魔法でも、撃ちたいじゃん! (扶桑畝傍)
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先ずは、勉強・・・

この日、俺は・・・

あの世界で、目覚めた。

そう、

ナイツ&マジックの世界で。




 

 

「ん・・・んっ。」

 

 何処かのベット?

 

 いや、

 

「見た事が無い天井・・・。」

 

どっかのセリフを、言ってしまった。

 

 

(・・・状況を整理しよう)

 

1、知らない所

 

 

2、田舎臭い

 

3、鏡を見ると?

 

「え?これが、俺?」

 

 

「オネスト!!

 起きなさい!!」

 

 母さんの声で、

 

 頭が一気に冴える。

 

 そうだ、

 

 俺はこの世界、

 

 ナイツ&マジックの世界の、

 

 “本編とは違う国の農村一家に

  生まれ変わったんだっけ”

 

オネスト

「起きてるよっ!!」

 

 

 俺が住んでいる国、

 

 ファゼンディラ公国は、

 

 フレメヴィーラ王国とは違う大陸の、

 

 半島に位置する。

 

 国土の6割が農耕で占めており、

 

 食用品輸出が、主な外貨取得で、

 

 戦争自体は、

 

 それほど経験しなかった国だ。

 

 よって、

 

 シルエットナイトも、自ずと、

 

“古い機体を修理しながら使っている”

 

 農村の出でありながら、

 

“ファゼンディラ公国

 ・魔法学校”に通っている。

 

 理由は、ちゃんとある。

 

 国王、リャン・ダオ11世による、

 

 近代化計画により、

 

“一定の年齢までは、

 学問を受けさせ、

 より、収穫の向上、

 新たな、

 ナイトランナー育成”

 

 内容に関しては、

 

 フレメヴィーラ王国より買い付けた、

 

 教科書通りの内容で、

 

 結局の所、

 

 ナイトランナーの育成には繋がったが、

 

 肝心の“収穫の向上”には、

 

 効果がまるでなかった。

 

 そんな時、

 

 ふとした切っ掛けから、

 

 フレメヴィーラからの噂を耳にする。

 

 

オネスト

「新型機?」

 

ペガル

「あぁ、

 なんでも、初等部から中等部に、

 飛び級で、やらかした奴が、

 すげぇのを作ったらしいぜ?」

 

 あ、コイツは、ペガル、

 

 国王直属の諜報機関の、孫。

 

 どう言う訳か、

 

 隠密が一切駄目な駄目孫。

 

 なので、せめてナイトランナーとして、

 

 国王に仕えろと、親から、

 

 家を叩き出された不憫な子。

 

 

オネスト

「なぁ、

 そう言うのって、

 “国家機密”じゃねえのけ?」

 

 生前の、ミックス弁

    (色々な地方の方言が混ざる)で、

 

 質問を返す。

 

ペガル

「え?マジで?」

 

オネスト

「この100年前後で、

 “新型機”の声は出て無いんだぞ?

 教科書、読み直して来い、

 それに、

 今までの既存じゃ、

 稼働時間を切り詰めて、

 瞬発的に発揮するに、

 留まっているんだぞ?

 うちの国の機体、

 “デュファンス”は、

 防御主体で、

 防衛が主任務、

 精々、国境付近で、

 散発的な魔獣の撃退、迎撃が主だろ?」

 

ペガル

「ぁ~・・・。」

 

 ま、俺も、教科書を読みながら、

 

 今の説明をした。

 

 つまり、馬鹿二人のお喋りだ。

 

 

 ま、先生に怒られ、

 

 別々に処罰を受ける。

 

 これが、一つ目の切っ掛け、

 

 だったのかもしれない。

 

オネスト

「なんでったって、

 生徒会の手伝いを・・・。」

 

 近々、学際が開催されるので、

 

 そのパンフレット作りの手伝いに、

 

 駆り出されたのだった。

 

 



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会長と馬鹿二人。


生徒会・準備室のドアをノックする。

「入れ。」


オネスト
「普通科・初等部、
 オネスト・ディシュリオン、
 入ります。」



 

オネスト

「・・・失礼しました。」

 

 そのまま回れ右をし、

 

 扉を閉める。

 

会長

「ま、待ってくれ、

 頼むっ!!」

 

 瞬間移動でも

 

 取得してるのか?この会長は。

 

オネスト

「いえ、

 楽しそうに、

 “編み物”をしてらっしゃった会長の、

 お邪魔をしないように、

 一度改めてお伺いしようかと。」

 

会長

「いっ///いうなぁっ!!」

 

 若干、ギャップ萌えとか、思ったが、

 

 会長は許嫁がいるし、

 

 貴族同士だから、

 

 農村の俺には、高嶺の花だな。

 

オネスト

「では、

 来月の学際パンフレットを、

 早く作ってしまいましょうか。」

 

会長

「そ、そうだな、

 うん、

 直ぐに支度する。」

 

 一緒に机を動かしたり、

 

 ページ順に用紙を並べ、

 

 順番にとって、

 

 紐で纏めて、一冊にして行く。

 

 

ようやく、一クラス分が終わる。

 

オネスト

「・・・ふぅ。」

 

会長

「以外に、几帳面なんだな?」

 

オネスト

「そうですか?」

 

 きっちり折り目を付け、

 

 きっちり、同じ場所に穴を開け、

 

 蝶結びで、冊子のアクセントをつける。

 

 これのどこが?

 

会長

「ほら、

 私のなんか、

 所々、ズレていたり、

 結び目も、

 上手く結べていない。」

 

オネスト

「まぁ、言われてみれば。」

 

会長

「はぁ、

 なんで会長に選ばれたんだろうな。」

 

 その哀愁漂う可憐さと、

 

 不正を正し、

 

 凛としてそれに立ち向かう姿は、

 

 誰の目にも、頼もしく見えたんだろうよ、

 

 俺も、会長に一票入れたんだけどね。

 

オネスト

「一息、入れますか?」

 

会長

「うむ、そうしよう。」

 

 躊躇する事なく、

 

 生徒会・準備室にある、

 

 キッチンの火を入れる。

 

 このキッチン、

 

 コンロの下には、

 

 クリスタルティシューが埋まっており、

 

 学校所有のエーテルリアクタにより、

 

 周囲のエーテルを、収集、

 

 マナプール内で熱変換し、

 

 “調整の出来る炎を生み出している”

 

会長

「なんと、

 オネストは、

 キッチンを使えるのか?」

 

 ん?

 

 今、なんて言った?

 

オネスト

「えぇ、自炊しますから。」

 

会長

「ふむ、

 今度、教授願えないだろうか?

 爺やに、

 “お止め下さい”って、

 止められるのだ。」

 

オネスト

「調節に失敗して、

 天井でも、焦がしたんですか?」

 

会長

「うむ、

 “屋敷の半分が焼け焦げたな”」

 

ペガル

「うぃ~っす、

 会長、

 俺もパンフレットの手伝いに、

 回され・・・ました。」

 

オネスト

「タイミングが良いんだか、

 悪いんだか、良くわからんな。」

 

ペガル

「は?いや、オネスト、

 またコーヒーかよ、

 良く飲めるなぁ?

 俺は、

 紅茶を所望するぜ?」

 

オネスト

「会長は?」

 

会長

「え?

 あ、あぁ、

 済まない、私も紅茶だ、

 苦いのは好きになれん。」

 

オネスト

「そうですか、

 ペガル、

 コップを三つだ。」

 

ペガル

「あいよ~。」

 

 





これが、後の、

ファゼンディラ公国

三馬鹿伝説もとい、

“ファゼンディラ公国三騎士”の、

始まりだった。


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会合・魔改造・即実行っ!?


学際が滞りなく終わり、

定期テストと、

シルエットナイトに対する、

“自己の評価の発表”が、

迫りつつあった。





 

先生

「では、

 本日より、ひと月の間、

 わが国のシルエットナイト、

 デュファンスを、

 “自己の評価”と、

 改善点、考察などを、

 文書、もしくは、

 “模型”にて、

 発表して貰う。」

 

 生徒達から、

 

 悲鳴が巻き起こる。

 

 そうなのだ、

 

 普通科の名前だが、

 

 ナイトスミス並みの技量も、

 

 求められる事がある、

 

 そりゃそうだ、

 

 “自分が、

 乗るかもしれない機体”なのだから。

 

 

オネスト

「・・・ふむ。」

 

ペガル

「うぇ~・・・。」

 

会長

「うぬぅ~・・・。」

 

二人

『いや、会長?

 なにやってんすか?』

 

会長

「ん?

 いや、

 二人が知っての通り、

 工作が苦手でな、

 “編み物”なら、

 出来るのだが、

 模型が作れないのだ、

 一体、どうしたら良いと思う?」

 

オネスト

「ぇ~・・・。」

(はぁ、

 会長の評価を落とす事は、避けたいしなぁ、

 でも、

 編み物・・・ん?)

「会長、

 セーターを編んだ事は?」

 

会長

「セーター?

 あぁ、冬用に何度も手直ししているし、

 手袋も作れるぞ?」

 

オネスト

「ペガルは、

 何が駄目なんだ?」

 

ペガル

「模型は出来るんだけど、

 それを上手く説明出来なくてさ、

 模型は満点、文章は赤点で、

 プラマイゼロ、

 ギリギリ、進級は出来るってとこ。」

 

オネスト

「会長、クリスタルティシューで、

 編み物をしてください、

 それを、模型に組み込んで、

 それを操作するのはペガルで、どう?」

 

二人『は?』

 

オネスト

「進級出来なくても良いんなら、

 教えませんけど。」

 

二人『やろうっ!!』

 

 

 俺は、

 骨格から、作り直す方法で、

 文章と、デュファンスを、

 より強固に、

 “量産を視野”にいれ、

 ある機構も押し込んで、

 農機具は、

 “生前の記憶を引き出して”

 この世界の枠組みに押し込む。

 

 幸いにして

 アルヴの民には、

 物好きが居るので、

 この“同学年”に、

 そいつは居る。

 

オネスト

「コンクォ、

 ちょっと良いか?」

 

コンクォ

「なに?」

 

 入学式早々の、

 自己紹介で、大騒ぎされ、

 周囲の男子と喧嘩をし、

 “全員なぎ倒した彼女”は、

 何時も、ムスッと、している。

 

オネスト

「この“フレーム”だと、

 足に掛かる負担は、

 どれだけになりそうだ?」

 

 走り書きの“逆足構想”だ。

 

コンクォ

「・・・この、バネ?って?」

 

オネスト

「あぁ、それはこっち。」

 

 バネ用に確認できている金属で、

 “強度もあり、伸縮性もある”

 金属の割合は公表されている。

 

 これらを、大型化し、

 爆裂術式で、

 “ジャンプ”を試して見たいのだ。

 

コンクォ

「無理ね、

 今までのデュファンスで、

 考えなさいよ?

 フレームその物を開発なんて、

 “ナイトスミス”達を、

 侮辱する行為だわ。」

 

 

 ま、

 

 模型用エーテルリアクタは貰っているので、

 

 後は、術式とかなんだけど・・・。

 

オネスト

「だめだ、

 あったま痛い。」

 

 術式を銀線神経(シルバーナーヴ)に、

 

 書き込むのには、

 

 それを“理解”しなければ、

 

 書き込んでも、発動しなかったりする。

 

オネスト

「やっぱ、コンクォに頼むしかないよなぁ。」

 

 机に突っ伏し、

 

 教科書を読み直す。

 

ペガル

「ぉ~い、

 オネスト?

 生きてるか~?」

 

オネスト

「頭がヤバい。」

 

ペガル

「つ、遂に馬鹿になったのか?」

 

会長

「ペガル程では無かろうに。」

 

 ガハァッ!?

 

オネスト

「あれ?会長、

 どうかしましたか?」

 

会長

「どうかしましたか?では無い、

 試作のクリスタルティシューセーターが、

 出来たのだ、

 見てくれるか?」

 

 はやっ!?

 

 模型に着せてみる。

 

オネスト

「・・・う~ん。」

 

会長

「う~む。」

 

ペガル

「うぬぬぬ・・・。」

 

 動かない。

 

コンクォ

「なにしてんのよ?

 そことそこ、

 シルバーナーヴが、繋がって無いし、

 エーテルリアクタの、

 吸排気も逆よ、

 壊す気なの?」

 

3人『おぉっ!!助かったっ!!』

 

コンクォ

「・・・って、

 ホントに、逆足なんだ、

 へぇ~・・・成程、

 ここと・・・っ、これで、

 うんうん、

 オネスト、だっけ?

 さっきはごめんなさい。」

 

オネスト

「え?別にいいよ、

 コンクォから見て、

 どうすれば、

 ちゃんと動作すると思う?」

 

コンクォ

「任せなさい、

 “術式”は、全部やってあげるから、

 貴女達は、

 文章とか、色々準備なさい、

 “お父様にもお願いして”

 実機を借りてくるから。」

 

3人『はぃ?』

 

 

 魔法学校の隣には、

 

 デュファンス格納庫が併設されており、

 

 隣の宿舎は、

 

 国境防衛隊の修理も担っている。

 

オネスト

「・・・マジか。」

 

ペガル

「うへ~。」

 

会長

「なんと・・・。」

 

コンクォ

「ふふん♪どう?」

 

 僅か二日で、

 

 実機を改良、

 

 もとい魔改造しやがった。

 

イストゥリア

「娘の頼みだ、

 廃棄寸前の機体程度、

 朝飯前だよ。」

 

 フレームは、そぅ、

 

 アーキテクト001、

 

 ただ、骨格の中には、

 

 クリスタルプレートが仕込んであり、

 

 マナ切れ対策をしてある。

 

 その機体には、

 

 巨大機織り機で作られた、

 

 クリスタルティシューセーターと、

 

 “逆足・ジャンプユニット”が、

 

 異色を放っていた。

 

 

オネスト

「で、

 なんで俺が乗せられてんの?」

 

コンクォ

「え?

 貴方が発端なんだから、

 実機試験もやんなさいよ、

 この100年での、

 新たな発展の一歩を、

 貴方にやらせてあげるんだから、

 感謝なさい?」

 

 装甲は無い、

 

 あくまで、試験、

 

 クリスタルティシューセーターと、

 

 逆足、ジャンプユニットの、

 

 “動作試験”なのだ。

 

オネスト

「まさか、

 この操縦席も、

 採用されるなんてな。」

 

 硬質ガラスを、胸部に埋め込み、

 

 中からは見えて、

 

 外からは見えないガラス。

 

 そして、頭部のモノアイ部分からの映像は、

 

 やや上方に映し出される。

 

オネスト

「やりますか、

 エーテルリアクタ、起動開始、

 全術式、

 ・・・強制ロード。」

 

 コンクォが、

 

 理解できないなら、

 

 叩きこんであげると、

 

 片手間で作ったヘルメットから、

 

 大量の術式と、動作方法が、

 

 及第点しか取れない、

 

 俺の頭に、叩きこまれる。

 

コンクォ

「あ、

 お父様?

 ちゃんとリミッター、

 掛けていますよね?」

 

イストゥリア

「ん?

 普段からリミッターなんて、

 使って無いんだが?」

 

ペガル

「ちょっ!?」

 

会長

「いかんっ!?

 このままでは、

 本当に馬鹿になってしまうぞっ!!」

 

 

オネスト

「動くぞ。」

 

 めちゃくちゃ痛いが、

 

 足を動かす。

 

コンクォ

「嘘、理解できたの?」

 

イストゥリア

「信じられん、

 徒人(あだびと)でありながら、

 術式を理解しきったのか?」

 

 ずしん

 

 ずしん

 

 逆足故に、一歩は狭い、

 

 だけど。

 

オネスト

「すげぇ、

 動いてる。」

 

 各部に変な振動も無く、

 

 腕も、手も、頭も、

 

 思った通りに動作する。

 

オネスト

「屋外演習場で走るよ、

 道を開けてくれ。」

 

 演習場には、

 

 デュファンスの練習機と、

 

 演習機が数機居た。

 

 この逆足、

 

 ある構造を足に付けていた。

 

オネスト

「悪路走破用、

 回転球(ロータリーボール)、

 リフトアップ。」

 

 慌てて皆が追いかけて来る。

 

コンクォ

「ちょっとっ!!

 待ちなさいってばっ!!」

 

オネスト

「ロータリーボール、

 回転上昇開始。」

 

 左手の操縦桿の脇に、

 

 スロットルレバーがあり、

 

 少しずつ、上げて行く。

 

 周りの演習機が、

 

 追いかけて来る。

 

オネスト

「回転異常無し、

 すげぇ、

 試すなら、

 “全開”だよなっ!!」

 

 一気に、ロータリーボールの、

 

 回転数を最大にする。

 

 一瞬、上半身がのけぞるが、

 

 姿勢制御がうまく働いて、

 

 前かがみの姿勢で安定する。

 

オネスト

「消費マナは・・・

 クリスタルティシューセーターから、

 使ってるから、

 メインマナプールの消費は、

 ほとんどない、

 すげぇ!!滅茶苦茶すげぇよっ!!」

 

 そのまま、姿勢を傾け、

 

 ターン、反転、さらに傾けて、

 

 ドリフトも出来た。

 

オネスト

「うし、

 って・・・うわぁ~。」

 

 ただ、ロータリーボールの難点は、

 

 地面を抉って回転する為、

 

 土を固めただけの演習場には、

 

 向かない事だ。

 

オネスト

「ぁ~、

 誰か叫んでる、

 怒られるだろーなぁ~。」

 

 なら、

 

 怒られるのを承知の上で。

 

オネスト

「ジャンプユニット、

 使って見ますか!」

 

 ロータリーボールを格納し、

 

 逆足の裏にある、バネ、

 

 爆裂術式噴射口に、

 

 マナを流し始める。

 

オネスト

「バネだけで、

 ジャンプ出来るのかな?」

 

 ひとまず、

 

 バネのみで、

 

 ジャンプしてみる。

 

オネスト

「うひぃっ!?」

 

 機体は、

 

 いとも簡単跳ね上がり、

 

 6階建ての校舎を、

 

 飛び越える高さを叩き出した。

 

ズドォオン!!

 

 重音と共に脚部がギシギシと唸り、

 

 バネが再びセッティングされる。

 

ガチン!!

 

オネスト

「バネは問題なさそうだけど・・・。」

 

 バネだけで、

 

 校舎6階分、

 

 ざっと、20mは、飛び上がった事になる。

 

オネスト

「ジャンプユニット、

 や、止めとこう。」

 

 結局、ジャンプユニットのテストは、

 

 柔らかい地面の上でやる事となり、

 

 兼用テストは、

 

 また別の日に回され、

 

 俺はしこたま怒られて、

 

 デュファンスで、

 

 延々と演習場の地ならしをさせられた。

 

 

 





??
「シルエットナイトが、
 飛んだ?」

??
「はい、
 演習場で、
 居合わせたものは、
 “魔法でもみてるのかと”
 衝撃が広がっております。」

??
「面白い、
 そやつと、面会したいものだ、
 我が国に、
 そやつが居た事を、
 宝にせねば。」



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面会・相手は陛下っ!?


執政官
「まさか、コンクォ嬢が、
 関わっていたとは。」

コンクォ
「執政官、
 あの発端は、
 オネスト・ディシュリオン、
 彼は、
 “編み物”から、
 発想を得たそうですよ?」




 

先生

「お前、

 本当になにしたんだ?」

 

オネスト

「演習場の地面を、

 ぼっこぼこにしました。」

 

 授業中、

 

 別科目の先生が呼びに来て、

 

 先生、俺、コンクォ、ペガル、

 

 途中で、会長と合流して、

 

 校長室にたどり着いた。

 

先生

「国から、怒られるのか・・・。」

 

 この世の終わりの様な顔をしている。

 

別科目の先生

「失礼します、

 ご指名の、

 プラタ・クラロ・デ・ルナ・エクラ、

 コンクォ、ペガル、

 オネストを連れてきました。」

 

??

「ごくろう、

 先生達には、

 元の授業に戻って貰う、

 話があるのは、

 その4人だけだ。」

 

別科目の先生

「はっ。」

 

先生

「え?」

 

 

??

「そうかしこまらんで良い、

 お忍びで来ているのだ、

 普通に接してくれ。」

 

 そう、

 

 目の前には、

 

 リャン・ダオ11世国王陛下が

 

 居るんだから。

 

オネスト

「てか、

 会長、名前長かったんですね。」

 

プラタ(会長)

「演説で

 散々噛みそうになる名前だがな。」

 

コンクォ

「陛下、

 お久しぶりです。」

 

リャン・ダオ11世

「うむ、

 大分なじんでいるようだな。」

 

ペガル

「コンクォ、知ってるの?」

 

コンクォ

「だって、

 私の、遠縁の叔父だもの、

 1000年以上前の、

 枝分かれした血筋よ、

 ちゃんと、家系図にも残っているわ。」

 

オネスト

「陛下、

 私達が呼び出された、

 理由をお願い致します。」

 

リャン・ダオ11世

「君が、

 “シルエットナイトを

  飛ばした馬鹿”だね?

 やけに時間を気にしているようだが、

 何か約束でも?」

 

オネスト

「学生ですから、

 授業点と、

 出席日数に響くと、

 学費を工面してくれている、

 両親に申し訳が立たないので。」

 

3人『あ。』

 

リャン・ダオ11世

「・・・すまん、

 わしから、

 特別授業手当てとして、

 出して置こう、

 オネスト君、

 君は、

 我が国のシルエットナイト、

 デュファンスを、

 “どうしたい?”」

 

オネスト

「いえ、

 既にフレームは出来ているので、

 それに見合う装甲、

 武器、術式砲撃を搭載すれば、

 “量産に値する機体の構想”は、

 出来ているんですけど、

 術式のほとんどを、

 コンクォに頼っているので、

 一個人では、

 大した事も出来ません。」

 

リャン・ダオ11世

「我が国の研究機関に、

 これらの資料を、

 送っても?」

 

オネスト

「構いません、

 専門分野は、

 専門職の人にお願いします、

 私自身は、

 “農耕に適したシルエットナイト”を、

 これから考えたいので、

 “戦争に使う分野”は、

 軍にお任せします。」

 

コンクォ

「ちょ!?

 なにそれっ!?

 聞いてないわよっ!?」

 

ペガル

「そうだそうだ!!」

 

プラタ(会長)

「あれだけの事をしでかしたんだ、

 “一人で農耕に

  逃げられると思うなよ?”」

 

 あれ?なんで責められてるの?

 

リャン・ダオ11世

「よかろう、

 それも並行して、

 研究、開発、

 試験を頼んでもよいかな?」

 

オネスト

「え?

 いち、学生ですよ?おれ。」

 

リャン・ダオ11世

「ここだけの話、

 隣国との交易に、

 いささか暗雲が掛かり出しておるのだ、

 その為めにも、

 “新型機”が必要なのだ、

 オネスト君、

 キミの力を貸してはくれまいか?」

 

コンクォ

「勿論、私もアルヴの民代表として、

 国防に力を貸すわ!

 この国の料理は、

 “日進月歩”

 常においしい

 調理法が発見されるから、

 楽しみなのよね♪」

 

プラタ(会長)

「私もだ、

 許嫁と要らぬ会合を持つより、

 楽しそうだ!」

 

ペガル

「俺も、

 親父たちに協力して貰うように、

 頼んでみるよ、

 そうだ!

 俺が試作機に

 乗ってテストしてやるよ!」

 

リャン・ダオ11世

「頼まれてくれるな?」

 

オネスト

「はぁ、

 わかりました、

 けど、

 “やりたいようにやりますよ?”」

 

リャン・ダオ11世

「構わん、

 農耕に適したシルエットナイトも、

 気になる所だ、

 早く形になる事を、

 楽しみにしているぞ!」

 

 扉が、突如として開かれる。

 

執政官

「陛下っ!!

 とっくに、会議は

 始まっているのですよ!!

 早く戻って来て下さいっ!!」

 

リャン・ダオ11世

「げ、

 もう見つかったか、

 では、

 正式な辞令は、

 追って出すから、

 またその時に。」

 

 と、窓から逃走する陛下。

 

執政官

「近衛兵!!

 陛下を捕まえろっ!!

 ただでさえ、

 溜まっている書類があるのだ!!

 今日こそ逃がしてなる物かっ!!」

 

近衛兵達『おぉ~っ!!』

 

 

4人『陛下・・・サボってたんだ。』

 

 





3日後、正式な書類が届き、

国王陛下直属の、

開発、研究、試験運用機関、

“ディサフィアンテ騎士団”が設立され、

学生出向の形で、

4人が呼ばれた。



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出向・試作機・質量はパワー


ナイトスミス
「これ、
 動くのか?」

オネスト
「一応。」

ペガル
「か・・・、
 かっけぇええっ!!」

プラタ(会長)
「物凄い重装甲なんだな。」

コンクォ
「並列処理が無ければ、
 こんな機体、
 動かないわよ、普通。」



 

 デュファンス格納庫には、

 

 リンゴが入った、

 

 網かごが一つ、転がっていた。

 

オネスト

「アルサノさん、

 “積層大盾”はどうですか?」

 

アルサノ

「あぁ、

 トンでも大盾だよ、コレは。」

 

 装甲ではなく、

 

 大盾なら、量産出来ると踏んで、

 

 網かごの、“斜めに編み込む”方法で、

 

 10mmの鉄板、

 

 8mmの、編み込んだクリスタルティシュー、

 

 合わせて20mmの装甲版を、

 

 8枚重ねている。

 

 厚さ、16cm、

 

 長辺10m、短辺3mの、

 

 巨大な大盾が完成した。

 

 そして、クリスタルティシューには、

 

 “構造強化魔法”を、

 

 各層に発動させるので、

 

 従来の大盾の、半分の重量で、

 

 5倍以上の強度に達していた。

 

 これ自体は、

 

 盾の強度維持のみに、

 

 マナが消費されるので、

 

 機体からは、

 

 マナプールを、満タンにするときだけ、

 

 供給される仕組みであり、

 

 一度稼働すれば、

 

 “27時間”動きっぱなしに出来る。

 

オネスト

「小型版はどうでしょうか?」

 

アルサノ

「稼働時間の減少は、

 サイズの問題だ、

 ただ、

 “ナックルシールド”の、

 発想には、

 驚かされたよ、

 あんなので殴られたら、

 操縦席はぺしゃんこだ。」

 

オネスト

「今まで、

 それを実現されなかっただけ、

 良かったとしましょうよ。」

 

 ナックルシールドは、

 

 大盾を、長辺4.5m、

 

 短辺を、2mに縮小し、

 

 腕を覆うように、

 

 手先だけ、くの字に曲がっている。

 

 これで、そこら辺の大木なり、

 

 城壁を想定した岩塊を、

 

 いとも簡単に砕いたのだ。

 

アルサノ

「ただよ、

 ナックルシールド、

 手になにも持てないんじゃないのか?」

 

オネスト

「それは、武器の構造で、

 解決の目途が立っています。」

 

アルサノ

「トンファー型、

 法撃火器か、

 腕その物と連結して、

 姿勢制御、

 “新開発のライフリングシリンダー”で、

 貫通力、射程距離が伸びた、

 化け物武器か、

 しかも、

 マナプールを、

 カートリッジにして、

 “機体からの供給をせずに連発”

 平均、20発は撃てると来た、

 お前の頭の中が、

 真面目に大丈夫なのか疑うぞ?」

 

オネスト

「大丈夫じゃないから、

 こんな発想になっちゃうんですよ、

 俺は、農耕に適したシルエットナイトを、

 早く作りたいんですけど、

 まさかの、

 “戦争”が、始まりましたからね。」

 

アルサノ

「あぁ、

 今は、国境付近で、

 耐えてるが、

 状況は芳しくない、

 徐々に後退しているらしいぞ。」

 

コンクォ

「オネスト!!

 こんな無茶が出来ると思うのっ!?」

 

 あ、マギウスエンジン並列処理の、

 

 構想を書いたやつだ、

 

 エーテルリアクタも、並列で配置し、

 

 ある意味、人間の右脳、左脳を、

 

 再現する、ハチャメチャな機体だ。

 

オネスト

「コンクォ、

 戦争が始まった以上、

 “戦時試作量産機”を、

 いち早く作らなきゃいけない、

 会長、

 ロングレンジライフルの、

 試験はどうでしたか?」

 

プラタ

「会長は止めないか、

 卒業し、

 今は軍属だ、

 成果を報告するなら、

 尋常じゃない、

 威力もさることながら、

 “着弾地点にブレが無い”

 射線上にいたら、

 間違いなく当たるぞ。」

 

オネスト

「アルサノさん、

 工廠に、

 量産指示と、

 先行試作ロングレンジライフルを、

 全て、

 グラソン砦に運搬しましょう、

 フェメンターレ全機、

 グラソン砦にて、

 ハルネキッヒ国軍を迎撃して下さい。」

 

コンクォ

「オネストっ!!」

 

オネスト

「コンクォ、

 いやだったら、

 辞めて良いよ、

 陛下からも、

 許可は貰ってるからね、

 キミだって、

 戦争兵器として、

 シルエットナイトを、

 造りたくは無いんだろ?」

 

ペガル

「オネスト!

 親父達からトンデモ情報が来たぞ!」

 

 クシャペルカが堕ちた。

 

オネスト

「相手は?」

 

ペガル

「ジャロウデク王国だ、

 ここ最近、急激に戦力が充実してたらしい、

 なんでも、

 フレメヴィーラ王国から、

 新型機が、強奪された時期と、

 合致するそうだ。」

 

コンクォ

「そんな・・・

 そこには、

 姉さんが居るのよっ!?」

 

ペガルに飛びつく。

 

ペガル

「うわっ!?

 ちょ、離れろ!

 今、

 親父達がクシャペルカでの足取りを探ってる、

 心配すんな、

 簡単には、

 入れない用になってるんだろ?」

 

コンクォ

「徒人じゃ、開けられない扉の筈だけど、

 でも、なんで・・・。」

 

 泣き崩れるコンクォ。

 

ペガル

「それに、

 もう一つ、

 厄介な情報だ、

 “ジャロウデク王国の間者”が、

 ハルネキッヒ国で、

 確認された、

 新型機、

 “シャウターレ”

 背中に二本の腕を装備し、

 重装甲にも関わらず、

 従来機の2倍速く動いているそうだ。」

 

オネスト

「・・・陛下に会って来る。」

 

ペガル

「あ、おいっ!!」

 

 



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鋼鉄の兎


オネスト
「ディサフィアンテ騎士団、
 貴方達には、
 先行して、
 グラソン砦に向かって貰い、
 そのまま、
 防衛任務に着いて下さい、
 私は、
 次の試作機にて、
 現場で合流します。」

ペガル
「ディサフィアンテ騎士団、
 総員、行軍姿勢。」

 大盾を背中に背負い、

 FA・輝鎚に近い容姿をした機体が、

 20機、これしか、出れなかった。

ペガル
「出撃!!」




 

 

 

コンクォ

「オネストは?」

 

ナイトスミス

「いいえ、

 見ていませんが?」

 

 

 残っている団員に聞いても、

 

 誰も見ていなかった。

 

 ふと、

 

 普段は開いていない

 

 エーテルリアクタ保管庫の扉が、

 

 開いている事に気づく。

 

コンクォ

「どうして・・・。」

 

 階段を降りて行くと。

 

コンクォ

(なにこれ?

 エーテルリアクタが、

 一つもない?)

 

 収納ケースはあるのだが、

 

 その中身が無かった。

 

コンクォ

「・・・あんなとこに、扉?」

(ここを保管庫に改築した時、

 あんな扉は無かった筈)

 

 

 その先には、

 

 整然と並ぶ、

 

 “量産機”が立ち並んでいた。

 

コンクォ

「こ・・・こんな機体が、

 量産されてたなんて。」

 

 細身の機体には、

 

 オネストが最初に造り、

 

 生産が続けられている“新フレーム”が、

 

 垣間見えた。

 

コンクォ

「脚部のあれ・・・ロータリーボールっ!?」

(それに、手持ちの武器は、一体なに?)

 

オネスト

「爆裂術式を応用した、

 “小型徹杭を撃ち出す機関銃”さ、

 ごめん、黙ってて。」

 

コンクォ

「オネスト・・・貴方、

 あの反動で、全部理解していたのね?」

 

オネスト

「全部じゃないさ、

 イストゥリアさんに協力を仰いで、

 “タンデムリアクタ”を、

 造って貰ったんだ。」

 

コンクォ

「タンデムリアクタ?」

 

オネスト

「二つあるエーテルリアクタその物を、

 “一つにした”のが、タンデムリアクタ、

 鉱石が核のエーテルリアクタだから、

 出来るそうだよ、

 マナプールを、少なくしても、

 供給量が単純に2倍から、3.5倍、

 だから、軽量化、

 重要部分のみ装甲化し、

 背部に、

 “超電導反重力エンジン”を装備、

 この地面に縛り付ける力と、

 反発する力を発揮し、

 “空中制御を可能とした”

 制空機として、

 先ほど、完成したばかりだ。」

 

コンクォ

「どうして・・・

 空を飛ぶ発想なんてどこから。」

 

オネスト

「イストゥリアさん、陛下には、

 話したんだけど、

 やっぱり、コンクォには、

 直接言って置こうって思ってさ。」

 

コンクォ

「な、なんの事?」

 

 俺、とある世界の人間から、

 

 生まれ変わったんだ。

 

コンクォ

「世界の?なにそれ?」

 

オネスト

「言っちゃえば、

 身体はこの世界の人間だけど、

 “中身は異世界人”なんだよ、

 だから、

 “空を飛ぶ技術”も、

 発想の一つにあるし、

 “実現出来る事”もある。」

 

コンクォ

「・・・異端者、なの?」

 

オネスト

「うん、

 そうだね、

 だから、

 “この国以外は亡ぼしても良いんですね”

 この答えに、

 陛下は、

 首を縦に振ったよ。」

 

コンクォ

「そんな・・・、

 許されない!!」

 

オネスト

「国は亡ぼすよ、

 でも、

 “労働力”は、殺さないって、

 陛下に約束された、

 平和ボケしている?

 否、

 平和は、

 “次の戦争の為の準備期間だ”

 そう言ったら、

 イストゥリアさんも、

 納得してくれたんだ。」

 

コンクォ

「お父様が・・・。」

 

オネスト

「コンクォ、

 騎士団団長として命ずる、

 “農耕に適したシルエットナイト”を、

 俺の変わりに造ってくれ、

 必要な資料は、

 “ノート”に書いてあるから、

 それを基準に、

 進めてくれ、

 そして、

 この戦争に“参加する事を認めない”

 以上だ。」

 

 



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グラソン砦・フェメンターレ到着



国防軍

「なんなんだアレはっ!?」

「背中に法撃杖が二本も付いてるぞっ!?」

「第二中隊全滅!!
 第三中隊、撤退を要請しています!!」

隊長
「くっ、
 法撃しながら後退!
 グラソン砦へ向かうぞ!」




 

ハルネキッヒ国軍・指揮所

 

アグストア(総指揮官)

「ぬぅ、

 ファゼンディラ公国、

 防御に徹せられると、

 やはり強いか。」

 

「シャウターレの損害、

 5機、

 これに対して、

 デュファンスは34機、

 記録的な大勝利ですよ!!」

 

アグストア(総指揮官)

「馬鹿者、

 ジャロウデクからの技術供与が無ければ、

 ハルネキッヒ国軍は、

 居るだけ無駄扱いされ続けたのだぞ?

 それを踏まえても、

 もっと、確実な大勝利が必要なのだ。」

 

「は、失礼しました。」

 

アグストア(総指揮官)

「第6、第7中隊は、

 このまま沿岸側から法撃をしつつ、

 砦近辺に、駐留地を確保、

 第4、第5中隊は、このまま本陣の防衛、

 第1から、第3中隊は、

 機体の修理を急がせろ。」

 

「既に、修理を進めていますが、

 新しい機体故に、

 整備に時間が掛かってしまいます、

 再出撃には、半日は頂きたく。」

 

アグストア(総指揮官)

「半日もか、

 ぬぅう、

 向こうにもデュファンス予備隊はあるだろう、

 この数日中に援軍として来るだろうが、

 仕方ない、

 “再出撃を明朝、日の出と同時に行う”

 全軍に通達、

 各々、休息を取り、

 明日の鋭気を養えと。」

 

「はっ。」

 

 

グラソン砦

 

デュラント公爵

「デュファンスの残存は?」

 

「は、

 100機いた我が方は、

 34機が撃破され、回収不可、

 30機が、腕部大破、

 交換パーツにて、戦闘可能な機体は、

 4機、

 現状、

 稼働機、40機が、

 我が防衛戦力となります。」

 

デュラント公爵

「100年護り続けてきた、

 デュファンスの力も、

 最早ここまでか。」

 

「伝令!!

 この砦に、

 援軍が到着しましたっ!!」

 

デュラント公爵

「援軍?

 それにしては早すぎないか?」

 

「それが、

 最近新設された、

 ディサフィアンテ騎士団、なる、

 新設騎士団だそうで、

 副隊長として、

 ペガル子爵が、いらっしゃいます。」

 

デュラント公爵

「なにぃ?

