将をなんちゃらするならまず馬をなんちゃら。 (stan)
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ある兄妹の始まり。

思い付きでつらつらと書いてしまった。
不定期更新になるとおもいますが、気長に付き合って貰えるとうれしいですm(__)m


「つんつん♪」

 

チクチクと頭に違和感が走る。

薄目を開けて、状況を確認する。

擬音を口に出しながら、ピンク色の髪の白い帽子を被った、ピンクを基調とした明らかにサイズの合っていないダボついた洋服を羽織った幼女が木の枝で俺の頭をつついていた。

 

そう。まるで某アラ○ちゃんのように‥

 

って‥誰がウンコやねん!

 

取り乱しました。失礼した。

私の名前は山田正樹と申します。

簡単に言うなら、転生者です。

アラサーでリリなの大好きな大きなお友達というやつです。

その日、俺の部屋。

日課であるリリなの同人で武者修行に励んでいたところ、

 

リリなののお気に入りサークルのフェイトさん陵辱本の出来が良すぎて、テクノブレイクした模様です。

やべえ。俺、人として終ってるそして、人生も終わってた。

すると、突然、身体が空へ引き寄せられる感覚へと襲われた。

待ってくれ。せめて、あと一冊分、続きを読んでから逝かせてくれ。

このままじゃ成仏出来ない!

空に吸い込まれるような浮遊感に俺は気合で全力で逆らった。

すると、やがて吸い込む力は弱まり、

俺は、自分の部屋でふよふよと浮かんでいた。

ベッドの上では、フェイトさん陵辱本をひろげながら、胡座でちんこをにぎりしめて死んでいる俺ガイル。

俺がこんな死に方をするなんて間違っている。

その不様な死に様を見て、俺はハッとする。

俺には愛して止まない、可愛い可愛い妹(ただし胸は無い)が一人いる。そんな愛しい妹(ただし胸は貧しい)にこんな不様な死に様を見せて良いものか?

否!断じて否であろう。

 

これは‥どげんかせんといかん!

とりあえず、何とかしようと俺は、俺の死体に触れようとする。

しかし、当然のごとく、その手は空を切る。

俺のモロチンの死体は勿論、俺のバイブルにさえ、触れる事は叶わなかった。

その時、俺のバイブルのページが目に入る。それは勿論、俺がテクノブレイクした、俺のお気に入りのシーンであった。

そう。俺の死因のシーンである。あれ?今俺上手いこと言った?

エリオの嫁ことキャロちゃんが密輸組織の犯罪者に捕まり、俺の嫁たるフェイトたんが、仕方なくナブラレテイル。というシーンである。

当然のように下半身に違和感を覚える。

見れば、俺のバルディッシュが張るディッシュにセットアップしていた。

最早、パブロフの犬である。

死にたい。死んでた。

反射的に股間に手を伸ばすが、張るディッシュを掴む事は叶わなかった。

なん‥だと‥‥どういう原理だ。今の俺が霊体だとする。

それで、俺の死体や、バイブルに触れないのはまだ納得できる。だが、霊体である俺の身体の一部に触れないのはおかしいだろ!

 

俺は茫然自失で立ち尽くしていた。

 

いや、勃ち尽くしていた。

 

自分の不様な死体の前で、フル勃起で浮遊している、自爆霊。

ヤバい。こんな地縛霊、美神さんでも徐霊嫌がるかもしれない。いや、横島くんなら理解してくれるかもしれない。

 

しかし、どうしたものか。

 

現世に留まる事には成功したが、このままでは当然新作もPCでポチれないし、ページもめくれない。

 

八方塞がりである。何より、ちんこが握れないんじゃ、生きている意味等ないではないか。

 

いや、死んでるけど。

 

死んで、尚も、絶望している。

ちょっとー!神様ー!早く何とかしてよー!不具合起こってますよー!

そんな俺の天への願いが届いたのか、

再び、空へと吸い込まれるような、感覚に襲われる。

今度は逆らうことなく、

 

空へと導かれるまま、昇る俺。

 

バイバイ。現世。妹(残念な胸)よ。達者でな。

 

あっ。俺の不様な死体そのままやん。

ちょっとマッテー!

慌てて戻ろうとするが、そこで一気に昇る速度は加速した。

 

 

そして‥‥‥‥‥‥‥‥

 

 

気がつくと俺は闇の中にいた。

目をいくら凝らしても、少しも慣れる気配の無い

漆黒。

 

ああ。ここが地獄かな。

 

天国に逝けるなんて思ってなかったが、

なんか思ってたのとも違うな。

 

えーき様はまだかな?

 

三途の川を渡る舟はどこかな?

舟が揺れたことにして、巨乳の渡し守の胸にエッチスケッチワンタッチしたいです。

小町ったらまたサボっているのかしら。

 

そんな妄想をだらだらと垂れ流していると、

 

上から光りが差し込んできた。

 

そして顕れたのは、石原さとみ似の

美しい女性だった。

‥‥‥‥‥‥俺がなんとも言えない面持ちで見つめていると、

「ナンだ‥そのがっかりした顔は?」

 

神々しいお声で威嚇してきた。

 

「いえ。なんていうか、コレジャナイ感が凄くて‥」

 

「わざわざ、声もお前好みにしてやったのにか?」

 

「いえ。CVサトリナは有り難いんですが。」

「肝心のヴィジュアルが‥」

 

「ん~?この姿が現世では人気と聞いたんだがな‥」

 

「そうですね‥人気といえば人気なのですが、

我々の業界とは違うというか、神様といえば、アクアちゃんか、ヴェルダンディ様にしか興味ないもので‥」

 

「ふむ‥」

 

「仕方ないのう。貴様の記憶から神のイメージを検索させてもらうか‥」

 

と、神様が俺に手をかざす。と、神様の姿が光りに包まれる。

 

おお。有り難い。俺は慌てて、アクアちゃんのお姿(履いてない)を想像する。

 

神様‥神様といえば。

 

いかん。雑念は捨てるのだ。とんでもねえ。あたしゃ神様だよ!

 

違う!コレジャナイ!

 

やがて、光りが収まり、

 

そこには、緑の肌に触覚の生えた、ヨボヨボの‥

 

ズコー!

 

いや。神様だけど!それ大魔王でもあるからね。

神様が大魔王になってしまったこの世に救いはないのか。

CVサトリナでもコレハキツイ。

 

「お主‥変わった趣味をしておるな‥」

 

と、自分の姿を見ながら神様。

 

「違う!俺の趣味じゃない!」

 

「だが、この姿はお前の潜在意識がイメージしたものだぞ?」

「潜在過ぎるよ!懐かし過ぎて、一瞬=神様にならなかったよ!」

 

全力で突っこみながら号泣する俺。

 

そんな俺の様子に引いている神様。

 

「あと、気持ち悪いからその声で喋らないでよ!」

 

まさかサトリナの声を気持ち悪いと思う日が来るとは思わなかったよ。

ヴィジュアル大事。はっきりわかんだね。

 

「それで?間違って殺したの?」

 

「え?」

 

「転生先はリリなのでフェイトさんの相手役でお願いします」

 

「は?」

 

「は?って‥俺を間違って殺したからお詫びに転生な♪迄がテンプレの流れでしょうが!」

 

「ちょっと何いってるのかわからないな。」

 

こいつ。一般人かよ

 

「1からか?1から説明しないとダメか?」

 

はあー。と大仰にタメ息を付きながら、神様に問い掛ける。

 

「なんだか、そこはかとなくむかつくな‥」

げんなりした顔で返す神様。

 

「あのな。リリなのの世界?とかないから‥」

 

「」

 

わかってはいた。俺はオタクだが廚二ではない。

 

二次元と三次元の区別くらいついている。

 

それでも、心のどこかで期待していたのだろう。

 

だが、神様からハッキリと言われてしまっては、諦めるしかない。

ショックを受けている俺に構わず、神様は言葉を続ける。

 

「まあ。貴様が死んだのは予定外ではあるのだがな‥」

 

「え?」

 

貴様は百回連続でオナッて死んだ」

 

 

「」

 

 

ちょっ正確にあらためて言われると流石に恥ずかしい。

 

「通常どんな人間にでも神の加護はある」

 

「貴様のような猿にもな。神は等しく人間を愛しているのだ」

 

「本来であれば、貴様が百回イク前に貴様の妹が貴様の部屋をノックして、貴様のオナニーを阻止した筈だったのだ」

 

それはそれで、なんとなくやだな。と想いつつ、続きを黙って待つ。

 

「そういう、縁とでも言うのかな‥ふと思い立った行動の偶然も全て、神の加護なのだ。」

 

 

「それで?」

 

「毎日毎日何度もオナニーしおって‥正直見るのに飽きていたのだ。それで、目を離したら‥」

 

「死んでいた‥と」

 

「仕方ないじゃろ!特に変化もなく、同じ姿勢で同じリズムで擦り、同じページでイキ果てる!」

 

「た、たまには左手使ってたし!」

 

「だからどうした!」

「毎日毎日、猿のオナニーを見るだけのお仕事!儂はもう疲れたんじゃ!」

 

「いや。知らんがな」

 

「ふむ。良いこと思いついたぞ」

 

悪い笑みを浮かべながら、こちらを見てくる神様。いや、今のヴィジュアル、元々人相悪いんですがね。というか顔色も悪い。

 

「貴様。転生させてやる」

 

「本当に!」

 

「だがさっきも言ったが、リリなのの世界なぞ無い」

「貴様の記憶を頼りに、擬似的にリリなのの世界とやらを作り上げてやる」

 

「あとはそこで生きていけ」

 

「わかった!ありがとう!神様!」

 

「うむ」

 

「で、転生者特典なんだけど‥」

 

「は?」

 

「1からか?」

 

またげんなりした顔でタメ息を付く俺。

 

「ああいい。また検索する」

 

そう言って、俺に再び手をかざす神様。

 

「ふむ。なるほど。そういうのもあるのか」

 

少しの時間のあと、手を下ろすと、神様は重々しく口を開いた。

 

「残念だが、チート能力?とかそういうものはつけられん。そんなものあっては面白くないではないか」

 

「面白くない?」

 

「うむ。こちとら、そのリリなのの世界?とやらでお前が足掻く姿を見たいのだ。精々楽しませてくれよ?」

 

なんかカマセキャラっぽいこと言っている。

 

「いや。チート能力はいらんから、最低限の魔力だけはお願いします。あと、キャロちゃんの知り合いとしてお願いします。あと、俺の不様な死に様を何とかしてくださいお願いします。なんでもしまむら!」

 

「えー。アレに触りたくないんだけど‥」

 

そこだけCVと顔を妹(だが乳は無い)にするのやめてくれませんかね。

 

「あと、俺の分迄妹(ナイチチ)に加護を与えてやってください」

「ふむ。見上げた心意気じゃないか」

 

「安心しろ。お前が死んだお陰で妹の人生は幸せに向かうであろう」

 

「そ、それってどういう‥?」

 

まさかと想いつつ震える声で、神様に尋ねる。

「お前の存在は妹にとって障害でしかなかった。ということだ」

 

憐れむような視線を俺に向ける神様。

 

「ウボアーー!!」

 

決定的な一言に俺の感情は振り切れた。

その場に膝を付き、意識が遠くなる。

 

 

そして現在。

 

「つんつん♪」

 

頭をつついているこの幼女はキャロ=ル・ルシエ!?

ガバッと身体を起こし、キャロの姿を確認する。

「うぐっ‥!」

その時、割れるような痛みが頭を襲い、俺は頭を抑える。

その瞬間、この肉体の記憶だろうか、産まれてからの思い出が脳内にバーッと広がった。

俺の名前はジム=ニー。

この場所の傍の小さな集落で産まれ育った。現在11才の男の子である。小さい頃にウチの親が孤児院から引き取ってきた、この少女、キャロ

とは兄妹同然に育った。

おお。ナイスです神様。

キャロちゃんについていれば、フェイトたんに会える筈である。

そう。将をなんちゃらするならまず馬をなんちゃらである。

夢はあのお気に入りシーンの再現だ!

「お兄ちゃん?どうしたの?」

「ああ。すまない。ちょっと頭が痛くてな」

 

「大丈夫?」

 

キャロが心配そうに覗き込んでくる。

「ああ。大丈夫だ」

「ところで何で俺はここに倒れてたんだっけ?」

 

「一緒にフリードに乗ってお散歩してたら、お兄ちゃん落ちちゃって‥」

 

「キュルー‥」

 

小さい白竜が俺の顔をペロペロ舐めてくる。

 

「おお。フリード。大丈夫だよ。心配かけたな」

 

こいつはフリード。キャロが召還した竜である。

 

キャロにとてもなついていて、俺にもなついてくれている。

 

とても可愛いヤツである。

 

記憶の整理をしながらボーッとフリードの頭を撫でてやっていると、

 

「お兄ちゃん?やっぱりちょっとおかしいよ?」

 

「早く村のお医者さんのところいこ?」

「大丈夫だって。心配性だな。キャロは‥」

そう言いながら、キャロの頭をそっと撫でてやる。

「えへへ」

キャロは気持ち良さそうに目を弓にしながらされるがままになっている。

か、可愛いぃん。心がピョンピョンするとはこういうことか。

もうキャロでも良いんじゃないだろうか?

兄妹ではあるが、血は繋がってないのだ。誰に憚ることもない。今はちびっこだが、キャロもいずれは大人になるはず。

あれ?結構な時期迄ちびっこのままだったような。エリオ。いやエロオはだいぶデカクなっていた記憶はあるが。キャロは‥あれ?おきくなるよね?

兄と慕う男がこんな邪な考えを抱いてるとは露程も思っていないだろう彼女は安心しきった表情で、俺に身を任せていた。

「ぱよ♪」

ん?今何かきこえたような。

 

「キャロ?そろそろ帰るか?」

「ぱよぱよ~?」

撫でる手を止めた俺に不服そうな顔を向けるキャロ。

いや。ぱよぱよ?

そして、撫でるのをやめた俺の手を両手で掴み、うんしょうんしょと自分の頭に持っていこうとしている。

 

かわええ。

 

もうキャロでも良いんじゃないかな?

 

仕方なく、俺は

キャロの頭を撫でるのを再開する。

 

「ぱよぱよ~♪」

なんかキャラちがくない?

いや、可愛いから良いんだけどね。

その後、日が暮れる迄、キャロの頭を撫で続け、なんとか家路に付くことを説得し、フリードに乗って、二人で村へと飛んでいた。

キャロを後ろから抱き締めるように乗っているのだが、キャロからはミルクのような甘い臭いがする。

それは良い。良いんだが、キャロがグイグイと俺に身体を預けてくる。

 

「ちょっ‥キャロ!また落ちちゃう!お兄ちゃんまた落ちちゃうから!」

「ぱよ~?」

それがなにか?とばかりにキャロは更に俺にもたれかかってくる。

 

くっ。間違いない。俺はこのせいで落ちたのだろう。

キャロがこんなに甘えんぼうだったとは‥知らなかった。

だが、俺も伊達に長年お兄ちゃんをやっていない。

 

「どうした~?今日のキャロは随分甘えんぼうだな~?」

 

そう耳元で囁き、更にキャロを抱き締める力を強める。

 

「ぱ、ぱよっ?」

 

すると、突然キャロは慌てだした。顔は真赤になっている。

 

「フリード!ぱよ~~!!」

 

キャロが意味不明なことを叫ぶが、フリードにはしっかり伝わったらしい。

フリードの速度が更にあがった。

 

息をするのも苦しい程の速度である。

 

俺はキャロが落ちないように、しっかりと抱き締めるのであった。

 

「ぱよっ!?」

 

キャロがジタバタと暴れ出すが気にしない。

 

この速度だと本当に危ないのだ。

 

「ぱよぱよ~~~~!!」

 

キャロの叫び声が夕焼けの空にこだまして消えていった。夕焼けのせいかキャロの顔は真赤だったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




みったん大好きこんなキャロは如何でしょうか?ネタと割り切って楽しんで頂けるとうれしいですm(__)m


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ある兄妹の日常。

とりあえず説明回。
説明回を面白く書ける人ってすごいよね?
stanが上手くなる日は来るのだろうか。
まったく想像出来ません。



俺が転生してから一ヶ月程経った。

 

ある日の夕飯の食卓。

「ぱ、ぱよ~‥」

どこか物憂げな声に見やると、キャロがせっせと、ニンジンをおかずから分離していた。

「こーら。キャロ~」

俺が声をかけると、ビクッとしてこちらを哀しげに見てくる。

「好き嫌いしないでちゃんと食べないと、大きくなれないぞ~?」

本当に切実に。

ヒロイン選択を広げる為にも、大きくなってもらわなければ困る。

リアルプリンセスメーカー作戦である。

 

「ぱ、ぱよっ‥」

 

キャロはこちらから目を逸らし、グイグイと、皿をこちらへ押しつけてくる。

「ふーん?俺だけどんどん大きくなっちゃうけど良いんだな~?」

「ぱ、ぱよぉ‥」

哀しげに目を伏せ、いやいやをするキャロは可愛い。

前世の愛すべき妹様もこのくらいの時は可愛いかった。胸はずっと可愛いままだったが。

「仕方がないな‥じゃあお兄ちゃんだけ大きくなっちゃうか♪」

そう言って、人参を一気に掻き込む。

「ぱ、ぱよっ?」

キャロが驚愕に目を見開いて、俺を見てくる。

皿の上は既に綺麗に完食している

「ぱよ~」

唸り声のような声色で唸りながら、俺の足をゲシゲシと蹴ってくるキャロ。

若干涙目である。

「わかったわかった。じゃあお兄ちゃんのニンジンあげるから」

パアッと明るくなるキャロ。

「ほい?」

そう言って、キャロに渡した皿には

ニンジンとピーマンが山盛になっている。

このキャロはニンジンよりもピーマンの方が嫌いらしい。そんな設定無かったと思うが、まあ気にしない。

パアッと明るくなった顔をサアッと青ざめ、キャロは皿を持って震えていた。やがてゆっくりと、お皿をテーブルに戻し、

「ぱよぱよ~!」

今度はポカポカと俺を殴り出す。

「あはは。ごめんごめん」

「ぐっ。グフッ‥ちょっキャロ?ブーストしてない?」

いつものキャロとは思えない程の強烈な打撃が俺のみぞおちに突き刺さる。

キャロは現在10才だが、召還というレアスキルを持っており、支援系魔法も既に使いこなす。

いや。この場合は私怨系魔法か。あ。また上手いこと言ったわ。

俺が転生したばかりの時は、まだおっとりというか、身体のつかい方があまり上手くなく、よく転んで泣きそうになっていたのだが、毎日毎日、外へと遊びにつれ回しているうちに、だんだん身体のつかい方を覚えたのか、そんなことも無くなった。お陰で、今では普通に肉体言語で負けてしまう。いや、この年代でブースト使われたら‥一才くらいの差や男女の差なんてないようなもんですよ。

為すすべなく、キャロに打ち倒され、キャロが馬乗りになって見下ろしてくる。

 

「ぱよー」

ムフーと、鼻の穴が広がりながら、

ドヤ顔をしてくるキャロは可愛い。

「鼻の穴」

「ぱよっ!?」

俺が呟くと

サッと鼻を隠して

俺から顔を背ける。

俺がニヤニヤとしていると、

キャロの目にだんだん涙が貯まっていく。

あっやべっ。

「ぱよ~いよ~い」

キャロは泣き出してしまった。

その泣き声に反応する高速の白い物体。

 

「キュクル~~!」

目にも止まらぬ速さで

ズザーしてきたのはフリードだ。

「や、やあ。フリード。これは。違うんだよ‥」

無駄と知りつつも一応弁明を試みる。

「キュクルッ(ギルティッ)」

そして、フリードは俺の鼻へと噛みついた。

「ぎゃあああ!」

俺の悲鳴に応えてくれるものは居なかった。つらたん。

「あらあら。相変わらず仲良しさんね~」

そう声をかけてきたのは、マイマザーである。

このマザー。驚くなかれ、ヴィジュアルCVは共に三浦あずささん。

なんてこった。もうマザーで良いんじゃないだろうか?

息子の筆下ろししてくれないだろうか。

「ぱよっ!」

そんな俺の邪な思考を中断するように、腹に重い一撃が突き刺さった。

見ると、キャロが唇を尖らしながら、俺へと拳をめり込ませていた。

そしてパッと、俺から飛びすさると、フリードも俺の鼻を解放し、キャロの隣へと並ぶ。

 

いかん!

俺はダッシュで外へと逃げ出す。

「フリード!バーストぱよっ!」

走っている俺の背中に、強烈な衝撃波がぶち当たる。

説明しよう。

バーストぱよっ!とは‥空気を圧縮した衝撃波を繰り出す、フリードの得意技である。

フリードはバーストフレアと言う、強烈な火弾を飛ばすことも出来るが、そんなもん食らえばさすがに死んでしまうため、キャロ&フリードの最上級の手加減技なのだ。いわゆるアマガミである。

まあ十分痛いんだけどね(泣)

どれくらいかと言うと、濡れタオルでビシィッくらいだろうか。

「あらあら。キャロちゃんもフリードちゃんもそのくらいにしてあげてね~~」

俺が背中の痛みに耐えながら倒れ付していると、

マザーの呑気なお声が聞こえてきた。

「ぱよっ!」

 

「キュクルッ!」

一人と一匹が揃って敬礼ポーズをしていた。

キャロもフリードもマザーには頭が上がらない。最早、絶対服従の姿勢である。

キャロは召還というレアスキルのせいで、元々育った部族を追われ、一人と一匹でとぼとぼと歩いていたところを孤児院にフリード共々拾われたらしい。

だがお世辞にもその孤児院は経営状況は良くなく、育ち盛りの一人と一匹の食費もギリギリだったらしく、困った孤児院関係者から知り合いである、うちのマザーに話が行き、

ならばと、ウチで引き取ることになったのであった。この時、この肉体の俺、3歳の時である。

マザーマジ聖母。

最初のうちこそ、キャロは心を開かず、部屋の隅で邪魔にならないようにと、1日縮こまっていたのたが、まず、フリードがマザーの聖母オーラにやられ、マザーになつくと、徐々にだが、キャロも気がつけばトコトコといつもマザーの後を着いて回るようになっていた。俺自身もまだ小さかったので、あまり構ってやれなかったことが悔やまれる。

キャロは居場所というものに人一倍の憧れを持っていたようだ。8年間も一緒に過ごせば、お互いに情も沸く。それに多少なりと信頼しなければ一緒になんて暮らせやしない。

今ではこうやってじゃれあうくらいには家族になれたと思う。

リアルプリンセスメーカー作戦等と言ってはいるが、俺自身キャロの事は妹として愛しているし、

守りたいと思っている。キャロが望む限り、彼女の居場所であり続けたいと思う。

その為には彼女を良い女に育て上げ、恋人になるのが手っ取り早い。その為のプリンセスメーカー作戦なのだ。

ホンとだってば。

 

「さあ。ご飯食べるわよ~」

「「はーい(キューイ)」」

マザーの提案はいついかなるときでも絶対なのだ。

この幸せが何時までも続きますように。

 

 

 

 

 

 




説明回が終わったとはいえ、まだ疑問はあるでしょう。それはおいおい、作中で説明出来たらと思っています。気長に御待ちくださいな。


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ある兄妹の同衾。

夜も更けてきた頃。

 

俺の部屋で俺とキャロはずっとお喋りしていた。

 

いつもならもう寝ている時間だが、今日のキャロはどこか落ち着かない。

視線をあちこちにさまよわせ、

チラチラとこちらを見てくる。

 

「どうした?キャロ?眠くなったか?」

 

俺の問いかけにキャロはぶんぶんと首を横に振るが、

目はしょぼしょぼしている。明かに眠そうだ。

 

「ジム兄は眠いの?」

 

「ん~?まだ平気かな。キャロが眠くなるまで付き合うよ」

 

「ジム兄‥」

 

キャロがキラキラした目でこちらを見てくる。

よせやい。照れるぜ。

「んじゃ召還のこともう少し聞かせてよ?」

「うん!」

~~更に夜は更けて~~

 

「ふーん。詠唱が大事なんだな。呪文間違えたらどうなるの?」

 

「わかんない‥なにも起きないかもしれないし、とんでもないモノが出てきちゃうかもしれないし」

 

「へー。じゃあさ‥」

 

呪文の詠唱。非常に厨二心をくすぐられる響きである。

黄昏より暗きモノ‥闇より‥あかん。これアカンやつや。

その後こうしたらどうなるか等、色々な案をキャロと話し合った。

 

すると、キャロがコクリコクリと舟を漕ぎだした。

 

「キャロ?眠いのか?」

 

「ぱよ~‥」

 

コクリコクリと頷く。

「んじゃ自分の部屋にお帰り?送るから」

 

「ぱよ~」

 

フルフルと首を横に振るキャロ。

 

「ジム兄、一緒に寝よ?」

 

「へ?」

 

「いや、お互い自分の部屋あるんだから、部屋で寝ようよ?」

 

「いやなの?」

 

ウルウルと潤んだ目でこちらを見てくるキャロ。

 

むう。お兄ちゃんこの目には弱いんだよなあ。

 

「‥わかったよ」

 

「今日だけだぞ?」

 

俺がそう言えば、嬉しそうに、同じベッドに潜りこんでくるキャロ。

 

「えへへ。ジム兄と一緒に寝るの久しぶりだね」

 

「そうだな。キャロが五つになった時にお互い別々にねるようになったんだっけ?」

すると、キャロは哀しげに目を伏せて、

「うん。でもね、私、ホントは寂しかったんだあ」

「そっか。キャロはホントにあまえん坊だなぁ」

 

「そんなことないもん」

 

プイッと俺に背を向けるキャロ。

それでも、モゾモゾと背中をこちらへくっつけようと、近付いてくるキャロは可愛い。

 

「じゃあ、部屋帰るか?」

 

ガバッとこちらへ向き直り睨んでくるキャロ。

 

「ジム兄のいじわる‥」

 

そんなキャロがとても可愛くて、俺は苦笑を溢す。

 

「ごめんごめん」

 

謝りながらソッとキャロを抱き締める。

 

「ぱよ~♪」

 

顔を真赤に染めてあっという間に、機嫌を直したキャロを腕に納めながら、蒲団をかけ直す。

 

「でもさ。寂しい時は寂しいって言えよ?」

 

「俺は、キャロの兄ちゃんなんだから」

 

「キャロが寂しいなら、いつだって守ってやる」

 

「ジム兄‥ありがと‥」

 

お礼をいわれると少しはずかしい。

 

俺は、恥ずかしさを誤魔化すように、眠ることに決めた。

 

「お休み。キャロ」

 

暖かいキャロの体温に心地よさを感じながら、

 

キャロから漂う、甘い芳香に、殊更、鼓動が高鳴るのを感じる。

キャロに高鳴る鼓動がバレやしないかと心配になる。

だが、自分の腕の中から、自分のではない、明らかに自分より速いリズムを刻む、鼓動を感じ、これならばれないかと安心すると、直ぐに、俺の意識は眠りへと沈んでいった。

 

お互い、多少の意識はしているようだが、本当に男女として意識し合う日は、来るのだろうか。

 

今無理矢理答えを出す必要は無い気がした。

 

 

  二人の物語はまだ始まったばかりである。

 

 

 

寝静まって少し後、

モゾモゾと闇の中で動く影がひとつ。

その影はぺたぺたと暗闇の中に手を這わし、

何かを確認すると、ひとつ大きく息を吸って、

「ジム兄‥ありがとう」

そう囁くと、顔を寝ているジムに寄せたのであった。

 

   チュッ

 

翌日、

ジムが朝起きてから、首を傾げながら、自分の唇に指を這わせている光景があったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ある兄妹の特訓。

やはりバトルは苦手です。
描写し過ぎると疾走感無くなるし。
え?もとから疾走感無い?
そんな正論聞いてない。
脳内補完力を鍛えると思って、頑張って読んでください(開きなおり)
ごめんってば。


キャロと同衾して翌日。

俺とキャロは村のはずれの広場に来ていた。

キャロがフリードを上手く解放出来なくなったというので、原因究明を含めて、練習しに来たのだ。

「じゃあ、ちょっとやってみせて?」

「ぱよっ」

力強く頷く、キャロは今日も可愛い。

「蒼穹を走る白き閃光、我が翼となり、天を駆けよ。ぱよ、我が竜フリードリヒ、龍魄召還!」

んん?

俺は違和感を感じ、昨夜つくったカンペを取り出す。

そして、予想通り、フリードは光りに包まれたものの、成竜の姿になることなく、光りはおさまってしまった。

カンペを見て、俺は確信を覚えながら、キャロに告げる。

「キャロ。もう一回だ」

「うん」

「蒼穹を走る白き閃光、我が翼となり、天を駆けよ。ぱよ、」

「ダウトオオオオ!」

「ほえ?」

「今、呪文間違えたの気づいてないのか?」

「えっ?間違えてた?」

マジで気づいてないのか。

「来よ。をぱよ。って言ってたぞ?」

「ぱよっ⁉️」

「昔から思ってたんだが、そのぱよって何なんだ?」

「えっ?うーん。何だろ?いつの間にか口癖になってたというか、いつから言い出したのか、えへへ。正直覚えてないんだあ」

「そ、そうなんだ‥とりあえず、詠唱中は間違えないように気をつけるしかないな」

「うん。そうだよね。うん。ありがとう。ジム兄!」

いつの間にか‥ね?

神様が言っていた。ここは、俺の記憶から作り出した、疑似りりなのの世界であると。

俺の記憶が混同されているのか?

つまり、俺のせいで、キャロも作り替えられてしまった?

確かに、細部迄きちんと覚えているか?と、問われれば自信はない。

神様を記憶から検索して、ピッコロさんをサルベージしてくるような、駄女神だ。他にも色々変わっているんじゃないだろうか?

 

俺は漠然とした不安を感じずにはいられなかった。

 

「じゃあ昨夜話したやつやってみようぜ!」

 

「うん‥大丈夫かな?」

 

いよいよ昨夜話した厨二心満載のアイデアのお試しだ。上手くいくかは、結果をごろうじろってね。

「ええっと‥」

ゴソゴソとキャロもカンペを取り出す。

二人で作りあげた、詠唱呪文である。

 

キャロの足下に魔方陣が浮かび上がる。

 

そして、俺の足下にも同じ魔方陣が浮かび上がる。

「蒼穹を走る白き閃光、我が騎士の鎧となり、槍となれ。来よ。我が竜フリードリヒ。竜鎧召還!竜槍召還!」

するとフリードが光りに包まれ、俺の身体へと集束した。

 

光りが収まると、俺の身体は白い鎧に包まれ、右手に深紅の槍が顕れていた。左腕には円形の盾が備わっている。槍の柄と刃の結合部分には龍があしらわれている。

 

成功だ!

やべえ。テンション上がる。

「やったぞ!キャロ!」

「うん!ジム兄カッコいい!」

よせやい。照れるぜ。

うーん。なんか、この盾見覚えあるような。それにこの槍も。

「ちょっと鏡見てくるー」

俺は好奇心を抑えきれず、自室へと駆け込んだ。

そして自室の鏡を見て驚愕。

これ、色が白いドラゴンの聖衣じゃね?

やべえ。廬山昇竜波の練習しなきゃ!

 

ズウウウンン!

その時、外から物凄い轟音と地震が来た。

なんだ?キャロ!?

 

とにかく急いで、キャロのもとへと戻る。

すると、そこには巨大なクレーターが出来ていた。その中央にはキャロがちょこんと座っている。

な。なんじゃあこりゃあああ!?

 

「キャロ!?大丈夫か?」

「あ。ジム兄。うん。私は大丈夫。」

こちらを見上げながら答えてくるキャロ。

けがはなさそうだ。

良かった。

俺は安堵のタメ息をつくと、キャロに手を貸し、

立たせる。

 

「それにしても、隕石でも落ちてきたのか?」

「ナニガあったんだ?」

「うん‥私がやったの‥」

「へっ?!」

予想外の答えに俺は再度周りを見渡す。

範囲もそうだが、深さもそれなりに陥没してしまっている。これを、キャロが?!

「うん‥ごめんなさい‥」

その声がとても暗くて、

俺はハッとする。

眉を八の字にして、うつむいているキャロ。

その表情はとても暗い。

その理由を考えて、俺はハッとする。

キャロは幼い頃に、その強力な力故に、部族を追われている。

またそうなるのではと危惧しているのではないか?

‥バカだなぁ。

ここはひとつ兄ちゃんが一肌脱ぐしかないか。

「よし!キャロ!」

俺の声にビクっとし、俺をおそるおそる見上げるキャロ。

「この鎧凄いんだ。力がどんどん沸いてくる!」

「ちょっと戦闘訓練したいから付き合ってくれないか?」

「え‥?う、うん!」

大丈夫。恐がることなんかなにもない。

 

兄ちゃんはどんな事があっても、キャロの居場所なんだから。

 

それをわからせてやる。

「フッフッフっ。歩がみったん♪」

「ジム兄。時々何言ってるかわかんない」

「どれ。兄ちゃんの力を少し見せてやる。」

俺はキャロを御姫様抱っこで抱き抱えると、

クレーターから跳躍する。

 

軽く跳んだたけなのに、50mくらい跳んでしまった。

うん。やはり竜騎士と言えば、ジャンプだよね。

キャーリューサーン!という歓声が脳内に響いた。

まだまだ。

「フリード。バーストフレアー!」

《キュッ♪》

俺の呼掛けに脳内にフリードの返事がひびく。

すると俺の周りに複数の火弾が浮かび上がった。

「はあっ!」

 

俺が槍を振ると、それに合わせ、

火球は地面に吸い込まれる。

 

ドガアーーン!

大地を震わし、爆発。

そして、あとには、キャロの作りだした、クレーターと同じくらいの大きさのクレーターが出来ていた。

 

「わー。凄い!」

「ジム兄。カッコいい!」

よせやい。照れるぜ。

俺の腕の中で、キャイキャイと手を叩いて喜ぶキャロは可愛い。

「どうだ?不安になる必要なんてない。」

「お前がどんなに、強力な力を持ったって、俺はずっと、お前のソバにいるから」

「お前の居場所はここだから‥」そう言って、キャロを抱く腕に力を込める。

「ジム兄‥!‥ありがとう。ありがとう!」

キャロは大粒の涙をながしながら、繰り返しお礼を言っている。

キャロの涙は苦手だ。

たとえ、悲しい涙じゃなかったとしても。

願わくば、これからキャロの流す涙が全て、嬉しい涙でありますように。

《キュッ!》

フリードの警戒を孕んだ鳴き声が頭に響く。

ハッとすると、地面がかなり近付いてきていた。

うおっ!アブねっ!

あわてて、着地の態勢をとり、着地する。

ジーン‥と両足から痺れるような、感覚が上ってくる。

 

危ない。危ない。俺は聖衣を着てるから、多分あの程度の高さなら落ちても耐えられるだろうが、

キャロは危なかったかもしれない。いや、ブースとしてれば、キャロも平気だろうが。

「どうだ?」

 

「うん!ジム兄カッコいい!」

 

よせやい。照れるぜ。

 

「この鎧、防御力も相当高いんだ。そうだろ?フリード?」

 

《キュッ♪》

 

「ジム兄。フリードと話せるの?!」

 

「ああ。どういう理屈だか知らんがこの鎧を着けてると、フリードの言ってる事がわかるんだ」

 

「へー。スゴーイ!」

 

よっこらしょーいちっと。

 

キャロをゆっくりと地面に下ろす。

 

キャロは少し名残惜しそうにしていたが、地面に降り立つと、トテトテと少し俺から離れた。

 

「じゃあ‥ジム兄に私の新しい友達を紹介するね!」

 

「大地に溢れし、慈愛の心。

 

我が愛の鎧となり、力となれ」

 

「愛の女神(アルカナ)パルティニアス!」

 

「愛魄召還!」

 

キャロを魔方陣が包みこみ、

手首には長めのリボンが巻きつく。

服はまるで日本の制服のような白いシャツに赤いネクタイへと変化した。

伸長も伸びている。胸も膨らみ、お尻も丸みが出ている。そして、頭にはアホ毛がピョコリ。

ハートを象っている。

セットむずかしそうですね。

急に成長したキャロを見て、俺の股関はクリティカルヒットを食らっていた。

成長するとか、どこの魔法少女だよ。

あ。魔法少女の世界だった!

魔法少女リリカルキャロ!始まります!

マスコットはオタクの童貞転生者。

凹む。

俺が脳内妄想を繰り広げていると、

「‥‥兄!」

「ジム兄!」

「えっ?」

「どうしたの?ボーッとして?」

「ああ。いや。すまない‥成長したキャロがかわいくてな‥」

「えへへ。」

キャロは頬を染めて、頬に両手を当ていやんいやんしている。

その動きで、お胸もプルンプルンしている。

おお。まさかキャロが万有乳力を身に付ける日が来ようとは。

お兄ちゃん感激。

「じゃあ。戦えばいいの?」

「あ、ああ。頼む」

「行くよ。パルちゃん!」

パルちゃん?

誰?

すると、キャロの後ろに美しい女性が微笑んだのが見えた。

え?スタンド?

お兄ちゃんいつの間に黄金の矢に射られたの?

ぐっと、キャロが前傾姿勢を取ると、足元に魔方陣が浮かび上がる。

 

ベルか式?見たことないタイプである。

 

「愛の!鉄拳パーンチ!」

 

そしてキャロが、右拳を突きだしながら突進してくる。

「え‥はやっ!?ブラァッ!?」

 

避ける間もなく、キャロの右ストレートが俺の顔面を捕らえる。溜まらず吹っ飛ばされる。

もんどりうって、ゴロゴロと転がる俺。

大の字で倒れ伏していると、

「ジム兄?大丈夫?」

キャロの不安そうな声が聞こえてきた。

 

いかん!

 

ガバッと起き上がると、

 

「全然平気!」

 

必殺超やせ我慢である。

兄の威厳を保つ為、キャロの居場所であるためにも、一撃でパーフェクト負け等、許されない。

「ハッハッハ~お兄ちゃんちょっと油断しちゃったな~」

「愛の!鉄拳パーンチ!」

再び、キャロが突進してくる。

が、甘い!

聖闘士には一度見た伎は通用しない!

間一髪のところで、俺は、ジャンプしてかわすことに成功した。

下を見ると、キャロが先程よりもデカイ、魔方陣を展開していた。

そして、腕のリボンがハートになっていた。

えっ?ナニガオキルンデス?

「ハートフル!パーンチ!」

そしてキャロがとんでもないスピードで、こちらに右拳を突きだしながら飛んできた。

私。空中。逃げれない。なすすべなく、キャロの強烈な右アッパーを食らってしまう。

「ぐはあー!」

突進伎に滞空伎とか。主人公キャラか。

主人公俺じゃなかったのかよ。

不様に車田落ちで地面に叩きつけられる。

だが、大丈夫。

何故って?今の鎧、ドラゴン聖衣の旧モデルだから、頭の守りも完璧である。ちょっとダサいけど。

「今度は俺からも行くぞ。」

「フリード!バーストフレアー!」

キャロに向けて複数の火球が向かう。

「パルちゃん!」

《ロズキクロス!》

キャロの呼掛けに女神が頬笑むと、キャロの前に壁のようなものが現れた。その壁がバーストフレアーを阻む。だけでなく、なんと、火球がこちらに反射してきた。

「ウソォッ⁉️」

「くっ」

たまらずジャンプで後ろへと避ける俺

「フリード、バーストぱよっ」

俺の周りに不可視の空気弾が浮かぶのを感じる。

「ハッ!」

と、槍を振ると、火球にそれぞれ向かう。

そして、火球にぶつかり、それらを相殺する。

さて。どうしよう。

キャロつええ。

お兄ちゃん頑張らないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ???side

 

 

私は、空を高速で飛行していた。

 

《はやて?この先で良いんだよね?》

 

《うん。そのまま。せやけど本当に一人で大丈夫か?フェイトちゃん無理はせんでな?》

 

《あはは。なのはじゃないんだから‥うん。無理はしないよ。これくらいの状況なら何度も経験あるし‥心配。ありがとう。》

 

はやてが心配してくれる。

 

はやては当初、私が一人で行くことに渋っていたのだが、私のたっての希望を聞き入れてくれた。

ここは都市から大きく離れた、のどかな自然保護地帯。

 

普段なら事件とは無縁な場所である。

 

ところが、数分程前、この近くに、突如大きな魔力反応が2つ現れた。

 

しかも戦っているようだという。

 

とても放置しておける魔力値ではないということで、急遽近くにいた私に出動がかかった。

一人では

確かに、若干の不安はある。

でも、私が一人でで動くのが1番速いのだから仕方ない。はやてが危惧しているとおり、今の管理局の体制は初動に時間がかかりすぎる。

 

都市から離れているとはいえ、反応のすぐそばには、小規模だけど、村があるらしい。

 

魔力反応は2つ。その大きさは2つとも私に匹敵するほどだとか。

 

戦っているとはいえ、最悪2対1になりかねない状況でもある。下手に刺激しないように。様子を伺いながら、いこう。

 

話が通じる相手だといいなあ‥

村の人達、避難させた方がいいのかなぁ。

対応策を考えながら、私は気持ち飛行速度を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ようやく登場させられました。フェイトたん(///ω///)♪
さて、どうなりますやら。
ネタ全部わかった人いるかな?この時点でエンディング迄見えた!って人いたら天才だと思います。そんなに捻るつもりないので、もしかしてって思った貴方。その通りです。きっとw感想で予想はやめてくたさいね(笑)ネタバレ上等。確認したいって方はメッセでお願いしますw


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ある兄妹の運命の邂逅

今日もなんとか無事投稿出来た(* ̄◇)=3
難産でしたがwでも詰めこみ過ぎたかもしれない(´д`|||)
もう少し小分けにしたほうが読みやすいかな?
何字くらいが良いんだろ。


「ジム兄!まだまだいくよ?!」

「おう!こいっ!」

「シューティングレイ!」

キャロの周りに摩力スフィアが浮かぶ。

いつの間に砲撃魔法を?!

スフィアからビームが俺に伸びる。

「フッ」

俺は左腕の盾で、その光線を防ぐ。

「ドラゴンの盾は絶対に砕けない」

そう。俺にはこの無敵の盾があったじゃないか。

「フリード!業火の功刃!」

《キュッ》

俺の槍を焔が包む。

行くぞ!キャロ!

「紅墜閃!」

キャロへと、槍を掲げて突進する。

が、槍がキャロに当たるか当たらないかのところで、

《キュッ(怒)》

槍が勝手に明後日の方へと向いた。

そりゃないぜ。フリード。

《キュッ(怒)》

キャロを攻撃するのはイヤなのね。わかったよ。

槍に振り回される俺の隙を見逃さず、キャロが、一際大きな魔方陣を浮かび上がらせる。

ぶんぶん右腕を回転させながら、俺へと狙いを定める。

「すっごい‥!」

「愛の!鉄拳パーンチ!」

そして三度、俺へと突進してくる。

「フッ、聖闘士には一度見た伎は通用‥しな‥ちょっ!?」

盾で防ごうとした時、再び盾が、明後日の方向へと向かされた。

そして無防備になった俺の顔面に、

前回よりも速く、重い拳が、えぐりこむように、俺の顔面を捉えた。

「ぐはあー!」

再びもんどりうってぶっ飛ばされる俺。

ちょっとフリードちゃん?勘弁してよ!《キュッ(怒)》

え?あの勢いのパンチを盾で受け止めたら、キャロの拳が砕けるだろって?

むう。反論出来ん。わかった。俺が間違ってたよ。ありがとうよ。

《キュッ♪》

「ジム兄?大丈夫?」

「当たり前田のクラッカー!」

そして、再び俺の必殺、超やせ我慢が炸裂する。

膝が笑ってるのはご愛敬だ。

火の加護で体力水増しして、なおかつ紅墜閃で、防御も上げてなかったらやばかった。

妹に良いとこ見せるのも楽じゃない。

限界は確実に近付いていた。

ギブアップしちゃおうかなぁ?なんて弱音が脳裏に浮かんだ瞬間。

《キュッ!》

フリードから警戒を呼びかける声が聞こえた。後ろを見ると、そこには‥

風にたなびく鮮やかなな金色のツインテール。

おお‥おお‥

夢に迄見た、何度も何度も絶頂を繰り返した憧れの人。ラブリーエンジェル。大天使。フェイトたんその人であった。

まるで、絵画のような、アニメのワンシーンのように、白いマントを風にたなびかせながら、俺とフェイトたんは向かい合っていた。

 

「私は、時空管理局執務官、フェイトテスタロッサです。この区域は自然保護区です。双方、即刻戦闘を停止してください!」

 

凛としたお声が響き渡る。お声迄美しい。

 

俺は即刻武装を解除する。

 

そして両手を頭上に上げ、敵対意志が無いことをアピールする。

 

「すいません。ちょっと戦闘訓練してただけなんです自然を傷付けるつもりは全く無いです」

 

「な?キャロ‥」

 

後ろを振り返り、キャロの方を見ると、

何故かキャロはフェイトたんに歯を剥出しにして眉を吊り上げ、威嚇していた。

 

アッルェー?

どうしたのかな?キャロちゃん?

初対面かもしれないけど、その人仮にも本当の君の保護者だよ?

 

「あの‥?‥キャロちゃん?」

 

「ジム兄は黙ってて!」

 

キャロに事情を聴こうとしたら、鬼のような形相で、恫喝されたでござる。

こんなキャロ‥初めて見た。

 

「えーっと‥?私。何かしちゃったかな?」

 

フェイトたんがとまどいながら、こちらに問いかけてくる。

 

「すいません。俺にもよく‥」

 

「すっごい‥!」

 

そして、キャロはぶんぶんと右腕を回し始める。

 

あかん!

 

手出したら、シャレにならん。

 

俺はとりあえず駆け出した。

 

「愛の!鉄拳パーンチ!」

 

そして、キャロはフェイトたんに向けて突進する。

キャロのスピードと行動が予想外だったのか、フェイトたんは動けずにいる。

 

「キャロオオオオ!」

 

俺はなんとか、キャロとフェイトたんの間に身を滑り込ませた。

 

    フェイトside

 

現場に到着した私は驚いていた。

大きな魔力反応の正体は‥子供?!

 

年の頃は12才。くらいだろうか?

 

白い鎧を纏った男の子はヘルメットのような兜を被っているので、顔はいまいちよくわからない。

 

もう一人は女の子だ。

 

ピンク色のショートヘアの女の子。

 

一房とりわけ長い髪があり、頭の上でハートを象っているのが可愛い。

 

年は‥14?15才くらいかな?

 

まだあどけなさの残る可愛い少女だ。

男の子の方は息も絶え絶えに見えるけど、戦闘は終わったのかな?

大きいクレーターが二つ、その他にも小さい亀裂があちこちの地面に走っている。

この場所で戦闘があったのは確実だ。

「私は時空管理局執務官、フェイトテスタロッサです。この区域は自然保護区です。双方、即刻戦闘を中止してください!」

 

私の呼掛けに、男の子の方は、直ぐに武装を解除して、両手をあげてくれた。

良かった。敵意は無さそう‥かな。

《はやて?場所はここで良いんだよね?》

《せやで。魔力反応は消えたけど、いや、ひとつはまだそこにおるで!フェイトちゃん気ぃつけてな!》

 

《えーっと、いたのは、子供が二人だけなんだけど》

《子供?!ホンマか工藤?》

 

《工藤?うん。とりあえずこちらに敵意は無さそうだから、一安心かな。》

 

《せやかて工藤!》

 

はやては時々よくわからないことを言う。

はやてとの念話を終了し、改めて状況を確認する。

 

と、男の子の影になってて、気づかなかったけど、女の子はめちゃくちゃ私を睨んでいた。

ピョコリと一房だけ伸びた髪も逆立っている。

 

あはは‥敵意ありまくりだね‥

でもなんで?

私をまるで親の仇みたいな眼で睨んでる。

初対面だよね?

「えーっと‥私‥何かしちゃったかな?」

 

とりあえず敵意の無さそうな、男の子に確認してみる。

 

「すいません‥俺にもよく‥」

 

すると、私と男の子が会話すると、更に女の子から殺気と魔力が脹れあがった。

なんて魔力?!

女の子は右腕をぶんぶんと振り回し、ゆらりと、

前傾する。

足元にはドデカイ魔方陣。

ミッド式でもベルカでもない初めて見るタイプだ。

「すっごい‥!」

「愛の!鉄拳パーンチ!」

「キャロオオオオ!」

女の子が突進してくると同時に男の子もこちらへ走り出した。

同時攻撃?!

敵意の無いと思っていた男の子の突然の行動に気をとられ、私は女の子から目を離してしまった。

 

その一瞬で、女の子は既に私の懐にいた。

 

ウソでしょ?!

 

女の子の拳が私を捉える。

そう思った瞬間、

私と女の子の間に、男の子が現れた。

ドムン!!

鈍い音と共に、男の子の身体がくの字に折れ曲がる。

同時攻撃ではなかった。

男の子は私を庇ってくれたのだった。

女の子はというと顔面蒼白で震えていた。

ゆっくりと、男の子の身体が崩れ落ちる。

「ジム兄!」

女の子が、慌てて、男の子を支える。

すると、男の子はゆっくりと女の子の頭に手を置くと、優しく撫でだした。

 

「ばーか。なんて顔してんだ‥」

 

「兄ちゃんがこの程度でどうにかなるとでも‥っぐっ‥」

ゆらりと後ろに倒れる男の子を私は慌てて、抱き留めた。

どうやらこの二人は兄妹らしい。

 

ずいぶん優しいお兄ちゃんみたいだ。ふふ。羨ましいな。クロノはぶっきらぼうだし、上司ということもあって、私はうまく甘えられない。私も不器用だしね。

ハッ。なんて呑気に考えてる場合じゃないよね。

「君!大丈夫?」

私は慌てて、抱き留めていた男の子の様子を伺う。

すると、男の子は‥なんということでしょう。

 

おびただしい量の鼻血を流していたのです。

 

どうしよう。回復は私あんまり得意じゃないんだよね。

 

応急処置にとりあえず寝かせてみる。

 

「えーっと‥どうすれば?」

 

あわあわと慌ててしまう。

しっかりしろ。フェイト。私が落ち着かないと。

あ?!まず鼻血止めないと!

私は慌てて、男の子を抱き起こす。

「う、あ‥息‥が‥」

男の子がか細い声で訴える。

鼻血が喉に詰まってしまったのだろうか。

なんてことだ。

完全に私の処置ミスだ。

ごめんね。

早く、何とかしないと。

思考がぐるぐる回って纏まらない。

息が出来ない?

そうか!

私は慌てて彼の唇へと、自分の唇を重ねた。

そして、息を送り込む。

あ。これ私のファーストキスだ。

厳密には異姓との、だけど。

ファーストキスはしょっぱい鉄の味がした。

ゆっくり目を開けて見ると。

男の子は更に鼻血を出していた。

なんで?!

「ぱよ~~~~!」

獣の唸り声のようなモノが聞こえ、そちらを見ると。

女の子が物凄い形相でこちらを睨んでいた。

えーっと、私は汗たらり。

確かに、何故かわからないが、私の行動で、男の子は明らかに、容態が悪化している。

妹さんが怒るのも当然である。

「う‥あ‥キャロ‥」

 

男の子が息も絶え絶えに、女の子へと手を伸ばす。

 

「君!無理に喋らないで!」

 

苦しそうな男の子の顔を覗き込もうと私は身体をずらした。

 

ふにゅん

 

ふにゅん?

見ると、男の子の手は

私の胸に触れられていた。

私が身体をずらしたせいで、妹さんを撫でようとした手が胸に当たってしまったようだった。

 

男の子は更に鼻血を吹き出した。

なんで?!

私なにもしてないよ?

 

「ん?キャロ?なんか頭柔らかいな」

 

すると。なんということでしょう。男の子は私の胸を優しく撫でだした。

あ‥。

優しい‥。

男の子は出血多量のせいか目が見えていないのか、完全に私の胸を妹さんの頭と勘違いしているようだった。

我慢。我慢。

この状況は、私を庇ってくれた結果、私の処置ミスのせいである。

 

と、私が己に言い聞かせていると、

ぽんっと、私の肩に手が置かれた。

そちらを見ると。先程とはうってかわり、ニコニコ笑顔の女の子が立っていた。

 

あれ?笑顔なのにすごく怖い。

 

何だろう、幼い顔立ちに似合わぬ凄みがある。

 

このプレッシャー。怒った時のなのは並み?!

女の子は私の胸へと視線をやると、スーーっと、

表情から、感情が抜け落ちた。

 

こわっ!?

 

「ウチの愚兄が、すみません直ぐに、渇入れますので」

 

「渇?貴女、回復魔法使えるの?」

「回復魔法?ええ。そうですね」

そっか。なら安心だ。

女の子は一歩下がると、精神集中を始めた。

 

「危ないので、少し下がってください」

 

え?危ない?

