オーバーロード 異世界に転移したアリストテレス (始まりの0)
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主人公&ヒロイン紹介

随時更新します。


 名前:ゼオス・アルドライグ

 

 種族:

 

 ・【アリストテレス(星の守護者)

 

 星の意思の代行者であり、星を守護する者。唯一の存在である。

 

 種族特性は、あらゆる異常状態、洗脳、ドレインといった物を完全に防ぐ。また敵味方問わずスキルを無効化する。ワールドアイテムでも彼の者を害する事は出来ない。また、どの様なペナルティも無効化する。設定上、星からのバックアップがある為と言う事になっている。

 

 因みに種族補正で物理・魔法の防御力は半端なく高く、体力・MPも自動的に回復していく。

 

 ただ、アリストテレスと言う存在が謎に包まれている為、何を起こしても不思議ではない。

 

デメリットとして、既存の魔法、装備などに使用制限がかかってしまう。

 

詳細は魔法の発動は超位魔法を除き1日に10回まで。装備は通常の装備に関しては1度使えば壊れてしまう。スキルを発動した場合はこれに含まない。また彼の所有する個人の宝物ならば対象とならない。

 

 

 

 

 ・【始まりの真祖(ロード・オブ・ヴァンパイア)

 

 元々、吸血鬼の種族でプレイしていたが、アリストテレスへと進化した際に変わった。

 

 種族特性は、吸血により体力とMPを回復。また日光の下でも活動可能。また己が眷族だけでなく、ヴァンパイアに対して命令権を持つ。

 

 月が出ている際には能力値が変化するようになる。満月では能力値が上がり、新月では逆に低下する。たがアリストテレスでもあるので、特に関係ないがギルド単位で責められると流石に倒される可能性がある。

 

 

 職業:

 

 ・【アルテミット・ワン】

 

 ゼオス専用に運営が作った企画外の職業。超位魔法を使用するメイジ職などは武器が限られるが、この職業はそれを廃して武器は基本的に何でも使える。つまり、前衛でも後衛でも戦闘可能。

 

 超位魔法も1日3回まで即時発動でき、1日4回までならMP消費なし発動できると言う制限を5回までに引き上げる。

 

 物理(武器も可能)の際にはでダメージを与えた場合、敵から体力またはMPをドレインする。

 

 この職業の所為で、幾人ものプレイヤーが地獄を見た。

 

 実際には彼そのものがアルテミット・ワンなのだが……。

 

 

 ・創作者(アイテム・メーカー)

 

 アイテムの鑑定、調合、使用などの制限を取り払ってしまう職業。使用回数に限りのある課金アイテムの回数を確率で回復させる。

 

 

 スキル

 

 ・世界よ、我に従え(ワールド・オーダー)

 

 世界を改変するスキル。

 

 ゲーム上は、一定時間フィールドを自分の陣地に置き換える。そこでは自分、もしくは仲間以外の能力を半減させる。

 

 簡単に言えばORTの侵食固有結界の様なもの。

 

 

 ・我が意志は時すら支配する(ザ・ワールド)

 

 お馴染みの時間停止能力。

 

 

 ・空想具現化(マーブル・ファンタズム)

 

 自己の意思を世界と直結させ、範囲は局所的ながら因果に干渉し、ゼオスが望み思い描く通りの環境に世界を変貌させる。

 

  ・星の知識

 

  星と直結することでありとあらゆる知識を得ることができる。

 

  ・真祖の波動(ロード・クラッシャー)

 

 番外席次を吹き飛ばしたスキル。見た目は赤と黒の光の波動で、今回は森の一部と彼女を吹き飛ばした。

 

 1日に3回まで発動可能で、効果はアイテム効果・スキルを含む防御力無視攻撃。HPを50%削り、状態異常がランダムで起きる。

 

  ・直感

 

  つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

 

  また本人にとって「とても面白いそう」になりそうな事も感じ取る事が可能。発動時はニュー◯イプの様な音が出る。

 

 ・最高位の魔眼

 

 ・神獣使役

 

 ・その他

 

  容姿:アーサー・ペンドラゴンを銀髪ストレートにした姿。目は紅。

 

 属性:中立

 

 身長/体重:180cm/100kg

 

 別称:チート魔神、クソドS魔神

 

 所属:アインズ・ウール・ゴウン

 

 役職:ナザリックの最終兵器

 

 装備:

 

 ・【帝王の衣(カイザー・ローブ)

 

 ゼオスの着ている服。見た目は服だが、実際には神級アイテム。上位物理・魔法無効化、スキル・アイテムによるダメージと効果を半減させると言う能力を持っている。

 

 見た目は、仮面ライダーキバに出てくるキングの服。

 

 

 ・【紅のコート】

 

 冒険者ユウの時に着ている装備。何処かのデビルハンターと同じコート。

 

 上位魔法・物理を無効、異形種からのダメージを半減させる。

 

 アイテム:

 

 ・【対女性用拘束具・アンドロメダの鎖】

 

 名の通り、女性を拘束する為の鎖。種族・レベルに問わず女性を拘束するし、一定時間無力化する。

 

 しかし相手を攻撃すると拘束が解け、そのダメージも半減する。

 

 

 

 

 

 

  アインズ・ウール・ゴウンの42人目のプレイヤーにして、ユグドラシルのプレイヤー達から最強と言われた存在。

 

  性格を基本的に誰にでも優しく接するが、過去の事件から無抵抗な者達への虐殺、虐め等は決して見過せず、彼の目の前で、その様な行為を行った場合、確実に相手は死ぬ。

 

 リアルでは天津 裕と言う人間、リアルのモモンガとは幼なじみである。家族は両親は事件に巻き込まれて死亡、弟が1人いる。弟が結婚し、義妹と姪っ子が出来た。

 

 弟を高校に行かせる為にバイトを掛け持ちしていたが、亡き父と母の友人に出会い、隠れた才能を見出だされた。

 

 想像力と表現力、子供心が常人の数倍あり、手先も器用で試しに玩具を製作し販売した所、これが売れた。

 

 父の友人に投資して貰い、会社を作り、創業1年で売上は数千万になった。接待や売上が落ちるなど苦労はあったものの、成功を手にしている。

 

 また、玩具会社の社長故に「例え遊びであっても全力で!」と言っている。

 

 ユグドラシルは開始当初からプレイしている。そんな時に、幼なじみである鈴木悟ことモモンガとゲーム内で出会った。

 

 モモンガ経由でアインズ・ウール・ゴウンに入り、多くの異種狩りされている異形種プレイヤーを救った。

 

 型月コラボイベントでは、全アリストテレスを討伐した唯一無二のプレイヤーであり、運営はこれを讃え、彼自身のアバターをアリストテレスへと進化させた。

 

 アインズ・ウール・ゴウンのメンバーとは仲がよく、基本的に喧嘩しているメンバーの仲裁役である。

 

 特にタブラ・スマラグディナやペロロンチーノ、ぶくぶく茶釜達とはとても仲がいい。そして、殆どのNPCの作製に関わっている。

 

 アリストテレスへとなってからは、凄まじい数のプレイヤーを絶望に落としていった。その戦いぶりにギルドメンバーも「本当に敵じゃなくて良かった」と言われている。

 

 異世界に来るまで年齢=彼女いない歴だったので、全く恋愛について分からないが、番外席次である彼女と出会い子供を作れと言われた。

 

 本人は「そう言うことは結婚してから」と初心である。

 

 

 ~キャラ設定~

 

 太古の昔に飛来した巨人に対抗するために、星と神々の母が産み出した奇跡な存在。

 

 時に傲慢な神々を天より引き摺り降ろし、邪悪なる魔王を討ち滅ぼす者。

 

 あらゆる脅威から星を護る者であり、生態系の調和を司る存在……(などと言うことが延々と書かれている)

 

(考案者:ゼオス&タブラ・スマラグディナ)

 

 

 

 

 

 ・番外席次

 

  種族:ハーフエルフ

 

  年齢:?

 

 オーバーロード二期から出てきた名前が分からない女性。

 

 六大神の血を引いており、この世界では強い。

 

 自分より強い男の子供を産むことを望みとしており、偶々探索していた所、ゼオスと出会う。

 

  冒険者としての偽名、ベルンカステル。

 

  登場当初は勢いで夜這いなどをしていたが、少し時間が経ち、2人旅になり落ち着いてみると、恥ずかしくなり、色々と妄想?したり、何を話せばいいか分からなくなったりと 恋する乙女へと変貌した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・型月コラボイベント

 

 ユグドラシルのイベントの1つ。

 

 かなり人気があった為に、期間が延長。ラスボスも英雄王からORTへと変更された。

 

 ORTを始め、多くのアルティメット・ワンが登場した。その強さに殆どのプレイヤーが敗北し絶望した、その中で唯一アルティメット・ワン達を倒したのがゼオスである。

 

 クリア当初はゼオスは伝説として語られていたが、アリストテレスへとなった彼が強すぎて、ユグドラシルを震撼させた。

 

たが、アリストテレスとなった彼が強すぎて一部のプレイヤーから苦情が来た為、ある程度、能力に修正が掛かり、幾つかの条件がかけられた。

 

ギルド戦に出れるのは1ヶ月に一度だけ。ギルド本部であるナザリック防衛戦は参加しない。と言った幾つかの条件が課せられ、彼は基本的にアイテム集めやNPC達に関わる仕事をしていた。とは言うものの、後者に関してはナザリックの奥までプレイヤーが侵入する事がなかったので意味はなかった。

 

プレイヤーVSプレイヤー戦ではその相手に合わせてスペックを下げていたが、ゼオス自身の戦術や仲間達の連携で事なきを得ている。

 

尚、この条件は全てのプレイヤーに伝わっている。だが、ゼオスと言う存在がかなり抑止力になっていたのは言うまでもない。ギルド防衛戦に関しては、ゼオスが参加しない事を知ったプレイヤー達が攻めてきたが、十分に他のメンバー達だけで対処できていた。

 

唯、この条件や能力の制限については異世界転移した際になくなっている可能性が高い。



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主人公 魔法・スキル・武器

 ・超位魔法

 

 魔法名:【総てを浄化し、次代を招く焔剣(エンド・オブ・レーヴァティン)

 

 神々の黄昏(ラグナロク)の後、総てを焼き払う終焉の剣。

 

 発動後、発動者の周囲に凄まじい冷気が発生し、敵を凍てつかせ行動不能にする。その後、魔法陣より焔が吹き出し、剣となり、発動者がその剣を振り下ろす事で本当の力が発動する。

 

 剣を振り下ろした瞬間、神聖属性+炎属性の合わさった白い炎が発動者の周囲を焼き払う。

 

 ダメージ+魔に属する種族を高確率で即死させる。尚即死効果は即死対策か蘇生アイテムで対処できる。

 

 ダメージは基本ダメージ+敵のレベルの高さで計算されるので、戦っている相手のレベルが高ければ高いほど与えるダメージも多くなる。

 

 LV.100ともなれば、かなりのダメージを負うことは間違いなく、防御に特化し魔法等で防御力を底上げしても、最悪即死効果抜きで一撃やられる可能性もある。

 

 上記の効果から、凶悪すぎると言う事で1日に1回しか発動できない。

 

 

 

 

 

 魔法名:【月落とし(プルート・デァ・シェヴァスタァ)

 

 鏡像化された月を具現化し、それを敵に落下させる極限の質量攻撃。

 

 ゼオスの意思次第でサイズの調節が可能だが、最低でも半径1キロは消し飛んでしまう。

 

 本気で行う場合は星が危険なので、自身の世界である【千年城】でしか本気を出せない。

 

 具現化した月は、質量的にも破壊不可能である。型月ならばゼル爺のエーテル砲か全力英雄王の乖離剣、全拘束を解かれた星の聖剣くらいだろう。

 

 例外的に二十のワールドアイテムでなら何とか破壊できるだろうが、超位魔法と1回使うと消滅してしまう二十とでは割りに合わないのでする事はまずない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・魔法

 

 魔法名:【流星は汝に降り注ぐ(シューティング・メテオ)

 

 階位;第10位階

 

 宇宙より無数の隕石を呼び寄せ、敵に対して落とす魔法。アインズの使う隕石落下(メテオフォール)よりも隕石のサイズは小さいが、若干追尾能力があり、速度も速い。

 

 

 

 

 魔法名:【聖光の檻(ホーリー・ゲージ)

 

 階位:第6位階

 

 聖なるルーン文字の刻まれたクリスタルの柱を4本召喚し、その中に敵を閉じ込める魔法。殆どのプレイヤーやレベルの高いNPC達に対しては足止め程度にしかならないが、ゼオスは足止めしてからの大技を繰り出す事が多いので、多用する事が多い。

 

 

 

 魔法名:【地獄の門(ヘルズ・ゲート)

 

 階位:第8位階

 

 地獄の門を召喚し、自身の前方にいる敵を地獄に引きずり込むと言う恐ろしい魔法。

 

 引きずり込める相手はレベル80以下。ただし、相手のカルマ値が高ければ失敗する。逆にカルマ値が高ければ、レベル80以上でも成功することもある。

 

 地獄に繋がっている為、堕ちれば確実に死ぬ事になる。

 

 

 

 

 

 ・スキル

 

 ・【世界よ、我が意に従え(ワールド・オーダー)

 

 世界を改変するスキル。

 

 ゲーム上は、一定時間フィールドを自分の陣地に置き換える。そこでは自分、もしくは仲間以外の能力を半減させると言うものだったが、異世界転位後は世界そのものを改変できる様になった。

 

 簡単に言えばORTの侵食固有結界の様なもの。

 

 

 

 ・【究極神の王(キング・オブ・アルティメット)

 

 他のアルティメット・ワンを倒し、彼らの頂点となった証。

 

 1日に2回のみ、ゼオスは他のアルティメット・ワン達の能力を行使する事が可能となる。一度発動させれば、解除しない限りは消えない。

 

 ゲーム上ではこのスキルの所為で、多くのプレイヤーがクリスタルの像になりやられた。

 

 

 

 ・【我が意思は時すらも支配する(ザ・ワールド)

 

 時間の操作能力。時間停止、巻き戻し、早送りと言った時間を操作できる。

 

 時間停止の場合、対抗できるのは【時間停止対策をしたプレイヤー】【同じ時間停止の力を持つプレイヤー】のみである。シャルティアが対抗できなかったのはプレイヤーでないからである。

 

 発動可能時間は不明だが、発動後直ぐには発動不可能であり、インターバルを挟む必要がある。

 

 

 

 ・【空想具現化(マーブル・ファンタズム)

 

 自己の意思を世界と直結させ、範囲は局所的ながら(局所と言いながら結構広範囲の)因果に干渉し、ゼオスが望み思い描く通りの環境に世界を変貌させる。

 

 ゲーム上ではフィールドの一部を変化させたりだったが、この世界では作中でも行った様な荒業も可能になった。

 

 

 

 ・【星の知識】

 

 星と直結することでありとあらゆる知識を得ることができる。

 

 と言う設定なのだが、ゲーム上では戦闘時の魔法ブーストでしかなく、使用した魔法の威力がかなり上がる。

 

 この世界では戦闘時に発動され、魔法の威力が上がるのは同じだが、他にも隠れた能力が……。

 

 

 

 ・【真祖の波動(ロード・クラッシャー)

 

 番外席次を吹き飛ばしたスキル。見た目は赤と黒の光の波動で、今回は森の一部と彼女を吹き飛ばした。1日に3回まで発動可能で、効果はアイテム効果・スキルを含む防御力無視攻撃。HPを50%削り、状態異常がランダムで起きる。

 

 

 ・【直感】

 

 常に自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

 

 また本人にとって「とても面白いそう」になりそうな事も感じ取る事が可能。発動時はニュー◯イプの様な音が出る。

 

 

 

 ・【盟友達の幻影(ボーンズ・ファントム)

 

 仲間の武器を所有している際に発動できる実態のある分身。

 

 発動には幾つかの条件が在り、①仲間の武器を一定数所有している②自分が1人で戦っていること③1対多数であることである。

 

 シャルティア戦では【千年城】を使用した事で上記の条件を無視して発動した。またゼオスの幻影で在ったが、その気になれば、かつての盟友達の姿で出現させられる。

 

 

 

 

 ・【最高位の魔眼】

 

 時折、ゼオスが見せる虹色の魔眼。感情が昂ったり、戦闘時に見せる事が多い。

 

 

 ・【神獣使役】

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・武器

 

 

 名前:妖刀・断空

 

 階級:神級

 

 空間を断絶する力を持つ妖刀。

 

 一閃の延長線上の空間を断絶する【空殺】、敵を空間ごと断絶する【空間殺法】を使用できる。

 

 

 

 

 名前:大神の神槍(グングニル)

 

 階級:神級

 

 大神の持つ槍。

 

 朱い槍で、金や銀で装飾されており、雷を操る力を持つ。

 

 その時のHPとMPの半分を捧げる事で、広範囲に神聖属性と雷属性の合わさった神の雷を降り注がせる事ができる【この雷は大神の裁きである(ジャッチメント・オブ・グングニル)】を発動可能。天より雷を受けた槍を投擲し、何かに突き刺さる事で発動する。また範囲は捧げたHPとMPの量により増減する。なので、HPまたはMPの量が多ければ多い程、広域になる。

 

 

 

 

 

 

 

 ・NPC

 

 名前:キャスパリーグ(欲望の獣)

 

 別名:プライミッツ・マーダー、ビーストⅣ、比較の理

 

 型月の世界に出て来た、ビーストⅣ・キャスパリーグ。FGOに出て来た個体とは別個体ではあり、ゼオスが唯一創ったNPC。

 

 異業種しかいないナザリックではマスコットキャラの1体。

 

 何処かの花の魔術師とは違い、主従関係は良好。ナザリックのNPCでありながらゼオス以外には懐こうとせず、基本的にゼオスの服の中にいる。

 

 シャルティアの一件から番外席次と共にいる事が多く、キャスパリーグも彼女の事を気に入っているらしい。

 

 スペック自体は原作と変わらないので、本気を出せばプレイヤー達と同じくらい強い。

 

 

 

 

 

 

 

 ・12の守護神

 

 ゼオスを守護する12の神獣達。

 

 ゼオスを主とするイベントを開催する事になった為に、運営とゼオスが話し合い、これから一切NPCを創らない事を条件に、ユグドラシルに存在したモンスターを捕まえ、強化・育成をした結果、レベル100のプレイヤーのギルドが総力戦を行ってやっと倒せるレベルの化物になった(あくまでこれはイベント内のみで、イベント終了後はNPC達と同じくらいの強さとなった)。

 

 モチーフは12星座であり、それぞれ特殊な能力や技を持っている。

 

 1:牡羊座……???

 

 2:牡牛座……???

 

 3:双子座……善悪を極めし双子(アンニス・ジェミニ)

 

 4.蟹座……???

 

 5:獅子座……英雄殺しの獅子(オルタ・レオ)

 

 6:乙女座……???

 

 7:天秤座……???

 

 8:蠍座……神毒の蠍(グオス・スコーピオン)

 

 9:射手座……???

 

 10:山羊座……???

 

 11:水瓶座……???

 

 12;魚座……???



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本編開始
EP1 星の守護者、出会う


番外席次ちゃんとイチャイチャしてぇ!

と言う思いで書いた妄想の塊です。


 DMMO-RPG:ユグドラシルのオンラインサービスが本日、終了した………筈だったのだが、終了していない。時計を見てみれば0:30:06となってた。

 

 その事に頭を抱える銀髪の青年。そして、自分はギルドの自室にいた筈……正確には、サービス終了だから、最後にオークションやらアイテムの回収をしていたら遅くなり、ギリギリでギルドに戻った。

 

 そして、同じギルドに所属する幼なじみに会うために玉座に間に行こうとした所、意識が途絶えた。

 

 目を覚ましてみると、見知らぬ森の中にいた。

 

 ―どうして、こうなった?……まず、此処は何処だ?

 

 状況を確認しようにも、周りには誰もいない……GMコールも使えないし……はぁ……おまけに触覚、痛覚、視覚、聴覚まである。魔法まで使えるし、ゲームで使ってた武器も呼び出せた。自分の中に意識を向けるとステータスが浮かんだ。

 

 

 

 名前:ゼオス・アルドライグ

 

 種族:アリストテレス(星の守護者)

 

 職業:アルテミット・ワン、創作者(アイテム・メーカー)、その他

 

 属性:中立

 

 身長/体重:180cm/100kg

 

 所属:アインズ・ウール・ゴウン

 

 役職:ギルドの最終兵器

 

 

 

 因みにこれは俺がユグドラシルで使っていたアバターである。

 

 名前もそうだが、種族と職業があり得ない?

 

 そんなの、俺だって分かってるよ!これは、ユグドラシルのコラボイベントをクリアした証だ。

 

 100年以上前に人気のあった型月シリーズとのコラボだ。始めは英雄王がラスボスって感じだったんだが、プレイヤーから人気過ぎてイベントを延長するようにと要望があった。

 

 それで調子に乗った運営がORTを出したのが事の始まりだ。タイプ・マーキュリーを筆頭に様々なアリストテレスを出してきやがった。

 

 これには他のプレイヤー達も熱を入れたものだ……だが現実はそう甘くない、ORTだよ?型月の中でも屈指のチート存在だよ?それが一杯いるんだよ?

 

 結果、アリストテレスに挑んだプレイヤー達が絶望したのは言うまでもない。俺はその絶望を乗り切り、何とか勝った唯一のプレイヤーなのだ。何で勝てたか?根気と忍耐と課金(魔法)だよ。

 

 流石に運営もやり過ぎたと思ったのだろう、他のプレイヤーに謝罪と同時に俺にアリストテレスにならないか的な誘いをしてきた。

 

 勿論、俺はそれを引き受けた……結果、チートの塊になりました。クリアして、アリストテレスとなった俺は、ギルドの仲間だけでなく、幼なじみに讃えられたが、課金額を言った途端に引かれた。

 

 なんで、そんなに課金出来るか?俺、リアルでは天津 裕と言うちょっと普通とは違う一般人だった。何が普通とは違うかと言うと……実は俺、とある玩具会社の社長だったんだ。ついでに、色んな方面のスポンサーにもなっていた。環境破壊で俺のいた世界は外でまともに遊ぶことも出来なかった為に、ボードゲームやらがよく売れた。玩具会社の社長であるが故に遊びには全力で挑むと決めていた。

 

 まぁ、俺の身の上話はこのくらいにして……マジでどうしよう?これ、完全に異世界だよね―

 

 

 

 青年……に見えるチートの塊であるゼオスはこれからどうするかを悩んでいた。

 

 ーガサッガサッー

 

「誰だ?」

 

 茂みが動く音がして、そちらの方を見るとそこには女が立っていた。

 

「あなた……強そうね、私と戦いなさい?」

 

(この女……普通の人間ではない気がする)

 

「あらっ黙り?それとも言葉が通じないのかしら?まぁ、いいわ」

 

 女はそう言うとデカい鎌の様な武器を取り出した。

 

「私を負かしてみなさい……もし、私に勝てたらこの身体を好きにさせて上げる」

 

 女は狂った様な笑みを浮かべて武器を構えた。

 

(何だろう、関わっちゃいけない気がする)

 

 ゼオスはそう思った。だが、女はそんな彼を無視して襲い掛かる。

 

「たわけ……矮小な身でこの俺に噛み付こうとは……身の程を知れ。【真祖の波動(ロード・クラッシャー)】」

 

 ゼオスは自然とそう言い、向かってくる女に手を翳す。

 

「!?」

 

 ゼオスから放たれた何かが女を吹き飛ばした。 自然と攻撃してしまったものの……彼の前方の木々が丸々消えた事に唖然とする。

 

「まさか殺しちゃった?でも真祖の波動(ロード・クラッシャー)って、防御力無視で、敵のHPを半分にして状態異常をランダムに起こさせるスキルだったよな?………生きてるかな、これ?」

 

 自分の力に唖然としながも、殺人をしてしまったんじゃと考える。

 

「この体の影響かな、殺しをしたかも知れないのに対してどうでもいいって思う……とは言うものの、放っておく事はできないか」

 

 ゼオスはそう言うと、吹き飛ばした女の元へ向かったのであった。

 

 

 

 ~数時間後~

 

「ねぇ、これ取って欲しいんだけど」

 

 そう言う、俺を襲ってきた女。俺は現在、彼女を鎖で拘束してる。理由は簡単だ、ポーションで回復させ起きた女に襲われたからだ。

 

 攻撃的な意味でなく、性的に。

 

「私と子供を作りましょう?きっと強い子が産まれるわ」

 

「女の子がそんな事を言うんじゃない!」

 

「あらっ、女にモテそうな顔をしてるのに、初心なのかしら?大丈夫、私も初めてだから」

 

「ダメだコイツ……取り敢えず話を聞かせて欲しいんだけど」

 

「まぁいいわよ……解いて」

 

「解いたら襲うだろ?」

 

「勿論、私より強い男なんて初めてですもの」

 

「ならそのままだ」

 

「そう言うぷれいがいいのかしら?私は別にそれでいいわよ」

 

「もう嫌だ……コイツ」

 

 そんなやり取りが在りながらも、俺は彼女から情報を聞き出した。

 

 此処はスレイン法国とやらの外れにある森だそうだ。知らぬ名前の国、確実に異世界だね。彼女はどうやらこの国でも機密扱いされており、普段は外に出る事もできないらしい。なのに、何故此処に居たのかと聞いてみると。

 

「暇だったし………偶には出掛けたいじゃない?追手はまいたわよ」

 

 だ、そうだ。詳しくは聞かない事にした。それから六大神、八欲王などの話を聞いたが……直感だが、俺と同じようにユグドラシルプレイヤーではないかと思う。

 

 何故か?解放してやった女が話している最中にルービックキューブをやりだしたからだ。聞いてみると、「ルビクキュー」と言うもので六大神が伝えた玩具だとか。

 

 確実に俺等の世界の物だよね。しかも「ルビクキュー」に俺の会社のマークまで付いてる。再現度高いな、おい。

 

「って事は俺みたいにプレイヤーがこの世界にいる可能性は高い……もしかしたら仲間もいるかもしれない。そうと決まれば探すしかないでしょ。よし!」

 

 ゼオスは当面の方針をプレイヤー探しに決め、歩き出そうとするが服を捕まれた。

 

「子供……作りましょうか」

 

「はぁ……逃げ「逃がさないわよ」

 

 完全にゼオスに狙いを付けた女。

 

「取り敢えず俺は仲間を探さないといけないんで。それにまだ結婚するつもりはない」

 

「なら貴方に付いて行くわ」

 

「いや、でも……君はスレイン法国とやらの人間なんだろう?」

 

「別にどうでもいい」

 

「はぁ………結婚は置いといて、現地の協力者は居た方がいいか……ゼオス・アルドライグだ」

 

「?」

 

「俺の名前だ」

 

「そう……私は普段は絶死絶命とか、番外席次とか呼ばれてるわ」

 

「(名前じゃなさそうだけど)付いて来るのはいいが、俺はまだ結婚には興味がない」

 

「子供を作ってくれるだけでいいわよ」

 

「俺が嫌なんだよ、そう言うのは……取り敢えず何処かで情報を集めて動くか」

 

 これが、俺と彼女との出会いだった。

 

 そして、俺達は仲間を探す為に異世界を冒険する事になった。




『モモンガさま~』

『我が君~』

『やってしまった……仲間のNPCを汚してしまった』




ーキュピィーン!ー


「はっ!?」

「どうしたの?」

「なんか……面白そうな場面を見逃してしまった気がする」


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EP2 星の守護者、救済する

『ありえねぇ!何だよ、あのチートは!?』

 

『運営しごとしろぉ!』

 

『月落としとかありえねぁ!ふざけんな!』

 

『魔法にしろ、物理にしろ、神回避してやがる!ナザリックの吸血鬼は化物か!?』

 

『見せて貰おうか、アリストテレスのちか……ちょっと待って!最後まで言わせて、ぁーーーー!』

 

 プレイヤー達は悉く倒されていく。

 

 彼の魔法で、彼の所有する無数の武器で、はたまたその爪で、加減など一切ない。

 

 目の前に立つ敵を1人残さずに蹂躙していく。

 

 そして、揃ってプレイヤー達はこう言う

 

『『『この鬼畜がぁぁぁ!』』』

 

 

 

 

「……夢か」

 

 ゼオスは起きた。彼はかつてギルドの仲間と戦った時の夢を見ていた。

 

「鬼畜とは失敬な……戦争は殺るか、殺られるかだ。トラップ、策略なんて当然、当然……勝てば官軍なんだから」

 

「そうね、何の事か分からないけど、戦いに卑怯もへったくれもないわよね」

 

 ゼオスは木にもたれ掛かって寝ていた、下に視線を向けてみると自分の下半身に抱き付く番外席次がいた。

 

「……何をしている?」

 

「起きてないかと思って」

 

「何がとは聞かん……」

 

 ゼオスはそう言って、彼女を退けると立ち上がった。

 

「取り敢えず国は越えたみたいだし………何処かは分からないけど」

 

「それにしても凄かったわね、アレって何の魔法なの?」

 

「ゲート、転移魔法の1つだ。距離無限、失敗率0%で一定時間、場所と場所を行き来できる門を作る物だ。本来なら行く場所を決めないと行けない訳だが、『スレイン法国以外の国、人気のない場所』と言う条件で開いたんだ。正直、此処が何処かは分からんがな」

 

「そんな魔法もあるのね……」

 

「あぁ……さて、一先ずは情報を集めるか」

 

「情報なら上げたじゃない」

 

「お前の情報は一部だけではないか………俺が欲しいのは、人口・地理・文化に至るまで全ての事だ。お前の情報は偏り過ぎだ」

 

「だって……私は知らないもの。普段は漆黒聖典の本部から出られないし、戦うかルビクキューをするくらいしかなかったもの」

 

 番外席次は無表情でそう言った。

 

「(何か事情がありそうだな)……そうか、変な事を聞いたな」

 

 ゼオスはそう言うと、懐から出した地図へと目を落とす。

 

「雑だな……この地図」

 

 地図には大まかな国しか書いていなかった。

 

「それでもこの国ではいい方の地図よ……誰かがくれたんだけど使う事なかったから仕舞っておいたのよ」

 

「そうか………(これと前に入った街を見る限りは魔法で発展した様な感じだな。唯、もう少し見たかったんだが……此奴がいらんことをするから……言っても仕方ないか)」

 

 ゼオスは先日の事を思い出した。番外席次の所属するスレイン法国へと向かったのだが、彼女は自分が所属する「漆黒聖典」と言う組織に「私、結婚するから辞める」とか言い出して俺と彼女は追われる身となった。

 

 一応、認識阻害する装備を纏ってたから法国側に顔はバレてはいない。彼女自身も組織でも機密な存在だったから一部の者しか知らない………だが万が一がある。

 

「俺の宝庫が使えれば色々とアイテムが使えるんだが……今は【鍵】は持ってないし。手持ちのアイテムで何か在ったか…………」

 

 ゼオスは自分の近くに手を翳すとそこに空間の歪みが現れ、そこに手を入れる。

 

「おっ………これは使えるな」

 

 ゼオスが歪みから取り出したのは水晶で出来たアイマスクだった。

 

「これを付けておけ」

 

「?」

 

「此奴は認識阻害のアイテム【私はだぁれ?】だ………ふざけた名前のアイテムだが、力は確かだ。付けてる限り、誰もお前が番外席次とは気付かない」

 

「へぇ……面白いアイテムね」

 

(課金ガチャの外れアイテムだけどな……名前と種族を隠すだけのアイテムだったが……この世界に来た影響か、魔法やスキル、アイテムの効果が変わっている。これに付いても少し調べる必要があるな)

 

 彼女はゼオスに言われた通り【私はだぁれ?】を付けた。

 

「これでよし………後は人のいる所に行けばいい。俺に付いてくるのであれば、あまり目立つ事はするんじゃないぞ」

 

「……まぁいいわ。従ってあげる」

 

「ならばいい」

 

 ゼオスはそう言うと、目を閉じた。

 

(生命の気配は………向こうの方か)

 

 ゼオスは周囲に気を配ると、此処より少し離れた場所に多くの命の気配がある事に気付いた。彼はそこに向かって歩き出す。番外席次もその後に続いて歩く。

 

 

 

 

 ~30分後~

 

「ん?」

 

「戦ってるみたいね」

 

「と言うより……アレは虐殺だな」

 

 村の様な物が見えてきた所で、そこから煙が上っているのが見えた。

 

 人外のゼオス、人外レベルの存在である番外席次は、村で何が起こっているのかが目視で確認できた。

 

「あの鎧や盾、確か帝国の物ね」

 

「フム……何故、騎士が民を襲っているのか……この世界の騎士は虐殺などをするのか?」

 

「さぁ…興味ないもの。どうするの?」

 

 番外席次がそう聞いてきた。ゼオスは少し考える様に顎に手を当てる。

 

(助ける義理はない……厄介事に巻き込まれる可能性がある。特に国と国の問題だ……面倒ではあるが)

 

 ゼオスが村の方に目を向けてみると、小さい2人の子供が逃げていくのが見えた。その後ろを騎士達が追い掛けていく、このままでは子供達は殺されるだろう。

 

(姪っ子と同じ様な年頃の子供を見捨てる訳にはいかんか)

 

 ゼオスには……正確に言うとリアルの彼には弟がいる。そして弟は既に結婚しており、娘がいた。この世界に来る前には小学生だった。だからこそ、同じ様な年頃の子供達を見殺しにする事は心が痛む。

 

「助ける」

 

「貴方……正義感とか持ってるの?」

 

「いや………情報収集を行う。流れ者が聞くより、命の恩人が聞く方が色々と教えてくれるだろう?」

 

 ゼオスはそう言うと、逃げて行った子供達を追い掛けた。

 

 

 

「はぁはぁ」

 

「頑張って!」

 

 カルネ村に住んでいる少女、エンリ・エモットと妹のネム・エモットは逃げていた。正体の分からない、騎士達から。

 

(何で、こんな事になったんだろう。何時もと変わらなかった。豊かではないけど、お父さんとお母さん、ネムと、村の皆と生きていくには困らない生活をしていた。なのに、どうして私達は逃げているんだろう?)

 

「きゃ!」

 

「ネム!?」

 

 倒れた妹に駆け寄るエンリ。直ぐに後ろから3人の騎士が追って来た。

 

「やっと追い詰めたぜ」

 

「悪く思うな……これも任務なんだ」

 

 騎士達はそう言うと、その手に持つ剣で斬り掛かる。エンリはネムを抱き締め、庇い背中に傷を負った。

 

「せめて一瞬で終わらせてやろう」

 

「おねがい……誰か……助けて!」

 

 妹を抱き締め、必死に願う。

 

『神ではないが、助けよう』

 

 ―バキィ!―

 

 何かが折れる音がした、何時まで経っても痛みはない。目を開き、顔を上げてみるとそこには美しい銀髪の青年がいた。青年の手には折れた剣が在り、騎士達は彼の登場が予想外だったのか混乱している。

 

「貴様等、何故にこの子供達を襲う?」

 

「これは任務だ、邪魔をするならお前も殺す」

 

「子供を殺す事が任務だと………聞くに堪えぬ【ライトニング】」

 

 青年……ゼオスが指を騎士達に向けると、指先から雷が出現し騎士の1人を貫いた。

 

「弱い」

 

「くっ!このぉ!」

 

 騎士の1人が仲間がやられた事を怒り、ゼオスに斬り掛かろうとする。

 

「ちょっと……人の旦那様にそんな粗末な物を向けないでくれる?」

 

 女性の声が聞こえると、襲い掛かって来た騎士が真っ二つになった。

 

「速かったな……」

 

 どうやら先程、騎士を斬ったのは番外席次の様だ。

 

「これくらいは普通よ」

 

「(常人には付いて来れる速さではないんだがな)それと、俺は未だお前と結婚した覚えはないんだが」

 

「いいじゃない」

 

「……まぁいい。さてと」

 

 生き残った騎士に視線を向ける、ゼオスから睨まれ身体を硬直させた。

 

「ひっひぃ……たったすけ」

 

「助ける訳がないだろう」

 

 ゼオスが手を払う様な仕草をすると、騎士が真っ二つになった。

 

「これで終わり……大丈夫か?」

 

 ゼオスが振り返ると、エンリとネムを見た。

 

「きれい……」

 

「おねえさん、きれい」

 

「おねっ!?」

 

 ゼオスが女性と間違われた事で少し傷付いた様だ。

 

「俺は男だ…」

 

「そっそうなんですか、ごめんなさい!」

 

「いや、別にいい」

 

『ゲート』

 

 そう声が聞こえると、エンリ達の後ろの空間に穴が開いた。



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EP3 星の守護者、友と再会す

 ~カルネ村 森~

 

 エンリとネムを助けたゼオス、謎の声と共に出現した空間の穴を見ると身構えた。その穴から現れたのは『死の王』だった。

 

「ひっ!」

 

「おばけ!」

 

 エンリとネムは助けてくれたゼオスに抱き付いた。

 

「……モモちゃん?」

 

「えっ……ユウちゃん!?」

 

「えっ、本当に?!」

 

 ゼオスはそう言うと、骸骨に向かって歩いて行く。どうやら知り合いの様だ。

 

「本当にユウちゃんなのか!?」

 

「俺だよ、モモちゃん……まさか本当にこの世界に来てたとは」

 

「ユウちゃんこそ」

 

「御待たせしました、モモンガさ………ま」

 

 空間に開いた穴からフルプレートの鎧を着た何者かが現れた。声からすると女性だろう。

 

「……まさか、ゼオス・アルドライグ様!?」

 

「だれ?」

 

「私です、アルベドでございます!」

 

「アルベド……タブラさんの創ったNPCの?」

 

「はい!」

 

「そうか、鎧を着てるから分からなかった……モモちゃんはどうして此処に?」

 

「村が襲われていたのを遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で見て、助けようかと思って」

 

 この骸骨……実際にはアンデッドのアバターなのだが、彼の名はモモンガ。ゼオスと同じ、アインズ・ウール・ゴウンに所属するメンバーで、ギルドの長だ。

 

 続いて現れたのは、アルベド。同じギルドのメンバーが作ったNPCだ。

 

「そっか……俺も同じ目的だ。一先ず、話は後……村人を助ける事を優先でいいか?」

 

「あぁ……それでそこの騎士は?」

 

「レベル20……いや、10にも満たないと思うぜ。鎧も剣も紙みたいだし、モモちゃんなら素手でも十分だろうよ」

 

「そうか……【中位アンデッド作成:デスナイト】」

 

 モモンガが死んだ騎士に向かい手を翳すと、黒い何かが騎士を包み込み変貌させ始めた。

 

((うわっ、キモッ!))

