Girls und Panzar mit Boys (おっさま)
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男子戦車道はじめます!

 
初投稿です
戦車知識、執筆経験皆無ですがこれから勉強していきます

この作品は
野郎が戦車に乗って戦車道で俺TUEEEE!!!したいだけです

基本的にはアニメの世界観に
戦車道世界大会誘致に伴い世界中で男子戦車道が興り、それに伴い、主に男のオリキャラが複数人出てきたり、既存のキャラに絡んでたりします。

最初は戦車出ません!みぽりんが出てくるまで時間かかります!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「…ってことで、さくらだー 来年からうちも戦車道やるから 昔盛んだったらしいから始めるってより復活だね~ かっこいい~」

 

何を言っているのだろうかこの人は 生徒会長角谷杏さまのいつもの思いつきだろうか それにしても 戦車道は女子のための武芸だ わざわざ俺に言う必要があるのだろうか いや まあ 生徒会の庶務だし 一応必要はあるのか うーん…

 

「なんか 男子戦車道を世界大会誘致とともに立ち上げたいらしくて 男子戦車道やると国から補助金が入るらしいんだよね〜 ってことで、さくらだー 最低5人ッ!男子を集めて欲しいんだよねぇ〜 」

 

「まじっすか!? 一体何に乗れるんですか!? kv‐2ですか!? クルセイダーですか!?」

 

興奮して人集めどころじゃなかった

俺があの戦車に乗れるのだこんなに良いことはない うひょー

今から妄想が止まらないぜ 車長でかっこよく指示を飛ばすのもいいし 操縦士になって鮮やかに運転するのもいいし 砲手になってスナイパーになるのも最高だなぁ 意外と通信士も渋くていいかもなぁ

あ まずい 桃さん睨んでる…

 

「ほら!惚けてないで  さっさと探しに行け! 」

 

「うっす さーせん」

 

うひー やっぱり怒られたわ… 黙ってれば可愛いのに 怒ると本当におっかない

 

「まあまあ桃ちゃん 和樹君は戦車大好きだし 喜ばないはずがないでしょ? お願いね、和樹君」

 

「はい! わかりました! 柚子さんのためにも不肖、桜田和樹頑張ります!!!」

 

 

あぁ… 本当に桃さんに比べて 柚子さんは本当に天使だ おっぱいも大きいし オラ 嫁に欲しいだ

 

「優秀者には単位も沢山あげちゃうし遅刻も見逃しちゃうよ〜 頼んだよ~」

 

ニコニコしながらそう区切るように言って会長はまた干し芋を齧り始めた 

てか戦車にも乗れて単位も増えるのかいい事づくめだな 本当に

でも遅刻見逃しは風紀委員が黙っちゃいないだろうなぁ まあ会長が何とかするだろ

 

「オッケーっすよ、じゃあ行ってきますね!」

 

そう言って俺はガッツポーズをしながら生徒会室を後にした

幸い何人かあてになる友人がいるから尋ねてみるとしようか

まずはアイツだな この時間なら校庭の近くで絵でも描いてるかな?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「なあ、男子戦車道やらないか」

 

ウホッ なんだコイツ コイツはなかなか筋肉質だからシャレにならない 僕はホイホイついて行かないんだからな!

 

「いきなりなんだい 戦車道? アレは女の子のための武芸だよね? 男の僕らには出来ないだろう?」

 

校庭で一人でバレーボールの練習をしている子がいる…

頑張ってるな ああいうのって応援したくなるよね よし 今日の題材は彼女にしよう

ううん 動いてる対象はスケッチしづらいな…

 

「って思うじゃないですか? どっこい 国を挙げて男子戦車道を興そうとしてるらしいんだよ んでいつものごとく会長様に言われて人集めよ ってことで男でも大丈夫! オイ、聞いてんのか、幸二?」

 

ああ サッカー部が来ちゃって 追い出されちゃった かわいそうに…

うーんモデルがいなくなっちゃった 今日はもうやめにするか

 

「聞いてるよ でも なんで僕を誘ったんだい? 僕は非力だし アクティブなことは苦手だよ?」

 

「大丈夫だって 熱意があればなんでもできるって! 理由? 前に机に置きっぱなしのお前のスケッチブックを悪いと思いつつ見たんだが、すごく上手にCV33とセモベンテが描いてあったからさ そんで 幸二も俺と同じだと思ってな」

 

僕はそういった根性論は嫌いだ

 

「ったく また勝手に見たんだね、君は はぁ…」

 

「まあまあ 本当に上手だったぜ あのCV33は! まるで実物見たみたいだったぜ 今度はイタリアつながりでP40描いてくれよ! てか戦車道やろうぜ!!! 新しいことを始めたいって言ってたじゃないかよ 絶対良い刺激になるぜ!!!」

 

「まったく正直だな和樹は… でもまあ 確かに 絵を描くにあたって新しいこと始めるのはいい刺激になるかもね 良いかもしれない やろうかな、戦車道」

 

「お じゃあ決まりだかんな! うし これで桜田和樹、原幸二を入れて二人だな!」

 

この時の僕は半分は本当に新しいことを始めたかったんだ でも もう半分は僕が戦車道を始めることでアイツとまた会えるかも知れないって無意識に思ったんだと思う

 

「でも 和樹 流石に僕ら2人って訳ではないだろう? 他にも声をかけるの?」

 

「ったりめーよ、戦車ったら 車だろ 車って言ったら アイツしかいないだろ?」

 

「なるほど 彼なら二つ返事かもね」

 

僕らは笑い会うと 学園の自動車部のガレージへと向かった

さっきのバレー少女は中庭でトスの練習をしていた 頑張るなぁ

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「君尋、戦車にのれ」

 

「乗るよー」

 

「「一つ返事かよっ!!」」

 

当たり前だよね 14歳の少年っぽく悩むことはない アレに乗ればどんなところでも進めるし 砲弾で障害があればぶち壊せる 最高の乗り物だよ

前の学校では 整備だけで ずっとお預け状態だったんだ 乗れるなら是非乗りたいな

詳しく話を聞きたいし一旦ガレージを出ようかな

 

「ナカジマさーん!ちょっと外に出ますねー」

 

「うんー! わかったよー!」

 

よし 外に移動しますか

三月の日差しは気持ちがいいよね ドライブに行きたくなるね またホシノさんの運転で行きたいなー 速いし 楽しいだろうなー

 

「でも何でいきなり戦車に乗れることになったの?」

 

「理由もわからず了承したのかよ、おまえは…」

 

「君尋は戦車に乗りたい乗りたいって言ってたもんね…」

 

うん 戦車乗れれば 理由なんてどうでもいいよね

 

「かくかくしかじかな事情でな 正直 俺もおまえみたいにワクワクしてんだよ、君尋」

 

「うん最高だね 戦車も女の子が乗るだけのものじゃなくなるんだね てか 幸二も乗りたいってことなの?」

 

「うん 僕も新しいことに挑戦してみたくてね」

 

「そいつは良いね じゃああと二人を探しに行くの?」

 

「そうそう あともう2人声をかける予定なんだよ だから君尋もちょっと付き合ってくれよ」

 

「いいよー じゃあちょっと ナカジマさんたちに言ってくるねー」

 

単位も沢山貰えて遅刻も見逃してくれるんだねぇ じゃあ彼に声をかけるしかないよね

うーん 早く戦車を運転したいな~

 

「じゃあ行ってきますね~、スズキさーん」

 

「気を付けてね~、鮎川~」

 

そういえばスズキさんも戦車道に興味あるとか言ってたね

もしかして自動車部全員で戦車道やることになるかもね~ なんてね

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「俺達と一緒に戦車乗って単位を沢山稼いでよ!」

 

「なに言っとん、お前? 今は罰の掃除で忙しいんや 後にしてくれや」

 

そんな単位が沢山貰えるみたいな 奇跡や魔法みたいな話あるわけないやろ アホらし

にしても、風紀委員厳しすぎやろ なんで遅刻しまくっただけで罰掃除なんや そど子許さん!!

 

「龍秋、お前このままだと単位足りなくて留年しちまうかもしれないんだろ? 今なら単位のおまけで遅刻見逃しもつくらしくてさ どうよ?」

 

む 確かに 遅刻が死ぬほど多い俺には遅刻見逃しは大きい 風紀委員のおかっぱ三人衆からも解放されるっちゅうことやな そういえば戦車と言えば 昔アイツも戦車に乗りたいとか言うてたなぁ 今どうしてんやろうか?

 

「一考の価値ありやなぁ にしても話がうますぎへん?」

 

「ちょっと、山口君! さぼらないでよね!これは罰掃除なんだから!!」

 

「はいはい、そど子 あとでやるから大丈夫や」

 

「そど子って呼ばないで! もう 絶対よ! まったく冷泉さんだけでも大変なのに山口君ったら…」

 

ああやっとどっかに行ったわ ほんま そど子の相手は疲れるわぁ…

 

「よし 邪魔者もいなくなったし もう少し詳しく聞かせてくれや」

 

「おう かくかくしかじかってことなんだよ」

 

「ほう なるほどなぁ ええわ おもろそうやしやったるわ」

 

実際実入りが多いのも事実やしな

 

「流れから察するにあと一人に声をかけるって感じやな」

 

「そうだねぇ 俺ら四人集まったら 自ずともう一人は決まるよねぇ」

 

「うん それに彼は昔に戦車道に関わっていたみたいだしね」

 

「おう わかってるじゃん、お前ら 早くアイツのところに行こうぜ!」

 

相変わらず桜田は元気やなぁ

まあ 確かにアイツは本当に戦車道に関心の深いやつや 深すぎてたまに怖くなるほどにな

でもアイツにとってこの話は悪くない話やろうな

まだ教室にいそうやし行くか~

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「なあ 俺らで戦車道やろうぜ!」

 

目の前のやつは何て言った?センシャドウヤロウゼ? わけがわからない、武部並みに訳がわからない。

お、今日も五十鈴さん相手に何か言ってる、誰か貰ってやれよ いやー五十鈴さん今日もキレイだなー 

にしても…

 

「何言ってんだ 昔の俺ならともかく 俺らが出来るわけがないだろう 第一 大洗学園に使える戦車はあるのか?」

 

「「「「たしかに」」」」

 

たしかにじゃねーよ! お前ら戦車もなしに戦車道やろうとしてたのか?

そんなの肉なしの焼肉じゃないか!アホか!

 

「そんな大事なこともわからないのに よく誘えたなぁ それに男が戦車道できるのかよ?」

 

「それは かくかくしかじかで 大丈夫なんや、蒼」

 

「そう、なのか…? だけど 戦車のこともあるし 色々と抜けてないか、和樹? 」

 

「そうだな 俺も触りしか聞いてないしな」

 

「でも俺ら五人でやったら楽しいとおもうよ~、蒼君」

 

この学園に来てから特に何をするわけでも無く何気なく過ごしてきた そんな生活を変える契機になるかも知れない それが戦車道なら俺にとってはなおさら好都合かもしれないな だけど…

 

「蒼 考えてみて 君は戦車道に関わりたかったけど お義母さんに戦車道に関わることを許されなくて 今は戦車道がない大洗学園に入学させられたんだろう? だけど大洗学園の戦車道は今復活しようとしてる だったらこれはチャンスだと思うよ 確かに君のお義母さんとことを構えるかもしれないけど こんなチャンス二度と来ないかもしれないと僕は思うよ」

 

幸二の言う通り 俺はあの人にて言われて この大洗学園に来た そして俺の戦車道の道は完全に絶たれてしまった だけど またあの道を歩めるかもしれない もう二度とこんなチャンスはないかもしれない…

 

「わかった やるよ いや やりたい 戦車道を」

 

決めた 俺はもう一度 戦車道の上を歩こう

もしかしたら あの子を助けられるかも知れない

 

「うん そうだね」

 

幸二がニコニコしている ここまで言ってくれた幸二には感謝しないとな

 

「おう ありがとう 幸二」

 

「お ええやん にしても随分大袈裟やったなぁ」

 

「うん 今のは勧誘っていうより説得だったねぇ」

 

「前に蒼が少しこのことについて話したのを思い出して ついね」

 

「まあともかく 蒼もいれて五人そろったわけだし 会長に報告に行くかー」

 

「そのことだけど さっきも言ったけど まだまだ分からないこと多い 会長に色々聞きたいんだが 構わないか、和樹?」

 