 

回復魔法だよね?

 

とまどいながら、彼女の迫力に気圧され、私は言われた通りに一歩下がる。

 

「我が求めるのは、縛めるもの、捕らえるもの、言の葉に応えよ。鋼鉄の絡鎖、錬鉄召還!アルケミックチェーン!」

 

これは。召還魔法?!

 

男の子の寝ていた地面が魔方陣で光り、そこから無数の鎖が男の子を絡めとり男の子の両手、両足を引っ張りながら、空中へと吊り上げる。

「う‥あ?キャロ?」

ようやく意識を取り戻したのか、男の子が呼びかける。

 

「え?どういう状況?」

 

男の子は自分を縛っている鎖を見て、慌てだす。

 

「浮気者にはお仕置が必要でしょ?」

 

そういう、彼女の目には既に光りがなく。

「浮気っ!?いや。キャロちゃん?お兄ちゃん今生身だから、やめてーもうお兄ちゃん既にHP0だからーっ?!」

 

「蒼穹を駆ける、白き閃光、我が騎士の鎧となれ、竜鎧召還!」

 

再び彼女が呪文を詠唱すると、男の子はまた鎧を纏っていた。

「くっ!キャロ‥」

「鎧つけたげたから、これで安心だね♪」

ガクッと頭を垂れる男の子。最早顔は絶望に染まっている。いや、兜でよくみえないけど。

「じゃあジム兄。」

「んー?」

「死んじゃやだよ?♪」

「俺の妹がこんなにどSなわけがない」

じゃらじゃらと鎖を揺らしながら、男の子は答える。

「ジム兄は本当に時々何言ってるかわからないや」

「ねー。パルちゃん?」

すると、彼女の後ろに、美しい女性が現れた。

これも召還?

少なくとも、人間じゃない。

とんでもない魔力を感じる。

その美しい女性は優しく微笑みながら、言の葉を紡いだ。

《ロズ、トクソ》

すると、男の子に向かって、一条のビームが走る。はやっ!?

「ぐはあー!」

私が介入する間もなく、男の子はビームに飲み込まれた。

あとには、なにも残っていない。

え?!もしかして、跡形も残らず?

「あーーー死ぬかと思った」

いきなり後ろから聞こえた声に私は驚く。

見ると、ビームに飲み込まれたはずの男の子がそこにいた。

「君!大丈夫なの?」

「アッハイ。大丈夫です。キャロもパルちゃんもあれでちゃんと手加減してくれてるんで」

「アマガミですよ。甘噛み」

「そ、そうなんだ‥」

見たところ、鎧が少し焦げてるけど、深刻な怪我は無さそう‥鼻血も止まってるし、本当に大丈夫そうである。膝は笑ってるけど。

私がそれを指摘しようとすると

彼はこちらを手で制し、ひとさし指でしーっとしてくる。

本当に大丈夫そうだし、まぁいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は今回の話のキャロ視点です(ノ´∀`*)
それではまたお会いしましょうm(__)m
毎日投稿を目標にして頑張って来ましたが、少し息切れしてきました(。>д<)ストックも作れないし、
なんでこんなマゾプレイをしてるんだろうw


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ある兄妹の運命の邂逅キャロ遍。上

やってしまった。タイトル通り、前後編です。申し訳無いm(__)mキャロがノリノリで長くなってしまいましたm(__)m後編はなるべく早めに出しますm(__)m


「シューティングレイ!」

私の砲撃魔法はジム兄にあっけなく盾で防がれる。流石。ジム兄。

さすおにである。

ジム兄は私の不安に気付いてる。

私の過去のトラウマといっても良い。部族を追われた想い出。黒竜の巫女と呼ばれ、何をしたわけでもないのに、村を追放された想い出。

人間は弱いから、自分の理解出来ないモノを排除しようと動く。

まあお陰で、ジム兄に出会えたのだから、人生はわからない。ジム兄のいるこの村に来てから、

私は幸せだった。

ジム兄のお義母様のキングさんもとても良い人。

 

時々、ダジャレで空気を凍らせるけど、それを差し引いても、私は彼女が大好きである。

彼女とジム兄に家族としての愛を貰い、

フリードに続いて、新しい友達も増えた。

 

見事な美しい翼を生やした、美しい彼女がニコリと微笑む。

愛のアルカナ。パルティニアスこと、パルちゃんである。

《あなたが、愛を忘れない限り、私はあなたと、共にあります》

うん。ジム兄がいる限り、私は愛を失う事はないよ

《そうですね。貴女のジムへの愛はとても心地好いです》

えへへ。パルちゃんたら、照れちゃうよ。

そんな中、ジム兄が

槍を振り上げる。

「フリード!業火の攻刃!」

すると、ジム兄の槍が焔に包まれる。

フリードとジム兄の息はピッタリみたい。

二人の仲がいいのは、私にとっても喜ばしい。「紅墜閃!」

と、ジム兄が私に向かって突進してくる。

はあ。ジム兄‥カッコいいなあ。

フリード。ちょっと。仲良すぎじゃない?

私は目を細めて、槍、そして鎧となったフリードを睨む。

そこで私は気づいてしまう。

ジム兄とフリードが力を合わせて、私と戦っている?

ジム兄の一番は私だよ?その辺ちゃんとわかってるのかなあ?ねえフリード?

すると、フリードが怯む気配が伝わってきた。

怯むだけじゃなく、槍自身が勝手に動き、明後日の方を向く。

ふふふ。可愛い子。

さて。隙だらけのジム兄に、私の愛をぶつけるとしよう。ね?パルちゃん。

《ふふ。キャロは本当にジムさんが好きですね》

パルちゃんたら。からかっちゃ‥やだよ。

私は頬が熱くなるのを感じながら、

愛を込めて、魔法陣を展開させる。

「すっごい‥!」

ぶんぶんと右腕を回しながら、愛を右腕に充実させていく。

 

「愛の!鉄拳パーーンチ!」

 

足元に魔力を爆発させ、その勢いでジム兄へと突っ込む。

 

最初ジム兄は盾で防ごうとしたが、

私の愛を受け止めない?

 

そんなのジム兄じゃないよね?

 

ねえ?フリード?

 

そしてジム兄は盾を私の鉄拳の軌道上から外してくれた。

そうして私の鉄拳は無事にジム兄の頬を捉える。

ちゃんと受け止めてくれるジム兄大好き!!

 

やっぱり私の居場所はここなんだと安心する。

 

バウンドしながら吹っ飛ぶジム兄に私は頬がにやけるのをこらえながら、

 

「ジム兄。大丈夫?」

 

「当たり前田のクラッカー!」

 

そう言って、すぐさま立ち上がるジム兄はやっぱりカッコいい。膝が笑ってるのも素敵。

私の不安に気付き、それで、私の居場所たろうとしてくれているのだ。こんな純粋な愛をぶつけられたら、私はもうメロメロである。

 

もう私の全部をジム兄にあげていい。

 

ジム兄への愛しさと心強さと切なさがハキュンドキュンしていると、突如邪魔者が現れた。

 

時空管理局?執務官?ナニソレ?おいしいの?

 

突如現れた金髪ツインテールのその女とジム兄は、私そっちのけで見つめ合っている。

は?

 

《キャロ?》

どうしたの?パルちゃん?

《言いにくいのですが、ジムさんから、あの女性へ、尋常でない、愛が向けられています》

は?

 

意味がわからないよ。

そんなの絶対おかしいよ。

私のソウルジェム濁っちゃうよ。

 

パルちゃんは愛のアルカナである。

パルちゃんが間違える事はないだろう。

認めたくない事だが、ジム兄はあの女に懸想しているらしい。

なんだ。簡単だ。あの女を消せば良いんだ。

 

キャロちゃんマジ天才。

 

待ってて。ジム兄。

 

今その女を排除して目を覚まさせてあげるからね。

 

かつてない程に愛がみなぎっているのを感じる。

 

「すっごい~‥!」

 

「愛の!鉄拳パーーンチ!」

いつもよりも加速力のある突進で、私はその女に向かう。

貫けええー!

ドムン!

あれ?ウソでしょ?この殴り心地の好い感触は‥

私が恐る恐る目を開けると、そこには、あの女ではなく、ジム兄がいた。

は?

え?今空間飛んだ?

ちょっと待ってよ。だってジム兄。今、武装解除してて、生身なんだよ‥‥。

ゆらりと、ジム兄が態勢を崩す。

「ジム兄!」

私は慌てて、ジム兄を支える。

と、ジム兄はポンっと私の頭に手を乗せ、

「ばーか。何て顔してんだ。この程度で、兄ちゃんが、どうにか‥なる、とでも‥っぐっ‥」

そこで、ジム兄は後ろに倒れる。ジム兄を支えようと、伸ばした私の手は空を切る。

そして、ジム兄はあの女に抱き締められていた。

は?

この女‥よわっているジム兄に何を‥!

すると女は、ジム兄を横に寝かせた。

今度は何をする気なの⁉️

よく見ると、ジム兄はおびただしい量の鼻血を出していた。

ちょっと!そんな状態で寝かせたら‥!

みるみる、ジム兄の顔色が悪くなってきた。

鼻血が気管に詰まってしまったのだろうか?

とても苦しそう。

 

この女‥!

 

すると、次の瞬間には、女はジム兄にくちびるを重ねていた。

は?

しまったー!これが狙いだったのか!

汚ない!流石時空管理局!汚ない!

危なかった。

 

昨夜、しといて良かった。

 

守られた。ジム兄のファーストキスはこのキャロちゃんである。良かった。

 

しかし、この女。一体何時までしている気なのか。そうこうしているうちに、ジム兄が更に鼻血を噴き出した。

 

「ぱよ~~~~‼️」

 

私は思わず威嚇の声がもれてしまう。

すると、ジム兄の意識が戻り、私へと、手を伸ばしてくれる。

ジム兄に撫でられるのは好き。

どんなに嫌な事があっても、あの優しい手で撫でられると、とても癒されるのだ。

ジム兄に撫でられるのが好き。

どんなに寂しい時でも、あの優しい手で撫でられると、自分の居場所はここだと安心できるのだ。

ジム兄に撫でられるのも好き。

ジム兄の優しい笑顔、声。全てが好きだけど、

あの暖かい手で撫でられると、全てどうでも良くなってしまう。

これが噂のなでぽなのかもしれない。

そんなジム兄の手を待ち焦がれ、私は待ちきれないとばかりに、頭を寄せる。

すると、なんということでしょう。

「君!あまり喋らないで!」

あの女があろうことか、私へと伸ばされたジム兄の手を遮るように、私とジム兄の間に身体を割り込ませやがったのです。

は?

良いでしょう。その宣戦布告。確かに受け取りました。

「ん~?キャロ?なんか頭やわらかいな~?」

ジム兄はあの女の忌ま忌ましい胸を撫でながら、間の抜けた声をあげます。

ブチィッ!

久びさに切れちまったよ!こんちくしょう。

 

 

 

 

 

 

 



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ある兄妹の運命の邂逅キャロ遍。下

まずは、謝罪からm(__)m
間を開けてしまい申し訳無いm(__)m
急に忙しくなりまして。
おまけに花粉で、体調も絶不調でして
言い訳タイム終了。
エタりはしません。完結はさせます。こんな駄作待ってる人いるかはわかりませんがw


私はキレていた。

ビキビキと、コメカミの血管が音を立てている。

ねえ?パルちゃん?

《はい。何ですか?キャロ》

あの愚兄‥いや、ジム兄にはお仕置きが必要だと思うんだぁ?

私はニコリとパルちゃん微笑みながら、問い掛ける。

《そ、そうですね‥お手柔らかにしてあげて下さいね》

何故かパルちゃんは目を逸らしながら、そんな事を言ってくる。

パルちゃんは優しいなあ。

愚兄の目を覚ましてあげるのも、妹の大切な使命じゃないかな。かな?かな!

《ダメです。キャロ。愛を忘れては‥》

愛?おかしなパルちゃん。

私はこんなにもジム兄を愛してるのに。

パルちゃんは愛のアルカナなんだから、わかるでしょ?

《は、はい‥確かに、それもひとつの愛の形だとは思うのですが‥》

だよね♪

じゃあやろっか♪

昔、こんな歌があった。愛を取り戻せってね♪

 

待ってて。ジム兄。今、目を覚ましてあげるから

そして、また、頭を撫でてよ。

それを思うと、頬がにやけてしまう。

私はジム兄を誘惑している女に、これからお仕置きするから、邪魔だと告げた。

すると、女は素直に身をひいた。

ふむ。案外良い人かもしれない。何か言っていたが、よくわからない。適当に返事だけしておいた。だがあの胸だけは許さない。絶対にだ。

 

私はゆっくりと精神を集中して、言の葉を紡ぐ。

「我が求めるのは、縛めるもの、捕らえるもの、言の葉に応えよ。鋼鉄の絡鎖、練鉄召還!アルケミックチェーン!」

私の言の葉に応えて、鎖がジム兄を磔のように縛り上げる。

「う‥あ?キャロ?」

そこで、ジム兄は目覚めたようだ。

「え?どういう状況?」

 

ジム兄は、自分の状況を見て、慌てだす。

 

「浮気者にはお仕置きが必要でしょ?」

 

さも当然とばかりに私が返すと、

ジム兄は命乞いをし始めた。

ふむ。確かに、ジム兄は今生身だ。

私とて鬼では無い。大好きなジム兄を殺すなんて事出来るわけがない。

仕方なく、私は再び、ジム兄に竜鎧を召還してあげた。召還するときに、フリードが嫌がったが、一睨みしたら、大人しく装着されてくれた。

ジム兄をしっかり守るんだよ?

「鎧つけたげたからこれで安心だね♪」

 

さて。お仕置きの時間である。

 

「じゃあジム兄」

 

んー?」

 

ジム兄はがっくりと、項垂れながら返事を返す。

哀しいけど、これ‥しつけなのよね。

 

二度と浮気しないようにしっかりしつけないとね♪

「死んじゃやだよ?♪」

 

「俺の妹がこんなにどSなわけがない」

 

ジム兄は本当に時々何言ってるかわからないや。

私が欲しいのはそんな言葉じゃない。

 

「ねー。パルちゃん?」

 

私の問いかけに、パルちゃんが現れる。

愛のボルテージはMAXだ。

パルちゃんはゆっくりとジム兄に、指を向ける。

《ロズ、トクソ》

すると、その指から、ピンク色のレーザーが放たれる。

 

縛られているジム兄はなすすべなく、レーザーに飲み込まれた。

やがてレーザーの放出が収まると、

そこには、何も無かった。

え?

ドクン!

心臓が苦しい程に高鳴った。

まさか、跡形も無く‥?

ウソでしょ?

 

やだよ!ジム兄!私を一人にしないで!

抑えきれず、涙が溢れてくる。

 

「あーー。死ぬかと思った」

 

そんなとき、何よりも愛しい、間の抜けた声が聞こえてきた。

 

私がそちらを向くと、ジム兄はそこにいた。

それだけでなく、こともあろうに、あの女と談笑している。

どういうことかな。

 

私にこんな想いをさせておいて、

 

何で、他の女とおしゃべりしてるのかな?

 

すると、ジム兄は女に向かって、ひとさし指を立てて、秘密ポーズをとる。

は?

 

この期に及んで、隠し事!?

 

これが許せる?

 

私はそんなに、人間出来てない!

自分の気持ちがおさえられない。

「天地貫く轟火な咆哮、歩けき大地の永遠(とわ)の守り手、我が元に来よ黒き炎の大地の守護者。竜鎧招来、ヴォルテール!」

言の葉に応え、私へと黒き焔が纏わりつく。

 

《いけない‥!キャロ‥!抑え‥きれ‥な‥》

 

パルちゃんの声がだんだん遠くなり、やがて消えた。

そこで、私は意識が途切れた。

 

 

 

 




キャロが病み過ぎてる気がする(´д`|||)
あれれー?おかしいなー。
まだ序盤も序盤なのに(´д`|||)
話が進んだら、しれっと通常運転に戻すかもしれません。そのときは、すみません。できるだけ、そんな事はしませんがw


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ある兄妹の旅立ち。序。

久しぶりの日曜休みということで、サクサク投稿♪
今日出来るだけ、ストックを作りたい所存です(*`・ω・)ゞ



轟っ!

突如、デカイ火が灯ったような音と共に、周りの温度が急上昇する。

音のほうを見ると、熱の発生源の中心には、着ていた白いシャツは黒く染まり、眼から光りの消えたキャロがいた。そしてゆっくりと、こちらへ歩いてくる。

「あれは‥何?」

フェイトたんが驚愕を隠そうともせず、1歩後ろへと下がる。

     ◆◆フェイトside◆◆

 

「あれは‥真竜。ヴォルテール」

呆然と呟く、ジム君に私は尋ねる。

「ヴォルテール?」

「キャロの守護竜です」

「遥か昔の大地の守護者。キャロは、そのヴォルテールの祝福を受けた、竜の巫女なんです」

「何だか‥凄そうだね‥」

感じる魔力凄すぎるんだけど。

《フェイトちゃん?!》

《どうしたの?はやて?》

急にはやてから通信が入り、私は我に還る。

《どうしたもこうしたも。突然、どデカイ魔力がそこに出現したんや!何が起きてるん?大丈夫なんか?》

私を心配する親友の声に、少し心が落ち着く。

《ごめん。ちょっとまだ状況把握中‥》

《わかった。無理はせんでや!》

《了解》

《さて。バルディッシュ?》

《yes!master!》

《解析は済んだ?》

《yes!ターゲットの周囲の温度は未だ上昇中です。近付くだけでもダメージは必至かと》

あらら。

そんなになんだ。バリアジャケットで防げそう?

《sorry完全には無理ですね》

《また、先程迄の戦闘データの考慮した結果、スピードが更に上がっていた場合、マスターでも対応はむずかしいかもしれません》

《一人では難しいかと。撤退を進言します》

むう。確かに、先程は、不注意とはいえ、一瞬で、懐に入られてしまった。

見たことろ、攻撃力は明らかに高そうである。

一点集中ならともかく、纏うタイプの防壁なら軽々しく突破されそうである。

どうしよう。近くの聚落には避難勧告はしていない。撤退はあり得ない。

 

《バルディッシュ!setup!》

私はとりあえず、バリアジャケットを纏う。

そして、ジム君にプロテクションをかけ、女の子に相対する。

 

「私が意識を逸らすから、君はその間に、村の人達に避難するよう伝えてくれないかな?」

 

「フェイトさん‥無茶ですよ!」

 

彼は心配して止めてくれるが、やるしかない。

「お願いね」

 

私は短く言葉を発すると、彼から目線を切って歩きだす。

 

良し。行くよ。バルディッシュ!

 

《ご武運を!》

 

バルディッシュの諦めたような応援に私は苦笑する。

こういうとき、私は止めても聞かないとわかっているのだ。

長年連れ添った最高の相棒がいるのだ。やってみせる。

バルディッシュを握る手に汗が滲むのを感じる。

 

こんなに緊張しているのは久しぶりだ。

 

 

 

もう少し、もう少しで間合いにはいる。

 

 

「‥‥さん!」

 

急に手を掴まれ、引っ張られ、私は我に還る。

そこにはジム君がいた。

何で?プロテクションは?

「すいません。破壊しました」

 

え?

 

見ると、先程迄、彼が居たところにプロテクションの魔力の残骸がガラスのように散らばり、消えていくところだった。

内側からとはいえ、プロテクションを簡単に破壊するなんて、やはり、この子もタダ者じゃない。

「聞いて下さい!今のキャロには、パルちゃん‥パルティニアスの加護はついていません!」

 

「うん。うん?」

 

「つまり、さっきまでのキャロとは、戦闘スタイルは別物です。多分、スピードは大幅に落ちているかと。」

 

 

「そうなの?」

 

「はい。暴走を抑える、心当たりもあるので、少しの間だけ、時間を稼いでください!お願いします!」

 

そう言って、彼は深々と頭を下げる。

 

「そっか。うん。わかったよ」

 

私がそう返すと、彼は心底安心したように、微笑むと、女のコの方を心配そうに見つめる。

やっぱり優しいお兄ちゃんだ。

 

「じゃっお願いします!」

 

そう言って彼は、村の方へと駆け出した。

良い情報をくれた。

スピードが上がってないのなら、時間稼ぎの持久戦は望むところである。

だよね?バルディッシュ。

 

《yes!nosilly!butkeepyourguardup!他愛もないです。くれぐれも油断無きよう》

 

 

うん。了解。

 

「ライトニングバインド!」

 

私がバルディッシュを向けると、女のコに無数のバインドが絡みつく。

しかし、女のコはまったくきにすることもなく、歩みを止めない。

 

やっぱりダメか。

 

バインドが紙のようだ。

いや。紙でももう少し、拘束するだろう。

 

そしてゆっくりと女のコは右腕を振り上げた。

私は身構える。

あの突進技だろうか。

ゴクリと、喉が鳴る。

 

しかし、意に反して、女のコは右腕をそのまま、地面に突き立てた。

すると、そこから、黒い焔が吹き出しながら、私に迫ってきた。

えっなにそれこわい。

私は意識的に大きく回避した。

空を飛びながら、様子を伺っていると、

さっきまで私が居たところを大きな黒い焔が呑み込んだ。

危なかった。小さく回避していたら、捲き込まれていたかもしれない、

私が地面に、降り立つと、女のコは再びこちらを向き、無表情のまま、こちらへ歩きだした。

こわっ。

子供の頃、なのはの家て見た、ターミネーターを思い出した。

次はどうくる?

私が油断なく身構えていると、

 

「あらあらー」

 

突然、のんびりした声が響き渡った。

見ると、ジム君が妙齢の女性を抱き抱えながら、そこにいた。肩で息をしている。

ジム君が女性を下ろすと、女性は女のコに向かって、歩きだした。

ちょっ?危ない!

私が女性を止めようとすると、ジム君が私と女性の間に入り込んだ。そして、手でこちらを制してくる。

「キャロちゃん?おいたはその辺にね~」

 

女性は女のコに優しく語りかける。

すると、女のコはピタリと動きを止めて、

やがてプルプルと、震えだした。

すると、女のコを再び、黒い焔が呑み込んだ。

私は状況がまったく呑み込めない。

ジム君と女性は静かに、その光景を見守っている。

えっ?わかってないの私だけ?

 

やがて、焔が納まると、そこには、一回り小さくなった、少女がちょこんと土下座していた。

どういうことなの。

 

 

 

 



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ある兄妹の旅立ち。

   ◆◆フェイトside◆◆

 

私はジム君とキャロちゃんの母親という、女性とジム君を挟んで座って向き合っていた。

 

「ジムとキャロを預かりたい‥ですか?」

 

「はい‥」

 

そう、あのあと、私は二人を管理局で預かりたいと申し入れたのだ。

 

「二人共、類い稀な才能を持っているようです」

 

そう。特にキャロちゃんの方は、しっかり訓練して、もう二度と、暴走等しないようにしなくてはならない。私は必死にその必要性を説いた。

今回は、事なきを得たが、次もうまく行くとは限らないのだ。

ジム君の方は、上手く制御出来ているようだが、

あんなに仲の良い兄妹を引き離すのは偲びない。

私が後見人となり、二人共に管理局の陸士候補生となってもらえれば、先々、色々都合が良いと考えた。はやてに話したら、2つ返事で、優秀な人材は大歓迎という即答だった。夢の部隊結成の為に人材が欲しいのだろう。逆に絶対にスカウトしてくるよう頼まれてしまった。

 

「ジムはどう思う?」

 

お母様は、ジム君へと視線をやり訊ねた。

話しを切り出してから、終止目を見開いて、色々考えていた様子のジム君は、

 

「いや‥俺は‥」

 

「母さんに遠慮するんじゃありません」

ジム君が言いかけた言葉をピシャリと遮る、お母様。

「でも‥母さんを一人にするわけには‥」

私はその言葉にハッとする。

お母様に視線を送り、恐る恐る訊ねる。

「失礼ですが‥お父様は‥?」

するとお母様は苦笑をひとつ。

「だいぶ、昔に死別しました」

と、少し寂寥の影を落として、答えた。

 

私はバカだ。

 

「すみません‥このお話しはなかったことに‥」

 

「何を仰います‥先程、あんなに、熱心に話して下さったではありませんか?」

 

「貴女の仰有った事は何一つ間違っていません‥

それに‥可愛い子には旅をさせよ。と云うでしょう?」

 

にこりと優しく微笑む姿に私は思わず見蕩れてしまう。

「この子は‥私が言うのも何ですが、とても優しい子に育ってくれました‥だからこそ、キャロ‥妹もとてもなついています‥こんな、優しい子だから、‥こんな機会でも無いと、私も子離れ出来ません‥クスッ」

話しながら、溢れそうな涙を、誤魔化すように小さく笑ったお母様に、私はかける言葉を持たなかった。

「こう見えて、人を見る目はあるつもりです‥グスッ貴女は信用出来る‥」

 

会ったばかりでそんな風に言ってもらえるなんて、

私は照れ臭くて、頬が熱を持つ。

 

「どうか、二人をよろしくお願いいたします。ビシバシ鍛えてやって下さい」

 

そう言って、お母様は深々と頭を下げる。

私も慌てて、頭を下げる。

「はい。お任せ下さい」

「母さん‥本当に大丈夫なのか?」

ジム君がなおも心配そうに尋ねる。

本当にお母さん想いの良い子だ。

こんな良い親子を引き離すのだ。私がしっかりしないとと、身が引き締まった。

「大丈夫よ♪寂しくなったら、すぐに逢いにいっちゃうから♪」

逢いに行くって‥ここからミッド迄は転移門を3つ程使う必要が‥そんな近所に散歩に行くみたいに‥

私がとまどっていると、

「そっか♪わかったよ♪」

と、ジム君迄もが何でもないことのように、返事していた。

「あ、あの‥二人は一応ミッドに住んで貰おうと思っているのですが‥」

何か重大な齟齬が起きている気がして、私は堪らず尋ねた。

「ええ。やだ。フェイトさんったら、先程、そう仰有っていたじゃありませんか?」

クスクスと笑いながらお母様は答える。

どうにも話しが繋がらない。

私がなおも、混乱していると、

「そうですね。実際に見て頂きましょうか」

そう言って、お母様は立ち上り、部屋のドアへと向かう。

見る?何を?

私のハテナマークを感じてか、

「ちょっと管理局に御挨拶してきますね」

え?

「スタンバーイ」

そしてお母様はドアを開け、部屋を出た。

そのあとすぐに、ドアを開け戻ってきたのだが‥

私は今日1番の驚きをする。

お母様は手に何かを握っていた。

《何ですか?ナニが起きたのですかー?》

《はやてちゃーん?助けて下さいでスウー》

聞き慣れたその声はリィン?

「リィン?」

《あ。フェイトちゃ~ん》

リィンが半泣きで私へと飛んでくる。

そんなリィンを抱き留めて、確認する。

うん。間違いなくリィンだ。

どういうことなの?お母様がドアを出て、戻ってくるまで5秒とかかっていない。

《えーと?はやて?》

《あ!?フェイトちゃん!大変や!リィンが拐われた!》

《急に青みがかった髪の美人さんが現れてな!あまりにナイスバディやから見蕩れてたら、いきなり、リィンを掴んで消えてもうたんや!》

《落ち着いて、リィンならここにいるから》

《は?》

《なんでや!てことは、あの美人さんはフェイトちゃんの仲間なんか!?》

 

は?いけない。はやてがまた暴走しはじめた。

 

《くそー!やはり、巨乳は敵や!》

 

《(めんどくさい)じゃっ後でね♪》

 

《ちょっ?!フェイトちゃん!?今何か聞こえたで?!念話で行間入れるとか器用過ぎやろ!》

 

とりあえずめんどくさいので、通信を打ち切り、お母様へと尋ねる。

 

「どうやったんですか?」

 

「あらあら‥ごめんなさいね。私にも良くわからないの」

 

は?

 

わからないって‥私は目が点になる。

 

「フェイトさんにもわかりやすい言い方するなら‥これは、母さんのレアスキルです。」

 

ジム君が答えてくれる。

そっか♪レアスキルか。じゃあちかたないね♪

 

「レアなんちゃらとかはよくわからないけど、昔から、こうなんです。行きたいと思ったところに行けちゃうんですよね♪」

 

なにそのリアル何処でもドア。

 

お母様に心で突込みを入れつつ、私は考えるのをやめた。

「では、そろそろお暇しますね?」

「すみません。俺はキャロに話してから行きますんで、そちらに伺うの明日でも良いですかね?」

「もちろん♪これ、私の住所と、連絡先ね」

「はい。お預かりします」

「では、失礼します。」

最後に深々と御辞儀をして、私は部屋を出る。肩に乗ってるリィンが早く説明しろと、ジト目を送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、おわかりだと思いますが、次は、ジム→キャロと、視点別でいきます。
正直少しめんどい(笑)自分でそういう構成にしたので、自業自得なんですがね(´д`|||)個人的には少し駆け足でストーリー進めたい気持ちもあるんですが、どうですかね?心情描写必要かなと思って、こうした構成にしてるんですが、これから、少しずつ、設定矛盾とか出てくるかもしれません。その時は、多少はおおめに見て下さると助かります。ですが、ご指摘も御待ちしています(笑)どっちやねーん(´д`|||)
読んで戴いた後に、視点別いらなかったな。と、言われないように頑張りたいです(゜ロ゜;
それではまたお逢いしましょう。


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ある兄妹の旅立ち。ジム偏。

キャロの暴走が治まって後、キャロは今、自室でぐっすりお休み中である。

そして、俺はというと、リビングで、母さんとフェイトさんに挟まれる形で座っていた。

フェイトさんは母さんに、俺とキャロを預かりたいと申し出た。

原作が始まったかと、俺は、ほくそえむ。

だが待てよ?ウチには父親がいない。つまり、俺とキャロが出ていったら、母さんは一人になってしまう。

どうする?俺の心は正直、もうフェイトさんとひとつ屋根の下へ、想いを馳せてしまっている。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「フェイトさん♪お背中お流ししますね♪」

 

「こら♪ジム♪目がなんかやらしいぞ♪」

 

「てへっ♪すいませーん♪」

「フェイトさんの身体があまりに素敵過ぎて(キリッ)」

 

「もう♪仕方ない子だなぁ♪」

 

「あっこーら♪前は良いってば♪」

    ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ヤバい‥

フェイトたんマジ天使

いかーん!

違う!

こんな煩悩に流されて、母さんを一人にして良いのか?

女手ひとつで、俺とキャロをここまで育ててくれたんだぞ?

結論。あり得ない。

俺が心を決めた時、

 

「ジムはどう思う?」

 

母さんが俺に意見を求めてきた。

 

「いや‥俺は‥」

 

「母さんに遠慮するんじゃありません」

 

反対だと言おうとしたら、母さんにピシャリと遮られてしまった。

俺の葛藤はお見通しだとばかりに、母さんは俺を真っ直ぐ見ている。

 

わかってる。

母さんは俺とキャロの事を1番に考えてくれているのだ。

確かに、俺の煩悩はともかく、

キャロは二度と暴走しないようにしっかり訓練したほうがいい。それは是非もなく、正論である。

それに、これからJS事件が起こるとするなら、キャロは機動六課の重要なメンバーである。

もし、キャロがいなかったら、原作がバッドエンドになるかもしれない。

それはあかんやろ。

でも‥それでも俺は、母さんに寂しい想いをさせたくない。させたくないのだ。

これは俺のワガママである。

そんな子供のワガママを通そうと、俺は口を開く。

「でも‥母さんを一人にするわけには‥」

 

俺の言葉にフェイトさんがハッとする。

 

「失礼ですが‥お父様は‥?」

 

そして、母さんは苦笑をひとつ。

 

「だいぶ、昔に死別しました」

 

その顔には、寂寥の影が滲んでいて、

「すみません‥このお話しはなかったことに‥」

 

ああ。やはりこの人は優しい。

 

天使!フェイト!大天使である。

 

だが母さんはフェイトさんになおも反論する。

 

「可愛い子には旅をさせよと云うでしょう?―――――――私も子離れ出来ません‥クスッ」

 

ずるいよ。

 

ずるいよ母さん。

 

そんな涙をこらえながら、そんな風に言われたら、俺はもう何も言えない。

どうしたら良いんだろう?

どうすれば、俺は貴女に恩を返せる?

答えは決まってる。

立派な大人になろう。

貴女に誇りに思ってもらえるような、立派な大人に。

そして、貴女の分迄、キャロを守る。

俺が静かに決意していると、

 

「――はい。お任せ下さい」

 

話しは進んでいた。

最後に不安になり、

 

「母さん‥本当に大丈夫なのか?」

 

母さんに尋ねる。

 

「大丈夫よ♪寂しくなったら、すぐに逢いにいっちゃうから♪」

 

そっか。母さんにはあれがあった。

 

「そっか♪わかったよ♪」

 

「あ、あの‥二人は一応ミッドに住んで貰おうと思っているのですが‥」

 

フェイトさんが戸惑いながら、声をかけてくる。

そっか。どう説明したものか。

そう思っていると、母さんは実演するようだ。

リビングのドアの前に立ち、ドアを開け放つ。

 

「管理局に御挨拶してきますね」

 

え?管理局行くの?

大丈夫かな?捕まらないといいけど。

まあ、捕まっても大丈夫だと思うけど。

 

「スタンバーイ」

 

その瞬間、小さい2頭身の母さんがドアの向こうに見えた。

そして母さんはドアをくぐる。

心配したようなことはなくすぐに母さんは帰ってきた。

が、手に何かを握っていた。

あれ?ツヴァイちゃん?

脳ミソ蕩けるようなお声が響く。

やっぱ可愛いわ。マジ小天使。

その後、フェイトさんに軽く説明をして、フェイトさんは帰る事になった。キャロに説明するために俺は1日猶予を貰った。

さて。キャロにどう説明したものか。

俺が一緒だから、大丈夫だとは思うけど

トラウマを刺激しないように気をつけないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ある兄妹の旅立ち。キャロ偏

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感想、評価も出来ればよろしくお願いいたします(笑)


私が目を醒ますと、周りは暗闇だった。

えっと。ここは、自分のベッド、自分の部屋だ。

私はどうなったんだっけ?

ジム兄にお仕置してたはずなんだけど、途中から記憶が無い。なんだか、とても怖い想いをしたような気がする。

と、部屋の中に私のではない呼吸音がしていることに気付く。

周りを見渡すと、ベッドの脇にはジム兄が座って寝息を立てていた。

それを見て、私はとても暖かい気持ちになる。

と、咽が乾いたので、ジム兄と反対側のベッド脇においてある、水差しとコップをそっと静かにとり、ジム兄を起こさないようにコップに水を注ぐ。

水差しを置いて、両手でコップを持ち、乾いた咽を水で満たす。

コクコクと、すんなり一杯分の水をひと息で飲み干し、

喉が潤され、胃が冷やされるのを感じる。

飲み終わり、空になったコップを脇に置き、ふう。と小さく息を吐く。

すると、きゅる~と小さく御腹が鳴った。

記憶はないが、どうやら夕飯は食べ損ねたようだ。

 

「ほれ」

 

そう言って、差し出されたのは小さいおにぎり2つ。

差し出したのはもちろんジム兄だ。

「ありがとう」

ジム兄が起きていたことに驚きを覚えるが、それより空腹が勝った私は、目の前のおにぎりに口をつける。

キャロちゃんは育ち盛りなのだ。

具はおかかのようだ。香ばしい芳香が口の中に広がる。この丁度良い、醤油加減。お母さんのおにぎりだ。わーい。キャロ、お母さんのおにぎりだーいすき♪

モクモクと、食べていると、おにぎりが喉に詰まってしまった。

息がつまり、ん~ん~と唸っていると、コップが差し出された。

もちろんジム兄だ。

急いで受け取り、喉のご飯を流し込む。

ジム兄の前ではしたないところを見せてしまった。私は恥ずかしくなり、顔を熱で染め、布団をかぶり、ジム兄の視線から避難する。

すると、間もなく、布団の向こうから、クスクスと笑う声が聞こえてきた。

私はカッとなり、

 

「ジム兄のバカ!もう出てって!」

 

と、声を荒らげる。

すると、ジム兄は‥

 

「あれれ?おにぎり一個残ってるな?勿体ないから、兄ちゃんが食うか~」

 

「食べる!」

 

ガバっと布団をはねのけると、そこには、ニヤニヤ笑うジム兄。

私はまた、顔が熱くなる。

 

「ほれ?」

と、ジム兄が差し出す残り一個のおにぎりを奪いとり、

 

「はむっ」

と、

かじりつく。

「キャロ。喰ったまま聞いてくれ」

その声色は初めて聴く、真剣なもので、思わずジム兄の顔を見る。と、ジム兄は表情もとても真剣で、

お言葉に、甘えて、二口目をかじりついたところで、ジム兄は言葉を続けた。

 

「お前‥今日のこと、覚えているか?」

 

今日のこと、記憶がすっぽり抜け落ちている部分のことだろうか?

私は咀嚼しながら、首を横に振る。

あ、梅ぼしだ。わーい。キャロ、梅ぼしのおにぎりだーいすき♪

「そっか‥」

と、ジム兄は真剣な表情で項垂れてしまう。

「簡潔に言うぞ?お前は今日暴走した」

え?

暴走?

何が?

私がquestionマークを浮かべていると、

ジム兄は言葉を続けた。

「お前はヴォルテールを竜鎧として、召還した。そして、その結果、暴走した」

ジム兄に言われて、だんだんと、記憶がよみがえってくる。

確かに、あの時私は正気じゃなかった。自分の行動も抑えられていなかった。

「それで、だ‥俺とお前はこれから、時空管理局の預かりとなる。そこで、二度と暴走しないように訓練をさせてもらえるらしい」

ブルッと身震いする。なんてことだ。私はもしかしたら、この手でジム兄を‥殺してしまっていたかもしれないのだ。ジム兄じゃなくても、誰か他の人を傷つけてしまっていたとしたら‥

昔、部族の長老が言っていた言葉を思い出した。

「強すぎる力は‥争いと、災いを‥呼ぶ‥」

私は、私は‥ガバっと自分で自分を抱き締める。

私は、この、居場所を無くしてしまったのだろうか?また居場所を壊してしまったのだろうか?

ポロポロと、涙が止めどなく流れてくる。

「キャロ!」

ジム兄が私の名前を呼びながら、抱き締めてくれる。

「お前の居場所は壊れてなんかいない。言ったろ?お前の居場所は俺だ。兄ちゃんだって」

「あはっ。そうだったね‥ジム兄。ジム兄~」

ジム兄の温もりがどこまでも温かくて、私はひてすらに、ジム兄にすがり付いて泣いていた。

私が泣いてる間、ジム兄はずっと、私の背中を撫でてくれていた。

おかげで今は心がポカポカ暖かい。

「私、ジム兄と離れたくないよ‥」

ギュッとジム兄の服を握り、そんなことを独白する。

「ばーか。話しちゃんと聞いてろよ?

管理局に行くのは俺も一緒だ」

ジム兄も一緒。

それだけで、私の心はスーッと、軽くなった。

「そっか‥えへっ‥良かった‥良かったよぅ‥」

私はまた泣き出してしまった。

でも大丈夫。今度のは、安堵の涙、嬉し涙だ。

ポンっと、頭に手が置かれ、くしゃりと髪を鋤くように優しく撫でられる。

ああ。安心する。

すると、キュル~と小さく御腹が再び鳴った。

キャロちゃんは育ち盛りなのだ。

「ははっ‥母さんに何が作ってもらうか?」

「うん♪」ジム兄に手を引かれ、私は母さんのところへいく。

 

「母さ~んキャロがあれだけじゃ足りないってさー、グフッ」

声を張り上げるジム兄の背中にドスっと、正拳を入れる。

全くジム兄はもう少し、でり‥デリ、デリバリーを持ってほしいものである。

「あらあら♪何が食べたい?」

 

「青椒肉絲!ピーマン大盛りガフッ!!」

 

光りの早さでジム兄の顔に正拳を叩き込み黙らせる事に成功した私は、大好きなお母さんのメニューをリクエストする。

「卵焼き!甘いの!」

 

「はいはい♪キャロは卵焼き好きね♪」

 

「うん♪」

 

卵焼きも好きだけど、お母さんの笑顔も大好き。お母さんと離れるのは非常に寂しい。

そこで私は、更にワガママを言ってみた。

 

「あとね、今日はお母さんと一緒に寝たいな?」

 

「あ!俺も!」

 

ジム兄がちゃっかり、便乗してくる。

 

「はいはい♪そうね。今日は久しぶりに三人で川の字で寝ましょうか?」

 

「わーい♪キャロ。川の字だーいすき♪」

 

夕飯を、済ませ、布団を敷き、お母さん、私、ジム兄の順で並んで寝る。

優しい家族に挟まれている。この安心感が、私は大好きである。

温もりに包まれて、私が早くも、ウトウトし始めると、微睡みの中で、ジム兄とお母さんの会話が聞こえてきた。

「母さん‥一人にして、ごめんなさい。」

 

「バカね‥大丈夫と、言ったでしょ?」

 

「俺‥立派な大人になるから」

 

「キャロは勿論、周りにいる人、みんなを笑顔に出来るような‥母さんが誇りに思ってくれるような、立派な大人になるから‥」

 

「バカね。貴方はもう‥私の誇りよ?私の愛しい、とても優しい子‥」

 

「‥母さん‥」

そして二人は、私を間に挟みながら、強く抱擁をする。ギューっと前から後ろから、かかる圧力が、とても心地よい。

うん。私にとっても、ジム兄は誇らしい、優しいお兄ちゃんだ。

私の顔には、お母さんの胸が、どたぷ~ん。と、押し付けられており、少し息が苦しい。

私も、これくらい、育つかな‥?

だと、いいな‥

そうすれば、きっと、ジム兄も喜んでくれるはず。

私は兎に角、最後になるかもしれないお母さんの温かさを刻み込もうと、ギュッとお母さんにすがり付くのだった。

 

ジム兄の独白にも似た、言葉を聞いて、私も強くなろうと、心に決めた。守りたい、優しい人を。私に笑いかけてくれる人達を。

自分の力で、意志で、守りたい!

そして、ヴォルテールを制御出来るようになって、戻ってこよう。この場所に。もちろん、ジム兄と一緒に。

それは、私にとって、何よりも叶えたい願い。

魅力的な夢だった。

そのためなら、どんな辛い事だって我慢出来る気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ある兄妹の新生活。

雨風ヒドイですねー(´д`|||)
どこぞの高木さんみたく、フーハハハー。吹けよ風!なんて叫びたくなりますね。花粉症の身としては、雨は望むところなんですが、風とバリューセットだと、出掛けるのもキツいので鬱になりますね。皆様もどうかお気をつけて(。>д<)


ジュー。

と、肉が焼ける音と、共に、良い匂いが立ち込める。

「キャロ~?そこの瓶とって?」

 

「うん。これ?」

 

「そそ。ありがとー」

匂い付け程度に酒を投入。

更に良い音と匂いが台所を包む。

「向こうのテーブルの片付けは終わったか?」

 

「うん!」

キャロがキラキラした目でまだかまだかと急かしてくる。

俺は苦笑しながら、盛り付けを開始する。

「キャロ?盛り付け手伝ってくれるか?」

「はーい」

空の皿を棚から出して、俺の傍迄持ってきてくれるキャロに軽く礼を言うと、

キャロは四人分のご飯をよそいはじめた。

ここは、ミッド郊外のフェイトさん宅。

なんとフェイトさんは、俺達を預かるにあたって、わざわざ、一軒家を間借りしてくれたのだ。

隊舎の寮では、四人は流石に手狭だからと言うらしい。

執務官って、稼ぎ良いんだなぁ等と、下世話な事を考えながら、

盛り付けをしていると、

「ジム兄さん。何か手伝える事ありますか?」

そう声をかけてきたのは、赤毛の美少年。

「ん~じゃあ、悪いけどレタス剥いてくれるか?」

「はい!」

と、元気良く返事をして、水にさらしておいたレタスを慣れない手付きで剥いていく、エリオ、モンデヤル君。

そう。エリオも一緒に住む事になったのだ。

当初は仲良く出来るか心配していたが、

思いの外、エリオは良い子だった。

会ったばかりの頃は、人見知りなのか、虚空を見て、ともちゃんとやらに話しかけていて、なかなか馴染んでくれなかったが、

同年代の同性と接するのが楽しいらしく、

今では、

ジム兄さん。ジム兄さんとなついてくれた

可愛い、弟が出来たようで、少し嬉しかったのは内緒である。

え?誰にって?

もちろん、キャロにである。

キャロは最初のうちは、兄が取られるとでも思ったのか、少しエリオに対して、威嚇することがあった。

同性にすら嫉妬する妹の愛の深さに、うれしいやらなんやら、もうなんやらお兄ちゃんわかんね。

当然これからは家族になるんだからと諭しましたよ。それからは、エリオ君♪キャロ♪といつの間にやら、仲良くなっていた。

うんうん♪仲良きことは美しきかな♪

元々相性は悪くない筈なのだ。

唐突だが、俺は、前世の記憶はある。

なので、人生経験的にはかなりのものになっている。前世では死んだのは‥いくつだっけ?三十路であったのは間違いないのだが。

なんせ、妹様にさんざん三十路をからかわれたからな。

此方へ、来てから、10年は経ってるだろうし、

もう俺もアラフォーか‥いや、この身体は‥あれ?いくつだっけ?12?うん。12だった気がする。いかん。少ボケがきているかもしれん。

だからか、一緒に住んでから、フェイトさんには何度か、子供っぽくないと、不審がられた。

そういった事もあり、エリオとキャロには、軽く勉強も教えている。

と、言っても、こちらの歴史や地理は全然知らんから、結構ちぐはぐになることもあるんだけどな。そこらへんは、一緒に勉強してる。

おっと、脳内説明をしていたら、もうフェイトさんが帰ってくる頃合いだ。

「よーし、二人とも、食事をご飯の部屋に運んでくれ?」

「「はーい」」

我先にと、突っつきあいながら、食事を運ぶ二人。

うん。仲良いね!

お兄ちゃん少し寂しいかも。

なんて、哀愁を感じながら、俺も料理を持って、二人の後を追う。

テーブルに料理を並べていると。

「ただいまー」

「「「おかえりなさーい」」」

フェイトさんが丁度帰ってきた。

「うーん。良い匂い。」

テーブルに並んだ料理を見て、フェイトさんが目を輝かす。

「今日もお務めご苦労様でした」

フェイトさんからコートと鞄を預かり、手早く、片付ける。

「もうご飯にします?お風呂も沸いてますけど?」

「あはっ♪至れり尽くせりだね。ジム。ありがとう」

そう言って、俺の頭を撫でてくれる。

頭を撫でられるのは未だに少しだけ恥ずかしい。

視線を感じ、横を向くと、

エリオが羨ましそうに、しかし目はキラキラと、流石ジム兄さんです。とばかりに、こちらを見ていた。

エリオは良い子である。

フェイトさんを母と慕い、常々、何かしてあげたいと、考えているのだが、何をすれば良いのかわからない。といった葛藤を抱えてるのをお兄ちゃんは知ってるよ。

つねに学ぼうとしているその姿勢は好感が持てるし、何より、そういう想いはちゃんと伝わるものだ。

現に、フェイトさんもそういうエリオを微笑ましく見ているし。キャロは‥あ?こめかみがひきつりだしてるわ。

限界が近いなあれは。

以前に比べて、キャロはだいぶ丸くなった。

いや、グレてたわけじゃないけど、

俺を独占したい気持ちが、溢れて、暴走してたあの頃のキャロはもういない。

年を重ね、少しは自制が効くようになってきたのだろう。兄としては、少し寂しくもあるが、嬉しい成長である。

「今日の分の書類仕事はわかる範囲でまとめて、処理して書斎の机に置いておきましたので、後で確認お願いします」

「ホント?助かるよ」

「それで‥お時間あるようでしたら‥その‥」

 

「うん。お陰で時間は空いたよ。勉強?」

 

「はい。お願いします」

 

俺は、執務官試験を受けようと勉強していた。

現役執務官のフェイトさんの家庭教師は非常にたすかる。独学では、限界あるしね。

だから、その代わりにと、家事をこなし、仕事の手伝いもしているのだ。

仕事の手伝いといっても、捜査とかは勿論しないよ?教えてもらってわかったのだが、執務官はかなり忙しい。

捜査だけでなく、書類仕事もかなり多いのだ。

手続きや申請が諸々とにかく多い。

こういう、行政が融通効かないのは、いつの時代、何処の世界でも変わらないんだなと苦笑する。

諸経費等の、excel入力、ワードを使っての公式文書作成。俺でも出きる事を最初に教えてもらって、継続している。

幸い前世では事務職をそれなりにしていた。

ジムだけに(ドヤァ)

あっ。すいません。調子こきました。

なので、パソコンの基礎的な作業くらいはお手の物である。

それに、フェイトさんの家庭教師以外にも、ひとつ嬉しい事がある。

仕事を手伝うと、フェイトさんはいちいちお小遣いをくれるのだ。

勿論、そんなに大きい額じゃない。

いや、割と、大きいかな。あくまで例えだが、

わかりやすくいうなら、五千円くらいだ。

家事をして、書類仕事をして、五千円。

これを多いととるか、少ないととるかは、人各々だろう。

 

 

フェイトさんは過保護な印象があったが、違う。フェイトさんは律義なのだ。俺みたいな子供に対してもしっかりと真摯に真っ直ぐ向き合ってくれる。

だってそうだろ?

仕事の手伝いだってそうだ。無理だ。やらなくていと決めつけるのではなく、とりあえずやらせてみせてくれるのだ。そんな信頼が何より嬉しくて、有り難くて、ミスだけはしないように、正確さを第一に手伝いをしている。

普通、俺みたいな子供が、執務官になりたいなんて言っても、鼻で笑い飛ばすぜ?

わざわざ自分の時間を割いて迄、家庭教師なんてしない。ミスられるかもしれないと、自分の仕事だって任せたりはしない。

しかも、俺達の為に、新しく家迄、借りてるんだぜ。生活費だって、普通に倍増してる筈だ。

小遣いだって本来渡さなくたって、文句なんか出ない筈だ。

なのはさんの親友だけあって、お人好し。

それが俺のフェイトさんへの今の印象である。

貰った小遣いは勿論貯金だ。キャロとエリオにお菓子を少しづつ買ってやり、残りは全て貯金箱にシュート!!超エキサイティング!

あ、もちろんキャロとエリオもお小遣いは貰ってるよ?ただ、手伝い等している分、俺の方が多目になるのは致し方無い。

その部分で軋轢が出ないように俺なりに考えている。

フェイトさんには内緒にしているが、考えていることがある。

陸士訓練校に行こうかなと、思っている。

フェイトさんと同じ、三ヶ月の速成コースだ。

特に深い意味はない。

出といた方が、将来有利かなと思っただけだ。

フェイトさんに内緒なのは勿論、資金の事だ。

フェイトさんならきっと、喜んで出してくれるだろう。

しかし、そこまで甘えていいものか?

いくらか知らないけど、決して安くはないだろう。

フェイトさんにバレないよう、こっそり、情報収集をしてるのだが、資料請求等したら、バレる可能性大なので、少しずつしか進んでないのが現状だ。奨学金とかもバレずにやるのは不可能だろうし。もう少しデカクなったら、バイトでもするかね。

あ、もう少ししたら六課出来るんじゃね?

そしたら、そこで雇ってもらえるように頼んでみようかな。

その為にはトレーニングの方にもう少し時間割いた方が良いかもな。

現在は専ら、家事と勉強に時間をとられ、戦闘訓練の方はあまり出来ていない。

瞑想して小宇宙を感じたり、筋トレ、体力作り程度だ。

嬉しい誤算がひとつ。キャロの詠唱が無くても、俺の意志で、フリードを聖衣化することが出来るようになった。

フリードも漸く、俺の事を、パートナーとして認めてくれたようだ。竜槍はまだ具現化出来ない。

あれは、フリードじゃなく、純粋にキャロの召還の産物だっようだ。

まあ、聖闘士としては徒手空拳は望むところだ。

別に、武器の扱いに慣れてたわけでもないしね。

六課が出来たら、フェイトさんに訓練のお願いしてみようかな。

いや、フェイトさんに迷惑かけるわけには。

 

と、俺が脳内で考えをまとめていると、

 

「「「いただきまーす」」」」

 

と、三人が、席に着いて、いただきますをしていた。

俺も慌てて席に着く。

 

「ジム兄おいひいよー」

 

「ゴックンしてから、喋りなさい」

 

咀嚼しながら、料理の感想を言ってくる、キャロを軽く嗜める。

「でも‥ありがとうな」

と、頭を撫でてやる。

キャロはニコニコしながら、くすぐったそうにしている。

 

「ジム兄さん本当においしいです!」

 

「おう。エリオもレタス、きれいに剥けてるな」

エリオも物欲しげだったので、頭を撫でてやる。

 

「本当ですか!ありがとうございます!」

くすぐったそうに目を弓にするエリオ。

 

ワイワイと、賑やかな食卓。

 

こういう雰囲気は嫌いじゃない。

 

「そういえば、ジム?体力錬成は進んでる?」

 

え?何で知ってるんです?

