東方幻守録 〜Guardian of illusion〜 (希望光)
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前日録 幻影の狭間

どうも、あけましておめでとうございます(遅い)。なんとなく書きたいという理由だけで書き始めました。
今回はこのシリーズ初投稿ですが、イメージ曲の紹介をさせていただきたいと思います。
今回のイメージ曲は豚乙女さんの『幻想のサテライト』です。この曲の歌詞などを後半部分はイメージしながら書いてみました。では、どうぞ。


 燃え盛る炎の中に1人の少年がいた。その少年は、もう息が無いであろう少女を抱いている。

 その少年の見つめる先、灰色に染まった空に1つの黒い影があった。

 少年はその影を見つめながら、ただ泣くことしかできなかった——

 

 

 

 

 

 とある時代の京都にあるとある大学にて、2人の少女が話していた。

 

「今日はどうするの蓮子?」

 

 蓮子と呼ばれた黒髪の少女が答える。

 

「今日も昨日と同じところを調べに行こうと思うだけど。それでいいかなメリー?」

 

 メリーと呼ばれた少女が金髪を風になびかせながら笑顔で頷く。

 

「うん!」

「じゃあ行こうか——」

 

 そう行った彼女は何かを見つけた。

 

「あれってもしかして」

 

 彼女の向いている方向には1人の少年がいた。

 

「おーい」

 

 蓮子に呼ばれた少年は振り返る。髪と双眸はそれぞれ黒。見た目は彼女らより少し幼く見えた。しかし、どことなく大人びていた。

 

「……ん?」

「やっぱり昊空君だった」

 

 昊空と呼ばれたその少年は彼女らの側に近づいてきた後、2人を見てから問いかける。

 

「どうしたんだ蓮子? それにメリーも。秘封倶楽部の活動か?」

「うん。昊空君も一緒に来ない?」

 

 メリーに問われた昊空は少し考えてからこう返す。

 

「遠慮しておくよ。今日はこの後バイトが入ってるから」

「そっか、残念だな〜」

「昊空君も一緒に秘封倶楽部として活動しようよ」

「考えておくよ。それはそうと、今日は何をするんだ?」

「今日は向こうの森を調べてみようと思うの」

 

 蓮子が答えたことにメリーが付け加える。

 

「といってもここ数日ずっと同じところを調べているけどね」

「あっちか……」

「どうかしたの?」

「いや、最近『あっちの方が危ない』って言う話を聞いたりしたからなと思って。止めはしないけど注告はしておくよ。あまり奥の方に入るなよ」

 

 それに、と言って昊空は続ける。

 

「ここ数日、なんとなくだけどあっちの方から嫌な予感もするし」

「そっか。取り敢えず気をつけてみるよ」

 

 昊空は何となく腕時計に目を落とし言った。

 

「おっと、もうこんな時間だ。俺はこれで失礼するよ」

「うん、じゃあね」

「また明日」

 

 そんなやりとりの後、昊空は走って行った。

 

「私達も行こうか」

「そうだね」

 

 メリーと蓮子、秘封倶楽部の2人も目的の場所に向かって行った。

 この時宇佐見 蓮子、マエリベリー・ハーンことメリー、そして霧島 昊空(そら)の3人はまだ知らなかった。この後に待ち受けているとんでもない出来事を——

 

 

 

 

 

 その日の夜、バイトから帰ってきてある程度のことを済ませた昊空は寮にある自室で寝巻きに着替えてベットの上で横になっていた。

 明かりを消し、目を閉じてまさに眠りにつこうとしたその瞬間、ある光景が見えた。

 森の中を走る2人の少女、2人を追いかけるかのように後ろから無数の影が迫っている。

 

「……?!」

 彼は飛び起きた。そして、妙な胸騒ぎを感じた。今見た光景が夢ではなく現実である。そんな気がしてたまらなかったのである。

 ベットから出た彼は、急いで着替える。

 

 そして小さめのレジャーリュックと、布に包まれた棒状のものを掴み取る。

 そして、靴を履いた彼は彼女らが——秘封倶楽部の2人がいるであろう場所へとかけて行った——

 

 

 

 

 

 森の中を走る少女と手を引かれるように走るもう1人の少女。2人を追いかけるように無数の影が迫り来る。

 2人は必死になって逃げる。そうして森の中を走っている間に開けたところに出た。

 そこに出たところで、手を引かれるように走っていた少女が突然手を振り払って言った。

 

「もう……もう嫌だ! 何もかも信じられない! 全部、全部嘘なんだ! こんなことになるなら、くるべきじゃなかったんだ!」

「落ち着いてメリー!」

 

 取り乱したメリーをなだめようと試みる蓮子。

 

「どうして蓮子はそんなに落ち着いていられるの!? 私には、私にはわからないよ!」

 

 そう言うと、メリーは走って行ってしまった。

 

「あ、メリー! 待って!」

 

 蓮子はメリーを追いかけようとする。

 

「——!」

 

 その彼女の目の前に、先ほどまで後ろにいた影が現れる。

 その影が彼女を取り込もうとしたその刹那、彼女は左からの強い衝撃によって右側へと転がる。

 

「うっ……」

 

 ゆっくりと瞳を開くとそこには見覚えのある少年がいた。

 

「……昊空……君?」

 

 体を起こし先程まで自分がいた場所を確かめると、影が静止していた。どうやら、彼に助けられたらしいことを蓮子は理解した。

 

「……逃げるぞ」

 

 昊空がそう言いながら蓮子の手を引いて走り出す。

 影は相変わらず静止している。

 

「待って、メリーが、メリーが居なくなったの!」

 

 それを聞いた昊空は驚く。

 

「何だって! メリーはどこに行った?」

 

 蓮子は泣きながら答えた。

 

「分からない……分からないよ!」

「落ち着け、蓮子!」

「全部……全部私が悪いんだ……。あの時……昊空君の注告をちゃんと聞いておけばこんなことには……。そのせいでメリーは……」

「お前のせいなんかじゃ無い。誰も悪くは無いんだから」

 

 昊空は少しの間、蓮子が落ち着くのを待つ。

 そして蓮子が少し落ち着いたところで尋ねる。

 

「メリーはどっちに行った?」

「あっちの方向に走って行ってしまった……」

「分かった。探しに行こう」

 

 そう言いながら、そばにあった水溜りに目をやる。

 そこには月が映っていた。どこも欠けていない満月の月が。

 昊空はその月に違和感を感じた。

 

「……なあ、蓮子」

「何?」

「今日って満月だっけか?」

「え? 違ったと思うけど」

 

 蓮子がそう行った次の瞬間、水面に映る月が黒く染まり不気味な笑みを浮かべた。

 

「……ッ?!」

「え?!」

 それを合図にしたかのように、周りの木の影などにも同じような黒い影が現れ、口を開けて不気味な笑みを浮かべる。

 