 あの家を叩き出された小僧が、

 副隊長だとぉっ!?」

 

 

応接間

 

ペガル

「デュラント公爵、

 8年振りですね、

 ディサフィアンテ騎士団、

 先発隊、先行試作機、

 フェメンターレ20機、

 現着致しました、

 補給物資も、

 随時到着します。」

 

デュラント公爵

「・・・見違えたな、ペガル。」

 

ペガル

「はい、これでも、

 副隊長をやっていますから。」

 

デュラント公爵

「早速だが、

 先行試作機を見せて貰っても?」

 

ペガル

「はい、ご覧ください。」

 

 

デュラント公爵

「こんな大盾を、

 軽々しく扱うとは・・・。」

(信じられん、

 これなら、

 シャウターレを撃ち倒せるやもしれん)

 

ペガル

「では、

 これより、

 “夜襲を慣行”してきます。」

 

デュラント公爵

「なにっ!?夜襲だと!?」

 

ペガル

「オネスト隊長から、

 “日中夜”構わず、暴れてよい、と、

 許可は貰っています。」

 

デュラント公爵

「この新型機は、

 そんなに稼働時間が長いのかっ!?」

 

ペガル

「あくまで、先行試作機ですので、

 “デュファンスの5倍”は、

 長く動けます、

 ただ、

 一度使い切ってしまうと、

 満タンまで、

 丸二日かかります、

 ですが、

 予備の積層装甲に、

 補充してありますので、

 積層装甲を付け替えれば、

 5時間は動けます。」

 

デュラント公爵

(一体、

 我が国に、

 何が起こったのだ?)

 

 



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夜襲


ハルネキッヒ国軍

「なんだ?
 あの音?」

「知らねぇよ、
 それよりも、
 相変わらず、戦闘食は不味いよなぁ。」

「あぁ、
 ファゼンディラ公国が、
 羨ましいぜ。」




 

ペガル

「全機、法撃用意、

 機動砲撃戦、

 開始!!」

 

 ロータリーボールから繰り出される突進力は、

 

 従来機を比較にするのが、

 

 おこがましい程に、高速だった。

 

 

ガンガンガン!!

 

「敵襲~っ!!

 夜襲だぁっ!!」

 

 

アグストア(総指揮官)

「なに?!

 沿岸部隊が襲撃されただとっ!?」

 

「は、

 目下確認中ですが、

 シャウターレが反撃できず、

 半数が大破、

 数機が脱出に成功したと。」

 

アグストア(総指揮官)

「信じられん、

 敵の素性は?」

 

「残念ながら、

 まったくの未確認機、

 “ファゼンディラ公国の新型機”かと、

 思われます。」

 

誰かが走りこんで来る。

 

「緊急伝っ!!

 第1、第2、第3中隊に敵襲!!

 その圧倒的な速度に翻弄され、

 最早全滅間近ですっ!!」

 

アグストア(総指揮官)

「馬鹿なっ!?

 そんな余力が、

 奴らに残っている筈がっ!?」

 

また、一人、駆け込んで来る。

 

「我が本陣前に、敵小隊接近!!

 新型機ですっ!!」

 

 

ペガル

「全機続けぇっ!!

 その質量を持って、

 弾き飛ばせぇえっ!!」

 

 フェメンターレは、

 

 ロータリーボールにより、

 

 高速で移動し、

 

 その重装甲が持つ質量は、

 

 シャウターレに体当たりし、

 

 “四散させてしまう程の威力を保ちつつ”

 

 更に、

 

 腕部のライフリング加工を施された法撃杖で、

 

 次々と、シャウターレを、

 

 撃破して行った。

 

 

アグストア(総指揮官)

「・・・これが、

 先日まで200機は居た、

 我が方の現実なのか?」

 

 見るも無残なシャウターレが、

 

 見渡せる範囲、すべてに広がっていた。

 

 

デュラント公爵

「・・・なんと、むごい。」

 

 そう言わしめてしまう程に、

 

 フェメンターレは、

 

 衝撃を与えてしまった。

 

「で、伝令、

 ディサフィアンテ騎士団、本隊が到着、

 我が、グラソン砦守備隊は、

 首都にて、

 近代化改装と、完熟訓練を実地されたし、

 陛下からの勅命でありますっ!!」

 

 砦の前には、

 

 大盾を地面に突き刺し、

 

 腕部法撃杖を、

 

 ハルネキッヒ国軍に向けたまま、

 

 マナプールを、充填待機している、

 

 フェメンターレが20機、

 

 おびただしい傷を負いながらも、

 

 稼働状態である姿は、

 

 鬼神とも言える重厚感を放ち、

 

 朝日に照らしだされていた。

 

デュラント公爵

「わかった、

 ディサフィアンテ騎士団に、

 グラソン砦防衛任務を移管し、

 我が守備隊は、

 首都にて、

 新型機受領と、完熟訓練の為に、

 帰投する。」

 

 

グラソン砦・応接間

 

オネスト

「ふぅ。」

 

 ブラックコーヒーを一飲みし、

 

 作戦指示書を目に、

 

 眉間にしわが寄る。

 

オネスト

「深追い厳禁、

 これじゃぁ、

 新型機の詳細を敵国にさらけ出すも当然、

 陛下に大至急、

 “進軍許可”の申請を。」

 

「は、

 内容は?」

 

オネスト

「“宣戦布告もせず攻め込んで来た国に、

  慈悲は無い”

 あと、

 鹵獲した、シャウターレを、

 研究所へ、

 これを元に、

 機体の研究解析を頼めるか?」

 

「無限軌道輸送機なら、

 半日で研究所に到達出来ます。」

 

オネスト

「時間との勝負だ、

 使っていい、

 その足で、コンクォに手紙を渡してくれるか?」

 

「・・・出来ません。」

 

オネスト

「どうしてだ?」

 

コンクォ

「ここに、居るからよ。」

 

 



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グラソン砦・侵攻準備


オネスト
「いつ、ここに?」

コンクォ
「さっきの補給部隊に便乗して来たの。」

「では、
 鹵獲機の輸送と、陛下へ、
 侵攻要請をしてまいります。」

オネスト
「・・・頼んだ。」




 

 二人きりになった途端、

 

 抱き着かれ、泣かれてしまった。

 

オネスト

「コンクォ、

 どうして泣いているんだ?」

 

コンクォ

「貴方が泣かないから、

 泣いているのよっ!!」

 

オネスト

「・・・ノートは、

 見てくれたか?」

 

コンクォ

「だから、

 ここまで来たのよ!!」

 

 

 あの日

 

 そのまま貴方は出発してしまった、

 

 それから、

 

 貴方が書いたノートを読んだわ。

 

コンクォ

「こんばいん?

 ぱわーろーだー?

 こううんき?

 なんなのこれっ!?」

 

 

コンクォ

「水田の作り方とか、

 “コメ”って、なにっ!?

 ファゼンディラ公国に

 そんな作物はなかったわよねっ!?」

 

オネスト

「ぁあ、そっちか、

 米に関しては、

 フレメヴィーラ王国・さらにその先の国を経由して、

 随分遠方にあったんだよ、

 苗に関しては、

 “学校の裏の畑で育てて貰っている”

 しかも、

 植えるに適した時期は、

 “次の春、雪解けが始まる季節だ”

 だからこそ、

 早く戦争終結と、

 農耕に適したシルエットナイトを、

 造って欲しかったんだ、

 ただ、

 雨に濡れても動けるが、

 “半身を水没させると”

 さすがに動けなくなる、

 耐水、防水型のシルエットナイトが、

 必要不可欠なんだ。」

 

コンクォ

「なるほど、

 そ、それと、ね。」

 

 あ、思い出したように顔が赤くなってやがる。

 

コンクォ

「徒人との混血は、

 難しいと思う、の。」

 

オネスト

「でも、

 陛下は1000年前の枝分かれだって、

 言ってたじゃないか。」

 

コンクォ

「だから、

 それきりなのよ、

 “アルヴの民”と、徒人は、

 生きている時間が違い過ぎるから。」

 

オネスト

「1000年前は、

 有ったんだ?その交配技術。」

 

コンクォ

「こっ!?

 ちょっ!?

 ど、ストレートに言わないで頂戴///」

 

オネスト

「え?

 いや、

 コンクォって、

 可愛いし、

 ちっさいし、

 独り占めしたいし、

 軽く聞こえるだろうけど、

 俺は、

 コンクォが好きなんだよ。」

 

コンクォ

「ばっ!?」

 

 彼女からの渾身の一撃を喰らい、

 

 扉を突き破り、

 

 そのまま階段を転げ落ちる俺って、

 

 どーなんだろ。

 

オネスト

「ごほっ・・・ごほ、

 いってぇ~・・・。」

 

パタパタと階段を駆け下りる音がする。

 

 

コンクォ

「だっ!?大丈夫っ!?」

 

オネスト

「咄嗟に、身体強化の魔法を使ったよ、

 じゃなかったら、

 頭を強く打って、

 そのままお陀仏だったね。」

 

コンクォ

「いやっ!?

 死んじゃいやっ!!」

 

うは~・・・可愛い~。

 

オネスト

「・・・それじゃぁ、

 50年ぐらいは、

 夫婦として、

 一緒に暮らして貰えますか?」

 

コンクォ

「ふっ!?」

 

 あ、これはヤバっ!!

 

 仰向けのまま腹に強打され、

 

 その勢いで、床が抜け落ち、

 

 下の格納庫まで落っこちる。

 

オネスト

「ぐほぅっ!?」

 

 ま、しっかりとコンクォを抱えて落ちたので、

 

 もろに一撃が入りますよ。

 

ペガル

「おいおい、

 大丈夫なのかよ、

 隊長さん?」

 

プラタ

「痴話喧嘩なら、

 他所でやって下さい隊長。」

 

隊員達『そぅそぅ。』

 

オネスト

「お前ら、

 この戦争終わっても、

 こき使ってやるから、

 覚悟しとけよ・・・。」

 

 



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ハイヴェームア丘陵砦


グラソン砦から、僅か数キロ、

ハルネキッヒ国軍に奪われた砦、

ハイヴェームア丘陵砦がある。

アグストア(総指揮官)
「たどり着けたのは、
 何機だ?」

「35機です、
 道中で、魔獣の襲撃さえなければ、
 40機はたどり着ける予定でしたから。」

アグストア(総指揮官)
「仕方ない、
 急ぎ迎撃準備だ、
 みな、頼んだぞ。」



 

ハイヴェームア丘陵手前3キロ地点

 

ファゼンディラ公国軍

 

ディサフィアンテ騎士団野営地

 

オネスト

「やっぱり、脚部の負担は、

 大きいか。」

 

 フェメンターレ全機に、

 

 大きな傷跡が差し込まれていた。

 

コンクォ

「予備パーツは持って来てるけど、

 全機分は足りないのよ、

 どうするの?」

 

オネスト

「デュファンスの廃材と、

 大破、放置されてるシャウターレを、

 かき集めてくれ。」

 

コンクォ

「貴方、まさか、ここで改修する気?」

 

オネスト

「勿論、

 丁度、グラソン砦に、

 “量産武器第1ロット”が、到着したんだ、

 そのままこっちへ向かって貰っている、

 構想は出来ているから、

 後は、

 技術と、技師、優秀な操縦士が必要なだけだ。」

 

コンクォ

「呆れた、

 あんた、

 きっとロクな死に方死ないわよ。」

 

オネスト

「コンクォから、

 オッケー貰って、

 こど」ごきぃ

 

コンクォ

「黙りなさい。」

 

ふぁい

 

ペガル

「何やってだよ、

 それに、

 どんだけ集めんだ?」

 

オネスト

「ん?

 全部。」

 

二人『は?』

 

オネスト

「いや、全部、

 破片だろうが、ちぎれた、

 シルバーナーヴだろうが、

 エーテルリアクタだろうが、

 全部、

 シルエットナイトの廃材は、

 なんでも。」

 

 

 フェメンターレに乗り、

 

 比較的無傷のエーテルリアクタを回収する。

 

オネスト

「いって~・・・。」

 

 二人そろって、頭を叩かなくて良いだろうに。

 

オネスト

「さてと、

 次々、ん?」

 

 大破したシャウターレから、

 

 誰かが降りて来る。

 

オネスト

「生き残りか、

 なにをするのかな?」

 

 ナックルシールドを構え、

 

 右腕も、汎用ソードを構える。

 

 

??

「違う、

 兄さん、どこ?

 どこで死んだの?」

 

オネスト

「敵国で、

 堂々と死体あさりか、

 何が目的だ?」

 

 外部音声で話しかける。

 

??

「ファゼンディラ公国の者か、

 敵兵に頼るのは癪だが、

 “頭に角を付けた”

 変な機体を見なかったか?」

 

オネスト

「角?」

(はて?

 そんな報告あったかな?)

「それを見つけてどうする?」

 

??

「知らないならいい、

 私は探す、

 そして、

 本国へその一部を持ち帰り、

 埋葬するのだ、

 “せめて、眠る地は、自国で”と、

 兄さんの口癖だったんだ。」

 

オネスト

「そうか、

 これを持って置け。」

 

 部隊彰をちぎって渡す。

 

??

「これは?」

 

オネスト

「死体を見つけるんだろ?

 なら、仮の身分証明書だ、

 他の軍属に見つかって見ろ、

 殺されるぞ?」

 

??

「随分と甘い考えだな、

 貴様、ロクな死に方をしないぞ?」

 

オネスト

「同じ事を彼女にも言われたよ、

 名前を聞いておこうか?

 万が一、次の戦闘で、

 勝ち合うやもしれん、

 俺は、

 オネスト・ディシュリオン、

 お前は?」

 

メイジ・ファン・ボレット

「メイジ・ファン・ボレットだ、

 そうだ、

 ついでに私も同じ、角付きの機体に乗っている、

 万が一、どこかで死んでいたら、

 ハルネキッヒ国軍に届けてくれるか?」

 

オネスト

「出来たなら。」

 

メイジ

「そうだな、オネスト、

 また何処かで。」

 

オネスト

「あぁ、

 また、何処かで。」

 






深夜

オネスト
「どうだ?」

「沿岸側に、
 その角付きの残骸を発見しましたが、
 死体は、
 野犬、魔獣の餌食となったのか、
 操縦席が酷く損傷していました。」

オネスト
「なにか、遺品はあったか?」

「ありませんでした。」

オネスト
「ご苦労様です、
 協力してくれてありがとう。」

「それでは。」



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ハイヴェームア丘陵侵攻


オネスト
「夜通しの
 現地改修に感謝すると同時に、
 即、実戦投入となった事に、
 深くお詫びを入れたい。」

ペガル
「では、フェメンターレ改修機は、
 動作確認を踏まえ、
 陣地防衛任務、
 局地制空攻撃機“クジャク”隊は、
 騎乗、
 携行武器のチェックを怠るな、
 今世紀初の上空からの侵攻となるやもしれん、
 気を引き締めて掛かれ!!
 出撃っ!!」




 

ハイヴェームア丘陵砦

 

アグストア(総指揮官)

「ボレットっ!!

 貴様、

 どこをほつき歩いていたっ!!」

 

メイジ

「叔父上、

 私はメイジです、

 ボレットの呼び名は兄さんだ。」

 

アグストア(総指揮官)

「関係あるまい、

 まったく、兄妹そろって、

 無能隊長共め、

 まもなく、

 ファゼンディラからの攻撃が始まる、

 貴様もこの砦防衛に出撃せんかっ!!」

 

メイジ

「お言葉ですが叔父上、

 私の機体も

 バックウエポン損傷、

 左腕部に至っては、

 デュファンスの物を、

 無理やり繋げた物、

 戦闘に耐えうるとは

 到底思えません。」

 

アグストア(総指揮官)

「ならば、右腕で、法撃杖にて迎撃せよ!

 これは、命令だっ!!」

 

メイジ

「~っ、わかりました、

 法撃杖にて、迎撃に向かいます。」

 

 

ファゼンディラ公国野営地

 

ペガル

「そうだ、オネスト。」

 

オネスト

「ん?」

 

ペガル

「10日遅れだけど、

 クシェペルカが息を吹き返した、

 銀凰商会なる商会が、

 テコ入れをして、

 ジャロウデクを押し返したそうだ。」

 

オネスト

「・・・敵には、

 なってほしくない国だね。」

 

ペガル

「おいおい、

 怖い事言うなよ、

 一応、

 お前の情報も、

 すこし、リークしておいた、

 その内、

 フレメヴィーラ王国から、

 間者か、大使が来るかもな。」

 

オネスト

「そう言うのは、

 俺に聞いてからって、

 いったよなぁっ!!この馬鹿っ!!」

 

ペガル

「いたっ!?

 なんだよっ!?

 会って見たいとか、

 言ってたじゃんかっ!!」

 

オネスト

「今の時期じゃねえんだよっ!!」

 

 

メイジ

「機体のバランスの為に

 デュファンスの腕を付けたは良いが、

 重い。」

 

 このデュファンスの腕には、

 

 盾がついたままであり、

 

 シルバーナーヴで繋ぎはしたが、

 

 手の部分が焼き切れており、

 

 盾を手放せない状態だった。

 

「上空に正体不明の飛行物体出現っ!!」

 

メイジ

「・・・なんだ、あれは。」

 

 

装甲飛行船

 グラーフ・ヒンメル

 

オネスト

「クジャク隊、

 降下用意、

 メインリアクタ、起動!!」

 

 10機の黒塗りの機体は、

 

 一部に、オレンジを配した、

 

 FA・クファンジャルを模した機体で、

 

 背部のスラスターに、

 

 “タンデムリアクタ”を搭載、

 

 一番の弱点になっているが、

 

 その機動性は、

 

 搭乗者が、食い縛っても、

 

 有り余る推力を誇り、

 

 機体ポテンシャルを全ては引き出せていない、

 

 だが、それを引き算しても、

 

 空戦を行え、

 

 滞空し、

 

 地表も、ロータリーボールとの併用で、

 

 超高速で機動戦闘をこなせる。

 

オネスト

「“当たらなければどうと言う事は無い”

 これを、実現しろ、

 一番機、

 射出位置へ。」

 

 

「何かが撃ち出されたぞ!!」

 

「うっ!?

 うわぁああっ!?」

 

 まるで雨粒が、

 

 鋼鉄の強度を持ち、

 

 降って来るかの如く、

 

 シャウターレは、

 

 無数の徹杭により、

 

 その機能を損失した。

 

メイジ

「たっ!?

 盾を構えよ!!

 法撃杖にて、

 降下してくる敵を撃ち墜とすのだっ!!」

 

 



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激戦


「なんだよっ!?
 俺達のが最新鋭機じゃないのかよっ!?」

「黒い鬼だっ!!」

「早すぎる!!
 法撃杖が当たらないっ!!」

「隊長!!味方の指揮を!!」

メイジ
「デュファンスの盾を使えっ!!
 少しでも耐えるのだ!!
 本国から、援軍も来る!!
 それまで耐えるのだっ!!」




 

オネスト

「6番、射出まて、

 艦首、

 右回頭、

 ハルネキッヒ国軍の本隊だ、

 6番から、10番は、

 これの迎撃、

 侵攻を妨げるんだっ!!」

 

 

 慌ただしく飛行船は回頭する。

 

 地表部には、

 

 “プロペラ式方向転換機”を8基搭載、

 

 前後で、逆方向運用する事で、

 

 その場回頭が可能になっている。

 

 

オネスト

「連続射出!!

 緊急発艦!!」

 

 

ハルネキッヒ国軍本隊

 

ファルディック(副指令)

「ハイヴェームア丘陵砦が・・・、

 伝令、砦に向かい、

 増援個所の選定に迎え!

 本隊は、

 目視県内の、

 敵野営地を撃つ、

 総員、着剣!!

 突撃ぃっ!!」

 

ハルネキッヒ国軍本隊

『おぉおおおっ!!』

 

 

ファゼンディラ公国野営地

 

プラタ

「フェメンターレ、全機、

 “狙撃姿勢”

 ロングレンジライフル、

 構えっ!!」

 

 ロータリーボールに損傷を抱えた機体では、

 

 機動戦は出来なかったが、

 

 大盾に蓄積された、

 

 大容量のマナプールを、

 

 使う事が出来た。

 

 大盾に連結された、

 

 第1ロットのロングレンジライフルは、

 

 その射程に、

 

 “ハルネキッヒ国軍本隊”を、

 

 既に捉えていた。

 

 

ハルネキッヒ国軍本隊

 

「ファゼンディラ公国、

 以前動き無し!!」

 

ファルディック(副指令)

「怖気づいたのか?

 しかし、チャンスだ、

 全機、歩みを緩めるなっ!!」

 

 

プラタ

「“法撃杖・照射切り変え”

 中央は、左右に銃身を振り、

 左右中隊は、

 中央に向かって、

 照射せよ、

 銃身、冷却開始!!」

 

 冷却用トリガーを引くと、

 

 氷結術式が展開され、

 

 冷却専用カートリッジから、

 

 マナが供給される。

 

プラタ

「“範囲照射”開始、

 撃てぇえっ!!」

 

 

 単発で飛翔する法撃杖の魔法とは違い、

 

 “射程圏内を”

 

 焼き払う為に、

 

 引き金を引きっぱなしで、

 

 撃ち続ける、照射攻撃が可能だった。

 

 

 推定、500機はいた、シャウターレは、

 

 フェメンターレから撃ち出される、

 

 照射攻撃により、

 

 解け落ちたり、ばらばらに吹き飛んだり、

 

 “無事な機体は、

  後方に居た、100機程度だった”

 

 

プラタ

「照射止め!

 単発使用へ!!

 手を休めるなっ!!

 撃て!!撃てっ!!

 撃てぇえっ!!」

 

 フェメンターレのマナは、

 

 あれだけの照射をしたにもかかわらず、

 

 “微量しか減って居なかった”

 

 大盾の大容量、

 

 カートリッジ式の冷却用マナプール、

 

 “ロングレンジライフル本体に

  組み込んである、

   小型量産用エーテルリアクタ”が、

 

 この高威力の正体であった。

 

 

アグストア(総指揮官)

「なんなのだ、

 今の一撃はっ!?」

 

「わかりませんっ!?

 ですが、

 我が方の援軍が、

 総崩れな現実は変わりません、

 アグストア総指揮官!!

 急ぎ、残存部隊の指揮をっ!!」

 

 





日没を待たずして、

ハルネキッヒ国軍は

ハイヴェームア丘陵砦を放棄、

撤退した。

ハルネキッヒ国軍、

シャウターレは、

総数、780機出撃中、

損失、532機を出し、

再編すら、ままならない状態に陥った。



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再編


 ハルネキッヒ国と、

 ファゼンディラ公国は、

 休戦協定を結ぶ運びとなり、

 事実上、ハルネキッヒ国は崩壊、

 ファゼンディラ公国に吸収、

 合併された。



 

ファゼンディラ公国

 

ディサフィアンテ騎士団執務室

 

オネスト

「はぁ。」

 

 溜息をついて、

 

 コーヒーを一口。

 

オネスト

「間に合わない、か。」

 

 ハルネキッヒ国の崩壊のせいで、

 

 “春の雪解け”を逃してしまったのだ。

 

 “冬の革命”と

 

 のちに呼ばれたハルネキッヒ国の革命は、

 

 ディサフィアンテ騎士団も関わっていた、

 

 戦場で出会った、

 

 メイジ・ファン・ボレットが、

 

 革命を手伝って欲しいと、

 

 ハイヴェームア丘陵砦に残って居たのだ。

 

コンクォ

「まぁ、

 機体の防水に、

 全然資材を回せなかったし、

 水田を作ろうにも、

 “水源地域が、

  ハルネキッヒ国”なんだから、

 なんとも言えないのが、実情ね。」

 

オネスト

「そうだな、

 ペガル、

 例の新生クシェペルカはどうなったんだ?

 こっちは飛行船を装甲化して、

 飛ばしてたけど、

 向こうはどうなんだ?」

 

ペガル

「ほぃ、これが資料、

 マギウスジェットスラスタだとよ、

 ま、

 お前さんは、

 磁場の反作用で、

 機体を飛ばしてたから、

 似ても似つかないアプローチだな。」

 

オネスト

「フェメンターレに乗ってから、

 お前、人が変わったよなぁ、

 めちゃくちゃ、

 頭いいじゃん。」

 

コンクォ

「そぅそぅ、

 まさか、普段のおバカが、

 “演技”で、

 学校内での間者を探してたなんて、

 わからなかったわよ?」

 

 そう、こいつ、

 

 身内すら欺いて、

 

 おバカを演じていたのだ、

 

 諜報活動に関しては、

 

 ファゼンディラ公国、ハルネキッヒ国で、

 

 戦争を仕掛け、

 

 同時に、政権交代を目論む貴族達の、

 

 暴走がこの戦争の発端だったそうだ。

 

ペガル

「仕方ないだろ?

 敵を騙すなら、まず、

 味方から、が、家の家訓なんだ、

 その件に関しては、

 悪かったって、思っているよ。」

 

 既に貴族達の処刑は終わっており、

 

 旧ハルネキッヒ国の貴族達も、

 

 処刑がつい先日行われた。

 

オネスト

「マギウスジェットスラスタねぇ、

 家の、

 マギウスレシプロエンジンよりは、

 高出力だろうが、

 小型化は難しそうだな。」

 

ペガル

「だな、

 お前が、

 “震電”なる二重反転プロペラ構想を、

 打ち出した時は、

 やっぱ、コイツの頭は駄目なんじゃないかって、

 正直思ったよ。」

 

コンクォ

「ぁ~、

 でも、

 飛行船よりは超小型で、

 火力に関しては、

 “カートリッジ式

  小型徹杭弾”で、十分過ぎる威力、

 航続時間に関しては、

 巡行速度で、40時間、

 戦闘機動で、5時間、

 機体のほとんどを、

 クリスタルティシューで覆って、

 内部も、タンデムリアクタで、

 大出力、機体制御には、

 通常のマギウスエンジンで事足りる、

 トンでも兵器よ?」

 

オネスト

「そうかなぁ~、

 まぁ、空を自由に飛べる、

 これは叶えたい夢の一つだけど、

 “高高度に関しては”

 濃密すぎるエーテルが充満していて、

 人間、アルヴの民でも、猛毒な世界、

 頑張って飛んで、1万2千メートル、

 滞在可能時間は限られている、

 まるで、意図的に、

 上れないようにしてある見たいにね。」

 

 





オネスト
(ペガルからの情報じゃ、
 フレメヴィーラ王国も、
 海には、力を入れていない、
 ま、マギウスジェットスラスタのせいで、
 “海上”はまだまだ空白だらけだ、
 空に関しては、
 迎撃機を作るとして、
 海は貰うぞ?
 銀凰騎士団団長?)



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登場人物及び、機体解説回


オネスト
「ここでは、
 作者自身、
 忘れそうになる、
 紹介回とするそうです。」




 

 本作主人公

 

 オネスト・ディシュリオン ♂

 

 年齢は、アニメ終了時点で、17歳

 

 身長171cm

 

 体重、やや軽め

 

 容姿、

 

 髪は真っ黒、

 

 俗に言うファーマーイケメン

 

 細マッチョの体格で、

 

 自炊が出来る至極一般人。

 

 しかし、中身は、

 

 “こちらの知識引継ぎの弱チート勢”

 

 農村の家系で、

 

 実家は、物凄い範囲を抱える一大農家で、

 

 両親は共に農作業に毎日勢を出している。

 

 若干割高な授業料を、

 

 何とか工面してくれる、

 

 心優しい両親に対し、

 

 農耕に適したシルエットナイトを、

 

 何時か作り上げ、

 

 少しでも楽をさせてあげたいと、思っている。

 

 実は三男であるが、

 

 兄二人は、小さい頃に、

 

 流行り病でなくなっているので、

 

 顔すら覚えていない。 

 

 学校では、シルエットナイトを、

 

 FA準拠のフレームに仕立て、

 

 試作新型機フェメンターレを開発、

 

 容姿は輝鎚に近いが、

 

 最初の装甲取り付け時は、

 

 “両手にナックルシールド”を装備し、

 

 まさに、その巨体が武器となっていた。

 

 相次いで、腕部連結型、

 

 ライフリングシリンダーを用いた、

 

 新型法撃杖を同時に完成させ、

 

 その凶悪な威力は、

 

 5mクラスの城壁を5km先から、

 

 貫通させるぶっとび武器と化している。

 

 そして、姿勢制御には、

 

 並列処理式マギウスエンジンと、

 

 並列配置のエーテルリアクタを搭載、

 

 各装甲にも、積層装甲を採用し、

 

 装甲その物が、マナプールとし、

 

 空になれば、予備の装甲と付け替え、

 

 緊急稼働時間として、5時間を確保できた。

 

 しかし、一度使い切ると、フル充填に、

 

 丸二日かかってしまい、

 

 うんともすんとも動かせない。

 

 フレームに内蔵された、クリスタルティシューでは、

 

 機体を維持出来るが、

 

 “動作を支えるほどのマナは要らない”との

 

 判断したためであり、

 

 今後の大きな課題の一つであり、

 

 一機当たりの製造コストも、

 

 かなり高価であり、

 

 派生型は幾つも出て来るが、

 

 隊長機、指揮官機、式典機、

 

 武功を建てたナイトランナーの、

 

 ワンオフに製造が留まる事となった。

 

 脚部には、

 

 ロータリーボールを二個ずつ配置し、

 

 長距離行軍に向いており、

 

 歩行でも消費するマナ消費を

 

 4分の一までに抑えているが、

 

 ロータリーボールの強度に難点があり、

 

 程々にしないと、

 

 金属が、自己崩壊してしまう。

 

 そして、極めつけのジャンプユニットだが、

 

 実戦にて、

 

 使ったナイトランナーは未だにいない。

 

 逆足に備えられた強力なバネで、

 

 事足りる為、

 

 大ジャンプを行う必要性が、

 

 無くなってしまったのだ。

 

 試験運用の時、

 

 装甲の有無を感じさせる事無く、

 

 “300m”まで、ジャンプしてしまい、

 

 脚部の負担が、倍増したのだ、

 

 そして、そのナイトランナーは、

 

 高所恐怖症になってしまい、

 

 6階建ての校舎の、2階が限界になってしまった。

 

 一回のジャンプユニット使用で、

 

 総マナプールの内、

 

 3パーセント消費するので、

 

 乱用にも向かなかった、

 

 今は、出力を落とした加速用ブースターとして、

 

 研究、開発が進んでいる。

 

 

 コンクォ・チェルカス・トゥーラ ♀

 

 オネストの同級生であり、

 

 アルヴの民、物好き家系の一人娘。

 

 身長146cm(厚底なので実質140cm)

 

 体重、非常に軽い

 

 年齢は117歳、

 

 既に、100年は生きているので、

 

 ファゼンディラ公国のシルエットナイト、

 

 デュファンスの開発を目の前で見ていた。

 

 なぜ、入学し、わざわざ学校に通うのは、

 

 コンクォ

「少しでも退屈を凌げるかと思ったの。」

 

 父にイストゥリアを持つが、

 

 母に関しては、不明。

 

 姉が、クシェペルカに居る為、

 

 クシェペルカが

 

 堕ちた知らせを聞いた時は、

 

 取り乱してしまった。

 

 切っ掛けとして、

 

 オネストが書いた走り書きの逆足からで、

 

 機体の模型から、

 

 興味が沸き上がり、

 

 父を懐柔し、

 

 廃棄寸前とは言え、

 

 デュファンス一機を、魔改造し、

 

 最初の試験運用に携わった。

 

 技術者としては優秀だが、

 

 運動能力は、偏っており、

 

 無意識魔術強化パンチで、

 

 オネストが毎回吹っ飛ばされている。

 

 オネストが告白してくるが、

 

 内心満更でもない、

 

 しかし、アルヴの民と、徒人の

 

 “生きる時間が違うのを理由に”

 

 返事は保留のまま、進展していない。

 

 なお、つるぺたすとん、である。

 

 オネストの場合、

 

 術式を書き込むのが苦手であり、

 

 そのほとんどを、彼女に頼んでいる。

 

 

 イストゥリア・チェルカス・トゥーラ ♂

 

 コンクォの父であり、

 

 多分、400歳らしい。

 

 エーテルリアクタを、

 

 “二つを一つにした”

 

 タンデムリアクタを生み出した。

 

 これは、オネストが、

 

 “同種、同出力の鉱石核なら”

 

 くっつけてみてもいいのでは?

 

 と、何気なく言った一言で、

 

 頭の中に、雷撃が走った、などと、話している。

 

 並列配置は、均等出力に秀でているが、

 

 その分、並列処理にマナを喰う欠点がある。

 

 これの、タンデムリアクタは、

 

 大出力を供給でき、

 

 並列配置のスペースよりも、

 

 4割減少し、小スペース化を実現、

 

 しかし、供給寿命に関しては、

 

 実戦データが不足し過ぎており、

 

 未だに不明、

 

 何時、限界が来るのか分からないリスクがある。

 

 なお、一人娘、コンクォの懐柔には、逆らえない。

 

 

 プラタ・クラロ・デ・ルナ・エクラ ♀

 

 ファゼンディラ公国の生徒会長であり、

 

 卒業後、ファゼンディラ公国、

 

 ディサフィアンテ騎士団、第2大隊隊長を務める。

 

 年齢、体重は、非公表であり、

 

 身長のみ、189cmと、判明している。

 

 隠れ巨乳説があり、真意は不明。

 

 騎乗スキルは、どの騎士団員よりも長けており、

 

 どの機体でも、

 

 性能限界まで引き出せるが、

 

 フェメンターレ、クジャクは別であり、

 

 なだめながら操縦しているそうだ。

 

 特殊スキルとしては、

 

 オネストが、生前知識の解禁を決意した、

 

 “編み物の凄腕であり”

 

 女生徒の制服修繕は、

 

 平均5秒と、超早業を持っている。

 

 しかし、工作、料理、

 

 家事全般がダメダメお嬢様であり、

 

 キッチンに立たせれば、屋敷が半焼の被害、

 

 工作に至っては、

 

 造った物は、爆発四散する傾向が強い。

 

 料理も、もってりしたなにか、

 

 液状のなにか、

 

 得体の知れない何かを降臨させる。

 

 これを知ってか知らずか、

 

 婚約者がいるのだが、

 

 プラタ自身、

 

 どうでもいいと思っている。

 

 不思議と、ペガルと一緒にいる所が

 

 目撃されているが、詳細は不明。

 

 

 ペガル・コンタージョ・ヴェレーノ ♂

 

 身長169cm

 

 フツメン、おバカ、

 

 それが表の顔であり、

 

 “裏の顔”は、

 

 リャン・ダオ11世直属、

 

 影の部隊師団長。

 

 内定調査、間者捕縛、

 

 他国の内情調査等など、

 

 手広くこなす、超ハードワーカー、

 

 本当の顔も、超イケメンであり、

 

 フツメンは、メイクで造った物らしい。

 

 機体は、フェメンターレを通常使用とし、

 

 裏では、

 

 静音特化にした、クジャク・サイレントキラーを、

 

 愛機として運用している。

 

 本人の体術も戦闘に特化しており、

 

 対人キル数は、

 

 既に、4桁は超えているとの事。

 

 フレメヴィーラ王国にも度々潜入し、

 

 幾度となく、藍鷹騎士団と接触し、

 

 その都度、逃走に成功している。

 

 それが功を奏したのか、

 

 後の、オネストから、

 

 直接、本編主人公に宛てた手紙を、

 

 届けて貰う事も。

 

 真面目だが、

 

 融通が効かない事もしばしばあり、

 

 リャン・ダオ11世が、

 

 学校にも潜入し、

 

 友達も作るようにと、命令、

 

 結果、“混ぜるな危険”の、オネストと親友となり、

 

 唯一、心を許せる一般人として、

 

 大事にしており、

 

 その周りも、大事である。

 

 プラタ会長と、学校内では、

 

 度々一緒にいる所が目撃されており、

 

 周りからも、

 

 不思議と、お似合いに見えるそうだ。

 

 事実、許嫁は解消され、

 

 その貴族達も、国家反逆罪として、

 

 今も裁判が続いている。

 

 

 リャン・ダオ11世 ♂

 

 ファゼンディラ公国の、11代目国王であり、

 

 サボり国王の異名を持つ。

 

 何かしら理由を付けては、

 

 オネストの

 

 ディサフィアンテ騎士団執務室に入り浸り、

 

 コーヒーブレイクを満喫している。

 

 本気を出せば、半日で書類の山を片付けられるのだが、

 

 気分屋であり、

 

 気が乗らなければ、

 

 1週間行方不明もざらにあり、

 

 公国の宿屋や、

 

 農村で、収穫の手伝いをしていたり、

 

 魔獣を撃退していたりと、

 

 国民からの受けはかなり良好で、

 

 庶民よりの国王。

 

 オネストの、

 

 “ファゼンディラ公国以外は

  亡ぼしても良いですね?”に、

 

 縦に首を振る男であり、

 

 ファゼンディラ公国を生き残す為ならば、

 

 悪魔だろうが、鬼神だろうが、

 

 契約してでも、

 

 国を守る事を優先する愛国者である。

 

 奥さんは居たらしい。

 

 

 アルサノ ♂

 

 出生不明のドワーフで、

 

 デュファンスの修理を担当していた

 

 ナイトスミス。

 

 ディサフィアンテ騎士団設立の際、

 

 出向の形で、

 

 オネスト達と行動を共にする。

 

 頼まれたら断らず、

 

 全力で打ち込むのがモットーであり、

 

 ぶっ飛び武器の雛形を作り、

 

 オネストの要望を盛り込んだ、

 

 ぶっ飛び量産武器の総指揮をとっている。

 

 

 デュラント公爵

 

 半島国家・ファゼンディラ公国の、

 

 大陸接合部、グラソン砦の防衛司令官、

 

 ディサフィアンテ騎士団が臨時派遣されるまで、

 

 100年前の機体、

 

 デュファンスで、

 

 敵国、ハルネキッヒ国軍の新鋭機、

 

 シャウターレと交戦、

 

 撤退しつつも、

 

 シャウターレを総数12機撃破している優秀枠。

 

 防衛任務を移管し、

 

 正式量産機・クジャクを受領するも、

 

 重厚な機体、フェメンターレを渇望、

 

 隊を二分割し、

 

 上空援護、急襲をクジャクとし、

 

 突撃、突破をフェメンターレにした、

 

 陸・空同時攻撃を主体とした、

 

 新戦術を展開、

 

 ハルネキッヒ国が崩壊し、

 

 新たな国境にて、

 

 防衛任務に就いていたら、

 

 別の国からの侵攻軍を発見、

 

 フェメンターレ、クジャクを持って、

 

 “全機、無事帰還”

 

 侵攻軍の8割を駆逐する、

 

 大勝利を収めた。

 

 

ファゼンディラ公国

 

シルエットナイト

 

・デュファンス

 

 新造はおよそ100年前で、

 

 その機体の外観も、中身も、

 

 ほとんど姿を変えず、

 

 稼働し続ける機体である。

 

 重たく、分厚い大盾を装備し、

 

 左腕は、盾の保持を優先とした構造で、

 

 右腕よりも太く作られている。

 

 法撃杖を一つ、ソードを一つの、

 

 極めて標準的な機体であり、

 

 フレメヴィーラ王国の、

 

 アールカンバーに近い容姿で、

 

 操縦性能も、

 

 フェメンターレ、クジャクよりも良好で、

 

 扱いやすく、整備性能も秀でていたが、

 

 完成された機体だった為、

 

 オネストが、会長に、

 

 クリスタルティシューセーターを依頼するまで、

 

 僅かな改装すら、

 

 受け付けなかった頑固な機体でもあった。

 

 

 クジャク

 

 容姿は、FA・クファンジャルに寄せてあるが、

 

 背部のエンジン機構自体が違う為、

 

 大きな相違点となっている、

 

 かかとのホイールローダーは、

 

 フェメンターレで採用した、

 

 ロータリーボールで、代用、

 

 ボールの負担が、

 

 軽い機体のおかげで少なくなり、

 

 地表を、超高速で動き回れる。

 

 タンデムリアクタを、

 

 背部に搭載、超電導反重力エンジンとし、

 

 地表に縛り付ける力場とは、

 

 逆位相の流れをぶつけ、

 

 その反作用で空中戦闘を行う。

 

 装甲は、重要部分のみとし、

 

 最小限となっている、

 

 中のフレームがむき出しの部分があるが、

 

 フレーム自体も強固なので、

 

 多少の被弾ではびくともしない。

 

 タンデムリアクタ生産が起動に乗りつつあるので、

 

 最もコストパフォーマンスが良い機体になりつつある。

 

 

 モノアイ部分

 

 これは、タイプ001再現のつもりで、

 

 走り書きしただけだったのだが、

 

 複眼でとらえるより、

 

 単眼でとらえる分、

 

 マギウスエンジンの処理に負荷がかからず、

 

 見た方向を移すだけに絞ったため、

 

 従来の複眼より、消費が抑えられているが、

 

 “余計な装備”

 

 ズームアップを搭載したため、

 

 フェメンターレでは、消費が、倍になっている。

 

 

 操縦席

 

 これは、ほぼほぼ、従来の配置のままで、

 

 利き腕の違いや、

 

 本人のやりやすさを優先し、

 

 ロータリーボールの出力レバー、

 

 超電導反重力エンジンの出力レバーも、

 

 その操縦者によって、バリエーションが違う。

 

 前面部分は、

 

 胸部装甲と一体化しており、

 

 超硬化ガラスによって、

 

 中からは見え、

 

 外からは見えない構造、

 

 前方視界はかなり良好、

 

 その上部に、モノアイ部分からの映像が映し出されるので、

 

 頭部が破壊されても、

 

 胸部からの、

 

 有視界戦闘も可能な機体となっている。

 

 

 クリスタルティシューセーター

 

 これは、オネストが、会長の編み物から、

 

 ヒントをえて、

 

 着せてしまえば、

 

 場所はあんまり取らないのでは?