 

俺が驚いていると、

 

「ふふ。エリオから聞いてるよ?」

 

な、ナンダッテー!

 

確かに何度かエリオと一緒にトレーニングをした。

俺がエリオを見ると、

エリオは申し訳無さそうに目を伏せた。

 

いや。良いんだよ?別に秘密にしてって、言ってたわけじゃないし。

そういう気持ちをこめて、エリオに笑いかけると、エリオはホッとしたように、息を小さく吐いた。

「うーん。まだまだですね」

 

「そんな事無いです!ジム兄さんは凄いです!」

 

と、エリオがフォローしてくれる。

 

そうは言っても、まだ原子の破壊は出来てないし、拳速もマッハには程遠い。

 

正直、伸び悩んでいる。

 

俺の雰囲気を察したのか、フェイトさんが口を開く。

「明日はオフだし、私が見てあげようか?」

 

「ホントですかっ!?」

 

天啓とでもいうかのようなタイミングの提案に1も二もなく、俺は飛びついた。

「うん。それで、今の実力具合を見て、執務官補佐、やってみない?」

「え?」

「将来、執務官目指すんでしょう?

それなら、きっと良い経験になると思う‥」

本当にこの人は‥

ここまで真剣に俺の将来を考えてくれていたんだなと、胸が熱くなる。

「はい!是非お願いします!」

「うん。でも覚悟してね?甘くはみないからね?」

「勿論です!」

 

「すごいや、ジム兄さん!」

 

「ジム兄頑張って!」

キャロとエリオが応援をくれる。

「おう!兄ちゃん頑張るぜ!」

そんな俺達を、フェイトさんは何処までも優しい 眼差しで見守っていた。

 

◆◆◆◆◆◆

 

食事を終えて、書斎で、俺はフェイトさんに勉強を教わっていた。

「うん。法務関係もかなり覚えたね」

と、フェイトさんが頭を撫でてくれる。

恥ずかしいのだが嬉しくて、口角が上がるのを感じる。必死に表情を崩さないよう努める。

「ありがとうございます」

「うん。これならやっぱり、補佐も事務関係なら問題無さそうだね♪」

 

「フェイトさんのご指導の賜物です」

俺の返事に、

フェイトさんは苦笑をひとつ。

「ねえ?ジム。君は何者?」

「え?」

突然の問い掛けに俺は固まる。

 

「気を悪くしないでね?はっきり言って、君は異常だよ?とても12才とは思えない。」

「私は、時々君が

歳上に見えるんだ。」

 

精神年齢はアラフォーですから。

「エリオやキャロ達への接し方だってそう。

彼らと同年代には見えないよ」

転生者。なんて言葉が通じるだろうか。

この人なら信じようとしてくれるだろう。

その先には、ナニが待っているだろうか。

モルモット扱いで、何処かの施設か病院に、入れられるかもしれない。

フェイトさんは優しい人だが、世界は優しくはない。その後キャロはどうなる?

引き離されるのは間違いないだろう。

いや、それよりなんて言えばいいのだ。貴女が凌辱される姿に興奮しまくって、テクノブレイクしましたと言えと?いつかそれを再現したいと

せっかく築いた信頼も簡単に砕けるだろう。

やはり、言うわけにはいかない。

「ただの子供ですよ‥力の無い、子供です。」

 

「ただ、立派な大人になりたいです。」

 

「母さんが誇りに思えるような、立派な人間に‥」

「そんな目標迄の最短ルートを心掛けているだけです」

本音を隠しつつ、嘘偽りの無い気持ちを口にする。

「そっか‥」

「立派な目標だね。お母様も喜んでると思うよ?」

「貴女にもですよ?フェイトさん」

「え?」

「いつか貴女にも恩を返したい。」

「俺が執務官をめざしてるのは、俺にとっての立派な人間が貴女だからです」

「貴女が俺の目標です」

そう言うと、フェイトさんは目を見開き、じっと、俺を見つめる。

その目には、じわりと涙がにじみ、

俺は慌てだす。

そんな俺を見て、フェイトさんはクスッと笑うと、

「そんな風に思ってくれてたんだ‥」

「あはっ‥嬉しい‥うん。嬉しいな‥ちょっと恥ずかしいけど‥」

フェイトさんは安心したように笑うと、グスグスと泣き出してしまう。

泣いてる子をあやすのは得意だが、歳上の女性となれば話は違う。

俺はあわあわと慌てる事しか出来なかった。

「クスッ」

そんな俺を見て、フェイトさんが小さく笑う。

何故に?

「ふふっ‥漸く可愛いところ見えた」

そんなフェイトさんの言葉に、俺は赤くなって小さくなる。

その後、なかなかフェイトさんが笑うのを、やめてくれないので、俺は黙って勉強へと、没頭した。

明日は頑張ろう。

そう心に決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




それではまた明日お逢いしましょう。


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ある兄の覚醒。上

また、やってしまった。覚醒どころか、訓練迄、行かないというね(´д`|||)



俺とフェイトさんは管理局へと、共に歩いていた。

 

昨夜の話しの通り、フェイトさんが俺を執務官補佐としてのテストをしてくれるのだ。

緊張で、手に汗が滲む。

自信はないがやれるだけやるしかない。

俺の緊張を感じとったのか、フェイトさんが、

俺の顔を覗きこんでくる。

「‥緊張してる?」

にこやかに話し掛けてくれるフェイトさんは今日もお美しい。

 

「ええ‥少し」

隠す事でもないので、正直に打ち明ける。

 

「でも‥何でわざわざ、管理局へ?」

 

「うーん‥顔合わせも兼ねてかな‥」

 

顔合わせ?まさか‥

 

「遅くなったけど私の親友達に紹介したくて‥」

 

あ。やっぱり‥

 

魔王と狸とエンカウントですか。

 

あかん。更に緊張が加速してきた。

 

「ふふっ。二人共良い子だから、そんなに緊張しないで?」

 

無理です。

前世でのオカズは主に貴女でしたが、

なのはさんと、はやてさんも

 

好きでした。

フェイトさんは性的嗜好の対象として、

 

なのはさんは、畏怖の対象として、

 

はやてさんは、弄りの対象として、

三人のウチで、甲乙つけがたく、

DDと蔑まれても、三人とも、同じくらい好きでありました。

ドクンドクンと心臓の鼓動が速まる。

知らず知らずに、早歩きになっている自分に気付く。

「ちょっ‥ジム?早いよっ?!」

 

いつの間にかフェイトさんは少し後ろにいた。

 

「すみません‥」

 

「ふふっ‥私の友だちに会うのがそんなに楽しみなの?」

 

「いえっ!いや‥楽しみですが‥それよりもフェイトさんに訓練見て貰えるのが嬉しくて‥」

 

「ふふっ‥そっか‥そうだ。私だけじゃなくて、なのはにも見て貰えるよう頼んであげるね」

 

やめてください。死んでしまいます。

 

「ふふっ。なのは‥あ、私の友だちね?教導隊でも人気の教官なんだよ?」

 

「いえっ!俺は‥フェイトさんが良いです!」

必死に頭を下げる。

天地魔闘の構えからゴミを見るような目で

 

「頭‥冷そうか‥」

 

とか言われるんですよね?

俺、Mじゃないんで、本当に勘弁して貰えませんかね。

「そっか‥私が良いんだ?‥」

 

と、フェイトさんが頬を染めながら前を見て、チラチラとこちらを見てくる。

か、可愛いィン!

「ええ。それに、フェイトさんの執務補佐になるんなら、やっぱり、フェイトさんに見て貰うべきかと」

おお。これはなかなかな良い言い訳じゃないだろうか?

「あはっ‥そうだね。うん。じゃあなのはには断っとくね‥」

 

あぶねえ。知らないとこで、死亡フラグが建築されてた。

そんなんだから、ネギ持った女の子になのはさんに萌えれないとか唄われちゃうんだよ。

俺が死亡フラグを折る事に成功して安心していると、管理局の建物が見えてきた。

「お?来たな?フェイトちゃん」

そう言いながら現れたのは、

狸!じゃなくて、八神はやてさん。

「で?この子が噂のフェイトちゃんの秘蔵っ子やね?」

ポンと頭に手を置かれながらそんなことをのたまわれる。

それだけで人当たのいい性格だというのが窺われる。

秘蔵っ子?なにそれ?

 

俺が目をパチパチしながら?を浮かべていると、八神さんが教えてくれた。

「フェイトちゃんにしょっちゅう自慢されてるんやで。家事良し、事務良し、気配り良し、性格良しの有望株やって?」

フェイトさんがそんな風に言ってくれているとは、ヤバい。嬉しい。口元がにやけるのを止められない。

 

「ちょっとはやて!」

 

フェイトさんが頬を赤らめながら、はやてさんを窘める。

「あはは。本当のことやん‥」

 

「堪忍なー」

悪怯れる事なく、キャッキャッしながら逃げていく八神さん。

残された俺達は、どこか目を合わせるのが照れ臭くて、微妙な空気になってしまう。

「フェイトちゃ~ん」

甘い声が響く。

この声はまさか‥

栗色のサイドポニーを揺らしながら駆けてくる、一人の女性。

「あ‥なのは‥」

フェイトさんが名前を呟く。

何となく嬉しそうである。

「やっ。この子が例の?」

「やっ」

お互いにしゅたっと手を挙げて挨拶を交わす。

仲良いですね。

 

「うん。そう‥」

 

すると、なのはさんは後ろに手を組ながら、頭を揺らしながら、俺に近づいてくる。

これは‥新型デンプシー!?

 

「は~じめまして!なのはだよっ!」

 

ズイッと顔を近付けて、自己紹介される。

パチキされるのかと思った。

 

「ジム‥です。よろしくお願いします!」

顔が近すぎて、なんかミルクみたいな甘い香りが鼻孔をくすぐるので、俺はどぎまぎしてしまって、目を逸らしながら、なんとか自己紹介する。

「あらら‥緊張してるのかな?」

なのはさんは心底わからないといった感じで、顔を離す。

「もう‥なのはは距離感おかしすぎだよ。ジムは人見知りなんだから‥」

「そうなの?あはっごめんね?‥でもなのはお友達になりたいなー?」

遠慮します。

だってあれでしょ?貴女と友だちになるためには、バインドされながら、集束砲喰らわなきゃいけないんでしょ?やめてください。死んでしまいます。

「もうっ!ジムが困ってるでしょ!」

フェイトさんが間に入ってくれる。

でも心なしか、少し不機嫌な気がする。

どうしたんだろう?

なのはさんもそんなフェイトさんに若干驚くと、

「はーい‥」

と、両手を挙げて、一歩下がる。

「それじゃ早速あそこ行こうか。」

と、クルリと方向転換すると、なのはさんは先に歩き出す。

あそこ?

フェイトさんが黙って着いていくので、俺も追随した。

20分程歩いた頃、

「漸く来ましたね!」

「誰だっ!?」

突然の声に俺も叫び返す。

そこには、腕組みをして仁王立ちをしている、眼鏡っ娘がいた。

 

「飛んで火に入る‥夏のなんちゃら達よ‥!」

「お、おまえは‥?」

 

「木の葉同盟国‥」

 

「砂の?」

 

「忍びだ‥」

腕組みをしたまま、ドヤ顔で言い放つシャーリーさん。

 

「シャーリー‥」

 

フェイトさんがおでこを押さえながら呟く。

 

「フェイトちゃん?ジム君ホンとに人見知りなの?」

 

「うん‥私もビックリだよ‥流石シャーリーという べきか‥なんというか‥」

 

いかん。なんとなくノッテしまった。

言いきったシャーリーさんはといえば、恍惚の表情を浮かべながら、こっちへダッシュしてきた。

うわっ!?こわっ!

「やあやあ。君が噂のフェイトさんの秘蔵っ子だね?わかるタイプだね?こっち側の人だね?」

 

怒涛の勢いで、手を握られ、ブンブンと振られる。

「男の子だし、お祖母ちゃんが言っていた。で行こうかなとも思ったんだけどねー?」

「天の道ですか?というかまず、助っ人じゃないですよね?」

俺の答にシャーリーさんはさらに嬉しそうな顔を浮かべ、

「良いねー君!今度お姉さんと遊びに行こうか!」

いきなり抱き締められた。

 

あ、意外と胸ありますね。

 

「シャーリー‥?」

 

と、フェイトさんの凍りつくような声が聞こえた。

そして、シャーリーさんの抱き締める力が弱まる。

急に解放されて、たたらを踏んでしまう。

フェイトさんの方を見ると、

そこにはバルディッシュをセットアップして戦闘モードのフェイトさん。

 

「あ、あははーすみません。準備しますねー?」

と、シャーリーさんは若干焦りながら虚空を指でパチパチタッチする。

「それでは、本日初披露!監修なのはさん。私自慢の陸戦空間シミュレーター。いざ!」

 

タターン!と、いった感じで、虚空を叩き終えると、海側に突如、ビル街が現れた。

おお。これがあの。フォワード陣の訓練に使われていた、例のやつか。

 

「すいません?こういうのは出来ます?」

 

俺はシャーリーさんに耳打ちで尋ねる。

 

「ふんふん?面白いね。調整すれば勿論出来るよ。」

 

シャーリーさんの答に安心する。

これで更に修行が捗るぜ。

 

「じゃあ今度お願いいたします」

 

「ほーい?」

 

「それじゃジム‥行こっか?」

 

「アッハイ」

 

まだ御機嫌斜めっぽいフェイトさんの妙な迫力に圧され、大人しく追随する。

 

「モテモテだったねー?‥」

 

唐突にフェイトさんが声を掛けてくる。

ジト目である。

美人のジト目とかご褒美でしかないんですが。

俺が新たな性癖のとびらをノックしていると、

「みんな可愛いもんねー?」

「いえっ!可愛い‥ですが‥俺は、フェイトさんが1番‥可愛いと、思います‥」

あたふたと、答えを返す。

 

あれ?何言ってんの俺。

すると、みるみるフェイトさんは赤くなり、

 

「ふ、ふーん?そうなんだ‥?」

「すみません!歳上の方にこんな言い方、失礼でしたよね?」

慌てて、頭を下げて、謝罪する。

 

別に良いよ?そうだね。もういっかい言ってくれたら許してあげる」

微笑みながら、そんな事をのたまうフェイトさん。

微笑みながらそんな事を言うフェイトさんはやはり、1番可愛い。」

すると、フェイトさんは更に顔を真っ赤にした。

あれ?

「ジムったら‥」

「あれ?もしかして、声に出てました?」

「うん。バッチリと」

ぐはあー!

とたんに顔が熱を持つ。

何やってんの俺。

俺何やってんのーー?!

俺が羞恥に悶えていると、

「えーと。何時までイチャイチャしてるのかなー?」

突然、なのはさんの声が響いた。

ウィンドウでなのはさんの顔が浮かび上がる。

「な、なのは?今の‥聴いて‥?」

 

「ウチも聴いてたでー!」

と、はやてさん迄、現れる。

「あーあ‥まさかフェイトちゃんが1番乗りとはなー」

「1番乗りって何が?」

あかん。フェイトさん聞いたらあかん。

‥「何がやろうなー?ねー?高町さん?」

 

「そうですわねー?八神さん?」

 

魔王と狸のコンビネーションに、流石の雷神もタジタジである。

混ぜるな危険!とはこの事か。

なんかなのはさん刺々しくない?

フェイトさんは開かずの信号機みたいに、ずっと赤くなりっぱなしだ。

欠陥切れちゃうんじゃないかな?

かくいう俺もさっきからずっと顔が熱い。

「はーい。お二人ともそこまでー」

 

と、助け船を出してくれたのは、シャーリーさん。流石、砂の忍び。

 

「時間なくなっちゃいますよー?」

 

「あ、そうだね!ジム?早速始めようか?」

 

「は、はい!」

 

そして、漸く訓練が、始まる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




話が進まない。文才もない。
原因はわかってるんです。
無駄な描写、ネタが多すぎるんですよね(´д`|||)
でも、その無駄な描写を書くのがたのしいんです。
だから何時までも、私の作品はオナニーなんでしょうね(。>д<)
読者の方には申し訳ないですが、暫くはこのままのスタイルで行きます(´・ω・`)すみませんm(__)mそれではまた明日お会いしましょう。


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ある兄の覚醒。中。

「それじゃ‥執務補佐のテストってことで、フェイトちゃんと模擬戦してもらおうかと思ったんだけど、またイチャイチャされそうだから、やめます」

「「ちょっ?!」」

あんまりと言えばあんまりななのはさんの物言いに、俺とフェイトさんの突っこみが重なる。

「てことで、ジム君には実戦形式のテストをさせてもらいます」

はやてさんが異論は受け付けませんとばかりに言葉を続ける。

 

実戦形式ね?

望むところである。

「お?やる気満々やね?」

「はい!お願いします!」

「ほんじゃ、説明していくで?リピートアフターはやてしなさい」

「最近巷を騒がせている奴等がおる」

「現場に出たとしたら、まず間違いなく、そいつらと抗戦するやろ‥それがこいつらや!シャーリー?」

「はいはいはいっと~」

シャーリーさんが軽く返事をすると、

何も無いところから、卵型の機械が現れる。

大きさは、俺と同じくらいだ。

というか、どこでリピートすればいいんだろう?

「通称ガジェットドローン」

「これはシミュレーター用の仮想再現だけど、侮るなかれ。攻撃は結構鋭いよ?」

なのはさんが追加で説明をつけ足す。

「ところで、ジム君は戦闘タイプ何?」

「戦闘タイプですか‥強いて言うなら、近接格闘ですね」

「了解♪それじゃ頑張ってねー相手は5体、一体も逃がす事なく、殲滅してみせて!」

「今回は初めてだし、動作レベルB攻撃精度Bでいくね?」

説明しているうちにも、ガジェット五体は

俺を取り囲むように展開する。

 

と、ガジェットは一斉に、俺に向かって、魔力弾を放つ。

「なんとぉー?!」

間一髪で、俺は回避する。

つづけざまに、魔力弾が放たれるが、なんて事はない。聖闘士には一度見た伎は通用しない。

全て回避し、回避している間に近付いてきたガジェットに、振り向き樣に拳を叩きこむ。

易々と姦通し、火花を散らすガジェット。

新たに周りを取り囲まれそうになったので、

腕を抜いて、とびすさる。すると、その瞬間、ガジェットは爆発した。

 

「仮想再現でも爆発するのか。あぶねーっ‥」

跳びながら身体を捻り、俺の着地点に回り込んでいたガジェットに回し蹴りを一閃。

俺の蹴りは易々とガジェットを引き裂き、

再び爆発。

後三体っと。

チラリと周りを見ると、ガジェットが集合して、俺から逃げようとしていた。

やれやれ。めんどくさいなあ。

俺はダッシュして、逃げるガジェットの前に回り込む。知らなかったのか?聖闘士からは逃げられない。

そして、心を落ち着けて、ドラゴンの星座を自らの身体でなぞる。

俺の小宇宙は既に把握している。

それを魔力で増幅してやる。

戦闘中に小宇宙を解放するのは初めてだ。

気分が高ぶっているのか、思いの外すんなりと、コネクトできた。小宇宙が膨れ上がるのを感じる。イケル。

「廬山‥」

ガジェットが慌てて、ブレーキをかけるが、おせえ。

「龍、飛翔!」

 

ガジェット三体の間を光りが一閃する。

そして、ガジェット三体は同時に爆散した。

「ミッションコンプリート!」

 

========================

「おいおい‥」

はやてが、呆れたように、言葉を紡いだ。

「フェイトちゃん?彼は本当に、素人なんか?」

「うん‥その筈、だけど‥」

私だって驚いている。

「とか言って、本当は隠れて、特訓してたんやろ?秘蔵っ子やもんな?」

本当に特訓なんてしてないのだが、言っても信じてもらえなそうなので、私は首だけ振った。

「それにしても凄い魔力だったね」

なのはが感心したように呟いた。

うん。ジムがなんか変な躍り?をしたら、突然、彼から爆発的な魔力が感じられた。

それだけじゃない。ガジェットを三体同時に倒した技。

まるで龍が駆けたかのような速さだった。

私より速い‥かも?

「プッ‥あの、変な躍り、なんやったんやろな」

はやてが笑うのをこらえながら、呟く。

「あれは‥もしかしたら‥」

「知っているのか雷電。」

意味ありげに、呟くシャーリーに、はやてが、無駄にキメ顔を作って問い掛ける。

あい変わらず、何言ってるのかわからない。

多分、私の知らない漫画かなんかのネタなのだろう。この二人が揃うといつもそうだ。

「キタキタ躍りに違いないです!」

シャーリーが無駄に力強く答えた。

「ネタ古すぎやっちゅーねん!」

スパーンと、はやてがどこからともなくハリセンをとり出し、シャーリーを殴り倒した。

私が呆れて二人を遠巻きに見ていると、なのはが目に入った。

「なのは‥?」

なのははずっと難しい顔で、考え込んでいて、何を考えてるのか、私にもわからなかった。

私の呟きが聞こえたのか、なのははこちらに視線をくれると、少し恥ずかしそうに、苦笑した。

「フェイトちゃん‥ごめんなの‥」

え?何を謝ったの?

私の疑問の視線に答える事なく、なのはは歩き出した。

 

======================

 

ガジェットは全滅させたが、それから何の音沙汰もなく、10分程が過ぎていた。

テストダメだったのかなぁ?

と、ウィンドウが浮かび、なのはさんが写る。

「congratulationなの!お見事でした!」

「ありがとうございます!合格‥ですか?」

おそるおそる尋ねる。

「いやー強いね。ジム君♪かっこ良かったよ♪」

 

「あ、ありがとうございます?」

何だろ?なんかやな予感がする。

「そんなジム君にはついでにおまけのテストをしちゃおうかな?」

 

「おまけのテスト?‥ですか?」

 

「そう。実は、まだ秘密なんだけど‥もうすぐ、時空管理局には、新しく部隊が創設されます!」

 

な、ナンダッテー?一体機動何課なんだ?

 

「このテストに合格出来たら、君をその部隊のFWとして迎えます!ワーパチパチパチ!」

 

「わ、ワー‥」

 

「君、執務官志望なんでしょ?その経験は将来絶対有利に働くと思うよ?」

 

「やります!」

 

即答する俺。

 

「その意気や良し!」

 

急に上から声が降ってきた。

ポカンと見上げると、そこにはなのはさんがいた。

パンツ見えてますよ?

オレンジか。いや、ベージュか?

ていうかいつのまに?

 

「それで、テストとは?」

 

俺は、下着が目に入らないように、横を向きながら、問う。

 

「それは‥シュートイベイジョンなの!」

なんか聞いた事あるような?

 

「今から5分間、なのはの攻撃を全部避けきるか、なのはに一撃クリーンヒットを与えればクリアーだよ!」

あー。新人達をしごいてた時のやつか。

まあ。やれというならやりますか。

 

「なんでこっち見ないの?」

 

なのはさんが呑気な声で問い掛ける。

 

「‥るんです!」

 

「え?」

 

「パンツが見えてるんですよ!」

 

やけくそ気味に叫ぶ。言わせんな恥ずかしい。

あー。頬があちい。

言われたなのはさんはと言えば、みるみる真っ赤になり、スカートを下に引っ張って隠そうとしている。

可愛い人である。萌える。

19歳でも俺は、萌えますよ?

ただ、なのはさんの、周りに、五十発近くの魔力弾が浮かんでいなければ‥だが。

五十かー‥たしか、あれ誘導弾だよね?

初見で避けるのはきちいな。

新人しごいてた時と違って、今回はターゲット俺一人だし。

なら‥先手必勝‥かな。

俺は、未だに、スカートを引っ張って、あたふたしているなのはさん目掛けて、飛び上がる。

一瞬で、なのはさんの正面へと、到達すると、

驚愕に目を見開くなのはさんにゆっくり手を伸ばし、

「ピーンっ」

 

デコピンをした。

「あうっ!」

おでこを抑えて後退るなのはさん。

跳びながら、器用なもんである。

そして、なのはさんに向けて、ひとさし指を指し、

 

「ミッションコンプリート♪」

 

と、いい放つ。

言われたなのはさんはキョトンとして、ボーっとしている。

心なしか、顔が赤い。

 

か、可愛いィィン!

 

やがて、再起動すると、顔を真っ赤にして、怒りだした。

 

「もー!ずるいの!今の無しなの!」

 

「いーや‥有功や‥」

 

と、いきなりはやてさんが通信で割り込んできた。

 

「ジム君。機動六課は君を歓迎します↑」

 

「はい。よろしくお願いいたします!」

 

うーー!ちょっとはやてちゃん!?》

 

すまんな、なのはちゃん。悪いけど有望なFWは喉から手がでる程欲しいんや》

 

《再戦なら、入隊してからいくらでも訓練でできるやろ?今は我慢してや》

 

《うー‥わかったの。今は我慢するの》

 

《おおきに。今度飯作りにいったるから堪忍な‥》

 

《ほんと?わーい。約束だよ?》

 

《せやけど有望な新人もみつかったし。《だいぶ、新部隊の構成も目処がたってきたな‥》

 

《あ、はやてちゃん?なのは、ジム君欲しいなー?

《うーん‥それは‥どやろな?》

 

《多分やけど、フェイトちゃんが放さへんんやろ?》

 

《あー‥そっかー‥》

 

そんな念話が交わされれている事など露知らず、俺は、ゆっくりと、微笑み手を振るフェイトさんへと歩き出していた。

ついに機動六課かー。

廬山昇竜波早く完成させないとな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂き、ありがとうございます。
漸く半分くらい迄来たかな。
これからも頑張りますので、
最後迄お付き合いお願いいたしますm(__)m


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花いちもんめ。

どうも。サブタイがしっくり来ないことでお馴染みのstanです。



    ◆◆フェイトside◆◆

 

管理局でジムのテストをしてから、数日後。

私は、はやてに呼び出されていた。

 

「それで、今日はどうしたの?」

 

「オフのとこすまんな‥いよいよ来週には機動六課が正式に可動する。その内訳‥部隊編成を決めたくてな。なのはちゃんが、教導隊の方で遅れてるから、もうちょい待ってくれるか?」

 

「了解であります。部隊長殿。」

 

私は背筋を伸ばして、大仰に敬礼してみせる。

と、はやては苦笑をひとつして、

 

「やめてーや。フェイト執務官殿。」

と、八の字眉毛で返してくる。

「でも、これからは、直属の上司だし、そこら辺はきちっとしないと‥」

 

「ほな上官命令や」

 

「えー‥」

 

そんなことで、上官命令つかわないでよ。

私が内心呆れていると、

コンコン。と、ノックが響いた。

 

「どうぞー?」

 

「失礼します‥」

「遅れて申し訳ありません!高町なのは。ただ今到着しました」

敬礼と、共になのはが入ってきた。

流石のなのはも今日はしっかり敬語だ。

私と、目が合うと、パチリとウインクをひとつくれる。

 

「もー!二人ともなんやの!水くさい!水くさいで!東京の水か!」

 

バタバタとソフアで駄々をこねだすはやて。

 

「えー‥」

 

流石になのはも若干ひいている。

一緒のリアクションだ。そんな事に私は少し嬉しくなり、微笑む。

「?フェイトちゃん?‥ナニコレ?」

 

「いつも通りに接して欲しいんだって。上官命令らしいよ?」

 

「はあ‥全くはやてちゃんは‥全く‥」

「はあ‥全くはやては‥全く‥」

私となのはの溜息と呟きが奇しくも重なる。

「解せぬ‥」

はやてがナニか言っているが、当然無視である。

 

「それで?部隊編成するんでしょ?」

 

「うん。そやった。」

 

「はーい」

 

はやてもなのはもキリッと顔を切り替える。

おちゃらけてるようで二人共仕事はきちんとするのだ。

 

「まず、部隊を分隊4つに分ける。前線を担当する分隊は2つ。スターズとライトニング。

そして、後方支援にロングアーチ。これは、管制、部隊輸送、情報処理が主な任務や。こっちのリーダーは私が勤める。二人には、スターズ、ライトニングそれぞれの分隊長をお願いしたい」

 

「良いけど。4つの内のもうひとつは?」

 

私の質問にキリッとしてはやてが答える。

 

「良い質問や。」

 

「それ‥言いたかっただけでしょ‥」

 

私がジト目でツッコムと、

はやてはあからさまに、目を逸らした。

おちゃらけてるようで、仕事はきちんとするのだ‥本当だよ?

 

「もうひとつは、バックヤード。主に医療やメンテナンス関係を担当する。こっちはシャマルと、シャーリーに任せようと思ってる」

 

「話し合うのは、スターズとライトニングのメンバーって事かな?」

 

私の問い掛けに再び、キリッと顔を切り替える二人。

本当に君達仲良いね。

 

「せや。」

 

「フェイトちゃ~ん」

 

なのはが急に猫なで声を出してきた。

これは、なのはの我儘言いますサインだ。

 

「はいはい。なーに?」

 

私はなんとなく、予想がつきながらも問い返す。

「ジム君。スターズに欲しいn‥」

 

「あげません」

 

「なのはの一生のお願~i‥」

 

「いたしません」

私はなのはの顔を直視しないように、身体の、角度を調節しながら、キッパリと、断り続ける。

眼を合わせたら最後。私はいつも押しきられてしまう。

 

予想通りだ。この間のテストの時、なのはは明らかに、ジムに興味を示していた。

 

「フェイトちゃんの意地悪!」

 

「いくらなのはでも、これは聞けない‥」

 

「うーー!」

 

「ムムムム!」

私となのはが譲らず、唸り合っていると、

はやてが声をあげた。

「ストップや!六課成立前に喧嘩せんといて!」

「悪いけど、私の方で、メンバーは決めといた。」

「スターズ       

高町なのは

八神ヴィータ

スバルナカジマ

ティアナランスター

ライトニング

フェイト、T、ハラオウン

八神シグナム

ジム=ニー

キャロ・ル・ルシエ

エリオ・モンディアル」

 

 

「これで行く」

「異論反論、口答えは一切認めへん」

 

「ジム君は、やはり家族と一緒が良いやろ。

なのはちゃんには、スバルとティアナの教導も重点的にお願いしたい。特にティアナや。

魔力やスキルは平凡やけど、判断力、思考の速さ、柔軟性の点で、良いもの持ってる。

マルチタスクを平行してこなせるように、オールマイティに訓練したってくれ」

「はやてちゃんがそこまで言うなんて珍しいね♪」

 

「勿論おっぱいも良いもの持ってるで」

 

 

「それは別に聞きたくなかったの‥」

 

「スバルもや。性格も含めて、陸のエースになれる逸材や。おっぱいも大事に育てたい」

 

「はあ‥上官命令じゃ仕方ないの。」

 

「でも途中で、ジム君自身がスターズに行きたいって言ったら仕方ないよね?」

 

と、勝ち気な瞳でなのはが不穏なことを呟く。

 

「そりゃまあ‥なるべく、本人の意志は尊重するで?」

 

「そんなことあるわけないけどね」

 

私は、自然に、否定の言を潜り込ませた。

 

ジムが一緒の部隊である。私もはりきらないと。

ジムは私が守る!シグナムと、一緒の部隊も、久々である。柄にもなく、自分がワクワクしているのを感じていた。

 

「あー。フェイトちゃん?

エリオと、キャロもメンバーにいれてもうたけど、良かったんかな?」

 

「ジム君からは、本人の言質貰ってるからええけど、」

「うん。二人共ジムにすごいなついてるから、ジムが一緒の部隊なら問題ないと思う。私としては、抵抗あるんだけどね‥」

 

暗に、ジムはライトニングから動かさない。という牽制を加えておく。

「すまんな‥FW陣枚数足りなくてな‥」

 

「さて、ジムの実力は問題無さそうだけど、二人にはきちんと訓練しないとね‥」

 

「私も手伝うよ♪」

 

「うん♪お願いします。高町教導官」

 

私が敬礼しながら、お願いすると、

なのはも敬礼でかえしてくれる。

 

「おまかせ下さい。フェイト執務官」

そして、そのあと、二人で静かに笑い合った。

このメンバーなら問題無い。どんな事件が起きても、団結して、速やかに解決させられる。

と、私は確信していた。

「あー。大事な事があったんや」

「「大事な事?」」

突然はやてが思い出したように呟いた。私となのはの返事が重なる。

 

「リィン?」

 

「はいです。マイスターはやて‥」

はやてに呼ばれて、リィンツヴァイが飛んでくる。

「実は、この前のテストの時、なんですが‥ジムさんの、魔力値を計測していたのですが‥」

 

ああ。私は、はやての言いたい事に気付く。

 

「厳密には魔力とは違う種類みたいなのですが、魔力として換算した場合、その出力は‥驚愕のSSでした」

 

驚いた‥確かにあの時の魔力は凄まじいものがあったが。

なのはもポカンとしている。「あくまで出力だけの話やから、魔道師ランクではないけどな‥ただ‥そこまでいくと、流石に、誤魔化しも効かん。」

「ジム君には、申し訳ないけど、私達と同じように出力リミッターをかけてさせてもらうしかない‥」

 

「そっか‥そうだね‥」

 

「解除権限者は‥フェイトちゃん。お願い出来るか?」

 

「もちろん」

 

「後日、その研修、受けてな?」

 

「了解」

 

しかし、ジムがそこまでとは‥

子供っぽくないとは思っていたけど、

晴天の霹靂である。

「早急に、ジム君には、昇格試験受けてもらわなあかんな。SSランクの魔力持ちのDランク魔道師なんて危なくて仕方ないで」

 

「ちょっと待ってはやて‥」

 

私はそこである可能性にたどり着く。

 

「ん?どうしたんや?」

 

「それならキャロもしっかり計らないとダメかも‥」

 

「なんやて!キャロもあない、強いんか?」

 

「うん‥多分?」

 

「なんやの!ハラオウン家は化物揃いなん?!」

 

「エリオもそうやとか、言わんといてな?」

 

「エリオは大丈夫かな‥素質はあると思うけどあの兄妹が規格外過ぎるんだよ‥」

 

「これは一回きちんとする必要があるな‥場合によっては私達のリミッターも増やさなあかんかもしれん‥出来れば、それは避けたいけどな‥」

 

「フェイトちゃん?明日‥ジム君とキャロちゃん連れてきて!」

 

「え?」

 

「明日‥シグナムにも協力してもらって、あの兄妹の実力、丸裸にしたる!なのはちゃんも協力してな!」

 

「あいあいさー」

 

「ああ。そうや‥フェイトちゃん。急いで、ジム君を執務補佐に任命して、いくつか活動実積作っといてな?」

「うん?元々そのつもりだったけど、急ぎって?」

「元々裏技で六課の面子は集めてるんや」

「ここに更に、SSランクが増えるとしたら、余計な軋轢が産まれる‥リミッターつけるとしてもな‥」

「あくまで、執務官に執務補佐が付いてきたって形にしたいんや身内の既成事実が欲しいんや」

 

狸。

 

我等が部隊長様は相変わらず抜け目がない。

「了解‥儘ならないものだね‥」

「ホンマやで‥全くどいつもこいつも自己顕示欲拗らせよってからに‥」

溜息交りにはやてが呟く。

例え、同じ勢力であっても、自分以外が力を持つ事が許せないのだろう。

六課設立に関してもかなり、突き上げがあったらしい。

私には想像もつかない苦労をしてきたのだろう。

それでも人々の平和の為に努力を惜しまない、この親友が私は誇らしかった。

多少のおちゃらけは許せるくらいに。

「実積作りに都合の良い事件(ヤマ)が今無いんだ。ガジェットが現れたら、優先的にこっちに回してくれるかな?」

「もちろんや。バッチリチリバツ。現れた瞬間そっちに連絡するから、通信緊急枠は開けといてな?」

「うん。了解‥」

さて。忙しくなりそうだ。

でも、ジムが補佐か。楽しみだな‥。

 

「リィン?シャーリーにジムの事伝えて、手続きも頼んどいてくれるかな?」

「了解しましたですよー♪」

実力。丸裸‥ね?

くれぐれもキャロに暴走しないよう言い含めておかないと。場合によっては、お母様にまた出張って頂かないと。

いやいや。信頼して預けて戴いてるのに、それはあり得ない。

ジムにも言い含めておかないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
それでは、また明日‥お会いしましょうm(__)m


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ある兄妹の奮闘。

何回書いても何回書いても、戦闘シーンが上手くならないよ(泣)


深夜。

 

ハラオウン宅。

 

フェイトさんに話しがあると家族全員集められて、緊急の家族会議が開かれていた。

その内容は、俺、キャロ、エリオの、機動六課入りの話だった。

俺的には、予想通りの展開なので、たいして驚きもなく、落ち着いて、二人を見回せば、二人はそれぞれに、驚き、不安気な表情をしていた。

いや、キャロは欠伸をして、目をショボショボさせていた。か、可愛いィン!

 

「大丈夫か?二人とも」

エリオとキャロは、俺の言葉にお互い、見やると、

頷き合って、力強い目でこちらを見てきた。

「私はもちろん。平気。ジム兄が一緒なら、どこでも平気だもん」

「僕も大丈夫です。尊敬するジム兄さんについていきます」

「だそうです。フェイトさん?」

俺は二人に気持ちを聞いてから、フェイトさんへと話しの続きを促す。

「あ、うん‥ジムは本当に揺るがないね‥不安とか無いの?」

「うーん。俺は六課入りはのぞむところでしたし、そこに家族が増えるだけでしょ?心強さはあっても、不安は無いですね」

「「ジム兄‥(さん)」」」

二人が感激の視線を向けてくるが、照れ臭い。

「そ、そっか。やっぱり子供らしくない‥」

フェイトさんが横を向いて、何か言っているが聞き取れなかった。

「ジム兄さんは、本当に凄いです!憧れます!僕もそれくらい、落ち着いて、物事を考えられるようになりたいです!」

エリオが持ち上げてくる。

くすぐったいからやめなさい。

 

「それで‥ね?」

フェイトさんが言いにくそうに、歯切れ悪く、言葉を続ける。

両手の人差し指を合わせて、つんつんしている。やめてください。萌えるじゃないですか。

「ちょっと‥説明しにくい、大人の事情がありまして‥ジムには、出力リミッターというのをつけさせて、欲しいなぁーって‥」

 

ああ。なるほど。

そういえば、そういうのがありましたね。

 

「良いですよ。」

 

「うん‥そうだよね‥って良いの?!」

 

「はい。」

 

「いやいやいやいや。自分でいうのもなんだけど、今の説明‥全く言葉足りてなかったよ?!」

 

「本当に自分でいうのもなんですね。」

 

俺は苦笑するしかない。

 

「ジム‥本当に良いの?」

 

「フェイトさんが、必要だと判断したんですよね?俺は、フェイトさんを信頼してますから」

 

「ジム‥」

 

フェイトさんがキラキラした目で、こちらを見ている。やめてください。萌えてしまいます。

「それでね?明日なんだけど、ジムとキャロには、管理局に来て、正確に魔力、測らせて欲しいんだけど‥」

 

「わかりました」

 

「即答過ぎだよっ!?」

 

「フェイトさんを信r‥」

 

「わかったよ!?何度も言わないで!嬉しくてにやけちゃうから!」

 

「キャロもいいか?」

 

「ジム兄が良いなら、私はモチのロン。」

 

「なんでもなくいってるけど、兄ちゃん気づいてるからね?エリオの後ろでそっと振り上げた拳をどうするつもりだったんだ?」

 

「えー?」

とぼけおる。

ハハハ。コヤツメ。

そして、キャロは無慈悲に拳を振り下ろした。

 

‥‥エリオに。

「いたっ?!ちょっ!?キャロっ!?」

 

「うわぁ‥」

流れるような体重移動で、キャロはエリオにまたがり、マウントを征す。

そして拳を続け様に振りおろす。

エリオはもがくが、キャロは全く意に介さない。

あのグレイシーばりのグラウンド技術は一体どこで?

「ほらほら。やめなさい」

流石に可哀相だったので、止める。

しかし、時既にお寿司、エリオの顔はボコボコに

なっていた。

「ジム兄さん‥ありがとうございます‥」

ボコボコになりながらも潤んだ目で礼を述べるエリオ。

ちょっと可愛い。いやいや。エリオは男の子‥男の子。萌えてたまるか。

「ほら。キャロちゃん?エリオにごめんなさいしなさい?」

「エリオ君?」

 

「う、うん‥何?キャロ。」

 

「許してにゃん♥️」

 

ポーズつきでどこまでも軽く謝るキャロ。

我が妹ながら、なんてあざとい。

「う、うん。大丈夫だよ?」

 

そして頬を染めて、簡単に許すエリオ。

ちょっとちょろすぎんよー。

エリオの将来がお兄ちゃん心配だわ。

ん。でも、キャロとくっつくとしたら、問題ないか。

フェイトさんも、頬をヒクヒクしながら、二人を見てる。

「それでは、明日は管理局ですね?」

 

「ほら、キャロちゃん?もう寝なさい?」

 

「ふぁ~い‥」

 

目を擦りながら、ノロノロと立ちあがり、部屋へと歩き出すキャロ。

 

ふむ。さて、どうなりますやら。

 

次の日。

俺と、キャロは管理局の、陸戦用仮想シミュレーターで再現された荒地で、なのはさん、シグナムさん、ヴィータさんと相対していた。

は?

ちょっと理解が追いつかないんですが。

「えっと。魔力を測るのでは?」

 

「せやで。戦闘における魔力を測りたいんや」

 

なーるほど♪

って納得できるかアアアア!?

「いや、それなら、この前と同じ、ガジェット相手で良くないですか?」

「そんなeasyモードのデータなんていらんねん♪」

だからって、難易度ルナティックはおかしくないですかね?

「あははー楽しみにしてたんだあ♪」

無邪気に笑う魔王様。

悪魔め‥!

「ふっ‥相当出来るらしいな‥?遠慮はいらん!本気でかかってこい!」

シグナムさんもヤル気満々である。

「お前の命の保障は出来ん。我が身の未熟‥許してくれるか?」

もうやだこのひと。

嫌です。許しません。

俺がげんなりとフェイトさんを見ると、フェイトさんは両手を胸の前で合わせて、ペコペコと頭を下げていた。

いや、胸を強調して、上下に揺らしていた。

やめてください。萌えてしまいます。

仕方ない。その双丘に免じて、本気でやりますかね!

「キャロ?」

「なーに?ジム兄?」

欠伸を噛み潰しながら、返事をするキャロ。

あ、こいつ。飽きてるわ。

「この三人、はっきり言って、強いぞ。」

「関係ないよ。私とジム兄の愛の前では、」

我が妹が頼もし過ぎる件。

「パルちゃん呼べるのか?」

暴走してから、パルちゃん全然見てないんだけど?

「多分ね‥」

多分て‥

「大丈夫。だって、ジム兄と一緒だもん。キャロちゃんは今、猛烈に愛に溢れているのです‥」

そうか。ならいいんだが。呼べなくなったかとお兄ちゃん心配してたんだよ?

「遠慮はしない!全力で行くぞ!」

 

俺の叫びに合わせて、キャロの魔力が膨れ上がる。「パアアアアrrrrrrrrルちゃああああん!」

フウウウrrrrrリイイドオオオオ!」

そして、キャロは大人バージョンへ。

俺はドラゴンの聖衣を纏った。

「こ、これは‥」

「はやてちゃん!二人ともSSおーばーですぅ!」

はやてさんがなんか、悪役みたいな呟きをしてる。そこにリィンツヴァイさんがナニかしんこくそうに報告する。

 

「はは‥ホンマにあの時、全然本気じゃなかったんやな‥もう笑うしかないわ‥」

シグナムさんが剣の柄を握り、前傾姿勢をとる。

居合い?狙いはキャロか。

シグナムさんの殺気が膨れ上がる。

キャロは未だに眠そうにしている。

あいつ、完全にナメテやがる。

仕方ない。お兄ちゃんが頑張りますか。

シグナムさんの剣が抜かれる。

ちっ。俺はキャロの前へと身を踊らせた。

ガキイイイン!

金属と金属がぶつかる音が響く。

間一髪、俺のドラゴンの盾は、シグナムの剣を防いでいた。

俺の盾に剣を弾かれ、シグナムさんが目を見開く。

「その盾‥」

シグナムさんの呟きに俺は答える。

「ドラゴンの盾に防げないモノはない‥」

「この盾を砕きたくば、己の剣が砕けるのを覚悟されよ?」盾を掲げて見せながら、

無駄にカッコつけてみる。

すると、フッとシグナムさんは優しく微笑んだ。

なんか嬉しそうである。

この人、こういうノリ好きそうだもんね。

ふと、視界の端に、なのはさんが目に入る。

魔力バレルを展開して、砲撃か!狙いはキャロのようだ。

「させるかっ!?」

俺はなのはさんへと、飛び掛かる。

 

ワイドプロテクション!》

 

なのはさんを障壁が包む。

「聖闘士の闘法は原子の破壊」

俺の拳は易易と、障壁を突き破る。

 

《アクセル!》

 

なのはさんへと拳が届くかと思った瞬間、なのはさんの姿がかききえる。

そして一瞬にして、俺から50m程離れた所へと、移動していた。

俺はドラゴンの星座を身体でなぞる。

小宇宙が膨れ上がる。

なのはさんはヽ(; ビクッとこちらを見て、こちらの一挙手一投足も見逃すまいと、睨んでいる。

こええ。防御力下がっちゃいそう。

だが、これでいい。意識を俺に集中させるのがこちらの狙いなのだから。

「すっごい‥!」

「高町!」

シグナムさんが叫ぶ。

でももう遅い。

そこは、キャロの射程距離だ。

なのはさんが

警告を受けて、キャロに気付く。

だが、キャロはなのはさんの後ろに陣取っている。身体をキャロの方へと向ける、そのアクションの遅れだけで、キャロには十分だ。

「愛の!鉄拳パーンチ!」

だが、俺達は甘かった。

魔王は魔王だったのだ。

魔王には百戦錬磨の経験があったのだ。

なのはさんは、キャロに振り向くことなく、その場で回避行動をとった。

そして、かわすことで、キャロ自身の動きで、自分の正面へと、来させる。結果、なのはさんの正面で、キャロは無防備な姿を晒していた。

攻撃を見ないでかわすとか、どんな達人だよ。あなた、作品間違えてますよ?これ魔法少女モノじゃないんですか?

魔砲少女とかもう良いですから。

だが、甘かったのは俺だけだったのだ。

キャロは、鉄拳パンチが、かわされたと悟るやいなや、その場で急停止し、しゃがんだ。

なのはさんからは消えたように見えたかもしれない。常識ではありえない動き。

ダッシュして、パンチをかわされて、その場でとどまって、しゃがむなんて芸当出来るやつ、聞いたこともない。

「とにかく‥すっごい‥はぁ~とふるぅ~パーンチ!」

そして、キャロの全魔力を込めたジャンピングアッパーが、

地面すれすれを這うように、繰り出された拳が、なのはさんを足元から巻き込むようにヒットした。

天高く打ち上げられた、なのはさんを見て、

俺に、安堵はなかった。

倒した?

魔王を?

そんなわけない。

何回やっても何回やってもなのはさんは倒せないのだ。

「廬山‥龍‥飛翔!」

逡巡の末、俺が撰んだのは、追撃。

自分の全身を拳へと変え、なのはさんへと、突撃する。

「アイゼン!」

突如響いた、声にハッとする。

しまった。よりにって、攻撃特化のこの人を忘れるとは、

「ラケーテン!ハンマー!」ハンマー型のデバイス、アイゼンの片面から魔力をジェットのように吹き出し、その勢いで、ハンマー投げのように高速回転しながら、こちらへ飛んできたのは、鉄槌の騎士ヴィータ。

「にゃのはは落とさせねえ!」

そして、俺とアイゼンが激突する。

とんでもない衝撃に意識が飛びそうになるが、なんとかこらえて踏ん張る。

つらぬけえええ!

更に小宇宙を爆発させると、少しだけ、アイゼンを破壊するわけにはいかないので、俺はあくまで、突破力だけで拮抗する。すると、アイゼンを少しだけ押し返した。

「なめるなあああ!」

だが、結局は押しきられ、俺はかっとばされた。

地面に頭から突っ込む。ヴィータさんは魔力も腎力も並々ならぬモノを持ってるのだ。

だが、痛くない。聖衣、旧モデルだからね♪

ダサさと引き換えに、頭の防御は岩壁なのだ。

ヴィータさんはそのまま、落ちていくなのはさんを抱き留めた。

なのはさんは気を失ってるようだ。

キャロ恐るべし。

魔王に勝つとか、ウチの妹が怖すぎるんですが、

まあ、前に戦った時も、俺は手も足もでなかったしね。

あの時より、更に強くなってるようだ。

俺もしっかり修業しないとな。

「そこまで!」

はやてさんが声を上げて、戦闘を止める。

「どうや?シグナム?」

「この若さで‥末恐ろしいですね」

「せやな‥しっかり鍛え上げてな♪」

「ハッ!」

と、シグナムさんははやてさんに敬礼する。

「ヴィータもな?」

「はやてが言うなら‥」

ヴィータさんは若干不機嫌そうだ。

ヴィータさん、何気になのはさん大好きだもんね。俺が追撃したのがキニイラナイのかもしれない。ヴィータさんとは仲良くしたいんだけどな。

お、俺はロリじゃねえ!

 

「よろしくお願いします」

 

俺はペコリと頭を下げる。

 

「‥おう。その‥悪かったな‥最後の、大丈夫だったか?

