Hero×Heroine×Hundred (緑谷百)
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始まり
第一話


何故、自分を大事にできませんの?

何故、自分を信じれませんの?

何故、自分を救けませんの?

何故、痛いのに立ち向かえますの?

何故、“私の想い”に気づきませんの?

もっと知りたい

もっと触れたい

隣に居るのが私でない事が

今になってこんなに切ないなんて

あの時貴方が委員長を引き受けて下されば

貴方との距離はもう少し近かったのでしょうか?

私は誰かを救える“ヒーロー”になり

貴方だけの理想の“ヒロイン”になります

どうか我が儘で欲深い

”私の想い“をお救い下さい


私が自分の気持ちに気づく3ヶ月前…

 

 

ー雄英高校初日ー

 

 

 

~1-A~

 

教室に着くと既に賑やかなやり取りが始まっていた。

 

私は黒板で自分の席を探して席に着くと、

 

喧騒の中心に耳を傾ける。

 

 

「机に足をかけるな!

雄英の先輩方や机の製作者方に

申し訳ないと思わないのか!?」

 

「思わねーよ、てめーどこ中だよ端役が!」

 

「ボ・・・俺は私立聡明中学出身飯田天哉だ」

 

「聡明~!?くそエリートじゃねえかっ!

ブッ殺し甲斐がありそうだな」

 

「ブッコロシガイ!?君はひどいな!

本当にヒーロー志望か!?」

 

(低俗な会話です事…。品位を疑いますわ。)

 

眼鏡をかけた真面目を絵に書いたような方と

ヤンキーのイメージをそのままにした方が

言い争いをしていた。

 

 

少し呆れながら、周りを見渡すと

 

 

(彼は…、エンデヴァーのご子息ですわね。

推薦試験の時、圧倒的な氷の力で周りを圧倒してた…。)

 

轟を見つけ、挨拶しておこうかと席をたった時、

 

「おはよ~!」

 

ピンク色の女性に声を掛けられた。

 

「おはようございます!」

 

声掛けられたのが嬉しくて、

ニコニコが止まらない。

 

「やっと待ちに待った入学だね!

あたしは芦戸三奈!よろしくね!」

 

「私は八百万百と申します。

これからよろしくお願いしますわ~。」

 

「あれ?試験の時は居なかったよね??」

 

 

「はい、あちらにいらっしゃる轟さんと、

私は推薦で入学しましたの。ですので、

一般入試は受けておりませんの。

どのような内容でしたか?」

 

 

「えっと~、ロボットを倒すと

ポイントが貰えるシステムの個性有りの

戦闘試験みたいな感じかな!

見られてたのは、そこだけじゃなくて、

他の人を助けたりとか、そういう所も

見られてたみたいだけどね~。」

 

と芦戸さんと他愛もない会話をしていた所、

 

 

 

 

「おい、友達ごっこをしたいなら、他所へ行け…

ここはヒーロー科だぞ。」

 

いつ来たのか、そこには寝袋に包まれた男が

教壇に立っていた。

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。

君たちは合理性に欠けてるな。」

 

 

「担任の相澤だ。

早速だがこれを着てグラウンドに集合しろ。」

 

「えっ!?入学式は??」

 

先程話ていた芦戸さんが聞くと、

 

「時間は有限だ…。ヒーローを目指すんなら

1分1秒無駄にはできないだろ。

納得できないなら他行け。」

 

(担任って事は彼もヒーローなんですね。

ですが、彼のようなヒーローは見た事がありませんわ。)

 

その言葉に誰もが無言になり

寝袋から体育着を出す相澤に若干ひきながらも、

着替えをすませ急いでグラウンドに向かった。

 

 

 

-グラウンド-

 

 

 

 

「これから君たちには、

個性ありの体力テストをしてもらう。

やってみてもらう方が早いだろう。

爆豪、まず個性使わずに投げてみろ。」

 

 

(爆豪と呼ばれた方は、教室でヤンキーのように

周りに突っかかってた…)

 

「ケッ!!」

 

 

「ピッ…67m。じゃあ、

もう一回、今度は個性を使って投げてみろ。」

 

そう言って、ボールを手渡す

 

 

 

「んじゃ、まぁ…」

 

「死ねーーー!!!!」

 

 

(死ね…?何て野蛮なんでしょう…。

ヒーロー科に居るのが不思議ですわ~。)

 

あっけにとられていると

 

「ピッ705メートルか、中々じゃないか。」

 

「705メートル?!」

「飛びすぎだろ?!」

「でもたのしそう!」

 

と色んな声が聞こえる。

 

 

「楽しそう?そんな腹積もりで

この3年間を過ごすつもりなのか?

そんな甘い考えでヒーローが勤まる訳ないだろ。」

 

(先生の言う通り。私達の本気の力が見たいのですね。

周りの力を見る良い機会ですわ。)



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第二話

好きな気持ちに遅いとかありますか?

好きな気持ちに嘘はつけますか?

