東方魔卿録 (子アオ)
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プロローグ

彼らは失った居場所を求め、世界を敵に回した。
たとえそれがきっかけで命を散らす事になろうとも、それを後悔することはないだろう。

だが、しかし──




 

 

───ここはスピリット達の住まう世界、グラン・ロロ。

 

現在は十二神皇によって世界の均衡が保たれ、多種多様な種族のスピリットが協力して今を過ごしている──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───普段ならば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──刹那、陸を紫の閃光が斬撃のように走った。それを受けて紫の竜達が散っていった。

 

 

──今度は蒼い炎を纏う何かが駆け抜けた。それによって鈍く光った鱗を持つ、鳥のような竜達が消し飛んだ。

 

 

 

 

ここはグラン・ロロに存在しているとある島国。

 

その陸が炎や氷で覆われ、雷や風で切り裂かれていく。

 

 

 

長年の眠りから覚めた【邪神皇】と呼ばれるアルティメットが率いる邪神軍。

かたやグラン・ロロを守護する使命を承った12体の英雄、【十二神皇】を擁するグラン・ロロ連合軍。

 

 

 

 

 

破壊の後の変革か、今までと同様の安寧か。

 

 

 

 

 

 

 

──数刻程前、天下分け目の一大決戦の火蓋が切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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???「──失せろ!!」

 

ケンタウロスのような鎧を全身に纏った騎士が神皇軍の一角、死竜の軍勢を一掃した。

 

この騎士は邪神軍の統括者の1人、獄土を統べる四魔卿、『マグナマイザー』。

 

マグナ「ヴァン、そちらはどうだ?」

 

マグナが声を投げかけるが、近くには誰もいない。

しかし、その声に応える別の声があった。

 

ヴァン『こっちはどっちかと言えば優勢、ってところかな──ッ!向こうから酉と卯が来た!!一旦切るよ!!』

 

マグナ『了解した。負けるなよ。』

 

ヴァン『お互いにね。』

 

通信(?)を切ると、もう一度斬撃を放ち、周囲を一掃する……が、向こうから水晶のような竜と、翼を持つ蛇が降りてくる。

 

竜「ヒドイヤラレヨウダナ。」

 

蛇「我らが同志がここまでにされるとは、その力には惜しみない賛辞を送ろう。土の卿よ。」

マグナ「アメジストにティアマドー…貴様らか。」

 

アメジスト「ワルイガ、キサマハココマデダ。」

 

マドー「あぁ、我らがここで貴様を討つ!」

 

マグナ「フッ……やってみろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「──ここか!」

 

蒼を纏った馬が一頭、燃える大地を発見した。

彼の名は『エグゼシード・フォーミュラー』。

先程午の神皇の力を預かり、戦場に全速力で駆けてきた。

そこには高笑いする赤い竜を中心に同志の骸が転がっていた。

 

赤竜「こんなもんかァ!?スピリットっつーのはこんなに脆いのかァ!?」

 

F「!!……ブラムザンド、アイツか!!」

 

音速にも劣らない速さで赤い竜─獄炎の四魔卿『ブラム・ザンド』に突撃するフォーミュラー。

ブラムザンドも当然気づき、飛んで回避する。

 

ザンド「そのナリ……新しい午の十二神皇か?」

 

F「いかにも。俺は超・十二神皇エグゼシード・フォーミュラー。お前を焼く炎の名だ!!」

 

感じ取れるのは同志を殺された怒り。

ブラムザンドもそれを感じ取ったのだろう、両手に持った大剣を構えた。

 

ザンド「オレを焼く、ねぇ……はたしてその蒼い炎、俺の獄炎を払うのに足りるかな?」

 

F「その言葉、そのまま返そう。先代の神皇より受け継いだ力、存分に味わうといい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「………。」

 

「ウオォォッ!!」

 

一体の機獣が青い異形に飛びかかる。

異形が持った杖で大地を小突くと、その機獣は瞬く間に氷山の中に閉じ込められた。

 

???「うじゃうじゃ面倒じゃのう……機械の扱いには………慣れておらんでな。」

 

杖を振り上げると今度は氷の波が周辺の機獣達を閉じ込める。

この異形の名は『イル・イマージョ』。獄海を統べる四魔卿である。

 

イル「さて次は……ん?」

 

突如氷を破って侵入してきた二体の機獣。

 

一方は重砲を携えた羊、もう一方は要塞のような牛だ。

 

イル「グロリアスシープ……アバランシュバイソン……機械の奴らとはとかく面倒なのが多いのう。」

 

シープ「……。」

 

バイソン「……。」

 

イル「ほう、だんまりか……まあいい。さっさと狩らせてもらうぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???×2「「──タァーッっ!!」」

 

???「──はぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

緑の不死鳥と兎の連携を鎌と風を使って捌いてく虫というには大きすぎる何者か。

この甲虫──獄風の四魔卿『ヴァンディール』は兎の神皇『ミストラル・ビット』ともう一体の超・十二神皇『ゲイルフェニックス・ゼファー』を相手取っていた。

 

ビット「くっ……巧いですね……。」

 

ヴァン「2対1じゃ力も気合いも劣っちゃうからね……なら巧さで勝負するしかないでしょ?」

 

Z「ならば──今よりも疾く、強く、そう攻めるだけだ!!」

 

ヴァン「ならこっちも少しペース上げようか!!行くぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──先程各地で起こった両者の邂逅から半刻程か。

 

アメジスト「ハァッ!!」

 

マドー「フッッ!!」

 

 

 

マグナ「はっ!!」

 

 

 

 

 

渾身の一合。

恐らくこれで決着が着くと思われる攻撃。

 

──倒れたのは、鎧の騎士だった。

 

 

マグナ「くっ………。」

 

マドー「ハァ……ハァ……貴様の……負けだ……。」

 

マグナ「どうやら……そのようだな……フフッ。」

 

アメジスト「ナニガ、オカシイ?」

 

マグナ「いや、何も…………ここから北に……邪神皇がいる……まだ果てていないなら、挑むがいい……。」

 

アメジスト「……フン。」

 

マドー「……さらばだ。」

 

 

2頭が飛び去る。それとほぼ同時に、獄土の四魔卿は光と共に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ほぼ同刻、炎で覆われた戦場にて。

 

ザンド「………ククッ。」

 

F「………。」

 

嗤うブラムザンド、無言でそれを見据えるフォーミュラー。しかし、ブラムザンドの体には風穴が空いていた。

 

ザンド「オイオイ……こんなんで死ぬたァ……オレも衰えてんなァ……。」

 

F「…いいや、俺とお前でぶつかり、俺に運が向いただけの事。お前は強い。」

 

ザンド「言ってくれんなァ……あとは恐らく邪神皇だけだ。せいぜい足掻きな……。」

 

そう言うと、ブラムザンドは炎に包まれて消えてしまった。

 

F「……………行くか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イル「せいやっ!!」

 

バイソン「むんっ!!」

 

イルイマージョの攻撃をバイソンが受け止め、その後ろからシープが射撃で攻める。

バイソンの耐久力も相まって完璧な戦い方であるといえよう。

 

バイソン「………ッ。」

 

イル「……そっちの要塞は、限界っぽいのう!!」

 

イルイマージョもそのバイソンを削るだけの苛烈な攻撃を放っている。

 

バイソンとてあと十撃受け止められるか否か、程度だろう。

 

イル「お前さんが倒れればこっちの──なっ!?」

 

突如バイソンが飛びかかる。

 

イルイマージョにとっては咄嗟のことだったが、渾身の一撃を打つことでバイソンを吹き飛ばした。

 

イル「捨て身か……ッ!!もう片方は!?」

 

そう言ったときには既にシープがゼロ距離で待機していた。シープの攻撃まで数瞬───

 

 

 

 

 

イル「───ハァッ!!」

 

 

 

 

その数瞬が反撃を許すことになり、イルイマージョが魔法を飛ばす。ゼロ距離だったのが逆に災いし、至近距離で直撃する。

 

シープ「──まだッ!!」

 

 

が、シープの重砲から発射されたビームは確実にイルイマージョを捉え、貫く。

 

イル「グゥッ!!……ガハッ……。」

 

シープは当たったのを目で捉えてすぐ、機能を停止──死亡した。

 

イル「ったく……火事場の……馬鹿力とは………怖いのう………。」

 

水のように消えていったイルイマージョ。

 

異形の魔術師と鉄壁のコンビの戦いは、相討ちとなった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Z「───ッ!!」

 

ヴァン「──ッ!!」

 

声一つ聞こえない戦い。

ゼファーとヴァンディール、共に空中で満身創痍で打ち合いをしている。

 

その下には動かなくなったミストラルビットの姿があった。

 

ゼファーが一度距離を取り、最高の速度で突進してくる。ヴァンディールはそれに合わせ鎌を振りかぶり──

 

 

 

 

 

 

───互いの一閃が空に光る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァン「───あぁ───負け、か──。」

 

制したのはゼファー。

ヴァンディールは空から落ちていく。

 

それを一瞥したゼファーは、振り返らずに、前を見て、

さらにその先に飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

F「───見つけた。」

 

Z「───ここか。」

 

いち早く邪神皇のもとに辿り付いたのは超・十二神皇の二体。

 

F「待たせたな───邪神皇デスピアズ!」

 

ピアズ「……貴様らがここに来たということは、四魔卿達はやられた、か……。」

 

Z「……それは、お互い様だ。今まで散っていった仲間達の無念、貴様の敗北をもって手向けにする!!」

 

ピアズ「そうか………。

 

 

 

 

 

─────ならば、これからの戦は互いに弔い戦となろう。貴様らが、四魔卿へ手向ける最初の血だ。」

 

 

 

 

 

互いの目的のため、互いの信念のため、

最後の戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邪神皇と超・十二神皇、彼らの戦い。

状況など誰が見ても分かる。

 

万全の状態で控えていた邪神皇、それに対し満身創痍の二体。

 

どちらが優勢など言うまでもない。

もっとも、たとえ彼らが万全だとして、邪神皇にその刃が届くかも怪しいが。

 

邪神皇の攻撃が二体を襲う。流石に二体とも限界なのか、避けようとも身体が動かないようだ。

 

 

 

 

 

 

だが、その攻撃は二体に届くことはなく────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────二体の前には、光を纏った、

希望という字を体現したような、

一体の魔神の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 




そう。この戦いを望んだのは彼らだ。
間違っても、いわゆる『逆恨み』などという事はしないだろう。
彼らは本気の、そして正々堂々の戦を望み、神皇達もそれに応え、真っ向から迎え撃った。
戦の形としては素晴らしいものだろう。

だが───






















───もしその戦に水を差す者が居たとして、それを彼らが知れば、どうなるだろうか?


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第1話『冥界と剣士』

───冥界。死した魂が成仏、及び転生するまでの時を過ごす場所である。何故か最近は生者の訪れる頻度が急激に上がっているがそこはここでは割愛しよう。

 

死後の世界であるため、冥界に住む者は基本的に魂のみでここにいる。

 

しかし、その中に1人─いや、人なのかも分からない、五体満足の状態でこの冥界に存在している者がいた。

………いや、そもそもこの者は死者なのだろうか?

 

男「───やけに魂の数が多いな……さしづめここは冥界と言ったところか。」

 

紫の長い髪の男。それも刀を帯刀している。

先程の発言から、ここは彼にとって未知の場所であるのだろう。

その割には冷静だが。

 

男「さて……まずはとりあえず意思疎通の出来る者を探すとしようか。」

 

男「………ん?」

 

男が辺りを見回すと、遠くに大きな桜と屋敷があるのを確認した。

数秒それらを見ていたが、後にそこに向かって歩を進め始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男「ふむ……思ったより大きいな。この広さならば恐らく何者かがいるだろうが……。」

 

屋敷の中に入った男。どうやら扉は閉まってようで、上から侵入したようだ。

 

少し歩いたところで、先程の桜の木を見つける。

 

男(死者の世界だというのに、随分と綺麗な桜だな。庭の中の植物も手入れの痕跡があるのを見ると、誰かが住んでいるのは明白───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───動くな。」

 

男「!?」

 

男が振り返ると、白い髪の少女が二振りの刀を抜刀し、片方をこちらの首にあてがっていた。

 

男「………初対面の者にいきなり刃を向けるなど、いささか野蛮ではなか?」

 

少女「貴方のような者がこの『白玉楼』に来るなどという知らせは受けていません。よって貴方はただの侵入者です。」

 

男「……確かに、正論だな。」

 

少女「そう思っているならば、早々にお引き取り願います。」

 

男「それは聞けないな。少々用事もあるのでな。」

 

少女「………そうですか。ならばこうしましょう。」

 

少女は刀を収め、カードの束─『デッキ』を取り出し、男に向ける。

 

少女「……この地では、大抵の争い事はバトルスピリッツで解決するのが常識です。

私が勝ったら、貴方には即刻ここを去ってもらいます。」

 

男「『バトスピ』、か………いいだろう。俺が勝てば、こちらの話を少し聞いてもらおうか。」

 

少女「望むところです。」

 

男「なら決まりだな───そうそう、これを忘れていた。」

 

少女「?」

 

何かを思い出したような仕草に少女は首を傾げる。

 

男「一騎打ちの際に互いに名も知らぬままでいるのはいささか無礼であろう。名乗りを上げるくらいはしなくてはな。」

 

少女はああ、そういうことか…と納得する。

そして双方構え、自らの名を名乗る。

 

 

 

 

「──マグナマイザー。邪神軍、四魔卿の一角に座す者だ。」

 

「──魂魄妖夢。ここ、白玉楼の主の護衛、及び庭師をしている者です。」

 

 

マグナ「では行くぞ、魂魄──!!」

 

妖夢「遠慮は無用、いざ──!!」

 

 

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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妖夢「先攻と後攻、そちらがお選びください。」

 

マグナ「では先攻をもらおう。スタートステップ。」

 

マグナ「ドローステップ、メインステップ。

『ワンアイドデーモン』を召喚。さらに『獄土の騎士レフティス』を召喚する。レフティスの召喚時効果で1枚ドロー。」

 

マグナ「ターンエンドだ。」

 

マグナ

R:0 T:2 H:4 D:34

 

レフティス:【1】Lv1

ワンアイド:1 Lv1

 

 

妖夢「ではこちらのターン。スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。」

 

妖夢「『熱血剣聖リューマン・バーンカラー』を召喚。召喚時効果、デッキを4枚オープン。」

 

 

大地穿つ石剣

ネオ・ダブルドロー

太陽神剣ソルキャリバー

リューマン・クロウ

 

 

妖夢「この中から系統:剣刃を持つソルキャリバーを手札に。残りはデッキの下に戻します。」

 

妖夢「ターンエンド。」

 

 

妖夢

R:0 T:4 H:5 D:34

 

バーンカラー:【1】Lv1

 

 

マグナ「俺のターン。『旅団の摩天楼』を配置、配置時の効果で1枚ドロー。レフティスをLv2にアップし、バーストをセット。」

 

マグナ「アタックステップ。レフティス、行け。」

 

マグナの指示でレフティスが妖夢に突撃する。

 

妖夢「……ライフで受けます!!」

 

 

妖夢:ライフ5→4

 

 

マグナ「続いてワンアイドデーモンでアタック!!」

 

妖夢「それもライフです!」

 

 

妖夢:ライフ4→3

 

 

妖夢「ぐっ……。」

 

 

マグナ「ターンエンドだ。」

 

 

マグナ

R:0 T:1 H:4 D:32

 

レフティス:【3】Lv2

ワンアイド:1 Lv1

摩天楼:0 Lv1

 

 

妖夢「私のターン。(恐らく相手は紫の速攻。なら……)」

 

妖夢「『ガーネットドラゴン』をLv3で召喚します。そしてこのままアタックステップ。」

 

妖夢「ガーネットドラゴン、アタックです!」

 

ガーネットドラゴンが駆ける。マグナは、先程のフルアタックでブロッカーがいない。

 

マグナ「ライフだ。」

 

 

マグナ:5→4

 

 

妖夢「ターンエンド。」

 

 

妖夢

R:0 T:3 H:5 D:33

ガーネット:4 Lv3

バーンカラー:【1】Lv1

 

 

マグナ「俺のターン。『暗極天イブリース』をLv4で召喚。召喚時効果で1枚ドローする。」

 

マグナ「アタックステップだ。ワンアイドデーモン、もう一度行け。」

 

ワンアイドが先のターンと同じように飛んでいく。妖夢のブロッカーは1体。互いの手札とバースト次第ではそのままゲームエンドも有り得る。が──

 

 

 

妖夢「──ガーネットドラゴンの効果!!相手のアタックステップ中、こちらの系統:甲竜/竜人を持つスピリットは疲労ブロックが出来ます!!」

 

マグナ「何!?」

 

妖夢「ガーネット、ブロックを!!」

 

 

疲労していたガーネットが起き上がり、そのまま迎撃のため飛ぶ。

ワンアイドは回避しようとするが、体格差が大きいためか、避けきれずに叩き落とされた。

 

マグナ「チッ……続けてイブリースでアタック!BPは7000、ガーネットよりも上だ!!」

 

妖夢「くっ……そのアタックはライフで受けます!!」

 

 

妖夢:ライフ3→2

 

 

マグナ「ターンエンドだ。」

 

 

マグナ

R:1 T:2 H:5 D:30

 

イブリース:【3】Lv4

レフティス:1 Lv1

摩天楼:0 Lv1

 

 

妖夢「私のターンです。スタート、コア、ドロー……。」

 

妖夢「!(……いいタイミングですね。)」

 

妖夢「『リューマン・クロウ』を召喚。そして、リューマンクロウのスピリットソウルを発揮し、赤のシンボルを1つ追加!」

 

マグナ「!……大物が来るな……。」

 

妖夢「光より来たれ!黄金の剣聖よ!!

『アルティメット・アーク』召喚!!」

 

 

 

アルティメット・アーク Lv3 BP11000

 

 

 

マグナ「赤のアルティメットか……。」

 

妖夢「これだけではありません!『太陽神剣ソルキャリバー』アークに直接合体(ブレイヴ)して召喚!!」

 

大地からソルキャリバーが出現、アークがそれを引き抜き、構える。

妖夢が称したように、まさに剣聖と呼ぶにふさわしい姿だ。

 

妖夢「アタックステップ!お願いします、アーク!!」

 

アークが剣を構え、駆ける。

行く先はマグナ───ではなく、レフティスだった。

 

妖夢「ソルキャリバーの効果、相手のBP4000以下のスピリットを破壊します!!」

 

アークがソルキャリバーでレフティスを斬り捨てる。

そこからすぐに、マグナに向かって飛びかかった。

 

マグナ「ぐっ───」

 

アークが剣を振り下ろす。

その一撃は、マグナのライフを3つ奪っていった。

 

 

マグナ:ライフ4→1

 

 

マグナ「ぐっ………!!」

 

妖夢「アークはブレイヴしている時、自らに赤のシンボルを追加します。よってこのアタックは3点ダメージです。」

 

マグナ「やるな……だがそれで終わりだ。

ライフ減少によってバースト発動!『絶甲氷盾』!!

ライフを1回復、そしてコストを払うことでアタックステップを終了させる!」

 

 

マグナ:ライフ1→2

 

 

妖夢「辛うじて耐えましたか……ターンエンドです。」

 

 

妖夢

R:0 T:5 H:3 D:32

 

U・アーク:【1】Lv3

ガーネット:2 Lv2

バーンカラー:1 Lv1

リューマンクロウ:1 Lv1

 

 

マグナ「俺のターン……コアステップ、ドロー……ッ!」

 

マグナ「……フフッ。」

 

妖夢「……何がおかしいんですか?」

 

マグナ「いや………どうやら、このターンで決着がつくようだ。どちらが勝つかはこれから分かるが。」

 

妖夢「左様ですか………なら、白黒つけてしまいましょう。」

 

マグナ「もとよりそのつもりだ──行くぞ。」

 

 

マグナ「我が統べるは闇の大地。戦の舞台にて、ただ敵を地獄へと還す者────『獄土の四魔卿マグナマイザー』Lv4で召喚!!」

 

 

 

獄土の四魔卿マグナマイザー Lv4 BP25000

 

 

 

妖夢「な………見た事もないアルティメット……それに今、『マグナマイザー』って……。」

 

マグナ「察しがいいな。まあ、そこについての説明は今はよかろう……アタックステップ。」

 

妖夢(……来る!)

 

マグナ「俺自身でのアタック。アタック時効果、『トリプルアルティメットトリガー』ロックオン!!」

 

妖夢「!!」

 

マグナが右手を銃の形にして妖夢に向けると、妖夢のデッキの上から三枚がオープンされる。

 

マグナ「それぞれのコストは?」

 

妖夢「な……7、4、0……です。」

 

マグナ「全て8未満、トリプルヒットだ!!」

 

マグナがそう言うと、アルティメットの方のマグナマイザーがランスのような剣を薙ぎ払った。

 

それの斬撃が妖夢とそのスピリット達を襲う。

 

 

妖夢「なっ……!?」

 

マグナ「俺のトリガーのトリプルヒット時の効果。貴様のスピリットとアルティメットのコア6つ、ライフのコア1つ、手札2枚……これら全てをトラッシュに送る。」

 

斬撃が通り過ぎ、妖夢がフィールドを見ると、文字通りの更地となっていた。

 

マグナ「そしてメインアタックだ。どうする?」

 

妖夢「!……ライフで、受けます……。」

 

 

 

 

妖夢:ライフ0

 

 

 

 

 

 

WINNER…マグナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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妖夢「……私の負けです。先の約束通り、貴方の事情をお聞きします。」

 

マグナ「あぁ、助かる。」

 

妖夢「…ですがその前に、ここ白玉楼の主、西行寺幽々子様にこの事を伝えさせて頂きます。従者である私が勝手な行動をとる訳にはいきませんので。」

 

マグナ「あぁ、構わない。して、その西行寺とやらは……

 

 

 

「説明はいいわよ~妖夢。さっきのバトル、見てたわ~。」

 

マグナと妖夢が縁側を見やると、桃色の服を来た女性がお茶を飲んでいた。

 

妖夢「ゆ、幽々子様!いつから……」

 

幽々子「わりと最初の方からよ~。見てて面白かったわぁ……さてと。」

 

幽々子「はじめまして、。ここの主をしている西行寺幽々子よ。名前で呼んでもらって構わないわ。」

 

マグナ「マグナマイザーだ。長いからマグナでいい。」

 

は~い。と気の抜けたような返事をする幽々子。

そして、妖夢に手招きして幽々子の隣まで移動させ、話し始める。

 

幽々子「妖夢が迷惑をかけてごめんなさいね。この子ったら来る人来る人だいたいみんなに対してこんな感じで。」

 

マグナ「いや、無断で侵入してしまった俺にも非はある。こちらこそすまなかったな。」

 

妖夢「い、いえ!私の方こそ、申し訳ありません……。」

 

幽々子「じゃあこの話はこれでおしまい、と。それでマグナさん、お話があるのでしたっけ?」

 

マグナ「あぁ。正確にはこちらが聞きたい事がある、というものだがな。」

 

幽々子「分かったわ。ここで話すのも何だし、中でお話しましょう。妖夢、お茶をお出しして差し上げて。」

 

妖夢「はい!かしこまりました!」

 

2人が部屋の中に入っていったため、マグナもそれに続いて白玉楼に上がる。

 

マグナ(2人から感じる感覚からして、ここが冥界であるのは間違いないな……ということは俺は死んだのか?

いや、死んだならば先程フィールドで行ったバトルでの痛覚は普通に考えて感じないはずだが……。)

 

 

マグナ「……まあその事についても、話をしていく内に分かるか。」

 

神皇との激しい戦いの末敗れた四魔卿。

その内の1人が、幻想の中に迷い込んだ日であった。



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第2話『紅と紅、炎と呪』

──白玉楼──

 

マグナ「──それで、今に至る。俺が話せることはこれで全てだ。」

 

幽々子「なるほどねぇ……。」

 

妖夢「マグナさん、グラン・ロロ出身だったんですか……。」

 

屋敷の一室にて、マグナが現在に至るまでの経緯を説明し終わったように見える。

話を聞いた2人も、相応の反応を示した。

 

マグナ「ここが冥界だと言うのなら、俺はここに亡霊として来た、という事になるのか?」

 

幽々子「え?あなた、まだ死んでないわよ?」

 

マグナ「……なに?」

 

自分は死んだと思っていたマグナからすれば今の言葉は少し信じ難いだろう。

彼が目を丸くしているのを他所に、幽々子は話を続ける。

 

幽々子「確かに亡霊としてここに来る人はいるわ。とても少ないけどね。でも私が断言します。あなたはまだ死んだりなんてしてないわ。」

 

マグナ「……根拠は?」

 

幽々子「私があなたから感じるのが死者のそれじゃない、って言えば納得してもらえるかしら?」

 

マグナ「なるほどな……亡霊であるお前が言うのなら間違いはないのだろう。」

 

幽々子「納得してもらえたようで良かったわぁ♪」

 

一旦落ち着いたかのように2人は茶を啜る。

すると、妖夢がマグナに尋ねた。

 

妖夢「あの、マグナさん。1つよろしいですか?」

 

マグナ「む?なんだ?」

 

妖夢「その…これから、どうされるんですか?」

 

マグナ「どうとは……あぁ、確かにな……。」

 

どうするか、というのはマグナの今後だろう。

幻想郷ではマグナにはツテなどは一切ない。

お先真っ暗、と言ったところだろうか。

 

幽々子「……なら、ここを使う?」

 

妖夢「幽々子様!?」

 

幽々子「もちろん、白玉楼の手伝いはある程度していただくけどね。あなたにとっても悪い話ではないはずよ?」

 

マグナ「……。」

 

少し目を瞑って考えるマグナ。

その間、数秒。

結論が出たのか、幽々子の方を見て口を開く。

 

マグナ「そちらがそれで良いのなら…その提案、喜んで受けさせていただこう。よろしく頼む。」

 

幽々子「うふふ、よろしくねぇ♪」

 

妖夢「……よ、よろしくお願いしますっ。」

 

幽々子の提案によって案外早く片付いた衣食住の問題。

これで当面は問題ないと思われる。

 

マグナ「……にしても。」

 

妖夢「にしても……どうされました?」

 

マグナ「……先程話したように、俺達四魔卿は俺を含め四体いる。俺がここに来たという事は、もしかしたら他の奴らもどこかにいるのかもしれない…と、思ってな。」

 

幽々子「ありえない話ではないわねぇ……。」

 

妖夢「ですねぇ………あ、もうこんな時間ですか。マグナさん、料理などな?」

 

マグナ「並程度には。」

 

妖夢「では、お手伝いをお願いしてよろしいですか?厨房はこの奥にありますので。」

 

マグナ「承知した。」

 

そう言って、2人は厨房に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マグナ「……この食材の量はなんだ?」

 

妖夢「八割程幽々子様が食べます。」

 

マグナ「なんだと……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──マグナが食材の量に絶句しているのと同時刻。

 

幻想郷にある大きな湖の近くの紅い館。

幻想郷の住民は『紅魔館』と呼んでおり、吸血鬼を主とする建物だ。

 

その紅魔館の門に、欠伸をしながら門番をしている少女がいた。

 

少女「ふあぁ~……もうダメ…寝そうです……。」

 

彼女は『紅美鈴』。紅魔館の門番をしている妖怪である。

普段から寝ていることが多いため、館のメイド長に毎度毎度怒られているが。

 

その彼女が珍しく起きて門番をしているところに、1人の人影が。

 

?「おい、アンタ。」

 

美鈴「ん?……おや、見ない顔ですね。この紅魔館にどのような御用でしょうか?」

 

美鈴がそちらに目をやると、そこには長身で紅い髪をした男が1人。

 

男「へぇ、『紅魔館』っつーのか。道理で血みてぇに紅いわけだ。館っつーことは主もいるんだよな?」

 

美鈴「ええ、勿論……それで、何故紅魔館に?」

 

男「主に会わせろ。それだけだ。」

 

その言葉を聞いて、美鈴の目付きが険しくなる。

 

美鈴「主に?……それはなぜまた?」

 

男「アンタに話す事じゃねぇさ。ちょいと聞きたい事があるだけだ。」

 

美鈴「……どこの誰とも知らぬ者に、この門をくぐらせる訳にはいきません。」

 

男「へぇ……ってことはやるか?」

 

美鈴「当然……ターゲット。」

美鈴の声で男の懐から光が。

男は一瞬驚くが、懐のその光の原因の物を取り出す。

 

男「なるほどねぇ……ここでの喧嘩は『コレ』を使うのか。」

 

美鈴「ここを通るならば、私を倒してからにしていただきます。」

 

男「ご立派な忠誠心だな。上等だ───燃やしてやらァ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館の中にある一室。

そこには1つのベッドとそこから起き上がる幼い少女の姿が。

彼女は『レミリア・スカーレット』。吸血鬼であり、この館の主である。

 

服を普段のものに着替え、部屋を出る。

時刻は夕方。何か特別なことがない限り、彼女はこの時間帯の起床が多い。

 

そうこうしているうちに、レミリアはホールに出る。

 

すると、そこには自らに仕えるメイド長、『十六夜咲夜』が自分のいる方に背を向けて立っていた。

 

 

 

レミリア「!……咲夜、そんな所で一体──

 

 

 

───どうしたの、と言おうとした矢先、咲夜が見ている方向にいる人物が目に入った。

 

 

?「───アンタの後ろにいるその嬢ちゃんがここの主だな?探す手間が省けた。」

 

紅い長髪に高い背丈。見たことのない男がホールの入口にて自分と咲夜を見据えている。

 

レミリアは今生まれたひとつの疑問を解消するために、男に問いかける。

 

レミリア「お前、どうやってここに入った?門の前に館の門番が居たはずだが。」

 

男「そいつならさっき倒してきたぜ──コイツでな。」

 

男は右手に持った紙の束──デッキを見せながら言う。

それを見て、2人は驚きの表情を見せる。

 

男「そんなに意外だったか?……まあいい。そこの嬢ちゃんに用があんだが。」

 

レミリア「私はお前に用などない。」

 

男「だろうな。」

 

レミリア「お前がどこの誰かは知らないが…美鈴──門番を倒したのは賞賛しよう。」

 

男「そりゃどうも「だが」ん?」

 

 

レミリア「───それは、我ら紅魔館に対する宣戦布告だぞ?」

 

男「はァ?いきなりどういうこっ「ターゲット」……聞いてねぇし……まあいいわ。」

 

 

互いに歩み寄り、一定の距離まで近づくと歩を止める。

そして、互いにデッキを構えた。

 

 

 

 

男「四魔卿が一角、ブラム・ザンドだ。」

 

レミリア「紅魔館の主、名をレミリア・スカーレット。」

 

 

 

 

 

レミリア・ザンド「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

レミリア「先攻後攻、好きにするがいい。」

 

ザンド「そうかい。じゃあ先攻をもらおうか。スタートステップ。」

 

ザンド「ドローステップ、メインステップ。『邪神域』を配置。ターンエンドだ。」

 

 

ザンド

R:0 T:【4】 H:4 D:35

 

邪神域:0 Lv1

 

 

レミリア「(見たことのないネクサスだな……。)私のターン……え?……へぇ。」

 

ザンド「?」

 

レミリア「ええ……分かったわ。コアステップ、ドローステップ、メインステップ。」

 

ザンド(アイツ……誰と話してやがる……?)

 

レミリア「『混沌の魔術師アマルディ』を召喚。召喚時効果でデッキを3枚破棄。」

 

 

No.16リッチマウンテン

戊の四騎龍レッドライダー

クリスタニードル

→トラッシュ

 

 

レミリア「その後、トラッシュにあるアマルディ以外の紫のスピリットを手札に。レッドライダーを手札に戻す。」

 

レミリア「ターンエンド。」

 

 

レミリア

R:0 T:4 H:5 D:32

 

アマルディ:【1】Lv1

 

 

ザンド「オレのターン。『ビートルゴン』をLv4で召喚。邪神域をLv2に。」

 

ザンド「アタックステップ!アタックだ、ビートルゴン!」

 

レミリア「早速来たわね………ライフで受ける!」

 

 

レミリア:ライフ5→4

 

 

ザンド「先制攻撃はいただきだ。ターンエンド。」

 

 

ザンド

R:0 T:2 H:4 D:34

 

ビートルゴン:【2】Lv4

邪神域:1 Lv2

 

 

レミリア「私のターン。『紫水晶の古宮殿』を配置。配置時効果でデッキを5枚オープン。」

 

 

クリスタニードル

竜骸山脈

デスハザード

戊の四騎龍ホワイトライダー

辰の十二神皇ウロヴォリアス

 

 

レミリア「ウロヴォリアスを手札に。残りはデッキの下に戻す。」

 

ザンド「!……なるほど、さっき独り言のようにブツブツ言ってたのはそういう事か。」

 

レミリア「ええ、そうよ。お前の事はウロヴォリアスから聞いた。かつて刃を交えた宿敵……とな。」

ザンド「間違いじゃねぇな。現にグラン・ロロで殺し合った。」

 

レミリア「ウロヴォリアスは私の相棒。その敵というならば、それは私の敵だ。

『戊の四騎龍レッドライダー』を召喚。召喚時効果で1枚ドロー。」

 

レミリア「アタックステップ、レッドライダー、行け。」

 

レッドライダーが飛び、ザンドのもとに向かう。

 

ザンド「ライフだ。」

 

 

ザンド:ライフ5→4

 

 

ザンド「ッ……へぇ、痛覚が発生すんのか。」

 

レミリア「ターンエンド。」

 

 

レミリア

R:0 T:5 H:6 D:29

 

アマルディ:【1】Lv1

レッドライダー:1 Lv1

紫水晶の古宮殿:0 Lv1

 

 

ザンド「オレのターン。ビートルゴンの効果、メインステップ中ビートルゴンには緑と赤のシンボルが追加される。よって1コストで『バーゴイル』を召喚。召喚時効果でコアブースト。」

 

ザンド「さらに『ネオ・ダブルドロー』を2コストで使用。アルティメットがいるから3枚ドローする。そしてバーストセット。」

 

ザンド「ターンエンドだ。」

 

 

ザンド

R:0 T:3 H:6 D:30

 

ビートルゴン:【2】Lv4

バーゴイル:2 Lv3

邪神域:1 Lv2

 

 

レミリア「私のターン……さて。」

 

レミリア「アマルディとリザーブのコアを交換。その上で『戊の四騎龍ブルーライダー』を召喚。……これで戦場は整った。」

 

ザンド(来やがるか……!!)

 

 

レミリア「──深淵より出でる龍王よ。今こそその呪われた力を解放せよ!『辰の十二神皇ウロヴォリアス』Lv2で召喚!!」

 

 

ウロヴォリアス Lv2 BP16000

 

 

レミリア「Lv2にするためのコストはアマルディから確保する。」

 

レミリア「アタックステップ!行け、レッドライダー!」

 

ザンド「チッ……バーゴイル、ブロックだ!」

 

バーゴイルがレッドライダーを迎え撃つ。

レッドライダーが騎乗している竜は巧みに動き回り、バーゴイルの背後をとる。

そのまま一撃を与えんと突っ込むが、直前でバーゴイルに躱され、カウンターを喰らって破壊された。

 

 

ザンド「同コスト帯でアルティメットに勝負するのは悪手だぜ?」

 

レミリア「ククッ……いいや、これでいい……ウロヴォリアス!」

 

レミリアが名を呼ぶと、ウロヴォリアスが地面を叩く。

すると、地面から紫の龍が這い出てきて、ザンドに突っ込んでライフを破壊した。

 

ザンド「ッ!!……んなっ!?」

 

 

ザンド:ライフ4→3

 

 

レミリア「ウロヴォリアスがいる間、私のターンに系統:神皇/十冠を持つスピリットが破壊された時、その数だけ相手のライフをボイドに送れる。」

 

レミリア「この程度でへばるなよ?ウロヴォリアス、行け!」

 

今度はウロヴォリアスが飛び、ザンドに突っ込む。

 

ザンド「ビートルゴンでブロック!」

 

ビートルゴンが迎撃のために飛ぶが、あっという間にウロヴォリアスに叩きつけられ、破壊される。

 

 

レミリア「そうね………ターンエンドよ。」

 

 

レミリア 【封印】

R:1 T:3 H:5 D:28

 

ウロヴォリアス:2 Lv2

ブルーライダー:1 Lv1

紫水晶の古宮殿:0 Lv1

 

 

ザンド「チッ……オレのターン。「スタートステップ。」!?」

 

レミリア「ウロヴォリアスの【呪縛】。相手の各ステップ開始時、相手のスピリットかリザーブのコアを1つトラッシュに送る。」

 

ザンド「スピリットかリザーブだと?オレのフィールドにはアルティメットしか「だがここでブルーライダーの効果」

 

レミリア「系統:神皇/十冠を持つ自分のスピリットが相手のスピリットに及ぼす効果は、アルティメットもその対象に捉えるようにできる。」

 

ザンド「なっ…!?」

 

レミリア「消えろ、バーゴイル。」

 

紫の龍に縛られ、バーゴイルが消滅。ザンドのフィールドはネクサスのみとなった。

 

ザンド「……メインステップ。『生還者ネオ・アーク』をLv3で召喚。邪神域にコアを追加し、アタックステップ。」

 

レミリア「ステップ開始時、【呪縛】。ネオアークのコアを1つトラッシュに。」

 

ザンド「構うか!アタックだ、ネオアーク!」

 

レミリア「ライフだ。」

 

ネオアークが斧でレミリアを攻撃し、ライフを削る。

痛みは感じているのだろうが、レミリアの表情にはかなりの余裕が見える。

 

ザンド「ターンエンド。」

 

レミリア「エンドステップ、ネオアークのコアをもう1つトラッシュに送る。」

 

 

ザンド

R:0 T:5 H:5 D:29

 

ネオアーク:【1】Lv1

邪神域:3 Lv2

 

 

レミリア「私のターン。ウロヴォリアスからお前達四魔卿の事は聞いていたが、こんなものか……まあいい。」

 

レミリア「これで終わりだ。召喚!!異魔神ブレイヴ、『龍魔神』!!ウロヴォリアスの左に合体(ブレイヴ)だ!」

 

 

ウロヴォリアスと龍魔神がリンクし、合体。

Lvも3に上がり、ウロヴォリアスが吼える。

 

レミリア「アタックステップ、行け、ウロヴォリアス!!」

 

ウロヴォリアスが再び攻撃に入る。

 

ザンド「ッ……ライフだ!」

 

ザンド:ライフ3→1

 

レミリア「龍魔神の力を得たウロヴォリアスはWシンボル。残りは1つ。ブルーライダーでアタックだ!」

 

ザンド「させるか!フラッシュ、『白晶防壁』!ブルーライダーを手札に!」

 

ブルーライダーが白い壁に囲まれ、手札に戻された。

 

レミリア「辛くも耐えたか……ターンエンド。」

 

 

レミリア 【封印】

R:1 T:3 H:6 D:27

 

ウロヴォリアス:5 Lv3

紫水晶の古宮殿:0 Lv1

 

 

ザンド「オレのターン…。」

 

レミリア「ブルーライダー不在により、【呪縛】が実質的に有効なのはメインステップの1回になる。」

 

ザンド「(それでも使えるコアは減りやがる……さて、どうするか……。)……ドロー……ステップ。」

 

ザンド「ッ!?……ハハッ。」

 

ザンド「どうやらまだ勝負はついてねぇようだな。………いや、これからつくのか?」

 

レミリア「……?」

 

ザンド「なぁに、今から見せてやるよ───我が統べるは絶望の炎。全ての戦場は我が力の前に燃え尽きる──召喚『獄炎の四魔卿ブラム・ザンド』!!Lv5で参上ってなァ!!」

 

 

ブラム・ザンド Lv5 BP26000

 

 

レミリア「……それがお前の本来の姿か。」

 

ザンド「あぁそうだ。だがまだまだ、アルティメットを召喚したことにより、このブレイヴをノーコストで召喚する。『地球神剣ガイアノホコ』を召喚し、そのまま合体(ブレイヴ)だ!」

 

 

アルティメットのブラム・ザンドの剣のうちひとつの表面が割れ、その中から緑色の剣が姿を現す。

 

ザンド「さあ、アタックステップと行こうか!!オレ自身でアタック!!アタック時効果発揮!!」

 

 

ザンド「俺の魂は地獄の炎そのもの…今こそこの獄炎を解放せん!!【ソウルドライブ】発揮!!」

 

ザンドがソウルコアをバトルフィールドに投げる。

すると、アルティメットのブラム・ザンドの下に魔法陣が形成され、その魔力が剣に集中していく。

 

 

ザンド「オレのソウルドライブの効果は単純明快。ソウルコアを除外することでお前のスピリットを全て破壊し、次のオレのターンまで、お前はスピリットを召喚できない!!」

 

レミリア「なっ──!?」

 

アルティメットのブラム・ザンドが炎を纏った剣を薙ぐ。その炎がレミリアのフィールドとスピリットを焼き尽くす。

 

レミリア「ぐっ!?ウロヴォリアス!」

 

ザンド「メインアタックだ!どうする!?」

 

レミリア「……ライフだ!」

 

 

レミリア:ライフ4→2

 

 

ザンド「ターンエンド。」

 

 

ザンド

R:0 T:6 H:4 D:28

 

ブラムザンド:3 Lv4

ネオアーク:1 Lv1

邪神域:0 Lv1

 

 

レミリア「わ、私のターン。」

 

レミリア「……2枚目の『紫水晶の古宮殿』を配置。配置時効果でデッキを5枚オープン。」

 

戊の四騎龍ブラックライダー

戊の四騎龍レッドライダー

ポイズンブレス

絶甲氷盾

ウロドラ

 

レミリア「ブラックライダーを手札に加え、残りはデッキの下に……ネクサスのレベルを上げてターンエンド。」

 

 

レミリア【封印】

R:6 T:2 H:7 D:25

 

龍魔神:0 Lv1

紫水晶の古宮殿:2 Lv2 ×2

 

 

ザンド「オレのターン。『ネオ・ダブルドロー』を使用し、3枚ドロー。」

 

レミリア(ブラックライダーと絶甲氷盾……これなら防げる筈、あとは奴が他のスピリットを出せば……。)

 

ザンド「『獄炎伯デフェール』をLv3で召喚する。デフェールの召喚時効果。」

 

レミリア「召喚時?今更何をする気「さっき放ったオレのソウルドライブ、それをもう一度、ソウルコアを除外させずに発揮させる。」──ッッ!?」

 

ザンド「さて、これでここからまたスピリットは召喚出来ねぇ……アタックステップ。オレ自身でもう一度アタックだ!」

 

レミリア「ッ……ライフだ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア:ライフ0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第3話『挨拶』

ザンド「──ったく、この短時間で連戦たァめんどくせぇ。ここの連中は人の話を聞きもしねぇのか?こっちは聞きたい事があるだけだっつーのに。」

 

レミリア「……聞きたいこと?一体何を「なるほどな。」ん?」

 

レミリアのデッキから1枚のカードがザンドの頭の位置まで浮上してくる。

それに合わせてレミリアも立ち上がる。

 

ザンド「あぁ、やっぱテメェかウロヴォリアス。パチモンだったら笑ってやったんだがな。」

 

出てきたカード──ウロヴォリアスにも煽るような口をきく。口の悪さは恐らく彼の性分なのだろう。

 

ウロヴォリアス「全く、あいも変わらずの憎まれ口よ……。」

 

レミリア「話を逸らすな。なるほど、とはどういうことだ?」

 

ウロヴォリアス「簡単な話。こやつも私と同じという事だ。」

 

レミリア「……そういう事か。つまりお前もグラン・ロロで死に、ここに流れ着いた者の1人という訳ね。」

 

ザンド「その『ここ』っつーのが何処かってのを聞きにきたんだがな。」

 

レミリア「……いいだろう。話してやる───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~少女説明中~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「───と、いう訳だ。」

 

ザンド「なるほどねぇ。それでそこの辰と同じって訳か。」

 

ウロヴォリアス「というか、用がそれだけならば何故美鈴と戦闘になった?」

 

レミリア「……確かにそうね。お前、美鈴の気に障るような事でも言ったのか?」

 

ザンド「いや、何も言ってねぇぞ?文字通り何も。」

 

レミリア「自業自得か!用件も何も言わずに通ろうとすればそうなるってことぐらい分かるでしょうが!」

 

ザンド「あー……確かにな……なんつーか……わりぃ……。(てか口調のオンオフどうなってんだこいつ…)」

 

ザンドはバツの悪そうな顔で目をそらし、謝る。

 

ウロヴォリアス「雑さ加減も相変わらずか。」

 

ザンド「ほっとけ。」

 

レミリア「……ひとつ聞く。」

 

ザンド「ん?」

 

レミリア「……お前、ここで何をするつもりだ?」

 

ウロヴォリアス「…それはそうだな……グラン・ロロでの神皇軍との全面戦争の事もある。貴様、目的はなんだ?」

 

ザンド「バカ言うな。そんなもんねぇよ。ほかの四魔卿も邪神皇も居ねぇし、よくわからん土地で暴れる程めでたい頭もしてねぇ。強いて言うなら拠点の確保ぐらいだろうよ。」

 

幻想郷への敵意は無いということを示すように両手を上げて言う。

レミリア(……信用できるか?)

 

ウロヴォリアス(奴は敵ではあるが、この状況で嘘をつくほど間抜けではなかろう。念の為多少の警戒は必要だが、嘘ではないとは思うが……)

 

ザンド「てなわけでさ、この館の部屋1つしばらく貸してくれねぇか?」

 

レミ・ウロ「「………は?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって紅魔館の廊下。そこには二人分の足音が響いている。

しばらく歩くと、ある部屋の前で足音が止んだ。

 

片方が部屋の扉を開け、二人は中に入る。

 

咲夜「ここがあなたの部屋よ。」

 

ザンド「思ったよか広いな。」

 

咲夜「狭いよりはいいでしょう。」

ザンド「まあな。サンキュー。」

 

咲夜「明日から早速仕事に入ってもらうわ。最低限の家事くらいはできるでしょう?」

 

ザンド「当然。」

 

事務的な会話をする2人。

あの後紅魔館の皆で協議した結果、『紅魔館で働く』という形で手を打ったのだ。

 

咲夜「紅魔館の内部はさっき教えたわね。分からなくなったらもう一度聞きなさい。あと、館の皆には1度挨拶をしに行くように。じゃあ私はこれで。」

 

ザンド「了解………っと、じゃあまずは。」

 

ザンド「これからよろしく頼むぜ。メイド長さん。」

 

そう言って手を差し出す。一瞬あっけにとられた咲夜だが、すぐに握手に応じた。

 

咲夜「えぇ、よろしく。じゃあ、私はお嬢様のところに戻るから。」

 

そう言うと、咲夜は部屋を出て戻っていった。

 

ザンド「……さて、早いとこ挨拶済ませちまうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──大図書館──

 

ザンド「……うっわ。」

 

見渡す限りの本、本、本。あまりの多さに感嘆の声が漏れる。

 

?「あ、ザンドさん。どうされました?」

 

ザンド「!」

 

声をかけてきたのは赤い髪に黒い翼の少女。名を『小悪魔』といい、この大図書館の司書をしている。

 

ザンド「メイド長がほかのメンバーにも挨拶して来いって。つーわけで、改めてよろしくな。」

 

小悪魔「はい、よろしくお願いします!」

 

小悪魔「ちなみに、パチュリー様や妹様にはお会いに?」

 

ザンド「いや、まだだが……。」

 

小悪魔「なら案内しますよ。丁度お二人とも大図書館にいらっしゃいますし。」

 

ザンド「じゃ、頼もうかね。」

 

小悪魔について行くザンド。その移動している途中でも周りは本で溢れている。しばらく行くと、紫の服を着た女性と、宝石のような翼を背中に持った少女が目に入る。

 

紫の彼女は『パチュリー・ノーレッジ』魔女であり、小悪魔の主でもある。

翼の彼女は『フランドール・スカーレット』名前と小悪魔の発言からお察しの通りレミリアの妹である。

 

パチュリー「本でも借りに来た?しっかり返すなら貸すけど。」

 

ザンド「オレは借りたモン返さねぇほどロクでなしじゃねぇぞ?いや、そういうのじゃなくてな。まあ単なる挨拶ってやつだ。これからここで世話になるからな。」

 

パチュリー「あら、そういう事ね。よろしく。」

 

ザンド「こっちこそ、な。フランドールもよろしくな。」

 

フラン「よろしくね!」

 

ザンド「おう。……さて、あとは美鈴とレミリアか。」

 

フラン「もう行っちゃうの?ちょっとぐらい遊んで行こーよ。」

 

ザンド「そうしたいのは山々なんだが………まあいいか。よし、付き合ってやるよ。」

 

やったー!とはしゃぐフラン。このあとなんだかんだで2、3時間程相手をして、レミリアのところに行った時にお叱りを喰らったのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──草木が生い茂る場所。傾斜もあることを考えると、山だろうか。

突如、十数の影が横切った。その集団は各々が同じ帽子と刀を身につけ、陣形のようなものを組んで走っていく。

また、大半の者は頭部に犬の耳のようなものが付いており、尻尾も確認できる。恐らく妖怪だろう。

 

そして、その集団の十メートル程先を駆け抜けている者の姿が。

体躯はほんの少し大きい子供程度のもので、フードを被り、右手には特殊な形状の鎌、背中には透明がかった緑の薄羽が二対。

 

子供が進行方向を変えると、集団もそれに合わせてその方向へ向かう。格好の違いから、集団が子供を追いかけているのだろう。

 

子供「………っと!」

 

子供が足を止めると、その前方には別の集団が。完全な挟み撃ちである。

 

子供「あらら……。」

 

困ったような言葉を呟くが、表情には余裕が見える。

子供は鎌で地面を斬った────すると、子供が地面に飲まれるようにして消えた。

 

 

「「「!!!???」」」

 

「どこだ!?」

 

「あの一瞬で穴を?」

 

「まだ近くにいるはずだ!探せ!」

追っていた者達が混乱する。すると、遠くの方から彼らを呼ぶ声が聞こえた。

 

「こっちこっちー!続きしようよ!」

 

先程の子供だった。フードが取れており、容姿だけみればただの幼い少年である。

 

「居たぞ!次こそ逃がすな!」

 

再び少年と集団の追いかけっこが始まる。

少年は笑顔のまま、集団と一定の距離を維持しながら走り続ける。

 

少年「フフフッ……ていうか、ホントにここどこなんだろう……?」

 

少年「……適当に遊んだらチャチャッと撒いて、人が集まってる場所を探すかなぁ……。」



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第4話『暴風の申し子』

「いたぞ!こっちだ!」

 

少年「おぉっと、見つかっちった。」

 

見つかり、逃げ出す少年と、それを追う集団。

集団は包囲、待ち伏せなどあの手この手で少年を追い詰めるが、逃げ場を無くしても少年は一瞬で別の場所に移動する。

 

そのせいでかれこれ2時間はこの状態が続いている。

 

少年「……フフッ。」

 

「!また消えたぞ!」

 

再び少年が消えたのを見て、周囲のそれぞれ別々の方向に走り出す集団。数分と待たず、先程まで少年がいた場は静寂に包まれた───のだが。

 

少年「フフフッ、毎度毎度別の場所に行くとは限らないもんね~。」

 

先程までいた場所にいきなり現れた少年。

誰も居ないのを確認すると、少年はその場に寝そべる。

 

少年「あー面白かった。でも少し疲れちゃったし、そろそろこの山っぽい場所を離れようかなー……っと。」

 

少年は立ち上がり、そこから飛び立とうとする。

が、その前に後ろから声がかけられた。

 

「──貴方が、先程報告のあった侵入者ですね?」

 

少年「ん?」

 

少年が振り向くと、先程の集団と同じ格好をした少女が。先程の集団の中には居なかったように思い、少年は首を傾げる。

 

少年「あれ?もしかしてさっきの人達のお仲間さん?」

 

少女「……その様子では、貴方が報告の者で間違いないようですね。この『妖怪の山』に何の用です?」

 

妖怪の山。少女は確かにそう言った。だからさっきの彼等は尻尾が生えていたりしたのか、と少年は自分で納得する。

 

少年「用っていう用はないんだよねー。」

 

少女「用もないというのに白狼天狗の懲戒隊を何時間もおちょくって……。」

 

少年「あ、あの人達天狗さんなんだ……知らなかった……。」

 

少女「そのまま立ち去れば良かったものを。連行させてもらいます。」

 

少年「お断り……だねっ!」

 

少年は先程のと同じ手段で消える。少女は一瞬驚くが、数秒そこに留まった後、すぐにその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年「ここまで来れば流石に分からないでしょ……。」

 

一方、少年はさっきの場所からそれなりに離れた場所に居た。走ったような後が見られないのを見ると、これまでの奇妙な移動手段は彼の能力だろうか。

 

少年「いやぁ、新手が来るとはね……とりあえずここを離れ「見つけた。」!!」

 

少年が振り向くと、約十数歩というところの距離を先程の少女が走ってくるのが見えた。少年は驚きながらも、また『消える』。

 

少女「また……次は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年「なんで分かったんだよ……ビックリしたぁ……。」

 

一回目よりも遠めの距離に移動した少年。

すぐに見つかったことに慌てたのか、少し冷や汗をかいているのが分かる。

 

少年「流石にまた見つけられたらたまったもんじゃないよ……もうさっさとここから──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───見つけた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

少年「──!?」

 

少年がまた声の方に振り向くと、そこには少女の姿が。

 

少年「なんでまた……!?」

 

少女「大人しくついてきてもらいたいのですか……。」

 

少年「嫌な予感しかしないからお断りします!」

 

少女「そうですか……なら「椛隊長!!」

 

一触即発の状態に投げられた声。

2人はその声の方を向いた。

 

椛「どうしました?」

 

「また別の侵入者です!今度はこちらに怪我人まで出ています!」

 

椛「!?……わかりました。案内を。」

 

少年(?……見逃してくれる感じかな?)