動機はしっかりとあるが どうにもわからないことが多すぎる 特にあの会長だ何か隠しているかも知れない だけど苦手なんだよなー あの会長 よくわからないし 和樹もよく生徒会に入ったよな 「すげぇ可愛いロリが会長らしいぞ」とか言ってたっけ?たぶんあのとき君尋が聞いてたらアイツも生徒会だったかもなぁ

 

「おうたぶん大丈夫だと思うぞ じゃあ 行くか 生徒会室」

 

たぶん このときの俺は若干の不安も混じりながら また戦車に乗れるかもしれないことに 喜びも混じっていたと思う

そう 消えかけてた火に再び薪が入れられたような感じだ

今度は絶対に間違えたくない

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「では、桜田和樹、原幸二、鮎川君尋、山口龍秋、そして島田蒼の五名は来年度の選択必修科目は男子戦車道ということで異論はないな?」

 

「「「「「はい」」」」」

 

うーん こーゆーときのかーしまはハキハキしてていいねぇ

にしても 桜田はいい仕事をするねぇ ちゃんと計画とおり 島田をつれてきたね

あとは四月からウチに編入になる西住ちゃんがいれば完璧だねっ

あ 島田がこっち睨んでる 色々聞かれそうだ

 

「会長、二、三聞きたいことがあるんですがよろしいですか?」

 

ほれ きた

 

「いいよ~ 言ってみ~」

 

「なぜ いきなり戦車道を復活させようと?」

 

いきなりいいところついてくるな~ まあこーゆーときは嘘は言わず本当のことを少しだけいうのがコツなんだよね~

 

「いやー 戦車道の世界大会誘致の関係で文科省がスポーツ振興に忙しいし それに戦車道はじめたら国から補助金出るらしくてさ この学園艦も古いし メンテナンスにも当てたいんだよねぇ 」

 

「確かにそうですね、僕らの学園艦も古いですし 学園艦の管理運営を行う生徒会がこういう金策をするのも変な話ではないですね」

 

「ですg「はいはーい! 質問や 男子戦車道は女子と合同なんですか?」」

 

「いい質問だねぇ 戦車道は協議の性質上 男女の差が出にくいからね 公式大会でも男女混合になるみたいだし 男女混合でやるよ~」

 

「まじっすか!?」

 

桜田と山口がハイタッチしてる 島田は少し苦笑いして二人を見てるね

よしこのままいけば切り抜けられるかな

 

「そういえば 島田君は別のことも聞きたいって言ってなかった?」

 

小山ナイスアシスト!

 

「そうですね この学園に戦車はあるんですか?」

 

まあー 次はこれだよね

さすがに隠しても仕方がないからね

 

「1両しかないよー」

 

「は?」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 




今回は以上となります
しばらくアニメ部分の突入には時間がかかるかもしれません

なにぶん初めての投稿なんで
至らないところがあればぜひ感想と一緒にお願いします

書き溜めないんでこれから頑張ります


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戦車持ってきます!

だいぶ時間空きました
ドリームタンクマッチ面白いし仕方がないね!




「ただいまー」

 

そう言いながら俺は学生アパートの自分の部屋の鍵を開ける、引っ越したての頃は自分の部屋より日当たりがいい隣の角部屋を羨んだが、住めば都で一年近くたった今はなかなか愛着が湧いている。

 

「さてと…」

 

制服から部屋着に着替え、先日龍秋から貰った紅茶を淹れる。とてもいい香りがする、いい茶葉なんだな。龍秋はこの紅茶を誰かから貰ったらしいけど、その人はきっと良いところの出身の人なんだろうな。良いなー、俺もお嬢様の知り合いとか欲しいな… 一応一人いるけどアイツはなんかちょっと違う、少なくとも紅茶は飲んだことはなさそうだな。

 

「姉さんに連絡しないとな…」

 

スマートフォンのチャットアプリを開く、きっと姉さんももう家にいるだろう。『相談がある』と入力し送信して、紅茶を一口飲む。

 

「うまいな…」

 

紅茶でリラックスしながら、イスの背もたれに体重を預ける。そしてゆっくりと今日の出来事を思い出す。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「だから〜、この学園には今のところ一両しか戦車はないんだ〜」

 

は? 何言ってんだこの人は? たった一両の戦車で戦車道の授業をやろうとしていたのか? タンカスロンならともかく公式戦は5両以上は必須だ。この人は本当に戦車道のことをわかっているのだろうか?

 

「い、一両ッ!? そんな車両数で戦車道が出来ると思ってるんですか、会長!?」

 

「まあまあ、落ち着いてよ、島田。 別に今見つけてあるのが一両ってだけなんだ~ かーしまー」

 

「はい、会長」

 

会長が河嶋先輩に声をかけると一つのファイルを俺に渡してきた、どうやら戦車のことについて書いてあるものらしいが

 

「この書類に書かれている戦車は昔の戦車道の名残だそうだ、そしてこの学園のどこかに存在しているらしい。これらの戦車の捜索をお前たち五人にしてもらう。ちなみに見つけてある一両は一番上の書類に記載されているⅣ号戦車だ。」

 

なるほど、完全に理解した。昔使用していた戦車を探してきて再利用するらしい。ひとまず俺は書類に目通す。

38t、Ⅿ3中戦車リー、89式中戦車、三号突撃砲、ルノーB1bis、etc…まじか、このラインナップで戦車道をやるのか、目も当てられないぞ…

 

強豪黒森峰はドイツ、聖グロはイギリス、プラウダは旧ソ連、サンダースはアメリカと言ったように多くの他学校はだいたい使用戦車を同じ開発国で固めている。やはり戦車の開発に当たっては国ごとに攻撃の目標、運用の目的となるものが異なる、アルプス山脈を楽々と越えられるように作られたCV33もあれば、歩兵の随伴支援のためのチャーチルだったりする。つまり各校の持つ戦術ドクトリンに則ったコンセプトの戦車が選ばれるのだ、したがってこれらの大洗学園にある戦車が見つかっても各戦車の出身地が違い過ぎて戦術がとてもたて辛いのだ。

 

てか整備が大変ってレベルじゃない。あと普通にこれ見つけても戦術以前に戦力が足りない。はぁ、仕方がない…

 

「会長、戦車道に私物の戦車は持ち込めますか?あとそれで公式戦に出られますかね?」

 

「たぶん大丈夫じゃなーい?こやまー?」

 

「はい、会長。 そうですね、今軽く調べたところ、公式戦に関して私物の戦車について記載はないです」

 

小山先輩が調べてくれたみたいだ、てか生徒会怖すぎ、名前を呼んだだけで自分の仕事を理解しちゃうのか… もしかしたら和樹も… あ、ずっと小山先輩のおっぱい見てるわ

 

「ありがとうございます、小山先輩。じゃあ、会長、ちょっと戦車持ってきますね。お前ら、あとの戦車の捜索は頼んだッ!!!」

 

「あッ! 汚ぇぞ、蒼!」

 

「てか、私物の戦車があるっちゅうことが驚きや…」

 

「は? 蒼ちゃん、どうして俺にそれを教えてくれなかったんだ、い!?」

 

「気を付けてね、蒼」

 

四者四様の反応を背にして俺は生徒会室を後にした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

回想終わり

 

だが実のところ偉そうなことを言った割りに俺は悩んでいた、実は島田家は西住家と並ぶ戦車道の大家である。そんでもって家も立派で広く小綺麗な西洋風の屋敷だ、まあ当然盗もうと思っても警備厳重だし、盗めてもあとで使用されていることもすぐにバレてしまうだろう。それに正式に受け取ることが出来ても、あの戦車を実家こと風雲島田城から持ってこなくてはならないのだ、俺は半勘当の身だから支援は受けられないし、一介の学生には他の手がない。そしてこれと言っていい方法が浮かばないので姉さんに相談をしてみた段である。なんてことを思い出してるとスマートフォンからピロンと音がする、多分姉さんだろうな。

 

『蒼が私を頼るなんて、また不思議な風が吹いているね。どうしたんだい?』

 

相変わらずわけのわからない言い回しだ、だが妙に安心してしまう、俗に言う実家のような安心感ってやつだ

 

『相変わらずよくわからない言い回しだな、ミカ姉さん。それが戦車道を始めることになったんだ。』

 

『それは素晴らしいことだね。戦車道には人生の大切なことが沢山詰まっているからね、君がまたこの道を歩めることをうれしく思うよ。あの人はともかく私は歓迎するよ、蒼。でもね、「姉さん」は不要だよ、昔みたいに「ミカ」で構わないっていつも言ってるじゃないか。』

 

昔。俺とミカは姉弟ではなく従姉弟だった。ミカの妹の愛里寿とは二人とも年が離れていて、ミカとは年が近かったので「ミカ」と呼んでいたのだ。

ただ当時島田の家を治めていた母さんと父さんが「事故」で他界してからは母さんの島田千代、つまりはミカと愛里寿の母親に養子として引き取られ、ミカ、俺、愛里寿は姉弟となり今に至るのだ。

だから、俺はミカに「姉さん」とつけるのだがあまりお気に召さないらしい。まったくよくわからない。

 

『ありがとう、ミカ。だけど圧倒的に戦車の数が足りなくてさ。』

 

『戦車の数、それは本当に大事なことなのかい?』

 

うわぁ… 今絶対に画面の前でドヤ顔でカンテレ引いてるよ、姉さん

 

『俺は姉さんと違うんだ、それに姉さんが思っているより戦車も少ないと思うよ。姉さんの通う継続高校よりも圧倒的に』

 

事実、姉さんの戦車道においての優秀さは群を抜いている、去年の全国大会において優勢火力ドクトリンを得意とするサンダースの戦車五両に囲まれたときにミカの愛車BT-42一両ですべての車両を撃破し突破して見せたのだ、あのときの観客席で見ていた俺も興奮のあまり震えを覚えたほどだった。多くの学校がミカを注目し始めたのもこのときだったと思う。でも残念ながら去年の継続高校は次にあたった黒森峰に敗れてしまったんだけど…

 

『自分を卑下するものではないよ、蒼。きっと君なら君の歩む戦車道の途中で素敵な仲間に出会えるさ』

 

『仲間ねぇ…』

 

ふと、和樹、君尋、龍秋、幸二の顔が過ぎる。アイツらは何を考えて戦車に乗るんだろうか…

 

『だいぶ話が逸れてしまったけど、蒼は大洗の戦力増強に「星さん号」を持っていくつもりかな?』

 

「星さん号」、懐かしい響きだ。母さんのおさがりでもらった俺の愛車であるコメット巡行戦車を当時まだ小学生だった愛里寿が「コメットって彗星って意味なんでしょう?じゃあ星さん号だね!!」と笑いながら命名したのだった。あの頃は俺、ミカ、愛里寿の三人で「星さん号」で出かけてたな、愛里寿もよく笑ってた、元気かな愛里寿…

キーボードに文字を打つ指が止まってしまう

 

『今、愛里寿のこと考えていたね、蒼。でもね、もう一度戦車に乗るってことはいつかは直接、愛里寿と、あの人と対峙するってことだよ。それだけは忘れては駄目だよ。』

 

ああ、ミカはわざと「星さん号」の名前を出したんだな、でも、ミカは間違っている。逆だ、俺がもう一度戦車に乗ることは、またあの人と対峙「出来る」ってことなんだ。確かに和樹たちに「戦車道をやろう」と言われたときは足のすくむような感覚を覚えた、でも幸二に「もう二度とこんなチャンスはないかも知れない」と言われたとき俺はもう一度戦車に乗ろうと思った。また島田千代と対峙するために、愛里寿に笑ってもらうために。

 

『大丈夫だ。うん、ミカの言う通り「星さん号」を実家から持ち出したいんだけど手伝って貰っていいかな?』

 

『構わないよ、じゃあ、明日の6時に大洗学園の校庭に居てくれるかな?風が君を迎えに行くよ』

 

『え、風ってなにさ、てかもっと具体的な話をしなくても大丈夫なのか?』

 

『それは明日のお楽しみさ、全ては風が教えてくれる。おやすみ、蒼』

 

そう言い残してミカはログアウトしてしまった、考えても仕方がないし明日を待つしかないか…

俺は不安を覚えながらそのままベッドにダイブして寝てしまった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

本当に彼女は昔から強引だし何をするにしても急だ、昨日の夜遅くに突然「蒼が実家から戦車を運びたいらしい、無事運んだら何でも君のお願いを聞いてくれるらしい。だから明日ヘリを出して欲しい」とメッセージが来たのだ。

