Fate/Golden Bonds (熱盛worker)
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第1話 黄金の出会い
蔵の中にあった本を開いてみた。そこには"聖杯戦争"と書いていたが私には意味がよく分からなかった。
だが好奇心に駆り立てられた私は、本の内容を実行してしまう。
これが彼との出会いだ。
「あんたが俺のマスターか?」
激しい雷光があった後何も無かった場所から人影が見え声が聞こえた。
「え、あ、多分そう。」
曖昧な答え。
「そうか、いや間違えねぇな。」
私の右手を見てそう言ってくる。つられて私も右手を見るとそこには赤い紋章があった。
「マスターにはまず自己紹介からだな!」
確かに自己紹介は大切だ。冷静なのか冷静ではないのかは分からないが周囲の分析は必要だ。
「あんたに呼ばれてこの"バーサーカー坂田金時"!ここに参上した!これからよろしくなマスター。」
筋骨隆々で大柄な体型な彼の声と表情は少年そのもののように聞こえ、見えた。
だが私が1番驚いているのは
「よろしく。私の名前は坂田金美。あなたは私の御先祖様なのね。」
そう、坂田金時と言えば私の家系の先祖にあたる。
「なっ、ほぉ、ならこの大喧嘩かっこ悪ぃとこは見せられねぇな。」
ニカッと笑って私をサングラス越しに見る。サングラス越し?
彼の服装をマジマジと見る、いやそんなに見なくても分かる。彼の服装は現代の格好ではあるのだが明らかに1つズレている。チンピラやヤのつく人達と見て取れるシャツ、金ピカの指輪と首飾り。極め付きにはベルトの金色で書かれてる「GOLD」。
街にいたらまず寄り付かない。
「どうした?マスター、そんなに俺っちのことを見て。」
そんな呑気に言われても困る。私の先祖は何を間違えてしまったのか…
「いや、坂田金時って平安時代の人でしょ。その、なんて言うか…派手すぎない?」
そう聞いてみた。
「あぁ、なるほどな。いや現代のもんはいいものが多い。だから俺もそれに合わせて見たってわけよ。特にお気に入りなのはこのGOLDな輝きを放つ装飾品だぜ。」
腕を広げて色々見せつけてくるが、それが一番問題だっつーの。
「まぁ大体分かったわ、で、金時さん。」
「待てマスター、名前で呼ぶのは今はご法度もんだぜ。てか聖杯戦争を知ってるか?」
「いや、全然。」
金時の顔が明らかに険しくなった。
「ちっ、あんた、この戦いがなんだか分からずに俺を呼んだって事か?」
そう問われて「うん」としか答えれない。金時がため息をつく
「マスター、これだけは覚えといてくれ。この聖杯戦争ってやつはシンプルに言うと殺し合いだ。あんたその覚悟はあるのか?」
この時の私はそう深く考えてなかった。その場のノリみたいな感じで頷いた。
「まぁ、今はとりあえずそれでいい。で呼び方の問題だがクラスってもんがあるんだけどよ、俺はバーサーカーってクラスなわけだ。つまり俺の呼び名はバーサーカーだ。なんならゴールデンって呼んでくれてかどうせならこっちの方がグッドだ。」
「分かった、じゃあバーサーカー、改めてこれからよろしく」
とりあえずゴールデンはスルーしておく
「スルーかよ!まぁよろしくなマスター。」
初投稿とりあえずねこの作品オリサーヴァントもでるけどゆるしてくれるかな?
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第2話 初戦(昼)
あと金美ちゃんの読みは「かなみ」です
夢の中である影を見た。それはボヤけていて少女のものだとしか情報は分からなかった
朝だ。大学一年目の夏休み、私はこれを楽しみに大学に入ったと言っても過言ではない。そう、長いのだ。中学生も高校生もまだ学校。そんな中での夏休み、愉悦感が湧き上がる。
しかしグータラしてばかりもいられないので私はリビングに降りる。
「よぉ、おはようマスター。」
「あ~おはよう…っ。」
「お?」
「きゃァァァァ!!ちょっと!あっち向いてなさいよ!」
「どうしたってん…うわぁぁぁぁぁぁ!!」
彼の振り向きざま悲鳴を上げられた。悲鳴を上げたいのは私の方だ。なぜなら今の姿は下着1枚。誰かに見せるような格好ではない。しかも相手は昨日会ったばかりの男だ。
「どうしてあんたが悲鳴上げんのよ!」
「んなぁこたぁどうでもいいからさっさと服を着てくれ!!」
まぁ確かにこの服装?に関しては私が悪い。だが悲鳴とはなんだ悲鳴とは。少女の下着姿だぞ、今どきの小学生でも悲鳴は上げない。
まぁ色々考えてもしょうがないさっさと着替えよう。
「さて、着替え終わったよ。」
「それは何よりだ。」
「何よ、その反応は。」
これ以上掘り返しても埒が明かない。だから話を切り替えよう。
「まぁいいや。バーサーカー、何かご飯作れるの?」
「と、唐突になんだよ、まぁ作れるって言ったらおにぎりぐらいだな。」
なるほど、朝食にはもってこいだなら作って貰おう。ちょうどご飯も残ってる事だし
「じゃあ作ってみて。晩御飯は私が作るから。」
「おう、いいぜ。それじゃあ魂込めて作ろうか!」
完成したおにぎりを見るとそれは大きさにして3号ソフトボールぐらいはゆうに越している。釜の中にはそこまで無かったはずなのになぜこんなに…
「これ、何入れたらこんなんになるのよ。」
「あぁ?さっき言った通り魂だぜ?」
そんなあっさり言ってもらっても困る。まぁいい問題は味だ。味さえよければどうでもいい(と思いたい)
「もぐもぐ……あ、美味しい。」
「だろ?生前はよく作ってよく食べてたぜ。」
やはりおにぎりは主流なのだろうか。その時代によって価値も変わってくる…危ない。おにぎりの話になっていってる。
おにぎりを食べた私はバーサーカーにこう問う。
「ねぇ、聖杯戦争は殺し合いってのは分かった。でも、何処で何時するのかはまだ聞いてないから聞かせて。」
「…場所は決まっちゃいねぇ。強いて言うならそいつと会った場所だ。時間に関しては夜がほとんどだがな。」
バーサーカーはそう答えた。
「なら、今夜山の方に行ってみようよ。誰かいるかもよ。」
「そんな呑気に構えるもんじゃねぇよ。ちゃんと準備はしておけよ。」
「はーい」
我ながらなんとも気の抜けた返事だろう。しかしこの考えが甘かったことは今晩思い知らされることとなった。
いやこのタイミングでこの出会いがなければきっと私は早々に殺されていた。これは想像なんかじゃなく確定事項、そう言いきれるほどに。
はい、とりあえずちょっとした日常を入れてみたわけですが蛇足かんが否めない。
まぁ次の回は早くもあの方との戦闘(9割オリキャラだからほぼネタバレ)
金時の活躍に乞うご期待
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第3話 初戦(夜)
時間は夜の10時をまわった。私はバーサーカーの言う通りに準備をした。動きやすい服、動きやすいズボン、動きやすい運動靴、背中には必要最低限の物が入ったリュックサック。とにかく起動性が高い装備だ。
「準備は出来たか?マスター。」
「モチのロンでバッチシ。」
そう言って私は玄関を開ける。そしてバーサーカーが後から出てくる。玄関に鍵をかけ私はバーサーカーに質問する。
「ところでどこに行くの?」
「お?そうだなぁ…それじゃああの山とかどうだ?」
多分勘なのだろうが、きっとそこに敵がいると言って口角を少しあげていた。
「それじゃあしゅっぱーつ!」
「おう!」
30分は歩いただろう、やっと目的の山の麓に着いた。
「ねぇ、これでいなかったら無駄足ってレベルじゃないよね…。」
私のその心配を吹き飛ばすようにバーサーカーは言った
「大丈夫だ、やっぱここになんかいる。ぃゃ……。」
その後何かを呟いたように聞こえたがさほど大事では無いだろうと思い聞き返さなかった。
「まぁ誰かいるんなら登ってれば会うでしょそれじゃあ登ろう。」
「まぁそれもそうだな。」
気のせいかさきほどよりも声のトーンが落ちているように思えた。
懐中電灯を付け山を登っていく。流石に無言なのはこの暗さのせいもあって不安が徐々に溜まっていく。それを感じ取ったのかバーサーカーが話しかけてきた。
「なぁマスター。ここの山って動物かなんかはいねぇのか?」
「ん?あぁイノシシとかなら聞いたことあるなぁ~。今出てこられても困るけど…。」
「そうか、クマはどうだ?」
「クマねぇ~あんまり聞いたことないかな。」
一体なんなのかクマのことを聞いてきたりして。少し質問してみた
「で、クマがどうしたの?」
「いやぁクマが出れば面白いのによ、と思ってだな。」
冗談じゃない。クマなんて出た時は私は卒倒するだろう。それを面白いで済ませるあたりやはりバーサーカーは坂田金時なのだと思う。
「まぁイノシシでもいいがよ。」
そうバーサーカーが言い終わると。
「クマやイノシシやないけど堪忍してな。」
「なっ!?」
突然そんな声がしたと思えば私の頭はバーサーカーに強制的にしゃがまされていた。
「あら、上手にやりますなぁ。って、あらあらこら懐かしい。」
フフッと笑う1人の少女。だが彼女のことは一目見ただけで人間では無いと分かる。なぜなら頭に普通は無いはずの角が2本生えているからだ。
「ちっ、やっぱてめぇか。やけに覚えのある感じがしたとは思ったぜ。てか、てめぇ気付いてただろ嘘くせぇこと言いやがって。」
2人の間で会話が進んでいく。私は何が起きたのかは分からなかった。その場に硬直しているだけだ。
「そんなに怒らんといてくれはる?懐かしい再開にうちは嬉しいんよ?」
「そうかよ。だがな聖杯戦争だ。なら生きてるはずがない者たちが出会ったらどういう意味か分かってるよな。」
「そんなこと言わんでもうちらは出会ったらやることは決まってはるやろ。」
瞬間周りの空気が一変した。そうだ、浴びたことのない私でも理解できる。この空気のことは殺気と言う。それはひどくねっとりと首を撫でるような不快な感覚。先程のことが思い返される。酷く吐き気がする。あの時バーサーカーが私を抑えてくれなければ今頃この首はない。
「あぁ、そうだな。俺たちはそういう関係だな。それじゃあ、いっちょ地獄をみていけや!」
「あはは、楽しませておくれやす。小僧!」
吐き気を抑えながら私はバーサーカーと少女の戦いを見る。先程まで無かったはずのマサカリがバーサーカーの手にあった。しかしそれをじっと見る暇もなく、彼とマサカリ、そして少女の姿が消えていた。
しかしそれはすぐに見えるようになった。彼らは衝撃と共に現れた。木が激しくざわめく、地面が動く、空気が吠える。たったの一撃どうしがぶつかり合っただけでこの影響。街でやれば間違いなく家が数件吹き飛ぶだろう。
「どうやら、俺たちのパワーはあの時とは全く変わっちゃあいねぇようだな!」
「そうやね、あんたの力が衰えとったらどうしたろうか考えたんやけど、それは杞憂やったわ。」
1度二人ともが後退する。
「それじゃあ、次行くぜ、しゅ「小僧、気ぃつけや。今のうちはアサシンや。」
言葉を遮られてアサシンと名乗る少女に怒られるバーサーカー。その瞬間だけなんだか場が安らいだ気がした。
「全く危ないったらあらへんわ~、小僧、次は気ぃつけてな。ええな。」
「お、おう、すまねぇ。じゃ、じゃあ行くぜ、アサシン。」
「よろしい。ほな行くで!」
また戦いだす二人。彼らは今のも含めて全て真剣なのだろう。二人ともの顔を見ると笑って戦っている。その笑顔の意味はまだ分からない。しかし今もこの空間には重厚な殺気が立ち込めている。私に向いてない分幾らかマシだが、やはりきつい。だがこの戦いを見て、感じで私は気付いた。これは遊びの殺し合いではなく、本当の殺し合いだということを。ならば今バーサーカーの言葉を思い返して考える。「覚悟」とはどういう意味だったのかを。
二部に続きます。明日まで待ってください。
大方の予想はついてると思うけれども以下アサシンについてのネタバレ
まぁアサシンはどう考えても酒呑ちゃんです、この物語のヒロインと言える彼女(言っても良かったのか?)
