儚き貴女への悲哀曲 (鴉紋to零)
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プロローグ

あらすじでも書いた通り、鎮魂曲は書こうとすると精神的に辛くなるので、リニューアルして書いていきます。

不定期更新なのはお察しください


例えば、日常を守るために戦った者、既知感を終わらせたかった者、戦いを続けたいと思った者

 

その世には様々な事を成した、または、成そうとした者がいる

 

当然、そんな者達の歌劇には参加せず、人の生を終えたものもいる

 

例えば、そう……このように…………

 

 

 

 

 

 

 

オレンジ色のネオンランプが背を押してくる

 

背から追い掛けてくるのは光だけでなく、同時に寒気もやってくる

 

僕はただ、逃げていた

 

僕はただ、走っていた

 

僕はまた、離れていた

 

背から迫り来る追跡者(アンノウン)

 

抗う術がない訳ではないが、使おうにも人が多すぎた

 

その場で抗えば、家族を巻き込む戦いとなる

 

それは僕の渇望(信条)に反した

 

そう判断した己に躊躇いはなく、家族に一言告げて、思い描く無人の場に駆け出した

 

無論、速度は人のそれではない

 

彼の者達が言う、魔人達に属する速度である

 

取り分け早いわけではないが、一般人の速度ではない

 

それでも追跡者は追い掛けてくる

 

狩人の獲物というのはこのような気分なのだろうか、等と他人事のような感想が脳裏を過る

 

刹那、視界が暗闇に染まった

 

地面に頭を叩きつけられ、思考の中身が全て飛ぶ

 

呻き声を挙げることも出来ず、頭を押さえ付けられる

 

必死に頭を起こそうとするが、上手く体が動かない

 

「ふぅ……よく逃げるな、お前」

 

頭上から聞こえた声は、謙遜と嘲笑を織り交ぜたような不思議な声

 

屈辱的な体制を整えるより早く、右手で相手の足を払う

 

相手が避けると同時に立ち上がり、追跡者の容姿を確認する

 

宵闇の中でもはっきりとわかるほどの銀色の髪、赤い瞳を切れ長の相貌に納め、彼の周りはうっすらと輝いている

 

雰囲気は一般人のそれではない、人を喰らった獣の覇気

 

命の危険を感じ、狙った場所に来たと認識したとき、僕は言葉を紡いだ

 

「形成__…………」

 

続く言葉は掠れ、風に流されて相手には聞こえなかったようだけれど、腰に現れた剣を見て、何をしたのか察したようだ

 

「さて、死合おうか」

 

うっすらとした輝きが目が眩むほどに強くなり、一つの球体のようなものができる

 

僕は腰の剣を抜き、慣れ親しんだ構えを取る

 

雰囲気が高まり、張り積めた糸のように、場が凍る

 

先手は向こうの光の爪

 

右斜めに振られた鉤爪を紙一重で避けて、躊躇いなく斬撃を放つ

 

振りきっている爪の付け根である指を狙い、短い動作で落としにかかる

 

だが、飛び退いて避けられると、僕も地を蹴り間を取った

 

相手の動きが分からない以上、こう動くのが最善手である

 

両者ともににらみ合い、時より斬り合いをしながら時が流れる

 

その戦いは唐突に終わりを迎えた

 

視界を過る質感の異なる白色

 

反射的に腕を伸ばし、手紙と判断するや否や、手で掴み更に後退する

 

流石に捨てるわけにはいかず、後ろに投げようとするが締めが出来ていなかったのか、中身が中に放たれた

 

その時、不思議と内容に目がいってしまった

 

その手紙には、こう、綴られていた

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能ギフトを試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの゙箱庭゙に来られたし』

 

目にした途端、奇妙な事に全身を浮遊感が襲う

 

瞬きをして、一瞬にして変わった世界を傍観する

 

見たことのない色の木々、真下に広がる湖、真後ろから響く滝の音

 

そんな世界を見て、僕は、ただ一つの単語を呟いた

 

()()()()?」

 

その言葉がこの世界への印象なのか、それとも既知感から生まれた言葉なのか、先程の手紙からなのか……

 

答えは永遠に分からないだろう



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一ノ一

すみません。随分と遅れました

それでは、どうぞ


視界が反転する

 