「しまった……囲まれている!」

「え!」

 

 そして、周りの影たちは一斉に2人へと迫ってくる。

 

「走れ!」

 

 そう言った後、2人は走り出した。

 しかし影達は簡単には逃がしてくれなかった。

 迫ってくる無数の影を躱しながら走って行く2人。

 その影の1つが蓮子へと襲いかかった。

 蓮子は目を閉じて身構えた。

 しかし、何の違和感もなかった。恐る恐る目を開けると、昊空が身を呈して彼女を守っていた。

 

「昊空君!」

 

 昊空は影に絡みつかれていた。

 自分を助けようと近づいてくる蓮子に昊空は言った。

 

「行け!」

 

 蓮子は躊躇う。

 

「で、でも昊空君——」

「俺に構わずに行け! アイツを、メリーを助けられるのはお前だけだろ!」

 

 その言葉を聞いた蓮子は少し俯いた後に彼に背を向けた。

 

「行ってくるよ」

 

 そう言って彼女は再び走り出した。

 その彼女に地面を這って近づく影があった。昊空はその影に向けて、布に包まれていたものを投げつける。

 投げたものは影の目の前の地面に突き刺さり、影の行く手を阻んだ。

 

「これ以上は……行かせないぜ」

 

 昊空はそう呟いた。

 そして、絡みついている影を無理やり引き剥がす。

 

「……ッ!」

 

 影を引き剥がした昊空は、地面に突き立っているものを掴む。

 彼が掴んだもの、それは——刀である。

 そして横に持った刀の柄の部分右にしてを掴んで鞘から抜く。

 その刃は、鮮やかな銀色の輝きを放ちながらも僅かに緋色の輝きも放っている。

 昊空は抜いた刃を影へと向ける。

 

「……ようやくみつけた」

 

 その言葉に反応したのか、無数の影が1つに集まり人のような形を成して行く。

 

「……」

「……」

 

 お互いの間には沈黙が続く。

 その沈黙を破るかのように昊空が斬りかかる。

 

「はぁぁ!」

 

 その攻撃を影は避けた後、一歩後退する。そしてその刀に対して、どことなく恐怖のようなものを表した。

 

「……?」

 

 昊空はそれを見て首を傾げた。

 次の瞬間、影は逃げ出した。

 

「あ、待て!」

 

 昊空はその影を追いかけるために走り出した。

 影は森の奥へと進んで行く。それを追いかけて昊空も森の奥へと進んで行く——

 

 

 

 

 

 しばらく追いかけた後、昊空は影を見失ってしまった。

 代わりに、進んでいた方向に光が見えた。

 昊空はそこを目指して進んで行く。

 そこにたどり着くと、少しだけ開けたところに出た。

 

 その正面には、何やら道のようなものがあり、その傍らには苔むした地蔵があった。

 彼はまた進んで行く。

 その先には、石段があった。

 

「石段?」

 

 首を傾げながら石段を登ると、鳥居が構えられている。

 その鳥居を見たとき、随分と長い間放置されているような感じがした。

 そこで、彼の持っていた刀が震え始めた。

 

「……なんだ?」

 

 その光景に、少し唖然としていた彼の頭に痛みが走る。

 その後、彼の頭の中にとあるイメージが流れ込む。

 

「これ……は?」

 

 彼は少し戸惑った。

 

「こう……しろって事か?」

 

 そのイメージ通りに刀を正面へと向ける。

 すると刀が緋色の光を放った。

 

「……?!」

 

 その光が辺り一帯を包んだ。

 思わず彼は目を閉じた。そしてゆっくりと目を開くと、先程までとは違う光景が目に入った。

 

「……さ、桜?!」

 

 辺り一帯が先ほどまでの生い茂った緑から桃色に変わった。

 同時に、先ほどまで紺色だった空が雲ひとつない青空になっていた。

 

「何が起こっているんだ……?」

 

 そう呟いた彼の耳に自分のものでは無い声が入ってくる。

 

「……教えて欲しいか?」

「……!?」

 

 声のした方向を向くと、先ほどまで自分が追いかけていた()がいた。

 彼は、刀を構えた。

 

「まあ、そうピリピリするな。取り敢えず、お前には礼を言わないといけないわけだしな」

 

 影の言ったことに対して眉を潜めながら聞き返す。

 

「どういうことだ?」

 

 影は答える。

 

「俺はずっとここに入ることを目的としていてな。今、その目的がお前のお陰で叶ったから礼を言わなければならないと思ってな」

 

 そこまで聞いて昊空は理解した。

 自分は利用されたのだと。

 

「……謀ったな」

「そんなことはしていないよ。ただ俺はお前をここに導いただけだ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、彼は斬りかかっていた。

 

「——おっと」

 

 その攻撃を予想していなかったらしい相手は慌てて避ける。

 

「危ねーな。いきなり刀を振り回すなよ」

 

 刀は相手を軽く掠っただけであった。

 

「さてと、こっちにきたからにはこれはもう必要ないな」

 

 そう言ってそいつ——影は()()()()()()()()()()()()()()()

 

「な……!」

 

 あまりのことに昊空は唖然としていた。

 影の中から出てきたのは、自分とそっくりな姿をしたものだったからである。

 昊空は目の前の光景に訳が分からなくなった。

 

「おーい、何ボーッとしてんの? まあ、良いや。じゃあね」

 

 そんな昊空を横目に、そいつは飛んで行く。

 我に返った昊空はそいつを追いかける。

 こいつは仕留めないといけない。そう思った。

 その日を境に蓮子とメリーのいる世界から、霧島昊空という1人の人間が忽然と姿を消した。




今回は取り敢えずここまで。次回もどうぞお楽しみに!(いつ投稿されるのかがわからないが)


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宝刀伝
第01話 楽園に現れし災厄とその追跡者


どうも、お久しぶりです。
かなり投稿をサボってました。最近テストの勉強とかで忙しくてなかなか手を回すことができませんでした。取り敢えず、完成したのでどうぞ。


 その日、1つの違和感と1人の少年がこの世界に現れた——

 

 

 

 

 

 外の世界とは地続きでありながらも、外の世界からは入ってこれない楽園、幻想郷。

 そんな幻想郷は普段と変わらず平穏であったが、一部の有力な者達は違和感を覚えた。

 幻想郷を覆っている結界である『博麗大結界』を管理している『博麗神社』の巫女である博麗霊夢もそのうちの1人だった。

 

 そんな彼女は普段と変わらず縁側でお茶をすすっていた。違和感などは感じなかったかのように。

 基本的に彼女はある程度までことが進まないと行動しない。要はめんどくさがりなのである。

 何か大きなことが起きなければいつもと同じようにのんびりしている。

 それが彼女、博麗霊夢である。

 そんな彼女のもとに来客が訪れた。

 

「よう霊夢。遊びに来たのぜ」

 

