波導の勇者がゆゆゆいにINしました。 (千点数)
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番外編:絶望的な西暦の時代に色んなタイプを突っ込んでみたお話。
諏訪にドラゴンタイプを突っ込んだ。


 本編のルカリオの奴とは全く関係ないものです。


 別の世界線の出来事だと思って、頭を空っぽにして読んでくれると有り難いです。


 俺は転生者だ。

 何言ってんだコイツみたいな事を思う人間がいるかもしれないが、事実なのでしょうがない。

 

 俺は前世の記憶を持ったまま人生をやり直したのだ。

 ・・・・・・前世と同じ、十三歳の状態で転生した為に、家無し、戸籍無しの無一文だが。

 

 そして、俺はある力が使える。

 

 “ポケモンのドラゴンタイプの全ての技と体“、そして、“特性:プレッシャー(伝ポケクラス)“。

 

 これら二つは、転生するときに、何かよくわからない光り輝く存在に会って、それで貰ったものである。

 本当にチートである。ドラゴンタイプの体になったお陰か、かなり体が頑丈になった。それに、ドラゴンタイプの技には、威力や効果が馬鹿みたいに強力なものがゴロゴロある。

 

 そして、今現在、その能力を貰って本当に良かったと実感している。

 転生した時代はどう見たって西暦の、恐らく二十一世紀の世の中なのだが・・・・・・

 

 町並みがボロボロでどう見ても世紀末ですどうもありがとうございます!

 

 しかも、転生してから人間に会ってない。

 会ったのは、野良犬と野良猫、後は真っ白くて細長いグミに口をはっつけた感じの化け物や、どう見たって無機物にしか見えない、真っ白グミ化け物によく似た感じの化け物、天秤や蠍、蟹によく似た化け物にも会い、そしてそれら全てに襲われた。

 

 取り合えず何時も“りゅうのまい“ガン積みからの“ドラゴンクロー“で一掃しているが、殲滅しても次の日には何事も無かったかのようにワラワラと出てくる。

 Gもビックリの繁殖能力だ。

 

 *

 

 人間に会うという目的で、転生した初日に決めた目標を抱き、旅を始めて早九十五日。

 町から離れた山を苦労して超えた日。初めて、この世界で人間に会った。

 “農業王“と書かれたTシャツを着たファッションセンス皆無の、俺と同じくらいの歳の女の子が畑を耕しているのを見て、思わず泣きながら抱き着いてしまった。

 

 女の子は困惑して、わたわたしていたが、頭を撫でて俺を慰めてくれた。

 その後、俺は正気に戻り、ジャンピング土☆下☆座をかました後、女の子に何があったのかを聞かれ、転生と俺の体に宿る能力の事は伏せて、一割フェイクを交えつつ、九十五日かけてここまで来た事を話すと、女の子は俺を抱きしめつつ泣き、今度は俺が女の子を慰める事となった。

 

 まあ、俺の今の格好ボロボロに擦り切れたジーパンにシャツ、その上にところどころ破けたパーカーを羽織り、足は素足(裸足でも平気ってドラゴンタイプの体はチートだと思った)で、尚且つ俺は平均身長よりも小さくて痩せ型で、ところどころ泥とかで汚れていたから、より俺の話の悲壮感(面白おかしく話したつもり)を際立たせてしまったのだろう。

 

 俺は大丈夫だからと、元気だからと、今こうして貴女と会って確かに存在しているというニュアンスを含んだ少々痛い台詞を吐きつつ、慰める事十分以上。

 ようやく泣き止んだ女の子は、俺の服を涙で濡らした事を謝罪した後俺に自己紹介をした。

 

 白鳥歌野というらしい。

 ここで、化け物から人を守る勇者をしているそうだ。

 将来の夢は農業王らしい。・・・・・・英雄王と何か被るな・・・・・・。

 

 歌野が、今日は俺が生きていた事を祝ってくれるとか何とかで、蕎麦パーティーだとか言った言った矢先。

 

 俺を襲ってくる化け物が目の前の山の向こう側から姿を現した。

 しかも、数が多い。何時も俺を襲ってくる数は数百単位だが(これでも十分多い)、あれはそんなチャチな数じゃあない。

 軽く千・・・・・・いや、万は超えている。もしかしたら億を超えているかもしれない。

 歌野は、ちょっと来てと言い、俺を担ぎ近くの神社へと入ると、その奥の部屋に俺を押し入れ、ここから出るなと言い、問答無用で扉を閉め、外側から鍵を閉めた。

 

 余りにも見事に流れるように起きた出来事に、一瞬頭がついてこなかったが、

 

 「歌野が危険なんじゃね?」

 

 そう思い、俺は“りゅうのまい“をいつものようにガン積みすると、扉を強引に殴り飛ばし、外に出た。

 

 地獄だった。

 

 空も、陸も、全てあの化け物に埋もれ、地獄以外の何物でもなかった。

 そして、その化け物達は、鞭を武器に孤立無援の状態で戦っている、なんか黄色い華やかな衣装を纏った歌野を集団リンチしていた。

 歌野はもう満身創痍で、立っているのもやっとといった感じだった。

 

 すかさず“りゅうのまい“を更に積みながら、歌野に向かって駆ける。

 だんだん素早さが上がり、化け物を蹴散らしながら進み、そして歌野に襲い掛かろうとした化け物を、

 

 「邪魔だ」

 

 “ドラゴンクロー“で切り裂いた。

 驚いて呆然として俺を見つめている歌野に向け、「その服、良く似合ってるじゃねぇの」と意味も無く褒めた後、俺は歌野が巻き込まれないように腕の中に歌野を抱き抱え・・・・・・・・・・・・

   

 ・・・・・・・・・・・・全方位にいる化け物共に向けて、全力で“ときのほうこう“をブッパした。

 

 この日、時間が歪みに歪んで、日が一時間長くなったという。

 

 *

 

 化け物共を時間ごとぶっ飛ばしてから数分後。

 立つのもやっとな歌野をお姫様抱っこで抱え、人里にあるという治療施設へと運んでいた。

 歌野は満身創痍なのに、キッチリと道案内をしてくれている。いい子やでぇ・・・・・・。

 

 道中、俺も勇者なのかと聞かれ、そう見えるか?と逆に言ってやった。

 「少なくとも私には、勇者に見えた」のだそうだ。

 

 そして、何故見ず知らずの自分を助けたのか、と聞かれ、

 

 「何、お前さんは特別な人(自分がこの世界で初めて会った人という意味で)だからな」

 

 というと、顔を“ぼしゅっ“と真っ赤に染め、「い、いきなり何・・・・・・もう・・・・・・」と、しおらしくなってしまった。

 何か変な事でも言ったのか?俺。・・・・・・言ったな。言ってしまっているな。さっきの言葉、別の意味でも捉える事が出来るじゃねーか何言っちゃってくれてんですか俺の口はぁー!

 言っちゃった事は仕方ないな・・・・・・畜生(泣)。

 

 お互い道中とてもぎこちなく、気まずい雰囲気で、遠くに見える夕日がそんな俺達を嘲笑っている感じがした。




 *この番外編主人公は十三歳です。中学生である事を理解しつつもう一度読んで戴くと、主人公の可笑しさが解ると思います。

 この番外編主人公の設定を今書いてます。

 うたのんに強固なフラグが立った模様。


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諏訪地域の巫女はうたのんが好き。

 番外編は、このドラゴン主人公視点で進めます。


 歌野を治療施設に預けて、廊下にあるソファーでぐでーっとしていたら、なんかとってもオドオドした娘さんが俺の近くにやってきた。

 

 「そ、その、この土地とうたのんを助けてくれてありがとうございます。

 ・・・・・・あ、あの!」

 「はいはい?」

 「あ、貴方がその・・・・・・“大いなる龍“さんですか!?」

 

 ・・・・・・へぁ?

 

 「何その中二心くすぐる超絶ステキネーミング。・・・・・・んでさ、何故あんたがそんな事を俺に聞くのかなんかめっちゃ気になるんだけど」

 「え!?えと、・・・・・・それは・・・・・・ですね・・・・・・その、神託が、ありまして」

 「ちょっとストップ。ゴメンね?・・・・・・よし一旦落ち着こう俺」

 

 さあ、シンキングタイムだ。彼女は今、“神託“・・・・・・そう言った。

 あんな化け物がいる時点で、この世界が普通の地球ではない事も、ポケモンの世界でもない事も流石に解っていた。

 ・・・・・・だが、神様が出てくるとは思わなかったなぁ・・・・・・。しかも恐らくモノホン。こんな気の弱そうで純粋な娘さんが嘘をついているとも、中二病を患っているも思えない。

 え?転生するときに会っただろって?バッカあんなチャラい性格した神様がいてたまるかよ。

 多分ありゃあ神様じゃあない別の存在だ。なんか異様な雰囲気の光ってる人のカタチした何かだ。

 

 「よし、悪かった話を遮って。で?その神託って奴がどうしたって?」

 「ええと、これから更に戦いが激化するから、神々をも殺せる者を異なる世界から複数人派遣する、という内容でして・・・・・・」

 「待ってもう一回ストップ」

 

 え?マジか。さっきの話が本当だとすると、俺が会ったのはマジモンの神様って事になる。・・・・・・神様ってあんなチャラ男みたいな性格だったのん・・・・・・?

 そして、更に神様は、俺と同じ存在をこの世界に複数呼び出して、恐らく、神様若しくはそれに準ずる何かと戦わせようとしている・・・・・・と。

 何その無理ゲー。・・・・・・いや、周囲の空間ごと存在と神格を“あくうせつだん“や“ときのほうこう“で時空間若しくは亜空間の彼方にぶっ飛ばせばワンチャン?

 

 「ゴメン、何回も止めちゃって。ちょっと衝撃的な事が俺の中で起こったもんで。それで、続きをお願いしますはい」

 「は、はい。わかりました。

 そして、別の地域の神様とも協力して、四人、この世界に異なる世界の人を呼んだそうです。

 神託だと、北方の地には“凍える世界“を宿した者、四国には神さえも切り裂く“聖なる剣“の担い手、南西の海に、全てを焼く“青い炎“を操る魔王、そして、この土地の近くには、“流星群“を降らせる、大いなる龍を呼び出す、と」

 「なるほど。大体察した」

 

 確証はないが、恐らく全員俺のように問答無用でポケモンのタイプと技、特性を貰い・・・・・・もとい、押し付けられ、転生した人達だろう。

 何故そう思ったか?

 まず俺。“りゅうせいぐん“を降らせる事が出来ます。そして、ドラゴンタイプ。ここまでは良いな?

 

 そこから考えていくと、“こごえるせかい“から考えるに、氷タイプの力を持った人。

 “せいなるつるぎ“から、格闘タイプ。

 “あおいほのお“から、炎タイプ。

 

 カッコイイ二つ名の中に、ポケモンの技の名前が入っているのだ。 

 タイプは、その技自身のタイプと同じであろうと考えた。

 いや、本当に、確証があるって訳じゃあないけどね?必ずそうだ、とは俺自身も思ってない。あくまでも予想だ。

 “凍える世界“の人が、本当は固有結界みたいなものを持っているのかもしれないし、“聖なる剣“がエクスカリバーや草薙の剣なのかもしれないし、“青い炎“を操れる、モノホンの魔王様が南西の海に呼び出されたのかもしれない。

 

 でも、もしも俺の予想した事が本当だったとしたら、マジで南西の海に呼び出された炎タイプの人に合掌だわ。

 

 *

 

 「うたのん!」

 「みーちゃーん!」

 

 ぎゅー。

 

 ・・・・・・ここ室内なんだけどなぁ・・・・・・本当に、なぜだろうか。百合の花が咲き乱れているのが見える。

 ここは治療施設の一室。そこに今俺と、巫女さん・・・・・・藤森水都、そして、諏訪の勇者である白鳥歌野の三人がいる。

 水都と歌野の二人、実は出来てるんじゃ・・・・・・うん、実に良い。

 男に百合が嫌いな奴はいない。うん。

 

 完全に蚊帳の外だと思っていたら、歌野が俺に話を振ってきた。

 

 「いやぁ本当に助かったよ。あ~、四国にあんな通信入れちゃったからなぁ・・・・・・ちょっと格好悪いけど、生きてる分もうけ物だね!

 あ・・・・・・あと勇者の装束が残念な事になっちゃったな」

 「元気そうで何より。で、勇者家業はどうするんだ?その装束、ズタボロだけど」

 

 壁に掛かっているハンガーには、局部以外ズタボロで、もはや布切れとしか表現のしようのない黄色の勇者装束があった。

 

 「あ~考えてないなぁ。神様がこう、パパッと直してくれると良いんだけど・・・・・・直るのかな?あれ」

 「まあ、直るまで俺が諏訪地域は守りますわ」

 「「え?」」

 「ん?何か問題でも?」

 

 二人共、驚いたような顔をしている。

 いや、何か変な事を言ったっけ?今回は・・・・・・言ってないな!うん。

 

 「そ、その大丈夫なんですか?十分強いのは解っ「ねぇ・・・・・・」うたのん?」

 「どうかしたか?」

 

 水都がワタワタと言っているのに割り込むようにして、低い声で歌野が俺に言う。

 

 「私の勇者装束が直ったら、君はどうするの?」

 「え?そりゃあ・・・・・・」

 「まさか、ここから出て行く、なんて言わないよね?」

 

 その言葉を言った歌野は、それはもう綺麗な笑顔だった。

 ・・・・・・目に光が一切ないが。

 

 「・・・・・・・バッカお前あの化け物の大群に一人で突っ込むようなアホタレを一人に出来るか。

 ・・・・・・まあ、勇者装束が直ってもずっと一緒に居てやるさ」

 

 なぜだろうか。少し寒気が・・・・・・

 引き攣った笑顔で俺がそう言うと、二人は別々の反応をした。

 

 歌野は呆気に取られたような顔をして、顔を真っ赤にし、「あわわ・・・・・・それって・・・・・・」と、なんかブツブツ言い始め、一方水都はと言うと、歌野の反応を見た瞬間に俯いて、

 

 「・・・・・・うたのんが・・・・・・取られる・・・・・・渡さない・・・・・・!」

 

 なんかこちらもぼそぼそ言っていた。

 ・・・・・・何この空間。

 

 というか、さっき、俺また痛い台詞吐いちゃってるな。

 ・・・・・・唐突に毛布に包まって布団の上でゴロゴロ悶えて枕をボスボスしたい気分になった。




 もしも番外編主人公の思っていることが正しければ・・・・・・

 天の神涙目ですね。


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南西の海では。

 ドラゴン主人公、いきなり一話分休み。


 [九十五日前、沖縄本島北三キロ洋上]

 

 「ふっざけんな、ちっくしょぉー!」

 

 現在、海で俺は大声を上げて、俺を転生させたまばゆく光る何かに対し恨み言を吐いた。

 

 「次会ったら“あおいほのお“で丸焼きにしてやるあの魚ヤロー」

 

 海神を名乗る糞野郎に、ポケモンの炎タイプの技全てと炎タイプの体、そして特性の“マグマブースター“を貰って・・・・・・いや、半ば押し付けられて転生“させられた“どうも俺です。

 何か誰かを助けて欲しいとか言ってたけど、あんなガサツな神の知り合いだ、どうせろくでもねぇ奴に決まってる。

 

 ・・・・・・つかやばくね?俺、今炎タイプ。そして、俺は、今海に浸かってる。

 めっちゃ綺麗で、はしゃいで泳いだりしたいけど、炎タイプの体でそんな事したら大変なんじゃ・・・・・・

 

 急いで向こうに見える砂浜に上がろう!上陸作戦を可及的速やかに決行だ!

 

 *

 

 「本当にあの魚ヤローどうしてやろうか・・・・・・“フレアドライブ“でぶっ飛ばすか・・・・・・?」

 

 俺の周りに“おにび“を漂わせ、服を乾かす。ちっくしょう結構このパーカー気に入ってたのに。

 濡れた体がとても冷える。このまま放って置いたら風邪引いてたな。

 

 服を乾かしつつ、ここが何処なのかを考える。こんな綺麗な海なんだ。海神が日本の領域に転生させるとか言ってたから、ここが日本の海の名所だということが解る。

 だとすると、おのずと選択肢は絞られる。多分沖縄辺りだろう。

 

 さて、ここが何処なのか当たりがついたところで、どうするかを考えよう。

 ・・・・・・水面を何となしに見やる。

 綺麗な海の水中に、何か無機物みたいな感じの魚みたいな形した何かが・・・・・・へぁ?

 

 ざっぱぁーん。

 

 目の前に、水飛沫を上げつつ、無機物な魚の化け物が表れた。

 クジラ並にデカい。

 

 「でっけー。ってそうじゃねぇ!うわぁこっち襲ってくるぅー!待て待てあぶねえからぁ!“はじけるほのお“ぉぉぉ!」

 

 俺の手の平から放たれた数個の炎のつぶてが、魚の化け物の目みたいな部分に当たった瞬間、弾けて散った。焼け跡が付いたくらいで全然効いてない。

 

 「ですよね!明らかに水タイプっぽいもんなお前!

