はにゃーん様、コズミック・イラの大地に立つ (ざんじばる)
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ありふれた異世界転移の始まり

全て……全て……Define12巻が悪いとです。
こんなん泣いてまうやろ……。ハマーン様……。

ということでCDA時代のはにゃーん様をベースにしたSSを書くことにしました。
CDA時代の言動をもとにしているつもりですが、人によっては(特にCDAを読んだことがない人)、こんなもんはハマーン様じゃないという意見もあるでしょうが作者にとってはこれもハマーン様です。なので『オリ主』タグは付けません!(予防線は張りながら)

なおなぜ17才なのかですが、少女らしさを残しながらもキュベレイがある程度形になっているのがこの辺りかと考えたからです。
一年後にはあの事件が起きちゃいますからね。なんもかんも大佐が悪い。



◇U.C0085年1月某日:アクシズ兵器開発エリア

 

 

「コントロール。こちらAMX-004、準備完了。いつでも出れるわ」

『こちらコントロール。了解です。こちらはもう少々かかります。申し訳ありませんがしばしお待ちください、ハマーン様』

「もう! ハマーン様は止めてって言っているでしょう!」

『そんな!? 偉大な摂政閣下を前にして無礼はできません! 閣下こそいつもの口調で命令いただければ』

「よく言うわ。声が笑っているわよ…… いつもいつも摂政じゃ息が詰まるわ。妹や貴方たちの前でくらい気を抜かせてちょうだい」

『摂政に就かれてはや1年半。いい加減慣れたのでは?』

「まさか! 日々覚えることばかりの上、ミネバ様のお付きや軍高官の皆様に囲まれて、すり減っていくばかりよ。だからとても貴重な時間なの。この新型MS開発は」

『はは、了解です。我らがハマーン嬢』

「その呼び方もどうなのかしら…… まあ、『様』よりはましか」

 

『ありがたき幸せ。……ところでハマーン嬢。地球圏への帰還の日取りが決まったそうで』

「耳が早いわね。まだ一般には公開されていない情報なのだけど…… どこから聞いたの?」

『おっと、ジャーナリストとして情報源の秘匿は大原則ですので。こればかりは摂政閣下のご下問でも口を割るわけには参りません』

「誰がジャーナリストよ…… まったくほどほどにしておきなさいよ」

『は! 肝に銘じます!』

「はぁ…… 確かに決まったけど、まだ出発も1年ほど先よ?」

『なるほど、待ち遠しいですな』

「なに? そんなに地球圏に帰りたかったの? 向こうに誰かいい人でもいた?」

『いえいえ、ハマーン嬢のことですよ。これでようやく愛しのシャア大佐を追いかけられるというものでは?』

「…………は?……ちょ、ちょっと待って!?あなた何を言って……!?」

『隠さなくてもよろしい。アクシズが誇る大輪の薔薇が秘めたる恋、我ら開発メンバーで知らぬものなどおりませぬ』

「……それ、全然秘められてないじゃない」

『我らは例外です。あなたともう何年の付き合いになるとお思いで?』

「……シュネーヴァイス開発の頃からだからもう5年近いか……それはバレてもしょうがないわね……」

『ぶっちゃけ、言動に出まくりだったのでアクシズ中が知っているとは思いますが』

 

「?……何か言った?」

『いえ、何も? しかし、あの小さかったハマーン嬢も地球圏に着く頃には20歳ですか』

「そうね……ってなんで航行スケジュールまで正確に知って……」

『……黙秘します』

「もう…… でも20歳なんてオバサンよね。大佐に会ってもガッカリされないかな?」

『……ハマーン嬢、忠告です。今の言葉は致命的な間違いです。ですので他の女性の前では決して口にしないように』

「そう? ……でも大佐が大事に持っていた写真にいっしょに写っていた女性は今の私と同じくらいの年齢だったから心配なの」

『あのロリコン大佐……整備不良に見せかけて始末しておくべきだったか』

「?……何か言った?」

『いえ、何も? ハマーン嬢、20歳は最高です。女性が最も輝き出す年齢です。何も問題ありません』

「そう? ……そうね!」

『ええ、それに出発する頃には大佐の置き土産であるこいつも完成します。地球圏に着いたらこいつに乗って大佐を捕まえにいくんです!』

「ええ! 頑張るわ!」

『その意気です。……っと、言ってる間にこっちの準備も完了しました。オールグリーン。いつでも行けます』

「了解! AMX-004! ハマーン・カーン! 出ます!」

『グッドラック! ハマーン!』

 

 

 

◇同日:アクシズ周辺宙域

 

「コントロールへ。こちらハマーン。テストケース20までクリア」

『コントロール了解。ハマーン嬢、機体の状態はどうです?』

「何の問題もないわ。機体の反応、腕部ビームガンの照準精度、AMBACによる機動性、どれも最高! もう完成でいいんじゃないの、この機体?」

『いやいや、まだ肝心の物をテストしてませんよ? それに各部もまだまだ煮詰めなきゃなりません。こいつの真価はこんなもんじゃないんですぜ、摂政閣下? もう1年くらい付き合ってくださいよ、摂政業の息抜きもかねて』

「息抜きは重要ね! じゃあこのままテストを継続します」

『コントロール了解。ターゲットを射出しました。打ち落としてください』

「ハマーン、了解です!」

 

 きたっ! 私を囲むようにターゲットが10の曲線を描きながら高速で迫ってくる。とてもビームガンじゃ迎撃しきれないけど、この機体なら!