 

 ゼオスとモモンガの心が1つになる。死んだ騎士はやがて、巨大な骸骨の騎士へと変貌する。

 

「デスナイトよ、そこの鎧を着た騎士達を殺せ」

 

 《グォォォォォォ!》

 

 デスナイトは咆哮すると、そのまま村へと向かって走って行った。

 

「えっ……」

 

「デスナイトって守るモンスターじゃなかったか?」

 

「あぁ、命令したとは言え守る対象から離れるとは」

 

「やはり魔法やスキルは一部が変化している様だな……大丈夫か?」

 

 ゼオスは騎士に斬られたエンリの方を見る。

 

「はっはい……」

 

 エンリは脅えた表情でモモンガを見る。

 

「大丈夫だ、彼は俺の友人だ……見た目は恐いが、根は優しい。背中を斬られたのか……これを飲むといい。治癒のポーションだ」

 

「はっはい」

 

 エンリは赤いポーションを受け取ると、それを飲んだ……すると傷は始めからなかったかの様に消えた。

 

「これでいいな……モモちゃん、彼女達に防御の魔法を」

 

「あぁ」

 

 モモンガは2つの魔法を発動した。命を通さない魔法と射撃を防ぐ魔法だ。

 

「もし、何かあればこの角笛を吹くといい。吹けばゴブリンの軍勢が現れて、お前達に従うだろう」

 

 モモンガはそう言うと、2つの角笛を彼女達に向かい投げた。

 

「その中に居れば安心だ」

 

「あっあの!」

 

 ゼオスとモモンガは村へと向かおうとするが、エンリに止められた。

 

「お願いします!お父さんとお母さんを助けて下さい!図々しいとは思いますが……どうか、お願いします!」

 

「生きていれば、尽力するよ」

 

「ありがとうございます!あっあの御名前は何と仰るんですか?」

 

 そう尋ねられた。

 

『ねぇ、ユウちゃん』

 

 モモンガが少し考える様な仕草をするとメッセージの魔法を使い、ゼオスに話しかけてきた。

 

『どうした、モモちゃん?』

 

『名前の事なんだけど………………って名乗っていいかな?もしこの名前が広がれば』

 

『そう言う事か……あぁ、モモちゃんにこそ相応しいだろう』

 

『ありがとう、ユウちゃん』

 

 メッセージを切ると、モモンガは両手を広げる様にして言い放つ。

 

「我が名を知れ。我こそが――――アインズ・ウール・ゴウン!」

 

「俺はゼオス・アルドライグだ」

 

 彼等は名を告げると、再び村に向かい歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、彼女は?」

 

「ぁ~……実は」

 

 番外席次の事は簡略に説明した。そして彼女にもモモンガ……アインズの事を説明し、敵でない事を伝えた。

 

「何やってんの?」

 

「俺も分からないよ……一先ず、現地協力者という事で」

 

「分かった……でも本当に良かった。ユウちゃん……いや、ゼオスもこっちの世界に居てくれて」

 

「モモちゃん……いやアインズも此処にいてくれてよかったよ」

 

 ゼオスとアインズはリアルでは幼馴染だ。リアルでもゲームでも仲が良かったのは言うまでもない。

 

「そう言えば、アルベドの事なんだが………彼女がお前に向ける視線に何とも言えない感情が含まれている様な気がするんだけど」

 

「うぐっ………きっ気の所為じゃないかな?」

 

「リアルの頃から何かを隠そうとすると視線を外すよな」

 

「……ナザリックに戻って話します」

 

 アインズはゼオスには隠し事できないなと思った。



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EP4 星の守護者、戦士長と出会う

 ―カルネ村に着いた俺とモモちゃん……アインズはデスナイトを止めた。

 

 結果的に先程の姉妹の両親は助けられなかった。

 

 俺達が辿り着いた時には既に両親は殺されていた様だ。蘇生アイテムを使えば死んだ者達を甦らせる事ができるが……それは後々に面倒な事になる為にしない事にした。個人的には彼女達に同情している為に、使用してもいいと思っていたが、これをした場合のデメリットが大き過ぎる。この世界の情報が少ない状態で賢明ではないと判断した。今は自分達の命が助かった事で我慢して貰う。せめてこの後、彼女達が幸せになれる様に気を掛けるとしよう。

 

 アインズは村長に金銭の報酬を要求したが、金銭で払うのは財政上厳しいという事なので情報を貰った。此処はリ・エスティーゼ王国のカルネ村で、番外席次の持っていた地図ではスレイン法国からかなり離れていた場所に在った。逃げる為にゲートを使い、行先をランダムに使ったからこうなった…………運が良かったのか、それとも何かによってそうなったか………分からないが、後者であるなら感謝しよう。幼馴染と再会できたのだからな。

 

 それでユグドラシルで使っていた金貨は金としての価値はあるが、今の状態では使うのは危険だろう。それから、他の街や冒険者、神話のことなどを聞いた。聞いた事のない常識や言葉が多く、少し混乱したがそれは後ほど整理するとしよう。

 

 因みにアインズは辺境の地に篭っていた魔法詠唱者(マジック・キャスター)、俺はその友人、アルベドと番外席次はその付き人という事にした。

 

 俺は顔を隠す為にステータス隠しの仮面をつけている、アインズは髑髏を出さない様にマスクを被っている。因みにこのマスク、ユグドラシルでクリスマスイヴの19時~22時の間に2時間以上ログインしていると強制的に所有させられる、ある意味呪われた装備品だ。通称:嫉妬マスク、ただのマスクで特に効果はない。

 

 そして俺達はこの村を離れようとした時、騎士団が現れた。先程の輩とは違うようだが、絶対に害がないとは判断しかねる為に……村長たちと共に彼等と接触する事にした―

 

 

 

 

 その騎士団は馬に乗り、やって来た。そして先頭に居た筋骨隆々な男が話しかけてきた。

 

「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。この近隣で村々を荒らし回っている帝国の騎士達を討伐するべく、王の御命令で村々を周っている者である」

 

 

「王国戦士長!?」

 

 

「ん?この村の村長だな、横にいる者達は一体なの者なのだ?教えて貰いたい」

 

 村長が説明しようとするが、アインズが前に出た。

 

「それには及びません。始めまして、王国戦士長殿。私はアインズ・ウール・ゴウン、この村が襲われていましたので助けに来た魔法詠唱者(マジック・キャスター)です。横に居るのは我が友、ゼオス・アルドライグ、後ろの者達は供の者です」

 

 

「おぉ」

 

 それを聞いたガゼフは馬から降りた。

 

「この村を救って頂き感謝の言葉もない」

 

 どうやら礼を言う為に態々降りてきた様だ。

 

「戦士長!この村を囲む様に敵影があります」

 

 

「なに?!」

 

 それを聞いたアインズは一先ず村長の家へ行こうと提案した。

 

 

 

 

 

 ~村長の家~

 

「かなりの数の魔法詠唱者(マジック・キャスター)だな」

 

 

『アレって炎の上位天使(アークフレイム・エンジェル)だよな?』

 

 

『みたいだな……』

 

 メッセージの魔法を使い交信しているゼオスとアインズ。ガゼフの話では敵は恐らく、スレイン法国の『陽光聖典』らしい。

 

「ゴウン殿、アルドライグ殿、よければ雇われないか?報酬は望まれる額をお約束しよう」

 

 

「おことw「アインズ」ゼオス?」

 

 アインズが断わろうとしていたが、ゼオスがそれを制する。

 

「どうかしたか?」

 

 

「受けようじゃないか」

 

 

「……理由を聞いても?」

 

 

「一方的に奪われる苦しみと哀しみ………そして絶望を奴等に刻んでやる」

 

 ゼオスの瞳には言い知れぬ何かが宿っている。アインズ……いや鈴木悟はそれが何かを知っていた。そしてこういう場合、彼は何を言っても自分の意志を曲げない事も。

 

『勿論、デメリットは分かってる。だけどそれ以上にメリットもある。大国の戦士長との繋がり、情報、資金……まぁ金に関しては今回は止めておこう。そっちの方が印象はいい。恩を仇で返すタイプじゃなさそうだしな。

 

 加えてこの村の危機を2度も救ったとなれば、誰かを此処に派遣しても怪しまれる事はないだろう?』

 

 ゼオスはメッセージでそう伝えた。

 

「分かった………戦士長殿、今回の話、お受けしましょう」

 

 

「おぉ!本当か!」

 

 

「ただし条件があります。それを飲んでいただけるのでしたら、報酬は少額で構いません」

 

 

「なんと!?」

 

 

「まず第一に、色々と教えて頂きたいのです。我等は辺境にいた為に、この辺りの事については疎いので」

 

 

「勿論だとも!それで他の条件とは?」

 

 

「まずは村人の安全を第一に……先に村人達を避難させます。戦闘に参加するのはそれからにしていただきたい」

 

 

「では我等が敵を引き付け、村人達の逃げる時間を稼ごう」

 

 

「それではお願いしましょう………では後、これを」

 

 アインズはそう言うと、ガゼフに木で出来た小さな彫刻を渡した。

 

「これは?」

 

 

「お守りの様な物ですよ」

 

 

「おぉ!貴方からの贈り物だ、ありがたく頂こう。万が一、我等がダメでも村人達の事を頼む!」

 

 

「勿論です。我が名に懸けて村人達を護りましょう」

 

 アインズはそう言うと、ガゼフと握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガセフと騎士団達は笑みを浮かべて出て行った。ゼオスとアインズはそんな騎士達の背を見送っていた。

 

『自分達が囮になり死ぬかも知れぬのに、村人達の心配をしていた………騎士の鏡の様な者達だな』

 

 

『ゼオス、何故受けようと言った?』

 

 

『アインズ……モモちゃん……いや、さとっちは分かってるだろう?個人的な事で受けたのは悪いと思ってるよ』

 

 

『ゼオス……いやユウちゃん。あの子達の姿を見て、思い出したの?』

 

 

『あぁ………俺もあの子達みたいに()()()()から。それがどれだけ辛い事か分かってる………唯、そこに居たと言う理由で()()()()と言うのが許せない』

 

 

『はぁ……ユウちゃんがそう言う目をしている時は止まらないのは知ってるよ。それに俺達にとってもメリットあるしね』

 

 

『悪いなさとっち』

 

 

『そう言えば、そう呼ばれるのは久々だな』

 

 

『俺が【さとっち】って呼ぶのはリアルだけだったからなぁ………ゲーム内では【モモちゃん】で通してたし。最近は忙しくて、リアルでも会えなかったし』

 

 

『そうだな………じゃあ、2人の時は昔みたいに呼び合おうか』

 

 

『そうするか』

 

 メッセージにより会話している2人。端から見れば黙って並んでいる様にしか見えない。だがその様子を見ていた、アルベドは。

 

(アインズ様……とても楽しそうですね。至高の御方であるゼオス様との再会が嬉しかったのでしょう、ですが何故か2人の距離が近い様な……肩と肩が触れ合いそうな程近い……はっ?!

 

 まっまさか御2人は想い合っているのでは?!いっ……いぇ、落ち着きなさい私。これは男の友情と言うもの……それ以上ではない筈……もっもしそれ以上の場合はどうすれば………あっアインズ様は男性の方が好み?……わっ私は女……いやっでも……アインズ様とゼオス様………こっこれは絵になるのでは?

 

 でっですが、私はアインズ様を愛しています!その様な御趣味であるなら正すのも守護者としての役目!)

 

 等と勘違いして、全く別方向に向かい悶えているアルベド。

 

 ゼオスについている番外席次はそんな彼女を見て、疑問を浮かべ首を傾げていた。



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EP5 星の守護者、怒る

 ~村の倉庫~

 

 ゼオスとアインズは此処にに村人達を集め、防御魔法を張った。

 

「そろそろか」

 

 

「あぁ」

 

 ゼオスとアインズがそう呟くと、次の瞬間、ゼオス、アインズ、アルベド、番外席次の姿がその場から消えた。入れ替わりに負傷したガゼフと騎士達が出現した。

 

「こっ此処は……(何処だ此処は、私は先程までニグン達と戦闘していた筈)」

 

 先程まで戦闘していた筈の彼はいきなり場所が変わった事に驚いていた。

 

「此処は村の倉庫です。アインズ様が魔法で防御を張られています」

 

 

「アインズ殿とゼオス殿は?」

 

 

「それが戦士長様と入れ変わる様に、姿が掻き消えまして」

 

 村長がガゼフにそう説明すると、彼はアインズから御守である木彫りの彫刻を取り出した。すると彫刻はその役目を終えた様に消滅した。

 

「そうか……ふっ」

 

 ガゼフはそれだけ言うと、気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 ~荒野~

 

「何者だ?」

 

 スレイン法国、陽光聖典隊長・ニグン・グリッド・ルーイン。彼は自分の部隊を率いて王国戦士長ガゼフ・ストノローフとその部下達約20名を抹殺するべく動いていた。

 

 彼の策は上手くいっていた、自分達が帝国の兵士に扮して村々を襲う事で、ガゼフ達を誘き出し、天使達を使い先程まで追い詰めていた。此処までは予想通りだった……だが彼は1つだけ間違いを犯していた。

 

「初めまして、私の名はアインズ・ウール・ゴウンと言う。さて………挨拶は此処までにしておこう。こうして話すのも最後だろうから教えてやろう、お前達は1つだけ過ちを犯した」

 

 

「なに?」

 

 

「我が友を怒らせた事だ」

 

 アインズはそう言うと、ゼオスの方を見た。

 

「おい、お前……1つ聞く、何故村人達を殺した?」

 

 

「何故?………簡単な事だ、ガゼフを誘き出す為だ」

 

 

「男だけでなく、女子供までもか?」

 

 

「我等は大義の為にやっている多少の犠牲はつきものだ。死んだ者達も大義の為に死ねたのだ、本望だろう」

 

 

「………そうか」

 

 

「ほぅ………理解したか。ならばきs「貴様等に生きている価値がない事は理解できた」はっ?」

 

 ゼオスはそう言うと、前髪を掻き上げた。彼の紅眼が鈍い光を放ち、凄まじい殺気が彼等を襲う。

 

「ひぃ?!」

 

 

「っ!?」

 

 その殺気に当てられ兵士達とニグンは恐怖する。

 

「くっ……お前達やれ!」

 

 ニグンの指揮に我に帰る兵士達は炎の上位天使(アークフレイム・エンジェル)にゼオスを襲わせた。炎の上位天使(アークフレイム・エンジェル)は光の剣でゼオスは突き刺した。

 

 

 

 

 

 ~アインズside~

 

「ゼオス様?!」

 

 抵抗する事無く、ゼオスは突き刺された事に驚いたアルベドは声を上げる。

 

「下がれ、アルベド………この程度で我が友は傷1つ、つかん」

 

 

「ふっ……………うふっ……フフフフフフフ」

 

 

「人間、何が可笑しい?!」

 

 突然、笑い始めた番外席次に声を荒げるアルベド。

 

「だって……凄いもの………この殺気、力………まだあんなの隠したなんて。アレはスキルかしら?それとも魔法?」

 

 

「アレは彼の帝王の衣(カイザー・ローブ)の力だ。上位物理・魔法無効化、加えてスキルによるダメージも半減させる」

 

 

「そう言えば、彼は人間ではなさそうだけど………なんの種族なの?私は人間であろうと、なかろうと私的には子供を作ってくれればいいのだけど」

 

 番外席次は彼が人間なのかどうかを聞いてなかったのを思い出した。

 

始まりの真祖(ロード・オブ・ヴァンパイア)………そして最強の種族・アリストテレス」

 

 

「アリストテレス?」

 

 

「お話には聞いた事はありますが……一体どう言う種族なのですか?」

 

 

「一言では言えんな………唯、これだけは言える………二度と敵に回したくない」

 

 

「アインズ様はゼオス様と戦った事が御有りなのですか?」

 

 

「あるにはある……とは言っても模擬戦だがな。そして私が……正確にはアインズ・ウール・ゴウン(私達)が戦ったのは他のアリストテレス………ワールド・アイテムを用いても勝てなかった化物だ」

 

 

「なっ!?」

 

 番外席次は良く分かっていない様だが、アルベドはその言葉に驚愕した。ワールドアイテムとはユグドラシルに存在する全アイテムの中でも頂点に位置するアイテム達だ。1つ1つがゲームバランスを崩壊させかねない力を持っており、対抗するのは不可能。

 

 対抗するには同格のワールドアイテムを使うか、最高峰の職業ワールドチャンピオンのスキルをタイミングよく使用する事で防ぐことが可能。

 

 そんなアイテムをものともしないのが、ORTを始めとするアリストテレスである。二十と呼ばれる、使い切りのワールドアイテムを用いても倒す事は不可能で、物理攻撃で倒すしかない。それを唯一、やり遂げたのが天津 裕ことゼオスである。

 

「そしてその化物達を倒し切ったのがゼオスだ……正直、アイツが敵だったらと思うと………恐ろしい」

 

 ~side out~

 

 

 

「なっ………何が起きている?」

 

 ニグンは目の前で起きている事が理解できなかった。炎の上位天使(アークフレイム・エンジェル)の剣は確実にゼオスを貫いた。貫いている……貫いていると言うのに彼は全く動じていない。それどころか炎の上位天使(アークフレイム・エンジェル)の頭を掴んでいる。天使達は逃げれそうにない様だ。彼に突き刺さっていた光の剣は直ぐに消滅する。

 

「この程度か………フン!」

 

 ゼオスは天使達を掴んだまま地面へ叩き付ける、その衝撃で彼の足元は陥没した。

 

「なっ?!」

 

 

「この程度で、我が衣を貫けるものか」

 

 

「くっ………ぜっ全天使で総攻撃を仕掛けろ!」

 

 部下達が天使達に総攻撃を仕掛けさせた。それを見た、アインズはゼオスの横に立つ。

 

「それでは私にやらせて貰おう………【負の爆裂(ネガティブ・バースト)】!」

 

 アインズから黒い衝撃波が放たれ、天使が掻き消えた。

 

「なっ!?」

 

 

「流石、アインズ。やっぱり弱いな……コイツ等」

 

 

「あぁ。到底、私達には及ばんな」

 

 恐怖した敵の兵士達が魔法を放ち始めた。

 

「無駄だな」

 

 しかしゼオスとアインズの身を傷付けるには至らなかった。ゼオスは何かをしようとする。そんな時、兵士の1人がボウガンを放つ。

 

 ゼオスとアインズは効かない為に無視していたが、下がっていた筈の番外席次とアルベトが出て来て、矢を弾き返した。それによりボウガンを放った兵士は頭と身体が離れた。

 

「何故出てきた?あの程度で我等が身を傷付けれぬことは承知の筈だ」

 

 

「はい、分かっております。しかし、至高の御方と戦うのであれば、最低限の攻撃と言うものがございます」

 

 

「折角、面白い所なのに下らない玩具で水を差すなんて最低」

 

 アルベトは至高の存在と戦うには最低限の攻撃をするべきだと言い、番外席次は折角ゼオスの本気が見れると思っていたのにボウガンと言う玩具で水を差された事を怒っているらしい。

 

「くっ……【監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)】!かかれ!」

 

 ニグンは自分が召喚している監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)へ命令を送る。

 

 監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)はゼオスとアインズへと向かっていく。

 

 アインズはゼオスに視線を向けた、ゼオスはそれに気付くと何も言わずに頷いた。

 

「【獄炎(ヘルフレイム)】」

 

 アインズは権天使の攻撃を受け止めると指先から黒い炎が出現し、権天使に触れると天使の総てを燃やし尽くした。

 

「あっあり得ない……上位天使を一撃だと!?」

 

 上位天使が一撃で倒された事で混乱するニグンと兵士達。

 

「はっ……最高位天使を召喚する!」

 

 ニグンは我に帰ると懐から水晶を取り出した。

 

『アレは……確か魔封じの水晶だったか』

 

 

『あぁ。何が封じられているのか分からん内は警戒が必要か』

 

 メッセージでゼオスとアインズが交信する。アインズはアルベドにスキルで自分を守る様に命じた。

 

「見よ!最高位天使の尊き姿を!出でよ!【威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)】!」

 

 ゼオスとアインズは思った。

 

(熾天使じゃないのかよ!!!)

 

 

『アレが最高位と言われるとは……後は俺がやっていいか?』

 

 

『あぁ。あまり遊ばない様に』

 

 ゼオスはアインズからそう聞くと、前に出た。

 

「下らん……」

 

 

「なっ何を」

 

 ゼオスがそう言うと、彼の瞳が七色に染まった。放たれた殺気と覇気によりニグン達は恐怖する。

 

 既に日が暮れ時間は夜。そして夜はゼオスにとって自分の領域だ。

 

「目障りだ」

 

 ゼオスがそう言うと、主天使の周囲の空間から突如、鎖が出現した。鎖の先には剣の様な物が付いており主天使を貫き、引き裂いた。

 

「なっ馬鹿な!?最高位天使が一撃で……あっありえない。こんな事があって良い訳がない」

 

 自分が知る中で最強の天使が一撃で倒された。ニグンと兵士達にはこれがどういう事を意味するのか直ぐに理解できた。

 

 主天使は人間では決して到達出来ない領域の存在……それを倒した目の前の敵には決して勝てないと。

 

「おっお前は一体……」

 

 

「言っただろう……ゼオス・アルドライグだと。まぁ、かつてはアインズ・ウール・ゴウンと共にその名を轟かせていたんだが……まぁいい」

 

 ゼオスが次に動こうとする。

 

「まっ待って欲しい!ゼオス・アルドライグ殿…いや様!どうか、私達……いぇ私だけでもお助け下さい!金なら幾らでも」

 

 命乞いするニグン。だが既に彼等はゼオスの逆鱗に触れ、始めから死は確定している。

 

「命乞いか……お前達はこれまでそうやって命乞いした民をどうした?殺しただろう?

 

 だから俺も同じように殺す。一方的に奪われる絶望と嘆きを教えてやる、【地獄の門(ヘルズ・ゲート)】」

 

 ゼオスの背後の空間に巨大な門が出現する。門は禍々しい気配を放ち、幾つもの髑髏で飾られていた。

 

 ーギィーー

 

 音を立てて門が開き始めた。

 

「絶滅タイムだ」

 

 ゼオスがそう言うと門の中から無数の手が出現し、その手が兵士達を門の中へと引き摺り込み始めた。

 

「ぎゃぁぁぁぁ!」

 

 

「ニグン隊長!助けてくださいー!」

 

 

「なっなんだ、これは……」

 

 ニグンは目の前で起きている事が理解出来なかった。上位天使に加え、最高位天使まで屠られた。部下達は次々に異形の門の中へと引き摺り込まれていく。

 

「わっ私は……何処で間違えた……私は」

 

 

「貴様のしてきた事を振り返り地獄で罪を贖え」

 

 ニグンが見たのは地獄の門の上に立ち、巨大な朱い月を背にする王の姿だった。そして王の言葉により地獄はニグンを引き摺り込んだ。

 

 

 

 

 

 

「終わったか……」

 

 ニグンを引き摺り込み地獄の門は重い音を立てて閉じ、消えた。

 

 ーバキッー

 

 何かが壊れる音がした。ゼオスは空を見上げる。

 

「どうやら誰かが監視していたみたいだ、私の情報系魔法に対する攻性防壁が発動した様だな」

 

 

「みたいだな」

 

 ゼオスとアインズは全てが終わった事で、一先ずギルドへと帰る事にした。2人は星空を見上げながら歩いていた。その後ろには番外席次とアルベドが付いて来る。

 

「うふっ………うふふふふふ!凄い……凄いわ!」

 

 番外席次は先程のゼオスの力を見て興奮していた。

 

「ねぇ、ゼオス。何処に行くかは知らないけど、早く子供を作りましょう。きっと強い子が生まれるわ」

 

 

「貴様、人間の分際で至高の御方に」

 

 

「アルベド。いいから」

 

 

「はっ!」

 

 

「それからお前もそう言う発言は少し控えろ、慎みを持て」

 

 

 アルベドが番外席次を睨みつけるが、ゼオスはそれを制した。

 

(ユウちゃんも凄い女性に惚れられたな)

 

 

「やっべ………アインズ様、かっけぇ」

 

 

(俺は何も聞かなかった………アルベドは何も言ってない)

 

 アインズはゼオスに対して同情していたが、後ろから何やら変な声が聞こえて来たので聞こえてない事にした。

 

『所で、モモちゃん』

 

 ゼオスはアインズにメッセージを使った。

 

『ん?』

 

 

『アルベドの事なんだが………モモちゃんに対して凄い視線を向けているんだが……と言うか、その視線の熱が番外席次(彼女)から向けられるのと同類の様な気が』

 

 

『……そっ、それを説明すると長くなるから、ナザリックに戻ってから言うよ』

 

 どうやら深い事情がある様なので、今は聞かない事にした。



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EP6 星の守護者、友と語る

 今回も番外ちゃんとイチャイチャできなかった……次こそは


 ~ナザリック大墳墓 アインズ私室~

 

 ギルド、アインズ・ウール・ゴウンの本拠地ナザリック大墳墓。そして此処はアインズの私室、現在、此処に居るのはゼオスとアインズだった。

 

 ゲートを使い此処に戻った後、アルベドに番外席次をゼオスの私室へと案内する様に命じ、彼等は此処に来た。

 

「それでユウちゃん、これまでの経緯を聞きたいんだけど」

 

 

「あぁ」

 

 ゼオスはまず、自分の経緯を話した。

 

 ユグドラシルのサービス終了前にオークション等を終えた後、ギリギリの時間でナザリックへと戻ってきた。そしてリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使い円卓の間に転移しようとした所、意識を失った。その後、スレイン法国の外れで目覚めた。

 

 どうしたものかと考えていると、番外席次と出くわし襲い掛かって来た彼女を撃退、情報を貰う為に拘束したが、何故か子作り宣言された。何とか落ち着かせて、ある程度情報を引き出し、スレイン法国に潜入したが彼女が寿退社を宣言した事でゲートを使い、国外へ。そして偶々、先のカルネ村に辿り着いたと。

 

「成程………では俺の方も話そうか」

 

 アインズ……モモンガはユグドラシル最後の時間を玉座の間で過ごしていた。しかし時間を過ぎても現実に戻らず、NPC達が喋り動いていた。そしてこれがゲームでないと知り、周囲を調べさせ、現在は守護者によりナザリックは隠蔽されている。遠隔視の鏡でカルネ村が襲われているのを確認し助けに行き、ゼオスと再会した。

 

「成程な……それで身体の方は?」

 

 

「感情が激しくなると抑制される、アンデットだからか食欲も睡眠欲もない。性欲は無くもないかな」

 

 

「実戦で使う前に廃棄されたか………」

 

 ゼオスは何やら優しい目をアインズに向けた。

 

「ぐっ!言わないでくれ、気にしてるんだから」

 

 

「悪い、悪い」

 

 

「ユウちゃんの方は?」

 

 

「五感は人間以上……それに加えて何やら巨大な存在と繋がっている感じがする。食欲は特にないが、食事は出来ない事はない。睡眠欲も今はない、性欲は………なくもないって感じだな」

 

 ゼオスとアインズは互いの事を情報交換していた。そして種族関係なく2人に共通している所は、人を殺したと言うのに何も感じないと言う所だ。しかしゼオスの方は感情が抑制される事はなく、リアルの時の()()はしっかりと出ていた。

 

「後、スキルや魔法、アイテムの効果が若干変化している」

 

 

「それについては、追々調べていく必要があるな………フフフ」

 

 アインズと話しているとゼオスが笑い始めた。

 

「ユウちゃん?」

 

 

「あっすまん………こうしてると、ユグドラシルで一緒にプレイしている時の事を思い出してな」

 

 

「あぁ……あの頃は楽しかったな」

 

 ギルドのメンバー達と共に戦っていた日々の、苦楽を共にした仲間達との美しい思い出が2人の脳裏に浮かぶ。

 

「俺達みたいにこっちの世界に来たメンバーが居ればいいんだが」

 

 

「だからこそ、アインズ・ウール・ゴウンの名前を轟かせよう。この世界の総てに」

 

 

「あぁ」

 

 ゼオスとアインズは改めて決意する、この世界に居るかも知れない仲間達の為にアインズ・ウール・ゴウンの名を轟かせようと。

 

「それで………アルベドの事なんだけども」

 

 

「うぐっ?!」

 

 

「何をしたのかな、モモちゃん」

 

 ゼオスは笑顔でアインズにそう尋ねた、何か面白い事を期待している顔だ。

 

「そっその……」

 

 

「その?」

 

 

「せっ………を…………る」

 

 

「なに?」

 

 

「あっアルベドの設定を見たんだ」

 

 

「フムフム」

 

 

「そっそれで長文の最後に『ちなみにビッチである』って在ったんだ」

 

 

「ぁ~タブラさん、設定魔でギャップ萌えだったな」

 

 

「この設定はないかなぁと思って……最後だし、多少変えてもいいかなぁと思いまして」

 

 

「変えちゃったの?」

 

 

「………はい」

 

 

「で、どんなのに?」

 

 

「………もっ『モモンガを愛している』」

 

 ゼオスはそれを聞いて、瞬きを繰り返した。そして軽く頬を叩き、寝惚けていないかを確認。

 

「One more please」

 

 

「『モモンガを愛している』」

 

 何度聞いても答えは変わらなかった。手で顔を覆い、天井を仰いだ。

 

「責任……取ろうな」

 

 真剣な表情になり、両手をアインズの両肩に置きそう言った。

 

「…………はい」

 

 

「そういや、18禁行為がどうのとさっき言ってたけど」

 

 

 ―ギクッ!―

 

 

「まさかと思うんだけど………」

 

 ゼオスはジト目で彼を見る。

 

「正直に言おうか……モモちゃん」

 

 

「すっすいませんでしたぁー!!!」

 

 アインズはゼオスに視線に耐えかねて、プライドを捨てて土下座した。

 

「俺に謝られても……ヤッちゃったの?」

 

 

「胸を触っただけです」

 

 

「本当に?」

 

 

「………無意識に揉みました」

 

 

「謝るならタブラさんに………ぁ~でもタブラさんなら、喜んで結婚式の用意しそう。取り敢えず立ったら?」

 

 ゼオスに言われて立ち上がったアインズ。

 

「こっコホン!では玉座の間に行こう!守護者の皆が待っている!」

 

 話題を切り替えてこの気まずい空気を打ち消そうとするアインズだが……

 

「モモちゃん!」

 

 

「はい!?」

 

 

「自分で仕出かした事だから………責任は取ろうね?」

 

 

「はい!!!」

 

 何やらゼオスが黒い笑みを浮かべており、それに対してアインズは裏返った声で返事を返した。

 

「さてNPC達か………結構楽しみだなぁ。皆の子供達に会うのは」

 

 仲間達が作ったNPC達に会うのが楽しみなのかワクワクしているゼオス。それを見てアインズは彼の肩に手を置いた。

 

「覚悟しておくといい………色んな意味で凄いから」

 

 

「?」

 

 ゼオスはこの時はアインズの言葉の意味が全く分からなかったが、後に知る事になる。



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EP7 星の守護者、忠誠を誓われる

 ~ナザリック大墳墓 玉座の間~

 

 ナザリック大墳墓の玉座の間にある玉座に座るモモンガ改めアインズ・ウール・ゴウン。そしてその前にはナザリックの各階層の守護を担うNPC達が跪いていた。

 

「第4階層守護者ガルガンチュア、第8階層守護者ヴィクティムを除き各階層守護者、御前に」

 

 アルベドが集まったメンバーについて、アインズに報告する。

 

「よく集まってくれた。まずは始めに、私が勝手に動いた事を謝罪しよう」

 

 それを聞いて守護者達は驚く。彼等にとってモモンガはこのナザリックの絶対なる支配者であり主だ。そんな主が勝手に動いた事を謝罪したのだ、守護者達にとっては畏れ多い事に当たるだろう。

 

「それから、これより私の事はモモンガではなくアインズ・ウール・ゴウンと呼ぶ様に」

 

 

「「「おぉ」」」

 

 

「そして此度は大きな収穫が在った………入ってくれ!」

 

 アインズがそう言うと、玉座の間の巨大な扉が開いた。各階層守護者は扉の方を振り返る。

 

「「「なっ!?」」」

 

 

「ぜっゼオス………アルドライグ……様?」

 

 守護者の内、スーツを着た男がそう呟いた。

 

「よぉデミウルゴス、久しぶりだな」

 

 

「ほっ本当にゼオス様でありんすか?」

 

 ドレスを着た肌白い少女が唖然とした表情で聞いた。

 

「おっシャルティアか、久しぶり。他の階層守護者達もな………コホン」

 

 守護者達はまるで幽霊を見たかの様な顔をしている。だが我に帰ると、直ぐにゼオスが通る道を開けた。彼はその道を通り、アインズの前まで歩いて行く。彼の後ろには番外席次が追従していた。

 

「我が盟友モモンガ……いやアインズ。星の守護者(アリストテレス)ゼオス・アルドライグ、ナザリックに帰還した」

 

 ゼオスはアインズに向かい、そう言った。

 

「良くぞ、帰って来てくれた。我が盟友ゼオスよ」

 

 

「それじゃあ、まずは俺から自分の状況を説明させて貰おう」

 

 ゼオスは自分が在った事を守護者達に伝えた。守護者達は彼の帰還に喜んでいたが何故かアルベドは何やら辛そうな表情を浮かべていた。

 

「成程………そうだったのですか」

 

 

「あぁ……俺はナザリックで意識を失った筈だが、何故かスレイン法国に居た。それが何故かは分からん」

 

 

「ゼオス様、質問を御許し下さい」

 

 デミウルゴスがゼオスにそう言うと、ゼオスはそれを許した。

 

「ゼオス様の隣にいる女の事なのですが………何者ですか?」

 

 

「ぁ~………ぇ~と……彼女はげんt「婚約者よ」」

 

 

「「「「なっ!?」」」」

 

 

「違う」

 

 

「妻?」

 

 

「違う」

 

 

「愛人?」

 

 

「だから違うと言うのに」

 

 

「あんなに激しいのは初めてだったわ(攻撃が)」

 

 重要な主語が抜けている。これでは変な意味に捉えられても可笑しくない。

 

「「「「激しい!?」」」」

 

 

「ちっちg「(動きを止める為に)鎖で縛られたし」」

 

 

「「「「鎖!?」」」」

 

 

質問(言葉責め)も面白かったわ」

 

 

「「「「言葉責め?!」」」」

 

 

「「?」」

 

 各階層守護者達が番外席次の言葉に過剰に反応する。唯、小さい双子のエルフ達だけは何が何のか分かっていない様だ。

 

「お前等、確実に勘違いしてるからな。お前等が思っている様な事は何もしてないからな!」

 

 

「間違っては無いでしょう?私を倒して、拘束して、情報を聞き出したんだから」

 

 

((((あっ………そう言う事か))))

 

 

(拘束プレイで激しく……言葉責め………そんな事をアインズ様にされたら私は……はぅん)

 

 

(まっマニアックでありんす。でっでもアインズ様が御望みならどんなプレイでも)

 

 番外席次の言葉で納得の言った守護者達。若干2名は自分の世界から未だに戻っていない様だが、これでゼオスの無実は証明された。

 

「コホン!俺の無実が証明された所で、彼女は俺の協力者だ………アインズ、彼女は色々在って国から追われている。なのでナザリックで保護を願う」

 

 

「盟友の協力者であるならば勿論だ………さて、皆もゼオスの状況を理解してくれたな?

 

 彼は私と共にナザリックに残った友………一時期、突然彼が居なくなった事で困惑した者もいるだろう………守護者達よ!ゼオスの帰還に意見がある者はいるか!?あるならば立って異を唱えよ!」

 

 アインズは守護者達に聞いた。

 

「至高の御方の御帰還に異を唱える者が居よう筈がありません!」

 

 守護者を代表してアルベドがそう言った。

 

「よし……フッ」

 

 

「?」

 

 アインスが何やら笑みを浮かべる。実際には骸骨なので表情が分からないが、ゼオスには確かにアインズが笑ったのが分かった。

 

「ではゼオスに対し【忠誠の儀】を行う!私の時と同じように思うがままを言うがいい……まずはシャルティア」

 

 アインズの言葉にシャルティアは顔を上げた。その表情は決意に満ちている。彼女は………いやこの場にいる者達は同じ気持ちだった。

 

 ゼオスはアインズと共に最後まで残った至高の42人の内の1人。だからこそ、NPC達はゼオスが消えた際には落胆・絶望した者達もいた………自分達はゼオスにも見捨てられたと。だが実は違っており、こうして彼は此処に帰って来た。

 

 だからこそ、この忠誠の儀に全霊をかけていた。万が一、此処で誤ればゼオスが「戻って来るべきではなかった」と考え、今度は本当に消えてしまいそうだったからだ。

 

「ゼオス・アルドライグ様は偉大なる吸血鬼の王にして、最強の存在でございます。その御力の前では神々さえも平伏すでしょう」

 

 シャルティア・ブラッドフォールン。俺と仲が良かったペロロンチーノの作ったNPC、外見は14歳程の少女だが、吸血鬼である。

 

 うん、シャルティア、盛りすぎだよそれは。

 

「コキュートス」

 

 

「我等ヨリモ強者デアリ、我ガ創造主ヤ御方々トノ親交二厚ク、決シテ慢心スル事無ク、更ナル高ミヲ目指ス為二日々修練ニ励マレテ居ラレマス。正二武人ノ鏡………私ガ目指ス御方ノ御一人二在ラセラレマス」

 

 コキュートス。常に冷気を纏った2.5m程の巨大な二足歩行の昆虫の様な外見をしている。武人建御雷が作ったNPCで、見た目も鎧を想起させ能力も性格も武人そのものである。

 

 武人の鏡って……素材集めや装備の実験の為に戦ってただけなんだけどなぁ。

 

「アウラ」

 

 

「強く、優しく、大変慈悲深い御方です」

 

 アウラ・ベラ・フィオーラ。外見は10歳程の少女、金髪ショートヘア、金と紫のオッドアイのダークエルフである。制作者は仲の良かったぶくぶく茶釜で、彼女の趣味で男装させられている。

 

 違和感ないなぁ。

 

「マーレ」

 

 

「かっカッコ良くて、御強く、御優しい方です」

 

 マーレ・ベロ・フィオーレ。アウラの双子の弟である………弟だ。重要な事なので2回言いました。彼もまたぶくぶく茶釜に生み出されたNPCで、彼女の趣味により女装させられている。

 

 確か男の娘だったか……うん、違和感ないけど男だもんな、流石ゲーム。

 

「デミウルゴス」

 

 

「最強の種族アリストテレスで在られながらも力だけで全て解決させず、凄まじい知識と経験により、常に未来を見通される御方です」

 

 デミウルゴス。人間の姿をしているが、その実は人を陥れ破滅に追いやる事を悦とする悪魔。制作者はアインズ・ウール・ゴウンのメンバーの中で最も「悪」と言う言葉に拘った男ウルベルト・アレイン・オードル。

 

 さっきから何なの?皆の目には俺はそんな風に映ってるの?

 

「セバス」

 

 

「アインズ様を始め、至高の御方達に絶大な信頼を寄せられ、最後まで私共を見捨てずに残って下さった慈悲深き御方です」

 

 セバス・チャン。執事の姿をしており、至高の42人の生活面を支える家令。製作者は正義感溢れるたっち・みーさんだ。

 

 たっちさんに作られたからか、たっちさんに似た雰囲気があるな。

 

「では最後にアルベド」

 

 

「その大いなる力と以てナザリックに繁栄をもたらし、至高の御方々から絶大な信頼を受けられた素晴らしい御方。そして私の愛するモモンガ様の御親友に御座います」

 

 アルベド。人間の姿をしているが、腰から出る黒い羽と頭の角、人間ではなく純白のサキュバスであり、守護者統括だ。製作者はタブラ・スマラグディナ……俺がアリストテレスになった際に設定を一緒に考えてくれたタブラさんだ。

 

 彼女、何やら違和感があるな。直感だけど……本心を隠しているような……。

 

 それはさておき……何これ、信頼が天元突破してるんですけど。

 

「だそうだぞ、ゼオス」

 

 

(さっき部屋での言葉の正体はこれか)

 

 ゼオスはアインズが部屋での言葉を思い出した。すると彼は深呼吸して目を閉じた。その瞬間、場の空気が一変した。

 

 その空気の変化に息を飲む守護者、そしてゼオスはその目を開けた。そこには先程までの真紅の瞳でなく、虹色に輝いていた。

 

「我が盟友達の子等よ。汝等の気持ちは良く、分かった。我は此処に誓おう。命ある限りこのナザリックから離れる事はないと!」

 

 ゼオスはそう宣言した。彼にとっても此処は思い出の場所……決して自らの意思で離れる事はないだろう。

 

「僕一同、ゼオス・アルドライグ様の御帰還を心より御祝い申し上げます!」

 

 アルベドの言葉に他のNPC達も同じ気持ちの様だ。

 

「では話を終える前に」

 

 アインズは、自分の持つ杖……このギルドの証、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで床を叩き、立ち上がった。

 

「忠実なる僕達よ!」

 

 NPC達はアインズの言葉に耳を傾けた。

 

「アインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とせよ!

 

 英雄がいるならば塗り潰せ!

 

 今はまだ準備段階に過ぎないが、将来、いずれ来る時のために備えろ。このアインズ・ウール・ゴウンこそが最も偉大なものだと知らしめるために!」

 

 

「神がいるなら天の座から引き摺り下ろす!魔王がいるなら噛み殺す!邪魔をするならねじ伏せろ!

