転生者を更正する警察集団 (ガンダムラザーニャ)
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警察集団の前日譚

「さてさて、このあたりかなぁ~♪」

 

「バン隊長、ちゃんと仕事してくださいよぉ」

 

「うーん、まぁ良いじゃん!

もうすぐ転生者のところに着くんだしさ!」

 

住宅街をバン隊長とよばれた白髪のボサボサした長い髪の少年がだらけた感じで通報のあった転生者のリストと地図を持ち歩き、緑の髪が特徴の少女がそんな態度の男を注意し、少女の恰好したピンク色の髪の少年が少女を宥める。

 

すると、住宅街の隙間のところで隊長は目つきを変えてそこをにらみつける。

 

「おい、そろそろ転生者の下に着くぜ。

かこ、アストルフォ、行くぜ!」

 

「は、はい!」

 

「うん、行こう!」

 

三人は隙間に入り銃を構えた。

 

「動くな!」

 

そこでは、両手の剣を構え今まさに血だらけで倒れこんでいる少女を殺そうとしている男の姿があった。

 

剣を持った男がめんどくさそうに振り向き、頭上から剣を出現し弾丸のような速さで三人を打ち抜いた。

 

打ち抜き、煙が舞い上がるさまを見た男は再び少女の方へと振り向く。

 

「・・・なんだ、ただのポリ公か」

 

「ただの、じゃあねえぜ♪」

 

「なに!?」

 

男が驚き、もう一度振り返ると三人は無傷で立っていた。

 

「まさか、打ち抜いたのか!?

あれを全部!?」

 

「ふーん、「無限の剣製」の転生者か。

お前、いくら転生先が思い通りにならないからって人殺しをするのはどうかと思うぜ♪」

 

「黙れ!

俺の女にならないやつは皆邪魔なんだよ、生きてるだけで目障りなんだよ!」

 

「はあ、結局はそんなことでしか、自分を肯定できないって口か。

・・・だったら今からお前を逮捕してやるよ!

行くぞ!」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

三人は懐から赤、緑、ピンクの機械を取り出し銃に取り付けた。

 

「「「ケーサツチェンジ!」」」

 

『1号!』

 

『2号!』

 

『3号!』

 

『パトレイズ!

ケーサツチェンジ!

パトレンジャー』

 

銃を上に向けて撃つと同時に三人は光に包まれ、バンは赤の鎧を、かこは緑の鎧を、アストルフォはピンクの鎧を全身に纏った。

 

「パトレン1号!」

 

「パトレン2号!」

 

「パトレン3号!」

 

「「「警察戦隊、パトレンジャー!」」」

 

「そんじゃこれから、

お前を逮捕させてもらうぜ♪」

 

「パトレンジャーだと?

ふん、ただのコスプレが俺に楯突くなぁ!」

 

男は剣を水平に構え三人に突進する。

 

2号と3号は左右に銃を構え男の両手の剣を撃ち弾いた。

 

「ぐぁ!

それがぁ、どうしたって言うんだよぉぉッ!!!」

 

男は両手から剣が離れるが、手元から新しい剣を出現させて、血眼になって1号に飛びかかる。

 

だが、1号は一瞬で男の懐に入り何発か腹を殴り付ける。

 

「オラオラオラ!」

 

「ぐっはぁ!

な、嘗めんじゃねぇぞゴミクズの分際がぁぁ!」

 

男は血を吐きながら剣と弓を出し、頭上から大量の剣を出現させる。

 

「死んでしまえってんだよぉぉぉ!」

 

「はっ、いくら能力がすごくても、使うやつがこんな野郎なら、神様の顔も浮かばれねぇな!」

 

1号は二人と一緒に男から発射される矢を全て撃ち尽くす。

 

そんな光景を見せられた男は後退りする。

 

「な、何でだよ!

何で何で何で何で何で何でだよ!!?

俺は、こんなところじゃ死なねぇんだ!

この世界の女は皆俺のもんなんだよぉ!!」

 

「諦め悪いというか見苦しいぞお前。

その特典はお前には早すぎたんだよ」

 

1号は男の方へと歩く、特殊な形の手錠を取り出して。

 

「な、何をする気だ?

やめろ、俺はまだ捕まりたくない!

俺はハーレム作りたいんだよぉ!」

 

耐えきれなくなった男は後ろに振り向いて走り逃げようとする。

 

だが、1号は逃げ出す前に一瞬で距離を詰め男に手錠を嵌める。

 

「・・・16:20、転生者の確保っと♪

ハーレム作りたいんなら、少しぐらい女のことも気遣うっての覚えろよ。

とはいってももうお前には特典も記憶もなくなるがな」

 

手錠を嵌められた男は光に包まれ消滅する。

 

「じゃあな、来世は全うに生きるんだぜ?」

 

 

 

「よーし、今回の仕事終わりだね!」

 

「ふぅ、終わって良かったです。

緊張、してましたから」

 

「はっはっはぁ、じゃあ仕事終わったし、目一杯食おうぜ!

俺が奢ってやるからよ♪」

 

三人は戦いが終わった後店で食事を取っていた。

 

しかし、彼らは知らなかった。

 

自分達の席の後ろに様々な世界を騒がす怪盗集団がいることを。

 

警察と怪盗、本来交わるはずのない二つの物語が今、始まろうとしていた。

 



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パトレンジャーとその関係者の設定

バン

 

容姿は七つの大罪のバン(聖騎士時代)。

パトレン1号の変身者。

転生者で生前は家族のために当たりくじやアルバイトをやっていたが、ある日それらから大金をもらい持って帰った時に家が火柱を立てたような火災に見舞われ家族が全員死んでしまった過去があり、のちに路頭に迷っていたら黒マントの人物に襲われ悲惨な最期を遂げた。

死んだあと、神様から転生者のことを聞き自分と自分の家族のような犠牲者がこれ以上でないようにしたいって考えるようになる。

普段はかなりの楽天家でのんびりしていて、家族の面倒を見ていたことから面倒見が良く、基本的にふざけてるように見えるが相手のことを考えてやっている。

かこやアストルフォのことは親友のように思っているが、かこの好意については気づいているためたまにかこの頭を撫でている。

 

 

 

 

 

 

 

かこ

 

容姿はマギアレコードの夏目かこ。

パトレン2号の変身者。

同じく転生者で、生前は幼いながら家族と共に図書館の管理をしていた。

しかし、ある日図書館には見覚えのない借金や謂れのない誹謗中傷の手紙などが押し寄せるようにきて、果てには親が犯罪者として連行され処刑されしまった過去がある。

そして、両親が処刑されたから一人で悲しみに明け暮れていた時に仮面をかぶった謎の人物が訪れ来客用の茶を出そうとしたときに殺され図書館ごと燃やされた。

死んでからは人間に対してトラウマになっていたがバンやアストルフォの優しさに触れてまた人間を信じようと立ち直った。

元々図書館の管理をしていたことから漫画や小説などを読むのが趣味。

普段は大人しく誰に対しても優しく、子供がいたら絵本を読み聞かせてみたいと思っている。

バンやアストルフォに好意を抱いている。

生前は夏ノ森かこ。

 

 

 

 

 

 

 

アストルフォ

 

容姿はFateのアストルフォ。

パトレン3号の変身者。

生前は貴族の出身で両親と執事の四人暮らしだった。

そんなある時に、執事の様子が変わったことに気が付いたが、当時はただの気のせいだと思っていたが、実は本物の執事は殺されていて、一人の男が変身した偽物だと気付いた時にはすでに遅く、その男によって両親が毒殺され、財産を奪われた。

そしてアストルフォ自身はその男に激しく問い詰めようとした矢先で男である二人に捕まり、服を引き剥がされて凌辱を受けて殺された。

生前のことについて、殺されたことについては、自分が殺されたことよりも、執事の異変に気付けなかったことと親を守れなかったことに対する後悔が強い。

普段は人懐っこくて正義感が強く、困っている人や立ち直れずにいる仲間の相談に乗ったりしている。

貴族出身ではあるが、民間とも交流もあったため世俗に詳しく、転生してからも戸惑うことはなかった。

見た目は誰がどう見ても女の子にしか見えないが実は男の娘で、生前に両親の前で披露した時に喜んでもらったのを機に趣味となっている。

バンやかこのことはかけがえのない家族や親友だと思っている。

 

 

右京

 

容姿は相棒の杉下 右京

パトレンジャーの長官。

かつては杉下 右京として警視庁特命係に所属していた警察だが、転生者による事件を調べていく内に女神エリスと出会う。

そこから転生者の存在を知り、自らも転生者を取り締まるためにエリスから神の力の一部とXチェンジャーと三つのvsチェンジャーを与えられた。

だが、力が弱く、特典を渡したり、転生者や特典のことを調べることができる程度で、転生者に対する決定打に欠けていた。

そこで、Xチェンジャーをかつて付き合いのあった亀山に託し、代わりに戦ってもらっていた。

それでも、一人だけでは対抗するにも限度がある上、Xチェンジャーに登録されたもう一人の変身者も使うため、いつでも変身できるわけではなかった。

また、vsチェンジャーには転生者によって殺された人間の魂の中から使用者を選ぶ性質を持っていたため、バン、かこ、アストルフォに託した。

それと同時に、各々の容姿に似たキャラの特典を与えている。

また、普段は長官室でパトレンジャーの報告書を読んだり、必要とあれば転生者のことを調べたり、協力関係を築いている管理局やIS学園とも連絡を取って情報を共有したりしている。

また、パトレンジャーのことを優しく見守っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

亀山 薫

 

パトレンXの変身者。

右京とは警視庁特命係での付き合いがあったが、現在は警察を辞めて妻と一緒にサルウィンにいる。

だが、ある時どこからともなく飛んで来たXチェンジャーに触れたことを機に、転生者のことを知り、サルウィンを襲っていた転生者から妻と現地の子供達を守るためにために戦っていた。

そんなときに右京とエリスに会い、世界中でもこのようなことが起きているということを知って、正式にパトレンXとして右京達とともに戦うことを決意する。

普段は妻と一緒に暮らしており、現地の子供たちに、自身が警察として培った精神を教えている。

ちなみに、Xチェンジャーは自分から飛んでくることがあれば、自身でも呼ぶこともできる。

だが、Xチェンジャーにはもう一人の変身者がいるため、いつでも変身できるわけではない。

 

 

 

 

パトレンジャーのサポーター。

容姿は艦これの霞改二。

特典は艦これの霞改二。

(だが、かつて大戦で司令の駆逐艦として名を馳せたこともあり、広範囲にわたって探知できるように索敵機能を強化されている。

また、やろうと思えばアルペジオのように駆逐艦を展開することができる)

普段は資料の整理や転生者の反応を探ったりしている。

口が悪くてすぐに人前でクズ呼ばわりするが、相手のことを考えて言っている。

また、彼女も転生者に殺された身であるが、自分からあまり言いたがらない。

 

 

 

 

 

 

 

エリス

 

幸運の女神にして、右京の上司にあたる存在。

右京に神の力の一部を与え、バンたちをパトレンジャーに任命した。

他の神々と同様に、死した人間の魂を別世界に転生させていたが、その転生者たちが人の心を失い、特典を使って悪事を働いてることを知って心を痛めている。

それゆえ、転生者を元の人間に戻って全うに生きてほしいという考えを持つようになった。

自分が神であるゆえに、一度させると、こちらから干渉ができないことので代わりに取り締まれる人間を探していた。

そんな時に、当時転生者による迷宮入りの事件を調べていた右京と出会い、転生者のことを教え、神の力の一部とXチェンジャーと三つのvsチェンジャーを与えた。

Xチェンジャーには右京自身か、右京と付き合いが長く信頼できる者に。

三つのvsチェンジャーは、それ自身が使用者にふさわしいと判断した者と渡すよう告げて。

普段は、人間の世界を覗き見たり、転生者の書類を整理したり、たまに死んでしまうカズマと生き返るまでの間に会話をしたりしている。

 

 

 

※ちなみにパトレンジャー3人の容姿は生前から引き継いでいる。

なお、三人とも転生者であるため、その世界の人間ではないという事で、基本的には生前の苗字を名乗らないようにしている。

 

 

追記

 

彼らは転生した後、神様からパトレンジャーの能力と各々の容姿に似たキャラの能力を与えられている。

バンはクレシューズと魔力スナッチとパトレン1号の力、かこは魔法少女夏目かこの能力とパトレン2号の力、アストルフォはヒポグリフやトラップオブアルガリアなどfateアストルフォの能力とパトレン3号の力を与えられている。



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警察の日常

とある世界にある交番。

 

そこは見た目は事務所だが、そこが彼らパトレンジャーの拠点である。

 

「おいかこぉ、てめぇまた夜更かしして読書してたろ?

目の下に隈ができてるぜ♪」

 

「えぇ、そんな!?

昨日はできるだけ早く寝たつもりなのにぃ・・・」

 

「あっはははは!

昨日の本面白かったね!」

 

「アストルフォ、お前が原因かよ・・・」

 

三人は会話をしながらソファに座り、机に置いてあるパンにジャムを塗って口に運ぶ。

 

二人に注意と突っ込みをだらけたながら注意している長い白髪の少年はバン。

 

パトレンジャーのリーダーであり、パトレン1号の変身者である。

 

基本的にだらけた言動だが、面倒見がよく食事をよく作っている。

 

目の下に隈ができていることを指摘された緑の髪の小柄な少女はかこ。

 

パトレンジャーとしてはバンの助手を担っていて、転生者の記録などの管理を行っており、パトレン2号の変身者である。

 

読書が趣味でよく夜更かししてしまうため目の下に隈ができることが時々あるためバンから注意されている。

 

かこの隣で大笑いしているピンク色の髪の少女の見た目をしている、所謂男の娘の少年はアストルフォ。

 

パトレンジャーの中でも、捜査の関係で異世界に飛ぶことが多いがその分情報が多くたまに行った先の異世界で友達を作ることがあるが、これでもパトレン3号の変身者である。

 

三人の中でもムードメーカー的存在で性別や身分など関係なしに人と接している。

 

「たくよぉ・・・、かこもちゃんと断っとけよ♪

じゃなきゃ俺が一緒に寝てやるからよ♪」

 

「ちょ、ちょっと隊長からかわないでくださいよぉ、もう・・・」

 

「え!?

隊長とかこ一緒に寝るの!?

だったらボクも寝る!」

 

「ちょっとアストルフォちゃん!?」

 

「おーい、今日も仕事だから早く食うぞ♪」

 

バンは呆れながらパンをほおばる。

 

三人が食事を終えた後、各自で転生者や特典に関する書類の整理をしようとしたときに、拠点から通報がが流れた。

 

『緊急事態発生、緊急事態発生!

インフィニット・ストラトスの世界で転生者による異常が確認されています!

パトレンジャー、すぐにこれの調査、および解決に向かってください!

繰り返します・・・!』

 

「インフィニット・ストラトスの世界だぁ?

確かあそこって女がいっぱい出てくるから転生者のほとんどはそこでハーレム作りたいって言うので有名な世界だろ?」

 

「はい、実際それに伴いISというパワードスーツを超える能力などを特典に持って転生される方も多くあります」

 

「でもでもぉ、そんな世界で緊急事態って一体何だろうね隊長?」

 

「んなもん調べてみねえとお手上げだっつの。

アストルフォ、お前その世界での被害状況などを調べてくれ。

かこはあっちの世界の転生者とそいつらの特典のピックアップしろ。

俺はあの世界の映像からそれらしいやつを調べる」

 

「「了解!」」

 

バンは二人に指示した後、パソコンからインフィニット・ストラトスの世界の映像を出し、調べ出した。

 

「うん?

何だぁこいつ?」

 

映像を見てバンはあるものを見つけた。

 

青い空が広がる中、四人ほどのISに乗った少女たちがあっという間に一人の影によって殲滅されていた。

 

それを見た一人の少年は激昂し白いISを展開し、影を切り裂こうと刀のような武器を振り上げる。

 

だが、その影は少年の後ろを通りすぎると同時に、少年の装甲が一瞬でひびが入り武器も刃の根元から先までが粉々に砕かれた。

 

しかも、そんなことを認知させるよりも早く、少年の周りに八つの飛行物体が現れ多方向からビームを発射し少年のISを破壊した。

 

地面へと落ちる少年を見下すように見下ろす影。

 

動きを止めたことによりその全貌が明らかとなった。

 

黄金のフレームを元に、白い装甲、そして何より目を引くのが背中から生えている機械的な八つの青い翼。

 

「こいつってまさか・・・。

かこ、ピックアップは終わったか?

ちょっと気になるところがあるから確認してえんだけどよ」

 

「はい、準備完了です!」

 

かこから渡された資料を見る。

 

「・・・やっぱりな。

こいつはストライクフリーダムっていう奴の特典だな。

まさかあんなチートみてえなの持ってる奴なんていたなんてな」

 

「ストライクフリーダム、ですか?」

 

「あぁ、簡単に言うと翼から遠隔操作できる武器を射出できて、本体だけでも異常に素早く、翼のそれと合わせての攻撃はまさに地獄だ。

しかも、翼のは本来宇宙でしか使えねえけど、あそこの世界じゃあBT兵器と同意義になってるからそのハンデもねえって話だな」

 

「は、はあ」

 

バンの説明に頭がお花畑になるかこ。

 

すると、アストルフォが交番の扉を勢いよく開ける。

 

「隊長ぉ!

被害状況確認できたよ!

今のところIS学園っていうところとその付近だよ!」

 

「ご苦労だなアストルフォ。

よし、じゃあ犯人特定していくぜぇ♪」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

三人は資料を調べ、犯人特定を開始した。

 

「インフィニット・ストラトスの世界でストライクフリーダムの特典持ってたやつ見っけ♪」

 

バンは資料から一枚の書類を取り出し二人に見せる。

 

「あっちの世界じゃあストフリ持っての転生はこいつだけだな。

名前は芝浦大和。

男性で、生前は自殺して特典をもらってあの世界に行ったやつだな。

最も、自殺からの転生はごく最近らしいがな」

 

「では隊長、行きましょう!」

 

「ボクも一緒に行って戦うね!」

 

「そうだな♪

んじゃ、パトレンジャー出動だ!」

 

「「了解!!」」

 

三人は銃型のアイテムのVSチェンジャーを手に取りとそれぞれの制服を纏い、出動する。

 

しかし、彼らは知らなかった。

 

その世界には、怪盗集団も向かっていることに。

 

 

 

 



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潜入と怪盗との出会い

バン、かこ、アストルフォはインフィニット・ストラトスの世界の中で被害が大きいIS学園の入り口にたどり着いた。

 

「おいおい、こいつはいくらなんでも・・・」

 

「ひ、ひどすぎます!」

 

「うっわぁ・・・。

改めてみたけどやっぱり、ねぇ」

 

三人が目の前の惨状に思わず目を覆う。

 

入り口の時点で最早焼け野原になっていたのだ。

 

奥に見える校舎らしき建物も瓦礫の山になっていて原型を留めていなかった。

 

「隊長、かこ、早く行こ?」

 

アストルフォは探知機を取り出す。

 

「まだ、この近くに反応あるから、さ?」

 

「・・・そうだな」

 

三人は奥へと歩みを進める

 

足を進めると、一部無事だった校舎が見えそこには大勢のけが人が運び込まれ治療を受け、無事だった人はその場所に避難しているのが見えた。

 

すると、三人の前をタンカーが通りかかった。

 

「う、ぐうぅっ!!」

 

「お、おい一夏しっかりしろ!」

 

「通してください!

彼は今危険な状態なんです!!」

 

タンカーに乗せられた少年に、必死で呼びかける少女。

 

だが重症ということもあり医師に追い払われてしまった。

 

「・・・私は、一夏に何もしてやれないのか!?

私は、一夏と一緒に居たいだけなのに・・・!」

 

目のまえでくじけながら嘆く少女。

 

バンはそんな少女が放っておけないのか声を掛けた。

 

「おい、お前ここの生徒か何かか?

というか大丈夫かよ?」

 

「・・・誰だ貴様ら?

まさかあいつの仲間か?」

 

「違えよ♪

俺たちは警察だ、ちょっとここで異常が確認されたんで調査と解決に来たんだよ」

 

「信じてもらえないかもしれませんがこの人の言ってることは本当なんです!

ですので、少しお話を聞かせていただけませんか?」

 

「何ならボクが代わりにあの子のところに行って看病してくるからさ!」

 

「・・・わかった。

だが、私も他の奴らも、突然のことだったからあまり言えないぞ?」

 

そう言って少女はこの現状を話した。

 

青い八枚の翼の全身装甲が突然ISの演習中に襲い掛かったこと。

 

量産型に乗った生徒はその姿を見た瞬間ISを切り刻まれコアを破壊されたこと。

 

専用機持ちの代表候補生や教師も戦ったが手も足も出ず、その様は蹂躙に等しかったこと。

 

先程タンカーで運び込まれた少年も、まったく歯が立たなかったこと。

 

「・・・そうか。

ところでそいつは今どこに向かったかって知らねえか?

俺たちもちょうどそんな奴追っかけてんだけどよ♪」

 

「アリーナというドーム状の施設がある。

あそこにそいつは向かったんだ」

 

「あの潰れかけてるドームだな?

サンキュー♪」

 

バンはドーム状の建物を見る。

 

潰れかけてるが、ドームとしての形状はまだ保っていた。

 

だが、その瞬間だった。

 

アリーナの上空を中心に青空から暗い夜へと変わったのだ。

 

「バン隊長!

アリーナにそれらしき反応が動いてます!」

 

「そうだな。

じゃあな嬢ちゃん、お前は早く男ん所に行ってやれよ!」

 

「あの子と仲良くね!」

 

「お、おう」

 

アストルフォに言われて顔を真っ赤になった少女に見送られながら三人は走る。

 

「このドームなんだよなぁ」

 

「はい!

反応を見る限り、ここで間違いないと思われます!」

 

アリーナに到着し、かこは探知機で反応の位置を確認する。

 

かなり動き回ってるがアリーナ内部に留まってるのがわかる。

 

「でもさぁ、何かさっきからこの中からの音激しくない?

他にも誰かいて争ってるような」

 

「だったら尚更すぐに止めに入るしかないだろ?

とりあえずVSチェンジャー構えて行くぞ!」

 

「「了解!」」

 

三人は銃型のアイテムであるVSチェンジャーを構えアリーナ内部に入り込む。

 

そして反応があるアリーナの中心に着くと三人はVSチェンジャーを構えた。

 

「そこまでだ!」

 

VSチェンジャーを構えた三人は、目の前の光景に驚く。

 

通報にあったストライクフリーダムがぼろぼろになって倒れていたのだ。

 

ストライクフリーダムの転生者の前に怪盗のような鎧を纏った赤、青、黄色の三人いた。

 

そして何より、バンたちの目を引いたのは彼らの武器だった。

 

手に持っている銃型の形状がバンたちパトレンジャーのVSチェンジャーと酷似していたのだ。




すみませんが近い内にアンケートさせて頂きます。


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交わらない正義

バンたちは驚きを隠せなかった。

 

目の前にいる三人の怪盗の手に持ってるものが、自分たちパトレンジャーのVSチェンジャーと酷似していたからだ。

 

バンは二人に合図し、VSチェンジャーとそれぞれ赤、緑、ピンクのトリガーマシンを取り出した。

 

「「「ケーサツチェンジ!」」」

 

『1号!』

 

『2号!』

 

『3号!』

 

『パトレイズ!

ケーサツチェンジ!

パトレンジャー!』

 

バンたちはトリガーマシンをVSチェンジャーに取り付けると同時に、銃身を下に回転させた後に頭上に撃つと、パトレンジャーのマークが現れ、それがバンたちの頭上から全身を覆うように通り過ぎるとそれぞれの色の鎧を身に纏った。

 

「てめぇらは何者だ!」

 

バンはVSチェンジャーを構えながら怪盗たちに問う。

 

「これから有名になる怪盗だよ」

 

赤の怪盗はそのように告げると、懐から一枚のカードをバンに投げ付ける。

 

バンはそれを受け取り、そのカードを読むとそれは怪盗たちの名義の予告状だった。

 

「バン隊長!

あの人たち、転生者に何かしてます!」

 

かこが声をかけられたことで予告状から目を離したバンは怪盗集団に目を向けると、怪盗集団の一人が転生者の中から何かを取り出していた。

 

「じゃあな」

 

用が済んだと言わんばかりに怪盗集団はバンたちの足元

を撃って牽制し、怯んだ隙に別の出口へと向かう。

 

「待て!」

 

体勢を立て直し、バンたちは追いかけようとするが倒れている転生者の身柄の確保しなければならないのでバンはかことアストルフォに先に行って追うよう指示し、バンは転生者の逮捕しようとする。

 

「あぁ?

どうなってんだ?」

 

バンは転生者の逮捕と異世界への転生をするために手錠を嵌めるも全く反応がなかったのだ。

 

バンたちパトレンジャーは転生者を更正の名の下に記憶

と特典を消去した上で転生者を異世界へと転送させる能力がある。

 

だがそれは相手が転生者だった場合であり、その世界に生きるただの人間相手には効果が発動しない。

 

つまり、バンが今逮捕しようとしている転生者はただの人間になったということである。

 

「ちぃ!

あいつら、まさか・・・」

 

「ごめん隊長!

あいつらに逃げられちゃったよ!」

 

「はぁはぁ、もうどこにも見当たりませんでした・・・」

 

バンは怪盗集団のやったことを考えようとした時に、かことアストルフォが変身解除して帰ってきた。

 

バンも二人の状態を見てこれ以上は無理と判断し自身も変身解除する。

 

「あいつらを追えなかったのは気にすんな。

ただ、もうこいつは転生者じゃねぇし、身柄はこの世界のやつらに任せるぜ」

 

「え?

隊長、それってどういう・・・」

 

「こいつはさっきあいつらに特典奪われちまったんだよ、これ以上は俺たちでも手出しできねぇんだよ。

さっさとこいつを学園に突き出して来るぜ。

さっさとついてこいよ」

 

バンは転生者だった少年を縛り担ぎ上げてかことアストルフォを連れてアリーナから出る。

 

 

 

転生者だった少年はあの後、インフィニット・ストラトスの世界の警察に送り出され逮捕された。

 

未成年ということもあり処刑はあり得ないがあれだけのことをしたこともあるため刑務所で一生を過ごすのか、それ以外の録でもない刑罰が下されることになるのかどちらかしかなかった。

 

 

 

 

とある世界の高層ビル最上階。

 

バンたちはある人物に会うために足を運んだ。

 

「右京長官、パトレンジャーです。

失礼します」

 

最上階の扉を開けると、そこには黒髪のオールバックと眼鏡が特徴の壮年の男が椅子に座っていた。

 

「おや、お疲れ様ですバンくん、かこちゃん、アストルフォくん。

・・・今回のことはとても残念でしたねぇ、まさか通報にあった転生者が人間になってしまって更正できなかったのは」

 

右京長官と呼ばれた男は柔和な笑みを浮かべながら、どこか残念そうにしながらもバンたちを労う。

 

「その事ですが、あちらの警察に身柄を引き渡しました。

それで、あちらの世界で、怪盗を名乗る集団が、このような予告状を俺達に渡してきたんです」

 

バンは予告状を取り出し、右京に渡す。

 

右京は、予告状を見て、一瞬だけ険しい表情になった。

 

「そうですか、君達は、彼らにあったのですね」

 

「彼ら?」

 

「彼らの名前は三人合わせて、怪盗戦隊 ルパンレンジャー。

転生者の特典を奪い、懺悔させる怪盗たちです」

 

「「「怪盗戦隊ルパンレンジャー?」」」

 

バンたちは、不思議そうに傾げる。

 

「あのぉ、懺悔って一体どういうことですか?」

 

かこが手を挙げて質問する。

 

「そうですね、転生者を普通の人間に変えて、今後の人生を歩ませる、と言ったところでしょう。

特に、悪さをしていた転生者に対して、ですが」

 

「それって、罪を償わせる、ということですか?」

 

「えぇ、ですが転生者の中には、特典を奪ったところで、懲りずに悪巧みしようという輩もいます。

中でも、その世界の記憶を持つ者は厄介です」

 

「それじゃあ、ボクたちがやってるような更正なら、どうなのですか?」

 

アストルフォが右京に質問する。

 

「君達の更正は、転生者を記憶と特典、この二つを消した上で、別の世界へと転送しています。

なので、特典を奪われても、またその世界で悪巧みする、という可能性を消しているので、その心配はありません」

 

「そ、そうですか…」

 

「ですので、その転生者の特典が怪盗に奪われる前に、君達の手で、更正してもらいたいのです」

 

「了解です。

それでは、失礼します」

 

バンは二人を連れて右京の部屋を後にいた。

 

一人残された右京はつぶやく。

 

「警察と怪盗、本来交わらない正義の味方が、互いの正義を信じて戦う、ということでしょうか」

 

 




右京長官の見た目は相棒の杉下右京です。


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残酷な人形と巨大ロボ

「おーい、いくらなんでも重すぎんだけどぉ?」

 

商店街の中、バンはへとへとになりながら、両手に本や食材、衣類が入った買い物袋を持って歩いていた。

 

「ダメです!

今日は一日中荷物持ちになってもらうんですから!」

 

「男に荷物持たせんなら俺だけじゃなくアストルフォもいるだろうが!」

 

「えぇボクが?

乙女にそんな荷物持たせるのはどうなのさ隊長?」

 

「チクショウ、こんな時に限って女面かよぉ」

 

アストルフォに断られてバンはがっかりする。

 

そもそもなぜこんなことになったのか。

 

それは朝食前に遡る。

 

 

 

「よぉーし、これで一丁上がりっと♪」

 

「やったぁ!

今日はピザトーストなんだね!」

 

バンが朝食を作って、出来上がった料理をアストルフォが喜んでいた。

 

「まぁな♪

おい、そう言えばかこはどうしたんだ?」

 

「かこ?

まだ寝てるじゃあないかな?」

 

「そぉかよ♪」

 

そう言ってバンはかこ部屋になっている書斎に向かう。

 

「おーいかこ、朝飯出来てんだけど起きてっか?」

 

ノックしても声どころか反応がなかったのでバンはドアを開ける。

 

「かこ、起きてんなら返事を・・・!?」

 

「ふぇ!?」

 

ドアを開けると、目の前にかこがいた。

 

着替え中で下着姿だった。

 

「いやぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ぶはぁっ!?」

 

書斎にかこの悲鳴とバンの顔をぶつ音が炸裂した。

 

 

 

「だから、悪かったって・・・」

 

「ふん!

バン隊長なんて、もう知りません!」

 

左頬に小さい紅葉のような跡をさすりながらバンは謝るも、かこは中々許さない。

 

「じゃあかこ、隊長に何してくれたら許してくれるの?」

 

アストルフォの問いにかこはむくれながらバンの方を見る。

 

「・・・本当に、反省してるんですか?」

 

「あぁ、だから許してくれよぉ、なぁ?」

 

本気で申し訳なさそうに謝るバンに、かこは少し考える。

 

「・・・じゃあ、今日一日中荷物持ちしてください」

 

「はぁ?」

 

「だから、今日買い物しますので、荷物持ちするんです!

文句は言わせませんよ!」

 

「あぁ?

依りにもよって荷物持ちかよ!?」

 

「やらないなら、資料の整理もしませんから」

 

「・・・わぁーたよ」

 

 

 

 

 

という経緯があり、今に至る。

 

「さぁ、次はあそこの本屋に行きましょ!」

 

「隊長、ちゃんと着いてきてよね?」

 

「あいよー♪」

 

両手に荷物抱えながら小走りでバンはついて行く。

 

 

 

その時だった。

 

「ぎゃああああ!

なっ、何なんだよあの化け物は!?」

 

「逃げろ!

捕まったら殺されるぞ!!」

 

三人の前方から人々が逃げる。

 

「バン隊長、あれは一体・・・」

 

「なんだありゃあ?」

 

「何なんだろうねぇ?」

 

前方を見ると、三体ほどだが、猫か兎ような頭に下は洋服を来ている人形のような生き物だった。

 

しかも、その手にはノコギリや鉈、そしてミキサーのようなものが握られていて、夥しいほどの血がこびりついていた。

 

「・・・おいおい、こいつはパーティーとかそんなレベルじゃねぇぞ。

明らかに虐殺しにきてんじゃねぇか」

 

バンは荷物を下ろしながら言う。

 

そして、下ろした瞬間、猛スピードで人混みを避けながら生き物の下へと走る。

 

「バン隊長!?」

 

「かこ、ボクたちも行こう!」

 

二人もバンに着いていくように走る。

 

「ほぉあ!!」

 

「ええい!!」

 

「あらよっと!」

 

バンは手元から両端が杭になっている四節棍を取りだし、ノコギリを持った生き物のを胴体を横なぎに切り刻み、先端の杭を生き物の頭部に深く突き刺した。

 

かこはハタキに似た杖を手に持ち、杖の先端からビームを出して生き物のミキサーのような武器を内部から破壊し、生き物の体半分を消し飛ばした。

 

アストルフォは馬上槍を手に、鉈を持つ生き物の胴体に人ひとり入れるほどの風穴を開けるように貫通した。

 

三人はそれぞれ倒した生き物を見下ろす。

 

「こいつら一体何なんだ?」

 

「ちょっと待ってください。

今調べます」

 

かこはすぐにデータを調べる。

 

「・・・これ、ドリィというモンスターの特典です!」

 

「特典?

てことはこの近くに転生者がいるってこと!?」

 

「かこ、こいつらの反応を辿れるか?」

 

「はい、ですので今は私について来てください」

 

かこは探知機でドリィの特典の反応から転生者の反応を探るため、先頭を歩き、バンとアストルフォはついていく。

 

 

 

 

 

しばらく歩くと、商店街の隅に渦を見つける。

 

「・・・ここから反応が強く出てます」

 

「まさか別の世界を通ってきたってのか?」

 

「でもそれって、向こうの世界もやばいんじゃない?

さっきみたいなのが大暴れしてるとかさ」

 

「だとしたらさっさと行った方がよさそうだな。

お前ら行くぞ!」

 

「「了解!!」」

 

三人はVSチェンジャーとトリガーマシンを取り出す。

 

「「「ケーサツチェンジ!!」」」

 

『1号!』

 

『2号!』

 

『3号!』

 

『パトライズ!

ケーサツチェンジ!

パトレンジャー!』

 

「パトレン1号!」

 

「パトレン2号!」

 

「パトレン3号!」

 

「「「警察戦隊 パトレンジャー!!!」」」

 

「さーて、逮捕と行きますか!」

 

バンたちはパトレンジャーに変身し、渦の中に飛び込む。

 

 

 

 

 

 

 

三人が渦の中を通り抜けると、そこには学校、おそらくは高校の校舎の校庭だった。

 

だが、まるで待ち伏せていたかのように、大量のドリィが出現した。

 

「おいおい、特典の持ち主に会わせたくないからって随分な歓迎だな?」

 

「バン隊長!

感心してないで、早くこの場を何とかしましょうよ!」

 

「そうだよ、なんだかこのドリィたち様子がおかしいしさ!」

 

「そうだな・・・。

じゃあ行くぜ!!」

 

「「了解!」」

 

三人はVSチェンジャーとロッドモードに変形したメガホン型の武器パトメガボーを構え、ドリィたちを倒しながら突き進む。

 

突き進む中、校舎の窓から誰かが、三人を見るのを1号が気づいた。

 

一人の少女が見ていた。

 

まるで、何かに怯えるかのように。

 

だが、それに気づかれたのか少女はすぐに校舎の中を走っていった。

 

「おいかこ!

まさかとは思うけどな」

 

「はい、今私たちを見ていたあの子からドリィと同じ反応が見られます!

おそらく彼女がドリィの特典を持つ転生者です!」

 

「でもあの子、何か怯えてなかった?

なんかこう、自分のせいでボクたちが襲われてるような・・・」

 

「ってことは、あいつ、特典が暴走しちまってるってことじゃねえのか?

だとしたらまずいぜ!

あいつ、自力で特典を止めれる状況じゃねえぞ!」

 

1号はそう言うと二人を連れてドリィを倒しながら校舎へと入った。

 

「チッ!

校舎の中までついてくんのかよ!

邪魔すんじゃねぇ!」

 

「通してください!」

 

「ボクたちは君たちの持ち主に会いに行かなきゃいけないんだ!」

 

廊下を走りながら三人はドリィを倒す。

 

「この廊下の奥に、あの子がいるみたいだね」

 

「らしいな。

じゃあ行こうぜ!」

 

「待ってください!

誰かが来ます!」

 

よく見ると、インフィニット・ストラトスの世界でストフリの特典を奪った三人の怪盗集団、怪盗戦隊ルパンレンジャーだった。

 

「またか、儂らの偽物」

 

「おいおい、よりにもよってあんたらが来るのかよ」

 

黄色の怪盗が開口一番にそう言ったので1号が言い返す。

 

すると、赤の怪盗がまるで自分たちに興味なさげに廊下の奥に体を向ける。

 

「まぁいいや。

俺たちはこいつの特典を盗ませてもらう」

 

「させるもんか!」

 

赤の怪盗が今そこに向かおうとしたとき、3号がVSチェンジャーを向けて撃とうとした。

 

「邪魔をさせるか」

 

黄色の怪盗がそう言うと近くにいたドリィをマジックハンドで掴んで、3号へと投げた。

 

「ここから先に貴方達を進ませません!」

 

「それはこちらのセリフだ」

 

2号が投げられたドリィを撃ち落とすと同時にいつの間にか背後に隠れていた青の怪盗が剣を取り出し2号に不意打ちする。

 

「それじゃ、お先に」

 

青の怪盗の肩を踏み台に飛んだ赤の怪盗がそう言って転生者の下へと向かおうとした。

 

すると、1号は赤の怪盗の前に立ちパトメガボーを構え、赤の怪盗を迎え撃とうとする。

 

「てめぇらなんかに、あいつを懺悔させてたまるか!

あいつは好きでドリィを動かしているんじゃねぇぞ!」

 

「それで、勝手に記憶を消して、どこか知らない世界に送れと言うのか?」

 

1号は赤の怪盗とつばぜり合いになりながら、自分があの転生者の様子とドリィの様子から推測したことを言うが、赤の怪盗は自分たちパトレンジャーのやっていることを否定的に言い返した。

 

それに頭が来たのか1号は言い返した。

 

「逆に聞くが、転生者をただの人間にして、懺悔させるってのはどうなんだよ!

記憶があるまま特典を奪われ、無力感と罪悪感に押しつぶされて、破滅するかもしれないんだぞ!!」

 

「だったら記憶と特典を消して別の世界で普通の人間として生きるのは間違ってないだろ!!」

 

「あぁそうだな。

人間は誰だって間違って、人を傷つけることがある。

だけどな、人間ってのはな、そんな所があるから変わって、人を守れる存在になれるかもしれない」

 

「生きている限り、人間は何度でも変われる。

それがどんなに苦しくても、どんなに険しくても、、まだ生きていているなら幾らでも変われる」

 

赤の怪盗は一瞬だけ顔を伏せるもすぐに顔をあげてはっきりと1号に言う。

 

「あいつの顔は自ら変わりたいと願っている。

だったら、俺達はあいつを苦しめる特典を盗んでやる。

それが怪盗だ!」

 

その言葉に1号は驚く。

 

今目の前にいるこの怪盗は本気でそう言ってるのだ。

 

敵じゃなかったら尊敬していたのかもしれないと、1号は思った。

 

だが、自分たちは警察で相手は怪盗、相まみえることのない存在だ。

 

だから、1号は警察として、パトレンジャーとしての意地を見せる。

 

「確かにそうかもしれねぇな。

あんたの言う事も一理あるって思っちまうよ。

けどな、もうこれ以上あいつを苦しませる訳にはいかない!

だからあいつを俺達は更生させる!

それが俺達警察の仕事だ!」

 

「そうかよっと、だけどなこっちは引くつもりは元からないけどな」

 

赤の怪盗がそう言うと、1号から距離を取り1号の後ろにいたドリィを撃ち、同時に走った。

 

「どうやっても、、あんたらは引く気はねぇんだな?」

 

1号は近いに来たドリィをパトメガボーで殴り倒し、赤の怪盗の近くにいたドリィを撃ち抜き、それと同時に走る。

 

だが、赤の怪盗が掃除機を持ったドリィに気を取られ1号を追いかけれる状況ではなかった。

 

「・・・悪いな、今回は俺たちが更生させてもらうぜ」

 

1号は赤の怪盗に聞こえるかどうかわからないほどの声でそう言うと転生者の下へと走った。

 

 

 

転生者は、争っている間に廊下の奥の階段を上り屋上へと来ていた。

 

「・・・私は、どうしたら良いの?」

 

もはや精神的に参っている。

 

それもそのはず、突然特典が暴走して人々を襲いだしたのだから。

 

最初は男に襲われそうになったときに特典が発動したのに、なぜかドリィが言う事聞かず男だけじゃなく周りの人を襲い始めた。

 

自分が特典を使ったせいで皆が傷ついた。

 

その罪悪感が転生者を苦しめていた。

 

そんなときに、うわさで聞くルパンレンジャーが現れ、自分に転生と苦しみを盗むと予告した。

 

転生者は喜ぶがそれもつかの間、ドリィが転生者を捕まえ学校に連れて行ったからだ。

 

転生者はドリィの手から逃げるように校舎を走った。

 

途中、、校庭でルパンレンジャーとは別の集団(転生者視点)がドリィに襲われているのを見て、また自分のせいで人が襲われてると思い再び走った。

 

結局、自分には希望も何もないのかと絶望してしまった。

 

「皆と、一緒にいたいよぉ・・・」

 

転生者は屋上の柵にもたれながら嘆いた。

 

自分はただ友達といたかったのに、この世界で平和に暮らしたいと願っただけなのにと。

 

その時だった。

 

「・・・やっと見つけたぜ」

 

1号が屋上へとやってきた。

 

手には手錠が握られている。

 

「い、いや!

来ないで、来ないでよぉ!」

 

転生者はその様子を見て恐怖してしまう。

 

1号は、転生者の様子を見てか足を止める。

 

「お前、やっぱり暴走、しちまったんだな。

見る限りじゃあお前の心情はわかる。

・・・辛かったんだなってな。

だから、お前はもうこの世界にはいられないが、俺がお前から特典と記憶を消してやる」

 

「・・・どうしても、この世界にいられないの?

ここで友達もできたのに?」

 

そんな言葉を聞いて1号は仮面の下で血が滲むほど唇を強く噛む。

 

「・・・あぁ、暴走したとはいえお前は多くの人を傷つけた。

だから、お前は別の世界で、全うに生きて欲しんだよ」

 

「そうですか。

そうするしか、ないんですね」

 

「そうだ、だがその代わりもう特典も持たない、ただの人間になれるんだ。

だからな、強く生きてくれ!」

 

下を向いて震えながら涙する転生者に1号は近づき、頭を撫でながらそう告げた。

 

「・・・はい!」

 

転生者は下を向きながらだが力強く言った。

 

その言葉を聞いた1号は何も言わず、転生者の手に手錠を嵌める。

 

すると、転生者の体が光りの粒子になり空へと舞い上がる。

 

「・・・あばよ。

来世は、幸せにな・・・」

 

上空を見上げながら手向けにするように1号が言う。

 

 

 

 

ドリィの転生者はこの世界からいなくなった。

 

それを確認した途端、地面が激しく揺れた。

 

「こ、今度はなんだ!?」

 

1号は床に伏せながら叫ぶ。

 

すると、街に巨大なドリィが、校舎や町中にいるだろうドリィを吸収しながら出現した。

 

「どういうことだ!?

転生者は更生したぞ!?」

 

2号から通信が入る。

 

『バン隊長、大変です!

全てのドリィが一か所に集まってます!

どうやら転生者が今世界にいなくなったことでより一層暴走したようです!』

 

「となると、マシンを使うぞ!」

 

『『了解!』』

 

1号は2号と3号に指示した後、VSチェンジャーを回転させてトリガーを押した。

 

『位置について、ヨーイ!

走れ、走れ、走れ!

轟音、爆走!』

 

VSチェンジャーのトリガーマシンが巨大化し1号はそれに乗り込み、巨大ドリィの下へと走る。

 

その途中で、二人の乗ったトリガーマシンと合流した。

 

そんな時に長官から通信が入った。

 

「長官!?」

 

『お忙しいところ、すみません。

今回は君たちの現場で何かが向かうのを確認できたのですが』

 

「何かが向かってる、だぁ!?」

 

『隊長、見てアレ!』

 

「あぁ!?

なんだあれは!?」

 

三人は空を見上げると、小さいマシンが下りてきた。

 

1号はすかさずそれを拾うとマシンがしゃべる。

 

『よぉ、あんたらがパトレンジャーか!?』

 

「うお、マシンがしゃべりやがった!!」

 

『どうなってんの!?』

 

『まさか付喪神ですか!?』

 

『おいおい、俺はそんなオカルトなもんじゃねぇぜ!

俺の名はグッドストライカーってんだ、よろしくな!

今回はお前たちに手を貸してやるよ!

俺をその銃ででかくして、ケイサツガッタイムってやってくれ!』

 

「へ、だったらちょうどいいぜ!

かこ、アストルフォ、行くぜ!!」

 

『『了解!!』』

 

『グッドストライカー!

発射準備用意、ゴー!』

 

1号はVSチェンジャーでグッドストライカーを巨大化させる。

 

「「「ケイサツガッタイム!」」」

 

三人がそのように叫ぶと、三つのトリガーマシンがグッドストライカーに引き寄せられるように宙に浮かび。変形する。

 

3号のトリガーマシンは警棒を持った右腕に、2号のトリガーマシンは銃を持った左腕に、そして1号のトリガーマシンはトリガーマシンは頭部と胸部になってグッドストライカーに合体し、巨大ロボになる。

 

そして、三つのコクピットが一つに集約され、1号のコクピットの先端から人形が飛び出した。

 

『どうだ、気に入ったか!』

 

「な、なんかすごいことになってます!」

 

「なにこれ合体ロボになっちゃったよ!?」

 

「こいつはすげぇな」

 

『へっへぇ、どうだ!

この時の俺の姿は「パトカイザー」って呼んでくれよ!』

 

「何でもいい!

サンキューだぜ!」

 

1号はそう叫んでレバーを動かすと二人もそれに合わせるように操作する。

 

パトカイザーは巨大ドリィに目掛けて走り、右腕の警棒で頭部を殴る。

 

巨大ドリィは大きく怯むが手に持っていたチェーンソーで切り刻もうとするが、銃の光線で腕ごと破壊される。

 

「これでとどめだぁ!!」

 

パトカイザーはスラスターを勢いよく吹かし、一気に巨大ドリィとの距離を詰め勢いに乗せる形で警棒を巨大ドリィの頭部を殴った。

 

すると、巨大ドリィは左右に真っ二つになり爆散した。

 

 

 

 

『今日は楽しかったぜ、野郎ども!

また気が向いたら手ぇ貸してやるよ!』

 

「おいおい、もうどっか行っちまうのかよ!?」

 

「良いじゃん!

その時はそれで巨大な敵とも戦えるからさ!」

 

「はい、私もそう思います!」

 

「そうだなぁ」

 

三人は手平サイズになり空高く飛ぶグッドストライカーを見ながらそう言った。

 

「まぁ、転生者の方は湿っぽくなっちまったが、これで事件解決だな♪」

 

「うん、そうだね!」

 

「そうですね、これでまた荷物持ちの続きができますね」

 

「えっ!?

やべぇ、すっかり忘れてた!!」

 

バンたちはすぐに元の世界に戻り、買い物に走った。

 

後日、それが原因でバンの両腕が筋肉痛になってしばらくは料理がまともに作れない状態になったとかそうでもなかったとか。

 

 



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救世主の獅子

「さてと、この世界で異変とかねぇよなぁ♪」

 

バンはパトロールのため、単独で異世界をパトロールしていた。

 

他の二人もそれぞれでパトロールしているのだ。

 

「そんじゃあ、さっさとパトロール開始っと♪」

 

バンは町中を歩き転生者が絡むような事件はないかを探る。

 

すると前から悲鳴が聞こえた。

 

「あ?」

 

バンは足を止めて前の道を見る。

 

目の前に、牛型のロボットが現れ、右肩からビームを出して町を破壊していたのだ。

 

「あいつは確か・・・」

 

バンは冷静にデータベースを取り出し調べる。

 

「なるほど、キュウレンジャーの敵として出てきた『牛型汎用破壊兵器ゼロ号』』ってやつの特典か・・・。

じゃあどうにかしねぇとなぁ!

ケーサツチェンジ!」

 

『1号!

パトライズ!

ケーサツチェンジ!

パトレンジャー!』

 

バンは即座にパトレン1号に変身し、ゼロ号につかみかかる。

 

「てめぇの相手は俺だぜ♪」

 

しかし、つかみかかるもゼロ号は強力なパワーで1号を投げ飛ばした。

 

そしてゼロ号は1号に体を向けビームを乱射する。

 

「ぐぅ!

この野郎!」

 

1号は負けじとVSチェンジャーでゼロ号を撃ち怯ませる。

 

怯んだ隙をついてパトメガボーでゼロ号を殴った。

 

だが、少し胸部の装甲がへこんだ程度であまりダメージがなかった。

 

「いくら何でも固すぎるだろうが!!」

 

VSチェンジャーをゼロ号の腹部に当てて発射する。

 

「オラアァ!!」

 

VSチェンジャーのビームはゼロ号の装甲はすぐに壊れ内部を破戒したことによりゼロ号は動かなくなった。

 

「・・・ふぅ。

さて、早いとこ転生者見つけねぇとってウオァ!?」

 

1号の背後が爆発した。

 

後ろにはもう一体、ゼロ号が現れたのだ。

 

「チィッ!

何体いるんだよ!」

 

他にもいることにいら立ちを覚えた1号は悪態をつくが、爆発でのダメージが残っているのか上手く立ち上がれない。

 

「こんのぉ!」

 

VSチェンジャーを使って反撃しようとするも狙いが定まらず外してしまう。

 

「チクショウ、ここまでかよ!」

 

「いや、まだ終わってねぇ!」

 

1号が諦めそうになった時、目の前にライオンを模したマスクを被り宇宙服のような鎧を纏った戦士が大剣でゼロ号を大きく切り裂いて現れた。

 

「ヨッシャラッキー!」

 

ゼロ号が爆散したことを確認した戦士は大声で喜ぶ。

 

「あんた、何者だぁ?」

 

「うん?

俺の名はラッキー。

究極の救世主、キュウレンジャーの一員だ」

 

「・・・てことはここはあんたらキュウレンジャーの世界ってことか」

 

1号はため息をしながらそのように考える。

 

「そう言えば、お前見かけない顔だがキュウレンジャーの新しいメンバーか?」

 

「そんなんじゃねえよ」

 

休みながら話した。

 

自分たちはパトレンジャーとしてパトロールしていること、ゼロ号が暴れていて転生者の特典の反応があったから戦って転生者を探そうとしたこと。

 

「じゃあ今回はジャークマターとは別の敵ってことか」

 

「あぁ、中身が全然別人なんだよ。

それじゃあいくらか回復したんで俺は転生者探しに行くわぁ」

 

「待てよ、それだったら俺も行くぜ!

まだ全快じゃねぇんだろ?」

 

「そうだが、これは俺たちの仕事なんだ。

あんたが手を患う必要なんざねぇよ♪」

 

「いやある!」

 

「あ?」

 

「確かに、これはお前の仕事かもしれない。

だけど、世界を救うのは俺たちも同じだ!

嫌でも戦うぜ!」

 

「へっ、お人よしだな♪」

 

1号はシシレッドの威勢に呆れながら笑う。

 

こんなやつも悪くないと。

 

そんな時だった。

 

「あのさぁ、なに人さまのおもちゃ壊してちゃってるわけ?」

 

二人は声のした方向に向く。

 

そこには複数のゼロ号を引き連れた青年が傲慢な態度で睨んでいた。

 

「ま、いっか。

どうせ、この程度の奴らにやられるようなガラクタとかいらないし」

 

「何ぃ!?

それはお前のじゃないのか!」

 

「そうだけど何か?

俺みたいなやつには最強なのがふさわしいんだよ。

だからこんな鉄くずはお断りなの」

 

青年は倒れて動かなくなったゼロ号を踏みつけながら言う。

 

その様子を見た1号は確信した。

 

「そうか、ってことはこの世界に来た転生者ってことか」

 

「・・・へぇ、驚いた。

じゃああんたも転生者ってことか」

 

別に驚いた様子のない表情で青年が言うと、少し考える。

 

「・・・ま、いっか。

じゃあ死んでよ?」

 

青年は親指を下に向けたと同時に複数のゼロ号が1号たちに足を進める。

 

「バーカ、そう簡単には死なねぇッつうの」

 

1号は挑発しながらVSチェンジャーを構えシシレッドも大剣を構える。

 

「おいおい、こいつはやる気だなぁ」

 

「気をつけろ、こいつらはパワーがとんでもないからな!」

 

「だろうな♪」

 

「じゃあ、お前らの運試してやるぜ!!」

 

二人は複数のゼロ号に突っ込む。

 

シシレッドは大剣でゼロ号を切り裂いたり、ゼロ号の右肩のビーム砲を左腕のブラスターで破壊し戦闘不能にする。

 

「けっ、さっきは手こずっちまったがそうはいかねよ!

装甲が固くても間接はそこまで固くねえみてぇだからな!」

 

1号は先ほどの戦いを思い返しながらゼロ号の腕や脚をパトメガボーで殴り潰したり、頭部の口にVSチェンジャーを突っ込み集中攻撃したりした。

 

そのようにして二人はゼロ号を破壊していった。

 

「さすが、救世主を名乗んのも伊達じゃねえなお前♪」

 

「そっちもな!」

 

「な、何でだよ!?

この役立たずがぁぁ!!!」

 

二人にやられたゼロ号を見て憤慨した青年はゼロ号の残がいを乱暴に踏みつける。

 

「もう終わりだ!」

 

「大人しく降参したらどうだよ?」

 

「・・・やだね。

こうなったら最強の俺が直々にお前らぶっ潰すし」

 

青年はそう言うと後ろに伏せていたゼロ号の胸部に手を突っ込みあるものを取り出し握りつぶす。

 

するとゼロ号が巨大化し、青年はその中に乗り込んだ。

 

「あそこからの巨大化とかねぇだろ!?

こうなったらこっちも!」

 

1号はVSチェンジャーを、シシレッドはブラスターを操作しようとした

 

シシレッドの体が光り出し、その光が1号の手元に来て鬣を持った小さいライオン型の戦車のトリガーマシンへと変わった。

 

「こいつは・・・」

 

「なんだかよくわかんねぇけどコジシボイジャーだな」

 

「・・・そう言う事かよ」

 

1号はコジシボイジャーをVSチェンジャーに取り付け操作する。

 

『キュウレンジャー!

位置について、ヨーイ!

走れ、走れ、走れ!

セイザ、ゴー!』

 

すると、巨大なコジシボイジャーへと変わり1号は乗り込む。

 

「まさかこんなのもあるとはな」

 

『住民の避難は俺に任せてくれ!』

 

「あぁ、頼むぜ!」

 

1号はレバーを動かし、コジシボイジャーで巨大ゼロ号に飛びつきかみつく。

 

ゼロ号は振り払おうと動かしたと同時にコジシボイジャーは距離を取る。

 

「こいつ、意外にも身軽だな♪」

 

『バン隊長!』

 

『どうしたのさ、そのライオンみたいなマシンはさ!?』

 

転生者の反応で掛けつけた2号と3号がトリガーマシンに乗って合流した。

 

そして、どこからともかくグッドストライカーが1号のコジシボイジャーに取り付く。

 

『おいおい、しばらく見ねぇ内に新しいのに乗り換えか!?

何か面白そうじゃねぇか、手ぇ貸してやるよ!』

 

「さっき救世主から借りたんだよ。

じゃあ、合体するぜ!」

 

『『了解!』』

 

「「「ケイサツガッタイム!!!」」」

 

1号はグッドストライカーを巨大化させて合体する。

 

コジシボイジャーは前後にパーツが湧かれ、前パーツが頭部に変わり後ろパーツが左腕に装着され尻尾が大砲に変わる。

 

「名付けて、パトカイザー シシバージョンだな!」

 

「隊長、ネーミングが・・・」

 

「もうちょっと捻ることもできたんじゃないですか?」

 

『そうだぜ?

俺なら、もっとマシなネーム付けれるぜ!?』

 

「良いんだよそんなの。

じゃあ行くぜ!」

 

パトカイザーが前を向くと、巨大ゼロ号がビームを出して攻撃する。

 

「い、行きます!」

 

2号はパトカイザーの左腕の大砲でビームを打ち消した。

 

その様子を見た巨大ゼロ号が憤慨したように激しく動きながらパトカイザーに突っ込もうとする。

 

だがパトカイザーはジャンプしたと同時にゼロ号の頭部を蹴り上げ胴体を警棒で殴りつける。

 

後ろに大きく吹き飛んだ巨大ゼロ号はよろよろしながら立ち上がろうとするもうまく立ち上がれずにいる。

 

「よっし、これでとどめだぜ!!」

 

パトカイザーの大砲にエネルギーを溜める。

 

「「「行っけぇ!!!」」」

 

大砲から強力なビームが出て、それが巨大ゼロ号の胴体に当たり爆散した。

 

 

 

 

「ぐっ!

あぁ・・・」

 

巨大ゼロ号から放り出された青年はボロボロになって気を失っている。

 

パトカイザーから降りた1号は手錠を取り出しつぶやいた。

 

「お前は調子に乗りすぎたんだよ。

少しは自重するっての覚えときな」

 

青年の手に手錠を嵌め光の粒子になって消えた。

 

「じゃあな、来世でも調子に乗ってっと痛い目見るぜ♪」

 

「そっちは終わったんだな!」

 

「あぁ、おかげさまでな♪

このコジシボイジャーは返すぜ♪」

 

1号はコジシボイジャーをシシレッドに返そうとするがシシレッドは断る。

 

「いや、そんな必要はない。

こいつはおまえのだ」

 

「そうかい。

だったらありがたくいただくぜ♪」

 

1号はコジシボイジャーをしまうと握手する。

 

「今回はサンキューな、この世界の救世主さんよ♪」

 

「あぁ!

またいつかどこかで会おうな!!」

 

1号はシシレッドに別れを告げて二人を連れて元の世界へと帰った。



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口の悪いサポーター

早朝、パトレンジャー三人は右京から話があると言われ、高層ビル最上階に呼ばれた。

 

「わざわざご足労いただきありがとうございます、パトレンジャーの皆さん」

 

「いえ、大丈夫です。

ですが…」

 

バンは気まずそうな顔でかことアストルフォを見る。

 

すると、空腹で倒れそうになったり、正気を失いそうになっている二人がいた。

 

「うーん、お腹ペコペコですぅ・・・」

 

「長官!

話って何ですか!

朝ごはんのことですか!?」

 

「あっははは、僕としたことが、失礼しました。

それでは、手短に伝えますが、今回から、サポーターを雇おうと思うのです」

 

「サポーター、ですか?

それって、今後ルパンレンジャーと遭遇する可能性が増えるとか?」

 

「その通りです。

君たちが彼らに遭遇してからルパンレンジャーにより特典を盗まれた転生者は多数確認されています。

なので、君たちにはなるべく彼らより発見して更正してほしいのです」

 

「あの、でもそのサポーターの人って今いらっしゃいますか?」

 

「えぇ、いますよ。

入って大丈夫ですよ」

 

右京が扉に声をかけると、一人の少女が入ってきた。

 

その少女は灰色のサイドテールが特徴で、小学生のように小柄だが目付きが鋭く、背中や手には軍艦を模した武器を持っていた。

 

「霞よ。

口が悪いけど、あんたらのサポーターよ。

特典は艦これの霞の改二だけどね」

 

「お前がサポーターか。

俺はバンってんだ。

よろしくな♪」

 

「わ、私はかこと言います!」

 

「ボクはアストルフォだよ!

よろしくね、霞ちゃん!」

 

三人は霞と握手する。

 

するとバンが霞を見て疑問を抱いた。

 

「そう言えばよ、特典ってなわかるんだが、その背中とか手に持ってるのって艦娘の武器か?」

 

「はぁ?

なに当たり前のこと聞いてんのよ!

その通りよ!」

 

霞は光に包まれると装備がなくなる。

 

「今回は、霞ちゃんのサポーターとしてのデビューも兼ねて君たちにトリコの世界で転生者を更生してほしいのです」

 

「確か、食材と猛獣がわんさかしてる世界ですね?

でも、その世界で悪さしてるのってたいていは美食會の連中じゃないんですか?」

 

「ところが今回はそうでもないんですよね」

 

「まさか、転生者!?」

 

「でも待ってください!

今朝はそんな通報はなかったです!」

 

「ボクもヒポグリフを飛ばしてましたけど全然そんな異変は見られてないですよ!?」

 

「どうやら、転生者は特典だけでなく、証拠隠滅がお得意のようですね?」

 

「ですが、長官はどうやってその情報を仕入れたんですか?」

 

「事前に、霞ちゃんにテストを兼ねて調べてもらったんですよ。

彼女の索敵であの世界で最近美食屋と猛獣が急激に減っているのが確認されたのです」

 

「まぁ、私のはかつての大戦で司令だった駆逐艦だったからこの程度はすぐなんだけどね」

 

「そう言う事ですので、申し訳ありませんが行ってきてもらっても構いませんか?」

 

「早く行ってきなさい!

あそこの主人公が死んじゃっても良いの!?」

 

「了解!!

…というかサポーターなのに、本当に口悪いな」

 

バンは呆れながらかことアストルフォを連れて部屋を出た。

 

 

 

 

トリコの世界、バロン諸島

 

バンたちはトリコの世界に来ると同時にパトレンジャーに変身した。

 

「ここがトリコの世界ねぇ♪

お前ら、腹減ってるとこ悪ぃがさっさと終わらせようぜ♪」

 

「「りょ、了解」」

 

2号と3号は力の抜けた掛け声をすると、通信機から霞の声が聞こえた。

 

『無事そっちの世界に着いたみたいね。

座標を送るからそっちを辿りなさい』

 

「あぁ?

そんなのよりも探知機の反応で辿れば良いだろ♪」

 

『はぁ!?

あんたバカなの!?

探知機は姿を消した敵には反応しないわよ!

そんなのよりも座標と最短ルートで辿ればとすぐ着くでしょ、このクズ!!』

 

「クズじゃねぇし♪

じゃあ今回はそれを辿らせてもらうぜ♪」

 

1号たちは霞の言うとおり、指定された座標と最短ルートを通ることにした。

 

 

「そろそろなんだよな♪

気を引き締めろよ!」

 

「「了解!」」

 

森の中を通り抜けると、青髪の大男が蛇のような紫の鎧を纏った男に踏みつけられていて、その男の手には蛇の尾のような鈍器が握られているのが見えた。

 

男は大男の顔を鈍器で殴り怒り心頭するかのようににらみつける。

 

「はぁ、お前じゃああまり面白くもないなぁ」

 

まるで飽きたと言うように大男の頭部を捉え粉砕しようと鈍器を振り上げる。

 

「「「動くな!」」」

 

霞のサポートで駆けつけたパトレンジャーがVSチェンジャーを構え、男に突きつける。

 

男は気だるそうに、パトレンジャーの方を見ると、大男を別方向に蹴り飛ばした。

 

「ト、トリコさん!?」

 

隅で怯えていた小柄な男は驚いた様子で大男が飛ばされた方向へと追いかけた。

 

「ポリ公、か。

はっ、お前らのほうが楽しめそうだ!」

 

男は鈍器を振り上げながらパトレンジャーの方へと走り出した。

 

「やれ!」

 

三人はVSチェンジャーで男を撃つが、男は体を掠めながら鈍器で銃撃を弾く。

 

「があぁぁぁぁ!!」

 

「ふん!」

 

男の鈍器を1号はパトメガボーで弾く。

 

すると、男は1号の腹部に蹴りを入れ、背中に鈍器をタコ殴りするように叩きつける。

 

「がはぁ!」

 

「隊長!」

 

3号はパトメガボーで男の足を弾き転ばせ、続いて2号が男にVSチェンジャーを撃ちつける。

 

「ぐおぉ!

邪魔だぁ!!」

 

『アドベント』

 

撃たれながら男は蛇を模した杖を取りだしカードを読み込ませると、近くの沼地、厳密には沼地の水面に映った鏡から紫の大蛇が現れ、2号と3号を薙ぎ払って1号に喰らいついた。

 

1号は間一髪のところでパトメガボーで大蛇の口を押さえつけたことで噛みつかれなかった。

 

「なるほどな、証拠隠滅はこいつでやってたってことかよ!」

 

1号は足でパトメガボーを押さえながらもうVSチェンジャーにコジシボイジャーを取り付ける。

 

『コジシ!

パトライズ!

ケーサツチェンジ!

セイザ・ゴー!』

 

「これでも喰らっときな!」

 

VSチェンジャーを大蛇の口に向け、ライオンのエネルギーを発射する。

 

すると大蛇は口の中が炎に包まれ苦しみながら倒れこむ。

 

1号は2号と3号に合流し、男にVSチェンジャーを構える。

 

「さて、大人しく投降した方が身のためだぜ?」

 

男は倒れた大蛇を見て怒気が混ざったため息をしながら杖とカードを取り出した。

 

「こいつをやるとはな、最高にイライラするぜ!!!」

 

『ファイナルベント』

 

男は怒り狂いながら杖にカードを読み込ませると、無理やり大蛇を起こさせ、男が自分から後ろに飛ぶように大蛇の口元まで近づくと、大蛇が男に猛毒を噴射し、男は猛毒を浴びながら三人を蹴ろうとした。

 

「やらせっかよ♪」

 

『ギャラクシー!』

 

1号はコジシボイジャーを取り付けたVSチェンジャーに先ほどよりも大きなライオンのエネルギーを作り発射し、二人もそれを追いかけるように男にVSチェンジャーで一斉射撃し全弾命中させた。

 

「があぁあああ!!?」

 

男は全身の鎧にひびが入り、そのまま地面に叩きつけられ気を失う。

 

大蛇も男の巻沿いを食らいハチの巣にされ消滅した。

 

「さーてと、これで終わりだな。

じゃあな、来世ではイライラが止まるようせいぜい頑張るんだな♪」

 

1号は男の手に手錠をかけ転送する。

 

「これで、一件落着だな♪」

 

「バン隊長、私もうそろそろ倒れそうです・・・」

 

「かこ、大丈夫?」

 

転生者の男を更生し、変身解除する三人。

 

朝食を食べずに転生者と戦ったため空腹で体力が限界だった。

 

「おい、あんたら」

 

「あ?」

 

「えっ?」

 

「うん?」

 

バンたちは声が聞こえる方向に振り向くと、先ほど転生者の男に蹴り飛ばされた青髪の大男が小柄な男に体を支えてもらいながら歩いてきた。

 

「なんだか知らねぇが、腹減ってんだろ?

礼として何だが一緒にガララワニ食わねぇか?」

 

沼地の近くで首と胴体が真っ二つになった巨大なワニを見ながら大男は言う。

 

「おお!

マジか!?

かこ、もう大丈夫だぜ!」

 

「は、はい・・・」

 

「でも良いの?

あのガララワニって元々君たちが倒したものだよね?」

 

「はい!

トリコさんを助けてくださったお礼ですのでよろしければ一緒に食べましょうよ!

・・・あれ、でもなんか忘れてるような?」

 

小柄な男も三人を歓迎する。

 

「よーし、じゃあみんなでガララワニ食おうぜ!」

 

「「「「おーー!!」」」」

 

5人はワニを焼いて食べる。

 

そして、パトレンジャー三人は右京と霞にお土産としてワニ肉を一部分けてもらい、元の世界へと帰った。

 

 

 

一方、高層ビル最上階では。

 

「いかがでしたか、霞ちゃん。

彼らの仕事ぶりは。」

 

「ふん、パトレンジャーを名乗るぐらいだし、中々じゃないの?

あんたらも転生者相手に苦労するわね」

 

パトレンジャーの様子を見ていた右京と霞は三人の評価をしていた。

 

「でも、あの三人が相手にする転生者の中には今自分がいる世界に家族とか友達がいるやつとかいるじゃない?

そんな奴相手にも今みたいなことするの?」

 

「・・・これは痛いところ突きますね。

その辺りはやっぱり彼らの線引き次第でしょうか」

 

「はぁ?

何よそれ、そんなじゃいつか自分の正義とかが揺らぐじゃない。

・・・ねぇちょっと待って」

 

「うん?

どうしましたか?」

 

霞が突然目の色を変えて背中や手に装備を展開する。

 

「何よこれ?

色んな世界が混ざってんじゃない!?」

 

「・・・おそらく、特異点でしょう。

場所はわかりますか?」

 

「えぇ、あんたは近いうちにあの三人を向かわせたほうが良いわよ。

場所は・・・見つけた!

多次元学園ってところよ!」

 

「多次元学園?

そのような学園聞いたことありませんが、僕も調べてみましょう。

場合によっては彼等用に転学届を用意しなければなりませんので」

 

二人は発見した特異点を調べる。

 

 

その特異点がパトレンジャーの新たな戦場になるのではと予想しながら。

 

 

 

 

 




次回で特典を盗む怪盗集団に追いつきます


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学園への転入と管理局からの協力者

すみません、コラボするキャラについて考えていたので投稿が遅くなりました。


「多次元学園?」

 

「えぇ、今回は君たちにそこに生徒として行ってもらいたいのです。

君たちの年齢から考えても、普通なら学校に通っていてもおかしくもないでしょう?」

 

バンたちは右京に呼ばれ、特異点である多次元学園の説明を聞いた。

 

霞と調べたときに、様々な世界が混ざり合った世界であることが確認された。

 

転生者が何かしら危害を加える可能性があると考慮した結果として、転生者の取り締まりも兼ねて生徒として多次元学園に通うということになった。

 

「だからって、転入届とかあるんですか?

俺たちはパトレンジャーとして転生したときにそれぞれの苗字もないんですが」

 

「ですので、僕たちの方で戸籍を作らせていただきましたよ。

霞ちゃん、例の者を」

 

「あんたたちのために作ってやったんだから感謝しなさいよね」

 

霞がバンたち三人にあるものを渡した。

 

「戸籍表か。

しかも、転入届付きか」

 

「あと、君たちから預かったパトメガボーです」

 

「確か、この先転生者の取り締まりが厳しくなるからその改良、でしたよね?」

 

「えぇ、その通りです。

そこで色々と新機能をつけさせていただきましたが、そこは、使ってみてのお楽しみです」

 

かこの質問に右京は肯定するも、そのいたずら心を込めたような態度にバンは呆れる。

 

「…その辺りはちゃんと言ってくださいよ」

 

「君たちには協力者をつけようと思いまして、時空管理局から招待しているのです」

 

「時空管理局からですか?

あの、リリカルなのはの世界の」

 

バンは非難するが、右京は話を進める。

 

かこは協力者が時空管理局から来ることに疑問を持つ。

 

時空管理局とは「魔法少女リリカルなのは」における組織で時空の異変を取り締まるのが目的であるからだ。

 

それに対してかこたちパトレンジャーは時空というよりも異世界に行っては悪事を働く、または暴走した特典を持つ転生者を取り締まるのが目的である。

 

「えぇ、かこちゃんの言う通りその世界の時空管理局からの協力者です。

実は前々から、君たちに良い評価をしていましてね。

転生者による事件の解決に尽力を尽くしていることや、転生者たちを更正して別の世界で普通の人間として新たな人生を歩ませていることに感心を抱いているようです。

それで、今回の多次元学園ではこちらの世界でも影響がある上時空を超えて様々な転生者が悪事を働くのではと危惧し、現状でも管理局だけでは対処しきれない転生者の更生を専門とするパトレンジャーに協力させていただきたいとのことです」

 

「へぇ、そりゃ俺たちも有名になったってもんだな♪」

 

「それでその人が来るのっていつなの?」

 

「もう少ししましたら来ると思いますが・・・」

 

話の途中でチャイム音が響く。

 

「おや、言ってるそばから来たようです。

どうぞ、入ってください」

 

「はい、失礼します!」

 

扉が開き、入ってきたのは青髪の少女だった。

 

「本日より、時空管理局機動六課よりパトレンジャーに協力させていただくことになりました、スバル・ナカジマです!

新人の身でありますが、よろしくお願いします!」

 

「なるほどなぁ、俺はバンってんだ♪」

 

「かこと言います!」

 

「ボクの名前はアストルフォ、よろしくね!」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いします!」

 

四人は自己紹介を済ませる。

 

「さて、自己紹介も終わりましたね。

それでは準備ができ次第、多次元学園に向かってください」

 

「了解!!

…よし、お前ら行くぜ」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

「了解です!」

 

スバルを含める四人は部屋を後にした。

 

 

 

すぐに準備を終えて四人は多次元学園に到着後、手続きを済ませ教室に入り、自己紹介を済ませる。

 

「へぇ、案外皆騒いだりしねぇんだな♪

・・・中には見たことあるやつもいるし♪」

 

バンは周りを見回すとかつて担架で運ばれた少年とその少年を追っていた侍風の少女がいるのが見えた。

 

「さてと、ここからが取り締まりの大仕事だな。

お前ら、気を引き締めろよ」

 

周りに座っていた三人はバンの言葉に頷く。

 

そして、バンたちは数々の転生者と戦う学園生活が今幕が上がろうとしていた。

 

 



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鋼の肉体を持つ強盗と新たな技

多次元学園に転入して数日、バンたちは通報によりある場所に向かっていた。

 

「こりゃかなりやられてんなぁ」

 

バンは目の前の風景に目を細める。

 

銀行らしき廃墟があるのだが、中はかなり荒れているが、その中でもひどいのが金銭を預かる金庫だった。

 

パスワードか暗証番号を入力する装置があったであろう場所は風穴を開けられたかのように抉られていて、金庫のドアも止め金を原型を留めないほどにまで潰されていた上、ドアがまるで素手で引きちぎられたような跡が目立った。

 

「なぁスバル、さっき通報があったって言ってたが、管理局からの情報とかでそいつの特徴わかるか?」

 

「それが、あまりわかっていないのです。

わかるとしたら、警備の実弾をまともに受けても体で全て弾かれてるということしか」

 

「おいおい、そいつはサイボーグか何かか?」

 

「バン隊長、それが少し違うみたいです」

 

かこがちぎれたドアを調べ、解析データを見せる。

 

「…『鐙』?

まさか、こいつは転生者がやったってことか?」

 

「みたいだよ?

この街の銀行もここと似たようなやられ方してるから、同一の犯行だと思うよ?」

 

アストルフォが地図と記録を読みながら三人に伝える。

「なるほどなぁ、だとすると早くそいつを見つけねぇとこの街から金がなくなっちまう。

早いとこそいつの居場所を辿ろうぜ?」

 

「「「了解!」」」

 

バンたちは廃墟を後に転生者の反応を探る。

 

しばらく歩くと、コンビニらしき建物から激しい音が聞こえた。

 

「バンさん、皆さん、あれは!?」

 

「あそこから転生者の反応が見られます!」

 

「だとしたら、あそこコンビニだから、早く行かないと被害者が出ちゃうよ!」

 

「そんじゃ、さっさと逮捕しねぇとな!」

 

四人はコンビニへと急いだ。

 

コンビニから少年がもめているのが聞こえた。

 

「おい、そこのお前!

お前がやったんなら弁償しろよ、俺のクレジットカード!」

 

少年がコンビニの入り口付近だったところで腕や頭部に鎧を着けた大男に半ばで二つに折れてしまったカードを見せつけて怒鳴っていた。

 

「……知るかそんなもん」

 

「ごめんなさいで済めばアンチスキルもいらねぇんだよ!

というか何やってんだよ、素手でATM破壊してんじゃねぇ!

返せみんなのお金と俺の生活費!!」

 

大男は怒鳴る少年を無視しながらATMを拳で破壊し中に札束を袋の中に入れる。

 

「ふふふ、今日の上条さんはマジでバイオレンスですよぉ!」

 

「邪魔だ、失せろ」

 

大男は近づいてきた少年を片腕でなぎ飛ばし、そのままコンビニを後にしようとする。

 

「動くな!」

 

大男がコンビニを出た瞬間、バンたちはVSチェンジャーを構えるも、そんなことも構いなしに車を持ち上げバンたちに投げ付けた。

 

「危ない!

マッハキャリバー、セットアップ!」

 

スバルがバンたちの前に立つと同時に右腕のガントレットとローラースケートが特徴の姿に変えて、車を横に殴り飛ばした。

 

「お前たち、何者だ?」

 

「なぁに、俺たちは警察だよ。

お前ら転生者専門のな♪」

 

「「「ケーサツチェンジ!」」」

 

『1号!』

 

『2号!』

 

『3号!』

 

『パトライズ!

ケーサツチェンジ!

パトレンジャー!』

 

「パトレン1号!」

 

「パトレン2号!」

 

「パトレン3号!」

 

「「「警察戦隊 パトレンジャー!!」」」

 

「え、えーと。

マッハキャリバー!」

 

スバルは三人の名乗りについていこうか悩むもすぐに名乗る。

 

「……何だ、ただの警察か」

 

大男はその様子を興味なさげに見た後、袋を降ろすと鎧のついた拳を構えパトレンジャーに突っ込む。

 

「はぁ!」

 

「ぬぅ!?」

 

スバルは大男の前に立ち拳で対抗する。

 

「ナイスだぜスバル!

かこ、アストルフォ、左右から転生者を撃て!」

 

「「了解!!」」

 

パトレンジャーは大男を囲み、スバルに当てないようVSチェンジャーを撃つが、大男の体は傷ひとつ付いていない。

 

まるで、皮膚そのものが鎧を思わせるほどの固さだった。

 

「小賢しい……!」

 

大男は鬱陶しそうに目を細め、スバルをパトレンジャーに投げようと掴みかかるもスバルは掴もうとした手をかわしてガントレットを回転させながら大男の腹を殴る。

 

大男は腹を殴られた衝撃で後ろに下がるも大したダメージではなかったのかすぐに立ち上がり近くにいた2号を殴り飛ばそうとしたが、3号がパトメガボーで大男の足を引っかけることで阻止する。

 

「ふん!」

 

倒れる瞬間、大男は地面を拳で破壊し、その爆風の中を札束の入った袋を持って逃げようとする。

 

「おっと、逃げようたってそうはいかねぇぜ?」

 

「なに!?」

 

大男の手から袋が目に見えない力で引き寄せられ、1号が掴みとる。

 

「貴様ぁ…!」

 

怒りに我を忘れたのか大男は1号に殴りかかろうと走るが、頭上からグッドストライカーが飛んできて大男にぶつけ動きを止めさせる。

 

『よお、また会ったな!

今回も力を貸してやるよ!』

 

「おいおい、今回はでけぇの相手じゃねんだよ」

 

『良いから使ってみなって!』

 

「チッ、わぁーたよ!」

 

グッドストライカーの頼みに呆れながら1号はグッドストライカーをVSチェンジャーに取り付ける。

 

すると、1号の体に2号、3号の体が引き寄せられ、二人が光になると同時に1号の左右の半身がピンクと緑に変わる。

 

『イチゲキストライク!』

 

1号と二人ははそれに気づいていないのかVSチェンジャーを大男に向けて高エネルギーのビームを撃った。

 

「ぐはっ!」

 

大男はそれに耐えきれず吹き飛び、地面を何度もバウンドして倒された。

 

「よーし、終わったね!」

 

「一時はどうなるかと思いましたよぉ」

 

「へっ、これで任務完了だな♪

来世でまともな仕事見つけて金稼げよな」

 

1号は大男に手錠を嵌めて別の世界へと転送する。

 

大男が消えたことを確認した1号にスバルが声をかけた。

 

「あの、バンさん。

その格好は一体……」

 

「あ?

…って、え?」

 

「「え?」」

 

「「「なんじゃこりゃ!!?」」」

 

スバルに言われて気づいた三人が自分達の格好を見て絶叫した。

 

 

 

あの後、グッドストライカーが飛び去ったことで三人は元に戻った。

 

「一生のお願い揉ませて吹寄!!」

 

「ふん!」

 

あれからしばらくしてバンは教室内で三人の少年が一人の少女に飛び付こうとするも怒った少女に殴られて倒される様を見ていた。

 

というか、殴られた一人の中には大男がいたコンビニで伸びていた少年がいた。

 

「あいつ、同じ学校だったんだなぁ…」

 

バンはその現状に呆れる。

 

 

 

 



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揺らぐ正義

転生者が街で民間人に被害を出していると通報を受けたバンたちは街中へと向かった。

 

「おいスバル、かこ、今回の転生者の情報はわかるか?」

 

「バン隊長、それが…」

 

「その転生者と特典などの素性が全くもって不明で、情報収集ができませんでした」

 

かこが気まずそうにしてスバルがフォローに入る。

 

「お前らでもか…。

アストルフォは?」

 

「ううん、ボクもわからなかったよ。

そういう隊長はどうなの?」

 

「俺も映像から見てみたが、人影が生身じゃあ考えられねぇほどの力で暴れまわってるけど、それが何の特典かってのがわかんねぇ」

 

「まさか、身体強化の特典でそれが暴走してる、のかな?」

 

「わかんねぇ、だから反応を追って探してんだよ」

 

そんな感じで会話をしていると、探知機の反応が強くなる。

 

「バン隊長、この近く転生者の反応が!」

 

「あぁ、変身するぞ!」

 

「「「了解!!」」」

 

「「「警察チェンジ!!!」」」

 

「マッハキャリバー、セットアップ!!」

 

『1号!』

 

『2号!』

 

『3号!』

 

『パトライズ!

ケーサツチェンジ!

パトレンジャー!』

 

『stand by ready set up!』

 

バンたちは変身し、反応があった場所へと走った。

 

 

 

 

「バン隊長、あれみたいです!」

 

「らしいな。

って、何で怪盗がいんだよ…!」

 

物陰に隠れながら様子を見ると、転生者の反応が見られる女性を赤の怪盗、ルパンレンジャーがワイヤーで縛り上げていた。

 

よく見ると、女性は尋常じゃない力で暴れているのが見える。

 

「まずいな、ありゃ間違いなく暴走しちまってる。

被害が広がらねぇうちに行くぞ!」

 

「「「了解!!!」」」

 

四人は女性を縛っている赤の怪盗へと近づき、VSチェンジャーを構えた。

 

「動くな」

 

赤い怪盗は四人の方へと振り向いた。

 

「こんな時に」

 

「そこにいるのは転生者だな。

怪盗に転生特典を奪われる前に確保するぞ」

 

「なっ」

 

赤の怪盗は驚いたような声を出すと、1号は2号と3号に射撃援護、スバルは一緒に接近戦に持ち込みつつ転生者の女性の確保と指示を出す。

 

「行くぞ」

 

2号と3号に射撃援護してもらいながら、1号はパトメガボーで、スバルは拳で赤の怪盗に攻撃しようとする。

 

「おいおい、危ないだろうが!!」

 

赤の怪盗は女性を片手で抱えながら攻撃をかわす。

 

「大人しく掴まれ!!」

 

「嫌だね!

俺は決めたんだよ、最後まで生きるのも助けるのも辞めないってな」

 

「何を言ってんだ!

俺たちはただ転生者たちを更生させているだけだっつうの!!」

 

特典が暴走している転生者を抱えたまま放そうとしない赤の怪盗に言い返す1号。

 

悪事を働くまたは特典が暴走している転生者を更生すれば、これ以上周りに被害が出ないうえに転生者も別の世界で普通の人間として生きていける。

 

そのことを否定的に言う赤の怪盗に1号は腹を立てた。

 

「ぐっ!」

 

後ろからの射撃の衝撃耐えられなくなり、赤の怪盗は女性をかばいながら壁に叩きつけられる。

 

「そこまでだ、怪盗」

 

1号は女性を傷つけないよう近づきながらVSチェンジャーを構える。

 

「balwiyall Nescell gungunil tron]

 

VSチェンジャーで撃とう構えたときにどこからか歌声が聞こえた。

 

その瞬間、1号の目の前を何かが通りすぎ、赤の怪盗も女性もいなくなった。

 

「な、どこに行った!?」

 

「バンさん、あれを!!」

 

1号がビルの上を見ると、赤の怪盗と女性がいて、その隣に黄金の鎧を纏った少女が立っていた。

 

「なんだよあいつは」

 

「おそらく、この世界の戦士であるシンフォギアではないですか?」

 

「マジかよ。

さっきの歌もシンフォギアを起動するためのってことか」

 

「でもさ、そのシンフォギアの子がどうして怪盗の味方やってんの?」

 

「わからねぇ。

だが、俺たちを見たときの眼が一瞬だけ敵意を感じたのは間違いねぇよ」

 

「そんな!

私たちは転生者を更生しようとしてるのに!」

 

「誤解されてるのは間違いねぇな。

…おいおい、何かまた一人増えてるし、とにかく迎撃するぞ!」

 

「「「了解!!」」」

 

四人はビルの壁を走りながら接近するルパンレンジャーと少女と、赤い忍者を迎撃するために攻撃を始める。

 

「おいおい、あの赤い忍者ってニンニンジャーじゃねぇか!

かことアストルフォはあいつと応戦してくれ!

スバルはあのシンフォギアのやつを頼む!

俺は赤の怪盗を戦うんでな!」

 

「「「了解!」」」

 

スバルが少女と、2号と3号はニンニンジャーと、そして1号は赤の怪盗と激突する

 

「お前、まだ諦めていなかったのか」

 

「残念ながら、俺は諦めが悪いからな」

 

赤の怪盗がまるで呆れたように言って剣を取り出し、1号も対抗してパトメガボーで応戦する。

 

すると、赤の怪盗が何かを見つけたのかニンニンジャーに合図を送るのが、1号に見えた。

 

だが、疑問を持つ前にニンニンジャーの刀から水が溢れ火を纏った刀で切り裂くと同時に斬りを発生させパトレンジャーたちの視界を遮る。

 

「ちぃ、何も見えねぇ。

あの怪盗はどこだ!?」

 

『2.1.0!

get set ready?

飛べ、飛べ、飛べ!

ニ・二・二・二ンニンジャー!』

 

「あぁ!?」

 

霧の中で何か電子音が聞こえ振り返ると、霧が晴れそれと同時に鳳凰のような飛行機が飛ぶのが見えた。

 

「まさか、あれに乗って逃げたってのか!?

追うぞ!」

 

「「「了解!!」」」

 

『位置について、ヨーイ!

走れ、走れ、走れ!

轟音、爆走!』

 

パトレンジャーたちはトリガーマシンを巨大化させ乗り込み、スバルは1号と一緒に乗り込んだ。

 

そしてトリガーマシンを怪盗が乗っていると思われる飛行機を追おうとするがいくつにも分身し、それぞれ別方向に飛んでいくのが見えた。

 

「マジかよ!?

おい、散開してそれぞれの飛行機を追うぞ!」

 

「「了解!!」」

 

「待ちやがれ怪盗!!」

 

三両のトリガーマシンは別方向に飛びまわる飛行機を追いかける。

 

しかし、しばらく追いかけると飛行機が煙になるように消えた。

 

「消えやがった!?

かこ、アストルフォ、そっちはどうだ!」

 

『ごめんなさい、消えてしまいました…」

 

「ボクのところもだよ』

 

「あいつらにはめられたってのか。

…引き上げるぞ」

 

「えぇ!?

でもバンさん、怪盗も転生者も…」

 

「俺たちが追いかけた時点で、特典を奪われたのか転生者の反応がなかった。

それに、あれだけ俺たちを分身で惑わしやがったんだ、もう近くにいねぇよ」

 

「そ、そうですか…」

 

顔を伏せるスバルをよそに、1号は先ほどのことを思い出した。

 

あのシンフォギアの少女の眼から敵意を感じたことを。

 

あれは怪盗に何かの洗脳されてるようには見えなかった、むしろ自らの意思で敵意を向けたのか。

 

そうだとすれば、先ほどの女性はあの少女の身内か知り合いの可能性がある。

 

ふと、1号はドリィの転生者のことを思い出した。

 

彼女は特典を暴走させたが故に更生した。

 

そして今回の転生者も暴走している転生者だった。

 

もしあの時、ドリィの転生者を更生しようとしたときに、彼女の身内か友人が止めに来たら、シンフォギアの少女と同じような眼で睨んでいただろう。

 

そう考えただけで1号はマスクの下で歯噛みした。

 

自分たちパトレンジャーは、特典が暴走した転生者や悪事を働く転生者を更生してるのに、なんでそこまでの感情を向けられなくてはいけないのか。

 

自分たちは正義のために動いているだけなのに、向こうからすれば悪人に等しいのか。

 

「…だったら、俺たちは何のために戦ってきたんだよっ!!」

 

スバルにも聞こえないほど小さくうなるように1号はつぶやいた。

 

自分たちパトレンジャーの正義はその世界に人間からすれば悪なのか、そんなこと自問自答すながら1号はトリガーマシンを走らせる。



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苦悩するバン

ルパンレンジャー、シンフォギア、ニンニンジャーと戦って数日が経った。

 

バンは多次元学園の屋上で缶ジュースを片手に空を眺めていた。

 

「はぁ、俺たちは何のために戦ってきたんだよ…」

 

ため息交じりでバンはつぶやく。

 

この数日間、バンは前の戦いのこととドリィの転生者を更生したことを思い返していた。

 

バンたちパトレンジャーは特典が暴走したり、悪事を働く転生者を更生するのが主な目的である。

 

それがこれ以上周りに被害を出さないための方法でもある上、転生者は記憶と特典を消した上で普通の人間として別の世界に転送し生活してもらうための方法でもあるのだ。

 

それに対して怪盗たちルパンレンジャーは、更生ではなく、懺悔の名の下で転生者から特典を奪い記憶もある上その世界に留まらせ一生を過ごさせることを目的であると考えられる。

 

間違いではないと考えるが、バンはルパンレンジャーのやり方をあまり快く思わない。

 

転生者から特典を奪うことで普通の人間に変えるまでは良い、だが問題があった。

 

確かにルパンレンジャーのやり方は間違いではないし、罪を償わせるという意味合いでは共感するが、相手は転生者だ。

 

特典を持ったうれしさで世界を支配しよう、本来の主人公を蹴落とし自分だけのハーレムを作ろう、その世界で自分は最強の存在になろうとする輩が多い。

 

そんな輩は世界を敵に回す者も多いため、やりたい放題した後で特典を奪われただの人間になると必ずその付けが来る。

 

その付けを払うのに人生をどれだけ費やすか、いやそれ以前に付けを全て払いきるまで社会的、精神的、肉体的破滅が待ち受けているのかもしれない。

 

なぜ自分はあんなことをしたのか、どうして自分はこんな目に遭わなきゃいけないのか。

 

そんなことを後悔しながら十字架を背負うことになるのは間違いない。

 

それは意図せずとも、特典を暴走させてしまった転生者も同じである。

 

自分の意思でやったことではないとはいえ、特典で大勢の人を傷つけた。

 

それだけで罪悪感に苛まれることだってある。

 

仮にその騒動が治まったとしても、次に待ち受けるのはマスコミなどからの捜索だ。

 

騒動で顔が割れていたら、雑誌や新聞でも自分が大勢の人を傷つけた怪物として取り上げられることになる。

 

それだけで、今までの近所や友人、家族の付き合いもガラッと変わってしまうこともある。

 

それも悪い方向に。

 

だから、それを防ぐことも兼ねての更生をバンたちは行っている。

 

だが今回の戦いは違った。

 

あの暴れていた女性から特典の反応があった。

 

だからその女性による被害が広がる前に、その女性が今後人生を狂わされることのないようにしようと更生に向かった。

 

しかし、怪盗から女性を引き離そうとしたときに女性の知り合いらしき少女がシンフォギアを纏って割って入り、怪盗と女性を連れてビルの屋上へと飛んだ。

 

その時に少女が一瞬だけバンたちを敵意のある目で睨み付けた。

 

もしかしたら、ドリィの転生者の時も身内か友人が来ていたらあの少女と同じように敵意を向けていたのかもしれない。

 

だからバンは悩んでる。

 

自分達パトレンジャーがやって来たことは正しかったのかと。

 

「…俺達の更正は、誰かを苦しめるためだってのか?

だったら何のために転生者と戦ってきたんだよ…!」

 

バンは怒りの余りに缶ジュースを握りつぶす。

 

それほどまでに今回は動揺が隠せずにいた。

 

「おや、この学園に警察の戦隊がいると聞いたのだが君のことかな?」

 

ふと、後ろから男の声が聞こえた。

 

「あ?」

 

バンは苛立ちを隠しきれないまま振り返ると、犬の頭をした、警官のようなコートを羽織った男が立っていた。

 

「誰だてめぇ」

 

「そう警戒するな。

俺はドギー・クルーガー、宇宙警察地球署の署長だ。

デカレンジャー、と言えばわかるかな?」

 

「へぇ、てことは俺らの先輩の警察だな。

俺はバン、あんたの言う通り警察戦隊の一員だ。

それで、その先輩が俺に何のようだ?」

 

「なに、転生者を取り締まる警察戦隊がいると聞いたので顔を見に来たまでだ。

とは言っても、今の君は何か悩んでるように見えるが?」

 

「だったらなんだ?

あんたに何がわかるってんだよ」

 

「いや何もわからないさ。

だから聞かせてもらえないか?

警察のよしみとしてな」

 

「ちっ、わぁーたよ」

 

バンはドギーに悩みを話した。

 

「うむ、君たちは転生者の更生の下で記憶と特典を消し別の世界に転送、そしてルパンレンジャーを名乗る怪盗は懺悔の下に特典を奪いただの人間に変えてその後の人生を歩ませる、か。

確かに、君たちのやることは間違いとは言えないし、かといって怪盗のやり方も間違いとは言い切れないな」

 

「あぁ、けどよ。

前の戦いでその怪盗と戦った時に暴走した転生者を巡って戦った時に、そいつを引き離そうと怪盗に攻撃しようとしたらシンフォギアってやつの女が現れるわ、しかもそいつから敵意を向けられるわでわけわかんなくなっちまったんだよ」

 

「というと?」

 

「そいつは転生者の知り合いらしいんだよ。

だから思っちまうんだよ、俺たちのやっていることは間違いなのかってな。

今回だけじゃねぇ、ドリィの転生者もそんなことになっていたかもしれないんだよ!

そいつにも身内やダチがいて、もしそいつらが更生を止めに入ってきたら間違いなく俺らが悪者扱いされちまうって思っちまうんだよ!」

 

バンは思わず頭を抱えながら支離滅裂に語る。

 

それは罪悪感でもあり後悔でもある。

 

だから自分たちパトレンジャーのやってきたことは間違ってたんじゃないのかと考えてしまった。

 

だが、ドギーは落ち着いた表情でバンの肩を叩く。

 

「確かに、そう言う事考えてしまうことがあるのかもしれない。

だが、現実に君たちが転生者を更生したことで救われた世界や人々だってあったはずだ」

 

「…」

 

「一つ聞きたいが、君は何のために警察戦隊として転生者と戦ってきたんだ?

転生者と戦うにしても、根本となる理由があるはずだ。

今はただ、それを思い出せばいい」

 

そう言ってドギーは屋上を去った。

 

「俺は、俺がパトレンジャーになった理由、だ?」

 

ドギーの言葉を頭の中で反芻する。

 

バンはその理由を思い出そうとするが、通信機が鳴る。

 

「…何だ」

 

『緊急事態です!

転生者とみられる男が街で特典を使って暴れています!

至急来てください!』

 

「かこ!?

おい、待て!

転生者ってどういう…。

切れちまった」

 

とりあえず、かこから送られた座標や情報を頼りに、バンは走った。

 

未だに、その理由を思い出せないまま。



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バンの絶望

「この近くだな!?

あいつら、持ちこたえてくれよ!!」

 

バンはかこから送られた座標と、転生者の情報を頼りに街に向かっていた。

 

すると、街の広場から爆発音が聞こえ見るとそこで2号と3号とスバルが戦っているのが見えた。

 

相手はカエルのようなギョロ目だが手には特殊な形のステッキが握られていて、周りに戦闘員らしき集団がギョロ目を囲んでいた。

 

「あいつが転生者か!」

 

バンはVSチェンジャーでパトレン1号に変身して2号たちの下へと走った。

 

「おい、お前ら大丈夫か!?」

 

「バン隊長、すみません、手こずってしまって」

 

「んなことは良いんだよ!

それよりも大丈夫か!?」

 

2号が、転生者を相手に手こずったことを謝罪するも1号はそれを否定した。

 

「いやぁ、実に見物だねぇ。

ボロボロになった女を男が助けに入るなんて名シーンはさ」

 

「あ!?」

 

ギョロ目の転生者はまるで小ばかにした口調で拍手しながら笑う。

 

「お前、まさかだと思うが、その姿はデカレンジャーのアリエナイザーの特典か?」

 

「はーい、その通りでちゅよぉ、よくできましたぁ!

この姿はアリエナイザーの一人だったクウォータ星人のダゴネールの特典なのさ!

ま、そこからさらに微改造してもらってるけどねぇ」

 

「微改造だぁ?」

 

「おっと、ここから先は低脳な君たちにはわからないよねぇ?

そんな感じなんで、皆そいつを始末してくれる?」

 

ダゴネールがそう言うと、戦闘員が前に出て1号たちに襲い掛かった。

 

「ちっ!

お前らいけるか!?

行くぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

1号は2号たちに言うと、四人で戦闘員を迎え撃つ。

 

1号はパトメガボーで敵を殴るか蹴り飛ばすといった攻撃を。

 

2号は避けながらVSチェンジャーで撃つ攻撃を。

 

3号はVSチェンジャーで撃ちながらパトメガボーで足を引っかける攻撃を。

 

そしてスバルはローラースケートで翻弄しつつガントレットを纏った右腕で殴り飛ばす。

 

「クソっ、数が多いじゃねぇか!」

 

「ねぇ隊長、長官から言ってたパトメガボーの新機能使わない!?」

 

「そうだな。

かこ、アストルフォは俺のそばに来い!

スバルは後ろに下がれ!」

 

「「了解!」」

 

「でもバンさん、なぜ私が後ろに!?」

 

1号の指示に納得がいかなかったのか、慌てながらスバルは質問する。

 

「悪いな、今からやることは下手すりゃ前に出てるお前さえも巻き込む可能性があるんでな!」

 

「え?

は、はい、わかりました!!」

 

パトメガボーを見せながら説明したことで納得したのかスバルは返事をしながら素早く後ろに下がる。

 

「よーし、お前ら準備は良いな?

こいつの新機能を使うぜ!」

 

「「了解!!」

 

スバルが後ろに下がるのを確認した1号は戦闘員が一斉に来るのを見計らって三人同時にパトメガボーのグリップを押す。

 

『『『そこの君、止まりなさい!』』』

 

すると、警察でよくあるセリフと音声が流れ、戦闘員は一斉に動きを止めた。

 

『『『全員、整列!

前、ならえ!』』』

 

再びグリップを押すと、今度は3列に並びその場で動きを止める。

 

そして、パトメガボーをエネルギーの籠ったロッドモードに変え、三人はそれぞれの列に沿って殴り進めていく。

 

『『『ダメ、ゼッタイ斬り!!!』』』

 

最後の列まで殴ったと同時に、戦闘員は全員を爆散する。

 

「これが、長官の言ってた新機能…」

 

「すごいよ、あの大群を倒しちゃったよ!」

 

「へっ、こんな機能つけられちゃ長官を悪くいえねぇな」

 

「す、すごい…!」

 

三人はパトメガボーの新機能に驚き、スバルを感心を覚える。

 

「ギャアー、ボクチンの戦闘員がぁ!?」

 

「じゃあ、後はお前だけだな♪

おらぁ!!」

 

戦闘員を全員倒され嘆くダゴネールに、1号がパトメガボーで殴ろうと飛び掛かった。

 

だが、ダゴネールにパトメガボーを当てる瞬間、ダゴネールの目の前で1号はパトメガボーを止めてしまう。

 

「なっ!?」

 

1号は思わず目を見開いた。

 

なぜなら、目の前に更正したはずのドリィの転生者の幻覚がいたのだから。

 

『私はこの世界に居てはいけないの?』

 

『どうして、この世界じゃあダメなの?』

 

『私は友達や家族と一緒にいたかったのに』

 

『また私を更正するの?』

 

『別の世界に行っても幸せになるわけないのに』

 

ドリィの転生者の幻覚は悲しげな顔で続けざまに呟き続ける。

 

「ぐ、ぐううぅ!!」

 

「バンさん?」

 

「隊長!?」

 

「バン隊長!?」

 

苦しみながら頭を抱え1号は膝をついてしまう。

 

「な、なんだかよくわかんないけどボクチンは失礼するよぉ!!」

 

「あ、待て!」

 

ダゴネールはチャンスと見たのか街中へと飛んで姿を消した。

 

その間にも1号は苦しみ続ける。

 

「ぐっ!?