 

なるほど。怒ってたんじゃなくて、心配してくれてたのか。

 

「リィン?データはバッチリか?」

 

「はい。後で計算してリミッターの計画書作製しますね」

「うん。よろしゅうな」

「あ、ジム君とキャロちゃん、近いうちに、魔道師ランクの昇格試験受けてな?」

「えー?」

「実力あるのに低ランクにとどまってると、色々問題あるんや‥すまんが頼む」

「給料上げるから」

「「やります」」

俺とキャロの返事が被る。

フェイトさんも、何故か苦笑いしている。

と、そこで、なのはさんが目を覚ました。

「いやー。参ったの‥」

「ジム君もキャロも強いね~」

言葉とは裏原に表情はとてもイキイキしてらっしゃる。

戦闘狂め。

あ、そうだ。ついでに、修業してくか。

「シャーリーさんはいますか?」

 

「呼ばれて飛び出て、ジャジャジャーン」

と、突然現れた。

「この前言ってた件、お願いしたいんですけど‥」

「あーはいはい。調整できてるよー」

と、シャーリーさんが虚空をパチパチ指で弾くと、辺りの風景が変り、

デカイ滝が現れた。

「こんなんでどう?」

「バッチリです。ありがとうございます」

「フェイトさん。キャロ。俺、ちょっと修業していくんで、先に帰ってて下さい」

そして、俺は滝へと、飛び込む。

仮想だけど、水はしっかり冷たかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。
それでは、また明日‥いや、1日お休みもらいます(笑)ということで、明後日またお会いしましょう(///ω///)♪


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魔王と貍の会合。

祝UA、一万突破。お気に入り100件突破、ありがとうございますm(__)m嬉しくて、突貫で、書きました。UAとお気に入り件数の割りに、感想と、評価が、少ないという‥あっ‥察し。状態の辱しめを受けてるのは内緒。


時は少し遡り、ジムの執務官補佐のテストが終わった日の夜。

    ◆◆なのはside◆◆

隊舎の寮の自室で私は、はやてちゃんと、食卓を囲んでいた。

約束通り、はやてちゃんが、夕食を作りに来てくれたのだ。

はやてちゃんのご飯は美味しい。

「ご馳走様でしたー」

 

「お粗末さまや」

 

「美味しかったの♪」

 

「そうか?おおきにな♪」

 

「はやてちゃん。嫁に来いなの」

 

「どうしよう。同性の親友にプロポーズされてもうた」

 

「全く‥こんな良い女が二人して、独り身なんて、世の中の男供はどうかしてるで!」

 

「クスッ全くなの‥」

 

「やれやれ。でも、このままじゃフェイトちゃんんに先越されそうやな?」

 

「やっぱりそう思う?」

 

「ああ。あれはもう落ちてるな‥」

 

「フェイト‥!色を知る

年齢(とし)か‥‥っ!」

バキッ。

あ、箸が折れちゃったの。

割り箸は直ぐに折れちゃうから、困っちゃうの。

はやてちゃんが目の前でなんか震えてるの。どうしたのかな。とりあえず私は特注のステンレス製の箸を取り出した。

「と、とりあえず‥ウチはそろそろ‥

と、思ったら、急に、はやてちゃんが帰り支度を始めたの。

私ははやてちゃんの手首を掴む

「どうしたのかな?まだ夜はこれからだよ?」

はやてちゃんはビクッとこちらを向いて、顔をしかめる。あ、ちょっと、力強く握り過ぎちゃったかも。

私ははやてちゃんの手首を解放する。

はやてちゃんはホッと一息つくと、手首を擦りながら、椅子へと座り直した。

流石はやてちゃん。話しがわかる。だから好きなの。

 

 

そういえば、随分、気にしてたみたいやけど?」

「ほえ?あ、ジム君?」

「そうだね。彼、面白いよ。今日も、全然本気出して無かったし。」

 

「ほんまか工藤?」

 

はやてちゃんが

聞き直してくる。

 

「ほんまやで~」

 

これは本当。

今日の彼は、全然本気を出して無かった。

でもまぁ、相手もガジェット5体だけだったし、仕方ないんだけど。底が見えないのは初めてだった。

今迄、私は、大体の人間は動きを見ただけで、

その実力を推し測れていた。

それが、彼に関しては、全く測れなかったのだ。

初めての感覚に戸惑いもしたが、もっと解せないことがある。

彼の私を見る時の目、そこにあったのはたしかな怯え。

なんで?初対面だよね?見た目はこんなに可愛い女の子なのに、どこに怯える要素があるというのか。

それはすなわち、彼には、私の実力がバレている。看破された。ということなのだ。

今日の私は、全く、そういったものを見せていないはずだ。なのに、彼は見破ったというのか。

私は、戦闘中の彼を見ても、その実力が推し測れていないというのに。彼は私よりもひとつ上のステージにいるといえる。

そう考えると、胸に熱いモノが宿った。

もっと彼を近くで見たい。

 

高町なのはは、慢心しない。今迄、どんなに絶望的な状況下でも、不屈の心を胸に、切り抜けてきた。才能も確かにあった。だがそれだけではない。どんな時でも彼女は、自分というものを通してきただけなのだ。

幼い頃から戦ってきた彼女は知っている。世界において、自分を通すことの難しさを、力無きモノは蹂躙され、奪われるのが、この世界の正体だと、その身を持って誰よりも知っているのだ。

だから、彼女は貪欲に強くなる。

大切なものを奪われない為に、不屈に強くなるのだ。そんな彼女が感じた感覚。

彼の傍に居れば、きっと自分はもっと強くなれる。

だから、私は、はやてちゃんに切り出した。

「はやてちゃん。ジム君欲しいな‥」

高町なのはは慢心しない。

エースオブエースと呼ばれても、魔王と呼ばれても、未だに、純粋に強さを追い求めていた。

 

 

=========================

◆◆はやてside◆◆

唐突だが、機動六課の話しをしよう。

機動六課。それは私の夢の部隊。初動の遅い、管理局のシステムから独立し、助けを求める人を迅速に助けられるよう私が前に進む為の部隊。

いわば私の翼である。

部隊の設立は困難を極めた。

カリムの予言に対抗するための部隊。まさかの事態への対抗部隊やから、実力が無いと、意味が無い。しかし、部隊には魔道師保持制限がある。

裏技を使う事を思いつき、活きのいい若手FW陣、加えてウチの身内の強力なべテラン陣を集める事には成功した。

だが、事はそう単純にはいかなかった。

そこで気付いた。、ウチにも盲点があったのだ。

現場の実動部隊は集まった。後方支援、バックヤード、等の、医療、メンテナンスチームも、なんとか確保した。

だが、部隊の屋台骨、裏方の事務員が集まらなかった。

管理局には、二種類の人員がおる。

戦闘もこなす、現場に出る魔道師。

魔力が少なく、現場には出ない、非戦闘員。

そういった人間は、主に、事務系の仕事に就いている。適材適所。当たり前のことや。

では何故、事務員が集まらなかったのか。

ウチには、空のエース。教導隊の鬼の教官。管理局の白い魔王。悪魔。物騒な呼名にことかかない高町なのはがおる。

そのネームバリューたるや、管理局で知らんモノはおらんほどである。

つまり、非戦闘員のみなさんは、びびってしまったのだ。同じ部隊になったらしごかれるのではないかと‥

事務員を探しているときに、六課入りを断った、人間から、そんな理由を聞いた時は愕然とした。

そんな、アホな理由が、あるかと憤慨しても、実際に、事務員は集まっていないのだ。

じゃあどうする?

なのはちゃんは、機動六課のメイン兵装だ。外すわけにはいかん。

私の脳内に思わず、オージンジの音楽が流れた。

 

そんな時やった。フェイトちゃんからジム君の話を聞いたのは、聞けば、事務系の仕事迄完璧にこなすそうだ。実力もあるらしいし、性格も良いらしい。

これは、神様がくれたウチへのプレゼントに違いない。

ウチはなんとか、ジム君を機動六課に引き込めないかと考えた。

そしてフェイトちゃんの執務補佐ということにすれば、引き込みやすいんちゃうかと考えた。

結果はバッチリやった。実力は想定以上。FWとしても、是非とも欲しい人材やった。しかも事務系の仕事もこなせるのだ。もう絶対離さへんで。

そう。大事に大事に育てるのだ。

だのに。だのにだ。

魔王が、駄々をこね始めた。

オージンジオージンジ。

誰かタスケテー!

私は考えた。

なのはちゃんの希望を聞いた場合どうなるかと。

まずフェイトちゃんが拗ねる可能性が高い。

そして、ジム君が、なのはちゃんに磨り潰されるかもしれない。

あかんやん。デメリットだらけやん。

 

私は断固として断ることに決めた。

「昼間も言うたやろ。フェイトちゃんが離さへんよ」

「フェイトちゃんにはなのはからお願いしとくの」

あかん。部隊設立前に、隊長二人が仲違いとかやめて!

考えろ。はやて。

こういったトラブルを纏めるのも、上に立つ者の役目や。

「それはあかんよ。なのはちゃん」

私はじっと、なのはちゃんの目を見て、諭す。

「例えば自分の立場だったとしてどうや?」

「え?」

「なのはちゃんに好きな人ができたとする。

それを、ウチやフェイトちゃんがアプローチかけたら、なのはちゃんはどう思う?」

「お話しして、頭冷やすの!」

なんでやねん!なんでや!ウチの親友はいつから、こんなジャイアン思考になってしもうたんや!

「なあ。なのはちゃん。うちら三人は親友や。多分、一生付き合う親友や。親しき仲にも礼儀ありっていうやろ?こういうことに燗しては、お互い邪魔しないようにしていこうや?」

「こういうことって?」

「恋愛事や。人の恋路を邪魔するモノはなんとやらっていうやろ?」

「わかったの。」

ショボンとしながら、なのはちゃんが了承してくれた。

良かった。ちゃんと付き合ってみれば、本当は友だち想いの優しい子なんや。話しても‥わかんないことも、時々、あるけど。

「じゃあはやてちゃん?」

「なんや?」

私はいやな予感を感じながら、尋ねる。

「明日、リミッター外してほしいなー」

なんでや!?ナニがじゃあなのかさっぱりわからんわ!

「出来るわけないやろ!」

「リミッター無しで、本気でやりあいたいの‥」

相手は12歳の子供やぞ!

ホンマニ何言ってるん?

それで、ボコボコにしてジム君が六課入り嫌がったらどうするのん?

誰かタスケテー!オージンジオージンジ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


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ある兄の修業。

滝は良いねえ。雑念を洗い流してくれる。

滝に打たれながら、俺は、自分の中の小宇宙を魔力で、ゆっくり高めていく。やがて、全身に小宇宙が循環する。先ずは、ショートアッパーを繰り出してみる。

「廬山‥昇竜‥波!」

一瞬だけ、滝が割れた。

違うな‥

もっと、小宇宙を乗せるイメージで。

全身のバネを生かす感じで‥!

膝のバネを意識して‥そうか。ガゼルパンチの感じかな。

「廬山‥昇竜‥波ァ!」

 

すると、全身の力が拳に載った気がした。

そして、まるで、龍が昇るように、滝を切り裂いて行く。

これだ。この感じだ!

やったよ。鴨川さん!

確認するため、俺は跳躍して、滝をのぼっていく。

滝の上迄飛び上がり、見ると、未だに、滝は二つに別れたままでいた。

うん。

良いだろう。廬山昇竜波完成だ。

俺が達成感に、打ち震えて、ガッツポーズを取っていると、

視線を感じた。見ると、

フェイトさん達がポカンと、こちらを見ていた。

ちょっと‥今のガッツポーズみてたの?!恥ずかしい!

どこ見てんのよ!?

「何‥?今の‥?」

フェイトさんが呆然と聞いてくる。

「流石だね!ジム兄!」

キャロは当然だとばかりに、褒め称えてくる。

「必殺技です。」

どや顔で、報告する俺。

そう。必殺技である。必ず殺す技。

廬山昇竜波‥体力の無い時にやると、その膨大な小宇宙消費によって、全身から血を吹き出して絶命してしまう、諸刃の刃である。

 

「ジム兄、ずっと修業してたもんね?」

キャロが問い掛ける。

「ああ。長かったぜ。」

「いつも、私が部屋に入ると、「おぉーい?!」

って、言いながら、凄い早さでうつ伏せになってたもんね?」

キャロちゃんそこまでだ!

それ違う修業の時だから、

あ!何人か気付いてらっしゃる!

はやてさんとシャーリーさんが二人で生暖かい目でサムズアップしてきてる!‥うぜえ。

なのはさんと、フェイトさんはわかってないようだ。「何その‥修業‥なんの意味が‥?とか、話し合ってる。やめて!掘り下げないで!

「カギくらいかけーや。」

と、はやてさんが頬を染めながら、にやにやして言ってくる。

お、頬染めてるあたり、少しポイント高し君ですよ!部隊長。

「カギかけると、キャロがドア壊すんで‥」

 

「難儀やな‥」

 

やめて!同情するくらいならもうほっておいて!

 

「一時期、家のドアが壊れてたのはそんな理由が‥」

と、フェイトさんが戦慄している。

本当にすいません。

でも仕方無くない?同じ家に暮らしてれば、やはり、多少のニアピンはある。

溜まるのだ。小宇宙以外で放出しないと身体に、悪いでしょ?

「若いんだから仕方無いよね~」

シャーリーさんがにやにやと聞いてくる。

あ、この人はもう手遅れだわ。

まあ、実際問題、良い修業になっていたのだ。

心を落ち着けて、こすりながらも、いつドアが開くかと、いう恐怖。そして、同じ家の中で、キャロとエリオの小宇宙‥いや気配を探りながら、

擦るのだ。おかげで、小宇宙を感じとる事が当たり前になり、自分の中の小宇宙を感じとるのも楽勝になった。

時々、夢中になりすぎて、ギリギリになることはあったけどね。

勿論、証拠なんて、何ひとつ残さない。専用の、ゴミ袋を、用意して、毎度、済んだら処分している。あとはファブリーズだ。あれマジで便利。

開発者も、多分そういう用途のために作ったんだろうね。マジで感謝。

母さんと、一緒に住んでた時は全く出来なかったからね。母さんは、家の中、空気の、揺らぎとかで全て把握してたから、隠しようがなかったのだ。フェイトさん宅に、来てからは、それまでの分を晴らすように息子も、腫れた。

あ、うまいこと言ったかも。

と、下らない事を考えていて、俺は気づかなかったのだ。

魔王の様子がおかしいことに。

「ねえ?模擬戦しない?」

魔王がソワソワしながらなんか言い出した。

お断りしたい。

「さっき戦ったばかりじゃないですか」

俺はげんなりと、返す。

「その‥必殺技見たら、ヤりたくなっちゃった」

なんか‥ビッチっぽいですよ。

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂き、ありがとうございますm(__)m明日は、用事あるので、休みます。


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ある兄妹の後悔。

深夜テンションでネタをつめ込み過ぎた(´д`|||)
読みにくくてすみません。


  ◆◆キャロside◆◆

 

「ねえー。模擬戦やろうよー。」

 

高町なのはとかいうおばさんがジム兄に絡みついていた。

私はいい加減イライラして、

言葉を放った。

それが、まさか、あんなことになるとは思わなくて。

「いい加減ジム兄から離れてくれませんかね?おばさん」

ピシリ。と空気が止まった。

ジム兄が、おばさんに絡み付かれながら、ガタガタと、震え出した。どうしたんだろう?

 

  ◆◆なのはside◆◆

 

「あれれー?おかしいなー?なのは、成人もしてないのにおばさんなんて呼ばれちゃったよ?」

「ねえ?フェイトちゃん?」

「ウチの子がホンマすんません」

「ねえ?ジム君?」

「後でキツく言っておきますんで、何卒命だけは‥」

 

「はやてちゃん?」

 

「はいぃっ!?」

 

「リミッター外して?」

 

私はにっこり微笑んでお願いする。

 

「5ランク60分で良いですかね?」

 

60分かー。でも全解除だ。それなら、十分かな。

 

「命あっての物種やしな‥」

 

はやてちゃんは何かブツブツ言いながら、解除してくれた。その目は少し潤んでいた。意味わかんないの。身体に、力が、滾る。

と、キャロが、いきなり襲いかかってきた。

一拍遅れて、ジム君も。

キャロは、上から、

「必殺‥キーック!」

 

「廬山‥龍‥飛翔!」

 

まだ開始の合図もしてないのに‥

二人にはまず、礼儀を叩き込む必要が、あるみたいだ。

《レイジングハート‥モードリリース》

 

《オムライス!》

私の言葉に応えて、レイジングハートがバリアジャケットを解除する。

さて、調子に乗った、ガキ共に教育しないとね。

まず、キャロのキックを右手一本で受け止める。

そして、ジム君の拳は左手一本で、

そこそこの衝撃が来る。

リミッター無しの今の私にとっては、そよ風みたいなものだ。

さて、教導だ。

「あれ?おかしいな?まだ開始の合図もしてないのに。模擬戦は喧嘩じゃないんだよ?」

淡々と、話す私に二人のガキの顔が、恐怖に歪んでいく。

誰に喧嘩を売ったのか教えてあげる。

魔王の名は伊達じゃないの!

二人を解放する前に、キャロの足は逆向きにひねってやった。ついでにジム君の拳は握り潰した。

キャロはもう、スピードは出せないね?ジム君は廬山昇竜波だっけ?あれだけは少し厄介そうだしね。あはははははははは!ジム君とキャロは、直ぐに後ろへと、跳んで離れる。

 

空間に、設置しておいた、バインドが、発動し、キャロを絡めとる。

キャロはもがくけど、無理だよ。今の君じゃそれは解けない。

私はゆっくりと右手をキャロに向ける。

 

「さて。どうする?」

 

「キャロは‥キャロだけは許してやって下さい。」

キャロの正面に両腕を広げて、ジム君が立ち塞がる。

うん。美しい兄妹愛だね。だが無意味だ。

 

「うん。それ無理。」

 

すると、ジム君の顔が、絶望に染まる。

 

「悪魔め‥!」

 

カッチーン。

 

「少し、頭。冷やそうか。悪魔で良いよ。悪魔らしく、話しを聞いてもらうから‥」

私の言葉を聞いて、ジム君の目から、涙が溢れた。

このあと、めちゃくちゃバスターした。

 

  ◆◆キャロside◆◆

私の、目の前で、ジム兄がおばさんの砲撃魔法を受け続けている。

その数が100発を越えたところで、私は数えるのをやめた。

いや、正確には涙で視界が滲み、数えられなくなったのだ。

ジム兄は既に、両腕を広げることすら出来ず、その腕はダラリと下がり、

ようやく立っているだけという状況だ。

それでも、砲撃は止まない。

私の、目の前で、どんどん弱っていく、ジム兄を見て、私はバインドを解こうともがくが、さっき全魔力を放出したせいか、力が入らず、全くびくともしなかった。

さっきとはまるで別人の魔力の強さに、戦慄する。なんでこうなったの?おばさんって言ったから?

おばさんって言われると、パワーアップするとか、ナニソレ、聞いたことないよ。

愛が‥負けちゃ‥う?

もがくと、さっき離れ際に捻られた足が、ズキズキ痛みだして、立っていられなくなった。

幸か不幸か、バインドのおかげで倒れることはなかったが。

 

私は、後悔した。

ジム兄は言っていたのに、

このおばさんは強いと、

ジム兄が間違う筈ないのに、

なのに、なんで私は調子に乗っちゃったのかな。

いや、そもそも、あのおばさんが、ジム兄にベタベタするのがいけないんじゃないか。

折れそうな、私の心に再び、炎が灯った。

そうだ。愛が負ける筈ないんだ。

ぜーったい!

私は精一杯の抵抗におばさんを睨み付ける。

「ぁ?」

しかし、奮い起った炎は、おばさんのひとにらみで、あっさりと消え失せた。

なんだ、あれ?ヤバいよ!

人間じゃないよ!

胸に目があり。腹に口があるように見えた、まるで、デスピサr最終形態みたいだ。

すると、一際大きな砲撃をおばさんは放った。

「ジム兄ーーー!」

私は叫ぶことしか出来なかった。身体は恐怖で、動かないけど、ジム兄の無事だけを祈って、夢中で叫んだ。

砲撃は無慈悲にジム兄に着弾して、爆発を巻き起こす。

「ああ‥ジム兄‥」

さっきの戦いで、パルちゃんが全魔力を使い果たしていなければ、ジム兄が修業で疲れていなければ、

色々なたらればが、私の脳に浮かんでは消えて行った。やがて、爆発の煙が晴れると、そこには、ジム兄が立っていて‥

凄い。流石ジム兄。あれを耐えきるなんて。

と、思ったら、違った。ジム兄の前に、フェイト姉が立って、障壁を展開させていた。

「あれ?フェイトちゃん。何のつもりかな?」

「私は、この子達の保護責任者だからね。」

フェイト姉が震える声で、でもしっかりと、答えた。

「そっか。じゃあ‥フェイトちゃんにも、教導が必要かな?」

おばさんが、更に眼光鋭く、私達を睨み付ける。

全てを塗り潰す、圧倒的な恐怖、というものを、私はこの日初めて知った。

「そこまでや。」

はやてさん?が声を掛けてくる。

「はやてちゃんも教導する?」

 

「超遠慮」

 

「それよりもお仕事や。ガジェットが現れた。フェイトちゃんは、ジム君伴って、現場へ急行して」

はやてさん?の言葉に、魔王の圧力が、弱まる。

 

そして、フェイト姉は、ジリジリと、ジム兄を抱えて、魔王から距離をとる。

 

「任務なんだから、行っていいよ?」

魔王がひとつ息を吐き、

そんなことを宣い、フェイト姉は超スピードで、その場から離れる。

た、助かった‥のかな。

私が、がっくりと肩を落とすと、

その落とした肩にポンと手が置かれた。

振り向くと、そこには魔王。

ちょっ‥

 

 

「何を安心してるのかな?」

ジム兄タスケテー!

「さて、先輩に対する、口の聞き方を教えてあげないとね‥」

「リピートアフターなのはしなさい」

顔は微笑んでるのに、有無を言わせない、迫力に私は、赤べこのように首を振る。

「はいっ!」

「先程は生意気な口を聞いて、すみませんでした。おねえさん」

「先程は生意気な口を聞いて、すみませんでした。おねえさん」

「おねえさん」

「おねえさん」

「おねえさん」

「おねえさん」

「なのはさんは」

「なのはさんは」

「ピチピチの」

「ピチピチの」

「可愛い、乙女です」

「可愛い?ot‥めっです!」

私の素朴な疑問が言葉に載ってしまい、その瞬間にとんでもない力で、肩が握り締められる。

私が急いで言い切ると、

「おかしいな?まだ冷やし足りないのかな?」

と、醜悪な笑顔を向けられる。

恐い。恐いよジム兄‥っ!

私はぶるぶると首を横に振り、

その場で、五体投地する。

そんな私を見て、フンと、荒く息をひとつ吐くと、興味を失ったように、その場から歩き出す魔王樣。

 

まだだ。まだ。

魔王樣の気配が、なくなる迄、私は地面からおでこを離さず、じっと耐えていた。

と、魔王樣が歩みを止めて、こちらを振り向くのを、感じる。

あぶない。

魔王樣はまだ私が、頭を下げてるのを見て、ふう。とひとつ息を吐くと、

「管理局では、上下関係は絶対なの。六課はその辺、緩めだけどね。でも、だからこそ、締めるとこは締めてくから‥」

「イエス!マム!」

「は?」

「はいっ!おねえさん!」

「次はねえぞ‥」

そして、ようやく、魔王樣の圧力が、消えた。

消えたところで、どっと汗が噴き出す。そして私は、

人って安心すると、汗かくんだーなんて、訳のわからない事を、考えていた。

 

 

 

=====================

 

「流石やな。また強くなったんちゃうか?」

私が歩いていると、はやてちゃんが、声をかけてきた。ちょっと怯えている。何故なの。

確かに、力がたぎっていた。

少しやりすぎたかなーなんて、も思っている。

特に、ジム君に対しては、完全に八つ当たりであった。反省反省。

まあ、今度お詫びしよう。

「漫画で見たんだけど、」

「へ?あ、うん」

私の唐突な話題にはやてちゃんが戸惑う。

「能力にリミッターかける修業法が、あるらしいよ?」

そう。詳しい原理はわからないけど、身体に、常に負荷をかけ続ける事で、リミッターかかってる状態を普通にすることで、リミッター外した時の力が、アップする‥とかだったか?

「へー」

はやてちゃんが興味無さげに相槌を打つ。まあ、私も興味ないけど、効果があるかはともかく、私の好きな修業法ではないからだ。

私の好きな修業法は限界迄、身体を追い込んで、それを乗り越える事だからだ。限界を自覚して、それを乗り越えた時の達成感。なのはさんはそれが大好きなのだ。

 

 

 

 

========

どうだっ!

俺の拳が最後の、ガジェットを、貫く。

なのはさんに潰された、拳が、ズキズキと、悲鳴をあげるが、我慢だ。

 

「流石だね」

フェイトさんが、声を掛けてくる。

あちらももう終わったようだ。

「フェイトさんこそ」

「違うよ。私が言ってるのは、そんなにボロボロなのにってこと。」

ああ。そういうことでしたか。

「はは。ちょっと、辛いです‥」

と、ふらつく俺をフェイトさんが抱き締めてくれる。

「ごめんね。なのはは私の親友なんだ。」

 

「なんで‥フェイトさんが謝るんです?」

「止めてあげられなくて‥」

フェイトさんの身体は、とても、柔らかくて、暖かくて、

俺は‥(フニュン)許せるっ!

オカズが補充できたなーなんて、思っていた。

「あれは、わるいのは、キャロですから‥」

俺は苦笑いしながら返す。

「あはは。でも、キャロやジムから見たら、私達はおばさんだしね‥」

 

「そんな事無いです!」

 

「え?」

 

「少なくとも、俺にとっては、フェイトさんは魅力的な女性で‥」

 

「そうなんだ‥ふふっ‥ありがとう‥」

そう微笑んで、フェイトさんは更に俺を優しく胸に抱いてくれた。

 

 

 

 

 

===========================

 

    ◆◆??side◆◆

モニターに写し出された、ある少年の戦う姿を見て、私は興味をそそられた。

「面白い‥!実に面白い!」

「あーあ。また、ドクターの面白い病が始まったよ」

「ノーヴェ!君にはわからないかい?」

「んー?確かに強いとは思うけどさあ、何あの変な恰好。ダッサ‥」

ガーン!私は恰好良いと、思ったんだがなあ‥

ノーヴェのような若い女子にはわからないのかもしれないね‥

「欲しい‥!欲しいなあ‥!この力!」

「クックックッ‥クヒャーハッハッハッハッ‥ガッゲフッゲフッゲフッ‥」

「あーあ‥仕方ないなあ‥」

と、ノーヴェが私の背中を擦ってくれる。

「高笑いへたなんだから、しなけりゃいいのに‥」

何を言う。高笑いしないマッドサイエンティストなど、居ないのだ。マストなのだよ。そう。お約束なのだ。

だが、文句を言いながらも、背中を擦ってくれるノーヴェ。うん。親孝行な娘である。

この娘が幸せに、生きられる世界を何としても、創造しなくてはならない。その為なら私は鬼となろう!

「ドクター?ドクターはあの、鎧みたいなのが欲しいの?」

ルー君が、声をかけてくる。

「ん?ああ。欲しいなあ。超欲しい」

「ふーん‥」

と、また画面に視線を戻す。

ルー君はこの天才の私にも考えてる事がいまいちわからないお嬢さんだ。彼女の母親を私が保護している為、私に協力してくれている、召喚というレアスキル持ちのお嬢さんだ。

まだ若いが、その、魔力は素晴らしいモノを持っている。

 

「ねえドクター?」

「何だね?」

「この人、なんでこんなにボロボロなの?」

そう。この少年は既にボロボロであった。

だが、戦闘でボロボロになったわけではない。

既にボロボロの状態で、戦場に現れたのだ。

「うーむ。わからんねえ。」

「管理局で苛めでもうけているのかもしれないねえ。なんせ、管理局は悪の組織だからねえ‥」

「かわいそう‥」

ルー君が、哀しげに呟く。

その時、私の紫色の脳細胞にイナズマ走る。

「ああ‥かわいそうだねえ‥救いだしてあげようか。」

この少年を拐ってきて、解析すれば、あの力が、てにはいるかもしれない。クックックックヒャーハッハッハッハッっ!?ゲフッゲフッ

「ノーヴェ~」

「ん~ほっときなよルーお嬢。」

私は、彼を拐って来るよう、ノーヴェに命令しようとしたが、生憎今は、人数が足りない。

執務官殿もいることだし、今回はパス

が妥当だねえ。やるときは確実に‥だ。

ちょっと、誰か、背中、擦ってくれないかねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




また明日‥と、言いたいですが、ラスト近いので、のんびり書こうとおもいます笑すみませんm(__)m


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ある兄のお仕事。

遅くなって申し訳ないm(__)m
言い訳はしません。許して下さい。何でもしまむら!


「食べる?」

いきなり横から出てきたお菓子にキーボードを叩く手を止めて、出された腕を視線でたどると、青みがかったショートカットがさわやかな、女性が

人懐っこい笑みを浮かべていた。

 

「ナカジマ先輩お疲れ様です。もう検診は終わったんですか?」

 

「うん。これお土産。チョコポット」

 

「ありがとうございます。いただきます」

 

一掴みして口の中に頬張ると、サクサクした食感に続いて、チョコの甘味が追いかけてくる。

この人はスバル、ナカジマさん。俺達兄妹が六課に入ってから、席が隣な事もあって、気さくに話し掛けてきてくれる、良き先輩である。

元来、面倒見の良い性格なのだろう。

仕事の事や、六課の事等、色々教えて貰った。

気さくといっても、野球に誘ったりはしてこないけどね。

 

「あれ?それ私の仕事?」

 

「そうです。今日は検診と聞いてたので‥余計なお世話かと、思いましたが、」

 

俺が、申し訳無さそうに頭を下げると、

 

「ううん。ありがとー。ジム坊大好きー」

と、いきなり抱き締められた。

顔に押し付けられる、双丘に口元が、緩むのを慌てて引き締める。

 

「こーら。仕事中になにやってんのー」

 

と、俺の至福の時間は終わりを告げる。

 

「ああ。ティア。おっつー」

 

「はいはい。おっつー」

 

と、声を掛けてきたのは、

ティアナランスター先輩。

 

「ランスター先輩。すみません」

 

「別にあんたは悪くないでしょ?悪いのはそこのバカスバル」

 

少々、ツンデレのきらいがあるが、基本的には優しいお姉さんである。

あと巨乳。あとツインテール。

 

「これもらうわよ」

 

と、机に残ってた、チョコポットをかっさらっていく。

「ジムもあんまりこいつ甘やかさないでね」

「はいすいません」

「いやいや、もっと甘やかして良いんだよ?」

ティアナさんの注意に謝る俺を見て、スバルさんが、慌てて会話に割り込んでくる。

「子供に甘えんな」

ティアナさんがツッコムが、スバルさんはそれをかわし、視線を遮るように

どこからか取り出した、扇子を広げる。

と、そこには「もっと甘やかして」と、書いてあった。

 

それを見た、ティアナさんはチベットスナギツネのような目で、スバルさんを一瞥すると、頭痛を耐えるかのように、頭を手で抑える。

「ナカジマ先輩にはいつもお世話になってますので、少しでも恩返し出来ればと、思いまして‥」

 

「もーー!ジム坊なんでこんなに可愛いのーー!?」

と、 また頭を引き寄せられ、抱き締められワシワシされる。

 

まるでペット扱いである。

 

だがこれが意外に気持ちいい。いや。双丘関係無いよ?

全く無いとは言わないけど。

そんな俺達を見て、ティアナさんは溜息をひとつ吐くと、

「とりあえず、まだ仕事中だからね?」

「「はいっ」」

急いで席に戻り、仕事を再開する。

 

「あっ。ナカジマ先輩。これ終わりましたんで、確認お願いします」

 

「「えっ?!」」

 

何故かティアナさん迄驚いてる。

 

「まだお昼休みにもなってないのに‥」

 

「スバル‥あんた。ずっと、検診してなさいよ‥」

 

「流石にそれはヒドイよ!?ティア~」

 

「ジム坊。なんでそんなに仕事出きるの?」

 

「こういう仕事。得意なんですよ」

 

「そ、そうなんだ。ティアより出きるかも‥?いたっ!」

 

見ると、ティアナさんがスバルさんのお尻をつねっていた。

「フェイトさんの補佐として、事務仕事は前から手伝ってましたから‥」

 

「おー。ジム坊が

噂のフェイトさんの秘蔵っ子だったのかー」

 

え?なにその噂。広まってるんですか。

 

「っ!?」

 

えっ。ティアナさんになんか凄い勢いで睨まれたんですが。さっきのチベットスナギツネの方が全然可愛いレベルなんですが。

うーん。ポクポク。ポクポク‥チーン。

あ。そういえば、ティアナさんは執務官志望なんだっけ?

あんま覚えてないけど、strikersエピローグで、フェイトさんの執務官補佐になってたような。

フム。ということは、嫉妬されてると見るのが妥当かな。

うーむ。油断した。この間なのはさんに凹られてから、原作キャラとは、良好な関係を構築したいと思っているんだが。

ティアナさんに関しては

漠然とした記憶しかないんだよな。スバルさんとゆるユリしてて、最後はヴァイスさんと結婚して、スバルさんネトラレテるやん!ていう記憶しか無かった。

更に言うなら、ヴァイスさんの妹さんと中の人同じだから、ヴァイスさんは、合法近親相姦したんだな。ヴァイスの兄貴パネエなあ。ということを思ったことしか覚えてない。

と、しょうもないことを考えていると、お昼を告げるチャイムが鳴った。

 

「「ジム兄(さん)!」」

 

と、キャロとエリオがやってきた。

 

「「お昼いこー」」

 

二人とも、訓練終わりでボロボロである。

 

「おー」

 

机の上をちゃっちゃと、片付け、立ち上がる。

 

「それでは失礼します」

 

スバルさんとティアナさんに頭を下げ、

キャロとエリオに手を引かれ、食堂へと歩き出す。

と、食堂への道すがら、八神部隊長とすれ違う。

「「「お疲れ様です」」」

キャロ、エリオ共に三人で、敬礼する。

「おー。お疲れさんや。キャロとエリオはどうや?訓練慣れたか?」

「はい‥なんとか」」

二人同時に答えるが、エリオの歯切れが悪い。

八神部隊長はそんな様子に苦笑いすると、

「ジム君。お昼終わったら部隊長室きてくれるか?」

 

「はい!了解しました!」

 

「ほななー」

と、ひらひら手を振りながら去っていく八神部隊長。

 

  ◆

 

食堂にて

大盛のナポリタンを丸テーブルの中央に陣取り、それを囲むように三人で席に着く。

 

エリオとキャロにナポリタンを取り分けてやりながら、エリオに話を振る。

 

「どうした?エリオ。訓練キツいのか?」

 

エリオはぺこりと会釈をしながらナポリタンを受取り、答える。

 

「いえ。キャロに全く勝てなくて‥」

 

二人は今、ヴィータさんやシグナムさん、フェイトさんに、基本的な戦闘技術を学んだあと、一対1の模擬戦をずっとしているらしい。

それでキャロに凹られ続けているわけか。

兄として、身内贔屓に見てもキャロは強い。

今のエリオが勝てる訳がないのだが、

そこはやはりエリオも男の子。女の子であるキャロに負け続けはくやしいのだろう。まあ、男女というより、完全に同年代だしな。

 

 

「そうか。戦績はどんなもんだ?」

 

エリオは顔を伏せると、

 

「今日は50戦50敗です‥」

 

「ごじゅっ‥」

 

あまりといえばあまりな、結果に俺は掛ける言葉を失う。

 

「エリオ君は、真っ直ぐ過ぎだよ。もっと、フェイントとかも意識しないと」

 

キャロがどや顔で、語り出す。

やめてさしあげろ。

それアドバイスしてるつもりかもしれないけど、

死体蹴りだからね?

罰代わりにキャロの分にはピーマンを多めにのせてやる。

「ぱよっ!?」

俺から渡された皿に鎮座しているピーマンの山を見て、キャロが青褪める。

そして、ピーマンの山をまるごと、フォークで、エリオの皿に移す。

 

「こら。キャロ。」

 

「ぱよ~?」

 

こやつめ。あからさまに目を逸らしおってからに。

エリオは苦笑いしながら、ピーマンにフォークを突き刺す。

 

「そういえばエリオ。少し背伸びたんじゃないか?」

 

俺の問い掛けにキャロの動きがピタリと、止まる。

 

「えへへ。はい。少しだけ。いっつ!?」

はにかみながら答えるエリオ。

だが急にエリオが悲鳴をあげる。

見ると、テーブルの下でエリオの足をキャロが踏んでいた。

 

「キャロ。食事中は静かにしなさい」

 

「ぱよっ」

 

俺の言葉に椅子に座り直して、何事も無かったように食事を再開する。

と、いつの間にか、大盛のナポリタンは無くなっていた。お、俺の昼メシ‥全部エリオにやっちまったようだ。不覚。

はやてさんに呼ばれてたな。新しいの注文する時間はないかな。

仕方ない。

 

「それじゃ。俺は行くな。午後も訓練頑張れよ」

 

「うん(はい)」

 

二人とも笑顔で手を振ってくれる。

さて。なんの用事だろうね。

期限の近い仕事は無かった筈だけど。

 

「あ。キャロ。デバイス待機モードに戻しとけよ?」

「ぱよっ?!」

待機モードに戻すのを忘れてたキャロはワタワタと慌て出す。その様子にくっくっと笑いを溢しながら、俺は歩き出す。

 

=======================

 

「ジムです。参りました」

 

部隊長室をノックして、声をかける。

すぐに返事は帰ってきた。

 

「おー。入りー」

ドアをくぐり、中へと入ると、

はやてさんは、自分の机でお弁当を広げていた。

「やあやあ。よう来てくれたな。こんな格好ですまん。」

そう言いながらも弁当からお惣菜をぱくつくはやてさんは、少し頬を染めながら、こちらに謝罪する。

「いえ。こちらこそ間が悪くてすみません。出直しましょうか?」

「いや。かまへん。すまんけど、時間なくてな

このままお話しさせてもらうけど堪忍な?」

八神司令はお忙しい方だ。

このタイミングで食事をとらなければ、食事抜きになってしまうのだろう。

女性の食事に興奮する層は一定数いるらしいが、

自分は断じて違う。かといって不快になる事もない。八神部隊長は見目麗しい部類の女性だし、

そんな女性のいつもと違う一面を見る事は嬉しくもあった。八神部隊長が構わないのなら、俺が許否する理由は無かった。私は一向に構わんっ!

 

「それでお話しとは?」

 

「うん。座ってええよ?」

 

「はい。失礼します」

 

と、俺は少し離れた椅子に腰を下ろす。

本人が構わないとはいえ、あまり食事を近くで凝視するもんじゃないだろ。

 

「仕事はもう慣れたか?」

 

「そうですね。先輩方もみなさん良い人で良くしてもらってます」

 

「さよか‥けどキャロとエリオの分も、合わせて三人分は大変ちゃうか?」

 

「いえ。もう慣れましたし」

そう。キャロとエリオの訓練の時間をつくる為、俺はキャロとエリオの分の事務仕事も引き受けたのだった。でも八神部隊長が知っていたとは、驚きである。この人はおちゃらけてるようで、本当によく見ている。肩代わりの件はなのはさんとフェイトさんといった、直属の上司には報告しているが、お二方が司令に報告したという話は聞いていなかった。もしかして怒られるのだろうか。

と、俺が不安になっていると、

 

「お説教やないで?」

 

と、クスリとひとつ微笑んではやてさんは話し出す。

「六課の事どう思った?」

「え?」

発せられた言葉はとてもじゃないが想定外で。

俺が言葉に詰まっていると、

 

「忌憚なく頼むわ」

 

「そうですね。実務‥現場の実働部隊は問題無いと思います。‥が、反面、裏方、事務が酷すぎますね。実務未経験の方が多く見受けられます。

むしろ、今までよく回っていたなと、そんな感想です」

ひと息に言ってから、無言で俯くはやてさんに不安になる。言い過ぎただろうか。

だが、嘘偽りない気持ちである。

配属したばかりの時、表計算ソフトを1セルずつ手打ちしているのを見た時は目眩がした。

何であの作業スピードで今まで回っていたのか謎過ぎる。きっとはやてさんやフェイトさんが奮闘していたのだろう。事実、今は俺は残業して、六課全員分の仕事を確認して、終わらせている。

初日が終わった時はとんでもないブラック企業に来てしまったと絶望したものだ。

マジでフェイトさんいなかったら300回は辞めてるね。

 

「せやねん。現場の人材集めるの必死になってたら、裏方が素人だらけになってしもてん‥」

 

その後、事務方が集まらない理由も聞いたが酷すぎる。絶対魔王には教えられない。

「残業もしてくれてるみたいやけど無理してないか?」

「バレてましたか‥」

バツの悪い思いで頭をかく。

「正直有り難いっちゃ有り難いんやがな‥」

と、憂いに染まった顔を伏せるはやてさん。

「今週いっぱい頑張れば、多分事務系統は正常化します。目つぶって頂けませんか?」

と、はやてさんは愕然とした顔を上げる。

「あの量の仕事をこの短期間で処理したんか‥」

確かに配属当初は既に、事務系統はパンクしており、日々の急ぎの仕事を優先してなんとかこなすだけの自転車操業状態だった。だが実際は日々の仕事量自体はそんなに多くなかったのだ。実務、パトロールや訓練に時間を取られ、慣れない事務仕事を後回しにしていただけで、事務スキル持ちがまともにやれば、

そこまで、時間は掛かるモノではなかったのだ。

実際俺自身の訓練、フェイトさんとのデート‥いや、パトロールがなければ、もう終わっていただろう事は記しておく。

「本当に子供とは思えんな‥」

 

「お褒めに預かり光栄です」

「わかった‥一応ウチからの特別指令てことにしとくわ‥残業頼む」

「はい!承知しました」

敬礼と共に、俺が答えると、はやてさんは満足気に首肯くと、

「おおきにな‥」

ボソリと一言お礼を言ったはやてさんに問題ないという気持ちで笑いかけると、はやてさんは頬を染めて、目を逸らすのであった。

さて。指令を頂けた事だし頑張りますか。

今迄は内密で残業してたから、バレないようにコソコソしてたから、効率悪かったのだ。

内密といっても、なのはさんやフェイトさんにはバレてたから、暗黙の了解を貰ってた認識だったけどね。一応他の六課メンバーにはバレてない筈だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。
注意。この六課の設定は私の勝手な妄想です。
本来の六課は事務系統は問題なく回っていたと思います(笑)お目こぼしよろしくお願いいたしますm(__)m若手のFWばかり集めたとしたら、こんな展開もあり得たんじゃないかという妄想です。
後書きで説明は寒いですね(´д`|||)次はもう少し早く投稿できるように頑張ります。


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サビ残。

今回はちょっと実験的にオマケなんてものを書いてみました(笑)本編には一切関係ありません。
オマケの前迄が本編と、考えて下さいm(__)m
ただ思い付いたネタをぶっこんだだけなので、これ以上ない自慰行為です(´д`|||)
読まなくても問題ないです。


タタッターン!小気味良くエンターキーを叩き、

目を揉みほぐしながら、息を吐く。

ホイールをコロコロ回しながら、表を流し見、確認する。

「今日はこの位にしとくか‥」

ぐぐっとイスの背もたれに寄りかかりながら、身体を伸ばす。

 

「はい‥」

と、言葉と共に、目の前に差し出されるコーヒーに驚く。

見るとそこには、フェイトさんがはにかみながら、ソーサー片手にカップを差し出してくれていた。

「お疲れ様‥」

 

「ありがとうございます」

 

お礼を言って、カップを受けとる。

ブラックのまま啜ると、程好い苦味と熱さがが思考をクリアにする。

 

「お疲れ様‥」

 

そう言って、フェイトさんが俺の両肩を解すように揉んでくれる。

 

「サービス良いですね」

 

フェイトさんのしなやかな指が俺の凝り固まった肩を解していく。

「はやてから聞いたよ。随分頑張ってくれたみたいだね‥」

 

「大したこと‥ないですよ‥」

 

フェイトさんのマッサージが気持ち良くて、睡魔が襲ってくるが、この至福の瞬間を味わいたいと、気合で睡魔を跳ね返す。

今迄散々サビ残してきたからね。たまには、こんなサービス付き残業もありだよな。

まさか料金は発生しないよね?

残業して、残業代はでず、料金発生とかブラックってレベルじゃないよ?

でもフェイトさんじゃ仕方ないね。払うよ。いくらでも。

と、背中にぺちょんと柔らかいモノが当たる。

これは‥もしや‥?

 

「んっ‥んっ‥」

フェイトさんが力を入れる度に、吐息と、共に声が洩れる。そして、背中に柔らかいモノが2つ押し付けられる。

「ジム‥子供の凝り方じゃないよ?」

 

フェイトさんが苦笑交りに呟く。

呟きと同時に、吐息が俺の耳をくすぐる。

肩だけでなく股間迄凝り固まってしまうんですがそれは‥この際股間も揉みほぐしてくれませんかね‥

流石にそこまでいったら料金発生するか。

フェイトさんともなれば、尋常じゃない料金設定だろう。俺は詳しいんだ。

と、俺の頭が煩悩にまみれていると、パソコンにメッセが表示された。

from愛妹3センチ

title

 

「ぱよ」

 

なんだこれは。悪寒を感じ、たちまち正気に戻される。

そして、辺りを見ると、六課の入り口から、ピョコンとピンクのアホ毛が、覗いていた。そして、黒いオーラも覗いていた。

やべえ。

そこはかとない恐怖を感じた俺は、フェイトさんから身を離し、

 

「もう大丈夫です。ありがとうございます。だいぶ楽になりました。もう少しで終わるんで、先帰ってて下さい」

 

と、名残惜しくもフェイトさんのサービスに別れを告げる。

と、ピコんとまたパソコンのモニターに新たな通知が来る。

 

「キャロちゃんがあなたの発言に良いねしました。」

 

おお。どうやら少し怒りは治まったらしい。

俺は胸を撫で下ろす。

 

「そっか‥あんまり無理しないでね?」

 

と、フェイトさんが少し寂しげに呟く。

えっ何その反応。

やめろください。勘違いしちゃうから。

私。騙されないから。

と、めんどくさい女みたいに心中で自分を押さえ付ける。

これで調子こいてアプローチでもしようもんなら、また魔王に頭冷やされるにちがいない。

 

あぶないあぶない。

だが、股間は正直である。

ダメ元でくだけ散れと「かたくなる」を繰り返して、主張している。やめて。パンツに、恥ずかしいシミ付いちゃう。

俺はフェイトさんを見ないようにして、仕事へと意識を集中させるのだった。

 

 

 

 

    【おまけ】

 

  ◆◆なのはside◆◆

薄暗い室内に三人の女性が集まった。

長机の中央で両手を組んで、その上顎をのせていた私、高町なのははゆっくりと、他二人を見渡し、口を開いた。

「集まってくれてありがとうなの」

「別に問題ないよ」

「せやで。ウチら親友やろ?水臭い事言わんで用件はなんやの?」

フェイトちゃんとはやてちゃんが口々に気にするなと許してくれる。流石親友共なの。

「用件は他でもありません‥最近の私の二次創作での扱いについてなの‥」

「「は?」」

二人が揃って聞き返す。

「どこへ行ってもやれ魔王だの。悪魔だの‥」

「ま、まあ‥いわゆる、畏怖ってやつやろ?ある意味尊敬に近い弄り方やろ‥」

「私、ピッチピチの19歳だよ?」

「花も恥じらう乙女に畏怖すんな!なの」

「「お、おう」」

二人が揃って引いている。

解せない。

「でも、仕事に役立ってるやろ?」

 

「例えば?」

「ほら?この間の銀行ごうとうの時とか‥」

「フェイトちゃんより解決時間30分も早かったで‥」

あれか‥

 

 

◆◆

 

なのはの場合‥‥

管理局に銀行強盗の通報があって三十分。私は現場の銀行に着いていた。

「行くか‥なの」

私はゆっくりと銀行の入り口から中へと入って行く。

「たのもー」

私の声に中にいた、人間の視線が集まる。

中では、部屋の中央に人質が集められ、それを取り囲むように武装した男達。

「管理局だー」

「なんで棒読みなんだよ!?」

男達の一人がツッコンでくる。

「だって心底めんどいの」

「白い バリアじゃけっとに栗色のツインテール‥まさか‥げえっ!?撲殺魔王!」

「誰が撲殺魔王だ★」

と、私は命知らずな男の一人に、右ストレートを撃ち込む。

男は簡単に吹っ飛び、天井に突き刺さった。

ぷらーんと、足を揺らしながら、天井から落ちてこない仲間を見て、男達は次々と投降し始める。

そして、人質の一人のご婦人が頭を抱えてうずくまり、

「ナンマンダブナンマンダブ‥じいさん助けてー」と拝んでいた。

解せない。

何はともあれ、無事事件は解決したのだった。

◆◆フェイトの場合‥

私は銀行強盗の通報を受けて現場の銀行にたどり着き、状況の報告を受けていた。

二ヵ所同時に銀行強盗が起こり、もうひとつの方へは、なのはが、向かっているときいた。

なのはなら問題ないだろう。

まずは人質の安全確保からだね。

よし。行くよ。バルディッシュ。

yessir!

もうだいぶ付合いの長くなった相棒を握り直し、私は銀行の入り口からそっと中の様子を伺う。

ホール中央に人質が集められ、それを武装した数人の男達が取り囲んでいた。

銃口が向けられているため、下手に攻撃することは躊躇われた。

まず、人質達を包むように障壁を展開し、それから男達一人ずつにバインドをかけていく。

無事最後の男がバインドでからめとられ、倒れたところで、人質達と犯人の間へ立つ。

「管理局です。もう大丈夫です。何故って?私が来たから‥」

人質のみなさんに安心させるように微笑むと、

突入してきた警ら隊の人達に犯人を引き渡す。

うん。今日も、無事お仕事完了‥っと。

 

◆◆

 

解決VTRを見て、私はタメ息をつく。

「くっそー!あいつかっけーの」

「私もあんな風にやりたいの」

「ねぇはやてちゃん?私もあんな風にやりたいのどうしたら良い?」

するとはやてちゃんはフッと目を逸らすと、

「無理‥ちゃうかな?」

「なんで?」

「キャラ‥ちゃうし‥ハハ‥」

「頭冷す?」

「ほら!それ!そういうとこやでなのはちゃん!

ナニソレ。イミワカンナイ。

「とりあえずフェイトちゃん?」

「なーに?なのは‥」

 

「私は私ヒロイン化計画を立案するの!」

 

「うん‥なのはならなれるよ‥」

 

「フェイトちゃん‥」

 

「でも、今作のヒロインは私だから‥」

「ウボアー!」

 

「全く‥年増が何言ってるんですかねえ‥」

ピョコピョコとハートの形のアホ毛を揺らしながら、少女は歩きながら呟く。

「愛は絶対勝つんだよ!ぜーーーったい!」

 

 

 

 

 



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JSの憂鬱。

遅くなってすみませんm(__)m3月中に書けてはいたんですが、ちょっと寝かして、推敲してました。あんま良くならなかったけど、大して変わらないので出します。ルーちゃんをちゅるやさん、にしてみたり、色々遊んでたのですが、纏まらなくなりそうだったので、やめました(笑)個人的にはにょろにょろ言ってるルーちゃん可愛いと、思うんですがね(´・ω・`)


「ドクター。お待たせ‥」

私はルー君に呼び出され、ラボの一室で佇んでいた。近近、ホテルアグスタにて、古美術品のオークションが開かれる。そこにレリックが出品されるという情報が入り、私は娘達に襲撃するよう指示をだし、その後、ルー君に呼び出され、今ここで、ルー君を一人待っていたのだ。

襲撃計画自体はウーノとクアットロに任せている。二人とも情報分析に優れ、私よりもこういう事に適正を持っている。頼もしい事だ。

「かまわないよ。それでルー君?何の用かな?」

「うん。ガリュウ‥?」

と、ルー君が呼び掛けると、音もなくガリュウ君が現れた。

ガリュウ君はルー君が召還した人型の召還獣だ。

こんなナリだが虫らしい。

そういえばどことなく仮面ライダーに似ている気がする。

そして、ガリュウ君はゆっくりと私に、近づいてくる。

彼の、表情からは感情が全く読みとれない。

いや、わかる者にはわかるのかもしれないが、少なくとも私にはさっぱりだった。

感情がわからないというのは不気味なものだ。

彼は声も発さない。

そんな彼に気圧され、私は一歩下がってしまう。

「どうしたの?ドクター?」

「いや、何でも‥」

と、答えようとしたところで、私の肩に手が添えられる。

見ると、ウーノが静かに微笑んでいた。

「ウーノ?何故此所にいるんだい?」

「ルーお嬢様に協力を頼まれまして‥」

「協力?何の協力だい?」

しかし私の問いに応えてくれる者はいなかった。

二人は静かに微笑んでいるだけだ。

なにこれ恐い。

と、私が恐怖を感じていると、

唐突に部屋の扉が吹き飛ばされた。

「ちょっとウーノ姉樣!?私の下着、ドクターの下着と一緒に洗わないでって言ったでしょう?!」

入って来たのはクアットロだった。

娘にそんな事を思われていたとは‥

これが反抗期‥。凹むね。

私はゆっくりと四つん這いになってしまう。

クアットロはそんな私を見て、ばつが悪そうに、目を逸らすと、ウーノに近づいてヒソヒソし始めた。凹むね。これならふつうに聞こえるように話して貰った方がマシだ。いや。ウソだ。泣いちゃうかもしれない。

「ウーノ?そろそろ説明して、くれないかい?」

「すみませんドクター。アグスタの件でルーお嬢様にも協力をお願いしたのですが‥その際、大変魅力的な御提案を頂きまして‥私の一存で了承致しました」

「ふむ。それでその提案とは?」

ウーノが了承したのなら問題は無いのだろうと思ったがルー君の提案とやらに興味を引かれ、私は尋ねる。

「それでは、ルーお嬢様、お願いいたします」

ペコリと一礼してウーノは一歩下がる。

すると、再びルー君とガリュウ君がにじりよってきた。

「な、なにかな?」

私の問いは恐怖でかすれ、震えていた。

「ドクターが欲しいモノをあげる‥恐がらないで‥ガリュウ?」

コクりとガリュウ君がうなずくと、ガリュウ君の身体が光り始めた。そして、光りが治まると、ガリュウ君は消えていた。

「おや?ガリュウ君はどこへ?」

「そこにいるよ」

ルー君が答えると、ウーノがどこからともなく、姿見の鏡を私の前へと置いた。

そこには、漆黒の鎧に包まれた私がいた。

「これは‥?」

「ドクター。欲しいって言ってたでしょ?」

そうか。あの時の‥確かにあの時の青年が身につけていた鎧に似ている。いや、あれを、黒くしたものがこれだ。

「ドクターが欲しがってたから、ウーノに頼んで解析してもらったの。まあ私は当たりはついてたんだけど」

ドヤ顔ルー君頂きました。

「そしたら思ったとおり、あの、鎧は魔力生命体だった」

魔力生命体?あれが?

「わかりやすく言うと、ガリュウと同じモノ。向うにも召還士いるんでしょ?ならあとは簡単。ガリュウに聞いたらできるっていうから、おなじようにしてみたの。気分はどう?単純に今、ガリュウの力がドクターに上乗せされてるから力強くなってる筈だよ」

そう言われてみると、確かに力が、溢れている

力が、追い求めた力が、この手に!。

「ふはは。フーハッハ!ゲフッゲフッ!」

むせる私を余所に、ウーノとクアットロとルー君はアグスタ襲撃計画を立てている。

誰かちょっと背中擦ってくれないかねえ‥。

 

 

 

 

 

 

 



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ある兄の日常。

ある昼下がり。

どうもジムです。今日も元気に事務仕事に清出してます。ジムだけに!

