私を助けたのはとある店長兼ヒーローだった (水被り)
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プロローグ

処女作ですのでご了承ください。


とあるところに一軒の店があった。

 

大きなビルが建ち並んでいて、スーツを着た人やパトロールをしているヒーローが歩道を歩いてるなか一つだけ変わった店があった。

 

その店にはこう書かれていた。

 

『修理屋兼リサイクルショップ サイクル・ボーン』

 

店の窓ガラスには『壊れたもの、なんでも直し(ます)」と書かれた紙が一枚。

 

店の中を覗いてみれば、あるのは古めかしい物やデパートにでも売ってそうな普通な物、目新しい物までもがあった。

 

家電、家具、衣類やおもちゃ、普通のコンビニの二倍くらいある店の中に沢山あり、何より特徴的なのはどの商品も新品であることだった。

 

別に他の所から買って売ってるわけではない。ここの店長は『物を直す個性』を持っていて、その個性を使ってすべての商品を新品に直しているわけである。大切にしていた物が壊れてしまって人達にとってはとても便利な個性だ。

 

そんな店の中にいるは、この店のたった一人の従業員、七咲魔理華(ななさきまりか)がいた。彼女はいろんな諸事情があって店で住み込みで働いてもらっている。

 

「客、来ないですね」

 

魔理華は誰もいない店で独り言を呟いた。

 

いつもなら客とかも結構来て、持ち運びすることができない物を修理のお願いする電話もよく来るが、今のところ来た客は一人だけだ。店長が帰ってくるまで休もうとしたら

 

チリンチリーンと入り口から二人の男が入ってきた。

 

「いらしゃいませー」

 

魔理華はすぐさま営業スマイルで出迎えた。

 

「おい、嬢ちゃん手をあげやがれ」

 

そういって一人は刃物を、もう一人は個性と思われるトゲトゲの両腕を出してきた。

 

「.....わかりました」

 

魔理華は何の抵抗もなく手をあげ、男らはレジを物色した。

 

「おい見ろよ、リサイクルショップなのに万札がいっぱいあるぞ!」

 

「ついでに金目の物も持っていこうぜ。お前はあの女を縛っとけ」

 

「わかったよ。丁度いいことにロープがあったし」

 

刃物を持った男が魔理華を縛ろうした。

 

「う~らの畑でポチが鳴くぁ~っと、今帰ったぞ。店番ご苦労さん」

 

するとサイクル・ボーンの店長が変なリズムで歌いながら帰ってきた。

 

「だ、誰だお前は!」

 

「誰って、この店の店長だが。お前ら見た感じ敵(ヴィラン)みたいだが」

 

「うるせぇ!ケガしたくなかったらそこからがばァ!」

 

店長は強盗の腹を殴って気絶させた。

 

それを見たもう一人の強盗は魔理華の後ろに回り、首筋に刃を立てた。

 

「お、おい!動くんじゃなえぞ!こいつがどうなって痛っ!」

 

魔理華は強盗の腕に噛みつき隙をついて逃げ、店長は強盗の間合いに入って腕を掴み、背負い投げで締めた。

 

「魔理華、お前が動く必要はねぇよ。刺されて死んだらどうするんだ」

 

店長は落ちてたロープで二人の強盗を縛りながら、魔理華を注意した。

 

「すいません、修哉さんの役に立ちたくて...」

 

魔理華は反省し、少し落ち込んでいた。

 

「...ぐっ、お前一体何もんなんだ」

 

気絶していた強盗が目を覚まし、店長に聞いてきた。

 

店長の名前は直崎修哉(なおさきしゅうや)、『物を直す個性』を使って修理屋とリサイクルショップを合わせた商売を始め、成功した男。個性を使うためには資格が必要であり、その資格を取得するために名門の高校に入って無事卒業していった。

 

そして彼にはもう一つの職業がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あまり知られていないと思うが、『エコロ・サイクル』一応ヒーローだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はヒーロー、だけど普通のヒーローとは違う正義を持つヒーローであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリキャラ設定

名前 直崎 修哉

年齢 26歳

本業 ヒーロー

副業 修理屋兼リサイクルショップ サイクル・ボーン 店長

ヒーロー名 修復ヒーロー エコロ・サイクル

趣味 レトロゲーム(主にポケ〇ン) 商品の手入れ 筋トレ

特技 武術 棒術

好物 サバの味噌煮 

外見 茶色の天然パーマ 少したるんだ目(たまにキリッとした目になる)

性格 能天気かつお人好し

個性 不明(本人曰く物を直す個性)

頑張れば8階建ての建物を完璧に直すことができる。直し方の種類も二つあり、
一つは壊れた部品が十分に揃っているとき、磁石みたいにくっついて直る『巻き戻し型』
もう一つは壊れた部品が不十分なとき、植物が生えるかのように直る『再生型』

この作品のオリジナル主人公

子供の頃に考えてた仕事を実現するために雄英高校に入って資格を取得した。
ヒーローになった後、副業としてサイクル・ボーンを営業している。
困っている人がいると助けようとする行為でいろんな人たちに好かれている(主に女性)。
恋愛に関しては疎くていわゆる鈍感。



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No1 昔の私

遅くなってしまいました。


私の目の前に見えたのは幼き頃の私と優しい両親がいた。

父と母は良好であり、一緒に外へ出てピクニックに行くこともあった。

毎日がとても楽しく幸せであり、かけがえのない日々でした。

そんな時、私は両親を事故で亡くしてしまい親戚の家に預けられることになった。

しかし親戚の叔父叔母とその娘から私のことよく思われていなかった。

 

叔父叔母は私を叩いたり物を投げつけたりひどいときは三日間、何も食べさせて貰えなかった。小学校を卒業し、親戚の娘と同じ中学校に通うことになるが、親戚の娘を中心としたグループにいじめられていた。心身ともにボロボロだった。

 

後ろを見るとテレビのニュースを見ていた中1の頃の私がいた。

 

『本日未明、ヒーローが殺害されました』

 

ヒーロー殺し ステイン 何人もののヒーローを殺害、再起不能した凶悪犯。

 

『おそらく彼は自分だけの思想があり、その思想に基づいてヒーローを襲っているのかもしれません』

 

その思想は何か、そこまで専門の学者は言わなかった。

だが、私はその思想について少しだけわかったつもりだった。

 

ヒーローとは人を助ける存在。けどヒーローたちは悪を見落として助けようとしない。

それは今のヒーローが堕落しているからだ。だからヒーローは私を助けてくれない。

彼はそんなヒーローたちを減らすために、正しきヒーローを増やすために、ヒーローを殺しているんだ。

 

だったら私も堕落したヒーローを、ヒーロー殺しのように退治してやるんだ。

 

偶然か必然かヒーロー殺しのニュースが映り、それを昔の私にとっては目指すべき存在になっていて、

その頃の私を見ていると、本当に悲しく思えた。

 

 

 

________________________________

 

 

 

私が目を覚ますと見慣れた自分の部屋だった。

 

「......なんで昔のことが急に夢の中に出てきたのかな?」

 

私は自分の夢のことに疑問に持ちながら昔のキャラクターと思われるぬいぐるみをなでた。

 

『おーい、魔理華起きたか~。起きたんなら顔でも洗ってこい』

 

下の階から修哉の声が聞こえ、洗面所へ向かった。

 

(あの頃の私は精神的に追い詰められていたからあんな考えに至ったわけだけど、今となっては黒歴史ね)

 

私はヒーロー殺しみたいになると決めた日、叔父叔母の家から出ていきいろんなヒーローを襲ってきた。

殺害や再起不能とまではいかなかったが、3人ものヒーローを負傷させることができた。

けどヒーローを襲ったことで思っていた以上にヒーローたちに危険視されるようになった。

ある日、ヒーロー達から逃げた際に強いヒーローに出会ってしまった。

 

No2ヒーロー エンデヴァー 事件解決数史上最多の記録を持つ燃焼系ヒーロー

 

そのエンデヴァーの猛攻をくらってなお、生きて逃げ出したことが今でも信じられなかった。

そんな事を考えながら顔を洗い、タオルで濡れた顔を拭いた。

 

(でも、もしあんな事がなかったら修哉さんに出会わなかったね)

 

エンデヴァーから逃げた後、人気(ひとけ)のない路地裏で倒れた。

身体中はエンデヴァーの炎でおった火傷がヒリヒリと痛み、動く元気もなかった。

火傷を冷ますかのように雨が降るが、それが逆に私を痛めつけていた。

身体の体温は徐々に下がってるのがわかった彼女は思った。

 

このまま死んじゃうのかな?死んだ両親に会えるかな?

 

今までの苦しみから解放されると思えば思うほど喜びのような感情で溢れかえってくる。

すると、雨の音に紛れてかすかに足音が聞こえてくる。

 

「...あれ?ま...れか...れて....お~い......」

 

激しくなってきた雨で姿や声がよくわからなかった。

自分の意識もここで途切れてしまった。

 

 

 

 

______________________________

 

 

 

 

 

「......ここは、どこ?」

 

意識が戻った魔理華は辺りを見て、部屋の中にいることに気がついた。

ケガしたところを見ると包帯やガーゼなどで覆っていた。

自分は裏路地で倒れたからここにいるのはおかしい。

考えられるとしたら

誰かに匿(かくま)われたか連れ去られたかのどっちか。

面倒なことになる前にここから出ていくことにした。

 

扉をゆっくり開け、近くに人がいないのを確認し廊下に出た。

今いる場所は最上階なのか下り階段あり、その反対に窓があった。

窓を少し開けて下を見て何階にいるのか確かめた。

 

(...どうやら今私がいる階は四階のようね)

 

 スタッ...スタッ...スタッ...

 

階段のほうから足音が聞こえてきた。

慌てた私は部屋に戻り寝ているふりをした。

 

「おーい、起きてるか?...まだ寝てるみてぇだな」

 

扉が開き男の人がやってき、状態を確認して部屋を出た。

足音が聞こえなくなるのを待ち、扉を開けて部屋から出ようとした。

 

「やっぱり起きていたみたいだな」

 

その時、後ろから声が聞こえ、私は背後を取られないよう素早く振り向いた。

扉の陰からさっきの男の人が出てきた。

 

「下の階に朝ご飯用意してあるからついてこい」

 

そう言うと男は下の階へと向かって行った。

 

「あなたは...一体誰なの?」

 

思わず私は男に問いかけた。

 

「俺は直崎修哉、リサイクルショップの店長だ」

 

これが私と修哉さんの出会いでした。

 

 

 




オリキャラ設定

名前 七咲 魔理華(ななさき まりか)

年齢 16歳

趣味 パズル 読書

特技 料理 掃除

好物 ホットケーキ 

外見 黒髪のふわふわした短めロング 少しつりあがった目 

性格 真面目 積極的

個性 火炎弾 

右腕に棒状のメーターがついていて、あることを口にすると手から火炎弾を発射でき
メーターの赤が減っていく。メーターの赤がなくなると火炎弾は出せなくなる。
炭酸飲料を飲んだり、寝ることでメーターの赤が回復する。
この個性にはまだ何かがあったりする。

この作品のオリジナルヒロイン&もう一人の主人公

5ヶ月前まで敵(ヴィラン)として活動していたが
エンデヴァーにやられそうになり、逃げた先に修哉に会い助けられた。
以来、修哉に対して絶対的な敬愛と恋心を抱いているが
本人はそのことに関して気づいてない。



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No2 新たな人生

魔理華の昔の話の続きを頑張って書きました。



洗面所で歯を磨き顔を洗い終えた私は食堂に着いた。

食堂のキッチンには朝ご飯の用意をしている修哉さんがいた。

 

「お、来たか魔理華。朝ご飯今持ってくるな」

 

私はいつもの席に座って、修哉さんは私の前に朝ご飯とカフェオレを置いてくれた。

今日はハムエッグトーストだった。

 

私は大きく口を開けハムエッグトーストを頬張った。

焼けたパンを噛むとサクリと音が鳴り、噛めば噛むほど小麦の味がしてくる。

次に来たのは主役ともいえるハムエッグだ。

焼いたハムの味と白身の味、二つの味が混ざり合い美味しく感じた。

食べ進めると半熟の黄身の濃厚な味が加わり、さらに美味しいものへと変わった。

 

カフェオレを飲むと優しい苦みとほのかなミルクの甘みがした。

口に残っていたハムエッグの味が流されていき、すっきりとさせていく。

このカフェオレはいつも修哉さんがブレンドしていて毎朝いつも飲んでいる。

 

あの時、初めて修哉さんのカフェオレを飲んだ時は本当に嬉しかった。

 

 

___________________________

 

 

 

「とりあえず飯でも食いな。お前、腹減ってるだろ」

 

並べてあったのはスクランブルエッグとソーセージとパンとカフェオレだった。

私は遠慮なんか気にせず無我夢中で食べた。

親戚に預けられから普通にご飯を食べることはなかった。

敵(ヴィラン)をやっていた時もただ生きるがために食べてた。

久々に『美味しい』ということを、普通にご飯を食べていると感じられた。

 

「余程腹が減っていたみてえだな。まだ食べたいなら作ってやるけど」

 

私は首が取れるかと思うほどに頷き、それを見た修哉さんはにっこりと微笑んだ。

三皿ほどおかわりをして私は満腹感に浸っていた。

 

「ところでお前、どうして路地裏で倒れてたんだ」

 

やられた、優しかったのはこのことを聞くためだったのかと私は思った。

相手の考えに気づいた私は敵(ヴィラン)だということを悟られないよう黙秘した。

相手も私の答えを待ち続けた。

 

「まあ、何も言いたくないならいいけど」

 

そして相手の方から諦めてくれた。

諦めてくれたのはいいけど、次は何が来るか私は警戒を続けた。

 

「なあ、もし行くところがなかったらここに住むか?」

 

最初はこの人が何を言ってるのか分からなかった。

どうしていきなりここに住むかなんて聞くのかしら?

 

「俺はヒーローの資格免許を持っているから一応俺はヒーローなんだ」

 

ヒーローだとわかった私は後ろに下がり、いつでも逃げれる体制をとった。

あとは逃げれるタイミングを待つだけ...。

 

「だけど、俺はヒーロー活動に関しては興味ない」

 

えっ...どういうこと?私は驚きを隠せられなかった。

 

「人間は善と感じれば善、悪と感じれば悪と決めつけるもんだ。それを覆すことは難しい。ヒーローといえばヒーロー、敵(ヴィラン)といえば敵(ヴィラン)。一般人はそういうだろう」

 

「正義だの悪だの俺は知らねえ、困っている人は助ける。それが人の道ってものだ」

 

「例え、助ける相手が敵(ヴィラン)の真似事をするヤツでもな」

 

この人は最初から私のこと知っていて、わざと聞いてきたみたいだ。

 

「助けたい人を助けられないのがヒーローなら俺はヒーローをやめてやるさ!」

 

この人はヒーローとは違う、あのオールマイトに似ているようで似ていない正義を持っている。

ヒーロー殺しみたいな思想を持っているわけではない。

私はこの人に私のヒーローというものの根底を変えさせるものを感じた。

 

「俺のことを信じないならそれでいい、けどこれだけは約束する」

 

「俺は絶対に、お前を守ってやる!」

 

この人なら信じられると私はそう思った。

 

「わかりました、住んでみます」

 

「そうか、じゃあまずはここに住むについての説明だが三食寝床付きで土日の日の俺がいない間の店番と商品の手入れと電話の受け答えをしてくれれば家賃はなしだ」

 

「は...はい、わかりました」

 

「ところで名前聞いてなかったな。言いたくないならいいけど」

 

「いえ大丈夫です。私の名前は魔理華、七咲魔理華です」

 

「魔理華か、いい名前だな。次に仕事の時の服は...」

 

その日から私の人生は大きく変わった。

毎日美味しいご飯を作ってくれて、服などの必要品も用意してくれたりした。

時々ゲームで遊んだり仕事で起きたことなどを話したりして楽しんだりした。

あの人は...修哉さんは私を本当の家族のように慕ってくれました。

 

 

___________________________

 

 

 

私は修哉さんに初めて会ったときのことを思い出しながらカフェオレを飲んだ。

気づくと朝ご飯は全部平らげていた。どうやら無意識に食べていたようだ。

 

「食べ終えたんなら食器は自分で洗えよ。さっき仕事の電話がきたから店番よろしくなー」

 

「はい、わかりました。何時ごろに戻ってくるんですか?」

 

「1時間半ぐらいだ。仕事の依頼が来たら記録しろよ」

 

「わかりました。頑張ってきてください!」

 

今の私にとってここは帰るべきところであり、新たな人生の始まりの場所であった。

そして修哉さんから聞いた”あの言葉”、”あの言葉”のおかげで今の私がいる。

私を家族として迎え入れて私の人生を変えてくれた。

これ以上の幸せはない、このままで十分だ。

 

これ以上の幸せはない。その時の私はそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

これ以上の...

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、新キャラクターのお話を書きます。


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No3 逃げてきた子供

彼がものごころがつくころ、パパとママが喧嘩をしていた。

 

毎日のように怒鳴り合って、妹の泣く声が響いていた。

 

パパとママが離婚をし、彼らはママのところで暮らすことになる。

 

その日から母親は自分の子供に暴力を振るうようになった。

 

母親は酒を飲んでは僕らに殴ったり蹴ったり酒瓶を投げてきたりなどしてとても怖かった。

 

食べるものも一日に一個のハンバーガーというものだけだった。

 

一気に全部食べないで少しずつ食べて、まだ幼かった頃の妹には兄がよく噛んでから食べさせてた。

 

もういやだ、そう思った彼らはここから抜け出すことを決意した。

 

母親が寝ている間に彼らは大きな椅子を玄関のドアのところまで運び、かかっていたカギを開けて、二人一緒にドアを押して開けた。

 

彼らはやっと外に出ることができた。彼は妹の手を引いて走り出した。

 

走って、走って、走って走って走って走り続けた。

 

できるだけ遠くへ、できるだけ遠くへ......。

 

誰かに助けを求めることも考えずに走り続けた。

 

でも体力も底をつき、おなかも減って動けなくなってきて彼らは路地裏で力尽きた。

 

 

 

____________________________

 

 

 

 

「魔理華どうだ?この子らの容態は」

 

「はい、今はぐっすりと寝ています。そっとしておいたほうがいいと思います」

 

魔理華は手ぬぐいを水に浸してよく絞ってから男の子の額に乗せた。

 

「とりあえず俺は目を覚ました時のためにご飯を作ってる。何かあったら教えろ」

 

「はい、わかりました」

 

俺はキッチンへ行きご飯の準備をした。

夜中に店の近くの路地裏であの子らが倒れているところを発見した俺は匿うことにした。

俺のベッドに寝かせて一晩中様子を見ていたところを起きた魔理華がきて、魔理華が代わりに様子を見ることになった。

 

「修哉さん!二人が目を覚ましました!」

 

「少し手を貸しながら連れてこい、歩く力がないかもしれないからな!」

 

魔理華は女の子を背負って男の子の手を引きながら食堂に連れてきた。

子供らはここがどこなのかわからずキョロキョロと辺りを見まわしている。

子供らを椅子に座らせて前にありったけのご飯を置いた。

 

子供らは最初にスンスンと匂いを嗅ぎ、危険なものじゃないとわかると手で食べ始めた。

二人はご飯を口に放り込んでは喉を詰まらせそうになったりした。

 

「修哉さん...、この子達はもしかして」

 

「ああ、服もボロボロだし、所々に痣(あざ)とかもあったからな。たぶん、この子らは虐待を受けていたに違いないな」

 

「修哉さん、この子達はどうすれば...」

 

「とにかく俺は警察に電話する。お前はそれまでの間この子らを見ていてくれ」

 

「はい、二人ともこっちにおいで~。お姉ちゃんと一緒に遊びましょう」

 

「店のおもちゃを使ってもいいから遊ばしてやれ」

 

魔理華は子供らを連れて、おもちゃがある方へ行った。

 

「もしもし、実は家の近くに子供二人が倒れてまして......」

 

俺は家の電話機から警察に通報した。

 

 

 

____________________________

 

 

 

 

「ちょっと待っててね。今おもちゃ探すから」

 

魔理華は店のおもちゃ箱をあさり始め、子供二人は物珍しそうに周りを見ていた。

二人は今までにこれほど色鮮やかなものを見るのは初めてだった。

男の子は魔理華が出した飛行機のおもちゃを手に取った。

それが気に入ったのか持ったまま走り回った。

 

「他にもおもちゃがあったような...。保管庫にしまっていたかしら?」

 

そう言うと魔理華は一部の商品をしまっておく保管庫の部屋に入っていった。

女の子の方は小さなボールに目が行っていて、そのボールを手に取り遠くへ投げた。

ボールはトン...トン...と跳ね、棚に当たりながら行った。

女の子はそれを追って歩いていった。

 

男の子は自分の妹がいなくなってることに気づき、探し始めた。

妹は店の出入り口の前で何かを見ていた。

男の子は妹を見つけて元いた場所に連れてこうとしたが妹の視線に気にした。

視線の先には床に映っている長細い影だった。

その影を辿っていくと...

 

 

 

 

 

ガラス越しに見ているバールを持った自分の母親がいた。

 

 

 

 

 

 




頑張って書いたのですが誤字があったりします。そして誤字があることを教えてくれた人へ

読んでくれましてありがとうございます。


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No4 新たな家族

        ガシャーン!

 

「!何の音だ、まさか...魔理華!」

 

俺は大きな音が聞こえ、魔理華に呼びかけた。

店の方から音が聞こえたから俺は店のある階へ急いだ。

 

「魔理華いるか!いるなら返事しろ!」

 

「修哉さんすみません!倉庫でおもちゃを探してまして...」

 

「それで、音がした場所は」

 

「ここです!その時子供達はいませんでした」

 

魔理華は俺を案内した場所は出入り口の横のガラス張りだった。

 

「内側にガラスが...、外から割ったんだな」

 

「でも、誰がそんなことを」

 

「誰かはわからない。最悪の場合、あの子らの親かもしれない」

 

「じゃあ、あの子たちはその親に」

 

「とにかくあの子らを探すぞ。大事になる前に見つけ出さねえと!」

 

「はい!」

 

「俺は左側を、魔理華は右側を探せ!見つけたら真っ先に俺にメールで伝えろ!」

 

「わかりました!」

 

俺と魔理華は二手に分かれてあの子らを探しに行った。

俺はあの子らが無事にいることを祈りながら走った。

 

 

 

__________________________

 

 

 

 

二人を探してはや10分、まだ見つかっていない。

このままだとあの二人が死ぬかもしれない、そう思えば思うほど焦りを感じてくる。

私は走る速度を速めようした。

 

ガン......ガン...ガン...

 

横切った路地裏から金属が当たる音が聞こえてきた。

もしやと思い、私は路地裏へ入っていった。

 

音を頼りに焦らず慎重に進んで行った。

 

「まちなさいよ...まちなさい!」

 

すると音と一緒に女の声も聞こえ、私は足音を立てずに歩いた。

曲がり角で止まりそっと覗いた。

 

「どうして、ワタシの子供なのに、どうして言うこと聞かないの!?」

 

よれよれの服を着て右手にバールを持った女性と

その奥に怖がって動かないあの子供たちがいた。

私はケータイを取りだし修哉さんに今いる場所をメール送信した。

 

「大丈夫よ、すぐに終わるから...終わるから!」

 

「待ちなさい、そこのあなた!」

 

私は大声で叫び、相手の目線が子供から私に向いた。

 

「何をしてるんですか?その子共達はあなたの子供ですよね。」

 

「ええそうよ、アンタには関係ないでしょ」

 

「どうして自分の子供を傷つけようとするの、その子達が何したの!?」

 

「うるさいわよ、この子をどうしようがワタシの勝手でしょ‼」

 

女性はバールを振り回し私に近づいてきた。

私は後ろに下がりつつ、隙をうかがった。

そして女性が大きく振りかぶった、私はチャンスだと思った。

思い切り振る前に素早く近づき女性の腕を押さえた。しかし

 

女性は私の目の前に手のひらを出した瞬間、強い光が出てきた。

その光をまともに見てしまい、反射的に手を離してしまった。

横腹から重い衝撃がきて、固い壁にぶつかった。

 

「これでゆっくりこの子を殺せるわ」

 

「や、やめなさい...痛っ...!」

 

壁と横腹からきた衝撃でまともに動けず、目もやられてしまった。

今の私では殴り殺されるだけ、でも

それでもあの子達を助けたい。

 

足音と金属を引きずる音が遠ざかっていく。

 

動け...!

 

「まずは千代、アンタからよ」

 

動け...動け...!!

 

「や...やめ...やめろ...」

 

動け...動け...動け!!!