 ・・・・・・っつー事で蒸発しやがれ。“れんごく“」

 

 いくら何でもここはポケモン世界とは違う現実。ポケモン世界みたいにこの煉獄を軽減する事が出来るならやってみやがれーーーーー

 

 全てを蒸発させる、太陽のコロナにも等しい焔が化け物を襲った。

 

 *

 

 どうやら、あのデカい魚の化け物と俺の戦いの音に釣られたらしい。

 真っ白いグミみたいな奴が俺を襲ってきた。

 

 「数が多い!?めんどくせぇー!」

 

 海の上にでも立てたら苦労しないが、俺は生憎炎タイプ。そんな技はございません。

 “ほのおのパンチ“と“ブレイズキック“で蹴散らしつつ、悪態をつく。

 

 「でえーい畜生、全然数が減りやしない。全く、近くに森が無かったら“かえんほうしゃ“とかの大火力の特殊技で一掃出来るのによぉ」

 

 ブツブツ言いながら、炎タイプの物理技で蹴散らしていく。

 流石にこの自然豊かな森を燃やしたくない。

 

 あらかた片付いた時。背後でめちゃくちゃデカい爆発音がした。

 目の前化け物を“ブレイズキック“で纏めて吹き飛ばすと、後ろを見た。

 

 「なぁにあれぇ」

 

 水飛沫を上げながら飛び出したあれ、どう見たってクジラ(の化け物)だよな。

 ホエルオー以上にデカいぞあれ。反対側からも見えるってどんだけデカいんだよ。しかもそれが三匹。大漁だな。

 

 クッソどうでも良い事を考えつつ、ぽけーっとして見ていた俺だが、あるものを見て、咄嗟に走った。

 

 女の子が空に打ち上げられている!親方!蒼空から女の子が!

 

 ・・・・・・あの高さから落ちるのは流石に危険だ!

 

 「空を飛べないって不便だなチクショー、届けぇー!」

 

 転生によってかなり、いや、絶大に上がった身体能力を存分に使い、女の子をキャッチする。

 背が高い、褐色の肌の女の子だ。白い衣装を着て、手には・・・・・・ヌンチャク!?可愛い顔をしてかなり物騒なものを持っていらっしゃる。

 

 あのクジラみたいなヤロー、どうやらこの女の子を付け狙っているらしい。ストーカーかよ。

 女の子が目を開け、俺を視界に入れ、次にクジラを見る。

 

 ・・・・・・クジラを見る目が揺れ、少々腕が震えている。

 全く、こんなシチュエーションを、俺は、俺は・・・・・・

 

 ・・・・・・待っていたんだぁー!

 

 「おい、お嬢さん」

 

 腕の中にいる女の子が、こちらを向く。

 

 ーーーーー安心しろ。俺がいる。

 

 (っしゃぁー!生きている内に言ってみたい台詞第一位言えたぁ!)

 

 この日の俺は、世界一のどや顔をしていたと思う。

 

 *

 

 とりあえずクジラみたいなヤロー(別名:褐色肌の女の子を付け狙うストーカー)を三匹共平等に散々ボコボコにした後、聖なる炎(誤字にあらず)で蒸発(こちらも誤字にry)させた後の事。

 

 おい、何故こうなった。

 

 今現在起きているのは、

 

 助けた(?)女の子・・・・・・古波蔵棗に、口移しでソーキそばを食べさせられてます。

 ・・・・・・うん、美味しいんだろうけど味とかぜんっぜん解らん。

 

 「美味しいか?」

 「味が衝撃的過ぎてわかんなかった」

 

 え、いや、マジで何でこうなった!?

 人生で一番言ってみたい台詞を吐き、達成感に浸った後、クジラをボコって、昼飯奢ってくれる言うからホイホイ着いて行っただけなんだが・・・・・・本当に、何処でこんなフラグが立った!?もう訳ワカメ。

 

 「味がわからなかったなら・・・・・・もう一度食べさせてやろう」

 

 うん、本当にどうしてこうなったんだろうね(脳内オーバーヒート)!




 人生の墓場に突っ込んでいくスタイル。


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空間を司る龍

 番外編主人公、伝説に会う。


 現在、俺はある存在と相対している。

 その龍は、それ程大きくはないが、それでも、圧倒的なプレッシャーと、存在感を放っている。

 

 後ろにいる歌野は、汗を垂らしながら、動けずにいるようだ。

 

 それもそうだろう。目の前にいるのは、それ程までの存在なのだから。

 

 くうかんポケモン、パルキア。

 

 アルセウスの分身の内の一体で、空間を司る神とも言われている、伝説のポケモンの内の一体だ。

 

 *

 

 数時間前。

 

 「勇者装束直ったという事で、諏訪勇者ふっかーつ!」

 「わぁ・・・・・・!すっごく綺麗」

 「前に一回見た時よりも随分と華やかになってんな」

 

 歌野が、直った勇者装束を着て、クルリと一周その場で回ってみせる。

 水都は、そんな歌野を写真に収めている。

 

 黄色なのは変わらないが、花や、花びらのような意匠がところどころにあしらわれており、とても綺麗だ。

 なんでも、防御力が絶大にアップした、防御特化の装束らしい。

 武器の鞭も、細部が異なっているらしく、こちらは攻撃力がかなり高くなったそうだ。

 

 俺がこの諏訪に来て百五十日。二ヶ月弱、俺がこの地を守り続けたお陰で勇者の装束を直すだけでなく、アップグレードさせる事が出来たという事らしい。

 まあ、タダで飯食わせて貰っているし、ここを守るくらいしないと割に合わない。

 

 閑話休題。

 

 という事で、次からは歌野が俺と戦線に立つ。

 夫婦の共同作業だね!と、歌野ははしゃいでいたが、おい。俺はお前と結婚式を上げた覚えも無ければ付き合った覚えもないぞ。

 

 というか、水都が薄暗い気を放ってるから。

 おい、水都の事も構ってやれ。

 

 この後の展開の結論を言おう。

 水都に刺されそうになった。

 

 全く、“りゅうのはどう“を包丁で真っ二つに切れる人間とか初めて見た。

 

 *

 

 水都を歌野と二人で落ち着かせ、水都の部屋のベッドまで運んで寝かせた後。

 あの真っ白グミ化け物がワラワラと諏訪を襲ってきた。

 歌野が、新しい装束のお試しが出来て良いと、俺と共に諏訪を守る結界の側まで行く。

 

 うーん、何時も千とか普通にいるけど、今回はとりわけ数が多いな。三千くらいか?

 

 「なあ歌野、一人千五百だ。いけるか?」

 「ご褒美くれたら全部なぎ払うくらい余裕」

 「じゃあ、頑張ったら何でもしてやる」

 

 歌野は、一瞬にして俺の隣から消え、気がついた時には化け物の群れの中でばっさばっさと化け物をなぎ払っていた。

 

 「ハッスルしすぎだろ・・・・・・」

 

 さて、歌野に負けないように俺も突貫するか。

 “りゅうのまい“を高速で積み、“ドラゴンクロー“を展開。一気に化け物の群れに上がった素早さを駆使して突貫した。

 “ドラゴンクロー“を展開した両腕を振り回し、化け物を細切れにしていく。

 

 時々、丸い円形の盾のような奴が現れるが、“ドラゴンダイブ“で突撃したら他の奴を巻き込みつつ消し飛んだ。

 

 キリがないな。

 倒しても倒しても、どんどん結界から化け物が溢れ出してくる。

 

 アホみたいにデカい奴もワラワラよってたかって俺達二人を攻撃してくる。

 受けに回ってしまった。押し切るか。

 

 そう思い、火力の高い技を使おうとした瞬間、

 

 俺の直感が、ここは危険だと警笛を鳴らした。

 ドラゴンタイプになってから、妙に鋭くなった直感は、必ずと言っていい程良く当たる。

 

 偶然近くにいた歌野の腕を掴み、最大速力でその場から離れた。歌野が何か言っているが、気にする暇はない。

 

 俺達が化け物の群れから抜け出した瞬間。

 

 俺達の背後を、紫色の光る刃が化け物を大量に巻き込みつつ上空から降り注いだ。

 背筋が凍りそうになった。

 元凶を確認するために、空を確認する。

 

 ・・・・・・空が、ズタズタに切り裂かれている。

 何を言っているかわからないと思うが、これ以上の表現のしようがない。

 

 空が無数の切り傷で無残にボロボロになって、空間の間のような、地味に光っている場所が見えている。

 

 そしてそこから、一つの圧倒的な存在が俺達の目の前に降り立ち、目の前の化け物を“りゅうのはどう“でなぎ払った。

 

 その存在は、そこに存在するだけで、常人であれば泡を食って卒倒するかもしれないようなプレッシャーを辺りにばらまきながら、俺達の方を見た。

 

 「空間を切り裂いて出て来るとか本当にチートだな。俺も出来るけどさ・・・・・・なあ、パルキア。この世界に一体何の用だ?」

 

 パールやプラチナに出て来る伝説のポケモン、パルキアが、空間を切り裂いてこの地に降臨した。

 

 *

 

 パルキアは、俺達の方をじっと見て、観察している。

 俺も、生で見れたパルキアに興奮しつつ、しっかりとその目に存在を焼き付けていた。

 創作でしか出会えないような存在が今目の前にいるんだ。興奮しない方がおかしい。

 

 歌野は、俺の背中にヒシッと抱き着いて離れない。

 おい、俺の方が身長低いから隠れられてないぞ。頭さえも隠れてないぞ。

 

 パルキアは、俺達から、結界からまだわんさか湧いて出て来る化け物を見ると、腕を後方に振り上げ、肩の部分にある、真珠に似た宝玉に紫色のエネルギーを溜めはじめた。

 

 やがてそれはパルキアの腕全体を多い、パルキアは、それを勢い良く、化け物共がわんさか出て来ている方向へ、空間を引き裂きながら進む刃を飛ばした。

 

 “あくうせつだん“。

 

 パルキアの専用技で、相手を空間ごと切り裂くという凶悪な効果の特殊技だ。

 ふむ、まだ安心は出来ないが、どうやら今のところ、パルキアはあの化け物の敵らしい。

 

 敵の敵は味方。加勢しよう。

 いくらパルキアとはいえ、四桁の数の化け物を一体で相手取るのは難しいだろう。

 

 「おい歌野。何時まで隠れてる。あのドラゴンは恐らく、きっと味方だ。

 加勢するぞ。おら、オドオドすんな。何時までもあんなプレッシャーにビビってんじゃねぇよ」

 

 歌野を引きはがし、背中をバシッと叩いて活を入れると、俺は“ドラゴンクロー“を展開して、化け物の群れにさっきと同じように突貫した。

 

 「スクラップの時間だぜ!木っ端共がぁーーー!」

 

 この日、平行世界規模で一部の空間が切り裂かれた。




 パルキアの“あくうせつだん“に余裕で堪えるフェアリータイプってやっぱり可笑しいと思います。
 空間切り裂くような一撃が何故効かないのでしょうか・・・・・・

 不思議ですね。


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超短編“八十日前の四国では“

 メッチャ短いです。
 千文字ちょいくらいです。


 本日の空手の練習も終わり、一息ついた時だった。

 俺は、問答無用で神々の手により勝手に殺されて、ポケモンの格闘タイプの体と格闘タイプの技全て、そして“特性:かたやぶり“を押し付けられ、“ある存在を助けて欲しい“と、意味不明な事を説明され、あれよあれよと、前の世界と同じようで違う世界に無理矢理転生させられた。

 

 「あんの大木・・・・・・次会ったらへし折ってやる」

 

 俺を転生させた光る大木のカタチをした神々の集合体に文句をつけつつ、俺は、前の世界とは“ちょっと違う“日本を見る。

 

 崩れ落ちた看板、倒壊したビル、蔦が繁茂した住宅。

 ところどころ歩いてみて、人間が全くおらず、この世界は何かの手により壊滅状態にあるのでは、と推測した。

 

 こんな様子じゃあ助けるどころの騒ぎじゃあねぇぞ・・・・・・と、ブツブツ言っていたら、爆発音が俺の今いる場所より少し離れた場所から発生した。

 土煙を、離れているところにいる俺もモロに被り、一体何処のドイツが馬鹿やらかしているのか、と、爆風で乱れた空手の胴着を直しつつ、爆発音のしたほうを見ると、

 

 変わった格好をした、刀を持った女の子と素手の女の子の二人が、真っ白い化け物やその他色んな種類の化け物に襲われていた。

 

 一人は刀で次々と舞うように化け物を切り払い、もう一人は素手で次々と化け物を爆散させていくが、あのままではジリ貧だろう。

 ビルや立体駐車場で袋小路のようになっている場所にだんだん追い込まれ、余裕がなくなってきている。

 

 「“グロウパンチ“」

 

 “グロウパンチ“を取り合えず化け物に連打して、攻撃をガン上げする。

 イキナリの事に、化け物も女の子達も浮き足立っているが、そんなの気にせず、化け物をぶっ飛ばしていく。

 

 「おいそこのガールズ、ボサッとしてないでチャッチャと動け!」

 

 俺の怒鳴るような声にハッとした二人は、敵を鮮やかに倒していく。

 

 「・・・・・・さて、準備体操は終了だ。本番はこれからって奴だぜ」

 

 “せいなるつるぎ“。

 

 手に、まばゆい光を放つ、半透明の青い刀が出現する。

 

 「ショータイムだ」

 

 *

 

 さて、俺は今、四国にいるのだが、質問攻めされている。

 

 というのも、どうも、俺が転生したのは瀬戸大橋の近くだったらしく、化け物を処理った後、人類が生存しているという四国に、女の子達と他の化け物がくる前に逃げ込んだ。

 

 そして、今に至るのだが・・・・・・

 

 質問攻めにされている(重要)。これ以上本当に何を言おう。

 

 あの能力は何なんだとか、何故あんな場所にいたのかとか、何故胴着を着ているの?とか(余り関係ない!?)、その他俺の個人情報諸々。関係ない事まですべからく質問され、時々拷問(?)と、脅し(?)も受けつつ、何もかも吐かされた。

 

 というわけで、ポケモンの能力についてと転生者であることが彼女達に知られてしまったのだった。

 

 そして、俺も質問しようとしたら、巫女をしているという女の子が、俺が質問する事を見越していたのか、この世界の状態について説明してくれた。

 どう聞いてもかくかくしかじかこれこれうまうまとしか言っていないのだが、何故か理解出来た。説明してくれた巫女・・・・・・上里ひなた曰く、“巫女ぱわー“らしいのだが・・・・・・不思議だ。

 

 どうにも、俺がこの土地・・・・・・世界に来ることは、神樹という神からの神託で解っていたらしく、化け物に襲われていた二人は、俺の出迎えだったらしい。

 神樹って・・・・・・ニュアンスからして、絶対に俺を転生させたあれ、だよな。

 

 この世界で会うことがあったら絶対にへし折って薪に焼べてやるぜ畜生が。




 誰と絡ませましょうか・・・・・・楽しみです。
 設定はまた後ほど・・・・・・。


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北海道にて。

 短いです。


  [八十五日前、昼]

 

 何故こうなっているんだ俺は・・・・・・

 

 「何故俺は転生初日から化け物に追われてんだよちっくしょぉおおお!」

 

 この一週間、意味不明な外見の化け物に追われ続けている。

 おかげさまで一睡もしてない上に何も口に出来ていない。

 

 “こごえるかぜ“を放ち、背後に迫る真っ白い口だけ化け物を纏めて足止めする。

 威力が足りないのか、倒すまではいかないようだ。

 

 「だぁぁぁああああああああ!もーこうなりゃあヤケだ!」

 

 俺は化け物がいる方向に振り返り、ある技の準備をする。

 少々溜めが必要だが、とても高威力なあれである。

 

 俺の周囲を、雷と氷の粒が漂う。

 それが段々と大きくなり、しばらくすると、俺の周囲には紫電を纏った氷の塊が空中制止していた。

 

 「さてと、大技の試運転にちぃと付き合えや。

 消え失せろ・・・・・・・・・“フリーズボルト“ォオオオオオオオオオオオオ!」

 

 *

 

 さて、俺は転生者である。

 何言ってんだお前と、良い病院紹介するぞと、まあ、そんな事を言う人間がいるかも知れないが、事実なのだ。事実なのだ!(大事な事なので二回言った)

 

 強盗に撃たれて死んだ俺は、青白い光る玉に、ポケモンの氷タイプの技全てと氷タイプの体、そしてポケモンの特性である“てきおうりょく“を持って転生“させられた“のである。

 

 で、転生先はボロボロの廃墟があるだけで、化け物しかいない、所謂終末世界のようなものだったのだ。

 

 いや、本当に人間いるのかここ?