ドヤァ‥と、脳内でドヤ顔をしていると、PCのモニターにグループチャットの着信が通知された。

【平成狸合戦ぽんぽこ】《おいすー。》

【流派当方腐敗】《あ。ぽこたんインしたお》

【平成狸合戦ぽんぽこ】《やあやあ。みんな。今日お昼一緒せえへん?》

【流派当方腐敗】《それアグリー》

【イノセントstarter】《私もいいよ‥》

【大鑑巨砲少女】《私もOKなの♪》

みなさん仲がよろしくて結構なことだ。一部名前の付け方おかしいけど。

【平成狸合戦ぽんぽこ】《ジムはどないする?》

【龍座のジム】《僕も良いんですか?》

【平成狸合戦ぽんぽこ】《当然やろ》

【流派当方腐敗】《今日の議題は何にします?》

 

《ゆの×クロorクロ×ユノどちらが正義かはいい加減勝負つきませんし‥》

 

《なのはさんとはやてさんの千日手になっちゃってますからねー》

【大鑑巨砲少女】《クロノ君はやっぱり攻めなの♪》

【平成狸合戦ぽんぽこ】《攻めのクロノなんかクロノやない!なのはちゃんは何もわかってへん!》

【大鑑巨砲少女】

《少し。頭‥冷やそうか?》

【流派当方腐敗】

《すとっぷ!いつもの流れになっちゃってますよ!二人とももっと懐を深く持ちましょうよ?私はリバも美味しくいただけますよ♪》

【龍座のジム】《流石シャーリーさんは業が腐海わ。》

《腐ってやがる‥遅すぎたんだ‥》

【流派当方腐敗】

《そんなに褒めるな少年》

褒めてねえよ。

【流派当方腐敗】

《じゃあもう今日の議題は‥なのはシリーズで、1番人気のあるシーンは幼女なのはさんの着替えシーン説で良いですか?》

なんだそれは。

そうかもしれないけど、わざわざ話し合う事なんですかね。しかも本人の前で。

【大鑑巨砲少女】

《えー‥そうなの?困っちゃうなあ‥》

あ。これ困ってないやつですね。

【平成狸合戦ぽんぽこ】

《ちょい待ち!ウチも幼女時代に入浴シーン披露してるんやで!》

【流派当方腐敗】

《確かにそのシーンも人気はあるんですが‥不純物が混じってるんですよね‥》

 

【平成狸合戦ぽんぽこ】

 

《お前、それ絶対シグナムの前で言うなよ!》

 

おい仕事しろよ。

 

【イノセントstarter】

 

《みんな早く仕事しないと昼休みなっちゃうよ‥》

 

流石フェイトさん。天使やで。

そして、全員ログアウト‥と。

なんて分かりやすい人達なんだ。

それからほどなくして、昼休みを告げるチャイムが鳴り響いた。

 

さて。お昼行きますか‥机から立ち上がり、ぐっと、身体を伸ばす。

すると、どこからか女性のすすり泣くような声が聞こえてきた。

見ると、PCとにらめっこしながらえぐえぐ泣いているなのはさんがいた。

俺はふうとひとつタメ息をこぼすと、なのはさんに声をかける。

「どうしました?」

「うっ‥うっ‥終わんなくて‥お腹空いたよーえぐえぐ‥」

なのはさんは意外と事務仕事が苦手だ。

壊せないものが苦手らしい。

なんだそれは。

 

「少し見せて頂いても良いですか?」

 

「うん‥」

 

と、しおらしく席を明けてくれるなのはさん。しおらしくしてると普通に可愛い。

 

「なのはーお昼行こう」

 

と、フェイトさんがやってきた。

「うん‥ごめんフェイトちゃん。まだちょっと終わってなくて‥」

 

「終わりましたよー」

 

「えっ!?」

俺が声をかけると、驚愕の表情でなのはさんが振り向く。

そしてモニターを確認していく。

「ほんとに終わってる‥」

と、キラキラした目でこちらを見てくる。

なにそれ可愛い。

「ん?ジムが手伝ってあげたの?」

と、フェイトさんがこちらを見てくる。

非難というよりは、単純に興味からの質問ぽい。

だけどここは。

「いえいえ。手伝うもなにも‥もうほとんど終わってましたから‥」

 

「そっか‥そうなんだ‥」

 

と、フェイトさんは優しく微笑む。

あ。これバレてますね。

 

「さ。司令が待ってます。昼メシイキマショー」

 

フェイトさんの天使の微笑に照れ臭くなり、俺はそそくさと、机を片付ける。

するとそんな俺になのはさんが近づいてきて、

 

「ぁりがとなの‥」

 

と、ぽしょりと囁いた。

 

「いえいえ。俺もなのはさんと昼一緒したかったんで」

 

と返すと、なのはさんは一瞬キョトンとすると、「ふ、ふーん。そうなんだ‥?」と、頬を染めて、逃げるようにフェイトさんの方へと走って云った。

 

ーーーーーーー

「チキチ!第一回。機動六課お料理対決ーーわーーパチパチパチパチ!」

ナニがハジマルンデス?

俺以外の全員が一糸乱れず普通に拍手してるあたり、俺以外で話がすすんでたんだろう。

お料理対決ねえ?確か、このメンバーならお料理

に不安は無かった筈だけど。どうなるやら‥

「俺も作るんですか?」

 

「いや。ジムは審査員枠や」

それなら安心。料理は出来ないことはないが、他人樣に出せる程の自信はない。

「なんや?ジムは料理もできるんか?」

「滅相もない。慎んで、審査員やらせていただきます。」

「謙遜しないの‥ジムの料理。美味しいよ‥」

と、フェイトさんが言ってくれる。流石天使。

「ありがとうございます。うれしいです」

社交辞令とはいえ、誉められて悪い気はしない。

俺は弛む口許を必死で引き締めた。

「ふーん。フェイトちゃんはジム君に料理作ってもらってるんだ?」

と、なのはさんが口を尖らせながら言ってくる。

「入局してからは全然。だから久しぶりに食べたいなー‥」

と、チラチラこちらを流し見るフェイトさん。

甘えモードのフェイトさんは可愛い。

 

「はは。今回は勘弁してください。その代わり、今度のオフは夕飯作りに行きますから。」

「絶対だよ?」

少し拗ねたように囁くフェイトさん。

でも機嫌は良いっぽい。

そんなフェイトさんを見て、なのはさんとはやてさんがやれやれと。首を振る。

「もうやめてー。これ以上は飯食う前にお腹一杯になってまうわ」

「ほな。料理作りに行くでー?」

と、はやてさんが拳を振り上げながら、歩き出す。そしてその後ろをぞろぞろと皆でついていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも。本当に文章上手くならないなー(´д`|||)詠みにくくて本当にごめんなさいm(__)m


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ある兄の災難。

お昼時、食堂のテーブルで一人、所在なく座っている俺。

周りはもう慣れたモノで、あえてこちらを意識しないようにしている。なんだかなぁ。

食堂で食事もとらずに、丸テーブルにポツンと一人座っている男。

うん。不振である。孤独のグルメでもここまでは不審じゃない。あっちはちゃんと飯食ってるしね。

事情を聞かれても、何と説明していいのかわからないので、いないものとして扱われている現状は正直たすかる。

でも‥何だな。

俺‥ボッチみたいじやない?

何の罰ゲームだと。

あ。向こうの方で、誰か座ってやれよ?みたいなやりとりが始まってる。やめて。ほっといて。

まるでお店を予約して行ったら、自分以外誰も来ない。みたいに見るのやめて。「コース料理お出しし始めて良いですか?」と、気まずそうに聞いてきた店員さんの顔は忘れない。

おい。ケーキとか用意するのやめて。買いに行かないで良いから。

誕生日じゃないですから。一人バースデーパーティーとか、職場の食堂で開くような剛の者じゃないですから。だってパーティ終らない?

始まる予定もないから。

と、俺が居心地の悪さを味わっていると、

気を遣われる事が痛いということを俺は初めて知ったんだ。

 

「お待たせ~」

と、ガラガラと台車を押しながら、八神司令が現れる。台車の上には多くの食事が鎮座している。

助かった。司令の登場によって漸く、俺に纏わりついていた、憐れみの視線が霧散した。

「みんな。急にごめんな~‥ああ。そのまま食事続けてかまへんよ?」

突如現れた司令官に数人が立ちあがって敬礼をしようとするが、司令はそれをやんわりと押し留める。ガラガラと台車を俺のテーブルの傍に着けると、そのまま、イスへと着席する。

そして、周りは理解する。

食堂に現れた、不審なボッチの事情を‥

おい。地縛霊みたいに言うな。

あれ?おかしいな。また憐れみの視線が纏わりついてきたよ?

そして、続いて、フェイトさんが現れる。

「ジム。待った?‥ごめんね‥お腹空いたでしょ?」

フェイトさんの登場と同時に、憐れみの視線が憎しみの視線へと変わる。

解せぬ。

「おっ待たせ~」

そしてなのはさんも登場。

すると、再び視線が憐れみに‥

ナンデヤ!

なのはさん可愛いやろ!

六課内での、ヒエラルキーが垣間見えた瞬間だった。

「ほな。早速、審査してもらおうか?」

と、司令が手際よく、料理を並べて行く。

「公平を期して、誰がどれ作ったのかは内緒や」

ふむふむ。メニューはきんぴらごぼう、肉野菜炒め、見ればわかる。肉野菜炒めはフェイトさんのだ。あとは、シュークリームか。

きんぴらごぼうをぐいぐい俺の目前に押し分けてくるあたり、きんぴらごぼうははやてさんかな?

シュークリームはなのはさんかな?二次創作で、腕前はプロ級みたいな話があった気がする。うん。デザートとして楽しみにしておこう。

じゃあ‥まずは、と、箸を出そうとした時、気付いてしまった。

三人が物凄い凝視している。まず、どれから行くのか。恐ろしい程の緊張感が場を支配している。

腕が重い‥出そうとしているのだが、鉛でもついているかのように、持ち上げた腕は震えてしまっていた。

こんな中食っても正直味なんてわかる気しないのだが、

ならばここは‥

せっかくだから俺は。パンを選ぶぜ!

と、懐からランチパックを取り出しておもむろにかじりついた。

「いやー!今日もパンが旨い!」

 

「ええ度胸してるな‥自分‥!」

と、はやてさんが聞いたことの無いような、声色で凄んでくる。

こわっ!乙女が出して良い声色じゃないですよそれ!

俺は慌てて、きんぴらごぼうを箸で一掴みして口に運ぶ。

ぬう。旨い!

甘辛の味付け。しっかり黄金比を守った、基本に忠実な味付けだ。歯応えもしっかりあり美味い。文句のつけようがない。

「これは‥美味いですね‥」

すると、はやてさんの殺気が霧散した。

ホッと、一息ていてさらに味わう。

「この‥優しい甘味は‥蜂蜜ですか?」

「ほう。わかるんか。」

一転はやてさんはニコニコと、料理の解説を始める。

料理好きなんですね。

とても美味しゅうございました。

いい加減腹の虫が騒ぎだしたので、メインディッシュの肉に手を伸ばす。

うん。いつものフェイトさんの味だ。旨い!

フェイトさんを見て、「美味しいです!」

と、声をかけると、フェイトさんは嬉しそうに、柔らかく微笑んだ。

ご飯が、ご飯が、すすむ君~♪

ご飯、肉野菜、きんぴらごぼうの回転が止まらない。俺まるで、人間製鉄所だ!

ウォォオオオン!

あっという間に完食。

さて、デザートである。

お茶碗を置き、シュークリームを手にとる。

甘いモノは嫌いじゃない。

むしろ珠にのぺーすで積極的に取りたいくらいだ。

 

さて。いただこう。

俺はおもむろにシュークリームにかじりついた。

見た目もキレイで始めのサクッとした歯応えで、このシュークリームが、水準以上の品であることがわかる

トロっとしたカスタードが口の中に広がり、追ってきたのは、甘味‥ではなく、酸味だった。

 

酸味?

 

違和感の正体を探りながら、咀嚼を続ける。

そして、鼻に抜けた薫りで、俺は違和感の正体に気付いた。

気付いた瞬間俺は、それを吐き出すことを選択した。

 

「マズウウウーイ!」

 

叫びながら、シュークリームを吐き出し、テーブルに顔から突っ込んだ俺を見て、フェイトさんが心配そうに駆け寄る。

「ちょっ!?ジム!?」

「なのは?!何入れたの?」

「マヨシューは正義なの」

フェイトさんの問い掛けに対して何でも無い事のように答えるなのはさん。

あんた。どこの鋼鉄の女王だよ。

そう。シュークリームにはマヨネーズが入っていた。マヨネーズ単品ならまだ耐えれた。

ご丁寧にカスタードとしっかり混ぜられていたのだ。混ぜるな危険。これはもはや兵器である。

八神さーん。機動六課でバイオテロ起きてますよー?

。いかん。瞼が、重く‥遠くでフェイトさんの悲鳴のような叫び声が聞こえながら。

ナニかとても柔らかくて、温かいモノに包まれるのをかんじながら、俺は意識を手放した。

 

「ジムー?!寝ちゃダメだー?!シャマルさん!?シャマルさーん!?うわー!ジムがなんか良い笑顔で私の胸に寝ゲロ吐いてるー?!」

 




そろそろシリアス入るので、ネタを突っこみまくり(///ω///)♪まあ、シリアス中でも気にせずふざけるのが、stanのスタイルなんですがね(´・ω・`)そこは好き嫌い別れるでしょうが、申し訳ないm(__)m


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ある兄の事件簿壱

導入だけで一話終わった‥だと‥まとめきれない己の文章力の低さよ‥orz


退勤間近の夕暮れの時間。俺は八神司令の執務室へと来ていた。

 

「お時間頂きすみません」

 

「かまへんよ」

 

「それで、どうしたんや?」

 

「はい。私にこの件の調査をさせてください」

と、言って、俺は懐からプリントアウトした紙を取り出す。

それは、一見何でもない嘆願書だった。

管理局では、一般市民からの嘆願書等を、犯罪の予防、防止索の一環として常に受け付けている。

大体は悪戯であったり、思い過ごしの勘違いの与太話レベルなのだが、

差出人の名前を見る迄は、俺も特に問題視していない案件だった。

 

「これは‥?」

 

その嘆願書を見て、はやてさんは眉をひそめる。

「村に魔物が現れた。身寄りのない若い女の生贄を求められている?

「魔物に生贄‥?アニメの視すぎやないか‥?」

そう。一見眉唾ものな嘆願。悪戯ともとれる内容である。こんなものにいちいち対応するほど、管理局は暇ではない。

だが、俺には動く理由が、あったのだ。

「近くの局員を調査に行かせる‥じゃああかんのか?」

はやてさんはジッと俺の目を見て、聞いてくる。

それはそうだ。転移門を使うのもタダじゃあない。

わざわざ俺が動くよりも、近くに配属されている局の人間に対応させたほうが効率的であり、それが組織というものだ。

俺はそれでもはやてさんから視線を逸らさず、言葉を発する。

「その差出人‥俺の母さんなんです。」

「なんやて‥」

「おまけに現場は俺とキャロの故郷の村です」

「ふむ‥」

俺の言葉を受けて、はやてさんは目を嘆願書に再び落とす。

「それだけやないやろ?」

 

「えっ?」

 

「君は何かこの嘆願書に違和感を感じた。違うか‥?」

 

この人は本当にさすがだ。

「恐れ入ります。はい。私が疑問視したのは、何故、差出人が母なのかです。」

「ふむ。続けて?」

 

「私の故郷の村は小さい村ですがきちんと村長もおります。普通、こうした嘆願書を送る場合には村長の署名で送る筈。と、愚考致しました」

「なるほどな‥村長ではなく、君の母君が一存で送らざるを得ない、イレギュラーな状況下にあると、君は考えてるんやな‥」

「ハッ!思い過ごしであれば良いのですが‥」

「ええやろ‥君の判断には一定の説得力を認める。思い過ごしで片付けるのは楽観的過ぎるやろ。」

「ありがとうございます!」

「ジム=ニー。フェイト執務官をつける。少し遅れて私も、行くわ。すぐに現場に急行し、調査にあたってくれ!」

 

「了解しました!」

「リィン?おるか?」

《おりますよ~♪》

私は椅子の背もたれにドカッと体重を預けながらリィンを呼ぶ。

「聞いてたやろ?フェイトちゃんに分かりやすく資料まとめて、司令送っておいてくれるか?」

《おやすい御用ですよー♪》

 

《なのはちゃんは良いのですか?》

「んー。流石にここを空には出来ん。ウチも行くつもりやし、なのはちゃんには悪いけど、今回は留守番やな。」

《はやてちゃん迄行く必要あるんですか?》

「うーん。ジムの考察には一定の説得力が、あったのは確かや。確かに村長の署名でなく母君が一存で嘆願書を送る事態というのは、異常やろ。」

《確かにそうですねー》

「なーんかきな臭いで‥」

《とか言って、久久に外回りしたいだけじゃないですかー?》

うぐっ。リィンめ。図星をついてくる。

だって、最近デスクワークばかりやったから、

ちょーっとお腹にお肉がついてきた気がするし‥「そんなことないで!たまには上司が働いてるとこ見せんとな!」

《ふーん‥》

と、リィンはこちらをニヤニヤしながら見てくる。

これ‥バレとるな‥

「さ。いざというときに動けるようにしっかりお仕事お仕事や!」

《はーい》

 

 

 




続きは早めに出せるよう頑張ります(///ω///)♪
最近あまり時間がとれてないのです(。>д<)
きららファンタジアが悪い。俺は悪くない。


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ある兄の事件簿弐。

転移門を抜けると、懐かしい風景が広がる。

俺が育った村が見えてきた。

早く母さんに会いたい。はやる気持ちを抑えながら、自然と早足になるのを感じる。村の入口をくぐり、自分の記憶と寸分違わぬ風景にホッとしながら、自分の家へと急ぐ。

「ふふっ‥ジム。嬉しそうだね‥?」

俺の隣を同じ速度で走りながら、フェイトさんが声をかけてくる。

「すみません。はしゃいでしまって‥」

「あはっ‥別に構わないよ。お母さまに会うのも久しぶりでしょ?私には構わなくていいから」

と、柔らかく微笑むフェイトさん。

正直ありがたい。

というのも、あの嘆願書を見つけてから、言い様の無い不安が俺を蝕んでいた。母さんがどこか遠くに行ってしまうような‥そんな得体の知れない不安が。

はやる気持ちに任せ、自分の家のドアを開け放つ。

「母さん!」

家の中に入ると、そこには母さんがきょとんとしていた。洗濯物を干していたのか、その手に洗濯物を持ちながら、

「ジム‥なの?」

 

「母さん!ただいま!」

 

俺は思わず母さんを抱き締めた。

この腕に母さんを抱き締めてなお、修まらない不安に震えながら、母さんを強く抱き締めていた。

すると、母さんは優しくそんな震える俺の頭を撫でてくれるのだった。

そして漸く、俺は震えが収まり、顔を上げる。

「おかえりなさい。私の可愛い坊や。」

そこには、聖母のような慈愛の視線を向ける母さん。

思わず、気恥ずかしくなり視線を逸らしてしまう。

コホンとひとつ咳ばらいをして、仕切り直す。

そう。今回の俺は、管理局員として来たのだ。

 

「時空管理局、機動六課ライトニング隊所属のジム=ニーです。今回はこちらの嘆願書の件で調査に参りました。こちらの差出人は貴女で間違いありませんね?キングさん?」

 

すると母さんは、目に憂いを載せて頷いた。

 

「はい。間違いありません。」

 

「御話を伺っても?」

「ごめんなさい。ジム‥出来れば、貴方以外にお願いしたいわ‥良いかしら?フェイトさん‥でしたかしら?」

と、母さんの視線の先を見ると、いつのまにか、玄関にフェイトさんが立っていた。

唐突な許否に何か重いモノで頭を殴られたような錯覚に陥る。

「か‥母さん‥なんで‥?」

 

。「ごめんなさい‥ジム‥本当にごめんなさい‥」

 

「俺じゃ頼りない?」

 

「違う!違うの‥そうじゃないのよ‥」

 

何か言いたい事を言えないような葛藤を見せながら、母さんは頑なに謝りながら、俯き、涙を溢す。

困り果てた俺は、フェイトさんへと視線を向ける。

と、フェイトさんはゆっくりと頷きこちらへ歩み寄る。

と、そのまま未だ泣きじゃくる、母さんの肩を抱き、別の部屋へと誘導し歩いて行く。

俺は母さんに許否された事がショックで、その場を動けずにいた。ただ、立っているだけで精一杯だったのだ。

◆◆◆   フェイトside◆◆◆

「さて‥お話しを伺っても?」

と、私の問い掛けに、お母さまはゆっくりと頷くと、ぽつりぽつりと話始めた。

それは、この村の暗部。

この村では昔から、身寄りのない若い娘を生贄に捧げてきたらしい。魔物とやらが実在するかは解らない。ただ、生贄にされた娘達は、誰も戻ってはきていないそうだ。

何故、村長の署名でなく、お母さまの署名で嘆願書を出したのか。

村長は生贄をだす事に積極的らしい。

元々、ここは小さい村だ。

身寄りのない娘は村全体で養っているようなものだ。そこで、労働力の乏しい、若い娘は生贄の名目で体の良い口減らしをしているらしい。

娘がどうなったかはわからない。

お母さまはそんな村長の方針を止められなかった、自分の非力さを悔いていらっしゃった。

そして、そんな自分をジムには見せたくないのだと。

そして、この度とうとう、良心の呵責に耐えられなくなり、独断で管理局への通報に踏み切ったというわけだ。

一通り話を聞いて、納得はできた。

ただ、これは解決が難しい‥。

村長がやっていることは間違いなく悪い事だ。

十人に聞けば、ほぼ十人が悪い事だと談じるだろう。

だが、動機はどうだ。やり方はともかく、村長の方針によって、村全体は助かっているのかも知れない。綺麗事だけじゃ世の中は回らない。

それは、ここ数年管理局で執務官をして、嫌というほど感じてきたことだ。

これくらいの規模の小さい村だと確かに、村人全員の食扶持を確保するだけでも、いっぱいいっぱいなのかもしれない。

それでも私は‥

私がしようと、していることは、この村にとっての悪かもしれない。

お母さまの気持ちが今ならよくわかる。この現状を見ない振りしたら、私は二度とエリオに顔向け出来なくなる気がする。

いつの間にか強く強く拳を握り締めていた。

はやてに相談しよう。

あの頼もしい親友なら私には想いもつかない解決策を出してくれるかもしれない。

いつだって、この世はこんな筈じゃないことで溢れてる。そんな現実を一歩一歩、小さい歩幅でも前に向かって行こう。ねえ?なのは?なのはならどうするかな?決まってるよね?何時だって、全力全壊だよね?明るい未來へ一直線に最短距離で‥だよね!

 

 

 

 



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ある兄の事件簿参。

今回はおまけ仕込んでみました。不快なネタかもしれません。閲覧注意と、だけ。
なお、本編とは一切関係ありません。読まなくても全く問題ありません。ただの、思いつきネタです。悪巫山戯とも言う。


やはり、自分の部屋は落ち着く。

 

久久に帰ってきた我が家の自室で、座禅を組んで、俺は瞑想していた。

この家を出て、フェイトさんの家に御世話になり、管理局の隊舎の寮に入り、

どこもそれなりに愛着も湧き、落ち着くようにはなったが、やはりここは別格である。

結構な期間、離れていたのだが、部屋は綺麗に整えられていた。おそらく、いつ帰ってきても良いように、母さんが毎日掃除してくれていたのだろう。

今のように部屋に一人でいても、母さんの温もり、優しさを感じる。

おそらくそれが落ち着く理由だろう。

瞑想しながら、体内の小宇宙を魔力とリンクさせ、高めていく、転生して、小宇宙を感じてから、およそ毎日やっているルーチン。

小宇宙を高めながら、俺は考え事に没頭していく。

考えるのは、母さんの事。何故、母さんは俺に今回の件を話してくれなかったのか。

管理局に一存で嘆願書を出すくらいだ。

母さんが助けを求めているのは確実だ。

それを俺に話せない理由とは‥

この件について、母さん自体がまだ事情を把握していない?

 

それはない。

そんなあやふやな状態で管理局に一存で嘆願書を出すような人じゃない。

 

ならば何故か‥

 

母さん自体が、今回の件に関わっている?

 

いや、それはないか‥俺が言うのもなんだが、あの人は悪い事をできるような人じゃない。

あの人は何時だって、自分の事は二の次で、他人を気にかけている人だ。

仮に関わっているとしたら、あの人から積極的にじゃない。

あの人ではどうにもならない事情があり、見てみぬ振りをした‥程度だろう。

うん。これが1番腑に落ちるかな。

そんな自分を恥じて、俺に話すのを躊躇ったというところか。

思考に一応の決着をつけたところで、違和感を感じて、片目を開ける。

すると、部屋のドアからフェイトさんがこちらを覗いていた。

「わっ‥ばれちゃった‥」

悪戯っぽく笑って、いたたまれない様子で微笑みながらフェイトさんはその場で顔を傾げながら、問うてくる。

「入っていい‥?」

なにそれ可愛い。

「勿論です」

俺はあわてて、体勢を整えると、フェイトさんを向かえ入れる。

「すごいね‥気配、完全に、消してたんだけど‥」

 

「丁度、集中してましたから」褒められたのが照れ臭くて、ポリポリと頬をかきながら、

フェイトさんに座布団を出して、薦める。

フェイトさんは軽く礼を返して、座布団に正座する。

いやいや、楽にして下さいよ。

簡単に言うなら、胡座とか、お薦めです。

ボーッと立っている俺を不審に思ったのか、

フェイトさんが声をかけてくる。

「座らないの‥?」

 

ハッとして俺は答える。

 

いや言えねえ。正座して強調された太股に感動してましたなんて。

 

「いえ。女性が自分の部屋にいる事に緊張してしまって‥」

俺は何を言っているんだ。

これでは、女としてフェイトさんを見ています。と、宣言しているようなものじゃないか。

まだ早い。今はまだ、家族の立ち位置で、信頼を深めるのだ。

「そ、そっか‥」

アッルゥエエエ?

フェイトさんが真っ赤になって俯いたよ?

これは。フェイトさんも結構意識してらっしゃる?まだまだと、思っていたが、これは行けるんじゃないだろうか?

いや。これは孔明の罠だ。

どうせあれでしょ?ここで、調子に乗って、告白でもしようものなら、今です!とか言うんでしょ?

そしたら、

 

「ここにいるぞ!」

とか言って、なのはさん辺りが出てくるんでしょ?

そして、その後、勘違い野郎としてフルボッコにされるに違いない。

危なかった‥なんて恐ろしいことを考えやがるんだ。これだから女ってやつは‥

いや、待て。フェイトさんがそんな事をするとでも?

そう。フェイトさんはそこいらのひと山いくらのビッチ達とは違うのだ。

絶世独立とも、言える程の美を備え、なおかつ、清廉潔白なお人柄。

文字通り俺が、が死ぬ程愛した女性がそんな事をするとでも?

 

でも‥せっかくだから俺は!スルーを選ぶぜ!

「あ‥!飲み物、持ってきますね!」

と言って、俺は部屋を逃げ出したのだった。

 

二度目の人生でも俺はヘタレだった。

 

 

=======================

 

《おまけ》

夜の帳が落ちた無限書庫。

人の気配の無い、この場所で、僕。ユーノ・スクライアは今日の作業を終え、

帰り支度を、始めていた。

と、唐突に、背後に人の気配を感じて振り替える。

そこにいたのは、僕の想い人。

クロノ、ハラオウン提督だった。

「よう。お疲れさん。ユーノ。」

「クロノ‥君‥どうしたんだい‥?」

「どうした?とはご挨拶だな?労いに、来てやったんだよ‥」

そう言って、彼は、右手に持った瓶を掲げる。

「美味い酒見つけたんだ。飲むだろ?」

「いや、職場じゃちょっと‥」

と、僕が断ろうとすると、彼はズイッと一気に距離を詰め、僕を逃がさないように顔の横に空いた左手を叩きつける。

ドンッ!という強烈な音と共に、空間が震え、僕は容易く足がすくんでしまう。

彼は強力な魔道師であり、魔法は勿論、体術でも僕は到底かなわない。

脅えた様子の僕を宥めるように、彼はゆっくりと‥僕の顎をつかんで、僕の目を自分の視線と絡み合わせる。

「飲みたいんだろ?物欲しそうな目しやがって‥それとも俺に飲ませて欲しいのか?この、卑しん坊め‥」

彼の嗜虐的な瞳に射ぬかれると、僕はいつも何も言えなくなってしまって‥

?お願いだよ‥クロノ‥君‥酷い事‥言わないで‥」

と、弱々しくお願いする事‥そんなささやかな抵抗しか僕には出来なくて‥

でも、そんな僕を見て、クロノ君は何故か頬を赤らめると、持っていたお酒を口に含んで、強引に僕の、口へと流し込んできた。

 

 

 

=====

ふう。と、一息ついて、私は書いた小説を、シャーリーへと送る。

すると、すぐにシャーリーから返事が来た。

『お疲れ様です。今回もクロ×ユノ愛に溢れてる良いプロット頂きました♪おめでとうございます。今回は、なのはさんの先着でした!』

その一文を見て、私はグッと、ガッツポーズを取る。私とはやてちゃんは勝負していた。

先にプロットを書き上げた方が、絵師である、シャーリーに本にしてもらうと。

その勝負に私は勝ったのだ。

緩む口許を必死に閉じながら、溢れる笑いを押さえきれない。

ああ‥待ち遠しい。

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございますm(__)m
妹さえいればいい。予想外の名作でした。
税理士のアシュリーちゃんが特に好きです。ぬーさんに惚れ直した(///ω///)♪那由ちゃんも可愛い。金元さんの声は人を駄目にする声だとおもいますまるニューゲーム七巻も良い出来でした。
牛の乳搾るひふみんがなんかえろかわいかった(笑)。いやー元高木さんも楽しみにしてるんですが、楽しみ過ぎて、執筆が進まない。進まない。
みんなのお薦め作品を教えて欲しいですね(///ω///)♪何でもしまむら!(何でもするとはいってない)


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ある兄の事件簿四。

またおまけ仕込んでます。自分で言うのもなんですがヒッドイです。


俺が、二人分のコーヒーを煎れて、部屋に戻ると、フェイトさんは落ち着きなくキョロキョロと、辺りを見回しながら、ゆらゆら揺れていた。

フェイトさんも緊張しているのだろう。

なにこの人可愛い。

俺に気付くと、その場で小さく縮こまる年上のお姉さん。

超可愛い。

ウブ可愛い。なんだこの人。まるで、可愛さのデパートやで!

可愛さの初売りである。俺の初めても買ってくれないだろうか。

フェイトさんの初めて?カウー!カウカウー!

当たり前体操♪古いか。

「お待たせしました‥」

いかんいかん。益体もない思考が止まらない。これではまた不審に思われてしまう。

何より縮こまっているフェイトさんに早く助け舟を出してあげないと。縮こまる事で、胸が強調され、胸自体はでかく見える。因みに、故に、俺の息子は縮こまらずに、膨脹しているもよう。だが全く変化が見受けられなくバレる気配は無い模様。泣ける。

「ありがとう‥」

コーヒーを持ち、お互いに一啜り。

 

「うん。やっぱりジムのコーヒーは美味しいね‥」

「普通に煎れてるだけですよ?」

「それでも美味しいんだよ‥」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「う、うん。どういたしまして?」

お互いに俯き頬を染める。

そして暫しの沈黙。

俺はこの沈黙が嫌いじゃない。

そして、おそらく、フェイトさんも。

なんていうか、お互いがお互いの事を思っての沈黙というのがお互いわかるのだ。

「コホン。事件の事だけど‥」

そこでフェイトさんが沈黙を破り、切り出した。

そうだよ。お仕事お仕事。フェイトさんとのいい雰囲気を楽しんでる場合じゃないんだよ。

そして、フェイトさんは母さんから聞いた話を話してくれた。

身寄りの無い若い娘を生贄に、捧げるというのは、体の良い、口減らしじゃないかと言うこと。

村長が積極的に行っているらしいということ。

それによって、この村は助かっているのかも、知れないと言うこと。母さんはそれに気づき、管理局に助けを求めたと言うこと。

ふむ。大体考察通りと言える。

でもこれは‥

「これは‥難しいですね‥」

 

「だよね‥」

 

この村の根本的な問題を解決しないといけない。

村の生産性を上げる‥?一捜査員にそんな事出来るわけがない。

「村の事については、はやてに相談してみるよ‥」

「そうですね。あの人なら何か、解決案出してくれるかも‥」

そうだ。困った時は報連相。

社会人の基本である。

村長をぶっ飛ばして、生贄制度を辞めさせて、村が全滅しましたなんて笑えない。

「その辺ははやてに、任せるとして‥私達も、案を各々考えてみよう?それで、それ以外で何かする事あるかな?」

「気になるのは‥生贄に、された娘達の足取りですね‥村長が手を下して、殺してしまっているのか、若しくは売られてしまっているのか‥」

「村長の家を調べれば、そこら辺解るのではないでしょうか?可能ならば、生きているのなら、救ってあげたいです」

「そうだね‥うん‥そうだ‥。」

「明日、村長の家に案内します。それで俺が、村長の気を引きますので、フェイトさんがその間に潜入‥村長の家を家宅捜索。というのはどうでしょう?」

「うん。OK。」

「少々御待ちを‥」

俺は、うろ覚えの記憶を頼りに、村長の家の見取り図を書いて、フェイトさんに渡す。

「細部は間違っているかもしれません。」

「ううん。OK。これで十分だよ‥」

「村長が戻る時には念話で忠告します」

 

「うん‥よろしくね‥」

 

=======================おまけ

 

己の肉体と魔力と魔法少女の定義に限界を感じ悩み抜いた結果

彼女が辿り着いた結果は感謝であった

自分自身を育ててくれた魔法とクロ×ユノへの限りなく大きな恩

自分なりに返そうと思いたったのが

1日一万回 感謝のディバインバスター!!

 

魔力を整え 拝み 妄想し 構え 放つ

一連の動作を一回こなすのに当初は5~6時間

一万回を放ち終える迄に当初は五日近く費やした

放ち終えれば倒れるように寝る

しかしその寝顔はとても安らかであったとは彼女のデバイスヤオイハートの言である

起きてまた放つを繰り返す日々、

四年が過ぎた頃異変に気付く

一万回を放ち終える前に息が苦しくなっている

齢23を過ぎて老いを感じる!

そして、己の身体の変容に、彼女は気付く。

筋肉は盛り上がり、ムキムキになっている。

年齢以上に何か大切なモノを失った気がした彼女はおよそ久方ぶりにスマホで『魔法少女』と検索する。

そこに表れたのは『魔法少女 俺』なる作品。

今の自分と似たようなムキムキの肉体。

なんだ。漸く、時代が私に追いついた♪と、彼女は胸を撫で下ろし、山を下山した。

そこに待っていたのは、八神はやて。彼女の親友である。

彼女は森林破壊の通報を受けて駆け付けたそうだ。

するとどうだ。そこにいたのは、連絡もなく仕事をサボリ続けていた親友である。

狂ったようにバスターを撃ち続ける彼女を見て、

流石の、八神女史も踏み込むに踏み込めなかったそうだ。

このあと目茶苦茶説教された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで何番煎じかわからない感謝ネタでした。うん。ヒッドイね(。>д<)
ほ、本編がシリアスモードだからバランスとりたくて、‥(´・ω・`)え?本編も別にシリアスじゃない?そこに気付くとは‥(´д`|||)お主只者ではないな?(´・ω・`)とりあえずすみませんm(__)m
これからも、ちょいちょいオマケネタは入れるかもしれませんが、本編には100%関係ない悪巫山戯ですので、ネタを許容出来ない方、ツマンネって方は飛ばし読みをお薦めしますm(__)m


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ある兄の事件簿五。

村に戻った翌日。

フェイトさんを連れて、村長の元へ。

「村長~?いる~?」

村長宅のドアをノックしながら、中へと呼び掛ける。

「ん?おお。ジムじゃないか?」

程なく中から、老年の男が出てきた。

「お久しぶりです」

 

「元気そうで何よりだ。キャロは元気かい?」

「お陰さんで。元気過ぎて困ってますよ」

「はっはっは。そうかそうか‥」

「お前達兄妹は村の元気印だったからな‥いなくなって寂しく思ってる者も多かったんじゃよ?」

「初耳ですね。てっきり清々してるかと‥」

「貧しい村じゃからな‥お前達の食扶持を創るのも、村の年寄りの生き甲斐になっていたんじゃよ?」

「そうですね‥余所者の俺達兄妹を此処まで育ててくれて、ありがとうございます。」

「ん?何。礼ならキングに言いなさい。」

「母さんに?」

「ああ‥キングがどうしても。というので、受け入れた。それだけじゃよ‥」

昔と、変わらぬ優しい微笑みで穏やかに話す村長は、とても口減らしをしているようには思えなかった。

俺は違和感を感じながら、更に会話を進める。

「でも、母さんが言ったからって、よく受け入れてくれましたね?」

 

「ん?」

「俺が言うのもなんですが、ここはほんとに貧しい村です。村を離れ、外で勉強するとよくわかる。子供とはいえ、俺達二人分の食扶持確保も大変だったんじゃないですか?」

すると村長の目が細まり、俺をじっと見つめる。

探っているような視線を黙って受け止める。

少しの時間が経ち、ふう。と村長はタメ息を吐くと、

「大人になったんだなあ‥ジムよ‥」

ゆっくりとそんな事を言われ、リアクションに困ってしまう。

その目は、まるで孫の成長を喜ぶ好々爺にしか見えなくて、

何となく、居心地悪くなりながら俺はじっと、言葉の続きを待つ。

「もう、今のお前には話しても、良いだろう‥」

「話してもって?」

 

「少し歩こうか‥」

そう言って、村長は家とは別の方向に歩き出そうとする。

「あ。ちょっと待ってください。」

ここだ。このタイミングだろう。俺はフェイトさんに視線を送り、村長を呼び止める。

「ん?」

「今日来たのは、帰郷の挨拶と、上司を紹介したくて‥」

 

「紹介?」

「うん。俺の故郷を見たいってことで、一緒に来てて、それで、少しの間滞在するから、それで村長に是非挨拶しときたいってことで‥」

出任せの理由をでっち上げる。

村長との会話は先程からフェイトさんにはオープンチャンネルで開いている。

このでっち上げの理由もちゃんと伝わっているだろう。

そして、フェイトさんがゆっくりと歩み寄って、声をかける。

「初めまして。時空管理局執務管のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンです‥」

名刺を渡しながら、ペコリと村長に礼をするフェイトさん。

「これはご丁寧に‥」

「執務官ですか‥」

と、その時だ。名刺を確認しながら、村長の目が鋭くなった。

「ジム君にはいつもお世話になってます‥今回は私のワガママで、無粋にも着いてきてしまいました。つきましては、二~三日滞在するのを許して頂けないでしょうか?」

フェイトさん

が顔を上げたその瞬間には村長の表情は元に戻っていた。

「あ、ああ。ご覧の通り、何もない、小さな村ですが、お時間さえ良ければ、いくらでも居て頂いて結構ですよ」

「ありがとうございます」

「ジムはどうですか?管理局に入局したとは、本人からの手紙で知っておりましたが、なんせこんな村育ちでしょう?ろくな教育も受けさせてやれなんだ‥そんな子がちゃんと働けているのか心配でしてな‥」

やめてくれよ恥ずかしい。

「とても優秀ですよ」

 

「私の補佐をしてもらっているのですが」

 

「とても助かってます」

 

「ほう‥あの悪ガキが‥」

 

「その、お話詳しく」

 

そこで俺はもう限界だった。

 

「ほら。村長。なんか話してくれるんだろ?」

そう言って、俺は村長の背中を押して、その場から離れる。

 

「あら。残念‥」

珍しく、フェイトさんが悪ノリしている。

と、フェイトさんは悪戯っぽく微笑みながらウィンクをひとつくれる。

そ、そんなので許したり‥

 許せるっ!

 

「はっはっは‥」

 

そんな俺達を見て、心底可笑しそうに笑う村長。

そんな彼はやはりただの好々爺にしか見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 



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ある兄の事件簿六。

大変お待たせしておりますm(__)m
シリアスは読むのも書くのも苦手で(´д`|||)
申し訳ないm(__)m
誤解の無いよう言っておきますが、作者はレジアスたん嫌いじゃありません。むしろ、優秀な男だなとも思っております。そしてオーリスたんも好きです(ノ´∀`*)レジアスの腹心になって、オーリスたんとイチャイチャする。みたいなSSが書きたい。もしくは読みたい。
なので、この作品でもレジアスたんを完全な悪者にする気はありません。レジアスファンの方々には不快な思いをさせてしまうかもしれませんがね(´д`|||)


村の外れ迄歩いたところで、村長が歩みを止める。

「この辺りで良いじゃろ」

そして、村長はじっと俺を見つめる。

えっ?何?

村長は無言のままである。

暫く、無言で見つめあう村長と俺。

俺は若干の居心地の悪さを感じながら、視線で村長に続きを促す。

 

何から話したもんかのう‥」

 

漸く、言葉を発したと思ったら、そんな事をのたまう村長。

あっ、心中で言うことまとめてたんすね。

良かった。そろそろ立ったまま寝てる事も視野にいれるとこだったよ。

更に辛抱強く待つ事、十分強‥

腹、減ったな‥

まあ、フェイトさんが家宅捜索中だし?

時間がかかるのは、望むとこなんだけど、

会話しながらならまだしも、無言で老人と見つめあうだけの時間。えっ‥何この苦行。

あまりに暇だったので、村長の顔の皺で迷路を楽しんでいると、村長が意を決したように、話始めた。

ああ‥もうちょいでゴール出来たのに‥

「ジムは今管理局に勤めてるんじゃったよな‥?」

「えっ?うん。そうだよ」

うんうん頷きながら、尚も俺を見つめる村長。

「ふむ。今回の帰郷。唯の気まぐれではないのだろう?」

ありゃ。バレてたか。

「えっ?どういうこと?」

とりあえずとぼけてみる。

「‥キング辺りが連絡したんじゃろ?」

 

「母さんが何を連絡したって?」

あくまでシラを切る俺をぼんやりと見ると、村長はため息をつく。

 

「悪い事は言わん。この件には首を突っ込むな‥」

 

と、強めの拒絶をしてくる村長。

頑なな村長を訝しげに見つめると、

村長は苦々しい顔で続きを話出した。

‥たがそれは、俺の想像よりも酷いモノだった‥

事の発端は15年程前、

村の食糧事情に行き詰まりを感じた村長は、当時の管理局に相談したらしい。

その時に対応したのはレジアスゲイズ。

思わぬビッグネームに俺が驚いていると、村長は更に話を続ける。

レジアスは、こんな提案をしてきたという‥

 

生産性の低い、身寄りのない若い娘を口減らししてはどうかと。

無論、村人にはそれらしい別の理由をでっち上げて‥だ。

そうして娘を放逐して、その娘は管理局で面倒を見るからと。

 

なんだそれは。

管理局でそんな事をしているなんて話は聞いたことがない。

 

因みに放逐した娘達からは、その後、連絡は無いそうだ。

これは、はやてさんが来てからじゃないと、どうにも出来んな。

俺が考えこんでいると、

村長は、罪悪感を滲ませながら、更に言葉を紡ぐ。

「幻滅したか‥?」

 

「いんや。別に。」

確かに、村長がしたことは、悪だ。

だが、村長は村の長として、村を守る義務がある。

きれいごとだけじゃ世界は回らない。

村長は村長として、その時自分ができる事をしたのだろう。

少なくとも、幼い俺達兄妹を暖かく受け入れてくれたことは事実だ。恩を感じこそすれ、幻滅なんざするわけない。

少なくとも、今俺の目の前で、罪悪感を感じて、肩を落として、小さくなっている、この老人を否定する気にはなれなかった。

「村を守る為に、必死だっただけだろ?」

「逆に管理局の一員として謝らせてくれ‥」

そう言って、村長に俺は深々と頭を下げた。

「レジアスがなんでそんな事をしたのかは、わからないけど‥娘達の行方は俺なりに探ってみるよ‥」

「ジム‥本当に大人になったのう‥」

村長はそして俺を眩しそうに見上げる。

いつのまにか、背、追い抜いてたんだな‥。

「あと、ついでに聞いて良い?」

「なんじゃ?」

「口減らし以外に何か、食糧改善の計画はしてる?」

「いや‥してない‥」

なんでやねん。

「なら畑の集積とか、効率化を図ろう。」

「う、うむ。だが、ここは痩せた土地で、作物も余り、育たん。」

「畑作の基本は土造りだぜ村長。堆肥を作らないと」

「堆肥?」

やっぱりか。

「あのさ。この村って農業に詳しい人いないよね?」

「うむ。ワシらは元々、農民ではなく、流民のより集まりじゃからな‥現在の畑も見よう見まねじゃ」

「そっか。なら俺が教えるから先ずは畑の整備から始めよう?」

「この村の畑の規模なら、きちんと、手入れすれば、村人分の食扶持くらいなら採れる筈だから」

「ほ、本当か?」

「ああ。だからもう‥そんな辛い顔しながら、口減らしなんて、やめようぜ」

「ジム‥ワシは‥ワシは‥」

すると、村長は涙を流して、その場に踞ってしまった。

無理もない。元々悪い人間ではないのだ。

だが、村を守る為にと歯をくいしばってやってきたのだろう。もうしなくていいという安堵と、後悔、色々な想いが胸中を駆けているのだろう。

俺自身にも、後悔はある。子供のように振る舞っていただけで、子供の頃から俺はこの村の問題点には気づいていた。

まあ、当時の俺が言ったところで、素直に受け入れて貰えていたかは定かじゃないけど。

レジアスの件は

どうなるかわからないけど、せめてこの村の食糧事情だけは改善しよう。それが恩返しにもなるだろう。

 

 

 

 

 

 



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ある兄の事件簿七。

今回は短めですm(__)m


◆◆はやてside◆◆

ゲートを通り抜けたらそこは、のどかなど田舎だった。

「ここがジム君の故郷かー‥」

良いじゃないか良いじゃないか。

忙しい日々が続いてたからな‥たまにはこういう所でのんのんしないとなー。

 

「のどかのどかー‥」

大きく息を吸い込んで、身体を伸ばしながら呟く。

うん。とりあえずジム君達に遅れること2日。八神はやて。颯爽と見参や!

「にゃんぱすー‥の方が良かったかな‥?」

当然の事ながら返事は無い。

リィンもアニメネタには疎いしなー‥

シャーリーでも拉致ってくるべきだったか‥

数少ないこっち側のネタが解る友として、シャーリーは貴重である。あ。ジム君もわかるな。ジム君ならきっと受け止めワンツー♪してくれるな。

ホンマ優秀な男やで♪

正直部隊長命令で強引に連れて来ることも考えたが‥それが出来ない訳があったのだ。

まあ。仕方あらへん。

「さっ‥お仕事お仕事~♪」

「えーと‥座標は‥あっちか‥」

そして私は飛び上がる。

飛び上がりながらフェイトちゃんへと念話を送る。

《フェイトちゃん?聞こえる?》

 

《はやて?もう来たんだ‥》

《もう来たんだ‥とは御挨拶やな‥》

《あはは。ごめんごめん‥来てくれて助かったよ‥》

《助かった?てことは‥?》

《うん‥御察しの通り、だいぶややこしい事になってるみたい‥》

《ウソやろ?!せっかく羽根伸ばせると思ったのn‥ゲフンゲフンなんでもあらへん‥》

《いや‥無理あるでしょ‥》

《いややー!うら若き乙女がもうずっと仕事漬けなんやで‥ちょっとくらい、出張で羽根伸ばしたって罰当たらへんやろ!》

《私に言われても‥》

《それで?どうややこしいんや?》

 

《うん‥とりあえずこれ見て‥》

 

pdfデータ?

フェイトちゃんから送信されて来たデータを開いて確認する。

そして私の血の気がひいた。

とりあえずその場で着陸した。

《ちょっとちょっと!?これ‥マジなん?》

それは、ジム君の故郷の村の娘を口減らしの名目で、次元犯罪者、ジェイルスカリエッティに売り渡しているという書面。しかもそれを手引きしているのが、管理局陸の大物。レジアスゲイズ。

あんの、クソオヤジ何やらかしてんねん!

管理局創設以来の不祥事やで‥

これは、扱いが難しい‥

 

《ジム君は?》

 

《ジムは今、村長を引き付けて、二人で話してる。》

《私はその間に村長の家を家宅捜索して‥これを見つけたんだ‥》

 

《とりあえず、三人で集まろか‥》

 

念話で話してるだけなのに、喉がカラカラや‥

 

《ジムの家の座標送ったから、そこに集合で‥》

 

私は送られてきた座標を確認しながら、これからの事を考えていた。

軽いリフレッシュ休暇のつもりが、とんでもない事になってしまった。

キリキリと胃が痛みだす。

 

あ‥胃薬忘れてもうた‥

 

とりあえず私は手持ちのバッグからバナナを取りだし、皮を剥いてかじりついた。

そしてさらにタンブラーを取りだす。中は只のミネラルウォーターだ。

口の中のバナナをゴクリと流し込むと、胃の痛みが少し落ち着いた。

そして私は残りのバナナを齧りながら、ジム君の家へと歩き出した。

 

 

 




ちょっと冗長気味だなと思ったので、少し早送りしていきます。必要な部分を短くまとめて面白く構成するって、センスが必要なんですね(´д`|||)
そして、作者にはそれが無かったorz


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32話

stanサブタイ付けるの辞めるってよ‥



喧騒の途切れない店の中で俺達は杯を傾け合っていた。

「レジアス?今日はまた御機嫌斜めだな~?」

「うるせえ!バカヤロウ!」

まただ。また本局に予算と人員を持っていかれた。このままじゃ地上は‥

隣でツマミをビールで流し込む旧友に愚痴を吐き出す。

「次元世界の安定だかなんだか知らねえが、俺達が生きてるのはここ(ミッド地上)だろうが!先ずはここの平和の安定が重要じゃねえのかよ!違うか?!」

 

「違わねえよ‥」

俺の愚痴を苦笑しながら受け止めてくれるこいつとのたまの飲み会は、俺にとって忙しい日々の唯一のオアシスだった。

と、そこへもうひとつのオアシスがやって来た。

「パ‥中将閣下‥また、こちらでしたか‥」

「よう♪オーリスちゃん。益々美人になったね~」

俺の一人娘であり、秘書官でもあるオーリスがやって来た。

「お久しぶりですね飲み友Aさん。父がいつもお世話になっております‥」

「良いよ良いよ~♪地上の英雄さんにはいつも苦労かけちゃってるからさ~‥」

「たまのガス抜きくらい何てことないさ♪」

「ありがとうございます‥」

「しかしレジアスよ?」

「あん?」

「聞いたぜ?評議会の命令とは言え、ちょっと危ない橋渡り過ぎじゃねえか?」

 

「地上の平和の為だ‥」

苦々しい思いでビールを流し込む。

確かに疑問も多い。自分のしていることが正しいのかどうかも既にわからなくなっている。

もう一人の親友と誓った思い‥

「確かに地上の状況は悪い‥けどよ?あんまりオーリスちゃんを悲しませるなよ?」

「うるせえ‥そんなことは‥わかってんだよ‥」

ゼスト‥俺は間違えたのか‥?お前がここにいてくれたら‥どう言ったかな‥?