 

「では……その前に、あの者はどうしますか?」

 

椛「……残念ですが、彼に構っている暇はありません。行きましょう。」

 

少女「そこの貴方も、今回は見逃しますので、早々に立ち去るように。」

 

そう言うと、椛と呼ばれた少女は部下を連れて別の方向に走っていった。

 

少年(別の侵入者……もしかしたら皆の内の誰かかもだし……行ってみようかな。)

 

少年は数秒考えた後、先程2人が向かった方向に飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椛「あれか!」

 

椛が現場に着くと、十数人の天狗達と1匹の赤い竜が戦っていた。

 

椛は竜の死角から飛びかかって斬りつけるが、浅くしか入らなかった上、気づいた竜に回避の間も無く吹き飛ばされる。

 

椛「くっ……硬い……。」

 

竜「……Grrr……。」

 

両者とも構えて様子を見ていると、1人の人影が竜に向かってくる。竜はそれに気づき、後ろに飛んで避けた。

 

椛「なっ!?貴方は!!」

 

少年「ちぇー、赤い竜が居たからアイツかと思ったけどハズレかぁ……首つっこみ損だったなぁ……。」

 

椛「立ち去れと言ったはずです!」

 

少年「てへっ☆」

 

椛の忠告を無視したことを少年が誤魔化していると、先程は唸るだけだった竜が言葉を発した。

 

竜「ヴァン……ディール……。」

 

少年→ヴァンディール「あれ?僕のこと知ってる感じ?ってことは君スピリットか。」

 

竜「GAAAAA!!」

 

竜が吠えたのを見てヴァンディールと呼ばれた少年が構える──が、その瞬間両者の間に光が発生し、周囲を呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァン「ん……なんだここ……バトルフィールド?」

 

竜「ソノトオリダ。」

 

ヴァン「ってことはバトスピ(これ)で決着付けるわけか…。」

 

竜「察シガイイナ。」

 

ヴァン「じゃあパパっとやっちゃおうか。先攻どうぞ。」

 

竜「フン、オレノターン。」

 

竜「ネクサス、『恐龍同盟本拠地』ヲ配置。ターンエンド。」

 

 

R:0 T:【4】H:4 D:35

 

恐龍同盟本拠地:0 Lv1

 

 

ヴァン「僕のターン。『ビートルゴン』をLv4で召喚。そして『ビートルゴン』の効果でメインステップ中に自身に赤と緑のシンボルを1つずつ追加。」

 

ヴァン「ネクサス『邪神域』を配置。『ビートルゴン』のレベルは下がるよ。ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:0 T:4 H:3 D:35

 

ビートルゴン:【1】Lv3

邪神域:0 Lv1

 

 

竜「オレノターン。『恐龍同盟ステゴラール』ヲLv2デ召喚。『ステゴラール』デアタック!」

 

竜「アタック時効果、1ドローシテBP+3000。サラニ『恐龍同盟本拠地』ノ効果デ疲労状態ノ地竜ハスピリット、ブレイヴノ効果ヲ受ケナイ!!」

 

ヴァン「ふーん……ライフで「フラッシュタイミング!」ん?」

 

竜「【煌臨】発揮ダ!!」

 

ヴァン「!?」

 

竜「ソウルコアヲ支払ウコトデ『ステゴラール』ニ新タナスピリットヲ重ネル!!『恐龍同盟 鎧角のドレッドロサウルス』、煌臨!!」

 

ヴァン「……煌臨……?」

 

突如ステゴラールを炎が包む。しばらくすると、その炎の中からステゴラールとは全く別のスピリットが現れた。

 

竜「『ドレッドロサウルス』ノ煌臨時効果!煌臨元ノカードノ数ドロースル!!」

 

ヴァン「……それでもライフで受けるのは変えないよ!」

 

ドレッドロサウルスがヴァンに突撃し、ライフを奪う。

ヴァンは衝撃でほんの少し後に後退する。

 

 

ヴァン:ライフ5→4

 

ヴァン「痛ッ……くっ……!!」

 

竜「ターンエンドダ。」

 

 

R:0 T:【3】H:5 D:32

 

ドレッドロサウルス:2 Lv1

恐龍同盟本拠地:0 Lv1

 

 

ヴァン(思ったより全然ダメージが来る……カウンターを警戒してちょっと慎重に行こうかな………。)

 

ヴァン「僕のターン。『ビートルゴン』をLv4に上げて『バーゴイル』を召喚。召喚時効果でコアブースト。」

 

ヴァン「それで『ネオ・ダブルドロー』を使うよ。アルティメットがいるから3枚ドロー」

 

ヴァン「ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:0 T:3 H:5 D:31

 

バーゴイル:1 Lv3

ビートルゴン:【2】Lv4

邪神域:0 Lv1

 

 

竜「オレノターン。『赤の探索者エドウィック』ヲ召喚。召喚時効果デデッキヲ3枚オープンシ、【煌臨】ヲ持ツスピリットヲ加エル。」

 

ジュラシックスピア

恐龍同盟 マノブロウサウルス

恐龍覇者ダイノブライザー

 

竜「ガハハ!『ダイノブライザー』ヲ加エ、残リヲ破棄。サラニネクサストスピリットノレベルヲアゲル。」

 

竜「ターンエンドダ。」

 

 

R:0 T:1 H:6 D:28

 

ドレッドロサウルス:【3】Lv2

エドウィック:1 Lv1

恐龍同盟本拠地:1 Lv2

 

 

ヴァン「僕のターン。(相手の動きが止まった……行くか。)ビートルゴンのレベルを4に。」

 

ヴァン「そして『木星神剣ジュピターセイバー』を召喚。召喚時効果で自分のアルティメットにコアを1つずつ追加。」

 

竜「ココニキテ緑ラシイ動キヲシテクルナ。」

 

ヴァン「まだまだ、『終焉甲帝(ラストエンペラー)』を召喚!召喚時効果でさらに2つコアブースト!」

 

ヴァン「『ジュピターセイバー』を『終焉甲帝』に合体(ブレイヴ)し、ビートルゴンと『終焉甲帝』をLv4に。アタックステップ!」

 

ヴァン「合体アルティメットでアタック!『アルティメットトリガー』ロックオン!」

 

竜のデッキの1番上が公開される。公開されたカードは『恐龍同盟 鉄面のダスプレトン』。コスト5だ。

 

ヴァン「ヒット!ヒットしたことで、相手のスピリットを2体疲労させる!そしてメインアタックだ!」

 

竜「甘イゾヴァンディール!

フラッシュタイミング、『ジュラシックスピア』!!

ダブルシンボルノアルティメット、ツマリ『終焉甲帝』ヲ破壊!!」

 

地面から巨大な刃が数本突き出て、終焉甲帝を串刺しにする。終焉甲帝は破壊され、ジュピターセイバーが宙に舞う。

 

竜「サラニ【煌臨】ヲ持ツ『ドレッドロサウルス』ノ下ニ手札ノ『恐龍同盟 刃雷のエレクトロサウルス』ヲ追加スル!!」

 

ヴァン「くっ……ジュピターセイバーは残す!アタックはまだ続いてる!」

 

竜「ライフノヒトツ程度、クレテヤル!!」

 

 

竜:ライフ5→4

 

 

ヴァン「くっ…ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:0 T:6 H:4 D:30

 

ジュピターセイバー:【3】Lv1

ビートルゴン:2 Lv4

バーゴイル:1 Lv3

邪神域:0 Lv1

 

 

竜「オレノターン。『ドレッドロサウルス』ト『エドウィック』ヲLv2ニ。ソシテアタックステップ。」

 

ヴァン(何もせずにアタックステップ?……何が目的だ……?)

 

竜「『エドウィック』デアタック!

フラッシュ、再ビ【煌臨】ダ!!」

 

ヴァン「また煌臨……さっき加えた奴か!!」

 

竜「ソノトオリ!イデヨ、我ガ分身、『恐龍覇者ダイノブライザー』!!

『ドレッドロサウルス』ニ煌臨!!」

 

 

ダイノブライザー Lv2 BP16000

 

 

ヴァン「お前のキーカードか……!」

 

竜「オレノキーカードデアリ、オレソノモノ。コノ力、トクト味ワエ!!煌臨時効果発揮!」

 

ダイノブライザーは出現地面を踏みつけ、揺れを起こす。その後、咆哮と共に炎を放ち、ヴァンのフィールドを焼け野原にした。

 

竜「貴様ノBP10000以下ノスピリット、アルティメットヲ全テ破壊!!ソシテ『エドウィック』ノメインアタック!!」

 

ヴァン「くっ……ライフで受ける!」

 

 

ヴァン:ライフ4→3

 

 

竜「『ダイノブライザー』、オレ自身ノアタック!」

 

ヴァン(削りきれもしないのにフルアタックか……!)

 

竜「ココデ『ダイノブライザー』ノ【連覇】ヲ発揮!!オレノ下ニカードガ3枚アレバ、ソレヲ破棄スルコトデオレノターンヲ再ビオコナウ!!」

 

ヴァン「なっ……!?」

 

ダイノブライザーがヴァンに爪をお見舞いしてライフを削った。

 

 

ヴァン:ライフ3→2

 

 

ヴァン「ぐっ……!」

 

 

竜「エクストラターン。『恐龍同盟 ドロマエオー』、『暴双龍ディラノス』ヲ連続召喚。」

 

ヴァン「……随分と……並べるねぇ。」

 

竜「絶望ダロウ。コレデ貴様ノ負ケダ。アタックステップ、『ディラノス』でアタック!」

 

ヴァン「負けかどうかはまだ分からないだろ……『絶甲氷盾』を使うよ!!このバトルの後アタックステップを強制終了!アタックはライフだ!」

 

 

ヴァン:ライフ2→1

 

 

竜「チッ……マアイイ。ターンエンドダ。コノ状況ヲ覆スナドデキマイ。」

 

 

R:0 T:4 H:4 D:24

 

エドウィック:1 Lv1

ダイノブライザー:【1】Lv1

ディラノス:1 Lv1

ドロマエオー:1 Lv1

恐龍同盟本拠地:1 Lv2

 

 

ヴァン「僕のターン……。」

 

ヴァン(まずい……このターンで決めなきゃ負ける……。)

 

竜「無理ダナ。イクラコアガアロウガ手札ガ3枚デハドウニモデキマイ。」

 

ヴァン「うるさいな……ドローステップ!」

 

ヴァンがカードを引く。勝負はこのドロー次第だろう。

 

ヴァン「……ん?」

 

ヴァン「……ま、やるだけやってなるように、か。」

 

竜「…?」

 

ヴァン「───真打登場ってね。」

 

ヴァン「我が統べるは地獄の暴風。その風は同志を鼓舞し、敵に敗北を与える───『獄風の四魔卿ヴァンディール』Lv4で召喚!!」

 

 

ヴァンディール Lv4 BP22000

 

 

竜「貴様ノ本来ノ姿カ……。」

 

ヴァン「そゆこと♪さて……勝負を決めようか。『ヴァンディール』のアタック!!」

 

ヴァンディール「我が魂は風そのもの。今こそその風は吹き荒れん!!【ソウルドライブ】発揮!!」

 

ヴァンがソウルコアを砕く。

すると、上空に裂け目のようなものが開く。

 

ヴァン「まずは自分のデッキをアルティメットが三体出るまでオープンする!」

 

ヴァンのデッキが1枚ずつ開かれていく。

 

 

獄風の小隊アントマン

止まない風の森

ドクロスリーパー

アルティメット・カイザーアトラス

甲殻伯メタリフェル

ネオダブルドロー

インファナルウインド

アルティメット・ウシワカ

 

 

ヴァン「そうして出たアルティメットを全て、召喚条件とコストを無視して召喚する!来い!!」

 

裂け目から三体のアルティメットが降りてくる。

 

竜「ナンダト!?」

 

ヴァン「さあ僕のアタックだ!どうする!?」

 

竜「『ダイノブライザー』デブロック!!『ディラノス』ノ効果でBP+5000サレ、合計13000!」

 

ヴァン「足りないね!僕のBPは22000だ!」

 

ダイノブライザーがヴァンディールに飛びかかる。

ヴァンディールは飛んで躱すが、ダイノブライザーは持っていた武器を投げつける。

ヴァンディールがそれを鎌で弾いた瞬間、その瞬間ダイノブライザーの炎がヴァンディールを襲った。

 

しかし、既にヴァンディールは裂け目を使ってダイノブライザーの後ろに移動しており、ダイノブライザーを鎌で両断した。

 

 

ヴァン「続いて『メタリフェル』でアタック!『アルティメットトリガー』ロックオン!」

 

先程と同じように竜のデッキの上が公開される。

カードは『絶甲氷盾』、コスト4だ。

 

ヴァン「ヒット!『ドロマエオー』と『ディラノス』を疲労させる!」

 

メタリフェルが剣を振るい、2体を吹き飛ばす。その後、竜に斬りかかり、ライフを奪う。

 

竜「グァッ……ダガオレノライフハマダ3。マダ「負けないって?甘いよ。」!?」

 

すると、ヴァンディールが鎌を投げて竜のライフを奪う。竜は突然の事に驚愕する。

 

ヴァン「僕のLv4効果、アルティメットのアタックが通った時、お前のライフを追加で奪う!これでラストだ。『アルティメット・ウシワカ』!!」

 

ヴァンの宣言でウシワカは上空高く飛び、急降下して竜に蹴りを入れる。それと同時にヴァンディールがもう一度鎌を投げつけ、竜のライフを削り切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、椛達は突如出現したバトルフィールドに困惑していた。

どうするか決めかねていると、バトルフィールドが崩れ、先の両者の姿が見えた。

 

ヴァン「さて……ダイノブライザー、だっけ?……残念ながらお前の負けだよ。」

 

竜→ダイノ「……ククク。」

 

ヴァン「…何笑ってるのさ。悪いけどここで殺「今回ハ負ケダ。ダガマタ戦ウコトニナルダロウ。」!?」

 

瞬間、ダイノの後ろに次元の穴のようなものが出現し、ダイノを呑み込んだ。

 

ヴァン「逃がしたか……まあしょうがないか。」

 

「おい、そこの貴様!」

 

ヴァン「ん?」

 

ヴァンが振り向くと、先程の天狗達が抜刀して構えていた。

ヴァンはそう言えば居たね……と呟き、もう逃げる気力もなかったため、両手を上げて彼等の方にゆっくりと歩いていった。

 

ヴァン(やっぱ他所のいざこざに下手に首突っ込むもんじゃないなぁ……。)



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第5話『雨の後に踏み固まる』

天狗の集落の中のある建物、そのまたある一室。

お世辞にも広いとは言えない部屋には、中央に机1つと椅子2つ。

入口の側に机と椅子が1つずつ。

まるで取調室だ。実際にそうなのだが。

 

ヴァン「あれからどのくらいだろ……はぁ………暇ぁ………。」

 

ヴァンディールは中央の机に突っ伏していた。

お察しの通り、あの後この部屋に連れてこられたのである。

 

ヴァン「はぁ……お腹も空いたし……早く来て……。」

 

そんな事を言っていると入口の扉が開いて、中に人……もとい2人の天狗が入ってきた。

 

「お待たせしました……おや、随分とお疲れの様子で。」

 

先に入って来たのは、ヴァンを追いかけていた天狗の中には居なかった黒髪の天狗だった。

黒い羽、尻尾がない、など先程の彼らとは違う種族なのが分かる。

 

もう一方はさっきも見た『椛』と呼ばれていた少女。

数枚の紙と筆記具を持っているのを見ると、どうやら取調をされるらしい。

 

ヴァン「……取調……って感じかな?」

 

「その通りです。察しのよろしいことで。私は『射命丸文』、鴉天狗です。そしてあちらの彼女は『犬走椛』、白狼天狗です。」

 

文は自分と椛の自己紹介を終えると、ヴァンと向かい合う形で座った。

 

文「では始めましょうか。まずお名前と種族をお伺いしても?」

 

ヴァン「僕は『ヴァンディール』、長いから『ヴァン』でいいよ。種族は……って、種族まで聞く必要ある?」

 

文「まあ、一応ということで。」

 

ヴァン「そっか……うーん………種族かぁ……。」

 

頭を抱えるヴァン。それに文は少し不思議そうな顔をする。

 

文「ご自分の種族を把握されていない、と?」

 

ヴァン「そうじゃないんだけど……まあ、いいか。種族は邪神。出身はグラン・ロロだよ。」

 

文「なるほど……グラン・ロロですか……。幻想郷にもグラン・ロロ出身の方は居ますが、人の姿でこちらに来る方は初めてですね。」

 

ヴァンは文が何気なく言った言葉に食いついたのか、身を乗り出して文に問いかける。

 

ヴァン「僕以外にもいるの!?名前は!?どこにいるの!?」

 

文「い、いきなり食いつきましたね……。『神皇』を名乗るスピリットが約2名ほど確認されています。」

 

ヴァン「なんだ……アイツらか。いきなりゴメンね。続けて。」

 

文「いきなり冷めましたね……では次に。妖怪の山に侵入した目的は?」

 

ヴァン「目的っていうか、気がついたらここに居て………それで天狗さん達に見つかって逃げてたら、途中でそれが楽しくなっちゃってね……。」

 

『てへっ』というように舌を出しておどけるヴァン。文の『子供ですか』というツッコミに苦笑いする他無かった。

 

文「じゃあ次は……先程の赤い竜、あの竜との面識は?」

 

ヴァン「僕は見覚えないね。向こうは僕を知ってたっぽいけど、なんで知ってたのかもさっぱり。」

 

文「ふむふむ……あの竜とは初対面、と。」

 

首を縦に振って同意するヴァン。すると、文は『では最後に』、と言って質問した。

 

文「ヴァンさん、これからどうされるおつもりですか?」

 

ヴァン「……え?」

 

質問の意味が分からず困惑するヴァン。脇で記録をとっていた椛は意味が分かったのか、抗議するような口調で口を挟む。

 

椛「文様……流石にそれは……。」

 

文「私は大丈夫だと思いますけどね?確かに撹乱されたのは事実ですが、あの竜を追い払ったのが彼と言うのも同じく事実ですし。」

 

椛「ですが……。」

 

文「それに他の天狗達の報告を聞くに、一瞬で色々な場所に移動していたと聞きます。それなら貴方達の懲戒任務の助けにもなるのではないですか?」

 

しばらく2人のあいだに沈黙が流れる。ヴァンは未だによく分かってないような顔をしている。

そして、椛がジト目で口を開いた。

 

椛「……本音は?」

 

文「新しくやってきた新聞のネタを逃したくないです。」

 

椛「やっぱりそれじゃないですか……。」

 

呆れる椛に『まあ、性分ですから』とヘラっとした物言いをする文。

 

ヴァン「え、つまりどういうこと?」

 

文「こう見えて私、天狗の中では結構立場が上でして。なので私が口添えしてヴァンさんに衣食住を提供できるようにする、ということです。」

 

文「もちろん、それなりに仕事はしてもらいますが。」

 

ヴァン「!……いや、でも……いいの……?」

 

文「構いませんよ。ただし後日取材に伺わせて頂くという条件付きですが。」

 

ヴァン「全然大丈夫だよ!ありがとう!」

 

椛「はぁ……全く……。」

 

文「そうと決まれば善は急げですね。上に提案しに行きましょうか。ヴァンさんもご同行よろしいですか?」

 

ヴァン「はーい。」

 

呆れてる椛を他所に、二人の間で勝手に話が進んでおり、椛が記録を片付け終わる頃にはもう二人共部屋を出てしまっていた。

 

椛「全く文様は……。」

 

ため息をつきながら、椛も後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数刻、現在の時刻は夕方頃か。結論としては、ヴァンは天狗の集落に住むことを許可された。許可されたのだが───

 

 

 

椛「──どうして私の家なんですか!!!」

 

現在椛の自宅にいるヴァン、文、椛。

居住は許可されたのだが、肝心の家の空きが無く、監視の意味も含めて椛の家に居候することになった。

 

文「いやー…まさか空きがないとは予想外でしたねー。まあこういうのも引越しの醍醐味ということで。」

 

椛「醍醐味もへったくれもありませんし何より引越しですらありませんから!!」

 

思いきり抗議する椛と、それにたじろぐ文。ヴァンはそれを見ながら

 

ヴァン(椛さん毎日こんな感じで疲れてるんだろうな……。)

 

などと考えていた。今日の椛の疲れの原因が自分にもあるのを知っているのか否かは分からないが。

 

文「ま、まあまあいいじゃないないですか。この状況で彼を放り投げても後味悪いですし、男子が一緒に居るってだけで毎日楽しくあぁいひゃいいひゃいいひゃい!!!」

 

文が言い訳からからかいにシフトしようとしたところを、椛に左右の頬をおもいきりひっぱられて悲鳴をあげる。

椛の攻撃から脱出した文が、慌てた様子で2人に告げる。

 

文「じゃあそういう事で、私はこれからやる事あるので!ヴァンさんは後日また取材に来ますねー!!」

 

そう言ってとてつもない速さで飛んでいった。

 

椛「はぁ……もう……。」

 

椛が長いため息をついていると、ヴァンから声がかけられる。

 

ヴァン「あ、あの………椛…さん……?」

 

椛「……なんですか?」

 

ヴァン「……なんか、色々とごめんなさい……でも、なるべく迷惑にならないように迷惑かけないようにするから……ええと……」

 

後半少しおかしい文面になり、オドオドしだす。

 

椛はそれを見て少し吹き出した。

 

ヴァン「ど、どしたの?」

 

椛「いえ、何も。先程はああ言いましたが、特に嫌という事もありませんので。お気になさらず。よろしくお願いします。」

 

椛が笑顔でそう言うと、ヴァンがほっとした表情で

 

ヴァン「そ、そっか……よかったぁ……これからよろしくね。」

 

 

 

 

 

風の四魔卿、天狗社会に片足を突っ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──幻想郷、そのどこでもない何処か。

光もほとんど届いておらず、目の良くない者はまともに足元も見えないだろう。

その中を赤い竜──ダイノブライザーが歩いていた。

 

ダイノ「少シアブナカッタナ……スクイ上ゲラレナケレバ殺ラレテイタ……。」

 

「……帰ってきたか。死んではないようだな。」

 

ダイノの前方から声が届く。姿形は確認できないが、複数ではないのは感じ取れた。

 

ダイノ「スマナイ……マサカ負ケルトハ……。」

 

「仕方ないな。相手の方が1枚上手だったということ。別段言及はしない。」

 

ダイノ「アリガタイ……奴ラハ?」

 

「幻想郷を調査させてるよ。何処にどんな奴が居るとか、把握しといて損ないからな。」

 

声の主がダイノの方に歩いてくる。目の前で止まると、ダイノの足に触れた。

 

「休むならその姿が丁度いいだろ。」

 

ダイノ「……アァ…。」

 

気がつくと、ダイノは竜ではなく人になっていた。ザンドのそれとはまた違う赤色の髪をした男だ。

 

「しばしの休息を命ず。気に備えよ。」

 

声の主がそう言うと、ダイノはその主の居た所の先に歩いていった。

 

「もうこれで退路なし……毒を食らわば皿まで、ってやつだな。」

 

声の主は誰にというわけでもなく呟いた。



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第6話『喧嘩』

──人里付近──

 

ザンド「まさか食材が粗方消えてるとはな……。」

 

咲夜「普段はこんなことないのだけれどね……不覚だったわ……。」

 

会話から食材の買出しに来ているのだろうと思われる2人。

普段咲夜は飛行で人里に行っているのだが……

 

 

 

咲夜「まさか飛行が出来ないとはね……。」

 

ザンド「うっせぇ。オレからしたらお前らみたいにひょいひょい飛べる方がおかしいわ。」

 

 

 

そう、ザンドは飛べないのだ。よって、2人で歩いて向かうハメになっている。

 

咲夜「今度パチュリー様にでも飛び方を教えてもらったらどうかしら?」

 

ザンド「向こうにいた時知り合いに教わってこのザマなんだよ………まあ、せっかくだ。たまには歩くのもいいだろ?」

 

1人はため息、片や苦笑い。しばらく歩いていると、ザンドがある場所に目を向けた。

 

ザンド「ん?なんだここ?」

 

2人の横にあるのは彼等の背の数倍高く伸びた竹林。ザンドにとっては珍しかったようで、そちらの方に寄っていく。

 

咲夜「そこは『迷いの竹林』と言ってね。霧が深い上に所々傾斜もあって、余程運が良くなければ出れない事からそう呼ばれてるの。」

 

ザンド「へぇ、出れないんなら燃やせば解決じゃねえの?」

 

咲夜「近隣の林にも飛び火するじゃない……で、ここを抜けるには近くに住んでるとある人の案内が必要なのだけど……居たわ。」

 

咲夜が少し遠くを指さす。

 

ザンドがそちらに目を向けると、白髪の少女と、青髪の青年が何やら話していた。両者ともに髪は長く、青年の方は眼鏡をかけている。

 

ザンド「……どっちが?」

 

咲夜「白い方よ。にしても、何か言い争っているみたいだけども……。」

 

そう言いながら、2人は言い争っている(?)2人の元に歩を進める。

 

咲夜「こんにちは、妹紅。」

 

咲夜が声をかけると、妹紅と呼ばれた白髪の少女は咲夜に気づき、挨拶を返した。

 

妹紅「咲夜じゃないか。丁度いいや、コイツをどうにかしてよ。」

 

咲夜「コイツ?」

 

咲夜が聞き返すと、妹紅は青髪の青年を指さした。

 

妹紅「この男が『1晩泊めてくれ』ってしつこいんだよ。私は今日夕方から慧音のとこに行くから出来ないって言ってるのに、しつこくてさ。」

 

青年「屋根裏でもいいから貸してほしいんじゃよ!このままじゃワシ夜の寒さで死ぬぞ!?ワシとお前さんの中じゃろ!?」

 

妹紅「まだ会って30分も経ってないっての!?」

 

手を合わせて頼み込む青年に突っ込む妹紅。青年の方は喋り方が多少、というよりかなり年寄り臭い。

 

ザンド「……おいテメェ。」

 

青年「ん?何じゃお前さん?」

 

ザンドが唐突に会話に割り込む。背は青年より高いので、上から見下ろす形で向かい合う。

 

ザンド「初対面の人間に対して少し図々しいんじゃねぇか?ったく、オレの知り合いにも似たようなのがいるわ。」

 

呆れたように吐き捨てる。本人が狙っているのか否かは分からないが、口調も少々煽り気味だ。

 

青年「ワシだって悪いとは思ってるんじゃよ!でも今日泊まるとこがないとホントに死にそうなんじゃ!」

 

若干涙目になっているが、演技か素か。

 

妹紅(……アイツ誰?咲夜のコレ?)

 

咲夜(そんなわけないでしょ……最近幻想郷に来たらしくてね。紅魔館で働いてるの。名前はザンド。)

 

妹紅(ふうん……。)

 

咲夜「……ところで眼鏡の貴方、人里には行ったの?」

 

青年「なんじゃそこ?」

 

咲夜「行ってないのね……なら人里まで私達が案内するから、そこで今夜分の宿を探しなさいな。丁度私達も人里に用があるし。」

 

妹紅「そうだね。アンタ、見たとこ外来人でしょ?それなら貸してくれるとこ1件位はあるはずだよ。」

 

ザンド「決まりだな。」

 

青年「そんな場所があるのか。それは知らなんだ…じゃあそうさせてもらうかのぅ……。」

 

苦笑いしながら提案を受け入れる青年。人里の存在は知らなかったらしい。

妹紅も安心したような表情で咲夜に礼を言う。

咲夜も『困った時はお互い様よ』と、笑って返す。

 

とりあえず丸く収まったと思われ

 

咲夜「じゃあ早速行きましょうか。貴方、名前は?」

 

 

───たのだが。

咲夜のこの言葉でまた思いもよらぬ事が起きるとは。

 

名前を聞かれた青年は笑顔で、答えるために口を開く。

 

青年「ワシか?ワシの名はイル・イマ───

 

 

次の瞬間、人が吹っ飛ぶ音と竹が何本もバキバキと折れる音がした。

 

何が起こったかというと、ザンドが青年を殴り飛ばし、吹っ飛んだ青年が竹に激突して竹が折れたのだ。

 

突然の出来事に妹紅と咲夜は『は?』といった顔。

 

ザンド「はぁ……妹紅っつったっけか?アンタ。」

 

妹紅「あ、あぁ。えっと…ザンド、だっけ?」

 

ザンド「あぁ。とりあえずあの眼鏡が迷惑かけたな。今殺してくるから2人はちょいと待って「いやいやいや待つのはアンタでしょ!!」あ?」

 

妹紅「どう考えたってやりすぎだよ!名前言いかけた途端にいきなり殴り飛ばして!どうしたのさ!?」

 

咲夜もただ頷いて肯定する。そりゃこんなのあいきなり過ぎて訳が分からないよ。

 

咲夜「……まさか、知り合い?」

 

ザンド「…あぁ。」

 

肯定するザンド。全面的に『めんどくせぇ』と言ったような態度だ。

 

ザンド「アイツは『イル・イマージョ』。グラン・ロロの時のオレの同僚だ。そんで同僚の中で1番図々しい奴。」

 

『いくら何でも同僚を突然殴り飛ばすか?』と思った2人だが、口には出さなかった。

 

すると、吹き飛ばされた方向から青年──イル・イマージョが出てきた。

眼鏡ににヒビが入っていて、頭から少し血が流れている。

 

イル「誰かに似てると思ったらお前さんか!!いきなり殴り飛ばすとはどういう了見じゃ!?」

 

ザンド「身内が人様に迷惑かけてるのがイラついただけだ。」

 

イル「はぁ!?ワシだって悪いとは思ってるってさっき言ったじゃろうが!!せめてデコピンにせい!!」

 

ザンド「いい加減にその図々しいのを直せっつってんだよ!!ったく、そこら辺で野宿でもしてろ。行こうぜ咲夜。」

 

咲夜がザンドに声をかけるが、咲夜も妹紅も固まっていて返事をしない。

ザンドが「おーい」と声をかけていると、首根っこを掴まれた。

 

イル「─そりゃあっ!」

 

そのまま投げる。ザンドが竹林に突っ込んでいく。

 

イル「お返しじゃこの乱暴者!!」

 

ザンド「……テ…メェ……死にたいらしいな……!!」

 

ザンドが剣を取り出すと、イルも杖を取り出した。完全に戦る気である。

 

妹紅「ちょっと!ストップ!ストーップ!!」

 

妹紅が仲裁に入る。

 

イル「なんじゃ!邪魔するな妹紅さんや!」

 

妹紅「いやいや言ったん落ち着きなよ!!」

 

咲夜「そうよ。ザンド、貴方も。」

 

2人の説得で、とりあえず得物は収めてくれた。

だが、2人のムードは険悪そのものである。

 

ザンド「………。」

 

イル「………。」

 

両者無言の睨み合い。いたたまれなくなった咲夜が口を開く。

 

咲夜「そんなに白黒つけたいなら、バトスピで決着付ければいいんじゃない?ザンドがバトスピを知ってたんだから、イルも知っているでしょう?」

 

ザンド「……だとよ。」

 

イル「おう上等じゃ。ワシが勝ったらザンドの居るとこに上げてもらおうかの。」

 

咲夜「え?ちょっと─」

 

ザンド「ならオレが勝ったらこのままテメェは放ったらかしだ。自分でどうにかしな。」

 

咲夜「2人とも──」

 

 

 

ザンド・イル「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

 

咲夜の制止も聞かずにバトルフィールドが展開される。

妹紅は咲夜がため息をついたのを見て心配して声をかけた。

 

妹紅「咲夜、大丈夫……?」

 

咲夜「え?…あぁ、大丈夫よ。彼、普段はもう少し丸いのだけれどね……。」

 

妹紅「…なんか、苦労してるんだね。」

 

咲夜「そうでもないわよ。」

 

 

咲夜(もし負けたら、お嬢様には貴方から説明しなさいよ……ザンド……。)



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第7話『智恵の奔流』

 

ザンド「──先攻はやるよ。早いとこ終わらせようぜ。」

 

イル「そうじゃなぁ。んじゃ、ワシのターン。」

 

イル「『海帝国の秘宝』を配置。バーストをセットしてターンエンドじゃ。」

 

 

イル

R:0 T:【4】H:4 D:35

 

海帝国の秘宝:0 Lv1

 

 

ザンド「オレのターン。『ビートルゴン』をLv4で召喚。さらにビートルゴンの効果でシンボルを追加し、『邪神域』を1コストで配置。」

 

ザンド「ターンエンドだ。」

 

 

ザンド

R:0 T:4 H:3 D:35

 

ビートルゴン:【1】Lv3

邪神域:0 Lv1

 

 

イル「ワシのターン。『獄海勇士スキッドメン』を召喚。さらに『ストロングドロー』を使用し、デッキから3枚ドロー。その後2枚捨てるぞ。」

 

 

チョウチンリザード

海帝国の秘宝

→破棄

 

 

イル「そんでもってネクサスをLv2にして、バーストセット。アタックはせずターンエンドじゃ。」

 

 

イル

R:0 T:3 H:3 D:31

 

スキッドメン:【1】Lv1

海帝国の秘宝:1 Lv2

 

 

ザンド「オレのターン。『小火竜ヒノコ』をLv3で召喚。召喚時効果でデッキから4枚オープンし、その中のアルティメットを1枚手札に。残りはデッキの下だ。」

 

 

闇騎士ダスクドラゴン

龍魔皇イビルフリード

絶甲氷盾

生還者ネオ・アーク

 

 

ザンド「イビルフリードを加えて残りはデッキの下に「召喚時じゃな?なら貰うぞい。」…好きにしろ。」

 

イル「『双翼乱舞』を発動。デッキから2枚ドローするぞい。」

 

ザンド「……アタックステップ。ヒノコ、アタックだ!」

 

イル「それはライフで受けるかの。」

 

 

イル:ライフ5→4

 

 

ザンド「ターンエンドだ。」

 

 

ザンド

R:0 T:2 H:4 D:33

 

ビートルゴン:【1】Lv1

ヒノコ:3 Lv3

邪神域:0

 

 

イル「ワシのターン。2枚目の『ストロングドロー』を使用。3枚ドローするぞ。その後2枚破棄。」

 

 

煌炎の神剣

巨人勇者ペルセウス

→破棄

 

 

イル「さらに『獄海勇士スキッドメン』をもう一体、Lv2で召喚。バーストをセット。」

 

イル「アタックステップ。Lv2のスキッドメンでアタックじゃ。」

 

ザンド「チッ…ライフだ。」

 

 

ザンド:ライフ5→4

 

 

イル「ま、ターンエンドじゃな。」

 

 

イル

R:0 T:3 H:4 D:25

 

スキッドメン:【3】Lv2

スキッドメン:1 Lv1

海帝国の秘宝:0 Lv1

 

 

ザンド「オレのターン。『ネオダブルドロー』を使用。アルティメットが居ることによりデッキから3枚ドロー。さらに『龍魔皇イビルフリード』を召喚。」

 

ザンド「召喚時効果、アルティメットトリガー、ロックオン!!」

 

イル「む…!」

 

イビルフリードのアルティメットトリガーで公開されたカードは『英雄皇の神剣』、コストは3。

 

ザンド「イビルフリードのコストは5だ。よってヒット!トラッシュのコアを全回収!」

 

ザンド「さらに、アルティメットの召喚により、『地球神剣ガイアノホコ』をイビルフリードに合体させて召喚。ヒノコを最大Lvに。」

 

ザンド「アタックステップ、イビルフリードでアタック!」

 

イビルフリードがガイアノホコをくわえたまま飛び、そのままスキッドメンを踏み潰した。

そこからすぐさまイルの所に飛んでいく。

 

ザンド「イビルフリードのアタック時効果で、Lv1のスキッドメンを破壊することで1枚ドロー。さあ、アタックはどうする!?」

 

 

イル「スキッドメンはバーストがセットされていれば疲労状態で残る!アタックはライフじゃ!」

 

 

イル:ライフ4→2

 

 

ザンド「締めだ。ヒノコでアタック!」

 

イル「させるか!『ハイドロリックウェーブ』を使用!!『獄海』を持つスピリットの数だけ、コスト8以下の相手のスピリット、アルティメットを破壊する!」

 

ビートルゴンとヒノコが突如現れた大波に呑まれて破壊される。

これでこのターン中の決着は免れた。

 

ザンド「ターンエンド。」

 

 

ザンド

R:4 T:0 H:7 D:27

 

イビルフリード:【4】Lv5

邪神域:0 Lv1

 

 

イル「ワシのターン……。」

 

ザンド(さて、どう来る……。)

 

イル「片方のスキッドメンをLv2に。そして『双翼乱舞』を使用。2枚ドローするぞ。」

 

イル「──ターンエンドじゃ。」

 

 

イル

R:0 T:4 H:5 D:22

 

スキッドメン:【3】Lv2

スキッドメン:3 Lv2

海帝国の秘宝:0 Lv1

 

 

ザンド(この状況でまだ何もしねぇだと……?どういうことだ……?)

 

ザンドは先のターンの時点でブラムザンドを手札に持っている。先程のアタックもソウルドライブで決着させるための『詰め』であり、だからこそこのターンで何もしないイルを不審に思った。

 

ザンド「……そうかい、ならもう終いだ。邪神域をLv2に。そして疲労させ、アルティメットの召喚条件を無視する!」

 

ザンド「──我が統べるは闇の炎。全ての戦場は我が炎の前に燃え尽きる──召喚、『獄炎の四魔卿ブラム・ザンド』!!」

 

 

ブラムザンド Lv3 BP16000

 

イル「……来たか。」

 

ザンド「てめぇがチンタラしてるからだぜ。ガイアノホコをブラムザンドに合体。アタックステップ。」

 

ザンド「ブラムザンドでアタック───!」

 

ブラムザンドが駆ける。そして、フィールドに投げ入れられたソウルコアが魔法陣を形成し、魔力がブラムザンドの剣に集中。レミリアとのバトルと同じようにその剣が薙ぎ払われる。

 

ザンド「【ソウルドライブ】だ。スキッドメンは残るだろうが、次のオレのターンまでテメェはスピリットを召喚出来ねぇ!」

 

ザンド「アルティメットはダブルシンボル。さあ、どうする!!」

 

イル「ッ!──フラッシュ、『白晶防壁』!!

このターン、ワシのライフは1しか減らんぞ!!」

 

ザンド「チッ!」

 

ブラムザンドが剣を振るうが、イルのライフは1残る。

ザンドらターンエンドを宣言。

 

 

イル:ライフ2→1

 

 

ザンド

R:0 T:6 H:7 D:26

 

ブラムザンド:1 Lv3

イビルフリード:1 Lv3

邪神域:0 Lv1

 

 

イル「ッ……ワシのターン。『獣極天ユキヒョードル』をLv5で召喚。アタックステップ、スキッドメンでアタック!」

 

ザンド「ライフだ。」

 

 

ザンド:ライフ4→3

 

 

イル「…ターンエンド。」

 

 

イル

R:0 T:4 H:4 D:21

 

スキッドメン:3 Lv2

スキッドメン:1 Lv1

ユキヒョードル:【4】Lv5

海帝国の秘宝:0

 

 

ザンド「テメェらしくもねぇ中途半端な攻めをするもんだな…オレのターン。『闇騎士ダスクドラゴン』をLv4で召喚。」

 

ザンド「アタックステップ、ダスクドラゴンでアタック!!アタック時効果発揮、回復してるスキッドメンに指定アタックだ!」

 

ダスクドラゴンがスキッドメンに斬り掛かる。

 

イル「フラッシュタイミング、『絶甲氷盾』!!このバトルの終了時、アタックステップは終了じゃ!」

 

イルが絶甲氷盾を使用するのとほぼ同時にダスクドラゴンがスキッドメンを捉え、斬り捨てる。

 

すると、光の壁が出現し、これ以上の進行が出来ないようになった。

 

ザンド「まだ耐えるか…ターンエンド。」

 

 

ザンド

R:0 T:3 H:7 D:25

 

ブラムザンド:1 Lv3

ダスクドラゴン:3 Lv4

イビルフリード:1 Lv3

邪神域:0 Lv1

 

 

イル「ワシのターン…ふぅ…何とか耐えたのう。」

 

ザンド「耐えるだけじゃ意味がねぇぞ?」

 

イル「んなこた分かっとるわい。でも、後はこっから巻き返すだけじゃ。」

 

ザンド「……へぇ。」

 

イル「んじゃ、真打登場じゃの───我が統べるは穢れの大海。水、そして智恵は全ての源なり!『獄海の四魔卿イル・イマージョ』Lv4で召喚!!」

 

 

イル・イマージョ Lv4 BP12000

 

 

ザンド「へっ、来やがったか。」

 

イル「アタックステップ。イルイマージョでアタック!」

 

イル「知は時に武器と転じる……見せてやろう、【ソウルドライブ】発揮!!」

 

イルがソウルコアと2枚の手札を投げる。すると、ソウルコアは塵になって消え、2枚の手札は表向きに宙に留まる。

 

イル「ソウルドライブの効果、自分の手札のカードのバーストを好きなだけ発動させる!『紅炎の戦姫ブリュンヒルデ』、『グリードサンダー』を発動させる!!」

 

ザンド「バーストの同時発動か……!」

 

イル「まずはブリュンヒルデ!相手の合体していないスピリット、アルティメットを全て手札に!」

 

イルイマージョが杖を振り、氷の柱を飛ばす。

柱はイビルフリードとダスクドラゴンに直撃し、2体は手札に返った。

 

イル「次にグリードサンダー!相手の手札が5枚以上ならすべて捨てさせ、その後2枚ドローさせる!!」

 

ザンド「んなっ!?」

 

雷がザンドの手札を叩き落とす。

 

イル「そしてメインアタックじゃ!」

 

ザンド「ブラムザンドでブロックだ!」

 

剣と杖がぶつかる。イルイマージョは水流を飛ばすが、ブラムザンドは全て避けて懐に入り一閃。

イルイマージョは破壊された。

 

イル「あーチクショウ!!スキッドメン2体でアタック!」

 

ザンド「チッ、両方ライフだ!!」

 

 

ザンド:ライフ3→1

 

イル「ラストォ!行け、ユキヒョードル!」

 

ザンド「………!」

 

ザンドは特に何も言うことなく、ユキヒョードルがザンドの最後のライフを削った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────で?それでソイツをここに連れてきた、と?

 

大図書館に響くレミリアの声。声色から多少怒っていることが察せられる。

 

対面には苦笑いをするザンドと椅子に座って本を読んでいるイル、そして我関せず、と言った顔で紅茶を飲んでいる咲夜とパチュリー。

 

ザンド「いやぁーいつもの癖でな……すまんすまん。」

 

レミリア「殴るわよ?」

 

ザンド「申し訳ございませんでした。」

 

90度に頭を下げるザンド。なかなか見れないだろう。

 

レミリア「あのねぇ……ここは難民キャンプじゃないのよ?そうポンポンと入れさせる訳にはいかないの。」

 

ザンド「その……すまん……。」

 

咲夜「全く、言わんこっちゃないわね。」

 

イル「発言っていうのは考えた上で言わんとのう。」

 

パチュリー「全くね。」

 

ザンド「咲夜とパチュリーはともかくとしてイルてめぇ!てめぇも原因のひとつだろうが!!」

 

イル「お前さん魔女かの?」

 

パチュリー「ええ、そうよ。」

 

イル「ほう、どんな魔術を?」

 

パチュリー「そうね…例えばこの──」

 

イル「ほうほう、ワシはこっちの分野の──」

 

パチュリー「そっちはまだ余り進んでないのよね──」

 

イル「なんなら教え──」

 

パチュリー「あら、じゃあお言葉に──」

 

ザンド「話聞けェ!!」

 

ザンドの言葉に耳も傾けずに話を展開してく2人。

 

レミリアが咲夜に「話の筋分かる?」と聞いて咲夜も「いえ、あまり……。」と返す始末。魔術など3人は素人なのでもはや別の言語に聞こえるだろう。

 

パチュリー「──で、なんだっけ?彼を迎え入れる、だったかしら?」

 

パチュリーの問に3人で首を縦に振る。

 

パチュリー「私はむしろ歓迎よ。最近こあじゃ手が回らない実験も出てきたし。」

 

図書館のどこかで本を整理している小悪魔がくしゃみをした。

 

レミリア「うーん……。」

 

パチュリー「対本泥棒用としての仕事も任せていいかしら?」

 

イル「そのくらいならオッケーじゃよ。というかそんな奴おるのか……。」

 

パチュリー「頻繁に来るのよ……で、どうかしら?」

 

レミリア「……まあ、パチェが言うなら良いけども。」

 

ザンド「なんつーか……ホントすまんな…。」

 

どうやら丸く収まりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「その代わり罰としてしばらくは貴方の仕事量倍ね。」

 

ザンド「甘んじて受け入れよう……。」



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第8話『因縁の再会』

「……ふぅ。こんなところかしら。」

 

神社の境内で落ち葉を掃いている巫女服の少女。

名は『博麗霊夢』。この神社、『博麗神社』の巫女であり、幻想郷を囲う結界の管理人でもある。

 

霊夢「さて、お茶でも飲みましょうか。」

 

「終わったのか。お疲れさん。」

 

霊夢「?」

 

霊夢が横を見ると、1枚のカードが霊夢と並んで浮かんでいる。

 

霊夢「あら『エグゼシード』、起きてたのね。」

 

『エグゼシード』、そう呼ばれたカードは苦笑いをしながらいつも寝てるみたいに言うなよ、と零す。

 

彼はグラン・ロロの十二神皇だったスピリットの一体、つまりウロヴォリアスと同じ立場のスピリットである。

 

霊夢「で?どうしたの?」

 

エグゼシード「掃除が済んだなら適当に話し相手にでもなろうか、と。」

 

霊夢「アンタも暇ねぇ。」

 

エグゼシード「お互いにな。」

 

霊夢「話すのはいいけど、その前にお茶を……ん?」

 

霊夢が上を見上げると、途端に1人の少女が降りてくる。射命丸文だ。

 

文「あやや、エグゼシードさんも一緒ですか。こんにちは。」

 

エグゼシード「あぁ、こんにちは。」

 

霊夢「それで?どうしたの?」

 

文「決まってるじゃないですか。新聞ですよ。」

 

霊夢「こないだ貰ったじゃない。」

 

文「特別号って奴ですよ。少し物珍しいネタが入ったので。読んでくださいね。」

 

霊夢「ふーん……。」

 

文にそう言われて渡された新聞を受け取る。

一面の中央には緑髪の少年の写真が。

 

霊夢「なにこれ?大妖精が男にでもなった?」

 

文「そうなったら今頃チルノさんがパニックで幻想郷中を駆け回ってますって。」

 

霊夢「ふふっ、それもそうね。」

 

文「……あ、それと霊夢さん。一つ尋ねたいのですが。」

 

霊夢「…何かしら?」

 

いきなり文が少し真剣な表情になったのに気づき、霊夢も、『霊夢』ではなく『博麗の巫女』の顔になって聞き返す。

 

文「……ここ最近、見たこともない生き物が出現したという話を聞いたりしていますか?」

 

霊夢「?……いいえ、全く。」

 

文「そうですか…。」

 

霊夢「何かあったらまた言って。最悪私も動くわ。」

 

文「わかりました。では私はこれで。」

 

霊夢「えぇ、気をつけて。」

 

挨拶を済ませて文は来た方向に飛んでいった。

姿が見えなくなってから、霊夢とエグゼシードは縁側で新聞を見始める。

 

 

【 妖怪の山に謎の竜と外来人 異変の前触れか 】

 

 

霊夢「文が言ってたのはこれかしらね……。」

 

エグゼシード「謎の竜、か……外来人の事も載っているのを見るに、彼女は何か関係があると見ているのかもな。」

 

霊夢「続きは……『謎の竜はほぼ同時刻に目撃された外来人が撃退。現在は天狗の里にて生活中。』ねぇ……。」

 

 

『なお、竜はバトルスピリッツによる勝負を挑んで来た模様。この竜、及びその他不審な生物を見かけた場合はくれぐれも注意されたし。』

 

エグゼシード「バトスピによる勝負……となると、その竜はグラン・ロロから来た可能性が高いな。調べ上げるか?」

 

霊夢「流石に情報無さすぎよ。それにまだ一件しか起こってないしね。文が何かしらの情報を持ってくるまで待ちましょうか。」

 

新聞の事件の考察をしていく1人と1体。

霊夢は博麗の巫女であるため当然、エグゼシードもグラン・ロロ(向こう)で守護者にあたる役割を担っていたため、このような事には敏感なのだろう。

 

霊夢「…外来人の情報も載ってるわね。」

 

霊夢「『撃退した外来人はヴァンディールと名乗っており、本人は事件との関与は否定。』だって。」

 

エグゼシード「……なに?」

 

霊夢「だから事件との関係は「そこじゃない。今名前なんて言った?」名前?ヴァンディール、っていう名前らしいけど。」

 

エグゼシード「……ソイツ、名前以外には何かあがってるか?」

 

霊夢「いや自分で見ればいいじゃない……ここね。

『種族は邪神、グラン・ロロ出身との事』だそうよ?」

 

エグゼシード「……完全にあのヴァンディールだな……。」

 

何か嫌なことでも思い出したようにため息をつくエグゼシード。これには霊夢も不審に思う。

 

霊夢「あの、ってどのよ。」

 

エグゼシード「邪神の話は覚えてるか?」

 

霊夢「えぇ。アンタ達と戦ってた連中でしょ?」

 

エグゼシード「あぁ、その最高戦力は『四魔卿』と呼ばれているんだが……その内の1体だ。」

 

霊夢「なるほどね……で、それがどうしたの?」

 

エグゼシード「邪神は厄介な連中だ。もし何か企んでいるとしたら、事を起こされる前に倒すか拘束するかした方がいい。」

 

霊夢は新聞に載ったヴァンディールの写真を見る写真だけ見れば無邪気な笑顔をしているただの子供だが。

 

霊夢「この見た目で、ねぇ……まあ見かけに惑わされるなとはよく言うけど……。」

エグゼシード「そういう事だ。とにかくヴァンディールの様子を見に行くだけでも──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴァンディールの事について話しているのか。我にもそれを見せてはくれまいか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、霊夢でもエグゼシードでもない者の声が響く。

 

霊夢とエグゼシードが声の方に振り向くと、長い黒髪に金目の男が立っていた。

 

霊夢「……アンタ、誰よ?」

「人に名乗らせるならまずは自分から、と言うだろう?」

 

霊夢「……博麗の巫女、博麗霊夢。」

 

エグゼシード「俺は「貴様の事など知っている。午の十二神皇エグゼシード、であろう?」!!」

 

霊夢「……これで私達は名乗ったわ。今度はアンタの番じゃない?」

 

「あぁ、その通りだ。では我も名乗るとしよう。

我が名は───」

 

 

 

 

 

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どことも知らぬ森で目覚めた。

戦に敗れ死したあの姿の影すら残さぬ風貌で。

 

『負けた』

それはいい。戦が起これば勝者と敗者が生まれる。

生き残った者と死んだ者が生まれる。

此度の我は後者だったというだけのこと。

 

だが我を打ち負かしたあの2体に力を貸したあの『何か』だけが我の感情を納得させない。

 

どこかで見た(・・・・・・)

 

初めて見たはずの存在に感じる既視感。

 

あれは。

 

そこまで思い返して、思考を1度切り替える。

 

「……今は現状の把握が優先だな。」

 

見知らぬ土地故に、どこかで情報を集めねばならぬ。

上を見上げると五体を持つ存在が空を飛んで行くのが見えた。

 

「………行ってみる価値はあるな。」

 

体を浮かべ、空を切る。幸い飛び方は変わらぬようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく飛ぶと長い階段が見えた。

 

歩いて登るのは面倒だ。飛んで上の鳥居の下に着く。

 

「……社、か。声が二人分……向こうだな。」

 

縁側の方に向かうと、1人の巫女と思われる女と1枚のカードが話している。我には気づいていないようだな。

 

「邪神は厄介な連中だ。もし何か企んでいるとしたら、事を起こされる前に倒すか拘束するかした方がいい。」

 

この声…エグゼシードか。面白い偶然だ。

 

巫女「この見た目で、ねぇ……まあ見かけに惑わされるなとはよく言うけど……。」

エグゼシード「そういう事だ。とにかくヴァンディールの様子を見に行くだけでも──

 

 

 

 

 

 

 

「ヴァンディールの事について話しているようだな。我にもそれを見せてはくれまいか?」

 

 

 

同胞の名前が出てきた為、思わず声をかけてしまった。内心では反省しつつ、顔には出さない。

 

 

巫女「……アンタ、誰よ?」

 

巫女が警戒した様子で尋ねてくる。我との初対面ならば当然の反応か。

人を警戒させる性質を持っているのは自覚している。

 

「人に名乗らせるならまずは自分から、と言うだろう?」

 

巫女「……博麗の巫女、博麗霊夢。」

 

霊夢、か。カードの方は声で分かった。聞く必要も無い。

 

エグゼシード「俺は「貴様の事など知っている。午の十二神皇エグゼシード、であろう?」!!」

 

霊夢「……これで私達は名乗ったわ。今度はアンタの番じゃない?」

「あぁ、その通りだ。

では我も名乗るとしよう───

 

 

──我が名はデスピアズ。邪神の皇だ。」

 



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第9話:『皇と巫女』

 

「──我が名はデスピアズ。邪神の皇だ。」

 

デスピアズと名乗ったソイツは、不敵な笑みを浮かべながら私達を見遣る。

 

隣にいるエグゼシードからははっきりとした敵意を感じて取れた。

 

エグゼ「お前ッ……何故ここにいる!?」

 

ピアズ「我には答えようのない質問だな。神皇共(やつら)に敗北し、もう一度目を開けたらこの地に倒れていたという事しかわからん。」

 

エグゼ「何……?」

 

ピアズ「では逆に問うが、貴様の方こそ何故ここにいる?」

 

エグゼ「……あの後、気がついたらこの神社の近くに居ただけだ。」

 

ピアズ「フッ、要するにそれと同じということだ。それにしても、貴様までいるとは思わなかったぞ。」

 

霊夢「……アンタ、ここに何しに来たの?」

 

ピアズ「何かしらの情報源を探してさまよっていたらこのを発見した。それだけだ。」

 

なるほどね。

つまり流れてきてからあまり時間は経っていない……と。

 

ピアズ「まあ、そういう訳だ。それで、この幻想郷?という場所は一体何なのだ?」

 

霊夢「……忘れられた者達の最後の楽園。現代で忘れられた妖怪や神、人間、物とかがここにやってくるわ。

アンタやエグゼシードのようにグラン・ロロの連中がやって来るようになったのは最近の事だけどね。」

 

ピアズ「成程。存外興が乗りそうな土地に来たものだ……フフフ…。」

 

エグゼシード「……何を企んでいる?」

 

エグゼシードがアイツに問う。

向こうで何があったかは聞いた話でしか知らないけど、警戒しすぎじゃない?