やっと酒呑ちゃんをお迎えできてすこし興奮気味の私、金時と並べて使うと尊みが深い
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第4話 第一の覚悟
「オラァッ!!」
「アハハッ。」
二人の打ち合いは一向に終わる気配は無い。これが人間の域を超えたサーヴァントどうしの戦い。それを見ていれば、戦いを知らない、死を知らない者は恐怖を覚えるだろう。だが私にはそんな暇は無い。考えなければいけないと、まず思えたからだ。それはきっと二重三重の恐怖が襲ってきて、思考回路がバグを起こしてしまっているのかもしれない。だがそんなのは関係ない。きっと、バーサーカーを召喚した時から私の未来は殺し合いに巻き込まれる事が確定している。
「もろうた…フフッ。」
「まだまだ甘ぇよ!」
こんなことなんてこれより先まだまだ続くはずだ。私は考えが甘かった、浅かった。だがそんな事を悔やんでいては、前には進まない。進むためには考えろ。彼の言った「覚悟」の意味を。
「フンッ!!」
「ほれ。」
私は、私の意思で前に進む。吐き気はもう無い。安全圏で彼の戦いを見るだけってのはどうにも気に食わない。私は彼に少しでも意思表示をする。
「マスター、そこは危ねぇから少し下がってろ!」
「あら?うちのことだけを見てくれへんのん?いけずやわぁ。」
「おっと。」
よそ見をさせてしまったのは申し訳ないとは思う。だが私はこう言わずにはいられなかった。
「大丈夫、私のことは私で何とかする!あんたは目の前の敵を倒して!覚悟はできてる!!」
「ほぉ~…そうかい!なら十分気をつけてくれ"大将"!!だが後2歩ぐらいは下がってくれ。」
そう言ってバーサーカーはアサシンとの戦いに戻る。また激しくぶつかり合う。その衝撃により土がめくれてゆくが私はそれを、リュックの横に刺さっている傘で最小限の被害に抑える。
「あの子、えらい肝が座っとるやないの。まぁまだまだ覚悟を履き違えとるけどな。」
「テメェもよそ見してんじゃねぇよ!まぁだが、さっきよりは顔つきと目が違った、なら成長したんなら次が見込めるだろ?」
「次がある思うてはるん?フフッ。」
「それはテメェの方だぜ!」
何を話しているのかはさっぱり分からないが、話しながらでも戦いのキレは落ちない。それどころか速さが増している。そんな一進一退の攻防の中。
「オラオラァ!!」
「小僧の戦いはほんま力押しやなぁ。」
「はっ、それならこれはどうだ!喰らえっ!」
「!?あぁっ!」
バーサーカーが先にリードを取った。彼のマサカリをアサシンは防いだ。しかしそこから一気に電気が放電された。零距離からの爆発的な放電。さらにバーサーカーのパワーともなると軽くでは済まない。それを機に首を刎ねようとした瞬間、バーサーカーの手が後一歩のところで止まる。
「何してはるん?はよう刎んかい。」
「大将の手前だ、流石に気が引ける。」
「嘘つきはあかんよ。ならその汗と手の震えはなんなん?」
「ちっ、ほっとけ。」
確かに、ここでアサシンの少女の首が飛ぶところなんて見てしまったら私は一生もののトラウマになる。だがそんな事よりバーサーカーの方だ。傍から見てもありえない汗のかきかたと手の震えが分かる。
「はぁ~がっかりやわ~。全く興ざめにも程があるわ。」
そう言い、服を払いながら立ち上がる。
「あの牛女、召喚されとったらまずあいつから殺したろ。小僧、今度会う時までにはしっかり腹くくっとってな。じゃないと、次こそはホンマにがっかりして、うっかりなぶり殺しても知らんからな。」
言い終えるとアサシンの少女は夜の森に消えていった。
「ちっ、早速カッコ悪ぃとこ見せちまったな。すまねぇ大将。」
「うんうん、別に、ところでバーサーカーは大丈夫なの?調子悪いようだったら言いなよ。」
「いや、大丈夫だ。問題は無い。」
そう答えるがやはり心配ではある。だがあまり気にかけすぎてもいいことは無いので、そっとしておく。
さて今晩は疲れた。特にあの殺気の空間は私を疲労させるには充分過ぎる、早く帰って寝よう。
「それじゃあバーサーカー、帰るよ。」
「おう、大将。」
なんでしょう自分でもドンドン雑になってる感が凄い。反省しなくては。
てか金美ちゃん成長早ない?自分で書いてて思ったw
まぁでもこれからもドンドン金美ちゃんのメンタルをブレイクしていく予定なんでまぁ大丈夫でしょう。
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第5話 因縁の始まり
夢の中の話だ。この前とは変わってはっきりした夜の山中の景色が見える。月が周りを照らしているのに気づく。それと同時に、私は見てしまった。そこら中の地面を濡らす赤い血。その中心には刀を持った金髪で筋骨隆々の男がいる。体は返り血で赤く染まっていてその様子はまるで"鬼"のようだった。
その男が見る先、いや殺意の先には、彼とは違い小柄な体型の女の子がいる。だがなぜそんなものを彼女のような者に向けているのか。彼女の額を見ればすぐに分かる。それは人とは違う角がある。一目見れば"鬼"と分かるほどの立派なものだ。
疑問が浮かんだ、地面に転がっている死体はなんなのか。鬼だ。首の一つ一つに角がある。つまり彼は"鬼"のように見えてその実、鬼を退治する側の"人間"だ。
「テメェ、誰だ?」
男が少女に問いかける
「うち?うちは■■■■、あんたはんは?」
「はっ!テメェに名乗る名なんざねぇんだよ。鬼はここでしめぇだ。」
そう言って手に持った刀を少女の首めがけて振り下ろす。だが、彼女の首に到達する前に、彼女の手で刀は止められてしまった。
「そないないけずなこと言わんと教えて欲しいわ~。」
「な!?今の一撃を止めるのか…なら教えといてやる、俺の名前は■■■■。よく覚えとけ、ここで死んであっちまでこの名前をよ!」
そこからは死闘がくり広げられていた。どちらかが首を取るまでの勝負。鬼の少女は舞うように軽く、人間の男は不動のように力強く、一撃一撃を、相手に放つ。だがそれは両者とも、届きそうで届かない。いや、どちらかが届いた時点で勝負は決まる。しかしそれは1羽の鶏の鳴き声で終わりを告げる。夜が明けるのだ。
「あら、明けてもうた。ならここは一旦引くとしましょ。」
「あ?逃げるってのかよ?」
男は怒気を含んで少女に言った。
「当たり前やろ?鬼は夜の世界で跋扈する。ほいなら夜が明けてもうたら家に帰らなあかんやろ?」
「ちっ、何が家だ。まぁいい、それなら次会った時は首を洗って待ってな、洗ったもんとって帰るからよ。」
「ふふっ、楽しみに待っとくわ~金髪の小僧。」
「なっ!?小僧だと!?テメェの方が明らかにチビじゃねぇか!」
「鬼を外見だけで年齢決めたらあかんよ?うちの方があんたより長生きなんよ?ふふふっ、ほなさいなら。」
そう言って彼女は去っていった。それと同時に夢も終わり、私の意識はまた落ちていった。
目が覚めると、もう日はとっくに上がっていた。カーテンを開け、夏の朝日をしっかり浴びる。そしてリビングに入りバーサーカーに「おはよう」と声をかける。
「おう、おはよう大将。今日もゴールデンな朝だな。」
だいたい分かってきたゴールデンの意味。多分これは、かなりいいと思った時に使うんだろう。ゴールデン…ね。
金酒は個人的に間合いの取り方が大事だと思う。やっぱ根幹は殺し愛だと思ってる。
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第6話 遊びに行こう
「そういえば大将、あんた母ちゃんとかはどうしたんだ?」
唐突にバーサーカーが聞いてくる。別段聞かれて困るようなことはないので、正直に答えた。
「母さんは外国に出張。父さんはその付き添いで今はいないよ。多分二、三ヶ月は帰ってこないんじゃないのかな?まぁ昔からよくある事だし。今年から大学生だから家に一人でいるの。」
それを聞いて彼は「なるほど」と一言返してきた。
朝食を食べ終わり、私はバーサーカーに今日の予定を話しをした。
「バーサーカー、今日は少し友達と遊ぶから。まぁこんな時だから夕方には帰るけど、もしかしたら夜になるかもしれない。そうはならないようにはするけど、まぁそうなったらどうしたらいい?」
彼は少し渋った顔をして忠告してくる。
「いいか、大将。今はどこで誰がアンタを狙ってるのか分からねぇ。夜になれば相手は所構わず襲ってくる。それはアンタのダチも対象だ。だから最低限、夕方にはダチとは別れるようにしとけよ。あと、オレを呼びたいのなら、その令呪を使え。それがありゃあアンタのとこまでひとっ飛びだ。」