 やってきたのは白と黒で統一された格好をした魔法使いの霧雨魔理沙である。

 

「何しに来たのよ」

 

 霊夢は魔理沙に対して辛辣に返す。

 

「そんな冷たい言い方しなくてもいいだろう。せっかく魔理沙さんが来てやったのぜ」

「誰も頼んでないわよ」

「……相変わらず酷いのぜ」

「私は本当のことを言っただけよ」

 

 そういった霊夢の顔が急に険しくなる。

 

「どうしたのぜ霊夢?そんな険しい顔なんかして?」

 

 霊夢は率直に答えた。

 

「いや、さっきからなんとなくだけど違和感を感じていたのよ。で、その違和感がなんとなくだけどこっちに近づいてきているのよね」

 

 霊夢の話に興味を持った魔理沙はさらに尋ねる。

 

「その違和感は今どの辺なのぜ?」

「あの辺よ」

 

 そう言って霊夢は少し高台にある神社から見える目の前の森の中を指した。

 魔理沙は気になったことを訪ねた。

 

「お前は行かないのか?」

 

 霊夢は即答した。

 

「行かないわ」

 

 その返答に、イラッときた魔理沙は言い返していた。

 

「そうかよ!じゃあ私は1人で行ってくるのぜ!」

 

 そして魔理沙は、箒に跨りそれがあるであろう場所へと向かって行った。

 魔理沙の背中を見送った霊夢は呟いた。

 

「あいつ、1人で大丈夫かな…」

 

 霊夢は祓棒とお札を持つと魔理沙の後を追った——

 

 

 

 

 

 森の中を駆ける二つの影があった。

 一方は宙を漂いながら、もう一方は地面を走りながら森を駆けて行く。

 地面を走っている方である少年——昊空(そら)は、宙に浮かびながら自分の前を進んでいる()()()を仕留めるために追いかける。

 

 すると目の前を飛んでいたそいつは突然止まった。

 それにつられて昊空も止まる。

 そいつは振り返ると、昊空に向かってこう言った。

 

「そろそろ終わり(チェックメイト)といかないか?正直こんな追いかけっこをしていても——面白くない」

 

 昊空は返した。

 

「いいぜ。ただ、その前に一つだけ教えてくれ」

「何だ?」

 

 昊空は、今自分の中で一番聞きたいことを尋ねる。

 

「お前は誰なんだ?」

 

 その質問に対して相手は少し考え込む。

 

「そーだな…」

 

 そして何かを閃いたかのように答えた。

 

「取り敢えず——シャドウとでも名乗っておくことにするよ」

 

 そう答えると、シャドウは不敵な笑みを浮かべて昊空に言った。

 

「聞きたいことは聞けただろ?じゃあ、サヨナラだ!」

 

 そう言い終わると同時に、手元に力を集め黒い影のような塊を作り、ソラに向けて放った。

 

「!?」

 

 昊空は突然のことに驚いたが、そんなに速くはないそれを刀で弾く。

 それを見たシャドウは再び黒い影のようなものを複数放つ。

 昊空はそれらも刀で弾いていく(弾いたそれらはその場で消滅した)。

 そして最後の一つを弾こうとした時、彼はシャドウの表情が自分を嘲笑しているものだと気がついた。そして思った。

 

(これを弾くのは不味い!)

 

 しかしその考えに至るのは遅かった。彼は振りかざした刀を止めることはできなかった。

 そして、振りかざした刀が相手の放ったそれと接触した瞬間——

 

 

 

 

 

 箒に跨がり目的の場所へと向かっている魔理沙は、霊夢に対して腹を立てていた。

 彼女が何かに気付きながらも行動しない。

 持って生まれた才能だけで自分よりも強い。

 自分よりも強いのに何もしようとしない。

 

 それが、彼女が霊夢に対して腹を立てている理由である。

 そんな彼女に、霊夢が追いついた。

 魔理沙は横に並んだ霊夢の方を向くことなく不機嫌そうに言った。

 

「来ないんじゃなかったのか?」

 

 霊夢も魔理沙の方を向かずに答える。

 

「嫌な予感がしたから見に来たのよ」

 

 そう言葉を交わした二人の目の前で突然——どん。

 森が爆発した。

 

「「!?」」

 

 二人は突然のことに驚いた。

 

「…一体何が起こったのぜ」

「…わからないわ」

「とにかく急ぐのぜ」

「ええ」

 

 二人は爆発が起こった場所へと向かった。

 そして爆発した地点の直ぐ側で宙に浮かんでいる人影を見つけた。

 その人影の視線の先には、木の根元に倒れているもう一つの人影を見つけた。

 

 先程の爆発で吹き飛ばされたのだと二人は理解した。

 霊夢は、宙に浮かんでいる人影に近づいた。そして尋ねた。

 

「あんた、一体何者?」

 

 これに対して相手は振り向いて答えた。

 

「通りすがりの者だよ。()()()を始末したら帰るからさ」

 

 そう言いながら親指で後ろを示す。

 

「あんた、通りすがったにしては異常ね。それにあんた人間じゃないわね?」

 

 意外な答えが返って来たことに相手は驚いているようだった。

 

「へぇ〜、人間じゃないって一発で見抜けるなんて。そういう君もただの人間じゃないみたいだね」

 

 少し面白く感じたらしい相手は笑って返した。

 

「ええ、そうよ。私はただの人間じゃなくて巫女」

「巫女?」

 

 相手は復唱するように聞き返す。

 

「私は博麗の巫女。その使命を持って——あなたを倒す!」

 

 そう言った霊夢は、懐から取り出した相手を自動追尾するお札——『ホーミングアミュレット』を相手に向けて放つ。

 しかし、その攻撃は相手に当たらなかった。

 

「自動追尾とは、また厄介なのを使うね〜」

 

 そう軽い気持ちで言いながら全ての弾を避けて行く。

 

「…ッ!」

 

 霊夢は動揺した。

 

(何で!何で当たらないの!ほとんどの弾が当たるはずの速度で飛んでるはずなのに何で!)

