モンスター達の悲劇 (しろねぎ)
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ラオシャンロンの悲劇。

ラオシャンロンは逃げてるだけ。


怖い。物凄く怖い。あの黒龍がもうすぐ現れる。何処かに逃げないと。でも、僕の通る道には邪魔な砦がある。その先には人間の街がある。街の先にある場所が一番安全だからどうしても行きたい。どうしよう。“ハンター”って言われてる人間が邪魔をしてくるし……仲間もやられてる。でも黒龍と遭遇するよりは生き残る可能性は高いから、行くしか無いよね。

 

いざ砦の近くの渓谷に来ると緊張する。多分ハンターが沢山居るんだろうなぁ……ほら、矢が飛んできた。痛いよぅ。でも頑張って進まないと。

 

目の前には大きな樽が置いてある。空を飛んでいた飛竜に話を聞いてたけど、あれは爆弾みたいだ。絶対痛いけど、渓谷が狭いせいでUターンも出来ないから進むしか無いよ。嫌だなぁ……

 

ふぎゃっ!やっぱり爆弾だった……角が折れちゃったよぅ。しかも目の前にハンターが3人も居る。痛いよ!急に顔を斬りつけないで!やめてよ!僕は黒龍から逃げてるだけだよ!それに僕の通る道に勝手に街なんかを作ったのは君たち人間だよ!先に邪魔をしてきたのは君たちなんだから!

 

アレ?何だか背中がムズムズするよ……?あっ!背中にハンターが乗ってるみたいだ!急いで振り落とさないと何をされるか分かった物じゃない!降りてよ!

 

ぎゃあああぁぁぁぁぁ!?せ、背中で爆弾が爆発したみたいだ!角が折れた時よりも痛い!凄く痛い!で、でもすぐに砦だ!そこを越えれば人間は避難で忙しくなって、僕は安心して安全な場所まで行ける筈だ!

 

あれが砦か……何回か体当たりすれば壊れるかな?取り敢えず近付かないと壊せないからね。火を吹いたり出来る飛竜とかが羨ましいなぁ。

 

うわっ!?大砲で撃ってきた!痛い……何で邪魔ばっかりするんだよ!怒ったぞ!砦なんか潰してやる!

 

な、何であの砦は針なんか飛び出すんだよ!そこらじゅう傷だらけだよ……ここは広いしUターン出来そうだけど……もう少し頑張ってみて、砦を壊せなかったらUターンして帰ろう……黒龍に会わない事を祈るしか無いよ。

 

うぅ。頑張ってみたけど、やっぱり壊せなかった。そこらじゅうボロボロだし、何処かでゆっくり休みたいな……

 

やっと帰って来れたよ……イタタ……。黒龍には会わなかったし、何とかなったかな?でも今度いつ現れるか分からないし、砦をどうにかする方法を考えないと。でも今は眠いや。一眠りしよう。

 

眠りについたラオシャンロンが最期に聞いた音は、黒龍の鳴き声だった。ハンターに襲われ、満身創痍だったラオシャンロンは成す術も無く黒龍の餌食となった。そしてラオシャンロンの肉を喰らった黒龍は圧倒的な力でハンター達を倒し、国々を滅ぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砦を開けてよー!僕はただ、黒龍が怖いだけなんだよー!




討伐よりも撃退の方が可哀想。


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ジンオウガの悲劇。

モンスターの悲劇を描いていきます。別に全てのモンスターが命を落とす訳では無いです(笑)


私は縄張りを追われた。あの嵐の龍に。いや、それは問題では無いのだ。元々この世は弱肉強食であり、嵐の龍は私よりも強者だっただけなのだから。

 

だが、許されぬのは弱者でありながら姑息な手を使って戦う泡の龍だ!確かタマミツネとか言ったか?足元に泡が出る体液を振り撒き、のらりくらりと攻撃を避ける!あの臆病者め!

 

……しかしその手にまんまと引っ掛かったのは私の落ち度だ。そして新しい縄張りをここに決めた以上はあのタマミツネに邪魔をされるのは必定だ。

 

ならばなんとしてもあの泡を攻略しなければならない。良い方法は無いだろうか?雷撃で蒸発させるか?いや、大人しくそれをさせる相手では無いだろう。

 

ん?そう言えば人間達は泡を使って汚れを落とすと聞いたな。つまり汚れを付けた状態なら泡を受けても汚れが盾となり、滑らなくなるのではないか?……早速試してみよう。

 

ハチミツを全身に塗ってみるか。どれ、蜂の巣を突っついてハチミツを出そう。ぬぅ、背中に塗れんぞ!そうだ、少し転がってみるか。

 

……恥をかいたぞ、たまたま通りかかったハンターに笑われた。それはもうゲラゲラと。何が新種のアオアシラだ。腹が立ったから雷撃を食らわせてやったぞ。

 

さて、対策も済んだ所でタマミツネに再戦を……ん?何だアオアシラ、私を見て舌舐めずりなどして。

 

何故かアオアシラが襲ってきた。しかも3匹も。大した敵では無いから問題無く倒せたが、全身を舐められた。恐らくハチミツを塗ったせいであろう。しかしそのせいで塗っていたハチミツが無くなってしまったではないか。もう一度塗りに行くしか無いな。

 

……あのハンター許さん。また私を見てゲラゲラと笑いまくっていた。今度は尻尾で叩き潰してやった。今度笑われたら食ってやろう。

 

さて、タマミツネの奴は何処に居るのだろうか?とにかく辺りを散策してみるか。

 

普通に負けた。ハチミツ意味無かったな。逆に良く滑った。今度は雷撃で蒸発させよう。それでダメならまた別の手段を考えよう。

 

帰り道に迅竜に会った。いつもなら手合わせするのだが、どうやらハンターに手酷くやられたらしい。手傷を負った者を襲う主義では無いので今回は見逃したが、まさか私が倒したハンターにやられたのでは無いよな?あんな間抜けなハンターにやられる筈が無いよな。

 

どうやらあのハンターは相当の手練れだったらしい。まさか私がここまでやられるとは。だが、何とか倒せたぞ。……ぬ?タマミツネか……少し不利ではあるが、相手を……

 

何?この泡は……傷を癒すのか!?何故私を癒す!?それに良く見ると貴様も傷だらけではないか!ハンターにやられたのか!

 

……最期だから癒した?待て、貴様……そうか。迅竜も結局やられてしまったのか。なら貴様が居なくなってしまえば私だけの縄張りになるな。そうだな、それは、少しだけ寂しいかもな。何?雌火竜とかも居るだと?奴等はこの時期は密林や丘に行っている。問題は無い。

 

そうだな。貴様は小賢しい奴ではあったが、逃げる事はしなかったな。あぁ、貴様は間違いなく強者だった。楽しかったよ。ありがとう。

 

……逝ったか。この縄張りも少しだけ寂しく感じるな。張り合う相手が居ないと言うのも詰まらん。だが、この場所を託された以上は負ける事は許されない。そう思うだろう?ハンター達よ。

 

さて、今度は複数人で来たな。ならば貴様達が私と張り合ってみせろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数多のハンターを薙ぎ倒すジンオウガの姿は正に“無双の狩人”と呼ばれるに相応しい物だった。そしてその鳴き声は何故か悲しげで、寂しげだった。




孤独なのも悲劇だと思います。


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