超次元ゲイムネプテューヌ- ゲイムギョウ界に迷い込む戦士と七つの龍玉 - (GPSA(´・ω・`)FB)
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序章
プロローグ前半『事の始まり』


オリ主とドラゴンボールがゲイムギョウ界に迷い込む発端の話となっております。
原作キャラのネプテューヌ達の出番は次回からですm(_ _)m



既に日が暮れて暗闇と静寂に包まれた山道の途中、道に転がり落ちているオレンジ色の玉を拾う、門と龍の装飾が書かれた深緑色の服を着た青年と、青年の周囲で地面に転がる数人の男達の姿があった。

 

「まったく、ドラゴンボールが盗まれたと聞いて探し出したのは良かったが…暗闇に乗じて山中で散り散りに逃げるとはな。」

 

赤い小さな星が入った半透明の綺麗なオレンジ色の、七つの玉を拾い集め終えれば、倒れ伏せて伸びている男達を見ながら青年は悪態を吐く。

ドラゴンボール…それは、七つの玉を集めて合言葉を唱えれば、空が暗闇に覆われ玉が放つ光と共に神龍が現れ、どんな願いも叶えるという夢のような秘宝なのだ。

知っている者はそれ程多くはないが、強大な力を持つ存在の為に、願いの力を悪用しようと企む者達も多い。

現に、倒れ伏せている男達の目的もドラゴンボールの力で願い事を叶える事なのだ。

 

「うぐぐっ…と、登龍館の…化物め!」

 

倒れていた男達の一人が気が付いたのか、這いずるように匍匐しながら落ちている拳銃を拾えば、すぐさま青年に銃口を向けて引き金に指を掛ける。

だが、引き金を引いた瞬間、青年がまるで残像のようにブレたかと思うと、男の視界から一瞬にして消えていたのだ。

 

「へ?ぐへぇ!?」

 

ダァン!と激しく銃声が響き、銃弾が勢い良く放たれるものの、弾は既に青年が先程まで居た場所を虚しく通り抜けただけに終わった。

目の前で起きた状況に理解が追い付かず、ヘンテコな声を上げるが、額に何かが刺さったような激痛に意識を奪われ、再び地面に顔を伏せる羽目になった。

 

「観念するんだな。お前達の行った報いは、その命が尽き果てるまでしっかり償って貰おう。…とは言っても、気絶している以上は返答は聞けないか。」

 

何時の間にか男の前に現れた青年は、既に意識の無い男を見て呟くが、面倒そうな表情を浮かべながら帰路に着く事にした。

 

登龍館とは青年が住む大きな武道館であり、老舗の料理店でもある。

ドラゴンボールの神々しさとその願いの力の脅威性から、安易に人の手に渡らないよう登龍館に保管されていた。

しかし、年に1度に開催されるドラゴンボールを展示する日を狙って、客人を装った強盗集団によって盗まれてしまい、現在に至ったのである。

登龍館の門下生や料理人、そして恩師である先生も今頃は事件による騒ぎに対しての対応と収拾に追われているだろう。

 

「既に仕事を終わらせているとはいえ、早く戻らないと先生や皆に心配を掛けてしまうな。…可能な限りは急ぐか。」

 

片手で気の糸を手から放てば網のように器用に編み込んでいくと、拾い終えた七つのドラゴンボールを気の網で包み込んでいけば、それを片手で掴み持つ。

もう片手からも気の糸を放って倒れている男達に張り付かせれば、一箇所に集めるように引き寄せると、こちらは縄のように気の糸を太くしていけば、あっという間に男達を簀巻きの状態に巻き上げる。

巻き上げ終えた気の糸を手にすれば、身体中に気を纏い放つと、地面から離れるように身体が浮き上がっていき、森林から抜け出せるぐらいの高さまで到達すると、風を切るような音と共に高速で空を駆け抜けていく。

そして、そのまま速度を維持した状態で進みながら、更に高度を上げようとした。

 

「…ん?何だ、この感じは?」

 

何もない筈の空中で、近くから感じる異様な違和感に足を止めてしまった。

その直後、前方の空間が抉れるように湾曲していくと、夜空に彩られた夜の空の色とは別物の、黒く大きな穴が何の前触れもなく出現したのだ。

そして穴からは、周囲のあらゆるものを飲み込まんとする勢いで強力な引力が発生していた。

 

「なっ…ぐっ!?」

 

周囲の木や地面は勿論、空を舞空術で飛んでいた青年も例外ではなく、穴から発生した引力に吸い寄せられていた。

発生した引力に逆らうように、青年は緑色の気を纏い後方に下がろうとするも、その場所で辛うじて踏ん張るので精一杯だ。

因みに、強盗団達を捕らえていた気の糸はどうなったかと言うと…穴の出現時に真っ先に切り離している。

 

「くっ、これは…特異点、ブラックホールか!?」

 

突然起きた出来事に対して、ブラックホールが真っ先に思い浮かんだが、よりによってこんな上空で発生するものなのだろうかと思うも、何か現状を打開する案が無いか考える。

穴の大きさは時間が経つにつれて小さくなっているものの、引力は比例して強さを増していく分、青年は踏ん張り切れずに特異点に引っ張られているのだ。

 

「特異点が消えるまで耐えるしか…っ!?」

 

青年がより強い気を身体から放ち、出来る限り特異点が消えるまで堪えようと決めて行動に移した時だった。

小さくなっていく特異点の穴から、針のようなものが青年を目掛けて飛び出してきたのだ。

 

「ちっ!」

 

特異点の渦の中から飛び出してきた物体は槍のように尖っており、何で形成されているか分からないと考えれば、殆ど身動きが取れない状況とは言え、飛んできた物体を弾こうと体が反射的に動く。

気を纏った片手を銃を模すように構えれば、指先に集まった気が渦巻くように収束していくと弾丸ような形に形成される。そして、こちらに向かって来ている鋭利な物体に指を構えれば、気の弾丸を撃ち放った。

銃声のような音ともに指から放たれた気弾は、向かって来ている鋭利な物体に直撃するものの、当たりが悪かったのか破壊出来ずに逸れてしまう。

しかも、ドラゴンボールを包んでいた気の糸が、逸れて飛んで来た物体に掠り当たってしまい、引力によって千切れてしまった。

 

「ドラゴンボールが…ぐっ!?」

 

飛んできた針のような物体は気の糸によって軌道が逸れ、青年には当たらず地上へと落ちていく。

だが、肝心な7つのドラゴンボールは、穴から発生している引力で、あっという間に特異点の中へと飲み込まれてしまった。

しかも、青年自身もドラゴンボールに気を取られた事で僅かに力が緩み、更に強まった引力によって一気に穴に引き込まれてしまう。

体に掛かった負荷に反応するものの既に遅く、穴に身体が飲み込まれていく。

 

「しまっ……」

 

青年がドラゴンボールに気を取られた事と自身の不覚を後悔する間も無いほどの速さで、抵抗虚しく特異点の穴へと飲み込まれてしまう。

そして、7つの願い玉と青年を飲み込んだ特異点は、やがて急速に縮んで小さくなると、夜空に紛れるように消滅した。

 




やや強引な進め方な気がしますが、温かい目で見守ってくださいm(_ _)m


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プロローグ後半『友好条約と星降る夜』

超次元ゲイムネプテューヌ THE_ANIMATIONの1話目の友好条約と晩餐会の時間帯の話です。
主に原作主人公であるネプテューヌ達が中心となっています。
ドラゴンボールは最後にチョロっと出るだけです。
今回はオリキャラは出ません。
オリキャラを何処に向かわせるか悩みましたが、無難にプラネテューヌに向かわせる事にしました(・ω・)
オリ主のイメージからリーンボックスにしようと考えましたけどね(´・ω・`)
後、後書きの次回予告はドラゴンボール風な感じで書きたかっただけです…すみません\(^o^)/


–––––

 

ここは、超次元と呼ばれる世界に存在する【ゲイムギョウ界】

女神と呼ばれ、人に似た姿をして超越的な力を持つ者達によって、それぞれ四つの大陸が守護されている世界である。

四つの大陸の内の一つの大陸であるプラネテューヌで、ゲイムギョウ界全体を取り巻く大きな式典が開催されていた。

 

「ゲイムギョウ界に遍く生を受けしみなさん。新しい時代にその第一歩を踏み出せるこの日を…皆さんと共に迎えられる事を、喜びたいと思います。」

 

開いた胸元や背中、スリットされているスカート等から、やや大胆な印象を与える濃色系のドレスを着こなす女性…プラネテューヌを治める女神パープルハートが代表として司会を務めていた。

 

「ご承知の通り…近年、世界から争いの絶えることはありませんでした。」

 

式典会場の中央へと歩み寄りながらパープルハートは言葉を綴り続けていく。

ゲイムギョウ界に住む人々の信仰心によって生まれる力『シェアエナジー』を巡り、守護女神による戦争が絶えず行われ続けていた。

この式典は、長く続いた女神同士の戦争に終止符を付けるという重要さも示している。

 

「女神ブラックハートの治めるラステイション…」

 

パープルハートの言葉と共に、勝気な雰囲気を感じさせる、黒いドレスが似合う銀色の髪の女性が、羽織っていた上着を取り払いながら歩み出した。

それと同時に、ラステイションから参加している人々が立ち上がる。

 

「女神ホワイトハートの治めるルウィー…」

 

次に歩み出したのは白いドレスを着た、やや幼さが残る水色の髪の可憐な少女。

先程と同じく、ルウィーから参加している人々が同時に立ち上がる。

 

「女神グリーンハートの治めるリーンボックス…」

 

最後に歩み出したのは胸を強調させるような白のドレスに、大人びた雰囲気を漂わせる緑髪の女性。

同じく、参加しているリーンボックスの人々も同時に立ち上がった。

 

「そして私、女神パープルハートの治めるプラネテューヌ…」

 

パープルハートの言葉と共に、プラネテューヌから参加している人々が立ち上がる。

やがて、四人の女神が光る足場に着くと歩みを止める。

すると各女神達の足場がゆっくりと浮き上がっていく。

 

「四つの国が、国力の源であるシェアエナジーを競い、時には女神同士が戦って奪い合うことさえしてきた歴史は、過去のものとなります。本日結ばれる友好条約で、武力によるシェアの奪い合いは禁じられます。これからは、国をより良くすることでシェアエナジーを増加させ、世界全体の発展に繋げていくのです。」

 

足場が一定の高さまで到達すれば静かに止まり、中央に向かって四女神が集うように再び歩み寄っていく。

その光景は正に神々しいと言うべきであろう。

…最も、女神と言われる四人の姿は、正に人智を超えた神々しさと、並外れた美貌を兼ね揃えている事は言うまでも無いが。

そして、女神たちが中央に集まると、それぞれの手を合わせて円を作る。

 

「「「「私たちは、過去を乗り越え、希望溢れる世界を創ることをここに誓います」」」」

 

女神同士による戦争の終着を告げるように、四女神達の誓いの言葉が終わると、空を彩るように幾多もの花火が打ち上がっていく。

新たな時代への始まりを告げた式典は、未来への希望を喜ぶ人々の歓喜と拍手に包まれていった。

 

––––––––

 

ゲイムギョウ界史上最大とも言える式典が無事に終了したその夜、四女神達と親しい関係者達がプラネタワーのバルコニーに集っていた。

 

「ふぅっ…終わったね。」

 

用意された席に座りながら一息付いていたのはプラネテューヌの女神であるパープルハートだった。

夜の景色に彩られているプラネテューヌの街と夜空を眺めていたのである。

そして、パープルハートの身体が仄かに光り輝けば、少しすると先程までの美女とは打って変わった、紫髪の少女の姿になっていた。

 

「ひゃっほぅ!!ん〜っ、終わった終わったぁ!やっぱりこっちの姿の方がいいかな~私らしくて。」

 

先程までの大人びた面影も雰囲気も見事無くしている。

 

「全く、落差が激しいわねぇ…ネプテューヌは。」

 

パープルハート…もといネプテューヌの式典が終わった事にはしゃぐ、子供のようなその姿を見て呆れながらそう言ったのはブラックハートだった。

彼女も先程のネプテューヌと同じく光に包まれていくと、ツインテールが特徴的な女の子へと姿が変わった。

…とはいえ、1番変貌しているのはネプテューヌであるのは間違いないが。

 

「それより、どう?どうどう?どうだったノワール!私のスピーチは!」

 

「そ、そうね…まあ、悪くはなかったわよ。どうせ、イストワールが書いたと思うけど。」

 

ブラックハート…もといノワールと呼ばれる少女は褒め言葉と共に、やや皮肉まみれに感想を述べる。

その感想内容にネプテューヌが少しむくれたのは言うまでもない。

 

「けど…テメェだけ目立つ役だったのは納得行かねぇな。」

 

女神の口調とは思えない、やや荒々しさを感じる言葉を言い放ったのはホワイトハートだ。

彼女も光に包まれていけば、白色の帽子を被っている少女の姿へと変わっていた。

 

「ジャンケンで決めたのは後悔してる。」

 

「も〜っ!ブラン!それは言いっこ無しだってばぁ〜っ!!」

 

ホワイトハート…もといブランは女神の時とは対照的に、静かに不満をネプテューヌに話す。

そして、次々に不満を言われて困った表情を浮かべるネプテューヌ。

 

「…まあ、良いじゃありませんか。」

 

その光景を見かねて、助け船を出したのはグリーンハートだった。

グリーンハートも他のメンバーと同じように光に包まれていけば、金髪と緑の服を来た女性の姿になっていた。

 

「今更言っても大人気ないですし。」

 

「そうそう!ベールの言う通りだよ!それに…」

 

グリーンハートもとい…ベールの言葉に嬉しそうにするネプテューヌがカクテルグラスを手に取ると、それぞれノワール、ブラン、ベールの三人に渡していく。

 

「私達、もう敵じゃなくて仲間なんだから…ね?」

 

ネプテューヌの言葉に三人は静かに相槌をうてば、カクテルグラスを四人で乾杯するように静かに当て鳴らしていた。

 

「…ん?ねぇ、あれ流星じゃないかしら?」

 

「ほんとです〜!とっても綺麗な流星です。あっ、幾つも落ちて来てるです!」

 

その光景を見ていた内の、ネプテューヌの親友である2人の少女、アイエフとコンパが上空から煌めき落ちる流星に気が付いた。

やがて流星は8つになると、雲一つない星空を彩るように流れていく。

2人の言葉にその場にいる者が次々と空を見上げ、流れ落ちている流星に気付く。

 

「ホントだ!そうだ、願い事を唱えとかないと!」

 

アイエフとコンパの言葉に空を見上げて流星を見付けたネプテューヌは、願い事を唱えようとする。

 

「あれ?でもお姉ちゃん、一つだけ流星が消えたけど、何か変じゃない?」

 

ネプテューヌの妹であり、プラネテューヌの女神候補生のネプギアが流星を見て違和感を感じていた。

8つのうち1つの流星はあっという間に消えたが、残りの7つの流星はまだ空に流れ続けているのだ。

すると、7つの流星が強く光り輝いた途端に、空の彼方に散り散りに飛んで行ったのだ。

 

「わーっ!凄い!」

「あんな流星、見た事ない。(モジモジ)」

 

「いや、今のは確実に流星じゃない気がするんだけど…」

 

そして、ブランの双子の妹の、ルウィーの女神候補生であるロムとラムは空で散らばった流星の様子に驚いている。

明らかに不可思議な軌道で流れた流星にツッコミを入れたのは、ノワールの妹でありラステイションの女神候補生こユニだった。

 

「…特に何も起きないなら、大丈夫だと思うわ。」

 

「そうですわね、流れ星がノワールさんに落ちるって訳でもなさそうですし…。」

 

「ちょっと!それはないでしょ!?それに、どうして私が落ち担当みたいな扱いになってるのよ!?」

 

しかし、今までに多くの時間や異変を乗り越えてきた彼女達にとって、些細な出来事でしかないのだ。

 

「ほーら、喧嘩しちゃダメだってば!流れ星も良かったけど、せっかくのパーティなんだからいっぱい楽しもうよ!」

 

突如現れた謎の流星を気にする事無く、ネプテューヌ達は晩餐会を楽しむ事にした。

しかし、この出現した流星の存在が後に、ネプテューヌ達に大きく関与してくるとは、彼女達は知る由もなかった……

 

–––––




【次回予告】

特異点に飲み込まれた青年は意識を取り戻したが、目前に広がる景色は自分の知る世界のモノとはまるでかけ離れていた場所だった!
見覚えの無い景色を手探るように青年は行動を開始したが、突如現れた未知の生物達が青年を襲う!
果たして…青年の運命は如何に!?
そして、青年は無事に生き残る事は出来るのだろうか!?
次回!【謎の生物出現!?目覚めた場所は知らない世界!】


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第1話『謎の生物出現!?目覚めた場所は知らない世界!』

ようやくスタートラインに立てました。
オリ主の名前や技も此処からドンドンと出していきたいと思います(`・ω・´)
1話目の時間軸は、原作の超次元ゲイムネプテューヌTHE_ANIMATIONの1話目冒頭の式典が開催された翌日の時間帯です(・ω・)
オリ主の1ヶ月間の行動はどうしようかと考えましたが、別に飛ばしても良いかなぁ…と考えております(・ω・)

長過ぎたので1話とに分けました( ;´Д`)
まさか、初っ端からこんなに長くなるとは…
あらすじも辞めておこう…( ;´Д`)



–––––

 

「ぐっ…ううっ…。」

 

どれくらいの時間が経っただろう。

特異点に飲み込まれ、いつのまにか気を失っていた青年の目が覚めた。

身体中に走る痛みに表情を歪ませながら、ゆっくりと立ち上がる。

 

「此処は…いったい何処だ?」

 

やがて視界がハッキリとすれば周囲を見渡すも、辺りは一部分が隕石が落ちたようなクレーターと、それを囲むように生い茂る森林しか確認出来ない。

恐らく、相当な高さから落ちた事で出来てしまったのだろう。

ふと、服などはズタボロになっているだろうかと心配して上着やズボンを損傷が無いか確認したが、幸いにも服の何処にも問題が無い事に一旦安堵する。

青年自身も常人とは比べ物にならない程の頑丈な肉体をしているのだが、それを踏まえて考えても、特異点に飲み込まれて身体が残っていること事態が幸運だと青年は思った。

それも、運が良かったと割り切っている程に。

仮に運が無かったら、特異点に飲み込まれた時点で原型すら保てない位のミンチか、文字通りの塵屑になっていただろ。

しかし、気絶している間に出血もしていたのか、所々に血痕が滲むように付いていた。

着ている服に相当思い入れがあるのか、身体の痛みに耐えながら確認し終えた上着を着る。

 

「…ドラゴンボールは完全に見失ったか。クソッ…」

 

そして、次に思い返したのはドラゴンボールの事だった。

特異点に飲み込まれる寸前、不覚とはいえ手放してしまったドラゴンボールの事を真っ先に思い返して後悔する。

激しい憤りを滾らせながら、悔しさに拳を強く握り締めていた。

 

「やむ終えない…か。とにかく、まずはこの森を抜ける必要があるな。」

 

青年は気を取り直すように一息深呼吸をすれば、ゆっくりと歩き出す。

今、自分が置かれている状況や現在地の把握、そして、ドラゴンボールが見付かっていないという状態に陥っているという事実が重なっている為、こんな見慣れない場所でただ項垂れている訳にはいかないのだ。

舞空術を使おうかと考えるも、特異点の影響で受けたダメージが思った以上に身体に響いている事から、ある程度飛べるぐらいまで回復してから使う事にした。

 

–––––

 

「しかし、こうしてよく見ると、似たようで見た事ない場所だな此処は。北の街付近の仰天山の山道でも、南の街付近にある樹海の森林でもないみたいだが……」

 

気力と体力の回復を優先する為に暫く歩いていたが、周囲から感じる雰囲気や空気の違いに違和感を感じていた。

青年から出た地名は恐らく青年が元いた場所にある場所の事だろう。

森林にしては随分と太陽の光が射し込む、暖かで穏やかな景色を堪能するように歩いていく。

 

「ん?」

 

ふと、青年は何かを見付けたのか歩みを止めた。

地面を這うように動いてるように見える、犬のような耳と口に目が付いた、謎の青色の物体を。

 

「スラー!ヌラー!」

 

「!?」

 

そう、ゲイムギョウ界ではお馴染みのモンスター…スライヌである。

しかし、青年にとっては『犬の部品が付いたゼリーのような何か』にしか見えないのだ。

 

「な、何だ…これは?生き物…なのか?」

 

未知との遭遇に逢った青年にとっては、もはやスライヌが生物かどうか怪しいレベルである。

特異点の影響でおかしくなったのではないかと、青年は真っ先に自分自身を疑った。

普通に考えても生物としてあり得ないんじゃないかと考えたのだが、実際そこにゼリーのような何かが目の前いるのだ。オマケに、ゼリーの物体は声まで発している。

そんな事を考えている間にも、事態は更に悪い方向へと傾いていく。

 

「「「ヌラー!ヌラー!!」」」

「「「スラー!スラー!!」」」

 

「ふ、増えた!?」

 

1匹のスライヌの声に、何処となく他のスライヌ達が現れ、見る見るうちに数を増しているのだ。

所謂、モンスタービートで増殖したスライヌの群れに青年は遭遇していたという、ある意味最悪な状況だ。

そして、青年の周囲を取り囲うようにスライヌ達が集まって来ている。

確実に逃げられないように、ジワジワと青年に迫りつつあった。

予想外の状況の中で放心状態になっていた青年だが、ある事に気付いてすぐさま我に帰る。

 

「こいつら…俺を敵として見ているのか?」

 

ゼリーの物体…スライヌ達から僅かだか敵意を感じたのだ。

敵だと分かったのか、唖然としていた表情から鋭い目付きをした真剣な表情へと変われば、色々と突っ込みが追い付かない状況の中、現状を整理するべくゼリーの物体を確認する。

既に周囲は青いゼリーだらけで逃げ場を断たれ、今にも飛び掛かって来そうな状態だ。

しかし、それぞれ1個体からは大した力を感じない事から、単体での戦闘力は無く、群れて行動するタイプの物体だと判断する。

心配する必要がある事と言えば、ゼリーの飛沫で服が汚れる位だ。

ついでに、現在自分がどれだけ気を使って動けるのかも把握出来る機会と考えた。

舞空術や気功波による手数がある上、身体能力的にも簡単に殲滅可能だと判断すれば、青年はスライヌ達より先に動き出す。

 

「…仕掛けて来たのはそっちだ。悪く思うなよな?はぁっ!!」

 

満身創痍の状態から少しは回復したのか、練気と呼ばれる仄かな緑色に光る気を身体に纏うと、両手から気の玉を作り出す。大きさは野球ボール程のものだ。

そして、掌に溜めた気弾をスライヌの群れに向けて放った。

 

「ヌラッ……」

 

撃たれた気弾がスライヌ達に直撃すると、周辺を吹き飛ばす程の爆発が巻き起こった。

青年も周囲の環境を変えないように注意して手加減はしたが、爆発に巻き込まれた近くの樹木や地面が次々に抉れたり吹き飛んだりしていく。

 

「ヌラーーーッ!!?」

「スラーーーッ!!?」

 

気弾を放たれて混乱したのはスライヌ達の方だった。

手負いだから束になれば倒せると踏んでいたのだろう。既に後の祭り状態だ。

巻き起こる爆風に次々と吹き飛んでいくスライヌ達。

 

「はぁっ!!」

 

次々と爆風によって吹き飛ぶスライヌを逃がすつもりは無いのか、今度は指に気を集中させれば浮き上がっているスライヌ達に狙いを定め、気の指弾を次々に打ち込んでいく、その状況は正にクレー射撃の状態だ。

正確無比な軌道で飛んでいく指弾に撃ち抜かれたスライヌ達は次々と、光の粒子のようなモノに変質して消失していった。

 

「終わったか。さて……試してみるか。」

 

風を切り裂く気弾の音とスライヌ達の悲鳴が続いていたが、暫くするとスライヌの群れの殲滅を終えた青年が、周囲に敵はいないか確認していた。

周囲から敵意を感じなくなれば、一度深呼吸をしてから両腕を腰に添えるように構えを取っていく。

 

「はあああぁぁっ……!!!」

 

目が覚めた時よりマシになったとはいえ無茶は出来ない為、身体の具合を確かめる為、力を込めると身体中に纏っている緑色の気がより静かに、青年を中心により強く渦巻いていく。

やがて、纏う気の範囲が広がっていくと共に周囲は気による圧力で突風が発生し、森林が激しく騒めいていく。

 

「…これぐらい気を使っても問題無いなら、舞空術で空を飛んでも大丈夫そうだな。」

 

ある程度の気を身体に纏い込めば、身体中の感覚を感じ取りながら、飛んでも問題無いぐらい回復した事を確認する。

そして、地面を蹴り上げて跳躍すると、舞空術で空高く飛び上がる。

一定の高さに到達すれば気を維持しながら空中に停滞すると、周囲の景色を見渡す事にした。

 

「近くにある街は…あの首都みたいな場所だけか。しかし…あんな塔、何処かの国にあったか?」

 

見える範囲で特に目星をつけるような大きな街は、遠くからでも一目で分かるほど大きな都市一つだった。

特に、都市の中心部であろう巨大なタワーが建っている場所は、あの街の象徴的なものなのだろうと考える。

他は山や湖のある草原。そして、街と言うには少し小さな村や集落がいくつかあるぐらいだ。

 

「まずは情報をあの街で集めないとな。」

 

出来るだけ情報を集めようと目的地を決めた青年は、纏っている気をより強く放出しながら加速していくと、都市へ向かって空を駆け抜けて行った。

 

–––––

 

「ちょっと、アレを見て!誰か飛んでる!?」

「ひ、人が…怪我をしてる人が飛んでるぞ!?」

 

「…?随分と騒ぎになっているな。しかし、改めて近くで見てもかなり大きな都市だ。」

 

都市の中心付近に到着すれば、ゆっくりと高度を下げていく。

空を飛ぶ速度を落としているとはいえ、街を歩く人達にとっては驚くような光景だったのだろう。

飛んでいる青年を見かけた人達は皆して驚愕した表情で指を指したり携帯の撮影機能で撮ったりしている。

何せ、守護女神以外に飛ぶような人物は殆ど居ないと言った方が良いのだから。

 

「さてと…通りに人が多いが、地道に探すしかないな。」

 

見事注目を浴びているが、殆ど空を飛ぶ必要のある日常を過ごしていたのか、当の本人である青年は周囲の視線など気にする事なく着地すると、纏っていた気も弾けるような音と共に消える。

まずはこの街について詳しく聞ける場所でも探そうかと決めたのか、近くの人に話を聞こうと周囲を見渡す。

しかし、原因が当の本人である青年にあるとはいえ、騒ぎを聞き付け何事かと野次馬のように人が集まってくる。

やがて声を掛ける処でなくなってしまう程に人混みが多くなってしまう。

 

「ねぇねぇ!ちょっと!そこの飛んで来てた人!」

 

街についての情報は自力で探すしかないかと考えた所で、人混みの方から声が聞こえてきた。

 

聞こえてくる声の感じから子供のような少女の声だ。

 

「ねえってばー!聞こえてるー!?」

 

「…俺の事か?聞こえている。」

 

「そうそう!君の事だよ!そこでちょっと待っててね?」

 

気のせいかと思ったが再び声が聞こえてきた為、声がした方向へと顔を向けて答える。

人混みの中で紫色の物体…というより、白い十字の髪留めが二つ付いた紫色の髪が跳ねているようにしか見えないが、自分を呼び止めた人物がいる事か分かった青年は、その人物が人混みから出て来るまで待つ事にした。

 

「…ぷはーっ、やっと人混みから出でこれたよ。…って、ねぷぅっ!!?」

 

少しして人混みから抜け出してきたのは、ジャージとスカートを合体させたようなワンピースを着た、全体的に紫色が特徴的な少女だった。

しかし、少女が少し驚いたような声を上げれば、周囲の人達もより騒めき出している。

それも、悲鳴や心配するような声の方が多くなってきていた。

 

「ちょっと君!大丈夫なのそれ!?それに、足元も凄い事になってるよ!?」

 

「足元?」

 

紫色が特徴的な少女が慌てて青年に近付いていく。

青年は少女の様子と周囲の雰囲気の変化に気付いて不思議そうにしていたが、少女の言葉に視線を自分の足元へと移した。

青年の両腕から手に掛けて血が滴り落ちているのだ。

更に、着ている服やズボンは勿論、履いている靴から血が滲み出ており、青年の足元は血溜まりが出来ている。

最早、滲んでいるというよりは溢れていると言うべきだろうか。

 

「あぁ…なるほど、傷口が開いたか。自分で言うのはアレだが、酷いなこれは。」

 

「いやいやいや!?この状況で冷静に納得してる場合じゃないと思うよ!?」

 

「それもそうだな…だが、まだ自力で歩いても問題ない。とりあえず、治療が出来る場所に案内して欲しい。」

 

塞がっていた傷口から出血しているだろうと青年は考えたが、同時に不甲斐なさを感じていた。

先程まで身体中に纏っていた気を解いたとはいえ、飛んでいた時は違和感が無かったのだ。

街に来る前に可能な限りに開放した気の負担か、もしくは舞空術の負荷に体が耐えれていなかったのかと考える。

 

「ホントに大丈夫なの!?とりあえず、近くに教会があるから…」

 

「あっ、お姉ちゃん!探したよ!いーすんさんが探して…って、わああぁっ!!?だ、大丈夫ですか!?」

 

色々と考えたい事があるものの、怪我の事について少女に指摘されば返す言葉もないので、まずは治療を受ける事が出来る場所に向かおうと決めた。

少女が話し終える前にもう1人の女の子が場に割って入ってきた。

今度は高校生ぐらいの年齢だろうか…見るからに小さな少女を姉と言う紫髪の女の子だ。

青年の状態を見るなり少し固まったが、驚愕した表情を浮かべながら慌てて聞き訪ねてくる。

 

「いや、このぐらいなら問題はn「ネプギア!丁度良い所に!この人を教会まで連れて行くの手伝って!」

 

「う、うん!」

 

青年が問い返そうとするも見事に少女に遮られてしまう。

そして、大人しく従っていた方が良いなと判断した青年は、二人の少女に半ば付いて行くような形で後を追う事にした。

途中、身体を支える必要があるかと聞かれたが、明らかさま自分よりも小さな少女二人に血だらけの男に肩を貸させるのは申し訳ない気がして自力で歩くと言い張ったりしていた。

色んな意味で街中の注目を浴びた青年は、後により大きな注目を浴びる事になる…。

 

–––––




まさか1話2話に分けないといけない事態に陥るとは思いませんでした( ;´Д`)


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第2話『茫然自失!?見慣れない地の名はプラネテューヌ!』

あまりに長かった為、こちらを2話目にして分割しましたm(_ _)m
自分でも予想しなかったぐらい長くなりました…( ;´Д`)


–––––

 

教会と言われる大きな建物の中に案内されれば、広いエントランスホールを抜けて進んでいくと、本に乗っている小さな少女(?)と二人の少女がいる、応接室のような広い部屋に着いた。

 

「あら、帰って来たみたいねネプ子…って!?」

「わああぁっ!?そ、その人、どうしたんですか!?かなり血塗れですけど!?」

「お、大怪我をしてるです!?だ、大丈夫ですか!?」

「いーすん!コンパとアイちゃんも来てたんだ!丁度良かったよ!」

「事情はまだ、私もお姉ちゃんも分からないんですけど、とにかくこの人の治療を…」

 

そして、部屋に居た三人も青年を連れてきた二人の少女と似たような反応を見せながら、青年を置いて話が勝手に進んでいく。

少ししてから少女達の方で話が纏まれば、少年はそのまま少女達に客室のような部屋に連れて来られて治療を受ける事になった。

 

「まずはこれで体の血を拭いて頂戴。治療するにも血だらけじゃ困るわ。」

 

「後、一応着替えなんですけど、ズボンしかなくて…」

 

「いや、ズボンだけでもいい。わざわざ用意してもらってすまない。」

 

まずは身体の血を止血する必要がある為、服を脱いで濡れたタオルで拭くように指示を受ければ、数枚の濡れたタオルに急ごしらえで用意しただろう半ズボンを青年に渡す。

そして、少女達は治療の準備をしてくれる為に部屋を一度出て行った。

彼女達が部屋を出たのを確認してから上着を半袖を脱いでいけば、まずは前腕や上腕に何かで切ったような切り傷を幾つか確認すると、腹部や横腹にも切り傷が開いたような跡があり、血が出ている状況だった。

教会に来るまでに多少はマシになっているのだが、傷口を濡れたタオルで軽く拭いて血を拭き取っていけば、ズボンも脱いで太ももや足に付いている血も濡れたタオルで拭き取っていく。

それが終えると準備されたズボンを手に取ったのだが、ボクサーが履くような短パンのようなものだった為、やや不格好じゃないかと思ったものの、贅沢を言っていられる状況では無いため、大人しく着替える事にした。

 

「これを着るのか。あるだけ有難いんだ、仕方が無いか…うっ……」

 

悪態を付きながらズボンを着替え終えると、軽い眩暈と気だるさに襲われる。出血多量の負担が現れたのだろう。

精神的に大丈夫でも、肉体的に身体に過負荷が掛かっていた事に気付けなかった事に対してまだまだ駄目だなと考える。

 

「入るですよ?身体の方は大丈夫ですか?」

 

身体に付いていた血をタオルで拭き終えた頃に、先ほどコンパと呼ばれていた白のセーターを着た女の子が部屋に入ってきた。

消毒液にガーゼ、包帯に飲み薬のようなものを持って来ている。

 

「あぁ。心配かけたみたいで悪かったな。」

 

「気にしなくても大丈夫ですよ。これでも私、お医者さんをしてるです。なので、怪我の処置も任せて下さいですぅ。」

 

テーブルに持ってきた物を一先ず置けば、手慣れた様子で消毒液の付いたガーゼを手に取って使い、傷口に消毒液を丁寧に塗っていく。

出血の方は落ち着いてきたのか、止血剤を塗ってからは血も止まっていた。

流石に足の方は青年が遠慮したのか、自分で消毒液を塗って止血剤を使って包帯を手早く巻いていく。

すると、茶髪の髪に葉っぱのような髪留めをした少女アイエフと、紫色の少女の二人…ネプテューヌとネプギアが部屋に入ってきた。

 

「治療が終わったみたいだね。身体の方はもう大丈夫なのかしら?」

 

「止血剤も投与された。それに、包帯も巻いたから無理をしない限りは大丈夫だ。」

 

アイエフの言葉を聞けばコンパが止血剤を塗り終えた様子を見て、余程激しい動きをしない限りは傷口が開いたりしないだろうと話す。

その場にいた全員の表情が落ち着いた辺りで質問をしてきたのはネプテューヌだった。

 

「そういえば怪我の事で色々と聞きそびれちゃってたけど、君って何者なの?」

 

「俺か…そういえば、名前も何も言ってなかったな。俺はキールだ。色々と助かった。」

 

ネプテューヌの言葉を聞けば此処について何も分からない以上、自分の素性だけでも話す必要があるなと考えれば、キールは自分の名前を告げ、ネプテューヌ達に礼を言った。

 

「いやー、どういたしまして。私はネプテューヌ!こっちは私の妹のネプギアで、こっちはコンパにアイちゃんだよ!よろしくねキール!」

 

「俺の方こそよろしく頼む。」

 

天真爛漫な笑顔を浮かべるネプテューヌを見て話せば、ネプテューヌから名前を呼ばれたメンバーの方を見る。

 

「折角だし、色々と聞きたい事があるんだけど聞かせてもらえないかしら?」

 

「答えられる範囲でなら構わない。俺も、ネプテューヌ達に聞きたい事がある。」

 

次に話の話題を振ってきたのはアイエフだった。

街での騒動の件もあるだろう。

自己紹介を兼ねての話し合いへと路線が変われば、互いに質問を交わす会話が続いていった。

 

–––––

 

すでに夕暮れ時を過ぎた辺りを時計が指している時間帯…

 

「ゲイムギョウ界…プラネテューヌに守護女神…か。」

 

暫くして話し合いに一旦折り合いが付けば、上半身に包帯を巻かれているキールは気難しい表情を浮かべながら椅子へと座り込んでいた。

別の世界とはいえ神の存在を信じていなかったのか、キールにとって女神という存在自体に驚愕していた。

地球ではなく全く違う世界である事、守護女神という存在がこの世界を守っているという事、そしてシェアエナジーという人々の信仰心から生まれる力で女神達や大陸が保たれている事…

 

「気っていう生命エネルギーを使った力に、7つ集めたら願いが叶う不思議な玉ねぇ…」

 

「キールさん自身がサイヤ人という特殊な民族…そして、キールさんの世界には、女神がいないんですね。」

 

「俺個人としては、神みたいな存在がいるっていう事実に驚いている。」

 

先ほどの広い部屋に居た、本に乗っていた少女…イストワールも場に加わっている。

キールの元居た世界の事について話を聞けば、人が神という存在に頼らず自力で生きている世界があると言う事に驚いていた。

…最も、人類同士で争いを続けている事もある為、この世界の方がよっぽど平和だ。

ネプテューヌ達からすれば、サイヤ人という戦闘民族の存在や、気という生命エネルギーを使った力、7個集めれたらどんな願いも叶えられるドラゴンボールと言った、オカルト染みた物が存在しているという方が衝撃的だろう。

因みに血だらけになっていた服や靴は、現在洗濯されて干されているらしい。

キールの今の格好は全身に包帯を巻いて、短パンを履いているという何ともシュールな格好になっている。

 

「それにしても、大事に至らないくて良かったよ。まさか新作ゲームの予約の為に外に出かけてたのが功を成すなんて思わなかったけどね。」

 

「…ホント、そういう所の運は凄いわね。もっと女神らしい事をした方が良いと思うんだけど?」

 

ネプテューヌの誇らしげな様子に少しあきれた表情を浮かべながら話すアイエフ。

彼女の言葉で痛い所を突かれた表情になっているのは最早ご愛嬌だろう。

 

「でも、別の世界から迷い込んだって…キール君も大変な目にあったんですね。」

 

「…俺自身、まだ信じられないが、俺のいた地球じゃないって事だけは分かったんだ。それだけでもまだ良い方だ。」

 

気難しい表情のままいるキールを見て心配したコンパの言葉に、考え事の整理がついた様子で顔を上げるキール。

特異点は別の世界に通じている可能性も持つと、何処かで聞いたような事を実際に体験してしまったのだから…。

しかし、同時にこのゲイムギョウ界の世界ではキールの存在自体が異常…イレギュラー的存在だからだ。

元々存在しない人物であるため、自分の事を証明する物がなに一つもない。

 

「…出来れば身分証明を作れる所と、仕事が出来る場所を教えてほしい。ネプテューヌ達に迷惑を掛けたままじゃ駄目だしな。」

 

「それなら、暫くの間は教会に居候するという形で良いのではないですか?プラネテューヌの事も全然分からないでしょうし、ちゃんと身体も治さないといけませんからね。」

 

「良いのか?俺からすれば有難い話なんだが…」

 

イストワールからの提案に、キールは少し遠慮気味な表情を浮かべた。

怪我を治療してもらった上に居住食まで用意してもらえる事はキール本人にとっても有難い事なのだが、ネプテューヌ達にこれ以上の迷惑をの掛けるわけにはいかないと考える。

しかし、本人の意思とは関係なく部屋中に響き渡るような腹の音がキールから鳴り響いた。

 

「…すまん、俺だ。」

 

鳴り響いた音に気まずそうな表情を浮かべ、間髪入れずに謝るキール。

 

「おぉ、凄いお腹の虫の音!もしかして、ちゃんと食事は取ってなかったの?」

 

「あ…あぁ、状況的にも飯を食べれなかったからな。」

 

流石に腹の音は恥ずかしいのか、困った様子で軽く頭を指で掻いている。

 

「急ぎたい気持ちもあると思うですけど、今はゆっくり考えるのもいいと思うですよ?」

 

「…それもそうだな。分かった、暫くの間は居候させてもらうよ。」

 

「そうと決まれば夕食だね!いーすんの許可も降りたんだから。折角だしゆっくりしないと!」

 

ひとまず、これからの事をどうするか一通り纏まれば、夕食を一緒に食べようと誘われる。

ネプテューヌ達の親切さに少しお人好し過ぎないかと思いながらも、キールは微笑ましそうにしながら彼女達の後を付いて行くことにした。

暫くは落ち着いて物事を整理できる状況だという安堵と、今後どうなっていくかという少しの不安を胸に抱えて…

…因みに、怪我をしている為に料理の手伝いが出来なかったものの、食事を食べる量とペースに驚かれたそうな…。

 

––––––




次はオリ主…主人公の紹介となっておりますm(_ _)m


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キャラクター説明【主人公】

この物語内で登場するオリジナル主人公の説明になります。
物語が進むにつれて更新するかもです。


【名前】 キール

【年齢】 18歳

【種族】 サイヤ人

【性別】 男

【身長】 178cm

【体重】 84kg

【容姿】

ウルフカットの髪型をしており、髪の長さはミディアム程。

剣のように反り上がった鋭いアホ毛がある。

整った顔立ちをしており、黒色の瞳にやや鋭くキリッとした吊り目をしている。

体格は普通だが、鍛え上げているのか無駄なく引き締まった筋肉質になっている。

深緑色の半袖に黒色の長袖を着ており、長袖の背中部には龍と門の紋章が描かれている。

臀部から黒色の尻尾が生えており、普段は腰回りに巻いている。

金の線模様が描かれた黒色のズボンに深緑色の靴を履いている。

【情報】

元の世界で起きた事態により、何故か世界線を超えてゲイムギョウ界に迷い込んでしまったサイヤ人の青年。

ドラゴンボールがゲイムギョウ界に散らばってしまった事を知り、事態の収束と元の世界に帰る為の奮闘が始まる事になる。

ゲイムギョウ界には空から森の中に落下して迷い込んだ為、物語開始時は迷子になっている。

元の世界では料理店兼武道館の料理人兼武術師範という、少し変わった職業に属している。

第一人称は俺。第二人称は相手する人によって大きく変化する。

若くして地球の危機に直面するような戦闘を幾度も掻い潜ってきた為、年齢に反して戦闘経験は豊富。

戦闘能力的には技量特化の万能型で気術や体術に長けており、特に適応力・順応力においては天賦の才を持ち、学習能力が非常に高い。

敵や状況に応じて戦法を変え、臨機応変に挑む戦い方を好むが、敵を観察して最良の方法で戦うという戦法を基本的なスタンスとしている。

その為、完全に動きを把握した敵や、似たような技を使ってくる敵に対して非常に強い。

反面、初見の技や戦った事のない敵には辛い状況に立たされる事が多いが、実力差が離れている場合はこの限りではない。

武器は持たず素手での肉弾戦が主体だが、気の扱いに長けているため中距離からの気弾による攻撃や援護を得意としている。

基本的に様子見をしながら戦闘するタイプなのでサイヤ人としては珍しく積極的になる事は少ない。但し、戦いたくないという訳ではない。

普段は静かに立ち振る舞ったりトラブル事も判断の速さや手際の良さも相まって機械的に処理する為、第一印象や性格面では無愛想さや冷淡さが目立つが、根は優しく自分の信じる事を貫く頑固さと情に熱い熱血漢な一面を合わせ持つ。

尚、悪人に対しては無慈悲かつ一切の容赦や加減をしないという非常に危なっかしい所もある。

【変身可能形態】

超サイヤ人

超サイヤ人2

超サイヤ人3

???

???

???




物語で出て来るオリジナルの技の解説は、ストーリーが進むに連れて後々に更新して書いていきたいと思っています。
紹介文の所に書いても邪魔になると思った為別々に分けて書くことにしましたm(_ _)m


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使用技の説明

オリ主が作品内で使用する技の説明です。
気功波・舞空術・残像拳と言った原作ドラゴンボールのキャラが使う基本的な武術、気術を使用可能となっておりますm(_ _)m
更新は話が進むにつれて増やしていく予定ですm(_ _)m

【追記】
増やすと書いた割に設定していた技を全部書いてしまいました( ;´Д`)
今後のオリ主関係の更新は紹介のみになるかもです…多分m(_ _)m


【体術系】

『裂迅槍』

相手の懐に潜り込むと共に放つ片手突き。

震脚による前方への重力移動、キール特有の独特な体軸移動から発生する運動エネルギー、そこに更に全身から片腕へと練気を収束させる事で繰り出される。

動き自体はシンプルなのだが、相手の隙を的確に把握出来るキールならではの技で、非常に高い威力を持つ為に必殺技と言える代物になっている。

『屠龍昇脚』

低い体勢から上空に向かって飛び蹴りを放つ技。

主に反撃や自分の位置が対象より低い場所から放つ事から回避から繰り出したり対象が上空から向かってくる時に使用する。

『追襲投撃』

震脚に気功波を乗せ、浮き上がった対象をアッパーで殴り上げた後、回し蹴りから横蹴りで吹き飛ばす。

地上に叩き付けた対象への追い討ちが主になる。

『雷装脚』

練気を稲妻のように纏った脚で地上に向かって勢い良く落下しながら飛び蹴りを放つ技で、裂迅槍以上の威力を誇る。

【気弾系】

『裂指弾』

練り上げた気に途轍もない回転エネルギーを加えて放つ技。

弾速・連射性・貫通力に長けており、牽制や援護の時にも通常の気弾に織り交ぜて撃っている。

『撃指光裂弾』

数ある技の中でもキールの代名詞と言える程に主軸として使っている技。

練り上げた気の球を前方に撃ち、それに向けて指弾を撃ち込む事で圧倒的な弾幕を形成しながら強力な追尾性能を持たせ放つ連射系貫通弾。

溜めれば溜めるほど、威力・射程・弾数・貫通力が上昇していく。

技として撃ち出すには少し時間を必要とするが、その見返りに強力な貫通力と弾速、追尾性能を誇る。

技の特性上により連射は出来ないが、気の球をいくつか設置しておく事で、擬似的に連続して撃ち込む事も可能。

 

『撃指雷煌閃』

指先に溜め込んだ気を稲妻のように拡散させて撃ち込む技。

なお、他の気弾と違って射程限界に一瞬で届くのが特徴で威力も非常に高い。

広げたり絞ったりなど範囲の調整が可能。

但し、溜めれば溜めるほど威力や射程が広がる特性の為、咄嗟に撃ったり連射するには向いていない。

 

『撃指封縛陣』

周囲に気の糸を結界のように放ち張り巡らせる技。

溜める事で気の糸の強度が上がり、張り巡らせられる範囲も広がる。

補助的な使い方しか出来ないが、使用可能な用途は幅広い。

因みに、撃指光裂弾のように設置した気の球から放つ事も可能。

 

『撃指裂破衝』

散弾の要領で拳や掌から気を撃ち込み、内部から爆発させるという技

特性上から鎧通しと言われるほどの代物で、内部からの破壊に特化している。

威力は高いが射程はかなり短い為、主に肉弾戦や至近距離でのカウンターで用いる。

 

『撃指超絶弾』

全身から極限まで圧縮して練り溜めた気を一点集中して放つ技。

基本的に連続して放たれる事が多い。

身体にある全て気を使い切るまで、休み無くひたすらに放ち続ける諸刃の剣。

気を纏っている為に意外と攻撃を通さないが、同時に放つまで一切の身動きが取れなくなる。

体術を除けば、威力・破壊力・弾速共に、全てが最も高水準の性能を誇り、更に一点に集中して撃ち続けるという特徴を持っている。

代償も大きく、限界まで気を使い切ってしまった後は気絶して行動不能に陥る程の危険極まりない技。

溜めた気を解除する事で行動可能になり、体力や気の温存は可能な為、技を中断した場合の代償はこの限りではない。

『撃指輪廻陣』

限界まで圧縮し練り上げた気の球を自身の周囲で浮遊させて維持する技。

シューティングゲームでいうオプションのようなもの。

この気弾自体の威力も非常に高いのだが、最大の特徴はどんな状況でも扱いやすい圧倒的な汎用性。

主にキールの周囲で浮遊する為、防御や技の補助としても大きく働く。

【気功波系】

『塵衝波』

気力を溜め、突き出した両掌から高出力のエネルギー波を放つ技。

両手を腰に引いた鳥の嘴のような構えをするので、原作ドラゴンボールかめはめ波に似ているが、片手の手甲に掌を添えるように重ねて構えている。

『塵衝裂波』

塵衝波と同様に高出力のエネルギー波を放つ技なのだが、こちらは霧のように細かくした気を混ぜて放っている。

その為、威力は塵衝波より劣るが、拡散範囲が非常に広いのが特徴。

但し、拡散してしまう事が災いして放った後のエネルギーを操気術で操作出来ない。

『塵衝殲裂波』

塵衝波と塵衝裂波の良い所を合わせたような技で威力、拡散範囲もより広がっている。

塵衝裂波とは違い範囲を絞って威力と貫通力を底上げする事も出来る。

また、放った後のエネルギーを操気術で操作出来るようになった。

【特殊系】

『練気功』

元の世界にある気術の中でも奥義とされる技。

体内エネルギーである気を体内に溜め込みながらコントロールする事により、より純度の高い気を放出する事が出来る。

練気功で生み出された気は、通常の気とは比べられない程の威力を持ち、使用する用途も格段に広がる。

また、気力や体力をある程度まで回復する事も可能。

但し、治癒能力の即効性は低く、応急処置としての範囲でしか期待できない。

『青剛靭』

キールの世界にある武術の流派に伝わる極意であり、あまりの危険性に封印されていた秘術。

練気を爆発させるように体内で溜め込み、その上で気を練り込み制御するいう代物。

通常の練気は淡い緑色なのだが、この技を使うと文字通り鈍い深青色の気が激しく迸る。

成功するとありとあらゆる能力を2倍にまで引き上げる事が可能。

但し、負荷が大きい為に使い勝手が良くないのか、使用を控えている。

『蒼剛靭』

青剛靭の負荷を抑えて安定させる為にキールと恩師が試行錯誤を重ねた結果、新たに生み出された奥義。

激しく鈍かった青剛靭の練気とは打って変わり、落ち着いた蒼色の練気へと変化。

能力を最大5倍に引き上げる事が可能。

青剛靭と比べて負荷が少なくなっているが、長時間の使用には向いていない。

『碧剛靭』

キールが考案した青剛靭の完成形。

練気功を体内から体外へ放出、そこから体内へ取り込む繰り返しを絶えず行い蓄積させる事で、長期的に能力を底上げする代物。

この奥義を体得するには身体を極限まで鍛え込んだ上で、練気功を極める事が前提とされている。

体得すれば碧色の輝きを放つ静かな練気が自身を取り巻くように渦を発生させる。

あらゆる能力が現時点では最大30倍にまで引き上げられる上に、身体に掛かる負荷は殆ど無い。

但し、得られる恩恵に到達するまでに時間が掛かってしまう。

『極影身』

キール本人が発案した技で、自らの姿に変化させた練気を維持した状態で別々に行動する事が可能。

主に足止めや撤退時の囮、索敵時の偵察役、そして、登龍館での家事や料理を作る人数合わせの時にも活躍する。

本人そのままの分身体ではない為、戦闘能力が本体と比べて低くいものの、練気体の為か普通に体術や気術を使ってくる。

更に、別々に行動出来る事から、多忙を極める日常生活で重宝されている。

なお、キール本人か極身影が一定量のダメージを受けると影のように消失してしまう。




思いのほか、オリ主の技が多くなったような気がします(´・ω・`)
次は漸く第2話に入っていきます!原作アニメに沿って進みますが独自展開も少し入ると思います( ;´Д`)


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守護女神編
第3話『シェアエナジー枯渇!?問題解決のため別大陸へ!』


漸く1話目の冒頭から抜けた気がします( ;´Д`)
前置きとサブタイトルが長い気がしますが、どうかご了承して下さいませm(_ _)m
因みに、オリ主の1ヶ月間の行動は省きました(´ω`)
話の流れで経緯を説明すれば良いかなと思ったので_(:3」z)_


–––––

 

四女神による友好条約が結ばれ、そして、サイヤ人の青年キールがプラネテューヌの教会で居候する事になって、早くも1ヶ月が過ぎていた。

教会内では、食事の支度から洗濯やゴミ出しは勿論、施設内を所狭しとくまなく掃除したりして駆け回るキールの姿があった。

現在はネプテューヌが後回しに放置している書類の整理及び、送り宛の割り振りを行なっていた。

既に怪我は完治したのか、身体に巻いていた包帯やギブスは無くなっている。

 

「書類の振り分けはこれで良いとして、後はネプテューヌに確認させるか。…それにしても、この1ヶ月間は酷い目にあったな。」

 

教会で治療を受けた後日、キールは勧められた病院に向かったのだが、教会に帰る頃には身体の至る所に巻いていた包帯の上にギブスを付けるという事態に陥っていた。

帰って来たキールの様子と診断結果を見てひっくり返る勢いで仰天したイストワールに約3時間程の説教を受けた上で、絶対に安静にしておくようにと耳にタコが出来る程言われていた。

その為、こっそり修行するにしてもある意味目立つ格好だったために、すぐさまイストワールの耳に届いてしまい、説教を受けるという事が何度かあった為、怪我が完治するまでは修行は出来なかったのだ。

 

「腕が鈍ってなければ良いんだが…」

 

サイヤ人は死の淵から回復すると戦闘力が大きく上昇する…かつて、地球に襲来してきたサイヤ人に言われた言葉なのだが、一ヶ月もまともに鍛錬を積めていないのだ。

この一ヶ月間で出来た事と言えば、動かずとも出来る気のコントロールと瞑想だけだ。

 

「…教会で出来る事はもう無いな。それに暇だし、ギルドで何か依頼を受けにでも行くか。」

 

一応、2週間程経った頃にはある程度身体が回復していた為、過度の運動以外なら良いと許可を取った為、教会の雑務をこなしていたのだ。

ついでに地図を頼りにギルドに寄って登録していた為、これからは自分の足でも稼がないとなと考えれば、書類の最終確認を終えて執務室から出る。

 

「ネプテューヌさん!いつまでゲームをしているんですか!?最近、女神の仕事を全然していないじゃないですか!!」

「高速ジャーンプ!!あぁっ!?落ちた!?ムキーーーッ!!」

「ちゃんと聞いているんですか!?」

 

執務室から出ると、教会のリビングに位置する広い部屋で、イストワールがネプテューヌに怒っている声が響き渡ってきた。

キールが現れた前日に、このプラネテューヌで友好条約が結ばれて平和になったと言う事は聞いている。

その平和さに甘んじているのか、ネプテューヌはグータラと怠惰な生活を送っているのだ。

怒り心頭のイストワールに構わずゲームを続けているネプテューヌ。

その光景を遠くから見ていたキールは、また始まったなと呆れていた。

 

「んーっ…いわゆる一つの平和ボケ?これからは戦争とかする必要はないし…」

「平和だからこそ、女神にはちゃんとした色んな仕事があるんですよ!」

「お姉ちゃん、お茶が入ったよ。あっ、キールさんもどうですか?」

「!?お、おいネプギア…」

 

面倒そうな様子で対応するネプテューヌにより怒った様子で話し続けるイストワール。

そして、お盆を両手で持ってその場にタイミング悪く現れたネプギアは、気配を消してたキールにも声を掛ける。

こっそりとネプテューヌ達の様子を伺っていた為、ネプギアの存在に気付けていなかったのか、声を掛けられれば驚いた反応を見せるが、この後に起こる流れを察してしまったのか静かに頭を抱えていた。

 

「キールさん!ネプギアさん!お二人もネプテューヌさんにn」

「サンキュー、ネプギア!一緒に対戦プレイやろうよ!」

「うん!」

 

現れたネプギアとその場にこっそりといたキールに気付いたイストワールは、2人に何とか説得してもらおうとしたが、気にする事なくゲームを誘ってきたネプテューヌにあっさりと乗ったネプギアは、流されるままにネプテューヌの隣へと座る。

この状況でゲームの誘いに乗った辺り、ネプギアもネプテューヌに似てるなとつくづく思っていた。

 

「ね、ネプギアさんまで…いい加減にしてくださああぁいっ!!!」

「ねぷっ!!?それやっちゃダメって説明書に書いてあるのに!?」

 

ワナワナと震えていたイストワールだったが、堪忍袋の尾が切れた様子で怒り叫ぶと、ネプテューヌが使っているゲーム機のコンセントを勢い良く引き抜いた。

すると、引っ張った力が強過ぎたのか、コンセントの遠心力に振り回されていく。

ゲーム機のコンセントを引き抜かれたネプテューヌはその事をイストワールに注意するが、飛んで来たコンセントを見て隣にいたネプギアと共に慌てて回避する。

 

「わあああぁっ!!?…って、あ、あれ?」

「大丈夫か?イストワール。」

 

コンセントに振り回されて止まらなくなっていたイストワールだったが、緑色のオーラのようなエネルギーに包まれて無事に止まっていた。

下手をしたら物が壊れるか誰かが怪我をしていただろう…状況的にも危なくなった為、キールが操気術を用いて止めに入ってきたのだ。

イストワールに向けて翳している片手を降ろすと、イストワールとコンセントを包んでいた気が消える。

気が消えるとその場にフワフワと浮きながら謝るイストワール。

 