 

 畏怖も正義も天地も我らの物。この世界に、何者にも覆せぬ絶対的な存在は我等がアインズ・ウール・ゴウンだけでいい!」

 

 アインズとゼオスがNPC達にそう言った。

 

「これよりアインズ・ウール・ゴウンの名前を世界に刻み込む!」

 

「この世界の過去・現在・未来の全てにアインズ・ウール・ゴウンの名を刻め!」

 

 

 

 ー全ての知性ある者に……我らの名前を知らないものが存在しない領域まで上る。あの栄光を……いや、あれ以上の栄光を手にして、この世界に居るであろうギルドメンバーの元に届くようにー

 

 ー友たちよ。この名前が世界の果てまで知れ渡るように頑張る。そして、何時までもこの旗を掲げて待っているから……だから帰って来てくれー

 

 アインズとゼオスは今一度、このアインズ・ウール・ゴウンで栄光を手にし、世界にその名を刻みつけようとする。

 

 全てはこの世界にいるかも知れない、仲間達に自分達の存在を知らせるために。




~その後~

「アイツ等マジだ……」


「俺もそう思った」


「忠誠度天元突破じゃん……こりゃ下手な発言したら忠誠心下がるよ」


「……ヤヴァいね」


「あぁ」


「「はぁ……」」

二人支配者達はこれからの事を考えてため息を吐いた。


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EP8 星の守護者、宝物殿に行く

 ~ナザリック大墳墓 ゼオス私室~

 

 至高の42人にはそれぞれ部屋がある。基本的な構造は同じ様な物だが、それぞれが個人の趣味に合わせて改造……改装しており、中には入ったらいきなりゴーレムが襲ってくると言うおっかない部屋まである。

 

「はぁ…………物凄く疲れた。肉体的にはないが……精神的に」

 

 そう言いながら紅いベッドにダイビングする部屋の主ゼオス。

 

「ふぅ………さてと、これからどうするかね」

 

 

「子作りしましょう」

 

 

「そうする………訳ないだろうが」

 

 視線をベッドの横に座っていた番外席次に向けて、そう言うゼオス。

 

「全く……お前の頭はそれしかないのか?」

 

 

「あらっそんな事はないわよ。私だって他にも色々と考えているわ」

 

 

「例えば?」

 

 

「貴方の本気を見てみたいとか、貴方の好きな物とか嫌いな物は何かとか、どう言うプレイがいいのかとか」

 

 

「あのなぁ………まぁいい。一先ずは武器と鍵を取りに行くか」

 

 

「武器?鍵?」

 

 

「俺の武器と宝物庫の鍵だ。普段は使わないから此処の宝物殿に預けている……お前はこの部屋に居ろ」

 

 

「分かったわ」

 

 

「用があるならそこのベルを鳴らせ、メイドの誰かが来るだろうから」

 

 ゼオスはそう言うと、再び部屋を出て行った。

 

 外に出たゼオスはメッセージを使い、アインズに連絡を入れた。

 

『モモちゃん、ちょっといいか?』

 

 

『あぁ、ユウちゃんか。どうかした?』

 

 

『俺の武器と鍵を取りに行くんだけど、一緒に行かないか?』

 

 

『確かそれって宝物殿に………ぅ』

 

 

『ぁ~そういや、あそこにはモモちゃんのパンドラズ・アクターが居たんだったか……ぇ~と黒歴史?』

 

 

『ごはっ!』

 

 

『軍服に、敬礼に、ドイツ語かぁ………オフ会の時に実演してたっけ?』

 

 

『やめろっー!俺の黒歴史を言わないでくれぇ!』

 

 

『【Wenn es meines Gottes Wille(我が神の望みとあらば)】だったか』

 

 

『ノオォォォォォ!』

 

 

『じゃあ、そう言う訳で俺は宝物殿に行くから』

 

 

『待って!俺も行く!ユウちゃん、変な事をアイツに吹き込みそうで怖い!』

 

 

『やだなぁ………そんな事する訳ないじゃない………面白そうだなぁ(ボソッ』

 

 

『今なんてったの!?』

 

 

『さてね………じゃあ、また後で』

 

 ゼオスはメッセージを切ると、直ぐにリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの転移の力を使い宝物殿へ向かった。

 

 

 

 ~宝物殿前~

 

 ナザリックのプレイヤー達が集めた宝が納められている宝物殿。金貨の山の前にアインズが既に立っていた。

 

 この部屋はナザリックのどの部屋とも繋がっておらず、完全に独立した部屋になっている為、彼等の持つ指輪がなければ入れない。

 

「あぁ、来たか」

 

 

「御待たせ………じゃあ、行こうか」

 

 2人は金貨の山を通り過ぎ、黒い壁に向かい歩き出した。

 

「「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!」」

 

 2人がそう言うと、黒い壁に文字が浮かんだ。

 

「ぇ~と確か」

 

 

「【かくて汝全世界の栄光を我がものとし、暗きものは汝より離れ去るだろう】だろ?」

 

 ゼオスがそう言うと、黒い壁が消え道が開けた。2人は共にその道を進んでいく。

 

「此処に来るのは、魔剣と鍵を封印した時以来だったか」

 

 

「そうだったな……」

 

 ゼオスは楽しそうに進む中、アインズは何やら落ち込んでいる。

 

「未だ落ち込んでるのかよ、何時かは会わないと行けないんだし、お前のNPCだろう?」

 

 

「分かってはいるんだけど……唯……」

 

 道を抜けて広い空間に出た。その空間の奥には更に道が続いていた。そして彼等の前に軍服を着たドッぺルゲンガーが現れた。

 

「ようこそ、御出でいただきました」

 

 彼はそう言うと、姿勢を正して敬礼した。

 

「私の創造主たるモモンガ様!そしてそのご友人、ゼオス・アルドライグ様!」

 

 ゼオスは隣を見てみると、アインズが緑色の光に包まれているのを見た。

 

「おっお前も元気そうだな」

 

 

「はい、元気にさせて頂いております。それで此度はどう言うご用件で?」

 

 左胸に手を当てながら一礼した。

 

「俺の魔剣と宝物庫の鍵を取りに来たんだ、パンドラズ・アクター」

 

 

「おぉう!彼の世界を変えるワ~ルド・アイテムに匹敵するゼオス様の魔剣!そして無数の神級クラスの武器やアイテムが納められた宝物庫!その宝物庫に唯一アクセスできる鍵……どれもゼオス様の為だけに存在するアイテム!強大な力!ナザリックの秘宝の中でも1、2を争うアイテム……それを使う日が来たのですね」

 

 台詞を発する度にポーズを決めるパンドラズ・アクター。彼はアインズが作ったNPCであり、彼の言動、服装に至るまで全てアインズの設定である。

 

 アインズは幾度も強制的に精神が抑制されていた。それを見て、ゼオスは笑いを堪えていた。

 

「ククク……あぁ」

 

 

「そっそうだ、私の事はこれからアインズと呼ぶ様に。アインズ・ウール・ゴウンだ」

 

 

「おぉ……承知しました!私の創造主!ん~アインズ様!」

 

 再び精神が強制的に抑制させられたアインズ。

 

「じゃあ、パンドラズ・アクター。指輪を頼んだぞ」

 

 

「はっ!」

 

 ゼオスとアインズはこの先に進む為に、指輪を彼に預けた。

 

「行ってらっしゃいませ!アインズ様!ゼオス様!」

 

 再び敬礼、そしてアインズの精神もまた抑制された。

 

 

 

 

 

 

「ぁ~面白かった」

 

 

「そんな楽しまないでよ!こっちは精神抑制されまくりなんだから!」

 

 ゴーレムの安置された廊下を進みながら彼等は話を続けていた。

 

「あっペロロンチーノの………こっち茶釜、たっちさん」

 

 

「ウルベルトさんに、武人建御雷さん」

 

 彼等は並んでいるゴーレムを見ながらそう呟いた。

 

 此処に置かれたゴーレムは全て、去って行った至高の42人を模った物だ。ゴーレムに装備されているのは、彼等が引退の際にゼオスとアインズに預けて行った装備やアイテムだ。

 

 本人達は売却してもいいと言っていたが、2人は決してそれをする事はなかった。何故なら何時か彼等が戻ってくるとずっと信じていたからだ。

 

「1人でもいいから、こっちに来てればいいだけどな」

 

 ゴーレムを見上げながらそう言うアインズ。そんな姿を見て、ゼオスは彼の背を叩いた。

 

「いたっ!」

 

 

「何落ち込んでんだよ、さとっち!お前は1人じゃない、俺がいる。それにアルベドや他のNPCだっている。決して1人じゃない!」

 

 

「ユウちゃん……ありがとう」

 

 

「おうさ」

 

 そして再び、2人は奥へと進んでいく。

 

「NPCと言えば………そういやユウちゃんの」

 

 

「アリストテレスとなった際に、得た12体の僕達………NPCではなく、ユグドラシルに存在したモンスター達をキャプチャーして育てた」

 

 

「そういやレベル100で彼等だけで俺達全員より少し弱いくらいだったか。それを知った時、みんな驚いていたよね」

 

 

「1週間限定だったけど、俺をメインにしたイベントの時の守護役だったし」

 

 

「確かあのイベントに出る時の条件って」

 

 

「ワールドアイテム、二十の内5つ」

 

 

「あの時、皆の表情引き攣ってたっけ」

 

 昔の事を思い出し笑みを浮かべながら、彼等は再び奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 ~番外席次side~

 

 ―私は人間とエルフの間に産まれた………種族を越えた愛………と言う訳ではない。エルフの男が法国の切り札だった母だった女を強姦して私が出来た。母親から私を取り上げなかったから性格が歪んでいると最高執行機関の1人が言った。私にとってはどうでもいいことだけど………。

 

 毎日が詰まらなかった、殆ど神器の警護で日々を過ごしていた。それ以外はルビクキューで遊ぶくらいしかなかった………唯一の望みは私より強い男と子供を作ること………何故か?だって、私より強い男との子供よ?どれ程の強さを持っているか、興味あるじゃない。

 

 それに恋と言う物をしてみたかったのよね。六大神の残した文献で見た事があった……1人の姫と恋に落ちた騎士との物語。魔王に攫われた姫を助ける為に幾度も死地を越えて、魔王の城へ乗り込み、魔王を打倒した後に姫と結ばれた。

 

 在り来たりな物語であるけど、この物語は他の物と違ってやたらと細かく書かれていた。だからこそ、幼い頃の私はこの物語に引き込まれていた。修練が終わり、寝る前には必ず読んでいた。

 

 今でも、そのふっとした時に写本に手を伸ばすこともある。でもそれは幻想の中の話だ、何故なら私より強い存在なんて今まで居なかったもの。

 

 けど今は違う………私を一撃の元に吹き飛ばした男が現れた。ゼオス・アルドライグ、吸血鬼であり、最強の種族・アリストテレスだと言う。詳しくは分からないけど、骸骨……アインズとか言うマジック・キャスターが言っていた。星を護る者であり、最強最悪の存在だと。

 

 フフフ、彼に出会って数日、私はおかしい。例の物語の姫を私に、騎士にあの人を置き換え自然に頬が緩んでにやけてしまう。

 

 そして子供だけ作ってくれればいいと思っていた筈なのに、今はゼオスの事を知りたい、共に居たい、触れ合いたいと考えている。これが恋なのかしら?

 

 これから退屈はなくなりそうね。ウフフフフフフフ―




~宝物殿~

―ゾクッ―


「!?(キョロ、キョロ)」


「どうしたの、ユウちゃん?」


「何か……何て言っていいか。変な感じが」


「?」


『くふふふふっ……アインズ様との御子は男の子と女の子どちらになるでしょうか?ふふふ』


『アインズ様の覇気でまだ拙いのが収まらんでありんすぅ』


―ゾクッ―

「!!?」


「どうした、さとっち?」


「俺も変な気配が……」

色んな意味で凄い女性に惚れられているナザリックの2柱であった。


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EP9 星の守護者、冒険者になる

 ~エ・ランテル~

 

 堅牢な三重の城壁に守られた城塞都市エ・ランテル、この街にはある組合がある。冒険者組合だ。

 

 まず、冒険者から説明しよう。冒険者とはこの世界の職業の1つ、一言で言えば「対モンスター用の傭兵」だ。仕事内容は基本的には厄介なモンスターの退治を請け負う事だが、秘境の探索なども行う。

 

 冒険者組合は、モンスター討伐の依頼の仲介などを行う組織だ。その組合の1つがこのエ・ランテルに在る。

 

 そして、冒険者になるには組合に登録する必要がある。冒険者は誰でもなる事ができる。そして登録時に(カッパー)のプレートを身分証として貰う。プレートとは簡単に言えば階級の様な物であり、最低位が(カッパー)、次に(アイアン)(シルバー)(ゴールド)白金(プラチナ)、ミスリル、オリハルコン、そしてアダマンタイトがある。

 

 そして、つい先程、冒険者の登録を行い(カッパー)のプレートを首から掛けている4人がいた。4人は堂々と、宿屋に入って行く。

 

 フルプレートの大男が入って来たのを見て、この宿屋にいる冒険者達が彼に視線を集めたのは言うまでもない。

 

「宿だな……相部屋で1日10銅貨、「4人部屋を希望したい。食事は不要だ」」

 

 店の主が視線を上げ、大男のプレートを見る。

 

「お前さん、(カッパー)のプレートだろう。だったら此処は「先程、組合で登録してきたばかりなんでな」……1日14銅貨、前払いだ」

 

 それを聞き、店の主は前の机を叩きそう言った。

 

「それで構わない」

 

 大男はそう言うと、14枚の銅貨取り出し、店主の前に出した。

 

「部屋は2階の奥だ」

 

 大男が部屋へと行こうとすると、柄の悪いの冒険者が通る場所に足を出す。完全に嫌がらせだ。大男は溜息を吐きと、それにわざと引っかかる。

 

「いってぇ!どうしてくれるんだよ、ぁあ!」

 

 男の冒険者は立ち上がると大男に絡み始めた。そして彼の後ろにいた、2人の女性に目を付ける。

 

「おっ、えらくいい女じゃねぇか。こうなりゃそっちの姉ちゃん達に手当てをして貰わないとな」

 

 厭らしい笑みを浮かべてそう言う冒険者。

 

「「くっククク……アハハハハ」」

 

 その冒険者の態度に笑いを上げる、大男と黒い髪の男。

 

「いや、すまない。雑魚に相応しい台詞だと思ってね」

 

 

「お約束だな、こりゃ」

 

 

「なんだと!テメェ!」

 

 

「モモちゃん……どうする?」

 

 

「この程度、遊びにもならないな」

 

 大男はそう言うと、目の前の冒険者の首を掴み放り投げた。

 

『えっ?』

 

 

「で?次は誰が相手だ、何なら纏めてでm『おぎゃーーー!!』」

 

 

「「?」」

 

 大男と仮面を付け白いマントを羽織った黒い髪の男はその悲鳴に首を傾げた。

 

「ちょっと!ちょっと!」

 

 赤い髪の女性が何やら怒りながら此方に近付いてきた。

 

 黒髪の男は先程まで女性が居たであろう机を見た。大男が投げ飛ばした冒険者により潰れており、割れた瓶と中身であろう青い液体が床に落ちていた。

 

 赤い髪の女性によると、あの青い液体はポーションらしい。節約に節約を重ねてやっと買えた物の様だ。

 

「弁償しなさいよ!」

 

 

「なら、そっちの連中に言ったらどうだ?」

 

 大男は絡んできた冒険者達の方を見た。

 

「金貨1枚と銀貨10枚よ、何時も、飲んだくれてるんだからそんなお金在る訳ないじゃない」

 

 女性にそう言われると、男の冒険者達は気まずそうな顔をしている。

 

「アンタさぁ、御大層なフルプレートの鎧を着てるんだから治癒のポーションくらい持ってるんでしょ?現品でいいからさ」

 

 

「持ってはいるが」

 

 大男は黒髪の男の方を見る。黒髪の男は「それは拙いでしょ」と言う雰囲気を出していた。

 

「この……(ボソッ」

 

 ポーションを要求する女性の後ろで剣を引き抜こうとする黒髪の女性。

 

「わっ分かった!ポーションだな!」

 

 大男は赤いポーションを取り出すと彼女に渡した。

 

「これで問題ないな?」

 

 

「赤いポーション?……えぇ、まぁ一先ずは」

 

 一先ず事を解決した大男たちは早々と部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 ~宿屋の部屋~

 

 部屋に入った2人の男は息を吐いていた。

 

「ですが、この様な場所に至高の御方々が滞在されるなど」

 

 

「そう言うなナーベ………それにしてもあれが冒険者か、組合に管理され、モンスターを駆逐する毎日、予想以上に夢のない仕事だな」

 

 ヘルムが光りだし、現れた顔は骸骨………アインズ・ウール・ゴウンの物だった。

 

「そう言うなよ、モモちゃん」

 

 黒髪の男性の髪の色が銀髪変わり、仮面を取った。最強のプレイヤー、ゼオス・アルドライグだ。

 

「ねぇ、これ、もうとってもいいの?」

 

 黒髪と半分白い髪の仮面を付けた女性がそう聞く。

 

「あぁ、構わないぞ。番外……コホン、ベルンカステル」

 

 

「なんか、慣れないわね。偽名で呼ばれるの」

 

 

「慣れて貰わないと困る、此処に居る間はお前は冒険者・ベルンカステル。俺は冒険者・ユウ、アインズがモモン、ナーベラル・ガンマがナーベだ」

 

 仮面を外した番外席次はベットに腰掛ける。

 

「アインズ様、ゼオス様、あの人間はどうしましょう?」

 

 ナーベが言ったのは先程ポーションを渡した女性の事だろう。アインズは放置でいいと判断した。

 

「それよりもナーベ、此処に居る間はモモンだ」

 

 

「承知しました……モモンさm…-ん」

 

 

「モモンさーんか………少しマヌケた感じだがいいだろう」

 

 

「じゃあ、ナーベ。俺の事も呼んでみて」

 

 

「ゼオ……コホン、ユウさーん」

 

 

「うん……まぁいいだろう。それよりも問題は………モモちゃん」

 

 

「えっ?」

 

 ゼオスは笑みを浮かべてアインズの方を見た。

 

「なんで、ポーションを渡しちゃうかな?」

 

 

「あっあの時は」

 

 

「そうだな……あの場を収めるには金を渡すか、ポーション渡すかしかなかったろう。でもだ……さっきの女がいた場所に散らばっていたのは青いポーションだった。完全に俺達の世界の物とは別物だ、創作者(アイテム・メーカー)の特性を活かして鑑定してみたけど俺達の物より劣る。

 

 俺と同じ様に鑑定のスキルや魔法を使える奴に見つかったら面倒だ」

 

 

「そうか……すまん」

 

 

「まっ……あのままじゃ、血の海になってたから仕方ないと思うけど、これからは気を付けようぜ」

 

 

「あぁ」

 

 

「さて………金がないな」

 

 

「ないな」

 

 アインズ……モモンがポーチから金を取り出す。銀貨数枚、銅貨数枚しかない。これが現在の彼等の所持金である。

 

「まずはコネクションを作るより」

 

 

「仕事だな!仕事を探すぞ!」

 

 そう意気込むゼオスとアインズ、改めユウとモモン。

 

「仕事はいいけど依頼書は読めるの?」

 

 

「「えっ……」」

 

 番外席次……改めベルンカステルがそう言う。2人はそう聞くと、今まで街で見た文字を思い出してみた。全く見た事ない文字だ。

 

「重要な問題だな」

 

 

「あぁ」

 

 

「後々、解決していくか」

 

 

「そうだな」

 

2人は基本的な事を言われて初めて気付き、少し反省した。

 

「さてと………じゃあ、モモちゃん。この街の事は任せるよ」

 

 

「何か在れば連絡しよう。気を付けてな」

 

 

「おう、じゃあ、行くぞ。番外……じゃなかったベルンカステル」

 

 

「えぇ」

 

 ゼオスは番外席次と共に部屋を出て行った。

 

「モモンさーん、ぜ……ユウさーんはどちらに?」

 

 

「彼等は私達とは暫くは別行動だ」

 

 

「そうなのですか?」

 

 

「あぁ、王都へ向かった」

 

 

「そちらの方はセバス様とソリュシャンが向かっている筈では?」

 

 

「あぁ、セバス達は貴族方面から、ゼオス達は冒険者方面から情報を取る事にした」

 

 

「しかし、至高の御方が情報収集など……その様な些事は下々の仕事です!」

 

 ナーベ………ナーベラル・ガンマ、人間の姿はしているが実は二重の影(ドッペルゲンガー)であり、ナザリック地下大墳墓の戦闘メイド「プレアデス」の1人だ。

 

「では聞くが、人間の事をどう思う?」

 

 

「何の価値もないゴミです」

 

 

「その考えを捨てろとは言わんが、態度には出すな。問題になる」

 

 

「はい」

 

 

「お前達は人間とのコミュニケーションが真面にできないだろう?ならばゼオスが適役だ、番外席次が居るとは言え、彼ならなんとかするだろう」

 

 

「?」

 

 

「昔、ゼオスとペロロンチーノさん、茶釜さん、たっちさん、ウルベルトさんが出掛けた事があったんだ」

 

 

「そう言えば、ペロロンチーノ様とぶくぶく茶釜様、たっち・みー様とウルベルト様は仲が………私達が仕事をしている時もよく喧嘩なさっていました」

 

 ナーベの言葉にアインズはモモンガとしてギルドの仲間と共に冒険していた日の事を思い出していた。ぶくぶく茶釜とペロロンチーノはリアルでは姉と弟であるが、常日頃喧嘩していた。とは言う物の、最終的には姉である茶釜の「黙れ」の一言で終了する。

 

 たっち・みーとウルベルトは色々な事があり、日々喧嘩がしていた。

 

「ナザリックであれば観察している所だったがな……その出掛けた時はそう言う訳にはいかなかった。私が止めに入ったものの、両側で喧嘩されては私もどうしようもなかった。

 

 そんな時、2組を止めたのがゼオスだった。ククク」

 

 その時の事を思い出して、笑いが漏れるモモン。だが直ぐに、緑色の光に包まれ感情が抑制された。

 

「チッ……そう言う訳だ。何せ、彼はユグドラシルでも最強のプレイヤーでもある。それに彼は頭がいい、万が一にプレイヤーと接触する事が在り、敵ならば直ぐに撤退するだろう」

 

 ナザリックの中でも最もゼオスを信頼しているのはモモンガであり、モモンガを最も信頼しているのもゼオスである。彼等は幼馴染であり、ゲーム内でも共に戦った仲間だ。アイコンタクトで大概の事は分かり合える仲だ。ゼオスが何を第一に考えるか、彼には分かっていた。

 

「この部屋をキープしておく為にも、我々も金を稼ぐぞ!」

 

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 ~エ・ランテル外~

 

 ゼオスと番外席次……もといユウとベルンカステルはエ・ランテルを出てリ・エスティーゼ王国へと向かっていた。因みに、仮面は外している。

 

「………フフフ」

 

 

「どうかしたか?」

 

 

「こうやって誰かと歩くのも悪くないわね」

 

 

「そうか」

 

 

「でも良かったの、骸骨の人を置いてきて?」

 

 

「問題ない……モモちゃん……アインズは強い。今は制限が付いているとは言え、お前よりも強い」

 

 

「ふぅん……これでも貴方のペット達と戦って少しは強くなった筈だけど………それにしても、世界は広いわね。あんなにも強い連中がうじゃうじゃいるんなんて本当に面白いわ」

 

 彼女はナザリックでゼオスの僕達と戦った時の事を思い出した。自分の力が全くと言って、通用しない相手がゼオス以外にいるなど知らなかった彼女は歓喜した。

 

「世界は広いぞ………そうだな。全ての目的を果たした後に、世界を旅するのも悪くないな」

 

 

(そう言えば、誰かと2人で旅するの何て始めてね。何でかしら、頬が緩む)

 

 

「それはそうと、これから先、お前を知る輩がいないとも限らない。認識阻害アイテム、暗殺者の衣(アサシン・ローブ)が着けている限り誰もお前が番外席次とは分からない。だが知り合いが居れば行動・仕草からお前を疑う輩も出て来るだろう」

 

 

「でも私を知っているのなんて、漆黒聖典と最高執行官くらいのものよ?彼等があの国に居るとは思えないわ」

 

 

「万が一と言う場合もあるんでな」

 

 

「まぁいいわ。また楽しませてくれるんでしょう?」

 

 

「協力してくれるならな。また僕共と遊ばせてやるさ」

 

 彼等はそんな話をしながら、王都へ向かうのであった。




と言う訳で、アインズ様と別れて別行動になりました。

偽名?中の人と、性格の事を考えて、ふっと出てきたキャラクターの名前です。


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EP10 星の守護者、道中で家を建てる

 エ・ランテルで冒険者登録を終えたユウ(ゼオス)ベルンカステル(番外席次)はモモンとナーベと別れ王都へと向かっていた。

 

「………」

 

 

「………」

 

 2人とも無言だ。全くと言っていい程、会話がない。ベルンカステルが話掛けようとするが、ユウの顔を見た途端に顔を茹で蛸の様に赤くして黙ってしまった。

 

(こっこういう時、何を話せばいいの?初めて会った時は子供を作ることで頭が一杯だったけど……今考えると凄く恥ずかしいことじゃ………)

 

 恋などしたことのなく、初めて自分に勝利し、心を射止めた相手と2人きりで旅だ。

 

 今までは勢いに任せていたが、落ち着いて考えてみると初めて羞恥を覚えたベルンカステル(番外席次)

 

「ねっ……ねぇ」

 

 

「ん?」

 

 

「いっ……いい天気ね?」

 

 やっと出てきたのが、定番な言葉である。これでも彼女なりに頑張ったのだろう。ユウはその言葉に空を見上げてみる、そこには青空……ではなく、曇り空が広がっていた。

 

「うん……まぁ、そこそこの天気だな」

 

 ベルンカステルが必死に言ったのが分かったのか、空気を読んだのか分からないが彼はそう返答した。

 

「………」

 

 再び黙るベルンカステル。ユウはと言うと黙ったまま、彼女を見ている。

 

 見られている本人は既に限界なのか、俯いてしまった。

 

(まるで借りて来た猫みたいに大人しい………何時もこうならいいんだが………)

 

 等と考えているユウ。ふっと辺りを見てみると、薄暗くなってきていた。

 

「段々と日も暮れて来たな………この辺りで宿……っと言ってもある訳ないか」

 

 

「そっそうね………野宿でも良いわよ」

 

 

「俺もそれでいいが………流石に女のお前を野宿させる訳にもな……頼んでみるか」

 

 ユウはそう言うと、地面に手を着いた。すると黒かった髪が元の銀色に戻った。

 

 すると周囲に幾つ物、光の球が出現し彼の周りを浮遊し始めた。彼は何かを言っているが、その言葉はベルンカステル(番外席次)には理解できない言語だった。

 

 少しすると、ゼオスの前の地面に何本かの木………と言うか木材が生えだした。そして普通では在り得ない成長速度で大きくなり、組み合わさり、家の形になった。

 

「ふぅ」

 

 

「…………何したの?」

 

 

俺の城(千年城)を出そうかと思ったが、アレを出すと邪魔だし、目立つからな。なんで精霊達に頼んで木で家を作って貰ったんだ」

 

 

「精霊………」

 

 

「ほれっ……さっさと入るぞ」

 

 

「あっ……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 ~家の中~

 

「ほらっ、出来たぞ」

 

 

「料理出来たんだ………」

 

 番外席次が目の前に出されたゼオスの手料理を見てそう呟いた。

 

「これくらいは簡単だろ?」

 

 

「………」←料理できない

 

 

「冷めない内に喰え………」

 

 

「うん」

 

 こうして2人で食事をする事になった。

 

 

 

 

 

 

 食事を終えると、装備を確認しているゼオス、番外席次はその横でルビクキューをしている。

 

「これは………ダメ、威力が在り過ぎる。此奴は世界を滅ぼしかねないから仕舞って………」

 

 

「ねぇ…………その武器、凄く怖いんだけど」

 

 

「こりゃ失礼…………これは死の概念を形にした様な物で危険だから、仕舞うと」

 

 そう言うと、禍々しい大剣を空間の歪みに仕舞ったゼオス。

 

「そっちの赤い剣……それが一番怖い」

 

 

「あぁ………これは俺の魔剣だ。まぁ………確かに此奴が一番危険かもな」

 

 彼はそう言うと、手を振るうその魔剣は消えた。一通りの作業が終わったのか、手を止めて天井を仰ぐ。

 

「ふぅ………終わりと」

 

 

「ねぇ………ゼオス」

 

 

「なんだ?」

 

 

「ゼオスは凄い力を持ってるんでしょう?」

 

 

「まぁ……他の奴からすればそうだろうな」

 

 

「なのに、なんでその力で思うがままにしないの?貴方ならできるでしょう?」

 

 

「確かに出来る。その気になれば、この世界の総てを壊す事もできるだろうな…………でもそれをする理由はないからな」

 

 

「理由?」

 

 

「確かに俺の力を用いれば世界を生かすも殺すも出来る。でも、理由もなく奪ったり、殺したりするのは………駄目だ」

 

 そう言ったゼオスが怒りの表情になり、歯が折れるのでないかと言うくらい歯を食いしばる。それを見て、番外席次はビクッと身体を震わせた。

 

「すまん……………まぁ、そう言う訳だ。お前も理由もなく、簡単に命を奪う様な事はするな」

 

 ゼオスはそれだけ言うと、部屋から出て行った。

 

「あの人……あんな顔もするのね………」

 

 彼女は先程のゼオスの表情を見てそう呟く。

 

「アリストテレス………星の守護者…………」

 

 未知の種族……存在だと思っていた彼女はこれまで何処か、彼が遠い存在に感じていた。だが普通に笑い、言葉を交わし、怒りを顕わにする。その様子に、まるで人間の様だと思った。

 

 

 

 

 

 

 ~屋根の上~

 

「理由もなく奪われる………」

 

 2人の男女の姿………リアルの両親と弟と過ごした日々を思い出していた。

 

 楽しかった時の事、イタズラして怒られた時の事…………そして血塗れになり倒れる両親の姿が浮かぶ。

 

「父さん………母さん……」

 

 空に浮かぶ月を見上げながら彼はそう呟いた。その瞳からは雫が流れ出していたが、それを見た者は誰もいなかった。




と言う訳で、ちょっと乙女な番外ちゃんと主人公の過去に少し触れました。


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EP11 星の守護者、見てはいけない物を見る

~朝~

 

「………はい?」

 

ゼオスは朝起きると、横を見た。可愛い少女が眠っている………そして思い出していた。用意したベッドで寝ていた………1人でだ。

 

「俺は確かに1人で寝てた筈だ…………なのに何故、番外席次(此奴)が此処で寝てるんだ?多分、あそこで残骸になっているドアから入ってきたんだろうけど」

 

そう言うと、ゼオスは木片と化しているドアを見た。

 

「こうしてれば可愛いんだけどな」

 

そう言ってゼオスは番外席次の頬を撫でる。

 

「フム…………」

 

―ぷにっ、ぷにっ、みょ~ん―

 

「存外に楽しいかも………」

 

彼女の頬を突いたり、引っ張りして、その柔かさを楽しんでいるゼオス。

 

「………これって端から見たら変な奴だな。さて、朝飯の用意をするか」

 

彼はそう言うと、番外席次に布団を掛け直すと部屋を出て行った。ちゃんと扉を直してだ。

 

「ッ#%!#~~~~」←起きてた

 

―可愛いって言われた、可愛いって……可愛いって、可愛いって―

 

産まれて初めて(?)、男に可愛いと言われた故に悶絶している番外席次。この数秒間で、ゼオスの「可愛い」と言う言葉が幾度もリピート再生されている。

 

「えっ……えへへ」

 

自然と頬がだらしなく緩んでしまう番外席次。

 

「可愛い……可愛い……うふふっ」

 

 

 

 

 

 

 

~数十分後~

 

「可愛い……可愛い」←未だ、リピート再生中。

 

―コンッ、コンッ―

 

「起きてるか?」

 

 

「起きてるわ……」←無表情(若干、口元が弛んでる)

 

 

「ん?何か、口が弛んで「ないわ」しかし「ないから」えっ「ない………いいわね?」はい」

 

彼女の圧力によりゼオスはそれ以上、追及しなかった。

 

「とっ取り敢えず、朝飯が出来た………起きたならこっちへ来い」

 

ゼオスはそれだけ言うと、出て行った。

 

「あっ……危なかった。あんなだらしない顔見られたら、恥ずかしくて死んじゃう………」

 

緊張が解けたからか、へなへなと力が抜けた様にベッドに倒れ込む番外席次。

 

「…………誰かと一緒に居るのって………楽しいのね、ふふふ」

 

 

 

 

 

 

 

~朝食後~

 

朝食を終えた2人は、家を出した時と同じく精霊達に頼み家を片付け、再び王都へ向け足を進めたのであった。

 

「雨か……」

 

 

「雨ね」

 

再び出発したのだが、途中で雨が降って来た為、大きな木の下で雨宿りしていた2人。

 

「まぁ……雨なら仕方ないな」

 

そう言うと、ユウは太い木の根に腰かけた。ベルンカステルもその横に腰掛ける。

 

「別に隣に来なくていいんじゃないか?」

 

 

「べっ別にいいでしょ、此処が座り易そうだったからよ」

 

 

「そうか……」

 

相変わらず、会話が続かない。ユウは別に会話することがないからだが、ベルンカステルは話したくても何を話せばいいのか分からないのである。

 

「取り敢えず、様子を見るか………雨具を出して、直ぐに仕舞う事になるのは御免だし」

 

そう言うと木にもたれ掛かり、周りの風景を見だした。

 

「………」

 

 

「………」

 

そして再び、沈黙が続く。

 

「それでベルンカステル………先程からもぞっもぞっとしているが、トイレならそのh「フン!」」

 

ベルンカステルがユウを殴り、木にめり込ませた。彼女の行動は当然だろう………どうやらユウにはデリカシーがない様だ。

 

「痛くはなかったが、俺じゃなきゃ死んでるぞ?」

 

 

「……私は悪くないわ」

 

 

「よっ……と」

 

木から出ると、服についた埃を払うユウ。

 

「ねぇ………誰か、近付いて来てるけど?」

 

 

「あぁ……みたいだな」

 

人外レベルの彼等の耳に雨音とは違う音を拾った。

 

「馬車の音だな」

 

これからどうするかと考えるユウ………さて、彼はどう動くのだろう?

 

 

 

 

 

 

―俺とベルンカステルはやって来た馬車に乗り、近くの村へとやって来た。

 

乗せてくれたのは、村の家族だ。夫婦と子供1人の家族で、商業をしている様で、荷を運ぶついでに王都へ出かけた帰りだったそうだ。中々、人の良い者達だ。他の村の者達も、良い人達で余所者の俺達にも普通に迎えてくれた。

 

何でもこの村では農業が盛んで、様々な野菜等を王都へ出荷しているらしい。

 

村の中は歩いても構わないらしいが、西側には立ち入り禁止だそうだ。まぁ入るなと言われてる場所に無理に入る事はしないがな。

 

だが…………妙な視線が幾つかある。普通の人間ではない、冒険者とか、そう言った力を持った存在だろう。唯、弱い。多分、瞬殺できるくらいだ。後、村の外に幾つか力を感じるな。そっちの方が強いな、俺やベルンカステルと比べると弱いが………雨を凌げる部屋を用意してくれた家族には恩があるし………少し動いてみるか―

 

 

 

 

 

 

~深夜~

 

「眠いんだけど」

 

 

「だったら部屋で寝てろ。俺は用があるから出るだけだ」

 

 

「だって貴方、戦うつもりでしょう?だったら傍で見たいもの(私も戦いたいけど)」

 

雨が止み、星が輝いている夜空の下でそう言い合う2人。2人は村の外にある力を持つ存在の元へ向かう事にしていた。理由は、この村に危険を齎す存在ならば排除する為だ。

 

そして村の隣にある森へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……魔剣キリネイラム、お前に私の身体は渡さんぞ!例えお前が一国を滅ぼす魔剣だとしても、神に仕えし我が聖なる力で抑え込んでくれる!」

 

と金髪の女性が剣に向かい言っていた。

 

それを見て固まるユウ。そして咄嗟にベルンカステルを引っ張り木の陰に隠れた。

 

「ねぇ……アレ、何してるの?剣に向かって何か言ってるけど………乗っ取るとか、魔剣とか言ってるんだけど………特に剣からそんな危険な力は感じないわ」

 

 

「確かに……(アレってもしかして)」

 

 

「ぐぅ………凄まじい力だ。だが私は決して屈しはしない!神に与えらし聖なる指輪よ!私にちか……ら………を」

 

 

「「あっ」」

 

ユウと女性の目が合った…………そして世界が停止した。

 

時間にして数秒……だがそれが数十分、数時間に感じた。

 

「(この世界で中二病を見ることになるとは……そっとしておこう)………ごっ………ごゆっくり」

 

 

「ねぇ、アレ、何してるのよ?」

 

 

「ほっほら、行くぞ。人を指差さない」

 

ベルンカステルを連れて去ろうとするユウ。チラッと先程の女性の方を見てみる。

 

「(顔真っ赤だ。羞恥だろうな)いやあの………本当にすいません。見るつもりはなかったんです、直ぐ忘れるんで安心して下さい」

 

 

「ぅ………ぃ………」

 

 

「剣に向かって独り言って………変な人」

 

 

「だから指差すな………ほらっ!あの人、顔が真っ赤だ!羞恥で死にそうな顔してるから!」

 

女性は顔だけでなく、耳も真っ赤にしておりぷるっぷるっと震えている。

 

「ぃ………いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

この日、森に女性の悲鳴が響いた。




と言う訳で例のあの人と邂逅しました(気まずい空気で)。

あの人は既に死にそうですが


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EP12 星の守護者、【蒼の薔薇】と出会う

 ~森の中~

 

「もっもう生きていけない!」

 

 

「おっ落ち着け!首を斬ろうとするな!」

 

 

「離してくれ!あんな所を、見ず知らずの他人に見られたんだ!もぅ死ぬしかない!」

 

 剣に話しかけていた女性は顔を真っ赤にして、持っていた剣で首を掻っ斬ろうとしているので、それを止める為にユウは彼女を羽交い絞めにしていた。

 

「気持ちは分からんでもないが死ぬな!これで死なれたら、後味が悪すぎるわ!」

 

 

「頼む!死なせてくれ!仲間にも隠してたんだ!それを見ず知らずの他人に見られるなんて………もう生きていけない!」

 

 女性は恥ずかしい所を見ず知らずの者に見られた事で、かなり混乱している様だ。絵に描いた様に目がグルグルと回っている。隙をついて、剣を叩き落とした。

 

「おい、何だ!?何の騒ぎだ?!」

 

 

「何を騒いでいる、ラキュース」

 

 何処からか3人の女性がやって来た。

 

(格好からして、此奴等、冒険者か。それも装備からして上級……プレートはアダマンタイトかよ………この状況、どうしたものか)

 

 

「うぅ………」

 

 ユウはふっと今の状況を第三者視点で見てみた。

 

 ユウ()が女冒険者を羽交い絞めにしている………つまり襲っている様にしか見えないのである。

 

「アレ?これって(世間体が)ヤバいんじゃ?」

 

 

「テメェ!うち等のリーダーに何してやがる?!」

 

 大男と見間違える程の女性が巨大な刺突戦鎚(ウォーピック)を構えて今にも襲い掛かろうとしている。

 

「ちょっと待て!アンタ等、勘違いしているから!」

 

 

「どう見ても、女を襲っている様にしか見えんが?」

 

 

「俺も端から見たらそう思うけどね!違うからな!ベルンカステル、せt………」

 

 ベルンカステルに誤解を解く様に頼む為に、彼女の方を向くが……。

 

『自分以外の女を襲うなんて………フフフ』と言う、怒りを含んだ目で笑っている。しかも鎌を構えて襲い掛かろうとする。

 

「…………自分で何とかするしかないパターンですね、分かります。はぁ」

 

 援護どころかベルンカステルが敵に回ってしまった。

 

「なんで、こうも、話を聞かない奴等ばっかりなんだよ………」

 

 

「話はお前を捕縛してから聞かせて貰おう。安心しろ、加減はしてやる」

 

 仮面を付けた冒険者を含めた、女性冒険者達はやる気満々らしい。

 

「不動金縛りの術!」

 

 

「どりゃあぁぁぁぁぁ!」

 

 

クリスタル・ダガー(水晶の短剣)!」

 

 まず、混乱している女性の仲間が襲い掛かって来た。

 

「ふふふ…………ウフフフッ」

 

 続いて目の笑っていない笑みを浮かべながら、ユウに接近するベルンカステル。

 

 襲われている当の本人は何でこんな事にと言う顔をしており、周りの状況を確認した。

 

「(右からベルンカステル………左から魔法、大きい金槌の二段攻撃。しかも魔法………いや忍術か。忍術で拘束されてる。まぁ簡単に解けるけど)

 

 まずは話を聞けっての」

 

 ユウの眼が黒から、紅へと染まった。

 

 ―我が意志は時すら支配する(ザ・ワールド)

 

 その瞬間、風も、落ち葉も、小動物も、人間も、世界の全てが静止してしまった。

 

「これでよし」

 

 その制止した世界の中で唯一動いている存在がいた、時間を停止させた張本人であるユウだ。

 

 我が意志は時すらも支配する(ザ・ワールド)………アリストテレスの圧倒的な力で決して止める事のできない時間を支配する能力だ。時間の逆行・停止・加速を行える。

 

 ユグドラシルの魔法に時間停止(タイム・ストップ)と言う魔法があるが、この魔法は発動中はダメージを与える魔法が使えなかったり、時間対策のアイテムなどを使う事により防ぐことができたり、使用範囲などに幾らかの制限がある。

 