 俺を転生させた光る玉曰く人間いるらしいが・・・・・・ぜんっぜん確認出来ねぇ・・・・・・。

 気配のケの字もねぇぞ・・・・・・。

 

 廃墟となっている町並みを眺めつつ、めくれ上がったアスファルトの上を歩く。

 所々に草木が生え、湖のような水溜まりが出来ている。

 

 ドコゾの現代ファンタジーっぽいな、この光景。

 そんなどうでも良い事を思いつつ歩いていると、不意にサイレンのようなものが鳴り響いた。

 

 機械音が辺り一帯に響き渡り、そのあと、人間の言葉が聞こえた。

 

 「『避難してください』、か。避難訓練とか、そんなもんじゃねぇよな・・・・・・!」

 

 人間の声が聞こえた、という事は、その音が聞こえてくる方向には人間がいる、という事だ。

 そして、先の言葉から察するに、相当危険な状況下にあるのだろう。

 

 “ある大技“を撃つために溜めをしつつ、声がした方向に走る。

 転生して毛が生えた程度に上がった速力のすべてを総動員して走る。

 

 「だああ~!どちらかといえば耐久性が高い俺のステータスが今はとても恨めしい!」

 

 やっとの思いで声のした場所にたどり着いた時、そこは地獄だった。

 様々な種類の化け物が、町を蹂躙している。

 

 町は、化け物がいない所を探す事が難しい程の惨状だった。

 

 俺の存在に気がついたのだろう。

 何匹かのデカい化け物が、俺に突進してくる。

 

 「“コールドフレア“」

 

 今まで溜めていたエネルギーを放出する。

 氷と炎。同時に存在することがまず無い二つが入り混じった一撃は、向かってきた化け物を撃退するだけに留まらず、化け物の体を貫通し、他の化け物を巻き込んだ大爆発を巻き起こした。

 

 「あ、やり過ぎた」

 

 反省は後。今は、この町にいるであろう生存者を救出するという行為をしなくてはならない。

 

 

 生存者よりもヤバい人間を見つけてしまった。

 ある大きい橋の上で、一人の、俺と同い年くらいの少女が槍を片手に化け物に囲まれて戦っているのである。

 

 「最近の女の子は元気だね・・・・・・」

 

 溜息を吐きつつ、少女の背後に突撃しようとした化け物の群れを“ふぶき“で凍らせる。

 

 「・・・・・・っと。なあ、最近の女の子って女子力を攻撃力に変化させるのが流行っているのかい?」

 

 下らない事を言いつつ、“こごえるせかい“を使い、俺と少女以外の周りの全てを凍らせる。

 

 「そんな訳無いじゃん・・・・・・助かったよ。ありがと。

 ・・・・・・で、貴方も勇者だったり?」

 「そう見えるか?」

 「見えない。どちらかというと見た目からして魔王の方が合ってる気がするにゃあ・・・・・・」

 「オイコラ喧嘩なら高値で勝ってやんぞ」




 氷タイプの人は、結構ワイルドな人みたいです。


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目と目が合ったら・・・・・・?

 番外編です。短いです。


 くうかんポケモンに合って一週間くらいした後(あのあとパルキアは空間を派手にぶっ飛ばして帰っていった)。

 

 お客さんが来た。

 化け物・・・・・・バーテックスとかじゃなくて、れっきとした人間だった。

 七人の団体さんで、六人がかわいい美少女で、一人、俺と同じくらいの少年。女所帯かぁ・・・・・・苦労してんなぁ・・・・・・めちゃくちゃ居づらいだろう。

 

 どうやら歌野の知り合いらしい、栗色の髪の侍っぽい感じの少女が、歌野の声を聞いた瞬間、まず歌野の名前を聞いて、次に歌野の顔をぺたぺたと触って、そのあと抱き着いて大泣きし出した。

 死んだと思っていたらしい。

 ・・・・・・そういえば歌野、どっかになんか遺言状みたいな通信入れちゃって、そのあと通信機壊れたからフォロー出来てないやー、と、苦笑しながら言ってたな。

 恐らく、通信相手がこの歌野に抱き着いている娘なのだろう。

 

 ・・・・・・ただ、もう離れた方が良いぞ。

 水都が黒い瘴気出してるから。笑顔が怖いよみーちゃん!

 

 *

 

 と、ここで俺はあることに気がついた。

 お客さんの内、唯一の男であるあの少年である。

 ・・・・・・なんか、纏う雰囲気が他の六人の少女とは違う。

 何だか、“俺と同じ“、雰囲気がするのだ。だとすると、あの少年は・・・・・・

 

 「なぁ、あんた」

 

 気がつけば、その少年に声をかけていた。

 

 「ん?何だ・・・・・・へぇ・・・・・・?」

 

 少年も、何かを察したように、顔を好戦的に歪ませた。

 それを見た俺は、自身の予想が外れてない事を理解した。

 

 「じゃあ、あんたに質問だ。目と目が合ったら・・・・・・?」

 

 この質問の意図が解るなら、この少年は・・・・・・

 

 「ポケモンバトル、だろ?」

 

 これで確定。

 コイツ、転生者だ。

 

 *

 

 俺達二人は少々広い場所に移動し、十メートル程距離をとって相対した。

 

 「技は、まあデカい被害を出さなかったら何使ってもオーケー」

 

 “りゅうのまい“を積みながら、俺が言う。

 

 「戦えなくなったら負け、だな?」

 

 そう言いながら、少年は“ビルドアップ“を積んだ。

 

 そして、その一瞬後。

 俺の“ドラゴンクロー“と、少年の“ばくれつパンチ“がぶつかり合った。

 

 「なるほどね・・・・・・そっちは格闘タイプか・・・・・・パラメータ的には物理特化って感じか?」

 「そういうあんたはドラゴンタイプ・・・・・・火力特化ってトコか。見た感じスピードも結構ありやがるな」

 

 そのまま一瞬の間に、何回か拳の応酬を繰り広げる。

 

 目をギラギラさせながら、少年が睨んでくる。

 こちらも、恐らく目の前の少年と同じ目をしているのだろう。

 それほどまでに、このバトルは楽しいものなのだ。

 

 「“きあいだま“!」

 「“りゅうのはどう“!」

 

 特殊技同士がぶつかり合い、空中で派手な爆発が起こる。

 砂が巻き上がり、辺り一帯が砂埃で見えなくなる。

 

 すかさずここで、全方位に向けて“あくうせつだん“を乱射し、砂埃を掃うと同時に、少年に攻撃をする。

 

 だが、どうやら当たらなかったらしい。

 無傷の少年が、半透明の青く光る刀を持って突撃してきた。

 俺も、“ドラゴンクロー“で応戦する。

 

 「やるじゃねぇの・・・・・・まさかあれ全部避けられるとは思わなかった」

 「全方位に“あくうせつだん“とか正気の沙汰じゃあないだろ!?もう少しで危ねぇトコだったかんな!?」

 

 少年は至近距離で俺に“はどうだん“を、さっきのお返しと言わんばかりに大量に撃ってきた。

 俺はそれを、“ドラゴンクロー“や“ドラゴンテール“等の物理技でどうにか全て撃破した。

 

 ポケモンバトルにしては、だいぶ殺伐とした感じだが、それでも楽しく思えた。

 俺は、大技を出すべく右手と左手に、それぞれにエネルギーを溜める。

 あちらもそれに答えて、黄金色に光輝く剣を手に出現させた。

 

 

 ちゅど~ん!

 

 

 ・・・・・・と、その時不粋な乱入者が現れた。

 

 「・・・・・・なあ、バーテックスがワラワラと乱入してきたんだがどうする?処す?殺る?」

 「処す。殺る。叩き潰す。真剣勝負を邪魔したお仕置きだなこりゃあ」

 

 お互いに向けて撃つつもりだった技の標準を、お互いにバーテックスへと変える。

 

 「消し飛べ・・・・・・“コアパニッシャー“!」

 「“しんぴのつるぎ“!」

 

 膨大なエネルギーの奔流が諏訪全域に広がった。

 

 *

 

 「や り す ぎ だ!貴様らぁ!」

 

 ずばこーん!

 

 「「へぶぅぅぅ!?」」

 

 尚、先ほどの俺達が放った技の膨大なエネルギーによって、諏訪全域が震度三程度の地震に見舞われたとの事で、四国の勇者である栗色の髪の少女・・・・・・乃木若葉さんからバーテックスを倒した後で説教をくらった。




 乃木若葉さんの説教何か怖い気がする。


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沖縄の海では。

 番外編主人公の身長、容姿。

 氷タイプの人(14):167センチ/雪花曰く「魔王みたいな見た目」。
 ドラゴンタイプの人(13):133センチ/ただのショタ。
 格闘タイプの人(14):160センチ/中性的。
 炎タイプの人(14):142センチ/ほんのちょっぴりカッコイイ。


 沖縄に来てから、二ヶ月半経った。

 時々棗とバーテックス相手に戦いつつも、日常を過ごしている。

 そして、今俺は。

 

 「・・・・・・暑い。マジ暑い」

 

 棗の家に住まわせてもらっている俺は、縁側でだらけていた。

 

 夏でもないのに暑い。

 海にでも行きたい・・・・・・でも、行ったら化け物・・・・・・バーテックスに即座に囲まれるしなぁ・・・・・・。

 

 「うだー、マジで暑い・・・・・・これで夏じゃないとか・・・・・・真夏よりかは遥かにマシだが・・・・・・」

 

 真夏は暫く前に過ぎた。炎タイプだったから幾分か暑さに対しては強くなったが、それでも暑すぎなくらいだった。

 

 アイス片手に、うちわを扇ぐ。

 ・・・・・・・・・・・・お、当たりだ。

 

 ・・・・・・よし、もう一本アイス貰いに行くついでに海行こう。バーテックスがどうした。俺は海で泳ぐ!暑いから!

 

 俺は意気揚々と水着とアイスの当たり棒を持って飛び出した。

 

 *

 

 「えっと?棗さん?」

 「・・・・・・何だ?」

 「何故気がついたら俺の隣にいる?」

 「夫婦が共にいるのは当たり前だと思うが・・・・・・」

 「や、その~俺達夫婦じゃ・・・・・・」

 「ん?」

 

 いや、棗さん?首をこてんと傾けるそのしぐさ可愛いと、めっちゃ可愛いと思うけど、目が深淵みたいに真っ黒で怖いっす。はい。だからその目を止めてぇええええええ!怖いからぁ!?

 

 「いえ、別に何でもないっす。はい」

 「・・・・・・では、一緒に泳ごうか」

 「準備良いな。上着の中水着かよ」

 

 棗が上着を脱ぐと、真っ白いビキニが現れた。

 褐色の肌に白が映えて、めっちゃ似合っている。

 少々見とれていると、

 

 「・・・・・・そ、そんなに見ないでくれ・・・・・・恥ずかしい」

 

 棗が顔を真っ赤にして俯いた。

 うん、可愛い(語彙力崩壊)。

 

 *

 

 「ねーねー君カッコイイね、どこから来たの?」

 「ほっぺモチモチ~気持ちいい~」

 「あ、顔赤~い。かーわいい!・・・・・・食べちゃいたい・・・・・・」

 

 えー、現在、日が傾き始めた時間帯。俺は逆ナンに遭っております。はい。

 実は俺が知らなかっただけで、バーテックスが襲って来ない、神が結界張ったビーチがあった。

 で、そこで棗と昼過ぎ迄イロイロ遊んでいたのだが、はぐれてしまって、探している内にめっちゃスタイル良い俺より二、三歳年上のお姉さん三人組に捕まって逆ナンされた。や、マジで俺にそんなんされる要素あんの?

 

 「いやぁ私達あなたみたいなのが好みなんだよね~なんかこう、筋肉があまり付いてない痩せ型でちょっと背の低いコ」

 「それでかっこよければ尚良し。つまり、あなたは私達の、ど真ん中ストライク、ってわけよ・・・・・・はあ、我慢出来そうにないかも」

 「え~い、ムニムニ」

 

 はい、要素ありましたよチクショー。

 カッコイイかどうかは知らんが、筋肉付いてない、でもデブって訳でもなくガリガリって訳でもなくこう何だろう・・・・・・普通よりもちょっと痩せてて、そして背が平均よりだいぶ下。俺は同年代の女子よりも小さいからな・・・・・・一歳年上とは言え、棗が俺より二十センチくらい(実際もっと)身長差があるとか唖然としたわ。

 

 え、ちょまってそこさわんないでくすぐったい止めてお願いします!

 

 軽く貞操の危機である。

 俺の体軽いから、お姉さん達にひょいと持ち上げられてそのままお持ち帰りされそうになった。その時・・・・・・

 

 「・・・・・・何やってるんだ?」

 

 大魔王のような覇気を纏った勇者、棗が降臨した。

 

 *

 

 「で?・・・・・・私がお前を探している時にお前は私よりも胸がデカいお姉さん達とイロイロお楽しみしていた訳か?」

 「え、いや、ちが「・・・・・・言い訳なんて聞いていない・・・・・・!」」

 

 せめて弁明くらいさせて!?

 

 え~今現在。夜、ビーチから帰って来た時。棗の家の寝室にて、布団の上で棗に押し倒されています。

 

 「お前は・・・・・・私のものだ・・・・・・!誰にも、渡さない・・・・・・!」

 

 目の光が永眠したハイライトオフな棗が真っ白ビキニにワイシャツという何ともエロい格好で独占欲全開で俺を押し倒した状態でキスしてくる。

 最初は首とか、胸板とかだったのが、唇になって、最終的に深い、舌を絡めるものになった。

 

 「はぁむ・・・・・・んちゅ・・・・・・くちゅ、んっ・・・・・・っぷは・・・・・・。

 ・・・・・・はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・・・もっと・・・・・・」

 

 この日、俺はハイライトが消え失せた状態の棗に愛されすぎて夜も眠れなかった。



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イレギュラー

 人に味方する神々は、この世界を守る為に、異世界から四人の戦士を呼び出した。

 北方の地には“凍える世界“を宿した者、四国には神さえも切り裂く“聖なる剣“の担い手、南西の海に、全てを焼く“青い炎“を操る魔王、そして、中部地方には、“流星群“を降らせる、大いなる龍を。

 

 ・・・・・・だが、『異世界』から呼び出した、というのがまずかった。

 本来起こってはならないイレギュラーが起きたのだ。

 異世界と、この世界を繋ぐ『穴』が完全に塞がる前に一人の人間がその『穴』を通って、やってきてしまったのだ。

 更に、神々が戦士を呼ぶ際に行使した力の余剰エネルギーをその身に受け、他の戦士と同じように、『力』を持ってしまった。

 

 ・・・・・・これは、本来やってくる筈も無かった、神々さえもその存在を見逃した想定外(イレギュラー)の話。

 

 *

 

 [九月/関東地方/某所]

 

 最早原型を留めていない業務用スーパーが、ボクの秘密基地にして隠れ家だ。

 空から意味不明な化け物がやって来て三年。良くもまあ生き残れたものだと、自分自身素直にそう思う。

 業務用スーパーの中には保存食や飲み物が腐る程あって、更に毛布がわりの布がいっぱいあったから、風呂に入れない事を我慢さえすれば、生きるのには余り苦労をしなかった、というのが大きい。

 

 毎日化け物の存在にビクビクしながら過ぎ去っていく日常。

 正直、もう限界だ。でも、発狂することも、泣くことも無かった。

 そもそも、そんな事をする暇もない。

 毎日、生き残る事だけで精一杯。

 

 今日も、カンパンと水で一日を食いつなぐ・・・・・・筈だった。

 

 とうとう見つかった。

 化け物達に。

 

 走って逃げた。

 自分の人生十六年の中で、一番走ったかもしれない。

 でも、途中で転んでしまった。

 

 目の前に、化け物が迫る。

 

 「・・・・・・・・・・・・ッ!」

 

 この三年で、初めて泣いてしまった。

 涙が出て、目の前がぼやける。

 化け物が、その大きい口を開け、ボクを食い殺・・・・・・

 

 ザクンッッーーーーーー!

 

 ・・・・・・そうとした時、何かが引き裂かれる音のようなものが響いて、化け物が横から飛んできた存在に三枚下ろしにされた。

 

 「あーもー!

 全く、女の子がピンチな状態で助けるとか俺はラノベのヒーローですかチクショー・・・・・・。

 で?だいじょーぶですかねおじょーさん?」

 

 その存在は、ボクよりも少し年下の中学生くらいの少年だった。

 オレンジ色のパーカーにジーンズとラフな格好をした、見た目ごくごく普通の少年である。

 

 「ぼ、ボクは大丈夫・・・・・・」

 「おおう、ボクっ娘か。初めて見た。ラノベの中の存在かと思ってたぜぇ・・・・・・」

 

 そう少年は言うと、化け物達に向き直り、

 

 「さてと、来いよ。めっちゃ可愛い正直俺好みな感じの超絶美少女をリンチしてた報いを受けさせてやる」

 

 意味不明な事を言って、獰猛な笑みを浮かべた。

 

 *

 

 何かのヒーローものを見ているような感じだった。

 百を超える化け物に勇敢に立ち向かうヒーロー。彼は正に、そんな感じだった。

 

 拳が妖しく光ったかと思えば、次の瞬間には彼の腕にクリアパープルのクローがあり、化け物が切り裂かれ、敵の攻撃は虚空を突き、いきなり化け物の背後に表れて攻撃を仕掛ける・・・・・・まるで幽霊のような感じの戦い方だと思った。

 

 ここいら一帯の化け物を一掃して、彼は一息着いた。

 

 「ふぃー。疲れた・・・・・・で、一応怪我ねぇか聞いとくわ。大丈夫?」

 「さっき言ったように、ボクは大丈夫だよ。君が守ってくれたお陰でね・・・・・・で、聞くが君は化け物と戦うヒーローか何かなのかい?」

 「いや?化け物と戦ったのは昨日が初めて・・・・・・つーかまず、この世界に来たのが昨日の昼なんだよな・・・・・・」

 「へ?」

 

 ・・・・・・一体彼は何者なんだ・・・・・・?