 

 と、悪魔で気まぐれ発言だった。

 

 例のストランド・ティシューよりは、

 

 強度は劣るが、

 

 マナプール容量は、負けていない。

 

 

 積層装甲

 

 これは、市場で見つけた、

 

 リンゴ収穫用の網かごから、ヒントを得て、

 

 鉄板と

 

、“斜めに編み込んだクリスタルティシュー”を、

 

 何層にも重ね合わせるだけで、

 

 マナプール容量、

 

 それに添加できる、

 

 構造強化術式も、

 

 何層にも重なる為、

 

 単純に、重量半分、

 

 強度は、3倍以上を叩き出した。

 

 これ自体を、

 

 法撃杖のマナプール容量とし、

 

 巨大カートリッジとしても使用可能で、

 

 ロングレンジライフルで使用した、

 

 照射攻撃が、可能となった。

 

 

 ロングレンジライフル

 

 形は、輝鎚が専用ライフルとして、

 

 装備していた物を、

 

 真似して造った新造品、

 

 銃身部分には、

 

 冷却専用カートリッジマナプールがあり、

 

 照射攻撃時に、銃身に、

 

 とんでもなく熱が籠るので、

 

 事前に冷やす対策を取った。

 

 後ろには、

 

 着脱式のマナプールカートリッジがあり、

 

 20~21発毎に交換が必要、

 

 照射攻撃をすると、

 

 一回毎に交換しなければ、いけないのだが。

 

 連発にも対応しており、

 

 射程距離は、5km

 

 貫通能力は、最大射程5kmで、

 

 5mの石垣貫通、または、破壊出来るが、

 

 5km以上になると、

 

 急激に減衰、威力も急激に落ちる。

 

 

 小型徹杭機関銃

 

 これは、ジャンプユニットで使用した、

 

 爆裂術式を、

 

 小型化、連続使用前提術式として、

 

 新造した物。

 

 小型徹杭を、5・10・15発と、

 

 切り変えて発射可能で、

 

 貫通力のみ特化している、

 

 携行弾数は、

 

 50発マガジンを、3本が基本で、

 

 装甲の裏や、

 

 ナックルシールドの中は、

 

 10本前後、

 

 大盾を使うと、

 

 20本抱える事が出来る。

 

 どの機体でも運用できる為、

 

 デュファンスでも運用出来るが、

 

 評価はいまいち。

 

 しかし、

 

 クジャクで上空から奇襲、強襲を掛ければ、

 

 その効果は絶大で、

 

 一瞬で、味方機に徹杭が、

 

 刺さりまくる姿は、

 

 心理的にもダメージを期待できる。

 

 “次は、自分にも降りかかる

  プレッシャーに耐えねばならないのだから”

 

 

 ハルネキッヒ国

 

 メイジ・ファン・ボレット ♀

 

 ハルネキッヒ国第3中隊隊長で、

 

 グラソン砦で戦死した、

 

 兄の亡骸を探していたが、

 

 革命前夜、

 

 オネストが、その件を報告し、

 

 “角の破片が、ハルネキッヒ国の墓地に埋葬された”

 

 現、ハルネキッヒ地区の地区長兼、

 

 ハルネキッヒ地区防衛司令官として、

 

 忙しい毎日を送っている。

 

 

 アグストア

 

 旧ハルネキッヒ国の司令官であり、

 

 メイジ・ファン・ボレットの叔父でもある。

 

 しかし、

 

 ハイヴェームア丘陵砦での、

 

 大敗走の失態により更迭され、

 

 牢獄に居た所、

 

 革命が起こり、

 

 そのまま、

 

 即日処刑されてしまった。

 

 

 ファルディック

 

 旧ハルネキッヒ国の副指令、

 

 アグストアと同様、

 

 大敗走の失態により更迭、

 

 革命、即日処刑される。

 

 

 ハルネキッヒ国

 

 シルエットナイト

 

 シャウターレ

 

 この機体は、

 

 かの国、ジャロウデク王国の、

 

 ティラントーを間者から、買い付け、

 

 突貫で、

 

 デュファンスの姉妹機、

 

 イスクードを、

 

 バックウエポン装備、

 

 “部分的ストランド・クリスタルティシュー”にて、

 

 改修、

 

 元素供給器(エーテルサプライヤ)を、

 

 無理やり搭載、

 

 出力の向上、機体強度の向上に繋がったが、

 

 機体接合部が、

 

 イスクードのままだった為、

 

 フェメンターレの突進力に耐えきれず、

 

 ばらばらに吹き飛ばされていた。

 

 



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一時帰郷と、休暇消化


オネスト
「あ、
 コンクォ。」

コンクォ
「何かしら?」

オネスト
「家、来る?」

コンクォ
「は?」



 

ファゼンディラ公国

 

 半島先端・大穀倉地区

 

コンクォ

「・・・。」

(ここ、どこ?)

 

オネスト

「ん~、

 久し振りの実家は、

 空気がうめぇ~。」

 

コンクォ

「ねぇ?オネスト?」

 

オネスト

「ん~?」

 

コンクォ

「まさかとは思うけど、

 ここら辺一帯が、

 実家なんて、

 言うんじゃないでしょうね?」

 

オネスト

「麦の範囲は、

 半島先端の3分の2を占めてるけど、

 他にも、

 粉系統、種子系統、

 根菜類も、

 家の管轄だね。」

 

コンクォ

「・・・オネストって、

 家名“ディシュリオン”?」

 

オネスト

「おぅ、

 3男だ、

 兄貴二人は、

 病気で、小さい頃に、

 死んじまったけどな。」

 

 

 ディシュリオン家

 

 農耕大国ファゼンディラ公国では、

 

 最も古くから、

 

 農業に携わり、

 

 “貴族階級導入時、

  爵位を蹴っ飛ばした”

 

 “超有名一族で、平民”

 

 現在も、地位は平民。

 

 更に、穀倉地区の実質的管理者は、

 

 ディシュリオン家であり、

 

 古くても、40年程度の貴族が、

 

 太刀打ち出来ない力を持っており、

 

 下手に逆らえば、

 

 翌年から、その貴族が管理する地区は、

 

 大不作に陥る程。

 

 農耕に関しては、陛下ですら、

 

 頭を下げる事もあり、

 

 事務仕事をほっぽって、

 

 収穫の手伝いに来る理由の一つは、

 

 リャン・ダオ11世の、

 

 “乳母を務めた”

 

 オネストの母への恩返しも兼ねているそうだ。

 

コンクォ

「陛下の乳母っ!?

 どういう事よ、それっ!?」 

 

オネスト

「どうもこうも、

 あ、

 見えてきた、家だよ。」

 

コンクォ

「家・・・え?

 “普通の家”だ。」

 

オネスト

「悪いか?

 階級上、平民だし、

 耕作地帯の維持管理に、

 ぶっ飛ぶ値段が動いているんだぞ?

 贅沢なんてしてる暇がないよ、

 それこそ、

 “貴族”だけでいいだろうに。」

 

 

 深く息を吸って。

 

オネスト

「ただいまぁあああああっ!!」

 

コンクォ

(大きい声を出すって、

 言ってたけど、

 必要あるのかな?)

 

 

 

 

オネスト

「あ、貯水池の方だな、

 荷物はここに置いて、

 ついてきて?」

 

コンクォ

「え?

 大丈夫なの?」

 

オネスト

「大丈夫、大丈夫、

 この“箱”に、

 入れて置けば、

 大抵の事は大丈夫。」

 

 

 貯水池・水門

 

リャン・ダオ11世

「せぇっ!!のぉっ!!」

 

 潮風にさらされた水門は、

 

 錆付き、びくともしない。

 

リャン・ダオ11世

「くはぁ~・・・、

 やっぱり“油”が無けりゃ駄目かぁ。」

 

ハダス・ディシュリオン

「ダオ、残念だけど、

 今回の戦争で、

 油が去年の5倍に膨れ上がってるんだ、

 魚醤も高騰、

 最近は薄味で我慢してんだぞ?」

 

リャン・ダオ11世

「それはごめんって、

 ハルネキッヒ国の革命が無ければ、

 賠償金とか資源を、

 充てに出来た筈だったんだけど、

 家の部隊が、革命に関わってたから、

 請求する事も出来ず、

 資源も復興に使わなきゃいけない、

 大赤字も良い所だよ。」

 

ディンシア・ディシュリオン

「貴方?

 ダオをそこまでいじめないで頂戴?

 ダオだって、

 一生懸命やっているのだから。」

 

オネスト

「陛下、

 また脱走してここに来てたんですね?」

 

リャン・ダオ11世

「ん?ぁ、ヤベ、

 オネストじゃないか、

 どうしたんだ?」

(馬鹿っ!!怒らせるような事言うなよ!!)

 

オネスト

「母さん、

 陛下を甘やかさないで下さいね?

 “執政官達が迷惑してるんですよ?”」

 

チャキ

 

ディンシア

「だ~お~?」

 

リャン・ダオ11世

「ちょ!?

 ままままっ!?

 まってぇええっ!!」

 

ディンシア

「お仕事が終わってから来てるってのは、

 嘘だったのねぇえええっ!!」

 

リャン・ダオ11世

「オネストの裏切り者~っ!!」

 

ディンシア

「待たんか、ごら゛ぁああっ!!」

 

オネスト

「親父、

 母さん、元気そうで良かったよ。」

 

ハダス

「そう言うお前はなんだ?

 その子が、彼女とか言うのか?」

 

コンクォ

「かっ!?」

 

オネスト

「まだ、オーケー貰えてないよ、

 それに、

 立場上、部下に休暇も出さなきゃ、

 休日出勤手当も計算しなくちゃいけないから、

 大変なんだよ。」

 

コンクォ

「え?

 貴方、全部一人でやってたの?」

 

オネスト

「そりゃぁ、

 “ディサフィアンテ騎士団・団長”だからな?

 給与計算、資材費用、

 整備費用に、生産雇用にも、

 給金が必要だからな、

 それに、シルエットナイトの、

 維持管理費とか、

 施設使用料も、結構値切って、

 見返りに、色々融通してたりするんだぞ?

 算盤(そろばん)と、

 計算用エーテルリアクタ計算機も、

 (足し算用にエーテルリアクタ一基

  掛け算用は、タンデムリアクタ一基)

 イストゥリアさんに頼んで、

 造って貰ってなかったら、

 “卓上計算を延々と、

  紙に書いて、

  計算してる羽目になってただろうよ”」

 

コンクォ

「知らなかった、

 オネストが、

 真面目に団長の仕事してるなんて。」

 

オネスト

「ちょ、ひっで~なぁ~。」

 

ハダス

「団長?オネストが?」

 

コンクォ

「え?はぃ、

 知らなかったんですか?」

 

オネスト

「あぁ、

 “今日、初めて教えた”」

 

コンクォ

「えぇええええっ!?」

 

 



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資源を求めて

 往復だけで

 20日掛かる半島先端、、

 一泊しか泊まれず、

 手伝いも、

 精々の、

 試作稲刈り機(麦使用)を、

 3台置いて来ただけだった。




 ロングレンジライフル

 

 生産工廠

 

オネスト

「鉱石が足らない?」

 

 

「はい、

 戦争以前は、

 ディダットーラ帝国から、

 一定品質の物が納品されていたのですが、

 最近は、

 “採掘に支障が出ている”の、

 一点張りで、

 既に、

 “冷却専用カートリッジ”の、

 生産が、

 鉱石の納品待ち状態です。」

 

オネスト

「うぬぅ、

 帝国に使者は出しているんだろ?」

 

ペガル

「出してはいる、

 だが、法撃杖で、

 追い返されているそうだ。」

 

オネスト

「実質上の宣戦布告か、

 機体の情報は?」

 

ペガル

「シャウターレに近い改装と、

 その後続機体は、

 内装はティラントーで、

 外装は、

 多少、現行機の物だ。」

 

コンクォ

「ふぇ~・・・、

 オネスト?

 とりあえず、

 ある分だけの

 “水冷・空冷・ヒートシンク複合型”

 冷却専用カートリッジ、

 出来上がったわよ?

 空冷ファンも、

 今、削り出し中、

 それでも、

 40丁分のストックにしかならないわ。」

 

オネスト

「ぬぅ~・・・

 また、別な武器を作るしかないのか、

 シャウターレの改装と、

 残骸から回収出来たストックは?」

 

コンクォ

「シャウターレは、完全にストップ、

 フェメンターレの予備パーツは、

 腕、200セット、

 頭部、134セット、

 脚部、56セット、

 脚部のバネは随時生産中、

 これは、国内の鉱山で、

 十分に確保出来てるから。」

 

ペガル

「それで、

 肝心の胴体が、

 エーテルリアクタの増産待ち、

 タンデムリアクタも、

 クジャクの2次量産機、30機分は、

 出来ているが、

 月産、2、3個が良いペースだそうだ。」

 

オネスト

「ファゼンディラ公国の弱点が、

 ここに来て響いて来るのか、

 参ったな。」

 

 

ファゼンディラ公国

 

 パドリゥート城・会議室

 

リャン・ダオ11世

「それで、

 再三の要請も、

 追い返されたのか?」

 

デュラント公爵

「残念ながら、

 3回とも法撃杖による攻撃で、

 失敗に終わっています、

 被害こそ出てはいませんが、

 使者として送り出している

 部下の精神的疲労も、そろそろ限界かと。」

 

オネスト

「デュラント公爵、

 それは、

 この地図上のの何処で追い返されたのですか?」

 

デュラント公爵

「旧、ハルネキッヒ国国境より、

 20km、

 トクソリン峠の手前ですな、

 陣地を築くには最適な場所で、

 攻め落とすには、

 手を焼きそうだな。」

 

オネスト

「ふむ・・・、

 陛下、

 ファゼンディラ公国と、

 ハルネキッヒ自治区で、

 “一番の美術家”か、

 工作に長けている人物を、

 集めて貰えますか?」

 

リャン・ダオ11世

「集めてどうするのだ?」

 

オネスト

「宣戦布告が出ていない以上、

 こちらから攻撃は出来ませんが、

 “情報は取り放題です”

 ペガルの、

 クジャク・サイレントキラーにて、

 夜間偵察と、

 日中に置ける、

 フェメンターレのズームを使い、

 “詳細な地形の模型を作るのです”

 ディダットーラ帝国の配置も、

 その模型上に配置し、

 “長距離通信網”の、構築を、

 今後の目標とします。」

 

リャン・ダオ11世

「地形の模型に、

 通信?

 伝声管ではいけないのか?」

 

オネスト

「伝声管では、

 精々の20mが限界です、

 それでは、

 小隊・中隊・大隊・師団の、

 念密な連携作戦が取れません、

 メリットとしては、

 外部に音声が漏れないので、

 外からは、無言のシルエットナイトが、

 両機と連携を取り、

 各隊規模で、寸断、包囲殲滅を、

 やり易く出来る部分があります、

 しかし、デメリットとして、

 “味方の死に際の声を聴くリスクがあります”

 それを推してでも搭載する事は、

 今後の戦争、調査を行う上で、

 必要不可欠なものです。」

 

デュラント公爵

「うぅむ、

 しかし、その開発に必要な資材すら、

 足りておらんのだろう?

 信号弾では、

 敵にもばれてしまうが、

 味方の目につきやすい、

 指揮官機だけにとり「いえ、

 全機種、標準装備とするので、

 階級にとらわれなければ、必ず、

 新たな戦術も、そこに埋もれている筈です。」

 なにぃ?」

 

オネスト

「既にタンデムリアクタ同士の、

 “リズム”の交換は出来ています、

 ただ、

 これを用いた場合、

 リズムを聞いて判断し、

 その符合から、

 該当する言葉を探さねばなりません、

 その製作は、

 学生達にお願いしていますので、

 半年以内には、いい返事が期待出来そうです。」

 

デュラント公爵

「半年だとっ!?」

 

オネスト

「それと、並列配置でも、

 リズムの交換を出来るか、

 コンクォの方で実験と、

 別な方法でリズムの交換が出来ないか、

 検証を重ねて貰っています、

 エーテルリアクタには、

 “歌”が、一番の薬だそうです。」

 

リャン・ダオ11世

「オネスト、

 その通信に関しては任せる、

 デュラント公爵、

 直ちに直衛隊を率いて、

 トクソリン峠の偵察と、

 もう一度、

 使者の派遣を頼む、

 それも駄目な場合、

 “こちらから宣戦布告”を、発布する、

 行ってくれるな?」

 

デュラント公爵

「わかりました、

 陛下のご命令、拝命致します。」

 

オネスト

「了解しました、

 通信網と並行して、

 “国内で採掘される金属で”

 新武器、

 試作機の開発に取り掛かります。」

 

リャン・ダオ11世

「いま、

 何か余計な事を言わなかったか?」

 

オネスト

「いえ、何も。」

 

リャン・ダオ11世

「もぅいぃ、

 好きにしてくれ。」

 

オネスト

「お心遣い感謝します。」

 

 




ファゼンディラ公国

現有保有戦力

デュファンス改
(関節、胴体を強化、
 クリスタルティシューセーター装備)

 126機

フェメンターレ(現地改修機を含む)

 68機

クジャク

 57機

シャウターレ改
(デュファンス改と改装は同じ)

 49機



ディダットーラ帝国軍

機体名・不明

旧式・部分改装

 およそ380機

新型機
(内装はティラントー・
 外装は、旧式外装に追加装甲)

 およそ134機


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猛熱の月


トクソリン峠

ディダットーラ帝国臨時関所

「伝令、
 また、
 ファゼンディラ公国の者です。」

フレデュリック・グランツ
「・・・余程切迫しているのだな、
 致し方あるまい、
 少人数での会談を望むと、
 伝えてくれ、
 再三に渡る非礼も詫びをしたいと。」

「はっ。」




 

 丁度一年、

 

 全機種に通信機の搭載が完了し、

 

 農耕用シルエットナイトの

 

 ペーパープランは出来上がったのだが、

 

 海からの魔獣の襲来により、

 

 少なからずの被害が出てしまい、

 

 手つかずのままとなっていた。

 

オネスト

「え?

 デュラント公爵、

 俺も同席ですか?」

 

コンクォ

「なんで私もなのよ?」

 

デュラント公爵

「向こう方から、

 “物騒な武器を下げて欲しい”と、

 伝令が来てな、

 公爵の私と、

 師団長のオネスト、技術長のコンクォ、

 この3人で、

 双方の中間地点にて、

 会談を設けるそうだ。」

 

オネスト

「あははは・・・

 一様、脅しには使えましたね、アレ。」

 

ペガル

「あれだけ大きな大剣、

 誰もが目に入るだろうに。」

 

 勿論、この大剣、

 

 タンデムリアクタを搭載した、

 

 “切り裂く動作を回転にて上乗せする事が出来る”

 

 いわゆる、チェーンソーの馬鹿でかいヤツ。

 

 国内鉱山にて、

 

 クリスタルティシューに向かない鉱石を、

 

 超高温炉にて、融解、色々混ぜ込み、

 

 叩いて伸ばして、研磨して、

 

 デュファンス改の、両手持ち武器として、

 

 すでに5本、ロールアウトしている。

 

 一部の部隊長や、ナイトランナーに人気が出てしまい、

 

 専用の工廠が建設され、来月から、大量生産と、

 

 小型版の物も生産が始まる。

 

オネスト

「開始時刻は?」

 

デュラント公爵

「一応、明日(みょうにち)、

 日がでて、少し傾いてからと、

 言っていたが、

 オネスト?

 この時計には、驚かれたぞ?

 一つは渡して、

 7時に鳴るようにしておいたが、

 “正確な時を刻める魔道具が羨ましいと”」

 

オネスト

「あくまで、俺の体感秒数ですよ、

 ゼンマイと、

 イストゥリアさんのお弟子さんで、

 “エーテルリアクタの超小型化”に、

 挑戦し続けていた方が居たから、

 エーテルリアクタ搭載型懐中時計が出来たんです、

 あくまで、

 大雑把な時間と、体感秒なので、

 正確かどうかはわかりませんよ?

 しかし、明日ですか。」

 

デュラント公爵

「どうした?なにか問題があるのか?」

 

コンクォ

「・・・あ、もしかして、雨?」

 

オネスト

「あぁ、

 “春の雪解け”が終わると、

 次は、

 “猛熱の月”が来る、

 いきなり雲が立ち昇ったら、

 土砂降りなんて、ざらだからね、

 田畑には、恵みの雨であり、

 栄養を流されてしまう天敵でもあるから、

 水の管理が一番大変な季節でもある、

 これを乗り越えれば、

 “採量の時期”収穫が待ってる、

 ホントは、

 採量の時期が終わって、

 “白銀の時期”で、

 こっちに来たかったけどね。」

 

デュラント公爵

「仮設用テントを持って行こう、

 向こうにも、

 そう言う考えがあればいいのだが。」

 

 





 嫌な予感は当たってしまい、

 朝から猛烈な雨が降り出して、

 こちらから持参した、

 簡易テントの下で、

 会談を始める形となった。

 懐中時計は、

 しっかり7時に鳴って、

 ディダットーラ帝国陣営は、

 そのベルの音で、

 びっくりして起きたそうだ。



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会談・襲撃


デュラント公爵
「私が、
 デュラント・スパダッチェーノ公爵、
 そして、
 この黒髪が、
 ディサフィアンテ騎士団団長の。」

オネスト
「オネスト・ディシュリオンです、
 そして、
 アルヴの民であり、
 技術長の。」

コンクォ
「コンクォ・チェルカス・トゥーラ、
 以上3名、
 会談の席に着きました。」

フレデュリック
「フレデュリック・グランツ、
 国境警備隊師団長だ、
 こっちは、
 アポストロ・オラーコロ副師団長、
 リッカルド・ミゲルだ、
 コイツが、家の財布を握ってる。」




 

リッカルド

「グランツ、

 貴方がやれ酒だの、

 出前だの、宴会だの、

 経費のかさむ事ばかりするから、

 私がここに赴任したんですよ?

 本当なら、

 帝国の財政面を担当し、

 税金の緩和と、

 公共事業を立ち上げ、

 国を挙げての再発展の為に、

 尽力する予定だったのに、

 “一番の浪費”の根源は、

 貴方だと分かりましたからね!!」

 

アポストロ

「まぁまぁ、

 使者の手前、

 そう言う内輪揉めは。」

 

リッカルド

「アポストロ!

 貴女がしっかり、

 グランツの手綱を握らないから、

 経費ばかり嵩むのですよ!!

 本来なら、

 仮設テントは、

 こちらが用意したかったのですが、

 それすらも、

 国境警備隊を維持する為に、

 予算を削り、

 シルエットナイトの整備、食糧の均等配備、

 施設の保守保全に割いているのですよ!!

 わかっているのですかっ!!」

 

コンクォ

「あの、リッカルドさん?

 そろそろ本題に入りませんか?」

 

リッカルド

「っと、これは失礼しました、

 現在、ディダットーラ帝国には、

 他所へ輸出出来る鉱石に、

 まったく余裕が無い状態なのですよ、

 鉱山地区が、

 “魔獣の襲撃を受け、状況は拮抗”

 修理にも余裕が無いのが、

 我が国の現状なのです。」

 

デュラント公爵

「なに?

 それはどんな魔獣のだったのかね?」

 

アポストロ

「肉食の魔獣、

 “ナーゲルタイラント”

 大きな爪を持ち、

 周辺動物、家畜、

 人間すら、食い散らかす、

 暴君です、

 既に、農村の集落が3つ程襲われ、壊滅しました。」

 

オネスト

「・・・規模は?」

 

コンクォ

「ちょっとオネスト?

 家にも、魔獣退治の余裕なんて、

 あんまりないのよ?」

 

デュラント公爵

「ついこの間の、

 海から上陸してきた、

 魔獣の一群とやり合ったばかりなのだぞ?」

 

フレデュリック

「そちらも、魔獣に襲われていたのですか、

 それと、ハルネキッヒと、

 戦っていましたが、

 あれはどうなったのですか?」

 

オネスト

「我々の勝利で終わり、

 革命の手伝いもしました、

 現状、ファゼンディラ公国の自治区として、

 復興、食糧品の増産を急いでいます、

 それに伴い、

 賠償金が手に入らず、

 鉱石資源も期待出来ず、このざまです、

 我々も余裕がありません、

 少量でも、

 鉱石輸入を解禁してくれませんでしょうか?」

 

リッカルド

「先も申し上げた通り、

 主力機、メィディウムの改装を行い、

 その半数が、魔獣と毎日のように戦っています、

 そして、

 破損機体の回収もままならず、

 数を減らす一方です、

 ジャロウデク王国が大敗を期し、

 間者も帰って来ていません、

 再編すら、出来なくなっているかと。」

 

オネスト

「・・・フレメヴィーラ王国は?」

 

アポストロ

「残念ながら、余り良くない関係です、

 ファゼンディラ公国の用に、

 交易品での関係も無く、

 大陸侵攻時に、

 遭遇戦をし、双方に被害を出して、

 撤退しているので、

 外交に関しても、我が国、

 ディダットーラ帝国は、国土の半分が、

 海に面し、東は難攻不落の大山岳地帯、

 南も、国交断絶から、200年は建っています、

 このままでは、疲弊し、倒れるのも時間の問題かと。」

 

 峠の方から、一機のメィディウム改が、

 

 走って来る。

 

「でっ!?伝令!!

 トクソリン峠の東から、

 ナーゲルタイラントの群れが迫ってきます!!

 本国からの、

 増援は出せないとの、一報もあります!!

 師団長っ!!指示をっ!!」

 

 

フレデュリック

「オネスト師団長、

 申し訳ないが、

 力を貸して貰いたい、

 鉱石の件は、

 俺が責任をもって、

 陛下にお伝えする。」

 

オネスト

「そうですね、

 コンクォ、

 全機起動、

 対魔獣戦闘準備!

 デュラント公爵、

 本陣の防衛は任せます!

 ペガル!!

 ディサフィアンテ騎士団、

 全軍戦闘態勢!!」

 

ペガル

「了解、

 総員に次ぐ、

 対・魔獣戦闘用意、

 騎乗、出撃準備を急げ!!」

 

 





 デュラント公爵直衛隊

 デュファンス改・30機

 フェメンターレ
   個人改修機・5機

 ディサフィアンテ騎士団

 デュファンス改・50機

 フェメンターレ・20機

    クジャク・20機

 シャウターレ改・40機

 ディダットーラ帝国

 フレデュリック専用メィディウム改1機

 アポストロ専用メィディウム改1機

 メィディウム改・98機



 偵察隊報告の、

 ナーゲルタイラント、

 およそ3万匹、

 内複数体が、

 ナーゲルタイラントのメスと確認済み。



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265機VS3万匹


フレデュリック
「配備状況は?」

リッカルド
「現状、対・魔獣用砲台は、
 稼働6基、
 旋回範囲外なので、
 4基使えません。」

フレデュリック
「たった2基の砲台と、
 指揮官機2機、
 98機のメィディウム改、か。」

アポストロ
「フレデュリック、
 前線指揮、出るわよ?」

フレデュリック
「アポストロ、
 無事に帰って来いよ?」

アポストロ
「メィディウム改なら、
 壊さずに帰って来れるわよ?」

フレデュリック
「ばか、
 “お前の事を言っているんだ”」

アポストロ
「や~よ、
 アンタがしっかりしないと、
 “お嫁に行ってあげないんだから”」

リッカルド
(これで、
 付き合っていないと、公言するのだから、
 困った二人だ)




 

ディサフィアンテ騎士団

 

オネスト

「全機、通信機を起動して下さい、

 大丈夫、

 訓練通り、連携をとって、

 互いにフォロー、

 小隊規模で、

 確実に数を減らせば、

 “この間の用に慌てずに対処出来ます”」

 

「はっ!」

 

コンクォ

「オネスト、

 シャウターレ改の指揮はどうするの?」

 

オネスト

「シャウターレ改は、

 カリィ・ボーレに任せる、

 機体の癖を知り尽くしてるのは、

 彼だからね、

 それに、

 ロングレンジライフルを運用するには、

 向いていない機体だし、

 バックウエポンを、一門に減らしたけど、

 フェメンターレの、腕部ライフルなら、

 何とか使えるし、

 コンクォが、

 照準器のスクリプトを組んでくれたから、

 大雑把だけど、狙って撃てるリターンは、

 帰還機の増加に大きく貢献してくれている、

 大丈夫、

 みんな、アレを経験して、

 帰って来た猛者達だから。」

 

コンクォ

「でも、なんで貴方まで前線に出るの?

 後方で指揮を取ってもいいじゃない!!」

 

オネスト

「・・・コンクォ、操縦下手糞だから、

 それに、全体を把握、

 効率的にかつ、大量に撃破出来たのは、

 コンクォの指揮があって、

 あの襲撃に勝てたんじゃないか。」

 

コンクォ

「でもっ!!」

 

オネスト

「・・・こう言う時ぐらい、

 カッコつけさせてくれよ、コンクォ。」

 

 そっと、抱きしめる。

 

オネスト

「これが最後じゃない、

 これからも続く、なら、

 少しでも現場に出なきゃ、

 団長としても示しが付かない、

 それに、

 俺は、お前が大好きだ、

 魔法学校で会ってから、ずっと、

 今も、これからも、

 好きな女の子を戦場に出したくない、

 せめて後方で、少しでも安全な場所に居て欲しい、

 それぐらいの我がままを、

 許してくれよ。」

 

コンクォ

「・・・バカ。」

 

オネスト

「はい、バカですよ。」

 

コンクォ

「キス、ぐらいなら、いいよ。」

 

オネスト

「・・・帰ってからな。」

 

 頭を撫でる。

 

コンクォ

「ぇ?」

 

オネスト

「覚悟しろよ?

 我慢してたんだからな?

 逃げんなよ?」

 

コンクォ

「~~~っ!!

 ばかーっ!!」

 

 

ペガル

「オネスト、その顔。」

 

オネスト

「言うな。」

 

プラタ

「ほ~、綺麗な手形だな?

 今度、コンクォに教授して貰わねば。」

 

オネスト

「冗談は後でな?

 プラタさん、

 フェメンターレの状態は?」

 

プラタ

「大盾もフル充填済だ、

 カートリッジも、

 あるったけ持って来てある、

 40丁のロングレンジライフルに対し、

 200個を確保している。」

 

オネスト

「節約しつつ、

 撃破か、まったく、

 どうして、家の国は、

 鉱石資源の種類が少ないのかねぇ?」

 

 

デュラント公爵

「五人の騎士よ、

 フェメンターレの前衛として、

 存分に暴れて来い、

 その大剣の有効性を、

 証明してみせるのだっ!!」

 

5人『おぅっ!!』

 

 

 





 雨は上がり、

 地面はぬかるみ、

 歩くのがやっと、

 そんな事をものともせず、

 真っ直ぐに3万匹が迫って来る。



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会合・キングとクイーン

コンクォ
《1番中隊は、
 そのまま法撃!
 2番中隊は、
 後退、300m、
 3番中隊の援護に!》

オネスト
「コンクォ!!
 特機隊は、
 このままクイーンを狙う!!
 誘導を頼む!!」

コンクォ
《了解、
 目の前の魔獣小隊を飛び越えて!!
 そのまま直進!!
 道中の迎撃は最小限に3キロ直進!!》

オネスト
「了解!!」




 

フレデュリック

「不気味だな。」

 

リッカルド

「はい、

 アレが、通信機なる、

 連絡手段を用いた戦闘なのでしょうか?」

 

フレデュリック

「いちいち伝令を走らせるよりは、

 全然いいな、

 伝令をやられるリスクが無い、

 我が軍にも、

 導入して欲しい物だ。」

 

リッカルド

「そんな予算ありません、

 ある物で、我慢して下さい。」

 

フレデュリック

「わかっているよ、

 伝令、

 1、2、3中隊は、

 前線に展開、

 まずは、最大射程で法撃だ、

 事前の打ち合わせ通り、

 兎に角数を減らし、

 クイーンへの活路を見出さねば。」

 

リッカルド

「伝令、走ったぞ、

 フレデュリック、

 勝てるのか?」

 

フレデュリック

「お前が、グランツ呼びをしないなんて、

 何時振りだ?

 勝つんじゃない、

 如何に手早く“クイーンとキング”を、

 討ち取るかだ。」

 

 

ペガル

「ちっ、

 オネスト!!

 非常に不味いぞ、

 “クイーン5、

  キング2”だ、

 クジャク隊でも、

 侵攻を多少遅らせるので

 手一杯だ!!」

 

オネスト

《オネスト、了解、

 コンクォ!!

 第一セット、使用!!

 兎に角、

 数を減らしてくれ!!》

 

 

コンクォ

《コンクォ、了解、

 フェメンターレ各機集合!