 だが彼の使う我が意志は時すらも支配する(ザ・ワールド)は違う。アリストテレスが使うだけあって、制限は一切ない。対策も同じ時間停止を使う以外は方法がないのだ。

 

「【アンドロメダの鎖】よ」

 

 ポケットの中から掌に乗るくらい小さな白い鎖を取り出すと、彼女達に向かって放り投げた。鎖は普通の鎖サイズへと変化すると、意志を持つかの様に動きだし、彼女達を拘束した。

 

「これでよし………そして、時は動き出す」

 

 制止していた時間が動き始めた。

 

「「なっ?!」」

 

 

「なんだこりゃ!?」

 

 

「何時の間に?!」

 

 

「……壊れない」

 

 女性陣は何時の間にか拘束された事に驚き、鎖を破壊しようと力を入れるが全く壊れる気配がない。

 

「そいつは対女性用拘束具・【アンドロメダの鎖】だ。種族・レベルに関係なく、女を拘束し無効化するアイテムだ………話を聞け」

 

 

「なに?」

 

 ユウの言葉に仮面の冒険者が首を傾げる。

 

「俺は女を無理矢理抱くほど、飢えちゃいない。それに趣味じゃない」

 

 

「じゃあ、なんでラキュースにあんな事を?」

 

 

「えぇ~と………それは……その」

 

 

「みっ皆!落ち着いてくれ!この人は……そっそう!私を助けてくれたんだ!」

 

 

「「「助けた?」」」

 

 漸く落ち着きを取り戻したラキュースと呼ばれる女性がそう言うと、他の3人は首を傾げた。彼女達は自分のリーダーが助けを必要とする程の状況など予想が付かなかったからだ。

 

「そっそれは……」

 

 ラキュースは顔を真っ赤にして震えている。

 

「恐らく、剣の持つ力に飲まれそうになったんだろう。「でも、そんなこt」ちょっと黙ってようか」

 

 ユウの説明にベルンカステルが何かを言おうとするが、直ぐに止めた。

 

「もがっもがっ」

 

 

「色々と話がややこしくなるから黙ってろ。後で、パフェを食わせてやるから」

 

 

「それってナザリックで食べた、甘くて、美味しい奴?」

 

 

「そうそう」

 

 ベルンカステルは普段無表情で、ユウの事が関わると頬が緩む。それ以外は興味がないのか、表情が動く事はない。だと言うのに、パフェと聞いた瞬間、目を輝かせ、ユウの指示通りに黙った。

 

「コホン………彼女が剣の力が暴走して、自分の首を掻っ切ろうとしてたから止めたんだ(これで納得してくれたらいいんだけど)」

 

 

「そっその通りだ!この方は私の命を救って下さったんだ!自身を抑え込んでいる私の存在が邪魔になったんだろう………うん、きっとそうだ!(頼む!ごまかされてくれ!)」

 

 これ以上、ややこしくなるのが嫌なのでこれで終わってくれと思っているユウ、そして仲間にバレそうになっているこの世界ではないと思っていた病(中二病)を何とか誤魔化したいラキュース。

 

「しかし魔剣キリネイラムにはそんな力はなかった筈だが?」

 

 仮面の冒険者がそう言う。そう言われてラキュースの視線が誰も居ない方向へと逸れて行った。

 

「まっ………まぁ、さぞ名の在る魔剣だろうけど、知られざる事もあると在るんじゃないかな……うん。きっと在ると思うよ?」

 

 

「フム………」

 

 どうやら仮面の冒険者は納得したのか、黙ってしまった。

 

 ユウは彼女達が抵抗しないと感じた様で、指を鳴らす。すると彼女達を拘束している鎖は解けて、小さくなると彼の手へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「先程は本当に失礼した。仲間を助けて貰ったと言うのに、無礼を働いてしまった。紹介が遅れた、私の名はイビルアイ、そっちのデカいのが、ガガーラン、双子がティアとティナだ」

 

 

「そんで、アンタが助けてくれたのが、アタシ等【蒼の薔薇】のリーダー、ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラだ」

 

 

「いや、まぁ……勘違いは誰でもありますし………俺はユウ、そっちはベルンカステル」

 

 

「見た所、冒険者………それもかけ出しか」

 

 

「あぁ、昨日、エ・ランテルで冒険者登録をしたばかりでね。

 

(取り敢えず、収まってよかった。後は適当に別れよう、じゃないと余計に面倒になりそうだ)」

 

 早々にこの場から離れたかったユウ。ベルンカステルは未だ喋らない様にしているのか、口を押えている。

 

「おっとそろそろ戻らないと」

 

 

「戻る?それはあそこの村にか?」

 

 

「あぁ、昼間にあそこの村に住む商人の家族に会ってな。雨宿りしていた俺達に部屋を提供してくれたんだ」

 

 ユウがそう言うと、ラキュース達が神妙な顔をする。

 

「あの村で何か怪しい物は見ませんでしか?」

 

 

「特に見ていない………そう言えば西側は立ち入り禁止だと言われた」

 

 

「西側か……」

 

 

「………あの村に何かあるのか?」

 

 ユウがラキュースの問いが気になってそう聞いてみたのだが、彼女等は顔を見合わせている。

 

「ラキュースの恩人だ……言わない訳にはいかないか」

 

 

「あそこの村はある組織が運営している」

 

 

「薬の生産場だ」

 

 イビルアイがそう言うと、忍者の双子がそう言った。

 

「薬?」

 

 

「ライラの粉末………別命・黒粉。「副作用がない」と言う麻薬だ………その原料が生産されている場所の1つがあの村だ」

 

 ラキュースがそう言った瞬間、全てを押し潰すかの様な圧倒的な【何か】がこの場を支配した。

 

「「「「「ッ!!?」」」」」

 

 ラキュース達はその圧倒的な【何か】の発生源であるユウを見た。

 

 彼の全身から紅いオーラが溢れ、目は虹色に染まり、彼の足元の地面がひび割れていた。

 

 ラキュース達は唾を飲んだ。ユウと言う冒険者は(カッパー)のプレートだ………だが、どうだ。目の前にいる男が放つ力は(カッパー)の冒険者が放っていい力ではない。オリハルコン……いや自分達と同じアダマンタイト級の力だと、彼女達は肌で感じていた。

 

「ねぇ………顔、怖いわよ」

 

 

「…………あぁ、嫌な事を思い出してな」

 

 ベルンカステルの言葉により、落ち着きを取り戻したのか力が消えた。

 

「失礼………それで、村人達はそれに協力しているのか?」

 

 

「いっ……いや、それはないと思う。恐らく組織が高値で買い取るから生産しているだけだろう」

 

 

「なら良かった………無駄に犠牲を出さずに済む。それでその麻薬はどの程度、広まっている?」

 

 

「王都でもかなり広がっているが、貴族達により黙認されている様だ。他の国でも危険視されているみたいだが……」

 

 

「そう…………ベルンカステル、戻るぞ……住民を避難させる」

 

 

「どうして?」

 

 

「焼き尽くすのは薬の原料だけでいい。命を無駄に散らさせる訳にはいかん」

 

 

「ふぅ~ん……別に貴方がそうしたいならそうするわ」

 

 ユウとベルカステルはそう言うと、村の方へと歩いていった。いきなりの事で唖然としているラキュース率いる蒼の薔薇を置いて。

 

 

 

 

 

 

 

 村に戻る途中、ユウはメッセージの魔法を使って、親友であるモモンへと連絡を取った。

 

「やぁ、モモちゃん」

 

 

『あぁ、ユウちゃんか………もう、王都には着いたの?』

 

 

「いや、未だ途中だ………セバス達とも合流出来ていない」

 

 

『そうか……それで、何か在った?』

 

 

「実は………」

 

 ユウはモモンに自分の状況を説明した。

 

『成程………それで、その村を潰すと?』

 

 

「勿論、村人は避難させてな…………そこで、モモちゃんに意見を聞こうと思ってな」

 

 

『俺的には別に構わないけど………』

 

 

「メリットは冒険者ユウとベルンカステルの名が売れる。王都の方では黙認されているらしいが………全ての貴族がそうとは限らない」

 

 

『なら、冒険者ユウとベルンカステルが麻薬根絶に手を貸したとすれば……国の貴族達とのパイプが出来る』

 

 

「デメリットとしては、組織とやらを敵に回し、組織に協力している貴族に目を付けられる……と言う所だろう。まぁ組織とやらは根絶するつもりだがな」

 

 

『………はぁ……分かったよ。そっちはユウちゃんの好きにしてくれていいよ』

 

 

「すまん」

 

 

『いいよ………ユウちゃんの気持ちも分からなくもないから』

 

 

「ありがとう………それでそっちは?」

 

 

『えっ……まぁ、その』

 

 自分の方針が決まった所で、モモンの方の近状を聞いた。

 

 ンフィーリア・バレアレと言う薬師に指名で依頼をされたそうだ。だが、自分達は先日、エ・ランテルに来た所なのに何故と言う疑問がある。

 

 ンフィーリアによると、宿屋での事を聞いたらしく、(カッパー)のプレートなら依頼料が安いと言う理由だ。

 

「えっ、何それ……メッチャ、怪しいじゃん」

 

 

『だよね………俺もそう思うよ』

 

 

「取り敢えずは要監視か………」

 

 

『そうだな』

 

 

「じゃあ、こっちが終わったら連絡するよ………何か、問題が在ったら連絡してくれ」

 

 

『了解』

 

 メッセージを切ると、息を吐いた。

 

「それでどうするの?」

 

 

「普通に言っても、逃げないだろうからな……それに村の中に少ないが村人以外の存在を感じる。恐らく、組織とやらの人間だろう。監視兼守り役と言った所か」

 

 

「あぁ………あの弱っちぃ気配の事ね」

 

 

「だから、そいつ等は始末して……村人達は逃がす」

 

 

「どうやって?」

 

 ベルンカステルにそう聞かれると、笑みを浮かべるユウ。それを見て、ベルンカステルは背筋にゾクッと寒気を感じた。

 

「モンスターに襲われて、人間が死んだ。それが偶々、村人以外だった………別に可笑しい話じゃないだろう?」

 

 そう言って、彼は手に嵌めている指輪を見せながらそう言った。




・蒼の薔薇

アダマンタイト級冒険者チーム。メンバーの全員が女性であり、その名は他国にも知れ渡っている。


・ラキュース

蒼の薔薇のリーダー。王国の王女とは個人的な親交を持ち、政策についても議論する程、頭脳がある。強いが、ゼオス達には遠く及ばない。

この世界では珍しい中二病。仲間でもないユウに見られて恥ずかしさのあまり、困惑して自害しようとした。


・ガガーラン

大男と見間違える程、デカい女性。見た目に似合わず面倒見が良い。


・イビルアイ

仮面とローブを纏った魔法詠唱者。実際は吸血鬼である。



・ティア&ティナ

元暗殺家の双子の忍者。実はティアはレズビアン、ティナはショタコンと変わった趣味の姉妹。


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EP13 星の守護者、使い魔を呼ぶ

 ~村の近く~

 

 崖の上から、村を見降ろしているユウとベルンカステル。

 

「さてと………始めるとするか」

 

 

「でも、さっき言ってたモンスターが襲うって……そんな都合がいい事が起きる訳ないんじゃ」

 

 

「そりゃそうだ……なら、故意に起こせばいい。さて、誰がいいか?」

 

 ユウは自分の両手の指に嵌めている9個の指輪と、両腕に付けている腕輪を見た。合計11個の装飾品、それぞれには何かの印が描かれている。

 

「よしっ……決めた。来い、グオス・スコーピオン(神毒の蠍)オルタ・レオ(英雄殺しの獅子)

 

 ユウの指に嵌めている指輪の内、2つが光を放つ。すると彼の目の前に魔法陣が展開し、そこから巨大な白い蠍と、人間の成人男性5人分はある大きな黒い獅子が出現した。

 

「大きい………」

 

 

「スコーピオン、お前は森の奥へと向かい、モンスター共へ狂乱の毒を使え」

 

 

【ショウチ………主の……命令………実行】

 

 白い蠍はそう言うと、森の奥へと消えて行った。

 

「さて、レオ。今回のお前の役目はモンスターから村人を護る事だ、いいな?」

 

 

【グルル……ゴロゴロ】

 

 体格からしてユウを一撃で潰せそうなくらい大きな獅子が、猫の様に主であるユウに擦り寄っている。

 

「お前、分かってるのか?」

 

 

【ガゥ!】

 

 任せろ!と言わんばかりにオルタ・レオは吠える。

 

「よしっ………行くか」

 

 ユウはオルタ・レオに跨った。そして、ベルンカステルに向かい手を差し出す。

 

「お前も行くぞ」

 

 

「うっ………うん」

 

 少し顔を赤くしながら、軽く飛ぶとユウの手を握って彼の後ろに乗った。

 

【グルル】

 

 

「えっ?此奴は何者か?………協力者だ、お前も覚えておけ。それと他の守護獣にも伝えておく様に」

 

 

「獣の言葉が分かるの?」

 

 

「あぁ……此奴等は特別だからな。おっ?」

 

 

「モンスターの群れの足音………向こうから来る」

 

 ベルンカステルがそう言うと、グオス・スコーピオンが消えて行った方向を指差した。

 

「100くらいか…………良い運動になりそうだな」

 

 

「でも強い奴いないわよ………面白くない」

 

 

「いいから、いいから。レオ、ゴォー!」

 

 

【グオオォォォォン!】

 

 ユウがそう言い、村の方を指差すとオルタ・レオは村の方へ向かい駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「大変だ!村長!森の方からモンスターがやってくるぞ!物凄い群れだ!」

 

 

「しかも、やたらと興奮してやがる!?」

 

 

「なっなんじゃと?!どう言う事か、説明せぃ!」

 

 村の若い連中が村長の元に訪れ、そう報告した。村長が動揺している若い村人達を落ち着かせて、話を聞いた。

 

 この2人が夜、寝付けなかったので散歩に出たらしい。森の中を歩いていた時にモンスターの群れに遭遇し、走って逃げた。その時のモンスター達の様子が明らかに可笑しかったと言う。

 

「このままじゃ、村は全滅だ!早く逃げないと!」

 

 

「むぅ………そうじゃな」

 

 村長の決断は早かった、このままでは、家も、村の収入源の薬草も、全てモンスター達に蹂躙される。しかし命あっての物種だ、死んでしまっては元も子もないからだ。

 

「どうした?」

 

 村長達が声が掛けられ、その方向を見ると巨大な獅子がいた。それを見て、全てが終わったと思った村長達。

 

「ももももも……もぅ、来たのか!?」

 

 

「おいおい、喋ったのはこっちだ」

 

 獅子の上から顔を出した、ユウとベルンカステル。

 

「おぉ、貴方は」

 

 

「よっと………どうやらモンスター達がこっちに向かっている様だな」

 

 

「こっこのモンスターは……?」

 

 巨大な獅子に脅える若い村人達は、降りてきたユウにそう聞いた。

 

「此奴は俺の従える使い魔だ、俺の敵以外には襲わん様に言っているので安心しろ。それより早く避難を………俺と彼女がモンスターを始末する」

 

 

「しっしかし」

 

 

「あの家族には、一宿一飯の恩があるからな、それにモンスター退治は冒険者の務めでもある。しかし相手は多勢、万が一に1匹でも通れば犠牲が出る事になる」

 

 

「分かりました……直ぐに避難を始めます。お前達は村の者達に伝えるのじゃ!」

 

 

「「はっはい!」」

 

 村長の言葉で若い2人が他の者達に伝える為に走って行った。

 

「なんと、お礼を申し上げればいいか」

 

 

「礼は全部終わってからだ」

 

 ユウはそう言うと、ベルンカステルとオルタ・レオを連れてモンスターの来る方向に向かい歩いて行った。




使い魔達のステータスなどは後々、別で記載します。


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EP14 星の守護者、空想具現化を行う

 ~村の外れの畑~

 

 黒粉の原料の畑、そしてモンスターのやってくる森。それらを前にして戦闘準備を整えるユウ。

 

「さて………と」

 

 

「モンスターを狩るの?」

 

 

「あぁ……お前もやるか?」

 

 

「雑魚相手じゃ満足できないもの………それより、見せて欲しいわ。貴方の本気」

 

 ベルンカステルは弱いモンスター相手には興味がないらしく、オルタ・レオに乗ったままである。そのかわりにユウの本気を見たいと言ってきた。

 

「本気を出すまでもないんだがな………この草は燃やすだけでも危険な様だし消滅させる」

 

 

「どうやって?」

 

 

「こうやってだ」

 

 髪と瞳が元に戻り、ゼオスの姿に変わると全身が光に包まれる。すると、彼の前に何かが投影された。

 

「これは……この村と森?」

 

 

「そう…………我が特殊スキル【空想具現化(マーブル・ファンタズム)】。簡単に言えば、自然を思うがままに操る能力だ。そしてアリストテレスたる我が能力は精霊が行う物よりも高位の物………思うが儘に世界を改変する」

 

 投影された村と森の一部に手を翳した。そして手を払う仕草をすると、投影されている畑と森の一部分が更地に変わった。同時に目の前の畑と森の一部分が更地となってしまった。

 

「………何したの?」

 

 

「畑と森が在った空間をモンスター達ごと削り取った」

 

 

「魔力も、何も感じなかった………これで国を攻撃すれば簡単に滅ぼせそう」

 

 ゼオスが息を吐き、ユウの姿へと変わった。

 

「残念ながらこのスキルは自然物にだけ作用するものだ。人工物には作用できん………まぁ国を簡単に消し飛ばす魔法も持ってはいるが(主に月を落とすとか)」

 

 

「そうなんだ」

 

 

「さて、取り敢えず………組織とやらの人間に話しを聞くとするか」

 

 

「でも……そんな人間何処にいるの?」

 

 

『御待たせいたしました。我等が主よ』

 

 謎の声がした。ベルンカステルは凄まじい力を感じて空を見上げた。空に居たのは10人の男達を鎖で拘束した持つ天使だった。

 

「来たか………これで全員か?」

 

 

「その通りにございます」

 

 12枚の天使の翼を持つスーツを着た女性がそう言った。

 

「誰?」

 

 

「此奴等は俺の守護獣の1人。善悪を極めし双子(アンニス・ジェミニ)だ。12の僕の中では一番、善性の存在だ」

 

 

「おやっ……ぁあ、貴女が射手の言っていた我等が主のお后様ですか」

 

 

「はっ?」

 

 

「ふぇ?」

 

 アンニス・ジェミニの言葉に、「何言ってるんだ、此奴?」と言う顔のユウと顔を真っ赤にして頭から湯気が出ているベルンカステル。

 

「違うのですか?」

 

 

「違う……この世界の協力者だ」

 

 

「(おっお后様……つっつまりはお嫁さん……お嫁さん……お嫁さんって……あっあんな事やこんな事もするのよね)きゅ~」

 

 何を想像したのか、そのまま目を回してしまった。

 

「全く変な事を言うな、アイツが目を回したじゃないか」

 

 

「(主はそのつもりはないのでしょうか?)これは失礼しました」

 

 

「それで、此奴等が組織とやらの人間か?」

 

 

「はい」

 

 

「現時点で分かっている事は?」

 

 ユウはアンニス・ジェミニに、拘束している男達から聴取した情報を聞いた。

 

「組織の名は八本指、リ・エスティーゼ王国の裏社会を牛耳る組織です。8つの部門から構成され、その部門の長達が組織のトップだそうです。

 

 詳しい内容は此方に」

 

 そう言ってアンニス・ジェミニはユウに詳細を書いた書類を渡した。

 

「それと此方はこの愚者共が持っていたメモです」

 

 

「何かの暗号か何か?…………まぁ後々、解読しよう」

 

 ユウは受け取ったメモを見たが、何かの暗号の様で直ぐには分からなかったので書類と共に異空間に仕舞った。

 

「それでこの者共は如何しましょう?」

 

 

【グルルル】

 

 アンニス・ジェミニとオルタ・レオが八本指の構成員達を見降ろした。彼等は鎖で拘束され、口も猿轡されているが、意識はある。故に目の間の巨大な人外であるアンニス・ジェミニとオルタ・レオに恐怖する。

 

「そうだな…………」

 

 ユウは構成員達を見降ろした。

 

「此奴等は今まで、麻薬で荒稼ぎして来たんだ………人の人生を狂わせて、不幸にしたんだ。それなりの報いを受けて貰おう。ジェミニ、此奴等を連れてナザリックに帰還しろ。誰かに引き渡して、情報を引き出させろ。全部引き出したら、好きにしろ」

 

 構成員達は何か言いたいらしくもがいているが、そんな者達を冷たい目で見降ろしているユウ。

 

「御意に………では失礼します」

 

 アンニス・ジェミニはユウに対して一礼すると、構成員達を連れてその場から飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

「さてと………」

 

 

「ねぇ、モンスターの足音するけど?」

 

 ベルンカステルがその耳で消えた森の方からモンスター達が進行してくる足音を聞き取った。数秒すると、モンスターの群れが姿を現した。

 

「森を残そうと加減したから、取り残しが何匹かいた様だ」

 

 

『おいおい、何だこりゃ?!』

 

 声と足音が聞こえてきた為、後ろを振り返ると蒼の薔薇のメンバーが此方に走って来た。

 

 

【グルルル!】

 

 

「アイツ等はいい」

 

 オルタ・レオはそう言われると、やってくるモンスター達を睨みつける。

 

「おい、さっきまで此処は畑と森が在ったんじゃねぇのか?」

 

 

「あぁ……まぁ、モンスターごと消し飛ばしました」

 

 

「「「「はぁ!?」」」」

 

 

「そっそれでは、このモンスターは?」

 

 驚くラキュース達、落ち着いているのはイビル・アイだけ……と言う訳でもなく若干驚いているが、まずは上納が欲しいと思ったのかオルタ・レオの方を見て、ユウにそう聞いた。

 

「俺のペットです」

 

 

「ペット?」

 

 

「おっとモンスター共を忘れていた。ベルンカステル、降りろ………レオ、久しぶりに暴れていいぞ」

 

【グオォォォォォォ!】

 

 ベルンカステルを降ろすと、オルタ・レオは主に許しを貰い、喜びの咆哮を上げ、駆け出した。そして、モンスター達の蹂躙を始めた。

 

 ゴブリンも、オーガも、トロールも、総て等しく蹂躙されていく。

 

「なっ………」

 

 

「あの大軍が数秒で……」

 

 ―ドォォォォン―

 

 何かが踏みつぶされる様な音と共に、木々が薙ぎ倒された。すると森の奥から体長10m以上ある、8本脚と王冠の様な鶏冠のあるトカゲが十数体、現れた。

 

「ギガントバジリスク!?」

 

 

「しかも群れかよ?!」

 

 

「ギガントバジリスク?(初めて見るモンスターだな)」

 

 ユウは始めてみるモンスターに首を傾げた。

 

「【石化の視線】を持つモンスターだ。我々でも全力を出さねばならない相手だ、1匹でも厄介なのに……群れで来るとは」

 

 ラキュースによると、かなり厄介なモンスターの様なのだが……

 

「なんだ………その程度か。べr………やる気なしって顔だな」

 

 

「アイツ等、面倒だもの」

 

 

「はぁ………レオ、下がれ。一気に終わらせる」

 

 ユウはそう言うと、オルタ・レオを下がらせ、自分は一振りの刀を取り出した。

 

 刀身は紅く、唾は金、柄は黒………美しい刀だ。ユウはその刀の剣先を此方に突進してくるギガントバジリスクに向ける。

 

「我が妖刀よ………その力を見せろ。【空殺】」

 

 そう呟き、妖刀を横に一閃した。一閃した延長線上にいたギガントバジリスクとその後ろの空間が断絶された。ユウは妖刀を血を振り払う様に振ると鞘に納め、大きく息を吐き力を抜いた。

 

 ―キィン-

 

 妖刀が鞘に納められると金属が鳴った。その瞬間、ギガントバジリスク以外の空間は元に戻る。

 

「ふぅ………」

 

 

「空間がズレた様に見えたけど………何したの?」

 

 妖刀を収め、此方に歩いて戻ってくるユウにベルンカステルがそう尋ねた。彼女も何が起きたのか分からなかった様だ。

 

「モンスターごと空間を斬り裂いた。それでモンスター以外の空間を元に戻せば、モンスターだけが切断される。どんな防御力の高い鎧を着ようと、防御のスキルを使おうと、空間ごと斬り裂かれれば関係ないからな。

 

 そしてそれを行うのが、空間を斬り裂く【妖刀・断空】」

 

 ユウはベルンカステルに鞘に納めた妖刀を見せながらそう言った。

 

「ギガントバジリスクとか言うモンスターはレベルそれ程高くない様だな………そう言えば冒険者ってモンスター倒した時の報酬ってどうやって貰うんだ?」

 

 

「えっ…………あっ………えっとモンスターの一部を持ち帰って組合に提出すれば報酬を貰えるわ」

 

 ユウがどうやって報酬が貰えるのかと考えていると、我に帰ったラキュースがそう説明してくれた。

 

「成程…………モンスターの一部か」

 

 説明を聞いたユウは再び妖刀を引き抜くと、ギガントバジリスクの鼻先に付いている角を切断した。

 

「これでよし………」

 

 そう言いながら、切断した角を異空間と繋がっている皮袋へと仕舞った。

 

「(クリスタルなどがドロップする訳じゃないのか。ユグドラシルでもそうだがゲームではモンスターの素材がアイテムや武器になる可能性も………)でもなぁ…………弱いし」

 

 自分達でも1人では多少なりに苦戦するモンスターを弱いと言った、先程の戦いを見ればそれも頷けるが、圧倒的過ぎて唖然とした。

 

「ねぇ………これ、食べるの?」

 

 

「「「えっ?!」」」

 

 ベルンカステルの言葉に驚くラキュース達。

 

「…………でもなぁ」

 

 ユウはギガントバジリスクの切断面を見た。何やら毒のありそうな色をしている。

 

「止めよう。どう見ても、毒ありそうだし」

 

 

「そう?」

 

 

「とは言う物の………このまま放っておけば、肉食モンスター共が来そうだし」

 

 ―ズゥン ズゥン―

 

 森の奥から巨大な何かの足音が聞こえてきた。

 

「ッ!」

 

 

「なっなんだぁ!?あのデカい化物は!?」

 

 森の奥からやってきたのはユウの使い魔グオス・スコーピオンだった。

 

「………逃げろ」

 

 突如、イビル・アイがそう呟いた。

 

「なに?」

 

 

「逃げろ………アレは強い。例え私達が束になってもアレには勝てない」

 

 

「その様ね………アレは強いわ。見た事もないモンスターだけど………素直に逃がしてくれそうにはなさそうね」

 

 イビル・アイとラキュースは対面しただけで、グオス・スコーピオンと戦っても勝てないと理解できた。だからこそ、直ぐに逃げる事を決断する。だが、モンスターはこっちに近付いてきている。

 

「私とラキュースで時間を稼ぐ、だから逃げろ」

 

 

「とは言っても長い時間は無理よ……全力……って貴方!下がりなさい!」

 

 イビル・アイは魔法を展開し、ラキュースは剣を構える。しかし、ユウはお構いなしにグオス・スコーピオンに近付く。

 

【キィ……キィ……キィ】

 

 

「よしっ、よしっ、ご苦労様」

 

 ドデカい蠍がユウに擦り寄っており、まるで猫の様である。

 

「ななななななな………」

 

 

「あぁ、そうだ。ギガントバジリスク(あれ)、食べていいぞ」

 

 主がそう言うと、グオス・スコーピオンはギガントバジリスクの方へ向かい、その死骸を貪り始めた。

 

 ―バリっ!メキッ!グシャ!―

 

 グロテスクな光景である。数分で十数体を食べ終えた様だ。

 

「スコーピオン、レオ、ご苦労様………皆の所に戻っていいぞ」

 

 ユウがそう言うと、2体の獣は咆哮を上げ、光になると指輪へと変化し彼の手元に戻って行った。

 

「いっ……一体、貴方は」

 

 

「唯の駆け出しの冒険者さ……ベルンカステル、そろそろ戻ろうか」

 

 

「うん」

 

 2人は蒼の薔薇を置いて、村の方へと戻って行った。




と言う訳で、今回は長くなったので2話に別けました。


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EP15 星の守護者、跳ぶ

 ~早朝 村はずれ~

 

「何も言わずに出てきて、良かったの?」

 

 

「あぁ………良いんだよ。麻薬を消す為とは言え、スコーピオンでモンスターを村に嗾けたんだ。だと言うのに村人が英雄視してくるんだぞ………良心が痛む」

 

 ユウは昨夜、モンスターを討伐し村長や村人達に感謝され、子供達には英雄を見る様な目で見られていたのだが………畑を消す口実としてモンスターを嗾けた。つまりは自作自演である。故に人間としての良心が痛む様だ。

 

「別に気にする様な事はないんじゃないの?」

 

 

「俺が気にするんだ………はぁ、さっさとセバス達と合流しよう。と言う訳で………よっと」

 

 

「えっ……ちょっと!!」

 

 ユウは早くセバス達と合流する為に、ベルンカステルを抱え上げた。俗に言う、お姫様抱っこである。勿論、恋する乙女である彼女はそんな事をされれば顔を赤くなる。

 

「おおおおっ追い付けるわよ!」

 

 

「絶対に俺の方が速いんでな。ちょっと本気で行く………口を閉じとかないと舌噛むぞ」

 

 

「えっ?」

 

 そう言うと、脚に力を入れて地を蹴った。

 

「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

 アリストテレス(人外の中の人外)のちょっと本気は軽く音速になりました。流石に音速を予想していなかった彼女は猫の様な悲鳴を上げてしまった。

 

 

 

 

 

 ~数分後~

 

「ぜぇぜぇ」

 

 

「大丈夫か?」

 

 音速で移動していた為、ベルンカステルには少し辛かった様だ。未だに抱っこ状態である。

 

「取り敢えず、降りる?」

 

 ユウにそう言われて、勢いよく首を横に振る。

 

「怖い………怖い」

 

 彼女は若干、トラウマになった様だ。先程まで、彼女が体感していたのは簡単に言えば【シートベルトなしで〇ヒ〇ス(世界一怖いジェットコースター)に乗車した】様な物だ。後にそんなに怖いのかと思い体験したアインズがそう言った。ナザリックの支配者もトラウマになったのは言うまでもない。

 

「そんなにか?」

 

 当の本人は自分がチートの塊だという事を理解していない様だ。

 

「まぁいいか………おっ、あの馬車は」

 

 ユウは遠くに馬車を確認し、それに近付いていく。すると、馬車から執事が降りてきた。

 

「此方に居られましたか………旦那様」

 

 

「やぁ、セバス。出迎えご苦労」

 

 

「ハッ………では御乗り下さいませ」

 

 セバスはそう言うと、馬車に2人を迎える。

 

 

 

 

 

 ~馬車の中~

 

 未だ、恐怖が抜けないのかユウの腕から離れようとしない。

 

 ―ギリッ!―

 

 ―メキィ!―

 

 この馬車に乗っている、ユウ、ベルンカステル。

 

 そして、セバス、戦闘メイドのソリュシャン・イプシロン、ナザリックの階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン、シャルティアの愛妾の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)が2人乗っている。

 

 因みにセバスは竜人、シャルティアは真祖(トゥルー・ヴァンパイア)、ソリュシャンはスライムだ。

 

 セバスは特に表情に出ていない。しかしソリュシャン、シャルティア、吸血鬼の花嫁の2人は、ユウ………ゼオス・アルドライグの腕に引っ付いている番外席次を睨んでいた。その眼には嫉妬と羨望の感情が篭っている。

 

 当の原因である、ゼオスはそれに気付きながらも、面倒なので触れないでいた。

 

「はぁ………それで、セバス。情報は?」

 

 

「はい、こちらになります」

 

 セバスはそう言って、羊皮紙に書いてある情報をゼオスに渡した。ゼオスはそれを受け取り、目を通す。

 

「成程…………やはり、生活水準はこの程度。医療もそれ程、進んでいない」

 

 セバスがナザリックを出てから調べ上げた情報を、頭に叩き込んでいく。書類を10分程で読み終えると、息を吐いた。

 

「大体、分かった………セバス、アインズからはどう言った命を受けている?」

 

 

「はい。王都に着いた後は、情報収集、コネクションの形成を命じられております。ゼオス様と合流次第、御身の命を第一優先にと」

 

 

「分かった。後、今の俺はユウだ、番外席次もベルンカステルと名を名乗っている。ナザリックに帰還するまでは、室内等でも気を付けろ」

 

 

「「「「承知しました」」」」

 

 NPC達が揃って、ゼオスの意を受け入れた。

 

「やるべき事は多いな…………セバス、王都まではどのくらいだ?」

 

 

「恐らく、このペースで行けば2・3日かと」

 

 

「その程度か」

 

 

「あの、旦那様」

 

 

「どうした、ソリュシャン?」

 

 

「襲撃が在った場合、ザック………現在、手綱を握ってる男なのですが、私に頂けませんか?」

 

 ゼオスは馬車に乗る前に、馬の手綱を握っていた男の事を思い出していた。

 

「あぁ、あの男か。特に利用価値もなさそうだし、構わないぞ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 許しを貰ったソリュシャンは笑みを浮かべて頭を下げる。

 

 

 

 

 

 

 ~夜 テント~

 

 事前に用意していた簡易テントを張り、一同はそこで夜が明けるのを待つ事にした。

 

 ゼオスやNPCは人間でない為、別に食事をとる必要はないのだが………ゼオスは未だ、人間の時の習慣で食事をとる様にしていた。

 

 そして今夜、食事を作ったのは至高の存在であるゼオス・アルドライグだった。

 

「「「「「…………」」」」」

 

 

「どうした、お前等?早く、食え。冷めてしまうぞ」

 

 そう言ってスープを啜るゼオス。

 

 セバス達、NPCは自分達の持つ皿に入ったスープを驚愕と感動が入り混じった表情で見つめていた。当然だろう、本来であるなら自分達の役目であり、下々の仕事だ。

 

 だと言うのに、至高の1人であるゼオスが自分達に手料理を作ってくれた………感動しない訳がない。スープを食べた彼等が泣いたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 食事を終え、食器を片付け終わり、ゼオスは月を見上げていた。

 

「旦那様」

 

 

「セバスか?」

 

 

「はい、お休みにならなくて宜しいのですか?」

 

 

「おいおい、俺はそんな柔ではないぞ」

 

 

「それは承知しておりますが………」

 

 

「フム………あっ、そうだ。セバスに聞きたい事が在ったんだ」

 

 

「なんでございましょう?」

 

 

「お前は人間をどう思う?」

 

 ゼオスはセバスに人間の事についてどう思うかを聞いた。

 

 因みにナザリックの戦闘メイド・プレアデス達の意見は、長女のユリ・アルファ以外は餌やら玩具やらと言う物だった。

 

 基本的にナザリックの者達は人間を見下し、下等な生物と見ている。

 

「私が思うに人間は素晴らしい生き物だと思われます。愚かな者も居ますが、弱き者に手を差し伸べる優しさを持つ存在だと考えます。そんな者達がいるからこそ、私は嫌いにはなれません」

 

 

「手を差し伸べるか………フフフ」

 

 ゼオスはセバスの言葉で昔の事を思い出した。

 

「『誰かが困っていたら助けるのは当たり前』」

 

 

「!」

 

 セバスはその言葉に驚いた。それは自分の創造主、たっち・みーが良く言っていた言葉だったからだ。

 

「セバスは異形種狩りを知っているか?」

 

 

「いえ」

 

 

「俺やモモ……アインズ達の様な異形種は、特異性故によく他の種族に狙われてな。

 

 当時は毎度、毎度、狙われてうんざりしていた。でもそんな時、ある聖騎士が立ち上がった。困っていたら助けるのは当たり前だと言い、虐げられていた異形種達を助けたのが、俺達【アインズ・ウール・ゴウン】の始まりだ。

 

 勿論、その聖騎士と言うのは我が盟友であり、お前の創造主であるたっちさんだ」

 

 

「!!!」

 

 セバスは、自分が創造される以前の………アインズ・ウール・ゴウンの誕生の話、それに自分の創造主である【たっち・みー】が関わっている事を知り、感動で身体が震えた。

 

「お前のその考えは間違ってはいないと思う。俺はその考えに好感を持てる。

 

 それにお前のその考えはたっちさんから受け継いだものだ。誇りを持っていいぞ。大切にしろ」

 

 

「はい!」

 

 

「あっ、そうだ。これをお前に渡しておこう」

 

 そう言って、彼はポケットの中からアインズ・ウール・ゴウンの刻印の入った懐中時計を取り出した。

 

「懐中時計でしょうか?」

 

 

「開けてみろ」

 

 セバスはゼオスに言われた通りに懐中時計を開ける。蓋の内側の部分に【正義降臨】と言う文字とたっち・みーを現す刻印が刻まれていた。

 

「!?」

 

 セバスはその言葉を知っていた。彼の創造主であるたっち・みーが使っていたエフェクトと同じ言葉だったからだ。

 

「そいつは元々、俺が作った物でな。アインズ・ウール・ゴウンの仲間達との絆の証として、渡そうと思ったんだが、渡す前に皆、去っちまったからな。だから代わりにお前に渡しておくよ」

 

 

「っ!ありがとうございます!!!」

 

 

「フフフ………じゃ、少し休ませて貰おう。朝になったら起こしてくれ」

 

 

「はっ!」

 

 ゼオスはセバスを見ると、セバスに一瞬だけかつての友の姿が被った。その友との思い出を、胸に仕舞うと休む為にテントにへと戻って行った。




・懐中時計
 
 かつて、ゼオスが仲間達の為に自費で造ったアイテム。

 特に効果はないが、結構金が掛かっているアイテムである。

 蓋にはアインズ・ウール・ゴウンの刻印、蓋の内側には個人のマークと言葉が入っている。(たっち・みーの場合は正義降臨)

 制作したはいいが、渡そうとした矢先、それぞれの仲間はギルドを離れていったので渡せず終いになった。



次回、ちょっとした事件が起こります。


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EP16 星の守護者、(番外ちゃんの)子守をする

 多くの誤字報告ありがとうございました。

 出来るだけ無い様にと思っているのですが………報告して頂いた方には感謝します。


 ~王都への道中~

 

「……」

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 馬車の中は沈黙と殺気で支配されていた。

 

 殺気の発生源は、シャルティア、ソリュシャン、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達だった。彼女達が殺気を放っている理由は………

 

「ねぇねぇ、こぇ、にゃに?」

 

 ゼオスの膝の上に座る小さい女の子が、彼の持っている本を指差した。

 

「【鈍感騎士とプリンセス(案:ぶくぶく茶釜 著者:ゼオス)】。実際に売り出して、10万部売れた本だ。何か若い女だけでなく、男達にまで人気だったんだ」

 

 

「どんなおはにゃし?」

 

 

「鈍感な騎士に惚れた姫が、騎士にアプローチするんだけど全然相手にして貰えなくて毎夜、枕を涙で濡らしながら頑張って、騎士を………って、流石にこれは子供のお前に早いか。違うのは庫に入ってたな」

 

 そう言うと、ゼオスの手元の空間が歪む。そこに本を入れると、代わりに子供向けの絵本が出て来た。

 

「それにしても間違って、番外席次が若返りの薬を飲んじまうとは………」

 

 

 

 

 

 

 

 ~早朝~

 

 起きたゼオスは食事を済ませて、出発する前にアイテムの整理をしていた。

 

「え~と、これはこっち………これは庫、これも庫、これはこっち」

 

 次々に出てくるアイテム、彼の周りにはアイテムが山積みとなり、その姿は何処かの猫型ロボットと被っていた。

 

「何してるの?」

 

 番外席次がゼオスに元へやってくると、そう尋ねる。

 

「アイテムの整理………忙しくてする暇がなかったからな。量が凄く多いからな、ちょっとの時間でもしておかないと…………」

 

 

「ふぅ~ん」

 

 

「あまり、触るなよ。俺も把握してないのもあるし」

 

 

「ゴクッ………苦い」

 

 

「ゴクッ?苦い?」

 

 ゼオスは振り返ってみると、そこには蓋の空いた青い瓶を持った番外席次がいた。

 

「それは確か………【若返りの薬】。勝手に弄るなと言っただろう」

 

 

「この前、飲んだしゅわしゅわするジュースかと思って………どうn【ポンっ】」

 

 番外席次が煙に包まれる。

 

「あっちゃ~」

 

 

「?」

 

 煙が晴れると、そこには幼女化した番外席次が座っており、可愛らしく首を傾げている。

 

 

 

 

 ~回想終了~

 

 

 

 

 ~戻って現在の馬車の中~

 

「あの時、ちゃんとしてなかった俺も悪かったけど……」

 

 

「?……ふぁ~……ねみぃ………ん~」

 

 番外席次が欠伸をすると、目を擦る。そしてゼオスの服を掴み、顔を彼に擦り付ける。

 

 ―バキッ!―

 

 ―メキッ!―

 

 それを見た、シャルティア、ソリュシャン達が怒らない筈がない。と言うより、半分以上嫉妬なのだが、それは置いておこう。

 

「眠くなってきたか?よしっよしっ」

 

 前の世界の姪っ子の事を思い出して、これはこれで良いんじゃないかなと思い始める世界最強の存在。番外席次(幼)の頭を撫でて、寝かせようとするゼオス。姪っ子がいただけあって、凄く手馴れている。

 

 そして若返りして記憶がない筈なのだが、幼女化した彼女もゼオスに懐いており、旅をするには特に問題ないのだが………

 

(この……下賤な生命体の分際でぇぇぇぇ!)