久しぶりに彼の名前を聞いて少し顔が熱くなる感じがしたが、即座にそれを振り切り『私には偉大なるカチューシャのお世話がありますので丁重にお断りします』と返すと『それは大丈夫さ』と返事が来た。

それと同時にカチューシャがいきなり私の部屋のドアを開け「ノンナ!明日はおやすみをあげる!ヘリも自由に使っていいわよ!カチューシャは心が広いし、一人でも大丈夫なんだから!」と顔を真っ赤にしながら言い放ちドアを閉めて部屋に戻って行きました。

ミカさん、あなたはいったいカチューシャに何を吹き込んだんですか… すると間髪入れずに新しいメッセージが届き『それは風が知っているよ』と来ました、本当に何なんですか貴女は…

 

翌朝、私は彼女の指定通りの時刻、ポイントにヘリを飛ばすと目の前に継続高校の学園艦が見えてきた。そして指定された継続高校の校庭を目指す。いた、彼女は校庭のベンチで特徴的な水色と白の帽子を被りカンテレを弾きながら座っていた。私をヘリを着陸させ彼女と合流した。

 

「久しぶりですね、ミカさん」

 

「そうだね、ノンナ。でも久しぶりの再会を喜んでる暇は無いんだ、もうすぐでこの学園艦が物資の運搬の関係で大洗の学園艦と最接近するんだ、急ごうか、蒼も待っているよ」

 

そう言って彼女はスタスタとヘリの方へ歩いて行く。そういえば彼と会うのも久しぶりですね、前に会ったのは半年前の全国大会でしょうか、昔と比べ背もだいぶ高くなり私よりも高かった気がします。また大きくなっているんでしょうか…

 

「ふふ、ブリザードのノンナと言われた君もそんな顔が出来るんだね。とてもいい顔をしているよ」

 

まったくこの人は… 少し口元を緩め私もすぐに操縦席に乗り込み大洗の学園艦を目指す。朝日がとても眩しい、今日もいい天気になりそうです。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

誰もいない。

当たり前だ、こんな朝の早い時間に誰が学校に来ると言うのだ。にしてもミカは何でこの時間にこの校庭を指定したのだろうか、あー眠い。

俺は大きく欠伸をし伸びをする、すると遠くの空からヘリの飛んでくる音が聞こえてきた、朝早くから大変だななどと思っているとヘリがちょうど校庭の直上まで来て降下を始めた。え?マジで?

無事着陸を終えたヘリからミカがなんともないと行った顔で降りてくる。

 

「やあ、蒼。迎えに来たよ」

 

「ええ…」

 

いったいどこでヘリを… 一瞬疑問に感じたがヘリから降りて来たもう一人の姿を見て納得がいった。

 

「ノンちゃん!」

 

「ええ。蒼、久しぶりですね。また少し背が伸びましたか?お元気そうでなによりです」

 

たしかに俺は背が伸びた、でもノンちゃんも、うん、半年前に比べて大きくなってるかもしれない色々… 微妙に目のやり場に困り、小さい頃のことを思い出す、昔はノンちゃんの方が背が高かったのにな…

ノンちゃんの母親は島田流の師範代の一人で当時は俺と島田姉妹の近所に住んでいてよく遊んでいた、だけど俺が中学校に上がったくらいにノンちゃんの母親が青森の方の島田流の道場を任されてしまい引っ越してしまった。

その後もちょくちょく連絡をとったところプラウダ高校で戦車道を始め、この前の全国大会では「尊敬する同士」と共に優勝を手にしていた。やっぱりノンちゃんも母親譲りで優秀な戦車乗りらしい。

 

「そうだな。ノンちゃんも元気そうでよかった」

 

そう言ってノンちゃんは近くまで来て俺の顔を少し見上げながら軽く微笑んでくれる、この人はいつも無表情だからこういう微笑みはちょっと反則だと思う。あ、ミカが少し目を細くしてこっち睨んでる、こわい。

 

「み、ミカも元気だったか?あはは…」

 

「その質問に意味があるとは思えない。こんなところで油を売ってる時間はあるのかな?ノンナ?」

 

「はい」

 

ミカはそう言ってツカツカとヘリの方へ歩いて行く。ノンナもそれについて行く。うーんなんだかなぁ…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

蒼がソワソワしながらこっちをチラチラと見てくる、さっきのことを気にしているのだろうか。面白いからもう少し黙っていよう。

 

「蒼、いきなりどうして戦車が必要になったんですか?」

 

「あー、話してなかったか、来年度からウチの学校で戦車道が復活するんだけど、それに伴って男子戦車道も始めるみたいなんだ。」

 

「男子戦車道?蒼はまた戦車に乗るのですか?」

 

「まあそうなるな」

 

「そうですか、ならプラウダに戻りましょう」

 

いつも淡々と話す彼女とは違い怒っているような悲しんでいるような口調で言い放った。

 

「それは駄目だ、ノンナ」

 

「どうしてです?戦車に乗ればまたあなたは傷ついてしまいます。それを私に黙って見過ごせと言うのですか?」

 

「確かにノンナの言う通りかもしれない、でもこの機を逃せば二度と愛里寿を助けられないかも知れない。それは絶対に嫌だ。」

 

島田愛里寿、私の妹で、蒼の従姉妹で島田千代の娘だ。誰よりも優しく、誰よりも明るく活発な笑顔の似合う子だった、しかし、蒼の両親が亡くなってから元々戦車道の才能の片鱗を見せていたこともあり、私達とは別で島田流戦車道を叩き込まれることとなる。 その様子は当時の小学生に行う「それ」ではなく苛烈極まるものだった。次第に彼女からは笑みが消え、表情も消えていった。

しかし一度だけ愛里寿が「もう戦車道なんてやりたくない」と蒼に泣きながら訴えたことがあった。そのときの蒼は堪らなくなり島田千代に異を唱えたが聞き入れられることはなかった。

当時の蒼は前島田流家元であった彼の母の血を濃く受け継ぎ愛里寿ほどではないものの男子ながら戦車道において異常な才能を発揮していた。彼はそれを自覚していた、自信があった、信じていた、疑わなかった、慢心していた、油断していた。結果、彼は島田流から外れることになり、「島田流」として戦車に関する一切のものに触れることが出来なくなった。同時に彼は島田本家から遠い分家に預けられることになり、愛里寿はもちろん私やノンナとも離れることになった。

そのときのノンナは私以上に力が無い自分に悔いていた。だから彼女はもう二度と同じことが起こらないようにしたいのだろう。だけど…

 

「また俺も傷つくかもしれない、でも愛里寿の方がずっと長い間辛い思いをしてる。」

 

やっぱり君は「また」そう考えるんだね。何も変わっていない。

 

「大丈夫だって、ノンちゃん。今度は上手くやるって、その最初の一歩に大洗で男子戦車道をやるんだしさ。」

 

「納得できません、そんな…」

 

このままいっても二人は平行線だろうね。

 

「じゃあ蒼の所属する大洗が全国大会で優勝出来ればいいんじゃないかな?」

 

「本気で言っているんですか、ミカさん」

 

「そうだね、優勝出来なかったら蒼も今度こそ本当に戦車から降りればいい。それぐらいの実力が無ければ到底島田流家元に敵うとは思えないからね。」

 

厳しく聞こえるかも知れないがどうしようもなく事実だ。蒼もきっと理解している。

 

「確かにミカの言う通りだな。ノンちゃん、それで良いかな?」

 

「はぁ… 本当にあなた達は… わかりました、ですがプラウダは今年も全力で優勝を頂きにいきます。」

 

「わかってるよ、ノンちゃん。 ミカもだろ?」

 

「その質問に意味があるとは思えない」

 

答えは最初から分かっているだろう、私も全力で優勝を取りに行くよ、蒼。私はそうだと言うようにカンテレを鳴らす。

 

「ではこのまま本土の島田邸を目指すのでよろしいですか?」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

えぇ… 嘘やん ミカがなんとかしてくれる言うたやん。 何が「策?そんなものは本当に必要なのかな?」だよ、無策じゃん。

超シリアスムードの固い決意の後にミカから「策を弄すれば弄するほど上手くはいかないからね、蒼の気持ちを伝えれば良い」と言われた、D○Oかお前は、忍者戦法の島田流大否定じゃねぇか。

それにお世辞にもあの人からの俺の印象は良くはない、ましてやまた戦車道に関わろうとしているんだ。絶対無理だ。どうしよう…

ついさっきノンちゃんが島田邸の庭に無理やりヘリを着陸させ、とりあえず俺は離れの戦車倉庫に向かっている。

今頃本邸の中は大慌てだろうなぁ… 帰るときどうしようか…

なんやかんや考えていると目的の戦車倉庫の目の前に辿りつく。

 

「嘘だろ…」

 

俺の探していたコメット巡航戦車が目の前にあった、だが思っていた様子とだいぶ違う。完璧に修理がなされている。俺が本邸を追い出されるときは大破していてボロボロだったのに…

清潔なものの年季の入ったこの倉庫の中で新品同然にまでレストアされてるコイツはとてつもなく異質だった。

 

「このコメットはね、今は島田家の戦車じゃないの。」

 

俺は驚いて声の方に振り向く、そこには毛先にウェーブがかかった赤毛に近い茶髪の女性がいた。 で、デカイ… ノンちゃんといい勝負かも知れない。

 

「それはどういう?てかあなたは?」

 

「私? 私はアズミよ、よろしくね。この戦車の持ち主はね、『今』は

島田流の人間じゃないの、そしてこの戦車は持ち主をずっと待ってるのよ、やっと来たみたいだけどね」

 

え? 俺のこと?

 

「だからはやく乗りなさい、あんまり時間ないのよ?」

 

そういうとナイスバディは俺を戦車に乗らせようと手を引く

 

「え? 大丈夫なんすか? 使用許可とか? 所持証とか? 盗難になるんじゃないんですか? え?」

 

それを聞いてアズミが振り返る、うおっ、この人めっちゃ美人かよ

 

「そこらへんは全部、お姉さん達がお膳立てしてあげるから気にしなくていいわ、あなたは島田流でも何でもない『名無し』なの、だからこのコメットに乗ってあなただけの戦車道を進んで強くなりなさい、そして絶対に私達の『隊長』を助けなさい」

 

達? お膳立て? 隊長? 最初の二つはよくわからんが、三つ目は直感的に愛里寿のことだってわかった。だったら返す言葉決まってる。

俺は懐かしい『星さん号』に乗り込みながら答える。

 

「おう、任せてくれ、愛里寿は絶対に助ける、サンキューなアズミ」

 

「なんだ、ちゃんとわかってるじゃない。 じゃあ頼んだわ、蒼」

 

そう言ってアズミはキューポラの蓋を閉める。

 

名前言ったっけ? まあいっか。

 

俺は昔の記憶を辿りながらコメットのエンジンを始動させる。大丈夫そうだ、むしろあのときよりも成長したからかかなり楽に扱えている。

 

よし行こう

 

コメットは動き始めて倉庫を出る。コメットの履帯は通った芝生に跡をつけていく。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

送り出した『星』は前へと進んでいく。次第に見えなくなり、しばらくしてヘリの飛んでいく音が聞こえ始める。

 

「ちゃんと運べたみたいね… あとはあなた達次第よ…」

 

風になびく髪を抑えながら私も倉庫を出る。

 

「私もルミとメグミに合流しなくちゃね」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ポロロ〜ン♪

 

腹が立つほど美しい音が部屋に響く。

 

島田邸から戦車を持ち帰ったあと、俺らは急いで大洗の学園艦に戻りコメットを戦車倉庫に搬入した。 ノンちゃんにお礼をしたかったが「カチューシャが待っていますから、でも今度ゆっくりどこかに行きましょう。それと私達は負けないですからね」と宣戦布告しながらプラウダに帰ってしまった。

今度は敵として会うのか〜とか考えながら家に帰るとノンちゃんと共に帰ったと思っていたアイツが家の中にいた。

 

「お帰り、蒼。紅茶を淹れたけど飲むかい?」

 

おい、何してんだ、お前。 人の家の紅茶だろう。 あと楽しみに取っておいたGO○○VAのクッキーまで勝手に開けやがって。 てかどうやって鍵を開けた。 まったく昔とやることが変わらん… 昔から俺の部屋に勝手に入っては漫画を読んだり、ゲームをしてたりしてたからなぁ… もう慣れたわに…

 

「おう、ミルク入れたら許さねぇからな、あと出てけ」

 

てかベットの近くから離れろ。そこの下を絶対に覗くんじゃない。 あ コイツ わざとミルク入れやがった。

 

「ミルクの有無、それはそんなに大事なことかな? 」

 

目がニコリと笑っているが、その目が少し開いて

 

「蒼、君の趣味はまた随分のものだね。」

 

アイエエエエッ!? エロ本!エロ本アルノナンデェッ!

