ストライクウィッチーズ ~ 天翔ル白狼の奮戦記 ~ (ティルピッツ)
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プロローグ 異世界への転生
プロローグ1 《大西洋海戦》
かなりの期間が経ってしまいましたが、満足のいく内容にする事が出来ましたので、投稿を再開します。
長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません。
では、本編をどうぞ!
20世紀は戦争の世紀と言える‥…
海に‥‥陸に‥‥戦火は絶えず、近代兵器の発達はその災禍を飛躍的に拡大させた‥‥
幾度も激戦の舞台となったこの大海では、この日も何度目か分からない大規模な戦闘が繰り広げられていた。
大小様々な軍艦が海上を右往左往しながら、艦上では盛んに砲煙が湧き出ている。上空には多数の航空機が飛び交い、それらに向けて海上の軍艦から猛烈な火線が伸び、時折その線に捕らえられ火球と化して墜落する機もいたが、大半の航空機は海上の軍艦に向けて攻撃を仕掛ける。
軍艦も航空機だけでなく、敵艦に向けて砲撃や魚雷による攻撃を盛んに仕掛け敵艦を沈めるが、敵の反撃をつけ大きな水柱で覆い尽くされる艦や大爆発を起こし、黒煙を履きながらその姿を海中へと没する艦もいた。
─── 日本、アメリカ、イギリスの3カ国を中核とする連合国は、講和後を見据えて大西洋の制海権を失わない為に、多数の航空機や艦艇を大西洋に投入。
対するドイツ第三帝国改め神聖欧州帝国を中核とする帝国側も講話を有利にする為、大兵力を大西洋に送り込んだ。
その為、両者は大西洋上で激突。昼夜を問わないほどの大激闘が常に繰り広げていた
しかし、比較的補給が容易い欧州帝国軍と違って、補給線の確保が難しく補給面に難のある連合軍では、修繕に使う資材や武器弾薬が不足、更に昼夜問わずの戦闘で連合軍の将兵達は疲弊……
──そして、この日の欧州帝国軍の猛攻は何時にもまして苛烈を極めた
アメリカ海軍 第6艦隊 旗艦 戦艦《フィルモア》
「重巡《ノーザンプトン》被弾!」
「《ヴィンセンス》被雷!速力低下!
「第38駆逐隊…被害甚大……!」
「くっ!…………何隻やられた?」
「駆逐艦12、軽巡及び重巡8隻が沈没。空母と戦艦はそれぞれ4隻ずつ失いました……」
「ヒトラーのクソ野郎め……っ…!…次から次へとっ!……一体どれだけの戦力を投入しているんだ!」
米第6艦隊司令長官 ウォルター・スコット大将は、自艦隊の損害を聞き、ヒトラーに対して悪態をつく。
連合軍の中でも比較的豊富な戦力を持つ米軍が率先して迎撃に当たっていたが、敵の数が尋常では無い程多く多数の被害が出ていた。
様々な型式のUボート…ビスマルク級戦艦やシャルンホルスト級巡洋戦艦、ドイッチュラント級装甲艦などの水上艦だけならまだしも、艦上機や攻撃機、更には重爆撃機まで加わっての空と海からの同時攻撃で、米艦隊だけでなく英艦隊や少数の日本艦隊は、苦戦を強いられていたのだ。
「……………空母部隊の損害は?」
「我が方は《キアサージ》《オリスカニー》撃沈。《エセックス》《バンカーヒル》大破。英艦隊は、《イラストリアス》撃沈。《アーク・ロイヤル》中破……」
「航空隊は既に3割を損失……しかし、全部隊が依然として戦闘を継続中です。」
「提督、艦隊の被害も大きいですが、航空隊の損害が大きすぎます。増援を出すか撤退させないとこのままでは全滅しかねません。」
「分かっている……分かってるが……。しかし───」
当然、スコット大将も航空隊の損害状況を把握しており、増援を送るか1度退かせるべきだろうと考えていた。
──しかし、戦況はそれを許せる状態では無い。
米英の空母部隊は敵航空隊の猛攻を受けて、応戦しつつ回避行動の真っ最中であり艦上機の発着艦は行えない。着艦の為に回避行動を止めてしまうと集中攻撃を受ける恐れがある。
空中給油機も空戦の影響で飛ばせない。給油機につける護衛機もなく、そんな無防備な状態で無理やり飛ばしても結果は目に見えている。
「………無理にでも収容させますか?」
「ダメだ。危険が大きすぎる。自軍の倍近い敵機をあわよくば振り切る事が出来たとしても、味方の猛烈な弾幕の中母艦に着艦し、補給を済ませ再出撃できる可能性は極めて低い……。」
「ではどうし───っ!」
参謀の声は大きな爆発音で遮られ、スコットらが爆発音のした方を見ると1隻の米重巡が激しく炎上しており、動きが完全に止まっていた。