今はもう亡き、親友との誓い‥それだけが、俺を掻き立てていた。

過激派。等とそしられようと、構わない。親友と誓った地上の平和。其だけ守れれば、他はどうでも良い。

ジョッキのビールの泡が消え、金色の液体の水面に映し出された男の顔は、今にも泣き出しそうに、なっていた。

そんな父親を見て、オーリスはひとつタメ息をつくと、席を立つ。

「それじゃとう‥中将閣下、あまり飲み過ぎないでくださいね?」

 

「わかっとる。明日はアインヘリアル砲の視察だしな‥」

しっかりスケジュールを把握している事に安堵して、オーリスは飲み友Aに挨拶して店を出る。

「オヤジ!ポテト追加な!」

「あいよ!」

飲み友Aの追加注文を聞いて、レジアスはタメ息をつく。

「またポテトかよ」

 

「うるせえな。良いだろ?好きなんだから」

 

「イモばっか、食って屁こくんじゃねえぞ?」

「お、おう。実はさっきから‥俺の肛門のサテライトキャノンがぶっぱしそうでな‥」

「こんなところで化学テロ起こすんじゃねえよ!」

そう言いながら、ヤツをぶん殴る。

こいつの屁はマジで臭いからな。

きっと腸が腐ってるんだろう。

愚痴を吐き出したお陰で、だいぶ気分もスッキリした。無差別テロが起きる前に避難するとしよう。

「俺はもう帰るが平気か?」

「あーん?こんなのよっぱらってるうちにはいらねえよ♪」

「俺もお前ももうトシだ。自分を大事にしろよ?」

「なんだぁ?今日は随分優しいな?こんなオッサン同士のBLなんざ腐女子も食わねえぞ?」

「フン‥言ってろ‥」

「予算や人員の話はお前にも無関係じゃないだろ?現場はカツカツだ‥くれぐれも無茶はするなよ?」

「おま‥死亡フラグ建てるんじゃねえよ!」

「ダッハッハ!またな‥」

「オヤジ!おあいそ!」

「へい!毎度あり!」

「二人分な‥あと、悪いことは言わねえ。換気扇回しときな‥」

「へ?」

「そうだ。屁だ。」

訳が解らないというオヤジを置いて、さっさと外に、出る。振り返って、見ると、出てきた、ポテトを笑顔でツマミながら、煙草に火をつけるヤツがみえた。

犯罪の危険性に反比例するように、現場の装備、人員は日毎弱体化している。割りを食うのは何時だって現場の捜査員だ。コイツは年齢、階級的にも、後ろでふんぞり返ってて良いキャリアなんだが、現場主義というか、部下思いで、危険には我先にと飛び込んでいく、寄特なヤツだ。イカンイカン。これ以上は本当に死亡フラグだな。

フラ着く身体をコントロールしながら、店の外に、出ると、夜風が火照った身体を冷やしてくれた。幾分、酔いが醒め、タクシーを拾おうと、大通りへと向かうと、プップッとクラクションが鳴らされる。何だとそちらへ顔を向けると、タクシーが停まっていた。

中にはオーリスが載って笑顔で手を振っている。

出来た娘だ。

「早かったですね」

タクシーに乗り込むと、オーリスが声を掛けてくる。

「テロが起きそうだったからな‥避難してきた」

「なるほど。‥クスクス」

オーリスは手で口を抑えて笑っている。

運転手に行き先を告げ、発進させる。

バックミラー越しに運転手がチラチラとこちらを見てくる。

円光とでも思われているのかもしれない。

だが親子だ。

「ゴホン!」

大きめに咳ばらいしてやる。

すると運転手は慌ててミラーから目を逸らした。

やがて家に着き、居間に座り、TVを付ける。

TVでは魔法を使った犯罪行為が、、デカデカと、報道されていた。

おのれ‥魔道師め!忌ま忌ましい!

テーブルに拳を叩きつける。

憎々しげにTVを睨みつけていると、オーリスがビールとお皿を持ってやって来た。

「父さん‥これ御好きでしょ?」

と、見せたのは、少し焦げた焼き茄子。

確かにワシはこれが、好きだ。

「おひとつ如何?」

と、オーリスがビールを差し出してくる。

フン。ビールも飲めん癖に。

生意気な‥!グラスを差し出し、注がせる。

見た目的にも綺麗なビールが注がれた。

焼き茄子をツマミながら、ビールを流し込む。

すると、先程のイライラは消え失せていた。

本当に出来た娘だ。

 

 

 




オリキャラの名前が適当過ぎィ!等、思う所は多々あるかもしれませんが、お目こぼしをよろしくお願いいたしますm(__)m


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33話

また最後に、小ネタという名の悪巫山戯があります。ついカットなって書いた。反省と後悔はしている。発作的にフェイなのが書きたくなってしまったので‥病院行くかな‥


朝から止まない雨が降っていた。

雨のせいだけでなく、そこかしこで泣きむせぶ者。かくいう俺も泣いていた。湿っぽい空気は苦手だ。

突然の「飲み友A」の訃報。

心配していたとおり、ヤツは大した装備もなく、現場に出、部下を庇い、あえなく、命を散らしたそうだ。偉くなったところで、何も出来ん。自分の無力感にやるせなさを感じて、涙が止まらない。何が陸の英雄だ‥

何故だ!何故、現場の奴等が死ななければならない!

ワシは一体何のために‥飲み友Aの遺影の前で踞り、胸中でヤツにひたすら謝る。

そんな俺の頭にそっとタオルが掛けられる。

見ると、喪服に身を包んだオーリスが悲しげに立っていた。

オーリスもヤツには小さい頃からなついていたからな。酒も飲めない頃から、俺達が呑んでいる間に入り、楽しそうに、俺達のツマミを摘まんでは、俺達の下らない話を楽しそうに聞いていた。

「父さん‥ご霊前です。あの方は賑やかなのが好きな方てました‥笑って見送って差上げましょう‥」

 

、そうだな‥」

佇まいを正して、改めて手を合わせる。

俺もそう遠くないうちに逝くだろう。

何故だか、そんな気がしていた。

だから親友‥ポテトでも食って待っててくれや。

逝く前に必ずミッド地上は平和にしていくからよ‥

その時、後ろに人の気配がした。

振り返ると、そこには八神はやてが喪服で立っていた。

ワシはヤツを憎々しげに睨み付けた。

するとヤツはそっとハンカチを差し出してきた。

「目‥真っ赤ですよ?」

 

「手を合わせてもよろしいでしょうか?」

ワシは羞恥に顔が熱くなる。が、ここは、親友の告別式。怒鳴りそうになる気持ちをかろうじて抑えて、ハンカチを奪い取る。そして、場所を譲る。

「礼は言わんぞ‥」

「ハンカチなんてどうでも良いです。それよりも‥仲間の死に涙を流す‥そんな貴方が見れて、良かったです‥」

「フン‥ワシは‥魔法が‥魔術師が‥嫌いだ‥」

「魔力があろうとなかろうと、想いは一緒ですよ?中将‥」「管理局の仲間が殉職して‥悲しいです‥何故その場に私が居なかったのかと無力感に胸が締めつけられてます‥」

そう言ったヤツは唇をキュッと、結んで、本当に悔しそうに、悲しそうに涙を流した。

そうか。泣いてくれるか。ワシの親友の死を惜しんでくれるか‥。

「ありがとう‥」

ワシは小さく、本当に小さく呟いて、そこに背を向けた。

聞こえただろうか?いや。聞こえてないほうが、良い。

レジアスが去って、はやては瞑っていた目を開き、合わせていた手を下ろすと、静かに微笑んだ。

それは‥見た者は思わず見蕩れるような、優しい微笑みだった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆おまけ◆◆

仕事が終わり、管理局を出た私の目の前にスポーツカーが横付けされる。

窓がゆっくりと開き、そこにはフェイトちゃんが微笑んでいた

「お疲れ様。なのは」

そう言って、ウィンクをひとつくれるフェイトちゃんは今日も格好いい。

助手席に私が乗り込むと、

フェイトちゃんがゆっくり顔を近づけてきた。

近い。近いよ!

それだけで私の鼓動は跳ね上がる。

近くで見ると、フェイトちゃんは本当に綺麗な顔をしてる。すっきり通った鼻筋。長い睫毛。薄いのにプルプルと瑞々しい唇。

顔が熱い。私は思わず見とれてしまった。おかしいよね?女のコ同士なのに。

「動かないで‥」

そう言って、フェイトちゃんは更に顔を寄せて来る。

ふわりと良い薫りが漂う。

私の好きな薫り。

随分前にこの薫りが好きだと言ったら、それからずっとフェイトちゃんのシャンプーはこれだ。

期待しても良いのかな?

フェイトちゃんも私と同じ想いだって‥期待しても良いのかな?ねえ?フェイトちゃん?

「なのは‥?」

「なぁに?フェイトちゃん?」

「そろそろ‥私達‥進まない‥?」

「す、進むって‥?」

「こういう事‥っ!」

「きゃっ」

急に座席シートが倒され、フェイトちゃんにのし掛かられてしまう。

「ふふ‥きゃっ‥だって♪なのは可愛い♪」

私は羞恥で顔が熱くなる。

悲鳴を挙げてしまったのは不覚だった。

「バルディッシュ‥自動運転モード」

《yessir》

え?そんなこと出きるの?

 

《どちらへ向かいますか?》

 

バルディッシュの機械的なシステムボイスにフェイトちゃんは時計をチラリと確認すると、事も無げに返事する。

「ご休憩でよろしく♪」

《ya!》

 

そこから、30分程でクルマはご休憩場所についたらしい。その間、私はずっとフェイトちゃんにのし掛かられて、胸をまさぐられていた。

そして、フェイトちゃんは手慣れた様子で、私を横抱きに抱いて、部屋へと連れて行ってくれた。

スカートの中はケダモノでした。

タターンと、キーボードを叩き終えムフーと、鼻から息を吐く。シャーリーへとメールで送る。と、すぐに返事が返ってきた。

「お疲れ様です。フェイトさんへの熱い想い。頂きました(///ω///)♪ただ、言いにくいのですが、流石に元上司をネタにエロ描くのは抵抗があるので勘弁してくださいm(__)m」

「クロノさんやユーノさんはあまり面識無いので、そんなに抵抗無かったのでいいのですが、ササスガの私でもナマモノはちょっと‥(ヾノ・∀・`)」

シャーリーからの返事を見て、私は‥

「ガッデム!」

キーボードに拳を叩きつけた。

「良いもん。それなら、お姉ちゃんに描いてもらうもん‥」

私は唇を尖らせながら故郷のお姉ちゃんに書いたプロットをメールで送る。お姉ちゃんはシャーリーと、同等の絵師である。すると、お姉ちゃんから返事が来た。

流石神速のお姉ちゃん♪仕事が早いの。私はワクワクしながらメールを開く。

「どうしたの?病院行く?」

書かれていたのは簡素な一文のみ。

「マンマ・ミーア!」

私は頭を抱えて、天井を振り仰いだ。

 

 

 

 

 

 




一人シリアスのメビウスから外れていくなのはさん(笑)ヒーローは遅れて登場するのが世の常だからね。ちかたないね


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34話

今回もレジアス視点ですm(__)m


指に微かな熱を感じ、見やると、煙草がだいぶ短くなり、灰が落ちそうになっていた。

チッと舌打ちをひとつして、灰皿に乱暴に捩じ込む。時計を見ると、草木も眠る丑三つ時。

眠気を振り払うように、首を振り、パソコンの画面へと視線を戻す。

警ら隊のパトロール地域の選別と、担当者の編制を組んでいた。

魔法技術が発達し、犯罪にも魔法が普通に使われるようになった現状では、普通の武装局員では、一対一では、解決が難しくなっていた。

局員の安全性を考慮しつつ、確実に犯罪を取り締まるには、どうすればいいか?

簡単である。犯罪者よりも、多くの人員で当たればいい。だが、一人二人では足りない。相手が一人ならこちらは三人。およそ三倍の戦力差を以て当たる。

だが、言うは易し行うは難しとはよくいったものである。現在のミッド地上には、そんな人員も予算も無かった。

住民からの聞き込みで、治安が悪化している場所を絞りこみ、少ない人員をなんとかやりくりしながら、だましだましでやっている。

それでも何とか一定の検挙率を維持できていたのは、現場の局員の頑張りに尽きるだろう。

先日殉職した飲み友Aの顔がちらつき、胸がシクリと痛んだ。

手っ取り早く、治安を改善するにはどうしたらいいか。

治安の悪化は、市民の生活面の悪化が著しいからだ。

公共事業等、新しい産業でも造り出せれば、治安はみるみる回復するだろう。

だが、そんな予算は無かった。

「クソッ!海の連中め!忌ま忌ましい!」

もしもの備えが必要無いと言うつもりはない。

だが先ずは、普段の治安の安定化が先だろうに!

評議会の提案はわたりに船でもあった。

次元犯罪者ジェイルスカリエッティ。

マッドじゃなければ間違いなく、歴史に名を残したであろう天才。

ヤツを利用して、戦闘機人の部隊を量産出来れば、現場の局員が無茶なスケジュールで、無茶な特攻をする必要もなく、平和が手に入る。

村の身寄りの無い娘は不憫ではあるが、放置しておけば、村全体が飢え死にしかねない。

双方において悪い話ではない。

恨むなら恨め。

この地上の平和の為ならワシは鬼にも悪魔にもなろう。

むくむくと沸き上がる罪悪感を振り払うように、

今週のパトロール案を完成させる。

と、ノックと共に、オーリスが室内に入ってきた。

「とう‥中将‥まだ執務なされてたのですか?」

「うむ‥今終わったところだよ‥」

ワシは何とか、口角を上げながら答える。

「あまり、根を詰めないで下さい。お身体に障ります‥」

オーリスが心配気に嗜めてくる。

そもそも中将たるワシがする仕事ではない。

だが、自分で言うのもなんだが、こんな仕事、ワシ以外には出来ない。と、本気で思っていた。

予算も人員もなく、治安を守れという、言ってみればただの無茶振り。

それでもワシが何とか、踏ん張ってこれたのは

娘のオーリスの存在が大きいだろう。

娘の未來の為に、地上の平和を守る。父親として当然の事だろう。

それに‥ゼストとの誓いもある。

「お耳に入れたい事が‥」

「なんだ?」

ワシは嫌な予感を感じながら聞き返した。

「例の村の事が機動六課に嗅ぎ付けられました‥」

「なんだと‥!」

あの小狸め。

 

 




うーん。レジアス視点を突き詰めると、六課側が、悪になってしまう。
そうならない程度にさっさとシリアスさんにはご退場頂きますかね(´・ω・`)


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35話

ある昼下がり。俺は八神司令に呼ばれ、部隊長室へと足を運んでいた。

軽くノックをすると、室内からすぐに入室を促される。

「失礼します」

と、中へと身体を滑り込ませると、

そこには先客がいた。

応接テーブルを囲むように、八神司令、フェイトさん。なのはさん。そして、ヴォルケンリッターの騎士の面々。

視線が一気にこちらに向かい、少したじろぐ。

「お待たせしてしまいました?」

俺は不安になり、そう声を掛ける。

指定された時間ぴったりだけどね。

「いんや。すまん。先に少し話し合い始めてたわ。リィン?ジム君にも資料を」

 

「了解でありますぅ」

と、リィン曹長が紙の束を持って、

こちらへと、ふわふわ飛んでくる。

その姿がとても愛らしくて、なんとも和む。

資料を受け取り、礼を言うと、曹長は嬉しそうな顔をして、自分の席へと飛んでいく。

「ちょっとそれ、一読しといてくれるか?」

「了解しました。拝読します」

敬礼と、共に返事を告げ、早速資料を読み込んで行く。

 

これは‥

地上の陸士隊の活動記録?

活動理念と、中期目標?

ふむふむ。

サクサクと、流し読みしていく。

俺がひととおり読み終わったのを確認してか、八神司令が、声を掛けてくる。

「どう思った?」

 

ええ‥どう答えるのが正解なんだろう?

俺が返答に迷っていると、

 

「単純に君の感想が知りたいだけや‥忌憚なく頼む」

 

「は、はあ‥」

 

どういう事だろう‥

それでも返答を渋る、俺に八神司令は更に声を掛ける。

「ここにいるメンバーはウチの大切な家族でほぼ全員身内や。だからどうしても、私寄りの考えになってしまう‥それは嬉しい事でもあるんやけどな?」

と、そう語る八神司令は確かに嬉しそうで、また誇らしげでもあった。

 

「だから、フラットな意見が聞きたいんや‥」

 

「なるほど‥」

 

「では‥僭越ながら‥まだまだ、一読した限りですが、とても‥優しい‥ですかね‥」

 

「優しい?」

 

「はあ?どこがだよ?!」

八神司令が聞き返し、ヴィータ副隊長が声を荒らげる。

フェイトさんやなのはさんも、回答が意外だったのか、目を丸くしてこちらを見ている。

 

「ヴィータ!」

ヴィータ副隊長がおもむろに立ちあがり、こちらへ掴みかかろうとするところを、間一髪で、八神司令が嗜める。

すごすごと、ヴィータさんは席へと座り直す。

 

「その心は?」

 

八神司令が続きを促してくる。

 

「そうですね‥この理念は、誰の為の、何の為の理念か‥ですが」

 

「現場の捜査員の為、平和の為の理念であると、愚考します」

 

「というと?」

 

「力の無い捜査員でも、安心かつ安全に任務を遂行する為に作られている。ということです」

 

「力が無いのは、本人の努力が足りないからだ!」

 

と、シグナムさんが断じる。

俺が困った顔で見ていると、

八神司令もチラリとシグナムさんに目配せをする。その視線を受けて、

シグナムさんはコホンと咳ばらいをひとつして、すまなそうに、佇まいを正す。

 

「ここにいる方達は強者です‥だから見過ごしてしまう‥自分も周りも強いから、出来て当たり前のハードルが上がり過ぎていることに気づかない。ですが、世の中の大多数の人は貴方達の思う出来て当たり前が出来ない人達です‥」

 

言い過ぎただろうか‥?

だがシグナムさんを筆頭に室内の面々は思うところがあるのか、顔を伏せて、考えこんでいる。

「スペシャル。優秀な人員は、称賛されてしかるべきですが、

その人達に依存するようなシステムは組織としてはあるまじき、形だと思います」

 

「貴方方はスペシャルです。それは疑いようの無い事実です」

 

「この理念はそういった、スペシャルでない人達の事を考えて作られた。これが、私がこの理念と活動報告から読み取った事です‥と、愚考しました‥特筆すべきは、この運用案ですね。素晴らしい。のひと事につきます‥此処まで予算も人員も削られてるとは、思いませんでした‥これで、この検挙率は驚愕ですよ?効率良く警らの地域を絞り、編制も完璧です。これを考えた人は、とんでもなく、優秀ですね。」

室内がシーンと鎮まり返ってしまった。

 

「そうか。ありがとう。参考になったわ‥」

 

「恐縮です」

 

「あの‥?そもそも、この集まりはなんなのでしょうか?」

「ジム君の村で見つかった、レジアス中将とスカリエッティの癒着に関しての対策会議や‥」

「は、はあ‥」

「先ずは、管理局を代表して、謝罪を‥この度は、君の村に迷惑を掛けて‥申し訳無い。」

 

と、八神司令がふかぶかと頭を下げてくる。

「ちょっ‥止めて下さい!」

俺は慌てて、八神司令を止める。

「確かに中将がスカリエッティと繋がっていた事は、大問題ですが‥それと、先程の質問がうまく繋がらないのですが‥?」

と、俺が素朴な疑問を口にすると、八神司令はゆっくりと首肯して、こちらへと視線を向けた。

「中将を断罪するべきか‥最近、思うところがあってな‥少し迷ってるんや‥」

迷って?」

フェイトさんが八神司令へと聞き返す。

「せや‥」

八神さんはゆっくりと迷いを話し出した。

「先日の陸士隊が全滅した事件‥みんなも知ってるやろ?」

「ガジェットドローンの新型が出た時の事件?」輸送中のレリックが狙われ、その確保にある陸士隊が

装備も人員も不足した状態で、確保に向かい、新型のガジェットドローンの前に、なす術なく、全滅させられた事件。

隊の隊長はベテランの優秀な、魔道師だったが、危険に晒された部下を庇い命を落としたらしい。

なんとも後味の悪い事件だった。フェイトさんの問い掛けに八神司令は苦々しく答える。

「それや‥その隊長のお葬式でな、棺の前で号泣している中将を見てな‥なんや、この人も私達と変りないやん‥ってな‥」

 

八神司令の言葉に俺達は言葉を失う。

「そう思ってから、中将の事をちゃんと調べてな‥そうして出てきたのが、さっきの資料や‥」

「ジム君が言った事は大体私も納得出来る‥むしろ少々、耳が痛いわ‥」

と、八神司令は苦笑いする。

「じゃあどうするの?」

なのはさんが八神司令へと真っ直ぐ視線を飛ばす。

見逃すなんてありえない。と、言いたげな厳しい表情である。

「決まってるやろ?罪には罰を‥きちんと責任とってもらうで」

そう言った八神司令の笑顔はかなり黒かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


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タヌキVSゴリラ。

すみません。ゴリラ迄いってませんm(__)m


私が、ある部屋へと向かって歩いていると、目的の部屋の前ではオーリス三佐が立っていた。

「これは、八神二佐‥中将に何か御用ですか?」

「オーリス三佐。レジアス中将にお話ししたい事があるんですが、お取り次ぎお願い出来ますか?」

「お断りします」

 

「なっ?!」

「中将はお忙しいのです。申し訳ありませんがお引き取りを‥正規の手続きも踏まずに、いきなり来て、中将に会わせろ?‥関西人ならもう少し面白いジョークを飛ばして下さい?」

 

「非礼はお詫びします」

 

正規の手続き踏んだって、面会なんかさせないだろうに。なんて考えはおくびにも出さない。

表面上は笑顔を保ちつつ、仕方ない。強硬するかと、言葉を放つ。

 

「宜しいので?」

 

「どういう‥意味ですか?」

 

「こちらは中将の重大な職務違反を掴んでいます」

「それをどうするかをご相談に来たのですが、お忙しいなら仕方ありませんね。こちらは、本局に、提出させて頂きます‥」

 

「待ちなさい!」

オーリスは

敵意に満ちた目でこちらを睨むと、こちらへと背を向け、どこかへと通信をひらいて、話し出す。

そんな彼女を見て、私はひとつため息をついて、肩をすくめ、壁に背中を預ける。

さて、これからや‥

「お待たせしました。中将がお会いになるそうです‥」

「おや?お忙しいのでは?」

ほくそ笑みながら問い掛ける。

ギリッと歯を食い縛りながら、オーリス女史はまくし立ててくる。

「予想より早く、仕事が終わったのです。中将はは優秀なお方ですから‥」

「そうですね。なんせ、陸の英雄樣ですからね?」

茶化すようなこちらの受け答えに、女史の目は鋭さを増していく。

「それで?中将の職務違反とは?」

探るような問い掛けに、

中将の副官である彼女が知らない筈が無いだろうに。

私はとりあえずはぐらかすことにした。

 

「事が事ですので、直接お話させて頂きます」

「貴方は‥中将の重要さを‥何もわかっていない!」

 

「はいぃ?中将の優秀さは、重々承知しておりますよ‥」

「元犯罪者風情にわかるわけないでしょ!あの方は‥あなたが闇の書事件を引き起こしていた時から、自分の身も省みず‥全てを、この地上の平和に注いでこられたんですよ!」

悔しさからか、オーリス女史の目には涙が溢れていた。

だが、はやては動じない。

「公的には、贖罪は済んでおります。今の発言は問題ですよ?オーリス三佐?」

暗に、自分の方が階級が上だと強調することも忘れない。

はやては自分の罪を認め、騎士達と共に、管理局に従事することで、贖罪を終えていた。だが、収監等の実刑を受けたわけではない。その事を快く思われていない事はわかっていた。

はやてが動じず、淡々と言い返してきた事にオーリスは驚きを隠さない。

自分の発言が、問題発言であることは、はやてが上官であることを差し引いても、オーリスにもわかっていた。

いわば、伝家の宝刀を抜いたのだ。いや、抜かされたのだ。自分の本丸に攻めこんできた、この狸を何とか止めようと。

それを難なくいなされたことで、オーリスは気付かされる。はやての覚悟、想いが本物だということに。

フッと軽く息を吐き、オーリスは敬礼する。

「失礼致しました。八神二佐」

「かまへんよ」

はやても敬礼で答える。そして、ニコリと微笑む。

そのどこか憎めない笑顔にオーリスは毒気を抜かれる。

 

「どうぞ‥」

 

と、ドアの前から身体をどかし、

入室を薦める。

 

いよいよだ。

相手は陸の英雄。

一筋縄ではいかんやろなあ。

上手くいったら、ジム君に、美味しい夕食でも作ってもらおう。

それくらいの、御褒美はええやろ?フェイトちゃん。

《(ヾノ・∀・`)ダメー》

すかさず念話を送り込んでくる親友に若干の恐怖を覚え、多少げんなりしながら、ドアをノックした。

 

 

 

 

 

 

 

 




オーリス女史で、思ったより、文字数使ってしまった(´д`|||)長くなりそうなので、一度切りますm(__)m


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タヌキVSゴリラ。

なんて難しいテーマなんだ‥(´д`|||)皆様に納得していただける出来になっているかどうか、自信はありませんが、とりあえず、緩く読んで下さい。お願いします。なんでも島村!


ドアを開けて入るとそこにはゴリラが青筋立てて待ち構えていた。

うわー。超臨戦態勢やん。腹の探り合いとか、テンプレの挨拶とかを交わす気は無さそうだった。

「何の用だ!小狸!」

いきなり怒鳴り散らしてくる。

いくら中将とはいえ、この対応は如何かとも思うが、そこにツッコミいれても、時間のムダっぽいので、あえてスルー。せっかくだから、私はスルーを選ぶぜ。

「中将が現在お盛んになっているスカリエッティとの取引について、お話しに来ました」

私は淡々と用件を告げる。

私の態度が気に食わないのか、中将はワナワナと震え、青筋を浮かび上がらせる。

両拳を握り締め、プルプルしている。

いっそこのまま、キレて掴みかかりでもしてくれたら、楽なのだが。

シャアとアムロばりに殴り合いでも私は一向に構わん!私は中将に向けて、シャドウボクシングを始める。

もう一押ししてみようかと、更に口を開こうとしたとき、

「パパ?お薬の時間です‥」

オーリス女史がお盆に藥と水を持って割って入ってきた。

残念。

てかパパて。

「おお‥いつもすまないな‥」

中将も中将でねこなで声で答える。

 

「それは言わない約束でしょ?」

ため息交りでオーリス女史は藥を渡す。

いきなり繰り広げられる親娘の茶番。

「プッ!あははははは‥!ちょ‥オーリス三佐‥堪忍してーな‥あははははは!」

オーリス女史は何か?みたいな顔でこちらを見ている。それが更に私のツボに入る。

レジアス中将もすっかり毒気が抜けて、怒りのオーラは消え失せている。

やられたわ。

公の場でオーリス女史が中将をパパなんて呼び間違えた事は今まで無い。

そして、多分これからも‥。

つまり、オーリス女史はたった一言挟むだけで、部屋の空気をリセットしてしまったのだ。

こちらは中将の不正の証拠を握っている。そんな状況で相手に襲いかかりでもすれば一発アウト。

だからこそ私もあえて、挑発的な態度をとっていたわけだが。

中将は優秀だが、直情径行な所がある。気に入らない小娘。まさに不倶戴天の敵である私に挑発されれば、キレさせるのは簡単だと思っていたのだが、優秀な副官もついているのを忘れていた。

「八神二佐。中将は長年の激務で、心身はボロボロなのです。あまり、挑発的な態度は慎んで頂けませんか?」

「わかりました。非礼をお詫びします」

私は中将へと頭を下げる。

「構わん。キレてないし?キレたら大したもんだし?」

「パパ?前から言ってるけど、それ全然似てないよ?」

「そ、そうか‥」

オーリス女史の鋭いツッコミにシュンとする中将。

「オーリス三佐‥もう勘弁してーな‥」

私は必死に笑いをこらえながらオーリスにお願いする。

あかん‥このまま、親娘漫才で有耶無耶にされるわけにはいかん。

頭を振り、気持ちをリセットする。

私が真面目なオーラを出すと、オーリス女史は一歩下がる。

とりあえず、静観の構えのようだ。てか、出ていかへんの‥?

まあ、しゃあないか‥中将キレッキレ作戦は無しやな‥

「スカリエッティに村の身寄りの無い娘を提供し、戦闘機人の部隊を量産しようとしているところまでは、調べが付いています‥」

私はハキハキと、現在わかっている事を簡潔に伝える。

「それがどうした?」

中将は全く怯まず、聞き返してくる。

げっ。開き直りかいな。

「どうしたって‥余りにも非人道的過ぎます!管理局がやっていいことじゃありません!」

私は務めて冷静に理を説く。

「ワシの仕事は地上の平和を守る事だ!それ以外は知った事か!」

あかんわ。この人、本気でそう思ってるわ‥

「弱者を踏みにじった上での平和にどんな意味があるんですか!そんなもん‥正義やない!」

「正義だと‥?」

中将から気迫が立ち上る。

何やこれ‥

私は必死に呑み込まれまいと、歯を食い縛り、中将を睨みつけた。

「少しは見所のある狸かと思ったが、所詮只の小娘か!」

「そんな甘ったれが、軽々しく正義等と口にするな!」

「そもそも、善と悪は表裏一体!」

「善などというものを求めれば、悪に利用される!悪などというものに酔えば、善に弾劾される!」

 

「そのどちらもを呑み込むのは「力」だ!」

「圧倒的な力と、それに属される絶対的な支配!」

「自らの理想を妨げる他者を捩じ伏せる力が無ければ、その先にあるのは滅びだけだ!」

「これは、人類が悠久の昔から、繰り返してきた真理だ!」

中将の真っ直ぐな視線に射抜かれ、私の心に迷いが産まれる。

「なあ‥八神よ‥?」

「‥は‥い?」

唐突に名前を呼ばれ、困惑する。記憶を遡っても、初めてのことだ。

「ならば、地上から、人員や予算を

奪っていく、海の連中は、悪なのか?」

「奴等の、必要になるかどうかもわからない、武器開発の予算があれば、この地上の人々の、暮らしはもっと楽になり、治安も良くなるだろう?」

「ならば、海の連中は悪ではないか?違うだろう?」

「はい‥」

私は既に中将に呑まれているのか?

「人には各々事情があり、立場がある。そんな人間達が纏まるには、大いなる目標と、力が必要なのだよ‥そして、その力を理解せず、蔑み妬む者達は、時として、目標を見失い、同胞にすら牙を剥く‥」

‥この人は、人間に絶望してるんだろう。

私もたくさん汚ないモノを見てきた。中将ともなれば二佐の私以上に見てきたのだろう。

ジム君の言葉が脳裏に浮かぶ。

「優しい‥ですね」

人間と、同じ管理局の仲間に絶望しながらも、

現場の捜査員の安全性を第一に考え、市井の平和に注力し続けるこの人は‥確かに、陸の英雄である。大きい‥とてつもなく大きく見える‥。

「そして、機動六課‥だったか‥?」

「はい?」

「あの、部隊はなんだ?」

「なんだ‥?と、言いますと?」

「リミッターでごまかして、高ランク魔道師を集めていたな‥」

うっ‥あかん‥薮蛇か‥?

「そのリミッターの解除権限を持つ者も貴様達の身内ではないか‥」

「何時でも解除可能なリミッターに何の意味があるというのだ‥」

うぐぐ‥あかん‥撤退や!

「時空管理局の歪さの象徴とも言うべき部隊ではないか‥」

「中将!」

「なんだ‥?」

「勘違いしないで下さい。私は別に中将を糾弾しにきたんじゃありません‥」

「‥?何を今更‥」

「だってそうでしょ?中将を糾弾、断罪したいなら、証拠をさっさと本局に渡せばいいんですから!」

「ふむ‥それで、何が言いたい?」

私は必死で考える。

「えーと。つまりですね‥?」

「元々、村の村長は、村の食糧事情を解決して欲しいと、管理局に陳情したわけじゃないですか?」

 

‥うむ‥。確かにそうだったな‥」

 

「なら中将、解決しましょうよ!」

 

「どうやってだ?」

 

「こちらが計画書になります!」

 

私はジム君が考案した農業再生案を見せる。

これは、村から帰ってきてから、ジム君が大急ぎで作ってくれたものだ。

中将は資料をパラパラ見ると、

 

「そんな予算は無い。」

 

と、資料を返して来た。

 

「こちらがバジェットになります‥」

私はすかさず、予算案を纏めた、資料を手渡す。

予算案を見た、中将は軽く目を見開くと、資料を読み込んでいく。

「どうです?かなりお求め易くなっておりますよ」

私は揉み手をしながら、中将に詰め寄る。

「確かに安いが‥この金は‥誰が出すのだ?」

「それは勿論、中将のポ、ケ、ット、マ、ネー、で、はぁと」

「なん‥だと‥」

「ゲイズおじ様ならぁ、これくらい、大したこと‥無いでしょう?」

私が中将の胸板にのの字を書きながらお願いすると、中将は嘆息してげんなりしながら、オーリス女史を手招きした。

 

「オーリス。お前に、任せる‥」

資料を受けとり、手早く読み込むと、オーリス女史の眼鏡が一瞬光った。

 

「八神二佐?」

 

「はい?」

 

「言わずもがなですが、わかっていますよね?」

 

「勿論♪」

 

契約成立ってことで‥♪

 

私はウィンクをひとつすると、オーリス女史は静かに頷いた。

そのオーリス女史の頷きを受けて、

中将が再び、口を開いた。

「八神‥」

 

「ハッ」

「お前はワシを断罪しなかった‥」

 

「世間一般でみれば、それは正義に悖る行為ではないか?」

 

ええ?そこで、そんなこと言い出しちゃうん?

 

「はい‥ただ、正しい事が正義では無いと考えました。」

 

私の答えに中将は満足気に頷いた。

そう。正義を行ったから必ず良い結果が出る‥なんて事はない。世界はそんなに単純にできてない。

「それで良い。お前は、この世界に漂う、偽者の正義などより、自分の正義に基づいたのだ。」

「他者の決めた、善悪等に惑わされるな‥お前は機動六課しかり、お前はお前の信じる道を生け‥」

「は、はいっ!」私は思わず敬礼していた。

 

 

 

 

 

 




書いてて思ったけど、なのはってキャラの年令以外にも、設定とか、魔法少女モノのそれじゃないよね?(笑)六課自体がイレギュラーな産物だし(´・ω・`)そこを突かれて、タヌキとゴリラの対決は、一応、作者的には引き分けということになりました(笑)これで一応、レジアス分は終わりです。これから、風呂敷畳みにはいります。


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魔王VS冥王

どうも。大変遅くなって申し訳ありません。
言い訳が許されるならば、この話自体が予定外のモノだったので、前話でシリアス終わったと思っていたら、あれ?これ魔王様納得しないんじゃね?という思いが産まれまして、
急遽、こんな話を書きました。少し、アンチヘイトっぽくなってしまったかもと反省。不愉快な思いを、させてしまっていたらすみません。
そして、無駄に長い駄文ですみません。


俺は今、フェイトさん宅のキッチンで、ガムを噛みながら包丁を振るっていた。八神司令から中将の件で、報告があるということで、前に約束させられた、フェイトさんに夕食を作るという約束を果たさせられている。というわけだ。

何故か、魔王樣と狸司令も一緒になっているのはご愛敬だが。

何故、ガム噛んでるのかって?玉ねぎ対策に決まってる。何故かは知らないけど、ガムを噛んでると、玉葱のバイオテロを防げるのだ。

玉葱を櫛切りにしながら、調整しておいた、タレに漬けこんでいく。

「今日のメニューはなーにかなー?」

鼻唄交りになのはさんが覗きこんでくる。

こちらの両肩に手を乗せてるあたり、あざとい。

やめてください。そういう心ないスキンシップが罪もない男達を死地へと送り込むんですよ?!

 

「そうですねー‥今日は良いマグロがあったんで‥」

 

「お刺身?わぁい♪なのは、マグロだーいすき♪」

 

「え?でも、ジム君が今用意してるのって‥」

八神司令が訝しげに口を挟む。

 

「あはっ流石ですね?確かに、今用意してるのは、しょうが焼きの下拵えですね♪」

 

「そうやんな?びっくりしたわ‥」

 

「えー‥マグロじゃないの?‥」

と、不服そうに八の字眉毛な魔王樣。

 

「いえ?マグロですよ?」

 

「え?でも‥」

訝しげな魔王樣の前にマグロを出して、小さく切出していく。

うん。やっぱり良いマグロだ。

切り出されたマグロの身を見て、魔王樣が目をキラキラさせている。

 

「おーいーしーそー♪」

 

謳いながら俺に引っ付くようにぴょんぴょん跳ねている。

包丁危ないんでやめていただきたい。

  可愛いけど。

そして、切り終わったマグロの身をまとめて、漬けダレに投入。

 

「えーーーーっ?!」

 

見ると、八神司令も目を丸くしていた。

ご存知無いメニューのようで、一安心。

八神司令なら知っててもおかしくない、メニューだけどね。

 

「なのは、お刺身は醤油が良いんだけど‥」

 

 なんでやねん。醤油の代わりじゃないですから。

手早く、マグロを投入した器にラップをかけ、冷蔵庫にシューーーート!超エキサイティング!

さて、後は、15分程で、しっかり味は染み込む。その間にサラダでも。

「なのはさん?嫌いなモノありますか?」

 

「なのは‥ピーマン嫌い‥」

 

あざといなあ!こんちくしょう!

ピーマンを避けて、野菜を切出し、器に盛り付けていく。しょうが焼き用の器には、キャベツの千切りを大盛りだ。

 

「たいした手際やね♪」

八神司令が優しく微笑みながら、褒めてくれる。

「たいしたことないですよ‥それに、八神司令もこれくらいは簡単でしょう?」

「そやな。私は‥な♪」

八神司令の微妙な言葉回しに、他の女子二人の顔が落ち込む。

 そんなつもりじゃなかったんだけどな。

 

「俺、フェイトさんの料理、好きですよ?」

 

「そう?」

と、フェイトさんの顔が明るくなる。

一人落ち込んだままのなのはさんに、どう声を掛けたものかと、俺が迷っていると、

 

《大丈夫なん?》

 

と、八神さんから念話が飛んできた。

今日は前もって、八神さんから、間違いなく美味しいのを頼む。と言い含められていた。

 この後の報告をスムーズに行う為だという。

俺自身は先に、八神さんから結果は聞いていて、それもやむ無し。という感想だったのだが、八神さんは、なのはさんの反応に不安を感じているようだ。

確かになのはさんはこまけえ事は‥(ry悪は滅殺すべし。が信条なとこあるしな。

今回の結果は、痛み分けとはいえ、中将の断罪自体はしてないから、なのはさんが不満を持つ可能性はある。

 

人は美味しいモノを食べている時は、あまり怒りの感情が沸かないそうだ。

そこに期待しての、「美味しいモノ作れ」作戦というわけだ。

 

《ふふふ。自信作ですよ?》

 

俺は自信っぷりに念話を飛ばす。

 

《もしかしたら司令のご飯より美味しいかもしれませんね?フフーン♪ボクは可愛いですから♪》

 

不安気な瞳の八神さんに発破を掛けるように、挑発する。

俺の小ボケに吹き出し、元気の良い、ツッコミが帰ってくる。

 

《はは‥言うやないか?腹パンするぞこらぁ!》

良かった。少し元気になったみたいだ。

突然吹き出した八神さんに、なのはさんとフェイトさんが訝しげな視線を向ける。八神さんは居心地悪そうに、その視線を避けると、

 

「あ~あははー‥すまんすまん。昨日のお笑い番組の思い出し笑いや‥」

 

と、若干頬を染めながら、キッチンから出ていこうとする。

 

《とにかく期待してるで?ホンマに私のよりおいしかったら、何かご褒美あげるわ‥》

 

《ファミチキください》

 

《こいつ‥直接脳内に‥ってやかましいわアホーー!》

 

キッチンを出る寸前にもう一回吹き出したはやてさんに、更に二人の視線が集まる。

 

「昨日‥そんなに面白いお笑い番組やってたっけ‥?」

どちらのものともつかない呟きに背を向けてキッチンから出ていく八神司令を尻目に、俺は次の工程へ。

フライパンにゴマ油を垂らして、加熱する。そこに刻んでおいたニンニクを投入。軽く火を通して、匂いが出てきたら、続いて、残っていた玉葱を投入。飴色になる程度迄、絡ませながら炒めたら、

メインのマグロを投入だ。軽く焼き色が付く程度に火を通したら完成だ。本来は、変色してしまったような、時間の経ったマグロのリメイクとしてする料理法だが、新鮮で良いマグロが手に入ったなら、思いきって試してみるのも良い。また別次元の旨さを味わえる。

「完成です」

 

お皿に、盛り付けると、なのはさんがキラキラしながら、がぶりよっている。

「おいしそー♪」

「これもう食べて良いの?」

なんでやねん。

「まだに決まってるでしょ‥ご飯よそいますから、ちゃんとテーブルで食べましょう‥」

「なのは、大盛りね!」

 

「了解しました‥ってなのはさんよだれ!よだれ!」

 

「おっと失礼ジュルッ‥」

 

なのはさんが食いしん坊キャラに。

貴女こんなでしたっけ?と思いながら、フェイトさんを見やると、唖然としていた。

フェイトさんも知らない一面のようだ。

これ、ひょっとして、凄い貴重なんじゃないかな‥

勝手知ったるわが家とばかりに、食器をスムーズに準備して、フェイトさんに目配せしながら、食卓へと料理を運ぶ。

食卓では既に、はやてさんが待機していた。

「いやーなんていうか誰かにご飯造ってもらうのッてワクワクするな」

と、満面の笑顔でワクテカしてらっしゃる。

でも、わかる。自分で作ると、自分好みの味付けには出来るけど、完成品の味も想像できるから、新鮮味がどうしてもなくなるよね。

はやてさんは、小さい頃から既に、料理等の家事はしてたらしいし、誰かに造ってもらう事自体が新鮮なんだろう。

《フェイトさん?ビール空けていいですか?》

《‥うーん‥仕方ないね‥》

少し、葛藤があったみたいだけど、許可してくれた。ひょっとしたら、フェイトさんも今日の作戦を聞いているのかもしれない。

食卓の傍にある小さめの冷蔵庫を開けると、麒麟と、スウーぱー‥ドラーいが陳列していた。

こちらの冷蔵庫はお酒専用だ。替わらないラインナップに少し懐かしさを覚える。

《麒麟ね。ドライでも良いけど黒はダメだよ?》

 

《はいはい。》

フェイトさんは黒生がお気にいりだ。これは取って置きで滅多に開けない。

焼酎も芋から麦から米迄揃えている。

普段呑みはもっぱら、麦らしいが。「魔王」や「黒霧島」には手を付けないので安心して頂きたい。

だからフェイトさん。そんなに不安な目をしないでください。

結局俺は、麒麟だけを二本程取りだし、冷蔵庫から離れる。

フェイトさんが、ホッとしてるのがたまらなく可笑しい。

「はいお待たせしましたー。マグロの生姜焼きでござーい♪」

 

「「わー」」

既に着席して、お預けを食らっていた、二人が拍手で迎えてくれる。

フェイトさんも着席したところで、

「ビール飲む人ー?」

と、俺の呼掛けに三者三様で手を挙げる。

なのはさんは、ビールがあまり得意ではないのか、少し遠慮がちに‥当たり前とばかりに勢いよく手を挙げたのは八神のはやてちゃん。

そして背筋を伸ばし、スッと無駄に姿勢良く、優雅に手を真っ直ぐ挙げるフェイトさん。

そして俺は、八神さんから順にビールを注いで回る。

 

「空腹でいきなりビールは胃に良くないんで、一応サラダから摘まんで下さいねー特に八神司令」

 

「ウッ‥ありがとうな‥それじゃ頂きます。」

八神さんが、手を合わせると、他の二人も手を合わせて、サラダに手を伸ばす。

「このシーザードレッシングオーイシー♪」

 

「牛乳じゃなく豆乳で造ってみました」

「‥豆乳?!」

その瞬間、なのはさんと、はやてさんの目が光る

。目線はフェイトさんの豊かなお山へと注がれていた。

「ちょっと‥!」

「フェイトちゃんのおっぱいにはそんな秘密が‥!」

「いえ、俺がこのドレッシング作る前から、フェイトさんのお山は世界遺産レベルでしたよ?」

「こら!ジムも乗らないの!」

顔を真赤にして抗議してくるフェイトさんが、可愛くて、場は和やかな空気に包まれた。

そして、はやてさんがメインのマグロを一口。

「これは‥旨い。旨いな。」

ご好評は頂けたようだが、裸にはならないようだ。やっぱソーマはすげえわ。あれどういう原理なんだろ。魔法の世界に転生してもようわからんわ。「この深みのある味。そうか。漬けダレを醤油ベースじゃなくめんつゆベースにしたんやな?」

流石。

「わかりますか。流石ですね‥」

「めんつゆな分、味はまろやかやけど、それでも少し、味が濃いな‥」

ヱッ。ダメ出しされんの?

このしょうが焼きを造ったのは誰だ?!とか言われるんだろうか‥雄○先生はお帰りください。

「それは違うよ!はやてちゃん。‥それに‥良く見て?はやてちゃん。」

なのはさんがはやてさんに反論を始めた。なんか声おかしくない?凄いイケメンボイスなんだけど。銀河に吠えそう。

「このしょうが焼き‥キャベツ。大盛りなの‥」

なのはさんの言葉にはやてさんはハッとして、項垂れる。

「そうか‥!しょうが焼きのタレで食べるキャベツは、また一つの独立した料理‥っ!」

「お分かり頂けましたか‥キャベツにこのタレをタップリ吸わせて、ご飯と一緒に掻き込む‥!ああ‥おいふぃ‥の‥!」

幸せそうにモリモリ食べるなのはさん。

うん。こんだけ幸せそうに食べて貰えると、うれしいもんだね。

「‥せやな‥これは‥八神はやて、一生の不覚や‥っ!ジム君!済まなかった!」

「キャベツとご飯と一緒に食べる事を想定した味付けだったんやな‥!」

確かにそのつもりだったけど、そんなに大袈裟にされる事でもないです。

「まあまあ、ビールどうぞ。」

「圧倒的‥度量‥っ!私の‥負けや‥っ!」

なんか額に縦線入れながら、ガっ‥グッ‥!言ってる。

やだ。この人、面白い。

「さて。本題や‥」

 

そう言って、はやてさんは、今回の顛末を話始めた。

レジアスに関しては、とりあえず断罪はせず。しかし、村の農業改革の為の予算を引き出す事には成功した事。

何事もなく、話は続き、話が終わろうかと、言うところで、やはりというか、なのはさんが口を挟んだ。

 

「私は納得いかないの」

()()()()()

あろうことか、念話が三人で被ってしまった。

八神司令もフェイトさんもこれは流石に予想外なようで、肩を震わせて、笑いをこらえている。

二人とも頑張って。殿中でござる。ここでもし笑いでもしようものなら、魔王の御機嫌がどうなるか、考えたくもない。

「まあまあ。なのはさん。おかわりいります?」

「頂きます」キリッ

 

「少々御待ちを‥」

マグロは品切れになってしまったので、簡単な物で追加するか。

とりあえず食パンをトースターに投入して、1~2分。

焼き上がったら、たっぷりバターを塗って、焼き海苔を醤油に浸して、ペタペタ。

「お待ちどおさまです」

「トースト?」

「はい。マグロが品切れでして‥簡単な物で申し訳ないですが‥」

「頂きます!」

笑顔でパクつくなのはさん。

「これ凄い‥しゅごいよぉ‥」

お気に召して頂けたようで何より。

あっと言う間に二枚平らげてしまったようだ。

「ちょ!なのはちゃん!ウチ等の分は?!」

 

「そうだよ!なのは!ズルいよ!」

はやてさんとフェイトさんに同時に責められ、小さくなる魔王様がくっそ可愛い。

先程の不穏な雰囲気は、霧散していた。とりあえず一安心かな。俺のミッションはコンプリートかな。

そう思いながら、食器を片付けていると、はやてさんがウインクをくれた。

(トースト私にもよろしく》

《承知しました》

俺は苦笑しながら念話を返すのだった。

俺が追加を作りに、キッチンへ行こうとすると、視線を感じて、振り返るとフェイトさんが、じっとこちらを見ていた。

視線を絡ませながら、意図を読み取ろうとしていると、フェイトさんが、黙ってひとつ頷く。

あー。フェイトさんも食べるんすね。

 

手早く四枚‥いや、念のため5枚焼き上げ、

食卓へと戻ると、はやてさんと、なのはさんが睨み合っていた。

えっ?

「はやてちゃん‥日和ったの?」

 

「いーや‥」

わお。まさかの第2ラウンドですか?

はやてさんも少しイラついてるように見える。

それはそうだろう。今回の件。はやてさんはいっぱい考えてこの結末に落ち着けた筈だ。それをハナから考慮されずに、日和った扱いは流石に酷すぎる。俺は黙って、はやてさんにトーストを差し入れる。

それを会釈ではやてさんは受け取ると、ふう。と小さく息を付いた。それでも食べて、少し落ち着いて下さい。冥王と魔王の喧嘩とか洒落にならないんで。

、なのはさん。それは言い過ぎです‥」

俺の言葉になのはさんはハッとして、少し考え込む。

「ジム君‥ジム君は良いの?故郷の人達が、迷惑かけられてたんだよ?許せる‥の?」

 

「そうですね‥仕方‥ないかな‥と」

「仕方ない‥?」

「泣き寝入りなんてダメだよ!悪人には罰を!それが私達、管理局の仕事じゃないの?!」

なのはさんは目に涙を浮かべながら、思いを吐き出す。

「弱い人、困ってる人を助ける為に、私はここにいるの‥」

「ねえ‥はやてちゃん‥フェイトちゃん‥ジム君‥!なのは、間違ってるの‥?」

なのはさんはボロボロと涙を流しながら、涙ながらに問うてくる。

「間違ってはいません。ただ、もう少し考える必要があります。」

 

「考える?」

「もし、今レジアスを断罪して、更迭したとします‥その結果‥どうなると思います?」

「‥悪が滅びて、ハッピーエンドなの!」

「それがそうじゃないんです‥」

「ぇ?」

「今レジアスを更迭したら、間違いなくミッド地上は荒れます。その結果、どれだけの罪無い人々が被害を被るか‥」

 

「そんな‥」

「今のミッド地上の治安はレジアスのワンマンです。地上の英雄の名は伊達じゃない‥あの人が優秀なのはうたがいようがないです。八神司令はそれを案じて、今回の結果に落ち着けたんだと思います‥」

なのはさんが俺の言葉にはやてさんを見る。

はやてさんはゆっくりと頷いた。

「なのはちゃん‥ごめんな‥」

八神司令にも出来ない事はある。当たり前の事なのだが。そういう難しい事は全部はやてさんに任せてきたなのはさんだ。良くいえば、信頼。悪くいえば、依存。いや、依存は言い過ぎかな。

自分が前線で頑張れば、そういう厄介事ははやてさんが何とかしてくれる。それがなのはさんの考えなのだろう。適材適所。それは間違いじゃない。

でも、任せるというのなら、最低限、何故、そういう結論に至ったのかに関して、思いを馳せるべきじゃないだろうか?でなければ、はやてさんが可哀相だ。

「なのはさん‥もし、八神司令が結果を考えず、レジアスを更迭したとして、その結果、罪の無い人々に不孝が起こったとしたら、その責任は何処に行きますか?いや、八神司令がそれに責任を感じずにいるような人に思えますか?」

「そう‥だね。」

「はやてちゃん‥ごめんなさい‥」

「エエよ。スコーし揉ませてくれたら♪」

台無しだー。

手をワキワキしながら、なのはさんににじりよるはやてさん。

なのはさんは胸を抑えて、後ずさる。

「いや‥フェイトちゃん‥たす‥けて‥」

その瞬間、はやてさんの首にバルディッシュのサイズモードがあてがわれていた。

はっや。流石フェイトさん。全然見えなかったぜ。

トーストをムシャムシャしてるのがご愛敬だけど。

「冗談。冗談や‥」

両手を上げて、後ろに下がるはやてさん。

いや、あの顔はあわよくば。って顔だ。

でも、お陰で雰囲気も良くなった。これが、揉みにュケーションか‥

《ジム君。ありがとうな‥》

はやてさんの安堵交りの念話のお礼に俺は微笑みで返す。

はやてさんが頬を朱に染めながら、これがニコポかーと呟いているが、気にしない。そうして、夕食会の夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なのはさん説得してるうちに、本局の悪口を書いていたら、なのはさんが管理局を辞める展開が、開けて当然没(笑)シリアスが本当に苦手。そして、料理描写も難しい。飯テロ上手く書ける人って凄いよね。それでは、次回からは本当に、風呂敷畳みに入ります。


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ある兄妹の今昔。

ちょっと忙しくなりそうなので、頑張って早送り投稿。忙しくなる前に何とか完結させたい所存。


―お兄ちゃん‥

 キャロ‥か?

暗闇の中から俺を呼ぶ声がする。

いくら眼をこらしても、視界は晴れない。けど‥

_――お兄ちゃん‥

キャロ?