 

「年頃なんだほっとけよ、てか出てけ」

 

「はい、蒼のぶんだよ、あとでノンナに伝えておくよ」

 

ミカからミルクティーを貰う、あ、意外とうまい。ミルクティーええやん。 てかノンちゃんにはマジでやめて、本当に死んじゃう。 黒髪ロング巨乳の写真集とかバレたらどうなるか分からん、縁切られちゃう。

 

「ありがとう。 わかった、もう好きなだけ泊まったけよ」

 

「ふふ、素直なのはいいことだよ」

 

ポロロ〜ン♪ じゃねぇよ、お願いだからノンちゃんには言わないでね、マジで。

 

「でもね、蒼、もうすぐ風が私達を運ぼうとしているんだ」

 

相変わらずよくわからない言い回しだ、もう慣れたけど

 

「え、どこ行くんだよ」

 

「黒森峰さ、もちろん君もね」

 

「は?」

 

突然の旅行が決定した




おい まだアニメ一話にも到達しないゾ
まだみほちゃん出るのに時間かかりそうです


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報告します!

いやー ガルパンの新しいアプリ楽しみですね〜

内容は黒森峰旅行の前の蒼以外の四人の話です。


ぬわぁーん、疲れたもぉーん、ったくやめたくなりますよぉ、戦車道。 結局、戦車1両も見つからねぇし。 蒼みたいに自前の戦車持ってねーしなー… 会長達の仕事手伝おうと思ったけど「桜田は帰っていーよー」って言われるし、やることもない。

 

「はぁ… どうすっかなー」

 

暇つぶしにネットサーフィンを始める。

目にとまる戦車道ニュースを片っ端からのぞいていく。

 

「ふーん、戦車道の流派って西住流、島田流以外にもあるんだなー。佐伯流かー初めて見たわ。」

 

なんて調べながら時間を過ごしているとピロンとチャットアプリの通知がなる。戦車道掲示板で知り合ったオットボールさんからみたいだ。オットボールさんはどっかの戦車大好きJKらしい、まったく胸が熱いな。男の俺には戦車について話せる数少ない友人だ。

ちょうど良いし戦車道を始めることでも話そうかな。

 

『ども、オットボールさん、お疲れでーす。』

 

『お疲れであります、ムエタイX殿。』

 

『いやー、俺たちの学校で新しく男子戦車道が始まることになって履修することになったんだよね〜』

 

『それは本当ですか?! いったいどの戦車に? ムエタイX殿はどのポジションに? 車長ですか?砲手ですか?それとも操縦士ですか?』

 

『いやー、それが戦車が4号戦車とコメット巡航戦車しかなくて、乗れるかも怪しいんだよね。まだ学園のどこかに戦車があるらしいんだけど… 』

 

『それは大変ですね… でもでもコメットといえば大戦中に目立った活躍は無いもののとても運用がしやすく、イギリスの国防義勇軍で勤めを果たしてからはつい最近までミャンマーなどで使用されていた戦車じゃないですか!』

 

『まあ開発された時期が不遇だったかもね、コメットは。 そんなわけだからまだポジションどころの話ではなかったんだよな〜』

 

『でも考えているポジションはあるんですよね?』

 

『そうだな、乗員のみんなを支えられるポジションがいいかな』

 

別に目の前に誰かいるわけじゃないが何となく力こぶを作ってみる。うん、我ながら惚れ惚れする腕だ。

 

『でしたら装填手なんでどうでしょう! どんなに腕の立つ砲手がいても装填手が駄目だとその真価を発揮出来ませんからね、正に縁の下の力持ちですよ!』

 

そう「縁の下の力持ち」いい言葉だよな。 世の中って沢山頑張っている人がいると思う、でもなかなか評価されなかったり、成果が出なかったりする人もいる。だからそういった人の力になりたいなって、努力してる頑張ってる人の力になりたいなって思う。

まあだから生徒会に入ったりしたわけだけどな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

流石に疲れた。戦車を探して一日中歩いてたしね。でも日頃絵ばっかり描いてて体力がないんだろうな。少し運動したほうがいいのかな。バレー少女にバレー混ぜてもらおうかな、なんてね。

 

テーブルに置いてある。スマートフォンが音を鳴らしながら震える。

たぶんいつも通り彼女だろう。

 

「もしもし千代美ちゃん?」

 

「おー、幸二! 元気してるかぁ? ちゃんとご飯食べてるか? 友達と仲良くやってるか? 絵の調子はどうだ?」

 

「うん、元気だし、ご飯は毎日美味しいし、友達とも仲良くやってるよ。 ただ、絵の方はぼちぼちかな…」

 

「うんうん! そうかそうか、でもたまには息抜きも大事だぞ! まったく幸二の真面目さをうちの子達にも見習わせたいくらいだ!」

 

彼女は僕の幼馴染の千代美ちゃんこと安斎千代美である。僕とは異なり彼女はアンツィオ高校に通っている。また中学時代の戦車道での功績が評価され特待生で入学していて、戦車道履修生を引っ張ていく存在らしい。

とても面倒見のいい彼女にはとてもピッタリだと思う、そして何だかんだ、その面倒見の良さで僕のことも心配してよく電話をかけてくれる。

 

「ははは、でもそこがアンツィオの良いところなんでしょ?」

 

「まぁな、そして今年こそは一回戦突破!じゃないや、優勝を目指したいなぁ!」

 

「うん、応援してるよ、でも千代美ちゃんもあんまり無理しないでね。」

 

「うん、ありがとうな。 そういえば最近変わったことはあったか?」

 

そういえば千代美ちゃんに戦車道を始めることになったこと話してなかったな…

 

「そうだね、僕も戦車道を始めることになったよ。」

 

「えっ!? 男子も戦車道が出来るのか!?」

 

「どうやら文科省の来年度からの試みらしくてウチの学校でも始めるみたいなんだ」

 

「なるほどなー、じゃあもしかしたら私と幸二が戦うことになるのかもなー」

 

「そうかも知れないね、そしたらきっと面白いかもね」

 

「だな、だけどウチは絶対負けないからな、いや勝つ!」

 

ふと一枚の手紙が目に入る、ああ、このことも話さなきゃな…

 

「あとね、父さんから手紙が来てたんだ…」

 

さっきまでと比べ自分でも驚くくらい沈んだ声を出してしまった

 

「そうなのか… お父様はなんて?」

 

「アンツィオに転入しないかってさ…」

 

「そうか… どうするんだ?」

 

「いや断るよ、僕は自分で考えてここに来たからね、簡単には曲げたくないよ」

 

僕の父はアンツィオの出身で、また母校への愛なのか後援会にも所属していてそこそこの支援を行っているらしい、お世辞にもアンツィオ高校の資金は潤沢とは言えず、この後援会にも頼っているようだ。 僕の家は代々芸術家の家系で、またアンツィオ高校には全国でも名が通る芸術科があり、昔からアンツィオに通うように僕は言われていた。だけど僕は親に敷かれたレールに沿うことに耐えきれなくなり、反発してこの大洗に通っている。 まだ父は諦めがつかないらしいけど…

 

「うん、わかった。 でも気が変わったらすぐに教えてくれよ? 私は、いや私達はいつでも幸二を歓迎するからな!」

 

「ありがとう、千代美ちゃん」

 

僕は自分で選んでこの大洗にきた、でも結局納得の行くように絵は描けていない… 焦るなぁ…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はぁー、やっぱりアッサムやな」

 

今日は苦労虚しく戦果なし、ほんま疲れたわ… こういうときはやっぱりいい紅茶に限る、アイツにお礼言わなあかんな

 

『紅茶美味かった、ありがとうなー』

 

疲れたし少し寝るか…

 

ピロン♪

 

うっわ、はっやいな相変わらず

 

『龍秋の口に合って良かったわ。 ちなみにどの茶葉が良かったのかしら?』

 

『アッサムが一番飲みやすかったわ。 ただダージリンは相性悪くて友達に譲ってしもうたわ、すまんな』

 

アッサムは凄く飲みやすいんやが、ダージリンはあの苦味があんまり好かん。

 

『気にしなくて良いわ、とても良い趣味をしているわね、龍秋。 またアッサムを送ってあげるわ』

 

『おおそうか、ありがとうな。 でも何で急に紅茶送ってくれたん?』

 

『学校が学校だから簡単に良いものが手に入るのよ、それに久しぶりに連絡するきっかけが欲しかっただけよ』

 

ちなみに俺は彼女の学校を知らんし、聞いても教えてくれん。彼女曰く「あんまり女性に探りを入れるものではないわ」らしい。 てか「久しぶり」言うても、割と頻繁に物を送ってきてやりとりがあんねんやけど彼女にとっては「久しぶり」になるらしい、まあ野暮なことを言う気は無いけどな。

 

『あらあら可愛いこと言うやないか』

 

ちょっとふざけてみる

 

『馬鹿なこと言わないでちょうだい、あんまり女性をからかうものではないわ』

 

相変わらずこういった冗談に過敏やなー。 そういえば彼女も戦車道をやっていたな、前から気になることがあったし聞いてみるのもアリやな

 

『すまんすまん。 そういえば熊本で戦車道の有名な学校ってあるん?』

 

『あなた、それは本気で言っているのかしら? 熊本で戦車道と言えば戦車道最大流派の西住流のお膝元で有名な強豪の黒森峰学園があるのよ?』

 

『ほーん』

 

『どうしてそんなことを?』

 

『いやーな、前に話したやん、熊本にお前に会う前の幼馴染がいるってな、そいつが戦車に乗りたいって言ってたのを思い出してな。』

 

『あらそうなの、意外と有名選手かも知れないわね。 名前はなんていうのかしら?』

 

思い出そうとするけど中々頭に浮かんでこない、熊本から引っ越してから結局連絡取らなかったからな… うーんと確か…

 

『あー…、イツミエリカやったと思う』

 

なんとなく思い出してくる、毎日けったいなゴスロリっぽい服ばっかり着ていて、えらい素直じゃないやつやけど、負けず嫌いで努力家でものっそいお節介なやつやった気が… あぁ… 毎朝その体躯からは想像出来ないプロレス技で起こされてたなぁ…

 

『調べるまでもないわ、その人、黒森峰の副隊長よ、あと逸見エリカね』

 

『ハァー、えらい昇進したもんやな、アイツ』

 

『それとあなたはもう一つ私に言うことがあるのではなくて?』

 

『特にはないなぁ』

 

『本当に? 戦車道関連であるのではなくて?』

 

ん? ああ、そういえば男子戦車道の話をしてなかったな。

でも何で俺が戦車道関連についてなんかあること知ってんねやろか

 

『あー、ウチで男子戦車道始めることになったわ』

 

『そう…、それなら「佐伯」という名字に注意しなさい。』

 

は?「佐伯」? んな、知らんわ。

 

『なんやそれ? 誰やねん。』

 

『とにかくよ、注意しなさい』

 

わけわからんが、コイツがこんなに念を押すのも珍しいし注意しとくか…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

西日が眩しい…

自動車部での今日必要な整備を終え、僕は帰路についている。

新学期から自動車部で戦車の整備も始めるみたいだし、忙しくなりそうだな、多分この西日もなかなか拝めなくなるかもな〜

 

大きく伸びをする、体がポキポキ鳴る意外と疲れてるのかもな〜

ポケットの中のスマートフォンが震える。

 

「またケイさんかー」

 

内容は戦車の整備の変更及びそれに伴う運用注意についての相談らしい。

 

「転校前にタカシさんに聞くように話したんだけどな〜」

 

僕は大洗学園に来る前はサンダース大付属に通っていた。 そのときの戦車道の隊長がケイさんで、そこの整備士の先輩がタカシさんなんだけど…

 

「僕はもうサンダースの整備士じゃないんだから…」

 

ケイさんからのメールを放置する。もう何度目かわからない、僕はもうケイさんに関わりたくないのに… 隊長のあの人が僕なんかと対等になれることはないんだからさ…

 

あー… 戦車道やってたらいつかケイさんにも会うのかなー…

 

 




ケイさん好きの人まじすいませんでした…
でもケイさん全然悪い人じゃないんで安心してください!