 

「いけッ! ファンネルッ!!」

 

 バインダーに格納された小型の機動砲台――ファンネルを放出する。

 ファンネルは私の思念を受け取り、機敏に反応する。

 ファンネルはそれぞれ別個のターゲットをロックオンできる位置に素早く移動し、砲撃。またたく間にターゲットを火の玉に変えた。

 同時に私自身も機体を操る。腕部ビームガンをサーベルモードに切り替え、残る一つのターゲットを切り裂いた。

 

「全ターゲット撃墜を確認。ファンネルの反応も前回テスト時より遙かに良くなってる! もうシュネーヴァイスのビットとは完全に別物ね! やっぱりこの機体、もう完成でいいんじゃない?」

『1発外してますよ、摂政閣下。ごまかさんでください』

「……バレましたか」

 

 そう。この機体――今はまだ試作実験機という扱いだが制式採用時には『キュベレイ』という名が付くことになっている――には、ファンネルが10基搭載されている。先ほど落としたターゲットは10。サーベルで切り裂いたのが1。ということはファンネルの攻撃は1発外れているのだった。

 なお、どう見ても10基以上ファンネルを使っているという都市伝説もあるが事実無根である。キュベレイのテストパイロットを務めている私が言うのだ。間違いない。何を疑うことがあるというのだ、痴れ者めっ!

 

『バレバレです。ターゲットドローンだってタダじゃないんです。外すなら潔く外して再利用させてください』

「そういうわけにはいかん。私にも摂政としてのプライドがあるのだ」

『突然、摂政モードにならんで下さい……なんもかんも貧乏が悪いので改善して下さい摂政閣下』

「……善処します」

『玉虫色のご回答ありがとうございます。……はぁーつっかえ。どっかに有能な摂政転がってないかな?』

「……おい、いくらなんでも無礼が過ぎないか?」

『小官、尊崇する摂政閣下の摂政扱いするなというご命令を堅く遂行中であります!』

「私自身の命令でも、私に無礼を働くわけにはいかないとか出撃前に言っていなかったか?」

『ハマーン様! 次のターゲットが来ます! ご用意を!』

「……後で覚えていろよ?」

『はッ!後で覚えております!』

「…………」

 

 私は無言でファンネルをバインダーに戻し、次のターゲットに備えてエネルギーをチャージする。

 そして、オペレータへの怒りも込めてファンネルを解き放とうとした、その時。

 

「ぇ!? なぜ? ファンネルが動作しない!?」

 

 だめ! 思念をいくら送ってもとどかない! トリガーを引いても反応しない!

 

『ハマーン様!? 大丈夫ですか!? 何が起きてるんです!?』

「わからないわ! ファンネルが動作しないの! そちらでモニターできない!?」

『……っ、これはっ!? ハマーン様! サイコミュの数値が無茶苦茶になっています!! 思念波を送るのを一旦止めて下さい!!』

「そんなこと言われても……私何も…… あれ? 何これ?」

『どうしたんです!?』

「何か、虹みたいな光が……光なのに曲線を描いて帯のように広がって……?」

『ハマーン様!? そうだっ、いっそキュベレイの動力を落として下さい!!』

「分かったわ! やってみる!! …………ダメ……動力を落とそうとしても反応しない……」

『ッ! なんてことだ!!』

「ダメ……光がどんどん強くなって……」

『諦めるな! ハマーン! おい! ハマーン!?』

 

 もう眼も開けていられないほど眩しい。

 せめてノーマルスーツに着替えていれば、ハッチを開けて飛び出せたのに。

 ……いえ、ダメね。どう考えても巻き込まれる。

 

 私は何もなせず、ここで死ぬの……?

 せめて……最後にもう一度……シャア大佐に会いたかった。

 

 ダメ……もう意識も遠い……

 でもなぜか、この光に包まれていると暖かくて安心する……

 これは人の意思の光……?

 

 

 そうして、私の意識は途切れた————

 

 

 




ということでお約束の異世界転移です。
次回から舞台はC.Eに移ります。
なお、ハマーン様と軽快なトークを繰り広げてくれたオペレーター君はまごう事なきモブキャラのため二度と出てきません。惜しい人を亡くした。

次回は19時過ぎに投稿です。


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ガール・ミーツ・ボーイは戦場で

若干ハマーン様をポンコツにさせすぎた気もする。
まあでも『オリ主?』タグもつけたから良いよね(目そらし)



◇????年??月:死後の世界?