やがて、闇の中にシルエットが浮かぶ。

そこに現れたのは、まごうことなき美少女。

まだ、幼さの残る顔立、まだ、染めたばかりのような、明るい茶髪。

 誰だ?キャロじゃない‥

でも、俺は彼女を知っている。

 誰だっけ‥

__また寝惚けてんの?正兄は本当に、だらしないなあ。

その瞬間、記憶の扉が開く。

‥何年振りかな‥「千秋ちゃん」

 

 

◆◆◆

「もう‥正兄‥‥だからバター塗りすぎ‥!」

トーストを齧りながら、千秋ちゃんが眼を吊り上げて、怒ってくる。

「バターたっぷりが美味しさの秘訣なんだよ‥」

「それはわかるけど、カロリーとか油が気になるんだよ!」

「そんな乙女みたいな‥」

 

「乙女だ!」

我慢の限界とばかりに、千秋ちゃんの拳が俺を襲う。

全然痛くないけど。

「もう‥もし、女子力下がって、彼氏とか出来なかったらどうしてくれるの?」

 

「彼氏とか許しません!」

即答する俺に、少々唖然とした千秋ちゃんは、

「まったく。正兄は‥まったく‥」

と、悪態を付きながら、トーストを片付ける作業に戻る、妹様。

「口元、緩んでるぞ?」

俺が的確なツッコミを入れると、テーブルの下から足が飛んできた。

「うるさい!シスコン!」

弁慶の泣きどころを痛打され、俺は悶絶する。

 

◆◆◆

「今週のみったんのダンスかわいかったー♪」

「それな」

「あんこう音頭とか本家よりキレッキレだったよねー♪」

「あれは笑ったなーでもお兄ちゃんは双子山に釘付けだったけど‥」

「あーね。正兄は本当におっぱい星人だねー」

「ただ千秋ちゃん?みったんの真似したいのはわかるけど、スタイリッシュにコンセントに差す遊びは危ないからやめなさい?」

「なんで、知って‥?」

千秋ちゃんは赤面して俯いてしまった。プルプルと羞恥に震えている。

兄→妹の羞恥プレイキタコレ。ウマーー!

これはそそられますな。

「なんでって‥家のいたるところで、コンセントが視界に入る度にやってるじゃん?」

 

「うう‥」

 

「よしよし‥」

更に俯いた妹の頭を撫でてやる。

暫く撫でていると、いつの間にか、千秋ちゃんはこちらを上目遣いで見ていた。

ヤッター!妹の上目遣い戴きましたー!

「千秋ちゃんは可愛いなあ‥」

つい、素直な感想が漏れてしまう。

すると、千秋ちゃんは更にプルプルして、

「正兄のアホーーー!」

と、飛び出して行ってしまった。

「ち、千秋ーーーーー!」

 

 ビコン

そこでスマホが震える。

見ると、

from愛妹3㎝

 

title「今日一緒に帰ろ?」

一秒で了解。いつもの時間に迎えに行く。と返す。

さて。今日もお仕事頑張りますか。

 

◆◆◆

仕事も無事に終わらせ、千秋ちゃんの学校の校門前へと自転車で乗り付ける。

校門前で千秋ちゃんは既に待っていて、こちらに気付くと、嬉しそうに駆け寄ってくる。

「お待たせ‥かな?」

俺が声をかけると、千秋ちゃんはフルフルと首を横に振り

 

「んーん?全然待ってないよ」

 

言うなり、千秋ちゃんは後部座席に跨がる。

「ほいじゃ、正兄号、シュッパーツ!」

「へいへい」

 

「山田ちゃんじゃーねー!」

と、複数人のJKが声を掛けてくる。

「んー。また明日ねー♪」

と、千秋ちゃんは返事を返すと、思いっきり、首に抱きついてきた。

 

後ろでキャーと黄色い声が上がったが気にせず、ペダルを強く踏み込む。

「良いのか?」

校門から少し離れたところで、千秋ちゃんに声をかける。

「何が?」

「こんなに甘えんぼうなとこみせて、からかわれたりしないか?」

「別に平気かなーそんな事するようなヤツはハナから友達認定してないし‥」

おおう。我が妹ながらドライな事で。

「それよかちゃんと誰のモノかアピールしとかないと‥そっちの方がめんどくさそうだしねー」

「はい?」

「わかんなくていいよー」

ぼやかされてしまった。考えてもわからなそうなので、別の事に思考を向ける。

因みに千秋ちゃんは変わらず俺に抱き付いたままだ。

しかし、‥全くと言っていいほどに背中にナニも当たらない。

風通し良すぎて風邪ひきそう。

千秋ちゃんは可愛くて、頭脳明晰、人当りも良い、俺の妹なのが信じられないくらいの完璧美少女なのだが、何故か、胸は生えてこない。

毎日豆乳飲んでるのにね‥

 

「おい‥正兄‥今何考えた‥」

 

突然、首に巻きついた腕に力が篭り、首が締め付けられる。

「べ、別に‥何‥も‥」

 

「カッハァ‥嘘ヲツケ‥!」

 

地獄の底から響いてくるかのような声色に俺は思わず戦慄する。

「吐かないと、このまま落とすぞ‥」

 

「危ないから‥ところで千秋ちゃん胸もげた?」

 

「ギルティ‥!」

そこで俺の意識は途切れた。

 

◆◆◆

次に目を開けると、真っ暗だった。

遠くに、風景が見える。

そこにいたのは、ピッコロ大魔王にすがりついて泣いている千秋ちゃん。

声は全く聞こえない。

ああ。嫌だな。1番見たく無いものを見てしまった。愛する妹の泣き顔なんて、一生見たくなかった。俺は思わず、顔を背けた。

 

 

 

◆◆◆

 

次に目が覚めると、またもや辺りは真っ暗だった。

「知ってる天井だ‥」

そう。ここはフェイトさん宅だ。

隣に温もりを感じ、見やると、そこには、キャロが寄り添うように寝ていた。

 

「‥ムニャムニャ‥お兄ちゃん‥ギルティ‥」

 

不意に飛び出した寝言に俺はドキッとする。

「ハハ‥まさかね‥」

「千秋ちゃん‥」

ふとついて出た言葉に、キャロがもぞもぞと身体を捩る。

そこで俺は気づく。自分が泣いていることに。

何故、こんなにも、悲しいのか、こんなにも寂しいのか。それすらわからない俺には涙を止める術は無かった。

脳裏に浮かぶのは、千秋の泣き顔。

あんの‥堕神‥ウマイ事やってくれなかったのかよ‥!そう。夢で千秋がすがりついていたピッコロ大魔王はあの堕神じゃないか。

俺が転生してから、何がどうなったのか‥

当然俺にわかるわけがなかった。

と、不意に俺の頭に手が宛がわれる。

見ると、いつの間にかキャロが起きて、俺の頭を撫でていた。

「正兄‥よしよし‥」

俺はギョッとして、キャロから身体を離す。

すると、キャロは悪戯っぽい笑みを浮かべて、

「あーあ。バレちゃった‥」

と、のたまうのだった。

「千秋‥ちゃん‥なのか‥?」

「やっと気付いたの?‥正兄‥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




サブタイのこれじゃない感。お気付きですか?いつの間にかまたつけはじめていることに。(笑)でも、やっぱつけない方が良いかもと後悔してみたり。SSって難しいですね(´д`|||)


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ある実妹の事情。

◆◆千秋side◆◆

 

その日、私は何時まで経っても夕飯を食べに来ない兄に痺れを切らせて、兄の部屋へと駆け込んだ。

そこにいたのは、下半身裸の兄をひきずりながらベッドから下ろそうとしている緑色の肌の変な人間‥いや、人間だろうか‥触角があるし、ていうか、見た目ピッコロ大魔王だ。

「「あ?(へ?)」」私とピッコロ大魔王の声が被る。

「何‥してるの?正兄をどうする‥気?!」

 

「いや‥これは‥」

不思議だ。見た目ピッコロ大魔王なのに、CVはサトリナだ。

「ていうか誰ですか?変質者?」

「とんでもねえ。あたしゃ神様だよ」

「貴様のような神様がいるか!」

「兄妹揃って無礼なヤツラじゃな‥」

「あっ。すいません‥って正兄?!」

私はピッコロに引き摺られながらぐったりしている兄へと声をかける。兄は血の気が感じられない、真っ白な顔をしている。

まるで‥

すると、ピッコロ大魔王はアチャーと頭に手をやり、私を不憫なモノを見るように目線を下ろす。

 

ちょっと‥待ってよ‥

私は兄へとかけより顔に手を当て‥

冷たい!温もりが‥無い?!どころか、呼吸もしてない!

 

 ――ウソでしょ!?何のドッキリ?

え?モニタリング?これ‥

テレビカメラどこ?いやいや‥テレビだとしたら‥正兄何露出させてんの‥私はとりあえず正兄の下半身を毛布でくるむ。

正兄が死んだ‥‥?

一鞠の涙とはよく言ったものだ。

人間は本当に悲しい時には涙が出ないんだなと、私は、想い知らされた。

そしてピッコロ大魔王に問い詰める。

「どういう事なの?!貴方がやったの?」

「いや‥え?なんで今毛布でくるんだの?わかった‥説明するからとりあえず落ち着け」

「カクカクシカジカ‥フンフンディフェンス‥センセイバスケガシタイデス」

 

「転生‥なんて‥羨ましい‥」

 

「は?」

 

なのはの世界に転生‥だと‥しかもあの金髪巨乳狙い‥で‥!?

私を一人遺して‥?自分は巨乳とキャッキャウフフ‥ってか?

久久に、切れちまったぜ‥あんの愚兄。不運と、踊らせてやる!

 

「お、おい‥?」

 

「ねえ?神様?」

 

「なんじゃ?」

 

「私と契約して私を憑依させてよ」

 

「憑依?なんじゃそれは?意味がわからないよ」

 

「1から?1から説明しないとダメなの?」

 

「お前達、間違いなく兄妹じゃな‥」

 

兄の記憶で造り出された世界の登場人物に憑依なら簡単でしょ?

それに、今生じゃ、実の兄妹故に諦めなければいけなかった想いを遂げるチャンスだ。そう考えると、天祐とも言える。

いや、このまま、私が就職したタイミングで、兄を酒で酔い潰し、子種をゲッツ大作戦を諦めるわけにはいかない。それにしてもテクノブレイクって‥何よそれ‥あんの巨乳‥何処までも私の華麗なる家族計画を邪魔してけつかる‥おっと。はしたない。オホホホ。

フェイトに憑依しても良いけど、巨乳キャラはあんまり好きじゃないから、よく覚えてない。ボロが出ても困るしね。

それにどうせなら、自分からアタックして、落としたいのだ。

自分じゃない人間に憑依してアタックされても、例え相手が兄でも面白くない。なのはさんは、兄は魔王と呼んで崇めていたから、無しかな。はやてちゃんは中の人含め、好きなんだけど政争とかありそうで、社畜っぽくてめんどくさそう。私はあんなに優秀じゃないし。

ここはみったん好きとしては、キャロ一択だね。エロオは邪魔になりそうだから、キツメに当たっておこう。ルーテシアちゃんとお幸せに。

余計な希望を持たせるのは可哀相だしね。

私ってばなんて良い女。

「ふむ‥なるほどの‥大体わかった」

 

私の頭に手をかざしていたピッコロさんがそう口を開いた。

わあ。便利。

 

「面白そうじゃし。良かろう」

 

「ありがとー。神様大好きー」

 

「はいはい‥それじゃいくぞ?」

 

「あ。その前にラ。ステル。マ。スキル。マギステル。って言ってー」

 

「はあ‥ラ。ステル。マ・スキル・マギステル」

「キャーネギせんせー!‥ああ‥やっぱその見た目で言われても気持ち悪いわ‥」

 

「お前達やっぱ兄妹じゃな‥」

 

何故かげんなりしているピッコロさん。

「しかし。良いのか?お主は別に死んでるわけではないんだぞ?」

 

「私は兄さえいれば良い」

 

その瞬間、私は急激な浮游感に襲われ、意識を手放した。

次に目が覚めた時、私の身体は縮んでいた。

8才くらいだろうか‥?

至るところにテントが張られている。

そういえば、キャロちゃんはルルシエとかいう部族の子だっけ?

キャロちゃんとしての記憶も千秋としての記憶もちゃんとある。

―キュル‥?

おや?キミはフリードだっけ?

見ると、小さい白竜が心配そうに私を覗き込んでいた。

私の入れ替りに気付いているのか‥いぶかしげにこちらを見ている。

よしよしと、頭を撫でてやると、安心したように、こちに身を寄せてきた。

キャロちゃんの記憶によると、部族の仲間との関係は余り良くない。フリードがほぼ唯一の友達だ。

「仲良くしてね?フリード?」

―キュル?

今の自分を取り巻く環境は決して幸せとは言えないけれども、私の口から出る声は憧れのみったんの声である。

これには流石の私もにっこり。

「ラブラブラブメールラーブコールラブラブだーリーン♪」

好きな曲を歌ってみる。自分の口からCD音源である。ニヤニヤが止まらない。

テンション上がった私は、某笑顔動画でみったんと一緒に踊って、覚えたダンスを躍りだす。

「なぞなぞ~みたいに~ちきゅーウギーをーときーあーかーしたらー♪‥」

――好きでしょう?♪」

決まった‥。少し身体が縮んでる分、動きにくかったけど、肩で息をしながら、横を見ると、フリードが私と似たようなポーズで決めポーズを取っていた。

やーん。可愛いー。

一緒に踊ってくれてたの?フリード♪ありがとー。

―これは‥フリードにフォーメーション迄覚えさせたら‥金がとれるレベルになるんじゃなかろうか‥。

アイドルデビューしちゃう?

ハイアット美佳子に、なっちゃう?

いやいや‥兄にバレちゃうね‥

ここで、無理なく‥原作を壊さない程度に兄と結ばれる為に、私がすることは、

私の灰色の脳細胞が活性化を始める。

―先ずはFの排除。

いや‥それは無茶だ。

Nなら兎も角、キャロでFを落とせる筈が無い。

だが、こと恋愛においては別だ。

肉体の性能の差が戦力の決定的戦力差ではない事を、教えてやる‥。

―先ずは、Fと仲良くなる。

その上で、出し抜く!

Fと絆をつくっておけば、それだけで牽制になるはずだしね。

女というものは、少し仲良くなっただけで、聞いてもいないのに、自分の好きな男の事を、話し出す。

話す事で、その男が自分の獲物だと主張しているのだ。

そのあとは、ひどいものだ。

こちらがアプローチかけたわけでもなく、男からアプローチかけてきただけでも、被害者ツラで騒ぎ出す。弱き者よ。汝の名は、女なり。

兄には悪いけど、その想いは叶わない。

 

―Fには退いて貰う。

 

そして、傷心の兄をゲットだぜ!

うん。これに決めた。

―将をなんちゃらするなら、まず馬をなんちゃらってね。

 

 

―フッフッフ‥

兄のツボは大体わかってる。一緒に家族として暮らした時間は伊達じゃない。実の兄妹じゃなければ、落とす自信はある。

せっかくだし、この人生も楽しまないとね。

さて、先ずはFと出会わないとか‥んーと。このあと、部族を追い出されるんだっけ?

あれ?キャロちゃん割と人生ハードモード?

とりあえず、追い出される準備だけはしとかないとね。先ずは情報収集かな。キャロってば、マジ箱入り娘。彼女の記憶には、外の事は何もなかった。マジ卍。

先ずは、部族の大人達に外の世界の事を、聞いておこう。

それから‥まぁいいか。

 

―ノープランで行こう♪

魔法少女らしく、魔法の呪文でも言っときますか。

 

          ―絶対大丈夫だよ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ネタを入れすぎただろうか‥
かえって詠みにくくなってる気がする。
丁度良いコメディ分量がわからない‥


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キャロの訓練。

うーん。質問なんですが、正直、まだ、実妹ちゃんをメインヒロインには確定させてないんですが、タグに、オリヒロ入れた方が良いんでしょうか?


ウッ!オロロロロロ‥

両膝に手をつき、肩で息をしながら、自分が吐き出した吐瀉物を見つめながら、考える。

―何時になってらこの地獄が終るのだろうと‥。

酸素をよこせと早鐘を打ち続ける、心臓にゆっくり酸素を送り込みながら、口の中に残る、酸味を唾棄する。口を手で拭いながら、息を整える。

 

「もうバテちゃったー?後、ニセット残ってるよー?」

 

頭上から掛けられる、甘ったるい声に苛立ちを覚えながら、震える膝に喝をいれて頭上を振り仰ぐ。

栗色のツインテールを風に揺らしながら、こちらを見ている魔王と目が合った。

その目には微塵も心配の情は無く、どこまでも無感情に、機械的に、こちらの残り体力を見透かそうとしているかのようだった。

終る迄は逃げられない。許されない。それは‥ここ数ヶ月の訓練で嫌と言うほど想い知らされた事実だった。

「ふう‥ふう‥エリオ君‥どんな塩梅?」

私は隣で大の字で倒れているエリオに声をかける。

「はあ‥はあ‥‥限界‥かも‥」

訓練内容は、サーキットトレーニングをやりきるか、途中で魔王に一撃入れられれば終了。

サーキットは陸戦シミュレーターで、山あり谷あり、坂ありの御機嫌なコース。途中でマリカーも真っ青の妨害トラップ等が跋扈する。そして、申し訳程度に時々ガジェットも出てくる。当然全部撃破必須。因みに私には、全部で100kgの重りもついている。亀の甲羅は何とか回避して、アンクルタイプだ。え?良く動けるなって?もちろん軽くブースとかけてます。魔王が言うには、それもトレーニングになるのだとか。

魔王的には、常に戦闘モードで訓練してほしいそうだが、流石にそれは、魔力が保たないので、ご勘弁頂いた。セルゲーム前の悟空と悟飯の修行っぽくしたかったのかもしれない。この世界で、あの世界観に、ついていけるの貴女だけですからーー!ザンネーン!‥‥戦闘民族‥斬り‥!話が逸れたね‥。

ただし、やりきるにしても、二人共でなければいけないのだ。私一人でゴールしたとしても、連帯責任で、周回追加されるのだ。なんだそのクソゲー。

私は予想していたエリオの答えに泣きたくなる。

はあ‥ペア相手が正兄だったらなあ‥

舌打ちを抑えた私を誰か褒めてほしい。

 

「ごめん‥ね‥キャロ‥はあ‥はあ‥」

息も絶え絶えに謝罪してくるエリオを養豚場の豚を見るような目で見ながら、答える

「はあ‥はあ‥いいから‥体力回復に‥集中して‥」

「うん‥ごめんなさい‥」

ホンとだよ。もう何周お前の分肩代わりしてると思ってるんだよ‥

「このままじゃ‥ジリ貧‥だね‥なんとか、なのはさんに‥一撃入れよう‥?」

これ以上、体力を減らしたら、クリア自体が難しくなる‥

 

「ど、どうやって‥?」

どうやってじゃねーよ。

お前も考えろよ。

再び、養豚場の豚を見る目で彼を見る。

「はあ‥はあ‥キャロは‥凄い‥ね‥はあ‥」

「はあ?」

「こんなに‥キツい訓練なのに‥きちんと‥クリアを‥目ざしてるんだもん‥」

ぷちっ。

私は激怒した。

キャロには弱い者の気持ちはわからぬ。

ただ、甘ったれには敏感であった。

何としても、この甘ったれを叩き直さねばならぬ。

私はエリオの服の首元を掴んで起こす。

「何時まで甘ったれてんだ?男だろ?!」

私の態度に、面食らったのか、エリオはされるがままで、眼を見開いている。

「力が無いまま、現場に出たら、死ぬかも知れないんだぞ?!お前が死ぬだけじゃない!一緒に闘う仲間も死ぬかも知れないんだぞ!この間の部隊が全滅した事件も知ってるだろ!この訓練だってそう!私達がきちんと無事に帰ってこられるように、強くしようとしてくれてるんだよ!?」

 

「更に言うなら、私達が訓練を受けられるように、ジム兄が私達の事務仕事を肩代わりしてくれてるんだよ!この訓練中に、私達が無駄に過ごして良い時間なんざ一分だって無いんだよ!」

一息に思いをぶちまけてしまった所で我に帰る。

いけないいけない。キュートなキャロちゃんのイメージが。養豚場の豚‥いや、エリオどころか、

魔王迄ポカンと、口を開けて、こちらを見ている。

こっちみんな。

「ごめん‥キャロ‥そうだよね‥僕が間違ってたよ‥!」

お?エリオ‥覚醒?

よし。その勢いで逝ってこい。

「良し‥!一撃は僕が入れる!」

おう。やったれや。

「キャロ‥隙を作ってくれる‥?」

ズコー!覚醒しても、豚は豚だった。

でもしゃあない。それが1番現実的だしね。

ほな。いっちょやったるか。

――愛魄召還!」

私は戦闘モードへとチェンジする。

エリオもストラーダを振り回して、ポーズを決める。

向かう先には、何処までも無表情な魔王が降り立った。

これで失敗したら、体力も魔力も尽きるだろう。

こうして、私達の背水の陣が始まる。パートナーが頼りなくて、泣きたくなるけど。

 

 

 

 

 

 




久しぶりのキャロメインの話なのに、ゲロはかせたり、エリオを豚扱いしたりと。やりたい放題すみません。


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キャロの訓練。弐。

お、終わらねえ‥(´д`|||)


ゴクリ‥それは、誰の嚥下音だったか‥

ただ、唾を呑み込む行為すら、憚られる。

唾を呑み込む事に意識を向ける事さえも隙になるのではと、私達は身じろぎひとつ出来ずに、睨み合っていた。不意に、私達の間を一陣の風が通り抜ける。砂埃が舞い、魔王が一瞬眼を細める。

その瞬間に私は手足の重りを外した。

そして魔王の右側へと軽く投げる。

ゴトリと、音を立てて、重りが落ちる。

そちらへ、眼をつむったままの魔王が意識を向ける。

ここだ。

私は魔王へと、飛び掛かり、拳速に留意したジャブを放つ。

私の一振りで、パパパン!と、高い音が三回響く。

牽制にと放ったジャブは全て魔王の片手であしらわれてしまった。

――もうやだ‥意識を逸らせて、不意を付いて、それでもまだこの拳は届かないというのか。

魔王≠人間説がここにきて天元突破。いや、元々薄々感じてたけど。

牽制が失敗した以上、この距離に留まり続けるは下策。私は距離を取ろうと考える。

―果たしてそうだろうか?

本当にこの距離は不利だろうか?

元々私と魔王のリーチ差は考える迄もなく、魔王に軍配が上がる。魔王と対比しての私の強みは、この小さな身体と、そのコンパクトさ故の攻撃の回転率じゃ無いだろうか。

牽制が届かなかったとはいえ、魔王の懐にいる今は、チャンスではないだうか。

怖い‥けど!魔王の吐息すら聞こえてきそうなこの距離は正直目茶苦茶怖い‥けど!

その口から今にもしゃくねつや輝く息や焼けつく息を吐き出してくるんじゃないかと、今も恐怖で身体が震えるけど‥!

私はひとつ大きく息を吸いこみ、拳速半分威力半分で拳をつき出す。

魔王は私が距離を取らないことに少し驚きを覚えたようで、眼を見開いて、私の拳を丁寧に受け流した。

流れそうな身体を必死で制御しながら、しゃがみ下段蹴りを繰り出す。足にヒットしたが、まるで、鉄柱を蹴ったような感触。

――全然効いてない。

止まるな。私は直ぐ様起きあがりこぼしの勢いで再び正拳突き。その時、まるでスローモーションのように魔王の肚を私の拳が捉えようかと言うところで、魔王の左腕が円を描くように回転して上から私の拳をはね除けた。

攻撃が、読まれてる‥?!

もっと。もっと回転をあげなくちゃ!手を止めるな。止めたら死ぬ。

私はより速度を上げ、上下に攻撃を散らしていく。

一体どれくらい、ガードされたか。ついには、一撃もクリーンヒットをいれられぬまま、その時はきた。

「プハッ‥!」

息が続かず、私が息継ぎをした瞬間、

魔王の眼が光ったのを、私は見たような気がした。何故曖昧なのかって?何故なら‥

「ガッ!?」

次の瞬間、私の横腹に、魔王の拳がめり込んでいたからだ。その衝撃で私の両足は地面と別れを告げる。

漸く補給した酸素を全て吐き出さされ、私のリバーと肺と肋骨が悲鳴をあげる。

酸っぱいモノが再び込み上げるが、なんとか耐える。魔王が追撃に拳をスイングする。

やだこの人マジで容赦ねえ。

もう一撃喰らったら確実に堕ちる。いまだ私は空中に浮かされたままである。避けるのは無理だ。

私は右へと身体を捻る。捻った勢いで身体を回転させて右回し蹴り。

「りぼんびーむ!」

私の足がハート型の障壁を産み出す。

その障壁が、魔王の右フックと、激突して火花を散らす。

そして、障壁が砕け散った。

――もうやだ。なんなのこのムリゲー、

そして漸く私は地面へと着地する。

脇腹の痛みに耐えながら、魔王へとファイティングポーズを取る。

隙を伺っていると、突然魔王の右側からエリオが突進してきた。

魔王は当然のように、ストラーダを親指と、人差し指で摘み、興味を無くしたように、エリオごと、ポイ捨てた。

わかってたけど!相方がたより無さすぎて、泣けてくる。

《エリオ君。こっちへ!》

《うん》

とりあえず、思いついたことがあり、エリオを呼び寄せる。

一先ず、魔王から距離をとり、エリオにブーストを掛ける。ストラーダが、蒼い光を帯びる、

《ほんじゃ、突貫!》

ゑっ‥》

《良いから突貫!》

 

《わかったよ‥》

エリオが魔王へとスタートを切る。

ブーストをかけただけあって、良いダッシュだ。

私もエリオの後ろにビタリと付き、実を隠しながら、魔王へと、走り出す。

魔王迄、後数十㍍。そこで私は大地を蹴る。

軽く跳躍して、エリオの背中へと着地する。

《ちょっ!?キャロっ!?》

《良いから》

《いや‥あの‥》

《良いから》

私の返事に諦めたのかますます加速するエリオ。

良いね。

養豚場の豚からドダイYSに昇格してあげよう。

《このまま、同時攻撃逝くよ》

《うん!あれ?字‥》

魔王迄後数㍍。そこでエリオがストラーダを掲げながら、魔王へと、飛び込んだ。

私も、エリオの背中から軽く跳び、低空で必殺キックを放つ。

「「いっけええええ!!」」

そして‥

―魔王は右手でストラーダを摘み、

左手で、私のキックを受け止めていた。

そう。みなさんご存知、転地魔闘の構えである。

 

 

――魔王には勝てなかったよ。

 

「あれ?おかしいな?こんな闘い方教えてないよね?」

静かに諭すように語り掛ける魔王さま。その滲み出る覇気に私達は、ひと言も返せない。

「訓練の時だけ、言うこと聴く振りして、本番でこんな無茶するならさ‥訓練の意味無いじゃない。私の言ってる事間違ってる?」

有無を言わせぬ迫力に私達はフルフルと首を振る。

「じゃあさ‥ちゃんと練習通りやろうよ‥」

あかん。これMK5や。

「なのはさん!発言宜しいでしょうか?」

このまま、処刑を待つよりは、話してみよう。と、私は挙手する。人間話せば解る。ってね。相手人間ちゃうけど。

「なに?」

変な事言ったら殺される‥プレッシャーだけで胃が苦しい。変わらず据わりきった眼でこちらを見る魔王樣。

超こええ。でも、話してみよう。

「教わったフォーメーション、攻撃パターンはもう既に、全部撃破されました‥!」

そうなのだ。教わったフォーメーション、パターンは一通りもう試して悉く撃破されているのだ。

ならばどうする?自分で手持の武器を駆使して戦うしか無いじゃないか。

私の言葉になのはさんは虚空を見上げて、少し考える。

「そうだっけ?」

と、ケロリと聞き返してくる。

だが、プレッシャーはいくらか和らいでいた。

私とエリオはコクコクと頷きを繰り返す。

 

「うーん‥じゃあいっか♪」

「それでも諦めずに、立ち向かったその心意気や良し‥!」

あんた。諦めるの許さないじゃん。

 

「うん。じゃあ‥続けよっか♪」

 

なんでそうなる。

 

今めでたしめでたしの流れだったじゃん‥

 

「そう考えると、今の作戦はなかなか面白かったよ?ただ慣れてないからか、どちらとも威力が足りなかったね?特にエリオ?キャロが乗ったくらいで、スピードや威力落としてちゃダメだよ?もっと足腰鍛えなきゃダメかなあ?」

いや、威力は十分な筈だよ?相手が魔王なのが間違いなだけで。やはり模擬戦の相手が魔王なのは間違っている。と思う。

魔王の言葉に、青くなるエリオ。

「さっ。じゃあ飛び道具も、何でもありで模擬戦再開しよっか♪」

魔王樣が楽しそうで何よりです。

 

《エリオ君。わかってるよね?》

 

《ゑ?》

 

《ここで男見せないと、なのはさん多分マジで地獄の特訓追加してくるよ?》

 

《が、頑張ります‥》

 

私の冗談にならない警告にエリオの顔が青くなる。

 

《うん♪期待してるよっ♪》

キャルンっ♪と、効果音が付きそうな勢いで、ウィンクをひとつ。

 

《‥っ!うんっ!頑張るよ!》

 

男ってチョロい。

青くなったり、赤くなったり、忙しいことで。

《それじゃまた、何とか隙を作ってみるから、頑張ってね‥》

 

《うん‥ごめんね‥》

 

良いってことよ。お互いタイマンじゃ勝ち目ないんだし、協力プレイと洒落込みましょう。

そして三度、私と魔王は対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 




サクッとエリオに活躍の場を用意して終る筈だったのに、何回やっても何回やっても魔王なのが倒れない。
そして、戦闘シーン苦手(ToT)


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キャロの訓練。完。

漸く訓練終わった‥エリオ‥よう頑張った‥


ゴクリ‥それはどちらの、嚥下音だったか‥

あれ?おかしいな。ループしてる?終らないパーリー始まってる?だってバートルーおーわらないー素敵なパーリーはどこ?助けて夕立ちゃーん‥もうやめて下さい。これ以上私にどうしろというのですか‥

―キャロはこんらんしている―

「じゃ‥イくよ?」

と、魔王が一歩踏み出す。

いやです。来ないでください。

どうすればこの地獄は終るのか。

答えの出ない、自問のループ。もう何回問いかけたかわからない。そろそろ悟りを開くレベル。

気分はクイズ番組で使い古された問題が出てきた感じ。

さて。仕方ない。奥の手を出すか。

Q。無茶をしなければいけない状況だったか?

A。そろそろガチで体力限界なんです。あとお腹いたい。

Q。誰の為の無茶か?

A。考える迄も無い、自分の為だ。

これ以上続けて、再びゲロでも吐こうモノなら私はゲロインになってしまう。

だから良いよね?もう‥ゴールしても良いよね?

 

私はひとつ大きく息を吸いこむ。

魔王も、それに合わせて身構える。

 

隙が―無え―

 

気分はベジータ襲来時の悟空の気分だ。

界王拳が使えない私に出きること。

私は魔王の後ろに視線を動かし、驚愕に眼を見開いて、

「アーーッ?!フェイトさんが、また脱いでるっ!」

私が指差して叫ぶと、魔王は案の定、そちらを向いた。

だがそこにはなにもない。

私は一瞬で魔王の背後を取る。

そんな私に魔王が手の平を向けながら振り返る。

顔の、作画変わってる。

何処かの爆弾魔みたい。まるでゲン○○ーである。

助けてゴンさん。

とりあえずヤらなきゃ死ぬ。

「シューティングレイ!」

至近距離での、砲撃魔法ぶっぱ。

幾条もの光線がスフィアから放たれ魔王に迫る。

光線が今にも魔王を捉えようと言うところで。

魔王の姿がかき消えた。

―これもかわすか。

かわされた光線が魔王の後ろの断崖を砕いた。

瞬間、私の身体にゾワッとした、警戒信号が走る。

――後ろッ!?――

振り返る時間すら惜しく、私は身体ごと右にずらす。

すると、さっきまで、私がいた場所に、魔王の白い手が突きだされた。その手は薄く、魔力の光りを帯びている。

「チッ‥」

 

魔王が小さく舌打ちした。

こええよ。

ナニソレ。掴まれたら本当に爆発しちゃうの?モノホンのボマーさんなの?

まだ身体の警戒信号は解けてない。ざわ‥ざわ‥してる。ざわざわタイムだ。

距離を取るのは多分ムリ。背を向けながら、離れた時点で、砲撃されるに決まってる。

なら‥接近戦しかない。

私は再び、恐怖に対して拳を振るう。

振り返りながら、正拳突き。

振り返って見えた魔王の顔は笑っていた。

 

まるで私の選択を喜んでいるかのように。

罠にかかった獲物を嘲笑うとは別の笑顔。

遊び相手を見つけた時の純粋な、子供のように。

彼女は笑っていた。

私の拳を涼しい顔で、顔を少しだけ傾けてかわすと、魔王は右腕をぶん回す。

私はそれを後ろに身体を反らしてかわす。

自分の身体の上を通り過ぎる魔王の右腕に戦慄を覚える。

これはガード無理。

ガードしたところで、まるで豆腐のようにガードごと潰されるであろう。そんなことを確信出来る程に、その右腕は力を内包していた。

恐怖を感じている暇はない。攻撃こそ最大の防御。攻めないと。

反らした身体をもどし、その勢いのまま、魔王に肩からぶつかる。

―まるで、壁にぶつかったかのように、びくともしない。

いやいやいやいや。

これ、体幹とか体重差の問題じゃないよ。

おかしいて。実力差がまさに大人と子供。

――勝てない。――

そう痛感させられたのだった。

その時、

 

「ウオオオオオオ!!」

 

後ろからエリオが突っ込んで来た。

 

まだ私のブーストが残っているのか、スピードとパワーも十分に乗っていた。

だが、ちょっと待ってほしい。

針路微妙にズレてない?

私に当たらないように調整したのだろうが、

それじゃ甘い。

むしろ、私ごと刺す!くらいの勢いでいかないと。

やはりエリオはエリオか‥と、冷めた面持ちで、

私の横を通り過ぎる、エリオを見ていると、

やはりというか、当然というか、魔王は少しだけ身体をズラしただけで、その突進をかわした。

 

と、思ったが‥

魔王にかわされ、エリオが突進したた先に行きなり、巨大な岩が現れた。

見ると、どうやら最初に私のシューティングレイが断崖の岩を砕いていて、どうやらその瓦礫が降ってきたようだった。

エリオはその岩に両足で着地する。

まさか、それを計算してたのか?

「ハアアアア!」

そして、その岩を踏み台にして、再び魔王へと、突貫した。

 

至近距離からの、いきなりの方向転換、かわした筈の相手からの奇襲。

これをかわせたら、本当に人間じゃない。

 

エリオのストラーダと、魔王の障壁がぶつかり、爆発が起こった。

爆発が晴れると、そこには平然と、立っている魔王の御姿。

ウソやろ?

エリオも愕然としている。

 

「クリアおめでとー♪」

 

突然、パチパチと拍手する魔王樣。

 

「「え?」」

 

私とエリオの声がハモる。

「ちゃんと、障壁抜いて、ダメージ通ったよ♪ほら、ここ‥」

と、魔王が自分のバリアジャケットを指差す。

するとそこには、よく見ないと、わからない程度に小さい綻びが、できていた。

 

「「はぁ~~‥」」

 

私達は二人して脱力してその場に坐り混んでしまう。

「エリオ‥よく‥頑張ったね‥」

 

「キャロは‥闘い方について、ジム君とフェイトちゃんに後でお説教してもらうからね?」

 

「ハイッ!」

 

「そんなぁ~‥」

 

私とエリオの明暗が別れる。

解せぬ。

でもまあ。頑張ったのは事実だし、そこは認めてあげよう。ドダイからジェガン位には格上げしてあげよう。少しは今まで、散々ボコった成果が出ているのかもしれない。

 

「それじゃ二人ともお疲れ様♪キャロはしっかりシャマル先生の診察受けてね?楽しかったね♪またヤろうね♪」

 

「お疲れ様でした。ありがとうございました」

いやです。

私は視線を逸らして、答える。

魔王が寂しそうな眼を向けてくるが、見ないふりをする。

私は人間なので、普通に会話出きるんです。

なので、肉体言語なんていう、特殊なコミニュケーション方法は覚える必要がないんです。

こうして漸く今日の、訓練が終わった。

てかお腹いたい。

 

この後、シャマル先生にアバラが折れてると診察され、

目茶苦茶説教された。

解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はフェイトさんとの、デート回にでもします(///ω///)♪多分(笑)気まぐれ次回予告でしたm(__)m


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男として。

お待たせして申し訳ありません。
思ってた以上に長くなってしまった。フェイトさん可愛いんじゃ~(///ω///)♪心が、ぽよんぽよんするんじゃ~


朝の食卓に、パンケーキの焼ける甘い薫りが漂う。

フライパンの柄を持ちながら、拳でトントン。

――おし。上手に返せた。

再び蓋をして、火を弱めて、さらに焼き上げる。

牛乳の代わりに炭酸水を使うと、フワフワに焼き上がるのはいいのだが、ひっくり返しに結構気を使う。

そろそろいいかと蓋を開けると

フワフワに膨らんだパンケーキがお目見えだ。

皿に乗せて、バターと蜂蜜を添えて、食卓へ。

「お待たせしました」

待機していた女性陣から黄色い歓声が上がる。

「御好みでどうぞ」

 

「マヨは無いの?」

 

「無いっす」

マヨラーの魔王樣からリクエストが入るが、流石に、パンケーキにマヨは合わないと思いますよ?

少々呆れながら返すと、

 

「うー。残念なの‥」

 

「無いのはなのはさんが全部マヨチュッチュしちゃったからですからね?」

人ん家のマヨをマヨチュッチュしないで頂きたい。

ていうかなんで魔王もしれぇ!も当然のようにいるんですかね。

「ごめんなさいなの‥」

と、への字眉毛の魔王樣。

いや、良いんですよ?どうせ、家主さんは‥

と、フェイトさんを見ると、

「許せるっ!」

と、握り拳で宣言していた。

やっぱりかーと、空のマヨネーズをビニールのゴミ箱に捨てる。

その瞬間、フェイトさんがもったいない‥と、呟いた。正気に戻って下さい。衛生兵ー!お客様の中に衛生兵はいませんかー?

誰か‥うちの上司がなのキチなんですが、治療してくれませんかね?

「フェイトちゃん‥」

 

「なのは‥」

二人の距離は徐々に縮まり、

――caution!――

―緊急ゆるゆり警報発令!――

属性持ってない方は避難してください。

俺は、ユリ属性は特に無いのだが、

でもせっかくだから、見ていよう。

これなんてntr?

ビデオレター来ちゃうの?

信じて送り出したフェイトさんが目茶苦茶になっちゃうの?

震えるぞハート!燃え尽きる程嫉妬!

股間に10秒チャージ。やっぱりなのフェイは最高だぜ。

二人の唇の距離が零になろうかと言うところで、八神司令の咳ばらいが、響き渡った。

「あー?二人とも?朝っぱらから何してるん?」

すげえ。あの雰囲気に割って入るなんて‥

流石しれぇ!俺達に出来ない事を平然とやってのける。そこに痺れる憧れるぅ!

「さ。冷めないうちに頂こうや」

それもそうかと、魔王も腰を下ろす。

「うわっうまっ!」

もっきゅもっきゅと、咀嚼しながら、魔王樣が眼を輝かせる。

「‥とまあ、そんな感じかな‥」

朝食中に魔王樣から告げられたのは、キャロとエリオの訓練終了のお知らせ。

「そうか‥思ってたより早かったな‥なのはちゃん‥ご苦労様‥」

「二人共伸び盛りだしね♪後は実戦あるのみだと思う」

「ほなジム君。二人に事務仕事教えたってな」

 

「承知しました‥ついでなんで、ご報告を‥シャリオ技術主任に御協力頂いて、作ってたシステムがあるんですが、テスト兼ねて二人で試したいんですが‥聞いて頂いてもよろしいですか?」

「ほう?言うてみ?」

「事務仕事のマニュアルを、デバイスにインストールすることで、誰でも事務仕事をこなせるようにするシステムを考えてまして‥」

「そんな事が可能なんか?!」

「勿論容量に空きがあるインテリジェントデバイスに限られますが主任の言を借りるなら可能だそうです」

そう。残業の甲斐あって、今は正常化した六課の事務作業だったが、俺とフェイトさん、はやてさん三人が、俺の村への捜査で三人共に六課を空けた数日間で、業務は再び自転車操業に戻っていた。このままじゃいたちごっこである。勿論現在は、フェイトさんと俺で頑張って、また正常化させている。

そこで俺が考えたのはナレッジマネジメントだ。

思い付いたアイデアを主任に相談したところ、二つ返事で突貫作業でプログラムを組み上げてくれた。

あの人仕事超速い。腐ってるけど。技術主任の肩書きは伊達じゃないようだ。その時の彼女はガチで格好良かった。フェイトさんが居なければ、惚れる迄あった。

とりあえず二人のデバイスにインストールして作業を俺が監督しながら、問題無いかチェックしながら試して、問題無ければ実装というテスクスケジュールをたてていた。

「報告遅れてすみません。実現可能かまだわからなかったので、ぬか喜びさせても、申し訳ないと思いまして‥」

「ええよ。報告くれたって事は、実現レベル迄来たってことやんな?ぬか喜びじゃないんよね?」

 

「はい」

 

俺の返事にパアーっと表情を綻ばせる八神司令。

「ナレッジマネジメントは私も考えてたんよ‥ジム君のスキルを手っ取り早く共有化出きひんかな?って‥でも畑違いで、全然方策思いつかんかったんよ。動いてくれて助かったわ‥出きる部下に囲まれて、私は幸せ者やね‥」

「八神司令。良禽木を選ぶと申します。」

自分を良禽に例えるとか、自意識過剰で超気恥ずかしい。違うから。この場合の良禽はシャリオ技術主任と、フェイトさんの事ですから。俺、そんなに恥ずかしいヤツじゃないですからー!だが、思いは伝わったようで、

八神司令は少し涙ぐみながら小さく頷いている。

「ほな良禽さんには御褒美やらんとな‥」

と、悪戯っぽく微笑む司令。

「ジム君とフェイトちゃんには特別休暇あげるわ二人でどっか遊びにいっといで‥」

これは粋なことをなさる。

戸惑いながらフェイトさんを見ると、

フェイトさんは少しはにかみながら、頷きを返してくれた。

「しれぇ‥!ありがたく‥」

 

「良い木やろ?」

 

「これ以上無く!」

 

 

◆◆◇◆◇

見事な晴天に恵まれた朝。

隊舎の入り口で待っている俺の目の前にスポーツカーが付けられる。

「おはようジム。待たせちゃったかな‥?」

車窓が開き、フェイトさんが顔を覗かせる。

「おはようございます。いえ、全然待ってませんよ」

「そう。良かった。じゃあ乗って?」

自動でドアが開き、俺は車内へと若干緊張しながら身体を滑り込ませる。

車内のフェイトさんは何時もよりもたいぶラフな格好で。

黒のタンクトップにデニムのクラッシュホットパンツ。それに黒のニーハイブーツによる絶対領域のコントラストが眩しい。チチ!尻!太もも!の三種の神器が、ばバーン!と効果音付きで俺の視線を捉えて離さない。

「何処にいくんですか?」

俺はなんとか視線を剥がしながら、胸の高鳴りをごまかすように、目的地を聞く。

「ジムとならどこでもいいんだけどね。せっかくだし、街に出ようかなって‥」

おっと。更に心臓に深刻なダメージが。

「今日の‥服装。素敵ですね‥」

「ふぇっ!?」

何かにおどろいたように、フェイトさんはハンドルを滑らせてワタワタする。

キキーッ!とブレーキ音を響かせながら、車は何とか停止する。

どうしたのだろう?と、フェイトさんを見やると

フェイトさんは真赤な顔で、ハンドルに突っ伏しながらこちらを見ていた。

「‥本当に?」

囁くような確認。

この人は本当に‥自分の魅力を相変わらず理解していない。生れの複雑さ所以か、自分を肯定する事が苦手なようだ。無理もない。親にさえ否定されてしまったのだから。親が居ないよりも、ある意味キツい事じゃないだろうか。だから、俺はフェイトさんを肯定する。

どんな時でも、この優しい姉を肯定してあげるのだ。

「勿論です。お恥ずかしながら、かなり見蕩れちゃいました‥不躾でしたらすみません‥」

「もう‥今日なんでそんな他人行儀なの?」

「えっと‥せっかくのデートですし‥今日は家族としてじゃなく、一人の男としてみてほしいなって思いまして‥」そう。せっかく八神さんがくれたチャンス。家族のお出掛けで終わらせたくない。

「ふーん‥生意気だね‥ふふっ‥」

少しはにかんで、悪戯っぽく微笑むフェイトさん。その微笑みは、いつもの尊敬する上司でもなく、優しい姉でもなく、

出逢ってから初めて見る色気を含んでいた。

「いや‥でした?」

少し不安になり、俺はつい訊ねてしまう。

「ううん‥ふふっ‥うれしいかな‥♪」

そう答えて、本当に嬉しそうに微笑むフェイトさんはとても綺麗で、綺麗なお姉さんは好きですか?僕は勿論大好きです。

◆◇◆◇◆

街に着いた俺達は、車を駐車場に入れ、散歩することにした。

「あ、あそこのアイス美味しいらしいよ‥」

フェイトさんが指差した先にはワゴン車型のアイス移動販売店。

「何にします?」

「んーじゃあチョコミントで」

「了解」

チョコミントと、俺は抹茶を購入。

フェイトさんにチョコミントを渡して、二人でペロペロしながら、歩き出す。

いかがわしい事じゃないからね?

「ジム。お金‥」

 

「今日はご馳走させてください」

「でも‥」

「今日の俺は家族でなく、一人の男としてフェイトさんを楽しませたいと思っています‥だから、お願いします」

フェイトさんはそこでひとつ息を吐くと、

「うん‥わかった‥ありがとう」

 

◆◇◆◇◆

それから、フェイトさんが希望したのはなんとゲーセン。

ひょっとしたら、俺に合わせてくれたのかもしれない。

それか、誰かの入れ知恵か‥。だってフェイトさん明らかにゲーセン慣れしてないし。入るなりずっとキョロキョロしてる。可愛い。

「ジム。どうする?何で遊ぶ?」

可愛いからっていつまでも眺めているわけにもいかんね。しっかりエスコートしますかね。

「プリクラでも如何ですか?」

「プリクラ‥!うん!聞いたことあるよ!やろう!」

「こちらへどうぞ‥フレームを適当に決めて、後は御好みでポーズとってみたり‥」

「ポ、ポーズ?ジム。教えて‥」

先ずは当り障り無く、腕組みして背中合わせでドヤ顔してみたり、フュージョンポーズを指導してみたり。困りながらも付き合ってくれるフェイトさんに俺の新たな性癖の可能性を感じながら、俺達は楽しんだ。

「プッ。変なポーズ‥」

出来上がった写真を見ながら、クツクツと小刻みに震えているフェイトさん。フェイトさんが楽しそうで何よりです。

可愛い。

 

「ジム。次は?」

 

「ちょっと運動がてら、エアホッケーでも如何ですか?」

フェイトさんに快諾を頂き、俺達はエアホッケーの台へ。

これ結構昔からある定番だけど、全然飽きないんだよね。結構熱くなれるし。フェイトさんも楽しんでくれるといいな。

結果、フェイトさんの反応速度は異常。俺達は周りのお客が軽く引く位のハイスピードハイレベルバトルを繰り広げてしまった。

時々、フェイントも混ぜて、点をかっさらうと、フェイトさんはジト目で

「今のはズルいよっ!」

と、嬉々としてクレームを付けてきた。

フェイトさんが楽しそうで何よりです。

可愛い。

「ふう。軽く汗かいちゃった」

 

「どうぞ」

 

そう思って、買っておいたジュースを渡す。

「ありがとっ。フフッ‥おいしっ♪」

 

「さっ。ジム。次は?」

 

「次は不朽の名作KONAMIだけに(小波感)ビシバシチャンプです!」

これは、ルールや難しい操作もいらないミニゲームの対戦なので、ゲームが得意不得意関係なく遊べる名作である。結婚式でパイ投げ遠投等、意味のわからない、ユニークなミニゲームもあり、飽きさせない。そして、俺とフェイトさんは時間を忘れて、ビシバシボタンを叩き続けた。

「は~楽しかった♪」

 

「それは何よりです」

可愛い。

 

「手のひら痒くなっちゃった」

 

「あははわかります」

 

ボタン叩きまくるから、終ると手のひら痒くなってるんだよね。

二人してハエのように手のひらを擦り合わせているのが可笑しくて、ついつい笑ってしまう。

さて、お次は‥と、遊ぶゲームを探していると、フェイトさんがクレーンゲームの前でぬいぐるみの山をじっと見ていた。

「何か気になるモノでも?」

「うん‥あれ‥」

と、フェイトさんが指差したのは‥某金魚の糞こと白蛇のナーガのぬいぐるみ。

アイエエエ?ナンデ?ナーガナンデエエ?

疑問が、顔に出てたのか、フェイトさんが少しはずかしそうに、付け加える。

「なんのキャラかは‥知らないけど、何となく‥母さんに、似てて‥」

なるほど。これはとるしかあるまいて。

自慢じゃないが、俺はクレーンゲームは苦手だ。というか、へたくそである。

だがそれでも、漢には、戦わねばならない時がある。恐ろしい勢いで、手持ちの100円玉が消えていく。

―偉い人は言いました。クレーンゲームは貯金箱であると―

俺の‥諦めたらそこで試合終了ですよ。

理論に基づいた、コイン投入の連打に、フェイトさんが顔をひきつらせながら、俺の手を押さえる。

「ジム‥!もう良いから!気持ちだけでうれしいから!」

「大丈夫です。フェイトさん。俺には最終奥義がありますから!」

「そんなものが‥!」

そんなものがあるなら、最初から使えよとは思っても言わない。流石フェイトさん。大人である。

逝くぜ!最終奥義!

俺は口に両手を当てて、

「スタッフ~!」

 

「はーい!まさかの時の、何でもおまかせ、いつもニコニコあなたの背後に這い寄る店員。何かご用ですか?お客様ぁ!」

随分ノリの良いスタッフである。

「あそこのあずにゃ‥いや、ナーガ。取りやすい位置に動かしてくれ‥」

すると店員は手慣れた手つきでケースの鍵を開け、ナーガを「ゴッド鷲づかみぃ!」とか叫びながら、掴むと排出口のすぐそばに置いてくれた。

これなら、チョンとクレーンのアームを当てるだけでとれる。どんなに下手なクソ客でも取れる位置取りである。って誰がクソ客やねん。

左アームは添えるだけ‥!そして、無事にナーガを落とす。やはり天才!

そしてナーガのぬいぐるみをフェイトさんに渡すと、フェイトさんはぬいぐるみをぎゅっと胸に抱くと、

すげえ。ぬいぐるみが胸に埋まって見えなくなった。手品かな?

「ジム。ありがとっ♪お礼にお昼はジムの好きなもの食べようか♪何が良い?」

もうそんな時間か。確かに腹の虫がさっきから鳴いている。ゲーセンの音できづかなかったけど。

「そうですね‥行き着けのラーメン屋が近いんで、そこ良いですか?」

「勿論♪その前に、もう一回、プリクラ撮ろっ♪」

 

当然快諾して、再び、機械の中へ。

今度はもう慣れたのか、フェイトさんが設定を全部してくれている。

シャッターが切られる瞬間、俺の頬に湿った、でも暖かい感触が触れた。

出来上がった写真には、しっかりと、フェイトさんが俺の頬に口付けしている瞬間が捉えられていて。それをみて、俺の顔は凄まじく熱をもつ。

見ると、やはりフェイトさんは悪戯っぽく、舌を出して、色気を醸し出しながら、ウィンクをくれるのだった。

「今日は凄く楽しかったから、そのお礼。また来ようねっ♪」

 

「はいっ♪」

◆◇◆◇

 

「こいこて、バリカタ、チャーシュー脂身、情熱最大で」

 

「「あいよっ!」」

 

「えっ‥何の呪文?」

「フェイトさんはあまりラーメン屋来ませんか?」

 

「うん‥少しはいりづらくて‥」

確かに女性ははいりづらいよね。

「大将、味玉追加」

 

「へい!味玉!」

そして大将がれんげに味玉を載せて、差し出してくる。俺はゆっくりとカウンターにラーメンの器を置く。

「味玉入りやす!さあ‥みなさん。御一緒に~‥!」

 

「よっ!」

大将の掛け声と共に、れんげから味玉がラーメンの上に着水する。

それと同時に数人の店員と他の常連客(勿論俺も)

が、両手を、万歳する。

「「元気玉!」」

 

「お付き合い。ありがとうございやした~!」

 

フェイトさんはポカーンとしている。

無理もない。これはこの店ならではのローカルルールだ。

常連には既にお馴染みだけど、味玉を頼むとここまでが、一連の流れでお約束となっている。

 

このあとめちゃくちゃ替え玉食べた。

「すみません‥ラーメン屋なんかにつれてきてしまって‥」

「ううん。美味しかったよ♪」

「もっとおしゃれなお店も考えたんですけど、フェイトさんには、俺の好きな店も知って欲しくて‥」

すると、フェイトさんは俺の頭を抱き締めて、

「うん‥ジムの好きなもの‥もっと教えて‥?」

フェイトさんです。と、危うく言いそうになってしまった。すごい!このおっぱい凄いよぉ!