好きな方に自分を知って貰いたい

好きな方に興味を持たれたい

あの娘じゃなくて

私が隣に居たい



張り詰めた空気の中、

 

「生徒の校則が自由なら、先生も自由ということだ…。

そうだな、記録がビリだったものは除籍とする!」

 

(危機感を煽る為の嘘でやる気を出させる

作戦ですわね。皆顔つきが変わりましたわ。)

 

一部の生徒は動じず、

一部の生徒は顔を恐怖でひきつらせ

ざわざわする中、

 

「先生!流石に横暴すぎではありませんか?!」

 

(飯田さんと言ったかしら、すっかり

先生の策に嵌まりましたね。

その隣の彼…、顔色が悪いですが

大丈夫でしょうか?)

 

 

“私が初めて彼を認識した時だった”

 

 

この時の私は

地味で弱そうな見た目

思い詰めた顔をし

ヒーロー目指すのに

そんなんでやってけるのかと

呆れと同情すら覚えていた。

 

 

 

「ヒーローとは苦難の連続!

これから数々の壁を俺ら教師は

全力で君達に与え続ける!

Plus ultraだろ?

ヒーロー目指すんなら

これ位の壁乗り越えてみせろ。」

 

ニヤリと笑いながら

目の前の教師は言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから個性把握テストを一通りこなしていった。

 

 

その中でもあの地味目の彼は、

ほとんどの競技で個性を使わず、

本当にヒーローになる気があるのかと

疑問に思っていた所、

 

ソフトボール投げで遂に個性を発揮。

 

指を赤黒く腫れさせながら、目尻に涙を溜めて

 

「先生、まだやれます!」

 

と怪我とは裏腹に笑みを浮かべていた。

 

(爆豪さんの話が本当なら、緑谷さんは

今まで無個性…!?

そんな事本当に有り得るんですの!?

だから個性が馴染んでないのかしら…。

それとも個性を使うのに代償がいるとか…。

それにしても、今まで無個性でよく

雄英に進学できたものですわ。)

 

自傷行為に近い彼の個性を見ながら、

私は無意識に彼を見下し、

興味を持とうとすらしなかった。

 

 

 

”何故この時に彼の事を思えなかったのだろう“

 

 

 

 

 

 

そして、先生がイレイザーヘッドという事が分かり、

合理的虚偽という理由で、“最下位”だった緑谷さんの

除籍はなくなった。

 

 

(最初からそのつもりだったんでしょうに…。

それにしても皆さん強い”個性“をお持ちのようで。

これからの学校生活が楽しみですわ。)

 

自然と笑みがこぼれた。

 

この個性把握テストのお陰で、

クラスメイトとの簡単な自己紹介も済ませられ、

確かに合理的だと感じた八百万であった。

 

 

 

~放課後~

 

「はぁー!誰も除籍でなくて良かったねー!!」

 

満面の笑みで話す芦戸さん。

耳郎さん、葉隠さんと一緒に教室から出た。

 

「うちも正直焦ったかな。男子と女子の

ジェンダー差もあるしさ。」

 

そう話すのは耳郎さん。

 

「私もー!!透明なだけの私には

この世の終わりかと思ったよー!」

 

制服が喋っているように感じる葉隠さん。

 

「やはりヒーロー科だけありますわね!

初日からかなりハードでしたわ~。

まぁ本当に除籍はないと思ってましたけど。」

 

と私達は下駄箱で靴を履き替える。

 

そして、校門前に一台の車が見えた。

 

「それでは皆様今日はお迎えが来てますので、

ここで、また明日ですわ~。」

 

私がお辞儀をすると、

 

「やっぱお嬢様なんだねー!

また、明日ねー!」

 

皆、笑顔で手を振ってくれた。

 

そして駆け足で車まで向かう途中

 

緑谷さん、飯田さん、麗日さんの三人組を

追い越した。

 

笑顔で話してる三人をちらっと横目に見て、

軽い会釈をしながら、私は車に乗り込む。

 

「お帰りなさいませ。」

 

運転手に声をかけられながら、車は自宅へ向けて

走り出す。

 

 

 

 

“ああ…この時も、チャンスがあったんですのね”

 

 

この時の私は、夕飯でお父様とお母様に

話す事で頭がいっぱいでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第三話

ー八百万自宅ー

 

 

~夕食時~

 

 

「お父様、明日からは電車で学校に通いますわ。

私はヒーローを目指してますもの。

皆さんと同じように経験を積まなきゃですわ。」

 

私は次々と運ばれてくる料理を

ナイフとフォークを使いながら

ひたすら食べ続けながら、

目の前でコーヒーを飲みながら

パソコンを叩いている父に話しかけた。

 

「ああ、それはそうなんだが…。

百の身に何かあったらと思うと…。

個性による露出も激しいし。

百ももう15歳だから、分かっていると思うけど、

“男はオオカミ”なんだよ。」

 

 

パソコンの手をとめて考えるように、

眉を八の字にしながら私を見た。

 

 

「あらあなた、会話が噛み合ってませんわ。

そんなに大事になさりたいなら、ヒーロー科なんて

行かせなければ良かったじゃないですか。」

 

 

母はハーブティーを飲みながら、

呆れた顔をしつつ、父を指摘した。

 