「す、すみません、キールさん…」

「気持ちは分かるが、不意とは言え流石に今のは危なかったな。まあ…これも全部、碌に仕事をしないネプテューヌのせいだが。」

「ねぷっ!?キールまでいーすんの味方を!?」

「あのな…事の原因はお前だぞネプテューヌ。それに、俺が率先して片付けているとはいえ、お前がしなきゃいけない仕事まで俺が終わらせているんだ。助けて貰った恩はあるが、仮にそれで目を瞑ったとしても堕落し過ぎだ。」

「うぐぐっ……」

 

落ち着いたのか、取り乱した事を謝るイストワールに対して、問題無い様子で話すキール。

ついでにゲームも止まっている為、イストワールの話を戻すように、ネプテューヌに指摘を始めていく。

しかし、ついでの割には容赦無く痛い所を突かれて苦い表情を浮かべるネプテューヌだが、反省するような素振りを見せない彼女の様子に呆れ返った表情を浮かべ、より一層畳み掛けるように指摘を続けていた。

 

–––––

 

その後、イストワールの説教交えた案内と共に、教会の中枢に位置する部屋へと入る。

部屋の中心に位置する場所に仄かに輝きを放つ結晶体…シェアクリスタルがある以外は特に何も無い場所だ。

シェアクリスタルとは国民達からの信仰心がエネルギーとなっている、女神達の力の源でもあるシェアエネルギーの集合体であり、この部屋にあるシェアクリスタルはプラネテューヌの中核を担っていると言っても過言ではないのだ。

 

「見てください!これを!!」

「「…?」」

「シェアクリスタルを見てください!!」

「あぁ、見るってそっちの事だったんだ…」

「むしろ、他に何処を見る必要があるんだ?」

 

ネプテューヌとネプギアはシェアクリスタルの前にいるイストワールの言葉に対して、最初は何を見れば良いのか分かっていなかったのか、シェアクリスタルを見ろと言う言葉に納得している2人に対して、部屋にシェアクリスタル以外何も無い事をキールはすぐさま突っ込みを入れていた。

 

「シェアクリスタルがどうかしたんですか?」

「クリスタルに集まる我が国のシェアエナジーが最近、下降傾向にあるんです!」

 

不思議そうにシェアクリスタルを見るネプギアの言葉に、イストワールは何処からともなく丸眼鏡を取り出して掛ければ、シェアエナジーの収集率をグラフに表した紙を取り出して説明を始める。

 

「まだ沢山あるんでしょ?心配する事なくない?」

「よくないです!シェアの源が何かはご存知でしょう!?」

「国民の皆さんの、女神と守護者の信じる心……ですよね?」

「その通り!この下降傾向はすなわち、国民の皆さんの心がネプテューヌさんから少しずつ離れているということなんですよ!」

 

信仰心の薄れ…この世界でのそれは、女神としての力だけでなく、同時に治安の悪化や生活環境の低下など…様々な影響として現れていくのだ。

現に、他の大陸の女神と比べて仕事をしていないネプテューヌのいるプラネテューヌでは、女神としての役目を努めていない為に、その傾向が僅かながらも現れていた。

 

「え~?私、別に嫌われるようなことした覚えないよ~?」

「お前…自分自身にも影響するかもしれない事態に陥ってるのに、能天気過ぎないか?」

 

シェアの恩恵を受けていないキールですらも、話の内容から女神であるネプテューヌ本人と、ネプテューヌの守護する国であるプラネテューヌ全体に危機が訪れている事は把握出来ている。

しかし、そんな周りの心配を他所に、危機感というものを全く感じさせないような素振りで話すネプテューヌだった。

 

「でも、好かれる様な事も、最近してないかも…」

「はぐっ…」

「個人的な意見だが、何もしてない事の方が酷いと思うがな。後、そんな反応をしてネプギアに揺さぶりを掛けて困らせるな。」

「ぐはっ!?2人して酷いよっ!」

 

すると、先程まで一緒にゲームをしようとしていたネプギアからの思いもよらない一言によって、ネプテューヌは何も言えなくなった。

そして、その姉の反応を見てどうしようか困っているネプギア。

想定外の奇襲を受けたネプテューヌに対し、逃げ道を塞ぐようにキールが間髪入れずに言い放つ。

 

「キールとネプギアの言う通りでしょ?ネプ子。」

 

そんなコントのような状況下の中、シェアクリスタルの部屋に入って来たのはアイエフとコンパの2人だった。

手には何か書かれた紙を持っている。

 

「すみません、イストワール様。話が聞こえたもので…」

 「いえ、アイエフさんとコンパさんなら別に構いませんよ。」 

「えーっ!?キールとネプギアに続いて、アイちゃんまでいーすんの味方するの!?…コンパは違うよね?」

 

自分の味方になってくれる人が居ない為、不貞腐れるような態度を取ってアイエフに対し文句を言ったネプテューヌは、助けてもらうような様子でコンパを見て話す。

しかし、コンパが手に持っていた紙の内容によって、ネプテューヌの立場はより悪い方に向かっていくのだった。

 

「…ねぷねぷ、これ見るです。」

「え?…女神…いらない…?」

「なぁ…っ!!?」

 

コンパから受け取った紙に書かれているものを見たネプテューヌの言葉に、小さな悲鳴を上げたイストワール。

ショックがあまりにも大きかったのか、本から落ちそうに成る程フラついていた。

イストワールが崩れ落ちるのも無理はない。

女神への信仰を主にしている世界である以上、ましては自分の所属している女神が守護している大陸で、女神を否定するような紙が配られている事態に陥っているのだから。

 

「こういう人達にねぷねぷの事を分かって貰う為にも…もっとお仕事頑張らないとです。」

 

この時のコンパからは、何時もの穏和な雰囲気は感じられなかった。

その表情は無表情と言っても差し支え無く、その上で静かなプレッシャーを纏っていた。

部屋の扉が閉まったのだろうか、部屋が暗くなる演出によって、よりコンパから放たれる威圧感を強く出している。

コンパの様子を静かに見ていたキールは、男は女には勝てないんだなとつくづく痛感するのであった。

キール本人も女子に対して連敗しているという苦渋を味わっている為、決して笑い事で済むような事でないのだ。

 

「ひうっ!?これぞ四面楚歌!?私、大ピンチ!?」

「ネプテューヌ…お前、この状況でよくそんな事を言えたな……」

 

完全に逃げ場の無くしたネプテューヌは事の重大さを理解していないのか、余計な一言を言ってしまう。

満場一致でこの国が危ない事を悟っているのに、肝心のネプテューヌの危機感の無い一言を聞いたキールは頭に片手を当てて呆れ返っていた。

 

「ピンチなのはこの国の方です!!」

 

案の定と言うべきなのか、ネプテューヌの言葉に口元をヒクつかせていたイストワールが、再び怒りと共に声を荒げて説教を始めていた。

よりヒートアップしていくイストワールとは対照的に、面倒そうな表情を浮かべて困っていたネプテューヌだったが、唐突に掌をポンと軽く叩きながら立ち上がった。

 

「そうだ!私、女神の心得を教わってくる!」

「「「「えっ?」」」」

「(既に女神の筈なのに、女神の心得を教わる必要が何処にあるんだろうか…)」

 

何か閃いた様子で、女神の心得を教えて貰いに行くと一声上げて言ったネプテューヌに、一瞬何を言っているのか理解が出来てなかったのか、キョトンとした表情で声を上げるメンバー。

キールだけは真っ先にその内容についてツッコミを入れたかったが、イストワールが説教を続けている途中だと言う事もあり、心の中でツッコミを入れていた。

 

「えっと、教わるって…誰にですか?」

「ノワール!」

「「「「…えぇっ!?」」」」

「ラステイションの…ノワール!」

 

困惑した様子でイストワールがネプテューヌに問い尋ねたら、ノワールと答えた為、ネプテューヌの言葉の意味が分かったメンバーは驚いた声を上げていた。知らない人物の名が出た為、誰の事か分かっていないただ1人を除いて…。

因みに意図的に言ったのが分かるぐらいに、当の本人であるネプテューヌはウインクをしていた。

 

–––––

 




主人公の戦闘能力はネプテューヌ達に合わせていこうかなと思っております。
その為、女神化したネプテューヌ達はかなり強い設定にしたいと思いますm(_ _)m
ストーリー自体はアニメともう一つぐらい要素を足しても良いかもと思ってます。
オリ主の帰還の為にも必要だと思いますので( ´Д`)
ちなみに、戦闘は次の話辺りになると思いますm(_ _)m

話は変わりますがドラゴンボール超の身勝手の極意の展開に燃えました!
最終回へのスパートで盛り上がっている為、次の話が待ち遠しいです(*´ω`*)


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第4話『重厚なる黒の大地!その名はラステイション!』

原作1話目はいつになったら終わるんだろうかと自分自身に突っ込みながら書いております(●´ω`●)
ネプテューヌ達の戦闘及びオリ主の本格的な戦闘は次の話になりますm(_ _)m
なんだか、無駄に話を引っ張っている気が…( ;´Д`)
次の話のオリ主は1話目の時と同様に、気弾をばら撒くだけの簡単なお仕事になるので…( ;´Д`)


–––––

 

此処は、ゲイムギョウ界最大の土地面積を誇る大陸ラステイション。

黒の女神が守護するこの大陸は主に重工業が盛んで、近未来的な影響が強いプラネテューヌとは対照的な、現代的な影響を強く受けている。

大陸の広さも相まって、最も人が住んでいる大陸だと言っても過言では無いだろう。

 

 

…所変わって、現在ネプテューヌ達がいるのは、ラステイションの教会の最上階。

 

「…キールだ。色々事情が重なって、プラネテューヌ教会で世話になっている者だ。今日はネプテューヌの監視役として来た。よろしく頼む、ラステイションの女神さん。」

「ノワールで良いわ。よろしくね、キール。…所で、一つ良いかしら?」

「…言いたい事は分かるが、何だ?」

 

そこから見える景色や街並みを背に、自己紹介をしているキールとノワールの姿があった。

しかし、2人の表情はあまり良くない。

ノワールは呆れと不機嫌を思わせるような表情をしており、キールは気難しそうな表情を浮かべ、困った様子で両腕を組みながら目をつぶっている。

 

「よく分からないけど…どうしてお隣の国の女神がうちの所で寝てるのかしら!?」

「…それに関しては本当に申し訳ない。」

「んん…ふあぁーっ…構わず仕事しててノワール。私は気にしないからー…」

「私が気にするわよ!」

 

それもそのはず。

ラステイションに行くと言い出した肝心のネプテューヌは、屋上に設置されているデッキチェアで横になって寝ているのだ。それも抱き枕を抱きしめた状態で。

そして、その様子に怒っているノワールに対してキールが謝罪しているという、謎の状態に陥っていた。

元々はアイエフとコンパ、そしてネプギアの三人が監視役として来る予定だったが、ラステイションがどのような大陸か興味があった事と、別の大陸について把握しておきたかった事もあるため、キールも彼女達に付いて来たのだ。

 

「…後でイストワールに報告するにして、ネプテューヌは女神の心得を教えて貰いに来た筈だろ?」

「ごめんなさいノワールさん。ほら、お姉ちゃんも起きてよ?」

 

やはりこうなったかと予想が付いていた様子でキールが呆れていれば、続いてノワールに謝ったのはネプギアだった。

そして、横になっているネプテューヌを起こそうと近寄って触れれば、姉の体を軽く揺さ振っていく。

 

「悪いけどお断りよ。私、敵に塩を送るつもりは無いから。」

「えーっ?友好条約を結んだんだし、もう敵っていうのはないんじゃない?」

「シェアを奪い合う事には変わりは無いんだし、敵よ。」

 

しかし、頼みを聞く前にノワールに断られてしまう。

その一言にやや不満げに反論するネプテューヌだが、ノワールは更にキッパリ切り捨てるように言い放つ。

 

「もーっ!そんな可愛くない事を言ってるから、友達いない〜…なんて言われるんだよ?」

「なっ!?」

 

不貞腐れながらデッキチェアで寝返りをうっているネプテューヌの一言にで動揺するノワール。

その反応は周囲にいるメンバーが見ても分かる程の動揺っぷりだ。

ネプテューヌの何気無い一言が彼女の心を抉ったようだ。

 

「と、友達ならいるわよ!!」

「えぇっ?誰?それって、何処の何さん?」

「そ、それは…ええっと…ううっ……」

 

すかさず反論するようにノワールが強がった様子で話すも、それが嘘だと分かっている様子でデッキチェアから起きたネプテューヌがノワールに詰め寄っていく。

対してノワールは口籠ったまま何も言い返せなくなり、次第に追い詰められていた。

 

「ふんっ!」

「あいたああぁっ!!?いった〜いっ!!酷いよキール!いきなり何するのさ!?」

 

調子付いていたネプテューヌだったが、スパーンッと鋭く響き渡るような音と共に何かで叩かれたような痛みを感じれば、悲鳴を上げながら両手で頭を押さえていた。

ヒリヒリと痛む頭を手で摩りながらネプテューヌが後ろを振り向けば、頭身程あるようなハリセンをキールが手に持って佇んでいた。

 

「調子に乗り過ぎだネプテューヌ。ノワールの人間関係がどうなってるかは知らないが、お前も人の事を言える立場じゃ無いだろ?」

「むーっ、良いじゃーん別にっ!」

「此処に来ている理由上良くないから言ってるんだが…」

 

頭をハリセンで叩かれ、むくれた表情を浮かべながら不貞腐れた様子になっているネプテューヌ。

本来の目的は何処に言ったのだろうかと溜息を吐きながら、手に持っているハリセンを搔き消すキール。どうやら気をハリセンのように維持させていたようだ。

 

「お姉ちゃん、この書類終わったよ。」

「あっ…お疲れ様ユニ。それはそこに置いといて。」

 

キールが話の流れをいったん切った事で内心助かったと安堵するノワール。

すると、教会内のエレベーターの扉が開いた音と共に、書類の束を両手に抱えたユニが現れた。

 

「あ、あのね、お姉ちゃん。私、今回早かったでしょ?私、凄く頑張って…」

「そうね、普通ぐらいにはなったわね。」

「あぁ!もしかして友達ってユニちゃんの事?妹は友達って言わないんじゃないかなー?」

「ち、違うわよ!ちゃんと他に居るわよ!!」

 

ユニがノワールに仕事を頑張った事を話すも、ノワールはその事を軽くあしらうように一言だけ告げれば、直後にからかうようなネプテューヌに反論を始める。

 

「っ……」

 

ノワールに相手にされないユニは一瞬悲しそうな表情を浮かべるものの、そのまま書類の山を置けば静かにエレベーターに乗っていく。

 

「あっ!ユニちゃん待って!!」

「(…このままだとラチがあかないな。…そういえば、ユニって呼ばれてたあの子に話を聞くか。それに、放って置くわけにもいかないし…)」

 

エレベーターで降りていくユニに気付いたネプギアが、慌てて彼女を追い掛けるようにエレベーターへと向かって行った。

 

「アイエフ、コンパ。悪いがネプテューヌの事を…」

「ユニの事を気遣ってるのね、分かったわ。此処は私達に任せておいて。」

「…悪いな。」

 

妹達や本来の目的をそっちのけで話が盛り上がっているネプテューヌ達の様子を見かねたキールは、先程この場から立ち去ったユニとネプギアの様子が気になったのか、アイエフとコンパに一言頼んでから、静かにその場から離れてネプギア達の後を追う事にした。

 

–––––

 

「はぁっ…どうすれば、お姉ちゃんに認めてもらえるのかな…」

 

ラステイションの教会から少し離れた庭園にある湖の近くに設置されている長椅子に落ち込んだ様子で座っているユニ。

 

「ユニちゃん!」

「!ネプギア…」

 

すると、聞き慣れた声で呼ばれた為、声のした方を向くと少し息を切らして呼吸を整えているネプギアの姿があった。

 

「ごめんね、お姉ちゃんが話の邪魔をしちゃって…」

「ううん、良いの。私とお姉ちゃんは何時もあんな感じだから。…お姉ちゃんより上手くいかないと褒めてくれない…そんなの、無理に決まってるのに…女神化だって、出来ないのに…」

「ユニちゃん…女神に変身できないのは、私も…ロムちゃんもラムちゃんもだから……」

 

ネプギアはそのままユニの隣にそっと座ると、タイミングが悪かったとはいえ、水を差すような流れでユニとノワールの会話を邪魔した事を謝る。

しかし、日頃からノワールの反応が素っ気ないものな為、自分の実力に自信がなくなってきたのか、自分の実力の無さに対しての虚しさと悔しさを感じており、暗い表情を浮かべて下を向いたまま湖を見つめながらユニは話し続ける。

ネプギアも女神候補生と言われるがいえに、まだ変身できていない事を少しもどかしそうにしながら話す。

 

 

「…そうね。まぁ、その中でも1番に変身できるのはアタシだけどね!」

「ふふっ、うん!私だって、負けないんだから!」

 

ネプギアの話に気持ちが落ち着いてきたのか、フッと笑みを浮かべながら、最初に女神化すると自信有り気に話すユニ。

そして、その様子に安堵しながら負けないように自分も頑張ると嬉しそうに話すネプギアだった。

 

「此処に居たか。」

「えっ…!?」

「き、キールさん!?もしかして、空を飛んで来たんですか!?」

「まあな。歩いて探すのも時間が掛かると判断しただけだ。それよりも…」

 

聞き覚えのない声が聞こえれば、ユニは声顔を見上げて声の人物を探ろうとしたが、空からゆっくりと降りてきたキールの姿にキョトンとした表情を浮かべてしまう。

そして、キールに気付いたネプギアも飛んでいる事に気付いて声を掛けると此処に来た事について話すも、落ち着いたユニの様子を見て杞憂だった事を確かめると、そのまま二人の前へと着地する。

 

「だ…誰?…っていうか貴方、さっきお姉ちゃん達と居た…」

「キールだ。気になって様子を見に来たが、その心配は必要無かったようだな。」

「よ、よろしく…って、そうじゃなくて!何で何もないのに空を飛べてるのよ!?」

「それ、私もずっと聞こうと思ってたんですけど、キールさんって、どうやって空を飛んでるんですか?」

 

女神でもない人物が何もなしに飛んでいるのはユニも驚いたのか、平然と空を飛んで降りてきた様子のキールに突っ込みを入れる。ネプギアも気になっていたようだ。

空を飛んでいた事に付いて突っ込みを入れられたキールは、特に気にした事は無かったのか、少し不思議そうな表情を浮かべてからやや大雑把に説明を始めていく。

 

「そうだな…気と呼んでいる生命エネルギーを使って飛んでいるに過ぎないんだが?」

「気…ですか?プラネテューヌ教会で何度か使っていた、緑の光のようなものですか?」

「…何だか、急に胡散臭く感じるんだけど?」

 

ネプギアの場合は何度か見ていたはずなのだが、飛ぶ力として使われていないと思っていたのか、二人の言葉と全く理解が出来ていない表情を見て、キールはこの世界に気の概念が存在していない事を思い出せば、説明が少し面倒になるなと思いながらも内容をかみ砕くように話し始めていく。

 

「あぁ…なるほどな。そういえば、この世界だと気っていう概念はないんだったな。この世界で分かりやすく言えばシェアエネルギーか。性質自体はシェアエネルギーに似て非な物なんだが。」

「全く分からないんだけど…その、生命エネルギーで飛んでるって言ってたけど、それって大丈夫なの?」

「まあ、普通はそう思うのが道理だな。俺も飛ぶのはコツを掴んで慣れたと言うしか無いんだが…一番良いのは実際に気というものがどうものか見て触れる事だな。」

 

全く信用していない様子の二人を見れば、片手を開いて意識を少し集中させると、気のバレーボール位の球が何処からともなく現れる。

まるでシェアエネルギーのように仄かに光を放つ球体に恐る恐る触れる二人。

しかし、予想していたものとは違ったのか、気に触れた二人は驚いたような表情を浮かべていた。

 

「じゃ、じゃあちょっとだけ……っ!?」

「な、なにこれ?とっても温かい…これが気っていうものなの?」

「そうだ。暖かいのは生きている証拠だ。生命エネルギーを形として出しているんだからな。」

 

驚いている二人の様子を見ながら話すも、何処からか音楽が鳴り響いく。

すると、ネプギアがベルトポーチから通信機能から様々な機能を備えた端末『Nギア』を取り出した。

 

「あっ、メール…お姉ちゃんからだ。えっと…皆でクエストに行く事になったから教会に戻ってきて…って連絡が…」

「向こうでも話が纏まったみたいだな。待たせるのも悪いし行くとするか。」

 

ネプテューヌからの連絡を聞いた三人は、まずは合流する為に再びラステイションの教会へと向かって行った。

因みに、ラステイションの教会へ戻った後、キールが教会内の窓から外に飛び降り、そのまま空へと飛んで行った姿を目撃したという話を教会職員から耳にしたノワールから質問攻めを受ける事になってしまった。

 

–––––




かなり速足で駆け抜けている気がしますが、やっと1話目中盤付近まで到達しました( ;´Д`)
次は、ナスーネ高原のスライヌ戦、及びトゥルーネ洞窟のドラゴン戦になりますm(_ _)m


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第5話『変化し過ぎ!?黒と紫の女神とモンスター退治‼』

漸く本編の中盤に差し掛かりましたm(_ _)m
戦闘描写多めです‼
前回、主役は戦わないと言っていたな…話が長くなりそうなのでやっぱり次に回しますm(_ _)m
…という訳で、オリ主の戦闘は次回に持ち越しです。orz
少しオリジナル展開で戦闘に入ると思います(●´ω`●)


–––––

 

 

「今回のモンスター討伐依頼は2つよ。ナスーネ高原とその近くにあるトゥルーネ洞窟。難易度はそれ程…」

「お姉ちゃん…キール以外誰も聞いてない。」

「…えぇ!?」

「後続が付いて来れてないぞ。一人は除くが…」

 

ラステイションとプラネテューヌの境目である、国境付近の森林を歩くネプテューヌ一行。

先頭を率先して歩きながら受けた依頼の内容を淡々と話しているのはノワールだったが、ユニの言葉に足を止めて振り返る。

実際に、ノワールの後ろをちゃんと付いて歩いて来ているのはユニとキールの2人だけ。

 

「疲れたです~っ…」

「コンパ、大丈夫?」

「おぉっ!!これは後ろから見たら読めない看板だよ!」

「…お姉ちゃん、看板ってそういうものだよ?」

 

後続の状況はどうなっているかというと、倒れ木に座り込むコンパとその様子に心配しているアイエフ。

そして、特に何の変哲もない看板を見てはしゃいでいるネプテューヌとそれに対して和らげに突っ込みを入れているネプギア。

コンパは他のメンバーと違い、看護師な為に長距離の移動は慣れていないのは理解できるものの、ネプテューヌは完全にピクニック気分で行動している。

 

「…ちょっと!!」

 

マイペースな後続のメンバー…特にネプテューヌに対して怒っているノワールが彼女の元へ行くと説教のように話しだしていく。

 

「…少し休憩する必要があるな。ペースの方も、もう少し落とした方が良いか。」

 

そんな状況になってしまった為、全員の体力を配慮して一旦休憩を入れる事にした。

 

「ひうっ!」

「こらっ、ペース落ちてるわよ。」

「もーっ、ノワールったら真面目だなー。何時もそんな真面目だと疲れちゃわない?」

 

暫くしてから再び目的地を目指して歩き出すものの、キールが先頭に立って歩いていた。

先程ノワールが歩いていたペースより少し速度は落としてある。

最後列の方はというと、ノワールが拾った小枝で歩くペースが遅いネプテューヌを突いているという、何ともシュールな様子で歩いていた。

 

「疲れなんかなんて事ないわ。それに私は、もっといい国を作っていきたいの。」

「私だってもっといい国を作りたいけど、楽しい方が良いなぁー…」

「貴方は楽しみ過ぎなの!!」

 

しかも、何やら言い合いになっているようだ。

聞こえてくる話の内容は、どうやらこれからの国の在り方についてのようだ。

 

「ホントに大丈夫なのか?ノワールはまだしも、ネプテューヌの方は心配になるな…」

「だ、大丈夫だよキールさん。お姉ちゃんもやる時はやるんだから。」

「この1か月でその姿を拝んだ事は無いんだが…ん?」

 

国の象徴であろう二人の様子を横目に、少し心配気味な表情を浮かべて呆れながら歩いて呟くキール。

姉を気遣ってフォローするネプギアだったが、1ヶ月間のグータラっぷりしか見ていないキールの一言を受け、困った表情を浮かべて何も言い返せなくなっていた。

 

「キャ~ッ!女神様よ!!」

「ブラックハート様だわ!!」

「いらっしゃったわ!ブラックハート様!!」

 

前方から歓声が聞こえてきたかと思うと、後方にいたノワールが走って再び最前列へと飛び出していた。

森を抜けた先には村があり、そこで住んでいるだろう人達が女神を一目見ようと集まっていたのだ。

 

「…はっ!いけない!アクセスッ!!」

 

現れたノワールを見るなり、村の人達が次々に集まり手を振っている。そして、より歓声が大きくなっていく。

しかし、突然ノワールが我に返ったような反応を見せると、いきなり彼女の身体が光に包まれていったのだ。

女神の変身自体見た事のなかったキールは、ノワールから放たれた光に目くらましにあったような状態になっていた。

言うまでもなく慣れていないのと、最前列だった為にノワールに1番近かったという事もあるのだが。

 

「えぇっ!?変身今やっちゃう!?」

「うぅっ、目が……ん?…誰だ?」

 

変身をしたノワールに対して驚くネプテューヌ。

そして、変身時の光で何も見えなくなって目をつぶっていたキールだったが、目を開けた直後に視界内の人物の姿に見覚えが無いため、不思議そうにしていた。

現在のノワールは、水色の結晶体のような羽のようなものを付け、黒いレオタードを着こなしている銀髪の女性…ブラックハートへと姿が変わっていたのだから。

 

「女神の心得その2…国民には威厳を感じさせる事よ。皆さん、モンスターについて詳しく聞かせてくれないかしら?」

「…目の前で変身しても、威厳とか無くね?」

 

変身前よりも堂々とした態度でネプテューヌへと一言言ったブラックハートは村人達の元へと向かい、事情を聴くのであった。

そして、村人達の前で変身したノワールの様子にさり気なく突っ込みを入れるネプテューヌ。

 

「…なあ、あれは誰なんだ?誰か教えてくれ。」

「そういえば、キールさんは女神化を見るのは初めてだったね。」

 

先に行ったブラックハートを追い掛けるようにネプテューヌ達は後を追う事にした。

因みにその後、ネプギアとユニの説明によりブラックハートがノワールという事を知ったキールは、シェアという力はある意味気やドラゴンボールよりも凄いんじゃないのだろうかと内心思ったそうな。

 

 

–––––

 

 

「此処がナスーネ高原ね。」

「はい、スライヌが大量発生しているので困っているんです。」

 

村人達の案内でナスーネ高原に着いたネプテューヌ達。

しかし、高原には至る所にスライヌが徘徊しているという、大規模なモンスタービート状態になっていたのだった。

 

「この世界に来た以来だな、あいつらを見るのは。しかし……」

 

ブラックハートや群がっている村人達に遠慮したのか、少し離れた場所でスライヌ達を見ているキールは、何体程いるのか把握する為、気を集中させて気配を感じ取っていく。

ゲイムギョウ界に迷い込んで以来のスライヌの姿を久しぶりに見たキールだったが、前に対処した事もあるために特に気にしたようなそぶりも見せずにいた。

むしろ、今のキールが気になっていたのは、女神化しているノワール…もとい、ブラックハートの方だった。

 

「(やはり気は感じられない…どうなっているんだ?それとも、感じ取れないだけで、女神と言われる特有の力を持っているのだろうか…)」

 

探知能力でも高い性能を誇るのが気の便利な特性なのだが、その気を持ってしてもノワールの時に感じた気を、ブラックハートからは一切感じ取れなかったのだ。

つまり、女神化したネプテューヌ達に対して、気による感知は無意味になるなと判断すれば、気を取り直してスライヌの規模の把握に集中していく。

 

「ご安心を。今回の討伐には、お隣の国のネプテューヌさんとネプギアさんが対処してくれるらしいですから。」

「ねぷっ!?いきなり振られた!?」

 

そして、キールの事は構わずにいるブラックハートによって話が勝手に進んでいた。

勿論、討伐をブラックハートから指示されたネプテューヌはやや面倒そうな表情を浮かべていた。

更にはユニがネプギアからNギアを受け取って撮影を開始している状態だ。

 

「女神の心得その3、活躍をアピールすべし…よ。」

「むーっ、面倒だな…でも、スライヌだったらひのきの棒でも倒せるしね…やっちゃおうか!ネプギア!」

「うん!行こう、お姉ちゃん!」

 

しょうがないなと言わんばかりの表情を浮かべていたネプテューヌだったが、軽く柔軟をしてから軽い身のこなしで移動すれば、両手を前にかざして武器を取り出した。

形状は片刃の刀をしており、ネプテューヌ程の刀身のある代物だ。

続いてネプギアも手をかざして武器を取り出す。

こちらは片手で扱えるような光の刀身が特徴的な剣だ。

 

「せやああぁっ!!」

「はああぁっ!!」

 

2人がそれぞれ武器を手に取れば先陣を切るように高原へと向かえば、迫ってきたスライヌ達を斬り払うように一線を放つ。

2人の放った斬撃は群がっていたスライヌ達を次々に薙ぎ払っていく。

切られていくスライヌ達は光になって消失していくものの、他の群れがネプテューヌ達に気付いたのか、次第に数が増えていくのであった。

 

「ねぷねぷ、お手伝いするです〜!」

「ネプ子!油断しないようにね!!」

 

囲まれそうになったネプテューヌとネプギアを援護したのは、アイエフとコンパだった。

アイエフは暗器の短剣を投げ放ち、コンパは何処から取り出したんだと言わんばかりの巨大な注射器を使ってスライヌを攻撃していく。

 

「始まったみたいだな。だが、無闇にあんな所に飛び出して大丈夫なのか…どの道、あれじゃ袋小路だが…」

 

ネプテューヌやネプギアがスライヌ討伐を始めている事に気付いたキールは、ネプテューヌ達の実力を確かめたいのか、大人しくその様子を腕を組みながら見守っていた。

しかし、勢い良く飛び出したネプテューヌ達が戦っている様子を見てすぐに不安を感じる事になる。

スライヌ達が接近して攻撃するしか手段が無いとはいえ、ナスーネ高原は遮蔽物のようなものが無い。

仮にあると言っても立地の高低差を利用した戦い方しか出来ないのだ。

よって、ここでの戦闘では、常に距離を確保しながら戦う戦法か、それこそ圧倒的な火力で掃討する方法が良いだろう。

また、ネプテューヌ達が持っている武器と戦い方を観察して、近接戦を重視した戦闘を好み、かつ、単騎戦に慣れているような戦い方だと判断した。

その為、異常な程の数がいるスライヌ達の群れの中で孤立した状態で戦うのは得策じゃ無いのではと…思っていた。

後に、その不安は現実へと変わる事になるのだが。

 

「キール、貴方は戦わないのかしら?」

 

ネプテューヌ達を見守っていたキールだったが、その様子を見かねたブラックハートがキールに近付いて聞き訪ねてきたのだ。

ブラックハートもキールがどのような実力を持っているのか気になっているのだろう。

 

「折角ネプテューヌがその気になったんだ。危険な状態じゃない限りは、あいつらの見せ場を奪うつもりはない。」

「ふーん…要するに様子見って事?まあ良いわ。」

「…一応、戦えない理由はあるんだがな。ネプテューヌ達があれだけ倒してるんだ。それに、問題になるような相手じゃ……」

 

ネプテューヌ達の見せ場をわざわざ奪うような事はしないと話すキールだったが、ブラックハートのやや挑発じみた言葉にピクリと反応する。

しかし、目に見える範囲でスライヌを順調に倒し終えているネプテューヌ達の様子を見れば、このまま油断せず的確に倒していけば自分の出番は無いなと考えて続けて話すも、事態が急変した事に気付いて黙り込む。

 

「「「「「「ヌ〜ラ〜ッ!!!」」」」」

「へっ…?うわああぁっ!!?」

 

それは、先程よりも多くのスライヌ達が何処からとも無く出現したかと思えば、雪崩のようにネプテューヌ達へと押し寄せていたのだ。

 

「ちょっ、ちょっと!変な所触るな!!」

「き、気持ち悪いですぅ…」

「やっ、そんな所に入っちゃ駄目ぇ!!」

「あはははっ!!くすぐったい!!助けてぇー!笑い死んじゃうよー!!」

 

案の定というべきか、スライヌの群れに押し寄せられたネプテューヌ達はある意味で好き勝手に攻撃されていた。

攻撃と言って良いものかどうかは別として、身体を舐められたり服の中に入ろうとしたりしている状態だ。

 

「あんな群れに突っ込んだらそうなるだろうに…」

 

この様子を予想していたのか、キールは片手で頭を抱えていた。

加勢に入れば良いのだが、それではネプテューヌの為にならないと判断したキールは、ネプテューヌ達が何とかするまで待機しておこうと考える。

スライヌの数は前の比にならない程の膨大さだが、その気になれば気功波を何発か放てばものの数分足らずで群がっているスライヌも簡単に塵に帰るだろう。

しかし、それではネプテューヌ達が戦う意味が無くなってしまうからだ。その上、気功波で彼女達もろとも巻き込むわけにもいかない。

 

「お、お姉ちゃん!早く助けないと…」

「駄目よユニ。あの子達で何とかしないと意味がないの。」

 

状況が悪くなってきた為にユニがネプギア達を心配した様子で助けに入ろうとしたが、すぐさまブラックハートがそれを止める。その表情は呆れを通して失望に近いような表情だ。

 

「だああぁぁっ!!!お前ら全員、冥界送りにしてやろうかああぁっ!!!」

「お、おぉ…やるなアイエフ。」

 

「……少しは頑張りなさいよ、ネプテューヌ…」

 

暫くして群れに押し寄せられたアイエフがブチ切れた様子でスライヌ達を振り払えば、怒りのまま縦横無尽にスライヌ達を倒していく。その姿は狂戦士そのものだ。

怒り狂うアイエフの姿に若干引き気味な様子で見ていたキール。

怒りで戦闘能力を引き上げる事については納得出来るが、ものすごい勢いで減り続ける様子を見て、火事場のクソ力を発揮したんだなと思っていた。

結局、全てのスライヌをアイエフが倒し切るまでキールやブラックハートは静観していたのだが、スライヌ相手に不甲斐ない姿を晒すネプテューヌを見て、ブラックハートは不満げながらも、何処か残念そうに呟いて溜息を付いていたのだった。

 

 

–––––

 

 

「あの数を1人で倒し切るなんてな…凄いぞアイエフ。」

「あ、ありがとう…それより、今は休ませて頂戴?」

「分かった。アイエフとコンパ、それとネプギアは休んでいてくれ。次の場所は俺が片付けてくる。」

 

それから時間が経った後、アイエフの活躍によって高原からスライヌはいなくなっていた。

一番の功績者であるアイエフはグッタリとした様子で座り込んでいる。

コンパとネプギアもスライヌ達に対して酷い目にあって疲れ果てていた為、このまま休憩させておこうと考えれば、次の場所に向かう為にブラックハートの元に一旦話を聞きにいくかと決めてネプテューヌの元へと向かう。

 

「うぅっ…暫くの間は、肉まんとかゼリーとかは見たくない…」

「ネプテューヌ!どうして女神化しなかったの!?女神化しすればスライヌくらい簡単に…!」

 

一方で、大の字になって仰向けに倒れていたネプテューヌの姿を見て、やや怒りを露わにしたブラックハートが問い詰めていた。

女神と呼ばれる国の象徴が、スライヌという雑魚モンスターに一方的になすがままだった為に憤りを感じていたのだろう。

ブラックハートの言葉にぐったりとした様子で上半身を起こしながら彼女の方を見るネプテューヌ。

 

「あはは…でもまあ、なんとかなったんだし……」

 「っ!…他の人に何とかして貰ったんでしょ!?そんな事だからシェアが……もう良いわ、精々そこで休んでなさい!!誰か、トゥルーネ洞窟に案内して!」

「あっ、お姉ちゃん!私も一緒に…」

「大丈夫よユニ。貴方はネプギア達の介抱をして。」

「う、うん……」

 

しかし、それ程大して大きく受け止めていなかったネプテューヌは、少し疲れた様子で能天気に笑って話すも、未だに女神としての責任を感じていない彼女の様子に限界が来たのか、ブラックハートはやや荒々しい態度を露わにして背中を向けていた。

そんな姉の様子に自分も力になろうと話し掛けるユニだったが、ブラックハートも流石に妹に対しては落ち着いた口調でネプギア達の事を頼んでいた。

 

「待ってくれ、俺も同行する。ユニがネプギア達の事を見るなら、万全に動けるのは俺ぐらい…」

「必要ないわ。私一人で十分だから。静観に徹してた腰抜けな貴方も、戦う気がないなら此処で大人しく待ってなさい。」

 

すぐさまトゥルーネ洞窟へと村人達に案内をさせようと行動を始めるものの、怒った様子のブラックハートに少し周りが驚いているほどだ。余程、ネプテューヌの態度が気に入らなかったのだろう。

その為、動き出す前にキールが声を掛けたのだが、気が立っている事もあって彼に辛く当たっていく。

そして、そのまま村人の案内を受けて一人でトゥルーネ洞窟へ向かうのであった。

 

「キール、ごめんね。お姉ちゃんがあんな事を……」

「気にするな。結果的にも加勢した方が良かったからな。…しかし、ノワールには軽く失望されたみたいだな。」

 

ラスーネ高原を後にしたブラックハートを見送った後、彼女に当たられていたキールに謝るも、ネプテューヌ達に遠慮して戦わなかった自分にも非がある為、気にする事はないとユニに一言言いつつ、後を追うべきかと考えれば、まずはラスーネ高原に脅威になるモンスターが他に居ないか気を使って確かめてから、すぐさまブラックハートが向かった洞窟へと向かう事にした。

 

「…ネプテューヌの奴、何処行ったんだ?ん?…少しマズイかもしれないな。」

 

気を使って周囲に脅威となるような大きな気を持ったモンスターや生物が居ない事を確認すると、ふと、先ほどまでNギアをいじっていた筈のネプテューヌの姿が見当たらない事に気付く。

何処に行ったんだと思っていたが、村の方向から洞窟方面に向かっている小さな気が幾つかある事に気付いたキールは、嫌な予感を感じてすぐさま洞窟の方向へと向かって行く事にした。

 

 

–––––

 

 

「洞窟に誰かが入っていったのを見なかったか?」

「そうですね、ブラックハート様が洞窟に入られてからは、ネプテューヌさんが通っただけですけど?」

「…そうか、悪いな。」

 

トゥルーネ洞窟入り口付近で話をしながら待機していた村人を見付けると、先ほど村から此処に来ていただろう気の正体について探るべく聞き訪ねる。

返って来た返答はネプテューヌだけが洞窟へと入ったという事だったが、洞窟内にはネプテューヌのものと思われる気と洞窟内をゆっくりと進んでいる数名の気があるのだ。気の大きさからして子供だろうと判断する。

恐らく、此処で待機している大人の目を盗んで洞窟に入った者がいるはずだと判断したキールは、一言礼を言うとすぐさま洞窟内へと入っていった。

進むにつれて洞窟内は視界が悪くなっていく一方だが、ブラックハートが道中のモンスターを倒した事もあり、キールは何の妨害にも遭遇する事なく洞窟の奥へと向かって行くのだった。

 

「ん?ノワールの気が感じ取れる…だが、この違和感は何だ?」

 

暫く進んだ辺りで突然ノワールの気が感じ取れるようになった事に驚くも、同時に禍々しさを思わせる、嫌な感じの違和感を同時に感じ取った。

急に気が感じられるようになったという事は、ノワール本人に何かあった事を意味する。

別に気の気配がある件もある為に急ぐ必要があると考えたキールは、誰もいない洞窟内を舞空術を使って一気に向かって駆け抜ける事にした。

 

「…あれは…ノワールとネプテューヌか!」

 

気配が強くなってくれば付近に着地して歩いて向かっていく。

洞窟の奥には巨大なドラゴンと尻込みして座った状態のままのノワール…そして、ドラゴンの爪の斬撃を防いでいるネプテューヌの姿があった。

 

「ノワール!変身ってのは、こういう時に使うんだよ!刮目せよっ!!」

 

鍔迫り合いのようにドラゴンの攻撃を防いでいたネプテューヌだったが、そのまま横に刀を振ってドラゴンを薙ぎ払うと、よろめいたドラゴンの隙にネプテューヌの身体が光に包まれていく。

ドラゴンは負けじと追撃をしようとしたが、突如放たれる光に怯んでいた。

やがて光が落ち着くと、ヘビータイプのレオタードに身を包んだ、長い三つ編みの髪が特徴的な大人びた女性の姿へと変身していた。ネプテューヌの女神の姿であり、プラネテューヌの象徴である女神パープルハートである。

ちなみに、変身したパープルハートの姿を見て、変身前と後で面影無さ過ぎるだろうとキールが思った事については言うまでもないだろう。

 

「女神の力、見せてあげるわ!!」

 

変身前とは打って変わって落ち着いた様子で刀を構えれば、エンシェントドラゴンを見据える。

そこに小型のモンスターが天井からパープルハートへ捨て身の突撃をしようと向かっていたが、それに気付いて武器を取り出したノワールの一閃により返り討ちにあっていた。

 

「カッコ付けてるんじゃないわよ!!」

「っ!…助かったわ。こっちは私に任せて!」

 

気を抜いていたわけでは無かっただろうが、小型モンスターの気配に気づいていなかったパープルハートは、小さく微笑みを浮かべてノワールに礼を言うと、エンシェントドラゴンの方を再び見据えて武器を構える。

 

「…あっちは心配しなくて大丈夫だな。問題は…」

 

ちなみに、ネプテューヌから感じ取れていた気は、パープルハートへと変身した途端に感じ取れなくなっていた。

その様子を洞窟の物陰からやや不安げに伺っていたキールだったが、息の合った二人の連携を見て問題は無いなと安堵の表情を浮かべる。

自分が感じていた不安は杞憂だったなと考えるも、変化に気付いたキールの表情が真剣なものへと変化すれば、ノワール達がいる方向とは別の方向を見据えれば、気を開放して再び舞空術で空に浮かぶと、すぐさま洞窟の奥へと急ぐのであった。

 

 

「クロスコンビネーション!!」

 

自身の後方にシェアエネルギーの足場を作って勢いよく飛び出したパープルハートは、袈裟斬りと逆袈裟斬り…そして斬り上げを織り交ぜた連続斬撃を繰り出した後、止めの一撃でエンシェントドラゴンを地面に叩き付ける。

強烈な連撃をエンシェントドラゴンは強烈な光と共に爆発して突風を巻き起こす。

そして突風が落ち着いていくと共に、光となって消失していった。

発生した突風と光の眩しさに目をつぶっていたノワールだったが、やがて光と風が落ち着いた事に気付けば周囲に脅威が居なくなった事を確認する。

そして、エンシェントドラゴンを倒したパープルハートと視線が合い慌ててそっぽを向く。

 

「…っ!た、助けて貰わなくても、一人で何とか出来たわよ!」

「でしょうね。…でも、助け合うのが仲間だわ。」

 

そんな素直じゃない態度を示すノワールの様子に、まるで宥めるような雰囲気で微笑みながら話し掛けるパープルハート。

 

「べ、別に仲間だなんて…」

「じゃあ、どうして今日はこの辺りのクエストを選んだの?」

「そ、それは…」

「私が活躍すれば国境越しにプラネテューヌに伝わる。そうすれば、私はシェアを回復できる…そうでしょ?ありがとう、ノワール。」

 

相変わらずツンとした態度で話すノワールとは対照的に優し気に話し続けるパープルハート。

意図的にクエストを受けた事に気付かれ恥ずかしそうにするノワールだったが、パープルハートから礼を言われれば満更ではない表情で照れていた。

そして、礼を言った直後にパープルハートが再び光に包まれると元の姿へと戻った。

 

「…でも、追い詰められてやられそうになってた女神の事も、きっちり報告しなきゃね!」

「えぇっ!?それは黙ってて!?」

「おーい、みんなー!ノワールがねー!ヘマこいたよー!!」

「ちょっと!!ネプテューヌ!仲間なんでしょ!?コラーーッ!!」

 

しかし、変身が解けた途端、ナスーネ高原の時のお返しと言わんばかりに、エンシェントドラゴンと小型モンスターに追い詰められていた状況になっていた事を報告するというネプテューヌの言葉に慌てて止めようとするノワール。

しかし、焦るノワールをよそに洞窟の外へとネプテューヌが陽気に跳ねながら走っていく。

その為、ノワールは慌てふためきながらネプテューヌの後を追い掛ける羽目になった。

 

 

「お姉ちゃん!!」

「やっほーネプギア!モンスター退治終わったよー!…って、どうかしたの?何か物々しいけど?」

 

洞窟の外へと出たネプテューヌとノワールだったが、少し困った様子でネプギアとユニが待っていたのだ。

外にいる人達のうちの何人かは、心配するような表情を浮かべていたり、不安で泣いている者もいた。

 

「お姉ちゃんの事を聞き付けて来た子供達が、こっそり洞窟内に入って行ったみたいなの…」

「えっ!?それってどういう事!?」

「…ちょっと、それって流石にヤバくないかな?私が来た時は子供達は見なかったし。」

 

物々しい騒ぎの原因は、村で女神様の噂を遅れて聞き付けた子供達がブラックハートに会えずにいた為、どうしても女神様を一目見たかったのか、村からトゥルーネ洞窟に女神様が向かった事を聞いて、親の目を盗んで勝手に飛び出したらしい。心配で泣いているのは子供の親達だろう。

 

「モンスターを倒したって言っても、洞窟内は危険すぎるわ、早く助けに行かないと!」

 

ユニの言葉にすぐさま再び洞窟に入ろうとしたノワールとネプテューヌだが、村人の一言で、既に事態が悪い方向へ向いている事を知る。

 

「あっ、後…パープルハート様が洞窟に入った後に、ブラックハート様達と村に一緒に来ていた青年の方が来て、そのまま洞窟に入って行ったのですが、まだお戻りになっていないんです。」

「えっ…!?」

「キールが一人で入ったの!?私とノワールも会ってないよ?…って、待ってよノワール!!」

 

キールが洞窟に入ったっきり戻って来ていない事を聞いて驚く一同。

特にノワールは、村人の話にすぐさま洞窟の方へと振り向けば、焦りと後悔を思わせるような表情を浮かべて走り出していた。

ラスーネ高原で強く当たってしまった事を気にしていたのか、心のない言葉を言った事を後悔していた。

そんな様子のノワールを慌てて追いかけるネプテューヌと、洞窟の入口まで来ていたユニ達も、子供達の捜索も兼ねてノワールの後を追う事にした。

 

 

–––––




いやー1話が長いです(ーー;)
やっとオリ主を戦わせれる…スライヌ相手だとどうしても気弾撃って終了しか見えないので…(ーー;)


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第6話『これが俺の実力だ‼︎疾風怒濤の超サイヤ人‼︎』

お待たせしましたm(_ _)m
題名通り、空気だったオリ主メインの話です。
今回はアニメとは違ったオリジナル要素を入れておりますm(_ _)m
入れないとオリ主がいつまでも空気ですので(´・ω・`)


–––––

 

トゥルーネ洞窟の最深部に位置する場所で、迷子になっていた子供達が泣きながら逃げていた。はぐれないように皆で手を繋ぎながら…

ノワールやネプテューヌがいた場所とは違い、殆どの光が差し込まず遮られている為、視界は非常に悪い。

 

「怖いよーっ!お母さーん!!」

 

子供達を追い掛けているのは数台のモグラのような姿をした小型のモンスターなのだが、ノワールとネプテューヌが戦ったモノよりも色が違い、暗い体色が狡猾さを露わにしている。

そして、小型モンスター達の親玉であろう巨大なドラゴン…エンシェントドラゴンが佇んでいた。

こちらも色が黒く獰猛な雰囲気を思わせる。

腹を空かせているのか、牙を剥き出しにして逃げ惑う子供達を見据えていた。

 

「ひっ…あ…あぁ……」

 

次第に逃げ場を無くしていく子供達。

そして、遂に壁際へと追い詰められた子供達はお互いに寄り添うように震えながら抱き合っている。

逃げ場を失った獲物を見たモンスター達は舌舐めずりをした後、我先にと言わんばかりに震えている子供達へと飛び掛るのであった。

 

「ーーっ!!」

 

迫り来るモンスターの姿にもうダメだと思った子供達は目をつぶって顔を伏せる。

しかし、直後に何かが壁にぶつかった音が聞こえたかと思えば、暫くの間その空間は静寂に包まれていた。

 

「……っ?」

「安心しろ。もう大丈夫だ。」

 

子供達が何が起きたか分からずにいたが、声が聞こえれば目を開けて不思議そうな表情で見上げる。

そこに居たのは緑の上着と黒のズボンを着た、そり立つアホ毛が特徴的な黒髪の青年、キールだった。

しかも、何時の間にか子供達は迷い込んだ洞窟最深部入り口の前にいた為、困惑した様子で周囲を見てからキールを見上げていた。

 

「あっ……お兄ちゃん、誰?」

「単なるお人好しだ。女神様じゃなくて悪かったな。」

 

涙で濡れた顔でキョトンとしている様子の子供達を見れば、片膝をついて子供達の目線に合わせてから話せば、安心させるように軽く子供達の頭をそっと撫でてやる。

 

「…それよりも、これを追い掛けていけば外に出ることが出来るし、女神様とも会えるぞ?早く外に行ってお父さんとお母さん達を安心させてやれ。」

「う、うん…」

 

そして、出口に続いている洞穴に向かって手を翳せば、仄かに光を放つ気弾を手から静かに放ち、操気術でゆっくりと洞窟の出口に向かわせていく。

気弾から放たれる仄かな光が、周囲の景色を鮮明にしていく。

 

「お兄ちゃんは?」

「まだあのモンスター達がいるから、ここに残って外に出さないようにしないといけない。後、女神様に俺の事について何か聞かれても大丈夫だって伝えてくれ。…さ、早く行くんだ。」

「うん…ぐすっ…お兄ちゃん、気をつけてね。」

 

キールの言葉に落ち着きを取り戻した子供達は、涙を服の袖で拭いながら、そのまま蛍光の役目も担っている気弾を追い掛けて行くことにした。

先程、子供達に向かって飛び掛かっていたであろうモグラの姿をした小型モンスター達は、いつのまにか壁や天井にめり込んでいるという、なんとも間抜けな姿を晒している。

 

「キシャアアァッ!!」

「グルルルッ…ゴアアアァァッ!!!」

 

目の前で獲物を奪われ、しかも、群れの一部が片手間に倒された事に気付いたモンスター達が、その場にいるキールに怒りを露わにしていた。

あるものは咆哮を鳴り響かせ、あるものは敵意を剥き出し威嚇している状態だ。

 

「…フン、お仲間がやられて御立腹か。せっかく此処まで来たんだ。さっさと掛かって来るんだな。」

 

そんなモンスター達の怒りなど気にも止めずに、走っていく子供達を見送ってから立ち上がると、やっと気付いたのかと言わんばかりにモンスター達の方向を振り向く。

先程までの子供達に対しての優しい口調や表情は消えており、鋭い目付きでモンスターを見据えれば、煽るような口調で呟くと挑発するように片手を軽く動かしていく。

挑発行為を理解したか定かではないが、怒りを露わにしながら向かってきているモンスター達を見て、キールは不敵な笑みを浮かべて軽く身構えていた。

 

–––––

 

「おーい!何処に行ったのー!?返事してー!!」

「ネプテューヌ!向こうの方から何か光ってない?」

 

再び洞窟内に入ったネプテューヌ達は、エンシェントドラゴンと戦闘した付近まで戻って来ていた。

洞窟内は道の長さや広さは比較的あるものの、モンスターが現れてパニックにならない状況ならあまり迷う事は少ないのだ。

その為、ネプテューヌ達は声が反響する洞窟内を大声を上げながら、キールと子供達の捜索に当たっていた。

すると、彼女達が先ほど対処した、エンシェントドラゴンが現れた行き止まりの場所とは別の方向にある洞穴から、僅かに光が灯っている事に気付く。

 

「子供達よ!光ってる球体に付いて来てるみたいだけど…」

「あっ…め、女神様だ!!」

「無事で良かったです。怪我してる所とかはないですか~?」

「う…うぅっ…ふえええぇぇ……」

 

急いで光が灯っている方向へと向かうと、光の球を追い掛けている子供達を見付ける事が出来た。

子供達はノワールやネプテューヌ達の姿を見ては不安で一杯だったのか、安堵と共に疲れたような表情をしながら再び泣いていた。

そんな子供達の様子にネプテューヌ達は安堵の表情を浮かべて近付けば、子供達を落ち着かせるように宥めていく。

 

「いやー、ホントに無事で良かったよ。」

「でも、この光って何なのかしら?子供達を案内していたみたいだけど…」

 

討伐を終えた筈のエリアで子供達がモンスターの被害にあってしまえば、それこそ国民からの信頼が薄れてしまう所だっただろう。

怪我もせずに無事に戻って来てくれた子供達を確認すれば、今度は子供達が追い掛けていた光の球の方へと目視線を移す。

しかし、光の球は止まる事なくゆっくりと出口のある方向へと静かに浮遊しながら向かっていた。

 

「グスッ…緑色の服を着たお兄ちゃんが、これに付いて行けば…女神様に会えるって……」

「それって…その人はこの先に居るのね?」

「モンスターが沢山いるから…戻る訳にいかないって言って…」

 

泣きじゃくりながら頷く子供達は、ここまで来れた理由と1人の青年がモンスター達を止める為に残った事を話す。

 

「…分かったわ。ユニ、子供達をお願い!」

「あっ!?お、お姉ちゃん!?」

 

子供達の話を聞いてキールが足止めをしている事に気付いたノワールは、すぐさま彼が時間稼ぎをしているだろう洞窟最深部に向かって走っていく。

 

「ノワール!そんなに焦ってたら危ないってばー!」

 

何処か焦りを感じさせるノワールの姿に、流石に少し心配した様子でネプテューヌが追い掛けて行く。

 

「2人も奥に向かいたいんでしょ?じゃあ、子供達の事は私とコンパに任せて。今の所はモンスターがいないけど、安全だとは言い切れないわ。」

「ギアちゃんとユニちゃんも、気を付けるです。」

 

先に行ってしまった2人を見かねて、ネプギアとユニに2人を追い掛けるように話せば、子供達を放っておく訳にもいかない為、アイエフとコンパが子供達を外に連れて行く事にした。

 

「分かりました。ありがとうございます、アイエフさん。コンパさん。」

「私達も急ごう、ネプギア!」

「うん!」

 

アイエフの言葉に礼を言えば、ユニと共に先に行ったノワールとネプテューヌを追い掛ける為、洞穴を進んで行くのだった。

 

 

–––––

 

 

トゥルーネ洞窟最深部では、小型モンスターの連携を涼しげな表情を浮かべながら躱し続けるキールの姿があった。

洞窟の暗さや地形を利用して、所狭しと飛び交いながら襲撃するモンスター達。

しかし、気を感じ取れているキールにとっては、何処から飛んできているのか手に取るように分かってしまうため、簡単に躱し続けているのだ。

 

「遅いっ!」

「ギャッ!!?」

 

苛立ちが限界を超えた様子でモンスターの一体が連携を乱してキールに向かって飛び出す。

しかし、飛び掛かりを躱された直後に脚を掴まれると、まるで露払いのようにすぐさま投げ捨てられ、同時に気弾を放たれて吹き飛んでいけば、エンシェントドラゴンのすぐそばに落ちて爆発する。

 

「どうした?さっきみたいに掛かって来ないのか?子供達相手には意気揚々と追い詰めてた癖に。」

 

ほんのズレから一瞬で葬られた小型モンスターは、残骸も残る事もなく塵のように消し飛んだ為、他の小型モンスター達は戦慄しやや後退っている。

対してキールの方はというと、期待が外れたような表情を浮かべてモンスター達を見ていた。

そんな小型モンスターの様子を見かねたのか、エンシェントドラゴンが翼を広げて立ち上がる。

 

「ん?漸く本命が動く気になったみたいだな。さて…精々失望させないでくれよ?」

「ゴアアアアァァァッ!!!」

 