 

 相手はジリジリと距離を詰めて来る。

 霊夢は直感的に思った。あいつに触れられるのは不味いと。

 あと、五メートル程で触れられる。そう思った時だった。

 

「?!」

「!!!」

 

 相手めがけて、霊夢のものとは違う弾が放たれた。

 相手はその弾を避けるために霊夢から距離をとった。

 相手は弾の飛んで来た方を見る。霊夢も同じ方を見る。

 そこにいたのは、魔理沙だった。

 

「私のことを忘れてもらっちゃ困るのぜ!」

 

 そう言い放った魔理沙は先程と同じ弾——『マジックミサイル』を放つ。

 相手はそれらも全てかわした。そして魔理沙に質問した。

 

「お前は何者だ?どう見てもただの人間にしか見えないが?」

「失礼な!私は霧雨魔理沙、()()の魔法使いだ!」

「あ、自分で『普通』って名乗ったよ…」

「…取り敢えずそれは置いておいて、私もお前のことを退治させてもらうのぜ!」

 

 そう言った魔理沙は再びマジックミサイルを放つ。

 

「おっと」

 

 その攻撃を相手はまたしてもかわす。

 

「この……当たれッ!」

 

 次々に弾を放っていくが一つも当たらない。

 そんな時、霊夢が魔理沙を呼んだ。

 

「魔理沙」

 

 呼ばれた魔理沙は、攻撃の手を緩めずに霊夢の方に振り向き答える。

 

「何なのぜ?」

「あいつに対して、あんたお得意の火力押しじゃ倒せないと思うわ」

 

 そう言われた魔理沙は、少しカッとしながら聞き返す。

 

「じゃあ、どうするんだよ!」

「物量攻めをやるわ」

「物量攻め?」

 

 その答えに対して、魔理沙は思わず聞き返す。その瞬間今まで行っていた攻撃の手を止めてしまった。

 そのことに相手は少し驚いたが、二人が打ち合わせのようなものをしているのを見て何故か待っていた。

 

「そうよあんたも手伝って」

 

 そう言って霊夢は弾幕の刻まれた札——『スペルカード』を取り出す。

 頷いた魔理沙も同じくスペルカードを取り出す。

 二人は相手の方を向く。

 相手は何が起きるのか興味しんしんの様子だった。

 そして二人は同時に叫ぶ。

 

「霊符『夢想封印』!!」

「魔符『スターダストレヴァリエ』!!」

 

 叫ぶと同時に霊夢からは霊夢を中心に色とりどりの大きい光弾による弾幕が展開され、魔理沙からは魔理沙を中心とし星型の弾で構成された弾幕が展開された。

 相手は意外な展開に驚いた。

 

「おいおい…マジかよこれ」

 

 そう言った相手は少し焦っているようだった。

 相手の様子を見るに避けるので精一杯といった感じであった。

 その隙を霊夢は見逃さなかった。

 

「魔理沙、畳み掛けるわよ」

 

 その言葉に魔理沙は頷く。

 そして二人は再びホーミングアミュレットとマジックミサイルを放つ。

 相手はそれを避けられなかった。

 避けることができなかった。

 しかし、その攻撃が当たることはなかった。

 相手が弾をすり抜けたのである。

 

「ッ?!」

「どうなってるのぜ…」

 

 二人はあまりのことに唖然とした。

 唖然とした二人を見ながら相手は言った。

 

「いやー、結構楽しませてくれたね。ここまでやるとは思ってなかったよ。ちょっと意外だったね。じゃあ、今度はこっちから行くよ」

 

 そう言って相手は不敵な笑みを浮かべた。

 そんな相手を見ていた霊夢は突然魔理沙を掴むと後退した。

 あまりのことに魔理沙は驚いた。

 

「霊夢、何するんだぜ!」

 

 それを見て相手は少し不審がっていた。

 相手が二人のそばに近寄ろうとした瞬間——

 

 

 

 

 

 ——全身の痛みに堪えながら、昊空は立ち上がった。

 そして上空を見上げた。

 そこにはシャドウと、二つの影があった。

 その影がシャドウと戦っているということもすぐに理解した。

 

 今すぐ加勢に行きたいとも思ったができなかった。

 今の彼には、近接戦を行う程の力が残っていないのである。

 それを理解していた彼はここから攻撃するしかないと思った。

 そして彼はある言葉を呟いた。

 

「転送シークエンス起動…」

 

 その言葉と同時に、彼の周りが帯電し始める。

 

「転送コードA-001…」

 

 その言葉を呟いたあと、『コード認識、A-001転送』そうアナウンスが入った。

 直後彼の手元には、彼の身長の倍ほどの長さの機械があった。

 その機会は銃口と引き金が付いていた。

 彼はそれの引き金を右手で掴み左手で銃口の方を持ち支える。

 そして彼が引き金を一度引くと銃口にエネルギーが集まり始めた。

 そして、ほぼ限界まで溜まったあたりで彼は再び引き金を引き叫んだ。

 

「いっけぇぇぇぇえ!!」

 

 銃からは物凄いエネルギーが放出された。

 そのエネルギーは直線でシャドウへと放たれる。

 そしてシャドウへと直撃する——

 

 

 

 

 

 横から見ていた霊夢と魔理沙はとんでもない光景を目にした。

 相手は直撃する瞬間自分の前に黒い影のようなものを壁のようにして展開した。それと同じようなものを自分の後ろにも展開する。

 そして攻撃が当たった瞬間、その攻撃は黒い影のようなものに吸い込まれ、そいつの後ろ側へと抜けて行く。

 そして、その抜けた攻撃は徐々に威力を弱めながら結界へと当たった——

 

 

 

 

 

 全てのエネルギーを放ちきった彼の手元にある武装——『プラズマキャノン』は再び彼の手元から消える。

 それが消えるのを見送った彼は、上空を見上げた。そんな彼の目に入ったものは、無傷のシャドウだった。

 

「何で…無傷なんだ…」

 

 そう言った昊空は呆然とした。

 

「何ででしょうね。まぁ、君に知る機会はないと思うけどね」

 

 そう言ったシャドウは三つ程生成した影を再びソラ昊空へと放った。

 昊空はこれらがまた爆発するものだとわかった。そんな彼は思考的にはもうどうしようもない状況だった。

 しかし、彼の意思とは別に体は動いていた。

 刀を掴んだ彼は、自分の正面へと向かって来る影と自分との間の射線に刀の切っ尖を影の方に向けて放っていた。

 

 そしてその刀影は刀と接触すると同時に消えて行った。

 彼は正面の攻撃は防いだが、両端の攻撃を防ぐことはできなかった。

 自分の左右に着弾したそれらの爆発に巻き込まれたソラの記憶はそこで途切れるのだった——

 

 

 

 

 

 霊夢と魔理沙は目の前で起こった出来事に対して、頭での処理が追いついていなかった。

 しかし、目の前の奴が再び影を放ち爆発を起こしたことで二人は我に返った。

 

「あんた、何が目的なの」

 

 霊夢は少し回転が遅くなった頭で思ったことを聞いた。

 

「そればっかりは言えないね」

 

 相手はそう言った。

 

「答えなさい。答えないなら力尽くで吐かせるわ」

 

 そう言った霊夢は再びホーミングアミュレットを放つ。

 

「チッ」

 

 舌打ちした相手は、先ほどと同じく影で作った壁のようなもので自分を覆うとその影とともに消えてしまった。

 

「逃げられた…」

「…逃げ足の速い奴なのぜ」

 

 そう言った彼女らは、あることに気がついた。

 

「そういえば、あいつを助けないと不味くないのか?」

 