や、めろ!

やめろってんだろ!

俺はお前を貶めるために更正したんじゃねんだよ!!」

 

『私は幸せになれなかった』

 

『いじめも受けた』

 

『友達にも、家族にも裏切られた』

 

『知らない人に監禁されて襲われた』

 

『家族から捌け口として暴力を振るわれた』

 

『結局、私は幸せにはなれなかった』

 

『あなたのせいで』

 

『あなたのせいで』

 

『あなたのせいで』

 

『あなたのせいで』

 

『あなたのせいで』

 

1号は抗おうにも幻覚からの声は鳴り響く。

 

『こんなことなら…』

 

「やめろ!

それ以上、言うな…!」

 

鳴り響く声に制止をかけようとするも幻覚は悲しみと憎しみが入り交じった顔で叫んだ。

 

『こんなことなら、あの怪盗に盗んで貰えれば良かったっ!!』

 

「…!」

 

その言葉をとどめに、1号は頭を抱えていた手をだらんと力なく垂らす。

 

「あ、ああああああああ、あああああ、ああああああああああああっ!!!」

 

1号は垂らした手を地面に叩きつけ街の広場で獣が吠えるように叫んだ。

 

「バン隊長、しっかりしてください!!」

 

「隊長!

お願いだから正気に戻ってよ!」

 

「バンさん…!」

 

2号、3号、スバルは変身を解除し1号に必死に呼び掛けるも叫びのをやめない。

 

いや、やめられないのだ。

 

1号は自分達パトレンジャーのやって来た更正が、幻覚とはいえ更正した転生者から恨み言のように罵られ否定されたのだから。

 

「俺は、俺は…!」

 

1号の姿は、まるで1号の心情を表すかのように変身が解除される。

 

「バン隊長、お願いですから、正気に戻ってよぉ…」

 

かこは涙を流しながら必死でバンに呼び掛ける。

 

アストルフォとスバルは、その光景に胸を痛めながら見ているしかなかった。

 

「少し、良いかな?」

 

ふと、バンたちの前に男の声が聞こえバン以外の三人は目の前の男を見る。

 

「誰なんだいキミは?」

 

「俺はドギー・クルーガーだ。

地球署の署長だ」

 

「ドギー・クルーガーってあの!」

 

「ボクたちの先輩に当たる人じゃないか!

何で!?」

 

「この人がドギー・クルーガー…!

デカレンジャーの」

「驚くのも無理はないと思うが今はバンくんに用があるんだ。

少し、道を開けてくれないか」

 

三人は驚きを隠せないが、ドギーは迷わずバンの方へと歩みを進める。

 

「やぁ、先ほどぶりだねバンくん。

とは言っても、今はまともに聞ける状態ではないらしいが」

 

ドギーはバンの視線に合わせるように膝をつきバンの肩を叩く。

 

「良いかいバンくん?

君は確かにパトレンジャーとして大勢の転生者を更正してきた。

その転生者たちは別の世界で普通の人間になって生きているのは間違いない。

その中には、転生者のときの世界に家族や友達もいた輩もいたかもしれない、君たちの更正でその人たちとの生活を奪ったのかもしれない」

 

「ちょっと、いくらなんでも言い過ぎだよっ!!」

 

アストルフォが制止しようとするもドギーは喋る。

 

「だがそれでも、転生者を更正したことで、多くの人が、世界が救われたんじゃないのかっ!?」

 

ドギーの口調が穏やかなものから渇を入れるかのように変わった。

 

バンはドギーの言葉にビクッと反応する。

 

「君は何のためにパトレンジャーをやって来たのかは私は知らない。

だが、今目の前で転生者によって苦しめられている人がいるだろ!

君が、その人たちを見捨ててどうする気だっ!?」

 

「…ねぇよ」

 

「む?」

 

「んなこと言われてもわかんねぇよ!!

今までずっと転生者と戦って更正して、そんな事を繰り返しやって来たんだ!

なのに、さっきからドリィの転生者の声が聞こえてくるんだよ、こんなことなら怪盗に盗まれれば良かったって!!!

何でなんだよ!

何で俺達がそこまで言われなきゃいけねぇんだよ!?

だったら俺達が戦うなって言いてぇのかよ!!」

 

「バン隊長、やっぱりドリィの件のこと、引き摺ってたんですね…」

 

バンがドリィの転生者のことを後悔していることを確信したかこは申し訳なさそうに顔を下に向ける。

 

他の二人も同様だった。

 

だが、ドギーだけは顔を背けず、バンを見つめる。

 

「…君は、君たちは今まで更正した転生者のその後を見たことはあるかね?

そんな事を言った確証はあるのかね?」

 

「そんなの、知らねぇよ。

けど、頭の中であの転生者が出て来て囁くんだよ!」

 

「そうか。

…ならば、この戦いは俺が引き受けよう」

 

「は?」

 

「今の君では、到底転生者の相手はできないだろう。

ならば、俺がやつと戦うと言ったのだ」

 

「ふざけんなよ、相手は転生者なんだぞ!

あんたにあいつを更正できんのかよ!?」

 

「なに、更生できなくても無力化に追い込んでみせるさ」

 

「ちょっと待ってよ!

だったらボクも行く!」

 

「わ、私も行きます!」

 

「アストルフォ、スバル!?」

 

ドギーに同行しようとするアストルフォとスバルに驚くバン。

 

「ごめん隊長、だけどボクは転生者のせいで誰かが傷つくのは嫌なんだ。

だから、ボクが行って更正してくるからここで待ってて」

 

「バンさん、私からもお願いします!」

 

「君たちも来るというのか?」

 

「勘違いしないでよ。

ボクはただパトレンジャーの一人としての役目を果たさないといけないから行くだけだよ」

 

「私も、パトレンジャーみたいに更正する力がなくても、協力者としてバンさんたちの力になりたいから戦うんです」

 

「なるほどなるほど、君は行かないのか?」

 

「わ、私は、ここに残ります…。

バン隊長をここに置いていくのは嫌ですから」

 

かこはバンの背中を擦りながら悲しげに言った。

 

ドギーはその様子を見て無理に行くことはできないと判断し転生者が逃げた方向に向いて足を進める。

 

「そうか、では行くぞ」

 

ドギーの言葉に返事はしないものの、二人もドギーについていく。

 

「バン隊長…」

 

かこは三人を見送った後、ドギーの言葉を聞いて葛藤しているバンをただ見ていることしかできなかった。

 

 



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転生者の憎悪

「いた、あそこだよ!」

 

街中に逃げたダゴネールを追ってドギー、アストルフォ、スバルは走っていた。

 

そしてアストルフォは探知機を使って戦闘員を使って街を荒らしているダゴネールを見つけた。

 

「およ!?

もう見つかっちゃった!?」

 

「観念しろダゴネール!

これ以上貴様に民間人の手出しはさせんぞ!」

 

「…何で君が仕切ってんのさ?

ここは転生者のことに詳しいボクとスバルがいるんだよ?」

 

「む?

すまん、目の前にいるのがかつてのアリエナイザーだと知るとつい」

 

「正確には、そのアリエナイザーの特典を持った転生者ですよ」

 

「何をごちゃごちゃ言ってんのさ!

ドロイドたち、やれ、やってしまえ!」

 

ぐだぐだに話す三人に頭が来たダゴネールは戦闘員を呼び寄せ襲い掛かる。

 

「むっ、そうはいくか!

エマージェンシー デカマスター!」

 

「ケーサツチェンジ!」

 

「マッハキャリバー、セットアップ!」

 

戦闘員が襲い掛かろうとしたときにドギーはデカマスター、アストルフォはパトレン3号に変身、そしてスバルがマッハキャリバーを身に纏った。

 

デカマスターは狼の装飾をした刀で次々と戦闘員を切り裂いていった。

 

「うわー、やっぱすごいね!」

 

3号は周りにいた敵を倒しながらデカマスターの戦いに思わず驚いた。

 

「でも、ボクたちも負けないんだからねっ!!」

 

そう言って3号はさらに戦闘員を倒していく。

 

スバルも二人に続くように戦闘員を殴り、爆風を利用して吹き飛ばしていく。

 

「ん?」

 

しかし、戦いの中でスバルは疑問を抱いた。

 

街に戦闘員が蔓延り建物の中に避難していると思われる人々の気配がなかったのだ。

 

確かに自分達が来たときはダゴネールの戦闘員は街を襲っていたが、建物を破壊している程度で人はいなかった。

 

ではなぜ、避難しているはずの人々の気配が感じないのか?

 

協力者として、転生者の特典を調べていたこともあるので目の前にいるダゴネールの能力についても把握していた。

 

だとしたらとスバルは確信を得てダゴネールを睨んだ。

 

「あなた、まさかだと思いますが私たちが来る前にこの辺りの人たちをフィギュアにしたんですか?」

 

「え?」

 

「なっ!?」

 

「およよ、やっぱりわかっちゃう!?」

 

「答えてっ!」

 

スバルはダゴネールに怒りをぶつけるかのように言い放つ。

 

するとダゴネールはまるで自慢するかのように懐からあるものを取り出した。

 

「デュフフフ、やぁっぱりわかっちゃうんだぁ?

そうだよ、その通りだよ!?

例えば、こんな感じで、ね?」

 

「「「っ!?」」」

 

ダゴネールが取り出したのは人間の形をした大量のフィギュアだった。

 

しかも、よく聞けばフィギュアからまるで苦しんでるかのようなうめき声が聞こえた。

 

「でもちょっと待って!

ダゴネールの能力は人をフィギュアに変えて死に至らしめる能力のはずじゃ!?

…まさか君が言ってた微改造って!?」

 

「その通り!

本来のダゴネールなら人をフィギュアにした時点でそいつは死んでいるけど、ボクチンは特別に神様から人を人形にしてもすぐに死なない、死ぬまで苦しみ続けるように加減ができるようにしていることさ!!」

 

「あなた、人の命を何だと思っているんですかっ!!」

 

「人の命ぃ!?

ボクチンのフィギュア集めを侮辱した奴らへの当然の罰じゃないか!!」

 

ダゴネールは何を言っているんだと怒りのこもった口調で吐き捨てた。

 

「転生者になる前だって、ボクチンが趣味でかわいい女の子のフィギュアを集めていただけなのに、周りの人も家族も気持ち悪いとか変態だとか、人をまるでゴキブリを見るかのように睨みながら言ったんだ!

当然悔しかったよ、悲しかったよ!

挙句の果てには集めたフィギュアを親からごみ袋の中に詰め込まれて、全部捨てられたんだよ!

そこからは絶望しかなくて、自分から死んでやったよ!!」

 

ダゴネールのギョロ目を血走らせながら狂ったように言い続ける。

 

「そして、転生者になって最初こそは皆も優しかったし、フィギュアの話をしても気持ち悪いなんて言わなかった。

だけど、身内の奴がフィギュアのコレクションをうわぁって引きやがったんだよっ!!!!

…これではっきりしたんだ、所詮人間どもとボクチンとでは感性が違うんだって。

だからさ、この世界の人間どもを全てフィギュアに変えて死ぬまで苦しませるんだよぉぉっ!!!!」

 

「っ!

そうだとしても、人間をそんな風に扱っていいわけがない!

今すぐ人々を元に戻すんだ!」

 

「やーーだね!

だぁれが元に戻すもんかヴァーカ!」

 

「だったら力づくでも戻させるまでだ!」

 

「あ、ちょ!?」

 

3号の制止を振り切りデカマスターは刀を構えダゴネールの下へ走ろうとするが、ダゴネールが一つのフィギュアを取り出し頭部と胴体をつまみながら突き出す。

 

「おおおぉっと!!?

それ以上近づいたらボクチンの手でフィギュアが悲鳴をあげながらバラバラに千切れちゃうよぉ!?」

 

「なっ!?」

 

「くっ!」

 

「フィギュアにした人たちを人質にするなんて、君はそんなことをして何とも思わないの!?」

 

「そんなもの、これっぽっちもないね。

言っただろ?

ボクチンのフィギュア集めを侮辱した当然の罰だってね!」

 

「そんな!?」

 

3号は驚愕する。

 

いくら自分の趣味を侮辱されたからって人はここまで狂ってしまえるのかと。

 

その時だった。

 

「あぅ!」

 

「くっ!」

 

「ぬぅっ!」

 

背後から戦闘員が現れ三人を拘束した。

 

「何するんだよ、放せよ!」

 

「デュウフフフフフフゥ!!

無様だね、、滑稽だねぇ!

そうだよ、その苦痛に満ちた顔が見たかったんだぁ!」

 

三人が拘束されているのを高笑いするダゴネール。

 

ダゴネールは片手で特殊な形のステッキを取り出し、それを三人に向けた。

 

「さーて、君たちもボクチンのフィギュアになってもらいまちょうかにゃー?」

 

「くっ!」

 

ステッキから光が集まり始める。

 

このままでは三人ともフィギュアに変えられてしまう。

 

「そぉれ!

ボクチンのフィギュアになっちゃっうぐ!?」

 

「「「え?」」」

 

三人は今一瞬何が起こったのかがわからなかったがすぐに理解した。

 

ダゴネールのステッキから光が放射されようとしたときに、三人の背後から飛んできたレーザーが拘束していた戦闘員とダゴネールのステッキを弾き飛ばしたのだ。

 

「うぅぅ、誰だ邪魔したのはってあれ!?

ボクチンのフィギュアがない!?」

 

先ほどまでダゴネールの手に握られていた人間のフィギュアが手元からなくなっていることに気づき慌ているが、その時に三人の後ろから声が聞こえた。

 

「よぉ、探し物はこれか?

卑怯なオタク野郎♪」

 

三人は振り向くとそこにいたのはバンとかこだった。

 

バンはフィギュアを優しく両手で持ちながらダゴネールを睨む。

 

その眼は覚悟を決めたかのように光っていた。

 




次回はバンが覚悟を決めた経緯から入ります。


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復活の1号

さかのぼること数十分ほど前。

 

バンは未だに葛藤に立たされ自分はどうした良いかがわからずにいた。

 

かこはそんなバンを支えようとしていた。

 

「…なぁ、かこ」

 

ふと、バンはかこに声をかけた。

 

「どうしました?」

 

「俺達は、本当に何のために転生者と戦ってきたんだろうな?」

 

「…それは、何とも言えません。

でも、ドギーさんの言うとおり私たちは転生者を更正してきたことで多くの人も世界を救ってきたんだって思います」

 

「その転生者の幸せをどぶに捨ててるのにか?」

 

バンは皮肉に、卑下するかのように呟く。

 

「私は、そうは思いません」

 

「は?」

 

「だって私達が転生者を更正できてるのは、長官からもらったパトレンジャーの力があったからですよ?

この力で更正した転生者の魂もきっと長官がその人が全うに生きていけるような世界に転送しているのではと、時々思ったりするんです」

 

「おいおい、いくら長官からもらった特典つっても、根拠もねぇのによくそんな事考えられるな?」

 

「ないからこそ、そう信じるのもありなんじゃないかなって思うんですよ」

 

確かに、そんな事はかこの中の話であって実際にあるのかはわからない。

 

だが、だからこそ信じ続けているのだと、かこは言い切った。

 

「そうかよ。

まぁ前向きなことだな。

でもよ、その転生者にも家族とか知り合いとかいんだろ?

前みたいにシンフォギアの女みてぇに敵意向けられるんならどうすんだよ。

ありゃ仇を見てるようなもんだったぜ?」

 

まっすぐな目で見つめるかこにバンは目をそらしながら言う。

 

いくらかこが言ったことがあるかもしれないとはいえ、パトレンジャーはその世界から転生者を更生し別の世界へと転生させる。

 

人から見ればそれは殺人にも捉えられる。

 

だから転生者を更生しても今度はその転生者の身内から糾弾される可能性がある。

 

「それは、私にもわかりません。

今まで悪事を働いていたり特典が暴走したりした転生者の更生をしてきたので、改めて考えると、わかりませんね」

 

「そうかよ。

でもまぁ、ありがとなかこ。

おかげでいくらか気が晴れたぜ♪」

 

「ふぇ!?

え、えへへ」

 

かこが申し訳なさそうに顔を下げるもバンはかこの頭を撫でる。

 

そこでバンは改めて考える。

 

自分の戦う理由を。

 

なぜ転生者である自分が転生者の更生を行っているのか。

 

ドギーはその理由は根本となるはずだと言った。

 

だがバンにはその根本的な理由がわからなかった。

 

なぜ自分が戦うのかを。

 

そのときに通信機から雑音が聞こえた。

 

「アストルフォ?

あいつ、通信を切り忘れてたのか?」

 

「でも、なにか聞こえませんか?

まるで、人がうめき声をあげているような…」

 

「まさかな…。

まずいことになる前に行くぞ!」

 

「はい!」

 

『走れ、走れ、走れ!

轟音、爆走!!』

 

バンは即座にかこを連れてトリガーマシン1号に乗りダゴネールがいる場所に走らせ、その間に通信機の雑音から音を拾って状況を把握しようとする。

 

通信機から流れる音の中には、ダゴネールの生前のこと、なぜ転生者になった今こんなことをしたのかなど憎悪に染まった感情で口走っていることなどが聞こえた。

 

そしてダゴネールの特典の微改造のことも聞こえた。

 

「バン隊長、これってまさか!」

 

「あぁ、おそらくあいつがさっき言ってた微改造ってことだろうな!

フィギュアにしたやつを殺さず苦しませるってどんだけ悪趣味なんだよ!」

 

バンは内容を聞いて歯噛みする。

 

このままだと、フィギュアにされた人の心が壊れて死んでしまう。

 

しかも、この転生者は人を苦しませることに快楽を得ている可能性があるためもっとフィギュアにされる人が増えるかもしれない。

 

そんな人の命を、尊厳を踏みにじるようなやり方に、バンは内心怒りが込み上げてきた。

 

 

 

 

ふとその時、バンの中で映像が流れてきたのだ。

 

それは銀髪の少年が大金を抱え、家に帰ろうとしていた映像だった。

 

しかし家の近くに着いた時に自分の家らしき建物がすさまじい火柱を立てて燃え上がっているのが見えた。

 

少年は嫌な予感を感じて急いで帰路に着いた。

 

そこで見た風景は凄惨だった。

 

自分の家が徐々に外側から消滅するかのように燃えていたこと、中にいた親らしき人達も家から出ようとするも黒焦げの体から一瞬で骨だけの体に変わり消滅したこと。

 

そして家も、家族も何もかもがすべて燃えながら消失した。

 

そして自分も何者かに襲われ燃やされて殺されたこと。

 

バンにはその映像に見覚えがあった。

 

これはバンの生前の記憶だった。

 

そして転生者になった時、当時神として特典を与えていた右京からどの世界でも自分たちみたいに転生者によって殺された被害者が出ていると聞かされたときに、バンはあることを誓った。

 

それがパトレンジャーになった理由だった。

 

「…こんなときに思い出しちまうとはな」

 

「え?」

 

「なぁに、慣れってのがマジで怖えって話だよ!」

 

バンはトリガーマシンを加速させて向かう。

 

その眼にはもはや迷いはなかった。

 

「あれだな、降りるぞかこ!」

 

「え!?

ちょ、バン隊長何で私を抱きしめ、うわあ!?」

 

ダゴネールとアストルフォたちを目で見える範囲まで着くとバンはかこを抱えトリガーマシン急停止させながら飛び降りる。

 

先ほどまで加速させていたトリガーマシンの速度も相まって早いスピードで飛びながら一気に距離を詰める。

 

「かこ!

お前はあの杖とドロイドっていう戦闘員を弾き飛ばせ!

俺はその間にダゴネールから人質を助ける」

 

「わ、わかりました!

ええい!!」

 

「フォックスハント!!」

 

かこは杖を取り出しアストルフォたちを拘束していたドロイドとダゴネールがアストルフォたちに向けていた杖を弾き飛ばし、バンはダゴネールの手元にあった大量のフィギュアに手をかざし即座にダゴネールから取り上げ自身の両手で持った。

 

バンは手元に来た、ダゴネールによってフィギュアにされた人々を見て歯噛みする。

 

そして、ダゴネールの方へとゆっくりと視線を移しながらバンは言った。

 

「よお、探し物はこれか?

卑怯なオタク野郎♪」

 

所々がだらけた口調だが、その声色には覚悟がこもったものだった。

 

 

 

 

 

現在

 

「お前はさっきの!?」

 

「バンさん!」

 

「隊長!」

 

「バン君!

そうか、理由を思い出せたのか!」

 

バンはスバルを起き上がらせてフィギュアを渡した。

 

「スバル、この人たちを安全な場所に連れてってやってくれ。

この中でも足が速いのはお前だからよ」

 

「りょ、了解です!」

 

スバルはローラースケートを使いフィギュアにされた人たちを連れて行った。

 

そしてバンはデカマスターの方に振り向いた。

 

「ドギーのおっさん、あんたの言う通り確かに思い出したぜ。

そして、それとは別に改めて思っちまったよ。

迷っている間に、誰かが転生者にやられちまうってんなら、俺たちが戦わねえといけねえなってな」

 

バンとかこがVSチェンジャーとトリガーマシンを取り出す。

 

「怪盗みてぇに転生者を償わせるのは無理だが、それでも、転生者に苦しめられるやつらを俺は放ってはおけねぇ。

…更生が俺たちの罪だってんなら、俺が背負い込んでやるよ!!」

 

「「ケーサツチェンジ!」」

 

『1号!』

 

『2号!』

 

『パトライズ!

ケーサツチェンジ!

パトレンジャー!』

 

バンとかこがパトレン1号と2号に変身した。

 

そして3号とデカマスターはダゴネールと向かい合うように1号と2号の隣に並び立ち、フィギュアの人たちを避難させたスバルが戻ってきた。

 

「パトレン1号!」

 

「パトレン2号!」

 

「パトレン3号!」

 

「マッハキャリバー!」

 

「百鬼夜行をぶった斬る地獄の番犬、デカマスター!」

 

「「「「「警察戦隊 パトレンジャー!!!」」」」」

 

「さーてと、てめぇに対して実力を行使するぜ!!」

 

「実力を行使だあぁ!?

やれるもんならやってみろヴァーカ!」

 

パトレンジャーはVSチェンジャーを、デカマスターは刀を、スバルは拳を構えダゴネールの方へと走り出し、ダゴネールはドロイドを呼び出し一斉に攻撃を仕掛けようとする。

 

「あいつ、どんだけドロイド持ってんだよ!」

 

「まさかだと思うが、彼が言っていた微改造の一部ではないのか!?」

 

「それなら、今思い付いたが作戦があるぜ?」

 

「何?」

 

1号はデカマスタードにドロイドたちを倒しながら作戦を伝えた。

 

「…できるのか、そんな事が?」

 

「あんたの腕も見込んでだ、他のやつには号令で伝えるぜ」

 

「そこまで言うなら良いだろう」

 

そう言って1号は2号たちにパトメガボーのメガホンを使うことを指示した。

 

デカマスターとスバルは1号たちの後ろに下がり1号と2号、3号はメガホンにしたパトメガボーをドロイドたちに向けた。

 

『そこの君、止まりなさい!』

 

『全員、整列!』

 

『ダメ、ゼッタイ斬り!!』

 

ドロイドたちの動きを止め全員整列させエネルギーの籠ったロッドモードのパトメガボーで殴り付け爆散させる。

 

「おっさん、スバル、今だっ!!」

 

「「了解!!」」

 

ドロイドたちを倒すと同時に1号がデカマスターとスバルに合図する。

 

二人はダゴネールの元へと走りスバルはダゴネールを殴り飛ばし、その際に懐から落ちた装置をデカマスターが真っ二つに切り捨てた。

 

「なぁ!?

ボクチンのドロイドの取り寄せ装置がぁ!?」

 

「やっぱりな♪

それがなかったらお前はもうドロイドたちを呼べない。

そうだろ?」

 

「ふ、ふん!

バカめ、ボクチンには魔法のステッキがあるのを忘れてってうおあ!?」

 

ダゴネールは足場に落としたステッキを取ろうとするも1号に撃たれ爆発する。

 

「おいおい、これ以上苦しむやつ出すとでも思ったのかよ?」

 

「ひぃっ!!」

 

VSチェンジャーを向けられ、それを持っている1号に睨まれたダゴネールは冷や汗をかいた。

 

「ボ、ボクチンがこんなところで終わると思うなよ低脳どもがぁ!!」

 

ダゴネールが懐からスイッチを取り出しボタンを押す。

 

すると、背後からバラボラのついた巨大なロボットが現れダゴネールがそれに乗り込んだ。

 

「バン隊長、あれは!」

 

「あれは怪獣機のエンバーンズっじゃねえか!?」

 

「ならボクたちもトリガーマシンを!」

 

「少し待ってはくれないか?」

 

トリガーマシンを使おうとすると、デカマスターが制止をかけた。

 

「バン君、一つだけ聞かせてくれ。

君は何のために、パトレンジャーになったんだ?」

 

「そうだな、簡単に言うと、俺達みたいな犠牲者を出したくないから、だな?」

 

「犠牲者だと?」

 

「俺達は元々、転生者に殺された身でな。

後から長官に聞いて、思っちまったんだよ。

俺や、俺の家族のような犠牲者を出したくねぇってな」

 

「それが、君の、パトレンジャーになった理由なのか?」

 

「あぁ、だからこそ俺は戦うんだよ」

 

「…ふむ、それが理由なら俺は君を止めない。

だが、どうかそれを忘れないでくれ!」

 

デカマスターがそう言った途端、体から光が出現し1号の手元に来る。

 

それは赤い大型のパトカー型の機械へと変わった。

 

 

 



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爆走する赤いパトカー

デカマスターから出た光が1号の手元に来て、赤い大型のパトカーへと変わった。

 

「こいつは!」

 

「これは、パトストライカーではないか!」

 

「そうかよ。

じゃあ使わせてもらうぜ、おっさん!」

 

『デカレンジャー!!

位置について、ヨーイ!

走れ、走れ、走れ!

フェイス、オン!!』

 

パトストライカーを大型化させ、1号は乗り込んだ。

 

そして2号と3号も、トリガーマシンを使って、1号を追うように走っていく。

 

それを後ろから見ていたデカマスターは、笑みを含めるように呟いた。

 

「ふっ、自分達のような犠牲者を出したくないから戦う、か…。

ならば、それを貫き通してくれよ、バン君」

 

 

 

「なんだよ、これ!

スピード、出まくりじゃねえかよ!」

 

1号は、パトストライカーの高速速度に、戸惑いを見せていた。

 

だが、戸惑っている間にエンバーンズの足にぶつかりそうになる。

 

「うおあ!!」

 

1号が慌てて操作すると、パトストライカーの右後輪から長い剣が出現した。

 

『潰れてしまえっ!』

 

エンバーンズが、右足を上げて、踏み潰そうとする。

 

しかし、パトストライカーは踏み潰される寸前、車体の右側を持ち上げ、エンバーンズの足裏を切り裂き、ショートさせる。

 

エンバーンズが、右足のダメージで、膝をつこうするも、トリガーマシン3号の警棒で、胴体が突き上げられる。

 

突き上げられたエンバーンズに追い討ちをかけるように、トリガーマシン2号のキャノン砲が撃ち込まれる。

 

「ボクたちのこと、忘れちゃダメだよ!」

 

「私達だって戦えるんですから!」

 

「おっ、ナイスだぜ、二人とも!」

 

『よっ!

またすげぇのに乗ってんだな!』

 

上空からグッドストライカーが下りてきて、パトストライカーの中に入り込む。

 

「へぇ、今回来たってことは、パトカイザーをやるってのか?」

 

『おうさ!

グッドストライカー、ぶらりと参上!

それじゃあ、ケイサツガッタイムの時間だぜ!!』

 

「了解だぁ!

かこ、アストルフォ、行くぞ!」

 

「「了解!!」」

 

『グッドストライカー!

位置について、よーい!

走れ、走れ、走れ!

出動!

一撃、必勝!!』

 

「「「ケイサツガッタイム!!」」」

 

グッドストライカーを巨大化、変形させて、トリガーマシン3号が右腕に、トリガーマシン2号が左腕になり、そして頭部と胸部にパトストライカーが合体する。

 

「よし!

名付けて、パトカイザー・デカバージョンだ!」

 

「ねぇ、隊長。

今度からボクが名付けるのやってもいい?」

 

「おいおい、この状況でダサいとか言わせねえよ?

そもそも、今ネーミングを気にする状況じゃねぇしよ」

 

余りのネーミングのひどさに、グッドストライカーの人形も含めた三人は、かわいそうな人を見るような目で一号を見つめるも、確かにそんな状況じゃないと我に返り、互いにレバーを握る。

 

「よっしゃあ、行くぜ!」

 

「「了解!」」

 

『それじゃあ、勝利をつかみ取ろうぜ!!』

 

パトカイザーは、エンバーンズに向かって走る。

 

それに対抗するかのように、エンバーンズは機体の至る所にあるパラボラから電撃を浴びせようとする。

 

「当たるかよ!」

 

前方から来る激しい電撃を、パトカイザーは避けたり、警棒で弾き返した。

 

『およよ!?

エンバーンズの電撃がきかないなんて!?』

 

エンバーンズに乗っているダゴネールは驚くも、エンバーンズの拳によるボクシングでパトカイザーを殴ろうとする。

 

パトカイザーはそれを弾こうをとするも、素早い攻撃に数発パンチを食らう。

 

しかし、パトカイザーは一歩下がった程度でびくともしない。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

パトカイザーは左腕で、エンバーンズをアッパーカットし、そのまま銃で砲撃を浴びせ、エンバーンズは後ろに大きく飛んだ。

 

エンバーンズは、機体の所々がショートさせながら起き上がろうとすると、パトカイザーは左腕の銃に赤いエネルギーを溜める。

 

「「「デカ弾丸ストライク!!」」」

 

巨大な赤いエネルギーが発射され、エンバーンズの胴体に直撃し、爆散する。

 

 

 

 

エンバーンズから投げ出されたダゴネールは、青年の姿になって気を失っていた。

 

「ダゴネールの力を使うのに、ダゴネールそのものに変身してたって訳か…」

 

1号はダゴネールだった青年に手錠を嵌める。

 

「…お前はただ、自分の好きなことを貫き通せば良かったんだ。

だから、こんなに歪んでまで、周りの連中を痛めつける必要も無かったんだよ」

 

最後に、光の粒子になって消える青年に対してそのように呟いた。

 

「終わったようだな」

 

1号が後ろを振り替えるとドギーがいた。

 

「ドギーのおっさんか」

 

「彼には、君の言葉は届いたか?」

 

「さあな、でも仮に聞こえてたとしても、もう特典も記憶もない、ただの人間として別の世界に行っちまうから、あいつは覚えてねぇだろうな。

それでも、あいつらのような更正した転生者が全うにその世界で生きていることを信じるしかねぇよ」

 

「そうか。

では、俺はこれで失礼する。

君は、君の戦う理由を忘れるなよ?」

 

「あぁ、忘れねぇさ。

またいつか、どこかで会おうぜ」

 

そう言って1号はドギーと別れた。

 

自分の思い出した、戦う理由とある決意を秘めて。

 

「俺は、絶対に忘れねぇからな。

俺達が戦った転生者の中に、その世界で幸せに暮らしたいと願ったやつもいるってことを…」

 

 

 

「どうやら、バン君は覚悟を決めたようですね」

 

高層ビル最上階でモニター越しに様子を見ていた右京は呟く。

 

「彼らには、苦労させてしまいましたからねぇ。

僕の方で、更正した転生者の様子を見ておかないと」

そう言って右京は別のモニターへと切り替える。

 

「なるほど、これは微笑ましいものですね。

彼女は、幸せに暮らせているようで何よりです」

 

右京がモニターで見たものは、レストランらしき場所で、食事をしながら友達と会話をしている、かつてのドリィの転生者の姿だった。

 

すると、霞が受話器を持ってきた。

 

「長官、時空管理局からあんたに電話よ」

 

「ありがとうございます」

 

右京は霞から受話器を受け取る。

 

「もしもし、右京です。

本日はどのようなご用件で?

なるほど、わかりました。

では近々、こちらからも協力させていただきますね、高町なのはさん」

 

受話器を切って、天井を見上げる。

 

右京の中で、また新たな波乱が巻き起こることを予想して。



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機動六課との合流

ダゴネールの転生者を更正してから数日後、バンたちは右京に呼ばれた。

 

「時空管理局からの協力要請?」

 

「えぇ、何でもあるものを一緒に調査して欲しいとのことでして」

 

「そのあるものって何ですか?」

 

「そこからの説明は彼女たちにしてもらうところです。

お入りください」

 

 

右京が部屋の出入口に向けて言うと、三人の少女と一人の少年が入ってくる。

 

「はじめまして、時空管理局機動六課の高町なのはと言います。

今回はパトレンジャーに協力していただこうと、ここに来ました」

 

「ティアナ・ランスターです!

よろしくお願いします!」

 

「エリオ・モンディアルって言います!」

 

「あの、キャロ・ル・ルシエです。

よろしくお願いします」

 

「よろしくな♪

そう言えば、スバルも機動六課ってとこの一員だよな?」

 

「はい、お久しぶりです!

なのは隊長、みんな!」

 

「久しぶりね、スバル。

パトレンジャーの人たちと上手くやれてる?」

 

「はい、多少の戸惑いがありましたが、皆さんとやっていけてます!」

 

「そう、それは何よりね。

…それでは、今から説明させていただきます」

 

スバルと再会したなのはは説明に入る。

 

今回はとある世界でロストロギアと呼ばれる、様々な世界や文明の遺産の反応が見られたこと。

 

そのロストロギアは、下手をすれば世界おろか、全次元を滅ぼすことを可能とすること。

 

それ故に、なのはたち時空管理局はこれを調査及び回収すること。

 

しかし、今回のロストロギアは、反応から推測すると、極めて強大な力を秘めていることが判明した。

 

そこで、なのはたち機動六課だけでは手に負えないと判断し、パトレンジャーに協力を要請したこと。

 

なのはが説明を終えた後、バンが質問する。

 

「一つ聞きてぇんだけどよ、俺達は具体的にどう協力すりゃあ良いんだ?

護衛とか、共同戦線か?」

 

「そうですね、今回のロストロギアの反応を見てですから、共同ですね」

 

「そうかよ。

ま、互いに背中を預けながら戦うことだから、俺達はあんたらの足引っ張んねぇようにしねぇとな♪」

 

「あの、私からも質問良いですか?」

 

「あなたは、かこさんですね。

どうしましたか?」

 

「共同で戦うのはわかりましたが、そのロストロギアという、恐ろしく危険なものの調査ですよね?

本当に、私達でもちゃんと戦えるのかなって思うんですけど、どうなのでしょうか?」

 

「心配するなよ、かこ♪

俺達だって伊達に色んな世界行ってねぇよ♪

俺達となのはたちが力を合わせれば、何とかなるかもだぜ?」

 

「隊長の言うとおりだよ!

ボクたちは三人でパトレンジャーなんだし、スバルとなのはたちも一緒にいる!

だから、ロストロギアには遅れは取らないさ!」

 

不安げに質問するかこに、バンは肩を叩き、アストルフォが励ます。

 

二人に励まされたかこは少し微笑む。

 

「あ、ありがとうございます、バン隊長、アストルフォちゃん…」

 

その様子を見ていたなのはは微笑ましそうに見ていた。

 

「三人とも、仲がいいですね。

それではこちらで座標を送りますので、準備出来次第、出動しましょう!」

 

「「「「「「「了解!!」」」」」」」

 

号令した後、機動六課を含む八人はすぐに支度し、ロストロギアの反応が見られた世界へと向かった。



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ロストロギアと奪われた特典

パトレンジャーと機動六課は、ロストロギアの調査と回収を行うべく変身し、その反応が見られた世界で調査を行っていた。

 

「ロストロギアの反応が大きくなってます。

恐らくは、この奥にあると思います」

 

「マジかよ。

おい、そろそろ気を引き締めたほうがいいぜ?」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

1号はなのは以外に伝え気合を引きしめる。

 

すると、なのはが驚きの表情を見せる。

 

「怪盗、それにロストギア所持者が接近してきた!」

 

なのはが指さした方向を見た途端、1号たちは驚いた。

 

「おいおい、マジかよ!」

 

なぜなら、その方向には怪盗集団であるルパンレンジャーとシンフォギアの少女たちがいて、その背後で赤い鎧の少女が大量のミサイルを撃ってきたからだ。

 

「こうなったら二組に分かれるしかなさそうね。

エリオ、スバル、あなたたちは先行して、怪盗とロストギア所持者と交戦を。

私たちは、あのミサイルを撃ち落とします!」

 

「「「「「「「了解!」」」」」」」

 

エリオとスバルは槍と拳を構え、ルパンレンジャーに攻撃を仕掛け、その間に1号やなのはたちはミサイルの迎撃を行う。

 

だが、エリオとスバルが攻撃を仕掛けようとするが、ミサイルが怪盗に変わり、攻撃を避けていく。

 

「ルパンレンジャーが増えただとっ!!」

 

エリオがそう思った瞬間、怪盗が膨れ上がり、先ほどのミサイルと同じものへと変わった。

 

「こっちが偽物、きゃあぁ!!」

 

怪盗と誤認したスバルがミサイルを攻撃してエリオと共に爆風に爆風に巻き込まれ、近くの壁に叩きつけられてしまう。

 

その隙に、怪盗とは別に、ティアナの近くにシンフォギアの少女たちが接近してきた。

 

「だとしたら、このシンフォギアも」

 

「残念ながら、こちらは偽物ではない!!」

 

そう言って青い鎧の少女尾は刀を振り上げ、ティアナは銃から魔力の刃を出現させ対応しようとする。

 

「ぐぅ、流石に接近戦は苦手ね!」

 

「ティアナさん!!」

 

ティアナの背後から、キャロが巨大化させた竜を青い鎧の少女に向けて放った。

 

「まさか、このような手があるとはな」

 

「だが、狙い通りだ!」

 

そう言った途端、怪盗とシンフォギアの少女たちは、ティアナたちの間を通りすぎると同時に、パトレンジャー3人となのはの近くまで接近した。

 

「だけど、まだ甘い!」

 

なのはは怪盗たちに大量の魔弾を撃つ。

 

しかし、黄色の鎧の少女が先頭に立ち、それと同時に巻いていたマフラーをドリルのように回転させて、なのはの魔弾を撃ち落としていく。

 

「けど、隙を見せたなぁ」

 

「えっ?」

 

1号は黄金のシンフォギアの少女を無力化させようと手をかざし、その少女から槍の欠片を奪い取り、変身を解除させる。

 

黄金の鎧の少女は自分の変身が解除されたことに驚く。

 

「残念、俺の奥の手があるんだよ」

 

「まるで泥棒だな。

だけど、それがどうした」

 

赤い怪盗がそういった途端、背後から魔人の幻影のような姿が現れてた。

 

「ジャックフロスト!!」

 

瞬間、視界を遮るほどの吹雪が1号たちを襲った。

 

「ぐっ!

何も見えねえ!」

 

「返してもらうぜ、それは響のだ!」

 

「ぐう!!」

 

吹雪の中、赤い怪盗が急接近し、1号にVSチェンジャーで撃ちこんだ。

 

1号はその衝撃に耐えられず、手に持っていた槍の欠片を手放し、怪盗に奪われ、黄金の鎧に少女に手渡され再び変身した。

 

「ついでだ、貰うぜ、お前の特典」

 

赤い怪盗は赤い飛行機の機械を近づけようとした瞬間、2号たちが駆けつけたことにより数では不利があると感じたのか距離を置いた。

 

「バン隊長、大丈夫ですか!!」

 

「身体は、大丈夫だ!

それよりも、反撃だ!」

 

1号は2号たちに指示した後、黄金の鎧の少女を無力化しようと、もう一度手をかざそうとするが何も起きなかった。

 

1号は自分の、パトレンジャーとは別の特典が発動しなかったことに疑問を抱き、自分の手を見た。

 

「何も取れない?」

 

「あんたのお宝、頂いたぜ」

 

赤の怪盗の言葉を聞いて顔をあげると、その手には、光を放つ四節棍が握られていた。

 

そう、1号の持つ、「七つの大罪のバン」の特典が。

 

おそらく、先ほど飛行機の欠片を近づけられた時に、盗まれてしまったのだろうと、1号は思い出した。

 

「まさか、あの一瞬で!!」

 

「怪盗だったら、一瞬あれば十分だ。

お巡りさんが泥棒のような能力を持っていたんじゃあ、駄目じゃないかよ」

 

「黙れ!

お前に、その能力を馬鹿にする権利はない、転生者!!」

 

赤い怪盗の、まるで盗みにしか能がないと言わんばかりの口調に腹が立ち、1号は言い返した。

 

実際、1号はその特典を盗みに使うということは一切しなかった。

 

その能力が盗むことに特化していたから。

 

だから使う時は、相手が銃を向けてきたときや、人質を取ったや敵から武器を取り上げるなどにしか使わないと決めていたのだ。

 

だが、それを赤い怪盗が侮辱した。

 

「はぁ?」

 

「お前がさっき出したのはペルソナ。

そんな力を持っているのは転生者だろ」

 

「何を言うかと思えば、勘違いも良い加減にしろよ。

俺達と同じVSチェンジャーを使っているから、転生者の判断もできるかと思ったけど、とんだ期待外れだぜ」

 

「まさか」

 

「俺達は、正真正銘、転生していない人間だ」

 

「という事はまさか」

 

1号は、今目の前にいる赤い怪盗の言葉を聞いて驚き、あることに気づいた。

 

ルパンレンジャーの正体が、特典を持つ転生者ではない、特典に頼らずに能力を使う人間だというなら、あの三人にVSチェンジャーを渡したのは、神様ではない他の誰かではないかと。

 

「そんな事はどうでも良いぜ。

とりあえずは、まずは一人目のお宝を頂いたし、本命はまだ、この先にっ!?」

 

赤い怪盗が言いかけた途端、突然地面が揺れたので、一体何が起こったのかと確認しようとする。

 

すると、地面から何かが攻撃を仕掛けてきたので、急いで回避する。

 

1号たちが攻撃してきた方向を見ると、そこには紫の肌をした恐竜が立っていた。

 

「まさか、これがゴライアスなのか!!」

 

「ゴライアス?

まさかこれがロストロギアなのか」

 

「なるほど、戦いに惹かれて来たか」

 

そう言っている間にロストロギアが近づく。

 

すると、どこからか怪盗に目掛けて、グットストライカーが飛んできた。

 

『今日もブラっと参上、グットストライカー!

今日の気分は、怪盗だぜ』

 

「へぇ、丁度良い、あれも手に入れるぜ!!」

 

赤い怪盗がグットストライカーをVSチェンジャーにセットし、巨大化させる。

 

「ついでだ、恐竜にはキョウリュウ先輩の力だ!」

 

そう言って恐竜型のマシンを取り出しVSチェンジャーで巨大化させ乗り込み、ほかの二人とマシンと合体する。

 

ルパンレンジャーたちが乗った巨大ロボがロストロギアと戦闘を繰り広げているのを、1号たちは見ているしかなかった。

 

「グッドストライカーのやつ、どっかに行ってたと思ったら、あいつらにも手を貸してたのかよ!」

 

1号はグッドストライカーが自分たちだけでなく、怪盗にも手を協力していることに驚いた。

 

確かに、グッドストライカーは飄々な口調で話すというか、掴みどころがないのは1号たちでもわかるが、まさか怪盗に手を貸しているとは思いもよらなかったのだ。

 

そう考えているうちに、怪盗のロボットがロストロギアを倒し、小型化したロストロギアを回収していた。

 

「まずい、ロストロギアが!」

 

「やめろ、今の俺たちのこの状態じゃああいつらから取り返すことも出来ねぇよ」

 

なのはが武器を構えようとしたときに1号が止める。

 

「こっちはかなりやられちまったからな、今はスバルたちを連れて帰った方がいいと思うぜ。

それに、あいつらはロストロギアのことをゴライアスって言ったんだ。

向こうにもその手の専門もいるだろうな」

 

「そ、そうですか…。

すみません、私たちがいながら何もできずに!」

 

「あんたが謝ることでもねえよ。

むしろ、謝るのは俺たちの方だ。

あんたらに協力していたとはいえ、結局はロストロギアがあいつらに渡っちまったからな。

それに、俺なんか特典の一つを持っていかれちまった。

流石に、これ以上こっちの被害は出せねぇし、もっと俺たちも強くならねぇとな」

 

そう言って1号はエリオとスバルを担ぎ、歩き出した。

 

1号の中では、確かに特典を奪われたことはかなり痛いと思っている。

 

だが、その代わりに怪盗に関する情報が手に入った。

 

そしてそれがかなり最悪な情報でもあるが。

 

怪盗の正体が、特典に頼らない能力を使う人間だという事。

 

それは、転生者である1号たちパトレンジャーにとっても天敵であること。

 

パトレンジャーは相手が転生者だからこそ、更生ができる。

 

だが、怪盗は転生者ではないので、更生はできない。

 

逆に、怪盗は1号たちの特典を奪える。

 

実際に1号の特典の一つを奪ったのだから。

 

「本当に、強くならねぇとな…」

 

1号はそうつぶやいた。

 

改めて実感した怪盗たちの存在に、危機感を覚えながら。



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バイカーと動物や恐竜を従える女性

今回は鳴神ソラさんのリクエスト書かせていただきました。


「あぁ、マジでどうすんだよぉ…」

 

バンは項垂れながらつぶやいた。

 

前回の怪盗との闘いで、バンの特典の一つと、ロストロギアを奪われた。

 

バンの手元にはVSチェンジャーと三つのトリガーマシンがある。

 

そのうち二つはあまり試したことがない。

 

「とりあえずは、この二つをまともに使えるようにしねぇと」

 

頭を掻きながら、バンはシミュレーションルームへと向かおうとした。

 

「バンさん!」

 

「なのはか?」

 

なのはが手にケースを持って歩いてきた。

 

「そのケースは何だよ?」

 

「実は管理局の方で、バンさんの特典を補えるようにと、これを渡そうと」

 

なのはがケースの中から、バイク型の機械を取り出した。

 

「これ、トリガーマシンじゃねえか!

なんで管理局がこんなものを」

 

「それはですね」

 

なのははバンに説明する。

 

それは管理局で管理していたロストロギアの一つだと。

 

形状がトリガーマシンのそれに酷似していること。

 

VSチェンジャーに対応していると考えた上で、管理局はバンに渡すことを決めたと。

 

「…わかった、ありがとな♪

わざわざ渡しに来てくれてよ」

 

「どういたしまして」

 

二人がそう言った途端、霞から通信が入る。

 

『バン、緊急事態よ。

今街で、動物とか恐竜が暴れてるの。

おそらく、転生者が絡んでるから、なのはと一緒にこれの調査と解決に向かいなさい!』

 

「動物と恐竜だぁ!?

どうなってんだよ!」

 

「わかりませんが、とにかく行きましょう!」

 

二人は街へと飛び出した。

 

 

 

街へと飛び出した時、現状は異常だった。

 

ティラノザウルス、ライオン、ゾウ、オオカミなど、大量の様々な動物や恐竜が人の住宅街に、家に入り込んでは、人を襲う。

 

スーパーなど、商品が置いている場所に突っ込み、ありったけの食材を貪りつくす。

 

警察が動いているが、拳銃で撃とうとも、別の動物が飛び出し、襲い掛かる。

 

そんな現状を、二人は目の当たりにした。

 

「おいおい、動物が人間に反乱か!?」

 

「とりあえず、あの動物たちを押さえましょう!!」

 

「ケーサツチェンジ!」

 

「レイジングハート、セットアップ!」

 

『1号!

パトライズ!

ケーサツチェンジ!

パトレンジャー!!』

 

バンはパトレン1号に変身し、なのはは白い修道服にも似た鎧を身に纏う。

 

「バンさん!

私は空中から動物たちを押さえつつ、転生者の反応を探ります!」

 

「あぁ、俺は地上から押さえていけばいいんだな!」

 

そう言って、なのはは足元から羽の光を出して、空を飛ぶ。

 

1号はパトメガボーとVSチェンジャーを構え、動物たちの群れに目掛け走り出した。

「おらぁ!」

 

「はぁ!」

 

1号はVSチェンジャーで牽制しながらパトメガボーで気絶させる。

 

なのはは拘束魔法で動物たちを縛り無力化する。

 

「他は、いるのか!?」

 

1号は周りを見回す。

 

すると、家屋から悲鳴が聞こえた。

 

「そこか!」

 

二人は家屋の中へと走り出した。

 

そこでは主人らしき男がワニに足を噛まれそうにしながら、ワニの頭を踏むつけようと抵抗していた。

 

その後ろで、妻らしき女性が、物陰に隠れていた。

 

「あなた、やっぱり逃げましょ!」

 

「俺のことは良い!

お前は早く逃げろっ!」

 

「でもそんな事したら!」

 

「だったら、そこからの先は、俺達が引き受けるぜ」

 

1号がVSチェンジャーでワニの胴体を撃ち、主人と距離を離す。

 

「さぁ、皆さんは私の後ろに!

レストリクトロック!」

 

なのはが夫婦の前にたち、杖を構える。

 

すると、ワニは顎と前脚と後ろ脚を光の輪で拘束される。

そして、1号がそれでも暴れるワニの胴体を取り押さえ、持ち上げた。

 

「ふぅ、やっと大人しくなったか」

 

「あの、君達は?」

 

ワニを持ち上げ外に連れだそうとする1号たちに主人が声をかける。

 

1号は、仮面越しに主人と妻を見つめて言う。

 

「…俺達は、警察だ。

ちょっと、特殊だけどな」

 

「それでは、失礼します」

 

1号たちはそう言って家を出た。

 

 

 

「さて、こいつらはこれで全部だな

なのは、この動物たちって転生特典か?」

 

「はい、そうみたいですね。

その大元の反応は…、あちらですね!」

 

なのはが指を指した場所は山の中にある古い屋敷だった。

 

「あそこだな!」

 

「はい、ですので、しっかり捕まって下さい!」

 

「え?

って、うお!?」

 

なのはが1号の腕を掴み、屋敷に向かって飛んだ。

 

 

 

「んもぉー、何でよ!

あなたたちは、私の忠実な動物なんでしょ!

何でやられてんのよぉー!」

 

屋敷の中に中で、一人の女性は子供のように喚いていた。

 

彼女を見つめている動物や恐竜は、どうしたら良いのかわからず、あたふたする。

 

「動くな!」

 

「…!」

 

女性がぶつぶつ言っていると、1号がVSチェンジャーを、なのはが杖を構え部屋に入ってきた。

 

「誰よ貴方たち!」

 

「俺達は警察だ。

街に放った動物たち、あいつらはお前の特典だな!」

 

「ふふん、そうよ。

私の特典は、私の忠実な動物を生み出す能力よ!

ここにいる恐竜も動物もすべて、私の僕なの!」

 

「その動物や恐竜を放って、一体どれだけ被害が出たと思ってるのっ!」

 

なのはの問いに、女性は不思議そうに首を傾げた。

 

「え?

何で動物がおもちゃと戯れるのにそんな事言われないといけないの?」

 

「おもちゃ!?

人をおもちゃって、あなたは!」

 

「よせなのは!

…どうあっても、お前はこういうことをやめねんだな?」

 

「当然よ、楽しいもん!

さあ、私の僕たち、やってしまいなさい!」

 

女性の号令で、動物や恐竜が動く。

 

「しょうがねぇ、行くぞ、なのは!」

 

「…はい!」

 

1号となのはは二手に分かれ、次々と現れる動物や恐竜の猛攻を躱しながら撃ち抜いていく。

 

「邪魔をしないで!」

 

「どけぇ!!」

 

二人は次々と倒していくが、それでも猛攻は収まらない。

 

「このままじゃ…。

クリスタルケージ!!」

 

なのはは宙に飛び、杖を振るうと動物や恐竜の足元から巨大な魔法陣が現れ、光の結界を張る。

 

「バンさん、あれを!」

 

「あれ?

このバイクか!」

 

『バイカー!

パトライズ!

ケーサツブースト!』

 

「くらえ、バイカー撃退砲!」

 

1号はバイクをVSチェンジャーに取り付け、結界の中にいる動物や恐竜に目掛けて、強力な前輪型のエネルギーを撃ちこみ、爆散させる。

 

「そんな…!

私の僕が…!?」

 

女性は狼狽えるも、体を光の輪で縛り付けられる。

 

なのはは悲しい表情で指先に魔力を込める。

 

「あなた、少し頭を冷やそうか?」

 

「避けろ、なのは!」

 

「え?」

 

反応が遅れたなのはに、狼が飛びつこうとする。

 

噛みつく寸前に1号がなのはを押して、自らの体を狼に噛みつかれる。

 

「ぐっ、うぅ!!」

 

「バンさん!?」

 

「は、はは…、やっぱりそうなんだ。

最後に勝つのは、私の僕な!?」

 

女性が言いかけた途端、1号が女性の頬を叩いた。

 

「な、んで?」

 

女性はいきなりのことにふるふると目に涙を溜めながら1号に顔を向ける。

 

1号は胴体に噛みついた狼を気絶させて、放してから息を荒くしながら女性に向く。

 

「てめぇ、この期に及んでまだわかんねえのかよ?

自分がやってきたことをよ!」

 

「ひっ!」

 

1号が女性の胸倉を掴む。

 

「さっき殴られたとき、なんて思ったんだ?

痛かったんじゃないのかよ!

お前の召喚した動物とか恐竜に襲われた人もな、みんな痛いって思ったんだぞ!?」

 

1号は女性に倒れた動物たちを見せる。

 

「こいつらだって、俺らにやられて痛いって、思ったんだろうな。

こんなことになっても、お前は何にも思わねえのかよ!」

 

「…もん」

 

「あ?」

 

「知らないもん、そんな事なんて!

痛いとか、苦しいとか、そんなのよくわからないよぉ!」

 

女性は子供のように泣きじゃくる。

 

「でも、神様は教えてくれたもん!

こうやって人を傷つけて、苦しめることはとても楽しいよって!」

 

「…」

 

「それで、この立派なレディの体ももらって、存分に楽しみなさいって!

神様は言ったもん!

なのに、今更痛いとかそんなこと、わからないよぉ!」

 

1号は、仮面の下で歯噛みした。

 

「…今更泣いても、中には一生傷が残るやつだっているんだ。

お前は、もう一度子供に戻って、命は、痛みは何かを学びな」

 

女性の手に手錠を嵌め、光の粒子へと変える。

 

それと同時に、1号は変身を解除した。

 

「バンさん!

大丈夫ですか!?」

 

「あぁ、なんとかな。

けど、少し肩を貸してくれ…。

かこにこの傷を治してもらわねぇとな…」

 

血が滲む腹部を押さえながら、バンはなのはに担いでもらい、屋敷を後にした。



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番外編 電気街の戦士

「…どこだよ、ここは?」

 

バンは困惑していた。

 

つい先程まで、交番で寝ていたのに、目が覚めたら街にいた。

 

しかも、パトレン1号に変身して。

 

「何で俺がこんなところに…!」

 

1号は周囲を見回す。

 

よく見ると、電気街だが、人が一人もいない。

 

すると、1号の横で、赤い怪盗のルパンレンジャーが立っていた。

 

1号は反射的にVSチェンジャーで赤い怪盗を撃つ。

 

だが、赤い怪盗はそれをバク転しながら避け、物陰に隠れた。

 

「…何で怪盗がここに?」

 

VSチェンジャーを構えながら1号は疑問を抱いた。

 

ルパンレンジャーが現れるのは主に転生者の特典を奪うため。

 

だが、どこにもそれらしき気配もなかった。

 

「まさか、あいつもここに連れてこられた、とかか?」

 

そう考えていると、物陰から赤い怪盗がVSチェンジャーを構え飛び出した。

 

「ここで消えるが良い、スーパー戦隊!!」

 

すると、どこからかともなく声が聞こえた。

 

聞こえた方向に振り向くと、そこには青いボディスーツに白い鎧を纏った戦士がいた。

 

「ウルトラマン?

でもあんなの見たことないが」

 

「私の名はプリズムA、かつて地球を守るためにやってきた戦士。

だがお前達スーパー戦隊によって倒され、死んでしまった為、天から復讐の為に舞い戻ってきた」

 

「スーパー戦隊に?」

 

正義の味方を名乗ってるのに、言動が全くそれとは違う謎の戦士に、1号も赤い怪盗も呆れる。

 

「そう、かつてスーパー戦隊を兄さんのように慕っていたのだが、なぜかVSシリーズの企画が来て、来てみると、その相手のスーパー戦隊によく分からない法則によって、いつの間にか倒されてしまったのだ」

 

「それって、ようするにお前が弱すぎたんじゃないのか?」

 

「そいつの話に騙されてはいけない!!

とぉ!!」

 

プリズムAの話を遮るように、白いマフラーに赤い服を身に纏った男が現れた。

 

プリズムAはその男に警戒する。

 

「お前は」

 

「ふっ、4月1日という事でエイプリルフールだからと言って、嘘はいけないぜ、プリズムA!!」

 

「嘘?」

 

「というよりも、まだ4月じゃないはずだが」

 

「それは画面の外にいる視聴者が知っているから良いんだ!

それよりも、あいつはプリズムA、かつてはスーパー戦隊の放送時間である朝7時30分の枠を奪おうとした、チガウヨーコーポレーションのヒーローだ!!」

 

「一応はヒーローなのか」

 

「だが、俺達の活躍によって、それは阻止された。

行くぜ、銃妄想!」

 

その言葉を言った瞬間、姿が変わり、赤い鎧を身に着けた戦士へと変わった。

 

「VSシリーズならカーレンVSオーレン推し!

アキバレッド!!」

 

「「…」」

 

そんな言葉を聞いて、プリズムAを除く二人は、何も言えなかった。

 

というか、どこから突っ込んだらいいのか、わからない。

 

「ほら、ほら、スーパー戦隊なら、名乗って、名乗って」

 

「いや、その前に、聞きたいのだけど、どういう感じ?」

 

二人は余りにもついていけてないので質問する。

 

「ふむ、よく疑問に思った.

そもそも、この空間はかつて俺達アキバレンジャーが戦っていた妄想の世界が、チガウヨーコーポレーションの妄想によって作られたあのプリズムAによって支配された世界なんだ!!」

 

「妄想の世界」

 

「あぁ妄想だからって、馬鹿にしたか!!」

 

「いや、別に」

 

1号と赤い怪盗はそう言って眼をそらしたが、アキバレッドと名乗った戦士が怒りながら、二人に迫った。

 

「良いか、妄想の世界は現実にリンクしている。

もしも、プリズムAがこの世界で滅茶苦茶にしたら、現実世界にも影響が出る」

 

「そ、それは、そうかもしれない」

 

アキバレッドは何かとすごいことを言っているが、その威圧感でそれどころじゃない。

 

だが、それを聞いたプリズムAは、得意げに笑う。

 

「ふっ、既に遅い。

私は既に、スーパー戦隊の放送枠である7時30分へと手を伸ばした。

これで今日からは私が活躍する『非公認巨人プリズムA』が放送するのだ!!」

 

「ぎゃ!」

 

そんなことを言っていると、赤い怪盗の顔に新聞が飛んできた。

 

赤い怪盗は慌てて引きはがして、それを見る。

 

「…」

 

「栄光の放送時間、これで私のグッズもばんばん…」

 

「売れないな」

 

「…え?」

 

「だって、そこもうスーパー戦隊、放送してないから」

 

「何だって?」

 

赤い怪盗はそう言って、プリズムAに新聞を見せる。

 

「さ、サンデーL●VEだとぉ!!」

 

「ええぇぇーーー!!」

 

プリズムAと同じく、アキバレッドも叫んだ。

 

すると、今度は1号の足元にポスターが落ちていた。

 

1号はそれを拾って読む。

 

「どうやら、去年から放送時間が変わったらしいな。

今は9時30分で放送しているから、2時間違いだな」

 

「なっ、なんだとぉー!」

 

「その時間は他のチャンネルでも多くの人気番組があるじゃないか!

せっかくのスーパーヒーロータイムがぁ」

 

「あなたは知らなかったのか?」

 

「あぁ、最後の戦いで死んでしまって!

それからシーズン3も放送されないし!!」

 

「死んだっていう事は転生者か?」

 

アキバレッドの言葉を聞いた瞬間、1号は手錠を、赤い怪盗は戦闘機の機械を取り出し、構えた。

 

だが、それを見た瞬間、アキバレッドは慌てながら待ったをかける。

 

「いやいや、死んだスーパー戦隊が助けにだって来るよ!

ほら、アバレキラーさんもそうだし、ビートバスターさんだって、VSシリーズでは一時的に蘇っていたじゃないか。

ゴーカイジャーのレジェンド大戦なんて、とんでもないことになっているし!」

 

1号たちに対して、必死で説得するアキバレッドを見て、転生者になっても、目の前の戦士は正義の心を忘れないんだな、と1号は内心で思った。

 

「まぁ、そこまで言うんだったら、力を貸してくれよ、アキバ先輩」

 

「先輩?

今、先輩って言った?」

 

「えっ?

あぁ」

 

その言葉に反応し、うれしさいっぱいの勢いで、赤い怪盗の手を握った。

 

「非公認の俺を先輩だなんて!

燃えて来たぜ、力を貸すぜ、後輩!!」

 

そう言って、アキバレッドは二人から距離を離しポーズを決めた。

 

「受け取れ、ルパンレンジャー、パトレンジャー!

これが俺達アキバレンジャーの大それた力だ!」

 

その言葉と共に、アキバレッドの体は二つの光に変わり、1号と赤い怪盗の手元に来る。

 

よく見ると、アニメのプリントが特徴の、所謂痛車だった。

 

「マジかぁ。

なら、やるしかねぇか!!」

 

『イタッシャー!

パトライズ!

ケイサツブースト!』

 

VSチェンジャーに取り付け、操作したときに音声と共に、美少女のフィギュアが現れた。

 

「あの人、これ以外に何かなかったのかよ!?」

 

1号はフィギュアを手に取り叫んだ。

 

すると、フィギュアから『ズッキューン!』と音声が流れ、フィギュアが銃へと変化した。

 

それだけでは無く、1号の横には先ほどまで戦ったアキバレッドと、別に青と黄色の戦士が立っていて同じように銃を構えていた。

 

それと同じように、赤い怪盗はアキバレッド一人だが、アキバレッドが謎の鎧を装着し、さらには赤い怪盗が手に持っているものと同じ短剣が握られていて立っていた。

 

「なるほどな。

それじゃ、あんたらの力、貸してもらうぜ!!」

 

「任せてくれ!」

 

「任せて!!」

 

「お任せにゃあ!」

 

「行くぜぇ!

…えっ、あんたら喋れたのか!?」

 

「そりゃあ、バスコが出した公認様じゃないからな。

非公認だからこそ、出来た技だぜ!」

 

「にゃっふうぅああああ!?」

 

「回転ジャンプしながら驚くな!?」

 

「赤木さんが増えてる!!?」

 

「…何なんだよ、この人たち」

 

1号は3人のやり取りについていけなくて少しげんなりしそうになるが、今はそれどころじゃないと振り切った。

 

「そんなことしてる暇はない!

行こうぜ!」

 

「おう!」

 

「えぇ!」

 

「わかったにゃぁ!」

 

アキバレッドと二人の戦士は銃を構え、1号は銃とVSチェンジャーを構え、それぞれエネルギーを溜める。

 

「「「「5連ムニュズキューン!!」」」

 

1号たちから放たれた五つのエネルギー弾が怪盗たちを通り抜け、プリズムAに全弾命中する。

 

そして、怪盗と鎧のアキバレッドが短刀でプリズムAを斬りつけた。

 

「こっ、こんな短い戦いがあるか!!」

 

「馬鹿を言うな。

こういうのはテレビくんの付録DVDならば当たり前だぜ!!」

 

「最後まで言っている意味が分からない!!」

 

その言葉を最後に、プリズムAは爆散した。

 

「プリズムA、もしも純粋な放送番組だったら、見ていたかもしれない。

全ては商品の売り上げしか興味を持たなかったチガウヨーコーポレーションが引き起こした惨劇だったんだ」

 

「そもそも、どうやって放送枠奪ったんだ?

もしかして、買収か?」

 

「…それを言うと、このSS自体消されるから、言えない」

 

「???」

 

「それじゃあ、皆、今度はシーズン3(仮)で会おうぜぇ!!」

 

「放送すんのかよ!?」

 

1号はアキバレッドの言葉に叫ぶと、目が覚めて交番にいた。

 

「…変な夢、だったな」

 

バンは頭を掻こうと、手をあげる。

 

すると、手にはマシンイタッシャーのトリガーマシンが握られていた。

 

「…」

 

バンは無言でそれをしまい、缶ジュースを飲んでいた。

 

 



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多次元融合と対策

すみません、投稿が遅くなりました。




バンがバイカーのトリガーマシンを使って数日、バンたちパトレンジャーと、なのはたち機動六課が右京の前に集められていた。

 

「今回、君たちに集まって頂いたことについて、僕から説明させていただきます」

 

そう言って、右京は口を開き、皆に説明する。

 

それは、かつてなぜロストロギアが出現したのか。

 

そして、それに対する対策だった。

 

「多次元融合?」

 

「えぇ、君たちが向かった場所の周辺を、霞ちゃんに確認したところ、いくつもの世界と、次元が融合した結果、ロストロギアが発生したのではと推測しました」

 

「あの、それは、私たちが通っている、多次元学園以上に、ですか?」

 

かこが質問する。

 

「その通りです。

あの学園は、確かに融合しています。

しかし、多次元融合は、それ以上に様々な世界と次元が融合し、混ざりに混ざった状態なのです」

 

「じゃあ、その対策っていうのは何ですか?」

 

アストルフォが質問する。

 

「その事なんですが、君達は以前、怪盗とシンフォギアに会いましたね?

話によると、怪盗たちはゴライアスと呼んでいたようですが」

 

「は、はい」

 

「ですので、今後の対策として、君たちには一層協力していただこうと思うのです。

時空管理局にも、その話は通ってますね?」

 

「はい、上層部から今回のように、怪盗とシンフォギアにロストロギアを奪われないよう、パトレンジャーと励めと、連絡が」

 

「待ってください!

私たちはそんなこと一度も言われてません!」

 

ティアナがなのはに抗議する。

 

それに対して、なのはは申し訳なさそうに謝罪した。

 

「あぁ、ごめんね。

バンさんにロストロギアを渡してから皆に伝えようとしたら、通報が来て、言えなかったの」

 

「そ、そうなんですか…」

 

「じゃあ、このトリガーマシンは、その協力も兼ねて俺に渡したってことですよね」

 

バンはバイカーのトリガーマシンを取り出す。

 

「えぇ、バン君はあの戦いで、特典を奪われたので、どうかそれを補えないかと、時空管理局と掛け合ったのです」

 

「それをロストロギアの中から探して、バンさんのvsチェンジャーに対応しているものがこれだったのです」

 

二人の言葉に、バンはトリガーマシンをしばらく見つめる。

 

「…そうなんですね。

ありがとうございます、長官。

それとなのはも、ありがとな♪」

 

バンの礼に二人はうなづいた。

 

「それでは、今回はこれで話はまとまりましたので、皆さんはゆっくり休んでいてください」

 

「了解です。

それでは、失礼しました」

 

バンはそう言って、かこやアストルフォ、そしてなのはたち機動六課を連れて長官室を後にした。

 

一人長官室に残った右京は、椅子にもたれかかり、天井を見上げる。

 

「…君たちは、力を合わせればどんな困難にも、どんな試練にも立ち向かえるのです。

だから、この先転生者を更生していく中で、本当の正しさというのを、君たちの手で見つけ出してください」

 



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激突と蒼い死神

波打つ海の中、バンたちは船を走らせる。

 

「まさか、島にも転生者の反応があるなんてねぇ」

 

「普段は誰も近寄らないような場所みたいですけども、その転生者は一体何を…」

 

アストルフォとかこが地図を読みながら、話し合っている。

 

すると、操縦席からバンが言う。

 

「あぁ、なんでもその島の環境を揺るがすことしてるみたいなんだ。

例えば、青い影が、目に映る生き物の殺意を感じ取った瞬間に惨殺したりとか、森を片っ端から薙ぎ払ったり、とかな」

 

「それって、島の生態系を揺るがしている、ってことですか?」

 

「どんな意図があって、そんなことになってんのかやってのかは、まだわかんねぇけどな」

 

「でも、青い影でそういう殺意を感じ取って発動ってEXAMみたいだね。

ブルーデスティニーの」

 

「EXAM、ですか?

でもあれって、ニュータイプの殺意とか敵意に反応するんじゃあ…」

 

「人とか動物にも対応するようになってるって可能性もあるぞ?

…うん?

アストルフォ、先頭に行って見てくれ」

 

「はーい」

 

アストルフォは船の前に行き、望遠鏡で見る。

 

その先に島があった。

 

探知機と望遠鏡を見比べた後で、アストルフォは二人に言った。

 

「隊長!

目的の島だよ、もう少ししたら降りる準備しよう!!」

 

「わぁーたよ!

かこ、お前も準備しとけ」

 

「了解です。

…?

あの、そう言えばなのはさんたちは?」

 

「管理局の用事で、来るのが遅れるらしいんだ。

終わり次第、すぐ来るってよ」

 

三人は船を島の近くまで動かし、ボートに乗って浜辺に着く。

 

「しっかし、ここで被害が出てるってのに森とか生い茂ってるんだなぁ」

 

「確かにそうですけど、奥が怖いですよ」

 

「情報の通りなら、動物の死体とか荒らされた森とかありそうだけどね」

 

「こ、怖いこと言わないでよぉ!」

 

三人はそう言いながら、森の中を進む。

 

しばらくすると、バンは何かを見つけたのか、眼を見開いた。

 

「止まれ。

この先、なんかあるぞ」

 

「どうしたの?」

 

「この茂みの奥、何か血の匂いがするんだよ」

 

「まさか、死体?」

 

「それか、血の着いた何かだと思いてぇけどな。

行くぞ」

 

バンは茂みを掻き分けて開いた。

 

「…マジかよ」

 

その奥には、血に濡れた動物や人の死体があちこちであった。

 

さらには薙ぎ倒されたり、切られた木があった。

 

それらを見たかこは、気になるものを見つけた。

 

「まるで、何かで焼き切られたような跡がありますね」

 

「焼き切られた?

あぁ、本当だ!」

 

「確かに、これは普通に切ってもこうはならねぇな」

 

死体や木の状態を見ると、切り傷の断面が火傷のようになっていて、木の断面には熱の籠って赤くなっていた。

 

「こいつは、アストルフォの言う通り、ブルーデスティニーの特典だな。

それも、俺が映像で見た特徴だと、1号のだ。

今焼け跡から解析してるが、その辺りは間違いないだろうぜ?」

 

「その可能性は、高いですね……!?

待ってください、この近くで転生者のすさまじい反応が見られます!!」

 

バンが解析していると、かこが驚いたように、探知機の反応を確認した。

 

「この探知機でこの反応だなんて、まさか暴走?」

 

「ちっ!

だとしたら、早くその転生者を止めに行くぞ!」

 

「「了解!!」」

 

三人は探知機の座標を頼りに森の中を走った。

 

「あそこだな!

行くぜ二人とも!」

 

「「「警察チェンジ!!!」」」

 

『1号!』

 

『2号!』

 

『3号!』

 

「パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!」

 

転生者が近くにいることを確認した三人は変身し、転生者の下へとたどり着いた。

 

「そこまでだっ!

…!?」

 

「あれは!」

 

「ルパンレンジャー!?」

 

三人はvsチェンジャーを構えけん制しようと入り込むと、転生者が変身したブルーデスティニー1号とルパンレンジャーが戦っていたのが見えた。

 

「またお前らかよ!」

 

「こんな時に…」

 

「今はお主らの相手をしている暇はないのじゃ」

 

三人に気づいたルパンレンジャーは忙しそうに言う。

 

それもブルーデスティニー1号の猛攻を避けながら。

 

「そいつ、暴走してるんだろ!

だったら、俺達が更生する!

行くぞ!」

 

「「了解!」」

 

1号は二人に号令すると同時に、vsチェンジャーとパトメガボーを構え、ルパンレンジャーと転生者に攻撃を仕掛ける。

 

3号は青いルパンレンジャーを、2号は黄色のルパンレンジャー、そして1号は赤いルパンレンジャーとブルーデスティニー1号と戦うことになった。

 

「なっ!?

邪魔をしないでよ!」

 

「邪魔はお前らだ。

あいつの特典は俺たちがもらう」

 

「うっ!」

 

「お主らの相手は、儂らじゃ!」

 

「そこをどけ!

今はお前らと戦ってる場合じゃねえんだよ!」

 

「それはこっちのセリフだ!

あの爺さんは、特典に振り回されてる状態なんでな!」

 

「爺さん!?

だとしたら、負担かかりすぎで死んじまうじゃねぇか!」

 

1号と赤いルパンレンジャーはブルーデスティニー1号の猛攻を避けながら、vsチェンジャーで撃ちあい、パトメガボーと剣をぶつけ合いつばぜり合いになる。

 

「だからその前に、俺たちが特典を奪う!」

 

「いいや!

それよりも早く、俺たちが更生するんだよ!」

 

1号と赤いルパンレンジャーはいったん距離を取る。

 

『キュウレンジャー!

パトライズ!

セイザ・チェンジ!』

 

1号はコジシボイジャーを使って、キューソードとvsチェンジャーを構える。

 

「それはキュウレンジャーの!?

なら、こっちはどうだ!?」

 

『キョウリュウ!

0、3、8!

マスカレイズ!

アームド・オン!』

 

それに対抗するように、赤いルパンレンジャーは恐竜型の機械で恐竜型の銃と剣を取り出した。

 

すると、ブルーデスティニー1号は1号に目掛けて、ビームサーベルで斬りかかる。

 

「うおっ!?」

 

1号はキューソードの刃幅を盾に受け止め、ブルーデスティニー1号の胴体をvsチェンジャーで撃ち抜く。

 

後ろに後退した転生者はスラスターを使って空を飛ぶ。

 

「はあ!!」

 

転生者の背後にまわった赤いルパンレンジャーは剣で転生者を斬ろうとするが、それを察知して、転生者はビームサーベルで受け止め、ビームライフルを使って撃ち抜こうとする。

 

「やらせるか!」

 

赤いルパンレンジャーはビームライフルを持つ手を蹴り上げ、腰のベルトからワイヤーを取り出し、転生者の体を縛り付ける。

 

「くらえ!」

 

そして、激しく動こうとするので恐竜型のエネルギー弾で攻撃した。

 

強力な攻撃で木の幹に叩きつけられたブルーデスティニー1号は、いくらか装甲にひびが入りながらも、起き上がろうとしてる。

 

「どんだけタフなんだよ。

だけど、これを使って大人しくさせてやるよ」

 

赤いルパンレンジャーはヘリコプターのような機械を取り出した。

 

すると、1号はvsチェンジャーで赤いルパンレンジャーの足元を撃ってけん制した。

 

「待て!

その転生者は俺が更生する!」

 

「…しつこいな。

だったら、どっちがやるか、決着つけようじゃねえか」

 

1号は言葉に応じるように、バイカートリガーマシンを取り出した。

 

『バイカー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

『サイクラー!

3,1,9!

マスカレイズ!

怪盗ブースト!!』

 

1号は車輪のエネルギー弾を、赤いルパンレンジャーは竜巻のエネルギー弾を撃つ。

 

二つのエネルギー弾がぶつかり合った瞬間、二人の間に衝撃が走る。

 

「がっ!?

くうぅ!!」

 

「ぐっ!!」

 

二人は衝撃に耐える。

 

すると、衝撃は爆発を起こし、二人の体は木や崖にぶつかる。

 

「がはっ、ごほ!

…やるな」

 

「ちぃ、なんて威力なんだよ…」

 

二人はダメージを負いながら、起き上がる。

 

だが、赤いルパンレンジャーは先ほどの衝撃が強かったのか、すぐに膝をついた。

 

「…悪いが、今回は俺たちが更生させてもらうぜ」

 

1号はボロボロの体を引きずりながら手錠を取り出し、転生者の方へと足を向けた。

 

しかし、ブルーデスティニー1号の様子がさきほど明らかに変わっていた。

 

ブルーデスティニー1号はばったりと動きが止まり、力なく倒れこんだからだ。

 

すると、ブルーデスティニー1号の体から、赤いオーラのようなものが現れ、転生者の体は老人の体へと変わる。

 

老人から出たオーラはそのまま宙を飛び、そして巨大ながら、先ほどのようなブルーデスティニー1号へと姿が変わった。

 

「まだ暴走してんのか!?」

 

1号はまさかと思い、急いで老人に手錠を嵌める。

 

「…は?」

 

老人の体は転送されない。

 

転生者であるはずなのに。

 

「まさか、寿命で死んだってのか…?」

 

呆然とする1号をよそに赤いルパンレンジャーはヘリコプターの機械を巨大化させ、強力な風を巻き起こす。

 

1号はそれに耐えようとする。

 

「うっ!?」

 

赤いルパンレンジャーはヘリコプターに乗り込み、仲間の二人が乗っている飛行機と合流した。

 

すると、先ほどまであの二人と戦っていた2号と3号が来た。

 

「バン隊長!

大丈夫ですか!?」

 

「その転生者、まさか特典を奪われたの!?」

 

「いや、奪われてねえよ。

けど、この転生者の爺さんは死んじまった。

寿命でな…」

 

「っ!?」

 

「そ、そんな…」

 

二人は1号の言葉を聞いて呆然とする。

 

しかし、それも束の間。

 

ルパンレンジャーの乗る飛行機が崖に攻撃し、瓦礫が落ちてきたのだ。

 

「っ!

お前ら、伏せろ!」

 

そう言って1号は二人を抱え伏せる。

 

三人は落ちてくる瓦礫に耐える。

 

瓦礫の落下が収まったが、三人は動けなくなった。

 

「痛ぇ、こりゃあ動けねぇな。

お前ら大丈夫か?」

 

「はい、何とか…」

 

「ボクも大丈夫だけど、これじゃ動けないね」

 

「そうか…?

あいつは!?」

 

1号は空から何が怪盗たちに飛んで行くのが見えた。

 

グッドストライカーだ。

 

赤いルパンレンジャーの乗るヘリコプターに入ると、巨大化して飛び出した。

 

そして、ヘリコプターと二つの飛行機と合体し、巨大ロボットへと変わり、ブルーデスティニー1号と戦う。

 

「バンさん、皆さん!

大丈夫ですか!?」

 

「今から助けますので、待ってください!」

 

すると、なのはとスバルを含めた機動六課が来て、三人を瓦礫から救出した。

 

瓦礫から出た後、1号となのはたちはブルーデスティニー1号とルパンレンジャーのロボットの戦いを見ていた。

 

だが、それはすぐに終わった。

 

ブルーデスティニー1号は、ルパンレンジャーのロボットの手を掴み、海へと飛んで行き、そのまま爆発したからだ。



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猫に覆われた街


すみません、投稿が遅くなりました。

今回は、ジェンガさんのリクエストを書かせていただきます。

しかし、今回は前半と後半に分かれる形で書かせていただきます。

あと、少しリクエストと違う展開になっていますので、その辺りはすみません。


ブルーデスティニー1号の転生者が寿命で死亡し、ルパンレンジャーが行方不明になって数日後、バンたちパトレンジャーはルパンレンジャーの行方を探ろうと、行方不明になった場所を探していた。

 

しかし、ルパンレンジャーのメンバーどころかグットストライカーも見つからず、捜索は中止となった。

 

そんな中、バンたちパトレンジャーはブルーデスティニー1号の転生者の老人がいた島に向かっていた。

 

それもスーツを着て。

 

バンたちは島にある老人の墓に着いた。

 

「「「…」」」

 

バンたちは暗い表情のまま墓を見つめる。

 

すると、バンは手に持っていた花を、老人の墓の前に置き、手を合わせる。

 

かことアストルフォも同様に、手を合わせた。

 

「まさか、寿命で死んじまうとはな…。

更生でも、懺悔でも、どっちみち死んじまってたのか…?」

 

バンはぼそりと墓前でつぶやく。

 

「…悪かったな、爺さん。

俺達は、あんたを楽にしてやれなかった。

すまねぇ…!」

 

身体を震えながら、バンは謝罪した。

 

その謝罪は、転生者の老人に届くよう。

 

そして、しばらくしてからバンは立ち上がった。

 

「お前ら、行くぞ」

 

二人にそう言って、バンは老人の墓を後にしようとした。

 

その時だった。

 

通信機がなったからだ。

 

「…何だ?」

 

『ティアナです!

今街で転生特典と見られる猫が大量発生しています!

至急来て下さい!』

 

「猫?

そんなやついたか?」

 

『今その画像と、場所を送ります!

すぐに来て下さい!』

 

ティアナが通信を切ると同時に転生特典と見られる画像とその座標を送る。

 

「こいつは、にゃんこ大戦争の特典か?

しかも、よく見たらかなりの速度で大量発生してやがる!」

 

「だとしたら、このままだと街が猫で覆われて、押し潰されてしまいますよ!」

 

「なら、何時までも凹んでる場合じゃないよね!」

 

「あぁ、そうだな。

パトレンジャー、出動だ!!」

 

「「了解!!」」

 

バンたちはそれを確認して、すぐにその場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「おいおい、何だよこれ!?」

 

バンたちは目の前の現状に驚いた。

 

白くて丸い猫に街が覆われていたからだ。

 

しかもその猫は急速に増えて、中には家屋にひびが入り始めているのが見える。

 

そんな中、なのはたち機動六課は、その猫たちを魔法で拘束したり、死なない程度に攻撃して動きを止めいているのが見える。

 

「おい!

状況はティアナから聞いているけど、どうなんだ!?」

 

『先ほどより、数が増えて、私たちだけでは対応できません!』

 

「わかった。

ならこっちも猫をどうにかしながら、転生者を探ってみる!」

 

『了解です!!』

 

バンはスバルとの通信を終えて二人に向く。

 

「よし、じゃあこっちは散開して、猫をどうにかしながら、転生者を探るぞ!」

 

「「了解!!」」

 

「「「警察チェンジ!!」」」

 

『1号!』

 

『2号!』

 

『3号!』

 

『パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

バンたちはパトレンジャーに変身し、三人はそれぞれ別方向で街に入る。

 

 

「はぁあ!!」

 

「フリード、お願い!!」

 

エリオは雷撃を纏った槍の衝撃を利用して、キャロは巨大化したフリードリヒを使役し膨大な風の衝撃を使用して、猫たちを気絶させていた。

 

しかし、気絶した数よりも、増える数が上がってきているので押されている状態だった。

 

ついには、大量の猫が一つのスクラムを組み、とんでもない速度で飛び跳ね、フリードリヒにぶつかり無力化させてしまう。

 

「フリード!?」

 

「キャロ、危ない!」

 

「え!?」

 

別方向から来た猫のスクラムが、キャロに目掛けて飛んできた。

 

キャロはその光景に思わず目を閉じて、衝撃に耐えようとした。

 

その時だった。

 

猫のスクラムとは別の方向から、何かが飛んできて、それがキャロの体を抱え、その場を離脱した。

 

「え?」

 

キャロは何が起こったのかと思い目を開けると、アストルフォが変身したパトレン3号が自分を抱えていた。

 

アストルフォが召喚したヒポグリフに乗って。

 

「キャロ、大丈夫?」

 

「あ、アストルフォさん!?」

 

「来てくれたんですか!」

 

「うん!

次はフリードだね!」

 

そう言って3号はパトメガボーを取り出し、フリードリヒにまとわりついた猫たちに向けた。

 

『今すぐ、その子を放しなさい!!』

 

その音声を聞いた瞬間、猫たちは蜘蛛の子を散らすようにフリードリヒから離れる。

 

「さて、二人とも!

反撃開始だよ!」

 

「「了解!」」

 

フリードリヒを解放したことを確認した3号はキャロとエリオにそう伝えて、武器を構える。

 

 

 

 

一方そのころ、なのはとスバルは、魔法で拘束したり、拳で叩いて猫たちを気絶させていた。

 

「はあ!」

 

「たぁ!」

 

二人の周りには、拘束されて動けなくなった猫や気を失った猫が山になっていた。

 

「はあはあ…。

これじゃあキリがないですよ!」

 

「気を抜いちゃだめ!

まだ猫たちがいるんだから」

 

「は、はい!」

 

なのははスバルに鼓舞した。

 

その瞬間、まだ攻撃されていない猫がなのはに飛びかかろうとする。

 

「なのはさん!」

 

スバルはなのはの前に立ち、ガントレットをつけている右手で殴ろうとする。

 

だが、猫は飛びかかった勢いを利用してスバルの右手を弾き、もう一度飛びついてスバルの腹部に直撃した。

 

「うっ!?」

 

「スバル!?」

 

なのはがスバル方へと振り向く。

 

すると、なのはの左右から猫が飛び出した。

 

「っ!?」

 

なのはは思わず体の動きを止めてしまった。

 

だが、その瞬間、左右の猫が打ち抜かれたようになのはの後ろに飛んで行った。

 

「何とか間に合ったな!」

 

「バンさん!」

 

1号がvsチェンジャーを構えてなのはたちの下へ駆けつけた。

 

「スバルは立てるのか?」

 

「はい、何とか…」

 

スバルは息を切らしながらフラフラと立ち上がる。

 

「そうか…。

なら、もうしばらく一緒に戦ってもらうぜ!」

 

「…はい!」

 

「バンさん、スバル!

行こう!」

 

1号、なのは、スバルは背中を合わせながら猫の集団に警戒する。

 

「…来るぞ、気を引き締めろ!」

 

「「了解!」」

 

1号はバイカートリガーマシンを構えながら二人に言う。

 

それと同時に、三方から猫の軍団が雪崩のように押し寄せてきた。

 

 

 

 

「はぁはぁ…!

ったく、あの猫集団の転生者の猫はどこなのよ!?」

 

一方、ティアナは走りながら猫を攻撃していた。

 

「はあぁ!!」

 

ティアナは次々に飛んできた猫たちを2丁の銃で撃っていく。

 

「これじゃキリがない!」

 

そう言ってティアナは空へ飛び、転生者を探そうと街の様子を見ていた。

 

「っ!

あっちね!」

 

ティアナは転生者の反応を察知して、その場所へと向かおうとした。

 

だが、下方から猫が弾丸のような速度でティアナにぶつかってきた。

 

「はう!?」

 

ティアナは痛みに耐えながら、銃で対抗しようとする。

 

だが、次々に飛んでくる猫たちに為す術がなく、地面に叩き落とされてしまう。

 

「うぅ!」

 

ティアナは体の痛みに耐えながら立ち上がろうとする。

 

猫はその隙を見逃さないと言わんばかりに飛びかかってきた。

 

その時だった。

 

「ええい!」

 

声と共に、まるでティアナの周りを囲むように足場から緑の光があふれ出し、猫たちを遮った。

 

「これは!?」

 

「ティアナさん、大丈夫ですか!?」

 

2号はティアナの近くに杖を地面に突き刺していた。

 

「…まだ、動けますっ!」

 

「あぁ!

無理しないでください、今治しますので!」

 

2号はティアナの体に手をかざす。

 

すると、体から傷が消えていくのを、ティアナは感じた。

 

「傷が…」

 

「私の特典の一つなんです。

さあ、今のうちに行きましょう!」

 

「え?

は、はい!」

 

ティアナは戸惑いながらも2号と共にその場を離れようとする。

 

「あの、かこさん。

この近くに転生者の反応が見られたんです!」

 

「転生者の反応ですか?

わかりました、それではすぐに行きましょう!」

 

そう言って、2号はティアナと一緒に、転生者の反応が見られた場所へと向かった。

 

 

 

 

 

「この廃墟の中ですね」

 

「…みたいですね。

行きましょう!」

 

「はい!」

 

二人は転生者の反応が見られた廃墟へと入っていった。

 

中は静かで、周りは散らばっているのが目立つ。

 

すると、その先にボロボロの扉が見えた。

 

「この扉に転生者がいるみたいですね」

 

「はい。

では、行きます!」

 

その言葉と共に、ティアナは扉を蹴飛ばし、2号は転がり込むように部屋の中に入った。

 

「動かないでください!

…?」

 

扉の向こうの部屋は薄暗かった。

 

だが、その奥に一人の少女が泣きながらうずくまっているのが見えた。

 

皮肉にも、その少女から、転生者の反応が見られていた。

 

 



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その先に幸せがあると信じて

じぇんがさんのリクエストの後半です。


2号とティアナが入った部屋の先には、一人の少女がうずくまりながら泣いていた。

 

「まさか、この子が?」

 

「転生者、みたいですね。

あの猫と、同じ反応が見られますので」

 

「じゃあ、この子を更正すれば…」

 

ティアナは2号に提案する。

 

もし、目の前の少女を更正すれば、この街の騒動も、猫たちも消えると思って。

 

「…」

 

ティアナの言葉を聞いて、2号は手元にある手錠と少女を交互に見る。

 

「…いえ、今はまだやめておきましょう」

 

「え?」

 

そう言って、2号は手錠をしまう。

 

「ど、どうしてですか?

目の前に、転生者がいるのに」

 

「確かに、転生者です。

ですが、この人をすぐに更正すると、余計騒がしくなると思いまして」

 

「どういうこと、ですか?」

 

「この子のからの反応で、暴走している可能性があるからです。

だから、更生したところで、主を失った特典はさらに暴走するかもしれないんです」

 

「じゃ、じゃあ!

どうすればいいですか!?」

 

「…私に、考えがあります。

ですので、ティアナさんはしばらく、外から猫が来ないかを見てもらっていいですか?」

 

「っ!

…わかりました」

 

どこか納得のいかない様子で、ティアナは壁の隙間や特典の反応から、猫が来ないかを見張る。

 

2号は少女の方へと近づく。

 

「うっ…ぐすっ…!」

 

「あの…、こんにちは」

 

「ひっ!?」

 

2号は少女に声を掛けるが、少女は驚いて怯えてしまっている。

 

この姿で話かけると余計に警戒されると判断したのか、2号は変身を解除した。

 

「落ち着いてください!

決して、怪しい者ではありません!」

 

かこは怯える少女を説得しようとする。

 

だが、少女は耳を塞ぎ、さらにうずくまってしまう。

 

「…」

 

かこは少女の様子を見て、少し考える。

 

すると、かこは少女の手を握った。

 

「あ…」

 

少女は急に手を握られて驚いたように、かこを見る。

 

かこは、そんな少女に優しく微笑む。

 

「大丈夫です。

私たちは、あなたの敵ではありません。

だから、どうか落ち着いてもらえますか?」

 

「…」

 

少女は涙を流したまま、かこの胸に顔をうずめく。

 

かこは、少女が落ち着くまで、優しく頭を撫で続けた。

 

 

 

 

それから数分後。

 

「落ち着きましたか?」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

落ち着きを取り戻した少女は、涙を拭きながら元気にそう答えた。

 

「うん、それは良かったです。

私は、かこと言います。

よろしければ、あなたの名前を聞かせてもらって良いですか?」

 

「はい!

綾野 理恵って言います!

この世界には、今日この世界に来たばかりの転生者です!」

 

「そ、そうなんですか」

 

流石のかこも、目の前の少女、理恵の発言には驚いた。

 

まさか、自ら堂々と転生者と言うのだから。

 

「じゃあ、あの猫たちは、あなたの特典ということで、間違いないですか?」

 

「そ、そうなんです…。

なぜか、あの猫が私の特典として入ってたんです」

 

「入ってた?

それはどういうことですか?」

 

「はい、実は…」

 

理恵は説明する。

 

自分は死んだと思ったら、気が付いたらこの世界に飛ばされていたこと。

 

自分の手元に、身に覚えのないカードが入ってたこと。

 

それが怖くなって、近くにあった交番に届けたこと。

 

交番に届けて、しばらくしたら携帯から猫が一匹飛び出し、そこから一気に増えていったこと。

 

それと同時に、自分の携帯に入れた覚えのないアプリであるにゃんこ大戦争が入っていて、そのアプリから断続的に料金の請求が来ていること。

 

その二つが怖くなって、行く当てもないままこの廃墟にたどり着いたこと。

 

それらを説明した。

 

「…おそらくは、そのカードが手元になくなったから、そのアプリの特典が暴走したのかもしれませんね」

 

「え?

やっぱり、これが特典なんですか!?

じゃあ、どうすれば止まるんですか!?」

 

理恵は泣きそうになりながら、かこに詰め寄る。

 

「理恵さん。

そのカードは、どこの交番に届けましたか?」

 

「え?」

 

かこは真剣な顔で、理恵の顔を見つめながら聞いた。

 

 

 

 

 

そのころ、ティアナは廃墟の壁の隙間と探知機の特典の反応から、猫が来ないかを見張っていた。

 

「はあ…。

かこさん、なんですぐに更生しなかったのかしら…」

 

ティアナは先ほどのかこの行動に理解ができなかった。

 

探知機を確認しても、あの少女が特典の持ち主だという事は確かだ。

 

だが、かこはそれをせず、変身解除し、あの少女に手を差し伸べた。

 

「考えがあるって、行ってたけど。

それに暴走って…」

 

ティアナはまたしてもため息をついた。

 

その時に、かこが少女を連れてきた。

 

「ティアナさん、話は終わりました」

 

「そうですか。

あの、それで考えとは何ですか?」

 

「はい。

理恵さんをこの街の交番にお連れします。

その交番に、この特典を止めるためのカードがあるんです」

 

「というか、私がそこに届けちゃったんですけど…」

 

ははは、と力のない笑いをする少女、理恵と、かこの話を聞いて、ティアナは察した。

 

「つまり、彼女のカードがある交番に向かうから、それに協力してほしい、ってことですよね?」

 

ティアナは半ば呆れながら納得した。

 

ティアナはスバルのようにパトレンジャーと一緒にいたわけじゃないから、あまりパトレンジャーが過去に、どんな転生者を更生したかを知らない。

 

だが、かこの言っていた考えについて予想していた。

 

前に暴走した状態で転生者を更生したせいで、特典がひとりでに暴走して大変なことになったことを。

 

だから、今回はそれを防ぐために、手を差し伸べたのだと。

 

「あの、それでティアナさん。

それで頼みたいことがあるんですけど、良いですか?」

 

「な、何ですか?」

 

かこは、ティアナにあることを頼んだ。

 

 

 

街には猫が蔓延っている。

 

街の各地で、バンやなのはたちが対処しているが、それはいつまで持つかわからない。

 

かこたちが言っていた交番がある。

 

だが、その場所にも猫がいた。

 

まるで何かを探すかのようにあちこちを見てから、どこかへと飛び跳ねていった。

 

すると、交番の近くの壁の空間が歪み、かこたち三人の姿が現れた。

 

「どうやら、何とか着きましたね」

 

「まさか、オプティックハイドを使って隠れながら進むのが作戦だったとは…」

 

「でも、なんか忍者っぽくないですか?」

 

「私は魔導師ですよ。

…確かに、幻術も使えますが」

 

「それでも、ありがとうございます!

これであの猫たちと遭遇せずにたどり着けました!」

 

「お、お礼は良いので早く交番に行ってください!」

 

ティアナは顔を赤くて顔をそらす。

 

「わかりました。

理恵さん、行きましょう!」

 

「はい!」

 

かこは理恵の手を引いて交番に向かった。

 

 

 

 

「お邪魔します!」

 

「お巡りさん、いらっしゃいますか?」

 

交番に入って、二人は呼びかけた。

 

「…誰も、いないみたいですね」

 

「待ってください!

机の影に人が!」

 

理恵に言われてかこは机の影を見る。

 

「うっ、うぅ」

 

「まさか、この交番のお巡りさんですか!?」

 

かこと理恵は倒れこんでいた警官に駆け寄る。

 

よく見ると、頭から血を流して気を失っていたようだ。

 

「しっかりしてください!

大丈夫ですか!?」

 

呼びかけが聞こえたのか、警官は呻きながらかこたちを見た。

 

「うっ、何を、している。

ここは危険だから、早く、逃げなさい…!」

 

「それはわかってます。

ですが、その前にこの子がこの交番にカードを渡したみたいんですが、それはどこにあるんですか?」

 

「この子?

…君はさっきの!

確か、机の引き出しの中に保管してあるよ。

そのカードに何か心当たりが、あったのかい?」

 

「もしかしたら、彼女が間違えて、そのカードを出したかもしれないので、その確認です」

 

「そうなのか…。

確かに、あの子は名前を言わなかったから、それとそのカードの名前が一致すれば」

 

警官は頭を押さえながら机の中を開けてカードを取り出した。

 

「このカードだったはずだ。

名前は、綾野理恵さん、だね」

 

「ありがとうございます!

それ、私の名前なんです…!」

 

「そうなんだ。

大切に、使いなさい」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

理恵は涙を流しながら、警官からカードを受け取り、礼を言う。

 

だが、その喜びも束の間だった。

 

地面が揺れ、何かが近づいているのが聞こえた。

 

「な、何だ!?」

 

「これは、まさか…!」

 

「かこさん、大変です!」

 

ティアナが交番の入り口から声を張り上げる。

 

「あの猫たちが、雪崩みたいになってこっちに迫ってます!」

 

「な、雪崩…!?

い、いや…、助けて…!」

 

「理恵さん!?」

 

雪崩と聞いた瞬間、理恵は頭を抱えて、泣きながらしゃがみこんだ。

 

まるで、トラウマを思い出したかのように。

 

「助けて、助けてよぉ…!

私はあの冷たい中で一人ぼっちで死にたくない!

お願いだから、私を一人にしないでぇっ!!」

 

理恵は支離滅裂に叫ぶ。

 

「理恵さんっ!」

 

「っ!?」

 

かこの声で理恵はハッとする。

 

「私たちは、あなたを一人にはしません。

ですから、私と一緒に、この特典の暴走を止めましょう!」

 

「…はい!」

 

理恵は携帯を取りだし、にゃんこ大戦争のアプリを開く。

 

そして、かこの言葉を聞いて、その請求の支払いまでのページへと進む。

 

「あとは、このIDを入力してOKを押してください!」

 

「わかりました!」

 

「しまった!」

 

ティアナが次々と迫る猫を数匹を撃ち漏らしてしまい、交番の中に入ってきた。

 

「理恵さんは、やらせません!

警察チェンジ!」

 

かこはパトレン2号に変身し、パトメガボーで理恵に当たらないように弾いていく。

 

「かこさん!」

 

「理恵さん、私たちが止めてる隙に、早く!」

 

「はいっ!」

 

そう言って、理恵はカードのIDを間違えないように確認しながら入力する。

 

そして、OKボタンを押した。

 

 

 

すると、街中の猫が一斉に動きを止めた。

 

そして、猫の体は砂になるように消えた。

 

こうして、街を覆っていた猫は消えた。

 

 

 

 

交番を後にしたかこと理恵は、近くにあった公園にいた。

 

「やっぱり、そうなるんですよね」

 

「はい…。

暴走したとはいえ、私はあなたを更正しなくちゃいけないんです」

 

かこは理恵に、更正の話をする。

 

当然、理恵の顔は暗かった。

 

「でも、やっぱり寂しいですよね。

特典ごと、記憶も無くしちゃいますから。

かこさんたちとの、思い出も、全部」

 

「はい…」

 

かこは小さな手を震えるほど握る。

 

「でも…」

 

「?」

 

「でも、記憶も特典を失って、別の世界に行っても、あなたのこれからは幸せに満ちてると信じてます!」

 

「え?

どうして、ですか?」

 

「私も、転生した先で、大切な人たちと会いました。

だから、その先で辛いことがあっても、その人たちと入れたから、私は幸せになったんです」

 

「…」

 

「ですから、私は、あなたの幸せを願います!」

 

かこは真剣な眼差しで理恵に言った。

 

自分は転生して幸福になった。

 

その思いは、決して間違いではないと。

 

「…わかりました。

更正して、別の世界に行って記憶を失っても、きっと幸せになれるように、頑張ります!」

 

その言葉を聞いて、かこは理恵の手に手錠を嵌めた。

 

「ありがとう、優しいお巡りさん…」

 

光の粒子になりながら、理恵はそう言って、転送された。

 

「…あなたに、幸せの祝福があらんことを、祈ります」

 

かこは微笑みながら、空に向かってそう言った。

 

「終わった、みたいですね」

 

「ティアナさん」

 

理恵を見送った後、ティアナが歩み寄ってきた。

 

「かこさん」

 

「はい?」

 

「あなたはどうして、理恵さんに手を差し伸べたのですか?