そして、勢い良く翼を羽ばたかせて周囲に突風を巻き起こしながら飛び立つと、人の身体ほどあるだろう巨躯な腕を突き出しながらキールに向かって勢い良く飛んできたのだ。

普通の人なら、エンシェントドラゴンが発生させている突風で身動きが取れなくなるだろう。

しかし、気を纏っているキールは微動だにせず、再び暗闇に紛れる小型モンスター達を無視してエンシェントドラゴンの様子を見ていた。

決して油断をしているわけでは無いが、倒せる相手を放置したり、わざと様子見に徹したりするという、サイヤ人としての悪い癖が出ていた。

ある意味、戦闘民族の血が通っている因果というべきか。

そして、こういう時に限ってタイミングが悪かったりするのもサイヤ人にとっての因果なのだろう。

 

「キール!!」

「ん?この声は…ノワールか?」

 

ふと、洞穴付近から聞き覚えのある声が聞こえてくれば、エンシェントドラゴンが向かって来ているのに関わらず、声が聞こえた方向に顔を向ける。

探しにでも来たのだろうか…焦った表情で息を乱しながらも呼吸を整えているノワールが居た。

更に、ノワールを追い掛けて来たネプテューヌが、慌てた表情でキールに叫んでいる。

 

「キール!前前!危なーいっ!!」

「ネプテューヌまで来たのか…って、うおっ!?」

 

2人が来る事は想定していたが、戦闘中に来たかとタイミングが悪そうに、面倒そうな表情を浮かべていた。

そして、案の定と言うべきか、見ていれば躱す事も、逸らして反撃を撃ち込む事も出来た筈のエンシェントドラゴンの突進に直撃してしまうと、そのまま壁へ思い切り叩き潰されてしまう。

 

「あっ!?」

「き、キールさん!」

「うわー…だ、大丈夫かな?」

 

何とか2人に追い付いたネプギアとユニもキールの姿を確認するものの、直後に突進してきたエンシェントドラゴンの巨体に押し潰された光景に騒然としてしまう。

ネプテューヌだけはキールの頑丈さを把握しているが、生身の人間が受けて良いような攻撃では無いため心配そうな表情を浮かべながら様子を見守っている。

 

「はあぁっ!!」

「ガアアァァッ!!?」

 

目障りな敵を壁に押し潰せたエンシェントドラゴンは、目をギラ付かせながら壁に向かってもう片腕を構えると、鋭い爪を突き立てようと腕を振るったが、キールから発した気による気合いで放たれる衝撃波…気爆波によって大きく後ろに退けられてしまい態勢を崩して転んでしまう。

 

「まったく…わざわざこんな所まで来たのか?お前達も随分と物好きだな。…所で、子供達はどうした?上手く行っていればそろそろ出口に着いてる筈だが?」

「こ…子供達は、アイエフさんとコンパさんが保護してくれました。」

「そうか…」

 

緑色の気を纏ったキールは、舞空術でそのままネプテューヌ達の元へと飛んで来れば、やや不満げな表情を浮かべながらも子供達の事について聞き訪ねてきたのだ。

エンシェントドラゴンに壁に押し潰された筈なのに、平気な様子で話し掛けてきたキールの様子に、やや困惑しながらも子供達は無事に保護した事を話す。

それを聞いたキールは少し安堵の表情を浮かべていた。

 

「…あ、貴方ねぇ!驚かさないでよ!ビックリしたじゃない!!」

「…何だ?心配してくれてたのか?」

「ち、違うわよ!貴方がよそ見して危なかったじゃない!それに、別に心配なんて…」

 

目の前で起きた一連の状況に呆然としていたノワールは、ハッと我に返ると怒った様子でキールに詰め寄って問い詰める。

ノワールの言葉に以外そうな表情をしたキールが、ふと可笑しそうな表情を浮かべて逆に聞き訪ねれば、からかわれたノワールはツンとした態度でソッポを向いてしまう。

最も、ノワール本人もラスーネ高原で強く当たった事を気にして心配していたのだが…

 

「と…とにかく!手伝ってあげるから、こんな奴らさっさと倒すわよ!」

「おい、俺の獲物だ。悪いが手出しはしないでくれ。折角見付けたのに横取りされるのは勘弁して欲しいな。」

 

誤魔化すような素振りを見せながらノワールが手を翳し武器を構えれば、態勢を整えようとしているエンシェントドラゴンに向かおうとする。

…が、すぐさまキールがノワールの前に立ちはだかるように阻止して来た。

 

「えっ!?でも、こんなに人数もいるから、皆で戦った方が…」

「確かに、全員で掛かればすぐに終わるな。…だが、此処は俺1人で相手をしたいんだ。」

「でも…」

 

ネプギアの正論な意見に対して肯定しながらも、あくまで1人だけでモンスター全員を相手するとい言い張るキール。

 

「…そうだな、折角ノワールとネプテューヌの女神化を見せてもらったんだ。とっておきを見せてやるよ。」

「「「「…えっ?」」」」

 

納得の行かない全員の様子にどうしようか考えれば、ネプテューヌやノワールの女神化を見た事を思い出すと、何か閃いた様子で不敵な笑みを浮かべながら、自分の切り札を見せると言い出したのだ。

当然、そんな事を言われたネプテューヌ達はどういう事か分からず、何を言っているんだと言いたげな表情をしている。

 

「でも、別に切り札を見せなくても、今のまま倒せなくない?」

「まあ、そう言われるとそうだが…試したいんだ。今の自分がどれだけの力を出せるのか。高原の時はネプテューヌ達に任せるつもりだったし、観客も多かったからな。」

「なんだか、凄い嫌な予感がする…ちょっと離れるわよネプギア。」

「えっ?あっ、ユニちゃん待って…」

 

キールの言い回しからしてあまりいい予想はしていないような表情でネプテューヌが聴き尋ねると、小さくキールが頷いてから自分が現在出せる限界を確かめる為だと話す。

直感的に嫌な予感がしたユニは、ネプギアを連れて少し離れて様子を見る事にした。

因みにネプギアは、キールの戦闘の記録を残すつもりなのか、Nギアを起動させている。

そして、キールは起き上がろうとしているエンシェントドラゴンを横目に見て話すと、軽く拳を握って腕に力を込める。

 

「後、物陰に隠れるか少し離れてるんだな。可能な限りはコントロールするが、流石にそんなに近いと吹き飛ばされるぞ?」

「…えっ?ね、ねぇ!本当に何するつもりなのよ!?」

「まぁ、見ていれば分かる。…それと、忠告はしたから後で怒るなよ?」

 

これから起きる事に対して周囲に被害が出る事を考え、ネプテューヌ達に物陰に避難するように言いながら、より濃い緑色の気を纏っていく。

そして、エンシェントドラゴンの方向を向くと、両手を腰に沿えるような構えを取る。

そんなキールの様子を見てふざけているのかと言いたげなノワールが問い質すも、既にその気になっているキールは、彼女の方を振り向く事なく一言言い放った。

 

「さて…はああぁっ!!!」

 

一呼吸置いてから気合いを入れるような叫び声と共に全身に力を込めると、体内に留めていた気が一気に放出した。

すると、ドンッ!という鈍い音が洞窟内に響き渡ると、キールが発した気によって強烈な衝撃波が発生する。

さらに、幾つもの稲妻が発生して周囲に飛び散っていけば、地面や障害物などに迸っていく。

 

「へっ…?きゃああぁっ!!?」

「お、お姉ちゃんー!!?」

「ノワール!!?」

 

切り札と言われて技か何かだと思っていたのか、隠れる事も離れる事もしていなかったネプテューヌとノワールの2人は、気の圧で発した衝撃波に直撃してしまう。

ネプテューヌは咄嗟に反応して吹き飛ばされないように屈んで耐えるが、ノワールはキールに1番近かった事もあり、突風をまともに受けて軽く吹き飛ばされてしまう。

念のために入り口付近まで下がっていたユニとネプギアが、吹き飛んで来たノワールを受け止めた為、大事には至らなかったが。

 

「ノワールさん、大丈夫ですか!?」

「心臓が止まるかと思ったわ…。」

「ノワールー!ネプギアー!ユニちゃーん!!助けてぇー!!キールを止めてーーーっ!!!」

 

2人に受け止められキョトンとした表情をしながら、今起きた事態が理解できずにいるノワールを見て、無事な事を確認して安堵する。

しかし、今度はネプテューヌが悲鳴を上げていた。

 

「はあああああぁぁぁっ!!!!」

 

キールから発生する気が大きくなる分、衝撃波の勢いが強くなっている為、踏ん張りが効かなくなっていたのだ。

しかし、気を高める事に集中しているキールは、遠慮無しに叫び続けると共に、どんどん気を爆発させる勢いで高めていく。

やがて、キールを覆う緑色の気が黄金の輝きを放ち出すと、稲妻がキールを覆うように迸り、反り立つアホ毛のように、黒色の髪が一部の前髪を除いて全て逆立っていく。

 

「うわあああぁぁっ!!」

「っ!ネプテューヌ!!」

「あうーっ…助かったよー…」

 

流石に耐えれなくなって吹き飛ばされてしまうが、落ち着きを取り戻したノワールによって受け止められ、助けられたネプテューヌはグッタリとした様子で礼を言う。

 

「ね、ねぇ!キールの姿が…っ!」

「髪が…金色に!?それに、目の色も違う…」

 

気を取り直してキールの様子を見る事にしたネプテューヌ達だが、既に起きているキールの変化に気付いていた。

黒色の目は明るい緑色へと変化しており、逆立った髪や眉、纏っていた気も黄金色に変化していたのだ。

 

「はああぁぁっ!!!」

 

やがて、暴力的までに膨張していた気の圧が落ち着いていくが、変わりにバーナーの炎のように気が激しく揺れ動き、さらに幾つもの稲妻がキールの身体に纏わり付くように帯びていた。

キールが居た元の世界のサイヤ人に言い伝わる伝説上の姿だと言われ、故に、サイヤ人が最強の種族だと恐れられた姿…超サイヤ人である。

 

「…待たせたな。こいつが俺の、現時点の切り札…超サイヤ人だ。呼び名は少し単調だが、元の世界でこの姿になった時にそう呼ばれたんでな。」

「す、凄い…。」

 

一度ネプテューヌ達の方を見ると、大まかに今の姿について簡単に話す。

最も、キールが変身している姿は、その超サイヤ人の限界を超えた姿…超サイヤ人2である。

女神化とは違うとはいえ、目に見えて変化が分かる程の変身を見たネプテューヌ達は驚いていた。

 

「(この調子なら、もう少し鍛えれば次の段階に行けそうだな…)」

 

しかし、当の本人であるキールは余力を余しているのか、何やら確信を持った様子で超サイヤ人2の感覚を確かめていた。

 

「ググゥッ…ゴ、ゴアアアァァッ!!」

「さてと…おいデカブツ、運が良かったな。全力を出せる機会なんてそうそう無いんだ…感謝してくれよ?」

 

軽く一呼吸付いてからエンシェントドラゴンの方を見て呟けば、歩いて向かい始めていく。

只でさえ鋭い眼光はより鋭く、平常状態の時よりも圧倒的な威圧感を発していた。

変身の余波の時点で恐怖を感じていたか、金色に光っている目の前の人の形をした化物がいる事を理解しているのか、エンシェントドラゴンはやや後退りながらも怯えるように咆哮を上げていた。

そして、再び翼を開いてキールに向かって飛び掛かるように向かって行けば、振り上げた腕を勢い良く振り下ろす。

その様子を見上げたキールは避ける事もせずに片腕を上に向ければ、自らの頭上に降り注いできたエンシェントドラゴンの片腕を受け止める。

 

「ガアアァァッ!!!!」

「やっぱり、この姿だと大人げないか。それにしても…これじゃ、どっちが悪者なのか分からなくなるな。」

 

受け止めた衝撃で地面が大きく凹んでいくが、受け止めているキールは微動にしていない。

腕を受け止められたエンシェントドラゴンの方は全力でキールを押し潰そうと必死な様子だ。

そんな状況をキールは皮肉るように呟くと、受け止めている腕でエンシェントドラゴンを逃がさないように掴めば、もう片方の手を前に出して掌を向ければ、別れを告げる一言を言い放つ。

 

「…さてと、あいつ等を待たせるのも悪いしな。周りに散らばっている奴ら共々…早々に終わらせる。」

 

掌に気を溜め、バスケットボール程の大きさの気の球を発生させれば、エンシェントドラゴンの目前に出して静止させる。

そして、すぐさま前方に向けていた拳を握ると、小指を下に向けながら親指と人差し指、そして中指を開いた…銃を連想させるような手の形を作る。

指先には気が弾丸のような形で激しく回転しながら集まっていき、やがて収束した気弾は野球ボール程の大きさにまで膨れ上がっていく。

 

「撃指光裂弾!」

 

指先に集中した気弾が前方に静止している気の球へと勢い良く放たれた。

そして、気弾を受けた気の球から螺旋を帯びた大量のエネルギー弾が発生すれば、ガトリング砲の銃弾のように飛んでいき、エンシェントドラゴンの巨大な身体に直撃すれば、いとも簡単に貫いた。

 

「カアアァッ…!!?」

 

必殺技の気弾をまともに受け、身体中を蜂の巣のように貫かれたエンシェントドラゴンは、声にならない悲鳴を上げながら光に包まると共に爆発して消失していった。

しかし、キールが放った追尾弾はエンシェントドラゴンを貫いたにも関わらず、止まる事無く四方八方に潜んでいる小型モンスターに勢い良く向かっていく。

 

「ギィッ!?」

「ギャッ…!!?」

 

動きのないキールを奇襲しようとしていたのだが、親玉のエンシェントドラゴンを貫いた上、四方八方に散りながら向かってきた大量の気弾の弾道を判断できず、躱す事も叶わず次々に貫かれていく。

そして、あっという間にモンスター達の数が減っていくと、最後に残った1体のモンスターも、容赦なく追い掛けてきた気弾に貫かれれば、同じく光になって消失していった。

 

「…今の1体で最後だな。」

「ポカーン……」

「なに…今の?」

「気で作った弾の一種だが?」

 

周囲にネプテューヌ達以外の気配を感じなくなれば、深く深呼吸をすると纏っていた稲妻や金色の気が消える。

同時に変化していた髪や目の色なども全て元に戻っていた。

そして、何食わぬ顔でネプテューヌ達の元へと戻って来る。

しかし、全員の表情はキョトンとしたままだ。

何せ、まともに視界が効かない空間でモンスターの群れが何も出来ずに僅か数秒で一掃されたのだから。

 

「もしかして、貴方がラスーネ高原で戦わなかった理由って…」

「まあ、さっきの超サイヤ人を見て貰ったから分かると思うが…加減を間違えて被害の方がデカくなりました…なんて事になったら洒落にならないからな。それに、ラスーネ高原でも言った事と同じだが、あんな大勢いる前でネプテューヌ達の評価を霞める事はしたくなかったんだ。…結果的にああなったのは予想外だったがな。」

 

キョトンとしていたノワールの言葉に対してラスーネ高原で静観に徹していた理由を話す。

超サイヤ人にならなくても加減をしなければ一瞬で葬る事は出来ると断言する。

そして、ネプテューヌ達がスライヌに劣勢に追い込まれる事は予想していなかった為に対応を間違えた事も踏まえて話していた。

 

「そ、それならそうと最初から言えば良かったのに…」

「あんな不機嫌な時に言った所で、ノワールは信じなかっただろ?それに、今ので俺が腰抜けじゃないって証明にはなったかな。」

「うぐっ、それについては、その…悪かったわよ。…貴方って、結構根に持つタイプなのね。」

 

理由については納得したものの、女神のような圧倒的な力を持ち合わせていたのに戦わなかった事にやや不満を感じながら、ノワールはムスッとした表情を浮かべてソッポを向いてしまう。

しかし、そんな彼女をキールは軽くあしらうように話す所か、高原でノワールに言われた事を持ち出してくる。

案の定と言うべきか、話を持ち出されたノワールは分が悪そうな困った様子になっていた。

 

「まあ、立ち話もこれぐらいにして、そろそろこの洞窟から出るか。」

「そうしよっか。それにしても、行ったり来たりしたから疲れたよー…」

「とりあえず、先に外に出たアイエフさん達とも合流しないといけないですね。」

 

ノワールをからかうのを止めにして、薄暗い洞窟から出る為、来た道を戻る事にしたネプテューヌ達。

しかし…キールはこの時、重要な物が近くにある事に気付く事は出来なかった。

その存在について気付く事になるのは暫く後になるだろう。

それは、エンシェントドラゴンが消失した場所にある瓦礫から仄かに光を放ち、最深部から立ち去るネプテューヌ達を見送るように、僅かに姿を見せていたのだから…

 

 

–––––

 

 

「ブラックハート様とパープルハート様が!」

「ハイパー合体魔法でモンスターを倒してくださったわ!」

「それに、洞窟内に入った子供達を助けて頂き、本当にありがとうございました!!」

『ばんざーいっ!ばんざーいっ!』

 

洞窟を出て戻って来た一行はアイエフとコンパと合流したは良かったものの、集まって来た村人達に称賛を受けて群がられていた。

洞窟内に迷い込んだ子供達もお礼を言うと、村人達が嬉しそうに万歳をしている状況だ。

 

「なんか…勝手に話を作られちゃってね?」

「まあ、良いんじゃないか?終わり良ければ総て良し…だろ?」

 

村人達が助けた子供達から話を聞いたのだろう、最深部のエンシェントドラゴン達も含めて、ノワールとネプテューヌが倒した事になっていたのだ。

いつの間にか話が盛られている様子に困惑しているネプテューヌをよそに、特に気にしていない様子のキールは嬉しそうな村人達を見て小さく笑みを浮かべていた。

 

「(それにしても…何で勝手に変身が解けたのかしら?)」

 

その傍で、変身が解けた事に疑問を感じているノワールの様子に気付く事が出来ずに…

 

 

 

村人達やノワールとユニと別れを告げ、プラネテューヌへと向かって行ったネプテューヌ達の様子を、物陰から潜んで伺っている人影がいた。

 

「洞窟のモンスターを一掃してくれたようだな…」

「これで、お目当てのものを楽に探す事が出来るっちゅね。…ん?オバハン、変わった反応が他にもあるっちゅよ?」

「ほう…ならば、それもついでに回収しておくか。女神どもを倒せるものになるのならな……」

 

懐中時計型のレーダー装置を見ながら呟いていた人影…もとい、フードを取った鼠が目当てのもの以外に反応を出ている物体がある事を告げる。

その様子を見た長身の女性の人影は不敵な笑みを浮かべて話すと、誰も居なくなった洞窟へと向かうのであった…

 

–––––

 

プラネテューヌ教会に戻り、シェアクリスタルがある部屋へと戻って来たネプテューヌ。

イストワールにラスティションで行った事の報告をしてから来ていたのだ。

 

「す、凄い…ッ!!シェアクリスタルがこんな輝きを放ってるなんて!」

「ふふーん♪」

 

ネプテューヌが怠けていた時には輝きが鈍かったのか、光り輝くシェアクリスタルを眼鏡を掛けて分析していたイストワールが驚きの声を上げていた。

隣ではネプテューヌがドヤ顔を決めながら胸を張って自慢げにしていた。

 

「さすがノワールさん!!」

「ねぷぅっ!!?そこは流石は私でしょ!?」

「ネプテューヌさんの功績なのか、私まだ疑ってますよ?」

「いーすん、何気に酷ーい!!」

 

しかし、イストワールの言葉にひっくり返って尻もちを付いている。

折角頑張った事もある為、ネプテューヌが口を尖らせて問いただすものの、日頃の行いが災いしてイストワールの方はまだ信用していなかった。

そんな彼女の様子に結構傷付いた様子で落ち込むネプテューヌ。

 

「きゃああぁぁっ!!?」

「ん?ネプギアの声だ。どうかしたのかな?」

 

しかし、部屋の外からネプギアの悲鳴が聞こえれば不思議そうにしながら立ち上がると、ネプテューヌとイストワールは皆がいつも集まる居間に向かう事にした。

 

「どうしたんだ、ネプギア?」

「き、キールさん…私の変な写真がネットに……」

「…待て、何でそんなものがインターネットに流出しているんだ?」

 

居間の方では食事の準備を終えて来たキールや、居間にいたアイエフとコンパが、困った様子でノートパソコンを見ているネプギアの様子を伺っていた。

ネプギアの言葉にキールがパソコンの画面を見ると、スライヌ塗れになっているネプギアの写真が大量にネットの国民掲示板に張り出されていた。

勿論、そんなものがあると知らないキールは、どういう事か分からずに困惑していた。

 

「何々?おぉ!?私のメアド宛に送った写真!ネプギア可愛いよネプギア!」

「お、お姉ちゃん、恥ずかしいよ……」

 

すると、シェアクリスタルがある部屋から現れ、パソコン画面を覗き込んできたネプテューヌの一言で、その場にいた全員が何が起きてこうなったのか大方察してしまう。

そんな周囲の様子に構う事無く、ネプテューヌは表示されているネプギアのあられもない姿の写真を見ている。

そして、そんな写真と姉の言葉に恥ずかしそうにしているネプギアだった。

 

「ネプ子、送り先間違えたんじゃ?」

「まさかそんな…あっ、国民向けのメルマガに…」

「やっぱり…」

「最低だ、この女神…」

 

察したような表情を浮かべて問い尋ねたアイエフの言葉に、Nギアを取り出して操作しているネプテューヌだったが、送り先の履歴を見てバツが悪そうな表情を浮かべながら間違えていた事を告げる。

予想が当たって頭を抱えるアイエフと、冷やかな視線でネプテューヌを見ているキールであった。

 

「でも、コメントの方は何だか好評価です。」

「どれどれ…えっと、『ビジュアルショック』…」

「『脳天直撃』…」

「『まだまだ行けるぜ!プラネテューヌ!』…って、支持されてるわね。」

「えっ?えっ…えぇっ!?」

 

投稿されている写真に対してのコメントはかなりの好評価の物が付けられていた。

評価が高いコメントを、順に読み上げていくネプテューヌにコンパ、そしてアイエフ。

写真の内容が内容だけに、評価の良いコメントの内容もあまり良いと言えるものではないが。

 

「こいつら…ん?おいネプテューヌ。今のはなんだ?」

 

大人しくネプテューヌ達の会話を聞きながら、サイトに投稿されているコメントを呆れ顔で見ていたキールだったが、何かに気付いた様子でネプテューヌに声を掛けると、唐突にパソコンのパネルをやや強引に操作する。

 

「わわっ、ちょっ、いきなり何するのさー…って、あっ……」

 

突然邪魔されて不服そうな表情を浮かべていたネプテューヌだったが、サイトに投稿されているタイトルに気付いて固まってしまう。

そこには、《守護女神様に仕えし金色の戦士現れる!》という表示がされている動画タイトルだった。

その動画の元出情報も、ネプギアの画像が流出した国民向けのメルマガからだ。

 

「お姉ちゃん、これって……」

「…お前、嘘だろ?」

「あ、あはは……」

 

そのタイトルを見て固まってしまう3人。

恐らく、ネプギアの画像とキールの戦闘を納めた動画を一緒に纏めて自分のメール宛に送ったつもりだったのだろう。

困惑しているネプギアと、絶句した表情を浮かべるキールがネプテューヌに問い詰めていた。

 

「何かしら?三人とも知ってるの?」

「…とりあえず、まずは動画を確認して見ましょうか。」

「それじゃあ、再生するですよ?」

「ッ!?お、おい待て!!」

 

そんな状況を見たアイエフとコンパ、そしてイストワールの3人がどういった内容のものか気になったのか、不思議そうにしながら動画を再生させてしまう。

キールが慌てて止めようとするがすでに遅く、彼がトゥルーネ洞窟で超サイヤ人2に変身し、圧倒的な力でモンスター達をねじ伏せていく姿を映した動画が再生されていく。

 

「か、格好良いです!」

「ねぇ、これってキールなの?貴方も変身できるの!?」

「…俺だ。これは、超サイヤ人と言われている変身だ。」

「戦闘民族って聞いていたけど、まさかこんなに凄まじいなんて…」

 

動画の映像をキョトンとした表情で見ていた3人だったが、動画が終わればキールの方を見ると問い尋ねて来た。

超サイヤ人はキールにとっても切り札な為、あまり広めたくなかったのだろう…

しかし、事前に話していない事もある為、溜息を付きながら観念した様子で認めれば軽く説明をしていた。

 

「キールさんの動画に付けられてるコメントもすごく多いですよ。」

「それに、ラスティションだけじゃなくて、ルウィーやリーンボックスの方からのコメントもあるです。」

「それ、俺の個人情報も流出してる事になるよな…」

 

今まで見た事の無いような動画の内容に多くのコメントが送られていた。

否定的なコメントもあるものの、動画の出来事が実際に起きていた事に信じられないようなコメントが圧倒的に多かった。

ラスティション以外にある他の大陸のネットワークに金色の戦士の動画情報が流れたのか、サイトのランキングにはネプギアの画像を押さえ、金色の戦士がトップを飾っている状況になっていた。

しかも、ご丁寧に《守護女神様に仕えている》とまで書かれている為、特定されるのも時間の問題だろう。

そんな状況になっていると知ったキールは、今後の行動に支障をきたす事を確信して頭を抱えていた。

 

「ま、まさか…急激にシェアが増えたのは…」

「サイトに流出した写真と動画のせい?」

「凄いじゃん!2人とも!!」

「えっ、そ、そうかな…?」

「ふざけるな、この大馬鹿者。個人情報を流された側は溜まったものじゃないんだぞ?」

 

ラステイションで行った評価でない事が分かり、イストワールはガッカリした表情を浮かべていた。

それに対して、シェアが上昇している事に嬉しそうなネプテューヌと、彼女に言葉に褒められて困りながらも嬉しそうにしているネプギア。

ちなみにキールの方はと言うと、わざわざラステイションまで行った労力まで無駄になっている事も含めて怒っていた。

 

「…って事は、この写真と動画を更にばら撒けば…!」

「えぇっ!!?」

「おい馬鹿やめろ。超サイヤ人の事はもう諦めるが、ネプギアの写真は流石に駄目だろ。只でさえ流出して収集が付けれていないのに、元凶の女神本人が拡散してどうする気だ?火に油を注ぐ気か?」

 

現時点でも相当なコメント数と視聴数を誇るネプギアの写真とキールの戦闘動画を見ながら、何か閃いたような表情を浮かべながらNギアを取り出すネプテューヌ。

彼女の一言で何をするか分かったネプギアとキールはすぐさまネプテューヌが何かする前に止めようと動き出していた、

 

「ネプギア、キール、シェアの為だよ2人とも!」

「ちょっとお姉ちゃん!?」

「だからと言って、どさくさ紛れにそれを使うんじゃないっ!!」

 

しかし、勘が鋭いネプテューヌは、部屋内でキールが暴れられない事を良い事に、すぐさま2人から逃げながらNギアを起動させる。

 

「待て!この馬鹿女神!!」

「流出は任せろ!バリバリーッ!!!」

「止めてぇーーーっ!!」

 

そして、ネプテューヌの悪行を止めようと、怒った様子で追い掛けるキールと、涙目で勘弁して欲しそうに必死で止めようとしているネプギア。

 

「はぁ…この国の行く先が早くも不安になってきました……」

 

そんな光景とシェアの上昇の理由を知り、胃が痛くなりそうな不安を抱えて呆れたような表情を浮かべるイストワールだった。

 

 

–––––




漸く第1話が終了しましたm(_ _)m
超サイヤ人2はやり過ぎたかなと思ってます(´・ω・`)
まあ、後々もっと強力なのを出す予定です(`・ω・´)
次回はアニメ本編の2話目の冒頭から中盤までの話になると思いますm(_ _)m


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第7話『夢見る白の大地‼メルヘンチックな雪の国ルウィー‼』

今回はアニメ本編2話目に入っていきたいと思います。m(_ _)m


–––––

 

此処は年中雪景色に覆われている、白き大地ルウィー。

伝統を重んじたような文化を持ち、魔法の既存概念が強いのか、幻想的な建物やメルヘンチックな物がかなり多い事も特徴的だ。

そんなルウィーの街中を、馬車に乗って進んでいるネプテューヌ達の姿があった。

 

「わぁ…綺麗な街…ルウィー、ずっと来てみたかったんだ。」

「ネプギアがそう思ってる気がしてさー。ふふーん♪」

「此処の大陸は雪景色も相まって、随分と幻想的な場所なんだな。」

 

馬車の窓から移る街並みの景色を眺めるネプギアと、そんな妹の様子に嬉しそうにしているネプテューヌ。

その傍らで同じく外の街並みを眺めているキールも興味深そうに外の景色を眺めていた。

 

「ロムちゃんとラムちゃんに遊びに来て…って言われてたの。2人が他の国に行く事は、ブランさんが許してくれないんだって。」

「あぁ…ブランって、お堅い所があるからね。」

「少し過保護すぎる気がするな。友人の所に遊びに行くだけなら問題ないと思うが……」

 

ネプギアの話に3名の名前が話に出てくれば、ブランという人物が女神でロムとラムという人物が妹なのだろうと考えていた。

 

「そういう事してると、ノワールみたいにぼっちになっちゃうかも知れないのにねーっ。」

「目の前にいるんですけど?…っていうか、誰がぼっちよ!?」

 

楽し気に話しながらもノワールの事をからかうように話していれば、目前に座っているノワールの言葉にネプテューヌとネプギアが本人が居る事を思い出したかのように固まっていた。

そして、ぼっちと言われてやや怒った様子で問いただすノワール。

 

「あっ、ごめんごめん。でも、面と向かって言われる方が、自分を変えるきっかけになるよ?」

「グータラ女神に言われたくないわよ!」

 

怒るノワールに対して、ネプテューヌは宥めながら言い訳をして余計に怒らせてしまう。

 

「はぁ…誘いに乗ったの、失敗だったかしら。」

「何度言ったか分からなくなってきたが、人の事を棚に上げるなネプテューヌ。ノワールも、そういう事は言わない方が良いぞ。」

 

そんな2人のやり取りをキールが仲介するように割って入って話していく。

 

「ところで、まだ会っていないから分からないが、ルウィーの女神ともう一つの大陸の女神ってどんな感じの人なんだ?」

 

ふと、まだ会っていない女神の特徴を聞いておいた方が良いかと考えたキールは、ネプテューヌ達にこのルウィーの大陸と、もう一つの大陸リーンボックスの女神について問い尋ねてみた。

無論、此処にいる2人の女神の特徴から、個性が強いのだろうなとは思っているのだが。

 

「んー…ブランはちっちゃくて物静かなんだけど、キールが見たら子供っぽく見えちゃうかもしれないかな?ベールは大人びたお姉さんって感じだよ。」

「1番子供っぽいネプテューヌが言える事じゃないでしょ?」

 

キールの問いに対して、大まかながらも2人の女神の特徴について話していく。

しかし、普段から子供っぽい事しかしていないネプテューヌに対して、ノワールがすぐさま突っ込みを入れていた。

 

「まあ初対面の時は、冗談抜きで帰宅途中の小学生か中学生ぐらいにしか見えなかったからな。しかし、ネプテューヌより余計に幼く見えるのか…その点については気を付ける。」

「ねぷっ!?その発言結構傷付くんだけど!?」

 

ノワールの言葉にネプテューヌと出会った初対面の時の事を思い出せば、仮にルウィーの女神にあっても極力本音を零さないように気を付けると話す。

ちなみに、ハッキリと子供にしか見えないというキールの発言にネプテューヌは軽くショックを受けていた。

 

「そういえば、ルウィーでもリーンボックスでも、キールの話題が広まってるみたいよ。」

「勘弁してくれ…あの騒動のせいで、街に出かける時もギルドに行った時も大変なんだ。大体、超サイヤ人の変身を披露したのも、ネプテューヌ達に見せたかっただけだ。それにあの時も言ったが、現時点で出せるフルパワーを把握するだけだったはずなんだ。何でこうなったんだ……」

 

何とも言えない場の空気を変えようとしたのか、ユニがキールの活躍が他の大陸にも広がっている事を話すものの、数週間前に流出してした超サイヤ人動画の事を思い出し、頭が痛くなるキール。

理由としては、彼ががゲイムギョウ界に流れ着いた時に、プラネテューヌに空を飛んで来ていた姿を撮られたものが既にネットに広まっていた為、動画でキールが超サイヤ人に変身する前の姿も映っていた事が災いして見事に特定されていた。

火に油を注いだ勢いで金色の戦士の話題がゲイムギョウ界中に広がった事をネットで知ったキールは、金色の戦士として有名になり、色々と大変な目に遭っていたのだ。

 

「いやーそれにしても、キールの人気がこんなに凄い事になるなんてね。」

「誰のせいだと思ってるんだ…」

 

最も、動画をプラネテューヌ教会で確認した時点で既に他の大陸にも広まっていた為、どうする事も出来ない状況に陥っていた。

キール本人も評価されている事については悪い気はしないないが、あまり目立った事はしたくなかったのか、なんとも言えない表情を浮かべている。

因みにネプギアの写真は金色の戦士の情報に埋もれたのか、辛うじて(?)他の大陸に流れる事は無かった。

 

「むーっ…そもそも、キールが飛んできた時だって、プラネテューヌ内で凄い話題になってたんだよ?」

「それを言われたら何も言い返せなくなるから止めてくれ。」

 

ややからかい気味に楽しそうに話すネプテューヌに対して、キールは複雑そうな表情を浮かべて言い返す。

しかし、すぐさまプラネテューヌに来た時の事を言われれば、痛い所を突かれた様に今後の活動はどうすれば良いのか気が重くなっているキールであった。

 

「まあ、キールの事がシェアに強く影響してるから、私達も何とも言えないけどね。それに、他の大陸に行くにしても悪い気にはならないじゃない。」

「なっ!?ノワール!お前までネプテューヌと同じ事を言うのか!?」

 

あまり浮かない表情を浮かべるキールとは対照的に、シェアも上昇傾向のある2人の女神はむしろ調子が良さそうな様子で宥めている。

しかも、ノワールまでネプテューヌの味方をした為に、流石にキールも少なからずショックを受けていた。

そして、ルウィーの教会に向かう間、守護女神と金色の戦士による言い合いが続いたのだった。

 

 

-––––

 

 

「此処がルウィーの教会だよ。」

「今まで見た中で1番教会らしい建物だな。」

 

ルウィーの教会前に到着すると、馬車から降りていく一行。

雪景色の中に佇む教会を見れば、今まで見た中で1番教会らしい所ではないだろうかと思っていた。

なにしろ、これまで行った教会は、教会という名の高層タワーや高層ビルのような建築物ばかりだったのだから。

 

「ブランは居るのかな?お邪魔しまーす!」

「相変わらず遠慮が無いわね。」

「まあ、ネプテューヌだしな…」

「ロムちゃんとラムちゃんも居るかな?」

「出掛けてなかったら教会にいると思うけどね。」

 

そして、そそくさと先に教会へと歩いていくネプテューヌが、大きな扉を勢い良く開けて中に入っていく。

そんな元気な彼女の姿を見ながら続いてノワールやキール、そして、友人である二人の事を気にしながらネプギアとユニが続けざまに入っていく。

 

「待ちやがれーーーっ!!!」

「へへーーんっ!!!」

「逃げるーっ!!!」

「うぉらぁーーーっ!!!」

 

広い廊下を歩いていれば、怒号のような叫び声が響き渡ったと思えば、かなり幼げな声のはしゃぎ声と廊下を走る音が鳴り響いてきたのだ。

なお、この騒がしい教会内の様子に随分と賑やかそうだなと思ったキールであった。

 

「あっ、ネプギア!ユニちゃん!」

「来てくれたの?」

「うん。遊びに来たよ。」

 

そして、その大声が響き渡った後に通路の曲がり角から現れたのは、お揃いの服を着た小さな2人の少女と、帽子を被っている小さな少女が現れた。

お揃いの服を着た2人の少女を見て分かるぐらい似ているので双子だろうとキールは考える。

…違いといえば髪の長さと付けているリボンの色の違い位だ。

恐らく、ネプギアとユニが言っていたロムとラムという少女なのだろう。

そして、双子の少女を追い掛けて来ていた、怒っていた表情を浮かべていた少女はネプテューヌ達の存在に気付いて驚いた表情を浮かべていた。

 

「やっぽーブラン!来ちゃった♪てへっ。」

「……」

「(どうするつもりだこの空気…)」

 

ブランと呼ばれる少女がネプテューヌに声を掛けられれば、すぐさま無表情の顔になっていた。

ネプテューヌのややあざとい態度に対しての反応なのだろう、少々面倒そうな反応に見えるのも仕方が無いなとキールは思っていた。

 

 

–––––

 

 

「…まーそんな訳でね、ルウィーに新しいテーマパークが出来たって聞いたから、折角だから皆で遊びに来たの。」

 

その後、ブランの案内で中庭に来たネプテューヌ達は、用意されているテーブル席に座って紅茶を飲みながら話をしていた。

 

「…イストワールから女神の心得を教えてやって欲しいって連絡を貰っているんだけど。」

「もーっ、それはもう良いよ。前回の件であんまり役に立たなかったしー」

「悪かったわね…」

 

ルウィーには遊びに来た事を話すネプテューヌだったが、既にイストワールの手回しが早かったのか、ブランからの一言に面倒そうな表情を浮かべる。

そして、前回ラスティションでシェアの変動があまりなかった事を思い返しながら話せば、ノワールが不服そうに呟きながら紅茶を飲んでいた。

 

「…それで、金色の戦士も一緒に連れて来てるみたいだけど?」

「あぁ、折角だし紹介するね。キールもこっちにおいでよ。」

 

すると、金色の戦士の話が出てくれば自然と全員の視線がキールに移る。

なお本人としては、あまりインターネットの普及がしていなさそうなルウィーでも、金色の戦士の話題が広がってしまってるんだなと実感していた。

 

「…キールだ、よろしく頼む。後、金色の戦士って呼ぶのは極力止めてくれ。騒ぎになったらあんた達にも、ネプテューヌ達にも迷惑だしな。」

「まあ、随分と謙虚な方なのですね。」

「単純に面倒事が嫌なだけだ。こっちは既に散々な目に合ってるんだ。」

 

ネプテューヌ達の話の邪魔にならないように離れて伺っていたのだが、ネプテューヌに声を掛けられればそのまま彼女達の元に来てから軽い自己紹介をする事にした。

周りの迷惑を配慮して極力金色の戦士と呼ばないようにして欲しいと頼みながら自己紹介をすれば、長身の金髪の女性…リーンボックスの女神であるベールが話し掛けて来た。

他のメンバーとは違って、かなり落ち着きのある大人の雰囲気を感じさせる彼女の様子を見ながら、彼女の言葉にやや否定気味に話す。

 

「ねぇねぇキール君、金色になってよ!」

「私も…見てみたい♪」

「待て、金色の戦士関連の話題も止めて欲しいんだが?そもそも、こんな所であの姿になったら、此処が吹っ飛ぶ上にこの国が雪景色から雪塗れになるから却下だ。」

 

すると、早速と言わんばかりに超サイヤ人に変身して欲しいという要望が、近くでブランの顔を模した雪だるまを作っていたロムとラムの2人から飛んでくれば、キールは危うくすっ転んでしまいそうになるものの、この一帯が大変な事になると判断してすぐさま却下する。

 

「えーっ?つまんなーい…」

「そんな…」

「そう言わないでくれ…分かった。機会があったら見せてやるから、今は勘弁してくれ。」

「やったー!」

「楽しみ…♪」

 

しかし、小児ぐらいに幼い2人の残念そうな反応にどうすれば良いのか困った表情を浮かべるキール。

考えた末に変身出来る機会に見せるという条件で約束する事にしたが、嬉しそうな表情で楽しみにしているロムとラムの様子を見て、どうしようかと困り果てているキールであった。

 

「キールさんの話題は少し置いて、テーマパークの噂は私も聞いていますわ。皆で遊びに行くのも、楽しいのではないかしら?」

「スーパーニテールランド!?」

「行きたい行きたい!」

「連れて行って!ワクワク…!」

 

そんな苦悩を浮かべるキールを横目に、話を戻すようにベールがルウィーのテーマパークについて再び話を始めていく。

勿論、ベールがロムとラムがブランと一緒に遊べるような口実を作るために話題を切り出したのだろう。

テーマパークの話題が出れば、すぐさまロムとラムの2人が、目をキラキラと輝かせながら食いつくように反応すれば、四女神が座っているテーブルへと駆け寄っていた。

 

「…妹達を連れて行って貰えないかしら?」

「えぇっ?ブランは?」

「お姉ちゃん…行かないの?」

「私は…いけない。」

 

しかし、そんな周囲の思惑とは裏腹に、ブランの一言は随分と素っ気ないものだった。

一緒に行きたそうな表情を浮かべているが、余程重要な仕事が溜まっているのだろうか。

 

「また仕事?止めといた方が良いよ?それに、昔の偉い人はこう言ってたよ。働いたら負けかなと思ってる…って!」

「それ、偉い人じゃないから。」

「むしろ、生きてる限りは額に汗をかいて働くべきだろ。」

 

ブランの反応につまらなさそうにしていたネプテューヌが、真面目にふざけた態度で話し出す。

ネプテューヌの言い草にすぐさまノワールとキールが半ば呆れながら至極真っ当に突っ込みを入れていた。

すると、バンッと強くテーブルを叩きながら、ブランが苛立った様子で立ち上がる。

 

「…とにかく、私は無理。」

 

そして、全員がブランの様子にキョトンとした様子で見ている中、一言だけ告げるとそのまま教会の中へと入って行ったのだった。

 

 

–––––

 




アニメ本編の2話目前編が終了になりますm(_ _)m
もう少しオリ展開の話でも入れようかなと思いましたが、うまく書けなかったので断念しました(´・ω・`)
次はアニメ本編の2話目中盤辺りの話に差し掛かって行きたいと思います(・ω・)


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第8話『すれ違う想い⁉︎双子に忍び寄る悪意の影‼』

今回は本編の中盤辺りまでの話になると思いますm(_ _)m
とりあえず、今回もオリ主がやや空気になる予定です(´・ω・`)


–––––

 

 

教会に入って行ったブランを残し、スーパーニテールランドへとやって来たネプテューヌ達。

テーマパークという事もあり、様々なアトラクションは勿論、場違いな感じの亀からカラフルな建物、更には空に浮かぶ変わった形のブロック等、目で見てるだけでも楽しめるような観光施設になっている。

 

「わーい!」

「待って、ラムちゃん…!」

「2人とも!ちゃんとコートを着てー!」

「ネプギア!入場券忘れてるー!!」

 

はしゃぎながら先に走っていくロムとラムを追い掛けるように、2人の上着を抱えて走るネプギア。

更にユニがネプギアの入場券を持ってその後を追い掛けているという状態だ。

そんな様子を微笑ましそうに見て歩いているのは、ネプテューヌとノワール、そしてベールの3人だった。

 

「あんまりはしゃぎ過ぎて、怪我しないようにな!」

 

因みに、キールは最後尾で歩きながら少々不安そう様子を見ていた。傍から見れば保護者にしか見えない。

テーマパークのそこら中に設置されている土管の中にロムとラムが入って行けば、続いてネプギアとユニも入って行く。

そして、それぞれが別の土管から現れれば、近くにあるコインを見付けて手にして楽しんでいた。

しかし、思っていた柄のコインとは違ったのか、姉のブランが来ていない事もあって、ロムとラムは何処かつまらなさそうな表情を浮かべていたのだった。

 

「ふぅっ…あの調子なら大丈夫そうだな。」

「完全に保護者みたいになってるわね。」

「!ノワールにネプテューヌと…ベールか。」

 

テーマパークのアトラクションを楽しんでいるネプギア達の様子を、キールは少し離れた場所に設置されている長椅子に座りながら見ていた。

そこに休憩しに来たのか、ネプテューヌ達が飲み物を持ちながら来ていた。

 

「ほら、キールも飲む?喉乾いたんじゃない?」

「良いのか?ありがとうネプテューヌ。3人も座ったらどうだ?」

 

彼女達に気付いたキールは、ネプテューヌから飲み物を受け取りながら、3人が座れるように席の端へ寄る。

因みにネプテューヌだけは飲み物と桃の入った袋を手に持っている。

 

「ありがと。それにしても…他国の女神がわざわざ来てるんだから、ブランも付き合うべきじゃない?ホント、何考えてるんだか分かんないわ。」

「女神云々は一旦は別にして、ブランって子…じゃなかった。あいつも来たら良かったのにな。妹達の事を考えているならちゃんと来てやるべきだ。」

 

ふと、スーパーニテールランドに来る前のブランの態度を思い出しながらやや不愉快そうに呟く。

さり気なくブランの事を年下のように扱いかけるものの、女神は見た目に反して長生きしている上に、子供扱いなんてしたら怒られるだろうなと思えばすぐさま修正する。

なお、ネプテューヌに対しては完全に年下の扱いのそれなのだが。

 

「それに、あんな態度じゃ2人の事を蔑ろにしている気がする。大切な事ほど、何時の間にか自分の価値観をただ押し付けてる事の方が多くなるのにな。何れにしても今のままじゃ、あいつ自身が駄目になると思う。」

 

元の世界で自分が過ごしていた武道館の仕来りや古い習慣があった時期の事をキールは思い返していた。

自分が何も知らなかった頃、知らず知らずのうちに周りをただひたすらにかき回していた頃の事を。

大切にしている存在に対して程、実は思いのほか酷い事をしていたなんて出来事も少なくなかったのだから。

 

「キールって結構冷たく振る舞ったりしてるけど、ホントは優しいよね。」

「…そうか?情に流されるつもりは無いが…放っておくのも嫌だしな。」

 

いつも憎まれ口を叩きながらも周囲の事を気にしている様子の彼を見て、微笑ましそうに笑って話すネプテューヌ。

彼女の言葉に今まで優しいと言われた事は少なかったのか、意外そうな表情を浮かべながらも、あくまで自分のお節介で動いているに過ぎないとやや照れ隠すように飲み物を一口飲みながら話すキール。

 

「それで良いんじゃないかしら?少なくとも、貴方がそうするべきだって思ってるならね。」

「ノワールさんとネプテューヌさんの言う通りですよ。たとえ口で簡単に言えても、実際に行動で示すのは簡単ではありませんわ。」

 

あまり自覚の無さそうなキールの様子に、感じた事をありのままで受け止めれば良いんじゃないかという3人の言葉を聞いて、その言葉が持つ意味を自分なりに解釈していた。

 

「…そういうものなのか?」

「そりゃそうだよ。それに、急いでも答えが出るって限らないからねー。」

「…これも、他者の意志を尊重し自分の意志を信じる事…なのか。」

 

キール本人はまだ良く分かっていないものの、何処か納得したような表情をすれば、かつて自分を絶望の底から救ってくれた人物の言葉を思い出し、少し嬉しそうに笑みを浮かべながら小さく呟いていた。

 

「とりあえず、ブランはもう少し大人になるべきだとは思いますわ。私のように…。」

「…この場合、どう答えれば良いんだ?」

「私に振らないでよ!?」

 

話が戻るかと思えば、ワザとらしく大きな胸を強調するように少し揺らしながら、自慢げな表情を浮かべて話すベール。

 

「そういえば、何でベールはルウィーに…」

「ねぷうぅっ!!?」

 

そんな彼女の言葉にどう答えれば良いか困っていたキールとノワールだったが、何故ルウィーにベールが来ていたのか気になったのか、ノワールが聞き訪ねようとするが、その直後にネプテューヌの悲鳴が響き渡る。

 

「この亀、私のピーチを狙ってるよ!?いやー!助けてーっ!」

 

横に座っているはずのネプテューヌの方を見れば、どうやら彼女は亀に引っ張られたのか、地べたに座り込んでいた。

そして桃の袋を狙っている亀が、ネプテューヌを押し倒してまで桃を奪おうとしていたのだ。

 

「…待ってろ。亀をどけてから何とかする。」

 

その光景を目の当たりにした3人はキョトンとした様子で見ていたが、桃を持つ人を襲う亀の図が掛かれた看板に気付いたキールが、手にしていた飲み物を飲み干してから立ち上がると、亀に近付いて掴んでいけばヒョイと持ち上げる。

 

「ほら、これをやるから人に迷惑を掛けるなよ?」

 

そのまま亀をネプテューヌから離しながら売店の店員に桃を注文すれば、亀を下ろしてから店員に通貨を渡して桃を受け取ると、それを亀の前に桃を置いて食べさせていた。

 

「ねぷぅ…助かったよキール。」

 

人並みサイズの亀に押し倒されそうになっていたネプテューヌは、疲れと安堵の表情を浮かべながらキールに礼を言う。

そして、キールが用意した桃を食べ尽くした亀は、満足そうな様子でゆっくりと歩き出していけば、その場を去っていった。

 

「これでもう大丈夫だな…ん?」

 

軽いハプニングを解決して一息付いたのもつかの間、園内から感じる違和感に気付いたキールは、気を探るべく静かに意識を集中する。

 

「どうしたのキール?何か感じた?」

「…変だ。ネプギアとユニの気が少し減ってる。…それに、ロムとラムの気が、他の気で邪魔されて感じ取れにくい。」

「…それってどういう事ですの?」

 

そんな様子をベールが不思議そうにしながら見ていたが、キールが気を使っている事ネプテューヌとノワールが気付くと問い尋ねる。

 

「ネプギアとユニの所に行けば分かるわ。二人は何処なの?」

「こっちだ、付いて来てくれ。…っ!2人の気が移動してる…急ぐぞ!!」

 

やがて違和感が確信に変わった表情を浮かべたキールを見て、女神候補生の4人に何かが起きたと感じた2人が、キールにネプギアとユニの場所まで案内してもらう事にした。

 

「…ちょっ、ちょっと!?私を置いて行かないで下さい!」

 

因みに、ベールだけはどういう事か分からず、追い掛けながらキールから話の詳細を聞く事になった。

 

–––––

 

事態が動き出したのは、キールが違和感に気付く数分前まで遡る。

 

「あーっ!?デッテリュー模様のコイン!レアアイテムだよ!」

 

ネプギア達と行動を共にしていたロムとラムだったが、レアアイテムであるテッテギュウ模様のコインを見付け、目をキラキラと光らせながら手にしたレアコインを見ていた。

 

「ラムちゃん、あっちにもデッテリュー…。」

 

他にもデッテリューコインがある事に2人は気付いた。

空中にずらっと並んでいるその様子は、まるでコインの道のような状態になっている。

 

「あっ、あれも全部デッテリュー!…でも、一枚でいいかな。」

 

しかし、レアアイテムと言えども大量に並んでいる為、流石に目移りするような物で無くなってしまっている。

 

「お姉ちゃんにも、持って行ってあげる。」

「えーっ?お姉ちゃんにも?一緒に来てくれなかったんだよ?それに遊んでくれないし…私は嫌だなぁ…」

「そうだけど…うぅっ……」

 

ラムがつまんなさそうな表情を浮かべていれば、ロムがブランの為に何枚か持っていこうとレアメダルを取っていく。

しかし、仕事を優先して一緒に来てくれなかった姉の様子を思い出してしまったのか、ラムは嫌そうな表情を浮かべて不満を呟きながら拒否する。

ラムの様子に姉にもレアコインを持って行きたいのか、ロムは落ち込んだ表情を浮かべていた。

 

「…分かった。お姉ちゃんの分も取って帰ろ!」 

「!…うん!」

 

落ち込んだロムの様子を見てラムはどうしようかと考えると、2人で一緒に持って帰れば喜んでくれると思えば集めようと決めて話す。

ラムの言葉に嬉しそうにするロムは、一緒になってレアアイテムを集める事にした。

 

「…あれ?」

「ネプギア、どうしたの?」

 

その頃、近くで一緒に遊んでいた筈のロムとラムが居なくなっていた事に気付いて、周囲を見渡して2人を探し始める。

そんなネプギアを見かけたユニが彼女の後ろから話し掛けていく。

 

「ユニちゃん。ロムちゃんとラムちゃんが居なくて…何処に行っちゃったのかな…?」 

「二人ならさっきあっちの方向に…」

 

ユニが指さした方向をネプギアが見れば、不自然に並んでいるデッテリューコインと、その先が死角になるような場所に建物があった。

 

「ラムちゃーん!ロムちゃーん!…っ!?」

 

そのままコインを目印に奥へと進んで行くと、黄色の巨体な体と長い舌が特徴的なモンスターと、黒い魔導師のような姿をした巨大な斧槍を担いだ機械型のモンスターがその場にいたのだ。

 

「アックックックッ…!」

「ちっ…おい、余計な奴等が来たぞ。」

 

2体の巨大なモンスターはすぐさま現れたネプギアとユニに気付くものの、余裕綽々な態度でいる。

ロムとラムの2人は、黄色の巨体なモンスターに捕まえられ、身動きが取れない状況に陥っていた。

 

「ラムちゃん!?ロムちゃん!?」

「ちょっと、アンタ達!何してるの!?」

 

その状況に驚きながらも、ロムとラムの2人が危険な目に合いそうになっている為、2人を助けようと動き出す。

 

「幼女以外に興味はないっ!」

 

しかし、ロムとラムを抱え押さえているモンスターが突如長い舌を出せば、ネプギアとユニにその長い舌を振り放ってきたのだ。

 

「「きゃああぁっ!!?」」

 

モンスターの攻撃をまともに受けたネプギアとユニは軽くあしらわれるように吹き飛ばされ、そのまま地面に倒れてしまう。

 

「上手くいきましたね、トリック様。」

「アックックッ…お楽しみはこれからだ…!」

 

何も出来ずに倒れたネプギアとユニを見て、ニヤリと笑みを浮かべたやや柄の悪そうな小柄な女性が、トリックと呼んでいるモンスターに話していた。

 

「おい下っ端、女神と金色の戦士は居ないのか?俺様がわざわざ潰しに来てやったのによぉ…」

「ちょっ!?ジャッジ様、今回の目的は手に入ったんですから、此処からさっさとずらかりますよ!」

「ちっ、クソがっ…」

「アーックックックーッ!!!」

 

そして、その横で悪態をつきながら不機嫌そうにしていた、ジャッジと呼ばれる機械型モンスターは、女神と金色の戦士がこの場にいない事に憤りを感じていた。

流石に暴れると騒ぎになる事は分かっているのか、つまらなさそうな態度で先に去っていけば、続けてトリックと下っ端と呼ばれた女性がその場を立ち去って行く。

 

「っ…ロムちゃん……ラムちゃん……」

 

2人を連れ去られて行く姿を見る事しか出来ないネプギアは、倒れながらも必死に2人に向けて手を伸ばしていたが、やがて気を失ってしまうと伸ばしていた手も地面に落ちてしまっていた…

 

–––––

 

キールの案内でデッテリュー模様のレアコインが並んでいる、他の場所からは見えにくい建物付近に着いた。

 

「…っ!?ネプギア!!」

「ユニ!?どうしたの!?大丈夫!?」

 

4人の元に急いで駆け付けたメンバーだったが、その場には既にロムとラムの姿は無く、ネプギアとユニが倒れていた。

 

「うぅっ…ロムちゃんとラムちゃんが、変な人とモンスターに攫われて…」

「お、お姉ちゃん…ごめんなさい。何とか止めようとしたけど…」

「っ!そんな…」

 

倒れていたユニとネプギアを介抱するネプテューヌとノワール。

しかし、ユニとネプギアは誘拐を阻止出来なかった事で自分自身を責めていた。

そして、ロムとラムが誘拐されたと聞いて言葉を失う一行。

 

「…とにかく、まずは教会に戻るぞ。報告もあるが、ネプギアとユニの容態を優先する。」

「分かったわ、二人とも動ける?」

「う、うん……」

 

一応、ロムとラムの気は追えているキールだが、まずはネプギアとユニの介抱を優先する事と、緊急事態をブランに報告するのが先だと判断すれば、2人にキールが自らの気を少し分けてから肩を貸すと、そのまま全員でスーパーニテールランドから出てルウィーの教会へと急ぎ足で戻る事にした。

 

 

–––––




せっかくなのでトリック・ザ・ハード以外にもゲーム版ネプテューヌ関連の敵を出していきたいなと考えております(・ω・)
後々、ゲーム版の話にも沿って行くと思うので(´・ω・`)
ただ…出すとしても多分、何人かは自分の表現力の無さが災いして出ないと思います…(´・ω・`)


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第9話『不安渦巻く思惑と大騒動‼︎双子姉妹の奪還作戦‼︎』

アニメ本編第2話中編の話になります(・ω・)
今回はオリ主の出番多めです(`・ω・´)
それにしても、何処までゲーム版のキャラを出せばいいか困っています(´・ω・`)


–––––

 

「そう言われましても、誰も通すなとブラン様に申し付けられているんです…」

「えぇーっ!?私達女神仲間なんだから良いでしょ!?」

 

教会に戻ればすぐさまブランがいる執務室へと向かったのだが、部屋に誰にも入れるなと命令されている女性職員が困った様子で部屋に入れないようにしていた。

 

「あ、いえ…女神様と言えども…」

「悪いが退いてくれないか?こんな事をしている場合じゃないんだ。」

「ひっ!!?」

 

同じ女神であるネプテューヌ達ですら入れられないと困る女性職員だったが、状況が悪いにも関わらず立ち往生を喰らっている事に苛立ち、睨むような目付きになっているキールと目が合ってしまい、怯えるように涙目になって震えていた。

 