 

「ちょっと奥さん、自分の子供を物で殴るのはダメだろう」

 

「だ、誰よアンタは!?」

 

光でやられた目もだんだん見えてきた。そこに映ったのは私のヒーロー

 

「すまん遅れて、お前は休んでいろ」

 

「修哉さん...!」

 

「もう、ワタシの邪魔をしないでよ!」

 

女性は修哉さんに向かってバールを振り回した。

 

「気をつけて下さい。その人、手のひらから光を出す個性を持っています!」

 

「わかった」

 

修哉さんは後ろに下がってバールを避けていた。

そしてバールが地面に叩きつけた瞬間、修哉さんは足でバールを押さえた。

女性はバールを引っ張るが女性の力では無理だった。

 

「あんた、何であの子らを殺そうとするんだ?」

 

「全部あの子が悪いのよ、あの子が生まれてからワタシの人生を滅茶苦茶にしたのよ」

 

「それで殺そうと...」

 

「そうよ、あの子が死ねばワタシは幸せに」

 

「それは自分の人生だけだろうが!」

 

修哉さんは大きな声で怒鳴った。その声に私は少し驚いた。

私は初めて修哉さんが怒るところを見た。

 

「ただテメーが失敗してダメになっただけだろうが」

 

「ただテメーが進む道を間違えただけだろうが」

 

「だからってその怒りを自分の子供に八つ当たりするんじゃねえ!」

 

「うるさい!!」

 

女性はバールから手を離すと包丁を取りだし、襲いかかった。

 

「修哉さん!」

 

けど修哉さんは普通に避けて包丁を持つ手を掴んだ。

女性は片手を出そうとするが修哉さんはその手を押さえた。

 

「だからってテメーの人生を、テメーの子供に押し付けんじゃねーーー!!!」

 

修哉さんは手を捻って包丁を落とし、女性を押さえつけた。

私は子供二人の方を見ると、安心と悲しみが混じったそんな顔が見えた。

 

 

 

____________________________

 

 

 

 

あの子の母親を連れて路地裏から出ると警察が待っていた。

 

「では、この人を署まで連行します」

 

「おう、よろしく頼むわ」

 

「一応聞くがあの子らはどうなるんだ」

 

「はい、おそらく施設に預けられるか血縁の方にもらわれるかですね」

 

「おう、ありがとな」

 

修哉さんは警察の方にお礼を言った。

 

「お前は後で説教だからな魔理華」

 

「ど、どうしてですか!?」

 

「注意を引くだけでいいのに、押さえなくていいんだ」

 

「で、でも」

 

「でももへったくれもあるか、怪我したら元も子もない」

 

「はい...」

 

あの子の母親が乗せられ、行ってしまった。

それを見ている二人の顔は悲しそうな顔になっていた。

例え虐待を受けても自分の母親、どこかへ行ってしまうのは悲しい

 

すると修哉さんが二人に近づいて背を低くして目線を合わせた。

 

「なあお前ら、俺のところで暮らすか?」

 

修哉さんはあの子達に手を差しのべようとした。

けど二人は警戒して、近づこうとしない。

 

「そんなに怖がらなくていい、俺はお前らの敵じゃない」

 

「俺は、お前らを家族として迎え入れたいんだ」

 

すると男の子の方から近づいてきた。

 

「どうだ、一緒に来るか?」

 

男の子は女の子の顔を見て、女の子が頷くと修哉さんに振り返ってゆっくりと頷いた。

 

「よし、お前らの名前は?」

 

「この子の母親がちよっていってましたから女の子の方はちよだと思います」

 

「そうか、じゃあお前は?」

 

「...ま...まさ...と」

 

「まさとか、いい名前だな」

 

修哉さんがそう言うとまさと君は少し嬉しそうな顔になった。

 

「俺は警察に預けることを伝えてとくから魔理華は二人を家まで連れてってくれ。今日の晩ご飯はカレーだ」

 

「はい、まさと君とちよちゃん、一緒に行こうね」

 

二人はほぼ同時に頷いて、私の後についていった。

 

その夜、4人でカレーを食べ、ゲームなどして遊んだりしました。

 

この日、私に弟妹ができた。

 

 

 

 

 




次回予告

「新しい家族もできて本当に良かった!」

「修哉さん、ここは一体...」

「ん、なんか作者がヒロアカのアニメっぽくしたいってことで始めたんだ」

「そうなんですね」

「というわけで出来ればこの次回予告を続けていきたいと思ってます」

「皆さん、よろしくお願いいたします」

 次回 修哉の仕事

「原作にも出ているあのヒーローが出てくるぞ」

「そのヒーローは誰な...」

「さらに向こうへ!」

「プ、Plus(プルス) Ultra(ウルトラ)!」


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No5 修哉の仕事

今回は最後に真斗と千代の設定を書きます


「魔理華、真斗、千代、朝ご飯出来たから顔洗って服着替えてこい」

 

「はーい、今行きます」

 

「兄(にい)ちゃ、今日のご飯は何だ〜?」

 

「ご飯と焼き魚とバナナと牛乳だ。しっかり食えよ」

 

「......お兄ちゃん、待って」

 

真斗と千代が来て数ヶ月、4月になり二人は幼稚園に通うことになった。

 

修哉さんに徹底的に教育してうまく喋れるようになるまでに成長した二人は元気に洗面所へ向かって行った。

この数ヶ月で二人は表情豊かになり、私と修哉さんのことを本当のお兄ちゃんお姉ちゃんにように慕ってくれた。

 

真斗は元気いっぱいでお気に入りの飛行機のおもちゃでよく遊ぶことがあり、興味を持ったものに取り組んだりする、『やりたいことはとことんやるタイプ』の男の子。

 

千代は無口でおとなしく少し人見知りだけど、綺麗好きで自分の部屋を掃除したり、片付けもしっかりする面もある。初めて見る人は警戒して真斗の後ろに隠れるところが可愛らしい女の子。

 

二人は最初会ったときとは思えないほど元気になってくれた。

食べるものにあまり好き嫌いがなくいつも美味しそうに食べてくれているが、唯一二人が嫌いな食べ物が一つあった。

 

それはハンバーガーでした。母親と暮らしていた部屋にはハンバーガーの紙袋があったらしく、昔の私のように、ただ生きるためにそれを二人で食べていたんだろう。

 

そしてもう一つ、今後の生活に関わる問題があった。

それは千代ちゃんの心の傷、トラウマであった。私が強い光でなにも見れなかったあの時、あの子の母親は千代を殺そうとした。千代はその時の記憶が脳裏に焼き付き、悪夢として出てくるようになった。あの夜の日、千代の泣く声が聞こえ、私たちは飛び起きて千代に何があったのか聞いたら

 

『...お兄ちゃんたちが、いなくなって、お母さんに......』

 

そう言うと千代は真斗に泣きついてきた。それから

どんなにひどいことをされても、あの子はあの女性を自分の母親だと信じて生きてきた。そして、その母親に殺されそうになったことで出来た心の傷の深さは私たちではわからない。あの時、私が助けていれば千代ちゃんが傷づくことはなかった。

 

『おい、魔理華。早くしないと学校に遅れるぞ!』

 

「は、はい、すぐに仕度しますから待ってください!」

 

『え、姉ちゃ学校に行ってたの!?』

 

『そうだよ、ちゃんと学校に通わせないと社会に出た後が大変だからな』

 

『でも、この小説にそんなこと書いてなかったじゃん!』

 

『......お兄ちゃん、それ以上はダメ』

 

そんな声が聞こえながらも私は制服に着替えて、食堂へ向かった。

 

「ちゃんとご飯はよく噛んで食べな。こら真斗、フォークを落とすんじゃない。新しいの取ってくるから待ってろ」

 

「ごめん兄ちゃ」

 

修哉さんがだんだんお母さんみたいになってるのに少し笑いそうになった。

 

「ごちそうさま、いってきます」

 

「「「いってらっしゃーい」」」

 

私は急いで学校に行った。修哉さんも二人を連れて幼稚園に行くだろう。

そして今日も直崎家は平和であった。

 

 

 

____________________________

 

 

 

 

「どうしよう、これ」

 

「どうしたんだMtレディ?」

 

「あ、カムイさん。敵(ヴィラン)を倒した時の被害の弁償か修理しろって言われまして、どうすればいいんでしょうか?」

 

「あれはもともと我が倒すはずだったのを貴様が横取りしたんだぞ」

 

「あれなんてどうだろう」

 

「バックドラフトさん、あれって?」

 

「サイクル・ボーンっていう店があって、どんなものも直すことができるんだ」

 

「どんなものも直すね...」

 

 

 

____________________________

 

 

 

 

「ふいー、さて仕事しますか」

 

真斗と千代を幼稚園に連れていって帰ってきた修哉は仕事をして疲れたと思うところで時計を見た。時刻は正午近くになっていた。そろそろお昼を食べようしたが...

 

ジリリリリーン...ジリリリリーン...

 

店の電話が鳴り、修哉は電話に出た。

 

「もしもし、こちらなんでも直しますサイクル・ボーンです。ご用件は?」

 

『あの~、実は建物を少し壊してしまってその修理をお願いしたくて』

 

「あー、ヒーローの方ですね。ではヒーロー名と場所を聞きたいのですが」

 

『ヒーロー名はMt.レディで場所は田等院駅前です」

 

「わかりました。では着くのに40分は掛かりますのでそこで待っていてください」

 

電話を切って仕事着に着替え念ため【もう一つの仕事着】を持ってガレージに入っていった。

電気をつけると白いワゴン車があり、その車こそが修哉の愛車であった。

遠出の仕事とか魔理華たちと一緒に行くときにこの愛車に乗って出かけている。

修哉はガレージを開け、エンジンをつけて田等院駅に向かった。

 

修哉の仕事は主にリサイクル品の販売・買取と壊れたものの修理の二つであった。

修哉の個性は食器・家具・衣服・自動車、さらには精密な機械や大きな建築物さえも直すことができる。

その個性は他のヒーローたちもとても重宝されていて、毎日ヒーローから敵(ヴィラン)との戦いで壊れたものを修理している。

 

修哉は田等院駅前近くに車を止め、依頼者のMt.レディを探した。目についたのはエロ...もといきわどいヒーローコスチュームをした女性がいた。あれがMt.レディだとわかった修哉は向かっていった。

 

「あのー、あなたがMt.レディさんですね。俺はサイクル・ボーン店長の直崎修哉と言います。あとこれ、名刺です」

 

「ふーん...あら、あなたヒーローなんですね」

 

「はい、一応エコロ・サイクルで通していますので。それより壊れた建物を見たいのですが」

 

「これなのよ、本当に修理できるのでしょうか?」

 

Mt.レディが指差す方を見ると塀と電線を支える柱が壊れていた。

 

「これ両方ともMt.レディが壊したんですか?」

 

「いえ、あの柱を壊したのは敵(ヴィラン)です。それなのに全部弁償しろって言われたのよ」

 

「ハハハ、そりゃ災難ですね。では、直しますんで少し下がってください」

 

修哉は壊れた塀の近くの柱に触れた。

すると壊れて落ちた塀の破片や柱が宙に浮いていった。

塀の破片はパズルを解くように、柱は磁石のようにくっついて直っていった。

それを見た通行人は凄そうに眺め棒立ちしていた。

 

「よし、修理完了。Mt.レディさん修理終わりました」

 

「エコロさんは念力の類の個性何ですか?」

 

「いえ、俺は簡単に言うと『物を直す個性』なんです。個性を自由に使うためにヒーロー資格を取りましたからね」

 

「それで修理の代金は5万4000円です」

 

それを聞いたMtレディはこう言った。

 

「あの〜、今お金がなくて負けてくれない?」

 

Mt.レディが上目遣いで頼んで来たのに対して修哉は

 

「5万4000円です」

 

一瞬場の空気が止まった。

 

「負けてくれない」

 

「5万4000円です」

 

「負けてくれない」

 

「5万4000円です」

 

「負けてくれない」

 

「5万4000円です」

 

「負けてくれない!」

 

「5万4000円です。1円たりとも負けませんからね」

 

「どうして負けてくれないのー!?」

 

「俺年下は興味ないから、年上なら負けてたかもな。例えばミッドナイトとか」

 

「あの人はいい年してあの格好してるのよ!」

 

「大人の色気が出てるのがいいんだよ。うちポイントカード制で建物の修理で3ポイント、25ポイント貯まると修理代を無料になるからな」

 

「ポイントカードに負けちゃったの!?」

 

修哉は3ポイントつけたポイントカードを渡し、それをMt.レディは自分の色気がポイントカードに負けたことを悔しく思いながら渋々カードを受け取った。

 

「おい、大変だ!」

 

するとシンリンカムイが大きな声で叫んだ。

 

「田等院商店街で敵(ヴィラン)が人質を取って暴れていると連絡がきた!急いで行くぞ!」

 

「なに、ヴィランが暴れてる!こうしちゃいられん!」

 

「ねぇ、ちょっと!お金はどうするの!?」

 

「お金は後でもらう!今は目先の金より遠くの命だ!」

 

「でもそっち商店街の方とは逆よ!」

 

「車の中に『もうひとつの仕事着』があって、それに着替えてから行く!」

 

「わかったわ。早くしてくださいよ!」

 

「わかってらぁ!」

 

 

 




次回予告

「今回はこの真斗が予告するぞー!」

「......よろしくお願いいたします」

「兄ちゃはヴィランを倒しに行くみたいだぞ」

「......でも、相性が不利だけど」

「兄ちゃだったら何とかなる!」

「......ヴィランがいる場所、地雷元みたいだよ」

「それは...、何とかなる!」

「..................」

次回 久々のヒーロー

「僕たちは応援するから頑張って」

「......がんばって」

「という訳で、さらに向こうへ!」

「......ぷるすうるとら」



____________________________




キャラ設定

名前 真斗(まさと)

年齢 5才

好物 ソースカツ丼

外見 栗色のボブショートのぱっちりした瞳

性格 天真爛漫

個性 光玉(ひかりだま)

小さな光の玉を作り、ぶつけたり照らしたりすることができる母親の個性が混ざってできた個性である。今は小さいから弱いが成長するとどうなるのか楽しみである。




名前 千代(ちよ)

年齢 4才

好物 カレーライス

外見 栗色の長髪の垂れ目

性格 おとなしいかつ人見知り

個性 不明



母親に殺されそうになったところを魔理華と修哉に助けてもらい、家族として迎え入れられた。二人は将来、修哉みたいなヒーローになりたいと言っている。



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No6 久々のヒーロー

Mtレディの喋り方がよくわからない、けど書いてみました。


修哉は『もうひとつの仕事着』に着替え、急いで(ヴィラン)がいるところへ走っていった。

人質になっている人が無事でいることを祈りながらも修哉は走り続けた。

 

ドガーーーーンッ!!!

 

すると、どこからともなく大きな爆発音とその振動が響いてきた。上を見ると黒い煙が昇っていて、それを見た修哉は爆発が起きた場所へ向かって行った。

黒い煙の近くまで来ると野次馬と見られる人達が集まっていた。

その中に大きくなっているMt.レディがいた。

 

「おい!先に行くとか言っといて何ぼーっとしてんだ!」

 

「仕方ないでしょ!2車線以上じゃないと無理なのよ!」

 

「もう少し小さくならないのか!?」

 

「出来たらやってるわよ!」

 

「よくそれでヒーローになれたな...、ちょっとどいてください。通りますから」

 

修哉は愚痴をこぼしつつ野次馬を掻き分けて進んでいくと商店街とは思えない光景が見えた。

辺りには炎が燃え広がっていて、バックドラフトは炎の消火で手が離せなくなっていた。そして奥に見えるのはヘドロ状の敵(ヴィラン)とヴィランに取り込まれそうになっている少年がいた。それなのにヒーロー達はその場で立ち止まっていた。

 

「デステゴロさん!現状の方はどうなんですか」

 

「あのヴィランを捕まえようとしたがドロドロとしていて掴めない、おまけに人質の個性で地雷原になっていて近づけない。あのヴィランに有利な個性を持つヒーローが来るまであの子にはもうしばらく待ってもらうしかない」

 

「その人質の個性はどうやって出していたんだ」

 

「一瞬だが、手のひらから出していたように見えた」

 

「そうか...」

 

修哉には心の中でこう思っていた。

 

 

(人を助けるのに待つことなんているか!)

 

 

修哉は足に力を込めるとヘドロ状のヴィランに突撃していった。

 

「バカ...何やってんだあいつ!戻ってこい!」

 

「うおおおおおおおおおっ!!」

 

「何だこいつは!?くるんじゃねぇ!!」

 

ヴィランは修哉を追い払おうと腕を降り下ろした。

だが、それを修哉は避けた。その瞬間、振り下ろした手から爆発が起きた。修哉は人質の個性を乗っ取ってると思った。

修哉はその攻撃を避けながらも前に進んでいき、ヴィランの目の前まで近づくことができた。

 

「へっ、流動体の俺に触れることが出来んのか?」

 

「俺は物理攻撃しかできない。けどな...」

 

修哉は躊躇いも無くヘドロの中に手を突っ込んだ。

ヴィランは予想外なことに驚きを隠せられなかった。

「実体がある人質を助けるのにわざわざテメーと戦う必要はねーよ!!」

 

手をズブズブと奥に入れ、人質らしき実体のあるものを掴み取った。

あとは力任せに引っ張るだけだ。

 

「や、やめろおおおオオ!!!」

 

ヴィランは修哉目掛けて腕を振り回した。

動けない修哉はヴィランにとって格好の的、攻撃は全て当たった。

それでも人質を引き摺り出そうした。

 

「バカヤロー!!止まれっ!!止まれーーーっ!!!」

 

「あのガキ」

 

すると急に後ろからヒーローの声が聞こえ、ヴィランの気がそれた。

ヴィランは腕を振りかぶったが修哉の目の前にリュックサックが現れ、それがヴィランの目に直撃した。

修哉は後ろに誰かがいることに気づいた。

その時、ヴィランのヘドロが少し緩み、すぐさま力一杯に引っ張った。

横を見るとリュックサックを投げたであろう緑の髪の少年がいて、必死にヘドロを取り除こうとしていた。

 

「なんで、テメーが」

 

口にへばりついていたヘドロが取れ、人質の少年が問いかけた。

 

修哉はその理由がわかっていた。

 

 

今までのトップヒーローはある逸話を残し、誰もがこう言った。

 

 

 

考えるより先に、体が動いていた。

 

 

 

 

この少年はなんでもないただの一般人なのに修哉を含めたヒーローより、ここにいる誰よりも、彼は

 

 

 

「君が、助けを求めてる顔してた」

 

ヒーローだった。

 

「邪魔するなあああぁ!!」

 

ヴィランは少年に攻撃を仕掛けてきた。

修哉は少年の前に立ち、庇おうとし爆発が起き、周りは黒煙に包まれた。

だが修哉には熱さや痛みが一切感じなかった。

前を見ると、

 

「本当に情けない。君に諭しておいて己が実戦しないなんて...」

 

大きく筋骨隆々な体、勝利のサインと思わせるV字の前髪、どんな時も笑顔でやって来る姿、修哉はそれを見て言った。

 

「オールマイトさん!?何であんたがここに!?」

 

オールマイトは人質の少年の手を掴み、もう片方の手を振り上げた。

 

「プロはいつだって命がけええええぇ!!!」

 

そして彼はこう叫ぶ。

 

「デトロイトスマッシュ!!!」

 

その拳はたったの一撃でヘドロのヴィランを、炎を、吹き飛ぶほどの強風が巻き起こり修哉は緑髪の少年が飛ばされないよう腕を掴んだ。

風が止み、ヴィランも炎も消え、皆が呆然となっていた。そんな時に雨が降ってきた。さっきのパンチで起きた風圧でできたものであろう。少し遅れた感じにオールマイトへの歓声が上がった。オールマイトもそれに答えるかのように腕を上げた。

 

ヴィランのヘドロを集めて無事に警察に引き取ってもらい、緑髪の少年はヒーローらに怒られてしまい人質の少年はヒーローらにサイドキックの勧誘を受けられた。修哉はどっちかっていうと勇気ある行動をした緑髪の少年を褒め称えたいが他のヒーローらになんて言われるかわからないから黙っていた。商店街の被害は修哉が直していきもう少しで終わるところだった。

 

「ねぇあなた、ヒーロー名は何なの?」

 

修哉が振り向くと元の大きさに戻ったMt.レディがいた。

 

「ヒーロー名は『修復ヒーロー エコロ・サイクル』だ。お前はもしかしてプロヒーローになったばかりか?」

 

「今日からデビューしましたの。それよりエコロさん大丈夫ですか?ヴィランの攻撃めっちゃくらっていましたけど」

 

「体は結構丈夫だぞ。お前が心配することじゃない。それに」

 

「?」

 

「すぐに助けないのは俺のルールに反する。俺のルールを破れば俺のヒーローの道が終わる」

 

「苦しんで困っている人を助ける、それがヒーローってもんだろ」

 

修哉はMt.レディを見て微笑んだ。

Mt.レディは微笑みを見て赤面し、トクンと心臓の音が聞こえたような気がした。Mt.レディは即座にそっぽを向き走り去っていった。

修哉はそんなことに気づかずに修理の続きを始めた。

 

 

 

______________

 

 

 

 

商店街の修復が終わり真斗と千代を迎えに行ったら、修哉の傷だらけの姿に二人はびっくりして何があったか聞いてきた。修哉は車の中で二人に昔話を話すみたいに聞かせたら、真斗は興奮して座席をバンバン叩いて、千代には心配の眼差しを向けられていた。

 

家に着いたら魔理華が待ち受けて、ニュースに流れていたヘドロ事件について、無茶をしないでくださいと怒られてしまった。今日の晩御飯は自分が作るから安静にしていてくださいと言って魔理華はキッチンに行った。

 

「修哉さん、ご飯ができましたので二人を連れて食堂に来てください」

 

「よしわかった。二人とも、ゲームは一旦中断だ。ご飯食うぞ」

 

「ちょっと待って、今セーブするから...」

 

修哉たちは食堂に行き、席に着くとみんなの前に豚の生姜焼きが置かれた。

 

「それでは、いただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

合掌してご飯を食べ始めた修哉はあることを思い出した。

 

「そういえば魔理華、聞きたいことがあるんだが、いいか?」

 

「はい、何でしょうか」

 

「お前も今日から中3だ。志望校は決まってるのか?」

 

魔理華はそれを聞くと、箸を置き、まっすぐ修哉の顔を見た。

 

 

 

 

 

「私、雄英高校に行きたいです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

「それでは、雄英高校に行くために試験日まで猛特訓だ」

「はい!!」

「はいじゃない!イエッサーっだ!」

「い、イエッサー!!」

「姉ちゃ頑張れ!明日に向かって突き進め!」

「...頑張って、お姉ちゃん」

「ところで聞きたいことがある!」

「はい何でしょう!!」

「...お前の個性って、何だっけ?」

「「「ズコーーーーーッ!!」」」

次回 勉強 運動 猛特訓

「魔理華の個性には秘密があった!」

「それは一体何でしょうか!!」

「更に向こうへ!」

「「「plus(プルス) ultra(ウルトラ)!」」」



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No7 勉強 運動 猛特訓

もう一つ小説を書こうと思っています。


「私、雄英高校に行きたいんです」

 

「......まさかお前がそんなことを言うとはな。行きたい理由は?」

 

修哉は予想外なことに驚きつつ魔理華に理由を聞いた。

 

「私は修哉さんに助けられて感謝しています。だから、修哉さんの役に立つために雄英高校に行きます」

 

「ゆーえーこーこーって何だ、兄ちゃ?」

 

「雄英高校は日本で超最難関のヒーロー養成学校だ。強いヒーローの大体が雄英高校出身で、あの『No1 ヒーローオールマイト』も雄英出身だしな」

 

「もしかして兄ちゃもその学校でヒーローになったの?」

 

「ああ、そうだよ」

 

「じゃあ、そこで頑張れば兄ちゃみたいなヒーローになれるのか!?すっげー!!」

 

「俺みたいなヒーローがたくさんいたらこの世が終わってしまうわ。ヒーローの考え、戦い方、生き方は人それぞれだから、全員が一緒って訳じゃねえよ」

 

「......話が脱線してるよ」

 

途中から違う話に変わってしまったことを千代に指摘された二人はハッと思い出した顔をして話を続けた。

 

「私の個性は手のひらから炎を出す、しかも使える回数も限られているけど修哉さんみたいに強くなれば何とか...」

 

「ちょっと待て魔理華、実は試したいことがあるんだ」

 

「試したいこと?」

 

「もしかしたら炎を出す程度の個性じゃないかもしれんぞ」

 

修哉が出したのは普通のノートと削った鉛筆だった。

 

「ノートに何か書いてみろ」

 

「え?」

 

いきなりそんなことを言われ、キョトンとするが魔理華は鉛筆を持ってノートを開けた。何を書くか目を瞑って考えた。

 

すると鉛筆を持った手がピクリと動き、ノートに何か書いていった。サラサラと文章を書いているように見えている。

 

だが魔理華は目を瞑ったままで文章を書いていた。まるで違うものが書いているかのように。真斗と千代は不思議そうに眺め、修哉は思ってた通りになり喜んでいた。

 

「..................う〜ん、あれでも書く...か...。あれぇ!?」

 

文章を書いていた手が止まり、魔理華が目を開けると細かく書かれた文章があってそれに驚いた。

 

「やっぱりお前の個性はまだあったんだな。今まで気づくことがなかったもう一つの要素、名前をつけるなら...『レポート』だな。」

 

「修哉さん、これは」

 

「お前の個性は『火炎弾』じゃない。お前の個性は『マジシャン』というべきかな」

 

「『マジシャン』、ですか」

 

自分の個性の秘密がわかったが、魔理華はまだそのことに信じられなかった。

 

「しかも、その個性は文字通り『成長する個性』みたいだしな」

 

「修哉さんはどうして、私の個性がわかったんですか?」

 

「いやあ、俺のゲームコレクションの中にそれに似たやつがあったから、もしかしてと思って試したんだ。さっき言っていた俺みたいに強くなるのはまず無理だ。けど今のお前なら」

 

「ヒーローになれる」

 

修哉は魔理華の目を真っ直ぐ見て言った。

魔理華は憧れであり、命の恩人でもある人から聞きたかった言葉が出てきて嬉しくて涙が出てきそうになった。

 

「さ、特訓は明日からだ。今日はご飯を食べてゆっくりするぞ」

 

泣きそうになった魔理華に気づいて修哉は話を変えて、ご飯を食べ進めた。

魔理華は涙を堪えて、生姜焼きを食べた。

 

 

 

_____________________________

 

 

 

 

「今日から雄英に向けての特訓をするのだが、雄英は超最難関な場所だ」

 

「はい!」

 

翌日、修哉たちは朝食を食べ終え、リビングに集まっていた。

 

「そのためにある場所に案内する。ついてこい」

 

「?はい」

 

修哉は魔理華と後ろからついてくる真斗と千代を連れていった。ついた場所はお店のカウンターだった。修哉は何もないところのタイルを触っていると、タイルの一部が剥がれその下から金属の持ち手が出てきた。それ引っ張ると

 

「これって!」

 

「おおーっ!」

 

「......隠し部屋?」

 

タイルの床が開き、石の階段が下に続いていた。修哉は手招きをして進んでいき、魔理華たちは意を決してついて行った。中は暗く真斗の個性で照らして進み三階ほど降りていくと薄い水色の鉄の扉があった。開けて進んだ修哉に続いていき、パチンと音が鳴った。

 

「ここは...!」

 

「おおおおーーーっ!!」

 

「......すごい!」

 

明るくなると飾りっけのない白一色の部屋が見えた。だが三人が驚いたのはそれではなかった。赤いサンドバッグや大きなタイヤ、いかにも鍛錬するにはもってこいの道具がいっぱい置いてあった。

 

「ここは俺が時々筋トレする場所でな、捨ててあったやつを再利用して使っている。試験当日までここで特訓するつもりだからな。あとこれ」

 

修哉が渡したのはトレーニングの時間割が書かれた7枚の紙だった。

 

「雄英合格実現プロジェクト、これの通りにやってもらうからな」

 

一枚一枚曜日ごとに、学校の時間や寝る時間までも分刻みでびっしり書かれていた。

 

「それをやるんですか...?」

 

「言っておくけど、それ結構きついからな。それでもやるか?」

 

「......はい!やります」

 

この日から魔理華の雄英に向けての特訓が始まった。

 

「走れ!ヒーローにとって体力は必要不可欠だ、一秒でもより速く現場に向かえる体力を作るんだ!」

 

「はい!」

 

「ちなみに目標タイムを三回切ったら、タイヤか往復回数を増やすからな」

 

「えぇっ!?」

 

最初はタイヤを一つ持って百回往復ランニングをやった。

 

「お前はまだ個性を使いこなせてない。個性を知るために個性をいっぱい使ってこい!」

 

「はい!」

 

次は修哉たちしかいないこの部屋で個性を使い続ける特訓をした。

 

「ご飯はしっかり食べるんだ!太りたくなかったら思いっきり運動して栄養を消費しろ!それが強い体つくりの基本だ!」

 

「はい!」

 

今日の特訓が終わり、魔理華はいつもの二、三倍の量がある料理を全部食べていった。

 

「x二乗+2x−5=0を因数分解することをできない。この問題を解くには今の問題をax二乗+bx+c=0と当てはめて...」

 

「修哉さん、何でこんな問題を出してるんですか...?」

 

「雄英は高校だぞ、受験勉強をしなきゃヒーロー実技試験でいい点取っても勉強がダメじゃ雄英には受からねえぞ」

 

「この問題が出てくるんですか?」

 

「ああ出てくる、と思う。これが終わったら国語の勉強をするぞ」

 

「はい...」

 

次の日は受験対策の勉強をしていて、魔理華は自分にとって特訓よりきついと思っていた。

 

「修哉さん、何で私たちゴミ掃除をしているのですか?」

 