「っ!重巡洋艦《サンフランシスコ》被弾!キャラハン少将戦死!」
「《サンフランシスコ》の被害甚大、総員退艦が発令されました!」
「………乗員の救助を──っ?!なんだ!」
「戦艦《モンタナ》被弾!リー提督負傷!」
報告を聞いて戦艦隊の旗艦である《モンタナ》を見ると、艦前方…第2主砲塔付近に投下された航空爆弾の直撃を受けたらしく、火災を起こしていた。
「リー中将の負傷具合は?」
「報告では重症のようで、デヨ少将が一時的に戦艦隊の指揮を執るとの事です。」
「くそっ……………!」
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水上艦隊が苦戦している頃……
日米英の連合国航空隊は、圧倒的多数の敵機との死闘を繰り広げていた……
── 米軍や英軍そして日本の航空隊も既に20機以上の敵機を撃墜しているが、敵機の数が全く減らない。
戦端を開いてから数時間以上経過し、各国のパイロット達は疲労を蓄積させていた……
そして、補給無しで連戦を続けた事で武装の残弾がゼロになる機体が続出……疲労で判断力が鈍っていた事も重なり、撃墜される機体が一気に増加した…
「くっ……流石に簡単には背後を取らせてはくれんか……」
日本海軍航空隊の1つを指揮する
彼が乗る戦闘機……噴式艦上重戦闘機《
──対する独機は、《雷光》開発の原因である新型
「(性能…パイロットの腕はほぼ互角……──だが…っ!)」
ライバル機である《
──しかし、万全の状態である《ファルケン》のパイロットに対して、一切の休息なしで連戦を続ける加東大尉の方は疲労で本来の技量を発揮しずらい状態で、万全とは言えない。
「圧倒的に不利だが、逃げる事は不可能……………。一瞬でけりをつけるしかない…」
そう決意し操縦桿を握り直した瞬間………
ビィー!
ビィー!
「っ!敵の列機─────!」
警告音がコックピット内に響き、ハッとして周囲を見ようとした瞬間…
ガラスが割れるような音と、ガンッ!という鈍い音がコックピット内に響き渡った。
「っ!……クソ、何発か喰らったかっ…!ぐぅっ!」
機体の姿勢を立て直す為に腕に力を入れた瞬間、激痛が走った。
痛みに耐えつつなんとか姿勢を立て直すと機体を急旋回させて、一旦巴戦からの離脱を測る。
敵機に背後を取られる可能性があるが、片腕を負傷し操縦桿をしっかり握れなくなった以上、まともにやり合う事は出来ない。
そのまま逃げれば無防備な姿を晒す事になる為、機体を左右に不規則に動かしながら離脱を図る…
「くそ…っ……………敵機はっ!?」
敵機が追撃して来るか確認しようとした瞬間、液体が飛び散る様な音と爆音がコックピットに響き渡る……
「なに……が…………!」
機体の前方……機首の機関砲が内蔵されている付近が大きく抉られ破孔からは黒煙と紅い炎が吹き出している。
様々な情報を示す筈の計器類も殆どが画面が真っ暗となり、全く機能していない…
─── そして、腹部からは大量の血が溢れ、飛行服下部を赤く染めつつあった………
「…この怪我じゃ助からない……な…………」
彼は朦朧とする意識の中、動くかどうか分からない無線機で僚機に通信を送る。幸いにも無線機は損傷していない様で、僚機に通信を送る事が出来た
《 ワレ被弾にヨリ戦闘指揮不可能 二番機ハ代わって小隊の指揮ヲ執れ 》
無線を聞いた僚機が周囲に集まるが、加東機は徐々に高度を落としていく……
トドメを刺そうと寄ってくる敵機を僚機2機が追い払う。残りの1機は、加東機に高度を合わせて飛行を続ける…
「(──長! ──すか?! 母艦───します! ───隊長!)」
僚機が無線で必死に呼び掛けて来るが、意識が朦朧とする彼には途切れ途切れにしか声が聞こえない…
彼は最後の力を振り絞って僚機に
《 これまでの貴官らノ協力に感謝ス 武運長橋ヲ祈る 加東 正和 》
と無線を送ると、ヘルメットのバイザーを上げ 僚機に向けて敬礼を行う
────直後、火が燃料に引火し爆発、加東機は機首を大きく下げて海面に向かって墜落していった………
僚機3機は暫しその場に留まっていたが、墜落していく加東機に向けて敬礼すると、編隊を組み戦場へと戻って行った………
──── 3日後…後に《大西洋決戦》と呼ばれる大規模戦闘はドイツ軍の全面撤退で幕を下ろし、連合軍の残存部隊は生存者の救助を行い、海域から撤収した。
【 両軍 損害 】
《連合軍》