 そう言って魔理沙が倒れている人影の方を指差す。

 二人は急いで、倒れている人影のもとに行った。

 そこに倒れていたのは自分たちとはほとんど年が変わらないであろう少年だった。

 

 そしてそのからの服装を見て彼女らは分かった。

 ここに倒れている彼がこの世界の者ではないことを。

 彼が来ている服は帽子のようなもの(彼女らはこれがフードというなまえだということを知らない)がついており、下に履いているものも間違いなく、ここ幻想郷では見ないものであるからだ。

 

「——取り敢えず神社に運びましょう。魔理沙、手伝って」

「分かったのぜ」

 

 そう言って二人は、少年を博麗神社へと運んで行った。




書き終わってから思ったんですが、後半がなんだかごちゃごちゃしてる気が……。取り敢えず、こんな調子ですがまた頑張っていきたいと思いますので応援よろしくお願いします。次の更新もいつになるのやら…。え、緋弾?もちろん書いてますよ、ハイ(汗)


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第02話 動き出した歯車

どうも、おはこんばんにちわ。希望光です。2ヶ月ぶりぐらいの投稿です。本当に遅くなってしまって申し訳ありませんでした。なんとか気合と根気で書き上げましたのでゆっくり読んで行ってください!
では、本編開始です。


「ん……」

 

 昊空(そら)は目を覚ました。

 彼はゆっくりと上半身を起こした。

 その際右腕に激痛が走った。

 恐らくヒビがはいっているのであろうと昊空は感じた。

 それから、辺りを見渡した。

 彼の目には、畳が敷かれ床の間があり、襖で仕切られ縁側のついた部屋が映った。

 彼はここが和室であるということを理解した。

 そんな彼は思っていたことを口にしてしまった。

 

「……待って……ココドコー!」

「うるさいわよ」

 

 その声と共に襖が開き1人の少女が入って来た。

 その少女は赤と白で統一された格好をしており、頭には大きなリボンをつけていた。

 

「あ、えっと……スイマセン」

「やっと気が付いたのか?」

 

 先ほど少女が入って来たところから別の少女が現れた。

 こちらの少女は金髪で白と黒で統一された格好をしていた。

 

「紅白に白黒……」

 

 昊空は地雷を踏みかける。

 

「「なんか言った?(のぜ?)」」

 

 昊空の呟いたことが聞こえたのか少女等は聞き返してくる。

 その顔は笑っているのだが、額には青筋が浮き上がっていた。

 おまけに2人の後ろに何かとてつもないオーラのようなものが見えた。

 

「な、なんでも無いアルヨ」

「本当かしら? 何か失礼なことを言ってた気がするけど」

「そのようなことがあろう筈が御座いません」

「まぁ、いいわ」

 

 そう言って最初に入ってきた少女は布団の横に正座した。

 後から入ってきた少女もその隣に正座をした。

 それより、と最初に入ってきた少女が昊空に言った。

 

「あんたには色々と聞きたいことがあるんだけど」

「聞きたいこと?」

 

 昊空は聞き返す。

 

「そうよ。取り敢えず、まずはあんたの名前ね」

「俺は霧島昊空。宜しく。昊空って呼んでくれ。えっと……」

 

 昊空が戸惑っていると、紅はk……ゲフンゲフン、最初に入ってきた少女が自己紹介を始めた。

 

 

 

 

 

「作者、あんた後で覚えておきなさいよ」メ、メタァ……

 

 すいません、許してください

 

「ん? 今なんでもするって言ったわね?」

 

 いや、言ってないから! 

 と、とりあえず本編に戻ります……

 

 

 

 

 

「私は博麗霊夢。ここ博麗神社の巫女をやっているわ。霊夢でいいわよ」

 

 霊夢と名乗った少女に続いてもう1人の少女も自己紹介をした。

 

「私は霧雨魔理沙。魔法の森で霧雨魔法道具店をやっている妖怪退治の専門家で魔法使いだ。宜しくなのぜ。私も魔理沙で構わないのぜ」

「霊夢と魔理沙だね。助けてくれてありがとう」

「良いわよ。それよりまだ聞きたいことが聞き終わってないわ」

「あ、悪い。続けてくれ」

「あんたはどうやってここにきたの?」

「それは……気付いたらいた。ていうか、ここは何処なんだ?」

「此処は———」

 

 

 

 

 

 〜少女説明中〜

 

 

 

 

 

「———というところよ」

「なるほど。要するに外側からは入って来れない場所ってことね」

「そういうこと。でも変ね……」

「変ってどういうことなのぜ?」

 

 霊夢の言ったことに対して魔理沙が質問する。

 

「さっき昊空は『気付いたら』って言ったわよね?」

「うん」

「前兆もなしにこちら側に飛ばされてくることはあり得ない筈よ」

「ああ、なるほどなのぜ」

 

 魔理沙は納得する。

 

「前兆……例えばどんな感じ?」

「そうね、まぁ目玉模様の謎の空間に引きずり込まれたとかかしら」

 

 少し考えてた昊空は口を開いた。

 

「なんとなく前兆ぽいものならあった気がする」

「どんな?」

 

 霊夢は尋ねた。

 

「えっと確か——って、俺の荷物は?」

 

 ここで漸く、昊空は自分の荷物がないことに気がついた。

 

「荷物?」

「ああ、あの刀とかなら私が死ぬまで借りようかと———」

「へーそうなんだ……ハイ?」

「どうかしたのぜ?」

「いや、なんで人の物勝手に持ってこうとしてるの?」

「いや、だから借りて行くだけなのぜ。死ぬまでだが」

 

 悪びれる様子もなく魔理沙は言った。

 

「ちょっとあんたら私のことわ———」

「あれがないと色々とまずいから返してくれない?」

「何が不味いんだ?」

 

 自分のことを忘れていないかと質問している霊夢を他所に2人は口論を続ける。

 

「あの荷物がないと()()()に勝てないんだよ」

「あいつ? お前を襲ってたやつのことか?」

「そうだよ。だから———」

 

 そこまで言いかけて昊空は口を止めた。そしてとある方向に視線を向けた。

 

「ん? どうしたのぜ———」

 

 魔理沙も昊空が向いているのと同じ方向を向いた。

 視線の先にいたのは霊夢である。

 俯いている彼女からはとてつもない殺気が感じられた。

 

「え、あの、どうかしたんですか霊夢さん。そんなに殺気みたいなのを出して……」

 

 昊空は恐る恐る尋ねた。

 

「何か、あったのぜ……?」

 

 魔理沙も恐る恐る尋ねた。

 

「……たら」

「「……?」

 

 2人は首を傾げる。

 

「——あんたら良い加減にしなさい!!」

 

 そう叫んだ霊夢はどこからともなく取り出した祓棒を思いっきり振りかざす。

 

 霊夢の攻撃。

 会心の一撃! 

 急所(脳天)に当たった。

 効果は抜群だ! 