単純に、暴走を止めるためだけじゃないですよね」

 

「…似ていたんです。

彼女が、生前と転生直後の私に。

だから、この人にも幸せになってほしいな、なんて」

 

「え?」

 

かこは少し恥ずかしそうに、ティアナの質問に答えた。

 

「さぁ、早くバン隊長と合流しましょう、ティアナ!」

 

「は、はい!」

 

かこは通信機を使ってバンたちに連絡し、合流する場所へと移動しようとし、ティアナはそれについていく。

 

あることを考えながら。

 

「…かこさんたちの生前や転生直後に、なにがあったんだろ?」



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竜巻と赤いレスキュー隊員

バンたちパトレンジャーとなのはたち機動六課はある場所に通報がはいり、向かっていた。

 

「まさか、またインフィニット、ストラトスの世界で転生者が暴れているとはな!」

 

「でも、ここは前とは別で平行世界みたいですよ?」

 

「ボク達が知ってるあの世界は多次元学園と融合してるからね」

 

「あ、見えてきましたよ!

あれです!」

 

なのはが指を指す。

 

その先には、強烈な竜巻が巻き起こっておるIS学園だった。

 

「あれを、転生者が起こしてるってか!?」

 

「このままだと、あの学園だけじゃなく、周囲への被害も拡大します!」

 

「マジかよ!

俺たちは、学園に入って、転生者を止めるから、なのはたちは周囲の施設に竜巻の被害が来ないよう守ってくれ!」

 

「「了解!!」」

 

「「「「「了解!!!」」」」」

 

なのはたち機動六課は周囲の施設へ、バンたちパトレンジャーは学園へと向かった。

 

 

 

そして、バンたちは竜巻の中心となっているアリーナにたどり着いた。

 

「この中に、転生者がいるみてぇだな。

行くぞ!」

 

「「「警察チェンジ!」」」

 

『1号!』

 

『2号!』

 

『3号!』

 

『パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

バンたちはパトレンジャーに変身し、中へと走った。

 

 

 

 

IS学園のアリーナに急いで向かうと、中心で竜巻が巻き起こっていた。

 

教員や代表候補性がISを纏って対応しようとするが、強烈な風に身動きが取れず、姿勢制御するのがやっとだった。

 

中には竜巻に飛び込んだのか、壁に叩きつけられISを解除させられて気絶している人もいた。

 

その中には、織斑一夏と思われる少年もいた。

 

「おいおい、何だよこの竜巻は!?」

 

「あの中に、転生者がいるみたいです!

多分、この竜巻もその転生者が…」

 

「でもこれじゃ、前に進めないよ!」

 

三人は手で視界を確保しながら、竜巻を見る。

 

「空どころか、宇宙に行くことを想定していたISがまともに動かせねぇほどの力だ。

こいつは、かなりやばい竜巻だぜ!」

 

そう言って、1号は懐からバイカートリガーマシンを取り出した。

 

「バン隊長、まさか!」

 

「他に奴らに当たらねえようにしたいが、こいつを使ってあの竜巻を止めるしかねえよ!」

 

『バイカー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

1号はバイカートリガーマシンを取り付けたvsチェンジャーを構え、教員や代表候補性などに当たらないように狙いを定める。

 

「くらえ、バイク撃退…」

 

「待てっ!!」

 

「え?」

 

1号が撃とうとした直前、アリーナの出入り口から、男が警棒を携え、とんでもない速度で走ってきた。

 

それは、三人が反応してから制止するよりも早い速度だった

 

そして、距離が近くなったのか、そのまま警棒を前に突き出す形で竜巻の中に飛びこんだ。

 

すると、ISでは決して近づけなかった竜巻が晴れて、中から鋼の鎧を纏った男が壁に激突するのが見えた。

 

それで竜巻が止み、教員や代表候補性らはそのまま倒れこんだ。

 

「がはっ!?

誰だ、俺の邪魔をしたのは!」

 

その怪人は苛立ちながら正面を見る。

 

そこには、赤いスーツに顔部分が黒くなっている赤いヘルメットをかぶった男だった。

 

「お前は、まさか!?

ちいっ!!」

 

そう言って、怪人は先ほどよりも小さな竜巻を身に纏い、姿を消した。

 

姿を消したことを確認した男は周りを見回していた。

 

そこで、1号が駆け寄り問いかけた。

 

「おい、あんた。

一体どういうつもりだ?」

 

すると、男は1号に近づき、1号の胸倉を掴んだ。

 

「お前たちこそ、どういうつもりだ!

あんなものを使って、衝撃が周囲にぶつかったら、どれだけ被害が拡大すると思ってるんだ!」

 

「っ!」

 

「お前達二人もだ!

こいつがあれを使うと分かっていながら、なぜ止めなかった!」

 

「そ、それは…」

 

「うっ、うぅ…」

 

男に怒られて三人は何とも言えなかった。

 

1号は男に言われてはっとする。

 

自分は竜巻に目掛けてバイク撃退砲を撃とうとした。

 

だが、それに伴う衝撃と周囲への配慮が足りなかった。

 

2号、3号も同様だった。

 

「まさか、こいつなら何とかしてくれるとでも思ったのか?

だとしたら、それは過信だ。

それに…」

 

そう言って、男は周囲を見る。

 

「それに、あの竜巻で倒れている人だっているのに、救助に入ろうとしないのはどういうことだ!?」

 

「「「…」」」

 

三人は何も言えなかった。

 

自分たちは、倒れている人よりも、転生者の更生を優先したから。

 

「この世界では、確かにISというパワードスーツがあってシールドエネルギーというもので守られている。

でも、生身の人間は違うだろ?

お前たちは、そんな人たちを危険にさらそうとしたんだぞ?」

 

「じゃ、じゃあ俺たちはどうすればいいんだよ!」

 

1号は冷静さを欠きながら聞く。

 

すると、男は手を放して、気絶している人を担ぐ。

 

「決まっているだろ。

周りの人たちの救助だ。

お前たちも、手伝え」

 

「え?

あ、あぁ…」

 

三人は男に言われるがまま気絶した人たちを運び、倒れこんでいた教員や代表候補性たちに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

そして、救助活動が終わり、IS学園の屋上でバンたち三人は再び男と顔を合わせた。

 

男は変身解除し、オレンジの制服を着た姿へと変わる。

 

「そう言えば、自己紹介はまだだったな。

俺は巽マトイ。

ゴーゴーファイブの一員で、ゴーレッドをやっている。

お前たちの名前は何だ?

さっきの恰好を見ると、俺達と似ていたが」

 

「ゴーゴーファイブって救急戦隊の!?

てことは俺たちよりも先輩ってことか…」

 

目のまえにいる男、マトイからゴーゴーファイブだと聞いて三人は驚くが、すぐに自己紹介に戻る。

 

「俺たちは警察戦隊パトレンジャーだ。

それで、俺はバン、パトレン1号だ」

 

「かこと言います。

パトレン2号、です」

 

「ボクはアストルフォだよ。

パトレン3号なんだ」

 

「なるほど、警察戦隊か…。

それで、なんであの場にいたんだ?」

 

「あぁ、それは…」

 

バンはマトイにこれまでの経緯を話した。

 

「転生者?

確かに、あいつは災魔一族じゃあなかったが、そんなやつもいるとはな」

 

「俺たちは転生者の中でも、ああいう風に様々な世界で人々を襲う奴らを取り締まってるんだ」

 

「そうか…。

でもだからって、倒れている人がいるのにあんなことをするのはどうかと思うぞ?」

 

「…悪かった。

あの人たちが倒れているのに、これを使おうとして」

 

バンはそう言って、バイカートリガーマシンを取り出そうとした。

 

だが、マトイはそれはもういいと制止した。

 

「確かに、衝撃のことを考えずにそれを使うのはよくない。

だが、俺がお前たちに怒ってるのは救助しようとしなかったことだ」

 

「救助、ですか?

でも、あれは私たちもあまり身動きが…」

 

かこが弱弱しく言おうとする。

 

「そうだ、確かに身動きが取れない。

だが、本当に転生者から人々を守りたいなら、それでも動けるはずだ!」

 

「それだったら、どうやって助けるっていうのさ!」

 

アストルフォが聞き返す。

 

「…人々を守りたい、そう思うのは俺たちも同じだ。

どうしても知りたいなら、お前たちの中にあるレスキュー魂を燃やせ。

俺からお前たちに言えるのは、それだけだ」

 

そう言って、マトイは立ち去った。

 

残されたバンたちはなのはたちが来るまで、その場で立ち尽くしていた。

 



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吹き荒れる嵐と立ち向かう事

バンたちは、まだ転生者が近くにいるかもしれないと、教員たちに許可を取って、IS学園の一室を借りていた。

 

なのはたちは別室で今回の被害状況などを確認していた。

 

そんな中、バンたちパトレンジャーはゴーレッド・巽マトイの言葉を思い返していた。

 

「俺たちのレスキュー魂、か…」

 

「一体、どういうことなんでしょうか?」

 

「単純に、転生者と戦って人々を守るってわけじゃなさそうだよね…」

 

すると、部屋のドアから一人の女性が入ってきた。

 

「失礼。

IS学園で教員をやっている、織斑千冬だ。

あなた方が、IS学園の生徒と教師を救出し侵入者を撃退した方々とみて間違いないだろうか?」

 

「いえ、俺たちはただ、あの場にいた一人の男と一緒に救出しただけで、撃退したのはその男です」

 

バンはその女性、千冬の質問に半分肯定し半分否定した。

 

「そうか…。

では、その男はどこかは」

 

「すみませんが、屋上で別れたっきりでどこにいるのかは…」

 

かこはそう言った。

 

「…わかった。

だが、あなた方は私の弟を含む生徒や教員を助けたことには変わりはない。

まずは、そのことで感謝させてほしい」

 

千冬はそう言って頭を下げようとする。

 

「ちょっと、待ってくださいよ!

何もそこまですることも…」

 

アストルフォはそう言って、頭を下げようとする千冬を止める。

 

「俺たちはそんなに頭を下げられるようなことはしてませんよ。

むしろ、あの男が止めてなかったら、今頃俺たちは、この学校の生徒、あなたの弟さん、教員たちを傷つけていたかもしれないんですから…」

 

「ですが、その代わり、私たちに教えてもらえませんか?

何故先ほどのような男が現れたのかを…」

 

「…そうだな。

あれは…」

 

千冬は状況を説明した。

 

生徒同士に模擬戦の最中に男が乱入したこと。

 

男が出した竜巻はISをも破壊するほどの力を持っていたこと。

 

それにより、ほとんどが手も足も出ずに倒されたこと。

 

自身も、生徒たちを避難させることに手いっぱいでなにもできなかったこと。

 

それを聞いたバンは口を開いた。

 

「…それでも、あなたのやったことは正しいんじゃないですか?

もし、生徒たちの避難よりも、あの場に駆けつけたとしたら、それこそ余計に被害が大きくなって、今よりも、負傷者や逃げ遅れた人だって増えていたかもしれないし」

 

「…そうかもな。

すまない、外部から来た者だというのに、そんなこといわれるとは」

 

千冬がそう言って、申し訳なさそうにする。

 

すると、校内で警報が鳴った。

 

『緊急事態発生、緊急事態発生!

ISの整備室で異常が確認されています!

教員の方は至急、生徒を避難させてください!

繰り返します…!』

 

「整備室だと!?

あそこには、先ほどの戦闘で損傷したISを整備している生徒が!」

 

「だったら、俺たちが行きます!

あなたは、生徒たちをお願いします!」

 

「でもなぜ!」

 

「…おそらく、さっきの奴かもしれないんです。

だから、ここは俺たちに行かせてください!」

 

「っ!

分かった!」

 

「かこ、アストルフォ!

行くぞ!」

 

「「了解!!」」

 

バンたち3人は部屋を出て、整備室に向かう。

 

その途中で、なのはたち機動六課と合流した。

 

「バンさん!」

 

「なのはか!

お前らから見て、今回の襲撃はどう思う!

俺は、あの転生者がまたやってきたと見てるがよ!」

 

「私たちも同じです!

早く行きましょう!」

 

「あぁ!」

 

 

バンとなのはたちは変身し、急いで整備室に向かった。

 

 

 

「おいおい、マジかよこれは!?」

 

整備室に着いた1号たちが目にしたのは悲惨なものだった。

 

つい先ほどまでそこに置かれ修理を受けていたであろうISが瓦礫に埋もれていた。

 

ここにいた生徒たちは逃げたのか、どこにもいない。

 

だが、その整備室の奥に鋼の鎧を纏った男が立っていた。

 

「ほう、まだ俺に立ち向かう奴がいたのか?」

 

「お前、何でこんなことを!」

 

1号は怒りを込めて言う。

 

「はっ!

そんなものは決まっているだろ?

ISが壊れるさまを見て快感を得たいからだ」

 

男は哀れみとも蔑みにも見える表情で、瓦礫に埋もれたISを見下ろす。

 

「それにしても、無様だよなぁ。

あの天災が作ったパワードスーツがこんな無様に、この俺に見下されているんだからな!」

 

そう言って、男は瓦礫に中から露出したISを踏みつけた。

 

「ISは、お前のおもちゃじゃねえんだよ!!」

 

1号は怒りのまま、vsチェンジャーで撃とうとする。

 

「待ってください、バンさん!

相手の罠かもしれません!」

 

「かこ!?

…悪い」

 

2号に止められ、1号は落ち着く。

 

「どうした?

なら、こっちから行かせてもらうぞ!!」

 

「なっ!?」

 

男が手をかざす。

 

その瞬間、1号たちは、自分の身に何が起こったのかが一瞬だけわからなかった。

 

だが、体が急に勢いよく宙に吹き飛ばされたことで理解した。

 

自分たちは、この男の風で吹き飛ばされたことを。

 

そして1号たちはそのまま勢いよく地面や壁に叩きつけられた。

 

その強烈な攻撃で、バンたちは身動きが取れない。

 

しかも、先ほどの攻撃の影響か、周りには複数の小規模の竜巻が発生していた。

 

「こいつ、なんつー攻撃しやがるんだっ!

…?」

 

その時に、1号はある疑問を持った。

 

幾ら自分の特典とは言え、あんな近くで竜巻が怒ってるのに、何故普通に動いているのかと。

 

「こいつ、何であんなに竜巻を起こしてるのに、平然と立ってんだよ…!」

 

1号は男の鎧をよく見る。

 

龍を連想するような鎧、こんな嵐の中でもびくともしない頑丈さ。

 

「お前、その特典は、まさか…!」

 

「ほぉ、察しが良いな。

そうだ、俺の特典はモンスターハンターのクシャルダオラの力なのさ!

そいつを召喚するってのもありだったが、裏切られる可能性もあったんで、その能力を俺が使ってやってるのさ!」

 

男は吹き荒れる風の中、自慢げにそう叫んだ。

 

「この力がある限り、例えISだろうと、俺にはかなわないのさ!

何がIS、何が女性だけに許された絶対の権利だ。

所詮、ISがなきゃなにもできないのにな!

はーはっはっはっ!!」

 

「あ、うぅ…」

 

笑い声をあげた途端、整備室の瓦礫の中から少女のうめき声が聞こえた。

 

「まさか、逃げ遅れたってのか!?」

 

「…なぁんだ、逃げ遅れたうえに、生きてたのか」

 

男は呆れながら少女に向けて溜めた風を向ける。

 

「っ!?

おい、何する気だ!

やめろ!!」

 

「…」

 

男は何も言わず、気味の悪い笑みを浮かべながら、さらに風を溜める。

 

このままでは、あの男に、少女が殺されてしまう。

 

だけど、さっきの攻撃で動けない自分たちがいる。

 

必死で動こうとするも、痛みで動けずにいる。

 

「やめろ…」

 

1号は仮面の下で血を吐きながら言う。

 

だがそれでも、溜まっていく風は止まらない。

 

「それじゃあ、バァーイ!」

 

そして、男の手から、風の塊が放たれた。

 

「やめろおおおおぉっ!!!!」

 

1号が叫んだ。

 

その瞬間、1号の体は不思議と立ち上がり、風の塊が来るよりも走っていた。

 

そして、少女の盾になるように、自身の背中を風の塊に向け、少女の体を覆い体を伏せる。

 

 

 

だが、いつまでたっても、風の衝撃は来なかった。

 

何が起こったのかと、1号は背後を振り返った。

 

すると、そこには。

 

「傷ついた自分の身を犠牲にしてまでその子を守ろうとするとはな。

だが、少しだけだが、お前からレスキュー魂を感じたぞ、バン!!」

 

ゴーレッドに変身した、巽マトイが警棒で、風の塊をかき消す姿があった。

 



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燃えるレスキュー魂

「あんたは、マトイのおっさん!」

 

「しばらくぶりだな、バン。

僅かながら、お前のレスキュー魂見せてもらったぞ!」

 

風の塊を消した警棒をしまいながら、1号に振り向いた。

 

「俺には、そのレスキュー魂ってやつはいまいちよくわかんねぇけど…」

 

1号はうめき声をあげていた少女を見る。

 

「だけど、俺はこいつを死なせたくねぇって思ったら、このボロボロの体が動いてたんだ」

 

「そうか。

だが、今はわからなくてもいい。

その助けたいという気持ちがあれば、お前も、お前の仲間にも、そのレスキュー魂が燃え上がるはずだ!」

 

「…それって、要は根性じゃねえかって思っちまうけどな。

だけど、俺はそういうの、嫌いじゃないかもな♪」

 

1号はボロボロになりながらも、仮面の下で笑っていた。

 

その時だった。

 

「てめぇら、何をごちゃごちゃ言ってやがんだよおぉっ!」

 

男が怒り狂い、両手から強烈な風を生み出そうと、溜めている。

 

「やべぇ!

…うぐぅっ!!」

 

「バン!」

 

1号はボロボロの体で動けない。

 

ゴーレッドは、1号と少女を守るために警棒を取り出そうとするが、間に合わない。

 

「くたばりやがれ、雑魚どもが…ってうおっ!?」

 

攻撃しようとした途端、男が足のバランスを崩し、溜めていた風が中断され、空中で分散された。

 

3号がパトメガボーで男の足を思いっきり叩きつけたからだ。

 

「はぁ、はぁ…。

君、隊長たちばかり見て、足元がお留守だよ…!」

 

3号は今にも倒れそうな体で、男に挑発する。

 

「こいつ、よくも邪魔を!」

 

男は3号に怒りを覚え、風を纏った拳で殴ろうとする。

 

だが、3号の背後から飛んできた緑色の光線によって、腕を勢いよく跳ね返された。

 

「…私だって、いるんです。

バン隊長とマトイさん、アストルフォちゃんだけとは、思わないでください!」

 

3号の背後で、2号が杖を構えていた。

 

「くっ!

なっ!?」

 

腕を弾かれた痛みで手を押さえていた男は驚いた。

 

ゴーレッドやパトレンジャーの三人だけじゃない。

 

フラフラと、なのはたちも、自力で、または互いに肩を貸して立ち上がってきたのだ。

 

その眼は、痛みに対する恐怖や諦めなど、微塵もなかった。

 

「な、なんだよお前ら!

あれだけの攻撃をくらって、何で立ち上がれんだよ!?」

 

「それは、こいつらが互いを助けようとしているからだ!」

 

「っ!?」

 

信じられないと言わんばかりに男は狼狽えるが、ゴーレッドが叫ぶ。

 

「こいつらは警察って名乗っておきがら人助けが下手だ。

特に、バンはボロボロな状態で、女一人を助けるために自らを盾にするからな!」

 

そう言って、ゴーレッドは倒れそうになった体を叩き起こすように立ち上がる1号を見る。

 

「だが、今こいつはこいつなりに、負傷者を助けるために立ち上がったんだ!

そして俺は、その時のこいつから、わずかに燃えるレスキュー魂を感じた。

そのレスキュー魂が仲間たちを奮起させ、今立ち上がらせた!」

 

1号が、ゴーレッドの隣に来て、口を開いた。

 

「てめぇにやられた傷程度で、俺達が止まると、思ってんじゃねぇぞ!

てめぇらが自分の快楽のために人を襲うなら、俺たちは何度でも立ち上がってやるよ!」

 

「っ!

だ、黙れ死にぞこないがっ!!」

 

そう言って、男は竜巻を発生させようとする。

 

「やらせません!

フリード!!」

 

キャロはフリードリヒを巨大化させて、男を口で咥える。

 

「うおっ!?」

 

そして、そのままフリードリヒは整備室の外へと出た。

 

そのあとで、2号は杖を使って回復効果のある光線を1号やなのはたちに浴びせ、傷を修復させる。

 

「これなら、まだここに取り残されている人たちの傷も癒えていると思われます。

皆さん、行きましょう!」

 

「待て、かこ!

今は救助した方が良い」

 

2号の号令に1号が待ったをかける。

 

「え?

何で…、まさか!」

 

「決まってるだろ?

この子や他にもいるかもしてないやつを、瓦礫ん中から出すんだよ。

幾ら、かこの魔法で傷が癒えたとしても、瓦礫ん中に埋もれたままだと、本末転倒だからな。

…キャロ、悪いがフリードであいつをしばらく止めてくれねぇか?」

 

「は、はい!」

 

「なのはたちも、それで良いか?」

 

「…わかりました。

でも、あまり悠長にはできませんよ」

 

少し考えてから、なのはは答えた。

 

そうして、1号たちは整備室で取り残された人たちを救助し、すぐに男の下へと向かった。

 

だが、行く途中、ゴーレッドは1号を呼び止めた。

 

「バン、お前は、整備室にあの子以外にも、他にも取り残された人がいると、なぜわかった?」

 

「別に、何もわからねえよ。

ただ、一瞬だけ頭の中で、あの子以外にも生き埋めになってるやつがいるんじゃないのかってよぎったんだよ。

そしてみんなで救助したら、数人いたとはいえ全員を助け出せたって話だ」

 

「もしもの、か。

面白いやつだな。

まさか、そんなことを考えられるとはな」

 

「そうでもねぇよ。

でも、そう言われると、照れるな。

レスキュー魂、悪い感じはしねぇよ」

 

「ふっ、そうだろ…?」

 

そう言った途端、ゴーレッドの体から光が出現し、それが1号の手に消防車型の機械として握られていた。

 

「こいつは…」

 

「まさか、レッドラダーなのか!?」

 

「だとしたら、俺は、先輩であるあんたに認められたって感じだな。

良し、早く行こうぜ!!」

 

「あぁ!」

 

1号とゴーレッドは急いで男の下へと走った。

 

 

 

 

 

IS学園の外へ出た1号たちは、男とフリードリヒが戦っているのを見た。

 

「くっ!

このドラゴン野郎!

しつこいんだよ!」

 

「動くな!!」

 

1号たちはvsチェンジャーをなのはたちは杖や拳銃や槍を構える。

 

「ちっ!

加勢が来たってか。

なめんなよ雑魚がぁっ!!!!」

 

男は衝撃波とも見れる竜巻を周囲に発生させ、フリードリヒを弾き飛ばした。

 

「フリード!」

 

「あのドラゴンはてめぇらのだな?

ならくたばれ!!」

 

男は竜巻を大きくし、1号たちへと近づく。

 

「させるかよ!」

 

『ゴーゴーファイブ!

パトライズ!

着装!!』

 

1号はvsチェンジャーにレッドラダーを取り付け、消防車型のエネルギーを溜める。

 

ゴーレッドも警棒を構えて走り出した。

 

「くらえ!」

 

「スティックボンバー!!」

 

1号から消防車型のエネルギー弾が放たれ、ゴーレッドは警棒を突き出して竜巻の中に突っ込んだ。

 

「なっ!?

ぐああああああああ!!!」

 

竜巻の壁を容易く貫かれ二つの攻撃が男に直撃する。

 

男は、身に纏っていた鋼の鎧の破片をまき散らしながら数度地面にバウンドし、気を失った。

 

1号は、男に近づいて手錠を嵌め、転送する。

 

「…これで、終わったな」

 

「ああ、お前たちのおかげで救助もできたしな」

 

「そうだな。

…そう言えば、あいつアリーナであんたを見た途端撤退したんだ?」

 

1号は思い出したように、ゴーレッドに聞いた。

 

「…さぁな。

だが、あいつの能力が災害そのものなら、俺は災害から人々を守るやつ、だったからじゃないか?」

 

「だろうな。

いつかまた会おうぜ、マトイのおっさん」

 

「あぁ、お前たちも元気でな。

そのレスキュー魂を、忘れるなよ?

人の命は地球の未来だからな」

 

「あぁ、忘れるわけねえだろ?

じゃあな♪」

 

そう言って、1号たちはゴーレッドと分かれた。

 

ゴーレッドから教えられた、燃えるレスキュー魂を胸に秘めながら、教員たちに先ほどのことを伝えるため、1号たちはIS学園へと戻っていった。

 



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天災との遭遇

インフィニット・ストラトスの世界のとある研究所。

 

暗い一室の中、ウサミミを着けた紫色の髪をした女性が、パソコンの画面でIS学園を観測していた。

 

「…まさか、いっくんまであのクソヤロウにやられちゃうなんてねぇ…」

 

彼女が見ているのは、IS学園のアリーナで乱入した鎧の男に、一夏を含む複数のIS操縦者が蹂躙とも呼べるほどまでやられる様を見て、少し肩をすくめる。

 

「ん?

何あの三人?」

 

アリーナの画面からISでもないスーツを纏った三人の少年少女が写っていた。

 

「…確か、束さんが作った平行世界への観測機でもいたような」

 

そう言って、女性、束は機材のデータを取り出し少しの間見比べた。

 

「あぁ、思い出した!

別世界で箒ちゃんにいっくんへの応援してくれた連中だ!!」

 

思い出した束はニマニマと笑いながら画面を見る。

 

「まさか、平行世界だけじゃなくこの世界の観測でも見れるなんて…!

よし決めた!」

 

束は勢いよく立ち上がり、別の機械のコンソールを叩く。

 

「せっかくこの世界にいるんだし、ちゃんと挨拶しなきゃね!」

 

 

 

 

 

 

バンたちはIS学園の教員たちに、あの転生者のことを伝え、帰路に着こうとしていた。

 

「とりあえずは、これで一件落着ってところだな♪」

 

「そうですね、これならしばらくあの学校も大丈夫でしょう。

…これは?」

 

なのははそう言って、懐から通信機を取り出した。

 

「失礼します。

…はい、高町なのはです。

はやてちゃん、どうしたの!?

え、わかった、すぐに戻るから!」

 

なのははそう言って、少し慌てた様子で通信機をしまう。

 

「すみません、パトレンジャーの皆さん。

急遽管理局から戻るよう連絡が入ったので、失礼します!

皆も、帰るよ」

 

「ちょ、なのはさん!?」

 

いきなり変身したなのはに驚きながら、スバルたちも変身して、なのはについていくように飛んで行った。

 

「…管理局から?

一体、何があったんだろ?」

 

「彼女たちの世界、ミッドチルダで何かあったんでしょうか?」

 

「わからねぇ。

だが、これは向こうの問題だからな。

俺たちが入る隙間もねえよ。

とりあえず、交番に戻ろうぜ…!?」

 

その瞬間、バンたちの背後からとてつもない衝撃が走った。

 

思わず固まったバンたちは、ギギギと音を立てて、ゆっくりと振り向いた。

 

「なぁ、お前ら」

 

顔が引きつらせたまま、バンは二人に聞いた。

 

「もし、俺の眼が正常だったらだけどな。

俺には、でっかいニンジンが地面に突き刺さってるのが見えるだが、どうだ?」

 

「…安心してください。

バン隊長の眼も、私たちの眼も正常です」

 

「うわぁー、でかいニンジンだねえ…」

 

三人の言う通り、背後に大きなニンジンが地面に突き刺さっていた。

 

正確には、ニンジン型のロケットだが。

 

すると、ロケットのハッチが開かれ、一人の女性が飛び出し、三人も前に降り立った。

 

「ハロハロー、皆のアイドルぅー!

束さんだよぉ!

君たちに会いに来たよ!!」

 

束と名乗った女性はピコピコと機械のウサミミを動かしながら、そう言った。

 

その瞬間、バンは頭を押さえ、かこは少し顔をひきつらせ、アストルフォは呆然としていた。

 

「…とんでもねぇのに、遭遇しちまった」

 

バンは聞こえないように呟いた。

 

なぜなら、束はこの世界でのIS開発者であり、天災と呼ばれる女性だったからだ。

 

 

 

 

一方、時空管理局に戻ったなのはは、スバルたちを帰宅させて、一人の少女から一枚の紙を渡された。

 

「これは、どういうことなの、はやてちゃん?」

 

「ごめん、私も最初は反対してたんやけど。

上層部の圧力がとんでもなくて、な」

 

はやてと言われた少女は申し訳なさそうに、頭を抱えながらなのはに謝った。

 

「ううん、はやてちゃんのせいじゃないよ。

でも、いくら何でもこれはやり過ぎだよ」

 

なのはは一枚の紙を見る。

 

「全てのISのコアを、ロストロギアとして回収するなんて…!」



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天災の依頼

バンたちの前に、IS開発者であり、天災と呼ばれる女性、篠ノ之束が現れた。

 

その事実がバンたちの頭を悩ませた。

 

「…とんでもねぇのに、遭遇しちまった」

 

「ねぇねぇ、束さんの話聞いてる?」

 

いつまでも返事をしないことに頬を膨らませ、束は三人の顔を覗きこむ。

 

「っ!

あぁ、悪い。

あまりにも突然だったんで、驚いちまったんだよ。

それで、あんたは俺達に何のようだ?」

 

「さっきも言ったじゃん。

君達に挨拶しに来たんだよ」

 

「…いや、それこそ訳わかんねぇって。

俺達、あんたと接点ねぇし、あんたにそんな親しみこめて言われるような覚えは…」

 

「あるよ?」

 

「…は?」

 

バンは束の言ってることに理解ができなかった。

 

そもそも、バンたちの中でも束は、自分の身内と認識した相手にしかこんな態度を取らない女性だと、認知していた。

 

だからこそ、理解ができない。

 

身内以外にはとても冷たい束が、親しみを持って自分たちに接する理由が。

 

「束さんはね、平行世界を観測できる装置で、君達を見たことあるんだよね。

その時に、君達が平行世界であったとしても、束さんの可愛い可愛い箒ちゃんに、いっくんへの愛の応援をしてくれた瞬間を、見たんだ」

 

「あの時って、確か」

 

「ストフリの転生者が暴れてた事件だと思います。

現場に向かう途中、タンカーで運ばれた一夏さんを追ってた人のことだと…」

 

かこの言葉を聞いて、バンは思い出したように手をポンと叩いた。

 

「あぁ、そういえばそうだったな!

何か、一夏のそばにいたいのにって嘆いてたんで、放っとけなくて声かけたんだよな、あの時」

 

「…?

でもちょっと待ってください!」

 

「ん?

どうしたんだよ、かこ」

 

かこは何か気になったのか、束に質問しようとする。

 

「いくらIS開発者とはいえ、平行世界への観測装置を作ったって、一体どういうことですか?

何かこう、次元をを越えてしまってるというか…」

 

「フッフッフ、束さんは天災だからね。

そこら辺の機材を使って、ギュインギュインのズドドドドな感じな上に、パッコーンってやったら、できちゃったんだ♪」

 

「何それ、擬音ばっかでほとんどわからないよ!?」

 

「つまりは気まぐれで作ったってことだろ。

詳しくは聞かない方が良いぞ?」

 

束の説明に、アストルフォは困惑し、バンはアストルフォの肩を叩いて諦めるように言う。

 

「…でもあんたの場合は、ただ挨拶にきたってだけじゃねぇんだろ?」

 

「おや、切り替わりが早いね?」

 

「おかげさまで、色々察しちまったよ。

まぁ、俺達がどんなやつかって聞きにきたかもしれないけど」

 

バンの言葉を聞いて、束は一瞬だけ驚くがすぐに笑顔に戻る。

 

「…まぁ、それもあるんだけどね。

とりあえず、聞かせてもらえないかな?

平行世界でもいたんだし、普通の人間じゃないでしょ」

 

「…わかった」

 

バンは自分たちが何者かを説明した。

 

 

「ふぅーん、パトレンジャー、ねぇ。

しかも君達は皆転生者ってのは、オカルトじみてよく分からないけど」

 

「元々ただの人間が、一度死んで神様から特典というか、特殊な能力を渡された状態で人間だったころの世界とは別にところに飛ばされたやつって思えば良いんだよ」

 

「なるほどねぇ。

それで、君達はさっきのようなIS学園で暴れてたクソヤロウみたいな連中を取り締まって、この世界から追い出す、みたいな?」

 

「正確には、更正して特典と記憶を消した上で、別世界に送ってんだけどな」

 

「そっかぁ…。

じゃあ君達に、頼みごとしても良いかな?」

 

「お、おう…」

 

束は改まった様子で、バンたちにズイっと顔を近づける。

 

「この世界では最近、宇宙人以外にも、マンガにありそうな力でISを操縦者ごと潰しにかかるやつがいるんだ…。

君達で言う、転生者かもだけど」

 

束は先程とは売って変わって、怒気の含んだ目付きでバンたちに言う。

 

「束さんはさ、操縦者はともかく、他人の都合でISを潰されるの、非常にイラつくの…。

だからね…」

 

 

 

 

 

「そいつらをぶっ潰すのに、束さんたちに協力しない?」



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天災との交渉

「そいつらをぶっ潰すのに、束さんたちに協力しない?」

 

束はどこか怒気の含んだ目で、バンたちに聞いた。

 

「…それを聞いて、あんたはどうする気だ?」

 

「決まってるさ。

そいつらを潰すためなら、束さんは一切の協力も惜しまない。

それに、君たちの力があれば、転生者とやらをこの世界から消してくれるだろうからね」

 

「そうか…。

だが、その代わり条件があるが、それを受け入れるなら、俺たちも考えるさ」

 

「ほうほう。

で、その条件は何?」

 

「さっきも言った通り、俺たちはパトレンジャーだ。

立場で言えば、警察だ。

だから、俺たちは転生者を更生するにしても、関係のないやつを巻き込むつもりない」

 

「というと?」

 

「あんたが、あんたの都合で他人を巻き込むなら、俺たちはあんたに協力しないってことだ。

あんただって、そのせいで自分の妹が悲しい顔するの、見たくねぇだろ?」

 

「そりゃあね。

他人を巻き込まないというのが条件か…。

それが君たちの条件だね?」

 

「あぁ。

…お前たちも、それでいいか?」

 

かことアストルフォは、バンの言葉にうなづく。

 

「あんたにとっては少し肩幅狭くなるかもだが、どうなんだ?」

 

「そうだねぇ…」

 

束は少し真剣な顔で、ウサミミを動かしながら考える。

 

「…良いよ。

その条件を受け入れるよ。

ただ、それで君たちが転生者をぶっ潰してくれるならね。

だけど、その代わりちーちゃんたちにも連絡して、協力してもらうから」

 

「そのちーちゃんってのは、IS学園の教師をやってる、織斑千冬のことか?

それはつまり、あの学園との協力も得るってことだな」

 

「もちろんだよ。

この世界で転生者が暴れたんなら、いっくんやちーちゃん、箒ちゃんたちとも協力するのも、君たちにとっても得だからね。

束さん的には、箒ちゃんといっくんのラブラブシーンが見れれば、良いんだけどねぇ♪」

 

束は肩を抱きながら、わなわなして震え上がる。

 

バンたちはそれを見て内心、呆れていた。

 

「じゃあ、それで話は終わりか?

俺たちはこれで帰らせてもらうぞ」

 

バンたちは束を通りすぎて帰路に着こうとする。

 

「おや、もう帰るのか?

せっかくなんだし、もうちょっとゆっくりしなよ。

何なら、今からクロちゃん連れてきて、お茶会するってのも…」

 

「悪いが、それはまた今度で良いか?

俺たちは、あんたがさっき言ってたクソヤロウを更生させて、あちこちがボロボロなんだ。

どうせ休むなら、自分たちの拠点の場所が一番だしよ。

あと、俺から一つ言っといてやるよ」

 

「何かな?」

 

バンは足を止めて、束の方に振り返り、口を開いた。

 

「転生者に、自分にとっての娘さんを傷つけられたからって、あんまり根詰めんなよ?」

 

「っ!」

 

束はバンの言葉を聞いて驚く。

 

バンたちは、再び歩みをはじめ、その場を去った。

 

一人、その場に取り残された束は、バンの言葉を聞いて、下を向く。

 

「君に、何がわかるってのさ…!」

 

怒りと悲しみの混ざった表情で、一度地面を強く蹴る。

 

「まぁいいさ。

束さん的には、転生者を潰せれば、それで良いし」

 

そう言って、束は携帯を取り出す。

 

「…さて、ちーちゃんにも伝えないと」

 

 

 

 

 

二日後、IS学園に時空管理局を名乗る役員たちが、ISのコアの回収のために、押し寄せてきたと、バンたちパトレンジャーに通報で届いたのだった。

 

 

 



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襲撃のなのは

すみません、投稿遅くなりました。


通報が入る数十分前。

 

バンは一人で右京に、束とIS学園と協力することを伝えた。

 

「なるほど、そういうことですか。

本来は僕もその話を聞いて、ちゃんと交渉してから、協力を得たかったのですが…」

 

「すみません。

ただ、あそこは断ると色々と面倒になると思ってしまって」

 

「いえ、お気になさらず。

確かに、あちらの世界の転生者を更正するには、彼女たちの力も必要となるかもしれないので」

 

「そうですね…」

 

その時、長官室に警報が鳴り響いた。

 

「な、何だ!?」

 

「これは…」

 

「大変よ!」

 

霞が慌ただしく入り込んだ。

 

「長官、バン!

私達と協力を結んでる時空管理局の役員が、IS学園でISのコアの要求してるの!」

 

「…」

 

「おい、ちょっと待てよ!

管理局って、なのはたちだよな?

何であいつらがそんな事を!」

 

霞の言葉に、右京は黙りこみ、バンは霞に詰め寄る。

 

「知らないわよ!

私もさっき、そのように察知したんだから!」

 

「ちっ!」

 

「…落ち着きなさい、バンくん。

君は、二人を連れて、IS学園に向かいなさい」

 

「…了解です」

 

バンは長官室を後にして、右京と霞だけが残った。

 

「…霞ちゃん、君が先程言ってた、時空管理局の役員は、一人ですか?」

 

霞は首を縦に振る。

 

「まさか…」

 

右京は少し考える。

 

「わかりました。

少し時空管理局と掛け合ってみましょうか」

 

そう言って、右京は電話で連絡を取る。

 

 

 

バンはかことアストルフォを連れて、IS学園に向かっていた。

 

「あの、どういうことなんですか!?」

 

「わからねえ。

だが、時空管理局っていうからなのはか誰かだ!」

 

「でも、なんでなのはたちが?」

 

「それを直接見て、あいつらかどうかを確かめるんだよ!」

 

バンは苛立ちながら二人の質問に答える。

 

バン自身も、今回のことはあまりにも信じられなかったからだ。

 

そして、間もなくIS学園に到着した。

 

そして、バンたちはその光景を見た。

 

学園の校舎前で、時空管理局の制服を着たなのはが、千冬に問い詰めていた。

 

「大人しくISのコアを渡しなさい。

さもなくば、強行突破して回収します」

 

「何度言えばわかる。

貴様のような得体のしれない者に、コアを渡すわけにはいかん!」

 

「そうですか…。

残念です」

 

そう言って、なのははレイジングハートに変身する。

 

「実力行使で、やらせてもらいます!」

 

「やめろ、なのは!」

 

「っ!」

 

なのはが杖を構えようとした矢先、バンたちが千冬の前に立ち、止めに入る。

 

「なっ、君達は!」

 

「バンさん、かこさん、アストルフォさん…」

 

なのはは、悲しそうな目で三人の名前を呟く。

 

「やめてください、なのはさん!

どうしてこんなことをするんですか!?」

 

「そうだよ!

ISはこの世界の物なんだよ?

どうして、それを回収しようだなんて」

 

「…あなたたちには、関係のないことじゃないですか。

そこを退いてください」

 

「関係ないはずがねぇだろ!

俺達は協力関係だろうが!!」

 

「協力関係?

まさか君達は、彼女と知り合いなのか!?」

 

千冬は聞こうとするも、バンが手で制止する。

 

「…忠告はしましたよ」

 

そう言って、なのはは杖を構え、力を溜める。

 

「…かこ、アストルフォ。

悪いが、お前達は織斑先生を連れて、この学園に残って守ってくれ」

 

「っ!?」

 

「ま、待ってよ。

それじゃあ、キミは…」

 

「あぁ、俺がなのはを食い止める」

 

バンはVSチェンジャーとトリガーマシンを取り出す。

 

「…警察チェンジ」

 

『1号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

バンはパトレン1号に変身し、VSチェンジャーとパトメガボーを構える。

 

「…」

 

なのはも改めて、杖を構える。

 

「っ!」

 

先に仕掛けたのはなのはだった。

 

杖に魔力を込めて、魔弾を撃つ。

 

「うおっ!?」

 

1号は背後にいる千冬たちに当たらないように、パトメガボーで弾く。

 

「あれは、ISじゃないのか…!?」

 

千冬がなのはの攻撃の衝撃に耐えながら、驚いたようにいった。

 

「織斑先生、ここは危険ですので、校舎に入ってください!」

 

「なっ、待て!

そもそも、彼女は何者なんだ!」

 

「それを後で説明しますので、今は引いてください!」

 

かことアストルフォは、千冬を学園の中に連れていく。

 

それを確認した1号はVSチェンジャーを操作して、トリガーマシンを巨大化させる。

 

『1号!

位置について、ヨーイ!

走れ、走れ、走れ!

出動!

轟音、爆走!!』

 

「さて、これ以上学園に被害出さねえように、場所変えようぜ?」

 

「なっ!?」

 

1号はなのはの体を抱きしめ、トリガーマシンに乗り込み、高速移動する。

 

当然、その途中になのはは抵抗する。

 

トリガーマシンの中で、杖の刃先で1号を攻撃して止めようとする。

 

それに対して、1号は操縦片手でパトメガボーを使って、なのはの攻撃を防いでいく。

 

「バンさん、出してください!」

 

「学園を巻き込まない程度に離れたら、出してやるよ!」

 

そして、IS学園の人工島の端へとついて、トリガーマシンを解除され、二人は外へと出る。

 

二人は互いににらみ合う。

 

「バンさん、いくらあなたでも、邪魔をするなら!」

 

「だったら何で、ISのコアを回収しようとするんだよ!

これが前に言ってた仕事だってのか!?」

 

「っ!

えぇ、そうですよ。

あのコアは、ロストロギアかもしれないから、私に回収するようにと、上層部から指令があったんです!」

 

「ISのコアがロストロギア?

何の理由があって、そんな指令が出るんだよ!」

 

「そんなの、簡単ですよ」

 

なのはは怒りにもにた表情で、杖を構える。

 

「この世界では、ISの存在によって、男女の価値観が変わり、世界中で、それに絡む事件が起きてると聞いてます。

だから、それを回収することで、この世界から、差別をなくそうとしているんです!」

 

「っ!」

 

「それだけじゃありません。

先日更正した転生者も、生前はこの世界の人間だったそうです。

ですが、女尊男卑の世界の中で、謂れのない差別を受け、迫害を受けて死んだと」

 

「…」

 

「だから、彼のような悪に落ちた転生者を生み出さないためにも、ISのコアを回収しなければならないんです!

お願いだから、そこを退いてください!」

 

「…そんな事して、またそれに近い状況になったらどうすんだよ?」

 

「え?」

 

1号の言葉に、なのはは呆然とする。

 

「確かに、この世界は、ISの存在したことで男女の価値観も変わって、男が迫害を受けてるかもしれねぇ。

でも、コアを奪ったところで、その根本が変わるのか?」

 

「そ、それは…」

 

「もし、コアを奪って、女尊男卑から男尊女卑になったら、それこそ本末転倒じゃねぇのかよ!?」

 

「…」

 

なのはは、1号の言葉に何も言えず、黙ってしまう。

 

「それに、お前は何か隠してるんじゃねぇのか?」

 

「っ!?」

 

「お前、さっきから悲しそうな顔しやがって。

本当は、お前もこんなこと、やりたくねぇんだろう?

お前も、今俺が言ったみたいに、こんなことしても変わらないのはわかってんだろ?」

 

なのは下を向いて、体を震わせる。

 

「そんな事…」

 

なのはは周囲に魔方陣を展開して、光線を放つ。

 

「そんな事ぐらい、私だってわかるよっ!」

 

「ぐっ!」

 

1号は光線の衝撃に煽られながら、光線を避けていく。

 

「こんなことしても無駄だって、私にもわかるよ!

仮に、ISのコアがロストロギアだとしても、あれはこの世界の物で、それが重要視されてることも!」

 

なのはは敬語ではなく、素の口調で言う。

 

「だから、私はこの指令には反対だって、上層部に言ったんだよ!

だけど、ダメだったの…!」

 

次第に攻撃も弱まり、1号はなのはに接近する。

「あうっ!」

 

そして、1号はなのはを地面に押さえつけ、杖を手元から放した。

 

なのはは今にも泣きそうな顔をしていた。

 

「何がダメなんだよ?

…!

まさか、お前!?」

 

1号は何かを察して、なのはに問いかける。

 

「うん…。

私がやらないと…。」

 

 

 

 

 

「フェイトちゃんも、スバルたちも、殺されちゃうよぉ…!」

 



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上層部に蠢く違和感

バンはIS学園の人工島の端で、なのはの話を聞いた。

 

なのはは戦意喪失し、変身解除し、近くにあった木にもたれ掛かり、膝を抱えて座っていた。

 

バンも変身解除し、なのはの隣で胡座をかいて、なのはの話を聞いた。

 

「つまり、お前ははやてから、上層部からその指令が下ったことを聞いて、後で上層部に反対の抗議をした結果、フェイトや機動六課のあいつらが独房に入れられて、言うことを聞くしかなかったってことか?」

 

「うん…。

ごめんなさい。

フェイトちゃんや皆を守りたかったから、こうするしか、できなかったの…」

 

なのはの話を聞いたバンは、少し考え込む。

 

「そうか…。

けどな、お前はまず、謝る相手が違うぞ?」

 

「え…?」

 

バンの言葉を聞いて、なのはは顔を上げる。

 

「確かに、お前は協力関係にある俺達に迷惑をかけた。

だけど、それ以前にお前はまず、誰に謝るべきだと思うんだ?」

 

「IS学園の、先生?」

 

「そうだ。

不安なら、俺も一緒に謝るからよ」

 

「そ、そんな、バンさんまで謝りに行かなくても!」

 

「確かにそうだが、もっと早くお前を止めてやれなかった俺にも責任がある。

もっと早くに止めてれば、お前が先生に手を上げないで済んだかもしれないのによ」

 

「バンさん…」

 

すると、バンの通信機から音が鳴った。

 

「長官から?

悪い、少し待ってくれ」

 

バンはそう言って、通信機の使う。

 

「長官、俺です。

バンです、応答をお願いします」

 

『バン君ですか。

そちらの状況はどうなっていますか?』

 

「かことアストルフォはIS学園に残ってます。

そして、俺はIS学園の人工島の端でなのはと一緒にいます。

…なんでも、スバルたちや友人のフェイトが上層部に人質に取られているらしいのですが…」

 

『やはり、そうでしたか…。

実は先ほど、僕の方でも、コアの回収の件で、時空管理局に掛け合ってみたのですよ』

 

「長官自身が、ですか?」

 

『えぇ。

ですが、時空管理局の上層部は、それについては指令を出した記憶がないと一点張りで…。

その事は、余程隠しておきたいのでしょうねぇ』

 

「それは…、確かに。

異世界の、ロストロギアかもわからない、謎のコアを回収するから、極秘扱いにする、みたいな?」

 

『半分当たりですね。

ですが、そのコアを全て回収するために、優秀な役員に部下や友人を独房に入れてまで言うこと聞かせたと世間に知られる訳にはいかない、ということもあると思いますよ』

 

「確かに、そんな事を公表したら、ミッドチルダでの管理局の評判も、悪くなりますからね…」

 

これが俗に言う、情報統制ってやつかと、バンは歯噛みをする。

 

『あぁ、そうでした。

もうひとつ、おかしなことがありましてねぇ』

 

「おかしなこと、ですか?」

 

バンとなのはは眉を潜める。

 

『えぇ。

あれから一向に話が進まなかったので、暫く調べてからかけ直そうと、電話を切ったのですが…。

その直後に、何やら焦った様子でしたが、管理局から電話が入ったのです」

 

「?」

 

「あの、その相手は、まさか…」

 

なのはがバンの通信機に近寄り、右京に聞く。

 

『そのまさかでした。

八神はやてさんだったんです。

彼女もこの件に関わる者として、上層部から監視を受けていたのですが、運良く監視の目を欺いて連絡できたとのことでした』

 

「そんな、はやてちゃんが監視を受けていたなんて…!」

 

『そして、彼女から、先程バンくんが言ったことを聞いたのです。

スバルさん達やフェイトさんが独房に入れられ、なのはさんが指令に背けば、彼女たちを処刑されると、ね』

 

「それで、長官は、なのはが一人で回収しに来たことを聞いて、やはりって言ったんですね…」

 

『そうです。

…それと、これははやてさんから聞いたのですが、その時の上層部の様子がおかしかったそうなんですが、なのはさんは、ご存知ないですか?』

 

「え?

えぇと、確か…!?」

 

なのはは何かを思い出したように、目を開いた。

 

「確か、上層部の役員の一人の目が一瞬だけ、お金のような紋章が浮かび上がるのが見えたような…」

 

『なるほど、それで合点がいきましたよ』

 

「どういうことですか?」

 

バンが右京に聞く。

 

『まだ、推測の域ですが、上層部は転生者の特典によって操られている可能性があります』

 

「「っ!?」」

 

バンとなのはが驚いた。

 

『ですが、いくら操られているとはいえ、相手は、時空管理局の上層部です。

これを叩くには、我々も作戦を考えなくてはなりません。

バンくん、かこちゃんとアストルフォくんと合流して、僕の下に来て下さい』

 

「了解!」

 

「あの、少し良いですか?」

 

なのははおどおどしながら、右京に聞こうとする。

 

罪悪感があるのか、体が震えているのが見える。

 

「その中には、私も、含まれますか?

また、バンさんたちと一緒に、戦っても、良いんですか…?」

 

『えぇ、含まれます。

それに、君達は、互いに協力し、結束すれば、この先の困難を乗り越えられると、僕は信じてます。

だから、僕たちに、再び力を貸しては貰えませんか?』

 

「…」

 

なのはは堪えるように、唇を噛んで、下を向く。

 

すると、バンがなのはの肩を叩く。

 

「なのは、一緒に行こうぜ…。

そして、あいつらを助けて、上層部を操ってる転生者を更正して、皆で笑い会おうじゃねぇか…!」

 

「…!

はい…っ!」

 

『うん、それでは、僕は長官室で待ってます。

そちらでの用が済み次第、来て下さい』

 

答えを聞いて、納得した右京は通信を切る。

 

なのはは溢れそうになった涙を拭いて、立ち上がった。

 

「よし、その意気だ!

さっさとかことアストルフォと合流しようぜ!」

 

「えぇ、行きましょう、バンさん!」

 

バンとなのは、かことアストルフォがいるIS学園へと向かった。

 

 

 

 

 

だがこの時、学園に宇宙からの、人類の天敵が近づいていることに、バンたちは気づいていなかった。

 



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人類の天敵

すみません。
投稿が遅くなりました。


バンがなのはを連れて言った後、かことアストルフォは千冬に、なのはや自分たちのことを説明した。

 

「…なるほど、未だに信じられないが、君達が束の言っていたパトレンジャーという、転生者とやらを取り締まる警察戦隊で、なのははその協力者の一人だ、ということか」

 

「はい、2日前に、別れたっきりで、いきなり何でこんなことしたのかは、私達にもわかりませんが…」

 

「でも、何の理由も無しに、こんなことするとは思えないんです!

信じてください!」

 

「そうか…。

…君達の言いたいことはわかった。

だが、その詳しいことは、リーダーであるバンに聞かせてもらう」

 

千冬は頭を手で抑えながら、二人の言葉に納得した。

 

「…何か、すみません。

この前の、転生者の件もそうでしたが、今回もこんなことになってしまって」

 

かこが千冬に謝る。

 

「いや、良いんだ。

転生者の件については、生徒たちを助けてくれたこともあるから、むしろ感謝しているんだ。

それに、今回は何か訳ありかもしれないだろう?」

 

「そ、そうですが…。

…?

バン隊長から、通信が…」

 

「隊長から?

二人とも、無事かな…」

 

かこは通信機が鳴ったので取り出すが、話の途中で出ることに抵抗を感じて千冬の顔を見る。

 

「バンからの連絡だろう。

私に構わなくても大丈夫だ」

 

「ありがとうございます!」

 

千冬から了承を得たかこはバンと通信する。

 

「バン隊長、かこです。

なのはさんは…?

そうなんですか…。

え?

今IS学園の前に?

わかりました、すぐに迎えに行きます!」

 

「どうしたの?」

 

アストルフォがかこに訪ねる。

 

「…なのはさんと一緒だから、中に入れるようにって言ってたの。

一緒に迎えに行こ?」

 

「隊長となのはが?

わかった!

あ、すみません、失礼します!」

 

かことアストルフォは二人を迎えに行き、千冬はそれを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

「この度は、本当にすみませんでした!」

 

IS学園に入ったバンとなのは。

 

なのはは、千冬にコアを回収しようと脅迫したことや、変身して攻撃しようとしたことを、頭を下げて謝る。

 

バンも隣で、頭を下げる。

 

「俺もすみませんでした。

協力関係にあるのにも関わらず、なのはを止めることができなくて、すみませんでした…!」

 

二人の謝る姿勢に、千冬は難しい顔をする。

 

「束からは君達のことは聞いている。

特にバンたちのことだがな…。

私達と協力を結ぼうとしていたのに、初めからこんな調子では困る」

 

「すみません…」

 

バンは改めて千冬に謝る。

 

千冬はなのはに、顔を向ける。

 

「…それに、高町と言ったな。

かことアストルフォから話を聞いている。

何か訳ありのようだからな。

貴様は確かに私に脅しを掛けた。

だが、バンたちの介入によりそれは未然に防がれたのだ。

だから、今回は不問にする。

それでも、まだ悔いているのなら、協力関係として、今後の活躍で、その反省をいかせ」

 

「はい…」

 

なのはは、暗い表情になりながら、返事をする。

 

「そんなに悲しそうな顔をするな。

私はこれ以上、君を責めるつもりはない。

ただ、今回のことを反省して、今後にそれをいかせと言ったのだ」

 

「…はい!」

 

千冬の指摘に、なのは顔を上げて返事をした。

 

「さて、この話はこれで終わりだ。

学園長には私から伝えておくから、君達は帰っても大丈夫だ……!?」

 

「「「「っ!?」」」」

 

千冬がバンたちに帰るよう言った途端、学園中に警報が鳴った。

 

「…まさか、こんな時に奴らが出てくるとはな」

 

「それって、束さんが言ってた宇宙人のことですか?」

 

警戒しながらも、どこか落ち着いた様子で千冬が呟く。

 

それに対して、かこは思い返したように、千冬に聞いた。

 

「正確には少しだけ、そうとは言い難いがな。

だが、宇宙から来た奴らなのは確かだ。

済まないが、君達はここで待ってくれ」

 

千冬はバンたちにそう言って、部屋を後にした。

 

「…なあお前ら、確かこの世界ってインフィニット・ストラトスの世界の、平行世界だったよな?」

 

「はい。

ですが、この世界で宇宙からの敵が来たとなりますと…」

 

「まさかな…」

 

バンは少し考える。

 

この世界はインフィニット・ストラトスの世界の、平行世界。

 

そして、その世界で宇宙からの敵が来た。

 

平行世界、宇宙からの敵。

 

この二つの言葉が、バンの頭の中で巡る。

 

だが、その思考はより激しい振動で途切れた。

 

「ちっ!

下手したら、この学園もあぶねぇな。

俺たちも戦うぞ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

バンたちは部屋を出て、外に向かうための通路を走った。

 

すると、通路の壁が勢いよく破壊され、白い影と赤い影が、その奥にいる異形の何かと戦っているのが見えた。

 

「くっ!

やっぱり、絶対天敵(イマージュ・オリジス)か!」

 

「ということは、この世界はアーキタイプブレイカーだったんですね…」

 

「でも、あの二人、かなり苦戦してるよ!

早く助けに行こう!」

 

「あぁ、行くぜ!」

 

バンたちはVSチェンジャーとトリガーマシンを取り出し、なのはは赤い宝石・レイジングハートを構える。

 

「「「警察チェンジ!!」」」

 

「レイジングハート、セットアップ!!」

 

『1号!

2号!

3号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

『stand by ready set up!』

 

バンたちはパトレンジャーに、なのははレイジングハートに変身した。

 

そして、二人を援護するため、四人はVSチェンジャーやパトメガボー、杖など武器を構え走り出した。

 

 

 

「ぐっ、強いなぁ…!」

 

「一夏、大丈夫か!」

 

一夏と箒は、目の前にいる異形の怪物、絶対天敵に押されていた。

 

絶対天敵は、触手を鞭を振るうように、二人に攻撃しようとする。

 

「くっ、させるか!」

 

箒は一夏の前に立ち、装甲を展開する。

 

だが、絶対天敵の触手は装甲を一撃で弾き飛ばし、瞬時に箒の体を薙ぎ払った。

 

「ぐあっ!」

 

「箒ぃ!

こんのぉ!!」

 

一夏は激怒し、刀型の武器、雪片弐型を構え、切りつけようとする。

 

だが、絶対天敵はそれがわかっていたかのように、瞬時で触手で一夏の両腕を縛り付ける。

 

「なっ!?

この、放せ!

…!?」

 

腕に纏わりついた触手を振り払おうと抵抗するが、絶対天敵が新たに数本の触手を出すところを、一夏には見えた。

 

両腕が使えない上に、動けないので、一夏は目を閉じ痛みに耐えようとする。

 

 

 

 

だが、今まさに来るはずの痛みはなかった。

 

「っ?

…一体、何が?」

 

何が起こったのかと、一夏は目を開けた。

 

すると、絶対天敵の触手が、腕を縛っているものを除いて、打ち抜かれたように破裂していたのだ。

 

「おらぁっ!!」

 

さらに、1号が飛び出し、一夏の腕を縛っていた触手を切り裂いたことにより、一夏の腕は自由になった。

 

一夏は自由になった反動で倒れそうになるも、1号が一夏の手を掴み、支えた。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「え?

あ、あぁ、何とかな…。

それよりも箒が!?」

 

一夏は慌てて箒が倒れた場所に振り向いた。

 

するとそこには、倒れた箒を抱え、手を翳して光を浴びせる2号の姿があった。

 

光を浴びた箒は、体の傷が徐々に消えるのを感じて、目を覚ます。

 

「うっ…!

私は、どうして倒れて…?」

 

「大丈夫ですか?」

 

「うおっ!?

だ、誰だ貴様!?」

 

傷が治り、上体を起こした箒は、2号の顔を見て驚いてしまう。

 

 

だが、その隙に絶対天敵は脚を進ませて、新たな触手を出して、触手の先から光線を出そうとした。

 

「させない!!」

 

すると、なのはが1号と一夏の前に立ち、前方に魔方陣を出して、そこから光線を出して、触手を破壊した。

 

「行っけぇっ!」

 

3号は馬上槍とパトメガボーを構え、絶対天敵の脚を引っかけ、穿つ。

 

脚を破壊された絶対天敵はバランスを崩し、倒れる。

 

それを見た一夏は呆然としていた。

 

「す、すげぇ…。

あんたら、一体何者なんだ?

俺達と同じ、IS操縦者なのか?」

 

呆然としながら、一夏は1号に聞いた。

 

「そんなもんじゃねぇよ。

それに、説明したいのは山々だが、まずはあいつを学園のアリーナか外に出して倒してからだ」

 

「え?

あぁ、そうだな!」

 

一夏は何とか納得して雪片弐型を構える。

 

「何だかよくわからんが、助かる!」

 

箒も戸惑いながらもISを展開し、一夏の隣に並ぶ。

 

そして2号と3号、そしてなのはも1号の隣に立ち、武器を構える。

 

目の前にいる異形の怪物、絶対天敵を倒すために。

 

「…よし、行くぜ!」

 

「あぁ!」

 

「うむ!」

 

「「「了解!!」」」

 

1号の言葉に、五人は1号と共に、絶対天敵へと駆けた。



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共闘

すみませんが、ダラケーさんとのコラボの前日譚は消さしていただきました。

読者の皆様、誠に申し訳ありませんでした。


1号たちは、一夏と箒と手を組み、目の前にいる絶対天敵を学園のアリーナへと追い出そうとする。

 

だが、そう簡単に倒されまいと、絶対天敵は新たに触手を出して1号たちに攻撃しようとする。

 

「はあ!」

 

「ええい!」

 

なのはと2号が射撃で触手を撃ち抜いていく。

 

「とう!」

 

そして、3号がパトメガボーで絶対天敵の胴体を突き、その衝撃で絶対天敵は一瞬だけ後ろに下がらせる。

 

「はっ!」

 

続けざまに箒が空裂からエネルギー刃を出して絶対天敵を斬りつける。

 

すると、絶対天敵の後ろにアリーナが見えた。

 

「あと少しってところだな!

行くぜ!」

 

「あぁ!」

 

一夏は雪片弐型で絶対天敵を深く斬りつけた。

 

1号はそれを確認して、バイカートリガーマシンを取り出した。

 

『バイカー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

「くらえ、バイカー撃退砲!!」

 

1号がバイカー撃退砲を撃ちこみ、絶対天敵の体は大きく吹き飛びアリーナへと飛び出した。

 

絶対天敵はかなりの攻撃をくらって、動きが鈍くなっているのが見えた。

 

すると、一夏が絶対天敵の元へと走り、雪片弐型の刀身を展開し、全身に光を纏う。

 

「逃がすかぁっ!!」

 

光を纏った一夏の一撃が絶対天敵を大きく切り裂き、爆散する。

 

「はぁはぁ…、何とか倒せた…」

 

一夏は先ほどの劣勢でのダメージもあってか、白式を解除し膝を着いた。

 

それを見た箒は一夏の元へ駆け寄る。

 

「一夏、大丈夫か?」

 

「まぁな…。

そうだ、あんたらもありがとうな」

 

箒に担がれながらも、一夏は1号たちに礼を言う。

 

「どういたしまして、だな。

そう言えば、今回襲ってきた絶対天敵ってさっきの一体だけなのか?」

 

「あぁ、俺達が聞いた時は一体だけなんだ。

だけど、今回は妙に強かったんだよな」

 

「そうだな。

私たちも、もっと鍛えねばな…」

 

「そうだ。

そう言えば、あんたらは一体何者なんだ?

見た感じISには見えねぇけど、あいつらに攻撃が通じたし」

 

「そう言えばまだ言ってなかったな。

俺達は…」

 

「一夏さん!」

 

「一夏ぁ!」

 

「一夏!」

 

「嫁、無事か!」

 

1号が言おうとした途端、四人の少女が一夏の名前を叫びながら走ってくるのが見えた。

 

「おっと、お前らのダチが来たみてぇだな。

なら、俺達は別の用事があるんで失礼するぜ?」

 

「おい、待ってくれよ!

せめて何者か教えてくれよ!」

 

1号たちが立ち去ろうとした時に、一夏が呼び止めた。

 

1号は一夏のほうに振り返り、こう言った。

 

「…俺達はパトレンジャーだ。

特殊だが、警察だ。

詳しいことは、お前ら二人の姉貴に聞いてくれ」

 

「千冬姉と束さんから?

どういうことなんだよ!」

 

「っ!?

待て、貴様ら、千冬さんと姉さんの知り合いなのか!?」

 

「知り合いって呼べるかは、俺達もいまいちわからねぇけどな。

じゃあな、近いうちにまた会おうぜ!」

 

 

そう言って、1号たちはIS学園を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなるほど。

あのなのはって子、そう言う理由だったんだね…」

 

研究所で束が、観測機で今回の出来事の一部始終を見ていたことに気付かずに。

 



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なのはの意思

高層ビルの中で長官室に向かう途中、バンはかことアストルフォになのはの事情を伝えた。

 

「そんな、スバルさんたちが人質に取られていたなんて…!」

 

「それに、フェイトって人も…。

でも、今って大丈夫なの?

長官も、この事知ってるんでしょ?」

 

アストルフォはなのはに質問した。

 

確かに、なのははスバルたち機動六課のメンバーも、フェイトも独房に入れられて、人質に取られてる状態だ。

 

だからなのはは、ISのコアを回収するためにIS学園にやってきた。

 

だが、その事はバンに止められ、右京にも知られた。

 

なら、その人質はどうなるのか?

 

その時に、なのは返事をしようと口を開いた。

 

「…一応、私の報告次第になってます。

それに、スバルたちを処刑するにしても、予めその通告はするはずだから…」

 

「ってことは、まだ様子見の段階ってことか…。

でも、油断はできないのは確かだよね」

 

アストルフォは難しい顔をする。

 

「まぁな、だから今のうちに考える必要があるんだよ。

…そろそろ、長官室だな」

 

バンたちは長官室の前に着いた。

 

バンは扉をノックする。

 

「長官、パトレンジャー及び高町なのは四名です。

入ってもよろしいですか?」

 

『えぇ、入ってください。

…ですが、今君たちに会いたいと、一人客人が来ていますので、入ったらその人にも、挨拶を』

 

「こんな時に客が?

…失礼します」

 

バンたちは長官室に入った。

 

中では、右京がいつものように椅子に座っていた。

 

そして、右京が使っている机の端に誰かが腰かけているのが見えた。

 

「「「っ!?」」」

 

「?」

 

なのは以外の3人はその人物を見て驚いた。

 

その人物は女性だった。

 

紫色の髪に紫のドレス、そして何より目を引いたのは、機械のウサミミ。

 

なのは以外は一度会ったことのある人物だった。

 

そして、その女性はバンたちを見ると、元気よくこう言った。

 

「ハロハロー、皆のアイドルぅ♪

束さんだよ♪」

 

それを聞いた瞬間、バンたちは頭を押さえた。

 

「おいおい、マジかよこの人…」

 

「あの、バンさん…。

束さんってその…」

 

「あぁ、篠ノ之束だ。

織斑先生の友人で、ISの開発者だ…」

 

バンからそう聞いて、なのはは青ざめてしまう。

 

なのはが奪おうとしたISの開発者が、目の前にいるのだから。

 

 

 

「いやぁ、ここに来るの結構大変だったんだよねぇ。

だって、時空とか世界を超えるんだから、君たちの反応を探知するも大変だったんだよ。

下手すれば恐竜時代とかに飛んでたかもだからねぇ♪」

 

客人用のテーブルの椅子に座って、そんなに苦労してない様子で、束は菓子を頬張る。

 

「ちょっとあんた、どんだけお菓子を食べる気よ!」

 

霞は束の食欲にあきれながら、菓子を提供する。

 

右京を含むバンたちは束の前に座って、その様子を見ていた。

 

「なあ、束さん。

あんた、何しに来たんだ?

…まぁ、心当たりはあるけどよ」

 

「おっと、そうだったね」

 

束は菓子を持つ手を止めて、なのはを見た。

 

それに対して、なのはは暗い顔をした。

 

「で、でもよ束さん!

なのはのことは止めたから…」

 

「バンさん」

 

バンがなのはを庇おうとしたときに、なのはが遮った。

 

「大丈夫です。

…この先は、私に任せてください」

 

暗い顔をしながらも、決意を秘めた目でなのははバンに言った。

 

そして、なのはは束と向き合い、頭を下げた。

 

「今回は、ISのコアを回収しようとしたこと、その際に友人である織斑さんを脅そうとしたことについて、誠に申し訳ありませんでした」

 

「…」

 

束は真剣な表情で、なのはを見つめた。

 

「なのはって言ったかな。

束さんは、あっちの世界で君がやったことは観測機で見てたよ。

ちょうど、今君が言ったようなことをね」

 

「…」

 

なのはは束の話を黙って聞いている。

 

「最初こそは、ちーちゃんに脅そうとしたのは生意気だなって思ったし、ISのコアをそっちの言葉でいうロストロギアだっけ?

そんなわけわからないの事のために奪おうとしたときは、本気でスクラップにしてやろうかって思った。

たかが小娘の分際が、束さんの作ったコアを奪おうだなんて、思い上がりも甚だしいもん」

 

「…」

 

「だけど、理由を聞いて、気が変わったんだ」

 

「…?」

 

なのはは束の言葉の意味が分からず、思わず顔を上げた。

 

「身内が人質に取られて、それでやるしかなかったんだよね?

それも、最初こそは抗議した後で。

…私は、抗議はしてないけど、似たような経験があったから。

らしくもないよね、束さんが、他人にここまで共感するなんてね」

 

そう言って、束は力なく、椅子にもたれ掛かった。

 

「それに、君はばっくんたちとも協力関係にあるってこともあるから、君をスクラップにするのは諦めるよ。

…それでさ、改めて聞かせてもらえないかな?」

 

「な、何ですか?」

 

改まった様子で、束はなのはに聞く。

 

「今はこうして、ばっくんたちと一緒に、管理局をどうするか考えるためにここに来たけど、君は、どうしたいの?

君は、自分の意思で、友達を助けたいの?」

 

「それは…」

 

なのははしばらく黙りこんだ。

 

確かに、なのははバンの言葉でフェイトやスバルたちを助けたいと思った。

 

だけど、自分の中に、わずかに不安があった。

 

自分が上層部に抗議したせいで、フェイトたちは捕まった。

 

そんな自分に、彼女たちを助ける資格も、会わせる顔があるのかと。

 

だが、なのはの中で、決心がついた。

 

「…私は、助けたい」

 

なのはは、しっかりと束の顔を見る。

 

「バンさんたちに頼るだけでじゃない。

ちゃんと、自分の意思で、フェイトちゃんもスバルたちを助けたいですっ!!」

 

その言葉を聞いた束は満面の笑みを浮かべた。

 

「オッケー♪

それじゃあ、束さんも、作戦会議に参加させてもらうよ♪」

 

「え?

あんたも、参加するのか!?

というか、さっき言ってたばっくんって俺のことか!?」

 

「もっちろん参加させてもらうよ!

あぁ、ちなみになんだけど…。

ばっくんはバンくんのこと。

かっちゃんはかこちゃんのこと。

あっきゅんはアストルフォくんのことだよ♪」

 

「いつの間に、私たちのあだ名を…」

 

「ボクたち、そんなに仲良くなったのかな?」

 

「あだ名のはことは良いだろ。

でも、あんたも加わるなら、色々と考えることはできるんだろうな」

 

「任せてよ、ブイブイ♪

うっくんもそれで良いよね?」

 

束はそう言って、右京の方へと向いた。

 

「うっくんとは…。

これはこれは、一時はどうなるかと思いましたが、あなたが自らこの件に関わろうとは、思いませんでしたよ」

 

右京は苦笑する。

 

「良いでしょう。

では、束さんも含めて、今後をどうするのかを考えましょうか。

バンくんたちも、それでよろしいですか?」

 

右京の言葉を聞いて、バンたちも頷いた。

 

「わかりました。

それでは、話し合いましょう。

僕たちが、上層部にいる転生者を更正するためにも、フェイトさんたちを助けるためにも」

 

その言葉と共に、会議が始まった。



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作戦会議

右京、バン、かこ、アストルフォ、なのは、霞、そして束は、時空管理局の上層部に人質として取られたフェイトやスバルたちを助け、その上層部で暗躍しているであろう転生者を何とかすべく、作戦会議を開いた。

 

「まず、なのはさん。

スバルさんたちが閉じ込められている独房について、どこなのかはご存知ですか?」

 

「はい。

スバルたちが人質になったと聞かされた時に、映像を見せられたのですが、外壁や部屋の作りから、管理局の地下にある重罪を犯した犯罪者を投獄するための独房だったと思います。

ただ、あそこはセキュリティがとんでもなく固くて…」

 

「仮に助けに行くとしても、そのセキュリティのせいで行きたくても行けない。

そう言うところかな?」

 

「…はい」

 

束の言葉になのはは首を縦に振った。

 

「ふぅん…。

そんなの、ハッキングすればどうにかなるのにね?」

 

「ハッキングって、そんな簡単に…!」

 

「うん。

だから、それに関しては束さんがやるよ」

 

「え?」

 

束の言葉になのはは驚く。

 

「要はその厄介極まりないセキュリティをどうにかすればいいんだよね?

なら束さんがハッキングするから、君たちはその間に助けに行く。

それはどうなのかな?」

 

束はバンたちに言った。

 

確かに、そうすればフェイトたちを助け出すことができるかもしれない。

 

だが、それにバンが質問した。

 

「確かにあんたのハッキングなら、セキュリティの解除だって余裕だろうし、その状態なら俺達もあいつらを助け出せるかもな…。

けどよ、そうなったら、誰が上層部に行くんだよ?」

 

「うん、それはこの中から二人ぐらいはいるんじゃないかな?

君たちの話から察するに、上層部的にはこのことをなかったことにしてほしいみたいだし」

 

「なるほど、それはつまり一人は上層部と話をして、もう一人がその護衛で必要だという事ですよね?

それなら、上層部の方については僕が行きましょう。

僕も、彼らとは面向いて話がしたかったので」

 

 

「ちょっと、待ちなさいよ!

長官直々に出向くって、あんた自分が何やろうとしてんのか、わかってんの!?」

 

霞が右京に反論する。

 

「もちろんわかってます。

ですが、今回に関して、どうも引っかかることがあるんですよ。

なので、霞ちゃんはここに残って、管理局の上層部にいるであろう転生者の反応などを見てもらえませんか?」

 

「…わかったわよ、そのためのサポーターなんだから、ここで状況の確認させてもらうわよ」

 

霞はどうにか納得する。

 

「あの、質問良いですか?」

 

かこが手を上げて質問する。

 

「その、長官が何やら引っ掛かることがあるって言ってましたが、それはどういうことですか?」

 

「そうですね…。

強いて言うなら、なぜ今頃になって、ISのコアを回収しようとしたのか、ですよ。

それも、ロストロギアとしてね」

 

「でも、それは転生者が上層部に潜んでいるからじゃ…」

 

「確かにそうです。

ですが、問題は、どうやって転生者は上層部をけしかけたのか、ですよ」

 

右京の言葉に、かこははっとなる。

 

確かに、上層部でも簡単にこんな命令は出さない。

 

それにもし、ISのコアをロストロギアとして回収するにしても、インフィニット・ストラトスの世界の世界ではISはよく使われているため、常時ロストロギアの反応がなければおかしい。

 

そう思い、かこはなのはに質問した。

 

「なのはさん、管理局にいた頃、あそこの世界からロストロギアの反応はありましたか?

それも、ISから」

 

「…一切ありませんでした。

ですが、上層部はあれをロストロギアだと言ってました」

 

「そうですか…」

 

「ねぇ、質問あるけど良いかな?

もしかしたら、上層部だけその偽の反応の情報を渡されたとか、そんな感じかな?」

 

二人の話を聞いたアストルフォが質問する。

 

「恐らくそうじゃないかと…。

バン隊長や束さん、長官はどう思いますか?」

 

かこは三人に意見を聞く。

 

「そうかもしれねぇけど、買収されてるって可能性もあるんじゃねぇのか?

そいつ、目に金の紋章があったっていうことは金銭で、だと思うけどよ…」

 

「それか、上層部が誰からも知られたくない弱味を握ってるとかじゃない?

話を聞いてると、どうせ録な連中じゃないと思うし」

 

「恐らくは、その両方ではないかと。

金銭も機密、どちらも捨てきれないということもあるのではと思います。

まぁ、その辺りは、後でこちらで色々と確認してみましょうか」

 

「それもそうね。

それで誰が長官の護衛に行くの?」

 

霞がバンたちに聞く。

 

すると、バンが手を上げた。

 

「俺が行く。

俺も、上層部に一言言ってやりたいことあるんでな」

 

「そうですか。

では、人質の救出をかこちゃん、アストルフォくん、なのはさん。

セキュリティ解除を束さん。

上層部に会いに行って転生者を確保を僕とバンくん。

そして、転生者の反応の察知を霞ちゃん、というところでしょうか。

これに、どなたか異存はありますか?」

 

右京は皆に聞くが、誰も異存はなかった。

 

「わかりました。

それでは僕は、管理局と掛け合い、話し合いの時間を設けるよう聞いてみましょうか。

皆さんも、それまで体を休めて下さい」

 

そうして、バンたちは準備と体を休めることを兼ねて、長官室を後にした。

 

残った束は、右京に話しかける。

 

「ねぇうっくん。

君は長官である以前に神様だよね?

何で直々に管理局に行こうとするの?」

 

「先ほども言った通り、どうしても気になることがありましてねぇ。

それを今、様々な情報から探ろうとしているのですよ」

 

「へぇ、そうなんだ…。

じゃ、束さんも、情報収集しちゃおうかな?」

 

そう言って、束はパソコンや機材を取りだし、管理局の情報を調べる。

 

「ふふ、頼もしい限りですね…」

 

右京は少し微笑んで、管理局と連絡を取る。



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右京の推理と決着

束が情報収集してから、あることがわかった。

 

上層部に一人、奇妙な来歴を持つ男が。

 

数週間前に下級の職員として管理局に入ったが、その仕事はとても優秀でわずか一週間で上層部の職員として昇格したと。

 

そして、管理局に入る以前の来歴が、一切ないことがわかった。

 

右京たちが管理局に行く前、束は右京たちに、この男について要注意するように忠告した。

 

右京にあるものを渡して。

 

そして翌日、右京からの連絡もあり、上層部は日々の協力に感謝を込めてと、食事を誘った。

 

右京とバンは、これに出席した。

 

「いやぁ、機動六課のメンバーからも、あなたがたの活躍を聞いていましたよ。

高町に渡すように言ったロストロギアも、お役に立てて光栄ですなぁ!」

 

「あぁ、それはどうも…」

 

「これはこれは。

スバルさんも、後に行動を共にしたなのはさんたちも、転生者の更正に貢献して下さってるので、こちらも感謝の気持ちでいっぱいです」

 

右京達を出迎えたのは、上層部の職員と思われる数人の男。

 

その中には、束が警告した男がいた。

 

管理局にあるテラスで、食事をすることになった。

 

右京と職員の一人は、協力関係について互いを称賛し、バンは当たり障りのないように返事をしていた。

 

そして、右京はそれまでの話を切り、別の話をしようとする。

 

「そう言えば、実はパトロールしている時に、このようなものを見つけたですが、これはご存知ないですか?」

 

右京はそう言って、懐から特殊な球体を取り出した。

 

それを見た職員たちは少しだけ眉を顰めるがすぐに戻した。

 

「…それは、ISのコアではないかね?」

 

「ISの、コア?」

 

「確か、ある世界で女性にしか使えない、というバカげたパワードスーツを動かすためのコア、だな」

 

すると、例の男はそう言った。

 

他の職員も、それを聞いてざわつく。

 

「おや、やはりそうなのですか…。

…確か、これは開発者の手によってブラックボックスになっていましたよね?

ならば、これはロストロギアの可能性も考えられますね」

 

それを聞いて、またも職員たちを眉を顰める。

 

「ロストロギア?

それが、ですか?」

 

「まあまあ、これはあくまでも可能性の話、じゃないですか?

何でしたら、これについて私たちの方で調べましょうか?」

 

職員の一人は疑問に思うも、例の男が積極的に話を進めようとする。

 

「わざわざありがとうございます」

 

「いえいえ、そうお気になさらず。

ささ、それを私が預かりましょう」

 

そう言って、男は右京の元へと歩みより、ISコアに手を伸ばそうとした。

 

その時に、右京は微笑みながら、こう言った。

 

「預けて、その上で調べてもらえるとは、本当にありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

ですが、やはりあなただったんですね」

 

「え?」

 

「動くなっ!!」

 

右京の言葉の意味がわからず、男は疑問の声を上げようとするが、バンがVSチェンジャーで男の頭部を捉える。

 

「き、君!

何をしているのかね!?」

 

「いくら協力関係とはいえ、こんなこと許されるものではないぞ!」

 

「あ?

んなもん決まってんだろ?

こいつが、あんたらをけしかけて、なのはにISのコアを回収させようとした張本人だからだ」

 

バンは睨みながら言う。

 

男は少し冷や汗をかく。

 

「私が、高町にISのコアを回収するよう命じた?

なんの根拠があると言うのです?」

 

「おや、貴方が先ほど言ったではありませんか?

これがISのコア(・・・・・)だと」

 

「そ、それが何か?」

 

「僕は確かに、これをあなたがたにお見せしましたが、僕は一度も、これをISのコアとは言ってはいませんよ?」

 

「っ!?」

 

男は動揺してしまう。

 

それに構わず、右京は他の職員を見ながら言葉を続ける。

 

「他の職員の方々は、ISについては知っていても、直接拝見するのは初めてなので、これが何なのかわからなかったようです。

ですが、あなたはこれを見て、ISのコアだと言った。

それは、なぜでしょうか?」

 

「そ、それは…、詳しく調べたら、それがあって…」

 

「本当にそうでしょうか?」

 

そう言って、右京は管理局の資料を取り出した。

 

その中には、ロストロギアの反応の記録もあった。

 

「僕のところにも、優秀な協力者がいましてね。

それで調べてもらったのですが、どうも管理局には、ISに関する資料はほとんどないにも等しかった。

それどころか、コアのことも、一つも書いていなかったのです。

ましてや、ISのコアがロストロギアというわけではなかったようです」

 

その資料を見た職員たちは驚愕する。

 

右京はさらに言葉を続ける。

 

「…思えば、あなたの経歴も奇妙でしたねぇ。

なぜ管理局に入る前の経歴が一切ないのでしょう?

それに、なぜISのコアのことを知っているのですか?」

 

「…」

 

男は下を向いて何も言えなかった。

 

「最後に、一つ確認させてもらってもよろしいですか?」

 

右京は男の目を見て、人差し指を立てる。

 

「あなたの目のそれは、お金のマークが入っていますねぇ。

それに…、転生者用の探知機に、あなたから微弱ながら反応があります。

それについて、何か心当たりはありますか?」

 

「…っ!」

 

「「「っ!?」」」

 

男は歯噛みし、職員たちは男を見て驚く。

 

「その反応を見るからに、皆さんは彼が何者だったのかは、わからなかったようですね。

…さて、あなたはこれに何か間違いはありますか?」

 

「…」

 

男は下を向きながら、ゆっくりと口角を上げた。

 

それに対して、職員たちは次々に言葉を発した。

 

「君、どういうことかね!

ISはロストロギアでは無かったのか!?」

 

「まさか、最初から私たちを騙していたのか!」

 

「我々に渡された資料と、彼らが持ってきた資料と、まったく一致していないではないか!」

 

「そもそも、転生者だったとは、どういうことだ!」

 

職員の言葉に、男は笑う。

 

「…フフフ。

全く、これだから堪の良いゴミどもは…。

しかし、良いのか?

貴様らがこれを持ってきたという事は、高町は自らの任務を放棄したという事なんだぞ?」

 

男は笑いながら、懐からスイッチを取り出した。

 

「高町も随分と外道だ。

仲間よりも、自分の命を優先するんだからな?」

 

「それは、本当にそうでしょうかね?」

 

「ふん、ほざいてろ!!」

 

男はそう言って、スイッチを押した。

 

そして、狂ったように笑った。

 

「クッフフフフフフフ…、ハァハハッハハッ!

ざまあみろざまあみろ!

たった今あいつらは死んだんだ、お前らが俺の計画を邪魔したのだからな!

何が警察、何がパトレンジャーか!

全てお前らも、高町も悪いんだ!

素直にそのコアを渡していればこうならなかったんだからな!」

 

そんな男の様子を見て、右京はきょとんとしている。

 

「おや、そんなにこれが欲しかったのですか?

ならば、あげましょうか」

 

「あぁそうだ!

さっさとよこせ!!」

 

男は右京からコアを奪い取る。

 

コアを手に取った男は恍惚な笑みを浮かべる。

 

「おぉ…これがISのコアか…。

高町には全部回収するよう言ったが、これをすぐに解析して量産すれば早い…。

その前に、お前らを全員殺してな!!」

 

男はそう言うと、全身が青いロボットへと変わり、両手には二連奏のガトリングを持っていた。

 

「あれは、ヘビーアームズ改か!」

 

「えぇ、もちろん解析してもらっても、良いですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

それが本物なら、ですが」

 

「はっ?」

 

右京の言葉にヘビーアームズ改は呆ける。

 

それを気にせず、右京は続ける。

 

「それに、貴方がそのスイッチを押して、彼女たちを殺したように思ったのでしょうが、果たしてそうなんですかねぇ?」

 

「はっ!

何を言っているんだか…!?」

 

ヘビーアームズ改は、右京が気でも狂ったのかと思った瞬間、バンと右京の後ろ、つまりテラスの扉に誰かがいるのが見えた。

 

そこには、かこ、アストルフォ、なのは、そしてアストルフォが召喚したヒポグリフがいた。

 

フェイトやスバルたち機動六課のメンバーを担いで。

 

「馬鹿な!

なぜ、あのセキュリティの独房から!?」

 

『それは私がハッキングしたからだよ、このごみ野郎』

 

天井に映像が映し出されて、束の姿が現れた。

 

『お前がなっちゃん使って、私の大切なISを奪おうとしたの、調べさせてもらったよ。

何で、入って数週間のボンクラが一週間で上層部に入れたのかもね』

 

そう言って、束は様々なデータを提示した。

 

そこには、様々な職員を惨殺してその手柄を横取りしたことや職員の弱味を握って利用し、様々な事件を引き起こさせて自分で処理していたことなどが記されていた極秘のデータがあった。

 

『…これらを黙認してるそいつらもそうだけど、ずいぶんと下衆いことしてるねぇ?

これを世間に公開すれば、君の立場も危うくなるよ?

今から君がやろうとすることも含めてね』

 

束の言葉が終わると同時にヘビーアームズ改は映像に向かってガトリングをぶっぱなす。

 

「だったら、今すぐこいつら全員殺して、お前も殺してから、そのデータを消してやるよ!」

 

そう言うと、今度はバンたちに銃口を向ける。

 

それに合わせるようにバンは右京を後ろに下げる。

 

そして、スバルたちをなのはとヒポグリフに預けたかことアストルフォはバンの隣に並び、トリガーマシンとVSチェンジャーを構える。

 

なのはは、右京とヒポグリフ、そして職員を連れて、その場を後にした。

 

「お前が何でISのコアに拘ってるかは知らねぇが、それでも俺は、なのはを泣かせようとしたあんたを許さねぇ!」

 

「「「警察チェンジ!!」」」

 

『1号!

2号!

3号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

「パトレン1号!」

 

「パトレン2号!」

 

「パトレン3号!」

 

「「「警察戦隊、パトレンジャー!!」」」

 

「それじゃあ、実力を行使させてもらうぜ!!」

 

「やれるものならやってみろ!!」

 

ヘビーアームズ改は、両手のガトリングを三人に目掛けて乱射する。

 

すると、1号はテーブルを盾に利用して攻撃を防ぐ。

 

だが、テーブルは無残にも粉々になってしまった。

 

「…こいつはとんでもねぇな。

流石は、歩く火薬庫を特典にしてるだけあるぜ」

 

1号は粉々になったテーブルを見て若干引きつらせる。

 

「まだまだ、終わらねぇぞ!

ぐふっ!?」

 

ヘビーアームズ改が再びガトリングを構えようとすると、1号が足元にVSチェンジャーを撃って、態勢を崩した。

 

「あいにく、ずっとてめえのターンじゃあねんだよ!

行くぞ!!」

 

「「了解!!」」

 

パトレンジャー三人はVSチェンジャーとパトメガボーを構え、ヘビーアームズ改へと走り出す。

 

「これなら、どうだ!」

 

ヘビーアームズ改は胸部や肩部の装甲からミサイルやバルカンで迎え撃とうとする。

 

「させないよ!」

 

「ええい!!」

 

だがそれよりも早く、3号が懐に入りパトメガボーで右肩部を貫きミサイルを破壊した。

 

それに続いて、2号がVSチェンジャーで左肩部と胸部を撃ち、ミサイルとバルカンを破壊した。

 

それにより、ヘビーアームズ改はそれらの誘爆を食らう。

 

「ぐっ!

畜生!」

 

ヘビーアームズ改は両手に残ったガトリングを構えようとする。

 

「ふっ!」

 

だが、1号はそれらを弾き飛ばし、パトメガボーでヘビーアームズ改の顔面を殴り飛ばした。

 

「ぐはっ!!」

 

ヘビーアームズ改は壁に打ち付けられ、三人は、前と左右からVSチェンジャーを構える。

 

「もう、ここまでだな」

 

「ふっ、そいつはどうかな?」

 

「何!」

 

ヘビーアームズ改は懐から、映像が出る端末を取り出した。

 

そこには、独房に入れられているはやての姿があった。

 

「なっ!」

 

「まさか、他にも独房が!?」

 

「何で!?

この人、監視の状態じゃあ…」

 

三人は驚いてしまった。

 

そんな三人の様子を見て愉快そうに、ヘビーアームズ改は笑う。

 

「フフフ…。

八神はお前たちに情報を流したから、独房に入れたんだよ。

俺の身に何かあったら、独房が爆発するよう仕掛けてなぁ!!」

 

「「「っ!?」」」

 

ヘビーアームズ改の言葉に、三人は驚いてしまった。

 

だが、それでもヘビーアームズ改は言葉を続ける。

 

「ハッキングなんぞに期待するなよ。

こいつの独房にはどんなハッキングも受け付けないようにしてるからな。

何なら、その引き金を引いてみろ。

それと同時にこいつも死ぬけどな!」

 

ヘビーアームズ改は最後の足掻きと言わんばかりに叫ぶように言う。

 

「ちっ!

どんだけ計算高いんだよてめぇは!!」

 

1号はVSチェンジャーを構えながら歯噛みをする。

 

その時だった。

 

「へぇ?

誰が死ぬんだって?」

 

三人の後ろから声が聞こえた。

 

振り替えると、そこにははやてを担いだ束がいた。

 

「いやぁ大変だったよ。

本部からハッキングしようにもやりにくかったから、ここに来て直接ハッキングする羽目になったんだからさ。

…それで、お前の言いたいことはそれだけなの?

じゃあ束さんこれで失礼するねぇ」

 

束の言葉に、ヘビーアームズ改は青ざめてしまうが、怒りに体を震え上がらせる。

 

「このアマぁ!!」

 

ヘビーアームズ改は、勢いよく立ち上がりその場から離れようとする束に目掛けて走り出そうとした。

 

だが、1号はそれを見逃さなかった。

 

「やらせるかよ!」

 

『ダメ、絶対斬り!!』

 

瞬時にパトメガボーにエネルギーをまとわせ、今しがた1号の横を通り過ぎようとしたヘビーアームズ改の腹部に勢いよく叩きつけた。

 

「ぐぅあああああっ!?」

 

ヘビーアームズ改はまたもや壁に叩きつけられ、今度こそ元の姿に戻った。

 

「任務、完了だな」

 

「そうですね…。

あの、更正する前に、なぜISのコアを奪おうとしたのか聞きませんか?」

 

「そうだな♪」

 

2号の言葉に、1号はそれもそうだなと言った様子で男の前に屈み込む。

男はぼろぼろながらも、まだ言葉を話せるようだった。

 

「おい、手錠嵌める前に聞きてぇけどよ…。

何でISのコア奪おうとしたんだ?

それも、なのはを脅してまでよぉ」

 

「なぜ、かって?

そんなもん決まってんだろ…?」

1号の言葉に、男は息を絶え絶えになりながらも話そうとする。

 

「金だよ金!

金に決まってんだろ…!

ISのコアを世界中に売り捌いて、それで金を手にするためなんだよ…!

あのお方に、献上するためのな!!」」

 

「…そうかよ」

 

1号は男の言葉に心底呆れ、手錠を嵌めた。

 

「これで勝ったと思うなよ…。

あのお方が、必ずやお前たちに天罰を与えるのだからな!!」

 

男は愉快に笑いながら、消えていった。

 

「あのお方…。

誰のことなんだ?」

 

 

 

 

 

 

とある世界のビル。

 

部屋の中で、男はため息をついた。

 

「…あーあぁ…。

役立たずが、ヘマしやがって。

これであいつを動かすのに使った金はぱーだ。

くそっ…!」

 

男は怒りをぶつけるように机を殴る。

 

そうして、少し冷静になって、あることを考えた。

 

「そう言えば、消える直前にあいつの記憶の中にいた、あの緑色の女。

確かに、パトレン2号、だったか…。

 

 

 

 

 

 

 

あのガキ、部下使って殺してやったのに、何でいたんだ?」



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爆発の匠とミキサー

今回はブラッドマスカレイドのリクエストのトリガーマシンを出します。


管理局での騒動から数日が経った。

 

あれから、上層部ははやてたち機動六課にやったことを反省として、コアの回収に賛同していた上層部の職員の謹慎処分や解雇などが行われた。

 

残された上層部の職員にはロストロギアの反応の記録の確認の強化や、今後の魔導士たちに対する処遇を見直すよう求められた。

 

なのはやはやては、今回の事後処理やスバルたちのリハビリのためミッドチルダに戻っていた。

 

束は、あれから箒から連続で電話が来たことに気付き、元の世界へと帰っていった。

 

その代わり、フェイトが交番に来て、礼を言いに来た。

 

「あの、この度はありがとうございました!」

 

「どういたしまして♪

お前も無事で良かったな」

 

「その、お礼の印と言いましょうか。

なのはちゃんとはやてちゃんとで選んだんですけど、受け取ってもらえますか?」

 

フェイトはそう言って、ケースを取り出し、バンに渡した。

 

そして、バンはケースの中を見る。

 

中には水色のミキサー型の機械が入っていたのだ。

 

「おいおい、これトリガーマシンじゃねぇか!

まさか、バイカーの時みたいに、ロストロギアの中から選んだのか?」

 

「はい!

一応、許可は取ってありますので、大丈夫です」

 

「そうか。

ありがとな、大事に使わせてもらうぜ♪」

 

そうして、バンはトリガーマシンミキサーを受け取ることにした。

 

すると、交番に警報と霞からの通報が入った。

 

『街の至るところで爆発が起きてるわ!

バン、今すぐフェイトと一緒にこれの調査と解決に向かって!』

 

その通報を聞いたバンは、フェイトの顔を見る。

 

「…街で爆発って、まずいなぁ。

フェイト、行こうぜ」

 

「はい!」

 

二人は爆発が起きてる街へと向かった。

 

 

 

 

 

「おいおい、これは…」

 

「ひどい…!」

 

二人が街に着いたとき、その光景に驚いた。

 

ビルやマンションのような高層建築が地面から崩れたり、内部で爆発したのか、傾きかけたりしていたのだ。

 

しかも、地面には瓦礫で埋め尽くされていた。

 

「一体、どんな爆発でこんなことが…!?」

 

バンは周囲を見回すと、周りから緑色の謎の生き物が現れまっすぐとバンたち近づいてきた。。

 

「な、何ですか!

この生き物は!」

 

フェイトはその生き物を見て思わず警戒する。

 

「…こいつらはクリーパー、だな。

あまりこいつらに近づくと、強力な爆発を引き起こすから気を付けろ」

 

「了解です!

バルディッシュ、セットアップ!」

 

「警察チェンジ!」

 

『stand by ready set up!』

 

『1号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

「それじゃあ、行くぜ!」

 

「はい!」

 

1号はVSチェンジャーでクリーパーの額を撃ち抜き、近づいて爆発しようとしたら、パトメガボーで他のクリーパーのところへと殴り飛ばし同士討ちをさせながらクリーパーを攻撃する。

 

それに対して、フェイトは槍に電気を纏わせて、高速で移動しながらクリーパーを凪ぎ払っていった。

 

 

 

 

「ふぅ…。

とりあえず、こんなところだな」

 

「そうみたいですね。

しかし、何でこんな生き物がこんな街に?」

 

クリーパーを倒して周囲を見回すと、1号は探知機を取り出し、倒れたクリーパーに近づける。

 

「…こいつらは特典で生み出されたようなやつだな。

まだ周囲にも、隠れてやがるが、これ以上はキリがないな」

 

「じゃあどうすれば…」

 

「そうだな…」

 

そう言って1号は街の中央にある高い鉄塔を見る。

 

「あそこが一番反応が強い。

あそこに、この特典の転生者がいるかもな」

 

「じゃあ、その転生者を倒せばクリーパーも消えるってことですか?」

 

「だと思うぜ?

とにかく、あそこに向かおうぜ」

 

「はい!

じゃあしっかり捕まってください!」

 

「え?

って、うおおっ!?」

 

いきなりフェイトに手を捕まれ1号は呆気に取られるが、高速で鉄塔へと連れていかれたことに驚いてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

、鉄塔の天辺にたどり着いた1号とフェイトは、ある男と遭遇した。

 

緑色のパーカーを纏った青年だった。

 

そして青年は二人に言った。

 

「へぇ、よくここに俺がいるってわかったな?」

 

「生憎、転生者相手に、探すのは慣れてるんでな。

それで、お前があのクリーパーを街に放ったやつだな?」

 

1号は青年に聞くと、高いテンションで青年が言った。

 

「ビンゴぉ!

俺はクリーパーを操る特典を持ってんのさ!」

 

「っ!

まさか、あの爆発もあなたが!」

 

「その通り、たかが人間ごときが俺よりも上にいるのが気に入らなかったんでな。

この鉄塔以外の高い建物をぶっ壊してやったんだよ!

俺が世界の頂点に立つ存在として知らしめるためによぉ、ヒャッハーっ!!」

 

青年は背を向けて仰け反りながらそう言った。

 

「…いかれてやがるな。

てめぇをぶっ倒して、更正してやるよ!」

 

「あなたのような人を、私は許さない!」

 

「できるもんならやってみろよ!」

 

青年の言葉と同時に、周りにクリーパーが出現する。

 

「今夜は愉悦っしょぉ!!」

 

クリーパーは勢いよく1号たちに飛びかかった。

 

それに対して、1号はVSチェンジャーで近づかれる前に、クリーパーの頭部を撃ち抜いていく。

 

フェイトは槍に電気を纏わせ、爆発するよりも高速でクリーパーの体を貫いていく。

 

だが、これでは二人の体力が消耗するのも時間の問題だった。

 

「キリがねぇな!

試しに、あれを使うか!」

 

『ミキサー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

1号はトリガーマシンミキサーを使い、クリーパーたちの足元に向けて撃った。

 

はやても、その意味を理解したのか、勢いよくジャンプする。

 

VSチェンジャーから放たれた灰色のエネルギー弾はミキサーのコンクリートのように広がり、クリーパーの足を止める。

 

「すげぇな、これではこいつらの動きを止めれたぜ!

これでとどめだ!」

 

『バイカー!

パトライズ!

警察ブースト!』

 

「私も行きます!

フォトンランサー!」

 

「バイカー撃退砲!!」

 

1号はバイカー撃退砲を、フェイトは槍のような魔力弾を撃った。

 

鉄塔の天辺に強烈な衝撃が走り、クリーパーが消し飛ぶ。

 

それを見た青年は呆然とする。

 

「おいおいマジでか!

俺のクリーパーが、こうも簡単に!?」

 

「さて、あとはてめぇだけだぜ?」

 

「…」

 

そんな青年に、二人は武器を構える。

 

すると、青年は舌打ちし、クリーパーの人形を取り出す。

 

「俺がこんなところでやられるかよ!

とぉっ!!」

 

「なっ!?」

 

「っ!!」

 

青年は、クリーパーの人形を胸に突き付けると同時に、鉄塔から、身を投げた。

 

すると、青年の体は光だし、巨大なクリーパーへと変身した。

 

「こいつ、変身して巨大化しやがった!」

 

「ど、どうしましょう!」

 

『その時は、俺の出番だな!』

 

1号とフェイトが巨大化したクリーパーに驚いている時に、以前ルパンレンジャーと共に行方不明になったグッドストライカーが現れた。

 

『グッドストライカー、ぶらっと参上!

今回は警察に協力するぜ!』

 

「グッドストライカー!?

…話は後でだな。

かこ、アストルフォ!

デカイクリーパーが現れた。

トリガーマシンに乗って、すぐにこっちに来い!」

 

『『了解!』』

 

グッドストライカーが平気で自分達に味方しようとする態度に驚いたが、今はそれどころじゃないと判断し、かことアストルフォを座標などを提示して呼び出す。

 

その間に、フェイトは飛んで、クリーパーに牽制を仕掛ける。

 

『位置について、ヨーイ!

走れ走れ走れ!