「そんな…せめて、謝らせて下さいっ!」

「ロムとラムが誘拐されたのは、アタシ達のせいなのっ!」

「す、既に警備兵を総動員して、捜索させていますので……」

「それは知ってるけど…!」

「帰って…」

 

ロムとラムが誘拐された場に居たネプギアとユニは、阻止出来なかった事を悔やんでかなり罪悪感に呑まれている様子だ。

しかし、聞く耳持たずなのか、命令に反する事は出来ないと言わんばかりに頑固にその場を動かない職員。

何とか力になれないかと提案しようとするものの、部屋の中から聞こえて来たブランの声にネプテューヌ達は静かになった。

 

「帰って。あなた達はいつも迷惑よ…。」

「っ…ブラン……」

 

ブランの一言に、返す言葉も無くなってしまうネプテューヌ達。

そして、暫く部屋の前に佇んでいたが、一度ブランをそっとしておいて、一先ず作戦を立てる為にネプテューヌ達は中庭へと向かって行ったのだった。

 

 

「ロム、ラム、ごめんなさい。私のせいで…」

 

部屋の前の廊下から立ち去っていく足音がやがて聞こえなくなれば、ふら付いた足取りで執務室を彷徨う様に歩き出すブラン。

妹達より仕事を優先した事でロムとラムが誘拐されたという自責の念に押し潰されそうになっていた。

 

「私が姉として…もっとちゃんとしていればっ……」

 

フラフラと足取りも掴めないような様子で歩いていれば、視界が涙で滲んでしまう。

もしかすれば、ルウィー以外の大陸に連れ去られたかもしれない…

最悪の場合、生きている2人に会えないかもしれない…

そんな不安と後悔だけが、彼女をただ押し潰すように静かに迫っていた。

 

「何とかしなくちゃ…何とかっ…」

 

何とか2人を見付けてあげたい、2人を取り返せられたら抱きしめて謝ってあげたい。

涙で濡れた視界を手で拭えば何か方法が無いか考え始める。

 

「後悔先に立たずだぞ?ルウィーの女神さんよ。」

「えっ…?なっ!?」

 

しかし、その直後に声が室内に聞こえてくれば、思わず驚きながら振り向く。

そこには、先ほどまでネプテューヌ達と居たはずのキールが部屋の中にいたのだ。

 

「お前…何処から!?」

「あんまりにも外の奴が入れてくれなかったからな…少し眠って貰ってから入っただけだ。」

「っ…随分と強引に入って来たのね…早く出ていってよ……今すぐこの部屋からさっさと出て行け!!」

 

気配もなく執務室内にいたキールの姿に驚くものの、自分の弱弱しい姿を見られたくないのか、ワナワナと震えながら小さく呟いた後に、自分が抱える不安や憤りを彼にぶつける様に叫んだ。

 

「断る。今やらなきゃいけない事くらい、お前にだって分かる筈だろ?一人で抱え込めれるような事態じゃないって事を。2人に悪いと思っているなら尚更だ。」

「そ、それは…」

 

しかし、そんな彼女を憐れむように見ていたキールが即刻拒否すると、ブランに2人を取り返す為の手段を持ち出すために話を切り出そうとする。

少なくとも、キールには正確に特定の人物を探れる気を使えるのだ。

今も2人の気は感じ取れているので、それを手掛かりに探せば見付けられるのだから。

 

「私だって、すぐにでも2人を見付けたいっ…!」

 

ブランも、一人の力ではどうしようもない事態に陥っている事に関しては既に分かっている様子だ。

2人を見付けられる方法があるなら、どんな手段でも厭わないと感じさせるほどのものだった。

 

「…そうだっ!あれを使えば…」

「?あれって何の…」

 

すると、ブランが何か閃いた様子になればすぐさま動き出そうとする。

そんな彼女の様子を見て呆気に取られたキールだが、話が流れにかき消される事に気付くも、まずはブランが何かしようとしている事について聞く事にしようとした。

 

 

「ガラッ!ガラッ!ガラッ!!」

 

 

しかし、閉められていた扉が突如開いた音と何者かの無駄に響き渡る大声に、場の空気と流れが完全に切られてしまった。

 

「…えっ?」

「っ…何だ?」

 

真剣な表情で会話を続けようとしていたキールとブランだったが、突如開いた扉とその場に現れた一人の少女に気付いて何事かと止まってしまう。

直後にフラッシュライトの光が視界を覆えば、2人は咄嗟に片腕で目を覆うものの、その光が撮影カメラと照明のものであると気付く。

 

「見ーつけたっ!」

「…誰?」

「ワタシはアブネス!幼年幼女の味方よ!」

 

ブランを指さしながら現れた少女アブネスは、2人の付き添いを連れてキールとブランの前に来たのだった。

 

「…えっ?」

「帰れ。子供の遊び場じゃないんだぞ?」

 

聞いてもない少女の自己紹介にキョトンとした様子で見ているブランと、せっかく話を聞いてくれる流れに持って行けた状況を切られた事に苛立った様子で、かなり冷たい一言を放って煽るキールであった。

 

「ちょっと、何よその言い草!?私を子供扱いしないでくれる!?それに、れっきとした幼年幼女の味方だって言ったわよ!大人気番組『アブネスちゃんねる』の看板レポーターじゃん!…知らないの?」

「知らん。知りたくもないし、知る気もない。」

 

キールの煽りに少しイラっとしたアブネスだったが、連れている2人のアシストに撮影の準備を指示しつつ、ドヤ顔を決めながら説明を始めた。

しかし、聞いた事もなかった事と、現在の状況的にも茶番に付き合う必要がないと判断したキールは、すぐさまアブネスの質問をバッサリと切り捨てる。

 

「むーっ、何でこんな所に金色の戦士が居るか分からないけど…さあ、今日も中継スタートよぉ!」

「…中継?」

「何なんだこいつは…」

 

そんなキールの態度に不快そうな表情を浮かべて呟きながらも、気を取り直すように自身の後方で準備をしていた2人のスタッフに掛け声と合図を送れば、撮影カメラが起動していく。

 

「全世界のみんなーっ!幼年幼女のアイドル、アブネスちゃんでーす!今日はルウィーの幼女女神ブランちゃんと、何故かブランちゃんの所にいる金色の戦士の所に来てるぞっ♪」

「おい、テメェいい加減にっ…」

 

撮影が始まったのだろう…アブネスはあざとげに取り繕うような喋り方と仕草をしながら、その場にいる2人を映すように立ち位置を変えていく。

キールを立ち退かさなかったのは、金色の戦士がいるという事で視聴率を上げる算段なのだろう。

ふざけた事をしている状況でない為、先に苛立ちが限界を振り切りそうになっていたのはブランの方だった。

声を荒げながら乱暴な言葉遣いになると、実力行使で無理矢理にでも部屋から出そうとする。

 

「ところでっ!妹のロムちゃんとラムちゃんが誘拐されたって言うのはホントなのかな、ブランちゃんっ!?」

「なっ!?ど、どうしてそれを…?」

「ホントだったんだ!?アブネスちゃん心配…」

 

しかし、続け様にアブネスから来た質問は、妹2人が誘拐されたかどうかという、完全に虚を突くような質問だった。

何処から情報が漏れ出したのだろうか…明らか様にブラン態度に動揺さが現れていた。

 

「…で、カワイイ妹を誘拐された気分はどうですか?ブランちゃん?」

「…っ!!?」

 

ワザとらしく泣きそうな表情を浮かべた後、すぐさま元の表情に戻れば、攫われた事など気にもしていない様子でブランに問い尋ねていた。

動揺しているブランは妹を誘拐されている事実を突き付けられ何も言えずにいた。

追い詰められているブランの様子を心配そうに不安を募らせながらもその様子を黙って見ていた。

そして、そんな彼女の心境も気にも留めない発言を続けるアブネスに、キールは静かな怒りと激しい苛立ちを積もらせながら…

 

 

–––––

 

執務室に入れずに待ちぼうけを喰らう羽目になっているネプテューヌ達は、困った様子で中庭のテーブルの席で座っていた。

 

「はあっ…全くブランったら、こんな非常事態に意地を張るなんて…どうかしてるわよ。」

「素直じゃないのは、ノワールの特権なのにねぇ。」

「はいいぃぃっ!!?」

 

依然として頑固に意地を張って拒絶していたブランの様子に、不服そうにしながら呟くように話すノワール。

そんなノワールを見たネプテューヌは、いつも素直じゃない彼女が言ったのが面白かったのか、普段ならノワールがしている事だと言いたげな様子で話す。

勿論、そんな事を言われたノワールは怒った様子で声を上げながらネプテューヌを見ていた。

 

「あの、皆さん…実は……」

「あれ?お姉ちゃん、あれ何だろう?」

「ふぇっ?……」

 

少しの間静寂がネプテューヌ達を包んでいたが、ベールが切り出そうと話を持ち出す。

だが、直後にネプギアが違和感に気が付いて皆に聞き訪ねる。

遠くからでもガラス越しから見える執務室の様子は、ブランが3人組から何やら質問攻めを受けているような状況が映っていた。

 

「…みんな、もう一度ブランの所に行こう!」

「えっ?ちょっと、ネプテューヌ!?」

 

明らか様に困っている表情を浮かべているブランを放っておけなくなったネプテューヌは、すぐさま席から立ちあがると、ブランがいる部屋に急ぐことにした。

 

「…こんな時に何処に行ったのよ、キール…」

 

他のメンバー達もネプテューヌを追い掛けるべく席から立ちあがって追い掛けていくものの、この中で現在いない人物がいる事に気付いたノワールは、周囲を探すように見渡す。

しかし、姿の見えないキールが何処に行ったのか心配しながら、ネプテューヌを追い掛けて行ったのだった。

 

 

「きゅ〜っ…」

「えっと…これってどういう事かな?何でこの人、ここで気を失ってるんだろう?」

 

執務室の前に着くと、先程部屋に立ち入りをしないように扉の前に立っていた女性職員が、扉の隣で座り込みながら目を回して気を失っていた。

その様子を見て何かあったのだろうと考えた一行は、とりあえず、何が起きたか確かめる為に、気を失っている女性職員を起こす事にした。

 

「いい加減にしろ…この、屑があああぁぁっ!!」

「ねぷうぅっ!?」

 

しかし、直後に部屋の中から凄まじい怒鳴り声が響いてくると、その場にいた全員がビックリした表情で何事かと執務室の方を見る。

 

「今の怒鳴り声って…キールの声よね?」

「ど、どうしてキールさんが部屋の中に…!?」

 

この場に居ないキールがいつのまにか執務室に入り込んでいる事に驚いていたが、それ以上にキールの怒鳴り声を聞く羽目になるとは思ってもみなかった。

しかも、部屋の中で何が起きているのか分からない為、少し状況を整理するように話すネプテューヌ達。

 

「た、助けてええぇっ!!」

「…此処で待っているのも良くありませんわね。」

「う、うん。とにかく、まずは私達も中に入ろうっ!」

 

すると、今度は悲鳴のような叫び声が聞こえてくれば、悠長にしている事態ではないと考えると、まずは部屋に入る事にした。

 

–––––

 

ネプテューヌ達がブランの執務室に入る少し前…

 

「つまり、妹が誘拐されたのはあなたの責任ってことですね?ブランちゃん!?」

「そ、それは…」

「見てください!幼女女神は何も弁解できません!やっぱり幼女に女神なんて無理なんです!」

「っ……」

 

世界中に放送されている事を良い事に、ロムとラムが誘拐された責任追及だけをただひたすらにブランに問い詰めるアブネス。

下手に発言をしたら大変な事になるブランは何も言えず、良いように言われ続けて静かに拳を握り締めていた。

 

「アブネスちゃんねるは、幼女女神に断固…」

「おい、アブネスとか言うクソガキ。それ以上口を開くな、耳障りだ…。」

 

そして、ブランが女神としている事すらも否定しようとしたその時に、傍で黙って聞いていたキールが遂に口を開いたのだった。

両腕を組んで目をつぶりながら、いつものような淡々としたような口調ではなく、威圧感と殺気を織り交ぜたような、ドスをきかせた低い声で。

 

「ひ、酷いです!金色の戦士は、こんないたいけなアブネスちゃんにそういう事言うのですか!?あっ、それに!今回の件を金色の戦士さんはどう思っているんですか!?」

 

キールの発言の意味を捉えられていないのか、ワザとらしく涙目で被害者顔を浮かべながら、今度はキールに標的を変え質問攻めをしようとするアブネス。

 

「…お前、自分のやってる事に罪悪感は無いのか?弱ってる奴の苦しみを抉るような事しておいて…何様のつもりだ?」

 

すると、完全に呆れを通り越して怒りを感じている様子で溜息を吐くと、組んでいる腕を解いて目を静かに開ければ、苛立っているのが見て分かるぐらいに鋭い目つきで、先ほどよりも荒い口調で言い放つ。

弱きを救い強き理不尽を挫く事を理念として置いているキールにとって、アブネスがやっている事が許せないのだ。

 

「なっ…何よ!?貴方こそ何様のつもりよ!?ちょっと有名になっているからって、良い気になってるんじゃないの!?私はありのままの真実を世界に放送しているのよ!それの何が悪いのかしら!?」

「……」

 

そんなキールの言葉にムカついたのか、罪悪感を思わせる気が無いどころか、あくまで正当化した上で行っていると言いたげな様子で、開き直るような態度でアブネスは声を荒げて話しだした。

その無自覚な態度や、ただでさえ実の妹が攫われて打ちのめされているブランに対しての非情な行いが、キールの怒りを買っているなどと分からずに…

 

「それに、国民には真実を知る権利があるわ!私はその真実を日の下に晒す義務があるのよ!それが報道の自由を与えられてる……」

「…いい加減にしろっ、この…屑があああぁぁっ!!」

 

そして、使命や義務の元で動いているという、これ以上に責任感も罪悪感も微塵に感じないアブネスの言葉が引き金になってしまう。

今まで溜め込んでいた分が限界を超えたのか、キールの額やこめかみに血管が浮かんだ直後、完全に切れた様子で怒りを露わにしながらアブネスに怒鳴り叫んだ。

最低限配慮しようと言いたい事を極力抑えていたが、全く罪の意識のない態度や言動が気に食わなかったのだろう…叫んだ勢いで超サイヤ人になってしまっている。

 

「なっ…っ!?」

「へ…?きゃああぁっ!!?」

 

急に超サイヤ人に変身したキールの姿と言動に驚き、唖然としたブランとアブネスだったが、直後に変身したキールから発した気の衝撃波を受けてその場で身動きが取れずにうずくまってしまう。

流石に超サイヤ人2にはならないようにキールも加減はしているのだが、傍若無人なアブネスの態度に対して溢れ出る気を抑えれない程、怒りを露わにしていた。

 

「うわあああぁっ!!?」

「ぐえっ!!?」

 

なお、アブネスの背後に居たスタッフは気の圧によって簡単に部屋の隅まで吹き飛ばされ、壁に叩き付けられていた。

カメラは辛うじて回っているものの、2人のスタッフは強烈な衝撃波を受けた時点で意識を手放してしまったのか、ぐったりとした状態で地面に倒れていた。

 

「さっきから黙って聞いてれば…自己解釈に過ぎないような綺麗事と、建前ばかり並べて好き勝手言いやがって!!お前は世間や情報を盾に、人の不幸を嘲笑ってるだけだろうがっ!!」

「ひっ!?ひいいぃっ!!た、助けてええぇぇっ!!!」

 

暫くすると気の圧も緩やかなものになっていた。

しかし、キール本人の苛立ちと怒りは全く収まらない様子だ。

殺気と威圧を発しながら、唖然としているアブネスへと近づいていけば、片手で彼女の胸倉を掴んで勢い良く持ち上げる。

室内に吹き荒れた気の嵐が収まって安堵していたアブネスだったが、近付いてきたキールにいきなり胸倉を掴んで持ち上げられれば、身の危険が迫っている恐怖でパニックに陥っていた。

流石に殺気を感じ取れたのか、涙目で悲鳴を上げながらブランに助けを求める。

しかし、突如暴走したように怒りを露わにしたキールの様子に呆然とした表情を浮かべているブランは、その光景をただ見ているだけだった。

 

「良いか!?その飾りのような耳でよく聞けっ!真実を世間に知らせる報道なら他所で勝手にやれ!だがなっ!現状もロクに把握してないような奴が、出所も分からんような情報が当たりだった位で、人の弱みに付け込んで叩くなら子供と言えども俺が許さんぞ!!そして、そんな上辺だけの正義と口実に乗じて周囲の奴を…ましてや世間や社会を使ってこいつらを袋叩きにするなら、俺が貴様を直々に葬ってやる!!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!!ごめんなさーい!!!」

 

先程までの静かだった印象とは完全に逆転した様子で、握り締めている拳や腕から稲妻が迸っている状態や、怒涛の剣幕を立てながら説教交えに怒鳴り続けるキールの様子を見て、冗談が通じない事を悟ったアブネスは、顔を青ざめながら生命の危機を感じて本気で謝り続ける。

 

「ちょっと待ったーっ!こーらっ!…って、何やってんのキール!?」

 

今更になって謝るアブネスの様子に余計感に触ったのか、更に剣幕を立てる勢いで怒鳴ろうとしていた。

しかし、扉が開く音に気付くとその方向を見る。

執務室の扉を開けて入って来たのは、中庭へと行ったはずのネプテューヌ達だった。

部屋に入るやいな、キールが超サイヤ人の姿で小さな少女を乱暴に持ち上げているという、少々絵面的にも悪い状況に驚いていた。

 

「っ!ネプテューヌ!?それに、お前らまで…来たのか。」

「へ…?あいたああぁっ!!?」

 

その場に現れたネプテューヌ達に気付けば、頭に昇っていた血が収まるように冷静さを取り戻していけば、持ち上げていたアブネスを離す。

なお、まだ怒りの興奮状態が続いているのか、白色掛かった金色の状態のまま髪が逆立っていた。

結構な高さから落とされたアブネスは落ちた衝撃と痛みに悲鳴を上げるが、痛そうにお尻を擦りながら立ち上がる。

 

「うぅっ…あ、あんた誰よ!?」

「私はネプテューヌ、プラネテューヌの女神だよ!」

 

ひとまず助かったような表情を浮かべていたアブネスは、突然現れたネプテューヌを見て近付いて問い掛ける。

対してネプテューヌは仁王立ちのまま堂々とした表情で答えていた。

仲間のブランが打ちのめされていた事が、キールと同じく気にくわない様子なのか、ネプテューヌの表情は少し怒っている。

 

「あ、あなたも女神ぃ?見た所少女と言えなくもないけど…体が未発達だわ!あなたは幼女!幼女決定よ!」

「えぇっ!?自分より小さい幼女に幼女認定された!?」

 

先程までキールにブチ切れられて青ざめていた態度は何処へ行ったのか…ネプテューヌの姿を見定めるように見ていれば、勝手にネプテューヌを幼女認定する。

勿論、自分よりも背が低くて年下そうなアブネスに幼女認定され、ムキになったネプテューヌがアブネスの事をやや煽るように言い放つ。

 

「なっ…!?私の何処が幼女なのよ!?幼女って言う方が幼女なんだからね!」

「それならそっちが幼女だよね!そっちが先に幼女って言ったもん!」

 

やがて、2人の口喧嘩は子供同士のレベルの言い合いに発展していた。

 

「ま、また幼女って言ったわね!?キーッ!!!」

 

そして、自分の言った事で墓穴を掘る羽目になったネプテューヌの一言で、手に持っているマイクを持ち上げながら怒るアブネス。

だが、その直後に銃声のような音が室内に鳴り響いたかと思うと、スタッフが壁に叩き付けられた際に落としたカメラや照明器具、そしてアブネスが持っていたマイクの先の部分が、何かが削れるような音と共に消し飛んでいた。

 

「えっ?……はっ!?」

 

部屋に響いた音と自分が持っている物が急に軽くなった違和感に気付いたアブネスが、取っ手だけになっているマイクを見て唖然とするが、直後に背後の殺意を感じて振り向くと、視界内に映った金色のオーラに気付いて硬直する。

 

「…これ以上気分を害さないうちに…今すぐ此処から消え失せろっ!!!」

「ひ、ひいいぃぃっ!!?」

 

先程あんなに怒ったにも関わらず、反省する事なく元の調子に戻っているアブネスを見て再び火が付いたのか、額に血管を浮かばせながら、金色の気を纏ったキールが目の前に来ていた。

そして、警告まがいに怒鳴り散らされれば、先ほどの恐怖が思い出されるように、アブネスの顔色が再び青くなると、気が付いて震え上がっているスタッフと一緒に、部屋の扉へと逃げるように向かっていく。

 

「ととと、とにかく!きょきょ、今日はこれぐらいで勘弁してあげるわ!!おおお…覚えてなさい!幼女女神と…おおお、金色の戦士ーーっ!!!」

 

慌てて扉を開け、恐怖で体を震えさせながらも捨て台詞を吐いていけば、アブネス達は逃げるようにして部屋から立ち去って行った。

 

「屑が…二度と俺の目の前に現れるな。」

 

そんなアブネスの様子を見れば吐き捨てるように一言呟くと、後味の悪そうな表情を浮かべながら溜息を付けば、この後の事に付いてどうしようかと考える事にした。

気は収まったがまだ金色の状態が続いている為、興奮が収まるまでは別の事に意識を集中した方が良いなと考えたのだった。

 

「…悪かったな皆。みっともない所を見せて……本当にすまない。」

「そんな事ないよキール!ちょっとビックリしたけど、流石にあれは怒っても仕方ないって!だから、気にするのはナシで…ね?」

 

そして、むかっ腹が立っていた気持ちが次第に収まってくれば、部屋に入って来たネプテューヌ達に向かって、すぐさま頭を下げて謝罪していた。

タイミングが悪かったとは言え、怒りを露わにするような姿を、仲間であるネプテューヌ達には見せて迷惑を掛けたくなかったのだろう。

しかし、すぐさま謝ってきたキールの様子に宥めるように話したのはネプテューヌだった。

 

「…ネプテューヌ、ありがとな。」

「あっ…う、うん…。」

「……」

 

そんな励まされるようなネプテューヌの言葉に、気持ちの整理が少し付いた様子になれば、顔を上げて礼を言いながら、そっとネプテューヌの頭をそっと撫でていく。

異性に頭を撫でられる事は無かった為か、頭を撫でられたネプテューヌは驚きながらも、少し顔を紅潮させて照れていた。

そんなネプテューヌの様子に、ノワールが少し羨ましそうな表情を浮かべながら嫉妬していたのだった。

 

「っ…」

「!?お、おい!?どうした!?」

「ブランさん!?」

 

これからどうしようかと考え始めた矢先に、ブランがふら付いて倒れそうになっているのに気付いたキールは、風を切るような音と共にネプテューヌの前から消えれば、倒れそうになっていたブランの前に現れて受け止める。

 

「しっかりして、ブランさん!!」

「もしかして…今の中継を見た国民達の影響で、シェアが一気に減ったとか?」

「シェアが減ると、女神は力が出なくなっちゃうから…」

「それにしては、幾ら影響が出るって言っても早すぎるわよ。」

「…とにかく、何処かで休ませる必要があるな。まずは彼女を寝かせれる場所に持って行かないと…。」

 

気を失っているようにグッタリとしているブランを見て不安を浮かべる一行。

思いつく限りの可能性を上げていくものの、確証が無いため完全に決める事が出来ない。

とりあえずブランを休ませるため、そっと彼女をお姫様抱っこしてキールが抱えれば、案内が出来る職員を探す事にしようとした。

 

「皆さん…方法があります。ロムちゃんとラムちゃんの居場所を突き止める方法を…!」

「…えっ?」

 

すると、ベールが決意した表情を浮かべながら突然話を切り出した。

見つけ出せる可能性がある様子で…

 

–––––

 

ブランを寝室に寝かせた後、執務室に集まってベールの話を聞く事にしたネプテューヌ達。

 

「実は…ブランとはある計画を立てていましたの。ルウィーでは人工衛星を使ってのサービスを行われていた事は、キールさん以外はご存知ですわよね?」」

 

「えーっとー…確か、お寺ビューだっけ?」

「10年前に終わったやつよね?」

 

手慣れた手つきでパソコンのキーボードを打ち続けるベールと、彼女の話に思い当たる事を言っていくネプテューヌとノワール。

 

「えぇ。実はあの人工衛星はまだ稼働していて、地上の写真データを送ることが出来るのですわ。ただし、送られる写真は低解像度ですから、それを解析して高解像度にするソフトウェアをリーンボックスの研究所が開発しましたの。」

「おおーっ!流石ベールの所は進んでるねー!」

 

ベールが使用しているパソコンの画面が幾多も表示されていくと、様々な地上の場所を映しだ写真のデータが表示されていく。

驚いているネプテューヌの様子からして、リーンボックスが唯一、プラネテューヌに勝っている技術なのだろう。

 

「それで、ブランに持ち掛けたんです。ルウィーが写真のデータを提供してくれたら、我が国はこのソフトを提供するという事を…」

「つまり、試験的に続けていたそれを、これからは本格的に使っていく…って事か?」

「それって、あなた達だけが世界中の映像を見られるってこと!?」

「えぇーっ!?それじゃあ私達、見られ過ぎて困るじゃん!」

 

話の流れからして、現時点でルウィーとリーンボックスだけで、世界中の地上の映像データを解析が可能にしているいう事だ。

現時点でベールが持ち出した話の意図を大まかに理解したのか、彼女の話に除け者扱いされた形になっている、2人の女神は不服そうにしていた。

なお、ネプテューヌはやや違った意味で困った表情を浮かべているが。

 

「いいえ。私達、そのデータを皆で共有しようと思っていたのですわ。」

「「「「…えっ?」」」」

 

しかし、ベールから帰って来た言葉に意外そうな声を上げて驚くネプテューヌ達。

 

「ブランが言い出したんですのよ?、友好条約を結んだのだから4つの国で等しく利用すべきだと。だから私達2人で公開する機会を窺っていたのですわ。サプライズプレゼントみたいで洒落てるでしょ?」

 

そしてこの情報とデータを四つの大陸で平等に公開して使うつもりだった事を話すベール。

ブランがどうしても仕事を優先していたのはこの為だったのだろうかとキールは思っていた。

 

「そうか、だからあの時に…」

 

そして、先ほど使おうとした手段もこの事だとキールが納得したのもつかの間、画像の解析を終えたパソコンから音が鳴り響く。

 

「どうやら解析が終わったみたいですわね。これで誘拐犯の逃げた場所が……あら?」

「!?ここは…なるほどな、灯台下暗しだったって訳か。流石に抜け目だったな。」

 

ロムとラムが誘拐されたその場所はキールですら予想を外し見落としていた程、意外な場所だった……

 

–––––




次はアニメ本編2話目後半の双子姉妹の救出編になります。(`・ω・´)
話の都合上、オリ主が空気になっていますが、暖かい目で見てやってくださいm(_ _)m
ルウィー編が終わった後はオリ回でも入れようかなと思っています(・ω・)


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第9話『悪しき者を打ちのめせ‼救出作戦実行‼︎』

今回は本編アニメ2話目後編辺りの話になります(・ω・)
折角なんで次の回は修行回でも入れようかなと思っていますm(_ _)m
修行をさせたいのは次の段階に変身させたい事もあるので(・ω・)


–––––

 

 

「まさか、建設中のアトラクションに隠れてるなんてね…」

「待っててね…ロムちゃん、ラムちゃん…!!」

 

夜の月光に照らされたスーパーニテールランドの園内に入り込んだネプテューヌ達。

なぜこのような場所にいるかと言えば、誘拐犯が潜んでいる場所を解析した後に出てきたのが、建設中のアトラクション施設だったのだ。

 

「よーし!殴り込みだーっ!」

「お待ちになって。」

「えっ?」

 

そして、犯人がいるであろう施設に我先にと乗り込もうとしたネプテューヌだったが、すかさずベールに制止させられれば足を止める。

 

「こういう時は人質の救出が最優先ですわ。ですから、此処は私が行きます。皆さんには万が一の為に逃走経路を防いでおいて欲しいのです。」

 

犯人の確保より、状況的にもロムとラムの身の安全と救出を優先するべきだと言いつつ、助け出せれる良い方法があるのか、自信があるのか自分に任せて欲しいと話すベール。

 

「えぇーっ!?それじゃあ、私達裏方じゃん!?」

「そう言うなネプテューヌ。ベールの方法が失敗した場合の事を考えても、逃走経路を封じておくのは確実に効果はあるんだ。逃げ出した所を叩けば問題は無いだろ?まあ、出来ればここで息の根を止めておきたいが…」

 

そんなベールの様子に不服そうにしていたネプテューヌだったが、キールの説得によりむくれながらもしぶしぶ了承する事にした。

 

「サラッと怖いこと言うわね貴方は…」

「悪いな、生きてるうちに自然とこうなったんだ。」

 

さり気なく怖い一言を流すように言ったもののすぐにノワールに突っ込まれれば、癖のようなものだが出来る限り気を付けると話すキールであった。

近くに潜む、微かながらも渦巻く殺気を感じ取りながら…

 

 

–––––

 

 

「へっへっへっ…」

「ひうっ…うぅっ……」

「いやーっ!止めない!止めなさいってばーっ!!」

 

アトラクションの物置部屋に、人質として囚われているロムとラムが、黄色の大型モンスターであるトリックに長い舌で巻かれたりして遊ばれていた。

 

「そこまでですわっ!」

「「っ…えっ?」」

「んんっ?また幼女かぁ…?」

 

そして、そんな状況が繰り広げられていた部屋の扉が突如開くと、ベールが大声を上げながら堂々とした凛々しい表情で部屋へと入って来たのだ。

 

「お姉ちゃん…!」

「ベールお姉ちゃん!」

 

入って来たベールの姿に安堵の表情を浮かべるロムとラム。

 

「その2人を解放なさい!私が、身代わりになりますわ!!」

 

そして、ベールが考えていた作戦は自分が身代わりとなる事で2人を救出するというものだった。

因みに、それを聞いたキールはすぐさまベールの作戦には難があるんじゃないかと問い尋ねていたが…

 

「…は?俺紳士だし。守備範囲は幼女だけだし。でかい胸とか興味ないし。」

「なっ…!?お、大きな胸の何がいけないと言うんですの!?」

 

しかし、少し間が空いた後にトリックが放った一言はまるで眼中に無いような言いようだった。

トリックの一言に見事にショックを受けながらも反論のように問い詰めていくベール。

余程ショックだったのか、ロムとラムの事が明後日の方向に行っているのは言うまでもない。

 

「垂れる未来しか見えない。」

「ッ…貴方、私を怒らせてしまいましたわねっ…!」

 

そして、止めと言わんばかりに侮辱そのものの一言を受けたベールは、俯きながらも静かに怒りを露わにしていた。

顔を上げながら怒った表情で一言言い放った直後、ベールが緑色の光に包まれていく。

 

「グリーンハート…変身完了ですわ。」

「ぬっ!?女神だったのか!?」

 

そして、ベールから放たれた光に気付いたトリックは、彼女が女神である事に気付いて身構える。

やがて、光が治まっていけばベールが変身した姿であるグリーンハートがその場に浮遊しながら佇んでいた。

そして、グリーンハートとトリックの戦闘が始まっていく。

 

「やっべ、これ…身代金どころじゃねぇや。」

 

さり気なくその様子を違う部屋の扉から見ていた下っ端は、慌てて静かにその場を離れる事にした。

 

「狂乱怒涛の槍、受けてみなさい! レイニーラトナピュラ!」

 

緑色に光る足場を利用して勢い良くトリックへと向かって行けば、凄まじい速度の槍の連打を放っていく。

 

「ぬうっ!?うおっ…ぬあああぁぁっ!!?」

 

グリーンハートの怒涛の攻撃を防ぎきれずに大きくよろけてしまえば、そこに投擲された槍の一撃を受けて天井を貫く勢いでトリックが吹き飛んでいった。

 

「…ふうっ、余裕でしたわね。」

 

決め手の一撃が決まり、吹き飛んだトリックを見送るように外を見たグリーンハート。

しかし、本来の目的と同時に大事な事を思い出す。

 

「そういえば、ロムちゃんとラムちゃんは…?」

 

グリーンハートが助けるはずの2人が居ない事に気付いたのは、誰も居ない部屋の中をを見渡した後の事だった…

 

 

–––––

 

 

一方、ネプテューヌ達が施設内を進むのを後ろに着いて歩いていたキールだったが、静かに歩いてきた方向を振り向いて戻り、こっそりと外へ抜け出して周囲の気配を探り出していた。

仮に外に逃げられたとしても、舞空術のある自分が素早く動けばカバー出来る為、問題無いはずと判断した為である。

 

「ベールとノワールが女神化したみたいだな。ノワールの方はまだしも…まさか、2人に何かあったのか?」

 

彼女達が施設に入ってから暫く経った後に気が感じられなくなった為、女神化したのだろうとキールは判断した。

ノワールはロムとラムの近くにいる大きな気とは別の、共犯者を見付けたから変身したのだろうと考えるものの、身代わりになると言っていた筈のベールがなぜ変身しているか理由が分からなくなっていた。

考えられる節を思い浮かべるが、とにかく取りこぼしの無いように注意を払っていく。

 

「やっぱ駄目っすかーーっ!!?」

「…ん?ロムとラムの気が近くにあるな。それとこの気は…ブランか?」

 

待機している途中、何かが星の夜空に打ち上がったのが見えたのだが、近くに移動しているロムとラムの気に気付く。

そして、まずは2人を回収する事に決めれば、舞空術を使ってその方向へと向かっていく事にした。

すると、長い舌を出しながら身構える黄色のモンスターと、ロムとラムを守るように立ち塞がっているブランが対峙していたのだ。

 

「変態?それは俺への褒め言葉だ!」

「そうかよ…なら、褒め殺しにしてやるぜっ…!!」

 

妹達を危険な目に遭わせたトリックに只ならぬ殺意を表しているブランが呟けば、彼女を包むように青白い光が迸っていた。

 

「あいつも女神化したのか…ん?」

 

何やら意味の分からない事を誇らしげに話すモンスターの様子を不思議そうに見ていれば、ブランが光に包まれていく様子と気が感じられなくなった事から女神化したと判断する。

そして、その様子を滞空しながら見ていたが、3人に向かって殺気を放ちながら近付いている気配を感じると、すぐさま気を纏ってブラン達の元へと向かって行った。

 

「覚悟しやがれ!このド変態っ!!」

 

ブランを包んでいた光が治まれば、このルウィーを守護する女神であり、ブランが変身する姿であるホワイトハートが、得物である斧を携えながら荒い口調でトリックを罵っていた。

 

「お姉ちゃん!!危ないっ!」

「女神と金色の野郎は俺に殺らせろおおぉっ!!」

「っ!もう一体居やがったのか!?ちっ…邪魔すんじゃねぇ!!」

 

しかし、ホワイトハートがトリックに果敢に向かって行こうとしたが、直後に大型機械モンスターであるジャッジが彼女の死角から現れたのだ。

問題行動ばかり起こすために待機命令を下されていたが、女神の気配に気付いて我慢が出来なかったのだろう。

ホワイトハートの死角を取ったジャッジはすぐさま得物である槍斧の杖でホワイトハートを貫こうと放つ。

ジャッジに気付いたホワイトハートは舌打ちをしながらも、迎撃態勢を取れば返り討ちにしようとすぐさま斧を構える。

 

「おい!幼女は俺のものだぞ!?ん?アギャ!?」

「何っ!?ぐおっ!!?」

「っ!今のは…!?」

 

その様子を見たトリックが声を荒げながら怒ったが、背中に何かが付いた感触を感じたものの、直後に爆発を受けて吹き飛んでいく。

更に、緑色の光を放つ弾が続けざまに飛んでくれば、ジャッジが放った槍を弾いた上に爆発を起こしていた。

爆発を弾かれた槍で防ぐものの、爆風の衝撃でそのまま地面に叩き付けられるジャッジ。

 

「金色と呼ばれたから来てやったぞ。…って、またデカブツか。…それと、援護は必要なかったみたいだな。」

「お前っ…」

「「キール君!」」

「無事だったみたいだな。良かった…黄色の相手を任せてもいいか?ホワイトハートさんよ。あの黒いデカブツは俺が相手する。」

 

援護が間に合ったキールはロムとラムが無事な様子に安堵すれば、すぐさまホワイトハートの傍に飛んで近寄る。

そして、お呼びでないジャッジをホワイトハート達から離すべく断りを入れるように一言言えば、そのままジャッジの方へと向かって行った。

 

「…はっ、端からそのつもりだっ!」

 

そんなキールの様子を見ていたホワイトハートは余計な事をしやがってと言いたそうな表情を浮かべながらも、邪魔が入らないようになった事で再びトリックの方へと向かって行けば斧を構えていく。

 

「ぬうぅっ…アッケッケッケ!フンッ!!」

 

キールの気弾を受けてよろめいていたトリックだったが、向かって来たホワイトハートの姿に喜ぶように態勢を整えれば、跳躍しながら再び長い舌を出してホワイトハートへと向けて放っていく。

しかし、素早い女神の動きに舌の動きが追い付かず、頭上に踏み込まれるのを許してしまう。

 

「このっ…超絶変態っ!」

「ぐえっ!?」

「激甚変態っ!」

「ひぎいぃっ!?」

 

舌を出したままのために身動きが取れないトリックの頭上に斧を連続して叩き付けていく。

何度も頭に斧を叩き付けられたトリックは、やがてホワイトハートの強烈な攻撃に耐えきれず地面に倒れる。

 

「テンツェリントロンペッ!」

 

しかし、そんな事で許すつもりのないホワイトハートは、回転をしながら止めの必殺技の構えに入れば、回転の勢いを利用した切り上げを倒れたトリックへと放ったのだった。

 

「ぐああああぁぁっ!!?よ、幼女バンザーイッ!!!」

 

ホワイトハートの必殺技を受けたトリックは、そのまま夜空に輝く星になる勢いで空の彼方へと吹き飛んでいった。

 

「…女神に喧嘩売ったんだ。文句ねぇよな?」

 

何処かに吹き飛んで行ったトリックを見て吐き捨てるように一言決め言葉を呟けば、再び光に包まれていくと元の姿へと戻っていった。

 

「ロム…ラム……ごめんなさい、こんな目に遭わせて…私、姉失格ね…。」

 

そして、そのまま座り込んでいる2人の方向を見れば、申し訳なさそうな悲しげな表情を浮かべながら2人に謝っていた。

 

「お姉ちゃん。お土産…」

「デッテリュー!」

 

そんな姉の様子を見てロムとラムが立ち上がれば、ブランに渡すつもりだったレアアイテムのデッテリューコインを見せれば、気にしていない様子で笑って渡そうと近付いていた。

2人の様子に嬉しそうに微笑めば、そっと2人を抱きしめていくブラン。

 

「…っ、そうだ。あいつは…?」

「さっき、あっちの方向に行ってたよ!」

「お姉ちゃん…」

「えぇ。ちゃんと借りは返さないとね…。」

 

暫くして蟠りが解けた所で、もう一体の巨大モンスターを誘導していたキールの事を思い出したブラン達は、すぐさまキールの元へと急ぐことにした。

 

 

 

「…!見付けた。」

 

ブラン達がキールが向かって行った方向に移動すれば、キールとジャッジが戦闘している様子を見付けて近付いていく。

 

「どうしたぁ!?金色の戦士ぃ!!避けてばかりじゃ話になんねぇぞおおぉっ!!!」

 

ジャッジがリーチの長い得物を巧みに操り一方的に乱撃を繰り出し、それをキールが避けたり捌いている。

 

「オラアアァァッ!!死ねっ!死ねえぇっ!!」

 

斧槍であるハルバードを乱暴に振り回しながら、なりふり構わないような怒涛の連撃でキールに畳みかけていく。

しかし、ジャッジの繰り出す攻撃に慣れたのかキールは最小限の動きで回避し始めていたのだ。

 

「…これって、加勢した方が良いのかしら?」

「でも、お姉ちゃん!キール君が危ないんじゃ…」

「違うわ、むしろ逆よ。あの動き…完全にあのデカブツの攻撃を見切ってるわ。」

 

その状況に不安そうにしていたロムとラム。

対して、戦いの経験が長いブランは、冷静にキールの立ち回り方を見て、彼が優勢に立っている事に気付いていた。

 

「ぬううぅっ!!糞があぁっ!!八つ裂きにしてやる!!」

「意気込むのは良いが、攻撃を当ててからにしてくれ。」

「テメェ…言いやがったなああぁっ!!」

 

苛立ちながら暴れるように攻撃を続けるジャッジだが、挑発するような一言により怒りを露わにした様子で、攻撃の過激さがより増していく。

 

「死ね!死ね!死ね!!し…」

「はっ!」

「ぐおっ!!?」

 

当たらない事に苛立ちが限界を迎えたのか、連撃を放ちながら、大技を繰りだそうと槍斧を掲げてオーラを纏う。

そして、掲げた槍斧をすぐさま地面に突き刺そうとしていたのだが、隙だらけと判断したキールは、すぐさま片腕を至近距離にいるジャッジの前に突き出しながら拳を強く握る。

すると、ドンッ!と鈍く重い音が響くと同時に、ジャッジの巨体が大きく後ろに後退させられていた。

 

「くっ、クソがっ…ぐはああぁっ!!?ごはっ!!?あがっ!!?があああぁぁっ!!?」

 

カウンターの要領で反撃を受け、大きく後ろに下がらされたのの、たかが一発受けただけだと言わんばかりに平気な顔を浮かべながら立ち上がるジャッジ。

しかし、立ち上がった直後に内部から直接響くような衝撃波に何度も襲われれば、悲鳴を上げながら苦しんでいた。

至近距離で放った気を内部に打ち込み、爆発させて破壊するキールの技『撃指裂波衝』である。

 

「どうした、俺をぶっ殺すんじゃ無かったのか?」

「ぐ…クソがあああぁぁぁっ!!!何故だああぁぁっ!?何故この俺様が、こんな野郎にいいいぃぃっ!!?」

 

やや拍子抜けそうな表情を浮かべ、腕を組みながら余裕綽々な態度で煽り続けるキールと、片膝を付きながら苦しみまぎれに遠吠えを吐き捨てるジャッジ。

 

「…所で、ルウィーの女神さんよ。妹達と仲直りは出来たか?」

「っ!気付いてたのね…」

「まぁな…ロム、ラム。そういえば教会の中庭にいた時、超サイヤ人を何時か見せてやるって言ってたな。」

 

そして、片膝を付いているジャッジを放置するようにブラン達の方を見て話せば、3人の様子から無事に仲直りが出来たのだろうと予測すれば、問題は目の前の巨体のモンスターだけだなと判断する。

 

「…?キール君?」

「えっ?何で今そんな事を…?」

「…俺からのサプライズだ。しっかり見てな。」

 

そして、何か考えがあるのかロムとラムの方を見ると、2人に問い掛ける。

キールの問いに不思議そうな表情を浮かべながら聞き返してきたロムとラムの様子を見て一言告げると、不敵な笑みを浮かべながら舞空術で空に浮んでいけば、そのまま片膝を付いて苦しんでいるジャッジに近付いていく。

 

「クソ!クソっ!!クソがっ!!!…おい!金色の戦士!金色になって…俺様と戦いやがれえぇっ!!!」

「…良いだろう。お前程度にはちょっと勿体無いが、折角だからなってやるよ。超サイヤ人にな…はああぁぁっ!!!」

 

ある程度回復したのか、怒りに身を任せるように荒ぶりながら声を荒げて挑発するジャッジ。

すると、そんな挑発に応じるように呟くと、一瞬にして金色の気を纏っていけば超サイヤ人2へと変身していた。

 

「わあぁっ…金色の戦士だ!」

「カッコイイ…(キラキラ)」

「(執務室で見た時の姿とちょっと違うけど、あの時とも、動画で見た時とも全然違う…!)」

 

教会に来た時に約束していた超サイヤ人の披露を見せてもらった2人は嬉しそうにしながら目を輝かせて、金色になっているキールの姿を見ている。

ブランの方はと言うと、アブネスの時に切れて変身した姿の時よりも凄まじい威圧感と力を感じ取ってやや不安そうな表情を浮かべていた。

下手をすれば、女神をも凌駕しかねないような力を持っているのだから…。

 

「な…」

「何をビビってるんだ?お前が言い出したんだろ?金色の姿になれって…俺はお前の要望に応えただけだが?」

「くそっ…黙れぇっ、黙れええええぇっ!!こんな事が、こんな事が認められるかああぁぁっ!!」

 

情報に出ていた動画の時とは違い、一瞬で稲妻を纏う超サイヤ人2へと変身したキールの姿に唖然としながらも、彼の纏う圧倒的な気の圧力に押し出されるようにジャッジは後退りしていた。

洞窟で変身した時は元の世界で変身する必要が無くなっていた事と、ゲイムギョウ界に迷い込んだ時に怪我して動けなかった時期もあって変身するのに時間が掛かっていたのだ。

激しい稲妻と燃え上がる炎のような気に覆われながら、挑発じみた言葉で同情するような煽りを入れるキール。

そして、実力の差を見せつけられたジャッジは迫る威圧と気の衝撃に耐えながらも怒り叫んでいた。

もはや一方的な状況になっている様子を見て、少し敵に同情していたブランであった。

 

「さて…覚悟は出来たか?」

「ぐっ…クソがっ!せめて女神の1人だけでも…ごあっ…!?!?」

 

そして、さっさと済ませてしまおうかと考えていたキールだったが、女神だけでも仕留めるつもりでブラン達に向かおうとしたジャッジの行動に反応して目の前に一瞬で来ると、ジャッジの腹部に拳の連打を勢いよく繰り出していく。

反応すら出来なかったのか、腹部から感じる強烈な激痛に身体を九の字に折るように蹲ってしまうが、追い打ちのようにアッパーを顎に受けて勢い良く宙に吹き飛んで行く。

 

「こいつは追加だ。冥土の土産に持って行け。」

 

無造作に空に打ち上げられたジャッジを見ながら呟くと、身体に纏う稲妻が激しく迸り出せば、纏っていた気も急激に膨れ上がっていく。

そして、そのまま両手を腰に引いた鳥の嘴のような構えを取ると、片手の手甲をもう片手の掌で掴んで添えるように組み重ねていけば、掌に気を集中させていく。

やがて、掌に集まって来た気の球は激しい光と稲妻を迸らせ、夜の園内を照らしていた。

 

「…塵衝波ーーっ!!!」

 

そして、掛け声とともにジャッジの方向へと腕を付き出せば、溜め込まれていた気は空をも覆う程の巨大な光線波となって放たれ、吹き飛んでいるジャッジを飲み込んでいった。

 

「なっ…!?ぐああああぁぁぁっ!!?くそがあああぁぁぁっ!!!……」

 

エネルギー波に飲み込まれたジャッジは、悲鳴のような絶叫を上げながら、遥か空の彼方へと消し飛んで行ったのだった。

 

「ふぅっ…まぁ、こんなモンか。」

「……」

 

空も覆う光線が出てくるとは思ってなかった様子のブランは、目の前で起きた状況に呆然としていた。

 

「…ロム、ラム。これで約束は果たしたぞ。」

「うん…!とっても格好良かった…!(キラキラ)」

「すっごーいっ!!今のは何!?何だったの!?」

「あー…気を使ったエネルギー波だ。そんなに大した物じゃないんだが…」

 

超サイヤ人2を維持したまま纏っている気を解けば、そのままブラン達へと近付いていくキール。

そして、はしゃぐロムとラムの質問に答えながらも、その後に光線を目撃したネプテューヌやノワール、そしてベールが現れれば、放った気功波についての質問攻めを受ける羽目になってしまっていたのだった…。

 

 

–––––

 

 

「えぇーっ!!?寝不足!?」

「そう…気を失ってたのはそのせい。一緒に遊びに行かなかったのも…」

「なによそれ…もう……」

 

誘拐事件が無事に解決した翌日、ルウィーの教会の室内で席に座る四女神達。

ブランが倒れた理由を聞かされたネプテューヌ達は驚いた様子で彼女を見ていた。

当の本人は申し訳なさそうにしているが、案の定と言うべきか、理由を聞いたノワールは半ば呆れかえっている。

 

「このところ徹夜続きで、あなた達と向き合う余裕が無かったの。それなのに、ロムとラムを助けてくれてありがとう。ノワール、ベール。」

 

そして、自分の不甲斐なさを認めるように謝りながらも、妹達を助けてくれた事に対して礼を言う。

そんな彼女の様子に安堵の表情を浮かべるネプテューヌ達。

 

「それと…ネプテューヌとキールも、ありがとう。中継の時に私を庇ってくれたりして…。」

「あぁ、なんのなんの。あんなムカつく幼女は追い出して当然だからね!」

 

礼を言われたネプテューヌも、アブネスについては良い印象は持っていないので、気にしないで良いと言いたげな様子で笑って話す。

そしてブランは、相も変わらず気を使っている様子で部屋の壁に寄り添うように立っているキールの方を見れば、会ったばかりで散々ぞんざいな扱いをされてたにも関わらず、中継の時には金色の戦士になってまで注目を集めたり、対処は出来ていたとはいえ不意を突かれた所を助けてくれた事について礼を言う。

 

「気にするな、俺は自分がやりたいようにしただけだ。嫌われ役は慣れている。何せ、あのアブネスとかいう奴は気に食わなかったしな。」

 

ブランの様子を見て、もう心配なさそうだなと思いながら安堵の表情を浮かべていたキールは、腕を組んで壁にもたれたまま聞いていたが、壁から離れて組んでいた腕を解くと、あくまでも自分の意志で動いてただけだから気にする必要はないと話す。

特に中継の時については、アブネスのやり口が完全に気に入らないという理由が第一なのだが、女神であるブランがシェアの影響を受けられずに状況が悪化する位なら、自分が悪役として叩かれるような態度で動けば、少しはブランに対しての批判も少なくなるかもしれないと考えていたのだ。

 

「お姉ちゃん…!これ、見て…♪」

 

部屋の雰囲気も和やかな空気になった辺りで、本を持ったロムが部屋に入って来た。

そして、その本に書いたブランの笑顔の絵を見せる。

 

「うん。よく描けてる…っ!?」

 

本の似顔絵を見たブランは嬉しそうに見ていたが、何かに気付いた様子で本を持てば、慌てて席から立ちあがると、ラムやネプギア達のいる場所へと急いで走り出していた。

 

「…?どうしたんだろ?」

「まあ、追い掛けてみれば分かるだろう。」

 

そんな彼女の様子に不思議そうにしていたネプテューヌ達だが、一先ず彼女の後を追い掛けてみる事にした。

 

「ラム!落書き止めてっ!」

「えぇーっ?こんなに同じ本が一杯あるんだし、別に良いでしょ?」

「だ、駄目っ!」

「どうして?」

「そ、それは…私が徹夜して書いた小説だからだーっ!!」

 

特急便と書かれた大量のダンボールが置かれている場所にブランが慌てて来ると、本に落書きをしているラムに止めるように言う。

しかし、同じような本が大量にダンボールの中に詰まっている為、一冊だけなら問題無いはずなのだと、本に落書きをしているラムに言われてしまっていた。

痛い所を突かれたような表情を浮かべたブランが何とかして言い繕うとしていたが、開き直るように自らが書いた小説だと言い放つ。

ネプギアとユニが座りながら小説を読んでいたので色んな意味で遅かったのだった。

勝手に小説を読んで欲しくは無かったのか、ブランは恥ずかしさで顔を赤くしていた。

 

「(寝不足の原因って、これか…)」

 

ブランが寝不足だと話していた原因を察したキールは、積まれているダンボールを横目に見ながら、ブランも人の事を言えないなと思っていた。

 

「小説?つまり…ブランの書いた同人誌って事ですかしら?」

「えっ?ユニ、どんな話なの!?」

 

そんなブラン達のやり取りを見て、どんな内容が書かれた本か気になったノワールがユニに尋ねると、本を読んでるユニとネプギアが大まかながらも本の内容を話し出していた。

 

「えっと…空から落ちて来た少女と、生まれつき特殊能力を持った少年が世界を救う話…」

「ふむふむ…邪気眼と書いて、デスティニーと読む…」

「じゃ、邪気眼?そこから何でデスティニーに変換されるんだ?」

「よ、読むなぁ…!!」

 

更に、いつの間にか本を手に取ったネプテューヌも内容を説明するように音読をしていくと、その内容に純粋な疑問を浮かべた表情で突っ込みを入れるキール。

次第にエスカレートしていく周りの様子に、ブランが身体を小刻みに震わせながら顔を真っ赤にしていく。

 

「凄いっ…!主人公が新しい力に目覚めた…カッコイイっ!」

「~~~~っ!!読むなああぁぁっ!!!」

 

真剣な表情で読んでいるネプギアの一言が止めとなり、顔を真っ赤にしたブランの怒号が教会内に響き渡ったのであった……

 

 

–––––




これにてアニメ第2話までの話は完了となりましたm(_ _)m
最終的にオリ主も神の領域に到達させようかなと考えています(・ω・)
その方法についてまだ考えている途中ですけどね(´・ω・`)


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第10話『遥か高みを目指して‼新たな段階への挑戦‼︎』

今回は完全にオリ回でございますm(_ _)m
前回宣言した通り、オリ主が話の中心になっています(´ω`)
後は敵サイドの動きを少しだけ入れておこうかなと(-.-)


–––––

 

サイヤ人の青年キールがゲイムギョウ界に迷い込んでから、早くも4ヵ月の月日が過ぎた…

ギルドの依頼を受けて来たキールが、モンスター討伐の依を終えてプラネテューヌの街外れへと戻って来ていた。

イストワールに元の世界へ帰る方法を調べて欲しいと頼んでいたのだが、キールの世界がゲイムギョウ界との世界軸とは全く別に存在しているらしく、現時点ではまだ解決策が無いとの事だった。

元の世界に帰るにもドラゴンボールが必要になる為、ギルドの任務ついでにドラゴンボールを探していたのだが、特殊な装置も無い為に空回りの日々を送っていたのだった。

 

「ドラゴンレーダーがあれは、ドラゴンボールを探すのも苦労しないのにな…。」

 

ドラゴンボールが見付からない事に愚痴をこぼしながらも、ベルトポーチから小箱を取り出して開ける。

箱の中からホイポイカプセルを一つ取り出しながら、放置されている空き地を見付けて向かうと、その場所にカプセルを軽く放り投げていく。

すると、空き地に無造作に投げられたカプセルから特徴的な音が鳴ったと共に煙が出てくる。

やがて、煙が晴れるとドーム型の大きな施設がいつのまにか出現していたのだった。

周囲に人の気配が無い事を気を感じ取れば、確認を終えて出現した施設の中に入って行くと、入口にあるスイッチを押して装置を起動していく。

 

「久しぶりだな。これを使うのは…」

 

キールがホイポイカプセルから取り出した施設は、重力を発生させる装置が搭載されたトレーニングルーム施設であった。

施設内へと入ると壁から出て来た特殊な戦闘スーツを身に着替え、そのまま施設の大半を占めている巨大な部屋へと足を運ぶ。

着替えた戦闘用スーツは薄手なのだがかなりの重量があり、それを着ている時点でキールは自身の体重の倍以上の負荷を受けている。

 

「最後に使ったのはいつだったかな?しかし、修理も手入れも、内蔵されてるユニットが勝手にやってくれるんだったか…ホント凄いな。」

 

実は、ホイポイカプセルも重力トレーニングルームも、元の世界で助けた世界的な大企業から貰ったもので、日頃から肌身離さず持ち歩いており、大切に使っていたのだ。

なお、多忙な日々を過ごすうちに使わなくなっていたのだが、ゲイムギョウ界に来てからは暇な時間の方が圧倒的に多い為、折角なので修行を行う時は使おうと決めたのだ。

長年使用されていなかったにも関わらず、新品のような綺麗な状態で現れた設備を見てキールは感心していた。

メンテナンス等も、ホイポイカプセルに収納されている状態でもユニットが行っているのか、常に最良の状態が保たれている。

 

「衛星でバレてなければ良いんだが…バレても仕方がないか。」

 

最初はプラネテューヌ教会内にある適当な敷地で展開して使おうかと考えていたが、こんな施設が何も無い場所で出現したらまた騒ぎになるなと考えた上での行動だった。

しかし、一ヶ月前のロムとラムの誘拐事件の時に使われ、後に四大陸で運用されている人工衛星の映像システムの事を思い出せば面倒そうな表情を浮かべるものの、とりあえず修行を終えた後に考えるかと決めながら柔軟運動を続けていく。

 

「重力設定は…まずは50Gで行くか。それから10分経過で自動的に50Gずつ上昇させれば良いな。」

 

柔軟運動を終えて立ち上がれば、重力装置を久しぶりに使う為、まずは身体を慣らす必要があるかなと考えれば、50倍の負荷から開始していくかと決めると、装置に表示されているパネルに触れて設定すれば施設の重力装置が起動していく。

 

「ぐっ…はああぁぁっ!!!」

 