 ロングレンジライフル、

 照射攻撃隊形!!

 カリィ・ボーレ!

 シャウターレ隊は、

 照射攻撃準備の間援護を!!》

 

カリィ・ボーレ

《シャウターレ、了解、

 全機、俺に続け!

 撃ち漏らすなよ!!》

 

《了解っ!!》

 

 

リッカルド

「フレデュリック!!

 フェメンターレが隊列を組んでいるぞ!!」

 

フレデュリック

「・・・ったく、

 真面目に今は味方で良かったよ。」

 

 

 フェメンターレから、撃ち出される照射は、

 

 一挙に4、500は、減らす事が出来た。

 

アポストロ

「なんだぃありゃぁ?

 ファゼンディラの、

 城壁は、トンでも武器の宝庫なのかい?」

 

「お嬢!

 いっその事、

 亡命しますか?」

 

アポストロ

「馬鹿言ってないで、

 さっさと倒しな!

 それとも、

 メィディウム改ごと、

 切っちまっていいのかい?」

 

「うへっ、そいつはごめんですぜっ!!」

 

 

オネスト

「・・・おっと、

 真面目にでけぇな、コイツ。」

 

 ナーゲルタイラントのキングと、クイーンが、

 

 目の前に現れる。

 

 キングの弱点は、

 

 事前の情報開示で、

 

 爪の付け根の“複眼”と、

 

 本体の“単眼”の3か所、

 

 しかし、

 

 クイーンは、

 

 卵巣部分を切り落とし、

 

 飛び跳ねて“逃げ出す習性がある”

 

オネスト

「全機、ジャンプユニット起動!!

 クイーンを逃がすなぁああっ!!」

 

 豪快な起動音は、

 

 並列搭載した、エーテルリアクタの副産物だが、

 

 フェメンターレの個人改修機は、

 

 その“回転刃式大剣”を、

 

 落下エネルギーと共に、

 

 クイーンに捻じ込んでいく。

 

 

 そのクイーンの悲鳴は、

 

 ナーゲルタイラントに衝撃をもたらし、

 

 侵攻速度が極端に落ちる。

 

アポストロ

「メィディウム全機、

 突っ込むよ!!

 クイーンは獲られたけど、

 キングは頂くよっ!!」

 

 

コンクォ

「ディサフィアンテ騎士団全機に連絡!!

 クイーンは墜ちた!!

 残すはキングと残党!!

 ここからが正念場よっ!!」

 

 ナーゲルタイラントは、

 

 キング1~2、

 

 クイーン4~6で構成され、

 

 その子が、3~6万を構成する巨大な群れだ。

 

 しかし、クイーンが全て倒された場合、

 

 “一拍の間を空け、

  共食いをしてでも、

   その相手を倒しに来る”

 

 それを止めるには、

 

 キングを倒し、子が、“餓死”するまで、

 

 耐えねばならない。

 

 こちらの大陸では、

 

 これを知らずに手を出した幾つもの国が、

 

 魔獣の腹に収まった過去があるのだ。

 

 





ペガル
「プラタ!!
 大丈夫なのかっ!?」

プラタ
《大丈夫だ、
 腕を持って行かれただけだ、
 左は使える》

ペガル
「馬鹿野郎!!
 それを大丈夫なんて言わねぇんだよっ!!」



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大艦巨砲主義の息は途絶えない


ペガル
「オネストっ!!
 クジャク隊を任せるっ!!」

オネスト
《てめっ!?》

ペガル
「プラタの右腕がやられたっ!!
 援護に行くっ!!」




 

フレデュリック

「リッカルド!!

 伝令はどうしたっ!?」

 

リッカルド

「駄目だ、

 またやられた、

 誰でもいい、

 前線に、後退命令をっ!!

 砲台の射線に、

 メィディウムがいて撃てないっ!!」

 

 

コンクォ

「ちょっと、ペガルっ!?

 プラタさんっ!!

 後退してっ!!

 第二中隊は、援護をっ!!」

 

プラタ

《大丈夫だ、

 まだ左腕で、撃てるっ!!》

 

オネスト

《コンクォっ!!

 こっちは手を離せないっ!!

 苦しいが、クジャク隊を直掩に回して、

 プラタと、ペガルの援護にっ!!

 場合によっては、

 “アレ”を使うっ!!》

 

コンクォ

「まってオネストっ!?

 アレは、試射すらしてないのよっ!?」

 

オネスト

《キングの動きが、

 うぉっ!?

 早いんだよっ!!

 フェメンターレの予備機で、

 引っ張り出しておいてくれっ!!

 ぬぉおおっ!?》

 

コンクォ

「オネストっ!!」

 

オネスト

《頼むっ!!》

 

 

アポストロ

「ふぅ、

 流石に、キツい、な。」

 

「お嬢、

 メィディウムの稼働限界が近いですぜ、

 このままじゃ、不味いっすよ。」

 

アポストロ

「泣き言ってんじゃないよ、

 こっちも同じだよ!」

 

 剣は刃こぼれし、

 

 既に、突き以外の手が使えなかった。

 

アポストロ

「法撃杖は壊れたし、

 剣は突きだけ、

 更には時間切れが近い、

 参ったねぇ。」

 

「報告っ!!

 森林方面より、

 新たなナーゲルタイラントがっ!!」

 

 

コンクォ

「何ですってっ!?」

 

 

グラーフ・ヒンメル船員

《間違いないっ!!

 森林方面から、

 新たな個体がどんどん湧き出て来るっ!!》

 

コンクォ

「オネストっ!!

 返事してっ!!」

 

オネスト

《だぁあああっ!?

 なんだっ!!コンクォっ!!》

 

コンクォ

「森林方面から、

 ナーゲルタイラントの

 別の群れが近づいてるのっ!!

 一旦、キングも後回しにして、

 体制を立て直してっ!!」

 

オネスト

《・・・いや、

 コンクォ、今すぐ現地改修だ、

 ペガルっ!!プラタは捕まえたなっ!!》

 

ペガル

《捕まえたぞっ!!》

 

オネスト

《野営地に、フェメンターレをそのまま搬送、

 “大出力試作武器”に、

 直結、

 エーテルリアクタ6基を使った、

 アレを使うしかないっ!!》

 

ペガル

《馬鹿を言うなっ!?

 大体、スクリプトとか、

 どうすんだよっ!?

 冷却問題も解決してない、

 “一発”撃てるかも怪しいんだぞっ!!》

 

オネスト

《なりふり構っ!?

 粉糞っ!!

 こっちはキングで動けないし、

 メィディウムの稼働時間も、

 そろそろ限界の筈だっ!!

 賭けだが、やらずして後悔するより、

 “ぶっぱなしてから後悔”しようぜっ!!》

 

コンクォ

「・・・オネスト?

 行けそうなの?」

 

ペガル

《正気かっ!?》

 

オネスト

《一直線上に、

 個体と、キングを誘導するっ!!

 全隊、

 野営地に向かって集合しつつ、

 ナーゲルタイラントを、

 “直線に並べるんだ”》

 

コンクォ

「ったく、

 やってあげるから、

 “当たらないでよ”オネストっ!!」

 

オネスト

《オネスト、了解!!

 プラタっ!!

 射手はお前だっ!!

 コンクォは、

 スクリプト構成と

 書き込みを大至急進めてくれっ!!》

 

プラタ

《・・・プラタ、了解》

 

ペガル

《ったく、

 ペガル了解、

 クジャク隊、

 残弾を吐き出すぞっ!!

 ナーゲルタイラントを、

 直線状に集めるんだっ!!》

 

デュラント公爵

《コンクォっ!!

 何を引っ張り出すんだっ!?》

 

コンクォ

「“大口径法撃砲”

 広範囲殲滅兵器の試作機ですっ!!

 射線を確保するので、

 デュファンス改で、

 土を盛り上げ、

 “射撃用土台”を、

 大至急作って下さいっ!!」

 

 





 特定の人種には、

 軽嫌いされる大艦巨砲主義は、

 オネストの手によって、

 この世界に降臨する。

 対・魔獣用武器として。



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一閃


ファゼンディラ公国

野営地

コンクォ
「違う、もっとシンプルに、
 もっと効率と、
 “大出力”に書き換えて・・・。」

プラタ
「あはは・・・
 こんなドデカ砲を準備していたのか。」

ペガル
《プラタっ!!
 機体は大丈夫なのかっ!?》

プラタ
「心配するな、
 “最強の武器”で、
 奴らを一網打尽に出来そうだ。」




 

カリィ・ボーレ

「シャウターレ隊、分派し、

 ディダットーラ帝国の援護を、

 こちらの作戦を伝え、

 “伝令の役を果たせ”」

 

《自分が行きますっ!!》

 

カリィ・ボーレ

「パリガか、

 行ってくれるか!!」

 

パリガ・エスペランサ

《シャウターレが伊達ではない事を、

 証明してきます!!》

 

 シャウターレには珍しい、

 

 左にランスを装備し、

 

 右腕に、 

 

 積層装甲で組まれた、大盾を構え、

 

 そのままナーゲルタイラントを、

 

 弾き飛ばしながら向かって行く。

 

カリィ・ボーレ

「こちらシャウターレ、

 一名をディダットーラ帝国に派遣、

 作戦を伝え、伝令を任せる。」

 

オネスト

《オネスト、了解!

 ペガル!!

 辿り着くまででいい、

 援護を頼む!!》

 

ペガル

《ペガル、了解、

 クジャク隊、シャウターレを援護し、

 到着を見届けたら反転、

 再度、ナーゲルタイラントを、

 直線状に誘導する!!》

 

 

「お嬢っ!!

 後ろだっ!!」

 

アポストロ

「くっっ!?」

 

 別のナーゲルタイラントが、

 

 波状攻撃を仕掛けて来る。

 

パリガ・エスペランサ

「おぉおおおっ!!るぁああっ!!」

 

 突進力をそのまま生かし、

 

 ランスで突き刺す。

 

アポストロ

「シャウターレっ!?

 一体どこからっ!?」

 

パリガ

「シャウターレ隊、

 パリガ・エスペランサ!!

 ファゼンディラ公国の作戦を伝える!!

 “我が方野営地へ、

  ナーゲルタイラントを向かわせたし”

 秘匿武器にて、殲滅を試行す、

 以上だっ!!」

 

アポストロ

「随分威勢がいい声だねぇ、

 女にしちゃぁ、

 キモが座ってる、

 パリガ・エスペランサ!!

 武器を貸してくれるかい?

 剣が、駄目になっちまったんだ。」

 

パリガ

「私は、ランス一筋だ、

 剣など知らんっ!!

 どんな相手だろうが、

 貫き通すのみっ!!」

 

 そのまま砦の指揮所に突進していく。

 

アポストロ

「あ、ちょっ!?

 まちなさぁいっ!!」

 

 

コンクォ

「よし、

 これで、4連並列マギウスエンジン接続、

 エーテルリアクタ、マナ生成特化、

 “一発”は撃てるわ、

 後は、

 プラタ、貴女の狙撃スキルにかかってるわ。」

 

プラタ

「・・・こんなむき出し、

 シルバーナーヴで、大丈夫なのか?」

 

コンクォ

「私だって、

 こんな状態で運用したくありません、

 でも、

 これにかけて、

 森林方面からのナーゲルタイラントも、

 殲滅しないと、

 ほとんどの機体が、

 活動限界を超えちゃうの、

 だから、お願い。」

 

ペガル

《こちらクジャク隊、

 残弾無しっ!!

 コンバットナイフにて、近接を行う!!

 コンクォ!!プラタっ!!

 準備はまだなのかっ!?》

 

オネスト

《こちらオネスト、

 キングの足を二つ吹き飛ばしたっ!!

 狙うなら今だぁっ!!》

 

 

パリガ

「では、

 伝えに行きます。」

 

フレデュリック

「すまん、頼んだ、

 俺も、機体を出し、

 迎撃に参加する。」

 

リッカルド

「グランツっ!!」

 

フレデュリック

「リッカルドっ!!

 今は一機でも

 シルエットナイトが必要なんだっ!!

 止められても行くぞっ!!」

 

 

プラタ

「コンクォ、信号弾。」

 

コンクォ

「信号弾、用意、撃てっ!!」

 

 

 赤い煙が、3つ撃ちあがる。

 

オネスト

《シャウターレ隊、

 フェメンターレ隊、

 クジャク隊、、

 デュファンス改、

 全機、推定射程圏内から離脱!!

 衝撃に備えよっ!!》

 

 

パリガ

「アポストロっ!!

 来るぞ!!

 全機を射程圏内から離脱!!

 衝撃に備えろっ!!」

 

アポストロ

「全機、砦へ向かい全速力っ!!」

 

 

 6基から繰り出される総マナは、

 

 一つの大口径砲身に集約されていく。

 

プラタ

「マナ供給量、

 ペーパープランと同等の数値、

 異常なし、

 最終ロック解除、

 撃鉄、起こし。」

 

 シルバーナーヴを経由し、

 

 その命令が、巨大な砲身の撃鉄を起こし、

 

 射撃体勢に変化していく。

 

 銃身は赤く染まり出し、

 

 左手で銃身から出ている、

 

 銃身固定バーをしっかり握る。

 

プラタ

「・・・エーテルリアクタ臨界運転、

 コンクォ!

 もっと出力を上げてくれっ!!」

 

コンクォ

「足りないの?」

 

プラタ

「あぁ、

 もっとだっ!!」

 

コンクォ

「ぁ~・・・もぅっ!!

 “タンデムリアクタ”も、

 直結してやるぅっ!!」

 

 僅か数秒でスクリプトを書き足し、

 

 並列処理に叩き込む。

 

コンクォ

「絶対、外さないでよ!!」

 

 

 呼吸をヒト泊止め、

 

 引き金を引き切る。

 

 

 





 6基のエーテルリアクタの全力と、

 タンデムリアクタを上乗せされた、

 大口径法撃砲は、

 その威力を遺憾なく発揮し、

 森林ごと、ナーゲルタイラントを焼き払い、

 キングも飲み込んで行った。

 後には、

 焼けただれた大地と、

 魔獣の焦げた臭いが充満していた。



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神様は居ない

オネスト
《コンクォっ!!
 プラタっ!!
 大丈夫なのかっ!?》

コンクォ
「・・・つっ、かれたぁ~。」

プラタ
「あぁ、疲れた。」




 一度、それぞれの砦、野営地の戻り、

 

 パリガは、連絡手段の為に、

 

 フェメンターレで砦に残って貰う。

 

 

オネスト

「うは~・・・派手に逝ったね、こりゃ。」

 

コンクォ

「うん、

 シルバーナーヴは全損、

 クリスタルティシューも、

 プレートも、セーターも、

 自壊が始まってる。」

 

プラタ

「法撃砲も同じだ、

 砲身融解、

 エーテルリアクタ6基と、

 タンデムリアクタも、

 “死んでしまったよ”

 私のフェメンターレは、

 装甲も使い物にならん、

 辛うじて、

 機体の並列リアクタは、

 動いていたが、

 各種マギウスエンジンも、

 損傷、修復不可能、

 正に、

 操縦席ブロックのみ、

 無傷だ。」

 

 フェメンターレもそうだが、

 

 クジャク、デュファンス改、

 

 シャウターレ改も、

 

 操縦席を最重要区画とし、

 

 エーテルリアクタのスクリプトを改変、

 

 腕部、脚部、

 

 頭部のいずれかが損傷状態となった場合、

 

 その供給をカットし、

 

 操縦席へ、

 

 構造強化魔法を重ね掛けしていくように、

 

 書き換えてある。

 

オネスト

「そうでなければ困るからな、

 ・・・そうだ、

 コンクォ、

 ナーゲルタイラントの資料はあるか?」

 

コンクォ

「え?あるけど、

 どうしたの?」

 

オネスト

「ん?

 まぁ、出来たら核を使って、

 新型のエーテルリアクタを、

 頼もう、かなって、

 あれ?

 なぁ?

 俺達は、

 “キング2体”

 “クイーン5体”倒したんだよな?」

 

コンクォ

「?

 そうよ?

 大きかったからねぇ~、

 核も大きいだろうから、

 供給量も、書き込み容量も

 相当な量を一纏めに出来そう♪」

 

オネスト

「カリィっ!!

 通信中継!!

 パリガに繋げろっ!!

 大至急だっ!!」

 

 

パリガ

「はい、フレデュリック師団長、

 これを耳に当てて、

 こっちに声を出して。」

 

フレデュリック

「ぉ、おぅ、

 ぁ~、オネスト団長、

 聞こえているか?」

 

オネスト

《フレデュリック師団長、

 単刀直入にお聞きします、

 “クイーン討伐は5体”ですよね?》

 

フレデュリック

「ん?

 あぁ、5体、だ、

 まてっ!?

 伝令、

 本国との連絡はどうなっているっ!!」

 

「それが、

 偵察隊は伝令中間地点に向かったのですが、

 “本国から、誰も来ていない”と、

 伝令中間地点から言われ、

 先ほど戻って来たばかりです。」

 

オネスト

(やはり)

「師団長、

 メィディウム改の稼働機数を教えてください、

 コンクォっ!!

 フェメンターレを最低5機準備してくれ、

 ペガル!!

 クジャク隊は出れないのかっ!?

 プラタっ!!

 ロングレンジライフルの

 ストックは何丁残っているっ!!」

 

コンクォ

「5機でいいの?」

 

オネスト

「一機は俺だ、

 コンクォも一緒に来てくれ、

 この野営地は放棄、

 トクソリン峠の、

 ディダットーラ帝国野営地と合流、

 残存機は、ここの守備隊を結成、

 更に抽出し、

 ファゼンディラ公国へ警戒態勢と、

 増援要請を頼む」

 

ペガル

「オネスト、

 クジャク隊は出せない、

 タンデムリアクタであっても、

 マナの充填には、3時間は見てくれ。」

 

プラタ

「残り6丁だ、

 マナカートリッジは、8個、160発分はある。」

 

オネスト

「構わない、

 選抜5機は、フル装備だっ!!

 プラタは、ペガルと残り、

 トクソリン峠の防衛指揮を、

 俺と、コンクォは、

 フレデュリック師団長と、

 ディダットーラ帝国首都へ向かう、

 あと、

 損傷状態の厳しい機体から、

 “通信機”を、4機分外して、

 メィディウムに搭載、

 現地での連携に使う、

 総員、行動開始!!

 グラーフ・ヒンメル、

 全力運転準備!!」

 

 



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黒煙


カリィ
「パリガ!!
 師団長はっ!?」

パリガ
《損傷機の組み合わせで、
 稼働機を増やすって、
 慌てて行っちゃった》

カリィ
「もう一度呼び出してくれ!!
 オネストが、そっちに向かっているっ!!」

パリガ
《・・・ってか、
 もう見えてる》




 

 砦へ直接、グラーフ・ヒンメルを、

 

 乗りつける。

 

オネスト

「師団長っ!!

 師団長はいるかっ!!」

 

アポストロ

「家の砦に乗りつけるなんて、

 不躾な行為だと思わないのかっ!!」

 

オネスト

「口論の暇は無いっ!!

 クイーンが1体足りない!!」

 

アポストロ

「なにっ!?」

 

フレデュリック

「っ!?

 オネスト!!

 直ぐに動けるのは4機だっ!!」

 

アポストロ

「グランツ!!」

 

オネスト

「なら、大至急グラーフ・ヒンメルに搭載して、

 もう一体を探すぞっ!!

 森林方面の先には、

 “首都が在る”で、

 間違いないんだなっ!!」

 

フレデュリック

「あぁ、

 リッカルド!!

 ファゼンディラ公国軍と共同して、

 この砦を防衛、

 伝令中間地点に伝令!!

 稼働機全機を首都へ回させろっ!!」

 

リッカルド

「グランツっ!!

 いくら何でもそれはっ!?」

 

オネスト

「フレデュリックっ!!

 メィディウムは着地限界高度は幾つだ?」

 

フレデュリック

「試験なんてしていない、

 精々、20mだろう、

 この“飛空船”は、どうやって乗せればいいっ!!」

 

オネスト

「ワイヤーがある、

 選抜4機を乗せろっ!!

 早くっ!!」

 

 

 その直後に、

 

 ディサフィアンテ騎士団全機が到着、

 

 リッカルドを殴って気絶させ、

 

 オネスト専用フェメンターレ、

 

 選抜、フェメンターレ5機と、

 

 2機の指揮官機メィディウム、

 

 志願の2機を搭載し、

 

 グラーフ・ヒンメルは、全速力で飛翔する。

 

 

コンクォ

「メィディウムのリアクタはどんな感じっ!?」

 

フレデュリック

「この背中の中だ、

 ここから直結させて、

 通信機の出力を確保するのか?」

 

コンクォ

「状態を見るのよっ!!

 戦闘中に“死んじゃったら”

 貴方たちが死ぬのよっ!!

 最悪、乗せ換えるわっ!!」

 

 エーテルリアクタ基部の蓋を開け、

 

 状態を見る。

 

コンクォ

「・・・なんて酷い使い方、

 他も同じ・・・、でも、

 スペースが少し余裕があるならっ!!

 “タンデムリアクタ”を押し込むから、

 貴方は邪魔しないでっ!!」

 

フレデュリック

「なっ!?他国の機体を改修するのかっ!?」

 

コンクォ

「急げっ!!

 技術部隊全力で改修を進め、

 フェメンターレ全機を万全にするんだっ!!」

 

『はっ!!』

 

フレデュリック

「お、おぃっ!?」

 

 

 半日を全速力で飛ぶグラーフ・ヒンメルは、

 

 悲鳴を上げつつあった。

 

「プロペラ振動上昇!!

 潤滑油追加を急げっ!!」

 

「10連リアクタ、加熱増大、

 自然吸気だけでは、

 間に合いませんっ!!」

 

「師団長っ!!

 機関限界です!!

 緊急停止まで、あと5分っ!!」

 

オネスト

「やむを得ない、

 機関半速、

 前後4機ずつ簡易点検、

 交換できるパーツは急ぎ交換しろっ!!」

 

「はっ!!」

 

フレデュリック

「どうして速度を落とすんだ?」

 

オネスト

「試作機だからな、

 生まれたての機関に無理をさせているから、

 各パーツの精度にばらつきもある、

 直しながら飛んでいるんだ、

 10連リアクタも、

 5つのスクリプトを同時に処理、

 並列マギウスエンジンも5つ搭載、

 正に、無茶苦茶な船なんだ、

 壊れたら最後、

 “替えが効かない”大事な船なんだ。」

 

フレデュリック

「それは済まない、

 既に、中継地点を飛び越え、

 もう少し行けば、

 “首都城門”が見えて来る位置に来ている、

 感謝してもしきれないが、

 “あの砲台”は、

 今後、俺達に向けられるのか?」

 

オネスト

「・・・“前回”は、

 魔獣の討伐と言う同一目標に、

 砲身を向けただけです、

 “次回”は、

 どこへ向けられるかなんて、

 言わない方がいいでしょう?」

 

「甲板一番機より入電っ!!

 “城門を確認!!”」

 

フレデュリック

「おぉっ!!」

 

「されど、

 “大量の黒煙をみとむ”ですっ!!」

 

オネスト

「・・・フェメンターレ全機騎乗!!

 出撃用意!!」

 

 



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燃える首都


フレデュリック
「・・・しゅ、首都はどこに?」

「艦首モノアイ、拡大投影します!」

 左右に搭載されたモノアイが、

 艦橋大画面に、首都を映し出す。

オネスト
「レンガ造りの、
 良い都市だったんだな、
 甲板の一番機、二番機で、
 ズーム索敵!!
 ナーゲルタイラントを捜索せよ!!」




 

アポストロ

「グランツ、

 大聖堂が・・・私達の大聖堂がっ!!」

 

フレデュリック

「俺達の家が・・・。」

 

ソイレ・トレル

「そんな・・・。」

 

レパルド・フォーゲル

「大司教が・・・

 お父さんがっ!!」

 

オネスト

「まてっ!!」

 

レパルド

「離せっ!!」

 

オネスト

「メィディウムは、

 マナ充填中だ、

 今動かしてみろ、

 マギウスエンジンが処理しきれず、

 機体の崩壊に繋がる、

 耐えるんだっ!!」

 

ソイレ

「いやだっ!!

 お父さんを、

 大司教お父さんを助けに行くんだっ!!」

 

フレデュリック

「二人とも、我慢してくれ、

 俺も、直ぐにでも動いて助けに行きたい、

 だが、

 ナーゲルタイラントを駆逐出来ていない以上、

 帝国も助けられない、頼む。」

 

「二番機より報告!!

 城の付近にて、戦闘を確認!!

 複数のナーゲルタイラント個体と戦闘中っ!!」

 

オネスト

「帝国旗と、公国旗を掲げっ!!

 ちびっ子二人を降ろす!!

 アポストロ女官、

 お守を頼みます、

 フレデュリック!!

 クイーンが逃走しそうな方向はどっちだっ!!」

 

フレデュリック

「ソイレ・トレルと、レパルド・フォーゲル、

 旧メィディウムからの転属エースランナーで、

 俺の妹達だ、

 名前で呼んでやってくれ、

 アポストロ、二人を頼む。」

 

アポストロ

「了解、二人共、きっと、

 大司教お父様もお城に居る、

 みんなを守りに行くよっ!!」

 

二人『はいっ!!お姉ちゃんっ!!』

 

コンクォ

「・・・メィディウム、改修、充填完了、

 フレームの使い方から、

 “使えそうな武器も”乗せたから、

 存分に暴れてきなさいっ!!」

 

二人『うん!コンクォお姉ちゃんっ!!』

 

アポストロ

「武器か、

 どんな武器だろうが、

 奴らは皆殺しだっ!!」

 

 城の反対側に回り込み、

 

 高度を下げる。

 

オネスト

「メィディウム改、

 ソイレ・トレル専用機、

 射出位置へ!!」

 

 背中に使い捨ての“帆”を背負う。

 

ソイレ・トレル

《おじさんっ!!準備オッケーだよ!!》

 

オネスト

「お、おじ、

 ソイレ、前かがみになって、

 歯を食いしばってくれ、

 後は、帆が勝手に広がって、

 着地を補助してくれる、

 “レイピエーレカスタム”

 射出っ!!出撃っ!!」

 

 

ソイレ・トレル

「ナーゲルタイラント、

 私のレイピアで、

 ぶっ殺してあげるんだからっ!!」

 

 

オネスト

「メィディウム改、

 レパルド・フォーゲル専用機、

 射出位置へっ!!」

 

レパルド・フォーゲル

《準備完了、

 お、おね、

 やっぱ、おじさん!!

 何時でもいいよ!!》

 

オネスト

「・・・歯ぁ食い縛れよ?

 ソイレも出来たんだ、大丈夫、

 “チェーンメイズカスタム”

 射出っ!!出撃っ!!」

 

 

レパルド・フォーゲル

「縛ってぶっ叩いて、

 ぶっ殺すっ!!」

 

 

オネスト

「メィディウム改、

 アポストロ専用機、

 射出位置へ。」

 

アポストロ

《準備完了、

 なんだい?

 この反りが在る剣は?》

 

オネスト

「“切る”のが好きそうだったんでね、

 それに特化した剣だ、

 壊すなよ?

 まだ、2本しか作れてないんだからな?」

 

アポストロ

《ほぉ、

 なら、試し切りさせて貰うとするよ》

 

オネスト

「衝撃姿勢、

 “メィディウム改

  サムライソード”

 射出っ!!出撃っ!!」

 

 

アポストロ

「さぁ、

 この剣の錆になりたい奴はどこだっ!!」

 

 



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リゼンディシュリ城


 グラーフ・ヒンメルは、

 エンジンを焦がしながらも、

 クイーンが逃走したであろう方向へ。

 3人の乙女・・・乙女は、

 守りたい者の為に、

 再び戦場に降り立つ。




 

「くっ、

 このままでは。」

 

「左だっ!!」

 

「うわぁああっ!?」

 

どじゃんっ!!

 

 ナーゲルタイラントを踏みつぶし。

 

レパルド・フォーゲル

「どぉおおらぁあああっ!!」

 

ぐしゃ

 

 その重量と振り下ろす力に押し負けた、

 

 ナーゲルタイラントの頭部は破裂、

 

 動きを止めた。

 

レパルド・フォーゲル

「国境警備隊、

 トクソリン峠守備隊が、

 メィディウム改、

 “チェーンメイズカスタム”

 レパルド・フォーゲルが、

 ここに推参すっ!!

 総員、奮起せよっ!!」

 

ソイレ・トレル

「ちょっと、レパルド?

 あんたまだ幾つよ?

 国境警備隊、トクソリン峠守備隊、

 ソイレ・トレル、

 メィディウム改、レイピエーレにて、

 参戦します、

 指揮官は誰ですか?」

 

アポストロ

「っとと、

 ふぅ、やっと地面かい、

 全機、

 状況確認、

 近衛兵は陛下を守れ、

 残存機はナーゲルタイラントの総数を把握、

 誰が指揮官か?」

 

レパルド

「アポストロ!!後ろ!!」

 

アポストロ

「ほぉ、

 “試し切りしてみるかぃ”」

 

 両手で構えたサムライソードは、

 

 “風を纏い”

 

 切る感触すら感じさせず、

 

 ナーゲルタイラントの爪もろとも、

 

 いとも簡単に切り伏せた。

 

アポストロ

「おっとぉ、

 コイツはぁ、不味いねぇ、

 あんまりにも軽い業物だよこれは。」

 

 

レパルド

「ソイレっ!!今度はそっちにっ!!」

 

ソイレ

「・・・連撃、

 行きますっ!!」

 

 腕部に増設されたバネと、

 

 鋭く撓るレイピアが、

 

 ナーゲルタイラントを貫き、

 

 “突き痕”だらけにする。

 

ソイレ

「本当に、トンでも武器の宝庫ですね。」

(はぁ、真面目モードは疲れるなぁ~、

 あとで、

 オジサン呼びしたの、あやまろぅっと)

 

トラヴァエル・レガルド(国王)

「お前ら、

 どこでそんな改装して来たんだ?

 さっきの飛空船から、

 飛んで来たように見えたけど。」

 

アポストロ

「あ、陛下。」

 

二人『レガルドおじさん、生きてたんだ。』

 

トラヴァエル・レガルド(国王)

「・・・まだ、28なのに。」

 

アポストロ

「いや、そこは国王陛下として、

 威厳を保ってください。」

 

トラヴァエル・レガルド(国王)

「っと、そうだな、

 アポストロ、

 避難できた国民はここに居る、

 後は、

 駐屯地ごとに、戦闘が続いてる筈だ、

 あの飛空船は、

 どこへ向かって行ったんだ?」

 

アポストロ

「陛下、

 トクソリン峠守備隊は、

 ほぼ半減、

 ファゼンディラ公国軍の助力により、

 “キング2、クイーン5”の、

 討伐に成功しました、

 ですが、

 後クイーンが1体、

 行方を掴めておりません、

 何処へ向かっていますか?」

 

トラヴァエル・レガルド(国王)

「一部のナーゲルタイラントを率いて、

 南へ飛んでいったよ、

 さっきの飛空船に連絡はどうするんだい?」

 

アポストロ

「グランツ!!

 クイーンは南だっ!!」

 

トラヴァエル・レガルド(国王)

「ちょっ、アポストロ?」

 

フレデュリック

《了解した、

 オネスト!!南へ頼むっ!!》

 

トラヴァエル・レガルド(国王)

「グランツ!?

 どこから声がっ!?」

 

アポストロ

「事情はおって説明します、

 ですが、

 今は・・・。」

 

トラヴァエル・レガルド(国王)

「まだいたのか・・・。」

 

 200はくだらないナーゲルタイラントが、

 

 こちらに向け、迫って来る。

 

「伝令!!

 各駐屯地全滅っ!!

 残されているのは、

 ここだけですっ!!」

 

 



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南の先には


フレデュリック
「アポストロ!!」

アポストロ
《おほほほっ!!
 軽い!!軽いぞ!!
 なんだこれは!!》

ソイレ
《はぁあああっ!!》

レパルド
《だらっしゃぁああっ!!》

オネスト
「ったく、
 お前ら、壊したら弁償だかんな?」

3人《なんでっ!?》

オネスト
「誰がタダで貸してると思ってんだっ!!」




 

オネスト

「リアクタの状態は?」

 

「現状、自然吸気と、

 甲板から、直接換気口を接続、

 辛うじて冷やせていますが、

 全力運転は出来そうにありません。」

 

「プロペラの振動も厳しい状況です、

 交換が必要と思われる“シリンダー軸”が、

 歪んでしまい、

 “本体から引き出せず”

 3番、4番が、止まっています、

 残りの6基も、芳しくありません。」

 

オネスト

「フレデュリック、

 南の国に関して情報は無いのか?

 200年前の物でも構わない、

 最悪、

 国境を越えての戦闘になる。」

 

フレデュリック

「それは・・・、

 クイーンの足がそこまで早いとは考えにくい、

 “4対”あるクイーンの足の内、

 3本が、先ほど転がっていた、

 飛ぶ事は出来ないだろう。」

 

オネスト

「どうだか、

 過小評価よりも過大評価とし、

 2手3手の手札を用意しなければ。」

 

「砦が見えます!!」

 

フレデュリック

「南のカメリーオ砦だ!!

 見せてくれっ!!」

 

 

 砦のレンガに埋もれ、

 

 もがくクイーンが見えた。

 

フレデュリック

「くそっ!?

 300年護り続けてきた、

 カメリーオ砦が。」

 

オネスト

「全機、出撃!!

 このまま突っ込めっ!!

 グラーフ・ヒンメルは、

 上空待機、

 3、4番を収容し、

 修理を急がせろ、

 コンクォ、

 そろそろ起きてくれ、

 最後のクイーンを倒しに行くぞ!!」

 

コンクォ

「・・・ねむい。」

 

オネスト

「俺の機体に乗ってくれ、

 タンデムリアクタ二個積みは、

 まだ不安定な部分があるんだろ?」

 

コンクォ

「・・・ギリギリまで寝かせて。」

 

オネスト

「・・・フェメンターレ、

 1番から5番は先行、

 フレデュリックも、先行してくれ、

 俺は、

 “オーバーウェポンラック”を乗せてでるから、

 最後にでる。」

 

フレデュリック

「オーバーウェポンラック?

 なんなのかわからんが、

 指揮系統はどうする?

 俺でいいのか?」

 

オネスト

「そうだな、

 カメリーオ砦の

 メィディウム隊の指揮を任せる、

 フェメンターレは、

 援護を徹底させよう。」

 

 

 次々とフル装備の

 

 フェメンターレが飛び出て行く。

 

フレデュリック

「フレデュリック・グランツ、

 出るぞ。」

 

《装備はどれになさいますか?》

 

 左右に開かれた扉には、

 

 様々な武器が並んでいた。

 

フレデュリック

「・・・ふははっ、

 まさにトンでも武器の宝庫だな。」

 

 右腕に、

 

 大型徹杭と、シリンダーがついた物と、

 

 左腕には、

 

 8つの砲身と、

 

 ドラム式カートリッジが取り付けられた、

 

 何かを撃ち出す法撃杖を装備し。

 

フレデュリック

「さっき見た、

 “両肩に搭載するアレ”も、

 付けられるか?」

 

《え?かなり重くなりますよ?》

 

フレデュリック

「使い切れば、

 勝手に外れるんだろ?」

 

《えぇ、

 3回斉射すれば、爆裂術式にて、

 外れますけど》

 

フレデュリック

「なら、それを頼む。」

 

《了解》

 

 

フレデュリック

「・・・うむ、重い、

 だが、行ける、

 フレデュリック・グランツ、

 “ヘヴィウェポンズ”

 行って来るっ!!」

 

 

オネスト

「・・・ふふっ。」

(フレデュリック、

 アンタ絶対向こうの血筋だろ?)

 

《師団長、ご武運を》

 

オネスト

「オネスト・ディシュリオン、

 コンクォ・チェルカス・トゥーラ、

 フェメンターレ、

 “オーバーウェポンラック”

 出撃するっ!!」

 

 ぐんっ!!と、後ろに押し付けられる衝撃。

 

コンクォ

「ふぎゃっ!?」

 

オネスト

「くっ!

 やっぱ出撃は、

 射出からだよなっ!!」

 

 



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荒野と、砂


フレデュリック
「むぅ。」

《グランツ殿、
 その重さでは速度が出ないでしょう》

《我々が牽引します、
 肩をどうぞ》

フレデュリック
「すまん、
 船員が苦笑いした理由が良く分かったよ。」




 

オネスト

「メィディウム改の脚部の強化プランも

 考えなきゃなぁ。」

 

コンクォ

「っ~・・・、

 流石に起きたわよ。」

 

オネスト

「悪い、

 スクリプト設定、

 まだ済んでない武器はどれだ?」

 

コンクォ

「ライトニングホーンよ、

 こんな考えはアンタだけにして欲しいわ。」

 

オネスト

「え~、

 いいじゃん、頭の角で、

 切り伏せるモーション、

 相手の不意も付けるし、

 ゼロ距離戦闘でも使えるだろ?」

 

コンクォ

「そんな接近戦闘しないでよ、

 私も乗ってるんだから。」

 

 増設部分には、

 

 カートリッジ式法撃杖を6本搭載し、

 

 無限軌道(キャタピラ)を装備し、

 

 フェメンターレのロータリーボールで、方向を変える、

 

 いわゆる、“動く武器庫”を目標とした、雛形だ。

 

 他にも、接触型爆裂術式、

 

 いわゆる、爆雷を20発乗せており、

 

 シングルリアクタで、維持管理し、

 

 オネスト専用フェメンターレから、

 

 設定された番号を入力する事により、

 

 その該当する番号の武器を、

 

 フェメンターレへ受け渡し、

 

 空になった法撃杖を格納、

 

 再充填する仕組みになっている。

 

オネスト

「今回は法撃杖だけを6本積んで来たが、

 状況に応じて、

 ソードでもよさそうだな。」

 

コンクォ

「維持費は馬鹿にならないんだけどね?」

 

オネスト

「・・・だな。」

 

 

フレデュリック

「個体が気づいたな、

 よし、

 盛大にぶちかますぞっ!!