 

 

 なぜか体が揺さぶられている気がする。

 さらに、男の子の声もする。死後の世界はなかなか騒がしいようだ。

 

「あの! 大丈夫ですか!! 起きて下さい!!」

 

 なに……? 私は死んだんでしょ……? このまま寝かせておいて……

 きっといつか、大佐が迎えにきてくれるの……

 でも、ナタリーとは会いたくないわ……

 

「はやく! ここは危険です!! このままじゃ巻き込まれます!!」

 

 うるさい……この子なにを言って……?

 

 

「戦闘区域がすぐそばまで迫っています! もう時間がないんだッ!!」

「ッ!? 戦闘!?」

 

 そのパワーワードに私は跳ね起きた。死んでる場合じゃない!

 さて、他人が私の顔をのぞき込みながら揺さぶっているところで、ジャックナイフよろしく跳ね起きたらどうなるか…… 自明である。

 

 ゴッッ!!

 

「あぐッ!?」

「んぎゅぅぅぅぅぅ!?」

 

 私死んだ。生き返ってそうそう死んだよ!?

 

「良かった! 目が覚めた!! 早くこっちに!!」

 

 だが、早々に立ち直った男の子は悶絶している私の手を取ると走り出した。

 彼の頑丈さが解せないが、頭の痛みでどうしようもない私は抵抗できない。摂政モードの私なら『この俗物が!!』と罵り、手を払いのけるところなのだけど。

 涙を堪え眼を開ける。当然目の前には男の子の背中があるが、私はキョロキョロと辺りを見渡して状況確認にいそしむ。

 周辺は工業ブロックのようで、遠方には普通の住宅街が見える。でも周囲では爆発音や銃声が響き、火の手と煙もたくさん上がっている。

 結論、確かに戦闘中だ。どう考えても天国ではない。

 でも慌てるな。こんなシチュエーションを私は知っている。昔、ライブラリの書籍データで読んだことがある。そう――古の地球の文豪、『YASUNARI KAWABATA』の名著『The Izu Dancer』の有名な一節だ。

『国境の長いトンネルを抜けると戦場だった』

 死んで天国についたと思い、目を開けたら戦場にいた今の私にぴったりではないだろうか…… 何か違う気もする。

 

 まあいい。肝心なのは天国ではない=私は死んでいないということだ。

 私が地獄に落ちるようなことはあり得ない。確かにMSの戦闘で何人も殺しているけど、戦闘の結果やむを得ずだ。軍法上問題はない。問題があるとすれば私が軍属ではないことくらいか。些細なことだ。

 後はナタリーを見殺し、いや救えなかったことくらいだけど、これはノーカンだよね? それにコロニー落としなんて大罪を犯したわけでもないし。

 よし、死んでいないことが分かったところで次はここがどこかね。

 先ほど見たとおり、工業ブロックや住宅街がある。遠くを見渡せば、私がいるのは巨大な円筒形の空間の中であることが分かる。これは民間のコロニーに間違いなさそうだ。ただ連邦系のコロニーか、ジオン系のコロニーかは知らないけど表向き全て連邦の影響下に組み込まれた今の情勢で、民間コロニーを巻き込んでまで戦闘が起こるとは思えないのだけど……?

 

 そして何よりおかしいのは――

 

 私が事故にあったのはアクシズ周辺宙域でだ。アクシズは宇宙の辺境、アステロイドベルトにあり当然周囲にコロニーなど存在しない。なぜその私が乗っていたキュベレイから離れて、一人コロニーに倒れていたのか。

 いずれにしても、ここがどこかの判断は保留にするしかなさそうだ。

 幸い私はノーマルスーツではなく、ラフな普段着を着ている。まだ顔が連邦に売れているわけでもないので民間人のふりをしながら状況を把握しよう。

 

 

 ところで突然だけど私には3つの対人モードがある。

①素:身も蓋もないけど、17歳の小娘としての私。妹や開発メンバーに接するときはこれ

②軍人モード:淑やかさの中にも凛とした強さを感じさせる。シャア大佐には基本これ。

③摂政モード:なんというか女帝である。『俗物が!!』とか言っちゃう

 ということで、割ところころ口調を変えるだろうけど戸惑わずに着いてきて欲しい。誰にお願いしているのか分からないけど。

 民間人を装うので、当面は①を基本に、場合によっては②を挟んでいこうと思う。③は当分封印ね。女帝な民間人なんかいないし。

 

 

 そうやって私が一仕事終えた頃、少年の目的地に着いたらしい。だけど目的は果たせそうにない。シャッターが閉まっており、その先はがらんどうだ。

 

「くそッ、ここの脱出ポッドも使用済みだ! ごめん、他を探さないと……」

 

 そういって振り向いた少年は私の顔を見てなぜか固まる。もしかして、私の顔って連邦の支配地域に漏れてる? いや、そんなはずは……うん。ここは無視して押し通そう。下手に取り乱す方がまずい。

 一方的に見られているのも何なので私も少年を見つめ返す。

 年は私と同じくらい? いや一つくらい年下かな? 茶色がかった堅そうな髪をしている。 顔立ちはかわいい系というのだろうか? 整っているのだろうが、大佐以外男性に興味がなかった私にはよく分からない。後は全体的に線が細く頼りない感じ――だけど、先ほどまで私を引っ張る腕は意外なほど力強く私の腕力ではふりほどけそうになかった――

 そこで少年が我に返る。彼の少し頬が赤くなっている気がするけど、走った影響かな?