 この人のタイプは一体・・・・・・?


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イレギュラーとボクっ娘

 番外編!!というものです。
 イレギュラーな人の続きですはい。


 穴の先は異世界だった。

 

 いやいやいや・・・・・・えぇ・・・・・・マジかよ。

 次元の穴みたいなブラックホールがいきなり目の前に出現して、吸い込まれたかと思えば二十一世紀の日本が世紀末状態になった感じの世界にいた。

 

 しかも、変な力・・・・・・いや、これポケモンのゴーストタイプの技だわ。これが何故か使えるようになっている。

 俺の体も、本当の幽霊(ゴースト)みたいに浮遊したり、物質通り抜けたりできる。・・・・・・こりゃあ、体がゴーストタイプにでもなっているのか?

 

 正直ありがたい。

 だってこの世界、普通に化け物がウヨウヨいるんだから。

 真っ白い口だけある化け物や、それの進化系みたいなのがそこらへん普通にいて、心が全く休まらない。

 幽霊みたいに物質通り抜けしてたら少なくとも物理攻撃無効化出来るし。

 ゴーストタイプの技かなり強いし。“かげうち“とか何あれ。チートすぎだろ。“ゴーストダイブ“や“シャドーダイブ“で不意打ち奇襲何でもござれだし。

 

 ぐぅ~。

 

 ああ、腹減った。

 そういえば、飯どうしよう・・・・・・あと寝床も。

 結局、この世界に来た初日は飲まず食わず、更に寝ずに過ごす事になった。

 

 *

 

 ボクっ娘を拾った。

 化け物に襲われていたところを救出したのだ。

 

 少々やせ細り、顔色が悪く、服もボロボロ。

 何でも、この世界に化け物が闊歩するようになってから三年間もの間、ずっと一人でスーパーの廃墟に一人、暮らしていたらしい。

 で、その時ボクっ娘が言った今日の年号と年が完全に俺がこの世界に来る前の日付だったから、やっぱり異世界だったのか・・・・・・と思った。まだ完全に異世界であるという確証が持てなかったしね。

 ・・・・・・未来の世界とかじゃなくて良かった。

 

 ・・・・・・それにしても、良く生き残ったよなぁ・・・・・・この娘。

 俺より一つ年上の少女が三年間も化け物だらけの世紀末世界でサバイバルとか、凄すぎる。

 

 感動して思わず抱きしめて撫で回したら、何故かボクっ娘が泣いてしまった。

 もしかして痛かったのかと、離れようとしたら逆にぎゅうっと、弱い力で、必死に抱き留められた。

 ・・・・・・しばらく、このままにしておこうか。

 

 *

 

 「ぶ、無様を晒してしまったね」

 

 うん、へたりこんで涙目で赤面した女の子が目の前にいるこの状況。確実に事案ですありがとうございます。

 まあ、事案だからって飛んで来る憲兵もいないけどね。

 あれからたっぷり十分。時々襲ってくる化け物を“かげうち“の遠隔操作で上手く撃退しつつ、頭を撫で撫でしまくって宥めてようやく泣き止んだ。

 

 さてさて。ボクっ娘も泣き止んだところで。どうしようか?

 

 「おい、まずボクはボクっ娘という名前じゃない。ボクにはちゃんとカリンという名前がある」

 「おおう、そいつは悪かった。謝るぜ」

 

 呼び方も改めたところで、さて。本当にどうしようか?

 周囲にはまだ化け物はいないが(俺が殲滅したから)、だが、また、いつ襲ってくるかわからんから用心に越した事はないだろう。

 

 「どうする?安全で良い隠れ家とかあったりしないか?」

 「・・・・・・あるにはある。だけど、三年間も行ってないからなぁ、あそこ。無事だと良いが・・・・・・」

 

 そう言って、遠い目をするカリン。どうやら心辺りがあるらしいが、三年間も行ってないから無事かどうかわからない上に、何でもここから遠いらしい。軽く二十キロはあるそうだ。

 

 今まで隠れ家として使っていた廃墟は、もう完全に壊れて使い物にならないらしいから、僅かな希望にかけてそこに行くしか手はないそうだが。

 

 「で?その場所ってどんなところなんだ?」

 「何、君だって子供の頃に作った事はある筈さ」

 

 カリンはユラリと、まるで幽霊のように笑って言った。

 

 「秘密基地さ。ボクと、ボクの友達複数人とで作り上げた要塞。あそこなら、そうそう見つかる事もない」

 

 *

 

 道中、俺が化け物を吹き飛ばしたりしながら進み続けて五時間強。

 町外れの山中にそれはあった。

 

 「おいおいマジかよ・・・・・・」

 

 そこにあったのは、上手く木々に隠れたツリーハウス。指摘されて、それでもわからないくらい巧妙に隠されている。

 何でも、隠れた階段もあって、地上と地下にも部屋があるらしい。

 元々ここは第二次世界大戦中使われていた防空壕のようなもので、最初そこを秘密基地にしていたらしいが、五年間地味に頑張って最終的にこうなったらしい。

 

 「さて、案内するよ。ついて来ると良い」

 

 カリンがまるで子供のように、目をキラキラとさせながら言う。

 まるで、新しいおもちゃを自慢するかのように秘密基地を案内するカリンの姿は、それはもう可愛いかった。




 ゴーストタイプの人の設定

 特性:ファントムガード

 素早さが高い。
 ゴーストタイプの体になった為にモノホンの幽霊と同じような事が出来る。

 十五歳。歳の割に幼く見える外見。


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番外編その二。電気タイプです。
神世紀に電気タイプのショタっ子を突っ込んだ。


 1000文字程度の短い奴です。ショートショートです。
 それでもよければ読んで下さい。はい。


 まあ、何とも不幸な事に、僕は長生き出来なかった。

 僕は十歳で死んでしまったのだ。

 痛かった。けれど、それも一瞬だった。

 

 気がついたら、神様に僕は生きている時に好きだったポケモンの力を貰って、生まれ変わりをさせて貰った。

 平和な世界ではないらしい。化け物達が人間を襲って、食べるんだそうだ。

 

 そんな世界の、君のように長生き出来ない子をそれで救ってくれ、そう言われた。

 

 僕は、ポケモンの電気タイプの体と、電気タイプの全ての技、あと、僕が一番好きなポケモンのぜクロムの特性の、“テラボルテージ“を神様から貰った。

 

 そして今。僕は、カラフルな根っこが地面からいっぱい生えたところにいる。

 僕は、沢山生えている根っこの内の一つに登って、どんなところなのかを見ようとした。

 

 沢山の紐が付いた、大きな橋があった。そして、

 

 でっかい化け物がいた。

 

 口からいっぱい刺を吐いている化け物と、沢山の板を持っている化け物、しっぽが長い化け物の三体。その化け物達が、赤い服を着た、僕と同じくらい?の、とても大きな剣を持った女の子をいじめていた。

 女の子は、血がいっぱい出ていた。

 

 女の子が危ない。助けないと。でも、化け物達を見た瞬間、足がすくんで、震える。

 

 怖い。でも、助けないと、女の子が刺に刺されてしまう。

 

 それでーーーーーー

 

 ・・・・・・僕みたいに、長く生きずに死んでしまう?

 

 そう思った瞬間、顔を真っ青にしている僕はでも、怖いという考えとは、逆に、体が女の子に向かって動いていた。

 

 「いじめるのは、やめろーーーーーー!」

 

 僕の足が速い。

 クラスではいっつもビリだったのに。授業で聞いた、音速って言うのよりも速いかも。

 電気タイプになったおかげなのかな。

 

 そんなの考えるのは後。今は、女の子を助けないと。

 特撮を見ている時、こんなに格好良くて、ピンチの時に助けてくれるヒーローがいるものだと思っていた。

 でも、僕の時は、誰も助けてくれなかった。そんなに、“都合の良いヒーロー“なんていなかった。

 助けなんてないまま、ガムテープでぐるぐる巻きにされた手を引っ張られて、そのまま悪い人達が持ってたピストルやおっきい鉄砲でーーーーーー

 

 女の子の状況が、僕と似ていたから。

 一人ぼっちで、悪い奴に囲まれて、いじめられて。だから。

 

 「“でんげきは“!“じゅうまんボルト“!」

 

 多分、この女の子は、僕が転生したこの“平和じゃない世界“で、化け物から人間を守るヒーローなのだろう。

 だけど、ヒーローだからと言っても、僕と同じくらいの女の子が、目の前で死ぬのは、我慢出来なくて。生きていて欲しくて。だから。

 

 僕と同じにならないように、僕が“都合の良いヒーロー“になって女の子を守る。

 

 「大丈夫?」

 

 沢山飛んで来るおっきい刺を全部を、技で全て壊すと、僕は膝を付いている女の子に向けて安心できるように笑ってそう言った。




 感想誤字脱字その他モロモロお願いします。


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銀ちゃんはショタ主人公君を逃がさない。

 因みに、ショタ君は銀ちゃんの持っている斧を大きい剣だと思っています。

 短いです。


 向かって来る化け物のしっぽを“かみなり“で半ばからちぎる。

 さっき発動させた“エレキフィールド“の効果で電気タイプの技は強くなっているとしても、凄い威力だと思った。

 前、後ろ、横。色んなところから飛んで来るおっきな刺を、“でんげきは“で全て撃ち落とし、その刺を僕らの方に反射させてくる沢山の板を、“でんじほう“で壊す。

 

 女の子を守りながら戦っている為、僕は女の子の周りから動けない。

 守れないから。

 

 前から向かって来た板を全て壊された化け物と、しっぽを殆どちぎられている化け物が突撃してくるのを、“でんげきは“で足止めし、“かみなりパンチ“を沢山撃ち込んで体をボロボロにする。

 

 「・・・・・・もう、決着を付けようか」

 

 僕は、目の前の化け物達を倒す為に、僕の一番のお気に入りの技を使う事にした。

 確実に、僕が守っている血まみれの女の子を救う事が出来る、僕が核心を持って電気タイプ“最強“と言える技だ。

 “エレキフィールド“の効果が続いている今の内に、決める。

 

 僕が身体に力を込めると、体の周りに雷が散って、その雷が、僕を包んでいく。

 

 「行くよ、“いじめっ子“達」

 

 

 “らいげき“。

 

 

 眩しい光と、耳鳴りがするくらいの雷鳴が、辺りを包んだ。

 

 *

 

 [三十分後/大赦が管理している病院]

 

 「銀を助けてくれて、ありがとうございました!」

 「ありがとう~」

 

 僕は今、目の前の二人の、これまた僕と同じくらいの歳の女の子に頭を下げられている。

 一人は、長くて真っ黒い髪の毛が綺麗で、美人な女の子、鷲尾須美ちゃん。

 もう一人は、ノンビリとした感じの、長い薄い黄色の髪の毛の女の子、乃木園子ちゃん。

 僕がさっき守った女の子は、三ノ輪銀ちゃんと言うらしい。

 

 三人は、神様から選ばれて、勇者をしているらしい。

 僕とあまり変わらないような歳の女の子が世界を守っているなんて、と思ったが、厳しい条件があるみたいで、説明されても解らなかったけれど、でも、世界を守るという重たい使命が、三人の女の子にのっかっているというのは理解出来た。

 

 それで、今僕達がいるのは、重い怪我をしている銀ちゃんが入院している部屋だ。

 ・・・・・・他の二人も、腕を吊ったりしていて、だいぶ痛々しいけれど。

 

 「こっちからも、ありがとな。お前が助けてくれなきゃ、死んでた、かも」

 

 とぎれとぎれの言葉で、銀ちゃんがお礼を言ってくれる。

 

 「で、ちょっと・・・・・・こっちに寄って来てくれないか・・・・・・?」

 「?うん」

 

 銀ちゃんに頼まれて、銀ちゃんの隣に寄る。

 

 「で、何かな銀ちゃんむぅ!?」

 

 いきなり銀ちゃんからちゅうされた。

 お母さんが見ていたドラマでやっていたような、すっごく大人なちゅうをされた。

 献血とか、沢山管が繋がれていない方の手で頭の後ろを押さえられて、逃げられない。

 

 「なっ・・・・・・なななななああああああ!?」

 「ミノさんすっごく大胆~」

 

 須美ちゃんと園子ちゃんの二人はとても驚いて目を丸くしていた。

 たっぷりとちゅうされて、銀ちゃんはようやく離れた。

 

 「・・・・・・んむっ!ぷはっ・・・・・・。これ、救ってくれたお礼だ・・・・・・好き・・・・・・♪」

 

 ぎゅうー、すりすり。

 

 頭の後ろを押さえていた手でそのまま抱きしめられて、すりすりされる。

 真っ黒い、光を吸い込んでしまいそうな銀ちゃんの瞳と目が合う。

 

 何だかすっごいドキドキする。

 

 というか最後、好きって・・・・・・え?(心がオーバーヒートで心臓バクバク)

 

 *

 

 「逃がさねぇぜ・・・・・・♥」




 銀ちゃんには二つのルートが。

 1:ヤンデレ

 2:デレデレ


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設定
ドラゴンタイプ主人公の設定その他


 頭を空っぽにして見て下さい。


 [ドラゴンタイプ主人公]

 

 十三歳。

 ポケモン大好き人間・・・・・・人間?

 後で頭を打ち付けたくなるような言葉を、時々無自覚に言い放ち、自分自身が後々壁に頭を打ち付けるという馬鹿な事をやる。

 転生してもこの癖は直ってない所か直る気配がカケラもないとは本人の談。

 

 自分自身がドラゴンタイプになっているという特性から、同類(ドラゴン)、寒さ、フェアリータイプ(可愛いもの)に弱い。

 猫を神様レベルで崇める超絶なる猫派。

 体が伝説に登場するドラゴンと同じ位丈夫。

 

 ステータスとしては、耐久性はちょっと低く、素早さもそこそこしかないが、火力が馬鹿な超絶攻撃型。

 “りゅうのまい“で、なけなしの素早さと、馬鹿火力を底上げしつつ、“あくうせつだん“や、“ドラゴンダイブ“等の大技で一気にカタを付ける戦い方をする。

 

 ・・・・・・下手すれば時間を歪めたり、空間を歪めたりして平行世界規模の擬似的な結界を作り出せる。

 

 “プレッシャー“だけでバーテックスが逃げ出すが、普段は“プレッシャー“を引っ込めている為、かなりの頻度で襲われる。

 

 西暦世界を、縦横無尽に駆け抜ける超絶チート野郎。

 

 ドラゴン「おい、なんだこの中ニ病大歓喜なクソチート野郎は」

 たけゆう「正直、こうまでしないと神殺しは無理でしょう」

 ドラゴン「はぁ!?神殺しさせる気なの!?俺に!?」

 たけゆう「うん、それで神と心中してもらってヒロイン病ませようかとおmドラゴン「な、なぁ、たけゆう。後ろみてみ?」へ?」

 たけゆう「なんでしょう」クルッ

 

 病み落ちうたのん「・・・・・・ふふっ」ハイライトオフ

 

 みぎゃぁぁあああああああああああああああああ・・・・・・・・・!

 

 ドラゴン「お前さっきまでこの設定のコマにいなかったろどこから湧いて出た!?」

 うたのん「えへへー」(笑顔でごまかす)

 ドラゴン「ぐはぁ!?」(めっさ可愛い笑顔(フェアリー技)を受け撃沈)

 

・書いていて思った事。

 刺されるなぁ、この主人公・・・・・・(確信)。

 

 

 

 

 尚、うたのんは主人公を逃がすつもりはない模様。

 やったね主人公、美人で勇者で農業王な彼女が出来たよ!

 

 みーちゃん「うたのんが・・・・・・取られた」ヤミ(包丁を懐から取りだし)

 

 ・・・・・・・・・・・・番外編主人公、頑張ってみーちゃん、落とそう!

 やったね、そしたら二人から取り合いされて、毎日修羅場だぁい!(白目)

 

 みーちゃん落とせるかなぁ・・・・・・(汗)。

 頑張れ、番外編ドラゴンタイプ超絶バ火力主人公(無責任)。




 どしどし感想下さいね。


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炎タイプの人の設定。

 炎タイプの人の設定です。


 [炎タイプの人]

 

 ポケモンを含めたゲームとアニメのオタク。十四歳。中学二年生。

 時々、それらの作品の台詞を口にしてはドヤァとどや顔をする。

 パーカー愛好家。

 

 魚みたいな格好の神様に、半ば無理矢理転生させられた。

 押し付けられた力は、炎タイプの体と技全て、それと特性“マグマブースター“。

 

 炎タイプなので水は苦手・・・・・・かと思えばそうでもない。ただ、濡れると炎タイプの技の威力が10~15くらい、乾くまで落ちる。

 泳ぐのは得意。転生前は、水泳の授業でどや顔をしまくっては、先生にジト目で見られる事が度々あった。

 

 ステータスは万能型。綺麗な六角形。

 水場以外のあらゆる局面に対応出来る。

 

 南西の海に落ちた超絶不幸野郎。

 さて、コイツの行く末は・・・・・・棗「私の婿だな」・・・・・・設定を遮って出てこないで。つかお前別世界線じゃあケモナーだったろ。その設定何処へ消えた。

 

 尚、棗は炎タイプの人の貞操を(既製事実を作るために)常に狙っている模様。

 やったな。炎タイ・・・・・・炎「良くねぇよ!ちょっとしたホラーだぞあれ!」棗「見つけた・・・・・・!」

 

 みぎゃぁあああああああああああああああ・・・・・・・・・・・・!

