【旧】ダンジョンにファンタジーを求めるのは間違っているだろうか (東西南 アカリ)
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REGINLEIV

ダンまちとグラブルを混ぜてみた(笑)
あくまで設定はダンまちよりですが、主人公はグランとあとベートかな?
多分親友か、悪友クラスになります。
ベル君も出るよ。

*2/15 よくよく考えたら主人公のジョブと武器が一致してなかったので短剣から長剣へと変更しました。


ベート・ローガは驚きで目を見張っていた。

いや、ベートだけではない。

ベートを含めリヴェリア、フィン、ガレス、アイズを始めとした、この都市オラリオの最強たる【ロキ・ファミリア】の遠征軍の面々が驚きで目を見張っていたのだ。

その彼らの視線の先にいたのは、一人の少年の存在だった。

風貌は茶髪に、短く切り揃えた髪、防具は殆んどなく、一振りの黒の長剣を携えて―――闘っていた。

相対するは、白い巨漢、長い手足と馬鹿力を武器とした階層主、ゴライアス。

 

「ありえねぇ」

 

ベートが思わず口を溢した。

いや、無理もないだろう、なんたって幾らこのオラリオ最強と呼ばれる【ロキ・ファミリア】と言えども、階層主と単騎で渡り合えるものと言えど数が知れていた。

それを今、目の前で、そう目の前で起こっているのだ。

 

「おい、どういうことだ、フィンっ!?」

「うるさいぞ、ベート、少しは黙らんか」

「あぁん?ババァはすっこんでろっ!!俺はフィンに話してるんだっ!!」

「っ!?ババァだと?」

「なんか文句あんのか?いや、その前にこれを見て黙っていられるかってんだ、フィンっ!?」

「二人とも少し黙ってくれるかな?」

 

ベートは声を荒らげた。

それに反応してリヴェリアが諌め、あわや口論と成りかけたがフィンが静かにそれに幕を下ろした。

ちっ、とだけベートが舌打ちをしたが、気にすることもなく、フィンは考えた。

確かにベートの言うことにも無理はない。

もともと、先遣隊がこの階層主を葬り、その後に後発隊が通りすぎる手筈となっていたが、先程耳を驚かせるような伝令が伝わり、ベートが単身飛び出した。

仕方なくそれに追う形で、ここに来てみれば、目の前で本の中の英雄譚のような光景が起こっているではないか。

さすがのフィン自身も驚きを隠せないでいた。

 

それにしても、とフィンは思う。

いったい彼は何者なんだと。

フィンはこのオラリオ最強のファミリアの団長である。

然らば即ち、この都市全体の冒険者の、特に上位の冒険者達の情報には疎くない。

しかし、フィンの目の前で闘っている少年の顔に記憶はなかった。

いや、もしかしたら表に出ていないだけで、どこかのファミリアで隠されている―――例えば【フレイヤ・ファミリア】等はどうであろうか?

いや、それもないか。あそこのファミリアならもっと上手くやるはずだ。

するとすれば、新興勢力か?いや、それもおかしい。

一瞬白兎の冒険者――――【ヘスティア・ファミリア】のベル・クラネルのことを思い浮かべはしたが、あそこのファミリアにベルを越える冒険者などはいやしない。

とすると、彼はいったい?

 

 

そして、戦況は動いた。

 

「ぐあっ!!!?」

 

ついにゴライアスの凶拳がその少年の体躯を吹き飛ばした。

そして、壁に激突し、ヒビが入り、少年は埋め込まれた。

少年は動かなかった。

遠目に見るともしかしたらという想像ができてしまっていた、それほどに。

それでもずんずんとゴライアスは少年へ目掛けて進撃した。

そして埋まっている少年へ目掛けて、何度も何度もその拳を振るっていた。

何人かの団員は目を手で覆ってしまった。

もうあの攻撃を逃れる手立ては残っていないように見えた。

そして、それはフィンも十二分に分かっていた。

おそらくもう彼は事切れてしまっているだろう。

だがしかし、フィンはこの状況を好機と見た。

少年には悪いが今、ゴライアスは遠征隊に背を向けている。

もしも今、ファミリア全体で攻撃できるとしたら、きっとゴライアスもひとたまりもなく、何時もよりも攻略がスムーズになるであろう。

そして倒した暁には、偶然だが居合わせたその少年の遺骨を拾おう、そう素早く決断し、フィンは号令を放つ。

 

「総員っ、戦闘じy『まてーーーーっ!!』」

 

しかし、その号令は最後まで紡がれることはなかった。

ふっと、フィンは後ろを振り返った。

そして目の前には何かを感ずいているようなベートの顔があった。

遮ったのはベートだった。

 

「ベート、どういうつもりだ?」

 

リヴェリアが聞いた。

だがベートはそれを無視した。

くんくんと彼は鼻を嗅いでいて、そしてその顔は確信へと変わっていた。

 