 

「ご、ごめん。とにかく脱出できるものを探さないと。あっちのほうに行ってみよう!」

「ええ、貴方に着いていくわ。でも、どこに向かっているの?」

「ここはヘリオポリスの工場区なんだ。まだ脱出ポッドがあるかもしれないし、なくても貨物船とかで脱出できるかも知れない」

「そう。わかったわ。いきましょ?」

 

 へリオポリスね。そんなコロニーあったかな? さすがにコロニー全てを覚えているわけではないし……サイドいくつか分かればだいたいの位置がわかるのだけど。まだ保留継続ね。

 

「うん。いこう!」

 

 

 なぜか少年はまた私の手をつかんでくる。別に今は咄嗟に走り出すわけでもないし、普通に走れるのだけど……

 まあ手汗で気持ち悪いとかでもないので好きにさせておきましょうか。

 

 

 




しかし作者は種ではバリバリのシン君派で正直キラは大嫌いなのですがなぜSEEDをクロスオーバー先に選んだのか。A.その方が人気がとれるから
まあでも、キラがああなったのはクレイジー赤毛と淫乱ピンクのせいで本当はまともなのだと信じて続けます。

次回投稿は21時ごろです。


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ガンダム?大地に立つ

うーん。ハマーン様が大佐好きすぎてポンコツが止まらない……
でもきっと。キュベレイを駆ってMS戦さえ始まればきっと。



◇????年??月 へリオポリスコロニー工場区

 

 そうして私たちは工業ブロックをさまよっている。

 そこでこの戦闘の原因を悟ったのだった。

 何か連邦の白い悪魔っぽいMSがある。灰色だが。未塗装なのかな? 

 そしてそれを守ろうとしている軍隊と奪おうとしている軍隊が激しく戦っている。私たちは戦火を逃れてきたつもりが一番の激戦地にたどり着いてしまったらしい。市街地の方は陽動ね。これ。

 もしかしてこれはかの有名な『V作戦』!? 私は爆発のショックでタイムスリップし、大佐の(当時は少佐だが)伝説の一戦を目の当たりにしようとしているのだろうか。これは大佐と協力して憎きガンダムを撃ち、インド人の小娘のポジションを奪えというジオンのお導きなのでは?

 

 

 いえ、違う。え、なんで分かるのかって?

 第一にガンダムっぽいMSが5機ある。これはさすがに大佐でもどうしようもない。ザクマシンガンもヒートホークも効かないMSが5機なのよ?

 第二に襲っている側のMSがザクっぽくはあるけど、明らかにザクのフォルムではない。おそらくジオン軍残党がカスタマイズという名の応急修理をしながら使い続けた結果なのでしょう。

 第三は随伴している歩兵。緑のと赤いのがたくさんいる。緑のはいい。目に優しい緑色はジオン軍のスタンダードカラーだ。だけど赤いの。てめーはダメだ。赤を身にまとっていいのは大佐と百歩譲って、ジョニー・ライデン少佐だけなの。彼は紅だけど。パーソナルカラーの横取りなんてジオン正規軍ではあり得ない。それをあんなに大勢で。大方、大佐の偉業にあやかりたいだけの連中なのだろう。

 第四にタイムスリップなんてあるわけない。

 ということでこれは連邦の新型ガンダム秘密建造を嗅ぎつけたジオン残党ゲリラ部隊の襲撃だろう。それにしては、動きが良すぎる気がするのだけど。特に赤の歩兵。忌々しいことだけど赤を着るという意味を分かって、大佐にあやかるためとはいえ相当鍛えているのでしょう。そこだけは認めます。

 

 さて、どうしよう? これは少々まずいわ。私の顔は連邦に売れていないけど、ジオンにも売れていない。アクシズの外ではせいぜいサイド3の一部というところ。当然残党のゲリラ部隊が知るわけもない。下手に戦闘に巻き込まれると普通に攻撃される。これは、一刻も早くここから離れるべきね。

 そんなことを考えていると、私たちが見下ろしている先にいた女性兵士の背後に敵兵が回り込み、撃たれそうになってる。

 

「危ない!後ろ!!」

 

 ちょっ!? そんなことしたら!?

 少年の声に女性兵士は間一髪。後ろを振り返りざまに銃撃。見事に敵兵を倒した。

 だけどその後は、当然大声を出して注目を集めたこちらが狙われることに。

 案の定、銃弾と手榴弾が飛んでくる。銃弾は逸れているが、手榴弾には巻き込まれる———

 

「こうなったら———」

 

 っ!? 少年が突然私を抱き上げる。そして柵から身を乗り出して——

 って、ここから下までいったいどれだけの高さがあると思って……!?

 制止しようとするのも間に合わず、不意の浮遊&落下感が私を襲う。

 そして音を建てて着地。

 

 ————————ッは!? ほんの数秒なのでしょうけど内臓がふわっと浮き上がるようなあまりの不快感に一瞬気を失ってた!