私の右手の赤い紋章を見ながら彼は言った。
「おっと危ねぇ、令呪に関して言うことがもう一つあった。それが使えるのは3回までだ。そこは気をつけてくれよ、まぁそんなの無くっても大概のことはやってやるから、安心しな大将。」
ニカッと歯を見せて笑う彼の表情は、先程の渋った表情とは違って、自信のある顔だった。
「分かった、約束は守る。だからバーサーカーも留守番お願いね。」
任しとけ。そう言って彼は私を見送った。
待ち合わせの場所に着いた。彼女は多分少し遅れてくる。それがいつもの事だ。集合時間の5分前、暇つぶしがてら、右手の令呪と呼ばれるものを眺める。三画の赤い紋章。この前まで気にはしていなかったが、改めて説明をうけると気になってくる。と、そんな時横から声がした。
「お~い、カナ~!ひっさしぶり!!元気だった?」
彼女が来た。時間を見ると集合時刻の2分前。明日は雪が降るのではないかと疑うが、そんなことより久々の友人との再会に胸が踊っていた。
「やっほーマイ。元気だったよ。そっちは…まぁ聞くまでもないか。」
神崎 舞花。彼女とは幼稚園の時からの幼馴染だ。大学に入ったおりに、少しだけ疎遠になってしまっていた。と言っても4ヶ月程度だが。それでも、毎日会って話していた友達とそれだけ会っていないと、普通の何倍もの寂しさがある。
「ごめんね~突然遊びたいって言って。」
今回誘ってきたのはマイの方からだ。バーサーカーを召喚する2、3日前から決まっていた。断ることも出来たが、彼女に会いたい気持ちが勝ってしまった。
「別にいいよ。ところで今日はどうするの?」
「えっへっへ~、実は、プランは0なのです!」
こういう所は昔からだ。実際のところあてにはしていなかった。だが、そういうところが、彼女と遊ぶ上で一番楽しみにしているところである。
「知ってた。ならどうしよっか。」
「そうだ!体動かしたい!」
「なら、まずはバッティングセンターとボウリング場ね?」
「うん!!」
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第7話 別れ
マイとバッティングセンターに着いた。今日は火曜日、平日なので人の気は少ない。
「よ~し、それじゃあ私は140kmにいくよ!カナはどうするの?」
「もちろん、あんたと同じ140。」
「なら、勝負だね!どちらが多くホームラン打てるか、負けた方は昼ごはん奢りね!。張り切るぞ~。」
私たち二人は一番奥のバッターボックスに立つ。毎回この速度に立つと周りからの視線がすごい。それもそうだ。女子二人が店の一番最速に立ち、なおかつ平気でボールを飛ばすからだ。140kmと言うと高校野球でプロに注目されるレベルである。
「ホッ、ハッ、ホッ、ヨシッ!」
「オリャァァ!デリャァァァ!トリャァァァ!」
静かに、整ったフォームで打つ私。騒がしく、自己流のフォームで打つマイ。対照的ではあったが、両方しっかりとバットの芯に当て、ホームランを量産する。これも毎回ではあるが実際の所、勝負は毎回引き分けだ。
最後の一球が投げられる。両者ともまだ1度もホームラン以外を打ってはいない。来たっ!
カキーン!
音は一つ。私がホームランを打った。ならマイがミスをしたのか。隣のマイに目を向ける。今までドローだったが故に少し気になる。そこには、ボーッとこちらを見るマイがいた。足元にはボールが転がっている。明らかにおかしかった。ホームランではなくライナーならまだ今までに何度かあった。だが、ボールに当たらないことは絶対になかった。声をかける。
「マイ?どうしたの?」
それに反応してマイは、ハッと我に返った。
「ん?あぁ、いやいや何でもないの。しっかし、負けちゃったね~。こりゃ奢らなきゃね。」
いつものような笑顔と声で言ってきた。それに私は安堵する。
「それじゃあ、体を動かした事だし。今度はランチにしよー!」
時間は12時を少し回った頃。町のカフェに私たちは入った。
「いっやー、まさかカナに負けるとはね~。ちょっと油断しちゃったかな?」
「たまたまだよ、たまたま。それじゃあ、何にする?まぁマイの奢りだし?高いもの頼んじゃおっかな~フフッ。」
少し悪戯っぽく言ってみた。案の定マイは慌てて、
「ちょ、カナ、あんまり高いものはやめてよね!私のお小遣いが死んじゃうから!」
「大丈夫、そんなに高いものは頼まないから。」
もぉ~。そう言ってジト目で私を見てくる。マイの反応はいちいち面白い。彼女はちっとも変わってない。もちろんいい意味でだ。天真爛漫の言葉が良く似合う。
「う~ん、私はホットケーキにするけど、カナは決まった?」
「そうだね~、よし、オムライスにする。」
店員を呼ぶ。2人とも頼みたいものを頼み、料理が来るまで雑談に励む。話していると時間が経つのがやはり早い。すぐに目の前に料理が出される。
「う~ん!このホットケーキ美味しい!カナのオムライスどんなの?一口ちょうだい!」
「しょうがないな~、はい、どうぞ。」
「オムライスも美味しいね!じゃあお返しに、私のホットケーキを上げよう。」
そう言って私に、フォークで刺したホットケーキを差し出してくる。それを口にする。
「あ、美味しいねこのホットケーキ。また来ようか。」
そして黙々と食べ始める。マイの顔は笑顔だった。
オムライスが残り三口ぐらいの時、いきなり、ガシャンッ!という音がした。マイがナイフとフォークを落としてしまったのだ。音につられてマイの方へ顔を向ける。彼女の顔は大変青ざめていた。
「そんな…嘘、でしょ…」
彼女の視線は私の右手にある。いや、正確には、私の右手の令呪だ。
「えっと…マイ?どうしたの?」
「そんなはず…さっきのは見間違いのはず…」
聞く耳を持ってはいない。こんなマイの顔は生まれて初めて見た。この世の絶望を見てきたかのようなそれは、彼女に似つかわしくはなかった。
「ん?あ、あぁこれ?これは…。」
「カナ!」
一旦俯いたと思ったら、大声で私を睨んで泣きそうになっている。そして彼女はこう言ってきた。
「あんた!刺青なんて彫って!どうしちゃったの!4ヶ月会ってない間に何があったの!?私は凄く悲しいし、凄く怒ってるんだよ!」
なるほど、確かに令呪を知らない人間が令呪を見れば、刺青に見えるのもうなずける。ならば誤魔化すのは簡単だ。
「いやいや、マイ、誤解だって、これはシール。お店でお、これいいって思ってやってるだけだから。」
だが彼女の怒りは覚めない
「嘘だ!なら証拠として剥がしてよ!」
それは無理だ。ホントに刺青みたいに入ってはいるからそんな剥がれるものではない。
「え~、これこの前買ったばっかなのに~!嫌だよ!」
「う、それなら仕方がないや。でも、あと1週間でそれ、取ってよ。じゃないとホントに怒るから!」
「うぅ、ごめんマイ。」
「分かればよろしい」
初めて彼女に怒鳴られた。まさか令呪がこんな問題を引き起こすとは…今度から簡単な手袋をはめておこう。確か手頃なのがあったはずだ。
そんなこんなで、楽しい時間は過ぎていった。バーサーカーとの約束を忘れずに、夕方にはマイと別れた。
「じゃあね、カナ。また明日。」
「っ…じゃあねマイ、また明日ね。」
懐かしい記憶が蘇る。彼女と遊んでいた毎日。よく言われてはいるが、これがつい昨日のような思い出というやつなのだろう。振り向きざまマイは少し泣いているように見えた。
夕方が終われば、そんな楽しい一日から頭を切り替えなければならない。夜はまた戦争が始まる。
じゃあまずは主人公ちゃん
名前 坂田 金美
ふりがな さかた かなみ
誕生日 8月7日
血液型 A型
髪の色/髪型 黒 ボブカット
特技/趣味 スポーツや体を動かすこと全般 山歩き
サーヴァント バーサーカー
基本的に活発な女の子。服のセンスはロック系の服を好む。
だが家では半袖ダサTである。
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第8話 戦闘開始
マイと別れた後、一旦家に戻り夜の支度をする。ただ、支度と言ってもさほど用意するものは無い。
バーサーカーと夕飯を食べながら、今晩の作戦を立てていく。
「とりあえず、人気のないところをぶらぶらしとけば会えるかな?」
「まぁ、敵のヤツらが気づくはずだからすぐに出会うと思うぜ?」
作戦会議と言ってもいいのか分からないレベルの会話だ。だがそれも仕方が無いと思う。私たち二人は、情報が無さすぎる。だから手当り次第で今は行くしかない。本当に大丈夫なのだろうか?