 両機、離れてくれ、

 俺の前に個体を誘導頼む。」

 

《二番機、了解》

 

《一番機、盛大にどうぞ》

 

フレデュリック

「“フェルゼン・ブラスター”」

 

 中型の徹杭が両肩合わせ、40本が、

 

 ナーゲルタイラント目掛け飛び交う。

 

 突き刺さる徹杭は、

 

 “そのまま爆発する”

 

フレデュリック

「・・・豪快だなぁ、

 こいつはたまらんなぁっ!!」

 

 

オネスト

「おほぉ~、

 まんまアノ機体モーションじゃん!!

 いいねぇっ!!ロマンの塊が、

 目の前いるぞっ!!」

 

コンクォ

「楽しんでる場合じゃないのよっ!!

 ちゃんと避けてよねっ!!」

 

オネスト

「わかってるよっ!!」

 

 突貫で製造した爆雷20発は、

 

 それこそ爆発の危険が付き纏うシロモノで、

 

 充填されたマナもその中にあり、

 

 連鎖爆発の危険性が十分にあった。

 

 

「なんだ!?

 ナーゲルタイラントが、一気に数を減らしたぞ?!」

 

フレデュリック

「カメリーオ砦守備隊は無事かぁっ!!」

 

「フレデュリックっ!?

 おま、北側の、トクソリン峠守備隊に、

 転属した筈だろうがっ!!」

 

フレデュリック

「げっ、

 エリュブシン師団長、

 生きてたんですか。」

 

エリュブシン・テラス

「お前、

 かつての上司に向かって、

 良い度胸だ!!

 説教してやるから覚悟しろっ!!」

 

オネスト

《フレデュリックっ!!

 クイーンを早くっ!!》

 

エリュブシン

「誰だ!?」

 

フレデュリック

「エリュブシン師団長!!

 説明は、クイーンを倒してからだっ!!」

 

エリュブシン

「おぅ!やらいでかっ!!」

 

 



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砂に閉ざされた南


エリュブシン
「フレデュリック!
 その装備はなんなんだっ!?」

フレデュリック
「見てのお楽しみだっ!!」

《二番機、クイーンを確認、
 !?不味い!!
 何かが孵化するぞっ!!》

《いけないっ!!
 フレデュリック師団長!!
 撃って下さいっ!!》

フレデュリック
「おぅっ!!」




 

 ナーゲルタイラントの個体と、

 

 クイーンに当たり、爆発するが、

 

 “孵化”した、キングには、

 

 通らなかった。

 

フレデュリック

「なにっ!?」

 

《オネスト師団長っ!!

 新たなキングが孵化しましたっ!!》

 

オネスト

《こっちの個体は駆逐した、

 そっちの個体は、

 後どれだけいるんだっ!!》

 

フレデュリック

「ざっと50だ、

 オネスト、

 今のでクイーンを動けなくしたが、

 肩の武器は弾切れだ、

 この腕部の8門の武器は、

 どう使えばいい?」

 

オネスト

《ゼロ距離ですよ、

 8発同時に撃ちだし、

 相手の装甲を破壊し、

 吹き飛ばす前提なので、

 精々6回が限度です、

 それと、

 “右腕に何を持ってったんですか?”》

 

フレデュリック

「え?

 いや、なんか強そうだったから。」

 

エリュブシン

「フレデュリック!!

 相変わらず考えも無しに武器を選ぶなと、

 あれほど言っただろうがっ!!」

 

オネスト

《それも、装甲破壊と、

 フレームを打ち砕く為のものです、

 “腕部搭載型、バンカー”です、

 それも6発、

 空になれば、ただの重りにしかなりませんよ!!》

 

コンクォ

《オネスト!!キングが動き出す!!》

 

オネスト

《フレデュリック師団長、

 キングの甲殻を破壊してください、

 残りの機体は援護を、

 爪の付け根の複眼を先に潰してくれ!》

 

《一番機、了解、

 フレデュリック師団長、

 二番機と共に、

 援護します》

 

《一番機、勝ってに決めるな、

 二番機、援護はしますけど、

 狙える時は狙いますよ?》

 

《三番機、

 守備隊の援護に回ります》

 

《四番機、俺も援護に回る》

 

《五番機、

 俺も守備隊の援護に徹する、

 マナ残量も心もとない、

 美味しいとこ、

 しっかり味わって下さいよ?》

 

オネスト

《オネスト、了解、

 フレデュリック師団長、

 行きますよ!!》

 

フレデュリック

「おぅっ!!」

 

 

オネスト

「とは言ったもの、のぉおおっ!?」

 

コンクォ

「ふぎゃぁ~っ!?」

 

 増設部分を切り離し、

 

 腕部固定法撃杖と、

 

 ロングソードで、なんとか攻撃を受け流す。

 

オネスト

「早くないかコイツっ!?」

 

コンクォ

「くっ、

 確か、資料によると、

 “孵化”したナーゲルタイラントは、

 クイーンが見た光景を参考に、

 “それに適応した強化をされ生まれて来る”そうよ!!」

 

オネスト

「なんだとぉっ!?」

 

 

フレデュリック

「早い、

 このままでは狙えない。」

 

《二番機、足を止められるか?》

 

《一番機、

 冗談だろ?

 師団長の専用機ですら、

 避けるのが精いっぱいの足の速度だ、

 メィディウム改の法撃も、

 余り効果が見られない、

 マナ温存を優先するしかない》

 

 

オネスト

(不味い、

 このままじゃぁジリ貧だ、

 タンデムリアクタ二個積みでも、

 供給が追い付かなくなってきてる、

 マナが減り出してる)

「コンクォ!!

 ライトニングホーンのスクリプト構成は、

 何分掛かる?」

 

コンクォ

「はぁ!?

 何言ってんのよっ!?

 こんな状況でスクリプト構成しろってのっ!?」

 

オネスト

「それしかないだろぉおおっ!?」

 

 正面に足が迫る。

 

ごぎぃっ!!

 

 ロングソードで受けてしまう。

 

《止めたっ!?》

 

《ったく、師団長の機体じゃなきゃ、

 ばらばらになってるぞっ!!》

 

 ここぞとばかりに法撃を一点に集中する。

 

オネスト

「まずぃ、今ので腕が逝った、

 コンクォっ!!頼むぅっ!!」

 

コンクォ

「分かった、けど、

 どんな結果が出ても、

 文句言わないでね?」

 

オネスト

「お前と心中なら、本望だっ!!」

 

 





 通信機を搭載していた機体に、

コンクォ
「状況を考えなさいよねっ!!
 このばかーーーーっ!!」

 と、叫び声が聞こえたのは言うまでも無い。



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雷鬼降臨


《各隊、複眼を撃破急げっ!!》

「くそっ!!
 当たれ当たれぇっ!!」

《マナ残量危険域、
 これ以上は法撃出来ない!!》

「誰でもいい!!剣を投げろっ!!」




 

 軋む機体も悪く無い

 

オネスト

(って、アホか、

 腕が使えない以上、

 法撃も使えない、

 カートリッジは、腰に2個残っている、

 でも交換出来ない、

 そうだっ!!)

「4番機!!

 “武器庫”から、

 マナの供給を受けて、

 爆雷を

 “キングに投げ込んでくれ”」

 

《はぁっ!?

 正気ですかっ!?》

 

オネスト

「急げっ!!

 腕がそろそろ限界だ!!

 他の機体にも協力を仰ぎ、

 爆雷を投げ込むんだっ!!」

 

 

エリュブシン

「これが、その爆雷か。」

 

「はい、

 エリュブシン師団長、

 私の機体で、飛び上がるので、

 エリュブシン師団長が、

 キングに投げ込んで下さい。」

 

エリュブシン

「しかし、それは貴殿がやった方が良いのでは?」

 

「私の機体は、

 既に、マナ残量が危険域なのです、

 ジャンプ一回毎に、

 マナ供給を受けねば、

 動けなくなってしまいます、

 なので、

 投げる動作が出来ないのです、

 そこで、メィディウム改を抱えたまま、

 飛び上がる事で、

 投げる動作を不要とし、

 ここにある20発の爆雷を、

 投げ込むのです。」

 

 フェメンターの膝の上で足を支え、

 

 腰の部分を、フェメンターレの腕で固定、

 

 その姿勢のままジャンプを繰り返す。

 

 そこに、個体を殲滅し終えた機体が合流、

 

 なんとも奇妙な光景が生まれたが、

 

 確実にキングの甲殻装甲は、

 

 破壊され、その中身が見えて来る。

 

エリュブシン

「これが最後だ!!

 くらえぇっ!!」

 

 

フレデュリック

「一番機、二番機、

 また、肩を貸してくれるな?」

 

《当然です、

 ショットガンと、パイルバンカー、

 合計十二発、

 ぶち込んでやりましょう》

 

《どうせなら、

 足が届かない背中に乗りつけるか?》

 

フレデュリック

「いや、

 足を全て破壊しよう、

 ここから逃がさない為にも。」

 

《一発も仕損じ出来ませんよ?》

 

フレデュリック

「それが出来なくて、

 何がナイトランナーか?」

 

《ふっ、それもそうですね》

 

《んじゃ、行きますか》

 

 

 脚部にまで悲鳴が込み上げる。

 

オネスト

「コンクォ、

 どうなんだ?」

 

 返事は無い、

 

 小声で様々な術式と、

 

 再構成を呟いている。

 

オネスト

(ジャンプ出来ても一回かそこら、

 タンデムリアクタ二個の供給は、

 伊達じゃないけど、

 機体の維持にドカ食いしている、

 マナ切れが先か、

 腕部がもげるか、

 脚部が砕けるか)

「ったく、

 分の悪い賭けは、

 するもんじゃないね。」

 

フレデュリック

《王様の上にお邪魔するぞぉっ!!》

 

オネスト

「なっ!?」

 

 モノアイ頭部で、キングの上を見上げる。

 

 二機のフェメンターレと、

 

 メィディウム改が、

 

 主単眼目掛け走って行く。

 

 気が付けば、

 

 周りの足は砕け、

 

 この支えてる一本で踏ん張っていた。

 

フレデュリック

《喰らえっ!!》

 

 しかし、その一撃は、通らず、

 

 三機とも振り落とされる。

 

 “キングは瞼を閉じたのだ”

 

オネスト

「コンクォっ!!」

 

コンクォ

「出来たっ!!

 オネストっ!!

 “ライトニングホーン”

 使えるわよ!!

 ただし、

 一回こっきりだけどねっ!!」

 

オネスト

「待ってたぜっ!!

 飛べっ!!

 フェメンターレっ!!

 最強の一撃をくれてやるぞっ!!」

 

 

 バネと、ジャンプから繰り出される高度は、

 

 優に500mは超える。

 

オネスト

「ライトニングホーン、起動っ!!」

 

 頭部に搭載した角が、

 

 青白く光り出し、

 

 機体の4倍は伸びて行く。

 

オネスト

「一頭絶撃っ!!

 往生しろやぁあああっ!!」

 

 

 その一刀は、

 

 キングもろとも、後方のクイーンを両断し、

 

 ナーゲルタイラントの群れは、

 

 ここに討伐を完了した。

 





 ほぼ全ての機体が修理、

 改良せざるを得なくなった、

 ディサフィアンテ騎士団は、

 一度ファゼンディラ公国に帰投する。

 道中、新生デュファンス改率いる、

 ファゼンディラ公国正規軍が、

 ハルネキッヒ自治区、

 ディダットーラ帝国の防衛の為に、

 進出して行くのを、

 推進機が2基まで減った、

 グラーフ・ヒンメルから、

 オネスト・ディシュリオンは、

 眺めていた。

 眠ったまま、

 起きて来ない、

 コンクォ・チェルカス・トゥーラを、

 抱えながら。



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個人と国

 ファゼンディラ公国

 会議室

リャン・ダオ11世
「おい。」

オネスト
「・・・。」

リャン・ダオ11世
「オネストっ!!」

オネスト
「へ?
 なんですか?陛下?」

リャン・ダオ11世
「・・・会議中なのだが?」

オネスト
「・・・ぁ~。」



リャン・ダオ11世

「とにかく、

 現状は、

 ハルネキッヒ自治区、

 ディダットーラ帝国へ、

 正規軍を派遣継続し、

 その経費に関しては、

 鉱石資源で代替え、

 ファゼンディラ公国にて、

 生成、

 新型機を生産、

 ディダットーラ帝国、

 ハルネキッヒ自治区へ、

 逐一配置して行く。」

 

トラヴァエル・レガルド

「リャン・ダオ11世、

 その件なのだが、

 我がディダットーラでも、

 生産させて貰えないだろうか?」

 

リャン・ダオ11世

「残念だが、

 承服出来ない、

 貴殿の“アルヴの民”の使者から、

 “兵器転用エーテルリアクタ”

 これの生産を拒否すると、

 宣告されたのだろう?」

 

トラヴァエル・レガルド

「それはそうだが、

 生産済のエーテルリアクタは、400個、

 ナーゲルタイラント駆逐戦に置ける、

 大破した機体からも、

 121個は確保してあるのだ、

 それを持て余す余裕も無いだろう?」

 

メイジ・ファン・ボレット

「トラヴァエル陛下、

 リャン・ダオ11世陛下もただ、

 遊ばせている訳ではありません、

 我が自治区でも、

 シャウターレ改の生産は出来ていません、

 こちらの“アルヴの民”も、

 戦闘転用は承服出来ないと、

 残っているエーテルリアクタ、

 231個で、やり繰りしているのです、

 “無駄遣い出来る物は一つもありません”」

 

トラヴァエル・レガルド

「なら、

 生産を続けている、

 ファゼンディラから、

 新規エーテルリアクタの供与、

 又は買い付けは可能なのか?」

 

リャン・ダオ11世

「そこは、

 オネスト、

 ん?オネストっ!!

 現状のエーテルリアクタ

 生産状況はどうなっているのだっ!?」

 

オネスト

「・・・え?

 あぁ、そうですね、

 イストゥリアさん次第ですね、

 “タンデムリアクタ”は、

 月産1つ、シングルリアクタは、2個、

 これ以上は、集中出来ないと、

 宣言されていますので、

 我が方に残されたリアクタは、

 タンデムリアクタ20個、

(二個の鉱石核エーテルリアクタを

 一つにした物)

 シングルリアクタ36個、

(一つの鉱石核エーテルリアクタ)

 試作“トレスリアクタ”2個、

(三個の鉱石核エーテルリアクタを

 一つにした物)

 試作“アルヴァリアクタ”1個、

(四個の鉱石核エーテルリアクタを

 一つにした物)

 リアクタ搭載待ちの機体は、

 フェメンターレ50機、

 推進機の変更をせざるを得ない、

 クジャク隊60機分は使用不可能、

 全く余裕が無い状態です、

 来月納品予定の物は、

 ディダットーラ帝国へ納品させますが、

 その次からは、

 交互に納品予定としています、

 キング“3”

 クイーン“6”の魔獣核は、

 エーテルリアクタへの転用が出来ません、

 “家の技術長”が、起きないと、

 精製出来ないのが、

 我がファゼンディラの実情です。」

 

トラヴァエル・レガルド

「ちょ、ちょっと待て、

 リャン・ダオ、

 コイツ、大丈夫なのか?」

 

リャン・ダオ11世

「・・・ダメだと思う。」

 

トラヴァエル・レガルド

「と、とりあえず、

 来月には、タンデムリアクタ一基と、

 エーテルリアクタが二基納品されるのか、

 エーテルリアクタは余っているから、

 そちらはハルネキッヒ自治区へ

 納品された方が良いだろう。」

 

メイジ・ファン・ボレット

「それは有り難い事なのですが、

 ハルネキッヒ自治区の“アルヴの民”は、

 “他で生産されたリアクタ”を、

 黙って見ている程、

 大人しい方々ではないので、、

 辞めて置いた方がよろしいでしょう、

 シングルリアクタに関しては、

 ファゼンディラ公国正規軍へ納品して貰い、

 フェメンターレの稼働機を増やして貰い、

 ディダットーラ、ハルネキッヒ自治区の、

 防衛の主力を担って貰い、

 落ち着いてから、

 各国にて、新型、もしくは、

 新兵装を製作すると言うのは

 どうでしょうか?」

 

トラヴァエル・レガルド

「ぬぅ、メイジ・ファン・ボレット、

 それは最もなのだが、

 一刻も早く、我が帝国は、

 かつての力を取り戻し、

 それ以上の力が欲しいのだ、

 それには、魔獣核で精製される、

 “魔獣核エーテルリアクタ”が

 必要不可欠なのだ、

 どうにかならないのか?」

 

リャン・ダオ11世

「肝心の技術長がなぁ・・・。」

 

トラヴァエル・レガルド

「まぁ、あのちびっ子二人の機体改装、

 指揮官機2機の改装、

 これに関しては、感謝している、

 彼女らを北側のトクソリン峠守備隊へ

 配属したのも、

 “その性格上持て余していたのだ”

 今暫く大人しくしよう、

 だが、今後協議の内容次第では、

 事を構える姿勢だと、

 先に言っておこう。」

 

リャン・ダオ11世

「・・・そうなっては欲しく無いのだがな。」

 

トラヴァエル・レガルド

「それは本心か?」

 

リャン・ダオ11世

「消耗戦の先は、

 “餓えと、死”だけだ。」

 

トラヴァエル・レガルド

「・・・そうだな、

 次の会議は、

 半年後にして置こう、

 首都再編も、

 始めたばかりだからな。」

 

リャン・ダオ11世

「今度は、

 立派なレンガ造りの首都を見たい物だ。」

 

トラヴァエル・レガルド

「今すぐ、お見せ出来ないのが残念だ。」

 

 



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機体と人物・その二

 
リャン・ダオ11世
(色々、
 おさらいしないとな)




 

 オネスト専用フェメンターレ

 

 見かけはフェメンターレだが、

 

 搭載エーテルリアクタは、

 

 “タンデムリアクタ”を操縦席の両脇に乗せている。

 

 それ以外の変更点は、

 

 構造強化魔法の重ね掛け量が、3倍、

 

 背部に置ける、

 

 “連結機構”

 

 頭部に搭載した、

 

 “ライトニングホーン”を搭載し、

 

 ワンオフ機体としては、

 

 一番資材を馬鹿食いする機体である。

 

 量産体制にある、

 

 チェーンソー型大剣を始め、

 

 オネストが“ノート”に書き起こした兵装は、

 

 全て搭載、使用可能を目指した、

 

 “オールマイティー”使用。

 

 その分、構成スクリプトは、

 

 尋常じゃない量となり、

 

 “コンクォ”以外、修理出来なくなっている。

 

 フェメンターレの改修機の中で唯一、

 

 “複座”であり、

 

 前にオネスト、後部にコンクォが座り、

 

 ナーゲルタイラント戦闘時に、

 

 コンクォが後部座席で“現場改修”が出来るように、

 

 専用の設備を装備し、

 

 “ライトニングホーン”を、

 

 ぶっつけ本番で稼働、成功の内に終わった。

 

 ただ、スクリプト構成をそこそこ雑にしたせいもあり、

 

 一度切りの、使用しか出来なかった。

 

 結果、腕部はナーゲルタイラントの一撃で歪み、換装不可能、

 

 脚部は、バネと、ジャンプと、着地の衝撃で大破、

 

 頭部は融解、各関節も損傷が激しく、

 

 構造強化魔法の重ね掛けが無ければ、

 

 機体が粉々に砕け散っていただろうと言われた。

 

 タンデムリアクタ二基に関しては、

 

 稼働状態ではあるが、

 

 コンクォで無ければ外せないロックをかけており、

 

 他の機体に移し替える事も出来ず、

 

 満身創痍の姿のまま、倉庫番をしている。

 

 

 メィディウム改・現地改修機

 

 “源素供給器(エーテルサプライア)”を、取り外し、

 

 シングルリアクタ(エーテルリアクタ)を、

 

 “タンデムリアクタ”に変更、押し込んで搭載した。

 

 ソイレ・トレル専用機は、

 

 右腕部にバネと

 

 ストランドタイプクリスタルティシューを集中配備し、

 

 関節部への構造強化魔法の重ね掛けを実施、

 

 超高速の連続刺突に対応、

 

 秒間3往復を記録し、

 

 ほぼ、避けるのは不可能となっているが、

 

 悪魔で“直線状にある場合”と追記して置く。

 

 名前は、レイピエーレカスタム。

 

 レパルド・フォーゲル専用機は、

 

 腕部、脚部、関節を集中強化し、

 

 10mの鋼鉄鎖を左腕に、

 

 それに接続されている、

 

 大型メイスを搭載。

 

 鎖で相手の動きを封じるか、鈍くさせ、

 

 その一瞬で、

 

 大型メイスによる圧殺を主体とした。

 

 名前は、チェーンメイズカスタム。

 

 アポストロ専用機は、

 

 均等に強化し、

 

 メィディウム改の2.5倍の強度を誇る。

 

 専用武器として、

 

 オネストが“ノート”に書き起こした、

 

 “日本刀”をモデルにした、

 

 “サムライソード”

 

 これは、FAシリーズにも搭載される、

 

 “鞘(さや)”が、開くタイプで、

 

 両手持ち、片手での抜刀に対応、

 

 切る事が大好きなアポストロと相性は抜群で、

 

 ナーゲルタイラントの固い甲殻ごと切り裂き、

 

 付近の破損機体、

 

 瓦礫の山も一緒に両断し、

 

 “近寄るな危険”の二つ名を配する事になる。

 

 フレデュリック専用機は、

 

 左腕に8門同時法撃斉射前提の、

 

 “ショットガン”を搭載、

 

 ドラム式マガジンには、

 

 6回分のストックを充填でき、

 

 近距離戦闘にこそ向いているが、

 

 大きな欠点として、

 

 射程は短めで、精々、10mそこそこで、

 

 ドラム式マガジンの充填必要時間は、28時間かかる。

 

 右腕部の、

 

 腕部搭載型バンカー、

 

 いわゆるパイルバンカーなのだが、

 

 これも、6回分しかストック出来なかった。

 

 6つのシリンダーに、

 

 クリスタルティシューを編み込み、

 

 “筒状にした物”を、6本充填してあり、

 

 心棒にクリスタルティシューを採用し、

 

 これでもかと、構造強化魔法の重ね掛けをしてあり、

 

 杭の重量だけで、

 

 “フェメンターレの両腕”並みの重さ。

 

 パイルバンカー一式の総重量だけで、

 

 ほぼ、メィディウム改一体分の重量となる、

 

 超重量級装備である。

 

 よって、フレデュリックの機体は、

 

 即日オーバーホールと、

 

 構造を根本的に見直す事が余儀なくされた。

 

 極めつけは、

 

 両肩に搭載した、

 

 “爆裂式中型徹杭発射基”で、

 

 長さ50cm、太さ7cmの、“中型徹杭”を、

 

 両肩合わせて40発同時に発射し、

 

 対象に刺さるか、当たって弾かれても爆発する。

 

 3斉射分搭載してあり、

 

 空になると、爆裂術式にて投棄、機体を軽くする。

 

 当の本人は、重い機体が気に入っており、

 

 多少進軍速度に影響が出ても良いか、程度に思っている。

 

 

 ハルネキッヒ自治区

 

▽カリィ・ボーレ♂

 

 彼は、シャウターレ改のテストランナーとして、

 

 初搭乗し、その機体を自機とし、

 

 一度、オネスト率いる、ディサフィアンテ騎士団と、

 

 戦い、生き延びているエースランナー。

 

 旧主力・イスクードでも、

 

 魔獣退治専門部隊のトップランナーであり、

 

 部下として、ずっと一緒なのが、

 

 パリガ・エスペランサである。

 

▽パリガ・エスペランサ♀

 

 彼女は、カリィ・ボーレ率いる、

 

 魔獣退治専門部隊出身であり、

 

 カリィ・ボーレ同様エースランナー、

 

 ただし、

 

 左腕に巨大ランスと、

 

 右腕に盾と言う、

 

 “頑固一徹スタイル”で、

 

 ランス以外に全く興味が無いのもあるのだが、

 

 ランス以外で、

 

 まともに使えた試がないので、諦めたと言うのが近い。

 

 なぉ、二人きりの場合は、デレデレ、

 

 結婚こそしていないが、

 

 隊全体からは、

 

 『とっとと、くっついて落ち着いて欲しい』と、

 

 溜息が漏れ出している。

 

 

 ディダットーラ帝国

 

▽フレデュリック・グランツ♂

 

 国境警備隊兼、

 

 魔獣退治専門騎士団、団長でもあり、

 

 師団長、団長、隊長、フレデュリック、グランツ、と、

 

 複数の名前で呼ばれているのだが、

 

 単に、適当に返事を返しているのが通常であり、

 

 真面目な時は、稀で、

 

 魔獣退治の時も、つい気を抜いて、腕をもがれた過去も。

 

 ただ、真面目になると、

 

 1対500匹の魔獣相手で、

 

 無傷で帰還した事もある、超エースランナー。

 

 旧メィディウムでの、魔獣討伐総数は、5000匹は下らない、

 

 帝国内でも、ファゼンディラ公国、ハルネキッヒ自治区でも、

 

 “生ける伝説”として、真面目な部分の情報のみ出回っている。

 

 普段が不真面目過ぎる為、本人と思われず、

 

 名前が一緒の人程度に認識される事も。

 

▽アポストロ・オラーコロ♀

 

 実は、ファゼンディラ公国出身者、

 

 帝国へは、まだ国交が安定していた頃、

 

 300年前からある、

 

 南のカメリーオ砦を、観光として見に来ていた。

 

 その帰り道、暴漢に襲われ、

 

 危うい所を、当時、

 

 カメリーオ砦勤務で、エリュブシン師団長と喧嘩帰りの、

 

 フレデュリック・グランツに救助され、

 

 そのまま移住、

 

 フレデュリックの家に転がり込んだ。

 

 ついつい世話を焼いてしまい、

 

 普段の抜けっぷりに拍車をかけた張本人である。

 

 いい加減、彼から結婚して欲しいと、

 

 言われたいそうだが、その本人は中々言い出せずにいる。

 

 “公(おおやけ)では、付き合っていない”と、言っているが、

 

 どう見ても恋人同士にか見えないし、

 

 所構わずいちゃついているので、

 

 師団全体から、嫉妬と、生暖かい目で見守られている?

 

▽リッカルド・ミゲル♂

 

 国境警備隊の財布。

 

 胃痛持ち、頭痛持ち、お金に五月蠅い。

 

 ギリギリの予算内で、なんとか国境警備隊を運用している。

 

 北方のトクソリン峠守備隊と、

 

 南方のカメリーオ砦守備隊、

 

 東の大山岳地帯守備隊の、

 

 資金運用を、一人で計算し、

 

 国家予算会議で国境警備隊の維持存続資金を、

 

 確保している苦労人。

 

 トラヴァエル・レガルド国王からは、

 

 部下を付け、教育し負担を減らすように言われてるが、

 

 計算量が通常を通り越しており、

 

 一般人では対応出来ない書類の山で、

 

 彼の部屋は埋め尽くされている。

 

 部下を雇いたいが、雇えるほど資金に余裕も無い事、

 

 教育に時間をかけられない事、

 

 散財の張本人が、グランツであり、

 

 最近、抜け毛が増えてきたのが一番の悩み。

 

▽エリュブシン・テラス♂

 

 南方・カメリーオ砦守備隊の師団長。

 

 グランツの上司であり、

 

 魔獣退治専門師団の、元師団長。

 

 グランツが入る直前の魔獣退治の際、

 

 操縦席に魔獣が噛みつき、

 

 左手足を断裂、瀕死の重傷を負う。

 

 しかし、

 

 アルヴの民の“エーテルリアクタ供給型義手義足”で、

 

 一命を取り止め、

 

 腰には、義手義足用供給リアクタと、

 

 クリスタルティシューを巻きつけている。

 

 シルエットナイトも操縦できるので、

 

 現役続行を宣言、

 

 67歳には到底思えない程元気であり、

 

 新技術などを、取り入れる事を、

 

 良しとしており、

 

 メィディウム改のテストランナーも務めている。

 

▽トラヴァエル・レガルド♂

 

 ディダットーラ帝国の現・国王。

 

 力こそ、国を守る最重要の考えであり、

 

 ナーゲルタイラントの魔獣核を全て回収、

 

 自国内の、“イッジオーネ(アルヴの民の隠里)”を訪問、

 

 新型エーテルリアクタの製造を懇願するも拒否された。

 

 既に400個もの

 

 シングルリアクタ(エーテルリアクタ)を所有しており、

 

 大破した機体から回収した物を含めると、

 

 500を超える所有数となる。

 

 ファゼンディラ公国正規軍の臨時配置は致し方無いとしつつも、

 

 新型機の製造を“極秘裏に進めており”、

 

 タンデムリアクタの納品を、今か今かと、待ちわびている。

 

▽ソイレ・トレル♀

 

 その年齢は僅か12歳の少女であり、

 

 旧メィディウム、エースランナー。

 

 6歳から頭角を現しており、

 

 真面目モードと、素を使い分けている。

 

 ナーゲルタイラント討伐戦は、3度目の正式出撃であり、

 

 過去の演習では、レパルド・フォーゲルと同率一位。

 

 金髪ショートカットは、

 

 長いと操縦席に髪が引っかかる為、短くしている。

 

 オネストを、おじさん呼びした最初の子。

 

 おじさん呼びしたのを謝る前に、オネストが帰国したため、

 

 どうしようか悩んでいる。

 

 コンクォと同じ、“全長145cm”

 

▽レパルド・フォーゲル♀

 

 ソイレ・トレルと同い年であり、12歳の少女。

 

 茶髪の地毛であり、

 

 南方移民の血を引いている。

 

 元気っ子であり、

 

 “薄着でうろつく困ったちゃん”

 

 出掛ける時は、保護者として、

 

 グランツ、アポストロと一緒に行動、

 

 万が一雨や水なので濡れると大変な事になるので、

 

 二人がガードし、

 

 ソイレ・トレルが、その対象者に対し、

         (振り向いただけでも対象者)

 

 “男性にはレイピアで〇的”し、

 

 女性に対しては、度合いに応じて、目潰しや、

 

 露出補正を拡張させたりして逆に辱める特技がある。

 

 なお、おじさん呼びを直す積りは無いそうだ。

 

 この子も、“全長145cm”

 

 




リャン・ダオ11世
「そうだ、オネスト。」

オネスト
「はぃ?」

リャン・ダオ11世
「休め、これは国王権限での命令だ、
 コンクォ・チェルカス・トゥーラと共に、
 お前の実家での半年の休息を言い渡す、
 “誰にも邪魔されず”
 ゆっくりして来い。」

オネスト
「それでは、開発や、
 工廠の指揮はどうす「こっちでやる。」え?」

リャン・ダオ11世
「お前のノートを貸してくれ、
 エーテルリアクタの生産は出来なくとも、
 武器生産、構造研究ぐらいは出来るからな、
 やれそうな事はやって置くから、
 “最終調整に、コンクォ”が必要になるだろうが、
 それまでは、ゆっくりして来い。」

オネスト
「・・・期間は?」

リャン・ダオ11世
「次の会議予定の半年後だ、
 その時はこちらから人を迎えにやる、
 “予備のフェメンターレ”で、
 コンクォを護送しながら帰るんだ、
 護衛のフェメンターレも付ける。」

オネスト
「・・・わかりました。」



リャン・ダオ11世
「はぁ、
 ペガル、ディダットーラ帝国の内情を頼む。」

ペガル
「はっ、了解しました陛下。」

リャン・ダオ11世
(戦争、か、
 やりたくはないのだが、
 そうせざるを得なさそうだな・・・)



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 私は、

 疲れ、眠っていた。


 

 揺れる機体。

 

 目の前には、魔獣の足。

 

 無理やりスクリプト構成をして、

 

 オネストの、

 

 ライトニングホーンで、

 

 ナーゲルタイラントを倒した。

 

 それで安心しちゃって、

 

 寝ちゃったんだっけ。

 

 

 夢を見た。

 

 水田の真ん中にある、

 

 小さな家で、

 

 おじいちゃんになったオネストと、

 

 二人きり。

 

 ごめんな、ごめんな、

 

 その日のオネストは、

 

 ずっと謝ってた。

 

 夢の中で、

 

 目を閉じて、

 

 また、開くと、

 

 沢山の人が“黒い服”を着て、

 

 泣いていた。

 

 ぇ?

 

 木の棺に、

 

 ガリガリに痩せた、

 

 おじいちゃんのオネストが、

 

 眠るように、収まってた。

 

 私は、

 

 “泣きじゃくる私を見ていた”

 

 なんで?

 

 ここに居る私は、ダレ?

 

 

 また、場面が変わる。

 

 また、ナーゲルタイラントの足だ。

 

 嫌、いや、

 

 なんで?

 

 “何度も見なきゃいけないの?”

 

 

オネスト

「コンクォ、

 泣いてるのか。」

 

 眠っているコンクォの、

 

 涙を拭ってあげる。

 

オネスト

「おきろ~、

 まだ死んでねえぞ~。」

 

 ほっぺたをツンツンしながら、

 

 寝言で、

 

 死んじゃった、なんて言われちゃ、

 

 たまったもんじゃない。

 

 

 何度目だろう、

 

 繰り返し、繰り返し、

 

 ずっと“見ている”

 

 泣いている“私”を、

 

 何度も、何度も。

 

コンクォ

(いやっ!?

 なんで何回もこんな夢を見るのっ!?)

 

 

 こうなるってわかってるのに、

 

 仇人を好きなんだ?

 

コンクォ

(わ、た、し?)

 

 あんな100年も

 

 生きられない生き物なんて、

 

 必要あるの?

 

コンクォ

(そんな事絶対ないっ!!)

 

 絶対?ウソ、

 

 だって、貴女、

 

 “14歳の時に、好きな人いたじゃない”

 

 

オネスト

「・・・コンクォ。」

 

 そっと、手を握る。

 

 

コンクォ

(片思いだったのっ!!

 それに、違う国の人だったし、

 それに、それに)

 

 そうね、魔獣とではなく、

 

 盗賊に襲われて、死んじゃったものね。

 

コンクォ

(いうなっ!!)

 

 仇人だもんね?

 

 殺した相手、

 

 片思いしてた仇人と、同族だもんね。

 

コンクォ

(いわないでっ!!)

 

 “片思いの人を殺した同族”を、

 

 好きになるなんて、

 

 苦しいだけでしょ?

 

 

オネスト

「うなされてる、

 さて、はて、

 “やり方としては”べたなんだろうけど。」

 

 コンクォの身体を抱え起こす。

 

 

 嫌な思い出だけでしょ?

 

 毎日毎日、エーテルリアクタを、

 

 沢山作ってくれって、

 

 戦争の為に造りたくないって、

 

 貴女、毎日言ってたじゃない。

 

コンクォ

(・・・)

 

 “殴るなよ?”

 

 ちっ、アタシは、貴女、

 

 貴女なの、

 

 なんで、あの仇人が好きなのよ?

 

コンクォ

(ふぇっ!?私、本当に好きなのっ!?)

 

 貴女ねぇ、私は、貴女だって、

 

 さんざん言ってるんだけど?

 

コンクォ

(・・・ぁ~)

 

 まったく、

 

 しばらくは、大人しくしてあげる、

 

 でも、仇人と、結ばれるって、

 

 アルヴの民の歴史上、

 

 “悲惨な結果しか”産み出せないのよ?

 

コンクォ

(・・・オネストなら、大丈夫)

 

 どこから、そんな自信が溢れるのよ?

 

 私は、貴女なのに、

 

 理解出来ないわ。

 

コンクォ

(小さくて可愛いって、

 言ってくれたもんっ!!)

 

 ・・・一度、幼女趣味って言葉、

 

 調べてみなさい。

 

コンクォ

(なんで?)

 

 貴女の為によ。

 

 

 小さな唇に、

 

 一瞬だけ、口づけをする。

 

オネスト

「起きてたら、

 殴られるよな。」

 

 

 

 

コンクォ

「に゛ゃ゛~~~っ!?」

 

オネスト

「え゛っ!?

 コンクォ起き」バチーンっ!!

 

コンクォ

「バカ~っ!!」

(起きてる時にしなさいよっ!!)