 

アイツはと言うと、一瞬驚いたような顔になった後、顎に手を当てて明後日の方向を見遣り、何かを思案しているようだった。

 

ピアズ「企んでいる……そうさな。幸いその新聞がヴァンディールが来ていることを確定させているからな……。」

 

ピアズ「………奴と合流して、再び一旗上げるのも一興か。」

 

アイツがそう言った瞬間、エグゼシードの怒気が増した。

 

エグゼシード「……霊夢。」

 

霊夢「……はぁ…分かったわ。私としても、コイツは無視出来ない───

 

 

 

───ターゲット。」

 

 

 

デスピアズ「……ほう。我に挑むか。」

 

霊夢「悪いけど、何かしでかそうとする奴を野放しにするほど面倒くさがりでも無いのよね。一応、治安維持も仕事のひとつだし。」

 

デスピアズ「いいだろう……来い。」

 

霊夢「私達が勝てばしばらくは身動きは取らせない。いいわね?」

 

デスピアズ「一向に構わんとも。」

 

 

霊夢・デスピアズ「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

デスピアズ「先攻はやろう。好きにするがいい。」

 

霊夢「ならお言葉に甘えて。私のターン。」

 

霊夢「マジック『エンペラードロー』。デッキから2枚ドローするわ。ソウルコアを使ったから、その後にデッキを2枚オープン。」

 

 

壬馬トラケナー

コレオン

 

 

霊夢「この中から系統:皇獣を持つスピリットを全て手札に。よって両方とも手札に加えるわ。」

 

霊夢「ターンエンド。」

 

 

霊夢

R:0 T:【4】H:8 D:31

 

 

デスピアズ「我のターン。『邪神域』をLv2で配置。バーストをセットしてターンエンドだ。」

 

 

デスピアズ

R:0 T:4 H:3 D:35

 

邪神域:【1】Lv2

 

 

霊夢「私のターン。『彷徨う天空寺院』を配置。バーストをセットしてターンエンドよ。」

 

 

霊夢

R:0 T:【5】H:7 D:30

 

彷徨う天空寺院:0 Lv1

 

 

デスピアズ「赤属性の割りにはのんびりと動くな。さっさと攻めてもいいのだぞ?」

 

霊夢「私は私なりに現時点での最善の動きをしてるつもりよ。時間が来たら決めてあげるから安心なさい。」

 

デスピアズ「ほう……我のターン。『バーゴイル』をLv4で召喚。召喚時効果でコアブースト。」

 

デスピアズ「さらにマジック『ネオダブルドロー』。バーゴイルはアルティメットだ。3枚貰うぞ。」

 

デスピアズ「ターンエンド。」

 

 

デスピアズ

R:0 T:5 H:5 D:31

 

バーゴイル:【1】Lv3

邪神域:0 Lv1

 

 

霊夢「アンタこそゆっくりじゃないの。」

 

デスピアズ「元々こういう戦い方でな。」

 

霊夢「あらそう、私のターン。『コレオン』を召喚。さらに『壬獣ジャガーエッジ』をLv3で召喚。アタックステップ行くわよ。」

 

霊夢「ジャガーエッジ、アタックよ。」

 

霊夢の声でジャガーエッジが駆ける。また、それと同時に雄叫びをあげる。

 

霊夢「アタック時効果、ジャガーエッジにソウルコアが乗っているから1枚ドローするわ!BPは7000、そのアルティメットより上よ!」

 

霊夢のデッキはアタック時効果でアドバンテージを取るスピリットが多い。

今回は割愛されたがらジャガーエッジはアタック時にBP3000以下のスピリットを破壊する効果も持っており、序盤の支え役を買っている。

 

霊夢(相手が誰でもやることは変わらない。まずは序盤からライフを狙いに行く!)

 

 

デスピアズ「………ドロー、か。」

 

霊夢「?」

 

デスピアズ「ドロー、それは手札の増加でもある。お陰で『此奴』の仕事ができた……バースト発動。」

 

突如フィールドに炎が走る。

それはコレオンとジャガーエッジを見事に捉え、2体を破壊した。

 

霊夢「な──!?」

 

デスピアズ「条件は相手の効果での相手の手札増加。

『甲殻伯メタリフェル』をバースト召喚。」

 

地面から出てきたアルティメット。霊夢が目にするのは初だろう。

 

デスピアズ「発動時の効果はBP合計20000までの相手のスピリットの破壊。フフッ、計算が狂ったか?」

 

霊夢「……踏んでしまったものは仕方ないわね。ターンエンド。」

 

 

霊夢

R:【5】T:1 H:7 D:28

 

彷徨う天空寺院:0 Lv1

 

 

デスピアズ「我のターン。『獄風の探索者カゲロウ・シーカー』をLv4で召喚。ソウルコアを使っての召喚により、デッキから3枚オープンし、アルティメットを1枚手札に。」

 

 

龍魔皇イビルフリード

デパーテッドソウル

邪神皇デスピアズ

 

デスピアズ「『邪神皇デスピアズ』を手札に。残りは破棄だ。さらにカゲロウ・シーカーの効果で究極シンボルを赤とし、『ネオ・ダブルドロー』を2コストで使用。先程と同様に3枚ドロー。バーストセット。」

 

デスピアズ「アタックステップ、メタリフェル、行け。」

 

メタリフェルがゆっくりと歩いて行く。

勿論大剣を携えながら。

 

霊夢「フラッシュ、『セイントフレイム』!

相手のアルティメットをBP合計10000まで破壊、カゲロウ・シーカーを破壊よ!」

 

空から降る炎に晒され、カゲロウ・シーカーは爆散。

メタリフェルはそれでもなお歩を進める。

 

霊夢「ソイツのアタックはライフで受けるわ!!」

 

 

霊夢:ライフ5→4

 

 

霊夢「ッ……ライフ減少によりバースト発動!

『黒壬獣ブラッディ・セイバー』をバースト召喚!!」

 

デスピアズ「ほう。ターンエンド。」

 

 

デスピアズ

R:3 T:【3】H:7 D:24

 

メタリフェル:1 Lv3

邪神域:0 Lv1

 

 

霊夢「私のターン。『甲の使徒レーディア』を召喚。召喚時効果でトラッシュのコレオンを回収するわ。」

 

デスピアズ(先程メタリフェルを食らってなお手札を増やすか……ダメージ覚悟の賭け…中々度胸のある。)

 

霊夢(さっきのは……ないみたいね。なら……)

 

霊夢「私に力貸しなさい……異魔神ブレイヴ!」

 

デスピアズ「!」

 

霊夢「『炎魔神』、召喚!!」

 

現れたのは赤い機械の魔神。レミリアの龍魔神とはまた違う異魔神だ。

 

デスピアズ「異魔神か。面白い。」

 

霊夢「ブラッディ・セイバーを左に、レーディアを右にそれぞれ合体。アタックステップ!」

 

霊夢「ブラッディ・セイバーでアタック!!」

 

ブラッディ・セイバーがダッシュ。それと同時に炎魔神が左腕を構える。

 

霊夢「炎魔神の追撃!相手のバーストを破壊し、スピリット全てをBP+5000!」

 

炎魔神のロケットパンチがバーストを破壊。

また、炎魔神のオーラが強まり、2体のBPも上昇する。

 

 

バースト

聖龍皇アルティメット・セイバー→破棄

 

 

デスピアズ「ライフだ。」

 

ブラッディ・セイバーの牙がバリアにぶつかり、ライフを削る。

 

 

デスピアズ:ライフ5→3

 

 

霊夢「……ターンエンドよ。」

 

 

霊夢

R:0 T:4 H:6 D:27

 

ブラッディ・セイバー:【3】Lv2

レーディア:1 Lv1

彷徨う天空寺院:0 Lv1

 

 

デスピアズ「我のターン。(……さて。)」

 

デスピアズ(レーディアでのアタックが無かったのは我にコアを与えずに次で決めるためだろう。恐らく次に出てくるのは奴か。)

 

デスピアズ「……いいだろう。こちらが先に手を明かすとしよう。邪神域をLv2に。」

 

デスピアズ「そしてLv2の邪神域を疲労させる。そうすることで、次に召喚するアルティメットの召喚条件を無視する。」

 

霊夢「……来るわね。」

 

 

デスピアズ「──歯向かうならば焼き尽くそう。従うならば傀儡としよう。闇の頂点を前に、平伏の2文字の下踊るがいい。『邪神域デスピアズ』Lv4で召喚。」

 

 

デスピアズ Lv4 BP16000

 

 

霊夢「あれがアイツの……!」

 

デスピアズ「まずは召喚時効果だ。相手を一体指定し、それ以外を破壊する。レーディアを指定し、ブラッディ・セイバーにはご退場願おう。」

 

邪神皇がレーディアをバリアで囲むと同時に、地面を光線でなぞった。

瞬間、地面が爆発し、ブラッディ・セイバーは跡形もなく消え去った。

 

霊夢「一体破壊するにしてはデカすぎでしょ……!?」

 

デスピアズ「アタックステップ。邪神皇の一撃、受け取るがいい。」

 

霊夢「──上等よ!ライフで受ける!」

 

邪神皇の掌からレーザーが照射。霊夢のライフを破壊する。その後、デスピアズはメタリフェルには攻撃させずにターンエンドを告げた。

 

 

デスピアズ

R:0 T:5 h:7 D:23

 

デスピアズ:【3】Lv4

メタリフェル:1 Lv3

邪神域:1 Lv2

 

 

霊夢「私のターン……今度はこっちの番よ!」

 

霊夢「まずはコレオンを召喚。そんでもって──

 

 

 

───炎纏う神馬、その疾走は風の如く!召喚!『午の十二神皇エグゼシード』!!」

 

 

エグゼシード Lv3 BP25000

 

 

霊夢「エグゼシードを炎魔神の左に合体!!そしてアタックステップ!」

 

霊夢「行きなさい!エグゼシード!」

 

エグゼシード「りょーかい!」

 

エグゼシードが駆ける。その速さたるや、霊夢が『風の如く』と表したそれに相応しい。

 

霊夢「エグゼシードのアタック時効果【封印】!!

ソウルコアをライフに!!」

 

霊夢「さらに、封印中のエグゼシードは【走破】を使える!!メタリフェルに指定アタック!!」

 

エグゼシードがメタリフェルに向かって突進する。

メタリフェルはそれを跳んで避け、持っていた剣を2本、エグゼシードに向かって投げる。

 

対するエグゼシードは後ろ足に付いていた武装を飛ばして剣を迎撃、両者の中間で爆発が起きる。

 

霊夢「エグゼシードの走破は、ブロックされた相手とのバトルが終わった時、生き残っていればエグゼシードのシンボル分、相手のライフを減らせる!」

 

エグゼシードが跳び、メタリフェルに突っ込む。メタリフェルはそのままエグゼシードの角に貫かれ、破壊された。

 

霊夢「炎魔神とのブレイヴでコイツはトリプルシンボル!!これで!!」

 

エグゼシード「フィニッシュだ!!」

 

着地したエグゼシードが、今度はデスピアズに突進し、ライフを奪いに行く。

 

デスピアズ「フフッ、見事だな。伊達に神皇を使役している訳では無いか────

 

 

 

───まあ、おおよそこちらの予測通りだが。」

 

霊夢「え!?」

 

デスピアズ「『リアクティブバリア』。このカードは相手の効果でライフが減る時に破棄することで、その量を1にする。さらにその後、コストを払うことで相手のアタックステップを終了させる。」

 

霊夢「……!!」

 

エグゼシードは突然現れた2つ目のバリアに阻まれ、突進の威力が弱まる。

さらに、3つ目のバリアが現れ、霊夢のスピリット達を阻んだ。

 

 

デスピアズ:ライフ3→2

 

 

霊夢【封印】

R:0 T:1 H:5 D:26

 

エグゼシード:3 Lv2

レーディア:3 Lv2

コレオン:2 Lv2

彷徨う天空寺院:0 Lv1

 

 

デスピアズ「さて、我のターンだ。もう一度『邪神域』を疲労させ条件を無視。」

 

デスピアズ「かつて世界を守護していた三体の龍を知っているか?これがその一体だ。召喚。『アルティメット・ジークヴルムノヴァ』」

 

長剣を持ち、特徴的な翼を持つ赤い龍。

その体色は僅かに黒ずんでいた。

 

エグゼシード「三龍神!?」

 

デスピアズ「然り。召喚時のアルティメットトリガー。カードのコストはいくつだ?」

 

霊夢「コストは……3、『十二神皇の社』よ。」

 

デスピアズ「ヒットだ。そのカードのコスト分、ライフを回復させる。よって我のライフは5に戻る。」

 

デスピアズ「アタックステップと行こう。もう一度、邪神皇デスピアズでアタック。」

 

邪神皇が再び掌からレーザーを……出すことはなく、黒い波動を放つ。

すると、霊夢のライフにあるソウルコアが消え、トラッシュに移っていた。

 

デスピアズ「アタック時効果は封印の解除。行き先がトラッシュ故にこのターンの間は再封印することも出来ん。」

 

霊夢「くっ……!」

 

デスピアズ「さらにフラッシュタイミング!【煌臨】発揮!!」

 

霊夢「【煌臨】?」

 

デスピアズ「そうだ。ソウルコアを除外することで、手札にあるこのカードを邪神皇デスピアズに乗り移らせる!」

 

デスピアズがソウルコアを砕くと、邪神皇が突如現れた黒い渦の中に消える。

 

デスピアズ「これが我の本来の姿、『邪神皇デスピアズ・ゾーク』だ。」

 

霊夢「デスピアズ……」

 

エグゼシード「ゾーク…!!」

 

デスピアズ「ゾークの煌臨時効果。相手のスピリットのコアを3つボイドへ。エグゼシード、消えるがいい。」

 

ゾークが指を鳴らすとエグゼシードの居た地面が数度爆発する。

 

爆発が止む頃にはエグゼシードはコアごと消えていた。

 

霊夢「エグゼシード!」

 

デスピアズ「それだけでは終わらんよ。もうひとつの効果。貴様はこの瞬間から【封印】が不可能になる。さて、アタックはどうする?」

 

霊夢「くっ……コレオンでブロック!!」

 

コレオンが迎え撃つが、先程と同じように爆殺される。

 

デスピアズ「ターンエンド。」

 

 

デスピアズ

R:0 T:6 H:5 D:22

 

デスピアズ・ゾーク:1 Lv3

U・シークヴルム・ノヴァ:3 Lv4

邪神域:1 Lv2

 

 

霊夢「私のターン。『壬獣アクセルエッジ』を召喚。召喚時効果で邪神域を破壊!」

 

霊夢「アクセルエッジを炎魔神の左に合体……ターンエンド。」

 

 

霊夢

R:0 T:2 H:5 D:25

アクセルエッジ:【3】Lv2

レーディア:3 Lv2

 

 

デスピアズ「我のターン。『獄風の探索者カゲロウ・シーカー』、『ビートルゴン』をそれぞれ召喚。アタックステップ。」

 

デスピアズ「行け、ノヴァ。アルティメットトリガー、ロックオン。」

 

霊夢のデッキトップが舞い上がり、顕になる。

 

 

絶甲氷盾 コスト4

 

 

デスピアズ「クリティカルヒットだな。クリティカルヒット効果で、BP12000以下の相手のスピリットを破壊する。アクセルエッジだ。」

 

ノヴァが熱戦を放ち、アクセルエッジを破壊する。

 

デスピアズ「そして通常の効果。相手のスピリットに強制的にブロックさせる。」

 

ノヴァがレーディアに飛びかかる。

レーディアは避けて背後から飛びかかるが、尻尾に叩きつけられて破壊される。

 

デスピアズ「締めだな。ゾーク、シーカー、ビートルゴン、アタックだ。」

 

 

霊夢「………!!」

 

 

霊夢:ライフ3→0

 

 

 

三体のアルティメットが霊夢のライフを削りきり、霊夢は先にフィールドの外に弾き飛ばされた。

 

 

 

デスピアズ「…楽しかったぞ。神社の巫女よ。」




一応四魔卿と邪神皇について、地の文においての
『人物かカードか』の区別を明記しておきます。

人物の呼び名:カードの呼び名

マグナ :マグナマイザー
ザンド :ブラム・ザンド
ヴァン :ヴァンディール
イル :イル・イマージョ
デスピアズ :邪神皇orゾーク

です。紛らわしいですが何卒……。


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第10話『集合』

 

バトルが終わり、両者が元の場所に戻ってくる。

 

デスピアズ「この通り我の勝ちだ。拘束は叶わんようだな。」

 

そう言って霊夢とエグゼシードに歩み寄ってくる。

それを見て霊夢は身構える──が、デスピアズはその横に落ちている新聞を手に取って読み始めた。

 

デスピアズ「【 妖怪の山に謎の竜と外来人 異変の前触れか 】……なるほどな。ヴァンディールめ、姿形も変わり果てておるわ。」

 

霊夢「……それはアンタも同じじゃないのかしら?」

 

デスピアズ「確かにそうだな。……さて。」

 

デスピアズは霊夢の方を振り返り

 

デスピアズ「霊夢と言ったか、そこの巫女。貴様はこれをどう取る?」

 

霊夢「……は?」

 

唐突な問いかけに思わず聞き返してしまう霊夢。

デスピアズの方はというと、ため息をついてもう一度言い直した。

 

デスピアズ「どう見るかと言っている。偶然か、何かの前兆か。ヴァンディールの自作自演という線もあるが……まああの子供にそんな芸当はできまい。」

 

霊夢「……どうも何も、判断するには情報が少なすぎるわよ。」

 

デスピアズ「それもそうか……エグゼシード、貴様はどうだ?」

 

エグゼシード「……ここに来てから1年も経っていないが、今までこんな事はなかった。なるべく早めに動いた方がいいだろう。」

 

霊夢「前々から思ってるけど、もう少しのんびりしない?」

 

エグゼシード「何かあってからでは遅いだろう。」

 

デスピアズ「喧嘩なら他所でやるが良い。」

 

霊夢「アンタがふった話題でしょうが。」

 

霊夢がデスピアズに突っ込む。ちなみにここまでのやりとりの間、エグゼシードは常に警戒を張ってデスピアズを牽制している。

 

デスピアズ「では最後に。貴様はどうだ?──そこに隠れている輩よ。」

 

デスピアズが新聞に目を向けながら誰かに問いかけると

 

 

「──流石は邪神の皇。気づかれていましたか。」

 

空間が裂け、そこから現れる1人の女性。

口元を扇子で覆い、表情を隠している。

 

霊夢「いつからいたのよ、紫。」

 

デスピアズ「大方先程のバトルが終わってからであろう。貴様がこの地の代表か?」

 

紫「いかにも。幻想郷の管理をしております。『八雲紫』と申しますわ。」

 

デスピアズ「……。」

 

デスピアズは無表情のまま紫を見据える。ナイトキャップを被って扇子を手に持った金髪の女性。

終始扇子で口元を隠し、姿勢も崩さずにデスピアズを見ている。

腹の底を隠すのは上手いな、とデスピアズは心の中で感心しながらも

 

デスピアズ「……話を戻すが、紫よ。これをどう見る?」

 

紫「……霊夢の言う通り、今はまだ情報が少なすぎます。かといって、放置していては深刻化した際に手遅れとなるかと。」

 

デスピアズ「ではどうする?」

 

紫「当事者に1度話を聞くのが最善と思われますわ。

……貴方のお仲間と一緒に。」

 

デスピアズ「ッ!?」

 

ここまで無表情を貫いていたデスピアズの表情が初めて崩れた。

デスピアズはそれをもう一度問う。

 

デスピアズ「…仲間?ヴァンディールの他にもこの地には四魔卿がいる、と?」

 

紫「えぇ。湖の近くにある紅魔館に2人、冥界に1人。私のこの目で確認していますわ。」

 

デスピアズ「……そうか。では貴様の提案通り、ヴァンディールに話を聞くとしよう。面倒故、ここに奴らを集める方が早かろう。」

 

エグゼシード「……お前、どういうつもりだ?」

 

今まで口を閉ざしていたエグゼシードがデスピアズに問う。

 

デスピアズ「どういう、とは何だ?」

 

エグゼシード「同胞以外には一切の容赦も配慮もしないお前が、何故ここの事件に首を突っ込むのかということだ。」

 

デスピアズ「……そうさな。」

 

デスピアズは空を見上げて目を閉じる。

発する言葉を選んでいるかのようにも見えた。

 

デスピアズ「……我は神皇共に負け、ここに来た。だが、最期の戦でどうにも腑に落ちない事が出来てしまってな。」

 

霊夢「……腑に落ちない?」

 

デスピアズ「あぁ。言っておくが負けたことではない……まぁ、何が腑に落ちないかは今は伏せるが。」

 

デスピアズ「その事について、何か分かるような気がしてな。いわゆる勘というやつだ。」

 

霊夢「……。」

 

デスピアズ「そういう訳だ。先程はああ言ったが、別段幻想郷に大した興味もない。貴様らに害をなすようなことはしないと約束しよう。」

 

エグゼシード「……根拠は?」

 

デスピアズ「随分と疑り深くなったな。そこまで疑うならば、監視だろうが何だろうがするがいい。」

 

そう言って神社の屋根に上がり、空を眺め始めた。

 

霊夢「監視……ねぇ。確かに見張っとけば変な事はできないでしょうけど、そんなの誰が……。」

 

そこまで言って、紫とエグゼシードの視線が自分に向いてることに気づく。霊夢はあからさまに嫌な予感を感じた。

 

紫「では、しばしの間この博麗神社に留まってもらうということで───

 

 

 

スパァンッ!!

 

 

 

 

───いったぁ!?」

 

突然響く快音。紫の悲鳴。

エグゼシードは目を丸くし(カードの状態なので本当に丸くしているかは分からないが)

デスピアズも視線を咄嗟に下ろして霊夢と紫の方を見た。

どこからか取り出した大弊で霊夢が紫を引っぱたいていた。

 

霊夢「そんなこったろうと思ったわよ!何で私があんな面倒くさそうな奴の監視なんかしなきゃなのよ!」

 

 

 

スパァンッ!!

 

 

 

紫「れ、霊夢。貴方は博麗の巫女なのよ。だからその役目を「煩いわね!アンタがやればいいでしょ!」痛い!ちょっと痛い!」

 

 

スパァンッ!!

 

 

紫「ちょ、だからやめてって!妖怪にはそれすっごく痛いんだか

 

 

スパァンッ!!

 

 

さっきの胡散臭さはどこへやら。何度も叩かれた紫はナイトキャップがズレて、涙目で両手を盾に身を屈めていた。

 

 

エグゼシード「れ、霊夢。その辺にしとけ。流石にやりすぎ「ア?」……。」

 

霊夢にガンを飛ばされてエグゼシードが黙る。

デスピアズにとっては意外すぎる光景だった。

 

紫「私だって他にやる事あるのよ!その新聞の事だって藍と調査を

 

 

 

スパァンッ!!

 

 

デスピアズは流石に見兼ねたのか、屋根から降りて霊夢を止めようと歩いてくる。

 

デスピアズ「身内とはいえやりすぎだ「元々アンタが来なけりゃこんな面倒な事なってないのよ!」

 

 

スパァンッ!!

 

 

頭をひっぱたかれてうずくまる。

想像の3倍ではきかないほど痛い。

 

 

結局この後霊夢が折れ、デスピアズを霊夢が監視する形となった。

エグゼシードは後に「初めてアイツに同情した」と語ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──紅魔館──

 

時刻は神社での一件から数刻ほど後のこと。

大図書館にてザンドは小悪魔の手伝いを、イルはパチュリーと話をしていると、レミリアが突然入ってきた。

 

ザンド「どうした?本でも探しに来たか?」

 

イル「この机にある本はワシらが今使ってるから駄目じゃぞ?」

 

レミリア「イルとザンドに用があるのよ。これ。」

 

ザンド「?」

 

ザンドがレミリアから紙を1枚受け取る。イルも席を立ってそれを見る。

 

ザンド「招集?」

 

レミリア「そうよ。さっき八雲紫が書斎に来てこれを渡していったわ。恐らくこの新聞のことでしょう。」

 

イルが新聞を受け取り、ほぉ、と息を漏らす。

霊夢が見ていたものと同じものだ。

 

ザンド「なるほどね。大方オレ達の監視とこの事件についての事、って感じか。」

 

イル「なるほどの。」

 

レミリア「私と咲夜、そして貴方達2人。明日の昼頃に博麗神社に向かうわ。準備をしておいてちょうだい。」

 

2人「「了解だ(じゃ)。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──白玉楼──

 

時を同じくして白玉楼の客間にて。ここには紫の式である『八雲藍』、そして幽々子、最後にマグナの3人がいた。

 

マグナ「なるほどな……妖怪の山の事件について、か。四魔卿にも招集をかけたのは何故だ?」

 

藍「それはお答えしかねます。紫様からその事については詳細をお聞きしていませんので。幽々子殿も、宜しいでしょうか?」

 

幽々子「紫が呼んだなら行かなきゃねぇ。分かったわ。明日彼を連れてそちらに行きます。」

 

藍「ありがとうございます。では私は別件がありますので、これにて。」

 

そう言うと藍は足早に席を外して、白玉楼を去っていった。

残った2人は招集の旨が書かれた紙を見る。

 

マグナ「ほかの連中まで来ていたとは意外だな。それにしても、赤い竜か。」

 

幽々子「今まで無かった事だから少し不安ねぇ。紫がこうするのも無理はないわ。」

 

マグナ「さて、明日の準備をするか。」

 

幽々子「あら、早いわね。」

 

マグナ「誰かのせいで食事を用意するのに大幅に時間を食ってしまうからな。」

 

そう言ってマグナは部屋を出た。

幽々子が戸の向こうで「何よその言い方~」と言ったのを有意義に無視して。

 

 

マグナ「どうやらここでも、何事も無く平穏にとはいかないらしいな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──妖怪の山 椛宅──

 

ヴァン「……なるほど。それで、僕も来いってこと?」

 

椛「らしいですね。どうやらヴァンさんお1人でとの事らしいです。」

 

椛がそういうとヴァンはえぇー、と頬を膨らませる。

 

ヴァン「……めんどくさい。」

 

椛「行かなきゃ駄目ですよ。ここで行かないともっと面倒になりますし、第一あの竜と直接戦ったのはヴァンさんなんですから。貴方が居ないと進みません。」

 

ヴァン「……椛さんも一緒がいい「駄目です。招集されてるのはヴァンさんだけなんですから。」……はーい。」

 

机に項垂れてぶーぶーと文句を言うヴァン。

彼ホントに邪神なのかなぁ、などと椛は思いつつ。

 

椛「たっぷり蜂蜜用意しておき「ホント!?」…はい。しっかり行ってくれますね?」

 

椛の問いにものすごい勢いで首を縦に振るヴァン。

もう少しでヘッドバンキングレベルになるのではないか。

 

椛「神社までの案内はしますから、早めに準備を済ませておきましょう。」

 

ヴァン「はーい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の太陽が登りきる時、かつてグラン・ロロに刃を向けた者達が一堂に会する。

 

 



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第11話『招集・遭遇』

 

デスピアズ「……む。」

 

鳥のさえずりで目が覚めた。体を起こして周りを見渡すとそこは鳥居の上。そういえば昨日はここで眠りについたのだったな。

 

デスピアズ「……正午まではあと三、四刻と言ったところか。」

 

もう少し寝ているつもりだったが、まあいい。

鳥居の下に降りると、丁度あの巫女が出てきたところだった。

 

霊夢「あら、早いわね。」

 

デスピアズ「目が覚めただけだ。それよりも、集合の時間まであとどれほどだ?」

 

霊夢「3時間ぐらいね。朝ご飯、食べる?」

 

デスピアズ「……何?」

 

霊夢「だから朝ご飯。」

 

あぁ、そういうことか。どうやら我が思っていたよりも気が利くというべきか、その辺りの保障は抜け目なくしてくれるようだ。

 

デスピアズ「では頂戴するとしようか。」

 

霊夢に連れられ中に入る。朝食が神社の外観と(良い意味で)比例しない内容なので少々驚いたが。

 

食べ終わる頃には、例の時間まで残り二刻と半分ほどになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日の昇りが進んできた頃、神社の鳥居の前に2つの影が着地した。

一人は桃色の服の亡霊── 幽々子。もう1人、これは言うまでもなくマグナだ。

 

幽々子「時間ギリギリになっちゃったわねぇ。」

 

マグナ「誰のせいだと思っている?」

 

幽々子「それはもちろんマグ「お前が人里の甘味処にいちいち寄ろうとしなければもう少し早かったろうに。」何よー主人のせいにするのー?」

 

マグナ「せいにするも何もその通りだろうに。早く行くぞ。」

 

鳥居を潜り、神社の境内に入る。そこには複数の人影が居た。

翼の幼女にメイド、紅い髪の高身長の男、そして青い長髪に眼鏡の男。

虫のような羽が生えた緑髪の少年。

長い黒髪に金目の男に紅と白の巫女服を来た少女。

 

マグナは男達に、幽々子は少女達に見覚えがある。

 

ザンド「お、これで最後か?」

 

イル「らしいのう。」

 

ヴァン「おーマグナー!お久ー!」

 

デスピアズ「貴様が刻限ギリギリとは、珍しいこともあるものだ。」

 

マグナは外見が変わっていても顔と名前が一致する事に笑いがこみ上げそうになるが、抑えて彼らに対応する。

 

マグナ「随分と風貌が変わったな。まあお互い様だが。」

 

霊夢「遅いわよ幽々子。」

 

幽々子「予定の時間より早いんだからいいじゃない。」

 

レミリア「どうだか。もう少し余裕を持つべきではなくて?」

 

幽々子「私のせいじゃないわよ~。マグナが寄り道ばっかり

 

咲夜「どうせ貴方が団子屋にでも寄り道したんでしょうに。」

 

バレバレである。

 

マグナ「で、邪神全員と幻想郷の要人を集めて何を話そうというのだ?」

 

霊夢「まあそうなるわよね。えっと…「マグナマイザーだ。マグナでいい。」ん。マグナの言うことももっともだし、早く始めたいんだけど……。」

 

ザンド「何か問題でもあんのか?腋巫女よォ。」

 

霊夢「その言い方止めなさい。」

 

デスピアズ「奴がまだだな。妖怪の賢者が。」

 

イル「呼びつけたのってその賢者さんじゃなかったっけか?──

 

そんな風に、まだ姿を見せない紫の事をああこう言いながら、ついでに自己紹介なども済ませたりして5分程。

 

突然空間が裂け、1人の女性が現れる。

 

紫「皆さん、お待たせしましたわ。此度は「遅い!」

 

 

スパァンッ!!

 

 

紫が霊夢に大幣で叩かれる。

2、3度叩かれた後、ズレたナイトキャップを直しながら話を戻す。

 

紫「……今回招集をかけたのは他でもない、この新聞の1件です。」

 

紫が新聞を見せる。昨日、霊夢達が読んでいたものだ。

 

紫「この事態に多少の警戒心を抱き、皆様を集めた次第です。ヴァンディール殿、この時の事をご説明願えますか?」

 

ヴァン「え?う、うん。確かアレは──」

 

 

 

ヴァンディールは自らが覚えている範囲の一部始終を話した。

妖怪の山を襲った赤い竜。その竜が仕掛けてきたバトルスピリッツでの勝負。初対面だというのに名を知られていたこと。

 

 

ザンド「……なるほどねぇ。」

 

咲夜「本当に見覚えはないのかしら?忘れてる、とか。」

 

イル「いんやー、ヴァンは敵味方問わず顔を覚えるのは得意じゃ。忘れる事はないじゃろうて。」

 

霊夢「向こうがどっかでアンタらの事が書かれた本でも読んだんじゃないの?」

 

レミリア「姿形がグラン・ロロの時と別物になっているのよ。本で見ただけじゃ判別できないはずだわ。」

 

霊夢「む、それもそうね……。」

 

幽々子「それで、調査をしようという事かしら?紫。」

 

紫「えぇ、その通り。姿が変わった上で彼を判別したという事は、貴方達が幻想郷に来ているのを知って襲撃してきた、もしくは貴方達を送り込んだ張本人という可能性もあります。」

 

マグナ「なるほどな……だが、調査とは言うが、具体的に何をするのだ?敵の背景や正体、目的、数もわからんというのに。」

 

マグナの一言で周りが静まり返る。

 

マグナ「ん?どうした?」

 

デスピアズ「問題はその1点という事だ。襲撃してきたのは一体で、なにか有力な情報を漏らした訳でもない。」

 

ザンド「じゃあ意味ねぇじゃねぇか。」

 

レミリア「それとも、それについて何か案があるとでも?」

 

霊夢「何かあるの?アンタ。」

 

デスピアズ「ない。」

 

イル「それだと話がここで止まるぞい…。」

 

ヴァン「……ねぇ。」

 

マグナ「どうした?まだ何かあるのか?」

 

ヴァン「うん。あの日、戦って勝った後、アイツが引く間際にこう言ったんだよ。」

 

 

 

 

『今回ハ負ケダ。ダガマタ戦ウコトニナルダロウ。』

 

 

 

 

ザンド「…へぇ。」

 

幽々子「また向こうからコンタクトがある、って事かしら?」

 

ヴァン「その認識であってると思う。だから、優先するのは調査よりも、迎撃準備…かな?」

 

咲夜「なるほど…備えておけば、迎え撃つ形で捕縛する事も出来るかもしれない、と。」

 

咲夜の言葉にヴァンは頷く。しかし、ヴァンはそこから 言葉を続ける。

 

ヴァン「でも、情報を集めて回るのも必要だと思うよ。向こうがどれだけいるかは分からないし、僕達だけを狙うとも限らないしね。」

 

霊夢「それもそうね…。」

 

デスピアズ「まとめると、あちら側の襲撃に備えた迎撃準備、そして人里等を回って目撃情報等の収集、か……現時点で出来ることとしては上々だな。」

 

レミリア「だったら、幻想郷に元からいるメンバーは八雲紫を経由して、お前達邪神は…」

 

ザンド「ヴァン経由だな。」

 

マグナ「ヴァンが適任だろう。」

 

イル「ヴァン一択じゃろ。」

 

デスピアズ「ヴァンディールだな。」

 

全員がヴァンの名前をあげる。当の本人もあー、やっぱり?と言ったような表情だが。

 

ザンド「オメェの能力なら立ち回りやすいからな。」

 

ヴァン「やっぱりそうなるよね……了解。じゃあ僕は紫さんと共有ってことで。」

 

両サイド共に、ひとまずの情報網は完成。

 

紫「では幻想郷の皆は私に、貴方達邪神はヴァンディール殿に情報を共有。敵と接触した際ですが…その場合は私に連絡を。すぐに向かいます。」

 

デスピアズ「とりあえずはこんなところか……後は今後の進展次第だ。解散でいいだろう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集まった面々は解散し、人里の付近。レミリア達紅魔館のメンバーが帰投している途中だった。

 

レミリア「迎撃か……正直気に食わないわね。」

 

イル「仕方ないじゃろ。今はこれしか出来んのじゃし。」

 

咲夜「にしても……意外ね。」

 

イル「意外?」

 

咲夜「えぇ。ウロヴォリアスから話を聞いた限り、貴方達が協力するとは思わなかったから。」

 

イル「……まあ、正直バックレたいと思わないわけでもないんじゃがなぁ。」

 

ザンド「本音を言うと同感だ。それでも一応今は紅魔館に身を置いてるからな。レミリアがやるのにオレ達がやらないって訳にはいかねぇだろう。」

 

レミリア「もし貴方達が紅魔館に居なかったら?」

 

ザンド「……さぁな。ま、今回は何故かリーダーもやる気出してるし、それなりに働くさ。」

 

『リーダーがやる気を出している』

これがどういう意味かをレミリアと咲夜は知り得なかったが、道中で2人にそれを聞くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デスピアズ「……。」

 

霊夢「どうしたの?」

 

皆が帰った後、デスピアズはしばらく固まっており、それを不思議に思った霊夢は彼に声をかけた。

 

デスピアズ「いや……奴らも全く変わらんと思ってな。それだけだ。」

 

霊夢「本当にそれだけ?」

 

霊夢は追ってデスピアズに問いかける。

数秒の間のあと、答えが返ってきた。

 

デスピアズ「……あぁ、勿論だとも。それよりもうすぐ昼時だ。我は先に中に居るぞ。」

 

デスピアズはそう言って神社の中に入っていった。

 

霊夢「……そうね。私も準備しようかしら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幽々子「彼の様子が変?」

 

マグナ「あぁ。ヴァンも何となく感じただろう?」

 

ヴァン「え?うん……一応。」

 

妖怪の山までの同行という事で、一緒に空を移動する3人。その途中でマグナが呟く。

『ピアズの様子が少しおかしかった』と。

 

幽々子「私は彼の普段を知らないからどうとも言えないけども……どのあたりが?」

 

マグナ「そうだな…まず今回の事に協力している時点で中々に珍しい事だが……。」

 

ヴァン「まぁね。でも……ピアズがマジになってるのって、もっと珍しいよね。」

 

マグナ「あぁ。神皇達との最終決戦でしか見たことがない。」

 

幽々子「…今回の件に心当たりがある、とか?」

 

ヴァン「かもしれないね。もしかしたら───

 

 

───ねぇ。」

 

ヴァンが話を切って2人にアイコンタクトを取る。

2人が頷き、3人とも進行方向を少しズラした後、後ろを向く。

 

マグナ「思ったより早かったな。」

 

ヴァン「まぁ、魚は早く連れた方がいいけどね。」

 

3人の視界の先には黒い鎧のロボットと、朱の竜。

2体ともこちらに向かって飛んできている。

 

 

マグナ「幽々子、妖怪の賢者に連絡を。ヴァン、竜の方は任せたぞ。」

 

ヴァン「りょーかい!」

 

ヴァンとマグナは2体の下に飛んでいく。

距離がそこまで無かったためか、あっという間に両者は鉢合わせる。

 

竜・ロボ「「……ターゲット。」」

 

ヴァン「バトスピで挑んでくるのはアイツと同じか…。」

 

マグナ「問題なかろう。早く終わらせてしまうぞ。」

 

 

 

「「「「ゲートオープン、界放!!」」」」

 

 



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第12話・前『邪神の力量 ─地─』

 

マグナ「さて…始めるか。その前に貴様、何者だ?」

 

ロボ「我が名『ヴァルハランス』。お前を倒す者。」

 

マグナ「堂々と勝利宣言か……まぁいい。そう簡単にはいかんぞ?」

 

ヴァルハランス「百も承知。先攻を譲る。」

 

マグナ「ほう…いいだろう。俺のターン。」

 

マグナ「『旅団の摩天楼』を配置。配置時の効果で1枚ドロー。さらに『冥騎獅アロケイン』を召喚。ターンエンドだ。」

 

 

マグナ

R:0 T:3 H:3 D:34

 

アロケイン:【1】Lv1

摩天楼:0 Lv1

 

 

ヴァルハランス「我がターン。『超時空重力炉』配置。互いのコスト3以下のスピリットの軽減不可。ターンエンド。」

 

 

ヴァルハランス

R:0 T:3 H:4 D:35

 

超時空重力炉:【2】Lv2

 

 

マグナ「俺のターン。『暗極天イブリース』を召喚。召喚時効果で1枚ドロー。イブリースとアロケインのコアを交換し、アロケインをLv2に。」

 

マグナ「アタックステップだ。アロケインでアタック!」

 

ヴァルハランス「ライフで受ける。」

 

 

ヴァルハランス:ライフ5→4

 

 

マグナ「続けてイブリースでもアタックする!」

 

アロケインの次はイブリースが攻撃を仕掛ける。が──

 

ヴァルハランス「フラッシュタイミング、『ドリームバブル』使用。ソウルコア使用により、アルティメットを一体手札に戻す。」

 

イブリースが泡に包まれる。その泡が弾けるとともにイブリースも消え、マグナの手札に戻った。

 

マグナ「チッ…ターンエンドだ。」

 

 

マグナ

R:【1】T:2 H:6 D:32

 

アロケイン:2 Lv2

摩天楼:0 Lv1

 

 

ヴァルハランス「我がターン。超時空重力炉、再びLv2。我が力の真髄を見よ!」

 

ヴァルハランス「鎧袖一触!我が鉄壁、あらゆる撃を退けん!『鎧神機ヴァルハランス』Lv3、召喚!!」

 

 

ヴァルハランス Lv3 BP10000

 

 

マグナ「ヴァルハランス、か……貴様達も妖怪の山に現れた竜の仲間か?」

 

ヴァルハランス「……。」

 

マグナ「話すつもりはない、か……ならバトルの後にたっぷりと吐いてもらうとしよう。」

 

ヴァルハランス「否、戦の勝利、常に我にあり。故に、貴様に後など無し。」

 

ヴァルハランス「アタックステップ。ヴァルハランス、アタック!」

 

マグナ「ライフで受けよう!」

 

 

マグナ:ライフ5→4

 

 

ヴァルハランス「ターンエンド。」

 

 

ヴァルハランス

R:0 T:3 H:3 D:6

 

ヴァルハランス:【4】Lv3

超時空重力炉:0 Lv1

 

 

マグナ「俺のターン。『ワンアイドデーモン』を召喚。さらに『暗極天イブリース』をLv4で再召喚。召喚時効果で1枚ドロー。さらにバーストセット。」

 

マグナ「アタックステップ、ワンアイドデーモンでアタックする!」

 

ワンアイドデーモンが突っ込んでいく。

すると、ヴァルハランスが突然立ち上がる。

 

マグナ「なに!?」

 

ヴァルハランス「Lv2、Lv3効果。疲労ブロックが可能。」

 

ヴァルハランスはワンアイドデーモンを掴んでそのまま握り潰した。

 

ヴァルハランス「貴様のフィールドはイブリースのBP7000が最大。超えることは不可能。」

 

マグナ「なら疲労ブロックを解除するまで!相手による自分のスピリット破壊により、バーストゾーン及びイブリースのUハンドで手札から、それぞれバーストを発動させる!!」

 

マグナ「まずは手札から『ダークマター』を発動!

トラッシュのワンアイドデーモンをデッキの上に戻し、1枚ドロー。」

 

マグナ「次に通常のバースト、『獄土の大騎士オルダ・グラナトス』を発動!

アルティメットの存在により相手のスピリット全てから3コアずつをリザーブに。

Lv1に戻って貰うぞ!」

 

グラナトスが地を踏み鳴らす。フィールドが揺れ地面が割れる。

───が、ヴァルハランスは一切動じることなく耐えきった。

 

マグナ「ッ………装甲か!」

 

ヴァルハランス「【重装甲:∞】。相手のフィールドのシンボルと同じ色のスピリット、ブレイヴ、ネクサス、マジックの効果を無効化。」

 

マグナ「…ターンエンドだ。」

 

 

マグナ

R:0 T:2 H:5 D:30

 

イブリース:【3】Lv4

グラナトス:1 Lv1

アロケイン:1 Lv1

摩天楼:0 Lv1

 

 

ヴァルハランス「我がターン。『愛国の機士パトリオート』召喚。次いで『亀甲獣カブトガメ』を召喚、ヴァルハランスに合体。両者最高レベル。」

 

ヴァルハランス「ヴァルハランス、アタック!」

 

先程とは違い、盾状になったカブトガメを構えながら突進してくる。

 

BP合計20000。この時点ではマグナは知る由もないが、ヴァルハランスは自身のBPを上げることもできる。

このBPを超えるのは生半可な事では不可能だ。

 

マグナ「ライフだ!」

 

 

マグナ:ライフ4→2

 

 

ヴァルハランス「ターンエンド。」

 

 

ヴァルハランス

R:0 T:2 H:2 D:7

 

ヴァルハランス:【4】Lv3

パトリオート:2 Lv2

超時空重力炉:0 Lv1

 

 

マグナ「俺のターン。」

 

ヴァルハランス「紫属性ではBPの競い合いの程は知れている。我が鉄壁を超えること叶わず。」

 

マグナ「……ひとつ質問がある。」

 

ヴァルハランス「答えよう。」

 

マグナ「貴様は……いや貴様達は、俺達の事を知っているのか?」

 

ヴァルハランス「旧世界を収めた邪神軍、悠久の封を解き、グラン・ロロに挑み散った逆賊。聞き及んでいる。」

 

マグナ「そうか…なら、愚かとしか言いようがないな───自らの守りに驕ったその慢心が敗因だ!鎧神機ヴァルハランスよ!!」

 

ヴァルハランス「!!」

 

マグナ「我が統べるは闇の大地。戦の舞台にて、ただ敵を地獄へと還す者────『獄土の四魔卿マグナマイザー』Lv4で召喚!!」

 

 

マグナマイザー Lv4 BP25000

 

 

マグナ「BP勝負の程は知れていると言ったな。否定はしない。BPを比べる相手など、攻撃の瞬間には消えているからな!!」

 

マグナ「アタックステップ、俺自身でのアタック!【トリプルアルティメットトリガー】ロックオン!!」

 

ヴァルハランス「!!……3コスト『氷楯の守護者オーシン』、4コスト『ランパートウォール』、6コスト『秩序軍 白炎機神ローゲ』。」

 

マグナ「トリプルヒット!6コア、ライフ1点、そして手札2枚だ!消し飛ばす!!」

 

マグナマイザーが紫の巨大な斬撃を放つ。

斬撃が通り過ぎた後は、フィールドは空になっていた。

 

マグナ「手札もスピリットも0!何もできまい!」

 

ヴァルハランス「ライフで受ける!」

 

マグナマイザーがヴァルハランスに直接一撃を見舞い、ライフを削る。

 

ヴァルハランス:ライフ3→2

 

 

マグナ「トドメだ、グラナトス、イブリース、行け!!」

 

グラナトス、少し遅れてイブリースが突撃する。

マグナの言った通り、守るスピリットも手札ももうない。

当然、攻撃はそのままヴァルハランスに向かう。

 

 

ヴァルハランス:ライフ2→0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マグナ「スピリットであったならば、貴様を負かすには手を焼いただろう。次はアルティメット(俺達)との戦い方も考えておくといい。」

 

 

 

マグナ「……さて、後はヴァンの方か。アイツの事だから負けはしないだろうが……。」

 

 



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第12話・後『邪神の力量 ─空─』

ヴァン「さて……と。早いとこ終わらせよっか。」

 

竜「同感だ。さっさと勝たせろ。」

 

ヴァン「おー!言うねぇ。その前に、君らなんなの?僕達を狙う理由は?」

 

竜「答える事はない。あるとしたら、名乗る程度の事だけだ。名を『メテオヴルム』。お前を倒す。」

 

ヴァン「メテオヴルム……か。グラン・ロロじゃ結構有名な竜さんが出てきたもんだね。

……じゃ、話はこの辺にして始めよっか。先攻貰っても?」

 

ヴルム「構わない。」

 

ヴァン「ありがとね。僕のターン。『バーゴイル』を召喚して、召喚時効果でコアブースト。ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:0 T:0 H:4 D:35

 

バーゴイル:【2】Lv3

 

 

ヴルム「俺のターン。『煌星竜スターブレイドラ』を召喚、さらに『星の砂漠』を配置。その後に『双翼乱舞』を使用して2枚ドロー。ターンエンドだ。」

 

 

ヴルム

R:0 T:4 H:4 D:33

 

スターブレイドラ:【1】Lv1

星の砂漠:0 Lv1

 

 

ヴァン「僕のターン。ソウルコアを使って『獄風の探索者カゲロウ・シーカー』をLv4で召喚。召喚時効果でデッキを3枚オープン。」

 

 

終焉甲帝

獄風の探索者カゲロウ・シーカー

ドクロスリーパー

 

 

ヴァン「この中から『終焉甲帝』を加え、残りを破棄。さらに『邪神域』を配置。シーカーの効果でバーゴイルのシンボルを緑に変えて、2コストで置くよ。」

 

ヴァン「アタックステップ、バーゴイルでアタック!」

 

バーゴイルが飛ぶ。先程『早いとこ終わらせる』と言ったとおり、速攻でカタをつける気らしい。

 

ヴルム「ライフで受ける。」

 

 

ヴルム:ライフ5→4

 

 

ヴァン「ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:0 T:【4】H:4 D:31

 

バーゴイル:1 Lv3

カゲロウシーカー:1 Lv3

邪神域:0 Lv1

 

 

ヴルム「俺のターン。『煌星竜コメットヴルム』をLv2で召喚。さらにバーストをセット。」

 

ヴルム「アタックステップ。行け、コメットヴルム!!アタック時効果でデッキを3枚オープンし、その中の系統:星竜を持つスピリットを手札に加える!」

 

 

龍星皇メテオヴルム

スターレインリボーン

彗星竜サングレーザー

 

 

ヴルム「メテオヴルムを手札に加える加え、残りは破棄する。」

 

ヴァン「……来るか!」

 

ヴルム「フラッシュタイミング、【煌臨】発揮!コメットヴルムを依代に、我が分身『龍星皇メテオヴルム』を煌臨させる!!」

 

コメットヴルムの体が朱く光り、形状を変える。

光が弾かれ、朱の竜が姿を表す。

 

 

メテオヴルム Lv2 BP12000

 

 

ヴァン「アタックはライフだ!」

 

メテオヴルムが右腕を叩きつけ、ヴァンのライフを削る。

 

 

ヴァン:ライフ5→4

 

 

ヴァン「くっ……。」

 

ヴルム「ターンエンド。」

 

 

ヴルム

R:0 T:【3】H:3 D:29

 

メテオヴルム:3 Lv2

スターブレイドラ:1 Lv1

星の砂漠:0 Lv1

 

 

ヴァン「僕のターン。シーカーと邪神域のレベルをアップ。」

 

ヴァン「前のターンと同様に、アルティメットとネクサスのシンボルを緑に変え、さらに邪神域を疲労させることで召喚条件を無視する!召喚、『終焉甲帝』!!」

 

 

終焉甲帝 Lv4 BP18000

 

 

ヴァン「シーカーをLv4に。コアは邪神域とバーゴイルから確保。よってバーゴイルは消滅する……ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:0 T:4 H:4 D:30

 

終焉甲帝:【3】Lv4

カゲロウシーカー:3 Lv4

邪神域:0 Lv1

 

 

ヴルム「出鼻から仕掛けて来たと思えば次は何もなしか…まあいい。『煌星竜コメットヴルム』をもう一体召喚。メテオヴルムをLv3にしてアタックステップ。」

 

ヴルム「コメットヴルムでアタック。アタック時効果でデッキを3枚オープン!」

 

 

煌星第二使徒スターゲイズ

堕ちる煌星

爆星龍ガンマレイ・バーストドラゴン

 

 

ヴルム「フッ、スターゲイズを加え、残りを破棄する。」

 

 

ヴァン「……シーカーでブロック!」

 

コメットヴルムをカゲロウシーカーが迎え撃つ。BPはカゲロウシーカーの方が上であり、コメットヴルムはもちろん圧される。

が──

 

ヴルム「再び【煌臨】発揮!」

 

ヴァン「なに!?」

 

ヴルム「次に依代とするのは俺自身。メテオヴルムに『煌星第二使徒スターゲイズ』を煌臨!!」

 

 

スターゲイズ Lv3 BP16000

 

 

コメットヴルムがカゲロウシーカーに叩き潰されて破壊されると同時に、スターゲイズが出現する。

 

ヴルム「スターゲイズは煌臨したターンの間、相手の効果を受けぬ。」

 

ヴァン「また面倒な……!」

 

ヴルム「続いて行くぞ、スターゲイズでアタック!アタック時効果、依代となっているメテオヴルムを召喚する事でスターゲイズを回復!

もう一度現れよ、我が分身!」

 

スターゲイズが小さな星を空に打ち出す。

その星を内側から壊して、出現したメテオヴルムがフィールドに降りる。

 

ヴァン「終焉甲帝、ブロックだ!!」

 

終焉甲帝が迎え撃つ。爪と剣がぶつかり、火花が散る。数合目の撃ち合いで、終焉甲帝がスターゲイズを吹っ飛ばす。

 

ヴァン「どこから卸した力か知らないけど、BP勝負じゃ僕達の方が上だ!」

 

ヴルム「どうかな──フラッシュタイミング、『煌星竜スターブレイドラ』のアクセルを使用!スターゲイズをBP+3000、合計で19000だ!」

 

スターゲイズを吹っ飛ばした終焉甲帝は、追撃をしようと剣を構え飛ぶ。

 

ヴァン「ッ───!?」

 

スターゲイズを斬ろうと剣を振るう──が、すんでのところで止められ、首を掴まれる。

終焉甲帝はそのまま地面に投げ落とされた。

起き上がろうとするが、直後にスターゲイズの叩きつけが決まり、破壊される。

 

ヴルム「再びスターゲイズでアタック!アタック時効果をもう一度使用、コメットヴルムを召喚し回復!