「それじゃあ、昨日は山だったから、今日は海に向かって歩いていこう。」
「分かった、道案内は頼むぜ?大将。」
「任せといて。」
家を出て、港の方に向かう。人の気配は全くもって感じられない。普段ならばこの時間帯でも人はいる。やはり、人間の本能というものなのだろうか、誰も彼もが無意識のうちに外に出ることを嫌がっている、そんな空気感が漂っていた。
そこから30分経ったころ、なにか視線を感じる。バーサーカーに相談してみる。
「あぁ、使い魔がいるな。大将のことを監視してんだ。大方、アサシンのマスター辺りだろうがな。」
「え?それって潰しといた方がいいんじゃないの?」
「いや、今は別段ほっといてもいいと思うぜ?帰る時はきちっと始末すりゃあ問題はねぇだろ。堂々と見せてやろうぜ、大将。」
そう言って彼はニカッと笑う。その笑顔に私は「そうだね」と笑って返す。
そこから10分後、港についた。この港にはコンテナが沢山ある。多分仕掛けてくるならこの当たりが一番確率が高い。
そう思っていると急に後から声がした。
「こんな時間にこんなところに来るのは危ないって親から習わなかったのかい?」
後ろを振り向く。そこには男が立っていた。年齢は私より少し年下だと思われる。
「あんた、誰?」
「僕は"菅 悠人"。で、ここは危ないって言ったんだけどそれについての反応は?」
「別に?危ないのは分かってるけど、私はここに来たかったから来ただけなんだけど?てか初対面の年下の男に注意されるほど私は弱くないんだけど?」
そう言った時、彼は突然下卑た笑顔を浮かべた。
「フフッ、なるほど!なら、襲われても構わないってことだね!僕はこれを合意と受け取ったよ!邪魔な強そうな男がいるけど、今の僕には関係ないね。フフッ、アハハハハッ!!」
そのセリフは私に全身に鳥肌を立たせるのには十分すぎた。普通にこいつは気持ち悪い。ただの変態だと思って睨んでいると、横のバーサーカーが険しい顔をした。
「大将、下がれ。こいつ、マスターだ。」
その言葉に私はギョッとした。こんなやつが聖杯戦争の参加者なのか。
「おぉ?なんだなんだ?横のヤツ、まさかサーヴァント?こりゃあ幸運だ!まさかの一石二鳥かよ。楽しくなってきたぁ!」
「何が一石二鳥なのよ?」
「あぁ!?決まってんだろ!聖杯戦争参加者を一人消せれるので一つ。そして、サーヴァントを倒した後のお楽しみができるので二つ。ほら!ほら!フゥゥッフフッハハハハ!やっちまえ!ランサー!!女は俺がやるからよ!」
「御意」
すると男の横から、突然赤い槍を持った男が出てきて、ものすごい勢いでこちら側に突っ込んでくる。狙いは明らかにバーサーカーの方だ。
「バーサーカー!!!!」
「"黄金喰い(ゴールデンイーター)"!!」
すぐさま、斧を出し、彼の槍に合わせて叩き込む。ランサーはそれに持ってかれまいと、上手く斧を受け流す。そして、体制を立て直し、連続で刺突していく。その早さは、槍が数十本にも見えるほどだった。
だが、バーサーカーも負けてはない。基本的に避けてはいるが、避けれないものは、斧とその腕で対処していく。そして、ついにランサーの槍を掴んだ。
「なっ…!!」
ランサーが驚きの表情でバーサーカーを見る。
「はっ、捕まえたぜ、ランサー。…オラぁッ!」
バーサーカーの強烈な頭突きがランサーに入る。その音は明らかに頭突きの音ではなかった。地面が砕け散るような音であった。それほど綺麗にきまったのだろう。ランサーが一撃でよろめく。だが流石英霊だ。よろめくのは一瞬で、すぐに後方のマスターの元まで下がる。
「なかなかの兵とみました。では、次いきます、バーサーカー!ご覚悟を!!」
「あぁ!!かかってきな!ランサー!!この喧嘩、楽しんでこうや!」
ランサーVSバーサーカー
勝負開始
はい、新キャラの男「菅 悠人」の説明
名前 菅 悠人
ふりがな すが はると
誕生日 11月8日
血液型 AB型
髪の色/髪型 黒/オールバック
特技/趣味 弱いものいじめ
サーヴァント(マスターだけ) ランサー
基本的にクズに仕立て上げようと思って作ったキャラ
やっぱりクズキャラは一人いた方がいいと思う
次回は起伏がたくさんついてるはずだから楽しみにしててください
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第9話 一対一
ちょくちょく書いていくんでよろしくお願いします!
ランサーの槍がバーサーカーに迫っていく。眉間、喉、心臓。弱点を的確に突く。それをバーサーカーはその腕とマサカリで払う。昨日のアサシン戦でもそうだが、やはり彼ら達の戦いは、隣で色々と話しかけてくる人間と大差のない彼を人間ではないと実感させられる。今の彼らはまさに人間離れした攻防を繰り広げている。
「オラァッ!!」
「ハッ!」
また火花が散る。1つ火花が散ればほぼ同時に2つ、3つ火花が生まれる。
「なぁバーサーカーのマスター。」
遠くからランサーのマスター、菅が呼んでくる。
「お前、魔力あんまりないだろ。てか魔術師でも無いよな~。」
「だったらどうだっていうの?」
瞬間、彼が不気味に口を釣り上げた。
「いや、都合が良いなって思っただけ。」
菅が何かを呟き、指を鳴らす。すると景色が変わる。まず、さっきまでいたサーヴァントの姿が見えない。そして海沿いにいたはずなのに360°見渡してもコンテナが積まれている景色しか見えない。場所を移動させられたのだ。
「おいテメェ、大将をどこやった。」
注意が足りなかった。目前の敵に集中しすぎていたのだ。大将との魔力の繋がりはしっかりとある。そしてそれはそこまで遠くはない。きっとこの港のどこかだろう。
「さぁね~、サーヴァントの君に言っても仕方がないと思うけど。ここから遠い外国の地かもしれないし、そもそもこの世界にいないかもしれないんじゃないかな?」
「そんなはったりが効くと思ってんのか?」
「いや?全然。ところで君、どこのサーヴァント?日本じゃないよな~。」
「テメェに答える義理はねぇ。悪ぃが俺は大将のところに行かせてもらうぜ。」
1歩足を踏み出す。ランサーが目の前にいた。槍を突いてくる。それはほんの僅かな、秒単位の出来事だ。
「なっ!?」
「そんな簡単に合流されたら、彼女を移動させた意味が無いじゃん、ランサー、バーサーカーをここで足止めしといてね。」
「御意」
そう言ってランサーのマスターもこの場から消えた。
「さて、大将の方が気になって仕方がないが、どうやらテメェをまずはぶちのめさなきゃ大将の元には行けないんだな……覚悟しろや、ランサー。」
「えぇ、分かりました、しかし負けるのはあなたです。バーサーカー。」
遠くから刃物のぶつかり合う音が聞こえる。目の前には菅がいる。
「さて、二人きりだね。どう料理しようか?」
「あんたに料理なんかされたくないんだけど、この変態。」
彼の目は電車にいるエロ親父よりも質の悪い目線で私を見てくる。それに応戦して私は彼を睨みつける。だがたいして効果は無い。
「ハハハッ、その目付きたまらないねぇ~弱い奴が意地で強い奴を見つめる目だ。」
いちいち癪に障る。だが一対一の今、明らかに不利なのは私の方だ。彼は性格こそ掃き溜めみたいな性格をしているが、ちゃんとした魔術師だ。さっきの瞬間移動を行えるのがどれぐらいすごいかは知らない。だが迂闊な行動が危険なことぐらいはわかる。
「そう、で、これから私をどうするのか決まった?」
「そうだな~君みたいな気の強い子は…まずその心から折ることから始めるよ。」
「あら、そう?それは楽しみ、でも、あんたなんかに私の心が折られてたまるもんか!」
「いいねぇ、すごくいいよ!君はきっといい表情をしてくれるさ!さぁ調理の開始だ、アハハハハっ!!」
クラス ランサー
真名 ???
聖杯にかける願い ???
筋力B 魔力C 耐久C
幸運D 敏捷A 宝具A
宝具名 ???