白が黒に、黒が白に

 

思考するだけの知能がほどける

 

次に思考が纏まったときには、閉じた目に光が射していた

 

ゆっくりと確かめるように目を開く

 

落下するところまでは覚えている

 

この世界を見て何かを呟いたこともわかる。が、どのように落下したかがわからない

 

当然ながら、ここが何処かも不明だ

 

だが、わかるのは……三人の同年代とおぼしき少年少女に顔を覗き込まれている事だけだ

 

「お、気が付いたか?」

 

「貴方、頭が地面に埋まったいたけど、大丈夫?」

 

「…………」

 

金髪の少年。というより、青年が心配とも興味とも取れる表情を浮かべて此方を見ている 

 

その隣には黒髪の少女が困惑した表情で覗き込み、更にその横には眉を下げた茶髪の少女が見ていた

 

なるほど、僕が地面に仰向けで倒れていることだけは分かった

 

「はい…………ここは?」

 

ゆっくりと上体を起こしながら、目だけで回りを調べる

 

今まで生きてきた中で一度も見たことのない色や形をした木々が辺りに多く生えており、この滝の近くだけはあまり木が生えていないことだけは理解できた

 

そして、誰かの返答で更に何か情報を得られれば有り難いのだが……

 

「どこぞの大亀の背中じゃないか?」

 

彼は皮肉げに笑みを浮かべる

 

その様子を見るに、誰も状況がわかっていないようだ

 

頭についた泥を落とすために滝に軽く打たれた後に、金髪の少年が話を切り出す

 

「まず間違いないけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前らにも変な手紙が?」

 

軽薄な笑みを浮かべる彼に、黒髪の彼女はあまりよい印象を抱いていないようで両腕を組み、高圧的な態度で返答している

 

「そうだけど、まずは、``オマエ''って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」 

 

久遠飛鳥と名乗った彼女は、今度は茶髪の少女に話を振る

 

「………春日部耀。以下同文」

 

無表情で猫と戯れながら茶髪の少女は春日部耀と名乗った

 

「そう、よろしく春日部さん。それじゃあ、野蛮で凶暴そうな貴方は?」

 

怪訝そうに彼を見ながら、久遠は彼に目を向ける

 

彼はそんな視線すら楽しんでいるようだ

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴そうな逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

冗談めかして話す逆廻。そんな彼に印象が変わったのか、微笑を浮かべながら久遠は対応する

 

「そう。取り扱い説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

冗談に冗談で返す二人は、中々に気のあっているようにも見えた

 

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

軽く笑いあった二人は、その後、二人は此方を向いた。

 

さて、僕にはどんな珍妙な前振りが付くのかと思い、予測する

 

「それで、頭から地面に刺さっていた貴方は?」

 

まあ、安直で予想通りだった

 

天宮 琥珀(あまみや こはく)です。まあ、どうぞよろしく。なのかな」

 

絹色の髪が視界を微かに過るのを感じる程度体を傾けながら、僕は低頭した

 

 

 

閑話休題

 

 

 

互いの事を軽く話している最中、あえて触れていなかった話題に逆廻が触れた

 

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」

 

こうして話し始めて早、数十分。未だ変化のないこの事態に、痺れを切らすのも十分理解できた

 

そして、そんな一言はいとも容易く響くもので

 

「そうね。何の説明もないままでは動きようがないもの」 

 

当然ながら、久遠にも伝播した

 

「………。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

 

と言っても、只のつっこみであったが。ここで、よく分からない団結をして、奇妙なムードにならなかっただけましである

 

「さて、何かアイデアとかあります?無いなら……」

 

視線を茂みの奥へと向ける

 

先程からずっと向けられていた視線、その先である目を直接見据える

 

動物なら逃げるだろう……が、逃げないということは、人である。または、何か用事があり、逃げられないものであろう

 

「___仕方がねえな。こうなったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

と、そんな僕の視線に気付いてか、それとも、元からかは分からないが……

 

「なんだ。貴方も気付いてたの?」

 

そう話す久遠の瞳に、微かな驚きが映る

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだせ?そっちの猫を抱いてる奴も気付いてたんだろ?」

 