コメットヴルムのコアはフィールドのスターブレイドラを消滅させ確保する。」

 

ヴァン「──フラッシュタイミング、『インファナルウインド』!相手のスピリットを2体疲労させ、カゲロウシーカーに1コアを追加!」

 

刃のような風がスターゲイズとメテオヴルムを襲う。

メテオヴルムはその風に抑え込まれるが、スターゲイズは風を払い除ける。流れた風は代わりにコメットヴルムに当てられた。

 

ヴルム「今のスターゲイズは効果が効かぬと言っただろう!」

 

ヴァン「……ライフで受ける!」

 

 

ヴァン:ライフ4→2

 

 

ヴァン「グゥッ……!!」

 

ヴルム「終わりだ、もう一度スターゲイズでアタック!」

 

スターゲイズがヴァンにトドメを刺さんと飛ぶ。

スターゲイズはヴァンに爪を振り下ろし──

 

 

 

 

 

 

 

 

────突如として現れた暴風に阻まれた。

 

 

ヴルム「何!?」

 

ヴァン「効果効かないのなんて分かってるよ。それに言ったでしょ?BP勝負で勝てると思うな、って。」

 

ヴァン「──【烈神速】召喚。『アルティメット・セイリュービ』」

 

壁となった風を払って現れたのは竜。ガイアノホコを携え、スターゲイズに切りかかる。

 

ヴァン「ブレイヴも合わせて合計22000。ブレイヴ使ってんのかっていうツッコミは無しだよ。そっちもアクセルでBP上げてるんだし、あいこあいこ。」

 

セイリュービは瞬く間にスターゲイズを切り伏せ、破壊する。

 

ヴルム「チッ……ターンエンドだ。」

 

 

ヴルム

R:4 T:2 H:2 D:26

 

メテオヴルム:1 Lv1

コメットヴルム:1 Lv1

星の砂漠:0 Lv1

 

 

ヴァン「僕のターン……さて、アルティメット2体に手札2枚。しかもそっちはバーストあり、と。難儀だねー。」

 

ヴルム(そうだ、まだ俺の方が優勢。伏せた絶甲氷盾で凌ぎ、スターレインリボーンでスターゲイズを回収し「なーんてね。」……何?」

 

ヴァン「難儀だなんて嘘さ。最初っから決める手札は揃ってる。って言ってもホントに最初っからだから事故とも言えるけどね。」

 

苦笑いしながらおどけるヴァン。

しかし、次の瞬間表情が変わる。

 

ヴァン「まあでもダブルシンボル痛かったし、ちょっと怒った。」

 

 

───だからお返し、と。

 

 

獰猛な笑みをもって

 

ヴァン「召喚条件は大丈夫、コアも充分、行くよ──

──我が統べるは地獄の暴風。その風は同志を鼓舞し、敵に敗北を与えん!『獄風の四魔卿ヴァンディール』Lv4で召喚!!」

 

 

ヴァンディール Lv4 BP22000

 

 

ヴルム「ヴァンディール……!!」

 

ヴァン「アタックステップ。行け、セイリュービ。」

 

セイリュービが瞬時に移動し、ヴルムに剣を見舞う。

合体しているので、削るライフは2つだ。

 

 

ヴルム:ライフ4→2

 

 

ヴルム「グッ……だがライフ減少によりバースト「おっと、そうはいかないよ。」

 

ヴァン「ガイアノホコを持ったアルティメットがバトルしている間、そっちはバーストを使えない。」

 

ヴルム「!?」

 

ヴァン「さらに!」

 

ヴァンディールが鎌を投げ、ヴルムにダメージを与える。突然の事にヴルムは驚く。

 

ヴルム「なんっ……!?」

ヴァン「アルティメットのアタックが通れば追加でもう1つライフを貰う。僕の能力だ。」

 

ヴァン「それじゃ、締めだね。カゲロウシーカーでアタック。」

 

ヴルム「グッ……クソッ……!!」

 

 

 

 

ヴルム:ライフ0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

ヴァン「っと……ただいまー。」

 

ヴァンが戻ると、ロボ──ヴァルハランスを拘束したマグナと幽々子が居た。

 

マグナ「戻ってきたか、思ったより手こずったか?」

 

ヴァン「問題ありませーん。僕はゆっくり戦うんでーす。」

 

バトルのはじめに早いとこ終わらせると言っていたのは忘れているようだ。もしくは誤魔化しているか。

 

すると下から

 

紫「ヴァンディール殿、歓談もいいですが、しっかりと捕縛をお願いします。」

 

ヴァン「あっ、ごめんなさい!!アイツは!?」

 

紫「大丈夫です。私が捕まえてスキマに送りましたので。」

 

マグナ「全く、そういう所はしっかりすべきではないか?」

 

ヴァン「うぐ…今回はたまたまだよっ。次は問題ない……はず。」

 

マグナ「言い切らないあたり自覚があるようだな。」

 

ヴァン「う、うるさーい!!」

 

ヴァンが頬を膨らませて拗ね始めたので、幽々子が止めに入る。

 

幽々子「マグナさん、その辺にしましょ。ところで紫、たった今思わぬ収穫があった訳だけど、どうするの?」

 

紫「……今日集まってくれた皆には申し訳ないけれど、もう一度招集をするとしましょう。それまでこの2体はスキマに閉じ込めておきます。」

 

マグナ「あぁ、頼む。」

 

紫「…では、また同じ時間に博麗神社に、ということでよろしくて?」

 

幽々子「わかったわぁ。」

 

マグナ「問題ない。」

 

ヴァン「はーい!」

 

紫「ありがとう。では私はこれで。他の皆にも報告しなければいけないから。」

 

そういうと、紫はスキマの中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──白玉楼──

 

妖夢「おかえりなさいませ、幽々子様。マグナさんも、お疲れ様でした。」

 

幽々子「ただいま。お夕飯食べたいわ。」

 

妖夢「ハハ……もうすぐできますから。今日は私一人でやりますので、マグナさんはお休みになってください。」

 

マグナ「そうか?すまないな。」

 

少しのやり取りを終えると、妖夢は厨房に消えていった。

 

幽々子「真面目ねぇ。マグナさんが来て負担が減ったとはいえ、毎日大変でしょうに。」

 

マグナ「それをお前が言うのか?元はと言えばお前の食事量が問題だと思うのだが。そのうち体が風船のようになるぞ。」

 

幽々子「女の子に太る太らないの話はタブーよ。気にしてる子多いんだから。」

 

マグナ「そうなのか?……それはすまなかった。」

 

幽々子「………貴方も貴方で生真面目なところあるわよねぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──妖怪の山 椛宅──

 

ヴァン「ただいまぁ……。」

 

椛「あ、おかえりなさい。お疲れ……みたいですね。」

 

文「あやや、結構遅い帰りでしたね。ヴァンさん。」

 

2人の返事に対して、手をひらひらとさせて応じる。そしてそのままベッドに向かう。

 

ヴァン「ちょっと今日疲れた……もう寝ちゃっていいかな?」

 

椛「え、いいんですか?蜂蜜用意したのに…。」

 

ヴァン「うん……明日も同じ時間に行かなきゃだし……明日の朝に食べるよ……ごめんね……。」

 

そう言いながらベッドにダイブし、1分もせずに寝入ってしまった。

 

 

文「ホントに疲れてたんですねぇ。」

 

椛「らしいですね……いつもは夜更かしとか、結構するんですけど。」

 

文「……椛ってヴァンさんの話する時楽しそうですよね。」

 

椛「なっ……そんなこと、ないです。ないです!」

 

文(ここまで説得力のない否定も珍しい……。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

どこかもわからない場所。地面と空の境界すら見えない程暗い。

しかし、そこを歩く何者かの姿ははっきりと見える。

暗いのか明るいのか、全くもって曖昧な場所だった。

 

歩を進める人物は黒に近い紫を基調とした服を纏った小柄な男。

髪も目も紫で、左の手には篭手のようなものを付けている。

 

男が進む先には、玉座のような椅子にもたれかかっている者が1人。

背は少年のそれで、髪は黒く、玉座に座っているというより、抱かれているようある。

 

──起きていられますか。

 

男がそう問うと、少年は目を開けて、男に答えた。

 

少年「……何の用だ。」

 

男「単刀直入に言えば、報告に来た次第です。」

 

少年「……言え。」

 

男「ヴァルハランスとメテオヴルムですが、駄目でした。それだけならばまだ良いのですが、加えて捕虜にまで。」

 

少年「あっそ。ダイノがやられたのは意外だが、あの2体は別に期待もしちゃいない。」

 

男「……もう少し、彼らにも期待をかけてもよろしいのでは。」

 

少年「仲間にはかける。でも使い捨ての駒に何を期待しろと。」

 

男「ハハ、貴方らしい。それで、どうしますか?向こうに情報が漏れないとも限りませんが。」

 

少年「任せていいか?お前なら朝飯前だろ。」

 

男「承知……手段は?」

 

少年「何でもいいよ、最悪アイツらを切っても。

……俺も少し寝る。もう少ししたらアイツらが起きるだろうしな。おやすみ。」

 

男「おやすみなさいませ。件のことはお任せ下さい。」

 

男がそう言うと、少年はまた瞼を閉じた。

 

男「……。」

 

「……彼は寝ておられるか。」

 

横から唐突に声がかかる。男は驚くことも無く応じる。

 

男「はい。たった今。」

 

男に話しかけたのは男よりも少し年が上であろう男性。

緑の袴に刀を下げている。

 

男「仕事で少し出ます。彼をお願いしたく。」

 

男性「任せておけ。貴様よりはマシにできよう。」

 

男「それはいい。……ではこれで。」

 

男性「うむ。」

 

そういうと、男は来た道を引き返していった。

それを見届けると、男性はその場に胡坐をかき、少年を見遣る。

 

男性「──早く目覚められよ、頭。」

 

眠りについている少年が、少し微笑んだように見えた。



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第13話『笑んだ睨み』

 

──紅魔館──

 

藍「 ──という訳で、明日また同じ時間に博麗神社に来て欲しい。」

 

ザンド「……。」

 

マグナとヴァンが件の2体を倒した数刻後、藍によってそれを知った紅魔館の面々。

ザンドが大きなため息をついた。

 

イル「事が動くのが早いのう……。」

 

レミリア「同感ね……。」

 

藍「すまないな。だがこの短時間で成果があったものだからな。悪いが、なんとしても来てもらわないと困るよ。」

 

イル「つっても何するんじゃ?その2体を尋問でもすんのか?」

 

藍「その予定だ。」

 

ザンド「はぁ……この手の奴らが下手に口を割るタマでもnグフゥッ!?」

 

ザンドの背中に何かが激突し、途中で言葉を遮られる。

 

ザンド「……なんだよ、フランドール。」

 

フラン「帰ってきたら遊ぶって言ってたでしょー!」

 

レミリア「……あのね、フラン。今は私達は重要な「てなわけでオレ外すわ。」ちょっと?」

 

レミリアの制止も聞かずにザンドはフランと部屋を出ていった。

それと入れ替わりで咲夜が入室してくる。

 

咲夜「紅茶をお持ちしました。藍、貴方も飲んでいって。」

 

藍「ではお言葉に甘えて。」

 

咲夜「…ザンドが妹様と部屋を出ていったけど、いいのかしら?」

 

イル「フランドールと遊ぶのを建前に逃げおったな。」

 

レミリア「アイツめ……。」

 

藍「ハハハ……。では明日、頼めるかな?」

 

レミリア「……わかったわ。咲夜、明日も同じ時間に博麗神社に出向くから、準備を。」

 

咲夜「かしこまりました。」

 

藍「助かるよ。…では、私はこれで。」

 

イル「気ぃつけてな。」

 

レミリア達が明日来るのを確認した藍は、すぐにスキマで帰ってしまった。

 

イル「メテオヴルムにヴァルハランスか……なんでまたそんな奴らが。」

 

レミリア「その2体は名前こそ幻想郷でもそれなりに有名だけれど、どういったスピリットなの?」

 

イル「ワシもよく知らん。一つだけ言えるのは、悪意をもって戦いをするような奴じゃない。2体ともな。」

 

咲夜「……だとしたら、操られている…とか?」

 

イル「もしくは幻想郷にワシらが居るのに気づいて、ワシらを掃除しに来たか、じゃな。後者ならまだ対話の余地はあるが……前者なら黒幕突き止めるまでずっとこんな感じじゃろ。」

 

レミリア「不愉快ね。さっさと黒幕を始末してやりたいわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラン「さっきは何のお話をしてたの?」

 

ザンド「なんか異変が起こってるらしくてな。それの事だ。」

 

フラン「ふーん……最近は異変なんてなかったのに。」

 

ザンド「どうせすぐ終わるだろ。終わるまでオレもレミリアも忙しいから、あんま遊んでやれねぇぞ。」

 

フラン「…わかった、早く終わるといいね!」

 

ザンド「そうだな……早く……ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──博麗神社──

 

デスピアズ「 ──ッハハハハハ!急展開にも程があろう。」

 

霊夢「うるさいわよ。まあ、急展開だっていうのには同感だけど。」

 

紫「私もよ。では明日、今日と同じ時間に。2人もそれで宜しくて?」

 

霊夢「了解。」

 

デスピアズ「構わない。だが、具体的には何をするのだ?」

 

紫「……2体の尋問…あとはあの2体と交戦した彼らからの報告、といったところでしょうか。」

 

霊夢「アンタ話し方戻しなさいよ。胡散臭い。」

 

デスピアズ「昼頃に霊夢に叩かれたせいで貫禄もなにもないしな。」

 

紫「……ともかく、明日は今言った事の他にも、2人にも本格的に調査に乗り出してもらうわ。いいわね?」

 

霊夢(さらっと戻したわね。)

 

デスピアズ(戻したな。)

 

紫「じゃあ私はこれで。今日も早く寝ることね。」

 

紫がスキマで戻った後、少し間を空けてデスピアズが突然笑い出した。

 

霊夢「何よ、気持ち悪い。」

 

デスピアズ「クククッ…いや、あまりにも事態が早く動いたものでな。」

 

霊夢「それはさっき聞いたわよ。同じ事で笑ってばかりだと気色悪いわよ。」

 

デスピアズ「女とは思えぬ言葉遣いの人間に言われたくはないな。」

 

デスピアズがやれやれといった身振りをする。霊夢はそれが勘に障ったのか、デスピアズの頭を叩こうと、大幣を振る。

 

デスピアズ「─おっと。2度は同じ手は喰わんぞ?」

 

大幣はデスピアズが張った障壁に阻まれ、衝撃音が響く。

 

デスピアズ「すぐに手を上げるのは如何なものかと思うがな。」

 

霊夢「アンタのその上から目線な態度が治ったら考えてあげる……ご飯にするわ。片付けはよろしく。」

 

デスピアズ「ハァ……仕方ない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の昼前、昨日博麗神社に集まった面々が再び会していた。

 

ザンド「へぇ、コイツらがねぇ。」

 

イル「2体とも本物じゃのう。」

 

昨日捉えた2体を囲んでいる構図である。

すると、マグナが一歩前に出て2体に問いかける。

 

マグナ「さて……貴様らに質問しよう。答えたくなければそれで結構。」

 

ヴァルハランス「貴様らに開示する報せは有らず。」

 

ヴルム「そういうことだ。諦めるがいい。」

 

ヴァン「僕らを狙った目的は?」

 

ヴァル・ヴルム「「……。」」

 

霊夢「何が目的で襲ったのかしら?」

 

ヴァル・ヴルム「「………。」」

 

ウロヴォリアス「……貴様らはグラン・ロロから来た、間違いないな?」

 

ヴルム「……そうだが。」

 

エグゼシード「その様子だと、俺達とは違って自分の意志できたみたいだな。」

 

レミリア「……分かってはいたけど埒があかないわね。いっそのこともう殺す?」

 

幽々子「せっかちさんねぇ。」

 

咲夜「私もお嬢様と同意見です。」

 

ヴァン「ハハ……こんがらがってきたぞ……。」

 

皆ある程度分かってはいたが、全く口を割らぬ2人にどうすべきか決めあぐねていた。

 

紫「……1度この2体のことは放置しましょうか。先にマグナ殿とヴァン殿に話を「待て」

 

紫の言葉を遮って、デスピアズが2体の前に出る。

デスピアズがしゃがみこんで2体と同じ目線になる。

 

デスピアズ「最後にひとつ質問がある。『YES』か『NO』の2択だ。」

 

ヴァル・ヴルム「「……?」」

 

デスピアズ「貴様ら───

 

 

 

 

───自分が自分であると証明できるか?」

 

 

マグナ「……どういうことだ?」

 

霊夢「質問の意味が私たちでもわかんないんだけど。」

 

デスピアズ「理解する必要はない。して、答えはどうだ?」

 

ヴァルハランス「……肯定する。」

 

ヴルム「……同じく。」

 

デスピアズ「………そうか。わかった。」

 

紫「……今のは?」

 

デスピアズ「いや、特にどうということは無い。ただの個人的な質問だ。」

 

「しかしながら、中々いい的を射ているとは思いますよ。流石は邪神皇殿。」

 

咲夜「的を射ている……どういうことで───ッ!?」

 

咲夜が声の方にナイフ数本を投げる。しかし、その声の出処に居た男は左手で全て弾き飛ばした。

 

「素晴らしい技をお持ちのようだ。警戒心も高い。従者とはかくあるべきでしょうな。」

 

全員「「「──!!??」」」

 

全員が声の方を振り向く。すると、そこには黒に近い紫髪、そして紫の服を着た男の姿が。

 

男「お初にお目にかかります。吸血鬼のお嬢、そしてその従者の方。さらには亡霊の姫に妖怪の賢者、巫女の方、最後に邪神の皆々様。仕事で少々お邪魔させていただいています。」

 

透き通るような声で、誠実な口調で話す男。

邪気や悪戯心のような感情は一切混ざっていなかったが、そこにいる全員が彼を警戒した。

 

男「まずは驚かせてしまったことをお詫びします。

仕事というのも、その2体を引き取りに来たと言うだけですので、終わり次第すぐにここから立ち去ります。」

 

ザンド「へぇ、テメェがコイツらの上司か。」

 

レミリア「親玉が自分から出向いてくれるのはありがたいわね。」

 

前に出たのはザンドとレミリア。それに続いてイルと咲夜も前に出る。

 

男「御二方を返すつもりは無い、と仰りたいのでしょうか?」

 

イル「見りゃわかるじゃろ。お前さんさては察しが悪いタイプじゃな?」

 

男「これは耳が痛い。全くもってその通りです。」

 

困ったように男が苦笑いする。すると、後ろから声が聞こえた。

 

ヴァン「そういうわけだからコイツらの回収は諦めなよ。ついでに君の無事も。」

 

気がつくとヴァンは男の後ろの上空に居て、退路を塞いでいた。

男はため息をつく。

 

男「逃げに回るのは得意ですよ。ですが私も『アイツらを回収してこい』と命令を受けているので、手ぶらと言うわけには行きませんが。」

 

男「そこで、です──これで決めませんか?」

 

男が取り出したのはデッキ。すなわち、バトスピで決めようという事だ。

 

イル「──いいじゃろう。ワシがやる。」

 

イルが他の3人よりも前に出る。するとザンドが抗議に出た。

 

ザンド「人の獲物とるんじゃねぇよ。」

 

イル「一応ここにいる全員の事を考えて言ってるんじゃがなぁ……仮にワシ以外だとしたらピアズぐらいじゃろ。」

 

男「──では、イマージョ殿。お手柔らかに。」

 

ザンド「おい、テメェまで「まあ見てろ。ワシにも考えがあるんじゃよ?」……ッチ。」

 

ヴァン「情けない真似しないでよねー。」

 

イル「(お前さんには言われたくないのう……)んじゃ、やろうかの。」

 

男「承知しました。私が勝てばそこの者を回収して帰らせて頂きます。貴方が勝てば甘んじて縄に入りましょう。」

 

イル「いいぞ。……その前にじゃが、お前さん何者じゃ?」

 

イルがそう問うと、男は目を丸くした。

身元を聞かれるとは思っていなかったらしい。

 

男「何者、というほどのものでもございません。『 蛇噬(ダク)』とお呼びください。仲間内での私の渾名です。」

 

イル「了解じゃ。じゃあ蛇噬や。お手柔らかに(・・・・・・)、のう?」

 

蛇噬「フフ──承りました。」

 

 

 

 

イル・蛇噬「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 



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第14話『振り出し』

蛇噬「では始めましょうか。先攻後攻、お選びを。」

 

イル「後攻じゃ。先手はそっちに譲るぞ。」

 

蛇噬「わかりました。では私のターン。『クリスタニードル』をLv2で召喚。さらに『旅団の摩天楼』を配置し、配置時効果で1枚ドロー。以上でターンエンドとします。」

 

 

蛇噬

R:0 T:2 H:4 D:35

 

クリスタニードル:【2】Lv2

摩天楼:0 Lv1

 

 

イル「ワシのターン。『海帝国の秘宝』を配置。バーストをセットしてターンエンドじゃ。」

 

 

イル

R:0 T:4 H:3 D:35

 

海帝国の秘宝:【1】Lv2

 

 

蛇噬「私のターン。『斬首刀のシャドウスライサー』を召喚。アタックステップ、シャドウスライサーでアタックします。」

 

イル「…ライフじゃ!」

 

 

イル:ライフ5→4

 

 

イル「ッ……!」

 

蛇噬「以上でターンエンドとしましょう。」

 

 

蛇噬

R:0 T:3 H:4 D:34

 

シャドウスライサー:【1】Lv1

クリスタニードル:1 Lv1

旅団の摩天楼:0 Lv1

 

 

イル「シャドウスライサーか……随分昔に生きてたスピリットじゃなかったかのう?」

 

蛇噬「その通りです。と言っても、貴方に比べれば最近のスピリットですが。」

 

イル「…まぁ、ワシが生きてるのは旧世界からじゃからな。ワシのターン。『英雄皇の神剣』を配置。さらに『双翼乱舞』を使用して2枚ドロー。バーストをチェンジするぞい。」

 

 

【バースト】

グリードサンダー

→破棄

 

 

イル「新たにバーストをセットした。よって神剣の効果で1枚ドロー。ターンエンドじゃ。」

 

 

イル

R:0 T:6 H:4 D:31

 

海帝国の秘宝:【1】Lv2

英雄皇の神剣:0 Lv1

 

 

蛇噬「私のターン。『美麗鬼アラ』のアクセルを使用し、1枚ドロー。そして『旅団の摩天楼』をもう1枚配置、さらに1枚ドロー。シャドウスライサーをLv2にし、アタックステップ。」

 

蛇噬「シャドウスライサー、もう一度お願いします。」

 

イル「それもライフじゃ。」

 

シャドウスライサーの剣がイルのライフを削る。

 

 

イル:ライフ4→3

 

 

イル「…ライフ減少によってバースト発動!『紅炎の戦姫ブリュンヒルデ』!相手の合体していないスピリットを全て手札に戻す!!」

 

ブリュンヒルデが氷の一閃を放つ。

それが直撃したシャドウスライサーとクリスタニードルは蛇噬の手札に戻る。

 

蛇噬「赤と青の混色かと思えば白のバーストですか……ターンエンドとします。」

 

 

蛇噬

R:【4】T:2 H:7(1) D:31

 

旅団の摩天楼:0 Lv1 ×2

 

 

イル「ワシのターン。さて、早めに行ってしまうかの。」

 

 

イル「我が統べるは穢れの大海。水、そして智恵は全ての源なり!『獄海の四魔卿イル・イマージョ』Lv4で召喚!!」

 

 

イル・イマージョ Lv4 BP12000

 

 

蛇噬「これが獄海の四魔卿……海の賢者、と言ったところでしょうか。」

 

イル「賢者なんざ柄じゃないがのう。バーストをセットし、神剣の効果で1枚ドロー。

アタックステップ、ブリュンヒルデでアタック!アタック時効果でターンに1度回復じゃぞ!」

 

蛇噬「ふむ……ライフで受けましょう。」

 

 

蛇噬:ライフ5→4

 

 

イル「ターンエンドじゃ。」

 

 

イル

R:0 T:3 H:4 D:29

 

イル・イマージョ:【3】Lv4

ブリュンヒルデ:2 Lv2

海帝国の秘宝:1 Lv2

 

 

蛇噬「それでは私のタ……む?」

 

突然蛇噬が目を瞑り、左手を耳に当てる。

その状態のまま1分程が過ぎた。

 

イル「……?」

 

蛇噬「……さて、失礼しました。バトルを続けましょう。」

 

イル「……気にするな。」

 

蛇噬「ありがとうございます。では3コストで『蛇戦士フェウラーガ』のアクセルを使用。トラッシュにあるコアを1つライフに置きます。」

 

イル「紫でライフ回復…か……器用なもんじゃのう。」

 

蛇噬「白属性や黄属性とは違い、フィールドのコアを減らしますので、器用とは程遠いかと。

……では旅団の摩天楼を全てLv2にしまして、ターンエンドとします。」

 

イル「……なに?」

 

 

蛇噬

R:0 T:2 H:7(2) D:30

 

旅団の摩天楼:【2】Lv2

旅団の摩天楼:2 Lv2

 

 

蛇噬「ターンエンドです。そちらのターンをどうぞ。」

 

イル「……馬鹿にしてるのかの?」

 

蛇噬「何を言いますか。そのような事はありません。ただ私の中の優先順位に基づいて行動しているのみです。」

 

無表情でそう言い放つ。嘲笑、諦観、困惑、その他。

そのどれにも当てはまらない無表情に、イルは調子を崩されそうになる。

 

イル「……ワシのターン。」

 

イル(あの手の奴はやりづらいのう。恐らく馬鹿にしているわけでも嘘をついてる訳でもない、本当に奴の言う『優先順位』に従って行動しとるんじゃろうが……)

 

イル「『ストロングドロー』を使用。デッキから3枚ドローし、手札を2枚破棄する。」

 

 

手札

白晶防壁

巨人勇者ペルセウス

→破棄

 

 

蛇噬「防御効果にソウルコアを要する白晶防壁を捨てる……攻めてきますか。」

 

イル「アタックステップ、イルイマージョでアタック!!

さっきのターン、ライフを増やしただけだった事を後悔するがよいぞ!!」

 

イル「知は時に武器と転じる!【ソウルドライブ】発揮!!」

 

イル「手札のバーストカードを好きなだけ指定し、望む順に強制発動させる!

『グリードサンダー』、『獄海将軍スキッドメン・ジェネラル』、『双翼乱舞』を発動!」

 

イル「まずはグリードサンダーの効果、お前さんの手札が5枚以上なら、全て破棄して2枚ドローさせる!」

 

電撃が走り、蛇噬の右手に直撃する。その拍子に手札が全て落ち、消え去る。蛇噬はデッキの上から飛び出てきた2枚を左手で取る。

 

蛇噬「雷とは中々に痛いのですね……それにしても、本来なら地雷であるバーストを攻撃に使いますか。流石は邪神と言ったところ。」

 

イル「あと2つ残ってるのを忘れてやせんか?スキッドメンジェネラルの効果でお前さんのデッキをイルイマージョのコスト分、つまり5枚破棄する!」

 

今度は蛇噬のデッキが上から5枚舞う。

蛇噬は焦る様子もなく、ただただ感心したように眺めている。

 

イル「……?」

 

イル「………そしてスキッドメンジェネラルをLv2で召喚、最後に双翼乱舞で2枚ドロー!」

 

イル「ジェネラルの効果でイルイマージョとジェネラルはダブルシンボルじゃ!」

 

蛇噬「相手の防御手段を潰し、自らの手札を増やした上での打点増加……なるほど。ライフで受けましょう。」

 

 

蛇噬:ライフ5→3

 

 

イル「次じゃ、ブリュンヒルデでアタック!」

 

蛇噬「それもお通しします。」

 

 

蛇噬:ライフ3→2

 

 

イル「(ここまで何もなしか……いや、勝ちを確信するには早すぎるのう。じゃが行かぬ手も無し!)ジェネラルでアタック!ダブルシンボルじゃ!」

 

イル(さあ、どうでる……?)

 

蛇噬「……ライフをどうぞ。」

 

 

ジェネラルが蛇噬のライフを一撃で2つ削り、蛇噬のライフを0にする──決着。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

蛇噬「いやはやお強い。流石ですね。」

 

イル「……どういうつもりじゃ?」

 

蛇噬「どうもこうもありませんよ。さて、帰りましょうか。」

 

蛇噬は踵を返し、立ち去ろうとする。

 

 

 

 

ヴァン「──待ちなよ。」

 

 

 

 

 

しかし、それが許される訳でもなく。前に立ちふさがるヴァン。

 

ヴァン「イルが勝ったらお前は拘束。言ったよね?」

 

鎌を突きつけながら高圧的に言葉を投げる。蛇噬は、なんでこの外見でこのプレッシャーが出せるのでしょうか。などと内心で舌を巻きながらも、冷静に答える。

 

蛇噬「先程イル殿に申しましたが、私の行動は一貫した『優先順位』によって定められるのです。約束を反故にするのは心苦しいですが、その約束も私の中の最優先事項には程遠い。」

 

ザンド「……なら力づくで「そうですね。力づくでここを去るとしましょう。」!!」

 

蛇噬が爪先で地面を叩く。すると、蛇噬の周囲に蛇が20程現れ、各々の方向に飛びかかる。

 

ヴァン「ッ──!!」

 

ヴァンは後方に、ザンドとイルは左右に飛び、蛇を避ける。

すると蛇達は、後ろに居たマグナや霊夢達に遅いかかった。

 

デスピアズ「……。」

 

マグナ「チッ!」

 

マグナとデスピアズが前に出て蛇を撃ち落とす。

しかし、2匹だけ撃ち漏らし、その2匹はさらに後方に居たメテオヴルムとヴァルハランスに噛み付いた。

 

ヴルム「ガッ!?」

 

ヴァルハランス「グッ!?」

 

噛み付かれた直後、2体は塵となって消滅。近くで見ていた霊夢や紫、幽々子をはじめとして皆が驚愕の表情を、見せる。

 

蛇噬「──さて、第一任務完了。また相見えましょう。」

 

蛇噬が空に飛ぶ。

 

ヴァン「待てっ!!」

 

ヴァンが追い、凄まじいスピードで差を縮める。スピードも乗せて鎌を振るう、が──

 

 

 

斬った瞬間、蛇噬は霧となって消えた。

 

ヴァン「──!!??」

 

 

 

蛇噬『──危ないところでしたね。次に会った時は全霊をもってお相手しましょう。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マグナ「──なんだったんだ、あの蛇は。」

 

蛇噬が去って少しして、マグナが口を開く。

 

霊夢「そんなのわかんないわよ。でも、アイツらが噛まれただけで消えたってことは、毒蛇か何かじゃないの?」

 

デスピアズ「毒だとしたら塵になるのが理解出来ぬが……まあ恐らくは呪いの類だろう。正体は分からんがな。」

 

紫「……せっかくの情報源を潰されてしまったわね……少し迂闊だったかしら……。」

 

幽々子「……確かにもう少し待ってからでも、良かったかもしれないわね。」

 

ザンド「変わらんだろ。気付かれずに接近して訳も分からず逃げてったような奴だぞ?」

 

イル「………。」

 

ヴァン「……イル?」

 

イル「む?」

 

ザンド「どうかしたか?」

 

イル「……いや。」

 

 

イル(ジェネラルで破棄した中にあったあのカード……どこかで……。)

 

 

デスピアズ「何も損だけでないだろう。敵の1人を知ることが出来た。それだけで現状としてはいい成果だ。」

 

紫「……そうね、そう思うことにしましょう……今日はもう解散ね。また明日から、調査を再開しましょう。」

 

紫の言葉に全員が頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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蛇噬「ただいま帰投致しました。」

 

蛇噬は跪き、頭を下げる。

その前に居るのは、例の少年だった。

 

 

少年「ご苦労様。いきなり呼び出して済まなかったな。」

 

蛇噬「何を言いますか。貴方の命令より優先すべき事などありませぬ。今でさえ、こうしてお声がけ頂くことだけでも恐縮な事なのです。」

 

「アイカワラズ大袈裟ダナ。」

 

2人が声の方を見ると、そこには赤い髪の男が。

 

蛇噬「……ダイノ殿ですか。」

 

ダイノ「負ケテモドッテキタソウジャナイカ。ツイニ焼キガマワッタカ?」

 

蛇噬「ご冗談を。仕事を失敗するのは貴方だけで充分でしょう。」

 

ダイノ「……ナンダト?」

 

少年「言い合いは他所でやってくれ。それよりも蛇噬、例の件についてだが。」

 

蛇噬「仰られると思っていました。手筈は整っています。後は彼が自ら器を見つけるでしょう。」

 

そう言うと、少年には驚きの表情が浮かぶ。

 

少年「………敵わないな。助かった。しばらく休め。もう1つの方はアイツに任せてある。」

 

蛇噬「承知しました。」

 

蛇噬はそう言うと、闇の中に消えていった。

 

少年「お前も休んどけ。まだソレに慣れてないだろ。」

 

ダイノ「アァ、ソウスル。」

 

ダイノも、蛇噬に続けてその場から去る。

すると、今度は別の声が聞こえた。

 

「全く、部下を甘やかすのは如何なものかと思われるがな。」

 

緑の袴に刀を持った男性。

少年はそちらを向いて答える。

 

少年「厳しくするのは性に合わん。……アイツは?」

 

男性「あの地雷者なら最後の器を探している。時期に見つけるであろう。」

 

少年「ん、分かった。」

 

男性「さて、拙者もこれにて。何かあれば報を入れよ。」

 

少年「あぁ、分かってるよ。」

 

 

 

 

少年「───もうすぐ、か。」

 

 

 

 

少年の呟きを聞く者は、誰も居ない



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第15話『成さねば成らぬ異変解決』

「───。」

 

とある部屋。この部屋には見覚えがある。

紛れもなく自分の部屋だ。

 

旧世界、世界の中で邪神がもっとも大きな勢力だった頃、自分が使っていた部屋だ。

 

部屋を出て、廊下を移動する。

体の大きいアルティメット達に配慮された廊下は、人の身になった今見てみれば相当の大きさだ。

 

廊下を進み、テラスに出る。

そこから見えたのは火だった。

 

戦の火。

 

邪神とスピリットが戦っている。

建物が崩れ、悲鳴や叫びがあがる。

 

 

『──状況はどうなっている!?』

 

『敵の3分の1がもう広場まで来てる!空にはその倍!このままだと押し負けるよ!』

 

『ヴァンディールは広場に迎え!空は我が対処する!!』

 

『了解!!』

 

ヴァンディールが広場に向かった。が、自分は追わない。

追うのはもう一方の方。つまり空に向かう。

 

空に出ると、光が見えた。

 

光線を照射して周囲を薙ぎ払う邪神──言うまでもなく自分だった。

 

そこからは何度も同じ光景を見ていた。

向かってくる敵を周りの奴らごと薙ぎ払う。

別の方向からまた向かってくる。

 

薙ぎ払う。

 

薙ぎ払う。

 

薙ぎ払う。

 

そうしていくと、敵の残りは約3割ほどとなっていた。

倒し切るために前に出て、もう一度光線を──

 

 

 

 

 

 

 

『思ったよりやるねぇ。こりゃ計算外だ。』

 

嘲笑うような声が耳に入り、上を見上げる。

 

黒い龍だった。本来の自分より少し小さい体躯の黒い龍。

そしてその上に乗るのもまた黒き龍。

後者の体躯は自分と比べるまでもないが、明らかに他のスピリットとは違う。

 

「──。」

 

『……!!』

 

 

 

 

 

「『おまえは───』」

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、そうだ。コイツは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──いい加減起きろッ!!!」

 

突然頭部に激しい痛みを伴い、目を覚ます。

頭をさすりながら体を起こすと、視界に入るのは紅と白。

 

霊夢「ったく、いつまで寝てるのよ。さっさと起きて布団片付けなさい。」

 

デスピアズ「はぁ……何も大幣で叩くことはなかろう。」

 

霊夢「そう思うならさっさと起きろ。」

 

デスピアズ「……。」

 

はて、自分を邪神皇と言い出したのはどこの誰であったか。

その者がこの状況を見たら、腹を抱えて笑い出すだろう。

 

霊夢「起きて朝食食べたらすぐに出るわよ。」

 

そう言うと霊夢は部屋を出ていった。

 

デスピアズ「はぁ……全く、横暴な女よ。」

 

嫌な夢に最悪の目覚め。

厄日の始まりを予感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「………んにゃ?」

 

起きたら目の前に本が積まれていた。

あ、そっか。ワシ寝落ちしたんじゃった。

 

机に突っ伏した状態で顔だけ回すとパチュリーが同じ姿勢で寝ていた。

 

可愛いのう──なんて思いながらしばらく眺める。すると彼女の片目が空いた。

 

パチュリー「……んぅ?」

 

イル「ぐっもーにん、パチュリー。寝顔ごち

 

 

激痛。

 

本の角(金具付き)がこめかみに落ちてきた。

エグいぐらいに痛い。

 

イル「……アルティメットトリガークリティカルヒッ

 

 

激痛。

 

これに関してはちょっと理不尽じゃないのか。

 

流石に3回目は嫌なので、体を起こして椅子から立ち上がる。

そしてすぐさま出かける準備をする。

 

パチュリー「いきなりどうし……あぁ、そういうこと。」

 

そういうことだ。昨日の件もあって、朝からザンドと調査に出ることになっているのである。

 

パパっと準備して図書館を出ようとすると。

 

パチュリー「……いってらっしゃい。気をつけて。」

 

決めた。ワシ今日がんばる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イルが外門に着くと、そこには3人が立っていた。

 

ザンド「おせぇぞ寝坊野郎。」

 

イル「いやーすまんすまん。」

 

ザンド「ったく……じゃ、行ってくらぁ。」

 

咲夜「気をつけて。夕方までには切り上げてきなさい。」

 

咲夜の言葉に2人は頷き

 

美鈴「あ、人里に寄ったらお土産にお団子お願いしまーす。」

 

美鈴の言葉は有意義に無視して紅魔館を出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イル「──お前さん空飛べないの致命的では?」

 

ザンド「うっせ。仕方ねぇだろ。」

 

徒歩で道を歩く。ザンドは飛べない、かと言ってイルがザンドを担ぐのは不可能なのでこうなる。

 

イル「まあたまには歩きもアリじゃの。よーし!今日は頑張るぞいっと!」

 

ザンド「なんだそのテンション……。」

 

イル「パチュリーからいってらっしゃいを貰ったからのう!今日の儂は一味違うぞー!」

 

ザンド「へいへい。勝手にやってろ。」

 

イルがおかしな事を言ってザンドが呆れるのもいつもの事である。道を歩いていると、見知った顔が視界に入る。

 

 

妹紅「…あれ?喧嘩コンビじゃん。どしたの?」

 

藤原妹紅。イルとザンドの喧嘩を見てから、2人のことを『喧嘩コンビ』と呼んでいる。

 

ザンド「ちょいと仕事でな。」

 

イル「仕事か?」

 

ザンド「仕事だろ。」

 

妹紅「どっちなのさ。」

 

妹紅が笑いながら突っ込む。ザンドは妹紅に例のことを聞いてみることにした。

 

ザンド「なぁ、妹紅。ところで──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妹紅「なるほどねぇ……いや、そういう奴はまだ見てないし、聞いてもいないかな。」

 

ザンド「そうか、サンキュな。」

 

妹紅「力になれなくて悪いね。じゃ、頑張って。」

 

ザンド「おう。」

 

言葉を交わして、2人は妹紅と分かれる。

 

 

 

 

ザンド「んじゃ、手当り次第行くとするか。」

 

イル「望み薄じゃがのー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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準備を終え、神社の外に出た2人はこれからどう動くかを話していた。

 

霊夢「──調査って言っても、雲を掴むような話よね。手がかりは主犯の1人に潰されるし、敵がいつどこに出るかも分かったもんじゃないし。」

 

デスピアズ「……今まで多くの異変を解決してきたと聞いたが、その貴様でも今回は難解か?」

 

霊夢「あのねぇ。今までの異変は紅い霧だとか春が来ないだとか間欠泉だとか、発生源がなんとなく特定できるものばっかだったのよ。

でも今回は『敵が襲ってくる』だけ。しかも主犯は恐らくグラン・ロロの奴らでしょ?」

 

デスピアズ「今までと根本的に違う、と?」

 

霊夢「そゆこと。……はぁ、仕方ない。アイツの家にでも行きましょうか。って訳で、早速行くわよ。」

 

デスピアズ「……どこにだ?」

 

デスピアズが霊夢にそう聞くと、霊夢は少し気だるそうに答えた。

 

 

 

 

 

 

霊夢「──魔法の森よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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私は魔法使いである。

名前は霧雨魔理沙。

 

魔法の研究をしたりバトスピをしたり、まあどこにでもいる普通の魔法使いだ。

 

ここ最近はずっと家に籠って魔法の研究に没頭している。

 

研究というのは1度始めると止まらないもので、昨日も気がついたら日が暮れてた。

 

でも研究ばかりしていては体が鈍る。今日は久しぶりに霊夢のとこにでも行こうか、などと考えていたら──

 

 

 

コン、コン

 

 

 

魔理沙「ん?」

 

どうやらお客ようだ。

 

魔理沙(珍しいな……アリスか?)

 

そう、珍しいのだ。私は他人の家に出向く事はあっても家に来られることはあまり無い。

 

魔法の森に住んでいる以上は仕方ないけどな。

 

さて誰か、と思いつつドアを開けると、そこにはさっきまで思い浮かべていた友人の姿が。

 

霊夢「久しぶり。最近全く来ないから死んだのかと思ってたわ。」

 

魔理沙「おいおい出会い頭に言うセリフにしては縁起でもないな。魔理沙さんはいつでも元気だぜ?」

 

互いに軽口を叩くのも慣れたもの。付き合いが長いからこんな会話も自然に出てくる。

すると、霊夢の後ろにもう1人、私の知らない姿が木に背を預けていた。

 

「……その白黒が魔理沙という奴か?」

 

霊夢「そうよ。アンタもこっち来なさい。」

 

魔理沙「なんだ?男作った報告にでも来たのか?魔理沙さん妬いちまうぜ?」

 

霊夢「バカ言ってんじゃないわよ。ただの異変調査の協力者。」

 

魔理沙「……異変?」

 

異変と聞いちゃ黙っちゃいられない。とりあえず2人を中に入れる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デスピアズ「──というわけで、現在調査中だ…と言っても調査を始めたのは昨日今日で、まだほとんど何も成果は上がっていないのだが。」

 

名前をデスピアズと名乗った黒髪の男は、やれやれといった様子で言葉を切った。黒幕やその目的が一切不明瞭な異変か。面白そうだぜ。

 

霊夢「そゆこと。アンタも何か見てないかと思って来たんだけど……。」

 

魔理沙「最近は家に籠りきりだったからな。特にそういうのは何もみてないぜ。」

 

霊夢「そうよねぇ……。」

 

魔理沙「にしてもグラン・ロロねぇ……エグゼシード達がこっちに来るまではただのマユツバだと思ってたけどな。」

 

霊夢「そんなん私もよ。確かめようがないんだし。」

 

魔理沙「そういやアイツは?家に置いてきたか?」

 

霊夢「寝てるわよ。アイツバトルの時ぐらいしか起きないし。」

 

デスピアズ「……して、霊夢よ。これからどうする?」

 

霊夢「そうねぇ……とりあえず近辺を捜索して、何もなければ今日は切り上げましょうか。」

 

魔理沙「よし、私もついてくぜ!」

 

霊夢「は?なんでよ?」

 

魔理沙「人手は多い方がいいだろ?それに最近体を動かしてないし、たまには運動もしないとな。」

 

霊夢「……まぁいいけど。なら早速行きましょうか。」

 

デスピアズ「分かった。」

 

魔理沙「外で待っててくれ。箒取ってくる。」

 

2人にそう言って、魔法道具を置いてある部屋に入る。

そして机に立てかけてある箒を取って

 

魔理沙「……?」

 

違和感を感じて窓に目を向ける。

 

魔理沙「……気のせいか?」

 

霊夢『魔理沙ー!早くしなさーい!』

 

魔理沙「っと、鬼巫女の催促だ。今行くのぜー!!」

 

一瞬感じた違和感を頭の隅に追いやって、我が家を出た。



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第16話『森の中で』

マグナ「…………。」

 

妖夢「…………。」

幽々子「…………。」

 

沈黙の中にいる3人。

なぜこうなっているのかというと。

 

マグナ「妖夢。」

 

妖夢「はい……幽々子様?」

 

笑顔で幽々子に問いかける妖夢。

笑顔と言っても黒い方だが。

 

幽々子「な、なにかしら~?」

 

妖夢「そうですね。では簡単に。

 

 

 

 

 

 

 

──────なに朝食の食材全部つまみ食いしてるんですか!?」

 

そういうことだ。朝妖夢が起きて朝食の準備を使用としたところ、食材があったはずの空間とその横にいる幽々子を発見。現在事情聴取中である。

 

妖夢「あのですね!?百歩譲って料理の摘み食いはともかく食材を摘み食いするのはやめて下さいと何度も何度も言ってますよね!?」

 

幽々子「ち、違うのよ。食材さん達の『ありのままの私を食べて』って声が聞こえて

 

妖夢「などと言っておりますが裁判長。」

 

マグナ「有罪だ。柱に縛り付けておくといい。」

 

妖夢「わかりました。」

 

幽々子「女の子を緊縛するのはいけないと思います!」

 

マグナ「とりあえず抜けられたり切られたりせんように術式でもかけておくか。」

 

妖夢「いいですね。では。」

 

幽々子「従者が2人とも話を聞いてくれない!!」

 

ものの1分ほどで幽々子を縛り付け、今日の予定をどうするか相談する2人。

 

妖夢「どうしますか?朝食プラス異変調査。」

 

幽々子「ねぇ~。」

 

マグナ「買って作るのも面倒だ。調査の前に外で済ませよう。」

 

妖夢「そうですね。では行きましょうか。」

 

幽々子「ねぇ~!」

 

マグナと妖夢は幽々子を完全に無視して、白玉楼を出ていった。

 

幽々子「……妖夢とマグナさんのば~か……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マグナ「頭が痛い。」

 

妖夢「同感です。」

 

ほぼ同時のため息。妖夢は慣れているとはいえ、主の奇行にはいつも悩まされるのである。

 

マグナ「適当に握り飯でもよかろう。さっさと食べて調査に移るぞ。」

 

妖夢「はいっ。」

 

ここで『せっかくだからたまにはいい物を』という選択肢が出ないあたり、この2人の真面目さが良くわかるというもの。

 

2人は人里にておむすびを食べた後、道を徒歩で移動する。

 

妖夢「と言っても、手がかりらしい物が見つかるとは思えませんが……。」

 

マグナ「それは俺や紫、他の邪神達も理解していよう。それでもただでさえ後手に回っているのだ。やれる事をやるに越したことはない。」

 

妖夢「……確かに、マグナさんの言う通りですね。根気強く行きましょう!」

 

「そうだね!根気強く行かなきゃ!」

 

妖夢・マグナ「「!」」

 

上から声がしたので空を見上げるといつの間に居たのやら。ヴァンと椛が降りてくる。

 

マグナ「お前達も調査か?」

 

ヴァン「うん。紫さんが上に言って僕達を動けるようにしてくれてね。」

 

椛「というわけで、今日は懲戒任務を休んで調査に、と。」

 

ヴァン「ごめんね椛さん。手伝ってもらっちゃって。」

 

椛「気にすることありませんよ。私の意志ですし。」

 

マグナ「それで、そちらは何か分かったか?」

 

ヴァン「ダメです。」

 

椛「先日の竜の件があった場所の付近を探してみたんですが、特に何も見つからず……。」

 

妖夢「やっぱりダメですか……。」

 

ヴァン「このままだと探しても何も見つからなさそう……。」

 

マグナ「……とりあえず虱潰しに行くしかあるまい。俺と妖夢はここから北を、ヴァン達は南を頼む。」

 

ヴァンと椛が頷き、両組は別々の方向に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マグナ「とりあえず森の中に行ってみるか。」

 

妖夢「森…ですか。」

 

マグナ「森は暗いからな。結界などを使えば周囲に溶け込みやすい上、川に近い場所を選べば色々と困らん。」

 

妖夢「なるほど……詳しいんですね。」

 

マグナ「向こうにいた時の経験則だな。」

 

妖夢「やっぱり、元の世界に……とか…考えたりします?」

 

妖夢が少し遠慮がちに聞く。マグナは難しい表情をしながら目を伏せる。

 

マグナ「……さぁ、どうなのだろうな。だが、元はといえば俺達はグラン・ロロでは死者だ。戻れたとしても戻ることは無いし、許されないだろう。」

 

そう言って少し苦笑いを浮かべた。

 

妖夢「……。」

 

マグナ「……さ。俺の事はこれくらいにしよう。なにかあるかもしれんし、もしかしたら襲われることも有り得る。気を引き締めろよ。」

 

妖夢「……はい。」

 

話を中断し、周囲に意識を向ける。

しばらく歩いていると、1人の男性が木にもたれかかっているのを見つけた。

 

マグナ「……そこの者。どうされた?」

 

マグナが声をかけると、驚きのあまり声が裏返った。

 

マグナ「……大丈夫か?」

 

男性「あ……け…獣…。」

 

マグナ「獣?」

 

男性「あ、あぁ……ゴツゴツした細い獣に襲われそうに……なって……なんとか……隠れてたんだ…。」

 

妖夢「その獣はどの方角に?」

 

男性「え……多分……み、南に……。」

 

マグナ「……分かった。感謝する。お前は人里の人間だな?1人で歩いて帰れるか?」

 

男性「あ、あぁ……もう大丈夫だ……あんちゃん達も気ぃつけな……。」

 

男性はそう言うと、思い足取りでその場を去っていった。

 

妖夢「……マグナさん。」

 

マグナ「あぁ……恐らくその獣と会う可能性も高い。ヴァン達を追うぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ヴァンと椛。2人は予定通り南に向かって森を歩いていた。マグナ達とあった時とは違い、会話はない。

 

ヴァン「……。」

 

椛「……。」

 

ヴァンは常に辺りを見回しており、一言も話さない。椛はそれを不思議に思った。

 

椛(いつもは彼からよく話しかけてくるのに……すごい集中してる……。)

 

ヴァンを見習って椛も周囲に意識を向け直そうとする。その直後、ヴァンが急に立ち止まった。

 

ヴァン「……南東に人っぽい何かがいる。その少し近くにもう1つ何か。こっちはよくわかんないな……。距離は50ってとこか…。」

 

椛「え、分かるんですか?」

 

ヴァン「なんとなくだけどね。伊達に向こうで指揮とってなかったし……そんなことより、急ぐよ!」

 

そう言うとヴァンは走り出した。初速から相当なスピードだ。椛も慌てて追いかける。

 

ヴァン(人の方にもう一方の奴が近づいてく!)