クラス別能力
対魔力D
スキル
カリスマB 狂化E ???A
ランサーなのに狂化?そのうち分かるって
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第10話 必殺「ゴールデンパンチ」
私は過去の自分を許せない。ただの我儘であったとは思う。何が英雄か、あれではただの"鬼"ではないか。自暴自棄になり沢山の者を殺した。かつて私の後をついて歩いて来てくれた者もだ。私はできることなら彼らに謝罪したい。彼らが望むなら喜んで腹を切ろう。あぁ、だが私にはそんな事も許されないのだろう。
「うおぉぉ!!」
手に持つ斧をランサーに目掛けて叩きつける。だがそれは、ランサーには当たらずその槍に防がれる。先程からそれの繰り返しが行われているだけだ。
叩く、防がれる、叩く、防がれる、叩く、防がれる。防戦一方では無いだけまだマシではある。だが生憎俺には時間が無い。いち早くマスターの元へ行かなければ、きっと生きていたとしても取り返しのつかないことになる。あの手の奴はやばい、目が完全に据わっていた。
「ふっ。」
「あ?何笑ってやがる?」
防戦一方のはずのランサーが唐突に攻撃を防ぎながらニヤけた。
「いえ、気にしないでください。ただ、ここからは私が攻める番なので、覚悟していてください。」
「なっ!?」
叩きつけた斧が弾かれる。ランサーの姿が消える。なるほど、後ろに回りやがったか。
「甘ぇ!」
ランサーの槍を弾く。少しぎょっとした顔をしたが、すぐにその中性的で色素の薄い顔を無表情に変える。
「まだまだ行きますよ。」
そう言うやいなや、ランサーは先程よりも倍の動きで俺の周りを回りながら槍で突いてくる。
「ちっ、チョロチョロと、ゴールデン鬱陶しいな!」
場所はだいたい感で分かる。だが攻撃は掴めない。来た攻撃を反射で躱している様なもんだ。
「まだ、あなたには届きませんか。なら、速度を上げるだけです。」
そう言ってランサーは速度を上げる。右へ、左へ、後ろ、前。徐々にギアを上げていくランサー。槍が薄皮を掠め、どんどん槍が肉に近づく。先程とは打って変わって自分が防戦一方だ。
「さぁまだまだですよ。」
さらに上がる速度、ついに肉体に傷がつき始めた。だがこの状態はチャンスだ。いくら素早いランサーといえ、この速度ではきっとすぐには止まらない。ならば。
「ランサー、速度を上げるのはいいが、気をつけろ?ゴールデン大変な目にあうぜ?」
「何?」
頭の悪い俺に出来るのはこれしかない。ランサーの速度が上がりきらないうちにやってやる。
「うぉぉぉ!!!!」
腕に雷を纏わせる。その雷を纏った腕は紅く色が変わる。ここまでで1秒はかからない。攻撃は受けてはいるが、俺の体はこの程度なら問題ない。なら後は地面を殴りつけるだけ!!
「何っ!?」
速度を上げすぎたランサーは対処に遅れた。アスファルトが自分を中心にして吹き飛んでゆく。ランサーもその衝撃により吹き飛ばされていた。だがこれで終わりではない。宙に浮いているランサーを確認する。
「それじゃあ、大将の所まで一気に行くぜ!」
着地点であろう場所に入る。角度を決めて、ランサーに、
「ゴールデン!!パァァァァンチ!!!!」
思いっきりパンチを入れてやる。コンテナを突き破る音が一気に鳴り響く。
当たりは良かった、だが直には入ってはいない。
「野郎、間一髪槍で防ぎやがったな。…さて、俺も行くか。待ってろよ大将、すぐに行くからよ。」
走って自分の大将の元へ駆ける。ランサーが開けてくれた道のおかげで真っ直ぐに迷わず大将の元へたどり着いた。
そこには、腕が紅くなった自分のマスターと、派手にやられて相当キレてるランサーのマスターがいた。
「やっと、来たね…」
大将の腕の色は普通に戻り、体は地面へ吸い寄せられるように倒れた。
ゴールデン斧無しでいいんじゃね?徒手空拳でいいと思う
キャラ紹介は今回は無しで
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第11話 一般人対魔術師
時は少し戻り、金美視点。
マスター対マスターの戦い。だがその実、魔術師対魔術師では無い。一般人対魔術師である。普通に考えれば、一般人に勝ち目はない。そんなこと私だって理解している。だが少しでも抵抗しなければ後が怖い。
「ん~、そうだ、君の名前聞いてなかった。僕はちゃんと自己紹介したよ?君の名前は?」
「私の名前?まぁ、あんただけ名乗って私は名乗らないのは少し不公平だから教えてあげる。私は坂田金美よ。」
「ふ~ん、金美って言うんだ。じゃあ金美ちゃん?君から先攻でいいよ?ほらやっぱ男女の力差って結構あるからハンデを上げるよ。さぁどうぞ?ここに頬があるよ~?」
ニヤついた顔で煽ってくる菅。その煽りは一級品のものだと思う。現に私はかなりイラついている。イントネーション、表情、仕草、それら全てが見下している。
「えぇ、分かったわ。なら、お望みどうりアンタの頬をぶん殴ってやるわ。精々ハンデを与えたことを後悔しないことね!」
腕っ節にはそこそこ自信はある、同い年ぐらいの男子には勝てるぐらいには。なぜかというと中学生ぐらいの頃、母さんが念の為と言って私に武道と言いながらステゴロの喧嘩を教えてきた。しかもかなり本気で。その時の母さんの目は真剣な表情をしていたので断るに断れなかったのをよく覚えている。強さとしては母さんの場合、蹴りで木を折ることが出来ていたと思う。だがそんなのがまさか役に立つとは思ってもみなかった。母さんに感謝だ。
「ふんっ!!」
菅に向けて一発、殴りを入れる。頬に入った。後退する菅。パンチが入った所が赤く腫れていた。
「つっ…!おいおい、マジかよ、想像以上にやべぇじゃねぇかよ。ゴリラか?」
女子に向かってゴリラとはなんだゴリラとは。失礼にも程がある。だが今のトーンは明らかに素のトーンだった。
「次いくよ!はぁっ!」
腹に入れる。菅がその場に倒れた。
「はぁ…はぁ…ってぇなぁ!…フフっ…だが金美ちゃん、あんたは今から俺に攻撃を当てることはできないよ。フフハ、ハッハッハァァ!そして君は今から僕に蹂躙、調理されるんだ。さぁまずは下処理だ!……」
コンテナに来た時と同じ事を最後に言っている。そしてその時と同じ表情で私を見る。だが、寝そべっている状況で何が出来ると言うのだ。私は顔に向けて蹴りを入れる。足に当たった感触がある。
「つっ…!!」
だがその蹴りが捉えたのは、菅の顔ではない。私の腹だ。何が起こっているのか理解ができない。何故、自分の蹴りが自分の腹に入るのか?頭が追いつかない。
「ふぅ…ふぅ…どうだ?自分の蹴りを自分で食らうのは?痛いだろ?怖いだろ?なんでそんなことが?って思ってるだろう?これが僕達の魔術だ!」
そう言いながら立ち上がる菅。私は痛みに我慢しながら、後に下がる。無闇矢鱈に攻撃してはきっとさっきのようになるだろう。
「ふ~ん下がるんだ。まぁ正しい判断だけど、僕には距離なんて関係ないから。」
「Gate set.」
菅が英語を呟く。それの意味がわからない。だが注意しておかなければならないのは確かだ。
「僕はここから動かず君を調理する。ここは全部僕のまな板だと思うといいよ。」
「そんなに私を舐めてるの?もう一発殴ってあげようか?」
一応、こう言っておく。じゃないと私の心が安定しない。魔術というのが理解できていない。未知との遭遇。私にとってはそうだ。地球人が宇宙人に会うぐらいには混乱している。人間相手ではあるが、あれは立派な私とは別の存在だ。
「だから、もう金美ちゃんは僕に攻撃はできないってのが理解できてないようだね。ハハハッ。さて。」
目が一瞬、冷酷な目になった、それは本当に向けられた者にしか分からない程のものだ。
「捕まえた。」
菅がそう言うと、突然首根っこが掴まれた感じがした。瞬きの一瞬。菅の顔が目の前にあった。彼との距離は5mは離れていたはずなのに。そもそも、後に引っ張られているのに、前にいた菅の目の前に来ること自体がおかしい話ではある。
「ほら距離なんて関係ない。おらっ!」
顔に一発もらう。そして続けざまに二発、三発、四発。殴りは素人の殴りだが、男の力だ。痛みがある。七発目の時にカウンターのスキを見つけた。見逃さずに殴る。だがそれは、菅の七発目のパンチとともに、私の顔に入る。
「いけないじゃないか~、僕に手を出そうとするなんて。だから自分に返ってくるんだよ?」
ヘラヘラ笑いながら私を殴り続ける菅。ついに私は膝を着いてしまう。
「あれ?もうへばっちゃった?下処理が楽だねぇ金美ちゃんは。」
スイッチが入った。私は思いっきり彼を睨みつける。まだ心は折れていない。折れてたまるものか。あの時私は決めた、この聖杯戦争、自分の事は自分でやると。ならこの状況下、自分で道を切り拓くことに力を注ぐ。
「へぇ~まだそんな目付き出来るんだ、面白いねぇ、でも、少しムカつくな。」
蹴りが私の側頭部に当たる。頭が少しフラフラする。だが戦意だけは消さない。こんな奴に私は好きにされたくはない。
「ちっ、このゲス野郎。そのニヤついた顔、今に見れなくしてあげる。」
「はっ!少し距離が足りないけど、関係ないね!!ほら!!」
菅のパンチが空間を割いて私の元へやって来る。だがそんな攻撃、所詮ただのパンチだ。空間を超えていようがいまいが、動きは捉えれる。
「さぁ今度は私が捕まえた。どう?掴んでしまえば、あんたのよく分からない魔術も意味が無いんじゃない?そう、距離が無ければね。」
思いっきり彼の拳を握る。その時、私の力はいつも以上に入っていたと思う。
「グアァァァァ、手が、手が!折れる!離せ!離せよ!」
「離すと思う?考えが甘いんじゃないの?」
「ちぃっ!!…close!!」
空間の裂け目が無くなると同時に彼の手も離れる。
「なんだよ、お前、魔術使えないんじゃ無かったのか!?」
「魔術?おかしなこと言うわね、あんた。私は魔術なんて使ってないわよ別に?」
怯えておかしなものでも見えたのだろうか。私はサーヴァントの召喚は本があったので出来ただけで、私自身、魔術はからっきしだ。
「じゃあ、なんだよ、その腕は?…なんで腕が赤いんだよ!?」
「はぁ?何言って……?!」
彼の言った通り、私の腕は赤かった。夜の暗さをほんのり照らす程度には光っていた。
「さぁ?分からない?」
平生を装うが正直自分が一番驚いている。一体これはなんなのか?意味がわからない。
「ちっ!もういい!gate,sッ」
「させるか!オラァ!!」
「もう遅い!空間は開かれた!!」
赤い腕で彼を殴ろうとする。だが間に合わなかったらしい。きっとこの腕は力が上がっているのだろう。私は自分の力以上の自分のパンチで彼に負けるのだろう。まぁ、この腕が何かの偶然で彼に当たるとこを祈ってはいるが、私に当たる覚悟は決めておこう。
バチッ、バチバチバチ!!