僅かに首を縦に振る春日部。

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

さも当然のことのように、否、春日部からすればさも当然なことであるようだ

 

「………………へぇ?面白いな、お前ら」

 

にやついた笑みをこちらに少しだけ浮かべたが、直ぐに某茂みの方に目を向けた。それに合わせるように二人も向く

 

僕はチラリと目を向けたが、流石に威圧的な目をするのは嫌なので軽く手招きをする

 

「や、やだなあ御三人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいまよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じて、ここは一つ穏便に御話を聞いて頂けたら嬉しいでございますヨ?」

 

ホールドアップされたような、万歳の姿勢で茂みから出てくる女性。優れた美貌にも目を引くが、何より気を引いたのは頭の上に乗せているとも、生えているとも取れる耳だった

 

「嫌だね」

 

「断る」

 

「却下」

 

「はい。構いませんよ」

 

聞かないとここが何処かも分かりませんしね。と、一言付け加える

 

上記三名は怒り心頭のようで、三拍子で拒絶していたようだが

 

「あっは、取りつくシマもないですね♪。最後の御方はありがとうございます」

 

丁寧に御辞儀をするその女性に、合わせるように低頭する

 

と、頭を上げた瞬間に、事件は起きていた

 

「えい」

 

「フギャ!」

 

瞬間移動の如く、黒ウサギの耳を鷲掴みにする春日部(加害者)と、その様を呆けて見る、または、観賞している三人(傍観者)の構図が出来上がる

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか、初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとはいったいどういう了見ですか!?」

 

「好奇心の為せる業」

 

「自由にも程があります!」

 

流れるように漫才を披露しながらボケとツッコミをこなす二人

 

そこに、第二、第三の魔の手が迫っているとも知らずに

 

「へえ?このウサ耳って本物なのか?」

 

伸びる腕は兎の左に

 

「………。じゃあ私も」

 

細い(かいな)は兎の右に

 

「ちょ、ちょっと待_______!」

 

悲鳴が上がる直前、黒ウサギは動きを止めた

 

何故か

 

その原因は多分、僕なのだろう

 

「ふみゃぁ……」

 

「猫ですか?」

 

耳と耳の間に手を起き、優しく手で頭を撫でている

 

行っていることはそれだけなのだが、現れた結果は想像を容易く越えていった

 

顔の筋肉が全て脱力したらこういう風になるのだろうな、と連想させるほど惚けた表情

 

有り体に言う、うら若き乙女がしてはならない顔をしていた

 

耳を引き千切られそうな痛みを快感が帳消しにしているというもう笑うしかない光景である

 

そんな奇妙な光景は暫く続いた

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

「それではいいですか、御四名様。定例文で言いますよ?さあ、言います!ようこそ、゙箱庭の世界゙へ!我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

幸福に満ちた顔にとても似合わないほど耳が腫れている黒ウサギが森の木陰で叫ぶ

 

先程の湖より歩いて数分行ったところに、この場所はあった

 

僕を含めた四人の視線を浴びながら、黒ウサギは話を進めていく

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません!

その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。

『ギフトゲーム』はその゙恩恵゙を用いて競いあう為のゲーム。

そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

ここまでを聞いての僕の本音は胡散臭いだった。

 

どんな物事だろうと無料ではあるまい。となると、そんなサービス一つのために僕達を呼び出したのは、些か胡散臭すぎた

 

脳裏に浮かぶ様々な可能性を保持したまま、続きを聞いていく

 

「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言ゔ我々゙とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「yes!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある゙コミュニティ゙に属して頂きます♪」

 

久遠と黒ウサギの対話を聞きながら、思考を深めていく

 

何故、呼び出す理由があったのか

 

今のところ、その理由の核はコミュニティに関係があるのだろうと判断できた

 

「嫌だね」

 

ずっこけたため再度深く思考していく

 

「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの゙主催者゙が提示した商品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」

 

怒ったり、笑ったりと、器用なものである

 

数分もあれば喜怒哀楽の全てを見られるのではないだろうか

 

「……………゙主催者゙って誰?」

 