起動と同時に自らに掛かる50倍の重力の負荷に苦し気な表情を浮かべながらも、すぐに真剣な表情へと変化すれば重力トレーニングを開始するのであった…

 

–––––

 

 

「お姉ちゃん、ベールさんからメールが届いてるんだけど、ホームパーティと5pb.さんのライブに皆を招待したいって…」

 

所変わってプラネテューヌ教会の広いリビングルームで、何時ものように抱き枕を支えに寝転がりながらゲームをしているネプテューヌと、パソコンの画面を操作しているいるネプギアの姿があった。

一緒にゲームをしていたのだが、起動させていたパソコンからメールが届いた音が聞こえた為、メールを確認していたのだ。

 

「ホント!?もちろん行くよ!それっていつ頃になるの?」

「えっと、ちょうど1ヶ月後だよ。楽しみだなぁ…。」

 

ベールからのライブとホームパーティの招待を聞いたネプテューヌは、ゲームを一旦中断して立ち上がるとネプギアの傍に寄りながらパソコンの画面を覗き込む。

予定されているライブの日を確認すれば、待ち遠しそうにしていたのだった。

 

「そういえば、キール遅いね…。」

「うん。朝からギルドに行ったきりで、まだ帰って来てないね。」

「…はっ!?もしかして、他の住居を探してるとか!?」

「そ、それは流石に無いと思うよ?キールさんだって住み慣れた所から移る気は無いって言ってたけど…」

 

ふと、時計を見ればお昼時の時刻を指している事に気付くと、朝早くからギルドに行ったまま帰って来ていないキールの事を思い出すと、彼が教会に初めて来た時の事を思い出す。

しかし、教会の生活に慣れた事や仕事も完璧に把握したもあって、住居を変えるつもりは今の所は無いと言っていた事をネプテューヌに話すものの、日頃からの姉の様子から冗談で済まなさそうな状況に、何とも言えないような困った表情を浮かべているネプギアであった。

そんな状況の最中、パソコンの国民向け掲示板サイトに掲載されている最新情報覧のトップに書かれている1文に視線が移った。それも、例によって動画付きのものが。

 

「あれ?これって、キールさんの事だよね?」

「えーっと、何々…えっ?何これ!?…ネプギア、ちょっと確認しに行ってみる?」

「う、うん。私も気になってるから、行ってみようよ。」

 

早速乗せられている動画を確認すると、空き地の前で佇んでいたキールが何かを投げた後、煙と共に現れた施設内に入って行った様子を映していたのだった。

動画の背景の街並みや、コメントを見てプラネテューヌの街外れだろう。

あの施設がどのようなものなのか気になった様子でいれば、早速どういうものか確認する為にコメントに書かれている場所へと向かう事にした。

 

–––––

 

「だあぁっ!せいっ!りゃあああぁぁっ!!!」

 

修行を開始して1時間が過ぎ、キールが行なっている重力修行もより過酷さを増していた。

重力下の中で行なっているのは、想定した仮想の敵からの攻撃を避けながら、施設内を忙しなく動き、拳の突きや蹴りを繰り出し続ける訓練だ。

表示されている重力は350Gとなっている為、キール自身の体重と戦闘用スーツの重りの合計分から更に350倍が掛かっている。

 

「はぁっ…はぁっ…これ以上は流石に…休憩を挟まないとな……」

 

合間に小休憩を入れているとはいえ、負担の大きな重力修行は身体にこたえるのか、肩で呼吸をするように息を切らしていた。

なお、携帯電話も着替えたついでに施設内にある待機室に置いている為、早速バレてしまっている事も状況など知らずにいるのだが…

 

「(休憩後は極影身を使って、実戦を想定した組み手を始めよう…)」

 

より高度で過酷な修行に移る為にも一旦休憩を入れるかと考えながら、装置を起動させたパネルに近づいて行く。

ひたすらに動き続けていた為か、ふらつきながらも装置のパネルに触れる。

やがて装置から鳴り響いていた駆動音が静かになると共に重力装置が停止していった。

 

「はぁっ…はぁっ……」

 

重力の負荷が無くなれば、その場に倒れ込んでしまう。

大の字になって横たわりながらも、これからの事について少なからず不安を募らせていた。

 

「(…もし仮に、元の世界に戻れなかったら…その時俺はどうすれば良いんだ?このまま此処で過ごす事になるのだろうか…)」

 

ゆっくりと目を閉じながら考え事をしていれば、自分が元いた世界にいる、親しい人達の面影が浮かんでくる。

このままこの世界で暮らす事という事は、ネプテューヌ達のいる世界で生涯生きて行く事になるのだ。

 

「(…今、考えても仕方がないか。帰れなくなった時に考えよう。今は、俺に出来る事を…ただひたすらにするだけだ。)」

 

次から次へと出てくる不安を振り払うように目を開ければ、倒れている体勢から勢いよく起き上がる。

 

「(それに…もっと強くなるんだ。まだ見えない遥か高み…その先に俺は到達する。そして、いつかあの人を…師匠を超えてみせるっ!)」

 

少しの間、深呼吸をしながら気を落ち着かせていく。

そして、幼い時に別れて以来会っていない、うる覚えながらも微かに浮かぶ…自分を拾って登龍館に連れて来てくれた恩人であると共に、今の自分の実力でもまだ勝てないであろう師の後ろ姿を思い出す。

遥か先にある目標を超えてみせるという、小さな頃からの強い志を携えて強く拳を握りしめながら、不敵な笑みを浮かべて天井を見上げていた。

 

 

「此処だけ開かないって事は、この中にキールがいるんじゃないかしら?」

「それにしても、私達に黙ってこんな施設を使ってるってキールも酷いよー。」

「貴方の場合、仕事をサボりたいからとしか考えられないんだけど?」

 

「…ん?この声、ネプテューヌ達か?ま、まさか…」

 

ふと、施設内の待機室から騒ぎ声が聞こえてくれば、我に帰ると共に嫌な予感を感じていた。

 

「それにしても、ノワールとブランも此処に来てたなんてびっくりしたよー。てっきり教会に向かってるって思ってたからさ。」

「人集りがあったからもしかしてと思ったの。それに、1ヶ月前の借りがあるから…」

 

それも、聞き慣れた声が何人も聞こえてくる。

何時ものメンバーが此処に来たのかと考えるも、また質問攻めに合うと思えばいい気はしないのだ。

 

「(…やむ終えないか。)」

 

もうバレたのかと面倒そうな表情を浮かべるものの、此処に居座っても仕方がないかと考えれば、諦めた表情を浮かべながらパネルを操作していく。

重力装置が勝手に作動する危険がある為、施設内に入れても重力装置の部屋に無断で入れないようにロックを掛けていたのだが、パネルを操作して重力装置が起動しないようにしてから部屋のロックを解除する。

 

「あっ、扉が開いたよ。おぉ、キール発見!」

「お前らか……」

 

そして、待機室で待っていたネプテューヌ達が、扉のロックが解除された事に気付いてキールのいる重力装置の部屋へと入って来たのだった。

 

「それにしても、さっきの部屋とは違って、こっちの部屋はかなり広いわね。」

「それに、凄い大掛かりな装置があるわ。何かしら…?」

「危ないから勝手に触らないでくれ。」

 

不服そうにしているキールの様子など御構い無しに部屋に入れば、部屋の隅にある大きな重力発生装置を興味深そうに眺めているノワールとブラン。

一応念の為に釘を刺すように迂闊に装置に触れないようにキールは声を掛けていく。

 

「やっぱりキールが関係してたのね。それにしても…何時もと違って変な格好してるけど何をしてたの?」

「あんまり似合ってないですぅ…」

「悪かったな…只の訓練だ。この格好は此処の訓練の為に着替えてるんだ。しかし、ネプテューヌとネプギアだけじゃなくて、アイエフやノワール達も来てたとはな。」

 

キールの格好を見てすぐさま突っ込みを入れてきたアイエフの言葉に対して、訓練をするのに最適な服装だからという理由で着ていると話すキール。

普段の服装で見慣れている為か、似合っていないと言ったコンパは勿論のこと、その場にいるメンバーもコンパの言葉に頷いていた。

元々は戦闘民族サイヤ人の戦闘服を元に作られているのだが…

因みに、元の世界でもキールが着ても似合っていないと不評を買っている代物だ。

 

「それで、どんな訓練をしてたの?」

「重力発生装置を使って、負荷を掛けながら動き回り続ける訓練だ。身体に掛かる負荷が尋常じゃないから、この訓練方法は気を使える奴に限るがな。」

「重力を発生させる…って、重くするって事?」

「ダンベルとかサンドバッグとかは無いの?」

「すぐに壊れるんだ…ここで発生する重力に耐えれなくてな。まあ、俺にとってはこの施設が使える場所さえ取れれば、重力下での修行が1番効率が良いと思っている。」

 

装置以外に大したものが見当たらない部屋の中を不思議そうにしながら見ていたノワールが、普通の訓練なら置いてありそうな物を思い浮かべながら聞き尋ねる。

しかし、この施設内で行っている訓練ではすぐに使い物にならなくなる為、そういった物は置いていない事を話す。

 

「…さて、そろそろ訓練を再開したいから、この部屋から出てくれないか?隣の部屋に居てくれて構わないが、この部屋は装置が起動すると危険だしな。」

「えぇーっ、良いじゃん別にー。」

「危険だって言われても…壁みたいな装置以外に何もない部屋なんだし、あんまりピンとは来ないわよ。」

 

そろそろ訓練を再開したいのか、部屋をくまなく見渡したりしているネプテューヌ達に部屋から出るように言ったが、特に広い空間と大きな装置以外に何もない室内の様子から、この部屋の危険さがあまり分からない様子でいたのだった。

無論、重力発生装置なんてものはプラネテューヌにも存在しない代物なのだから仕方がないのだが…

 

「そうだな…ネプテューヌ、ノワール、ブラン、この部屋の重力を少しだけ試してみるか?」

「ふぇ?」

「3人は女神化も出来るしな。万が一の時でも何とかなるだろ?」

「まあ…別に良いけど、そんなに危険だとは思えないわね。」

 

このままでは埒があかない為、どうしようかと考えれば、一度体感すれば理解してくれるだろうと思うと装置のパネルを起動させて重力負荷の設定を2Gに固定して設定していく。

アイエフとコンパ、そしてネプギアやユニ、ロムとラムが待機室に行ったのを確認すると、重力発生中に部屋に入らないようにロックを掛けていく。

 

「今に分かる。始めるぞ?」

 

そして、重力設定を2Gにした状態で装置を起動すると、部屋内が暗い赤色へと変化すると共に倍の重力が発生していく。

 

「ねぷぅっ!?」

「「っ!?」」

 

室内の変化と自らに掛かる負荷によって重くなった3人は、その場で重力の流れに負けないように踏ん張っていた。

特に依頼以外では日頃から運動をしていない為に、余計に堪えているだろう。

 

「な、何よこれ…」

「ちょっと、キール…その装置、止めてっ…」

 

因みに、重力が掛かった時点で、3人から表情の余裕が無くなっている。

3人の様子を見て起動させた重力装置のスイッチを押せば、再び重力が解除されて部屋内の照明も元の色に戻っていた。

 

「お、お姉ちゃん、大丈夫!?」

「ねぷぅーっ…もう少しで轢かれた蛙になりかけたよー…」

「まったく…だから危ないって言っただろ?」

「うぅっ、こんなに重くなるなんて思わなかったわよ…」

 

負荷が無くなればその場に座り込んでしまった女神3人を、待機室に居たネプギア達が扉から入って慌てて駆け寄っていく。

イメージしていたモノとは違ったのか、3人とも辛そうな表情を浮かべていた。

重力の負荷に馴れずに疲れている3人を見れば、この結果を予想していたのか両腕を組みながら少し呆れた表情を浮かべていた。

 

「何で貴方は平然としてるのよ…」

「この訓練は長い事やってた時期があって馴れてるんだ。それに、俺が修行している設定とネプテューヌ達が体感した重力の設定がそもそも違うからな。まあ…久し振りだから長時間続くと流石に堪えるが。」

「全く、どんなにタフなのよ。サイヤ人っていうのは…。」

 

ゆっくりと起き上がったブランは、少し怒った表情を浮かべながらも、同じ重力下に居たにも関わらず、平然とした何時もの様子でいるキールを見て突っ込む。

しかし、先程まで350倍の重力下で修行していたキールにとっては最早負荷がちょっと掛かったぐらいにしか感じない程の為、即座に答えて説明していく。

 

「…キールが大怪我してても動けてた理由が分かった気がするわ…」

「でも、あんまり無理は禁物です。キールがプラネテューヌに来た時みたいになるですよ?」

「…まあ気を付けるが、それでも俺は強くなりたいんだ。…さ、修行を続けるから隣の部屋に移ってくれ。」

 

しかし、彼の言葉に無理しないようにと釘を刺すコンパの一言に、1ヶ月間動けなかった時を思い出してしまう。

あんな目に極力ならないようにしようと考えているのか、キールは大人しく聞き入れるものの、それでも強くなる事を優先した彼はネプテューヌ達に待機室に移るように言ったのだった。

そして、キールが修行する様子を隣の部屋から見る事にしたネプテューヌ達は、どんな身体の作りをすればそんなになるんだと言いたげな表情を浮かべながら、500Gに設定された状況下で実戦を想定した修行を見ていたのだった…

 

–––––

 

 

とある人気を感じない怪しげな場所にて…40を過ぎているであろうビール腹が特徴的な中年と、背の低い落武者のような髪型をした痩せ型の男が居た。

そう、ドラゴンボールを盗んでキールにコテンパンに薙ぎ倒され、特異点の出現時に切り離して何処かに放置されたはずのならず者の2人である。

 

「…これで、ドラゴンボールも残すは1個ですよ親分!」

「よし…此処に無いのは四星球だけだ。あの登龍館の化物に邪魔され、目が覚めて恐竜みたいな怪物に襲われた時はどうしようかと思ってたが、変わった女と喋る鼠に助けられてから、俺達はつくづくツイているな。」

 

彼らが手にしているものは、懐中時計のような探知機ドラゴンレーダーと、赤色の星が入った小さなオレンジ色の玉…ドラゴンボールが入ったアタッシュケースであった。

密かに何やら企んでいるような表情を浮かべているものの、その表情はあまり良く無いものだ。

 

「でも、良いんですかい?喋る鼠はまだしも、あの生意気な青色女にこき使われて…」

「ばっ、馬鹿っ!しょうがねぇだろうがっ!?幸いにもドラゴンボールの事については見られてるが、変わった水晶ってだけでバレてないんだ。それに、お前も見ただろ?あの怪獣をぶっ倒した女の姿…ドラゴンボールも揃ってないのにあの女に楯突いてみろ?どうなる事か…」

 

アタッシュケースを物陰へと隠し込みながら途端にヒソヒソ声になれば、誰かの事を蔑んだような会話をしている。

恐らく、自分達の野望の弊害となっている者のことだろう。

 

「私がどうかしたか?」

「「!!?」」

 

しかし、直後にその場に現れた人物の声が聞こえてくれば、表情を青ざめ冷や汗をかきながらその方を振り向く。

そこにはマントを身に纏った女性がいた。

ラステイションのトゥルーネ洞窟の時や、ルウィーの双子誘拐事件にも一枚噛んでいた人物である。

 

「ひいいぃっ!!?マ、マジェコンヌ様!!」

「ななな何でもありませんよ!?我々は例のブツの…残りの場所を割り当てていただけですから〜!あははは……」

 

マジェコンヌと呼ばれた女性を見るなり、飛び上がりながらも慌てふためき、媚びを売っているならず者の2人組であった。

 

「…ふん、まあ良いだろう。お前達はあくまで邪魔な女神どもを片付けるまでの手駒に過ぎないのだからな。最後のブツが発見された。さっさと回収に向かうぞ。」

「「か、畏まりました!!」」

 

そんな2人の様子に興味も無さそうにしながら、ネプテューヌ達こと守護女神を排除するべく、最終段階に差し掛かる為、最後にある必要ないものを探し出しに向かう事にした。

そんなマジェコンヌをよそに、二人組の男達はアタッシュケースを大事に抱えながら慌てて追いかけて行く。

 

「フフフッ…待っていろ、忌々しい守護女神どもよ…。もう少しで貴様らを排除し、このゲイムギョウ界を我が手中に収めてやる。」

 

問題なく手筈通りに計画が進んでいる事に不敵な笑みを浮かべ、計画が成功した先にある、自らが思い浮かべる世界を確信しながら、今か今かと待ち遠しそうな表情を浮かべて踵を返して歩き去って行ったのだった…

 

−−−−−

 




キールが重力発生装置の部屋で着用しているのは、ドラゴンボールZやドラゴンボール超でベジータが着ている戦闘服に似たものです(´ω`)
次はアニメ本編の3話目の中盤辺りまでの話になると思いますm(_ _)m
多分、3話目の辺りが1番の内容が長くなると思いますm(_ _)m
オリ主もあの形態に変身もすると思いますが…多分やられ役になると思います( ;´Д`)

ちなみに、ならず者の2人はモブ扱いです(´Д` )


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第11話『ライブとホームパーティ開催! 雄大なる緑の大地リーンボックスへ‼︎』

アニメ本編3話目冒頭から中盤までの間の話になりますm(_ _)m
オリ主と敵サイドをどうすれば上手く動かせられるか困惑しながら書いております(´・ω・`)


−−−−−

 

緑の女神が守護する大陸リーンボックス。

この大陸は自然が多く残った風土で、中世時代のような雰囲気を持っている。

元々は独創的な文化を持っており、また、軍事力に長けていた。

しかし、5ヶ月前の同盟によって軍事力が必要無くなった事で、軍事施設の物などを利用した娯楽やスポーツ、レジャー施設などに力を入れている。

その為、他の大陸とは違ってサービスなども充実しているので、旅行などで訪れる人も多いのだ。

 

現在キール達はリーンボックスにある巨大なスタジアム会場の中に居た。

今日この場で行われる歌姫のライブにベールに招待された為、全員でライブを見に来たのだ。

なお、肝心のベールの姿は居ないのだが…

こういうライブ会場には慣れていないのか、ネプテューヌ達とはぐれないように注意しながら、キールはライブの開始を待っていた。

 

「随分と大掛かりなイベントだな…」

「そろそろ始まるよ?楽しみだねー。」

 

ライブ会場の天井ドームが開かれると快晴の青空が現れる。

そして、それと共に入りの音楽が流れると共に現れた少女の歌と共にライブが始まった。

リーンボックスの歌姫と言われる5pb.と呼ばれている少女だ。

彼女の歌と振り付けと共に、青空に現れた武装の外されているライブ専用の戦闘機が、飛行機雲を使ってパフォーマンスを行っていた。

戦闘機には武装は装備されておらず、代わりに国の象徴であるベールの色である緑色の塗装や、ベールの姿を大きくプリントした物が貼り付けられている。

 

「わあぁっ…すご〜いっ!!」

「凄い盛り上がり方だな…まるで、会場全体が熱気で包まれてる感じだ。」

「でしょ?さっすがリーンボックスの歌姫、5pb.ちゃんよね。」 

「ですぅ!」

 

ライブの盛り上がりとパフォーマンスに満足げな様子のアイエフが5pb.を称賛していた。コンパも同じく満足そうな様子でライブを見ている。

より一層高まるライブの熱気を感じながら、ふと今置かれている状況と片付けなければいけない問題事がキールの頭の中を過っていた。

 

「(…まだ対処しないといけない問題も多い。だが今は…今だけは少しだけ忘れて、この時間を皆と楽しむのも良いかもな。)」

 

しかし、楽しそうにしているネプテューヌやノワールにブラン、アイエフとコンパ…そしてネプギアとユニ、ロムとラムの様子をふと見ながら、ただ問題事だけに意識を向けるのでは駄目だなと思いながら、今はただ、この盛り上がっているライブを皆で楽しもうと思いながら見ていたのだった。

 

やがて歌姫の歌っている曲は一番盛り上がる場所であるサビに入ったのか、会場の歓声も高まると共に興奮と熱が同時に上がっていく。

ライブの盛り上がりも最高潮に近付いている最中、空を駆け巡りながらもまだパフォーマンスを行なっていなかった、残りの三機の戦闘機のうち二機が、飛行機雲でハートマークを書き上げていく。

そして、2機の戦闘機によって作り上げられたハートマークに、最後の1機が飛行機雲を出しながら接近していく。

そして、ハートマークを潜り抜けた所で飛行機雲を出すのを一旦止めていく。

そして、潜り抜けてから少し距離が離れた所で再び飛行機雲を出しながら急加速していくと、5pb.の腹辺りに描かれているタトゥーが完成したのだ。

歌のサビの一区切りのタイミングと戦闘機のパフォーマンスが見事に合わさり、会場は盛り上がりの最高潮を迎え、歓喜と熱気で溢れかえり続けていたのだった…

 

−−−−−

 

ライブ会場近くの海辺付近…

透明度があり美しく様々な魚類が泳いでいる中、2足歩行の特殊潜水服を身に纏った一匹の鼠と、同じく潜水服を着ている中年男2人組の姿が、何やら探索のように手分けして歩き回り続けていたのであった。

 

「全く、ライブか何か分からないけど五月蠅いッチュねぇ…。こっちの身にもなって欲しいッちゅ。」

 

鼠はライブで響き渡る音に五月蝿そうにしつつも、1匹虚しく冗談を交えながら、何処となくドラゴンレーダーに似ているレーダーを頼りに、鼠は海底を全速前進しつつ辺りを見回していた。

 

「それに、海と鼠を掛けたら海鼠ッちゅよ。全く笑えないッちゅ。」

 

やがて、レーダーに反応する付近に到達すると、不気味な赤色に光る一つの石が砂に埋もれながらも姿を晒していたのだった。

 

「!…チュ、遂に見つけたッチュ!おい、お前らもさっさと付いてくるっちゅよ。」

「「か、畏まりましたー!」」

 

鼠は、それを拾い上げるとその場を後にする為、2人組の男達に付いてくるように言えば、先に港の方へ向かうのだった。

 

「…クソッ、何でよりにもよって鼠と仲良く海中探索なんだよ。勘弁して欲しいぜ…」

「でもこれで、俺達の目的も達成しましたぜ親分!」

「後は、女神とかやらを何とかすれば俺達は自由の身だ。そうなれば…ぐふふふっ……」

 

港の方へと先に向かう鼠を追い掛けながら、こっそり手に隠し持っているある物を確認しながら呟いていた。

その手に持たれていたのは、最後の一つであるドラゴンボールの四星球であった。

後は用が終われば邪魔者が居なくなる…そんな浅ましさを感じさせるような、悪どい表情を浮かべながら。

 

−−−−−

 

「全く、ライブに招待してくれたのは良いけど、肝心のベール自身が来ないなんて…どういう事なの?」

「…きっと、何か事情があるのよ。」

 

午前のライブが終わり、リーンボックスの教会へと足を運んだキール達だったが、名家の屋敷を思わせるような外装から広い廊下を歩きながら、何処かの部屋に居るだろうベールを探す事にした。

 

「まあ、それに関しては本人を見つけないといけないがな。しかし、慣れないと同じような感じで迷うな…」

 

廊下の広さといい幾多もある扉の間取りといい、均一的な感覚を保たれている為、慣れていないと何処の部屋に行けば良いのか迷ってしまうだろう。

ネプテューヌとロムとラムが手当たり次第に扉に触れ、開かなかったら次の扉に走って向かって行っている。

 

「おっ、この部屋空いてるよ。お邪魔しまーす!」

「勝手に入って良いか知らないが…まあ、やむ終えないか。ん?……」

 

そして、鍵が掛かって居ない扉を開ければ、真っ暗な室内をお構いなしに入っていくネプテューヌ。

相変わらず遠慮を知らないなと思いながらも続いてキールが部屋内に入るも、室内の様子を見て絶句していた。

廊下から入ってきている明かりだけでも分かるほど、部屋中が物で散乱している酷い有様だったのだ。

 

「…何が、あったですか?」

「荒らされた跡みたいね…」

「いや、単に掃除が行き届いて無いだけなんじゃ…」

 

続いてノワール達も入って来れば、室内の様子を見たコンパとアイエフが何かあったのだろうかと思いながら見渡して話すも、単に片付けられていないだけだと分かったノワールは呆れ返りながら部屋の中を見ていた。

 

「おおーっ!これは18歳にならないと買えないゲームっ!」

「ちょっと、やめなさいよ。ちっちゃい子もいるんだから…」

 

そして、散策するように落ちている物を見渡すネプテューヌが、何やら物々しそうな様子で置いてあるゲームの一つを指差ししていた。

あまり教育上よくないものなのか、慌ててアイエフがやめさせようと止めている。

 

「それにしても、酷いなこの部屋…物置き部屋じゃあるまいし……」

「後方の部隊は何をしていますの!?」

「ん?」

 

完全に呆れた様子で部屋の奥にある扉を調べようと向かったキールは、扉の奥から聞こえてきたベールの叫び声に動きが止まる。

当然、部屋中の全員が扉の方へと視線が移れば、扉の前に先に来たネプテューヌが扉を開けた。

 

「私が援護しますわ!」

 

奥の部屋に居たのは、パソコンの画面に釘付けになるように真剣な表情でゲームをしている、マイク付きヘッドホンを付けたベールが居たのだ。

勿論部屋が空いている所か、ネプテューヌ達がいる事にすら気付いていない。

 

「あぁっ!?それは早すぎますわ!?」

 

「何やってるのよベール…」

「どう見てもネトゲね…それも四女神オンライン。」

「だから叫びながらゲームをしてるのか…」

 

そして、大きなリアクションをしながら慌てた様子でゲームを続けている彼女の様子に、ガックリと肩を落とすノワールに呆れながらも静観しているブランが話していた。

先程の声はゲームをしている他のプレイヤーに指示していたものなのかと納得するものの、類は友を呼ぶとはこういう事かと呆れていたキールであった。

 

「おーい、そこの廃人さーん。」

「…ダメだな。聞こえてない。皆は耳を塞いでてくれ。」

 

ネプテューヌがゲームをしているベールに声を掛けるが、まるで反応の一つ無くゲームに集中している彼女を見れば、気付かせる為にも強行手段を取るかと考えれば、その場にいるベール以外のメンバーに耳を塞ぐように言う。

そんなキールの言葉に何をするか分かったネプテューヌ達は、ベールの居る部屋から少し離れてその様子を見る事にした。

 

「ベーーーールッ!!!」

「ひゃあぁっ!?」

 

静かに息を大きく吸い込んだ後、部屋中に響き渡るような大声を上げれば、ゲームに集中していたベールが悲鳴を上げながら驚いた様子で彼の方を向く。

 

「…やっと聞こえたみたいだな。」

「キ、キールさん?それに…皆さんも来ていたんですのね。」

「ついさっきから此処にいたんだが?」

 

キョトンとした表情を浮かべながら何事かと言いたげな様子でいたベールだったが、此処にキールがいる事と、この部屋に戻ってきたネプテューヌ達を確認した事でどういう事か分かったようだ。

 

「それで…約束事を放り出しておいて何してるのよ?」

「実は、出掛ける前に一時間だけで終わらせるつもりだったんですけど、攻城戦が始まってしまって…手が離せなくなってしまったんですわ。」

 

状況を理解した所でノワールに突っ込まれ、忘れていた約束事を思い出したように慌てて言い訳をするベール。

その理由に何故かノワールが納得している様子でいた。

 

「ライブの後はホームパーティーで持て成してくれるんじゃなかったかしら?」

「もう少しで攻城戦が終わりますから、その後で…」

 

直後にブランがすかさず問いただすも、ベールはゲームの画面に動きがあったのか、答えながら画面の方に目を戻して再びゲームを再開するのであった。

 

「こういう人だったのね…」 

「ま、まあ、趣味は色々だから…」

 

ベールの以外な様子を呆れながら呟くブランの様子に、何気なくフォローを入れているノワールを見て、いつもの真面目で強気な彼女からは考えられない為に、キールは不思議そうにしていたのだった。

 

「もーっ、ベールは駄女神だねー。もしかしたら私より駄目かも?」

「「それは無い。」」

「ねぷぅっ!?こんな時だけ気が合ってる!?」

「安心しろ、その点についてはネプテューヌが1番酷い。」

「相変わらずだけど、キールも酷いよ!」

 

ベールの駄目駄目な調子に調子に乗った様子で呟くネプテューヌ。

しかし、その言葉に賛同するものは無く、その上で普段から仲が良くないノワールとブランから容赦なく否定され、キールに追い討ちをされてショックを受けていたネプテューヌであった……

 

 

「さあ、みんなで準備するわよ!」

 

その後、ホームパーティまでの時間をどうするか決める為、アイエフとノワールが話していたが、目を離した隙にいつのまにかメイド服に着替えていたノワールが、ベールの代わりに全員で準備する事に決めたのだ。

 

「えぇ~っ!?何で私達が準備するの!?」

「文句言わない!せっかくリーンボックスまで来たんだから、きっちりパーティーして帰るわ!」

 

案の定と言うべきか、不満を零しながら愚痴るネプテューヌの言葉に、やけに張り切っているノワールはこうして集まったのに意味が無くなるのが嫌なのか、ネプテューヌの反論を切り捨てるように言う。

 

「まず、ネプギア、アイエフ、コンパの三人は食糧の買い出し!キールも付いて行って!ついでにキールは戻って来たら料理を作って!良いわね!?」

「「「はっ、はいっ!!」」」

「やれやれ…分かった。」

 

そして、モップを片手に指示を出し始めたノワールは、まずは買い出し係をネプギアとアイエフにコンパ、そしてキールに任命する。

指名された3人はノワールの勢いに押されるように返事をすると、慌てて準備をするのであった。

なお、キールは料理人である上に力作業に向いている為、容赦無くこき使われる事について不満げながらも、このまま時間が過ぎるのも良い気がしない事と、状況的にもやらざる終えない為、割り切るように了承していた。

 

「他の人達は部屋の掃除よ。はい、今すぐ始めてっ!」

「で、でたー…こういう時に妙に張り切って仕切るやつー…」

「変なスイッチ入ったわね……」

「うるさいっ!ちゃっちゃと働く!」

 

指揮を取っているノワールの様子に嫌々そうに話していたネプテューヌとブランだったが、しっかりと聞こえていたのか、ノワールは持っていたモップの頭で床を叩く。

そんな彼女の様子に渋々動き出すネプテューヌ達を置いて、キールはネプギア達と買い出しに行くのであった…

 

−−−−−

 

ショッピングモールに来たキール達だったが、ノワールから渡された必要な買い物の種類が多かった為、手分けして購入してから教会に戻る事に決めていた。

勿論、数が多く重い食料品を優先的にキールが選んだ為、比較数が少なくて済む備品をネプギアとアイエフ、そしてコンパが引き受ける事にしたのだ。

 

「必要な物はこれで全部だな。…だが、前が見えないな。」

 

大量に購入した食品を種類別に仕分けた為、非常に多くの買い物袋に埋もれるような状態になっていた。

無論、必要な食材料と自分の作る料理も食べて貰おうと考え、購入したものも入っている。

教会を目指して歩き出そうとするものの、気が感じれるとはいえ前が見えない状況は危険だと判断したキールは、気を体に纏っていく。

すると、纏った部分からキールの姿を模した気が現れると、次々に手分けして買い物袋を両手に持って歩き出したのだ。

 

「…よし、行くか。ネプギア達も先に行ってるみたいだし、追い付かないとな。」

 

気で作った極身影の分身体に各自買い物袋を持たせ終えれば、先に向かっているネプギア達に追いつく為、自分も早足で教会の方へと向かい歩き始めようとした。

 

「っ!この感じ…トゥルーネ洞窟の時に感じたものか。何処だ…」

 

直後にトゥルーネ洞窟に入った時に感じた違和感を感じ取れば、何故こんな場所で感じ取れるか疑問を浮かべながらも周囲を見渡す。

しかし、正確な位置を掴めないのか、気を引き締めるように真剣な表情で周囲の気配を探り出す事にした。

 

「ん?アイエフ達は止まってるのか?それに…ネプギアの気が少し減ってるな…何でだ?先に教会に戻ろうとしてたみたいだが…まずは急いで合流するか。」

 

すると、教会方面に向かっていたであろうアイエフとコンパ、ネプギアの3人の気が、キールの現在いる場所から少し先の方で止まっているのだ。

オマケに僅かに小さな気も感じ取れたが、ネプギアの気が少し減ったと同時に感じていた違和感が一瞬だけ強く感じた為、ネプギア達と合流してから状況を確認する事にしたキールは、荷物を持つ極身影と共に急いで3人の元へと向かうのであった…。

 

−−−−−

 

遡ること数分前…

 

「ギアちゃん達はまだみたいですね…」

 

自分が担当していた買い物を終え、最初にショッピングモールから出てきたコンパは、事前に決めておいた待ち合わせの場所に到着すると、ネプギアとアイエフが来ないか待ちながら周囲を見回していた。

 

「あ〜っ、急がないといけないっちゅ!またあのオバハンに愚痴を言われるっちゅ…おわっ!?」

 

すると、目の前を急いで走っている鼠が現れれば、慌てた様子でコンパの前を通り過ぎて行こうとしていた。

しかし、相当焦っていたのか、何もない所で転んでしまう。

更には、転んだ勢いで鞄のボタンが外れ、中に入っていた物が鞄の外へと放り出されていた。

 

「うぅっ…痛かったっちゅ……ん?」

 

鼠が転んだ拍子で地面に顔をぶつけたのか、痛そうに鼻を摩りながら顔を上げると、転んだ様子を見て心配したのか、近付いてきたコンパが近付いていたのだった。

 

「…ハッ!?な、何っちゅか!?ネズミが転ぶのがそんなに面白いっちゅか!?」

 

目の前に来たコンパの姿に一目惚れのように見惚れていた鼠だったが、我に帰ると憎まれ口を叩く。

しかし、そんな鼠の態度を気にせず、無事な事を確認したコンパは、安心したように満面の笑みを見せていた。

 

「大丈夫そうで、良かったです!あっ、でも怪我してるですね…」

「は…ッ!?」

 

コンパの笑顔を見た鼠は、まるで稲妻に打たれて全身に電気が迸ったような感覚に陥っていた。

そんな鼠の様子を見ていたコンパが、鼠が手に怪我をしている様子に気付くと怪我をしている手をそっと手に取りながら、鞄を開けて絆創膏を探し始める。

なお、手を持たれた鼠が更に感覚的な意味で全身に電気が迸り、心拍数が跳ね上がって目を泳がせていたのだった。

 

「もう大丈夫ですよ♪」

 

そして、見つけた絆創膏を傷口に貼り終えたコンパが、満面の笑みを浮かべていた。

それがトドメとなったのか、鼠はハートを撃ち抜かれたように鼠の心は完全に落ちていたのだった。

 

「気を付けてくださいね、ネズミさん♪」

「は、はいっちゅ……」 

「じゃあ、私はこれで…」

「ま、待ってくださいっちゅ!」

 

手当が終わった為、コンパは鼠に笑顔で話せばそのまま立ち上がって、再び待ち合わせの場所に戻ろうとしていた。

その様子を只々見ていた鼠だったが、立ち去ろうとするコンパを慌てて呼び止める。

 

「?何ですか?」

「あ、あの…お名前は、何と言うっちゅか…?」

「コンパですぅ!」

「こっ、コンパちゃん…可憐なお名前っちゅ…」

 

呼び止められたコンパが再び鼠の方を向いてくれれば、勇気を出した鼠は高鳴る鼓動と緊張にめげず、コンパに名前を聞き訪ねた。

顔を赤くしている鼠の様子を不思議そうにしながらも、笑顔で自分の名前を言ったコンパの姿に恋心を抱いた鼠であった…。

 

 

「…あれは、コンパさん?」

「そうみたいだけど…誰かと話してるのかしら?」

 

するとそこに、買い物を済ませて待ち合わせの場所にネプギアとアイエフが現れたのだった。

しかし、ネプギアとアイエフからは鼠の姿がしゃがんでいるコンパの姿で隠れて見えない為、何をしているんだろうと思いながら近付いていた。

コンパともう1人の話し声が聞こえきている為、話をしているのだが、姿が見えないので2人とも不思議そうにしている。

 

「…?何だろう、これ…?」

 

ふと、ネプギアが足元に何かがある事に気付けば、座り込みながらそれを拾い上げる。

それは、先程鼠が転んだ際に鞄から落ちた物だったのだが、不気味に赤い怪しげな光を仄かに放っていたのだった。

 

「っ!?っ…」

「ネプギア!?どうしたの!?」

 

ネプギアが座り込んで、その石を持った直後に異変は起きた。

突然、身体中から力と意識が抜けそうになるような脱力感に襲われ、立ち上がる所か片手を支えにしないと倒れそうになる状態に陥っていた。

ネプギアの反応に気付いたアイエフがすぐさま彼女に寄り掛かり声を掛ける。

 

「ハッ…!?勝手に触るなっちゅ!!」

 

そしてコンパの死角にいた鼠は、周囲の声で我に帰るとネプギアの元まで走り出し、右手に持っていた石を奪い取れば、再び慌てた様子で走り去っていく。

 

「ギアちゃん、大丈夫です?」

「わ、分かりません…、突然、力が抜けるような感覚に…。」

「おい、どうしたんだ?何があった?」

「あ、キール君。それが…」

 

異変に気付いたコンパもネプギアの元に駆け寄って来た。

まるで脱力状態のようにグッタリした様子のネプギアに、心配そうに声を掛けるコンパ。

更に、その場に違和感を感じ取って現れたキールが、3人の元へと駆け寄って来たのだった。

ネプギア達の元に着いたキールは、すぐさまネプギアの容態と経緯を聞く事にした。

 

「あの鼠…何処かで……」

 

アイエフは走り去る鼠を見て、少しだけどこかで見たような気がしたのだった。

そして、この一連の些細な出来事が、後の大きな事態に陥る等とは知らずに……

 

−−−−−




なんか、話が飛び飛びになってる気しかしないです(´・ω・`)
恐らくアニメ本編3話目辺りが1番長くなるだろうと踏んでおります(´・ω・`)
次はホームパーティからゲーム及び、ネプテューヌ達主体の話になります(´・ω・`)


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第12話『立ち籠める不穏な気配‼︎女神に迫る悪意‼︎』

アニメ本編の中編までのパーティの話と敵サイド側の話になります(´・ω・`)
抜けてた場面があった為、書き直しました(´・ω・`)
次辺りから戦闘描写が多くなると思います(´・ω・`)


−−−−−

 

立ち上がれないほど動けなくなったネプギアを教会に連れ戻ったキールは、彼女を客室のソファーで座らせて休ませていた。

 

「回復するまでは少し休憩しておいた方が良い。準備の事は俺達に任せていろ。」

「は、はい…あ、ありがとうキールさん。」

 

因みに、ネプギアが立ちくらみをした場所から教会までお姫様抱っこをされて運ばれた為、礼を言いながらも恥ずかしそうな表情を浮かべている。

そして、自分でも分かるぐらいに赤くなっている顔を彼に見られないようにネプギアは下を向いていた。

ネプギアの容態が落ち着いた事を確認すれば、買い出しで手に入れた食材で料理を作らなければいけない為、調理場へと急いだ。

 

「…何事も無かったら良いんだが…」

 

極身影に任せた食材はそのまま調理場に運ばせていた為、引き続きホームパーティの準備と調理を分身体の極身影と共に急いで始めていく。

しかし、料理を作る彼の表情は、買い出しの時に感じた違和感の不安を拭えぬままの、張り詰めたような表情のままであった…。

 

 

「お待たせいたしましたわね。我が家のホームパーティーへ、ようこそですわ!」

 

「…というかベール、殆ど何もしてない…」

「言っても虚しくなるだけよ…」

 

日が落ちそうな夕暮れ時の前に何とか準備を終えたキールは、ノワール達によって綺麗になった部屋に、人数分のグラスや取り皿などと共に作った料理を並べていく。

そして、ノワールの最終確認が終えれば、パーティの準備が完了したのであった。

因みに、ネットゲームの区切りが準備終了手前まで伸びたのか、殆ど何もしなかったベールの挨拶の台詞に全員が苦笑いを浮かべていたのは言うまでも無い。

特に、掃除組のメンバーは結構疲れた表情を浮かべている。

 

「…そういえば、買い出し中に立ち眩みしたんだって?大丈夫?」

「うん。でも大丈夫、もう平気だよ。」

 

ネプギアが立ちくらみをした事をアイエフとキールから聞いていたのか、心配そうにしながら様子を伺うネプテューヌ。

しかし、ネプギアも休んでいた事もあって体調は良くなったのか、もう大丈夫だといつも通りの調子で話していた。

 

「…さぁ、皆さん。遠慮なく食べて、飲んで、騒ぎましょう!今日の為に、とびっきりのゲームも用意しましたわ!」

「おぉっ!なになに!?」

 

そして、そんな皆の様子など気にも止めていないベールは、パーティを盛り上げようと話を進めていた。

このホームパーティの時の為に準備をしていたのだろう。

そのベールの出し物がゲームという事に、真っ先に反応したのはネプテューヌだった。

 

「説明するより、見せたほうが早いですわね。ネプテューヌとノワール、少し後ろに立ってくださいな。」

「ほいなーっ!」 

「えっ?…何?」

「それでは、華麗に戦って下さいまし!」

 

ノワールとネプテューヌに指示をしながらベールは映写機のような機器を設置していく。

何をするか分からない為、不思議そうにしているノワールとワクワクした様子で待っているネプテューヌ。

やがて、必要な機材の設置を終えて、2人が所定の位置に立っている事を確認したベールは手に持ったコントローラーのボタンを押した。

 

「あっ!?ねぷねぷが…!?」 

「ねぷぅっ!?スライヌになってる!?」

「こ、これ…私なの!?」

「二人の動きを特殊なカメラで撮影して、立体投影しているのですわ。中々の技術でしょう?」

 

すると、部屋の風景が教会の一室から、木々に囲まれた場所に変わったのだ。

更に、コンパが何かに気付いた様子で指を指した方向を見れば、スライヌに髪の毛が生えて色違いになっているネプテューヌとノワールの姿がその場にいた。

ベールの説明を聞いたネプギア達は驚いた表情を浮かべながら、スライヌ化したネプテューヌとノワールの様子を見ていた。

 

「じゃあ、この姿でノワールと戦えばいいんだね!やーい、ノワスライヌ!ねっぷねぷにしてやんよ〜!」

「えっ!?な、何よ、ノワスライヌって!?」

「ていやぁ!」

「きゃあっ!?」

 

スライヌの状態のネプテューヌが体当たりを繰り出していく。

そして、ゲームのルールを理解していないノワールに体当たりがヒットすると、50Pという文字が浮かび上がった。

 

「いえ~いっ!ポイント先取~っ!」

「私を怒らせたわねっ…覚悟しなさいっ!ネプライヌ~ッ!…うわあぁっ!?」

「や~いっ!逆さノワイヌ~っ!」

 

先程の数字はゲームのポイント獲得だったようで、スライヌの体になっているネプテューヌが小さく何度も跳ねながら喜んでいた。

そして、ゲームの仕組みが分かったノワールはムキになったのか、反撃をするために同じくスライヌの体で体当たりを繰り出した。

しかし、ネプテューヌが器用にもジャンプして避けたので、ノワールは転んで逆さの状態になってしまっていたのだ。

それを見たネプテューヌが煽った事でノワールが更にムキになり、スライヌ同士の対戦ゲームはより盛り上がりを見せていたのだった。

 

「因みに、もっと実践寄りのシュミレーションモードも用意してありますから、戦闘の訓練にも使えますのよ?」

「す、凄い…!」

 

女神候補生達がマニュアルを見ながら、事細かに自分のキャラクターを作成は勿論のこと、作成した自分のキャラやモンスター達と戦闘が出来たり、更にはフィールドやギミックを組み込んでより実践的な戦闘や、アトラクションのようなフィールドで戦闘も可能という…これでもかと言わんばかりに色んな要素が詰め込まれていた。

 

「キールさん、どうかしましたか?キールさんも楽しまないと損ですわよ。」

「ベール…いや、大丈夫だ。ゲームも良いがせっかく作った料理もあるんだ。冷めないうちに食べないとな。」

 

盛り上がりを見せるパーティの最中、キールはただ1人は楽しめれていなかった。

そんな彼の様子に気付いたベールが近付いて声を掛けると、反応して話すものの表情はあまり良くない。

ネプギアが立ちくらみで動けなくなってた時に感じた違和感の事がどうしても気になっていたのだ。

痒い所に手が届かなさそうな様子でいたが、楽しんでいる皆を心配させない為、気を取り直してパーティを楽しもうと思えば、後でゲームに参加するつもりなのか、まずは食事を取る事にしたのだった…。

 

−−−−−

 

夕焼けに染まり日没が迫るリーンボックスの、人気の無い静かな港…

一隻のエンジン付小型ボートが止まっている近くには魔女のような格好をした女性…マジェコンヌと、ならず者の男達2人が居た。

 

「ネズミはどうした?」

「そ、それが…先に行ったんで急いで此処に来たんっすけど……」

「つまり置いてかれたつもりが置いて来たわけか…」

 

男2人の様子から、鼠と別行動を取っていたなと思うマジェコンヌ。

男達2人は本来の目的である、ドラゴンボールを回収した後、隠していたアタッシュケースを回収しに行っていたのだ。

だが、肝心の鼠が解散した合流地点に来るのが遅過ぎたのか、先に着いてしまっていた。

しかし、その場に走って来た鼠に気付いて睨みをきかせて見ていた。

 

「遅いっ!計画を台無しにするつもりか!」

「ぢゅう…ぢゅう…これでも精一杯急いだっちゅよぉ…。無理なスケジュールを組むオバハンがいけないっちゅよ!」

 

鼠の到着が遅れた事で場の空気が悪くなっていく。

鼠はこれ以上ないペースで間に合うように急いでいたのだ。

そして、自分を置いて行った2人をジト目で睨むように見ていた。

2人組の男達は視線を逸らしていたが…

 

「雇い主に向かってオバハン言うの止めろと何度言ったら…まぁいい、こんな所で腹を立てつつ説教しても仕方ない。ネズミ、例の物を早く寄越せ。」

「分かってるっチュよ。」

 

話を戻すように計画に必要な物を渡すように指示すると、鼠は鞄から十字の形をした赤黒く光る怪しい石を取り出し、それをマジェコンヌに渡す。

渡された石を手にしたマジェコンヌは、不敵な微笑みを浮かべながら石を見ており、計画に必要な物が全て揃った事を確認する。

 

「くっくっく…これで四つ揃った。」

「マジェコンヌ様、お言葉ですが女神とやら以外にも、金色の戦士っていう少し不安要素が…」

「…何だ?私が女神以外の奴に負けるとでも?」

 

機嫌が良くなっていたマジェコンヌだったが、ならず者の2人組から金色の戦士についてどうするかと言われ、興味も無さそうにしながら聞いていた。

しかし、男達の方はというとそういう訳にはいかないのだ。

金色の戦士の恐ろしさは、彼らがいた元の世界でも登龍館の武闘家として広く知られており、男達の知り合いのツテで送り込んだ数々の殺し屋なども、彼によって全て葬られているからだ。

 

「い、いえ!そんなことは…ただ、奴は途轍もない化け物でして…」

「ふん、女神でもない輩には用はないのでな。所詮、金色の戦士とやらも私の踏み台にすらならんだろう。」

 

しかし、金色の戦士に怯えきっている男達の事など気にする事もなく、小型ボートへと乗り込んでいくマジェコンヌ。

金色の戦士の情報については把握しているものの、計画が成功すれば金色の戦士など足元にも及ばなくなる確証を持っていたからだ。

 

「今夜、世界というゲームのルールが塗り替えられる…。」

 

水平線に沈む太陽を見ながら、4人の守護女神を葬り終えた後は、自分の理想を描いた世界の始まりだという確信と共に、マジェコンヌは不敵な笑みを浮かべていた。

そして、鼠と男達もボートへと乗り込めば、日没とともに目的の場所へと向かって行ったのだった…

 

−−−−−

 

日没が過ぎて外の景色も見えなくなってきた夜の時間帯…

ネプテューヌ達はベールが用意したゲームに夢中になって続けていた。

何やら色んなモンスターになったりして対戦したり、フィールドを駆け巡ったりしている。

キールは必要以上に動いた事もあって、席で食事をしながらゲームを楽しんでいるネプテューヌの様子を見ていた。

しかし、盛り上がっている中、扉からノックの音がした為、ベールが気付いて扉を開ける。

 

「ベール様、失礼します。」

「何ですの?パーティーの最中ですのに。」

「申し訳ございません。ですが、実は……」

 

扉を開ければリーンボックス職員が一礼をしながら持ってきた情報を彼女に伝える。

パーティの最中だった為、不満そうにしていたベールだったが、職員の話を聞いているうちに表情が少し険しくなっていた。

その様子に気付いたノワールは、一度ゲームを中断する必要があると考えると、手元にあったコントローラーの終了用のボタンを押した。

すると、さっきまでの森に囲まれた景色は元の教会の部屋に戻り、モンスターの姿となっていた皆の姿も元に戻っていた。

 

「何かあったのベール?」

「いえ…ズーネ地区にある廃棄物処理場に、多数のモンスターが出現したという知らせがありますわ。」

 

ベールの様子から何かあったのだろうかと思ったノワールは、すぐさまベールに近付いて聞き訪ねていく。

どういう事か、国が管理する地域にモンスターが大量に発生しているらしい。

 

「リーンボックスの離れ小島ね。引き潮の時だけ地続きになる。」

「モンスターくらいどこにでも出るっしょ?」

「国が管理している地区ですから、そんなことはあり得ませんわ。でも、事実のようですわね…」

 

本来は国が管理している場所の為、モンスター達は一掃されているはずなのだが、その地区に出現している以上、女神はそれに対処せねばならない。

ベールは返答しながらも、すぐさま仕事用のパソコンを開いて確認すると、パソコンの画面にはズーネ地区に群がるモンスターの姿が確認されていた。

 

「…私、今からズーネ地区に行ってきますわ。」

「私も行くよー!」

 

パーティの途中で抜けるのは気が乗らないのか、仕方が無さそうな表情を浮かべながら、立ち上がったベールは1人で向かうような様子で話す。

そんなベールの言葉に対して、ネプテューヌが真っ先に一緒に向かうと言ったのだ。

 

「けれど…これは私の国の事ですから…」

「こうして私達がいるのも何かの縁だしさ…手伝わせてよ。」

 

ただ、ベールはネプテューヌ達がリーンボックスに客人としてきている為、同行する事を望んではいないようだ。

しかし、せっかく他の大陸の女神もいる為、何か力になれるならなりたいというネプテューヌの言葉に、ベールは申し訳ない気持ちと同時に嬉しそうな様子になっていた。

 

「またお決まりの"友好条約"を結んだから仲間…ってやつ?」

「まぁねーっ!」

「私も手伝う…誘拐事件の時の恩を返すいい機会だから…」

 

そんなネプテューヌの言葉にやや冷やかすような様子でノワールが話すと、続けざまにブランも同行すると話し出したのだった。

ロムとラムの誘拐事件のときの借りを返したいのだろう。

 

「よーし!じゃあ、3人で…」

「ま、待ちなさいよ!私も行くわよ!貴方達だけじゃ、どれだけ待たされるか分からないもの…」

「皆さん、分かりましたわ。…では、4人で参りましょう。」

 

そして、ネプテューヌが3人で向かおうと決めた直後に、案の定というべきか、残されたノワールが慌てて同行する気になった為、四女神全員でズーネ地区に向かう事になったのだった。

 

「あ、あの!私も行きます!」

「え?…あ、アタシも!」

「わたしも!」

「わたしも…。」

 

そこに、ネプギアも同行する意志を示すように声を上げれば、ユニやロムとラムも続けて手を挙げ、同行する意志を見せる。

 

「貴方達はダメ、遊びじゃないの。これから向かう所は危険だから…」

「え~っ!?」

 

しかし、真っ先にそれを否定したのはブランだった。

ブランは首を横に振ってから、これから先に行く場所は危険な場所だからと忠告するように話す。

ロムは残念そうに落ち込んだ表情を浮かべており、対照的にラムは不満そうな表情を浮かべながら声を上げていたのだった。

 

「ユニも当然、留守番よ。貴方まだ変身も出来ないんだから。」

「……はい…。」

 

そして、ユニにはノワールが念を押すように駄目だと言った。

女神化出来ない状態で危険な場に向かわせらないという理由を付けて。

彼女なりに考慮して言ったのだろうが、ユニは落ち込んだ様子で小さく頷いて返事をしたのだった。

 

「ネプギア!ここはお姉ちゃん達に任せてよ!主人公としての活躍、見せないとね!」 

「…うん。」

 

ネプテューヌは自信ありげな様子で笑って話すものの、落ち込ませないようにと気を使っていたのか、最後は苦笑交じりになってしまっていた。

そんなネプテューヌの言葉と笑みを見たネプギアは、少し不安はあるものの、コクリと頷いてネプテューヌ達の帰りを待つ事に決めた。

そんな状況を見ていたキールも、同じく同行しようと決めれば、食べていた料理を急いで食べ終えてから立ち上がる。

 

「…ねぇ、キール。お願いがあるんだけど……」

「…?どうした、ネプテューヌ?」

 

そして、一緒に向かう意志を伝えようとネプテューヌ達の元に来るものの、ネプテューヌに声を掛けられれば不思議そうにしながら聞き返す。

 

「私達が帰ってくるまで、ネプギア達の事をお願い出来ないかな?」

「?俺も同行するつもりなんだが?」

 

ネプテューヌからはネプギア達の事を言われるものの、同行する気になっているキールは、なぜ彼女がそんな事を言ったのかという意図が分からなかった。

 

「あはは…何だかちょっとだけ、嫌な予感がしてさ。ネプギア達に何かあったら嫌だから…」

 

そんな不思議そうな表情を浮かべているキールを見て、珍しく困った表情を浮かべているネプテューヌ。

直感的に秘めている不安を吐き出すようにキールに話すのだった。

今回モンスターが出現している場所自体が異常な為、嫌な予感を感じているのだ。

 

「…なるほどな。分かった、こっちは任せろ。」

「うん。えへへっ、ありがとうキール。」

 

不安そうなネプテューヌを見たキールは、ルウィーの時の誘拐事件の事や、買い出し時のネプギアの事を思い返して少し考え込む。

ネプテューヌ達だけで事足りるなら、ネプギア達を守る方が良いだろうと判断すれば、久しぶりに活躍する女神の見せ場を奪わないようにする為、この場に残ってネプギア達を守る事にした。

配慮してくれたキールの言葉に、安心した表情を浮かべたネプテューヌは嬉しそうに笑って頷くと、ベール達の元へと向かって行った。

 

「それじゃあ…変身っ!」

 

ネプテューヌの合図で四人が変身を始める。

そして、変身を終えた女神達が飛び立って行く様子をネプギア達やキールは見送っていた。

僅かに残っている不安を胸に抱きながら…

 

−−−−−

 

ネプテューヌ達が教会から飛び去ってから、早くも数十分が経過していた。

嫌な予感がして不安そうな表情になっているネプギアが、バルコニーから外の景色を不安そうに見ていた。

 

「ネプギア、大丈夫か?」

「あっ、キールさん。私は大丈夫だよ。」

 

キールが声を掛ければ気が付いた様子で彼の方を見て大丈夫だと話すネプギア。

しかし、心配させないようにと笑っている表情からは、不安が抜けていないような様子でいた。

 

「不安なんだろ?ネプテューヌ達の事が…」

「それは…」

 

そんなネプギアの様子を見兼ねたキールが、飛んで行ったネプテューヌ達の事について尋ねれば、彼女は再び不安そうになっていた。

 

「そう…分かったわ。ありがとう。」

 

ふとネプギアが視線を巡らすと、アイエフが携帯電話を切る所だった。

恐らく、仕事仲間の知り合いと話していたのだろう。

 

「何か分かったんですか?」 

「…昼間、買い物に行ったときに見たネズミ…見覚えある気がして諜報部の仲間に調べてもらったの。そしたら案の定、各国のブラックリストに載ってたわ。要注意人物、と言うか要注意ネズミとしてね。」

「えっ!?あのネズミさん、悪い人だったですか!?悲しいです……」

「鼠?鼠が国際手配犯?何の話だ?」

 

ネプギアが聞き尋ねると、アイエフは厳しい表情を浮かべながら話し出す。

すると、昼間にあった鼠の事だと知ったコンパは悲しげな表情を浮かべていた。

因みに、鼠を目撃していないキールは話に付いて行けず、何の事か分かっていない。

そんな状況に構わず、アイエフは言葉を続ける。

 

「しかも、数時間前にズーネ地区に船で向かったのが目撃されているの。怪しげな奴らを引き連れてね。」

「それって……」

「推測でしかないけど、廃棄物処理場にモンスターが現れたのは……」

「少なくとも、そいつらが原因なのは間違いなさそうだな。」

 

モンスターが出現する原因となった要因があるアイエフの言葉にネプギアやキールは勿論、その場にいた全員が緊迫した空気に包まれていた。

 