沈没 : 戦艦8 、 空母9 、重巡14 、 軽巡11 、駆逐艦41
大破 : 戦艦5 、 空母3 、重巡9 、軽巡2 、駆逐艦8
中破 : 戦艦7 、空母4 、 重巡2 、軽巡8 、駆逐艦21
小破 : 戦艦1 、空母1 、重巡21、軽巡14 、駆逐艦27
航空機損失 : 267機( 帰還後廃棄を含む )
航空機搭乗員戦死 : 193名
艦船乗組員戦死 : 24,912~31,314名
戦死者合計 : 25,105 ~ 31,507名
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《ドイツ第三帝国軍(欧州帝国軍)》
撃沈 : 戦艦6 、巡洋戦艦8 、空母3 、重巡16 、軽巡4 、駆逐艦12 、潜水艦12
大破 : 戦艦4 、巡洋戦艦8 、空母5 、重巡8 、軽巡8 、駆逐艦28 、潜水艦8
中破 : 戦艦2 、巡洋戦艦4 、空母9 、駆逐艦11
小破 : 重巡3 、軽巡8 、駆逐艦17 、潜水艦11
航空機損失 : 438機(陸上機&艦載機双方 / 帰還後廃棄含む)
航空機搭乗員戦死 : 342名
艦船乗組員戦死 : 23,975 ~ 26,921名
戦死者合計 : 24,317 ~ 27,263名
《ユトランド沖海戦》を遥かに上回る 史上最大の海戦は、双方共に多数の航空機や艦船を投入したが、互いに大損害を受け「痛み分け」に終わった。
連合軍は、大西洋の制海権を完全に奪われる事は避けられたものの、
── しかし、欧州帝国側は大戦力を投入したにも関わらず制海権の奪取は出来ず、逆に連合軍の反撃と抵抗で戦力の7割を失う結果となった。連合軍の戦力を大きく削る事は出来たが、自分達も大損害を受け、戦力の回復を優先せざるを得なかった。
──── その後、世界はドイツを中心とした《欧州帝国》側とアメリカ、イギリス、日本を中心とする《連合国》 側に属する2つの陣営に別れ、膠着する事となった。
数日後、オマーンの首都、マスカットで講和会議が開かれたが、会議は双方が互いの主張を譲らず議場は戦場と化したものの、丁々発止の議論と末に、講和は締結された。
────しかし、それは次の戦いに向けての休息の時に過ぎなかった………
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*登場兵器 解説 *
【 ー 噴式艦上重戦闘機 《
全長 : 13.68m
全幅 : 9.65m
全高 : 4.03m
乗員 : 1名
【 ー 武装 ー 】
①20mm機関砲 × 2門or4門
②35mm重機関砲 × 2門(取り外し可)
③
④
⑤
解説
・独空軍の新型戦闘機に対抗する為に開発配備された新型機。独軍の新型機《フォッケウルフ Fw265 ファルケン》とほぼ同等の性能を有する高性能機。後に多数のバリエーション機体が作られた。
・通常は20mm機関砲4門であるが、2門に減らして対重爆用の35mm重機関砲を搭載する事も可能。噴進弾は対艦型は4基、対空型は最大8基を搭載。また、自衛兵装として熱性放射欺瞞弾と電波妨害欺瞞弾を搭載している。
【 ー フォッケウルフ Fw265 《ファルケン》 ー 】
全長 : 16.4m
全幅 : 10.6m
全高 : 5.6m
乗員 : 1名
【 ー 武装 ー 】
①30mm機関砲 × 1門
②20mm機関砲 × 2門
③
④
解説
・独軍の最新鋭噴式戦闘機。日本軍の新鋭機《
若干、両軍の損害を大きくし過ぎた気がします…………
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プロローグ2 女神《テミス》との出会い
中々、内容が纏まらなくて何回も書き直してしまいました。
*6月10日 1部内容を書き直しました *
「一体どうなってるんだ…………俺は───戦死したはずじゃ?」
加東正和大尉は、現在の状況に困惑して声を漏らす……
─── 彼はつい先ほど、大西洋で独戦闘機との空戦中に敵機の銃撃を受けて乗機が被弾。コックピットに被弾した際に重傷を負い、最後は乗機の爆発に巻き込まれて
──しかし目を開けると、彼はは謎の場所に立ちすくんでいた……
「これは夢なのか?」と頬を抓ったりしたが、当たり前の如く、痛みを感じたので夢ではない様だ。格好は飛行服姿だったが、腹部や右腕付近に血が滲んだ跡が残っており、袖をまくってみると右腕に大きな傷跡があり、腹部も同様だった……