「ボランティア活動もヒーローの仕事の一環。こういったゴミ掃除や市民の手助けなどをしていくのだが、最近のヒーローはヴィラン退治ばかりでこういうことする奴が減ってるんだ」

 

「兄ちゃ、これって燃えるごみ?」

 

「いや、それはプラスチックだからプラスチック用のゴミ袋に入れといてくれ。これもヒーローとしての仕事だ。覚えとけよ」

 

「はい、わかりました!」

 

次に魔理華がしたのは市内でのゴミ掃除。修哉たちと一緒に落ちているゴミを拾っていく作業をしていって、ゴミがあった場所を綺麗にしていった。魔理華はこんなヒーローの仕事があることを自覚した。

 

平日は学校に行って帰ってきたら特訓をして、土日は朝起きてすぐに特訓、そんなことが毎日続いていったが魔理華は1分たりとも無駄にはせずに頑張っていた。7ヵ月が経ち紅葉(こうよう)の季節となったある日、タイヤを二つ持って走っている魔理華を見ていた修哉が何かに気づいた。

 

「ちょっと走るのをやめて休憩しろ魔理華」

 

「いえ、まだ走れます...!」

 

修哉は休憩していいといったが、魔理華はそれを聞かずに走り続けた。

 

「俺が気づかないと思ってたか?雄英合格実現プロジェクトはお前の体に合わせて作ったんだぞ」

 

「.....................」

 

魔理華はそれでも走り続けた。

 

「お前、プロジェクト守ってないだろ。運動のやりすぎは逆効果だ。雄英に行きたくねえのか?」

 

その言葉に魔理華は走るのをやめた。呼吸が乱れ重心も保てずにフラフラと揺れていながらも立っていた。

 

「雄英に行って、ヒーローになるために勉強して、そして、あなたみたいなヒーローになりたいんです...!」

 

「私や、真斗と千代みたいな、誰にも助けられずにいる人たちを、何の躊躇もなく、誰だろうと救ってくれる、あなたみたいなヒーローになりたいんです!!」

 

「......っ!!」

 

「そのためなら、どんな特訓でも、私は頑張れます!」

 

それを言うと魔理華の体が地面に吸い込まれるように倒れそうになった。

 

「俺はそこまで大げさなヒーローじゃねえ、でもそういうの好きだぞ」

 

その倒れそうなった体を修哉は支えた。

 

「とにかく今日はゆっくり休め、プロジェクトの方はもう少し厳しくするから覚悟しろよ」

 

「は...はい...」

 

魔理華はそのまま気を失って、すーすーと寝息を立てて眠っていった。

修哉は魔理華を部屋まで背負って運んで行った。

 

 

 

そして、雄英高校試験前日

 

「よく頑張った魔理華、これで特訓は終わりだ」

 

「......はい、ありがとうございました...」

 

すべての特訓が終わり、今までの疲れが出て魔理華は膝から崩れていった。

 

「お前がここまで頑張るとは思わなかったが、その努力は絶対に報われる」

 

「今日はゆっくり休んで明日に備えてご飯をいっぱい食べ、ぐっすり寝るんだぞ」

 

「わかりました」

 

二人はご飯を食べに食堂へ向かった。

 

 

いよいよ明日、魔理華の人生を賭けた勝負が始まる。

 

 

 




次回予告

「ここが雄英高校、一体どんな試験が」

「ここでお前の人生が左右する。しっかりしろよ」

「はい!」

「おい、ハンカチ落としたぞ」

「あれ、あの拾ってくれた人は?」

「もしかして新キャラか!?」

次回 ヒーローとは

「試験で起きる出来事とは一体!」

「更に向こうへ!」

plus(プルス) ultra (ウルトラ)!」


設定更新

 名前 七咲 魔理華

 個性 マジシャン

 右腕のメーターの赤がある限り、呪文を唱えると色んな力が出せる。



 呪文(消費ゲージ)・・・効果

 フレイ(2)・・・手のひらから火炎弾を出す

 コール(3)・・・手のひらから氷の塊を出す

 ビリディン(5)・・・手のひらから電気を出す

 バイガス(4)・・・3分間パワーアップする

 ピルア(4)・・・3分間スピードアップする


ゲージ 6 >>> 28



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No8 ヒーローとは

オリキャラを二人作ってみたけど、自分だけだとわからないので、できれば感想書いてくれたら嬉しいです。


「ここが雄英高校...」

 

試験当日 8時35分 魔理華は修哉の母校である雄英高校に着いた。

合格できるかの緊張感と昔敵(ヴィラン)として活動していることがヒーローにバレないかの不安感を持ちながら魔理華は中へ入ろうとした。

 

「あの...すいません」

 

「ヒャ、ひゃい!」

 

突然後ろから声をかけられた魔理華は変な声で返事をしてしまった。

 

「これ、落ちていました」

 

後ろを見るとオレンジ色のチクチクしてそうな髪の女の子が自分が持っていたはずのハンカチを持っていた。

 

「あ、拾ってくれたんですか。ありがとうございます」

 

「いえ、ハンカチ落としたら縁起が悪いと思って...」

 

「受験に落ちるとかけて、ね。お互い頑張りましょう」

 

「うん」

 

魔理華は落ちたハンカチを受け取り、その子にお礼を言って中へ入っていった。

待機する場所に座って試験の説明を待っていた。

 

試験の説明が始まり、試験の内容がわかってきた。

各演習会場に4種類の仮想ヴィランがいて、各ポイントがついた3種類の仮想ヴィランを個性を使って倒していくゲームみたいなやり方だった。そして4種類目の仮想ヴィランは倒しても得点にならないことになっている。

 

「最後にリスナー達に我が高校校訓をプレゼントしよう。かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った。真の英雄とは人生の不幸を乗り越えて行くものと」

 

「更に向こうへ、plus ultra(プルスウルトラ)!」

 

説明が終わり、私は受験証に書かれた演習会場に向かうバスに乗って行き、会場に着いた。受験者のほとんどが自分の個性に自信があり、緊張してなかった。魔理華は違った、自分の個性に自信がある云々以前に昔ヴィランとして活動したことがバレるかバレないか心配で仕方なかった。魔理華は修哉に言われたことを思い出した。

 

『お前、ヴィランの頃に火炎弾を使っていたか?』

 

『はい、使っていましたけど』

 

『試験では火炎弾は禁止だ。ヴィランとして認識されていたなら使っていた個性をわかっている筈だ。最小限にバレたくなかったら、火炎弾を使うなよ』

 

フレイさえ使わなかったらバレない、と自分に言い聞かせてゆっくり深呼吸をした。落ち着いてきたところを気合いを入れるために両頬を叩いた。

 

「はいスタート!実戦にはカウントダウンはないわよ!走りなさい!」

 

スタートの合図の声がかかり、受験者は一斉に走り出した。魔理華は合図に出遅れてしまい急いで走っていった。

 

「バイガス!ピルア!」

 

走りながら呪文を唱え、その効果でスピードが上がり他の受験者に追いついた。

 

近くから仮想ヴィランが三体現れて、魔理華に向かってきた。

今までの特訓で鍛えられた魔理華は仮想ヴィランの攻撃を避けて、仮想ヴィランを全部殴り倒していった。

 

仮想ヴィランを探しに走り回りながらも他の受験者の様子を見ていていると、個性を使って次々と倒して行く人や少し苦戦している人もいた。

 

「おンらああぁ!そりゃああぁ!」

 

一番目に入ったのは仮想ヴィランを持ち上げたり、それをぶん回したりと強化系の個性を使っているであろう灰色の髪の男の子だった。

 

「!」

 

その男の子の後ろに倒しきれていなかった仮想ヴィランが男の子を攻撃しようとしていた。魔理華はそれに気づいたが男の子の方は全く気づいていなかった。

 

「コール!」

 

咄嗟(とっさ)にその仮想ヴィランに攻撃をして、男の子がやられる前に倒した。男の子は今の攻撃と後ろにあった仮想ヴィランを見てどういう状況だったか理解した。

 

「あんたに助けられたな、ありがとな!」

 

「気をつけてくださいね!」

 

男の子はお礼を言うとどっかに行ってしまった。

魔理華はどんどんと倒していき、消費ゲージがなくなりそうになってきた。

 

ズドーーーーンッ!!!

 

すると急に地響きが鳴り、空を見上げると大きな砂煙が舞い上がっていた。その中から魔理華達を見下ろす巨人のようにデカい仮想ヴィランが現れた。

 

「デカすぎでしょ...!」

 

そうとしか言えなかった。他のみんなは巨大な仮想ヴィランに怯え逃げていった。魔理華も自分の力じゃ無理だと悟り、逃げようとした。仮想ヴィランがどれぐらいの速さで来るのか後ろに振り返り、動く速さは遅く個性を使って走れば大丈夫と思った。

 

「いたっ......!」

 

砂煙の中から声が聞こえ、走るのを止めた。目を凝らして見てみると。

 

ハンカチを拾ってくれた女の子が倒れていた。

 

「!!」

 

魔理華は女の子に向かって走り出していった。

 

どういう理由でこんなことをしたのか魔理華はわかっていた。

 

 

 

あの子を助けたかったからだ。

 

「あ、あなたはハンカチの...!」

 

「腕を貸して!早く!」

 

魔理華は足を怪我して動けなくなって彼女の腕を肩にかけて運ぼうとした。だが仮想ヴィランがすぐ目の前までやってきていた。

 

「手を貸してもいいかな?」

 

横を見ると仮想ヴィランに襲われそうになった男の子が魔理華とは違う方の腕を肩にかけていた。

 

「さっきの借り、返させてもらうな!」

 

「ありがとね!」

 

二人一緒に女の子を運んで走り、巨大仮想ヴィランとの距離が離れていった。

 

「タイムアップよーーっ!」

 

そして制限時間が終わり、彼女を安全な場所に座らせた。

 

「助けてくれてありがとうございます」

 

「いえいえ、困ったときはお互い様です」

 

「しかしあんた、あの巨大ヴィランロボの意味がわかっていたんだな。あんたがこの子を助ける見てなかったら気がつかなかったな」

 

「へ、意味?」

 

「へ?」

 

魔理華と男の子の間に長い沈黙ができた。

 

「あんた、気づいてなかったんだな...」

 

「意味ってどういうことなの?」

 

「オレの口からじゃ言えん、たぶん合否通知が来たらわかると思うな」

 

そういうと男の子はまたどっかへ行ってしまった。

女の子の怪我はリカバリーガールというヒーローが治してくれました。

 

 

 

__________________________________

 

 

 

 

「魔理華お姉ちゃん、元気ないよ」

 

「姉ちゃだったら絶対に合格できるって!」

 

あれから1週間経つが合否通知は来ることはなく、魔理華は不合格になったと考え、魔理華が灰色に見えるほど落ち込んでいた。

 

「そういえば、試験のこと聞いてなかったな。試験で何があったか?」

 

「それは斯く斯く然々で...」

 

「なるほど、巨大仮想ヴィランの時に怪我してた子を運んで行ったのか」

 

「......どうしてそれでわかるの?」

 

「なら大丈夫だろ、お前は合格できるさ」

 

修哉は魔理華の頭をポンポン叩いて、それに魔理華は恥ずかしながらもされるがままになった。

 

「そうだ!兄ちゃ、手紙が来たんだけど漢字が多くて読めないだよ。これなんて書いてあるの?」

 

真斗が出した手紙は封蝋してあり、漢字で『雄英高等学校』と書かれていた。

 

「いつ届いたんだ?」

 

「ついさっき」

 

「一旦電気を消すぞ、豆電はつけとくから」

 

豆電球だけをつけて、手紙の封を開けてみると小さな機械が出てきた。

 

『ハァーイ!』

 

「あ、試験の合図の!」

 

「お、ミッドナイトか!いやぁ綺麗だナバカッ!」

 

「なんかすんごいなぁ」

 

「......すごい格好」

 

その機械から光が出て、画面が投影された。現れたのはミッドナイトと言うヒーローだった。ミッドナイトが出てきたのを喜びデレデレしてる修哉に魔理華は怒りの顔面グーパンを食らわした。ミッドナイトを見た子供二人はそれだけしか言えなかった。

 

『七咲魔理華、筆記の方は合格ラインに入っていたけども実技ではあまり点は取れていなかったわ。この場合貴方は不合格よ』

 

魔理華は既にわかっていた。ヴィランだった自分がヒーローなんかになれるはずはない。せっかく修哉さんに鍛えてくれたのに、これでは修哉さんに申し訳ない。そんなことを考えていたら。

 

『この場合は、ね』

 

「えっ?」

 

『実技にはヴィランポイントの他にもう一つポイントがあったのよ。その名もレスキューポイント!しかも審査制!』

 

『仮想ヴィランに襲われそうになった男の子と怪我していた女の子を助けたことをポイントにすると...』

 

 

 

 

 

『七咲魔理華、貴方は合格よ』

 

「姉ちゃ、ごーかくおめでとう!」

 

「......魔理華お姉ちゃん、おめでとう!」

 

「ほら、合格できたじゃん」

 

「しゅ、修哉さん、じゅゔやざーん!!」

 

魔理華は嬉しさのあまり修哉に抱きつき、涙ぐんでいた。修哉は魔理華の頭を撫で、にっこりと笑った。

 

『ちなみに貴方が助けた人、矢那雲上流(やなぐも あがる)、五舞手和(いまい しゅわ)、この二人も合格よ』

 

「お前が助けた子も合格したみたいだぞ」

 

「ゔん、ゔん!」

 

『七咲魔理華、ようこそ、ここが貴方のヒーローアカデミアよ!」

 

ここから魔理華のヒーロー人生が始まった。




次回予告

「今日から雄英に行くことになって、ここが私のクラスなんだけど...」

「女はスレンダーが一番なんだよな!」

「いいや、胸がデカい方がいいんだよ!」

「わあ!私がもう一人いる!」

「こ、これは私の個性で作った...」

「おんなじクラスでよかったね!」

「う、うん麗日さん」

「あぁ!テメーどこ中だよ」

「ガラ悪いなあ、あいつ」

「いろいろ騒がしいです...」

次回 いきなり大変!

「おーい、席につけー」

「この人誰!」

「更に向こうへ」

「「「plus(プルス) ultra(ウルトラ)!」」」

「この人が言っちゃった!?」


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No9 いきなり大変!

最近忙しいからしばらくは定期的には出せないと思います。


「魔理華、忘れもんしてないよな」

 

「はい、大丈夫です」

 

「姉ちゃ、いってらっしゃい!」

 

「うん、ありがとね。行ってきます」

 

「頑張って来いよー!」

 

魔理華は念願であった雄英高校に入学することになり、そして今日、入学式の日になって雄英高校へ向かって走っていった。

 

「ここがAクラス、ドア大きい」

 

魔理華は雄英に着いてつい口に出してしまっていた。ドアに手をかけるとまたもや敵(ヴィラン)だったことがバレるかどうか心配になった。

 

(大丈夫よ落ち着いて、ヴィランだとわからない筈よ)

 

自分に言い聞かせて勇気を持ってドアを開けた。

 

「机に足乗せたらダメだよ」

 

「あ゛?テメーどこ中だ?」

 

「市立倉正(くらまさ)中学だけど」

 

「聞いたことねぇな、ぶっ殺してもつまんねぇ」

 

「お前、本当にヒーロー志望か?」

 

「......ほっ」

 

自分よりもっとヴィランみたいな子がいることに魔理華はしばらくはバレないと安心した。

 

「お、アンタやっぱり合格してたな」

 

「あなたは、あの時はありがとうございます」

 

声をかけてきた方を見ると受験の時に助けた二人、男の子の方は矢那雲上流(やなぐも あがる)、女の子の方は五舞手和(いまい しゅわ)だと魔理華は思い出した。

 

「あがる、そいつがお前を助けた子か?」

 

次に現れたのはさっきヴィランみたいな子に絡まれていた男の子がきた。髪の色は獣のような茶色でよく見ると頭の上に猫耳がピクピク動いていた。

 

「チチチチチチチチ、おいでおいで〜」

 

「アホ、猫扱いするな!」

 

猫耳男子は自分を馬鹿にした魔理華を叩(はた)いてやった。

 

「この人は誰ですか?」

 

「こいつは◯もフレのサーバルだ」

 

「ちげーよ!オイラは衣月永鬼(きぬつき えいき)、一応あがるとは友達だ。よろしく」

 

「私は七咲魔理華、よろしく」

 

『君は』

 

メガネをかけた男子が誰かを見つけて声をかけていた。ドアの前に立っていた緑髪の男子にメガネの男子が近づいていった。

 

「あいつは、入試の時に質問していた飯田天哉だっけ?」

 

『君はあの実技試験の構造に気づいていたのだな』

 

「俺の他に試験のもう一つの意味に気づいていたんだな」

 

(多分、緑髪の方は気づいてなかったと思う)

 

魔理華は緑髪の男子の顔を見て大体ことがわかった。

 

「お、次は女の子がきたぞ。なんか照れてるぞあいつ」

 

「女の子に慣れてないんじゃないのかな?」

 

「あそこに誰かいるけど...」

 

手和が指さす方を見るとさっきの男子二人と次に来た女の子がいる扉の先に寝袋に入った男性が寝転がっていた。三人もその人に気づいて驚いていた。男性は寝袋を脱ぎ、教室へ入ってきた。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

担任だとわかると生徒たちは驚き、ざわめいていた。

相澤先生はこの学校の体操服を出してこれに着替えてグラウンドに出るよう指示した。

 

 

 

___________________________________

 

 

 

 

「「「個性把握テスト!?」」」

 

いきなりのことにみんな声を出した。入学式やガイダンスのことを先生に聞くと、ヒーローになるならそんな時間はないといった。

 

このテストでやるのは個性を使った体力テストで個性を自由に使って記録を伸ばす簡単なことだった。

最初に見本として、ヴィランみたいな男子の爆豪がボール投げをすることになった。

 

「死ねええぇっ!」

 

ボールは爆発によって勢いが増えて遠くまで飛んで行った。

 

「......ほっ」

 

爆豪の叫んだ言葉に魔理華はまた安心した。

記録は700メートルを超えていて、他の生徒は楽しそうだと口々に言っていた。

 

「オイラの個性でいけるか...?」

 

「お前の個性、変身系だからな。難しいと思うな」

 

「面白そうだね、魔理華ちゃん」

 

「確かに、そうですね」

 

「面白そう、か。ヒーローになるための三年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」

 

「どういうことですか、相澤先生」

 

魔理華は少し違和感を感じ、先生に聞いてみた。

 

「これから行う8種目のトータル成績で最下位だった者は見込みなしとして除籍処分にするということだ」

 

「「「はあああぁぁぁぁぁ!!!???」」」

 

「じょ、除籍処分!?」

 

「どういうことなんだよな!」

 

生徒たちは理不尽なことに声を上げて、魔理華と上流はもう一度先生に聞いた。

 

「さっきも言った通り、俺たちは自由、生徒の遺憾も俺たちの自由」

 

魔理華は先生の意図に気づいた。

 

ヴィランや災害、事故など、世の中は色んな理不尽なことでいっぱい

 

その理不尽をものともしないで覆すのがヒーロー

 

修哉さんもそのヒーローとして、人の理不尽を吹き飛ばす力を持っている

 

ここは、そんなヒーローを育てる高校

 

「ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

どんな理不尽も超えてこそ、自分はヒーローになれると魔理華はそう考えた。

 




次回予告

「種目も順調に進んでいる。これなら」

「おい魔理華、すごいこと聞いちゃった!」

「何をですか?」

「それがよ......何だったっけ?」

「忘れたのなら次の種目の準備を」

「ちょっと待ってな、巨大仮想ヴィランを」

「あの仮想ヴィランを?」

「そうだ、ぶっ飛ばした奴がいるんだよな!」

「嘘つくならもっとマシな嘘ついてください」

「嘘じゃないからな!!」

次回 更に上の子

「次のやつを見ればわかるからな!」

「更に向こうへ」

plus(プルス)ultra(ウルトラ)!」


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No10 更に上の子

オリキャラ三人の個性が出てきます。
後書きは上流の設定を書きます。


第1種目は50m走で魔理華と上流は走る準備をしていた。

 

「ピルア」

 

魔理華は速くなる呪文を唱え、走る合図を待った。

 

『位置について、よーい(パン!)』

 

合図が鳴ると魔理華は全力で走った。が、走る速さは上流のほうが上回っていた。

 

『2秒42』

 

「うっしゃあああぁぁ!」

 

『3秒19』

 

「あなた、単純な増強じゃないの!?」

 

「よくぞ聞いてくれたな!オレの個性は『グレードアップ』、力、速さ、物の大きさなどを10倍までグレードアップ出来るのだ!」

 

上流はカッコつけながら自分の個性を説明した。

 

「けどな一度に複数グレードアップすることができなくてな、力をグレードアップするとその力だけしか使えないんだよな」

 

「それでもすごい個性だと思うぞ」

 

「お前そろそろ走る番だろ」

 

「ああそうだな、じゃあいってくるわ」

 

次に走るのは五舞手和と衣月永鬼の二人、手和は両手で何かをして、永鬼は手に持っている何かを見ていた。

 

『位置について、よーい(パン!)』

 

「グルアアアァァッ!!」

 

永鬼は獣のような雄叫びを上げ、四つん這いになって走り出した。

手和は大の字に体を広げ、宙に浮いていった。

 

『3秒98、4秒52』

 

先に着いたのは手和、手和の体の周りには手袋があちこちについていた。

永鬼は顔の形が少し変わって獣みたいになり、猫耳が前よりも大きくなっていた。

 

「手和ちゃん、その手袋は」

 

「これは私の個性で作った手袋です。この手袋を自由自在に操ることができて、手袋をいっぱい作って自分の体を持ち上げてもらったのです」

 

手和はそういうと手袋をあちらこちらに飛び回らせた。

 

「そうなんですね、衣月さんは...」

 

「永鬼でいい、オイラの個性は『獣人』、丸いものを見ると獣みたいになるんだ」

 

永鬼の体は獣じみた姿から徐々に人間の姿に戻っていった。

それから種目は続いて行き、生徒たちは個性を自由に使っていった。

 

魔理華と上流は状況に応じて力を強くしたり、足を速くしたりしていった。

手和は手袋を使って宙に浮いたり、何枚も重ね着して握力を上げたりした。

永鬼は野生の気のままに種目を進んでいった。

 

次の種目がボール投げになり、緑髪の男子の番になった。

 

「そういえば今思い出したんだが」

 

「ん、なんだ」

 

永鬼がふと何かを思い出し、上流に話しかけた。

 

「試験が終わってすぐの時、緑髪の奴があの巨大仮想ヴィランをぶっ飛ばしたって言う噂を聞いたんだ」

 

「「「えっ!!」」」

 

その話を聞いてしまっていた魔理華や手和、そして上流は驚きの声を上げた。

 

「嘘だよなそれ!あの馬鹿デケー奴をぶっ飛ばしたなんて嘘だよな!」

 

「実際見た奴がいっぱいいたから本当だと思う」

 

「じゃあ、あの子がもしかして話に出てきた」

 

「緑髪の、奴」

 

緑髪の男子がボールを持って構えた。

どれほどの者か見てみたい四人は緑髪の男子から目を離さなかった。

そして思いっきりボールを投げつけた。

 

『46メートル』

 

「......あれ?」

 

記録は普通だった。まさかの普通の記録が出たため、四人共は違う意味で驚いた。

緑髪の男子も個性が出せなかったことに驚いていた。

 

「個性を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよ、お前のような奴も合格できてしまう」

 

「個性を消した...、もしかしてイレイザーヘッド!」

 

魔理華は個性を消すということを聞いて思い出した。

 

「知ってんのか?あの人のこと」

 

「ええ、抹消ヒーロー イレイザーヘッド。仕事に差し支えるからメディアの露出を嫌っているヒーローだからあまり知らないけど」

 

「なんか、クールだな」

 

そこからは緑髪の男子が先生の指導を受けていた。

その後、先生は緑髪の男子にボールを渡し、緑髪の男子は何かブツブツと呟いた。

 

緑髪の男子は意を決してボールを投げようとした。投げ方は見たところ至って普通。だが

 

「うえっ!?」

 

「なっ...!!」

 

そのボールは遥か遠くに爆豪と同じくらいの勢いで飛んでいった。

それを見た上流と永鬼は思わず声が出てしまった。

魔理華と手和は予想以上のことに一瞬頭が真っ白になった。

 

正気に戻った魔理華は緑髪の男子を見た。男子の握り拳の指の一本が腫れていて、痛いのを堪える顔が見えた

おそらく個性を使った反動で腫れたのかもしれない。魔理華は頭を絞りその答えを導いた。

 

「コラァ!訳を言えデクテメェ!!」

 

爆豪は緑髪の男子に向かっていった。

だが先生が布で爆豪の動きを止めた。爆豪は無理矢理進もうとするが布が硬く破れなかった。

 

「ったく、何度も何度も個性を使わすなよ」

 

「俺はドライアイなんだ!」

 

(個性すごいのにもったいない!)

 

先生がそう言うと時間がもったいないから次の種目の準備しろと言い生徒たちは種目の続きを始めた。

 

全部の種目が終わり結果が発表されていった。魔理華はいい成績を取れたため、いい順位に入っていた。

魔理華が気になったのは最下位の人、最下位の人の名前は緑谷出久、緑髪の男子を見ると悔しいと顔に出ていた。

この子すごいのに除籍になるなんて、魔理華はそう思った。

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 

「..................」

 

「君らの個性を最大限引き出す合理的虚偽」

 

「「「はあああぁぁぁぁぁっ!!!???」」」

 

まさかの嘘にみんな驚愕し、大声を上げた。

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない。ちょっと考えればわかりますわ」

 

(き、気づかなかった......)

 

(気づかなかったな......)

 

魔理華と上流は心の中でそう呟いた。

 

「嘘でよかった、誰一人除籍しなくて」

 

「これにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類が置いてあるから戻ったら目通してとけ」

 

テストが終わり、生徒たちは教室に戻っていった。

 

 




次回予告

「今回は大丈夫だったか?」

「はい、なんとか」

「そういえばお前、緑髪の子を気にしてたな。もしかして」

「違います、そんなんじゃありません」

「今日は赤飯でも炊くかな」

「話を聞いてください!」

次回 いざ、訓練

「私のヒーローコスチュームがいよいよ出てきます!」

「更に向こうへ」

plus(プルス) ultra(ウルトラ)!」



オリキャラ設定

名前 矢那雲(やなぐも) 上流 (あがる)

年齢 15歳

趣味 ボクシング

特技 クライミング

好物 パイナップル

外見 灰色のボサボサの髪 キリッとした目

性格 頑張り屋

個性 グレードアップ

力や速さ、物の大きさ、体の強度などを10倍までグレードアップすることができる。一度に複数グレードアップすることはできない。7倍以上グレードアップすると、腕や足の強化の場合は筋肉痛、体の強度の場合は全身の疲れなどの副作用を引き起こすことがある。

あるヒーローに憧れて、そのヒーローの母校である雄英高校に入学した男の子。時々人をいじって遊ぶことがあり、気の強そうな爆豪のいじりネタを只今探している。他の人と協力したがるが、何故か他の人に頼りたくない。


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No11 いざ 訓練

カリキュラムを読み終えて家に帰ろうとする魔理華はおそらく緑谷出久という名前の男子のことを考えていた。

すごいパワーを持っているが、反動で体を痛めるリスクがある個性、まるで発現したばかりの個性でそれを使いこなせていないような感じだった。

 

「おーい、お二人さーん、駅まで?待ってー」

 

誰かを呼びかける声が聞こえ、声のする方を見た。

ボール投げで無限を出した女の子が飯田と緑谷を呼び止めていた。

 

「麗日お茶子です。えっと、飯田天哉君に緑谷...デク君!だよね」

 

「デク!?」

 

たまたま近くにいた魔理華は三人の話をこっそり聞いていた。

 

「え?体力テストの時、爆豪って人が『デクテメー』って」

 

「あの、本名が出久(いずく)で、デクはかっちゃんがバカにして」

 

「蔑称だったのか......」

 

「あぁそうなんだごめん!でもデクって、頑張れって感じで好きだ私」

 

「デクです!」

 

「緑谷君!?」

 

爆豪が言っていたデクは蔑称であることがわかり、魔理華は少し疑問を感じた。

 

(......爆豪の驚きよう、今まで出久さんの個性に気づかなかったの?)