 

そういうとさらにスピードを上げる。

 

椛「ちょっ!?」

 

椛はついていけず、どんどんと離されていく。

 

進んでいくヴァンの目に映ったのは、帽子をかぶった1人の少女と全身が装甲で覆われた獣。スピリットだというのはひと目見てわかった。

 

獣が少女に飛びかかる。そして、その爪が少女を切り裂く───

 

 

───ことはなく、獣が地面に落ちる頃には真っ二つになっていた。

 

ヴァン「危なかった!大丈夫です「あら、ヴァンさんじゃないありませんか。こんなところで会うとは。」あれ?」

 

少女が帽子を取ると、ヴァンの見知った顔が。

 

ヴァン「文さん?」

 

文「はい。清く正しい射命丸文です。

ところでヴァンさん、私相手にカッコつけるよりも椛にカッコつけた方がいいと思いますよ?あれくらいどうにでもできますし。」

 

ヴァン「お、大きなお世話だよ……ところで、なんでこんな所に?」

 

文「えぇ、それが……」

 

文が自分がここにいる訳を話そうとした瞬間、もうひとつの声が聞こえてくる。

 

椛「ちょっ…はっ…はっ……はぁ……も~、速すぎですよぉ……文さんじゃないんですから……。」

 

椛だ。ヴァンは置き去りにしたのをすっかり忘れていたのか、慌てて謝る。

 

ヴァン「ご、ごめん…」

 

椛「ホントにもう……あ、文さん。」

 

文が居るのにようやく気づいたようで、文にも声をかける。

 

文「私はついでかなにかでしょうか?」

 

椛「そ、そういうわけでは……。」

 

ヴァン「ハハ……それで、文さんはなんでここに?」

 

文「あぁ、そうでしたね。まあ簡単に言えば新聞のネタ探しです。」

 

ヴァン「そういうことなら納得だね……それにしても……。」

 

ヴァンは先程自分が斬った獣の死骸、いや残骸を見る。

 

椛「…スピリット、ですか?」

 

ヴァン「うん。でもこんな奴見たこと「なんだ。もう狩ってしまっていたか。」!」

ヴァンが振り向くと、そこにはマグナと妖夢が。

 

マグナ「目撃情報を聞いてこちらに来たが……ふむ、コイツもスピリットのようだな。」

 

ヴァン「でも、僕達が見たことないのって相当最近のか僕達より昔に生きていた奴になるけど……。」

 

マグナ「……神皇共に聞いてみるか。写真にできればいいのだが……。」

 

文「私がやりましょう。」

 

ヴァン「さっすが!」

 

文が写真を取っている間、4人での話が始まる。

 

妖夢「やっとそれらしいものが見つかりましたね……。」

 

ヴァン「だね……あの残骸は紫さんに渡して、僕達は紅魔館と博麗神社にそれぞれ向かおうか。」

 

マグナ「なら博麗神社の方は俺達が行こう。」

 

椛「では私達は紅魔館に、ですね。」

 

文「写真、撮れましたよ。」

 

ヴァン「ありがとー!じゃ、行こうか。文さんはどうする?」

 

文「そうですね…ヴァンさん達にご同行させて頂きましょうか。」

 

妖夢「決まりですね。」

 

マグナ「なら、さっさと見せに行くとしよう。」

 

そう言って、5人はそれぞれの方向に飛んでいった。



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第17話『戦法…?』

 

ヴァンと椛、文は数十分かけて紅魔館に到着した。

門に歩いていくと、そこには美鈴が。

 

美鈴「おや、椛さんに文さん、それに…「ヴァンディールだよ。」あぁ、貴方がヴァンさんですか。紅魔館に何か御用で?」

 

ヴァン「うん。ちょっとレミリアさん…というかウロヴォリアスにね。異変の事で。」

 

咲夜「そういう事でしたか。案内しますわ。」

 

いつの間にか現れていた咲夜にヴァンが驚く。

 

ヴァン「うわっ……周回移動?」

 

咲夜「違いますよ。さて、なんでしょうか?」

 

ヴァン「……時間操作?」

 

咲夜「正解ですわ。」

 

ヴァン「やったー!」

 

咲夜「さて、お話はこの辺りに。案内しますわ。」

 

文「お願いしまーす!」

 

咲夜「あなたは……まぁいいでしょう。付いてきてください。」

 

3人は咲夜に連れられ、紅魔館の中へと入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「……なるほどね。ウロヴォリアス、どう?」

 

ウロヴォリアス「残念ながら見覚えがない。なにかの文献に載っていた覚えもな。」

 

椛「てことは、新種とか……でしょうか?」

 

文「逆もありうるかもしれませんよ。大昔過ぎて資料がない、とか。」

 

ウロヴォリアス「ハヌマーリンかダイテイオウ様が居れば分かるのだろうがな……判断できるのは、機獣だということぐらいか。」

 

レミリア「残骸はどうしたのかしら?」

 

ヴァン「紫さんに。」

 

レミリア「そう、なら大丈夫ね。」

 

文「こっちは進展なし…と。霊夢さんの所の彼が知っているという可能性は?」

 

ウロヴォリアス「ない。」

 

椛「随分バッサリと否定するんですね……。」

 

ヴァン「そっかー……じゃあ僕らはここで「待ちなさい。」…?」

 

席を立とうとしたところをレミリアに呼び止められ、不思議そうにレミリアを見て座り直す。

 

レミリア「ヴァンディール……私達とバトルしなさい。」

 

ヴァン「……え?なんで?」

 

レミリア「今の私達は目的を同じとする仲間。その仲間の強さを知っておくため、といったところかしら。」

 

ヴァン「なるほどね。いいよ。」

 

即答で了承するヴァン。そして、両者席を立ち、地面を離れる。

 

文「おやおや。」

 

椛「いいんでしょうか……?」

 

ウロヴォリアス「付き合わされる身にもなって欲しいものだがな……。」

 

文は関心の目で2人を見上げ、椛は部屋が大丈夫なのかと心配している。ウロヴォリアスは呆れているようだ。

 

レミリア「ウロヴォリアス。」

 

ウロヴォリアス「はぁ……まったく。」

 

ヴァン「こっちはいいよ。いつでもどうぞ?」

 

レミリア「いいわ。では始めましょうか。」

 

 

レミリア・ヴァン「「ゲートオープン、界放。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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レミリア「先攻後攻、選びなさい。」

 

ヴァン「いいの?」

 

レミリア「えぇ。私から挑んだのだしね。」

 

ヴァン「じゃあ先攻貰うね。僕のターン。」

 

ヴァン「『小凰ニックス』を召喚。召喚時効果発揮、デッキを上から4枚オープンし、アルティメットを1枚手札に。」

 

 

バーゴイル

獄風極天クルビデンス

止まない風の森

ドクロスリーパー

 

 

ヴァン「『バーゴイル』を手札に入れて、残りはデッキの下に。ターンエンドだよ。」

 

 

ヴァン

R:0 T:3 H:5 D:34

 

小凰ニックス:【1】Lv1

 

 

レミリア「ではターンを貰うわ。『死神壬龍ジェット・ザ・リッパー』を召喚。アタックステップ。」

 

レミリア「行きなさい、ジェット・ザ・リッパー。アタック時効果発揮。相手の2コア以下のスピリット、つまりニックスを破壊。」

 

ジェット・ザ・リッパーがニックスを鎌で両断する。

 

レミリア「そうすることで1枚ドロー。」

 

ヴァン「ライフで受ける!」

 

 

ヴァン:ライフ5→4

 

 

レミリア「ターンエンド。」

 

 

レミリア

R:0 T:4 H:5 D:34

 

ジェット・ザ・リッパー:【1】Lv1

 

 

ヴァン「僕のターン。『ビートルゴン』をLv4で召喚。Lv4の効果でビートルゴンに赤と緑のシンボルを追加。それを使って『バーゴイル』を1コストで召喚する。」

 

レミリア「初動はザンドのデッキとおおよそ同じね。どのあたりから動きが変わるのかしら。」

 

ヴァン「どこからだろうね。バーゴイルの召喚時効果、BP5000以下のジェット・ザ・リッパーを破壊だ!」

 

バーゴイルが炎でジェット・ザ・リッパーを焼く。

ジェット・ザ・リッパーが破壊された。

 

レミリア「バーゴイル…コアブースト以外にもそんな事が出来るのね。」

 

ヴァン「アタックステップ!バーゴイルでアタック!」

 

レミリア「いいわ!ライフで受ける!」

 

 

レミリア:ライフ5→4

 

 

ヴァン「ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:0 T:4 H:4 D:33

 

ビートルゴン:【1】Lv3

バーゴイル:1 Lv3

 

 

レミリア「中々やるわね……『戊の四騎龍ホワイトライダー』を召喚!召喚時効果で相手のアルティメットのコアを2つリザーブに!消えなさい!」

 

ホワイトライダーが紫色の2本の矢を放つ。その矢はバーゴイルとビートルゴンを貫通し、2体は消滅した。

 

レミリア「そうね……ターンエンド。」

 

 

レミリア

R:0 T:5 H:5 D:33

 

ホワイトライダー:【2】Lv2

 

 

ヴァン「ザ・除去合戦だね。でもここで一旦休憩、『邪神域』を配置。さらに『ネオダブルドロー』を使用!デッキから2枚ドローするよ。」

 

ヴァン「バーストセット。ターンエンドだよ。」

 

 

ヴァン

R:0 T:【7】H:4 D:30

 

邪神域:0 Lv1

 

 

レミリア「(動きを止めたわね…)私のターン。『竜骸山脈』を配置。そして『ウロドラ』、『戊の四騎龍レッドライダー』を召喚。レッドライダーの召喚時効果で1枚ドロー。」

 

レミリアがカードを引く。すると、ヴァンの口角が少しつり上がった。

 

レミリア「アタックステ「おっと!そのドロー、貰っちゃうよ!」…!?」

 

ヴァン「相手の効果による相手の手札増加でバースト発動!『甲殻伯メタリフェル』!」

 

レミリア「なにっ!?コアのないその場面で!?」

 

ヴァン「さっきホワイトライダー1体に2体もやられたからね!1.5倍返しだ!」

 

メタリフェルのバースト効果。

BP合計20000まで相手のスピリットを破壊できる。

 

それによって、レミリアのフィールドの三体も例外なく炎にさらされ、破壊される。

 

 

レミリア「やってくれるわね。でも更地にはならないわ。レッドライダーをもう一体、ソウルコアを使って1コストで召喚。」

 

レミリア「本来ならば2コストだけれど、『竜骸山脈』の効果でソウルコアを2コスト分として扱うわ。召喚時効果で1枚ドローし、竜骸山脈をLv2に上げてターンエンド。」

 

 

レミリア

R:0 T:【7】H:4 D:30

 

レッドライダー:1 Lv1

竜骸山脈:1 Lv2

 

 

ヴァン「僕のターン。『獄風の小隊アントマン』を召喚。召喚時効果でコアブースト。」

 

ヴァン「次にコイツだ!召喚!『終焉甲帝』!!」

 

レミリア「コアブースト…やはり厄介ね。」

 

ヴァン「じゃあもっとやっちゃおう!終焉甲帝の召喚時効果でコアを2個追加。アタックステップ!」

 

ヴァン「終焉甲帝、アタックだ!アルティメットトリガー、ロックオン!」

 

レミリア「トリガー持ちのアルティメットか…!コストは……えっ!?」

 

 

辰の十二神皇ウロヴォリアス 7

 

 

ヴァン「ガード…だけどいいのが落ちたね!」

 

レミリア「くっ…アタックはライフで受けるわ!」

 

同様しつつもレミリアはアタックを通す宣言。終焉甲帝の太刀が振り下ろされる。

 

 

レミリア:ライフ4→3

 

 

ヴァン「ははっ、ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:0 T:6 H:3 D:29

 

終焉甲帝:【5】Lv5

アントマン:1 Lv1

邪神域:1 Lv1

 

 

レミリア「私のターン…。」

 

ウロヴォリアス『付き合わされた挙句登場することもなく退場…か。』

 

レミリア「仕方ないでしょ!こんなの予測しないわよ!」

 

ヴァン「あっははは!!」

 

レミリアとウロヴォリアスのやり取りを見てヴァンが笑い出す。

笑い終えた後、口角のつり上がったままレミリアに問う。

 

ヴァン「どうするの?相棒、トラッシュに落ちちゃったけど?」

 

レミリア「分かってるわよ……『ダークネスワイバーン』を召喚し、召喚時効果で1枚ドロー。さらに召喚!」

 

レミリア「異魔神ブレイヴ『龍魔神』!!」

 

突如現れたゲートを開き、龍魔神が姿を現す。

 

レミリア「さらに『死神壬龍ジェット・ザ・リッパー』を召喚。そして龍魔神をジェット・ザ・リッパーの左、ダークネスワイバーンの右に合体!!」

 

レミリア「アタックステップ、ジェット・ザ・リッパーでアタック!」

 

ジェットザリッパーが突撃する。その直後、龍魔神が拳を構えた。

 

レミリア「龍魔神の追撃!アントマンを疲労させることで1枚ドロー!さらにジェット・ザ・リッパーの効果でアントマンを破壊し、もう1枚ドロー!」

 

龍魔神が拳から放った雷撃がアントマンに当たり、発散する。その後、ジェット・ザ・リッパーに両断され爆散した。

 

ヴァン「わーお……。」

 

レミリア「ダブルシンボルのアタック、どうする!?」

 

ヴァン「流石にここで何もしないと負けちゃうよね……フラッシュ、『インファナルウインド』!レッドライダーとダークネスワイバーンを疲労させ、ボイドからコアを終焉甲帝に!」

 

叩きつけるような風が巻き起こり、ダークネスワイバーンとレッドライダーがその場に伏せる。

 

一方でジェット・ザ・リッパーはヴァンに斬りかかり、ライフを奪っていく。

 

 

ヴァン:ライフ4→2

 

 

レミリア「惜しいわね……ターンエンド。」

 

 

レミリア

R:0 T:7 H:5 D:25

 

ジェット・ザ・リッパー:【1】 Lv1

ダークネスワイバーン:1 Lv1

レッドライダー:1 Lv1

竜骸山脈:0 Lv1

 

 

ヴァン「僕のターン……さて、反撃反撃っと。」

 

ヴァン「我が統べるは地獄の暴風。その風は同志を鼓舞し、敵に敗北を与える───『獄風の四魔卿ヴァンディール』Lv4で召喚!!」

 

 

ヴァンディール Lv4 BP22000

 

 

ウロヴォリアス『向こうはしっかりと出てきたが。』

 

レミリア「分かってるわよ。」

 

ヴァン「アタックステップ!ヴァンディールでアタック!!」

 

ヴァン「我が魂は風そのもの……この風こそ我が証明!!【ソウルドライブ】発揮!!」

 

ヴァンがソウルコアを砕くと、ヴァンのデッキが上からオープンされていく。

 

 

アルティメット・セイリュービ

地球神剣ガイアノホコ

ドクロスリーパー

小凰ニックス

獄風極天クルビデンス

邪神域

邪神域

止まない風の森

甲殻伯メタリフェル

 

 

ヴァン「アルティメットが3枚出たので、そのアルティメット達を無条件ノーコストで召喚!!」

 

 

ヴァンディールが次元を裂くと、その中から三体のアルティメットが出現した。

 

ヴァン「さぁ!アタックはどうだ!」

 

レミリア「ライフで受ける!」

 

ヴァンディールが鎌で斬り、すぐさま後退して今度は鎌を投げる。この一連の動きでレミリアのライフを2つ削った。

 

ヴァン「ラストアタックだ!メタリフェル!」

 

メタリフェルが両手の剣を構え、駆ける。

 

レミリア「まだまだ!フラッシュ、『リミテッドバリア』!このターンの間、コスト4以上のアルティメットのアタックではライフは減らない!さらにソウルコアを使用した時、相手のネクサスを手札に!」

 

ヴァン「むむっ、耐えられちゃったか。ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:1 T:6 H:3 D:19

 

ヴァンディール:3 Lv4

メタリフェル:3 Lv4

終焉甲帝:1 Lv3

U・セイリュービ:1 Lv3

 

 

レミリア「私のターン。……来た!」

 

 

レミリア「『戊の四騎龍レッドライダー』を召喚。召喚時効果で1枚ドロー。さらに『戊の四騎龍ブラックライダー』の【アクセル】を使用!トラッシュの系統:死竜を持つスピリットをノーコスト召喚!」

 

ヴァン「ようやく来たね!ウロヴォ「『戊の四騎龍ホワイトライダー』を再召喚!」あれ?」

 

レミリア「召喚時効果、セイリュービと終焉甲帝のコアをリザーブに!」

 

ホワイトライダーが矢を放ち、セイリュービと終焉甲帝を射抜く。射抜かれた2体は消滅した。

 

ヴァン「ぐっ……。」

 

レミリア「さらにホワイトライダーのLv2効果、『戊の四騎龍ブラックライダー』を、そちらのリザーブからコストを払って召喚する!」

 

ヴァン「ズルくないですか!?」

 

レミリア「最後に『戊の四騎龍ブルーライダー』を2体、Lv2で召喚する。四騎龍揃い踏みよ。」

 

ヴァン「おおー!すごい!」

 

レミリア「さて、勝負を決めに行きましょうか。アタックステップ。」

 

ヴァン(数が多いなぁ……でもインファナルウインドがまだ

 

レミリア「アタックせずにアタックステップを終了。」

 

ヴァン「……え?」

 

レミリア「このままエンドステップに。」

 

ヴァン「……??なら僕のター「エンドステップ。ブルーライダーの効果が発揮」!?」

 

レミリア「名前の異なる『四騎龍』が4体いる時、相手のスピリット1体のコアを全て除去することで、相手のライフを1つ破壊する。ブルーライダーのもうひとつの効果でこの時の対象にアルティメットも含める。」

 

レミリア「条件が揃っていてブルーライダーは2体。よってヴァンディールとメタリフェルのコアを全て除去し、ライフを2つ貰うわ!!」

 

メタリフェルとヴァンディールが突然現れた紫色の魔方陣に飲まれる。

2体の姿が見えなくなると、四騎龍達が一斉にヴァンに飛びかかった。

 

ヴァン「うそでしょぉぉぉぉぉ!?」

 

 

 

 

 

ヴァン:ライフ0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

ヴァン「うー……なんかいつもより悔しい負け方……。」

 

レミリア「こういう戦法もあるという事よ。覚えておきなさい。」

 

ウロヴォリアス『黒を引いたお陰で咄嗟に出来た事を戦法と言って良いものかどうか。』

 

レミリア「……。」

 

椛「残念でしたね…ヴァンさん…。」

 

文「四騎龍が決まるとは思いませんでしたねー。」

 

ヴァン「いいもん。次は勝つもん。」

 

レミリア「ふふっ、楽しみにしてるわ。」

 

互いに拳をぶつける。

どうやら互いにそれなりに満足できるバトルはできたようだ。

 

文「いやー、子供が遊んでる姿っていいですねぇ。」

 

レミリア「誰が子供よ!!」

 

ヴァン「子供じゃないもん!!」

 

文「あははー、私一足先に失礼しますねー。」

 

そう言うと文は窓を開けて飛んでいってしまった。

レミリアはそのまま席に座ったが、ヴァンは文を追いかけて飛び出した。

 

ヴァン「文さん待てーっ!子供発言撤回しろー!!」

 

椛「……2人とも行ってしまったので、私も失礼しますね。」

 

レミリア「ええ。わざわざ足を運んでくれて悪かったわね。気をつけて。ヴァンディールにはもう少し大人になりなさいと言っておくといいでしょう。」

 

椛「(どっちもどっちな気もするけどなぁ……。)言っておきます。今日はありがとうございました。」

 

そう言うと椛は部屋を去り、しっかりも玄関から出て紅魔館を去った。

 

 

 

なお、椛が2人に追いつくと、椛が来る前に文がいじり過ぎたのかヴァンが涙目になっていたのは完全な余談である。



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第18話『進む行く末』

デスピアズ「特に収穫なし……か。」

 

霊夢「上手く運ばないものねぇ…。」

 

博麗神社に戻ってきた霊夢とデスピアズ。

会話からするに結果は良くなかった模様。

 

デスピアズ「敵の居場所さえ分かればなんということもないのだがな。」

 

霊夢「それが分からないから苦労してんでしょ……ん?」

 

霊夢が空を見上げると、2つの影が降りてくる。

 

デスピアズ「何の用だ?マグナ。」

 

マグナ「お前に用があるわけではない。霊夢、エグゼシードは起きているか?」

 

霊夢「…は?」

 

妖夢「マグナさん、説明飛ばし過ぎですよ……。」

 

マグナのあまりにも唐突な切り出しに苦笑いする妖夢。

妖夢はマグナに変わって説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「なるほどねぇ…。」

 

デスピアズ「これは……我も見たことがないな。」

 

マグナ「ダメか……。」

 

写真を見る霊夢とデスピアズ、そして2人の言葉を聞いてため息をつくマグナ。

マグナはデスピアズならもしや、と考えていたらしい。

 

妖夢「となると、後はエグゼシードさんだけでしょうね…。」

 

霊夢「そうね……おーい。起きてるかー?」

 

霊夢がエグゼシードのカードを取り出し、呼びかける。

2、3度声をかけると、カードが赤く光った。

 

エグゼシード「……なんだ霊夢。人が、いや馬が寝てる時に。」

 

霊夢「異変に関することでアンタに聞きたいことがあんのよ。」

 

エグゼシード「……なんだ?」

 

声色が変わる。妖夢はそれを聞いて驚いたのか変な声をあげ、デスピアズとマグナは相変わらずだな、と笑をもらす。

 

霊夢「えっと……この写真の奴なんだけど、見たことあるかしら?」

 

霊夢に見せられた写真をまじまじと見つめること十数秒

 

 

エグゼシード「……ないな。」

 

マグナ「ダメか…「でも。」ん?」

 

エグゼシード「全くと言っていいほど見覚えがない。」

 

デスピアズ「ふざけたジョークをほざくなら叩き割るぞ?」

 

妖夢「それはあんまりでは……。」

 

エグゼシード「話を最後まで聞けよ……見覚えがないってのはな。見覚えが『無さすぎる』ってことだ。」

 

霊夢「ごめん、アンタの言ってることが全然意味わかんない。」

 

エグゼシード「まあ、だろうな……まずコイツは恐らく機獣だ。」

 

デスピアズ・マグナ「「だろうな。」」

 

妖夢「思いっきり機械ですもんね…。」

 

エグゼシード「でも、こんなタイプの奴は知らない。」

 

霊夢「タイプ?」

 

マグナ「……なるほどな。」

 

霊夢が首を傾げる一方、マグナは納得したようにつぶやく。

 

エグゼシード「機獣ってのは白の世界のスピリットだ。白の世界に居る奴らは大体が機獣や武装、機人なんだが…。」

 

マグナ「これの同型機を見たことがない。」

 

エグゼシード「そういうことだ。」

 

妖夢「……どういう事ですか?」

 

デスピアズ「命とはいえ白のスピリットは機械だ。1つの機械が生まれるためには、その前の旧型、もしくは派生型というのが無ければならん。」

 

エグゼシード「で、今まで見た奴らはもちろん、本で見た奴らのどこにも、コイツのような形状や装甲をしたスピリットを見たことがない。」

 

霊夢「……完全に新しい奴か、よっぽど昔の奴か。」

 

マグナ「だな……。」

 

エグゼシード「幻想郷のシステム上全くの新型が来る可能性は少ない。そしてお前等邪神も知らないとなると……旧時代直後のスピリットだろうな。」

 

妖夢「マグナさん達と時代の直後……ですか?」

 

エグゼシード「その辺りの時代は明確な記述も痕跡もない。何せロロ様が『作り替えてしまった』からな。」

 

1度グラン・ロロが崩壊間際にまで行った際、ロロの英断によって新しい世界に塗り替えられた。

本当に『塗り替えられて』しまったため、今その直前の事を知ることはほとんど不可能に近いのだ。

 

マグナ「だがそれが分かっても大した収穫には…「充分だ。」?」

 

デスピアズがマグナの言葉を否定した。

全員がその方向を向くと、目を閉じて何かを思案するように言葉を紡ぐ。

 

デスピアズ「最悪のケースを想定する必要が出てきた。霊夢、我は明日から少々ここを留守にする。」

 

霊夢「…いきなりね?まあいいけど…。」

 

デスピアズ「マグナ、そして妖夢よ。ご苦労だった。今日はもう帰るといいだろう。日も落ちてきたしな。」

 

そう言ってデスピアズは神社の中に入っていく。

霊夢がどうしたのかと聞けば、『寝る』とだけ言ってそのまま戻って言った。

 

エグゼシード「どうしたんだ?アイツは。」

 

マグナ「さぁな。だがあいつがあのようになった場合はやりたいようにさせておけ。下手に手を出しても邪魔になるだけだ。」

 

霊夢「へぇ…随分と信頼してるのね?」

 

霊夢がマグナに言うと、マグナはまたため息をつきながら

 

マグナ「傲慢で自尊心が高く、周りをよく振り回すような奴だが……最後まで付き合ってやれば大抵はいい結果を持ってくる。

暴君の皮を被った名君だ。」

 

エグゼシード「そのおかげでこっちは飛んだ迷惑だったがな。」

 

マグナ「ハハハハ!敵対してしまった以上は仕方あるまい。……さて、俺たちも白玉楼に戻るとするか。」

 

妖夢「そうしましょうか。では霊夢さん。何かありましたらまた。」

 

霊夢「えぇ。またね。」

 

挨拶を交わして、妖夢とマグナは神社から飛び去った。

 

霊夢「……さて。」

 

2人が見えなくなったのを確認して、霊夢も神社の中に入る。

 

霊夢(今回の件は紫に報告ね。1歩にも満たないかもしれないけど、しっかりと前身てる。解決も時間の問題……になればいいけど。)

 

明かりの消えた部屋を除くと、デスピアズが既に寝ていた。

 

霊夢「…はやいわねぇ。相変わらず。」

 

霊夢はすぐに戸を閉めて台所に向かう。

そして食事の準備を始めた。

 

霊夢「……ねぇ、エグゼシード。」

 

唐突にエグゼシードに声をかけると、返事が返ってくる。

 

エグゼシード「どうした?霊夢。」

 

霊夢「今回の件だけど……アンタにはどう見える?」

 

エグゼシード「……どう、ってのは?」

 

霊夢「直感的に何か感じるか…ってとこかしら?」

 

エグゼシード「例えが分かりにくいが……そうだな。

……面倒にはなりそうな気はするな。」

 

霊夢「面倒……ね。」

 

エグゼシード「嫌な予感という程ではないんだけどな。ただ、何かあるような気はする。」

 

霊夢「ふぅん……誰かが死ぬ、とか?」

 

エグゼシード「縁起でもないことを言うな霊夢。

第一───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

魔理沙「──っと。着いたついた。あの二人に付き合ってたら思いの外遅くなっちまったぜ。」

 

霊夢とデスピアズと分かれて家に戻ればもう夕方。

久しぶりに外に出て、さらに何時間も移動しっぱなしだったからな。流石に疲れた。

 

速攻風呂に入って今日はさっさと寝るか、なんて思いながら玄関の戸を開け、中に入る。

 

物が沢山置いてある部屋に愛用の箒を置いて、風呂を沸かしに行こうと戻る。

 

「風呂なら沸かしてあるよ。パパっと入っちまいな。」

 

魔理沙「お、助かるぜ。」

 

手間が省けた。さっきの男の言う通りパパっと入って────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「───ッ!?誰だ!?」

 

「気づくの遅くね?」

 

 

あまりにも自然すぎて気づかなかった。

いつの間にか椅子に座って紅茶を飲んでいる、銀髪に白い服を纏った男はケラケラと笑って

 

「おかえり魔理沙ちゃん。なんなら飯も作っとこうか?」

 

魔理沙「女の子の家に無断で上がるなんてデリカシーの無い奴だぜ。」

 

反射的に軽口を叩く。この時は自分の癖に少々感謝した。

男は一瞬面食らったような顔をした後、紅茶を飲み干し、椅子から立ち上がってこちらに歩いてくる。

 

またもや反射的に右足が1歩下がると──

 

「あ、地雷乙。」

 

魔理沙「は?なに言って──ッ!?」

 

足元から何かが収束するような音が聞こえ、下を向くと右足が鎖のような物に縛り付けられていた。しかも右足どころか首以外が動かない。

 

「いやー、やっぱかけた罠に人がひっかかるって楽しいね。地雷と罠っていい文明。失敗もするけど、その失敗もむしろ楽しい。」

 

魔理沙「……何モンだ?」

 

「おっと、これは失礼。美少女に名乗りもしないで近づくなんて無礼千万さね ───俺っちは『フェン』って呼ばれてる。出身はグラン・ロロで……今回の騒動の黒幕の仲間さ。」

 

フェンと名乗った男は軽薄な話し方で自己紹介を終えると、至近距離まで近づいてきた。

 

フェン「動け……ないよね。」

 

魔理沙「何しに来た……!!」

 

フェン「可愛い子がそんな顔しちゃ台無しだぜ?順を追って説明するからちょいと待ちな。」

 

フェン「んー……まずは目的からだな。簡単に言うと、俺っち等はここに神皇の奴らを殺しに来たんだ。」

 

魔理沙「エグゼシードとウロヴォリアスを…!?」

 

フェン「そ。でも2体とも幻想郷では名のある人にお世話んなってるから下手に手が出せない。周りの奴らまで敵にしちゃうし。幻想郷ごと焼くのもアリだけど、平和主義な俺っち達はそんな事したくないしね。」

 

こんな事しといて平和主義か。どの口が言うんだか。

 

フェン「で、そんな風に悩んでる時に発見したのが魔理沙ちゃん、君だ。」

 

魔理沙「……まさか…?」

 

フェン「さっすが。察しいいね───

 

 

 

 

──そう。君にエグゼシードを殺してほしいんだよ。」

 

魔理沙「……!!」

 

エグゼシードを殺す。

霊夢の相棒であるアイツを。

 

…そんなのできるわけない。

 

魔理沙「断る。出直してきな。」

 

フェン「ハハ、知ってた。──でもまあ、そうすると困るよね。お互いに。」

 

魔理沙「困る…?」

 

フェン「うん。さっきも言ったけど幻想郷には手出したくないわけ。でも幻想郷側はあの2体を売るなんてしないでしょ?」

 

その通りだ。レミリアも霊夢も、そんな薄情な奴じゃない。

 

フェン「でもそうするとうちのボスが最終手段に出ちゃうわけよ。──幻想郷ごと、って奴ね。そうすると……まあ、みーんな死ぬよね?」

 

魔理沙「……!!」

 

コイツ……!!

 

フェンはわざとらしい表情で私を見遣ると、いきなり銃を出現させ、私の額に当てがった。

 

フェン「ちなみにボスはグラン・ロロぐらいなら寝起きに半壊できる程にはヤバくてね。こないだも十二神皇達とやり合った時に圧勝しちゃったし。」

 

魔理沙「な…!?」

 

グラン・ロロの守護者たる十二神皇に圧勝。

エグゼシードから神皇の強さは聞いているので、それがどれだけヤバい事かは私にも分かった。

発言の真偽は分からないが、言い方と声色からして嘘をついてると断ずるには難しい。

 

フェン「まとめると、ここで君が動いてくれないと幻想郷壊滅しちゃうわけですよ。

そういうのも踏まえてもっかい聞くから、しっかり選んでね───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ここで意地張って皆と一緒に死ぬ?

 

 

──それともほんの一時だけ悪者になって皆を守る?

 

 

 

 

 

 

魔理沙「……………私……は………。」

 

今私はどんな顔をしてるだろうか。

怯えているだろうか。

絶望しているだろうか。

 

ふと、夕焼けの光が差し込んでくる。

それがフェンの持つ表情の無い銃に反射し、朱と白の光が目に入ってきた。

 

与えられた選択肢。そのそれぞれの未来を示すように。



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第19話『鉄は熱いうちに』

 

目が覚めて布団から身を起こす。外を見ればまだ太陽が地平線から顔を出し始めた頃だった。

 

存外早い目覚めになってしまったが、遅いよりはマシだろう。

 

デスピアズ「さて……行くか。」

 

起きて早々と準備を始める。

朝食?要らぬ。元々食事を摂取しなければ死んでしまうほど惰弱な身体でもない。

 

霊夢はまだ寝ているようだが、起こす必要も無いだろう。無理矢理起こして一撃喰らうような事があってはたまらん。

 

外に出る。半分ほど姿を見せた太陽を見遣り、少し物思いにふける。

 

太陽…か。昔その名を冠した竜が居たとか。後に射手座の神にまで昇ったと言うが、詳しくは知らない。

自分たちが封印されていた時代にあった出来事の事など把握しかねる。

 

デスピアズ「……そろそろ向かわねばな。なるべく戻りたいものだ。」

 

地を蹴り、空に出る。

さて、今日は多くの場所を回ることになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

妖夢「──バトルしましょう。」

 

マグナ「……??」

 

朝食に使った食器を洗い、簡単な部屋の掃除を終えた。

幽々子は冥界の主人としての仕事に向かったので今は留守だ。

そうすると当然やる事が無くなる訳であり、何をしようかと考えていると、妖夢から声をかけられた。

 

マグナ「……バトル、か?」

 

妖夢「はい。珍しく2人とも時間が空いていることですし、もしだったら、と思いまして。」

 

マグナ「構わないが……なぜいきなり?」

 

妖夢「……言うなれば気分転換みたいなものでしょうか。最近マグナさんは白玉楼の仕事と異変の調査でずっと働き詰めですし……。」

 

まあ、言われるとその通りなのだが。

 

妖夢「それに最近難しい顔をしてる事も多いので……。」

 

……確かに異変に関係した事で思考を巡らす事は多いが、顔に出ていたとは。

確かにそれはあまり良くないかもしれない。

 

マグナ「そうだな。たまにはいいだろう。受けて立つぞ。」

 

妖夢「ふふっ、わかりました!負けませんよ!」

 

マグナ「それは俺とて同じこと。では庭に出るとしよう。」

 

 

2人で庭に出る。デッキを構え、いつもの掛け声と共に

 

 

妖夢・マグナ「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

 

2人の周囲が塗り替えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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マグナ「先攻後攻、選んでいいぞ。」

 

妖夢「では、お言葉に甘えて。私のターン!」

 

妖夢「『小火竜ヒノコ』を召喚。召喚時効果でデッキを4枚オープン。」

 

 

ホワイトホールドラゴン

グラウンドブレイク

アルティメット・シャイニングドラゴン

アルティメットウォール

 

 

妖夢「アルティメットであるシャイニングを手札に加え、残りをデッキの下に。ターンエンドです。」

 

 

妖夢

R:0 T:3 H:5 D:34

 

ヒノコ:【1】Lv1

 

 

マグナ「では俺のターンだ。『ワンアイドデーモン』、そして『ボーン・バード』を召喚。ボーンバードの召喚時効果でデッキを3枚破棄し、その後1枚ドローする。」

 

 

獄土の大騎士オルダ・グラナトス

暗極天スピネルドラゴン

冥騎獅アロケイン

→トラッシュ

 

 

マグナ「さらに『旅団の摩天楼』を配置。配置時効果で1枚ドロー。ターンエンドだ。」

 

 

マグナ

R:0 T:3 H:4 D:30

 

ワンアイド:【1】Lv1

ボーン・バード:1 Lv1

旅団の摩天楼:0 Lv1

 

 

妖夢「やっぱり展開が早いですね…。」

 

マグナ「元々そういう戦い方が得意でな。準備するにも敵を叩くにも、早い方がいいというもの。」

 

妖夢「鉄は熱いうちに打て、という事ですね。私のターン。」

 

妖夢「『デブリ・ザード』を召喚。さらに『赤龍の剣刃探知機』をLv2で配置。ターンエンドです。」

 

 

妖夢

R:0 T:2 H:4 D:33

 

デブリ・ザード:1 Lv1

ヒノコ:【1】Lv1

赤龍の剣刃探知機:1 Lv2

 

 

マグナ「お前も随分と入念に準備をする。」

 

妖夢「攻める為の準備ですよ。赤も紫も、攻撃を得意とするのは共通ですから。」

 

マグナ「その通りだな。俺のターン。」

 

マグナ「さて、妖夢は俺のやり方を鉄は熱いうちに打て、と評したな。」

 

妖夢「……はい。」

 

マグナ「ならば早速実行に移すとしよう。

 

──我が統べるは闇の大地。戦の舞台にて、ただ敵を地獄へと還す者────『獄土の四魔卿マグナマイザー』召喚!!」

 

地面から吹き出た紫の柱を斬り、その中から現れるアルティメット。

もう言わずと知れたマグナのキーカードであり、彼自身だ。

 

 

マグナマイザー Lv3 BP14000

 

 

妖夢「は、はやっ!?」

 

マグナ「ワンアイドデーモンはコスト確保のため消滅。アタックステップ、マグナマイザーでアタック!」

 

妖夢「──来ましたね!」

 

トリプルアルティメットトリガーにより、妖夢のデッキの上3枚が宙に舞う。

 

 

ネオ・ダブルドロー 4

ガーネットドラゴン 4

星騎槍ガクルックス 4

 

 

マグナ「すべて4コスト。トリプルヒットだ!効果は分かっているな?」

 

妖夢「分かってます──でもさせません!【トリガーカウンター】!!」

 

マグナ「!……ほう。」

 

妖夢「『サンブレイカー』!デッキから2枚ドローし、ヒットしたカードに赤のカードがあればトリガーをガードします!!」

 

マグナマイザーの斬撃を太陽の壁が阻む。壁は斬撃を受け砕けるが、それと同時に斬撃の威力も殺した。

 

妖夢「アタックはライフで受けます!」

 

 

妖夢:ライフ5→4

 

 

マグナ「ボーンバード、続け!」

 

妖夢「それは…それもライフです!」

 

明らかなチャンプアタックだが、妖夢はそれをライフで受ける。何かあると踏んだか。

 

 

マグナ「ターンエンドだ。」

 

 

マグナ

R:0 T:4 H:4 D:29

 

マグナマイザー:【1】Lv3

ボーン・バード:1 Lv1

旅団の摩天楼:0

 

 

妖夢「サンブレイカーを引けていなければと思うと怖いですね………私のターン。ドローステップに赤龍の剣刃探知機の効果が発揮。ドロー枚数を+1。カードをドローした後に手札を1枚捨てます。」

 

 

熱血剣聖リューマン・バーンカラー

→トラッシュ

 

妖夢「こちらも行きます!召喚!『アルティメット・シャイニングドラゴン』!」

 

 

アルティメット・シャイニングドラゴン Lv3 BP10000

 

 

妖夢「さらに『太陽神剣ソルキャリバー』をシャイニングに直接合体して召喚!アタックステップ!」

 

妖夢「アルティメット・シャイニングドラゴン、お願いします!アルティメットトリガー、ロックオン!」

 

 

マグナ「む……!」

 

 

暗極天イブリース コスト4

 

 

妖夢「来ました!ヒットです!」

 

イブリースのカードが撃ち抜かれる。これはヒット時に当たり前のようにある事だが、普段のそれと少し様子が違った。

 

妖夢「ソルキャリバーの追加効果!ヒットしたカードがアルティメットカードなら、合体してない相手のアルティメットを破壊します!」

 

マグナ「何っ!?」

 

シャイニングがソルキャリバーを振るうと、巨大な炎の斬撃がマグナマイザーを焼いた。

 

妖夢「シャイニングドラゴンそのもののヒット効果は、使用しません!ここからメインアタックです!」

 

マグナ「ライフで受けよう!」

 

 

マグナ:ライフ5→3

 

 

妖夢「ターンエンドです!」

 

 

妖夢

R:0 T:5 H:4 D:26

 

Uシャイニング:【1】Lv3

ヒノコ:1 Lv1

赤龍の剣刃探知機:1 Lv2

 

 

マグナ「俺のターン……ふむ、ものの見事に捌かれるとはな。」

 

妖夢「これが私のアルティメットの力ですとも!」

 

妖夢は得意気な顔をする。マグナはその顔を見て何故だか自然と笑ってしまった。

そして同時にマグナは思う──この状況少し…いや結構マズい、と。

 

マグナ「(さて、どうするか……。)『旅団の摩天楼』を配置。配置時効果で1枚ドロー。さらに『暗極天スピネルドラゴン』、『暗極天イブリース』を召喚。イブリースの召喚時効果で1枚ドローする。」

 

マグナ「ターンエンドだ。」

 

 

マグナ

R:0 T:5 H:4 D:25

 

スピネルドラゴン:1 Lv3

イブリース:1 Lv3

ボーン・バード:【1】Lv1

旅団の摩天楼:0 Lv1 ×2

 

 

妖夢「私のターン。光より来たれ!黄金の剣聖よ!!

『アルティメット・アーク』召喚!!」

 

 

アルティメット・アーク Lv4 BP15000

 

 

マグナ「キーカード揃い踏み…か。」

 

妖夢「さらに『火星神剣マーズブリンガー』をアークに直接合体して召喚!コスト確保のため、ヒノコは消滅します。」

 

剣を携えた2体の赤い龍。その刃がマグナに向けられる。

 

妖夢「アタックステップ、アルティメットアークでアタック!アルティメットトリガー、ロックオン!」

 

マグナのデッキのカードが1枚宙を舞う。

 

マグナ「……『獄土の騎士レフティス』、コスト3だ。」

 

妖夢「ヒットです!ここでマーズブリンガーの効果、ヒットしたときの効果の発揮を取り止めます!」

 

マグナ「なに……?」

 

取り止めたにしてもアークはトリプルシンボル。アタックを通す選択肢はない。

 

マグナ「イブリースでブロックだ!」

 

イブリースが迎え撃つ…が、一瞬のうちに斬り伏せられ破壊される。

 

 

妖夢「続けてアルティメット・シャイニングドラゴンでアタック!アルティメットトリガー!」

 

またもやアルティメットトリガーが発揮。

コストは6、『デパーテッドソウル』

シャイニングドラゴンのコストは6のため、ガードとなる。

 

しかし、ソルキャリバーの効果でBP4000以下のスピリット、つまりボーンバードが破壊された。

 

マグナ「(……ここで受けるしかあるまい!)ライフで受ける!」

 

 

マグナ:ライフ3→1

 

 

マグナ「ッ……ライフ減少により、スピネルドラゴンの【Uハンド】でのバースト発動!『絶甲氷盾』!ライフ回復後、コストを支払うことでアタックステップを終了させる!」

 

妖夢「むむっ…。」

 

マグナ「(凌いだか…。)俺の「いいえ、マーズブリンガーの効果はまだ終わってません。」

 

 

妖夢「マーズブリンガーによって先程停止させたヒット効果、その停止したヒット効果を変換します!」

 

疲労していたアークとシャイニングドラゴンが起き上がる。

さらに、フィールド全体に火が走った。

 

妖夢「ヒット効果を発揮させないことでそのターンの終了時に1度だけ、自分のアルティメットを三体回復させ、もう一度アタックステップからやり直します!」

 

マグナ「ッ!?」

 

妖夢「アーク、お願いします!アルティメットトリガー、ロックオン!」

 

 

このバトルで何回目になるかというアルティメットトリガー。

めくれたカードのコストは1、『冥騎獅アロケイン』だ。

 

妖夢「ヒット!ヒット効果で、BP15000以下のスピネルドラゴンを破壊!!」

 

アークがスピネルドラゴンを斬り伏せ、マグナに突進する。

 

マグナ「……ライフだ。」

 

 

 

 

マグナ:ライフ0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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マグナ「これは俺の完敗だな……。」

 

妖夢「そんな事ありませんよ。運が良かっただけです。」

 

妖夢はそう言うが、マグナはそれを心の中で否定した。

あれは恐らく妖夢の完全勝利だろう。

 

妖夢「……あの、マグナさん。」

 

マグナ「む?どうした?」

 

妖夢「その……今、バトルして感じたんですけど……。」

 

マグナ「……なんだ?」

 

妖夢「あの……お気を悪くされ無いでくださいね?」

 

おどおどしながら話す妖夢。今のバトルで何かあった訳でもないだろうに、とマグナは思った。

 

マグナ「気を悪くなどしない。言ってくれて構わんぞ?」

 

妖夢「……では。

マグナさん、その────

 

 

 

───戦い方が、少し怖いな、と。」

 

………怖い?

意味がわからず聞き返す。

 

妖夢「はい……私のデッキはアークだけじゃありません。もう1人のエースとしてのシャイニングや防御を任せられるガーネットがいるから、安心して戦えます。」

 

マグナ「ふむ。」

 

妖夢「でも……マグナさんのデッキは、貴方を勝ちに繋ぐのが貴方自身だけなんじゃないかな、と……。」

 

マグナ「………。」

 

その瞬間、思考が開けた。

 

ザンド……奴は相棒としてデフェールがいた。ここでもそれは変わらないようだった。

ヴァン……アイツには終焉甲帝やアトラス達がいる。

イルにはスキッドメン達がいるし、デスピアズは現在三龍神と共に戦っている。

神皇達も、一体では厳しい時は2体で、それでダメなら3体で、というように戦ってきた。

 

 

 

───俺は、どうだろうか。

 

 

 

向こうにいた時は、ほぼ必ず1対多の状況で戦っていた。自慢でないがそれで負けたのは封印される時と死ぬ時の2回以外負けていない。

 

妖夢と会った時のバトル……あの時も自分で戦況を覆した。

ヴァルハランス……前述の2つと同様。

 

腕に覚えはある。戦況を覆す自信と、実際に成功した多くの事実がある。

 

 

 

 

 

 

 

───だがそれは、いつまで持つ?

 

 

 

 

 

 

マグナ「……フフッ。」

 

妖夢「……?」

 

マグナ「……なぜ奴等に負けたのか、気になっていた。勝るとは断ぜずとも、劣らぬ自信はあった。……だが負けた。」

 

妖夢「……。」

 

マグナ「まさかこんなところで答えを得るとはな。……仲間を信頼しなかった訳では無いが……今思えば、頼った事もほとんどなかったか。」

 

妖夢「……それは、仲間の人達からしたら、悲しい事だと思います。」

 

マグナ「……あぁ。」

 

妖夢「もっと…頼っていいんだと思います。マグナさんは強いですけど、1人では出来ないこともあります。

他の邪神の人達でも、幽々子様でも……私でも、頼って欲しいなって思います。」

 

強さ以前の問題。そう考えると不思議と腑に落ちた。

いつからだろうか──俺だけで充分だ、等と考えるようになったのは。

 

少し自嘲気味に笑った後、マグナは屋敷の中へ上がろうとする。しかし、数歩歩いたところで立ち止まる。言わなければならないことを思い出した。

それでマグナは、振り返ることなく

 

 

 

 

 

 

────礼を言う。ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋敷の中に入り、廊下を進む。すると見慣れた、しかしここには居ないはずの者の姿が。

 

デスピアズ「まさか四魔卿たる貴様があのような娘に諭されようとはな。宴の席での酒の肴が出来た。」

 

マグナ「……気づいていたのか?」

 

デスピアズ「部下の弱点にも気づけぬようなら邪神の皇など名乗らん。まあ、常日頃から顔をあわせている我が忠告しても、貴様は気づかなかっただろうが。」

 

マグナ「……否定はできんな。」

 

実際そうだっただろうと思った。

気づかせてくれた妖夢には感謝しかない。

 

デスピアズ「敵との戦になる前に気づいたのが幸いだな。やはり何事も早めに成されるに限る………それはそうと、我がここに来た理由だが。」

 

マグナは2枚のカードを受け取る。金と紫のカード。どちらもアルティメットだ。

 

デスピアズ「無縁塚に居た2体だ。今の貴様になら従うだろう。」

 

マグナ「……貰っておく。」

 

デスピアズ「ならいい。」

 

マグナ「……要件はそれだけか?」

 

デスピアズ「勿論だ。明け方頃に無縁塚に向かってスピリットやアルティメット達のカードを探した後、ザンドとイル、それにヴァンと会ってカードの一部を渡してきた。言うなれば戦力補充だな。」

 

マグナ「……珍しく積極的に動くな。何か訳があるのか?」

 

デスピアズ「……いや、何も。強いて言うなら勘という奴よ。」

 

デスピアズ「そろそろ神社に戻る。霊夢を1人にするのは現状良いとは言えんからな。」

 

マグナ「そうか…気をつけろよ。」

 

デスピアズ「無論。」

 

デスピアズはそう言うと足早にその場を去っていった。

入れ替わるように、妖夢の声が聞こえてくる。

 

どうやら昼食の準備をするようだ。いつもの倍作る等という言葉が聞こえたがそんなものは知らない。

マグナは早歩きで厨房に向かった。



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第20話『夢』

───紅い床。

 

それが自分の目線と同じ高さにあるのを見て、自分が倒れているのが分かった。

 

手の甲で口を拭えば、血がついた。体がうまく動かない。

相当痛めつけられたか、重い1発を食らったのだろう。

 

 

うまく動かない身体に鞭をうって少し先を見る。

 

1枚のカードが、色を失った状態で落ちている。

 

さらにその先には、あの子が──

 

 

 

 

 

 

 

───いや、あの子のような何かが立っていた。

 

 

 

『この子の体は少々借りていくよ。僕が単身で現界するために必要だ。何、事が終わればすぐに返すさ。』

 

あの子……いや、コイツは何を言っているのだろうか

この風景は何を意味しているのだろうか。

 

『彼の事は気にしなくていい。どの道全て忘れていつもの日々に戻るのみだ。仲間が減った事にも気付かずに平和な毎日をまた送れるだろうよ。』

 

あの子の後ろの空間に穴が開く。あの子がそこに入っていく。

 

 

どこに行くの!?

 

待ちなさい!

 

 

声を出そうとしても、喉が機能しない。

 

空間が閉じる直前に見えたあの子の顔は、目の色も、表情も、全く別の『ナニカ』に塗り替えられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「?……んぅ……。」

目が覚めると目に入ってきたのは紅い床ではなく紅い天井だった。

 

どうやら夢……いや、夢ではないか。あれは恐らく運命だろう。あそこまで鮮明に映るのはいつぶりだろうか。

 

不安になって、まずはフランの顔を見に行こうと体を起こした。

 

ザンド「やっと起きたか。にしても汗やべぇぞ?着替え持って来た方がいいか?」

 

レミリア「えっ………うわああああああああああああああ!!!???」

 

とっさに全力の腕力をもって枕をこの男の顔に叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザンド「……驚きすぎだろ。」

 

レミリア「貴方がいきなりいるからでしょう!?レディの部屋に無言で入るなこのケダモノ!!」

 

ザンド「はいはいレディレディ。」

 

こいつ……出会ったばかりの頃から感じていたが、この男には敬意の二文字が存在するのだろうか。

 

イルに聞いたところ

 

 

 

 

イル『アイツに敬意?んなもんあったら逆に怖いぞ?』

 

 

 

らしい。人を煽るような言動が所々に見られる。

クビにしてやろうか。

 

ザンド「んー……まぁ今回はオレも悪ぃな。すまん。」

 

と思っていたらいきなり謝られた。どういう風の吹き回しか。

 

ザンド「とりあえず着替えとタオル持ってくらァ。水もいるか?」

 

レミリア「………。」

 

ザンド「どうした?」

 

レミリア「いつものように煽りを入れてくるかと思っただけよ。」

 

ザンド「オレも顔色悪ぃ相手をからかうほどアホじゃねぇよ。」

 

そう言うとザンドは部屋を出ていった。

 

レミリア「……変な奴。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザンド「あ、そうそう。こないだデスピアズが来たんだよ。」

 

レミリア「邪神皇が?何故?」

 

ザンド「デカい戦いになるかも知れねぇから戦力補強しとけ、ってカードを渡された。オレとイルがな。」

 

フランの様子を見に行く途中、そんな会話をしていた。

邪神皇の奴も紅魔館に来たのなら主である私に顔を見せるくらいするのが礼儀ではないか、と思っていると。

 

ザンド「その日のその時間のお前爆睡してたからな。寝起きの機嫌が悪ぃ奴は寝かせとくのが一番だ。」

 

と言われてしまった。

そんな事はさておき、フランの部屋に入る。

すると、フランがベッドの上でゴロゴロしているのを発見した。

 

フラン「あれ?お姉様が私の部屋に来るなんて珍しいね。」

 

レミリア「え、えぇ。」

 

フラン「どしたの?」

 

……伝えづらい。今朝視たものの内容も中々形容し難いものなので、適当にお茶を濁しながら返答する。

 

レミリア「……最近、調子はどうかしら?」

 

何かよく分からないことを聞いてしまった。

隣でザンドが苦笑いしている。

 

フラン「調子って?」

 

レミリア「今は異変の調査中で色々と落ち着かないから、何か変な事が起きたりとかしてないか、と思ってね。」

 

フラン「心配性だなぁ。私はは全然元気だよ?変わった事も……あっ。」

 

ザンド「何かあったのか?」

 

フラン「昨日ワインで酔ったイルが

『研究つ~か~れ~た~~!!ワシを労って欲しいのじゃ~~!!』

って泣きついてきたんだよ!喋り方が変なになってて面白かった!」

 

ザンド「何してんだあの野郎……。」

 

レミリア「…コホン!

とにかく、大丈夫そうなら安心したわ。何かあったら私か咲夜に言いなさい。なんとかするから。」

 

大丈夫だって言ってるのに、と言われながらも、部屋を後にした。

 

レミリア「ザンド。」

 

ザンド「んァ?」

 

レミリア「今日はいつもより長く探るわよ。イルを呼んできてちょうだい。」

 

ザンド「張り切ってんねぇ……ま、お前がやる気出すならオレ達が中途半端でいる訳にもいかねぇが。」

 

さっさと終わらせるに越したことはない。私はウロヴォリアスを叩き起こしに部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ヴァン「………。」

 

椛「どうしたんですか?」

 

デスピアズから渡されたカードをゴロゴロしながら見ていると、椛さんから声をかけられた。

 

ヴァン「いや、デスピアズから渡されたカードを見てただけだよ……ってあれ?もうお昼?」

 

椛さんがおたまを手にしているので、思ったより早く時間が過ぎるな、とふと思う。

 

椛「はい、お昼ですよ。もうご飯出来てますので、一緒に食べましょう。」

 

ヴァン「うん!」

 

今日はなんだろうな、と楽しみを膨らませながら椛さんについていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァン「ご馳走様でした!」

 

椛「ふふっ、お粗末さまでした。」

 

食べる度に思うのだが美味しい。ザンドのより美味しい可能性ありだね。

 

椛「そうやって美味しそうに食べてくれると私も嬉しいです。」

 

ヴァン「ふふふー。」

 

美味しいんだから美味しそうに食べるに決まってるのだ。

 

椛「……ところで、異変の方はどうですか?」

 

ヴァン「!」

 

椛さんからその話をしてくるのは珍しい。

僕も少々真面目な面持ちで答える。

 

ヴァン「……あれから取り立てた収穫は無いかな。ココ最近はそれにおかしな生物が森とかで見かけられてる。人里に被害は出てないけど、ちょっと雲行きは怪しいかも……。」

 

椛「そう、ですか……。」

 

ヴァン「でもバッチリ解決はしてみせるよ。なんたって僕達四魔卿と邪神皇総動員だからね!」

 

冗談めかして得意気に言ってみる。

 

でも椛さんにはあまりウケなかったらしく、不安気な顔をしていた。

 

椛「……無理はしないでください。万が一怪我したり、それこそ死んじゃったりしたら……。」

 

ヴァン「……。」

 

椛「……ヴァンさん、ホントに、無理はダメですよ?」

 

ハッキリ言って驚いた。まさか心配されるとは思わなんだ。

ちょっとむず痒くて、笑みがこぼれる。

 

椛「なんで笑うんですか……本気で心配してるんですよ?」

 

ヴァン「あはは、ごめんごめん。でも大丈夫だよ。

椛さんにそうやって心配されてるうちは、絶対に無理はしないし、五体満足で帰ってくるよ。」

 

椛「……約束ですよ?」

 

ヴァン「……うん。」

 

これは責任重大だなぁ…なんて思いながら僕は、この気持ちいいむず痒さを味わうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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……あれ?ここ、どこだろう?

 

『──あぁ、お目覚めになりましたか?おっと、この状態ではいらっしゃいましたか、の方が正しいですね。』

 

……あなたは、だれ?

 

『──此度の異変の黒幕、とでも言いましょうか。』

 

ッ……!!