次はいよいよ黒森峰旅行編です


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出会いです

めちゃくちゃ遅くなりました。



モノを食べる時はだな、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなくてはダメなんだ。独りで静かで豊かで……

などと考えながら私は目の前の激辛カレーを頬張る。辛い。

 

人間は心理的であれ五感的であれ強い刺激を受けるとそのことだけで頭がいっぱいになってしまう。 そして私は心理的な事情から一時的に逃避するために目の前のカレーで痛覚と味覚を刺激している。 辛い。

 

辛さに耐えられなくなってきて水の入ったコップに手をかけようとするが、妹の顔がチラついてしまい、もう一度カレーを頬張る。辛い。汗が止まらなくなってきた、たぶん涙も出ているだろう。 それでも私はカレーを食べる手を止めない。 ひたすら食べる、辛い、辛い、辛い…

 

ああ… ついに食べ終えてしまった。

 

「みほ…」

 

このカレーの辛さは私を遠くに逃がすことは出来なかったようだ…

涙が出る、でも何の涙なのかわからない… 涙は止まらなくなってくる…

 

「あの… 大丈夫ですか…?」

 

隣の席にいる亜麻色がかった髪の男に声をかけられる

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ミカ!お前!どんだけ!弁当くうんだよ!金無くなるだろうが!」

 

「お金?それは本当に大事なものなのかな?」

 

ポロローンじゃねぇ、人の金を何だと思ってやがる。弁当5個目だぞ…

これから天下一武道会でも行くのかよ…

にしても、ミカのやつ服装気合い入ってんなぁ

落ち着いた春らしい色のワンピースに北欧を思わせる模様のストールを羽織りいつも通りのチューリップハットを被っている。とてもよくに似合っているが行動が色々とアレなせいで素直に言えない、黙ってれば美人なんだけどなぁ

 

俺たちは大洗の学園艦から出て今本土の電車に乗って現在黒森峰学園の学園艦が停泊している港を目指している。

 

「大事だろうが!なんでいつも金もってこねぇんだよ!」

 

「余計なものは邪魔なだけだろう?」

 

「お前なぁ…」

 

前途多難である。

 

「にしても何で黒森峰に行くんだよ、ミカ?」

 

ペットボトルのお茶に口をつけ喉を潤す、車窓から外を眺めると港が近くなっていることと、線路の脇に桜が所々咲いていて春を感じる。

 

「ただ風が呼んでいるだけだよ」

 

出たよ、このフレーズ。

 

「じゃあ何で俺を連れてきた?」

 

「私と一緒は嫌かな?」

 

「んなっ、そういうわけじゃねぇけど… ただ何かしら目的があんのかと思ってさ」

 

「そうだね、蒼には私の代わりに行ってもらいたい場所があるんだ」

 

「え、ミカは行けないのか?」

 

一緒に行動するんじゃないのな。

 

「私も行かなければならないところがあるからね」

 

どうせどこに行くか聞いても教えてくれないから聞かない

 

「ふーん、で、どこに行けばいいんだ?」

 

「カレー屋」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

俺は今、黒森峰学園艦にただ一軒あるカレー屋の前にいる。

ミカは行くところがあるからと学園艦に入った途端消えてしまった。

何でだ、何でカレー屋なんだ、ミカァッ!

 

カレー屋の中には店員らしきおっちゃんと一人くらいしか客がいない。おっちゃんと目が合う、にこやかな笑顔を返してくれる。なんだか急にカレーの良い匂いにやられてお腹がすいてきた。入ろう。

 

「らっしゃい、ここの席に座ってねー」

 

と言われ、女の子のとなりの席に案内される。 あ、カツカレー美味そう。

 

「カツカレーください」

 

カツカレーを注文しボーッとしていると隣の女の子のカレーが運ばれてくる。

 

「いただきます」

 

女の子は行儀よい態度も束の間で一心不乱にカレーを口に運び始める、カレーが辛いのか時折手が止まるが水を口に入れる事なく食べ続ける、汗もかいている。

なんかスッゲェなこの人とか思ってると俺が注文したカツカレーも運ばれてくる、美味そう。

 

「いただきます」

 

あ、やっぱり美味い、来てよかったなカレー屋。

とか考えながらマイカレーも中盤に差し掛かって来た頃

 

「…ほ……」

 

隣から聞こえたのでチラッと見ると先程の女の子が汗とか涙とか色々垂らしながら微妙に女の子としてアカン顔をしていた。

 

「…ッヒグ…グスッ」

 

えぇ… 本格的に泣き始めたよこの子、ヤベーやつだよ。店主がこっちを見てお前が声をかけてやれと言わんばかりの顔をしている。笑顔で親指たてんな! こっちみんな! ええい!ままよ!

 

「あの…大丈夫ですか…?」

 

やや茶色がかった短めの女の子はこっちを向く、ヤバイ、涙でスゴイ顔になってるよ。

 

「大丈夫…だ…」

 

えぇ… 嘘だろ、明らかに大丈夫じゃないよ

 

「よかったらこのハンカチ使ってください」

 

「すまない…」

 

そう言ってカレー娘はハンカチを受け取り、涙を拭き始める。でも涙は止まらずしばらく目を拭っていた。

 

カレー娘が落ち着いて来たころ、店主がサービスだと二人分のコーヒーを淹れてくれた。俺と彼女の間を流れる微妙に張り詰めた空気をコーヒーの良い香りが解きほぐしてくれる。

 

「みっともないところをみせた、すまない」

 

「大丈夫ですよ」

 

彼女の声はさっきの様子とは全く違う落ち着いた大人びた声をしていた。目元はまだ赤く腫れているがいつもの彼女であろう凛とした表情が見つめてくる。 つい見入ってしまう。

 

「このハンカチも弁償したいのだが」

 

「いや良いですよ、そんな高いものでもないですから」

 

「そういうことではなくてだな」

 

「お礼が欲しくて貸したわけでもないですから、大丈夫ですよ」

 

カレー娘は納得出来ないという顔をしている、たぶん何かしら返さないと彼女は満足しないだろうな

 

「じゃあこの学園艦について教えて貰えますか? 今日来たばかりでよく知らないんですよ」

 

彼女は一瞬キョトンとしたがまた凛とした顔に戻って答える。

 

「ああ、わかった」

 

目を細め微笑みながら、君は変わってるなと言いながら彼女は語り始めた。黒森峰学園は戦車道でも有名だが全国有数の進学校だとか、学園艦はドイツをイメージしていて速度制限のないアウトバーンがあったり、ノンアルコールビールが有名でとても美味しいとか、他にも色々と教えてくれた。

ノンアルコールビールはちょっと気になるな、アウトバーンは君尋が喜びそうだ。

 

「君は何故私が泣いていたのか聞かないのか?」

 

とカレー娘はいきなり切り出す。

 

「人間誰しも話したくないことはあると思います、それが泣いてしまうほどなら尚更ですよ」

 

ちょっと気になるけど。

 

「そうか…」

 

ふと愛里寿のことが頭をよぎる。泣きながら戦車道をやりたくないと言った日のことを、長い間誰にも相談出来ずに一人で抱え込み続けた従妹のことを思い出す。本当にもし目の前の彼女がかつての愛里寿と同じだったら、俺は…

 

「俺に話して楽になるなら聞かせてください、俺にはあなたが辛そうに見えます。」

 

「近しい人より素知らぬ他人の方が意外と話せることもあると思います」

 

俺に彼女を放っておくことはできない。

 

カレー娘は少しの間躊躇するが決心したように口を開く。

 

「じゃあ…聞いてくれるか?」

 

二人のカップに二杯目のコーヒーが注がれる。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

私は目の前の亜麻色の髪の彼に話した。

戦車道、またその家元の娘であることや、妹のみほの名前を伏せながら、去年の戦車道大会のことを話した。

 

決勝で妹が命の危機にあった仲間を自分を顧みず助けたこと、そのせいで試合に負けてしまったこと、そのあとは家元である母からだけではなく、他の西住流の人間からも責められたこと、結果妹は黒森峰だけではなく実家にも居づらくなり他の学校に転校してしまったこと、自分は守ることも助けることも出来なかったこと、自分は妹も十分に守れないどうしようもなく弱い人間であること全てを話した。

 

喉が渇き、コーヒーを喉に流し込んだ。 どうやらコーヒーはだいぶ温くなってしまったみたいだ。

 

「私はどうしようもなく弱い人間だ…」

 

自嘲的な笑みがこぼれてくる。

 

「そんなことは…」

 

「良いんだ、私自身がよくわかっている」

 

「本当にこのことは誰にも?」

 

言えるわけがない。事実は知られているにしても弱音を吐くことは家元の娘として許されない。

 

「ああ… 私は人をまとめる立場の人間なんだ、こんな弱音を吐いて良いわけがない、強くなくてはならない」

 

「それは違いますよ、確かに貴女が妹さんを守れなかったのは強くなかったからかもしれない、だけどその強さは自分の弱音をひた隠しにすることじゃない、そんなんじゃ貴女がいつか潰れてしまいます。」

 

「私は潰れたりしない」

 

私が潰れてしまったら本当に黒森峰も西住流も終わりだ、なによりみほの帰る場所がなくなってしまう。

 

「嘘だな、現にアンタは泣いていたじゃないか」

 

彼の口調が変わる。

 

「それは…」

 

そんなことはわかっているんだ、でも私が潰れてしまったら…

 

「アンタはアンタの仲間が悩んでるときどうする?」

 

なんでそんなことを…

 

「たぶんアンタは力になろうとすると思う」

 

でも私は悩んでるみほを助けることが出来なかった…

私には力がなかった…

 

「だからそんなアンタの部下達はアンタが困ったら死ぬ気で助けてくれると思うぜ」

 

私は…

 

「本当のアンタの思いを明かすべきだ、アンタを弱いだなんて笑う奴なんて誰もいない。きっと受け止めてくれる。妹さんが命をかけて助けた仲間なんだ、信頼してやれよ。あとはアンタがどうしたいかだ。」

 

「私は…、私は妹の守ったものを守りたい、妹が間違っていないことを証明したい、黒森峰を妹が胸を張って帰って来られるように変えたい!」

 

「おう、アンタは一人じゃねぇんだ、きっとやれるって」

 

そう言って彼は笑うが急に取り乱しはじめた。

 

「いやっ、その何か、話を聞くだけだったのに、偉そうに語っちゃってすいません、本当にごめんなさい…」

 

さっきの男らしい口調とはうって変わって、丁寧な口調に戻り凹み始める。なんだか面白いな。

 

「ああ、大丈夫だ。むしろお礼を言いたい、ありがとう。お陰で進むべき道がわかったよ。それと口調はそのままで構わない」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

俺に向けられた彼女の微笑みはとんでもない破壊力で目を逸らしてしまう。可愛すぎだろ…

 

至福に包まれることも束の間、ポケットの中のスマホが軽快なメロディを流しながら震え始める。

 

「その、少しごめん」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

彼女は微笑み返してくれる、いやまじでやめて、惚れる。

俺は逃げるように店を出てスマホを見るとミカからの着信だった。

 

「やあ、蒼。黒森峰のカレーはどうだったかな?」

 

「うまかったよ」

 

「それは良かった。だけどそろそろ時間だ。急いでさっき別れた場所に来られるかい?」

 

「え?まじ?わかった、すぐ行く」

 

「待っているよ」

 

と言われミカに電話を切られる。

カレー娘と店主のおっちゃんに挨拶して急いで行かなきゃな。

 

俺は店にもう一度入り直す、あ、彼女の名前知らないや

 

「おかえり」

 

彼女は冗談っぽく言う、さっきまでの表情と違いとても良い表情をしている、幸ニにデッサンしてもらいたい。

 

「おう、ただいま、でももう帰らなきゃ行けないんだ、だから最後にアンタの名前を教えてくれないか?」

 

彼女は一瞬ためらいの表情を見せるがすぐに元の表情に戻る。

 

「西住まほだ」

 

黒森峰。西住。まほ。まじか…戦車道の名門西住流の人じゃん。 しかもさっきの話聞いてると家元の娘か… じゃああの決勝と妹さんってのは…

 

「どうかしたか?」

 

「いや、何でもないんだ、まほ」

 

「じゃあ君も名前を教えてくれないか?」

 

あー、逃げられないやつだ、コレ。まほに回り込まれまくってるよ。まあ俺のこと話してないし、大丈夫か…

 

「島田蒼」

 

「蒼か、素敵な名前だな。」

 

あ、バレてない、よし!