「困惑するのは仕方ない事です、加東さん。」
「?!」
何処からともなく、突然女性の声が聞こえてきた……
驚きつつ、声が聞こえた方を向くと、そこには純白の衣装を身にまとった女性がいた。
「…?…?……??」
「色々とご説明しますので、こちらへ来て下さいますか?」
「あっは、はい……………」
言われるがまま、女性に続いて歩いて行くと、白い壁に囲われテーブルと2つの椅子がある空間に着いた。
テーブルの上には、茶菓子と湯気の経つコーヒカップが2つ置かれていた。
「どうぞ。」
「ありがとうございます………」
彼女が先に椅子に座りやや遅れて加東が座ると、彼女は彼にコーヒーカップを差し出し、彼は例を言いつつそれを受け取る。
(ここは何処なんだ………それに彼女は………)
加東は、「此処は一体何なのか?」「対面に座る女性は誰なのか?」と、気になって仕方ない。
受け取ったカップに口をつけずに、キョロキョロと周りを見ている…
「ちゃんとお話しますからご安心を。折角のコーヒーが冷めてしまいます。」
「は、はぁ…」
確かに、周りをひたすら見てるだけで、暖かいコーヒーを一口も飲まずに冷ましてしまうのは、用意してくれた彼女に申し訳ない。
少し落ち着きを取り戻した加東は、カップのコーヒーを口にする……
「美味しい………」
「ふふっ、私の自信作ですからね。」
彼の素朴な感想に彼女は笑みを零す……
しかしその直後、彼女は驚くべき事を口にした
「まぁ
「ッ!げほッ!げほッ!」
「─── 大丈夫ですか?」
「大丈夫です……………何故、見ず知らずの貴方がその事を知ってるんですか?」
涙目のまま、彼は女性に問い掛ける。
彼が所属した艦隊の総司令官……《
同じ海軍の軍人でもその事を知ってる人間は多くない。民間人となればもっと少ない。
目の前の女性がそれを知っている筈がない。
── すると、彼女は予想もしない事を口にする……
「それは
「───────は?」
女性は加東の反応を気にせずに話し続ける。
「私の名前は《テミス》。そして此処は、生と死の狭間‥…‥《選択の間》と呼ばれる空間です。此処ではこの先の行方を選択してもらいます。』
「…………………貴方は一体何を言ってるんだ…?」
彼には目の前の女性が言ってる事を何一つ理解する事が出来なかった。いきなり現れたかと思えば、「自分は女神です」とか「ここは生と死の狭間です」などと言われても理解出来る訳が無い。
「お疑いになるのも仕方がありません。突然、見ず知らずの女に自分は女神だの、ここは生と死の狭間だの言われて直ぐ理解出来る人はごく希です。多くの方は加東さんと全く同じ反応をします。」
「少しでも直ぐ理解する出来る人がいる事に驚く。」
「人それぞれですから。」
「…………それで、これは夢か何かですか?本当の事を説明して欲しいのですが………」
「私は一言嘘は言っていません。」
「……………………。」
「嘘は言っていない」と断言する彼女に対して、彼は怪訝な顔をする…
先程から《女神》や《生と死の狭間》という単語を口にするだけで、それ証明出来る物を見せようともしてこない彼女の事を、彼は疑っていたのだ…
「幾つか証拠となるものをお見せしましょう。──まずはこちらをご覧下さい。」
「っ!これは──!」
テミスが手に持った黒い板の様な物を指で軽く触ると突然、2人目の目の前に液晶画面のような物が出現し、そこにある光景が映し出された。
だが、彼が驚いたのは突然現れた液晶画面ではなく、そこに映し出された
─ 映像は、彼が空戦中に独機の銃撃を受け、被弾する様子だったのだ
彼が僚機と共に独戦闘機隊との交戦を開始する所から、銃撃を受け被弾…最後の力を振り絞って僚機に最後の電文を送った後、機体燃料に引火して機体が爆散するまでが鮮明な映像として画面に映し出されていた。
「何故あの時の戦闘映像が………それにこの撮影角度…一体何処から………────いや、これは………」
軍用機には《
これは、作戦対象地域(戦場、戦場の想定地、予定地…他)や訓練の状況を記録して利用する目的で装備され、
最初、この映像は、僚機の《
「これは……《
《
すると《
ただし、旋回式の機銃等に直接取りつける事が出来れば、その限りでは無い。
爆撃機などの大型機は、自衛用に機体各所に旋回式機銃を備える為、その全てに《
─── だが、あの時その場にいたのは
戦闘機の《
つまり、
「こいつは戦闘機の《
「流石の洞察力ですね………」