「な、なんだ!僕の開いた空間が!崩壊してる!?なぜだ!!」
なんだ?目の前の空間が一瞬、電気を発して消え去った。そしてすぐに元に戻る。なるほど、天に祈りが届いたのかな?これで、彼をぶっ飛ばせれる。
「吹き飛べ!!」
彼の顔に私のパンチが思いっきり入る。それにより、後ろの方へ吹き飛び、背中から強く打つ菅。死んではいないだろう。だが、かなり重症のはずだ。3ヶ月は見積もってもいい。
その時、コンテナから大きな音がしたと思ったら、そこには大穴が空いていて、ランサーが倒れ込んでいた。
「ぐっ…カハッ…。!?マスター!!すみません、すぐに!ぐっ!?」
血を吐くランサー、あっちもこっぴどくやったらしい。
「ちっ!ランサー!あんたはあとどれ位で動ける!?」
「マスターが望むならすぐにでも…くっ。」
「しょうがない、令呪をもって命ずる!この場から離れるぞランサー!」
「御意。」
みるみる、傷が塞がるランサー。それを確認しながら、私に向いて菅が言ってくる。
「君、絶対忘れないから、金美ちゃん。次はこうはいかないぞ。いいな!」
「はいはい、捨て台詞乙。」
最後に少し煽っておこう。
「大将!!無事か!?」
バーサーカーが来た。その姿を見て、少し緊張が解れる。力が抜けるのが分かる。
「やっと、来た…。」
そこで私は意識を手放した。
とりあえずランサー戦終了です。まぁ聖杯戦争は始まったばっかりなんで脱落されてもすごく困る
構想としてはきちんと全陣営華を持たせる予定ではある。クズっぷりの強いランサーのマスター、彼の願いはいかに!?
ではまた次回。
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第12話 母の背中と鬼の背中
周りの風景は古都京都の大通りの屋敷の中。目の前には、前に見た金髪碧眼の男の姿があった。昼間なのでよく顔が見える。年齢はざっと18~21ぐらいだろうか。そんな事を思っていると、奥から女性が出てきた。その表情を見た途端、私は惹かれた。なぜなら、金髪碧眼の彼を見るその表情は、母性に溢れたものだった。一目見ただけで分かる。この2人は血は繋がっていない。だが、そんな事など関係ないほど彼女の表情は母親だった。実の子でも無いのにこんな表情が出来るのか。私はそこに目を奪われた。
「■■?何をしているのですか?日向に出て何か考え事でもあるのですか?」
声色もそうだ。聞く者に安らぎを与える色である。
「大将…いや昨日言ったことなんだけどよ。」
男は申し訳なさそうに、女性に言う。
「昨日の鬼の事ですね、そこまで気にしなくてもいいのですよ?また時期に現れるでしょうし、何より昨日はあなたの初陣だったのですから。」
「いや…でも…。」
「なら、次の時にまた成果を上げてくださいね?これならあなたも納得してくれるはずです。どうですか?」
イタズラっぽく微笑む女性。それに戸惑いながらも首を縦に振る金髪の青年。それはまるで、母親と子のようだった。
「ところで■■?あなたはまだ元服してません。だから今度その式を挙げます楽しみにしておいてくださいね?そうすれば今の貴方の名前■■■■は正式的に貴方の名前となります。それが何を意味するのかを理解しておいて下さい。よろしいですね?」
真剣な顔で金髪の青年に言う。その顔は母ではなく、また別の何かを感じさせた。
「では■■、また後で。」
笑顔で女性は去っていった。その後ろ姿を頭を下げながら青年は見ていた。彼は一体何を思って彼女の背中を見ているのか、少し気になってしまった。
その夜のこと。青年は街に出て警備にあたっていた。大通りを見回り、裏路地を見回ると、屋敷に帰ろうとして、歩き始めた時、一人の少女が道を歩いていた。
青年は不思議がって声を掛ける。
「おい、あんた、こんな時間に何してんだ?」
そう聞くと、少女は微笑みながら答えた。
「家出したって言ったらどうするん?」
すぐに回答を返した。
「あんたの家を聞いて送り返すだけだ。」
「そぉ?まぁうちがここにおるんは別に違う理由なんやけどな。」
そう言うと、少女の雰囲気が一変する。青年が腰の刀に手を伸ばし、いつでも抜けるように待機する。
「ちっ、てめぇ、鬼か。」
「昨日ぶりやなぁ、小僧?どや?うちの名前覚えとる?」
「は!鬼の名前なんて覚えてるわけねぇだろうが!」
そう言い放つや否や、鬼の少女に切りかかる。それを嬉しそうに避ける彼女。
「その目とその顔は、あんたのことよぉ覚えとるって言うてるよ?ふふふっ。」
何度も何度も切りかかる青年。皮一枚で避ける少女。防戦一方、攻撃一辺倒の戦いではない。これは、両者の駆け引きだ。スキを狙う少女とスキを作らないようにする青年。どちらかが間を間違えたら、どちらかの首が飛ぶ。
青年は苛烈に攻め、少女は舞うように避ける。それは、命のやりとりの芸術であるように見えた。だが、それは10分もしないうちに、終わりがきた。少女のある一言だ。
「はい、終わり。今晩はあんたとやり合う為に来たんとちゃうんよ。人も襲わへんし、盗みもする気は無い。」
「あ?じゃあ何のために来たんだ?」
「簡単なこと。小僧に挨拶をするために来たんよ?」
「なんで俺に挨拶をしに?」
嫌そうな顔で、少女を見る。
「久々にええ男がおるから口説き落とそう思うてな?」
「あいにく、俺は人間、てめぇは鬼だ。口説き落とそうと思わねぇ事だ。つまらねぇ冗談を吐くんじゃねぇ。構えろ。」
「いけずやわぁ。」
笑う少女。表情に余裕が見て取れる。
「それなら、今日は帰るわ」
「なんだと?」
「だって用件済んだらやることないやろ?なら帰るにこしたことは無い。」
そう言って青年に背を向ける少女。それに少し苛立つ青年
「それじゃあ、サイナラ。明日の晩、あんたんとこ行くさかいよぉ準備しといておくれやす。楽しみやわぁ。」
ニヤッとしてその場から消える。彼女の姿があった場所を青年は歯がゆそうに見ていた。
正直早く自作サーヴァント登場させたい
理由としてはFGOに起用されたらなんか負けた気になるから(本家相手に何を言ってんの?w)
まぁもしもあちらが先に出したらこちらの設定は変えることなく出します。
オルタとは違うけどこういう側面もあるよ的な?w
とりあえず出ない間にみんな出します。
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第13話 ライダー!見参!!