 昊空は倒れた。

 

「昊空!!」

「イタタタ……。何でそんな物騒なもので殴るんだよ」

「私のことを忘れたまま、話を進めないでほしいわ」

「原因それなんですか……」

 

 昊空は再び地雷を踏みかける。

 

「なんか言ったかしら?」

 

 そう言った霊夢は昊空とついでに魔理沙に笑顔で尋ねる。その後ろには鬼神のようなものがいた。少なくとも2人にはそう見えた。

 

「何でもごさいません……」

「よろしい」

 

 そう言ってとりあえずことなきを得た。

 少なくとも昊空と魔理沙はそう思っている。

 

「で、魔理沙」

「何なのぜ?」

「昊空の荷物は?」

「いや、さっきも言った通り私がs「魔理沙」返します。すぐ返します。だから睨むのはやめて欲しいのぜ!」

 

 魔理沙は(半強制的に)昊空に荷物を返した。

 

「で、前兆って何があったのかしら?」

 

 霊夢に尋ねられた昊空は刀を取り出して答えた。

 

「この刀が光ったんだ」

「この刀が、ね。抜いてもらっても良い?」

「抜きたいところなんだが……」

 

 そう言って昊空は自分の右腕に視線を移す。それに気づいた魔理沙が尋ねる。

 

「どうかしたのぜ?」

「右腕が折れてるみたいで、抜こうにも抜けないんだ」

 

 そう言った昊空は自分のリュックを漁る。

 

「何してるのぜ?」

「右腕を固定しようかなと。何か板みたいなの無い?」

 

 確かと言って霊夢が部屋から出て行った。そして、部屋に戻ってきた霊夢は細長い木の板を持っていた。

 

「何それ?」

「見て分からないの? まな板よ」

「まな板……」

 

 そう呟いた昊空は霊夢の方を向いた。そして少し考え込む。

 それを不審に思った霊夢は昊空に尋ねた。

 

「何よ?」

「いや、何でも無いんだ」

 

 そう言った後、魔理沙の方も向く。

 

「どうかしたのぜ?」

「何でもない」

 

 そう言った昊空は自分の腕に視線を戻す。

 

「何よ、なんかあるなら言いなさいよ」

 

 霊夢は昊空に問いただす。

 

「だから、何でも無いって」

「本当かしら? はっきり言わないとこれ貸さないわよ」

 

 そう言ってまな板を抱えてそっぽを向く。

 

「待ってそれは酷い。てか、本当に何でも無いから」

 

 まったくと言って霊夢は昊空に板を渡した。

 板を受け取った昊空は、リュックから包帯を取り出した———

 

 〜少年治療中〜

 

「———よしと。こんなもんかな」

 

 魔理沙に三角巾を結んでもらったことによって応急処置が完了する。

 

「ありがとう」

 

 昊空は魔理沙にお礼を言う。

 

「さてと、あんたがどうやって入ってきたかは分かったわ。けど、あいつは一体何なの? 弾幕をすり抜けるしどうなってるわけよ?」

「あいつが一体何なのかは分からない。でも、あいつは自我を持ち己の思考で動いていた」

 

 それにと付け加えて昊空は続ける。

 

「これだけは確かだ。あいつを此処へ連れてきてしまったのは紛れもなく……俺の責任だ」

「何があったのぜ?」

「あいつに利用された。此処——幻想郷に入るために俺を使ったらしい」

 

 魔理沙は再び問いかける。

 

「どう言うことなのぜ?」

「分からない。多分だけど、こちら側に何かを求めてきたのかもしれない」

 

 次に霊夢が尋ねる。

 

「じゃあ、あんたは何であいつと戦っていたの?」

 

 それはと言ってた昊空は答えた。

 

「あいつに大切な友人達を襲われたから。それと、ここへ連れてきてしまった責任を感じたから。だから、あいつを倒さないといけない。そう思ったから戦ってた」

「責任ね。たしかにあんたにはあいつを連れてきてしまった責任があるわね」

 

 霊夢はそう返した。

 昊空は俯いた。

 しばらくの間沈黙が辺りを包んだ。

 それを断ち切るかの様に魔理沙が昊空に尋ねた。

 

「それよりも昊空、あのレーザーは一体なんだったのぜ?」

「レーザー? あー、あれのことか」

 

 そう言った昊空は左手にプラズマキャノンを取り寄せる。

 

「あんた、一体どこからそんなもの出したの?」

「出したんじゃ無い。取り寄せたんだ」

「取り寄せた?」

「そう。空間力学の基礎の応用を……大丈夫?」

「「??」」

 

 聞いていた2人は頭の上に無数の『?』を浮かべていた。

 

「ごめん、もっとわかりやすく言って」

 

 霊夢がそういった。

 

「そうだね……大まかに言うとこの幻想郷を覆っている結界を通り抜けるのと同じようなことが出来るものを使った瞬間移動ってところかな」

「納得したわ」

 

 霊夢はそう言った。魔理沙もその言葉に頷いた。

 2人が納得したことを確認した昊空は手元のプラズマキャノンを元々あった場所に戻す。

 

「あんた、この後どうするの?」

「取り敢えず、どこに行くか考える」

「そう。でも、その怪我が治るまではおとなしくここにいたら?」

「そうさせてもらうよ」

 

 そう言った後、霊夢と魔理沙は部屋を後にした。

 彼女らが部屋を出ていくのを確認した昊空は再び眠りについた———

 

 

 

 

 

 昊空は目を覚ました。

 外を見ると、先ほど起きた時よりも日が傾いていた。

 昊空は日の傾き方から現在の大体の時刻を求めた。

 求めた結果、今は午後2時ごろ。

 

「腹減った……」

 

 時間を知った途端に昊空は空腹を覚えた。

 こういう時の人間の適応力はつくづく恐ろしいと昊空は思った。

 取り敢えず、2人を探すために昊空は部屋を後にした。

 襖の先は板張りの廊下だった。

 そこを真っ直ぐ進んでいると少し明るい部屋があった。

 その部屋は茶の間だった。

 広い縁側から差し込んだ日光が、部屋を明るく照らしていた。

 昊空が部屋に入ると何かが聞こえた。

 

「……スヤァ」

「……?」

 

 疑問に思った昊空は、音の聞こえて来た方を見た。

 そこには、縁側で眠る2人の姿があった。

 

「スー……」

「スヤァ……」

「……」

 

 黙って2人を見ていた昊空は、急に顔を赤くした。

 

(……やばっ、かわい)

 

 不覚にもそう思ってしまった昊空は、慌てて2人から目を逸らした。

 その後、先程まで彼が眠っていた部屋に置いてあった、肌掛け布団を持ってくる。

 

「……?」

 

 2人に肌掛け布団を掛けた彼は何かを感じた。

 彼は茶の間を出て玄関へと向かった。

 そこにあった自分のスニーカーを入った彼は戸を開けて外へと出た。

 外に出た彼は鳥居の方へと向かった。

 鳥居の先には、下へ続く参拝道と広大な森だった。

 その景色を見た彼は、此処が自分の居た場所とは違うということを改めて感じた。

 