 

 

(なんでありすんか!?私だってゼオス様によしっよしっして貰いたいでありんす!)

 

 と子供に対して本気で嫉妬しているスライムと吸血鬼達。

 

 そして、チラッと番外席次(幼)彼女達を見た。

 

「フッ」

 

 

「「「「なぁ?!」」」」

 

 幼女でありながら優越感に満ちた笑みを浮かべているのを見たシャルティア達。勿論それはゼオスからは見えない。

 

「どうした、お前等?」

 

 

「いいいいっ今」

 

 

「番外席次(幼)がどうかしたか?」

 

 

「この人達、怖い……」

 

 そう言って彼の胸に顔を埋める番外席次(幼)。どうやら幼くなった分、羞恥が抜けて素直に彼に甘えている様だ。

 

 きっと、優越感に満ちている顔も、計算通りみたいな顔をしているのは気の所為だろう………多分………恐らく。

 

「おいおい、子供を泣かしてくれるな」

 

 

「いっいぇ……そんなつもりは」

 

 

「そっそうでありんす」

 

 と気まずい空気になる。それを変えようとセバスが口を開く。

 

「そっそう言えば、ゼオス様………いぇユウ様は子供がお好きなのですか?」

 

 

「う~ん、そうだな。子供は好きだな………子供は次の時代を担う者………どの様な種族であれ、子供は宝だよ。俺自身に子供はいないけど、姪っ子がいたからな」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

「月に何度かしか会えなかったけど、遊びに来たら一緒に遊んで楽しかったよ。【将来、おじちゃんのお嫁さんになる】とか言われたな。その度に弟に睨まれたけど………フフフ」

 

 と昔の事を思い出し、笑みを浮かべている。ゼオスは特にこの空気を気にしておらず、番外席次(幼)に絵本を読み始めた。

 

 ゼオスが姪っ子がいると言った事が凄く気になっているが、絵本を読み聞かせている彼の邪魔をする訳にもいかないので黙っているNPC達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~夕暮れ~

 

 ゼオスが番外席次(幼)に絵本を読み聞かせたり、遊んだりしてから数時間が経過した。途中で街に寄ったりしたが、彼等はシャルティア達と共に馬車の中に乗っていた。

 

 現在、番外席次(幼)は疲れたのか、ゼオスに抱かれたまま眠っていた。

 

「そう言えば、シャルティア様。シャルティア様はアウラ様と仲が宜しくない様ですが、何か理由があるのでしょうか?」

 

 セバスがふっとシャルティアとアウラが事ある毎に喧嘩している事を思い出し、彼女にそう聞いた。

 

「本気で仲が悪い訳ではないと思いんす。妾を創造なされたペロロンチーノ様がそう決められたから、適当にあしらっているだけでありんす」

 

 

「ほぉ」

 

 

「そもそも、ペロロンチーノ様とあのチビの創造主であるぶくぶく茶釜様はご姉弟ですし。ある意味、妾とあのチビは姉妹になるでありんすねぇ」

 

 

「そうだったのですか……!?」

 

 

「昔、至高の方々がそんなお話をされていたんでありんす………なんでも、ぶくぶく茶釜様はえろげなる物に出ているせいゆうと言うご職業らしいでありんす」

 

 

「せいゆう……ですか」

 

 

「せいゆうと言うのは声を吹き込む事で命を吹き込むご職業………即ち、生命創造系のご職業だと思うでありんすが……どうでありんしょう、ゼオス様?」

 

 と自分の推察が正しいか、ゼオスへと確証を求める。ゼオスはそう聞かれるが、本人は頭を抱えている。

 

「ペロロンチーノ………それに相手は多分、モモちゃんだろう。何言ってるんだよ、全く……」

 

 

「ぜっゼオス様?」

 

 

「あっ……あぁ。声優か。確かにシャルティアの言う通りでいいと思うぞ、後、エロゲの事は今後出来るだけ言わない様に」

 

 

「どっどうしてでありんす?」

 

 

「えっ……ぁ~………エロゲと言うのは、俺達、至高の存在の中でも(女性の前では)禁句なんだ。言えば最後(女性から)身も凍る様な視線(軽蔑の視線)を向けられるんだ。例を挙げるなら、お前の主ペロロンチーノだ。

 

(女性プレイヤーからの)冷たい視線(+アカウント停止)を怖れずに連呼してたのは、ユグドラシル広しと言えどペロロンチーノくらいだしな。まぁ……ある意味、勇者だが………絶対にマネしない様に」

 

 ゼオスの言葉に驚きシャルティアは両手で口を押える。

 

「まぁ、これから気を付けてくれればいい」

 

 ―ガタッ―

 

 物音がして馬車が止まった。

 

 ゼオスはカーテンを少し開けて外を見てみる。すると盗賊らしい集団が馬車を取り囲んでいた。

 

「どうやら、上手くいったようですな」

 

 

「あぁ………シャルティア、ソリュシャン、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達、下種共を駆逐しておいで」

 

 

「「「「はっ!」」」」

 

 シャルティア、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)、ソリュシャンの順で、馬車の外へと出て行った。その目的はゼオスの命令通り、周囲にいる下賤な者共を駆逐する為だ。

 

「ん……ぅ~……?」

 

 

「お前はそのまま眠っていろ。今のお前は気にする必要はない」

 

 物音で起きそうになった番外席次(幼)を撫でて、自分の来ているコートを被せて再び眠りにつかせた。

 

 盗賊達の一掃が終わり、シャルティアと吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達と別れて、ゼオス……冒険者ユウとソリュシャン達は王都へと向かう事になった。

 

「では、ぜお……ユウ様、我々は王都へ」

 

 

「あぁ………シャルティア、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)、お前達なら何も無いとも思うが、気を付けてくれ。

 

 お前達に何か在れば、俺もアインズも悲しいし、仲間達に申し訳がたたんからな」

 

 

「はっはい!」

 

 

「では、行こうか。セバス」

 

 

「承知しました」




「尚、薬の効果は王都に着く頃に切れました


その際に色々とありましたが……御想像にお任せします。

ヒントは身体と心は小さくなるが、服までは……おっと殆ど答えでした(笑)」


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EP17 星の守護者、屋敷を購入する

 ~王都リ・エスティーゼ 高級住宅街~

 

 リ・エスティーゼ王国の首都だ。

 

 塗装されていない場所や、古い建物が並んでいる。そして、この国の王がいる城が街を見降ろす様に立っていた。そしてこの高級住宅街には富める者達(金持ち)が住む場所だ。

 

「へぇ……此処が俺達が住む場所か」

 

 

「申し訳ありません。至高の御身が滞在する場所としては相応しくありませんが、急遽用意できたのはこのランクの物でして」

 

 ユウ達は大きな屋敷の前に居た。セバスとソリュシャンは王都に到着して直ぐに、居住する為の屋敷を購入した。元々社長とは言え一般人のユウからはすれば、とても大きな屋敷だ。だがセバス達はこの屋敷は至高の存在であるユウには相応しくないと思った様だ。

 

「いや、十分だよ(それにしてもデカいな)」

 

 ユウは目の前の屋敷を見て、かつての自分の家の事を思い出していた。

 

 玩具メーカーの社長とは言え、普通の家に住んでいたユウ。何で社長なのに、一般的な家に住んでいたのかと言うと『普通に住むならこれで十分、金は生活と趣味に使う』との事だ。

 

「旦那様」

 

 

「なんだ、セバス?」

 

 

「私とソリュシャンは先に屋敷に入り、掃除をして参ります。御手数でしょうが、少々御待ち下さい」

 

 

「あぁ、俺とベルンカステルは冒険者組合にパーツを提出して報酬を貰ってくるよ。後、アインズと連絡を取るとしよう…………帰るのは恐らく昼前くらいかな」

 

 

「承知いたしました」

 

 

「ベルンカステル、行くぞ。じゃあ、セバス、ソリュシャン、行ってくるよ」

 

 

「「行ってらっしゃいませ、旦那様、ベルンカステル様」」

 

 そう言って、彼等は2人を見送った。

 

 セバスはともかく、ソリュシャンはベルンカステルを良くは思ってない、しかし彼女は主の客人であるので形式だけとは言え挨拶したのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~王都 冒険者組合~

 

 ユウとベルンカステルは報酬を貰う為にギガントバジリスクのパーツを持って、冒険者組合に来ていた。受付の女性の元に向かう。

 

「スマン、モンスターのパーツを持ってきたんだが」

 

 

「はい、では此方です」

 

 受付の女性の案内で、報酬を支払う窓口にやって来た。そして異空間に繋がっている皮袋から、倒したギガントバジリスクの角を取り出し、差し出した。

 

「………アンタ等、(カッパー)のプレートだろう。此奴はギガントバジリスクの角じゃねぇか、(カッパー)の冒険者が倒せる訳がない。何処からか盗んで来たのか?」

 

 と窓口に座っている男に言われた。

 

「違う。俺が倒したものだ」

 

 

「おいおい、あんちゃん、流石にそれは無理があるぞ。いいか、ギガントバジリスクは最低でもオリハルコン級の冒険者チームじゃなきゃ倒せない。ギガントバジリスク(こいつ)を1人で倒せるなら、そいつはもうアダマンタイト級の冒険者だ」

 

 この窓口担当の男のいう事は正論である。

 

 ギガントバジリスクを倒せるのは、オリハルコンの冒険者チーム、アダマンタイト級冒険者だけ。銅の冒険者(ユウ)が倒せる筈がないと思っている。

 

「俺は真実しか言っていない」

 

 

「そうは言ってもなぁ……」

 

 担当の男は信じられないと言う顔をしており、横にいた受付嬢も同じ様な顔をしている。

 

『それは私達が保証する』

 

 声が聞こえ、振り返るとそこには覚えのある面々がいた。

 

「あっ貴方達は」

 

 

「【蒼の薔薇】!?」

 

 先の事件の際に出会った蒼の薔薇の面々だ。

 

「しっしかし」

 

 

「私達がこの目でちゃんと見たんだもの、ねぇ、イビルアイ?」

 

 

「あぁ………唯の一撃で群れを一掃していたな」

 

 

「「なぁ!?」」

 

 担当の男と受付嬢は蒼の薔薇とユウを交互に見る。

 

 受付嬢は大変だと言う表情で走って何処かに行った。担当の男は目を点にしていたが、ラキュースに声を掛けられて我に帰ると報酬の用意をし始める。

 

「アンタ達は……あの時の……スマン、助かった。あの男も受付嬢も信じてくれなくてな」

 

 

「ハハハ!アタシ等だって、この目で見なけりゃ信じられなかったよ!」

 

 ガガーランが笑いながらそう言う。

 

「ねぇ………誰?」

 

 ベルンカステルはどうやら彼女達の事を覚えてない様だ。

 

「前にいた村で会ったろ?」

 

 

「……………?」

 

 顎に手を当てて、上を向いたり、下を向いたり、しながら思い出そうとしている。だが欠片も思い出せない様だ。

 

「…………あっ!」

 

 考え始めて数分、どうやら思い出した様だ。

 

「あの時、剣に向かってはな「わぁ!わぁ!わぁ~!」もごっもごっ」

 

 ベルンカステルが何を言おうとしたのか、分かったのかユウは直ぐに彼女の後ろに回ると後ろから彼女の口を押える。ラキュースに至っては大声を出して、仲間達に聞こえない様に遮っている。

 

「「「「?」」」」

 

 

「ベルンカステル………その事は黙ってなさい。人には触れられたくない事もあるんだから」

 

 

もごっもごっ(どういうこと)?」

 

 

「良いから、その事は言わない。いいな」

 

 

「………(コクッ」

 

 どうやらベルンカステルは納得はしてない様だが、ユウのいう事なので大人しく従った。

 

「すっすまない」

 

 

「えっ……えぇ、俺も同じ様な事がありましたし(色々な事を書いたノートや技のポーズの練習(黒歴史)とか。弟に見られた時は変質者を見る眼で見てたからなぁ。あの時は本気で首を吊るか、首を切るかって考えていたな………それにしても、この世界で厨二病患者に会うとは)」

 

 ユウは元の世界での暗黒時代の事を思い出していた。そして同情の眼(生暖かい眼)でラキュースを見ていた。

 

「だっ大丈夫ですよ。あの事は口外しませんから(1人を除いてだけど)」

 

 ユウはベルンカステルから手を離し、ラキュースにそう言った。それを聞いた彼女は若干、瞳に涙を浮かべながらユウの手を握った。

 

「あっありがとう!本当にありがとう!」

 

 

「えっ……いっーピシッ!ー」

 

 

「っ!」

 

 ラキュースの手が叩かれた。叩いた犯人はベルンカステルである。

 

「なに気安く、この人の手を握ってるのよ」

 

 私、怒ってますと顔を見れば丸分かりの顔でラキュースを睨んでいる。

 

「すっすまない、そう言うつもりはなかったんだ」

 

 

「フン……」

 

 

「あっ、おい!連れがすまない、ではまた」

 

 怒って冒険者組合を出ていったベルンカステルを追い掛けて、ユウも出ていこうとするが、報酬の事を思い出し直ぐに窓口まで行くと、報酬の入った皮袋を受け取り彼女を追い掛け始めた。

 

「ハハハ、変な勘違いされちまったな」

 

 

「あぁ、申し訳ない事をした」

 

 

「………ラキュース、何故、そんなにも残念そうな顔をしている?」

 

 

「えっ?」

 

 イビルアイにそう言われてラキュースはドキッと動揺した。

 

「そっそんな事ないわよ」

 

 

「そうか?」

 

 

「えっえぇ!そうよ!あっ、そうだ!ラナーとの約束があるんだった!」

 

 ラキュースはそう言うと、その場から離れようとするが、動揺し過ぎて途中で転んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~王都 市場~

 

「おい、ベルンカステル、何なんだいきなり?」

 

 

「あの女がムカついただけ………」

 

 

「何故に?」

 

 

「知らない………」

 

 そう言ってベルンカステルは頬を膨らまして、そっぽを向いている。彼女が腹が立てたのは、勿論、ユウが原因である。

 

 ラキュースが彼と楽しげ?に話し、手を握っていたので彼女に焼き餅………嫉妬したのである。特に彼女は今まで、親しい者がいなかった。そしてユウは初めて出来た好意を寄せる存在だ、そんな男が他の女と仲良くしていれば嫉妬するのも無理はない。

 

 だが番外席次(彼女)はそんな感情を今まで感じた事がないので、感情が何なのかが理解できない。またゼオス(ユウ)もそんな乙女心が理解できる筈もなし。

 

「一体何なんだ?…………おっ、アレ、美味そう。ベルンカステルも食べるか?」

 

 出店の菓子を見つけ、それを買おうとするユウ。彼女にも食べるのかと聞いた。

 

「…………食べる」

 

 

「それ2つくれ」

 

 ユウは菓子を買うと、1つをベルンカステルに渡す。

 

「ほれっ」

 

 

「………ん」

 

 2人は菓子を食べながら市場を歩き始めた。

 

(フム………悪くない……ん?)

 

 菓子の感想を考えながら、歩いていると左手に何かが触れる感触を感じた。視線を左手に向けてみると、ベルンカステルが自分の手を握っていた。そんな彼女を見て笑みを浮かべるユウ。

 

 視線をそのまま、彼女の方へと向けてみると、無表情で歩いていた。

 

(何………あの女。ゼオスと仲良さげに話して、手まで握って………私だってした事ないのに………このままじゃあの女に取られちゃう……そんな訳は…………ないとは言えない。

 

 私、そんなに美人じゃないし、可愛くないし………胸もそんなに大きくない………あの女は結構美人だった。やっぱりゼオスもあんなのがいいのかな?)

 

 等と考えているベルンカステル。そして我に帰り、自分の右手が何かを握っているのが分かった。

 

(何コレ?柔かくて、暖かい)

 

 止まって視線を自分の手の方へ視線を向け、握っているのが何なのかを見た。どうやら手の様だ。しかし誰のだろう?

 

 そのまま視線を上へ逸らすと、笑みを浮かべるユウの顔が在った。

 

「…………」←思考停止

 

 ベルンカステルの思考が完全に停止してしまった。

 

「(えっなんで?なんで、私は彼の手に………???………かっ彼と私が手を繋いで)………きゅぅ~」

 

 ボンッと音を立てて、頭から湯気を出しショートするベルンカステル。彼女はそのまま、気を失ってしまった。どうやら、彼女がユウの手を握ったのは意識しての事では無かった様だ。

 

「おっと………なんで、いきなり気を失うんだ?」

 

 この男、乙女心が分からなさ過ぎる。彼はベルンカステルを背負うと屋敷に向かって歩き始めた。



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EP18 星の守護者、笑いを堪える

本日、タイトルを変更しました。


 ~ユウの屋敷 自室~

 

 一先ず、屋敷に帰って来たユウはゼオスの姿に戻ると、ベッドに番外席次を寝かせた。

 

「おっと………そろそろ定時連絡をしないとな」

 

 メッセージの魔法を使い、アインズに連絡を取る。

 

「よっ、モモちゃん」

 

 

『あぁ、ユウちゃんか』

 

 

「今、大丈夫かい?」

 

 

『あぁ、問題ないよ』

 

 

「じゃあ、俺から説明するよ」

 

 まず、ゼオスがこの数日在った事を説明する。

 

『成程、王都についたのか………その八本指とか言う組織、どうするつもり?』

 

 

「潰す………我の全力、アリストテレスの力を持ってな」

 

 

『気持ちは分かるけど………色々と使えそうなんだし、取り込めば』

 

 アインズは八本指を取り込む事で実質的に、リ・エスティーゼ王国を支配しようと考える。

 

「モモちゃん………言いたい事は分かるけど」

 

 

『ユウちゃんにとって、麻薬やそれを扱う奴等を許せないのは分かってるから………勿体無いけど仕方ない。必要があるなら、ナザリックの戦力を使って貰っていいよ』

 

 

「ありがとう、モモちゃん………あぁ、そうだ。この間、モンスター倒して報酬を貰ったぞ。合計で金貨500程」

 

 

『本当に?!助かるよ!!!これで当面は活動できる!』

 

 

「後、捕まえた組織の連中はナザリックに送ってるから、実験に使うなり自由にしてくれ」

 

 

『分かった、ありがとう』

 

 

「じゃ、金は後ほど送るとして………モモちゃんの方はどう?」

 

 

『……………』

 

 何やら、アインズは黙っている。

 

『じっ実は……』

 

 アインズは話し始めた。

 

 アレから直ぐに出発したらしい。

 

 指名したのは先の宿屋の事を客から聞いたからだそうだ。実際はアインズが宿屋で女冒険者に渡した赤いポーションの所為であった。ユグドラシルでは普通のポーションだが、この世界ではかなり高位の力を持つ物らしい。

 

 そして、漆黒の剣のメンバーとンフィーリアの依頼を受けたのだが、ナーベの発言から、冒険者モモンがアインズ・ウール・ゴウンだという事がバレたそうだ。

 

 驚く事にンフィーリアはカルネ村出身で、エンリの言っていた魔法を使う知り合いとは彼の事だったらしい。そして先程、森の賢王と呼ばれるモンスターと遭遇し力でねじ伏せ、自分のペットにしたそうだ。

 

「まぁ、正体がバレたのは仕方ないか。今度からは気を付けよう」

 

 

『あっ……あぁ』

 

 

「それで、森の賢王ってどんなのだったの?」

 

 

『ギクッ!』

 

 

「?」

 

 

『そっ………それは』

 

 何やらアインズは言うべきか、言わないべきかを悩んでいるらしい。

 

 ―キュピーン!―

 

 何やら、凄く面白そうな予感がしたゼオスは何も言わずに、何時もの様にアイテムを収めている空間から遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を取り出し起動させた。

 

「ほほぅ………何やら面白そうだな」

 

 ニヤッと笑みを浮かべながら、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を操作しカルネ村へと視点を合わせる。

 

「えっと………探索魔法(サーチング)の巻物を合わせて使うと、あらっ不思議、探す対象を映し出す事ができる」

 

 探索魔法(サーチング)巻物(スクロール)を使うと、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)にアインズの姿が映る。どうやら、アインズの方も何をしているのか分かったらしく慌てている姿が映し出されている。

 

「おっと、近すぎた」

 

 アインズから視点を離す、すると何かに騎乗している彼の姿が映し出された。因みにその隣にはナーベが立っている。

 

 丸くてつぶらな瞳、ふかふかしてそうな毛皮、四足歩行、丸々太った身体、尻尾は蛇のようになっている。ゼオスはその姿に見覚えがあった。

 

 前の世界で愛玩動物として飼われていたそれに酷似していたからだ。

 

「ジャンガリアンハムスター?」

 

 

『ぐほっ!?』

 

 大きなハムスターに乗っているモモンが落下した。ハムスターとナーベはモモンを案じて、駆け寄っている。

 

『いっっ……そうだよね!やっぱりジャンガリアンハムスターだよね!

 

 でも聞いてよ!皆、強靭とか、偉大なる力と叡智を思わせる姿とか言うんだよ!ナーベでさえ、力強そうな眼をしてるって!

 

 ねぇ、ユウちゃん!俺がおかしいのかな?!』

 

 

「いや、愛らしいハムスターにしか見えない」

 

 

『ユウちゃんが言うなら間違いないね!よかった!俺は正常だったんだ!』

 

 

「モモちゃん……落ち着いて」

 

 

『あっ……あぁ、ごめん』

 

 

「それにしても、デカいハムスターとは………驚いたな」

 

 

『あぁ、俺も驚いたよ。あっ……漆黒の剣とンフィーリア・バレアレがこっちに来た。また連絡するよ』

 

 

「あぁ。大丈夫だと思うけど、気を付けてくれ」

 

 

『了解』

 

 そう言うと、メッセージの魔法が切れた。

 

「………ハムスターに跨る不死王…………ぷっ……ククククク」

 

 ゼオスはデカいハムスターに跨る友の姿を再び想像するとソファーの床に転がり、腹を抱えて笑おうとする。だが近くで番外席次が寝ているので大声を出せずに、笑いを必死に堪えていた。

 

「ぜぇぜぇ………ククク………やべぇ………写真に撮りたい。そしてドデカい額縁に入れてナザリックの廊下に飾って、仲間達やNPC達がどんな顔をするかみたい」

 

 等と考えているゼオス。だが直ぐに気を静めると、立ち上がった。

 

「はぁ………こんな所をセバス達に見られると余計な心配を掛けるな。さてと…………八本指とか言う、愚かな存在……どう料理してくれようか。

 

 なんにしても、まずは情報収集か。取り敢えず、一旦、ナザリックに戻るか」

 

 ゼオスはそう言うと、部屋から出た。

 

 

 

 

 

 

 

「セバス、ソリュシャン、今いいか?」

 

 掃除をしている2人に声を掛けるゼオス。

 

「これは旦那様、如何なさいました?」

 

 

「少し、ナザリックに戻るから後の事は頼むよ」

 

 

「了解しました」

 

 

「じゃ、宜しく………ゲート」

 

 ゲートを使用し、ナザリックへ向かうゼオス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ナザリック大墳墓~

 

 ナザリックに移動したゼオスは、異空間に仕舞ってあるアイテムの中からリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを取り出す。そして、指輪の力を使い転移した。

 

「お帰りなさいませ、ゼオス様」

 

 玉座の間に転移すると、ゼオスをアルベドと複数のNPC達が出迎えた。

 

「あぁ、ただいま。すまん、アルベド、話があるんだが」

 

 

「はい。では執務室でお聞きします」

 

 そのまま、ゼオスとアルベドは執務室に移動した。

 

 

 

 

 

 

 

「それではナザリックに戻られたのは……」

 

 

「人手を借りたくてな」

 

 

「ならば命令して下されば、直ぐにでもそちらにお送りしましたのに」

 

 それもそうだ。至高の存在であるゼオスの命であれば、NPC達は喜んで、我こそはと志願する事だろう。

 

「力を借りると言うのに、メッセージで呼びだすと言うのもな。やはり顔を見て言わないと」

 

 

「私共の様な存在にまでその様な対応………身に余る光栄です、深く感謝いたします」

 

 普通は命令するだけで済む事だが、態々、出向いてくれた事に感謝するアルベド。

 

「まぁ……丁度、お前にも話があったしな」

 

 

「私にですか?」

 

 

「あぁ………アルベド、お前はアインズ……モモちゃんの事が好きか?」

 

 

「えっ……はっはい!私はアインズ様の事を愛しております!」

 

 始めは何を聞かれたのか分からなかったが、アインズの事だったので直ぐに息を荒げて「愛している」と返答するアルベド。

 

「そっか…………アルベド、お前は至高の42人に従うべく創られた存在だよな?」

 

 

「はい、勿論でございます。至高の方々に奉仕する為に我等は創られました。御望みとあらば何なりと御命じ下さい」

 

 

「なら命令する……『モモンガを殺せ』」

 

 

「はっ?」

 

 その瞬間、世界が止まった。




 やっとハム助、出せた。

 最後の言葉の理由は一体何なのかは次回をお楽しみに。


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EP19 星の守護者、水星の力を使う

「モモンガを殺せ」

 

 至高の存在、アインズ・ウール・ゴウンの中でも最強と言われ、モモンガと親交の深いゼオス・アルドライグがそう言い放った。

 

 アルベドはそれを聞いた瞬間、思考が停止してしまった。そして、悪い冗談だと思った。幾らモモンガの友人であっても言って良いことと悪い事がある。

 

「ゼオス様……お戯れが過ぎます」

 

 

「戯れ?何を言っている?我は本気で言っているのだぞ」

 

 

「アインズ様とゼオス様は仲のいい御友人の筈です。ですが、御友人であっても、言って良い冗談と悪い冗談がございます」

 

 アルベドは混乱する頭を無理矢理、落ち着かせながらそう言う。

 

「アルベドよ……これが、冗談を言っている顔に見えるか?」

 

 アルベドはゼオスの顔を見る。その表情と放たれる威圧を肌で感じ、これは嘘でも冗談でもない、本気でアインズを殺せと言っていると。

 

 それを理解したアルベドの行動は速かった。

 

「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 自分の忠義と愛を奉げるモモンガの為にも、ゼオスを此処で殺す。彼女は自分の所持する緑色の微光を宿した斧頭を持つ3F(バルディッシュ)を呼び出すと、迷いなくゼオスへと振り下ろした。

 

 ―ガキィン!―

 

「!?」

 

 何か堅い物に直撃した音が響く。そしてアルベドは信じられない光景を目にした。

 

 ゼオスの足元から水晶の様な物が生え、アルベドの3Fを受け止めていた。加えて、徐々に3Fは水晶に侵食され始める。

 

「!!」

 

 その水晶に悪寒を感じたアルベドは直ぐに3Fを手離して、ゼオスから距離をとった。

 

「なっ……これは!?」

 

 アルベドはゼオスの足元から生える謎の水晶が広がり続けるのを目にした。

 

「此奴を見るのは始めてか………此奴は侵食固有結界・水晶渓谷。触れれば最後、綺麗なクリスタルの彫像の出来上がりってね。

 

 かつて我が屠った、アリストテレスの1匹の能力だ」

 

 ゼオスがそう説明する、その間には部屋は水晶に包まれていく。

 

 アルベドは直ぐに逃走を選択する。このままでは勝ち目はない、一先ずは逃げ対策を整えるのが、得策と考えた。しかしゼオスの後ろにある唯一の出入り口は既に水晶と化しており使用不能。

 

(扉は無理………ならばリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの力で)

 

 アインズより貰ったギルド内を自由に転移できる指輪の力を使おうとする。

 

「!?」

 

 

「残念だが、リングの力を使う事はできない。何故ならこの水晶と化した場所は、既にナザリックの法則ではなく我の法則になっている」

 

 水晶渓谷、それは水星に住んでいたアリストテレスの固有能力。水晶と化した場所を自分がいた水星の環境へと変えてしまうと言う、凄まじい能力だ。生命体が触れれば、彼の言う通りクリスタルの彫像へと変わってしまうだろう。

 

「お前に選択肢をやろう………我に従うか、此処で死ぬかだ」

 

 そう言ったゼオスの瞳は虹色に輝き、蜘蛛の様な紋様が浮かんでいる。そしてこの部屋を凄まじい力が覆っている。

 

 アルベドは必死に頭を働かせ、ゼオスに対抗する策を考える。だがそんな彼女の思惑を感じ取ったゼオスは更にその力を強めた。

 

(そっそんな…………まだ力が………無理……無理だ。こんな……こんな化け物に敵う訳がない)

 

 彼女は、何故プレイヤーが至高の存在と呼ばれるのか、その中でも何故彼がナザリック最強と言われるのか分かった様な気がした。そして幾ら自分が防御に特化して創造された者であったとしても、これを止める事が不可能だと。その瞬間、彼女の選択は1つだけだ。

 

 せめて、アインズを裏切った者の手に掛かるくらいなら自ら死を選ぶ事だけ。そう考えたアルベドは自分の心臓を貫こうとする。

 

(モモンガ様………申し訳ありません)

 

 設定を変えられたとは言え、愛する主の事を思い、自決を実行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心臓を貫こうとした手が誰かにより止められる。止められた事に驚いて、目を開けると笑みを浮かべたゼオスがいた。

 

「はい、合格」

 

 

「ぇ?」

 

 まるで先程の事が嘘の様に笑っているゼオス。凄まじい力も、覇気もまるで感じさせない。邪気の全くない笑みだ。

 

「えっ?ぇ???」

 

 何が何なのか全く分からないアルベドの頭はこれまでにない程、混乱していた。

 

「はぁ~良かった、良かった。お前がモモちゃんを裏切る様な奴じゃなくて」

 

 

「えっ?……いっ一体なにを」

 

 

「本気で言ってる様に見えただろう?」

 

 

「はっ?」

 

 

ロール・プレイング(なりきり)は得意でね」

 

 

「でっでは……アインズ様を殺せと言うのは?」

 

 

「嘘に決まってるだろう、俺が親友を殺させる訳ないだろう」

 

 それを聞いてアルベドは全身から力が抜け、へたり込んでしまった。

 

「なっ何故!何故、この様な事を!?」

 

 

「あぁ、それについてはこれから説明するとしよう。取り敢えず」

 

 パチッと指を鳴らすと、部屋を覆っていた水晶が砕け散り、消滅した。

 

「さてと………よいしょっと」

 

 ゼオスはへたり込んでいるアルベドを抱え上げる。

 

「なっなにを!?」

 

 

「別に何もしないよ。椅子にでも座らなきゃ、話ができないだろう」

 

 そう言うとゼオスはアルベドを椅子に座らせた。

 

「さてアルベド………俺がなんで、あんな事をしたのかだったか。理由は簡単だ、お前の事を怪しんでいたからだ」

 

 

「………どういうことでしょうか?」

 

 そう言いながら、お茶の用意をしているゼオス。

 

「私に至らぬ所が在ったからあの様な演技をしたという事でしょうか?」

 

 

「至らぬと言う訳じゃない。こっちの世界で再会した時、それからの忠誠の儀……違和感を感じていた。他のNPC達と違う言い知れない何かをな。

 

 俺はそれを確認しないとならなかった………それが何なのかをな。それが万が一、アインズを裏切る様な物なら俺はお前を排除しなきゃならなかったからな。でもそれがアイツを裏切る様な物でなかったから、ちょっと安心したよ。

 

 なんせ、この俺に向かって来たんだからな」

 

 そう言って、紅茶を入れるとアルベドの前に置いた。

 

「取り敢えず飲め………ちょっとは落ち着くぞ」

 

 どうやら、未だ混乱している彼女を落ち着かせる為に紅茶を入れた様だ。彼女は混乱しているが、未だゼオスに対する危険視が解けないでいた。

 

「大丈夫だ、毒なんぞ入ってない」

 

 ゼオスがそう言うと、アルベドは渋々と紅茶に口を付ける。

 

「さてと………今回の事でお前がアインズに絶対の忠誠を誓ってる事は分かった。

 

 それともう1つ、アルベド………お前、アインズ・ウール・ゴウン(みんな)の事を恨んでいるな?」

 

 

「!?」

 

 アルベドはそう指摘されて動揺し、彼から視線を外し、俯いてしまう。

 

「やっぱりな………」

 

 どうやら彼にはある程度、この答えになる事が予測できた様だ。

 

「タブラさんの事も……………か?」

 

 ゼオスの問いに彼女は俯いたまま、頷いた。それを聞いた、彼は手で顔を覆い天井を仰いだ。

 

「タブラさん…………どうした物ですかね?」

 

 彼は共に語らい、戦った友の顔を思い浮かべる。ある事を話す事を決めた。



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EP20 星の守護者、語る

 ―ある者達の話をしよう。

 

 未だユグドラシルが始まった頃の話だ。プレイヤーの間では異形種を一定数PKすることで事でなれる職業があった、それが当時はかなり強かったので、異形種狩りが起こっていた。

 

 後に不死王(オーバーロード)と呼ばれるモモンガもそれに巻き込まれ、当時はウンザリしていた。

 

 そんな時に立ちあがったのが、後に公式チートの1人としてゼオスと肩と並べるたっち・みーだった。彼はモモンガを含めた仲間達と共に異形種狩りを怖れずに立ち向かった。

 

 これがギルド・アインズ・ウール・ゴウンが始まったきっかけである―

 

 

「これがアインズ・ウール・ゴウンの始まり……そして後に俺やタブラさん、ペロロンチーノが入団したんだ」

 

 アルベドはそれを黙って聞いてた。それは自分達NPCが決して知る事ない話だからだ。

 

「(さて此処からだな)……さて、アルベドよ。此処から先は俺達だけしか知らぬ世界の真実だ、スケールがデカすぎて信じられないかも知れんがな」

 

 そう言うと、彼は頭をフルに回転させ、伝説(筋書き)を考える。

 

「俺やアインズ、タブラさん、たっちさんと言った至高の存在(プレイヤー)と言うのは、日常的に2つの世界を行き来していたんだ」

 

 

「!?」

 

 アルベドは一体、何を言っているのか分からなかった。世界を行き来している?その様な事は不可能だと言う答えに行きつく。

 

「まぁ、普通は信じられんだろう。だが事実だ、俺もアインズも、タブラさんも、【リアル】と言う世界、そして【ユグドラシル】の世界に身体を持っていた。この2つの世界にある2つの身体を意識が行き交っていた」

 

 

「2つの世界を……」

 

 

「それが日常だったからな、俺も皆も疑問なくそれを行っていた。だが世界を越えるなんて事はな、本来できる訳がないんだ。だから無理が祟ったんだろうな、ギルドのメンバー達は段々と世界を越える能力を失った」

 

 

「なっ!?」

 

 

「俺やモモンガはなんとか能力を喪う事はなかったがな。だが他の皆は…………」

 

 

「そっそんな……では至高の方々は」

 

 

「来たくても来れなかったんだ……リアルでの生活(色々な事が重なってな)

 

 

「私は……私は………そんな…ことも………知らずに……なんという……ぅう………あぁぁぁぁぁ!」

 

 アルベドはモモンガを除くアインズ・ウール・ゴウンの全てを恨んでいた。

 

 その理由は簡単だ、【自分達(NPC)は捨てられた】そう思っていたからだ。だが今、そうでないと知った。そして、自分達の元へ来れない理由があった。だと言うのに、自分は何も知らず……いや、知ろうともせずに自分達を捨てたと決めつけ、至高の御方を、創造主であるタブラ・スマラグディナを憎んでしまった。

 

 そんな自分に対する嫌悪感と罪悪感が彼女の中で暴れ回る。

 

「アルベド………1つだけ言っておく、自害等考えるなよ。今のナザリックにはお前が必要だ、死んで詫びようなどと考えるな」

 

 

「………………」

 

 何とか泣き止んだ彼女にそう言うゼオス。しかし、今の彼女に何と言っていいのか分からない至高の存在。なので、冷めてしまった紅茶を入れ直し、彼女に差し出した。

 

「アルベド…………未だ、タブラさんや他の皆の事がまだ憎いか?」

 

 

「そっそれは………」

 

 アルベドはゼオスにそう言われて、言葉が出なかった。直ぐにその答えは出ない。

 

「まぁ直ぐには答えは出ないか。それでも構わない……俺が同じ立場なら困惑する。こういう事は時間が解決してくれるからな………だがこれだけは覚えておいて欲しい。

 

 タブラさんはお前やルベド達を愛している」

 

 ゼオスはそう言い切った。そしてその理由を続いて述べた。

 

「お前達は知らないだろうけどな………俺は殆どのNPC達の創造に関わってるんだ」

 

 

「!?」

 

 

「だから俺は知ってる。シャルティアを創造する時にペロロンチーノがどれほど(どうすれば運営に目を付けられないか)悩んだか、アウラとマーレを創造する時に茶釜がどれだけ(男の娘にする為に服装に)細心の注意を払ったか………。

 

 お前を創造する際なんて、タブラさんも苦しんでたんだぞ。設定は自分で考えていたが、装備やアイテムの素材を集める為に他の皆に頭を下げてな。お前が嫁に行ったらどうするんだって、言われた時は泣きながら喧嘩してたんだぞ」

 

 

「タブラ・スマナグディナ様が………そんな事を」

 

 

「今は頭が一杯一杯だろうから、何も言わん。だがタブラさんがお前達に与えた愛だけは嘘でないと分かっていてくれ………俺が望むのはそれだけだ」

 

 ゼオスはそう言うと、席を立った。

 

「ぜっゼオス様!どうか!どうか!私に罰をお与えください!私は至高の御方に憎しみを抱きました!それは許される行為ではありません!」

 

 

「今は自分に与えられた使命を全うしろ。

 

 お前の答えが出た時、罰を与えてやる」

 

 ゼオスはそう言うと、そのまま執務室を去って行った。

 

 そんなゼオスをアルベドは一礼し見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~アルベドside~

 

 私は憎んだ………私達を捨てた至高の御方達を。

 

 創造された身には決して許されないことだ。創造して下さった方々への叛逆心だ。

 

 私はそれを必死に隠した、アインズ様に、ゼオス様に悟られない様に。でも見抜かれてしまった。

 

 そして、ゼオス様から真実を聞かされた。至高の方々は2つの世界を行き来し、数々の偉業を成された。だがその力は弱り、私達の居た世界に来れなくなってしまったと。

 

 それを聞かされた時、私は何も知らずに御方々を恨んでいた己を恥じ、そんな自分を何よりも憎んだ。

 

 だが、そんな私には死は許さず、時間を与えられた。ゼオス様は、時間を掛けて答えを出せばいいと仰って頂いた。

 

 それにより、私は苦しむだろう、悩むだろう、それでも答えを出さねばならない。だが、今はアインズ様やゼオス様に与えられた命を全うする。

 

 それが至高の方々に与えられた私の役目だから。



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EP21 星の守護者、アルベドの心を救う

今回は、後にアインズ様がする行為を主人公が行います。


 ~ゼオスの自室~

 

「はぁ~………やっぱりか」

 

 ゼオスは自分の部屋にある豪華なベッドの上に身を投げ出すと、枕に顔を埋める。

 

(ある程度、予測はしていたが………アルベドがねぇ。果たして、本当にこれでよかったのだろうか?)