 

「ありがとう、まほ。じゃあ俺行かなきゃいけないから。アンタの戦車道応援してるぜ!おっちゃん、ご馳走様!」

 

そう言って急いで店を出る。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

蒼との電話を切り、待ち合わせの場所に向かいながら今日の出来事を思い出す。

 

ーー------------

 

蒼が例のカレー屋に行っている間、私は黒森峰学園にいた。

学園に着くと同時に待ってたと言わんばかりに応接室へ通され、待ち人に問いかけられた。

 

「あなたが島田千代の使いとしてきたということは、あなたはもう知っているのかしら?」

 

戦車道西住流の家元西住しほである。

 

「そう思ってくれて構わないよ」

 

「わかったわ、じゃあ島田千代に伝えて頂戴、佐伯流が動き始めたわ。今日本の大小問わず経営の厳しい学園艦に戦車道のというより男子戦車道の補助金の斡旋が文部科学省から行われているの。そしてそのバックには佐伯流がいたわ。」

 

私は特に言うこともないので黙って聞いている。

 

「みほとあなたの従兄弟が通う大洗学園も斡旋を受けていたわ。私からはあとは特にはないわ、島田千代から何かあるのかしら?」

 

「大学選抜の主導が佐伯流に移動したことぐらいかな?」

 

「島田千代は?」

 

「大学選抜の顧問としては残ってはいるけど、後援会などのほとんどが佐伯流に抑えられているね」

 

「そう、報告ありがとう」

 

あとのことはどうでもよくてあまり覚えていない、ただ、私たちはまた佐伯流に翻弄されることになるのかも知れないとだけ思っていた。

 

----------------

 

遠くから蒼の走ってくる姿が見える。

 

「ミカー!」

 

ああ、どうかこの心地の良い音楽が再び止まらないように…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

結局あの日以来、蒼に貸してもらったハンカチは私の手元にある。ハンカチのどこか不思議な紋様は私の進む道を思い出させてくれる。

 

キレイに畳んであるハンカチを握りしめる。人に自分の本音を打ち明けることは勇気のいることなんだな、なかなか口が開かない。

 

「大丈夫ですか、隊長?」

 

銀髪の副隊長が心配をしてくれる。

 

「大丈夫だ、エリカ、ありがとう」

 

再び黒森峰戦車道の全隊員に向き直る。

 

「みんな、聞いてくれ。私は…」

 

伝えよう、私の進みたい戦車道を。

 

 

 

 

 

 

 




ミカって何考えてるかわからないから、マジで心中文書くの難しスギィ!!!
いよいよアニメ本編に突っ込んで行きたいです。

すとらっぷさん感想ありがとうございます。

私生活をもう少し整えて更新速度あげたい、切実に


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新学期です

お待たせしました。
今回は会話多めで追いにくいですがご容赦ください。


どっちが上か下かも分からない濁った水の中に私は漂っている。

そして声が聞こえてくる。ああ、またこの夢か

 

『君のせいで黒森峰は負けたんだ』

 

ごめんなさい

 

『名門校に泥を塗ったのは理解しているんですか?』

 

ごめんなさい

 

『貴方の戦車道は間違っています、貴女は…』

 

お母さん…

 

「私は…」

 

目がさめる。まだ見慣れない天井が目の前にある。

 

「ああ、もう家じゃないんだ」

 

時計を見るとゆっくりと朝の支度をしている場合ではないみたい。

 

「急がないと…」

 

まだ着慣れない制服に身を包む。私はこっちの制服の方が前の学校のものより可愛くて好きかな。

急いで身支度を整えて、朝ごはんを食べて家を出る。そろそろちゃんと自炊しなきゃ。

 

「行ってきまーす」

 

部屋のすぐ隣の階段を降り始める。

 

「あ、鍵しめなきゃ!」

 

あはは、まだ実家の習慣が抜けてないのかな、早く一人暮らしになれないと…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

突然だがみんなは好きなものがあるだろうか?

俺はある。サンドイッチだ。

だけど食パンのサンドイッチじゃなくてバケットのやつ。食べごたえがあって好きなんだ。そして今日も朝ごはんに俺はサンドイッチを食らう。

 

「毎度あり〜」

 

マンションから近いこのパン屋は開店も早いし、美味いし重宝してるんだよなー。

とか考えながらパン屋の袋を手にぶら下げて店を出る。

 

「わぁっ!」

 

「うおっ!」

 

不注意で誰かにぶつかる。やばい、相手が後ろに倒れそうになってる!

 

「っ!」

 

俺は思いっきり手を伸ばして相手の背中に回すようにする。

 

「っと、あぶねぇ、セーフ」

 

むにゅ

oh…ベリーマシュマロン…

 

ぶつかった相手は女の子だったらしく、俺はどうやら路上でいきなり女の子を抱きしめてしまっているらしい。

 

おうふ、俺捕まったわ、ごめんな、愛里寿…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

まだ歩き慣れない通学路、日々新しいことに気づいていく楽しさ、新鮮さが妙に嬉しく感じる。

 

「うーん、焼きたてパンのいい香り!」

 

こんなところにパン屋があったんだ、ちょっと覗いてみよう。

 

「わぁっ!」

 

「うおっ!」

 

丁度パン屋から出てきた人とぶつかってしまう、その拍子によろけて後ろに倒れてしまいそうになる。

 

「っ!」

 

だけど相手が咄嗟に手を伸ばし倒れるのを防いでくれる。

 

「っと、あぶねぇ、セーフ」

 

なんとか倒れずにすんだみたい、ちゃんとお礼を言わなきゃ…

相手の顔をみると放心してる。何で?アレ?この顔は…

 

「え、と、島田君?」

 

「え?に、西住?」

 

島田君の顔がさらに青ざめる… え、私何かしたのかな?

 

島田君は私の背中を抑えていた手を外し、頭をさげ、両手を合わせる。

 

「すまん、西住、わざとじゃないんだ、許してくれ!」

 

やっと島田君が青ざめた理由に気づく、でも怪我をしそうだったところを助けて貰ったのだから、私に怒る理由はない。

 

「ううん、大丈夫。島田君が手を伸ばしてくれなきゃ、怪我してたかも知れないし、ありがとう」

 

「おお、助かるわ、西住」

 

彼は手を伸ばしたときに落としたパン屋の袋を拾う。

 

「あの、私のせいでパン落としちゃったね、ごめんね、私がぼーっとしてたから…」

 

「大丈夫、大丈夫。中身フランスパンだからちょっとのことじゃダメにならないって」

 

「そう、なら良いんだけど…」

 

「そんなことより早く学校行こうぜ、遅刻してそど子に怒られると面倒だ」

 

「うん!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

よかった、捕まらずに済んだわ、西住はいい子だったよ…

てか黒森峰でまほから聞いた妹って、目の前の西住なのかな…?

まあ西住なんて沢山いるだろうしたまたまだろう。

 

「てか、西住としっかり話すの初めてかもな」

 

「そうだね、私は2年からこっちに来たから、友達いなくて…」

 

まだ上手く馴染めてないからなのか少し落ち込んでいる。

 

「まあ、大丈夫だろ。昨日も放課後に武部と五十鈴さんが西住ってどんな子なんだろうって話してたぜ?みんな興味持ってるし、すぐに友達も出来るって」

 

「ほんとうに?私、頼りないってよく言われるから不安で。」

 

「おう、本当だって。だからしょげた顔してないで新しい学校楽しもうぜ。」

 

「うん!」

 

西住が笑顔になる。なにこの守ってあげたい小動物。かわいい。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はい、鮎川君出席ね」

 

今日も出席だけで学校が終了する。

サンダースにいた頃の単位が膨大すぎて、大洗で受ける授業がなくなってしまい、いつも出席だけで学校が終わってしまう。

 

前までならすっごい暇だったんだけど、今は違う。

蒼が持ってきたコメット巡行戦車を参考にしながらこれから始まる戦車道に向けて戦車の整備のメソッドの確立や追加で必要な道具を調べて発注などをしないといけない。

僕以外の自動車部の人達は普通通りに授業があるから日中は一人で頑張っている。

 

新しく戦車倉庫と名付けられた倉庫の扉を開く。

 

「あれ?」

 

倉庫に置いてあるソファで誰かが寝ている。

 

近づいて様子を見るとウチの女子生徒らしく制服を着たまま寝ている。このまま放置も出来ないので声をかける。

 

「おーい、おきてくださーい。」

 

返事がない。

 

「おーい、起きてー」

 

返事がない。

 

「起きてよー」

 

返事がない!!!

 

もう知らない。自分の作業を始めよう。

今日のBGMは…

稲◯淳二のアレにしよう。たまにはホラーも悪くないよね。

スピーカーで稲◯淳二を流しながら作業を始める。

 

蒼からもらったコメットの書類を見ながらコメットの仕様を確認する。

コメットは第二次大戦当時、イギリスの機甲部隊はアメリカからレンドリースで借り受けていたM4シリーズを主に運用していたんだけど、ドイツの当時の最新機ティーガーやパンターに十分に対抗出来なかったんだよね、だからドイツ戦車に対抗するために17ポンド砲を搭載した巡行戦車として開発されたんだ。

コメット自体は巡行戦車クロムウェルを元に開発されているんだけど、一番の売りはヴィッカーズ社の77mm戦車砲HVだね、この砲はパンターの主砲70口径7.5cm戦車砲KwK42に匹敵するレベルだとか…

 

書類を読み進めていると稲◯淳二の語りも佳境に入る、さっきの女の子のソファの横にあるスピーカーからしきりに「怖いな〜、怖いな〜」と聞こえてくる。

書類に飽きてきたので聞き入ってしまう。

 

「怖い!!!」

 

さっきまでぐっすりだった女の子が突然起きてスピーカーの音量を落とした。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

人間には勝てないものがある、睡眠欲に代表される三大欲と幽霊だ。

 

先程誰かに声をかけられてから眠りが浅くなり、周りの音が聞こえてくる。眠いので関係なかった。

…ということもなく、よりにもよって私の天敵稲◯淳二の語りが聞こえてくる。

やめろやめろ怖い怖い、それ以上語るんじゃない。

眠気はとっくに醒めていた、もうこの語りを止めるしかない。

 

「怖い!!!」

 

私の近くにあったスピーカーの音量を落とす。

 

そこで私は彼と目が合う。

 

「えっと…、やっとおきたのかな?」

 

「誰だ?」

 

今まで日中はこの倉庫は誰もいなくてとても寝やすかったんだが…

 

「僕は整備科2年の鮎川君尋、君は?」

 

ああ整備科か今年からこの倉庫も使われるのか、新しい昼寝場所を探さねば…

 

「2年、冷泉麻子」

 

「冷泉さんはどうしてここに?」

 

「この倉庫は日中誰もいないからな、昼寝だ」

 

「そっか、僕がその邪魔をしちゃったんだね、ごめんね」

 

「いや勝手に使っていたこちらが悪い、また新しい場所を探す」

 

「別に大丈夫だよ、日中は多分僕しか来ないし一人じゃ大掛かりな整備もできないから対して音も出さないと思うよ。」

 

「そうか、だがアレは流すんだろう?」

 

私はスピーカーを指差す。

 

「こういうのダメだった?」

 

「ああ、幽霊は苦手だ。」

 

幽霊だけは本当に無理だ。

 

「じゃあ今度からは別のものにするよ。」

 

「たのむ。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

冷泉さんとのやり取りを終え、また書類を読み始める。

 

「なあ、鮎川君。何でこの倉庫は戦車があるんだ?」

 

「昔この大洗学園で戦車道が活発だったみたいだね、その名残だよ。そして今年から戦車道が復活するみたいだよ?冷泉さんは戦車道に興味あるの?」

 

「ない。寝る時間が減りそうだ。」

 

「そうなんだ」

 

どんだけ寝たいんだ、冷泉さん。

 

昼休みの始まりを告げるチャイムがなる。

 

冷泉さんは倉庫の入り口に向かって歩き始める。

 

「鮎川君、私はまたここに来ても良いのか?」

 

「大丈夫だよ、冷泉さんさえよければ」

 

「わかった、次は落ち着く音楽がいい」

 