出動!

轟・音・爆・走!!』

 

そして、1号はVSチェンジャーを操作して、トリガーマシンを巨大化させる。

 

1号はトリガーマシンに乗って、クリーパーの足元の近くで2号と3号のトリガーマシンマシンと合流する。

 

『バン隊長、これは一体…!』

 

『このデカイの、クリーパーだよね!?』

 

「あれは転生者が変身した姿だ。

すぐに決着つけるぞ!」

 

『グッドストライカー!

位置について、ヨーイ!

走れ走れ走れ!

出動!

一・撃・必・勝!!』

 

『警察、ガッタイム!

正義を掴み取ろう!』

 

巨大化したグッドストライカーは変形し、三人のトリガーマシンが合体する。

 

「「「完成、パトカイザー!!」」」

 

「あれが、パトレンジャーのパトカイザー…!」

 

フェイトはクリーパーの攻撃を避けながら、初めて見るパトカイザーに驚く。

 

「フェイト、ここからは俺たちが引き受ける!

下がって休んでくれ!」

 

「…!

いいえ、私も、やらせていただきます!」

 

フェイトはそう言って、パトカイザーの隣に移動する。

 

「そうかよ。

それじゃあ、行くぜ!」

 

「「「了解!!」」」

 

パトカイザーはクリーパーに近づき右腕の警棒でクリーパーを殴り付けようとする。

 

すると、クリーパーは頭部を器用に使い、パトカイザーの警棒の動きを反らせる。

 

そして、クリーパーは口を開けて、中から大量のクリーパーが射出し、パトカイザーは爆発の衝撃で後ろへと下がってします。

 

「ぐおぉっ!?

クリーパーを弾丸代わりってか?

…やるじゃねぇか」

 

「ええい!」

 

2号はレバーを操作して、左腕のキャノンでクリーパーを撃とうとする。

 

だが、まるで軌道がわかっているかのように、避けられてしまう。

 

「これならどう!?

フォトンランサーっ!!」

 

フェイトは魔力弾を連続で撃つ。

 

パトカイザーのピストルよりも速い速度で魔力弾を撃っているため、クリーパーは避けきれず、一発が口の中に入り、口の中が勢いよく爆発する。

 

そして、クリーパーは、爆発の衝撃で大きく怯んだ。

 

「口の中が弱点だな。

なら、こいつで動きを止めてやるよ!」

 

『お!

それって新しいやつか!?」

 

1号が取り出したトリガーマシンミキサーを見て、少し驚いた様子でそう言った。

 

「まぁな。

行くぜ!」

 

『ミキサー!

位置について、ヨーイ!

走れ走れ走れ!

出動!

完・全・硬・直!!』

 

『右腕、変わります!』

 

右腕のトリガーマシン3号からミキサーへと切り替わる。

 

「これは、パトカイザーミキサーってところだな♪

…ところで、何でお前らそんな微笑まし気に俺を見てんだよ?」

 

「す、すみません!

名前の付けるの、上手になってきたなぁって思って…!」

 

「おめでとう隊長!!」

 

「今回は俺も、花丸やっても良いぜ!」

 

「お前ら、俺を何だと思ってたんだよ…。

というか、今はそんな場合じゃあねぇな!」

 

三人に暖かい目で見つめられた1号は呆れながら、クリーパーに集中しようとする。

 

すると、クリーパーは口を開けて、小型のクリーパーを発射しようとする。

 

「させるかよ!」

 

パトカイザーミキサーは右腕のミキサーを構え、クリーパーの顔面にコンクリートを射出する。

 

すると、口をコンクリートで固められたクリーパーは、射出するすることができなくなり、口の中で大爆発を起こした。

 

「さて、これでとどめだ!

行くぞ!」

 

「「了解!!」」

 

1号の言葉を聞いて、1号を含む三人はクリーパーにVSチェンジャーを向ける。

 

『喰らえ!

パトカイザーメテオロードストライク!!』

 

三人が同時にVSチェンジャーの引き金を引いた瞬間、右腕のミキサーでクリーパーの体をコンクリートで固め、左腕のキャノンでクリーパーの口に連続射撃を行う。

 

それにより、クリーパーの口の中に留まらず、体が一気に膨れ上がり爆発した。

 

「任務完了だ!」

 

 

 

 

バンは元の姿に戻った男を更正した後、グッドストライカーに問い詰めていた。

 

「…俺が聞きたいことはわかるよな?

何でルパンレンジャーに協力してたんだ?」

 

『え?

そりゃ、あの怪盗たちにもグッときたからだよ』

 

「グッときた?

なんだよそれ、気分次第ってことかよ!」

 

『ハッハッハ!

そう怒るなよ。

今までや今回だって、お前たちに協力したのも、お前たちにグッときたからなんだぜ?』

 

バンの剣幕にグッドストライカーはカラカラと笑いながら受け流す。

 

『俺はその時の気分で、お前たちにも、怪盗にも手を貸すのさ。

それじゃあ、アッデュー!』

 

そう言って、グッドストライカーは空の彼方へと消えていった。

 

「…マジかよ。

まぁ、裏切ったって訳でもないから、そうだろうな…」

 

グッドストライカーの行動に一々頭を悩ますのに馬鹿らしくなったバンは、トリガーマシンミキサーを見つめる。

 

「バンさん!

そろそろ、交番に戻りましょうか!」

 

バンは声のする方向に顔を向けると、かこ、アストルフォ、そしてフェイトが待っていた。

 

「わぁーったよ!

今行くぜ」

 

バンは三人のいる方向へと、足を進めた。



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恐怖に惑う警察と狂気に染まる怪盗

すみません、投稿が遅くなりました。


「おいおい、こいつらマジかよ…」

 

バンはかこと一緒に、交番にある資料を見ていた。

 

「あの…何かわかったんですか?」

 

かこは資料を持って近づいてきた。

 

バンは新聞を見せてかこに言う。

 

「ここ数日で逮捕されたやつの顔写真と、資料を見比べろ」

 

かこはバンに言われた通り、新聞と資料を見比べる。

 

すると、かこは思わず目を見開いた。

 

「バン隊長、これって…」

 

「あぁ、ここ数日事件起こして逮捕されたやつのほとんどが、元々転生者だったやつだ。

それも、俺たちが更正してないやつらだ」

 

「元々?」

 

バンの言葉にかこは疑問を持つ。

 

「特典を奪われたんだとよ。

あの怪盗たちに…」

 

「まさか、ルパンレンジャーに特典を奪われたのが原因でっ!?」

 

「ほとんどのやつが、その八つ当たりで人を殺したり、強盗やったり、女子供を誘拐してたらしいんだよな」

 

「じゃあ、特典を奪われて人間になっても、犠牲者が出るってことでしょうか?」

 

「さすがに、あいつらに特典を奪われた元転生者全員が全員ってわけじゃねぇと思うけど、そう言う奴もいるって話だ。

…けど、それが原因で犠牲者が出ているってのも否定はできねえんだよな…」

 

すると、パトロール中だったアストルフォから通信が入った。

 

『隊長、かこ、大変だよ!

今すぐ来て!!』

 

「ど、どうしたのアストルフォちゃん!?」

 

いきなりの通信にかこは慌ててしまう。

 

『突然、車や信号みたいな生き物が人を襲ってるんだ!

急いで来て!』

 

「車や信号みたいな生き物?

わかった、すぐに行くぜ!

かこ、行くぞ!」

 

「了解です!」

 

バンとかこはすぐさま変身して、アストルフォの下へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

1号と2号は座標を辿って、アストルフォが変身した3号と合流した。

 

だが、街の様子は、3号の言う通りの光景だった。

 

「おいおい、何だよこれは…」

 

「うん…。

人の避難は完了したんだけど、それでもあのへんな生き物たちが暴れいるのが止まらないし、数も増えているんだ」

 

「…どっちにしても、このまま放置するわけにもいかねえよな。

特典によるものなのかを確かめながら、こいつらを倒すぞ!」

 

「「了解!!」」

 

三人は探知機を使いながら、生き物たちを薙ぎ払う。

 

すると、生き物たちから微かだが、転生者の特典の反応があった。

 

「こいつら、特典で動いてるのか!」

 

「でも、どうしましょう…。

周りに囲まれそうですよ!?」

 

「これ、下手したら転生者のところに行くまでにボクたち倒されちゃうよ!」

 

2号と3号の言う通り、生き物たちを薙ぎ払いはしたものの、そこから一気に数が増えてしまい、囲まれしまった。

 

三人は互いに背中を合わせながらVSチェンジャーやパトメガボーを構える。

 

「なら、ここはキュウレンジャーの力を使わせてもらうぜ!」

 

『キュウレンジャー!

パトライズ!』

 

『キュークロスボウ!』

 

1号はトリガーマシンコジシボイジャーからキュークロスボウを召喚し、VSチェンジャーを操作しながらキュークロスボウを上に向ける。

 

『ギャラクシー!』

 

キュークロスボウから特殊なエネルギー弾が上空に撃ちこまれる。

 

すると、それは花火のようにエネルギー弾がはじけ飛び、三人の周りの生き物へと降り注ぎ、生き物たちを吹き飛ばしていった。

 

「…どうやら、今ので意識を失ったみたいですね」

 

2号がそう言った途端、近くで悲鳴が聞こえた。

 

「この悲鳴は…」

 

「この近くみたいだね」

 

「でも、その近くで転生者の反応があります!」

 

「おいおい、そりゃあ襲われてる可能性があるぞ。

急いで行くぞ!!

 

三人は急いで悲鳴の聞こえた場所へと向かった。

 

 

 

 

 

悲鳴の聞こえた場所へとたどり着いた三人は、倒れている女性を見つける。

 

「間に合わなかったのか…」

 

「でも、外傷はないようですよ?」

 

「…そうだな。

とりあえず、この人を安全なところに…!?」

 

1号は女性を運ぼうと持ち上げる。

 

だが、女性の体は氷のように冷たく、脈もなかった。

 

「どういうことだよ、死んでるじゃねぇか!?」

 

「えぇ!

でも、外傷ないよね!?」

 

「まさか…、魂を抜かれた、とかでしょうか?」

 

2号は女性に探知機を当てながらそのように言う。

 

「それって、さっきの変な生き物のことと関係してるってのか?」

 

「だと思うんですけど、あの生き物たちと同じ反応が見られるんです。

だから…」

 

2号の言葉が言い終わる前に、探知機から強い反応が見られた。

 

「これは…、あそこですっ!!」

 

2号は反応の強い方向に顔を向ける。

 

その先では、転生者と思われるローブを被った男と、赤いルパンレンジャーが戦っていた。

 

「あれは、ルパンレンジャー…!」

 

「という事は、怪盗と戦っているのはこの事件を起こした転生者ってことだね」

 

「あぁ、あいつに特典を奪われる前に、転生者を更生するぞ。

もう、特典を奪われた転生者による犠牲者を出さないためにもな」

 

「「了解!!」」

 

そう言って、パトレンジャー三人は一気に二人の下へと走り、VSチェンジャーを構えた。

 

「怪盗、および転生者、そこまでだ!!」

 

男の周りに魂のようなものが浮いていて、近くにはポストのような生き物がいた。

 

「にひぃ、にひにひ、獲物が増えてラッキー」

 

笑いながら男が言う。

 

1号は、男の周りを見て確信する。

 

「あれはソルソルの実か!」

 

「だとしたら厄介だよ」

 

「あぁ、急いで更生っ!」

 

1号たちがそう言った途端、男は一気に近づいた。

 

「DEADORLIFE!!」

 

ローブの男は言葉と同時にフードを取り、素顔を見せた。

 

1号たちはその素顔を見て思わず恐怖してしまった。

 

それは、かつて1号たちを殺した転生者たちの顔だった。

 

「お、お前は!」

 

「嫌ぁっ!」

 

「な、んで…」

 

三人は恐怖に身を固めてしまった瞬間、体から何かが出てきた。

 

「へぇ、まだいるまだいる!

俺の奴隷がなぁ!!」

 

すぐさま赤いルパンレンジャーへと近付き、素顔を見せようとする。

 

「DEADORLI…」

 

「おらぁっ!」

 

「ぶふぅっ!?」

 

だが、赤いルパンレンジャーは男の素顔を見た瞬間、恐怖するどころか、迷わず男を殴り付けた。

 

「「「っ!?」」」

 

三人はそれを見て驚いた。

 

自分達が恐怖で動けなかったのに、赤いルパンレンジャーはそれをものともしなかったこともそうだが、赤いルパンレンジャーの雰囲気が徐々に変わってきたからだ。

 

「お、お前、何で俺の顔を見て恐怖を感じなかったんだ!?」

 

「まさか、ここで会うとはな…。

本当に嬉しいぜっ!」

 

赤いルパンレンジャーの様子が明らかに可笑しかった。

 

「ルパンレンジャーは恐怖してないのか!」

 

「でも、あの雰囲気、まるで…」

 

「狂気染みてる…」

 

「ちぃ、こんな奴がいるとはな!」

でもな、それでもこれを作り出すには十分だあぁ!!」

 

歯噛みした男はそう言うと、1号たちに手を伸ばし、何かを奪い取った。

 

その瞬間、1号たちの意識は失った。

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…!

ここは…」

 

1号は目を覚ました。

 

街の路上で倒れこんでいたのに、不審に思ったが、意識を失う前のことを思い出した。

 

自分たちは、男に魂を奪われて、意識を失ったことを。

 

「っ!?

そう言えば俺たちは…。

かこ、アストルフォっ!!」

 

そう言って、1号は隣で倒れこんでいた2号と3号の体を揺する。

 

「あうっ…」

 

「う、うぅん…」

 

二人はうめき声をあげた。

 

「よかった、無事だったみてぇだなあ…♪」

 

二人の様子を見た1号はほっと息をつく。

 

だが、そうとわかった瞬間、1号は先ほど男がいた場所へと顔を向けた。

 

そこには、倒れた男の隣で背中から幻影を出している赤いルパンレンジャーを落ち着かせている青と黄色のルパンレンジャーの姿を見つけた。

 

それに、青いルパンレンジャーの手元には特典と思われる果実を見つけた。

 

これは、男がルパンレンジャーに特典を奪われたことを意味していた。

 

「…くそっ!

あいつらに特典を奪われちまったか」

 

1号は思わず毒づいた。

 

ルパンレンジャーに特典を奪われた転生者は只の人間になるが、その後にその人間がそれのストレス発散などで事件を起こす可能性がある。

 

このままルパンレンジャーを逃がすと、犠牲者が増えるかもしれない。

 

1号はパトメガボーを構えて、赤いパトレンジャーを背後から攻撃しようとした。

 

だが、赤いルパンレンジャーは背後から幻影を召喚し、翼を使って攻撃を防いだ。

 

「まだやる気か?」

 

「当たり前だぁ。

お前らを逃せば、犠牲者が増えるからな」

 

赤いルパンレンジャーはため息を漏らしながら言った。

 

「どうせ、転生特典を奪われた奴らの事件による被害者とでも言うつもりだろ」

 

「それがわかっているなら、どうしてこんな事を?」

 

「…お前らだって、人を悲しませている事に自覚しているのか?」

 

赤いルパンレンジャーは見透かすかのように、1号に問いかける。

 

「なに?」

 

1号は思わず疑問の声を上げるが、赤いルパンレンジャーは幻影の翼を使って、1号を払いのけた。

 

「人に注意する前に、てめぇらの罪を数えろ」

 

そう言って、赤いルパンレンジャーは二人を連れてどこかへと姿を消した。

 

「…俺達の罪、か…」

 

1号はルパンレンジャーが消えた方向を見ながら呟いた。

 

赤いルパンレンジャーの言葉に、1号は二人の転生者を思い出した。

 

ドリィの転生者とブルーデスティニーの転生者のことを。

 

そして、シンフォギアの少女の知り合いのことを。

 

「…確かに、俺達に罪は全くないとは言い切れねぇか。

それでもな…」

 

1号は変身を解除して、2号と3号の下へと歩く。

 

「それでも俺は、戦い続けるんだよ。

俺達のような犠牲者を、これ以上出さないためにも…!」

 

 

 

 

 

「おぉい、お前ら大丈夫か?」

 

「はい…何とか」

 

「ボクも…。

だけど、転生者にあんなこと思い出されたなんて、正直不覚だったよ」

 

「まぁな。

けど、俺は思い知らされちまったよ。

あいつの、恐怖に立ち止らないところに、な。

それに、今回ルパンレンジャーがいなかったら、俺たちはあの転生者にやられてたしな」

 

「確かに、あの怪盗、見た瞬間に止まる所か、殴りに行ってましたからね…」

 

二人は変身解除して、立ち上がろうとする。

 

「あれ?」

 

だが、かこだけはどうしても立ち上がれずにいた。

 

「どうしたの、かこ」

 

「な、なんでなのかな?

立ち上がれないよう…」

 

「おい、大丈夫か?

それなら、俺がおぶってやるよ」

 

そう言って、バンはかこをおんぶする。

 

「ふぇっ!?

あ、ありがとう…ございます」

 

「ねえ。

やっぱりさっきのあれで、堪えてたんじゃあないかな?」

 

「だろうな…。

あいつの見せた顔は、俺たちのトラウマそのものを映しやがったし」

 

アストルフォはかこの様子を見て心配そうに言った。

 

すると、かこは顔をバンの背中に埋めて、片手でアストルフォの手を握った。

 

「あの…、しばらく、こうしても良いですか?」

 

かこの言葉にバンとアストルフォは優しく微笑んだ。

 

「良いぜぇ、それで少し気が晴れるならな♪」

 

「もっちろんだよ!」

 

三人はしばらくその状態で交番へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

転生者と戦っていた場所から数十キロ離れたビルの屋上から、同じ顔をした二人の男が見ていた。

 

一人は宙に浮いていてそこからパトレンジャーを見ていた。

 

「社長の言ってた通りだな。

あの緑のガキ、生きてやがった。

…おい弟、お前本当にあのガキを殺したんだよな?」

 

男は屋上に胡坐をかいて不貞腐れたようにしているもう一人の男にそう言った。

 

「間違いないって!

社長の依頼で、中で刺し殺した後で、図書館ごと燃やしたんだから間違いねえんだよ!

それでも生きてるってことは、やっぱりあれだろ?」

 

「あぁ、正確にはお前に殺された後で、転生したってところだろうな」

 

「どうするよ、何なら今すぐ殺しちまう?」

 

「待て。

今回は只の偵察だからな。

それ以外は金を出さねえだとさ」

 

もう一人の男が背中に背負っている火炎放射器を構えようとしたところを、男が制止する。

 

「…わかったよ。

あいつの金の力は絶対だからな。

今度こそ、俺の手でもう一度ぶっ殺すよう社長にでも頼もうか」

 

「それなら、今度は俺様も混ぜろよ?

新しい特典を手に入れた俺様達兄弟のコンビネーションを、あのガキと二人に披露しねぇとな?」

 

「あぁ、もちろんだぜ兄貴」

 

二人の兄弟は笑う。

 

その二人の眼には、左右対称に、金の紋章が浮かび上がっていた。

 



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怯えるかこ

読者の皆さん、申し訳ありません。

どう話を繋げたら良いかわからず、投稿が遅くなりました。


ソルソルの実の転生者の件から数日後、バンたちパトレンジャーはようやく、なのはたち機動六課のメンバーと再び行動を共にすることができるようになった。

 

しかし、一つだけ問題があった。

 

「…」

 

「おいかこ。

調子はどうだ?」

 

「…バン隊長。

すみません、まだ調子が悪くて…」

 

前回の件から、かこは体調を崩すようになってしまった。

 

ソルソルの実の転生者に、トラウマを呼び起こされた時から。

 

特典の力で体調を整えようと試みたものの、すぐにぶり返してしまうので、現在は書斎のベッドで安静にしている。

 

「気にするな。

何かあったら、すぐに呼んでくれ」

 

バンはかこの頭を一回撫でる。

 

「…ありがとう、ございます」

 

バンはじゃあなと言って、書斎を後にする。

 

書斎に一人残ったかこは、大人しく本を読もうとした。

 

すると、かこは頭に激しい頭痛を覚えた。

 

「っ!?」

 

手に取った本がベッドから落ちることを気に留めず、かこは頭を押さえた。

 

かこの頭の中で、かつての記憶が蘇る。

 

それは自身が殺された時の記憶。

 

そしてそれは謂れのないクレームを突きつけられ、両親が目の前で処刑された記憶。

 

「いやぁ、やめて…!」

 

その記憶が、そのトラウマが、激しくフラッシュバックし、かこを苦しめる。

 

かこはたまらずベッドから落ちた。

 

「はぁはぁ…!

くぅ…!」

 

かこはベッドから落ちて、そのまま身を守るように手足を丸める。

 

すると、音を聞いたのか、バンが駆けつけた。

 

見舞いに来たと思われるティアナと一緒に。

 

「かこっ!

大丈夫かっ!?」

 

「かこさん、しっかりしてください!」

 

二人の声が聞こえた途端、かこは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…ここは?」

 

かこが目を覚ますと、視界に書斎の天井が映っていた。

 

「気が付きましたか?」

 

かこは声がする方向に目を向ける。

 

そこにいたのはティアナだった。

 

「ティアナさん…」

 

「さっきはビックリしましたよ。

バンさんからかこさんのことを聞いていたら激しい音が聞こえたので…」

 

「そうでしたか。

私、倒れてたんですね…。

そう言えば、バン隊長は?」

 

「アストルフォさんと合流して、かこさんの体調を整えるよう、食料を買いに行ってるようです。

…パトロールも兼ねて、ですが」

 

「そうですか…」

 

かこはそこまで言うと、顔を下に向ける。

 

「…やっぱり、以前の件のことで、何かあったんですか?」

 

「…」

 

「ごめんなさい、変なこと聞いて」

 

「…バン隊長から」

 

ティアナが申し訳なさそうにすると、かこは下を向いたまま、口を開いた。

 

「へ?」

 

「バン隊長から、聞いているとは思うんですけど、以前の転生者に、私を殺した転生者の顔を、見せられたんです」

 

「…」

 

「それを目の当たりにして、怖くなって…」

 

「そうなんですか…。

でも、その転生者は特典が怪盗に奪われたから、もうその顔を見ることはないんじゃないですか?」

 

「それもそうなんですけど…」

 

かこは手を強く握る。

 

「だけど、やっぱりあの顔を見たせいか、生前のことを思い出して、今も、あの光景が蘇りそうになるんです…」

 

「かこさん…」

 

ティアナはかこに対して、居た堪れない気持ちになる。

 

ティアナは、かこのことをあまり知らない。

 

だから、かこがどんな生前を送っていたのかも知らない。

 

でも、協力関係としても、かつてにゃんこ大戦争の転生者の件で行動を共にしていた仲だとしても、かこのことを放ってはおけなかった。

 

「かこさん」

 

「…?」

 

ティアナは、かこの背中をさすりながら声を掛ける。

 

「私は、かこさんにしてあげられることはないと思うんですけど…よかったら何かおもしろい話とかしませんか?

そしたら、いくらか気が済むかもなんですけど」

 

かこは、ティアナの言葉に思わず目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の商店街で、バンとアストルフォは、パトロールを兼ねた買い物を終えて、交番へと向かおうとしていた。

 

「ちぇー、せっかく面白そうな食材見つけたのに」

 

アストルフォは買い物袋をぶら下げたまま不貞腐れる。

 

「病人に飯作るのにハバネロ入れるバカがどこにいるんだっつーの♪」

 

「ボクだよ?」

 

「本当にバカじゃねぇか…」

 

バンはアストルフォの食材に対する考えに呆れる。

 

「でもさぁ、キムチのチョイスはどうなのさ?

隊長ったら、結局辛いもの選んでんじゃん」

 

「ハバネロよりかずっとマシだ♪

それに豚キムチとかチャーハン、鍋にも使えるしよ♪」

 

「へぇ、キムチってそういう使い方もあるんだけど」

「まぁな♪

んじゃ、さっさと交番に帰ってかこに飯作ってやらねぇとな」

 

「うん、そうだね。

…?

隊長、あれ…」

 

「あ?」

 

二人は帰路につこうとした時、目の前に妙な男が立っていた。

 

背中に大きな火炎放射器を背負った、蛇のような鋭い目付きの男だった。

 

男はバンとアストルフォを見て、にやけていた。

 

「何だこいつ?」

 

すると、男は火炎放射器を構えた。

 

「お前ら、あの緑の髪のガキの仲間だな?

良かったら俺と遊ぼうぜ?」

 

「「っ!?」」

 

男が言った言葉に二人は驚く。

 

目の前にいる男は、明らかにかこのことを言っていたのだから。

 

そして、男の片目には、お金の紋章が浮かび上がっていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ…」

 

その頃、右京は転生者のデータを見ていた。

 

「長官、頼まれてた資料、持ってきたわよ」

 

長官室に来た霞はファイルを右京に渡す。

 

「ありがとうございます、霞ちゃん」

 

「お礼なんて良いわよ。

それで、何か気になることがあるんじゃないの?」

 

「えぇ、その通りですよ。

この前の管理局にいた転生者の反応の一部と、ある世界で観測された反応の一部が、どこか似ているような気がしましたのでね」

 

右京は分かりやすく説明しようと、データととある世界の記録を見せる。

 

「…長官、これってまさか…!?」

 

「その、まさかです。

あのお金の紋章は、すでに他の世界にもあったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この、生前かこちゃんがいた世界も、含めて」

 



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炎を吹く巳

街は騒然となった。

 

つい先ほどまで、人々が行き交う街は、たった一人の男が振り撒く炎に炙られている。

 

「逃げろぉっ!!」

 

「何なんだあいつ!?

町中で火炎放射器持ってるぞ!!」

 

逃げ惑う人々を1号と3号が、男から攻撃を凌ぎながら避難させた。

 

「くそっ!

いきなり放火するって何なんだよあいつ!」

 

1号は思わず毒づく。

 

「ハァハッハッハ!

ほらぁ、早く逃げねぇと丸焼きになっちまうぞぉ!?」

 

男は狂ったように、酔いしれたように火炎放射器から炎を噴き出す。

 

「隊長、危ない!」

 

「うおっ!?」

 

炎を浴びる寸前、3号は1号を連れて建物の隙間へと入っていった。

 

「あ?」

 

男は追いかけようと建物の隙間を見るが誰もいなかった。

 

「おいおい。

この俺から逃げられるとでも思ってんのかよ!?」

 

男は地面に手を着いた。

 

「…そこか」

 

男は素早く移動し、1号たちを追いかける。

 

「はあはあ…。

流石に、ここまでくれば、あの火炎放射器も扱えないだろうね」

 

3号は1号と一緒に、建物の隙間を縫って、人気のない廃工場にやってきて、体勢を立て直していた。

 

「…」

 

「どうしたの?」

 

1号が黙り込んでいることに気が付いた3号は、1号の顔を覗き込む。

 

「あいつ、何でかこのこと知ってたんだろうな…」

 

その時だった。

 

「そりゃあ、俺があのガキを殺したからだよ」

 

「「っ!?」」

 

1号と3号がいる廃工場に火炎放射器を持った男が、にやつきながらやって来た。

 

「…どういうことだ?」

 

1号は警戒しながら男に聞く。

 

「殺したっても、前世にだがな。

兄貴に親を殺されたあいつの怯えっぷりはたまげたもんだぜ?

それに、ぴーぴー泣き喚いていたし、俺に刺し殺された時の顔なんか、絶望のどん底に突き落とされたようなもんだったからよぉっ!!」」

 

男は良い思い出を語るかのように、愉快に笑いながら言った。

 

「てめぇ…、何で笑ってられんだよっ!!」

 

「あ?

そりゃあ、俺たちは転生者である以前に戦士でもあるんだよ。

干支の十二支の戦士としてな!」

 

「干支の十二支の戦士!?

まさか、君は!」

 

男は自らの素性を言うと、3号は声を荒げる。

 

目の前にいる男の言っていることが本当なら、とある世界の戦士でありながら、転生者だということでも、あるのだから。

 

「さすがに、ここまで言えばわかっちまうか!

なら、手向けに名乗ってやるよ。

巳の戦士、遊ぶ金欲しさに殺す 断罪兄弟 弟!!」

 

男は高らかに自分の名を告げる。

 

目の前にいる獲物を焼き殺すために。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、交番にいるかことティアナは。

 

「へぇ、色々あるんですねぇ」

 

「そうなんですよ。

この間なんか、キャロがエリオを連れてお風呂に入ろうとしてて、止めるの大変だったんですよ」

 

「ふふふ。

でも、それだけキャロさんはエリオさんのこと、好きなんですね」

 

「そりゃあそうなんですけどね…。

いや、実際そうだと思いますけども」

 

「そうだ。

そう言えば、この間バン隊長が…」

 

互いにバンたちやスバルたちの話や、書斎の本を通して様々な世界の話をしていた。

 

そのこともあってか、かこの表情も少しずつ明るくなっていた。

 

だが、そんなときにティアナの通信機が鳴った。

 

「…なのはさんから?」

 

「また何か、あったんでしょうか」

 

二人は少し不安になりながら、通信を開始する。

 

「はい、ティアナ・ランスターです」

 

『バンさんとアストルフォさんが転生者と戦っているの!

私たちはバンさんたちのところに向かってるけど、合流できそう?』

 

「…!」

 

「バン隊長とアストルフォちゃんが!?」

 

なのはが慌てた様子で通信した。

 

かこは、まさか買い物の途中で転生者と戦っているとは思わなかったので驚いてしまう。

 

ティアナは、どうしようか迷っていた。

 

なのはの話が本当なら、バンとアストルフォが手こずるほど強い転生者であり、自分達機動六課も向かわなければならない。

 

だけど、自分が向かえば、かこは一人になってしまう。

 

できることなら、かこを置いて行きたくない。

 

そう思っていた矢先だった。

 

「ティアナさん。

行ってあげてください」

 

「かこさん…」

 

かこは少し不安げな顔をしながらも、ティアナに言う。

 

「私は、大丈夫、ですから…。

なのはさんたちと一緒に、バン隊長とアストルフォちゃんを、助けてください…」

 

「…!

わかりました。

でも、何かあったらすぐに連絡してください!」

 

かこは黙って首を縦に振ったと同時に、書斎を抜け出して交番を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交番からはるか上空で、巨体なカプセルを背負った男が、その様子を見下ろしているとも知らずに。

 

 



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氷を放つ辰と金色の警察

「これは、少し不味いですねぇ」

 

右京は現在のパトレンジャーと機動六課の位置を見て、難しい顔をしながらそう言った。

 

「やっぱり、かこのこと?」

 

その様子を見ていた霞が右京に聞く。

 

「えぇ。

彼女は今、とてもではありませんが、戦える状態ではないですからね。

…これを見てくれますか?」

 

「…?

え?

何で!?」

 

右京から見せられた映像を見て、霞は驚く。

 

現在、かこだけがいる交番の前に、転生者と思われる男が降り立ったからだ。

 

しかも、背中には何かが詰まっていると思われる巨大なカプセルが背負われているのだ。

 

「…恐らく、反応を見る限りでは、あの管理局にいた転生者と一部同じようですねぇ。

目的は、その報復ではないかと」

 

「何を悠長にそんなこと言ってるのよ!

このままじゃあかこが…!?」

 

突然、机の電話がなった。

 

右京は受話器を取り、応答する。

 

「もしもし、パトレンジャー本部です。

どのようなご用件で…!」

 

右京は受話器越しに聞こえた声に目を見開いた。

 

「…なるほど、それが君のところに来たということは、今回君も一緒に行動を共にするということなんですねぇ。

わかりました。

では、そのようにお願いします」

 

右京は受話器を下ろした後、すぐにバンに連絡しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

右京から連絡が来る前、ティアナは交番を出てすぐに、バンたちが戦っている転生者の反応がある場所の近くで合流した。

 

「バンさんたちは、この近く、見たいですね」

 

「うん。

情報によると、その転生者は火炎放射器を使って攻撃してるみたいなの」

 

「それに、バンさんたちも苦戦するほどの転生者みたいなんだ!

早く行こう!」

 

なのはたちは互いにうなづいた後、バンたちがいる廃工場へと入ってきた。

 

すると、廃工場の中は燃え盛る炎に呑み込まれようとしていた。

 

その中で、バンたちが変身した1号と3号が炎をかわしながらvsチェンジャーで応戦しているのが見えた。

 

1号たちの先に、笑いながら火炎放射器から炎を吹き出している男が見えた。

 

「バンさんたちが!?」

 

「何なのよ、あの男…!?」

 

「とにかく、援護に向かわないと!」

 

「うん!

一緒に行こ、フリード!!」

 

「…皆、あの人は私が押さえるから、二人の援護に向かって!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

なのはたちは一斉に飛び、男に接近する。

 

「レストロアクロック!」

 

なのはは杖を向けて、男の体を光の輪で縛り付ける。

 

「うおっ!?

何だよ、これ!」

 

男は体を縛られ、火炎放射器が使えなくなった。

 

「はあぁ!」

 

「たぁ!!」

 

そして、スバルとエリオが左右から接近して攻撃を仕掛けようとする。

 

「はっ!

甘いんだよ!!」

 

男は二人の攻撃を転がるようにかわし、自由である足を回転して、蹴り飛ばした。

 

「うぁ!」

 

「ぐっ!」

 

「エリオ君、スバルさん!

…お願い、フリード!」

 

巨大化したフリードリヒに乗って、キャロは男に攻撃を仕掛けようとする。

 

「…おっと。

随分とでけぇドラゴン、だなっ!」

 

男はフリードリヒの頭部にぶつかる直前、ジャンプして避ける。

 

そして、フリードリヒの背中に乗っているキャロの体を蹴りつけた。

 

「きゃっ!」

 

キャロを蹴り飛ばした男は器用に手を使い、フリードリヒの背中に火炎放射器を突き付け、炎を吹き出した。

 

フリードリヒは背中を焼かれる痛みに悶え、地面に倒れ小さくなる。

 

「フリード!!」

 

「こいつ…!!」

 

ティアナはすかさず、二丁拳銃で男を撃とうとする。

 

すると、男は良いこと思いついたと言わんばかりに笑みを浮かべ、その場にとどまる。

 

そして、ティアナが撃った魔弾を自らを縛っている光の輪に当て、破壊した。

 

「なっ!?」

 

ティアナはそれを見て驚くが、その隙に男が自由になった腕で、火炎放射器をティアナに向け、炎を吹き出した。

 

「ティアナ!」

 

ティアナに当たる直前、なのはが素早くティアナを抱き寄せ、回避する。

 

「へぇ、援護に来たみたいな感じでも、あんまり大したことねぇんだな」

 

男は見下すかのように、なのはたちにそう言った。

 

さらに、男はティアナを見ながらあることを言った。

 

「…そこのツインテのガキが来たってことは、今頃あのガキは一人ってことだよなぁ?」

 

「…どう言うことよ」

 

男の言葉に、ティアナは眉をひそめる。

 

「さっき兄貴から連絡があってな。

お前が交番から出ていくところを見たってな。

ってことは、あのガキもうじき死ぬんじゃねぇのか!?」」

 

「っ!?

お前、いやお前らまさか!!」

 

その言葉を聞いて、1号は確信と同時に怒りが混み上がってきた。

 

この男がなぜ、自分達の前に現れたのかを。

 

「そうなんだよ。

俺は、ただの陽動だぁ…。

本命である、あのかこっていうガキは、兄貴が向かって、粉々にしに行ったんだよ」

 

男は高らかに笑う。

 

「てめぇ、何でそこまでかこを狙うんだよっ!!」

 

1号は声を荒げる。

 

だが、男はそれに対して暢気に答えた。

 

「そんなもん決まってんだろ?

俺はあいつを殺したんだが、転生したってんで俺達兄弟のどちらかが殺せばボーナスくれてやるって話なんだよ」

 

1号たちは男の言った言葉に歯を食い縛る。

 

すると、1号の通信機が鳴った。

 

「っ!」

 

「余所見たぁ、随分と余裕だなぁ!!」

 

男は、1号たちに目掛けて炎を吹き出す。

 

1号たちはバラバラに避けながら物陰に隠れる。

 

「はっ!

今度はかくれんぼか?

じゃあ、どこから燃やしてやろうかなぁ?」

 

その様を見た男はゲラゲラ笑いながら品選びするかのように見つめていた。

 

その隙に、1号は通信機を取り出す。

 

「長官!

バンです。

今現在、転生者と応戦中です!」

 

『やはりそうでしたか。

それで、その最中に交番に近づいて来てるのはわかりますね?』

 

「はい。

だから、あいつの攻撃の隙をついて俺かなのはたちに向かってもらおうと…」

 

『いえ、それには及びません。

ちょうど、かこちゃんのところに一人だけ救援に向かっている人がいるのです。

…僕の懐かしい知り合い、ですが』

 

「知り合い、ですか?

わかりました。

ですが、念のため何人かそちらに向かわせるようにします!」

 

1号は通信を切り、男の方に目を向ける。

 

「さて、この状況どうしたもんかな?

…?」

 

状況を打開しようと考えた矢先、男の様子が変になっていた。

 

「…?

あ?

金づるのガキが逃げ出した!?

ちっ、わかったよ。

戻ればいいんだろ!!」

 

男は苛立ちを覚えながらその場を後にした。

 

「…何だったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

一方、ティアナがバンたちの援護に向かってから、かこは交番の書斎で一人ベッドの上で俯いていた。

 

「…はぁ」

 

かこはため息をついた。

 

自身の不甲斐なさに。

 

本来なら、パトレンジャーの一員として、バンたちと一緒に戦いたいのに、今の自分にはそれが出来ない。

 

トラウマの恐怖が、それを拒んでいるから。

 

そんな時に、交番のチャイムがなった。

 

「…?

こんな時に、お客さん…?」

 

かこは足をふらつかせながら寝間着の上から制服の上着を羽織り、交番に出る。

 

「はぁい…。

あの、どちら様です…か…?」

 

かこは交番の入り口にいた人物を見て固まった。

 

目の前にいた人物は蛇のような目付きのしていて、防寒具の服を来た男だった。

 

しかも、背中には巨体なカプセルのような機材が背負われていて、ホースが繋がっていた。

 

「あ、あなたは…!」

 

かこは震えていた。

 

だが、男はそれを見て愉快に笑いながら、ホースを構えて言った。

 

「よぉ。

両親を目の前で処刑して以来だったな?」

 

その瞬間、交番は凍てつくほどの冷気に襲われた。

 

それを突き破るように、かこは外へと走る。

 

「はぁっ、はぁっ!!」

 

体から汗が吹き出る。

 

冷や汗だ。

 

あの男の顔を見た瞬間、かつてのトラウマが、より鮮明に思い出したからだ。

 

あの男が、両親を殺したのだから。

 

それも氷漬けにして粉々にして。

 

「うっ!」

 

走っている最中、かこは吐き気を催し、手で口を押さえる。

 

すると、目の前に男が降り立った。

 

「おいおい。

まさかもうギブアップってか?」

 

「…っ!!」

 

男はカプセルのホースをかこに向けて何かを射出した。

 

「ひっ!」

 

かこは怯えながら横に倒れるように避ける。

 

すると、かこがつい先ほどまでいた場所が氷に覆われた。

 

「…!

警察チェンジ!」

 

『2号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

かこはせめての抵抗と言わんばかりに2号に変身、応戦しようとする。

 

だが、いつもの調子もでないこともあり、攻撃をかわされてしまう。

 

「ほらほらぁ!

動きが止まってんじゃねぇかよ!」

 

ついには、2号は杖を使って男の足元から光線を出そうとするも、宙に浮かんでそれを避ける。

 

「おらっ!」

 

「きゃあっ!!」

 

宙に浮かびながら男は2号を思い切り蹴り飛ばした。

 

「う、うぅ…!

こ、このままじゃあ…」

 

壁に激突した2号はフラフラした手つきで、VSチェンジャーを操作する。

 

『2号!

位置について、ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!

百・発・百・中!!』

 

2号はトリガーマシンを巨大化させて、街の外へと向かおうとする。

 

男はトリガーマシンの後を追うために、空を素早く飛んだ。

 

「はぁ、はぁ…!!

早く、どうにかしないと…!」

 

2号は焦りながらトリガーマシンを走らせる。

 

すると、いきなりトリガーマシンが大きく揺れた。

 

「あぁあ!!」

 

2号はレバーを握っていたため、座席から離れることはなかった。

 

そして、トリガーマシンの被害状況を見ると、タイヤの一部が凍ってしまい、スリップしてしまったのが分かった。

 

『はぁい♪』

 

「っ!!?」

 

男の声が聞こえ、2号はびくっと体を震わせる。

 

『ほら、さっさと出て来いよ。

じゃないと、こうしてやるぜぇ!?』

 

すると、外から何やら強烈な空気がぶつかる音が聞こえた。

 

それは冷気をトリガーマシンの外からぶつけているのだ。

 

だが、2号は座席から一歩も動かずじっとしていた。

 

「大丈夫…大丈夫だから…!

ここにいれば…、大丈夫だから…!?」

 

2号は自分に言い聞かせるようにつぶやくがあることに気づいた。

 

「この中に閉じこもってたら俺様の攻撃も通らないって算段か?

だが、浴びせ続けたらどうなるんだろうな?」

 

男は笑いながら、トリガーマシンに冷気を浴びせ続ける。

 

すると、中では強烈な冷気が入り込み、2号はそれに逃れるように冷気が漂っていないスペースへと移動し、そのままうずくまる。

 

いくら外が頑丈になっていても、強烈な冷気を浴びせ続けたら中の気温が急激に下がる。

 

例え体が氷のように粉々にならなくても、凍えさせることはできる。

 

恐怖と寒気、この二つが2号を襲い掛かっている。

 

「はあぁああああ……っ!

どうしよう…どうしよう…!!」

 

2号は自らの体を抱きしめ、泣きすすりながら震えていた。

 

『おっ、泣いてんのか?

だが、お前らの仲間なんて来ねえし、誰も助けになんか来ねえよ!

あぁそうだ。

どうせここで死ぬんだから、冥土の土産に名乗ってやるよ!

辰の戦士、遊ぶ金欲しさに殺す 断罪兄弟 兄!!』

 

男がそう名乗っているうちにもトリガーマシンの中に冷気が入り込み気温が徐々に下がっていく。

 

「た、助けて…。

バン隊長、アストルフォちゃん…!

ティアナさん、皆ぁ…!」

 

2号は震える手で通信機で1号たちに伝えようとする。

 

「ぐぉっ!」

 

直後、男は何かに攻撃されたかのようにうめき声を上げながらその場から離れた。

 

「…え?」

 

何が起こったのか、わからなかった。

 

『おい、ケガはないかい!?』

 

ふと、外から先ほどの男とは別の声が聞こえた。

 

1号でも3号でもない。

 

少しだけ、トリガーマシンのハッチを開ける。

 

「っ!

あ、あなたは一体…!」

 

ハッチを開けた先には、パトレンジャーと似た装飾をした金色のコートを纏った男がいた。

 

どこか威厳を感じるような雰囲気を2号は感じていた。

 

「よかった…。

無事みたいだったんだな!」

 

そんな威厳のある雰囲気とは別に、本気で無事を喜んでいた。

 

すると、先ほどの男がホースを金色の男に向けていた。

 

「てめぇ、何者だ!

よくも邪魔しやがったな!!」

 

「…パトレンX!

パトレンジャーの助っ人だ!」

 

パトレンXと名乗った金色の男は十手を男に向けてそう言った。

 

「上等だ!

だったら今すぐてめぇを粉々にしてやるよ!!」

 

男はパトレンXに冷気をぶつけようとする。

 

だが、それをパトレンXはジャンプしてそれをかわし、十手でホースを絡ませる。

 

そしてそのまま男の胴体を勢いよく殴りつけた。

 

「ぐほあっ!?」

 

男は衝撃に耐えられず吹き飛ばされる。

 

パトレンXは続けざまに機関車のような銃を取り出し、男が背負っているカプセルに数発大きな風穴を空ける。

 

「なっ!?

くそっ!!」

 

男は体に冷気が寄り付かないように、カプセルを投げ捨てる。

 

「こうなったら!

…!」

 

「?」

 

男が懐から何かを取り出そうとしたときに手が止まった。

 

すると、男は苛立った表情になった。

 

「くそっ!

あのガキを逃がすって何してんだよ!

…次あったら真っ先にお前を殺してやるよ…!」

 

男はパトレンXにそう言うと勢いよく空を飛び、どこかへと消えていった。

 

「…ふぅ!

あ、そうだ!」

 

パトレンXは2号のトリガーマシンに戻る。

 

「おい、嬢ちゃん大丈夫か!?」

 

「は、はい…。

なん…とか…」

 

2号は変身解除と同時に気を失った。

 

 

 

 



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右京とパトレンXの秘密

「…うん、ここは?」

 

かこは目を覚ました。

 

天井を見るが、病室のようだったがどこなのかはわからなかった。

 

 

「気が付いたか!」

 

「かこ、どこか痛いところとかない?」

 

「かこさん、無事でよかったです…!」

 

バン、アストルフォ、ティアナがかこの顔を覗き込んだ。

 

その後ろでなのはたちは安堵していた。

 

「バン隊長、アストルフォちゃん、ティアナさん、皆さん…」

 

「おや、お目覚めのようですねぇ」

 

「全く、1日丸々寝てたわよあんた」

 

右京と霞が入ってきた。

 

「右京長官に、霞さん。

あの…、ここは?」

 

「ここは本部の病室です。

今までこういう機会がなかったので、初めても無理はありませんが」

 

「そうですか…。

…!

そう言えば、あの時、私を助けてくれた人は!?」

 

かこは思いだしたかのように、右京に聞いた。

 

右京もそれについて、聞かれると分かっていたように、冷静に答える。

 

「そのことでしたら、もう来てますよ?

入ってきても大丈夫ですよ」

 

「はい、右京さん!」

 

右京に言われて、一人の男が病室に入ってきた。

 

そこには刈り上げた短髪にフライトジャケットのような服を着たとこがいた。

 

「初めまして、俺は亀山 薫。

今はパトレンXをやらせてもらってます!」

 

「…どうも、初めまして。

かこと言います」

 

「バンです」

 

「ボクはアストルフォです。

よろしくお願いします!」

 

「よろしく!

…そう言えば右京さん。

以前パトレンジャーのことは聞いてましたけど、この子たちは?」

 

亀山はなのはたちを見て疑問に思ったのか右京に聞く。

 

「彼女たちはパトレンジャーと協力関係を結んでいる、時空管理局の魔導師です」

 

「初めまして、高町なのはです」

 

「スバル・ナカジマです」

 

「ティアナ・ランスターです」

 

「エリオ・モンディアルです」

 

「キャロ・ル・ルシェです。

この子は、フリードリヒです」

 

右京から聞いて、なのはたちは順番に自己紹介をする。

 

それに対して亀山はよろしくと頭を下げる。

 

その時に、バンが質問した。

 

「亀山さんがパトレンXなのはわかったんですけど、亀山さんも俺達と同じ、転生者なんですか?」

 

「それを、これから話すところだったんです。

彼は少し、複雑な状態ですからねぇ。

本来ならば、話す場を設けたかったのですが。

…その前に、かこちゃんも、病み上がりで申し訳ありませんが、よろしければ話を聞きますか?」

 

「いえ…、大丈夫です」

 

「わかりました。

では、まず亀山くんの話をする前に僕の話をしましょうか。

これは後で亀山くんにも繋がりますからねぇ」

 

かこに確認を取った後、右京は自分のことを話す。

 

「まず、君達は僕が神様であることはご存知ですね?」

 

バンたちは頷く。

 

「確かに、僕は神様を名乗っています。

ですが、正確には僕は神の力の一部を与えられた、いわば神でありながら人間でもあるんです」

 

『っ!』

 

それを聞いて、亀山を除くバンたちは驚いた。

 

「元々僕は、杉下 右京として警視庁の特命係で警察をやっていたのです。

亀山くんとは、その付き合いがありましてねぇ」

 

「あの時は、お世話になりました」

 

「いえいえ。

そして、亀山くんが警察を辞めた後、僕は特命係として様々な人と組み、様々な事件の捜査及び犯人の逮捕に至りました」

 

そう言いきった時、右京は難しい表情になる。

 

「ですがある時、不可解な事件が多発化したのです」

 

「不可解な事件?」

 

「えぇ、捜査一課ですらもお手上げで、鑑識に回しても見たこともない物質など検出されて凶器の出所もわからない。

挙げ句の果てには、証拠らしい証拠も、見つからなかったのです。

それゆえ、早々に捜査を打ち切られ迷宮入りするという事が相次いでいたのです。

…当時の僕もそれらの事件を調べましたが、まったく手掛かりがつかめませんでした」

 

「そ、そうだったんですか…。

でも、それと長官が神様になったことと関係しているのですか?」

 

「もちろんですとも。

その時に、後に君達をパトレンジャーに任命した女神であるエリスさんが現れたのですから」

 

「エリス様が…」

 

それから右京は話を続けた。

 

最初こそは右京と半信半疑ではあったが、女神エリスに右京が調べていた事件の真相とその証拠になる記憶などを見せられたのだ。

 

その事件のほとんどが転生者が関与していて、未だに捕まっておらず、それ以外でも発覚していない事件を引き起こしていた。

 

そして何より、その転生者は人としての心を失っていることにエリスは心を痛めていた。

 

それ故、元の人間に戻したいと願っていた。

 

しかし、一度転生させると、こちらから干渉することができない。

 

だから、自分の代わりに転生者を取り締まれる人間を探していたのだと。

 

「…それで選ばれたのが、長官だったってことなんですね」

 

「はい。

ただ、僕の場合、神の力を与えられても、特典を渡したり、転生者の特典や情報を調べることができる程度で、僕では転生者に対する決定打に欠けていました」

 

「…」

 

「なので、僕の代わりに戦える人を探しました。

僕と付き合いのある人の中からねぇ」

 

「それで選ばれたのが、俺だったってわけッスよ!

まぁ、海外にいる時にいきなりこれが飛んで来たのは驚きだったッスけど」

 

亀山は補足するように銀の新幹線と金の機関車が合体した銃を見せる。

 

すると、アストルフォが手を挙げた。

 

「そう言えば、それってvsチェンジャーに似てるけど、何なんですか?」

 

「これはXチェンジャーってやつなんだ。

普段は俺の手元にないんだけど、俺が念じたり、転生者関係で何かあると俺のところに来るようになっているんだ。

…何でか、俺以外にも使っている奴いるみたいなんだけどさ」

 

「その点について、以前エリスさんがいっていました。

Xチェンジャーは元々エックストレインゴールドを自分で作ったのだと。

ですが、どういうわけか、もう一人の作ったエックストレインシルバーと合体したことでこのようになり、亀山くんともう一人の誰かが変身できるようになったのです。

だから、もし君達両方が同時に呼び出したのなれば運に頼らざるを得ないのです」

 

『…』

 

それを聞いたバンたちは難しい顔をする。

 

もう一人の変身者は誰なのかも、敵か味方かもわからない。

 

だから、場合によってパトレンXは一緒に戦えないということが出てくるのだ。

 

「でも大丈夫だよ!

もしそうなったら、俺なりにサポートするからさ」

 

「そうですね。

ですが、そうならないよう祈りますよ」

 

「まぁ、それなら良いんだけどね。

…!?」

 

直後、霞の髪飾りのアンテナが何かを察知した。

 

「長官。

前回戦った二人の転生者が現れたわよ。

…しかも、今回は誰かを追っているみたい」

 

「二人?

…そうですか。

それでは、パトレンジャー及び機動六課の皆さん。

二人の転生者の更生及び、追われている人の保護をお願いします。

…かこちゃんは、ここで待っててもらっていいですか?」

 

「!?

ど、どうしてですか?」

 

「さっき察知した転生者のの片方、あんたにとってのトラウマなんでしょ?

そんな状態のあんたを戦いに出したら、どうなるんだか」

 

「す、すみません…」

 

「申し訳ありませんねぇ。

…それでは皆さん、出動準備でき次第向かってください」

 

「了解です!

…悪いなかこ、今は一緒にいてやれなくて」

 

バンはかこにそう言ってから、アストルフォたちを連れて病室を出た。

 

「さて、僕たちもそろそろ行きましょうか」

 

「右京さん!」

 

「…?

どうしました、亀山くん」

 

右京たちも病室に出ようとした時、亀山が引き留める。

 

「すみませんが、俺、この子と話がしたいんです。

なので、それが終わってから現場に向かっても良いですか?」

 

それを聞いた右京は少し考え込む。

 

「…なるほど、わかりました。

では、用が済み次第、向かってください」

 

「あんまり悠長にしてられないわよ」

 

そう言って、右京たちは病室を後にした。

 

病室に残ったのは、亀山とかこだけだった。

 

「…すみません、私なんかのために…。

それと、前回、助けていただいて、ありがとうございました…」

 

かこは謝罪と感謝を述べる。

 

「おう、どういたしまして。

…えーと、確か君はパトレン2号なんだよね?」

 

「はい。

長官からこの特典をいただいて、戦うことができるんです。

それで、私と話がしたいと言っていましたが、どのような?」

 

「…そうだな。

俺助けに行った時に、かなり怯えてたから、気にはなってたんだ。

まぁ、相手が君にとってトラウマみたいなもんだったかもだけど、さ」

 

「…」

 

「まぁ、俺が聞きたいのは、何でこんな小さな子が転生者相手に戦ってるんだろなってところもあるけれど。

君は何でパトレンジャーになったんだ?」




文中に出るエリスはこのすばの女神エリスです。


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かこの願いと時の戦士、そして宇宙の力

今回は、烈 勇士さんのトリガーマシンを出します。

また、名前だけですけど、NCドラゴンさんの転生者も出します。


「私の、パトレンジャーになった理由、ですか?」

 

亀山は頷く。

 

「右京さんから君達のことは聞いてる。

皆転生者に殺されて転生したってことも、それで転生者の更正のために戦ってることも。

でも、君自身はどうなのかなぁって」

 

「…」

 

それを聞いてかこは俯く。

 

「あぁごめん!

別に、心の傷を掘り下げようなんて…」

 

「いえ!

それは、大丈夫、なんです…。

でも、パトレンジャーになったの、最初こそは本当に、選ばれたってだけだったんです」

 

「選ばれた?

それってどういう…」

 

「長官が言うには、この特典は私たち三人を選んだとのことでした。

ですが、私自身はそんなものになるつもりは、なかったんです。

…何より、当時の私は人間というものに対して、トラウマを抱えてましたから」

 

「え?」

 

かこは話を続ける。

 

生前に図書館の常連客からいきなり謂れのない誹謗中傷の罵倒を浴びせられたこと。

 

いきなり、両親でも身に覚えの無かった莫大な借金を背負わされたこと。

 

挙げ句の果てには、両親が危険な思想を持っているというわけのわからない理由をつけて、両親を連行して、拷問して、自分の目の前で処刑したこと。

 

そして、後に仮面を付けたピエロみたいな人が町に来たばかりの客だから中に入れて欲しいと言ったので案内ついでにお茶を出そうとしたときに刺されたこと。

 

しかも、死ぬ寸前、ピエロが仮面を外して、見えた姿が、自分の両親を目の前で処刑した男と同じ顔だったこと。

 

これらのことから、人間が信じられなくなり、トラウマそのものとなったこと。

 

「…」

 

亀山はかこの話を黙って聞いていた。

 

だけど、その手は強く握り絞められ震えていた。

 

それは怒りだった。

 

亀山はかこの話を聞いて、理不尽だとおもった。

 

それでも、かこは話を続ける。

 

「だから、当初はバン隊長のこともアストルフォちゃんのことも、信じられなかったんです。

あの人たちはただ純粋に、私と話がしたくて、美味しいご飯を食べて欲しくて、やってただけなのに。

私は、それを全部拒絶したんです…」

 

「…」

 

「転生者と戦う時だって、あの二人を見捨てようと、したんです…。

それなのに…助けてくれたんです。

大丈夫かって…。

どこかケガはないかって…!」

 

かこは話をしていくうちに涙を流していた。

 

「おかしいですよね…?

あの人たちのこと、見捨てようとしたときだって、心の中でざまあみろってバカにしてたのに…!

そんなひどいこと考えてた私を、あの人たちは助けたんです…!

正直、そんなことされると、人間不信になってた自分が恥ずかしくて…悔しくて…!

どうして、そんなに優しくしてくれるのか、わからなかった!」

 

かこの目から大粒の涙が溢れていた。

 

それはその時の後悔と、優しさに包まれたうれしさもあるのだろう。

 

「だから、その時のことを聞いても、放っておけなかったからって、同じパトレンジャーの仲間だからって!

その時の二人の背中はとても大きくて、まぶしかったんです…。

私の、闇が一気に晴れるかのような気分だったんです。

だから、バン隊長とアストルフォちゃんの力になりたいって、また人を信じたいって…その時から思うようになってきたんです!

…でも、今じゃダメですよね、こんな体たらくでは。

私たちを殺した人の顔を見ただけで、この状態なんです…。

…惨めに、思っちゃうよぉ…!」

 

言い切ったかこは涙に濡れた顔を手で覆う。

 

亀山はかこの肩にポンと手を置く。

 

「…あの二人の力になりたい。

それが、君の理由、なんだね」

 

「うん…うん…!」

 

「そうなんだ。

けどさ、今の世の中、君のような犠牲者は、多いと思うよ?」

 

「…?」

 

「俺さ、君達が転生する前から少しずつだけど、転生者による被害者のこと調べてたんだ。

特典の力で周りに裏切られた挙げ句、大切な家族を奪われ、何もかも信じられなくなった人も、結構いたんだ」

 

「…」

 

「今でも、それは変わらない。

…もし、君と同じような境遇にあいそうになった人がいたら、君はどうしたいんだ?」

 

「私、だったら?」

 

「パトレンジャーとしての責務を果たすのも有りなんだけどさ…。

君自身は、どうしたいんだ?」

 

「…」

 

かこは考える。

 

パトレンジャーとしての使命。

 

自分の心。

 

その人とその人の家族との幸せ。

 

それら全てを引っくるめて考える。

 

「私は…!

その人を守りたいです!

私と同じ目に遭ってほしくないから、

皆に笑顔でいてほしいです!」

 

かこの顔には、不安も迷いもなかった。

 

それを見た亀山は安心したのように微笑む。

 

その時、置いてあったVSチェンジャーが光を放ち、何かがかこの手元に飛んで来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ、はっ!」

 

街を一人の男が傷だらけの少女を担いで走っていた。

 

男は人目のつかない建物の隙間に入り、そこで休憩しようと座り込んだ。

 

「はぁはぁ…。

…ここまで来れば、あいつらも追ってこないだろうな。

…おい、大丈夫か?」

 

男は少女に声を掛ける。

 

「うっ…うぅ…」

 

少女は少しだけ目を開けるも、うめき声をあげることしかできなかった。

 

すると、男は懐から飲料水を取り出した。

 

「これを飲め。

少しなら、のどが潤うはずだ」

 

そう言って、男は少女に飲料水を飲ませる。

 

少女は少しだけ安らかな表情になっていることに男は安堵する。

 

「よかった…。

これならしばらくは…!?」

 

直後、男は何かを察知して建物の隙間の通路を見る。

 

「よおっ!」

 

「どうもぉ♪」

 

通路から挟み込むように同じ顔をした二人の男、断罪兄弟が入ってくる。

 

男は警戒する。

 

「もう鬼ごっこは終わりだ。

さっさとそのガキ引き渡してくんねぇかな?」

 

「引き渡しても、粉々にしてやるけどよ」

 

「ってそれ結局は殺してんじゃんかよ兄貴!」

 

断罪兄弟はゲラゲラと笑う。

 

「くっ!

…!」

 

「おっと!

迂闊に動くんなら、丸焼きになるぜ?」

 

男は隙をついて断罪兄弟の隙間を縫って脱出しようとするが、断罪弟に阻まれる。

 

その間に断罪兄が近づいてくる。

 

「…やるしかないってのか!」

 

男は何かを取り出そうとした直後。

 

「動くなっ!!」

 

「「「っ!?」」」

 

バンたちは断罪兄弟の後ろからvsチェンジャーや武器を構える。

 

「…おい弟。

こいつら前のポリ公か?」

 

「あぁ、そうさ。

けど警察名乗ってる癖して弱いんだよ」

 

「とか言いながら結局一人も殺せてねぇのによ」

 

「うるせぇよ!

今から殺せばいいんだよ!」

 

「てめぇら、今すぐその二人から離れやがれ!」

 

バンは断罪兄弟に離れるように言う。

 

だが、断罪兄弟は小ばかにするかのように切り捨てた。

 

「はぁ?

んなもんノーに決まってんだろバーカ!」

 

「だな!」

 

その言葉と同時に二人は走り出した。

 

そして、男と少女を飛び越え、火炎放射器と氷冷放射器を構える。

 

それと同時に、バンたちも変身する。

 

1号、なのは、スバル、ティアナは断罪兄が。

 

3号、エリオ、キャロは断罪弟が。

 

その隙に、男は少女を連れてどこかへと走った。

 

「今のうちに早く逃げないと…!?」

 

男は隙間の外へと出た途端、何かを見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!」

 

「二人一緒だと、こんなに強いだなんて…!」

 

男がどこかに行ったあと、断罪兄弟と戦っていた1号たち。

 

だが、二人の圧倒的なコンビネーションを前に、手も足も出ない状態だった。

 

「お前ら程度に、俺様たち断罪兄弟のコンビネーションに敵うとでも思ったのか?

ダッセェ!」

 

「そう言うわけなんでぇ、お前らはここで丸焼きでぇす!」

 

断罪兄弟は氷冷放射器と火炎放射器を構える。

 

1号たちは歯噛みした。

 

その瞬間、建物の隙間に奥から、誰かが走ってきて、断罪弟を蹴飛ばし、断罪兄にぶつかる。

 

「っ!

誰なんだ!?」

 

1号たちと断罪兄弟は誰かがやって来た方向を見る。

 

そこにいたのは亀山だった。

 

「悪い、遅くなっちまった!

君達大丈夫か!」

 

「亀山さん!」

 

1号は亀山が来たことに驚く。

 

「てめぇ、誰なんだよ!?」

 

「ふざけやがって!」

 

断罪兄弟は怒りを露にしながら亀山を睨み付ける。

 

「はっ!

お前らみてぇなやつらに名乗る名前なんざねぇよ!」

 

亀山はどこからか、Xチェンジャーを呼び出す。

 

Xチェンジャーを見た断罪兄は驚いた。

 

「その銃は!?

てめぇ、やっぱりあのときの…!

よくもガキを殺すのに邪魔しやがったなっ!!」

 

「そのガキは、私のことですか?」

 

「っ!?」

 

亀山の隣にかこがやって来た。

 

その表情には不安や恐怖はない。

 

そこには、立ち向かう勇気が秘められていた。

 

「かこ!」

 

「もう、大丈夫なんだね!」

 

「かこさん…!」

 

「バン隊長、皆さん、ご迷惑をおかけしました…!

もう、大丈夫です!」

 

かこは笑みを浮かべて1号たちに言う。

 

そして、かこは断罪弟を睨み付ける。

 

「…やはり、あなただったんですね、私を殺したのは」

 

「へっ!

どうせ兄貴の時みてぇにすぐに怯えて逃げるんだろ?」

 

「いいえ」

 

そう言って、かこは1号たちに近づき、手を翳す。

 

すると、1号たちの傷が消えた。

 

傷が癒えたことを確認したかこは微笑み、すぐに断罪兄弟を睨み付ける。

 

「…私はもう逃げない。

もう、誰も転生者に傷つけさせたくないから。

皆と皆の笑顔を、守りたいから、戦うんです!」

 

それを聞いた亀山は断罪兄弟に言う。

 

「聞いたか?

この子の覚悟を!

金で動いてるようなお前らとは違うんだよ!」

 

「「…!」」

 

亀山に言われた断罪兄弟は歯噛みする。

 

「へっ!

ずいぶんとすごい覚悟を持った子なんだな」

 

「今度はなんだ!」

 

すると、先ほどの男が、1号やかこたちの前に立つ。

 

「あんたはさっきの…!」

 

「…俺は浅見竜也。

タイムレッドだ、よろしくな!」

 

浅見竜也と名乗った男に、1号たちは驚く。

 

「タイムレッドってタイムレンジャーの!?」

 

「でも、死んだんじゃ…!」

 

「説明は後だ。

とにかく、あいつらをどうにかしないと!」

 

「了解!」

 

「「警察チェンジ!!」」

 

「クロノチェンジャー!」

 

『2号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

『エックスナインズ!

警察Xチェンジ!』

 

かこと亀山、竜也がそれぞれのアイテムを使って変身する。

 

かこはパトレン2号に。

 

亀山はパトレンXに。

 

浅見はタイムレッドに。

 

そして、1号たちは三人の隣に並ぶ。

 

「パトレン1号!」

 

「パトレン2号!」

 

「パトレン3号!」

 

「パトレンX!」

 

「レイジングハート!」

 

「マッハキャリバー!」

 

「クロスミラージュ!」

 

「ストラーダ!」

 

「ケリュケイオン!」

 

「タイムレッド!」

 

『警察戦隊 パトレンジャー!』

 

「さぁて、実力行使だぜ!」

 

それを見た断罪兄弟は、笑みを浮かべる。

 

「…どうやら、そんなに死にたいらしいなぁ?」

 

「だったらよ、俺たちも名乗らねぇとな!」

 

そう言うと、互いの武器を構える。

 

「辰の戦士 遊ぶ金欲しさに殺す 断罪兄弟 兄!!」

 

「巳の戦士 遊ぶ金欲しさに殺す 断罪兄弟 弟!!」

 

そして、ぶつかり合った。

 

2号、スバル、ティアナ、なのは、タイムレッドは断罪弟と戦う。

 

「ほらぁ、燃えちまえっ!!」

 

断罪弟は火炎放射器で燃やそうと炎を吹き出す。

 

だが、炎を吹き出す方向がわかったのか、四人はそれを避ける。

 

「はぁっ!」

 

「たぁっ!」

 

ティアナとなのはは魔力弾で火炎放射器を撃ち抜いていく。

 

「ちっ!」

 

火炎放射器のタンクを撃ち抜かれ燃料が漏れてしまい使い物にならなくなった火炎放射器を2号に投げつける。

 

「えぇい!」

 

だが、2号はVSチェンジャーで撃ち抜き爆発させる。

 

スバルとタイムレッドは爆炎を突き抜け、一気に断罪弟との距離を詰める。

 

「たぁっ!」

 

「ふっ!」

 

「おら!」

 

スバルとタイムレッドと断罪弟の拳や蹴りがさく裂する。

 

その隙に、2号とティアナは左右に移動に射撃でタイムレッドの援護を行う。

 

「ぐあぁっ!?」

 

そして、なのはは真上から杖を構え魔力弾を生成する。

 

「ディバインシューター!!」

 

「ごはっ!?」

 

ディバインシューターで撃ち抜かれた断罪弟は建物の壁に打ち付けられる。

 

 

 

一方、1号、3号、エリオ、キャロ、パトレンXは断罪兄と戦っていた。

 

「はっ!

凍れ凍れ!!」

 

断罪兄は氷冷放射器から強力な冷気を吹き出す。

 

すると、キャロはフリードリヒに指示を送る。

 

「フリード!

あの冷気を焼いて!!」

 

フリードリヒはキャロの前に立ち火炎放射で相殺する。

 

「くそっ!」

 

このままではらちが明かないと思ったのか後ろにジャンプすると同時に空を飛ぼうとする。

 

「させないよ!

トラップオブアルガリア!!」

 

3号は光を放つ馬上槍を断罪兄に向けて穿つ。

 

断罪兄は足をかすれるが3号の攻撃を避ける。

 

「はっ!

どこ狙ってん・・・うぉ!?」

 

断罪兄は急に空を飛ぶ能力が使えなくなり落ちる。

 

地面に叩きつけられる寸前、1号がトリガーマシンバイカーを取り付けたvsチェンジャーを向けていた。

 

そめてもの攻撃と言わんばかりに氷冷放射器を断罪兄は向けようとする。

 

直後、パトレンXは十手モードのXロッドソードで氷冷放射器のホースを破壊し、蹴り飛ばす。

 

「はぁ!」

 

飛ばされた先でエリオが槍を構え、断罪兄の背中にあった氷冷放射器を穿ち、冷気が分散するほどの速度で切り刻む。

 

「くらえ、バイカー撃退砲!!」

 

とどめと1号がエネルギーの溜まった弾丸を断罪兄にぶつけた。

 

「ぐあぁっは!?」

 

勢いよく壁に打ち付けられ、地面に叩きつけられる。

 

「さて、ここまでのようだな?」

 

「おい、どうするよ兄貴!」

 

「…一々言わなくてもわかんだろ?

あれを使うんだよ」

 

「あれ?

…そうか!」

 

そう言って、断罪兄弟は懐から青と赤のうろこを取り出した。

 

「何をする気だ!?」

 

すると、それを胸に翳し、それぞれ氷塊や溶岩に包まれた龍へと変わった。

 

そして、断罪兄が変身した氷塊に包まれた龍は空を飛び、1号たちを見下すように見下ろしていた。

 

断罪弟が変身した溶岩に包まれた龍は1号たちを見ながら舌舐めずりしていた。

 

「っ!?

こいつらは、アグナコトルとそれの亜種じゃねえか!」

 

「これはやべぇぞ!

あいつら、俺たちごとこの街を潰す気だ!

すまないが、なのはさんたちは、住民の避難を頼む!」

 

「了解です!」

 

なのはたちは散開して、住民の避難を始める。

 

その場に残されたのは、1号、2号、3号、パトレンX、そしてタイムレッドだった。

 

「じゃああいつらを俺たちが…」

 

「悪いがちょっと待ってくれ」

 

「?」

 

タイムレッドが1号たちを止める。

 

すると、タイムレッドは2号を見る。

 

そして、1号たちを見た。

 

「その子は、あの子の傷を治して、明日を繋げてくれたんだ。

だから、お前たちも、この街の明日を繋げてくれ!」

 

「…?

かこ、どういうことなんだ?」

 

「…私にもあまりわからなかったんですけど、病室でこんなのがVSチェンジャーが出てきたんです。

これを使って、浅見さんが運んでいた子の傷を治したんです」

 

2号が取り出したのは、救急車の形をしたトリガーマシンだった。

 

2号は話を続ける。

 

2号はパトレンXと一緒にこれに乗り込みここに向かっていた時、浅見達と会い、少女の治療しようとした。

 

だが、傷があまりに深く、すぐにでも死んでしまうかもしれない状態だった。

 

そこで、2号はトリガーマシンを自動に変えて、中にあった集中治療室でロボットに治してもらったのだと。

 

それで、今は安全な場所で寝ていると。

 

「そんなことが…」

 

「あぁ、俺もびっくりだったけど、あの子の命を助けてくれたんだ!

だから、頼む!

俺の代わりに、この街の明日を繋げてくれ!」

 

「おいちょっと待てよ。

あんたはやらね…!?」

 

1号は反論しようとした瞬間、タイムレッドの手足の先が徐々に粒子になって消えてるのが見えた。

「俺は元々、あの子の助けを聞いて一時的にこの世界で実体化したに過ぎないんだ。

だから、消える前にこれを…!」

 

タイムレッドの体から光か現れ、それが1号の手元に来た。

 

それは、赤色の宇宙船のような形をしていた。

 

「こいつは…!」

 

「それはタイムジェット1!

俺たちタイムレンジャーの力が込められている。

使ってくれ!」

 

「あぁ、そうさせてもらうぜ…!?」

 

1号は使おうとした瞬間、懐からコジシボイジャー、パトストライカーが飛び出し、タイムジェット1に合体するように飛び込んだ。

 

すると、重火器を搭載したロケットへと変わった。

 

「…どうやら、3つの宇宙の力が合わさって、一つになったか」

 

「え?」

 

「宇宙の力を持つ3つのスーパー戦隊の力が合わさった時、合体してできた存在、スペーススクワッドだ!」

 

「…マジかよ。

けど、使わせてもらうぜ!」

 

そう言って、1号はそれをVSチェンジャーに取り付けた。

 

『スペーススクワッド!

パトライズ!

スーパー警察チェンジ!!』

 

「宇宙チェンジ!」

 

『スペースパトレンジャー!!』

 

vsチェンジャーを上空に向けて撃つと、それは人間サイズに巨大化し、中心部が割れ、1号の体を覆う。

 

すると、背後にスラスターと重火器が、胸部と肩部には装甲が装着され、頭部にはパイロットのヘルメットのようなバイザーが装着された。

 

「こいつは…!

へっ、ならやれるだけやってやるぜ!!」

 

1号はスラスターを吹かし、アグナコトル亜種がいる空へと向かう。

 

「バンくんがあっち向かったってことは俺達は、こっちだな…。

俺達はあいつをあいつを倒そう!

君達はこれを使ってくれ!」

 

パトレンXは2つの機械を2号と3号に渡した。

 

「亀山さん、これは!」

 

「XチェンジャーのVSビークルだ!

それを使ってくれ!」

 

「「了解!」」

 

パトレンXはXチェンジャーの銃身を回転させる。

 

『前方よーし 発車よーし 信号よーし!

駆けろ 駆けろ 駆けろ!

出発進行!

エ・エ・エ・エックス!!』

 

『ファイヤー!

get set ready!

飛べ 飛べ 飛べ!

go!

フ・フ・フ・ファイヤー!!』

 

『サンダー!

位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!

疾・風・迅・雷!!』

 

巨大化したXチェンジャーは金色の機関車に、2号と3号が巨大化させた2つは新幹線と蒸気機関車に変わった。

 

「すごい…!

線路を作って動いてるよ!?」

 

「うわぁ!

すごいねぇ!」

 

2号と3号は物陰に隠れながらそう言った。

 

「うっし!

じゃあ行くぜ!

エックス合体!!」

 

パトレンXはレバーを操作すると、エックストレインゴールドと連結したエックストレインシルバー、エックストレインファイヤーと連結したエックストレインサンダーが交差して、変形合体する。

 

すると、上半身が金色、下半身が銀色、胸部には巨大なガトリングが搭載されていたロボットが出現した。

 

「完成 エックスエンペラーガンナー!」

 

エックスエンペラーガンナーが出てきたところをアグナコトルは口から強力な熱線を浴びせる。

 

「よっと!」

 

ガンナーは軽々と避ける。

 

そして、胸部のガトリングを構える。

 

「次はこっちの番だぁっ!!」

 

ガンナーのガトリングから放たれる大量の弾丸は、アグナコトルの固まった溶岩を撃ち抜いていく。

 

そして一瞬で溶岩は砕け、生身に直撃し、大ダメージを負う。

 

アグナコトルは体勢を立て直そうと地面に穴を空け、その中に入ろうとする。

 

「逃がすかよ!」

 

パトレンXはレバーに使っていたXロッドソードを引き抜き、エネルギーを溜めながら狙いを定める。

 

それに合わせるようにガンナーのガトリングよ他にも頭部、膝部などからも砲門が開き、エネルギーが溜まる。

 

「くらえっ!

エックスエンペラーガンナーストライク!!」

 

ガンナーから一斉掃射されたエネルギー弾がアグナコトルを撃ち抜く。

 

アグナコトルは悲鳴をあげながら爆発し、元の姿に戻った。

 

一方、1号は上空にいるアグナコトル亜種の前に飛び出した。

 

「よぉ!

随分とでけぇ面してんじゃねえか」

 

1号の言葉に反応したのか、アグナコトル亜種は顔を向いて高圧水流を発射する。

 

「おおっと!!」

 

1号はそれを避ける。

 

すると、1号の顔を覆っているバイザーから様々な情報が出てきた。

 

「…これは、あいつの…。

なるほど、そう言う事か!!」

 

バイザーから送られる情報などを見て、1号は背部にあった重火器を取り出し、瞬時にモードを変え、発射する。

 

アグナコトル亜種は勢いよく尻尾を振って弾く、空を飛びながら避ける。

 

「おらおらぁ!!」

 

1号は続けて撃ち続ける。

 

すると、アグナコトル亜種の氷塊は徐々に溶け、防御は下がる。

 

「氷には炎、ってな♪

しまいにはこれだぁっ!!」

 

1号は手に持っていた2つの重火器を連結、モードを変え狙いを定める。

 

「くらえっ!」

 

強力な力を溜め込んだエネルギー弾を発射する。

 

アグナコトル亜種は避ける間もなく、体を撃ち抜かれ、爆散しながら落ちていき、元の姿に戻った。

 

「ふぅ!

任務完了、てな♪」

 

 

 

 

 

 

「…」

 

2号は気を失っている断罪兄弟を見下ろし、その後で二人に手錠を嵌めて、転送した。

 

2号は変身解除して、そのまま座り込んだ。

 

「お、おい!

かこ、大丈夫か!?」

 

「まだ、調子がわるいところとかあるの!?」

 

「ううん…。

その、両親と私自身の仇が取れたって思うと、気が抜けちゃって…」

 

かこたちが話をしているところを見ていた亀山は、先ほどの少女を運ぼうとした時、竜也がいた。

 

もう、体のほとんどが粒子になっていて立っているのがやっとだった。

 

「…あんたは、もうそろそろ行くのか?」

 

「あぁ、元々俺は死んでるようなもんだからな。

でも、その前に言っておきたいことが、あってな」

 

「…?

何だよそれ」

 

「俺がその子を連れていたのは、助けを聞いたってこともそうだけど、その子がある場所で拉致監禁、拷問されていたからなんだ」

 

「拉致監禁に拷問!?

どこでそんなことが!?」

 

「転生者に詳しいなら、聞いたことあるじゃないのか?

金丈コーポレーションという会社を…」

 

「か、金丈コーポレーション!?

何で、あの企業が?」

 

「わからない。

なぜ、その子を拷問していたのかも…な。

でも、そこの社長には気を付けてくれ…。

そいつ、かなりヤバイやつだから…」

 

そう言いきった竜也は完全に消えた。

 

「…金丈コーポレーション。

何で、こんな小さな子を…?」

 

疑問しか残らなかった亀山はすぐさま右京に連絡して、本部に向かった。

 




パトレン1号のスペーススクワッドによる宇宙チェンジのイメージは仮面ライダースナイプのジェットコンバットです。


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怪盗との共闘

真っ暗な世界に2つの席に座る二人の男女が座っていた。

 

一人はシスターを思わせる服を来た女神。

 

もう一人は緑のジャージを来た少年。

 

だが、少年は項垂れていた。

 

「では、アクア様がお迎えに上がりましたので…。

くれぐれも、また下らない理由や無茶して死なないでくださいね、カズマさん」

 

「…はい、くれぐれも気を付けます」

 

女神はそう言うと、目の前に座っていた少年は天井に開いた光に飲まれて消えた。

 

「ふう…」

 

一仕事終えた女神はため息をする。

 

「おや、またカズマくんが死んでしまったのですか?」

 

ふと、女神の席の後ろから声を掛けられた。

 

そこには右京とバンがいた。

 

「右京さん!

それに、バンさんも!」

 

「お久しぶりです、エリス様」

 

「お久しぶりです」

 

エリスと呼ばれた女神はにこやかに二人に挨拶した。

 

「本日はお忙しい中、来てくださりありがとうございました」

 

「いえ、俺も、ここに来る許可をいただいてありがとうございました!」

 

「僕からも、ありがとうございます。

…ところで、本日はどのような件で僕たちを呼んだのですか?」

 

挨拶を終えて、右京は本題に入ろうとする。

 

「そうですね。

実は、このような連絡が来たのです」

 

そう言って、エリスは資料を取り出した。

 

それは一人の転生者の資料だった。

 

それも、神々の間でも禁止されてる特典を渡された転生者の。

 

「彼の名は四ノ宮 塁。

元々、普通の人間でしたが本来死ぬはずのない女性を助けて死亡し、転生しています。

その際に、こちらの特典を与えられたのです」

 

「っ!

これは…、まさか」

 

「クリエイトにゲーム、十全…!?

何なんですか、これ!?」」

 

エリスから資料を見せられた右京とバンは思わず驚いてしまう。

 

「私も、最初は驚きました。

元々、創造神から一人の神に譲渡された特典なのですから。

それに、そのような、極めて異例の転生なので、更正が効かないときましたから。

ですが、いくら転生者とはいえ元は人間です。

多くある特典の力で魂も精神が歪んでしまうでしょう…」

 

エリスは悲しそうな顔をしながらそのように言った。

 

「僕も、正直驚いてます。

…クリエイトにゲーム、十全。

どれも、チートの特典ですねぇ。

それを3つ以上一人の転生者に入れるとなると、体への負担もかなりのものでしょう」

 

「そうなんですか…。

でも、まだその転生者って何かやって…」

 

「彼による被害はこちらです」

 

そう言って、エリスは映像を出した。

 

そこには、壊滅状態にある街があった。

 

「ここは…、かことアストルフォがパトロールに向かった街じゃないですか!?」

 

「え!?」

 

「はい?」

 

エリスと右京はきょとんとする。

 

すると、通信機から音が鳴った。

 

バンは二人の顔を見てから、通信機を使う。

 

『も…もし、バン…隊長、ですか?

至急…、こちらに来て下さい…っ!!

きゃっ!?』

 

「かこ!?

かこぉ!?」

 

かこは何かに攻撃されたと同時に通信がきれた。

 

「…状況はまずいですね。

バンくん、至急現地に向かってください」

 

「了解です。

しかし、更正できない転生者については…」

 

「いくら通常の方法で効かないとはいえ、それに変わる弱点か、情報があるかもしれません。

…バンさん、申し訳ありませんが、その調査も兼ねて、お願いします」

 

「了解!

それでは、行ってきます!!」

 

バンはそう言って、その場を後にした。

 

「あの転生者は彼らに任せるとして…。

右京さん、引き続き亀山さんがお連れした少女の身元の確認を。

可能であればバンさんに今回の転生者の座標の指定を」

 

「わかりました。

それでは僕も、失礼させていただきます」

 

右京はその場を後にした。

 

「…さて、私の方でもこの転生者と、特典を渡した神様について調べないと…」

 

そう言ってエリスは様々な資料を取り出して今回の転生者について調べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

バンは座標をたどりながら壊滅状態にある街を走っていた。

 

「はぁはぁ…!

あいつら、大丈夫だよな…!?」

 

すると、その近くで大きな爆発が見えた。

 

その場所は転生者の反応の座標が記されていた。

 

「かこ、アストルフォ…!

頼む、無事でいてくれっ!」

 

バンは焦燥感に駆られながら向かう。

 

ついに、座標にあった場所へとたどり着いたが、既に終わっていて場所自体がボロボロになっていた。

 

その場所には、体の所々がボロボロで気を失っているかことアストルフォが倒れこんでいた。

 

二人だけじゃなく、その奥で、怪盗と思われる衣装を着た金髪の少女と白髪で褐色の青年が倒れこんでいるのが見えでいて、一人の男が二人に駆け寄り呼びかけていた。

 

「かこ、アストルフォぉっ!!」

 

バンは倒れているかことアストルフォに駆け寄った。

 

「おい、しっかりしろ、おいっ!!」

 

「う、うぅ…。

ば、バン隊長…。

すみません、あの転生者にやられ、ました…」

 

「あそこにいる怪盗の集団、ううん、ルパンレンジャーとあそこにいる転生者との闘いに向かった時に、ルパンレンジャーもろともやられたんだ…」

 

「ルパンレンジャー!?

それに、転生者って…」

 

バンはかことアストルフォが向いた先を見ると、どこにでもいるような普通の男がいた。

 

だが、探知機がその男に反応を示していた。

 

エリスが見せた資料にあった転生者の男、四ノ宮だった。

 

すると、怪盗の服を着た一人の男が、四ノ宮に向いて詰め寄っていた。

 

「てめぇが二人をやったのか?」

 

「まぁね。

ついでに(・・・・)パトレンジャーもやっておいたぜ。

ここまでやれば、俺の強さわかってくれたか?」

 

「ついで?」

 

バンは四ノ宮の言った言葉を反芻する。

 

今、怪盗が詰め寄っている男の言っていることによると、どうやらルパンレンジャーに用があったのだろう。

 

おそらくはそれが本命。

 

それに怪盗の男の声を聴いて、バンはあの男は、赤いルパンレンジャーだと確信した。

 

だが、今のバンにとって、重要なのはそれではない。

 

本命がルパンレンジャーであろうと関係ない。

 

四ノ宮はこう言ったのだ。

 

ついでにパトレンジャーも倒したと。

 

つまり、あの男は、そういう感覚でかことアストルフォを痛めつけたということ。

 

そう思っただけでも、怒りが込みあがりそうになった。

 

反芻して、その結論に至るまで一秒もなかった。

 

「…悪い、二人とも。

すぐに終わるから、ここで待っててくれ」

 

バンは小さな声でそう言うと、怪盗の男と同様に四ノ宮に近づく。

 

「あぁ、よくわかったぜ」

 

「お前が外道なのがな」

 

怪盗の男の言葉に続いて、バンはそう言った。

 

「パトレンジャーに言われたくないなぁ。

まぁ、、俺がなりたいのはルパンレンジャーなわけだから関係な…」

 

「はぁ何を言っているんだ?」

 

「えっ?」

 

「てめぇのような奴をルパンレンジャーにするつもりはさらさらない。

お前は、ここで片付ける」

 

「良いのかな?

僕の特典は凄いよ、なんだって創造でなんでも作り出せるから」

 

「またその能力かよ。

どうでも良いから、さっさと片付けるか」

 

怪盗はそう言ってvsチェンジャーと恐竜型の機械を取り出した。

 

バンは前に出て怪盗を止める。

 

「待て、俺も奴に用がある」

 

「だったら、どうする。

奴をやる前に俺をやるか?」

 

「いいや、奴の実力ははっきり言うと未知数だ。

仲間もあの状態で勝てるのか?」

 

「さぁな。

でもな、残念ながら本当に残念ながら勝てる可能性が一つあるぜ」

 

確かに目の前にいる四ノ宮の実力は未知数だ。

 

それも、かこやアストルフォ、ルパンレンジャーの二人を倒してしまうほどだ。

 

今戦えるのは、バンと赤いルパンレンジャーの二人だけ。

 

転生者を前に戦っていたら共倒れする可能性がある。

 

だから、四ノ宮に勝つにはたった一つだけあることが分かった。

 

それは既に怪盗も同じことなのだろうと思った。

 

「…俺も丁度、それを思いついたところだ。

この状況、これしかなさそうだしな」

 

バンと怪盗は互いにvsチェンジャーを男に構える。

 

「おいおい、まさかお前たち、手を組むつもりなのかよ!?」

 

「だとしたら、どうなんだよ」

 

「それが、俺達が選んだ道だからな」

 

「…はぁ、本当に、お前にはがっかりだよ、ルパンレンジャーっ!!!」

 

四ノ宮はそう言って、特典の力を発動させようとするが、バンと怪盗は落ち着いた様子でvsチェンジャーを構えた。

 

それと同時に怪盗は先ほど取り出していた恐竜型の機械を、バンはトリガーマシンスペーススクワッドを構える。

 

「行くぞ」

 

「あぁ」

 

『ダイノホープ!!』

 

『スペーススクワッド!!』

 

「恐竜チェンジ!」

 

「宇宙チェンジ!」

 

vsチェンジャーに取り付けると同時に、怪盗は赤いルパンレンジャーに変身し、その上から翼の生えた恐竜の鎧を身に纏い、バンはパトレン1号に変身し、その上からスペースクワッドの装備を身に纏いスペースパトレン1号に変身した。

 

「ダイノルパンレッド!!」

 

「スペースパトレン1号!!」

 

「やれやれ、君達程度では僕には勝てないと思うけど?」

 

「ほざけ」

 

「今にわかる」

 

その言葉を合図に、1号はマシンガンを構え何万とある弾丸を四ノ宮に向けて撃つ。

 

だが、四ノ宮は余裕で盾を召喚して、攻撃を受け止める。

 

「そんな弾で、僕には傷一つ…」

 

「傷がなんだって」

 

「がはぁっ!」

 

1号の攻撃に気を取られている間に背後にまわった赤いルパンレンジャーが四ノ宮を殴りつける。

 

それと同時に今度は赤いルパンレンジャーに狙いを定め巨大な拳を召喚し、接近戦に持ち込む。

 

その隙に1号は赤いルパンレンジャーの背後に回る。

 

「これで、どうだぁ!!」

 

「あぁ、そうだな」

 

赤いルパンレンジャーはそう言って四ノ宮を地面に殴りつけ、地面に穴が開く。

 

1号はその中に入って、巨大なレーザーを打ち出した。

 

「がぁ、馬鹿な!?」

 

「本当にあの二人は初めての共闘なのか」

 

ルパンレンジャーの仲間が言う。

 

「別の世界で一度だけ行ったが、二人だけというのは今回が始めてだ」

 

「なのに、あの連携…」

 

かこがそう言うと、四ノ宮は立ち上がる。

 

「がはぁ、確かに厄介だな。

だが、無駄だ。

俺の特典は、貴様達の力では…」

 

「「ごちゃごちゃ五月蠅ぇよ!!」」

 

「がはぁ!!」

 

四ノ宮が何かを言おうとしたと同時に、1号と赤いルパンレンジャーが殴りつける。

 

「アバレモード」

 

それと同時に赤いルパンレンジャーの鎧はドリルへと変わり、右腕に装着する。

 

そして1号もモードを変形して、ライフルを連結させる。

 

「必殺!!

恐竜ドリル電撃スピン!!」

 

赤いルパンレンジャーのドリルの拳と1号のライフルのエネルギー弾が四ノ宮を貫き、赤いルパンレンジャーの鎧が戻ると同時に爆発した。

 

「…やったか」

 

そう言って、赤いルパンレンジャーは四ノ宮がいた場所に近づき、特典を探しているのか、見つからなかった。

 

だが、赤いルパンレンジャーは自分の手の中に何かの欠片があることに気が付いた。

 

「これは、もしかして」

 

何かに気づいた赤いルパンレンジャーと、後から近づいた1号は四ノ宮に向いた。

 

そこには立ったまま気絶した四ノ宮がいた。

 

「まさか、転生者を生かす為の攻撃と、転生者を殺す為の攻撃が重なって、特典を破壊したのか」

 

「っ!?」

 

1号はそれを聞いて驚いてしまう。

 

破壊することができないはずの特典が、自分たちは粉々になるほど破壊した、という事実がを目の当たりにしたのだから。

 

そして、1号と赤いルパンレンジャーはにらみ合う。

 

「俺とお前の共闘はここまでだ」

 

「あぁ、分かっている。

今度会った時は再び敵同士だ」

 

二人はそう言って互いに背を向け、それぞれの仲間も下へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界、一人の神はパトレンジャーとルパンレンジャーの戦いを見て震えていた。

 

 

「そんな馬鹿な、あれは創生神が直接渡した特典だ。

決して奪われず、更生も許さないはずなのに、このような結果など、あり得ない!!」

 

「それはどうかなぁ?」

 

その言葉と同時に現れたのは、ルパンレンジャーに力を貸している死神様と女神エリスだった。

 

「貴様、なぜ奴を殺した!

奴は私と人間を何処まで成長等するのか確かめる為の存在をっ!?」

 

その言葉と共に、死神様が取り出したのは一枚の書類だった。

 

「彼の事は調べさせてもらったよ。

死ぬはずの無いイレギュラーな女性を助けて死亡だとね。

正直言って、彼の性格でなぜこんな事をしたのか疑問だったけど、それは今は関係ないよね」

 

「私達はそれよりも、本来の目的であるはずの転生を無視し、規定を破った数々の特典を渡した事に対して問いただしに来たのです」

 

「なっ、何を言って!?」

 

「調べは既についたと言ったよね。

この前の普通の転生ではあり得ない特典、さらには不可思議な現象、それらはす全てあなたがしていたのも調べているよ」

 

「さらには創造神には、全く別の説明をしての力の譲渡、これは既に掟を破っています」

 

「なっ!?

だから何だと言うのだ!!

より人間の可能性を知る為には、これぐらいは…」

 

「あんまり人間をおもちゃにすんじゃねぇぞぉっ!!!」

 

「ひぃっ!!」

 

意地汚く言い訳をする神に、死神様は激怒する。

 

「掟を破り、それでもやるとしたら、俺達もこれ以上、話すつもりはない。

お前がどれだけ大層なことを言っても、結局は人の命を弄んだのは代わりない!」

 

「私達は互いに敵対はしておりますが、目的は一緒!

世界に秩序を守るためにと!」

 

「だから、これ以上世界を壊す行為を続ける貴様を許すつもりはないっ!!」

 

そう言って、死神様もエリスは神に手を翳す。

 

「まっ、待ってくれ!

俺はただ、ただ頼まれっ!?」

 

直後、神は光に変わり、存在そのものが消滅した。

 

「…どうやら、我々の想像以上にギャングラーの手は伸びているようだな」

 

「えぇ、そのようですね。

ですが、我々にできるのはほんの僅かな支援のみ。

それが掟ですから」

 

「だとしても、俺は信じている。

ルパンレンジャーなら、奴らを止めてくれると」

 

「私のパトレンジャーならば、すぐに止められますけどね」

 

「言うね、エリスちゃん」

 

そう言って、二人の神はその場から消え去った。

 

 

 

 



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スペーススクワッドの扱いとゴーレム使い

今回はじぇんがさんの転生者を出します。


ルパンレンジャーとの共闘を経て、翌日。

 

かことアストルフォは、数日間本部の病室で安静にすることになった。

 

見舞いを終えたバンはトリガーマシン・スペーススクワッドを見ていた。

 

「…これに、あの三つの戦隊の力が入ってんだよなぁ」

 

バンはそのようにつぶやいた。

 

断罪兄弟との闘いで、タイムレッドから託されたタイムジェット1とデカマスターから託されたパトストライカー、シシレッドから託されたコジシボイジャーが合体して、トリガーマシン・スペーススクワッドが誕生した。

 

つまり、これには宇宙の力が込められている。

 

だがバンは、これを使って2度戦ったことがあるが、どこかまだ使いこなせていないところがあると思った。

 

「そこで何突っ立ってんのよ」

 

ふと、声が聞こえたので、振り返る。

 

「霞か…。

いや、ちょっとこいつを見てたんだよ♪」

 

「ふぅん。

で、それの使い方は把握できてんの?」

 

「…いや、さすがに二回使っても、どうも使いこなせてねぇところがあるんだよなぁ…」

 

「はぁ、何よそれ?

自分で使ってる癖に使いこなせてないって、ホントにクズね!」

 

「クズじゃねぇし♪

まぁ、これは面目ねぇけどよ…」

 

バンは申し訳なさそうに頭を掻く。

 

「あっそ。

じゃあ、私も手伝うしかなさそうね」

 

「は?」

 

「だから、私もそのトリガーマシンのことについて、手伝ってあげるって、言ってんのよ!

一応、長官からの命令でもあるんだから」

 

「長官から?

そう言えば、長官と亀山さんは?

それに、なのはたちは帰ったのか?」

 

「あの二人はこの間の女の子の身元を調べるのに忙しいんだって。

おまけに、機動六課の連中もミッドチルダでの仕事や休暇を取ってるって話よ」

 

「そ、そうなのか…。

でもまぁ、手伝ってくれるってんなら、ありがとな♪」

 

「ふん。

私はあんたらのサポーターなんだから、これくらいどうってことないわよ。

…!」

 

その瞬間、霞は自身の髪飾りのアンテナが何かを察知するのを感じた。

 

「…転生者か?」

 

「えぇ、正確にはその転生者の特典らしきものが街に出て、破壊活動を行ってるみたいよ」

 

「はぁ!?

マジかよ!」

 

「とにかく行くわよ!

戦闘中にでも、そのトリガーマシンの使い方を調べれば良いんだから!」

 

「あ、あぁ!」

 

そう言って、バンと霞は現場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

二人が現場に着いたときに、人間の倍はある大きさの、石でできたと思われるゴーレムが数体、建物を叩き潰したり、車を片手で持ち上げ、ボールを投げるような感覚で道路やら建物に投げつけて爆発させているのが見えた。

 

「おいおい、こりゃあやべえじゃねぇか!」

 

「見りゃわかるわよ!

…私が住人の避難するから、あんたはトリガーマシン・スペーススクワッドで戦いなさい!」

 

「わかった!

宇宙チェンジ!」

 

『スペーススクワッド!

パトライズ!

宇宙チェンジ!

スペースパトレンジャー!!』

 

バンはスペースパトレン1号に変身する。

 

そして、空を飛びながら背部にある2つのマシンガンを複数のゴーレムに乱射する。

 

だが、少し怯むだけでゴーレムは壊れなかった。

 

「ちっ、固ぇな…!

…?

これは!?」

 

1号はバイザーから写し出された情報を見る。

 

そこには、いくつかのモードの切り替えの他にも、スペーススクワッドに合体している戦隊のモードが載っていた。

 

「…まずはこれか!?」

 

『デカモード』

 

すると、1号が持っていたマシンガンが上下に銃口のあるマシンガン、ディーリボルバーへと変わり、胸部の装甲が変わり、脚部にも装甲が追加された。

 

「これって、デカレンジャーの?

とにかくやるしかねぇ!!」

 

そう言って、1号はゴーレムの間合いに入らないようにディーリボルバーで応戦する。

 

すると、ゴーレムの一体が数発当たった直後、内側から爆発した。

 

「へぇ、こいつはすげぇな!

…!?」

 

すると、背後からゴーレムが拳を突き出して、1号を殴り飛ばそうとする。

 

1号はその攻撃にことができず、直撃してしまう。

 

「うおぁ!?

…あれ、あんまり効いてないぞ?」

 

1号は直撃したにも関わらず、少し距離が開いた程度で、痛みもゴーレムに殴られたにしては、あまり痛みはなかった。

 

1号は思わず、ゴーレムの拳を見る。

 

突き出したゴーレムの拳は、ひび割れていて、徐々に崩れているのが見えた。

 

「まさか、この装甲が守ってくれたってのか?

ありがてぇな!!」

 

1号は胸部の装甲を撫でおろすと、ディーリボルバーでゴーレムを破壊する。

 

「デカレンジャーのデカモード。

…スワットモードの由来からの防御力と攻撃力の向上、マシンガンの性能の向上、ね。

…っと!

邪魔するんじゃないわよ、このクズが!」

 

避難を終えて見ていた霞はそのように解釈するが、途中で邪魔したゴーレムに腕にある連装砲や脚部の魚雷で迎撃する。

 

「オラオラぁ!!」

 

「沈みなさい!!」

 

二人はゴーレムを破壊していく。

 

だが、明らかに霞が不利になっていた。

 

「ったく、どんだけいるのよ!

ほんっとに迷惑だわ!!」

 

霞は少しずつゴーレムを倒せているが、少しずつ数体のゴーレムが霞の周りを囲んでいく。

 

「くっ…!」

 

霞はその状態に歯噛みをする。

 

その瞬間、1号が周囲のゴーレムを破壊し、霞の前に立つ。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「このぐらい、どうってことないわよ!

だけど、これじゃあ少しまずいわね…」

 

「らしいな。

…なら、これならどうだ!」

 

『キュウレンモード!』

 

1号は瞬時に戦隊のモードを切り替える。

 

すると、脚部が元に戻り、マシンガンはキューショットに、胸部の装甲がペガサス型の装甲へと変わった。

 

「行くぜ!!」

 

1号はそう言った途端、空高く飛んだ。

 

そして、二丁のキューショットを構え、回転しながらゴーレムに撃ちこむ。

 

無数の弾丸がゴーレム達をを襲い、大きく怯ませる。

 

1号はキューアックスとキューソードに変えて、高速スピードでゴーレムたちを斬り、頭部をたたき割っていく。

 

「おらぁっ!!」

 

ものの数秒で、ゴーレムたちは崩壊した。

 

「ふぅ…」

 

1号は地面に降り立ちため息をする。

 

「これがキュウレンジャーの力、ね。

ペガサスアーマーで強化された機動力に加え、両手のキューザウェポンで様々な戦いができるって感じね」

 

霞はキュウレンモードのことを説明しながら1号に近づいた。

 

 

「霞、無事だったか。

そう言えばこいつらってもしかして、特典のゴーレムなのか?」

 

「はぁ?

そうに決まってんじゃない!

それに、たった今このゴーレムたちを操っている転生者を見つけたわ。

このゴーレムたちの反応の中でも、一番反応が大きいのはあそこよ」」

 

そう言って霞は別の方向に顔を向ける。

 

そこには工場らしき建物が見えた。

 

「あそこに転生者がいるってのか?」

 

「おそらくね」

 

「なら、さっさと行こうぜ!!」

 

「言われなくてもそのつもりよ!」

 

そう言って、1号と霞は工場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

仮面をつけた男は工場で一人、数十体はいるゴーレムの調節をしていた。

 

「…ふむ、これだけの力があれば人を屠ることは可能だが、奴らには勝てないか…」

 

「動くなっ!!」

 

すると、1号がマシンガンを、霞は連装砲を構えて男に呼び掛けた。

 

「…流石はパトレンジャー、かつて断罪兄弟を倒しただけのことはある。

おそらく、僕の転生者の反応を追って、ここに来たのだろうが」

 

「っ!?