 

 



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引き金は戻らない


 トクソリン峠

 臨時会議場

トラヴァエル・レガルド
「では。」

リャン・ダオ11世
「本気なのだな?」

トラヴァエル・レガルド
「くどい、
 貴殿とは、2年待ったが、
 もう待てん、
 復興に関しては感謝するが、
 “タンデムリアクタ”製法の開示がなされない以上、
 最早言葉は不要。」

リャン・ダオ11世
「・・・そうか。」

トラヴァエル・レガルド
「せめてもの礼儀だ、
 貴殿が首都へ着くまでの間は、
 “侵攻しない”」

リャン・ダオ11世
「・・・まったく、
 難儀な性格だな。」

トラヴァエル・レガルド
「あんたもな?ダオ兄ぃ。」

リャン・ダオ11世
「この愚弟。」

トラヴァエル・レガルド
「・・・じゃぁな。」




 

 ファゼンディラ公国

 

 行政執行館・会議室

 

リャン・ダオ11世

「オネスト、すまん。」

 

オネスト

「・・・そう、ですか。」

 

コンクォ

「戦争、始まるのね。」

 

イストゥリア

「避けられないのか。」

 

ペガル

「現状、トクソリン峠に最も近い砦、

 プレザケ砦を最前線とし、

 ハルネキッヒ自治区守備隊、

 “テッラ・ゲイル”が40機、

 クジャク・改が、60機、

 計、100機を主軸として、

 “プルドゥチオーネ”を70機、

 予備大隊とし、

 迎撃を徹底させる。」

 

オネスト

「ハルネキッヒ自治区の東はどうなんだ?」

 

リャン・ダオ11世

「今は、国交制限しかしていないが、

 “食料品の輸出入のみ”に、限定して、

 こちらの戦争には“介入しない”

 などと言っている、

 疲弊した所を狙って来るのは間違いないだろう、

 それと、

 海なのだが、

 “航空戦艦”の完成間近だそうだ、

 水上ホバリング式シルエットナイト、

 “マレ・ゲイル”予定搭載機数、15機の完成を待ち、

 ディダットーラ帝国の海岸より“首都を法撃”

 短期間での決着を予定しているが、

 如何せん、戦争だ、

 長期化だけは避けたい。」

 

ペガル

「それと、オネスト、

 一つ報告があるんだ。」

 

オネスト

「そう言えば、

 プラタは?」

 

コンクォ

「そうだ、会長、じゃなくて、クーさんは?」

 

リャン・ダオ11世

「なんだ?まだ言ってなかったのか?

 こいつ、

 ペガル・コンタージョ・ヴェレーノは、

 プラタ・クラロ・デ・ルナ・エクラと、

 子供を成していてな、

 既に、5人もいるそうだ。」

 

二人

『は?』

 

ペガル

「すまん、コンクォが眠った後、

 数日置かないで、

 その、な、

 だから、

 “クーナ”は、参加出来ない。」

 

デュラント公爵

「そう言う訳だ、

 オネスト、お前には、

 ディサフィアンテ騎士団を兼任し、

 “新生大隊の大隊長”を務めて貰う、

 拒否権は無い。」

 

 

ディサフィアンテ騎士団・執務室

 

オネスト

「・・・まぁ、俺達二人も、

 人の事言えないか。」

 

コンクォ

「まぁ、そうね///」

 

 この二人も、婚姻届けを出し、

 

 夫婦としてオネストの実家から、海よりに家を建て、

 

 既に暮らし始めている、

 

 どうしても家を離れる事が多い為、

 

 ハウスキーパーを二人雇っている。

 

 その二人のアイデアから、

 

 “テッラ・ゲイルとマレ・ゲイル”を、

 

 新規量産機として、

 

 半年でロールアウト、開戦に間に合わせた。

 

 エーテルリアクタの生産に関しては、

 

 ファゼンディラ公国内の、

 

 アルヴの隠れ里、“ヘルム・ヴェッァ”の説得により、

 

 里同士を結んでいた隠しトンネルを開通、

 

 “オブリィオ・シェクレ”も、

 

 ハルネキッヒ自治区防衛の為に動き出していた。

 

 



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残る者、行く者


 ディダットーラ帝国

 トクソリン峠

ファナティクア・バガーチェ
「この度、私、
 ファナティクア・バガーチェは、
 トラヴァエル・レガルド陛下より、
 ファゼンディラ公国侵攻のに置ける、
 “指揮権を拝命された”
 全軍、ファゼンディラ公国の虫を蹴散らし、
 我が帝国こそ、
 この大陸の王者だと知らしめるのだっ!!」

『おぉ~っ!!』




 

フレデュリック・グランツ

「リッカルドっ!!

 説明しろっ!!」

 

リッカルド・ミゲル

「陛下より直接、拝命されたのだ、

 俺は、その現場に居たんだ、

 嘘じゃないんだ。」

 

アポストロ・オラーコロ

「アタシは嫌だよ、

 グランツ以外の指示は受けない。」

 

ソイレ・トレル

「私も、グランツ兄さんの指示に従う。」

 

レパルド・フォーゲル

「うん!絶対あんな奴の命令なんて、

 絶対聞いてやらないんだからっ!!」

 

 

「あの5人と、その賛同するグループは、

 如何なさいますか?」

 

ファナティクア

「離反か?

 やらせておけ、

 既に首都から、

 “新型機ディストリオーネ”が出立済みだ、

 あんな現地改修機なんぞ、

 役に立たんし、

 居ても、他の隊に悪影響を及ぼすだけだ、

 それに、“大司教の後ろ盾”は、

 既に無い、

 奴らにすがる所なんて、

 言わずともわかるだろうに。」

 

「なるほど、

 逆族を匿う国に、慈悲は必要ありませんからね。」

 

ファナティクア

「それに、陛下からも、

 あの5人は危険分子として、

 暗殺も許可されている、

 上手い事使って、消してしまおう。」

 

「は、了解しました。」

 

 

シャサール・ヘリック

「フレデュリック・グランツ、

 コレを“見聞き”して、

 どう行動する?」

 

フレデュリック・グランツ

「・・・アポストロ、

 お前は、平気か?」

 

アポストロ・オラーコロ

「えぇ、問題ないわ、

 二人も良いわね?」

 

ソイレ・トレル

「はい、兄さんと姉さんがいる所なら、何処へでも。」

 

レパルド・フォーゲル

「でも、私達の機体じゃ、

 “追いつかれちゃうよ?”

 ディストリオーネは、

 源素供給器搭載型で、

 並列リアクタなんだよ?」

 

シャサール・ヘリック

「機体に思いでは?」

 

フレデュリック・グランツ

「まぁ、無い訳じゃない、

 この2年で、愛着も沸いているし、

 “タンデムリアクタ”での通信で、

 助かって来た事実もある、

 置いては行けない。」

 

ソイレ・トレル

「私も、レイピエーレカスタムには、

 沢山助けられたし、

 無理もして来てくれた、

 出来る事なら、

 “綺麗に治してあげたい”」

 

レパルド・フォーゲル

「私も!私もっ!!」

 

シャサール・ヘリック

「・・・リッカルド・ミゲル氏、

 貴方は“残るのですね?”」

 

フレデュリック・グランツ

「リッカルド、殺されるかも知れないんだぞ?

 一緒にきてく「行きませんよ」おいっ!?」

 

リッカルド・ミゲル

「よくもまぁ意図も簡単に国を捨てられますねぇ?

 私は、国に陛下に忠誠を誓いました、

 ならば軍人として、

 守備隊の資金運用を任されたからには、

 それを、全うする事が本分だと思っていましたし、

 これからも、帝国に、陛下に、忠誠を誓います、

 だから、ここでサヨナラです、

 フレデュリック・グランツ、

 “これから起こる事は”

 なにも聞かされていませんし、

 見ても、現場に居合わせてもいません。」

 

 

シャサール・ヘリック

「では、

 “4人と4機”これでよろしいですね?」

 

 4人が静かにうなずく。

 

シャサール・ヘリック

「では、黒狼騎士団は、

 他の賛同する同志達を頼みます。」

 

「はっ、

 既に、“潜水艦”は、水中待機しています。」

 

シャサール・ヘリック

「では、

 今宵は“新月”月明りがありませんから、

 見失わないように、

 “私の機体に着いて来て下さい”」

 

 



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新月に吠えるは黒狼


トクソリン峠

「静かだな?」

「あぁ、首都から新型機、
 ディストリオーネって言う、
 やべぇ新型機がここに配備されるから、
 到着の明日を待つんだとよ。」

「ん?誰だ、こんな夜中に、
 偵察の交代にしちゃぁ、
 シルエットナイトを使わないだろ?」

「あれじゃねぇか?
 例のナーゲルタイラントの
 生き残りでも出たんじゃねぇの?」

「しゃれになんねぇよ、それ。」




 

フレデュリック・グランツ

「シャサール、

 どうなってんだ?こりゃぁ?」

 

シャサール

《余分な通信は控えて下さい、

 各機は、

 この“足跡”を、踏んで来て下さい、

 これが一番大事なのです》

 

レパルド・フォーゲル

《はぁ~ぃ》

 

ソイレ・トレル

《うぅ、眠たいです、姉さん》

 

アポストロ

《ソイレ、頑張んな》

 

フレデュリック・グランツ

「・・・シャサール、巡回のメィディウム隊だ、

 このままだと、進路が被るぞ?」

 

シャサール

《安心して下さい、

 “アレがこの隠密行動の要ですから”》

 

 

「あれ?

 フレデュリックの機体だ、

 お~い、フレデュリック、

 夜間偵察かなんかか~?」

 

シャサール

《普通に接して下さい、

 魔獣目撃の情報の元、夜間偵察だと》

 

フレデュリック・グランツ

「おぅ、

 どっかの馬鹿が、野ションしてたら、

 魔獣を見たとかほざきやがってよ、

 仕方ねぇから、

 俺らが出向いてんだよ。」

 

シャサール

《同行を求めて下さい》

 

フレデュリック・グランツ

「どうだ?肩慣らしに一緒に魔獣討伐いくか?」

 

「そうだな、小遣い稼ぎにはなるだろうし、

 分隊の必要はあるのか?」

 

シャサール

《全員で行きましょう》

 

フレデュリック・グランツ

「いや、全員で行こう、

 一人でおっ死ぬのだけはごめんだからな。」

 

「ははっ!ちげぇねえな!おっしゃ、

 お前ら着いて来い!」

 

 

フレデュリック・グランツ

《どうするんだ?》

 

シャサール

《このまま彼らと真っすぐ進んで海へ》

 

フレデュリック・グランツ

「なんでも、海から上がって来た魔獣らしくてよ、

 そいつ、

 したまんまシルエットナイトに乗りやがって、

 今、操縦席を洗ってるんだとよww」

 

「ぶはっ!?

 マジかよそれww」

 

フレデュリック・グランツ

「あぁ、

 おっと、海が見えて来たな。」

 

シャサール

《総員、合図と同時にしゃがんで下さい》

 

 

「それらしい痕跡は・・・おっと、

 確かに何かが引きずった跡があるな、

 おい、

 この引きずった跡」ごふっ!?

 

 姿が見えない機体が、

 

 メィディウム改の操縦席のみを、

 

 “沸騰させ”ナイトランナーを絶命させた。

 

フレデュリック・グランツ

「・・・殺したのか。」

 

シャサール

《・・・彼らは“帝国兵士”です、

 戦場、魔獣討伐で、戦死は当たり前です》

 

アポストロ

《・・・随分酷いやり方だね》

 

シャサール

《ディサフィアンテ騎士団、団長曰く、

 “戦争に卑怯も正義も在ったもんじゃない”と、

 言っていましたよ》

 

レパルド・フォーゲル

《え?》

 

ソイレ・トレル

《それって、

 オネストさんの事ですか?》

 

シャサール

《まもなく、我々の母艦が浮上します、

 速やかに機体を乗せて下さい、

 後ろには、貴方達に賛同し、着いて来た同志が、

 控えているのですから》

 

 





リッカルド
「グランツ、
 お前には色々言ったけど、
 俺も、一緒に行きたかった、
 だがな、
 “持ちすぎる力は”
 国を亡ぼすんだ、
 だから、
 “先に行って待っているぞ”」



「トクソリン峠に巨大な火の手が上がっています!!」

フレデュリック・グランツ
「なにっ!?」

シャサール
「リッカルド氏からの手紙です、
 トクソリン峠に火の手が上がってから、
 グランツさんに渡してくれと、
 言われておりましたので。」

フレデュリック・グランツ
「シャサールっ!!」

シャサール
「怒るなら、
 黙っていたリッカルドさんを、
 怒りに行って下さい、
 我々黒狼騎士団は、
 “リッカルド・ミゲル”から、
 依頼を受け、あなた方を、
 帝国から脱出の手助けと、
 その後の人権保障、
 生活の補助を頼まれています、
 時間です、
 水密扉を閉めます、
 出発です。」


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アルヴの意地

 
 夜が明けるのを見届け、

 リッカルドは、

 瓦礫に押し潰され、死んだ。
 
 ファナティクアを、

 道連れに出来なかった事を、

 悔やみながら。



 

ファナティクア

「副官っ!!おいっ!!

 誰でもいいっ!!

 この、破片を退けてくれっ!!」

 

 ディストリオーネ新規編制部隊

 

「なんなんだ、

 この有り様はっ!?」

 

 辺りは、吹き飛んだ瓦礫の山と、

 

 “背中が大きく損傷した”

 

 メィディウム改(源素供給器搭載)が、

 

 無数に、鎮座していた。

 

「全隊、生存者と、

 砦物資の損失を急ぎ調べよっ!!

 魔獣警戒を怠るなっ!!」

 

 

 まる1日を消費し、

 

 被害の全貌が見えて来た。

 

 事前配備されていた、

 

 メィディウム改は、

 

 新造6機を残し、

 

 200機近くが、

 

 “エーテルリアクタの

  マナ爆発的放出”により、

 

 ナイトランナー158名の命が奪われ、

 

 整備中の機体の側に居た、

 

 ナイトスミスにも、

 

 数十名の死傷者が出ていた。

 

ファナティクア

「ディストリオーネに被害は?」

 

「此方に被害は無し、

 エーテルリアクタも、

 新規生産ロットなので、

 スクリプト改竄の形跡は無し、

 恐らく、生産済みの旧ロットに、

 “事前に仕込まれていた”

 自爆用スクリプトが発動、

 この近辺の機体が、

 ほぼ同時に自爆、

 その引き金を、

 リッカルド執政官が引いた物かと。」

 

ファナティクア

「昨夜の偵察分隊は、

 帰って来ていないのか?」

 

「それが、

 砦より数キロの海岸にて、

 “操縦席が焼け爛れた状態”で、

 発見、ナイトランナーの死亡が、

 確認されました、

 一点に高温を集中され、

 “金属が沸騰した形跡が”

 調査に動向した、

 ナイトスミスによって判明しました。」

 

ファナティクア

「あの5人は?」

 

「リッカルドの死亡は確認済みですが、

 残りは、行方不明のままです。」

 

ファナティクア

「・・・不味いな、

 幾ら旧式機体のメィディウムでも、

 “我国唯一のタンデムリアクタ”を、

 積んでいるのだ、

 大至急、痕跡を探し、

 機体を回収、タンデムリアクタを、

 我国に持ち帰るのだ。」

 

「は、部隊編制が終わり次第、

 調査捜索隊と、

 このトクソリン砦守備隊に分け、

 行動を開始します。」

 

ファナティクア

「す、素晴らしい対応だな?

 貴殿の名前を聴いて置こうか。」

 

シュペリァン・フォーゲル

「シュペリァン・フォーゲルと申します、

 腹違いの妹が、

 行方不明で、家名に傷がつき、

 迷惑と、汚名を払拭するに当たり、

 志願にて、参加しております。」

 

ファナティクア

「フォーゲルか、

 成る程な、確かに払拭するには、

 功績が必要だ、

 良かろう、私の副官を頼みたい、

 どうだ?やってくれるな?」

 

シュペリァン

「は、有り難き御言葉、感謝致します、

 しかし、隊の評価もあります、

 “直衛隊”として、

 奴隷契約していると、

 隊にお伝え下さい、

 さすれば、

 ファナティクア司令官様の評価は、

 自ずと上がりましょう。」

 

ファナティクア

「成る程、

 わかった、だが、

 表向きは、だ、

 裏側では頼んだぞ?」

 

シュペリァン

「ファナティクア司令官の、

 仰せのままに。」

 

 



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手紙


ソイレ・トレル
「ぅ~・・・。」

レパルド・フォーゲル
「うゅ~・・・。」

アポストロ
「シャサール、
 まだ水上に出れないのかい?
 流石に参っちまうよ。」

シャサール
「後2時間で浮上出来る海域になります、
 我慢して下さい、
 “黒狼騎士団”でも、
 この潜水艦を嫌う者もおりますが、
 それに耐え、任務を遂行しているのです。」




 

フレデュリック・グランツ

「・・・確かに、シャサールを怒るのは、

 お門違いだったな。」

 

 

 親友へ

 

 間違いなく、この手紙が読まれている頃には、

 

 私は死んでいる事でしょう。

 

 この計画を思いついた、

 

 いえ、決心したのは、

 

 ほんの3日前ですから。

 

 我々のアルヴの民の里、シャルルアに赴き、

 

 “ファゼンディラ公国で使用されている”

 

 通信に関する情報と交換に、

 

 “現存する400個の

  エーテルリアクタの崩壊スクリプト”を、

 

 教えて貰ったのです、

 

 そして、

 

 私は、起爆用エーテルリアクタを受領し、

 

 トクソリン峠に戻って来たのです、

 

 そして、黒狼騎士団と協力し、

 

 “ナイトスミス”

 

 “ナイトランナー”

 

 “アルヴの民からの勇士達”で、

 

 約200個のエーテルリアクタに、

 

 “起爆用エーテルリアクタ連動スクリプトを構成”

 

 グランツ達が離れ、“箱舟”に乗る直前、

 

 起爆、ファナティクア諸共

 

 トクソリン峠を消し去るつもりでした。

 

 トラヴァエル陛下は焦って、源素供給器を大量に発注、

 

 エーテルリアクタを“数”で数えるようになっていました。

 

 止められなかった、

 

 南のメリダァエス国が、

 

 “ナーゲルタイラントの群れに喰い尽くされた”

 

 その一報が入り、メリダァエス国が、

 

 “ジャロウデク王国から強奪したティラントー”を、

 

 回収、その後直ぐに、

 

 “新生クシェペルカの反撃が飛び込んで来たのです”

 

 ますます、トラヴァエル陛下を止められず、

 

 ファナティクアの“ストランドタイプの量産成功”の、

 

 拍車が掛かり、

 

 この様な事態になってしまった。

 

 っと、箇条書きですね、これでは。

 

 もっと沢山あった筈なのに、

 

 いざ書くとなると、

 

 何も浮かばなくなります。

 

 でも、

 

 グランツ、貴方から一緒に行こうと言われても、

 

 ここに残り、

 

 陛下への忠誠を果たします、

 

 陛下へは、“暗殺を目論む用に情報を流して下さい”と、

 

 事前に言ってあります、

 

 大司教様は、“殺されたのです”

 

 その事実を“陛下”から直接聞きました、

 

 でも、変ですよね?

 

 なんで、陛下は大司教様が、

 

 ナーゲルタイラントの群れに襲われる前に、

 

 “殺されたのを知っていたのか”

 

 それは、ファナティクアが関わっていただろうと、

 

 陛下の推測でした、

 

 陛下自身も、

 

 奥方と、ご子息を、

 

 “ファナティクア・バガーチェ”の家に、

 

 匿わせていましたので、

 

 “表向きは”要人保護、

 

 “裏では”陛下を使って、

 

 戦争を商売にしていたのです、

 

 私個人では、この様な断片しか、

 

 調べられませんでした、

 

 もし、

 

 ファナティクア・バガーチェを殺せなかったら、

 

 グランツ、貴方に託します、

 

 陛下を、陛下の家族を、助けて下さい、

 

 国民に苦しい生活を強いている自責の念で、

 

 壊れてしまう前に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 追伸、いえ、

 

 これは、叶わない願いです、

 

 兄さん、どうして、

 

 黙っていたんですか?

 

 父親が違うだけで、

 

 どうして大司教様の孤児院に居たのですか?

 

 お母様は、教えてくれないまま、

 

 病によって息を引き取りました、

 

 どうして?

 

 兄さん、俺も、

 

 “一緒に進みたかった”

 

 ・・・でも、

 

 理由は何となくわかっています、

 

 お母様は、貴族の娘であり、

 

 その婿が俺の父、

 

 その父の友人、それが、兄さんの父、

 

 3人は、学生の時から、

 

 仲が良かったと、陛下から聞きました、

 

 陛下は、お母様達の後輩でした。

 

 ある日を境に、3人が行方不明になり、

 

 突然の退学届けと、

 

 父の友人の死が、学校に告げられたそうです。

 

 兄さん、

 

 最後まで呼ぶ事が怖くて、

 

 兄さんと言えなかった弟の我儘と、

 

 “その最初で最後の大博打”

 

 見ていて下さい、

 

 そして、“先に行って待ってます”

 

 お母様、二人の父上と、俺で、

 

 待っています、

 

 あ、ちゃんとアポストロさんと、

 

 ケッコン、子供を作ってから、

 

 こっちに来て下さいよ?

 

 おじさん呼びされるの、

 

 楽しみだったんですから!

 

 絶対ですよ?

 

 では、兄さん、

 

 フレデュリック・グランツへ充てる、

 

 リッカルド・ミゲルの手紙を、ここで終わります、

 

 “今日が新月”なのですから。

 

 





フレデュリック・グランツ
「知ってたよ、ミゲル、
 だから、友人として、
 お前と接しようと決めていたんだ、
 俺こそ・・・、
 ふらふらした兄で、
 済まなかったな、
 お前と兄弟だと、
 公言出来ずに、済まなかったな、
 俺の父は、
 “ジャロウデク王国の貴族”だったからな、
 わざわざ身分を隠してまで、
 ディダットーラ帝国に来ていたんだ、
 “嫁を探しに来てた”アホな親父だったよ、
 だからかな、
 お前の父、エリュブシン家の次男と、
 気があったそうだ、
 二人して、同じ人を愛した、
 そして、母さんはそれに応えようとした、
 それがばれて、
 学校から一時だけ、ジャロウデク王国へ、
 俺が生まれて、
 帰って来た矢先に、
 “魔獣に襲われ”
 親父は囮となって、
 母さんと、お前の親父を逃がして、
 そこで死んだんだ、
 そして、俺は大司教の親父へ、
 母さんと、お前の親父は、
 母さんにお前を宿して、
 リッカルド家へ戻った、
 ったく、
 陛下のヤツ、
 大司教親父から、
 黙ってろって、言われてたのにな、
 馬鹿野郎、
 ばかやろうだよ、お前は・・・、
 ばかやろう・・・、ミゲル、
 ばかやろう・・・。」

アポストロ
「そっか、
 色々あったんだね。」

フレデュリック
「・・・聞かれちまったのか。」

アポストロ
「あぁ、だけど、
 アンタがしっかりしなきゃ、
 アタシは、嫁に行かないからね?」

フレデュリック
「おぃおぃ、そこは慰めて、
 その勢いで、だろうに。」

アポストロ
「やなこったい、
 ウチは、アポストロ・オラーコロ、
 山賊と海賊の先祖を持つ、
 代々賊を率いて来たんだ、
 ふらふらグランツじゃ、
 誰も着いてこないよ。」

フレデュリック
「ははっ、確かに、な。」

アポストロ
「・・・そんな強い眼差し、
 出来たんだねぇ?」

フレデュリック
「・・・なぁ、これだけは聞いてくれ、
 “俺より、先に死ぬな”」

アポストロ
「なら、守ってくれよ?
 旦那候補様。」


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虚実と事実


 大抵の国々は、

 エーテルリアクタを取得する為に、

 “一つのアルヴの民の隠里と交易、国交を持つ”

 ただ、ここ“サビオ大陸”では、事情が違う。

 一つの国に、

 複数のアルヴの民の隠里がある場合が多いのだ。




 

ハルネキッヒ自治区・プレザケ砦

 

 対魔獣・対侵略迎撃用要塞建設が、

 

 着々と進んでいた。

 

フレデュリック

「・・・おぃ、シャサール、

 ここ、プレザケ砦だよな?」

 

シャサール

「どう見ても、要塞ですねぇ、

 出立以前の風景とかけ離れています、

 これはどういう事なのですか?

 ディサフィアンテ騎士団長。」

 

オネスト

「シャサール、

 これにはちょっとした、問題があってな、

 ディダットーラ帝国の、二つの隠里、

 “イッジオーネ”と、“シャルルア”の、

 “建築馬鹿同士”で、

 意気投合してな、

 ここ、プレザケ砦に、

 アルヴの民の避難民も受け入れている、

 今、俺のノートを見ながら、

 要塞砲を作ってる最中なんだ。」

 

フレデュリック

「イッジオーネと、シャルルアからもか、

 ったく、

 トラヴァエルの奴、

 なんて言って、協力させようとしたんだか。」

 

オネスト

「久しぶりですね、フレデュリック・グランツさん、

 アポストロ・オラーコロさん、

 ソイレ・トレル嬢、

 レパルド・フォーゲル嬢、

 綺麗になりましたね。」

 

レパルド・フォーゲル

「へぁっ!?

 わっ!?わたしがきれいっ!?」

 

ソイレ・トレル

「ばっ!?

 ばかなことはおっしゃらないでくださいませっ!?」

 

フレデュリック

「オネストっ!!

 貴様には絶対やらんぞっ!!」

 

オネスト

「そこは、まぁ、

 コンクォ次第ですね、

 今は、フレデュリックさん達の機体を、

 “現地改修”し始めたので、

 おそらく三日は、動けないでしょうけど。」

 

アポストロ

「へ?

 そんな資材に余裕なんて無かった筈なんだろ?」

 

オネスト

「表向きは、ですよ、

 情報は常に新鮮を求められるので、

 ペガルには、

 “月月火水木金金”で、休日返上させ、

 どんどん仕入れて貰っていますから。」

 

4人『黒い、黒いオーラが見える。』

 

オネスト

「キノセイデスヨ。」

 

シャサール

「団長、

 南のディダットーラ帝国は兎も角、

 東のヴァゥヴァイネン帝国の

 動きはどうなのでしょうか?」

 

オネスト

「つい、4日前に、

 無条件降伏セヨ、と、

 攻めて来てます、

 まぁ、家の国民が黙っている訳が無いので、

 “試製・農耕用フェメンターレ”で、

 見事、迎撃に成功、

 ヴァゥヴァイネン帝国の新型機を鹵獲、

 複数の捕虜も捕らえています。」

 

フレデュリック

「新型機だと?」

 

オネスト

「おそらく、ディダットーラ帝国の上、

 南の国が強奪したとされる、

 ティラントーを、

 ヴァゥヴァイネン帝国も掴んでいたのか、

 一枚噛んでいたのか、

 “ストランドタイプクリスタルティシュー”が、

 確認済みです、

 まぁ、自ずと持久力に難点がありそうな機体ですね。」

 

レパルド・フォーゲル

「あ、あの、

 オネ・・・おじ、

 団長さん!

 農耕用のフェメンターレって?」

 

ソイレ・トレル

「オネストさん!

 その農耕用シルエットナイト、

 気になりますっ!!」

 

オネスト

「・・・ハッ!?

 そ、それなら、

 ウィリディゥス・メリッタに任せるよ、

 メリッタさん、

 この二人に農耕用シルエットナイトの

 見学を許可してくれますか?」

 

ウィリディゥス・メリッタ

「ん~?

 二人共、

 “手を見せな”」

 

ソイレ・トレル

「え?」

 

レパルド・フォーゲル

「はい。」

 

ウィリディゥス

「・・・お前はこっち、

 アンタは、

 “乗せられない”

 悪いね。」

 

レパルド・フォーゲル

「えっ、どうして?」

 

ウィリディゥス

「団長、

 この子、しっかり守ってやんな、

 今後、一番辛い立場になるだろうよ。」

 

レパルド・フォーゲル

「ちょっ!?

 一体なんなのですかっ!?」

 

ソイレ・トレル

「レパルド?口調が変だよ?」

 

レパルド・フォーゲル

「答えて下さい!!

 ウィリディゥス・メリッタさんっ!!」

 

ウィリディゥス

「・・・あんた、

 “貴族の娘だろう?”

 それに、

 マメや、タコが残って居る、

 “人を殺す為に鍛錬した跡だ”

 そんな子を、

 “人を生かす為のシルエットナイト”には、

 乗せられないね、

 “清算が終わるまでは絶対にね”」

 

ソイレ・トレル

「え?だって、レパルドは、

 私達と同じ孤児院に・・・。」

 

フレデュリック

「ソイレ、それは。」

 

アポストロ

「グランツ、あんた、

 知ってたんだね?

 どうして今まで黙ってたんだい?」

 

フレデュリック

「アポストロ、

 知ったのは、つい先週だ、

 元々、ミゲルに調べて貰ってたんだ、

 二人の両親が生きているのかを、

 まぁ、

 ソイレは、本当に普通の家族で、

 “口減らしの為”

 レパルドは、

 “ディダットーラ帝国・穏健派代表の孫娘”

 しかも、

 “腹違い”って言うお荷物付だった、

 ミゲルの資料に、

 “フォーゲル家の裏事情も載っていたからな”

 レパルドを、隠すしか無かったんだろうよ、

 それに、

 フォーゲル家の長男なる野郎が、

 ファナティクア・バガーチェの

 副官として着任予定だったから、

 侵攻軍に居るのは、間違いないだろう。」

 

レパルド

「っ!」

 

オネスト

「おっと、

 逃げないでくれ、レパルド嬢、

 ここに居て貰わねば、

 “母君からの頼み事を裏切ってしまう”」

 

レパルド

「母様になにがあったのっ!?」

 

コンクォ

「・・・知ってどうするの?」

 

レパルド

「コンクォ姉さまっ!?」

 

オネスト

「もぅ改修終わったのか?」

 

コンクォ

「そんなわけないでしょ?

 スクリプト構成が終わったから、

 骨組み強化、装甲取り付けぐらい、

 私のチームで出来るから、

 休憩がてら、こっちに来たら、

 この惨状って事。」

 

オネスト

「そうか、

 ソイレ嬢、

 レパルド嬢を、悪く言わないでくれ、

 これに関しては、

 キミ一人もがいても解決できない事柄なんだ。」

 

ソイレ

「・・・貴族、なんだ、レパルド。」

 

レパルド

「ソイレ・・・ごめんなさい!!

 ごめんなさい!!ごめんなさい!!

 ごめんなさい!!

 許してなんて言わないからっ!!

 貴女まで離れてしまったら、

 私はっ!!私は・・・私は、

 また、ひとりぼっちになってしまう。」

 

ソイレ

「ざんねん、ひとりぼっちには成れないし、

 させないから、

 私、

 レパルド・フォーゲルの友達だもん、

 私が泣いてた時、

 涙を拭ってくれた女の子は、

 レパルド・フォーゲルだもん、

 貴女はだれ?

 “貴族?”違うわよね?

 レパルド・フォーゲル、

 私の友人、

 ソイレ・トレルの、

 大切な友人、親友なんだもの。」

 

 





オネスト
(あの~、
 俺、動けないんですけど?)

コンクォ
(我慢なさい)

アポストロ
(ん?おっ!?おぃっ!?)

フレデュリック
「ちょっ!?
 ソイレ!?レパルド!?」

レパルド
「好き、ソイレ、
 貴女を愛してるわ。」

ソイレ
「ふふっ、
 先に言われちゃったわね、
 私も好きよ、
 レパルド、愛してるわ。」

オネスト
(・・・だから、俺、動けない)

コンクォ
「二人共、
 とりあえず、
 私の旦那を離してくれないかしら?」

二人『え?ケッコンしてたのっ!?』

オネスト
「・・・おぅ。」

コンクォ
「うん、ほら、
 “エンゲージリング”
 オネストが、御揃いで、
 造ってくれたの。」

二人『オネストさん!!私達のも造って下さいっ!!』

オネスト
「ぇ~・・・。」
(フレデュリックが、
 なんか崩壊してる・・・)



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ドュリューサンド砦


 ハルネキッヒ自治区には、

 南のプレザケ砦、

 西のハイヴェームア丘陵砦、

 東のドュリューサンド砦がある。

 色々な意味で、

 珍しい砦でもある。



 

オネスト

(フレデュリック達は、

 プレザケ砦に置いて来て正解だったな)

 

 と、つい思う。

 

 目の前に広がる、

 

 “7色に色分けされた砂の山”が、

 

 広がっていた。

 

コンクォ

「あっつぃ。」

 

オネスト

「だな、

 “移動指揮所”に戻ろう。」

 

 

 砂丘だらけなので、

 

 今回は、フェメンターレを持って来ていない。

 

オネスト

「さて、

 ペガル、

 この近辺の探索、調査、

 ヴァゥヴァイネン帝国の内部情報、

 ありったけ頼む。」

 

ペガル

「・・・この、7色の砂は、

 それぞれ特性があり、

 “重量”で、その特性が分かれます。」

 

オネスト

「ん?もしかして、

 フェメンターレでも運用出来た?」

 

ペガル

「はい、

 赤、土色、橙は、重量級シルエットナイトでも、

 問題ない強度を持っていますが、

 “接地した瞬間は保てます”

 しかし、継続した支持強度は見込めない用です。」

 

コンクォ

「白、黄色、青は?」

 

ペガル

「そちらは軽量級シルエットナイトなら、

 こちらは平均30秒ほど、支持強度も見込めます。」

 

 

ペガル

「あの色に関して、お聞きにならないのですか?」

 

二人『え?あの“表現できない闇黒色”の事?』

 

ペガル

「はい、

 アレは“シルエットナイトの装甲を腐食させる”

 非常に厄介な性質を持っています、

 最悪、シルバーナーヴさえ腐食、

 行動不能に陥ります、

 対策としては、

 踏み込まないのが前提かと。」

 

オネスト

「マレ・ゲイルを量産して置くべきだったのか。」

 

コンクォ

「それには、規格部品の増産工廠を変更しなきゃダメよ、

 それに、

 “採掘待ち”の部品も溜まってるから、

 量産するにしても、

 半年は待って貰わないと。」

 

オネスト

「うぬぅ、手持ちで何とかするしかないのか。」

 

 手持ちは、

 

 背部機関を、

 

 超高回転ターボファン式ホバリング機関に変更し、

 

 名称も、回転粒子圧縮噴射式とし、

 

 風の魔法と、“強制吸排気”に置ける反作用で、

 

 20cm程浮上し、ロータリーボールで、推進、

 

 タンデムリアクタをフル活用前提になった、

 

 クジャク・改、20機、

 

 脚部、腰、背部に、この回転粒子圧縮噴射式機関を、

 

 合計8基搭載し、

 

 タンデムリアクタと、並列リアクタを搭載、

 

 一機にエーテルリアクタを3つ搭載する事で、

 

 持続力と、瞬発力を両立させたが、

 

 生産コストが、

 

 デュファンス・改6機分と、

 

 かなり高く付いている事が今後の大きな課題の、

 

 テッラ・ゲイル、20機。

 

オネスト

「グラーフ・ツヴァイの進捗は?」

 

コンクォ

「砂塵防御対策は既に終わらせたわ、

 吸気部分に、フレメヴィーラ王国から、

 パクった情報を元に、

 “ふぃるたー”なる物を再現、

 9割方の防御を確認したわ、

 でも、

 定期的な掃除をしなきゃ、

 いずれ目詰まりを起こして故障するのは、明白よ。」

 

オネスト

「パクったって・・・、

 向こうにも、

 そう言う機関があるだろうに、

 どうやって、情報を持って来たんだ?」

 

ペガル

「そ、その件なのだがな。」

 

コンクォ

「ペガル、遺言は聞いてあげる。」

 

オネスト

「まさか・・・。」

 

ペガル

「“ノート”のコピーを、

 銀凰騎士団、団長、

 彼に渡して、直接そのコピーを、

 受け取ったんだ、

 何時かお話しましょう、と、

 ちょ、それは・・・。」

 

オネスト

「アァ、コレカ、

 “この世界にも居たんだ”

 拷問ニハ、

 “最強の恐怖”ガ一番ダカラナ。」

 

カサカサカサ・・・

 

 





 奴らは飛ぶんだ、

 真っすぐに、飛んで来るんだ。

 来たっ!?

 ヤツだっ!!

 こんなヤツが、

 居て良い訳がないんだっ!!

 いやぁあああああっ!!

コンクォ
「この、“ごきぶり”
 家の里に放り込もうかしら?」

オネスト
「止めとけよ、
 いくら虐めて来るヤツが住んでるからって。」

コンクォ
「環境に適応出来るか、気になるのよ。」

オネスト
「どっちかって言えば、
 お前の里は、
 “寒いから”
 逃げ出すんじゃないか?」

コンクォ
「それもそうね。」



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式典?いえ、軍隊です。


ドュリューサンド砦・野営地

オネスト
「なぁ、
 ペガル、アイツらのシルエットナイトってさ。」

ペガル
「式典用・・・でしょうか?」

コンクォ
「確かに、
 “オオカミっぽい”4脚シルエットナイトは、
 気になるわね、
 どう言う構造なのかしら?」

オネスト
(記憶が間違ってなきゃさ、
 アレ、ツ〇ンカー〇ンのお面だし、
 4脚は、ジャッカル、
 前屈みのシルエットナイトは、
 マントヒヒか、
 って事は、サルのモーションで、
 戦う事を想定しなきゃならんか)




 

メサフニタ・ゼルエラ

「そこ!!