 

『──おっと、勘違いなさらぬように。この異変、最終的には幻想郷の利益になるものであります故。』

 

……どういうこと?

 

『──神皇がどういうものかはご存知で?』

 

ウロヴォリアスから、少しだけなら。

 

『充分でしょう。神皇はかのグラン・ロロを守護する12体の勇者……と言われています。ですが、幻想郷にとっては現在彼らは危険なのですよ。』

 

……危険?

 

『はい。彼らが幻想郷にいる事でグラン・ロロと幻想郷との繋がりが強くなります。さすれば、グラン・ロロのスピリットが流れ込んできます。

新しい土地というものを与えられた彼らは、その土地を奪い合うために周囲を顧みず戦うでしょう。』

 

……幻想郷が荒らされるってこと?

 

『頭の良い御方だ。おっしゃる通りです。その為に私は神皇を殺すためにこの地に参った次第……なのですが、それを貴方にお願いしたいのですよ。』

 

……えっ?

 

『ハッキリ言ってしまうと、ウロヴォリアスを殺して頂きたいのです。』

 

……嫌だよ!だってウロヴォリアスは……!

 

『貴方の姉の相棒。えぇ、それは承知しています。だからこそ、妹である貴方にお願いしたいのです。幻想郷とグラン・ロロの関係性が悪化しないためにも。』

 

嘘よ!それが本当だったらもうとっくに幻想郷は荒れてるはずでしょう!?

 

『……。』

 

幻想郷の為を思ってるならあちこちに変な生き物を歩かせたりしない!

それにお姉様達を襲う理由も無いわ!

 

『…チッ。』

 

…!?

 

『子供だからといって少々舐めすぎましたね。フェンに任せるべきだったか……まあいいでしょう。つまり貴方に協力の意思はないと。』

 

当たり前じゃない!

 

『承知しました。なら──

 

 

 

 

───その身体だけでもお借りしましょうか。』

 

 

……………え?

 

次の瞬間、私の体を絨毯のようなものが包んでいく。

 

 

……きゃっ!?

 

『この夢に入った時点で貴方の負けですよ。同意を得た上の方が波風も立たず、且つ確実なのですが、致し方ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───では、後は何卒よろしくお願い致します、

【▅▅▅▅▅】様。』

 

 



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第21話『不可解』

ヴァン「……。」

 

妖怪の山を飛び回るヴァン。普段は他の天狗と班を組んで行う懲戒任務だが、近頃はヴァンのみ単身で行っている。

 

理由は単純明快。無駄に火が回るのを避けるためだ。

腕にも逃げ足にも自信があるため、単身の方が何かと対処しやすい。

 

もっとも、そのような事態は未だ1度として起きていないが。

 

 

ヴァン「……。(今日も怪しい奴は居ない……にしても、今日は妙に静かだなぁ……。)」

 

1度地面に足をつき、辺りを見回す。

あまりにも静か過ぎる。

 

ヴァン(小さい妖怪1匹すら見当たらない……ん?)

 

ヴァンが少し先を見ると

 

 

ヴァン「──!?」

 

 

ヴァンはその先に向けて走り出す。

その表情は少しばかりの焦りが見えた。

 

ヴァン「大丈夫!?」

 

そこに居たのは倒れた1人の天狗。

急いで駆け寄って、意識を確認する。

 

「んァ、アンタか……ウゥ……。」

 

怪我はしていないようだが、完全に弱りきっているようだった。

 

ヴァン「どうしたの!?今から運ぶからしっかり「しん……に……しゃ……銀のか……と……」……ッ!ねぇ、ちょっと!!」

 

弱々しく呟いた後は、ヴァンの問いかけに答えることは無かった。

ヴァンが歯を軋ませていると、突如背後から気配を感じる。

 

ヴァン「ハッ!!」

 

振り向きざまに鎌を振るうと、向かってくる刀とぶつかり、金属の音が響く。

ヴァンが目に捉えたのは、緑の袴を来た男だった。

見覚えは全くないが、今のヴァンにとってはどうでもいい。

恐らく先程事切れた天狗を襲った1人であろう事は明白だ。

 

ヴァン「えいっ!!」

 

男「む!?」

 

体重を乗せて鎌を押し込むと、男は抵抗することなく跳んで後退する。

ヴァンは流れるように、そのまま鎌で後方180°を薙ぐ。

 

後ろの木々が吹き飛ぶと同時に、1つの銀色の影がヴァンの頭上を超えて男の隣に着地した。

 

銀色「おいおい!話ちげーっての!簡単に間合い離されてどうすんだよ!?」

 

男「拙者に戦闘面での期待をするのは間違いであろう。自他ともに弱いのは知れていることよ。」

 

銀髪の男と袴の男が口論を繰り広げる。

少しの間の後、両者ともにヴァンの方を向いた。

 

ヴァン「……さっきの彼を殺ったのは?」

 

銀髪「名前くらい聞いたって良くね?俺っちは『フェン』。ちなみにさっきの天狗の奴を殺ったのはコイツさ。」

 

男「名乗らねばならぬものか?……まあいい。拙者は『ゴグマザン』。特に名を上げる事も出来なかった弱小者よ。」

 

ヴァン「あっそ。僕の名前は知ってるだろ?」

 

フェン「もち。ヴァンディールの名前はグラン・ロロでも結構有名だったからな。酉と卯をいっぺんに相手取ったんだろ?大したもんだ。」

 

ゴグマ「御託はよかろう。拙者達が相見えた今起こる事はただ一つのみよ。」

 

ヴァン「だね。じゃあ死ね。」

 

ゴグマ「概ね予想通りだな……ターゲット。」

 

ヴァン「!」

 

ゴグマ「捉えればもう拒否する選択肢はなかろう?」

 

ヴァン「……いいだろう。」

 

ヴァンもデッキを構える。

両者ともに戦闘態勢だ。

 

 

ゴグマ「ゲート「上だ!避けろ!」!?」

 

フェンとゴグマザンが左右に散る。すると、2人の居た場所に光の柱が降り、その場所を焼いた。

 

フェン「……へへっ。随分とデカい魚が釣れたじゃねぇの。やっぱ仕掛けって楽しいわ。」

 

デスピアズ「……なるほどな。アレは貴様が書いたのか。」

 

現れたのはデスピアズ。突然の乱入にヴァンは驚く。

 

ヴァン「えっ!?なんで!?」

 

ヴァンの問いに答える代わりに、ひとつの便箋を投げ渡す。そこには

 

ヴァン「『明日妖怪の山でドンパチやるから来なすって。アンタの部下死ぬかもだしな。』……え、これで来たの?」

 

フェン「来ない選択肢ないっしょ。『部下の命』って言われたらねぇ?」

 

デスピアズ「何を勘違いしているのだ?

釣り針にサメがかかって逆に喰われる事態を想定していないようだな。」

 

フェン「おーおー言うねぇ。……──。」

 

デスピアズ「何?」

 

フェン「いや、なんでも。ゴグマザン、風の卿を頼むわ。俺っちは王様の接待やってるからよ。」

 

ゴグマ「荷に負けているのではないか?」

 

フェン「どうだかねぇ?」

 

デスピアズ「結局そうなるか。ターゲット。」

 

フェン「トラッパーをターゲットとは言い得て妙だな!上等!」

 

ゴグマ「……行くぞ。若き名将よ。」

 

ヴァン「……いいだろう。全力で迎え撃とう!」

 

四人「「「「 ゲートオープン!界放!! 」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

ゴグマ「望むなら先攻は差し上げるが、如何するかな?」

 

ヴァン「……なら貰おうか。僕のターン。」

 

ヴァン「『獄風の小隊アントマン』を召喚。召喚時効果で1コアブースト。ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:1 T:3 H:4 D:35

 

アントマン:【1】Lv1

 

ゴグマ「ターンを貰おう。『百刀衆 風来のベニカミ』を召喚。召喚時効果でコアブースト。ターンエンドよな。」

 

 

ゴグマザン

R:1 T:3 H:4 D:35

 

ベニカミ:【2】Lv1

 

 

ヴァン「僕のターン。『バーゴイル』を召喚し、召喚時効果でコアブースト。さらに『邪神域』をLv2で配置。ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:0 T:4 H:3 D:34

 

バーゴイル:【1】Lv3

アントマン:1 Lv1

邪神域:0 Lv1

 

 

ゴグマ「ターンを貰う。『三十三代目風魔頭首ヤタガライ』を召喚。召喚時効果で2コア貰うぞ。」

 

ゴグマ「では我が得物が1つ、お見せしよう……『風王銃ヘビーエグゾースト』を召喚。ヤタガライよ、それを持つがいい。」

 

ヤタガライがヘビーエグゾーストを担ぐ。すると次の瞬間、ヤタガライの周囲に暗雲がたちこめる。

 

ヴァン「!?」

 

ゴグマ「ここでもうひとつ効果が発動する……系統:神銃を持つブレイヴの召喚時、そのブレイヴ、及びその持ち主に煌臨する!!

 

 

────我が力は”老い”の象徴。盛者必衰の理の体現。『闇輝石六将 百刀武神ゴグマザン』、ヤタガライに煌臨せい!!」

 

 

ヤタガライが雲に隠れる。

そのしばらくあと、雲が一閃の下に切り払われ、姿を見せたのは銃と刀を構えた武士だった。

 

 

ゴグマザン Lv1 BP8000+5000→13000

 

 

ヴァン「こんな早くに……!?」

 

ゴグマ「そこまで驚くこともなかろうに。ターンエンド。」

 

 

ゴグマ

R:0 T:7 H:2 D:34

ゴグマザン:【1】Lv1

ベニカミ:1 Lv1

 

 

ヴァン「僕のターン。『獄風の探索者カゲロウ・シーカー』をLv4で召喚。召喚時効果、デッキを3枚オープン。」

 

 

絶甲氷盾

インファナルウインド

邪神域

 

 

ヴァン「チッ…手札に加える対象が居ないから全部破棄。」

 

ヴァン「続けて『ネオ・ダブルドロー』を使用。デッキから3枚ドロー。そして『命の果実群生地』を配置。支払うコストはアントマンを消滅させて確保。」

 

ゴグマ「よく動く……。」

 

ヴァン「そりゃどうも。もう一度『ネオ・ダブルドロー』を使って3枚ドロー。ターンエンド。」

 

 

ヴァン

R:0 T:【6】 H:6 D:24

 

バーゴイル:1 Lv3

カゲロウシーカー:1 Lv3

邪神域:0 Lv1

命の果実群生地:0 Lv1

 

 

ゴグマ「ターンを貰おう。『テッポウナナフシ』を召喚。召喚時効果発揮。手札を全て捨て、そちらの手札の枚数分ドローする。」

 

ヴァン「……。」

 

ゴグマ「裏目に出た……とは思っていないようだな。顔に出さぬだけ、という事もあるが。」

 

ヴァン「フン……。」

 

ゴグマ「……『蒼き蜂皇オオセイボゥ・A』を召喚。召喚時に3コアブースト。テッポウナナフシを合体し、ゴグマザンをLv2に。」

 

ヴァン(…来るか!)

 

ゴグマ「仕掛けさせてもらおうか。オオセイボゥでアタックだ!」

 

ゴグマ「アタック時効果でターンに1度回復。さぁ、どうする?」

 

ヴァン「ライフだ!」

 

オオセイボゥがテッポウナナフシを構え、ヴァン目掛けて2発撃つ。

その2発でヴァンはライフを2つ奪われる。

 

 

ヴァン:ライフ5→3

 

 

ゴグマ「では次だ!ゴグマザンでアタック!」

 

ヴァン「させるか……バーゴイルで「フラッシュタイミング!」なっ!?」

 

ゴグマ「我が肉体を喰らい、現れ出でよ!!【煌臨】、『煌陸帝フォン・ダシオン』!!」

 

ヴァン「煌臨…!!」

 

ゴグマザンの身体を光が上書きしていく。光が消えると、一体の緑龍に姿を変えていた。

 

ゴグマ「系統:誕晶神を持つゴグマザンに煌臨した時、ソウルコアの支払いを無視する。

さらにフォンダシオンの煌臨時効果!BP4000以上のそちらのアルティメットを全て疲労させるとしよう!!」

 

フォンダシオンの咆哮でシーカーとバーゴイルが吹き飛ばされる。

ヴァン「ッ……通すかッ!!フラッシュタイミング、【烈神速】召喚!!」

 

ゴグマ「ほう…!」

 

ヴァン「Lv4で来い、『アルティメット・セイリュービ』!!そして迎え撃て!!」

 

セイリュービがフォンダシオンを迎撃する。

爪と剣、銃と尾がそれぞれぶつかり合う。

 

ゴグマ「やりおるわ……だがそれでは残りの2体のアタックで終わりだ。ただの足掻きにしかならんぞ?」

 

ヴァン「足掻きかどうか見せてやるよ……アルティメットトリガー!」

 

ゴグマ「む…!?」

 

ヴァンが人差し指を向けると、ゴグマのデッキの1番上がオープンされる。

 

ゴグマ「コスト7、『百刀衆 煌刃のミヤマ』だ。」

 

ヴァン「ヒット!アルティメットトリガーのヒット効果で、オオセイボゥを疲労させる!!」

 

セイリュービが放った風に巻き込まれ、今度はオオセイボゥが吹き飛ぶ。

そんな事も気にせず、セイリュービはフォンダシオンに剣撃を放つが、フォンダシオンは銃を盾に捌いていく。

 

数合の撃ち合いの後、セイリュービが2本の剣を投げ、対するフォンダシオンは銃の引鉄を2回弾いた。

 

銃弾と剣は、1本はそれぞれ相殺し合うが、もう一本はすれ違い、両者に直撃。相打ちとなった。

 

 

ゴグマ「見事なり……ターンエンドだ。」

 

 

ゴグマ

R:0 T:5 H:4 D:27

 

ヘビーエグゾースト:3 Lv1

オオセイボゥ:3 Lv2

ベニカミ:【2】Lv1

 

 

ヴァン「僕のターン……ひとつ聞く。」

 

ゴグマ「何だ?」

 

ヴァン「さっきお前はお前自身を煌臨の土台としてフォンダシオンを煌臨させた……オオセイボゥじゃなかったのは何で?」

 

ゴグマ「……と、言うと?」

 

ヴァン「仮にも自分の身体だ。それをそう易易と他人にやるのはどうかと思ってね。」

 

ゴグマ「一理ある……が、拙者にはそれは当てはまらん。」

 

ヴァン「……?」

 

ゴグマ「結論から言うとしよう……拙者はな。弱いのだよ。」

 

ヴァン「…弱い?」

 

ゴグマ「左様。所詮戦の才に恵まれなかった身だ。であるならば、自らが戦って死ぬより、力ある者からそれを借りればいいだけの事。」

 

ヴァン「……。」

 

ゴグマ「元よりそれで失うものなどない。自らを捨てる事で頭の益になるならば、それが最上というものだ。」

 

ゴグマ「理解したか?」

 

ヴァン「……あぁ、わかったよ………お前が厄介だってことが。」

 

ゴグマ「ほう……。」

 

ヴァン「バーゴイルを召喚しコアブースト、命の果実群生地の効果でさらにコアブースト。」

 

ヴァン「邪神域をLv2に上げ、疲労させる。これで次に召喚するアルティメットの召喚条件を無視する──

 

──初陣だ、気合い入れなよ!

召喚『アルティメット・ギガ・ガルレイヴ』!!」

 

複頭の狼が吠える。ヴァンの新しいアルティメットだった。

 

ヴァン「ギガガルレイヴの召喚時効果で味方すべてに1つずつコアブースト!つまり4コアブースト!」

 

強烈な勢いでコアブーストをしていくヴァン。ゴグマもこれには舌を巻く。

 

ヴァン「真打はここからだ────我が統べるは地獄の暴風。その風は同志を鼓舞し、敵に敗北を与えん!『獄風の四魔卿ヴァンディール』Lv4で召喚!!」

 

 

ヴァンディール Lv4 BP22000

 

 

ゴグマ「来たか……!」

 

ヴァン「アタックステップ!ヴァンディールでアタック!」

 

ヴァンディールが上空に飛ぶ。そして、それと同時に空に穴が空いた。

 

 

ヴァン「我が魂よ!風の暴威となって吹き荒れよ!【ソウルドライブ】発揮!!」

 

ヴァン「ソウルドライブの効果、アルティメットが三体出るまでデッキを破棄し、その三体を召喚に必要な要素を全て無視して召喚する!!」

 

 

止まない風の森

木星神剣ジュピターセイバー

神狼テンペスター

神虎ベンガウル

邪神域

絶甲氷盾

絶甲氷盾

獄風極天クルビデンス

 

 

ヴァン「テンペスター、ベンガウル、クルビデンスをそれぞれ召喚!コアは小型のアルティメット達から確保する!」

 

空の穴から三体のアルティメットが降りてくる。

 

ゴグマ「たった一ターンでこれ程まで展開するとはな……だがまだ終わらんよ!」

 

ゴグマ「フラッシュタイミング、ヤタガライの【アクセル】を使用!そちらのテンペスター、クルビデンス、ギガガルレイヴを疲労させ、こちらのオオセイボゥとヘビーエグゾーストを回復させる!」

 

フィールド全体を包む風が巻き起こり、ヴァンのアルティメット達は押さえつけられて、ゴグマのスピリット達は逆に立ち上がる。

 

ヴァン「ならこっちだって!フラッシュタイミング、『インファナルウインド』!!

ソウルコアが除外されている状態なら、相手のスピリットを全疲労させ、こっちのアルティメット全員に3コアずつコアを追加する!!」

 

ヴァンディールが鎌を払うと、先程回復した2体も含めて全てのスピリットを吹き飛ばした。

 

ゴグマ「使い所を見誤ったか?ブロッカーが居なくともこちらのライフは削りきれまい!」

 

ヴァン「どうだかね!ここでクルビデンスのLv4効果!

系統:邪神を持つアルティメット、つまり自身とヴァンディールにシンボルを追加する!」

 

ヴァンディールが鎌でゴグマのライフを奪う。

その後すぐさま後退し、今度は鎌を投げてダメージを与える。

 

ゴグマ「なん……!?」

 

ヴァン「ヴァンディールの効果で、アタックを通したアルティメットは、追加でライフを奪える!

続け、ベンガウル!」

 

ヴァンの指示でベンガウルが吠え、ゴグマに突進する。

 

 

ゴグマ「ッ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───流石だな。」

 

 

 

 

 

 

ゴグマザン:ライフ0

 

 

 

 

 

 



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第22話『失敗』

 

フェン「邪神の王様と戦えるなんざ光栄だねぇ。」

 

デスピアズ「くだらぬ世辞を言っている暇があるのか?」

 

ヘラヘラと笑うフェンをデスピアズは睨む。

 

フェン「そんな睨みなすんなって。先攻後攻、選んでどうぞ。」

 

デスピアズ「……我のターン。『邪神域』を配置。ターンエンド。」

 

 

デスピアズ

R:0 T:【4】H:4 D:35

 

邪神域:0 Lv1

 

 

フェン「マイターン。『アバランシュ・バイソン─フォートレスモード─』を配置。ターンエンドだ。」

 

 

フェン

R:0 T:【5】H:4 D:35

 

フォートレスモード:0 Lv1

 

 

デスピアズ「我のターン。『バーゴイル』を召喚し、召喚時のコアブースト。さらに『ネオ・ダブルドロー』を使用して3枚ドロー。ターンエンド。」

 

 

デスピアズ

R:0 T:5 H:6 D:31

 

バーゴイル:【1】Lv3

邪神域:0 Lv1

 

 

フェン「マイターン。『五角形の砦』を配置。さらにコイツに来てもらおうか。出てきな!『氷の覇王 ミブロック・バラガン』!!」

 

デスピアズ「氷の覇王か……実物との対面は初めてだが。」

 

フェン「へぇ、じゃあ今のうちに目に収めときなよ。……バーストセット。ターンエンドだ。」

 

 

フェン

R:0 T:5 H:2 D:34

 

ミブロックバラガン:【1】Lv1

五角形の砦:0 Lv1

フォートレスモード:0 Lv1

 

 

デスピアズ「我のターン。……さっさと決めさせて貰おう。邪神域をLv2に。そして疲労させる。」

 

デスピアズ「来るがいい、三龍神が一柱よ。『アルティメット・サジット・アポロドラゴン』、召喚。」

 

 

アルティメット・サジット Lv3 BP12000

 

 

フェン「……早くね?」

 

デスピアズ「そのように驚いている間に圧倒されるがいい。やれ、サジット。」

 

デスピアズの指示でサジットが駆ける。デスピアズはフェンのデッキを指さした。

 

デスピアズ「ダブルアルティメットトリガー、ロックオン!!」

 

フェン「ッ!!」

 

フェンのデッキの上2枚が舞い、コストが見える。

 

 

要塞騎神オーディーン Type-X コスト6

霊銀魔神 コスト5

 

 

デスピアズ「ダブルヒットだ。消えろ、ミブロックバラガン!」

 

サジットがミブロックバラガンを撃ち抜く。そして、続いてフェンに狙いを定める──

 

 

フェン「……アンタ、今手札何枚だ?」

 

デスピアズ「今聞いて何になる?」

 

フェン「いいから答えてくれって。」

 

デスピアズ「6だが、それが「6枚か、んじゃ貰うぜ。今仕掛けたのは『失敗』だったな。」なに?」

 

 

フェン「本来タイミングは別だがな。フォートレスモードの効果で、相手のアタック後にも発動できる──バースト発動!!」

 

突然、フェンのフィールドから凝固寸前の冷水の柱が吹き出る。その中から4発のビームが放たれた。

 

フェン「相手の手札が6枚以上なら、相手のカードを4枚指定して、それ以外をデッキの下にサヨナラだ!!手札3枚と邪神域以外消えな!!」

 

ビームはサジットとデスピアズの手札に直撃し、それらをデッキの下に還す。

 

フェン「最高の快楽とは他者の失敗!!アンタを後悔と失敗で塗りつぶす!!

我が分身、『闇輝石六将 機械獣神フェンリグ』をバースト召喚だ!!」

 

水柱を吹き飛ばし、機械の獣に乗った一体のロボットが出現した。

 

 

フェンリグ Lv1 BP6000

 

 

デスピアズ「……ッ!!」

 

フェン「いいねぇその表情(カオ)!!失敗とか焦りとか!そう言うの見れるからバトルはおもしれぇ!!」

 

デスピアズ「……ターンエンド。」

 

 

デスピアズ

R:【1】T:6 H:3 D:34

 

邪神域:0 Lv1

 

 

フェン「クククッ、あーおもしれぇ……マイターン。『幻魔神』を召喚し、フェンリグに右合体。フェンリグと五角形の砦をLv2に。」

 

フェン「アタックステップ、フェンリグでアタック!!」

 

デスピアズ「来るか……!」

 

フェン「積み上げた盤面も成功も、全部崩れちまえ!!アタック時効果、【闇奥義・天獄】発揮!!」

 

フェンリグが銃を構え、邪神域に向けて撃ち出す。邪神域は凍りつき、砕けるようにフィールドから消えた。

 

フェン「フィールドと手元が白のカードのみで4枚以上なら、相手のネクサスかスピリット手札に戻して回復できる!!」

 

デスピアズ「ライフで受ける!!」

 

 

デスピアズ:ライフ5→3

 

 

フェン「もう1度アタックだ!フラッシュタイミング、『甲竜封絶波』!!フェンリグは回復する!」

 

デスピアズ「ッ……ライフだ!」

 

 

デスピアズ:ライフ3→1

 

 

フェン「ラストォ!フェンリグで3回目のアタック!」

 

フェンリグが銃からビームを撃ち出す。

 

デスピアズ「舐めるな……『リミテッドバリア』!!このターンの間コスト4以上のスピリットのアタックではライフは減らず、ソウルコアを使った時、相手のネクサスを1つ手札に戻す!」

 

デスピアズ「フォートレスモード、返すぞ!」

 

フォートレスモードが沈み、フェンの手札に返る。

ビームは展開されたバリアに防がれ、フェンはターンを終了した。

 

 

フェン

R:0 T:5 H:2 D:33

 

フェンリグ:【2】Lv2

五角形の砦:0 Lv1

 

 

フェン「惜しかったねぇ……ま、次で終わりさね。」

 

デスピアズ「……ひとつ聞く。」

 

フェン「ん?何?」

デスピアズ「貴様は先程こう言ったな。『最高の快楽とは他者の失敗』、『積み上げた盤面も成功も全部崩れてしまえ』と。」

 

フェン「……それが?」

 

フェンは顔をしかめ、デスピアズを睨む。

先程のヘラヘラした態度はどこへやら。

 

デスピアズ「一体何故そこまで他者の失敗にこだわる?」

 

フェン「……聞いてどうする?」

 

デスピアズ「言いたくなければそれでよい。我が貴様を”無意味に他者を貶める下衆”と認識するだけだ。」

 

フェン「腹立つ言い方すんねぇ…。

………能力だよ。」

 

デスピアズ「ほう?」

 

フェン「話しても今の俺っちならアンタらとの戦いには関係ねぇから話してやる。

俺っちの能力は【失敗する程度の能力】。他人が出来ることは基本俺っちには出来ねぇのさ。それで向こうじゃ無能扱いだ。」

 

デスピアズ「……。」

 

フェン「でも今は違う。ボスがくれた力のお陰で今はそれを抑え込めてる。そん時から決めたんだよ。成功ばかりを語る奴ら叩き潰す、全員に同じ”何も上手くいかない悔しさ”ってのを味あわせてやる。」

 

デスピアズ「……。」

 

フェン「もういいだろ。早く続け「ハハハハハ!!」……ア?」

 

デスピアズ「何かと思えばただの嫉妬か。くだらん。」

 

デスピアズが言葉を放ったその瞬間、フィールドの温度が下がった。

 

フェン「……んだと?」

 

デスピアズ「そのような能力を持ってしまったのは不幸と言えよう。だが、他者に同じ苦しみを与えようなど、自分勝手な子供の言い分に過ぎん。」

 

フェン「……。」

 

デスピアズ「全く、嫉妬というのはまこと見苦しいものよ───貴様が自らの能力でどれだけ苦労したかは知らんし、想像もつかん。

だがその責任の所在を他に求めるのはお門違いだ。

そしてその責任は誰にもない。貴様がそのような目にあったのは仕方の無いことだ。巡り合わせが悪かった。それだけだな。」

 

 

 

 

 

 

 

フェン「……黙って聞いてりゃ言いやがって──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ぶっ潰す!!!!」

 

デスピアズ「フン。やってみるがいい。バーストをセットしてターンエンド。」

 

 

デスピアズ

R:12 T:0 h:3 D:33

 

 

フェン「……は?」

 

デスピアズ「貴様のターンだぞ?」

 

フェン「テメェ………どこまで俺っちを馬鹿にすれば気が済む!!マイターン、フォートレスモードを再配置。さらに五角形の砦とフェンリグを最大Lvに!!」

 

フェン「フェンリグでアタックだ!」

 

フェンリグが走り出す。先程のアタックよりも一段と速度が速い。

 

デスピアズ「『相手のスピリット、アルティメットのアタック後』、バースト発動。『次代機獣ブリザ・ライガ』。相手のスピリット一体をデッキの上に戻す。」

 

氷の波がフェンリグ押し寄せる…が、幻魔神が突然フェンリグの前に移動し、波を弾いた。

 

フェン「馬鹿が!!幻魔神の力で【超装甲:白】があんだよ!!」

 

デスピアズ「ハァ……。」

 

フェン「万策尽きたらさっさと「フラッシュタイミング」なにっ!?」

 

デスピアズ「本命はこちらだ。『フォビドゥングレイヴ』!!」

 

フェン「!!」

 

デスピアズ「今召喚できずにトラッシュに行ったブリザライガをノーコストかつ召喚条件を無視して召喚する。来い、ブリザライガ!」

 

地面を割って出現する白と金の獣。ブリザライガは出てきた途端、フェンリグに向かって走る。

 

フェン「くっ……!!」

 

フェンリグは幻魔神を合わせてもBP18000、対するブリザライガは単体で25000。

どう足掻いても覆せない差がある。

せめて、届くとすれば──

 

 

フェン「──【煌臨】!!発揮!!」

 

デスピアズ「…ほう。」

 

フェン「我が神が象徴するは”衰退”!『機神獣インフィニット・ヴォルス』、煌臨!!」

 

 

インフィニット・ヴォルス Lv3 BP25000

 

 

デスピアズ「ヴォルス……やはりか。」

 

フェンリグの足元から銀色の帯が大量に出現し、フェンリグを覆う。その覆われた帯を全て破って、一体の獣が現れた。

 

ブリザライガとヴォルスがぶつかる。互いが互いの体を千切り合うまさに獣同士の戦いだった。

 

両者共に体の半分以上が破壊された状態で頭突き合い、その衝撃でどちらも崩れ落ちる。

 

フェン「ッ……ターンエンド。」

 

 

フェン

R:5 T:【3】H:2 D:32

 

幻魔神:0 Lv1

フォートレスモード:0 Lv1

五角形の砦:0 Lv1

 

 

デスピアズ「我のターン。……感謝するぞ。フェンよ。」

 

フェン「何……!?」

 

デスピアズ「……そのヴォルス、今晒していいものであったのか?」

 

フェン「え………ッッ!!!」

 

デスピアズ「その様子では隠しておくつもりだったようだな。貴様の頭の姿を見た事のある我がいるならば当然の判断だが。」

 

フェン「………!!」

 

フェンは同様したまま。動かない。

すると、フェンの頭の中に声が聞こえてくる。

 

『貴様、何をしているッ!!??』

 

フェン「あ……ゴグマ……『闇奥義はまだいい!だが虚神だけは絶対に晒すなと頭から強く言われていたであろう!!』うっ……。」

 

ゴグマザン『いいからそこから離脱しろ!撤退するぞ!!』

 

フェン「ッ……わかった。解除!」

 

フェンがそう叫ぶと、バトルフィールドが崩れ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

ヴァン「ピアズ!一体何が…!?」

 

デスピアズ「敵を見ろ。」

 

ヴァン「!…そうだ!」

 

ヴァンの様子から見るに、あちらもバトルを終えた直後のようだった。

 

デスピアズ「バトルには買ったのであろう?なぜ捕えない?」

 

ヴァン「それが……。」

 

ヴァンが前方を指さすと、そこには黒髪の少年の姿が。

 

少年「……たかだか邪神がここまでやるとは予想外だ。」

 

デスピアズ「……なるほどな。」

 

フェン「ボス……?」

 

フェンの声に答えることもなく、少年は指を鳴らす。

すると、3人の後ろに穴が空く。

 

少年「久しぶりだな邪神皇。まあ、今回は退いてやる。」

 

デスピアズ「ほう…?2対3だというのにか?」

 

少年「……理由は言わねぇよ。」

 

デスピアズ「……。」

 

ヴァン「ピアズ!今なら「やめておけ。」なんでさ!?」

 

デスピアズ「恐らく勝てん。負けもせんだろうが。」

 

少年「ま、そゆことだ。……あぁ、そうそう───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ご愁傷様、邪神皇。」

 

そう言うと、3人は穴に呑まれて姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァン「なんで追わなかったんだよ!!」

 

デスピアズ「落ち着け。」

 

ヴァン「落ち着かないよ!!3対2って言っても2人は僕らが伏せた相手なんだからいけるでしょ!!」

 

デスピアズ「あのまま追っても逃げられるだけだ。そらにあの子供は本気ならば最悪我を上回ろう。これでも追うか?」

 

ヴァン「ぐっ…………はぁ、分かったよ。」

 

デスピアズ「ならいい。我は賢者に報告をしに神社に戻るが、貴様はどうする?」

 

ヴァン「とりあえず天狗の里に戻るよ。この事報告しなきゃだし、それに……。」

 

ヴァンは屍になった天狗を見つめ、歯を食いしばる。

デスピアズはそれを見て、ため息をつく。

 

デスピアズ「貴様が気に病むことではない。目の前で殺されたわけではなかろう?」

 

ヴァン「でも……。」

 

デスピアズ「厳しい事を言うようだが、分をわきまえろ。目の届かぬ所に居る者は助けも殺せもしない。今ここで貴様が引きずり続ければ、場合によっては貴様はさらに多くの者を殺すぞ?」

 

ヴァン「………わかったよ。確かに、もっと酷いことにならないとも言えない。」

 

デスピアズ「それでこそ四魔卿というものよ。」

 

ヴァン「じゃあ、僕は戻るよ。椛さんを心配させたくないし。」

 

デスピアズ「椛?妾の名か?」

 

ヴァン「言い方考えろ!!あとただの同居人です!!」

 

ヴァンは天狗の遺体を担いで、次元の裂け目に消えていった。

 

デスピアズ「……さて、我も戻るか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛇噬「全く……敗北に飽き足らずヴォルス神の姿まで晒すとは……貴方は頭に綿でも詰まっているのですか?」

 

フェン「……なんの言い訳のしようもねぇ。」

 

蛇噬「さらには主にまで苦労をかける始末……主は今塵ほどの力も惜しいというのに!!」

 

今にも殺しに出そうな剣幕で叫ぶ蛇噬。フェンはただ俯いてそれを受けている。すると例の少年が後ろから現れた。

 

少年「あまり責めてやるな。意図的にやった事じゃないだろう。」

 

ゴグマザン「しかし頭。今回の此奴の失態は軽く済むものでもなかろう。」

 

少年「俺がいいと言っているんだ。フェンに今退場されるのは困るし……それに比べればヴォルスがバレただけなら安いモンさ。」

 

蛇噬「…承知しました。」

 

少年「フェン、お前もあまり気にするな。まだまだよろしく頼むぞ。」

 

フェン「当たり前だ、ボス。今後は今回のミスの倍以上は動いてみせる!」

 

肩の力抜けって、少年はそう言ってその場をあとにする。

 

少年(邪神皇にはバレたが……敵の内2体はもう確定で屠れる準備がある。あの二柱にやらせてるからな。後はダイノか……。)

 

少年「……もうすぐだ。ここでの仕事を終えれば───

 

 

 

 

 

 

 

 

───後はグラン・ロロ(焼き残し)を片付けるだけだ。



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第23話『ふたつ』

霊夢「ん………。」

 

陽の光が顔に当たって目が覚める。

もう朝か、などと思いながら体を起こし、布団を畳む。

 

エグゼシード「お、霊夢。今日は遅いな。」

 

霊夢「そういうアンタは珍しく早いわね。変なものでも食べた?」

 

エグゼシード「飯を食える体でもないだろう……あ、そうそう。邪神皇なら少し前に出掛けたぞ。」

 

霊夢「アイツが?なんでよ?」

 

エグゼシード「わからん。起きて神社の中をさまよっていたらちょうどアイツが外に出ていったのを見ただけだからな。」

 

エグゼシード「飛んでいった方向からして妖怪の山辺りだとは思うが。」

 

それなら別に不思議に思う必要も無い。どうせヴァンディールに用事でもあったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を食べ終わって、境内に出る。まずは境内の掃除だ。

 

エグゼシード「毎度大変だな。」

 

霊夢「それは掃除が?それとも博麗の巫女としての仕事かしら?」

 

エグゼシード「両方だろう……ん?」

 

霊夢「何よ…あら。」

 

風を切る音が上から聞こえたので、空を見上げると、白と黒の影が降りてきた。

 

霊夢「魔理沙じゃない。こんな早くからなんの用かしら?」

 

魔理沙「お、おう…霊夢。おはよう。」

 

霊夢「……?」

 

魔理沙の様子が少し変だ。いつもなら時間帯などお構い無しに『よう霊夢!遊びに来たぜ!』というのがテンプレだ。

 

しかし、今回は妙にテンションが低い……その上目を合わせようとしない。

 

霊夢「……なによ?」

 

魔理沙「いや、その……異変はどうだ?なんか進展あったか?」

 

霊夢「別に。」

 

魔理沙「そ、そうか。それは残念だなハハ……。」

 

やはりおかしい。何か隠してるのは明白だが、何だろうか。まさかうちにある食材だのお茶っ葉だのを盗んだのでは。

 

そんな風に疑っていると、魔理沙の様子がまた変わった。

 

魔理沙「………。」

 

次はエグゼシードの方を険しい目付きで見ている。一体何なのだろうか。

 

魔理沙「……霊夢、その───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全く、いつまで余を待たせる?魔法使いよ。早々と殺ってしまえばよかろうに。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然響く声。突如、魔理沙の懐から黄色のカードが飛び出してきた。

 

 

?『ここまでくればもう退路は無かろう──魔法使いよ、分かっているな?』

 

魔理沙は数瞬言葉を詰まらせた後、私達の方を睨み、頷く。

 

霊夢「……エグゼシード。やるわよ。」

 

エグゼシード「分かっている!」

 

霊夢「……ソイツ、誰かしら?まさか異変の黒幕に手貸してるんじゃないでしょうね?」

 

魔理沙「ッ………否定も肯定もしないぜ。それと1つ言っとく──これは幻想郷に被害が出ない為でもあるんだ。」

 

互いに睨み合う。魔理沙も引き下がる気は無いようだし、せっかくだ。叩きのめして洗いざらい吐いてもらうとしよう。

 

魔理沙「ターゲット。悪いが勝たせて、いや───潰させてもらうぜ。」

 

霊夢「言うじゃない。その言葉、数分後に自分に返って来るわよ?」

 

 

魔理沙「……ゲート、オープン!」

 

 

霊夢・魔理沙「「界放!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

霊夢「さて、始め………!?」

 

霊夢は周囲を見回し、目を見開いた。

 

霊夢「……なによ……ここ……?」

 

霊夢は魔理沙を睨んで問いかける。

 

霊夢「アンタ、悪魔とでも契約した?」

 

魔理沙「……んなわけないだろ。一つだけ忠告しとくと──普段のバトルと同じと思うなよ。」

 

霊夢「……ハッ。上等よ。」

 

魔理沙「先攻、譲るぜ。」

 

霊夢「いいわよ。私のターン。」

 

霊夢「『十二神皇の社』をLv2で配置。ターンエンド。」

 

 

霊夢

R:0 T:3 H:4 D:35

 

十二神皇の社:【1】Lv2

 

 

魔理沙「私のターン。『水銀海に浮かぶ工場島』を配置。ターンエンドだぜ。」

 

 

魔理沙

R:0 T:【5】H:4 D:35

 

工場島:0 Lv1

 

 

霊夢(……白紫?あの魔理沙が?)

 

魔理沙は使用するデッキを固定しない。しかし、今まで使ってきたデッキはどれも赤や緑、青などの攻撃的な色、その中でも特に攻撃特化したデッキを使ってくきていた。

 

加えて混色などまず使わない。霊夢は今までの経験と今の齟齬に内心戸惑う。

 

霊夢「……まぁ、考えても仕方ないわね。『壬獣アクセルエッジ』を召喚。召喚時効果で、相手のネクサスを1つ破壊するわ。」

 

アクセルエッジが肩の銃を発射し、工場島を焼き払う。

 

霊夢「ターンエンド。」

 

 

霊夢

R:0 T:3 H:4 D:34

 

アクセルエッジ:【1】Lv1

十二神皇の社:1 Lv1

 

 

魔理沙「私のターン。『旅団の摩天楼』、『五角形の砦』を配置。摩天楼の配置時効果で1枚ドロー。

バーストをセットして、ターンエンド。」

 

 

魔理沙

R:0 T:【6】H:4 D:33

 

旅団の摩天楼:0 Lv1

五角形の砦:0 Lv1

 

 

霊夢「……アンタ、そのデッキどうしたの?」

 

魔理沙「……何がだ?」

 

霊夢「前まではやられる前にやると言わんばかりの攻撃特化のデッキばかり使ってたじゃないの。

それをいきなりネクサスで固めるとこから入るデッキなんて。」

 

魔理沙「……そんなの、今は関係ないだろ。」

 

霊夢「それもそうね。私のターン。『エンペラードロー』、ソウルコアを使って使用するわ。デッキから2枚ドローした後、デッキをもう2枚オープン。」

 

 

午の十二神皇エグゼシード

セイントフレイム

 

 

霊夢「エグゼシードを手札に加えてセイントフレイムは破棄。さらに『彷徨う天空寺院』を配置。」

 

霊夢「アタックステップ。アクセルエッジでアタック!」

 

魔理沙「……ライフだ。」

 

 

魔理沙:ライフ5→4

 

 

魔理沙「ッ……!」

 

霊夢「?……ターンエンド。」

 

 

霊夢

R:0 T:【5】 H:6 D:28

 

アクセルエッジ:1 Lv1

十二神皇の社:0 Lv1

天空寺院:0 Lv1

 

 

霊夢(エグゼシード……今、魔理沙の奴……。)

 

エグゼシード(見てたよ。それなりのダメージを受けたように見えた。やっぱりこの空間、少し危険だな。)

 

魔理沙「……私のターン。『さまよう甲冑』を召喚。召喚時効果で1枚ドロー。さらに『鎧闘鬼ラショウ』をLv2で召喚。召喚時効果でデッキを4枚破棄し、2枚ドロー。」

 

 

戦鬼ムルシエラ

機巧武者シラヌイ

氷石柱の大地

ストロングドロー

→破棄

 

 

魔理沙「ラショウのLv2の効果。トラッシュにソウルコアがある時、相手のネクサス全てのLvコストを+2する。どっちのネクサスも消滅だぜ。」

 

十二神皇の社と天空寺院が瘴気に当てられて崩れ去る。

 

魔理沙「ターンエンドだ。そう簡単にエグゼシードは出させないぞ。」

 

霊夢「でしょうねぇ……すぐ終わるのは拍子抜けだもの。」

 

 

魔理沙

R:0 T:【3】H:6 D:24

 

ラショウ:3 Lv2

さまよう甲冑:1 Lv1

旅団の摩天楼:0 Lv1

五角形の砦:0 Lv1

 

 

霊夢「んじゃ私のターンね。召喚、『雷魔神』!

召喚時効果でラショウを破壊するわ!」

 

雷魔神が、その名の通りの雷放ち、ラショウを破壊する。

その後、アクセルエッジと雷魔神が繋がり、合体スピリットとなる。

 

霊夢「さらに『壬馬トラケナー』をLv2で召喚。アタックステップ。アクセルエッジ、行きなさい!!」

 

魔理沙「エグゼシードが手札にあるのが分かってるからな……次のターンで確殺しようってハラだろうが……いいぜ!!ライフで受ける!!」

 

雷魔神の力もあり、アクセルエッジが魔理沙のライフを2点奪う。

 

 

魔理沙:ライフ4→2

 

 

魔理沙「ぐっ……!!」

 

魔理沙はまたしてもダメージを受けたかのような素振りを見せる。

 

魔理沙「ライフ減少によりバースト発動!!『絶甲氷盾』!!ライフを回復して、フラッシュ効果でアタックステップを終了させる!」

 

霊夢「ターンエンドよ。」

 

 

霊夢

R:0 T:4 H:5 D:27

 

アクセルエッジ:【1】 Lv1

トラケナー:2 Lv2

 

 

魔理沙「私のターン。『機巧武者シラヌイ』を召喚。さらに『ストロングドロー』。デッキから3枚ドローして手札2枚を捨てる……よし。」

 

霊夢「…!」

 

 

鍵鎚のヴァルグリンド

絶甲氷盾

→破棄

 

 

魔理沙「バーストセット。ターンエンドだ。」

 

 

魔理沙

R:0 T:6 H:5 D:19

 

シラヌイ:【3】Lv2

さまよう甲冑:1 Lv1

旅団の摩天楼:0 Lv1

五角形の砦:1 Lv2

 

 

霊夢「私のターン……。(どう思う?)」

 

エグゼシード((正直少し不穏だな。ドローを繰り返すのは分かるが、白と紫が中心だってのに入ってるストロングドロー、それに白紫では核になるブレイヴも見られない。))

 

霊夢(……そもそも白紫デッキじゃない?)

 

エグゼシード(有り得る。しかもストロングドローの後、「よし」と言ったのも聞こえた。行くなら早めがベストじゃないか?)

 

霊夢「……そうね。『コレオン』を召喚。コレオンの効果で、系統:神皇を持つスピリットのコストを-1する。」

 

 

霊夢「───炎纏う神馬、その疾走は風の如く!召喚!『午の十二神皇エグゼシード』!!」

 

 

エグゼシード Lv1 BP15000

 

 

霊夢「出てきていきなりで悪いけど、維持コストはコレオンを消滅させて確保。さらに雷魔神をエグゼシードに右合体。」

 

エグゼシード『すまんな……コレオン……。』

 

霊夢「その分私達がやってやろうじゃないの。アタックステップ!エグゼシードでアタック!」

 

エグゼシードが嘶くと、ソウルコアが消え、霊夢のライフにセットされる。

 

 

霊夢「【封印】によって、エグゼシード達は【走破】を得る!さまよう甲冑に指定アタック!」

 

魔理沙「いつものか………!!」

 

霊夢「走破の効果で、バトル終了時にコイツのシンボルの数だけライフを奪う!」

 

魔理沙「させるか……フラッシュタイミング、さまよう甲冑を消滅させて『白晶防壁』を使う!!

相手のスピリットを1体手札に戻し、このターンのライフ減少を1に抑える!!」

 

氷の壁がエクゼシードに飛んで行くが、トラケナーの効果によりそれを弾き飛ばす。

 

さまよう甲冑が消滅したため一瞬立ち止まるが、すぐさま魔理沙の方に突進していき、1つではあるがライフを奪った。

 

魔理沙「いッ………クッ……!」

 

エグゼシード『決めきれないか……!』

 

霊夢「仕方ないわね…!」

 

魔理沙「ライフ減少によりもう一度バースト発動!『虚龍ホロゥドラゴン』!!」

 

魔理沙「デッキを6枚オープンして、その中の系統:虚神を持つスピリットを全て手札に加える!」

 

エグゼシード『虚神……!?』

 

 

再び空いた虚空の穴

No.25 グロウセレブレーション

水銀海に浮かぶ工場島

さまよう甲冑

氷刃の大空洞

神帝獣スフィン・クロス

 

 

魔理沙「スフィンクロスを手札に加えて残りはデッキの下に──さらにこの効果で加えた枚数だけ、相手のスピリットのコアをボイドに送る。…じゃあな、エグゼシード。」

 

ホロゥドラゴンが飛び、エグゼシードを弾き飛ばす。

さらに乗っていたコアを奪って、噛み砕いた。

 

 

霊夢「エグゼシード!?」

 

エグゼシード『すまん……霊夢……!』

 

魔理沙「……。」

 

エグゼシードが消滅する。霊夢は歯を食いしばりながらも、ターンエンドを宣言した。

 

 

霊夢【封印】

R:0 T:3 H:3 D:26

 

アクセルエッジ:1 Lv1

トラケナー:2 Lv2

 

 

魔理沙「私のターン……。」

 

霊夢「……魔理沙、アンタ。」

 

魔理沙「……なんだ?」

 

霊夢「今までのアタック3回。アンタ全部あからさまに痛がってたわよね。どういうことかしら?」

 

魔理沙「……。」

 

霊夢「なんか言いなさいよ。」

 

魔理沙「鋭いな……お前は。」

 

霊夢「……この空間、負けるのどうなるのかしら?」

 

魔理沙「……さっきの私の反応から分かるだろうが、ライフダメージは結構な量だ。でもこの空間じゃ死にはしない……らしい。」

 

霊夢「らしい?」

 

魔理沙「私の作った物じゃないからな……。」

 

霊夢「……アンタが敵側に加担する理由は?」

 

魔理沙「……言えない。」

 

霊夢「そう……なら終わった後に全部「無理だぜ。」……なんですって?」

 

魔理沙「もう私の勝ちだ……それに、恨んでくれたって構わない。どうせ忘れるんだしな。」

 

霊夢「……は?」

 

魔理沙「私のターン。………虚を祀る、闇の神官『虚神将ドグマ・グラード』Lv3で召喚。」

 

 

ドグマ・グラード Lv3 BP9000

 

 

魔理沙「………召喚時効果で2枚ドロー。そしてホロゥドラゴンをLv3にアップ。アタックステップ。」

 

霊夢(……来る!)

 

魔理沙「ッ………。」

 

アタックステップに入ったものの、全くアタックをしようとしない魔理沙。

まるで何かを躊躇しているようだった。

 

霊夢「………どうしたの?」

 

魔理沙「………。」

 

霊夢(……ったく。)

 

霊夢「……魔理沙。」

 

魔理沙「……なんだよ?」

 

霊夢「アンタの友人として言うわ。もし聞き取れなかったら2、3回くらいは言ってあげる───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───アンタ、そういうの向いてないわよ。」

 

魔理沙「……意味がわからないぜ。」

 

霊夢「『幻想郷のため』、そのアンタの言葉を疑いはしない。でもね、恨まれ役なんてやめなさい。私が、邪神の奴らが、そんなに弱く見えるかしら?」

 

魔理沙「……!!」

 

霊夢「アンタが1人でなんとかしようとする必要もなければ、私の恨みを買う必要も無い。もっと周り見なさい!!」

 

魔理沙「……ッ。」

 

霊夢「ほら、そんな変な奴どっかに追い出してさっさと戻ってきなさいよ。私達2人なら負け知らずじゃない。」

 

魔理沙「……れい、む…!」

 

魔理沙は泣きそうになりながらも、霊夢の言葉に何度も頷く。そして、自分の手札を見遣る。

 

魔理沙「……悪いな、スフィン。お前らの思い通りには動かないことにした。」

 

スフィン『……ほう?』

 

魔理沙「もうお前らと一緒に戦う理由はないぜ。このバトル、私の負けで──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──魔法使いよ。貴様、我らをなんだと思っているのだ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「……え?」

 

スフィン『まさかとは思うが、このまま終われるとでも思っているのか?』

 

魔理沙「………何が言いたい……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『───少々、余を甘く見すぎているな。』

 

突如寒気と頭痛が魔理沙を襲った。

魔理沙は頭を抑え、うなり始める。

 

霊夢「魔理沙!?」

 

『そもそもこの程度の状態で何もできなければ神など名乗るまい。煌臨の原点というのはな──煌臨する対象の生物、その体と魂を無理やり食い破る行為だ。』

 

魔理沙「な……ん……ウァッ!?」

 

頭を抑えていた魔理沙の両手が突然力無く降りる。

数秒後、霊夢の方を見据える目は──

 

 

霊夢「なっ……!?」

 

スフィン「──まあ、そういうことだ。せっかくの説得も無駄骨だったな。」

 

 

 

───一切光を反射しない虚ろな黄色。

 

その禍々しい色が、霊夢を捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「アンタ…魔理沙に何を…?」

 

スフィン「喰った。」

 

端的に返す、魔理沙の姿をしたスフィン。その言葉に霊夢は絶句した。

魔理沙を喰った。それを理解するのに数秒かかった。

 

霊夢「アン……タ……まさか…魔理沙を……!?」

 

スフィン「早合点するな。魂を喰って腹で消化した訳では無い。こやつの魂を余という名の檻で囲った状態よ。」

 

スフィン「しかし、ふむ……食い破る、というのは少し語弊があったな。身体の支配権を奪うのが面倒だから、魂の主導権を貰った、とでも言うか。」

 

霊夢「は……?」

 

スフィン「本来身体を操作するはずの魂を閉じ込め、身体の操作権を握っている。」

 

霊夢「……魂を身体の隅に追いやって、代わりに自分が中心に入った、って事かしら?」

 

スフィン「ふむ……まあそれでよかろう。何はともあれ、今はこの身体はこの余のものという事だ。」

 

霊夢「……ってことは、アンタを倒せば魔理沙が中心に戻るわけね。わかりやすいわ。」

 

スフィン「然り。では、その発言に力が伴うか、試して見るとしよう。」

 

 

スフィン「ドグマ・グラードよ、アタックせよ。」

 

スフィンが指示すると、ドグマは杖を突き立て、魔法陣を地面に形成した。

 

スフィン「アタック時効果、手札の系統:虚神をソウルコアも煌臨条件も無視して煌臨させる。」

 

霊夢「!!」

 

 

スフィン「我が象徴するは”繁栄”、無の繁栄である。『神帝獣スフィン・クロス』ドグマグラードに煌臨!」

 

 

スフィン・クロス Lv3 BP15000

 

 

霊夢「それがアンタの……!!」

 

スフィン「ホロゥドラゴンの効果を発動。貴様のライフ、1つ貰うぞ。」

 

ホロゥドラゴンが巨大な炎の玉を打ち出し、霊夢のライフを奪う。

 

 

霊夢【封印】:ライフ6→5

 

 

霊夢「ッッ……!!」

 

焼けるような痛みが全身を襲う。片膝を付きそうになるが、なんとか堪える。

 

スフィン「忠告は受けただろう?ダメージは普段とは段違いだと。」

 

スフィン「さらにスフィン・クロスの煌臨時効果、下のカードであるドグマ・グラードを再召喚。この時、余のコアを全て使い、余は消滅する。」

 

霊夢「消滅……?」

 

スフィン「理由は今に分かる。ドグマ・グラードの召喚時効果で2枚ドロー。そのままドグマ・グラードでアタック──

 

 

 

 

 

 

 

 

──こやつはトラッシュの虚神を煌臨させることも出来る。後は理解できよう?」

 

霊夢「あ……!!」

 

スフィン「貴様のライフは残り5つ。よし───

 

 

 

 

 

 

 

 

────もう5回、繰り返すとしよう。」

 

 

 

霊夢に無数の炎の玉が襲いかかる。

霊夢は何も出来ず、ただそれを受けるのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

バトルフィールドから投げ出され、デッキのカードが散らばると同時に、霊夢は地面を転がる。

 

霊夢「ぐっ……ァ………!」

 

立ち上がろうとするも、ライフダメージと今の衝撃で上手く身体が動かない。

 

エグゼシード『霊夢!』

 

エグゼシードが浮遊したまま霊夢の所に向かう──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スフィン「それは叶わぬ事よ。貴様はここで終わりだ。」

 

エグゼシード『なっ────!?』

 

エグゼシードが重なった魔法陣に捕まり、その場に固定される。

 

霊夢「エ………グゼ……!!」

 

瞬間、霊夢は嫌な寒気を感じた。

 

魔理沙──いや、スフィンが自らの手にエグゼシードを拘束したものと同じ魔法陣を作り、手にとった。

 

スフィン「クク────2度目の終わりだな。午の十二神皇よ。」

 

 

霊夢「待っ………やめ……─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────バキッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────2つの魔法陣が砕けた。



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第24話『吐け。泣け。』

 

─────ん……?