 

 先程のアルベドに事実を改竄して話した。

 

(改竄と言うより、殆ど捏造に近いけど………とはいうものの、タブラさんがアルベドに愛情を持っていたのは事実だし…………万が一に備えて、モモちゃんと口裏を合わせて………いや、でもそれをすると、どうして説明するに至ったかを言う必要が………駄目だな。

 

 取り敢えず、口外しない様にアルベドに釘を差しておこう。こういう場合は口止め料を払った方が良いかな。あっ、そうだ。アレを渡そう)

 

 ゼオスは一先ず、これからの行動を決めると起き上がる。

 

「?」

 

 その時、違和感を感じた。

 

「はぁ~」

 

 何を思ったのか、再び顔を枕に埋める。

 

「スンッスンッ…………何やら良い匂い。香水でも振ってるのか?」

 

 自分の枕から香る匂いを嗅ぐ。

 

「はぁ~落ち着く。俺等の世界で嗅いだ香水の匂いはきつくて、我慢ならなかったけどこれならありだな。

 

 今度、メイド達にどんな香水なのか聞いておこう」

 

 ゼオスはそう言うと、立ち上がりアルベドのいる場所へと向かう為に指輪の力を使い転移した。

 

 彼はこの時、勘違いしていた。一般メイド達は清掃を行う。しかし、ゼオスは部屋は普段から鍵をかけている為、メイド達は入れない。因みに本人はそれを忘れているのだ。

 

 だと言うのに、何故か部屋が綺麗に保たれているのは不思議だが元々ゲームの世界という事で気にしてはいけない。

 

 ならば、何の匂いかというと

 

『暇ね』

 

 番外席次は部屋から出れなかったので、殆どベッドでゴロゴロと。

 

『すぅすぅ』

 

 寝る時もベッド。つまりそう言う事である。

 

 この時、後に親友も同じ様な事をする等、全く思っても無かったゼオスであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~執務室~

 

 ―コンッコンッ―

 

「アルベド、未だ居るか?」」

 

 ノックすると足音と共に扉が開き、アルベドが出迎えた。

 

「少しは落ち着いたか?」

 

 ゼオスの言葉に首を縦に振り肯定した。未だ目が赤く腫れている。

 

「入ってもいいか?」

 

 

「はい」

 

 アルベドの許可を得て部屋に入るゼオス。

 

「アルベド、お前も座れ………少しは気持ちの整理はついたか?」

 

 ゼオスはソファーに座る。彼女に座る様に促すとそう言った。

 

「それは………」

 

 

「未だ整理できないのは致し方ない事だ………時間を掛けて整理すればいい」

 

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

「それはそうと………先程、お前に話した事はアインズには黙っておいてくれ。あの話は俺達の中でも超重要機密だからな、俺がアインズに怒られてしまう」

 

 

「そんな機密を私に……」

 

 

「お前の胸に刺さった棘を取る為だからな………でも、これだぞ」

 

 人差し指を口元に当てながらそう言った。

 

「畏まりました。このアルベド、命に代えましても先程の話を口にしないと誓います」

 

 

「それでだ………これをお前に渡そう」

 

 そう言うと、空間の歪みから紐で封された少し大きな木箱を取り出した。

 

「これは?」

 

 

「口止め料と言う奴だ」

 

 

「こっこの様な物、頂けません!」

 

 

「いいから納めておけ。元々それはお前専用に用意した物だからな」

 

 

「私専用……どう言う事でしょう?」

 

 

「まぁ、開ければ分かる」

 

 アルベドは少し戸惑いながらも、ゼオスに促されたので箱を開ける事にした。結ばれている紐を解くと、そっと蓋を開けた。

 

「布?」

 

 中には白い布が入っていた。アルベドは蓋を横に置くと、その布を手に取ってみた。布と思っていたそれは、ドレスだった。

 

 清純を思わせる純白のドレスとベール、金で出来たティアラ、パンプス、水晶の花のブーケが入っていた。

 

「こっこれは」

 

 

「俺とタブラさんが考案したウェディングドレスだ」

 

 

「!?」

 

 

「茶釜さん、やまいこさん、餡ころもっちもちさんが結婚という話題で盛り上がっていたのを聞いた男性陣が【女性NPC(自分の娘)達が嫁に行ったら】って話になってな。その流れで花嫁衣裳を作る事になったんだ。

 

 皆、それを作るのに熱を入れ過ぎて一時期ナザリックは資金難になったくらいだ。(俺は資金の補填と素材回収で連れ回されたっけ)

 

 そう言う訳だ。だから納めてくれ」

 

 アルベドはその話を聞いて心打たれる。自分は……NPC(自分達)は本当に愛されていたのだと、それがハッキリとした形として目の前にあるからだ。

 

「あっ………あり……がとう……ございま……す」

 

 アルベドは喜びから涙が溢れてくる、彼女はそれを止めようとしても止まらない。それを見た、ゼオスはハンカチを彼女に差し出した。

 

 少し時間が経ち、彼女は落ち着いた様で、涙は止まった様だ。

 

「ゼオス様………これまでの御無礼、真に申し訳ありません」

 

 

「お前の全てを許す。だから気にするな。もし気にするのであれば、これまで以上にナザリックに………いや、此処は敢えて、モモンガに尽くせと言おう」

 

 

「はい!」

 

 こうして、一先ず、アルベドの心のつかえを少しでも取り除けて良かったと考えているゼオス。

 

「さて、俺はそろそろ戻るとしよう。ではな」

 

 

「ゼオス様」

 

 

「ん?」

 

 

「いってらっしゃいませ。御戻りを御待ちしております」

 

 アルベドは笑顔でそう言うと一礼した。ゼオスはそれを見て、表面上だけでない笑顔であると感じ、それを喜んだ。

 

「あぁ……行ってくる」

 

 ゼオスはそう言うと、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの力を使うと自身の部屋へと転移した。




 ・NPC専用装備【花嫁衣裳】

 一時期、自分の創った娘(娘)達が結婚すると言う設定で創った装備。どんな事をしても決して汚れる事無く、装備すると家事スキルが上昇するだけの装備

 家事スキルが上がるだけだが、着用すると色々なエフェクトが出現する為に、かなり金が掛かっており、一時期ナザリックは資金難になり、主人公が資金の補填と素材回収で働かされた。

 アルベドだけでなく、シャルティア達の分もあるが、それぞれ創造主の個性が出過ぎたので、運営の介入がありそうだったのでゼオスや女性陣により修正された。




「これなんてシャルティアに似合う筈だ!流石俺!」


「却下、露出が多すぎる」


「えっ!?ゼオっち!酷い!これ見てくれよ!ぜlt「黙れ、黒歴史晒すぞ」何処をどう直せば宜しいでしょうか、お姉様!」

姉に言われて(脅し)素直に受け入れたペロロンチーノ。


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EP22 星の守護者、NPC達を混乱させる

 漸く、Ⅲ期が始まりました。

 これからが楽しみですね。

 今回は、Ⅲ期の1話で出て来た彼女達が出てきます。


 ~ゼオス自室~

 

「ふぅ………作戦成功。いやぁ~あの時の装備がこんな事に役立つとは………一時期は俺を金庫代わりにするなと思っていたが、こういう時には役に立つな」

 

 取り敢えず、アルベドの口止めが成功したのでほっとするゼオス。

 

「安堵したらちょっと疲れたな…………フム、少し甘い物が食べたいな。えっと確か食堂が在ったな」

 

 そう言って、部屋を出て食堂に向かうゼオス。誰かに言い付ければ済む話なのだが、そう言った事に慣れていない彼は食堂に歩いて向かうので在った。

 

 

 数分後、食堂に続く扉の前に辿り着いた。何故、徒歩で来たのかというと

 

「食事は食べる前と、食べてる時が楽しみだからな。転移しちゃうとその1つの楽しみがなくなってしまうからだ…………俺は誰に向かって言ってるんだ?」

 

 

 

 

 

 ~食堂内~

 

「はぁ~相変わらず、美味しそう」

 

 

「そうだね」

 

 食堂の中には一般メイド……戦闘能力の持たない清掃などを行うメイド達である。そんなメイド達やNPC達は此処で食事をとっている。

 

「それじゃ、食べようか」

 

 一般メイド、美しい金髪のシクスス、短髪のフォアイル、髪に星の様な輝きを宿すリュミエールの3人は共に食事をする為に席に着いた。

 

「えっと、シクススだったな。此処は何処で食事を貰えばいいのだ?」

 

 とシクススに後ろから声が掛かる。どうやら何処で食事を貰うのか分からない様だ。

 

「そんなのあそこに決まってるでしょ」

 

 

「そうか」

 

 

「食事中には話しかけないで欲しいんですけど」

 

 彼女達は食事中には喋る事はしない様で、喋り掛けられた事で少しご立腹の様である。

 

「すまないな。食事中は静かにするべきだったな」

 

 

「そうそう……………2人とも、どうしたの?」

 

 普段、食事を始めたら喋る事無く、行儀よく食事を行うメイド仲間のフォアイルとリュミエールは緊張しているのか立ち上がって固まっている。

 

「しっ………しっ……」

 

 

「うっ後ろ」

 

 2人はまるでこの世の終わりを見た様な顔をしていた。そして周囲を見回してみる、この場にいる全員が立ち上がり固まっている。

 

「ん?」

 

 シクススは手を止めて、後ろを振り返ってみた。

 

「成程、あそこに並んで貰うのか。会社の食堂となんの代わりもないな。

 

 こういう所は向こうと変わらないのだな。いや、創造した俺達の影響という事か」

 

 顎に手を当てて食事の受け取り口を見つめながら、そう呟いている至高の42人の1人ゼオス・アルドライグの姿が在った。

 

「ぜっゼオス・アルドライグ様!?」

 

 

「おう。シクスス、助かったぞ」

 

 

「もっ申し訳ありません!」

 

 シクススはどうやら自分が仕出かしてしまった事を理解した。ゼオスと分からなかった為にタメ口を聞いてしまい、挙句、話しかけられた事を怒った。そんな事は在ってはならない。

 

 NPCは至高の存在達に創造された身であり、彼等にとって神も同然だ。そんな相手に対してとっていい態度ではないからだ。

 

「何故に謝っている?」

 

 

「しっ至高の御方であるゼオス・アルドライグ様に御無礼を働いてしまい………わっ私の命をもって」

 

 

「謝罪しなくていいぞ。お前等にとって食事は必要不可欠で、重要な事だと知ってるからな。それを邪魔されたなら怒るのは当然だ」

 

 

「しっしかし」

 

 

「フム、そこまで気にしなくていいぞ。この場にいる皆も気軽に話しかけてくれていいんだが…………どうも、皆固すぎる。あっ、そうだ。何時も、ナザリックの清掃ご苦労。他の皆も、何時も助かっているぞ」

 

 この場にいる全てのNPCがゼオスの言葉に胸を打たれた。自分達の様な下っ端でしかない者達に労いの言葉を貰えたのだから。

 

「それでは食事をいt………メッセージ?モモ………じゃなかった。アインズか?」

 

 アインズの名前が出て場が騒ぎ出す。だが直ぐに至高の存在の邪魔になると考えたのか、黙ってしまった。

 

「もう直ぐ、エ・ランテルに着くんだけどこのままハム助に乗って行くのが恥ずかしいどうすればいいって?…………フッ。

 

 大丈夫だろう。俺等以外にその生き物を強大なモンスターと認識してるらしいし…………尊敬の眼差しで見られるんじゃないか」

 

 完全に人事なので、面白そうに笑いを堪えながらそう言うゼオス。とは言え、此処で話をすると、NPC達に迷惑が掛かると思ったのか、出口に向かい身を翻す。

 

 何かに気付いた様で、シクススに向かい手を伸ばした。

 

「!?」

 

 どうやら、彼女の頬に付いていたケチャップを取っただけの様だ。そして手で取ったケチャップを舐める、最後に彼女の頭を撫でるとそのまま出て行ってしまった。彼は此処まで物凄く自然体で行っていた。

 

 場は唖然としてしまう。そして全員、シクススに視線を向ける。当の本人は………

 

 至高の存在であるゼオスにそんな事をされ、完全にショートしてしまっているシクスス。そして数秒後、彼女の足元は鼻血で血の海となってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ゼオスは何故シクススにあんな事をしたのですか?~

 

「えっ、姪っ子には何時もしてたぞ?普通のことだろう?」

 

 

【これは至高の存在だけが許される事なので、良い子はマネしない様に。

 

 特に上級のNPCにすると確実に命を失います】←ナザリックに近付いた時点でだけど。



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EX1 幸せ

 ~???~

 

 真っ白な空間の中、番外席次(ベルンカステル)は目を覚ました。

 

「此処何処?」

 

 

「何をしている、ベルンカステル」

 

 

「ぜお……ユウ?」

 

 

「落ち込んだ顔をしているぞ?不安か?」

 

 

「別にそんなことは………!」

 

 ユウはベルンカステルの頬に手を添える。

 

「俺と一緒になるのは不安という事か?」

 

 

「???」

 

 

「そうか………」

 

 何やら凄く残念そうに落ち込むユウ。

 

「そっそんなことない!貴方は色々な事を教えてくれるし、一緒にいて退屈しないし………そっそれに一緒にいて…………ポカッポカッするもの」

 

 

「そうか………それは良かった!」

 

 ユウはそう言うと、ゼオスの姿に戻り彼女を抱き上げてくるっくるっとその場を周る。そして、そのままお姫様抱っこの状態へと移行する。

 

「えっ?……ぇえ!?」

 

 

「この程度、毎日しているだろう?」

 

 

「まっ毎日?!」

 

 

「今日は変だぞ。あっ、そうか。これがなかったから、機嫌が悪いのか」

 

 そう言うとゼオスは彼女の頬に自らの唇を触れさせた。つまりキスである。

 

「!?」

 

 

「全く、これくらいで機嫌が悪くなるとは………母親失格だぞ?」

 

 

「ふぇ?」

 

 ゼオスの言葉が全く理解できなかった番外席次(ベルンカステル)。母親とはどう言う事だろう?

 

「父上~」

 

 

「母上~」

 

 何処からともなく小さい子供が2人走って来た。

 

「あ~!父上と母上、またイチャイチャしてる!」

 

 

「イチャイチャ~!」

 

 

「えぇ!?」

 

 

「こらこらっ、親をからかうな」

 

 番外席次(ベルンカステル)は全く、状況が理解できずにいた。この子供達は父と母と言っている、そしてこの場にはゼオスと自分達しかいない。

 

 ゼオスに似た子供は左右の髪の色が違い、目は右眼が黒、左眼が紅。

 

 番外席次(自分)に似た子供は髪は銀髪、右眼が紅、左眼が白となっている。

 

 どう見ても、自分達の特徴を受け継ぎ過ぎている。

 

「ねっねぇ…………これは夢?」

 

 

「夢な訳ないじゃないか。ゲンジツだよ?」

 

 

「そっか、現実なのね………そっかぁ~」

 

 現実でも、夢でも、こんな良い出来事はどちらでもいいやと思い、今を楽しもうと考える番外席次(ベルンカステル)

 

「母上、あそぼ」

 

 

「父上も~」

 

 

「えぇ」

 

 

「あぁ」

 

 家族4人楽しく遊び始めた。

 

 御飯事、追いかけっこ、かくれんぼなどで遊んだ後に、皆で食事をした。そして子供達と共に入浴し、上がった子供達の身体を拭くゼオス()

 

 そして子供達に絵本を読んで聞かせた。内容は「モーモンの魔神退治」、モーモンと言う人物が御爺さんと御婆さんに拾われて、魔神退治に行く為に旅に出ると言う物で。

 

 モーモンは途中で淫魔(サキュバス)吸血鬼(ヴァンパイア)、氷武者、双子のエルフ、悪魔を仲間にして、魔神島へ赴き、魔神を倒して、宝をうb………貰い、お爺さん達の元に戻り、淫魔(サキュバス)吸血鬼(ヴァンパイア)に毎日、よb………プロレスをして楽しく暮らす物語だ。

 

「そしてモモちゃ………モーモンは楽しく暮らしましたとさ(笑)」

 

 

「あらっ、もう眠ったみたい……」

 

 番外席次(ベルンカステル)は子供達が寝たのを確認すると、2人に布団を掛ける。

 

「可愛いな」

 

 

「えぇ」

 

 

「そういや………2人が弟か妹が欲しいって」

 

 

「………バカ」

 

 ゼオスにそう言われて顔を赤くして答える番外席次(ベルンカステル)

 

「じゃあ………3人目いっとくか」

 

 そう言うゼオスは起き上がると、番外席次(ベルンカステル)を抱えて、自分達の寝室に向かうのであった。

 

 それから先の事は夫婦しか知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~王都リ・エスティーゼ 高級住宅街 ユウの屋敷~

 

「なんで番外席次(こいつ)は幸せそうな顔で、鼻血を噴き出してるんだ?

 

 うわぁ………白いシーツが、赤いシーツになってるよ。致死量じゃないか、これ?いや人外レベルならこれ位は大丈夫か?

 

 まぁ…………幸せそうだし、そっとしとこう。セバスとソリュシャンには後で謝るか、2人なら理由も聞かずに処理してくれそうだし」

 

 ナザリックから戻ったのは、幸せそうな寝顔なのに鼻血を噴き出している番外席次の姿だった。本当に幸せそうである。

 

ただ、ヒロインがしていい顔ではない。

 




夢オチでした。

三期1話のアルベドを見たら、番外ちゃんもありじゃね?という事でやってしまった。

何故、夢オチか現実だと、失神するからです。この作品の番外ちゃんは乙女なので(ここ重要)。


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EP23 星の守護者、困惑す

 ~王都リ・エスティーゼ 高級住宅街 ユウの屋敷~

 

「ば……ベルンカステル、顔色悪い様だが」

 

 

「えぇ………頭がふらっふらっする。でも何故かとてもいい物を見た気がするわ」

 

 夕食を食べながら2人は話をしていた。ベルンカステルは血が足りない様で少し、顔色が悪い。

 

「そうか………まぁ確かに幸せそうな顔だったな。もぐっもぐっ……ゴクッ………セバス、このステーキの味付けいいな。美味しいぞ」

 

 

「お褒めに預り光栄です。旦那様に御口に合い幸いにございます」

 

 セバスはユウに褒められた事で、喜んでいるのか何時もより声に覇気が篭っていた。

 

「悪いな、俺達に合わせて食事を作って貰って。俺は食べる必要はないが、食事はするのが楽しくてな」

 

 

「畏れながら申し上げます。私どもは至高の御方々に奉仕する為に創られた存在です。御方の御喜びになる事であれば、なんなりとお申し付け下さい。

 

 勿論、ベルンカステル様も何か御用があれば仰って下さい。貴女様は旦那様の御客人ですので」

 

 

「ありがとう、セバス」

 

 

「ありがとう、執事さん」

 

 セバスは2人に一礼した。

 

「そう言えば、ソリュシャンはどうした?」

 

 

「ソリュシャンでしたら、周囲の地理の把握と必要な日用品の買い出しに行っております」

 

 

「そうか…………ん?メッセージ?」

 

 ユウはメッセージを受信した。どうやら相手はアルベドの様だ。

 

『ゼオス様、少しお時間宜しいでしょうか?』

 

 

「アルベド、何か在ったか?」

 

 

『はい、緊急事態であります』

 

 アルベドの口から緊急事態と聞き、彼の眉がぴくっと上がると、ワイングラスに入った水を飲む。

 

「それほどにか?」

 

 

『はい………………シャルティアが反旗を翻しました』

 

 

「はっ?」

 

 あまりにも予想外過ぎる言葉だった為に、手からワイングラスが落下する。セバスは一瞬で中に入った水を一滴も零すことなくワイングラスを受け止めた。

 

「旦那様?」

 

 

「セバス、すまん………アルベド、悪いがもう1回言ってくれるか?」

 

 

『シャルティアが反旗を翻しました』

 

 何度聞いても、アルベドの言葉が一字一句変わる事はない。

 

「アインズには報告したか?」

 

 

『アインズ様には現在、エ・ランテルで冒険者としての御仕事中との事でしたので後ほどご報告致します』

 

 

「了解した………俺はアインズと合流後、直ぐにナザリックに戻る。故に報告は此方でする」

 

 

『畏まりました。御待ちしております』

 

 メッセージを切ると、真剣な表情に変わった。

 

「如何なさいましたか?」

 

 

「まだ確定した情報ではないので、今は言えん。セバス、ソリュシャンを直ぐに呼び戻せ。そして、屋敷の警戒レベルを最大まで上げろ。敵と襲撃してきた場合は、戦闘せずに直ぐに屋敷は放棄し、偽装したナザリックまで退避せよ」

 

 

「了解いたしました」

 

 

「ベルンカステル、お前は俺と共に付いて来い」

 

 

「分かった」

 

 

「【ゲート】」

 

 ユウは直ぐにゲートを開き、エ・ランテルへと向かった。

 

 勿論、アインズ………モモンとナーベと合流する為である。そしてアインズにシャルティアの事を報告すると、驚いていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ナザリック大墳墓 玉座の間~

 

 玉座に腰掛けるアインズは遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)でシャルティアを見ていた。

 

 現在、シャルティアは俯いたまま呆然としていた。その手には変わった形の槍を持っていた。

 

「【スポイトランス】か。戦闘になって、使用したという事だろうな」

 

 

「状態異常………アンデッドのシャルティアがと言う疑問が残るがな」

 

 ゼオスとアインズは目の前のコンソールに映るシャルディアの名前が赤くなっている。これはユグドラシルにおいては状態異常、・第三者による精神支配により敵対行動を取っていると言う場合だ。

 

 だがシャルティアはアンデッドの為、精神支配は受けない筈なのだが………現に起きている。それが不思議で仕方がない、2人。

 

「私やゼオスの対応に不満が在って反旗を翻したと言うなら分かるんだが……」

 

 

「俺がシャルティアと別れた際には特に変わった様子がなかったから、それはないだろう………多分」

 

 

「取り敢えず、会いに行くとするか。ゼオス」

 

 

「おうよ」

 

 シャルティアが何故反旗を翻したのか、未だ彼等には分からない。そしてこの出来事が彼等に大きな衝撃を与えた。




 やっと此処まで、来た。

 長かった~


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EP24 星の守護者、星に願う

 ~エ・ランテル近郊の森~

 

 生気のない眼で、茫然と立ち尽くしているナザリックの階層守護者、シャルティア・ブラットフォールン。

 

 彼女の前に(ゲート)が開いた。そして、(ゲート)からナザリックの支配者アインズとゼオス、その付き人としてアルベドと番外席次(隠蔽アイテム装備)が現れる。

 

「シャルティア」

 

 アインズがシャルティアに声を掛けるが、彼女は全く反応しない。

 

「シャルティア!貴様!謀h「下がれ、アルベド」はっ!申し訳ありません!」

 

 アルベドがシャルティアに何かを言おうとするが、アインズに止められた。彼は再び声を掛けるが全く反応はない。するとゼオスの方を見た。ゼオスはその視線の意味を理解したのか、頷くとシャルティアの方へと近付いていく。

 

「シャルティア」

 

 

「…………………」

 

 

「シャルティア」

 

 

「…………………」

 

 2度声を掛けるが、やはり反応はない。

 

「反応なしか…………ならっ」

 

 ゼオスの目が虹色に輝くと、彼の全身から凄まじい力が溢れる。

 

「『シャルティア………始まりの真祖の我の命である、我が声に応えよ』」

 

 ゼオスはアリストテレスであると同時に、始まりの真祖(ロード・オブ・ヴァンパイア)だ。総ての吸血鬼に対して、絶対の命令権を持っている。それを今、行使した。これを行使されれば、吸血鬼と言う種である以上は彼の命令に従う事になる。

 

「………………………」

 

 だがシャルティアは返事をする所か、全く反応しない。

 

「無理か………」

 

 

「その様だな。ならこれを使うしかないか」

 

 ゼオスは駄目だった為に落胆し、アインズは指に嵌めた指輪を見せる。ゼオスはそれを見て「あっ……それね」と納得した様な顔をする。

 

「それは?」

 

 

「これは超・超・超!レアアイテム!流れ星の指輪(シューティングスター)!超位魔法【星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)】を経験値消費無しに、即時発動可能なアイテムだ(これを手に入れる為に夏のボーナス全部ぶっ込んだんだよなぁ)」

 

 

(皆、ボーナスぶっ込んでたみたいだけど…………5000円で3つ出たよな。それを皆に言った時、凄い眼で睨まれたっけ)

 

 と考えているアインズとゼオス。

 

「超位魔法」

 

 

「アルベドは聞くのは初めてか」

 

 

「はい。第10位階よりも上に存在すると言われる魔法だという事は知識としては知っております」

 

 アインズがアルベドにそう説明した。

 

「そんな魔法があるんだ」

 

 

「あぁ………俺もアインズも、それを使える。まぁ1日に回数制限があるし、経験値を消費するし、発動までの時間は長い、リキャストタイム(発動不可時間)は課金アイテムでも短縮不可能と言う使い所を考えなきゃならない代物だ」

 

 番外席次の言葉にゼオスは超位魔法についてそう説明した。そんな中、指輪を空に向けアインズはその力を発動しようとしていた。

 

「さぁ、指輪よ!俺は願う(I WISH)!」

 

 アインズの言葉と共に指輪が光りだし、彼の足元に魔法陣が展開した。

 

「シャルティアに掛けられた効果を打ち消せ!」

 

 アインズはそう願った。だが次の瞬間、魔法陣は音を立てて砕け散った。

 

「「!?」」

 

 これにはゼオスも、アインズは驚愕する。そして思考を巡らせ最悪の答えに行き着いた。

 

「撤退だ!早くしろ!」

 

 

「お前もだ!」

 

 アインズはアルベドに、ゼオスは番外席次にそう言った。彼女達は困惑しながらも、2人の元に駆け寄った。アインズとゼオスは直ぐに転移魔法を発動し、この場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転移魔法でシャルティアの元から離れたゼオスとアインズ。2人はアルベドと番外席次の元から離れる。

 

「クソがぁぁぁぁ!クソッ!クソッ!クソォォォォォ!!!」

 

 アインズは叫びながら、地面を蹴る。彼の筋力は凄まじく1度の蹴りで地面が抉れる。それを幾度も繰り返し、その度に精神抑制が発動している。3回、4回と精神抑制が行われ漸く落ち着きを取り戻した様だ。

 

「オオオォォォォォォォォ!!!!」

 

 ゼオスも同じ様に叫びだすと、大きく手を振り下ろした。すると彼の前の地面と森の一部に大きな爪痕を残した。

 

「すまない………先程の失敗は忘れてくれ」

 

 

「はぁはぁ………見苦しい所を見せたな」

 

 

「はっはい……しかし、一体何が起きたのでしょう?」

 

 

「指輪の力を発動したが、願いは聞き届けられなかった」

 

 アインズの言葉に驚くアルベド。至高の存在の持つアイテムが効かなかった等、普通は在り得ない話だからだ。

 

「可能性は幾つかあるが、最も高い可能性は……」

 

 

「あぁ………世界級(ワールド)アイテムだ」

 

 ゼオスとアインズはこの世界に来て、始めて危機感を覚えた。



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EP25 星の守護者、不死王と共に決断する

 ~ナザリック ゼオス私室~

 

「はぁ………可能性としてあるアイテムは強制命令(キング・オブ・ギアス)皇帝の勅令(エンペラーズ・オーダー)………もしくは完全なる狂騒を使い、精神支配系のアイテムを使ったという可能性も」

 

 ゼオスは一先ず自分の部屋へと戻り、思考を巡らせていた。自分が思いつく限りの可能性を口にし、ブツブツと呟いている。

 

「精神支配と言えば……【傾城傾国(ケイ・セケ・コゥク)】よね」

 

 ゼオスの独り言を聞き、番外席次がそう呟いた。

 

「ケイセケコゥク?」

 

 

「アンデッドでも、吸血鬼でも、精神支配できる神具よ」

 

 

「ケイセケコゥク……けいせけこく……けいせいけいこく……傾城傾国!?」

 

 ゼオスは驚き、番外席次に詰め寄る。

 

「それはアレか!?龍の刺繍の入ったチャイナ服か!」

 

 

「えっ……だk……きゃ!」

 

 ゼオスは勢い余って彼女をベッドに押し倒す形と成り、2人の顔が近くなる。

 

「えっと……」

 

 

「どんな道具!?」

 

 

「えっ………えぇと、白い布にドラゴンの刺繍が入った服よ」

 

 

「クソッ………俺のミスか。もっと詳しくお前から聞いて置くべきだったな。だが、その可能性が高いな。情報感謝するぞ」

 

 

「うっ……うん………そっそれよりも………その」

 

 番外席次が顔を赤くしており、ゼオスは落ち着いて今の状況を考えてみた。

 

「…………すまん」

 

 ゼオスは彼女に謝罪すると、彼女の上から離れる。

 

「シャルティアの件、恐らく傾城傾国だろう。逆にその名が出てきた以上、それ以外の可能性がない訳ではないが………ケイ・セケ・コゥク……傾城傾国が訛ってそうなったのか?

 

 六大神とやらが、何処かのプレイヤーなら可能性は十分ある。

 

 クソッ!プレイヤーなら、ワールドアイテムを所持していてもおかしくないのを失念していた。

 

 だが、シャルティアが何も反応がなかった………完全に支配される前に反撃され、撤退という可能性が高いか?それとも罠か……だが、俺達が現れた時に何のアクションもなかったのを考えると前者か………どちらにしてもワールドアイテムがある以上は俺でも油断できん」

 

 ゼオスはブツブツと独り言を呟いている。

 

「えっと……漆黒聖典があの近くにいるなら私は気配を感じれたけど、何の気配もなかったわよ」

 

 

「……それは本当か?」

 

 

「えぇ、彼等には独特の気配があるもの。高位の気配遮断のスキルか道具を使っていれば話は別だけどね」

 

 

「……成程、警戒はしておくべきか。番外席次!」

 

 

「なっなに?」

 

 

「ありがとう!解決の道が見えた!」

 

 ゼオスはそう言うと、番外席次を抱き締めた。

 

「!?」

 

 

「お前のお陰だ!俺はアインズと話し合ってくるから、此処にいろ、いいな?」

 

 

「はっ……はぃ」

 

 番外席次は顔を真っ赤にして、ゼオスを見送ると、腰が抜けたのかその場にへたり込んだ。

 

「…………はぅ」

 

 ―ボンッ―

 

 彼女は爆発し、乙女の空間(妄想)へと堕ちて行った。

 

 

 

 

 

 ~執務室~

 

「と言う訳だ………すまん。完全に俺のミスだ」

 

 

「いや、俺もだ…………ワールドアイテムの存在を思考から外していた。そんなのがある訳ないってな」

 

 

「取り敢えず、何とかしないとな。ペロロンチーノに申し訳がたたん。二十を使うか?」

 

 

「いや、駄目だ。ワールドアイテムが存在する以上は二十は温存する必要がある…………クソッ!シャルティアの命とアイテムを天秤にかけるなんて……………すいません、ペロロンチーノさん」

 

 星の守護者(アリストテレス)不死王(オーバーロード)はこの世界にいない盟友に謝罪する。

 

「敵の姿が絶対にないとは言い切れないが可能性は低い」

 

 

「だがどうするつもり?二十が使えない以上、シャルティアを………そうか、そう言う事か」

 

 

「シャルティアを倒す。そして蘇生させる。蘇生を行えば、状態異常は消える…………だがユグドラシルの法則がこの世界でも同じとは限らないがな」

 

 

「だけどそれしかないか………」

 

 2人は盟友の子であるシャルティアを救う為に彼女を倒すことを決意した。




 アインズ様の見せ場…………奪うべきではない!

 だが主人公もまともな戦闘をさせたい………迷う


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EP26 星の守護者、終焉の剣を振り降ろす

 ~アインズ私室~

 

「それで本当にいいの?」

 

 

「あぁ。この世界ではユグドラシルの時の様に俺達が蘇れる保証はない。なら俺が行く………少なくともこの身なら遅れはとらない筈だ。

 

 それに………アインズ・ウール・ゴウンにはモモちゃんが必要だ」

 

 ゼオスがアインズにそう言うと、アインズは黙ってしまった。

 

「…………」

 

 

「もしかして………ギルド長なのに事務仕事しかしてない、本当に自分は長として相応しいのかって考えてる?」

 

 

「なっなんで?」

 

 

「モモちゃんならそう考えてるかと思ってな…………モモちゃん、俺も、たっちさんも、ペロロンチーノも、他の皆だってモモちゃんなら任せられるって思ったからギルド長に推薦したんだ。自信を持ってくれ」

 

 

「ユウちゃん………ありがとう」

 

 

「モモちゃんはギルド長らしく堂々と待っていてくれ」

 

 

「分かった………もう何も言わない。でもちゃんと帰って来るって約束してくれ。ユウちゃんは親友で、大切な仲間なんだから」

 

 

「おう!モモちゃんの方も頼むぜ」

 

 

「了解………ワールドアイテムは持って行かなくていいの?」

 

 

「あぁ、課金アイテムも沢山あるしな。まぁ、幾つか武器は持って行くけど」

 

 

「武器……確か宝物庫だよね…………うっ、胃が痛い」

 

 そう言って腹を抱えながら落ち込むアインズ。

 

「いや、骸骨なのに胃が痛いっておかしいだろ。まぁ、気持ちは分からなくないけど。俺が唯一作ったアイツはあそこまでは………」

 

 

「ごはっ!?」

 

 どうやらパンドラズ・アクターの事を思い出し、それで精神的なダメージを受けているアインズ。落ち込んだ彼はベッドに倒れ込んだ。

 

「はぁ~黒歴史だ………ゲームの中なら良かったけど、現実に動いて喋ってるのを見ると………どうしても精神的に」

 

 と落ち込んでいると、身体が光に包まれ精神が抑制された。

 

「俺は取り敢えず、必要な物を取って来るよ」

 

 

「じゃあ、俺は冒険者組合の方に行くよ。勿論、ユウちゃん達の幻影付きでね。そうすれば俺だけでなく、ユウちゃん達の名も売れるしね」

 

 

「あぁ………じゃあ、シャルティアを取り戻す為に」

 

 

「頑張ろう!」

 

 2人はそう言うと、互いの拳と拳をぶつけた。これは前の世界の時から変わらない2人が行う儀式の様な物だ、何かを行う時、2人はこうして拳と拳を重ねた。

 

 今すべきことは、盟友の子であるシャルティアを救う事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~エ・ランテル近郊の森~

 

 シャルティアが立っている場所を見下ろせる崖の上に門が出現し、そこから現れたゼオスと番外席次。

 

「さてと………番外席次、お前は下がっていろ」

 

 

「むぅ………」

 

 

「戦いを見たいというから、連れてきたんだ。約束は守れ」

 

 

「分かった」

 

 どうやら番外席次は自分が戦いたいと考えて居た様だがゼオスにそう言われて、彼女は納得したらしい。それを見ると、彼を中心にドーム状の立体魔法陣が展開する。

 

「本格的な攻撃でなければ反応しないのか…………」

 

 ゼオスの帝王の衣(カイザーローブ)の下から、白い小さな獣が現れた。

 

「フォーウ」

 

 

「キャスパリーグ………彼女を守ってくれ」

 

 

「フォウ………キュー」

 

 キャスパリーグと呼ばれた獣はゼオスに向かい翔けだすと、甘える様に彼の顔に頬ずりする。

 

「後で構ってやるから………ほらっ」

 

 

「フォウ!」

 

 キャスパリーグはゼオスの言葉を受け、番外席次の方へと飛び、彼女の肩に乗った。

 

「なに、この子?」

 

 

「そいつは俺が唯一創ったNPC【原罪のⅣ・キャスパリーグ】。愛らしい姿はしているが、お前よりも強いぞ……少し派手にやるからな。そいつと一緒に下がってろ」

 

 

「分かったわ」

 

 番外席次はそう言うと、キャスパリーグと共にこの場より去った。それを確認したゼオスはシャルティアを見下ろした。

 

「さてと………始めようか。

 

『終焉の鐘は鳴り響いた。ならば始めよう、神々の黄昏(ラグナロク)を」

 

 ゼオスを中心に一気に周囲の気温が低下し、凍り始めた。やがてその冷気はシャルティアまでも凍らせ始めた。

 

「『大神は獣により喰われ、あらゆる命は消え、邪神は解放され、地上は魔が溢れ、世界は混沌に支配される。

 

 なれば再び地上に命を取り戻す為に、総てを浄化しよう。邪神も魔も、穢れも、万象の一切を焼き尽くせ。新たに世界に命が溢れる様に、次の世界の始める為に』」

 

 ゼオスの足元から炎が噴き出すと、それが剣の形と成った。彼はそれを握り締めると、剣先を天へと向けた。

 

「超位魔法!【総てを浄化し、次代を招く焔剣(エンド・オブ・レーヴァティン)】!」

 

 ゼオスが世界の終焉の時に全てを焼き尽くす魔剣・レーヴァティンを振り降ろす。その瞬間、世界は熱気と光に包まれた。




 と言う訳で、主人公のNPCとしてフォウさんが登場しました。

 感想にプライミッツ・マーダーを出してほしいと言うのがありましたが、マスコット的なフォウさんにしました。

 理由?番外ちゃんと並べると良い感じになりそうなので。


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EP27  星の守護者の本気その①

主人公、とうとう無双を開始します。


 ~ナザリック大墳墓 玉座の間~

 

 玉座に座りながら魔法でゼオスとシャルティアの様子をを見ているアインズと各階層守護者達。

 

「アインズ様!進言いたします!どうか直ぐにでもゼオス様に増援を!万が一、ゼオス様の身になにか在ってはなりません!」

 

 デミウルゴスがアインズにそう進言した。彼等にとって至高の42人の命は何よりも尊重すべきものだ。

 

「静まりなさいデミウルゴス」

 

 

「アルベド!何故ゼオス様を御1人で行かせた!?反逆者など我等全員で叩き潰せばいい!」

 

 

「それは」

 

 ―カァーン!―

 

 彼等の言い合いを諌める様にアインズが杖で床を叩いた。

 

「静まれデミウルゴス」

 

 

「私はこの場で命を絶たれようと構いません!ゼオス様の御身に何かあるくらいならば、我が身を賭して「デミウルゴス!」?!」

 

 アインズはデミウルゴスの言葉を遮る様に一喝した。

 

「デミウルゴスよ。お前は我が友を思い、進言してくれる事を嬉しく思う」

 

 アインズは優しい口調でデミウルゴスにそう言った。

 

「だが我が友がシャルティアの事は自分に任せておけと言ったんだ………私は友の言葉を信じ送りだした。それにお前達に戦わせないのは彼の意志だ。

 

 同じ守護者であるお前達とシャルティアを戦わせたくないと言う親心だ」

 

 

「「「「?!」」」」

 

 

「お前達は知らないだろうが……ギルドのメンバーがNPC(お前達)を創る時にはゼオスも関っているのだ」

 

 

「なっ?!」

 

 

「本人は少し手伝っただけだと言っていたがな………各階層守護者だけではない、一般NPCまでもだ。故に彼はお前達の事を我が子の様に思っているのだ。

 

 だからこそ、お前達を戦わせたくないのだ。彼は言っていた『どこの世界に自分の子等が殺し合うのを黙って見ている親がいる』とな」

 

 アインズの口から語られた真実を知り、涙を浮かべるNPC達。

 

「(盛り過ぎたかな………まぁでも嘘は言ってないしな)

 

 だからこそ、お前達は黙って見ていろ………ゼオスの戦いを」

 

 アインズはそう言うと、ゼオスとシャルティアの戦いへと目を向ける。ちょうど、ゼオスが超位魔法を発動する場面だった。NPC達もゼオスの戦いをその眼に焼き付ける為に戦いへと目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャルティアに凍て付く吹雪が自分を襲ってきた。シャルティアは攻撃されたと判断し、その攻撃をしてきた者へ反撃しようとしたが、彼女の身体は凍てついた。

 

(なっなにが………身体が動かないでありんす。凍りついている?力ずくで破壊できない!?)