 隊列が乱れているぞ!!」

 

トクソリィウス・タゲル

「ゼルエラ?

 彼らは新入りよ、

 訓練だって、ロクにしないで連れて来たんだから。」

 

メサフニタ・ゼルエラ

「何を言うタゲル!

 我らヴァゥヴァイネン帝国の騎士足る者、

 隊列如き、こなせずして、

 なんだと言うのだ!!」

 

スヴァラディクス・モンゲル

「ゼルエラ司令官様、

 申し訳ありませんが、

 我がヴァゥヴァイネン帝国自体、

 “200年程”戦争をしていないのです、

 ましてや、

 新型のシルエットナイトの完熟訓練もままならないまま、

 ここまで進軍してしまった以上、

 “隊列は兎も角”

 戦力として加算出来るのも怪しいのです。」

 

メサフニタ・ゼルエラ

「っ!

 貴様、そんな事はわかっておる!!

 だから、今完熟訓練をさせ、

 進撃をだな!!」

 

ゴードン・グランディストーレ

「ゼルエラ殿、

 先ずは野営準備を願います、

 司令官足る者、

 先ずは兵士達をねぎらわねば、

 進撃すら出来ませんぞ?」

 

メサフニタ・ゼルエラ

「ふむ、グランディストーレが言うなら、

 致し方あるまい、

 全軍、野営準備を開始せよ!!

 休息をとり、

 進撃に備えるのだ!!」

 

 

トクソリィウス・タゲル

「ゴードン様、助かりました、

 あのような強行でここまで脱落者が居なかったのは、

 ゴードン様の一括があってこそです。」

 

ゴードン・グランディストーレ

「そう謙遜するな、タゲル、

 あの馬鹿僧を上手くあやしておるわ。」

 

スヴァラディクス・モンゲル

「そうね、タゲルが居てくれなかったら、

 私のような突然拝命された指揮官では、

 威厳の欠片もないから。」

 

ゴードン・グランディストーレ

「モンゲル、キミも謙遜するな、

 不慣れな大軍の指揮、

 つい2週間前に拝命された者の指揮では無い、

 どこかで、習っていたのかい?」

 

スヴァラディクス・モンゲル

「いえ、

 私の実家は、

 “放牧民”ですので、

 “オオカミ役を複数名決め”

 羊の放牧の容量でなんとか。」

 

ゴードン・グランディストーレ

「ぶははははっ!?

 羊かっ!?

 ぐははははっ!?

 これは、一本取られたなぁっ!!」

 

スヴァラディクス・モンゲル

「もぅ///そんなに笑わないで下さいっ!!」

 

 

ヴェニゥス・バロン

「マトゥァヒヒの防塵は念入りに掃除しろ、

 ジャッカルアは、脚部の重整備、

 ハルガダータは、

 式典装備から、

 戦闘装備に変更、

 明日には戦闘かもしれない、

 大至急、始めてくれ。」

 

ゴードン・グランディストーレ

「バロン、新兵、新型はどうかね?」

 

ヴェニゥス・バロン

「正直、未知数ですね、

 どれだけ戦闘に耐えれるか、

 兵士の負担がどれだけ軽減出来るのか、

 “操縦席の温度管理”も、

 行軍中では、調整仕様が無かったので、

 これからです、

 全機、戦闘前に間に合わせたいですが、

 正直、難しいです。」

 

ゴードン・グランディストーレ

「済まん、

 出来るだけの調整を頼む。」

 

ヴェニゥス・バロン

「了解です。」

 

 





ペガル
「これが、写撃珠に記録、
 紙に起こした、
 ハルガダータ、
 ジャッカルア、
 マトゥァヒヒです。」

オネスト
(ますます、式典用、
 ジャッカル、マントヒヒにしか見えない)
「大体の予想は出来るな、
 ハルガダータは、エーテルリアクタを1基、
 ジャッカルアは、2基、
 マトゥァヒヒも2基と想定して、
 直進、斜進機動に適してるのは、
 ジャッカルア、
 ジャンプ、引っ掻き動作、
 パワー重視は、マトゥァヒヒだな、
 ハルガダータは、
 式典用装備から換装中か、
 これは標準機として判断しよう、
 法撃杖と、“シャムシール”か、
 側面からの攻撃に注意を促すか、
 コンクォ、
 ジャッカルアの・・・。」



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機体と人物・その3

コンクォ
「ねぇ、
 この作者は頭大丈夫なの?」

オネスト
「その大丈夫じゃない彼に、
 書かれている俺達は、
 もっと大丈夫なのか?」

コンクォ
「ぁ~・・・。」



 

 ファゼンディラ公国

 

・クジャク・改

 

 反重力エンジンの問題が判明し、

 

 “地域ごとに”

 

 飛行出来る高度が変わってしまう事が判明、

 

 突然、高度が上がったり下がったり、

 

 ナイトランナーで対処しきれなくなり、

 

 それを解決する為に、

 

 “ハルネキッヒ自治区内鉱山”から、

 

 産出される重金属を、

 

 “削り出し製法”にて、

 

 超高回転ターボファンを作成、

 

 それを、“6枚重ね”風の魔法で、一点に風を集中、

 

 辛うじて20cm浮上出来た。

 

 その結果、クジャクも、総数100機を越えてから、

 

 量産機のリストから除外、ワンオフ使用へ変更されつつある。

 

・テッラ・ゲイル

 

 直線的なデザインを取り入れ、

 

 “スティレット風味に仕上がっている”

 

 しかし、本編でも説明した通り、

 

 エーテルリアクタを実質3基搭載、

 

 デュファンス改換算6機と、

 

 量産機にしては、かなり高価になってしまった、

 

 8基の回転粒子圧縮噴射式推進機で、

 

 約40mまで高度を確保し、空中戦闘を30分は出来る。

 

 各パーツは規格生産が進んでおり、

 

 民間への払い下げも検討に入れている。

 

・マレ・ゲイル

 

 フェメンターレの上半身を用いて、

 

 ジャンプユニットを廃し、

 

 脚部を全て、大型回転粒子圧縮噴射式推進機を7基、

 

 姿勢制御用中型回転粒子圧縮噴射式推進機6基で、

 

 バランスをなんとか取っている、

 

 タンデムリアクタを並列配置し、

 

 大型回転粒子圧縮噴射式推進機用タンデムリアクタを2基、

 

 これもまた、エーテルリアクタを8基積む、

 

 “非常に高価な量産機”になってしまった。

 

 しかし、その馬鹿力は尋常では無く、

 

 ナーゲルタイラントの群れにぶっ放した要塞砲を、

 

 “単機”で運用出来るほど。

 

・シャサール・ヘリック♀

 

 黒狼騎士団、団長。

 

 要人救出、暗殺を主目的とした、

 

 ペガルとは違い、オネスト専属の部隊。

 

 どうしてオネストに仕えるのかは。

 

 シャサール・ヘリック

「私の言動を個人の自由だと言ってくれ、

 “そう言う女性を好む人も居る筈です”と、

 ならば、側室に如何ですか?と、聞いても、

 “コンクォ次第かな”と、はぐらかされました。」

 

 ぼん、きゅ、ぼん、の、超モデル体型で、

 

 褐色美人。

 

・ウィリディゥス・メリッタ♀

 

 農耕用シルエットナイト、運用責任者で、

 

 フェメンターレに、“ツナギ”を着せ込み、

 

 腰まで浸かっても、活動出来る簡易改装をしただけ。

 

 非武装ではあるが、馬鹿力は健在、

 

 巨石を投げたり、巨木を根っこから、

 

 引っこ抜く事も出来る。

 

 相手の手のひらを見て、乗せて良いか判断する。

 

 悪魔で、彼女の判断で決める。

 

 ハルネキッヒ自治区

 

・プルドゥチオーネ

 

 これは、FAでも正式量産機として、

 

 生産されている、“カトラス”の、

 

 スラスタ配置を再現、

 

 腕部のシールドは、小型積層装甲板とし、

 

 法撃杖のマナストックとしている。

 

 エーテルリアクタを並列配置し、

 

 背部は、作戦、状況に応じて、

 

 “換装出来る”バックウェポンユニットを搭載、

 

 大剣、大型法撃杖、連装法撃杖、

 

 ランス、長剣、メイス、回転粒子圧縮噴射式推進機など、

 

 バリエーション豊富で、工作機械も搭載でき、

 

 野営設営にも一役買っている。

 

 

 ディダットーラ帝国

 

・ディストリオーネ

 

 エーテルリアクタを2個搭載し、

 

 源素供給器を搭載し、

 

 瞬間的な力は、フェメンターレを上回る厄介な機体、

 

 見た目は、

 

 “ヴァイスハイト”の、左右反転、

 

 頑丈さもさることながら、

 

 背部の砲身型法撃杖から繰り出される法撃は、

 

 大型盾を破損させる威力はあるが、

 

 連発には向かない。

 

 腕部の大型法撃杖も連発は効かないが、

 

 威力はフェメンターレを損傷させる、

 

 当たり所が不味いと、大破してしまう威力はある。

 

 欠点は“持久力が無い”

 

 

 ヴァゥヴァイネン帝国

 

・ハルガダータ

 

 ツ〇ンカー〇ンのお面を被り、

 

 200年前から何も変わっていない機体、

 

 式典用装備が通常で、戦闘時はお面を外し、

 

 “シャムシール”曲剣を装備し、法撃杖を1本持つ。

 

 近年、源素供給器を搭載したが、

 

 操縦席の温度調整に手間が掛かっており、

 

 胸部装甲は、布張り部分もある。

 

・ジャッカルア

 

 姿をキンイロジャッカルに模しており、

 

 4脚型シルエットナイト、

 

 ジャッカルと同じモーションをこなせるが、

 

 噛みつき動作は、操縦席が物凄く揺れるので、

 

 ほとんど使われていない。

 

 走る速度はかなり早く、

 

 慣れているナイトランナーだと、

 

 “崖から崖”を、飛び越える事も出来るらしい。

 

 機体コストは、ハルガダータ3機分と、

 

 それなりの低コストを実現している。

 

 装甲部分が少なく、防御面に問題がある。

 

・マトゥァヒヒ

 

 マントヒヒの姿を模して造られており、

 

 引っ掻き動作、ジャンプ、

 

 猿としての動作を再現出来る。

 

 しかし、ジャッカルアより燃費が悪く、

 

 生産コストも割高であり、

 

 武器は持たない、

 

 “腕その物”が武器であり、

 

 凶悪な爪を装備し、シルエットナイトを引き裂く。

 

 ただし、現状は完熟訓練が終わっていない為、

 

 その性能を引き出せるナイトランナーが、

 

 どれだけ居るのかは不明。

 

・メサフニタ・ゼルエラ♂

 

 ヴァゥヴァイネン帝国軍、

 

 ハルネキッヒ自治区侵攻軍司令官として、

 

 3週間前に拝命されたばかりで、

 

 “演習では負け無し”だが、

 

 実戦経験はゼロ。

 

 叔父に、ゴードン・グランディストーレがいる。

 

・ゴードン・グランディストーレ♂

 

 侵攻軍のオブザーバーとして同行、

 

 メサフニタ・ゼルエラの叔父である、

 

 今回の侵攻軍では数えるぐらいの、

 

 “実戦経験者”であり、全体のまとめ役。

 

・トクソリィウス・タゲル♀

 

 立場上、副指令だが、

 

 小隊長から、急に拝命された為、

 

 四苦八苦の毎日を送っている。

 

 ゼルエラに余り良く思われていない為、

 

 怒らせない用に行動するので手一杯。

 

・スヴァラディクス・モンゲル

 

 新兵旅団指揮官として、

 

 この2週間前に拝命されたばかりの、一兵卒。

 

 新兵達を、“放牧民で培った”

 

 羊の放牧経験から、

 

 複数名を“オオカミ役”とし、

 

 旗の上げ下げ本数で、

 

 隊列の崩壊を未然に防いでおり、

 

 “砂漠の行軍で脱落者を出さない偉業”を、

 

 成しているのだが、本人にその自覚は無い。

 

 





ヴェニゥス・バロン
「まて、俺は?」

作者
「影で支えるナイトスミス、
 男、イケメン、でもドワーフ、
 シルエットナイトを大事にしない
 ナイトランナーには容赦しない。」

ヴェニゥス・バロン
「他は?」

作者
「追々。」

ヴェニゥス・バロン
「え?」


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砂獣降臨


ゴードン・グランディストーレ
「タゲル、モンゲル、
 野営の設営はどうかね?」

トクソリィウス・タゲル
「こちらは訓練の中である程度こなしてましたので、
 なんとか形になっています。」

スヴァラディクス・モンゲル
「こちらは夜までには何とか形に出来ます、
 “夜間の冷え込み”は、
 誰しもが身に染みていますから。」




 

オネスト

「どうだ?コンクォ。」

 

コンクォ

「ん~♪きもち~♪」

 

オネスト

「俺は少し寒いがな。」

 

 砂漠の夜は、

 

 地球でも、マイナス20度にもなる。

 

ペガル

「オネスト、

 気がかりな情報が入った。」

 

オネスト

「ん?

 “嵐でも来るのか?”」

 

ペガル

「なんだ、気づいてたのか。」

 

オネスト

「これでも、農家出身だからな、

 “風の匂い”と、“雲”

 後は、

 “削り取られたような跡”から、

 この近辺では、

 “濁流”が起こった形跡がある、

 ただ、砂漠である以上、

 水が直接的な原因ではない可能性がある。」

 

ペガル

「・・・魔獣か。」

 

コンクォ

「そうだ、

 ペガル?ここの砦に文献とか残って無いの?

 調べれば、なにかわかるかも。」

 

ペガル

「そう言うと思って、移動指揮車に準備してある。」

 

 

スヴァラディクス・モンゲル

「・・・ん?」

 

トクソリィウス・タゲル

「モンゲル?どうしたの?」

 

スヴァラディクス・モンゲル

「え?うん、

 “風が匂うの”

 羊達が怯えて、

 暴れ出した時とおんなじ匂い、

 “あの砂獣”を見た時と、おんなじ。」

 

トクソリィウス・タゲル

「ゴードン様に連絡して来るっ!!」

 

 

オネスト

「・・・不味いな。」

 

コンクォ

「うん、私もエーテルの流れが、

 なんか乱れてる、

 そんな感じ、良く無いのが近づいて来る。」

 

ペガル

「既に搭乗と、

 防塵対策防御は済んでいる、

 指揮車も、直ぐに動ける。」

 

オネスト

「コンクォ“黒雷”を準備してくれるか?」

 

コンクォ

「え?プルドゥチオーネの雛形を?」

 

オネスト

「フル装備で頼む、

 また、後ろに乗ってくれるな?」

 

コンクォ

「ぇ~・・・またやるの?」

 

オネスト

「砂塵防御対策はしてるけど、

 “武器リミッター”を、かけていないだろ?」

 

コンクォ

「ぁ~・・・そう言えば。」

 

ペガル

「テスト運用の時、

 “山一つぶった切った”あの事件か、

 新たな鉱石の発見に繋がったから、

 不問にされたけど、

 追放か、処刑がいい所だったんだぞ?」

 

オネスト

「・・・ペガル、

 全軍、砦を離れ大至急、第二拠点ダコズーヴァ砦へ撤退、

 嵐が来る、

 それに、あの黒色の砂が、

 どうして一番下に積もっているのかも気になる、

 ハルガダータのフレーム、装甲の色と、

 幾つか符合する物がある、

 もしかして、

 “かつて、ここに居たハルガダータ”の、

 残骸では無いか?と、推測してるんだが、

 コンクォ、どう思う?」

 

コンクォ

「ヤバい、

 なんか来るよっ!!」

 

 

ガンガンガンガン!!

 

「砂獣だぁああっ!!」

 

ゴードン・グランディストーレ

「ヴァゥヴァイネン帝国軍、応戦用意!!

 誰でも良い、ゼルエラを叩き起こして来いっ!!」

 

 

「ヴァゥヴァイネン帝国の警鐘を確認っ!!

 双眼鏡にて、“正体不明の魔獣を確認”!!

 後方にっ!?

 “砂の竜巻を確認っ!!”

 色は、黒っ!!

 黒い竜巻が複数乱立していますっ!!」

 

オネスト

「全軍、緊急撤退っ!!

 ダコズーヴァ砦へ、全速力で駆け抜けろぉっ!!」

 

 




 
 赤く光る瞳に、

 獅子の容姿を真似た姿、

 翼を生やし、

 黒い砂塵を吐き出し、

 “黒い竜巻を意のままに操る”

 それが、砂獣“サンドゥリュオン”

 オス4頭、メス6頭、個体4千から、5千、

 “魔獣には珍しい連携を得意とする魔獣である”

 この魔獣が通った跡は、“砂しか残らない”

 黒い砂に溶かされるシルエットナイト、

 魔獣に喰われ、亡骸は腹の中へ、

 別名“サンドタイフーン”とも。



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選択一つで・・・

 
メサフニタ・ゼルエラ
「一体何事だっ!?」

「緊急っ!!
 砂獣ですっ!!
 規模、“キント”」

メサフニタ・ゼルエラ
「なっ!?5師団規模だとっ!?」




 

オネスト

「ペガル、状況は?」

 

ペガル

《望遠越しだが、

 相当焦っているぞ、

 バラバラに動いて、っ!

 また一つ喰われたぞ》

 

コンクォ

「大まかなリミッターは出来たわよ、

 ったく、

 “わたあめ”がなかったら、

 また寝ちゃってるわよ?」

 

オネスト

「黒雷に、いつ積み込んだんだ?」

 

コンクォ

「手持ちだけよ、後二つしかないわ。」

 

ペガル

《最近、砂糖の消費が激しいと思ったら、

 コンクォだったのか》

 

オネスト

「あぁ、俺が“わたあめ”を、教えたからな、

 おかげで俺の財布が厳しいよ。」

 

コンクォ

「え?」

 

オネスト

「この砂糖は高いの!

 ましてや国内生産するには、

 “土壌改革”から始めなきゃいけないから、

 これは輸入品、つまり、国家予算からは出せないの!

 悪魔で、俺の給料から“天引き”して、

 輸入してるんだよ。」

 

ペガル

《撤退中なのに、

 なに日常会話してるんだ?

 そうこうしてる内に、

 こっちにも気づいたヤツが迫って来てるぞ!!》

 

 

ゴードン

「サンドゥリュオンとは、

 ついてない、

 タゲル、モンゲル、馬鹿僧は起きたのか?」

 

タゲル

「それが、マトゥァヒヒと、ジャッカルアを率いて、

 討伐に向かってしまいましたっ!!」

 

ゴードン

「・・・残存機は幾つだ?」

 

モンゲル

「ハルガダータ200機中、残存150機、

 マトゥァヒヒ58機中、残存18機、

 ジャッカルア120機中、残存40機、

 総残数208機、

 全て“新兵です”」

 

ゴードン

「・・・見捨てる、

 タゲル、後方のズメェイ砦へ撤退、

 本国に援軍要請を出す、

 それと、

 “ファゼンディラ公国に使者”を、出す準備を。」

 

タゲル

「え?見捨てるのですかっ!?」

 

ゴードン

「新兵を率いて勝てるサンドゥリュオンでは無いっ!!

 全機騎乗!!

 テントは残していけ!!

 抱えられる食糧、水筒は、抱えるだけ抱えろ!!

 モンゲル!!

 全体の隊列指揮は任せる!!

 ジャッカルア10機は、殿(しんがり)として、

 ワシと共に来いっ!!」

 

モンゲル

「なら、3番小隊をお使い下さい!

 彼らが一番ジャッカルアを使いこなせます!!」

 

 

ペガル

「移動指揮車、後部牽引ハッチ開け、

 黒雷、出るぞ!」

 

 

オネスト

「テッラ・ゲイル、

 1、2、3、4、5番機、

 俺達と殿(しんがり)を務める、

 タンデムリアクタリミッター解除、

 機動戦闘にて間合いを保ちつつ、撤退支援、

 クジャクは全機、

 高機動にてダコズーヴァ砦へ急行、

 フェメンターレ隊と合流、

 迎撃態勢を整えてくれ。」

 

《1番機了解、

 はぁ、また痴話喧嘩聞きながら、殿ですか。》

 

《2番機、

 1番機、仕方ないだろう?

 この二人の仲は、

 今に始まった事じゃないだろ?》

 

《3番機、

 2番機、言えてるww

 オネスト!!帰ったら、酒ぐらい奢れよ!》

 

《4番機、

 3番機、これ以上団長の財布を苦しくしてどうするんだ?

 しわ寄せが俺達に来るんだぞ?》

 

《5番機、

 馬鹿言って無いでとっとと出ろよ!!

 踏んずけるぞ!!》

 

オネスト

「お前ら、

 “後でお説教な”」

 

1~5《げっ!?それ勘弁っ!!》

 

コンクォ

「慈悲は無い。」

 

ペガル

《緊張感ねえな、お前ら》

 

 



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生前知識の本領発揮

ズメェイ砦

ゴードン
「タゲル、モンゲル、
 偵察隊からの情報は?」

タゲル
「・・・ありません。」

モンゲル
「今、“観測気球”によって、
 望遠捜索を進めています。」

ゴードン
「偵察隊もやられたのか。」




 

ダコズーヴァ砦

 

コンクォ

「オネスト、

 もぅ、埋めてあげよう?」

 

オネスト

「・・・あぁ、そうだな。」

 

 4、5番機、を、

 

 喰われ、ナイトランナーは、死亡、

 

 機体も、タンデムリアクタのみ回収、

 

 機体は破棄した。

 

オネスト

「彼らは、ナイトランナーとして、

 在るべき姿を貫き通した、

 人々を魔獣から守り、

 攻め来る敵も、弾き返して来た、

 だが、

 “死んでは駄目だ”

 重ねて言う、

 死ぬなっ!!

 死んで詫びだの、恩を返すだの、

 時代遅れだっ!!

 “生きて共に歩みを進めようっ!!”

 総員、

 “魔獣討伐仕様へ装備転換”

 全装備を使って、

 彼らを殺し、

 彼らの未来を奪った魔獣、

 いや、サンドゥリュオンを、

 “殲滅する”

 着いて来てくれるな?」

 

 

コンクォ

「ねぇ、このプラン、本気なの?」

 

オネスト

「鉱石核を使うエーテルリアクタでは、

 そうするしかない、

 “魔獣核”の、エーテルリアクタは、

 “ディダットーラ帝国”が占有してしまった以上、

 使える手札は少ないし、

 “過激になるのは当然だ”」

 

ペガル

「オネスト、陛下が来ている、

 談話室へ頼む。」

 

 

リャン・ダオ11世

「初の被害だな、オネスト。」

 

オネスト

「責任追及なら後にして下さい、

 これから、

 “殲滅兵器に着手するので時間はありません”」

 

リャン・ダオ11世

「オネスト、

 お前、“鬼”にでもなるつもりか?

 そんな事、コンクォも望んでいないだろうに、

 “ヘルム・ヴェッァ”から、

 “トレスリアクタ”

 “アルヴァリアクタ”の納品があったんだ、

 これだけの個数、一体何に使う気だ?」

 

オネスト

「あぁ、出来たんですね、

 コレで、“アレ”が運用出来る、

 コンクォ、

 ペガルにここを任せて、

 “アレ”を完成させよう。」

 

コンクォ

「・・・魔獣だけに使う、

 それだけは、

 絶対に約束して。」

 

オネスト

「・・・国防には?」

 

コンクォ

「威嚇だけ。」

 

オネスト

「まぁ、しゃ~ないか、

 奥さんのお願いじゃ、

 断れないな。」

 

リャン・ダオ11世

「おぃ、

 まだなにか俺に言わないで、

 “勝手に何かを造ってたのかっ!?”」

 

オネスト

「陛下には、先に約束したでしょう?

 “好き勝手にやる”と、

 この国以外は、滅んでも構わないと、

 働き手は残すと、ちゃんと覚えてますよ?」

 

リャン・ダオ11世

「あ、アレは、口約束だろうがっ!!

 大体、

 国内の“小型エーテルリアクタ搭載”の、

 “荷役車”なんて、いつの間に量産していたんだっ!?」

 

オネスト

「おかげで、半島往復日数が、20日から4日に短縮、

 一度に運べる量も、“トン単位”に大幅アップしました、

 街道整備にも、

 フェメンターレを使い、

 砂利を敷き詰め、その上に、

 “ボタ山”を使った、“道路”を敷設、

 “ポンプ式”上下水道も整備を急ピッチで進行中、

 より近代化を進めてます、

 ま、生前知識はあっても、

 “専門知識はありません”

 コンクォが、許可したものだけ、量産、

 “平民価格を目指しています”

 後ろには、アルヴの民と、

 “ディシュリオン家”が居る事を、お忘れなく。」

 

 

コンクォ

「ねぇ、オネスト。」

 

オネスト

「ん?」

 

コンクォ

「“なんで泣かないの?”」

 

オネスト

「ん~、コンクォが、

 俺の奥さんが代わりに泣いてくれたからな、

 “サンドゥリュオン”を、殲滅してから、

 泣く・・・かもしれない。」

 

コンクォ

(どうして?

 なんで?

 オネスト、貴方はそこまで怒りに満ちているの?)

 

 



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咆哮の目覚め

 
 ヴァゥヴァイネン帝国は、

 ズメェイ砦にて戦力の拡充と、

 完熟訓練を余儀なくされ、

 サンドゥリュオン討伐に向け、

 訓練を始めていた。

 ファゼンディラ公国のオネスト達は、

 レビテートシップの情報を元に、

 オネストの生前知識を応用、

 “戦闘用飛空船”を完成させようとしていた。




 

半島先端・地下ドック

 

オネスト

「後は、アルヴァリアクタが、

 どれだけの供給期間を持つかどうか、

 動かさなきゃわからんのが一番の問題だな。」

 

コンクォ

「試算上、

 タンデムリアクタが30年、

 トリスリアクタが、15年、

 アルヴァリアクタは、もって5年、

 これが、私達の計算上の結論、

 でも、動かしてから、

 300年もつエーテルリアクタもあるし、

 1年持たないエーテルリアクタもある、

 計算だけじゃ、分からないのよ。」

 

オネスト

「“フライホイール式エーテル供給器”は、

 試運転したのか?」

 

コンクォ

「貴方の言う“ラムスクープ方式”で、

 強制的に空気中のエーテルを収集、

 アルヴァリアクタ5基に供給、

 それを元に、

 “エーテミスト噴射式推進機”で、

 浮上、推進、転進を担う、

 試運転したら、

 この“地下ドック”ごと、浮き上がったのよ?

 どれだけの推力を発揮してるかなんて、

 計算したくないわ。」

 

オネスト

「そして、トリスリアクタ搭載“3連装法撃主砲”、

 射程距離は、結局5キロなのか?」

 

コンクォ

「砲身一つに付き、トリスリアクタ一つって発想が、

 馬鹿げてるのよ?

 25キロまで伸びたわよ、

 でも、連射は出来ない、

 15年の供給寿命をかんがみたら、

 “一日6~8発”それ以上撃とう物なら、

 一気に寿命を消費するわ、

 それを、上下合わせて5基、

 旋回出来るし、砲身角度も調整出来る、

 貴方の妻になってから、

 常識なんてどこに行ったのやら。」

 

オネスト

「ごめんな、俺がこの世界に居て。」

 

コンクォ

「馬鹿ね、“絶対忘れられない日々”を、

 記憶に焼き付けるのよ。」

 

 

リャン・ダオ11世

「・・・これが、飛空船なのか?

 海ですらこんな大型な船は無い、

 フレメヴィーラ王国で量産が進んでいる、

 レビテートシップの荷役船でも、

 こんな規模は無い、

 ましてや、“テッラ・ゲイル搭載機数30機”

 又は、“運搬可能物資は、規格コンテナ”で、

 200個は積める?

 移動要塞と言っても過言では無い、

 これがもし、

 “この大陸以外にバレたら”

 それこそ、海上航路は封鎖され、

 空路も封鎖、陸路も、

 ディダットーラ帝国、ヴァゥヴァイネン帝国も、

 周りが、全て敵になってしまう。」

 

執政官

「それが、オネスト・ディシュリオン、

 それを飲んだのは、貴方ですよ、陛下、

 現に、平民の暮らしは一気に改善傾向、

 農作物に関しても新鮮な状態で販売でき、

 “海鮮物”も、食卓に上がり出し、

 食生活も変化が著しく、

 “コメ”も、軌道に乗り、増産の一途、

 フレメヴィーラ王国と敵対しても、

 餓えて負ける事はあり得ません。」

 

リャン・ダオ11世

「言うなっ!!

 あの国は魔獣番、

 その国に居る銀色の偉人が居る、

 その者が万が一、

 この国に来たら、

 “全てを失うやもしれん”」

 

執政官

「では?」

 

リャン・ダオ11世

「秘匿文書にて、同盟国の会談を申し込んでくれ。」

 

執政官

「だ、そうですよ?オネスト・ディシュリオン。」

 

 



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ズメェイ砦攻防

 
ゴードン
(気球での遠眼鏡では、
 対して見えないが、
 サンドゥリュオンが、居るかどうかだけでも、
 わかる筈)

モンゲル
「ゴードン様っ!!
 ゼルエラが帰還しましたっ!!」

ゴードン
「な、なんだとっ!?」




 

 ズメェイ砦・救護室

 

ゴードン

「ゼルエラ、入るぞ。」

 

 扉を開けると、

 

 消衰仕切った姿で、

 

 部屋の隅に屈み込んでいた。

 

ゴードン

「・・・よく、生きて帰って来た。」

 

 動こうとしないゼルエラを、

 優しく抱きしめる。

 

ゴードン

「隊の誰かが、ハルガダータに乗せ、

 お前を帰還させたのか?」

 

 チガウ

 

ゴードン

「どうした?」

 

 俺ハ

 

 目印ダッテ

 

 人間ハ美味イカラ

 

 探ス手間減ラスッテ

 

ゴードン

「砂獣が喋ったのかっ!?」

 

 チガウ

 

 ナンカ

 

 直接、頭ニ

 

 叔父上ワタシハ

 

 ナニカサレテシマッタノデショウカ

 

ゴードン

「服を脱げ、

 傷の手当だけでもせねば。」

 

 傷?

 

ゴードン

「これだけ血だらけなのだ、

 お前の血でなければ、

 誰の血なのだ?」

 

 ・・・ベットリシテル

 

 服、脱グ

 

ゴードン

「・・・これは。」

(紋章?いや、

 普通の人間にこの様な物はあり得ない、

 では、誰かが意図的に?)

 

 アレ?

 

 コレ、ナニ?

 

ゴードン

「カースドベイトっ!?

 馬鹿なっ!?これの生産方法は、

 抹消された筈っ!!」

 

 ソウダ、アイツガ言ッタンダ

 

ゴードン

「アイツ?」

 

 試作品ハ完成シタ

 

 人間達ヨ

 

 己ノ愚カサヲ悔ヤムガヨイ

 

 ッテ、言ッテタ

 

ゴードン

「その手を離せ、ゼルエラ、

 “ソレ”が、魔獣に嗅ぎ付けられたら、

 砂獣だけではない、

 他の魔獣も凶暴化するのだぞ?」

 

 対象ハ、魔獣デモ、砂獣デモ、

 

 “人間”デモ、意思アル者ナラ、

 

 興奮、凶暴化スルッテ!

 

ゴードン

(しまったっ!?)

「ゼルエラっ!?」

 

ゼルエラ

【アハハハハッ!!

 コノ高ブリハナンダッ!!

 今なら全テヲ、

 思イノママダッ!!】

 

ゴードン

(ぐっ、

 アツい、熱い、

 このままでは)

「モンゲルッ!!

 急ぎ、拘束椅子ヲッ!!」

 

 

モンゲル

「ゴードン様っ!?」

 

タゲル

「モンゲルっ!!

 一体なにが起こってるのっ!?」

 

モンゲル

「ゴードン様がっ!?

 ゴードン様がっ!?」

 

ゴードン

「・・・ふた、り、共、

 よく、きけ、

 これより、

 私の言葉と、

 “魔獣禁止薬”が、使われ、

 “人間ニモ”

 効果がでて、しまう、改良型が、

 がぁっ!?」

 

モンゲル

「ゴードン様っ!!」

 

タゲル

「・・・ゴードン様、

 “遺言”はございますか?」

 

モンゲル

「っ!?タゲルっ!!

 なに言ってるのよっ!?」

 

タゲル

「ちょっと黙って!!」

 

ゴードン

「・・・タゲル、

 ゼルエラと、私、

 “他の発症者”を殺せ。」

 

モンゲル

「ゴードン様っ!!

 きっと解毒剤がある筈よっ!!

 諦めないでっ!!」

 

タゲル

「そんなの無い、

 あったら、魔獣も大人しくなってるわ。」

 

モンゲル

「でもっ!!」

 

ゴードン

「モンゲル、

 キミは軍隊を離れなさい、

 優しすぎる、

 タゲル、後始末を押し付けて、済まないな。」

 

(トクソリィウス、

 キミの娘は強く育っているよ・・・)

 

タゲル

「・・・ふっ!!」

 

 

 下顎から、脳天目掛け、短剣を突き上げる。

 

 髪を強く掴まれ、

 

 ブチぶちと、抜け落ちる。

 

モンゲル

「・・・タゲル、髪が。」

 

タゲル

「モンゲル、

 着いて来てくれる兵だけでもいいから、

 “ファゼンディラ公国”に行くよ。」

 

モンゲル

「ぇ?」

 

タゲル

「この事実を伝えなきゃ、

 他の国で使われる前にっ!!」

 

 白銀の鎧は、どす黒く染まり、

 

 無理に引き抜かれた頭皮から、血が流れる。

 

 



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伝える為に

 
 警鐘が鳴り響く

 ゴードン・グランディストーレの

 亡骸が見つかったのだ。




 

ゼルエラ

「総員に告ぐっ!!

 奴ら脱走兵は、

 我が叔父、ゴードン・グランディストーレを、

 その手で刺殺し、

 挙句の果てに

 ジャッカルアを他国へ売り渡そうとしている、

 逆族である!!

 全軍を持って、脱走兵を捕らえるか、殺せっ!!」

 

 

モンゲル

「・・・っ、

 うぁ゛~ぁああっ!!」

 

タゲル

「泣くなっ!!

 今は走るのっ!!」

 

「駄目だ、

 専用ハンガーは封鎖されてる。」

 

「なら、ジャッカルアを奪うしかない。」

 

タゲル

「完熟訓練をした事なんてないけど、

 モンゲルっ!!

 貴女、操作手引書は読んでいたわねっ!!」

 

モンゲル

「ぅうう~・・・ぁああぁっ。」

 

「見捨てよう、

 俺達6人だけでもファゼンディラ公国に行こう。」

 

 頬に赤く腫れが広がる。

 

タゲル

「立てぇっ!!

 ゴードン様になんて言われたのっ!!

 私達は、“伝えなきゃならないの”

 この国が危険だと、

 “人間すら凶器にする”カースドベイトが在る事をっ!!」

 

「不味い、近衛兵だっ!!」

 

「ちっ、雷撃投槍っ!!」

 

 

「居たぞっ!!」

 

「副指令に、旅団長までも・・・、

 これも、カースドベイトのせいなのかっ!!」

 

 

ハルガダータ予備倉庫

 

「いてて・・・ついてないぜ。」

 

「お前のついてないは、

 いつも当たるからなぁ、たまったもんじゃないよ。」

 

「しかし、近衛兵の目、

 “赤く光ってたな”

 アレが、人間にも通用するカースドベイトか、

 トンでも無い物を、誰かが造っちまったのか。」

 

「その面(ツラ)、

 拝んでおきたかったな。」

 

「あぁ、それで魔獣の群れに放り込んでしまいたいよ。」

 

タゲル

「・・・傷はどうだ?」

 

「幸い、毒矢ではない用です、

 “溝”が無い物ですから、

 ここ、ズメェイ砦は、

 貴族の療養所でしたから、

 毒物はかなり厳しく検査されている筈です。」

 

タゲル

「では、

 お前達はハルガダータを奪い、

 私と、モンゲルはジャッカルアを奪う、

 ハルガダータは、武装状態と、

 式典用装備を一部持って行くぞ。」

 

「え?あれ、めっちゃ重いんですよ?

 ただでさえ邪魔扱いのアレをですか?」

 

タゲル

「盾代わりに使うだけだ、

 いくらカースドベイトに掛かっている者でも、

 “初代国王を模(かたど)った”、面を、

 攻撃するとは思い難い、

 まぁ、撃って来たら容赦なく捨てる、

 それに、投げつければ、

 投石並みの衝撃は与えられるだろう、

 なんとしてでも、

 ファゼンディラ公国に向かわねば。」

 

モンゲル

「・・・え?

 “ゴードン様?”」

 

タゲル

「そんなっ!?

 脳天は貫いた筈っ!!」

 

 

???