 

 

「やっと起きたか。今はあまり動かぬ方がいい。」

 

………?

 

霊夢「ピア……ズ……?」

 

意識が段々覚醒してきて、私は自分の現状を把握する。

今、私は普段から使っている布団に寝ていた。

 

霊夢「あれ……なんで……。」

 

そこまで言って、先程起こった出来事がフラッシュバックする。

そうだ……アイツが、魔理沙が───

 

 

 

布団から思いきり体を起こすと、全身を痛みが襲う。

先程よりはいくらかマシだが、また布団に倒れ込んでしまった。

 

デスピアズ「思い出したか……。」

 

霊夢「あ……ピアズ……わた、し……。」

 

デスピアズ「………。」

 

霊夢「魔理沙、が、きて、それ、で……。」

 

声が震えているのが分かる。頭では分かってしまっているのに、なのに

 

 

霊夢「あ、アイツ、が……エグゼ「言うな……口にするだけでも苦痛だろう。」

 

デスピアズは目を伏せたまま何も言わずに座っていたが、私の言葉を遮って口を開いた。

 

デスピアズ「帰ってくれば貴様が倒れていて、何事かと思ったぞ……今の言葉から察するに、魔理沙と何かあったのだな?」

 

霊夢「……あいつに、突然バトルフィールドに、連れ込まれて、それ…で……。」

 

デスピアズ「……。」

 

霊夢「あいつが、変な奴に、乗っ取られて、エグゼ、シードが……。」

 

デスピアズ「……そういう事か。」

 

デスピアズ「……霊夢。」

 

霊夢「……?」

 

デスピアズ「泣け。」

 

霊夢「……え?」

 

泣け、と。いきなり何を言い出すのかと思えば──

 

霊夢「な、泣け……って…?」

 

デスピアズ「……そのようなことがあって、辛いなどという言葉では到底済むまい。今でもそれを認めたくないだろう。」

 

デスピアズ「だが、耐えるな。今耐えて苦痛を飲み込んだとしても、自らの心身に毒を盛るだけだ。」

 

霊夢「……え」

 

デスピアズ「耐えるな。飲み込むな。辛いなら吐け。泣け。」

 

霊夢「……う…。」

 

デスピアズ「今の我に何が出来るでもないが、貴様に壊れられるのは望むところではない。

………此度は特別に、受け止める程度のことはしよう。」

 

なによそれ。そう言いたかった。でも──

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「──うっ……ひぐっ……。」

 

口が言葉を発しない。視界がぼやけて何も見えなくなる

 

その随分と上から目線な物言いはなによ。邪神の皇だかなんだか知らないけど、それが居候の態度なの?

 

霊夢「うぐっ…ううっ……あぁぁ……!」

 

慰めるにしたってもっと言い方あるじゃない。

 

ばか。ばかばかばか。

 

ピアズの、ばか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デスピアズ「……もういいのか?」

 

霊夢「……うん。」

 

デスピアズ「そうか。」

 

半刻程だろうか。それだけずっと泣き明かしてしまえば涙も枯れよう。

こいつに慰められたのは癪だけど。

 

霊夢「……どういう風の吹き回しよ。」

 

デスピアズ「む?」

 

霊夢「慰めるなんて、アンタのすることじゃないでしょ。」

 

目が真っ赤であろう事は分かるので、デスピアズのいる方と反対方向に顔を向けながら問いかけた。

 

デスピアズ「我に慰められるのは癪か?」

 

霊夢「……そうよ。」

 

全くだ。なんでこんなのに慰められなければならないのか。

 

デスピアズ「癪、と言われてもな。貴様、誰かの死を見るのは初めてだろう?」

 

霊夢「……だからなによ。」

 

またコイツは遠慮も何も知らんとばかりにストレートにものを聞いてくる。

それでもまだ落ち着いてられるのは、先ほど泣ききってしまったからだろうか。

 

デスピアズ「なら我がああ言わなければ、どうすればいいか分からなかっただろう?」

 

霊夢「……!」

 

背中を針で刺されるような感覚が襲う。

そうだ。コイツに泣けって言われなかったら───どうしてたんだろ。

 

デスピアズ「そういうことだ。何事も1度目は何をすればいいか、自分は今どうなっているかわかる試しもなし。」

 

霊夢「……ふん。」

 

デスピアズ「……まぁ、噛み砕いて言えば、我とて同居人の身は少なからず案じるという事だ。」

 

霊夢「……アンタ。」

 

デスピアズ「……さて、話を変えよう。とりあえず今後はしばらく貴様は神社を出られない。無論我もな。最低限怪我がマシになるまでは、だ。どうしても外に行かねばならん時は我に言え。ついていく。」

 

霊夢「いきなり勝手に………傲慢なんだか、お節介なんだが。」

 

デスピアズ「なんとでも言うがいい。何にせよ、我が良しと判断するまでは1人での行動は許さんぞ。」

 

霊夢「……わかったわよ。」

 

上からの物言いなのは相変わらずだが、私の事を考慮してくれてるのはわかった。

 

デスピアズ「1ついいか?」

 

霊夢「…なによ。」

 

デスピアズ「魔理沙を乗っ取ったという輩だが、名は名乗っていたか?」

 

霊夢「名前……?」

 

名前……あれ、なんだっけ……確か──

 

霊夢「──スフィン・クロス……確か、そんな名前だった気がするわ。」

 

デスピアズ「……やはりか。」

 

霊夢「やはり?」

 

デスピアズ「今朝、我が留守にしていたのは?」

 

霊夢「……知ってるわよ。にしてもなんであんな早くから?」

 

デスピアズ「脅迫状のようなものが届いてな。それで妖怪の山に向かった。そこで、敵の主犯格と見れる輩達に出くわしたのだ。」

 

霊夢「……続けて。」

 

デスピアズ「その者と交戦した時、『インフィニット・ヴォルス』という名の白のスピリットを使ってきた。」

 

霊夢「……スフィンクロスは黄色のスピリットだったわ。2体の属性は違うわよ?」

 

デスピアズ「虚神。それが奴らの共通点だ。」

 

霊夢「……虚神?」

 

デスピアズ「我ら邪神と同様古くからある神の一種。世界を崩壊させる程の力を持つ、我から見ても規格外としか言いようのない存在だ。」

 

霊夢「そんな奴が幻想郷を……!?」

 

いきなりスケールの大きい話を切り出されては戸惑ってしまう。

デスピアズは続ける。

 

デスピアズ「我らが見たクロスとヴォルスは虚神の親の分体に過ぎん。奴は各属性の分体を1つずつ体に収めている。」

 

霊夢「……。」

 

デスピアズ「今朝の件と、魔理沙の件、このふたつで確信が持てたな。」

 

霊夢「……でも、アンタからでもバケモノに見えるような奴、どうしろってのよ……?」

 

神皇12体と渡り合った邪神軍の力は想像できる。

その大将であるコイツがバケモノと評する神。

 

落ち着いた今だからこそ、そんなものが幻想郷の力でどうにか出来るのか不安になってきた。

 

デスピアズ「そうさな……手立てはないが……やれるだけのことはできよう。」

 

霊夢「?」

 

デスピアズ「霊夢。1つ頼みがある──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────八雲紫を呼んでくれ。」

 

 

 

……紫?なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「……事情はわかったわ。ごめんなさい、霊夢……私がしっかりしていれば……。」

 

霊夢「……仕方ないでしょう。」

 

紫「でも……。」

 

霊夢「……私はもう大丈夫だから。どこかの邪神様がお節介を焼いてくれ「して、八雲紫よ。霊夢に貴様を呼ばせたのは折り入って頼みがあるからだが。」」

 

露骨に遮ってきたわね……。

別にからかおうってわけじゃないってのに。

 

紫「頼み……?」

 

デスピアズ「そうだ。その出来次第では奴らに一泡吹かせる事が出来るやもしれん。」

 

紫「内容にもよるけども……その頼みっていうのは?」

 

デスピアズ「何、貴様ならそこまで骨でもなかろう───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────。それだけだ。」

 

 

紫・霊夢「「…………はぁ?」」



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第25話『価値、責任』

 

「───。」

 

魔法の森の中にある建物。言うまでもなく魔理沙の家である。

魔理沙は居間の椅子に座り、ただただ呆然としていた。

 

魔理沙(………私……が……。)

 

魔理沙(私が……アイツを……。)

 

魔理沙(いや、違う……殺したのは私じゃない……でも…。)

 

魔理沙(原因を作ったのは私……なんだ?私が悪かったのか?スフィンクロスが悪かったのか?)

 

家に戻った後スフィンから身体の支配権を戻された魔理沙は、ここ2時間ほどずっとこのように自問を繰り返している。

 

魔理沙「私は───」

 

 

 

 

 

 

『───7813秒。いつまで自問自答をしているつもりだ?いや、答えがない以上ただの自問か。』

 

 

突然自分の脳内に声が響く。先程まで自分の身体を乗っ取っていたスフィンクロスの声だ。

 

スフィン『答えの見えない問題をいくら考えたところで無駄というものよ。あるのは【余が】、【貴様を乗っ取り】、【エグゼシードを殺した】。その事実のみだ。』

 

魔理沙「………ッ。」

 

魔理沙の歯が軋む。歯にヒビが入るのではないかと思うほど、思いきり歯を食いしばっていた。

 

スフィン『なに、案ずる事は無い。事が済めば貴様もあの巫女も、幻想郷の住民全て。此度の一連の事も、神皇共の事も、グラン・ロロの事も忘れて元の日常に戻るだろうさ。』

 

魔理沙「ッッ!!」

 

魔理沙の限界が来た。突然椅子から立ち上がって叫んだ。

 

魔理沙「何が元の日常だよ!!!忘れたって何したってアイツが死んだ事は変わらないじゃないか!!」

 

スフィン『覚えていなければ元から無かったも同然であろう?』

 

魔理沙「そういう問題じゃねぇ!!お前がッ…!!お前のせいで……!!!」

 

スフィン『責任を余に求めるか。確かに貴様は余の器になっているというだけ。さらにフェンが貴様の選択肢を無理矢理1つに絞った。貴様に責任が求められる道理ではなかろう。』

 

スフィン『だが、どの道今は貴様の身体はいつでも我が乗っ取ることができる。黙って従うしか貴様には選択肢が無いのだよ。』

 

魔理沙「………ッ。」

 

魔理沙は再び椅子に崩れるように座ると、頭を抱えた。

 

魔理沙「……なんなんだよ………お前もあのフェンって奴も……。」

 

魔理沙「なんで私なんだよ……なんでエグゼシード達を狙ったんだよ……お前らも……あっちの住民だろ……なんで、なんでアイツを……。」

 

スフィン『フン────あのような世界など、ただの三文芝居よ。あそこに住む者共も、神皇などというお飾りの名を冠し、守護者を気取る奴らも、全て茶番だ。』

 

スフィン『グラン・ロロに意味など無い。幾多の危機を経ても何も学ばず、正義というエゴを互いにぶつけ合う世界よ。』

 

魔理沙「………。」

 

スフィン『無価値。それがあの世界の名だ。見える標を蹴飛ばし、必要の無い争いに明け暮れる。

あの世界に意味は無い。これは旧世界からグラン・ロロを見てきた我ら虚神の総意だ。』

 

魔理沙「……勝手が過ぎるだろ。」

 

スフィン「言いたければ言うがよい。幾星霜もの時と試行を経て導いた結論、貴様等にはどの道分かるまい。」

 

魔理沙「………そうかよ。」

 

「話してるとこ悪いねぇ。お迎えに上がりましたよ、ってね。」

 

魔理沙が玄関の方を見ると、そこには銀髪の男──フェンが居た。

 

フェン「その様子だと成功したっぽいな。俺っち的には失敗しても面白かったけど?」

 

魔理沙「……。」

 

フェン「あと、しばらく魔理沙ちゃんはしばらくスフィン様に身体渡しとくのをオススメするぜ。どうせ逆らえないんだから抵抗しても痛いし苦しいモン見るだけ………ってあれ?聞こえてる?」

 

魔理沙「……。」

 

フェンが呼ぶが、魔理沙は答えない。顔を覗き込んでみるが、意識が無いわけではなさそうだった。

 

魔理沙「……ぃだ。」

 

フェン「なに?ちょっと声ちっちゃくて聞こえn「お前のせいだッ!!!お前が!お前がァ!!」っと…。」

 

魔理沙はフェンの胸ぐらを両手で掴んで、声を上げる。

目からは涙が流れていた。

 

フェン「───。」

 

魔理沙「私が何したってんだよ!なんで……なんでこんな事私が「あー…うるさい。」何だと!?」

 

 

 

フェン「うるさいねぇ───しばらく沈んどいてくんない?」

 

 

 

魔理沙「え……?」

 

 

 

次の瞬間、魔理沙の視界が歪んだ。

 

魔理沙「ぁ……なに……を。」

 

フェン「さっさと出てきてくれよスフィン様。めんどいったらありゃしねぇ。」

 

魔理沙「な……お……ま……

 

 

魔理沙はそのまま意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェン「はぁ……自棄になった女の子は見てて心が痛むぜ。やれやれ。」

 

スフィン「心にも無いことを言いおる。他者の失敗を嗤う事でしか欲求を満たせぬ奴が。」

 

フェン「はいはいさーせんね。じゃ、ボスんとこ戻りましょうや。」

 

スフィン「ウロヴォリアスはどうするのだ?恐らくエグゼシードが死んだ報はもう出回っているぞ?」

 

フェン「蛇噬が担当してる。まず間違いなく無事に終わると思うぜ。」

 

スフィン「なら問題はないか……では行くとしよう。」

 

2人は突然出来た空間の穴に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェン「ボスー。スフィン様とエグゼシード討伐完了の報告連れて……ありゃ。寝てら。」

 

暗い森の中、フェンが黒髪の少年に声をかけようとしたが、少年はぐっすりと眠っていた。

 

スフィン「予想はしていたがな。」

 

フェン「最近は睡眠時間減ってきてはいるんだけどなぁ。ま、もうすぐ万全になると思うぜ。」

 

スフィン「グラン・ロロ側の抵抗が強かったのは予想外だったからな。お陰でこちらを先に片付ける羽目になるとは。」

 

フェン「ま、問題ないでしょ。」

 

スフィン「……それはそうと、ウロヴォリアスの方、本当に大丈夫なのだろうな?」

 

フェン「大丈夫だって。ダイノと蛇噬がフォローに回ってるしな。……しかし、蛇噬も中々面白いことするもんだ。」

 

スフィン「面白い?」

 

フェン「あぁ、なにせ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────破壊の吸血鬼に創造の虚神を乗っ取らせて、その上で抹殺の仕事をさせるんだもんなぁ。



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第26話『いつも通りの朝』

 

紅魔館の一室。

私物はほとんど無く、家具もタンスと簡素なベッド、そして鏡のみ。

そしてそのベッドには寝ている1人の男が。

 

ザンド「……ンァ?もう朝かよ……。」

 

ザンドだ。ベッドから体を起こし、二、三度首を振ったあと、タンスから雑に執事服を引っ張り出して、着替える。

 

ザンド「ん、おっけ。」

 

ふと、鏡を見る。そこには当然だが、執事服を来たザンド自身の姿が。

 

ザンド「この服にも随分と慣れたもんだなァ。……さて、今日も仕事だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザンド「適当でいいか。」

 

咲夜「ダメに決まってるでしょう。手を抜くのは許さないわよ。」

 

ザンド「へいへい。」

 

咲夜にお叱りを受けながら朝食の準備を始める。30分程で全員の分が完成した。

 

咲夜「じゃあ私はこれを運んでお嬢様を起こしてくるわ。妹様の方をお願いね。」

 

ザンド「あいよ。」

 

最低限の会話のみを交わした後、それぞれ厨房を出る。

紅魔館の日常が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜「おはようございます、お嬢様。朝ですよ。」

 

レミリア「……んぅ~。」

 

咲夜が声をかけると、レミリアが目を覚ました。

 

咲夜「既に朝食の準備が済んでいます。パチュリー様やイル、小悪魔ももうダイニングルームでお待ちしておりますので。」

 

レミリア「……分かった。先に行っていてちょうだい。」

 

咲夜「よろしいのですか?」

 

レミリア「ええ。」

 

咲夜「承知しました。では、失礼します。」

 

レミリア「ありがとう。」

 

レミリアが咲夜を先に向かわせた事に特に意味は無い。

なんとなく、そういう気分だったのだ。

 

レミリア「さて……。」

 

レミリアはタンスの中から着替えを取り出し始める。

着替えを見つける頃には、中が乱雑になってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザンド「……さて。」

 

一方ザンドは地下室に繋がる階段を降りている。

距離としてはかなり長いが、走っていくとその音でフランが起きてしまう事があるのだ。

 

ちなみにその際、フランに怒られているので、こうして歩いて向かっている。

 

階段を降りきり、廊下を進む。

 

ザンド(今いきなり元の姿に戻ったりしたらどうなるんかねぇ……まぁ、壁と天井全部ぶっ壊すだろうが。)

 

などと考えながら、廊下を歩く。

しばらく歩いていくと、扉が見えてくる。言わずとも分かる、フランの部屋である。

 

ザンド「毎回思うがもうちょっと距離考えた設計にして欲しいよなぁ……ったく。」

 

ノックも無しにドアノブに手をかけ、ドアを開ける。

 

 

ザンド「おーい、フランドール。朝飯出来たから起こしに来たぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「おはよう、皆。」

 

パチュリー「えぇ、おはよう。」

 

小悪魔「おはようございます。」

 

美鈴「おはようございます!!」

 

レミリア「朝イチから大声出さないでよ……。」

 

美鈴「あはは、すみせません……。」

 

レミリア「全く……イル、貴方どうしたの?」

 

レミリアがイルを見ると、イルはテーブルの上に突っ伏してダウンしていた。

 

レミリア「……また徹夜したのかしら?」

 

美鈴「睡眠時間の削りすぎは体に毒ですよ。」

 

小悪魔「普段から寝ている人が言うと説得力ありますね。」

 

レミリア「へぇ?」

 

美鈴「ちょ!?小悪魔さん!?あぁ、ええとですねお嬢様、これは「面白いことを聞いたわね。」咲夜さああああああん!?」

 

イル「おぬしらうるさいのぅ……朝ぐらいもう少し静かにせぃ……。」

 

レミリア「……で、何があったの?」

 

パチュリー「寝すぎよ。昨日は普段の倍くらい寝たせいで、逆に体が動かなくなってるのよ。」

 

イル「そゆことじゃぁ……。」

 

レミリア「はぁ……情けない。」

 

イル「うるへぇ……。」

 

小悪魔「そういえば妹様とザンドさんは?」

 

レミリア「……そういえば来てないな。何故だ?」

 

パチュリー「朝から2人で遊んでるのかしら?」

 

美鈴「いやー、流石のお2人でもそれは……。」

 

咲夜「……仕方ないわね。お嬢様、私が様子を見てき──

 

咲夜がそう言おうとした瞬間──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───爆発音が響いた。

 

 

 

レミリア「ッ!?」

 

パチュリー「……敵襲かしら。こんな朝早くから。」

 

イル「……地下室に行く階段のとこじゃな。お前さんら!行くぞい!」

 

イルの言葉に全員が頷き、部屋を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイニングに居た面々が地下室への階段にたどり着くと、扉が壊れており、そこは煙が舞っていた。

 

 

レミリア「……?」

 

が収まり始めると、煙の中にはザンドが立っていた。

ただし、両手に剣を持ち、階段の方をじっと見たままだが。

 

レミリアがザンドは駆け寄って

 

レミリア「ザンド!何してるの!?それにフランは──」

 

 

 

 

 

 

ザンド「───見てみろ。」

 

 

レミリア「え?」

 

レミリアは階段の方を見遣る。すると、暗闇の中からフランが歩いて出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───炎剣では無く、ガラスのようなもので出来た剣を携え、普段とは一転した青い双眼を光らせながら。

 

レミリア「………え?」

 

フラン?「あぁ、人が集まってきてしまったか。ブラムザンドを早めに殺しておいて、スムーズに事を済ませたかったのだけれどね。」

 

フランの声ではない声が聞こえる。

ザンドとイル以外は、その状況に戸惑い、硬直してしまっていた。

 

咲夜「妹様…?」

 

フラン?「この子の事だね。しばらく体を借りているよ。何、事が終われば五体満足で返すさ。」

 

イル「……何モンじゃ?お前さん。」

 

ザンド「スピリットなのは見てわかるが……感じるモンが他の奴らと全然違ぇな。神か何かか?」

 

フラン?「ご明察。僕は『フェニックス・ゴレム』という者だ。虚神、と言えば大方のことは分かるかな?」

 

パチュリー「虚神……?確か、グラン・ロロに昔からいる神、だったかしら。」

 

美鈴「知ってるんですか?」

 

パチュリー「グラン・ロロの伝承が書いてある本に乗っていただけよ……曰く、『万物を滅ぼす六柱』と。」

 

フェニックス「そこまで知られているのか。僕達も無駄に有名になってしまったね。さて、僕が彼女の体を借りている理由だが。」

 

フェニックス「……ターゲット。」

 

フェニックスゴレムがレミリアを指差す。

すると、レミリアのポケットが光を放った。

 

フェニックス「辰の十二神皇……その首、貰うとしよう。」

 

ザンド「てめぇ……最初にオレに喧嘩ふっかけてきてターゲットはレミリアだァ?」

 

フェニックス「君に気づかれるのは予想外だったのでね。荒い気性から鈍いのかと予測していたよ。」

 

ザンド「……へぇ。言うねぇ。今すぐここでぶっ殺「ザンド、待て!」

 

イル「そいつが使ってるのはフランの体じゃぞ!そいつを剥がせない今手は出せん!!」

 

ザンド「ッ……ちっ!」

 

フェニックス「そういうことだ。ちなみに、バトルフィールドなら、僕を剥せるよ?」

 

レミリア「………いいでしょう。受けて立つわ。起きなさい、ウロヴォリアス。」

 

ウロヴォリアス「……今回は珍しく深刻なようだな。いいだろう。」

 

フェニックス「では始めようか。」

 

レミリア「……先程の言葉、嘘はないな?」

 

フェニックス「あぁ、勿論だ。先程の言葉も……辰の十二神皇の首を貰うという言葉もね。」

 

レミリア「それは有り得ないな。お前はここで捕まえる!!」

 

 

 

2人「「ゲートオープン!!界放!!」」

 

 

2人の間の空間が光、2人を呑んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザンド「レミリアの奴、大丈夫だろうな……?」

 

咲夜「……信じるしかないわ。今出来ることはそれしか……。」

 

ザンド「……チッ。」

 

 

 

 

────紅魔館の異変が始まる。



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第27話『破壊の創造』

フェニックス「では始めようか。先攻、どうぞ。」

 

レミリア「……私のターン。」

 

レミリア「『No.16 リッチマウンテン』をLv2で配置。ターンエンド。」

 

 

レミリア

R:0 T:3 H:4 D:35

 

リッチマウンテン:【1】Lv2

 

 

フェニックス「僕のターンだ。『海帝国の秘宝』を配置。さらに『巨人王子ラクシュマナ』のアクセルを使用し2ドロー。」

 

フェニックスはカードを2枚引き、それを見た後、そのまま捨てた。

 

フェニックス「その後2枚手札を破棄。」

 

 

最後の優勝旗

阿弥陀如来像

→トラッシュ

 

 

レミリア「優勝旗に阿弥陀如来像……そのままフランのデッキね。」

 

フェニックス「そういう事さ。ターンエンド。」

 

レミリア「……気に食わないわね。」

 

 

フェニックス

R:0 T:【5】H:3(1) D:33

 

海帝国の秘宝:0 Lv1

 

 

レミリア「私のターン。『戊の四騎龍レッドライダー』を召喚。召喚時効果で1枚ドロー。」

 

レミリア「さらに『紫水晶の古宮殿』を配置。配置時効果、デッキを5枚オープンし、系統:死竜を持つスピリットか異魔神ブレイヴを手札に。」

 

 

辰の十二神皇ウロヴォリアス

双光気弾

戊の四騎龍ブラックライダー

ウロドラ

ダークネスワイバーン

 

 

レミリア「ウロヴォリアスを手札に加え、他はデッキの下に。ターンエンドだ。」

 

 

レミリア

R:0 T:4 H:5 D:32

 

レッドライダー:【1】Lv1

リッチマウンテン:0 Lv1

紫水晶の古宮殿:0 Lv1

 

 

フェニックス「もう来たのか。早いものだ。『龍皇海賊団船長ホワイトジャック』を召喚。」

 

レミリア「!?」

 

フェニックス「ホワイトジャックの召喚時効果、先程捨てたネクサス2枚をトラッシュからノーコストで配置する。さらにこの効果で配置したネクサスの数、つまり2枚ドローする。」

 

フェニックス「ついでだ。優勝旗と如来像のそれぞれの効果で2コア貰うよ。」

 

レミリア「…なんだ、そいつは?」

 

フェニックス「おや、ホワイトジャックを見るのは初めてかな?」

 

レミリア「そういうことではない!!フランのデッキにはそんなカードは入ってなかった!!」

 

フェニックス「今この身体を使っているのは僕だ。なら、デッキの内容が変わっていてもおかしくはないだろう?」

 

レミリア「……続けなさい。」

 

フェニックス「気に食わない、と言った顔だね。ターンエンド。」

 

 

フェニックス

R:0 T:3 H:5(1) D:30

 

ホワイトジャック:【4】Lv3

海帝国の秘宝:1 Lv2

最後の優勝旗:0 Lv1

阿弥陀如来像:0 Lv1

 

 

レミリア「……早々と片付けてやろう。『クリスタニードル』を召喚。これで軽減は揃った。」

 

レミリア「深淵より出でる龍王よ。今こそその呪われた力を解放せよ!『辰の十二神皇ウロヴォリアス』、召喚!!」

 

 

ウロヴォリアス Lv1 BP11000

 

 

レミリア「今回は思い切りやってもらうぞ。」

 

ウロヴォリアス『当然だ。』

 

フェニックス「随分と早いことだ。人は急がば回れ、というのだろう?」

 

レミリア「黙れ。アタックステップ、ウロヴォリアスでアタック!」

 

レミリアの指示でウロヴォリアスが飛ぶ。一直線にフェニックスの下に突っ込んでいく。

 

 

フェニックス「ライフだ。あげるとしよう。」

 

 

フェニックス:ライフ5→4

 

 

フェニックス「ッ……フフッ、吸血鬼というのは丈夫だな。」

 

レミリア「何?」

 

フェニックス「言っておくが、このフィールドはライフダメージの軽減がない。もっとも、この身体が問題ない以上、そちらにも些細な問題だろうがね。」

 

レミリア「ッ……。」

 

つまりそれはフランの身体にダメージが入ってしまうということ。

レミリアが歯を軋ませると、ウロヴォリアスから声がかかった。

 

ウロヴォリアス『気にする必要はなかろう。』

 

レミリア「……だが……。」

 

ウロヴォリアス『恐れては救えるものも救えない。我等のする事は変わらん。いつも通り、勝てばいい。』

 

レミリア「!……そうね。失念していたわ。ターンエンド。」

 

 

レミリア【封印】

 

R:0 T:4 H:4 D:31

 

ウロヴォリアス:1 Lv1

レッドライダー:1 Lv1

リッチマウンテン:0 Lv1

紫水晶の古宮殿:0 Lv1

 

 

フェニックス「やれやれ、私のターンだが……。」

 

レミリア「分かっているようだな!ウロヴォリアスの【呪縛】、それをスタートからメインにかけて合計5回発揮する!対象は全てホワイトジャックだ!」

 

ウロヴォリアスが吼えると、無数の少龍がホワイトジャックに巻き付き、締め上げる。

コアが消え、ホワイトジャックは消滅した。

 

 

フェニックス「まあ、大した意味もない駒だ。アドバンテージを取っただけ上々さ。メインステップ。」

 

フェニックス「『侵されざる聖域を配置。』さらに『ストロングドロー』を使用。3枚ドローし、その後手札2枚を破棄。この2枚を破棄しよう。」

 

 

力奪う凱旋門

海帝国の秘宝

→トラッシュ

 

 

フェニックス「もう一度。『ストロングドロー』。3枚ドローし、2枚を破棄。次はこれらだ。」

 

 

海魔巣食う海域

阿弥陀如来像

→トラッシュ

 

 

フェニックス「さらにラクシュマナのアクセル。2枚ドローし、2枚破棄。……よし、これにしよう。」

 

 

最後の優勝旗

青碧のミツマタオロチ

→トラッシュ

 

 

フェニックス「『スワロウテイル』。2枚ドローし、1枚破棄。」

 

 

リミテッドバリア

→トラッシュ

 

 

フェニックス「侵されざる聖域をLv2に。バーストセットののち、ターンエンドだ。」

 

 

フェニックス

R:0 T:7 H:3(2) D:19

 

侵されざる聖域:【2】Lv2

海帝国の秘宝:1 Lv2

最後の優勝旗:0 Lv1

阿弥陀如来像:0 Lv1

 

 

レミリア「……私のターン。」

 

ウロヴォリアス『……レミリア。』

 

レミリア「……分かっているわ。」

 

先のターンのフェニックスの過剰なまでのドローカードの使用。そして捨てたカードの大半がネクサスである事。

元はフランのデッキであるため、次の手は読めていた。

 

 

レミリア(………ヤマタノヒドラ。)

 

 

ヤマタノヒドラ。最大9回に渡る連続アタックにマジック封じが特徴のフランのキーカードでたる。

 

レミリア(マジックも打てずにモロに9回攻撃を喰らえばどう考えても負け……なら。)

 

レミリア「『乙の整備士インフィニスネーク』と『ウロドラ』を召喚。」

 

つまりは手札保護の用意である。

マジックさえ打てればどうということは無いということだ。

 

レミリア「ウロヴォリアスをLv2にしてアタックステップ!レッドライダーでアタック!!」

 

フェニックス「そう来ると思ったよ。ライフだ。」

 

 

フェニックス:ライフ4→3

 

 

レミリア(でも……。)

 

フェニックス「ライフ減少後、バースト発動。『No.26

キャピタルキャピタル』を配置。」

 

レミリア「……えぇ、分かってたわよ。ターンエンド。」

 

 

レミリア【封印】

R:0 T:1 H:3 D:30

 

ウロヴォリアス:2 Lv2

レッドライダー:1 Lv1

インフィニスネーク:1 Lv1

ウロドラ:1 Lv1

リッチマウンテン:0 Lv1

紫水晶の古宮殿:0 Lv1

 

 

フェニックス「僕のターン。では、動き出すとしよう。君の妹のカード、ありがたく使わせて頂くよ。」

 

フェニックス「『霊峰魔龍ヤマタノヒドラ』、召喚だ。」

 

 

 

ヤマタノヒドラ Lv1 BP8000

 

 

レミリア「……。」

 

レミリアはフェニックスを睨みつける。

嫌悪や怒り、敵意。その全てが込められているのが感じて取れた。

 

 

フェニックス「さて、これがあるという事は、当然これもあるという事だ。『深淵の巨剣アビス・アポカリプス』をヤマタノヒドラに合体して召喚だ。」

 

 

ヤマタノヒドラの八つ首の1つがアポカリプスを咥える。

 

フェニックス「アポカリプスの召喚時効果でヤマタノヒドラはLv3に。聖域に余分に1コアを置いてアタックステップに入ろう。」

 

フェニックス「行け。」

 

八つの咆哮が響く。グラン・ロロでかつて『島砕き』と称された怪物が歩を進める。

 

フェニックス「【強襲】発揮。海帝国の秘宝を疲労させ、回復。」

 

フェニックス「さぁ、どうする?」

 

レミリア「……フン、舐めるな。フラッシュ、『ポイズンブレス』!このターンの間、コア1つの相手のアタックではライフは減らない!つまり、今のヤマタノヒドラでは私のライフは削れない!」

 

フェニックス「ほう……。」

 

レミリア「アタックはライフで受ける。もっとも、減らないがな。」

 

ヤマタノヒドラの攻撃は紫の霧の障壁に阻まれ、レミリアに届かない。

 

フェニックス「……バトル終了時、トラッシュの『海帝国の秘宝』をノーコストで配置する。」

 

レミリア「その程度でフランのデッキを使うなど、呆れたものだ。次のターンでお前は死ぬ。」

 

フェニックス「………手札とトラッシュが2枚、フィールドにはネクサス2枚とスピリット4体、か。」

 

レミリア「?」

 

フェニックス「見えているカードは10枚、つまり残りデッキは30か。なるほど───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ヤマタノヒドラで再アタックだ。」

 

レミリア「……はぁ?」

 

フェニックス「2度目の【強襲】、最後の優勝旗を疲労させ回復。」

 

レミリア「何がしたい……ライフで「フラッシュタイミング。」

 

フェニックス「【煌臨】発揮!」

 

レミリア「!」

 

フェニックス「条件はコスト6以上でLv3であること!どちらもヤマタノヒドラは満たしている!」

 

 

 

フェニックス「我が象徴するは"創造"、虚ろなる現実を創るもの!『神凰兵フェニックス・ゴレム』!最高レベルで煌臨!!」

 

 

レミリア「なにっ!?」

 

フェニックス「驚いている時間はないさ。アタックは継続中だ。」

 

レミリア「どの道ライフは削れない!そのまま来い!」

 

 

またもや障壁に阻まれて攻撃が届かない。

しかしフェニックスは

 

 

 

フェニックス「フェニックスゴレムでアタック。」

 

レミリア「まだやるか!往生際の悪い!」

 

フェニックス「そうでもないよ。アタック時効果、海帝国の秘宝を破壊する。」

 

レミリア「!?」

 

フェニックスゴレムが鳴く。すると、海帝国の秘宝が1つ崩れ去った。

 

 

レミリア「今度は破壊した……?」

 

フェニックス「そうすることで回復し、相手のデッキを5枚破棄!!」

 

レミリア「!!」

 

レミリアのデッキが5枚破棄される。残り25枚。

 

フェニックス「もう一度だ。フェニックスゴレムでアタックし、2枚目の海帝国の秘宝を破壊!!」

 

 

またもや5枚。残り20。

 

 

レミリア「──。」

 

フェニックス「再アタック、阿弥陀如来像を破壊。」

 

 

残り15──

 

 

フェニックス「もう一度。最後の優勝旗。」

 

 

残り10──

 

 

フェニックス「もう一度。キャピタルキャピタル。」

 

残り5──

 

 

フェニックス「最後だ……侵されざる聖域を破壊。」

 

 

 

 

 

 

─────0。

 

 

 

 

レミリア「あ……こ、こんな……!?」

 

フェニックス「やれやれ、大して面白くもない。疲れただけだったね。」

 

 

フェニックス「さて、約束だ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────さらばだ。辰の十二神皇。」

 

 

 

フェニックスゴレムが嘴にエネルギーを溜め、2秒も経たずに大型のビームを放った。

 

 

射線の先にはウロヴォリアス──

 

 

 

 

 

 

───そしてその真後ろにレミリアがいた。

 

 

レミリア「ウロヴォリアス、避け───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリアの言葉もかき消して───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──両者共に、ビームに呑まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

 

レミリアはフィールドから弾き飛ばされ、部屋の壁に叩きつけられた。

 

 

ザンド「ッ!?レミリアッ!!」

 

ザンドが咄嗟に駆け寄るが、散らばったカードを見て気づく。

 

 

ザンド「………オイオイ、まさか……!?」

 

フェニックス「そのまさかさ。」

 

フェニックスが遅れてバトルフィールドから戻ってくる。

 

痛みと怪我で動けないレミリアを背に、ザンドがフェニックスと対峙する。

 

フェニックス「任務完了だ。じゃあね。」

 

ザンド「──アァ?」

 

次の瞬間、周囲が炎の壁に囲まれた。

 

フェニックス「!」

 

イル「ザンド!おい!!」

 

外側からイルの声が聞こえるが、ザンドは耳に入っていないかのように無視する。

 

 

ザンド「じゃあな、だと?冗談言うな───

 

 

 

 

 

 

 

 

───ここで死ね。」

 

ザンドが剣を構え、飛びかかろうとしたその時──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────炎が消えた。

 

 

ザンド「!?」

 

フェニックス「……彼か。」

 

いや、正確には『死んだ』と言うべきか。先程まで燃え盛っていた炎は急激に勢いを弱め、姿を消した。

 

 

「──念の為、と思い来ましたが。」

 

 

「ダイセイカイダナ。」

 

1人は紫の髪と目、そして左手に籠手をした男。

 

そしてもう1人は赤色の長髪に赤の中華服のようなものを着た男。

 

蛇噬「………お久しぶりです。ザンド殿にイル殿。」

 

ザンド「蛇噬、だったか。」

 

蛇噬「えぇ。こちらはダイノブライザー、ヴァン殿と一戦交えた赤い竜、と言えばお分かりになられるか。」

 

イル「……そいつの回収に来た、というわけかの?」

 

蛇噬「察しがよろしいですね。」

 

イル「……させるとでも?」

 

イルがそう言うと、今度は結界が周りを囲む。

 

イル「転移も弾く結界じゃ。逃げれると思うなよ。」

 

蛇噬「転移など使いませんよ……もっと便利なものがありますので。」

 

すると、蛇噬の後ろの空間が裂ける。

 

蛇噬「ダイノ。フェニックス様をお願いします。」

 

ダイノ「リョーカイ。」

 

フェニックス「では行くとしようか。」

 

ザンド・イル「「させるか!!」」

 

ザンドが飛びかかり、イルは魔弾を撃つ。

 

蛇噬「──残念。」

 

しかし、ザンドの攻撃は蛇噬に受け止められ、イルの魔弾は蛇噬が出した蛇のようなものに弾かれる。

その間に、2人は裂けた空間の中に入った。

2人が入ると、空間が閉じていく。

 

ザンド「ッ……フラン!!」

 

ザンドの叫びも虚しく、空間があったところには、もう何もなくなっていた。

 

 

ザンド「チィッ…!!」

 

蛇噬「残念でしたね。あともう少し。」

 

ザンド「テメェ……!!」

 

蛇噬「では、私も私で用事がありますので───ターゲット。」

 

蛇噬がザンドを指さす。

言うまでもなくバトルの合図である。

 

ザンド「……いいだろう。上等だ。」

 

蛇噬「敵を減らすなら今ですからねぇ……。」

 

ザンド「咲夜。」

 

咲夜「!!」

 

ザンドに突然呼ばれたため、咲夜は一瞬反応できずに言葉が詰まる。

しかし、ザンドは無視して続ける。

 

ザンド「レミリアを頼む。」

 

咲夜「!……分かったわ!」

 

ザンド「……イル。」

 

続けてザンドはイルの方を見る。

 

イル「!」

 

イルはその目を見て自分の目を見開いた。

 

イル「お前さん……!」

 

ザンド「……よろしく頼むぜ。さて、蛇噬。待たせたな。」

 

蛇噬「お気になさらず。では、始めましょうか。」

 

ザンド「あぁ……この前と違って捕まえはしねぇ。殺す。」

 

蛇噬「気が合いますね。では──殺し合いといきましょうか。」

 

 

ザンド・蛇噬「「ゲートオープン!!界放!!」」



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第28話『蛇を騙る死』

ザンド「先攻後攻、選べ。」

 

 

 

蛇噬「ではお言葉に甘えて、先攻をとらせて頂きます。私のターン。」

 

 

 

蛇噬「では……おや、これはこれは。『クリスタニードル』を召喚します。」

 

 

 

蛇噬「その後、『旅団の摩天楼』を配置。配置時効果でドロー。さらにもう1枚摩天楼を配置。配置時効果で同じくドロー。」

 

 

 

蛇噬「最後にクリスタニードルを消滅させて『No.32 アイランドルート』を配置。配置時効果で1枚ドロー。」

 

 

 

蛇噬「ターンエンド。」

 

 

 

 

 

蛇噬

 

R:0 T:【4】H:4 D:32

 

 

 

旅団の摩天楼:0 Lv1 ×2

 

アイランドルート:0 Lv1

 

 

 

 

 

ザンド「……1ターン目から随分と動きやがって。

 

オレのターンだ。まずは『邪神域』を配置。」

 

 

 

ザンド「さらに『リューマン・スカイソード』を召喚。召喚時効果でデッキを3枚オープン。」

 

 

 

 

 

アルティメット・サジット・アポロドラゴン

 

聖龍皇アルティメット・セイバー

 

獄炎伯デフェール

 

 

 

 

 

ザンド「この中から系統:三龍神を持つサジットとセイバーを手札に。デフェールはデッキの下だ。」

 

 

 

蛇噬「三龍神……邪神皇が使っていたはずでは?」

 

 

 

ザンド「その邪神皇からこないだ渡されたんだよ。ターンエンド。」

 

 

 

 

 

ザンド

 

R:0 T:4 D:33

 

 

 

スカイソード:【1】Lv1

 

邪神域:0 Lv1

 

 

 

 

 

蛇噬(これは……少々厄介ですね。)

 

 

 

蛇噬「では私のターンです。『美麗鬼アラ』の【アクセル】を使用。効果は1ドローです。

 

さらに『紫骸旅団デスリブドラゴン』の【アクセル】。『紫骸旅団ゾンビドラゴン』を手札から破棄し、2枚ドロー。」

 

 

 

蛇噬「アクセルで使用したカードはどちらも手元に置かれます。続けて『クルセイダードラゴン』の【アクセル】を使用し、スカイソードのコアをリザーブに。」

 

 

 

蛇噬が指を鳴らすと、空から2本のナイフが落ちてきて、スカイソードに直撃、そのまま消滅させた。

 

 

 

蛇噬「序盤からの三龍神はご勘弁願いたいものです……ターンエンド。」

 

 

 

 

 

蛇噬

 

R:0 T:【5】H:4(3) D:28

 

 

 

旅団の摩天楼:0 Lv1 ×2

 

アイランドルート:0 Lv1

 

 

 

 

 

ザンド「オレのターン。『バーゴイル』を召喚し、召喚時効果でコアブースト。さらに『獄風の探索者カゲロウ・シーカー』を召喚。」

 

 

 

ザンド「ソウルコアの使用によりデッキを3枚オープン。その中のアルティメットを1枚手札に加え、後は破棄だ。」

 

 

 

 

 

獄炎の四魔卿ブラム・ザンド

 

エナジーバースト

 

小火竜ヒノコ

 

 

 

 

 

ザンド「ブラムザンドを手札に加えて残りを破棄。さらに『ネオ・ダブルドロー』を使用。3枚ドローだ。」

 

 

 

ザンド「バーストをセットしてアタックステップ!2体ともアタックだ!」

 

 

 

蛇噬「両方で来ましたか……どちらもライフで受けましょう。」

 

 

 

 

 

蛇噬:ライフ5→3

 

 

 

 

 

蛇噬「……小型アルティメットとはいえアルティメット。中々堪えますね……。」

 

 

 

ザンド「ターンエンド。」

 

 

 

 

 

ザンド

 

R:0 T:【5】H:6 D:26

 

 

 

バーゴイル:1 Lv3

 

カゲロウシーカー:1 Lv3

 

邪神域:0 Lv1

 

 

 

 

 

蛇噬「私のターン……少々勿体ありませんが、やるしかないですね。」

 

 

 

蛇噬「【アクセル】、『戦鬼ムルシエラ』。コア3個以下の者を全て破壊します。2体とも、失せなさい。」

 

 

 

蛇噬が再び指を鳴らす。今度は黒紫色の泥の波が押し寄せ、2体を呑み込んだ。

 

 

 

蛇噬「続けて手元から『美麗鬼アラ』を召喚。召喚時効果で3枚ドロー。」

 

 

 

蛇噬「『No.32 アイランドルート』を配置。配置時効果でドロー。手札の『美麗鬼アラ』の【アクセル】でさらにドロー。」

 

 

 

蛇噬「ターンエンドです。」

 

 

 

 

 

蛇噬

 

R:0 T:7 H:7 D:22

 

 

 

アラ:【1】Lv1

 

旅団の摩天楼:0 Lv1 ×2

 

アイランドルート:0 Lv1 ×2

 

 

 

 

 

ザンド「オレのターン。『小火竜ヒノコ』を召喚。召喚時効果は使わねぇ。」

 

 

 

ザンド「さらにこいつだ!召喚!『アルティメット・サジット・アポロドラゴン』!!」

 

 

 

 

 

アルティメット・サジット・アポロドラゴン

 

Lv3 BP12000

 

 

 

 

 

ザンド「アタックステップ!サジットでアタック!!」

 

 

 

ザンド「【ダブルアルティメットトリガー】、ロックオン!!」

 

 

 

 

 

蛇噬「チッ……『紫骸旅団アルマゲイズ』と『クルセイダードラゴン』。コストは6と1です。」

 

 

 

ザンド「ダブルヒット!アラを破壊し、サジットをダブルシンボルにする!!」

 

 

 

蛇噬「面倒な……ライフで受けます!!」

 

 

 

 

 

蛇噬:ライフ3→1

 

 

 

蛇噬「ぐっ……!!」

 

 

 

ザンド「終いだ!ヒノコでアタック!!」

 

 

 

 

 

蛇噬「……それは通りません!【アクセル】、『紫骸旅団ゾンビドラゴン』!!疲労状態のスピリット、ヒノコを破壊します!」

 

 

 

蛇噬が指を鳴らす。すると、ヒノコが突然爆散した。

 

 

 

ザンド「耐えるねぇ……ターンエンド。」

 

 

 

 

 

ザンド

 

R:1 T:6 H:5 D:25

 

 

 

アルティメット・サジット:【1】Lv3

 

邪神域:0 Lv1

 

 

 

 

 

蛇噬「ハァ……危ないところでしたね。もう一体居れば……死んでいました。」

 

 

 

ザンド「……このフィールド、ダメージレベルどうなってんだ?」

 

 

 

蛇噬「ダメージ、ですか……見ての通りですよ。バリアだのダメージ減少が無いだけです。

 

外傷こそありませんが、被弾者の体力と攻撃するスピリットの攻撃力次第ではショック死しますかねぇ。」

 

 

 

ザンド「……ライフが無くなると死ぬ、っつーわけじゃなさそうだな。なぜそうしなかった?」

 

 

 

蛇噬「………私がそれを話さねばならない理由が?」

 

 

 

ザンド「ないな。」

 

 

 

蛇噬「ご理解頂けたようで何よりです。」

 

 

 

ザンド「……なら。」

 

 

 

蛇噬「?」

 

 

 

ザンド「 ───なんでウロヴォリアスは死んでた?」

 

 

 

蛇噬「……。」

 

 

 

ザンド「レミリアが死んでいないとくれば尚更謎だ。バトルフィールドでの破壊は『死』じゃねぇだろう。」

 

 

 

蛇噬「………想像より鋭いですね。貴方は。」

 

 

 

ザンド「?」

 

 

 

蛇噬「では説明しましょう。このフィールド、そして先のバトルで展開されたフィールド等は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────グラン・ロロの者を殺すように出来てるんですよ。」

 

 

 

ザンド「……は?」

 

 

 

蛇噬「簡単に言えば取り決めのあるフィールドです。『敗者、かつグラン・ロロを出身とするならば死ぬ』というね。」

 

 

 

ザンド「……なるほどな。」

 

蛇噬「もっとも、意志のないカードには適用されませんし、私や貴方のような本来のものではない姿、つまり人の姿で存在している場合も効力は弱まりますが……まぁ、元はと言えば神皇達を殺すための舞台。些細な問題でしょう。」

 

 

 

ザンド「聞いてもねぇ事ペラペラ喋ってくれんなァ。」

 

 

 

蛇噬「冥土の土産には丁度いいかと思いまして。」

 

 

 

ザンド「さっきオレらには効果薄いって自分でも言っただろうが。」

 

 

 

蛇噬「えぇ、そうです───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───私という例外を除いてね。」

 

 

 

 

 

 

 

ザンド「………何?」

 

 

 

蛇噬「今からお見せしましょう。メインステップ。」

 

 

 

 

 

蛇噬「私は虚無の神にその御魂を捧げたもの。

 

私の自由、力、そして命に致るまでの全てが私のモノにあらず───全てを捧げ、ただ一つ貰い受けた『死』という理を持って、我が主に歯向かう者を断罪する!!」

 

 

 

 

 

蛇噬「召喚!!『紫骸龍神ダイムザーク』!!」

 

 

 

 

 

ダイムザーク Lv3 BP9000

 

 

 

 

 

ザンド「ダイム……ザーク?」

 

 

 

蛇噬「改めて自己紹介をさせて頂きます。『蛇噬』こと『ダイムザーク』という者です。以後……いや、冥府にてお見知り置きを。」

 

 

 

蛇噬「虚神に魂を捧げた者のみが扱える闇の力、お見せしましょう。」

 

 

 

ザンド「……。」

 

 

 

ザンドは直感で分かった。

 

「この男、ヤバい」と。

 

 

 

しかし、それとは別に笑みを浮かべた。

 

 

 

ザンド「おもしれぇ…殺せるもんなら殺してみな。」

 

 

 

蛇噬「この期に及んでその気概は感心しますね……召喚時効果、トラッシュのアクセルを全て回収。ゾンビドラゴンとアラを回収します。」

 

 

 

蛇噬「アタックステップ、ダイムザークでアタック!!」

 

 

 

ザンド「単騎でのアタックだと!?」

 

 

 

蛇噬「闇の力、その身で味わうがいい!!【闇奥義・天獄】発揮!!」

 

 

 

蛇噬が左手を肩と同じ高さに掲げ、自分の胸に勢いよく引き寄せる。

 

 

 

すると、ザンドは突然の痛みに膝をつく。

 

 

 

ザンド「なん……!?」

 

 

 

蛇噬「相手のライフを2つボイドに送り、自分のライフを2回復。」

 

 

 

 

 

ザンド:ライフ5→3

 

 

 

 

 

蛇噬「あぁ、あと闇奥義で貴方のライフが0になった場合、『終わり』ですので悪しからず。」

 

 

 

ザンド「ッ……!!」

 

 

 

終わり。それが暗に何を示すかなど言わずとも知れよう。

 

 

 

ザンド「だが一体で何しようってか?ライフはまだ3つあるぜ。」

 

 

 

蛇噬「そうですね。確かにまだ遠い。……なら死ぬまで殺せば良いのですよ。フラッシュ、『クルセイダージェネラス』の【アクセル】を使用。」

 

 

 

 

 

蛇噬「お互いの場にあるスピリットを1体ずつ破壊。貴方の方には居ませんが、こちらはダイムザークを破壊します。」

 

 

 

ザンド「……?」

 

 

 

蛇噬「何がしたいのか、という顔をしていますが……こういう事ですよ。『戊の四騎龍ブラックライダー』の【アクセル】を使用。」

 

 

 

 

 

蛇噬「再召喚。『紫骸龍神ダイムザーク』。」

 

 

 

ザンド「……!!」

 

 

 

蛇噬「ではダイムザークで再アタック。」

 

 

 

再び蛇噬が先程の動作を行い、ザンドのライフを文字通り奪う。

 

 

 

ザンド「……相手のスピリットのアタック後、バースト発動!『聖龍皇アルティメット・セイバー』!!」

 

 

 

ザンド「召喚は出来ねぇが、リザーブのコアでライフを1回復させる!!」

 

 

 

ザンド(これでこのアタックじゃ死なねぇが……。)

 

 

 

蛇噬「やはりセイバーでしたか……まぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザンド(悪あがきにしかならねぇか…。)

 

 

 

蛇噬「悪あがきにしかなりませんがね。」

 

 

 

 

 

 

 

蛇噬「ではもう1枚、『クルセイダージェネラス』を。ダイムザークを破壊。」

 

 

 

蛇噬「『戊の四騎龍ブラックライダー』。ダイムザークを蘇生。」

 

 

 

ザンド「……まァ、コアがないこのタイミングを狙ってきたってわけだな。」

 

 

 

蛇噬「偶然ですよ。防げた、そして勝てるからそうしたまでです。」

 

 

 

ザンド「いけ好かねぇ野郎だ……まァ、今回のは1本取られたが。」

 

 

 

蛇噬「……さようなら。赤の四魔卿。私が冥土に行った時は、お茶でも入れましょう。」

 

 

 

ザンド「『さようなら』、ねぇ。まぁそうか──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───じゃあ、またな。ダイムザーク。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

バトルフィールドが崩れると、ザンドが吹っ飛ばされ水切りのように床を転がった。

 

 

美鈴「!ザンドさん!」

 

美鈴が駆け寄ろうとするが

 

イル「馬鹿!!まだ目の前に相手がおるじゃろうが!!!」

 

美鈴「ッ!!」

 

イルの一喝で美鈴が動きを止める。イルは黙って蛇噬の方を見据える。

 

蛇噬「……ふぅ。」

 

蛇噬は外傷こそないものの、額から流れる汗の量が多い。

 

蛇噬「……さて、貴方は……どう…しますか……?」

 

イル「……どうせこのままトンズラするつもりじゃろうに。」

 

蛇噬「ハハハ……その通りです。」

 

パチュリー「そんなことさせるわけ「いや、やめろパチュリー。」なっ!?」

 

イル「無駄じゃろうて。」

 

パチュリー「貴方自分が何言ってるか分かってるの!?」

 

蛇噬「……賢明です。では、また相見えましょう……。」

 

蛇噬はそう言って空間の裂け目に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチュリー「……。」

 

咲夜「……。」

 

小悪魔「……。」

 

レミリアを寝室に運んだ3人は、すっかり黙り込んでひまっていた。

 

パチュリー「……どうすればいいのよ。もう……。」

 

小悪魔「妹様は居なくなっちゃうし…ウロヴォリアスさんもザンドさんもやられて、お嬢様もこんなに……。」

 

パチュリー「……咲夜、イルは?」

 

咲夜「え……あ、はい。先程美鈴を連れて、ザンドを地下室に運びに……。」

 

咲夜「八雲紫への報告も、彼がする、と……。」

 

パチュリー「……そう、分かったわ。」

 

小悪魔「……これから、どうなるんですか……?」

 

パチュリー「………。」

 

パチュリー「私が聞きたいわよ……そんなこと……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──地下室──

 

美鈴「……んしょっ。」

 

イル「すまんのう。ワシ力仕事出来んくてなぁ……。」

 

美鈴「……いえ、私に出来るなら、これくらいは……。」

 

美鈴はそう言うが、明らかに表情が暗かった。当然のことと言えよう。

 

イル「やっぱショック受けてるかのう?」

 

美鈴「………。」

 

美鈴「当たり前じゃ、ないですか……こんな、こんな……。」

 

今にも泣きそうな声で話す。イルは無理もないか、と思いながら黙っていた。

 

美鈴「イルさんは、どうなんですか……?」

 

イル「ワシ?」

 

美鈴「はい……ザンドさんとは、仲間……でしたよね。」

 

イル「まぁな……まぁ、向こうじゃ喧嘩ばっかだったが……死なれると堪えるのぅ……。」

 

美鈴「……。」

 

美鈴「これから、どうすれ「まぁ、堪えるのは死なれたらの時だけじゃけどねー。」……え?」

 

イル「ははは。前にもやったのうこれ。マグナもヴァンも、デスピアズにも教えてないけどな。」

 

美鈴「え、ちょ、イルさん……?」

 

イル「いきなり準備しろって言っても困るんじゃよ。しかもバトル終わるの速いしのう。保険使うならも少しゆっくりやれっちゅーこった。やれやれ……。」

 

美鈴「え、え……?」

 

美鈴はイルが何を言ってるのか理解しえなかった。

とうとう心がやられたのかとさえ思ったが……

 

イル「問題。ワシやザンドって何?」

 

美鈴「え?……四魔卿、でしたっけ?」

 

イル「そそ。四魔卿。邪神のトップ。そんで邪神ってどんな奴らかっていうと────

 

イルは笑って続ける。怒りを孕んだ笑みを浮かべながら、ドスの効いた声で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──倫理観とか一般論とか、そういうのがクソ大っ嫌いなんじゃよ。



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第29話『外道に終着する外道』

 

目が覚めて、体を起こす。

そして体を伸ばすと、体の所々がポキポキと音を鳴らした。

 

朝起きたらまずは顔を洗う。

早速洗面所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉を開けると、そこにはまだ誰もいない。

洗面台が使われた形跡もないので、まだ誰も起きていないか。

蛇口をひねり、水を出す。

二、三度顔に水をかけて、タオルで拭き取る。

 

昨日あのようなことがあっても、普段の仕事は怠ってはならない。

しかし、失ったものの大きさは計り知れない。他の皆は大丈夫だろうか。

 

ふと、部屋に繋がる廊下から足音が聞こえてくる。

扉が開くと、すごい寝癖の小悪魔が目を擦りながらふらふらと入ってきた。

 

とりあえず寝癖を指摘しておく。

すると、小悪魔は

 

小悪魔「しょうがないじゃないですかぁ……ふぁ……昨日ほとんど寝れなかったんですよ……イルさんは…ふあぁ……どうでした……?」

 

「なんでイルと間違えてんだよ。目ぇ大丈夫か?」

 

小悪魔「ふぇ……じゃあザンドさんですね。おはようございます、ザン……ド……さ……。」

 

眠そうにしていた小悪魔の目が少しずつ見開かれていく。

完全に開いた次は、額から首にかけて血色が悪くなっていく。

 

次に口をわなわなと震わせて、恐ろしいものでも見たように後ずさること2歩。

となれば次は

 

 

 

 

 

小悪魔「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

叫び声。正直言ってかなりうるさい。

耳を塞ぐと同時に、アイツが事の説明をしていない事を察し、後でぶん殴ると決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大図書館にて。

 

大きなテーブルを4人が囲み、近くの床に正座している人間が2人。

 

小悪魔「………。」

 

小悪魔は完全に表情が引きつっている。先程から無言の状態である。

 

咲夜「……さて。」

 

ため息をつきながら話を切り出そうとする咲夜。朝だというのに相当の疲れが見て取れた。

 

美鈴「とりあえずは……。」

 

美鈴は状況がよく読めず、苦笑いを浮かべているのみである。

 

パチュリー「何がどうなっているのか説明してもらおうかしらねぇ─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───貴方達!!一体それは何の冗談よ!!??」

 

パチュリーの怒号が響く。

正座している2人………イルとザンドはどちらも

 

こいつこんなでかい声出せるんだな

 

などと考えながらパチュリーの話を聞く。

 

 

パチュリー「まずザンド!!貴方どうなってるの!?