「今ならまだ引き潮に間に合う…私、ちょっと行ってくるわ!」 

「あ、あのっ!私も、連れていってください!」

 

アイエフは短く告げてすぐにズーネ地区に向かおうとしたが、それをネプギアが引き留める。

 

「えっ?ダメよ。ネプギアまで危険な目に遭わせる訳には…」

「どうしても気になるんですっ!お願い、アイエフさん!」

 

アイエフは断ろうとしたが、引き下がるつもりはない様子で、真剣な表情を浮かべながらネプギアは必死に頼み続けていた。

アイエフは根負けしたように一つ息を吐きながら、ネプギアの目を真っ直ぐ見つめる。

 

「…分かったわ。でも、絶対に無茶はしないこと。少しでも危険を感じたら、すぐに撤退だからね」

「うん、ありがとう!」

 

アイエフの言葉に嬉しそうな表情を浮かべて礼を言うネプギア。

こうして、アイエフの指示に従うことを条件に、ネプギアは同行を許された。

 

「キール、ネプ子達の事が気になるでしょうけど、ここの事は頼んだわよ?」

「…分かっている。気を付けるんだぞ?」

 

そして、アイエフが念押しをするようにキールに話すと、不服そうにしながらも渋々と了承するキールだった。

そのままアイエフが用意していたバイクに二人乗りする形で夜の道を疾走し、ズーネ地区に2人は急いで向かっていったのだった…

 

−−−−−




次は四女神達の敗北になります(´・ω・`)
アニメ本編3話終盤と4話前編を行き来してるんで、書いているうちに時間軸が分からなくなります…(´・ω・`)
飛ばし書いているのか、ゆっくり進めて書いてるのか分かり辛くなってる気がします(´・ω・`)
後、次の回はオリ主完全に空気です(´・ω・`)


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第13話『女神達の敗北⁉︎ネプテューヌ達に押し寄せる毒牙‼︎』

アニメ3話の後編に入ります(´・ω・`)
話が多くなるのは3話と4話になりますね…勘違いしてました(´・ω・`)



−−−−−

 

ネプギア達とキールに見送られる形で飛び立って数十分が経った頃、ズーネ地区方面に向かって飛んでいるパープルハート達の前に一つの島が見えてきた。

 

「…見えてきましたわよ。」

 

ズーネ地区の廃棄物処理場と思われる島だろう。

引き潮の時間帯からか、本来なら孤立している筈の小島は陸続きになっている。

陸にはリーンボックスで見られる機械系モンスター達が遠目でも分かる程、大小含め大量に群がっている状況だった。

 

「…けっ、うじゃうじゃいやがるぜ。」

「でも、数が多いだけで大した事のない奴らばっかじゃない。」

 

数は多くても個体自体は強いモンスターがいないのか、数だけいる事に面倒そうなホワイトハートと、余裕そうにしているブラックハート。

 

「確かに、これなら問題ないわね。でも、油断は禁物よ?それに、万が一街に渡ったら一大事よ。ここで早めに…っ!あれはっ…!?」

 

ホワイトハートやブラックハートの意見に頷きつつも、今までにない数が集中的にいる為、街になだれ込まないか心配しながら元凶を探すパープルハートだったが、一際大きな砲身と銃口をこちらに向けているモンスターに気付く。

 

「九十九式戦車…!」

「あのデカブツが真打か!」

「的に不足なしですわね。」

 

戦車型の大型モンスターを見つけるものの、向こうも女神達を捕捉したように、向けていた銃口から幾多もの弾を弾幕のように発射してきたのだった。

 

「おあつらえ向きに一人一体…競争ね!」

「抜け駆けはさせねぇぜ!」

 

飛んできた弾幕を避けながら、原因だろうと考えられるモンスターをすぐさま見つける事が出来た為、ただ倒すだけではなく誰が早いか決める為の提案をブラックハートがする。

対抗意識を燃やすように乗り気なホワイトハートとグリーンハート。

 

「三人とも待って!ここはみんなで一体ずつ倒すのがセオリーじゃ…」

「腰抜けのセオリーね!」

 

だが、パープルハートだけは教会の時にこの異常事態を知った時から、嫌な予感をずっと感じていた為、慎重に立ち回ろうとしていたのだった。

そんな彼女の様子に怖気付いたのかと言わんばかりに煽りを入れたブラックハートは、真っ先に弾幕へと向かって行き、続けてホワイトハートとグリーンハートも突っ込んで行く。

 

「まったく…変身するとみんな妙に強気なんだから…まあ、私もそうだけど!」

 

そんな強気な様子の3人の様子に、呆れるように溜め息をつきながらも、負けるのは癪な為に気取り直すように大型モンスターへと向かって行ったのだった。

 

「レイシーズダンスッ!」

 

最初に競争だと言い出したブラックハートが、最初に弾幕に突っ込んで切り抜ければ、斬り払いと蹴りを合わせた連撃を繰り出し、一体目を撃破していく。

 

「テンツェリントロンペッ!」

 

続けて攻撃を仕掛けたのはホワイトハートで、回転の勢いを付けたまま大型モンスターに突っ込んでいけば、勢い良く斧を叩きつけて破壊していく。

 

「レイニーナトラピュラッ!」

 

弾幕を避けたり捌いていたグリーンハートが、大型モンスターの射撃の隙を見切り、急降下しながら槍の連続突きを繰り出して撃破する。

 

「クロスコンビネーションッ!」

 

そして最後は、パープルハートの斬り払いによる連撃によって、最後の大型モンスターを一掃していった。

 

「ふふっ、私が一番ね。」

「ちっ、二番かよ…」

 

最初にモンスターを倒し終えて地上へと降りたご機嫌なブラックハートと、少し出遅れた為に不服そうにしているホワイトハート。

 

「さてと、遅れた二人は引き分けかしら?」 

「どっちもビリ…とも言うな。」 

「あら、私の方がほんの少し早かったですわよ?」

 

そして遅れて降りてきた2人を見れば、少し挑発するようにブラックハートとホワイトハートが話すと、いつも通りの調査と言わんばかりの態度のグリーンハートがパープルハートより速かったと言う。

 

「はいはい、私がビリですよ…」

 

小競り合いのような競争の話に自分が1番遅かった事を認めながらも、パープルハートは子供をあやすような反応を見せながら呟いていた。

しかし、直後に地面の至る所から亀裂音が響き渡れば、幾多ものコードが地中から飛び出し、ブラックハートとホワイトハートに襲い掛かろうとしていた。

 

「っ!?ノワール!ブラン!!」

 

パープルハートが真っ先に気付いて2人にその場から離れるように声を掛ける。

だが、声を上げた時にはは既に遅く、二人はコードに巻き付いていく。

それ所か、他の場所からもワイヤーが現れれば、パープルハートとグリーンハートにも襲い掛かり、残りの2人もコードに纏わり付かれてしまう。

 

「な、何なのよ!?これは…!?」

「ざけんなよ…っ!」

「気持ち悪いわねっ!」

「こんなものっ…!」

 

しかし、コードに纏わり付かれた4人はすぐさま力づくで引き千切ろうとする。

数が多いと言えども、これだけで女神を拘束出来ないのだから。

そんな女神達を少し離れた高台から見ていた黒衣の女性…マジェコンヌは、不敵な笑みを浮かべながら、黒い十字の形をした禍々しい結晶の石を持ちながら呟いていた。

 

「ふふふっ、頃合いか…」 

「っ!あれが、黒幕…」

「女神達よ、我がサンクチュアリへ堕ちるがいい!」

 

すぐさま女神達はマジェコンヌの姿に気付いたものの、マジェコンヌは自らの傍らに置かれている楕円体状の機械に結晶をセットすると、機械を女神たち目がけて投げつけたのだ。

その機械は女神達の頭上で静止すると、紫色の禍々しい光を放つ。

同時に地面からも楕円体状の機械が彼女達を取り囲むように三つ出現しすると、機械はそれぞれ光を放つと共に光線によって結ばれていく。

三角錐型の結界のようなその内側を、怪しげな紫の光が満たしていった。

 

「こ、この光は…うぁっ!?」

 

機械から放たれる光に気付き、驚愕した声を上げるホワイトハート。

その直後、彼女の身体から力が抜け、身体中を拘束しているコードがより強く縛り上げていく。

 

「くぅっ…!?」 

「なっ…!?力が…!?どうして!?」

 

結界のような空間内で発生している光の影響からか、ブラックハートとグリーンハートにも影響が現れ、力が抜けていくとともにコードにより強く縛り上げてられてしまう。

 

「あの機械…あれさえ壊せばっ!」

 

投げられた機械が原因だと判断したパープルハートは、辛うじて動く身体に力を入れ、自身が手に持っている刀を機械に向かって投擲する。

 

「なっ…ああぁっ!!?」

 

だが、投擲した刀は機械に届く事なく消失していったのだった。

そんな光景を目の当たりにしたパープルハートは驚愕するものの、対抗できないぐらいに力が抜けてしまい、コードに縛り上げられてしまうのだった。

 

「シェアエナジーを力の源にしているものはその機械に近付く事はできん。それが武器であろうと…女神自身であろうがな。」

「どういう…事ですの…?」

 

完全に身動きが取れなくなったのを確認して、マジェコンヌは意気揚々とした様子で近付いていく。

そんなマジェコンヌの言葉に、なぜ自分達の力が抜けたのか疑問を浮かべるグリーンハート。

 

「その機械にはアンチクリスタルと言う石が仕込んであってな。シェアクリスタルとお前達のリンクを遮断し力を失わせる石だ。」

「アンチクリスタル……?」

 

パープルハートは黒衣の女性の言葉や、アンチクリスタルという聞き覚えのないワードに疑問を浮かべるものの、突然鳴り響いたシャッター音に遮られてしまう。

 

「う~ん、いい写真っちゅね~!これは世間に大旋風を巻き起こすっちゅよ!」

 

そして続けて現れた鼠は手に持つカメラを起動させ、捕らえられている女神達の姿を写真に撮っていく。

 

「くっ…こんな事、ただじゃ済まさないわよ!すぐにぶっ飛ばしてやるんだから!」

 

何も出来ない状況でも屈するつもりはなく、ブラックハートは悔し紛れながらも強気な態度で強く出る。

 

「それはどうかな?アンチクリスタルの中では女神は力を失っていく、お前たちの勝ち目は刻一刻と無くなるのだ。」

「なっ…!?」

 

だか、直後に勝ちを確信したような様子のマジェコンヌの一言に絶句してしまう。

アンチクリスタルと言われる代物は女神の力を打ち消す…その性質を知っている様子のホワイトハートは、マジェコンヌの目的がどういうものか理解したのか、何も出来ないこの状況に悔しそうにしていた。

 

「ふふふ…あーっはっはっは!!」

 

そして、完全に自分の思惑通りに事が進んだ事に、勝ち誇ったような高笑いを浮かべていたのだった…

 

−−−−−

 

ズーネ地区へと何とか到着したアイエフとネプギアだったが、やけに静かな周囲の気配に返って不安そうにしていた。

 

「モンスターが居ませんね。もう退治し終わっちゃったのかな?」

「それだったらいいんだけど…っ!?」

 

しかし、ネプギア達の目の前が光ったかと思えば、その場にモンスターが出現した。

しかし、アイエフはそれを冷静に対処し、銃でモンスターを撃ち抜くと、銃弾を撃ち込まれたモンスターは光の粒子となって消え去る。

 

「まだいるじゃない!!ネプ子達は…」 

「アイエフさん!あれ!!」

 

突如現れたモンスターにネプテューヌ達が倒し損ねていたのかと思いながらも、アイエフはネプテューヌ達が何処にいるか探そうとする。

しかし、驚いたような様子で呼んできたネプギアの声に、彼女が指を指している方へ視線を移す。

 

「なっ!?そんなっ…」

「お姉ちゃん…お姉ちゃーん!!」

 

そこには…女神達が拘束され、身動きが取れない光景が映し出されていた…

 

−−−−−

 

「貴女は一体何者なの…?」

 

力が抜けて抵抗が出来ない中、パープルハートは黒衣の女…マジェコンヌに問い掛ける。

すると、機嫌が良いのか、高らかに宣言するような感じで口ずさむように話し出した。

 

「私の名はマジェコンヌ…四人の小娘が支配する世界に、混沌と言う福音をもたらすm」

「そして、おいらはワレチュー!ネズミ界ナンバースリーのマスコットっちゅ!」

 

しかし、隣に居た鼠…ワレチューと名乗った鼠に決め台詞を邪魔されてしまう。

ドヤ顔を決めるワレチューを苛ついたような表情を浮かべながらマジェコンヌは睨んでいた。

 

「……ネズミ、いい所で邪魔をするな!」 

「何を言うっちゅか!ラステイションの洞窟と、リーンボックスの海底にあったアンチクリスタルを掘り出したのはおいらっちゅよ!」

「ふん…私がプラネテューヌの森で一つ目を見つけた時に始まったのだ!それに、ルウィーの教会から盗むという大仕事をやったのも私ではないか!」

 

そして、何やらお互いに自分の手柄だと言わんばかりの言い合いが始まったのだった。

まるで利害が一致したから組んでいたと思えるぐらいに。

 

「ブラン…あの石のこと…」

「…ああ、知ってる。厳重に保管していたが、誘拐騒ぎの後、行方不明になっていた…」 

「教えてくださっていれば…」

「しょうがねえだろ!こんなにいくつもあるなんて知らなかったんだよ!」

 

ふと、言い合いをしている2人の言葉から、石の一つがルウィーの教会にあったと言う事にパープルハートがホワイトハートに問い掛ければ、後悔した表情を浮かべながら話し出す。

その言葉にグリーンハートが意見を問い尋ねるものの、あの石がこんな方法で使われる事を想定していなかったのか、悔しさと怒りを交えながらホワイトハートが反論していたが、誰も彼女をを責める事は無かった。

 

しかし…更なる悪循環が彼女達に襲い掛かる事になる。

 

「ねぷぅっ!?へ、変身が…っ!?」

「ふははっ!言ったはずだ、結界の中にいる限り、お前達は力を失っていくとな!」 

 

最初にパープルハートが光に包まれれば、元のネプテューヌの姿へと戻ってしまったのだ。

その様子に気付いたマジェコンヌが、再び上機嫌な調子に戻りながら満足げに話し出す。

 

「うあっ!?」 

「くうっ…」 

「なんて…こと……」

 

それに続くようにノワール、ブラン、ベールの3人も女神化が解けて元の姿に戻ってしまう。

 

「お姉ちゃーん!!!」

 

より状況的にも脱出が困難になり困惑した表情を浮かべていたが、聞き覚えのある声が聞こえてくると、その場にいた全員がそちらの方へと振り向いていく。

そこには、ショックを受けた表情を浮かべ、地べたに座り込んでいるネプギアと、迫り来るモンスターを倒しているアイエフが居たのだ。

 

「ネプギア!?それに、アイちゃん!?」

 

ネプテューヌが驚いた様子で声を上げるが、次第にアイエフだけでは対処が出来なくなっていた。

 

「くっ…ネプギア!今すぐ立って!ここから逃げるわよ!」

「でも…お姉ちゃんが!」 

「私達だけじゃ今は何もできないわ!キールだって教会に残ってるのよ!ほら、急いで!」

「っ……」

 

ネプテューヌ達の姿を見てショックで座り込んでいたネプギアだったが、アイエフの言葉で我に返って姉を助けに行こうとする。

しかし、頼れる姉達が黒幕に捕まっている事と、唯一の戦力であるキールがこの場にいない事を言われれば、表情に悔しさを滲ませながらもアイエフに着いて行く。

そして、バイクのある場所に急いで走って乗れば、その場から離れて行ったのだった。

 

「逃げられるっちゅよ?」

「構わん、まだ変身もできぬ女神の妹など、取るに足らん。」

 

そんな2人の様子に平然とした様子で見ていたワレチューとマジェコンヌ。

そして、その様子をコッソリと物陰から見ていた2人の男達がいた。

 

「親分、よく分かんないっすけど、これで俺達も自由の身ですぜ!」

「馬鹿っ!あの女から解放されても、周りの化物は俺達を獲物として監視してるんだぞ!?」

「そ、そんなぁ〜…」

 

男達からすればよく分からない状況なのだが、目的の一つが終えた為、1人が安堵の表情を浮かべるものの、いつ周りのモンスター達が自分達に襲い掛からないか不安なもう1人の言葉にショックを受けて落ち込んでいたのだった…

 

−−−−−

 

「どうやら、追ってきてないみたいね…けど……」

「お姉ちゃん…お姉ちゃん……」

「(急いで、キールや皆に知らせないと…っ!)」

 

ズーネ地区からリーンボックスの教会に退却しているアイエフとネプギアだったが、目の当たりにした光景とショックが大きく、動揺している状態だった。

アイエフは焦る気持ちを抑えながら、全速力でバイクを走らせ教会へと向かうのであった。

取り返しの付かない状況になる前に…ネプテューヌ達を救う為に……

 

−−−−−




次回はアニメ本編4話前編の女神候補生の決意及び、オリ主の出陣になりますm(_ _)m
四女神の戦闘敗北は飛ばそうかと思いましたが、せっかく色々と集まっている場所なので入れる事にしました(´・ω・`)
女神候補生の特訓は次の次です…話数の把握を間違え、ズレが発生しました(´・ω・`)


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第14話『不安漂う最中…女神候補生達の想い』

アニメ本編4話目前半部分ですm(_ _)m
本当に長くて気が遠くなりそう…(´・ω・`)
少々オリ主に変化を感じてもらう事にしました(´・ω・`)


−−−−−

 

ネプギアとアイエフがズーネ地区に向かって、更に数十分が経過した頃…

万が一の時に備えて動けるようにキールは部屋から庭に出て準備をしていた。

ポーチケースに入っている箱を取り出せば、小さなホイポイカプセルを取り出すと、中に入っている物を確認するため、外の庭の適当な位置に放り投げる。

すると、ボンッと音と共に色んなアイテムがカプセルが投げられた場所に出現していた。

回復剤から止血剤は勿論の事、ガーゼや包帯に鎮痛剤といった応急手当用の物も揃っている。

 

「…よし、これぐらいあれば良いだろう。」

 

確認を終えれば回収したホイポイカプセルを再びアイテムの場所へと放り投げると、ボンッと音と共にホイポイカプセルへと収納されていた。

カプセルを箱に戻してポーチケースに戻しながら、今のうちに身体でも温めておくかと考えれば、周囲の気配を探って誰もいない事を確認する。

 

「…ん?」

 

そして、準備体操をしていた最中、自分がいつも感じている気とは違う違和感を感じていた。

それは、トゥルーネ洞窟の時や買い出しの時に感じた禍々しさとは別物の物だ。

邪悪な違和感とは真反対で、どちらかと言えば気の性質に近い。

但し、気は自らの生命エネルギーを内から外に放出する為、どうしても力強さや荒々しさを感じさせてしまう。

現在キールが感じ取っている僅かな違和感は、外から体内の隅々まで包まれるような暖かさや心地良さを感じており、それ以上に気の性質以上に澄み切って質が高いのだ。

 

「この澄み切った感覚は…一体何だ?」

 

ほんの僅かしか感じ取れていないものの、確実に気とは別物の力だと確信したキールだったが、やがてその違和感は煙を巻くように感じ取れなくなっていた。

 

「…気のせいだったのか?…仕方がない、今は備えておくしかないか。」

 

感じ取れなくなっていた違和感の感覚を忘れられないのか、何処か名残惜しそうな様子で感じた違和感の正体が何だったのかと考える。

しかし、今はネプテューヌ達の事やアイエフと共に飛び出して行ったネプギアの事、ユニやロムとラムの2人の事と様々な事がある為、気持ちを切り替える為にも準備を怠らないようにしようと考えて深呼吸をしていく。

 

「…はっ!せいっ!」

 

そして、軽く気を身体に纏いながら空中に飛んで身構えれば、蹴りや拳の突きを繰り出すという動きを繰り出していく。

 

「ふっ!りゃあ!はああぁっ!!」

 

やがて、単調な動きに複雑な動きを入れ込むように、拳の連打や蹴りの連打を繰り返したり、構えを変えながら肘打ちや回し蹴り、急上昇や急降下、急加速を絶えず繰り返していた。

 

「だあぁっ!!…ん?帰ってきたみたいだな。」

 

ウォーミングアップのように身体を動かしていたが、暫くして教会に急いで入っていくアイエフとネプギアの姿が見えた為、まずは教会内へと入って2人の話を聞こうと決めると、ゆっくりと地上に降りようとした。

 

「っ!?あの時の禍々しい気配か!?それに、これは…ネプテューヌ達の気が少しずつだが弱まっているのか?」

 

しかし、地上に降りている途中、あの禍々しさを孕んだ邪悪な違和感を、ネプテューヌ達が飛んで行ったズーネ地区の方向から感じ取っていた。

同時に、ネプテューヌ達の気が感じ取れるようになった事と、彼女達の気が減っているのを感じ取れれば、確実に良くない状況に陥っている事を確信する。

急いで向かいたいのも山々だが、まずはアイエフ達に話を聞く為に再び先程の部屋へと戻ろうと、地上に着地しながら教会へと向かった。

 

 

「ネプギアの馬鹿っ!」

「…ん?今のは、ユニの声か?」

 

教会内に入りユニ達が待っていた部屋へと到着して扉を開くと、ユニが怒鳴るような声でネプギアに怒っていたのだ。

 

「お姉ちゃんは、アタシのお姉ちゃんはすごく強いのに…アンタのせいで…ネプギアが代わりに捕まればよかったのよ!」

「ユニちゃんっ!!」

「お、おい、ユニ!?」

 

そして、ユニが悔しさと何処にもぶつけられないような怒りを露わにしながら、涙を浮かべながら怒鳴り続けると、ネプギアの呼び止めにも聞かずに部屋から出て行った。

キールも状況的に良くない事は把握出来たものの、部屋から出ようとしたユニを呼び止めれず、どうしたものかと考えながらも部屋に入る事にした。

 

「っ…うぅっ…!!」

「おい!ネプギア!?」

 

部屋に入るやいな、後悔と自責の念に駆られたような表情を浮かべたネプギアが、目に涙を浮かばせながら声を押し殺すように部屋から出て行ってしまう。

ユニに続いてネプギアまで出て行った様子に、状況が分かっていないキールは困惑した表情を浮かべながら、アイエフの元へと向かう。

 

「アイエフ、コンパ、何があったんだ?何でユニとネプギアが…」

「キール……」

 

そして、案の定困った表情を浮かべながら、立ち尽くしているアイエフとコンパの元へと来ると、事情を聞こうと問い尋ねたのであった。

アイエフからはネプテューヌ達4人が捕まった事、アンチクリスタルという物がネプテューヌ達の力を奪っている事、そのアンチクリスタルをネプギアが買い出しの時に触れていたのを誰にも相談しなかった事でユニが怒って出て行った事を……

 

 

「なるほどな…あの場には俺も居たんだ。ネプギアの立ちくらみの原因をよく考え直して気付ければ良かったな。」

 

アイエフからネプテューヌ達の詳細と、ユニとが何故ネプギアにあんな事を言ったのかという理由を聞き終えると、今回の非は誰にもないという事と2人を呼び戻す事にしようと話す。

トゥルーネ洞窟の時の違和感と、買い出しの時の違和感の正体がネプテューヌ達の力を現在奪っている代物だと分かったが、現時点では向かってから対処するしかないと判断するものの、これからどうするべきかと両腕を組んだまま目を瞑りながら考える。

 

「…とにかく、この件は誰のせいでもない事は確かだ。今は…ネプギアとユニを見つけて呼び戻すぞ。」

「…えぇ、そうね。」

 

すぐにでも自分が飛び出して、ネプテューヌ達の救出に向かいたい…しかし、ネプギア達がこの状況で無茶な事をしないかという考えがそれを邪魔していた。

ネプギア達の安全を優先しないとネプテューヌ達を悲しませる事になるからだ。

 

「私とラムちゃんが…ユニちゃんの所に行くよ…。」

「だから、キール君はネプギアちゃんをお願い!」

 

すると、その様子を見ていたロムとラムが自分達に出来る事があるならと、キールにユニの説得を進んで言って来たのだった。

 

「ロム…ラム…ありがとう。なら、ユニの事は2人に頼む。」

「うん…。」

「任せて!」

 

こんなギクシャクとした状況でもめげず、何とかしようと健気に頑張る2人の姿に、キールは自分が1番しっかりしないといけないのになと申し訳ない気持ちになるものの、励まされたのかコクリと頷きながら部屋を後にする。

そして、自責の念に駆られているネプギアを説得するため、キールは気を探ってネプギアを探す事にした。

 

「うぅっ…ユニちゃん…お姉ちゃん…ごめんなさい……私のせいで……」

 

教会にあるバルコニーに来たキールは、我慢が出来ずに泣き崩れているネプギアを見付けると、そっと近付いて行く。

 

「…ネプギア、此処にいたのか。」

「っ!キールさん……」

「アイエフから事情は聞いた。」

「私のせいで…お姉ちゃん達が……」

 

キールが声を掛けると、ネプギアは涙で濡れた弱々しい表情を浮かべていた。

随分と落ち込んでいるネプギアの様子を見れば、どう励ませば良いのかと考えるものの、まだ時間はあると考えている。

 

「ネプギア、ユニは行き場の無い悔しさをお前にぶつけただけだ。お前が気負う必要は無い。此処で2人がギクシャクしてても、状況が悪くなるだけだ。」

 

そして、原因であるアンチクリスタルをどうにかすればネプテューヌ達を助けれると考えているのか、キールなりに気兼ねなくユニと仲直りしてもらおうと言葉を選んで話しを切り出す事にした。

 

「元凶の連中はどうにでもなる。ネプテューヌ達を捕らえてるアンチクリスタルさえどうにかすれば問題ない筈だ。ネプテューヌ達も気が少しずつ減っているとはいえ、まだ無事な事は俺が保証する。だから今は…」

 

しかし、キールが脅威として捉える価値観の違いが災いする事になってしまう。

キールはシェアの力を使えない。それは同時に、彼がシェアの影響を受けない為に、シェアの影響がどれほどの物かもサバを読む程度でしか分かっていない。

そして、そのシェアを搔き消し力を奪うアンチクリスタルの脅威さを把握しきれていないのだ。

 

「…キールさんだからそんな簡単に言えるんです。シェアの力を使わなくても強い力を持ってるキールさんは……」

「ネプギア?」

「キールさんは何も分かってないです!女神でも何でもないくせにっ!アンチクリスタルがお姉ちゃん達の力を奪って、今も蝕んでるのにっ!」

 

そして、価値観の違いとはいえ、彼の言葉を楽観的なものとして捉えてしまったネプギアは、拳を強く握りながら静かに呟く。

そんな彼女の様子にキールが気付くも、彼の意思とは反対にネプギアは怒ってしまっていた。

 

「力が無かったから…何も出来なかった私の気持ちが、キールさんには分かるんですか!?」

「お、おい、そんなつもりは……」

「シェアの力を使えるのに女神化出来ない私の気持ちが…目の前で捕らえられてるお姉ちゃんを…助けに行けなかった私の気持ちがっ!」

 

やるせない気持ちと悔しさと自分の無力さを抱え、ネプギアは何処にもやり場の無い怒りと悲しみと共に、自分の押し殺していた感情を、抱えていた苦しみを吐き出すように言い続ける。

大粒の涙が彼女の頬を伝って零れ落ちながら…

いつもはグータラとした自堕落さを見せる事が多くても、いざという時には自分や皆を助けてくれた姉を、自分は目の前で救えずに逃げ出したのだから。

 

「私は…私は…っ!!」

 

そして、彼に八つ当たりしている事と自責の念に耐えれなくなったネプギアは、再び教会内へと逃げるように走って行ったのだった…。

黙って彼女の言い分を聞いていたキールは、その場から立ち去っていくネプギアの後ろ姿をただ見送るしか出来なかった。

彼女に言われた事が頭の中を駆け巡っていたのだ。

 

「……力があるから…か。」

 

キールは、いつから自分の考えにズレが起きたのだろうかと考えていた。

彼が培った気や実力は、才能に恵まれていたからと言われたとしても…簡単に手に入ったものではないのだから。

かつて、自分自身も貧弱だったからこそ…力を求める者や力が無い事の無力さを知っていると思っていたのだ。

そのズレを親しくなった者達から言われた為、思っている以上にショックを受けていたのだった。

 

「俺も…最初から強くなかったはずなんだがな……」

 

変化によって変わってしまっている思考と価値観のズレ…正しく向き合えるのだろうかと思いながらも、前途多難な現状に深くため息を吐いて気持ちを切り替える事にした。

 

「キール!」

「ギアちゃんは、どうしたんですか?」

「アイエフ。コンパ。…すまん、説得出来なかった。それ所か、痛い所を突かれて返り討ちにあったよ。…面目無いが、俺じゃ役不足だ。」

 

そこに、アイエフとコンパが来ると、この場に居ないネプギアと、珍しく沈んだ表情を浮かべている彼の様子を見て心配そうにしている。

 

「…アイエフ、コンパ。少しの間、ネプギアやユニ、ロムとラムの事を任せて良いか?俺は、アイツらやお前達に出来る事を備える。」

「えっ?ちょっ…ちょっとキール!?」

 

説得に失敗した事について謝りながらも、これからどうするかを決めたのか、アイエフとコンパにネプギア達の事を頼むように話すと共に、アイエフ達の返事を聞く前に、そそくさと教会内に入っていった。

元凶倒す為だけではなく、万が一の時にもネプギア達がネプテューヌ達を救える可能性を引き上げる為に…

 

−−−−−

 

「あ〜もうっ!退屈~!!ゲームやりたーい!」

「ネプテューヌ、貴女ねぇ…」

「私達、捕まっているのよ…?」 

「はあっ…せめて四女神オンラインのチャットだけでも…ギルドの皆と待ち合わせしていますのに…」 

「ベールまで…」

 

場所は変わり、女神達が捕らわれているズーネ地区。

変身が解けたネプテューヌ達はすでに何時ものような調子に戻っていた。

特にネプテューヌに至っては、あまりの暇さに我儘を言う始末だ。

 

「ネトゲ廃人もこういう時は心強いね!よ~し!!思い切って要求してみよう!お~いっ!ちょっと~!ねえってば!いるんでしょ?マザコング!!」

「誰がマザコングか!?マジェコンヌだ!!マジェコンヌ!!!マしか合っとらんじゃないか!」

「なんなのよ、その名前…」

 

名前を間違われて怒鳴り散らすマジェコンヌ。

しかし、こんな状況で冗談を言えるネプテューヌの様子に他の3人も少し呆れたような表情を浮かべていた。

 

「じゃあマジえもん!退屈だからさ~何か出してよー!退屈で死にそう!」

「き、貴様……」

 

更に名前を間違われ苛立ちを覚えるマジェコンヌと、そんな様子に気にも止めずにマイペースな様子で名前を間違え続けて行くネプテューヌ。

側から見ればまるでコントのような状態だ。

 

「…ふんっ!どの道お前達の命は今、終焉を迎えている。」

「あれ?否定しなかったよ?あの人の名前マジえもんでいいのかな?」

「知らないわよ…」

 

マジェコンヌはそんな彼女の言動に苛立っていだが、気を取り直すように不敵に笑うと口を開き始めた。

しかし、マジエモンという色んな意味ですれすれアウトのような名前を否定しなかった事にツッコミを入れてるネプテューヌと、突っ込むのも疲れた様子でノワールが呆れていた。

 

「おいコラッ!聞いているのか!?人がせっかく死刑宣告してやったというのに!!まあ良い…足元を見るがいい。」

 

そして、半ばムカつきながらも忠告のようにマジェコンヌが足元を見るようにと言うと、ネプテューヌ達は下を見る。

 

「な、なにこれ…?」 

「不気味ですわ…」

「これも、アンチクリスタルの…」

 

すると、結界の下層部には黒く何か不気味な水たまりのようなものが少しずつ溜まっていたのだ。

恐らく、アンチクリスタルの力の影響によって発生しているものだろう。

 

「それはやがて、お前達を苦しめ死に至らしめるだろう…残された僅かな時間を楽しむがいい…」

 

意味深な言葉告げたマジェコンヌは、不敵な笑みを浮かべながらネプテューヌ達の様子を眺めていたのだった。

それはまるで、全てが自分の思い通りに進んで、最後には女神達がこの世界から消滅すると確信していた…。

 

―――――

 

ネプギアとユニが仲違いしてしまってから少し時間が経った頃…

 

「…あたし、酷いこと言っちゃった。ネプギアが悪くないって分かってるのに…友達なのに…」

「だったら謝ればいいのよ! わたしたちもお姉ちゃんとケンカしたら、ちゃんと謝るもん!」 

「仲直り…しよ?」

 「…うん。」

 

自分勝手にネプギアを傷付けた事に後悔していたユニであったが、ロムとラムの説得によって少し気持ちの整理が落ち着いたのか、ネプギアと仲直りする事にした。

仲直りする為にまずはキールを探す事にしたユニ達。

キールがネプギアの説得を終えているなら一緒にいる筈だ。

 

「あれ?ここの部屋空いてたんだ。」

 

しかし、中々見つからない為、キールが向かったバルコニーへと向かおうと廊下に出ると、買い出しの時に立ちくらみで動けなくなっていたネプギアが休憩していた部屋の扉が開きっぱなしになっていた。

真っ先に気付いたラムがすぐさま部屋に近付くと、ネプギアの泣いている声が聞こえてきたのだ。

 

「うぅっ…ごめんなさい…私…私……」

 

ロムがその部屋に入ると、部屋で泣き崩れているネプギアの姿があった。

目の前で姉を救えなかった事や、アンチクリスタルの事に気付けた可能性があった事を踏まえて、1番辛い状況に立たされている。

その上、心配して励ましに来たキールに対して、心の無い事を言い放ってしまった事で更に自分を追い込んでしまい、より一層自責の念に駆られていたのだ。

 

「ネプギアちゃん…!」

「っ…えっ?ロム…ちゃん……?」

 

泣き崩れているネプギアにロムが声を掛けると、声に気付いて顔を上げて振り向く。

ずっと泣き続けたのだろう…彼女の頬には涙の跡が付いていた。

そして、そのままラムとユニも部屋の中に入ってきた。

ユニの頬にも涙の跡がある…彼女もずっと泣き続けたのが分かるぐらいに。

 

「ほら、早く!」

「わ、分かってるわよ!」

 

一方的に言ってしまって罪悪感を感じているユニは、後ろめたさを感じてなかなか部屋に入らなかったが、ラムが彼女の手を繋いで一緒に入ったのだ。

 

「仲直り…しよ…?」

 

ロムがネプギアの手を繋ぐと、ネプギアもゆっくりと立ち上がり、ラムとユニの方に来る。

そして、ロムとラムがそれぞれ繋いだ手で、2人の手を重ねるように添え、握り合わせたのだった。

 

「ネプギア…言い…過ぎちゃった…ごめん…ね……」

「ユニちゃん…」

「分かってるの…ネプギアのせいじゃないの…分かってるのにっ!」

「…ユニちゃんの気持ち、分かるから…」

 

少し間が空いたものの、ユニが口を開けると謝りながら話し出せば、ユニがネプギアに辛く当たったように、ネプギアもこの場に居ないキールに酷く当たった事もある為、そっとネプギアはユニをそっと抱きしめながら話す。

ユニは仲直りが出来た事と申し訳なさを感じ、再び泣き出していた。ネプギアも気持ちの整理が付いたのか、もらい泣きをしてしまって泣いていたのだった…

 

 

暫くの間、ネプギアとユニは泣き続けていたが、落ち着いてきたのか話し合いはじめていた。

 

「アタシ、お姉ちゃんより強い人なんて、居ないと思ってた。…でも、何があっても、きっとお姉ちゃんならって…。」

「私だって同じだよ。私も、お姉ちゃんがいなきゃ何にも出来ない…今だって、何をすれば良いのか良く分からなくて…」

 

自分達が今までどう感じていたのかを…姉達に依存し頼り過ぎていた事…そして、これらについての事を。

 

「それなら簡単じゃない!私達が助ければいいのよ!」

「私も、お姉ちゃん達…助けたい。」

 

思い悩んでいた2人を見かねたラムが、座っていた場所から飛び降りながら元気よく口を開けば、ネプギア達の前に出てくる。

ラムに続くようにロムも口を開くと、拙いながらも真剣な表情で話していた。

 

「でも…私達、変身できないし…」

「だったら!変身出来るようになれば良いじゃない!!」

「やり方、覚える…!」

「私に…出来るのかな…?」

 

しかし、肝心の女神化が出来ない為、このまま向かっても返り討ちに合うだけだと判断したネプギアが、困った表情を浮かべながら話すものの、手段が無ければ作れば良いと言わんばかりに意志を曲げずに話すロムとラム。

とはいえ、女神化を出来るようにすると言っても、手段すら分からない為、再び八方塞がりになってしまう。

 

「…お姉ちゃんが言ってた。アタシが変身できないのは…自分の心にリミッターを掛けてるからだって…」

 

すると、ユニが口を開いて話し始める。

話の流れから、彼女がノワールに言われた事だろう。

 

「心のリミッター…?」

「例えば…何かを怖がってるとか…そう言う事よ。」

 

ユニの言葉に各自思い当たる節がないかを考え始める。

 

「私、モンスター怖い…」

「うん。私も…」

 

そして、真っ先に思い浮かんだのは、モンスターと対峙する時に感じる不安や恐怖だった。

戦闘の経験があまりないネプギア達にとっては、屈強なモンスターが出てきた時にどうすればいいのか分からないのだ。

今までなら、ネプテューヌ達が女神化して倒していたのだから…

 

「じゃあ!皆で特訓して、モンスターが怖くなくなればいいのよ!」

「でも、今からクエストを受けるって言っても…。」

 

ラムが実際にモンスターと戦って怖くならないようになるまで特訓すると提案するものの、捕まっているネプテューヌ達の事を考えると時間が無い。

そうこうして考えていたが、ふと、パーティーの時に使ったVRゲームの事が脳裏に浮かんだのだった。

 

「…あっ!パーティーの時に使ったVRがあるじゃない!あれで実戦モードって奴を使えば…!」

「ゲームだけど、モンスターと戦う経験を積めれば…!」

「うん!それ、良いかも!」 

「…うん!」

 

説明書の中にあった実戦を想定した設定が出来る事を思い出せば、考えていた事が一緒だった事に安堵と嬉しさを覚えていた。

そして、すぐさま行動に移すべく、パーティーを開いた部屋へと向かって行った。

 

 

「な、何これっ!?」

「こ、これって…VRが起動してるみたいだけど…?」

 

部屋に入るやいな、見た事も無いような広い道場のような部屋に変わった為、変化に気付いたネプギア達が困惑した様子で室内を見ていた。

 

「それにしても、動かした事も無かったのに、良くこんなステージ作れたわね…」

「言っただろ?その気になればすぐに出来るって。因みに、このステージは俺が元いた世界の登龍館って言われてる武道館…道場の稽古場を再現している。」

「…あっ、ギアちゃん達が来たみたいです!」

 

すると、部屋の中央には説明書やスイッチ、操作盤を手に持ったキールと、彼の手伝いをしていたアイエフとコンパの姿があった。

そして、ネプギア達の事に気付いたコンパが、彼女達の姿を見るや安堵した表情を浮かべていた。

 

「キールさん…あの、私……」

「謝る必要はない。それより、アイツらを助けに向かうつもりなんだろ?強くなる為に…女神化をものにする為に此処に来た…違うか?違わないなら、始めるぞ。」

「!…はいっ!」

 

バルコニーで八つ当たりした事を謝ろうとするネプギアを見たキールは、気にしてないような素振りを見せつつ話し続けると、ネプテューヌ達を助けに行くまでに女神化の訓練が出来る場所と言えば、今はすぐにでも訓練を優先した方が良いと判断して立ち上がる。

そんな彼の様子と訓練の目的を聞いたネプギア達は、より一層真剣な表情を浮かべながら頷いていた。

そして、ギミックで設置されたであろう大きな銅鑼が鳴り響くと、ネプギア達の大切な姉達を救う為の修行の始まりを合図したのだった。

 

−−−−−




次回はネプギア達の修行及びキールの出陣になります(´・ω・`)
後々オリ主にはネプギア達の出番を取らないように、ガス欠になってもらう事にします(´・ω・`)


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第15話『守護女神達を救え‼︎妹達の決意とキールの覚悟‼︎』

アニメ本編中編辺りの話になります(´・ω・`)
進行速度がだいぶ遅くなってる気がする…(´・ω・`)
話を行き来し過ぎてたまに分からなくなる(´・ω・`)


−−−−−

 

リーンボックスのパーティルームだった部屋が道場のような部屋へと変わり、修行を開始する事にしたネプギア達。

操作パネルを片手に持ちながら、キールは空いているもう片方の手で気の球を作る。

 

「さて…実際にモンスターとの戦闘を想定した戦闘を行う前に…お前達にやってもらいたい事がある。」

「これって、私とネプギアが前に見たのと同じよね?」

「見た目はな。だが性質的には、密度と練度を可能な限り高めている。」

 

同じようなものを6つ作ると、操気術を使ってネプギア達4人と、アイエフ、コンパの前に移動させて静止させていく。

目の前で止まった気の球を見たユニが、ラステイションの湖のほとりでネプギアと共に見せて貰った物の事を思い出す。

 

「これで、何するの…?」

「まずは何も考えずに触れてくれ。」

「じゃあ、私から行くよ!」

 

淡い緑色の光を仄かに帯びる気の球を見つめていたロムが、不思議そうにしながらキールに問い尋ねると、彼は何か企んでいるような表情を浮かべながら説明を続ける。

すると、その説明に応じるように、最初に気の球に触れたのはラムだった。

ラムが気の球に触れた途端、気の球がラムに吸収されるように取り込まれていけば、彼女の身体を緑色の光が覆うような状態になっていた。

 

「わっ!?…こ、これ…!」

「気は他人に分け与える事が出来るんだ。俺は気の扱いに長けているから、ある一定の状態まで馴染ませれる。そこからは本人次第だがな。」

 

身体の隅々まで浸透するように発している気のエネルギーに、ラムが驚いた様子で見ていれば、その様子を見ながらキールは説明を続けていた。

 

「要するに…力を分けてるって事?」

「その解釈でも問題ないが、半分ハズレだな。確かにシェアの力とは別に気も使えるようになれば、戦い方の幅も一気に広がるが…」

「それって、どういう事ですか?」

 

ふと、不満そうに疑問を浮かべるユニの言葉に対して、気を分け与えているという事が、ただ単にネプギア達に力を貸しているだけではないと否定する。

 

「気を分け与えた事自体は、あくまでもキッカケにしかならない。重要なのは、気のエネルギーを感じ取る感覚にある。それをネプギア達がシェアで同じように上手く…女神化のキッカケとして扱えられるようになればと思ってな。」

 

シェアと気の性質は良く似ているため、何らかの変化をもたらせばネプギア達を女神化出来るんじゃないかと考えたのだ。

そして、キールは続けざまに説明し続ける。

 

「それに…ネプギアとユニには言ったが、気は自分自身の生命エネルギーを具現化した力だ。使い続けると当然クタクタになるぐらい疲れる。気に触れたらすぐさま身体の力を抜け。深呼吸をしてリラックスすれば良い。」

「は、はい!」

 

気は、シェアのように信仰心で賄われるものではない為、気の扱いに慣れていない者は意識して制御しないと放出し続けて動けなくなる可能性がある。

念の為に、ネプギア達やアイエフとコンパにも気をただ使うだけではなく、まずは気を完全にコントロールして扱えるようになるまで意識させる事にした。

 

−−−−−

 

外が夜が明けて日がすこし出て来た早朝の時刻…

取り込んだ気を平常時でも使えるようにする為、気をコントロールする修行に入っていた。

全身に気を纏うように維持しながら、最小限に気を抑えるという少し難しい修行方法だ。

 

「くっ…結構、難しいわねっ…」

「上手くいかないですぅ…」

「まあ、慣れないうちはしょうがない。」

 

シェアの力が使えないコンパとアイエフは、気を意識してコントロールする訓練から始めたのだが、案の定手こずっていた。

単純に気の性質に慣れていないから仕方がないのだが…

 

「キールさん!こ、こんな感じですか?」

「よし、良いぞ。そのまま続けるんだ。」

 

身体に発している気をコントロールする感覚を掴んだのはネプギアだった。

何事もそつなくこなせる彼女だからだろう…荒削りではあるが、飲み込みの速さもあってすぐにコツを掴んでいた。

 

「出来た…!」

「ふふーん♪慣れればなんて事ないわね!」

「…っ!で、出来た!出来たわよキール!」

 

続いてロムとラムの2人が気のコントロールに成功して嬉しそうにしている。

そして、3人に若干遅れたとは言え、続けて成功させたのはユニだった。

女神化出来ないとは言え、ネプギア達の吸収力と適応性の高さを見てこれなら女神化出来るのも時間の問題だなと安堵の表情を浮かべていた。

…因みに、以外におっちょこちょいな面々が揃ってるネプテューヌ達だと、この修行に丸一日掛かるだろうなとキールは予想していたのだった。

 

「…よし、アイエフとコンパはそのまま気のコントロールを。ネプギア達は実践を想定した訓練に入るぞ。」

「うん…!」

「でも、モンスターの役ってキール君がやるの?」

「俺は分身体を気で作れるから問題ない。」

「あぁ…あれね……」

 

そして、キールが気のコントロールよりもネプギア達の訓練で重点にしている…最も重要な修行になる実戦訓練へと入る事になった。

ふと、ラムが訓練に必要な対戦相手がいない事を尋ねると、極影身を使えるために問題ないと話す。

なお、食材を持って入った人影のような大量の物体の事を思い出したユニは、あれはキールの仕業だったのかと納得していたのだった。

 

「こ、これって…!」

「トゥルーネ洞窟でいたドラゴンを採用した。体格がデカイし、攻撃方法も分かりやすい…ネプギア達の実戦想定にはうってつけだと思ってな。」

 

キールが設定したのは、トゥルーネ洞窟で戦闘したエンシェントドラゴンだった。

巨体で凶悪そうな外見から、攻撃の通りにくい部位や急所がよく分かる為、模擬戦にはうってつけだと考えたのだ。

 

「よし…戦闘開始だ!」

 

極影身の1人がVRの特殊カメラでエンシェントドラゴンになれば、ネプギア達に立ちはだかるように翼を開いて身構えていた。

そして、キールの掛け声と共に戦闘訓練が開始されれば、身構えていたエンシェントドラゴンがネプギア達に突っ込んでいく。

急に向かって来たエンシェントドラゴンに慌てて距離を取るネプギア達。

 

「わわっ!?」

「大事なのは流れを読む事だ。敵がどういう行動をしてくるかを判断するんだ。最初は視覚だけでも良いから、相手の動きをよく見て感じ取れ。」

 

気の探知や感覚的に感じ取る事は時間的にもまだ出来ないが、モンスターと戦う時に必要になってくる戦闘勘を養うには最適だなと思いながらも、引き続きネプギア達の戦い方を見る事にする。

 

「きゃっ!?」

「おっと、大丈夫か?」

「き、キールさん…すみません。」

 

ドラゴンの拳の突きが飛んでくれば、なんとか回避して反撃をしようとしたネプギアだったが、続けて尻尾の攻撃に弾かれるように軽く飛ばされてしまう。

しかし、キールがすぐさま移動して飛ばされたネプギアを受け止める。

 

「人とは違って尻尾や翼がある分、気を抜くと今みたいに返り討ちに遭う。だが、すぐ反撃に出れたのは悪くなかったぞネプギア。そうだな…状況に応じて戦い方を変えるのも一つの手段だ。」

「は、はい!」

 

ゆっくり着地しながらネプギアを降ろせば、駄目だった点と良かった点を指摘しながら、この際だから色んな手を使って見るといいとアドバイスを入れる。

そして、そのままネプギアが気を取り直すように一呼吸置けば、すぐさまエンシェントドラゴンへと向かっていった。

 

「えーい!」

「やぁっ!」

 

ロムとラムがドラゴンの動きに注意しながら、武器であるメイスで攻撃を仕掛ける。

 

「きゃああっ!!?」

「〜〜っ!!?」

 

しかし、翼を羽ばたかせられれば突風が巻き起これば、シェアの障壁を張ったといえ簡単に飛ばされていた。

そのままキールが二人を操気術を使い、気でバリアのように包んで守れば、2人を回収していく。

 

「こ、怖い…(うるうる)」

「あ、あんなのズルいわよ〜っ!」

「…まあ、あれだけデカイと衝撃波があるしな。接近している時は要注意だ。」

 

吹き飛ばされた事が怖かったのか涙目になるロムと、攻撃してたにも関わらずに吹き飛ばされた事に悔しそうにしているラムを見れば、体格や重量の大きなモンスターの特権のようなものだから、そういうのも注意するようにと指示をしていく。

 

「くっ、このっ……」

「距離を詰められても焦るなユニ。ただ動くだけじゃなくフェイントも掛けたりして相手を揺さ振れ。向こうもこっちの動きを読もうとしているんだ。敵に自分の動きを読ませるな。」

「わ、分かった!」

「ユニちゃん!」

 

片手剣を武器にしているネプギアと違い、銃が主体のユニは、ジリジリと距離を詰められ苦戦を強いられている。

キールもアドバイスをしながら様子を見守るも、ネプギアの援護もあって、回り込んで距離を取る事に成功する。

 

「助かったわ、ありがとネプギア。」

「良いぞ。一人でキツイなら、互いでフォローしながら戦うのが良い。…とは言っても、ネプギア達は連携して戦う方が向いてるな。」

「うん!」

 

次第にネプギア達の動きに硬さが無くなってくれば、エンシェントドラゴンの攻撃の動きに対応して、隙を狙っていく。

 

「やあぁっ!」

「それーっ!」

 

距離を置いたロムとラムが氷魔法を唱えれば、エンシェントドラゴンの足を凍らせて動きを押さえる。

 

「ネプギア!援護してあげるから決めなさい!」

「うん!ありがとうユニちゃん!」

 

そして、足を取られて動けなくなったエンシェントドラゴンの隙を更に作る為、ユニがすかさず銃を撃ち込んでいく。

足が凍って避けれない為、銃弾を腕で防ぐも、何発か直撃してよろめいていくエンシェントドラゴン。

 

「これで…トドメですっ!」

 

よろめいた隙を狙って懐に入り込んだネプギアが、そのまま剣の突きを繰り出せば、急所を攻撃されたエンシェントドラゴンは光になってかき消えていったのだった。

 

「やった…!」

「か、勝った…私達、勝ったわよ!」

 

標的であったエンシェントドラゴンを倒し終え、嬉しさと共に少し疲れた様子でその場に座るネプギア達。

 

「やるな。戦闘経験があんまりないとは言え、エンシェントドラゴンを倒したとは…」

「でも、気の訓練もしてエンシェントドラゴンを倒せたのに、変身できるようにはならないわね…。」

 

戦い方に拙さはあるものの、戦いの中で成長しているのが分かるほど、姉達に引けを取らないネプギア達の才能に内心嬉しそうにしていたキールであった。

しかし、まだまだ不安要素はある。

気のコントロールによる飛び道具や舞空術がまだ使えない事、そして…肝心の女神化が出来ない事だ。

 

「よし!もっと倒してコツを掴めば…!」

「…もう、その時間はないみたいよ。」

 

女神化までは時間が掛かる為、再び訓練を再開しようと立ち上がるネプギア達。

そこに、気のコントロールの訓練を終えて休憩していたアイエフが、スマートフォンを取り出して全員に見せるように出してきた。

 

「アイエフさん、これって…?」

「無名による投稿だったけど、この画像が上がっているのを見つけたの。それも捕まった経緯も事細かく書かれていたわ。」

 

そこには一枚の画像が表示されており、その画像にはズーネ地区の廃棄物処理場で捕まっているパープルハートの姿だった。

アイエフがそのままスマートフォンの画面をスライドさせると、同様に捕まっているブラックハート、ホワイトハート、グリーンハートの四女神達の姿が映し出される。

 

「このままだと、もうすぐゲイムギョウ界中にこの事が広まる事になるわ。つまりこれを国民が知ったら、急激にシェアが下がる事になりかねないわ。もしそうなったら…」

「シェアクリスタルから、私達に与えられる力が無くなる…」

 

画像を見て不安そうにしているネプギア達を横目に見ながら、それぞれの国民掲示板に出されている事についてキールが問い尋ねると、深刻な表情を浮かべるアイエフの言葉に、女神候補生達の表情に不安が募る。

 

「…やむ終えないが、訓練は終わりだ。これから全員でネプテューヌ達を助けに向かうぞ。」

 

気持ちを切り替えるようにキールがネプテューヌ達の救出に向かう事を告げれば、全員がその事に同意するように頷く。

そして、VRの装置の電源を切れば、部屋の姿が元のパーティールームに戻っていた。

それを確認してからすぐさま行動に移すべく、教会の外へと向かうネプギア達。

そして、教会を出てすぐの場所に停められているアイエフのバイクの側へと集まった。

 

「港の方で船を準備出来るか聞いてみるわ。」

「船じゃ間に合わない可能性がある。飛んでいくぞ。」

 

アイエフがスマートフォンを取り出して仕事仲間の諜報員に連絡を取ろうとするものの、キールに止められてしまう。

 

「でも…私達、女神化出来ないから飛べないわよ?それに、アイエフさん達も飛べる手段なんて…」

「なら、こうすれば解決する。」

 

一刻も早く姉達の救出に向かいたそうにしているユニが、アイエフを引き止めたキールに不満そうに疑問を述べると、キールは身体に気を纏いながら両手を広げれば、纏っている気がバリアのように広がっていくと、この場にいるネプギア達全員を包み込んで浮遊していく。

更にキールが気を解放して超サイヤ人に変身すると、気のバリアは金色に変化すると共に稲妻を纏い、強靭なものへと変化していったのだった。

 

「す、凄っ…」

「気を極めれば、こんな事も出来るんだ。よし、行くぞっ!!」

 

皆が驚いている中、ある程度の高度に達した事を確認したキールは、そのままバリアにしている気を維持しながら、勢い良く加速していく。

やがて、超サイヤ人で出せる最大速度に達すると、その速度を維持したまま向かうべき場所へと向かって行った。

そして、ネプテューヌ達に迫る制限時間に間に合うように、出来る限りの時間を作るために…

 

 

「ギアちゃん達、まだ変身もできないのに…」 

「女神が失敗しても妹が頑張れば国民は納得するでしょ?その方がシェアのダメージは少ないはずだわ。」 

「そうですけど…」

 

ズーネ地区へと凄まじい勢いで向かっている気のバリア内で、コンパはまだ変身が出来ないネプギア達を戦わせていいのか不安そうにしていた。

 

「それにね…キールもいるんだから、私も信じたいの。ネプギア達なら…ってね。」

「アイちゃんが言うなら、私も…ギアちゃん達とキールを信じるです♪」

 

女神の妹達であるネプギア達とキールなら、ネプテューヌ達を救い出せる事が出来る…そう信じているからこそのアイエフの言葉に、静かに頷いて微笑んだコンパだった。

そして、一刻一刻と迫っているタイムリミットに、焦る気持ちを抑えながらも、張り詰めたように不安な表情を浮かべているネプギア達を見れば、キールは声を掛けていく。

 

「…怖いか?」

「…うん。少しだけ…上手く行くかも、分からないから…」

 

不安そうな表情を浮かべつつも、ネプテューヌ達が捕らわれているズーネ地区方向を見ながら、ぎゅっと自分の拳を握りながらネプギアは呟くように話し出す。

 

「…怖いと思うのは間違いじゃない。無理だと思ったら逃げたっていい。だがな…1番駄目な事は、恐怖から目を逸らし続ける事だ。いつか向き合わないと駄目な事なら尚更だからな。…まあ、いつか分かる時が来る。後は…自分を信じろ。」

「…キールさん、ありがとう。」

 

対してキールは、やや辛口な意見を告げるものの、手加減はしていたとはいえ、エンシェントドラゴンになっていた分身体を倒した事もあるため、ネプテューヌ達を助ける為に必要な事はやったんだと励ましの言葉を話す。

 

「…さて、そろそろズーネ地区に入る。全員、ちゃんと備えろよ。」

 

そして、海岸から離れた場所にあるズーネ地区を確認すれば、捕らわれているネプテューヌ達の事が気掛かりな為、更に速度を上げてズーネ地区の廃棄物処理場を目指したのだった…

 

−−−−−

 

キール達が教会から飛び立って数分が経った頃…

ズーネ地区で捕まっているネプテューヌ達に、タイムリミットが迫りつつあったのだった。

 

「ずいぶん溜まってきたわね…」

「あれに飲み込まれたらどうなってしまうのでしょう…」

「こんなことなら対策を研究しておくんだったわ…私は自分から遠ざける事しか…」

「まあまあ、みんな元気出そうよ!今の所無事なわけだし、まだまだ希望はあるって!」

 

不安が渦巻く中、場の空気をぶち壊すようなネプテューヌの明るく元気な声が響き渡る。

彼女はこの状況から何とかなると信じている様子だ。

 