「やっぱりな、何か臭うと思ったら、奴はまだ生きているぞっ!!」

「そんな馬鹿なことはあるか、ベート。すでにあの少年は現に」

 

「お、おい、あれを見てみろ!!」

 

前の方から声が聞こえた。

それにつられてフィンやリヴェリアは目をやった。

そして驚きを露にした。

 

「凄いね、彼は。まさかあんなところにいるだなんて」

「嘘だろ?まさかあの少年が、どうやって切り抜けたのだ?」

「ガハハハハ、少しは骨のある奴のようじゃのう!!」

 

フィン、リヴェリア、そして今まで沈黙を貫いていた巨漢ガレスも声を野太く笑った。

 

「うっそぉ!!あんなに強打打たれていて生きてるとかあの子凄いじゃんっ!!」

「確かにすごいわね、本当にいつの間に切り抜けたのかしら」

 

アマゾネスの姉妹ティオナとティオネも目を見張っていた。

 

「だから言っただろ、奴はどうやらただの雑魚じゃねぇ、そうだろアイズ?」

 

ベートは隣にいたアイズに声をかけた。

アイズは沈黙はしていたが、その目はその少年の方へと向かっていた。

 

(彼は……………強い、私とは違う強さがある………?)

 

知りたい、と彼女は思った。なぜそんなにボロボロになってまでそこに立ち続けられるのか。

確かに技量はこちらの方が上だ、しかし、それは純粋な強さだ。

しかし、彼には強さがある、そしてそれはまるである白髪の少年のことを思い起こさせるようなものだった。

 

(彼は……あの子………ベルと……似ている)

 

それは確信だった、そしてそれは同時にこの闘いの結末を見てみたいとも思えた。

 

「しかし、どうするフィン?あそこにはいるとはいえど彼は満身創痍だ。さすがに目の前で死なれるのは困るのだが………」

 

リヴェリアはそうポツリと溢し、ベートは何いってんだとばかり牙を向けようとするが、フィンはにっこりと笑って言った。

 

「多分どうやら終わるみたいだよ、そんな風が吹いてるからね」

 

それを聞いて、【ロキ・ファミリア】の面々は納得した。

フィンは歴戦の戦士だ、そして我らの団長だ。だからきっと何か分かっているのだろうと、そして彼らは固唾を飲んだ。

 

 

不意に、空気が変わった。

 

 

「……………ミゼラブルミスト」

 

それは少年から発せられた声だった。

そしてそれはゴライアスの周囲に充満した。

とても黒い、霧だった。

霧が晴れるとなぜかゴライアスは疲れていた。

 

「速攻魔法っ!?」

 

誰かが叫んだ。

 

「リヴェリア?」

「うむ、私も見たことはない魔法だ、しかし様子を見るに相手の状態を悪くする魔法のようだ」

「そ、そんな魔法が………しかも速攻魔法で?」

 

エルフの少女レフィーヤが驚きで口を手で覆っていた。

それぐらい、相手の状態異常を誘う、ましてや速攻魔法の使い手とは驚きを隠せない。

 

だが次の言葉に彼らは再び愕然とした。

 

「レイジっ!!」

 

ぶわっと、彼の気力が、闘士が上がったような気がした、いや、上がっていた。

 

「嘘でしょ、あの子自分に強化魔法加えてるよ、しかも速攻で!!」

 

ティオナは凄いものを見たとばかり、はしゃいでいた。

 

「まさか、二重魔法使いとはね………すごいわねあの子」

 

再び短剣をゴライアスに向け、切りつけている少年を見てティオネは素直に感心していた。

少年は、見事だった。

見たこともなく、まるで先の怪我が嘘であるかのように、この部屋の中を縦横無尽に駆け巡り、ゴライアスに少しずつ、しかしそれは強烈に攻撃を加えていった。

ゴライアスが唸る、そして出鱈目に拳を振る、暴れる。

しかしそれらはすべて少年には当たらなかった。

 

誰もがその闘いに釘つけになっていた。

だがその中でただ一人、ベートだけが面白くないようにしていた。

それに気づいたティオナが吹っ掛ける。

 

「ベートあんたなに怖い顔してるのさ?あの子すごく強いじゃん?」

 

しかし、ベートはそれに答えなかった。

そして代わりにこんなことを言った。

 

「気に食わねぇ」

「えっ?」

「だから気に食わねぇって言ってるんだよっ!!」

 

ベートは声を荒らげた。

フィン達は不思議に思った。

 

「ベート、どういうことだい?まさか彼はまだ?」

 

フィンが聞くとベートは頷いた。

 

「まさか、まだ奥の手を隠しているのか?」

 

リヴェリアが驚いた。

その動揺は一同に走った。

ベートは口を開く。

 

「まだ奴はなにか隠してやがる、そしてそれは多分滅茶苦茶なやつだ、それに俺らが巻き込まれるかもしれないことを気にしてやがる」

 