 MSを振り回してGに耐えるのは平気だけどこれはだめ。耐えられない。

 抗議しようと少年を睨みあげるけど、彼はこっちを見ていない。

 着地と同時に私を抱えたまま前方にダッシュ。障害物の陰に滑り込む。そんな私たちの後を銃撃が追っていった。生と死の瀬戸際だったらしい。

 九死に一生を得た私たちは一息つく――いえ、つきたくてもつけないことに気づいてしまった。私たちが隠れた障害物――これ、ガンダムじゃないの!?

 

「ちょっと、あなた! なんでわざわざ敵が集まってくるところへ逃げ込むのよ!?」

「ご、ごめん。だけど一番近い障害物がこれで……」

「だからってこれじゃあすぐに敵に囲まれちゃう!」

「ほら、あそこ! さっきの兵士の人がMSに乗り込もうとしてる。僕らも乗せてもらおう!」

「えぇ!? MSに!? 大丈夫なの!?」

「MSのなかのほうがここよりは安全だよ!」

 

 それはそうなんでしょうけど。ガンダムなら頑丈だろうし。だけど民間人なんて乗せてもらえるもの? でも…… あー、もう! いくしかない!

 私たちはガンダムのハッチに向けて駆けだした。敵の死角側からよじ登り、コクピットハッチにとりついている女性へ近づいていく。

 だけどあと少しというところで横やりが入る。

 女性兵士が銃弾に倒れた。上腕を撃たれたようなのですぐに死にはしないだろうけど。その銃弾を放った歩兵――忌々しい赤を来た兵士が突っ込んでくる。

 そして私より先にハッチへたどり着いた少年にナイフを突きつけ、なぜか固まった。

 

「アスラン……?」

「キラ……?」

 

 何かつぶやきあってる? 二人の関係に興味がないではないが悠長に見守っていられる場合状況でもない。女性兵士の落とした銃を拾い上げ、赤の兵士へ牽制の銃撃を放つ。大佐の赤を騙る兵士——それも少年兵のようだ——など許したくはなかったが、ジオン関係者ではあるだろうことと、一応恩人に当たるであろう少年の関係者であるらしいことを考慮し牽制射撃とした。

 赤の少年兵は機敏に反応して飛び退いていく。3倍とは言わないがなかなかに素早い。

 相手が姿を消したのを見て、私も倒れている女性兵士と固まっている少年をハッチへと引きずり込んだ。

 

 

 

◇????年??月:ガンダム?内部

 

「歩兵が後退していった! 次はMSが来るわ!」

「はやく! 急いで下さい!」

「分かってるわよ!分かってるけど、こう狭い中に三人もいちゃ……」

 

 コックピット内部は混乱に陥っていた。

 女性兵士は慣れていないのか、MSの立ち上げに明らかに手間取っている。それを少年が急かすものだからさらにしっちゃかめっちゃか。

 少年、気持ちは分かるけどそれは逆効果よ

 

 そんな中で私は何をしているかというと心の中で大佐に詫びていた。

 申し訳ありません。大佐。ハマーンは大佐の宿敵であるガンダムに乗ってしまいました…… でも連邦は最新鋭のガンダムにまだ全天周囲モニターとリニアシートを搭載していません。技術力は我々の勝利です。

 そうしているうちにガンダムに火が入る。コックピットのモニターにはOSの起動画面が表示される。

『General Unilateral Neuro-Link Dispersive Autonomic Maneuver Synthesis System』

 なるほど…… OSの頭文字を取ってGUNDAMと呼称していたのね。最後のS二つが抜けている意味が分からないけど……

 だけど、OSの立ち上げに時間がかかる…… 一年戦争でガンダムの奇襲への即応性が低いなんて話があったかしら? 戦場への配備時は常に起動させているの……?

女兵士がガンダムを立ち上がらせる。が、その時には眼前に敵のザクもどきがいてマシンガンを掃射後、近づき実体剣を振り下ろしてくる!

 

「前!?」

「ッ!!」

 

 少年の警告に女兵士はガンダムの腕で受けさせる。ガンッ! と衝撃は走ったがさすがガンダリウム合金。装甲が破損する気配はない。ザクもどきは苛立ったように実体剣を何度も振り下ろし、マシンガンを乱射してくるがダメージはない。理不尽なまでの堅さだ。

 だけど、ガンダムは敵の攻撃に押され、のたうつばかりで一向に立ち上がって反撃することができなかった。

 

「何をやっているんですか!?このままじゃ!」

 

 その通りだ。敵は一撃でこちらを破壊することは諦め、滅多打ちにすることにしたようだ。実体剣を執拗に打ち付けてくる。さすがにこのままではまずいだろうし、援軍にビーム兵器持ちがいたらいくらガンダリウム合金でも荷が重い。このジオン軍残党がゲルググを持っていることはないだろうが、ザクスナイパーくらいなら持ち出している可能性がある。

 

「分かっているけど仕方ないじゃない! 私は正規のパイロットじゃないんだから!」

 

 いよいよ末期的だ。これは私が手を出さないとまずいか……? 目立つことは避けたいけど、命には代えられない。連邦のMSだろうと操縦できなくはないはず。そう考えていると、

 

「ッ! 僕がやります! 変わってください!!」

「え!? あなたMSの操縦なんてできるの!?」

「やるしかないでしょう!!」

 

 潮目が変わった。少し様子をみたほうがいいかしら?