「あの時、敵機と僚機の他に敵味方の大型機は居なかった……本当にどうやってこの映像を……?」
問いには答えずに、テミスは彼にこう問いただした…
「────加東さん………貴方は
「っ?!何故その事をっ?!」
彼は、先程よりも激しく動揺する
その訳は、彼女が口にした情報が、同じ軍人でも《紺碧会》に所属する者か、彼と親しかったごく一部の人間しか知らない事だからだ。
「貴方が前世からの転生者で創られた《紺碧会》のメンバーである事……貴方の上官や1部の同僚、艦隊総司令官…大石元帥らが転生者である事も知っています。」
「────── 全てお見通しという訳ですか………」
「納得して貰えたでしょうか?」
「そこまで正確に俺の事を知ってるんだ………あんたが言う事が正しいと思うしかないよ。」
よくよく考えてみれば、死んだはずの自分がこうして他人と喋っている事自体、本来有り得ない事だ。
最初は話を聞きながら「馬鹿馬鹿しい」と思っていたが、転生者である事や前世での最期を彼女が正確に知っていた事から、そのような考えは捨てて、彼女の言う事が本当なのだと思ったのだ。
「ご理解していただきありがとうございます。──それでは、先程申し上げた通り、貴方には此処でこの先の進路を選択してもらいます。」
「この先の進路?」
「はい。幾つかの選択肢があり、
「…………
彼女の《通常であれば》という単語に違和感を覚え、それについて問い掛けると……
「大変申し訳ありませんが、加東さんにはご自身で進路を選択する事は出来ません。」
「何故だ?此処はこの先の進路を選択する場所では無いのか?」
「ええ、その通りです。ですが、加東さんには進路を選択出来ない理由があるのです。」
「選択出来ない理由?」
「はい。理由は2つです。1つ目は《既に1度転生を経験している》です。加東さんは、前世で亡くなり、後世界に転生しています。これは、「自身でその先の進路を選択した」という扱いになるのです。」
「確かにその通りだが、その時は今回の様な出来事を経験していない。」
「無意識のうちに加東さんが選んだのです。例え、選んだ覚えが本人に無くても私の元には《選択した》という記録が残ります。」
「つまり、2度目の選択権は無いから、今度は選択出来ないという事か?」
「通常2度目の選択はありません。ただ、選択権が無いと言う訳ではありません。」
「…………では、もう1つの理由は?」
「続いて2つ目。………外部からの干渉により自身での選択が出来ない……実は、これが1番の要因です。」
「外部からの干渉??」
「滅多に起こる事が無いのですが、外部……私以外の存在から干渉を受け、進路を選択する事が出来ない事があるのです。」
「何故その様な事が?」
「理由は私もハッキリとは分かりません。この様な場合、死者本人ではなく、私が進路を選択する事になります。」
「貴方が決めた進路にしか行けないと?」
「有効な対抗策がありませんので、そうなります。」
「……………………………………拒否権は?」
「残念ですが拒否する事は出来ません。」
「なんてこった…………」
加東はそう言うしかない。目の前のテミスと名乗った女性が選択した進路にしか進む事しか出来ず、それを拒否する事も出来ない…………
──2分ほど沈黙していたが、彼はテミスにこう問い掛けた。
「……………………ひとつ聞いても?」
「何でしょう?」
「私が戦死した後……部下達はどうなったか分かりますか?」
「………その後が気になるのですね?」
「ええ。彼等は今どのような活動を行っているのか……最後にそれを知っておきたいのです。」
「分かりました。加東さんと同じ部隊の人達は──」
テミスは手に持った板状の元を何やら操作して、加東と同じ部隊に所属していた者達の情報を探す……
「──── ありました。……3人全員が無事生還を果たして、味方の空母部隊と合流。その後は、講和が成立すると共に日本本土に帰還。現在は、教官や部隊長として活動しているようです。」
「具体的に誰がどうなったか分かりますか?」
「
「…………成程……………分かりました。ありがとうございます。」
「他に何か質問等はありますか?」
「いいえ、ありません。」
「分かりました。───では、加東さん…………貴方には─────」
テミスが選んだ加東の進路とは一体…?
本文で登場させた3人については、加東本人の解説時に一緒にやります。
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