はっきりと言った。

だから気に食わねぇと。

再び、動揺が駆け抜けた。

 

「ガハハハハ、まさかこちらに気づいて、しかも気遣いをするとはわしらもなめられたものじゃな!!」

 

ガレスは大声で笑った。

それはある意味このオラリオ最強として君臨しているこのファミリアの誰もが感じていた。

心のかすかにあった、そんなものを、そんな自負という誇りを押し留めていた。

ベートはそれを前に出していただけだった。

 

「だとしたら、ベート、君ならどうする?」

 

フィンが聞くと決まっているとばかりにベートは息を大きく吸い込んだ。

 

「そこの野郎、俺らの事は気にせず隠し持ってるもんをさっさとだしなっ!!俺たちは早くそこを通りたいんだよっ!!!」

 

そのベートの声は空気を震わせ、このダンジョンを震わせた。

そして、それが届いたのかどうかは分からないが再び少年は纏う空気を一変させた。

 

「ッツ!!?」

 

それは遠くにいても分かるぐらいの変わりようだった。

先の変わり方が二倍とすれば、今のは四倍かそれ以上か。

そして少年は、一旦距離を置き、長剣を構えた。

 

「ウェポンバースト」

 

三度目の速攻魔法、そして―――――

 

「神をも滅ぼす破龍の力、我が声に応えて力を示せっ!!」

 

「四重魔法使いだとっ!?」

 

誰もが驚いた、驚きを隠せなかった。

嵐の渦中にその少年がいて、自分達はその嵐の奔流に呑まれないように必死にならざるを終えないほどだった。

 

「総員、退避っ!!防御展開っ!!」

 

一同はフィンの言葉にしたがった。

ガレスが、その他の面々が防御をはり、準備はすぐに整った。

 

そして一呼吸置き。

 

「レギンレイブッ!!!!!!!」

 

それは長剣から発せられた破壊の嵐だった。

それは周りのものを悉く破壊しつくし、ゴライアスはひとたまりもなく、【ロキ・ファミリア】の防御にすらも少しだけヒビをいれたのだ。

 

「グゥアアアアアアアッ!!!」

 

ゴライアスはその嵐の奔流に呑まれ一気に体を消してしまった。

それほどまでに強力だった。

やがてしばらくすると嵐は止み、そこに残っていたのは少年だけだった。

 

「リヴェリア」

「分かった」

 

リヴェリアそれだけを言うと、直ぐ様少年の方へと駆け寄った。

そしてやはりな、と思うとフィンに合図を送った。

それに呼ばれてこの遠征隊の上位人が少年を囲った。

 

「容体は?」

 

フィンは慎重に聞いた。

 

精神疲労(マインド・ダウン)だ」

「そうか」

 

魔力消失、それは一度に魔法を行使しすぎると自分の魔力を失い気を失うという状態。

彼は立ったままそうなっていた。

 

「まさかこうも連日でダンジョンの中で見せつけてくれるとはな」

 

リヴェリアはそう言った。

 

「まったくだね」

 

フィンはきちんとそれにかえした。

そして同時に血がたぎっていた。

こんなにも熱い闘いを見せつけられて黙っている男などいられるか、そしてそれはすでに着火されたものであって、とどまることをしらない青い炎だった。

 

「おい、ババァ、奴の背中を見ろ、破れているだろ?」

 

ベートは言った。またしても同じことを、かつて目の前で同じように起きた、白兎の奇跡の時と同じようにリヴェリアに背中のステイタスを見るようにと言った。

 

「仕方ないな」

 

やれやれというように、リヴェリアは少年の背中を見て動きを止めた。

 

「おいなんだぁ?またしてもアビリティオールSとか言うじゃねぇだろうな?」

 

だが、リヴェリアの顔はそれ以上の驚きを持っていたようだった。

 

「そんな馬鹿なことはあるものか………?」

 

それは衝撃を通り越して、畏怖だった。

 

「どういうことだい、リヴェリア?」

 

フィンは静かに聞いた。

リヴェリアは首を彼らの方に向けて、塗炭に少年の上着を剥ぎ取った。

そして、それを見て一同は驚愕した。

嘘、ロックかかっているんじゃ、等と声があがる。

しかし、リヴェリア違うと頭を左右に振った。

 

「信じられないけど、そういうことなんだね、リヴェリア?」

 

震える声でフィンは言った。

あぁ、と応えてリヴェリアは一呼吸分を置いてから言った。

 

「彼は神の恩恵(ファルナ)を受けていない。生身の状態でゴライアスを打ち倒したのだ」

 

その事実はその場にいた全員に衝撃を与えた。

そして後にこの衝撃はこの一団に収まることではなく、このオラリオ全体に広がることとなる。

そしてそれを一端とする、オラリオ全体を巻き込むある事件の幕開けに、その当時、誰もが気づくことはなかったのだった。

 

 

 



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