 少年はまずは動作の不具合の原因を取り除くつもりらしい。制御系のシステムを片っ端から調べ始める。

 ずいぶん悠長なことだけど、それで間に合うのかな……?

 

「無茶苦茶だ!こんなOSで動かそうなんて!」

 

 少年は猛スピードでプログラムを弄ったかと思うと、ザクもどきをワンパン。さらに時間を稼いでプログラム修正を終える。見違えるように動きがよくなるガンダム。

 

「武器……後はアーマーシュナイダー……これだけか!!」

 

 ガンダムはバーニアを吹かしつつ実体剣、ヒートナイフらしきものでザクもどきを一突きに仕留めた! 戦闘中にプログラミングするのはやっぱり悠長だと思うけど、その技術も含めてたいしたものだ。

 だけど敵も然る者。素早い判断で機体を捨て後方へ待避していく。ということは──

 

「離れて! 自爆する気よ!!」

「え……?」

 

 パイロットとしての才能はありそうでもやはりそこは民間人。咄嗟の反応を期待するのは無理だった。

 

 ドオォォォォンッ

 

 爆音とともに吹き飛ばされる機体の中でもみくちゃになる私たち。だけどさすがガンダム。びくともしない。

 

 

 私? オデコうちました。痛いです。

 

 




ということでひとまずここまでです。
次回をいつ書くかは…

メインに連載している作品が別にありますのでこちらは不定期更新となります。
気が向いたらチェックしてみてください。


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真実は小説よりも奇なり

 

◇????年??月:ヘリオポリスコロニー工業区

 

 

 

 自爆したザクもどきを最後に敵はコロニー内から退去したらしい。現在、小康状態となっていた。同じく工業区にいたらしい少年の友人達と合流し、女兵士は治療中だ。少年の友人達はガンダムにまとわりついて歓声を上げている。

 面倒事になることが見えていた私は、彼らから少し離れて外の気配を探っていた。コロニー内の戦闘は終わったものの、外ではまだドンパチやっているらしい。驚いたことに連邦・ゲリラ双方にニュータイプまでいるようだ。たいした力は感じないけど。

 

 キュンッキュンッ

 

 予想通り彼らが調子に乗りすぎたらしい。女兵士が威嚇射撃し、少年達を脅し始める。どうやら徴発するつもりのようだ。彼らを一列に並ばせている。そして私にもお呼びが掛かった。面倒なことね。

 

 彼らは既に自己紹介が済んでいるらしい。改めて名前を教えてもらい、

 

「ハマーン・カーンです」

 

 私も名乗る。特に問題はないはず。下手に偽名を名乗って呼ばれたときに反応できないほうがまずい。

 少年はキラ、女兵士はラミアス大尉というらしい。私たちはラミアス大尉の指示のもと、物資の搬出を手伝わされることに相成った。

 

 

 

 

 

 

 ああ、これはコロニー内に入ってくるわね。外で戦闘を続けていたニュータイプたちの意思がこちらに近づいてくる。

 私は作業の手を止め、そちらを見上げる。

 外壁を突き破って、先とは異なる白のザクもどきとオレンジの戦闘機が飛び込んでくる。

 

 今時戦闘機? ニュータイプの無駄遣いね。

 案の定ザクもどきは戦闘機をうまくやり過ごし、ガンダムへ突っ込む。

 キラは突然のことに反応できていない。だけどザクもどき、位置取りが悪いね。そこはもうすぐ……

 

 ドォォォンッ

 

 今度は工場ブロックの建造物を突き破り戦艦が飛び出してくる。連邦の木馬を進化させたような形だ。ザクもどきは射線をふさがれて仕方なく後方へ跳んで距離を取っていた。

 キラは九死に一生を得た形だ。ザクもどきの注意が逸れたおかげでガンダムのセットアップが間に合った。戦艦と共同でザクもどきを追い回す。戦艦は景気よくミサイルをばらまいているけれど……いいのかしら? 

 

 あ……。

 

 やはりというべきかコロニーのシャフトにも誤爆し吹き飛ばした。

 それに焦ったのかキラはライフルというかキャノンのようなものを構える。横でラミアス大尉が慌てて制止するが時既に遅し。

 キャノンから放たれた火線はザクもどきをかすめて右腕をもぎ取り———

 そのままコロニーの外壁に大穴を開けた。

 ザクもどきはその穴から宇宙へ飛び去っていく。結果的に敵MSを追い払うことには成功したけれど、コロニーへ与えた被害だけを言えば連邦の方がひどいんじゃ……。

 

 それにしてもあんな火力をMSに持たせて連邦はどういうつもりなのかしら? 使いどころに困ると思うのだけど……。ビグザムでも一撃で落としたいのかな?