「…貴女の前向きさって嫌いじゃないけど、こういう時は流石に鬱陶しいわ。」

「現実逃避ね…」

「だって、わざわざ希望がないと言うよりはさー。」

「可能性のない楽観だって役に立たないわよ。」

 

しかし、案の定と言うべきか、何も出来ない現状な為にノワールとブランから呆れてしまうものの、ネプテューヌは喋るのを止めなかった。

 

「…可能性ならありますわよ。」

「ねぷっ?」

 

しかし、意外にもネプテューヌに助け舟を出すように口を挟んだのはベールだった。

そんな彼女の言葉に少し意外そうな表情を浮かべながら声を上げるネプテューヌ。

 

「いるじゃありませんか。貴女方の妹が…そして、キールさんが。」 

「ユニ?あの子はまだ私抜きで戦ったことさえないのよ?可能性があるとしたら、キールだけになるじゃない。」 

「ロムもラムも…私が守ってあげなきゃいけない歳だわ…」

「ネプギアだって…しっかりしてるようで甘えん坊だし、無理じゃないかな?」

 

ベールがキールやネプギア達が必ず助けに来てくれる事を信じている様子で話すものの、まだ戦う事自体から遠ざけていた事もあって3人は否定的に意見を言い続ける。

 

「それは貴女方のエゴではなくて?…確かに、あの子達は可愛らしい。私だって、何時までもあのままでいて欲しいと思っていますわ。」

 

3人の意見をベールは否定しながら話し続けていく。

ベールから見ればネプテューヌの意見を聞く限りでは、彼女達が妹達を縛っているようにしか聞こえなかったのだ。

四女神達の中で唯一妹がいない彼女からすれば、ピンチに陥る姉を妹が助けに来てくれるという事が、彼女にとってこれ以上にない嬉しい事なのだろうが…

 

「…でも、そんな思いがあの子達を変身できない…可愛い妹のままでいさせてるのかもしれない…そうは思いませんこと?」

 

こんな状況だからこそ、自分達の大切な妹達を信じる事が大事だと話せば、3人も不安な表情を浮かべながらも納得した様子で頷く。

 

「それに、ネプギアちゃん達にはキールさんが付いていますわ。ですから…あの子達を信じてはみませんこと?」

「…そうね。信じるわ。ユニの事を…。」

「私も…ロムとラムを信じるわ…。」

 

最後まで諦めない事と、自分達の妹を信じるべきだと言われたブランとノワールは、自分達の大切な無茶はさせたくないものの、それでも助けに来てくれる事を信じて頷いた。

その様子を見たベールは嬉しそうに微笑むと、不安な空気が流れていた場の空気が少しだけ落ち着いた気がしたのだった。

 

「…ん?何か空が光ってるっちゅよ?」

「ふん、来たみたいだな。金色の戦士も一緒か。」

 

ふと、女神達の様子を監視していたワレチューが、リーンボックスの教会方向の空から、丸い金色の光が見えて来た事に気付く。

やがて、その光はこの廃棄物処理場で捕らわれている女神達に向かって来ているのが分かるぐらいに大きくなって来ている。

 

「案の定、仲間を連れて戻って来たっちゅよ?」

「だが、女神の妹を含め…何人来ようがここまで辿り着ける事など出来まい。それに、女神にも慣れない連中に何が出来る?」

 

しかし、この場に来たネプギア達を嘲笑うかのようにマジェコンヌが呟けば、彼女が腕を掲げると共に周囲にいた機械型のモンスター達が反応すると、金色の光に向かって進行を始めたのだった。

 

「さあ、小娘の妹達…そして、金色の戦士よ。止められると思うなら来るがいい。」

 

地上へと降りていく光を見ながら、ニヤリと不敵に笑みを浮かべて余興としての迎撃戦を始めるのだった。

女神達が消滅するその時を見せつけ、女神の妹諸共滅ぼす算段を付けながら…

 

−−−−−




次回はネプギア達を候補生達の女神化及び、対マジェコンヌとの戦闘になります(´・ω・`)
オリ主も活躍させたいですけど、あの形態の変身を入れる場所とタイミングがなかなか噛み合わない…( ;´Д`)
後、ドラゴンボールはマジェコンヌ戦では出さないつもりです(´・ω・`)


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第16話『予想外の事態!?違和感と不穏感!!』

アニメ本編5話の前半辺りの時間軸の話になります
オリ主とマジェコンヌの一回戦となります。


−−−−−

 

ネプテューヌ達が捕まっている廃棄物処理場付近に降り立ったキールとネプギア達。

本当ならそのままネプテューヌ達のいる場所に降り立ちたかったが、大量に蔓延っているモンスターを処理する必要があると考えて、可能な限り近付いて降りたのだ。

そして、地上へ降りればバリアを解除して周囲の状況を確認する。

すると、ネプテューヌ達が捕らわれている方向から大量のモンスター達が出現して来た。

 

「…敵もこっちの動きに気付いたみたいね。」

 

現れたモンスターの姿に身構えるネプギア達。

自分達の意志で姉である女神達を救いにここまで来たのだ。

そして、一帯を埋め尽くすようなモンスターの出現により、その場にいるメンバーの緊張が高まる。

 

「大丈夫よ!此処に来る為に特訓もしたんだから!どんなに数がいても倒せば良いのよ!」

「私も…モンスターが沢山いても、やっつける…!」

 

不安を振り払うように元気よくラムが意気込むように話すと、続けてロムも自分の武器であるメイスをギュッと握りしめながら頷いて話す。

 

「そうよ。アタシ達なら出来ないはずがないわよ。」

「ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん…うん、きっと大丈夫。上手くいく。」

 

ユニも武器であるライフルを装備しながら気を引き締めるように話す。

3人の言葉に後押しされるようにコクリと頷いたネプギアも、自分の武器である片手剣のビームソードを手にして身構えていた。

 

「よし…まずは俺が先行して空からモンスター共に奇襲を仕掛ける。もし溢れが出たらネプギア達で倒してくれ。」

「それって、キールさんが囮になるって事ですか?」

 

身体に気を溜めるように纏いながら、キールが先行して囮と同時に殲滅役を担う事を話すも、少し不安な表情を浮かべながら話すネプギア。

 

「ネプギア達はまだ女神化は出来ないだろ?それに、アイエフとコンパの2人にも囮役はキツすぎるしな。俺は舞空術が使えるし、派手に暴れれば敵の方から飛んでくるはずだ。まあ、あんな鈍重そうな連中の攻撃が当たった所で、大して痛くもないと思うが…」

 

しかし、キールからすれば飛び道具を使う程度の、機械型のモンスターの攻撃が当たった所で効かないだろう踏んでいるのか、一斉に攻撃された所で問題無いと割り切るように話す。

寧ろ、ネプギア達を消耗させずにどれだけの敵を殲滅出来るかの方が重要性が高いのだ。

 

「さあ、後は全力を尽くすだけだ。ネプテューヌ達を助けるぞ!」

「キールさん…分かりました。皆…行こう!」

「「うん!」」

「分かったわ!」

 

そんな彼の心強い言葉に少し気持ちが落ち着いたのか、真剣な表情を浮かべながらユニとロムとラムに声を掛けていくネプギア。

そして、アイエフとコンパも彼女達に着いていくように動き出したのだった。

その場に残った唯一飛行が可能なキールは、まずは手始めに群がっている有象無象共を片付ける事にした。

 

「可能な限りは殲滅しないとな…撃指光裂弾!!」

 

片手に溜めた気弾を前方に向け遅い速度で放つと、もう片手の指を銃を連想させるような形で構えて気弾を放てば、先に放たれた気弾に直撃して大量の気弾の弾幕が形成されれば、こちらに向かって来るモンスター達へと向かって行く。

トゥルーネ洞窟で彼が放った技でもある撃指光裂弾だ。

放たれた気弾はネプギア達を狙って向かって来たモンスター達を追尾して次々に貫いていき、貫かれたモンスター達は光となって消えていった。

 

「やっぱり、キールさん凄い…」

「でも、あんなに殲滅してるのにまだ残ってるわね。」

「残りは私達で倒すわよ!」

「うん…!」

 

気弾はやがて効力の限界を迎えて爆発していくものの、モンスターの数はまだ残っている。

気弾によって視界に群がる程にいたモンスターが殲滅された事に驚くネプギアと、それでもなお残っていたモンスター達が立ちはだかって来た事に面倒そうにしているユニ。

そして、元凶のいる場所まで突破する為、地上に残っている機械型のモンスターとの戦闘を開始していく。

 

「やああぁっ!!」

 

ネプギア達に狙いを定めた機械型のモンスターが光線を放つものの、戦闘訓練の効果が現れているのか、上手く距離を詰めて斬り込んでいけば、そのまま機械型のモンスターを倒しながら進んでいく。

 

「えぇいっ!!」

「凍っちゃいなさい!!」

 

ネプギアに続いてロムとラムが魔法を放ち、ネプギアに狙いを定めている機械型モンスターを凍らして倒していく。

 

「そこっ!!」

 

狙いがロムとラムの2人の方に移る前に、ユニがすかさず狙いを定めて狙撃していき、残っている機械型のモンスター達を倒して順調に進んでいくのであった。

 

 

「あいつらも進み始めたか。出来る限り雑魚を殲滅しておきたいが…」

 

候補生達がモンスターを倒しながら進行している様子を見れば、モンスターが向かって来ている方向からネプギア達の方向に一気になだれ込むのを防ぐ為、自分が先陣を切るしかないと考える。

しかし、撃指光裂弾の効力が消えてもまだ、残っているモンスター達がいる為、舞空術で宙に浮きながら両手に気弾を溜めて進む事にした。

 

「(そういえば、アイエフが戻って来た時、あいつらの力が奪われてるって言ってたな。予想以上に時間が無いかもしれない…それに……)」

 

ふと、先ほど教会で聞いたアイエフの話を思い返せば、先にネプテューヌ達を救わないと間に合わないかもしれないと考える。

 

「(ネプテューヌ達が捕まってる近くに1人、予想外に気が馬鹿デカい奴が居る……だが、何でこの気の概念が無かった世界で、これほど強力な気を感じるんだ?)」

 

そして、自分が良く知る力である気の力が、アンチエナジーと呼ばれる禍々しい力と共に、異様に強く感じる事に違和感を覚えていたのだった。

しかも、キールが現在感じている気の力は、下手をすると彼が変身している姿の超サイヤ人に匹敵する程だ。

 

「(今の超サイヤ人の状態になっている俺が勝てるかどうか怪しいが…対面してから力を上げて短期決戦に持ち込むしかないみたいだな。)」

 

このゲイムギョウ界では信仰心から現れるシェアエネルギーが、各大陸を守護する女神達の力の源として存在している。

対して、キール自身が使っている気については、別世界から流れ込んで来た異物のようなものだからだ。

伝説とも言われた超サイヤ人に匹敵する程の気の使い手が、このゲイムギョウ界に存在するとは到底考えられなかった。

 

「(ネプギア達に重荷になるかもしれないが、先に行って違和感の正体を確かめないとな…)」

 

胸焼けのような不安を感じながらも、先にネプテューヌ達の元に急ぐ必要があると考えれば、更に気を高めて纏いながらも戦っているネプギア達の負担を軽くする為、地上にいるモンスター達の殲滅を同時並行する為に気弾を撃ちながら飛行していったのだった。

 

−−−−−

 

「…ふん。やはり、金色の戦士が先に来たか。」

 

ネプテューヌ達が捕らわれている廃棄物処理場の高台で、見下げるようにネプギア達の様子を見ていたマジェコンヌ。

女神達の妹達は予想通りの位置で、付いてきていた人間の2人と共に行動している。

もう少しで潜伏しているモンスター達の波状攻撃が始まるだろう。

だが、地形など関係ないと言わんばかりに、凄まじい殲滅力を誇りながら、こちらに直進して勢い良く向かって来ている金色の光を見て不服そうにしながら呟いていた。

 

「お、オバハン!あんな滅茶苦茶してる奴に、勝てる算段なんてあるんちゅか!?動画の時とまるで違うっちゅよ!?」

「勝てるからこそ此処にいるのだ。万が一の為に用意した力があるのだからな。」

 

圧倒的な戦闘能力を誇る金色の戦士の様子に嫌な予感を感じているのか、ワレチューは不安を表情に浮かべながら呟くように尋ねるものの、マジェコンヌは変わらず見下げた様子で眺めながら話す。

 

「それに、奴はこの小娘の救出と妹共のお守り…両方を兼ね合いながら戦う羽目になっているのだ。例え、どれだけ雑魚を全滅出来た所で、バテた所を捻り潰せば良い。」

 

高い戦闘力を誇っているにも関わらず、シェアの恩恵が無い事から、自らの体力を犠牲に戦っていると見抜いたのか、キールの体力を限界まで奪ってから、いたぶるように始末すれば良いと自信満々に対策を話すマジェコンヌ。

 

「奴から金色の光が消えれば、その時が奴の最後だ。幾ら抜きん出た戦闘能力があった所で、力尽きて動けなくなれば無意味なのだからな。」

「キール…」

 

マジェコンヌの持論に女神達の表情に不安の色が見えてくる。

気は生命力を具現化したエネルギーというのは前から聞いており、女神がシェアを使うように、彼は自らの体力を消費するのだから。

 

「…その作戦ちゅけど、此処に回してる肝心のモンスター達がほとんど残っていないっちゅよ?」

「……は?」

 

勝ち誇るように高笑いしようとしたマジェコンヌだったが、直後にレーダーにある反応が僅かしか無い事に気付いたワレチューが、若干顔を青くしながら口を開けて話す。

そして、その言葉に硬直するマジェコンヌ。

 

「おいネズミ、あれ程の数を準備したのだぞ?もういなくなった訳がないだろう。もう一度モンスター達を呼び出せ!」

「だから、もういないって言ってるっちゅよ!」

 

そして、もう一度ワレチューに対してモンスターを出現させるよう告げるが、既に呼び尽くしてもう居ない事を言われてしまう。

 

「ちっ、一体どうなって…」

 

唖然とした様子で焦りの表情を浮かべるマジェコンヌだったが、捕えている女神を逃がさない為に、不服ながら対抗手段を取る事にした。

…が、そんなやり取りをしている2人背後の方向から、凄まじい衝撃音が鳴り響く。

 

「な、何!?」

 

マジェコンヌが音に気付いて慌てて背後を見ると、ゴロツキの男2人組が居た場所の付近が金色の光で覆われていたのだ。

その場には、マジェコンヌとワレチューに背中を見せながら、無造作に開いたアタッシュケースの中身を確認している金色の戦士…キールが居たのだ。

 

「…成る程な。コイツらがドラゴンボールを持ったまま、散り散りになって逃げようとしてたのは、ドラゴンレーダーを持っていたからか。」

 

開いたアタッシュケースの中身を確認したキールは、そのまま手にしたホイポイカプセルを投げると、アタッシュケースがその場から消えるようにカプセルへと収納される。そして、手にしたカプセルをポーチに収納すると、ゆっくりとマジェコンヌとワレチューの方を見る。

 

「…お前らが元凶で間違いなさそうだな。」

「キール!!」

 

結界に捕らえられているネプテューヌ達を確認してから、ゆっくりとマジェコンヌとワレチューに向かって静かに歩き始めていく。

超サイヤ人を維持したままその場にいる為、突風のように気の圧がその場を襲っている。

 

「ま、まさか…こんなに早く来るなんて思わなかったっちゅよ…」

「…ふんっ、何をしたかと思えば、無駄にいた連中を片付けただけか。」

 

速すぎる招かざる客の登場に冷や汗を垂らしながら警戒するワレチューと、その場にいない男2人組の事から、大した事もしていないと言わんばかりに口を開いて挑発するマジェコンヌ。

対してキールはマジェコンヌの言葉に対して何も言わずに、そのまま元凶の2人の前まで歩いて来ると立ち止まっていく。

 

「さて、何でこんな馬鹿な事をしたか知らんが、貴様を葬ってからネプテューヌ達を返してもらうぞ。」

「ふん!小娘共を取り返したければ、掛かってくるが良い…金色の戦士!」

 

ネプテューヌ達を陥れた元凶を見据え、静かに口を開いて話しながら身体に力を込めながら、元凶を葬らんという気迫を纏い、プレッシャーを放ちながら身構えるキール。

それに対してマジェコンヌは、自分の武器である槍を手に取る。

 

「…はぁっ!!」

「ぐっ!!」

 

武器を携えたマジェコンヌの様子に反応したキールが、真正面から突っ込んで行くと、踏み込みから鋭い拳の突きを繰り出す。

あっという間に距離を詰め寄ってきたキールに驚きながらも、拳の突きを槍で防ぐ。

 

「はあああぁぁっ!!!」

「ぐ…くうぅっ……」

 

しかし、重くて鋭い突きの一撃だけでは終わらず、すかさず拳の連打がマジェコンヌに向かって放たれていく。

更に、そこから上段回し蹴りからの連続蹴り、裏拳、手刀、肘打ちと流れるような連打を繰り出していくキール。

対してマジェコンヌが槍を扱いながら威力を流すも、徐々に威力を殺し切れずに態勢が崩れる。

 

「せいっ!!」

「うおぁっ!!?」

「貰ったっ!!」

 

マジェコンヌの態勢が崩れた所を見逃さなかったキールは、勢い良く横蹴りを放ってマジェコンヌを蹴り飛ばせば、すかさず舞空術を使って追い掛けていくと追い討ちを掛けるように思い切り急接近しながら拳を振り抜こうとした。

 

「ちっ…舐めるなっ!!」

「なっ…ぐっ!?」

 

だが、キールが拳を放った直後にマジェコンヌからあの禍々しい力…アンチエナジーの波動が現れると、エネルギー波に拳の突きを阻まれたキールは驚きを隠せずにして、更にそのまま腕を戻すのが遅れた事で、マジェコンヌの反撃を受けてしまい大きく後方に下がらされていた。

 

「(…今のが例のアンチエナジーの力みたいだが…何だこの違和感は?それに、こいつ…あの禍々しいアンチエナジーの力を使ってから一気に気が膨れ上がった…)」

 

空中で態勢を整えて再び身構えていくキールだが、感じ取ったアンチエナジーの力を感覚的に感じ取るものの、それでも自身に渦巻く違和感を拭えないでいた。

何故なら、アンチエナジー自体の力は超サイヤ人の域を超えている訳ではないから。

恐らく、マジェコンヌがアンチエナジーを使う事で相乗効果が現れているからではないかと考えるものの、それでも超サイヤ人の攻撃を防げるほどのモノになり得るものだろうかと考える。

 

「考えてもキリがないか…ん?何だ?」

 

拭えない強い違和感を感じながらも、再び先制を仕掛ける為に動き出そうとしたその時だった。

仕切り直しになった為に身構えながら、先手を掛けようとしていたキールだったが、アンチエナジーの力とは全く別の力を感じ取ったのか、ピタリと動きが止まり、その力の波動を感じる方向を向く。

 

「(この力…さっきより強く感じるが……まさか、これがシェアの力なのか?)」

 

そう、リーンボックスの教会で感じた、澄み渡ったような感覚を、先程いたネプギア達の辺りから強く感じ取っていた。

感じ取った力がどのようなものか理解したのか、ネプギア達の覚悟を感じ取ったのか、嬉しそうにフッと笑みを浮かべていたのだ。

 

「貴様、何がおかしい?」

「…いや、どうやら、思ったよりも速く決着が着きそうだと思ってな。」

「何だと?それはどういう意味だ?」

 

不敵な笑みを浮かべるキールの反応を見て癪に触ったような、苛立っている表情を浮かべながらマジェコンヌが問いただすものの、そのまま身構えながらネプテューヌ達を速く救出出来るなと確信した様子で話すキール。

 

「ぢゅっ!?」

「どうしたネズミ?」

「後方の女神の妹側から強い反応っちゅ!!」

「なっ、何だと!?」

 

それと同時に、レーダーを持っていたワレチューが慌てて表示されている強い反応の方を見ながら話すと、マジェコンヌもその方向を見る。

その方向には、暗闇に包まれているズーネ地区を照らす、一筋の光が迸るように輝きを放っていたのだった…

 

−−−−−




詰め込み過ぎじゃね?
何だか駆け足な気もしますし、自問自答しながら後悔してますが、表現力の無さのためにこの回に詰めたい物を無理矢理詰め込んじゃいました(´・ω・`)
リアの忙しさも相まってかなり大遅刻しました…申し訳ない。
そして案の定またまた長くなり過ぎたので分割しました(´・ω・`)
次回はアニメ本編5話中編までの話ですm(_ _)m


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第17話『恐怖を乗り越えて…女神候補生達の覚醒‼︎』

アニメ本編第5話中編辺りの話になりますm(_ _)m
オリ主も活躍させようと思いましたが、マジェコンヌ戦の途中なので、タイミング的にもこの次の方がいいと思ったので次にします(´・ω・`)


−−−−−

 

変化が訪れたのは、キールがネプギア達の元を離れた少し後の事だった。

急ぐように先に行ってしまったキールを追い掛ける為、残存しているモンスター達を倒しながら進んでいく女神候補生達。

 

「キールさんがモンスターを出来るだけ倒してくれてる間に、このまま急いで進もう!」

「えぇ!飛んで行ったキールを追い掛けながら、残ってるモンスターも纏めて倒すわよ!」

 

前方には彼がネプテューヌ達の元へ向かって進んでいる証拠に、金色の光が辺りを照らし、地上に光の玉が降り注いでいたのだった。

この調子なら姉の元にたどり着いて助け出す事が出来る…そう思った直後だった。

 

「きゃっ!?な、何!?」

 

突如、進行方向の道と来た道を遮るように瓦礫の山が出現してきたのだ。

それに続くようにモンスターが急に大量発生してくる。

そして、飛んで行ったキールに構う事なくネプギア達を標的に定めて攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

「きゃあっ!?」

「ラムちゃん…!?」

 

足場が悪くなっただけでは終わらず、大量のモンスターの攻撃にただ防戦一方になっていく。

ラムがモンスターの攻撃を受けて障壁で防御するものの、次第に押されていた。

そんなラムの様子に援護しようとしたロムだったが、別方向からの攻撃を受けてしまい、こちらも防御と回避に専念するのがやっとだ。

 

「あ、アイちゃん!このままじゃ…」

「くっ…分かってるけど、キリがないわ…っ!」

 

アイエフとコンパも応戦しているが、焼け石に水と言わんばかりに次々と押し寄せてきている。

 

「(どうしよう…私、間違ってた…私のせいで、皆を危険な目に遭わせてる…私のせいで、皆ががやられちゃう…何にも出来ないよ…助けて、お姉ちゃん…っ!)」

 

ネプギアは障壁を張ってなんとか防御するものの、その表情は焦りと後悔を浮かばせており、悔恨に沈んでいた。

ふと、この場に居ない姉に助けを求めようと思った直後、心の中で引っかかるような感覚をネプギアは感じていた。

 

「(また私…お姉ちゃんを頼ってる…だけど私…お姉ちゃんがいなきゃ…)」

 

その場にいる全員が防戦一方になって追い詰められている状況の中、障壁を展開して防御しているネプギアに変化が現れる。

 

『お姉ちゃんが言ってた。アタシが変身できないのは心にリミッターをかけてるからだって。例えば…何かを怖がってるとか…そういう事よ。』

『…1番駄目な事は、その恐怖から目を逸らし続ける事だ。いつか向き合わないと駄目な事なら尚更だからな。』

 

ネプギアが思い出したのは、自分の大切な親友の1人であるユニの言葉…

そして、姉達に引けを取らない実力を持ちながら、同じ目線に立って自分に答えようとしてくれていた…今も最前線で囮になりながら戦っているキールの言葉だった。

 

「(私が怖がってる事…目を逸らしている事…お姉ちゃんが居なくなる事…? お姉ちゃんの妹でいられなくなる事…?)」

 

急に、頭の中に渦巻いていた不安と焦りが落ち着いたような、そんな感覚に陥りながらも、冷静になって思い浮かべていく。

 

「(…違う!私が…お姉ちゃんよりも強くなる事だ!私…ずっとずっと、お姉ちゃんに憧れていたかったんだ!」

 

しかし、ネプギアは既に理解していた。

自身が1番恐れていた事…それを1番自分自身で抑え込んでいた事を…自分が姉を超えてしまうという恐怖を。

 

「(だけど…お姉ちゃんを取り返す為なら……)」

 

そして、ネプギアは受け入れた。

…大切な人達を守る為に、在り方を示してくれた人に応えるように…

そして、誰よりも大切で…大好きな姉を救う為に。

 

「…私!誰よりも強くなるっ!」

 

心に秘めた思いと共に叫んだネプギア。

その直後、彼女を包むように光が迸り出したのだ。

その光は柔らかくも鮮明で、ネプテューヌ達女神が変身する時の神聖な輝きと同じ光だった。

髪色が薄紫髪からピンク色に変化していき、更に、白いレオタードタイプのプロセッサユニットが装着されていく。

そして、彼女の右手には銃剣M.P.B.Lマルチプルビームランチャーが握られていた。

決意と共に…絶望を渦巻かせている闇を払うように、女神パープルシスターが誕生した。

 

「やあああああぁぁぁっ!!!」

 

ネプギアはM.P.B.Lを構えて空へ高く上昇すると、上空からM.P.B.Lで狙いをつけてモンスターを撃つ。

M.P.B.Lのレーザービームは正確無比にモンスターを貫いていき、ビームを受けたモンスター達は一撃で光となって消えていく。

 

「ネプギア!!」

「ネプギアちゃん…(キラキラ)」

「すごーい!!」

 

ネプギアの変化に驚いていたユニとロムとラムだったが、一掃されたモンスターや一気に覆った戦況に安堵すると共に、変身出来た親友の様子に嬉しそうにしていた。

 

「引くことだけはできません!…だからっ!前に突き進みますっ!」

 

そして、一筋の閃光となったネプギアは、飛翔しながら姉の元を目指す。

キッカケをくれた心強い戦士と共に、元凶を打ち倒す為に…

 

−−−−−

 

変身したネプギアを追従するように乗り物に乗って追い掛けていたアイエフ達は、何とかネプギアに追い付く事が出来た。

とは言え、気付いたネプギアが速度を落としてこちらに来てくれた事もあるが…

 

「私、気付いたの。お姉ちゃんにずっと守られていたい。だから弱い私でいい。そう思ってた…でも、それじゃダメだって、強くなりたいって願ったら…」

「変身できたっていうの?参考にならないわね…」

 

変身出来た理由と尋ねたユニ達だったが、よく分からない解釈だったのか、ユニはどこか憮然とした調子だ。

 

「弱くていいなんて思った事ないもん!」

「そ、そうだよね…」

 

ネプギアの変身出来た理由に納得出来ないラムが不服そうにしながら言えば、困った表情を浮かべながら話す。

 

「盛り上がっている所で悪いけど、そろそろ着くわよ?」

 

バイクを運転しながら声を掛けてきたアイエフの言葉に全員が前方に目を向ける。

ネプテューヌ達が捕らわれている結界の光、そして、超サイヤ人に変身しているキールの金色の光が輝く…ズーネ地区最深部の廃棄物処理場へとたどり着いたのだ。

決戦の場へと到着したネプギア達は、ネプテューヌ達はまだ囚われの身となっているが無事であることを確認する。

 

「「「「お姉ちゃん!!」」」」

「ネプギア!?」

「ロム…ラム…!」

「ユニ…!」

 

「ネプギア、変身できたんだ!」

「うん、直ぐに助けてあげるからね!」

 

中央の三角錐型の結界の中に、ネプギアたちの姉である女神達が、コードに絡め取られて空中に吊り上げられていた。

思わず声を上げるネプギア達に、捕らわれている女神達が驚きと嬉しさで声を上げていた。

特に、女神化したネプギアの姿に1番嬉しそうにしていたのはネプテューヌだった。

囚われの身でもいつもと変わらない調子の姉の声に、ネプギアは力強く答える。

 

「ネプギア、変身できたみたいだな。」

「キールさん!」

「それに、皆も速かったな。これならネプテューヌ達をすぐに救出する事が出来る。」

 

マジェコンヌと対峙していた為、超サイヤ人状態のキールだったが、変身しているネプギアと候補生達の到着に、安堵の表情を浮かべながら声を掛ける。

この状況で1番頼りになるメンバーの登場に、場の空気がより落ち着いていく。

 

「本当は俺1人でケリを付けるつもりだったが…勿論やれるよな?」

「…はい!」

 

そして、変身したネプギアの様子を嬉しそうに微笑みながらキールが頼むように話すと、ネプギアも彼の言葉に応えるように頷いた。

そして、姉達を罠に陥れた元凶の方に視線を向ける。

そこには、予定より早く妹達がこの場にいる事にやや面倒そうな表情を浮かべているマジェコンヌの姿があった。

 

「マジェコンヌ…。」

「…私の名を覚えていたのか。よくもまぁ戻ってきたものだ。まぁいい、小娘達の妹に挨拶がてらだ。私の名はマジェコンヌ。…人の小娘が支配する世界に、混沌という福音を…」

「コンパちゅわあああぁん!会いたかったっチュ!!」

「えぇっ!?あ…はいですぅ…。」

「…えぇい!貴様、いい所で邪魔をするなぁ!!」

 

マジェコンヌの後ろからワレチューが現れ、目をシイタケのような輝きを放ちつつ、会話に割り込んできた。

案の定邪魔されたマジェコンヌは激怒してワレチューを怒鳴るものの、シリアスな空気が台無しになっている状況に、ネプギア達は肩透かしを食らったような表情を浮かべていた。

特に、ワレチューに名指しされたコンパは困った表情を浮かべている。

 

「どうして、こんな事をするんですか!?一体何の目的で…」

「ふふふっ…なぜこんな事をしたかだと?知りたいのなら教えてやろう。私が求めているのは女神を必要としない新しい秩序、…誰もが支配者になり得る世界だ。」

 

気を取り直したように真剣な表情を浮かべ、睨むようにしながら問いかけるネプギアの言葉に答えるマジェコンヌ。

 

「それって、あなたが支配者になろうとしてるだけじゃないですか!」

「私より強い者が現れれば、その者が支配者になる。これぞ平等な世界だ。違うか?」

「なに尤もらしい事を言ってんのよ!要するにアンタは女神の力が羨ましいんでしょう!」

 

あくまで自分の理想が世界の為だと言いたげに話すマジェコンヌ。

それに対して、すかさずネプギアとユニがその意見を否定する所か、痛い所を付くように反論する。

 

「まあ…確かに女神共の力を欲した時期もあったなぁ…だが、今は違う。なぜなら…私自身が女神と同等の力を宿しているからだッ!」

 

2人の言葉にマジェコンヌは邪悪に笑ってみせた。

そして、マジェコンヌは意味深な言葉を強く言い放つと、直後に彼女の身体が光に包まれていく。

その光はシェアの光とは全く違い、赤く禍々しいアンチクリスタルのような…危険な力を感じさせるほどの光だ。

 

「…見るがいい、これが私の新たなる力だ!」

 

やがて、光が消えると、マジェコンヌの服装は魔女のような格好から黒を基調とした露出の多い格好に変わり、右手には槍のような特殊な武器を持ち、背中には悪魔のような翼が生えた姿へと変化していたのだった。

 

「くくく…どうだ。驚いたか?私も貴様等と同じく、女神の力を手に入れたのだ!」

 

変身が完了したマジェコンヌは不敵に邪悪な笑みを浮かべると、驚愕しているネプギア達の反応を楽しむように見ていたのだ。

 

「「変身!?」」

「そんな…どうして、あの人が変身を…?」

「あいつは女神じゃないのに…」

 

捕らわれているネプテューヌ達は勿論、ネプギア達のショックは大きいものだった。

何故なら…シェアの力で変身するのが女神の力なのだから。

それが今、魔女として変身したマジェコンヌの姿に、事実を吞み込みきれない様子でいた。

 

「…随分と力を持っているみたいだが、お前を倒してネプテューヌ達を取り戻すのは俺達だ。」

「ほう…いくら貴様が女神に匹敵するとは言っても、所詮は女神以下の存在でしかないような奴が、今の私に勝てるとでも?」

 

そんな中、ネプギア達を庇うように前に出て口を開いたのはキールだった。

マジェコンヌが変身した際に発生した莫大な邪悪な気を感じて驚いていたが、感じ取った力からしてまだ超サイヤ人2で対処出来ると考えていた。

同時に、たった一つの不安が彼の脳裏に浮かび上がっていた。

そんな彼の挑発に反応するように挑発し返すように話すマジェコンヌ。

 

「金色の戦士よ、貴様の実力はさっきので把握済みだ。いくら貴様が全力で向かって来ようが、貴様程度では私の足元に及ばない…取るに足らない存在だ。」

 

変身して予想以上に力を得ているマジェコンヌは、現在のキールが変身している超サイヤ人よりも大きな力を獲得している事を宣言する。

言われた本人は何も言わずにいるが…

 

「それに、驚くのはまだ早いぞ?真に驚くべきはこれからだ!」

 

そして、何かを企んでいるような表情を浮かべながら呟くと、直後にキールに向かって直進しながら武器を構えていた。

武器の形状が槍から太刀のような武器へと変化すると、マジェコンヌは凶悪な笑みを浮かべながら、太刀を振りかぶって斬り掛かろうとしていた。

 

「クロスコンビネーション!!」

「ねぷっ!?それ、私の技!?」

 

マジェコンヌが奇襲として繰り出したのは、ネプテューヌがトゥルーネ洞窟でパープルハートに変身した際に放った技だ。

そのまま彼女と同じ動作で連続して斬撃を繰り出していく。

…が、マジェコンヌの連続斬撃は、彼の残像を掠めるだけに終わる。

 

「なっ…何?」

「誰が全力を出してるなんて言った?」

 

手応えの無い残像を斬った事にどういう事だと言いたげな表情で周囲を見渡すものの、背後から聞こえる声に反応して振り向く。

そこには腕を組んで立ち尽くしているキールの姿があった。

 

「それに、人の技まで模倣品か。なるほど…つくづく残念な奴だ。」

「貴様…まあいい、どうとでも言うがいい。私には他人をコピーする能力があってな。私は既に女神の技までも我が物にしたのだ!そして…貴様の技もな!」

 

挑発ように変身を解いて立ち尽くしている彼の様子に苛立ちを覚えながらも、そのまま武器が今度は腕輪に変化すると、前方へと手を掲げる。

 

「えっ…あれって!?」

「う、嘘でしょ!?」

 

するとマジェコンヌの掌にエネルギーが集まっていけば、大きなエネルギーの球体が現れたのだ。

それをキールに向けて放ちながら、更にもう片手にエネルギーを溜めていく。

トゥルーネ洞窟の時にいたメンバーが、マジェコンヌの放とうとしている技に驚愕している。

 

「自らの技で散るがいい!撃指光裂弾!」

 

そして、もう片手で溜めたエネルギー弾を勢い良く放つと、先に放たれたエネルギー弾に直撃して大量の弾幕が形成されれば、立ち尽くしているキールへと襲い掛かる。

 

「…はあああぁぁっ!!!」

 

対してキールは、身体に力を込め叫ぶと共に纏っていた気を爆発させるように放出すると、弾幕を生成したエネルギー弾ごと消失したのだった。

 

「ちっ、かき消したか。」

「…点数も付けたくないぐらいに酷い模倣技だな。」

 

その場から動かず自分自身の技をかき消したと共に、激しい稲妻を纏う超サイヤ人2に変身したキールの様子に、面白くなさそうな様子で見ていたマジェコンヌだったが、酷評だと言いたげに皮肉るようにキールが呟いていく。

 

「ふん!いい気になるなよ!ちょこまかと動いているだけの貴様に何が出来る!?」

 

そして、続けざまに話しながら、再びネプギア達の元へと移動したキールの言葉に、今まで攻撃を避ける事しかしていない事を踏まえて挑発を続けていく。

 

「…確かに、お前の言う通り攻撃を避けたり捌けれても、今のままじゃ火力が足りずに倒し切れん。ネプテューヌ達に残ってる時間が無いしな。お前みたいな奴がそんな力を持っているなんて予想外だった。」

 

しかし、何かを確信したような表情を浮かべているキールの返答は、現状では倒せないと取られるような言い草だった。

キールが言った通り、今の超サイヤ人2状態でも対処は十分に可能だと考えている。

しかし、それはあくまでも《防御や回避に徹した場合》になる。

結界に閉じ込められているネプテューヌ達に迫っているタイムリミットがある以上、時間を掛ける訳にはいかないのだ。

不安そうな表情を浮かべるネプテューヌ達の様子を横目に見ながら考え事をしている様子だ。

しかし、マジェコンヌの様子からして予想よりも早くこの場に来ている事と、黒い液体がネプテューヌにまだ届いていない事からまだ時間は残っていると考えたキールは、早速行動を開始しようと決心した。

 

「キールさん!だったら私も…」

「…ネプギア、頼みがある。」

「えっ?」

「これから、もう一段階上に変身する。だが、変身するまでに時間が掛かる。それまでネプギア1人に任せても良いか?」

「もう一段階上の…変身!?」

 

ふと、力強く声を掛けてきたのは女神化しているネプギアだった。

彼女の言葉に少し躊躇いを感じたが、悠長にしている時間は無いと判断するとネプギアに話し始める。

 

「あぁ。超サイヤ人を超えた超サイヤ人を…更に超えた姿に変身すれば、奴をゲイムギョウ界の塵に出来ると思う。5分…いや、俺に時間を3分くれ。」

「…分かりました!私、やります!」

「頼んだぞ…ネプギア!」

 

現在の変身段階より更に上になる為に時間を稼いで欲しいと話せば、マジェコンヌを見据えながら力強く返事したネプギアはM.P.B.Lを構えていく。

 

「はああああぁぁぁっ……!!!」

 

そしてキールは、ネプギアの様子に頷きつつ空中へと浮上してから、身体に纏う気を爆発させるように高め始めていく。

鋭くなっている目は見開いており、纏っている稲妻はより激しさと凄まじさを増していたのだった。

 

「させるか…うっ!?」

 

上空へと登って気を高めていくキールの様子に対してマジェコンヌはすぐさま阻止しようと動き出すが、ネプギアに阻まれ地上に叩き落されていく。

 

「キールさんが私に頼んでくれた…だから、キールさんには指一本触れさせません!」

「ほざくな!ならばお前から葬ってくれる!テンツェリントロンペッ!!」

「きゃあああぁっ!?」

 

変身に集中しているキールの邪魔をさせまいとマジェコンヌに追撃を掛けようと突っ込んでいくネプギア。

だが、すぐに態勢を立て直したマジェコンヌは武器の太刀から斧へと変化させると、ブランの技であるテンツェリントロンペの一撃を放ったのだ。

咄嗟の攻撃に回避が間に合わず直撃してしまい、ネプギアは大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「はっはっは!まずお前からゆっくりと痛ぶって始末してやろう!」

「くっ…」

 

反撃に使われた技の威力が大きかったのか、ネプギアは態勢を整えながらも苦しそうにしていた。

そして、再びマジェコンヌがネプギアに向かって急接近すれば、斧の乱撃を繰り出していく。

対して、ネプギアは受け流したり防御するので精一杯だ。

 

「止めて!」

「ネプギアに酷い事しないで!!」

「ん?…ハッ!ガキは黙っておしゃぶりでも咥えていな!」

 

居ても立っても居られない状況にロムとラムの2人が、注意を引く為にマジェコンヌに言うが、マジェコンヌは全く気にも留める事無く、暴言を言い放ちながらネプギアの方に視線を戻す。

 

「オラァ!この程度か!小娘の妹!」

「きゃあぁっ!!」

 

ロムとラムの方に注意が向いた事で態勢を整えれたネプギアだったが、反撃を軽くいなされ追撃を受けていた。

必死に戦っている親友のネプギアが、いたぶられるように攻撃されてる光景を見せられているロムとラムは、お互いに

 

「私…あの人嫌い!」

「うん、私も大嫌い!」

 

2人が互いにマジェコンヌを打つという決意を固めた瞬間、2人の体が光に包まれていったのだ。

その光はネプギアが女神化した時と同じく、神々しさを感じさせる眩い輝きを放っていた。

 

「やっつける…」

「私達2人で!」

 

光が消えると、二人の格好は白を基調としたレオタードに変化し、お揃いの杖を手にしていた。

2人の違いがある点は、ロムは右側が長い水色の髪に、ラムは左側が長い桃色の髪に変化しており、手に持っている杖はロムが右手、ラムは左手に持っていた。

 

「絶対許さない…!」

「…覚悟しなさい!」

 

親友をいたぶり姉を苦しめ、嘲笑うマジェコンヌを倒すべく強く決意した双子の女神…ホワイトシスター・ロムと、ホワイトシスター・ラムが此処に現れたのだった。

 

「ロム…ラム…変身出来るようになったのね…!」

 

2人が変身した姿を目の当たりしたブランは嬉しそうな表情を浮かべている。

 

「はっ!変身したからといって…ガキ共に何が出来る!?」

 

変身した2人を見てもまだ余裕綽々な様子のマジェコンヌ。

女神化したばかりの候補生では自分の相手にはならないと踏んでいる。

 

「「アイスコフィン!!」」

 

しかし、そんな言葉を無視するように、ロムとラムは杖をマジェコンヌに向けて構えていけば、杖の先端から氷の塊が出現すると、マジェコンヌに向けてその氷塊を放ったのだった。

 

「何!?ぐうおあぁっ!?」

 

完全に油断をしていたのか2人が放った魔法に直撃するマジェコンヌ。

そして。魔法の衝撃でマジェコンヌのいた場所を中心に砂煙が発生していく。

 

「「やったー!」」

 

手応えがあったのか、魔法が直撃した事に嬉しそうにしているロムとラム。

 

「…どうした?これで終わりならば、次はお返しをさせてもらおうか。」

「なっ…!?」

「そんな…!?」

 

だが砂煙が静まると共に、その場に無傷で立ち尽くしているマジェコンヌの様子に驚きを隠せずにいた。

そんな2人の様子に隙を容赦なく付くように、斧に変化していた武器の形状を変化させれば、片手剣のような姿に変えながら2人に襲い掛かる。

 

「レイシーズダンス!!」

「「きゃあああぁぁっ!?」」

 

マジェコンヌは二人に対して数回の蹴りによる連携を放った後、剣を横一線に振り払う。

蹴りを防いだが、剣の一線を防ぎ切れずに直撃してしまい、ロムとラムは吹き飛んでしまう。 

 

「ふん、これでは面白くもない。…そうだな。貴様ら妹達に絶望を与えるのもいいが、逆にお前たちを苦しめ、あの四人に更なる苦痛を与えるのもまた良かろう…」

 

退屈そうにしていたマジェコンヌだったが、何か思い付いたような表情を浮かべながら呟くと、翼の近くに浮いている無数の黒いひし形の物体をビットのように展開すれば、女神へと変身している候補生の元へと送り飛ばしていたのだった…

 

ネプギア達を翻弄するマジェコンヌをスコープに治めて捉えるものの、候補生の中でまだ変身が出来てないユニは強烈な劣等感と不安に飲まれていた。

 

「(アタシ1人だけ変身出来ないなんて…お姉ちゃんだって見てるのに…っ!)」

 

マジェコンヌが見せた圧倒的な力への恐怖。

そして、真っ先に助けると意気込んでいた自分自身が殆ど何も出来ずにいるという無力感から、手の震えが止まらないのだ。

 

「(…何考えてるのよアタシ。今は、そんな事を考えてる場合じゃない…!)」

 

ふと、自分の置かれている状況や捕まっている姉達の危機、防戦ながらも必死に戦っているネプギア達の様子…

そして、己の限界を超えようとしているキールの事を思い返せば、今この場で自分がするべき事はただ考えるだけじゃないと気付いたような表情を浮かべれば、スコープに映るマジェコンヌ目掛けて弾を撃っていく。

 

「当たれ…当たれ!当たれえぇっ!!」

 

闇雲に撃っている様子にマジェコンヌも軽々と避けていたが、やがてユニの撃つ弾丸がマジェコンヌの翼や、周囲に飛び交うビットに命中していく。

 

「(そうよ、ユニ…今のアタシに出来る事をやる。今は目の前にいる標的の事だけを考えるの!)」

 

自分に出来る事をやると決意したユニ。

そして、彼女の身体が光に包まれていったのだ。

光が消えると、そこには白い髪を二つのロールで纏め、黒いレオタードの格好をした…先程よりも巨大な武器であるランチャーのようなライフルを携える女神…ブラックシスターが誕生したのだった。

 

「エクスマルチブラスターッ!」

「ぬあぁぁぁっ!!?」

 

ユニはマジェコンヌに向け、先程とは比べ物にならない威力と弾速のビームを撃つ。

油断していたマジェコンヌの肩に当たり、予想以上の高威力にマジェコンヌは吹き飛ばされていく。

 

「もう迷いなんてない…あるのは覚悟だけよ!」

「ユニちゃん…カッコいい!」

「…えっ?あ、あれ…アタシ変身してる!?」

 

マジェコンヌが吹き飛んだのを確認しつつ、決意を固めた様子で啖呵を切ったユニだったが、ネプギアに称賛されたことで、ようやく自分が変身している事に気付いたのだった。

 

「やったね! ユニちゃん!!」

「すごーい!!」

「ま、まあ、当然ね! 主役は最後に登場するんだから!」

「うん、そうだね!」

 

ロムとラムの賞賛に嬉しそうにしつつも、照れ隠しのように余裕そうな表情を浮かべながら話していた。

 

「ユニ…よくやったわね。」

「ええ…皆さん、凄いですわ…。」

 

心配そうに見ていたノワールも安堵と嬉しそうな表情を浮かべながら呟くと、ベールがネプギア達を賞賛するように頷いて話していた。

しかし、その場にいた女神達を含め、すくそばまで絶望という名のタイムリミットが迫っている事に気付いていなかったのだった…

己の限界を超えようとしている超戦士ただ1人を除いて…

 

−−−−−




オリ主のあの形態のご披露…及び、決着となっております(´・ω・`)
しかし、今回もやたらと詰め込んだせいで長くなってしまった…(´・ω・`)


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第18話『迫り来るタイムリミット!キールの切り札超サイヤ人3!』

今回で決着にするつもりが、次回まで引き延ばす羽目になりました…(´・ω・`)
今回はアニメ中盤辺りの時間帯になっております。
オリ主のあの形態のご披露&戦闘回です。(´ω`)


−−−−−

 

女神の力を模倣してパワーアップしたマジェコンヌ、そして、女神となった候補生達との戦闘がより激しくなっている最中、守護女神達を装置の監視を続けていたワレチュー。

戦闘の飛び火に巻き込まれる心配をしながらも、女神達を逃さないように装置が破壊されないよう監視していたのだ。

 

「まあ、予定通りっちゅかね。後はオバハンが上手くやれるといいっちゅが…」

「あ、あの~……ネズミさん?」

「ちゅ?ぢゅぅううっ!!?」

 

作戦の殆どが予定通りに終えているため、マジェコンヌが妹達を排除した後の事の為に準備に取り掛かろうとしていたのだが、声が聞こえてその方向を振り向くと、そこには自分の意中の人であるコンパがいたのだ。

 

「あ、あの……一緒にいっぱいお話しないですか?…あっちで。」

「おっぱ…!?おっぱいぃ話しっちゅかっ!?」

 

実は、戦闘の騒ぎに乗じてこっそり移動していたアイエフとコンパの作戦で、コンパがワレチューをおびき出して時間を稼ぐ為に呼び寄せたのだ。

そんな事とは知らず、わざわざ自分と話す為だけに来たのが信じられないワレチューは、普通の人ならドン引きされるような…空耳混じりで聞き返すものの、コンパはそんな空耳など気にも留めない様子で満面の笑みを浮かべて頷いていた。

 

「はいですっ♪」

「こっ…コンパちゅわぁ~んっ!!」

 

彼女の笑顔に射抜かれたワレチューは、作戦の事など明後日の方向に飛んだ勢いで、意気揚々とコンパに着いて行ったのだった。

物陰に隠れていたアイエフが、コンパを追うワレチューの死角を通って進んで行くとネプテューヌ達が捕まっている結界へと近づく事が出来たのだ。

 

「ネプ子っ!」

「…アイちゃんっ!」

 

結界に近付けば中で捕らわれているネプテューヌを呼んでみると、アイエフに気づいて喜びの声を上げた。

また、他の3人もアイエフの方を振り向いている為、全員に聞こえる事が確認出来た。

 

「イストワール様から伝言を預かってるの…聞いてもらえる?」

 

安心した最中、すぐさま問い掛けてきたアイエフの言葉に、ネプテューヌは真剣な表情になって迷わず頷いていく。

その様子を見たアイエフは、時間がない事も踏まえてすぐさま携帯端末を取り出すと、画面を操作して立体映像のイストワールを映し出したのだ。

 

『皆さん。大変なことが分かりました。アンチクリスタルの力は、シェアクリスタルから皆さんのリンクを邪魔するだけではないようです。』

「えっ…!?」

 

映像として現れたイストワールの唐突な言葉に、捕らわれているはネプテューヌ達は衝撃を受けてしまう。

 

『アンチクリスタルは、行き場の失ったシェアエナジーをアンチエナジーと言うものに変える働きもあるようで…密度の濃いアンチエナジーは、女神の命を奪うと言われています。』

 

アンチクリスタルの真の効力は、シェアのエネルギーをアンチエナジーと呼ばれる力に変わる事で自分達の命を奪うものだという事だった。

身動きが取れない状況で、生命の危機がすぐそばまで迫っている事に動揺しているのだ。

 

「それで、どうすればいいの!?」

『今の所、対処法は分かりません。せめて「みっか」あれば……』

 

流石に焦った表情を浮かべながらネプテューヌが打開策を訪ねるものの、申し訳なさそうな表情を浮かべるイストワールの言葉により不安と絶望感がその場を襲っていたのだった…

 

だが、絶望的状況を伝えるイストワールの言葉を遮るように、衝撃波と共に稲妻がネプテューヌ達を捉えている結界へと降り注いだのだ。

 

「なっ…きゃあっ!?」

 

直撃の際に凄まじい稲光と衝撃を発生させれば、近くにいたアイエフが吹き飛ばされないように身構えるものの、耐え切れずに尻餅をついてしまう。

稲妻が落ちた結界は傷一つ付かなかったものの、取り囲むように設置されている装置の結界には凄まじい勢いで稲妻が迸っていた。

 

「アイちゃん!大丈夫!?」

「え、えぇ…私は大丈夫よ。そっちは大丈夫なの!?」

「こっちも今の所は…それより、今のは一体……」

 

尻餅をついたアイエフを見ていたネプテューヌが、彼女が怪我していないか心配した様子で問い掛けるものの、アイエフはすぐさま起き上がって無事な事を話す。

稲妻の正体が何なのか分からない為、ネプテューヌ達は稲妻が降り注いできたであろう上空を見上げる事にしたのだった…

 

「ミラージュダンスッ!!」

「「アイスコフィンッ!!」

「エクスマルチブラスターッ!」

 

女神となった4人の候補生は連携を取って絶えずマジェコンヌへと攻撃を続けていく。

 

「レイニーラトナピュラ!!」

「「「「きゃあああぁっ!!?」」」」

 

だが、マジェコンヌとの戦闘経験の差が埋められず、軽くいなされた後、槍に変化した武器でベールの技を繰り出されて吹き飛ばされていた。

追撃を掛けようと手に持つ武器を再び達に変えれば、地上に叩き付けた4人に向かって加速しながらネプテューヌの技を放とうとする。

 

「クロスコン…うっ!?何だ今のは…な!!?」

 

しかし、直後に頭上から押し潰すような衝撃波に態勢を崩せば、そのまま着地して上空を見上げる。

 

「えっ…!?」

 

動きが止まったマジェコンヌの様子を見たネプギア達はすぐさま起き上がろうとしていたが、同じく視界に映ったある光景に気付いて硬直していた。

巨大な金色の気と絶えず激しく迸っている稲妻が空を覆い尽くしていたのだ。

それだけでなく、巨大な金色の光が発する圧が強過ぎる影響なのか、海は激しく掻き混ぜられるように荒れ、絶えず金色の気に迸る稲妻が地上に落ち、地形が変わる程のクレーターが幾つも発生している。

 

「あの金色の光って…キールの気…よね?」

「キ、キールさん…」

 

その場にいた者が全員動きを止め、上空を見上げている。

ネプギア達には巨大な光の正体が何なのか気付いた。

先程、ネプギアにマジェコンヌの相手を任せ、変身の為に上空へ上がったキールのものだという事を…

 

「う"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"ぁ"ぁ"っ!!!」

 

巨大な金色の気の中心点に位置する場所…

キールが上空に登って気を限界以上に引き上げ始めてから、既に約束の3分を大きく超えて5分が経過していた。

限界を超えて身体中の気を強引に引き出す為、無理をして全身に力を込めているのか、額やこめかみ、腕や脚、更には首など…身体中の至る所から血管が浮き出ている。

目を見開いて叫びながら気を激しく高めている姿は、どちらかといえば痛々しいものだ。

その光景は女神達の神々しいモノでもなく、マジェコンヌの禍々しいモノでもない…まるで自らの命を削っているようだった。

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"ぁ"ぁ"っ!!!」

 

しかし、その目に見える膨大な負荷と共に、キールの姿に大きな変化が現れていた。

逆立っているウルフカットの髪が腰の辺りまで伸び続けており、眼窩上隆起が起きて眉毛が消えていく。

腰に巻いていた黒色の尻尾も腰から解かれ金色に染まっている。

同じく大きく伸びた前髪は1束のみ垂れており、さらに緑色の瞳に瞳孔が黒く現れていく。

 

「はあ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!!!」

 

やがて、激しく膨張していた気の光が爆発するように輝くと、キールのいる中心へと収束していったのだった…

臨界点を超えた余波で周囲に激しい気の圧が飛び交えば、真下にあるズーネ地区の至る所が亀裂が入ったりしていく。

地上から離れているにも関わらず、激しく押し寄せてくる気の圧にネプギア達やマジェコンヌもその場で耐える事しか出来ない。

 

「くっ…肝心の奴を忘れていたっ!」

 

やがて、気の圧が落ち着くとともに、上空高くからゆっくりと降りてくる金色の光に、焦りの表情を浮かべるマジェコンヌ。

女神となった妹達に気を取られていた事や、ネプテューヌ達に残された時間がもう無い事で勝ちを確信した慢心が、結果的とはいえキールの変身を許してしまったのだ。

 

「…時間が掛かって悪かったな。コイツが、超サイヤ人を超えた超サイヤ人を…更に超えた姿、超サイヤ人3だ。」

 

小さくなった金色の光が地上へ静かに降りてくると、腰辺りにまで伸びた金髪に、眼窩上隆起が起きて眉毛が消えた特徴的な変身形態…超サイヤ人3に変身したキールが降り立ったのだ。

 

「ネプギア、ユニ、ロム、ラム…待たせて悪かったな。ぶっつけ本番で変身に挑んだ分、予想以上に時間が掛かった。それと、よく頑張ったな。」

「う、うん…」

 

超サイヤ人、超サイヤ人2に変身した時のような余裕の表情は今の彼には無い。

だが、先程まで余裕な表情が消えたのはマジェコンヌも同じだった。

消え冷や汗をかいて焦りの表情を浮かべている彼女を見据えながら、ゆっくりと起き上がったネプギアと女神化する事に成功しているユニやロム、ラムを見て安心した様子で確認する。

ただ、眉毛が無くなった事とより鋭さを増した目付きのせいで悪人の顔立ちにしか見えない為、候補生達は若干怯えているような表情を浮かべていた。

 

「…コイツは俺が何とかする。ネプギア達はネプテューヌ達の事を頼む。」

「…あっ、は、はい!」

 

ネプギア達の無事を確認したキールは、すぐさまネプギア達にネプテューヌ達の救出を頼むと、マジェコンヌの方を再び見据えてゆっくりと歩き出していく。

キールの言葉にハッと我に帰ったネプギアはすぐさま頷いていけば、本来の目的であるネプテューヌ達を救出する為、急いで彼女達の元へ向かっていけば、ユニやロムとラムも、ネプギアを追うように向かって行く。

 

「あ、あれがキールさんの、本当の切り札みたいですわね。」

「あの姿、確かに凄まじそうだけど…そんなに長く持つものじゃ無い気がするわ。」

 

異様な程の変身を遂げたキールの姿を見ながら驚きを隠せない候補生達とはうって変わり、今までの変身とは違って時間が掛かっている事に四女神達は不安を募っていた。

女神化のようなパワーアップというよりも代償を顧みずに無理矢理強くなっている…ドーピングのようなものにしか見えないのだから。

 

「さて、選手交代だ。悪いが時間を掛ける訳にはいかないんでな…手早く片付けてやるよ。猿真似が得意な魔女野郎。」

「き、貴様ぁ…今更出しゃばって来たような分際が調子に…っ!?」

 