 

 シャルティアは力ずくで破壊できない事に困惑した。そして、氷越しではあるがその攻撃の主が誰が視認できた。

 

(ゼオス……様?ゼオス様に攻撃された?何か粗相があったのでありんしょうか?……ならば反撃しないと)

 

 

総てを浄化せし、次代を招く焔剣(エンド・オブ・レーヴァティン)

 

 ゼオスが炎の剣を振り降ろした瞬間、凄まじい熱量が彼女を襲った。自分を凍て付かせていた氷は一瞬で溶け、自分の身体が消し飛ぶ感覚が彼女を襲う。

 

 終焉を迎え穢れた世界を浄化する焔だ。邪神を焼き、魔を焼き尽くす焔………吸血鬼であるシャルティアにとってはこれ程、相性の悪い物はない。

 

 その焔は、シャルティアだけでなく周囲の森も総てを消し飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ……フフフ………アハハハハハハハハハ!!!」

 

 総てが吹飛び、出来たクレーターの真ん中に立つ真紅の鎧を纏ったシャルティアがいた。彼女は何が可笑しいのか凄い笑い声を上げている。

 

「ぁ~ゼオス様!流石は至高の御方々の中でも最強と言われるゼオス様ぁぁぁぁ!」

 

 

「ほぉ……やっと反応してくれたか。無視されて少し寂しかったぞ」

 

 

「?……どう言う事でありんしょうか?」

 

 

「まぁいい。それよりシャルティアよ………消し飛んだ筈のお前が生きているのは蘇生アイテムでも使ったのか?」

 

 

「はい!そうでありんす!ペロロンチーノ様が持たせて頂いた物でありんす!」

 

 

(やっぱりか。総てを浄化せし、次代を招く焔剣(エンド・オブ・レーヴァティン)は神聖属性と炎属性の混合の魔法………アンデットや吸血鬼には即死効果があるから、即死無効のアイテムorスキル、蘇生アイテムがないといけない。どうやら後者の方らしいけど………これは1日に1回しか使えないんだよね。この後は発動不可時間(リキャストタイム)が終わるまではこのまま戦うか)

 

 ゼオスは自身の使用した超位魔法の効果と現状で起きている事を照らし合わせ、これからの事を考える。

 

「さてシャルティアよ。1つ確認するが、何故俺にその刃を向ける?」

 

 

「えっ……それは攻撃されたから反撃する………ゼオス様に?……???………よく分からないでありんすが、攻撃されたので反撃させて頂きます」

 

 

「成程。お前の状況は理解した………しかしシャルティアよ。お前が俺に戦いを挑むのであれば、心しろよ。なんせ、お前が相対するのは【アインズ・ウール・ゴウン(至高の42人)】だ」

 

 そうゼオスが言うと場に凄まじい圧力が襲う。実際に重力が倍加した訳ではない、ゼオスの発する無自覚の覇気がそう感じさせている。

 

「(凄まじい覇気………周囲には他の守護者たちの気配はないし………本当に御1人で?………どちらにしても倒すのにはかなり骨が折れそうね)

 

 では行きますよ!ゼオス様ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 シャルティアはゼオスに向かい突撃する。

 

「【流星は汝に降り注ぐ(シューティング・メテオ)】」

 

 ゼオスの足元に魔方陣が展開すると、シャルティアに向かい星が降り注いだ。

 

「なぁ……ぐっ…ぅう!」

 

 シャルティアはそれを視認すると急停止し、直ぐに後方へと下がるが何発かその身に受けてしまった。

 

「(流石はゼオス様………唯の突進では近付けてくれないか。長期戦になりそうね……回復を)リzy「回復などさせる暇は与えんよ」!?」

 

 シャルティアは回復の為に魔法を使おうとするが、ゼオスはそんな暇を与えない。彼の手には抜身の刀が握られていた。紅い刀身、金色の鍔、黒い柄……妖刀・断空である。

 

 彼を断空を振るった。その瞬間、シャルティアは自分の身体に激痛を覚える。

 

「ぐぅ!?」

 

 自分の身体が空間ごと、引き裂かれているのを目の当たりにする。

 

「妖刀・断空、【空間殺法】だ。どうだ、身体が引き裂かれる感覚は?」

 

 

「くぅ………ニィ」

 

 シャルティアが怪しい笑みを浮かべると、噴き出ていた血が逆流し、ズレていた肉体も元に戻った。

 

「成程……吸血鬼故に血の扱いは一流と言う事か」

 

 

「フフフフフフ!そういうスキルですよ、ゼオス様ぁ!それでは反撃させて頂きますよ!」

 

 シャルティアが手を上げると。巨大な光の槍が出現し、それがゼオスに向かい放たれた。彼はそれを回避しようとするが、槍はゼオスを追尾する。

 

「(MP消費で必中効果があったな)」

 

 光の槍はゼオスを貫いた。

 

「…………」

 

 

「うふふふふっ……これなるは【清浄投擲槍】と申しまして、神聖属性のスキルです」

 

 

「MP消費で必中効果があるんだったな」

 

 

「えぇそうですとも………?何故知っているのでありんすか?」

 

 

「知らないと思ったか?俺はペロロンチーノと共にお前を創ったんだ、知らない訳がないだろう?」

 

 

「?!」

 

 

「お前のスキル、魔法、装備、俺は総て知っている。蘇生アイテムに関してはペロロンチーノが俺に黙っていたから知らなかったがな。

 

 さて、シャルティア。そろそろ本気を出せよ………じゃないと死ぬぞ?【龍雷(ドラゴン・ライトニング)】」

 

 龍の形をした雷がシャルティアを襲う。シャルティアは反応するのに一瞬遅れるが、第5位階魔法である龍雷(ドラゴン・ライトニング)なら自分の鎧で防ぐ事ができる筈だと考え動こうとしなかった。

 

 だが、恐怖が襲い自分のスキルを発動させた。

 

「ふっ【不浄衝撃盾】!」

 

 シャルティアの周囲に赤黒い衝撃波が発生し龍雷(ドラゴン・ライトニング)を防いだ。

 

「(なんて力、第5位階でこの威力なんて………それに私のスキルの事を知っている。………魔力の精髄(マナ・エッセンス))」

 

 シャルティアは一時的に相手のMPを視認できる魔力の精髄(マナ・エッセンス)を使用した。オーラの様な形で魔力で見れる様になったシャルティアはゼオスを見て驚愕する。

 

 彼から溢れる魔力は彼女が今まで見た事のない程、巨大な量だった。

 

(なんて魔力……こんな力をどうやって手に入れたと言うの?……えっ嘘!?どうなってるのよ!?)

 

 シャルティアは驚いた、ゼオスに何の動きもないと言うのに周囲から魔力が彼へと集まっているのだ。

 

「ぜっゼオス様……一体何をしたのですか?」

 

 

「なにがだ?」

 

 

「魔力が」

 

 

「あぁ………魔力の回復か。俺の種族の影響だろう………アリストテレスは星を守護する者だ。星の脅威となる外敵を排除する為の存在、故に俺は星と繋がっている。俺が望もうと望まなくとも、星は俺に力を与える」

 

 

「そっそんなのって………」

 

 シャルティアは反則だと言う様な顔をしている。

 

「反則だろ……って顔をしてるな。よく言われたよ、敵プレイヤーとか、仲間達にもな。お蔭でギルド戦に出る際には幾つか制限も掛ってたしな…………」

 

 

「くっ!」

 

 シャルティアは目の前にいるゼオスは強いと実感する。そしてまず、このままでは負ける。回復しなければならないと、だがゼオスはそう易々とそうさせてはくれない。

 

(一先ずは回復しないと………)

 

 そう考えるシャルティアが光だし、その身体から光が離れた。すると光はシャルティアと同一の姿へと変わった。

 

死せる勇者の魂(エインヘリヤル)か」

 

死せる勇者の魂(エインヘリヤル)】、シャルティアのスキルの1つだ。本人そっくりの人造物を生み出す。簡単に言えば分身だ。しかも分身は魔法とスキルの一部は使用できないが、武装や能力値・耐性は本人と全く同じだ。

 

「【眷属招来】」

 

 シャルティアは再び、スキルを発動させる。彼女の眷属である蝙蝠やら狼が大量に召喚された。

 

「眷属?………うおっと!」

 

 ゼオスが何故眷属を召喚したのかと考えて居ると死せる勇者の魂(エインヘリヤル)が襲撃してきた為に、緊急回避した。

 

「あっ………(きったねぇ~。俺が言うのもアレだけど、フレンドリーファイアーが有効だからって召喚した眷属をスポイトランスで攻撃して回復って………えげつな)」

 

 シャルティアの装備、神級アイテムのスポイトランス。料理で使うスポイトを刺々しくした様なデザインで、ペロロンチーノが「与えたダメージの数割HPを回復する」と言うデータクリスタルを大量に突っ込んだ結果、極悪な性能を誇る武器となった。

 

 その性能を利用し、シャルティアは召喚した眷属達を倒す事で大幅にHPを回復を行っている。

 

 普通に立っているだけでHPもMPも回復するゼオスがそれを汚いと言っても、それはお前の方だよと言いたくなるが…………。

 

「さてさて…………先に解決すべきはエインヘリヤル(こっち)か」

 

 ゼオスはエインヘリヤルの攻撃を避けながら、エインヘリヤルに対する策を思い浮かべる。

 

 一秒でも早くエインヘリヤルを倒し、シャルティアの回復を止める。その為の案を1つ、2つ、3つと次々に思案する。

 

(この身体になってから戦闘になると驚くほど、冷静になれるし、普通じゃ考えられない戦闘方法が思い浮かぶ。肉体の恩恵か…………なんて考えても仕方がないか。

 

 回復しきる前にエインヘリヤルを何とかしないと)

 

 エインヘリヤルを倒し、シャルティアも回復させない様にする為のスキルを発動させる。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と考えるゼオス。

 

「【我が意志は時すらも支配する(ザ・ワールド)】!」

 

 ゼオスを中心に時の流れが停止した。



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EP28 星の守護者の本気その②

 今回もかなりやり過ぎた………FGOで術師匠来たから調子乗ってしまった。


「さてと………」

 

 総てが停止した世界で唯一動けるゼオスは周囲を見回した。

 

 ゼオスの我が意思は時すらも支配する(ザ・ワールド)に対抗できるのは、同じ時間停止を使用するか、時間停止の対策をしている()()()()()のみである。

 

 レベル70上のプレイヤー達は「時間停止」と「即死」に対して対策は必須としている。シャルティアを始め守護者一同もその対策は行っているものの()()()()()ではない故に、ゼオスの我が意思は時すらも支配する(ザ・ワールド)からは逃れる事はできないのだ。

 

「やるか………【魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)聖光の檻(ホーリー・ゲージ)】」

 

 ゼオスが後方に大きく下がり、崖の上に立ち空に向け手を上げた。すると空から4本の水晶の柱が落下してくる、柱はシャルティア、エインヘリヤル、シャルティアの眷属を囲む様に地面に突き刺さった。

 

「ふぅ………これでよし。時は動き出す」

 

 ゼオスの言葉と共に時間が再び動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?ゼオス様は一体どこに?!」

 

 シャルティアは突如視界より消えたゼオスの姿を探し周囲を見渡した。彼の姿は崖の上に在った。

 

「!」

 

 エインヘリヤルはゼオスの姿を捉えると、彼に向かい突進していく。だが突如出現した光の壁に弾き飛ばされた。それに気付いたシャルティアは眷属達に散開する様に命じた。眷属達は散開するが、光の壁により一定以上は出ていけない様だ。

 

「これは一体?!」

 

 

「第6位階魔法:聖光の檻(ホーリー・ゲージ)。聖なるルーンが刻まれたクリスタルの柱を召喚し、その中に敵を捕らえる魔法だ。

 

 まぁ、第6位階でお前を閉じ込められるとは思っていないさ」

 

 

「ならなんの為に………はっ?!」

 

 

「閉じ込められないが、足止め出来れば十分とは思わないか?」

 

 そう笑いながら言うゼオスの手には朱を主とした金や銀等で装飾された槍があった。

 

 シャルティアはその槍に見覚えがあった。ナザリックがまだユグドラシルに在った時に、創造主であるペロロンチーノとゼオスが槍を前に色々と話していたのを彼女は近くで聞いていた。

 

 その時の事を思いだし、顔が青ざめる。

 

 ゼオスは槍先を空に向ける。すると曇っていた空が更に暗くなり、雷が鳴り、周囲に落ち始めた。ゼオスの槍に雷が直撃する。

 

 槍は雷を纏った。そして、彼はその槍を投げる構えを取った。その瞬間、シャルティアは逃げる事を選択した。光の壁がシャルティアがその場から逃走する事を邪魔する。

 

「ぐうぅぅぅぅぅ!!!」

 

 シャルティアは光の壁を突破しようとするが、直ぐに破る事はできない様だ。

 

 ―バチッ!バチッ!バチッ!―

 

「!!」

 

 凄まじい電撃の音がする。シャルティアは一瞬、後ろを振り返った。そこには自分達に向かい槍を投げようとするゼオスの姿があった。彼の瞳は虹色の光を放っていた、常人がそれを見ればその輝きに心を奪われるだろう。だがシャルティアにとって恐怖の対象でしかなかった。

 

「【この雷は大神による裁きである(ジャッチメント・オブ・グングニル)】」

 

 投擲された槍はシャルティアや眷属達の中央に突き刺さる。槍は一瞬、眩い光を放つ。そして次の瞬間、暗雲から無数の雷が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…………」

 

 先程の雷により周囲は荒野と化し、空を覆っていた暗雲は先程の衝撃で吹き飛び、青空が広がっていた。荒野ではシャルティアが膝を付いていた。見た所、殆どダメージを追っていない様に見えるが、彼女の鎧は既にボロボロになっている。

 

「ほぉ…………殆どダメージを喰らってないのか…………成程、寸でのところで聖光の檻(ホーリー・ゲージ)から脱出し、【不浄衝撃盾】でダメージを受け、残りは鎧で受け止めたのか」

 

 

「流石ゼオス様、御慧眼、畏れ入ります……」

 

 

「倒しきったと思っていたが………流石はナザリックの守護者と言うべきか」

 

 

「ありがとうございます………ですが先程の1撃、少し無理をなさった様ですね。魔力がかなり減っておいでです」

 

 

「その通り。この大神の神槍(グングニル)の真の力は自身のHPとMPを半分、槍に捧げる事で一定範囲内の敵に神の雷を落とす。エインヘリヤルもお前の眷属も消し飛んだ様で安心した」

 

 

「ゼオス様ぁ………どうして敵対している私にその様な事を?普通であれば黙っている筈でしょう?ゼオス様は回復されるそうですけど、私もこのスポイトランスで回復できます。回復しきる前に接近戦で攻めれば」

 

 ゼオスはシャルティアの言葉を聞いて口端を釣り上げ、不敵な笑みを浮かべた。

 

「確かに俺は今のHPは半分、MPは半分以下………対してお前は一度死んだとは言え、HPは7割残している。だが、不浄衝撃盾は使い切ったな」

 

 

「たっ確かにそうですが、状況から言って」

 

 

「なぁ、シャルティア。俺が何故、ナザリック最強と言われているか分かるか?」

 

 

「それは………」

 

 

「知らないのは当然だ。お前達の知識は俺達が与えただけの物………実際に見て、体験した物ではないからな。

 

 だからこそ知らない。俺が何故故にナザリックで最終兵器と言われたか………その身に刻むといい」

 

 ゼオスがそう言った瞬間、周囲の景色が一変した。先程まで、森の中に出来た荒野におり、空は清々しい青空だった。

 

 だが今のシャルティアの目に映っているの光景は違った。

 

「いっ一体何をなさったのですか!?」

 

 

「おいおい、シャルティア。()()()()()驚いていてはこの先苦労するぞ」

 

 

「この程度………ですか………」

 

 シャルティアの目に映っているのは青空ではなく、夜空………そして血の様に紅い月。森ではなく、巨大な城だった。

 

 これは世界を変えるゼオスの力だ。世界を変える様な力を持つのはシャルティアの知る中ではワールドアイテムくらいの物だ。だと言うのに、彼はそんな道具は持っている様子はない。

 

 ならば答えは1つ。ゼオス自身の力で世界を改変したと言う事だ。故にシャルティアは恐怖した。

 

「シャルティアよ。闘いを始める前に言った通り、アインズ・ウール・ゴウンがお前に引導を渡してやる!」

 

 星の守護者とシャルティアの戦いも局面に差し掛かった。




 武器やスキル・魔法などは後々まとめて記載します。


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EP29 星の守護者の月落とし

 満天の星空、血の様に紅い月、そして眼前にそびえ立つ巨大な城。

 

 シャルティアは突如変わった周囲の様に驚愕する。世界の改変が目の前で行われたからだ。

 

「さてシャルティアよ。覚悟するがいい、これよりはお前達が至高の存在と讃えるアインズ・ウール・ゴウン(至高の42人)がお前に引導を渡す!」

 

 

「!」

 

 シャルティアは目の前のゼオスの動作に細心の注意を払う。此処は自分の知らぬ場所であり、ゼオスの領域内だ。何が在っても可笑しくない状況だ。だが最も注意すべきはゼオスだ。

 

「シャルティア、頭上注意だぞ」

 

 

「!?」

 

 シャルティアはその言葉に上を見上げた。そこには刀を持ったゼオスの姿が在った。彼はそのまま落下してくると、刀で一閃を繰り出した。

 

「ぐうぅぅぅぅ!!!!」

 

 シャルティアは回避しようと、するが完全に避ける事は出来なかった様だ。彼女は左腕を斬り落とされた。

 

「そっその刀は?!【建御雷八式ぃぃぃ】!?」

 

 その刀は至高の存在、コキュートスの創造主・武人建御雷の持っていた武器だ。

 

「一体どこから………えっ?!」

 

 シャルティアは自分の目を疑った、何故なら先程自分に注意を促したゼオス、そして自分の腕を斬り落としたゼオス………ゼオスが2人いた。

 

「次は後ろだ」

 

 

「はっ!?」

 

 シャルティアは後ろを振り返ると、巨大な斧を振り上げるゼオスがいた。その斧の名は【血ヲ啜リ肉ヲ喰ウ】、ゼオスのギルドメンバーの武器の1つだ。振り降ろされた斧を後ろに下がる事で避けるが、斧は地面を抉る程の一撃だった為に、その衝撃で彼女は吹き飛んだ。

 

 直ぐに体勢を立て直し、顔を上げると直ぐ目の前には4人目のゼオスがおり、二振りの小太刀で襲い掛って来た。最小限の動きでそれを避けようとするが、4人目のゼオスの小太刀が掠ってしまった。すると斬られた個所から何かが焼ける様な音と共に煙が上がる。

 

「それは弐式炎雷様の!?」

 

 4人目のゼオスの持つ小太刀は至高の存在・弐式炎雷が持っていた武器・【天照・月詠】だ。この武器は神聖属性の力を秘めている為にシャルティアにとって相性は最悪だ。

 

「次はまた上だ」

 

 

「5人目?!」

 

 上を見上げると、巨大なガントレッドを装備したゼオスが居た。そのガントレットは【女教師の怒りの鉄拳】、至高の存在・やまいこが所有していた物だ。5人目のゼオスは【女教師の怒りの鉄拳】でシャルティアを殴る。彼女は何とスポイトランスで受け止めようとするが、吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐうぅぅ!一体何がどうなって………そっそんな!?」

 

 1人目のゼオスは弓を構えていた。シャルティアはその弓を良く知っていた。

 

「【羿弓(ゲイ・ボウ)】!?それはペロロンチーノ様の武器!!何処に隠し持っていた?!」

 

 自分の創造主・ペロロンチーノの弓だった。

 

「簡単な事だ。俺は自分だけの宝物庫を持っている。そこから呼び出しただけのこと………」

 

 

「アレは魔法じゃないと防げない。スキルでもよかったのに………はっ?!」

 

 

「理解したか?全ては()の手の内だと言う事を………はぁ!」

 

 

「くっ………あっ(ペロ……ロンチー……ノ様)」

 

 1人目のゼオスは羿弓を放った。シャルティアは回避しようとするが、ゼオスの姿にペロロンチーノの姿が被った事で判断が遅れ、そのまま羿弓の直撃を受けてしまった。

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ」

 

 シャルティアはゼオスからかなり離れた場所で膝を付き、息を切らしていた。纏っていた鎧は破壊された様だ、唯一残っているのはスポイトランスのみだった。

 

「一体どうなって………」

 

 目の前の5人のゼオス。彼女にはそれが一体どういう原理で起きているのか理解できなかった。

 

「こいつ等は【盟友達の幻影(ボーンズ・ファントム)】。仲間の武器を所有している際、その武器を使う為の幻影を生み出す我がスキルだ。発動には幾つか条件があるが………この千年城ではそんな物は関係なしに使えるからな」

 

 シャルティアは開いた口が塞がらなかった。

 

【ピッピッピッ…………ゼオスお兄様。設定した時間が経過しましたわよ】

 

 ゼオスの腕に巻かれていた銀色の腕輪から女性の声が聞こえてきた。シャルティアはその声に聴き覚えがあった。

 

「ぶくぶく………茶釜様?」

 

 

「全くこの時計はなんで音声をカットできないのやら………まぁいいけど。さてシャルティア、この時間の意味は何の時間だと思う?」

 

 シャルティアは必死に頭を働かせる。そして時間の意味を漸く理解した。4人のゼオスの幻影が消え、ゼオスを包む様にドーム状の魔法陣が展開する。

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ゼオスに向かい駆け出そうとする。

 

 彼が行おうとしているのは、超位魔法だ。今の状態で超位魔法を受ければ確実にやられる。ならば超位魔法を放つ前に攻撃を仕掛ければ、発動を止める事ができる。故に疲労している体に鞭を打ち、1秒でも早く攻撃する為に……。

 

 だが此処でシャルティアはふっと思った。

 

(超位魔法は発動まで時間がかかる筈………なのにどうして!?)

 

 

「何故、発動に時間のかかる超位魔法を?と言う顔をしているな………理由は簡単だ。アルテミット・ワンは1日に3回まで超位魔法を即時発動できる」

 

 

「!!?」

 

 

「行くぞ!超位魔法!」

 

 ゼオスが手を天へと掲げ、ソレを呼ぶ。

 

「『宙より来たれ……………【月落とし(プルート・デァ・シェヴァスタァ)】』」

 

 天より月が墜ちてきた。

 

 

 

 

 

 夜を照らす美しい月がシャルティアの目前に出現した。

 

 シャルティアの視界を全て月が覆い尽くしていた。彼女はどう足掻いてもこれを避ける事も、防ぐ事も不可能だと悟った。

 

 死を目前にシャルティアはゼオスの姿を焼き付ける。

 

(あぁ……………ゼオス・アルドライグ様。貴方様こそ最強の至高の御方)

 

 ナザリックの最強の存在をその眼に焼き付け、彼女は月の圧倒的な質量に押し潰された。




~その頃 ナザリックでは~

ゼオスとシャルティアの戦闘を見守っていたアインズと守護者一同。

「【月落とし】」


「「「「「‥……………」」」」」←守護者一同、唖然。


(相変わらず無茶苦茶な力だなぁ………まぁ、ギルド戦とかでは良くお世話になったけど。

アレが自分に向けられると考えると………ぁ~恐ろしい。本当にユウちゃんが味方で良かったな、うん)

心の底から一緒のギルドで良かったと思う不死王だった。


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EP30 シャルティア復活。後に襲われる星の守護者。

 ~ナザリック 執務室~

 

「調子に乗りすぎた………」

 

 

「いやぁ~凄かったねぇ。一人称が我になったり、魔法使う時のモーションとかキレが良かったよ」

 

 

「ごはっ!」

 

 執務室内で話しているゼオスとアインズ。

 

 ゼオスはシャルティアとの戦闘の際にやたらと度々格好つけていたと、思い出し悶絶していた。

 

 どうやら戦闘中はかなりノリノリだった様で気にならなかったらしいが、冷静なって考えると恥ずかしくなった。

 

 アインズもそんな親友を見て、慰めようかと思ったが、何時も自分が弄られているので、ここぞとばかりにいじり倒している。

 

「ゲームの中なら気にならなかったが、実際すると精神的にくるものがある」

 

 

「ハハハ、大丈夫。格好良かったから」

 

 

「くっ……あっ」

 

 弄られていたゼオスは何か思い出したらしい。ニヤッと笑みを浮かべた。

 

「なぁ、モモちゃん。キレがよかったで思い出したけど……オフ会の時のモモちゃんの実演、凄かったよねぇ」

 

 

「ぐふっ!」

 

 アインズは精神的ダメージを負った。だが直ぐに精神の抑制が起こる。

 

「たっちさんやペロロンチーノとの共演も良かったねぇ~。

 

 タブラさんが即興で作った長い台詞もキメポーズ付きでやってたし。それに」

 

 

「調子に乗ってすいませんでした!」

 

 アインズは凄まじい勢いで土下座した。ナザリックの長も自分をよく知る親友の前では形無しの様だ。

 

「全く、俺を弄ろうなんて2万年早いぜ、モモちゃん」

 

 

「うぐっ………」

 

 

『アインズ様、シャルティア蘇生の準備ができました』

 

 アルベドより、アインズにシャルティア蘇生の準備が出来たことが報告された。

 

「あぁ、そうか。ではゼオスと共に行く」

 

 

『はっ!』

 

 

「ユウちゃん、シャルティア蘇生の準備が出来たって」

 

 

「えっ……そうなの?あっ……そうだ、蘇生と言えば…………」

 

 ゼオスは蘇生の準備をしているのを、知らなかった様だ。蘇生と言う事で何かを思い出したらしく、自分の空間の中からアイテムを取り出した。

 

「なぁ、モモちゃん。確かNPCを蘇生させるには金貨5億枚だったよな?」

 

 

「あぁ、宝物庫からパンドラズ・アクターに用意させた」

 

 

「これを使わない?」

 

 

「そっそれは!?どうしてそれを?」

 

 

「ユグドラシル終了のオークションが行われててな。自分の所有金貨100枚で買い取った」

 

 

「それが金貨100枚って………俺の給料2ヶ月分で出なかったのに」

 

 

「そりゃ………皆、最後だしって事だろう。これから先もNPCが死なないとも限らないし、金貨はとっておく方がいいと思う」

 

 

「確かに………ワールドアイテムがある以上は可能性は高い。でもそれはユウちゃんの私物だろう?」

 

 

「別に構わない。NPC達の為だ」

 

 ゼオスはそう言うと、そのアイテムをアインズに向かい投げ、彼はそれを受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

 ~ナザリック大墳墓 玉座の間~

 

 玉座の間に広げられた5億枚の金貨。

 

 そして玉座の前には守護者達が並んでいた。少しすると、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの力を使い、アインズとゼオスが転移してきた。

 

 アインズとゼオスがやって来た事で、NPC達はその場に跪く。

 

「待たせたな」

 

 アインズがそう言うと、守護者達は顔を上げる。

 

「皆、立ってくれ」

 

 

「「「「はっ!」」」」

 

 

「さて………パンドラズ・アクター、金貨の用意をしてくれてありがとう」

 

 

「おぉ……ゼオス様からの感謝の御言葉、身に余る光栄にございます!(ポーズ付」

 

 

「………」

 

 それを見て精神が抑制されたアインズ。そんな親友を見て笑いを堪えるのに必死なゼオス。

 

「コホン………折角用意して貰ったのだが、この度はゼオスよりコレが提供されたので、使う事にした」

 

 そう言うと、アインズが守護者達に何かを見せる。それは血の様に赤い石で、中には羽の様な物が入っていた。

 

「アインズ様、それは一体どの様なアイテムなのですか?」

 

 

「これはワールドアイテム:【不死鳥の宝玉(フェニックス・ジュエル)】。蘇生させる金貨5億枚の代わりとなるアイテムだ。これで在ればシャルティアを元通りに蘇生させる事ができるだろう」

 

 

「ワールドアイテムをシャルティアの為に………なんと慈悲深い」

 

 NPC達は自分達の様な存在にワールドアイテムを使ってくれる事に感激していた。

 

「礼はゼオスに言うといい。これはゼオスの手に入れた物だ」

 

 

「ゼオス様!守護者を代表し感謝申し上げます!」

 

 アルベドが跪きそう言った。それに続き他の者達も跪く。

 

「構わない。お前達は我が友の子だ……俺はお前達の為なら全霊を尽くす」

 

 ゼオスがそう言うと感激するNPC達、中には歓喜のあまり涙を流す者もいた。

 

「とは言え、この世界に来て魔法やアイテムの効果が多少変質している。この【不死鳥の宝玉(フェニックス・ジュエル)】が正常に働くかも分からない。万が一正常に機能しなかった場合は」

 

 

「万が一、シャルティアが蘇生しても尚、ゼオス様やアインズ様に反旗を翻すので在れば、我等が対処致します」

 

 デミウルゴスがそう言った。それを聞くと困った様な顔をするゼオス、彼はアインズの方を見た。

 

「しかし……」

 

 

「むぅ………」

 

 

「これ以上、至高の存在であるゼオス様とアインズ様の身に明確な危険が迫ると認める事こそ、相応しくないと判断いたします」

 

 

「その場合、私共が対応します。アインズ様とゼオス様は此処にいて下さるだけでいいのです。もし御二人がいなくなってしまったら、私達は誰に忠義を捧げればいいのでしょう?」

 

 デミウルゴスとアルベドの言葉を聞き、どうするべきか悩む至高の存在達。

 

「それに………捨てられたのではないと分かっていても、誰も居らっしゃらないのは寂しいですから」

 

 

「寂しい……そうだったな」

 

 アインズとゼオスは至高の42人のシンボルマークの描かれた旗を見上げる。そして互いに顔を見合わせると頷いた。

 

「分かった………守護者達よ!我等を護れ!」

 

 

「「「「はっ!」」」」

 

 

「ゼオス、いいな?」

 

 

「あぁ………そうならない事を祈ろう」

 

 

「では始めよう………不死鳥の宝玉(フェニックス・ジュエル)よ!シャルティアを蘇らせよ!」

 

 不死鳥の宝玉(フェニックス・ジュエル)から炎が溢れ部屋中を覆い尽くした、その炎が1点に集まると人型の形へとなる。

 

 炎は段々と小さくなり、やがて輪郭がはっきりとし、シャルティアの姿になった。勿論、服は着ていない。

 

 アインズはアルベドの方を見た。彼女はNPCのリストを見ており、黒くなり消えてしまっていたシャルティアの名前が白い文字で表示された事を確認し、それを皆に伝えた。

 

 アインズとゼオスはそれに安堵した。そして、2人はシャルティアの横に立った。

 

 アインズは自分の空間より黒い布を取り出すと、シャルティアを抱き起した。ゼオスはアインズと共にシャルティアを挟む様にしゃがんだ。

 

「「シャルティア」」

 

 2人はシャルティアに声を掛けた。

 

「ん………ぅう」

 

 彼女は少し呻くと、眼を覚ました。

 

「アインズ様?ゼオス様?」

 

 どうやらシャルティアは2人の事が分かっている様だ。

 

「ほっ………はぁ、良かった」

 

 

「いや……すまない」

 

 

「えっと何が何のか分かりませんが、至高の御方々に間違いなどあろう筈がございません。

 

 ぁ~……私は此処で初めてを。しかもアインズ様とゼオス様との3Pなんて……」

 

 と自分がした事が分かっていない様で、彼女はアインズに抱き着こうとする。

 

「アインズ様。シャルティアは疲れているかと」

 

 アルベドが物凄い怒気の含んだ視線を向けてくた。

 

「「そっそうだな」」

 

 2人は内心、「怖っ」と思いながら立ち上がる。シャルティアは残念そうな表情をしているが、一体自分に何が起きたのか分からない様だ。

 

「えっと、アインズ様、ゼオス様。この格好といい、状況といい、御2人の御対応といい、私は何か御無礼が在ったのでありんすかぇ?」

 

 

「シャルティア、お前の一番最後に覚えている事はなんだ?」

 

 

「えっと……ゼオス様と御別れした後、人間共を狩り殺そうとしていて…………申し訳ありません、そこまでしか」

 

 ゼオスが記憶の事を聞くと、どうやらゼオス達と別れたくらいの所までしか記憶が無い様だ。

 

「ではシャルティア、何か身体に異常は何か?」

 

 アインズがそう尋ねると、シャルティアは自分の顔を触ったり、腰を触ったり、確認している。

 

「大丈夫でありんす」

 

 それを聞き、至高の2人は心の底から良かったと思った。そして記憶の事に関しては残念だが、番外席次の情報で粗方の目星は付いている為、それで良しとしようと考える。

 

「アインズ様!ゼオス様!」

 

 

「どっどうした!?」

 

 

「何か在ったか?!」

 

 2人はワールドアイテムの影響が残っているのかと考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「胸が!なくなっていんす!」

 

 

「「…………………」」

 

 絶句する至高の存在2人。

 

「「「「「……………」」」」」

 

 デミウルゴスは表情を歪め、アウラとマーレは苦笑い、コキュートスは冷気を吹き出している。

 

「お前は!自分が置かれていた状況を分かって言ってるの?!」

 

 

「ほぉ………覚えていないのですか………あの守護者に有るまじき失態を!」

 

 アルベドとデミウルゴスがそう言うが、シャルティアには記憶がないので分からない様だ。

 

 そんな中、至高の存在である2人はふらふらと玉座へと上がる階段の方へと向かい、そこに腰掛けた。

 

「シャルティア!アンタ!ゼオス様にとんでもない事をしたのよ!このおバカ!」

 

 

「はぁ?」

 

 

「貴女は守護者の存在意義をどう思っているのですか?」

 

 

「ゼオス様とアインズ様がどれ程、心を痛められたか」

 

 

「ぼっ僕もそう思います」

 

 

「大体貴女は何時も自分の……」

 

 アインズとゼオスはその光景を見て、かつての仲間の姿を重ねた。そしてかつての仲間達に向かい手を伸ばそうとするが、直ぐにその姿は消え、現実に戻ってしまい、落胆する。

 

 その様子を見た、アルベドは2人へと近づいた。

 

「アインズ様、ゼオス様、御2人からもシャルティアに言ってあげて下さい」

 

 そう言って、その手を差し出した。2人はその手を取ると、アルベドが2人を引っ張った。

 

 そして各守護者達はシャルティアに言う様に進言した。

 

「ふっフフフ」

 

 

「ククク」

 

 

「「アハハハハハハハハ!」」

 

 

「この度の事はあらゆる情報を知りながら、それを警戒しなかった我等のミスだ。シャルティア、お前に罪はない。それを覚えておいてくれ」

 

 

「はっはい。ありがとうございます」

 

 アインズの言葉で少し安堵したシャルティア。

 

「他の皆もそれを覚えておいてくれ」

 

 

「「「「はっ!」」」」

 

 ゼオスの言葉により各階層守護者もそれを承知した。

 

「取り敢えず、シャルティアに在った事の説明はデミウルゴスに任せてもいいか?」

 

 

「はっ!」

 

 

「もも……アインズ。こっちの方は任せる、俺はセバス達の方に戻るとするよ」

 

 

「あぁ。今回は嫌な役目をお前にさせてしまったな」

 

 

「何を言う、総ては我が盟友達の子の為だ。気にする必要はない」

 

 ゼオスはそう言うと、シャルティアの頭を撫で始めた。

 

「ひゃぅ……ぜっゼオス様ぁ~」

 

 

「デミウルゴス、続いて悪いが、ナザリックでの事を定期的にで構わんから報告を頼む。

 

 書類でも、口頭でも構わん。俺がいなければ邸に居るセバスかソリュシャンにな。俺がいない間の事を知っておきたいからな」

 

 

「ならば私も頼もう。私も冒険者としていない事が多いからな」

 

 

「承知いたしました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~リ・エスティーゼ王国 ユウの邸~

 

「今、戻った」

 

 ゼオスはゲートを使い、この邸に戻ってくると、セバスとソリュシャンが出迎えた。

 

「「お帰りなさいませ、旦那様」」

 

 

「あぁ」

 

 

「それでシャルティア様は?」

 

 

「無事に復活した。記憶があやふやだが、その他に異常はない様だ」

 

 2人はそれを聞いて安堵したようだ。

 

「スマンが、少し腹が減った………何か用意してくれるか?」

 

 

「「承知いたしました」」

 

 

「では頼む。俺は暫し部屋に戻るのでな」

 

 ゼオスは2人に食事を頼むと部屋へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 部屋に入り、装備していた帝王の衣(カイザー・ローブ)を解除すると、Yシャツとズボンの姿になり、ベッドにダイブした。

 

「はぁ~ベッドフカフカだな」

 

 そして、ゼオスは違和感を感じた。ふっと周囲を見回してみる。誰も居ない………確か、番外席次はナザリックに戻る前に屋敷に戻した。何時もなら許可なく、部屋に入ってベッドでゴロゴロしている筈、なのに今日はいない。

 

 [トイレかな?]