 

 

 

 

 

 

 ひとまず戦闘は終結した。

 私たちはガンダムの手のひらに乗って戦艦のMS発着デッキへ。艦内からも士官や整備員たちがやってきてラミアス大尉と情報交換が行われた。そこにキラがガンダムから降りてきて、戦闘機パイロットのニュータイプから話しかけられる。そして少し喋った後、連邦軍から銃を向けられるという事件が起きた。スパイか何かと疑われたのかしら? だけどその疑いもまもなく晴れたらしい。騒動は収まり、コロニーからの脱出に向けた資材搬入が始められた。

 

 

「ラミアス大尉ー」

 

 搬入を行っていた整備員が外から走ってくる。

 

「どうしたの?」

「MSが一機残っていたんですがご存じですか? G系ではないようなんですが」

「いいえ? どれのこと?」

「今運んできてます。ほら、あれですよ」

 

 整備員が指さした方向には、曲線で構成された白い花のようなMS———

 

「私は知らないわ。どちらかと言えばザフトのものに近い———」

「———キュベレイ」

 

「……あなたあのMSについて何か知っているの? ハマーンさん?」

 

 しまった! 思わず口に出してた!

 ラミアス大尉はこちらを睨んで観察しており、周囲の兵士達も空気を察したようだ。今度は私が銃に囲まれる番だ。

 

「ラミアスさん!? 一体何をやってるんですか!?」

 

 事態に気付いたキラがラミアス大尉に噛みつくが状況に変化はない。ことここに至ってはもう誤魔化しようがない。私は大人しく両手を上げる。

 

「……条約に基づいた捕虜としての扱いを要求するわ」

「もちろん。あなたが素直にこちらの取り調べに応じてくれたらだけれど」

 

 

 

 ———なんとか切り抜けられるかしら?

 

 

 

◇????年??月:木馬もどき艦内

 

 

 

「貴様の尋問を担当するナタル・バジルール中尉だ」

「これはご丁寧にどうも。尋問のほうもお手柔らかにお願いします。中尉殿」

「それは貴様の態度しだいだな」

 

 態度しだいか。……バジル・ナタルール中尉とか言ってボケちゃダメだろうか。ダメだろうな。あまり煽り耐性があるタイプには見えない。

 そんな益体もないことを考えているとカシュッとドアを開けてもう一人女性が入ってきた。

 

「ナタル中尉。私も同席させてもらっていいかしら?」

「ラミアス大尉。あのMSの調査はよろしいのですか?」

「そちらはマードック軍曹に任せてきたわ。彼なら大丈夫。それに彼女からあのMSについても聞き出すなら技術系の人間もいたほうがいいでしょう?」

「そうですか。ではよろしくお願いします」

「ええ」

 

 ということでこの女性ふたりが私の尋問担当になったらしい。

 

「改めまして。私は地球連合軍大尉、マリュー・ラミアスよ」

「連合軍? 連邦軍ではなくて?」

 

 連邦の一方面組織か何かだろうか?

 

「連邦? そうね厳密にいえば(大西洋)連邦ね」

 

 どうやらそういうことらしい。

 

「それじゃあ今度はあなたの名前と所属を教えてくれるかしら?」

「ラミアス大尉には先ほど名乗りましたが、ハマーン・カーン。所属はアクシズです」

 

 迷ったけどひとまず正直に答えておく。現状アクシズという名前がオープンになっているわけでも連邦と正式に戦争状態にあるわけでもない。特に問題はないだろう。

 

「アクシズ? 聞いたことがない名前ね。どこかの組織の秘匿部隊かしら」

「そのようなものです」

「貴様! 適当なことを言うな!!」

 

 本当のことなんですけど……ジオンの秘匿組織のようなものでしょう。

 

「待って、ナタル中尉。あまり時間もないのだし、まずは先に進めましょう。気になった点は後からまとめて追求すればいいわ」

「……了解しました」

 

 まあ、小康状態とはいえいつまた戦闘が再開するかも分からないものね。

 

「それじゃあ次は年齢と階級を」

「17歳。階級はありません」

「階級がない?」

「軍属ではないので。軍から委託を受けてMSのテストパイロットを務めているんです」

 

 嘘じゃない。他に摂政をやってたりもするけどね。

 

「貴様のような小娘がか!? 適当なことを!」

「小娘って……これでもMSの操縦には自信があるんですけど。そうですね。さっきの白い敵MSくらいなら軽く落としてみせますよ」

「言うにことかいてクルーゼをか! 笑わせる!」

 

 クルーゼなんてエース、ジオンにいたかしら? 聞いたことないけど。やっぱりたいしたことないんじゃ? それになぜこの女は一々突っかかってくるのか。更年期障害かしら?

 

「ナタル中尉、それくらいで。それでMSの操縦が得意ということはあなたコーディネーターなのかしら?」

 

 調整者? ジオンの一残党がそう名乗っているの? アースノイドとスペースノイドの間を調整するとかそんな意味かしら?

 

「……いいえ。私はそのコーディネーターというのとは関係ありません」

「MSの操縦が得意だが、コーディネーターではない? 何を言っているんだ貴様は!?」

 

 お前が何を言ってるんだ。MS=コーディネーター? なにそれ?