超サイヤ人3となったキールがマジェコンヌに対面すれば、只でさえ口調が悪くなる癖が余計に酷いものになっており、煽りを通り越して最早暴言のような口調になっていた。

そんな彼の煽りにカチンと来たのか、既に目的の殆どが達成されつつあるこの状況で出てきた事を棚に出して煽り返すように言い返すマジェコンヌ。

だが、黙って静かに身構えていたキールの姿が、視界の中から何時の間にか消えていたのだ。

 

「くそっ、奴め何処に…はっ!?」

 

まるで切り取られた映像のように消えた為に周囲を見渡すマジェコンヌだったが、死角から殺気を感じ取るとその方向に向かって剣を振り切っていた。

しかし、殺気を感じて放った剣は虚しくも漂っていた稲妻だけを切り裂いていた。

 

「な、何……ぐはっ!?」

「りゃああぁぁっ!!」

 

殺気感じた方向に何も居なかった事にマジェコンヌは驚愕するものの、態勢を整える暇もなく横腹に激痛が走る。

彼女の横腹目掛けて放たれたキールの横蹴りが命中したのだ。

そして、舞空術で浮きながらもう片脚を勢い良く振りかぶると、マジェコンヌの背中に向かって延髄蹴りが放たれた。

 

「ぐあああぁぁぁっ!!!?」

 

超サイヤ人2の状態とは比較にならない程のパワーとスピードを誇る超サイヤ人3の蹴りを続けざまに直撃したマジェコンヌは、いなす事も叶わず遥か後方へと吹き飛ばされてしまっていた。

そのまま廃棄物の山にマジェコンヌが衝突すれば、凄まじい轟音と共に廃棄物の山が崩れ落ち、大量の砂ぼこりが吹き荒れていく。

しかし、吹き飛んでから少しの間が空けば瓦礫の中からマジェコンヌが飛び出して上空へと飛翔していた。

対してキールは追撃を掛ける為に舞空術で勢い良く空へと飛んで彼女に向かって行く。

 

「おのれぇ!猿の尻尾が付いた貴様が猿野郎というかっ!!レイニーラトナピュラ!」

 

マジェコンヌが手にしていた獲物は剣から変化してリーチの長い槍になると、飛翔した勢いに乗って急降下しながら槍の連撃を繰り出していく。

だが、機動力も超サイヤ人2よりも跳ね上がっている為、キールは両腕を使って槍の軌道を逸らしながら距離を一気に詰めていく。

 

「ちっ…クソがっ!」

 

距離が詰まった所ですぐさま腕輪に得物を変化させ、エネルギー弾をゼロ距離で放つマジェコンヌ。

エネルギー弾が直撃して大爆発が起きるものの、勢いの止まらないキールが立ち込める煙から現れる。

 

「うおおぉぉっ!!」

「ごあっ!?がはっ…!」

 

同時に懐へと潜り込み、震脚による前方への重力移動とキール独特の体重移動による強力な片手突き…裂迅槍が命中し、マジェコンヌの腹部に突き刺さるように片手がめり込んでいた。

 

「はああぁぁっ!だああぁぁっ!!」

 

強烈な拳の突きに悶絶するマジェコンヌに対して攻撃の手を緩めないキールは、肘打ち、膝蹴り、水面蹴り、回し蹴り、裏拳と流れるような一連の動きで連打を叩き込んでいく。

 

「ぐああぁぁっ!…くっ!おのれっ!」

 

超サイヤ人3の火力と機動力に押され堪らず距離を離したマジェコンヌ。

反撃に出ようと身構えれば、ネプギア達に向かって放ったあの無数の黒いひし形の物体を繰り出してきたのだ。

その様子を見ていたキールは、すぐさま両手を前に構えた態勢を取ると、ビームのようなエネルギー弾を放つビットを冷静に回避していきつつ、両手の指先へと気を集中させていく。

 

「撃指雷煌閃!」

 

そして、技名を叫ぶと共に、指先から集まった気が閃光と共に大きくなると、まるで落雷で落ちてきた稲妻のように四方八方へと放たれたのだった。

 

「なっ……」

 

キールが放った稲妻状の気弾…撃指雷煌閃は一瞬にして限界射程に拡散する技である。

持続性は無いものの、彼を囲むように飛んでいたビットは稲妻の気弾に直撃して爆発していた。

その上、距離を詰めようと迫って来ていたマジェコンヌにも直撃した為、大爆発が起こって周囲に砂塵が吹き荒れていく。

 

「お、おのれえぇ…ん?」

 

結界の近くまで吹き飛んでしまったマジェコンヌ。

砂塵の勢いがおさまり、周囲の視界が良好になった所でボロボロの姿で起き上がる。

こんな僅かな時間で追い詰められている事に焦りの表情を浮かべるものの、周囲の状況と追い討ちを掛けに来ただろうキールの様子に気付く。

 

「ぜぇっ、はーっ、はあっ、はあっ…ちっ、まだ起き上がるのかっ……」

「…フフッ…クククッ、ハハハハハッ!!どうした!?さっきまでの勢いは何処に行ったのだ金色の戦士?」

 

まるで肩で呼吸をするように息を切らしているキールの様子を見たマジェコンヌは、疑問が確信へと変わって高笑いを浮かべる。

ぶっつけ本番で変身した超サイヤ人3の消耗が予想以上に激しかったのか、変身が解けて通常の黒髪の姿へと変化していたのだ。

異様な程のマジェコンヌのタフさがその膨大な負荷に拍車を掛けていた。

 

「(くそっ、タフにも程があるだろっ…このままだとこっちが先にバテてしまうっ…)」

 

形勢が不利に傾いてしまった状況に、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていたキールであったが、とある事態に気付いてその方向を向くと、更に表情が青ざめていた。

 

「なっ…!?」

 

ネプテューヌ達を捕らえているアンチエナジーが動き出し、ネプテューヌ達を引きずり落とそうとしているのだ。

しかも、シェアエネルギーを取り込む性質が災いし、女神に変身しているネプギア達の攻撃を結界が通さない為、装置が破壊出来ない。

 

「ベール!手を伸ばして!!」

「ネ、ネプテューヌ……」

 

まるで亡者のような腕を彷徨わせながら、濃いアンチエナジーの底に引きずり落とそうとするアンチエナジーに対抗するように、ベールはネプテューヌに向けて可能な限り手を伸ばす。

手を伸ばしされたネプテューヌも必死になって手を差し伸ばし、ベールの手を掴む事が出来た。

だが、手を掴めた事で気が緩んでしまったベールは力を使い果たしたのか、意識を失ったように目を瞑ってしまい、下から湧き上がってきているアンチエナジーに沈んでいく。

 

「ベール!?駄目えぇぇぇっ!!」

 

アンチエナジーに沈んでいくベールの様子に気付いたネプテューヌが、彼女を必死に引き上げようとするものの、アンチエナジーはまるで嘲笑うかのように緑の守護女神を取り込んで行った。

 

「ノワールッ…!」

「ブランッ…!」

 

更に、ベールと同じくらいの高さにいたブランもアンチエナジーに沈みながらも、ノワールの方へと可能な限りに手を伸ばす。

ノワールも拘束されている中でどうにか手を伸ばしてブランの手を掴むが、ブランもまたベールと同じように力を使い果たしてしまい、気を失ってアンチエナジーへと飲み込まれてしまった。

 

「「お姉ちゃん!?」」

「全然効いてない…どうして!?」

「私もやるです…っ!」

 

必死に結界を破壊しようと攻撃する女神候補生達に加勢するように、アイエフも銃を使って結界を発生させている機械を狙い撃つが、結界の効力内である機械に銃弾が届かず、破壊出来ないでいた。

コンパもワレチューのもとを離れ、巨大な注射器を構えてビーム弾を結界に浴びせるものの、ビームは結界に阻まれて消失していくだけだった。

 

「コンパちゃん…悲しいけどそれ無駄なのよねっちゅ。」

「っ!…ダメなんですか…?」

 

そんな候補生達やコンパの様子を見て、決着が着いた事が確信した様子で眺めていたワレチューが呟いた。

アンチエナジーの濃度が濃くなった以上、女神になった候補生の力でもどうしようもない事を…

 

「何なのよこれは!?なんで…」

 

結界に攻撃していた候補生達の表情も次第に変わり、絶望の表情を浮かべいく。

結界から少し離れているだけにも関わらず、黒い水のせいで姉の姿が見えないのだから…

 

「ネプ…テュー…ヌ……」

「ノワー……ル……ッ……」

 

もはや生き物のように実体を露わにした、無数の蛇のような姿のアンチエナジーに紫の女神と黒の女神は取り込まれていく。

それでもネプテューヌとノワールはお互いに手を伸ばし、絶対に離さないようにしっかりと握り合っていた。

自分達の命を奪う力に飲み込まれ、意識が解けてしまっていても手を離さずに…

 

「そんなっ…お姉ちゃん……嫌あああぁぁぁっ!!!」

「(4人の気が…消えていく……)」

 

ネプギアは呆然としながらその場に座り込んでしまい、泣き崩れた彼女の悲鳴がズーネ地区に響き渡っていた。

目の前に居たのに…助け出せれる状況になっていたのに助けられなかったのだから……

 

ネプテューヌ達の気が、まるで消えていく灯火のように急激に小さくなっていた。

原因は結界に満ちたアンチエナジーの力のせいだと確信するキール。

 

「どうやら、時間切れのようだな。アンチエナジーはああやって女神を殺すのだ!」

 

狂気じみた笑みを浮かべ、勝敗がついた事を確信したマジェコンヌが高らかに宣言していた。

彼女のその身には、女神達の命を吸い上げたアンチエナジーが極限まで満ちていた。

同時に、彼女達が囚われている結界のある方向が、禍々しいエネルギーと共に周囲がより暗くなっていたのだ。

 

「ネプテューヌ!!ノワール!!ブラン!!ベール!!」

 

キールが叫ぶも、その声は女神達に届くことは無かった。

守護女神の4人の気が消えていく事に気付いたキールは、マジェコンヌを倒せなかったせいでネプテューヌ達の救出が間に合わなかったのかと思えば、超サイヤ人3になってもマジェコンヌ仕留め切れなかった事に自責していた。

 

「(俺のせいだ…くそっ、くそっ!この魔女の違和感に気付いていたら……)」

 

そして、シェアエネルギーを取り込んだアンチエナジーによって、急激に戦闘能力が上がった事で、超サイヤ人3の猛攻にも耐えられたと言う事も…

しかし、悲劇はこれで終わりではない。

 

「安心しろ、貴様を葬った後に妹共も纏めて、小娘どもと同じ場所に送ってやろう!死ぬがいいっ!」

「っ!?」

 

ネプテューヌ達が消失してしまった事に気を取られ、マジェコンヌの方の注意を怠ったキールが、絶望と言う名の漆黒の光に掻き消されるように飲み込まれていったのだった……

 

−−−−−




次回はアニメ本編5話終盤の決着…及び、アニメ本編第6話の冒頭までの話になっております(´・ω・`)
ついでにオリ主に引き立て役になって貰いました…こんな調子で大丈夫かなと思ってますけど(´ω`)
他の方の作品を見たりしていますが、表現や発想が多いなと思って羨ましいと思ってます…自分の語学力の無さが憎い(´・ω・`)


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第19話『決意と覚悟の果てに…女神達の共鳴!!』

守護女神編の最終話となっております。(´・ω・`)



ーーーーー

 

ネプテューヌ達を捕らえていたアンチエナジーの結界にタイムリミットが迫り、ネプテューヌ達は完全にアンチエナジーへと取り込まれてしまい、更にはマジェコンヌが放ったアンチエナジーのエネルギー砲に直撃したキール。

 

「ぐっ…くうううぅぅっ……」

 

しかし、キールは消し炭にはなっていなかった。

ビーム砲によって大きく後ろに後退させられたものの、吹き飛ばされないように耐えていたのだ。

 

「はぁっ…はぁっ…はあっ……ぐっ……」

「ほう、コレを耐えたか…だが、残念だったな。」

 

しかし、立っているのも辛いのか両膝をついてしまう。

服がズタボロな上に至る所から出血しており、いつ力尽きて倒れてもおかしく無い状況には変わりなかった。

 

「正直なところ…お前達は良くやったよ。ここまで私を追い詰めたのだからな。まあ、あと一歩の所で終わったが……」

「黙れっ…まだ、終わっていない……」

 

守護女神達がアンチエナジーに飲み込まれ、戦う気力すら断たれた候補生達…

そして、目前にある満身創痍ながらも諦めが悪い金色の戦士…

それぞれの様子を見て勝敗は決まったと確信したマジェコンヌは、自分の獲物を槍へと変化させながらキールに近付いて賞賛の意を示しながらも、手に持つ槍をゆっくりと振り上げる。

 

「そう悲観するな。すぐに同じ所へ逝かせてやろう…ドス黒い絶望の底になぁ!」

 

マジェコンヌがトドメを刺す為、キールの頭上へと槍を振り下ろしたのだった…

 

ーーーーー

 

「(どこだろう?ここ……)」

 

何も見えない真っ暗な空間で、ネプテューヌはゆっくりと目を開けた。 

戸惑いながら辺りを見回してみるが、何も見えない。

 

「(…私、死んじゃったのかな…?)」

 

漂っているかのような感覚の中、ふと違和感を感じるものの、答えてくれるものもいなかった。

 

「(ううん、違う…)」

 

ただ、静寂に包まれたこの空間の中で聞こえて来る鼓動が自分の死を否定していた。

 

「(でも…シェアエナジーはもう、届かないはずなのに……)」

 

アンチクリスタルの結界の中にいる自分達には、外からのシェアエナジーは届かない。

しかし、彼女はシェアエナジーが自身に届いている事を感じていた。

しかし、消失していくはずのシェアエナジーが何故伝わって届いているのかと疑問が現れるものの、彼女の両手には誰かと手を握り合っている感覚が伝わってきた。

 

「(あったかい……)」

 

アンチエナジーによって精製された、死を告げる黒い水のせいで体は感覚が無いような冷たさだ。

しかし、4人が互いに繋いだ手は確かに温かさを感じさせていた。 

 

ーシェアエナジーとは女神と守護者の信じる心ー

 

プラネテューヌにいるイストワールが、妹のネプギアと共にそれを確認した。

ネプテューヌは静かに目を閉じる。

そして、自分の周りにいる…微かながらもハッキリと捉えれている力を感じ取っていく。

 

「(ノワール…)」

 

ネプテューヌが右手で掴んでいるのはノワールの右手…

 

「(ベール…)」

 

それと、右手と掴み合っているベールの左手…

 

「(ブラン…)」

 

そして、その二人の空いている手の間に感じるブラン互いの手からそれぞれが繋がっているように、シェアエナジーが彼女達と包み込んでいた。

 

「(…そっか。そうなんだね…私達……)」

 

また、ネプテューヌは近くにあるものと大きな繋がりを感じていた。

必死になって自分達を助け出そうとしている妹達…

どうにかして助け出せる方法が無いか探しているアイエフやコンパ、イストワールを含む教祖達…

そして、何よりも繋がりを大きく感じたのは、無謀な事をしてでも自分達を助け出すため、自らの命を対価に戦っているキールだった。

 

「(キール…みんな…私達は…此処に居るよ……)」

 

守護女神達は僅かながらも光を放ち始めたシェアエナジーと共に想いを込める。

その想いが共に届くと信じて…

 

ーーーーー

 

「…っ!?」

 

自身の勝利を確信し、槍を勢い良く振り下ろしたマジェコンヌが驚きの表情浮かべていた。

満身創痍のキールが気を纏った掌で槍の矛を掴んで防いでいたのだ。

 

「ば、馬鹿なっ…何処にそんな力が!?」

 

変身の負荷とエネルギー波によって、ろくに立つ事もままならなさそうな大怪我を負いながらも、しぶとく槍の矛を掴んだキールの様子に、まだ無様に足掻く気かと苛立つマジェコンヌ。

しかし、漆黒に染まっている筈の結界の方から僅かに光が射している事に気付く。

 

「はっ!?」

「まだだ…まだ、終わっていない…アイツらは……」

 

キールには諦めたような様子は一つも無かった。

それ所か、髪は逆立ち金色の光が彼から静かに発せられ、激しい青色の稲妻が彼を取り囲むように迸る。

力強い目付きは変わらないどころか、彼の瞳には黒い瞳孔を覆うように緑色の瞳が現れ、変化を起こしていた。

 

「アイツらはまだ…あの中で、必死に抗ってるんだ。」

 

キールの言葉と共に結界の方向から候補生達は顔を上げる。

その瞬間、禍々しい色に染まっていた結界の中から四つの光が現れたのだ。

紫、黒、白、緑…それぞれの色が僅かながらも強く光り輝いていた。

そう…それは、アンチエナジーに取り込まれた筈の女神達のものだった。

 

「お姉ちゃんは…お姉ちゃん達はまだ、諦めてない!まだあの中で…私達を信じて戦っている!」

 

キールの行動と結界の変化がキッカケとなり、座り込んでいたネプギアが立ち上がる。

 

「それなら、アタシ達も…!」

「お姉ちゃん達が待っているなら…!」

「絶対に、諦めない…!」

 

更に、ネプギアに感化されるようにユニも、ロムとラムも立ち上がっていく。

 

「…アイツらが踏ん張って戦っているんだ。俺達が折れてお前に負ける訳には…いかないんだっ!!」

「…あなたを倒します!私達の…全身全霊を賭けてっ!」

 

そして、流れは大きく変化を見せて変わっていく。

候補生達の体から虹色の光が溢れ出てきたのだ。

まるで、超サイヤ人に変身したキールが気を高めるように…

その虹の光は彼女達だけに留まらず、大気中に虹色の波となって広まっていく。

そんな女神候補生達の覚悟と守護女神達の想いを受け取ったかのように、決意したような表情を浮かべたキールは、自分の中に残っている最後の力を振り絞っていく。

 

「うおああああぁぁぁっ!!!」

「な、何っ!?」

 

キールの身体にも僅かに虹色の光…シェアエナジーの力が現れると同時に、自分の命を捨てるような勢いで気を高めていけば、凄まじい気の迸りと共に超サイヤ人3へと変身したのだ。

 

「だりゃあああぁぁっ!」

「ぐああぁっ!!?」

 

下手をすれば失敗して犬死するかもしれない超サイヤ人3への変身を…それも、満身創痍のノーマル状態から一気に変身した様子に驚愕したマジェコンヌだったが、その隙を狙われアンチクリスタルの結界に蹴り飛ばされてしまう。

 

「塵衝ッ!!」

 

マジェコンヌが吹き飛んだ様子を見たキールは、すぐさま両手を腰に引いた鳥の嘴のような構えを取り、片手の手甲に掌を添えるように重ねて気を高める共に、叫ぶような大声を上げていた。

 

「殲…!裂……!」

 

掌に集まる気の塊から碧色の凄まじい稲妻と共に砂のように細かい気の粒子が激しく迸る。

技名を唱える掛け声と共にアンチエナジーの影響で暗くなっている空を吹き飛ばすような勢いで気の光が輝きを増していた。

 

「ぐうぅっ…ちいっ、ルウィーで放った光線か!そんな隙だらけな技が私に当たると思うな…っ!?」

 

限界まで気を溜めるつもりだろうか…構えを取っているキールの姿からしてルウィーで放った光線の事を思い出せば、当たらなければ意味は無いと罵倒するように告げるものの、彼女にも変化が起きていた。

もっとも、それはマイナス要素という意味でだが…

 

「アンチエナジーが…!?私の奇跡が、打ち消されていく…!?」

 

皮肉にもこの場にいる中で女神候補生以外で最も多く影響を受けていたのはマジェコンヌだった。

マジェコンヌの現在の姿にある、機械のように形成された翼の一部が悪影響を受けて砕け散っていたのだ。

砕け散った翼の一部に気付いて焦りの表情を浮かべるマジェコンヌ。

 

「くっ!ま、まずい…っ!」

 

始末した筈の女神達が生き残っているだけでは終わらず、妹達と共鳴してシェアエナジーが異常な程に高まっている事…

何よりも、しぶとく生き残っている上に先程よりも強く高まっている気を纏い、既に技を放つ態勢になっている金色の戦士…

予想を遥かに上回っている現状から、この場は逃げるしかないと判断したマジェコンヌは、不服ながらも撤退する為に勢いを付けて飛翔して逃げていく。

 

「…っ!?な、何だとっ!?」

 

ふと、背後から寒気を感じて振り向けば、凄まじい速さで自分を追い付いてきているネプギア達に気付いた。

アンチエナジーの恩恵を最大限に受けている筈の自分に追い付ける訳がないと思っていたのだ。

 

「逃がさないっ!」

「くっ!うあぁっ!?」

 

挙げ句の果てには候補生達に追い抜かれてしまい、より焦りの表情が露骨に現れていた。

信じられないような状況に判断が狂ってきたのか、マジェコンヌは来た道を戻るように、振り向いて逃げようと再び背を向ける。

しかし、ユニのランチャーから放たれたビームが、マジェコンヌの背にある右側の翼を撃ち砕いた為、翼を破壊された衝撃でマジェコンヌはバランスを崩して空中で回転してしまう。

 

「「ええーいっ!」」

「ぐああぁぁッ!?」

 

大きな隙を露わにしているマジェコンヌに対して、続けざまにロムとラムが二人で杖に魔力を込め、星形の巨大な氷塊を放つ。

態勢を整えたマジェコンヌだったが、氷塊に気付く時既に遅く、防御するしかないと考えて槍で防ぐ。

だが、圧倒的な質量差に負けてしまい、防ぎ切れなかった氷塊をまともに受けて吹き飛ばされる。

 

「ぐっ…あっ!?」

 

何とか動こうとしたマジェコンヌだったが、行動する前にネプギアが目前へと迫って来ていたのだ。

至近距離と言っても良いぐらい僅かな距離でM.P.B.Lの銃口をこちらに向けていた。

 

「消えてっ!」

 

完全に硬直したマジェコンヌに対して、ネプギアは一切迷う事もなくM.P.B.Lによる最大出力のビームをマジェコンヌへと放った。

 

「ぐあああああぁぁぁっ!?」

 

M.P.B.Lの最大出力ビームを受けて結界の壁に叩き付けられてしまう。

異様な強度を誇るアンチクリスタルの頑丈さが仇となり、マジェコンヌは全身の至る所から来る激痛に悲鳴のような叫びを上げながら表情を歪ませていた。

 

「あぐっ…ううっ……はっ!?」

 

痛みに身体が動かず貼り付けられたシールのように項垂れていたマジェコンヌだったが、今の状態が最悪な状況だという事に気付き、必死に身体を動かそうとしていた。

アンチクリスタルの結界付近には、超サイヤ人3に変身したまま必殺の光線波を放たんと構えている…金色の戦士がいる事を…。

 

「ひっ!?」

「波あああああぁぁぁぁっ!!!」

 

身体中や掌に集まった気が限界を超えたように膨れ上がれば、ネプギア達の猛攻によって結界の壁に叩き付けられたマジェコンヌを射程内に捉え、キールは全身全霊の力と共に勢い良く両腕を前方へと突き出した。

キールが腕を突き出した途端、掌に集まっていた光の玉から凄まじい規模の大きさを誇る巨大な光線が発生し、更には周囲のあらゆるものを破壊していくような勢いを持った衝撃波がマジェコンヌへと押し寄せていく。

 

「くっ、ううっ!?あ…あぁ………」

 

もう一度範囲外に飛ぼうとするが、残っていた片翼がシェアエナジーの共鳴と気の衝撃波に耐え切れず崩れてしまう。

そこに、砂のような粒子に変化していた大量の気の嵐がマジェコンヌへと襲い掛かっていた。

 

「うがあああぁぁぁあああぁぁっ!!!?」

 

一つ一つの気の粒子が凄まじい勢いで押し上げられている為、まるで散弾のような状態で全身に襲いかかって来たのだ。

散弾というよりも豪雨のような勢いでマジェコンヌへと叩き込まれていく。

規模や威力から考えても、彼女がキールに対して放ったアンチエナジー砲の比では無い。

 

「はあああああああぁぁぁぁっ!!!!」

「ぬああああああぁぁぁあああぁぁぁぁあああああぁぁぁっ!!!!?」

 

追い討ちを掛けるようにキールが腕に力を込めれば、光線の範囲はより一層広がっていく。

そして、続けざまに来た本命の巨大光線が一気に押し寄せれば、アンチクリスタルごとマジェコンヌを飲み込んでいくと、アンチエナジーによって発生した暗闇を吹き飛ばす勢いで光線が上空高くへと打ち上がっていったのだった…

 

ーーーーー

 

キールが放った塵衝殲裂波の光線が消えた後、そこにはネプギア達の攻撃によって新しくできた数々のクレーターと、地面ごとゴッソリ抉り取られたような地形が出来上がっていた。

アイエフやコンパはキールが構えていた時点で彼の後方へと避難していた為、無事であったが…

 

「…ぐっ!?っは…はぁっ…はぁっ…はぁっ……」

 

超サイヤ人3のまま構えていたキールだが、アンチエナジーの暗雲と自身が放った光線が消えたのを確認した直後に変身が解けてしまい、身体中に走る激痛と負荷による疲労感で座り込んでいた。

 

「お姉ちゃん…」

 

変わり果てた地形に変化した地上へと降り立ったネプギア達は周囲を見渡し、大切な姉の事を呟くように呼びかけながら探していく。

マジェコンヌは確かに倒した…しかし、ネプギアの呟きに答えてくれる者は居ない。

自分達が助けたかった姉達の姿も何処にも居ない。

 

「お姉ちゃん…どこにいるの?お姉ちゃんっ……」

 

ネプギアは諦めずに数歩前に出ながら呼びかけてみる。

しかし、答える声は無い。

折角力を手にしたのに…大切な姉を助け出す事ができなかった。

その事実はネプギアだけでなく、ユニ、ロム、ラムにも十分な打撃を与えていた。

 

「ここよ…ネプギア。」

 

雲一つない明け方の空に朝日が昇りだした瞬間、聞き覚えのある凛とした女性の声が聞こえてきたのだ。

ネプギア達は顔を上げ、声が聞こえた方向を向く。

するとそこには変身した姿の女神四人がいた。

 

「お姉ちゃん…!会いたかったよぉ…っ!う、うわぁぁぁっ…!」 

「良かったっ…会いたかった…っ!」 

「子供みたいに泣くなって…。でも、ごめんな。心配…かけたな。」

 

真っ先に飛び出したのはロムとラムの2人だった。

姉の無事が分かった途端にブランの方へと飛び込んで抱き付けば、安堵と嬉しさ、そして不安だった気持ちが爆発したように泣きじゃくっていた。

そんな2人を見てブランは呟きながらも、嬉しそうな表情を浮かべながらギュッと抱きしめていたのだった。

 

「…えっと、ごめんね。お姉ちゃん…遅くなっちゃって…」

「何謝ってるのよ。大分成長したじゃない…。ありがとう、ユニ。」 

「っ!…お姉…ちゃん…!」

 

こんな状況でどう言えばいいのか分からない様子のユニはいつも通りに話そうとするものの、ややぎこちない様子で謝りながら話してしまう。

そんな妹の様子にいつもとは違い、ちゃんとユニの意思を聞いたノワールは優しく笑みを浮かべながらありがとうと素直に話した。

その言葉に認められた事と救い出せた事で胸一杯になるほどに溢れてくる感情を抑えきれず、ユニは大粒の涙を流しながら嬉しそうな表情を浮かべてノワールに抱き付いていた。

 

「お姉ちゃん、あのね!私、私……」

「うん。頑張ったわね…ネプギア。…これからはずっと、一緒にいるから…。」

「っ!お姉ちゃん……お姉ちゃんっ!!」

 

言いずらそうに話し続けるネプギアの様子に、そっと優しく声を掛けるようにネプテューヌ。

大好きな姉の言葉に、もう一人で抱え込む事も苦しむ必要もない事が分かったネプギアは、涙を流しながら嬉しそうにネプテューヌへと抱き着いていた。

 

「あっ…お姉ちゃん、ちょっと待っててね。」

 

安堵の表情を浮かべながら、妹が唯一いないベールは一人寂しく妹達の様子を見守っていた。

彼女の様子に気付いたネプギアは姉に一言謝ってから名残惜しそうにしながら一度離れると、ベールに近付いてそっと彼女を抱きしめていた。

 

「ベールさん…お疲れ様でした。」

「!…ありがとう……」

 

ネプギアの行動に驚いたベールだったが、自分を気遣ってくれた労いの言葉を泣きそうな気持ちを抑えながらやさしく笑みを浮かべて受け取っていたのだ。

 

「はぁっ…まったく。ベール、今回だけだからね?」

 

ベールとネプギアの様子を見たネプテューヌが、少しヤキモチを妬いているように軽くため息を付いて呟くように話すものの、その表情は優しく何処か晴れやかなものだった。

そんな女神達を祝福するように、朝日は彼女達を力強くも優しく照らしていたのだった…

 

「痛ててて…やれやれ、これでホントに一安心だな。」

 

感動の再開を水を差さないように注意しながら、ホイポイカプセルから止血剤や回復薬を取り出して応急治療を施していくキール。

彼女達がお互いにそれぞれの気持ちを伝え、本当の意味で繋がった様子を確認すると候補生達の心配事もこれで解決したなと考えていた。

同時に、ゲイムギョウ界での目的も達成された以上、自分の役目もこれで終わりだなと考える。

 

「(後は、俺が元の世界に帰るだけか…。)」

 

処置が終われば身体にのしかかる様な疲労感と痛みを感じながら、激戦によってボロボロになった身体を癒す事に専念するかと考える。

後は人知れずにこのゲイムギョウ界からそっと立ち去るだけなのだから…

 

ーーーーー




前回で終わらせようとしたのに終わらず、結局ズルズルと伸ばしていて後悔中… _(┐「ε:)_
しかもリアで骨折して泣きそう_:(´ཀ`」 ∠):
仕事もあるのに…_| ̄|○
もっと速いテンポで投稿したいのに上手く進めなくて悔しいですが、ボチボチ投稿していきたいと思っています(*´ω`*)


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第19.5話『元の世界に帰れない!?ドラゴンボールが起こす騒動!!』

オリ回が挟まれていきますが、温かい目で見守って下さいませ(´・ω・`)
そして、題名通りの空気なあのアイテムの登場…及びオリ主のやらかし回(?)です(´・ω・`)


ーーーーー

 

マジェコンヌとの激闘から1週間が経過した頃…

まだ傷が癒えていないにも関わらず、夜空を舞空術で飛行して移動するキールは、空を滑空しながら何処か良い場所が無いか探し続けていた。

 

「…この辺りにするか。」

 

プラネテューヌからも遠すぎず、他の大陸の首都からも遠い山脈地帯を見つければ、そのまま山脈の谷底へと降りていった。

プラネテューヌから近過ぎてもドラゴンボールを使う際に夜空が光り輝く為、ネプテューヌ達やイストワールに怪しまれるのを考慮した為である。

最も、衛星のせいで後々バレてしまうため、帰れなかった時に問い詰められる事については覚悟しているのだが…

 

「さて…始めるか。」

 

谷底へと着地すればホイポイカプセルを取り出し目の前に軽く放り投げるとカプセルの爆発と共に煙が湧き出し、ドラゴンボールを収納しているアタッシュケースが現れる。

アタッシュケースの中からドラゴンボールを取り出し、7つの球で円を作るように置いていけば、ドラゴンボールが点滅するように光を放っていた。

 

「…出でよシェンロン!そして、願いを叶えたまえっ!!」

 

軽く深呼吸をしてからキールが合言葉を唱えると、夜空の色がより暗い空へと変化していくと共に、ドラゴンボールの光がより輝きを放っていく。

その直後、ドラゴンボールから力強く放たれていた光が天高くにまで登っていくと、凄まじい閃光と共に神龍が現れたのだった。

 

「さあ、願いをいえ。どんな願いもひとつだけかなえてやろう。」

 

神々しい光と共に現れたシェンロンの様子に安堵すれば、早速願いを言う為に話し出す事にした。

このゲイムギョウ界に名残惜しさを感じながら…

 

「特異点の影響のせいでゲイムギョウ界に流れ着いた俺を、元の世界に帰してくれ!」

 

そして、一呼吸置いてから自分の願いを託すようにシェンロンへと言ったのだった…

 

 

 

 

「…………………………………………」

「…シェンロン?」

 

しかし、シェンロンから返答が帰ってこない。

不思議に思ったキールはシェンロンに声を掛ける。

まだ彼が幼い頃にドラゴンボールが使われた時には、言われた後すぐに願いを叶えていたのだが…

少し長めの沈黙の後にシェンロンは口を開いて話し出したのだった。

 

「…どうやら、元の世界とこの世界が離れすぎているようだ。今の状態ではお前の願いを叶える事は出来ない。もっとも、この世界と元いた世界が再び、特異点の力で繋がった状態ならば、お前を元の世界に返せるが……」

「…そうか。分かった。それだけ分かれば十分だ。」

 

シェンロンが告げた言葉は、《現時点の状況では願いを叶えられない》というものだった。

返答に対して残念に思う反面、キールは心の何処かで安心していた。

 

「ならば、今の願いを叶えられなかった代わりに、特別に他の願いを叶えてやろう。」

「…良いのか?」

「もちろんだ。さあ…願いを言え。」

 

すると、願いを叶えられなかった事からシェンロンが気を遣ったのか、特別に他の叶えられる願いなら叶えようと持ち出してきたのだ。

その言葉に驚くキールだったが、シェンロンの気持ちを無駄にしない為に何を願おうかと考える。

 

「(そういえば、ネプテューヌ達の所で居候してるんだし、日頃のお礼にプレゼントでも…いや、それぐらいは自分で準備しないとな。にしても…この世界に馴染めきたとはいえ、思ったように借りを返せていないんだよな…)」

 

ネプテューヌ達やネプギア達に何かプレゼントでもしようかなと考えたものの、自分で用意した方が良いなと考える為、なかなか上手く決まらない。

 

「(それに、あのマジェコンヌとかいう奴との戦闘でシェアがかなり減って大変になってるし……そうだ!)」

 

ふと、この世界にようやく馴染めた事について考えれば、マジェコンヌ戦で大半のシェアエネルギーが消失したのではないかと考える。

 

「…叶えたい願いは決まったか?」

「あぁ。じゃあ言うぞ?世界を超えるのが無理でも、死人を蘇らせれるんだ…これぐらいなら大丈夫だろ?」

 

シェンロンの言葉に対して、叶える願いを決めた様子で不敵な笑みを浮かべて再びシェンロンを見上げて願いを言った。

 

「このゲイムギョウ界で消失したシェアエネルギーを回復してくれ!」

「それぐらいならお安い御用だ。シェアという力は願いの力によく似ている。可能な限り最大限まで回復してやろう。」

「あぁ、ありがとう。ドラゴンボール。」

 

キールの願いを聞き入れたシェンロンは光に包まれていく。

そして、ゲイムギョウ界の夜空をマジェコンヌ戦で見たシェアの虹光が煌めくように広がっていたのだった。

 

「…さぁ、願いは叶えた。さらばだっ!」

 

そして願いを叶え終えたシェンロンの周囲をドラゴンボールが取り囲むように開いていけば、凄まじい閃光の迸りと共に消失する。

そして、ドラゴンボールも7つの光の玉となって空高く飛び上がっていけば、四方八方へと飛び立っていったのだった…。

 

「さてと…俺も、プラネテューヌに帰らないとな。」

 

アタッシュケースの中にあるドラゴンレーダーを確認してからケースを閉じると、ホイポイカプセルを投げ当てて収納する。

ホイポイカプセルを手にとってポーチに入れてしまえば、自分もプラネテューヌに戻る為、再び気を纏って舞空術で飛翔すると、再びプラネテューヌへと向かうのであった。

 

 

だが、彼はまだ知らない…

 

シェンロンに叶えてもらう為に言ったこの願いが、後に自分自身を苦しめる原因になる事を……

 

ーーーーー




今回は短めです(´ω`)
題名を少し訂正しました。
次回は旧神タリ編の冒頭となっております。(´・ω・`)


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第20話『新たなる異変!?来訪者は幼き少女!』

旧神タリ編の冒頭となっております(´ω`)
前半はあの元気娘の登場となっております。
オリ主は後半辺りに出てきます。


ーーーーー

 

プラネテューヌ教会付近に設置されたトレーニングルーム施設内…

超サイヤ人3に変身した上で重力コントロールの重力負荷を100倍に設定した状態にしたキールがいた。

超サイヤ人3の弱点である大き過ぎる負荷の軽減と、超サイヤ人3でも長期間の戦闘を維持する為の修行を試みていた。

 

「…波ああああああぁぁぁっ!!!」

 

しかし、消耗という言葉が相応しい超サイヤ人3の負荷に身体を慣らす為に行なっている修行が過酷なのか、既に戦闘服はボロボロの状態になっている。

キールは塵衝波を放つ構えを取りながら気を練り上げて急激に高めていく。

そして、限界まで溜めた気を勢いよく放てば操気術で操り、自分のいる場所に向かってUターンさせると共に、塵衝波を受け止める為に身構えていく。

 

「ぐっ…くああぁぁぁっ…っ!!!」

 

戻ってきた塵衝波のエネルギーを受け止めるものの、あまりの威力とパワーに大きく後ろに下がらされてしまう。

何とか踏み止まって気を解放すれば、エネルギー波を両手で押さえ込んでいく。

 

「ぐはぁああぁぁっ!!?がっ!!」

 

しかし、互いに大き過ぎるパワーを相殺しきれず室内が大爆発に飲み込まれてしまい、キールは壁に勢いよく叩き付けられていた。

同時に、超サイヤ人3を維持する事が出来ずに変身が解けてしまう。

 

「はぁっ…はぁっ…くそっ。あの戦いからもう3ヶ月になるっていうのに……」

 

方で呼吸するように息を整えキールはその場に座り込み、苦い表情を浮かべながら、リーンボックスで起きた戦闘の事を思い返していた。

マジェコンヌとの激闘から3ヶ月の月日が経ち、ネプテューヌ達にいつもの日常が戻っていた。

失ったシェアエネルギーを回復するべく、各大陸の女神達は奮闘していた。

そう、プラネテューヌの守護女神をただ一人除いて…

 

ベールのいるリーンボックスは、ホームパーティーの時にネプテューヌ達が楽しんでいたVRゲームを最新のハードと共に一般向けに発表した事で、大きなシェアエナジーの回復に繋がっている。

ブランやロムとラムがいるルウィーは、ブランの顔の模様が入った饅頭…ぶらん饅頭が大ヒットした事で、シェアの回復も順調に進んでいるようだ。

ラステイションはノワールとユニが2人でモンスター退治に精を出し、失った以上のシェアを回復しているとの事だ。

 

「(あいつらは今頃、ピクニックを楽しんでいるだろうな…)」

 

出掛けたネプテューヌ達の事を思い出しながらも、気を取り直すように修行の反省点と改善点を探る為に座りながら考え始めるキール。

彼が行なっていたのは超サイヤ人3の状態で放った塵衝波を受け止める…というものである。

 

「(確かに超サイヤ人3には慣れてきた…だが、いくら維持した所で、気を溜めたり放出する時に余計に消耗しているのを何とかしない限りは超サイヤ人3の弱点を克服できない…。)」

 

超サイヤ人3の状態で気を溜めたり放ったりする際に力が抜けるような致命的な状態を克服する為、様々な修行方法を考え試したのだが、その殆どが失敗に終わっている。

その為、比較的効果のあった修行を重点的に行なっているが頭打ちの状態に陥っていたのだ。

 

「…今日はこのぐらいにしておくか。」

 

行き詰まった時に無闇に続けても進展は望めない為、早めに修行を切り上げる事にしたキールは、重力装置を操作して負荷重力を解除すると、着替えの服とタオルを手に取りながらトレーニングルームから出て行く。

 

「ん?ネプテューヌからか…」

 

汗を流す為に浴場へと向かおうとするものの、待機室のテーブルに置いていた携帯電話が鳴っているのに気付けば、携帯電話を手に取りつつ連絡してきている人物の名前を確認すると、自分に携帯電話を渡したネプテューヌからの電話だった為ひとまず出る事にした。

 

「もしもしキール、今って暇かな?」

「どうしたんだ?ピクニックに行ってるなら、別に俺に連絡を付けなくても…」

「それがさぁ、ちょっと大変な事になっちゃって…悪いんだけど来てくれないかな?」

「…分かった。後で行くから待っていろ。」

 

電話に出ると困ったような口調で話すネプテューヌの様子に何かあったのだろうかと考えつつも、ひとまずネプテューヌ達を迎えに行く為にシャワーを浴びる事にしたのだった…

 

ーーーーー

 

キールに連絡が入る数分前…

プラネテューヌの都市を見渡せる高い高台で敷いた敷物の上に座り、のんびりした長閑な雰囲気の中でネプテューヌ達はピクニックを堪能していたのだった。

 

「はむっ…んーっ!美味しいーーっ!!」

「まったく、あんな事があったのにピクニックって…ネプ子も変わらないわね。」

「えーっ?逆だよアイちゃん。あんな事があったからこそ、こうやってピクニックに来たんだよ。毎日がエブリデーみたいな!」

「意味が分からないわ…」

 

美味しそうにサンドイッチを頬張るネプテューヌを見たアイエフはやや呆れた表情を浮かべて呟いていた。

 

「キールも来れば良かったのにねー。せっかくこんなに良いピクニック日和なのにさ。」

「キールさん、ここの所ずっと修行に打ち込んでるから…」

「そうね…マジェコンヌとの戦いで倒し切れなかったのがよほど悔しかったみたい。」

 

現在この場にいないキールの話題が出れば、少し場の空気が微妙になっていた。

超サイヤ人3を維持できずに醜態を晒した事に納得がいっていないのか、キールは彼女達の誘いをキッパリと断って修行に打ち込んでいたのだ。

断った詫びとしてピクニックで食べるサンドイッチ等を用意したのだが…

 

「あーーーーーっ!!!」

「「「「…ん?」」」」

「コンパ!アイエフ!」

 

穏やかな天候の中でサンドイッチを堪能しながら高台から映るプラネテューヌの景色を見ていたが、聞き覚えの無いような声が聞こえればネプテューヌ達は声が聞こえた方向へと振り向いていく。

するとそこには、黒色と黄色のストライブ柄が特徴的な服装に、赤色のフェルトボールの付いた髪留めを付けた…金色の髪と水色の瞳をした小さな少女がアイエフとコンパの名を呼んで2人を指さししていたのだ。

 

「な…何?この子…?2人とも、この子の事知ってるの?」

「し、知らない子ですぅ…。」

「さ、さあ…?」

 

その少女に指を指されて名前を呼ばれたコンパとアイエフは困惑した表情を浮かべていたが、ネプテューヌに問い尋ねられればより困った表情を浮かべながら少女を見ていたのだった…

 

ーーーーー

 

シャワーを浴び終えたキールはいつもの服に着替えてからプラネテューヌ教会から飛び立ち、ネプテューヌ達の元へと向かっていた。

因みにプラネテューヌからはそれほど離れていない為すぐに到着したのだ。

 

「…あれか。」

 

空を飛びながらも自分が呼ばれるような事態が起きているのだろうかと考えていたが、ネプテューヌ達のいる場所が見えてくればそのまま彼女達の元へと降り立っていく。

 

「あっ、キール!」

「…わああぁぁっ!!空とんでるっ!」

 

キールに気付いたネプテューヌが声を上げながら手を振ればアイエフやコンパ、ネプギアもキールに気付いて彼の方を向いていく。

小さな金髪の少女も空を飛んできているキールに気付いたのか、舞空術で滑空している彼の姿を見てはしゃいでいた。

 

「ネプテューヌ、その子は?」

「えっと、それが急に現れたから分からなくてさー…」

「そうなのか…うおっ!!?」

 

彼女達の元にたどり着くと共に、見慣れない幼女の姿にキールは不思議そうにしながらネプテューヌへと近付きながら問い掛けるものの、目をキラキラと光らせ純粋な眼差しで見上げてきながら近付いてきた少女に驚いていた。

 

「ねーねー!どうやって飛んでたの!?教えて!教えてっ!!」

「えっ?あ、あぁ…その前に一旦教会に戻るが…一緒に来るか?」

「行くっ!」

 

少女の反応にキールは困惑しながらも、イストワールに相談し手から決めた方が良いなと考えると、少女に付いてくるかどうか聞くものの、空の飛び方が知りたそうな少女の反応に困り果てるキールであった…

 

ーーーーー




次回はアニメ本編第6話前半…ラステイションの珍騒動回となっております(´ω`)


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第21話『ノワールに迫る危機!?ラステイションのサーバーパニック!』

アニメ本編第6話の前半部分となっております。
なお、本編よりも進行している月日は意図的に遅らせております。


ーーーーー

 

「むーっ!ぴぃ退屈ーっ!あっ、キール遊んで!ねぷてぬが遊んでくれない!」

「わ、分かったから…って、コラっ!俺の尻尾を掴むんじゃない!」

「わーい!!」

「だからピー子、ねぷてぬじゃなくて、ネプテューヌ…おぉっと!今のは間一髪!!」

 

金髪の少女…ピーシェを拾って教会で保護する事になってから2か月が過ぎた…

教会内での仕事や家事を終え一息ついていたキールだったが、暇を持て余していたピーシェに尻尾を掴まれ遊び相手を務める羽目になってしまっていた。

そして、ピーシェにちゃんと自分の名前を言わせようとしているネプテューヌが突っ込みをいれつつゲームに集中している。

 

「ネプ子もキールも完全に懐かれてるわね。とはいっても、振り回されてるって言った方が良いかしら?」

「仲良しですぅ。」

「2人も見てないで手伝うか、ゲームやってるネプテューヌに仕事させてくれ。」

 

そんな様子を微笑ましそうに見ているアイエフとコンパの様子に気付いたキールが尻尾を掴んで離さないピーシェを、ゲームに熱中しているネプテューヌを白い目で見ながら2人に突っ込みを入れる。

 

「ぴぃっ…パンチっ!」

「うおっ!?コラ、ピーシェ!だから人を無暗に殴ろうとしちゃいけないってるだろ!?」

「きゃはははっ!!」

 

尻尾から離して持ち上げたまでは良かったものの、勢い良くアッパーの要領で腕を振り上げてきたピーシェの不意打ちが飛んでくれば間一髪の所で回避するキール。

そして、反応して避けたキールの姿を見てはしゃぐピーシェ。

 

「まったく…所で、さっきベールとネプギアがラウンジに居たが、放置してていいのか?」

「今はちょっと忙しいから、もうちょっと後で…」

 

ピーシェの反応に溜息を吐きながら、ゲームに集中しているネプテューヌの方を見て先ほど来ていたベールの事を思い出して問い尋ねる。

 

「…ピーシェ、ネプテューヌと遊んでやれ。」

「ねぷてぬ!遊んでー!」

「今いい所だから…ぬおおおぉぉっ…!」

 

しかし、ゲームに熱中しているネプテューヌは全く行動を起こそうとしない為、キールは抱き抱えているピーシェを降ろしてネプテューヌへとけしかけたのだった。

それでもこちらに反応を見せないネプテューヌの様子に頬を膨らませながら怒ったピーシェが、勢いよくゲームのコードを綺麗に引きちぎる。

 

「あっ!?もーっ!電源を抜いちゃダメだって…アレ?…あああぁぁぁっ!!?」

「ねぷてぬー!遊ぼーっ!!」

「ぬぬふふううぅっ!!?」

 

引きちぎられたコードを見てキョトンとした表情を浮かべていたネプテューヌだったが、ショックを受けたような驚愕の表情を浮かべながら悲鳴をあげていた。

そんなネプテューヌの様子など気にすることなく、笑顔で遊ぼうと大声で話すピーシェが彼女の腹部を目掛けて勢い良く飛びついた事で、ピーシェの頭突きのような突進をまともに受けたネプテューヌは女の子が上げてはいけないような呻き声を上げていたのだった。

 

「(そういえば、ラステイションに集まってほしいってブランから連絡が来ていたが…)」

 

そして、元気よく逃げるように走り出したピーシェと、それを追い掛けるネプテューヌの姿を見ていたキールだったが、仕事中にブランから連絡があった事を思い出すと、先にラステイションに行って何があったのか聞いた方が良いかなと考えたキール。

 

「イストワール、悪いが用事があったのを思い出した…ちょっと行ってくる。」

「え…ええっ!?ちょっと、キールさん!?」

 

急ぎではないと思うが気になるためネプテューヌ達を置いて向かうかと考えると、イストワールに出掛ける事を口実にして半ば強引にその場を後にする事にした。

因みにキールが部屋を出る間に、ピーシェの元気な声とネプテューヌの悲鳴が聞こえたそうな…

 

ーーーーー

 

「…それで、ネプテューヌ達を置いて先に来たのね。」

「ちょっとややこしい状況になっていてな。先に来て状況の把握に努めた方が良いと思ったんだ。」

 

暫くしてからラステイションに到着したキール。

舞空術で空を飛びながらラステイション教会の屋上にいるブランとノワールを見付け、そのまま屋上に着地してから話を聞く事にしたのだ。

 

「最近飼い始めた耳長バンディクートのクラたんよ。どう?可愛いでしょ。」

「わあぁっ…」

「可愛い!触らせて!!」

 

近くにはユニがペットとして買ったらしい耳の長い小動物が話題になっており、ロムとラムがクラたんを触っているのだった。

 

「それで、いったい何の話をしに来たのよ?」

「えぇ、ネットワークセキュリティーの事よ。」

「ネットワークセキュリティー…ネットワークの防衛装置みたいなものか。それがどうかしたのか?」

 

どうやら話があったのはブランの方だったが、話の内容としてはノワールが深く関与している事からわざわざラステイションに来たのだ。

まだネット関連の用語には疎いキールは少し不思議そうな表情を浮かべながらブランとノワールの話を聞く事にしたのだった。

 

「もしかして、ウチの鉄壁のセキュリティーをお手本にしたいのね。まあ、確かにそうよね。何たって、一流の技術者達を惜しみなく使って作り上げた難攻不落のセキュリティーなんだから…」

「その事なんだけど、ラステイションのサーバーがハッキングされた記録が残っているのよ。」

「…はいいいいぃぃっ!!?」

 

話の内容からルウィーがラステイションのセキュリティーシステムを見本にしたいだろうと早とちりしたノワールだったが、直後のブランの言葉に暫く硬直してしまう。

 

「ハッキングって確か…ネット上の不法侵入みたいなものだったな。それって、あんまり良くないんじゃないのか?」

「そんな事…あり得ないわ!あのセキュリティーが突破されるはずは無いわよ!!」

「でも、ラステイションのサーバーデータに痕跡が残されてるのは事実よ。」

「だいたい!あのセキュリティーが破られる確率は、空から人が降って来て当たるぐらいの確率しかないわよ!?」

 

ネット用語などについては少し読み漁っていた事もあり、ハッキングに遭ったラステイションの状況は良くないのではないかとキールは考えて話すものの、ノワールは一貫して否定していたのだった。

 

「その為にもちゃんと調べなおした方が良いんじゃないのか?って、何だ?この音は……」

「わあああああぁぁぁっ!!!どいてどいてどいてーーっ!!」

 

そんなノワールのやり取りを見ていたキールだったが、空から聞こえてくる音に気付いて空を見上げる。

すると、勢い良く空からネプテューヌが落ちて来ていたのだった。

 

「ん?のわああああああぁぁぁっ!!!?」

 

その様子にブランとノワールも気付いたが進行方向が悪かったのか、ノワールにネプテューヌが直撃してしまい凄まじい砂煙を発生させていた。

 

「いやぁ…助かったぁー。」

「う…ううぅぅっ……」

 

暫くして砂煙が落ち着くと座り込んでいるネプテューヌの下にノワールが下敷きになっているというシュールな光景になっていたのだった。

 

 

「まったく…いきなり人の上に落ちてくるなんて、非常識にも程があるわよ!」

「ごめんごめん。飛んでる最中にピー子が暴れてさー。うっかり変身が解けちゃったんだ。」

「うっかり過ぎるわよ!」

 

下敷きになったノワールの手当てが終わったものの、当の本人は完全に不機嫌になっていた。

幸いかすり傷程度で済んでいるものの、ギャグ補正が働いたんだろうなとキールは内心思っている。

 

「あ、そうだ。ピー子ご挨拶は?」

「ピぃだよ!」

 

ふと、ネプテューヌがピーシェに自己紹介するようにと話すと、ピーシェは元気良く挨拶をしたのだった。

 

「ネプテューヌ…こんな大きな子供がいたのね。」

「そうそう。初めてお腹を痛めて産んだ子だから可愛くって…って、違うよっ! 教会で迷子で預かってる子だから!」

「…まぁ、知ってたけど。」

「ねぷっ!?まさかのブランが誘いボケ!?」

 

すると、まさかのブランによる不意打ちのようなボケにネプテューヌがノリ突っ込みを入れるという、何とも珍しい光景が繰り広げられていたのだ。

 

「ロム。ラム。仲良くしてあげて?」

「はーいっ!」

「一緒に遊ぼ…?」

「うん! ぴぃあそぶ!」

 

ピーシェの簡単な自己紹介とネプテューヌとブランとの軽い茶番が終われば、ブランが年の差が近いロムとラムに仲良くするように話す。

すると、意気投合するように話していた3人が、ユニが飼っている耳長小動物のバンディクートを追い掛け回し始めたのだった。

 

「…とりあえず、場所を変えましょ。ユニ、ここの事をお願いね?」

「えっ?あっ、うん…」

 

その様子を見たノワールが話の内容をより深く掘り下げて説明したいのか、場所を移すためにエレベーターへと向かうとネプテューヌ、ブラン、ベールに続いてキールも一緒に向かう事にしたのだった。

 

 

「ネプギア…ちょっと相談があるんだけど、良いかな?」

「…?どうしたのユニちゃん?」

 

ノワールの事でネプギアに相談する事にしたユニだったが、後にネプギアが監視カメラを設置して傍聴されている事に気付き、とんでもない事態になる事になるとは知りもせずに…

 

 

ーーーーー

 

「あーっははははははっ!はははっ、あっはははっ!お腹痛い!笑い過ぎてお腹痛いよ!」

「ちょっと、何がそんなにおかしいのかしら?」

「だって、前にノワール自慢してたじゃん?『ラステイションのセキュリティーは世界一!』って!それを破られちゃうなんてー!」

「ぐっ……」

 

ラステイション教会内部にあるコンピュータールームでノワールの話を聞いたネプテューヌが爆笑していたのだった。

そんな彼女の様子を不機嫌そうに見ていたノワールを見るも笑いの止まらないネプテューヌは、過去にノワールに言われた事を思い返すように話すと再びおかしそうに笑っていた。

 

「起きてしまった事は仕方がないわ。それよりも…大事なのは再発防止よ。それに…」

「まずはこんな事をした不届き者を見付けて締め上げる事ね…!」

 

笑い続けるネプテューヌの様子を見て溜息をついていたノワールだったが、ブランのフォローに気を取り直すとセキュリティーをハッキングした犯人を捜す事にした。

 

「だが、こんな情報統計上の問題だと犯人が何処にいるか分からないんじゃないのか?仮にハッキングされた場所を特定できたとしても、その場に犯人が居るとは到底思えないが…」

「実は、こんな事もあろうかとある方を呼んでおりましたの。どうぞ、お入りになって。リーンボックスが誇る超天才プログラマー…ツイーゲちゃんですわ。」

 

ふと、情報上の犯罪について疑問を浮かべたキールの言葉に対して、助っ人を用意していたベールは室外で待機させていた人物をサーバールームへと招き入れる。

すると、黒縁眼鏡を掛け片手にノートパソコンを持ち、頭に4色の髪留めを付けたスーツ姿の女性が入って来たのだ。

 

「つ、ついーげちゃん?」

「…誰?」

「オリジナルキャラ来たー!」

「前髪の部分だけ随分と特徴的な奴だな…」

 

現れたついーげの姿に突っ込みを入れるノワールとブラン。

ネプテューヌに至ってはメタに近い発言をしており、キールに至っては自分も人の事を言えない部分に突っ込みを入れていたのだった。

 

「初めまして、ついーげですびる。よろしくお願いしますびる。」

「び、びる?」

「今時ありえない語尾でキャラ付け!?絶対失敗する奴だこれー!?」

「ご心配なく。このシーンのみの使い捨てキャラですびる。」

「お前、それで良いのか!?」

 

自己紹介の挨拶をしたついーげの言葉にキョトンとした様子のノワールとブランだったが、ついーげのに突っ込みを入れたのはまさかのネプテューヌだった。

対してメタ発言じみたついーげの言葉にその場ですっ転んだキールが、慌てて起き上がりながら突っ込みを入れる。

 

「えっと…貴女なら犯人を突き止めれるって事?」

「お任せくださいびる。」

 

流れが不吉な方向に進んでいる為、不安そうな表情を浮かべるノワールに対して無理な語尾付けで返事をしながらノートパソコンを開いて作業を開始していくついーげ。

その様子を心配そうな表情で見守るネプテューヌ達であった…

 

ーーーーー




次回はアニメ本編第6話の中編となっております。
ネプギア達のくだりはカットさせて頂きました…候補生派の方々には申し訳ないです(´・ω・`)



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