 

 と天井を見上げた瞬間、番外席次が襲い掛かってきた。

 

「ぬぉ!?」

 

 

「はぁはぁ」

 

 何やら彼女は息が荒くなっている。加え、眼はトロンっとしており、口からは涎が垂れている。正直、年頃の娘がしていい表情ではない。

 

「あんな戦い見せられたら我慢できなぃ~……もぅいいよね?」

 

 と言いながら服を脱ぎ出す番外席次。

 

「ちょっw」

 

 止めようとするが、凄い力で押さえ込まれた。

 

「はぁはぁ……身体はあつぃのぉ~、お願ぃぃ」

 

 普通の男ならそんな事を彼女に言われたらイチコロである。しかしゼオスは理性で踏ん張り、抵抗していた。

 

「おっ落ち着け!ちょっ…まっ…ぁぁぁぁぁっ!」

 

 襲われていた史上最強のアリストテレスは、後に来たセバスに助けられましたとさ。

 

 

 

 



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EP31 星の守護者を訪ねる黒い悪魔(G)

今回、黒い悪魔が登場します。


 ~エ・ランテル 黄金の輝き亭~

 

「リザードマン?」

 

 

「そうだよ。リザードマンの集落を見つけたからそこを攻めようと思う」

 

 ユウ……ゼオスはリ・エスティーゼ王国から転移魔法でベルンカステルと共に、この街での自分達の活動拠点に来ており、そこでモモン……アインズよりナザリックのこれからの方針について聞いていた。因みにモモンの時のヘルムを消しているので骸骨が剥き出しになっている。

 

 因みにベルンカステルはナーベ(ナーベラルγ)と共に外で待機している。

 

「戦闘についてはコキュートスに任せようと思う。軍を付けてね」

 

 

「成程。目的は?」

 

 

「リザードマン達を俺達が治められればと思ってる」

 

 

「うん。それで?」

 

 

「?」

 

 

「モモちゃんや俺が出向かずにコキュートスにやらせるのには理由があるんだろ?」

 

 ゼオスがアインズにそう尋ねた。

 

「あぁ。NPC達は俺達に対して忠誠を誓ってるけど、言われるがままじゃ駄目だと思う」

 

 

「……つまり自分の意見を言って貰いたいと」

 

 

「そう。俺達だけの考えじゃ限界もあるし、意見を言って貰った方が彼等の成長にも繋がるだろうから。唯……」

 

 

「成長するとなると忠誠心も変わると?」

 

 

「ないとは言い切れないだろう?」

 

 

「確かに……」

 

 アインズにそう言われ、確かにその通りだと思うゼオス。

 

(でも……ない様な気もするけど。0ではないか。アルベドの件もあるし……)

 

 アルベドの一件の事もあって、忠誠心は在っても、その感情から自分達に対して反乱を起こさないと限らないと結論を出す。

 

「それで、リ・エスティーゼ王国の方はどう?」

 

 アインズがゼオスにそう尋ねた。

 

「色々調べたけど、プレイヤーらしき存在はいない。後、魔法のスクロールの件に関しては珍しい物があれば、買っている。

 

 唯、最近、政治面では色々と動きが在ったよ。奴隷売買禁止とかね。

 

 後、八本指とか言う組織はリ・エスティーゼ王国の裏側を牛耳ってるのが分かったけど……まだ途中だよ」

 

 ゼオスはアインズにそう説明した。

 

「その八本指とやらも大変だな。ユウちゃんに目をつけられるなんて……」

 

 

「まぁ、それは置いといて……例のポーションは?」

 

 

「あぁ、アレか……まだ特に成果はないみたいだよ」

 

 

「そりゃ残念。俺達は殆どダメージを受ける事はなくても、NPC達はそうとも限らないし……万が一の場合に備えて欲しかったけど………まぁ時間が掛かるか」

 

 ―コンッコンッ―

 

 ゼオスとアインズがドアの方を見た。直ぐに彼らは冒険者としての姿に戻る。

 

「入れ」

 

 ユウがそう言うと、ナーベとベルンカステルが入ってきた。

 

「モモンさー……ん。ユウさー……ん。失礼いたします」

 

 

「はぁ、また出たな。その癖としか言い様がないな」

 

 

「まぁ、いいんじゃない?それよりナーベ、何か用だったか?」

 

 

「はっはい。モモンさんの注文されていた鉄鉱石が届いたと商人がやって参りました」

 

 

「そうか……暫し待て、直ぐに用意する」

 

 アインズは革袋に金貨を入れてナーベラルに渡した。

 

「確かに……モモンさん、1つお伺いしても宜しいでしょうか?」

 

 

「なんだ?」

 

 

「何故1ヶ所だけでなく、複数から鉄鉱石を取り寄せているのですか?」

 

 ナーベラルはアインズが複数の場所から鉄鉱石を取り寄せていることが疑問に思ったらしい。

 

 アインズはそれに対して、各地の鉄鉱石をエクスチェンジボックスと言うアイテムに使う為だと答える。

 

 エクスチェンジボックス……通称シュレッダーはアイテムを放り込むと相応のユグドラシル金貨が出てくるアイテムである。あくまで資源的な価値しか査定されないので、各地の鉄鉱石を集め、その内容物の違い等を確かめる為だと説明した。

 

 その話を聞いて目から鱗が落ちた時の様な顔をするナーベ。彼女はそれに感動していていた。

 

(上手く言ったつもりだろうけど……実際は金欠だもんね)

 

 ナザリックの経済状況を知るゼオスはアインズを見ながらそんな事を考えていた。

 

 一通り説明を終えると、ナーベとベルンカステルが出ていった。

 

「………はぁ~」

 

 2人が出ていったのを確認すると、ヘルムを消して溜め息を吐くアインズ。その掌には銀貨3枚と銅貨数枚が在った。

 

 これが、必要経費を引いて残ったアインズの全財産である。ユグドラシルの時の金貨は大量に個人所有しているが、それはナザリックの維持等に使用されているので、此方で使えない。

 

 ゼオスもユグドラシル金時はアインズに総て譲渡しており、ナザリックの維持に使っているが、それも何時かは尽きてしまう。なので、エクスチェンジボックスを使用していた。

 

「金がない……」

 

 

「完全に金欠だな」

 

 

「あぁ………スポンサーでもいればいいんだけど………漆黒のモモンやユウが金にがめついと思われるとイメージダウンだし」

 

 

「まぁ少なくとも俺達は食事不要だし、宿代だけあれば何とかなるし…………とは言うものの先立つ物がないと困るか」

 

 どうしたものかと考えて居る至高の2人。クエストを受けるにしても、現在アダマンタイト級となった自分達に見合うが毎日ある訳もなく………かと言ってちまちまとモンスターを狩る暇はない。なんせ、彼らは冒険者であると同時にナザリックの支配者達だ。ずっとどちらかだけに居る訳にもいかないのである。

 

「金の問題は一先ず置いておこう」

 

 

「そうだね」

 

 ゼオスの一言で話を一旦終えたアインズ。

 

「フォーウ」

 

 ゼオスの紅いコートの中からキャスパリーグが出て来た。

 

「そのNPCは………確かユウちゃんの」

 

 

「あぁ、キャスパリーグだ」

 

 キャスパリーグはジャンプするとゼオスの肩に飛び乗り、そこから彼の頭に飛び付いた。

 

「フォウ」

 

 

「もふっもふっしてるな」

 

 アインズはゼオスの頭の上で寛いでいるキャスパリーグの毛並を見てそう言うと、触れようと手を伸ばした。

 

 ―ペシッ!―

 

 キャスパリーグはその可愛らしい手でアインズの手を叩いた。

 

「…………」

 

 再び手を伸ばすアインズ。

 

 ―ペシッ!―

 

「……………」

 

 ―ペシッ!ペシッ!―

 

 何度やってもアインズの手はキャスパリーグに叩かれ、拒絶された。

 

「なんで?」

 

 

「分かんない。俺はそんな設定した覚えはないんだけどな…………男女問わずナザリックでは人気だったんだけど………此奴は懐こうとしないんだよなぁ。何でか番外席次には懐いてるんだけど………」

 

 

「折角だしモフって見たかったんだけどなぁ」

 

 どうやらアインズは純粋にキャスパリーグを愛でたかったらしい。

 

「モフるんだったら何だっけ………あのジャンガリアンハムスター………確かハム助か」

 

 

「ぐっ?!」

 

 

「何ならパンドラズ・アクターに動物に化けて貰えばいいんじゃ」

 

 ゼオスの言葉で精神的にかなり揺らいでいるらしく、精神の抑制が起こっている。

 

「ぅう…………ユウちゃんもハム助に乗って街を回って見てよ!どれだけ恥ずかしいか!」

 

 

「アハハハハハ…………絶対嫌だ。おっさんが1人で100円で動く動物のカートに乗ってるみたいで恥ずかしい」

 

 

「………(ピカッー」

 

 アインズはリアルでのそんな自分を想像して精神の抑制が連続で起きた。余程恥ずかしかった様だ。

 

「ぁ~………はぁ。さてと、俺は一度ナザリックに戻るよ。何かあったら連絡してよ、ユウちゃん」

 

 アインズは鎧を消して何時もの姿に戻るとそう言う。

 

「了解……俺は2人が戻ってきたら、番外席次と一緒に屋敷の方に戻るよ」

 

 

「こっちも何か動きが在れば伝えるよ」

 

 アインズはそう言うと、転移魔法でその場を後にした。

 

 数分後、戻ってきた2人。ゼオスは番外席次と共にリ・エスティーゼ王国にある屋敷へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~リ・エスティーゼ王国 屋敷~

 

「お帰りなさいませ、旦那様、ベルンカステル様」

 

 ゼオスと番外席次………ユウとベルンカステルを出迎えたセバス。

 

「ただいま、セバス。ソリュシャンはどうした?」

 

 

「買い物に行っております」

 

 

「そうか、何か変わった事は?」

 

 

「特にご報告する様な事はございませんでした」

 

 

「ならいい………俺は部屋に戻るから何かあったら声を掛けてくれ」

 

 

「承知いたしました」

 

 セバスはユウとベルンカステルを一礼して見送った。

 

 

 

 部屋に戻り、ゼオスの姿に戻った。

 

「よし………何で平然と俺のベッドに寝転んでいるんだ?」

 

 

「えっ?」

 

 此処はユウの部屋で、此処にあるのは勿論ユウの為に用意された物だ。そして、ベルンカステルの部屋も用意されている。なのに彼女は我が物顔で彼のベッドに寝転がっている。

 

「何で当たり前じゃないみたいな顔してるんだ、お前は…………まぁいい……ん?」

 

 ―カサッカサッカサッ―

 

 ゼオスの足元に黒い何かが動くと羽の様なものを広げ机の上に移動した。

 

「お久しぶりでございます、ゼオス様」

 

 

「恐怖公。久しぶり」

 

 ナザリック大墳墓の第二階層・黒棺の領域守護者。真紅のマントを羽織り、黄金の王冠を乗せ、宝石を嵌めこんだ王笏を持っている二足歩行する体長30センチの……………突如台所とかに現れる黒い悪魔がそこにいた。

 

「…………」

 

 

「どうか致しましたかな?」

 

 

「いや………何でもない」

 

 

「そうでございますか。それで私に御用があるとお伺いしましたが………どういった御用ですかな?我輩、至高の御方であるゼオス様からの命令との事で、心躍っております」

 

 

「実はお前の眷属を召喚して貰って、街に放って貰って情報を集めて欲しい」

 

 

「どういった情報が御入り用ですかな?」

 

 

「八本指と言う組織とそれに関る人物の情報だ。どんな小さな事でもいいから集めてくれ」

 

 

「承知いたしました。ではさっそk「此処で眷属を召喚しようとするな」」

 

 ポーズを決めて眷属を召喚しようとしている恐怖公を止めるゼオス。

 

「それと何だそのポーズは?」

 

 何か変わったポーズを取っている恐怖公に尋ねるユウ。

 

「はい!これはアインズ様が考案された魔法の発動が早くなるポーズでございます!」

 

 

「(モモちゃん、何言ってんだよ)…………そっそうか。眷属を召喚するなら街中でしろ。後、一般人への危害は出さない様に」

 

 

「承知しました。御報告はどうすれば宜しいでしょうか?」

 

 

「俺が居る時は俺に、居なければセバスかソリュシャンに…………って番外席次何をしようとしている?!」

 

 ゼオスは番外席次が靴を振り上げて恐怖公に振り降ろそうとしているのを見た。彼はそれを止める。

 

「………何故か、叩き潰したくなる衝動に駆られて。ごめんなさい」

 

 

「取り敢えず、ベッドに居ていいから向こうに居なさい」

 

 そう言って取り敢えず、落ち着かせた彼女をベッドに座らせた。

 

「スマンな、連れが………」

 

 

「いぇいぇ、最近女性の方々からは嫌な目で見られることになれております故………それはそうと、あの方がゼオス様の御妃様で?」

 

 

「違う、現地協力者だ………因みに誰が言ったんだ?」

 

 

「アインズ様が……『ゼオスにも春が来たかぁ~。でも結構お似合いだよな、あの2人………親友としては喜ばしい事だ』と仰っていましたし、他の者達もゼオス様が女性を連れて帰って来たと噂になっておりました」

 

 

「………そうか、なら現地協力者と知っておいてくれ」

 

 

「了解しました。では御命令通り、眷属達を放ち情報を集めましょう」

 

 恐怖公は一礼すると窓から外へと飛んで行った。

 

「はぁ………」

 

 

「ねぇ、あのモンスターも貴方の所の?」

 

 

「まぁ、そうだな。ナザリックの第2階層守護者だ。と言うか何で靴で叩き潰そうとしたんだ?」

 

 

「何故かしら?急に叩かないといけないと思って」

 

 

(アレに対する反射的行動は世界が違えど同じと言うことか。

 

 1匹だけなら未だしも、黒棺みたいな場所に放り込まれたら……そういや、黒棺に放り込まれたプレイヤーから苦情が来たっけ、懐かしいなぁ)

 

 それはユグドラシル時代の話、ナザリックに敵が侵入してきた事が在った。ナザリックには複数の罠が仕掛けられており、その中に強制的に転移させる魔法も仕掛けられていた。

 

 そしてその中には第2階層の黒棺と呼ばれる部屋へ転移する物もあった。その黒棺は恐怖公の領域であり、部屋一面………隙間なくアレがいる部屋だ。

 

 そこに送られた(主に外見が女性の)プレイヤー達は、恐怖と混乱嫌悪感により乱闘し同士討ちしたり、精神的に辛くなったので強制ログアウトしていた。

 

 勿論、そんな事が在ればプレイヤー達からクレームが在った。因みにゼオスがアリストテレスになりチートの塊になった時より多かったのはギルドメンバーだけが知る事である。更にいうなら黒棺誕生の際にギルドメンバーの半数以上が拒否反応を示したと言う。

 

(一度入った事あるけど………うん、アレはないなぁ…………1匹や2匹なら我慢できるけど…………アレは無理だ。入った瞬間、月落とししそうになったしな)

 

 黒棺での事を思い出しそんな事を考えて居るゼオス。精神は基本的には人のままなので分からなくもない話である。

 

「まぁそれは置いといて…………俺は暫く書類に目を通すから静かにしてろ」

 

 

「ん………分かった」

 

 

「フォーウ」

 

 ゼオスの服の中から出て来たキャスパリーグ。

 

「おいで」

 

 

「フォウ、フォウ」

 

 キャスパリーグは番外席次に言われると彼女の元へと跳び、ベッドの上で彼女に撫でられ始めた。

 

 そんな1人と1匹を横目に、ゼオスは机の上に置かれた書類を手に取りそれに目を通し始める。




・恐怖公

ナザリック第2階層にある黒棺の領域守護者。見た目は30センチのゴキブリ。真紅のマント、王冠、王笏をしている。

眷属(様々なサイズのゴキブリ)を召喚する事に長けており、自分の領域である黒棺は一面ゴキで埋め尽くされている。

ナザリックでは女性陣からは嫌な目を向けられており、プレアデスの1人であるエントマには眷属達をおやつとして食べられている。

因みに五大最悪の1人である。


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EP32 星の守護者、錯乱する

タイトル通りです。


 ~ナザリックから離れた場所にあるトブの大森林に建てられた木造の建物~

 

「…………」

 

 最強の種族・アリストテレスであるゼオス・アルドライグ。

 

 リアルの時から曲がった事は嫌いであり、情に厚い精神の持ち主である。ナザリックで仲間と共に戦う時でも常に冷静な判断をしており、仲間達と共に幾多の困難を乗り越えてきた。そんな彼が取り乱す事はあまりない。

 

 そんな彼が現在、スタンしていた。

 

「あっ…………」

 

 その原因は彼が一番信頼する盟友アインズの所為である。そのアインズも口を大きく開けて唖然としている。そしてその周りには、アルベド、デミウルゴス、アウラ、マーレが膝をついて控えていた。何時ならコキュートスが居ても可笑しくないが、特別な任によりこの場にいない。

 

 そして、残りのシャルティアなのだが………彼女は何故か四つん這いになり、その上にアインズが座っていた。つまり、アインズがシャルティアを椅子にして座っているのである。

 

「も………」

 

 

「ゆっユウちゃん、これは違うんだ」

 

 混乱しているのかアインズは、2人でいる時の様に呼んでしまったが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。

 

「モモちゃんが………モモちゃんが………変態に………

 

 おっ………おまわりさぁーん!!!

 

 いや、でも普通の警官じゃ無理だから…………

 

 たっちさぁーん!!!!

 

 

 モモちゃんが!!モモちゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 ぶへっ!?」

 

 何時もクールなゼオスは何処に行ったのか、錯乱して、この世界にはいない筈の仲間の名前を叫んでしまう。そしてそのまま現実逃避する為に物から出ようとするが、何やら陥没している個所が在った為に転んでしまった。

 

 そんな錯乱した親友を落ち着かせる為に、アインズは守護者達に耳を塞いで待機する様に命じて直ぐに彼の後を追い掛けた。

 

 そして、別室に移動した至高の2人。

 

 

 

 

「モモちゃん!俺は年端もいかない少女に椅子にする様な変質者に育てた覚えはありません!」

 

 

「いやっ、ユウちゃんに育てて貰った覚えはないよ!」

 

 

「保護者のペロロンチーノは何処だぁ!!その前にたっちさん………いや、やまいこさん呼んできて!」」

 

 

「俺ダウンするよ!確実に3回くらいは落ちるよ!じゃなくて!ちょっと落ち着いて!アレには深い事情が……」

 

 

「………事情?」

 

 アインズにそう言われて少し落ち着いたゼオス。

 

「実は」

 

 アインズは状況を説明した。

 

 此処はトブの大森林にアウラが建てた建物で、アインズとコキュートス以外の守護者達はこの近くにあるリザードマンの村に宣戦布告をしに行き、それから此処に転移して転移してきた。

 

 そこでデミウルゴスが玉座を用意してくれていたのだが………デミウルゴスは様々な動物の骨で造ったと言っていたが、それがどう見ても人間の骨を使っている物っぽかったのでどうしようかと考えていると、ふっと数日前の事を思い出した。

 

 それはアルベドから受けた報告の事だ。シャルティアは記憶がないとはいえ、至高の存在であるゼオスとアインズに反乱した事が彼女の心に罪悪感と言う名の棘を残した。アインズとゼオスから、その件については自分達の戦力ミスで在り、気にする必要はないと言ったのだが、やはり彼女の心の棘が取れる事はなかった。

 

 そこでアルベドから、シャルティアに罰を与える様に提案された。アインズとゼオスから罰を与えられる事でその心の棘が取れるのではないかと言う事だ。アインズはその意見を受け入れ、次にゼオスと会った際にそれを話そうと考えて居た。

 

 その時の事を思い出したアインズはシャルティアを椅子になる様に命じた。

 

 デミウルゴスは「守護者に座するなど!まさに至高の御方にのみ許されたこと!」等と言った。

 

 椅子になっている当の本人に至っては息を荒げて興奮し始め、一度アインズが退こうとしたが「苦しくなんかありません!寧ろ御褒美です!」と言う始末。

 

 アインズもまた自分達の戦略ミスであり、此処は我慢するべきだろうと考えて座り続けたと言う。

 

 それを見たアルベドは一度席を外して、部屋の外に出るとシャルティアに対する嫉妬と怒りを壁にぶつけたそうだ。

 

 そんな状況に登場したのが、ゼオスである。

 

「そうだったのか…………いやぁ~モモちゃんが変質者になったと思って取り乱しちまった」

 

 

「酷いなぁ、ユウちゃん」

 

 

「じゃあモモちゃん、俺が同じ事してたらどうする?」

 

 

「精神抑制が追い付かない程、錯乱してユウちゃんがペロロンチーノと同類になったと思う」

 

 

「でしょ?」

 

 

「何かごめんね」

 

 

「いや……でもペロロンチーノの奴」

 

 

「「どんだけ変態設定盛り込んだんだ?」」

 

 かつての盟友エロゲー大好きペロロンチーノの事を思い出して揃ってそう呟いた。

 

「まぁペロロンチーノだし……仕方ないか」

 

 

「ペロロンチーノだし、仕方ないよね」

 

 ゼオスとアインズはペロロンチーノならば仕方ないとして無理矢理納得した。

 

 

 

 

 

「先程は済まなかったな。あの失態は忘れてくれ」

 

 ゼオスとアインズはNPC達の所に戻るとそう言った。

 

「ぜっゼオス様も座って頂けるでありんすか?

 

 はぁはぁ」

 

 まだ椅子の状態でいるシャルティアはゼオスにも座って貰えると思い息を荒げている。

 

「おっ俺の罰については後々決めるとしよう。なぁアインズ」

 

 

「そっそうだな。1度に与えるより少し期間をあけた方がいいだろう(俺達の精神面的に)」

 

 

「そっそうでありんすか」

 

 物凄く残念そうな顔をしているシャルティアだが、再びアインズが彼女に座ると興奮し始めた。

 

 極力2人は彼女の事を気にしない様にして、リザードマン達の事に話を戻した。

 

 取り敢えず偵察をしようと考えて、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を使ってリザードマン達を偵察を始めた。

 

 そして途中で、2匹のリザードマンがいないのに気付き、室内に居るのだろうと思いフローティング・アイのスクロールを併用し室内も視れる様になったのだが………

 

「「あっ………」」

 

 雌のリザードマンの上に雄のリザードマンが乗って居た。その様子から何をしているのか直ぐに理解できたアインズとゼオス。どうやら守護者達も何をしているのか理解したようだ。

 

「てぇい!」

 

 アインズは遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)をOFFにした。

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 2人が沈黙する中、守護者達は先程の光景に対して愚痴を言っている。至高の2人は「生命の本能」であり仕方ないと言うと、守護者達も同意し、アインズとゼオスはアウラとマーレに「子供は何処から来るの?」と聞かれる事を考えそれぞれ案を考えながら、時を待った。

 

 コキュートスの活躍により、リザードマン達に勝利し、リザードマン・クルシュがアインズとゼオスに拝謁した。そこで彼女がアインズから番いであるザリュースの蘇生をすると言い出した。

 

 クルシュは始め目的は「私の身体でしょうか?」と言った際にアルベドとシャルティアが物凄い顔をしていたのは言うまで無い。

 

 アインズは「一族の者の監視」を命じ、彼女もそれを受け入れ、ザリュースを蘇生させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~リ・エスティーゼ王国 屋敷~

 

「と言う訳でリザードマン達は我等の配下となった。覚えておく様に」

 

 ゼオスは屋敷に戻ると、セバス、ソリュシャン、番外席次にリザードマンの件に関して説明した。

 

「承知致しました」

 

 

「それではリザードマンは殺さない様に気を付けます」

 

 セバスとソリュシャンはそう言い、リザードマンが配下となった事を理解したようだ。

 

「………椅子…………それはそれで………ありかな」

 

 

「はっ?」

 

 番外席次はシャルティアがアインズの椅子となったと言う所から顔を赤くし始めており、妄想の世界へと入っていた。

 

「ねぇ、1k「しない」1度だ「しません!」いっ「絶対しない!」」

 

 変な方向へ行こうとする番外席次の方向修正に大変なゼオスで在った。




もしもアインズがシャルティアに座っている場面に他の仲間が居たら

たっち・みー「モモンガくん…………少しあっちで御話しようか。大丈夫、かつ丼は用意して貰うから。出来心でもして良い事と悪いことか………(延々とお説教」

やまいこ「モモンガさん、歯……食いしばれ。小さい子達が真似したらどうするの!」

ぶくぶく茶釜「うわぁ………モモンガさん、愚弟と同じ道に……」

ペロロンチーノ「モモンガさん………俺も未だそんな事した事ないのに?!と言うか俺の可愛いシャルティアに何してくれてるんだ!表出ろ!」




冷静なゼオス「………アインズ………俺はどんな事が友達だぞ(と言いながら後ろに下がる」


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支配者達の休日①

タイトル通り、至高の2人の休日を描いたものです。




 異業種で溢れ返っているナザリック地下大墳墓。

 

 その支配者であるアインズとゼオスは第九階層「ロイヤルスイート」にいた。

 

 ロイヤルスイートは白亜の城を彷彿とさせる荘厳と絢爛さを兼ね備えた世界で、見上げるような高い天井にはシャンデリアが一定間隔で吊りさげられ、広い通路は磨きのかかった大理石が使われている。

 

 この階層にはギルドメンバーの住居としての私室やNPCの部屋だけではなく、客間、応接室、円卓の間、執務室等で構成されている。更に階層には他にも様々な施設がある。大浴場や食堂、美容院、衣服屋、雑貨屋、エステ、ネイルサロン等々がありショッピングモールの様になっている。

 

 そして2人は現在、浴場のあるスパリゾートナザリックの露天風呂で入浴していた。

 

「くはぁ~~~」

 

 

「ぁ~~~~」

 

 最強のアリストテレスと不死王も、此処では温泉を満喫する男達である。

 

「それはそうと……何してんのモモちゃん?」

 

 と言うゼオスは盟友アインズを見た。

 

 湯に浸かっているアインズは現在進行形でスライムに包まれていた。

 

 スライムはウォーターベッドの様になっており、アインズを包んでいた。

 

「まさか……」

 

 

「違うよ。

 

 この体って洗うの大変なんだ、だから試行錯誤してこれが一番良かったんだ」

 

 友人が変な性癖に目覚めたのかと思ったが直ぐにそれは取り越し苦労だと分かり安堵するゼオス。

 

「他には何をしたんだ?」

 

 

「タオル、ブラシ、洗濯機とか試したけど、このスライムに身体を這いずり回らせらのはなんとも言えないんだよね」

 

 

「へぇ……どれどれ」

 

 ゼオスは手を伸ばし、スライムに手を突っ込んで見る。

 

「おぉ……これは」

 

 

「中々いいでしょ?」

 

 

「うん、このぬめぬめが何とも言えない感覚だ。俺も後でして貰おう」

 

 どうやらスライム風呂が気に入ったらしい。

 

 男と骨が触手に絡まれるのは誰得だろうか?

 

「あっ、そうだ。この間、言ってた事なんだけど」

 

 そうゼオスが切り出した。

 

「ぇえと何の事だったか?」

 

 

「ほらっ、俺が食事してたら自分も食べたいって言ってたろ」

 

 

「ぁ~」

 

 それはゼオスとアインズが合流してナザリックに帰還した時の事、本来、食事の必要はないが人間の時の名残で食事をメイド達に運んで貰った時の事だ。

 

 その時に出てきたのが分厚いステーキだった。アインズが彼が旨そうにステーキを食べてるのを羨ましそうに見ており、自分も食事できたらなぁと漏らしていた。

 

 それを聞いたゼオスはアイテム使えばどうにかなるんじゃない?と言い、彼は親友の為に数多くのアイテムの中から探索をしていた。

 

「何かあったの?」

 

 

「あぁ……チャチャチャチャッチャーン」

 

 何処かの猫型ロボットが道具を取り出す時の音を口で再現しながらアイテムを自分の空間より取り出した。

 

「【擬態腕輪・マークⅡ】……これは一定時間、姿を変化させ、種族を偽装させるアイテムだ」

 

 

「確か………ユウちゃんを中心に開発したアイテムだったよね」

 

 

「そっ、これで未だ弱かった時は無駄な戦闘を避けれたからね。まぁこれはあの時から更に改良してあるし、パンドラズ・アクターの協力の元、五感まで再現した」

 

 パンドラズ・アクターが関わってると聞き、少し嫌な予感がしたアインズ。

 

「まさか……変な事にはなんないよね?」

 

 

「当たり前だ。俺が関わってるんだからちゃんとしてるよ」

 

 

「なら良かった」

 

 アインズはそう聞いて腕輪を受け取るとそれを腕につける。その時、気付いてなかった親友の口元が吊り上っている事を。

 

 装備した腕輪が光って、アインズの身体が変化していく。数秒で変化は終わり、彼は自分の頬を触ってみた。

 

(骨じゃない、人間だった時と同じだ)

 

 自分の手を見てみる。骨だった手には肉が付き、その上に皮膚が覆っていた。そして最後に水面に映った自分の姿を見た。そこに映っていたのは紛れもなく、自分のリアルの時の姿だった。

 

「ユウちゃん………これ」

 

 

「一応見ず知らずの姿も嫌だろうから、元の姿に設定しておいたぞ」

 

 

「ありがとう」

 

 

「よしっ、取り敢えず部屋に戻って感覚があるかどうか確かめよう」

 

 

 

 

 

 

 

 ~ゼオス私室~

 

「美味い!」

 

 

「味覚はあるみたいだな………人間の時と変わりないか?」

 

 

「うん。そうみたい………味もするし、食べるとHPとMPが少しだけど回復する感覚がある」

 

 どうやらアイテムはきちんと機能しているらしい。

 

「でも満腹感はないな……食欲も、睡眠欲も、アンデットの時と同じで特にない」

 

 

「性欲は?」

 

 

「無くはないって感じかな。アイテムの効果なのか精神抑制は起きないし」

 

 

「成程、成程………取り敢えず当面の目的は達成したし、改良はすべきか」

 

 アイテムの感想を聞いて記録を取って行くゼオス。

 

「ユウちゃん、本当にありがとう」

 

 

「まぁ親友の為だしな」

 

 自分の為に忙しいのにアイテムを作成してくれた親友に感動するアインズ。

 

「だけどアルベドやシャルティアにはバレない様にしとけよ。確実に襲われるぞ、性的に………それはそれで面白そうだけど」

 

 

「いや面白くないからね!俺が大変なんだけど!」

 

 そう言いながら一先ずアイテムを外そうとしているアインズ。

 

 ―ガチャ、ガチャ―

 

「……………」

 

 しかし何故か腕輪は外れなかった。

 

「ユウちゃん、これd」

 

 どうやって解除するのかと聞こうとするアインズ。しかしニヤッと笑みを浮かべているゼオス。

 

 そして理解した。

 

(はっハメられたぁ!)

 

 

「因みにそれを解除する時はカッコイイポーズを決めながら『キャストオフ』と叫ばないといけない」

 

 

「ななななななな」

 

 

「ほらっ、早くと解除できないよ」

 

 

「はっ謀ったな!ゼオス!」

 

 

「謀っただなんて………大丈夫、大丈夫、完成品はそんな事のない様にしとくから(多分……しない方が面白いのに)」

 

 

「くっ…………」

 

 アインズは親友にハメられたものの、これは何時もの事なので慣れているのである。まぁ親友も頑張ってくれたし、少々は恥ずかしくても我慢するかと思い行動に移るのであった。

 

 こうして至高の存在達の休日は終わった。

 

 因みにアインズのとったポーズは何処かの世界で仮面を付けた皇子が合衆国日本と叫んだ時のポーズである。




・擬態腕輪

階級:上級

ユグドラシルで異業種狩りが盛んだった頃にゼオスを中心に開発したアイテム。

姿を変え、種族を偽装するだけのアイテム。しかし未だレベルが弱かった頃はこのアイテムのお蔭で襲われるのを回避できた。


・擬態腕輪・マークⅡ

階級:上級

元々在った擬態腕輪にパンドラズ・アクターの協力の元、改良を加えて感覚を再現できる様にしたアイテム。

何故かアインズ装備の際には精神抑制が発動しなかったのに、欲求は変わらなかったりと言う効果が在ったものの、当初の目的である食事をする事は出来たので一応完成している。

試作品にはゼオスの悪戯心でポーズを取らないと解除できない様になっていたが、完成品にはそれを無くすらしい。


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EP33 星の守護者、依頼される

 ~リ・エスティーゼ王国 冒険者ギルド~

 

「……」

 

 クエストを貼り出している掲示板の前で仁王立ちしているユウとその後ろで暇そうにしているベルンカステル。

 

 受付嬢には2人に見合う仕事は来ていないと言われたので、他のクエストを探そうとしていたのだが

 

(どれもこれも簡単だし、報酬も少ない。

 

 だが色々と金は必要だし、簡単なものでも受けるべきか?)

 

 現在、金欠状態の至高の存在2人はどうにか金作を考えているのだが中々仕事がないのである。

 

 手持ちのアイテムはこの世界で売る訳にはいかない。ユグドラシルのアイテムはこの世界では超が付くほど高価な物だが現時点で他のユグドラシルプレイヤーがいないとも限らないので、出所が分かるとまずいのである。

 

 仮に友好的でないプレイヤーでも、ゼオスがいる時点で負けを認めそうな物だが、それでも無傷ではすまないし、シャルティアの時の様にワールドアイテムを所持している可能性もある為、無駄な争いは避ける方針だ。

 

 とは言うものの……簡単なクエストでは微々たるものであり、アマダンタイト級冒険者となった今、下位の者達に向けに出された仕事を取る訳にはいかない。

 

(どうするかね…………生活するのに最低限の資金はモモちゃんと2人で稼ぐ分で足りているが………やはり必要だよな。金は………)

 

 顎に手を当て何かを考えて居るユウの顔を覗くベルンカステル。

 

(何を考えて居るのかしら……)

 

 

「フム…………(やはり止めておこう。一先ず何処かで狩りにでも………あっ)」

 

 

「「「「あっ」」」」

 

 ユウは身を翻し出口に向かおうとする。それをみたベルンカステルも身を翻したのだが、彼らの正面に【蒼の薔薇】のメンバー達が居た。

 

 前回、気まずい別れ方をしたので変な空気になる2組。そんな中、違う事を考えて居る者達がいた。

 

(誰だっけ?)

 

 自分より弱い存在には全く興味がなく、現在ユウにべた惚れ中のベルンカステル。

 

(可愛い………今夜、誘ってみようかな)

 

 蒼の薔薇のティア。彼女は特殊な性癖を持っており、同姓である女の子が大こu……コホン、大好きなのである。

 

「これはどうも、俺達は用を思い出したのでこれで」

 

 

「そっそう言わずに前の事件でのお礼と前の時のお詫びをさせて貰いたいのだが」

 

 ラキュースがそう言う、どうやら前の時の礼と謝罪をしたいらしい。

 

「しかし…………」

 

 

「それと貴方達に依頼したい事があるんだ」

 

 

「依頼………まぁ話だけなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女達の話を聞く為に場所を移動した。

 

 ベルンカステルは暇なのかキャスパリーグと遊んでいた。

 

「「「「…………」」」」

 

 話は始まる前よりラキュース、ガガーラン、イビルアイ、ティナ、ティアは愛らしいキャスパ・リーグに釘づけである。

 

「それで依頼とは?」

 

 

「えっ……ぁあ……ごめんなさい。そっそうだった……わ…………ね」

 

 話を戻そうとするも、ベルンカステルとじゃれあっているキャスパリーグの方へ視線が行ってしまう。

 

「はぁ~………キャスパリーグ」

 

 

「フォウ」

 

 キャスパリーグはユウの呼びかけでベルンカステルの元から彼の肩の上へ飛び乗ると、そのまま服の中へと入ってしまった。

 

 と女性陣が残念そうな顔をする。しかしこのままでは話が始まらないので仕方ないのである。ベルンカステルはキャスパリーグがいなくなったので暇になったのか、ルビクキューを始め出した。

 

「そろそろ依頼の話をしてくれ」

 

 

「そっそうだったわね。実は以前に話した八本指の事なんだけども………」

 

 

「ほぅ………」

 

 

「私はある人物の頼みで八本指を壊滅させようとしているのだけど………中々尻尾は掴めないのよ」

 

 

「それで俺に依頼を?………確かに俺は今やアマダンタイト級だが、それはそちらも同じだろう」

 

 

「えぇ、確かに。でもあの時の戦いを見て分かったわ。貴方は私達より強い」

 

 

「……買い被り過ぎだ。それに仮に受けたとしても相手の居場所が分からないならどうしようもない」

 

 

「えぇ、勿論それは分かっているわ。

 

 だから私達……正確には私の友人の依頼はもし八本指の情報があれば、教えて欲しい。それと壊滅させる際には協力して欲しいの。出来るだけ犠牲は少なくしたいしね」

 

 ラキュースはあくまで、情報を入手した際に自分達に伝える事と組織壊滅の際の協力を依頼してきた。

 

(何故数度しか会った事のない俺にこんな依頼をしてくる?俺が同じアダマンタイト級だからか?少し探りを入れるか?)

 

 何故彼女達が自分に依頼して来たのか理解できなかったユウは直ぐに依頼を受ける事をせずにもう少し話を聞く事にした。

 

「何故俺に依頼を?」

 

 

「それは………」

 

 

「残念ながら俺は仕事は金ではしない。幾ら大金を積まれようともな」

 

 

「…………何も聞かず受けてくれたら前金でこれだけ出すと言っても?」

 

 ラキュースは大金の入った皮袋をユウの前に置いた。

 

「(何この大金?!)………我は金では動かない。たかが金銭如きでこの我を縛れると思うなよ」

 

 大金を目の前に置かれて動揺した彼の言葉使いは戦闘時の物へと変わっていた。しかも覇気まで出していた。その覇気に当てられ、この場に居た全員が硬直する。

 

「(何やってんだ俺?!言いたい事は在ってるけど、ビビらせてどうするんのよ!?)少し大人気なかったか」

 

 少し気持ちを落ち着かせて、直ぐに覇気を納めた。

 

「ごっごめんなさい。そうよね、話もしないで依頼を受けて貰おうなんて虫が良すぎるわよね」

 

 ラキュースはそう謝罪した。

 

「試す様な事をしてごめんなさい。貴方が本当に信用できる人物かどうかを知りたかったの」

 

 

「つまりは俺が金次第で動くかどうかと言う事か」

 

 

「そうよ。奴等はこの国の貴族相手にも取引しているから、お金で裏切る様な人物かどうか、見極める必要があったのよ」

 

 

「フン………まぁいい。取り敢えず依頼の詳細を聞かせて貰おう、話はそれからだ」

 

 まずは詳しい話を聞く為に、ラキュースに頼んだ人物に会う事になった。ベルンカステルは興味がなかった為に、キャスパリーグと共に先に屋敷へと戻る事になった。

 

 そして現在、ユウは綺麗なドレスを着たラキュースと共に城の前にいる。

 

(なっ………なんで城なんだよぉ?!絶対に面倒なことに巻き込まれるぞ?!)

 

先程の選択を後悔する主人公であった。



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EP34 黄金の王女

 ~城内 一室~

 

「初めまして、私はリ・エスティーゼ王国第三王女、ラナー・ティエール・シャルドルン・ライル・ヴァイセルフと申します」

 

 ユウとラキュースの前に座る美少女がそう言った。

 

「(こんちくしょう!予感が当たった、相手は王女かよ)

 

 ユウだ。冒険者をしている、言葉使いや礼儀知らずな所は勘弁してくれ」

 

 

「お気に為さらずに……ユウさんと言うんですね。お噂はラキュースから聞かされております」

 

 

「そうか……(何だこの娘は……こんな作り笑顔を浮かべて)」

 

 ユウはラナーの浮かべる笑顔が故意的に作っている物だと感じた。

 

「それにしても……ラキュースにも好い人が出来て嬉しいわ」

 

 

「?」

 

 

「なっ何言ってるのよ、ラナー!?」

 

 ユウは何の事かと首を傾げ、ラキュースは顔を真っ赤にして叫んでしまった。

 

「だって、この所ラキュースは貴方のお話しばかりするからてっきりそう言う関係なのかと思ったのだけど?」

 

 ラキュースは親友であるラナーにそう言われ、最近の事を思い出してみた。そう言えば、最近ラナーと話をする時には何故か彼の話題になっていることに気付いた。

 

 ラナーからすれば、そう思っても仕方がないなと思い顔を赤くするラキュース。

 

「残念ながら俺と彼女はそんな関係ではない。会ったのも今日で3回目だしな」

 

 

「あらっ、そうなのですか………(でもラキュースのあの顔は…)」

 

 

「それより依頼の話をしてくれ」

 

 取り敢えず早く話を終わらせたいので依頼の事を話す様に催促するユウ。

 

「そうでした……では」

 

 ラナーが今分かっている八本指の情報、依頼の内容を説明する。

 

 

「……成程。此方の情報をお前達に提供、殲滅する際には冒険者()の手も借りたいと」

 

 

「はい」

 

 

「それが依頼と言うなれば受けてもいい。だが何故俺に依頼を?」

 

 

「貴方のことはラキュースから聞きました。

 

 黒粉の原料を栽培していた村では誰1人村人に犠牲を出さずに、未知の魔法で畑を消し去ったとか」

 

 

「あの程度は大したことはない」

 

 

「それだけでなく、ラキュース達でも敵わない様な魔獣を使役してるとか」

 

 

「別にそれほどでは」

 

 何やらラナーは目がキラキラしているのは気のせいだろうか?

 

「それで……俺に依頼した訳を聞きたい」

 

 

「まずはラキュースから聞いた貴方の印象からですね。

 

 ラキュース達との会話で麻薬と言う言葉が出てきた時、過剰に反応していたと聞きました」

 

 ラナーは笑みを浮かべながら、そう言った。

 

「……それだけで?」

 

 

「それだけではありませんが、それが主な理由です。麻薬と聞いて過剰に反応する人は、それを扱っている人間か、それに対して良くない感情をもっている人間ですから。話を聞いた感じては貴方は後者の方と思いまして」

 

 そう笑みを浮かべながら話すラナー。

 

「成程……貴女は頭がキレるようだ。

 

 確かに俺は麻薬というものを憎んでいる。初対面でそれに気付いたのは貴女が始めてだよ」

 

 ユウはそう笑みを浮かべながら言う。

 

「いいだろう。依頼は受けよう」

 

 

「本当?」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 ユウがそう言うと、喜ぶラキュースとラナー。

 

「協力はする………しかし、俺は俺のやり方でやらせて貰う」

 

 

「えぇ、それは構いませんわ」

 

 

「では確認だ。此方は此方、其方は其方で動く、情報は交換しよう。勿論、其方の都合が悪いならば此方に報告してくれれば対処しよう。それで構わないか?」

 

 ユウの言葉にそれで問題ない答える、ラナーとラキュース。それから詳しい話を30分程掛けて行った。

 

「じゃあ、私は少し失礼して…」

 

 ラキュースは少し席を外し、ラナーとユウの2人となった。

 

「………」

 

 

「……(ニコッ」

 

 ユウ(一方)は無言で出された紅茶を啜り、ラナー(一方)はニコッニコッと笑みを浮かべユウを見ていた。

 

 -ピピッ-

 

 

(ん?メッセージ?)

 

 

『ゼオス様………御時間宜しいでしょうか?』

 

 メッセージをしてきた相手はセバスの様だ。

 

『少し取り込み中でな……手短に頼む』

 

 

『申し訳ありません、此方は急ぐ事ではないので後ほどで構いませんので』

 

 とセバスはメッセージを切ろうとするが、それを止めた

 

『いや構わない。丁度都合がいいんでな』

 

 

『?』

 

 

『こっちの話だ。それで何か問題でもあったか?』

 

 

『いぇ………実は』

 

 とセバスから話を聞くと、これは自分が戻らなければならんと考えた。

 

「少しばかり用を思い出した。俺はこれで失礼させて貰う」

 

 ユウはそう言うと、席から立ち上がる。

 

「あらっそうですか。もう少し御話したかったのですが………」

 

 

「またいずれ会う事もあるだろう……何かあれば、この紙に書いてある屋敷へ使いを出してくれ。ではこれにて失礼させて頂きます、お姫様。【上位転移(グレーター・テレポーテーション)】」

 

 ユウはそう言い騎士のする様な敬礼をすると、転位魔法を使いその場から消えた。

 

「あらあら………魔法ってあんなこともできるのね。あんな魔法聞いた事ないわね」

 

 ラナーは先程、ユウの使った魔法について考察しているとガチャっと音がして、扉が開きラキュースが戻ってきた。

 

「今戻ったわよ、あれ………彼は?」

 

 

「何か用があるらしくて、帰られたわよ」

 

 

「そうなの?」

 

 

「………それにしても、面白いわね彼」

 

 

「面白い?」

 

 ラナーの言葉に首を傾げるラキュース。

 

「えぇ…………初めてよ、あんなにも読めない人は……それに」

 

 

「それに?」

 

 

「いぇ……何でもないわ」

 

 ラナーは紅茶を飲みながら、ユウの事を思い出していた。

 

(こんな事は初めてね。大体の人間の考えてる事は顔を見れば分かるのに、彼からは何も読み取れなかった。

 

 それにまるで人ではなく、それ以外の何かと話している様な変な感じだったわね。少し情報を集めてみようかしら)

 

 

 

 

 

 

 

 

 上位転移(グレーター・テレポーテーション)を使い屋敷へ戻ってきたユウを出迎えたのは不機嫌な表情のソリュシャンだった。

 

(何があったか分からんが、物凄く重い空気だな、こりゃ)

 

 良く分からないが、何かあった事は間違いさなそうである。ソリュシャンはゼオスに一礼すると報告を始めた。

 

「ゼオス様、御報告申し上げます……」

 

 

「はっ?」

 

 そして、ゼオスに戻った彼は何とも間の抜けた声を出したのであった。



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