今度は春日部が表情を一切変えることなく問う

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開発するグループもございます。

特徴として、前者は自由参加が多いですが゙主催者゙が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。

しかし、見送りは大きいです。゙主催者゙次第ですが、新たな恩恵を手にすることも夢ではありません。

後者は参加の為にチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべで主催者゙のコミュニティに寄贈されるシステムです」

 

「後者は結構俗物ね……………チップには何を?」

 

黒ウサギに返答する久遠はとても苦々しい顔をしていた

 

聞き方にもよるが、後者は博打にも聞こえてくるだろう

 

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間……そしてギフト掛け合うことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑むことも可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然__ご自身の才能も失われるのであしからず」

 

この発言を聞いたとき、僕は少しだけ眉が上がったのを自覚した

 

それも仕方のないことと思ってほしい

 

何せ、この千年近くの連続してきた人生が終わる可能性が見えたのだ

 

進んで死にたい訳ではないが、逃げ道があることを知ると、少しだけ、楽になった

 

「そう。なら最後に一つだけ質問させてもらっていいかしら?」

 

「どうぞどうぞ♪」

 

他三人は微塵も失うことを恐れていないのか、失うことを知らないのかは分からないが、淡々と話を進めていた

 

「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

チラシを渡す売り子のように流れるように宣伝する辺り、多くの人と話すのに慣れているのは理解できた

 

話し方も、抑揚の付け方も、どちらかと言うと大衆に話しかけるのに向いている

 

となると、考えられるのは司会者等だが、その答えはそのうち分かるだろう

 

「………つまり『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解二割間違いです。

我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。

ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰します

__が、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全くの逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だと言うことですね」

 

自慢するような、己の国を誇るような、そんな自信満々の言い方

 

国ではないはずなので、少し的外れにはなるが、愛国心という言葉が脳裏をよぎった

 

「そう。中々野蛮ね」

 

「ごもっとも。しかじ主催者゙は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

 

中々にキツい言い方だが、真実であるから、そう聞こえるのだろう

 

「さて、皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させて頂きたいのですが…………よろしいですか?」

 

「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」

 

閉じていた目を開いて、逆廻は座っていた大岩を降りる

 

その目には子供のような好奇心が見え隠れしていた

 

「………………どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」

 

訝しむ目で逆廻を見る黒ウサギ

 

多分、先程の説明がざっくりとだがここのルールの全てなのだろう。更に、よく聞かれると思われていた質問も全て上がった、ならば、これ以上はないという考えだったのだろう

 

だが、違った

 

()()()()()()()()()()()

 

確かに、ゲームと言えばこの事を聞かねばならないことを僕も忘れていた

 

つまらないゲーム等、やらない方がましだ

 

「腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのはただ一つ」

 

逆廻は一拍開けて、黒ウサギの目を真正面から見る

 

両者、その目を微塵も逸らさずに逆廻は告げた

 

「この世界は…………面白いか?」

 

逆廻の目はいたって真剣、さすれば、黒ウサギも真剣に答えねばならぬ

 

その問いに、彼女は自信をもって解を告げた

 

「ーーyes。『ギフトゲーム』は人を超えたもの達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 

特大の笑顔を付けながら告げた黒ウサギを傍目に、僕は説明を聞きながら考え事をしていた

 

『あの時此方を襲ってきたのは、いったい何者だったのか』

 

『家族に被害はないか』

 

そして

 

『己は一体何者なのか』

 

幾つかの質問を頭の中に残しながら、今後の流れに身を任せていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ。今さっきそっちに行った」

 

スマートフォンで通話しながら、部下に連絡を入れる

 

俺の仕事は先程終わった。後は箱庭(あっち)に帰るだけだ

 

「お土産?ふざけんな、自分で買いに来い」

 

まったく、この馬鹿共は……

 

それでも、頼りになるのが憎たらしい

 

「それじゃあ、指示通りにな、ルクス」

 

狼の遠吠えにも似た、威勢のいい返事が耳に響く

 

その一言を聞いた後、俺は通話を切った

 

___(ノーネーム)は、俺達の帰る場所(獲物)だ」

 

胸に決めた決意を小さく言葉にして、いつものように白髪を棚引かせながら俺は暗闇を進んでいった

 

後には、腹の足しになったチンピラの武器が落ちていた



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