 

 

 たけゆう「良かったですね。お嫁さんが出来て」

 炎「」(死んだ目)

 たけゆう「褐色肌の美人、それも強くて可愛いもの好き。良いじゃあないですか」

 炎「マジで、何処でフラグが立ったんだよ畜生」(死んだ目)

 たけゆう「・・・・・・さぁ?(マジかよこの鈍感野郎)」

 棗「いた」

 たけゆう「あ、どうも古波蔵さん」

 棗「棗でいい・・・・・・もう少しで古波蔵じゃあなくなるから」

 たけゆう「おめでとうございます」

 棗「ありがとう・・・・・・」

 

 たけゆう(覚悟を決めろよ、炎タイプ君)

 炎(コイツ、直接脳内に・・・・・・!?)

 

 

 達成感を感じるとドヤる。

 彼曰く、「そんなことはない!」らしい。いっぺん鏡を見てこい。

 

 見た目は普通。笑った姿が獰猛(目がギラリと光る)。時々不幸。

 

 戦法はオールラウンド。

 状況に応じて変える。

 

 棗から毎晩貞操をつけ狙われ、眠っている間にDT卒業してたなんて事が起きないか戦々恐々としている。

 最近では抵抗せずに、逆に攻めてへたれたところを抱きしめ、無力化している模様。

 

 彼曰く、「めっちゃ柔らかい」だそう。

 

 世界中の奴から「リア充爆発四散しろ」と言われてもおかしくない人。

 たけゆう自身もそう思います(小並感)。

 

 ・・・・・・人生の墓場に突っ込んでいくスタイルの人。




 書いていてかなり楽しかったです。


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ルカリオの設定(御都合主義が多々含まれています)。

 設定です。


 [ルカリオになってしまった少年]

 普通の少年。

 少年だった時は、空手と一部の柔術の技が得意だが、それ以外のスポーツ及び武術は素人以下。体力は、まあまああった。物理脳。

 

 ルカリオになってから馬鹿みたいに強くなって、武術においては無類の強さを誇り、体力が無限数の無限乗(を無限回数)ぐらいに増大。

 

 だが、それ以外のスポーツ、得に球技においては無類の雑魚さを誇る。

 キャッチボールさえもマトモに出来ないヘッポコ。

 

 理数系と伝説伝承民話歴史地理政治経済系の科目は得意だが、外国語と国語、保健は苦手。得に保健と国語では、赤点スレスレの点数以上を取った試しがない。

 

 好きな食べ物はチョコレートと麺類。

 

 ルカリオのステータス的なもの。

・技

 過去作品から現在のシリーズまでの、全てのルカリオが技マシンやレベルアップで覚える技を使える。

 また、リオルしか覚えない技、タマゴ技も使用可能。

 ただし、教え技は使えない。

 

・ステータス

 6V。

 攻撃、素早さに基礎ポイントを全て振っている。

 これは元々、主人公の少年が使っていたルカリオで、ダイヤモンドパールの時からずっと使っている(6Vなのは、王冠を使っている為。元々は攻撃と素早さの2V)。

 主人公が最後に使った時に覚えていた技は、

 ・つるぎのまい

 ・グロウパンチ

 ・インファイト

 ・バレットパンチ

 

・波導

 バリバリ使える。F○teの魔力放出スキルみたいにして遊んでいる。

 “はどうだん“の威力の底上げの為に波導を余剰に突っ込んで、爆発させる事もしばしば。

 

 また、“波導システム“により、敵の攻撃を受けると、攻撃力やそのほか身体能力がある程度上がる。

 

・メガシンカ

 メガストーン無しでも出来る。が、その後数時間動けなくなる。

 

・Z技

 この作品においては使用不可能にしてあります。

 

・強さ

 樹海への被害を考えずに行動すれば、神も殺せる(“つるぎのまい“積みまくって“ギガインパクト“とか。元々タイプ相性さえよければ神々も倒せる世界の産物だし)。

 

・能力アップ系の技について

 百段階位まで上がる。一分以内に何か技を使わなかったら元に戻る。

 

・注意

 このルカリオは、ポケモンシリーズと、アニメ、映画、ポッ拳、大乱闘を合わせたものになっております。ご注意下さい。

 

 尚、強いとはいえ、バーッテクスの攻撃をマトモに喰らったり、神々の攻撃を防御せずに受けたりすれば、瀕死に近い重傷を負うこともあります。

 決して“無敵“ではありません。

 

 ・・・・・・チートではありますが。




 ごちゃごちゃ混ぜ混ぜしたルカリオです。


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本編『波導の章』(完結)
目が覚めたら携帯怪物で、


 改訂しました。
 大幅に話の数が減ってしまいましたが、これから挽回しようと思っております。


 ビビった。

 自分の姿がいきなり変なのになってたらそりゃあ誰でもビビる。

 たっぷり十分位ワタワタして、ようやく落ち着いた。ふぅ。

 ・・・・・・というか、この手、この足、このシュッとしたしっぽ、何か見覚えが・・・・・・というか、バリバリ見覚えあるわ。

 青と黒の体毛に身を包んだ、鋼、格闘タイプのポケモン。パールの時からの唯一無二の相棒の名前を忘れる訳が無い。

 

 (ルカリオじゃん)

 

 そう、どういう訳かは知らないが、この俺は、何故かこの日、ルカリオになっていた。

 

 *

 

 軽く現実逃避をした後、ほっぺをつねって現実だと実感した後。

 今更ながらに気がついたが、どうやらここ、俺の家でもなけりゃあ地球でもなさそうだ。

 

 周りに広がるのは、色とりどりの木の根っこみたいな何か。

 俺はそれらの内の一つに立っている。

 空は暗い、が、周囲の空間は真っ暗という訳ではなく、良く見える。どうなってんだこれ。

 一通り見回して考えるも、結局良く解らんという結論に至った。

 俺の体がルカリオになっているのもそうだが、俺は今、どんな状況に陥っているのか・・・・・・。

 

 うん、本当に訳解らん。

 

 「・・・・・・!」

 

 不意に、俺の横を何かが超スピードで襲ってきた。

 襲ってきたそれは、真っ白い細長のグミに口だけ加えたかのような、かなり気持ち悪い見た目をしていた。

 それが飛んできた方向を見ると、同じものがウジャウジャといる。

 

 (一匹見たら三十匹いるのはゴキブリだがありゃあ百は軽く超えてるな)

 

 俺の方に、飛んできた奴がまた襲い掛かってきたので、今度は反撃とばかりに腰と脚の回転とキレを利用して、殴る。

 ・・・・・・つい、空手をやっている時の癖でやってしまったが、俺の拳は白熱しながら白いバケモノを襲い、おもいっきり打ち抜いた。

 

 軽い爆発を起こしながら消える白いバケモノ。

 

 (今の“グロウパンチ“・・・・・・俺がやったのか・・・・・・?)

 

 今の技は、使う度に攻撃が上がる技だ。

 ポケモン大好きな俺は空手で突きを使う際に、今の技をイメージしてやっていたのだが、本当にそれらしきものが出せてしまうとは思わなかった。

 ・・・・・・まあ、今のが“グロウパンチ“という確証は無いが。

 ・・・・・・少々、いや、かなり拳が硬くなった気がする。うん、どうやら今のは“グロウパンチ“で合っていたようだ。

 

 (イケる・・・・・・のかこれは)

 

 もしかしたら、今俺の目の前にいるあの白いバケモノを倒せるかもしれない。

 あいつらは、今俺が仲間を撃破した瞬間に、俺に向かうスピードを上げた。俺の今いる場所まで一分も掛からないだろう。

 

 (さて・・・・・・空手以外全く出来ない運動オンチの俺は一体どのくらいやり合えるんだろうな!)

 

 両腕に“グロウパンチ“を発動させ、俺は、まるで星屑のようにも見える。真っ白いバケモノの大群に襲い掛かった。

 

 *

 

 俺が戦う上で最大の懸念事項があった。

 技のPPだ。

 PPが切れると技は使用不可能になる。

 ポケモンは、ゲーム準拠で行くと、技を四つしか覚えられない。

 “グロウパンチ“が一つ目だとして、それ以外がもしもPPの低い技だったりしたら・・・・・・かなりヤバい。こいつらは技でしか倒せないと、俺の当てにならない直感が告げている。

 

 が、そんな事は気にしなくても良かった。

 取り越し苦労だったのだ。

 御都合主義というのは、こういうものを言うのだろうという事を思ってしまう。

 

 恐らく、PPは、無限。

 一発につきPPを一消費する計算で行けば、二十発殴ればPPは尽き、グロウパンチは解ける筈。だが、何回殴っても“グロウパンチ“は解ける気配がなかった。

 一応、二十回、発動させて消してを繰り返しながら殴りもしたが、“グロウパンチ“は二十一回以上ちゃんと発動した。

 

 更に言うと、今の俺は、過去作品含めた、ルカリオがレベルアップ、もしくは技マシンで覚える事の出来る技全てが使える。

 リオルの時にしか覚える事の出来ない技や、それのタマゴ技も使えるようだ。

 ・・・・・・教え技は無理だった。

 

 技の種類が四つまでだという先入観に囚われていた俺は、“グロウパンチ“、“インファイト“、“はっけい“、“はどうだん“を使った後、恐らく“メタルクロー“であろう技が発動してとても驚いた。

 ここはゲームとは違い、現実なのだから、ゲームとかなり違っていても可笑しくない。

 

 というか、一番の懸念事項は、スポーツの中でも割と動ける方である空手の時でさえも“運動オンチ“と呼ばれるような俺の身体能力だが、ここまで戦えているのだ。問題は無いだろう。

 ルカリオというモンスターになった事による恩恵だろうか。

 

 “バレットパンチ“と“しんそく“を同時に発動してうっとおしい白いバケモノを蹴散らしていく。

 そろそろ終わりが見えはじめたその時。

 

 「・・・・・・!?」(ウッソだろおい・・・・・・!?)

 

 明らかにボスモンスターっぽい、天秤のような形をした何かが俺に襲い掛かってきた。

 ちっくしょう油断していた。ここまで接近を許すなんて。

 天秤モンスターは、回転して俺に、天秤の先っぽに付いた鉄球をぶつけて来ようとする。

 

 (死んでたまるかよ・・・!)

 

 技マシンの技も使えるのであれば、あれも使える筈だ。

 ゲームでの解説文からして、余り多用したくはなかったが・・・・・・

 

 (“まもる“!)

 

 俺の周りに、緑色の障壁が展開され、鉄球から身を守る。

 奴は回転を妨害され、一瞬止まる。

 今だ。そう思い、ちょっとした大技を繰り出そうとした瞬間。

 

 「はぁぁぁぁぁああああああああ!」

 

 ザクンッ!ズババババ!

 

 天秤モンスターが一瞬で細切れになった。

 細切れにしたとうの本人である、栗色の髪を後ろで纏めている娘は、溜息を吐きつつ今度は俺に刀を向けてくる。

 よくよく見てみれば周りに鎌を構えた娘やライフル持った娘、斧を両腕に一丁づつ持った娘までいる。

 更に、俺の後ろから更に何人か近づいてくる気配がする。

 いや、マジで誰だよおたくら。

 

 これが、俺と、勇者達の、(主に俺にとって)最悪な出会いだった。

 

 首に鎌を突きつけられるとか、コレどんな拷問?




 カッコイイ棗さんを書こうと、今奮闘中です。次の投稿は今しばらくお待ち下さい。
 (尚、ケモナーなのは変わりません)


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波導の存在を忘れていたルカリオでも解るぱーふぇくと波導教室(実践編)

 一話は、そこまで改訂しておりませんが、ここから大改訂しております。


 「で、どうする?この得体の知れない生物を」

 「新しいバーテックスかもしれないし、切る事をオススメするわ、乃木さん」

 

 赤黒い服の死神ガールと、青(っぽい色)の服の侍ガールが猟奇的な事を言っていらっしゃる。ワーイ、敵として認められたぞー・・・・・・全然嬉しくない・・・・・・。

 

 ここは、だ。話かけて俺が敵でないことを・・・・・・

 

 「下手な動きをしたら頭が丸ごと無くなってると思いなさい謎生物」

 

 結論、こいつらと話なんて無理。だってさっきからスナイパーガールが銃で頭狙ってるもん・・・・・・恐ろしい。

 こりゃあ“しんそく“か何かで逃げるしか・・・・・・

 

 と、逃げる手立てを考えていると、

 

 何かお仲間のような人達が来たよ。死んだな(俺が)。

 

 十人は軽く超えている美少女集団。しかも全員何らかの武器を持っている。

 ・・・・・・うん、逃げられる自信が無いや!

 

 “しんそく“でもかなり怪しい。

 あの技は、技の名前の通り、めちゃくちゃ速く動いて攻撃する事が出来る技だが、動きが直線的になる。

 

 つまり、軌道が読まれると終わり。首スッパーンである。

 

 ちっくしょうどうすりゃあ良いんだ。

 

 と、俺がピンチに陥っていると、さっきの真っ白グミ集団がゴキブリみたいにワラワラと遠くの方から出てきた。

 さっきのが第一波だとすれば、これは第二波か。

 

 俺の周りにいる奴らもあの真っ白グミ集団に気がついたようで、遠距離武器を持っている奴が攻撃を仕掛け、近距離武器を持っている奴らが突貫していった。

 

 俺も突貫して手助けしてやりたいが、如何せん死神ガールに、刀を首筋に付き立てられているので動けない。

 “しんそく“を使っても逃げられる気がしない。というわけで美少女達、頑張れ。

 

 というかすげーなー。あの美少女達。女子力が全部戦闘力に置き換わっているんじゃあないか?

 

 あー、何か更に敵が増えはじめたな。

 めちゃくちゃピンチっぽいぞ。しかもところどころにあの雑魚だけじゃあなくて、魚っぽい奴やまんま魚な奴、盾みたいなカタチした奴に、何かでっかいボスみたいなのも混じっている。

 

 うん、ピンチどころじゃあない、絶対絶命だな。

 

 ・・・・・・やるか。

 

 俺は、“こうそくいどう“と“しんそく“を同時に発動し、化け物の群れに突貫した。

 鎌が俺の首周りの毛を数本切り払っていくが、そこは気にせず、“つるぎのまい“と“ふるいたてる“を積んでおく。

 

 そして、まず手始めに、一番近くにいたでっかい鐘のようなものを持っている強大な奴に、

 

 (“インファイト“)

 

 物理技をプレゼントした。

 

 (さあ、かかってこいや化け物共!まとめて吹き飛ばしてやっからよぉ!)

 

 *

 

 “ボーンラッシュ“を使い、飛んできたビームを弾きつつ“はどうだん“を十発ほど化け物に撃ち込む。

 

 潰しても潰しても数が減らない。

 盾のような奴らに隠れて弓のようなカタチをした青い化け物がビームを撃ってくる。

 

 それを避け、“ラスターカノン“で纏めて吹き飛ばすが、それでもゴキブリよりも数が多いこいつらは、直ぐに吹き飛ばされた奴らの穴を埋め、俺に攻撃を仕掛けてくる。

 

 俺を脅威と感じたのか、少女達にはそこそこに、俺の方に化け物の大群が群がってくる。

 気がつけば三百六十度囲まれ、集中攻撃を喰らっていた。

 

 すべてをいなし、弾き、時々他の化け物に当てて同士討ちなんかもさせる。

 

 (まず・・・・・・!?)

 

 化け物のビームを飛び上がって避けた時、前から超スピードで魚っぽい黒い化け物、後ろからも、“見えない筈なのに“前と同じ奴が飛んで来るのが見えた。

 

 避ける事が出来ず、俺は始めてダメージを受けた。

 

 「・・・・・・・・・っ!」(ガッ・・・・・・・・・!?)

 

 腹と背中、同時に攻撃を受け、更に追い打ちとばかりに青いビームが四方八方から飛んで来る。

 

 当たったらヤバい。ルカリオは、バランスが良いと言われているが、それでも、防御や特防は攻撃や特攻ほど高いという訳ではない。

 これだけの数のビーム、すべて当たれば瀕死は免れないだろう。

 

 (“みきり“!)

 

 相手の攻撃を避けるが、それでも何発か喰らってしまう。

 

 絶大なダメージを受け、意識が飛びそうになる。が、俺の中の何かが俺の体を支え、むしろパワーアップさせた。

 

 (ダメージが増えたのにむしろパワーアップ・・・・・・?そんなドMな能力、若しくは特性をルカリオ持ってたっけ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・あ、あったな。ありましたね確かに。しかもルカリオを語る上で最も大事なものをすっかりと見落とすとか俺は一体何をやってるんだ!)