ランサーのマスターとの戦いから目が覚めるとそこは自分の部屋では無かった。
「え?ここ何処?何?この木の天井と木の床は?しかも揺れてる…まさか!?」
部屋から出るとそこには日に照らされた海原が広がっていた。
「なんなのよ!ここぉぉぉ!?」
海に向かって叫ぶ。
「朝からうるさいなぁ、ったく。」
後から20代前半ぐらいの男性が出てくる。
「あんまりうるさかったらほっぽり出すぞ、バーサーカーのマスター。」
その呼び名を聞き、すぐに臨戦態勢に入る。こいつは聖杯戦争の事を知っている。
「ほう?いい目をするねぇ、だが止めておけ?俺には勝てねぇぞ。」
その言葉に彼は自信では無く当たり前の気配を纏って言い放ってきた。
「あら?たいそうな自信ね、その自信はどこから来てるの?」
質問してみる
「どこって言われても、俺はサーヴァントだからよ、人間なんて赤子の手をひねる様なものさ。クラスはライダー、この船は俺達の宝具ってところか?」
なるほど。納得した。
「ねぇ、ならなんで私は殺されずここにいるの?まさか、私を拉致していいように使うって魂胆!?」
「んなこたぁねぇよ。ほら来たぞ。」
彼が顎で指した方向を見てみるとそこには。
「よぉ、大将、おはよう。どうだ、調子は?」
敵の近くだと言うのに呑気に挨拶をしてくる。その姿を見て私は彼の首に片腕を回し、半ばヘッドロックの形で彼に小声で問いかけた。
「ちょっとバーサーカー、なんだって敵陣の船にいるのよ。」
少し焦った表情になるバーサーカー。
「それがよ、大将が倒れた後の話…」
「大将!?」
マスターが倒れたので駆け寄るのと同時に、ランサーとそのマスターへの警戒を強めておく。
「そんなに警戒しなくても僕達もう帰るから。」
寝転がったままランサーのマスターは言った。だがあの性格とあの魔術だ。気を抜いた隙に大将を捕られる可能性は十分ある。よって、警戒はそのままだ。
「ちっ、…まったく、分かった、早くこの場を離れるよ。」
「そうかい。」
「行くぞ、ランサー、僕は足が折れてどうにも動けそうにない。運んでくれないか?」
「あぁ、分かった。」
雰囲気が変わるランサー。自分のマスターを抱え、その足で拠点に戻って行った。追えばどこかは分かるのだが、気絶した大将をそのままにしては置けないので、追うのは止める。
「さてと、大将を運ぶとするか。明日の朝ごはんはゴールデンなものにしてやらねぇとな。」
そう言って大将を抱えようと近づく。すると、後から。
「おい!!俺の縄張りを荒らしたのはてめぇか!!!??」
とんでもない大声が聞こえる。気配からしてサーヴァントだ。
「だったらどうだってんだ?」
振り向いて声をかける。そこには、荒々しい格好をした人物と、きっちりきまった服を着ている子どもがいた。
「そんなん決まってらァ!一勝負といこ…ってぇ!!てめぇ!それお前のマスターか!?気絶してんじゃねぇか!!おい、早く来い!俺の船に入れてやるから!」
「おいおい、いいのか?マスターの意見も聞かずに。」
そうすると横の男の子はうなずき口を開いた。
「……うん、いい……困ってる人は…助け…なきゃ。」
「そうか!それはありがてぇ!恩に着るぜ!おい、てめぇはクラスなんだ?俺はバーサーカーだ!」
「俺はライダーだ!そんじゃよろしく頼むぜバーサーカー!あ、つっても敵は敵だからな。時が来たらお互い死力を尽くしてぶつかろうぜ!」
「ってことがあって…。」
「あんたねぇ、もしこの人達が悪い人だったら確実に私たちは海の藻屑よ!」
「なんでだよ?」
呆れる。寝首を搔かれると言うことは考えなかったのだろうか。ため息を一つつく。
「てか、なんか人が違うくない?ほら私の横にいるライダーさんはどちらかというとクール系の方だけど、あんたが会ったって言うライダーさん、クール系とは違うよね?」
「あぁ、それが俺も聞いてびっくりしたんだが…。」
「おうおう!元気のいいお嬢さんだ!!感心関心。」
後から声が聞こえる。とんでもなく大きな声なので、寝起きの私にはきついものがある。だがそんなことよりもびっくりするのが、
「おはよう諸君!」
「父上、朝からうるさいです。」
そう、ライダーのサーヴァントが二体いるのだ。
「お、嬢ちゃん、いい反応してくれるねぇ。やっぱびっくりするだろ!でもな、これだけじゃないんだぜ。俺たちは。」
ライダーの詳しい事項は次の後書きで。
「おいおい!早く紹介してくれよ!俺のこと!」
まぁ待てって、いい感じに説明するから。
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第14話 船団英霊
ライダーに案内されるがまま私とバーサーカーは付いていく。
「ねぇ、一つ質問してもいい?」
「どうした」
若い方のライダーが答える。
「基本サーヴァントって1人につき1人だよね?なんで2人居るの?」
そう聞くと先頭を歩く父と呼ばれた方のライダーが反応し、こちらに少し顔を向けてニッとした。
「お嬢ちゃん、その理由を教えるために着いてこいって言ったんだ。楽しみにしときなよ。」
「ち、父上、まさか手の内を。」
「いいんだよ、どうせすぐバレることだしな。」
息子だと思われるライダーの言葉を遮ってライダー(父)は言った。はぁとため息をこぼすライダー(子)。その様子から生前もこんな感じだったのだろうと察しがつく
「さぁ着いたぞ!」
と案内された場所は船全体を見渡せれる船首部分。隣ではニヤニヤして腕組をしているライダー(父)。すると息をめいいっぱい吸い"号令"を出した。
「野郎ども!帆を張れぇぇ!客人が目を覚ましたぞぉぉぉぉ!!」
その声は太く通っていた。船上だけでなく、海を越えて遠くの陸にいても聞こえるのではないかと疑うほどに大声だった。だが、不思議なことに彼の隣にいる私は少し驚きはしたが、耳は痛くないし不快感も全く感じない。それどころか高揚感の方が心の底から増してくる気がした。
「ほら、見てろ。これが俺"達"だ。」
ライダー(父)がそう隣で話しかけてきた。すると、突然帆立柱が上がり、デカデカと描かれた家紋が目の前に現れた。するとどうだろう、周りから男達の声が次々と増えていく。視線を帆から甲板に向けると、そこにはいなかったはずの人達がたくさんいた。
「え、どういうこと?」
「ふっふっふー。どうだ驚いたかお嬢ちゃん。この船!この船員の数々!そして、この七曜紋!これで俺達が誰だか察しがついたろ。」
そう言ってドヤ顔で私を見てくるライダー(父)。だが残念ながら私は日本史は得意ではない。
「え?分かんない」
そう言うとライダー(父)はポカーンと顎を外していた。
「ま、マジかよ。っくしょー知らねぇのかよ。」
「で、あなた達は誰なの?家紋を見せたってことは真名教える気まんまんだったんでしょ?ライダー(父)さん?」
「ライダー(父)とか言うなよ。」
そう言って不貞腐れる(父)。すると甲板から野次が飛んでくる。
「船長のやつ不貞腐れてやがるぜ!」
「嬢ちゃんいいねぇ!もっとやれやれ!」
「でも俺達を知らないのはダメだな!」
「その通りだ!その通りだ!」
「船長、教えてやりなよ!」
その野次を聞いて微笑むライダーのマスター。年齢は多分10歳前後。こんな子どももこの戦争に参加してるのかと思うと心が痛い。
「で、教えてくれるの?」
ライダー(父)を見る。表情的にまだ不貞腐れているようだ。
「誰が教えるかばーか!ばーか!もう絶対教えてやらねぇからな!」
そっぽを向かれた。なんて子どもっぽいんだろうか。
「はぁ、父上。あなたは子どもですか。」
ライダー(子)が呆れた表情で父を見る。
「バーサーカーのマスター、俺達の真名は"九鬼水軍"俺は九鬼守隆だ。そして、拗ねてる父は九鬼嘉隆だ。あとこの周りにいる奴らは俺達の」
「おい、守隆てめえ何勝手に教えてんだよ!」
「父上が勝手に真名を教えようとしたくせに、拗ねて教えないからですよ。」
九鬼水軍、聞いたことない。帰ってネットで調べよ。隣で親子喧嘩しているのを置いて私はそんなことを考えていると、周りの船員達が親子喧嘩を見て囃し立てだした。それにつられるように親子喧嘩もヒートアップしていく。
あぁ、なんて騒がしくて楽しい船なんだろう。
はい、半年ぶりぐらいかなすみませんでした。
また書いていきたいと思います
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第15話 下船
相も変わらずサブタイトル浮かばねぇなw正直サブタイトルが割と苦戦する。
このサブタイトルも割と適当なわけなんです
親子喧嘩がひとしきり終わったあと、ライダーという英霊の説明を受けた。私は、最初何故こんなにも自分達の正体をバラすのか分からなかった。だから質問してみた。
「うん?なんでかって?そりゃあ俺らの名を上げるのに"ライダー"なんて名前じゃあ分かんねぇだろ。だから帆もこうやって堂々と掲げるし真名も明かす。何、大したことじゃないだろ?」
そうやって笑顔で行ってくるライダーの顔はワクワクしていた。ちなみにバーサーカーの方は納得のいく顔をしてライダーを見ている。
「なら、こっちも明かさなきゃな。」
と言う私の相棒。もちろんそれに反対することは無い。よってこちらも真名を開示した。
「な!?あの怪童丸の坂田金時ぃぃ!?うぉぉ…すんごい衣装だなぁそりゃ。てっきり南蛮人の類だと思ったぞ。」
まぁそりゃこういう反応になりますよね。あの伝説の金太郎がこんな衣装を着てるなんて誰も思わないだろ普通。
閑話休題、ライダーの正体の話を聞いた。どうやら彼らはバーサーカーみたいに1人の名前じゃなく、船団として英霊の座?というところに登録されているらしい。よって、人数も沢山いるようだ。
「なんでそうしたんだ?」
バーサーカーが聞いた。どうやら英霊の座というのは基本、英霊の意志によってそういう能力以外のところは自分で決めれるらしい。
ライダーの答えは至極真っ当な答えだったと思う。彼は
「船ってのは船員全員の力で動かすもんだからだ。」
胸を張って言った。