 

「おーい、待てよなー」

 

「あなたは、上流さん。どうしたんですか?」

 

「いや、一緒に帰ってもいいかなーってな」

 

「あの、私も......」

 

魔理華を呼び止めた上流に続いて、手和と永鬼がやってきた。

 

「うん、いいよ。一緒に帰りましょう」

 

魔理華は高校での初めての友達が出来たのが嬉しくて少し笑った。

 

 

 

_________________________

 

 

 

 

魔理華が家に着くと修哉が昼ごはんの用意をしてくれ、一緒にご飯を食べた。

 

「魔理華、入学式はどうだった?」

 

「それが、入学式の代わりに個性把握テストをしたんです」

 

「個性把握?ああイレイザーさんが担任だったんだ。誰か除籍処分になったか?」

 

「えっ、なんで修哉さんが除籍処分について知ってるんですか?」

 

「時々雄英高校から修理の依頼を受けることがあるから大体は知っている。去年は酷かったぞ、クラス全員除籍処分になったからな」

 

「ブッ!?クラス全員除籍処分!?除籍は嘘じゃなかったの!?」

 

「ん、どういう事だ?」

 

魔理華は体力テストのことを話した。

 

「なるほど、除籍を合理的虚偽で誤魔化したか。その除籍の条件が最下位になった奴ってわけか......」

 

修哉は少し考えて答えを導き出した。

 

「おそらく、その最下位の子を除籍したくなくなっただろうな。そいつが将来すごいヒーローになりゆる才能を持っているに違いないって」

 

「すごい、ヒーロー」

 

「ああ、今のそいつは最下位だったが今からメキメキと成長すると思うぞ」

 

「..................」

 

「ん、どうした?」

 

「私も、成長できるのでしょうか?」

 

「その信念が本物であり、努力をすればなれるさ」

 

「..................」

 

魔理華は本当にそれでいいのかと悩み出した。

 

「俺からいえば信念は地面に刺さった棒だな。その棒は時に殴られ、切りつけられ、そしてへし折られるなど理不尽な目に合うこともある」

 

「けど、折られただけで終わりって訳じゃない。棒は傷ついた所を直し、折られた場所をくっつけ固定すろこともできるんだ」

 

「その信念が夢から現実になるまで真っ直ぐ立っていれば、お前は立派なヒーローになれる」

 

「それに、今まで雄英に合格するまで信念は真っ直ぐ立ってただろう」

 

修哉はそう言うとニコリと笑った。

 

「......そうですね、修哉さんがなれるって言ってるから絶対なれますね」

 

「いやぁ、俺はそこまで凄い奴じゃねーよ」

 

そんな話をして、修哉たちはいつも通りの一日を送った。

 

 

 

 

_________________________

 

 

 

 

雄英高校の午前の授業は必修科目から始まる。

 

「じゃ、この英文のうち間違っているのは?」

 

(普通だ......)

 

大体の生徒はそう思っていた。けど魔理華は違った。

 

(えっと間違っているのは、3番?いや1番?どれなのぉ......)

 

魔理華はあまり勉強はできない方で一生懸命目の前の問題に苦戦していた。

 

お昼は雄英高校の食堂があり、とても美味しいそうだ。けど魔理華は違った。

 

(修哉さんのお弁当、もう食べられなくなっちゃった......)

 

魔理華はどんな一流の料理より修哉が作ったお弁当が食べたくて仕方なかった。修哉は『一流の食堂があるんだし、そこで食ってけ』と言ってお金を渡した。中学にいた頃が懐かしかったと思っている。

 

「魔理華ちゃん、大丈夫?」

 

「大丈夫だろ、多分な」

 

ちなみに魔理華の周りに手和や永鬼、上流が集まって食べているが魔理華はそれに気づかずにいた。

 

そして午後となり、ヒーローとしての授業、ヒーロー基礎学が始まる。

 

「私があぁ、普通にドアから来た!」

 

「「「おおおぉぉぉ!」」」

 

「オールマイトさんだ、魔理華ちゃんオールマイトだよ!」

 

「うん、そうだね」

 

「?どうした、No1ヒーロー オールマイトが来たのにその反応は?」

 

「私にとってのNo1ヒーローは別の人だからね」

 

「右に同じー」

 

魔理華の言ったことに上流は賛成した。

 

「早速だが今日はこれ、戦闘訓練!」

 

待ちに待ったヒーロー基礎学の最初の授業が戦闘訓練だとわかり、生徒たちの顔が変わった。

 

「そしてそいつに伴って、こちら!」

 

オールマイトが指差すと壁から番号が振ってあるカバンが出てきた。

 

「入学前に送ってもらった個性届けと応募に沿った誂えたコスチューム」

 

生徒たちは歓喜の声を出した。それもそのはず、自分が想像していたヒーローコスチュームが出来て、それが着られるのだから。魔理華もコスチュームがどんな風に出来ているか楽しみだった。

 

先生から着替えたらグラウンドβに来るよう指示を受け、まずは更衣室に向かった。

 

 

 

_________________________

 

 

 

 

グラウンドβに着いた生徒たちはゆっくりとヒーローとしての実感を楽しむかのように歩いていった。

 

魔理華のコスチュームは緑のレザーマントを羽織っていて、マントの中は白のスーツを着ていた。一応修哉のコスチュームを参考に描いてみたがスーツの白が気にいっていた。

 

昔敵(ヴィラン)だった頃の自分の服装が黒一色のマントと服を着ていたからスーツの白はそんな自分を打ち消してくれるものだった。

 

今回の訓練の設定はヴィランがビルのどこかに核兵器を隠し持っていてヒーローがそれを探しているということになっていて、ヒーロー側は核兵器の回収かヴィランを捕まえることで勝ちとなり、ヴィラン側は制限時間までに核兵器を守りきることかヒーローを捕まえることで勝ちとなる。お互いの個性を使った戦い方を見るにはうってつけだった。

 

対戦相手と組み分けはクジで決まり、魔理華が引いたクジと同じ人を探した。

 

「あ、あの!もしかして、Aのクジを持っていますか」

 

「ええ、持っているけどあなた」

 

「僕は緑谷出久です。よろしくお願いします!」

 

魔理華と組む相手は緑谷出久だった。

 

 

 




次回予告

「緑谷さん、爆豪さんとはどんな関係なの?」

「え、どんな関係って言われても」

「昔何があった?なんで爆豪さんはどうしてあなたを嫌っているの?」

「えっと......」

「ねえ、どうなの?」

(初めて女子に言い寄られてる!)

次回 喧嘩の始まり

「と、とにかく!更に向こうへ!」

plus(プルス) ultra(ウルトラ)!」



_________________________




キャラ設定

名前 五舞(いまい) 手和(しゅわ)

年齢 15歳

趣味 日記

特技 知恵の輪を解くこと

好物 たこ焼き

外見 オレンジ色の硬めの髪質 童顔

性格 少し臆病

個性 手袋

両手から特殊な液体を出して手袋を作り、自由自在に操れる。操れる範囲は半径10mまで、手袋の力は本人の力と同じ。最大で15組でそれ以上作ると操り難くなる。作ってから5分経過したり、本人が指示すると手袋が粉々に消滅する。

魔理華の高校で最初の友達。ヒーローになるために雄英に入ってみたものの、みんなの個性がすごかったり、みんなの性格がすごかったりといろいろ圧倒されている。今はしっかりしようと頑張っているが自分の凄さに本人は気づいていない。





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No12 喧嘩の始まり

チーム一覧

Aチーム 緑谷&七咲
Bチーム 轟&障子
Cチーム 衣月&八百万
Dチーム 爆豪&上流
Eチーム 芦田&青山
Fチーム 砂藤&峰田
Gチーム 上鳴&耳郎
Hチーム 常闇&蛙吸
Iチーム 尾白&飯田
Jチーム 五舞&葉隠
Kチーム 麗日&口田

以上、チーム一覧でした。変わってないチームもありますけどね。

それでは見ていってください。


全てのチーム分けが終わり、次に対戦相手を決めるくじ引きを始めた。

 

「最初の対戦相手は、こいつらだ!」

 

ヒーロー側のくじから魔理華と緑谷のAチームのくじ、ヴィラン側のくじから爆豪と上流のDチームのくじが出てきた。他の生徒たちは地下のモニタールームに行った。

 

爆豪チームがビルの中に入って、魔理華チームは先生からの合図を待った。魔理華はそれまでの間にビルの見取り図を見て作戦を考えていた。

 

上流の個性は特殊な強化系による機動力があるからおそらくヒーローチームの探索と捕獲をするはず。爆豪は核兵器の守護をするはずだが、爆発の個性なために核兵器に影響を及ぼしかねないから迂闊に個性を使えないはずだと推測した。

 

爆豪はまだまだよくわからないことがあるからどう出るか推測しにくい。だったら爆豪のことをよく知っている緑谷に魔理華は話しかけようとした。

 

「ねぇ緑谷さん、爆豪ってどんなって大丈夫!?すごい顔になってるよ!」

 

不安そうな笑顔をしていた緑谷に魔理華は驚いた。

 

「相手がかっちゃんだから、上流くんもいるから身構えちゃって」

 

「その爆豪くんとは友達なの?バカにしてくるようだけど」

 

「昔は一緒に遊んでたこともあったけど、今は僕のことを嫌っていて、中学の時までいじめられていたし」

 

それを聞いた魔理華は自分がいじめを受けていた頃を思い出した。自分をいじめていた親戚の女の子のことに昔は憎んでいた。今でも憎んでいるかもしれない。それほどたくさんいじめられてきたからだ。緑谷さんも同じように爆豪くんのことを憎んでいると魔理華は思うが

 

「けど、凄いんだ」

 

「凄い......?」

 

「嫌なやつだけど、目標も、自信も、体力も、個性も、僕なんかより何倍も凄いんだ」

 

「でも、だから今、負けたくないって」

 

魔理華は驚いた。嫌だった相手を憎むことなく、むしろ尊敬し、自分より凄いとわかっていてこの勝負に勝ちたいと思っていた。相手を憎んでいた自分が少し恥ずかしく思った。

 

中学の先生が言っていた嫌な相手だからこそ戦うということ、修哉が言っていた緑谷は凄いヒーローになれるということに魔理華は理解した。

 

「緑谷さんと私、似ているようで似てないね......」

 

「あの、何か言いました?」

 

「なんでもないわ。それより爆豪君の特徴なんだけど」

 

魔理華は呟いたことを誤魔化して作戦を練り始めた。

 

 

 

_________________________

 

 

 

 

数分前に遡り、Dチームは核兵器の置いてある部屋に着いた。

 

「ヒーロー側が良かったんだけどなぁ。あ、これハリボテだ」

 

上流は核兵器を叩いて本物かどうか確かめた。

 

「ま、普通にマジモンの核兵器置かれたら大問題だからな」

 

「おい、デクは個性があるんだな?」

 

「ボール投げの時に見ただろう。個性じゃなきゃどうやってあの記録を出せるんだよ」

 

「..................」

 

「まあ、リスクがあるのが難点だが一度手合わせしたいもんだな」

 

「..................」

 

「おーい、話聞いてる?」

 

 

 

_________________________

 

 

 

 

『それでは、Aコンビ対Dコンビによる、屋内対人戦闘訓練スタート!』

 

先生の合図が出て、魔理華たちは窓から侵入した。

この屋内で一番重要なことは敵を早く見つけることと屋内を傷つけないこと。この二つの条件を満たす人はDチームの中で上流しかいない。この中は分かれ目の所で死角があるからそれを利用する。

 

作戦はこうだ。分かれ目から上流が来たら、地面に手をついてコールを唱える。そうすることで地面を凍らせることができる。それを使って相手の動きをほんの少しだけ封じることができる。狙うタイミングは方向転換の数秒、後は二人で一気に捕獲するだけ。

 

少しずさんだけれど、これで何とかなると魔理華は思った。

だがそう簡単に上手くいくはずもなかった。

 

現れたのは上流ではなく、爆豪だったからだ。

 

爆豪は目の前の敵を爆破させようとした。予想が違っていたことに動揺した魔理華。緑谷はその魔理華を後ろに庇った。

 

「七咲さん!大丈夫!?」

 

「ありがとうって緑谷さん!顔が!」

 

緑谷の顔が掠ったのか顔を覆っていたマスクが半分無くなっていた。けどそれ以外に外傷はなかった。

 

「コラデク、避けてんじゃねえ」

 

爆煙の中から爆豪が出てきて言うと次の攻撃を仕掛けてきた。凍らして封じるにも緑谷が前にいて使えなかった。

 

爆豪が右手を突き出してきた、が緑谷は爆豪の右手を掴んで格闘の達人みたく背負い投げをした。その動きはトントンとリズムがよく、まるで爆豪の動きを読んでいたような感じだった。

 

「かっちゃんは、大抵最初に右の大振りなんだ」

 

魔理華はわかった。動きを読んだわけではなく、動きそのものを知っていた。昔からずっと一緒にいたから爆豪の癖など覚えていたんだと。

 

「凄いと思ったヒーローは全部ノートにまとめてあるんだ」

 

この人は本気でヒーローになりたいと思っている。ヒーローのことをよく知って今の自分でもできることを模索して頑張っている。

 

「いつまでも、雑魚で出来損ないのデクじゃないぞ」

 

「かっちゃん、僕は、頑張れって感じのデクだ!」

 

緑谷は麗日が言っていたことをそのまま爆豪に言い返した。その姿は勇ましそうに見えるが少し震えていた。

 

「デク......!ビビりながらよぉ......!そういうとこがムカつくなあぁぁぁ!」

 

それが爆豪の癇に障り、さらに怒りが込み上がってきた。

 

二人の喧嘩が今ここで始まる。

 

 

 




次回予告

「今、緑谷さんと爆豪さんが戦っている」

「けど、緑谷さんの個性はリスクが大きすぎる」

「だったら、私にできることはただ一つ」

次回 魔理華VS上流

「更に向こうへ、plus(プルス) ultra(ウルトラ)!」



キャラ設定

名前 衣月(きぬつき) 永鬼(えいき)

年齢 15歳

趣味 日向ぼっこ

好物 肉 刺身

外見 茶髪と小さな猫耳 凛々しい顔

性格 野生的

個性 獣人

丸いものを見ると獣に変身できる。丸いものの色合いによって変身する姿が変化する。動物系個性の中でいろんな動物の能力が発揮できる。だが動物系個性と比べてみると動物の能力が少し低いところが弱点だ。

上流の中学の頃からの友達。本人は猫と言われるのが嫌いだが、日向ぼっこする様は猫としか言いようがない。本人の自慢は髪の毛並みで髪が汚れることは絶対に許さないらしい。





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No13 魔理華VS上流

遅れてすいません、異世界モノの小説に夢中になってしまいました。とにかく読んでいってください。


「おい爆豪!今の状況を教えろ、爆豪!」

 

上流は勝手にどこかに行った爆豪に小型無線で確認を取っていた。

 

「黙って守備してろ、ムカついてんだよ俺は今」

 

「そうか〜、ムカついてたのか〜ってダァホ!気分を聞いたんじゃねえんだよ!俺の個性は足も早くなるから捜索は俺が有利なんだからオレに任せろって」

 

ブツンッ

 

「おい!切るんじゃねえよな!」

 

上流はノリツッコミをしながら返信したが途中で切れてしまった。それによって怒りが更に込み上がってきて、大声を出した。

 

「なんだよ、アイツ!」

 

 

_________________________

 

 

 

魔理華は爆豪の話を聞いておそらく爆豪の勝手な暴走で動いていると推測した。上流の方が機動力があるのは上流自身もわかっているはず。

 

爆豪が構えて攻撃を仕掛けてきた。緑谷は魔理華に言った。

 

「魔理華さん、行って!」

 

「ピルア」

 

魔理華は呪文を唱え、核兵器がある場所を探した。

この建物の構造を見た時、広い空間が何ヶ所かあった。核兵器確保に戦闘があるなら広い空間で戦うのが一番、魔理華は見取り図にあった広い空間を重点的に探した。

 

そして、魔理華は核兵器がある場所を見つけた。すぐに緑谷に報告しようとした。だが、あることが頭の中によぎった。

 

 

 

このままだと緑谷が無理して大怪我を負うかもしれない。

 

緑谷の個性は自身にとって危険なもの、絶対に腕を壊すかもしれない。

 

緑谷の性格から見て、そんな事態になるのは確実だ。

 

だったらどうする、どうすればいい。

 

緑谷が大怪我をしないでこの訓練で勝つ方法。

 

答えは簡単だった。

 

 

 

緑谷が大怪我をする前に終わらせる。

 

 

 

緑谷と爆豪の喧嘩に水を差して、今この場で、自分一人でできる方法はそれしかない。

 

魔理華は前に出てきて、上流は魔理華が来たことに少しガッカリしていた。

 

「なんだお前か、緑谷って奴と戦いたかったが、仕方ねえな」

 

上流は準備運動して余裕の表情で足に力を入れた。

上流の姿が一瞬で消えてしまった。魔理華はどこから来るか警戒していると後ろに何かいると感じた。

 

すぐさま回し蹴りで繰り出したがそこには誰もいなかった。辺りを見回していると腕に白いテープが見え、確保テープだとわかり、その場から離れた。

 

魔理華がいた後ろに上流が確保テープを持っていた。あのまま気づかなかったらテープを巻かれて終わっていただろう。

 

「体力テストの時は4倍ぐらいしか出してなかったからな、本気のマジでいくからな!」

 

言い終わると上流は魔理華のすぐ目の前にいて、蹴りを入れるところだった。

 

「フレイ!」

 

魔理華は腕で防いだあと、地面に向かって炎を出した。

炎が地面に当たり火が周りに飛び散り、上流は条件反射的に火から離れた。

 

上流は落ちている小石を拾って投げつけようとした。

 

「大きさ10倍!」

 

投げた小石は大きくなり、少し大きめの石になった。

 

「バイガス、ピルア」

 

少しびっくりしたが呪文を唱え、その石を砕こうと拳を振り上げた。

だが、その攻撃は当たらなかった。急に石が元の大きさに戻ってしまったからだ。

後ろから強い衝撃が背中からきて、体勢が崩れてしまったが、魔理華はすぐに起き上がり、体勢を整えた。

 

石を大きくして投げたのは一時的に自分から石に視線を逸らさせるためで、身構えたり、攻撃しようとして空振りをしたりなどでできた隙を突いて、後ろから攻撃した後で捕まえる算段だったんだと、魔理華はそう理解した。

 

このままだと負けてしまう、そんな時、魔理華は上流を捕獲する作戦をふと思い浮かんだ。

 

(一か八かの賭けになるけど、やってみなきゃ)

 

「そっちから攻撃しないなら、いくからな!」

 

上流は姿を消して死角から攻撃を仕掛けてきた。魔理華は感覚だけを頼りに攻撃を避けていった。現れては攻撃をし、攻撃したら姿を消す、それの繰り返しだった。

 

続けていけば個性の効果がなくなる、呪文を言えば何とかなるけど、相手はそれを知っていて、連続的に攻撃をしてくる。もうすぐしたら

効果は切れる。

 

ドゴーーーーンッ!!!

 

するとどこからか大きな爆発音と何かが崩れていく音が響き、強い振動が伝わってきた。

 

「な、何だ!?地震!?」

 

急なことに上流は魔理華の目の前で止まってしまい、隙だらけの状態にあった。

 

「ピルア!」

 

この状況はチャンス、今しか勝機がないと確信した魔理華はすぐに作戦を実行した。呪文を唱えて、レザーマントを脱ぎ、全力のスピードを出した。

 

僅か数秒で上流の頭にレザーマントを巻きつけ、脱げないようにボタンをつけ、マントの口についている紐を引っ張って口を小さくした。上流は視界が暗くなって驚きつつレザーマントを取ろうとしたが、力強く引っ張っても、ボタンを外そうとしても、レザーマントが外れることはなかった。

 

レザーマントの材質は相澤の布に似た特殊な繊維で編み込まれていて、力任せに引っ張っても破れないようになって、ボタンも特殊な仕組みになっていて、つけると自動でロックがかかるようにできていて、普通に外すことはできない。

 

「コール」

 

そして念のために呪文を唱えて、上流の足を凍らして、地面から離れなく身動きが取れないようにして、動かせない足に捕獲テープを巻いて完全に行動不能にした。

 

魔理華は少し早歩きで進んでいった。

 

「七咲さん、状況は?」

 

「大丈夫、もう終わるから」

 

緑谷から連絡がきて、そう伝えたら魔理華は核兵器にタッチした。

 

「ヒーローチーム、Win!」

 

これで魔理華のチームの勝ち、緑谷に悪いかなと魔理華は苦笑いをした。

 

 

 




次回予告

「偶然か必然か、私は修哉さんの傷を見た」

「どうして今まで言わなかったんですか!」

「そんなに私のことが信じられなかったんですか......?」

次回 隠していた傷

「私は修哉の傷について、知ることになる」

「更に向こうへ、plus(プルス)ultra(ウルトラ)


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No14 隠していた傷

この日、この時間、大阪で地震が起きました。



大阪にいる方々の皆さん、もし暇でしたら見ていってください。





魔理華達の訓練が終わり、一旦モニタールームにやってきた。

そこで聞かされたのは、この訓練での一番の成績は上流と緑谷だったこと。

どうしてかは八百万百が説明してくれた。

 

「爆豪さんはほぼ私怨で動き、建物の損壊を招き、七咲さんも同じように後半からの一人で勝手に動いたことです。あの勝利は爆豪さんの大規模攻撃の影響があってこそ勝てたのです」

 

魔理華は建物の損壊はヒーローやヴィランにとって愚策だということは昔の経験で知っていた。一人で勝手に動いたこともチーム連携が取れていない証拠である。

 

「ですが、矢那雲さんも七咲さんとの戦闘で遊んでいるような節がありました。その油断で負けたことを自覚してください」

 

「はい、そうですね......」

 

上流も確かにと顔に出してそう言った。

 

「よし、みんな場所を変えて第2戦を始めよう」

 

魔理華達は別の場所に移ることになり、オールマイトについて行った。魔理華が後ろを振り返ると爆豪が正論を叩かれたことでショックで動かなかった。

 

 

_________________________

 

 

 

学校から家に帰った魔理華は『冒険の書』を書き終え、戦闘訓練について振り返っていた。

 

轟の個性は魔理華の個性を強化したような感じで建物全体を凍らせた時はびっくりした。飯田は両足が離れていた時に地面を凍らされて、盛大に滑って転んで壁に激突、打ち所が悪かったかその場で気絶してしまった。その後に飯田は悔しがっていた。他にもいろんな個性が戦闘でどう使えるのか見れて良かった。緑谷がブツブツと呟いていた時はクラス全員引いていた。

 

『冒険の書』には二つの呪文が出て、ゲージも増えていた。これで新しい戦い方ができると魔理華は少し笑った。

 

それともう一つ、気になることがあった。戦闘訓練が終わって、みんなと遅れて教室に戻っていると、校門前で緑谷と爆豪が何か話をしていた。遠くからで何も聞こえなかったけど、気のせいか、あの爆豪が泣いているように見えた。

 

そうこう考えていたら、時間が結構過ぎていた。修哉がお風呂を沸かしていたことを思い出し、着替えを用意して風呂場に向かった。

 

「あ、魔理華お姉ちゃんそこは......」

 

途中で千代が風呂場に行くのを止めようとしていたが、魔理華は緑谷と爆豪のことをもう一度考えていて耳に入ってこなかった。そして、風呂場のドアを開けると

 

 

お風呂から上がったばかりの全裸の修哉と真斗がいた。

 

 

後ろを振り向いた修哉は思考が一瞬止まり、沈黙が続いた。

 

「何入ってきたんだよ!ドアにちゃんと『入浴中』って札があっただろ!!普通こういうイベントを男女逆だろーーー!!!」

 

修哉は急いでバスタオルを取って体を覆い隠した。魔理華はその場から動かなかった。

 

いや、動けなかったと言うのが正しい。それは決して修哉の裸に興奮したからではない、修哉の裸よりも衝撃的なものが目に入っていたからだ。

 

 

 

 

 

修哉の背中を覆い被さんと言える丸く大きい茶色くなった傷跡があった。

 

 

 

 

 

「修哉さん、その傷は......?」

 

修哉は魔理華の言葉に答えなかった。その顔は困っているように見えていた。

 

「とにかく服に着替えさせてくれ、話はそれからだ」

 

決意した顔でそう言うと、扉を閉めた。

着替え終わると、魔理華たちはソファーに座って修哉は魔理華たちと面と向かって椅子に座った。

修哉は上着を捲って腹を見せた。その腹には背中にあったのと似ている大きな傷跡があった。

腹部の傷跡と背部の傷跡、それを見た魔理華はこう思った。

 

この傷、まるで...。

 

土手(どて)(ぱら)に風穴が開いた後、みたいだろ」

 

修哉は魔理華がそう思う前に言った。魔理華はそれはヘドロ事件でできた傷なのですかと聞いた。

 

「いや、この傷は6年ほど前に凶悪なヴィランから受けた傷の跡だ」

 

修哉はとあるヒーローと一緒に闘い、そのヴィランを倒すことができたが、修哉とそのヒーローは大きな傷を負った。風穴が開く程の怪我を負いながら、なぜ生きたいられたのですかと聞くと、修哉の『直す個性』のおかげで助かったからだ。修哉の個性は物だけではなく、生き物の傷を治すこともできる。

 

他者の身体の傷を治すことには問題はない、自分の身体を治すことになると問題が起こる。それは傷跡に更なる痛みが来ることで、その行為は傷口に塩を塗って治すようなものだと修哉は言った。

 

ヴィランを倒した後、修哉は真っ先にもう一人のヒーローの怪我を治そうとした。だがもう一人のヒーローは自分より先に修哉の怪我を治すよう頼んできた。修哉はすぐに自分の怪我を治してからそのヒーローの怪我を治そうとしたが、修哉の傷は今までにないもので、想像を超えた激痛が走った。あともう少しで完治するところであまりの痛みに気を失ってしまった。

 

目を覚ますと病院の中にいて、残っていた傷はリカバリーガールに治してもらっていた。修哉は急いでもう一人のヒーローのところに向かったが、修哉は何週間も眠っていて、その時には修哉の個性では治せない状態になっていた。

 

「俺の個性は手を加えられたり、異物が入った後だと効果が出ないんだ。簡単に言うと割れた茶碗をボンドでくっつけて治そうとした後だと治せないってことだ」

 

真斗は修哉の傷跡について知っていて、修哉から男同士の約束だと言われて黙っていた。

 

「それで話は終わりだ。さっさと風呂に入ってこい」

 

「一つ、聞いていいですか?」

 

「......何だ、言ってみろ」

 

「話に出てきたヴィランは本当に倒せたのですか?」

 

魔理華はその敵がどうなっているか気になり、修哉に聞いた。

 

「倒したって言ったがあまり自信はない。だが相手も深手を負ったんだ、早々に動けないだろう」

 

それ以上は聞かずに、修哉がキッチンに向かうのを見ていた。

その後ろ姿は何か重いものを背負っているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、魔理華は知ることになる。

 

魔理華が知ることができなかった(ヴィラン)の奥底の恐怖を......。

 

「見たかこれ、教師だってさ」

 

「本当に、オールマイトって馬鹿みたいだなこりゃ。兄貴、やっぱり」

 

「ああ、楽しみだな。オールマイトが(ヴィラン)に殺されるところ」

 

「どうなるか、楽しみですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、自分の無力さを。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

「今回は委員長と副委員長を決めてもらうのだが」

「私は緑谷さんに投票しますので関係ないです」

「さて、それはどうかな?」

次回 ガンバレ魔理華

「更に向こうへ」

「「plus(プルス) ultra(ウルトラ)!」」



設定更新

魔理華の個性 マジシャン

ゲージ 28 >>> 36

スガロ(5) 一定時間身体を鉄並みに硬くできる。

ミルエ(4) 一定時間透視ができる。




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No15 ガンバレ魔理華


ちょっとジャンプのギャグの一つを入れてみました。




学校に向かう魔理華はある疑問を抱いていた。

 

前の話に出てきた凶悪(きょうあく)(ヴィラン)。修哉さんがその(ヴィラン)と戦って重傷を負ったなら、ニュースになるはずだと。しかし、ネットで調べてみてもそんな情報はなかった。だとするとよほど大きな力で情報を揉み消したのだろうか、その大きな力とは何なのか、疑問が疑問を呼んで頭の中が疑問でいっぱいだった。

 

「ちょっとそこの貴女(あなた)、聞きたいことがあるのですが」

 

また声をかけられて考えるのを一旦やめて、目の前を見た。

 

「オールマイトが教師になってどう思いますか?」

 

目の前には大勢の記者たちが覆い尽くしていた。

あのオールマイトが教師になるってなったら、メディアが見逃すわけがない。連日前夜こんな調子であった。

 

今、魔理華の心臓の鼓動はドラムロール並みに早くなっていた。もし記者の中に(ヴィラン)時代(じだい)の自分のことを知っている人がいれば、記事になって高校人生即終了(ジ・エンド)になることに魔理華は恐れていた。

 

「そうですね、あのトップヒーローを間近で見れて教師として指導してくれる。そんなことができるとはさすがは雄英だと思います」

 

魔理華は落ち着いた顔で質問の答えを言い、早歩きで教室に向かった。

 

教室に着いた魔理華は席につき深呼吸をして落ち着こうとした。だが心臓の鼓動の速度は速いままだった。魔理華は冗談のつもりで『静かにしろっ!』と念じてみた。

 

そしたら静かになった、心臓が止まったからだ。

 

急に心臓が止まって(くる)しくなり、急いで心臓を叩いた。心臓は普通の早さで動いて一安心した。私の体は一体どうなっているのと一つの疑問が生まれた。

 

オールマイトが教師になることは誰もが知っていることなのかと魔理華はふと思った。

 

 

 

そう、その誰もが......。

 

 

 

_________________________

 

 

 

 

「昨日の戦闘訓練、お疲れー」

 

相澤先生がそう言うと生徒たちの記録の評価した。爆豪は当たり前に大規模攻撃と行動を指摘され、魔理華の無茶な行動を指摘した。

 

「ホームルームの本題だ、今日から君らには」

 

また臨時テストがくるのかとみんなは覚悟したような顔をしていた。

 

「学級委員長を決めてもらう」

 

(((学校っぽいことキターーー!)))