「……!」

 そんな感傷に浸っていた彼は再び気配を感じた。

 彼はその気配の方向へと向かって行った———

 

 

 

 

 

「ふわぁ……」

 

 縁側で目を覚ました霊夢は欠伸をする。

 

「あれ、私……何してたのかしら?」

 

 霊夢は今までのことを思い返した。

 

「確か昊空(あいつ)の部屋を出た後魔理沙とお茶を飲んで……」

 

 そこまで言った霊夢は隣を見た。

 

「スヤァ……」

 

 隣では魔理沙が眠っていた。

 一瞬起こそうと思い手をのばしかけたがその手を止めた。

 

「やっぱりこのままにしておいた方がよさそうね」

 

 さてと、と言って立ち上がった霊夢は茶の間を出て別の部屋へと向かった。

 部屋に入ると、そこには畳まれた布団があるだけだった。

 それを見た瞬間に霊夢は嫌な予感がした。

 直ぐさま玄関へ向かってみると、彼の靴が無くなっていることに気がついた。

 茶の間に戻った霊夢は魔理沙を起こすために揺さぶった。

 

「魔理沙、起きて」

「う〜ん、なんなのぜ……夕飯ならまだいらないのぜ」

「そうじゃないわよ、あいつが居なくなったのよ」

 

 その言葉を聞いた魔理沙は、ガバッと素早く上体を起こした。

 

「居なくなった? どういうことなのぜ?」

「分からないわ」

 

 霊夢は魔理沙の質問に対して首を横に振りながら返答した。

 

「あんな状態で妖怪にでも出会ったら……」

「不味いわね……」

 

 2人は深刻な顔をして俯いた。

 

「何が不味いのかしら?」

「「!?」」

 

 唐突に聞こえた第三者の声に2人は声の主の方へと向いた。

 そこにいた人物は、緑のロングヘアーに緑の瞳、半身は幽霊の様に足が無く透けていてその先端が尖っている。

 そして青を基調とした服とマントを身に纏い、頭には太陽の模様が入った三角帽を被っている。

 霊夢は相手に問いかけた。

 

「何しにきたのよ魅魔」

 

 魅魔と呼ばれた彼女は答えた。

 

「ただ遊びに来ただけよ」

「悪いけど今それどころじゃないの」

 

 霊夢は冷たく遇らう。

 

「何かあったの?」

 

 実は、と言って魔理沙が切り出す。

 

「怪我人がいなくなったんだ」

 

 その言葉を聞いた魅魔は再び問いかける。

 

「その消えた者を探しているって訳ね?」

「ええ、そうよ」

 

 霊夢がそう答えた。

 

「この辺で見かけない顔の奴とか見てないか?」

 

 魔理沙が魅魔に問いかける。

 少し考え込んだ魅魔は、そういえばと言って話し始めた。

 

「ここに来る前に、森の中で人影を見かけたわ」

「それはどの辺でだ?」

 

 魔理沙が尋ねる。

 

「この神社の裏手側の森よ。襲うかどうか悩んだけど怪我してるみたいだったからやめたのよ」

 

 その話を聞いた2人は急いで準備をした。

 

「恩に着るわ。魔理沙」

 

 霊夢は魅魔にお礼を言って魔理沙に短く尋ねた。

 

「わかったのぜ」

 

 そう言って2人は神社の裏手側の森へと入って行った。

 

「退屈になってしまったわね」

 

 1人残された魅魔はそう呟き、この後何をするのかを考えながら森の中へと消えて行った———

 

 

 

 

 

 気配に導かれる様に森を進んでいた昊空は、社の前に辿り着いた。

 彼はその社の戸をゆっくりと開いた。

 中には一振りの刀が祀られていた。

 彼はその刀へと手を伸ばした。自分の意思とは関係なしに。

 一瞬手に取ることを躊躇い手を止めたが、再び手を伸ばしてその刀を手に取った。

 その途端、彼を中心に風が逆巻く。

 

「な?!」

 

 その事に彼が驚いていると、手元にある刀が翡翠(ひすい)色に光り出した。

 

(これは?! あの時と同じ———)

 

 刀の放つ眩い閃光に対し彼は、目を固く瞑った———

 

 

 

 

 

「……ッ?!」

 

 幻想郷のとある場所で現れた強力な力を彼女は感じ取った。

 

「どうかされましたか?」

 

 自らの式に問われた彼女は少し黙り込んだ後答えた。

 

「ええ、()()場所で」

 

 その言葉で理解したらしい式は別のことを尋ねた。

 

「向かわれるのですか」

「ええ」

 

 短く返した主は先ほどまで話していた式ともう1人別の式を連れてスキマの中へと消えて行った———

 

 

 

 

 

「……?」

 

 場所は変わって湖のほとり。そこにある館を治める主も、何かを感じていた。

 

「どうかされましたかお嬢様?」

 

 従者に問われた主人は答えた。

 

「今日、何か禍々しいものを感じたことは伝えたわよね?」

「はい」

「あれとは別に新たな力を感じたの」

「それはどの様な?」

 

 従者の問いに、主は少し考えてから答えた。

 

「そうね、敢えて言うなら最初に現れた物と対をなす感じね」

「私が確認して参りましょうか?」

 

 従者の問い再び主は答える。

 

「いえ、今は様子見と行きましょう」

「……?」

 

 その言葉に従者は首を傾げた。

 

「直に向こうからこっちへやって来るわ」

 

 それにと言って主人は続けた。

 

「もしもの時はあの子の遊び相手にでもなってもらうわ。あの子も退屈しているみたいだからね」

 

 そう言った主は不敵な笑みを浮かべた。

 その言葉を聞いた従者は主の意図を理解した。

 失礼します、と言った従者は主の元を離れ別の仕事へと取り掛かった———

 

 

 

 

 

現世(向こう側)はいつも賑やかね」

 

 現世(こちら側)ではない場所で扇子を仰ぎながら彼女は呟く。

 

「そういう時は大抵大事に巻き込まれますけどね」

 

 溜息をつきながら、傍らの少女が返した。

 

「その時は貴方が守ってくれるのでしょ? 頼りにしているわ」

 

 そう言われた少女は、少し顔を赤くしながらも心の中では全てを賭けてこの人を護ろうと強く誓った———

 

 

 

 

 

「……」

 

 竹林の中にある屋敷にいる賢者も何かを感じ取った。

 

「どうかしたの?」

 

 尋ねられた賢者は答えた。

 

「何か大きなものが現れました。月からの使者ではないようですが」

 

 そう返した賢者は続けてこう言った。

 

「姫様もお気をつけて。何が起こるか分かりませんので」

 