そう言って彼女は倉庫から出て行く。

なんだか冷泉さんって猫に似てるかも…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

午前中の授業が終わってお昼休み…

朝に島田君にああ言われたもののやっぱりまだ私は一人…

悲しいなぁ…

 

「なぁ、西住」

 

「ヘイ、彼女!」

 

「ふぇっ!?」

 

同時に二手に声をかけられてびっくりして机のものを散らかして床に落としてしまう。

 

「蒼、いきなり声かけるから西住さん驚いてるじゃないか」

 

「沙織さん、西住さん驚いてらっしゃいますよ?」

 

「え、ああ、すまん、西住」

 

「え、ごめんね、西住さん」

 

「えと…、島田君と武部さん?」

 

「おう」

 

「えー、覚えててくれたんだ〜」

 

「おら、蒼、ボーッとしてないで西住さんのペン拾えって」

 

「そうだよ、蒼」

 

「ほら、沙織さんもボーッとしてないで」

 

島田君と武部さん以外の三人が落とした筆記用具を拾ってくれる。

 

「ありがとう、原君と桜田君と五十鈴さん」

 

「俺らのことまで覚えててくれたんだ〜」

 

「嬉しいです」

 

「その、私転校してきたから早くクラスに馴染みたくて、みんなの名前覚えたから…」

 

顔がだんだん赤くなってきちゃった… うぅ、恥ずかしい…

 

「まあまあ、続きは飯でも食べながら話そうぜ?な、幸二、和樹?」

 

「あ、島田ずるーい。私たちが西住さんとお昼食べようとしたんだよ〜」

 

「まあまあ、沙織さん」

 

「じゃあみんなで食べたらいいんじゃないかな?どうかな西住さん?」

 

「私は全然大丈夫っていうか、むしろ嬉しいです!」

 

「じゃあ決まり!はやく行こう!学食混み始めるよ!」

 

武部さんが私の手を掴み食堂へ連れてってくれる。

 

「もう沙織さんったら」

 

「蒼、幸二もはやく行こうぜ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「おーい、こっちこっちー!」

 

運良く六人分の席が空いていたから、蒼と西住さんたちを誘導する。

 

「ごめん、お待たせー、桜田」

 

武部がそう言って俺の目の前に座る。そして隣に西住さんを挟むように五十鈴さんも座る。そして俺の隣は蒼が座り、五十鈴さんの正面に幸二が座る。

なんだこれ、合コンかな?

 

てか五十鈴さん、何だそのご飯の量。富士山じゃねーか。

 

「それじゃあ、みんな揃ったし食べようか」

 

おい、幸二。五十鈴メシにはノータッチかよ、てかお前もどんだけ食うんだよ!ピザにパスタとかお前イタリア人か!ジェラートつけてんじゃねぇ!

蒼、お前は何だそれ、昼からきりたんぽ食うのか!!!

ああもう知らね! あ、武部と西住さんは普通だ。

俺?俺はシュラスコだよ?美味しいじゃん、肉。

 

「「「いただきまーす」」」

 

みんな一斉に食事を始める。

 

にしても西住さん超いい笑顔だな。写真撮って飾りたいわー。

 

「西住さん、とても嬉しそうだね。」

 

俺の代わりに幸二が切り出してくれる。

 

「え!?そうかな?私、ここにきて始めてこんなに大人数でご飯を美味しく食べるから、それが嬉しくて…」

 

ちょっと赤くなってる、西住可愛い。

 

「じゃあこれからは一緒に食べよう?あ、そうだ!みほって呼んでいい?」

 

流石コミュ力おばけの武部だな。

 

「えー!何だか、友達みたい!大丈夫だよ!ありがとう、えーと…沙織さん!」

 

「みほさん、私も気軽に華と呼んでくださいね。」

 

「うん、よろしくね、華さん。」

 

何この空気なんだか和むな、あ、幸二がすごいイイ顔してる。

そういえば西住さんは転校してきたとか言ってたな?

 

「なぁ、西住さんはどうして転校してきたんだ?」

 

「え、えっと…」

 

「泥沼の三角関係に巻き込まれて!?」

 

武部、漫画の読みすぎ。

 

「それとも日本中を旅する流浪人だとか?」

 

幸二、何言ってんだ?

 

「もしかして骨肉の争いから逃れるために?」

 

五十鈴さん、あんた昼ドラ好きだろ?

 

「私…、前に黒森峰学園てところにいたんだけど…」

 

西住さんが言いにくそうに切り出す、ふと横を見ると蒼がとても驚いた顔をしていた。蒼は黒森峰学園を知っているのか?

 

「いや、西住、無理に言わなくても良い、誰にでも良いにくいことはあるって。なあ、和樹?」

 

「そうだな、別に大丈夫だぞ、西住さん。そういえば…」

 

この後、西住さんに色々聞いたり聞かれたりしながら談笑して昼休みを過ごした。結局西住さんの転校してきた理由は分からなかったけど。

みんなで笑いあいながらとても楽しい時間だった、ただ、蒼がときどき西住さんを何とも言えない顔で見ていたのが少し引っかかった。

 




ss書いてて思うんですけどやっぱりガルパンって中々に重いところもありますよね、だけどアニメはその重さをあまり目立たせず、すごく観る側が受け付け易くしているなと思います。
欲しいですね、文才…

感想・ご指摘ありましたら、是非お願いします。
次回もなるはやで頑張ります。


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ガールズミートボーイズです!

ドリームタンクマッチでエリカとノンナが追加されましたねぇ…
ペパロニはいつくるんでしょうか…?


授業終了のチャイムが鳴る。

今日はいつもと違って軽やかに聞こえる。

 

やっと友達が出来た!これで私がずっとしたかった普通の女子高生の生活が出来そう!今度は普通に友達と美味しいものを食べて、色々なところへ行って、たくさんおしゃべりして、それから恋愛とかもしちゃったりして…

 

自然とにやけてしまう、でもそれほどにまで私にとっては嬉しかった。

 

「どうしたの、みほ?ニヤニヤしちゃって。」

 

「ふぇっ!?沙織さん!?」

 

「うん、一緒に帰ろ!」

 

「本当に!?」

 

「え、もしかして都合悪かった?」

 

「ううん、とっても嬉しいよ!帰ろう、沙織さん!」

 

「やった!華が用事があるらしくて一人だったから寂しかったんだ〜」

 

華さんがいないのは残念だけど、転校してから一人だった帰り道が誰かと一緒なのがとても嬉しかった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

授業が終わり、私はある場所へ向かう。

 

「あれは?」

 

でも今日は先客がいたみたいです。

 

「原さん?」

 

「えと、五十鈴さん?」

 

原さんは大きいジョウロを持って花に水やりをしています。

 

「どうしてお花に水を?」

 

「たまに誰かがこの花に水をあげているみたいなんだけど、今日はまだ水をあげてないみたいだから代わりに僕がお世話しようと思ってね。」

 

「ふふ、原さんはお優しいんですね。」

 

ちゃんと花が傷つかないようになるべく根元にかかるようにしているところからも彼の優しさを感じます。

 

「そ、そんなことないよ。それよりもここの花は本当に綺麗だと思わない?僕は学園艦で一番綺麗に咲いていると思うんだ。」

 

「ありがとうございます、そこの花は私が育てているんですよ?」

 

やっぱり自分が大事に育ててきた花を褒められるのはとても嬉しいです。

 

「そうなんだね、すごいね、五十鈴さん!じゃあ今は花の世話をしに?」

 

「そうですよ。それと今日は夏に向けて向日葵の種を蒔きに来たんです。もしよろしかったら手伝って頂けますか?」

 

「うん!むしろ手伝わせてほしいくらいだよ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

しばらく五十鈴さんと土をいじってると五十鈴さんがベンチに置いてあるスケッチブックを見つめていた。

 

「気になるかい、五十鈴さん?」

 

「え、あの、すいません、いつも教室で桜田さんや島田さんに絵を見せているなと思って…」

 

ああ、見られてたんだ何だか恥ずかしいね…

 

「よかったら、五十鈴さんも見てくれないかな?やっぱり描いたものはたくさんの人に見てもらいたいからね。」

 

「じゃあこのお世話が終わったら、見せてもらってもよろしいですか?」

 

「うん、大歓迎だよ」

 

しばらくしてお世話を終えて、二人でベンチに座る。

 

「はい、五十鈴さん」

 

「ありがとうございます、では見させてもらいますね」

 

五十鈴さんはとても真面目な顔つきでスケッチブックの絵を一枚、一枚見ていく。前から思っていたけど、五十鈴さんって本当に美人だな、横顔とか本当に絵になるな。

 

あんまり見ていると不審がられそうなので花壇の向かいにある校庭に目をやる。

 

いつかのバレー少女が練習している、だけど前の様子とは異なり何人か人が増えている。よかった、新しい部員が入ったんだね。

 

丁度五十鈴さんも絵を見終わったらしく、スケッチブックをパタンと閉じる。

 

「とても素敵な絵でした、だいぶ前からこの花壇の花を描いていてくれたんですね。でも…」

 

「でも?」

 

「もしかして原さんの本当に描きたい絵はまた違うものではないでしょうか?」

 

心臓を鷲掴みにされたような気がした。

確かに僕は今までひたすら万人ウケをする『無難』なものばかり描いていた気がする。でも最近は何を描いても満足出来ず、自分の描きたいものを描こうとしてるんだけど自分が描きたいものが分からず、今に至る。

だから五十鈴さんの指摘は心に刺さった。

 

「どうして?」

 

「私もそうなんです、華道で花を活けるのですが、本当に自分の活けたいものが分からずどうしても『無難』なものしか活けられなくて…」

 

「五十鈴さん?」

 

五十鈴さんは続ける。

 

「足りないんです、何かが…」

 

彼女の目はどこか遠くを見つめていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「また明日ね〜」

 

私はみほと別れて商店街の方向へ歩き始める。

 

今夜は何を作ろうかな〜、うーん、ちょっと凝ってデミグラスハンバーグとかいいかも!

 

今日はみほと友達になれたし、あと桜田達とあんなに話したのも初めてかも、なんだか一日充実してたな〜

 

少し肩が凝ったのでカバンを手に持って、そのまま空に突き上げ大きく伸びをする。

 

ッパシ!ブロロロ

 

急に荷物を持っていた腕が軽くなり、目の前をあたしのカバンを持った原付乗りが通り過ぎていく…

 

一瞬で予想外の出来事に頭の処理が追いつかなくなって放心してしまう。

そして放心してると急に横でバイクが止まり、ライダーが声を掛けてくる。

 

「アレ、あんたのものやろ?」

 

「は、ハイ!」

 

「おっけ、任しとき」

 

ライダーはニーハンなめんなぁぁっ!!!と叫んで、ひったくりを追いかけ始める。アレ?ライダーが来てる服、ウチの男子の制服だった?

いやそんなことはどうでもいい、あたしも追いかけなきゃ!

ようやく理解が追い付き私もひったくりを追いかける。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「だ〜か〜ら〜違うって言うとるやないですが、おまわりさん!」

 

「しかし我々は君が原付の彼から荷物をひったくるところを目の前で見ているんだぞ」

 

やっとそど子から解放されて、Ni◯jaちゃんに乗ってウキウキで帰ってたんに、ひったくりの現行犯見つけて、胸糞悪いから荷物取り返したっちゅうのに…

運悪く対向車のパトカーに見られてて、俺がひったくり扱いやなんて、ほんま腹立つわー。

 

「この荷物は別の女の子のもんで、コイツが最初にひったくったんですわ、おまわりさん、すぐ女の子も来ます!」

 

「そのことはあとで署で詳しく聞くから、パトカーに乗りなさい」

 

ヤバイヤバイヤバイ、ほんまどうしたらええんや…

 

おまわりさんに腕を引っ張られる。

 

「待って下さい!」

 

さっきの女の子がやっと追いついたみたいや、遅いでぇ、ほんまに。

 

「あの子です、おまわりさん!」

 

「ふぅん?このカバンは君のもので間違いないのかな?」

 

「中に顔写真の入った学生証があるんで確認してください!」

 

おまわりさんはカバンの中の財布を取り出し学生証を確認する。

 

「ふむ。確かに顔写真は一致しているな。じゃあ君も来てくれ。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

はぁ、疲れた、まさか事情聴取がこんなにかかるなんて…

どうせ話すなら警察のおじさんじゃなくてイケメンが良かったのに!