 

生徒たちは一斉に手を挙げて学級委員長になると立候補した。前に修哉からヒーローにとっての学級委員長はトップヒーローとしてみんなを導くことを鍛えられるものと教えられたが魔理華はそういうのに興味がなかった。それに下手して(ヴィラン)であったことがバレないためにも、静かに何もしないでいることが一番であった。

 

飯田の提案で多数決で決めることになった。投票用紙をもらって誰に投票するか考え、緑谷に投票することにした。

 

そして結果発表が出て、緑谷が委員長になっているだろうと見てみた。

 

「えぇ!!!」

 

そこには緑谷4票の下に、魔理華の名前とその横に2票の投票があった。

 

一体誰が投票したのか探し、不自然に目をそらしている手和(しゅわ)と目があってVサインを出した上流(あがる)が犯人だと確信した。このままだと副委員長になってしまう。断るにも皆の空気に押されて断る勇気がなかった。

 

だが心配はない。何故(なぜ)ならもう一人、2票の投票がある八百万(やおよろず)(もも)がいることで、じゃんけんで副委員長を決めることになった。ここで負ければオーケー副委員長の座から即脱出ができる。魔理華は負ける思いでじゃんけんに挑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わって魔理華は食堂の机に突っ伏していた。じゃんけんで勝ってしまい結局自分が副委員長をやることになってしまった。魔理華の周りには手和(しゅわ)上流(あがる)永鬼(えいき)の三人が席についてご飯を食べていた。

 

「ごめんね魔理華ちゃん、私だと自信がないから......」

 

「お前なら立派な副委員長になれるな」

 

牛丼を食っている上流(あがる)(しば)きたいと頭によぎるが、我慢して置いてあったカレーうどんを食べた。

 

「あの永鬼さん、前々から気になっていたけど衣月(きぬつき)って、あの有名な衣月一門(きぬつきいちもん)と関係してるの?」

 

永鬼(えいき)は質問を聞いて食べ進めていた手を止めた。

 

「衣月一門って何?」

 

魔理華は知らない言葉を聞いて、疑問が声に出てしまう。

 

「衣月一門は動物系ヒーローを輩出している一族だ。そしてこいつはその一門の息子だ。あまりこいつの家族については聞かない方がいい、いいな」

 

上流(あがる)が一通りの説明をして言及するなと注意した。

永鬼(えいき)は止めていた手を動かし食べ進めた。

 

ジリリリリリリリリリリリーーーッ

 

『セキュリティー3(スリー)が突破されました。生徒の皆さんは直ちに屋外に避難してください』

 

ご飯を食べていた途中、急な警報が鳴り響き、アナウンスが避難警告を出した。

 

「あの、セキュリティー3(スリー)って何なんですか?」

 

「校舎内に誰かが侵入してきたんだ。三年間でこんなの初めてだぞ!」

 

手和が隣にいた先輩の人に聞いて、先輩の人はそれに答えた。

魔理華たちははぐれないように手を繋いで急いで避難しようとした。

廊下は避難しようとしている人たちでいっぱいで、今までにない侵入者が来たことでみんな大混乱していた。

 

「い、痛い......」

 

「押しつぶされるぞ、これ!」

 

大混乱の中に入った魔理華たちは避難するにも動けない状態にあった。魔理華と上流は誰が侵入したのか窓ガラスのある方に進んで確かめた。

外には記者たちが先生に詰め寄っていた。侵入者はあの記者たちだとわかった。

 

「皆さん、落ち着いてください!ただのマスコミが入ってきただけです!」

 

魔理華は大声で叫んだが、パニックとみんなの声のせいで誰にも聞こえていなかった。

 

「魔理華ちゃん、助けて......!」

 

「手和ちゃん!」

 

気がつくと手和が流されてどんどん遠くに行ってしまう。何とかしなきゃと魔理華は考えに考える。

 

こんな時、修哉さんなら......。

 

そして、この混乱を何とかする方法を思いついた。

 

「上流さん、声の大きさを10倍にできますか!」

 

「え、やったことはないけど、やってみるわな!」

 

魔理華は手和がいる方に進み、手和の手に届くところまでに近づけた。

 

「手袋をいっぱい作って、上流(あがる)を持ち上げて!」

 

手和(しゅわ)はコクリと頷くと手袋を作って上流(あがる)を持ち上げた。

 

「みんなーーっ!落ち着くんだよなーーーーーっ!!!」

 

十分なところまでに持ち上がったところで上流(あがる)がものすごく大きな声を出した。

 

「そうです落ち着いてください!ただのマスコミです!何もパニックになることはありません!だから大丈夫!」

 

上流(あがる)の他にもう一人、聞き覚えのある声が聞こえた。声がした方を見ると非常口にあるランプの人と同じポーズの飯田がいた。彼も魔理華のようにこの事態を止めるために頑張っていた。

 

外からパトカーのサイレンの音が聞こえ、警察たちが侵入してきたマスコミを連れて行き、事態は収まった。ちなみにパトカーのサイレンの音が聞こえた魔理華は少しばかりビクッと怯えた。

 

 

 

 

 

昼休みが終わって他の委員決めを始めた。緑谷はとても緊張していて、話が進まない。

 

「出久くん、話進めて進めて」

 

しばらくは出久くんのサポートをするのかなと魔理華は先のことを考えていた。

 

「で、では、他の委員決めを取り行なってまいります。けどその前にいきですか?委員長はやっぱり、飯田天哉くんがいいと思います!」

 

いきなりのことでみんなが、特に飯田が驚いていた。

 

「あんな風にかっこよく人をまとめられるんだ。僕は、飯田くんがやるのが正しいと思うよ」

 

魔理華はこの状況がチャンスだと思った。この流れに乗って副委員長の座を八百万に渡してしまえばいい。

 

「私も「俺はそれでいいと思うぜ。緑谷もそう言ってるし、確かに飯田、食堂で超活躍してたしな」

 

「私も「あぁ、それになんかさ、非常口の標識みてえになってたよな」

 

「私も「時間がもったいない、早く進めろ」

 

今度はちゃんとわかってもらうように魔理華は大きな声を出そうとする。

 

「私も「そうだ!緑谷委員長が言ってるんだ、飯田なら頑張れるよな!」

 

矢那(やな)(ぐも)、もう少し静かにしろ」

 

だが、上流(あがる)のわざとらしい大声で魔理華の声はみんなに届かなかった。

 

「委員長の指名なら仕方あるまい、以後はこの飯田天哉が委員長の責務を全力で果たすことを約束します!」

 

結局は、チャンスを逃して副委員長の座は変わらなかった。

放課後、魔理華が上流(あがる)をしばき倒したことは言うまでもない。

 

 

 

 




次回予告

「レスキュー訓練をしようする私たちの前に、突如(ヴィラン)たちが現れた」

「彼らは(ヴィラン)連合(れんごう)と名乗り、平和の象徴、オールマイトを殺しに来たと言う」

次回 たたかえ ヒーローの卵!

「更に向こうへ、 plus(プルス) ultra(ウルトラ)!」







八百万に変わって魔理華を副委員長しました。


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No16 たたかえ ヒーローの卵!

この前、熱中症になりかけてしまいました。その次の日は熱を出して大変でした。皆さんも熱中症には気をつけてください。




 

「ただ今到着しました根津校長。これが修理したいものですか......」

 

昼過ぎに修哉は雄英からの仕事の依頼を受けてやってきた。

校門の前に来ると黒い粉末が入った袋があり、その場にいた先生から雄英バリアーの残骸だと知らされた。

 

「あぁ、これを直せそう人は君しかいないからね」

 

「ここまで壊れちゃあ直すのに時間がかかりますよ」

 

「わかっているさ、直す前にこれを見てどう思うかね」

 

「見たまんまですよ。『物を壊す個性』を使って壊したしゃないですか」

 

修哉は粉の残骸を手に取り、サラサラと落としていった。

 

だから(・・・)、俺を呼んだんだろ」

 

修哉の穏やか口調から真剣味が混じった口調になった。

 

「そうさ、何かあったら連絡を入れてくれ」

 

根津校長は校内に戻り、修哉は雄英バリアーの直しにかかった。

 

 

 

その一方でヒーロー科 Aクラスでは

 

「今日のヒーロー基礎学は俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制になった」

 

(なった?)

 

魔理華は先生の言葉に疑問に思うが、話は先に進んでいった。

今回は災害レスキュー訓練、水難や地震、火災などの災害の中で負傷した一般市民を助ける訓練をするみたいだ。修哉はこれを「ヒーローとしての本質」と言っていて、魔理華は修哉さんみたいな誰でも救えるヒーローになるためにこの訓練を頑張っていきたいと思った。

 

今回はコスチュームと体操服のどれかを選ぶことになっていた。環境によりコスチュームの有利と不利が決まってしまうためらしい。訓練場はバスで行くと言われ、魔理華はコスチュームを選んでバスに向かっていった。

 

 

 

_________________________

 

 

 

 

バスの中では爆豪をいじっていたり、個性で思ったことで話し合っていた。

 

そして、もう一つの話題として修哉についての話が出てきた。

ただし、それはいいものではなかった。

 

「またエコロ・サイクルの噂が出ているな」

 

(ヴィラン)と関わりを持っているっていうあの......」

 

修哉はヒーローとして最悪な評価を受けていた。理由は(ヴィラン)を匿っているという噂があるからだ。その噂は嘘ではない、事実として修哉は魔理華を住まわせている。その噂のせいで支持率最下位(アンダー・ヒーロー)とネットでそう呼ばれている。ネットでは根も葉もない噂があり、それを見た魔理華は自分のせいだと落ち込んだが、修哉はあまり気にしていなかった。

 

『俺はただ人を救いたい、それに支持率なんてもんはいらねえよ」

 

それでも恩人が酷く言われるのはいい気分ではない。何とかして修哉さんがいいヒーローだっていうことを言いたいが、下手に喋ると余計に評価を下げてしまうかもしれないと考え、黙っていることしかできなかった。

 

「そんなことないよ、あの人はいろんな人たちを救ってきてるんだ!里鳴プロート・クリナでの救出だってあの人がいなかったら、被害も大きかったかも知れない!」

 

そんな中、緑谷が修哉の噂に異議を唱えた。

 

里鳴については魔理華も知っていた。

里鳴市でプロート・クリナという豪華なマンションが建てられたが、そのマンションは急いで作ったことで欠陥だらけの手抜きマンションだった。マンションを建てた人はこの事に気づいていて、事件が起こるまで隠し通していた。

 

建ってから1年半が過ぎて、いきなりマンションにヒビが入って、横に倒れ始めた。その時に修哉が居合わせていて、修哉の個性で倒壊を抑えた。その間に他のヒーロー達が住民達を救出して事なきを得た。怪我人はいたが死者は出なかった。

 

その事件を知っていて、修哉さんのことをよく思っている人がいる事に魔理華は嬉しく思いニコリと笑った。

 

目的地に着くと大きなドームがあり、そこで待っていたのは災害救助で有名な『スペースヒーロー 13号』だった。13号についてドームの中に入るとそこには山や湖、ビルの残骸(ざんがい)があり、災害レスキューのためだけに作られたかのような場所だった。それはまるでUSJのアトラクションのように見えていた。

 

「水難事故、土砂災害、火災、暴風、エトセトラ、あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です」

 

「その名も、ウソの災害や事故ルーム」

 

「略してU S J!」

 

(本当にUSJだった......)

 

魔理華は、いや多分みんながそう思いながらも13号から言いたいことが1つあり、話を聞いた。

 

13号の個性は『ブラックホール』、災害で瓦礫(がれき)を塵にして人を助けることができるが、それは簡単に人を殺してしまう力でもあった。この社会では個性が当たり前になり法律で規制をしているが、ヒーローでも個性で人を傷つけて仕舞えば(ヴィラン)に転ずることもある。自分の個性の危険性を知ってこそ、ヒーローとして進めることを実感した。

 

「そんじゃまずは......」

 

相澤が訓練内容を言おうとしたその時、ドームのライトが消え、噴水が途切れ途切れに水を出していたら噴水の前が歪み出し、黒いものが現れ、その中から複数の人が出てきた。

 

一塊(ひとかたまり)になって動くな!13号、生徒を守れ!」

 

「......どうしたんだろね、魔理華...ちゃん?」

 

魔理華はこの事態に気づいた。先生の急な指示、複数の人から感じる昔の自分に似たようなもの、そうあれは

 

「あれは(ヴィラン)だ」

 

先生の言葉で確信を得た魔理華は唾を飲み込んだ。

前のマスコミ侵入は(ヴィラン)が侵入するための撹乱、先生達がマスコミに対処している間に再度(さいど)侵入(しんにゅう)の下準備をしていたのだろう。この学校のセキュリティーセンサーが作動しないのはセンサーを妨害する奴がいることになる。隔離された場所での侵入から見て(ヴィラン)達はよく考えて行動している。

 

問題は目的、何のためにこんな(だい)それたことをしたのか、何をしたいのか?

 

「魔理華ちゃん、早く逃げよう!」

 

「何ボーっとしたんだ!さっさと行くよな!」

 

手和(しゅわ)上流(あがる)の声で我に返った魔理華はみんながいないのに気づいた。前を見ると遠くで相澤が(ヴィラン)と戦っていて、後ろを見ると13号と手和達がドアに向かって避難していた。魔理華も急いでみんなの後を追いかけた。

 

「させませんよ」

 

ドアの前に黒い(もや)が現れ、黒い(もや)からそう声が出てきた。

 

「はじめまして、我々は(ヴィラン)連合(れんごう)。この度僭越(せんえつ)ながらヒーローの巣窟、雄英高校に入らせていただいたので、平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことでして」

 

平和の象徴、オールマイトを消す?魔理華は(ヴィラン)連合(れんごう)の目的がわかったが、そんなことができるのかと疑問に思った。

 

けど、この場にはオールマイトが来ていない。目的の相手がいないこの状況で(ヴィラン)連合(れんごう)が何をするのかわかったものじゃない。

 

そう考えていると爆豪(ばくごう)上流(あがる)切島(きりしま)が黒い(もや)に攻撃を仕掛けた。

 

「「その前に俺たちにやられることを考えなかったか(な)!」」

 

「危ない危ない」

 

爆豪の爆煙の中から落ち着いた声が聞こえ、黒い(もや)は平然とし、笑ったかのように目をすぼめた。

 

「そう、生徒といえど優秀な金の卵」

 

「ダメだ、どきなさい三人とも!」

 

「私の役目は、貴方達を散らし(なぶ)り殺す!」

 

黒い(もや)が魔理華達を包み込み、辺りが黒く塗りつぶされた。

どこにみんながいるかわからなくなるが魔理華は前に進んでいった。

すると前から一筋の光が見え、急いで光のある方に進んだ。

 

黒い(もや)から出ると、そこはUSJの出入り口前ではなく、倒壊したビルがあるエリアに着いていた。

 

「小娘、動くんじゃねえぞ」

 

後ろから男性の声が聞こえた。口ぶりから(ヴィラン)だとわかった魔理華はボソッと呟いた。

 

「......ピルア、バイガス」

 

そして後ろにいる(ヴィラン)に蹴りを与え、相手から離れた。

5人程いる(ヴィラン)達は一斉に攻撃しようとしたが攻撃をする前に魔理華は(ヴィラン)を次々に倒して行った。

 

(ヴィラン)の応援が来て立ち向かおうとしたが、上流(あがる)(ヴィラン)達に突貫し、蹴散らして行った。

 

「お前、ここにいたんだな」

 

上流(あがる)は魔理華を見つけると手を振って近づいて来た。

 

「こっからどうする?副委員長」

 

そう言っている間に他の(ヴィラン)がやって来ていた。

 

「とにかくこのエリアにいるみんなを探して、ここから出る!」

 

「わかった、突き進むわな!」

 

二人は(ヴィラン)に向かって走り出した。

(ヴィラン)の攻撃を避けつつ、相手を倒しながら進んでいった。

 

この時は自分の力に自信があった。(ゆえ)に天狗になっていた。

 

 

 

彼女たちが本当(ほんとう)(ヴィラン)とヒーローの戦いを見るのはまだ先の話であった。

 

 

 

 

 




次回予告

(ヴィラン)達を倒して行きながら、みんなを探していた私たち」

「そこで最初に見つけたのは、爆豪!?」

次回 油断でうっかり

「更に向こうへ、plus(プルス) ultra(ウルトラ)!」



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No17 油断でうっかり

ヒロアカの映画が公開されてるのに自分はまだ行ってないんですよ。
最近、いやこれからも忙しいので当分は見に行けません。
トホホ。


みんなと離れてしまった魔理華たちは(ヴィラン)の一人を捕まえて問いただした。

 

「私たちの他に子供を見ませんでした?」

 

「知らねえなそんなの」

 

上流(あがる)さん、耳元で叫んでください」

 

「わかったよな、ワアアアアアアアアァァァァァッ!!!」

 

(ヴィラン)の耳元でグレードアップした大声を出した。それは(ヴィラン)の苦痛の声がかき消される程の大声だった。

 

「吐かないともう一度しますから」

 

「言う言う!言うからそれ以上はやめてくれ!」

 

(ヴィラン)は涙目になりながら知っていることを言った。

二方向に子供がいるとわかった(ヴィラン)たちは二手に分かれて、片方が魔理華達と出くわした。魔理華達はもう片方の(ヴィラン)が行った方向を聞き出してそこに向かって行った。

 

走り続けて行くと、遠くに二人の誰かが魔理華達に向かって来た。

どんどんと近づき、赤い髪が見えるところで切島だとわかった。

 

「おーい、やっぱりお前らも来てたのか」

 

「ええ、切島くんの他に誰か」

 

「爆豪と一緒にいるんだ。今は(ヴィラン)がいるか警戒しているが」

 

「爆豪ですか......、大丈夫ですか?」

 

「あぁ、爆豪の奴凄え強えぞ。目に見えない相手を一瞬で倒したんだからな」

 

そんな話をしているのを他所(よそ)に話に出ていた(ヴィラン)が3人を狙っていた。

 

(クックックッ、あのガキがいねぇ今、あそこのガキどもだけでも殺っておけば)

 

(ヴィラン)は一番油断してそうな上流(あがる)に狙い定め、ナイフで突き刺そうとする。

 

(死ねえぇぇぇ!!)

 

「死ねえぇぇぇ!!」

 

上流(あがる)が襲われる寸前に爆豪が爆発で(ヴィラン)を吹き飛ばし、間一髪で防ぐことができた。

 

「さっきぶっ潰した奴が見えなくなってここに来てみれば、てめえらもちいとは気をつけろ!」

 

(わり)いな、ありが」

 

「てめえも何もしねえなら引っ込んでろ!俺だけで充分だからな」

 

「ほんとお前頼りになるなぁ」

 

「........................」

 

「ん、どうしたんだ上流(あがる)?」

 

急に黙り込んでしまった上流(あがる)に切島は話しかけた。

|上流は「......何でもねぇ」と言って先に進んだ。進みは(あら)

乱暴に変わっていた。

 

「とにかく、ここから出ないとみんなが危ねえ」

 

切島が言ったことにみんな同意し、急いで出口を探していった。

 

「爆豪......君、あなたどうして緑谷(みどりや)さんに強く当たっているの?」

 

魔理華は自分の中の疑問を晴らすために、今この場で聞いてみた。

 

「あぁ!てめえには関係ねぇだろが!」

 

「それでも聞きたいの、鬱陶(うっとう)しくても聞きます。あなたはどうして緑谷(みどりや)さんに......」

 

「舐め腐っていたからだ。中学の時、デクは無個性だった。だと思ってた」

 

「........................」

 

「入学初日に急に個性が使えるようになるなんざありえねえからな」

 

「........................」

 

ここから聞くと爆豪は自分が一番でいることに、緑谷が気に入らなかったんだと魔理華はちょっと理不尽に思えた。

 

「戦闘訓練で俺はデクに負けた。半分野郎に敵わねえと思った。ポニーテールの奴の言う通りだ。」

 

「........................!」

 

「だがこっからだ。あいつらを、完膚なきまでぶちのめす!俺は、こっから俺は強くなるんだ......!」

 

話を聞いてわかった。本当の爆豪は一番でいたいのではなく1番になりたいんだと。一体誰が彼をこうなるまでにしたのかはわからない。多分昔は純粋にヒーローに憧れ、1番になりたいと思っていたのだろう。今までの爆豪は一番でいないと気が済まなかったが、今は違う、彼は止めていたものを再び動かしてヒーローとしての道を進んでいる。

 

「そっ、大体分かったわ」

 

「あぁ!何がだ!」

 

魔理華はそう理解すると、一クラスの一人として接するように爆豪に(いだ)いていた気持ちを切り替えた。

 

「これからもよろしくね、勝己君」

 

「..................!?」

 

魔理華は満面(まんめん)()みで爆豪に改めて挨拶した。

それに対して爆豪は魔理華の笑顔にうっかりときめいてしまった。

爆豪は急ぎ足で魔理華から離れて行った。魔理華はそれに一つの疑問も(いだ)かなかった。

 

「おーい!もうすぐ出られるぞ!」

 

切島が指差すところを見ると、瓦礫(がれき)のない道があった。この先を進めばUSJの中心に着く、だがその先には強い(ヴィラン)がいるとしたら、こっちにとって不利な状況になる。魔理華は気を引き締めて瓦礫(がれき)エリアから出て中央部に向かった。

 

上流(あがる)さん、視力の強化を!何が見えるか教えて」

 

「うるせえ黙ってろ!」

 

「でも強い(ヴィラン)がいたら」

 

「ようは(ヴィラン)をぶっ倒せばいいんだろ!」

 

上流(あがる)は魔理華の指示を無視して戦闘訓練に使った移動術で姿を消した。今まで上流(あがる)が怒ったことはなかったのになぜか怒っていた。

 

魔理華達は上流(あがる)を全力疾走で追いかけているとその先に誰かがいた。はっきり見えるところまで来るといたのは黒い手の男に首を掴まれた上流(あがる)と黒い(もや)(おとこ)に飲み込まされそうな緑谷、脳をむき出した怪物と苦戦しているオールマイトがいた。

 

「俺は(もや)モブをぶっ殺す!」

 

「俺は手だらけの奴を!」

 

「私は上流(あがる)さんを助けます!」

 

爆豪は黒い(もや)を、切島は手だらけの男を、魔理華は黒い手の男に向かって行った。

 

「フレイ!」

 

魔理華の火の玉が噴き出すが、魔理華の呪文の声で気づいた黒い手の男にあっさりと避けられてしまった。

 

だが、黒い手の男の後ろにある男が現れ、蹴りを入れて上流(あがる)を助け出した。その男を見て魔理華はこう言った。

 

 

 

「修哉さん!どうしてここに!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

「私の前に現れた修哉さん、一体どうしてここにいるのか」

「そして、ここまで来るまでに何があったか」

次回 ヒーローとしての力

「更に向こうへ、plus(プルス) ultra(ウルトラ)!」


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No18 ヒーローとしての力

投稿遅くなってすいません。



USJに(ヴィラン)連合(れんごう)が奇襲して数分後、USJに続く道で一人飛び続ける男がいた。

緑のマントを羽織い、黄緑(きみどり)色のコスチュームを着た修哉だった。

彼が1メートルぐらいの棍棒の上に乗って一直線に飛んで行く中、全速力でこちらに走ってくる飯田が来た。飯田は急に止まり、誰なのか確認すると、雄英の教師でないことが分かると身構えて警戒した。