 ラミアス大尉はどこかに通信を始めた。これは医務室?

 

「ごめんなさい。彼女の血液検査の結果は出ている?」

『ラミアス大尉。ええ、まだ細かい分析までは終わっていませんが、だいたいのところは。何かありましたか?』

「とりあえず、彼女がコーディネーターかどうか知りたいのだけど」

『検査結果を見る限りそれはありませんね。彼女はナチュラルです』

「そう。わかったわ。ありがとう」

 

 そう言ってラミアス大尉は通信を切る。血液検査でコーディネーターかどうか分かる? ますますコーディネーターが何なのか分からない。別に秘匿しているわけではないようだけど……。そしてナチュラルというコーディネーターの対極にあるらしい存在。私はナチュラルにあたるらしい。

 ……まさかニュータイプと強化人間のことを言っているのだろうか?

 

「よし。ひとまずあなたについてはここまででいいわ。次はあのMSについて教えて」

「はぁ」

「あのMSはキュベレイというの?」

「その答えに対する回答はYesでありNoですね」

「どういう意味かしら?」

「あの機体はまだ試作実験機という扱いで名はありません。ですが、制式化の際にはキュベレイという名前がつくことになっています」

「なるほど。それではあのMSの動力は?」

「動力? MSの動力なんて一つしかないと思いますけど……?」

 

 MSの動力なんて核融合炉以外にあるわけがない。ミノフスキー粒子と核融合炉があってこそのMSだ。

 

「そう。……そうね。では装甲の材質は?」

「……ガンダリウム合金です」

 

 ”γ”であることは教えてあげないけどね。

 

「ガンダリウム合金? そんな合金あったかしら?」

「ルナチタニウム合金という言い方でしたらどうですか?」

「ルナチタニウム? 名称からするとチタン系合金みたいだけど……」

 

 連邦の技術士官がルナチタニウムを知らない? そんなことがありえるの?

 

「まあいいわ。それじゃああのMSの出所だけれど……ザフトではないのね?」

「ザフト? いいえ違います」

「それではオーブ?」

「いいえ」

「ユーラシア連合? それとも東アジア共和国かしら?」

「どちらも違います」

 

 この人何を言ってるの? ザフト? オーブ? ユーラシア連合? どれもジオン残党の組織名なの? でも東アジア”共和国”って……?

 

「貴様! いいかげんにしろ! そのどれでもなければ大西洋連邦製とでも言う気か!?」 

「そんなこと言いませんけど……って”大西洋”連邦?」

「どうかした?」

「”地球”連邦ではなくてですか?」

「? いいえ。私たちは地球連合軍、そのうちの大西洋連邦に属する部隊よ」

 

 

 

 まさか? まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか!?

 

 

 

「……あの。こちらからも質問させていただけませんか?」

「貴様! 調子にのって何をッ」

「答えるのはあなたたちが敵兵でも常識的に知っているだろうと思う範囲で構いませんから!」

「……わかったわ。言ってみなさい」

「ラミアス大尉! 何を!?」

「ナタル。少し私に預けて」

「……承知しました」

「それじゃあどうぞ。ハマーンさん」

「今起きている戦争で戦っている勢力はどことどこでしょうか?」

「私たち地球連合軍とプラントの軍隊、ザフトよ」

「プラントというのはどういう国家ですか?」

「かつての生産コロニー群が独立したものでほぼコーディネーターだけで構成される国家ね」

「先ほどの話にも出てきたコーディネーターとナチュラルとは何ですか?」

「遺伝子調整によって生まれながらにして強靱な肉体と優秀な頭脳を持つとされるのがコーディネーター。対してナチュラルは遺伝子操作をしていない人のことね」

「それでは今の戦争はナチュラル対コーディネーターで行われているということですか?」

「ナチュラル・コーディネーターが共存する中立国家もあるし、地球連合にもある程度はコーディネーターがいるけれど大枠はその通りよ」

「…………今までの回答が真実だと証明するようなものはありますか?」

「貴様! どこまでも調子に乗って! 何を聞くのかと思えば子供でも知っているようなことばかり! あまつさえ証明しろだと!? どういうつもりだ!?」

 

 バジル中尉は怒り心頭のようだけど、ラミアス大尉の方は何か悟ったのか、端末の前に私を案内する。

 

「どうぞ。自分で見てみなさい」

「…………」

 

 そこには私が全く知らない歴史が綴られていた。そしてラミアス大尉の先までの回答が正しいものだと裏付ける内容だった。

 私は今、アクシズ周辺にいるのでもなければ地球圏にいるのでもない。信じられない。信じたくないことだけどまったくの異世界にいるらしい。

 

 

 

 こんな。こんなことって……。私はもうセラーナやアクシズのみんなに会うことも、シャア大佐に会うこともできない……。

 

 私はもう、顔を両手で覆って泣き崩れることしかできなかった。

 

 

 




ということでハマーン様が現実を理解したところで今回はここまでです。
次回はまたそのうちに。


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