 

「良かったな、カバン戻ってきて、俺も疑惑が晴れたし万々歳や」

 

と言いつつ、加点されたけどなとボソッと呟きながら彼は声を掛けてきた。

 

「うん!さっきはありがとう!お陰で助かっちゃった!やっぱりウチの生徒だったんだね。」

 

「まあ困ったときはお互い様や。せやで、2年の山口龍秋や、よろしくな。」

 

「本当に!あたしも2年だよ!武部沙織、よろしく!」

 

山口君は笑顔で返してくれるが、彼の顔が急に青ざめ、お腹を抑え始める。

 

「だ、大丈夫、山口君?」

 

「腹減った…」

 

「もう仕方ないな〜、お礼に何か作ってあげる!」

 

「ホンマか!じゃあすぐに行こう!」

 

彼は急に元気になり、あたしに予備のヘルメットを渡してきた。

 

「はよ行こうや」

 

「先に買い物からだからね」

 

「えぇー…」

 

私がバイクに乗り込むと山口君は捕まっときと言うとバイクを走らせ始める。

あれ?今あたし結構凄いことしてるんじゃ!?

 

一人で顔を真っ赤にしながら彼にしがみつくあたしだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「戦車ショップでも行くかなー」

 

空はもう薄暗いが生徒会室の灯りがまだついている。会長達はまだ仕事してるのか〜。

 

残りの仕事は私達がやるから桜田は帰んな〜、あ、帰りに戦車ショップにこれ渡しといてね〜と言われ、特に他にやることもないので素直に従った。最近なんだか帰らされることが多い。

 

多分また何か企んでるんだろうなー。まあ考えても仕方ないし会長から渡された書類を戦車ショップに持っていく。

ついでに月間戦車道も買わなきゃな。

 

大洗学園は昔、戦車道が盛んだったこともあり戦車ショップがある。当時の店の売り上げや人気はすごかったのだが、ご存知の通り戦車道がなくなってから泣かず飛ばずで店主は毎日暇そうにしている。

 

まあそのおかげで昔たまたま店に入ったときに店主に戦車のことを叩き込まれたんだけどな。まあでも戦車道復活のおかげで忙しくなるだろうし、恩返しは出来るのかな。

 

戦車ショップにつく、お、今日はお客さん一人いるし、マシな方だな。

 

「いらっしゃいー、お、和樹か。月間戦車道の新刊出てるぞー」

 

「ありがと、おっちゃん。でも今日はそれだけじゃないぜ〜」

 

いつも通り気さくに話しかけてきたおっちゃんに会長から渡された書類を渡す。

 

「おい、和樹、これは本当か?」

 

「ああ、戦車道復活のこと?本当だよ、しかも男子戦車道も始めるってよ。もちろん、俺もやるんだぜ〜」

 

おっちゃんに思いっきりピースしてみせる。

 

「くぁ〜、大洗も戦車道復活か、たまんねぇな!しかも男子戦車道!羨ましいったらねぇな!うちも忙しくなりそうだ!」

 

バサっ!っと音が後ろの方でしたので振り返ると、女の子が雑誌を落としたまま、震えている。天然パーマの入った髪質で…、うん?なんか凄い顔になってる。

 

「そ、その話は本当ですかぁっ!?」

 

女の子がものすごい食い気味で聞いてくる。おお、この子はウチの生徒か。まあ、どのみち知らされるわけだし、今バレても良いか。

 

「本当だぜ。ほら、生徒会長のお墨付き。」

 

おっちゃんがご隠居様よろしく書類を出し、紋所もとい会長の実印を俺が指を指す。我ながら、気持ちの良い流れだ。

 

「本当だ!まさか高校のうちに戦車道に携われるなんて!生きてて良かったー!」

 

「ッハッハッハ、良かったな、優花里ちゃん。ずっと戦車道やりたがってたもんなぁ〜」

 

「はい!おかげで夢が叶いました!」

 

「うおー、テンション高ぇな。てか、おっちゃんは知り合いだったんだな。」

 

「はぅ!私ったら、つい…」

 

急に恥ずかしくなったのか顔を赤くして少ししょんぼりしてる、可愛い。

 

「和樹、この子はね、秋山優花里ちゃん、もう一人のウチのお得意さんだよ。」

 

「はい!よろしくお願いします!えっと…」

 

「俺は桜田和樹、よろしくな、秋山ちゃん!」

 

「よろしくお願いします、桜田君!」

 

「いやー、ボーイミーツガールだなぁ。」

 

何言ってんだ、おっちゃん。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「へぇ〜、じゃあ秋山さんは、秋山理髪店の娘さんなんだね〜。親父がいつも世話になってるよ〜。」

 

「桜田君も、桜田コーヒーの息子さんだったんですね、私の方も父が世話になっています。」

 

戦車ショップを出て、戦車のことを交えつつ、お互いの話をしていると世間が狭いことを実感しました。

意外とこんなに近くに戦車が好きな人がいるなんて思いもしませんでした。

大洗学園は戦車道を復活するみたいだし、戦車仲間も出来るし、今日はとても良い日みたいです!

 

「本当に世間って狭いよな〜、そう言えば秋山ちゃんはどの戦車が好き?」

 

お、鉄板の質問ネタが来ましたね!ふふふ、任せてください!

 

「私はポーランドの7TP双砲塔方です!見た目も好きなんですが、性能でもドイツの軽戦車に匹敵してたなど、なかなか優れた1台なんですよ!まあ、ロシア戦車相手にはキツかったみたいですが…、桜田君は?」

 

7TPと聞いた瞬間、桜田君の眉が少しピクッとした気がするけど気のせいかな?

 

「俺はドイツの3号戦車J型かな?あの如何にもな形がたまらないんだよな〜、いやー、こんなに近くに戦車を語れる人がいたなんてなー、いつもチャットでしか語れなかったからな〜」

 

ん?3号戦車J型?そういえば、男子戦車道も始まるとさっき桜田君が言っていましたねぇ…

 

「あのー、桜田君。もしかしてコ◯ンドー好きですか?」

 

桜田君がギョッとした顔をする、あぁ、これは黒ですねぇ…

 

「あ、秋山ちゃん、もしかして戦◯大作戦好きだったりするのかな?」

 

私の方もバレてしまいましたね。

 

「オッドボールさん!」

 

「ムエタイX殿!」

 

ああ、なんて狭い世間なんでしょうか…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

放課後、幸二は絵の練習、和樹は生徒会に行ってしまい一人になる。

龍秋は風紀委員にいつも通り絞られてるだろうし、君尋は自動車部で忙しそうだ。しゃーない、一人で帰るかー。

 

俺は鞄を持って教室を出る。

 

やっぱり西住は黒森峰の西住流の人間だったんだな。

昼休みに西住が黒森峰から来たと聞いてからずっと考えていた。

大洗に来たってことは戦車道を避けてのことだよな、俺がここにぶち込まれたのと同じように。

だけど結局戦車道は今年から復活するしなぁ…

うーん、名門黒森峰のしかも最大流派の娘を生徒会長は放っておくだろうか…

いやー、ないなー。絶対に目星つけてるよな、あの会長は。

でも西住はまほの話を聞く限り絶対に戦車道やりたくないだろうし。

 

俺が考えても仕方ないよな、甘いもんでも買って帰るか…

 

適当に歩くとコンビニがあったので入る。するとさっきまで俺の中の話題の中心にいた人物が陳列棚の一部をじーっと見ていた。

 

何やってんだ、西住。

 

彼女の見つめている商品を見ると残り数が少なくなっているおまけ付きのお菓子のようだった。ん?あのオマケ見たことあるぞ。

 

「なあ、それボコだよな?」

 

「ふぇっ?! し、島田君!?」

 

急に声をかけられたからなのかものすごい声で返事をされる。

 

「ああ、すまん、驚かせるつもりはなかったんだ。西住もボコ好きなのか?」

 

「うん!とっても頑張り屋さんで可愛いんだよ!嬉しいな!こんなに近くにボコ好きがいるなんて!」

 

うわぁ…小さい頃の愛里寿みたいなこと言ってるよ。てか誤解されてるよ…

 

「あのな西住…」

 

「今ね、このボコのおまけ付きのお菓子を買おうと思ってるんだけど、あと二つしかないからどっち買うか迷ってるんだけど、どっちがいいと思う!?」

 

「え、どっちでもいいんじゃない?」

 

だって同じお菓子だろうよ。

 

「で、でも、もし買わなかった方に欲しいボコが入ってたらって思うと…」

 

ボコチョコ、甘いお菓子か…

ちょうど甘いもの欲しかったしちょうどいいかな。

 

「おっけ、わかった。俺も一つ買うよ、んで、西住が欲しいボコが出たらやるよ。」

 

「本当に!?」

 

おお、凄い嬉しそう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ボコチョコを買って、コンビニの前で開封する。

ちょっと行儀悪いけどたまにはいいよね?

 

「すごい!!!島田君!銀ボコだよ!」

 

「おーめっちゃ銀色だな、やっぱり珍しいのか?」

 

「うん!金ボコの方が珍しいんだけど、それでも滅多に手に入らないんだよ!」

 

「おー、じゃあ当たりを引けたんだな。良かったな、西住」

 

続いて島田君もボコチョコを開封する。

 

「あ…、金だ。」

 

「え!?」

 

「ほら、これ、やるよ」

 

島田君は金ボコを私の手のひらに乗せてくれる。

 

「いいの!?この金ボコ、プレミアつくくらいに珍しいんだよ!それに島田君もボコ好きなんだよね?」

 

「いや、良いよ。約束したし。それにな、さっき言い忘れたけどボコが好きなのは俺の従姉妹だよ。今はもうなかなか会えないし、それなら西住に持っていって貰う方が金ボコも喜ぶだろ?」

 

「ありがとう…」

 

なんだか申し訳ない気持ちになって島田君の方をみると、気にすんなと言わんばかりにチョコを食べ始めている。

 

「島田君のボコ好きの従姉妹ってどんな子なの?」

 

「あー…」

 

なんだかマズイこと聞いちゃったかな、微妙そうな顔をしている。

 

「その、ごめんね…、変なこと聞いちゃって…」

 

「ん、いや、気にしないでくれ。従姉妹は『普通』の女の子だったよ。ボコが好きで、トマトが嫌いで寂しがり屋だったな。あと笑うとすっごい可愛い。きっと出会ったら西住とも仲良くなれると思うぞ。」

 

「そうなんだ!それは会って見たいな〜!ボコ好きの人ってあんまりいないから〜。」

 

「まあ、独特だしな。」

 

「そ、そんなことないよ、たぶん…?」

 

うん、ボコは可愛いと思う。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

嘘だろ…、こんなことってあるのか…?

 

お互いそろそろ別れるだろうと思いながら歩き続けてついに同じ建物に入ってしまった。

 

「西住も、このマンションだったんだな…」

 

「う、うん、こういうこともあるんだね…、それじゃ私この階だから…」

 

「すまん、俺もこの階なんだ…」

 

なんだかとても気まずくなって早く部屋に入ろうとして角部屋の隣のマイハウスの鍵を開ける。

 

「隣なんだ…」

 

oh…god…

 

「お隣さんだったんだな…」

 

お互いなんとも言えなくなって棒立ちしてしまう。

沈黙といたたまれない空気が流れるが唐突にマイホームのドアが開けられる。

 

「さっさと入ってきたらどうかな?鍵を開けたままにすることは意味があるとは思えないよ、蒼?」

 

ああ…、そういえばまだ『もう一人の従姉妹』が家にいたんだ…

 

ミカはそのまま表情を変えずに口を開いた。

 

「まさか西住流の次女に手を出すとは大きく出たね、元島田流君?」

 

あ、目が座ってらっしゃる…

ぜってぇ勘違いされてる!!!

 

いやそれよりも一番聞かれたくないことを今一番聞かせたくなかったやつに聞かれちまった…

 

「西住流ってなんで…、それに島田流って…」

 

「いや、西住、別に意図的に隠してたわけじゃ…」

 

「ごめんなさい… !」

 

そう言って、西住は隣の部屋に逃げるように入ってしまった。

あぁ、マズッたなぁ…

 

「バレない秘密はないよ、蒼。」

 

「ミカ、お前今日飯抜きな」

 

「そのk…「うるさい」ごめんなさい」

 

はあ…どうしよう…

 

 

 




多視点になるとなかなか難しいです。
まだまだ本編1話ぐらいですね…

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