 

「一生懸命努力している娘の邪魔はできないよ。

百は人の為になる仕事をしたいから

ヒーロー科を選んだんだしね。

それは親として誇らしい事だよ。

今まで我慢させてたからこれ以上

百を束縛して嫌われたくないし…。」

 

 

 

「お父様を嫌いになる事なんてあり得ませんわ。

いつも感謝しておりますのよ。

それに、私の服は個性で作れますので、

破けても大丈夫ですわー!」

 

 

「そういう問題でわないのよ。

もう子供じゃないんだから、個性の反動とはいえ

人前で肌を晒すのはいけないことよ。

百が自分を大事にしないから、

パパだって子離れできないんだから…。」

 

 

 

「そうだよ!百は可愛いんだから、

もっと自覚しないとね!

変な虫がつかないように気をつけないと…

やっぱり車での送迎だけでなく、

携帯に盗聴器をつけるとか…

いっそのこと制服にGPS埋め込むか…ブツブツ」

 

 

ブツブツと自分の世界に入ってしまった。

 

 

「はぁ…、また始まりましたわ…。

百の事になるとすぐこうなるんだから。

…少し妬いてしまいますわ。

電車で通学するのは構わないけど、

よく周りを観察なさい。

後、電車の中では一人ガードをつけるから、

それが条件よ。」

 

 

母は満面の笑みを浮かべながら

有無を言わさない迫力で私に言った。

 

 

「お母様の言う通りにしますわ。

それでは私は明日の予習を致しますので…

ご馳走様でした!」

 

 

母の迫力に圧倒されながら、

逃げるように自室に向かった。

 

予習も早々に、シャワーを浴びながら

今日の濃い1日を振り返っていた。

 

 

(結局、学校の事話せませんでしたわ。

それにしてもお母様とお父様は

幾つになっても仲良いですわね。

私に嫉妬するのはやめて頂きたいですが。

…私にもそのような心から愛せる殿方が

現れるのでしょうか?)

 

 

様々な気持ちを織り交ぜ、

明日からの学校生活へ

期待に胸を膨らませていた。

 

 

 

 

 

 

 



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第四話

当たり前の毎日っていつまで続くのでしょう?

 

何をしていけば当たり前の毎日は続きますか?

 

幸せとはどういう事を幸せと呼びますか?

 

他人を思いやりながら生きるにはどうしたら?

 

大人になるって1体どうすれば?

 

私だけがなれるヒーローってどういうものなの?

 

 

ー翌日ー

 

今日は最寄り駅まで車で送ってもらい、

初めての電車デビュー。

高鳴る鼓動を抑えながら、これから

切符を買う所です。

 

「見張って頂いても結構ですが、

他の方から悟られないようお願いいたします。」

 

外で付き人がいると目立ちすぎるので、

一人で券売機に向かう。

朝に金額を調べておいた為スムーズに

切符を買う事ができた。

 

(あまり切符を買う人が少ないんですのね。

あのピッってしてるのがmanacaかしら…。)

 

そんなこんなで電車がくるのを待っていると、

 

「八百万さん、おはよー。

今日は電車なんだね?一緒に行こー。」

 

「おはようございます、耳郎さん。

はい、一緒に行きましょう。」

 

そういいながら、少し前で改札を通り抜けた耳郎さんを

見ながら、続くように改札にタッチして自分も通り抜けた。

 

顔が綻ぶのを感じながら、タッチしたカードを何の気なしに見ていると

 

「八百万さん、ひょっとして電車乗るの初めて?」

 

といたずらっぽい笑みを浮かべながら上目遣いに見やる。

 

「えぇ、人質になったりしては周りのご迷惑になりますので、高校生になるまでは乗っては行けないと言われてまして…。お父様が厳格な方ですので。」

 

 

「へぇー、お嬢様はお嬢様で大変なんだね。まぁこれから電車で色んな所行けるならこれから一つずつ経験していけばいいんじゃない?私も一緒に遊びに行きたいし。」

 

そう言いながら耳をくるくる回してはにかむ耳郞さん。

 

「いいですわね!私まずはコンビニに行ってみたくて…。それからタピオカも飲んでみたいですわ!」

 

「ハハハッ、推薦だって聞いてたのに、私立中学は校則厳しいんだね!行きたい所は一つずつ行ってみよ。」

 

(この頃はこんな他愛もない毎日がずっと続いていくと私は思っていたんです…。)

 

 

それからあっという間に学校に着いてその日のヒーロー実習でのオールマイト先生の授業はペアでのヒーローとヴィランに分かれての本格的な実習。

 

最初の緑谷さん、麗さんペアと爆豪さんと飯田さんペアでの試合を見て、生半可な覚悟で授業に参加してはいけないと思いました。勝った筈のチームがボロボロで痛々しくて緑谷さんを直視できなかったです。

 

この方は何故そんなに自分を傷つけるのか?

どうして学校の授業に身体をそこまでボロボロにできるのか?

貴方の事を考えると理解できない事が多すぎて正直引いていた私がそこにはいました

 

 

 

 

 



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