「ふふ~↑ふふ↓、

 そう簡単には、退場サセマセンヨ~、

 傀儡人形として、

 肉体が朽ちて無くなるまで、

 私のオモチャなんですカラ~。」

 

 




 
 ゆらゆらとうごめくその死体は、

 紛れもなく事切れている筈のゴードン。

 時折、

 かくん、かくん、

 “糸”に吊り上げられているように、

 かくん、かくん、と、

 確実に迫って来る。



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マギアハジャルの民


ヴェニゥス・バロン
「俺の親友を、
 もてあそぶのは止めて貰おうか。」

???
「ちっ!?
 “魔糸”が、
 貴様、何者だ~の?」




 

タゲル

「なっ!?」

 

「工場長、

 めっちゃつぇ~・・・。」

 

「あはは・・・あの噂はマジだったんだ。」

 

モンゲル

「う、そ。」

 

ヴェニゥス

「引退したとは言え、

 最前線帰りを、

 舐めないで貰おう、

 そして、親友を返して貰うぞ。」

 

???

「グッ、おのれぇっ!

 ナゼだ!!

 なぜ、おまえの様なヤツが、

 こんな国にっ!?」

 

ヴェニゥス

「ゴードンとは戦友であり、敵でもあり、

 親友でもあったのだ、

 “ドワーフと人間のハーフ”である、

 俺を受け入れてくれ、

 職を与えてくれた、

 それを傀儡人形など、

 言語道断!!

 貴様は、

 “ミンチが良いか?刻まれるのが良いか?”」

 

モンゲル

「っ!?

 小説のセリフっ!?

 まさか、“魔石の国の主人公”っ!?」

 

ヴェニゥス

「それは弟だ、

 だが、その主人公は死んだ、

 物語も、その後は書いていないだろう?」

 

???

「マジックストーンを操り、

 マギウスエンジンを用いて、

 “アルヴの民”と、事を構え、

 滅んだあの国、

 なぜだっ!?なぜ、ここに居るっ!?」

 

ヴェニゥス

「生きているからなぁ、

 単に、国を維持出来なくなったから、

 “周囲に溶け込んだに過ぎない”

 マギアハジャルは、不滅だっ!!」

 

 浮遊するクリスタルティシューが、

 

 形を変えて行く、

 

 正に、小説で解説されている通りに、

 

 “クリスタルティシューを今、

  加工して武器にしているのだ”

 

モンゲル

「本物だ・・・本物がここに居る。」

 

ヴェニゥス

「モンゲル、

 ヤツを切れ、

 小説を読んでいるなら、

 わかるだろう?」

 

モンゲル

「え?わたしが?」

(そう、

 彼らは“創る事は出来る”

 でも、

 “直接は相手を殺せない宿命”)

 

???

「そ、そうだ、お前達は造れても、

 “一族が持つ呪いで相手を直接殺せない”

 ならっ!!」

 

 再び、ゴードンの亡骸を魔糸で動かそうとする。

 

ヴェニゥス

「させるかっ!!」

 

 飛び交うダガーが、魔糸を切り裂いて行く。

 

???

「くっ・・・ナァ~んてネ?」

 

タゲル

「え?うわっ!?」

(身体が勝手にっ!?)

 

モンゲル

「タゲルっ!!」

 

「ちっ、

 コイツ、副指令に糸を絡ませてやがるっ!!」

(色々な意味で羨まけしからん!!)

 

「工場長!

 俺達はどう立ち回れば良い!!」

(くっそぅ、協調される胸といい、

 くびれと言い、

 非常時なのに、俺の愚息がっ!!)

 

(怪我してる俺は無視か、

 てか、コイツ等、

 どこに見とれてんだよっ!!)

 

ヴェニゥス

「・・・モンゲル、

 キミが汚れて無くて俺は一安心したよ。」

 

モンゲル

「はぃ?」

 

タゲル

「あっ///あんた達ぃ~っ!!

 どこみてんのよっ!!この変態っ!!」

 

???

「ケハハハハ!!

 所詮男はコンナモンダ!!」

 

ヴェニゥス

「・・・モンゲル、

 申し訳ないが目をつぶって居てくれるか?」

(二人のアホは後で粛清するとして)

 

モンゲル

「・・・スッパにするのですか、

 替えの服あったかなぁ?」

 

ヴェニゥス

「・・・まさか、“正・副・予備”の、

 3巻とも読んでいるのか?」

 

モンゲル

「そうですよ?面白いので。」

 

???

「なにをごちゃごちゃ言ってルンダっ!!」

 

 魔糸に操られ、

 

 剣を振りかざして来るタゲル。

 

ヴェニゥス

「タゲル、後で新しい服を買ってやる、

 それで許してくれ。」

 

タゲル

「ふぇっ!?」

 

モンゲル

「男3人の目潰しは私がっ!!」

 

3人『もぎゃぁ~っ!?』

 

 

???

「コノっ!?ハレンチ変態メッ!!」

 

タゲル

「ぁ~・・・お気に入りの服が~・・・。」

 

モンゲル

「あれ?タゲルって、

 案外大きいのね?」

 

3人『なにっ!?』

 

ヴェニゥス

「・・・さぁ、お前達には囮になって貰おうか。」

 

???

「チョット!!

 私の服ハっ!?

 まさか、コノママ置いて行クナンテ、

 言わナイワヨネッ!?」

 

ヴェニゥス

「餓えた近衛兵にでも、

 貰うんだな。」

 

 背後には、赤い目を光らせた近衛兵と、

 

 ゼルエラが怪しい呼吸をしていた。

 

???

「イヤァッ!?

 コナイデェエッ!?」

 

ヴェニゥス

「自分で蒔いた種に狩られろ、

 “同族の恥晒しめ”」

 

 

タゲル

「っ!?」

 

ヴェニゥス

「見捨てろ、

 殺しに来たんだ、

 その覚悟もしたんだろうよ、

 “生殺し”の覚悟もな。」

 

モンゲル

「ハァハァハァハァ///」

 

ヴェニゥス

「モンゲル、予備のジャッカルアを奪う、

 斥候を頼めるか?」

(っと言うか、

 大丈夫なのか?この娘は?)

 

モンゲル

「はいっ!!

 ヴェニゥスお兄様っ!!」

 

ヴェニゥス

(ダメかもしれない)

 



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花言葉

 
ジャッカルア予備部品倉庫

ヴェニゥス
(よし、これなら直ぐに動かせる)

モンゲル
「あははハハ!
 こんなにたくさんのジャッカルアがっ!!」

ヴェニゥス
「・・・タゲル、
 キミも操作手引書を読んでいてくれ、
 交代で操縦して貰う事態になりかねない。」

タゲル
「はい。」



 

ズメェイ砦まで約30km上空

 

オネスト

「コンクォ、

 やっぱり“人に向かって撃つ事になりそうだ”」

 

コンクォ

「うん、

 望遠鏡でも確認したわ、

 この“艦(こ)”を、

 そう言う事で使って欲しくは無かった、

 でも、

 私達の国、里、みんなを守る為に、

 “一緒に血まみれになる覚悟はある?”」

 

オネスト

「まぁ、はっきり言ってないよ、

 魔獣は兎も角ね、

 シルエットナイト同士で戦うと、

 弱点は操縦席、

 そこを狙えば動かなくなる、

 “戦争の名前を借りた人殺し”だ、

 《彼岸花(ヒガンバナ)》全力運転開始!!

 テッラ・ゲイル、

 対シルエットナイト・魔獣装備、

 エーテミストフィールド展開、

 各砲塔、トリスリアクタ起動、

 法撃用意、目標ズメェイ砦及び、

 サンドゥリュオン!!

 戦闘開始。」

 

 

 ズメェイ砦から飛び出て来るジャッカルア。

 

モンゲル

「凄い!スゴィッ!!

 こんなに早くハシレルなんて!!」

 

タゲル

(ヴェニゥスさん、

 もしかして・・・モンゲルは)

 

ヴェニゥス

(カースドベイトの症状だ、

 おそらく、

 “事前に何か投与されたか接触したか”だ、

 今の所、俺達に敵対しないだけで、

 何時、その手がこちらに向くかはわからない、

 おそらく、

 同行していたあの兵達も)

 

 

「砦より一騎、

 飛び出して来ましたっ!!」

 

コンクォ

「ズーム、

 これは・・・ジャッカルアのカスタム機ね、

 でも、様子が変ね?」

 

オネスト

「砦に動きは?」

 

「待って下さい、

 ハルガダータ、戦闘用装備を確認、

 その後ろから、ジャッカルア、マトゥァヒヒが続いています、

 脱走兵の様です。」

 

ペガル

《こちらペガル、

 テッラ・ゲイル、出撃準備完了、

 その脱走兵らしきヤツは、

 保護するのか?》

 

オネスト

「・・・見捨てる、

 “向かって来る奴らは全て敵と見なせ”

 俺も、

 “ヘクソカズラ”で、出る、

 そいつは俺が相手する、

 ペガルは、

 テッラ・ゲイルを率いて、“ヒガンバナ”の、

 射線上に敵を纏め、

 コンクォの合図で避けてくれ。」

 

ペガル

《了解、団長、

 躊躇うなよ?》

 

オネスト

「・・・わからない、

 所詮、人間だからな。」

 

コンクォ

「オネスト。」

 

オネスト

「コンクォ、

 場合によっては俺を見捨てろ、

 いいな?」

 

コンクォ

「貴方の妻として、

 見捨てないわ、

 それにケッコン初夜は寝ただけ、

 貴方、“何もしないから”

 それで良いって、勘違いしたんだからね?」

 

オネスト

「・・・それは、怖かったし、

 それに、国は戦争中で俺は軍属、

 休暇中の過ちで、

 お前が動けないのも困ったし、

 ましてや、

 “側に居てくれるだけでも”

 俺は幸せを感じているんだ、

 やっぱ、

 アレなんだよ、

 “触れたら壊れそうでさ”」

 

コンクォ

「もぅ、貴方はもう少し、

 我儘になりなさいよ、

 私に対して、“奥さん”に対して。」

 

オネスト

「・・・だな、

 先ずは目先の問題を片付ける、

 後ろは頼んだぞ、コンクォ?」

 

コンクォ

「もちろん、

 いってらっしゃい!オネストっ!」

 



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鋼鉄の獣

 
 砂は舞い上がり

 地面は揺れ

 巨大な騎士達が走る

 互いの目標に向かって
 


 

ペガル

「ちっ、

 一体何機居るんだ?」

 

オネスト

《複眼で見たけど、

 ざっと500は居るな》

 

ペガル

「その、オネスト?

 “複眼のシルエットナイト”

 気持ち悪くならないのか?」

 

オネスト

《若干、気持ち悪い》

 

ペガル

「なら、単眼のままで、

 良かったんじゃ?」

 

オネスト

《いや、

 俺には必要なんだ、

 左腕は、大出力ブースターナックル、

 右腕は、“蛇骨剣”

 左脚は、ジャンプ専用、

 右脚は、“蹴り”専用だからな、

 “同時に処理しなきゃ”

 簡単に倒れる機体だ、

 それに、

 “今後の防衛機体の為に”

 テストできる物は、

 テストして置きたい》

(オマケも搭載したが、使わずに済むかどうか)

 

ペガル

「団長、

 なにから護る積もりなんだ?」

 

オネスト

《さぁな、

 忘れたよ、コンクォ意外は、

 どうなっても良かった筈だったんだ、

 だけども、どうしてか、

 “コンクォの為に周りも”

 護らなきゃいけなくなった、

 それだけ、それだけなんだよ》

 

 

モンゲル

「あはハハハっ!!

 もっと!!モット早クッ!!」

 

バロン

(慣れてしまえば、

 崖から飛び移れるか、

 嘘ではないようだが)

「タゲル、

 “何時でも代われる準備を”」

 

タゲル

「っ!?了解。」

 

 

ゼルエラ

【全軍、脱走兵ヲ殺セッ!!

 我ラノ機密ヲ持チ出シ、

 アマツサエ、

 他国ニ売リ渡ソウトシテイルノダッ!!】

 

【オォ~ッ!!】

 

ゴードン

【コロセ、コロセ、コロセ、コロセ】

 

???

「殺せっ!!殺せっ!!殺せっ!!殺せっ!!

 みんな死ねっ!!死ねっ!!死ねっ!!

 私を汚し、

 辱め、

 陥れたヤツなんか、

 みんな死んじゃぇえ~っ!!」

 

 

オネスト

(・・・あぁ、

 戦争だ、これが本当の戦争かぁ)

 

「テッラ・ゲイル一番射出!!」

 

「続けて二番、昇圧完了、射出!!」

 

「艦底部、専用射出機起動、

 ヘクソカズラ、射出機へ!!」

 

オネスト

《ヘクソカズラ、了解、

 艦が揺れる、安定を保て》

 

 一歩

 

 一歩

 

 その巨体は、戦場へ歩みを進める

 

オネスト

《セッティングを始める、

 テッラ・ゲイル全機は、ペガルの指揮にて行動、

 単機で突出しているジャッカルアは、

 俺が相手する、

 残りは、“エーテルリアクタを片っ端から回収”

 搭乗者の生死は問わない、

 我が軍は、既にエーテルリアクタを使い切っている、

 一つでも多く回収し、新型機へ回すのだ、

 出来れば、サンドゥリュオンの核も回収し、

 各員の“専用機”に搭載したい考えだ、

 協力してくれるな?》

 

 

 射出から直ぐに落下を始める巨体は、

 

 “血液の色に似せたメタルレッド”

 

 “鋼鉄の獣が、地面にたどり着く”

 

オネスト

「さぁ、

 “戦争の時間だ”」

 

 



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湯がいても脳みそは脳みそ

 
???
「なに?あれ?
 空飛ぶ船に、
 空飛ぶシルエットナイト、
 それに、
 あの機体、
 アレは、シルエットナイトと、
 呼んで良いモノ?」




 

ペガル

「全機、“腕をもげ”

 それが一番手っ取り早い、

 我らのテッラ・ゲイルの馬鹿力は、

 伊達ではないっ!!」

 

 

ゼルエラ

【ナント、空飛ブシルエットナイトカッ!!

 ハルガダータハ、隊列ヲ組、

 中隊単位デ法撃セヨ!!

 一機ズツ、確実ニ数ヲ減ラスノダッ!!】

 

???

「伝令!!

 マトゥァヒヒとジャッカルアは、

 協力し、空飛ぶシルエットナイトと、

 空飛ぶ船を攻撃、

 ゼルエラには、ハルガダータの指揮を。」

 

【ハッ!!】

 

 

モンゲル

「アハハハッ!!

 早イッ!!楽シィッ!!

 アレ?

 タゲルゥ?

 アノ空飛ブ船カラ、

 何カ落チテ来タヨッ!!」

 

タゲル

「え?

 ・・・なんなの、アレ、

 モンゲルっ!!

 あれは不味いよっ!!

 離れてっ!!」

 

モンゲル

「大丈夫ダヨ!

 バロンお兄様ガイラッシャルノダカラ、

 私、ナンダッテ出来ルンダカラッ!!」

 

バロン

「・・・あれが、

 シルエットナイトだと言うのか。」

 

 

【オォオオッ!!】

 

「へぇっ!!

 確かに馬鹿力だなっ!!」

 

 マトゥァヒヒから繰り出される引っ掻き攻撃は、

 

 標的を切り裂けず、

 

 地面、またはハルガダータを巻き込んで、

 

 その威力を発揮していた。

 

【飛ベルノハ、

 オ前ラダケジャナインダッ!!】

 

「げっ!?

 岩山を駆け上がって来やがるぞっ!!」

 

【噛ミ砕イテヤルッ!!】

 

「コイツはやべぇ・・・、

 なぁ~んてな?

 どりゃぁっ!!」

 

 テッラ・ゲイルがバク宙し、

 

 ジャッカルアを蹴り上げる。

 

【グァッ!?】

 

「テッラ・ゲイルをなめんなよ?」

 

 

 500対20機と特機、戦艦が、

 

 法撃をまき散らし、

 

 地形を抉り、

 

 拠点を破壊して行く。

 

 

???

「なんなの、あの威力はっ!?

 ゼルエラに全部を指揮して、

 あの空飛ぶ船を攻撃させてっ!!」

 

【伝令、走リマシタ】

 

【緊急伝ッ!!

 サンドゥリュオンガ迫ッテ来マスッ!!】

 

【オス4、メス6、個体ハ、凡ソ、4500ッ!!

 間違イナク、

 先ニ襲撃シテ来タ個体群デスッ!!】

 

???

「ちっ、こんな時にっ!!」

 

 

オネスト

「丁度良い、

 アレも、試射してみるか。」

 

 

コンクォ

「やっぱ、あんたの脳味噌、

 湯がいて固まってるんじゃないの?」

 

オネスト

《かもな。》

 

コンクォ

「でも、

 そうでもしないと、

 彼らも全滅必須だろうし、

 試射出来なかったから、

 やる意味合いでも良いんだけど。」

 

オネスト

《“蹴り撃鉄”は任せろ。》

 

コンクォ

「・・・本気で、

 あのモーションでやるの?

 こっちの、再現発射装置で、

 撃てるのに?」

 

オネスト

《一度はやってみたいからなっ!!》

 

ペガル

《お前らっ!!

 オープンで、なに喋ってんだっ!!

 サンドゥリュオンが迫って来るんだぞっ!!》

 

 




 
オネスト
「随分止まってたな?」

作者
「・・・モチベーション。」

コンクォ
「まぁ、ね。」

オネスト
「ま、続き、頼んだぞ?」

作者
「わ~ってるよ。」


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拾う命、見捨てる命

カースドベイト

魔獣を狂暴化させ

その対処法は倒す以外無い

オネスト
「人間にも効果が在る、か。」

タゲル
「だからっ!!」



 

オネスト前に

砦から脱走して来た

ジャッカルアが迫る

 

タゲル

「ファゼンディラ公国軍の人!!

 お願い!!聞いてほしい事がっ!!」

 

オネスト

《聞く耳持たん》

 

外部音声で返す

通信機は切っておいた

 

タゲル

「なぜですっ!?」

 

オネスト

《サンドゥリュオンの討伐と、

 お前らヴァゥヴァイネン帝国の

 宣戦布告の行動に、

 慈悲は要らないと判断したからだ。》

 

背部に搭載している

“〇レイ〇ズーカ”を模した法撃杖で

攻撃しながら“会話”は続ける

 

タゲル

「お願いですっ!!

 魔獣だけじゃない!!

 “人間にも

  効果のあるカースドベイト”がっ!?」

 

一瞬でも躊躇すると思い叫んだ言葉は

 

タゲル

「きゃぁっ!?」

 

ジャッカルアの

装甲板が弾ける音によって崩された。

 

オネスト

《とっくに知っている》

(そうだ、既に犠牲者が

 黒狼騎士団からでているんだからな)

 

タゲル

「なら、なおさらっ!!」

 

オネスト

《言っただろ?》

 

聞く耳持たんってさ

 

ブースターナックルを使い、

一気に距離を縮める

 

モンゲル

「口閉ジテっ!!」

 

装甲板を弾き飛ばされ

フレームが悲鳴を挙げるジャッカルアを

必死に操作する

 

オネスト

《ちっ、

 巨躯故に、振りが大きくなるのは

 仕方が無いかっ!!》

 

遠目から見ると

“ナイ〇ン〇ール”に見えてしまう

巨大シルエットナイトは

見た目通り、細かい動作に追従しきれなかった

 

前後左右、平面だけでも

最低八方向に行動が取れるジャッカルアは

オネストが駆る“ヘクソカズラ”に

後手を取らせ

辛うじて被弾を避けていた

 

バロン

「聞いてくれ!!

 ファゼンディラ公国軍の兵士よ!!」

 

オネスト

(どうやってあの操縦席に

 三人乗ってるんだ?)

《何度も言わせるな

 聞く耳は持ち合わせに無い》

 

巨躯を“前にジャンプさせ蹴り込んだ”

 

再びジャッカルアの装甲が弾け飛ぶ

 

バロン

「っ?!

 不味い、モンゲル

 左後脚に負荷をかけるなっ!!

 飛び散った破片を集めるように

 奴の攻撃を避けてくれ!!」

 

モンゲル

「っ~、はぃ。」

 

様子がおかしい

異常な汗と、呼吸も荒く浅くなっていた

 

タゲル

「モンゲルっ!?

 大丈夫なのっ!?」

 

バロン

「モンゲル、操縦を変わって貰えっ!!

 タゲル!!

 厳しいが兎に角避けるんだっ!!」

 

タゲル

「バロンっ!?」

 

バロン

「俺が破片を回収しながら

 フレームの補強をする、

 このままじゃ

 ジャッカルアはバラバラになるぞ!!」

 

モンゲル

「ダイ、じょぶ、

 モンゲル、は、

 おに、ぃ、さま、を、ささえて。」

 

顔面蒼白になりながらも

操縦席からどこうとはしなかった

 

オネスト

(破片がフレームにくっついて行く?

 どう言う原理なんだ?)

《ちょっとチートなんじゃないのか?

 フレームを補強しながら動けるなんてさ》

 

そう言って“蛇骨剣”の操作に切り替える

 

 

ペガル

《コンクォ!!

 今だっ!!》

 

コンクォ

「主砲(主法)、発射っ!!」

 

三連装法撃砲から繰り出される法撃は、

地形を抉り飛ばしながら

十数機のシルエットナイトを融解させていった

 

コンクォ

(カースドベイトに感染していていると

 こうも単調な動きになるの?)

 

開戦序盤は確かに動きが早く

軽微とは言え

こちらの機体に損傷を負わせていたが

“今はどうだ?”

動きはどんどん単調になり、

撃破、またはサンドゥリュオンに喰われていった

 

コンクォ

「オネストっ!!

 もしかしたら、カースドベイトの効果には

 時間切れがあるのかもしれないわ!!」

 

オネスト

《あぁ、そうらしい、

 だが、“対処方は変わらない”》

 

コンクォ

「・・・そうね、

 聞き出せそうな情報は取り切ったの?」

 

オネスト

《そうだな、

 そろそろ狩る、

 暴爆法撃砲を準備してくれ、

 サンドゥリュオンごと、

 ヴァゥヴァイネン帝国の砦も吹き飛ばす》

 

コンクォ

「了解、

 全機に通達、

 暴爆法撃砲を準備します、

 着弾地点は、

 サンドゥリュオンが纏まっている付近に、

 爆発範囲に砦を巻き込めるように

 サンドゥリュオンを誘導して下さい。」

 

ペガル

《全機、聞いた通りだ、

 行動開始!!》

 

 



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瓦礫の中で拾った命

巨大な閃光と爆風、熱風

喉が焼け

瓦礫に埋もれ

痛かった



 

オネスト

《お喋りは終わりにしようか》

 

法撃杖で牽制しつつ

蛇骨剣で装甲を引き剥がし

フレームに蹴り込み

“それでも動くジャッカルア”に

声を掛けた

 

モンゲル

「・・・聞いてって、

 いった、でしょ。」

 

オネスト

《あぁ、そうだったな》

 

法撃杖のマナ消費が

思ってたよりも多かったので

蛇骨剣を振り回すのは止めずに

小休止も兼ねて動きを抑制する

 

タゲル

「これだけ訴えてるのに

 どうしてっ!!」

 

オネスト

《攻撃を止めないってか?》

 

タゲル

「そうです!!

 私達は“亡命”を希望したいのです!!」

 

オネスト

《断る》

 

タゲル

「・・・理由、

 理由はっ!!」

 

オネスト

《そのナイトランナー、

 感染しているのだろう?

 なら、

 同乗している人間も疑うべきだ、

 国の疫病対策は、

 国境閉鎖と内部拡散防止の二択だからな》

 

ついに、右前足が引きちぎられる

 

オネスト

《倒れない、か、

 マギウスエンジンが

 随分しっかりしてるんだな

 家にも導入しよう》

 

バロン

「それは技術供与するならば、

 亡命を許可してくれると

 取って良いのかい?」

 

バロンも“力を使い過ぎたのか”

冷や汗と

今にも意識を持って行かれそうに言った

 

オネスト

《断る、

 家の農耕地区に襲撃して来た

 “ジャッカルア”で事足りる、

 宣戦布告前に行われた行為、

 謝罪ぐらいなら受け取ろうか》

 

 

コンクォ

「周辺エーテミスト収縮問題なし、

 広範囲“マナ欠乏対策開始”」

 

ペガル

《コンクォ!!

 後、どれだけ砦に

 引き付ければいいんだ!!》

 

コンクォ

「距離は十分よ!!

 後は充填完了まで粘って頂戴!!」

 

ペガル

《了解!!》

 

 

コンクォ

「オネスト!!

 後は充填完了まで粘るだけよ!!」

 

オネスト

《わかった、

 “マナ欠乏対策”は念入りにな》

 

コンクォ

「わかってるわ。」

 

 

右前脚、左後脚、

姿勢制御ようの尻尾?も引きちぎったが

 

オネスト

《まだ、動くのかよ》

(これは、アレか?

 チラ見した資料の

 “マギアハジャルの民”が、

 三人の内誰かが該当するって事か)

 

バロン

「・・・すまん、

 これ、いじょう、は、もたん、ぞ。」

 

タゲル

「お願いよっ!?

 攻撃を止めてっ!!

 私達を助けてよっ!!」

 

オネスト

《ナイトランナー、

 名前は?》

 

モンゲル

「スヴァラディクス・モンゲル。」

 

オネスト

《“見えているのか?”》

 

タゲル

「え?動きを止めた?」

 

モンゲル

「・・・ばれ、た、か。」

 

振り向くと

両目から血が流れだし

“口からも流れ出ていた”

 

タゲル

「モンゲルっ!?

 どうしてっ!?」

 

オネスト

《・・・怖いか?》

 

モンゲル

「し、って、ど、す、る、の?」

 

タゲル

「モンゲルっ!?

 もう変わってっ!?

 死んじゃうよっ!!」

 

オネスト

《助からんよ、

 家からも、犠牲者がでているからな》

 

モンゲル

「な、ん、だぁ・・・

 たす、から、ない・・・のか。」

 

タゲル

「ファゼンディラのナイトランナーっ!!

 貴方って人はぁぁああっ!!」

 

モンゲルを無理矢理どかし

操縦席に座る

 

動かそうにも

残るは頭部、右前脚、左後脚、胴体のみ

“今まで動けていたのが不思議だったのだ”

 

タゲル

「うごいてよぉっ!!」

 

モンゲル

「バロン、にい、さま、

 うご、ける?」

 

返事は無かった

 

オネスト

《どうやら、

 マギアハジャルの民は

 “連続して力を使い過ぎたようだな”》

 

タゲル

「バロン!?どうしたのっ!?」

 

モンゲル

「た、げ、る、

 つめ、たい、よ、

 ば、ろん、にぃさま、

 つめ、たいよぉ~・・・。」

 

タゲル

「なんでっ!?

 モンゲルっ!?

 どうしてこうなったのっ!?」

 

オネスト

《魔石シリーズの主人公、

 死んだって言っただろ?》

 

タゲル

「どうして貴方が知っているのっ!?」

 

オネスト

《なんの触媒も無しに

 “その力”を使えば、

 消費するのは周辺エーテルと、

 自身の命だ

 そんな事も知らずに

 力を使わせて居たのか》

 

コンクォ

《オネスト、充填完了、

 撃てる(蹴れる)わよ》

 

オネスト

《了解、

 全機退避!!

 これより暴爆法撃砲を撃つ、

 広域マナ欠乏対策用意!!》

 

号令と同時に全機がヒガンバナに帰還する

 

タゲル

「一体、なにをするのっ!?」

 

オネスト

《・・・スヴァラディクス・モンゲル

 何か遺言はあるか?》

 

タゲル

「貴方ねぇっ!?」

 

モンゲル

「・・・ばろん、にぃさまと、

 けっこん、したかったなぁ・・・。」

 

オネスト

《・・・スヴァラディクス・モンゲル

 貴女は、バロンと、

 永遠の愛を誓いますか?》

 

モンゲル

「っ~・・・はぃ。」

 

オネスト

《バロン、

 貴方はスヴァラディクス・モンゲルと、

 永遠の愛を誓いますか?》

 

はい

 

モンゲル

「・・・う、れぇ、しぃ。」

 

オネスト

《本日吉日、二人は、

 神の名の元に、

 夫婦と認められました、

 どうか末永くお幸せに》

 

モンゲル

「・・・あ・・・り、が、と、

 なまえ、しら、ない、

 ナイトランナーさん。」

 

寄り添うように、倒れ込み

二人は眠る様に息を止めた

 

タゲル

「ぁ、あぁああっ!?

 そんなっ!?

 ソンナっ!?

 ナンデ!?

 イヤヨ!?

 認メナイ!!認メナイィイッ!!」

 

オネスト

《二人の門出に、

 無粋だぞ、感染者》

 

頭部を掴み

操縦席をこじ開ける

 

タゲル

「あ゛ぁ゛あ゛ぁっ!!」

 

オネスト

《・・・せめて、

 一瞬で終わらせてやるよ》

 

飛び掛かって来た彼女を

“機体のアーム”で掴む

 

タゲル

「ひっ!?」

 

 

ヒガンバナに降り立つヘクソカズラ

 

コンクォ

《いつでも》

 

オネスト

《おぅ》

 

アルティメット・ナイト・シュートっ!!

 

何処かの機体で

“整備士泣かせの蹴り込みモーション”で

巨大な球体と化したエーテルの塊を

蹴り込んだ

 

 

ズメェイ砦

 

???

「なんなのっ!?

 あの球体はっ!?」

 

「報告っ!!

 我軍ハ総崩レ!!

 対抗手段ガモウアリマセンっ!!」

 

 

気を失った?

 

ここ、どこ?

 

目は・・・あ、両方見える

 

身体中痛い

 

魔糸・・・だせない

 

声・・・

 

???

「・・・ぁ゛。」

 

「駄目ですよ、

 まだまだ治り始めたばかりなんですから。」

 

白い服の人?

 

オネスト

「どうだ?

 唯一の生き残りだ

 それに女性だ、

 暴漢に襲われた形跡もある、

 可能な限り傷も治療してくれ。」

 

「わかっています、総師団長、

 私も女ですから

 カウンセリングも心得てます、

 安心してお任せ下さい。」

 

総師団長?この人が?

 

オネスト

「ん?手?

 大丈夫だ、生きてる、

 助かった命だ、

 大事にしろよ?」

 

助かった?手、握り返してくれた

 

そっか・・・

助かったんだ・・・

生きてるんだ・・・

 

オネスト

「・・・暫く、手は握ってても?」

 

「10分だけです、

 着替えをするのでそれまでには

 出てってくださいね?」

 

オネスト

「・・・奥さんに殺されるから、

 直ぐに出る。」

 

あ、離されちゃった

てか、奥さん?

ぁ~、既婚者かぁ~

側室とか持たないのかな?

 

「・・・止めといた方が良いですよ?」

 

男性が出てった後、教えてくれた

 

奥さん、

身長152cmの小さな奥さんだって

 

・・・でも、いいかな?

もぅ、どこか田舎に暮らしたい・・・

どこでもいいから

あの戦争から

戦場から離れて暮らしたい・・・

 

 



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ヴァゥヴァイネン帝国の遺構

オネスト
「なぁ、確認したい事が幾つかあるんだ。」

???
「なにを?」

オネスト
「ヴァゥヴァイネン帝国の現状だ。」

???
「わかった、言う。」



 

 

かの救助出来た女性一人から聞いた情報は

“ヴァゥヴァイネン帝国の遺構”と言う

事実に少なからず動揺が広がっていた。

 

(酷い、か、

 そんな言葉で言い表せるモノか?コレは)

 

そんな事を思いながら

“黒雷”で街道だった物を進む

 

オネスト

「探索一班、

 みんな“死んでいる”」

 

《こちら探索ニ班、

 団長、どの探索班からも同じ報告だ》

 

コンクォ

《こちら探索拠点、

 オネスト、どう?》

 

オネスト

「駄目だ、誰一人として生きていない。」

 

コンクォ

《そぅ、なんだ、

 生産施設とかは?》

 

オネスト

「丁度目の前だ、探索に入る。」

 

コンクォ

《気よ付けてね?》

 

オネスト

「あぁ、わかってる。」

 

 

屋根は焼け落ち、

上から覗けば見える程に崩れていた

 

(人間に作用するカースドベイトに

 関する資料でもと思ったが、

 特にそれらしい物が無い)

 

ズームを使い、

極力機体から降りない様に探索を続ける

“空気感染”なのか“接触感染”なのか

“目で見られただけで感染”するのか

感染する糸口が掴めていなかった

 

オネスト

「こちら探索一班、

 生産施設に生存者無し、

 このまま都市中心部へ向かう。」

 

コンクォ

《探索拠点了解、気よ付けて》

 

 

幾度も施設を覗き込み

 

互いに刺し合い抱きしめて死んでいる者

 

自ら飛び降り変形した者

 

凄惨な死体しか見つけられなかった

 

オネスト

「ヴァゥヴァイネン帝国は、

 “死んだのか”」

 

僅かに音が聞こえる

 

(動力音?生存者か敵か・・・)

 

黒雷の制動リミッターを解除し、

何時でも全開に出来るようにする

 

オネスト

「誰か、生存者がいるのかっ!!」

 

外部音声で叫ぶ

 

コンコン

 

(いる)

 

オネスト

「動くなよ、そちらに機体をさらけ出す、

 撃つなよ?」

 

ゆっくり黒雷を建物の脇に進めた

 

「みた、こと、ない、機体、だね。」

 

あぁ、魔獣にも襲われていたのか

 

オネスト

「ファゼンディラ公国軍の者だ、

 貴殿は?」

 

「ファゼンディラ?

 半島国家が、なぜ?」

 

オネスト

「ズメェイ砦で戦闘があったが、

 そこの生存者の女性から、

 ヴァゥヴァイネン帝国の現状を聞いて、

 “救援と探索”に来たんだ。」

 

「・・・そうかぁ、

 家のおバカが迷惑カケタねぇ。」

 

オネスト

「メサフニタ・ゼルエラ、

 その親族か?」

 

「あぁ、私の息子だ、

 だが、うまく育てられなくてね、

 我儘に育ってしまったよ。」

 

話している間にも

機体を操作し、

コクピット部分の歪んだ基部を剥がして行く

 

オネスト

「これで、外れそうです。」

 

「すまないねぇ、

 魔獣にてこずってこのざまだ。」

 

ギシギシ軋みながらハッチを開け、

半壊したコクピットから人影が出て来る

 

アンジェラ・ゼルエラ

「アンジェラ・ゼルエラ、

 家の貴族は、

 苗字が後ろだよ。」

 

オネスト

「っ、オネスト・ディシュリオン、

 ファゼンディラは、

 基本、苗字が後ろだ、

 そこは、平民、貴族の隔たりは無い。」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・あぁ、ヴァゥヴァイネン帝国は

 滅んだんだねぇ。」

 

ふわっと広がる長い髪の女性は

“若い”

 

オネスト

「確認します、

 人間に作用する

 カースドベイトをご存知でしょうか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「あぁ、アレかぁ、

 “私が原型を造ったんだよ”」

 

オネスト

「・・・どのような理由で?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「ヴァゥヴァイネン帝国を恨んでいたからさぁ。」

 

オネスト

「マギアハジャルの絡みでしょうか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「そうさねぇ、

 理由の一つでもあるねぇ。」

 

オネスト

「どの様に感染するのでしょうか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「“接触”・“空気”・“傷口”

 “接種”かねぇ、

 その反面、効果時間が3~4日程度、

 もう、感染者が居ない限り、

 絶滅している筈さぁ。」

 

オネスト

「目を見ても感染するのでしょう?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「そうそう、それもあったねぇ、

 って事は国境まで

 一気に広がっちまったのかい?

 そいつはぁ悪かったよ、

 だが安心しな?

 ヴァゥヴァイネン帝国の

 環境に合ってても3~4日で死に絶える、

 ファゼンディラの四季には

 適応出来ないさ。」

 

オネスト

「貴女も“転生者”でしたか。」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「おや、アンタもかい?」

 

オネスト

「ですが、

 ここで見逃す訳にも行かないので、

 捕らえられて貰えますか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「いや、

 もぅ、無理さね、

 アンタには、

 “私が幾つに見えるんだい?”」

 

先ほどの若い女性は何処へ行ったのだろう

姿をそのままに“年老いた老婆”が

機体の手に横たわって居た

 

オネスト

「・・・満足の行く

 二回目の人生でしたか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・まぁ、それなりに。」

 

オネスト

「もう一度確認します、

 人間に作用するカースドベイトは、

 もう“死滅”したんですね?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・私の命をもって証明しよう、

 私が“女王感染者”なのさ

 だから、

 これ以上、広がる事ないよ、

 アンタが見ていても、

 その症状が出ないだろう?

 それが証拠さ。」

 

オネスト

「・・・せめて埋葬する場所を

 決めて欲しいのですが?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・“帰りたいね、元居た世界に”」

 

オネスト

「・・・墓石を、日本式にしますか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・キリスト様式で。」

 

オネスト

「・・・汝に神からの祝福と、

 救済が施される様に、

 祈りを捧げましょう。」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・アリガトウ、日本人の子よ。」

 

 

ヴァゥヴァイネン帝国

 

生存者なし

 

カースドベイトによる国家規模の感染により

ヴァゥヴァイネン帝国は

その歴史に終止符をここに打った。

 

 



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