 

 “波導“。

 

 ルカリオや、一部の人間が使いこなす、全ての人間が持っているオーラ等と呼ばれるものだ。

 

 それを使えば、映画ではテレパシーモドキで話したり、目を閉じていてもものが見えたりする。

 さっき見えない筈の背後の敵が見えたりしたのも、恐らく波導のお陰だろう。

 そして、俺が何となしに使っていた技“はどうだん“も、波導のカタマリである。何故俺はこんな大事なものを忘れていたのだろうか。

 

 そして、ルカリオは、ポケモンシリーズとは別のゲーム(大乱闘○マッシュブラ○ーズ)では、“波導システム“なるものが存在している。

 攻撃を受ければ受ける程、攻撃力が上がるという超ドM仕様のシステムだ。

 

 おいおい、ということは、今の俺はポケモンのアニメや映画、そしてゲーム全てのルカリオをぐっちゃにしたものだったりするのか!?

 ・・・・・・どんだけチートなんだよ。

 

 まあ、今は波導を忘れていた事は置いておこう。

 大乱闘と同じ事が出来るとすれば、メガストーン無しでメガシンカが出来て、波導を放出したりも出来る訳だ。

 

 (さて、さっきのようにはいかねぇぜ?)

 

 鏡を見ていないが解る。

 俺は今、人生(今のルカリオの状態で言っていいのか怪しいが)で一番の獰猛な笑みを浮かべている事だろう。




 アドバイス、そのほか誤字脱字、感想諸々下さると有り難いです。


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攻勢

 では、改訂した話を、どうぞ。


 (さあ、かかってこいや化け物共が。地獄を見せてやるぜ)

 

 ダメージを受けた事により発動した波導システムにより、増大した身体能力をフルに使い、向かってきた天秤のカタチをした化け物を“メタルクロー“で細切れにする。

 

 一歩踏み出し、飛び上がると、蟹のような化け物に“とびひざげり“を食らわせる。

 そのまま貫通し、勢いのまま蟹のような化け物の背後にいた木っ端共を“はどうだん“を連発して潰し、撃ち漏らしは“グロウパンチ“で叩き潰す。

 

 “グロウパンチ“で上がった攻撃力を利用し、青い、口から矢を吐いてくる化け物を“コメットパンチ“で粉砕すると、“しんそく“と波導の放出の同時併用で空中を蹴るようにして移動し、その周囲にいる木っ端を全て“文字通り“、“ボーンラッシュ“で串刺しにする。

 

 空中で自由落下する俺の周囲を、素早く動く化け物が囲む。

 ったく、包囲網作っても無駄だってのに。全方位に向けて“きあいだま“を撃ち、全て爆砕する。

 ・・・・・・が、どうやら丈夫な奴がいたらしい。ボロボロになりながら、俺に向けて超スピードで突撃してくる魚のような化け物。

 

 避けられない。

 

 今、俺と化け物の間合いはわずか数ミリ。“まもる“の発動も間に合わない。

 全く、油断と慢心は禁物って空手の先生に習った筈なのになぁ・・・・・・。

 

 ズガンッ!

 

 化け物が、ふいに青いエネルギービームのようなもので打ち抜かれ、粉々になった。

 ビームが飛んできた方向を見ると、さっき俺の頭を狙っていたスナイパーガールが、数キロ先で長大なライフルを構えていた。

 

 (ナイスショットだスナイパーガール!)

 

 着地してスナイパーガールにサムズアップすると、まだ数多くいる化け物に俺は向き直った。

 

 (さて、まだまだ俺の攻勢は続くぜ?)

 

 *

 

 (“インファイト“ォォオオオ!)

 

 飛んで来る魚の化け物を全て打ち落とし、迫ってくる盾の化け物を蹴りで砕く。

 数がもう大分少ない。終わりが見えてきたな。

 

 俺の隣では、白い装束を着た褐色肌の少女が、ヌンチャクで化け物を次々と倒していく。

 気がついたら隣にいて、一緒に戦っていた。

 

 今日初めて会ったというのに、まるで長年共に戦ってきたかのように息ピッタリである。

 

 「なかなかやるな、青い犬人」

 「(そっちこそ)」

 

 肩をすくめ、波導を使ったテレパシーモドキで伝える。

 戦いやすい。息の合う戦友のような存在とは、なかなかどうして、頼もしいものであると実感する。

 

 「まだ行けるか?」

 「(おうよ。この程度でヘバるかよ)」

 

 ニヤリと笑って見せると、ヌンチャクガールも獰猛な笑みを浮かべ、

 

 「・・・・・・上等・・・・・・!」

 

 普通の少女ではありえない脚力を使って、化け物の群れに突貫していった。

 

 「(ったく、クールっぽい外見からはあんな獰猛な娘さんだとは思えねぇのに)」

 

 そう俺もぼやきつつ、“つるぎのまい“で攻撃を上げつつ、“しんそく“で突撃する。

 

 “バレットパンチ“を発動し、目にも止まらぬ速さでパンチを連続で化け物共に食らわせる。

 “こうそくいどう“を連発して、残像が見えるくらいのスピードで動き、周囲数十メートルの木っ端共を全て屠る。

 素早い化け物が複数突撃してくるが、“カウンター“でその速さを利用し、高威力のカウンターパンチを食らわせて倒す。

 ゲームとは違う使い方だが、現実で“カウンター“を使うとこうなるのだ。

 

 (あらかた片付いた・・・・・・後はアレか)

 

 俺の視線の先には、複数の巨大な化け物が合体した、太陽のような外見の超でっかい化け物がいた。

 

 *

 

 “つるぎのまい“を積みまくって、まだ“こうそくいどう“の効果が残った脚力で移動しつつ、巨大な化け物から放たれる炎の弾を避ける。

 

 こちとら鋼タイプが混じっている。炎タイプ(に見える)技を食らうような真似はしたくない。

 

 炎の弾を避けながら、音速を超えたスピードで巨大な化け物に接近する。

 

 (“いわなだれ!“)

 

 炎タイプには岩タイプだ。ということで、岩タイプの物理技である“いわなだれ“を使う。

 ・・・・・・ポケモン世界でもないのに地味に効いている。まさか本当に岩タイプの技が効くとは思わなかった。

 巨大な化け物は、大分動きが鈍った。

 

 それを好機と感じたのか、俺と同じく化け物と戦っていた少女達が自らの武具で猛攻撃を仕掛ける。

 俺もこのチャンスを逃すつもりはない。

 

 “つるぎのまい“で上がった攻撃力を最大限に生かして、“インファイト“を巨大な化け物に叩き込んだ。

 

 *

 

 (ふい~、終わった)

 

 化け物がいなくなり、俺と少女達しかいないこのカラフルな空間に無数に生えている木の根っこのようなものの内の一つに腰掛ける。

 

 ドッと疲れと、ダメージによる痛みが押し寄せてきた。

 戦い終わって、少々気が抜けたのかな。

 

 そんな俺の元に、先程俺と戦っていたヌンチャクガールが近寄ってきた。

 

 「お疲れ様」

 「(ああ、お疲れ様だ)」

 「で、突然だが来てほしい場所がある」

 「(へいへい、何処にでも連れていくと良いさ・・・・・・)」

 

 俺が投げやりに言うと同時に、空間が変わった。




 レオ・スタークラスターを炎タイプと解釈しました。


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ルカリオと棗。

 一番書くのが難しい話でした。
 構想練るのに六日、書くのに四日。

 その割には量が無いです・・・・・・すみません・・・・・・


 俺は今、モフモフされている。

 もう一度言おう。モフモフされている・・・・・・!

 

 俺がこの、“勇者部“と呼ばれる、表向きボランティア部とほぼ変わらないこの部活の部室に来てから数時間後。

 俺は、褐色肌のクールっぽい少女・・・・・・古波蔵棗にめちゃくちゃモフモフされていた。

 

 ・・・・・・クールでカッコイイお前は何処へ消えた!?

 

 *

 

 まあ、最初はモフられる事なんて無く、質問して、されて、答えるみたいな情報交換会が開催されていたんだ。

 

 「とどのつまり、お前はポケモンという生命体で、何故樹海にいたかはわからない・・・・・・と?」

 「(そういう事だ。自分の寝床で寝たかと思えばあのカラフルな空間にいたもんでビックリしたね、本当)」

 

 そのあと、ポケモンが使える技やらタイプやら相性やらについて説明したところ、勇者全員から「ポケモンは神かそれに準ずる何かなのか」という言葉を頂いた。

 ・・・・・・うん、自分でもポケモンの使う技はあらゆる意味で可笑しいのばっかりだと思うし、空間切断するような技をフェアリータイプが何故受けて平気なのかとも思うけど・・・・・・とりあえず、それがポケモンなのだという事で納得してもらった。

 ポケモンの可笑しいところについて上げていたらキリが無い。

 

 そして、今度は今おかれている状況について、彼女らから説明を頂いたのだが・・・・・・神を鎮めろ?

 

 何とまあ無茶なことを・・・・・・神って何タイプなのだろうか。

 岩か鋼かノーマルか・・・・・・はたまたフェアリーか。マルチタイプとかだったら死ぬな。

 

 閑話休題。

 

 という事で、この世界の状況について説明が終わったところで、今度は俺の扱いをどうするか、その話が始まった瞬間、

 

 「・・・・・・私が飼おう」

 

 棗が俺を抱え上げ、モフりながらそう言った。

 いや、目が点になったね。

 

 聞けば、昔棗は犬を飼っていたらしく、それを俺に重ねたのだろうという・・・・・・いや待てやオイ。

 

 俺、犬に見えてるの!?

 おっかしいだろ犬に見えねぇだろ何処からどう見たってヒトガタの狼だろうが!というか飼われる気はねぇから離してマジで。

 

 ・・・・・・ちょっと落ち着け・・・・・・な?

 

 

 結論を先に言おう。

 

 棗の飼い犬(もとい手持ち)になってしまった。

 

 *

 

 手持ちというので思い出した。

 モンスターボールの事である。

 

 あの赤と白のツートンカラーの、野球のボールサイズのあれは、どういう原理かは知らないが、ポケモンを収納し、“持ち運ぶ“形で手持ち出来るのだ。

 

 モンスターボールにも種類があり、黒かったり、青かったり、紫だったりと、色や、それに応じて効果も様々。

 

 さて、何故そんなモンスターボールの事を今更思い出したかと言えば、

 

 「(何故こんな場所にこれがあるんだ・・・・・・)」

 「海が、“ルカリオの記憶を盗み見たときに役に立ちそうだったから作った“って・・・・・・これはなんだ?」

 「(勝手に盗み見てんじゃあねぇよ神サマ!?)」

 

 人気の無いところを通りつつ、人には見られないように精神力を削りつつ棗の住む寮の部屋に、あったのである。

 

 モンスターボールが。

 

 「野球のボール・・・・・・にしては硬いが・・・・・・」

 「(モンスターボールって奴だ。俺を“持ち運ぶ“形で携帯出来る魔法の道具みたいなモンだよ)」

 「なるほど・・・・・・はっ、だからポケットモンスターと言うのか・・・・・・」

 

 モンスターボールを手に取り、まじまじと見る。

 うん。ゲームのフレンドリィショップで200円で売ってる赤白カラーのモンスターボールだ。

 

 色違いのハイパーボールとかだったら神のズサンな再現度に愚痴付けてたぜ。

 

 「ルカリオ、これはどう使うんだ?」

 「(モンスターボールの何か臍みたいに突き出てる部分を俺に押し付けてみ)」

 「こうか?」

 

 俺に向かって棗がモンスターボールを押し付ける。

 すると、何か吸い込まれる感覚がして、次に何か狭い缶詰部屋に入った感じがした。

 何か凄い違和感を感じる。

 

 しばらくして。

 ポン!という音と共に、俺が感じていた違和感が消え去る。

 

 「モンスターボールの中に、本当にルカリオが入った・・・・・・」

 

 モンスターボールの中でも外の声は聞こえるんだな。

 ・・・・・・アニメでもそういう描写があったし今更か。

 

 「・・・・・・どう出せば良いのだろうか・・・・・・」

 

 投げれば良いんだぜ、棗。

 

 そう伝えようとするも、こちらの声は全くあちらには届かない。

 だが、棗は、

 

 「・・・・・・何?投げれば良い・・・・・・?

 では、出て来てくれ!ルカリオ」

 

 何かを察したのか、それとも海の声を聞いたのか。

 虚空に向けて、軽くモンスターボールを放った。

 

 何か外に放り出される感覚と共に、さっきの缶詰部屋のような感じが消え去る。

 

 気がつけば、棗の部屋のベッドに肩膝をついて着地していた。

 

 「隠れて寮まで移動する手間が省けたな」

 「(流石に毎日あれはキツイしな)」

 

 翌日、別に勝手に出る事が出来る事を思い出した俺はモンスターボールから不意に出て来て勇者を驚かせるというドッキリ(悪戯)をしたら、危うく若葉に手刀で落とされそうになったという事があったが、それは別のお話という事で。




 モンスターボール、あれホント不思議に思います。


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日常パート

 「三森お母さん!次はどうするの~?」

 「ええと、次は・・・・・・」

 

 何だろう。小学生組と三森を見ているとモノホンの家族に見えてしまう。

 というか園子(小)は、もうお母さんと呼んでしまっている。

 

 現在、家庭科調理実習室において、三森と小学生三人娘、そして俺は牡丹餅作りをしている。

 

 それにしても・・・・・・うん、これに結城友奈が加われば五人家族の完成ってとこか?

 

 父親:結城友奈

 母親:三森

 長女:園子

 次女:須美

 三女:銀

 

 ・・・・・・うん、なかなか良い家族のような気がしてきた。

 あんこを練りながら、そんな事を考える。

 

 うーん、母親・・・・・・うん、風もオカンといった感じがしてピッタリだな。

 あのヒト女子力じゃなくてオカン力が日に日に上がってんじゃあないだろうか。

 

 「ルカリオ、あんこは大丈夫?」

 「(いい感じだとは思うがな)」

 

 三森が俺の方に寄ってきて、あんこの出来具合を聞いてくる。

 ちょっと味見して、

 

 「うーん、少し足りないわね。ルカリオ、あれ取って?」

 「(コイツか?)」

 「それよ。それを大さじ一杯足してもう少し・・・・・・」

 

 そのまま次はどうするか聞いていると、

 

 「なんだか夫婦って感じがするね~」

 

 不意に園子がそんな素っ頓狂な事を言い出した。

 

 「(や、何故そう思った?)」

 「なんだか二人が出す雰囲気が何と言いうか~・・・・・・夫婦のそれにしか見えない?」

 

 ・・・・・・ふむ、ならば少し一芝居打つか。

 波導を少々調節し、三森にだけ聞こえるようにテレパシーを送る。

 三森は俺の方を向き、少々微笑みながらコクンと頷いた。よし。

 

 「ふふ、料理が上手だったのね、“あなた“。長年連れ添って来たけれど・・・まさかそんなに料理が出来たとは知らなかったわ」

 「(なに、“おまえ“の料理してる風景を何時も見て、毎日その料理を食ってりゃこれくらいできる)」

 「「「おおおおお~」」」

 

 うん、なかなか面白いもんだな。これ。

 熟年(っぽい)夫婦を演じてみたが・・・・・・上手く出来ただろうか?

 俺あんまり演技得意じゃあないし。

 

 「創作意欲が湧いて来たぁ~!」

 

 ・・・・・・何か約一人ハッスルしていらっしゃる。

 

 *

 

 牡丹餅が美味しい。

 や、まあ、上手く出来たから美味いのは当たり前なんだが、何かこう・・・・・・ね?自分で作ったものだからそれの補正とかもあって、何か何時もより美味く感じる。

 

 「これで桜があれば完璧だね」

 「・・・・・・確かに、この牡丹餅を食べながら花見をしたいものだ」

 「(食べるのに夢中)」

 「今度、行きませんか?」

 「良いこと言った我が妹よ!よし、今度準備して行きますか!」

 

 もっきゅもっきゅ。

 

 皆さん牡丹餅を頬張っていらっしゃる。

 あ、こらこら、銀よ。ほっぺにあんこが付いてる。・・・・・・よし、とれた。

 

 そういえば、巫女二人がこの牡丹餅パーティーの場にいないな・・・・・・。

 若葉や歌野に聞くと、どうやら用事で朝早くから大赦の方に出向いているらしい。

 牡丹餅、二人の分を先にタッパに取って残しておこう。

 うわっ!もう殆ど食い散らかしてる!やべぇ、さっさと取っとかないと二人の分が無くなる!