え?昨日完全に死んでなかった!?

それがなんで今日何事も無かったかのように顔洗ってんのよ!?」

 

パチュリー「そしてイル!!貴方なんでこんな大事なこと説明しないわけ!!おふざけってのもしていい場面とダメな場面あるでしょうが!!貴方アホ!?」

 

ひとしきり怒鳴ったあと、肩で息をし始める。

叫び過ぎてバテたのだろう。小悪魔が持ってきた水を飲んでいるあいだに、咲夜と美鈴が問い詰める。

 

咲夜「とりあえず何がどうなってるのか説明してちょうだい……朝からストレスよ……。」

 

美鈴「私もちょっとこれは呆れますね……説明、しっかりしてくださいよ?」

 

イル「じゃってさ、ザンド。」

 

ザンド「だってよ、イル。」

 

沈黙。

 

イル「いやあの土壇場でやれっつったのお前さんじゃろ!?そこお前さん説明が常識では!?」

 

ザンド「テメェに大体の部分を任せたオレが説明出来るわけねぇだろ!?」

 

パチュリー「さっさと説明しなさい!!」

 

パチュリーが本を2冊投げる。

 

そのそれぞれの角がイルとザンドの額に直撃し、2人して悶絶し始めた。

 

小悪魔「ほんとに……どうなってるんですか……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イル「まぁ、盛大に誤解を招く言い方をすると蘇生術じゃよね。」

 

ザンド「あぁ。」

 

さらっと説明したイルにパチュリーは絶句した。

動揺した頭をほったらかしてイルに質問を投げかけた。

 

パチュリー「生き返らせたとでも?そんなの禁忌もいいところだわ。」

 

咲夜「というか、そんなこと出来るのでしょうか……?」

 

イル「邪神っつーのは全部においてイレギュラーじゃしなぁ……幻想郷で神皇達がカードになってるのにワシらはこんな姿なのがそれの証明じゃ。」

 

ザンド「やり方としては、機能しなくなった体から魂だけ取り出して体の方を治す、って感じらしい。」

 

美鈴「いや、訳わかりませんけど……。」

 

小悪魔「というか、そんなことしていいんですかね……?」

 

イル「そんなのお前さん達の一般常識じゃろ?死んだ奴を生き返らせたりどうやっても死ぬ奴を完治させたりとか別にデメリットないんじゃし。」

 

ザンド「オメーら忘れてっかもしんねぇが、オレ達は邪神。異端のアルティメットであり、悪の権化の1つ。そっちとこっちじゃ価値観とかも多少は違うだろうよ。」

 

パチュリー「……納得いかないわ。」

 

ザンド「パチュリーは硬ぇなぁ。もうちっと雑な考え方しようぜ?」

 

小悪魔「そうは言っても……。」

 

イル「はい、この話終わり。」

 

咲夜「ちょっと、イル。勝手に終わらせないでちょうだい。」

 

イル「どの道これ以上ワシらは話さんよ。ワシらだからやれる事じゃが、お前さんらまでやり始めるのはダメじゃ。」

 

美鈴「それは……ウロヴォリアスさんの事ですか?」

 

イルとザンドは答えなかった。恐らく無言の肯定だろう。

 

パチュリー「……もういいわ。この件に関してはもう触れない。」

 

パチュリーがもう面倒と言わんばかりに話を切った。

 

ザンド「そういやレミリアは?大丈夫なのか?」

 

ザンドがその話をした瞬間、場の雰囲気が沈んだ。

 

ザンド「?」

 

美鈴「その、お嬢様は……。」

 

イル「まだ起きとらん。」

 

ザンド「何?」

 

パチュリー「診た結果、もうすぐ起きるとは思うけど……今日か明日か、その辺りはなんとも……。」

 

ザンド「………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───少しアイツの部屋に行ってくる。1人でな。

 

イル「……はて、あいつは何をしにいったんじゃか……。」

 

美鈴「珍しく真面目な顔でしたからね……。」

 

小悪魔「……もし、目覚めたら…お嬢様、大丈夫でしょうか……。」

 

咲夜「……大丈夫、と、思いたいけど……。」

 

その後は誰も続けなかった。

もしレミリアが目覚め、現実を目の当たりにして自棄になってしまうのではないか。

全員がそれを案じていた。

 

パチュリー「……ザンドが部屋に行った時に起きていたら、彼に任せるしかないわね……。」

 

パチュリー「……私、部屋に戻るわ。イル、ちょっと着いてきて。」

 

イル「ん?いいぞー。」

 

そう言うと、パチュリーとイルは並ぶ本棚の奥に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イル「んで、どしたんじゃ?いきなり。」

 

パチュリー「……。」

 

イル「?」

 

パチュリーは突然振り返ると、ため息をついて口を開いた。

 

パチュリー「……二度と。」

 

イル「?」

 

パチュリー「二度と私達に変な隠し事をしないで。」

 

イル「……。」

 

パチュリー「……いい?」

 

パチュリーの問いからイルはしばらくパチュリーを見据えていた。

およそ10秒か。

 

イル「……驚かせて緊張をほぐしてやろうと思った、って言い訳は聞いてくれんかの?」

 

パチュリー「できないわね。むしろ疲れただけだったわ。」

 

イル「ははは、手厳しいのう……。まぁ、今回はワシが悪いしな。すまんかったよ。」

 

パチュリー「……分かればいいわ。」

 

イル「でも、それならわざわざ2人にする意味ないんじゃないかの?むしろあそこで言った方が良かったんじゃ?」

 

パチュリー「……それは。」

 

パチュリー「………なんとなくよ。なんとなく。」

 

そう言うと、パチュリーは足早に自室に戻っていった。

 

イル「………。」

 

残されたイルは少しの間そこに留まっていたが、しばらくして少し笑って、また先程の場所に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……海に沈んでいく感覚がした。

 

フランもウロヴォリアスも。

 

全部にアイツが奪っていった。

 

悲しい、等とは感じない。

 

ただひたすらに許せない。

 

私は、まだ戦わなきゃならない。

 

ウロヴォリアスが居なくとも、まだ。

 

せめて──フランだけは。

 

 

そう思い、水面に上っていく。

 

夢の中だからだろうか、行こうと思うだけで進むことが出来た。

 

もう数センチ。

 

そして、水面から顔を出して───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───なんだ、起きてたか。」

 

目が覚めると、声が聞こえた。扉の方を向くと、あの生意気な従者の声が。

 

ザンド「オレは配慮とか分かんねぇから色々ひっくるめて聞くが──大丈夫か?」

 

随分とストレートに聞くものだ。

 

だが、頭は冷静に言葉を選ぶ。心の方は今にも煮えくり返ってもおかしくはないが。

 

レミリア「……フランは。」

 

ザンド「連れてかれた。表現がこれであってるかは分からんがな。」

 

レミリア「………。」

 

その次の言葉を聞こうとしたが、ザンドの目を見ると

 

ザンド「………。」

 

言わせるなとばかりの目をしていた。

 

あぁ、知りたいことは全てわかった。

 

レミリア「……許さない。」

 

ザンド「……。」

 

レミリア「あのふざけた虚神とかいう奴を。そして何も出来なかった私を。」

 

レミリア「この戦いを、私にとって完全な形で終わらせるまで……許さない。何も……!!」

 

ザンド「……アイツが居ないとしてもか?」

 

レミリア「無論だ……それが私の責任だ……!!」

 

声を震わせてそう言うと、ザンドは低く笑って、こちらに歩いてくる。

 

ザンド「ダメになってたらどうしたもんかと思ったが、まぁ大丈夫そうだな。」

 

ザンド「戦いに落ち込む暇は無い。怒りでも憎悪でも、戦う動機があればいい。ないなら死ぬだけだ。」

 

レミリア「慰める気は微塵もない、と?」

 

ザンド「当然。オレに限らず、他の四魔卿も邪神皇もそうするだろうさ。」

 

ザンド「怪我どうにかしたら次は空いた戦力の穴埋めだ。感傷に浸る暇は与えねぇ。」

 

レミリア「上等だ……あの愚か者がした事の重さを思い知らせてやる!!」

 

ザンド「いいねぇ…………オレも、手伝ってやろうじゃねぇの。」

 

 

 

紅魔館に、2つの紅い炎が燃える。



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第29.5話『キマグレワンデイ』

霊夢「───出かける?」

 

デスピアズ「うむ。」

 

霊夢「なんでまた。」

 

デスピアズ「単なる気紛れだ。」

 

霊夢「………はぁ?」

 

霊夢の疑問はもっともだろう。

時期が時期である上、先日の魔理沙との事もある。そのような事をしている場合があるのか。

 

デスピアズ「まぁ貴様の言いたいことも理解できる。幻想郷の危機かもしれない時だ。」

 

霊夢「ええ。」

 

デスピアズ「加えて貴様は病み上がりだ。」

 

霊夢「ええ。」

 

デスピアズ「だから出かけるぞ。」

 

霊夢「アンタどっかで頭でも打った?」

 

デスピアズ「正常だが?」

 

霊夢はいまいちピアズの意図が分からない。

一体何がしたいのだろうか。

 

霊夢「てか出かけるって言ってもどこに行くのよ?」

 

デスピアズ「そうだな……人里、紅魔館…後は白玉楼や妖怪の山に行ってみるのも面白くはあるか。」

 

霊夢「1人で行ってなさい。」

 

デスピアズ「そういう訳にもいかん。しばらくの間は貴様の側を離れないと言ったであろう。」

 

霊夢「なら出かけなければいいじゃない。」

 

デスピアズ「貴様が我に付いてくれば良い話でもあろう?」

 

互いの間に流れる沈黙。

先に破ったのは霊夢だった。

 

霊夢「……分かったわよ。行けばいいんでしょ。ったく……。」

 

デスピアズ「決まりだな。そうとなれば早速出向くとしよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで私とピアズは今人里に向かっている。

 

ったく……なんだってわざわざ外出なんてしなきゃなのよ……めんどくさいわね……。

 

デスピアズ「面倒だ、といった顔をしているな。」

 

霊夢「当たり前でしょ。今日は神社でぐうたらしてたかったのに。」

 

デスピアズ「太るぞ?」

 

前々から思っていたが、コイツの辞書にはデリカシーというものがないようね。お仕置きが要るかしら。

 

霊夢「……。」

 

デスピアズ「なぜ睨む?気に障るようなことでも言ったか?」

 

あーもうコイツダメね。邪神皇だかなんだか知らないけどお仕置きが必要だわ。

 

デスピアズ「む?どうした霊夢?何故大幣など持って──うおっ!?待て待て待て!いくら我とてそれは効く!落ち着け!!痛い!!痛いからやめろ──!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里につく。

ピアズは頭を片手で抑えながら溜息をついた。

 

デスピアズ「なぜ我はあそこまで叩かれた……。」

 

霊夢「自業自得でしょ。女の子に”太る”なんて単語使うアンタが悪いのよ。」

 

デスピアズ「解せぬ……。」

 

霊夢「さ、まずは甘味処にでも行きましょうか。お昼代わりに。」

 

丁度近くにあったので、そこで団子を5、6本頼んで待つ。

 

その間に、横に座っているコイツに先程から思っていた事を聞いてみる。

 

霊夢「で?なにが目的なのよ?」

 

デスピアズ「…目的?」

 

霊夢「わざわざ外出した目的よ。」

 

デスピアズ「……先程も言ったであろう。気紛れだ。」

 

霊夢「ホントかしら。なんか他に目的があるように思えるけど?」

 

デスピアズ「………。」

 

デスピアズ「いいや、何も。」

 

霊夢「なによそれ……ま、そっちが話す気ないならもういいわ。問い詰めるのも面倒だし。」

 

団子が届く。アイツに3本ほど渡したが、さっきひた隠しにされたのは少し気に食わなかったので、1本掠め取って食べてやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「で、次はどこに行くのかしら。」

 

デスピアズ「そうさな………む?」

 

霊夢「?」

 

デスピアズ「何か聞こえるな。微かにだが。」

 

霊夢「……なんも聞こえないんだけど。」

 

デスピアズは、音のするらしい森の中に入っていく。

霊夢も溜息をつきながらその後に続く。

 

デスピアズ「……まぁ、我の耳でも微かに聞こえる程度だ。人間の聴覚ならばその程度だろうな。」

 

霊夢「なんでアンタの聴力が人間より上なのが前提なの?」

 

デスピアズ「邪神も神の端くれ。神は人の上位存在だろう?」

 

霊夢「なーんか納得行かないわね……。」

 

デスピアズ「逆に聞くが、何が気に食わないのだ?別段、貴様自身を罵倒している訳ではなかろう。」

 

霊夢「アンタのその物言いよ。自分は他人の上にいる、みたいなその態度よ。」

 

デスピアズ「なるほどな……そう思ったことはないが。」

 

霊夢「……は?嘘つきなさい。」

 

デスピアズ「このような嘘つく意味があるまい。

我はそこまで自己の評価を高くつけている訳では無いぞ。」

 

霊夢「へぇ……ホントかしら。」

 

霊夢がもう少し疑ってかかってみると、デスピアズは溜息をつきながら続けた。

 

デスピアズ「戦闘ではマグナやザンドに劣る。魔術の知識がイルの足元にも及ばなければ、ヴァンほど戦の指揮が上手い訳でもない。」

 

デスピアズ「出来ることといえば、執政と能力による防護。その程度だ。」

 

霊夢「………。」

 

デスピアズ「……む、なるほど。さっきの音は”コレ”であったか。」

 

2人が森を出て見つけたのは川。

あまり強くもない流れで、水が流れている。

 

霊夢「なんだ、川じゃない。」

 

デスピアズ「ふむ……よし。」

 

デスピアズは突然川岸に座る。その手にはいつの間にか釣竿が。

 

霊夢「……どこにあったのよ、それ。」

 

デスピアズ「神力を少し編んだだけだ。この程度のものなら作れる。」

 

霊夢「へぇ……器用なのね。」

 

デスピアズ「まぁな。さて……よし。」

 

もう一本同じものを作って霊夢に渡す。

いくら鈍い人間でもデスピアズが何が言いたいのかくらいは流石に分かるだろう。

 

霊夢「え……。」

 

デスピアズ「どうした?やらないのか?」

 

霊夢「アンタがよく分からないわ……。」

 

デスピアズ「そうか。」

 

デスピアズはそれだけ返すと、釣り針を川に投げ、釣りを始めた。

やめる気配もなかったので、霊夢も隣に座り釣竿を振り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間半ほどが経過した。

 

霊夢の横には5、6匹の魚がのたうち回ってたり、そのまま動かなくなってたりしている。

 

一方デスピアズの横にはまだ何もいない。

 

デスピアズの横にはまだ何もいない。

 

霊夢「………アンタ、才能ないんじゃないの?」

 

デスピアズ「………。」

 

霊夢の竿が少し曲がる。

そのまま引っ張ると、少し小さめの魚が1匹バタバタと釣り針に食いつきながら姿を見せた。

 

霊夢「……ふっ。」

 

デスピアズ「何がおかしい。」

 

霊夢「いや、ふふっ……アンタ、今かなり可哀想よ。」

 

デスピアズ「………。」

 

デスピアズが指を鳴らすと、2人の持っていた竿が煙のように消える。

 

もう切り上げるという事だろう。

 

霊夢「あらあら。お逃げになさるのかしら?邪神皇サマ?」

 

デスピアズ「引き際というものは弁えている。帰るぞ。」

 

デスピアズは霊夢の返事を待たずにそのまま空に上がった。

霊夢もすぐに、食えそうな魚を2、3匹持ってその後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「あそこまで連れないと逆に面白いわね。」

 

デスピアズ「……放っておけ。」

 

釣った魚に米と味噌汁。それを食べながら霊夢は先程の事を掘り返していた。

デスピアズは少々機嫌が悪いのか、食べる速度が普段より速い。

 

霊夢「ふふっ、いやー…久々に楽しかったわ。面白いものも見れたしね。」

 

デスピアズ「……そうか。楽しかったか──なら今回は良しとしよう。」

 

霊夢「……。」

 

霊夢「……ねぇ、それどういう「馳走になった。食い覚ましに外に出てくる。」

 

デスピアズはそう言うと器を片付けて境内の方に歩いていった。

 

霊夢「………。」

 

霊夢「……はぁ、全く───よくわからない奴ね。」

 

霊夢も、自分の器を持って台所に行き、皿を洗い始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第30話『必要なこと─その1─』

ダイノ「グゥゥ………グゥゥ……。」

 

地面に丸くなって寝ているダイノ。そこに足音が近づいてきた。

 

ゴグマ「こんなところで何を寝ている?ダイノよ。」

 

ダイノ「……ォウ?」

 

ダイノは目を覚ますと、ムクリと体を起こし、ゴグマを見上げる。

 

ダイノ「ナンノ用ダ?ゴグマ。」

 

ゴグマ「拙者か?拙者はフェンの奴に頭と貴様がここにいると聞いて来た次第だ。」

 

ダイノ「ナルホドナ。ボスナラアソコニ寝テ………アレ?」

 

ダイノが後ろの方を向くと、そこには何も無かった。

ダイノが首をかしげていると、ゴグマはさらに問いかける。

 

ゴグマ「……頭は何処に行った?」

 

ダイノ「ワカンネ。サッキマデオレト昼寝シテタハズナンダガ。」

 

ゴグマ「その事、蛇噬の前で言ってやるなよ。死ぬぞ。」

 

ダイノ「アタリマエダロ。」

 

ゴグマ「だが、ここに居ないとなれば……どこかに向かわれたか?護衛も付けずに、というのは如何なものかと思うが……。」

 

「護衛なんていらんよ。全く。」

 

ゴグマが後ろを振り向くと、そこには彼らが主とする少年の姿が。

 

少年「ったく、もう護衛つけるほど弱っちゃいない。」

 

ゴグマ「それでも万が一の事を考え……む?頭よ。今なんと?」

 

少年「もう護衛要るほど弱っちゃいないって言ったんだよ。」

 

ダイノ「……テコトハ、ツマリ?」

 

少年「あぁ、もう概ね万全だ……もう少ししたら、本格的に事を起こそうか。」

 

少年の発言に、2人は笑みと頷きをもって返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──紅魔館──

 

ザンド「なるほどな──ウロヴォリアスだけじゃなくエグゼシードまでやられるか……。」

 

デスピアズ「神皇のみを狙った行動……何か裏があると見るべきか。」

 

現在紅魔館にはデスピアズと霊夢が訪れていた。

互いの近況報告を兼ねてデスピアズがここに顔を出そうと訪れ、今に至る。

 

レミリア「おまけにフランだけでなく魔理沙まで……あの外道共……!!」

 

霊夢「……ごめんなさい。私が不甲斐ないばかりに……。」

 

ザンド「おめェがそれ言ったら俺たちの立つ瀬が消えるだろうが。」

 

だんだんと暗い雰囲気になっていく話し合い。

その時突然扉が開き、誰かが倒れ込んできた。

 

イル「むぎゅっ。」

 

 

ごろごろ、どてん。

 

 

地面に額をぶつけた後立ち上がろうとすると、その背中を何者かに踏まれる。

 

パチュリー「………。」

 

霊夢「……アンタらなにやってんのよ。」

 

レミリア「イル……今度は何をしたのかしら?」

 

イル「いやワシがやらかした前提なの酷くない!?

ワシはただ机で寝てたパチュリーのほっぺを軽くペちペちして起こしただぎえぇっ」

 

パチュリー「ペちペち叩いたのに加えて頬を引っ張ったりつついたりしたわよね。また魔導書の角を喰らいたいのかしら?」

 

イル「あれすっごく痛いからネ!?ちょい!ザンド、ピアズ、レミリア、巫女さんや!!誰か助けて!!」

 

レミリア「話し合いを続けましょうか。」

 

ザンド「だな。」

 

デスピアズ「話が逸れるのは好ましくない。」

 

霊夢「で、どこまで話したのだったかしら。」

 

イル「オール無視!?」

 

嘆くイルを、パチュリーはお構い無しに踏み続ける。

 

パチュリー「いつになったらそういう性格は治るのかしら……。」

 

イル「あーそこそこ腰いい感じもうちょっと上。」

 

パチュリー「………。」

 

イル「あやべそこ肺のあっヒールの踵で首はダメじゃそこ結構痛いから痛い痛い痛いから!?」

 

 

 

デスピアズ「───して、問題はこれからどうするかだ。」

 

ピアズがそう言うと、最初から部屋にいた3人は黙り、パチュリーもイルを踏むのをやめた。

 

ザンド「どうするって……んなも1つしかねぇだろ。」

 

ザンドが言うと、イルも服のホコリを払いながら立ち上がり、続く。

 

イル「迎撃して乗っ取られた2人を取り戻すのが最善……まぁそんな簡単に行くかはわからんがの。」

 

デスピアズ「そのような当たり前の事を言っているのではない。我が言いたいのはお前達だ。レミリア、霊夢。」

 

レミリア「………。」

 

霊夢「………。」

 

ピアズの言葉の意図を察したのか、目を伏せる2人。ピアズはお構い無しに続ける。

 

デスピアズ「神皇達が居ない今、貴様らはどう戦える?」

 

レミリア「……ウロヴォリアスが居なければ勝てないわけではないわよ。」

 

デスピアズ「それはそうであろうよ。だが今までウロヴォリアスを中心の戦い方をしてきた事には変わらん。いいか、軸を差し込まない歯車というのは回らんのだぞ?」

 

レミリア「ぐっ………。」

 

霊夢「………でも、私達しか居ないのも、事実でしょう?」

 

デスピアズ「……確かに、な。」

 

デスピアズ「その通りだ。戦えぬ訳ではない以上下がるという選択肢はない。来たる時までに、なんとかするしかなかろう。」

 

ザンド「なんとかする、ねぇ……なんとかなんのか?」

 

デスピアズ「当てはある。」

 

イル「それをはよ言えぃ!」

 

デスピアズ「その時になれば話す。それまでは待っていろ。」

 

パチュリー「……何か、秘密にしておく真っ当な理由があるのよね?」

 

デスピアズ「当然。だが理由を言えば何を言えないのか言ったも同然故、そちらも今は話さぬ。」

 

パチュリー「納得しづらいけど……なんとかなるのよね?」

 

デスピアズ「確実ではないが、これ以外にと言われても検討がつかん。」

 

レミリア「……分かった。全面的に信頼しよう。」

 

デスピアズ「話のわかる子供は嫌いではないぞ。」

 

レミリア「誰が子供だ!!」

 

霊夢「はいはい一々突っかからない。ピアズも何煽ってんのよ。」

 

霊夢がピアズを睨むと、ピアズは肩をすくめる。

 

霊夢「ったく……次、ヴァンのとこ行くわよ。今日中に全員に伝えるんでしょ?」

 

デスピアズ「無論だ。では紅魔館の面々よ。これにて失礼する。」

 

ピアズはそういうや否や、足早に部屋を出ていった。

 

霊夢「じゃ、また。なんかあったらしっかり連絡するのよ。」

 

霊夢もそう言うと、ピアズに続いて部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イル「……全く、あいつの考えてる事はたまによく分からんのう。」

 

パチュリー「その言葉そっくりそのまま貴方に返すわ。」

 

イル「えー。」

 

廊下を歩きながら、どうでもいいような話をする2人。

その最中、パチュリーが突然イルに質問を投げた。

 

パチュリー「……先日の"アレ"、説明してはくれないのね。」

 

イル「………。」

 

パチュリー「だんまりかしら。」

 

イル「………別に。」

 

パチュリー「?」

 

イル「別にホントに死者を生き返らせたわけじゃない。こないだ蘇生術って言ったじゃろ?あれ半分ウソ。」

 

パチュリー「………半分、ね。」

 

イル「うむ。心肺停止の患者に心臓マッサージして息吹き返させるようなもんじゃ。雑にいうとな。」

 

パチュリー「………。」

 

イル「なんじゃその目…疑っとるのか?」

 

パチュリー「何度も嘘をつかれてるから、それはね。」

 

イル「ははっ、厳しいのう。」

 

イル「ま、この話はこれで終わりじゃ!眠いからワシ昼寝するぞ!」

 

イルはそう言うと、急に図書館に向かって走り出した。

 

パチュリー「ちょ!?待ちなさいよ!!」

 

イル「なんじゃー?もしかして一緒に寝たいとか痛ァッ!?」

 

パチュリーが投げた本がイルの頭に直撃し、イルは前に倒れ込んだ。

 

イル「痛いのぅ……暴力多い娘はモテんぞ?」

 

パチュリー「大きなお世話よ。」

 

パチュリーはため息をつきながらそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イル「あ、でも好きな人についついそういう反応する"ツンデレ"って性格もあるらしいだだだだだ!?

頭にヒールの踵は痛いからやめて!?」



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第31話『必要なこと─その2─』

お久しぶりですね。
|´-`)チラッ

お待たせして申し訳ない…。


霊夢とデスピアズが次に訪れたのは妖怪の山。

もちろんヴァンのところである。

 

霊夢「ようやく着いたわね……。」

 

ここに来る途中懲戒中の天狗に遭遇し、彼らに説明だのなんだのをした霊夢はお疲れの様子。

 

デスピアズが玄関の戸をノックする。

誰かが出てくる気配はない。

 

デスピアズ「……。」

 

もう一度ノックする。

 

誰も出てこない。

 

霊夢「……仕事中かしら?」

 

デスピアズ「先程の天狗達が今日の奴は非番と言っていたが……というか妖怪の山にある家には呼び鈴がないのか?」

 

霊夢「幻想郷だとある家の方が少ないんじゃない?うちにもないし。」

 

デスピアズ「神社に呼び鈴があってたまるか。」

 

霊夢「神社に呼び鈴あったとして何が悪いのよ……とりあえず、隣の家にでも聞いてみれば?」

 

霊夢はそう言いながら隣の家の玄関前に向かう。

その家の表札には『犬走』と書かれてあった。

 

霊夢「あいつらお隣さんだったのね……。」

 

霊夢が戸をかなり強めにノックする。

すると、奥の方から足音が聞こえてきて、玄関の戸が開く。

 

霊夢「ピアズ、私今から椛にヴァンのこと聞いて──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァン「──はーい、椛さんに何か御用……ってあれ?」

 

霊夢「なんでアンタがそっちに居るのよ。」

 

表れたのは椛ではなくヴァン。

 

ヴァン「最近は椛さんの家でお昼食べてるからね。」

 

霊夢「夫婦かっての……。」

 

デスピアズ「……とりあえず話がある。上がっても良いな?」

 

ヴァン「いいけど、そっちはどうしたの?2人でデート?」

 

デスピアズ「死ぬか?」

 

ヴァン「うわこわい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椛の家に上がり、紅魔館でした話と同じ事を話した。

 

ヴァン「……お昼食べたばっかの2人にする話じゃなくない?」

 

椛「突っ込むところそこですか……?」

 

デスピアズ「そこは運が悪かったと諦めろ。迅速な情報共有の方が優先事項だ。」

 

椛「魔理沙さん……それにレミリアさんの妹さんまで……。」

 

ヴァン「………わざわざピアズを呼び寄せてからこっちに襲撃に来たのはそういうことか……。」

 

デスピアズ「犠牲者3、行方不明者2……そろそろこちらも動かねばマズいが……。」

 

ヴァン「相手の場所も分からないからね……。」

 

椛「……あの……霊夢さんは、大丈夫なんですか?」

 

霊夢「えっ?」

 

椛「その……エグゼシードさんも魔理沙さんも敵に……あまり、無理をせずに休んでた方が…。」

 

霊夢「……。」

 

霊夢「……そうかもしれない。」

 

霊夢は拳を固く握る。

 

霊夢「……でも博麗の巫女としても、一個人としても、まだ休む訳にはいかないわ。せめて魔理沙とフランだけでも助けられるように……出来ることはしなくちゃいけない。」

 

椛「……そう、ですか……でも「分かってるわよ……無理はしない。ここで脱落なんて以ての外だもの。」

 

デスピアズ「……昨日あれだけ泣いていた奴の言うこととは思えんな。」

 

霊夢「水差してんじゃないわよ!!」

 

霊夢が拳骨でデスピアズの頭を思い切り殴る。

それを食らったデスピアズは床に倒れて頭を抑えていた。

 

ヴァン「ピアズを思い切り殴る人なんて初めて見た……。」

 

霊夢「邪神皇だかなんだか知らないけど、私を怒らせるのが悪いのよ。」

 

ヴァン「幻想郷はとんでもないなぁ……。」

 

デスピアズ「……さて、次だ。そろそろ行くぞ。」

 

ヴァン「え、状況報告しにきただけ?」

 

デスピアズ「動こうにも紫が戻ってこないことにはなんの目処も立たん。とりあえず、いつでも戦える準備はしておけ。行くぞ霊夢。」

 

霊夢「はいはい……突然押しかけて悪かったわね。びゃあまた。」

 

そう言って2人は妖怪の山を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デスピアズ「……次の白玉楼というのはどこにあるのだ?」

 

幻想郷上空、2人はすぐさま白玉楼に向かっていた。

 

霊夢「空のある場所からしか入れなくてね。もうすぐ冥界の門が見えてくるはずよ。」

 

デスピアズ「……冥界?」

 

霊基「そそ。会った時分かったと思うけど、幽々子は亡霊で、冥界にある白玉楼で冥界の管理をしてるの。妖夢はそこの庭師。」

 

デスピアズ「なるほどな……にしても、冥界か。」

 

霊夢「?何か思うところでもあるの?」

 

デスピアズ「我も一応グラン・ロロでは死者だからな……入った瞬間に人魂にならなければいいが」

 

霊夢「変な冗談言うわね……っと、あれが門よ。早速入りましょう。」

 

デスピアズ「うむ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マグナ「ふむ………なるほどな。」

 

幽々子「ついに動き出した、という解釈でいいかしら。」

 

デスピアズ「いいだろうな。」

 

妖夢「幻想郷、大丈夫なんでしょうかね……?」

 

霊夢「……今弱気になっても仕方ないわよ。」

 

霊夢とデスピアズの説明を聞いた3人は、各々の感想を述べる。

 

幽々子「それにしても……紫がそんなすごい奴の接近を感知できなかったのが不思議ね……。」

 

妖夢「幽々子様、真面目な話の時にお菓子食べないでください……。」

 

幽々子「真面目な時だからこそ食べるのよ。」

 

デスピアズ「魔理沙とやらの気配に紛れて分からなかったか、あるいは奴ら独特の方法で撒いたか、と言ったところか。」

 

マグナ「レミリアの妹の方はザンドとイルに任せるとして……その魔理沙はどうする?敵の手中にいるなら、肝心の時に盾にされると厄介だぞ。」

 

デスピアズ「霊夢の前であまり口にしたくはないが、最悪の場合は……。」

 

デスピアズはあえて言葉を濁す。

霊夢はそれにため息をついて口を開いた。

 

霊夢「そんなことさせないわよ……何がなんでも無事に助けるしかないでしょ……。」

 

マグナ「だ、そうだが?」

 

デスピアズ「……無論、最悪の場合の話だ。無事に越したことはなかろう。」

 

幽々子「あらあら、邪神の王様は随分お優しいのね。」

 

デスピアズ「この亡霊消しても良いか?」

 

霊夢「アンタもう少し気を長く持ちなさいよ……幽々子も幽々子で揶揄うのやめなさい。いちいち抑える私の身にもなりなさいよ。」

 

幽々子「あら、ふふふ。ごめんなさぁい。」

 

霊夢「やっぱ消していいわよ。」

 

妖夢「まぁまぁまぁ!!お二人共落ち着いて!幽々子様もいい加減にしてください!!」

 

幽々子「マグナ、味方が一人もいないわ。守ってくださる?」

 

マグナ「場を和ませようとするならもう少しマシなやり方を選べ。全く…。」

 

幽々子「あらあら……ふふふ。」

 

デスピアズ「はぁ……これで用は済んだ。もう帰「ちょっと待って。」……なんだ?」

 

霊夢「マグナ、少し頼みがあるのだけれど、いい?」

 

マグナ「頼みの内容によるな。一戦交える、と言ったものなら喜んで受けるぞ?」

 

霊夢「そうね、じゃあ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───お言葉に甘えて、手合わせお願いしようかしら。」



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第32話『機と運と勝敗と』

久 々 の ( ゚д゚)クワッ

はい、最近低迷しております。申し訳ないです……。

なんとか進めて行きたいと思うので、生暖かい目()で見守って貰えると嬉しいです。


デスピアズ「霊夢の奴め……いきなりどうしたのだ……?」

 

デスピアズは霊夢がマグナにバトルを申し込んだのが甚だ疑問だった。

 

妖夢「エグゼシードさんが居なくなって、今の自分がどれだけやれるか確かめたい、とか、ですかね……?」

 

可能性としては十分な話である。

これには幽々子も扇子で表情を隠し、何かを考え込むような様子だった。

 

幽々子「彼女は考え無しに人に物を頼む子ではないけど……今回は、そうね。私にも分からないわ。」

 

 

 

マグナ「……3人が何やら言っているが、俺も気になるところではある。俺と手合わせをするに至った理由はなんだ?」

 

霊夢「……1つ目は、妖夢の言った通り。今の自分がどんなものなのかを知るため。」

 

霊夢「2つ目は………分からないわ。」

 

マグナ「…分からない?」

 

マグナが顔に出るほど疑問に思うのも分かる。1つ目は明確に言葉に表せているのに、2つ目が表せない、というのも妙な話だ。

 

霊夢「……強いて言うなら勘かしら。今バトルをすることに意味がある、気がする。」

 

マグナ「……まぁなんであれ、全力で行くぞ。ピアズから借り受けたアレら、今までは妖夢相手にしか試していなかったからな。」

 

マグナ「先手か後手か、決めるといい。」

 

霊夢「……先攻で行くわ。私のターン。」

 

霊夢「『十二神皇の社』をLv2で配置。ターンエンド。」

 

 

霊夢

R:0 T:3 H:4 D:35

 

十二神皇の社:【1】Lv2

 

 

マグナ「俺のターンだ。『ボーン・バード』を召喚する。召喚時効果でデッキを上から3枚破棄し、1枚ドロー。」

 

 

ダークマター

獄土の騎士レフティス

獄土の四魔卿マグナマイザー

→破棄

 

 

マグナは小さく唸るような声を出し、片目を瞑り肩をすくめる。

 

霊夢「随分幸先が悪いわね。大丈夫かしら?」

 

マグナ「……勝負は俺1人で行うものではない。勝利を与えてくれる仲間もまだ居る。バーストをセットしてターンエンドだ。」

 

マグナ

R:0 T:3 H:4 D:31

 

ボーン・バード:【2】Lv1

 

 

霊夢「私のターン。まずは『コレオン』を召喚。コレオンの効果で自分の系統:神皇を持つスピリットのコストを-1するわ。」

 

霊夢「召喚!!『夢幻の神皇ゼムリアス』!!」

 

 

ゼムリアス Lv1 BP5000

 

 

幽々子「『夢幻』、そしてあの外見………なるほどね。貴方もおせっかいを焼くわ。」

 

妖夢「……?デスピアズさん、アレが何かご存知なんですか……?」

 

デスピアズ「……エグゼシードの抜け殻を外形だけ繕ったものだ。と言っても、せいぜい封印の力を使える程度だが……。」

 

 

霊夢「バーストをセットしてアタックステップ!ゼムリアスでアタック!!」

 

マグナ「夢幻などという二つ名は聞いたこともないが…もう1つは飽きるほど聞いた名だ。つまり……」

 

霊夢「ゼムリアスのアタック時効果、【封印】発揮!!」

 

ゼムリアスが拳を上に掲げると、ソウルコアが霊夢のライフに移動する。

 

霊夢「さらに封印状態になったことでもうひとつの効果、ゼムリアスにコアブースト!!」

 

マグナ「封印まで出来るとは大したものだ……ライフで受ける!!」

 

 

マグナ:ライフ5→4

 

 

霊夢「ターンエンドよ。」

 

 

霊夢 【封印】

R:0 T:2 H:2 D:34

 

ゼムリアス:2 Lv1

コレオン:1 Lv1

 

十二神皇の社:0 Lv1

 

 

霊夢は先日デスピアズに言われたことを頭の中で思い出していた。

 

 

 

 

霊夢『……なにこれ?』

 

デスピアズ『大雑把に言うとエグゼシードの骸だ。』

 

霊夢『……!!』

 

デスピアズ『……そんな顔をするな。いや、今のは言い方が悪いか……簡単に説明すれば、奴の魂が抜けて空になったカードを少し修復したのがそれだ。』

 

霊夢『……随分違う風になってるけど……。』

 

デスピアズ『まぁ最低でもエグゼシードの【封印】のようなものを出来るくらいにはしたからな。壊れた船を直すためにパーツを足したら、外形が変わったようなものだと思ってくれ。』

 

霊夢『……なんでこれを?』

 

デスピアズ『お前が戦力として最低限使えるようにするためだ。……さて、明日は紅魔館に妖怪の山、白玉楼と行く場所が多いぞ。さっさと寝ておけ。』

 

 

 

 

 

霊夢(……恐らく今の私が戦える唯一の手段、勝つまでは行かなくとも、どこまでやれるか。このバトルで知らなきゃいけない……!)

 

マグナ「俺のターン。まずは『ワンアイドデーモン』を召喚。」

 

マグナ「……さて、今日の主役のうちの一人だ。多少は驚いてほしいものだな?」

 

霊夢「……アイツから借り受けたっていう奴ね。」

 

マグナ「その通り……月の夜に照らされ、咲き誇れ!『咲月帝アルティメット・ウィステリア』!!」

 

 

アルティメット・ウィステリア Lv3 BP11000

 

 

霊夢「……これまた随分と綺麗なアルティメットじゃない。」

 

マグナ「褒め言葉は素直に受け取っておこう。だが人は綺麗な花にはなんとやら、というのだろう?」

 

マグナ「アタックステップ。ウィステリアでアタックだ!!

アルティメットトリガー、ロックオン!!」

 

 

霊夢のデッキの上の1枚が舞い上がる。

コストは5。炎魔神だ。

 

霊夢「あっ!?」

 

マグナ「ヒット!!ウィステリアのアルティメットトリガーは、相手のスピリット全てのLvコストを+2する!つまり、コアが3個未満のスピリットは全て消滅する!!」

 

ウィステリアが腕を払うと、無数の花びらが台風のように霊夢のフィールドに舞う。

それらの花びらが消える頃には、霊夢のスピリット達も消えていた。

 

霊夢「やるわね……ライフで受けるわ!!」

 

 

霊夢:ライフ6→5

 

 

マグナ「ボーン・バードでアタック!!」

 

霊夢「それもライフよ!」

 

 

霊夢:ライフ5→4

 

 

霊夢「ッ……ライフ減少時にバースト発動!!」

 

霊夢「ワンアイドデーモン、消えなさいッ!!」

 

霊夢がそう言い放つと、火炎竜がワンアイドデーモンに襲いかかり、焼き払う。

 

マグナ「む……!」

 

霊夢「ライフ減少時に、BP12000以下の相手のスピリットを破壊して召喚出来る!!『黒壬獣ブラッディセイバー』をバースト召喚!!」

 

マグナ「……ターンエンドだ。」

 

 

マグナ

R:1 T:4 H:3 D:30

 

ウィステリア:【1】 Lv3

ボーン・バード:1 Lv1

 

 

霊夢「私のターン。『エンペラードロー』を使用してデッキから2枚ドロー。ブラッディセイバーと十二神皇の社を最大レベルにして、バーストをセット。」

 

霊夢「ターンエンドよ。」

 

 

霊夢 【封印】

R:0 T:2 H:3 D:31

 

ブラッディセイバー:5 Lv3

十二神皇の社:2 Lv2

 

 

マグナ「攻めては来ないか……まぁ当然であろう。俺のターン。『バットナイト』をLv2で召喚する。召喚時効果、アルティメットの存在により2枚ドローする。」

 

マグナ「……ウィステリアのレベルを上げ、ターンエンドだ。」

 

 

マグナ

R:0 T:2 H:5 D:27

 

ウィステリア:【3】 Lv4

バットナイト:2 Lv2

ボーン・バード:1 Lv1

 

 

 

 

デスピアズ「互いに手札を増やすのみ、か……今マグナが攻めなかったのは霊夢にとっては都合が良かろう。」

 

妖夢「そうでしょうか?攻めたならそれはそれでカウンターのチャンスもありましたが……。」

 

幽々子「……マグナのバースト、かしら?」

 

デスピアズ「だな。恐らくアレだろう。」

 

アレとは?と言った顔を2人はするが、デスピアズは2人に自分で考えろ、と返した。

 

 

霊夢「私のターン。異魔神ブレイヴ『雷魔神』を召喚。召喚時効果でBP4000以下のバットナイトを破壊!!」

 

雷魔神は放った雷で、バットナイトを破壊した。

 

霊夢「雷魔神をブラッディセイバーの右に合体(ブレイヴ)!!」

 

マグナ(BPはこちらの方が上だが……それでも来るか?)

 

霊夢「ターンエンド。」

 

 

霊夢 【封印】

R:0 T:3 H:3 D:30

 

ブラッディセイバー:5 Lv3

十二神皇の社:1 Lv2

 

 

 

デスピアズ「……いつにも増して慎重だな。」

 

幽々子「……当然でしょう。ずっと頼りにしていた相棒がいないのだから。」

 

妖夢「……加えてマグナさんは彼本人にも勝るとも劣らない新しいアルティメット……厳しそうですね……。」

 

 

マグナ「俺のターン。」

 

マグナ(……さて、どうするか。攻める素振りを見せないのが気がかりだが……ん?)

 

マグナ「……ここで行くのもアリではあるか………いや、ここしかあるまいな。」

 

マグナ「マジック、『フォビドゥングレイヴ』!!」

 

霊夢「ッ……ここでか……!」

 

マグナ「トラッシュにある系統:次代/呪鬼を持つアルティメットをコストと召喚条件を無視して召喚する!!」

 

マグナ「我は闇の大地を統べる者。我が太刀の前に、一切の命が塵と化す。『獄土の四魔卿マグナマイザー』、Lv4で召喚する!」

 

 

マグナマイザー Lv4 BP:25000

 

 

マグナ「アタックステップ、マグナマイザーでアタック!!」

 

マグナ「トリプルアルティメットトリガー、ロックオン!!」

 

霊夢「くっ………コストは……ッ!!」

 

霊夢「9、9、5!!シングルヒットよ!」

 

マグナ「何ッ!?」

 

トリガーによって開かれたカードは『丙獣王ブレイゾーマ』2枚と、『彷徨う天空寺院』だった。

 

マグナ「天運とはまさにこの事か……!!」

 

霊夢「奪われるのはブラッディセイバーの2コアだけ!!アタックはライフで受けるわ!!」

 

 

霊夢:ライフ4→2

 

 

霊夢「ライフ減少によって十二神皇の社の効果が発揮!ボーン・バードを破壊!!」

 

マグナ「……ターンエンドだ。」

 

 

マグナ

R:1 T:4 H:5 D:26

 

マグナマイザー:【3】 Lv4

ウィステリア:1 Lv3

 

 

霊夢「ラッキーでなんとかなったわね……私のターン。」

 

霊夢「『戊の戦馬サラブレード』を召喚!!召喚時効果でウィステリアを破壊!!」

 

サラブレードが炎を放ち、ウィステリアを破壊する。

 

マグナ「ただではやらんぞ!相手による自分のアルティメット破壊により『ダークマター』を発動!」

 

マグナ「トラッシュのカードはそのままに、デッキから1枚ドロー。そしてフラッシュ効果で雷魔神を破壊する!!」

 

今度は、雷魔神がブラックホールに飲み込まれて消えた。

 

霊夢「打点を下げられたわね……でもマグナ、今のダークマターでフォビドゥングレイヴを回収しに行かないって事は、そのドローを除いて手札には返すカードがないんじゃないかしら?」

 

マグナ「……どうだかな。」

 

霊夢「……まぁ、それは今から確かめるとしましょう!サラブレード、アタックよ!!」

 

マグナ「打点が足りないというのに攻めてくるか……ライフで受けよう!!」

 

 

マグナ:ライフ4→3

 

 

霊夢「サラブレードの効果発動!!自分が封印状態なら、相手のライフが減った時に回復出来る!もう一度アタックよ!!」

 

マグナ「なるほどな……道理で攻めてくる……マジック、『ネクロブライト』!トラッシュからバットナイトを召喚し、先ほどと同じように2枚ドロー!!」

 

マグナ「バットナイトでブロック!」

 

バットナイトにサラブレードが突撃する。がらバットナイトは巧みに躱していく。

 

霊夢(このままだと次のマグナマイザーのアタックで負ける……どうすれば……。)

 

マグナ「ブラッディセイバーのシンボルはひとつ。これなら削り切れないぞ!」

 

霊夢「……いえ、いいえ。まだあるわよ。一つだけ!」

 

霊夢「『壬獣アクセルエッジ』のアクセルを使用!BP6000以下の相手のスピリット一体を破壊することでドローする!」

 

マグナ「ドローにかける、と……シンボルを増やすカードでも探しに行くか?」

 

霊夢「いいえ、違うわよ。まずこのアクセルを使うには今の状況だと3コスト必要。この3コストはサラブレードから使うわ。」

 

霊夢がサラブレードの上のコアをトラッシュにやると、サラブレードは突然消え、バットナイトは突然相手がいなくなったことに首を傾げた。

 

霊夢「そして、アクセルの効果。相手のスピリットを破壊することでドロー。『ことで』で繋がる効果は使わないことも出来るわ。よってバットナイトは破壊しない。」

 

マグナ「……?」

 

霊夢「ラストアタック行くわよ!ブラッディセイバー!!」

 

ブラッディセイバーは駆け出すと、炎を吐いてバットナイトを焼いた。

 

霊夢「ブラッディセイバーのアタック時効果、BP6000以下のスピリットを2体破壊。そして、『破壊したスピリットの数だけシンボルを増やす』!!」

 

マグナ「……なるほど。バットナイトを破壊しなかったのはこのためか。」

 

マグナ「フフ………これは見まごう事なき、完敗というやつだ。」

 

 

ブラッディセイバーがマグナの残り2つのライフを削り取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デスピアズ「………。」

 

妖夢「霊夢さん、すごい……!」

 

幽々子「これは、マグナが1本取られたわね…フフ。」

 

マグナ「恐ろしいまでの機転の利き方だな……戦場での指揮官の素質があるんじゃないか?」

 

霊夢「何とも言えないわね……あそこのトリプルトリガーが当たっていたら負けていたバトルだったから、勝ちという勝ちには思えないっていうか……。」

 

マグナ「人は運も実力に含めるのではないのか?」

 

霊夢「……そうね。そういう人も居るわ……って、ピアズ、あんたなんて顔してんのよ。」

 

正しく鳩が豆鉄砲を、というような顔をしていたデスピアズは、四人の視線が集まると表情を戻し、口を開いた。

 

デスピアズ「いや、何も。まさか勝つとは思わなかったというだけだ。」

 

霊夢「ギリギリだけど、ね。」

 

デスピアズ「逆にマグナは今の負けを恥ずべきだな。」

 

マグナ「そうか。では我が軍のリーダーの素っ頓狂な顔と共に覚えておくとしよう。」

 

デスピアズ「……。」

 

マグナ「さて、霊夢よ。分からなかった事は、このバトルで見えたか?」

 

霊夢「……。」

 

幽々子と妖夢が霊夢の方を見る。マグナを睨んでいたデスピアズも霊夢に目をやった。

 

霊夢「……そうね。正直今回、最初の方は負けるだろうなって思ってやってたわ。」

 

霊夢「でも、格上相手でも、時の運とその場の工夫でなんとかなることもある……。」

 

霊夢「次に魔理沙と戦う時も、今のバトルでやった風に、なんとか出来るかもしれないな、って……。」

 

デスピアズ「……。」

 

霊夢「……なんていうか、少し自信がついたかも。礼を言うわ。マグナ。」

 

マグナ「意味のあるバトルになったのなら光栄だ。今のお前なら、友人も助けられよう。」

 

妖夢「な、何かあれば私達も協力しますので!」

 

幽々子「そうよ~。じゃんじゃん頼って~。」

 

霊夢「ハハ、そうね……一応お言葉に甘えておくわ……さて、今日はもう行きましょうか。ピアズ、良いわよね?」

 

デスピアズ「……あぁ。早急に帰るとしよう。言うまでもないが、何か進展があれば互いに連絡をよこせ。」

 

マグナ「無論。」

 

デスピアズ「……では、行くとしようか。」

 

霊夢「えぇ。またね。3人とも。」

 

霊夢達は、3人に見送られ、神社に戻っていった。



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