あんた、何でパトレンジャーのことを…!」

 

「あの兄弟を倒したのだから、我々の間でもそれぐらいの名前を覚えるさ。

おまけに、その件で社長はご立腹だ。

なんせ、かつて干支の戦士に選ばれた戦士であり、金があれがいくらでも動くような連中だったんだからね」

 

「そうかよ。

ところで、あの街にいたゴーレムはお前が放ったのか?」

 

「そうだとしたら、どうするんだ?

あいにくと、僕はゴーレムの調整に忙しくてね。

社長に送るゴーレムを増やさなければならないんだ」

 

「っ!

てことは、お前があのゴーレムの転生者、だな?」

 

「…遠回しにそうだと言ったが?」

 

そう言うと、男は指を鳴らす。

 

すると、男の後ろにいた数十体のゴーレムが一か所に集まり、巨大なゴーレムへと変わった。

 

「こいつら一体一体は弱かったが、一か所に集まって合体すれば、君たちを潰すことも可能なのだろう」

 

男が巨大なゴーレムの頭部に乗る。

 

すると、男の体はゴーレムに呑み込まれるように沈んだ。

 

『どれ、君たちが僕に勝てるかどうか、試してみようか』

 

ゴーレムと一体化した男を前に、1号と霞は身構える。

 

「ちぃ、なんつうデカさなんだよ!」

 

「ちょっと、こんな時に悪態つくんじゃないわよ!

あんなにでかくなっても、弱点があるはずよ!」

 

「へっ!

そうだとうれしいがな!!」

 

1号はそう言って、巨大ゴーレムの胸まで飛んで行った。

 

その間に霞は自ら陽動になろうと、艤装を構え、攻撃する。

 

『デカモード!』

 

「くらえぇっ!!」

 

1号はデカモードへと切り替え、ディーリボルバーで応戦する。

 

だが、先ほどのゴーレムと比べて、段違いの固さがあるのか、直撃はしても着弾点から煙が出る程度だった。

 

『無駄だ。

このゴーレムの固さを前に、君の弾は効かんさ』

 

「くっ…!」

 

1号は歯噛みする。

 

すると、巨大ゴーレムは足元を見た。

 

『…さて、先ほどから痛くもかゆくもない攻撃をしているお嬢さんには、ご退場願おうか』

 

「っ!

霞、避けろ!!」

 

巨大ゴーレムの足払いが霞に襲い掛かる。

 

霞は、それが来ることが分かっていたのか後ろに飛んで避ける。

 

しかし、巨大ゴーレムが足を振った時に強い衝撃で工場の壁に激突する。

 

「…っ!」

 

「霞ぃ!!」

 

「私のことは、良いから…あんたは…この隙に…こいつを倒す方法を探しなさいよ…!!」

 

「…!

わぁーたよ!!」

 

1号は戦いに集中しようと、巨大ゴーレムに顔を向け、バイザーで巨大ゴーレムの弱点を探す。

 

すると、ある一点に核と思われる場所を見つけた。

 

人間でいうところの心臓に位置する場所だった。

 

「あそこか弱点か!

けどこいつ固いのにどうしろって…!

あれを使うか!」

 

『タイムモード!』

 

1号は戦隊のモードを切り替える。

 

すると、胸部と脚部の装甲はなくなり、その代わりにディーリボルバーが大型のアサルトライフル型の武器、アサルトベクターに変化した。

 

そして1号は二丁のアサルトベクターを連結させて、狙いを定める。

 

それに気づいたのか、巨大ゴーレムは1号の方へと顔を向けた。

 

だが、それと同時に、1号は引き金を引いた。

 

「くらえ!

必殺 スペーススナイプバーニング!!」

 

その瞬間、1号から放たれた赤い光線は、巨大ゴーレムの核を貫いた。

 

そして、巨大ゴーレムはすぐに崩壊して、中にいた男はその下敷きになった。

 

 

 

 

 

1号は瓦礫の中から男を引き上げた。

 

仮面の片目部分が割れ、素顔の目の部分が見えた。

 

よく見ると、金の紋章が浮かんでいた。

 

おとこは心底疲れたように1号に言う。

 

「…どうやら、僕の負けのようだ。

だが、僕をあの兄弟と同様に消したとしても、社長の下にあるゴーレムは消えはしないさ。

せいぜい、頑張ることだ。

君達も、君の仲間であるあの少女も、ね」

 

「そうかよ…。

じゃあな、来世は全うに暮らすんだな」

 

そう言って、1号は男の手に手錠を嵌めて、更生する。

 

それと同時に1号は変身解除する。

 

「ふぅ、今回も何とかなったな…♪」

 

「そうね…。

でも、次から相手も何かしらの対策を練るかもしれないわよ?」

 

「へへっ、そうだな…うぷっ!?」

 

バンは吐きそうになったのか口を手で押さえる。

 

「ちょっと、何で吐きそうになってんのよ!」

 

「いやほら、長い時間空を飛び回ってたもんだからよ…。

まだ慣れてないせいか、気分が悪いんだよ!

うぷっ!」

 

「あぁもう!

あんたパトレンジャーなんだからしっかりしなさいよ!!」

 

そう言って霞はバンに自分の肩を貸し、工場を後にした。

 

 

そしてしばらくの間、バンも体調不良で、本部の病室で、かことアストルフォと一緒に安静することとなった。

 



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それぞれの説明と真実

読者の皆様、時間を空けてしまい、大変申し訳ありませんでした。


ゴーレムの転生者を更正してから数日後、バンは復帰し、仕事の合間を縫って、トリガーマシンスペーススクワッドで練習し、何とか吐き気を克服した。

 

そして、今バンたちは少女が眠る病室にいた、亀山と霞と一緒に。

 

だが、かこだけは右京のいる長官室に呼ばれたので、その場にいない。

 

「この子の状態はどうなんだよ?」

 

「…あの時、かこが使ったトリガーマシンのおかげで徐々に回復に向かってるわ。

…まだ、意識は戻らないけど」

 

「それで亀山さん。

ボクたちに話って、何なんですか?」

 

「あぁ、実はこの子のことで、色々とわかったことがあるんだ。

何で、この子が狙われたのかも」

 

そう言うと、亀山は二人にデータを見せた。

 

その内容には、少女が元々転生者だったが、その特典はすでに奪われており、普通の人間として生きていたが、それを知らない組織に拉致監禁及び拷問されていたことなどが記されていた。

 

また、その奪われた特典がどんなものだったのかも記されていた。

 

「…お金が湯水のように出る特典?」

 

「でも、特典を奪われて普通の人間になったってことは…」

 

「おそらく、それをやったのはルパンレンジャーよ」

 

「あの怪盗たちが!?」

 

「うん。

俺もルパンレンジャーの事調べてたからわかるけど、あの怪盗に特典を奪われると、転生者は普通の人間になるみたいだ」

 

「ま、今まであの怪盗たちと戦ったあんたたちならわかるでしょ?」

 

「…そう言えば!」

 

バンは思い返した。

 

初めてルパンレンジャーと対峙したときにことを。

 

あの時、目の前で特典を奪われた転生者を更生しようとして手錠を嵌めたときにことを。

 

そして、その転生はもうただの人間になっていたので、更生することができなかったことを。

 

「…でも、この子の場合、この特典を使って何か悪いことをしていたってわけでも、暴走したってわけでもないみたいよ」

 

「…?」

 

そう言うと、霞は少女の経歴のデータを表示する。

 

「この子は、転生するときに、自らの承諾もなしに神様から特典を授けられたみたいなの。

そして、この子は生前縁のなかった家族を手に入れて、それなりに暮らしてたけど、一度親が多額の借金を背負ったときにその特典で返済したことがきっかけで周囲に知られて、その特典を目当てに誘拐されそうになったってわけよ」

 

「そんな時に、ルパンレンジャーが特典を盗みに来たってことか…」

 

「うん。

何か、特典を奪われたあとは、狙われることもなくなったから、この子は家族と幸せに暮らしてたってことなんだ…」

 

亀山は少し複雑な表情を浮かべながら言う。

 

「…」

 

その話を聞いて、バンは複雑な気持ちになりながら少女を見る。

 

「…世の中には、特典を奪われた人は、犯罪を犯す人って訳じゃないんだよね…」

 

「それについては、あんたらの偏見でしょ?

転生者だって元は人間なんだから、犯罪者になるやつもいれば、一般人として家族と生きるやつもいるってことよ」

 

「そりゃあそうだけど、さ…」

 

アストルフォはどう言えば良いのかわからず黙ってしまう。

 

だが、そう言った霞も少し表情が暗かった。

 

すると、バンは頭を掻きながら質問する。

 

「…話を戻すけどよ、何で普通の人間になったこの子が、拉致監禁されてるんだ?」

 

「そんなの決まってるじゃない。

…誤認よ。

この子には特典はもうないのに、それをまだ持っていると思って、連れ去った。

って、私は思うわ…」

 

「マジかよ…っ!」

 

それを聞いてバンは拳を握る。

 

すると、亀山の携帯が鳴った。

 

「ごめん…!

…もしもし、右京さんですか?

はい、はい。

…え?

わかりました、ではバンくんとアストルフォを連れてきます」

 

「…長官から、ですか?」

 

亀山が電話を切ったのを確認したバンが聞いた。

 

「うん。

今からエリス様のところに行くから、長官室に来るようにってさ」

 

「エリス様が?

…わかりました。

行くぞ、アストルフォ」

 

「うん。

霞、その子をお願いね?」

 

「わかったからさっさと行きなさい」

 

バンとアストルフォは複雑な表情を浮かべて少女を見た後、亀山に連れられ病室を後にした。

 

一人取り残された霞は、アンテナの髪飾りから以上な反応を捉えながら呟いた。

 

「…気を付けなさいよ。

今度の相手は、パトレンジャーにとって、存在意義を疑うようなやつだから」

 

そう呟いた霞の表情は、どこか悲しげだった。

 

 

 

 

 

時間は遡り、かこは長官室に呼ばれていた。

 

「君だけここに来てもらって、大変申し訳ありませんねぇ」

 

「いえ良いんです。

それで、私に話って何なのでしょうか?」

 

かこがそう言うと、右京はファイルを取り出し、その中の資料を取り出した。

 

「ここ最近君たちが戦ったお金の紋章の転生者のことなのですけど、実はある企業が関わっているのではと思いましてねぇ。

その企業について、お確かめしてほしいことがあるのです」

 

「企業、ですか?

でも、その話をするだけなら、私だけじゃなくても…」

 

「金丈コーポレーション、という企業を知ってるはずですよね?」

 

「金丈コーポレーション!?

…はい、生前両親と一緒に経営していた図書館の近くに建ってた大企業の、はずです」

 

かこは少し驚いた表情で言った。

 

「なるほど、ではそこはどんな企業だったのか、わかりますか?」

 

「え、えーと…」

 

右京に言われ、かこは金丈コーポレーションはどんなものだったのかを説明した。

 

その企業は様々な分野に力を入れている上、経済力が恐ろしいくらいまですごかったこと。

 

その上、そこの就職率も異常なまでに高く、中にはあまり活動的ではなかった人も、そこに入って人が変わったように仕事に打ち込むようになったことがあったこと。

 

また、本来なら肩を並べてもおかしくもない企業を同盟や協力関係ではなく、傘下に置いて、その企業の社員や社長も何のためらいもなく、例え本来の企業の理念や方針に反することがあっても従っていること。

 

それだけじゃなく、企業に限らずスーパーや飲食店、図書館などの小規模の施設も傘下にしていたこと。

 

そして、数回かこと両親の図書館に訪問して、傘下に入るか図書館の土地を明け渡すのかという話を持ち出し、両親はそれを断ったことなどがあった。

 

「…そうでしたか、聞く限りではあまりにも奇妙な企業ですねぇ?

しかし、なぜ君のご両親はお断りしたのでしょうか?」

 

「…図書館の方針を曲げたくないという事もあるのですけど、いくら大企業だからと言っても、様々な企業などを必ず傘下にするのはおかしいと思ったからです。

何より、あの時いくつかのジュラルミンケースに入った多額のお金を見せてこれでも考えないかと迫ったことがあるからです」

 

「ジュラルミンケースを?

…ちなみに誰が訪問しましたか?」

 

「はい、最初の数回は社員さんでした。

でも、最後にジュラルミンケースを持ってきたのはその社長で、その時は数人のSPを連れていました」

 

「なるほど。

では最後に、一つ確認しても良いですか?」

 

「何でしょうか?」

 

「図書館に身に覚えのない莫大な借金を背負う前の、常連客からのクレームは来た時期は、そのあとですか?

それと、その常連客はいつもと何か違いはありましたか?」

 

「…え?

えーと、そうですね…。

…!」

 

金丈コーポレーションの話からいきなり図書館に起こったことを聞かれ少し動揺するかこだが、その時のことを思い出そうとする。

 

「はい、確かそのあとだったと思います。

あと、クレームについてですが…」

 

かこは一拍間を置いて、口を開く。

 

「クレームを言ってきた常連客の人たちは皆目に、お金の紋章がありました…!」

 

「それは、君から見たときに、間違いはありませんね?」

 

「はい!

そのはずです!」

 

「そうでしたか…」

 

そう言って、右京はデータや資料を一目見る。

 

「…やはり、君の言うとおりですね」

 

「え…?」

 

かこは思わずきょとんとする。

 

その様子を見た右京は過去に資料とデータを見せた。

 

「実は君たちが断罪兄弟と戦っている時に調べたのですが、君がいた世界ではお金の紋章の反応が多数見られたのですよ。

それに、こちらの記録を見てください」

 

「…?」

 

かこはピックアップされたデータを見る。

 

「これは、君が殺される前の時間の世界の記録です。

…時期的には、常連客からクレームを言われた時と、その直前の君のご両親がお断りした時です」

 

「…。

えっ、そんな…!」

 

かこは記録を見て驚く。

 

そこには断った直前かた直後に掛けて、お金の紋章の反応が急激に上がったことが記されていた。

 

そして、データを見たままかこは口を開いた。

 

「…長官、お金の紋章を持つ人達はその転生者の部下だってことはわかります。

ですが、これって、いや、これが本当だとするなら、常連客や両親を連れ去った人たちは…」

 

「えぇ。

君のご察しの通り、彼らは転生者によって操られた人たちです。

おそらく、お金を人を操り、その人の意思すらも捻じ曲げることができるでしょう。

そして、その特典を持っているのは、彼だけですねぇ」

 

右京は転生者リストから一人のデータを出した。

 

「彼の名前は金丈 公也。

金丈コーポレーションの創設者にして、若き社長。

…かこちゃんは一度彼とは会っていますね?」

 

「はい、その人がジュラルミンケースを持ってきて、中にあった大量のお金を見せつけていました」

 

「…なるほど。

では近日中にも…!」

 

言葉の途中で右京の動きが止まり、頭に手を当てる。

 

「…なるほど、わかりました。

ではすぐにパトレンジャーを収集し、そちらに向かいます」

 

そう言った後、頭から手を離す。

 

「あの、エリス様、ですか?」

 

「…えぇ。

しかし、今回はかなりまずい状況のようですねぇ」

 

「…?」

 

右京はそう言うと、電話を使って亀山に連絡した。

 

 



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エリスの名を語るデビルガンダムとこれから

長官室で合流したバン、かこ、アストルフォ、右京、亀山の五人は、エリスの下に向かい、話を聞くことになった。

 

しかし、エリスの顔はいつになく暗かった。

 

「エリスさん、今回はどのようなご用件でしょうか。

…少なくとも、僕たちが今調べている金丈コーポレーションのことではないみたいですが」

 

「…」

 

「…その様子だと、あなたにも関わりのあることのようですねぇ」

 

「…はい、察していただき、ありがとうございます」

 

「あの…、それで、話って、何なんスか?」

 

事情を知らない亀山が質問した。

 

「「「…」」」

 

バンたちも、亀山と同じだった。

 

自分たちをパトレンジャーに任命した女神が暗い表情になるのに、気になって仕方なかったのだ。

 

「…これを見てください」

 

エリスは書物から一枚の紙を取り出し、映像化させる。

 

映し出されたのは、四本足の間にデビルガンダムの上半身がぶら下がった怪物が街へと向かうところだった。

 

「こいつは…!」

 

バンは思わず驚く。

 

「あなたたちパトレンジャーがかつて倒したデビルガンダムのコピー体です。

どこかで作られたみたいですが。

それと、この反応と波長をを見てください」

 

「…おやおや、これは」

 

デビルガンダムのデータを見せて、全員が驚きを隠せなかった。

 

「な、何ですかこれ…。

私達とほぼ同じじゃないですか!」

 

「はい、そうです。

それに、詳しく調べると、パトレンジャーの攻撃も解析しているみたいなので、通じるかどうかも…。

ですので、私はこの個体をデビルがンダムPと名付けることにしました」

 

「P…、パトレンジャーってことですか。

でも、どうしてこれとボク達の反応と波長と同じ上に、ボクたちの攻撃も…」

 

「…詳しくはわかりませんが、何者かが対パトレンジャー用に開発したのではと、考えられます。

しかも、ある程度、構造を見たのですが、今まで更生してきた、または特典を奪われた転生者の怨念が、あれを形作っているみたいです。

それに、あれは今一般人を巻き込みながら、何も悪さをしていない転生者を狙っています」

 

「え、転生者を標的に!?

でも、悪さとかしてるわけじゃあ…」

 

「それはわかってます…!

…ですけど、あれの言葉を聞いてください」

 

そう言って、エリスはデビルがンダムPからの音声を拾い上げる。

 

『転生者ナゾ人ノ心ヲ失ッタ存在ダ!

友情?

家族?

人生?

転生者二ソノ様ナ物ナアルベキデハナイ!

我々ノ邪魔ヲスルルパンレンジャー、女神エリスノ権限二オイテ実力ヲ行使スル!』

 

その言葉を発しながら、デビルガンダムPは街へと進撃しようとする。

 

これを見た全員が暗い表情となった。

 

デビルがンダムPの言っているそれは、パトレンジャーとエリスの方針などを極端にさせたものだからだ。

 

すると、バンが口を開いた。

 

「…エリス様、長官。

俺は、今この瞬間でも、あいつの言ってることは信じられませんよ」

 

「バン様?」

 

「バンくん、それはどういう事でしょうか」

 

「…俺たちパトレンジャーは、悪事を働くか特典が暴走した転生者を更生するために戦ってきたんです。

…そして俺自身が、そいつらのことは忘れないようにしてきました。

けど、あいつの言葉を聞いてると、俺たちのやってきたことについて、また疑問に持って仕方ないんです」

 

「と言いますと?」

 

「俺たちがやってるのは、転生者の更生であって、今こいつがやってるような転生者の虐殺ではないんです。

だから、俺は言ってることを信じられないし、認めたくないんです。

まるで、自分たちのやり方を根底から質悪くさせたようなの見てると、自分たちのやってきたことを疑いたくなるんです。

だから、すぐに俺たちを向かわせてください!」

 

「…わかりました。

くれぐれも、気を付けてください」

 

「了解!

かこ、アストルフォ、行くぞ!」

 

バンは二人を連れて、エリスの部屋を後にした。

 

残ったのは右京、亀山、エリスの三人だった。

 

すると、右京はエリスに言った。

 

「…あなたは、後悔しているんじゃないのですか?」

 

「え…?」

 

「あなたは、更正の名の下に、転生者から特典と記憶を奪い、別の世界へと送るパトレンジャーの力を、彼らに与えたことですよ。

そして、彼らもまた、後悔しているでしょうねぇ。

自分たちの更正のツケを、このような形で払わされることになるのですから」

 

「右京さん、さっきから何を言ってるんですか?」

 

言葉の意味がわからず、亀山が右京に聞こうとするが、それでも右京は言う。

 

「その顔を見れば、わかりますよ。

あなたは、人としての心を失った転生者をどうにかしたいがために僕を探し、VSチェンジャーとXチェンジャーを託した。

それは、僕たちなら、転生者をどうにかできると、信じていたからではありませんか?」

 

「…」

 

「誤解を招くようでしたら、これだけは言わせてもらいますが、僕はあなたを責めているわけではありません。

もしそのようなことがあるのなら、、誘いを受けた時にしていました。

それに、バンくんも先ほど言っていたではないですか。

自分たちは転生者の更正しているのであって、転生者の虐殺ではないと」

 

「そ、それはそうですけど…」

 

右京の言葉に、エリスはふるふると震えながら顔を背ける。

 

「しかしながら、あなたは後悔しているのでしょう。

こんなはずじゃなかったと、ね。

だから、今もそんなに怯えているのではないのですか?」

 

「…」

 

「…いい加減にしなさいっ!

いつまであなたは、自分の正義に後悔をしているのですか!」

 

「…っ!」

 

右京は怒りの声をあげながらエリスに言った。

 

エリスはその声にビクッとなり、今にも泣き出しそうな子供のような顔になる。

 

「確かに、あなたの後悔もわかります。

しかし、いくら後悔したところで、彼らはこれからも、パトレンジャーとして、在り続けなければならないのでしょう。

しかし、今それを否定しようというのなら、それは彼らに対する侮辱です。

だから、もしそれでも後悔するのなら、僕たち皆で、それを話し合おうではないですか。

何がいけなかったのかを、自分たちの為すべきことを」

 

「…」

 

「…亀山くん、今の戦いが終わったら、バンくんたちを迎えに行ってあげてください。

彼らも、疲れているでしょうから」

 

「え?

は、はい、了解です!」

 

亀山はエリスの部屋を後にした。

 

「…さて、僕の方から色々と言いましたが、あなたからは、何か言いたいことがあるんじゃないですか?」

 

「…はい」

 

そう言って、エリスは椅子から立ち上がり、右京の前に来て、顔を下げる。

 

「ごめんなさい、自分のやって来たことを否定しようとして。

私は、あなたの言うとおり、後悔していたんです。

あなたのことを、彼らのことを」

 

「やはり、そうでしたか。

…こちらも、色々と言って申し訳ありませんでした。

あなたは、転生者をどうにかしたいとわかっていながらも、ご無礼を言ったことを」

 

「…そうですね。

でも、こう言うのって、互いの責任を貫くべきなんですよね」

エリスは少し悲しげな顔で、右京を見ながら言う。

 

「えぇ」

 

そう言って、右京はデビルガンダムPの映像を見る。

 

「責任を貫くのは言うほど簡単ではありませんが、本当の意味での更正ともなると、難しいですよねぇ…」

右京もまた、どこか悲しげで、難しい顔をしながら呟いた。

 

 

 

 

「おいおい、あれは何なんだ!?」

 

急いで街に着いた1号たちは、驚いた。

 

「あれは、怪盗と一緒にいたシンフォギアの人たちじゃないですか!?」

 

「でも、向こうはあのデビルガンダムのユニットと戦ってて、ボクたちに気づいてないよ!?」

 

「知るかよ!

とにかく、俺たちは本体を叩くぞ!」

 

「「了解!!」」

 

そう言って三人は急いでデビルガンダムPの下へと走った。

 

「周りを囲んで撃て!」

 

三人は周囲を囲みながら一斉射撃をするが、傷つくどころか動きが止まる様子がなかった。

 

「こいつ、やっぱり俺たちの攻撃が効いてないのか!?」

 

「そんな…!」

 

「一体どうすれば…!」

 

「…!

お前ら下がってろ!

宇宙チェンジ!!」

 

『スペーススクワッド!

パトライズ!

宇宙チェンジ!

スペースパトレンジャー!!』

 

『キュウレンモード!』

 

「おりゃあぁ!!」

 

1号は即座にスペースパトレン1号に変身し、キュウレンモードに切り替え、高速で移動しながら両手のキューアックスで切りつける。

 

だが、それでも傷付かなかった。

 

すると、デビルガンダムPの数本の触手が1号の周囲を囲み、一斉に殴り、地面に叩き付けた。

 

その衝撃で普通の状態に戻ってしまった。

 

「バン隊長!」

 

「隊長!」

 

「くそぉ…!

これで効かないなんて…!

…!

あれは…!」

 

『グッドストライカー、ぶらっと参上!

今回は、怪盗に…!』

 

「グッドストライカー!

今は俺たちに力を貸せ!」

 

『おいおい、お前らの攻撃は効かないだろ!?

あぁ~、乱暴につかむなぁ!』

 

上空から飛んできたグッドストライカーを1号は掴み取り、VSチェンジャーに取り付ける。

 

『グッドストライカー!

突撃ヨーイ!

1号 2号 3号!

一致団結!!』

 

三人は合体し、パトレンU号に変身し、デビルガンダムPに攻撃を避けながらパトメガボーで殴りつけようとする。

 

「おらぁ!」

 

「えぇい!」

 

「とりゃ!」

 

デビルガンダムPの攻撃を避けながらひたすらパトメガボーで殴りつけるも、その体にはヒビどころか傷一つつかなかった。

 

「くそっ!

お前なんかに、この街を破壊させねぇ!

エリス様の名前を、語らせるわけにはいかねぇんだよ!!

…ぐぅっ!」

 

攻撃をしていくうちに、U号の脳内に、負の感情が流れ込み、腕が止まってしまう。

 

『エリス様ノ名ノ下二、実力ヲ行使スル!』

 

『ぐあっ!!』

 

パトレンU号は攻撃をくらい、建物の壁に激突する。

 

「これでも勝てないなんて…」

 

「やっぱり、ボクたちじゃあ…」

 

「くっ…」

 

U号の中にいる2号と3号は先ほどの攻撃で、まともに戦える状態ではなく、当然本体である1号も立つのがやっとの状態だった。

 

フラフラと立ち上がる間に次の攻撃が来る。

 

避けられない、とU号は覚悟した。

 

「させるかよ!!」

 

すると、デビルガンダムPとU号の間に何者かが飛び込み、デビルガンダムPの攻撃を切り裂いた。

 

そこには、忍者の姿をした赤いルパンレンジャーがいた。

 

「怪盗!」

 

「レッド!」

 

「遅かったな」

 

「悪い、少し手間取っていた」

 

周りにいたルパンレンジャーにそう言うと、周りを見て、U号の前に背中を向けた。

 

「どけ、お前の手はもう借りない」

 

「てめえじゃあ、あいつには勝てないよ」

 

「何だと!」

 

「あいつはデビルガンダムP、対お前達用に開発された機体だ」

 

「なんで、それを知っている。

まさか、お前が」

 

「あいつを作った奴と戦ったからだよ。

あっちには俺達の対策されていたデビルガンダムRってのがいたけど、まぁ倒せたがな」

 

「っ!」

 

U号はあっさりとそう言った赤いルパンレンジャーに驚く。

 

「そういえば、その恰好はなんデスか?」

 

「カラクリニンジャ、ダイノホープと同じく装着できるダイヤルファイターだ」

 

「なっ、なんだと!

どういう事だ」

 

「いや、だから俺に力を貸してくれている先輩達だよ」

 

「なんだと」

 

U号は赤いルパンレンジャーに、他の特殊な武器を持っていたことに驚く。

 

それも、パトレンジャーのスペーススクワッドと同様に、ルパンレンジャーのダイノホープの他にも、戦隊の力を組み合わせたものだということに。

 

「という事で、さっさと下がれ。

お前達では勝てないからな」

 

「そう言って、下がれるか!!」

 

U号は赤いルパンレンジャーに詰め寄ろうとすると、グッドストライカーがVSチェンジャーから外れて前に出た。

 

それと同時に解除され、2号と3号が1号の隣で倒れる。

 

「なっ!?

グットストライカー、なんのつもりだ!!」

 

「いやぁ、華麗な活躍をした怪盗にグッと来たから、あっちに行くだけだよ。

それに今のてめぇ達じゃあ、勝てないのは事実だろ?」

 

「そんな訳ないだろ、奴らだって倒せた。

ならば俺達だって…」

 

「悪いが、お前達に構っている暇はない!

行くぜ、グットストライカー!!」

 

「OK、さぁ盛り上がってきたぜ!!」

 

そう言って、赤いルパンレンジャーはグッドストライカーを使って走り出し、赤と銀のシンフォギアの少女と合体する。

 

「俺たちのような合体じゃないだとっ!?」

 

合体したルパンレンジャーはハンドガンを召喚しデビルガンダムPに向けて撃つが、あまり攻撃を効いていない様子で、胸に光を集めて光線を出そうとした。

 

「っ!

まずい!」

 

1号は、倒れた二人の上を覆う形で伏せるが、ルパンレンジャーが召喚した剣でデビルガンダムPの胸を貫き、阻止した。

 

すると、それと同時に、デビルガンダムPの体から先ほどシンフォギアの少女たちが戦っていた飛行ユニットを飛ばした。

 

だが、ルパンレンジャーは青とピンクのシンフォギアの少女と入れ替わりで合体し、今度はバイクを召喚し、飛行ユニットを破壊しながらデビルガンダムPがいる上空へと飛んだ。

 

「変わった…!」

 

1号は先ほどからの戦いを見て、驚いていた。

 

自分たちがやっている合体は、パトレンジャーにしかできないことなのに、ルパンレンジャーはそれをやってのけているからだ。

 

ましてや、シンフォギアの少女たちと合体するするのが、とんでもないと思ったのだ。

 

だが、そんなことを考えている間にも、とどめと言わんばかりに、ルパンレンジャーは黄金と緑のシンフォギアの少女と入れ替わりで合体し、拳に腰にあった鎌を纏わせ巨大化させて、差ライン炎を纏い体を回転させて、勢いよく殴りつけて撃破した。

 

そして、戦いが終わり、ルパンレンジャーが地面に降り立ち、1号を見る。

 

 

「お前達は自分の罪を数えた事があるのか?」

 

「…なんで、いきなりそんな事を聞く」

 

「デビルガンダムはな、俺達が人生を狂わせた転生者の怨念とお前達によって人生を奪われた恨みからできた存在なんだよ」

 

「そんなの、分かっている!!

だからこそ俺達のような犠牲者を出さない為には」

 

「笑わせるぜ、まったく」

 

「なんだと!!」

 

「まさか世界中の人間が同じような考えだと思っているのか!!」

 

「なに」

 

「てめぇらが転生して幸せかもしれない。

だけど他の奴らからしたら、会えるかどうか分からない大切な人との繋がりを無理矢理奪う行為だ」

 

「そんなの分からないだろう!」

 

「あぁ、それが幸せかどうか分からないかもしれないがな、記憶を持ったまま転生したお前達に記憶を奪われた奴らの気持ちなんて分かるかよ」

 

ルパンレンジャーがそう言って、飛行機を召喚し、その場を去った。

 

「…」

 

残されたのは、1号たちだけだった。

 

1号は変身を解除し、いつの間にか同じく変身解除していた二人を担ぎ上げようとする。

 

だが、ふと自分の手が震えていることに、バンは気付いた。

 

「…そんなの、お前らだって、同じじゃねぇのかよ。

特典を奪われた奴らの中には、普通に生きてるやつもいれば、犯罪を犯す奴もいるのに…。

何で、俺たちがそんなに言われないといけないんだよっ!!」

 

バンは地面を何度も殴りつける。

 

「くそぉっ!!!」

 

拳に血が滲み、痛みが走る。

 

それでも、地面を殴ろうとする。

 

すると、倒れているかことアストルフォが腕を掴んだ。

 

「…お前ら」

 

「バン隊長…、駄目ですよ、自棄になっちゃ…。

私たちも、右京長官も、亀山さんも、エリス様もいるんですから…」

 

「…ボクたちは、仲間なんだから、一人で、背負い込まなくても、良いんだ。

自分たちの為すべきこと…、皆で探そ…?」

 

「…っ!!

…お前らっ!」

 

バンは嗚咽交じりで二人を抱きしめる。

 

それは、亀山の迎えが来るまで続いた。



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それぞれの事情と前兆

デビルガンダムPとの闘いから二日が経った。

 

あの件から意気消沈としていたバンたちに、例の少女が意識を取り戻したという連絡が入った。

 

かことアストルフォは少女がいる病室に向かうのだが、バンは別の用事があるとのことで、二人で行くことになった。

 

「…意識を取り戻したけど、拷問された時のトラウマもあるかも知れないから、無理に刺激するじゃないわよ」

 

病室の前にいる霞にそう忠告されて、二人は無言で頷き、中に入って行き、霞もそれについて行くように入って行った。

 

病室のベッドに上には、一人の少女が、上半身だけ起こしてぼうっとしていた。

 

「…」

 

ぼうっとしていた少女はかこたちが入ってきたことに気が付いたのか、顔だけを向ける。

 

「あっ…」

 

少女はかこたちの顔を見て、すぐにかことアストルフォ太股に懸架されたVSチェンジャーを見つけた。

 

すると、少女は涙を流し始めた。

 

「えっ!?

あの、ちょっと…」

 

「ど、どうしたのっ!?」

 

「…」

 

かことアストルフォは突然泣き出した少女に狼狽える。

 

霞はそれに目をそらし、複雑な表情になる。

 

「か、いとう…さん?」

 

「えっ?」

 

「また、私を、助けてくれたんですか…?」

 

少女は泣きながら、そう言う。

 

すると少女はベッドから身を乗り出し、ベッドから落ちそうになる。

 

「あ、危ないっ!!」

 

アストルフォが走り出して、慌てながらも少女の体を支える。

 

少女は支えられながら、アストルフォの体に抱きついた。

 

「ありがとう…、怪盗さん。

ありがとう…」

 

「怪盗…?

ちょっと、待ってよ…!

ボクたちは…」

 

「あの、霞さん、これは…」

 

「…見ての通りよ。

あの子は、かつて怪盗に特典を奪われた、元転生者よ。

多分、あんたたちが持ってるVSチェンジャーが怪盗のとそっくりだったから、あんな反応してるんでしょうね」

 

「…!」

 

かこは霞の言葉を聞いて驚いた。

 

「あの子の場合、特典を奪われたことで幸せになった人間なのよ。

…皮肉なことに、ね」

 

霞は話をしていくうちに、表情が暗くなる。

 

「ねぇちょっとぉっ!

二人で話をしてないで早く何とかしてよぉ!!」

 

一人では対処仕切れなくて、涙目になりながら助けを呼ぶアストルフォ。

 

二人はそれを聞いて、アストルフォの手伝いをすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、バンは様々な世界を巡りながら、様々な転生者の様子を見ていた。

 

今まで更生してきた転生者たちの様子を。

 

そして今は、その根本のきっかけになったともとれる、ドリィの転生者の更生先の世界に来ていた。

 

そして、ようやくドリィの転生者を見つけ出し、気付かれない距離から、建物の陰に隠れて見ていた。

 

バンの視線の先には、この世界における母親らしき女性と、楽しく会話をしながら買い物をしているかつてのドリィの転生者の姿があった。

 

「…」

 

バンは、そんなドリィの転生者の姿を見て、複雑な気分になった。

 

バンは例の少女の件を断ってまで、今まで更正してきた転生者の今後を見てきた

 

ある者は、ろくに働かず女性にナンパをしては警察に通報され連行され。

 

ある者は、家族から出来損ないと見下され、逆上して暴力を振るい。

 

ある者は、周りに対する不信感のあまりに、常に卑屈な態度を取っては金をだまし取り。

 

ある者は、幼子になって、新しい家族に愛されて生活を送り。

 

ある者は、鍛えに鍛えた筋肉を使って、ボディービルダーとなって。

 

皆、良くも悪くも、生活を送っていた。

 

当然、その中には幸せになった者もいれば、幸せになれない者もいた。

 

記憶がないことを良いことに、心無い者たちによって、やりたくもないことをさせられたり、身代わりにされたりもあった。

 

ついこの間まで、前の世界で特典が暴走したり、自らの意志で街や住人を脅かしていた転生者たちが。

 

「…」

 

バンはそれを見るたびに、悲しい気分になった。

 

記憶もないまま様々な人生を送る原因を作ったのは、他でもない自分たち、パトレンジャーなのだから。

 

当然、転生者の中には前の世界に家族がいる者はいる。

 

その中には、その転生者がいなくなったことに悲しむ者もいれば、喜ぶ者もいる。

 

だが、バンたちパトレンジャーの更生の力は、前の世界に家族がいて、幸せな生活を送っていた転生者の人生すらも奪ってしまうのだ。

 

ふと、バンの脳裏に、赤いルパンレンジャーの言葉が蘇る。

 

『他の奴らからしたら、会えるかどうか分からない大切な人との繋がりを無理矢理奪う行為だ』

 

『それが幸せかどうか分からないかもしれないがな、記憶を持ったまま転生したお前達に記憶を奪われた奴らの気持ちなんて分かるかよ』

 

「…っ!」

 

それを思い出しただけで、バンは建物の壁を殴りつける。

 

そんなことは自分にだってわかってる、でも自分たちにはこれしかできない。

 

けど、実際転生者を更生して救われた世界もあるんだ、と。

 

バンは強く自分に言い聞かせようとする。

 

それでも、あの言葉が頭から離れなかった。

 

その時だった。

 

「おや、こんなところで奇遇ですねぇ」

 

「…!」

 

背後から声が聞こえ振り返ると、そこには右京がいた。

 

「…長官」

 

「言わなくてもわかります。

大方、今まで更生した転生者の今後の生活を見ていたのではないでしょうかねぇ」

 

「…」

 

右京に自分の行っていたことを打ち明けられ、バンは何も言えなかった。

 

「…今回の件について、僕たちもかなりの痛手でしたねぇ。

まさか、パトレンジャーの在り方に疑問を抱くことになっているのですから」

 

「僕たちって、何を言ってるんですか?

…今まで更生をやってきたのは俺たちなんですよ。

何で、長官まで責任を感じる必要があるんですか…」

 

右京は難しい顔をしながら言うが、バンは右京と目を合わせないで言った。

 

「そこはもちろん、僕は君たちパトレンジャーの長官です。

僕は君たちに様々な指示を送っては、転生者の更生のためのサポートをしてきたからですよ」

 

「それはそうですけど…!」

 

「右京さんっ!」

 

「おや?」

 

「…?

あれは…」

 

二人は声のする方向に目を向けると、亀山が走ってきていた。

 

「亀山さん…」

 

「どうしましたか?

そんなに慌てて」

 

「どうしたもこうしたもありませんよ!

いきなり、ふらぁっと外に出るんですから…!」

 

「これは失礼しました。

…バンくんと亀山くん、よろしければ気分転換にお茶をしませんか?」

 

「「…?」」

 

右京の突然の提案に、二人は少し疑問を抱く。

 

 

 

一方その頃、とある世界のビル、一人の男が一つの部屋にいた。

 

「…」

 

男は額に青筋が立っていた。

 

それは、何人もの部下を、パトレンジャーに倒されてしまったことともう一つ、一人の少女を取り逃がしたことだった。

 

今頃、パトレンジャーに保護されてしまっているだろう。

 

そう考えただけで殺意が湧いていた。

 

「ちくしょう、あのガキとその仲間どもめ、今度会ったらぶっ殺してやる…!」

 

そう呟き、拳で机を殴る。

 

すると、誰かがドアにノックをした。

 

「…入れ」

 

「失礼します」

 

その言葉と共に、一人のスーツ姿の男が入ってくる。

 

その手には、通信機と思われる機材が握られていた。

 

「先程、ケイネス様とサーチェス様が予定ポイントに入りました。

いつでも行動を開始できるとのことです」

 

「わかった。

後の指揮は俺がやるから、お前は下がれ」

 

「失礼します」

 

スーツ姿の男は、男に機材を渡してその場を後にした。

 

「…作戦決行だ。

ISコアやロストロギア、及び金になりそうなやつは人間であろうと物だろうと構うまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

奪え……!」

 

機材を手にした男の口は三日月のように、笑っていた。

 

まるで、これから起きることが、さも喜劇だというように。

 

 

 

 

IS学園の遥か上空、全身に赤い粒子を撒き散らす、獣のような男が見下ろしていた。

 

「ハッ、大将から許可が下りたか…。

じゃあ、報酬は弾んでもらわねぇとなぁっ!」

 

男は舌舐めずりして、一気にIS学園のアリーナのドームへと急降下し、それと同時に全身を覆っていた赤い粒子が晴れて、全貌が明らかになる。

 

赤黒い装甲に異様に長い腕、背中には同じ色の大剣が二本と折り畳み式のキャノン砲が一つ。

 

そして、腰元の両端にはスカートのように伸びる大きな装甲があった。

 

「行くぜ、インフィニットなんたらぁっ!!」

 

男は大剣を取り出し、アリーナのバリアを突き破る。

 

その瞬間、狩りが始まった。

 

 

 

 

ミッドチルダの時空管理局の正門前から遥か遠く、金髪のオールバックをした一人の男が大量のゴーレムを連れていた。

 

「…全く、社長も人使いが荒いな。

まさか、あの小娘を取り戻すためとはいえ、私にこのようなことをさせるのだからな」

 

男はやれやれと言った様子で首を振るが、その間にも懐から一本のビーカーを取り出した。

 

その中には、水銀が入っていた。

 

「まぁいいさ。

この任務をこなせれば、私の格も上がるというもの。

…フェルヴォール メイ サングィス」

 

言葉を紡ぐと同時に、水銀を溢す。

 

すると水銀が膨れ上がり、バランスボールの大きさになって留まる

 

それと同時にゴーレムの体の隙間から水銀が飛び出し、軋みながら動き出した。

 

それを見た男は、ほくそ笑みながら指を鳴らす。

 

ゴーレムは少しずつ、前に進む。

 

「…さて、進軍開始だ。

我らを辱しめたパトレンジャーと、その協力関係に誅伐を」

 

男は笑みを浮かべ、歩みを進める。

 

足元の水銀も、それについていくように動く。

 

 

 



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パトレンジャーの葛藤

「…落ち着いた?」

 

「は、はい…。

すみません、その銃を見てたら思い出して…」

 

かことアストルフォ、霞はどうにか少女を落ち着かせることに成功した。

 

「はぁ、全くよ」

 

「あの、私、家甲桜って言います!」

 

「かこです。

よろしくお願いします」

 

「ボクはアストルフォ。

桜ちゃん、よろしくね!」

 

「…私は霞よ」

 

「あの、それであなたたちは、怪盗の、ルパンレンジャーの仲間ですか!?」

 

桜は興奮気味にかことアストルフォのVSチェンジャーを見ながら質問する。

 

それを見た三人は少し複雑な気分になる。

 

その時に、アストルフォが口を開いた。

 

「…ううん、ボクたちは違うんだ。

ボクたちは…、そんなものじゃないよ…」

 

「え…?

じゃ、じゃあ…」

 

ルパンレンジャーじゃないと言われて動揺する桜はかこに目を向けるが、かこは悲しげに首を横に振った。

 

「…私たちは、ルパンレンジャーではないんです。

パトレンジャーという、警察の戦隊なのです…」

 

「パ、パトレンジャー…?

えと、それはどういう…」

 

困惑する桜を前に、かこはアストルフォに声を掛けた。

 

「アストルフォちゃん、変身、しよ…?」

 

「…うん、そうだね」

 

「…?」

 

桜は何のことだかわからなかったが、かことアストルフォは桜から少し距離を離れてVSチェンジャーとトリガーマシンを取り出した。

 

「「警察チェンジ!!」」

 

『2号 3号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

二人は桜に信じてもらうためにパトレン2号とパトレン3号に変身した。

 

「…っ!?」

 

さくらは変身した二人の姿に驚いた。

 

「マントがない…、それに顔の目も黒一色…」

 

そんな桜の様子を確認した二人はvsチェンジャーからトリガーマシンを引き抜いて変身解除する。

 

「…これで信じてもらえましたか?」

 

「…はい」

 

桜は力なく項垂れながら頷いた。

 

「…あんた、元々転生者だったわよね?」

 

「…!?

ど、どうしてそれを…!」

 

霞に言われて、桜は動揺する。

 

そして、霞は書類を取り出した。

 

「あんたが寝ている間に調べさせてもらったわ。

もう、その特典もないこともね」

 

「…」

 

「心配しなくても、私たちはあんたに何かするつもりはないわ。

ルパンレンジャーではないところ申し訳ないけど、あんたの味方よ」

 

「ほ、本当ですか…?」

 

そう言って、桜は霞だけでなく、かことアストルフォを見る。

 

すると、二人は桜にうなづいた。

 

そして、かこが言った。

 

「だから、その、教えてくれませんか?

あなたの身に何が起こったのかを…」

 

「…わかりました」

 

桜は少し安心したのか、少しずつ話した。

 

それは、自身が怪盗ルパンレンジャーに特典を盗まれ、家族と自由に過ごして1週間が経ったときのことだった。

 

学校の帰りに一人で通学路を通って帰っている時に突然、黒服に捕まれて口に布を当てられて意識を失った。

 

気が付いたら、牢獄のような場所に入れられていて、壁に磔にされて、手足が枷で繋がれていて身動きが取れない状態だった。

 

そして、一人の男が五人の部下を連れてやってきた。

 

その五人は仮面を着けた男、同じ顔をした双子の兄弟、神父の格好をした金髪オールバックの男、そして、長い髪に獣のような男だった。

 

その五人を率いた男はまるで舐め回すように桜を見ながら、こう言った。

 

お前の持つ特典で、金を出せ、と。

 

桜はそれはもうないと言ったが、嘘だと吐き捨てられた。

 

仮にそうだとしても、残りカスはあるだろうと。

 

さくらは何度も持ってないと言ったが、もういいと言わんばかりに、男は後ろに控えていた五人の部下のうち、双子の兄弟と、仮面を着けた男に声を掛けた。

 

金を出すまで、殺さない程度で好きにしろと。

 

そう言って、男は三人に札束を投げつけ、それが三人の体に吸収される。

 

すると、三人の様子が変わった。

 

男は二人の部下を連れてその場を後にし、三人の男はさくらを見る。

 

二人の兄弟は蛇を思わせるような目で、仮面の男は仮面越しであるためわからないが無機質な目で睨みつけていた。

 

仮面の男は何か準備をすると言ってその場から離れて二人の兄弟は舌なめずりをしながら、簡単に殺さないように火炎放射器や氷冷放射器の出力を変えた。

 

そして、ホースを肌に直接当てられ火傷や凍傷を負ったこと。

 

さらには、仮面の男が戻ってきたと思ったら、その後ろで巨大な人の手のようなものが床から生えて、そのまま体を殴り付けられ骨が折れる音がしたこと。

 

それから体を刃物で切りつけられたりと、何度も続いた。

 

その中でも、桜は痛いと、やめてと、助けてと、何度も泣き叫び続けた。

 

だが、それは何度も続き双子の兄弟と仮面の男は日をまたぐように交代して拷問された。

 

そうして続いた拷問に、意識が朦朧となり、心が壊れそうになった時に、誰かが助けに来た。

 

その誰かに運ばれ、最後に車らしき音と、光を感じて意識を失った。

 

気が付いたら、この病室で目が覚めて、体の傷も完治していた。

 

以上のことだった。

 

「「「…」」」

 

それを聞いて、三人は拳を握り震えていた。

 

こんな小さな女の子を、特典のためにそんなひどい怪我を負わせたことに、怒りで震えていた。

 

「…どうして」

 

「…?」

 

桜は顔を下に向けて、涙を流していた。

 

「どうして、私がこんな目に遭わなきゃいけないんですかっ!

もう、あの特典もないのに、どうして出せなんて言われないといけないんですか!!

確かに、私はかつてあの、お金の特典を持っていましたよ。

でも、怪盗さんに奪ってもらって、やっとお父さんとお母さんと一緒に幸せに暮らせるって思ったのにっ!!

何で、もう私にはない特典のことで私が家族から引き離されなくちゃいけないんですかっ!!!

…私は、わたしは、本当に…、お父さんとお母さんと一緒に、幸せに暮らしたかっただけなのに…っ!」

 

そう言い切った後、桜は子見た目相応に泣き始めた。

 

それを聞いて、三人は怒りから暗い表情になった。

 

そしてある考えに至った。

 

転生者の中にも、家族と幸せに暮らしたいと願う者もいると。

 

しかし、自分たちパトレンジャーはそんな願いを持った転生者をも更生し、その世界での家族との繋がりを無理やり断ち切ったと。

 

そう考えたとき、アストルフォは悲しい顔で頭に手をやり、かこは涙を流した。

 

「アストルフォちゃん…、アストルフォちゃん…っ!」

 

「かこ…」

 

アストルフォは泣いているかこをそっと抱き寄せる。

 

霞は、泣きそうになりながら桜を介抱する。

 

だが、そんな状態は束の間だった。

 

「…っ!?

ちっ、こんな時に…!」

 

「霞、どうしたの?」

 

霞が何かを感じ取ったことを察したアストルフォが聞いた。

 

「…今、IS学園と時空管理局が転生者による襲撃を受けてるわ。

しかも、金の紋章らしき反応あるわ。

あんたたちは、時空管理局に向かいなさい」

 

「えっ!?

金の紋章ってまさか…!?」

 

「わかってるなら、めそめそしてないで早く行きなさいっ!!

このクズどもがっ!!」

 

「…っ!?

わ、わかったよ!

行こう、かこ…!」

 

「…うん!」

 

霞の怒号に驚きながら、かことアストルフォは病室を後にした。

 

「…急に怒鳴ってごめんなさい。

私、ちょっと用事があるから、失礼するわ」

 

「…」

 

未だに泣いている桜にそう言って、霞は病室を出て、外出しているバン、右京、亀山に連絡して、IS学園に向かうように伝えた。

 

「はぁ…」

 

連絡を終えた霞は通路の壁に背中を預け力なく座り込んだ。

 

「うぅ…、ぐすっ…!」

 

そのまま霞は膝を抱え、顔を埋めて泣いていた。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…。

ここの紅茶は、良い香りがしますねぇ」

 

「そ、そうですね」

 

「…」

 

一方、右京、亀山、バンは近くの公園で右京が持ち歩いていた紅茶を嗜んでいた。

 

右京は自前で用意した紅茶のポットを徐々に上に上げながらカップに注ぎ、亀山は相変わらずすごい入れ方だなと言わんばかりに見つめながら自身の紅茶を飲んでいた。

 

しかし、バンだけはカップに入ってる紅茶に目もくれず、下を向いたままだった。

 

「おや、バンくん。

紅茶は苦手でしたか?」

 

すると、それに気付いた右京がバンに声を掛けた。

 

「…別にそんなものじゃないですよ」

 

「そうですか…。

ところでバンくん、一つ聞いてもよろしいですか?」

 

「…」

 

「君は、パトレンジャーになったことについて、後悔してますか?」

 

「…!」

 

右京の言葉にバンは顔を上げる。

 

「それは、どういう意味で聞いてるんですか?」

 

「その言葉通りの意味です。

君が更正した転生者のことを調べているところで、どこか悲しい顔をしてましたからねぇ」

 

「…それは、俺にもよくわからないんですよ」

 

「はい?」

 

バンは光の灯っていない、虚ろな目でポツリポツリと言った。

 

転生者のその後を見ていく中で、悲しくなったこと。

 

それは、更生した転生者がまた罪を犯していたり、記憶がなくて周りに不信感を抱いたりしていること。

 

中には、記憶がないことを良いことに、犯罪の道具として利用され、見捨てられた元転生者がいること。

 

当然、中には新しい家族ができて、幸せに暮らしている元転生者もいること。

 

かつての転生者の家族もこれらと似たものだったこと。

 

当然、転生者が更生されて、いなくなった家族のことを調べても、更生された転生者と似たケースだった。

 

最愛の家族がいなくなり、悲しみと絶望に覆われて、家庭崩壊した家族がいた。

 

逆に、その転生者がいなくなったことで、支配から解放されたと喜ぶ家族もいた。

 

だが、どちらにしても、どんな形であったにしても、家族がいた転生者には、その家族と繋がりがあった。

 

だからこそ、バンはこういう考えに至った。

 

自分たちパトレンジャーが、転生者と家族との繋がりを断ち切ったと。

 

だから、もうなにもわからなくなってしまったのだと。

 

そして、さらにバンは力なく笑いながらこう言った。

 

「…思えば、俺たちって運が良かったんですよ。

だって、全員が全員、記憶を持ったまま転生できるなんてありえませんし。

俺たちのやってきたことって、その運の良かった奴らから、大切な物を奪ったも同然なんですよ…」

 

その表情には絶望にも似た混乱に満ちていた。

 

それを見た右京と亀山は難しそうな顔になる。

 

「…」

 

「…」

 

しばらく沈黙が続いた。

 

「…バンくん。

君の気持ちはわかります。

確かに、パトレンジャーの力である更正の力は君の言うとおり、転生者とその家族との繋がりを断ち切ります。

…僕としたことが、このようなことを想定できませんでした」

 

「…」

 

「ですがバンくん」

 

「…?」

 

右京の言葉にバンは顔を上げる。

 

「もし、わからないと言うのであれば、今はわからないなりに前を向いてください。

君には、かこちゃんやアストルフォくんに、エリスさん、僕や亀山くん、そしてなのはさんたち機動六課なとがいます。

なので、一人で責任を背負おうとしないでください」

 

右京は優しげに微笑みながら、バンの肩を叩く。

 

「…あのさ」

 

すると、亀山がバンに声を掛けた。

 

「俺はさバンくん。

今はまだ、わからなくても良いんじゃないかって思うんだ」

 

「…?」

 

「俺もさ、パトレンジャーをやっててわからないことがあるんだ。

この転生者を更正したら、残された家族はどうなるんだろうって」

 

「…」

 

「俺が警察辞めてサルウィンにいるの、知ってるかな?」

 

「…それが何ですか?」

 

「…俺はさ、その国に親友がいたんだ。

けど、その親友がある事件で殺されて、その国の子供たちは取り残された状態だったんだ」

 

「…」

 

「サルウィンはその、荒れてた国でさ。

俺の親友は、ある団体に入って、そこの子供たちの支援をしてたんだよ」

 

「そう、ですか…」

 

「うん。

だから俺、その親友の意志を継いでって言うのは照れるつーか、恥ずかしいんだけどさ。

子供たちに、今まで右京さんと行動を共にして培ってきた警察の精神を、俺なりに教えたり、支えたくて、サルウィンに行ったんだよ」

 

亀山は恥ずかしそうに頭を掻きながら言った。

 

「まぁその、今から言うのは例みたいだけど。

残された家族とか、更正して記憶を失った転生者の支援とかも、ありなんじゃないかなぁ、なんて」

 

「…そう言う考えも、あるんですかね」

 

「亀山くんの言ってることも踏まえて、色々考えてみてはどうですか?

何かあれば、微々たるものですが、僕も力を貸します」

 

「…はい」

 

そう言ってバンは少しだけ、目に力が入って、少し考えようとした。

 

しかし、それは直後に中断された。

 

右京の携帯が鳴り出したのだ。

 

「…もしもし、右京です。

…!

わかりました、では二人にはそこへ向かうよう伝えます…!」

 

右京は電話で話を聞いていくうちに、顔が険しくなり、電話を切った。

 

「…あの、右京さん?」

 

亀山は右京の表情を見て何かを察したのか、気まずそうに声を掛けた。

 

「…亀山くん、バンくん。

霞ちゃんから今、IS学園と時空管理局が金の紋章の反応がある転生者に襲われていると情報が入りました。

管理局はかこちゃんとアストルフォくんが向かってます。

ですので、お二人には至急、IS学園に向かって戴きたいのです」

 

「っ!?

りょ、了解です…!」

 

「…了解です」

 

そう言って、二人は走って移動した。

 

走っていく二人を見送った右京はただ一人空を見ながら、紅茶を口に含んだ。

 

「…やはり、VSチェンジャーに選らばれたとは言え、彼らにこのような責務を負わせてしまった僕にも、責任はありますねぇ…。

Xチェンジャーを託した亀山くんについても、ですが」

 

そう言った右京の顔は、少し悲しげだった。

 

 




家甲桜の容姿はfateの遠阪桜(要は間桐に養子に出される前の桜)です。


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鮮血の狩人とクレーンドリル(前編)

投稿が遅くなり申し訳ありません。

それと今回は長く書いてしまったので二つに分けて書いてます


霞から通報を受けたバンと亀山はIS学園へとたどり着いた。

 

IS学園のアリーナが崩壊し、そこから赤黒い粒子が噴き出してるのが見えた。

 

「おいおい、ありゃ何なんだよっ!?」

 

「俺にもわかりませんよ!

とにかく、早く行かないよ…」

 

「そうだな、行こう!」

 

二人はそう言って、崩壊したアリーナへと走った。

 

 

 

 

 

IS学園 アリーナ

 

そこは観客席も放送室も破壊しつくされ、地面もクレーターができたように何か所か抉れて、空気そのものが赤く黒く染まっていた。

 

それだけでなく血だまりと機械の残がいに沈み、壁には血がこびりついていて、その下には教員や生徒などが虫の息で、血まみれで倒れこんでいた。

 

そんなアリーナの中央に赤黒い粒子をまき散らす、赤黒い異形の男がいた。

 

「おいおい、こんなもんかよ!

この世界で最強な上に女性だけの特権って言われてるインフィニットなんたらってのはよぉ!?」

 

そう言って、男は足元で倒れている銀髪の少女の髪を鷲掴みにして、同じ高さにまで持ち上げる。

 

「ぐぅっ!!」

 

「そう言えば、さっきお前から変な反応があったな。

例えば、こんなところによぉ!」

 

男は少女の左目の眼帯を引き千切る。

 

すると、その目は金色に光っていた。

 

「へぇ、やっぱりその眼からだったからか…。

てことはお前、兵器として造られたデザインベビーかなにかだろ?」

 

「…っ!?

貴様、何故それを…!」

 

「細けぇことは良いんだよ、てめぇを商品として扱ってやるから眠ってろ」

 

「ぐあ…」

 

男はそう言って少女の腹を殴り気絶させる。

 

「…さて、どれぐらいあったかなー」

 

男は少女の体を担ぎながら懐を見る。

 

そこには特殊な球体や指輪やイヤリングなどが入っていた。

 

すると、アリーナの観客席から一人の少年、織斑一夏がISを展開して飛び出した。

 

「てめぇ、ラウラを離しやがれぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!」

 

一夏は雪片弐型を展開して、光を放ちながら男へと向かって行った。

 

「あ?」

 

男は惚ける様にその様を見て、何の動作もなしに、サイドスカートから何かを出した。

 

「うおおおおおおぉぉぉっっ!!!!!!!!!」

 

一夏は怒りでそれが見えなかったのか、まっすぐと男の方へと刀を向けて接近する。

 

男はそれがとても面白いものだと口元が裂けるように笑う。

 

「おーそっかそっか、それがかのブリュンヒルデが使ってた零落白夜ってやつか…」

 

瞬間、少年の右肩と左の脇腹に何かが突き刺さった。

 

「っ!?

がぁあああっ!!?」

 

一夏は肩と脇腹を押さえて雪片弐型を手放し、その場にうずくまる。

 

それを愉快そうに男は見ていた。

 

「その手の奴って、要は当たらなかったら良いんだろ?

なら簡単だぁ…。

当たる前にへし折るか、持ち主をぶっ潰しちまえば良いってもんだ」

 

男は雪片弐型を拾い上げて、品定めするように刃先を見つめながら言った。

 

「まぁ、お前のはそれしかないってこともあるし、ISのは絶対防御があるってこともある。

けど、俺のは余裕で絶対防御を貫いちまう出力でな…。

要はお前は最初から俺に殴られるために走ってきたもんだ!

わかってくれたかなぁマゾヒスト君!?

いやぁ、君の小さなおつむじゃそんな難しい話もわからねぇか!?」

 

「っ!?」

 

「あばよ、ごみ野郎!!

その白い機体ごと真っ赤にしてやるぜ…っ!?」

 

男は雪片弐型を振り下ろし、一夏はこれまでかと目をつぶるが、その瞬間男の、雪片弐型を持つ手が何かに弾かれた。

 

「あ?」

 

「「動くなっ!!」」

 

その先には、バンと亀山がvsチェンジャーとxチェンジャーを構えていた。

 

「その銃…!

あ、あんたらまさか…!」

 

「悪いな、今はそんな暇はないんだよ!

行くぞバンくん!」

 

「はい、了解です!」

 

「「警察チェンジ!!」」

 

『1号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

『エックスナインズ!

警察Xチェンジ!

パトレンX!!』

 

「パトレン1号!」

 

「パトレンX!」

 

「「警察戦隊 パトレンジャー!!」」

 

「これ以上何かするなら、実力を行使する!」

 

「へぇ、あんたらがパトレンジャーか…!

殺しがいがあるってもんだぁ!!」

 

男はそう言って、銀髪の少女をゴミを投げるように投げ捨てた。

 

「っ!

ら、ラウラ!」

 

地面に叩きつけられそうになった、ラウラと呼ばれた少女を一夏が傷ついた体を引きづって何とか受け止める。

 

その瞬間、男は赤黒い粒子を撒き散らしながら、一瞬で距離を詰めた。

 

「なっ!?」

 

1号は男が目の前に来たことに驚きながらも、パトメガボーを構えた。

 

「ふっ!

おらよぉ!」

 

男は一本の大剣を取り出して、1号を斬りつけようとする。

 

1号は反射的にパトメガボーで男の大剣を防いだ。

 

「ぐっ、うぅ…!」

 

だが、1号はその威力に全身が軋み、立っている場所がめり込んでいた。

 

「バンくん!」

 

「させるかよ、ファング!」

 

パトレンXが駆け寄ろうとした途端、男はサイドスカートからファングと呼ばれた武器を大量に射出し、パトレンXを取り囲む。

 

ファングの撃つ、穿つといった攻撃を避けながら進もうとするも、中々辿り着けない。

 

「へへっ!

パトレンジャーってのはこの程度かよ!」

 

「てめえ…!

何でIS学園を狙った!」

 

「あぁ?

てめえらが大将の部下を次から次へと消しやがるからビジネスが捗らねぇのと、てめえらからあのガキの居所を聞くためだよぉ!」

 

「ふざけるな、そんなことのためにIS学園を…!」

 

「そんなもん、てめえらと関わりがあるからだろうが!

だったら、金づるなり商売の道具としてISとそのコアとか、適正高そうな女を奴隷として使ってやるのも楽しいもんだぜ!!」

 

「っ!

てめえっ!!」

 

「やめろ、バンくん!

敵の挑発に乗るな!」

 

1号はパトレンXの制止を振り払い、防いでいるパトメガボーを片手にvsチェンジャーで撃とうとする。

 

「へっ、何だよその豆鉄砲はよぉ!!」

 

だが、それをわかっていたかのように足先からビームサーベルを短く展開して、1号のVSチェンジャーを持つ腕の肩部分を突き刺そうとする。

 

「させるか!」

 

パトレンXが何とか大量のファングを撃ち抜いたりかわしたりして、その間を縫って、男の足元を撃った。

 

「亀山さん…!」

 

「ちっ!

てめぇ、あれを潰しながら来たってのか!」

 

男はそう言って、1号を振り払い、2本の大剣を構えて、パトレンXに迫る。

 

「おい待て!

まだ俺は…!?」

 

1号が動こうとするも、周りにはファングが浮遊していて、動くことができなかった。

 

「バンくん!

くっ、こいつ…!」

 

「何だよ、キレてんのか金ぴか野郎!」

 

「ハッ、誰がお前何かにキレるかよ!」

 

片手にXチェンジャー、もう片手に十手形態のXロッドソードを構えて、男の猛攻を凌ぎ攻撃していた。

 

ふと、パトレンXはアリーナで倒れてたり呆然と見ている人達を見た。

 

このままではまずい、巻き込まれてしまう。

 

そう思ったパトレンXは1号の周りのファングを撃ち落とした。

 

「バンくん、君はアリーナの怪我人たちを避難させてくれ!」

 

「っ!

でも、そんなことしたら亀山さんは!」

 

「行けっ!

今こうしてる間にも、巻き沿いで死ぬ人が出るかもしれないんだぞ!」

 

「っ!

…わかりました」

 

パトレンXの行動を無駄にしないためにも、1号は怪我人をアリーナの外へと運んでいった。

 

最後は一夏と気を失っているラウラだけだった。

 

「おい!」

 

「っ!

な、何だよって、うわっ!」

 

一夏は1号の声に驚くが、1号はそれに構わず二人を運ぼうとする。

 

「ここにいるとまずい。

ここから離れろ!」

 

「おい待てよ!?

このくらい何とも…」

 

「今は離れるんだよ!

そんな怪我で無茶して死にたいのか!?」

 

「っ!?

…くっ!」

 

1号の剣幕に、一夏はそれに渋々と納得したのか、大人しくラウラを連れて外へと向かった。

 

それを見送った1号がパトレンXの方を見ようとした瞬間、パトレンXが飛んで来て、何とか受け止める。

 

「ぐあっ!」

 

「ぐっ!

か、亀山さん!?」

 

「こいつは強い…!

俺は正面から叩くからバンくんは側面から攻撃してくれ!」

 

「了解です!」

 

パトレンXは何とか態勢を立て直して1号に指示を送る。

 

そして、1号はすぐに男の右側にまわり、パトレンXは正面から攻撃をしようとする。

 

「ハッ、それがどうした!」

 

だが、男は少しジャンプして大剣で、足先のビームサーベルで攻撃を防いでいく。

 

「ぐっ!

くそ、こうなったら…!」

 

『バイカー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

「くらえ、バイク撃退砲!!」

 

1号はすぐにトリガーマシンバイカーをvsチェンジャーに取り付けて、男を目掛けて発射した。

 

だが、そのタイヤ型のエネルギーはいつも使っている時よりも小さく弱弱しかった。

 

それを見た男は大剣を腕に取り付けてライフルに変形させて、それを撃ち落とした。

 

「ハハハハハ!!

随分弱っちい弾じゃねえかよおい!」

 

「っ!

何でこんな時に…!」

 

1号はトリガーマシンバイカーを見ながら歯噛みする。

 

「気持ちが足りないからだっ!」

 

「っ!?」

 

その時にパトレンXが1号に叫んだ。

 

「右京さんから君がパトレンジャーをやってるときのことは聞いてる。

君は、転生者に家族と自分自身を殺された!

だから、自分たちみたいな犠牲者を出したくなくて、戦ってきたんだろ!」

 

パトレンXの言葉が続く。

 

「君がパトレンジャーとしてやってきたことに疑いを持つのもわかるさ!

俺もそう言う事思うから!!

でも、今は悩んでる場合じゃないだろ、今はこいつと戦わなきゃいけないんだろ!!

 

「…!」

 

「vsチェンジャーは、持ち主の気持ちが強ければ強いほど、強い力を貸してくれる。

だから、もっと強く気持ちを持て!

バンくんには、それができるはずだ!」

 

1号は改めて自身のvsチェンジャーを見つめ、そして思い返す。

 

「俺は…、俺は…っ!」

 

自分がパトレンジャーをやっている理由を。

 

何のために戦っているのかを。

 

1号はvsチェンジャーに祈るように力を込める。

 

「…うおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

1号は震える自身の体を鼓舞するように叫ぶ。

 

『バイカー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

トリガーマシンバイカーを再びvsチェンジャーに装着した1号。

 

そこから貯まるタイヤ型のエネルギーは先ほどよりも大きく強くなった。

 

そして、それをゆっくりと男に狙いを定める。

 

「行っけぇ、バイカー撃退砲っ!!」

 

背後に風が巻き上がるほど、勢いよく発射されたそれは、まっすぐと男の方へと飛んでいく。

 

男は笑いながら大剣で切り裂こうとする。

 

しかし、大剣は半ばからへし折り、そのまま男の胸部に命中した。

 

その反動でパトレンXとの距離が離れた。

 

「ぐあっは!?」

 

体に強い衝撃が走り、胸部が焼けるような痛みが男を襲う。

 

「てめぇ…!

よくもやりやがったなっ!!」

 

男は怒りの形相で1号をにらみつけるが、1号はそれを気にせず俯いていた。

 

「…だったら戦ってやる…」

 

「あ?」

 

1号は顔を上げる。

 

「俺はやるぞ!

迷ってる暇なんかねぇ!

てめえみたいな、吐き気を催すような転生者が今人間を襲うなら、俺は戦ってやる!」

 

「吐き気を催すだと…?

図に乗ってんじゃねぇぞガキの分際がぁ!!」

 

それを見たパトレンXは仮面の下で笑みを浮かべる。

 

そしてパトレンXは1号の隣に来て、肩を叩いた。

 

「そう、それだよバンくん。

迷ってる場合じゃない、今現状であいつがここの人達を苦しめてるから、倒さなくちゃいけないんだ。

でも、その後の選択は間違っちゃダメだ」

 

「…はい!」

 

「何悠長に話してんだよ、死にやがれ!!」

 

男は粒子を勢いよく吹かして、二人に急接近する。

 

「させないよ、トラップオブアルガリア!」

 

「なっ!?」

 

その瞬間、男の足元に何が通り抜け、男は足に力が入らなくなり、その場に座り込んだ。

 

「今のは…!」

 

「くっ、誰だ!」

 

男は通った方向を見る。

 

それと同じように1号とパトレンXも見る

 

そこにいたのは、馬上槍を手に持っていたピンクの髪に三つ編みをした少女いや少年がいた。

 

「待ってよアストルフォちゃん!」

 

その後を追うように、緑の髪の小柄な少女が走ってきた。

 

その二人は1号とパトレンXのよく知る人物だった。

 

だがそれと同時に、今は別の場所へと向かってるはずだった。

 

1号は思わず声をあげた。

 

「かこ、アストルフォ!?

お前ら、管理局に向かったんじゃ…!」

 

そう、目の前にいる二人は本来、同じく襲撃を受けているミッドチルダに向かってるはずだったのだ。

 

 



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鮮血の狩人とクレーンドリル(後編)

遡ること数十分前のこと。

 

「管理局とIS学園に同時に襲撃だなんて…。

相手は何を考えてるだろ?」

 

「ぐずっ…、すんすん…。

そんなの、分からないよ…」

 

「かこ、泣きすぎだよ。

ほら、ティッシュ貸すから」

 

管理局に急いで向かっている途中、アストルフォは今回の襲撃について考えようとして、かこは泣いていた。

 

「ありがと、アストルフォちゃん…」

 

「…良いよ、そんなことは。

多分、さっきの桜ちゃんのことで泣いてたんだよね?」

 

「…うん。

あの子みたいな転生者を、私たちが今まで更生してきたって思うと、悲しくなって…」

 

「…」

 

アストルフォはそれを聞いて黙る。

 

別にそこには動揺はなかった。

 

だけど、多少の戸惑いはあるものの、落ち着いて話を聞く姿勢でいた。

 

「…かこ、ボクの話を聞いて?」

 

「…?」

 

アストルフォはかこの身長に合わせるように身を屈める。

 

「ボクはね、報告でしか聞いたことはないけど、君は前ににゃんこ大戦争の特典を持つ転生者を更生したんだよね?」

 

「うん…」

 

「君は、あの特典の暴走を止めたうえ、その子があの世界に来たばかりで、身内も行く当てもなかったから、更生したんだよね?」

 

「それが、どうしたの…?」

 

かこは目を赤くしながら聞いた。

 

「…君は、その選択を後悔してるのかい?」

 

「え…?」

 

アストルフォの言葉に、かこは呆然とする。

 

「…ボクもパトレンジャーだから、目の前にいる人たちを助けたくて、ずっと転生者を更生してきたんだ。

でも、君はあの子を助けたくて、来世で幸せになって欲しかったから、更生したんだろ?」

 

「…」

 

アストルフォの言葉に、かこは黙る。

 

アストルフォの言うとおり、かこはかつて綾野理恵という転生者を助けたうえで更生した。

 

そこには貶めようとした気持ちはない。

 

ただ、転生して間もなく暴走してしまったことを受けて、誰にも頼ることができず、一人で泣いていた彼女に、幸せになって欲しかったから、それだけだった。

 

自分も転生して、その先で幸せになったのだから。

 

「君のその時の気持ちは、嘘だったのかい?」

 

「っ!?

そんなことないもんっ!!」

 

アストルフォの試すような言葉に、かこは半ば怒鳴るように反射的に言い返した。

 

転生した先で幸せになったことも、彼女の幸せを願った気持ちは、まぎれもない本当だった。

 

それを聞いたアストルフォは、少しホッとしたようにほほ笑んだ。

 

「…それで良いと思うよ。

いつまでも泣いていたら、それこそ君らしくないもん」

 

「え…?」

 

「さ、こうしている間にも管理局が危ない。

もうすぐ着くころだから、しっかりついて来て!」

 

「待ってアストルフォちゃん!」

 

「…?」

 

何かを隠すように急ごうとするアストルフォにかこが呼び止める。

 

「どうして、私にそんなこと言ってくれるの…?

アストルフォちゃんだって、辛いでしょう?」

 

「…辛いさ、ボクも。

あの子のような転生者がいるってことと、自分たちパトレンジャーのやってることは本当に正しいのかって、今もそう言う考えが頭の中で渦巻いてる」

 

かこに背を向けながら、腕で顔を拭いながら言う。

 

制服の裾は、よく見ると濡れていた。

 

「でも、今うじうじしていたら助けれる人達を助けることができない…!

そんなの、ボクは嫌だ!

だから今だけは辛くでも前に進まないといけないんだ!」

 

「アストルフォちゃん…」

 

かこはそれを聞いて、自分たちが改めてこんなことをしている場合じゃないと思った。

 

こんなところで立ち止まっていたら、管理局の被害が広がる。

 

あそこにいるティアナやなのは、機動六課のメンバーや他の魔導士たちが危ない。

 

「うん、そうだよね。

行かなきゃダメなんだよね…」

 

「うん、行こう!

…!?」

 

二人が自分たちのやるべきことを見つけて、再び管理局に向かおうとした途端、目の前に時空の歪みが発生する。

 

その歪みが、二人を吸い込もうとする。

 

「これは…、まずい!」

 

「うぅ!!」

 

二人はその力に吸い込まれないよう耐えるが足が離れて、とうとうその歪みの中に入ってしまった。

 

「きゃあああっ!!」

 

「うわあああ!!!」

 

 

 

空間の歪みに吸い込まれたかことアストルフォは、別の世界へと放り出された。

 

「きゃっ!?」

 

「いたた!」

 

二人は歪みから解放されて、地面に叩きつけられた。

 

「痛いなぁ、もう。

…ここは?」

 

「アストルフォちゃん、あれを見て!」

 

「え?

って、うわっ!?」

 

かこが指を指した先を見たアストルフォが驚く。

 

その先は、真っ赤な粒子が吹き荒れるIS学園のアリーナの前だった。

 

「ここって、隊長と亀山さんが行った先の…」

 

「何か嫌な予感がする。

アストルフォちゃん、急いでバン隊長たちと合流しよう!」

 

「うん、任せて!」

 

二人はそう言ってアリーナの中へと入っていった。

 

 

 

「あれはバン隊長と亀山さん!?」

 

アリーナの中へと入った二人が目にしたのは1号とパトレンXが一緒に武器を構えて何かを話をしているところに、赤黒い粒子を撒き散らしている男が斬りかかろうとしている場面だった。

 

「まずい、早く止めないと…!」

 

「でもどうやって」

 

「ボクは足が早いから、これで足止めはできるはずだ…!」

 

そう言って、アストルフォは馬上槍を構えて、すごい勢いで走った。

 

「死にやがれ!」

 

「させないよ、トラップオブアルガリア!!」

 

アストルフォは光輝く馬上槍で穿つ。

 

その瞬間、男の足が止まりその場で崩れた。

 

「待ってよアストルフォちゃん!」

 

かこはアストルフォを追うように走ってきた。

 

そして現在に至る。

 

「かこ、アストルフォ!?

お前ら、管理局に向かったんじゃ…!」

 

「それが、ボクにもわからなくて…」

 

「でも、向かってる途中で次元が歪んで、その中に入ってしまって、気が付いたらここに来てたんです…!」

 

「まさか、多次元融合の影響か…!?」

 

「だとしたら、早くこいつを更正して行かないと!」

 

「ねぇ隊長」

 

アストルフォが1号の肩をツンツンする。

 

「…?」

 

「しばらく見てなかったのに、明るくなってきたね!」

 

「おいおい、俺今マスクで顔見えないはずだぞ?」

 

「でも、以前と比べると、だいぶ明るくなりましたよ?」

 

「そ、そうか?

そうなんだな…」

 

それを二人に言われて心当たりのある1号。

 

そして、真剣な眼差して、二人を見ながら体が男の方へと向ける。

 

「かこ、アストルフォ…。

俺は戦うぞ。

一人の人間として、転生者として、パトレン1号として…!

だから、一緒に戦ってくれ!」

 

「…わかりました」

 

「うん、了解だよ!」

 

それを聞いた二人は1号とパトレンXの隣に立ち、VSチェンジャーとトリガーマシンを取り出した。

 

「「警察チェンジ!!」」

 

『2号 3号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

「パトレン1号!」

 

「パトレン2号!」

 

「パトレン3号!」

 

「パトレンX!」

 

「「「「警察戦隊 パトレンジャー!!」」」」

 

「転生者を更生する者として、実力を行使する!!」

 

「更生だぁ?

やれるもんならやってみろ三下ぁ!!」

 

脚の自由が戻り、さらに粒子を撒き散らしながら男は大剣を構える。

 

「よし!

皆、散開して相手を攪乱してくれ!」

 

「「「了解!!」」」

 

パトレンXの指示を聞いてバラバラに動く。

 

「おいおい!

そんなんで俺を攪乱できてるつもりかよ!?

行け、ファングぅ!!」

 

男はファングを展開して四人に攻撃を仕掛けようとする。

 

四人は避けながらファングを撃っていく。

 

「くそっ!

うねうね動きやがって…!

…!?」

 

撃っていた1号は悪態を突く。

 

その時に自分の持つVSチェンジャーが光り出し、何かが飛び出した。

 

「あれは、あの時と同じ…!」

 

2号は以前病室にいたときと同じ現象が起こったことを思い出す。

 

1号はその何かを手に取った。

 

それは中にドリルの入った黄色のクレーン車のトリガーマシンだった。

 

「これは、やるしかない!」

 

『クレーン!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

1号は即座にそのトリガーマシン取り付け発動する。

 

その瞬間、クレーン車が右腕を覆う武器となった。

 

「バイカーとは違う?

けど、行くぜ!!」

 

1号は勢いよく右腕を振るうとクレーンのアームが伸びて次々とファングを絡め取り、地面に叩きつけた。

 

「なんだよあれ…!」

 

「すっごーい、アームが伸びた!」

 

「あれだけあったファングが一瞬で…!」

 

「うおっ!?

こいつはすげぇ!」

 

「てめぇ、俺のファングを…!

トランザム!」

 

「させるかよ!」

 

男の装甲がさらに赤く染まろうとした直前、パトレンXは懐に入り胸部と脚部の太陽炉をXロッドソードで切り裂き、機能不全を起こす。

 

「がっ!?

てめぇ、よくも!!」

 

「当たるか!」

 

男は大剣を振り回すもパトレンXはジャンプして、その上で男の背中を踏み台にして飛び越える。

 

「これでとどめだ!

かこ、アストルフォ、これを使え!」

 

1号はすぐにスペースパトレン1号タイムモードに変身し、2号にバイカーを、3号にクレーンを渡した。

 

3号は先ほどの1号のやり方を見て覚えたのかすぐに右腕に装着した。

 

「そうだな!

早く終わらせて、管理局に向かわないとな!!」

 

パトレンXはXロッドソードを構えながら言った。

 

1号は二丁のアサルトベクターを連結させて、2号はトリガーマシンバイカーをvsチェンジャーに装着して、3号は右腕を持ち上げて狙いを定めドリルをアームに乗せる。

 

『バイカー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

『一手 二手 三手 十手!

一騎当千!!

イチゲキエックスストライク!!』

 

四人はエネルギーを溜める。

 

「とどめを刺されるのはてめぇらだ!

覚悟しろ、ごみクズが!!」

 

男はそれを見て対抗しようと全身に火花を散らしながら両腕のケーブルを胸部に繋げ、背部のキャノン砲を展開する。

 

「いや、とどめを刺されるのはてめぇだ!!

くらえ、スペーススナイプバーニング!!」

 

「バイク撃退砲!!」

 

「ストロング撲滅突破!!」

 

「エクセレントエックス!!」

 

四人の必殺技が一つになるように寄り添いながら発射され、アルケーは赤黒を通り越してどす黒い極太ビームを撃ちだした。

 

二つの攻撃が衝突するがそれも一瞬のうち。

 

すぐにパトレンジャーの攻撃がアルケーの攻撃を押しのけ、体を貫いた。

 

「ぐぅああああああ!

馬鹿な、この俺が、こんなところで!!

こんなごみ共にぃぃぃぃぃいいいいいいっっっっ!!!!!」

 

男は勢いよく壁に激突して装甲もバラバラに破壊された。

 

その時に、男が持っていたISのコアとその待機状態の物が散らばった。

 

「…やったな」

 

「はい、そうですね」

 

「えへへ、ボクも初めて使ったけど、これすごかったよ!」

 

「さて、早く更生して、管理局に向かおう!」

 

「それもそうですね」

 

そう言って1号は手錠を取り出して男の下へと近付いた。

 

だが、その時に男に異変が起こった。

 

「うぐっ、何だ、これっ!

うっ、がぁあああああああああっ!!」

 

男がうめき声を上げた瞬間、体から先ほどの装甲のロボットのオーラが噴き出し、空間に次元の穴を開けて飛んで行った。

 

「空間に穴がっ!?」

 

「まさか、特典が暴走を!?」

 

1号は男を更生するが、空間の穴が閉じない。

 

むしろ地響きが起きている。

 

「あの特典を追えば…!

かこ、アストルフォ、亀山さん!

行くぞ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

四人は男の暴走した特典を追うために次元の穴を通った。

 

「…何だよこれ…!!」

 

1号たちが見た先は、同じく次元に穴が開いて地響きが起きている時空管理局だった。

 

しかも、どういうわけなのか倒れている襲撃者とルパンレンジャーがいた。

 

 



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怪盗との合体と守ること

1号たちは次元の穴を潜ると、その先は地響きが起きている時空管理局だった。

 

しかも、襲撃者とそれを倒したであろうルパンレンジャーがいた。

 

だが、直後にパトレンジャーが追っていた特典がルパンレンジャーが戦っていた特典が合体し、先程IS学園を襲っていた男の特典が水銀で覆われた上に巨大化していた。

 

「おいおい、まさかあれって!」

 

「暴走した特典同士が合体した!?」

 

「うわっ!?

見てよ、あれ!」

 

「これは…!」

 

3号が空を指に指すと、その先では様々な風景が入り混じって、色んな世界が繋がろうとしているのが見えた。

 

「冗談だろ…!

世界が繋がってやがる!」

 

「ねぇ、これってどうなっちゃうの!?」

 

「まさか…。

右京さん!」

 

パトレンXはとっさに右京に通信する。

 

『亀山くんですか?

こちらでも状況はわかっております』

 

「まさか、本部にも影響が!?」

 

『えぇ、僕も先程戻りましたが、その時に異常な反応と世界が繋がっているという現象を目の当たりにしました』

 

「でも、なぜこんなことが…!」

 

『僕の推測ですが、あの暴走している特典、あれは何者かが意図的に仕組んだものではないかと思います。

このままだと、世界が滅びる可能性が出ます。

僕は近隣の住民に避難を呼びかけますので、これを速やかに倒してください』

 

「なっ!?」

 

「世界が滅びる!?」

 

「それに、この暴走が、意図的だったのですか!?」

 

『おそらくは、ですが。

桜ちゃんのことは霞ちゃんに護衛するよう頼んでおりますので、そのようにお願いします』

 

右京からの通信が途絶え、四人はそれぞれで顔を見る。

 

「亀山さん、このままじゃまずいってことですよね」

 

「あぁ、だから右京さんのいう通り、早くあいつを倒さないと…」

 

「しかし、どうやって戦いますか…?

暴走した二つの特典の集合体ともなると、倒すの難しいですよ」

 

『それなら、おいらに提案があるぜ?』

 

そう言って空から降りてきたのはグッドストライカーだった。

 

「グッドストライカーっ!?」

 

『よう、久しぶりだな!

今回は、ルパンレンジャーと組んだ方が良いぜ?』

 

「怪盗と…!?

でもな…」

 

1号はグッドストライカーの提案に頭を掻く。

 

これまでに共闘したことはあるが、それでもルパンレンジャーのやり方とは相容れないでいる。

 

実際、デビルガンダムPの件できついこと言われたばかりだ。

 

だから1号たちパトレンジャーにとって苦手意識があった。

 

『おいおい、あいつらのこと勘違いしてないか?

何もあいつらだって、こんな世界が滅びるような展開は望んでないんだぜ』

 

「それはそうだろうけどよ…」

 

『今までだって、別にあいつらと戦うばかりでもなかったろ?

いがみ合いながらも、一緒に転生者と戦ったことがあったじゃねえか』

 

「…」

 

グッドストライカーのいう事はもっともだった。

 

かつて、別世界のシンフォギアでの戦い、四ノ宮 塁という転生者との戦い。

 

正直あれらの戦いはパトレンジャーだけだったら倒すのは難しかった。

 

しかし、その時にルパンレンジャーと組んで戦った時には勝つことができた。

 

『別にあいつらに礼を言えとは言わねぇけどよ。

このままあいつらにやられっぱなしっつーか、任せっぱなしにするの、お前らだって悔しいだろ?

だから、今回もあいつらと共闘して戦うのも、ありなんじゃねぇのか?

ほら、向こうもこうしてる間に準備始めてるぜ?』

 

そう言ってグッドストライカーは空を見る。

 

そこにはルパンレンジャーのアイテムが巨大化して空を飛ぼうとしていた。

 

「…まさかだとは思うけどよ。

俺らとあいつらのマシンを同時に合体するのか?」

 

『おうさ!

こうなっちまったら警察も怪盗もないのさ。

だから今回あいつらと組んだ方が良いって言ってるんだ』

 

「…わかった。

これであの暴走した特典を倒せるなら、やってやる」

 

『交渉成立だな!

おい、パトレンX!

お前はXトレインを2号と3号に巨大化させてくれ!』

 

「お、おう!

任せろ!

かこちゃん、アストルフォくん!」

 

パトレンXは2号と3号にXトレインファイヤー、サンダーを渡す。

 

「グッドストライカー、来い!」

 

1号はグッドストライカーを手に取る。

 

『グッドストライカー!

位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!

一・撃・必・勝!!』

 

『ファイヤー!

get set ready!

飛べ 飛べ 飛べ!

go!

フ・フ・フ・ファイヤー!!』

 

『サンダー!

位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!

疾・風・迅・雷!!』

 

『前方よーし 信号よーし 発車よーし!

駆けろ 駆けろ 駆けろ!

出発進行!

エ・エ・エ・エックス!!』

 

『1号!』

 

『2号!』

 

『3号!』

 

『位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!』

 

『轟・音・爆・走!!』

 

『百・発・百・中!!』

 

『乱・撃・乱・打!!』

 

1号たちはグットストライカー、Xトレインファイヤーとサンダー、トリガーマシンを巨大化させる。

 

すると、Xトレインシルバーに銀色のルパンレンジャーが乗り込み操縦していた。

 

「あれがもう一人の…!

いや、今はそれどころじゃない!」

 

それを目撃した1号だが、今はそれどころじゃないとして操縦する。

 

そうして、暴走する特典が向かってる先はパトレンジャーの本部だった。

 

「…確かあそこに桜って子がいるんだったな。

霞、悪いがそっちは任せたぜ…!」

 

1号は祈るように言って、レバーを握り直す。

 

そうして1号たちは三機のトリガーマシン、二つのXトレイン、グッドストライカーを走らせる。

 

上空ではルパンレンジャーの使う飛行機が飛んでいた。

 

【超絶エックスガッタイム!】

 

その声が鳴り響くと同時にグットストライカーを中心にルパンレンジャーの飛行機と、そしてパトレンXが乗り込んでいたエックストレインが合体していく。

 

そこにできたのはこれまでとは比べものにならない程の巨大な姿へとなっていき、1号たちの操縦席が辿り着くと、1号の後ろにパトレンXが来て、隣に赤いルパンレンジャーとその後ろに先ほどXトレインシルバーに乗り込んだ銀色のルパンレンジャーが座っていた。

 

「完成!グットクルカイザーVSX」

 

「まさかこんな力を持っているとはな」

 

これまではパトレンジャーかルパンレンジャーのどちらかしか合体できないと1号たちは思っていたが、今回のように二つの戦隊を同時に合体するとは思わなかったので、1号は驚きで声が出なかった。

 

だが、直後に自分の隣に赤いルパンレンジャーがいることに気が付いた1号は警戒した。

 

「怪盗っ!」

 

「今は戦っている場合じゃないのは分かっているよな」

 

赤いルパンレンジャーはそれを見て呆れたのか、やれやれと言った感じで言った。

 

「分かっているっ!」

 

そう言って1号は目の前の敵をにらみつける。

 

赤いルパンレンジャーの言う通り、今は二人で争ってる暇はない。

 

目の前に、世界に危機がせまっているのだから。

 

「やれやれ、仲良くなりそうにないかね?」

 

「あんたがもう一人の」

 

「まっ、予想は当たっているよ。

俺はルパンXだ」

 

「あっ、俺はパトレンX、亀山です」

 

その間にパトレンXは銀色のルパンレンジャーと話をしていた。

 

「ちょっと、亀山さん!

何怪盗とフレンドリーに話をしてんですか!」

 

「あぁいや、これから一時的とはいえ、一緒に戦うんだから、挨拶しようかな、なんて。

あはは…」

 

「本気で何してるんですか…」

 

1号は思わず頭を抱えそうになる。

 

ふと1号の耳に赤いルパンレンジャーと銀色のルパンレンジャーが会話する声が聞こえた。

 

それを聞き取ることはできなかったが、内容的に1号とパトレンXと同じだったようだ。

 

「さっさと行くぞ」

 

「言われなくても!!」

 

言葉と共にグットクルカイザーVSXは動きだすが、その巨体の為か、動きが鈍く、相手がこちらに向けて仕掛けてきた攻撃にすぐに対応する事ができなかった

 

「これはファング、本当にやばい相手だ」

 

「ファングかなんだか、知らないが、さっさと片付ける!!」

 

そう言い、青いルパンレンジャーは肩のパーツにセットされていた青い飛行機を動かし、動き回っているファングに向かって放つも一向に当たる気配がしない。

 

「何をやっているんですか!

そんなのが当たるとでも思っているんですか!!」

 

2号はそう言って、足に着いている2号のトリガーマシンで攻撃を仕掛けるも同じく一向に当たる気配がしなかった。

 

「お主だって、同じじゃないかよ!

これだったら、儂達だけでやればよかったぜ!!」

 

「それはこちらの台詞だ!!」

 

互いの失敗を言いながらも、パトレンジャーとルパンレンジャーは険悪な雰囲気は続く。

 

互いに睨み付けるように言っている間に目の前にいるロボットはこちらに向かって巨大な剣を振り下ろしてきた。

 

慌てて防御を行うも出力が負けて、大きく後ろに下がってしまい、建物にぶつかってしまう。

 

「くそぉ!!」

 

「こんなのに」

 

1号たちは互いにムキになりながら、がむしゃらに操作しようとした時だった。

 

僅かだがパトレンジャー本部のビルから声が聞こえ、見るとそこには未だに逃げ遅れていた子供がいた。

 

桜だった。

 

「あれは桜ちゃん!!」

 

「桜、まさか」

 

赤いルパンレンジャーと1号は急いでそこを見ると、こちらに向かって必死に大きな口を開いて何かを伝えようとしていた。

 

既に安全ではないこの場で、このままいたら。

 

そう思っていた時、ファングが桜に気づいたのか、桜に向かって襲いかかろうとしていた。

 

「「「「「させるかぁぁ!!」」」」」

 

その時、互いに声が重なったよう声を出すと、こちらに迫っていたファングを全て打ち落とし、同時に蹴り上げる。

 

「「「「「お前にこれ以上人々を傷つけさせるか!!」」」」」

 

パトレンジャーとルパンレンジャーはそれにより守るべき物を見つけると共に、互いに対する嫌悪は無くなった。

 

今あるのは、ただ思い出したここにいる人達を守る為に目の前にいる奴を倒すだけだ。

 

「行くぞ!!」

 

「あぁ!!」

 

その言葉と共に1号と赤いルパンレンジャーは叫び、レバーを操作すると共にグッドクルカイザーVSXは立ち上がると、こちらに襲いかかってきたファングがこちらに襲いかかってくる。

 

だがグッドクルカイザーVSXに装着されていた青い飛行機に搭載されたマシンガンでファングを墜落させる。

 

ファングはそのまま一つの巨大な塊に集まっていた剣になり襲いかかってくるが、それに対しては2号のトリガーマシンで貫く。

 

「はああぁ!!」

 

それを確認すると、グッドクルカイザーVSXは空を跳び、特典に向けて攻撃する為に黄色いルパンレンジャーの飛行機と3号のトリガーマシンによる連続攻撃を喰らわせながら、接戦する。

 

「まだまだ、終わらないぜ」

 

「ここからだ!!」

 

そう叫ぶと、1号と赤いルパンレンジャーは互いに別々の別々の戦隊の力を宿したトリガーマシン、飛行機を取り出し、巨大化させる。

 

『緊・急・出・動』

 

『時・空・超・越』

 

『シ・シ・シンケン』

 

『メ・メ・メガ』

 

1号はレッドラダーとタイムジェット1を、赤いルパンレンジャーはシンケンジャーとメガレンジャーの力が宿った飛行機を巨大化させて、各々が装備されると、下に装着されたメガレンジャーの飛行機とタイムトリガーマシンが各々のエネルギーを発動させながら、宙へと跳ぶ。

 

「烈火大斬刀」

 

「ライフバード!」

 

そう言うと共にグッドクルカイザーVSXの右手には烈火大斬刀と呼ばれる刀が握られ、左手にはライフバードと呼ばれる鳥型の武器が装着されると、目の前にいる特典が持っている巨大な剣とバズーカに各々対処を行いながら戦う。

 

「レジェンドパワー全開だぜ!!

おいら、ますます力がわき上がってくるぜぇ!!」

 

そう言うとグッドクルカイザーVSXは先程とは別のロボットのように的確な動きで全ての攻撃を当てる。

 

「これで」

 

「とどめだぁ!!」

 

そう言った瞬間、全員は手に持ったVSチェンジャーを構え、目の前にいるロボットに向けて狙いを付けた。

 

「グッドクルカイザービークルラッシュストライク」

 

グットカイザーがその言葉を言った瞬間、パトレンジャー達のトリガーマシンとルパンレンジャーの飛行機の幻影が現れると、グッドクルカイザーVSXはそれを蹴り上げると、ロボットに次々と当たり、ついにはロボットは地に倒れた。

 

「永遠にアドゥ」

 

「任務完了」

 

「気分は最高!!

これにて一件落着!!」

 

1号と赤いルパンレンジャーは互いの言葉を言うと同時にグットストライカーは全てのトリガーマシンと飛行機、Xトレインが離され、ルパンレンジャーから遠く離れていった。

 

 

そして、バンたちパトレンジャーは敵を倒したことを確認した後、本部に戻り今回のことを右京に報告しようと通路を歩いていると、桜と桜の護衛をしていた霞とあった。

 

「あ、お巡りさん!」

 

桜は笑顔でパトレンジャーの下へと走っていく。

 

「助けてくれて、ありがとうございました!!」

 

桜はバンたちの前に立ち止まり、頭をペコリと下げた。

 

「お、おう、どういたしましてだな…」

 

バンたちは一瞬戸惑うも、笑顔で返す。

 

「確か、お前が家甲桜、だったな?

俺はバン、パトレン1号だ」

 

「俺は亀山 薫。

パトレンXやらしてもらってます」

 

バンと亀山は初対面だったため自己紹介をする。

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

「桜さん、さっきよりも明るいね、アストルフォちゃん」

 

「うん、あれだけ泣いてたからね。

…でも、空元気ってわけでもなさそうだけど」

 

「それについて、ちょっと説明するわよ」

 

先程から明るい桜の様子について話をしていたかことアストルフォに霞がバンと亀山にも聞こえるように説明しようとする。

 

最初に右京から桜の護衛を任された霞は、桜と一緒に病室にいようとした。

 

しかし、本部がかなり揺れたりで、パニックを起こしてしまい桜は一人で通路を走って行ってしまった。

 

霞は何とかして桜を追いかけていると、通路の窓からパトレンジャーとルパンレンジャーの合体したグットクルカイザーVSXの戦ってる様子を見て、喜びながらパトレンジャーとルパンレンジャーに頑張れと応援している桜がいた。

 

しかも、本部が揺れている中でもそんなことは関係なしと笑顔で応援していたらしい。

 

「…」

 

霞の説明を聞いたバンは桜の方に顔を向ける。

 

「なぁ、桜。

今霞が言ってたことって、本当なのか?」

 

「はい、ずっと見てました!

最初は、かこさんとアストルフォさんから仲間じゃないって言われた時はとても悲しかったけど、あの大きいロボットに一緒に乗って戦ってたので、私にとってはパトレンジャーとルパンレンジャーの皆さんはヒーローなんです!」

 

「ヒーローっ!?

いや、俺たちはそんなもんじゃあ…」

 

ヒーローだと言われてバンは頭を掻くが、どこか嬉しそうな顔になった。

 

「そう言えば霞さん、顔に涙の跡があるみたいですけど、大丈夫ですか?」

 

「っ!?

み、見んじゃないわよ、このクズっ!!」

 

霞はかこに涙の跡のことを指摘されて、顔が真っ赤になり、手で顔を隠す。

 

「ほら、無駄話する暇があるならさっさと長官のところに行きなさい!

桜も、病室に戻るわよ!」

 

「えっ!?

は、はーい!」

 

そう言って、霞は桜の手を引いてその場を後にする。

 

「…よかったですね。

桜さん、元気になって」

 

「あぁ、そうだな。

それにしてもヒーローか…。

桜って子、むず痒くなること言ってくれるじゃねえか」

 

「まぁ、怪盗と一緒だったとはいえ、俺たちが桜ちゃんを守ったんだからな」

 

「へへっ、桜もそうだけど、ボクから見たらみんなも元気になって良かったよ!

さ、早く長官のところに行こう隊長、みんな!」

 

「お前も元気な面してんじゃねぇか♪

わぁーたよ、すぐ行くから待てよ」

 

バンたちはアストルフォを追いかけながら長官室へと向かい、今回のことを報告した。

 



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番外編 子供たちをさらうハロウィンの怪人

今回は時期的にかなり遅くなりましたがハロウィン回です。

この話に名前のあるゲームキャラが出ますが、その元ネタとは関係ない一般人です。



「エリオくん、早く早くー!」

 

「こらキャロ、あんまり先々に進んじゃだめだよ!」

 

「キャロさんは元気いっぱいですね」

 

「ま、今回はハロウィンなわけだし、はしゃぐのも当然よね。

…というかあんたら、今回は遊びに来たんじゃないってことはわかってんでしょうね?」

 

キャロ、エリオ、かこ、霞は夜のハロウィンの祭りが行われている街で仮装して歩いていた。

 

キャロは魔女、エリオは吸血鬼、かこはかぼちゃ、霞は小悪魔を連想する格好だった。

 

そして、それを後からついて行くようにバン、アストルフォ、なのは、スバル、ティアナが歩いていた。

 

ちなみに、バンは狼男、アストルフォはゴスロリ、なのはとティアナは魔女、スバルはミイラを連想する格好だった。

 

「今のところ、特に異変はないみたいですね」

 

「まぁな…。

ところでスバル、お前その肩に担いでるでけぇ袋どうしたんだ?」

 

「え?

あぁ、これは全部お菓子なんです!

バンさんも一つどうですか?」

 

「あんたねぇ、ハロウィンに遊びに来たんじゃないって言ってんでしょ!