 

 「(ちゃんとひなたと水都の分も残しとけよ~!)」

 

 牡丹餅の争奪戦は、それはもう激しいものであった。

 

 

 牡丹餅を食べて少しした後。

 俺はダブル友奈に、武道場に呼び出されていた。

 用件は、“俺との格闘術の試合“である。

 まあ、俺のメインウェポンは拳だし、良い練習にもなると思って、二つ返事で了承したのだ。

 

 「(食後の運動には調度良いな)」

 

 そんな事を独り言で呟きながら約束の時間に武道場に出向くと、もう二人は胴着に着替えて正座の状態で俺を待っていた。

 今日はこの場は貸し切りらしく、俺達以外には誰もいない。

 

 「来たね、ルカリオ」

 「どっちからやる?」

 「(どっちからでも、好きな方から来い。・・・・・・言っとくが、俺は負けるつもりは一カケラもねぇぞ)」

 

 さあ、試合・・・・・・いや、“死合“の始まりだ。

 

 *

 

 [同時刻/神樹の結界の外]

 

 その存在は、ヒトに見えて、人ではなく、どこか神々しさがあって、その存在そのものが輝いて見えた。

 その神々しい存在が、一つの、“星屑“と呼ばれるバーテックスに手をかざすと、手からまばゆい光を放つ何かが出て来て、それが“星屑“に吸い込まれていった。

 

 光を取り込んだ“星屑“は、身体から青いオーラのようなものを出すと、周囲にいた他の“星屑“をどんどん吸収していき、巨大化、変形して、最終的には一本の巨大な、持ち手の長い奇妙な形をした、剣のような形に見える怪物に変化した。

 

 「行け、“トツカノツルギ“」

 

 神々しい存在がそう言うと、“トツカノツルギ“と呼ばれたバーテックスは、遠目に見える、光輝く樹木に向かっていった。

 

 「我が神格の一部をバーテックスに託した・・・・・・さあ、どう対抗する?」

 

 軽く世界に危機が訪れた。




 長らくお待たせしました。


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日常崩壊

 [神樹/結界外]

 

 “トツカノツルギ“は、幾つかの時を経て、光り輝く樹木の側までやって来た。

 そのままその樹木の中に入ろうとするが、弾き返されてしまう。

 

 すると、“トツカノツルギ“の、刀身と思われる部分が、不意に青いオーラを発しーーーーーー

 

 ーーーーーーぐるん!と、自身の身体を回転させて樹木の一部をごっそりと切り裂いた。

 

 そして、その切り裂いた場所から、悠然と“トツカノツルギ“は、樹木の中へ・・・・・・神樹の、結界の中へと、入っていった。

 

 

 ・・・・・・億を超える単位の、大小様々な種類のバーテックスと共に。

 

 *

 

 大切なものは、無くしてから初めて後悔するという。

 近くに、何時も手の届く所にあって、当たり前のように思っていたもの。

 それは、無くなってから初めて、その大切さに気がつくのだと、俺の爺さんは死ぬ前に、そう言って死んだ。

 

 (確かに、なくして初めて大切さ、ってのは痛感するよなぁ)

 

 その時俺はそう思った。

 爺さんが死ぬ前に、そういう事があったから。それで、すごく後悔して、精神的に潰れそうにもなった。だからこそ、

 

 だからこそ、今度は無くさないと、そう誓ったのに。

 

 *

 

 「(何時だって後悔ばかりだ。いっぺんなくしてから後悔する・・・・・・ホントに、俺って奴ぁ一歩も成長できてねぇな)」

 

 ボロボロの樹海、朽ちかけて、光が消えそうになっている神樹。

 ・・・・・・そして、瀕死の、ボロボロの勇者達ーーーーーー

 

 *

 

 [数日前/勇者部部室]

 

 それは、スリリングでデンジャラスではあったが、そこそこ平和な日常を壊すには十分な言葉だった。

 

 「昨日、朝早くから大赦に用事があったのは、神託があったからなんです」

 「近い内に・・・・・・一週間以内に、バーテックスの侵攻が起きます。

 ・・・・・・それも、今までにない位の、総力戦に等しいものです。

 恐らく、今までとは比べものにならない位の、文字通り桁違いの激戦になるでしょう」

 

 二人の巫女が言ったその言葉は、静まり返った部室に、よく響いた。

 

 *

 

 空気がピリピリしている。

 それもそうだ。あんな台詞の後で、明るい雰囲気なんて出せる訳がない。

 比較的歳が上の勇者は悲壮に顔を歪め、歳がまだそこまでいってない勇者は、オロオロとして、落ち着きがないようだった。

 雰囲気に耐え切れず、今にも泣きそうな娘もいる。

 ・・・・・・棗のあんな歪んだ顔を初めて見た。

 

 笑顔で溢れていた時間が、一瞬にして不安と悲壮感に濡れた、悲痛な時間に変わってしまった。

 ・・・・・・日常というものは、こんなにも脆かったのか。

 この日、初めていつもの、当たり前にある日常に感謝し、嘆いた。

 

 *

 

 日に日に部室の空気は重くなっていった。

 部活動に、外面では一生懸命に取り組んでいるように見えても、波導を使える俺だから解る、解ってしまう。

 どこか、心に不安があって、全員何をするにしても上の空だ。

 

 これまでにもバーテックスが襲来する、といった内容の神託はあったらしい。が、今回のものは、何時もの倍・・・・・・いや、数百倍くらいの敵の量は覚悟をしておかねばならない、それほどまでのものだそうだ。

 

 最悪・・・・・・・・・・・・死ぬ覚悟もしておかねばならないそうだ。

 

 状況も、心も、精神も、雰囲気も。

 

 最悪なまま日にちは過ぎ。

 

 そして、来てしまった。その日が。

 

 *

 

 ドアを勢い良く開けて、若葉が開口一声。

 

 「大変だ!神樹様の結界がごっそりと破られて、バーテックスが大量に侵攻してきた!」

 

 それは、最悪な知らせだった。

 

 *

 

 神樹が作る結界が破られた。それも、一部がえぐりとられるようにごっそりと。

 すぐに神樹は結界を張直したが、かなりの数のバーテックスが侵入してきてしまったらしい。

 

 「直ぐに樹海化すると思う。それまでに・・・・・・気持ちの整理は付けておいてくれ」

 「恐らく今回の襲撃が、神託のそれだと思われます・・・・・・皆さん、絶対に、生きて帰ってきて下さいね」

 「誰か一人、欠けて帰ってくるなんて、嫌、ですから」

 

 若葉とひなた、そして水都が、全員に向かってそう言う。

 俺は、波導で全員の心を読み取るが・・・・・・悲痛だな。ヤバい。マジで、ある一人の為ならば死を厭わない奴が数人いる。

 

 ・・・・・・覚悟を決めるか。

 

 後悔だけは、絶対にしないように。

 

 *

 

 「(オイオイ・・・・・・ありゃあ億はいるぞ・・・・・・)」

 

 もしくはそれ以上。

 大小様々なバーテックスが、ワラワラと、一部の方角へ目掛けて侵攻している。

 

 「結界はもう神樹様が閉じた・・・・・・だから、これ以上数が増える事はない・・・・・・が、あの数だ・・・・・・絶対に死ぬなよ。

 一人では絶対に突っ込むな!誰かと、二人で互いを支え合え!」

 

 絶望。そんな言葉が似合うこの光景。

 だが、全員諦めていないのは、絶望しかないような光景を目の当たりにして、絶望しておらず、前を見ているのは、やはり勇者だからか。

 

 「(先陣は俺が切ろうじゃあねぇか)」

 

 “はかいこうせん“。

 

 「(開戦だ畜生共が。ゴキブリよりも湧いて出てきやがって。一匹残らず叩き潰す!)」

 

 だから、俺も、最後まで諦めない。

 

 こんなんでも一応、“波導の勇者“、だしな。




オリジナルバーテックスについて書きます。

*“トツカノツルギ“
 別称“天羽々斬剣“。造反神の神格の一部を星屑が取り込み、周囲のバーテックスと合体して出来た、“ほぼほぼ神に近いバーテックス“。
 何かを“断ち切る“事に特化しており、神樹の結界も用意に断ち切った。
 全長約五十メートル。そのうち、刃渡り約二十メートル。


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質より量。

 「らちが明かないぞこれ!」

 

 球子のそんな叫びが聞こえる。

 倒しても倒しても、奥の方からワラワラと湧いて出て来て、一向に数が減らない。

 途中、カタい奴や超巨大で、丸で山みたいな奴、倒した瞬間爆発する奴と、面倒な敵のオンパレードで、少しずつ勇者達は押されていった。

 

 「(だぁぁぁぁあああああああ!数が多い!雑魚でもこれは面倒臭い!)」

 

 棗とペアで、バーテックスを倒していくが、数が本当に減っていっているのか疑わしく感じてくる。

 威力が高く、攻撃範囲が広い特殊技を使っていくが、いっこうに数が減らない。

 

 俺が初めてこの世界に来たとき倒した、太陽のようなバーテックスも出てきた。・・・・・・わんさかと。

 

 「(お前らボスじゃなかったのん?何でゴキブリもビックリな数出てきてんだよチクショー!)」

 

 迎撃していく。ボスクラスの強さの奴らがズンドコやってくるからこちらの消耗が激しい。

 何人かもう肩で息をしている。

 

 と、ここで。

 ボスクラスを超える、ラスボスクラスの化け物が来た。

 

 それは、青いオーラを撒き散らしながら、周囲のバーテックスを巻き込みつつ俺達に攻撃を仕掛けてきた。

 

 危険だ。

 

 そう思った時には、もう身体が動いていた。

 大きく旋回しつつ、避ける。

 他の奴らも、思い思いに避けたようだ。だが、

 

 ズガァアアアアアアン!

 

 「きゃぁぁあああああああああ!?」

 「(うおぉおおおおおおおおお!?)」

 

 その攻撃が地面に当たった、その時の衝撃波だけで、俺達は紙のように吹き飛ばされてしまった。

 

 「(ヤバい・・・・・・あのバーテックスはヤバい!)」

 

 バーテックスが攻撃したところは、深い地割れがパックリと出来上がっていた。

 周囲の樹海もボロボロである。

 

 そして、そんな馬鹿げた攻撃をしてきたバーテックスは、まるで古事記に出て来る“十束剣“のような姿をしていた。

 約五十メートルはあるだろうか?そのデカい身体に付いてる刀身を、回転させて振り下ろしてきたのだ。

 そして、その余波だけでこの有様だ。直撃したら・・・・・・そう考えるだけで、鳥肌が立ってくる。

 

 「硬い・・・・・・!?攻撃が、通らない・・・・・・!」

 

 何処からかそんな声が聞こえる。

 動作がが亀よりも遅いので的なのだが、それを補って余りある攻撃力と防御力・・・・・・そして、周囲の雑魚。

 

 「(俺の最大級の“きあいだま“、くらいやがれぇーーーーーー!)」

 

 “はどうだん“を連発して、周囲の雑魚を一掃しつつ、刀野郎に気合いだけでなく波導も余剰に突っ込んだ“きあいだま“を一撃食らわせる。

 

 だが、奴は無傷だった。

 ・・・・・・みてくれは鋼タイプ単体っぽいのだが、実はフェアリータイプが混じっていたりするのだろうか。

 

 それからも、周囲のバーテックスの数を減らしながら、刀野郎に攻撃するのだが、全然通らない。

 格闘タイプの技では歯が立たない(無傷だった)為、鋼タイプや炎タイプ、そのほか諸々のタイプの技でどうにかしているのだが、それでもかすり傷が精一杯だった。

 

 「(“ブレイズキック“!)」

 

 この技ももう何発目だろうか。

 百はもう超えている気がするな・・・・・・。

 だが、それでも奴は倒れる気配がない。

 

 周囲の雑魚も、数こそ、大規模な特殊技の連発で最初よりかは大分減ったが、それでも六桁はまだいる。

 勇者の面々は、もう満身創痍と言った感じで、限界を迎えている者もいた。

 

 「おい、大丈夫かあんず!おい!?」

 「・・・・・・大丈夫、まだ・・・・・・!」

 

 「あれ?身体が、動かないや・・・・・・なんで?」

 「高嶋さん!?」

 

 「わっしー!大丈夫!?わっしー!ねぇ!」

 

 「お姉ちゃん、無理しないで!」

 「まだまだ・・・・・・行ける!」

 

 そうなった面子に“いやしのはどう“を使い回復をしつつ、俺はバーテックス共を叩いていく。

 

 こちらの消耗が激し過ぎる。

 半数以上の勇者がもう戦える状態じゃあない。

 ・・・・・・そんな時だ。

 

 「(おいおい・・・・・・なんだありゃ)」

 

 刀野郎が刀身を上に向けると、荒ぶる波のようにうねりを上げる、青いオーラのようなものが周囲に発生する。そしてその青いオーラがだんだん刀野郎の刀身に集まっていく。

 数秒後、百メートルは裕に超えているであろう青いオーラで出来た刀身が形成されていた。

 

 そして、その巨大な刀がーーーーーー

 

 「(デカい攻撃が来る・・・・・・!避けろぉぉぉぉぉ!)」

 

 ーーーーーー俺達に向かって、周囲の空間を切り裂きながら、自由落下するように振り下ろされた。

 

 *

 

 目を覚ます。

 どうやら、気絶していたらしい。

 ・・・・・・攻撃をくらって、確か・・・・・・!

 

 軋みを上げる身体に根性という鞭を打って、無理矢理立ち上がる。

 見えた景色は地獄だった。

 

 樹海は枯れ果て、灰色に染まり。神樹に大小様々なバーテックスが群がり、攻撃を仕掛けて、神樹のその神々しい輝きは失われつつあった。

 近くには、あの刀野郎も・・・・・・!

 

 マズイ。

 

 確か、神樹が死ねばこの世界の終わりだと聞いた。

 一刻も早くあのバーテックス共を蹴散らさねば・・・・・・!

 

 「待ってくれ、ルカリオ」

 「(若葉?)」

 

 声がしたため、振り向いてみると、果たしてそこにいたのは、ボロボロで立っているのもやっとな様子の若葉だった。若葉よりも酷い状態の夏凜に肩を貸しながら、神樹の方を睨みつけている。

 

 「あれらは私達がやるわ。あんたは・・・・・・あっちの方で寝てるみんなを、さっき回復してた技で回復させてあげて。・・・・・・お願い」

 「(でもお前らボロボロで・・・・・・!)」

 「なに、任せろ。私達にはこういういざという時の“切り札“があるからな」

 「ええ、完成型勇者の本領ってのを見せてあげるわ」

 

 ボロボロの状態で屈強に笑って見せる二人は、覚悟を決めている感じだった。“切り札“というものがどの程度のものなのかはわからないが、二人とも、負けるなんて事は一切思ってない様子だった。

 ・・・・・・ならば、その覚悟と勇気を踏みにじる真似は、しないほうが良いか。

 

 「(回復させて、皆を少々離れたところに運んで避難させる。

 それが済んだら、直ぐに行く)」

 

 俺がそう言うと、

 

 「じゃあ、それまでに・・・・・・」

 「私達があれを倒そうじゃないか」

 「(頼もしい限りだ。・・・・・・じゃあ、頼んだ)」

 

 俺は、二人に背を向けて、皆がいる方向に向けて走り出した。

 

 「任せろ」

 「任せなさい!」

 

 *

 

 神樹に群がるバーテックス共を睨みつける。

 さあ、ここからが正念場だ。

 

 「さて、やるか」

 「ええ」

 

 隣に立つ夏凜に声をかける。・・・・・・私よりもボロボロなのに、私に不敵に笑って見せている。

 強いな、夏凜は。

 

  私達は自分のスマホを取り出すと、勇者アプリを開き、アプリのホーム画面にある『封』と書かれたアイコンをタッチする。

 すると、『封』という文字が『開』という文字に変わる。

 切り札を普段は封じている私達だが、今回に限って、一部の勇者はそれが外せるようにされているのだ。

 

 制限時間三十分。

 それ以上は、切り札は使えない。

 

 「切り札には制限時間がある・・・・・・その時間内に片付けなければこちらの負けだ」

 「上等。やってやろうじゃないの」

 

 夏凜のその言葉に、不安なんて消し飛んでしまう。

 仲間というものは素晴らしいものだと、今更ながらに実感する。

 

 「来い・・・・・・大天狗!」

 「満開!」

 

 さあ、ここからは私達のターンだ、バーテックス!