 

「あなたは誰ですか!?」

 

「あぁ、怪しいものじゃない、ただのヒーローだ。それより何かあったんか?」

 

「そんなこと信じられるか!」

 

飯田は大声で叫んだ。飯田にとってはどこの馬の骨だかわからない人にそうやすやすとしゃべるわけにはいかないだろう。修哉(しゅうや)がそう考えていると修哉の後ろからスーツを着たオールマイトが物凄い勢いでやってきた。

 

直崎(なおさき)くん、君も来てたのか!」

 

オールマイトは修哉に声をかけてきた。そのおかげで飯田はオールマイトの知り合いだとわかり、警戒するのやめ、オールマイトに何が起こったか話した。

 

「オールマイト先生大変です!今USJに(ヴィラン)が現れて危険な状態なんです!俺は他の教師方を連れてきます。

 

13号から託された任務を果たそうと飯田は校舎へと走って行った。

 

「私の背中に乗ってくれないか、その方が早いからな」

 

修哉は遠慮もなしでオールマイトに乗って、オールマイトは走っていった。修哉がオールマイトの顔を覗き見ると怒りの表情を固めていた。オールマイトは(はら)()っていた、それは(ヴィラン)に対してではなくそんな危険な状況でゆっくり休んでいた自分に対してだった。修哉にもそのことはよく理解しているからこそ、何も言わなかった。

 

USJの入り口前に着いたオールマイトのはドアをぶち壊して開けて乗り込んで行った。

 

そこで真っ先に目についたのは背中がズタボロにされた13号と13号に必死に声をかける麗日(うららか)達だった。その奥には腕が折れ曲がって血だらけの相澤が倒れていた。|麗日(うららか)達は感じたことのない恐怖に怯えていた。それもそうだ、彼らは何をすべきかまだわからない未熟なヒーローの卵だ。

 

ヒーローが倒れ、絶望しかない状況でみんなを安心させるために、彼はいつもの一言を言った。

 

「もう大丈夫、私が来た!!」

 

オールマイトの顔はいつもの笑顔の登場ではなくそのままの怒りの表情にだった。それでもオールマイトの一言で麗日(うららか)たちは笑顔を浮かべた、オールマイトは相澤(あいざわ)を助けに行き、修哉は13号の元に近寄り、治療を開始しようとした。

 

「俺はエコロ・サイクル、ヒーローだ。とりあえず13号を治すから離れるんだみんな」

 

「ちょっと、何するの!」

 

修哉は13号の背中に触れて傷を修復するの見て、芦戸(あしど)は先生を傷つけていると勘違いして引き剥がそうとする。

それでも修哉は13号の傷を修復し続け、傷が()えると13号が少しずつ立ち上がった。

 

「先生!」

 

よろめく13号を瀬呂(せろ)砂藤(さとう)が支えて、麗日(うららか)芦戸(あしど)は修哉に治療を(さまた)げたことを謝り13号を治してくれたことのお(れい)をした。

修哉は棍を斜めに傾けて棍の中心を踏みつけた。棍がミシミシと鳴って今にも折れそうであった。修哉が両足を素早く棍の中心に乗せる。

すると麗日(うららか)達の目の前から修哉が消え、高く飛び出していた。

 

 

 

__________________________________

 

 

 

 

「早く相澤(あいざわ)先生を連れて行こう!」

 

緑谷(みどりや)峰田(みねた)相澤(あいざわ)を安全な所に移動し、緑谷(みどりや)はオールマイトのことを気にしながらも、今は相澤(あいざわ)先生を優先し、傷に触らないように運んでいった。

 

オールマイトが脳無と戦い、緑谷(みどりや)達が相澤(あいざわ)を連れて行く中、それを静かに見ている者がいた。黒髪に黒い服を着て、黒い手を持つ少年。少年はのんびりと緑谷(みどりや)の方を指差した。

 

黒霧(くろぎり)、残りの奴らを、あいつらに」

 

「わかりました」

 

少年が指示した瞬間、緑谷(みどりや)達の前に黒い(もや)が吹き出し、中から(ヴィラン)が十数人現れ、緑谷(みどりや)達を囲い込んだ。

 

緑谷(みどりや)少年(しょうねん)!」

 

「おいおい、脳無(のうむ)から目を離していいのか?」

 

オールマイトが緑谷(みどりや)を助けようとするが、死柄木(しがらき)の言葉で動きを止めた。もし脳無(のうむ)から目を離せば何をするかわからない。緑谷(みどりや)達が戦ったとしても重傷(じゅうしょう)相澤(あいざわ)を守りきることはできない。

 

それでもオールマイトは焦ることはなく、死柄木(しがらき)に言った。

 

「君たちは誤解しているようだが言っておく、誰が一人で助けに来たと言ったのだ」

 

「おい何か来るぞ!」

 

峰田(みねた)が指さして言った。指さす方向を見ると空から何が近づき、蛙吸(あすい)の目の前に落ちた。

落ちてきたのはさっきまで飛んでいた修哉だった。修哉は傾けた棍から足を下ろし(ヴィラン)に言い放った。

 

 

相澤(あいざわ)先輩(せんぱい)には手を出させねえからな」

 

 

「おいこいつ、支持率最下位(アンダー・ヒーロー)じゃねえのか?」

 

「弱え奴が(いき)がるな!」

 

(ヴィラン)らは口々に言うと修哉を倒そうと一斉に襲ってきた。

 

支持率が多い奴が強い、少数だがオールマイトの影響でかそのようなことが定着している人がいる。

そのため事件解決数や社会貢献度でなんとか(おぎな)っているがヒーローランキングでは最も低い順位にいる修哉。

 

 

    だがそれは、決して修哉が弱いわけではない。

 

 

襲い掛かってきた(ヴィラン)一人一人に(すね)や脇腹など狙って叩き、棍棒で薙ぎ払い弾き飛ばした。

 

次々と倒していく修哉、その背後に大きな腕を持った(ヴィラン)が現れ棍棒を奪い取ってバキリとへし折った。

 

「へっ、何だこれは、プリッツでも折ったかと思ったわ」

 

(ヴィラン)は折れた棍棒を捨てて修哉に殴りかかった。修哉は(ヴィラン)(こぶし)を軽々と避け、折れた棍棒を拾った。折れた棍棒に力を入れ、(ヴィラン)に向かって力いっぱい振りかぶった。しかし、棍棒が折れて丈が短くなったせいで(ヴィラン)に当たることはなかった。

 

蛙吸(あすい)は驚いていた。それは修哉の攻撃が外れたことではなく、もう片方の折れた棍棒が(ヴィラン)の腹にめり込んでいたことに。

 

不意打ち棍棒(アネクティ・コンボ)!」

 

修哉の言葉に反応してか(ヴィラン)は他の(ヴィラン)を巻き込んで吹き飛び、(ヴィラン)に当たった折れた棍棒が修哉の持つ棍棒とくっつき、元の棍棒に戻った。

 

修哉のヒーローとしての力は常人を(はる)かに超えた身体能力(しんたいのうりょく)と直す個性の応用。

ゴムやギターの弦には元に戻ろうとする『反動(はんどう)』が生じる。それと同じように物を直す時にもその『反動(はんどう)(ちから)』が生まれ、身体の力と一緒に上乗せすることで(ヴィラン)に対抗する(ちから)を得ることができる。

 

ここに来るときもその(ちから)を利用している。わざと(もろ)い材木を使用した棍棒の上に乗り、棍棒を弓の弦として使って、自分自身の身体を弓矢として、棍棒の反動で自分を飛ばす移動術を使える。

 

(ヴィラン)が呆然としている隙を突いて修哉は一人ずつ確実に倒していき、(ヴィラン)をすべて倒しきることができた。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「助けてくださってありがとう、おかげで相澤先生を守れたわ」

 

緑谷(みどりや)蛙吸(あすい)が修哉に頭を下げてお礼を言った。修哉は相澤に近づいて相澤(あいざわ)の傷を治していった。傷《がなくなり、相澤(あいざわ)の目が開いていき、ゆっくりと立ち上がった。

 

「お久しぶりですね相澤(あいざわ)先輩(せんぱい)、血液までは修復できませんから無理しないでください」

 

「エコロ・サイクル、なんでお前がいる」

 

根津(ねず)校長(こうちょう)先生(せんせい)に頼まれてまれまして、一体誰に」

 

修哉の言葉を(さえぎ)る大きな音と衝撃が急に響いてきた。その音源はオールマイトがいたところからだった。砂煙が舞い何も見えなくなって何がどうなったかわからなかった。

少しずつ砂煙が晴れ、オールマイトが脳無(のうむ)を掴んでバックドロップをきめる姿が見えてきた。砂煙が完全に晴れると、修哉(しゅうや)達は驚愕した。地面に叩きのめしたはずの脳無(のうむ)がオールマイトの脇腹を両手で掴んでいた。オールマイトの周りには黒い靄が(ただよ)い、オールマイトの傷跡に指がめり込み血が垂れていた。

 

この後どうなってしまうのかわかった修哉が助けに行こうとする横を緑谷が通り過ぎていった。

気づいた修哉は緑谷を追いかけるといつの間にか上流(あがる)が黒い手の男に殴りかかっていた。黒い手の男は上流の目の前に現れ首をがっしりと掴んで高く吊り上げた。

 

オールマイトを助けるか、緑谷を止めるか、上流を助けるか、どちらを先に助けるか、いや、全てを助ける方法を考えていると遠くから複数の誰かがやってくるのを見つけた。修哉はそれに()けた。

 

修哉は黒い手の男に向かい、男が魔理華(まりか)の一撃を避けたところを叩き、上流を奪い返した。

 

「修哉さん!どうしてここに!」

 

自分の知っている人がいきなり現れ驚いた魔理華(まりか)の言葉を返して言った。

 

「いろいろあってな」

 

 

 

 




次回予告

「棍棒で対抗する修哉さんに襲いかかる脳無」

圧倒的(あっとうてき)(ちから)の相手にどう戦うか」

次回 (よわ)いなりの戦い方

「更に向こうへ、plus ultra u(プルスウルトラ)!」




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No19 弱いなりの戦い方

今回は長めに書いてみました。

文章に自信はないですが見てください。

オールマイトの修哉の呼び方を変えました。


「ぐらぁぁぁ離せぇ!」

 

「落ち着いてください上流(あがる)さん、どうしたんですかそんなに荒ぶって」

 

「うるせぇぇぇぇぇ!」

 

魔理華(まりか)は黒い手の奴と戦わせろと暴れる上流を押さえ込んでなだめていた。修哉(しゅうや)はオールマイトの傷を修復し、それが終わると早歩きで上流に近づき頭をきつく殴ってさっきまでうるさかったのを気絶(きぜつ)させて(だま)らせた。そんな無理矢理(むりやり)なやり方に魔理華と緑谷(みどりや)(かお)を引きつらせていた。

 

そんな少しの時間で死柄木(しがらき)は首を皮膚が剥がれる勢いで()いて苛立(いらだ)っていた。

 

「おいおい全回復スキル持ちで高レベルモンスターかよ、雑魚しても強すぎだろ」

 

死柄木の掻く勢いが早くなるが、何か思いついたのか掻くの止めた。

 

「けど所詮(しょせん)身体能力だけでのごり押しだな。どんなに回復スキルを持っていても、戦闘慣れしても純粋(じゅんすい)なパワーで攻めれば終わりだ。脳無(のうむ)、あいつを(ころ)せ。影人(えいと)、お前は黒霧(くろぎり)を取り戻せ」

 

脳無は半身が氷で(おお)われ(こお)らされているのにかかわらず体を元の体勢(たいせい)に戻ろうとした。元の体勢に戻るが凍らされて(もろ)くなった右腕(みぎうで)右脚(みぎあし)()れてまともに歩けなくなった。折れた部分から肉の(かたまり)が盛り上がってくるとそれが折れた腕と脚の形になり、表面に皮膚が張られて完全な腕と脚になった。

 

「個性は『ショック吸収』だけじゃなかったのか!?」

 

「それだけと言ってないって、これは超再生かな。脳無はオールマイト(おまえ)のために作った高性能サンドバッグ人間だ」

 

「ショック吸収......超再生......作った............っ!!!」

 

修哉はオールマイトと死柄木の言葉を聞き取り、脳無の正体の可能性を見出(みいだ)した。それは知らなければならない(ヴィラン)連合(れんごう)を支える指導者(ブレイン)の存在。そのことに修哉は動揺(どうよう)を隠せずにいた、それを見た魔理華は今まで見たことがない動揺に心配をしていた。

 

死柄木の命令に(したが)う脳無は指差した先の相手に向かっていった。

修哉はそのことに気づき、近くにいる魔理華を棍で自分の周りから押し出した。脳無が修哉の真後ろに現れると修哉に目掛(めが)けて拳を叩きつけた。

それはたった数秒ほどの速さで動いていた。そんな動きに対して修哉は拳を棍で(ふせ)いで対応していた。

 

影人(えいと)と呼ばれる男は爆豪(ばくごう)に近づいていき首元に手を伸ばした。爆豪はそれを爆破で吹き飛ばそうとした。するともう片方の黒い手がボコボコと泡立つように(ふく)れ上がり、その手で爆発ごと爆豪を握りしめた。

 

「爆豪少年を離すんだ!」

 

オールマイトは爆豪を助けるべく影人の黒い手を叩いた。黒い手は(ひら)かなかった。次にオールマイトは力を入れて大きな指をこじ開けようとした。黒い手は(ひら)かない。最後の手段にオールマイトは力いっぱい殴りつけた。それでも黒い手は開かない。どんなに殴られても影人は防ぐことなく爆豪を握りしめたまま動かなかった。影人はゆっくりとオールマイトに向けて見ると口が(ひら)いた。

 

「オールマイト、それで本当に(なぐ)ってるのか?」

 

ゼンマイ式のブリキのおもちゃのように口元が動き、歪み笑うとオールマイトから離れて力強く爆豪でオールマイトを叩きつけ、黒霧を死柄木のところに連れていった。

 

「おいあいつ、あの化け物と同じ『個性』を持っているのか!?」

 

(とどろき)の言った言葉に緑谷はこの状況を危惧した。

オールマイトに不利な『個性』を持つ人が二人、一人はオールマイトに匹敵(ひってき)するパワーを持ち、もう一人は未知数、緑谷は何か打開策(だかいさく)がないか考える。

 

魔理華は修哉と脳無の攻防戦に目が離せなかった。脳無の力は強い、それはその巨体と殴る(いきお)いと速さで分かっている。そんな攻撃を修哉はことごとく防いでいる。殴るスピードが()がるも、拳が修哉の棍に吸い寄せられるかのように当たり、殴る勢いが上がるも、パンチが効いている感じがしなかった。

 

完璧(かんぺき)な防御を維持(いじ)していると急に修哉の体勢が崩れて始め尻餅をついてしまった。修哉は何が起きたか足元を見ると黒い(もや)が右足を飲み込んでいた。死柄木がいる方を見ると黒霧から自分のと思われる足が出ていた。足を()こうとしても死柄木と影人が力強く掴んでいて抜けなかった。黒い(もや)が少なくなっているのを見て、この後どうなるか予想ができた。

 

それは魔理華も同じであった。この状況で片足が使えなくなれば確実に脳無に殴り殺される。魔理華の心が今までに感じたことのない恐怖(きょうふ)で埋め尽くされそうになった。魔理華は全速力で走り出して、自分を呼び止めようとするみんなの声を無視していた。今ここで自分の恩人(おんじん)であり(あこが)れの人が殺されようとしていた。それが一番、自分が恐れる恐怖であったからだ。

 

「修哉さんを、離せえええぇぇぇぇぇ!!!」

 

魔理華が足を掴む影人に向かって拳を握り締め、物理的攻撃(パンチ)が効かないことを忘れ、数メートルで届こうとした時、黒い(もや)が目の前に現れ、中から手が出てきた。その手は死柄木のものであり、その手がどれだけ危険なものか知らない魔理華に触れようとしていた。

 

「その二人から離れるんだ!!」

 

魔理華に触れる前にオールマイトがやってきて、魔理華を後ろに下げた。死柄木らはその場から離れて、修哉の足を離し、修哉は足が自由になると脳無から一旦距離を取ろうと後ろに下がった。脳無も前に進もうするがオールマイトがそれを(さえぎ)った。

 

「お前の相手はこの私だ!!」

 

そこからはオールマイトと脳無の殴り合いであった。目に見えるのがやっとの速さでパンチが()()う中、徐々にオールマイトが押していった。オールマイトのパンチの全ての一つ一つに全力以上の力を込めて殴っており、それがわかる人いればわからない人もいた。そこからはもはや人間同士の闘いと言ってもわからないほどになっていた。殴り合いの余波(よは)で飛ばされそうになり、(ちゅう)に浮いた状態での殴り合い、森があるエリアまでに吹き飛ばし、相手を地面に叩きつけて割るなどと魔理華たちは漫画(コミック)の世界にいると錯覚してしまいそうであった。

 

「!修哉さん逃げてください!!」

 

オールマイトが投げ飛ばした脳無が修哉に迫っていた。修哉はそれに対して避けようとせずまさかの棍を野球バットのように構えて、それで脳無を受け止めた。それでも修哉は後ろに押された程度で止まった。オールマイトの全力の投げを棒一本で受け止めて後ろに下がった程度なのはおかしい、誰もがそう思った。

 

「今までのパンチ、全部返すからな......!反射棍棒(リベンジ・コンボ)!!!」

 

修哉の棍が振りかぶると爆発したかの様な打撃音(だげきおん)が鳴り響き、どんなショックにも耐えられた脳無はその効果がなく一直線に吹っ飛んでいった。その先にはいつの間に地上に立っているオールマイトがパンチを構えていた。

 

(ヴィラン)よ、こんな言葉を知っているか。更に向こうへ......plus(プルス) ultra(ウルトラ)!!!」

 

オールマイトのパンチが一発、脳無の腹に直撃した。脳無とオールマイトが動かなくなったと思うと修哉の時とは一回り上の(すさ)まじい轟音が鳴り、大地が砕け、脳無はUSJの屋根を突き破り、空高くに飛んでいった。

 

その(あと)は辺りが(しず)まり、オールマイトが動き出して一言(つぶや)いた。

 

「やはり(おとろ)えた、全盛期なら5発も打てば済んだのに、300発以上も打ってしまった」

 

これがNo1(ナンバーワン)ヒーローの力、これが平和の象徴、魔理華や緑谷はその姿を見て痛感した。魔理華はオールマイトだけではなく、修哉に自分には知らなかった強さを見せつけられた。前から自分は弱いと(なげ)いていた人が持っていた隠されていた強さ、魔理華は憧れの人がどれだけ遠い場所にいるのか、自分の力で通用できるのか、そのことで頭の中でグルグルと()(めぐ)っていた。

 

「さてと(ヴィラン)、お互い早めに決着をつけようか」

 

オールマイトを倒す脳無がいなくなり、(ヴィラン)連合(れんごう)は追い詰められた。死柄木は首を掻いて苛立(いらだ)ち始め、ブツブツと(つぶや)いていた。この状況が変わることがないと判断(はんだん)した切島たちはその場から離れようした。魔理華はこの安心と思える状況で一つの不安を持っていた。もし、オールマイトが戦える状態じゃないとしたら、そんなことが頭の中をよぎった。

 

「さぁ、来ないならこっちから来るぞ!」

 

オールマイトが時間を稼ぐために相手に話しかけていると、修哉が自分の隣に近づいてき、オールマイトは修哉にしか聞こえない小さな声で話しかけた。

 

直崎(なおさき)くん、もし(ヴィラン)が向かってきたら、もう一度()を貸してくれ......」

 

修哉もオールマイトにしか聞こえないように小さな声で話し返した。

 

「無理です、それ以上使うとオールマイトさんの活動限界に響きます......」

 

「頼む、もう一度だけだ......」

 

そんな話をしている時、影人が死柄木の肩に手を乗せて落ち着かせようとした。

 

「兄貴ここはみんなで一気に襲いかかりましょう。俺たちの連携でこいつらを潰せることができます。それにオールマイトもさきの闘いで弱っているようですし、まだ戦える奴もいます。増援が来る前にカタをつけるなら今しかありません。だから落ち着いてください」

 

「......そうだな、そうだよ、そうだ、目の前にラスボスがいるんだ」

 

死柄木はその言葉で落ち着いたのか掻いていた手を止めて、オールマイトを倒すことを決めた。魔理華たちの(まわ)りの(ヴィラン)が目を覚まして動き出し、切島たちはそいつらを倒そうと体勢を(ととの)えた。オールマイトの今の状態を理解している緑谷とこの状況で不安を持つ魔理華は周りの(ヴィラン)に目もくれず、オールマイトと修哉の方ばかりを見ていた。

 

「それに、脳無の(かたき)だ!」

 

死柄木は黒霧と影人を連れてオールマイトに向かってきた。修哉は何か覚悟し、オールマイトに触れて何かをしようとした。そして緑谷はこのピンチを止めようと瞬間的にスピードを出し、魔理華もそこから遅れて呪文(ピルア)を唱えて走り出した。

 

それでも緑谷のようにはいかなかった。魔理華は自分の無力さを知った、助けたいものに手が届かず、近づこうとしても足の速さでは遅い、自分は何ができるの?

 

そんなことを考えているとバンッと大きな音が響き、それで魔理華は我に返った。前を見ると緑谷が倒れてその前に黒い(もや)から出る手、その手は穴が空いて血だらけになっていた。おそらく銃に撃たれて、さっきの音は銃声だったんだと理解できた。オールマイトが撃ってきたであろう方向を見ると増援の教師(ヒーロー)たちが入り口に立っていた。先生たちは下に降りると爆発が起きるほどに暴れまわっていた。魔理華がそんなのを見ていると立っている感覚がなくなり、修哉に担がれているのに気がついた。

 

「ちょ、修哉さん離してください、恥ずかしいです!」

 

「お前がこの場にいると厄介(やっかい)なんだよ」

 

修哉はある程度離れたところで魔理華を下ろして、魔理華の頭をポンポン叩いて、あることを言った。

 

「助けようとしてくれて、ありがとな」

 

修哉はそれだけ伝えると遊びに混ざる子供のように教師たちが戦っているところに向かっていった。魔理華はそのまま動かずにいてると自然に涙が出て急いで服で(ぬぐ)っていた。拭っても拭っても涙が出てくる。それが何もできなかった(くや)しさか、憧れにお礼を言われて嬉しかったのか、それは誰にも分からないものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

次回 秘密の3人






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No20 秘密の3人

今回も長く書きました。

後書きにちょっと付け足しました。


ヒーローの増援が来て自分の手下たちが次々に倒されていく。

 

「あぁあ、来ちゃったよ、ゲームオーバーだな、帰って出直すか」

 

死柄木(しがらき)はそれを見て引いていくと身体の四肢に銃弾(じゅうだん)が撃ち抜かれていき、それを影人(えいと)(かば)って、黒霧(くろぎり)が黒い(もや)で二人を庇った。黒い(もや)がそのまま二人を飲み込んでいるととても強い力で吸い込まれそうになった。いつのまに近くまでに来ていた13号が黒霧を吸っていた、さっきまでの怪我は嘘のようになくなって一人で立てるようになってここに来たのだろう。

 

「今回は失敗だったけど、今度は殺すぞ。平和の象徴、オールマイト!」

 

私怨のこもった声で言うとそのまま黒霧に飲み込まれて黒い(もや)と一緒に消えていった。

 

 

 

 

死柄木たちがついた場所は誰もいないバー、彼らはここをアジトとして使っている。影人は黒い手の指を糸切れみたいな小さな手に変化させて死柄木の身体に残った銃弾を慎重(しんちょう)に取って簡易的な治療をした。

 

「話が違うぞ先生!ガキどもは強かった、オールマイトも健全だった、おかげでせっかくの脳無(のうむ)が吹っ飛ばされたぞ!」

 

死柄木が話しかけたのは壁に固定されたテレビ、画面には何も映らず、そこから声だけが出て死柄木の文句に答えた。

 

『違わないよ、ただ今回は見通しが甘かっただけだ』

 

『しかし脳無を失ったのは痛いな、オールマイト並みに強くした個体なのじゃが、連れ戻すことは出来んかったのか』

 

「場所を特定する時間がありませんでした。なにぶん遠くに飛ばされましたので」

 

影人が血を止める治療を終えると原因と思えることを先生に報告した。

 

「今回はオールマイトみたいなガキがいまして、そいつが何度も邪魔をしていました。彼がいなかったら勝てていたのかもしれません」

 

『ほぉ、それは本当かい?』

 

「あのよろしいでしょうか?もし俺があの場で暴れていたらオールマイトを(ころ)せたと思うのですが」

 

『ダメだよ、君は僕らにとっての「切り札」、そう簡単に出すわけにはいかないよ。それにまだちゃんと入手(・・)出来ていないでしょ』

 

「......はい」

 

『だったら、それまでオールマイトを生かすべきだと僕は思うなぁ。もう少しの辛抱(しんぼう)だ』

 

先生は影人を子供をあやすように言い、影人は報告を続けた。

 

「あと、予想外で謎の緑のレザーマントヒーローが乱入して少々予定が狂ってしまいました」

 

『......そうか、それは本当に予想外だったね、まさか彼が雄英に来るなんてねぇ』

 

「奴を知っているのですか?」

 

『知っているさ、彼はねぇ』

 

 

 

 

 

 

『大切な人も助けられなかった、かわいそうなヒーローだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

(ヴィラン)連合(れんごう)が去りその手下たちは駆けつけた警察官に連行されている、それを見ていた(もと)(ヴィラン)の魔理華は自分も下手してたらこうなっていただろうなとちょっと複雑な心境だった。周囲に修哉の姿が見えなかったので魔理華は近くの刑事に聞いてみた。

 

「あの、ここにしゅ......エコロ・サイクルっていうヒーローがいませんでした?」

 

「あぁ、彼なら今事情聴取(じじょうちょうしゅ)を受けているところだ」

 

「事情聴取!?」

 

生徒たちを守っていた修哉が何でそうなったのか魔理華は驚いていた。

 

「彼には(わる)(うわさ)()えないからね。一応念のために話を聞いてもらっている」

 

その悪い噂とは(ヴィラン)(かくま)っている話のことであろう、魔理華は自分のせいじゃないのかと自己嫌悪になっている時、永鬼(えいき)が魔理華のところに向かってきた。

 

「魔理華、本当にすまなかった」

 

永鬼がいきなり頭を下げて謝っていることにびっくりして、永鬼が謝るようなことをしたのか思い出そうとしていた。

 

上流(あがる)が迷惑かけてしまって、あいつはなんていうか、他の人に頼りたくない性分(しょうぶん)でたまに暴走(ぼうそう)気味(ぎみ)になってしまうことがあるんだ。」

 

「別に気にしなくてもいいですよ、上流くんの変わりぶりに驚きましたけど、謝ることはないです」

 

「それでも上流(あいつ)の友達として謝らないと気が済まないんだ。許してくれてありがとう」

 

永鬼は礼を言うと上流のところに向かっていった。

 

「13号先生!まだ休んでいてください」

 

「相澤先生も休んでください」

 

「僕たちは大丈夫ですから」

 

「そんなに心配する必要ないから」

 