あんたが行き当たりばったりでお菓子もらってきそうだったから、私が用意したのよ!」

 

「ねぇスバル、お菓子一つ、ボクにくれない?」

 

なのははかこたちの様子をバンたちに伝え、バンはそれに返事するが気になったのかスバルに担いでいる袋のことを聞いた。

 

スバルはこれがお菓子が入った袋だからと袋の中身を取り出そうとするもティアナに諫められる、しかしその隙にアストルフォがスバルにお菓子をおねだりしていた。

 

そもそも、なぜこのようなことになったのか。

 

それは先日に右京長官から転生者が関わっているであろうハロウィンでの事件が世界のあちこちで起きているという事を聞いたからである。

 

それは、子供たちが次々に行方不明になるという事件だった。

 

右京はその子供たちが行方不明になる事件で、世界各地で巨大なジャックオーランタンが観測されたことから、転生者が関わっている可能性があると見てのことだった。

 

それで、それを聞いたパトレンジャー、機動六課は早速その対策として、転生者に怪しまれないように、ハロウィン用の衣装を用意して着ていたのだ。

 

そして、かこと霞、エリオ、キャロを先に出てもらい、4人に何かしら仕掛ける輩がいるか、それが転生者なのかを探るためにバン、アストルフォ、なのは、スバル、ティアナが後ろで見張っていた。

 

ちなみに亀山はあんまり長く家を空けると家内が心配するからとサロウィンに戻っていたため、今回は出ることはできなかった。

 

そして、現在に至る。

 

「…やっぱり怪しまれているとか?」

 

「それはねぇと思いたいけどな…。

…?

誰だ、あいつ」

 

かこたちを見張っていると、かこたちに紺色のロングコートを着た青年が話し掛けてきた。

 

「ねぇ、ちょっとあなたたち、少し良いかしら?」

 

「な、なんですか?」

 

青年はオネェ口調で話すのに若干戸惑いながらかこは聞き返した。

 

「何だろうね、あの人」

 

「さぁな。

今はとにかく、妙な動きがないか、転生者の反応がないかそれを見るのが先だぜ」

 

そう言って、バンたちは青年とかこたちの会話を聞くことにした。

 

青年の名前はギャリーと言って、ある二人の少女を探していた。

 

昨日にその二人の少女はハロウィンの祭りに出掛けて無事に戻ってきた。

 

しかし、真夜中に二人の少女が寝間着のまま、ハロウィンの祭りが行われてるこの街へと向かった。

 

ギャリーは跡を追いかけたが、この街のどこかに姿を消してしまい、見失ってしまった。

 

それから日を跨いで街を走って探し回っても見つからなかったので、警察にも捜索願いを出したのだが、一向に見つからなかった。

 

それでこうして聞き込みしている、とのことだった。

 

「…ねぇ、隊長」

 

「あぁ、ありゃ被害者のダチか身内だな。

それに転生者じゃあない。

ということは…」

 

「まさか、今回の行方不明事件に関わってる可能性がある、ってことですよね」

 

「じゃあ、私たちも直接聞きに行きますか?」

 

「こうなったら、そうした方が…」

 

「そうだな。

…そこの兄ちゃん、その話詳しく聞かせてくれ」

 

バンは近づいてギャリーに話しかける。

 

「なああんた、その話、俺たちにも詳しく聞かせてくれねぇか?」

 

「な、何よあんたたちは…!?」

 

「ボクたちは君が先ほど言ってた行方不明の件で調べてるんだ。

だから、教えてくれないかな」

 

「調べてるって…。

まさか、あの子たち以外にも子供たちが!?」

 

「はい、ですのでその時の話を聞かせてほしいのです」

 

「…わかったわ」

 

ギャリーは話した。

 

二人は真夜中に出かけるとき、目が虚ろだったこと。

 

呼びかけても、全く返事がなくただひたすら歩みを進めたこと。

 

「まさか、洗脳の類いか?」

 

「洗脳ですって?」

 

「あぁ、予想だがその二人がハロウィンの祭りに行った時に何かされて、時間が経てば発動する、とかじゃないか?」

 

「でも、そうだとしたら相手は何のためにそんなことをするのかな」

 

「…?」

 

そう話し合っている時に、アストルフォはギャリーの背後に誰かが建物の隙間へと入るのを見た。

 

それは目が虚ろになっている子供たちだった。

 

それに釣られるように他の子供たちも入っていく。

 

「ねぇ隊長、皆。

あれを見て!」

 

「…!

あれはさっきギャリーが言ってたような子供たちじゃねぇか!

ついて行くぞ!」

 

「待って、私も行くわ!

あの子たちを追って行けば、あの二人に会えるかもしれないじゃない!」

 

「…わかった。

でも、やばくなったらすぐに引いてくれよ!

そうなったら俺たちでもあんたを守り切れないかもしれないからな!」

 

そう言って、バンたちは子供たちについて行った。

 

 

子供たちについて行くと、そこは街のはずれだった。

 

「…っ!?

おいおい、こいつはまさか!」

 

「な、何なのよこれ…!」

 

バンたちが見つけた先は右京が言っていた通りに、巨大なジャックオーランタンが聳え立っていた。

 

その口の中に、子供たちが吸い寄せられるように入って行く。

 

「まさか、本当にこのジャックオーランタンが行方不明事件に関わっていたなんて…!」

 

「あんたたち、注意しなさい!

この中に、転生者の反応があるわよ!」

 

「そうらしいな…!

行くぞ!!」

 

『了解!!』

 

「…待ってて、イヴ、メアリー…!」

 

そう言って、バンたちは変身して、ギャリーはそのあとを追うように中へと入って行った。

 

 

 

 

 

茶色の髪をした少女は中に入ってしばらくすると意識を取り戻した。

 

そこは遊び道具が打つ捨てられた公園の前だった。

 

「私、どうしてここに…。

…!?

メアリーっ!!」

 

少女は隣で倒れていた金髪の少女、メアリーを起こそうと揺すった。

 

「う、うぅん、どうしたのイヴ…?

って何なのここ!?」

 

「わからない。

でも、さっきまで家で寝てたはずなのに…」

 

イヴと呼ばれた少女はここに来る前のことを思い出そうとする。

 

「おや、お目覚めになったの?」

 

「「っ!?」」

 

二人は声のした方向に目を向けると、そこには黒いローブを着た魔女がいた。

 

「あなたは…ハロウィンの祭りでお菓子をくれた魔女さん…!」

 

「そのまま寝てたら、苦しませることなく夢を吸い取ってそこに捨ててやろうと思ったのに」

 

「捨てる…?

どういう…」

 

「きゃあああああっ!!

イヴ、あれを見て…!」

 

「っ!?

な、何なの…これ」

 

メアリーの悲鳴を聞いてイヴは公園を見ると、そこには大勢の子供達が目が死んでいて倒れていた。

 

おそらく、意識もない様子だった。

 

「フフフ…。

あんたたちのような幼い子供たちはとても素直で好きだよ…。

私の用意した催眠ロリポップを受け取って食べてくれたんだから…」

 

魔女はくつくつと笑う。

 

その眼はまるで、子供がおいしい料理に輝かせるものと同じだった。

 

「…何でこんなことを!」

 

「決まってるじゃないか!

私はハロウィンも大好きで、子供たちの夢を食べるのが大好きだからさ!

特に、子供の持つ、無駄にでかい夢を食べて、その子供が絶望して意識を失うさまが格別なのさ!」

 

「な、何なのこの人…!

イヴ、怖いよ…!」

 

「…!」

 

イヴはメアリーを庇うように背中に回す。

 

「おやぁ、女の子同士の熱い友情ってやつ…?

無駄だね、実に無駄だ…」

 

魔女は舌なめずりをしながら二人に近づく。

 

「なんせ、そんな無駄な友情ごと夢を食ってやるんだからなっ!!!」

 

魔女が二人に迫る瞬間だった。

 

「「「動くな!!」」」

 

「ん~、誰よあなたたち」

 

魔女は面倒くさそうに振り返ると、1号となのはたちは、vsチェンジャーとそれぞれの武器を構えていた。

 

ギャリーは巻き込まれないように後ろの物陰に隠れていた。

 

「子供たちを誘拐していたのはあなただったんですね!」

 

「だから何よ?

私はこれからこの子たちの夢を頂いて楽しいディナーにするところなの、邪魔しないで頂戴」

 

「夢を食べるっ!?

じゃあ君の特典は…!」

 

「…しつこいわね。

あんまり私の食事の邪魔をすると…」

 

怒気の含むため息を上げる魔女。

 

そして立ち上がった瞬間に魔女の姿が変わった。

 

それは顔の両側にリングの用な角が生え、左手は剣になり、背後には短い尻尾が生えていた。

 

「な、何よあの化け物…!」

 

「お前、異次元人ギランボの特典を持つ転生者か…!」

 

「えぇ、よくわかったわね。

ま、ここがばれた以上、あんたたちの夢もいただくわよ!」

 

ギランボは剣を構えて1号たちに突っ込む。

 

1号たちは咄嗟に避け、全員がばらける。

 

その隙にギャリーはイヴとメアリーの下へと走る。

 

「あんたたち、大丈夫!?」

 

「…!

ギャリー!」

 

「ギャリー、怖かったよ~!」

 

「そうね、怖かったわよね!

さ、ここに子供たちもここから出しましょ!」

 

「うん!」

 

「えっと、ギャリー、この子は?」

 

イヴは霞を見て聞いた。

 

「説明はあと!

早く他の子供たちを連れ出すわよ!」

 

「おい、そこのオカマと小娘!

何私の料理を持っていこうとするのよ!!」

 

「子供たちはあんたのごはんじゃないわよ!」

 

「そうだよ!

それなのに、子供たちの夢を食べようだなんて、許せない!」

 

ギャリーたちが廃人になった子供たち、まだ夢を食べられていない子供たちを外へと連れ出そうとする。

 

ギランボはそれを妨害しようとした瞬間、ティアナとスバルが前に出て銃と拳を攻撃する。

 

「この、小娘共が!!」

 

ギランボは剣で魔弾を弾き、スバルの拳と鍔迫り合いになる。

 

「くっ…!」

 

「うりゃっ!!」

 

「あうっ!」

 

ギランボの剣はスバルの拳を弾き、大きく払いのける。

 

「お願い、フリード!」

 

「はぁああっ!!」

 

その瞬間にキャロはフリードリヒに炎を吹かせてギランボの周りを囲み、エリオが槍を構えて高速で貫こうと迫る。

 

だが、その直前だった。

 

「フフっ!」

 

ギランボは微笑して、その場から姿を消した。

 

「えっ!?」

 

エリオは思わず先ほどギランボがいた場所に立ち止り周りを見回した。

 

「…っ!?

エリオくん後ろ!」

 

「…っ!

がぁっ!?」

 

エリオは振り返ろうとした途端、ギランボに剣で薙ぎ払われた。

 

「エリオ!」

 

「大丈夫です!!」

 

エリオは態勢を薙ぎ払われた衝撃を利用して、何とか態勢を立て直した。

 

「これならどう!!」

 

なのはは魔法陣から無数のビームを放つ。

 

だが、それをあざ笑うかのように連続で姿を消した。

 

「こいつ、まさか瞬間移動ってやつか!」

 

1号はVSチェンジャーを構えて警戒する。

 

「フフッ!

それだけじゃないわよ!」

 

ギランボがそう言った瞬間、1号たちを囲むように複数の分身が出現し、一斉に襲い掛かった。

 

「ほらほら!」

 

「ぐっ!」

 

「きゃっ!」

 

「あうっ!」

 

それぞれでギランボの分身と応戦しようとする1号たち。

 

だが、その時にキャロが締め上げれて、フリードリヒを踏みつけていた。

 

「うっ…がぁああ!」

 

「っ!?

キャロを離せ!!」

 

エリオは自身が戦っていた分身を押しのけて、キャロの下へと駆けつようとする。

 

「エリオ、伏せて!」

 

「え!?

うわっ!?」

 

3号はエリオの体を抱き、地面に伏せる。

 

その直後に、さっきまでエリオがいた場所にギランボの分身が斬りつけた。

 

「フフフっ!

めんどくさい相手だと思ってたけど、随分と楽しませてくれるわね!」

 

「くそっ!

全然キリがねぇ!」

 

「このままじゃ、私たち押されちゃいます!」

 

「何とかこれに対抗する方法はあるかな…ってうあっ!!」

 

「アストルフォさん!!」

 

3号は方法を考えようとした途端、ギランボの分身に大きく切り払われ地面に叩きつけられる。

 

それと同時に、3号の懐からある本が飛び出した。

 

「うっ、これは…!」

 

3号は思わずその本を手に取る。

 

それは、3号の持つ特典の一部だった。

 

「…確か、今は月が出ていたはず。

ってことは万全には使えない。

でも、やるしかない!!」

 

外の空の事を思い出した3号は少しがっかりしていたが、覚悟を決めてギランボの分身たちにそれを構えた。

 

「これでもくらえ!

ルナ・ブレイクマニュアル!!」

 

3号がそう叫ぶと、本が光り出して1号たちとギランボの分身たちを覆う。

 

すると、ギランボの分身の分身が消えて元の一体に戻った。

 

「分身が消えた!?

そんな馬鹿な!!」

 

「今だよ隊長!!」

 

「OK任せろ!!」

 

『バイカー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

「くらえ、バイク撃退砲!!!」

 

3号が作った隙をついてトリガーマシンバイカーを使って、バイク撃退砲を放った。

 

「きゃあああああっ!!!!???」

 

タイヤ型のエネルギー弾は、ギランボの瞬間移動する暇を与えず、ギランガの体に当たった途端、大爆発した。

 

そのままギランボは地面にクレーターができるほどに叩きつけられて倒れこんだ。

 

しかし、ギランボはよろめきながらも立ち上がり、公園の方を見た。

 

そこには先ほどの子供たちがいなくなっていた。

 

おそらく、ギャリーたちが、戦っている間に全員外に連れて行ったのだろう。

 

「…あの、オカマ風情がぁあああああ!!!

良いわよ、そこまでするならこっちにも考えがあるわ!」

 

「こいつ、まさか…!」

 

1号たちが身構えた途端、ギランボは光に包まれ巨大化した。

 

その巨大化により、巨大なジャックオーランタンが破壊された。

 

『こうなったら、この街いる子供たちも含めて、捕まえてやるわよ!!』

 

「…!」

 

真っ先に睨みつけられたギャリーはイヴとメアリー、そしてたくさんの子供たちの盾になるように前に出て、霞は艤装を展開して構えた。

 

その時に、グッドストライカーが現れた。

 

『グッドストライカー、ぶらっと参上!

今回は警察に味方するぜ!』

 

「グッドストライカー!

…よし、行くぞ!!

かこ、アストルフォ、準備しろ!!」

 

「「了解!」」

 

「では私たちは援護にまわります!!」

 

『グッドストライカー!

位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!

一・撃・必・殺!!』

 

『1号!』

 

『2号!』

 

『3号!』

 

『位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!』

 

『轟・音・爆・走!!』

 

『百・発・百・中!!』

 

『乱・撃・乱・打!!』

 

『警察ガッタイム!

正義を掴み取ろうぜ!』

 

「「「完成 パトカイザー!!」」」

 

1号たちはパトカイザーを合体させてギランボの前に出る。

 

すでになのはたちが攻撃していた。

 

『鬱陶しいハエどもめ…!』

 

ギランボはなのはたちをハエを追い払うように剣を振り回す。

 

「さてと、俺たちのご登場だぜ、魔女野郎!」

 

パトカイザーはなのはたちに気を取られているところに左腕のキャノン砲で撃つ。

 

『ぐっ!!

調子に乗るな!!』

 

パトカイザーの攻撃をくらったギランボは瞬間移動して一気にパトカイザーとの距離を詰め、剣で斬りつける。

 

「ぐあっ!」

 

「きゃっ!」

 

「いたた!」

 

1号たちは至近距離からの攻撃をくらい、後ろに下がってしまう。

 

その瞬間、パトカイザーの周りにギランボの分身が囲い、頭部に光を集めていた。

 

『これでもくらえ、ポリ公め!』

 

全方位から光線が放たれてパトカイザーに直撃する。

 

「ぐうあっ!」

 

「うぐっ!!」

 

「うわぁっ!」

 

パトカイザーはその攻撃に思わず膝をついた。

 

その様を面白そうに見るギランボの分身。

 

なのはたちの攻撃を無視しながらその場を見下ろす。

 

『さて、どう料理してあげようかしら?』

 

『それとも拷問?』

 

『それとも、また光線を浴びせて蒸し焼き?』

 

ギランボの分身の分身たちの不穏な言葉がパトカイザーに浴びせられる。

 

『あわわわ、おいどうするんだよ!』

 

グッドストライカーはこの状況に不安に思いながら1号たちを見る。

 

「…なら、これを使います!」

 

そう言って2号はトリガーマシンレスキューをvsチェンジャーに取り付けた。

 

『レスキュー!

位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!

緊・急・救・命!!』

 

『右腕、変わります!!』

 

トリガーマシン3号とトリガーマシンレスキューが入れ替わるように、パトカイザーの右腕に装着される。

 

すると、先端のハッチが開いて大量の注射型のミサイルがギランボの分身の分身に襲い掛かった。

 

『っ!?

きゃああっ!?』

 

突然の攻撃に対応できなかったギランボは分身が解かれる。

 

『な、何よこれ!?

動けないじゃない!』

 

ギランボは先ほどのミサイルの効果でなのか動きが鈍っていた。

 

「サンキュウー、かこ!

これで一気にとどめだ!!」

 

「「了解!!」」

 

1号たちはVSチェンジャーをギランボに向けてエネルギーを溜める。

 

『喰らえ!

パトカイザー・バインドブラスト!!』

 

三人が引き金を引いた瞬間、パトカイザーは右腕のレスキューからミサイルが一斉方向でギランボに直撃し、左腕のキャノンが強力なエネルギー弾が発射されてギランボの体に直撃して大爆発を起こした。

 

『そんな、すべての子供たちの夢は、私の料理なのにぃいいい!!!』

 

ギランボは光の粉を撒き散らしながら爆発して、元の魔女の姿へと戻った。

 

光の粉は子供たちの夢へと戻り、子供たちは意識を取り戻した。

 

 

 

 

魔女を更生したバンたち。

 

ギャリーはイヴとメアリーを連れてお礼を言った。

 

「今日は色々あったけど、助かったわ。

ありがと」

 

「ありがとうございます!」

 

「ありがとう!」

 

「礼なんて良いんだよ。

けど、どういたしましてだな♪」

 

「では私たちは子供たちがいるのかの確認と、子供たちを家族さんのところにお送りするので、これで失礼します」

 

「もうすぐハロウィン終わっちゃうけど、楽しんでね!

バイバーイ!」

 

「ではギャリーさん、イヴちゃん、メアリーちゃん、元気で」

 

「次は知らない人からむやみにお菓子もらうんじゃないわよ」

 

そう言って、バンたちはギャリーと別れて子供たちの確認と家族へ送り返すことにした。

 

そして行方不明になっていた子供たちが全員いることを確認して、無事に家族の下へと送ったバンたちはハロウィンが終わるその日まで楽しむのであった。



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金丈コーポレーションと対峙

すみません、少し文章がおかしくなってるかもしれません。

あと、NCドラゴンさんの出して頂いた転生者の予定だった一般人を出します。




「くそっ!

サーチェスもケイネスもやられちまうなんて…!」

 

あるビルの社長室、一人の男が怒りのあまりに机を叩いた。

 

「一刻も早く、あのガキを取り戻して、金をじゃんじゃん出してもらわねぇといけねぇってのに!」

 

「社長、お取り込み中に失礼します」

 

「…何だ?」

 

男が悪態をついている所に黒服の男が複数の男を引き連れて入ってきた。

 

その複数の男たちは一人の男を縄で縛って連れて来ていた。

 

「おい、放せよ!

桜は、桜はどこにいるんだ!」

 

「桜?

おい、こいつはまさか…」

 

「はい、以前脱走した家甲桜の父親ではないかと。

確認は取ってあります」

 

「ほお?

では、こいつにも聞こうじゃないか。

だが、万が一のこともある。

…あれを用意しろ」

 

部下に指示を送った後に、男は懐から札束を取り出して縛られている男の方へと歩み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回の戦いから数日後。

 

バンたちはある男が金丈コーポレーションに誘拐されたという情報を聞いて、金丈コーポレーションの前まで来ていた。

 

その拐われた男というのは、家甲達人、桜の父親だった。

 

中に入るともぬけの殻で、社員らしき姿も見えなかった。

 

「…何で誰もいないんだ?」

 

「あっ、バン隊長!

あれを…!」

 

かこは広間の前に何かを見つけて指を指した。

 

そこには全身が禍々しく黒い西洋の鎧が立っていた。

 

だが、次の瞬間にいきなり動き出して、剣や槍を取り出して、バンたちに飛び掛かった。

 

「「「「っ!?」」」」

 

バンたちは反射的に避けて、VSチェンジャーとXチェンジャーを使って変身した。

 

1号はパトメガボーで鎧の剣を押さえる。

 

すると、鎧から呻き声が聞こえた。

 

「さ…、さく、ら…」

 

「っ!?」

その鎧は喋ったのだ。

 

つまりは人間だった。

 

「この鎧、まさか…!」

 

「桜ちゃんのお父さん!?」

 

鎧の言葉を察した1号たちは動揺した。

 

まさか、誘拐されたはずの男が今鎧を着て1号たちに襲い掛かってきているのだから。

 

だが、その男は呻き声をあげながら剣と槍を振り回して1号たちに猛攻を繰り広げる。

 

「まさか、あの鎧で操られてるのか!?

ぐっ…!」

 

パトレンXは察したのか、Xロッドソードを構えて男を取り押さえる。

 

「亀山さん!?」

 

「ここは俺が食い止める!

バンくんたちは先に進んでくれ!」

 

「っ!」

 

「「「了解!!」」」

 

そう言って、1号たちは社長室へと向かった。

 

そして1号たちは社長室へとたどり着き、扉を開けた。

 

「ようこそ、パトレンジャーの諸君」

 

そこには一人の男が、迎え入れるように手を広げていた。

 

「お前が、この会社の社長の金丈公也か」

 

「いかにも。

お前たちがここに着たということは、あいつは下の階の玄関で門番やらせていたあいつはやられたか。

…あの役立たずが」

 

1号たちに聞こえないように金丈は悪態を着く。

 

「…先ほど玄関で鎧を着ていた人がいました。

あの人は、桜さんのお父さん、ですよね?」

 

2号はVSチェンジャーを構えながら男に言った。

 

「あぁ、そうだな。

まともに話そうともしなかったから部下に作らせた理性を失う鎧を着させてな。

…おや、久しぶりに見る顔だな。

お前は、あの図書館のガキだな?」

 

「…っ!」

 

2号は金丈に言われて警戒する。

 

かつて右京と話をした時に、この男の特典による事件で自分たち家族の人生を台無しにされて殺された可能性があったからだ。

 

「なら、一つ聞いても良いですか?」

 

「ほお?」

 

「…常連客の人たちの様子がおかしくなったのも、身に覚えのない借金を背負わされたことも、お父さんとお母さんが目の前で殺されたことも、私自身も殺されたことは、全部あなたが特典を使って仕組んだこと何ですか?」

 

「…違うと言えば、この場を見逃してくれるのか?」

 

「答えてください!」

 

男はかこを煽るように言葉を返して、かこは叫ぶ。

 

「…」

 

すると男は、まるで踊るようにその場をぐるぐると歩きだした。

 

「正解だ。

あの時はスカッとしたぜ…。

お前の親は、俺の駒にならなかったからな」

 

それから金丈は歌うように話した。

 

かつて常連客を調べ上げて特典で洗脳した後で、適当なそれもマイナスになるような発言や手紙をやらせたこと。

 

その中には2号の親を連帯保証人とした莫大な借金を作り雲隠れさせた人もいたこと。

 

そして警察官や裁判官などを洗脳した後で適当な理由をつけて捕まえ拷問、そして部下を使ってかこの目の前で処刑し、後日他の部下にかこの始末をさせて図書館に火を放つようにしたこと。

 

金丈はそれらを楽しそうに語っていた。

 

「本当にスカッとしたぜあの時はよぉ!!!!

俺に逆らうからあんな目に遭ったんだからよぉ!!

はぁーはっはっはっはっ!!

お笑いとかドキュメント並みに笑えてきたものだぜオイ!」

 

金丈は目に涙を浮かべて腹を抱えながら大いに笑う。

 

その行為だけで、2号の手は怒りに震えていた。

 

「あなたは…!」

 

「かこっ!!」

 

「っ!?」

 

怒りに震えていた2号の手を、1号が掴んだ。

 

「バン隊長…?」

 

「落ち着こうぜ、かこ。

確かに、あいつの言ってることはムカつくけどよ。

でも、だからって、感情的になりすぎるなよ」

 

「でも…!」

 

2号は癇癪を起こしそうになったが、1号は2号の頭に手をポンと置いた。

 

「心配するな。

俺たちがいるから、お前は一人じゃない」

 

「そうだよ、ボクたちもかこが無茶したら悲しいから。

だから、一緒に戦お?」

 

3号も続いて言う。

 

「…っ!

…はい」

 

2号は少し泣きそうになりながら頷いた。

 

それを見て安心した1号は金丈を睨み付けた。

 

「おい金丈。

俺たちはな、これまでたくさんの転生者を更正してきた。

中には、その世界で生きたいと願ったやつもいて、そいつから家族の繋がりを無理矢理断ち切ったこともあった」

 

「…」

 

金丈は1号たちを見下すように睨み付けるが、それでも構わず1号は金丈にVSチェンジャーを向ける。

 

「俺たちは曲がりなりにも罪を数え始めた。

さぁ、お前の罪を数えろ…!」

 

1号は、かつてルパンレンジャーが言っていた言葉を使って金丈に言った。

 

その時の1号のマスクの下はまるで苦虫を噛み潰したような苦い表情だった。

 

 

「…そうか。

良いだろう、今お前らをこの建物ごとぶち殺してやる…!」

 

金丈は1号たちの言葉に苛立ちを覚えたのか、懐から怪獣の模様が入ったカプセルを二つ取り出した。

 

そのカプセルはよく見ると金の紋章が浮かんで金色に輝いていた。

 

そのままベルトに装着していたアイテムに挿し込んだ。

 

「そのアイテムは!」

 

「こいつらは俺の特典じゃない。

部下に不眠不休、連日徹夜で作らせた、擬似的なジードライザーとカプセルスキャナーさ。

ま、部下からもらった後で捕まるのも面倒だから処分したがな」

 

「始末した!?

お前、操ってるとはいえ自分の部下を…!」

 

1号は金丈の言葉を聞いて怒りが込み上げる。

 

「あぁそうさ。

あと、ここに来る間にあいつ以外に誰も会わなかったろ?

それは俺があいつらから、操るのに使った金を全部取り戻してこのカプセルの怪獣たちにぶち込んだからさ。

今頃仕事場の机とかで突っ伏してるぜ。

それに、擬似的とはいえ、まだこいつらは俺に忠実ではなかったからな」

 

「てめぇ…!」

 

金丈は、赤と黒で彩られたデバイス、ジードライザーを取り出して起動し、そのアイテム、カプセルスキャナーにスライドさせてる。

 

「さて、色々と話したが、俺の思い通りにならないやつは邪魔でしかないんだよ。

なにせ俺は、この世界の王だからな!!」

 

『フュージョンライズ!

ドラコ!

クレージーゴン!

クレージードラコ!!』

 

その瞬間、金丈の体は光になって建物の外へと出る。

 

すると黒いうろこに所々金色の装甲が纏わりつき、右腕は巨大なアーム、左腕は鞭になっていて先端に鎌が取り付けられ、背中には透明な翼が広がり、顔の右半分が機械なった巨大な怪獣の姿へと変わった。

 

「あいつ…!」

 

1号たちは即座に身構える。

 

その時にグッドストライカーが飛んできた。

 

『グッドストライカー ぶらっと参上!

今回はクールに燃えてる警察に力を貸すぜ!』

 

「…グッドストライカーか。

わかった、じゃあ借りるぜ!

行くぞお前ら!」

 

「「了解!!」」

 

『グッドストライカー!

位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!

一・撃・必・殺!!』

 

『1号 2号 3号!』

 

『位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!』

 

『轟・音・爆・走!!』

 

『百・発・百・中!!』

 

『乱・撃・乱・打!!』

 

『警察ガッタイム!

正義を掴み取ろうぜ!』

 

『完成 パトカイザー!!』

 

1号たちはパトカイザーに合体を終えて金丈が変身したクレージードラコの前に立つ。

 

『…』

 

互いに牽制するように身構えながら右へと足を進める。

 

先手を取ったのはクレージードラコだった。

 

「「「っ!?」」」

 

クレージードラコは翼を広げて一気に距離を積める。

 

パトカイザーはとっさに右腕のロッドで殴ろうとするも胴体をクレージードラコの右腕の巨大なアームで掴まれビルに押し付けられる。

 

「ぐっ!」

 

「きゃっ!」

 

「あうっ!」

 

『はーはっはっは!

どうした、その程度か!?』

 

クレージードラコはアームを勢いよく振り上げて、パトカイザーを大きく投げ飛ばした。

 

パトカイザーは全身のスラスターを吹かして態勢を立て直した。

 

「ぐっ…!

こいつ!」

 

パトカイザーは左腕のキャノン砲をクレージードラコに向けて撃つ。

 

しかし、まるで嘲笑うようにクレージードラコは翼を広げてジャンプする。

 

「ええい!」

 

続けて2号が狙いをつけて空を飛んでいるクレージードラコに向けて連続で撃つ。

 

『おー、怖い怖い!!』

 

クレージードラコは素早いスピードで難なくかわしていく。

 

そしてその速度を維持したままクレージーは左腕の鞭を伸ばしてパトカイザーの胴体を縛りつける。

 

「なっ!?

ぐっ…!」

 

「何これ!

取れないよ…!」

 

パトカイザーは胴体を振り回してほどこうとするが先端の鎌が引っ掛かって取れない状態だった。

 

『お前たちがどんなことをしようともなぁ…!

無駄なんだよっ!!!!!』

 

クレージードラコはそのまま左腕を振り回してパトカイザーを地面から浮かせては叩きつけるを数回行う。

 

それで、何度目かで鞭はほどけて、パトカイザーは地面に叩き付けられた。

 

「くっ…!

一体、どうすりゃいいんだ!!

…!」

 

すると、1号の懐が光だした。

 

何が起こったのかと懐から取り出すと、トリガーマシンスペーススクワッドが光を放っていたのだ。

 



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打つべきピリオドとエボルト

1号たちがパトカイザーに乗って戦ってる間、パトレンXは鎧の男と広い玄関で戦っていた。

 

すると、玄関に強烈な爆発音が聞こえ、火花が飛び散った。

 

「いってー!

あいつ、どこから機関銃とガトリング出してきたんだ…?」

 

パトレンXは残骸の後ろに隠れて様子を見ていた。

 

見つめる先には、呻き声をあげながら機関銃やガトリングをぶっぱなす鎧の男がいた。

 

しかもよく見ると、機関銃とガトリングが赤黒くなっているのが見えた。

 

「saaakuuuuraaaaaaa!!!!!」

 

「おいおい、これってfateのランスロットのナイトオブオーナーじゃないのか?

ってことは、あれと理性失う効果のあるやつを複合ってか」

 

パトレンXはxチェンジャーを構えながら言う。

 

すると、パトレンXは隠れている残がいの近くから爆発音が近づいてるのが聞こえた。

 

「やばい!」

 

パトレンXは攻撃がすぐ近くで起きてると分かった途端、急いで物陰から脱出した。

 

すると、鎧の男は今度はバズーカを取り出して、パトレンXに目掛けて発射した。

 

「うおっ!?

マジかよ!?」

 

パトレンXの胸部に目掛けて飛んできたバズーカの砲弾は、パトレンXが咄嗟に身を伏せたことで通りすぎた。

 

しかし、後ろに飛んだことで、通路が瓦礫でふさがれてしまった。

 

「しまった、通路が!?」

 

「saaaa…」

 

これでは1号たちと合流できないとパトレンXは嘆きそうになるが、鎧の男は今度はチェーンソーを取り出した。

 

しかも、エンジンがかかっていて刃が回転している。

 

「saaaaaaaaaakuuuuuuuuuraaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」

 

「くっ!!」

 

鎧の男は咆哮しながらチェーンソーを振り回す。

 

それに対して、パトレンXは覚悟を決めたのかXロッドソードを構えて突っ込んだ。

 

「もうやめろぉおお!!」

 

パトレンXはそう言って、Xロッドソードを勢いよく斬りつけて、チェーンソーを破壊した。

 

そして、そのまま取り押さえるように壁に押し付ける。

 

「さっきから聞いてりゃ桜、桜って。

あんたは娘が好きなんだなって思う。

だから、あんたは自分の娘を探すためにここまで来たんだろ!」

 

「saaaa!?」

 

「でも、その時にここのやつらに捕まって、こんなの着せられて暴れまわって、そんなことで娘さんが喜ぶとでも思ってんのかよ!」

 

「saa…」

 

パトレンXの言葉を聞いて、少しずつ正気に戻ってきているのか、大人しくなる鎧の男。

 

兜の目の部分から涙が出ていた。

 

その目には、まるで自分を止めてくれと言わんばかりの目で睨んでいた。

 

鎧の男には言葉を発する程の理性がなくても、パトレンXにはそのように伝わった。

 

「…あぁ、今すぐ終わらせてやるさ。

少し耐えてくださいよ、家甲達人さん!」

 

パトレンXはXロッドソードを鎧の男、達人の胸に当ててレバーを動かす。

 

『一手 二手 三手 十手!

一騎当千!

イチゲキエックスストライク!!』

 

「くらえ、エクセレントエックス!!」

 

「saaaaaaaaaaaaaaaaaaaっ!!!!!」

 

至近距離から放たれた一撃は、達人の鎧を木っ端微塵に破壊して、その中から、気を失い多少の傷を負った達人が出てきた。

 

パトレンXは達人の体を支え、そのまま床に下ろす。

 

「これでもう大丈夫だ。

あんたを、必ず娘さんに会わせるからな…。

…!」

 

突然、外から激しい音が聞こえ、地面が揺れた。

 

「な、何だ…?

って、あれは…!」

 

パトレンXは外を見ると、怪獣とパトカイザーが戦っているのが見えた。

 

「おいおい、まさかあの怪獣って、ここの社長じゃないよな…!

いや、多分な…」

 

パトレンXはそのように察して、達人を崩落や巻き添えに合わないように安全な場所に連れていき、そのままパトカイザーの戦いを見ていた。

 

「そう言えば、パトカイザーってあんな姿だったか?

…とにかく、戦いが終わったら、やつには聞かなきゃいけないことを聞かないと…!

右京さんが言ってた、ギャングラーについて…!」

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ1号たちは。

 

「…」

 

パトカイザーを叩きのめされて危機的状況に陥った時に、1号が持ってるトリガーマシンスペーススクワッドが光り出したのだ。

 

「…まさか、これを使えってのか?」

 

『おいおい、迷ってる暇があるかよ!

このままじゃあやられちまうぜ!』

 

「そんなの分かってるぜ!

…かこ、アストルフォ!

お前たちはこれを使え!!」

 

1号は2号にトリガーマシンバイカーを、3号にトリガーマシンクレーンとドリルを渡した。

 

『スペーススクワッド!』

 

『バイカー!』

 

『クレーン!』

 

『位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!』

 

『銀・河・宇・宙!!』

 

『縦・横・無・尽!!』

 

『伸・縮・自・在!!』

 

『頭、右腕、左腕、変わります!』

 

パトカイザーと合体していた1号、2号、3号が分離し、それと入れ替わるようにトリガーマシンスペーススクワッドが中心部が折れて中から頭部が現れ合体し、トリガーマシンスペーススクワッドの先端は胸部に、後方のウイングやスラスター部分は背後に装着する。

 

そして右腕にはトリガーマシンクレーンが、左腕にはトリガーマシンバイカーが合体した。

 

「完成 スペースパトカイザー ストロングバイカー!!」

 

『ううーん、良い名前じゃねぇか!!』

 

「言ってろ!

よし、かこ、アストルフォ、行くぞ!!」

 

「「了解!!」」

 

1号たちはレバーを動かし新たな姿になったパトカイザーで一気に距離を詰める。

 

それは、スペーススクワッドの恩恵で通常時よりもかなり速いものだった。

 

『ふん、姿が変わったからってどうなるんだよ!』

 

クレージードラコは右腕のアームでパトカイザーを握り潰そうと構える。

 

「さっきと同じと思ってんじゃねぇよ!」

 

パトカイザーの右腕のクレーンを前に突き出し、機動力もあってすごい勢いでアームが伸びる。

 

『何っ!?

ぐあっ!!』

 

クレージードラコはその速さに反応できず、アームに、上空へと吹き飛ぶ。

 

『ぐっ…!

だが、俺のクレージードラコの飛行に着いてこれるかよ!!』

 

クレージードラコは空中で翼を開き、そのまま停滞し、左腕の鎌付きの鞭で地上にいるパトカイザーに攻撃しようとする。

 

「空を飛べるのはあなただけではありません!」

 

パトカイザーは鎌付きの鞭の攻撃を避け、ジャンプするように飛び左腕のトリガーマシンバイカーの車輪を回転させてクレージードラコの顔面を殴る。

 

強烈な回転をする大型の車輪はクレージードラコの装甲を削るようにめり込んでいく。

 

『ぐあぁあああ!?

ちょ、調子に乗るなぁ!!』

 

クレージードラコは顔がめり込みながらも右腕のアームでパトカイザーの胴体を切り裂こうと振り下ろす。

 

『デカモード!!』

 

その瞬間、パトカイザーの背中のウイングが変形して、巨大な手錠が飛び出し、そのままクレージードラコのアームに絡みついた。

 

『何ぃ!?

ぐぅあっは!!』

 

アームを絡められてそのまま顔面を殴り飛ばされて地面に墜落しそうになる。

 

クレージードラコは墜落すまいと翼を広げて衝撃を殺そうとした。

 

だが次の瞬間、クレージードラコは目にした。

 

はるか上空から、パトカイザーが出現した大型の剣を出して、右腕のクレーンのアームを構えて、それを弾の代わりに撃ち抜こうと狙いを定めているところを。

 

『嘘だろ!?

ちぃっ!!』

 

翼で勢いを殺しながらなんとか手錠を外して、アームで迎え撃とうとした。

 

パトカイザーのクレーンから放たれたその剣は、すさまじい速度でクレージードラコに目掛けて発射される。

 

『馬鹿め、そんなものこのクレージードラコのアームで!?』

 

金丈の言葉が、途中で途切れる。

 

何故ならクレージードラコのアームが、剣を掴んだが、クロー部分が一瞬でバラバラに吹き飛び、アームも肩から先が衝撃で引きちぎれたのだ。

 

『ぐぅあああ!?

なんだと!!?』

 

クレージードラコはそのまま地面に叩きつけられて、よろめきながらも立ち上がった。

 

それに合わせるように、パトカイザーも地面に降りる。

 

『この、クソカスどもがぁあああ!?』

 

クレージードラコは残った左腕の鎌を構えて翼を広げて、パトカイザーに一気に近づく。

 

「動きが丸見えだよ!」

 

パトカイザーの右腕のクレーンからドリルが飛び出し、そのままクレージードラコの片方の翼に大きな風穴を開ける。

 

『それがどうしたぁああああ!!!!』

 

翼を片方潰されても勢いに乗せて鎌を振り下ろす。

 

パトカイザーは右腕で、クレージードラコの左腕の刃のない部分を受け止め攻撃を防ぐ。

 

「おらぁ!!」

 

そのままクレージードラコの腕を振り払い、距離を開ける。

 

クレージードラコは勢いを殺されたことやダメージが大きいことから、立ってるのがやっとの状態だった。

 

「これでとどめだ!」

 

三人はVSチェンジャーを引き抜き、狙いを定める。

 

それと同時に、パトカイザーの胴体からオーラが吹き上がり、キュウレンジャー、タイムレンジャー、デカレンジャーの戦隊ロボのオーラが現れ、そのままパトカイザーと一体化する。

 

『くらえ!

スペースパトカイザー・トリプルギャラクシーレジェンド!!』

 

「これで、一巻の終わりとさせてくださぁぁぁぁぁいっ!!」

 

三人が同時にVSチェンジャーの引き金を引いた瞬間、クレーンの前に飛び出したドリルが、クレーンのアームで勢いよく発射されて、ドリルは回転しながらクレージードラコの体に突き刺さる。

 

それに追い討ちを掛けるように一気に距離を詰めてバイカーの車輪で、回転するドリルを殴り付ける。

 

そこから吹き飛んだクレージードラコの胴体に刺さったドリルにぶつけるように、ワイヤーで繋がったバイカーの車輪が発射し、ドリルが深々と突き刺さるように激突する。

 

その凄まじい衝撃と共にドリルはクレージードラコの胴体を貫通し、大きな風穴が開ける。

 

『ばかな…!

俺は、王なんだぞ!?

それがこんな、こんなぁぁぁぁぁっ!!!!!』

 

クレージードラコは勢いよく吹き飛び、その途中で大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

「がはっ!

くそぉ!!」

 

金丈はボロボロの体で口から血を吐いて、近くにあった建物の壁にもたれ掛かる。

 

「待ってください!

そこまでです!!」

 

「っ!?」

 

すると、パトレンジャーがすぐに駆け付けてVSチェンジャーを構えていた。

 

「ぐっ!」

 

「待ってくれ、かこちゃん、みんな!」

 

そう言って後からパトレンXが駆けつけた。

 

「亀山さん…」

 

「ごめん、このまま更生する前に一つ聞きたいことがあるんだ。

お前、ギャングラーって組織を知ってるか?」

 

「…!」

 

パトレンXの言葉を聞いて、1号たちは右京からの言葉を思い出す。

 

時空管理局のはやてから、金丈コーポレーションはギャングラーという組織と繋がってる可能性があるという情報を聞いたと。

 

「ぎゃ、ギャングラー?

はっ、誰がそんなことを…!」

 

「よう、来てみれば随分な様だな、金丈?」

 

『っ!』

 

金丈が反抗しようとした途端、どこからか声が聞こえた。

 

すると、金丈の姿が何かにかっさらわれるように消えた。

 

「何だ今のは…!

金丈はどこに…!」

 

「こいつならここだ」

 

再び聞こえた声を聞いて、1号たちは後ろに振り向く。

 

するとそこには、赤い鎧に蛇の装飾が彩られた怪人が金丈を担いでいた。

 

「お前、その姿は仮面ライダービルドのブラッドスタークか…!」

 

「正解、流石は転生者専門の警察だ!

そうだ、俺がブラッドスタークだ。

そして、俺の名は…」

 

「おい、エボルト!

ちょうど良かった…!

俺を助けてくれよ!」

 

怪人、エボルトは自己紹介を金丈に途中で遮られた挙げ句、自身の名前を言われてため息をついた。

 

「はぁ…。

人の自己紹介を邪魔をするとは心外だねぇ…。

フッ…!」

 

「うっ!」

 

エボルトは金丈に腹パンをくらわせる。

 

それでいくらか気がすんだか、再びパトレンジャーに顔を向ける。

 

「まぁその、なんだ。

俺はエボルトであり、お前たちが気になってるギャングラーの、幹部だ。

それにしても、まさか金丈を倒しちまうんだからな。

おかげで、俺の目的も達成できそうだ」

 

「目的…?

何を言ってんだ!」

 

「それはだな…。

こうするんだよ!」

 

『っ!?』

 

エボルトが言った瞬間、エボルトの腕から管が伸びて、金丈の体を突き刺した。

 

「ぐぅああああああ!?」

 

金丈は絶叫しながら体は紫に染まり、跡形もなく消滅した。

 

そしてエボルトの手には、火の玉らしきものがあった。

 

「それは、金丈の魂、なのか!?」

 

「そうだ。

俺はこいつの魂を取り込めば、本来の力を取り戻すことができる。

こいつには、それほどの力があるんだよ」

 

「でも、待ってください!

金丈さんはお金を使っての洗脳しか…」

 

「おいおい勘違いするなよ?

用があるのは、特典じゃなくてこいつの欲望に染まった魂だからな」

 

そう言って、エボルトは体に金丈の魂を取り込んだ。

 

「魂を、取り込んだ…!」

 

そして、エボルトは自身の体をさする。

 

「…やはりだな。

世の中探しても、こいつほど欲望に染まったやつはそうそういないさ。

そして…」

 

エボルトは懐からベルトを取り出し、腰に当てる。

 

『エボルドライバー!』

 

『オーバー・ザ・レボリューション!!』

 

ベルトを腰に巻き付けて黒と白の特殊なデバイスを起動して装着する。

 

そして、コブラと歯車の紋章が入った2つのアイテムをベルトに刺した。

 

『コブラ!

ライダーシステム!

レボリューション!!』

 

そのままエボルトはベルトのレバーを回すと周りに歯車が現れて、エボルトは腕をクロスする。

 

『Are you ready?』

 

「変身!」

 

『ブラックホール ブラックホール ブラックホール!!

レボリューション!!

フッハッハッハッハッハッハ!!』

 

瞬間、エボルトの姿が変わり、顔はコブラを連想し、ブラックホールを思わせる色をした鎧を身に纏っていた。

 

「ふふ、懐かしいなこの姿は…!」

 

「おい待て!」

 

「ん?」

 

「お前がエボルトなのはわかったが、お前の目的はなんだ!

ギャングラーの目的はなんだ!」

 

1号はVSチェンジャーを構えながらエボルトに聞いた。

 

「そんなもの、世界征服に決まっているだろ?

そして俺は色んな世界を滅ぼして、全てを俺の一部にするんだ」

 

「…だったら、なおさらここで逃がすかよ!」

 

『バイカー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

「やめとけやめとけ。

お前じゃあ俺には勝てねぇよ」

 

「うるせぇ!

バイカー撃退砲!!」

 

1号から、バイカー撃退砲が発射される。

 

それを見たエボルトはやれやれと言った感じで首を横に振った。

その瞬間、タイヤ型のエネルギー弾が消し飛び、1号の目の前にエボルトが現れた。

 

「え…?」

 

「フッ!」

 

呆気に取られた1号はエボルトに殴られて壁に激突する。

 

「がはっ!!」

 

「やめておいたほうが良いぞ?

俺はこれでも、同じ幹部だった金丈を倒したお前たちのことを買ってるんだ…」

 

エボルトは2号たちにVSチェンジャーを向けられているにも関わらず、呑気そうに話す。

 

「はぁはぁ…!

お前みたいなやつに買われても、嬉しくもねぇよ!!」

 

「そう言うなよ。

お前たちに情報として俺から一つくれてやるからよ」

 

「何…?」

 

パトレンXは警戒しながら聞く。

 

「あぁ、そうだ。

…お前たちは、ルパンX、銀色の怪盗にあったことあるよな?」

 

「…あいつがどうしたんだ?」

 

ルパンX、銀色の怪盗。

 

1号たちは一度だけ、共闘したときにあったことのある怪盗だった。

 

「あいつはな、俺の相棒であり、半身だ」

 

『っ!?』

 

エボルトの言葉に思わず驚いてしまう。

 

「…つまり、お前たちギャングラーはルパンレンジャーと繋がってるということなのか?」

 

「さてね。

その辺りは、ルパンレンジャーを取っ捕まえるなりして、聞いてみるんだな。

チャオ!」

 

「あ、待て!」

 

エボルトはブラックホールの中に入るようにして、その場から消えた。

 

「あいつら、本当にギャングラーと…?」

 

「やはり、遅かったか」

 

『っ!?』

 

1号は壁から抜け出せた後で考えようとした時に、1号たちの前から、銀色の怪盗、ルパンXが現れた。

 

「お前は…!」

 

「俺はルパンX。

そこにいるパトレンXと同様に、Xチェンジャーの変身者さ」

 

「何しに来た…!」

 

1号は警戒しながらルパンXに聞いた。

 

先ほどエボルトが言っていたことが本当なら、ルパンXはエボルトと同じ存在のはずだからだ。

 

「俺はエボルトを追っかけてたんだ。

それで奴の気配を感じたんで来てみたら、もう姿を消していたみたいだけどな」

 

「…お前、いやお前たちルパンレンジャーはギャングラーと繋がってるのか?」

 

「その口振りだと、俺がエボルトの半身だったことを聞かされたみたいだな」

 

ルパンXは少しため息をつく。

 

「まっ、間違いではないさ。

そもそも、俺の正体を見れば、一目瞭然だろうさ」

 

ルパンXはそう言って、Xチェンジャーを操作して変身を解除すると、壮年の男へと変わった。

 

「っ!?」

 

その姿を見て、1号は驚いた。

 

「お前、まさか仮面ライダービルドの石動惣一か…!」

 

「まぁな。

今は石堂惣一で通ってるが。

一応断るが、お前たちの知るビルドの世界の俺じゃないからな」

 

「まさか、平行世界、なのか?」

 

「そうだな。

それで、エボルトは俺のことを半身と言っていたが、正確には操られていた。

その辺りは、ビルドの世界のことを知ってるならわかるだろ?」

 

石堂はそう言って、懐からウサギの模様の、エボルトのアイテムに似た物を取り出した。

 

「そのアイテムは…!」

 

「これはラビットエボルボトルだ。

俺はエボルラビットフォームに変身して、ビルドたちと一緒に命懸けでエボルトを倒して、その時に俺は死んだ。

これが俺の話さ。

さすがに三人のことは話す気はないぞ?

あいつらにとって正体は生命線だからな」

 

「ねぇ、ボクから質問良いかな?」

 

3号が質問する。

 

「エボルトのことがあるから正体を晒すのはわかるけど、ここまで話をするってことは何か目的があるんじゃないのかい?」

 

「…そうだな。

強いて言うなら、エボルトを倒すために、俺たちルパンレンジャーと手を組め」

 

「は?」

 

3号は思わず唖然する。

 

1号たちも同じだった。

 

「別に、今に始まったことじゃないだろ?

そもそも、俺がこうやってお前たちに頼むってことはそれだけ今回は危険な状況にあるんだよ」

 

「っ!」

 

1号はそれを聞いて思い出す。

 

エボルトの目的を。

 

「このままあいつを野放しにすると、世界が滅びる…!」

 

「そういうことだ。

俺たちとしては、エボルトを倒すことは重要なことでもあるんだ。

もちろん、お前たちへの報酬として、ギャングラーの情報をくれてやるよ。

別に悪い話ではないと思うが、どうなんだ?」

 

『…』

 

1号たちは互いに見ながら、どうするかを考える。

 

今回も怪盗と共闘するのか。

 

でも、共闘しなければ、エボルトに勝つ可能性が低くなり、世界が滅びる。

 

1号たちは覚悟を決めて、再び石堂の方へと顔を向ける。

 

「…わかった。

その話に乗ってやる!

それでエボルトを倒せるならな!」

 

「あぁ。

その時はよろしく頼む、じゃあな!」

石堂は再びルパンXに変身して、Xトレインに乗ってその場を去った。

 

その場を去ったことを確認した1号たちは変身解除する。

 

すると、緊張の糸が切れたのか、かこがその場に座り込んだ。

 

「かこ!?」

 

「かこ、大丈夫?」

 

「かこちゃん、どうしたんだ?」

 

「…バン隊長、皆さん。

私は、ちゃんと自分自身とお父さんとお母さんの仇を、取れたんでしょうか?」

 

かこは、ポツリと言った。

 

「あぁ、きっと取れたと思うぜ。

更正はできなくても、あいつに勝ったんだから」

 

「うん、ボクも、そう思うよ。

きっと、君の両親も、喜んでると思うよ」

 

「…俺も、そう思う、かな」

 

バンはかこの頭を撫でながら言って、アストルフォは少し微笑みながら言って、亀山は少し頬を掻きながら答えた。

 

「…皆さん!」

 

それを聞いたかこは目に涙が溜まり、バンに抱きついて声を上げて泣いた。

 

 

バンは無言でかこを抱きしめ、アストルフォと亀山は泣いているかこを見ないように、顔を伏せたり、空を見上げていた。

 

 




家甲達人の容姿は、自分的にはfateZEROのマスターになる前の間桐雁夜のつもりです。


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ブラックホールに立ち向かう二つの赤

金丈コーポレーションでの戦いから数日後、バンはエボルトの資料を読んでいた。

 

正確には、エボルトと仮面ライダーエボルについてだが。

 

「…あいつが本当にエボルトなのは確かだ。

あのベルトとボトルの存在があるから…」

 

バンは読み進めていく。

 

エボルドライバーのことも、エボルボトルのことも、エボルトリガーのことも。

 

そして、エボルトが仮面ライダービルドの世界で何をしていたのかを。

 

それを読み進めていく内に、無意識の内に冷や汗をかいていた。

 

その時に、アストルフォから声をかけられた。

 

「隊長!」

 

「…!?

アストルフォか?

どうしたんだよ?」

 

「かこと霞から、桜ちゃんも、桜ちゃんのお父さんも容態が良くなってきた聞いたんだけどから、会わせても大丈夫だよね?」

 

「お、おう、そうだな。

俺も一緒に行くから、会わせてやろうぜ?」

 

「うん!」

 

バンは読んでいた資料を片付けて、アストルフォとともに病室へと向かった。

 

心のどこかで、エボルトに対する警戒心を抱きながら。

 

鎧で操られて気を失っていた家甲達人の容態も良くなり、病室でだが娘の桜とも再会することができた。

 

「お父さん…!」

 

「桜…!」

 

二人は涙を浮かべながら互いに抱きしめあった。

 

「良かったですね、桜さん、達人さん…!」

 

「うん、本当に会えて良かったね…!」

 

「そうだな…。

くそ、泣けてきたじゃねぇか…!」

 

その場にいたかこは涙がを指で拭って、アストルフォはハンカチで顔を拭きながら、バンは涙が見えないように顔を上げて手で隠している。

 

「…」

 

病室の入り口から様子を見ていた霞は、少し微笑みながら、その場を後にしようとした。

 

「…!」

 

しかし、霞は何かを察知して、目を見開き、足が止まった。

 

「な、何よこの反応は…!」

 

霞はすぐさま病室にいるバンたちを、達人と桜に気づかれないように手招きする。

 

「霞?

あいつ、どうしたんだ?」

 

「あんたら、ちょっと来なさいよ!

転生者の反応があったのよ!」

 

「…!

転生者、ですか…」

 

 

「まさか、誰かを襲ってるとか…」

 

「良いから来なさいよ!

そこにいられると、話しにくいじゃない…!」

 

そう言って、バンたちは達人と桜に気づかれないように、病室を後にして、霞からの説明を聞いた。

 

「街がブラックホールに呑み込まれてる!?」

 

「えぇ、突然街の上空にブラックホールが発生して、街もその住民も全員が呑み込まれてるのよ!

しかも、察知できた時点でもういくつもの街が消滅してる…!

おそらく、この間あんたらが遭遇したエボルトかも…!」

 

「エボルト!?

くそっ、かこ、アストルフォ、行くぞ!」

 

「「了解!!」」

 

バンは二人を連れて、現場へと走って行った。

 

 

 

 

上空から発生したブラックホール。

 

それは街にある物、人であろうと問答無用で呑み込み更地に変えていく。

 

その様を、白黒で蛇を連想する鎧を纏った男、仮面ライダーエボルことエボルトは手を広げて愉快そうに見ていた。

 

「フフフハハハハハハ!!

さぁ、もっと呑み込め!

そして俺の一部になれ!!」

 

「「「動くなっ!!」」」

 

ふと、エボルトは後ろから声が聞こえたので振り返ると、そこにはバンたちがvsチェンジャーを構えていた。

 

「よぉ、思ったよりも早いお出ましで手間が省けたぜ、パトレンジャー」

 

「手間が省けた?

じゃあてめぇは、わざわざ俺たちを呼びだすために街をブラックホールで呑み込んだってのか!?」

 

「そういうことだ。

ま、俺的にはルパンレンジャーというメインディッシュが来てくれることを期待していたのだがな」

 

「…どっちみち、お前を倒すだけだ!

行くぞ、かこ、アストルフォ!」

 

「「「警察チェンジ!!」」」

 

『1号!

2号!

3号!』

 

『パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

「パトレン1号!」

 

「パトレン2号!」

 

「パトレン3号!」

 

「「「警察戦隊 パトレンジャー!!」」」

 

「実力を行使させてもらうぜ!!」

 

「ふん、オードブルにはちょうどいい!!」

 

1号はvsチェンジャーとパトメガボーを、2号はvsチェンジャーを、3号はパトメガボーを構えて、エボルトの下へと走り出す。

 

先に攻撃を開始したのは2号。

 

2号はエボルトの足元に狙いを定めて撃つ。

 

「はぁ!」

 

「ほう、そう来たか…。

だが、これならどうだ?」

 

エボルトは手を払いのける様にすさまじい風を巻き起こして、2号が撃った弾丸の勢いを止めた。

 

「なっ!?」

 

「こうなったら…!

とうっ!」

 

続いて3号が勢いよく走り抜けて、エボルトの胴体を、パトメガボーで貫こうとする。

 

「フン…!」

 

「がはっ!?」

 

エボルトは残像を残すほどの速度で3号の攻撃を躱して、強烈な膝蹴りをぶつける。

 

そして、その衝撃で3号は接近していた2号にぶつかってしまう。

 

「きゃっ!」

 

「かこ、アストルフォ!

てめぇ…!」

 

二人が倒れたのを見た1号は、エボルトをvsチェンジャーで牽制しつつ接近し、パトメガボーで攻撃しようとする。

 

「ぬっ!?

では、こいつを抜くか」

 

エボルトはそう言って、手からノズルがついた剣を出現させた。

 

そして1号と鍔迫り合いになる。

 

「くっ…!」

 

「ふっふっふ…!

どうした、もっと俺に力を見せてみろ!」

 

「ぐあっ!!」

 

そのままエボルトと力負けして、1号は吹っ飛ぶ。

 

「ぐぅ…!」

 

「こうなったら、まずいよ。

隊長、この間のあれはどう!?」

 

「あれ!?

…わかった、使え!」

 

1号は3号の言葉の意味を察して、2号と3号にバイカーとクレーンを投げるように渡した。

 

そして、1号はスペーススクワッドを取り出し、スペースパトレン1号に変身して、タイムモードへと切り替えて、アサルトベクターを連結させて狙いを定める。

 

『バイカー!』

 

『クレーン!』

 

『パトライズ!

警察ブースト!!』

 

2号と3号はバイカーとクレーンをVSチェンジャーに装着する。

 

2号はタイヤ型のエネルギー弾を作り、3号はクレーンを右腕に装着して中のドリルがアームに乗ってエネルギーを溜める。

 

「行け、スペーススナイプバーニング!!」

 

「行きます、バイク撃退砲!!」

 

「行っちゃえ、ストロング撲滅突破!!」

 

三人の攻撃がエボルトに向けて発射される。

 

「うおっ!?」

 

エボルトはその攻撃に思わず両手で防ぐ。

 

衝撃で足が後ろに少し下がる。

 

だが、エボルトはそれに笑みを浮かべているのだった。

 

「…ほう。

これがパトレンジャーの力か、あいつらに比べてまだまだだが、これほどの力だとはな!

ぬぅおおおおおっ!!」

 

「「「っ!?」」」

 

エボルトは三人の攻撃を殴るように掻き消した。

 

それを見て驚いた三人に、高速で移動しながら攻撃した。

 

「ぐあ!?」

 

「きゃあああ!?」

 

「うおあああ!?」

 

その攻撃に対処仕切れなかったパトレンジャーは勢いよく、三人は一つに固まるように吹き飛ばされてしまう。

 

1号は今の攻撃で、スペーススクワッドが解除されてしまい、元のパトレン1号に戻ってしまい、2号と3号が気を失ってしまう。

 

「これで、終わりだ…!」

 

そう言って、エボルトはエボルドライバーのレバーを回す。

 

それと同時に、エボルトの手からブラックホールが発生して、次第に大きくなる。

 

「…っ!」

 

1号はそれを見た途端にわかった。

 

あの一撃をまともに食らったら死ぬと。

 

「くそっ!」

 

1号はすかさず2号と3号の盾になるように、体で覆った。

 

『READY GO!

ブラックホールフィニッシュ!』

 

その音声と共に、エボルトの手からブラックホールが放たれる。

 

1号はここまでかと、目をつぶった。

 

「まったく、世話をかけるぜ!!」

 

その直後、聞いたことのある声が聞こえた。

 

「諦めるかよ」

 

その言葉と共に、何かが1号たちの体に巻き付いて、そのまま力強く振り回されるようにその場から離れた。

 

ブラックホールはそのまま後ろにあった建物を破壊して、そのまま消滅した。

 

「どうやら、メインディッシュが来たようだな」

 

「このワイヤーは」

 

エボルトは空を見上げて、1号は巻き付いていたものがワイヤーだと気づき、それで気づいたのだ。

 

赤いルパンレンジャー、ルパンレッドが来たことを。

 

「よぅ、さっきぶりだな。

この騒ぎでのガーディアンの材料だが、もしかしてあれか?」

 

「まぁな。

オートマトンは実に良い材料だからな、大量に盗ませてもらった。

お前には感謝しているぜ、なんだってあの世界へと案内してくれたからな」

 

「そうか、だったら成仏しな」

 

「そう言うなよ、俺はお前との戦いは結構楽しみにしていたんだぜ」

 

「なに?」

 

そう言いながら、エボルトはルパンレッドに笑みを浮かべながら訪ねていく。

 

「だから提案だ。

ルパンレッド、俺と一体化しないか?」

 

「なに?」

 

「っ!?」

 

1号はエボルトの言ってることに恐怖した。

 

それは、エボルトの力と、情報を知っているから。

 

「お前の目的も知っている。

ルパンレンジャーになったのだって、その目的の為に過ぎないんだろ。

それにお前にとってもこの世界は好ましくないはずだ、纏めて消し去ろうじゃないか?」

 

「本気で乗ると思っているのか?」

 

「どうだろうな、だが俺はお前の敵の行方を知っている」

 

「っ!!」

 

「どうだ、簡単だろ、嫌いな世界を壊すだけでお前は目的を達成できる、これ程素晴らしい提案はないだろ」

 

エボルトは明らかに、ルパンレッドを取り込もうとしている。

 

もし、そうなったら、エボルトは、ルパンレッドの力を宿したエボルボトルを作って、新たな力を手に入れて、手に負えなくなる。

 

そうなってしまえば世界は確実に滅んでしまう。

 

「騙されるな!!

エボルトはルパンレッド、そのまま乗ったら、お前は後戻りできないぞ!!」

 

その考えに至って、1号はルパンレッドに怒鳴るように制止しようとする。

 

だが、ルパンレッドはどこか落ち着いた様子だった。

 

「…そうだな、まぁ確かにこの世界が嫌いじゃないと言ったら嘘になるからな。

正直言うと壊したいと思っている」

 

「ならば、俺と手を組むのに何の問題もないな」

 

「そうだな」

 

そう言って、エボルトは手を差し伸べながら近づく。

 

しかしは、ルパンレッドはエボルトにVSチェンジャーを構える。

 

「…何の真似だ?」

 

「何って、俺は提案なんて、最初から乗るつもりなんてないぜ」

 

「ほぅ」

 

「俺はこの世界が嫌いだというのは嘘でもない。

だけどな、それ以上にこの世界は大好きなんだよ。

帰る所があると思ってくれる仲間がいる世界を俺は守りたいからな。

だからエボルト、お前はここで倒す」

 

「ふっ、奴と似た感じだと思ったのだが、残念だ。

お前のペルソナ、できれば意思がある状態で取り込みたかったが、手段は変更しないとな」

 

「言っていろ」

 

ルパンレッドはそう言って懐から、戦闘機のようやアイテムと真っ白なトリガーマシンを取り出す。

 

「シャロン、力借りるぜ!」

 

その言葉と共に戦闘機型のアイテムをトリガーマシンに押し付ける。

 

その瞬間、真っ白だったトリガーマシンは青が特徴的な戦車型のトリガーマシンが現れる。

 

「これを使え」

 

「ルパンレッドっ!?」

 

ルパンレッドは戦車型のトリガーを1号に渡す。

 

「どういうつもりだ?」

 

「この状況で戦えるのは俺とお前だけしかないだろ。

お前に渡さないで意地を張っていたら、エボルトには勝てないからな。

さっさと使え」

 

「くそっ」

 

それだけ言うと各々のVSチェンジャーに戦闘機型のアイテム、と新しく誕生した戦車型のトリガーマシンを装着する。

 

『ビクトリーストライカー!

1・1・1!

ミラクルマスカレイズ!』

 

『サイレントストライカー!

グレイトパトライズ!』

 

『スーパー怪盗チェンジ!』 

 

『超警察チェンジ!』

 

『ルパンレンジャー!』

 

『パトレンジャー!』

 

二人が引き金を引いた。

 

それと同時にルパンレッドは体に戦闘機の装甲が装着されて、肩にはダイヤルと背中には戦闘機の翼が付いた姿になる。

 

1号の姿は金色の装甲が装着され、両肩にはレバーと二連装の砲台が装着された姿へと変わっていた。

 

「スーパールパンレッド!」

 

「超パトレン1号!」

 

「姿が変わった所で何ができる!」

 

「えっ」

 

ルパンレッドは何か戸惑いがあったらしく、一瞬だけ周囲を見回した。

 

「もしかして」

 

何かを察したルパンレッドはそう言い、エボルトの攻撃が来る前に1号を軽く蹴り飛ばして、攻撃を避け、手に持ったVSチェンジャーでエボルトが持っていた銃を打ち抜く。

 

「ぐっ、まさか、ここまで攻撃を読むとはな。

実力は確かに上がっているようだな!!」

 

その一言と共にエボルトは姿を消す。

 

1号はそれを見て周囲を警戒する。

 

しかしルパンレッドは懐からマグナムに似たアイテムを取り出すと、後ろへとワープしてきたエボルトを打ち抜き、そのまま後ろへと周り、蹴り飛ばす。

 

「さっさと撃て、それは飾りか?」

 

「言われなくても!!」

 

そう言って1号は肩についていたキャノン砲の引き金を引くと、スペーススクワッドと同等か、あるいはそれ以上の威力がある攻撃がエボルトに当たる。

 

「ぐっ、なぜ俺が背後に来るのを」

 

「俺の大切な妹から託された力だからな。

お前のよりも強かっただけだ」

 

それだけ言うとルパンレッドは度々襲い掛かってくるエボルトの攻撃を避けながら、攻撃を仕掛けていき、1号のキャノンによりエボルトの装甲徐々にだが剥がされていった。

 

「まさかここまでとはな!

下等生物如きがぁ!!」

 

「一気にとどめを刺す!!」

 

ルパンレッドはそう叫ぶと手に持ったマグナムらしき銃をVSチェンジャーをセットし、エボルトに狙いを定める。

 

【アン・ドゥ・トロワ!

イタダキ・ド・ド・ド・ドストライク!】

 

その音声と共に、ルパンレッドの目の前にある巨大な赤い光球が集まり始まる。

 

1号もキャノン砲のエネルギーが注ぎ込まれ、引き金を引く。

 

「舐めるなよ!!」

 

そう言いエボルトもドライバーを回して、こちら二人に向かって蹴り上げていくが、攻撃は1号とルパンレッドの方が早かった。

 

「結末はもう見たんだよ」

 

「なっ」

 

ルパンレッドはそう言い終わるのと同時にエボルトは光球によって打ち抜かれ、宙へと飛んだ。

 

「この俺がまた滅びるだと!!

人間共があぁぁ!!」

 

エボルトは最後の叫び声と共に完全消滅する。

 

「なんとか勝てたのか…」

 

そう言って1号は危機を脱せたのか地面に座り込むが、ルパンレッドはすぐさまその場から離れようとする。

 

「怪盗」

 

「それじゃあな、今度はそいつを返させてもらうからな」

 

そう言い、ルパンレッドは空を飛び、どこかへと消えてしまった。

 

「おい待て…、くそっ!

あいつに借りが出来ちまったじゃねぇか…!」

 

1号はルパンレッドが向かった空へと手を伸ばそうとするが、見失ってしまい、悔しそうに地面に横たわる。

 

そして、1号はルパンレッドに渡された戦車型のトリガーマシンを見つめる。

 

「…それにしても、怪盗のもそうだが、このトリガーマシンもとんでもねぇ。

俺に使いこなせるのかよ…」

 

少し不安げに1号はそうつぶやく。

 

「とにかく、エボルトを倒せたんだ…。

これで、これ以上の街の被害はない。

任務完了だな…」

 

「バン隊長!」

 

「隊長!」

 

1号は声が聞こえたので起き上がり振り返ると、傷を直したのか、ある程度無傷の状態で変身解除したかことアストルフォが走ってきた。

 

「お前ら、無事だったんだな…」

 

「大丈夫ですか?」

 

「何とかな…」

 

1号は変身解除して、足を震わせながらゆっくりと立ち上がる。

 

「隊長、肩を貸そうか?」

 

「あぁ、頼むぜ」

 

「では、私が移動しながら回復させますね」

 

そう言って、アストルフォはバンの肩を持ち、かこはバンの背中に向けて手を翳す。

 

そうして三人は達人と桜がいる本部へと足を進めた。



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かこの墓参り

エボルトが消滅して翌日。

 

かこは花束を持ってある場所へと向かっていた。

 

それも、黒い服を着て。

 

金丈コーポレーションは、金丈を失ったことにより壊滅した。

 

だが、それで路頭に迷う社員は少なかった。

 

金丈の洗脳が解けたことにより、正常に戻った社員はすぐさま別の仕事場を探して再就職したからだ。

 

だが、それでも洗脳されていた時の記憶が残ってるため、自分たちがやってきたことに嘆いたりしていたが。

 

当然、路頭に迷う者もいた。

 

その社員たちはその罪悪感や仕事を失った喪失感で立ち直れるかどうか定かではない。

 

中には家族に支えられながら、家事を手伝ったり学業から出直して資格を取ろうとしている者もいる。

 

今回パトレンジャーのやったことは、多くの社員の仕事先を奪ったことだ。

 

しかし、結果的に社員たちに様々な道を示すきっかけになった。

 

そして、かこはたどり着いた。

 

かこが見つめる先は、焼け落ちて原型を留めていない廃墟だった。

 

そこは、生前のかこが、家族と共に過ごした図書館だった。

 

かこは、手に持った花束を、廃墟の入り口に置き、手を合わせた。

 

「…お父さん、お母さん。

あのね、私…、ううん、私たちは、仇を取ったよ。

私自身と二人の仇を。

転生先でできた、大切な人達と一緒に。

確かに、あの人を逮捕とか、更生はできなかったけど、勝つことができたんだ…」

 

天国にいる親に言うようにつぶやくが、少しだけかこの体は震えて、頬に涙が伝っていた。

 

「お父さんと、お母さんは…、私がこんなことしてるの、許してくれるかな…?

…でもね、これが今の私にできることでも、あるの。

だから、だから、ね…?

そこで、見守っていてね、お父さん、お母さん…!」

 

そう言い終わると、かこはポロポロと溢れていた涙をぬぐった。

 

「ここにいたんですか、かこさん…」

 

「…?」

 

ふと、背後から声が聞こえたので、かこは振り返った。

 

「ティアナさん…」

 

「交番でバンさんから、かこさんが、あの件を終えたので、そのことを墓参りで両親に報告しに行ったと聞いたので。

…この焼け跡は、両親の墓標の代わりですか?」

 

「…はい。

調べてみたら、両親も私の墓も、ないんです。

あの人が、そうさせたようです。

それに、私の両親は私の目の前で処刑された時に、氷になって粉々に砕けてしまって、後で処分されたんです…。

私の遺体も、この図書館と一緒に焼かれてしまって、それも処分されたんです」

 

「…!」

 

「でも、例え遺骨がなくても、ここは私と両親が一緒に暮らした、思い出の場所でもあるんです。

だから、私にとっては、ここはその墓標の代わりなんです」

 

「…そうですか」

 

「ティアナさん?」

 

ティアナは焼け跡に近づき、その場に屈み手を合わせる。

 

「…」

 

「…」

 

ティアナはしばらく手を合わせて、終わった後でかこに声を掛けた。

 

「…かこさんも、家族を殺されてしまったんですね」

 

「…はい。

そう言えば、ティアナさんにも、お兄さんがいたんですよね」

 

「えぇ…、すでに死んでますが」

 

「確か、任務中に敵対していた魔導士と戦って、亡くなったと聞いてます。

そのことがきっかけで、ティアナさんは魔導士になったんですよね」

 

「そう、ですね…。

まぁ、それだけじゃ、ないんですけど」

 

「…」

 

かこはそれを聞いて、それからはあまり追究しようとしなかった。

 

人の死は、そう軽い物でもないのだから。

 

それにこれ以上聞くと、ティアナを傷つけるのではと思ったからだ。

 

「…私の場合、悔しかったんです」

 

「…ティアナさん?」

 

ティアナは、話を続ける。

 

その目には悲しみに彩られ、空を眺めてるようだった。

 

「兄さんが死んで、ひとりぼっちになって、えらい人に、兄さんのこと馬鹿にされて、悔しかったんです」

 

「…」

 

「だから、絶対に見返してやるって、そう思って、努力したんです」

 

「…それが、魔導士になったきっかけ、ですか?」

 

「そうですね。

結局、私は兄さんのような適正はなかったので、兄さんの役職には就けませんでしたが」

 

ティアナはあははと、頭を掻きながら笑った。

 

「…お互い、大変ですよね」

 

「そうですね…。

…!」

 

その瞬間、廃墟の焼け跡の残がいから、何かが光るのが見えた。

 

「今、何か光りましたね」

 

「何でしょうか…?

…あ!」

 

「かこさん?」

 

かこは廃墟から何かを見つけたのか、残がいの中へと足を踏み入れる。

 

「確か、この辺りに…。

あった!」

 

かこは煤で服が汚れるのを気にせず、残がいの中からある物を取り出した。

 

それはかことかこの両親が写った、図書館の看板を背景にした写真が縁に収まってるものだった。

 

保護するためのガラスは割れてしまっているが、中の写真は無傷だった。

 

「これは、写真、ですね」

 

「はい…。

ここに写ってるの、私と私の両親、です。

それと、この図書館の看板の名前、生前名乗っていた苗字なんです」

 

ティアナはかこに言われて、写真の看板を見る。

 

そこには『夏ノ森図書館』と書かれていた看板が写っていた。

 

かこはティアナがそれを見た後で、どこか懐かしむように言った。

 

「…夏ノ森かこ。

これが生前に私が名乗っていた名前です」

 

「…良い名前ですね。

でも、何で今はその名前を名乗らないのですか?」

 

「私たちパトレンジャーは転生者です。

…つまり一度死んでるので、もう生前の人間ではないからです。

それに、むやみに生前の名前を名乗って、騒ぎを起こさないため、っていうところがあります。

とは言っても、私もバン隊長もアストルフォちゃんも、苗字を名乗らないようにしてるだけですが」

 

「そ、そうなんですか…。

そろそろ帰りますか?」

 

「それも、そうですね…。

…じゃあ、行ってくるね、お父さん、お母さん」

 

かこは写真を持って、廃墟に名残惜しそうに言ってから、ティアナと一緒にその場を立ち去ろうとした。

 

その時だった。

 

『行くのは良いが、気を付けて行けよ、かこ』

 

『行ってらっしゃい、かこ…』

 

「…!」

 

かこは廃墟から声が聞こえたので振り返る。

 

しかし、そこには誰もいなかった。

 

そして、かこはふと、空を見上げた。

 

その先には、二人の男女が空へと昇っているのが見えた。

 

よく見ると、体は透けていた。

 

だが、二人を見たかこは、涙を流しながら空に向かって叫んだ。

 

「お父さん、お母さん…っ!

私、これからも、頑張るから!

皆と一緒に、頑張っていくから!

だから、元気でね…っ!!」

 

かこの言葉が聞こえたのか、二人はまるで安心したかのように笑い、空へと昇って消えていった。

 

しばらく空を見上げた後、かこは涙を拭い、ティアナの方へと向いた。

 

そこには悲しみや不安などはなかった。

 

そこには、どこかしら勇気に満ちているようだった。

 

「…ティアナさん、帰りましょう。

バン隊長たちがいる、交番へ…!」

 

「…えぇ、帰りましょうか!」

 

そうして、二人は今度こそ、その場を後にした。

 

かこはもう立ち止まらない。

 

両親が、行ってらっしゃいと言ったから。

 

共に進む人たちがいるから。

 

仮に立ち止まってしまうことがあっても、かこにはバンたちやなのは、ティアナたちが支えてくれるのだから。

 

故に、立ち止まることはない。




かこの生前の名前について、設定に追加しておきます。


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ギャングラーの情報と新たな影

読者の皆様、投稿が遅くなり大変申し訳ありません。

それと今後の話の都合上、2話の設定の話を一部変更しています。

気になる方はそちらもどうぞ。


かことティアナが墓参りに行ってから数日後、バンたちパトレンジャーはエリスの部屋に集まって説明を聞いていた。

 

その場所にはエリスの他にも、右京と亀山と霞がいた。

 

その内容は、前回倒した金丈公也とギャングラーの関係性と、エボルトを倒すときにルパンレッドから渡されたトリガーマシンについてだった。

 

「金丈については、以前会社が倒産したときに押収した書類から色々なことがわかってきたのです」

 

右京はそう言って、書類を映像化させて、バンたちに見せた。

 

「これは!?」

 

バンたちは驚く。

 

そこにあったのは、バンたちがこれまで転生してきた、金の紋章を持つ転生者からの報告書だった。

 

その中には、かつてなのはを利用してISのコアを回収しようとしたヘビーアームズ改の転生者のことも書いてあった。

 

「これ、時空管理局の上層部のことも書かれてます!」

 

「そう言えば、あいつ、更生する直前であのお方って言ってたからな…」

 

「彼が言っていたあのお方とは、金丈のことを指していたんでしょうねぇ」

 

それからバンたちは他の報告書を見る。

 

ゴーレムの実験のために街を潰そうとした計画書、以前殺したかこを殺す為の依頼書、家甲桜の特典のことや、拷問したときの状況と経過に伴う情報の有無の書類などがあった。

 

その他にも、金丈コーポレーションが吸収した企業の情報や、従わなかった企業や事業などをどのように始末したのかなどを記した書類や、社員の勤務時間や勤務状況の書類などがあった。

 

「何これ…!?

ほとんど社内で生活しているようなものじゃないか!」

 

「しかもこの勤務状況、明らかに過労死するかもしれないプログラムじゃねぇか!?」

 

「それだけではありません。

その無茶苦茶な勤務時間で社員を働かせてるのには、特典の力が関係しているようです。

普通なら、この異常とも言える時間にも、無理やり耐えれるようにしたのでしょう。

最も彼の都合で君たちの言っていた、金丈のアイテムを作るのに関わった数人の社員はすでに死亡していましたが」

 

『っ!?』

 

三人はそれを聞いてゾッとする。

 

もし、それが本当なら、もしあのまますぐに金丈コーポレーションに向かわなかったら、いったいどれだけの人間が過労死していたのかと想像したからだ。

 

しかも、今回相手にした金丈という転生者がどれだけ危険で邪悪な存在だったのかを身に染みたのだ。

 

亀山も霞もエリスも、冷や汗をかいた。

 

そしてそれを言った右京は難しい顔だった。

 

「…しかし、君たちのおかげで、その社員たちの洗脳は解けて、それぞれの道に向かうきっかけになりました。

ですので、彼らは救われたということなのです。

それについて、誇りに思われてもよろしいのではないですか?」

 

「そ、そうですよね…」

 

バンは冷や汗をかきながら言葉を返す。

 

「そう言えば長官、この間はやてからこの件はギャングラーと関係があるって言ってましらけど、あれって結局どういうことだったんですか?」

 

アストルフォが質問する。

 

「それについて、俺が説明するよ」

 

そう言って、亀山は書類を取り出して話し出した。

 

「実は、首謀者である金丈は、ギャングラーと呼ばれる組織の幹部だったんだ」

 

「「「っ!?」」」

 

それを聞いて三人は驚いた。

 

それでも亀山は説明を続けた。

 

金丈はギャングラーの幹部の中で特典の恩恵もあって経済的に優れていて、他の幹部とも取引をしていた。

 

しかし、金に対する異常な執着もあって評判は悪かった。

 

それがおそらく、今回のエボルトに魂を抜き取られる要因の一つではないかと推測されている。

 

「あの、一つ質問良いですか?」

 

かこが手を上げる。

 

「金丈の特典は確か、お金を使った洗脳でしたよね。

それで気になったんですけど、生前私の両親は彼からお金を見せられても何ともなかったのは、どうしてでしょうか?」

 

「…それについて、私が説明します」

 

エリスが口を開いた。

 

「私の方で調べさせてもらいましたが、彼の特典には欠点があります。

おそらく、それがあなたのご両親が洗脳を受けなかったことに繋がっていると思います」

 

「欠点、ですか?」

 

「はい。

彼の特典、お金での洗脳には、発動するのにいくつか条件があります。

それは彼自身が意思を持って洗脳しようと、相手にお金を見せること。

そして、洗脳を受ける人の精神力が、理性や何かしらの誇りなどよりも、金銭に対する執着が上回ること。

以上の条件がそろわないと発動しません。

また、人によって洗脳に使うお金の額も変わります。

多ければ多いほど、洗脳の強制力も上がりますので」

 

「でも私の両親はあんな大きいケースに収まった多額のお金を見せられても動じなかった…。

まさか、その欠点って…!」

 

「はい。

あなたのご両親は、決してお金に惑わされることがないほど、強い心の持ち主だったということです」

 

「そ、そうでしたか…」

 

「あなたのご両親のことは、勝手ではありましたが調べさせてさせていただきました。

…お金に全く無頓着ではないものの、図書館や家族のことを大切にされていたのですね」

 

エリスは少しほほ笑みながらかこの家族のことを話す。

 

それに対して、かこは少し思い出したように口を開く。

 

「はい…。

私の両親は読書も好きでしたが、それ以上にお客様の読みたい本を可能な限りお貸ししたいって、ずっと言ってましたし、仕事でもそれに沿えるように努力を惜しみませんでした。

それと同時に、どんなことがあっても私の事を大切にしてくれたんです。

…あの人の部下に連行された時も、せめて娘には絶対に手を出さないでくれって、言ってました」

 

「とても優しい親御さんなんですね…」

 

「はい…」

 

かこがそう言って眼を閉じて懐かしむ。

 

そこで霞が話に割り込むようにせき込む。

 

「あぁ懐かしむのは悪いことじゃないだけど、そんな風にされたら話が続かないわよ。

…特にバン、あんたが怪盗から渡されたこのトリガーマシン、気にならないの?」

 

霞の言葉を聞いて、かことエリスは確かにそうだったと我に返る。

 

そして霞は戦車型のトリガーマシンを取り出した。

 

「あ、あぁ…」

 

それを見てバンは息を呑む。

 

「…さて、これについて調べてみたんだけど、今から説明することは口よりも映像で見せたほうが早いから、それを見なさいな」

 

霞は手を翳して大型の映像を展開する。

 

そこには様々な情報が書いてあった。

 

このトリガーマシンの名前はサイレンストライカーと呼ばれるトリガーマシンだという事、

 

強力な火力を持っていて、砲撃による遠距離射撃を得意としていて、パトレンジャーに装備することができ、その他にも隠された能力がある事。

 

元々ブランクのトリガーマシンだったが、ルパンレンジャーの持つ、トリガーマシンの対となるアイテム、ダイヤルファイター、その中でも特殊なダイヤルファイターと共鳴することで発現した事、などが書かれていた。

 

しかしそこから先はトップシークレットとなっていて、読めなくなっている。

 

「何でここだけ読めなくなってんだ?」

 

バンはそのトップシークレットに疑問を持つ。

 

それを見て霞はため息をついた。

 

「…ここだけ厳重なロックが掛かってたのよ。

向こうとしても、それだけ知られないようにしていたって感じだわ」

 

「じゃあ見られないってこと?」

 

「心配しなくても、パスワードもできてるから、ロックは解除してあるのよ。

後はそれを開くだけ、苦労したわ」

 

「でも、何でそんなにロックが掛かってるものを私たちに…」

 

「おそらくですが、これはパトレンジャーとルパンレンジャー、その共通の敵に関する情報であるがゆえに、それ以外の人に見せないためではないでしょうかねぇ」

 

「…じゃあ、開くわよ」

 

霞はデータに手を翳して、トップシークレットの表示がなくなり、新しい情報が映し出される。

 

「これは…」

 

そこに写っていたのはギャングラーの幹部に関する情報だった。

 

そこにはいくつか名前に塗りつぶすかのように上から赤い線が引いてあった。

 

それを見た右京は顎に手を置いて考え、エリスはどこか思うところがあるのか目を伏せていた。

 

「…どうやら、ルパンレンジャーが早くからギャングラーと接触していたようですねぇ」

 

「えっと、右京さん…。

まさか、ここに書いてある赤い線は」

 

「おそらく、彼らが倒したギャングラーの名前なのでしょう。

ですが、金丈とエボルトについては違う線がありますねぇ」

 

「あ…」

 

バンたちはデータをよく見る。

 

幹部のリストには金丈の名前には黄色い線が、エボルトの名前には赤と黄色の罰点がひかれていた。

 

「そこにあるのはあんたらが倒したことを表している黄色い線ね。

区別をつけるためにやったのかしら?」

 

「…?

おいちょっと待て。

一人だけ、まだ線が光れてないやつの名前が載ってるぞ!」

 

バンがその名前に指を指して、全員がそれを見る。

 

その『赤嶺 友奈』と書かれた名前があって、まだ線がひかれていない。

 

おそらくはまだ倒せていないのだろう。

 

「ギャングラーの最後の幹部、ってところか…」

 

「そのようですねぇ。

そして、ギャングラーのボスもいる、ということなのでしょう」

 

「てことは、そのギャングラーもあと一息ってところですよね右京さん!」

 

「そうだと思いたいのですが…。

では最後に、このことは後々僕の方で管理局にもIS学園にもお伝えします。

それでは、以上とさせていただきます。

亀山くんも、休んで大丈夫ですよ」

 

「皆様もどうか、体を休めてくださいね?」

 

「ほらバン、このトリガーマシン、あんたが持っときなさい。

それと訓練の時でも良いからちゃんと使いこなせるようにしなさいよ!」

 

右京は話を締めくくり、エリスはバンたち四人を労い、霞はサイレンストライカーをバンに渡した。

 

そうしてバンたち四人はその場を後にした。

 

「…じゃ、私もやれるだけのことはやったから、休ませてもらうわね」

 

「えぇ、ごゆっくり、お休みください」

 

それを見た後、霞もそう言ってその場を後にして、部屋にはエリスと右京だけになった。

 

「…そう言えばエリスさん。

先程ギャングラーの幹部のリストを見た時、目を伏せていましたが、それはなぜでしょう?」

 

右京は先ほどのエリスの様子を思い出し、エリスに質問した。

 

「そ、それは…」

 

「確かに、ルパンレンジャーと共通の敵ではありますが、僕たちが今知った時点では金丈やエボルトを除いて、ほとんどの幹部がルパンレンジャーに倒されています。

…確かにパトレンジャーの手で倒すどころか、ギャングラーの存在に気づくのが遅くなりましたが」

 

「はい…」

 

「あなたはおそらく、ルパンレンジャーに先を越されたとお思いでしょうが、それは仕方のないことです。

パトレンジャーも我々も、完璧な存在ではないので」

 

「…」

 

「それに、ルパンレンジャーに関しては、確かに転生者の特典を奪い、ただの人間となっています。

それが起因して犯罪行為をして捕まる者もいれば、家族との幸せな生活を送る者もいます。

そうですね、例えば今本部で保護している家甲桜さんの様子も見てみれば、わかるでしょう」

 

右京の言葉を聞いて、エリスは病室にいる桜の映像を映す

 

「あ…」

 

そこには父親である家甲達人と楽しそうに遊んでいる桜の笑顔があった。

 

それを見てエリスは涙をこぼした。

 

右京はエリスの顔を見ないようにハンカチを取り出して渡す。

 

「…パトレンジャーとやり方は違いますが、彼らは決して敵ではありません。

おそらく彼らは、彼女のような存在を守りたいがために、今も戦っているのでしょうかねぇ…」

 

「…」

 

「しかし、だから言って、僕たちには責任はあります。

パトレンジャーにやらせてきたこともまた、人々を守るためとはいえ、それ以外の転生者を切り捨てる形で更生してきました」

 

「だから、これからはその選択を誤ってはいけない、ということ、ですか…?」

 

エリスは涙をハンカチで拭きながら言った。

 

「…えぇ、そう言う事になるのでしょう。

僕たちはこれから、本当に更生すべき転生者を探さなくてはなりません。

なのでエリスさん、これからもよろしくお願いします」

 

「…はい!」

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、とある小学校の廃墟では数人が何かしらの作業をやっていた。

 

その時にハンマーやカミソリを持って何か作業していた一人が口を開いた。

 

「なぁ、幹部が赤嶺さんだけになったって話、あれって本当なのかな?」

 

「嘘だろうと何だろうと、アートが描ければいいんですけど?

というか、それってギャングラー大丈夫なの?」

 

そう言って一人は億劫そうに答えて絵の具を取り出して絵を塗っていく。

 

その時に廃墟から誰かの悲鳴が聞こえて、刃物で切り付けられる音と爆発音が聞こえた。

 

「もう、話をしてるのに…。

ちょっと、作業なら静かにして欲しいんですけど?」

 

絵を描いていた一人が鬱陶しそうに別の部屋にいた人物に注意する。

 

その人物は両手に汚れた巨大な鉈を持っていて、足場に二つに斬られた何かが転がっていた。

 

そして奥にもう一人いて、何かを頬ずりしていた。

 

「ごめんね?

この子とお友達になりたかったから、つい…」

 

「すまない、注意していたがこうなってしまった」

 

そこにいた二人は申し訳なさそうに言う。

 

「はぁ、別に今に始まったことじゃないけど、こっちはアートを描いてるんだから、出来る限り静かにしてよね」

 

絵を描いていた人物はうんざりした様子で作業に戻ろうとする。

 

その時に誰かがひょっこりと顔を出した。

 

「はぁい、調子良い?

さっきこの部隊のリーダーから、近いうち自分たちも本格的に動くことになるって話が出たんだ。

結構おすすめするぞ?」

 

「へ?

それってどういうことなんだよ?」

 

「今ギャングラーの幹部の座がいっぱい空いてるから、自分たちの働きでメンバー全員が幹部に昇格できるってリーダーがボスから聞いた話だ」

 

「はっ?」

 

「へぇ?」

 

「あん?」

 

「マジで?

すげぇじゃねぇか!」

 

ひょっこり顔を出した人物の言葉を聞いて、全員が驚いた。

 

「最っ高だ!

超COOLだよあんた!」

 

「君の言う事が本当なら、これからはいっぱいお友達が作れるってことだよね?」

 

「…私としては、今の生活を送ることができれば構わないが」

 

「あぁ、幹部の座は良いぞ…?

これまでお前たちにおすすめしてきたことのどんなことよりもな…」

 

「別にその辺りの情報提供ご苦労様。

ところでその情報、他の奴らとかあのフールたちにも届いてんの?

そう言うのに一番食いつくと思うんですけど?」

 

「オウ…、まだ伝えていなかったね。

じゃあすぐにこのことをおすすめしてくるよ」

 

そう言って顔を出していた人物はそう言って顔を引っ込めてどこかへと行った。

 

「…それにしても幹部の座か。

ま、あまり期待はしていなかったけど…」

 

一人は顔を押さえながらくつくつと笑う。

 

「だとしたらどんだけ最高なアートをクリエイトすればいいのかって、アイディアが浮かぶんですケド!!」

 



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番外編 聖夜に怒れる氷点下

読者の皆様、投稿が遅くなり、大変申し訳ありませんでした。

次回からなるべく投稿を早めるようにします。


クリスマスの夜。

 

なのはたち機動六課はパトレンジャー本部の会場にて、クリスマスパーティーに参加していた。

 

ちなみに今回はミッドチルダからフェイトやはやても来ていた。

 

「この前はありがとうな、バンくん!」

 

「どういたしまして、だな。

けど、俺たちも、束さんの手助けがあったから、あんたらを助けることができたんだ」

 

「それでもや。

バンくんたちがおらへんかったら、なのはもあのままやろうとしてたかもだし…ムグッ!?」

 

「はやてちゃん、あまりそういうこと言わないでよ!」

 

バンとはやては、以前の管理局に潜んでいた転生者の件で話をしていた。

 

その時になのはは自分の、ISのコアを回収しようとしたことを聞いて恥ずかしそうに顔が赤くなり、はやての口を押える。

 

フェイトはその様子を微笑ましげに見ていた。

 

他にも、かこはスバルとティアナと一緒に食事を取りながら話をしていた。

 

ちなみにスバルの食事だけが皿が山のように積み重なっていた。

 

アストルフォは小さいフリードリヒの頭を撫でながらエリオとキャロに色んな話をしていた。

 

途中キャロが食事に気を取られた時に、アストルフォがエリオに、キャロにアタックしなよなどと言って、エリオの顔が赤くなっていた。

 

亀山はサロウィンで妻と一緒にクリスマスを過ごしている。

 

霞はその様子を見ながらジュースを飲んでいたが、その時に髪飾りが強い反応を示し、霞の目が大きく開く。

 

その様子を見ていた右京は、霞の方に顔を向けて聞く。

 

「…転生者ですか?」

 

「えぇ、それもこの近くの街でね。

…バン、皆、パーティーの途中で悪いけど、転生者が暴れてるみたい!

この調査と解決に向かって!」

 

「なのは、フェイト、それからスバルたちも、バンくんたちと一緒に戦ってくれへんか?」

 

『了解!』

 

そう言って、バンとなのはたちは会場を出て街へと向かった。

 

 

 

 

 

 

雪が降る街。

 

そこでは人々の悲鳴が聞こえる。

 

そして、それを追うかのように一人の男が歩いていた。

 

その男は腰に蝙蝠型の機械が付いたベルトを着用し、青い複眼に白い毛皮、そして両手に鎖が巻き付いていると言った特徴の鎧を着ていた。

 

男は建物や人に向けて手を翳し、超低温の冷気を放出する。

 

建物は凍り中に入れない状態になり、人は氷漬けにされて動けなくなっている。

 

それに巻き込まれなかった人々は恐怖し、腰を抜かす。

 

「ケッ、どいつもこいつもクリスマスとか言っていちゃつきやがってよぉ!

頭にくるぜ、このボケが!!」

 

男は苛立ちながら両足の底から刃を生やす。

 

その状態で地面に触れると地面が凍り付き、滑るようになっている。

 

「じゃあ、片っ端からぶち殺してやるぜ!」

 

『動くな!!』

 

「あぁ?」

 

男は鬱陶しそうに見ると、1号となのはたちがいた。

 

「街で暴れてる転生者ってのはお前だな?

何でこんなことをした!」

 

「ハン!

そんなもん決まってんだろ?

クリスマスとか言ってよぉ、カップルはいちゃつくし、ガキがギャーギャー騒いでいる。

俺はよ、そう言うのを見ただけでイラつくんだぜ?

俺たち転生者よりも劣るくせにいい気になってるやつがよぉ、調子に乗りやがって」

 

「…転生者、ねぇ。

けどよ、見下してる時点で、お前の方が良い気になっているんじゃねえのかよ!」

 

「ほぉ…?」

 

「確かに今はクリスマスでカップルが仲良くしてるし、子供も騒がしくなるさ。

けどよ、それはこのクリスマスっていう日が楽しいからだろうが!

そんなこともわからずに見下してるようなてめえに、これ以上めちゃくちゃにさせるかよ!」

 

「…言ってくれるじゃあねぇか!」

 

その瞬間、男は一瞬で1号との距離を詰めて拳を握る。

 

「なっ…!?」

 

「くたばれ、このボケが!!」

 

「バンさん、下がって!」

 

男の拳が1号の顔面に当たる寸前、スバルが前に出て拳をぶつける。

 

「くぅ…!」

 

「ほぉ、ガキのくせして俺のパンチと打ち合わせれるとはな。

けどな、さっさと放した方が身のためだぜ?」

 

「…スバル、今すぐそいつから離れて!」

 

「…!」

 

スバルはティアナの言葉を聞いて打ち合ってる拳を見ると、徐々に凍り付いていたのだ。

 

「うわぁああ!!」

 

「そら、隙だらけだぜ!」

 

スバルは距離を置いて凍らされた拳を押さえようとするが、その隙を逃がさないと言わんばかりに靴底に刃のついた足でスバルを切り裂こうとする。

 

それを阻止しようとティアナとなのはが遠距離から攻撃し、男を怯ませる。

 

しかし、怯んだ程度で、攻撃を受けたはずなのに無傷だった。

 

「無傷…!?」

 

「無駄だ、俺の特典は氷で覆ってるからどんな攻撃だろうが防ぐ。

後はどんな攻撃だろうと、すばやく切り刻んでやる。

ま、簡単に言うとホワイトアルバムの能力が加わった仮面ライダーレイってところだ」

 

「…!

なるほどな、道理で仮面ライダーレイにしては何かが違うとは思ったぜ。

だったら尚更、ここで倒さねぇとな!」

 

「来いよ!

俺にとどめを刺されによぉ!!」

 

男はそう言って、滑るように接近する。

 

「…なのは、お前らの射撃とかでできるだけあいつらを近づけるな。

フェイトとエリオ、スバル、アストルフォは隙をついて素早く攻撃してくれ。

俺とかこは状況を見て、その両方をやる」

 

『了解!』

 

1号が指示を送った後、1号たちはバラバラにばらけ、なのはやティアナは射撃を行う。

 

上空でキャロの指示を聞いたフリードリヒは男の鎧に目掛けて炎を浴びせる。

 

「ケッ、炎に弾丸かよ!

そんなもん効かねぇんだよボケが!!」

 

弾丸と炎を浴びながらも男は掌から冷気を放出しようとする。

 

その直前、フェイトとエリオが素早い動きで男に接近して槍で斬りつける。

 

「素早いからって調子に乗ってんじゃ…!

足が、動かない…!?」

 

男はどういうわけなのか、その場で膝をついてしまう。

 

「どういうことだ…!

あれは!?」

 

男がフェイトとエリオの方を見る。

 

すると、フェイトの後ろに3号が隠れていた。

 

しかも、馬上槍を持って。

 

「その槍は、まさか…!」

 

「気づいたかい?

ボクはフェイトの後ろで君にばれないように隠れていたんだ。

ついて行くのは、大変だったけどね!」

 

「ちぃ!

この、スカタンが!

ぐっ!」

 

3号の言葉を聞いて立ち上がろうとするが力が入らず、膝をついてしまう。

 

「隊長、相手は膝をついた。

今の内に!」

 

「わかったぜ!

なのは、頼むぜ!」

 

「わかりました!

みんな行くよ!」

 

1号と2号、なのはとティアナは男を囲み、それぞれの武器で男を撃ち抜く。

 

その間に3号とスバル、フェイトとエリオは1号たちの攻撃に当たらないように注意しながら素早く攻撃する。

 

キャロはフリードリヒに、仲間の攻撃が当たらないように指示して、男に目掛けて火炎放射をさせる。

 

それでも男には通じていないように見えていた。

 

「ふん、いくら足を止めたとしても、お前らの攻撃なんざ防げ…!?」

 

男は防いでいる内に、鎧の異常に気付いた。

 

鎧にヒビが入って、所々鎧についていた氷が溶けているようだった。

 

「何っ!?

どういうことだ…!

鎧にダメージが入ってやがる!?」

 

「いくらホワイトアルバムで硬い防御してても、これだけの熱量ある攻撃してたら、氷も溶けるぜ!」

 

1号のその言葉を皮切りに、スバルとエリオとフェイト、3号がより強い一撃を浴びせる。

 

「ぐぁっは!!」

 

あまりにも強力な攻撃に、男は吹き飛ぶ。

 

その時にグッドストライカーが飛んできた。

 

 

『グッドストライカー、ぶらっと参上!

今回は警察につくぜ!』

 

「そうかよ。

じゃあいっしょに行こうぜ!」

 

『グッドストライカー!

突撃ヨーイ!

1号 2号 3号!

一致団結!!』

 

1号がグッドストライカーを使ったことで、2号と3号と合体してパトレンU号になる。

 

だが、今回は少し違う姿だった。

 

パトレンU号の姿の上から、ピンク、赤、緑色のサンタの服を着ているような状態だった。

 

しかも頭には同色のサンタの帽子を被っていた。

 

「…あ?

何だよこれ?」

 

「サンタさんの服、ですね」

 

「うわぁ、服がふわふわ…!」

 

「ひゃん!?

バン隊長、どこ触ってるんですか!?」

 

「ぶほぁ!?

俺じゃねぇよ!