ライダーの正体は分かった、だがマスターが分からない。しかもこんなにマスターを無視して真名を明かしていいものなのか。そう思い、まだ10歳ぐらいの男の子のマスターに聞く。
「ねぇ、文句とか無いの?」
「…もん…く…?」
「うん、文句。ほら勝手に真名を明かすなーとか、なんで僕に相談せずにーとか…無いの?」
聞くとライダーのマスターは笑顔で。
「うん、ないよ!」
その笑顔は正に天使の微笑みだった。やばい、かわいい。
「そ、そうなんだ~。で、君の名前は?」
「…なまえ…ぼくの…なまえは…よしもり。」
「え。」
驚いた。彼の容姿は明らかに日本人じゃない。流れるような金髪で綺麗な青い瞳。それで名前は「よしもり」。多分触れない方がいいと私は判断した。
「そっか、よしもり君か。私は金美、坂田金美よ。」
「…かなみ…?」
「そう、金美。」
少し考え事をしたと思うと私の方を向いて呼んできた。
「…かなみ…おねえ…ちゃん…。」
あ、もう無理。やばみがやばい。鎮まれ私のかわいいメーター。このままじゃ何時か拐ってしまう。聖杯戦争関係なく拐ってしまう。
「…どう…したの?…」
どうやら不審に見えたらしく少し怯えている。
「ん?大丈夫だよ~怖くないよ~ほ~らおいでおいで~。」
と両腕を広げると、ライダー(子)こと守隆が、
「おい、バーサーカーのマスター。嘉守に何をしようとしてる?」
「え?何って?抱っこしようと。」
「何さも当たり前なことを、みたいな顔をしている。止めないか。」
そう言って私をよしもり君から引き剥がす。
「ちょ、離してよ!痛い痛い痛い!」
「お、あっちは仲がいいなぁ。」
そう言って笑って見ているライダー(父)にイラつきながら守隆から離して貰うように頼む。バーサーカーは何をやっているのだろう、マスターが別のサーヴァントに襲われているというのに。全くサーヴァントとしてどうなんだろう。とバーサーカーを見る。苦笑いかよバーサーカー。
そうこうしている内に昼になった。さすがに今日1日ここにいる訳には行かないので陸に船をつけて降ろしてもらった。
「おい、バーサーカーと金美!次に会う夜は敵どうしだからな!そんときは覚悟しろよ!俺らがてめぇらに勝つからな!知り合いだからって容赦はしねぇぞ。」
ニッと笑ってそう言って見送ってくれるライダー達。それに手を振る私は、絶対に負けないよという顔で彼らの出航を見送った。
それから1時間後、私はスーパーの食材売り場にいた。今日の晩御飯の為の買い出しだ。
「これと、これと、これ。う~ん、これは……買っとこ。」
買ったものは全部バーサーカーに持ってもらっている。
「ちょ、マスター、まだ買うのかよ」
バーサーカーが困った顔でこっちを見る。
「何言ってんの?あんた男でしょ、しかもすっごい力持ちの。あとこの量になったのはあんたがいるからよ。…後、人混みがいる所で"マスター"だの"大将"だのは止めてよね。何か勘違いされるかも知んないし、他のマスターがいたらすぐに気付かれるかもしれないから。下の名前で呼んで。」
「お、おう」
とやりとりをして食材選びに戻る
「俺がいるから?って言われてもな。」
「だって、昔っからあんたは大食いだって言うネタは多いのよ。ならたくさん買わないといけないじゃない。余ったら明日食べればいいし。」
「いや、マス…金美、実はだな、俺達はもの食べなくってもいいんだが…。」
「また何言ってんの、一緒にいるんだから晩御飯ぐらい付き合いなさいよ。それとも私が作ったものなんて食べたくないってわけ?」
意地悪く言ってみる。
「いや、そういう訳じゃねぇよ?ほら、金の問題があるじゃん?」
「そういう事か、大丈夫大丈夫。何とかなるって。」
………レジにて………
「会計、2万4千356円になります」
「…」
「お客様?」
「あ、はい3万円から…あ、6円あった。じゃあこれで」
やばい、今月あと1万だよやばい。やばいの言葉しか出てこないよ。
「金美、無理すんなって。」
帰り道、バーサーカーがそう言ってくる。荷物はあまりに重いので、バーサーカーに7割持ってもらっている。
「できるだけ安いの買ったんだけどなぁ~。」
「そりゃあ量がありゃ関係ないよな。」
「だよね~。」
そんなことを言いあっていると、突然声をかけられた。
「ちょっとそこのカップル2人、ちょっと来ぃ!」
少し違和感のある関西弁のイントネーションがあるお姉さんだった。その衣装は良くイメージでみる占い師みたいな感じで、勾玉のネックレスに高そうな宝石の指輪を身にまとっており、胡散臭い。
「なぁなぁ、占いしていかん?今ならウチがタダで占ったるから。あんちゃんらえらい特殊なオーラが出とる。せやからウチに見せてぇや。」
「占い?」
「そうそう!占い。あっこに机と水晶があるやろ、そこでドバーンと占いするんや。どや?やってかん?」
「う、うん。まぁなんかタダだしいいよね。」
こうして私は占い師のお姉さんに私のオーラを見てもらうことになった。
クラス ライダー
真名 九鬼水軍
聖杯にかける願い ???
筋力 C 魔力 D 耐久 B
幸運 C 敏捷 C 宝具 ???
宝具名 ???
クラス別能力
騎乗 B
スキル
カリスマ B ??? C ???A
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第16話 占い師さんの胡散臭さは凄い
「まぁ座り、座り。」
言われた通りに占い師さんの目の前に座る。バーサーカーは私の後ろで物珍しそうに机の上を見ていた。
「じゃ、まずは…この紙に名前、生年月日を書いてな。別に悪いことには使わへんから、安心して書いてな。」
「は、はぁ。」
また言われた通りに動いて相手に差し出した。
「ふむふむ、なるほどなるほど。」
喋れば喋るほど、占い師さんが胡散臭く見えてくるのは気の所為だろうか、いや気の所為ではない。
「え~と、名前は"坂田金美"さん、生まれは2014年8月7日。てことは19歳か~。え、嘘。もっと下や思うとったんやけどな。へ~。」
若く見られて少し嬉しかった。だが逆に、
「もっと大人っぽく見られたいんですけどね。」
「そんな!若く見られるのは得やで得!ウチなんかこの前実年齢の5歳上や言われたんやから!もーお姉さんショックやでショック!」
何やら逆鱗を掠めるぐらいの言葉だったらしい。少し早口になっていたなと思う。でも、少しだけ胡散臭さが減った。
「ごほん。それじゃ気を取り直して。ウチの目を見てちょうだいな。」
占い師さんがわざとらしい咳払いし、私はまたまた言われた通りに行動する。
「オーラを見るんにはやっぱ目と目、合わせるんが1番分かりやすいからな。」
目と目が合う。占い師さんの目は透き通るような茶色で、綺麗な瞳だ。私は、彼女の目に吸い込まれるかの様な感覚におちいる。そして約4秒、体感時間1分間の見つめ合いをしたところで、彼女が喋る。
「はい、えぇよ~。そんじゃぁ結果報告ぅー。」
ぼーっとしていたので少しビクッと驚いた。
「え~金美さんのオーラはどうやらこれから特殊な事柄にさらに巻き込まれていくでしょう。それは、自分だけじゃあ解決できひん事も多々あるはずです。」
「ほぉーほぉー。」
「へぇー。」
私とバーサーカーが同じタイミングで頷く
「せやけど、諦めたらあきまへん。周りにいる人達を信じればなんとかやっていけるでしょう。…多分。ってとこやな。」
「いや多分ってなんなの!最後の多分って!少し減ったと思った胡散臭さがMAXまで上がっちゃったよ!」
「え、カナミン私の事胡散臭い思うてたん?」
「当たり前でしょ!歩いてていきなり声掛けられて!その内容がオーラがなんだの言われて!胡散臭いって思わない方がよっぽど変わってるわよ!あとなんでいきなり馴れ馴れしくカナミン?!」
「まぁまぁ金美、少し落ち着けって。」
「バーサーカーは黙ってて!」
そう言って少ししゅんとするバーサーカー。
「うん?バーサーカー?珍しいあだ名つけるなあんた。」
「え、あぁ、いや、その。そう!こいつ筋肉ごついでしょ!で、見ての通りいっぱい袋を持てるだけの力があるでしょ!だからバーサーカーなの!」
一瞬焦った。感情的になりすぎてバーサーカーをまんま呼んでしまった。これは反省だ。まぁ我ながら完璧な言い訳。
「へぇ~そうなん。せやったらウチにも付けて。」
何故胡散臭い初対面の占い師にあだ名を付けなければならないのか。しかも出会って30分も経っていない。
「え、いや、あなたのことよく分からないし。」
「え~、ウチの占いやったらこれからカナミンとはちょくちょく会うって出てるのにー。」
「それは多分つかないんだね。」
「あ、そうだ、あだ名付けてくれへんのんやったら、お代、はろうてもらうから。1万。」
高!?
「ちょ、ぼったくりでしょ!」
「ウチの心が傷ついた慰謝料代こみやから。」
「あぁーもー分かった、分かった、付ければいいんでしょ!」
「やったー!」
なぜ私達はあだ名を付ける付けないでここまで言い合わなければならなかったのか。
「えーとじゃあ、胡散、くさい子。」
「なんでやねん。」
真顔で言われた。
「あぁ、じゃあ"たまちゃん"でどう?」
「ほぉーその心は?」
「勾玉のネックレスの主張が激しいから。」
「なんやねんそりゃ。」
そう言って占い師さんこと「たまちゃん」は笑っていた。
「それじゃあありがとうな。」
「うん。」
「今回はウチが引き止めたけど、次は道に迷ったり困ったりした時にきんさい。友達料金で99パーセントOFFにしたる。」
「残りの1パーセントはどうするのよ。」
そう言って笑いあい、手を振って家路に戻る。バーサーカーは蚊帳の外。荷物を持ってもらっているのに申し訳ない。今晩はたくさん料理をつくろう。昨日、一昨日の感謝を込めて、そして今日、明日の夜に共に頑張るために。
占い師たまちゃん
全て謎
やっぱ謎多き女は素敵
まぁたまちゃんそう言う性格ではないよな
話せば話すだけ謎が明かされていきそう
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