相澤(あいざわ)先生と13号先生の傷は修哉の個性で完全に癒えたがそれでも生徒たちは先生たちを心配していた。それもそのはずリカバリーガールでも傷を治すのに体力を消費する必要があるのだが、修哉の場合はノーリスクノーリターンで治せる、けどそんな都合のいい個性があるとは考えられない、だからみんなが心配するのである。

 

「とにかく、みんな教室に戻って次の行動について報告するまで待つんだ」

 

相澤がそう言うと生徒たちは指示通りに教室に戻っていった。

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

事情聴取が終わった修哉、彼は脳無の戦いがなかったように痛がることもなく保健室に向かって歩いていた。そこにいる男といろんなことを聞こうとしていた、(ヴィラン)連合のことや教師生活のこと、そして、彼の個性の状況とその個性の後継者について、保健室に着くとドアを()けた。

 

直崎(なおさき)くん、やっと来てくれたんだ」

 

「オ、オールマイト、その姿を隠して」

 

「心配しなくていいよ、彼はこの姿のことは知っているから」

 

オールマイトは修哉が来たことに喜んで、緑谷(みどりや)は二人の関係を知らずにオールマイトの秘密を知られたと(あわ)てた。オールマイトは緑谷を落ち着かせて話を続けた。

 

「君が来るなんて思わなかったよ、どうしてここに?」

 

「校長に(たの)まれて、雄英バリアーの修理をしていたんです。オールマイトさんも教師生活の方はどうですか」

 

大丈夫(だいじょうぶ)大丈夫(だいじょうぶ)、君も副業の方は順調にやっているかい」

 

「いい感じに進んでる、ていうか副業の方が本業になりそうだけどな」

 

そんなたわいのない話をして笑っている二人は緑谷から見て相当(そうとう)仲が良いとわかった。彼らはあの日から一度も会うことはなく、ヘドロ事件の時に久々にあった。修哉は気にしていたことを気にすることなく話した。

 

「修哉さん、ここにいたんですか。その人は誰ですか?」

 

そんなのもつかの間、ノックもなしでいきなり魔理華が保健室に入ってきた。魔理華はオールマイトの痩せ細った姿を見てしまい、オールマイトと緑谷は急なことで驚く暇もなく、窮地(きゅうち)に立たされてしまった。

 

「この人は八木(やぎ)俊典(としのり)さん、この学校で働いている人だ」

 

「そうなんですか?でも見たことがないですけど......」

 

「それはお前が見てないだけじゃないのか?」

 

「それにしてもすごい怪我、階段から落ちたんでしょうか?」

 

「お前もそろそろ帰ったら、俺はこの人と話するから」

 

修哉はバレるかバレないかの瀬戸際(せとぎわ)で、嘘をつかないオールマイトのためか嘘を言わずに保健室から出そうとし、なんとか魔理華を出すことができた。すると緑谷が修哉に質問してきた。

 

「あのエコロさん、あの脳無をどうやって吹っ飛ばすことができたのか教えてください」

 

「(ヒョコ)それは私も知りたいです」

 

「お前、帰ってなかったのかよ」

 

緑谷の質問にまだ帰っていなかった魔理華が現れたことをツッコミを入れつつ、緑谷の質問に答えた。

 

「あれは俺の個性の修復を応用した技術だ。棍に修復の個性を膜みたい張って、打撃の威力を吸収してその威力を溜めながら防御するんだ。そして溜めた威力をここぞという時に威力を一気に使って脳無を打ち返したんだ」

 

「それがエコロさんの防御術、御理破流棍(オリハルコン)の仕組みだったんですね!」

 

「その名前知ってんのか!?すげえなその技名(わざめい)滅多に言わないのに、お前極度のヒーローオタクか?」

 

「はい!」

 

そこからは修哉と緑谷はヒーローの話題で盛り上がっていた。魔理華はその話についていけず話が長くなると思い一人で帰ろうと保健室から出た。

 

夕日の光が差し込む廊下(ろうか)を寂しく思いながら歩いていくと、夕日で赤く染まった13号が向こうからやってきた。13号のコスチュームは(ヴィラン)との戦いの跡はなかった。おそらく替えのコスチュームに着替えたのだろう。

 

「さようなら13号先生」

 

「さようなら、魔理華くん」

 

「あの、すいません。エコロ・サイクルのことを知っているんですか?」

 

13号に挨拶すると修哉のことを知っているんじゃないのかと頭の中によぎり、13号を呼び止めて話してしまった。13号はそのことに聞き返した。

 

何故(なぜ)彼のことを知りたいのですか?」

 

「彼みたいなヒーローになりたいからです」

 

魔理華はそう言うと13号は大きなため息をついて、修哉について話した。

 

「彼は昔からあんな感じでした。あの3人と一緒に騒いでいて、よく先生に怒られていましたね」

 

「昔からですか?」

 

「彼とは同じクラスだったからね。彼はヒーローとしてすごいですが、いろんな噂があって、いい印象を持たれてないのが多いですね。けど、それでも彼は気にしないでしょう。彼みたいなヒーローになるんだったら、人の偏見を気にせずに一つの分野を育てていくほうがいいですよ」

 

「わかりました。ありがとうございます!」

 

魔理華はお礼を言うと修哉の昔のことを知れて喜びながら教室に戻って帰ろうとした。13号は彼女が帰るのを見て小さく言った。

 

「シュウ、まさかあの子にまだ言っていないのかな?」

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

魔理華が家に帰るとみんなの晩御飯の準備をした。その(あと)に真斗《まさと》と千代(ちよ)と修哉が帰ってきた。いつも通りにご飯を食べて、片付けをして、お風呂に(はい)ったりといつも通りの日常を過ごした。まるで(ヴィラン)連合の出来事がなかったように、その出来事を忘れるように過ごして、今までの疲れかぐっすりと眠っていった。

 

修哉が3人の様子を見て眠ってることを確認すると一人リビングの椅子に座ってスマホを取り出しあの男に電話をかけた。

 

「もしもし、オールマイトさん起きてます?」

 

『なんだい直崎くん、夜中に電話して......」

 

(ヴィラン)連合についてです」

 

電話相手のオールマイトは眠たげな声で電話に出て、修哉はわかる限りの可能性を伝えた。

 

「今回奴らが用意した脳無、あいつはショック吸収と超回復があるのは間違いないですね」

 

「死柄木はショック吸収と超回復があると言っていたから間違いないだろう」

 

「普通に考えるとハイブリッドの個性かも知れませんね、でもこういうこともありえます。複数の個性を持っていたってことに。そして死柄木はもう一つ言っていました、『作った』と......」

 

『それはつまり?』

 

「ショック吸収、超回復、作った、これらをよく考えると、『脳無は複数の個性を持っていたあるいは個性を与えられて作られた怪物』だという可能性ができます」

 

「......!!!直崎くん、まさか」

 

「奴が生きているかも知れません」

 

そのことを言った瞬間、電話からガタッと大きな音が鳴り、オールマイトの息が荒ぶり、怒りに満ちた声が出てきた。

 

「......それは本当か?」

 

「あくまでも可能性です、ですがお互いそれなりの準備をしましょう」

 

「そうか、わかった」

 

オールマイトの息が(ととの)っていき、次の話を進めた。

 

「あの緑髪の少年、あの子に『ワン・フォー・オール』を譲渡したんですね」

 

『やっぱりわかっていたのか......』

 

「あなたのあの姿を知っている時点で確信してました。ヘドロ事件の時に決めたのですか?」

 

『無個性でも友を助けようとした姿、私はそれを見て受け継ぐべき子だと思ったんだ』

 

修哉はそれを聞いてオールマイトらしいと感じ小さく微笑んだ。するとそっちから彼女の話を振ってきた。

 

『直崎くん、七咲少女とはどういう事柄なんだ?』

 

「あいつはうちの家に住んでいる家族、娘みたいなもんだ」

 

『七咲少女の黒髪、まさかと思うが「黒魔女」じゃないのか?」

 

「ああそうだ、本人は気づいていないけどな」

 

黒魔女、それは一時(いっとき)騒がれていた(ヴィラン)の名前。黒魔女の情報は黒髪と女性ということしかないが、事件解決率上位のプロヒーローたちに軽傷を負わせ、そのヒーローから何度も逃げ延びた経歴があった。エンデヴァーと対峙して逃げ延びて以来姿を消していった有名なヒーロー。プロヒーローに傷を負わせることができる隠密性から危険視されていたが、魔理華はそんなことを知らずにいていた。

 

『何故彼女を助けたのだ』

 

「たとえ(ヴィラン)でも助けるのが俺のモットーだ。それになんかシンパシーを感じてな、見過ごせなかったんだ」

 

『君らしいよ、もしかして七咲少女にアレ(・・)を』

 

「オールマイトさん」

 

とある話を出そうした時、修哉は敵に宣戦布告するように、オールマイトに負けず劣らずの怒りに満ちた声で言ってきた。

 

「俺は誰にも渡すつもりはない。あいつに重りを託すつもりもない。俺は親父が死んだ時からアレを死んでも守り続けると決めています。もし奴に奪われるようなことがあれば、アレごと墓場に持っていきます」

 

修哉はポケットからごく普通のアルミケースを取り出し、蓋を開けて中身を見続けていた。ケースの中にはどこにでも売っている裁縫(さいほう)のまち(ばり)綿(わた)の中にしまわれていた。

 

「こんな夜中にすいませんでした。また何かあったらご連絡ください」

 

修哉はオールマイトに別れを言って電話を切ると見続けていたアルミケースの蓋を閉めてポケットの中にしまうと寝る用意を始めた。

 

 

 

影人の秘密、オールマイトの秘密、修哉の秘密、この3つが分かりし時、世界が崩れゆくのは、まだ先の話であった。

 

 

 

 




次回予告

「いよいよ始まるな体育祭が」

「体育祭ではなにをするんですか?」

「借り物競争、玉入れ、後地雷原(じらいげん)走りとか」

「何か危険なこと言いませんでした」

「とにかくとても恐ろしいのは間違いないな」

「何をするんですか!?」

次回 頑張る奴と敵な奴

「更に向こうへ」

plus(プルス)ultra(ウルトラ)!」




______________


やっとヒロアカ一期編を終わらせました。
ここまで見てくれた人や最近見てきた人へ。
今後ともよろしくお願いします。


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No21 頑張る奴と敵な奴

「雄英体育祭が迫ってる」

 

「「「クソ学校っぽいのキターーーーーッ!!!」」」

 

雄英でのUSJ襲撃(しゅうげき)事件(じけん)から何日も経ったある日、ミイラ状態(じょうたい)相澤(あいざわ)の一言でクラス中のみんなが歓喜の叫びを上げた。

 

だが中には疑問に思う人がおり、襲撃に遭ってばかりなのに何で体育祭を始めようとするのかと耳郎や尾白がそんなことを聞くと相澤は逆に開催する事で雄英が大丈夫だということをアピールするためにと言った。

 

「それにこの(もよお)しは(ヴィラン)程度(ていど)で止められるものじゃねえ」

 

その昔、世界には様々な競技(きょうぎ)で各国の人たちと(きそ)()うオリンピックがあり、それに誰もが熱狂していた。しかし超常現象(ちょうじょうげんしょう)が起きると共に人口や規模が縮小し、今ではオリンピックは無くなってしまった。それに変わって現れたのが雄英体育祭、雄英体育祭は全国にとってのビッグイベント、しかもそれを見に来るのは一般人だけではなくスカウト目的のプロヒーローもだ。雄英の生徒たちにとっても有名なプロヒーローに認知されてもらうための雄英での3回のチャンスでもあるこの催しは(のが)せないのである。

 

「体育祭に(そな)えてしっかり特訓するように、以上だ」

 

相澤のホームルームが終わるとみんなは体育祭の話をして盛り上がっていた。

 

「体育祭......、どんなことが起きるか楽しみだな!」

 

「オイラも、体育祭対策の為に個性の調整をしないとな」

 

「魔理華ちゃんも楽しみだよね」

 

上流(あがる)永鬼(えいき)手和(しゅわ)は魔理華の机の前で話をして魔理華に話を振ってきた。

 

「私は......あまり目立ちたくないから気がのらないの」

 

魔理華にとって体育祭は仮病(けびょう)をしてでも出たくないのである。全国中継されプロヒーローがたくさん見ている中、元(ヴィラン)の魔理華が出てくれば(ヴィラン)の頃の自分を知っているヒーローに目をつけられてしまう、そんなのは絶対に()けたいと魔理華は思っていた。

 

「せっかくの体育祭だぞ、もっと盛り上がれよな。ほら今のお茶子みたいに」

 

『私頑張るーーーっ!』

 

「あれは盛り上がってるよりも燃えているでしょ」

 

魔理華は上流が指差す方を見るとテンションがいつもと違うお茶子がみんなに頑張る意思を言い回っていた。みんなも体育祭で頑張りたいところをみんなと話し合っている中で魔理華は一人ついていけなかった。

 

 

 

 

 

気がつけばお昼休みのチャイムが鳴り、みんなは食堂に行き魔理華は永鬼と手和の3人で話をしながら向かっていた。上流は席の確保に先に行っている。魔理華は上流のいない間に聞きたかったことを永鬼に話した。

 

「ねえ永鬼、1つ聞きたいことがあるけどいい?」

 

「何だよ聞きたいことって」

 

「上流はどうして他の人に頼りたくないの?」

 

USJの時、上流は爆豪の言葉で暴走した。でもどうして他の人に頼りたくないだけで暴走するのかよくわからない。その事を言うと永鬼はため息を吐いて魔理華の目を見て話した。

 

()(つま)んで言うと上流は昔の自分が大っ嫌いだからだな」

 

「どういうこと?」

 

「そんなに聞きたいなら直接上流に言えば、オイラからはそれが限界だ」

 

それだけ言うとそのまま食堂に行き魔理華も手和と一緒に行った。魔理華は永鬼に話す前に上流に聞いたが鋭い目で知るかとそれだけしか言わなかった。それのどうやって聞けばいいんだと魔理華は心の中で叫んでいた。

 

 

 

___________________________

 

 

 

 

「な、何事(なにごと)だーーーっ!」

 

最後の授業を終えて家に帰ろうとするとたくさんの生徒たちが出入り口の前で教室を(のぞ)()んでいた。これでは邪魔で帰れない、けどどうしてこんなに集まっているのか魔理華は考えていると爆豪がその答えを言った。

 

「敵情視察だろ、(てき)の強襲に耐え抜いた連中だから今のうちに確かめに来たんだろ。そんなことしても意味ねえからな、どけモブ共」

 

(どうしていちいち失礼な事を言うのかしら?)

 

魔理華は爆豪の言ったことよりもときどき出てくる人をバカにするようなフレーズを気にしていると人混みの中から誰が出てきた。

 

(ヴィラン)の攻撃を耐え抜いたって聞いたが偉そうなやつだな、ヒーロー科の奴らはみんなこうなのか?」

 

出てきた男の子の言葉にその場にAクラス全員が首を振って否定した。男の子はそのまま話を続けた。

 

「幻滅しちゃうな、お前ら知ってるか、普通科のほとんどがヒーロー試験に落ちて入っていった奴なんだ。そんな俺らでもチャンスがあるんだ、体育祭でいい成績を取った普通科の奴はヒーロー科に編入できるんだ。そしてその逆もある。敵情視察?そんなもんじゃねえ、(ヴィラン)を何とかできたと調子づいているお前らへの宣戦布告だ」

 

宣戦布告をしにきた男は相手(ばくごう)に対して堂々と前に立って爆豪と男は目を逸らさずに見続けているとまた人混みの中から誰かがやってきた。

 

「おうおう、Bクラスのもんだがよてめえ(ヴィラン)を倒したからって調子に乗ってんじゃねえぞオラァ!体育祭で恥かいても知らねえかんなって聞けーーーっ!!」

 

性格的に切島に似たBクラスの男子は爆豪に行っているようだが爆豪はそれを無視して帰ろうとしていた。

 

「おい爆豪、お前のせいでヘイト集まりまくってんじゃねえか」

 

「関係ねえ、上に上がれば関係ねえ」

 

切島の言葉に爆豪はそれだけを言うと帰っていった。Bクラスの人は爆豪の言葉に怒って普通科の人はそうなるとわかっているみたいに気にすることなく帰っていった。

 

 

 

人使(ひとし)ー、Aクラスの宣戦布告(せんせんふこく)は上手くいった?」

 

「爆豪と呼ばれてた奴が上に上がれば関係ねえって言ってきた」

 

「..............................(サッサッササッ)」

 

「上に上がればねえ、俺たちも体育祭までに特訓するかって皆無(かいむ)くんが言ってるよ」

 

「あぁそのつもりだ」

 

「いよいよ私たち、普通科三銃士の実力が出せるわ」

 

「何だよ、その三銃士は?」

 

「..............................(ササッササッサッサッ)」

 

「お前もいい加減喋れ」

 

「ごめん」

 

 

 

__________________________

 

 

 

 

(何で男の子たちは爆豪の言葉に乗っちゃうの?男っていつもこんな感じなの?修哉さんは絶対にそんなんじゃないけどね)

 

爆豪の言葉に男子のほとんどが賛同したのを魔理華は呆れていた。爆豪の言ったことは間違いではないかもしれないが返って全クラスを敵に回しただけだ。緑谷(みどりや)も爆豪に奮い立たせられたのかやる気に満ちた顔になって、魔理華はみんなの頑張る意味も分からず着いていくことができなかった。

 

自分の家であるリサイクルショップのサイクル・ボーンに着くと真斗(まさと)千代(ちよ)が窓から覗いて手を振っていた。家に入ると二人はドタドタと降りてきて魔理華の前に止まった。

 

(ねえ)ちゃ(ねえ)ちゃ、ゆーびんばこに姉ちゃあてのお手紙が来てた」

 

真斗が持っているものを魔理華は受け取った。それは大きな紙を入れるような封筒で中身を見ると中には何もプリントしてないDVDに『体育祭前に見ろ!』とマジックで書かれていた。もう一度封筒を確認すると住所などは書いてなく真斗が言ってた通りに七咲(ななさき)魔理華(まりか)へと書いてあるだけだった。

 

「これの中身見たの?」

 

魔理華は二人に聞くと二人は首を横に振った。どう見ても怪しい、でも中身が気になる、それを繰り返すと二人の純粋な好奇心が(とも)る瞳に負けて結局見ることになった。DVDをレコーダーにセットするともし変なのだったら(そく)消せるようにリモコンを構えた。

 

『さぁ今回の雄英体育祭最後の種目はバトルロワイヤルだ!』

 

テレビに映り出されたのは昔の雄英体育祭だった。それがいつのものか分からなかったがあの人がテレビに映った。

 

「修哉さん!?」

 

テレビに映っていた修哉は今より若々しく雄英指定のジャージを来ていることからこれは修哉の学生時代の映像だと分かった。種目のルールは囲まれた線の中で四人での戦いを始め、線からはみ出したり戦闘不能や降参をすると負けとなり線の囲いの中で最後まで残った人が次の試合に進めるという内容だった。魔理華はそのまま修哉の昔の姿を見続けた。

 

気がつけば魔理華はDVDをすべて見終えていた。種目の結果、修哉は惜しくも3位になっていたが魔理華の心に火がともり始めていた。

 

(そうか、みんなこんな風に感じていたんだ。何に私はビクビクしてるの、私は憧れに近づくんじゃなかったの?そうよ、私は強くなる、強くなるのよ!)

 

Aクラス(みんな)の体育祭への気持ちを理解し、無欲で人の目を気にして(おび)える自分を怒り、魔理華は体育祭で3位かそれ以上を目指すことを決意した。

 

「ただいま〜、今からご飯作るから待ってっておわぁ!?」

 

そうと決まれば魔理華は急いで階段を降り帰ってきたばかりの修哉に目もくれないで地下にある練習場に入っていった。

 

「真斗、魔理華のやついつになくやる気だけどなんかあった?」

 

「たぶん姉ちゃがこれ見たからかな」

 

真斗はリモコンを操作してまた映像を再生した。映像を見ている修哉はため息を吐いて顔に手を当てた。

 

「あいつ、何がしたいんだ?」

 

修哉は入っていた封筒の字を読んでDVD(これ)を出してきた人を知って呆れていた。

 

 




次回予告

「いよいよ始まった体育祭」

「魔理華の前に立つ壁、見知ったライバル」

「魔理華の力が今試される」

次回 個性爆発

「更に向こうへ、plus(プルス)ultra(ウルトラ)



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No22 個性爆発

遅くなってしまいました。
どうぞ見ていってください。


「あいつあん時よりやる気になってんな」

 

「なんかあったんか?」

 

体育祭当日、体育祭の発表の時にやる気を出していなかった魔理華はこの数日で何があったか(なん)かのオーラみたいなものが見えるほどやる気に満ち溢れていることにクラスのほとんどが驚き上流(あがる)永鬼(えいき)はヒソヒソと話し合っていた。

 

「やる気ないとか言っといて張り切ってんじゃん」

 

「魔理華ちゃん、何があったんだろう......?」

 

魔理華の心境が急に変わってしまったのは昔の修哉の体育祭のDVD、どこの誰が送ってきたのかはわからないが彼女の体育祭へのやる気を出すために送りつけてきたのだろう。

 

「みんな準備できるか、もうじき入場だ!」

 

緑谷(みどりや)

 

(とどろき)くん、何?」

 

飯田の知らせに全員席を立って準備をしようとすると轟は緑谷に話しかけてきた。

 

「客観的に見たら実力は俺が上だと思う。けどお前、オールマイトに目かけられてるよな。別にそこ詮索(せんさく)するつもりはないが、俺は勝つぞ」

 

轟の宣戦布告に場の空気が固まり、何も言えなくなった中で緑谷は口を開いた。

 

「轟君が何を思って僕に勝つと言ってるのかわからない、実力的に轟君が上だよ。大半の人達も勝てない。客観的に見ても敵わないよ。けど、他の科もみんな本気でトップを目指しているんだ。僕も、本気で取りに行く」

 

緑谷は真っ直ぐに轟を見て負けず劣らずに宣言した。見ているだけで熱くなる光景を目の当たりにした魔理華は改めてみんなの上位を狙う意思の強さとそんな人達と競い合うことを理解した。

 

 

 

 

_______________

 

 

 

 

魔理華たちが入場の準備をする数分ほど前、三人のプロヒーロー、デステゴロ、シンリンカムイ、Mt(マウント)レディがたこ焼きの出店の前に立っていた。

 

「あの〜、今持ち合わせがなくって......」

 

「いいよ、タダで!」

 

「ありがとうーっ!!」

 

「プライドないのか」

 

「そのたこ焼きの代金、俺が払うわ」

 

Mtレディの代わりにお金を出すと言ったのはサイクル・ボーンの店長の直崎修哉(なおさきしゅうや)であった。

 

「な、なんでエコロさんが出すんですか」

 

「そりゃお得意さんのご贔屓(ひいき)と新米ヒーロー無銭飲食防止のためだからだよ」

 

「なによそれ、ていうかなんでエコロさんがいるの!?」

 

修哉が代金を払うと代金を出す理由に怒るMtレディの質問に答えた。

 

「俺は雄英の警備をすることになったからここにいるんだ」

 

「そうか俺たちと同じか」

 

「それなら我らと一緒に行動しようではないか」

 

「えっ!?」

 

「じゃ、同行させてもらいます」

 

修哉はMtレディたちと行動することになったが、Mtレディは嫌がっているのか修哉から少し離れて歩いて警備を続けていった。

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

 

 

 

「緊張するね......」

 

「大勢の観客にめちゃ見られてるからな」

 

話し合っている手和と上流がいる場所は体育祭会場のど真ん中、観客はとても多く誰もが事件を乗り越えたAクラス目当てでやってきた人たちが半数を超えている。そのせいでか普通科やヒーロー科Bクラスからの視線が痛く感じる者もいた。

 

(終わって終わって終わって終わって終わってお願い早く終わって!!)