アストルフォ、かこの意識がある個所触るんじゃねぇよ!」

 

「あぁ、ごめんごめん」

 

三人は自分たちの姿に驚くが、3号が2号の意識があるU号の左半身に触ったことで2号が驚き、2号は1号が触ったと勘違いしてU号の頭部をはたくが、1号は抗議し、3号にやめるように言った。

 

『今回はクリスマスだからな、俺が着せたんだよ!』

 

「マジかよ!」

 

その様子を見ていた男は警戒しながらホイッスルを取り出した。

 

「…何をしようとしてんのか知らねぇが、このまま返り討ちにしてやるよ!」

 

『wake up!!』

 

男が蝙蝠型の機械にホイッスルを刺すと、パトレンU号の足元を凍らせる。

 

そして両手の鎖は外れて、巨大な爪が生え、周りには巨大な氷の爪が出現する。

 

「バンさん、皆さん!」

 

「…!」

 

なのはは呼び掛けるが、U号は足元が凍ったことを気にせず、VSチェンジャーを構えて言った。

 

「…なのは、皆。

あいつは一撃で俺たちを倒すつもりだ。

ここで、一気に畳み掛ける!」

 

「…!

わかりました!」

 

なのはは頷き、それを察したスバルたちはそれぞれの武器を構え、力を溜める。

 

「かこ、アストルフォ!

お前らも、覚悟を決めろよ…!」

 

「はい!」

 

「わかったよ!」

 

そう言って、U号はVSチェンジャーにエネルギーを溜める。

 

「喰らえ!

そんなにイラつくなら、これで安らぐんだな!」

 

『イチゲキストライク!!』

 

U号のイチゲキストライクが発射する。

 

それと同時になのはたちも強力な一撃を喰らわせる。

 

男は全身に力を込めて猛スピードで突っ込みながら巨大な爪を生やした腕を広げる。

 

「ぶっ潰してやるぜ、このクソどもがぁっ!!!

…!?」

 

男は両手の爪と周囲の氷の爪で1号たちの攻撃を破ろうとするが、触れた途端に全ての爪が吹き飛び、男はそのまま攻撃に呑まれて、鎧も破壊される。

 

「こ、この…ボケがあぁぁぁあああああっ!!!!!」

 

男の体は吹き飛び、地面に何度も跳ねて壁に激突し、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

男を更正した後、凍り漬けにされていた人たちの体は解放され、建物にも出入りできるようになった。

 

その場にいた人々は、風邪を引いたり怪我をしていた。

 

U号は2号の杖を使って回復効果のある光を空に打ち上げ、雪のように降らせた。

 

風邪や怪我が治りつつある人々は不思議そうにするが、U号はその人たちを見てこう言った。

 

「メリークリスマス!!」

 

U号はそう言ってから、なのはたちに連れられて、その場を後にした。

 

 

そして本部に帰ったバンたちは、クリスマスパーティーを再開し、楽しんでいた。

 

 

 



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悪夢の悪魔

金丈コーポレーションは倒産し、ギャングラーの幹部は一人だけだと分かって数日後。

 

桜と達人は完治し、金丈もいなくなったことで狙われる心配もなくなったので、明日には妻が待っている家に帰ることになった。

 

その夜のことだった。

 

バンたちは霞に病室に来るように言われて向かうと、ベッドで寝ていた桜と達人がうなり声をあげていた。

 

「くっ、ふうぅぅ…!」

 

「ぐっ、あがっ…!」

 

「おい霞、これはどういうことだ!?」

 

「…転生者よ。

今のところ健康状態に異常は見られないけど、この二人から、転生者の反応が見られるのよ」

 

霞は難しい顔をして、二人を見ながらバンたちに話した。

 

「でも霞さん、桜さんはもう転生者ではありませんし、達人さんも違うんですよね?」

 

「えぇ、そうね…。

だから、可能性があるとしたら…」

 

「…何者かが、夢の中に干渉してるってことだよね?」

 

「そうなるわね」

 

アストルフォの言葉に霞やバンたちは難しい顔になる。

 

「でも、それならどうやって戦えば…!」

 

かこの言いたいこともわかる。

 

今まで戦ってきた転生者は現実世界に存在し物理攻撃を仕掛けてきた。

 

だが、今回は夢の中。

 

一刻を争う事態だが、どのように戦えばいいのか、まるで見当がつかなかった。

 

バンたちがそう考えてる間に、アストルフォは懐から本を出して、何かしていた。

 

「…アストルフォ?」

 

「…隊長、かこ、霞。

ここはボクが行くよ、だから君たちは転生者が出たら、それに対処して」

 

「…アストルフォちゃんは、それで良いの?」

 

「うん、多分この転生者の特典はボクの特典と相性が良いし、それに…」

 

そう言ってアストルフォは病室の窓から夜空を見る。

 

「わかった。

けど、本格的にやばくなったらお前ら三人とも叩き起こすからな」

 

「うん、わかった。

じゃあ、ボクはそろそろ寝るね…」

 

「あまり無茶するんじゃないわよ」

 

アストルフォは病室のベッドで横になり、手に持っていた本を抱えて眠りに着いた。

 

 

 

「…ここは」

 

眠りについてしばらくすると、アストルフォは目を開ける。

 

そこは先ほどまでの病室ではなく、薄汚い廃墟や街だった。

 

「…」

 

アストルフォは周囲を警戒しながら手持ちを確認すると、VSチェンジャーとトリガーマシン、馬上槍などがあった。

 

とりあえず、手持ちは夢の中に持ち込めるのかとアストルフォは思うが、その時に悲鳴が聞こえ、物が散乱する音が聞こえた。

 

「…!

あそこかな!

警察チェンジ!」

 

『3号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

アストルフォは3号に変身し、音のした方向へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ…!

桜、こっちだ!」

 

「はぁはぁ、くぅ!」

 

達人と桜は必死で走っていた。

 

つい先ほどまで二人は寝ていたはずなのに、目を開けると別の場所へと飛ばされていたのだ。

 

しかも、いきなり鉤爪を着けた男が現れて殺しにかかってきたのだ。

 

達人は桜を守るために抵抗したが、レンガで殴ろうが木材で叩こうが男には何の意味もなかった。

 

それ故に、桜を連れて逃げていたが行く先でも現れては攻撃しようとした。

 

挙げ句の果てには、廃墟の中にあった電話を使おうにも使えず、むしろ受話器に耳に当てた途端、人間の口に変わって、顔を舐め回されるハメにあった。

 

それでも諦めずに達人は桜を連れて街を走っていたが、限界が近づいていた。

 

「はぁはぁ…!」

 

「う、うぅ…!」

 

二人は別の廃墟に入り込み、誰も入ってこないかを確認していた。

 

しばらく外を見ると、しばらくは大丈夫かと安堵する。

 

だが、それも一瞬だった。

 

目の前に、入ったときにはなかったはずのマネキンがあって、それが達人の首を掴んだ。

 

「お父さんっ!!!」

 

「うっ、がぁ…!!」

 

達人の呻き声を、桜の悲鳴を聞いてなのか、マネキンは笑っていた。

 

その直後にマネキンの姿が変わった。

 

先ほどまで追ってきた、鉤爪を着けた男の姿に。

 

「おいおい、鬼ごっこはもうおしまいか?」

 

「うぐ…!」

 

達人は首を絞められて声が出せない。

 

「お父さんを放してっ!」

 

「邪魔だガキ」

 

「きゃっ!!」

 

「桜ぁっ!!!

がぁあ…!」

 

達人から男を引き剥がそうと桜は男の腕をつかむが、男に殴り飛ばされてしまう。

 

そして男は達人を持ち上げて絞め殺そうとする。

 

「じゃあ、そろそろ死ね!」

 

「動くな!!」

 

達人が殺されそうになったときに、3号がVSチェンジャーを構えて入ってきた。

 

「…お前、パトレンジャーだな?」

 

「あぁ、そうだよ。

今すぐその人を放せ!」

 

「ハッ、ちょうど良いぜ!

…お前らを殺すのは後にしてやるよ!」

 

そう言って男は達人を放り投げて、笑いながらそう言って、3号に体を向け鉤爪を構える。

 

「…」

 

「…」

 

二人はそれぞれの武器を構えながら間合いを図るように足を進める。

 

そして3号が撃つと同時に、男は避けながら走り出した。

 

「うぅ、やっぱり当たらないか…!

なら…!」

 

接近してくる男に、3号はパトメガボーを取り出して応戦する。

 

男は大振りに鉤爪を振るい、3号を切り裂こうとするが、3号はそれを防御し、攻撃しようとするが避けられ、距離を置かれる。

 

「だったら…!

トラップオブアルガリア!!」

 

3号は馬上槍で勢いよく突進するが蹴られてしまい、壁が吹き飛んでそのまま外に出る。

 

「くぅう…!

やっぱり、その特典はフレディクルーガーの力が入ってるんだね」

 

「流石にここまでやればわかっちまうか。

まぁそういうところだな。

ちなみに俺を怖がらなくても別にこの世界での俺が無敵になるように変えてあるし、夢で受けた傷は現実でも反映されるけどな?」

 

男、フレディは鉤爪を舐めながら言う。

 

「…君はなんでこんなことを!」

 

「理由か?

それはな…」

 

フレディは惚けたような様子で目を泳がすと、鉤爪を鳴らす。

 

「別に誰でも良かったんだよ、ぶっ殺すにしてもな」

 

「っ!?」

 

「俺はギャングラーの暗殺部隊に所属していてな。

お前ら警察と怪盗が幹部を一人を残して倒してくれた後、幹部の座が余っちまってな。

それで、俺たちがその座をもらおうとしてるのさ」

 

「ギャングラー!?

まさか、幹部になるために、こんなことを…!」

 

「そうだ。

ま、正直誰でも良かったがな。

でも、お前が来てくれて嬉しいぜパトレンジャー?」

 

フレディは3号を睨み付けながら笑って舌舐めずりする。

 

3号はそれを見て気味悪くなった。

 

「お前ら警察は金丈を倒したことがあるからな。

お前らを皆殺しすれぱ、俺の幹部へののしあがりも最短ルートってわけさ!」

 

「…」

 

「まぁ、さっき誰でも良いって言ったが、お前がパトレンジャーだってわかって良かったぜ!

一々手間隙かけて殺すこともねぇからな!」

 

「じゃあ、ボクが死ねば、あの二人には手を出さないんだよね?」

 

「あぁそうだ…。

約束してやるよ。

お前だって、今の攻撃とかこの世界における俺の優位性も理解してるだろ?」

 

「…」

 

フレディは怪しい笑みを浮かべて言い、3号は冷めた眼差しでそれを聞いて、VSチェンジャーを見つめた。

 

「…そうだね。

確かにボクじゃ、君には勝てないね」

 

3号はVSチェンジャーからトリガーマシンを外して地面に捨てる。

 

それと同時に変身も解除される。

 

「来なよ。

それで君が幹部になれるならやってみなよ」

 

そう言ってアストルフォは手を広げる。

 

まるで、今から来る攻撃を受け入れるように。

それを見てフレディは三日月のような笑みを浮かべて鉤爪を構える。

 

「死ねぇ!!」

 

そう言ってフレディの鉤爪はアストルフォの胸を貫いた。

 

「ぐふっ!!」

 

「アストルフォさん!!」

 

アストルフォは体を貫かれた痛みに顔が苦痛に歪み、貫かれたせいで内臓にダメージが入ったのか、血を吐いた。

 

「ははっ!

このまま心臓を抉り取って…」

 

「…さて、ここまでやれば、発動できるかな?」

 

「…は?」

 

アストルフォが突然言い出した言葉の意味が分からず、フレディは呆けてしまう。

 

その間にアストルフォは、自身の胸を貫いたフレディの腕を掴んだ。

 

「こいつ、気でも狂ってんのか!?」

 

「ううん、違うさ。

これで良い、これで良かったんだ(・・・・・・・・・)

 

「何?

…!?」

 

フレディは貫いたアストルフォの胸の傷口が光りだしているのを見た。

 

「…ボクはさ、毎日月の満ち欠けを見るようにしてるんだ。

ちょうど今のようなことが起こることも考えてね。

確か、今日は新月だったかな…?」

 

「…お前、まさか!?」

 

「あぁ、その通りさ。

君がボクを傷付けてくれたおかげで、やっと反応してくれたんだ…!」

 

アストルフォの傷口から出た光は徐々に強くなり、光の奥から紙切れが飛び出した。

 

「キャッサー・デ・ロジェスティラ!!」

 

アストルフォの言葉に反応するように紙切れは一気に飛び出し舞い上がる。

 

すると、紙切れは廃墟の建物どころか風景すらも飲み込み、溶かしていく。

 

そんな中で、達人は桜の体を抱き寄せてその光景を見て思った。

 

「この紙、俺たちに危害を加えてない…?」

 

「まさか、俺をこの悪夢ごと消すつもりか…!」

 

「いや、消さないさ!

君を、ボクたちの夢から追い出すのさ!」

 

「ぐぅああああああ!?」

 

フレディの体が紙切れに覆われ溶けるように消えていく。

 

アストルフォを貫いていた鉤爪もへし折れて、刃先も溶ける。

 

そうして、フレディは夢の中から消え去った。

 

それを確認したアストルフォは胸を押さえて、血を吐いていた。

 

「…ぐふ!

ちょっと無茶したかな?」

 

「アストルフォさん!

なんでこんな無茶を…!」

 

達人が桜を引き連れてアストルフォに駆け寄る。

 

それを見てアストルフォは笑顔を浮かべる。

 

「…ボクとしては、無茶のはずじゃなかったけど、中々作動しなかったんですよ」

 

「でもだからってこんな…!」

 

桜は涙目でアストルフォに問いかけようとする。

 

それを見てアストルフォは宥めるように言った。

 

「桜ちゃん、ボクは死ぬために来たんじゃないんだ。

君たちを助けたかったから、ここに来たんだよ。

うん?

どうやら、この夢も終わりのようだね」

 

アストルフォは自身が光に変わるのを感じた。

 

それは達人も桜も同じだった。

 

「…大丈夫ですよ。

これは死ぬんじゃなくて、起きるだけなんですから。

さぁ、早く行きましょう!」

 

アストルフォは二人の手を強く握る。

 

それも同時に三人は光になって消えた。

 

 

「がはっ!!」

 

アストルフォの特典により夢の世界から追い出されたフレディは血塗れになって、アストルフォの体から出現した。

 

「こ、ここは、どこかの病室の前の通路か…!

…ハッ!?」

 

そこは病室前の通路にいることを確認したフレディは今すぐにアストルフォを殺そうと考えるが、そこには予め変身していた1号と2号と霞がいた。

 

その手には、トリガーマシンバイカーと、激しく光が灯った杖と魚雷が握られていた。

 

「どうやらアストルフォの奴、うまくいったみたいだな」

 

「バン、かこ、三人が目覚めるまでにさっさとやるわよ!」

 

「了解です!」

 

「がぁぁぁあああああ!!!??」

 

その夜、病室前の通路に強い光と衝撃が走り、後にフレディは更正された。

 

しばらくして目を覚ました達人と桜はフレディの攻撃で負った怪我は軽く、かこの特典ですぐに治った。

 

しかし、アストルフォの傷は、いくら特典の本を作動させるためだったとはいえ、深かったため、かこの特典で治すのに時間が掛かった。

 

その途中でバンたちはアストルフォから話を聞いてフレディの言っていたギャングラーの暗殺部隊の存在を知ることとなった。

 



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アストルフォの無茶

明けましておめでとうございます。

近いうちに、正月の番外編を書かせていただきます。



ギャングラーの暗殺者、フレディクルーガーを倒してから翌日。

 

右京やエリス、亀山、霞にギャングラーの暗殺部隊の存在をバンたちから聞いた。

 

それから厳重に警戒を強めるとともに、桜と達人の送迎も、周囲に警戒態勢を取りながら行うことになった。

 

この情報は、時空管理局にも、IS学園にも伝わっている。

 

特にIS学園では前回の襲撃で校舎が半壊したり、生徒と教員の大半がトラウマになってしまっているため、注意を仰いでいる。

 

一方、捨て身でフレディを夢の中から追い出したアストルフォはエリスに呼ばれていた。

 

「…なぜあのような無茶を?」

 

「あぁ、その…。

あぁするしか、あの転生者を追い出せなかったというか…」

 

「…とにかく、あの本の特典を見せてください」

 

「…はい」

 

少し厳しめな言い方で質問されたアストルフォは、言いよどんでしまい、エリスから特典を出すように言われて、しぶしぶ出して渡していた。

 

ルナ・ブレイクマニュアル、本当の名前はキャッサー・デ・ロジェスティラ。

 

フレディを夢の中から追い出すのに使ったアストルフォの特典の一つだ。

 

エリスはその特典を手に取り、特典の中のデータを見る。

 

「…特に、異常はないですね。

でも、あの転生者と戦う前に少しばかり設定を変えてるようですが」

 

「ぎくっ!」

 

「まさかだと思いますが、夢の中でちゃんと発動するかどうかわからなかったから、自分の体に一定以上の魔術的干渉から来るダメージがあれば自動的に発動するようにした、ということですか?」

 

「あ、あはは…。

それも、そう、ですね…」

 

冷や汗をかきながら目をそらすアストルフォに、エリスはため息を漏らす。

 

「はぁ…、まぁ外部から発動させて誰かの夢に入らないように、追い出すために仕方のないことだったとはいえ、あまり無茶はしないでくださいね?

バンさんもかこさんも、あなたの前ではあまり言いませんでしたが、かなり心配してましたから」

 

「そうですか…」

 

アストルフォは、あの二人に悪いことしたなと、頭を掻く。

 

「ところで、かこさんから治していただいたので問題はないと思いますが、あの転生者から受けた傷はもう大丈夫ですか?」

 

「あぁ、大丈夫ですよエリス様!

ほら、この通り!」

 

アストルフォはそう言って自分は健康だというように両手を広げる。

 

「…そうですか、それなら問題はありませんね。

ですが、今回は注意だけにしますが、今後からは気を付けてくださるのでしたら、もう下がっても良いですよ?」

 

「はい、それでは、失礼します!」

 

元気よく返事をしてからアストルフォはその場を後にした。

 

それでもエリスの中ではどうしてもぬぐい切れない不安があった。

 

「はぁ…」

 

ため息をついて、エリスはアストルフォのパトレンジャーとしての活動履歴の資料に目を通す。

 

普段からパトロールをしていても特に大けがになったり、転生者を絡まないトラブルに巻き込まれることはない。

 

だが、一度だけ。

 

アストルフォは転生者との戦いで今回と似たようなことをして意識不明の重体になったことがあるのだ。

 

それはフレディとの戦いよりも、機動六課と協力関係を結ぶ前の話。

 

その時は本当に突然のことだったので、バンもかこも対処することはできなかった戦い。

 

エリスは一度、その時の資料に目を通すことにした。

 

 

 

 

 

 

それは、怪盗と出会う前の話。

 

ガミザミという蟹のモンスターを召喚、使役できる特典とショウグンギザミの装備に双剣の特典を持つ転生者と戦っていた時の話であった。

 

1号たちは大量のガミザミが暴れる街から人々を避難させた後で戦っていたが、次第に押されてしまい一つの建物の中に入って様子を窺っていた時だった。

 

「くそ!

あの野郎、数で俺たちを押す気かよ…!」

 

「それだけでなく、あの蟹たち、猛毒を持ってますよ?

いくら私の特典で治せるとはいえ、あれだけの数に囲まれてしまっては…」

 

危機的状況だった。

 

当時まだ聖騎士バンの特典を持っていた1号ですらも、流石にこれには対処できないと思っていた。

 

いくら不死身でも、単身で突っ込んでも何分持つのか。

 

力を吸収しようにも体があの数の力を吸収することを許容できるのか。

 

当時まだ経験の浅かった1号たちでは、それが限界だった。

 

一方3号は窓から街の様子を見ていた。

 

未だにガミザミの群れが動いていて、自分たちを探してるようだった。

 

「…ふう」

 

3号はまだ見つかっていないことに安心したのか、ため息をついた。

 

だが、その時だった。

 

3号は再び窓の外を見ると、その先では逃げ遅れていたのか、ウサギを抱えた少女たちがガミザミに追いかけられていた。

 

「…!?」

 

それを見た3号はすぐに建物から外に出た。

 

「アストルフォ!?

どこに行く気だ!!」

 

「アストルフォちゃん、今外は危険だよ!?」

 

二人の制止を振り払い、3号はパトメガボーを構えて走った。

 

街を走って逃げていた少女の内、ウサギを抱えていた水色の髪の少女が足を引っ掻けて転んでしまう。

 

「うっ!?」

 

「チノちゃん!?」

 

「チノ!

くっ、こいつら…!」

 

桃色の髪をした少女がウサギを抱えていた少女の片を担ぎ、黒髪の少女がモデルガンで対抗しようとする。

 

しかし、弾が当たってもびくともせず少女たちに向かってくる。

 

後ろは気が付いたら既に囲まれており、その奥でショウグンキザミの鎧を来た男が両手に双剣を構えてその様子を見ている。

 

まるで餌をどう料理しようかと舌舐めずりするかのように。

 

そんな絶望的な状況の中、3号が突っ込んできた。

 

「やめろぉっ!!!」

 

3号はガミザミを切り払いながら少女たちの退路を確保しようとするが、きりがなかった。

 

そんな時に1号と2号が駆けつけて退路を開いた。

 

「おい、一人で突っ込むんじゃねえぞ!」

 

「逃げ遅れた人のためとは言え、無茶はダメだよ!」

 

「ごめん、二人とも!

…それと、その子たちは任せたから!」

 

「おい!?」

 

そう言って3号はヒポグリフを召喚し、VSチェンジャーで牽制しながらガミザミと転生者を引き付けて、すぐに遠いところへと向かった。

 

懐から角笛を取り出して。

 

少女たちの避難を終えた1号たちはすぐに転生者の反応が消えたことを確認して、3号のもとへと向かった。

 

「…!」

 

「ひっ…!」

 

二人は向かった先で見た光景に驚く。

 

何故なら、そこには変身解除したアストルフォがいたから。

 

しかしその体は血塗れで所々ガミザミの毒を浴び、腕や太腿、胸を切り刻まれた状態で倒れていたのだ。

 

「アストルフォぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「アストルフォちゃあああああああああっんっ!!!」

 

二人は慌てて駆け寄り安否を確認し、2号はすぐに変身解除して治療する。

 

傷はすぐに完治したが、しばらくは意識が戻らなかったのだ。

 

その後ようやく目覚めたアストルフォから聞いた話だと、街の外にガミザミと転生者を集めて、そこから角笛の特典、ラ・ブラック・ルナでの音波攻撃で一掃しようとした。

 

しかし、あまりの大勢の相手を一手に引き受けたので対処できないところから狙われて転生者やガミザミに切りつけられたり毒の攻撃を食らったのだ。

 

だがそれでも立ち上がってVSチェンジャー等を使って対処してどうにか持ちこたえた。

 

そして最後に残った転生者には、ヒポグリフに乗って高速移動からのパトメガボーで、凄まじい速度で殴り飛ばした後で更正し、そのまま意識を失ったのだという。

 

ちなみに、アストルフォは意識を取り戻した後でバンから思いっきり殴られ、かこからは本気でビンタを打たれ、そこからなんであんな無茶をしたんだと真剣に怒られたそうだ。

 

その時かこに至っては泣き崩れていたらしく、アストルフォがこのまま意識を失ったまま目を覚まさないのではと思い、死ぬほど悲しくなったそうだ。

 

それからアストルフォは反省して無茶なことはしないと約束し、それ以降は単独での対処が難しくなったらすぐに応援を要請するようにしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

資料を読み終えて、他の資料が置いてある場所に片付ける。

 

それからエリスは、先ほどまでアストルフォがいた場所に目を向ける。

 

「あなたは、正義感が強いのは認めます。

ですが、あなたのそれはバンさんとかこさん以上の自己犠牲と優しさから来るものです。

あなたは、そんなに生前に何も守れなかった自分が嫌いなのですか、アストルフォさん」



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番外編 年明けの異臭の湖

読者の皆様、遅くなって大変申し訳ございません。

今回は時期的にもう過ぎてる感じですが、正月の番外編です。

どうぞ、お楽しみください。



正月、新しい年を迎えた時期にバンたちパトレンジャーは転生者による被害の通報を受けたので現場に向かっていた。

 

内容は水源の湖が原因不明の悪臭を放っていることによる水不足だった。

 

それにより近隣の街では水が強烈な臭いで使えず、特に温泉地は絶望的な経営破綻になっていた。

 

「まさか新年早々にえげつないことをする転生者がいるとはな…」

 

「…はい、おかげで街のあちこちで悲鳴が上がってますよ」

 

「ねぇこれで更生してもボクらの体が臭くなったらどうしよう…?」

 

「アストルフォちゃん早まらないで!

まだ戦っていないから何とも言えないけど、絶対にそうなるとは限らないから!

希望を捨てないで!」

 

アストルフォに至っては目が死んでいた。

 

アストルフォはいつも女装していて、パトレンジャーの制服も女性用にしているが、かこ以上におしゃれに拘っていて、匂いでも気を遣っているからだ。

 

だから、戦いの後で自分たちの体にその時の臭いが染み込んでいたら間違いなく発狂するだろう。

 

そんなアストルフォが見ていられなかったのか、バンはアストルフォの肩に手を置く。

 

「心配するなよアストルフォ。

もしそうなったら俺が必死で服とか洗ってやるから」

 

「うん、二人ともありがとう…。

あれ、おかしいな、悲しくもないのに涙が…」

 

「よしよし、やっぱり辛いよねアストルフォちゃん」

 

二人に慰められてたアストルフォは涙を流し、かこは背伸びして頭をなでる。

 

いくら転生者を更生するためとはいえ、これほど行きたくないと思ったことはないのだろう。

 

だが、そんなことをしている間に目的地に着いてしまったのだ、目的の水源の湖に。

 

「うっ、何なんだよこの臭いは!?」

 

「臭すぎて、息ができません…っ!」

 

「うっ、うえっ、ボク、これ以上近づきたくないよぉ…!」

 

三人は現場に着くやいなや、あまりの異常な臭さに鼻を押さえる。

 

「おいおい、誰の許可でここに入ってきてんだてめぇら」

 

「…!」

 

バンたちは声の聞こえた方向に振り返ると派手な柄のスーツとサングラスが特徴のガラの悪い男が立っていた。

 

しかも、この男から転生者の反応があったのだ。

 

「てめぇ、まさかだと思うが、この湖を臭くしたやつか?」

 

「あぁ、そうだとも。

この近くの街もろとも使い物にならなくなったら、俺が全部立ち退かせるためにな!」

 

「立ち、退かせる…?」

 

男の声に鼻を押さえながらアストルフォは反応する。

 

「あぁ、この湖はとても澄んでいていてよぉ。

温泉でも効能が期待されてるし、飲料水にしたらうめぇときた。

これを水源にしているこの街の連中を見ていると、閃いちまっただよな…。

こいつらから湖を奪ってこの街を乗っ取ったらどんだけ晴れ晴れとした気分になれんのかってな!」

 

「そんな…!

まさか街の皆の水を独占するためにこんなことを!」

 

「そうだって言ってるだろうがよ!

この湖はこのオリ主な俺にこそふさわしいんだよ、ほかの奴らが使おうなんざ勿体ないだろう?」

 

「「「…」」」

 

それを聞いた三人の頭の中の何かが切れる音がした。

 

不思議と湖から発せられる臭いにおいにも耐えれるようになったのか、鼻を押さえるのをやめて、代わりにvsチェンジャーとトリガーマシンが三人の手に握られていた。

 

「…ほぅ、オリ主、だっけか?

まぁいいんじゃあねぇの、そんなの。

俺的には別にてめぇみたいなくそ野郎がどんなジャンルの主人公になろうが知ったことじゃねえし、仮に本とかドラマになってたとしても、読みたくも見たくもねぇがな」

 

「もし、あなたのような人が主人公を務めるような本があったら、私は絶対に読みたくはないですけどね」

 

「そもそも、君のような人、一体だれが認めてくれるっていうのかな、かな?」

 

三人の声はどこどなく冷めたものであり、それと同時に激しい怒気を含んでいた。

 

そして、三人は頭の中で同時に思った。

 

目の前にいるゲス野郎からこの湖と街を守らなければならない。

 

一刻も早く、このオリ主を名乗る身勝手な転生者を倒さなければならない。

 

そう考えただけで、臭いが体に染み着くとかそんな事はどうでも良いと思ったのだ。

 

『警察チェンジ!!』

 

『1号 2号 3号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

「パトレン1号!」

 

「パトレン2号!」

 

「パトレン3号!」

 

『警察戦隊 パトレンジャー!!』

 

「ここから先は、実力を行使するぜ!」

 

「おっ?

やるのかよこのモブ野郎共。

いいぜ、そっちがその気ならお前らを踏み潰してやるぜ!」

 

その言葉とともに湖の風景が歪み、そこから一体の怪獣が出現した。

 

それはタツノオトシゴのような顔をした怪獣だった。

 

「こいつは、マガジャッパ!?」

 

「驚いたか?

普段は姿を消すだけで湖に置いてはいたが、俺がこいつの中に入り込むことで…」

 

男の体は光りだして、そのままマガジャッパの体の中に取り込まれるように消えていった。

 

すると、マガジャッパの目は光りだして雄たけびを上げた。

 

『俺の意のままに操ることができるのさ!

ぎゃはははははは!!!

本来はもう少し先でもまだ立ち退きしない連中がいたらやろうと思ってた強行突破だったが仕方ねぇ。

てめぇらサツのようなモブ野郎どももろとも、ぶっ潰してやるよ!』

 

歩みを進めるマガジャッパ。

 

それを見て1号たちはうろたえる。

 

「ちっ!

こいつ、いきなりでけぇので戦いに来るのかよ!」

 

『グッドストライカー、ぶらっと参上!

今日は少し荒れ気味な警察に力を貸すぜ!

というか今回の転生者展開早くないか?』

 

「知らねぇよ、そんな展開なんか!

それよりも、こっちも行くぜ!!」

 

『グッドストライカー!

位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!

一・撃・必・殺!!』

 

『1号 2号 3号!』

 

『位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!』

 

『轟・音・爆・走!!』

 

『百・発・百・中!!』

 

『乱・撃・乱・打!!』

 

『警察ガッタイム!

正義をつかみ取ろうぜ!』

 

『完成 パトカイザー!!』

 

合体を終えたパトカイザーはマガジャッパの前に立つ。

 

『はっ、何だよそのちんけなロボットは!

そんなもんでこのオリ主な俺様を止めれるかよ!』

 

「そんなもんやってみねぇとわかんねぇし、てめぇを倒さなくちゃ水海の臭いも消えねぇって話だ!!」

 

そう言ってパトカイザーを前に進ませて右腕の警棒で殴りにかかる。

 

だが、マガジャッパは避けることなく殴られるが、びくともしないほどの硬さだった。

 

「な、なんなのこいつ!

めちゃくちゃ硬いよ!?

あとすごく臭いよ!」

 

『なんてちんけな攻撃なんだよ!

これでも喰らいなモブどもが!』

 

そういうと同時にマガジャッパの鼻先から黄色の液体が噴射され、パトカイザーの頭部に直撃する。

 

「ぐっほえ、マジ臭ぇ!!

離れろこの野郎!」

 

パトカイザーはマガジャッパの顔面に蹴りを入れて距離を取る。

 

しかし、パトカイザーのコクピットにいる1号たちはマガジャッパの攻撃に吐き気を催していた。

 

「うぅ、うぷっ!

ごめん、もう、耐えれそうに…!」

 

「待てって、もう少し我慢しようぜ!

くそ、あの野郎…!」

 

「はぁはぁ…!

バン隊長、ミキサーとバイカーを使いませんか?」

 

あまりの臭さに息苦しくなっていた2号は1号に提案する。

 

「あの二つを…?

わかったぜ、行くぞ!」

 

『ミキサー バイカー!』

 

『位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!』

 

『瞬・間・硬・直!!』

 

『縦・横・無・尽!!』

 

『左右 変わります!』

 

パトカイザーは両腕のトリガーマシンを換装する。

 

「アストルフォ、悪いがもう少し耐えてもらうぜ…!」

 

「うん、わかったよぉ…!」

 

3号はマスクの下で泣きながら改めてレバーを握りなおす。

 

「よし、行くぜ!!」

 

「「了解!!」」

 

1号たちの言葉と同時にパトカイザーは動く。

 

マガジャッパは再び鼻先から黄色の液体を噴射するが、パトカイザーはそれを横へ飛ぶように躱して右腕のミキサーを構える。

 

「もうその臭いはこりごりなんだよ!

いい加減にしてっ!!」

 

3号の怒りを乗せるかのように、ミキサーからセメント弾が発射され鼻先に直撃する。

 

それにより、マガジャッパの鼻先が固まり、液体を噴射できなくした。

 

『や、野郎…!

やりやがったな!

だが、まだこれがあるんだぜ!』

 

マガジャッパはあきらめないと言わんばかりに両手を広げて渦を作りパトカイザーを引き寄せる。

 

「くっ、このままじゃあ…!」

 

「すごい力で引き寄せてやがる…!

お前ら、力入れてあいつを殴り飛ばすぞ!」

 

「えぇ!?

あんな臭いやつのところに行くのかい!?」

 

「あぁ、だがアストルフォ!

お前は近づいたらミキサーであいつの動きを固めろ!

そしてかこは至近距離からバイカーで殴れ!」

 

「りょ、了解!」

 

「了解!」

 

1号たちはパトカイザーをマガジャッパの前に移動させる。

 

引き寄せる力が強いからか、移動速度も速い。

 

互いの距離が数メートルになる。

 

「今だ、やれ!!」

 

「てりゃぁ!!」

 

1号の合図と同時にミキサーからマシンガンのようにセメント弾を発射し、マガジャッパの体を固める。

 

『な、なにぃ!?』

 

「はぁっ!!」

 

セメントで固められたマガジャッパは困惑するが、顔面にめがけてのバイカーの回転する車輪による殴打を喰らった。

 

『ぐほっ!?』

 

その強烈な攻撃に顔は変形するように歪み、殴り飛ばされて倒れこむ。

 

『クレーン!

位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!

伸・縮・自・在!!』

 

『右腕 変わります!』

 

それと同時にパトカイザーは右腕をクレーンに変える。

 

「これでとどめだ!」

 

1号の言葉と同時に三人はレバーとして使っていたvsチェンジャーを引き抜き、狙いを定める。

 

『く、くそぉ!

こんなところでこのオリ主な俺がやられてたまるか!!』

 

マガジャッパは最後の手段のとして透明化し、周囲に同化して逃げようとする。

 

だが、いくら見えなくなっても足元は湖のため、そして体がセメントで固められてるために、じたばたと足元の水を蹴飛ばしてるために位置がばれてしまっていた。

 

『喰らえ!

パトカイザー リフトアップストライク!!』

 

パトカイザーのクレーンはマガジャッパを捕らえ、上空に吊り上げると、ワイヤーでヨーヨーのように射出したバ

イカーの車輪で勢いよく連続で殴打していく。

 

『そ、そんな…!

せっかく、この街を乗っ取るためにマガジャッパを湖に沈めたのに、街の住民どもを立ち退かしてこの湖を独占しようとここまで来たのにぃぃぃぃ!!!

ああああああああああぁああああぁあああああ!!!!!!』

 

硬い鱗で守られているマガジャッパの体は回転と遠心力による連続攻撃に耐えきれず上空で爆散する。

 

「…任務完了!」

 

そして1号たちは、気絶した男を発見し、更生することに成功した。

 

マガジャッパの特典を持っていた男を更生したことにより、バンたちとトリガーマシンとグッドストライカーに染み付いた臭いがまるで最初からなかったように消え、そして異臭を放っていた湖も元通りになり、街では再び温泉が復活した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。

 

交番ではなのはたち機動六課のメンバーが来ての新年会が開かれていたのだ。

 

「…というのが、昨日の俺たちの戦いだったんだよ」

 

「け、結構悲惨な戦いでしたね」

 

バンから昨日のマガジャッパの件を聞いたなのはは引くつきながらうなづいた。

 

「それに、昨日の反動からか、アストルフォがテンション高くなってよぉ。

あれを見てくれよ」

 

バンはなのはにそう言うとアストルフォの方に向く。

 

「ねぇねぇ!

やっぱりこのままキャロにアタックしなよ!」

 

「ちょ、アストルフォさん!?

僕とキャロはそんな関係じゃ…」

 

「本当はキャロのこと、好きなくせに!

このこのー!」

 

「っ!」

 

「ねぇ、アストルフォさんにエリオ君。

さっきから二人で何の話をしてるの?」

 

「な、何でもないから!

キャロは早く自分の分のおせち取ってきなよ!」

 

「はーい!」

 

そこにはにやけながらぐいぐいとエリオをからかうアストルフォがいた。

 

エリオは顔が真っ赤になって下を向き、キャロはそんな二人にきょとんとしながらもおせちを取りに行くという感じだった。

 

「バン隊長!

大変です!」

 

「…?

どうしたんだよかこ」

 

そんな中、かこが慌ててバンのもとへと駆け寄ってきた。

 

「バン隊長やなのはさんたちが準備してくれたおせち料理が、スバルさんがおいしいからとほとんど食べてしまってます!」

 

かこの言葉にスバルの方へと目を向けるバンとなのは。

 

その先では、おせちの重箱がほぼ空になり、それをおいしそうに完食したとティッシュで口元を拭くスバルの姿があった。

 

その隣ではまたやったのかと頭に手を置くティアナに皿を持ったまま涙目になっているキャロの姿があった。

 

そしてスバルはバンたちの視線に気づいたのか、ものすごく気まずそうに冷や汗をかき、目をそらした。

 

「何やってんだスバルうぅぅぅぅぅぅっっっっ!!!!!!」

 

「ねぇスバル、少し私たちと一緒に、お話しようか…?」

 

「ごめんなさあああああああああいいいいいいい!!!!!!」

 

激しく怒るバンに、どこか冷たくそして悲しげな目で言うなのはに、スバルは泣きそうになりながらも謝りながら追いかけられたのだった。

 



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鏡の蟹

アストルフォがエリスの元で事情聴取されている間、亀山は車に達人と桜を乗せて、達人たちの自宅に向かっていた。

 

護衛として、バンとかこを同伴させて。

 

三人は車で移動しながら周囲を警戒していたが、特に転生者に襲われるようなことはなく、無事に家にたどり着いた。

 

「何とか無事着きましたねバン隊長」

 

「…あぁ、だがまだ油断はできねぇぞ。

ちゃんと探知機とか周囲に意識を集中しようぜ」

 

それにはかこは無言で頷く。

 

バンの言うことはもっともだ。

 

相手はギャングラーの暗殺部隊、しかもそのメンバーの一人が昨夜に達人たちの夢の中に入って襲ってきたのだから。

 

それ故に、油断も隙も無い。

 

下手すれば、懐に近づかれて攻撃されるかもしれないから。

 

そんなことを考えている間に、亀山は二人を連れて車の外に出て、バンとかこもそれについていく。

 

「…っ!?」

 

その瞬間、家の中から転生者の反応がいきなり出てきたのだ。

 

「…えっと、奥さんって転生者ってわけじゃないんですよね?」

 

「はい、家内は俺と、そして今の桜と同じ普通の人間です」

 

「…まさか。

二人は彼らと一緒に居てくれ!

俺は中に入って確認してくるから!」

 

亀山はバンとかこに二人の護衛に着くように伝えて、チャイムを鳴らして出ないことを確認し、達人から借りた鍵で家の中に入る。

 

「家甲碧依さん?

いらっしゃいますか?」

 

亀山は玄関から居間に向けて歩きながら達人の妻の名前を、桜の母親の名前を呼ぶ。

 

だが、返事もなく静かだった。

 

いや、予め二人を送りに行くと言っていたので、いないことはまずありえない。

 

しかし、転生者の反応がある上にこの静けさ。

 

「…探知機の誤作動であってくれよな」

 

嫌な予感が的中しないように呟き、ドアを開けて居間に入る。

 

「…。

っ!?」

 

どこも荒らされた形跡はない、隅々まで整理整頓が行き届いているようだった。

 

床の血痕を除いて(・・・・・・・)は。

 

「この血の跡は!?

…!」

 

血痕の乾き具合からすると、ついさっきここで何かがあったのかと、亀山は勘を働かせる。

 

その時に、居間から奇妙な音が聞こえてきたのだ。

 

「っ!?」

 

思わず亀山は振り向くと鏡があって、黒いコートを着た男と血を流して倒れている一人の女性が映っていた。

 

「嘘だろ、こんな近くにっ!?」

 

反射的に鏡とは反対方向を向く亀山だが、そこには誰もいない。

 

もう一度振り向くと鏡に映っている男は不敵な笑みを浮かべて近づいてくる。

 

「まさか、鏡の中から!

バンくん、かこちゃん…!」

 

亀山はXチェンジャーを取り出し、バンとかこを呼ぼうとするが直前に鏡から発せられた光に呑まれてしまう。

 

 

 

 

 

「こ、ここは…」

 

亀山は周囲を見渡すと居間にいた。

 

しかし、奇妙なことに部屋全体が左右で逆になっているのだ。

 

「ここは鏡の世界なのか!」

 

「おや、ここに連れてこられてすぐにここが鏡の世界だと気づくとは意外でしたね」

 

「…!」

 

後ろを振り返るとそこには先ほどの男が立っていた。

 

しかも鏡の中に入ったことで、目の前にいるこの男が転生者だということがはっきりと分かったのだ。

 

「お前が、この鏡の中を作ったのか!」

 

「まぁそうなりますね。

…しかし驚きましたよ、その銃はまさか、警察か怪盗ってことですよねあなたは」

 

「…!

じゃあ聞くが、その人は何だ、何でこの世界に閉じ込められていて、彼女は何で血を流してるんだ!」

 

「あぁ彼女は私のモンスターの餌ですよ。

こいつは人間を食らえば喰らうほどに強くなるんですからね」

 

男がそう言って懐からカニの紋章の入ったデッキだった。

 

「お前、仮面ライダーシザースの転生者、なのか?」

 

「その通りですが、もしそうだとしたら私もあなたも、そして彼女もここに入って数秒で死んでますよ?」

 

「何だって…?」

 

男に言われてハッとする。

 

確かに男が仮面ライダーシザースなら、ここはミラーワールドであるはずなのだ。

 

しかしミラーワールドは生身の人間が入れば数秒で消滅してしまうのになぜ自分たちは生きてるのか?

 

なぜ男は生身でも平気でいられるのか。

 

そう考えただけで亀山はある考えに至った。

 

「まさか、ここはミラーワールドじゃない?」

 

「そういうことですよ。

より正確には、疑似的なミラーワールド、というところですが。

しかしあなたにはそれ以上何も言う気はありませんよ、何故ならあなたも彼女もここで死ぬんですから」

 

男はそう言って蟹のマークが入ったデッキを取り出し鏡に翳す。

 

亀山も戦闘態勢に入ってXチェンジャーを構えて回転させる。

 

「変身!!」

 

「警察チェンジ!!」

 

『エックスナインズ!

警察エックスチェンジ!

パトレンX!!』

 

亀山はパトレンXに、男は鏡に翳したと同時に出現したベルトにデッキを差し込み仮面ライダーシザースに変身した。

 

シザースが肉薄するように左手のハサミを構えて攻撃しようとする。

 

それをパトレンXはXロッドソードで絡み動きを封じる。

 

「甘いですよ」

 

「うおっ!?」

 

シザースはパトレンXの膝裏に蹴りを入れて体制を崩させ、腕でパトレンXの首を挟み締め上げる。

 

「ぐっ、お前、この動きは普通の人間じゃあないな!」

 

「ほぉ、私の動きを見てそんな的を得たことを言うとは、あなたも警察の端くれですね」

 

「当たり前だ、この相手を無力化するこの作法は、仮に転生者の特典によるものでもここまでにはならないからな!

だったら簡単だ、お前は生前警察かその関係者だったってことが割り出せるってものなんだ、よ!」

 

「うっ!?」

 

パトレンXはシザースの腰に強い肘打ちを与え、怯んだ隙に脱出する。

 

「警察だったなら、なんでこんなことしたんだ、お前は」

 

「…なぜ、ですって?」

 

シザースは腰元を押さえながらパトレンXを睨み、笑みを浮かべる。

 

「私は生前と同じようにライダーとしての頂点を極めるためですよ!

…かつてはあなたの言う通り、私も警察でした。

しかし、そこで正義とはどんなにくだらないものなのか、それを知って横流しとかもやってきたんですよ。

まぁ、あなたがたは転生者の情報を知っているのならこの後のことを知ってるはずですけどね」

 

「けどだからって、今もこんなことして良い理由にはならないだろ!」

 

確かにパトレンXは転生者の情報を調べていたので、仮面ライダーシザースはどんな奴だったのかは知ってる。

 

それが変身者本人ならなおさら。

 

彼がのちに行方不明事件や殺人事件に足がつき、同僚を殺した後でライダーバトルでデッキを破壊されて契約していたモンスターに捕食されて殺された。

 

そんな彼が転生してまでこんなことをしている理由がわからない。

 

「…私はあなたたちのような下らない警察とは違って、ライダーとしての頂点に加えて、ギャングラーの幹部の座に上り詰めて極めるために戦ってるんですよ。

いつまでもコソコソと暗殺に甘んじるよりも、こっちの方がやりがいがあるってものです!」

 

『ストライクベント』

 

シザースはカードを左腕のハサミのバイザーに読み込ませて巨大なハサミを右腕に装着する。

 

「…そうかよ。

お前は元警察だってのは知ってたけど、ここまでのゲスとはな。

だったら、俺がここでぶっ倒してやるぜ!」

 

パトレンXはXチェンジャーとXロッドソードを構えて、走り出す。

 

「おらぁ!」

 

「ふっ!」

 

互いに武器をぶつけ合っては弾き返し、そして互いの警察官として得ている体術を駆使する。

 

そんな中、シザースは何かを感じて鏡を見ると、その向こうではパトレンXの声を聴いて駆けつけたバンとかこがいた。

 

「バンくん、かこちゃん!」

 

「随分と速い救援ですね。

ですが、鏡の中では私の許可なくして入ることはできない!

来い、ボルキャンサー!」

 

『アドベント』

 

シザースは蟹型モンスター、ボルキャンサーを自分の近くに召喚し死角からパトレンXを攻撃する。

 

「がっ!!」

 

「ふふっ、これで距離を放せましたね。

マン・イン・ザ・ミラー、ボルキャンサーだけ外に出ることを許可しろ!」

 

シザースが叫ぶと背後から黒いマントにゴーグルをつけた怪人が出現し、ボルキャンサーを鏡の外に出させる。

 

「マン・イン・ザ・ミラー!?

鏡のスタンドの特典ってやつかよ!

まさか、この世界も、そいつで作ったのか!」

 

「えぇそうですよ。

この世界にはミラーワールドはないみたいでしたので、作らせてもらったんですよ。

物を動かせない代わりにこの世界に閉じ込めることも可能ですが、出入りには一々こいつに許可しないとできないのが難点ですが」

 

つまりはここは自分にとって有利な牢屋であると告げるシザース、そしてそのまま倒れている女性に巨大なハサミを向ける。

 

「おい待て!

その人に何をする気だ!」

 

「おっと、近づいてはいけませんよ。

近づいたら、彼女の命はありません。

…そうですね、武器を捨てて膝をついてください」

 

「くっ!」

 

少しでも武器を動かしたら、シザースのハサミは女性の首元に食い込み、血が流れる。

 

それを見てパトレンXは武器を捨てて膝をついた。

 

その瞬間、シザースは女性から離れたと思ったら一瞬で距離を詰めてパトレンXの顔面を蹴り飛ばす。

 

「ぐっふぅ!?」

 

「ははは、そうですよ。

そのまま私に痛め付けられれば良いんですよあなたは!」

 

シザースは動けないパトレンXを両腕の大小のハサミで突き刺し、殴り、頭を踏みつける。

 

それでもパトレンXの目に、諦めはなかった。

 

それは、勝機を待っているかのような目だった。

 

 

 

 

 

 

 

一方バンたちは、家の中で亀山の声が聞こえたので、桜と達人を外の車の中に避難させてから中に入って、その先で、鏡の中から出てきたボルキャンサーと遭遇し、戦っていた。

 

だが、ボルキャンサーが有利に立っていた。

 

というのも、場所が室内であったために、ましてやここは桜たちの家でもあるため下手に荒らすことに抵抗があったのだ。

 

しかも、ボルキャンサーは1号たちが手出しできないことを良いことに周りの家具を荒らしながら攻撃してくる。

 

「くそっ、あの野郎…!

こっちが手出せないからって良い気になりやがって…!?」

 

物陰に隠れながら1号は攻撃の最中に落ちてきた物を拾った。

 

それは、桜たちの家族写真だったのだ。

 

それを見て、このままだと桜たちの家がめちゃくちゃになってしまうのではと、1号はハッとなって思ったのだ。

 

そして1号は隣で様子を窺っていた2号に声をかける。

 

「…かこ、俺が時間を稼ぐから、お前はこの居間の窓を開けてくれ」

 

「…!

了解です!」

 

そう言った途端、1号は物陰から出てボルキャンサーを突っ込んだ。

 

「うおりゃあああ!!

てめぇが、これ以上、あの子とあの子の家族の家を、荒らしてんんじゃねぇ!!」

 

1号はボルキャンサーの両腕のハサミを取り押さえる。

 

ボルキャンサーは1号の肩を噛み付こうと口を開くが、その直後に1号が足を思い切り踏みつけてバランスを崩す。

 

「今だ、窓を開けろ!!」

 

「やぁああああああ!!!」

 

2号は物陰から出て急いで居間の大きな窓を全開にする。

 

「よし、おい蟹野郎、お散歩の時間だぜ!」

 

1号は倒れたボルキャンサーを強引に引っ張り上げて家の外に出し放り投げた。

 

「これで室内を荒らされる心配はねぇな!

こいつでぶっ飛ばすぜ!」

 

『サイレンストライカー!

グレイトパトライズ!

超警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

外に出て周囲を確認した1号は怪盗から渡されたサイレンストライカーを使用し、超パトレン1号に変身する。

 

「喰らえ!」

 

1号のキャノン砲から砲弾が発射される。

 

ボルキャンサーは避けずに、背中の装甲で防ぐが、衝撃が凄まじかったのか数メートル飛んだ。

 

「ちっ、硬いな!

…?

これは!」

 

1号はバイザー越しにサイレンストライカーの情報が見て、ある機能があることを知った。

 

そんな時に、ボルキャンサーが奇声を上げて立ち上がり1号に目掛けてハサミを構えながら突進しようとする。

 

「悪いが、ここからは通行止めだ!

おらっ!」

 

ボルキャンサーに向けて手を翳すと、ボルキャンサーの体が地面にめり込み膝をついた。

 

「あれは、重力を操ってるんですか!?」

 

「あぁ、さっきこのサイレンストライカーの情報を見たらその機能が載ってたからな。

ここでケリをつけるぞ!」

 

「了解!」

 

『バイカー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

1号は両肩の引き金を握ってエネルギーを溜め、2号はトリガーマシンバイカーをvsチェンジャーに装着してエネルギーを溜める。

 

「喰らえ、スーパースペリオルストライク!!」

 

「行きます、バイカー撃退砲!!」

 

二人の強烈な攻撃がボルキャンサーの装甲を貫き、跡形もなく爆散する。

 

「よし!

…そうだ、亀山さんは!」

 

「そういえば、まだ家から転生者の反応があります!

おそらく、さっきの蟹が鏡から出てきたことと関係が!」

 

「あぁ、その可能性はあるぜ!

とにかく、戻るぞ!」

 

1号はサイレンストライカーを解除した後、2号と一緒に家に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、パトレンXは。

 

「ぐっ!」

 

「私の勝ちですね。

さあ、このままその首を引きちぎって…!?」

 

シザースは巨大なハサミでパトレンXの首を掴んだまま、自身の鎧の色が消えていくのを感じた。

 

それと同時に先ほどまであった強力な力が消えてくのを感じてしまった。

 

「まさか、ボルキャンサーが、やられた…!

あの二人に!?」

 

「…どうやら、バンくんたちはうまくいったみたいだな。

なら、おれもそろそろ…!」

 

「なっ!?」

 

パトレンXはシザースを女性とは逆方向に投げ飛ばし、即座にXロッドソードを拾いレバーを動かす。

 

『一手 二手 三手 十手!

一騎当千!』

 

「マン・イン・ザ・ミラー、最後の力を振り絞ってやつの武器を取り押さえろ!!」

 

シザースはマン・イン・ザ・ミラーを召喚し、Xロッドソードの刃先を握って抑える。

 

「や、やった…!

このままそのエネルギーだけを、鏡の外に出してあげますよ…!?」

 

シザースはマン・イン・ザ・ミラーを通して感じた。

 

握っている刃先が、すでに強烈な熱とエネルギーを持っていて軌道の変えようがないことを。

 

「…あいにくだが、もう発動してるんだよ!

喰らえ、エクセレントエックス!!」

 

『イチゲキエックスストライク!!』

 

Xロッドソードをマン・イン・ザ・ミラーの腹に突き刺しゼロ距離で発射する。

 

「な、何だと、こんなことが、バカな!?

私は、絶対に、暗殺部隊から幹部の座に上り詰め…、がぁあああああああああ!!!」

 

それにより、マン・イン・ザ・ミラーの体が勢いよく吹き飛び、それに連動するようにシザースの体も勢いよく吹き飛び、壁に激突しそのまま力なく倒れた。

 

それと同時にパトレンXと女は自動的に元の世界に戻り1号たちと合流できた。

 

 

 

 

 

「…以上が、俺があいつから聞かされた話だ」

 

「…そうでしたか。

あぁ、駄目ですよまだ動いちゃ!」

 

亀山はかこに体を治してもらいながら先ほどのことを説明した。

 

「でも、これでいよいよ本格的に油断できませんよ。

相手は幹部の座を手に入れるのに必死、しかも他の人間を襲うだけでなく、俺たちを高得点のポイントか何かだと思って攻撃してくるとなると」

 

シザースを更生したバンは冷や汗をかきながら言う。

 

かこもそれを聞いて戦慄を覚える。

 

それにより、これ以上ここにいるとまた襲われる可能性を見た亀山たちは倒れていた女性の治療を終えて、彼女が桜の母親である家甲碧依であることを調べた後、送迎から保護に切り替えて三人を連れて本部へと帰投したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、IS学園では。

 

あの襲撃から日は経っているが、校舎は未だに半壊状態であり廊下や教室も所々穴が空いている。

 

「クソっ!!」

 

IS学園の通路で、織斑一夏は荒れていた。

 

前の転生者襲撃で自分が何もできなかったことに。

 

そのせいで学園の皆ほとんどがトラウマになって引きこもってしまっている。

 

ラウラや他の皆は無事ではあったが、それでも先日のことが忘れられずどこかに表情が暗い。

 

「俺は、何でこんなに弱いんだよ!

クソっ!」

 

怒りを押され切れず、一夏は通路の壁を殴る。

 

だが運が悪く、殴った壁はまだ修理が間に合っていない箇所だったのでその衝撃で穴が空いてしまい、腕を挟んでしまう。

 

「なっ、くそ、抜けろよ!」

 

右腕を抜こうと力を込めて引っ張るとすっぽりと抜けたが、一夏は何か違和感を覚えた。

 

「っ!

ない、白式がない!!」

 

右腕に待機状態の腕輪にしてはめていた自分の専用機がないことに気付き、穴を見る。

 

だが穴は深く、どこに落ちたのかわからなかった。

 

一夏はどうにか取り出そうと道具を探そうとその場から離れようとした。

 

「はぁい、一夏?」

 

「っ!?」

 

すると、先ほどの穴とは別の大きめの穴からピエロが顔を出した。

 

「世界でただ一人の男性操縦者に会えて、光栄だねぇ」

 

「だ、誰なんだよ、お前…!」

 

「俺の名はペニーワイズ、この世界では珍しいピエロさ。

ところで積もる話になるんだが…」

 

そう言ってピエロ、ペニーワイズはあるものを取り出し、一夏に見せる。

 

「それは、白式の待機状態…!

返せ!」

 

一夏は怒りを覚えて取り返そうとするがすぐに避けられてしまう。

 

ペニーワイズは、それを滑稽そうに見て笑いながら話を持ち掛けた。

 

「あぁ、ちゃんと返すさ、約束する。

ただし、俺のおすすめを聞いてくれるならな」

 

「おすすめだと…?

どういうことだ!」

 

「何、簡単な話だよ。

先ほど君は自分の弱さに嘆いていたじゃないか」

 

「…!」

 

「けどもし、君自身を極限にまで強くする方法があるとしたら、君はどうする?

そうすれば、君は誰よりも、それも君一人でどんな敵だろうと簡単に倒せると思うんだけど」

 

「っ!

じゃあ、それなら俺は皆を、千冬姉を、守れるのか?」

 

ペニーワイズの話を聞いて、一夏は一歩ペニーワイズの元へと足を進める。

 

「あぁ、何せ君はかのブリュンヒルデの弟だ、そんなことは造作もないことさ。

守れる力があるのはすごいぞ…一夏…深いぞ…」

 

「はは、全く、俺は良い姉さんを、持ったよ…」

 

一夏は手を伸ばす、その瞳には光は灯っていない。

 

ペニーワイズは再び白式を取り出し、一夏の手に近づける。

 

「君の姉さんは本当にすごいな、一夏…。

そして…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのクソみたいに下らない理想に絶望しろ、ド低能がっ!!」

 

ペニーワイズは一夏に白式を強引に掴ませると同時に、口から特殊な形をした矢が飛び出して一夏の肩に深く、突き刺さった。

 

「うわああああああああああっ!!!???」

 

この日、IS学園の通路で、一夏の悲鳴が響いたのだった。

 

 

 

 



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一夏の暴走とピエロ

「…」

 

亀山とバンとかこが 桜たちを家に送っている間、アストルフォはエリスとの話を終えて、交番でただ一人で髪の手入れをしながら先ほどのことを考えていた。

 

「はぁ…」

 

エリスの言い分もわかる、無茶はいけないことなのだから。

 

それに、前にバンたちからもう無茶なことはしないって約束したのだから。

 

だから、予め保険として特典の調整したり、方法自体が自分は無傷ではすまないことであればちゃんとバンたちに伝えて了承を得たりした。

 

転生者と戦うのに、自分は死ぬつもりはないのだから。

 

なのに、どうして時々自分の命を投げ打ってまで人を助けようとするのだろう?

 

「ボク、生前じゃあこんなことする奴じゃなかったのにな…。

…!」

 

すると、交番のパソコンに束からのメールが届いたので、開いて読むことにした。

 

『先ほどからいっくんの様子がおかしい。

箒ちゃんや他の女の専用機を取り上げようとしててちーちゃんも困ってるみたい。

どういうわけか自作した探知機でいっくんから転生者のくそ野郎の反応がちょぴっとだけあるから、すぐに来て!』

 

「え!?

いっくんってあの世界の主人公だよね、なんでそんなことが…!

いや、まさか…」

 

アストルフォの中で昨夜のことが過り、すぐさま髪を三つ編みに結び直して出動した。

 

 

 

 

 

 

アストルフォはIS学園に着いてからすぐに教室へと向かうと、一夏が他の女子からISの待機状態であろうアクセサリーを取り上げて、千冬が注意して止めに入っている姿があった。

 

しかもよく見ると、一夏の目に光が灯っていない状態で微かにだが転生者の反応がある。

 

また言動も正気ではない様子だった。

 

「こらそこの君、彼女たちが嫌がっているじゃないか!」

 

アストルフォはこれ以上騒ぎが続くといけないと考えて教室に入って止めに入る。

 

「…!

君は…!」

 

「何するんだよ、放せよ!?

お、お前は…!」

 

「だ、誰ですの!?」

 

千冬や一夏はアストルフォの顔やvsチェンジャーを見て動きを止めて、他の女子たちはいきなり制服を着ていない部外者を見て動揺する。

 

確かにいきなり部外者が入ってきたらそんな状況になってしまうが、今はそれどころではない。

 

アストルフォはそう考えて一夏の方へと向く。

 

「…見た感じだと、君は彼女たちからそれを取り上げているように見えたけど、一体どういうつもりなんだい?」

 

「…お、お前には関係ないだろ!

俺はただ皆を守るために、みんなが戦わないように専用機を取り上げてるだけなんだよ!」

 

「織斑、いい加減にしろっ!!」

 

「千冬姉は黙っててくれよぉ!!

俺が、俺が皆を守るんだよ!!」

 

「い、一夏…」

 

一夏は千冬を突き放し喚き散らす。

 

それを見た女子たちは恐怖していた。

 

「やめなよ、君は一旦落ち着けよ!」

 

「うるせぇんだよ!!」

 

「ぐっ!」

 

アストルフォは一夏を止めに入ろうとするが頭を思い切り殴られてしまう。

 

「…っ!

あまり気が進まないけど、こうなったら!」

 

「ぐっ!

は、放せぇ!!」

 

このままでは埒が明かないと思ったアストルフォは暴れる一夏の手を捻って押さえつけ、手に持っていたアクセサリーを落とさせる。

 

「聞きたいけど、なんでこんなことをしたの?

このアクセサリーを取り上げることが守ることと繋がるみたいなことを言ってるけど」

 

「そ、そうだよ!

あいつらは専用機があるから戦えるんだよ、それって転生者っていう連中とか、絶対天敵がいる線上に向かうってことで危険って思うだろ!?

けど俺は違う、俺は千冬姉の弟だから、あいつらがいなくても戦えるんだ、俺一人で十分なんだ!」

 

「…それを証明するために、彼女たちから専用機のアクセサリーを取り上げようとしたのかい?」

 

「そうだって言ってるだろ!

俺は千冬姉の弟だから、俺が皆を守らなきゃいけないんだ!!」

 

「…」

 

一夏の言葉を聞いて、アストルフォは取り押さえた状態で考えた。

 

先ほどから一夏は守るとか自分は千冬の弟だからと言っているが、何でここまでのことをするのか。

 

しかも転生者の反応を踏まえて考えると、一夏は何者かに何かをされてこんなことをしているのではと。

 

そう考えたアストルフォは、一夏に言い聞かせるように言った。

 

「ボクは、君が誰かを守ろうとする意志はとても素敵だと思うよ?」

 

「…え?」

 

「君は多分、前の転生者の襲撃の件で皆の表情が暗くなるのを見て、何もできない自分が嫌だったんだろ?

それはボクだって嫌だよ、すっごく嫌だ」

 

「…!」

 

「けど、君はこんなことしなくても、君はちゃんと誰かを守ってきたじゃないか!

ボクの隊長から聞いたよ、あの時クラスメートの子を連れてアリーナから脱出したって!」

 

「そ、それは…」

 

「確かに君は隊長に言われて脱出したかもしれない、でも君は実際にその子を守っただろ?

なら、それでいいじゃないか!」

 

アストルフォの言葉に動揺を隠せない一夏。

 

それでもアストルフォは言葉を紡ぐ、彼に言ってあげなくちゃいけないことを。

 

「君と、君のクラスメートたちはどんな関係はよく知らない!

でもこの先一人で戦うにしても無理がある、絶対にどこかで綻びが生まれる!」

 

「けど、俺は、千冬姉の弟だから…!」

 

「確かにそうかもしれないけど、君は彼女の弟であって、彼女自身じゃないだろ!

君は、君のお姉さんと同じぐらいに強いのかい、経験はあるのかい?」

 

「…」

 

それが遠回しに自分が弱いと捉えてしまったのか、一夏は悔しそうに顔を俯く。

 

「ねぇ、ボクの顔をよく見て、ボクの話を聞いて?」

 

「…?」

 

抵抗する力が弱まった一夏の体を自分の方へと向けさせて、目をしっかりと合わせる。

 

その目はどこか怯えているようにも見えた。

 

「君は、今は弱くても良いんだよ。

お姉さんはお姉さん、君は君なんだから。

それに君は一人じゃない、お姉さんも、クラスメートの子もいる、皆がいる」

 

「あ…」

 

一夏は教室を見ると、そこには自分のことを心配そうに見ているクラスメートたちと千冬がいた。

 

「…絶対に君が一人で背負わなければいけないなんて、彼女たちは望んでいないと思う。

だから、これから皆と力を合わせていけばいいんじゃないかな?」

 

「や、やっていいのか、そんなことを、俺が?

俺は、千冬姉に憧れて、千冬姉の名前と皆を守りたいのに…」

 

「あぁ、してもいいさ。

大事なのは、今を大事にして、いつかその憧れを枯らさないで目標に達することと、自分たちが力を合わせれてこの先のどんな困難な試練でも立ち向かえると、思うことさ」

 

アストルフォは、一夏の考えに沿ったことに対する言い分と右京からよく言われている言葉を言った。

 

それを聞いて、一夏の目に光が戻り涙が溢れ、そのまま壁にもたれ掛かり顔を隠す。

 

「ごめん、皆…!

ごめん、千冬姉ぇ…!」

 

「うん、よく言えたね。

君はまだ学生なんだから、皆に頼って、皆から頼られて、お互いを助け合えばいいんだ」

 

「…あぁ!」

 

「…?」

 

それと同時に、一夏の肩から靄が現れ、矢じりのような形になったと思ったら消えていった。

 

「今のは…」

 

「一夏!」

 

「一夏さん!」

 

「一夏…!

良かったな…!」

 

アストルフォはさっきの矢じりの靄について考えようとしたら女子たちが一夏のもとに駆け寄り、千冬は涙を指で拭いている。

 

「…どうやら、彼はこれで一件落着、かな?」

 

正直どうなるのかとひやひやしていたアストルフォ、先ほど言っていた言葉のほとんどは、前回の襲撃のことと錯乱した一夏が言っていた言い分から予想を立てていたに過ぎない。

 

というか、ほとんど初対面の相手にここまで言って変わらなかったらどうしようかって内心思っていたのだ。

 

『はぁい、調子いい一夏?』

 

『っ!?』

 

そんな時に、教室に誰かの声が聞こえた。

 

「こ、この声は!?」

 

「ねぇ君、この声を聴いたことあるのかい!?」

 

「あぁ、俺に、矢を突き刺した奴の声だ!」

 

「っ!?」

 

一夏の言葉に、アストルフォは驚く。

 

それと同時に、転生者の反応が出てきたのだ。

 

『OH その様子だとおすすめがまともに発動する前に拒否してしまったようだね…。

せっかく、矢を突き刺して君の誰かを守るという意思を暴走させたのに…、残念だな。

後しばらくすれば君を内側から矢を突き刺して自爆させるところだったのにね』

 

「…君が彼を暴走させたってことだよね?

どこにいるっていうのさ、出てきなよ!」

 

『そう急かすんじゃあない、今出るんだからさ』

 

そう言って声の主は、教壇の影から這い出るように現れた。

 

その正体は、赤い髪にメイクで顔を白く塗ったピエロだった。

 

「はぁい、初めましてパトレンジャー。

俺の名前はペニーワイズ、ギャングラーの暗殺部隊の一人さ」

 

「…警察チェンジ」

 

アストルフォはペニーワイズの姿を見て、戦闘態勢としてパトレン3号に変身しパトメガボーを構える。

 

 



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影に潜む殺人ピエロ

教壇の影から現れたギャングラーの暗殺部隊の一人、ペニーワイズ。

 

そしてそれに対峙するパトレン3号と一夏たち。

 

「…戦う前に、一つ聞いても良いかい?」

 

「あぁ良いぞ、手向けの言葉として答えてやる…」

 

ペニーワイズはニタリと笑みを浮かべながら答える。

 

「何故彼を狙ったんだい?

しかも他の子から待機状態の専用機を取り上げさせるなんて」

 

「おいおい、専用機を取り上げたのはそいつの勝手だぜ?

俺はただ、そいつの愚かさを見て面白そうだったから、絶望させるために狙ったのさ。

えーと、何だっけ、俺は良い姉さんを持ったよとか俺が皆を守る、的な?

一人じゃ何もできない癖にな!」

 

「くっ、こいつ…!」

 

「待って!

…つまり君は、暴走させたうえで絶望させて自滅させようとしたってことかな?」

 

「あぁそうさ、今の時代、様々なところで多次元融合が起こってるから、並行世界でのそいつの様を見せてもらったよ。

守る守るとか言っておきながら平気な顔を女心を踏みにじるド低能だってことがな!!」

 

それと同時に、ペニーワイズは天井にめがけて数本のナイフを投げつけて照明を破壊し、教室は暗くなる。

 

女子たちの悲鳴が上がり、3号たちは警戒する。

 

それを嘲るように笑いながらペニーワイズは影の中に消えていった。

 

「あいつ、何を仕掛けるつもりだ!」

 

「皆気を付けて、何をされるかわからないから専用機を持ってる子は、すぐに展開して戦えない子を守って!

…織斑先生も、それで良いですよね!?」

 

「…こうなってしまったら仕方ない。

私が責任を持つ!」

 

千冬から許可をもらい、一夏を含む女子たちは専用機を展開し、戦えない女子たちを守るように身を寄せる。

 

『一か所に固まっただけじゃないのか?

こんな薄暗闇の中、そんなことをしようとただぶち殺されることしかおすすめはできないなぁ』

 

「くっ、一体どこから…!」

 

3号は暗くなった教室に目を凝らしながらパトメガボーを構える。

 

『イヒヒ、どこ見ているんだよこっちだ!』

 

すると、ペニーワイズは青いISを展開した金髪の少女の目の前に現れ、口から矢を吐き出すように出して、少女を突き刺そうとする。

 

「なっ!?

くっ!」

 

「セシリア!!」

 

「大丈夫ですわ、スターライトで防ぎましたので!」

 

薄暗闇の中よく見えないがよく見るとセシリアと呼ばれた少女の持つ狙撃銃に矢で刺されたような穴が空いているのが見えた。

 

だが、それで安心するのはまだ早かった、3号はその狙撃銃を見たときに違和感を覚えたのだから。

 

「ねぇセシリアって言ったかな、今すぐその狙撃銃を放した方が良いよ」

 

「な、何でですの!?

なぜそのような言葉に従わなければ…!?」

 

「君には見えないのか!?

その狙撃銃から、矢がいっぱい生えてきてるんだ!!」

 

「え…?」

 

セシリアは恐る恐る自分の狙撃銃を見る、そこにはひび割れながら内部から矢が伸びるように生えてきている狙撃銃があった。

 

「きゃああああ!?」

 

セシリアは思わずその狙撃銃を投げつけると一気に矢がさらに生え始めて爆散した。

 

「な、何ですの、これは…!」

 

「わからない、でもあの矢の攻撃に喰らうのはまずい!」

 

セシリアたちは、狙撃銃が爆散した様を見て戦慄を覚える。

 

『OH…そこで言っちゃうのは卑怯じゃないかなパトレンジャー…。

せっかく目の前で人が死ぬか、病院送りになるほどの大けがするというショーを披露できたというのに…』

 

おどけながらも、心底残念そうにするペニーワイズ。

 

「あの矢は、まさか…」

 

3号は警戒を強めながら先ほどの一夏の肩から出た矢じりの煙と先ほどセシリアの狙撃銃が爆散したことについて考えていた。

 

「…君の持ってるその矢ってまさか、刺した対象を内側から破壊する能力か暴走させる能力があるだろ!」

 

『んん?

流石はパトレンジャー、よく気づいたな。

あぁその通りだとも、俺の持つ矢は元々はスタンド能力を発現させるやつだったが、確実に殺せるように今言ったことができるように改造したやつだ!』

 

それと同時に影から矢が伸びてきて3号はそれを間一髪で避ける。

 

矢は空を穿つとそのまま影の中へと隠れて、今度は3号の目の前にペニーワイズが現れ牙を向きながら襲いかかろうと影から這い出て、3号の腕を掴もうとする。

 

「くっ!」

 

3号はすかさず、後ろに飛び、教室の外に出る。

 

日光が降り注ぐ、廊下へと。

 

すると、ペニーワイズの体は影に出る直前にピタリと止まり、そのまま沈んでいった。

 

「…え?」

 

追い付かれるのではと思った3号は呆然とするが、今のことと照明を破壊したことで、あることを思い付いた。

 

「…まさかっ!」

 

だがそれと同時に、今の教室の現状がどれほど危険かを理解してしまった。

 

「皆急いで教室から出てっ!

その薄暗闇の場所は危険だ!」

 

「なっ、お前は何を言っているんだ!?」

 

「さっきあいつが照明を破壊したのは、教室内を自らの狩場にするためなんだ!

だから暗くすることで自分の影に入れる範囲を広げてるんだ!」

 

「ということは、相手は影の中を移動しているのか!?

おい貴様ら、急いでISを解除して、専用機を持っていないやつと一緒に廊下に出ろ!」

 

『はっ!

今更種が分かっても遅いんだよノロマが!!』

 

「いやああああっ!!」

 

3号の注意もむなしく、一人の生徒の足を掴んだペニーワイズ。

 

そのまま口から矢を出して、生徒を突き刺そうとする。

 

「やめろぉっ!!」

 

「ぐほぁっ!?」

 

3号が再び教室に入りパトメガボーでペニーワイズの頭部を叩き付け、そのまま影の中に沈める。

 

「大丈夫!?」

 

「は、はい…!」

 

生徒を千冬に預けて、3号はどうしようかを考える。

 

まず、専用機を持ってる生徒のそばなら安全かと考えたが、こんな室内だと狭くて行動が狭まってしまう。

 

かといって、彼女たちを廊下に連れ出そうとしてもその隙にさっきのように誰かが狙われてしまう。

 

そう考えた3号は教室の窓を見ると、あることを思いついた。

 

「…!

なら、あいつの特典を利用するしかない!」

 

「おい待てよ!

こんな暗いところで走ったら…」

 

3号は、床を蹴るように走り、窓に向かって走る。

 

その間にも影から矢が一本ずつ3号の動きを捕らえるように飛び出していく。

 

だが、3号はそれを躱していき、窓側の壁にたどり着いた。

 

その瞬間、3号の頭めがけて、矢が飛び出した。

 

3号は反射的に横にずれるように避け、壁に突き刺さりそのまま元の影の中に戻った。

 

「ひゃはっははは!!」

 

「あぐっ!」

 

矢が戻ると同時に影からペニーワイズが飛び出して、そのまま3号の両腕を掴み壁に叩き付ける。

 

「さぁて、これからお前の顔を抉って、そこから内臓を引きずり出して殺してやる…!」

 

「…あぁ、そうだね。

確かに、このままだとボクは君に殺されるかもしれないね。

でも、その前に君がやられることになるけど」

 

「なんだ寝言か?

だったら、今すぐ頸動脈を切って即死することをおすすめするよ」

 

「いいや、違うね。

君は絶対にやられる、ボクの隣の壁に矢を突き刺した時点でね」

 

「…は?」

 

「信じられないなら見てみなよ。

壁がどうなっているのかを…!!」

 

「…まさか!?」

 

3号の言葉に焦りだしたペニーワイズは壁を見ると、矢で突き刺した壁の内側から矢が生え始めて、ひびが入っている。

 

そして次々と生えてくる矢に耐えきれなくて壁に徐々に穴が空き始めて、そこから光が漏れ始める。

 

「さっきボクが窓側の壁に向かって走ったのは、君に矢を使わせるためだったのさ。

その、アンリミテッドロストワークスとか晴れの炎みたいな能力を持つ矢をね!」

 

「お前、まさか…!」

 

程なくして、壁に大きな穴が空き、そこから漏れ出した日の光が二人を覆い始める。

 

光を浴びた途端、ペニーワイズの体が燃え始めた。

 

「がぁあああああああ!!!??

パトレンジャー、貴様ぁあああああ!!!?」

 

「…やっぱりだね。

君の特典はその矢の他にも、自らをジョジョのブラックサバスのようにさせる特典だね。

さっき君が日の光が出てる廊下に出なかったのは、出れなかったからだ、こんな風に体が焼けるからね!」

 

「がぁあああ!!?

は、早く、影の、中にぃ…!」

 

「させないよ!

君を絶対に逃がすわけにはいかない!」

 

3号は自分も燃えてしまうことを気にせずにペニーワイズを羽交い絞めにし、ペニーワイズの体が日の光の当たるように向ける。

 

ペニーワイズの体が燃えていき、なのもかもが黒焦げになっていく。

 

「が、ぁああ…」

 

燃え尽きたペニーワイズはそのまま力尽きて倒れる。

 

所々ピクピクと動いてるので生きているようだった。

 

「な、なんとか倒せた…うぐっ!」

 

「お、おい!

大丈夫か!?」

 

3号は羽交い絞めにしたときに腕と胸に軽い火傷して、そのまま膝をつき、一夏がISを解除して駆けつけようとする。

 

「…うん、何とか。

あとは、こいつを…!?」

 

3号が一夏の方に向いてそう言った瞬間、正面からさっきを感じた。

 

振り返ると黒焦げになっているペニーワイズが半身だけを起こして口からボロボロで折れかけてる矢を出して、一夏に目掛けて突き刺そうと口から伸ばす。

 

「え…?」

 

「危ないっ!!」

 

3号は一夏を突き飛ばし、背中から胸にかけて貫通するように矢が刺さった。

 

「ぐっ、うぅぅぅっ!!」

 

想像を絶する痛みに3号は悶絶する。

 

しかし、そのまま体を回転して矢をへし折り、ペニーワイズに目掛け手錠を投げつけ首にはめる。

 

「うぐっ、鼬の最後っ屁のつもりが…!

だがまぁいいさ…。

今の一撃に、内部から破壊する力はないが、トラウマを暴走させることはできる…。

…刺してる間に過去を見せてもらったが、お前の闇は深いぞ…、パトレンジャー…!」

 

その言葉を最後に、ペニーワイズは光の粒子となって消え、3号に刺さった矢は消えた。

 

しかし、矢がなくなったが、3号の中で体の痛みよりも強い何かが沸き起こりそうになっていた。

 

「うっ、ぐっ、あ…っ!」

 

「…お、おい、大丈夫なのか!?」

 

一夏の声にも反応できない、むしろ聞こえない。

 

3号の中で、何かがよみがえる。

 

自分が住んでいた屋敷、いつも微笑まし気に笑っている両親、いつも優しく励ましてくれる執事の爺や。

 

様子が変わってしまった爺やに、両親の薬と水、毒を盛られて死んだ両親、奪われた財産、爺やに成り代わっていた誰か。

 

そして、何も見抜けなかった自分自身の罪(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「あぁ…、あぁああ…!

うわあああああああああああっ!!!!!」

 

3号は頭を押さえて涙を流してのたうち回る。

 

それと同時に変身が解除される。

 

「おい、しっかりしてくれ!」

 

「下がれ織斑!

おい、誰か彼を保健室に連れて行ってくれ!

私は彼の所属先に連絡する…!」

 

千冬は生徒たちに頼んでタンカーを用意してもらい、バンたちパトレンジャーに連絡を入れる。

 

その間にアストルフォは涙を流してうずくまっている。

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…!

父さん…母さん…爺や…」

 

アストルフォの悲痛な声をあげながら頭を押さえてそのまま気を失った。

 

それからしばらくして、桜と桜の両親を保護し終えたバンたちの耳にアストルフォが倒れたという情報が届いたのだった。



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炎の狂人

今回はいりごま塩さんからのリクエストを書かせていただきました。


「…」

 

「かこ、アストルフォの様子はどうだ?」

 

「はい、傷は早い段階から治せましたが、未だ意識が戻ってません。

…おそらく、先ほど聞いた矢の影響ではないかと」

 

「…そうか」

 

バンとかこはアストルフォが倒れたと聞き、IS学園の保健室に来ていた。

 

亀山は千冬から今回の状況についての説明を聞きに行っている。

 

かこは特典の力で傷を治せはしたが、情報で聞いたペニーワイズの矢の影響でトラウマが暴走したことが原因でまだ目を覚まさない。

 

「…ところで、そっちは見舞いか?

織斑先生の弟さん」

 

「…」

 

バンはそう言って振り返ると保健室の入り口付近の椅子に座っている一夏がいた。

 

バンたちが駆けつけてアストルフォが運ばれたときに互いに自己紹介を済ませてある。

 

「なぁ…。

確かそいつ、アストルフォって言うんだよな?

ちゃんと、目を覚ます、のか?」

 

「…さぁな、その辺りはまだ俺たちにもわからねぇ。

一応体の傷は治ったけど、トラウマが蘇って倒れたって話だからな…」

 

「…ごめん、俺のせいで、お前たちの仲間がこんな目にあって」

 

一夏は先の件で後ろめたさと罪悪感から、目を伏せながらそうつぶやいた。

 

自分が油断してISを解除した状態で近づいたから、敵がまだ動ける状態だということに気が付かなかったから。

 

「アストルフォは別にお前のせいでこんな目にあったとは思ってもねぇと思うぞ?」

 

「え?」

 

「アストルフォはな、お前たちを転生者から守りたくてこんな目にあったんだ。

…仮にお前以外の奴に攻撃を仕掛けようとしたとしても、こいつは絶対そうしただろうさ」

 

バンは眠っているアストルフォの頭を一撫でして、一夏に近づき視線を合わせるように目を合わせる。

 

その目には怒りとか憎しみといった感情はなかった。

 

「…そりゃあ、俺たちだってこいつがこんなことになったのは嫌な気分だ。

実際前に無茶したことが原因で死にかけたことがあったからな。

それで二度と無茶な真似はしないって約束もしたしな」

 

「…」

 

「でも今回は身を挺してお前のことを守ったんだ。

お前に対して怒ってないとか責めてないとか言ったら嘘になっちまうが、それでもアストルフォが助けた命なんだ。

だから、俺たちはお前のことを責める気はないし、悪く言うつもりもない。

そもそも俺たちはこれでも警察だからな」

 

「…でも、俺は」

 

バンの言葉を聞いても項垂れてしまう一夏、それを見かねたバンは一夏の手を引っ張りアストルフォの前に座らせる。

 

「…バン隊長?」

 

「お、おい!

何を…」

 

「決まってるだろ、そんなに自分が許せないなら、目が覚めるまでアストルフォの手を握ってろ」

 

「い、良いのかよ、それだけで…」

 

「良いも何も、今俺たちにできるのは、それだけなんだよ。

それに、俺たちも、少しばかり用事ができたんでな」

 

「え?」

 

「あの、バン隊長、それってどういう…!?」

 

状況が呑み込めないかこがバンに聞こうとするが、バンが手に持っていた探知機で全てを察した。

 

この学校に、それもこの近くに転生者がいるということを。

 

「…わかりました、そういうことでしたら私も行きます!

…一夏さんはここで、アストルフォちゃんと一緒にいてください」

 

「お、おい!

さっきから何を言って…!」

 

「…近くに転生者が現れました。

この近くにいるのはわかってますが、敵かどうかもわかりません。

それに、この近くで戦闘が開始したら、無事じゃすみません。

ですので、あなたは万が一のことがあったら、アストルフォちゃんを連れて逃げてください」

 

「…!

あ、あぁ…」

 

「一夏、悪いがアストルフォのことは任せるぜ。

…行くぞかこ」

 

「了解!」

 

二人は保健室の外へと出て、一夏と意識のないアストルフォだけが残された。

 

「アストルフォ、俺は…!」

 

一夏は、アストルフォの手を強く握って目が覚めることを願った。

その時、一夏は気づいていなかったが、アストルフォの握られていない手は、僅かながら指がピクッと動いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

「…」

 

バンとかこは近くで発生した転生者の反応を探るため学園の廊下を歩いていた。

 

「あの、バン隊長」

 

「…どうしたんだよ」

 

「アストルフォちゃんのことなんですけど、大丈夫でしょうか?

…正直、私には、わかりません」

 

「それだったら、俺にもわからねぇな。

けど、あいつがトラウマで我を忘れて早まったことしねぇよう祈るしかねぇよ。

それに、今は一夏の奴がいるし、大丈夫だと良いがな」

 

「あら、織斑君って保健室にいるのかしら?」

 

「「っ!?」」

 

二人は声がする方向に振り向くと、金髪の長い髪をした少女がいた。

 

「…何なんだ、お前?

その制服、見る限りじゃあここの生徒だよな?」

 

「…一夏さんに、何か用があるんですか?」

 

「別にぃ、ただ彼とお話がしたいのよ。

それじゃあねぇ♪」

 

「まぁ待てよ」

 

「…!」

 

バンは自分に背中を向ける少女の頭にVSチェンジャーを向ける。

 

「…あら、警察の方が、そんな真似をしても大丈夫なのかしら?」

 

「あぁ、確かにいけねぇ真似だな、俺だってやばいと思ってる。

けど、そうすんなり保健室に行くんならよぉ、その殺気、ちゃんと隠しておいた方が良いぜ、転生者さんよぉ?」

 

「…っ!?」

 

少女が振り返ると、バンはVSチェンジャーを向けてる他にも、探知機で自分のことを察知していることに気が付いた。

 

かこはVSチェンジャーとトリガーマシンを構えている。

 

「…まさか、すぐにバレるなんて、思いもしなかった、なっ!!」

 

「うおっ!?」

 

少女は右腕にISを展開してバンを凪ぎ払おうとするが、反射的に避けられる。

 

「…あなたは、何が目的ですか?

それほどの殺気出しておいて、一夏さんに何をするつもりですか!?」

 

「だから、お話がしたいって言ってるだろ?

別れの言葉とか遺言を聞くためになっ!」

 

そういうと同時に、少女はISを本格的に展開する。

 

その見た目は灰を被さったような黒で、両肩には犬頭があって炎を吹き出していた。

 

「…!

お前、何者だ。

何で一夏を狙ってるんだ!」

 

「あら?

警察だって言うなら、少しはこの世界の知識もあるだろ?

それでオレが何者かをな!」

 

「…まさか、ダリル・ケイシーだってのか?

でも何でお前から転生者の反応があるんだよ!」

 

「別に珍しいことでもないだろ?

転生するだからオリジナルな存在になるのと同じように、本来の歴史の人物になっているってのも不思議じゃない。

つまり、オレはダリルであってダリルじゃない、そんなところだ。

それに、オレは亡国企業に所属してると同時に、ギャングラー暗殺部隊に入ってるんだぜ」

 

「なっ!?」

 

「…っ!?」

 

金髪の少女、ダリルの言葉を聞いて二人は驚く。

 

ダリル・ケイシーという存在のことは、学園の生徒であると同時に亡国企業のメンバーであるのはわかっていた。

 

しかし、目の前にいるこの少女がダリル・ケイシーという存在の皮を被ったギャングラーの暗殺者だということには驚いてしまう。

 

驚いている二人をよそに、ダリルはため息交じりでしゃべる。

 

「はぁ、全くこの世界って異常よねぇ。

絶対天敵とかいう化け物が出てくるし、この間の金丈のくそ野郎が仕向けてきたやつの襲撃で生徒も教師もトラウマ植え付けられて、おかげで予定通りとはいかなくなってきたのよねぇ」

 

「…どういうことだ?」

 

「この学校はしばらくしたら修学旅行があったんだよ。

けど、さっきの二つの件で台無し。

オレは亡国企業の一員として合理的(・・・)に織斑君の暗殺と篠ノ之さんの拉致ができなくなった…」

 

「ですが、あなたがダリルさんに転生しても、別の人生を歩むこともできたのではないんですか?」

 

「良いでしょ別に?

オレとしては織斑くんがこの世界の主人公だから、彼を殺して幹部になってやる。

そしてその後で天災の妹の篠ノ之さんを拉致して天災との交渉材料として使わせ、それで私がISを独占するって話、実に素晴らしいだろ?」

 

「…そうかよ、俺たちは転生者でも、なにもしていないとかここの生徒とかだったらできれば戦いたくはなかったが、どうやらお前は違うみたいだな」

 

「「警察チェンジ!!」」

 

『1号 2号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

「すみませんが、彼のところには行かせません!」

 

バンとかこはパトレン1号と2号に変身し、VSチェンジャーを構える。

 

「そう、じゃあ先に、てめぇらが死ねっ!!」

 

ダリルは両肩の犬頭から炎を吹き出し、1号たちに襲い掛かる。

 

「うおっ!?」

 

「うぅっ!!」

 

二人はとっさに避けてVSチェンジャーで応戦する。

 

「フフッ、無駄だ!」

 

ダリルは避けずに手を翳すと、VSチェンジャーのエネルギー弾を指で挟んで止めた。

 

「なっ!?」

 

「た、弾が、止まった?」

 

「フフッ!」

 

エネルギー弾はダリルの手の指の中で形を変えて、そのまま向きを変えて打ち出した。

 

「うぉっ、おらぁっ!」

 

1号がパトメガボーで構えて弾き返す、弾き返したそれは、よく見ると小さな針になっていた。

 

「弾の形が…!」

 

「まさか、お前の特典ってのは!」

 

「そうよ、オレの特典は炎とかプラズマとかでも、そんな形を持たない物質を武器に変化することができるやつだ。

オレも最初は驚いたけど、せっかくもらった力なんだから、使わないともったいないじゃない?」

 

「くっ!」

 

「それに、この力ってやり方次第では、こんなこともできるんだぜ!」

 

ダリルは炎を吹き出すと、その炎を手で掴み、弓と矢に変えていく。

 

「…、おいおい冗談だろ!」

 

「さて、尻尾を振って逃げてもらおうじゃねぇか、パトレンジャーさん」

 

ダリルの炎の矢が発射され、二人は避けていく。

 

しかし、射抜かれた場所から炎が噴き出していた。

 

「…やべぇ、このままだと学校で火事が起きちまう!

かこ、外に出るぞ!」

 

「了解!」

 

「逃がすわけないだろ!」

 

二人は窓から学校の外に出て、ダリルは炎を斧に変化させて投げつけながら壁を突き破って追跡する。

 

しかも、二人を追いかけてるとはいえ外に出ようとも周りに斧や槍、矢を投げつけて周りを火の海に変えてしまう。

 

「クソ、あいつ無茶苦茶だ!

炙り出すにしても、これは異常だぞ!?」

 

「このままじゃあ、息ができなくなってしまいます…!」

 

「当然だろ?

オレ、生前は放火魔だったんだから」

 

「なっ!?」

 

「オレはよ、幼いころから、炎で何かが燃やされるの見ると、とっても興奮するんだよ。

初めて人を燃やした時だって、興奮のあまり体の中でうずいたんだ…!」

 

炎の中、ダリルは荒い息遣いで生前のことを話をしているのを聞いた二人は、ダリルの異常性にぞっとする。

 

そんな時に誰かの声が聞こえた。

 

「ダリル、どこっスか!?

さっき近くでダリルの姿がみえたっスけど」

 

「だ、誰だ…?」

 

1号は燃え盛る炎の中、燃えていないところを見ると、黒髪に三つ編みと眼鏡をかけた少女が焦った様子で近づいてきた。

 

「フォルテ…」

 

「ダリル…!

これは、一体どういうことっスか!?

何で、学園の外とか廊下の一部が燃えてるっスか!?」

 

「…」

 

「どうして、ISを展開してるんスか?

…何とか言って欲しいっスよ!!」

 

「おい、やめろ!

今のそいつに近づくな!」

 

「…あぁもう、めんどくせえな」

 

掴みかかるフォルテにダリルはため息を漏らす。

 

瞬間、フォルテと呼ばれた少女の体は右腰から左肩にかけて大きく切り裂かれた。

 

「え…?」

 

「なっ!?」

 

「っ!」

 

ほんの一瞬の出来事だったため、理解するのに時間が少しかかったが、1号と2号の二人はようやく理解した。

 

ダリルが、フォルテの体を刀に変化させた炎で切り裂いたのだと。

 

フォルテは口から血を吹き出し、そのまま仰向けになって倒れる。

 

「前からしつこいんだよスッスッスッってよぉ~。

何でオレがあんたみたいなブスのために止めなきゃ行けないんだよぉ」

 

「だ、ダリル…?

どう、して…?

私たち、恋人、じゃあ…!?」

 

血に沈んで倒れているフォルテの顔を踏みつけるダリル。

 

そこには侮蔑と嘲笑を含んだ顔で睨みつけてる、ダリルの目があった。

 

「あぁ、あれのこと?

あれはただの演技だ、え・ん・ぎ、わかったかなぁこのくそ女!

そもそも途中で絶対天敵とか転生者の襲撃があった時点で、お前は用済みなんだよメス犬が!」

 

「そ、そんな…うぐぁ!」

 

ダリルはさらにフォルテの顔を踏みつけ、その衝撃でかけていた眼鏡が割れてしまう。

 

フォルテはあまりの突然の出来事と、ダリルからの罵声に涙を流す。

 

「クソ、お前が話しかけてきたせいであいつらを見失ったじゃねぇか!

どう責任取ってくれんだ、えぇ!?

変形するまで踏みつぶして、蹴り殺すぞコラ!」

 

「そ、そんな…、やめてほしい、っス…!

私は、ダリルの…ダリルのために、綺麗に…してきたん…スよ…っ!」

 

「知るかボケ!

てめぇはどんなにおしゃれしてても似合わねぇんだよブス女が!

悲劇のヒロインぶってんじゃねぇよ!」

 

「あいつ…!」

 

「もう、やめてくださいっ!!」

 

「…!」

 

2号が炎の中から現れ、ダリルの足にしがみつく。

 

「何で、何であなたは、こんなことが平気でできるんですか!?

あなたにとっては嘘かもしれませんが、それでもこの人は、あなたのことを愛してくれてるんですよ!?」

 

「そんなの、決まってるだろ?

こうやって痛め付けるのが楽しいからなんだよ!

特に、こんな絶望した顔でぐちゃぐちゃにするのがよ!

そこに、愛するとか愛さないとか関係ねぇんだよ!」

 

「きゃっ!!」

 

2号は、しがみついた足を振り回されたことにより吹き飛ばされ、ダリルはそれを一瞥するとフォルテを焼こうと犬頭を向ける。

 

「やらせるかよっ!!」

 

「うわっ!?」

 

1号はトリガーマシンクレーンでダリルを引っ張り距離を放した。

 

「…てめぇ、自分が何してるのか、わかってるのか?」

 

「はっ、だったらどうしたんだよ!」

 

「てめぇ…!」

 

1号は歯噛みするも、その様子を見て楽しそうに炎を吹き出しながら攻撃するダリル。

 

右腕のクレーンで応戦しながら、1号は通信機を取り出し、何かを呟いた。

 

「うっ、くぅっ!」

 

2号は吹き飛ばされて、腕に怪我を負いながらも倒れているフォルテの元にたどり着き、怪我を治そうとする。

 

「…もういいんスよ」

 

「え?」

 

2号の手を、フォルテは突き放した。

 

その目は絶望したように死んでる目だった。

 

「もう…そんなこと、しなくても、いいんスよ…。

私が、ブスで、おしゃれとか、似合わないって、わかってるんスから…」

 

「そ、そんなこと、ありませんよ…。

だから、早く怪我を…」

 

「もうどうだって良いっスよ!!

そんなことなんかっ!!」

 

「っ!?」

 

フォルテは天に叫ぶように言った。

 

好きだった人から、実は演技だったとか、色々と罵倒を浴びたことによる絶望が木霊する。

 

「もういい…もう、いい…!

どうせ私なんか、女の子しか愛せない、クズなんスから…!」

 

「…それでも」

 

2号は強くフォルテの手を握る。

 

「それでも、あなたがあの人を愛していたということは、本当なんじゃないですか!?」

 

「…!」

 

「確かにあなたは女の子しか愛せないかもしれません。

ですが、あの人にとっては演技でも、あなたにとっては本当の恋だったんじゃないんですか!?」

 

「それは…」

 

「ならば、あなたにとっての恋人(ダリルさん)は思い出の中で生きています。

だから、あなたは生きてくださいっ!」

 

「あ…」

 

フォルテは2号の言葉を聞いて涙を流した。

 

それは悲しみの涙ではなかった。

 

「私の、思い出の中に…?」

 

「はい、もしあなたがここで死んでしまったら、思い出の中にいるダリルさんも死んでしまい、思い出も何もかもが消えていきます。

あなたは、それでいいんですか?」

 

「…違う、違うっス…!

私の中のダリルを、死なせたくないっス…!」

 

フォルテは嗚咽交じりに、生きたいと願う。

 

「…そうです。

あなたは、生きていて、良いんですよ。

…!」

 

思い止まったフォルテを見て安堵した2号はトリガーマシンレスキューを取り出そうとしたときに、VSチェンジャーが光を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラッ!」

 

「ぐぅおっ!?」

 

1号はダリルの攻撃を防いでいるが、完全に押されてる状態だった。

 

おそらく次の一撃をもらうと、身が持たない。

 

パトメガボーで受け止めることも可能だが、相手が常に炎を使ってるため、どれだけ持つかはわからない。

 

「オラオラ、そろそろギブアップか!?」

 

「…いや、まだだぜ…!」

 

「往生際が悪いな、とっととくたばって燃やされろよ!!

…!?」

 

炎の刀を振り下ろされる直前、1号の目の前で動きが止まった。

 

「なっ、動けない…!

動けないだけじゃない、システムまでダウンしてやがる…!」

 

やがてダリルのISは解除されて、元のチョーカーに戻ってしまう。

 

「くそっ、何でだ!?

あと一歩でこいつを仕留めれたってのによ…!」

 

『ハロハロー、みぃんなのアイドルぅ~、束さんだよブイブイ!』

 

「っ!?

こ、この声は…!」

 

「…ふぅ、本当にヤバかったぜ、束さんよぉ…!」

 

狼狽えてるダリルをよそに、1号は通信機を取り出した。

 

『いやぁ、まさか転生者がISを使ってるなんて思わなくてさ…。

だけど、すぐに調べて使えなくさせたよ』

 

「て、てめぇは、篠ノ之束…!」

 

通信機から聞こえた声に歯噛みをするダリル。

 

先程1号が通信機を取り出して呟いたのは、束に連絡してダリルのISを停止させることだったのだ。

 

『やぁ、クソ転生者。

今回は良い度胸してるんじゃない?

まさか、いっくんを殺そうとしたり、箒ちゃんで使って私と交渉しようとしてるみたいだし?

ま、バッくんから聞いたのもそうだけど経緯を調べたんだけどさ』

 

「…!」

 

ダリルはそれを聞いて、敗北が決定したと思った。

 

目の前にいる1号がいつの間にか束に連絡し、なおかつ自分の目的を調べあげたのだから。

 

『じゃ、束さんはここまでやったんだから、あとは任せるね、バッくん♪』

 

その言葉と同時に通信が切れて、束の間の静寂があった。

 

「…あの、腐れ脳みそがぁああああああっ!!!!」

 

ダリルはその静寂を破り、近くで燃えていた炎に手を伸ばそうとする。

 

しかし、その寸前で雨が降り、炎が一瞬のうちに消されてしまった。

 

「クソ、なんでこんなときに雨が…!」

 

辺りを見渡すと、先程自分で吹き飛ばした2号が、片腕に消火器のようなポンプを装備し、もう片腕で傷を直したフォルテを担いでいた。

 

フォルテの目には、先程のような絶望はなく、決意と覚悟で満ち溢れていた。

 

「フォルテ…!

な、なぉフォルテ、助けてくれよ!

オレ、こいつに殺され…」

 

「あなたはもう、ダリルじゃないっス。

もうこれ以上、私とダリルの思い出を汚さないで欲しいっス…!」

 

「…!」

 

ダリルは手のひらを返したように先程痛めつけたフォルテに助けを求めるが、フォルテに拒絶されてしまう。

 

拒絶されたダリルは頭の中で何かが切れ、獣のように吠えながら周りの水を弾丸に変えようとする。

 

「悪いが、これはお前の結末だ。

この吐き気を催すような転生者が」

 

1号はダリルの手を掴み、暴れるダリルに手錠を嵌める。

 

その瞬間に、ダリルは光の粒子となり先程の叫び声がまるで嘘だったかのように消えて、その場から消えていった。

 

残されたのは、ダリルが使っていたISの待機状態であるチョーカーだけだった。

 

 

 

 

 

 

フォルテの怪我は、特典とレスキューで治したので数日もすれば傷跡も残さないほどのものになった。

 

バンはダリルの件でフォルテに謝罪するが、ダリルは自分の思い出の中に生きてるから良いと言った。

 

「…胸糞悪い事件だったな」

 

「はい、フォルテさんは謝らなくて良いと言いましたが、やはりあぁいう身内や恋人の目の前で更正するのは、ここに堪えますね…」

 

「ちっ、織斑先生とか他の教師たちに何て言えば…!」

 

バンたちはこの件のことをどうするかを考えながら廊下を歩いていると、目の前で一夏が走ってきた。

 

「お、おい!

バン、かこ…!」

 

「い、一夏さん!