 姫様と呼ばれた少女はありがとうと言って微笑んだ。

 賢者は何も起こらなければ良いと心の中で思うのだった———

 

 

 

 

 

「……目覚めましたね」

 

 彼岸にも突如現れた力を感じとったものがいた。

 

「貴方が目覚めたということは何かの前触れ———はっきりと白黒つけなくては」

 

 そう言った少女は自分の部下がサボっていないかを確認するために三途の川の岸へと向かって行った———

 

 

 

 

 

「あやや……、また何か起こりましたね」

 

 カメラを手にした少女が呟いた。

 

「ですが、私にとっては寧ろプラス! 特ダネが増えたのですから! さてと、どこから———って、結局のところ全部回るから変わりませんね」

 

 そう言った彼女は、背中に生えた鴉の様な黒い翼を羽ばたかせ何処かへ飛んで行った———

 

 

 

 

 

「……何か現れた様だな」

 

 山の上の神社にて、そこに祀られている神が呟いた。

 

「とても強い力ですね」

 

 巫女であろう少女が呟く。

 

「ああ。これを利用して信仰を集められないだろうか?」

「この力をですか?」

 

 少女は首を傾げる。

 

「少し様子見でもすればいいんじゃないの?」

 

 2人の会話に、この神社に祀られているもう1人の神が入って来る。

 

「それがいいかもしれないな。今は様子を見ながら準備でもしよう」

 

 そう言った神はニヤリと微笑んだ———

 

 

 

 

 

「何か不吉なことでも起こるのかしら……」

 

 天人がそう呟いた。

 何も起こらなくて最近退屈はしていたが、これは少し違うと天人は思った。

 近々地上に様子見がてら降りて見ようと天人は思うのだった———

 

 

 

 

 

「……?」

 

 地下深くにある屋敷の主も何かを感じた。

 

「地上では何が起きているのでしょうか……」

 

 膝元にいる尻尾が2本生えている黒猫を撫でながら呟いた。

 彼女もまた、何も起こらないことを心の中で思っていた———

 

 

 

 

 

 光が収まり、昊空はゆっくりと目を開けた。

 特段変わったことは無かった。

 突然彼は気配を感じた。

 そして、後ろを向いた。

 

 そこには、上半身だけ見えており腰から下の部分が途切れたかの様に見当たらない金髪の『女性』と呼ぶのに相応しい程、可憐な人物がいた。

 その手には日除けであろう傘が握られていた。

 彼女は口を開いた。

 

「貴方は一体何者なの? どうやってここは入ったの?」

 

 相手を見た彼は無意識に呟いた。

 

「……八雲……紫」




はい、色々あってなんかよくわからないことになりましたよ。取り敢えず今度から緋弾の方の執筆に一旦戻りたいと思います。また投稿について詳しいことは活動報告にあげますのでそちらの方で。
では、自分はこれで(ガシッ)
霊「どこに行くのかしら」
え、どこって次の作品の執筆へ……
霊「逃がさないわよ」
ちょ、待って!何で?!
霊「さっき上で言ったでしょ」
あ、まさか
霊「そのまさかよ」(ニッコリ)
………………
霊「速攻魔法発動!狂○士の魂(バー○ーカーソウル)!!!」
ふぁい??
霊「さぁ、まず1枚目よ!ドロー!モンスターカード!追加攻撃よ!」
え、ちょ、マジですか!あーーー!!!
霊「まだまだ行くわよ!!!ドロー!———」

その後、霊夢は魔理沙が止まるまで数時間モンスターカードを引き続けたそうな。

はい、なんか本当に最後の最後で申し訳ございません。
感想、誤字・脱字報告お待ちしております。感想に関しては書いていただけると作者のやる気が上がります。
こんな調子ですがこれからも頑張って行きたいと思うので応援よろしくお願いします。




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第03話 甦りし宝刀

どうも。希望光です。
久方ぶりに書いてみました。
短いですが、どうぞ。


 紫は目の前の少年のことを全く知らない。しかし、目の前の少年は自分のことを知っている。

 彼女は、この事を不審に思った。同時に、目の前の少年に対して興味を抱いた。

「貴方、何者かしら? どうやって此処へ入ったの? そして、何故その刀を持っているの?」

 紫の問いかけに少年———昊空は、何一つとして応えなかった。

 すると昊空は、左手で右腕を釣っていた三角巾を解いた。さらに右腕を覆っていた包帯まで解いた。

「……?」

 昊空の行動に対して紫は首を傾げた。

 完全に腕が自由になると、昊空は祀られていた刀の柄を()()で掴んだ。

 そして、刀を鞘から抜こうとした。しかし、刀は抜ける様子がない。

「無駄よ」

 紫は昊空に言った。

「それは貴方のような者が抜ける刀ではないわ」

 しかし昊空は紫の言葉に構うことなくただ刀を抜こうとしていた。

「藍、橙」

 それを見ていた紫は自身の式である『八雲 藍』とその式『八雲 橙』を呼んだ。

 そして、それを合図に2人は昊空へと襲いかかる。

 昊空は抜けない刀で2人の猛攻を往なしながら後退していく。

「いつまでその状態が続くかしら?」

 紫は若干嘲笑していた。ここまで愚かしい人間がいるのかと。

 対する昊空は、何も答えず攻撃を避け続ける。

 そして、同時に襲いかかった藍と橙を吹き飛ばすと、その手に持った刀へ込める力を強めた。

 その次の瞬間、昊空は眩い光に包まれた。

「……まさか?!」

 その光景に、紫は息を呑んだ。

 そして、光が消えると、()()()()()()()を握った昊空が居た。

「……信じれないわ」

 紫は、唖然としていた。

「……参っちゃうね」

 ボヤいた昊空は、刀を一振りした。

 すると、目にも留まらぬ速さで、真空の刃が繰り出された。

「……藍、橙!」

 紫の言葉に反応した2人は、即座に後退した。

 それにより、なんとか真空刃をやり過ごす。

「紫様……アレは」

「私達の手には負えないわ。退くわよ」

 そう言って、3人はスキマの中へと消えていった。

 直後、霊夢と魔理沙がこの場所へと現れた。

「……何よここ。初めてきたわ」

「お前でも初めてくるのか? 神社の裏手なのに」

 そう言っている2人の側で、突然昊空が倒れた。

「……って、昊空?!」

 2人は慌てて昊空の下へと駆け寄った。

 昊空は、応答する事なく、気を失ってしまっていた。

「……不味いわね。此処は色々と危ない予感がするわ」

「どうしてそう思うんだ?」

「……カンよ」

 魔理沙は、その言葉で納得した。

「お前がそう言うってことは、危ないって事だな」

「とりあえず、コイツを神社まで運ぶわよ。手伝って」

「おう」

 そう言って、2人は神社に昊空を運んでいくのであった。




はい。
凍結作品ですので、次回の投稿は未定です。
では、これで


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