 

観客の中にもヒーローがいる。魔理華は顔を平常に保って大会の挨拶を早く早くと心の中で叫んでいた。さっきまでヒーローなんか気にしなくなってやる気満々だった彼女がこうも変わってしまったのは一つの噂を聞いたからだ。

 

エンデヴァーが雄英にいる息子の姿を見にやってきた。

 

エンデヴァーは魔理華がヴィランだった時に捕まる寸前に追い込ませられた相手。もし今エンデヴァーに見つかって捕まってしまえば雄英人生は終わり修哉たちに迷惑がかかってしまうと魔理華は恐れに恐れていた。

 

雄英一年生徒達が全員並び終えるとこの大会の進行を務めるヒーロー、ミッドナイトが台の上に立った。ミッドナイトの姿は個性の効率のためとてもいやらしい格好しており、生徒だけではなく観客などの人たちが彼女に見惚(みと)れていた。

 

「選手代表1ーA、爆豪勝己」

 

爆豪は一年代表として宣誓をすることになり、Aクラスは分かっていたのと心配であるの半々の気持ちでいた。爆豪は台の上に立って口を(ひら)いた。

 

「宣誓、俺が一位になる」

 

『『『絶対言うと思ってたーーー!!!』』』

 

『やっぱり言うんだ......』

 

Aクラスのみんなは心の中で叫び、魔理華も爆豪の言葉に我に返った。Aクラス以外の生徒(みんな)からはふざけるなと罵詈雑言の嵐が飛んできた。

 

「せめて跳ねのいい踏み台になってくれ」

 

さらに火に油の言葉を言って台から降りていった。飯田が爆豪に怒って注意し、爆豪の宣誓が終わっても怒号は収まらなかった。それから何とか全員落ち着いた頃にミッドナイトが第一種目を発表した。最初の種目は障害物競走、ヒーロー科、普通科、サポート科、経営科の計11チームの全員参加のレース。コースはスタジアムの周りにあり、コースを守れば何でもありとミッドナイトは言った。つまり個性を使うのはもちろん、それ以外のことを大抵できるということだ。種目の説明が終わると全員指定された地点に配置についてスタートの合図を待っていた。その間に魔理華はあることを考えた。

 

「上流、ちょっとこっちに来て」

 

「なんだ、呼び出して」

 

「あなた前に学級副委員長の時に邪魔、してたよね」

 

「過去は過去、すっぱり忘れて今を見ろよ」

 

「そうね、でも今あなたの力が必要なんです」

 

「俺の、力が?」

 

「はい」

 

「な、何でも言ってくれ!」

 

「まずはスタートしてからです」

 

上流との話を終えると出入り口前の上にある三つのライト、その一つが消え始めた。魔理華は正面を向いて、上流の手を強く握った。

 

『修哉さん、私は絶対にあなたのようなヒーローに、なってみせます!』

 

「スタートっ!!」

 

スタートの合図が出た瞬間、全員が走り出し、前を人を強く押し出していた。魔理華はバイガスとピルアを唱えて、上流を背負って高く跳んで壁に張り付いて壁を強く蹴り上げて跳んだ。跳んでは壁に張り付いて、張り付いては跳んでの繰り返しで前に進んでいった。

 

「すごいなお前、ところで俺の出番は?」

 

「もうすぐよ、もうすぐ」

 

壁を使った移動は体力的に効率が悪い、だが下でもみくちゃにされるよりはマシであった。そして出入り口の終わりに近づいて魔理華は上流を使う(・・)ことにした。魔理華は高く跳び上がり、上流の腕をしっかりと掴んだ。

 

「いくわよ!」

 

「えっちょっ、ってわあああぁぁぁぉぁ!?」

 

体を回転させ、上流を放り出した。上流は他クラスの頭上に落ちていき、魔理華は壁を強く蹴り上げ、落ちていった上流にめがけて行き、上流に向かってこう言った。

 

「上流、副委員長の時の恨み、今から晴らすから」

 

「せめて跳ねのいい踏み台になってね♪」

 

文字通り上流を踏み台にしてスタートダッシュを切った。外には地面が凍りついており、そこに着地した魔理華は滑って転びそうになるも次第に凍った地面を走れるようになった。周りには爆豪や青山みたいに(くう)飛んだり、尾白や峰田みたいに極力地面に触れないなどの様々な方法で轟の妨害を攻略していった。

 

氷の道が途切れ一気にスピードを出していくと、前に現れたのは受験の時に出てきた仮想ヴィラン。だが今回は普通のだけではなく大型機が複数あり受験とは迫力が違っていた。

 

最初に走り出したのは轟焦凍、彼は目の前の大型機を凍らし動きを止め、止まった大型機の下を進んだ。轟と同じように走ろうとする人もいるが大型機は無理な体勢で凍らされもうすぐで崩れる。魔理華はその(すき)を見て全力で走り出した。大型機が崩れ始め破片を避けながらも下敷きになる前にクリアした。

 

次に出てきた難所は大きく底が見えない谷間(たにま)、谷間には少し広めの足場とそれを(つな)ぐロープがいくつもあるエリア、魔理華はここで役立つ呪文は持っていない為、落ちないようにやる縄を掴んで進んでいく。

谷間を越えて先に進もうとすると後ろから魔理華の名前を呼ぶ声が聞こえた。振り向くと上流がロープを使わずに足場から足場へ飛んでやって来た。

 

「よくも踏み台にしたなコラァァァァァ!!」

 

「今は仲良くしてる場合じゃないの」

 

「おい待て!」

 

魔理華は上流をほっといて先に進んでいき、上流は騒ぎながら魔理華の後を追っていった。

 

障害を順調に乗り越えていった魔理華は最後の難所、地雷原に着いた。ぱっと見では何にもないがよく見ると地雷が埋められた跡があった。誰もが地雷を踏まないように慎重に進むが地雷を踏み、吹っ飛んでいく。それを見た魔理華は一か八か地雷を利用しようとする。

 

「ピルア!!!」

 

魔理華は速度増加の呪文を唱え、一気に走り出すと地雷が埋められてる場所を思いっきり踏んで素早く体を前に出した。地雷は爆発を起こし、魔理華は爆発に押されて飛んで走っていった。それを繰り返していき、一位を争う爆豪と轟に追いつき、追い越していった。それを見た2人は争うのやめ魔理華の追っていった。魔理華は手を出して呪文を唱えた。

 

「ビリディン、コール!!」

 

魔理華は攻撃するが爆豪は爆破で打ち消し、轟は氷で防御した。炎は自分の過去を知られたくない為使えず接近戦だと不利、魔理華は少し残っているゲージを見てゲージの全てをスピード強化に使うことにしようとする。

 

「ゴラァァァ魔理華ァァァ!!」

 

一位の取り合いをしているうちにまだ怒っている上流が追いつき、手和(しゅわ)も手袋に掴まって飛んできた。上流が爆豪や魔理華を殴りかかろうとし、手和が轟の身動きを手袋で止めようと、爆豪や轟は爆破や氷で抵抗しつつも魔理華を追って魔理華は先を突き進む。一位争いは激しくなってきた。

 

爆豪と轟が魔理華を追い抜いた、それと同時に大きな爆発音が後ろから響いた。その衝撃は遠くにいる魔理華たちにも伝わってきた。何故大きな爆発が起きたか、魔理華は考えたがそれはすぐに無くなった。

 

緑谷出久、彼が空から降ってきた。緑谷があの爆発を起こしたとわかり、その緑谷は魔理華(じぶん)たちの頭上を通り過ぎていった。緑谷の姿を見た全員、一位を争っていた人たちは争うのやめ我先にと走っていった。先頭に立った爆豪と轟、その後を追う魔理華、手和、上流。緑谷の飛距離とスピードが弱まり魔理華たちとの距離が近づいて、爆豪と轟は緑谷に追いついた。

 

だが緑谷は爆豪と轟の背中を踏んで持っていた鉄板で地面を叩いた。それによって地雷が爆発、その場にいたみんなは後ろに飛ばされた。しかし、緑谷は爆発に乗って一位を守りゴールに走っていった。

 

魔理華はせめて上位だけでもとゴールを目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

「第2種目で行うは騎馬戦」

「修哉さん、見ててください」

「私は集めたメンバーを信じて戦います!」

次回 (はし)退(しりぞ)け 手を()ばせ

「更に向こうへ、puls(プルス) ultra(ウルトラ)!」





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No23 戦え 退け 手を伸ばせ

魔理華の障害物競走の結果は10位、後からやってきた上流(あがる)手和(しゅわ)飯田(いいだ)君らに追い越されこの順位になってしまったがそれでもとても頑張ったと魔理華は少し喜んでいた。

 

「Bクラスの皆さん、大丈夫でしょうか......」

 

「大丈夫だと思う、脱落した奴がゴール近くで止まっていたのが妙だった、誰かの個性で止められていたんだろうな」

 

障害物でBクラスの数名が間に合わず第一種目で落ちてしまった。敵であるBクラスを心配する手和に永鬼は心配をなくすように言い、話に出た誰かを警戒していた。

 

そうこうしている間にミッドナイトが次の種目を発表した。

 

 

 

_______________

 

ヒーロー達が集まる休憩室、第一種目が終わったのをテレビで見ていた修哉は頬を緩めていた。

 

「魔理華、頑張ってるなぁ」

 

「魔理華って誰ですか、もしかしてあの黒髪の女の子?」

 

「あぁ、あいつはうちの親戚から預かった子でな雄英高校に通うためにステイしてるんだ」

 

修哉はさらっと嘘を言うとMtレディは話を進めてきた。

 

「あの子とはどう暮らしてるの?」

 

「普通に、家族として暮らしてる」

 

「じゃああの子のことどう思ってるの?」

 

「妹、みたいな感じかな」

 

「じゃあじゃあさ、あの子の......」

 

「さっきから魔理華のことを聞いてきてるけど、どうしたんだ?」

 

「別にそうゆうのじゃないから......」

 

「そうゆうのってどういうこと?」

 

「う、うるさい!」

 

「あがっ!足を踏むなバカ!」

 

「しつこく聞いてきたからでしょ!」

 

「しつこく聞いてきたのはお前だろ!」

 

「なんだろ、俺たち空気になっているみたいだな」

 

「同感だ」

 

デステゴロとシンリンカムイを無視して修哉とMtレディは言い争いを始めていった。

 

 

 

__________________

 

 

 

 

第二種目は騎馬戦、相手からポイントが書いてあるハチマキを奪い取り、取ったハチマキのポイントが高い4組が最終種目に参加できるシンプルな競技。魔理華は自分と協力してくれる仲間を再確認した。

 

一人目は五舞(いまい)手和(しゅわ)、手袋を複数に作り出してそれは自由自在に操ることができるためハチマキを取る担当を担っている。

 

二人目は衣月(きぬつき)永鬼(えいき)、変身に使うボールは持っていないため、獣に変身できる個性はあまり使えない。担当は手和を支える右側。

 

最後の三人目は青山(あおやま)優雅(ゆうが)、残ってしまったこの人を選んだが、手和を支える前を担当させて正面にやってきた敵をビームで近づけさせないために使うことにした。

 

魔理華は手和を支える左側に位置して後ろなどからくる敵を個性で近づけさせないように援護をする。作戦は手和の手袋を利用した遠距離からの奪取。

 

「手和ちゃん、私に協力してくれてありがとう」

 

「大丈夫だよ、魔理華ちゃんに信頼された分まで頑張るから」

 

「上流どこ行きやがったんだ?」

 

「僕のエレガントな活躍見せてあげる」

 

魔理華は手和にお礼を言い、手和ははりきり、永鬼ははぐれた上流を探し、青山は目立とうとしていた。そんな少しチグハグなチームで決まると

 

「スタートっ!」

 

ミッドナイトがムチを振るい騎馬戦の開始が会場中に渡っていった。

魔理華達の前に敵がやってき、魔理華たち(みんな)はスイッチを切り替え敵のハチマキを奪いに行った。

 

「青山さん永鬼さん、後ろに下がるよ、青山くんは弱めのビームを!」

 

「ノンノン、ビームじゃない。ネビルレーザーさ!」

 

まずは後ろに下がりビームで間合いを作る。魔理華が(うなず)くと手和は手袋を作って敵に放った。手袋は敵の周りをちょこまかと動き一つの手袋に集中している間にもう一つの手袋でハチマキを奪い、すぐに敵から離れた。

 

やってきた相手はこの方法で対処し、後ろなどから来た相手は魔理華の個性で距離を取り手和の手袋で奪取。最初は順調だがこの先どうなるかはわからない。

 

「なぁ、聞いていいか」

 

「何、永鬼さん」

 

「10000000P(ポイント)のハチマキ、取り行かないのか?」

 

ハチマキのポイントは第一種目の順位で決まり順位が高いほどポイントが高い仕組みになっている。しかし一位になった緑谷(みどりや)のポイントは桁外れの1000000P(ポイント)が与えられている。それを取れば一瞬に一位になれる。なぜ取りに行かないか、そのことを永鬼に伝えた。

 

「緑谷くんのハチマキはみんなが狙っている。私たちの今の現状だと近接と複数の戦闘は不利だから近づかない、それに常闇の個性が相手だと手和ちゃんの手袋が不利かもしれない。私たちが出来るだけ狙うのはハチマキ一つのチーム!」

 

「わかった!」

 

「オーケィ!」

 

青山と永鬼は話を理解し次の敵を探しに行った。大体の敵は得点の高い緑谷や轟などを狙っており、魔理華に近づいてくるのはハチマキを失った人ばかり。魔理華たちは逃げることに専念した。

 

他の人たちから逃げていると急に足元にぬかるみを感じた。足元を見ると地面が柔らかくなり、足が吸い込まれるように沈んでいた。青山や永鬼も同じように身動きが取れなくなっていた。

 

「カッカッカッ、引っかかったぞ」

 

「よっしゃ行くぞ!」

 

これを仕掛けてきたあろうチーム、Aクラスに他クラスが集まってきた時に見たBクラスの徹鐡だった。ここから抜け出すために魔理華は手和に二回頷く合図を出した。

 

手和はそれに頷くと手袋をたくさん作り出し、手袋全てが魔理華たちの足を掴んだ。

 

「バイカス!」

 

魔理華は個性の呪文(スペル)を唱えると手和たちから力が湧いてきた。手和は手袋を使い地面から引き上げた。ズブズブと地面から足が抜けていく音が鳴り抜け出すと勢い余って宙に飛んでいった。

 

「飛んでいったぞ!」

 

「くそっ、またやられた!」

 

「って徹鐡!ハチマキは!?」

 

「うおっいつの間に!」

 

徹鐡の頭と首にあったはずのハチマキは全て無くなっていた。それに気づいた徹鐡チームは持っていたハチマキを探していると魔理華の後を追う手袋がしっかりとハチマキを持っているのを見つけた。(いばら)の髪の塩崎は茨のツルを伸ばし手袋を捕まえようとする。

 

「ビリディン!」

 

それを魔理華が個性で茨を阻止し、手袋が掴むハチマキは無事に手和の手元に渡された。

 

「魔理華お前、急に力が湧いたんだが何したんだ!?」

 

いきなりの感覚にびっくりした永鬼は魔理華に何が起きたか聞いてきて、魔理華は説明した。

 

「チームメンバー探しの時に手和ちゃんしか話していなかったけど、私の個性は強化系なら触れている人にも強化されることができるの。つい最近わかったことなんだけどね」

 

体育祭が始まる数日前に個性の効果の付加できるのではないかと思った魔理華は真斗を使った実験......もとい遊んでいる時に試してみたことで個性の効果の付加が可能だとわかった。

 

「攻撃に仲間への支援、いろいろ使えるじゃねえか!」

 

「ええ、そのかわり持続時間は極端に短いの」

 

「魔理華ちゃん、着地するね」

 

魔理華たちが着地すると移動しながら騎馬戦の終了までの行動について話し合った。ポイントも十分に獲得し順位も4位になっている。話し合った結果、終了するまで逃げることした。その矢先

 

「おいなんか霧が出てきたぞ......!」

 

「魔理華ちゃん......」

 

魔理華たちの周りに霧が発生し、どこもかしこも見えなくなってしまった。手和は不安を感じて魔理華の服を掴んでいた。急に現れた霧に戸惑(とまど)っていると霧の奥から誰かがこっちに近づいてきて、その誰かの顔がはっきりとわかった。

 

Aクラスに宣戦布告を言い渡した普通科の男の子だった。彼を支える人を見ると同じ普通科であろう二人ともう一人見知った顔の人がいた。

 

「上流!お前こいつと組んでいたのか!?」

 

普通科の人と一緒にいた上流にいち早く気づいた永鬼は上流に声をかけた。しかし上流は無表情で無反応でいた。

 

「おいお前、こいつの知り合いか?」

 

「上流はオイラの親友だ!上流に何を......」

 

男の問いかけに反応した永鬼の話が途切れた。魔理華は永鬼を見ると上流と同じ状態になっていた。

 

「お前は確か、さっきビームを出していたよな」

 

「ノンノンビームじゃない、ネビル......」

 

今度は青山に問いかけをし、訂正を言おうとしたところで途切れた。言葉に反応した人に何かする個性だと判断した魔理華は口を力強く閉じた。

 

「お前、黒魔女を知ってるか?」

 

「............!?」

 

男の口から出たのは昔の、魔理華(じぶん)(ヴィラン)だった頃に言われていた名前。それを聞いた魔理華は個性に反応してないのに体が固く動かなくなっていた。

 

「黒いフードマントを着てヒーローに奇襲をした(ヴィラン)、情報だと黒い髪の女しかわかっていない」

 

「この前に起きたUSJの事件、もしかしたらだがそいつが関わっているのかもな」

 

淡々と話を続けていく男は最後にとどめの一言を言った。

 

 

 

 

 

 

「おまえ、まさかと思うが黒魔女なのか?」

 

魔理華は血相を変えて否定しようとした。

 

「違う!私は......」

 

そこで魔理華の意識が途切れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タイムアーップ!」

 

気がつくと騎馬戦は終わってしまっていた。青山や永鬼も今さっき正気に戻ったのか状況が把握できずにいた。手和の方を見ると泣きじゃくっていて、正気に戻った魔理華に打ち明けた。

 

「ごめん魔理華ちゃん......、ハチマキ、全部取られた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

「騎馬戦で敗退した魔理華」

「しかし、突然のチャンスがやってくるが魔理華は......」

次回 チャンスをどうする

「更に向こうへ、plus(プルス)ultra(ウルトラ)!」





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No24 チャンスをどうする

長い間遅れてすいません。


騎馬戦が終わり、最終種目に上がる1位から4位のチームが発表された。

 

一位は(とどろき)焦凍(しょうと)八百万(やおよろず)(もも)上鳴(かみなり)電気(でんき)飯田(いいだ)天哉(てんや)のチームで緑谷(みどりや)から10000000P(ポイント)を奪い取ってなったのだがどう奪取したのかは見ていなかった。

 

二位は瀬呂(せろ)半太(はんた)芦戸(あしど)三奈(みな)切島(きりしま)鋭児郎(えいじろう)を率いた爆豪(ばくごう)勝己(かつき)のチーム、一度はポイントを取られてしまったが取り返すことができて二位の座を得た。

 

三位は心操(しんそう)人使(ひとし)のチーム。制限時間ギリギリで魔理華(まりか)たちからハチマキを奪ってののし上がり、急などんでん返しに司会のプレゼント・マイクや一部の観客は驚きの声を上げていた。彼と協力していた人は同じ普通科の江亜呂(えあろ)皆無(かいむ)目立(めだち)可憐(かれん)と魔理華たちがよく知っている矢那雲(やなぐも)上流(あがる)であった。

 

最後の四位に入ったチームは緑谷のチームであった。10000000P(ポイント)麗日(うららか)茶子(ちゃこ)無重力(ゼログラビティ)発目(はつめ)(めい)の発明品、常闇(とこやみ)踏影(ふみかげ)黒影(ダークシャドウ)を十分に発揮でき、最終種目に上がることができた。

 

騎馬戦の結果発表が終わると昼の休憩時間となり(みな)は食堂へと向かっていった。

 

 

 

 

_______________

 

 

 

 

 

「本当にごめんね......」

 

「もう気にしなくてもいいのよ、相手もよくわからない個性を使ってきたんだから私も怖いと思ったのよ」

 

一緒に騎馬戦で協力したもの同士でご飯を食べている魔理華たち、青山はここの食事が口に合わないからと自分が持ってきたご飯を持ってどこかにいったために魔理華、手和、永鬼の三人で集まっていた。落ち込んでいる手和を(なぐさ)める魔理華、永鬼はご飯を食べながら上流を探しているのか辺りを見回している。

 

「おーい上流、こっちの席空いてるぞ」

 

上流を見つけた永鬼はここに来るように大きく手を振った。やってきた上流は怒っていると分かるほど表情が出ており、魔理華たちがいるテーブルに着くと持っていたお盆を強く置いた。

 

「よかったじゃないか。最終種目に出場できるんだから......」

 

「よくねえよ!!!」

 

永鬼が上流の出場が出来たことを喜んで話そうとしたが上流はそれを否定した。魔理華のいるテーブルがしばらく静かになり、上流が口を(ひら)いた。

 

「俺は何もしてない(・・・・・・)何も知らない(・・・・・・)、こんな俺に最終種目に行く資格なんてねぇ!」

 

確かにあの時の上流は様子がおかしかった。上流は自分が何をしたのかわかっていない。彼は自分から人の役に立ちたいが他の人に頼りにならないと意地でも役に立とうと暴走する子。自分が知らない間に使われていたことに腹が立っていた。それが嫌だと魔理華は理解して何も言わなかった。

 

「それにあいつら一つもお礼をしてないんだぞ。一人は無視するし、もう一人はヘラヘラ笑って、最後のやつに至っては変な動きして完全にバカにしてるだろ!」

 

上流は怒りの原因みたいなことを話すと魔理華に目を向けて言った。

 

「頼む、俺の代わりに最終種目に出てくれ!」

 

「............えっ!?」

 

「お前ならあの心操のやつらに勝てる、やってくれるよな!」

 

「ちょっと、そういうのは得点が多かった手和ちゃんに頼めばいいじゃない」

 

「いいよ魔理華ちゃん、騎馬戦の作戦は魔理華ちゃんが考えたんだから魔理華ちゃんが出るべきだよ」

 

「じゃあ、永鬼さんなら」

 

「永鬼が出ても個性発動に必要なボールがなきゃ実力が出せない、だから頼めるのはお前しかいない!」

 

上流が話したのは魔理華に出場の可能性だった。魔理華は目的の3位以上になるのに必要な最終種目に行く権利、だが魔理華はそれを誰かに譲ろうとした。譲ろうとするもすぐに正論を言われてしまい、魔理華が出場することになることになった。

 

「とにかく最終種目はお前が行ってくれ、頼んだからな!」

 

話を終えると上流は昼食(ちゅうしょく)のトンカツ定食を食べ始めた。最終種目に出れる魔理華は心の中で迷っていた。自分はこのままでいいのか、自分は出場できる資格はあるのか、そんなことを考えてしまう魔理華にはあの言葉が頭から離れない。

 

『おまえ、まさかと思うが黒魔女なのか?』

 

魔理華は紫髪の男の子の言う通り自分は黒魔女だった、(ヴィラン)の黒魔女だった子、そんな自分がヒーローとしての資格があるのか自身に疑問を抱いていた。自分にとってそれが自分を(しば)(かせ)となっている。魔理華はそれを理解しているそれでもこの枷は外れない。

 

そして、一番に気にしているのは手和であった。あの時の最後に相手の個性にかかったのは魔理華で手和はタイムアップまで自我があった。手和は魔理華と紫髪の男の子、心操とのやりとりを見て聞いていた。

 

友達の関係が崩れる、それどころか(ヴィラン)として警察に捕まってしまう可能性があった。手和に限ってそんなことはない、でもその先がどうなるかが怖くて聞けない。

 

「魔理華さん、手和さん、お話がありますの」

 

「八百万さん」

 

魔理華がそんなことを考えていると八百万百が自分たちのところにやってくると魔理華と手和を人気(ひとけ)のない場所に案内した。

 

「実は午後からこの服を着て応援合戦をするので準備してください」

 

八百万が見せた服はチアリーディングの制服だった。雄英高校の正式であるのか雄英のロゴが載っていた。この服を着て応援するのは恥ずかしいということは少し頬を赤らめた手和の顔を見て当然だとわかり、自分がおかしくないことを認識した。

 

「ちなみに誰からの指示なの?」

 

相澤(あいざわ)先生からの言伝ですが?」

 

「そう、なら仕方ないわね」

 

八百万から制服を受け取ると魔理華たちは更衣室に向かっていった。

 

 

 

 

_______________

 

 

 

 

 

「ちゃんと、着れてるよね」

 

魔理華は鏡で確認して着替えを終えると更衣室から出ようとした。すると自分のロッカーからスマホのバイブ音が聞こえ、ロッカーを開けてスマホを見ると修哉から電話だった。

 

「魔理華ちゃん、どうしたの?」

 

「手和ちゃんごめん、先に行ってて」

 

「......うん、わかった」

 

手和は更衣室から出ると更衣室には魔理華しかいない一人の空間になった。魔理華はスマホを手に取り電話に出た。

 

「もしもし、魔理華大丈夫か?落ち込んでないか?」

 

「はい大丈夫です、修哉さんは今どこにいますか?」

 

「俺は雄英体育祭の警備で来ている。お前の活躍はしっかり見ていたぞ」

 

「そうなんですか、あっさりハチマキ奪われて情けないですよね」

 

「いやそんなことはない、相手が対人型の個性の奴らみたいだからな。しょうがないと思うぞ」

 

魔理華は修哉の話で気になることを聞き返した。

 

「......対人型?」

 

「あぁ、人間にしか効果がない個性のことだ。俺みたいな修復する程度の個性は普通に使ったら戦闘には使えないだろ?個性は相手や状況で効果が変わる。お前からハチマキを奪った奴らはヒーロー科試験で落ちた、仮装ヴィランに個性が効かなかった奴らだろうな」

 

「そうなんですか」

 

「俺もヒーロー科試験に落ちて体育祭で成り上がったからわかる。あいつらもヒーローになりたくて必死なんだ。」

 

修哉の話を聞いて誰もが必死に順位に、素晴らしい成績を取ろうとしている。誰もがヒーローになるために上がろうとしている。自分にもその気持ちがある、だから上流からの願いは逃したくない。けれど昔のことを思うと自分のヒーローになりたい意思が揺らぐ。他のみんなにないものが自分の心にあり、それにいつも怯える自分が出来ている。それを変えるためかどうか魔理華はある事を話した。

 

「私、実は最終種目に出れるかもしれないんです。クラスの一人から代わりに出てくれって言われて。けど私、前はヴィランだったんですよ、犯罪者だったんですよ」

 

「こんな私でも、本当にヒーローになれるんですか?」

 

携帯からは何も聞こえず沈黙が続いた。そして電話の奥から修哉は口を開いた。

 

 

「だからこそ、お前は最終種目に出るべきだ。お前にとってのヒーローってなんだ?」

 

「............」

 

「それがないんならお前は最終種目に出て確かめるんだ。お前がなりたいのは人々の笑顔を絶やさない平和の象徴か?無駄な行動をしないで無駄な犠牲を増やさずに助ける合理的なやつか?」

 

「............」

 

「ヒーローは一括りにまとめられた職業の肩書きに過ぎない。ヒーローに必要なのは意思、自分を駆り立てるエンジンだ。いろんなヒーローにはいろんな意思がある。お前が見てるのはヒーローという肩書きだけだ。」

 

「......ッ」

 

魔理華はヒーローになろうとした切っ掛けを思い出した。自分は(ヴィラン)だろうと助ける、誰も手を伸ばしてくれなかった子供を救う、そんな自分が知っていたヒーローを(くつがえ)すそんなヒーローに憧れ、なろうと努力して今自分はここにいるのだと。

 

「お前は焦ってるだけだ。自分の持っていた肩書きに、とっくの昔に捨てた肩書きに怯えただけだ。今のお前はヒーローの卵だ、そんなお前をこの体育祭で見せつけてやれ、新しいヒーロー私がくるとな」

 

「お前もまだ未熟、この体育祭でいろんな相手と戦って経験を積んで自分を磨くんだ」

 

「わかりました!」

 

修哉との電話で体育祭の再出場を決意した魔理華は手和たちの所に急いで行こうとした。

 

「いたっ!」

 

「あぅ!」

 

更衣室の扉を開けると先に行っていたはずの手和が待っていた。勢いよく出た魔理華は手和とぶつかり、二人ともぶつけた所を手で押さえてた。

 

「大丈夫魔理華ちゃん?来るのが遅かったから......」

 

「ごめんね、ちょっと電話に出てて......」

 

魔理華は八百万のみんなと合流しようと向かっていくと手和は魔理華の手を強く握り、その場から動かなかった。手和は魔理華と目を合わせ、魔理華に問いかけた。

 

「魔理華ちゃんが、(ヴィラン)だったのは本当なの......?」

 

いつか来ると思っていた手和の質問、いつか知られると思っていた自分の過去、いつか起こると思っていた運命。それが今、ここで起こった。

 

魔理華は手和の質問に素直に答えた。

 

「うん......、私はこの高校に入る随分前にむしゃくしゃしていて(ヴィラン)みたいなことをしてたの。でもね、今は違う!(ヴィラン)としてのことはやめて新しい自分に、なりたい自分になろうと思ってここに入学したの......」

 

「..................魔理華ちゃん」

 

「何......?」

 

「魔理華ちゃんは昔は悪いことをしていたみたいだけど、今の魔理華が優しくて、ヒーローになろうと頑張っていて、そしてみんなと仲良くなっているだよ。」

 

 

 

「私は魔理華ちゃんを裏切ったりしない。昔がどうであれ魔理華ちゃんはヒーロー試験(あのとき)にはもうヒーローだから、私は魔理華ちゃんを(ヴィラン)なんて思わないよ」

 

魔理華にとってすべての自分を受け入れるは直崎修哉(なおさきしゅうや)だけだったが、受け入れてくれる人がもう一人できた。それが雄英での生活で今までにない喜びの瞬間だった。昔の自分の存在を否定しない人ができた。それだけでまた心が軽くなる。

 

「............ありがとう」

 

この時どう言えばいいのかわからない、少し恥ずかしながらも感謝の気持ちを伝えた。

 

「あっ、早く行かないとみんな待ってるから」

 

「うん」

 

二人は一緒にみんなの所に向かう。

まっすぐな廊下を走っていった。

二人は同じ道を進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

「いよいよ始まった最終種目」

「爆豪くんと轟くんの快進撃で会場は盛り上がっていく」

「そして私の相手は」

次回 爆・撃・戦

「更に向こうへ、plus(プルス)ultra(ウルトラ)




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