ど、どうしたんですか?」

 

「というかお前、何で保健室から出てんだよ?」

 

「そ、それが…!」

 

一夏の言った言葉に、バンたちは突っ切るかのように走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アストルフォが目を覚ました瞬間、悲痛な叫びをあげながら自分を突き飛ばし、そのままどこかに走っていったといった言葉を聞いて。

 

 

 



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アストルフォの嘆き

IS学園の屋上、アストルフォは柵にもたれ掛かり蹲っていた。

 

「うぅ、ぐすっ…!」

 

蹲っているため顔は隠れているが、泣いていた。

 

今のアストルフォの中にあるのは、生前のトラウマと自分の罪に対する罪悪感。

 

それゆえ、いつもの明るさはどこにもなかった。

 

「アストルフォっ!!」

 

「…!」

 

声が聞こえてので、顔を上げて屋上の入り口を見ると、バンとかこ、そして一夏の姿があった。

 

「アストルフォ、お前…」

 

「アストルフォちゃん…」

 

「…!」

 

三人はアストルフォの顔を見て驚く、一夏はあまり知らないが普段のアストルフォからは考えられないほど憔悴しきっており、目は闇に覆われたように光がなく死んでいた。

 

「…こんなところにいたのかよ。

お前、もう動いても…」

 

「来ないでっ!!」

 

「あ、アストルフォちゃん?」

 

バンたちが近付こうとした途端、アストルフォが怯えるように後ずさりしながら拒んだ。

 

「お願いだから、来ないで…!

ボクには、生きる資格なんてないんだから…!」

 

「生きる資格?

アストルフォ、お前一体何の話を!」

 

「わかったんだよ。

ボクがどうして、君たちに止められるような無茶をするのかっていう理由が」

 

「…!」

 

「…当初のボクには自覚はなかったし、目の前で転生者に襲われている人を助けたいとか、そんな感じで思ってたけど、実際は違ったんだ。

そんなのはただの建前でしかなかったんだ、人の命とかそんなのはどうでも良かったんだよ…」

 

「…アストルフォ、お前まさか」

 

アストルフォが言おうとしていることに何か察しがついたバン。

 

そしてアストルフォは自嘲気味になりながら体を起こして、叫んだ。

 

「ボクは、本当は死にたかったんだよ!

だから、そこにいる彼を助けたのだって、今までの無茶だって、自分で自殺する勇気がなかったからわざとそうしただけなんだよ!」

 

「アストルフォちゃん、どうしてそんな…!」

 

「そんなの、決まってるじゃないか。

ボクが親を見殺しにした(・・・・・・・・)からだよっ!」

 

「「「っ!!?」」」

 

アストルフォの、慟哭にも似た嘆きが、屋上に響いた。

 

「…今でも思うんだ。

あの時、見逃してなかったらあんなことにはならなかったんだって。

けど今更そんなことを思っても遅いんだよ…、実際に目の前で両親が死んだところを見たんだから!

だから、こんなボクには生きてる資格なんてないんだ…!」

 

3人が驚いていることをよそに、アストルフォは柵を乗り越えて屋上から飛び降りようとする。

 

ふと我に返ったバンとかこはアストルフォの元へと駆け寄ろうと走り出した。

 

「やめろ、アストルフォ!!」

 

「お願いだから、そんなことをしないでっ!!」

 

「…こんなボクのことを、止めようとしてくれるなんて、本当に優しいね二人とも。

でもごめんね、ボクにはもう、耐えきれないんだ…!」

 

二人の姿を見たアストルフォは、悲し気に笑い、すぐに屋上から身を投げ出した。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

「いやぁああああああああっ!!!!!!」

 

バンは身を投げ出したアストルフォに手を伸ばし必死で手を掴もうとし、かこはアストルフォが飛び降りる様を見たくないと目を塞ぐ。

 

「やらせるかっ!!

来い、白式!!」

 

そんな中、一夏も身を投げ出し、それと同時に右腕の腕輪を見せるように叫び、ISを展開する。

 

そして地面に落ちようとするアストルフォの手を掴もうと手を伸ばした。

 

その瞬間だった。

 

学園の地面が歪み、空間に穴が空いて、アストルフォと一夏を飲み込もうとしていた。

 

「あの穴は…!」

 

「まさか、空間の歪みが!?」

 

「これは、あの時に…!」

 

「え…!?

うわああああ!?」

 

「アストルフォ、一夏!!」

 

アストルフォと一夏は、その空間の穴の中へと落ちていき、その直後に消えてしまった。

 

バンは冷や汗をかき、かこは思い出したように少しだけ焦りを感じていた。

 

「おいかこ、今のって」

 

「…前に私とアストルフォちゃんがここに来た時に吸い込まれた空間の歪みです。

おそらく、二人は別の場所に飛ばされてしまったのではと」

 

「そうか…。

でも、少なくとも二人は無事なんだよな?」

 

「飛ばされた先にもよりますが、少なくともその可能性はあります」

 

「わかった。

じゃあ俺はさっきのことも含めて亀山さんたちに説明してくるから、かこは霞に連絡して二人を探してくれ。

難しいならなのはたちにも協力を仰いでくれ。

俺も終わったらすぐに向かうから」

 

「わかりました。

ですが、先ほどのことはどのように説明するつもり、ですか?」

 

かこの言葉を聞いて、バンは通信機を取り出した。

 

その通信先の名前に束の名前があった。

 

「…一応、あの人も当事者だからな。

束さんでだめなら、フォルテにも同行してもらうさ」

 

「…そうですか。

あの、バン隊長…」

 

「あ?」

 

「あまり、無理はしないでくださいね?

私も、アストルフォちゃんのこと、わかってるようでわかっていませんでしたから」

 

「…そうだな、サンキューかこ。

じゃあ、俺はもう行くぜ」

 

「はい…」

 

こうして二人は別々に行動することとなった。

 

かこは霞に連絡してアストルフォの反応を探しに、バンは情報整理と束に説明の補助の依頼を行っていた。

 

ただ、二人の頭の中では、アストルフォに対する理解の足りなさと後悔が渦巻いていた。

 

「すまねぇ、アストルフォ…!」

 

「ごめんね、アストルフォちゃん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…」

 

そのころ、アストルフォは空間の穴の中に落ちた後、ある建物の中の床の上で倒れこんでいた。

 

頭を強く打ったのか、あまり思考がまとまらず、頭から血が流れて片目の視界が赤く染まっていた。

 

目を動かすと、一夏が自分の体を揺すっているのが見えた。

 

泣きそうになりながら自分に呼びかけてるようだが、何を言ってるのかさっぱりわからなかった。

 

ただ、はっきりとわかることがあった。

 

自分はもうすぐ死ぬのかもしれないということ。

 

血は止まったかはわからないが、意識が落ちそうだった。

 

そうか、もう自分は死んでしまうのか。

 

これで、両親と爺やの元へと行ける。

 

そう思っていた時に、一夏とは別の誰かがやってきた。

 

一夏は警戒するが、それを退けて自分に手を向けた。

 

その瞬間、アストルフォの意識がそこで落ちた。

 



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アストルフォの罪

「はっ…、痛っ!

ここは…」

 

アストルフォは意識を取り戻し、頭を押さえた。

 

頭には、何か包帯らしきものが巻かれているようだった。

 

体を起こして自分がどこにいるかを見渡していた。

 

どうやらどこかの屋敷の寝室のようで、アストルフォはその大きなベッドで寝かされていた。

 

しかし、自分がいる部屋と横になっていたベッドにどこか違和感を覚えていた。

 

「…この部屋に、このベッド…。

どこか、懐かしい感じがする。

でも、ここはどこなんだ…?

…っ!

そういえば、彼は!」

 

アストルフォは一緒に落ちてきた一夏の存在を思い出して、周りを見渡すと部屋の椅子で寝ているのが見えた。

 

「よ、良かった、彼は無事だったんだ」

 

アストルフォは一夏の無事を確認して安堵する。

 

しかし、ここでアストルフォは頭の中で疑問を抱く。

 

ここがどこかということもそうだが、なぜ彼の無事に安心しているのか?

 

死にたがりの自分にとって、他人なんてどうでも良いはずなのに。

 

でも、本当にそれだけなのだろうか?

 

自分は本当に、心の底から人のことなんかどうでも良かったのか?

 

今でも死にたいって思ってるのに。

 

「…なんだよ、何なんだよ…っ!

もうっ!!」

 

頭の中で様々なことが思い浮かべて、もはや自分でも何がしたいのかわからない自分に苛立ちを覚えて、アストルフォは枕を思いっきり叩き付ける。

 

「はぁはぁ…っ!」

 

「気が付いたみたいだな」

 

「っ!?」

 

部屋のドアから一人の男が入ってきた。

 

その男は手にいくつかの野菜を持っていて、銀色の制服らしきものを着ていた。

 

「…君は、誰なんだい?」

 

「おいおい、助けてやったのにその言い方はないだろ?

なぁ、後輩のパトレンジャーよ」

 

「っ!?

な、なんでそれを…!

…まさか!」

 

アストルフォはすかさず自分の太ももを見ると、VSチェンジャーがあった。

 

男はその様子を見てため息を漏らしながら、近くにあった椅子をベッドの隣に持ってきて座り、アストルフォを見る。

 

「そう警戒するなよ。

俺様はお前たちの敵じゃない。

…そうだ、良かったらこの野菜食うか?」

 

「いらないよ。

…それで、君は誰なのさ」

 

「そういえばそうだったな。

俺様の名は高丘映士、ボウケンシルバーって言えばわかるか?」

 

「ボウケン…?

まさか、ボクたちの先輩にあたるボウケンジャーの…!」

 

「そういうことだ。

それにしても、危なかったな。

さっき俺様が助けに来なかったらお前本気で死んでいたぞ?」

 

「…っ!

余計なお世話だよ、それよりもここはどこなのさ」

 

まるで自分が死ぬことを心配されてるような言い方に腹が立ったのか、アストルフォはそっぽを向くような態度で質問する。

 

「随分とご機嫌斜めなんだな。

まぁいい、俺様もできる限りだが質問には答えてやるよ」

 

そう言って映士はわかる範囲でと釘を刺して説明した。

 

結論から言うと、ここはプレシャスと呼ばれる物質で構成された特異点ではないかということ。

 

この屋敷から外には出れるが、庭の外に出ることはできない、というかその先がないということ。

 

自分は先日突然この特異点に飛ばされて帰れなくなり、この屋敷や庭で危険や帰れる方法を探したこと。

 

結局のところ、この特異点は危険な世界ではないが、問題のプレシャスらしきものは見つかったものの触れずに困っているのだということ。

 

「…ふぅん」

 

アストルフォはあまり興味なさげに返事した。

 

別にアストルフォはこの場所に関心がないわけではない。

 

それに、意識を取り戻してからいくらか頭が冷えたのか、少しだけプレシャスという言葉に引っ掛かりを感じていた。

 

この特異点を作ったプレシャスと、暴走時に世界を歪ませるロストロギアが似ているのではと。

 

「…まさか、ね」

 

それからアストルフォは自ら思考を停止して、天井を眺める。

 

どうせバンたちにはあんなことを言ったし、今更どの面下げて会いに行けというのだと。

 

「それで、俺様から質問するぞ?」

 

「…何さ」

 

「お前のその目は、何だ?」

 

「言ってる意味がわからないね。

ボクの目を抉り取りたいとでも言うのかい?

だとしたら悪趣味だね」

 

「そうじゃない、俺様が聞いてるのは、お前の何かを諦めたような目は何だって聞いてるんだ!」

 

「…!」

 

映士に自分の心を見透かされたような言い方に驚くアストルフォ。

 

「だから何だって言うんだよ。

君には関係ないだろ、放っておいてよ」

 

「…じゃあもっとわかりやすく言うぞ?

お前、死にたいのか?

少なくとも俺様にはそうは見えるが…!」

 

映士が言い終わる直前に、アストルフォは枕を投げつける。

 

「…言葉の意味がわからなかったのかな?

放っておいてよって、言ってるんだ。

…そもそも、何で君はそこまでボクのことを聞きたがるんだい?」

 

「関係ないことはないだろっ!?」

 

「…っ!

君は…」

 

「おっ、目を覚ましたのか」

 

いつの間に話を聞いていたのか、椅子に座って寝ていたはずの一夏が身を乗り出して聞きに来たのだ。

 

「なぁ、お前ってアストルフォって言うんだよな?

…俺を助けるまでのお前の目はそんなものじゃなかったんだ。

…良かったら、俺にも教えてくれよ」

 

「…君にはさっき言ったけど、ボクは親を見殺しにした。

だから死にたいんだよ」

 

「けど、だからって死んでいい理由になんか…」

 

「君に、ボクの何がわかるって言うんだっ!!」

 

「っ!?」

 

アストルフォは一夏の胸倉を掴み睨みるける、その目はどうしようもないほどの怒りに満ちていた。

 

だがそれは一夏に対してではなく、自分自身に対するものだった。

 

「…お前、過去に何があったんだ?」

 

映士はアストルフォの態度が気がかりになり、質問した。

 

「放っておいて、言ってるのに…。

…もういいよ、そんなにしつこく言うのなら言えばいいんだよね言えば!?」

 

アストルフォは一夏を放して、半分自棄になりながら話した。

 

自分は貴族の末裔の出身で、両親と執事一人と四人暮らしだったこと。

 

ある時、いつも励ましてくれる執事が急に寡黙になり、鼻歌交じりでこなしていた家事などの作業を淡々とやっていることに気付いた。

 

しかし、両親や自分への気配りなどを見て、ただの気のせいだと思い、二度と執事を疑おうとは思わなかった。

 

そんな日々が続いたある時に、両親が風邪をひいてしまい執事が、屋敷にあった風邪薬と水を持っていくところを目撃した。

 

両親の寝室から出た執事が自分を見た瞬間に、普段からでは想像もできないような邪悪な笑みを浮かべて、それと同時に寝室から両親の悲痛な叫び声が聞こえた。

 

まさかと思い、アストルフォは寝室に行くと、苦しみ悶えて死んだ両親がいたのだ。

 

それで全てを察したアストルフォは執事に問い詰めようとするがすでに遅く、執事が弁護士を呼んで財産を奪い取った。

 

あまりにもひどい現実に弁護士が帰るまでその場に座り込んだアストルフォは、弁護士が帰った後で執事を避難しようとするが、その執事が本物の執事ではないことを知ってしまう。

 

そして自分は執事に化けた誰かの仲間の二人に捕まり当時着ていたお気に入りだった服を引き裂かれて、男の体である自分の体を穢された。

 

一日かけて両親の死体の目の前で凌辱の限りを受けたアストルフォは悟ったのだ。

 

自分があの時気のせいだと思い執事に化けた誰かのことを追及できなかったせいで、両親が死んで財産も奪われたのだと。

 

もしあの時見逃してなかったら、執事の無念だけでも晴らせたのではと。

 

そう思っただけでも悔しかった、自分が凌辱を受けていることがどうでもよくなるほどに。

 

もはやまともに歩けなくなったアストルフォは、体を引き摺って両親の死体に縋り付いて泣きながらひたすら謝った。

 

その後で仲間の一人に刺殺された。

 

それが、アストルフォの過去だった。

 

「「…っ!」」

 

その話を聞いて二人は吐き気を催し、それと同時に激しい怒りを覚えた。

 

そいつはアストルフォの家族を殺して財産を奪ったことに飽き足らず、アストルフォにそんなひどいことをして殺したことを。

 

だが、そう思ってると、アストルフォは震える自らの体を抱きしめ泣いていた。

 

「…これで分かっただろ?

全部、ボクが悪いんだ、ボクが見逃したから。

あいつを見抜けなかったから、あんなことになったんだよ。

だから、ボクには生きてる資格なんてない、転生するべきじゃなかったんだっ!!

ボクなんか、あのまま死んでれば良かったんだっ!!」

 

「アストルフォっ!!」

 

「っ!?」

 

「お前、本当にそれでいいのかよ!?

お前が死んだら、お前の仲間のバンとかこは喜ぶのか!?」

 

「あの二人は関係ないだろっ!?

それにあの二人は、ボクと違ってあっという間だったんだ。

けどボクには止められるだけの猶予があったのに、何もできなかった!

だから…!」

 

「そんなの答えになってないだろ!

…俺だって、お前みたいなことはなかったけど、俺が弱かったせいで誘拐されて千冬姉の名前を汚した!

だから、お前の気持ちも、少しはわかるんだよ…。

自分のせいで大切な人が大変な目にあったことを」

 

「い、一夏…」

 

一夏は泣いているアストルフォの肩を掴んで言った。

 

一夏はアストルフォの過去を聞いて、どこか自分と重ねていた。

 

だから、アストルフォのことが放っておけなかったのだ。

 

「…お前を見てると、俺様の親友を思い出すな」

 

「え?」

 

「そいつも、今のお前みたいに自分のせいで仲間を死なせたって思ってたことがあるんだ。

まぁ、そいつの場合、自分の身を挺してまで仲間を守ろうとしたけどな」

 

「え、映士さん…」

 

「けどな、同時にお前に対して腹が立った。

過去にそんなことがあったからって死にたいなんて、そんなの間違ってる」

 

「そ、そんなの…!?」

 

「だったらなんでお前みたいな死にたがりがパトレンジャーやってるんだよ!

何のために人を守ってるんだよ!

それを矛盾って言うんだぜ?」

 

「そ、それは…」

 

映士はアストルフォの胸倉を掴み 責する。

 

だが、今のアストルフォには何でパトレンジャーとして戦っているのか、わからなかったのだ。

 

そもそも、本当に死にたかっただけなのか?

 

「…そういえば、お前らと話をしてて、一つ思い出した。

アストルフォ、って言ったかお前。

この屋敷の地下で見つけたプレシャスらしき物の声が、お前を連れてこいって言ってたんだ。

ついて来い」

 

映士はアストルフォを放すとそのままドアへと向かう。

 

「え、プレシャスが?

何でボクを…!?」

 

「知るか、ただお前を連れてこいって言ってたんだ。

俺様が案内してやるから、あとはそいつと話をして、頭を冷やすんだな」

 

「ま、待ってくれ!

俺も一緒に行かせてくれ!」

 

「…良いのか?

お前は単に巻き込まれたようなものだろ?」

 

「そりゃそうだけど、それでもアストルフォを放っておけない!

正直、今の俺にアストルフォを守れるかの自身はない、でも…!」

 

「…良いだろう。

ただし、足を引っ張るのだけはやめてくれよ?」

 

「あぁ、望むところだ!」

 

「ねぇ一夏、無理しなくていいんだよ?

よく見たら足が震えてるよ」

 

「だ、大丈夫だって!

それより、何で俺の名前知ってるんだよ!?」

 

「君が自分で千冬姉とか言ってただろ?

自分で言ってたこと忘れないでよこの馬鹿」

 

「俺は馬鹿じゃない!」

 

「おいお前ら、いい加減行くぞ?」

 

「う、うん…」

 

「あぁ!」

 

暗い表情になりながらも先ほどのプレシャスらしき物の声に違和感を覚えながら、こうなったら行くしかないと思いアストルフォは映士についていく。

 

一夏も同様に、アストルフォのことが放っておけなくて、ついていくことにした。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、特異点の別の場所では。

 

「おい、あの男の娘がここに来てるんだってよ…。

こんな訳の分からない世界にな…」

 

「あぁ、上手くことが運べば、またあいつの体を味わい尽くしてやる…!」

 

「だがあいつはパトレンジャーだ。

何かあったら俺が殺す、あの時のようにな」

 

アストルフォたちに気付かれないような場所から見ていた三人は、武器やデバイスを触りながら様子を見ていた。

 



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3人の暗殺者

今回はいりごま塩さんと烈 勇志さんのリクエストの転生者を書かせていただきます。

しかし、リクエスト通りの特典を使っているわけではありませんが、似たような特典を使っています。


バンは千冬たちにダリルの件と一夏がアストルフォと一緒に別世界に飛ばされたことを説明した。

 

前者は、ダリルが転生者でしかも一夏を殺そうとしたギャングラー暗部組織の一人だったことを受け入れられずにいた教員もいたが、バンが束に用意してもらった資料などから納得せざるを得なかった。

 

しかし、教員たちもそういうことを見抜けなかったこともあるので、もしパトレンジャーが来てなかったら一夏が殺されていたかもしれないということで、それ以上言及も責任追及もしなかった。

 

後者は、一夏も巻き込まれたこともあるので、パトレンジャーが責任を持って連れて帰るとして話が決まった。

 

それによりバンは亀山と一緒にかこと合流した。

 

かこもかこでアストルフォを探すために霞に連絡はしたが捜索は難航していて、管理局にも協力を仰いでいる。

 

二人を探してる間、亀山はバンとかこからアストルフォの話を聞いていた。

 

「…アストルフォくんがそんな」

 

「俺も驚いてますよ。

あいつがまさか今までずっと死にたがってたなんて、その罪悪感を知りもしないであいつのこと前に殴って怒ってしまって」

 

「今思えば、アストルフォちゃんは心の、自分でも気づかないほどの奥底で泣いていたのかもしれませんね。

いつも明るく笑って励ましてくれていたのに、私たちはそれに気づかなかったんです…」

 

「…でも二人にも気づかないほどだから、それは仕方のないことかもしれないんだよな。

話を聞いてる限りじゃ、アストルフォくんは無意識のうちにそのことを押し込んでいたみたいだし」

 

「だからこそ、俺たちがわかってやらないといけなかったんです!

あいつの苦しみも悲しみも!

具合的とは言えませんけど、俺はあいつを見つけて、あいつに謝りたいんです!」

 

「私も、わかってるようでわかっていなかったんです…!

だから、アストルフォちゃんを見つけて謝って、理解できるようになりたいんです!」

 

「そっか…、仲直りできると良いな…?

通信機から連絡が…」

 

三人で話をしている間に亀山の通信機に右京からのメッセージが来た。

 

何でも束がこの捜索に手伝ってもらい、所々霞や管理局の補助を借りながらアストルフォたちの位置が分かったらしい。

 

「この世界の座標に…?

…何か、この世界自体が極小な特異点のようですね」

 

「あぁ、何で唐突に束さんが協力してくれたのか少し気になるがそれどころじゃない!

早く行こうぜ!」

 

「うっし、待っててくれよアストルフォくん!」

 

バン、かこ、亀山は指定された座標の世界へと向かった。

 

一方、アストルフォたちはというと地下に向かう途中、一夏がこの暗い状況に耐えられないとして様々な話をしていた。

 

アストルフォは気分が気分なためあまり乗り気じゃなかったが渋々話を聞いていて、映士は先頭を歩きながら黙って聞いていた。

 

「それでまぁ、箒たちに付き合ってくれって言うから買い物かって聞いたら怒られただけど、それが未だに俺にはわからなくてな…、聞いても自分で考えろって言われるしさ」

 

「ねぇ一夏、君ってひょっとして好きな子とかいないの?

恋愛的な意味で」

 

「えっ、恋愛?

あぁ、俺あまりそういうこと考えたことがないっていうか、ずっと千冬姉に憧れてたっていうか…」

 

「君、一度恋愛ゲームとかしてやってみたら?

絶対バッドエンド直行だよ?」

 

「それか玉砕覚悟で根強く聞いて、話をよく聞いてやれよ。

そんなんじゃ、いつまで経ってもそんな状況が続くんだぞ?」

 

「何でそうなるんだよ!?」

 

などと話をしていくうちに、アストルフォも少しだが心に余裕ができたのか色々とアドバイスができるようになってきていた。

 

それから一夏と映士から、バンとかこについて聞かれたのでアストルフォは話したが、話をしていくうちに涙を流して、あの二人がとても優しいから死にたいとか言えなかったとか二人を見ているうちにそんな感情も薄れていたなど話し、先ほどトラウマが暴走していたとはいえ飛び降りたことについて二人にあんな顔をさせたとして内心後悔している。

 

それゆえ、今更どの面下げて会えばいいのかわからないが、もし生きて会うことができれば謝りたいと本音を漏らした。

 

そしてそうしていくうちに目的地にたどり着いた。

 

「…ねぇ映士さん、ここってまさか、保管庫?」

 

「あぁその通りだ。

お前、よくわかったな」

 

「いや、その、なんとなくだけど…。

でも、何でかわからないけどこの地下だけでなく、この屋敷自体が懐かしく感じるっていうか…」

 

「じゃあ、この中にプレ何とかが?」

 

「プレシャスだ、最も俺様ははっきりとわからないからプレシャスらしき物って言ってるがな」

 

そうしてアストルフォたちは保管庫の中に入ると中はスペースを考慮してか広く作られておりぶつかる心配もなかったのでまっすぐ歩いていく。

 

そして、その奥で光る小さな石板を見つけた。

 

「あれがお前を呼んでいたプレシャスもどきだ!」

 

「これが…!?」

 

アストルフォが石板を手に取ろうとした途端、ありえないことに近くにあった壺から手が生えてアストルフォの手を掴んだ。

 

アストルフォはいきなりのことに恐怖に駆られるが、映士がその壺を蹴り飛ばす。

 

すると壁に叩き付けられるも割れず、そのまま大きくなって人の姿へと変わった。

 

「…なるほど、壺に変身して始末しようとしたが機転の利くやつがいるとはな。

それと久しぶりだな、男の娘なお坊ちゃん?」

 

「き、君は…っ、な、何で…!?」

 

「アストルフォ!?

お前、こいつと知り合いなのか!?」

 

「…っ」

 

男の姿を見たアストルフォは腰を抜かし後ずさりしたまま恐怖で何も言えなくなっている。

 

「決まってるだろ?

私はこいつの執事に化けて、両親の毒殺と財産を奪い取ったのだからね」

 

「…ってことはお前が!」

 

「おや、あいつから話を聞いていたのか?

だとするなら、私に構っていて良いのか?」

 

「何?」

 

『STAND BY』

 

機械音と何かカサカサと音が聞こえ、誰かが刀のようなものを持って歩いてきた。

 

「全く真向のやつめ、しくじったか。

まぁいいさ、相手は良い男、まとめてしゃぶりつくしてやる、変身!」

 

『HENSIN!』

 

もう一人の男が足元に近づいたサソリ型のロボットを刀に装着するとサソリを連想する鎧を着て襲い掛かる。

 

「うわっ!」

 

「ぐっ!」

 

「ひぃっ!」

 

三人はどうにか躱し、アストルフォと映士はパトレン3号とボウケンシルバーに変身し。一夏はISを展開した。

 

「うおぉおぉぉぉおお!!」

 

「ふっ!」

 

一夏はサソリの男と刃をぶつけ合い交戦する、しかし鎧のチューブが伸びて攻撃をしてくるため一夏は苦戦している。

 

シルバーと3号は真向と呼ばれた変身する男と戦うが、真向が腕を巨大な刃に変えて攻撃を仕掛けその他にもkらだの各部を武器に変えてトリッキーな戦いをするため、対処が困難な上、3号がトラウマと罪悪感のせいか上手く戦えずほとんど無抵抗だった。

 

「うぅ…!」

 

「アストルフォ、戦いに集中しろ!」

 

「でも、ボクには…、うわっ!!」

 

3号は真向のハンマーに変わった足で蹴り飛ばされて変身を解除される。

 

「アストルフォ!」

 

アストルフォは口から血を吐きながら体を引き摺り、光る石板に手を伸ばそうとする。

 

だが、その時にアストルフォの背筋が凍って思わず後ろを振り返ると、特殊な形をした短剣を持った男が立っていた。

 

「…っ!?

き、君は!?」

 

「真向、上場身、この小僧の首は俺がもらうぞ」

 

「おい待てよ狩矢、その男の娘は俺の獲物だぞ!

死体で遊ぶなんて趣味は俺にはないんだよ!」

 

「知るか、お前らはそいつらの相手でもしておけ」

 

「…っ!」

 

狩矢と呼ばれて男は無慈悲に短剣をアストルフォに突き立てようとする。

 

アストルフォはもはやここまでかと目をつぶり潔く殺されようとした。

 

「させるか!!」

 

しかし、その刃はアストルフォに刺さることはなく、何者かに阻まれた。

 

目を開くと、1号がパトメガボーで狩矢の短剣を防いでいた。

 

「隊長…!」

 

「よぉアストルフォ、怪我はないか?」

 

「隊長、あの、その…!」

 

あまりの衝撃にアストルフォは言葉にできなかった。

 

「…話は後だ。

よくわからないけど、それがこの特異点のコアみたいなものなんだろ?

俺たちが食い止めるから、お前はその石板を取れ!」

 

「俺たち…?」

 

他にもいるのかと疑問を抱いていると、2号とパトレンXが一夏とシルバーの援護をしていた。

 

「えぇい!

アストルフォちゃん、大丈夫!?」

 

「援護はまっかせてくれよ、アストルフォくん!!

あ、どもボウケンシルバーさん、俺亀山って言います」

 

「かこ、亀山さん…!

うん、わかったよ…!」

 

そうしてアストルフォが石板を掴んだとたん、石板から強い光を発してアストルフォを飲み込んだ。



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心の傷を癒す穏やかな風

気がついたら、アストルフォは平原に立っていた。

 

着ている服もパトレンジャーの制服ではなく、アイドル風なドレス姿だった。

 

吹いている風が心地よい、このまま日向ぼっこしたくなるような気分だった。

 

「もし、そこのご婦人?」

 

「…?」

 

振り返るとタキシードを着た老人がいたが、顔には靄がかかったようによく見えなかった。

 

しかし、アストルフォにはどこかこの老人に見覚えがある気がした。

 

「もしよろしければ、あちらに居られる旦那様と奥様と一緒に話をなさいませんか?」

 

老人が指さす方向に目を向けるとテーブルを囲むようにドレスとロングコートを着た二人の男女が座っていた。

 

どちらも顔に靄がかかっていてよく見えなかった。

 

ただ、アストルフォにはなんとなくだが、どこかであったような、そんな懐かしい雰囲気があった。

 

老人に手を引かれるまま、男女と面と向かい合わせになるように座らされる。

 

老人が日傘を出したと思ったらテーブルの真ん中に刺し込んで、3人に直射日光が当たらないように影ができた。

 

「あ、あの…」

 

アストルフォは指をもじもじと動かしながら顔を下げて目だけを二人に向けながら何かを言おうとする。

 

目の前にいる男女、どこかで見たことがあるのは確かだが、何か口にするだけでも気まずい感じがするのだ。

 

「心配しないで、落ち着いてお話をしましょう?」

 

すると、女性がアストルフォの肩に手をポンと置いて、見えない顔で笑いかけた。

 

「…っ」

 

その見えない笑顔に、不思議とアストルフォは緊張していた顔付きが少しだけだが和らぐ。

「…あの、一つ聞いても、良いですか?」

 

「…何かな?」

 

「もし、自分の子供が見逃したり見抜けなかったせいで、自分や自分の家族が殺されることになったら、あなたたちは、その子供のことを、どう思いますか?」

 

自分でも何を言ってるのか、最初に出てきた言葉がそれだった。

 

何か、この二人にはそれを聞かなければならないと、何となくそう思ったのだ。

 

けどそれと同時に後悔もあった。

 

こんな質問しても、何を言ってるんだとか憎しみを抱くに決まってるとか、そんな答えが帰ってくるのだから。

 

「そうだな…」

 

男は一息間を置いて、改めてアストルフォの顔を見る。

 

「少なくとも私はその子供のことを心配するね。

自分たちが殺されても生き残れたのかとか、この先生きていけるのかと、そう思うよ」

 

「…!」

 

「私も、自分の子供が怖い目にあっていないかっておもうわ。

だって、自分たちの大切な子供なんですもの…!」

 

「…っ、何で」

 

予想外の返答に焦りを覚えるアストルフォ。

 

この二人はよりにもよって、自分のことよりもその子供のことを心配しているのだ。

 

焦りと同時に、怒りを覚えた。

 

どうしてそんな答えが出てくるのか。

 

「何でそんなこと、平然と言えるんだっ!!」

 

二人の言葉に耐えられず、アストルフォは思わず椅子から立ち上がって噛みつくように二人に怒鳴った。

 

「だってそいつは親を見殺しにしてるんだよ!?

そいつが、殺人鬼を見逃したせいで、親が兄弟が姉妹が死んじゃうかも知れないんだよ!?

もし、そいつが見逃さなかったら、ちゃんと見抜いていたら、この先の未来があるのかもしれないのに…!」

 

「…確かにそうかもしれないが、それでも子供の心配は親として当然だ。

だから、この先に様々な未来があるであろう子供の行く末を見るのが、親の務めだ。

最も、死んでしまってその先を見れなくなるのなら、とても悲しいが」

 

「家族を見殺しにするような子供に!?

そんなやつは、生きてる資格なんかないんだよ!

皆死んで、そいつだけが…、ボクだけが転生して生きてるなんてできないっ!」

 

「…それは」

 

一度爆発した感情が止まることを知らないように溢れ出る。

 

「だから、ボクなんか…、ボクなんか…っ」

 

「やめて、もうそれ以上は…」

 

「ボクなんか、あのまま死んじゃえば良かったんだっ!!」

 

坊ちゃま(・・・・)っ!!」

 

「っ!?」

 

老人が悲しそうな声でアストルフォを止めに入る。

 

「お願いです、どうか…!

どうかそれ以上自分で自分を傷つけないでください…っ!」

 

「な、なんだよ!

さっきまで黙ってたくせに、急に止めに入って…?

今、ぼっちゃまって…」

 

今先ほど老人が自分に向けて言った言葉に沸騰していた頭がまるで冷水をかけられたように、一気に冷めていき冷静さが戻っていく。

 

「…爺やの言う通りだ。

そんなに自分を傷つけるべきじゃない、そんなことをしても悲しいだけだからな。

…逆に聞かせてほしいが、もし君が死んで、それは自分のせいだと思って君の家族が自傷行為に走ったり自殺したりしたら、どんな気持ちになると思う?」

 

「え…?

そ、そんなの…、卑怯だよ…!」

 

アストルフォはポロポロと涙を零し、嗚咽をあげる。

 

今頭の中で自分の死にバンが自殺したり、かこが荒れて自傷したりする場面を想像しただけで悲しくなったのだ。

 

「そんなのっ…、嫌だよ…っ!

ボクなんかのためにっ、そんなこと…っ、しないでよぉ…っ!!」

 

「私たちが言ってることは、そういうことなんだよ。

だからもう、自分を許してやっても良いんじゃないのか、アストルフォ(・・・・・・)

 

「…っ!?

どうしてボクの名前を…?

いや待って、…その顔は…!

あなたたちは…っ!」

 

涙で濡れた目で改めて男女の顔を見ると次第に靄がなくなり、素顔が見えてくる。

 

それはアストルフォにとって、もう一度会いたかった人たちの顔だったのだ。

 

「あなたたちは…っ、ボクがあいつを見逃したせいで殺された…っ!!」

 

「アストルフォ、言葉や行動はあれだったが、お前の気持ちは十分に伝わってきているんだよ。

私たちが、何て家族思いな息子を持ったんだと誇りに思えるぐらいにね」

 

「だから、私からもお願い、もう自分を許してあげて?」

 

「父さん…、母さん…っ!」

 

「坊ちゃま!」

 

老人が涙を流しながらアストルフォの手を握る、その顔には靄がなくなり優しそうな老人の素顔がそこにあった。

 

彼もまた、アストルフォがもう一度会いたかった一人なのだ。

 

「爺や…っ!!」

 

「坊ちゃま、申し訳ございませんでした…!

かつて、私めが殺されてしまったばかりにそのような思いをさせてしまって…!」

 

「うん…っ、うんっ、許すよ…!

だから…、ボクは…っ、自分のことを…っ、うわあああああぁぁぁぁ…!」

 

アストルフォは爺やを抱きしめて泣いた。

 

そこにあるのは、男の娘とか、パトレン3号だとか、そんなものは関係ない。

 

長い間迷子でやっとの思いで家族と再会できた、何てことのない子供の泣き声だった。

 

爺やは涙を流しながらもアストルフォの体を強く抱きしめた。

 

アストルフォの両親は涙を拭きながらも、息子との再会と息子の心の傷を癒すことができたことを喜んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「うぅっ、ぐすっ…!」

 

「落ち着かれましたか、坊ちゃま」

 

「うん、ありがとう爺や。

父さんも、母さんも…」

 

しばらく泣き続けて気持ちが落ち着いたアストルフォは三人の顔を見る。

 

そこには先ほどの暗さは無くなっており、少しずつ明るくなってきていた。

 

それは自分がずっと背負い込んでいた罪悪感が拭われて、雨雲が消えて太陽が光を照らすようなものだった。

 

すると、両親と爺やの体が徐々に浮かび上がり、、体も透けてきていた。

 

「…!

父さん、母さん、爺や、これは…!」

 

「私たちは、お前に会えてうれしいが、そろそろここを離れなきゃいけないんだ

元々私たちは、この石板にしがみついていただけの亡霊に過ぎない」

 

「ま、待ってよ!

それじゃあ…」

 

「アストルフォ、私たちにとって未練だったのは、あなたに悲しい思いをさせたことだった。

だから、あなたの心が救われた今、名残惜しいことではあるけれど、お別れになるの」

 

「そんな…!」

 

「坊ちゃま、もし寂しい思いをされるのでしたら、私たちのことを、思い出してください。

あなたの心に、私たちはいつでも居りますので」

 

「だが、お前の居場所はここじゃない。

後ろを、振り返ってみろ」

 

アストルフォは振り返ると、そこにはバン、かこ、亀山、右京、霞、そして機動六課、一夏、映士の姿があった。

 

彼らこそが、今の自分の居場所なんだと、アストルフォは悟った。

 

「…これで私たちとこの石板を通して形成された私たちのかつての屋敷も消えるが、気にするな。

私たちは、本来向かうべきだった場所に戻るだけなのだから、ただ元に…」

 

やがて三人は空高く昇り、最後は笑顔のまま消えていった。

 

アストルフォはただ一人、風が吹く草原の中三人が消えた空を眺めていた。

 

「うん、さよなら。

ボクも、いくらか気が晴れたような気がするよ。

それに僕自身がパトレンジャーとして戦う理由も、思い出してきたよ。

…もし、もうないかもしれないけど、また自分の罪悪感で苛まれることになるのなら…」

 

やがて光が全てを覆い、アストルフォさえも飲み込む。

 

「ボクは、彼らとともに戦う、そして勝ってみせる…!

だから、そこで見守っていてね」

 



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魂に刻まれた因縁に決着を

今回はいりごま塩さんからのリクエストのトリガーマシンを書かせていただきます。

あと、少し文章がおかしくなっているかもしてませんがそのあたりはご了承ください。


石板の光が治まり、現実へと引き戻される。

 

同時に体から矢じりのような靄が出てきたと思ったら消滅し、気分も晴れやかになる。

 

体感的には長かったが、現実ではほんの一瞬だった。

 

手には石板が握られていて、心に迷いがない。

 

もう何も怖くない、皆がいるのだから。

 

「…!」

 

アストルフォはすかさず石板をVSチェンジャーに押し付けた。

 

すると、石板が光を放ち、形を変えていく。

 

光がなくなると、石板は3頭の馬がつながった桜色の光沢を放つチャリオット型のトリガーマシンへと変わった。

 

「石板が、トリガーマシンに変わった…!」

 

「…何だか知らないが、くらえ!!」

 

真向は皆が光の影響で呆然としている隙を突いて、アストルフォに攻撃を仕掛けようとかぎ爪にして襲い掛かる。

 

アストルフォはそれを一瞥すると体を少しずらして攻撃をかわした。

 

「アストルフォ!」

 

「ごめん、皆!

ボクはもう大丈夫だよ!

何せ、君たちという頼れる大切な仲間が一緒にいてくれるからね!」

 

アストルフォはかつての明るさを取り戻し、勇敢ながらもどこか気高い決意を秘めた目でバンたちに言った。

 

「ふん、その様を見ると、少しは頭を冷やせたようだな」

 

シルバーが半ば茶化すようにアストルフォに言った。

 

アストルフォはそれに頷き、真向をにらみつけた。

 

「…そういえば、君あの時はよくも爺やを殺して化けてくれたね。

両親を殺して、財産を奪ってさ。

多分だけど、そこのサソードに毒を作ってもらって、それからボクを殺すときに、ナイフを持ってる彼がとどめを刺したんだろ?」

 

「よく気づいたな。

しかし、だからどうしたというのだ?

我々ギャングラー暗殺部隊の資金調達のため、平和主義だった貴様らを始末したまでだ」

 

「そうだと思ったよ。

…隊長、皆、彼はボクが引き受けるから、二人は君たちに任せても良い?」

 

「あぁ…!」

 

「…チャリオットチェンジ」

 

『チャリオット!

パトライズ!

チャリオットチェンジ!

チャリオッツパトレンジャー!!』

 

アストルフォはVSチェンジャーにトリガーマシンチャリオットを取り付けて変身した。

 

するとアストルフォはパトレン3号に変わって、その上から馬の頭や蹄、チャリオットの車輪などが全身を覆い、鎧に変化し、右手には蹄と車輪の模様が入ったレイピアが握られている。

 

1号も、サイレンストライカーで変身する。

 

「グレイトパトレン1号!」

 

「パトレン2号!」

 

「チャリオッツパトレン3号!」

 

「パトレンX!」

 

「ボウケンシルバー!」

 

「え?

えーと、白式!」

 

『警察戦隊 パトレンジャー!!』

 

「過去の因縁に決着をつけるため、実力を行使する!!」

 

「ふっ、上等だ!

やってみろこの男の娘めが!!」

 

すると、先ほど距離があったのにも関わらず自身の目の前に3号が来ていたのだ。

 

微塵も近づくそぶりも挙動もなかった。

 

それ故に反応ができなかった。

 

「…は?」

 

「はぁああああああ!!!」

 

3号の繰り出すレイピアを使った連続の突きは、真向には大量の刃が突き刺してくると錯覚を覚えた。

 

元々変身能力に特化していたとはいえ、真向にはそれに対応できるほどの力はない。

 

「な、なんだこの速さは!?」

 

「チャリオットだからね。

馬と車輪で移動する戦車だから速いのさ!!」

 

真向は両腕を盾に変化させて防御するが、あまりの高速の連続突きに弾かれ体にもろに喰らってしまい吹き飛ばされる。

 

「ぐぁ、これほどとは!」

 

3号は真向が飛んだ先に高速移動し、いくつかの分身を高速移動で作り飛んできたと同時にレイピアで連続突きを食らわせる。

 

分身との同時攻撃なので放たれる突きの攻撃は倍以上となり、真向の体を突き刺していく。

 

「ぐあっは!!」

 

「よし…!

…?」

 

攻撃が決まったと同時にVSチェンジャーが光だして、青いブロワー車型のトリガーマシンが出現した。

 

3号は躊躇いもなくそれを構えた。

 

「これで、とどめだ!!」

 

『トルネード!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

青いブロワー車のトリガーマシン、トリガーマシントルネードをVSチェンジャーに装着して操作することで、左腕に送風機型の籠手が装着される。

 

3号は左腕を突きだして強烈な風を巻き起こし、真向を壁に叩き付けて動けなくする。

 

「喰らえ、チャリオッツトルネード突進法!!」

 

足元の車輪を走らせて風の中に入り込み、風と車輪の力を使って体を回転させてエネルギーが籠っているレイピアで真向を貫いた。

 

「ぐおああああ!!」

 

「…オルヴォワール!(さようなら)」

 

真向は血を吹き出してそのまま倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、1号とパトレンXと狩矢が戦っていた。

 

「うおりゃああ!!」

 

1号は両肩のレバーを引いてとんでもない身のこなしで動いている狩矢を攻撃する。

 

「くっ、強いな。

だが、スピードは俺の方が上だ…!」

 

「へっ、させるかよ!」

 

「何…!」

 

パトレンXが狩矢の前に立ち、攻撃を仕掛ける。

 

「スピードはすごいかもしれないが、待ち伏せされることは予測できてねぇみたいだな!!」

 

「ちっ!」

 

狩矢は短剣でパトレンXに攻撃を仕掛ける。

 

「おっと!

ナイフとか短剣とか使うやつは警察時代で戦ってるんだ、よ!!」

 

パトレンXは短剣を握る手を掴んで捻り、短剣を落とさせる。

 

そしてそのまま足を蹴って体制を崩させる。

 

「残念だが、短剣は一本ではない!」

 

「うおっ!?」

 

狩矢は態勢を崩したまま懐から短剣を取り出して1号に目掛けて投げつけるがサイレンストライカーの鎧で弾かれる。

 

「くっ、あいつの仲間だから貴族かとは思ったが、そうでもないのか」

 

「貴族だと…?

そういえばアストルフォは自分のこと貴族の末裔とか言ってたことがあったか。

…お前のその短剣、相手が貴族とかその手の類のやつだったら例えどんな装備してても必ず殺せる特典か?」

 

「だが、貴族ではないとわかったからって、何もできないというわけではない。

このままメッタ刺しにしてくれる…!?」

 

狩矢は懐に手を入れてさらに短剣を出そうとするが、急に体が重くなり動けなくなる。

 

1号が重力を操作したのだ。

 

「こ、これは…!」

 

「生憎と、これ以上やられても厄介なんでな、とどめを刺させてもらうぜ!

亀山さん!!」

 

『一手 二手 三手 十手!

一騎当千!

イチゲキエックスストライク!!』

 

『行けよ、エクセレントエックス!!」

 

1号が重力操作で押さえてる間にパトレンXがエネルギーを溜めて強烈な突きを浴びせる。

 

それにより狩矢は声を上げる間もなく壁に叩き付けれて倒れた。

 

 

 

一方その頃、2号と一夏、シルバーは上場身が変身したサソードと戦っていた。

 

一夏は刀でサソードとつばぜり合いになる。

 

「ぐぅ…!」

 

「ははぁ!

どうした世界で唯一の男性操縦者さんよ!!」

 

サソードの力に一夏が押されていた。

 

ISの、それも専用機からのパワーアシストで補っているとはいえ実力がありすぎたのだ。

 

サソードは装甲の触手で一夏に追い打ちをかけようとするが2号とシルバーが撃ち抜いていく。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、あぁ!」

 

「油断するなよ、こいつはできるからな」

 

「ヒヒ…、幼い女に男が二人か。

普段は幼い女とか襲う趣味ねぇけど、今回は特別だな」

 

「…っ!?」

 

「な、なんだよこいつ。

何言ってんだよ…!?」

 

「こいつ、他の二人以上に危険だな」

 

サソードの放つ異常な何かにゾッとする三人。

 

「そう悪く言うなよ。

俺は生前医者やってたんだけどよ、それで身体を調べていくうちに俺の中で目覚めてよぉ」

 

サソードは刀のサソリを操作すると、全身の装甲が脱皮すりようにせり上がる。

 

「…人の体をしゃぶりつくして穢して犯すのって結構興奮するんだよ!!

キャストオフ!!」

 

『CAST OFF!!

CHANGE SCORPION!!』

 

サソードの装甲が弾け飛び、ライダーフォームへと切り替わる。

 

「さてと、さっさとその目障りな機材とか服を引き剥がして、お前らの体を味あわせてくれよ…!」

 

「…っ!」

 

「こ、こいつ…!」

 

「…」

 

「ひゃっほーい!!」

 

興奮してテンションが上がったのか刀を振り回しながら三人に襲い掛かる。

 

三人はサソードの攻撃を避け、態勢を立て直す。

 

「おいおい、避けんなよ。

あぁ、めんどくせぇな!」

 

サソードは手から透明な液体を出してナイフに変えて飛ばした。

 

あまりの速度に反応できずに2号の腕を掠った。

 

「ぐっ、うぅあ…!」

 

「かこ!!」

 

「これは、毒か…!」

 

2号はかすり傷を負った腕を押さえながら倒れ込み苦悶する。

 

「あぁそうさ。

俺はサソードの特典もそうだがありとあらゆる毒を操る特典を持ってるんだよ。

それでそこの幼女に打ったのは致死性の猛毒だ!

あと数分もすれば死ぬだろうな?」

 

「「っ!?」」

 

二人は驚愕する。

 

だが、2号は苦しみながらもvsチェンジャーを握っていた。

 

「はぁはぁ、そうですか。

数分、ですか…」

 

「お、おい、諦めるなよ!

こんなところで死んだら…」

 

「一夏さん。

私には、回復系の特典とこのトリガーマシンがあります…。

だから、心配しないで、ください…!」

 

そう言って2号が取り出したのはトリガーマシンレスキューだった。

 

「…どうやらあてはあるみたいだな。

おい、こいつが毒の対処しているうちに、俺たちはあいつを倒すぞ!」

 

「…っ!

わかったよ…」

 

一夏は心配そうに2号を見てからシルバーと一緒にサソードに攻撃を仕掛けに行く。

 

その間に2号はトリガーマシンレスキューをVSチェンジャーに取り付けた。

 

『レスキュー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

すると、2号の右腕に心電図や様々な情報が載っている特殊な装置の付いた籠手が取り付けられ、その手を傷口に当てた。

 

その間に二人がサソードと戦っていた。

 

サソリの刀の他にも透明な液体の猛毒でできたナイフで攻撃してくるためほとんど防戦一方だったが。

 

一夏はISに乗っているため絶対防御やシールドエネルギーが働くのだがIS以外の生身の部分が当たったらどうなるのかわからなった。

 

それ故にむやみに手出しができなくなっている。

 

だが、そんなときに2号が立ち上がってサソードのナイフを弾いた。

 

「…何!?」

 

「かこ、毒はもういいのか!?」

 

「大丈夫です、これで解析して抗体を作りましたから」

 

「なるほど、一度その抗体を作ってしまえばもうその毒は効かないってか」

 

「はい!

ですので、あなたたちにも抗体のワクチンを打っておきましね!」

 

そう言って2号は右腕で二人に触れたと同時に二人の体が光出した。

 

それを見たサソードは怒りのあまり歯噛みする。

 

なぜなら自分が使った毒は本当に致死性の猛毒で、体内に入ると数分間立ってもいられなくなるほどの苦痛の末に死ぬのだ。

 

それなのに平然と立ち上がってピンピンしているのだ。

 

しかも二人にも抗体が作られたためにもう毒が効かなくなっている。

 

「てめぇ、何勝手にピンピンしてんだよ!!

一々毒変えんの面倒だろうが!」

 

『CLOCK UP!!』

 

サソードは超高速移動で接近する、それは人間が認識できないほどの速さで。

 

「ライダースラッシュ!」

 

『RIDER SLASH!!』

 

サソードは刀を操作して、毒が垂れる刃でシルバーを切り裂こうとする。

 

「ふんっ!」

 

「ぐあっ!?」

 

当たる寸前、シルバーがロッドモードにしていた自分の武器でサソードの体を突き刺した。

 

それと同時に超高速移動も解除される。

 

「な、ぜ…?」

 

「俺様のサガスナイパーで探知したのさ。

まあ、少しでも見逃してたらやられていたかもな」

 

血を吹き出している体の傷口を押さえながら後ずさりするサソード。

 

「こ、こうなったら…!」

 

サソードは頭部の尻尾を振り回そうとするが2号に撃ち抜かれて先端の針が粉々に砕けてしまう。

 

「一夏さん、とどめを!」

 

「あぁ、わかったぜ!

零落白夜!!」

 

一夏は刀を展開してサソードを切り裂こうとする。

 

サソードは先ほど飛び散った装甲を元に戻して防御しようとするが、装甲が割れてしまう。

 

装甲のおかげで体が斬られることはなかったがその衝撃と先ほどの傷の痛みから倒れ込む。

 

これにより、三人のギャングラーの暗殺者が倒れたのだ。

 

 

 

 

三人をアストルフォが全員更生し、間もなく特異点となっていた屋敷が崩壊しようとしていた。

 

脱出する直前、アストルフォは皆に謝った。

 

錯乱していたとはいえ飛び降りたこと、励まそうとしてくれたのに気持ちの余裕がなくて心にもないひどいことを言ったこと、それらをひっくるめて。

 

それに対してバンとかこもちゃんと気づいてやれなかったことを謝った。

 

これからは互いがちゃんと支えあえるように頑張ろうと話し合った。

 

それから映士は改めてアストルフォにパトレンジャーをやってる理由を聞いた。

 

そしたらアストルフォは笑顔でこう言った。

 

「ボクは、人間が大好きなんだ!

だから、人が転生者に襲われているところを放ってはおけないから戦っているんだ!」

 

映士はそれを聞いて、そうかと答えた。

 

それと同時に映士の体が光りだして、赤いダンプカーのようなトリガーマシンが出てきた。

 

何でも自分の親友が使っていたビークルに似ているとのことだった。

 

そして最後に別れを告げて、特異点崩壊する寸前に脱出し、無事一夏を学園に送り届けることができた。

 

 

 




チャリオッツパトレン3号ですけど、見た目はジョジョのシルバーチャリオッツとファイズのホースオルフェノクを掛け合わせたピンクバージョンです。

足の装備は足の両側面に小さいチャリオットの車輪のようなものがついてます。


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狂乱の転生者たち

投稿が遅くなったこと、誠に申し訳ありません。

ボルメテウスさんの「特典を奪う怪盗団」は終わってしまいましたが、こちらは次で最終回とさせていただきます。

それと今回、文章が雑になっていたら申し訳ありません。


バンたちが特異点を脱出し、一夏を送り届けてから1日が経った。

 

あのあと、例の石板の正体が気になったアストルフォは管理局に寄って、石板が変化したトリガーマシンチャリオットを調べてもらうよう依頼し、その結果を聞きに行った。

 

その石板の正体は、管理局では未確認のロストロギアだったことが判明した。

 

ちなみに学園でのダリルとの戦いでかこのvsチェンジャーから、新たなトリガーマシンが出てきたが、それはトリガーマシンスプラッシュと呼ばれるものだった。

 

ダリルが放った炎を鎮火したのも、彼女がそれを使ったからだ。

 

推測だが時空の狭間を漂流している間に、死んだ人間の魂が宿って、それが特異点になったのではとされる。

 

バンとかこ、アストルフォ、亀山、右京はエリスからギャングラーの暗殺部隊について話を聞いていた。

 

エリスは昨日に襲ってきた転生者の身元を調べ、これまで更生した七人の転生者の記録を調べてみたところ、暗殺部隊のメンバーはリーダー一人と、十一人のメンバーで構成されていた。

 

つまり、残り4人とリーダーだけ。

 

だがそれと同時にあることも分かった。

 

それは暗殺部隊というものについてだが、これは実質には暗殺部隊と呼ぶにはあまりにも残酷な連中で構成されていた、ということだった。

 

どれもこれも幹部クラスの力を持っていながらその残虐性からボスから危惧されるほどに。

 

それ故に、普段から自分たちの気に入らない連中を始末するようにボスから依頼を受けて暗殺を行っていたらしい。

 

いわば、血に飢えた怪物たちともいうべき存在。

 

その瞬間に、強大な転生者の反応が見られ、霞から連絡があった。

 

『管理局とパトレンジャー本部にそれぞれ二人ずつ転生者の反応を察知したわ!

モニターを見せるから、急いて出動して!!』

 

それと同時にモニターが映し出されて、管理局と本部の近くにそれぞれ二人の転生者が確認できた。

 

どれも得点で攻撃しながら確実に近づいているようだった、このままだと管理局と本部を攻撃されるのも時間の問題だった。

 

「これはまずいですねぇ…」

 

「まさか、この四人って」

 

「おそらく、先ほど説明した暗殺部隊の四人、ということでしょうか。

…急いで確認を取ります」

 

「そうですか。

しかし、どちらにしろ、このままだと本部にいる家甲さんの家族も襲われる可能性が、出てきますねぇ。

管理局は、なのはさんたちがいるので、すぐにはないとは思いますが、それもいつまで持つものかも」

 

「とにかく、俺たちは二手に分かれて向かいます!」

 

そうして、バンと亀山が本部に、かことアストルフォは管理局へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

バンと亀山はすぐさま変身し、本部に向かってきた二人の転生者と遭遇した。

 

一人はうさ耳に腰に大きなウサギの尻尾を付けた、白髪に目の黒い男。

 

一人は金髪で髑髏模様のネクタイを付けたサラリーマン風の男。

 

「へぇ、君たちが彼らを倒したパトレンジャーなんだね」

 

「そういうお前らは、ギャングラーの暗殺部隊の転生者か?」

 

「ま、そういうことになるね。

全く、君たちも怪盗も、幹部を次々と倒してしまうのだから私も忙しくなるんだよ。

私はただ、植物のような平穏な生活を目標としていただけなのに」

 

「お前、まさか吉良吉影か?」

 

「それで、その隣にいるのが、十二大戦の憂城ってか?」

 

「さすがはパトレンジャー、私たちの正体を知っているようだ」

 

「よく気づいたね、僕が十二大戦に参加してた戦士だったなんて」

 

そういうと、憂城は懐から血に濡れた巨大な鉈を二本取り出した。

 

「じゃあ君たちも、僕のお友達になってくれるんだよね、ヒヒィ!!」

 

「おい、憂城…。

まったくこれだから血気盛んなのはあまり好きじゃないんだ」

 

吉良は呆れて頭を押さえるが、背後から猫のような頭をした怪人が現れた。

 

「まぁいい、このまま君たちを始末して、他のパトレンジャーを始末すればいいのだから」

 

「…っ、構えろバンくん!!」

 

「了解!!」

 

1号はパトメガボーとVSチェンジャーを構えて憂城に、パトレンXはXチェンジャーでけん制しながら吉良に攻撃を仕掛ける。

 

「卯の戦士 異常に殺す 憂城!!」

 

憂城は素早い動きで1号の射撃を避けながら接近する。

 

「ちぃっ、早いな!」

 

1号は間合いを詰められパトメガボーで応戦しつばぜり合いになり、至近距離からVSチェンジャーを撃とうとする。

 

しかしそれに察したのか、憂城は笑いながら後ろにジャンプし間合いを開ける。

 

それと同時にどこからともなく何かがうごめきながら接近してきた。

 

「…!?

これは、死体…!?」

 

「そうだよ、僕の特典はネクロマンチストなんだよ?

僕は殺した相手とお友達になることができるんだぁ。

だからね、君も僕のお友達になってよ…!!」

 

憂城の声に反応するかのように、死体が1号に一斉に襲い掛かる。

 

「おいおい、冗談だろ!?」

 

1号は何とか死体の攻撃を躱していく。

 

その隙に憂城が1号の首を捉えて鉈で切り裂こうと、鉈を横薙ぎに振り回す。

 

「…そう来ると思ったぜ」

 

「へ?」

 

その瞬間、憂城と1号の間に大きな爆発が起こり、それと同時に爆風と爆煙が巻き上がる。

 

その衝撃により、死体は吹き飛び焼けて、徐々に動けなくなっている。

 

「…いったい何が…!」

 

憂城は衝撃と爆炎に耐えながら目を開けると、1号がスペースパトレン1号に変身していた。

 

あの攻撃が当たる寸前に、トリガーマシンスペーススクワッドを使ったのだ。

 

その後ろではパトレンXがサイレンストライカーを装着したパトレンXがいる。

 

おそらくそれも同時に行ったのだろう。

 

「…そういえば、お前のそれには弱点があるんだよな?

本当ならこんなことはしたくはねぇけど、な!!」

 

1号は苦虫をかんだような様子で両手のバズーカや背後の翼のミサイルで憂城の操っている死体を吹き飛ばしていく。

 

「オラオラぁ!!」

 

「そんな、僕のお友達が…!」

 

憂城が狼狽えている内に、どんどん動ける数も少なくなっていき、やがて動ける死体は一体もいなくなってしまった。

 

「…全く君はひどい奴だよ。

僕のお友達をこんな目に合わせるなんて、人間性を疑うよ!」

 

「死体を操ってるやつが言うことかよ!

おかげで俺も今ものすごく胸糞悪い気分だぜ!!

死体を吹き飛ばして燃やすとかよぉ!!」

 

『キュウレンモード!』

 

『キューレイピア!』

 

『キュースラッシャー!』

 

キュウレンモードに切り替え、キューレイピアとキュースラッシャーを手に持った1号は超高速で憂城に接近する。

 

憂城も両手の鉈を構えて走り出し、1号に目掛けてジャンプする。

 

互いに接近し、ぶつかる直前に憂城は自分の舌を噛もうと口を開いた。

 

つまり自らの体をも特典の力で操ろうとしているのだ。

 

しかし、1号はそれを見逃さなかった。

 

キュースラッシャーの刃先を瞬時に憂城の口に刺し込み、舌を噛めないように挟んだ。

 

「…!?」

 

「これでお前はネクロマンチストを自分には使えない…!

くらえ、オラオラ!!!」

 

「…!!

~~~~~!!!!???」

 

憂城は声にならない声で叫びながら体をキューレイピアでラッシュするかのように連続で突き刺さり壁にぶつかり、意識を失った。

 

 

時間は少し遡り、パトレンXは吉良と戦っていた。

 

パトレンXは1号が憂城と戦っている間に、Xチェンジャーでけん制しながら攻撃していた。

 

「どうした、随分と消極的じゃあないか」

 

「お前のそのスタンドの特典で近づけねぇんだよ!」

 

吉良の背後にいる怪人、スタンド。

 

その見た目の特徴に見覚えのあるパトレンXはうかつに近づけないでいたのだ。

 

「そうか、君が私のスタンドの特典の正体を知っている言うのなら、これも知っているんじゃあないのか?」

 

「…!」

 

『コッチヲミロ!』

 

声が聞こえたので振り返ると小さな戦車が近づいてきたのだ。

 

「やれ、シアーハートアタック!

お前の近くで温度は高いのはそいつだ!!」

 

「くっ、エクセレントエックス!」

 

パトレンXはとっさにXロッドソードでシアーハートアタックを吹き飛ばし、その直後に起きた爆発から逃れる。

 

だが、それを読んでいたのか吉良は瞬時にパトレンXの背後に回り、怪人を出現させる。

 

「木っ端微塵に消し飛ばしてやる、キラークイーンっ!!」

 

「…っ、おらぁ!!」

 

パトレンXは怪人キラークイーンに触られる前に吉良に目掛けてXチェンジャーで撃ち込む。

 

「ぐっ!?」

 

吉良は体にXチェンジャーを撃ちこまれたことによりダメージを受けて距離を放す。

 

それと同時にキラークイーンも消えた。

 

「さすがは警察、そう簡単に君自身が爆弾になってはもらえないか…」

 

「言ってくれるな、この殺人鬼が!」

 

「だが、次はこうはいかないさ。

…実は先ほど君の攻撃が当たる直前に君のその銃には触れたのだからな」

 

「…っ!?」

 

吉良の言葉に、パトレンXは戸惑いを覚える。

 

何故なら、今手に持っているXチェンジャーが触られたということは、キラークイーンの能力で爆弾に変えられたということ。

 

「…やっぱりそのスタンドの特典、ジョジョのキラークイーンなんだな」

 

「いやぁ先ほどは君の体に触れなくて残念だったよ。

けど、至近距離で攻撃してくれたものだから、私はその反動で君の銃に触れてしまったのだからね。

そういえば、君のそれ、爆発したらその姿もなくなるのかもな」

 

「くっ!」

 

吉良の言う通りだ、この姿で居られるのはXチェンジャーがあるから。

 

もし、Xチェンジャーが破壊されるようなことが爆発するなどで破壊されたら、変身が解けてしまう。

 

しかも下手に動こうものなら、吉良はその能力で点火し爆発する。

 

そうなってしまうのと腕が吹き飛ぶのもそうだがそれに加えてまともに戦える状態じゃなくなってしまう。

 

「…さて、このまま君を嬲り殺すからな。

せいぜい、私の平穏な生活のためにも苦しみながら死んでいくんだな…!?」

 

「…っ!?」

 

吉良がパトレンXに接近しようとした途端、1号の方で爆発が起こり爆煙が巻き上がる。

 

「ケホッケホッ…!?

こ、これは…!」

 

爆煙の中、パトレンXは体に何かを装着されたような感覚を覚える。

 

煙が晴れると、自分自身がサイレンストライカーを装着しているのがわかった。

 

1号自身はトリガーマシンスペーススクワッドを装着している。

 

「これは、そうか…!

これなら…!」

 

「ぐっ、君の仲間もなかなか派手なことをしてくれるじゃあないか。

だが、それでも今すぐ君の銃を爆破できる状況に…!?」

 

言葉の途中で、爆弾のスイッチを押すような形になった、吉良の右手が急速に異常に重たくなり、非常に小さなクレーターができた。

 

吉良の体もそれに釣られるように地面に倒れ込む。

 

指も一本も動かせないほどの重さを感じていた。

 

「お、重い…!?

指も、動かせない、バカな…!

一体、何が…!?」

 

吉良は右手を押さえながらパトレンXを見ると、パトレンXは吉良に向けて手を翳しているのだ。

 

「そう言えば、バンくんは前にこうして転生者を抑えていたっけな」

 

「ぐっ、ぬぅぅ…!

このクソカスが!」

 

「うるせぇ!!

行くぞ、スーパースペリオルストライク!!」

 

「ぐぅおおおおおあああああああっ!!!???」

 

パトレンXは吉良に目掛けて高エネルギーの砲弾をぶちこみ、建物の壁に激突し倒れた。

 

 

一方、かことアストルフォは変身し、管理局へと向かい機動六課を含む魔導士たちと一緒に二人の転生者と戦うことになった。

 

一人は紫のジャケットを着たオレンジ髪の青年で、人間の皮で作られた本を持っていた。

 

一人は薄緑の髪に憲兵風の服を着た少女で、手元には光るキューブが浮かんでいた。

 

「はぁ!」

 

「ほらほらぁ!」

 

「COOL COOL!!」

 

「くっ!!」

 

だが、二人はとても強くそう簡単に倒せる相手ではなかった。

 

薄緑の少女の結界生成の力で大半の魔導師が閉じ込められ無力化し、青年が呼び出した怪物の群れに囲まれていたのだ。

 

現在まともに動けるのは、2号と3号、なのはとフェイト率いる機動六課だけだった。

 

「ねぇ、もうあきらめて俺たちのアートの材料になってよ」

 

青年が本を片手にそうつぶやくが、それと同時に周りにいる怪物もうごめき始める。

 

「くっ、なんて厄介なんだ…!

かこ、ボクはチャリオット使うから、援護に回って!」

 

「うん!」

 

「私たちも、援護します!」

 

3号はチャリオッツパトレン3号に変身し、電撃を出しながら高速移動しているフェイトと一緒に怪物を倒していく。

 

2号は二人が倒し損ねた怪物を倒していた。

 

だが、次から次へと怪物は出現しより多くなる。

 

「うーん、俺って旦那のような力がないのかな?

青髭の旦那は、これで俺にCOOLな殺しっぷりを見せてくれたんだけどな…」

 

「…君、ひょっとして殺人鬼の雨生龍之介なのかい?」

 

「あれ、俺の名前を知ってるってことは、俺ってここじゃあ有名人?」

 

「それはあなたの情報が向こうに知れ渡ってるからデショウ?

多分この調子だと、アリナの情報も知ってる可能性も高いワケ」

 

「確証はありませんが、あなたはアリナ・グレイですよね?」

 

「そうデスケド?

ま、アナタたちにはここで消えてもらうわけだし、さっさとデリートされて欲しいんデスケド」

 

アリナがそう言うと同時に手元のキューブが光りだして小さな弾丸がマシンガンのように発射される。

 

「なら、聞かせてよ!

君たちは、どうしてこんなことを…!」

 

「そんなの決まってるんデスケド?

アリナも龍之介も、それぞれ趣向は違うけど、幹部になればそれなりのアートが作れるってワケ!」

 

「あぁそれならさ、君たちかわいいから、俺たちのアートの材料になってよ!

大丈夫大丈夫、ちゃんと惨たらしく、手間暇かけて殺すからさ!」

 

「それなら、赤い絵の具になるか真っ黒な絵の具になるか、今からでも選んでほしいんですけど!」

 

 

 

「…なら、これならどうかな?」

 

3号が手を翳すと、三つの巨大な車輪型のエネルギーが出現し、回転しながら周りにいた怪物を潰していく。

 

「おいおい、まだ抵抗すんのかよ?

いい加減俺たちの…」

 

「確か、雨生龍之介って言ったよね?

君は、何で転生したのか、覚えてないのかい?」

 

「は?」

 

「君の殺人の理由ってさ、死の探求のため、だよね?

けど、おかしいよね?

転生するってのはさ、少なくとも君は何らかの形で死んでるんだ。

つまり君は一度死んでいる、それなのにどうして人を殺すんだい?」

 

「…さぁ?

俺って、自分の最期とか覚えてないから、仕切り直しも兼ねてやっているだけなんだけど?」

 

「そっか、じゃあ今さっきレイピアの刃は君に渡したから、それで思い出せるんじゃないかな?」

 

「え…!?」

 

龍之介の自分の腹に違和感と激痛が走り、その場に倒れ込んでしまう。

 

「なに、ねぇ何…?」

 

急に息苦しくなり腹を触ると、刃は深々と刺さってるのが見え、3号のレイピアが柄から先がなくなっているのが見えた。

 

その瞬間、周囲に回転する車輪の隙間から、レイピアの刃を飛ばしたのだと理解したのだ。

 

だが、そんなことよりも自分の腹から流れている血を見ていた。

 

「うわぁ、すっげぇきれぇ…。

そっか、ようやく思い出したよ…。

死は誰でもない俺の腸の中に隠れてやがったんだ…」

 

「…」

 

龍之介はまるできれいな小石を見つけた子供のような目で何かを呟いていたが、これで無力化できたと思い3号は、龍之介に目掛けて手錠を投げつけて更生した。

 

「ちっ、龍之介がやられるなんてバッドなんデスケド!」

 

アリナはそれを見て怒りが込み上がったのか、周囲にキューブを出現させて発射する。

 

「させない!」

 

なのはとティアナが前に出て撃ち落としていく。

 

そしてスバルとエリオとフェイトが一気に距離を詰めて攻撃を仕掛けようとする。

 

「「「はああああ!!」」」

 

「ちょっと、邪魔なんデスケド?」

 

「えっ!?」

 

「なっ!?」

 

「くっ…!」

 

三人の攻撃が当たる直前、三人は結界に閉じ込められ、攻撃の反動で動けなくなる。

 

「エリオくん!」

 

「スバル!」

 

「フェイトちゃん…!」

 

「そんな…!」

 

「あっははははははは!!

この程度なの、ミッドチルダの魔導士って」

 

「…っ、この!」

 

「待ってください、ティアナさん!」

 

ティアナはアリナの挑発に怒りを覚え、接近しながら撃っていく。

 

だが、アリナの目の前に結界に閉じ込められた三人が現れた。

 

「あらイイの?

アナタが攻撃すれば、間違いなくこの三人に当たるように盾にすることもできるんデスケド」

 

「え!?

きゃっ!」

 

ティアナが人質に取られたスバルたちを見て動揺し、その瞬間に結界に閉じ込められる。

 

「つっかまえた!

アハハ!」

 

「くっ、どうすれば…」

 

「…」

 

なのはもキャロも、手も足も出なかった。

 

仲間を結界に閉じ込めて盾代わりにされて、近づこうものなら結界に閉じ込められしまう。

 

だが、2号はアリナの攻撃を避けながら間合いを見はからっていた。

 

「ちっ、さっきからそこのアナタ、目障りなんデスケド!」

 

「…」

 

2号は物陰に隠れながら攻撃を避けている。

 

「そこの二人と同様に大人しくしていれば…!?」

 

アリナが悪態を突こうした途端、何かが背中から胸にかけて貫通した。

 

想像絶する痛みの中で、アリナは何が自分の体を貫いたのかを見た。

 

それはドリルだった、体を貫いたのだ。

 

「…見事に引っ掛かりましたね」

 

「あ、アナタ、まさか…!」

 

貫かれた胸を押さえながら2号をにらみつけるアリナ。

 

「私は、あなたの攻撃を避けながら、トリガーマシンドリルがあなたに気付かれずに近づけるかを、待っていたんです!」

 

「…っ、このクソガキ!」

 

2号に怒りを覚え、さらにキューブを展開するアリナ。

 

だが、その時に気付いたのだ、先ほど捕まえた三人の姿がどこにもなかったことを。

 

「…シット、あの三人どこに…!」

 

「フリード、早くこっちに来て!」

 

「なっ!?」

 

上を見上げると、巨大化したフリードリヒが三人を結界ごと連れ出していたのだ。

 

「…ヴぁあああああああああ!!!!」

 

アリナは怒りの頂点に立ったのか、奇声をあげる。

 

だがその隙に2号となのはがアリナに向けてトリガーマシンと杖を構えていた。

 

「行ってください、バイカー撃退砲!!」

 

「ディバインバスター!!」

 

「…っ!!」

 

アリナはとっさに自分の周りに結界を張って防御する。

 

だが、その結界は一瞬で破壊され、アリナに直撃した。

 

アリナは声を発するまでもなく倒れ込んだ。

 

そうしてアリナを更生し、スバルたちや他の魔導士たちを閉じ込めていた結界が解除された。

 

 

 

 

「そうか、そっちはもう大丈夫なんだな」

 

1号たちはそれぞれ四人を更生し終えたことを通信機で共有するが、周囲に無差別に巨大な火柱が立ち、建物が消滅していくのが見えた。

 

「あの炎は…!」

 

1号はそれに見覚えがあった。

 

それは、目の前で両親を家ごと焼き殺した炎なのだから。

 

「…っ」

 

「バンくん!」

 

1号は一瞬だけ立ち竦んでしまうが、この事態にそんな暇はないと、足を強く踏み込んだ。

 

その時に霞から連絡が入った。

 

『バン、皆!

そちらから確認されてる火柱の転生者を発見したわ!

今から座標を起こるから、急いで向かって!』

 

「…わかった」

 

「まさか、これって暗殺部隊のリーダーの…」

 

「…リーダーなのかは知りませんが、この炎自体に見覚えがあります。

急いで向かいましょう!!」

 

「おう!」

 

そう言って1号とパトレンXは霞から渡された座標で、2号たちと合流するために向かった。

 

 




次回は17日に投稿できるようにします。


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最終回 悲劇に終止符を、因縁に決着を、覚悟に喝采を

読者の皆様、この話で『転生者を更生する警察集団』は完結となります。

ちなみに今回の話には鳴神 ソラさんからのリクエストにあったトリガーマシンが出てます。

それでは最後までお楽しみください。


霞が示した座標を目指し、ようやくたどり着いた1号たち。

 

行きついた先は寂れた小学校の廃墟で所々血しぶきが飛び散っていた。

 

しかもよく見ると、この廃墟以外はすべてが焼け野原になっていた。

 

「おいおい、何でここ以外全部燃えてんだ!?

それに、この学校、どこかで見たような…」

 

「…皆、あんまりここからのは見ない方が良い」

 

1号が周りと校舎を見てそう呟くと、先頭に立っていたパトレンXは先に中を除いてから1号たちに告げた。

 

「あの、どうしてですか?」

 

「…遺体だ、それも惨たらしい殺され方をした数人もの遺体が放置されてる」

 

『…!?』

 

「…そうですか、わかりました。

おい、足元とか気を付けながらなるべく探知機を頼りに中に入るぞ!」

 

1号たちはそれを聞いて驚くが、1号は遠回しに遺体を見ないように2号と3号に伝えて、探知機を使いながら中に入ることにした。

 

中はとても暗く、奥に行くにつれて遺体の腐敗臭や鉄臭いにおいが強くなっていく。

 

「…っ!」

 

探知機を見ながら横目で教室の中を少し見た1号。

 

その中では言葉では表せないような惨たらしい殺され方をした遺体が無造作に放置されていた。

 

どの遺体も恐怖と苦痛に歪んでいた、中にはその様を見せられたせいなのか、猿轡を自らの喉の奥まで飲み込んで自殺した者もいるようだ。

 

「…」

 

1号はそれを見ただけで恐怖よりも、怒りが強くなった。

 

この人たちは危害を加えず平和に暮らしていた転生者だったのか普通の人間だったのかわからないが、こんな惨たらしい殺し方をされてどれだけ無念だったのだろう。

 

何より、こんなことを平然とやってのけるやつらがどうしても許せなかった。

 

「…!」

 

だが、それと同時に教室の作りとか廊下の形を見て、どこか懐かしさを感じていた。

 

いや、それどころかここがどんな学校だったのか、徐々に思い出してきたのだ。

 

そんなことを考えていると、1号たちの目の前で急に火の玉が現れた。

 

「…っ!?」

 

「これは…」

 

「な、何なの?」

 

「これは火の玉?

…おい、どこか行こうとしているみたいだな」

 

パトレンXの言う通り、火の玉は目の前に現れたのかと思いきや、どこかへと飛んでいこうとする。

 

「あの火の玉の向かってる先、転生者の反応がありますね」

 

「そうだな、今は一刻も早く、あの火柱を出してる転生者を更生しないといけないからな。

追いかけるぞ、逸れるなよ?」

 

「了解!」

 

「了解だバンくん!」

 

1号たちは飛んで行った火の玉を追いかけることにした。

 

 

 

 

 

 

それからしばらく追いかけていると、一つの教室の扉の前にたどり着いた。

 

ここだけは他の教室と違って、黒く焼け焦げていた。

 

火の玉は、その教室の扉の前で消滅した。

 

「ここで止まっているみたいだな」

 

「…間違いありません、この中に転生者がいます!

しかもこちらの存在に気付いているようです!」

 

「だとしたら…」

 

「なら、警戒は強めておけよ。

よし、行くぞ!」

 

1号は勢いよく扉を開けて、2号たちと一緒に転がるように教室に入り込み、VSチェンジャーとXチェンジャーを構えた。

 

「動くなっ!!」

 

1号たちが構えた先に一人の男がマントを被って一つだけあった椅子に腰を掛けていた。

 

「…っ!」

 

1号はそのマントの男に見覚えがあった。

 

それ故にマスクの下で唾を呑んだ。

 

「…ふん。

まさかここを嗅ぎ付けられるとは思わなかったな」

 

男は立ち上がって1号たちをつまらなさそうに見つめた。

 

すると、男は1号を見て動きを止めた。

 

「ほう、マスクで顔が見えないが、知っている顔がいるな。

そこの赤い貴様、さてはあの家の後で焼き殺した小僧か?」

 

「っ!

…じゃあてめぇ覚えていたってことなんだな」

 

1号は恐怖に耐えながら男に質問した。

 

だがそれと同時にとてつもない怒りが込み上がっているような雰囲気だった。

 

「あぁ、覚えているとも。

俺自身が転生して特典の力を見たかったから試しの的としてお前の家を燃やしたんだったかな。

確か、その家の表札に『湖光』って名前だったかな?」

 

「…っ、てめぇ!」

 

湖光、それは1号の生前の苗字だ。

 

だがそれ以上に、その名前がこの男に易々と言われたことに腹が立ったのだ。

 

まるで、自分の家族を殺したときの記念に覚えていたような言い方に、腹が立ったのだ。

 

「…質問しても良いか?

この学校、確か俺が生前暮らしていた街の小学校だよな?

てことは、ここは俺がいた世界、じゃないのか」

 

「察しが良いな、だがそれがどうしたのだ。

ここは俺が制圧したから拠点にしているだけだ、特に愛着はない」

 

「じゃあ聞くが、お前が、暗殺部隊のリーダー、なのか?」

 

「いかにも。

…そう言えばあいつらに資金調達させたときに潰されたという、ローラン家の小僧もいるな?」

 

「っ!?」

 

それを聞いた3号が驚く。

 

この男が、あの三人に財産を奪うように指示したと言ったのだから。

 

「まぁ、あの時の金は資金調達もそうだが、俺がギャングラーに許可もなくこの世界を滅ぼしたから、それで幹部の金丈に始末されそうになったんで、その半分を賄賂として渡したかな」

 

「…!」

 

2号はいきなり金丈の名前が出て驚いた、まさかもうこの先聞くことはないと思っていた金丈の名前が出てきたのだから。

 

「ま、元々金にがめつかったあいつが、その後でさらに金にがめつくなって、図書館だの色んな施設から巻き上げたり、社会的に抹殺したなんて思いもしなかったがな。

例えばそこの小娘、夏ノ森図書館の小娘のときのようにな」

 

「…っ!?」

 

「お前、さっきから俺たちの生前の苗字を言い当てるんだな」

 

「なに、暗殺を生業としている手前、調べあげることは容易いのだ。

それをするだけでも情報は色々と絞り出して暗殺もできるわけだからな」

 

「…」

 

1号はそれを聞いて黙り込んだ。

 

だがそれと同時に、何か切れそうになっていた。

 

つまりは1号のときは偶然で殺し、2号のときはけしかけた結果殺して、3号のときは暗殺と財産の簒奪の依頼で殺したと言っているのだから。

 

だが、だからこそ冷静でいようと1号は思った。

 

ここで一人で突っ走ると真っ先にやられてしまう。

 

街を守ることも世界を守ることもできない。

 

何より、ここに来るまでに見た、惨たらしい殺され方をした人たちの無念を晴らせない。

 

「…さて色々話し込んだが、今のは手向けとして受け取ってもらおうか。

俺にも、やらないといけないことがあるんでな」

 

「…どういうことだ」

 

「あいつらには働き次第では幹部の座が手に入ると言ったが、あいにくと俺は幹部よりもボスの座が欲しくてな。

ボスはその事に気付いていたのか、俺たちに警戒してか、自分の居所は伝えようとはしなかった」

 

「それで無差別に攻撃して、ボスの居所を探ろうって腹か?」

 

「あぁ、そういうことだ。

それに気づいてるか?

今ボスも躍起になって怪盗と戦ってるんだ」

 

「…!」

 

「お前らと怪盗が幹部を倒してくれたおかげで、ボスも騒動を起こす気になってな。

この騒動の隙に、ボスを殺そうとしてたが、まさかお前ら警察が来るとは思いもしなかったぞ」

 

「…まるで俺たちが前菜だと言いたげだな」

 

「クク、わかってるじゃないか。

ボスがメインディッシュで怪盗は付け合わせだ」

 

「…そうかよ。

そうじゃないのかって思ったが…、お前、吐き気がするな」

 

「…ほう」

 

1号は男を睨み付ける。

 

そこには怒りもあると同時に、今ここで倒さなければならないと言わんばかりの覚悟が秘められていた。

 

それは2号も3号もパトレンXも同じだった。

 

「つまりお前は、自分の目的のためだけに、自分の都合だけで大勢を焼き殺そうとしてしてる、そうだろ」

 

「そんなことは、絶対にさせません!

ギャングラーのボスが怪盗と戦っているのはわかりましたが、私たちだってあなたには負けません!!」

 

「ボクたちは、これ以上犠牲者を出さないためにも、君を倒す!」

 

「お前を倒さねぇと、右京さんたちも、家内も子供たちも安心できないしな!」

 

そうして四人はVSチェンジャーとXチェンジャーを構えた。

 

「…転生者を更正する警察として、実力を行使する!」

 

「クク、粋が良いじゃないか。

良いだろう…、お前たちがその気なら…」

 

そう言って男は2つの異なる色の炎を出現させて刀のように、手で握った。

 

そしてそれと同時に、マントもはだけて男の全貌もはっきりわかってきた。

 

機械じみた仮面にドラゴンの角に翼、そして仮面の奥で覗く赤い目。

 

明らかに複数の特典を持っているようだった。

 

「俺も、貴様らを叩き潰して殺してやる…!」

 

「…やれるものなら、やってみろ!」

 

そう言って1号たちは男に攻撃を仕掛ける。

 

VSチェンジャーやXチェンジャーで撃った弾丸は、男が全て弾き、弾き切れなかったら避けていた。

 

「…やっぱり効かないか。

なら…!」

 

『サイレンストライカー!

グレイトパトライズ!

超警察チェンジ!!』

 

『スペーススクワッド!

パトライズ!

宇宙チェンジ!

スペースパトレンジャー!!』

 

『チャリオット!

パトライズ!

チャリオッツチェンジ!

チャリオッツパトレンジャー!!』

 

『トルネード!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

『レスキュー スプラッシュ!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

速攻で決着をつけるために、サイレンストライカーやスペーススクワッド、チャリオット、トルネード、レスキュー、スプラッシュといったトリガーマシンを使った。

 

それによりパトレンXはスーパーパトレンXに、1号はスペースパトレン1号に、3号はチャリオッツパトレン3号トルネードに、そして2号はレスキューとスプラッシュを両腕に装着、変身した。

 

「変身すれば良いというものでもないだろ?

喰らえっ!?」

 

そう言って男は両手の炎の剣を合わせて斬撃を飛ばした。

 

いやそれは斬撃ではなく、炎の竜巻だった。

 

「この炎は…!

そうか、その炎で…!」

 

「そうだとも、この2つの炎はコードブレイカーのマモンの炎だ!

跡形もなく消し飛べ!!」

 

「させないよ!

行くよ、かこ!!」

 

「うん!

ええい!!」

 

当たる寸前に2号と3号が前にたちスプリングとトルネードが装着された腕を突き出し、水の竜巻を発射する。

 

それにより炎の竜巻は相殺されて消滅する。

 

次に1号がデカモードにチェンジして、両手のディーリボルバーで、パトレンXはキャノン砲の高火力で男を撃ち抜いたいく。

 

それにより大爆発が起こり、校舎の壁が壊れる。

 

だが、それほどの攻撃を直撃したのにも関わらず、男は無傷だった。

 

「無傷だと!?」

 

「ククっ、その程度では俺は倒せないぞ?」

 

「あの硬さに、あの竜の角と翼…。

まさかそれFateのジークフリートの…」

 

「そうだとも、これはファブニールの血の鎧さ。

残念だったな、いかにお前たちの攻撃がすごくても俺には通用しないんだよ!」

 

『ボウケンジャー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

「じゃあ、これでも喰らってそんなこと言えるのかな!?」

 

3号はボウケンシルバーからもらったゴーゴーダンプをVSチェンジャーに装着、調整して男に撃ち込んだ。

 

だが、男は効かないと言わんばかりに体で受け止めた。

 

「ふん、所詮はその程度か…。

さて、遊びはここまで…!?」

 

男が言おうとした途端、背中から胸にかけてレイピアが突き刺さった。

 

「君がどんな攻撃も効かないのはよくわかったよ。

けどね、今撃ったのは弱点を探るためのものだ!」

 

つまりゴーゴーダンプにはボウケンジャーの力が入っているので、プレシャスや歴史の伝承などにまつわる弱点を探るために撃って、当たったと同時に弱点を解析し、瞬時に背後に回ったのだ。

 

「これでもう君にはその鎧は使えないね!」

 

そう言って3号はレイピアを抜いて、三つの車輪を出現させて男に攻撃する。

 

「ぐあっは!?」

 

男はそれに対応しきれず車輪に巻き込まれながら壁に叩きつけられた。

 

そして、男が倒れ込んだ瞬間、2号は男に目掛けてレスキューの弾丸を撃ち込んだ。

 

それにより男の動きが鈍くなってきている。

 

「ぐっ、なんだ、これは!

体の動きが鈍いぞ!」

 

「今あなたに撃ち込んだのは、体の動きを一時的にマヒさせる麻酔弾です!」

 

「サンキュー、二人とも!

行くぞ、バンくん!!」

 

「はい!」

 

『タイムモード!』

 

「喰らえ、スペーススナイプバーニング!!」

 

「スーパースペリオルストライク!!」

 

「ぐおああああ!!

バカな、バカな…!!」

 

1号とパトレンXから発射されたこれまでにない強力な攻撃に、男は直撃し、壁を何重にも破壊しながら吹き飛ばされた。

 

 

吹き飛んだ男の元へと向かう1号たち、しかし男は足が震えながらも立ち上がって笑っていた。

 

「こいつ、まだ何か力が…!」

 

「クククッ…、まさか、この姿の俺をここまで追い詰めるとはな…」

 

男は笑っていながらも、体から炎が吹き上がっていた。

 

「こんなことは、かつて異聞帯以来だ…。

俺をこんなにまで追い詰めるとは…!」

 

「異聞帯!?

まさか、てめぇ!!」

 

1号が何かを察した直後、男が炎を纏った巨人に変貌し、校舎を破壊していく。

 

「フハハハハハ…、そうだ。

我が名はスルト…!

巨人の王であり、その残留思念である!」

 

男、スルトは強烈な炎を帯びた目で4人をにらみつける。

 

それと同時に、かなり熱い。

 

もう少し近づくだけでも火傷してしまいそうなほどに熱い。

 

「…スルト、北欧の巨人でFateの異聞帯の巨人王…!

それがお前の正体ってか」

 

「…正確には、その残留思念みたいですね…。

ですが、今ここで倒さないといけません!」

 

「うん、今すぐ倒さないと街が危ないからね!」

 

「あぁ、そうだな。

巨人王だろうと残留思念だとしても、今ここで倒さなければならない!

…!?」

 

すると、三人のVSチェンジャーが光りだして、その光が一つに集まる。

 

「え!?」

 

「うわ!?」

 

「こ、これは…!」

 

一つとなった光はやがてグッドストライカーに似た黒いダンプカーになった。

 

「これは…!」

 

「まさか、これを使えってことじゃ」

 

「うん、やろう!

よくわからないけど、これを使えば…!」

 

「よし、それじゃあラストスパートだ!」

 

『ダンプ サイレンストライカー レスキュー チャリオット サンダー!

位置について ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!』

 

『ファイヤー!

get set ready!

飛べ 飛べ 飛べ!

go!』

 

『代・行・発・進!!』

 

『勇・猛・果・敢!!』

 

『緊・急・救・命!!』

 

『軍・馬・疾・走!!』

 

『疾・風・迅・雷!!』

 

『ファ・ファ・ファ・ファイヤー!!』

 

巨大化したトリガーマシンダンプはグッドストライカーのように変形し、右腕に変形したチャリオットは三頭の馬のパーツが外れ、その下から一本の巨大なレイピアに出現し、一頭の馬のパーツが肩に来た。

 

左腕に変形したレスキューは後ろのコンテナ部分が前に来て、肩部分に先ほどのチャリオットの一頭の馬のパーツが装着される。

 

そして中央にサイレンストライカーが変形して頭部になりその上からチャリオットの馬のパーツが装着され、胸部にキャノン砲が装着される。

 

一方Xトレインが連結、交差することで合体し、胸部にガトリングが来ている。

 

「完成 サイレンパトカイザーチャリオッツレスキュー・アナザー!!」

 

「完成 エックスエンペラーガンナー!!」

 

「ふ、小賢しい!!」

 

パトカイザーに目掛けてスルトは火炎放射を浴びせる。

 

「…!?

バンくん、皆!

この…!」

 

ガンナーがガトリングでスルトに撃ち込んでいく。

 

だが、あまりにも熱すぎて弾丸が届く前に蒸発してしまった。

 

「何!?」

 

「効かぬ、貴様も灰塵と化せ!!」

 

「俺たちを、舐めるな!!」

 

「何だと!?」

 

スルトがガンナーに攻撃をしようとした途端、先ほど燃やされていたはずのパトカイザーが、スルトの腕を貫いた。

 

「ぐおぉ!?

バカな、なぜ、先ほど燃やされていたはずなのに…」

 

「あぁ、さっきは本気でビビったぞ。

だが、このダンプのおかげだろうな」

 

「先ほど知りましたが、このトリガーマシンは、私たちの中にある守りたいという思いがある限り!」

 

「決して壊れやしない!」

 

「つまりだ、今の俺たちは、負ける気がしねぇ!!」

 

「ぐおおああああ!!」

 

「す、、すごい…!」

 

トリガーマシンダンプで得た強力な防御力により、スルトの炎は通用せず、その防御力を得たチャリオットのレイピアは、スルトの体を連続で突き刺していく。

 

吹き飛んだスルトに目掛けて、レスキューから特殊なミサイルが発射される。

 

当然これもダンプの力で防御力を得ているため、必ず着弾する。

 

「ぐはっ!!」

 

ミサイルがスルトに直撃し、そのま地面に叩き付けられる。

 

「これであいつの動きを縛り、弱体化させました!

亀山さん、私たちと一緒にとどめを!」

 

「あぁ、わかったぜ!!」

 

「よし、とどめだ!!」

 

動きが鈍くなり、体の炎が弱まっている間に、1号たちはVSチェンジャーを、パトレンXはXロッドソードを構えてエネルギーを溜める。

 

「「「「必殺 パトレンジャーサイレンガンナーストライク!!!」」」」

 

パトカイザーからチャリオットのレイピアの刃、レスキューの大量のミサイル、サイレンストライカーの胴体・胸部からのエネルギー弾、そしてガンナーからの一斉射撃がスルトに目掛けて発射された。

 

「ぐおおああ!!!

ぐ、この…!」

 

「これで、終わりだああああああああああ!!!!!!!」

 

「まさか、俺は、またしても、終わるのか…!

ムスペルヘイムが、俺の終末が…!

オフェリア、オフェリアああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

スルトは耐えきれず、叫び声をあげて爆散した。

 

「…任務完了!」

 

「どうにかピリオド打てました…」

 

「オルヴォワール…!」

 

「これで、一件落着か」

 

バンたちは何とかスルトを撃破し、更生した。

 

だが、それと同時にVSチェンジャーもXチェンジャーも壊れてしまった。

 

「はぁはぁ、ギリギリだったな」

 

「はい、もう一時はどうなるかと思いましたよ…」

 

「でも、どうにか倒せたね…」

 

「これで終わったな…。

あーあ、右京さんにこれのこと、何て言えばいいんだ?」

 

四人は倒れ込み、披露した体を休ませていた。

 

その時に、強い地震が発生した。

 

「こ、これは…!」

 

「…どうやら、怪盗がボスを倒したから、融合していた世界が元に戻ろうとしているみたいだな」

 

「え!?

じゃあこの多次元融合も、ギャングラーのボスが…」

 

「そうかもな…。

けど、これでなくなったから、ここも元通りになるだろうな」

 

「そうですね。

…そうだとしたら、早く脱出しないといけませんね。

ヒポグリフ!!」

 

アストルフォはヒポグリフを召喚して四人を乗せる。

 

「ヒポグリフ、今四人乗ってるけど、耐えてね…!

行くよ!」

 

ヒポグリフは四人乗っているとは思えないほどの速度で空を飛んだ。

 

それと同時に、四人の目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

あれから二か月が経った。

 

多次元融合は無くなったことで全ての世界が元通りに戻り、パトレンジャー本部と時空管理局以外は何気ない毎日を送っている。

 

当然、多次元学園もなくなり、IS学園もなくなった。

 

ギャングラーの脅威がなくなったことを確認した右京達は桜たちを家に送って行った。

 

ただ、右京も霞もエリスも、なのはたちもその後でバンたちを探していた。

 

しかし、どこを探そうにもいない。

 

エリスにも四人が魂になってここには来ていないと言っている。

 

かくまっている様子もなく、これ以上言及することもなかった。

 

だが、それでも皆険しい顔になっていた。

 

特になのはたち機動六課は、バンたちと交流が深かったため誰もいないところで泣いていたりしばらく引きこもったりしていた。

 

それでもしばらくしてから探し回った。

 

「スバル、ティアナ!

そっちはどう!?」

 

「駄目です、全く見つかりません!」

 

「…かこさん、皆」

 

「なのは…」

 

それを見ていたフェイトも悲しい顔になっていた。

 

今まで協力関係とは言え、なのはたちは一緒と戦ってきた仲間とも言える存在が行方不明なのだ。

 

 

 

 

一方、少し離れた場所に誰かがいた。

 

「…やっべぇな、完全に葬式ムードじゃねえか」

 

「それはそうですよ。

ここ二か月の間、私たちのvsチェンジャーも通信機も壊れていたので、連絡も取れなかったら反応も感知は不可能ですから」

 

「うへぇ、もう次元の狭間飛ぶの嫌だよ…」

 

「この様子だと、右京さんもどんな顔してるんだろうな…。

ちくしょう、家内に何て連絡すれば…!」

 

そこにいたのは、バンたちだった。

 

実は先ほどやっとの思いでなのはたちがいるミッドチルダにたどり着いたのだ。

 

というのも、次元の狭間でずっと彷徨っていたところに偶然流れ着いたのだ。

 

そこでボロボロの体を引きづって、かこの特典で傷を癒しながら探していたのだ。

 

それで、やっとなのはたちを見つけたのは良かったものの、話しかけていいのかわからないぐらい暗い雰囲気だったのだ。

 

なので四人はどうしようか考えていた。

 

「ちっ、こうなったら埒が明かねぇ!

俺が行くぜ!」

 

「あぁ待ちなよ隊長!

君は目つきが鋭いんだから、久しぶりでも逆にびっくりされて捕まるよ!」

 

「じゃあ私が行きます!

そうすれば皆さんも…!」

 

「いやお前特典使って何気に疲れてるからここで休んでろよ!」

 

「いやあああ!

バン隊長、ズボン引っ張らないで、見えちゃうよぉ…!」

 

「ぶほあ!?」

 

「じゃあ、ここは年長者の俺が…!」

 

「いやここはボクが…!」

 

「いや、ここは俺が!」

 

そうして一悶着ありながらもバンが立ち上がった途端、なのはとスバルたちと目があった。

 

「あ」

 

「「「「あ」」」」

 

『あああああーーーーーーーっ!!!!!!!?????????』

 

この日、数人もの男女の叫び声が、ミッドチルダに響き渡ったのだった。




以上で、『転生者を更生する警察集団』はこれにて終了します。

終了になってしまいますが、バンたちや機動六課のお話はまだまだ続いていきます。

今までご愛読いただいた読者の皆様、そして今まで合同で書いてくださった『特典を奪う怪盗団』のボルメテウスさん、誠にありがとうございました。

まだ書けてるわけではありませんが、次回作でも皆様が楽しめるよう、書いていければと思います。

それではこれにて連載は終わります。

ご愛読、ありがとうございました。


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転生者を裁く救世主 予告編

こんにちわ、ガンダムラザーニャです。

この度は『転生者を更生する警察集団』の続編の予告編のPVのようなものを作らせていただきました。

ぜひお楽しみください。


ギャングラーの壊滅により、融合した世界は元に戻り、世界に平穏が訪れた。

 

バンたちも無事生還してから数か月が経った。

 

あれからバンたちはVSチェンジャーとXチェンジャーが壊れてしまったが、これまでの経験とそれぞれの持つ特典などを生かして、機動六課のサポートに回っていた。

 

もちろん、右京も霞も亀山も。

 

それなら、ジェイル・スカリエッティという犯罪者との戦いもあったが、どうにかこれの確保に成功した。

 

その時になのはたちはヴィヴィオという少女を保護し、面倒を見ている。

 

それからしばらくの間、平穏な日々が続いていた。

 

しかし、そんな日々も、一瞬で崩壊してしまう。

 

「こっ、これは…!」

 

エリスは水晶を通して、ある存在が迫っているのが見た。

 

「フッ、ギャングラーはいなくなったか…。

これで我々も思う存分、暴れることができる」

 

「控えろ、愚民ども!

ここは我らの領土だ!」

 

謎の転生者組織、ジャークマター。

 

恐ろしい速度で侵略される世界。

 

「くそっ!

俺たちには何も出来ないのか…!

いや、何かあるはずなんだ、俺たちにできることを、見つけるんだ!」

 

「ここには、大切な人たちがいる。

だからこそ、皆の居場所を守らなきゃいけないんだっ!!」

 

転生者に抗う術もなく、懸命に抵抗する術を探すバンたち。

 

侵略者から平和を守るために、立ち向かい続けるなのはやスバルたち。

 

「これは…!」

 

「な、何や!?

この異常な反応は…!」

「これはラッキーの使ってた奴と同じ…!」

 

「バン隊長、これは…!」

 

「これを、ボクたちが使えってこと…?」

 

そして、力が覚醒したことにより宇宙より降り注いだロストロギア、星座の力を宿すキュータマを手にバンたちは立ち上がる。

 

その者たちの名前は宇宙戦隊 キュウレンジャー。

 

だが、その他にもキュータマを手にした者たちがいた。

 

「ティア、これってまさか…!」

 

「わかってるわよ、まさかこれが私たちに…」

 

「な、何ですかこれ!?」

 

「フリード?」

 

「キュクルー?」

 

「スバルたちだけでなく私にも…?」

 

他の五人と一匹の手にも、キュータマが握られていた。

 

そうして集められた九人。

 

機動六課からキュウレンジャーに。

 

パトレンジャーからキュウレンジャーに。

 

「てめぇらのやってることが誰にも止めることができないって言うなら…!

俺たちが裁く!」

 

『スターチェンジ!!』

 

「スーパースター シシレッド!!」

 

「シノビスター カメレオングリーン!!」

 

「スピードスター ワシピンク!!」

 

「ビーストスター オオカミブルー!!」

「ポイズンスター サソリオレンジ!!」

 

「フードマイスター カジキイエロー!!」

 

「トリックスター テンビンゴールド!!」

 

「サイレントスター ヘビツカイシルバー!!」

 

「リングスター オウシブラック!!」

「究極の救世主!」

 

『宇宙戦隊 キュウレンジャー!!』

 

彼らは立ち上がる。

 

この理不尽極まりない転生者組織の侵略を止めるために。

 

転生者に裁きを、特典に封印を。

 

新作『転生者を裁く救世主』

 

「あ?」

 

「あれ、この声…」

 

「どこかで聞いたような」

 

合同作品、作者ボルメテウスさんの『特典喰らう騎士』近日連載。

 

後日詳細発表予定。

 

 

 

 

 

 



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