 感想その他モロモロ下さい。


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波導フルパワー

 前のお話最後の場面改訂しました。

 後、今回のお話は短いです。


 あの剣は、ある水神を鎮め払った、神殺しの神剣だ。

 

 神の加護は、通用しない。紙切れを破るように容易く切り裂くだろう。

 

 だが、彼の者ならば、若しくはーーーーーー

 

 *

 

 神樹様に群がる雑魚共を片付ける。

 ルカリオが、制限時間が来る前に終わらせる。

 任せろ、と、私はそう言ったのだ。

 

 空を駆け、音の速さでバーテックスを切り刻む。

 途中、巨大なものもいたが、

 

 「邪魔だぁぁああああああああああ!」

 

 一瞬で切り伏せる。

 

 向こうの方では、赤い衝撃波を伴った斬撃が、四方八方に飛んでいた。

 夏凜が暴れているのだろう。

 

 ふと、巨大で、変な刀の形をしたバーテックスを見やる。

 何もせず、静観を決めているのは、余裕の表れか、若しくは、様子見か。

 

 目の前に意識を戻す。

 突っ込んできた星屑を賽子の形に切り刻み、盾のようなバーテックスを真っ二つにし、魚のようなバーテックスを三枚下ろしにする。

 

 制限時間まで、あと十分。

 それまでに、神樹様に纏わり付くバーテックスを蹴散らし、あの刀バーテックスを屠る。

 

 ・・・・・・と、その時。

 

 「・・・・・・・・・・・・ーーーーーー!」

 

 刀バーテックスから、金切り声、若しくは金属音のような音がして、たまらず耳を塞ぐ。鼓膜が破れそうだ。

 すると、海のようにうねっていた青いオーラが、まるで乱気流のような、灰色のオーラに変化した。

 そして、

 

 「ーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・!」

 

 刀バーテックスが、自身の体を縦横無尽に回転させたかと思えば、次の瞬間、爆発と聞き間違うくらいの金属音と共に、辺りにかまいたちが起こり始めた。

 

 「うっ、ぐぅ!?」

 

 バリアのおかげで切り刻まれる事は無かったが、それでも相殺しきれなかったのか知らないが、とてつもない衝撃を全身にもろに受け、意識が遠退いていく。

 

 真っ暗闇に染まる視界の隅で、ルカリオが、刀バーテックスに極太の光線を照射している場面を最後に、私の意識は真っ暗になった。

 

 

 *

 

 刀野郎を“はかいこうせん“でぶっ飛ばした後、先ほどのかまいたちで気絶した二人を神樹から少し離れた、安全な場所へ運ぶと、傷を“いやしのはどう“で回復させる。

 

 「(後は任せろ。俺が終わらせる)」

 

 ・・・・・・さて。

 

 覚悟を決めて、後ろを振り向く。

 そこには、もう二~三桁程度くらいしかいなくなった、大小様々な大きさのバーテックスと、先ほどの俺の攻撃で少々傷を負った刀野郎がいた。

 “はかいこうせん“であの程度か・・・・・・いくらタイプ不一致とは言え、硬すぎだろう。

 

 俺が最後に見たときとは違う、灰色のオーラを噴出しながら、必死に傷を回復させようとしている。

 

 「(今度は俺の番ってところかね・・・・・・)」

 

 一応俺にも、彼女らが使ったような“切り札“のようなものがある。

 ただ、使えるかどうかは解らない。そこは気合いと自身の波導でどうにかするしか無いだろう。

 いつかやったゲームでは、別に専用のアイテムが無くても“あれ“は出来ていたのだ。

 ならば、俺にも出来る筈だ。

 

 「(よっしゃ、それじゃあやりますか)」

 

 自身の波導を、今自分が使える限界以上まで増幅し、自身の身体に循環させる。

 そのうち身体が耐え切れなくなってきて、骨や筋肉が悲鳴を上げ始める。

 

 体中から、虹色のオーラが溢れ出す。それと同時に、自身の波導の出力が上がり、体がオーラに包まれて変化し始める。

 

 体を包むオーラが卵の殻のように丸く俺自身の体を一瞬包みこんだかとおもえば、次の瞬間、それが割れて、

 

 

 「(・・・・・・メガ、シンカァアアアア!)」

 

 

 辺りに虹色のオーラが吹き荒れる。

 メガシンカ、やっぱり出来たな。

 大乱闘のルカリオがメガストーン無しでやってたから、もしかしたらと思ったが、どうやら当たりだったらしい。

 

 身体を動かす。

 

 軽い。

 これならば、やれる。

 

 「(さて、波導フルパワーだ。メガシンカした俺の力、とくと見やがれ刀野郎!!)」

 

 俺は、“ビルドアップ“と“つるぎのまい“を積むと、“しんそく“で灰色のオーラを纏う巨大な刀に突貫した。




 感想その他お願いします。


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決戦

 どうも。お久しぶりです。
 さて、今回ちょっとした御都合主義と独自解釈が、ほんのちょっぴり含まれております。ご注意下さい。

 あと、短いです。


 動きが素早くなっている。

 オーラが灰色に変わっているからか、風のように敵の動きが速い。

 

 「・・・・・・ーーーーーー!!!!」

 

 金切り声もウザい!

 

 「(まず刀が喋ってんじゃねぇ!)」

 

 “しんそく“で移動しつつ、バレットパンチで確実にダメージを与えていく。

 

 オーラが青色の時よりも鋼タイプの技の効きが良い。もしかして、刀野郎のタイプが、オーラの色と共に変わったのか?特性:マルチタイプだったりするのか?

 格闘タイプの技は相変わらず効かない。絶対にゴーストタイプかフェアリータイプが混ざっている。

 

 タイプが変わった、という仮定が正しかったとしても、この鋼タイプの技の効きが異常だ。やはりメガルカリオの特性の効果だろうか。

 

 “てきおうりょく“。

 

 ポケモンシリーズにおいて、タイプ一致の技の威力は、通常1.5倍になる。

 その倍率を、1.5倍では無く2倍にするという特性だ。

 

 “メタルクロー“と、“バレットパンチ“を使い、刀野郎をボッコボコにしていく。

 

 時折、嵐が吹き荒れ、身体が風に持って行かれそうになる。

 ・・・・・・だが、そこまできつくはない。精々天候が荒れたくらいにしか思えない。

 

 刀野郎が倒れるまで、あと一歩。そこまでいったところで、急に刀野郎から、猛烈な嵐・・・・・・いや、もうこれは神風の部類に入るのではないか、と、思えるくらいの風と衝撃波が俺を襲った。

 刀野郎は嵐に包まれ、その姿を確認する事が出来ない。

 

 そしてそのまま、刀野郎は身体をぶんまわし俺に襲いかかってきた。

 

 「(うわっ!?あぶねぇちょっと待った危険危険!!)」

 

 必死で避ける。

 掠れば即死だろう。

 かまいたちが無数に発生し、周囲の空間には、もう安全な場所などなかった。

 

 「(逃げ場がねぇなら・・・・・・!)」

 

 俺は、覚悟を決め、“こうそくいどう“と“しんそく“で移動し、かまいたちを出来うる限り避ける。

 時々その刃が近くを通り、俺に切り傷を作っていくが、そんなのは気にせずに、文字通り『神速』をもってして刀野郎に近寄る。

 刀野郎に纏わり付く乱気流が邪魔をするが、そんなの知るか。振りきって行く。

 そして、ようやくもってたどり着いた刀野郎の、刃が付いていない横側を、“つるぎのまい“を積んでからの“バレットパンチ“でぶっ飛ばす。

 過剰な強化で腕が軋みを上げる。が、そんなのは気にせずに“バレットパンチ“を撃ち込み続ける。

 刀野郎の刀身に、若干ひびが入る。

 

 そこを逃さず、追い撃ちとばかりにひび目掛けてもう何発か撃ち込んだあと、攻撃強化系の技を高速で積み、

 

 「(これで、くたばれーーーーーーーーー!!!!)」

 

 “コメットパンチ“を、そのひび目掛けて撃ち込んだ。

 

 瞬間。荒れに荒れていた風が急に止む。

 そして、俺が撃ち込んだ部分から、刀野郎の全身にひびが広がっていく。

 

 気がつけば、刀野郎は砕け散るようにして、その姿を消していた。

 

 *

 

 メガシンカが解ける。

 次いで、俺自身を強化していた技の効果が消えていき、そのあとに猛烈な痛みが俺を襲った。

 過剰な強化の代償のようなものだろう。

 

 痛みに堪えながら、ふと、神樹がどうなったかが気になった。

 神樹の輝きが確か相当弱っていた筈だ。

 状態を確認すべく、神樹がある方向を向く。

 

 「(嘘だろオイ・・・・・・)」

 

 果たして、その神樹は、もう輝きを殆ど失いかけており、もう枯れる寸前のような状態だった。

 今まで戦っていて気がつかなかったが、樹海も、その神樹の状態に続くように、赤黒く、枯れていっている。

 

 「(マズイマズイマズイ!どうする!?神樹が消えれば、この世界が滅んでしまう。枯れない方法は?何かあるか。考えろ!)」

 

 必死に思考を回転させる。

 ポケモンのゲームやアニメ、映画の出来事も思いだし、この、ルカリオの身体で一体何が出来るかを考える。

 

 ・・・・・・映画?

 

 確か、ルカリオが出て来た映画でも、終盤、今のこれとほぼ同じ状況だった。

 はじまりの樹が死にかけていた時、ルカリオは一体何を、どうした?

 神々の集合体である神樹が、あの方法で復活するかは分からない。だが、試す価値は有るはずだ。

 

 急いで神樹に駆け寄る。

 痛む身体に精一杯鞭を打って、“しんそく“で駆ける。

 

 根本にたどり着くと同時に、俺は神樹の根本に手を翳す。

 

 「(さて、と。頼むから成功してくれよ・・・・・・?)」

 

 俺が尽き果てるのが先か。それとも。

 

 「(波導ハ・・・・・・我ニ在リ・・・・・・!)」

 

 身体から、何かが抜けていく。

 波導だけじゃあない。何もかもが抜ける感覚がする。

 

 めまいを覚えて、身体がふらつくが、それでも、翳したその腕は、決して動かさない。

 波導を腕に集中させて、神樹に流していく。

 

 チカチカと視界が明滅し、段々身体から力が抜けていく。

 それでも、波導を注ぎ込むのを止めない。

 

 神樹の弱まっていた光が強くなっていく。

 それに比例して、その神樹から感じる神々しさというものも増していく。

 ふと、気がついた時には、身体がどさり、と倒れていた。

 

 自身の身体を見れば、存在が消えていくように、段々身体が薄くなって、消えていっていた。

 映画のルカリオは元の時代に消えていったが、俺は、元の世界に戻るのだろうか。

 

 不思議と、恐怖は無かった。

 自分の身体が消えていっているのに、そのような感情は抱かなかったのだ。

 

 (綺麗だなぁ・・・・・・これで桜みたいに花が満開だったなら、最高だな)

 

 暗くなっていく視界の中、最後に見たものは、神々しく、強い光を発する、綺麗に復活した神樹と、周囲の空間に舞う、赤青黄緑等の、色とりどりの花びらだった。




 もう少し、もうあと本当にちょろっとだけ続きます。


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記憶

 本日二回目。
 はい。めちゃくちゃ短いです。
 一応最終回的な感じです。


 目を覚ます。

 私、古波蔵棗は、病院のベッドで目を覚ました。

 ・・・・・・私は、四日前、ある戦いに参加し、重傷を負った・・・・・・らしい。

 らしいというのも、ここ数週間の記憶がすっぽりと、完全に抜け落ちているのだ。

 

 だから、私・・・・・・いや、別のベッドで入院している他の勇者達も含めて、私達が、何が、どういう経緯で戦って、どんな敵とぶつかって、ボロボロの重傷になったのか・・・・・・全く分からないのだ。

 大赦の人間も全く解っていないらしい。

 

 現在解っている、戦いがあり、そして辛うじて勝利したという情報も、三日前神託があって、初めて解った事なのだ。

 

 無くした数週間の思い出。

 何か、大切な何かがあった。

 そして出会った、かけがえのない誰かを、忘れている気がして。

 

 でも、全く思い出せない。

 

 他の娘達も、何処か、『喪失感』を感じているようだった。

 大赦にも掛け合った。が、大赦の人間も余す事無く全員、ここ数週間の記憶が抜け落ちていたため、全く何も分からなかった。

 

 ・・・・・・ふと、サイドテーブルにある『あるもの』に視線を向ける。

 赤と白のツートンカラーの、野球のボールよりは小さくて、少々固く、真ん中には黒い筋が走っていて、そこで二つに、カプセルのようにパカッと割れる変わったボール。

 それを手に取り、眺める。

 四日前、ボロボロの私が懐に持っていたものだそうだ。

 安全なものかの確認の為に、今まで検査に出されていたらしい。

 

 ・・・・・・しばらく眺めていると、込み上げるものがあって、一つ、二つと涙が落ちてきた。

 

 それと同時に、確信する。この失った記憶の中で、私は確かに誰かと会ったのだ。だが、その誰か、が思い出せない。

 大切だったように思える誰かを忘れてしまった事に、私は悲しくなって、声を出して泣いた。

 

 

 「うう・・・・・・うぁああああ・・・・・・・・・・・・!」

 

 

 その『誰か』を思い、涙が流れていく。

 

 *

 

 長い、長い夢を見ていた。

 現実では有り得ないような、何処かファンタジーじみた、不思議と現実感が湧いてくるような夢だった。

 

 「まるで映画みたいな夢だな。オイ」

 

 頭を掻きむしって、身体を起こす。

 眩しい朝日が、身体を包む。

 

 だが、何処か、夢では済まさない自分がいるのだ。

 アレは夢じゃあないと、そう思っている自分がいる。

 

 「・・・・・・はっ、何考えてんだか。バカバカしい」

 

 そんな考えを笑い飛ばし、今日も今日とて学校へ行く為の準備をする。

 ・・・・・・ふと、机の上を見る。そこには、ルカリオのぬいぐるみが置かれていた。

 

 「俺がルカリオになる・・・・・・か。

 ・・・・・・まるで不思議のダンジョンみたいな夢だったな」




 これにて閉幕、です。

 番外編を、これからちょくちょく上げて完成させようかと。


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IF:もしも、ルカリオが消えずに残っていたら

 「(波導は、我に在り・・・・・・!)」

 

  身体から、何かが抜けていく。

 波導だけじゃあない。何もかもが抜ける感覚がする。

 

 めまいを覚えて、身体がふらつくが、それでも、翳したその腕は、決して動かさない。

 波導を腕に集中させて、神樹に流していく。

 

 チカチカと視界が明滅し、段々身体から力が抜けていく。

 それでも、波導を注ぎ込むのを止めない。

 

 神樹の弱まっていた光が強くなっていく。

 それに比例して、その神樹から感じる神々しさというものも増していく。

 ふと、気がついた時には、身体がどさり、と倒れていた。

 

 自身の身体を見れば、存在が消えていくように、段々身体が薄くなって、消えていっていた。

 映画のルカリオは元の時代に消えていったが、俺は、元の世界に戻るのだろうか。

 

 不思議と、恐怖は無かった。

 自分の身体が消えていっているのに、そのような感情は抱かなかったのだ。

 

 (綺麗だなぁ・・・・・・これで桜みたいに花が満開だったなら、最高だな)

 

 暗くなっていく視界の中、最後に見たものは、神々しく、強い光を発する、綺麗に復活した神樹と、周囲の空間に舞う、赤青黄緑等の、色とりどりの花びらだった。

 

 *

 

 消えたと思っていた。

 夢のように、俺の存在がこの世界から抹消されたものだと、そう、思っていた。

 

 だが、現実はそう、バッドエンドばかりでは無かったらしい。

 

 「まさかルカリオがちっちゃくなっちゃうなんてね~」

 「(いや、今の俺はルカリオじゃない。リオル、と呼んでくれ)」

 

 風が言った言葉を訂正しながら、俺はぬいぐるみのように抱きしめてくる棗の拘束から抜けだそうと頑張っていた。

 

 そう、俺は、波導を使い果たして消えるものかと思っていたのだが、何とリオルとなってこの世界に残っていたのだ。

 

 「(マジで離して苦しいからぁ!)」

 「ルカ・・・・・・リオルが無茶をしたと聞いて心配だったのよ。棗に暫くそうさせてあげなさい」

 「(んな殺生なぁ・・・・・・)」

 

 ああもう。ルカリオからリオルになったからステータスがめっちゃ下がったし、波導もうまく使えないし、使える技の数も減ったし、ちっちゃくなっちゃったし・・・・・・まあ、神樹の復活なんて目茶苦茶やらかしたんだしこのぐらいで済んでむしろ良い方か。

 

 ちなみに、特性も実は変わっていたりする。

 え、何かって?直ぐにわかる。ほら、俺の特性の被害者が今日も・・・・・・。

 

 ガララ!と、扉を開けて勢いよく入ってきた若葉に、俺は棗から取り上げられてがっくんがっくん揺さぶられる。

 

 「リ~オ~ル~!またひなたと共謀して私の髪形に悪戯しただろう!」

 「(あ、ばれた?)」

 「いつの間にか私の髪形がツインテールにフリフリのリボンが結ばれていて驚いたんだぞ!」

 

 俺の特性は、せいしんりょくからいたずらごころに変わっていた。まあ、リオルの夢特性で、変化技を先に出せるという結構約に立つ特性なんだが・・・・・・こう、悪戯をしたくなる。時々、発作的に。

 

 「お仕置きだ。剣道場に行くぞ!一つ悪戯をするごとに一試合という約束、忘れた訳じゃないだろう?」

 「(え?・・・・・・あ“。・・・・・・ちょっと待って。い、いい一回落ち着こう?うん待って俺死んじゃう!俺よわっちくなっちゃったの!強くないのぉ!)」

 「ああ、そうだ。他に来る人はいるか?」

 「(無視!?)」

 「はいはい!私行く!」

 「私も!」

 「(ダブル友奈も!?ちょ、棗助けて!?)」

 「私も行こう。ルカリオがリオルになってから手合わせをしていない」

 「(味方がいない(泣)!?)」

 

 若葉の小脇に抱えられ、剣道場に連行される。

 

 「あらら・・・・・・リオルの自業自得って奴だねあれは・・・・・・」

 「ですね。でも、大丈夫でしょうか・・・・・・」

 「リトルわっしー、大丈夫だよ~きっと。だって、ああ言いながら今日でもう十一回目の試合だから~」

 「そうそう。弱っちくなったなんて本人は言ってるけど、いつも帰ってくる時は無傷なのよあの子」

 「まるで魂が抜け落ちた感じの顔で帰って来ますけどね・・・・・・」

 「あれは気にしない」

 

 「(たーすーけーてー!畜生!鬼め!)」

 「誰が鬼だって(威圧)?」

 「(すみませんごめんなさいもう言いません(号泣)!)」

 

 俺のまだ始まったばかりの、リオルとしての日常は、今日も騒がしく過ぎていった。




 もしかしたら有り得たかもしれない、優しい世界。


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