マジで息出来ない‥

「今日はジムにいっぱいドキドキさせられちゃったよ‥それに凄く楽しかった‥シャーリーに借りた雑誌で、ゲームセンターに初めて来てみたけど、こんなに楽しかったのは‥ジムのお陰かな‥?」

「ありがとうね‥大好きだよ‥ジム‥」

フェイトさんが何か言ってるけど、俺は息が出来なくて、意識が朦朧としていて、よくわからなかった。だって、おっぱいで耳も塞がれてるし‥

視覚も聴覚も呼吸さえも封じてしまう。フェイトさんのおっぱいはシャカなの?乙女座の聖闘士なの?いいえ。乙女のおっぱいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




梅雨入りして台風発生と、お天気崩れる日々になりそうですが、私はストーリー考える時、散歩しながら考えてるんですね。なので、雨は憂鬱です。


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フェイトの想い。

大変遅くなって申し訳ありません。きららにこみっくガールズ参戦ということで、急遽出稼ぎに出ておりました(笑)あばばば(。>д<)許してください。何でも島村が頑張りますから!


ジムとのデートが終わり、自分の部屋に戻ったフェイトはとりあえず目に入った鏡の前で自分の髪を弄りだす。軽く目にかかり始めた前髪を鬱陶しそうにかきあげながら、

「そろそろ‥切ろう‥かな‥?」

誰にともなく呟いた言葉に答える者は当然誰もいない。

前髪をかき分けながら、フェイトは気付く。

顔がにやけていることに。

「うん‥楽しかった‥な‥」

「前髪‥切ったとしたら‥ジムは、気に入ってくれるだろうか‥」

そう思うと怖くなり、髪を切るのはやめようと思い留まるフェイトであった。

初めての感情に若干の戸惑いを覚えながら、多少の痛みを伴いながらもどこか心地よい鼓動のリズムに手を当てながら、自分の格好を見下ろす。

初めて着る服装で若干不安もあったけど、彼は素敵だと言ってくれた。

その時の事を思い出すと、フェイトはまた自然と口の口角が上がってしまう。

スマホを開き、LINEを機動。

《ティアナ。彼喜んでくれたよ‥ティアナの撰んでくれた服装バッチリだったよ‥ありがとうね‥》

《好感触でした?》

 

《うん‥素敵ですって言ってくれた(///ω///)♪》

《うわっwwwwwあの子そんな事言うんですねwwwww楽しかったですか?》

《うん‥嬉かった‥し、楽しかったよ(ノ´∀`*)》

《それは良かったですね。》

 

《それでそれで?何か進展ありましたー?》

《進展って程じゃないんだけど‥今日、彼がね‥家族じゃなくて、一人の男として見て欲しいって‥》

 

《(≧▽≦)(/▽\)♪(/ω\)キャー》

 

《それで何て返したんですかー?》

《それがね‥嬉しくて、頭真っ白になっちゃって‥つい生意気だね‥って(´・ω・`)》

 

《お姉さんぶるフェイト隊長カワユス!》

 

《失敗しちゃったかなぁ‥?》

LINEの返信を打ち込みながら、気分が落ちこんでくる。せっかく彼が踏み込んでくれたのに、スカしてしまった自分に罪悪感を感じる。

「~~~~」

私はベッドへとポスン!と腰を下ろす。

すると、ポトリと何かが膝に落ちてきた。

見ると、彼がとってくれたぬいぐるみだった。

彼から貰って、嬉しくて抱き締めて、そのまま胸に挟まってたようだ。

私はぬいぐるみを抱き上げると、「フフッ‥」

と、笑みが溢れてしまう。

これを取る為に、必死にチャレンジし続けていた彼の必死な顔が思い浮かぶ。そして、彼と遊んだゲームの数々。

「楽しかった‥な‥」

私はぬいぐるみをゆっくりとベッド脇のサイドテーブルに載せて、座らせる。

ぬいぐるみの頭を指先でチョンと一付き。

「母さん‥私‥好きな人が出来たかも‥とても‥優しい子なんだ‥弱い私をいつも支えてくれて‥母さん‥アリシア‥二人がもしここにいたら、なんて言うかな‥祝福してくれたら‥うれしい‥な‥」

改めて、口に出すと、無性に恥ずかしさが込み上げてきて、室内には誰もいないのに、私は枕に顔を埋め、顔を隠す。そのまま寝転ぶと、それでも修まらない恥ずかしさを誤魔化すように足をバタつかせる。

 

「~~~!」

 

そして、声にならない叫びを上げた。

ピコン。とLINEの通知が響き、ティアナかなと思いつつ。画面を見ると、

《今日はとても楽しかったです。ありがとうございました。フェイトさんさえ良ければ、また御一緒出きると、うれしいのですが‥》

 

 

‥彼だった。

再び私の顔は一瞬で沸騰し、私はまた、枕にダイブするのだった。

ピコン。

再び通知が響く。今度はティアナだった。

少しガッカリした。

《それで、男として見て、フェイトさんはどうだったんですか?》

どうだった?男として、ジムを‥男として‥

私はまた顔が熱を持ち、ゆっくりと後ろに倒れていった。男としてのジムを‥私は憎からず思っている。それは最早疑わない。‥だが、女としての私はジムには、どう映っているだろう‥

不安感に

苛まれながら、私はノロノロと、ティアナに返事を返す。

《多分‥好き‥です‥》

 

《(゚∀゚ 三 ゚∀゚)キターー!》

《って‥多分って何ですかー?!》

 

《だって、好きとかよくわかんないもん‥》

私は今まで男性とお付き合いしたことはない。

《今まで、好きになった人はいないんですかー?》

《強いて言えば、なのはかな‥》

《知ってた。》

‥《それにね‥ジムが私を女としてどう見ているのかはわからないし‥》

 

《ていうか男として見て下さいって‥軽く告白っぽ‥いや、何でも(ヾノ・∀・`)です》

《それに‥ジムが好きなのは、キャロだと思うんだよね‥》

《あー‥。あの二人仲良すぎですもんね(´д`||)》

 

(でしょ?)

《でも、一線は越えてませんよ多分。だから、先にフェイトさんが越えちゃえば良いんじゃないですかね?》

 

「ブフッ!?」

予想外のティアナからの返信に私は思わず噴き出す。

《ティ、ティアナは過激だね‥》

 

《そうですか?今どきこれくらい普通ですよ?》

 

《そ、そうなんだ‥》

 

《アイツ多分童貞ですし、男なんて、童貞奪ってやればコロリですよ(*`・ω・)ゞ》

 

《う、うーん‥》

 

ジムと‥一線を‥想像してしまって私はまた顔が熱を持ち、枕に倒れ伏した。

 血管破けちゃうよ‥

 

「そうだっ‥」

 

私は勢い良く身体を起こし、

バッグから新品の手帳と、プリクラを取り出す。

そして、適当に開いた手帳のページに日付を書き、プリクラを綺麗に貼っていく。

雑誌で読んだ知識だけど、こうして思い出を残す風潮があるらしい。

貼ってみると、なるほど。確かに、これは良いかも。プリクラの小さい枠の中には、所狭しと、ぎこちなくポーズを決める二人。

それを見るだけで思い出として、情景が鮮やかに甦る気がした。

そして、この手帳いっぱい迄、プリクラを撮り集めたいと思った。

そして私は出掛ける寸前迄読んでいた。シャーリーから借りた雑誌を手繰り寄せる。今回はゲームセンターにしたけど、他にも行ってみたい所はあるのだ。ジムもまた一緒出来たらうれしいって言ってくれたし、次はどこに行こうかと、ページをめくりながら、思いを馳せる。

次の休みはいつになるかわかんないけど‥と、タメ息をひとつ。明日はスカリエッティとの取引現場に突入予定だ。エリオとキャロも、なのはの訓練を卒業したわけだし、ジムもいるし、戦力的には十分な筈だ。

明日の作戦に思いを馳せていると、再びスマホが、震えた。ティアナだ。

 

《因みにアイツの何処が好きなんですか?》

 

《えーっと‥お料理美味しいよ?》

 

《意外( ; ゜Д゜)胃袋掴まれちゃったんですねw》

《?ストマッククローなんてされてないよ?》

《胃袋掴み(物理)じゃないですからwそんな‥なのはさんじゃあるまいし‥あれ?すいません。来客みたいです》

 

《こんな時間に?》

 

その後、何分待っても、既読はつかなかった。

大丈夫だろうか‥なんだか心配になって私はもう一度LINEを送ってみることにした。

《ティアナ?大丈夫?》

《なの‥なのなのなのなのなのナノナノナノナノ》

返信来たけど‥どうしよう。全く大丈夫じゃ無さそう。

ティアナは明日の作戦不参加‥と。

私はとりあえずスマホの電源を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 




大阪の地震怖いねー((( ;゚Д゚))次は関東かな((((;゜Д゜)))きっとスバルが、助けに来てくれる筈(///ω///)♪え?なのはさん?作中で大体酷い扱いしてるから、多分スルーされるね(ToT)


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初めての実戦(ハーフライトニング)。

先ずは、サッカーW杯。日本初戦勝利おめでとう(///ω///)♪勝てると思って無かったので、うれしいです(ノ´∀`*)このまま、セネガル戦も頑張ってほしいですね(ノ´∀`*)


ここは、とある洞窟。

ひんやりした空気とジメジメした湿度で体感温度が余計低く感じる暗い洞窟内を俺達は進んでいた。

メンバーは俺、キャロ、エリオ、フェイトさん、なのはさんの5人だ。ティアナさんは謎の体調不良で、スバルさんは、そんなティアナさんの看病で、不参加だ。

それにしても、謎の体調不良て‥

心配だ。まあ。女性だし色々あるんだろう‥

そんな事を考えながら、歩みを進めると、やがて、開けた場所に出た。

ホールのように広がっている空間の中央に、何人かの人影が見えた。

紫の長髪に白衣を纏った男が一人。他にその男を中心にして、横一列で此方に向かって並んでいる、年齢もバラバラの女性達。

「スカリエッティ‥!」

フェイトさんが後ろから一歩前に出る。

あれがスカリエッティか。

並んでるのが、戦闘機人部隊。ナンバーズかな?

 

と、視界の左で何かが光った。

左を向くと、そこにも女が一人。ゴツい対戦車ライフルみたいな武器を構えていた。

狙いはフェイトさんか‥!

俺はフェイトさんの前に身体を投げ出す。

と、同時に、ライフルから一条の光線が放たれた。

わー。結構シャレにならない威力っぽいなー。

「蒸着!」

説明しよう!

修練を重ね、フリードとの、シンクロ率400%を達成した俺ならば、0.05秒で聖衣を蒸着することが可能なのだ。

向いくる光線に、最早見慣れた翠の輝きの盾を掲げる。

光線を盾で受け止めたは良いものの、その勢いに押され、俺は後ろへと押されてしまう。

両爪先に力を込めて、なんとかその場で押し留める。

が、それが良くなかったのか‥盾で受け止めていた光線がまるで風船のように、膨れ上がり、その場で爆発した。

◆◆◇◇

私は呆然としていた。

ジムが私を庇い、敵の砲撃を受けてしまった。

私の目の前で大爆発に、巻き込まれたジム。

私は震える足でなんとか立ちながら、砲撃手を探す。

‥が、既になのはが、制圧しているようだった。

相手砲撃手をバインドで雁字搦めにして、サッカーボールのようにリフティングしていた。

それより、ジムは!

「あー‥びっくりこいたー‥」

と、能天気な声でジムが煙の中から現れた。

彼の周りは、砲撃の余波で所々地面が溶けていた。

改めて、砲撃の威力の凄まじさが伺われた。

それでも、彼はピンピンしている。

確かに盾で受け止めていたけど‥おかしくない?

ジムは本当に人間なの?

「フェイトさん!」

 

ジムの警戒を孕んだ呼び掛けに

私は益体もない思考を中断する。

ジムの指した方角を見ると、敵がなのはを囲むように動いていた。

 

いけない!いくらなのはでもあの人数のAAクラスに囲まれたら危険だ。‥多分。危険だよね?

「キャロ!エリオ!」

「「はいっ!」」

私の呼び掛けに意図を察してか即時に二人揃ってなのはに向かって走り出す二人が頼もしい。

ジムは既に走り出している。私もバルディッシュをセットアップして地面を蹴るのだった。

◆◆◇◇

ジム君を砲撃した敵女性を手早く無力化し、リフティングして遊んでいたら、それが相手の逆鱗に触れたのか、一人の女が向かってきた。

茶髪のロングにカチューシャをつけた、まだあどけなさの残る少女。魔力のダガーを両手に構え、

がむしゃらに振り回してくる。

「よくも‥ディエチ姉樣を‥!」

相手の動きを一切意識せず、ただ振り回すだけの行為。確かに、スピードは早いけど‥見切れない速度じゃない。欠伸をしながらでもかわせる斬撃。軽く、ステップを踏んで、左右に動くだけで、その攻撃は、私には届かない。

少女の顔に悔しさが滲む。

と、背後に殺気を感じた。

赤毛のショートの勝ち気な瞳の少女が向かってくるのが見えた。

どこか、スバルに似ているその少女の右ストレートを、私は首を少し傾けてかわす。と、さらに右から赤毛を後ろで纏めた少女がサーフボードのようなものに乗って、こちらに向かってくるのが見えた。

―イラッ―

ちょっといい加減うざったいかな。

どうしよう。蹴散らすのは簡単だけど、

この相手、キャロとエリオに実戦経験積ませるのに、丁度良いレベルなんだよね。

見ると、キャロもエリオも向かってきてるし‥

うん。二人にヤラセテみようかな。

失敗したなあ‥あの砲撃手も片付けないでおけば良かった。

ティアナも締めないで、参加させれば良かったなあ。ティアナを指揮役において、キャロ、エリオ、スバルで当たらせたら、経験値稼ぎに丁度良い相手じゃないか。教導役失敗だなあ‥はやてちゃんに後で謝らないと。

 

と、私が後悔している間に、サーフィン少女がボードから砲撃してきた。

その砲撃を片手で弾くと、サーフィン少女は顔を青ざめて、逃げ出そうとした。

勿論逃がす筈がない。しっかりエリオとキャロの肥やしになって貰わないといけないからね♪

私がサーフィン少女の逃げ道に回り込むと、

何を思ったかサーフィン少女はボードの上で土下座を始めた。

どういう事なの?

私がまるで弱い者虐めをしてるみたいじゃないか。

すると、サーフィン少女を庇うように、赤毛のショートの少女と、茶髪のロングの少女が立ちはだかった。

美しい姉妹愛なの。だが無意味だ。

二人は震えているが、安心してほしい。今はまだ何もしないから。

私は安心させるように、ニコッと微笑むと、ゆっくり前に進んだ。

すると、二人は向き合って頷き合うと、覚悟を決めたような顔で襲いかかってきた。

解せぬ。

 

私は前に進みながら、最小限の動きだけでその攻撃をかわす。

周り、そして当事者からはすり抜けたように見えたかもしれない。

二人とも自分の得物と私を交互に見ながら、呆然としている。

まあ。今の動きが見えるのは、フェイトちゃんとジム君位だろうし、仕方ないと思う。

頃合いなので、私は後ろにゆっくり退がる。

そんな私の横にキャロとエリオが並ぶ。

「二人とも助けに来てくれてありがとー♪」

私が笑顔でお礼を言うと、二人はひきつった笑顔を浮かべた。

どういう事なの。

 

《はい。注目!作戦&ミッション発表するよ~♪ドンドンパフパフ~♪》

 

《今日は折角の実戦チャンスだからね♪出きるだけ二人に戦ってもらうよ~♪》

 

()()()()

 

《声が小さい!》

 

《イエスマム!》

 

《だから、のらりくらりと戦ってたんですね‥》

 

《キャロ‥なんか言った?》

 

《いえ!それで作戦とは?》

《私とキャロが砲撃で敵を分断。そして、エリオが分断された敵を各個撃破で、行こうか!》

《僕ですか!?》

 

《やめろ‥ジェガンじゃもたない!》

エリオが悲鳴のような声をあげる。

キャロはちょっと何言ってるのかわからない。

《私は基本敵を堕とさないから‥二人で敵を殲滅してみせて♪》

《出来なかったら罰ゲームね♪》

 

《鬼!悪魔!なのは!》

 

《は?》

 

《本当にごめんなさい‥》

 

 

 

 

 

 

 

 




ナンバーズ戦数多くてめんどい(笑)
何人か省略するかも(笑)


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ジムVSスカリエッティ。

「アクセルシュート」

 

「シューティングレイ!」

なのはさんの放った魔力弾が螺線を描きながら、戦闘機人のグループに向かう。

彼女達は散開して各々で逃げ出した。その内のサーフィン少女を魔力弾は追尾していく。

「なんで私~~~っ」

サーフィン少女は泣きながらボードを走らせる。

そんな彼女を助けようと、赤毛のショートカットの似非スバルが、魔力弾とサーフィン少女の間に身体を潜り込ませる。

魔力弾に向かってファイティングポーズをとった彼女を1拍遅れて、私の砲撃魔法が襲う。

突然の想定外の攻撃に似非スバルはこちらを睨みつける。

いや、改めて私が砲撃したわけじゃないし。

最初に私が放った砲撃魔法の射線上に勝手に立ちはだかったのはそっちである。

彼女はバカなのかもしれない。

それより、こっちばっか見てると‥

そして彼女を、追尾してきたなのはさんの魔力弾が襲った。

的確に彼女の身体を無数の魔力弾が貫く。

そして、似非スバルはゆっくりとその場に崩れ落ちた。

「ノーヴェ!」

サーフィン少女が慌てて、似非スバルに駆け寄る。

「ノーヴェ姉樣っがっ?!」

同時に悲鳴のような声が途中で遮られるのが聞こえた。

見ると、茶髪のロングの少女の腹に、エリオのストラーダの柄がめり込んでいた。

こちらに駆け寄ろうとしていたのだろう。勢いを止めきれず、彼女はそのまま、前のめりに崩れ落ちた。

エリオにしては上出来である。

さて。私も働かないと。罰ゲームはイヤなのだ。

似非スバルを抱き寄せて心配そうに顔を覗き込んでいるサーフィン少女の背後に音も無く降りたつと、手刀を首スジに落とし、意識を刈り取る。

 

◆◇◆◇◆

私は戦況をじっくり眺めながら、

少なくない満足感を覚えていた。

キャロもエリオもきちんと、指示通りの仕事をしてみせた。敢えて、細かく指示を出さずに任せてみたが、結果は上々。みっちりしごいたし、この程度の相手に遅れを取ることはないと、確信はしていたけど、初めての実戦とあり、やはり不安はあったのだ。何時でも助けにいけるように、待機もしていたが、必要なかったようだ。

少し離れた所では、フェイトちゃんが紫の短髪の女とスピードバトルを繰り広げていたが、リミッター解除してるみたいだし、問題はないだろう。

最早、大勢は決したと言える。

その時、黒い影が遠くで動いた。

―狙いはエリオか。

 

―よっこらショーイチっと。

 

私はゆっくりと身体を浮遊させた。

 

◇◆◇◆

早鐘を打つ鼓動を抑えながら、僕は倒した女性に手錠をかけようと近付く。

初めての実戦だったけど、上手く出来たと思う。

なのはさんとキャロの砲撃に散開した敵の中で、僕が狙ったのは茶髪のロングの少女。気配を殺しつつ、彼女の傍で隙を伺い、

程なくその時は訪れた。

彼女はとりわけ仲間意識が強いようだ。

仲間がやられた瞬間、全くの隙だらけになった。

少し罪悪感を覚えながら、彼女の腹に、ストラーダの柄を吸い込ませる。

柄が、肉に食い込む嫌な感触の後に、彼女は意識を失った。

やった!上手く出来た!キャロ‥見直してくれるかなあ‥

僕、この闘いが終わったら‥ジム兄さんに褒めてもらうんだ‥!

僕はバインドは使えない。

なので、こういう時の為に、手錠を持っている。

これで彼女を拘束して‥

彼女の腕に手錠を掛けようとした瞬間、

ザシュッという足音と共に、黒い影が僕の前に現れた。

その姿は配色以外はジム兄さんに似ていて‥

風にたなびくのは紫の長髪。

違う‥!ジム兄さんじゃない‥!

僕がストラーダを構えるより早く、その影は僕に、拳を突きだした。

速いっ?―かわせないっ!

思わず目を瞑ってしまう‥が、何時まで経っても衝撃は来ない。

ゆっくりと目を開けると、拳は僕の目の前で止まっていた。

いや、正確には手首を掴まれて止められていた。

掴んでいるのは見覚えのある白いバリアジャケット。

なのはさんだ。

なのはさんが助けに来てくれた。安心感半端ない。

「エリオ‥離れてて?」

 

「はいっ!」

僕は即時後ろへと飛び退く。

すると、なのはさんは、それを合図に黒い影に拳を放つ。

―ドカン!―

まるで爆発音のような命中音と共に、黒い影は吹っ飛んでいった。

幾度も地面に激突しながら転がり、やがてだいぶ離れた所で黒い影は漸く止まった。そして尚も立ち上がろうとするが、上手くいかず、倒れ伏した。当然だ。なのはさんのあの打撃を食らって、まだ立ち上がろうとしたことの方が驚きである。

 

「素晴らしい!なんて力だ!圧倒的じゃないか!欲しい!欲しいなあ!その力!フヒッ!」

 

と、気持ち悪く笑いながら、スカリエッティは立ち上がる。目が軽くイッててちょっと怖い。

見ると、流石のなのはさんも少し怯んでいた。そして、スカリエッティはなのはさんに襲い掛かった。

襲い掛かるスカリエッティに向かい、なのはさんが迎撃しようとするが、ガクンと‥なのはさんの体勢が崩れた。見ると、なのはさんの両足を地面から手が生えて掴んでいた。

―いけない!

僕はストラーダで突進の構えに入る。

が、僕が突進するより早く、なのはさんは足を蹴りあげた。

―そう。掴まれている手ごと、足を蹴りあげたのだ。

すると、地面から水色の髪の女が出てきた。いや。引っ張り上げられたのだ。そこからの女の判断は早かった。なのはさんの足を解放すると、素早くまた地面へと潜る。

見慣れない敵のスキルに流石のなのはさんも驚きを隠さない。

そして、少しだけ判断を迷ったようだった。

その迷いの間にもスカリエッティはなのはさんの頭上に到達していて、その腕を振り下ろす。

なのはさんは回避の素振りすら見せない。

まさか、気付いてない?!いや、なのはさんに限ってそんなことあるはずが‥

だが、僕は次の瞬間、解答を得た。

振り下ろされたスカリエッティの腕はなのはさんには届かなかった。

いや、正確には、止められていたのだ。

最早見慣れた、白い鎧。

「ジム兄さん!」

そう。ジム兄さんがなのはさんとスカリエッティの間に立ちはだかっていた。

ジム兄さんは軽々と、盾でスカリエッティの腕を押し除けると、左腕でぶん回しのラリアットのような打撃。スカリエッティはなす統べなく再び吹っ飛んでいった。

ジム兄さんはそのまま追撃へと向かう。

後に残されたなのはさんは心無しか、顔が赤く見えた。

◆◇◆◇

私はボケーっと遠ざかる白い背中を眺めていた。

ジム君が戦闘の様子を伺っているのは気づいていた。

だから多分助けてくれると思って、敢えてピンチになってみた。

予想通り、彼は助けてくれた。

だが、予想外の事も起きていた。

彼が私とスカリエッティの間に立ちはだかった時、彼の予想以上に広い背中に気づいてしまった。

激しく高鳴る動悸に抗いようもなく、私は立ち尽くすしか無かった。

そこに、相手を片付けたのかフェイトちゃんがやって来た。

「なのは。お疲れ様。‥」

 

「フェイトちゃんもお疲れ様」

相変わらず落着く声。私の好きな声。

私は自分の気持ちの揺れがばれないように、慌てて話題を探す。

「そ、そっちは終わったの?」

「?うん‥バインドで無力化してきたよ‥」

「それよりなのは‥?」

 

「にゃ‥にゃに?!」

噛みまみた。

「‥?また、強くなったんじゃない?リミッター‥解除してないよね?」

「え?あ、あー。優秀な教え子達と毎日模擬戦してるからね♪」

「そ、そっか‥ジムともしてるの?」

「ぴぇっ!?し、して‥?にゃ、にゃにを?」

「‥?だから模擬戦を‥」

「あ、あー模擬戦ね。うん。してるよ。まだまだ負けないけど、だいぶ私に匹敵するようになってきたからね♪おかげで楽しくて♪」

 

「そっか‥お手柔らかにね‥」

 

「ぴぇっ!?」

お手柔らかにねって、なんでフェイトちゃんいきなり宣戦布告‥?ハッ?!

まさか、既に気付かれ‥?

私はぐるぐると思考が回り、よくわからなくなっていた。

「あれ‥?なんかおかしくない‥?」

「ぴぇっ!?」

「な、ナナナナナナ何が?!なのは‥何もおかしくないよ?」

 

「‥?いや‥あれ‥」

と、フェイトちゃんが指差す方向にはジム君とスカリエッティが激しく肉弾戦をしていた。

私は勘違いに気づいて、顔が沸騰してしまう。

改めて良く見ると、なるほど。確かに少しおかしい。

「スカリエッティの動きが、少し違和感あるね‥」

「でしょ?まあ、スカリエッティが肉弾戦に強いなんて情報無かったし、闘い馴れてないってだけなのかもしれないけどね‥」

 

◆◇◆◇

闘いながら、違和感が確信に変わる。

始めは、その姿に驚きもしたが、闇黒聖闘士なの?と、双子を警戒して辺りの小宇宙を探ったが、他に潜んでいる相手はいなそうである。

何よりスカリエッティからは全く小宇宙を感じない。聖闘士じゃないなら、何も問題は無い。

どういう原理の鎧か知らないが、スカリエッティ自身の能力は底上げされてるように見える。

いや、元のスカリエッティの実力知らんけど、

何より、スカリエッティの纏っているものは、俺の聖衣、つまり、フリードと、同じ由来のモノのように思えた。

じゃあ、何に違和感を感じているのかというと、

時々、本当に一瞬、一瞬だけだがスカリエッティの動きが、いちいち止まるのだ。

先程のなのはさんと、俺の攻撃でどこか痛めたか?

それとも、単に肉弾戦に慣れてないだけか?

もしくは両方か。

俺はとりあえず、思考に決着を付け、倒しに行くことにした。

先ずは牽制の、右ジャブ。

「ぶべっ!?」

あっさり入ってしまった。

増悪に燃やした目をこちらに向け、スカリエッティが反撃しようとした時、また、一瞬、動きが止まった。

その隙の間に俺はバックステップで離れる。

だが、スカリエッティは追いかけて来ない。

怪訝に思い、見ていると、

「もー!これ邪魔!動きにくい!」

何を思ったか、鎧を脱ぎ始めた。

 

―ぇぇええ‥?

手早く、スカリエッティはすっぽんぽんになり、

俺を指差しながら吼えた。

「待たせたね!さあ!掛かって来るが良い!」

掛かって来るが良いとか言われても‥

そのプランプランしたもの仕舞えや。

男のそれ見ても、戦意減衰しかしねえよ。

って、デカイな‥!

まさか、あれ‥通常時なの?有事の際にはどうなっちゃうの?

くそ‥やられた!男としての、敗北感に俺がうちひしがれていると。

さっさと、あの目障りな対空砲塔を破壊しよう。そうしよう。

―だが、聖衣を着てない人間を攻撃するなど、聖闘士としてあるまじき行為‥。

「さあ‥どうしたね‥?」

スカリエッティが両手を拡げて、近付いてくる。

ブラブラすんな。

リザドのミスティかお前は。

だが残念ながら、ここは洞窟。太陽さんの

逆光援護は期待出来ない。

「さあ‥さあ‥」

にじり寄ってくるスカリエッティ。

正直逃げたい。

え?これ、俺が相手しなきゃ駄目?

―致し方無い。

ならば俺も‥!

 

そして俺は‥聖衣と服を脱ぎ捨てた。

「何でやねんっ!?」

 

「元気ですかっ!?」

そんな俺に、フェイトさんの強烈なツッコミ(延髄切り)が炸裂した。

そして、それから‥俺とスカリエッティはフェイトさんに正座で説教されていた。

下がゴツゴツしてて、大変足が痛い。

「女の子の前で‥軽々しく脱ぐなんて‥君達は変態さんなのかな‥?」

「「だってこいつが‥」」

俺とスカリエッティが同時にお互いを指差し、呟く。

「「ああん!?」」

そして俺達はメンチを切り合う。

そんな俺達を見て、フェイトさんはタメ息をひとつ。

 

「どうする?なのは‥?」

「気が済む迄やらせたら良いと思うの♪」

フェイトさんに意見を求められたなのはさんは、何故かワクワクしながら、そう答えた。

「筋肉と、筋肉のぶつかり合い!まるで、骨と骨がぶつかり合うような、リアルな音を聴かせて欲しいの♪」

「さあ‥ハリーハリー!」

なのはさんに急かされて、ノロノロと、俺とスカリエッティは立ち上がると。ろロックアップで

ガッツリと組み合う。

「レイジングハート‥REC●」

《allright!master!》

「はやてちゃんに良いお土産が出来たの♪」

「何でこんなことに‥」

 

「お前のせいだろうが!」

 

「「ああん?!」」

スカリエッティの呟きに律義に突っ込み、俺達はまたメンチを切り合う。

お互いに押し合いながら、手首を極めようと、手首を手繰り寄せては、いなし。寄せてはいなしの繰り返し。らちがあかん。

股の間に隙を見出だし、そこに、腕を差し込もうとするも、躊躇する。だって、触れちゃうじゃん。仕方無く右太股を取り、持ち上げて、バランスを崩してやる。

それでもスカリエッティは抵抗を、やめない。

俺は頭をスカリエッティの右脇に挿し込み、自分の右腕をスカリエッティの首に巻きつかせ、軽く絞めてやる。首が締まり、スカリエッティが苦しげに、腕をさまよわせる。その腕を右腕で掴み、股の間に持っていき左腕で掴み直す。

―終わりだ。

俺はそのままスカリエッティを持ち上げ、裏投げの要領で、後ろに頭から落とした。

「がっ‥はっ‥!」

完璧だ。

俺はすっくと立ち上り、昏倒したスカリエッティを見下ろすと、両腕を天に突き上げ、雄叫びをあげた。

 ―全裸で。

「ウォウォー!」

そんな俺をレイジングハートが赤ランプを点灯させながら、録画していた。

 

ちょっ‥撮っちゃらめえーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




描写が難しい‥最後ジムの決めた技がいまいちイメージ出来なかった人は、リフトクラッチエクスプロイダーで、ググってみてくださいな(。>д<)
すまぬ‥表現力不足で‥すまぬ(ToT)
うあああぁん!疲れたもおぉぉん!
なのはさんどころか、この六課‥全員‥凶悪‥っ!スカリエッティ一家は泣いて良い。


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嵐の中で輝いて。

少し遅れました。
理由はヲタ恋、コミがが終わって、生きる気力をロスっていたからです。あまんちゅアドバンも終るし‥何かDVDでも、買おうかなあ‥



春の陽ざしの向こうから、初夏の足音が聞こえてくる暦。

 本日は曇天なり。雨が降っていないのが、不幸中の幸いか。曇り空の雲が凄い勢いで風に流されていくが、いっこうに太陽は顔を出さない。ミッド地上、時空管理局隊舎は季節外れの台風に

見舞われていた。まるで、何かの前触れのように

ガタガタと窓を揺らす風。

太陽さんは厚い雲に覆われ、そのご尊顔すら拝めない。

こんな日でもAmazonさんは、休まず品物を届けてくれる。ありがたい事である。

漸く届いた注文の品を片手に、部屋の外へと出る。フェイトさんも確かオフだった筈である。

フェイトさんの部屋への道すがら魔王とエンカウントした。

管理局はラストダンジョンなの?

逃げるコマンドは無駄なので使わない。

「こんにちはなのはさん」

 

「ああ。ジム君こんにちは♪」

 

「凄い風ですね‥洗濯物とか飛ばされちゃいそうですね‥」

 

「本当だね気をつけないとね」

おや?今一瞬だけ‥なのはさんの目が鋭くなったような‥

だが、今はニコニコしている。

 ‥気のせいか‥

「それでは俺はこれで‥」

 

「うん。バイバイ」

胸の前で小さく手を振る魔王樣。

何事も無く、エンカウントが過ぎ去った事に、小さく胸を撫で下ろしながら、フェイトさんの部屋のドアをノックする。

「あ‥ジム‥どうしたの?」

ドアを開けて確認すると、直ぐに中へと迎え入れてくれるフェイトそん。

「注文してた好きな酒が漸く届いたんで‥御一緒出来ないかなと‥」

と、Amazonそんが届けてくれた品物を掲げる。

 

「へえ‥良いね‥さ。入って入って‥」

 

リビングへと通されると、テーブルの上にはパソコンが起動していた。

「お仕事中だったんですか?」

 

「うん‥もう終るけどね‥」

 

部屋は綺麗に片付いている。

さっき迄掃除していたのか、掃除機がコードに繋がっていた。

「お仕事大変なんですか?」

ソファの角に腰を下しながら、フェイトさんに問い掛ける。

「~♪ううん。平気だよ。最近はジムの例のシステムのお陰で、事務仕事も格段に楽になったからね」

鼻唄交りにキーボードを叩きつつ、否定するフェイトさん。なんか機嫌良いですね。

テンションフェイトッシモだ。

俺が遊びに来たから?なんて思うのは自意識過剰だろうか。

そんなご機嫌なフェイトさんを見ながら、持ってきた袋を開ける。

中から取り出したのはビールだ。ただし普通のビールじゃない。

物音に気付いたのか、フェイトさんが振り返り、

こちらをジト目で睨んでいた。

「わっ‥なぁに?それ‥?」

「ビールですよ」

隠し事が見付かったような子供の気分で、フェイトさんに瓶を掲げて見せる。

「これ‥唐辛子‥?」

ご名答。

そう。俺が持ってきたのは350くらいの瓶ビールに唐辛子を漬け込んだモノ、通称チリビールだ。

「頷きながら、もう一本の蓋を開け、煽る。

「かああ~♪」

ビールの炭酸の後から、唐辛子の辛みが追いかけて来て、喉を焼く。

この感覚が、堪らない。

昔飲み屋で見付けて、興味本位で飲んでからすっかり虜になってしまった。

 

「飲みますか?」

フェイトさんが物欲しそうな瞳で見ていたので、勧めてみる。

瓶を手渡され、フェイトさんは少し顔を赤らめながら‥飲み口をじっと見て、躊躇しているように見えた。

 

あれ?もう酔ってます?

まあ‥初めて飲む人はそうなるかも知れない。

俺も初めはおっかなびっくりだったし‥

すると、意を決したようにフェイトさんは一気に煽った。

ゴキュゴキュと、音をたてて、飲み込んでいく。

「プハッ」

半分程飲んだところで口を放し。息を吸い込むフェイトさん。

さて、感想は?

俺はドキドキしながらフェイトさんの言葉を待つ。

「~~~っ!」

と、フェイトさんはバンバンとこちらを叩いてきた。

お気に召さなかっただろうか‥

「~~っおいっし~~♪」

と、思ったらニコニコしていた。

え?じゃあ何で叩かれたの?

「お気に召しました?」

「うん‥これは新感覚‥喉越しが最高だね‥」

良かった。喜んでもらえたようだ。自分の好きなモノを気に入ってもらえるとうれしい。

「辛さは大丈夫ですか?」

辛いのが苦手な人にはそれなりにツラい品物だと思われる。

「うーん‥ヒリヒリはするけど‥壮快感の方が勝ってる感じ?」

「良かった♪トマトジュースで割っても美味しいんですよ?辛くて飲めないって人にはその飲み方も、おすすめです」

「トマトジュースかあ‥うん。合いそうだね♪」

そう言ってフェイトさんは台所に消える。

程なく、台所から、肉の焼ける香りが、漂ってくる。

流石。これに合うツマミはやっぱり肉だと、思う。

ワクワクしながら、ただ待っているのもあれだったので、

パソコンに向かう。

うん。このくらいなら‥

パチパチと、キーボードを叩く。

 

うし。終わり。

 

元の席へと戻ると、丁度フェイトさんが肉炒めをお皿に盛って、持ってきてくれた。

「なんだか懐かしいですね‥」

 

「うん‥そうかもね‥」

「戴きます」

 

「クスッ召し上がれ‥」

テーブルに置かれると同時に、箸を伸ばす。

行儀?知らない言葉ですね。

フェイトさんも慣れたものて、仕方無いなあといった感じだ。好みの、味付けに

お酒も、すすむすすむ。

「うーん‥相変わらず美味しいですね~♪」

 

「そう?ありがとう♪」

 

「毎日食いたいです!」

 

そんな言葉を発した瞬間、空気が止まった。

なんぞ?と、フェイトさんを見ると、顔を真赤にして、目を泳がせていた。

 

「‥毎日‥作って‥あげようか‥?」

 

「それって‥?」

 

フェイトさんの言葉に俺が意味を尋ねると、

 

「ねえ‥?そっち‥行って良い‥?」

 

と、返してきた。

そっち?

どっち?

そりゃここはフェイトさんの部屋ですしおすし。

フェイトさんが行ってはダメな場所なんて、ありませんよ?

俺が頷き返すと、

フェイトさんはギュッと、瓶を両手で握ると、

ゆっくりと此方へ近付いてきた。

そして、

―俺の膝に腰をおろした。

良い匂い。

え?なんぞ?

そしてゆっくり、膝の上で身体を回転させて、俺の胸へと、顔を預けた。

良い匂い。

何事?

殿中でござる。

フェイトさんの顔が近い。

「ジム‥凄い、ドキドキしてる‥」

やめて。報告しないで。言わなくても、自分が1番わかってますから!

胸に顔埋められたらそりゃわかりますよね。

誤魔化しようがないです。

 

「よ、酔ってますんで!」

 

「ジム‥凄く、顔赤いよ‥?」

 

わかってますとも。さっきから、すっごい顔熱いですもん。

 

「よ、酔ってますんで!」

 

フェイトさんが喋る度に、熱い吐息がクビに掛かって、ぼかぁ‥ぼかぁ‥もう‥

そして何よりも、俺の胸に押し付けられる、双丘の感触が‥!

「ジム‥?なんか‥当たって‥あっ‥」

やめて。報告しないで。後生ですから。

しかも、なんで最後のあっ‥て、ちょっと嬉しそうなんですか?

フェイトさんは悪戯を見つけた、お姉さんのように、悪戯っぽく微笑みながら、こちらを見つめてくる。その瞳はどこか、女の色気を孕んでいて、二人の間に妙な雰囲気が、流れる。

俺は吸い込まれそうな目線を何とかはがし、

ふと、窓の外を見る。

と、そこには、風に靡いている、黒光りするダイアモンド‥いや、黒の下着が見えた。

えっ?何でこんな日に外に干してるんですか?

風に煽られた下着を固定しているハサミのひとつが外れ下着を繋ぎ止めているのが、残り一つになるのが見えた。

「危ない!」

 

「えっ?」

 

「洗濯物が‥!」

俺はとりあえずフェイトさんを下し、洗濯物を保護しに向かう。

フェイトさんも俺の意図を、察し、後ろからついてくる。

そして、俺が窓を開けると同時に、無情にも、最後のはさみが外れた。

俺の目の前で風に飛ばされていく、下着達。

―そんな‥俺のお宝が‥!

慌てて、手を伸ばすが当然届かない。

嫌だ。諦めたくない。嵐の中でも黒く光る。その、宝石のような、お宝を、夢を‥俺は諦めたくない。

必死に伸ばした手の先を白い影が通りすぎた。

その影は俺のお宝を掴むと、ゆっくり此方を向いた。

ていうか魔王だった。

「なの‥は‥?」

フェイトさんが呆然と呟く。

「罠だったかー!?」

と、なのはさんが、ガビーン!という効果音でも付きそうな顔で叫んだ。

「「何がっ!?」」

俺とフェイトさんのツッコミが重なる。

「とりあえず、それ‥返してくれる?」

フェイトさんが冷静になのはさんが今も掴んで離さない下着を指して、言う。

 

「だが断る」

 

「ちょっ?!なのはっ!?」

 

「これは風に飛ばされた所をなのはが救ったの。

 

即ち、なのはの、物なの」

 

「いや、その理屈はおかしい」

 

魔王の暴論にフェイトさんも冷静に返す。流石魔王との付き合いが、長いだけある。

 

「そうです‥それは俺のモノです」

 

「ジムも何言ってるの?」

 

フェイトさんの冷ややかな目が俺にも突き刺さる。

超気持ち良い。

なのはさんは黙って下着を懐に入れる。

「ちょっ‥そんな‥男子が、軽々しく、探れない場所に‥!」

返す気はあくまでもない。ということか。

 

そして、なのはさんはゆっくりと右拳を握る。

 

―来るっ!

 

「そぉい!」

 

なのはさんのスリークォーターからの、スマッシュを俺はぎりぎりでかわす。

なのはさんはゆっくりと拳を戻すと、此方に背を向けて、ベランダの縁に飛び乗る。

そして、こちらをチラリと振り返り、

「ねだるな。勝ち取れ‥!」

と、宣うのだった。

「上等です‥師匠!」

お互いの宣戦布告が済み、なのはさんはフッと小さく笑うと、飛び立った。

こうして、何処までも下らない闘いが、幕を、開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ウチのなのはさんはいつも壊れてしまうなあ。
なのはさんヒロイン物もいつか書きたいんだけどなあ‥可愛いなのはさんがなかなか書けない(´д`|||)


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嵐の中の激闘。

案の定なのはさんがなかなか倒れなくて、長くなってしまった‥


風は益々勢いを増し、もはや、嵐の様相を呈してきていた。

上空はもっと荒れているのだろうか?

相も変わらず、雲が凄い勢いで流れていた。

そんな中、俺達は中空に位置取り、対峙していた。

「なのはさん‥それは俺のです‥速やかに返して下さい!」

 

「ハッ!片腹大激痛☆なの」

「これを着ければ、私も魔乳になれる筈なの!」

 

いや、そんなわけないでしょ。

 

「ダメです。なのはさん‥その先にあるのは‥敗北感と、虚無感だけで‥s‥」

 

「黙れ小僧!!」

 

ビリビリと大気を震わせる程のなのはさんの裂帛の叫び。

「君にわかる?ここにちゃんとあるのに‥無いです‥無いです‥と言われ続けられる‥無視され続ける私のおっぱいの気持ちが‥!」

自分の胸を掴みながら、独白するなのはさんに、俺は掛ける言葉が見つからなくて‥

 とりあえず土下座した。

 

「す、スイマセンデシター!」

「でも、なのはさん‥これだけは言わせて下さい‥僕らは、本気でなのはさんが貧乳だと、思っていたわけじゃなくて‥この世の貧乳いじりはすべからく、貧乳が好きなわけじゃなく、貧乳と言われて、恥ずかしがる女の子が好きなだけなんです!フェイトさんのご尊乳は確かに尊いです‥乳が多少小さくても、良いじゃないですか!そんな弱みのひとつや2つあった方が魅力的ですよこれだけは、信じて欲しい‥僕らはみんな、なのはさんが大好きなんだ!」

俺は必死に想いを込めて、なのはさんに叫ぶ。

「熱く言ってるけど、割と最低な事言ってるからね?」

なのはさんの冷ややかな目が俺に刺さる。

 

―伝わらなかったかー。

「最早、問答は無用!」

 

「教えたよね?お互いの主義主張が相容れない時は?」

 

「「全力全壊!」」

俺となのはさんの視線が強く絡み合い、言葉がハモる。

そう。今まで数え切れない程に、模擬戦を繰り返してきて、そこでなのはさんが教えてくれたこと。

―ねだるな。勝ち取れ!

なのはさんが右手を横に一閃すると、無数の魔力弾が浮かび上がる。

「レイジングハート‥とりあえず20ショット‥」

 

《ALLRight‥AXEL shoot!》

 

と、俺に迫る魔力弾。

俺は盾を構えるが‥

―違う!あのなのはさんが只の牽制なんて、するわけない。

脳裏に今までの模擬戦の日々が甦る。

◆◆◆

 

―「良い?ジム君‥君の盾は確かに優秀だけど、戦闘中は、行動のひとつひとつに常に、メリットとデメリットがつきまとうの‥だから、安易に盾に頼っちゃだめ‥相手の行動にも、必ず意味がある。勿論完全に其れを読み解くのは不可能だけど、でも、考える事をやめちゃだめ」

 

 はいっ!」

◆◆

 

考えろ‥この砲撃の意味を‥!

盾で魔力弾を防がせて、爆発に紛れて、俺の視界を塞ぐ、プランに違いない!

 

「なんとぉー!」

 

俺は全ての魔力弾をギリギリでかわす。

ギリギリでないと、射線が変わり、よりかわすのが難しくなるからだ。

信じられない事だが、なのはさんはこの高速の魔力弾を同時に全て精密にコントロール出来るのだ。

かわした魔力弾の行方を見ていると、やはりと言うかなんというか、遠くで全て、方向転換して、再び此方に向かうのが見えた。

俺は再び盾を構える。

 

「かわしたのは良いけど、結局相手を視界から外したら意味ないよね?‥」

唐突に後ろから聞こえた声に凍りつく。

「これをやっておけば、これさえあれば‥無敵なんていう、定石は無いんだよ‥?」

と、背後から俺の盾が掴まれ、首を極められた。

盾はジリジリと、上に持ち上げられ、その間にも無情に、魔力弾がこちらに向かってきている。

あ。これ‥詰んだ。

どうする‥考えろ‥回転して、身体の位置を入れ替えれば‥だが、回転しようにも、空中制御すら力で完璧に押さえ込まれてしまっている。

力でなんとか盾を動かそうとするが、ピクリとも動かない。どうなってんの‥あ、でも力を入れる度に、なのはさんが余計に俺に密着して、背中に胸がペチョンて‥熱い吐息が耳に‥

いやーん。考えに集中出来ない。

これは、確かにちゃんとありますわ。もうなのはさんを胸無いなんて言わないよ。絶対。

アホな事を考えてる間に、魔力弾はもう目の前迄来ていて‥

 ―そうだ!

 

「秘技!盾だけパージ!」

 

と、俺は盾を外し、拘束から抜ける事に成功したのだった。

直ぐに、身を翻し、その場から離れる。

魔力弾は急に外れた盾のせいでバランスを崩したなのはさんに直撃し、

爆煙を巻き上げた。

 好機と見た!

俺は爆発の下に回り込み、突撃する。

 

「廬山‥龍飛翔!」

 

「喰らええ!」

 

「ところがどっこい!」

俺の拳がなのはさんを捉える寸前、なのはさんの右手が優しく、俺を受け流した。

俺は標的を失い、天高く、飛んでいく。

上空で風に煽られ、慌てて、姿勢制御に意識を切り替える。

と、直ぐになのはさんもやって来た。

サツインテールが風に煽られ、邪魔そうである。

だが、顔には満面の笑み。

《It looks fun master!》

 

「うん。凄く楽しい♪」

 

魔王樣が楽しそうで何よりです。

 さて‥どうしよう‥

なのはさんを出し抜く為には、なのはさんの知らない攻撃パターンでいかないと‥。

 

それなら‥

「フェイトさん直伝!プラズマランサー!」

 

俺の唯一の砲撃魔法。

スピード重視の砲撃がなのはさんに向かう。

 

「高速砲?!」

 

なのはさんは簡単にひらりとかわす。

そこに突撃し、回転しながら勢いを乗せて、右回し蹴り。

なのはさんは左手で蹴りを受けるが、そこは流石に男女の力の差。蹴りの勢いを殺しきれず、ほんの少し、なのはさんはバランスを崩した。

其れを好機と、俺は更に拳をつきだす。

 

ドンッ!と、確かな手応え。

見ると、小さなシールドが発生しており、そこから魔力の鎖が飛び出し俺の腕を拘束していた。

―しまった‥なのはさんには此れがあった。

近接殺しの必勝パターン。

ここから、距離をとっての砲撃魔法がなのはさんの十八番である。

案の定、なのはさんは俺から距離を取る。

 

「バインディングシールド‥拘束確認♪」

 

「いくよ♪レイジングハート♪」

 

《yes!DIVINE‥shoot‥》

 

なのはさんの足元に巨大な魔方陣が浮かび上がる。

俺は何とか拘束を脱け出そうともがくが‥拘束はびくともしない。

「ターン!」

と、そこで俺は先程避けられた、プラズマランサーを操作して、なのはさんを狙う。

流石に意識は既に離れてるはずだ。

魔砲に集中してる今なら‥

だが、方向転換したプラズマランサーは突然上空から降ってきた魔力弾に相殺された。

あれは‥まさか、最初のアクセルシューター?!

 

「面白いプランだったよ‥」

「でも残念‥フェイトちゃんの使用魔法は特性から何から全部把握済みなの‥」

 

そりゃそうか‥俺程度が考えつくプランなら‥フェイトさんが既に使用してても不思議じゃない。

そうこうしてるうちになのはさんのチャージが終わってしまった。でも、おかげで考える時間は出来た。

「これさえやっておけば、これさえあれば無敵なんていう定石は無いんですよね?」

俺の言葉になのはさんはすっと眼を細めると、

「そうだよ‥どんな状況でも‥必ず、対処法はある筈なんだ‥頑張って♪」

 

「ディバイーン‥シューーート!」

そして、ごんぶとな魔力砲が発射された。

俺は空いてるほうの左腕を、シールド自体に叩き付けた。シールドは砕け散り、拘束が解かれる。

そして何とか魔砲をかわす。

「うそぉ!?」

なのはさんは撃ち終わりの術後硬直中。

ここだ!

俺はなのはさんへと突撃する。

「廬山‥昇‥龍‥波ぁーーー!」

いける!昇龍波なら普通のシールドくらいならそのまま貫通出来る。

当たれば一撃必殺。

しかし、なのはさんはほんの少し、少しだけ後ろに身体をずらした。

それにより、直撃は避けられてしまう。だが

昇龍波の余波でなのはさんは吹き飛ばされた。

が、手応えはやはり無い。

吹き飛んでいくなのはさんを見ながら、ゆっくり構える。

そして案の定なのはさんは遠くでピタリと、止まる。

が‥その時だ。なのはさんのバリアジャケットが、下から上に縦に裂け始めた。

そして、大きなお山が、2つ顔を出した。

(TKBは出ていない)(TKBは出ていない)大事な事なので2回‥。

「いやぁ~ん」

胸を庇い蹲るなのはさん。

可愛い。

そんな俺の顔に何かが覆い被さった。

ナニコレ邪魔。このラッキースケベを網膜に焼き付けないといけないのに。

俺は其れを手で掴んで取る。

見ると、それは何だか大きな布だった。

ナニコレ?ゴミ?台風で跳ばされてきたのかな?

デカイ面積の黒地の布が二枚横繋ぎ、になっていて、紐が二本伸びている。

何だこの物体。

レリック?

と、そこでジムに電流走る。

 これ‥ブラジャーじゃね?

マジでか‥布の面積が、でかすぎて一瞬わかんなかったわ‥どうしよう‥被ればいいのかな‥(錯乱)とりあえずポケットに捩じ込んだ。

と、そこで俺は気付いた。

少し離れた所にヒラヒラと、空を舞う物体。

あれは‥パントゥ!

俺はつい神龍にパンツをお願いした、ウーロンみたいなポーズを取ってしまう。

そして、パンツに向かい、突撃。

パントゥを両手で包み込むようにキャッチ。

した瞬間。俺と、パントゥはピンク色の魔砲に呑み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。戦闘シーン。つたない文章力でどれだけ伝わってるか心配ですが‥皆様の読解力なら逝ける筈!諦めないで!
次はまた来週の日曜に出せたらいいなと(。>д<)


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心の温もり。

長くなってしまった‥大変かも、知れないけど頑張って読んでやって下さいな。


台風一過の昼下がり、初夏といえども、その日は風もあり過ごし易い陽気だったので、日頃の仕事の疲れもあってか私は部屋のソファでまどろんでいた。

ウトウトと、自分が眠りに落ちていく感覚。

スーッと、意識を手離す瞬間。

誰かの気配を感じ、私は眼を開ける。

 と、そこにはスーツ姿のジムがいた。

いつになく真面目な表情。

どうしたの?と、声をかけようとするが、声は全く出なかった。

あれ?と、思いながらも、声を出そうとするが、

努力虚しく、口がパクパクするだけだった。

そんな私に気付いてか、気付かないのか、ジムはゆっくり私に近付いて‥ソファに横たわる私の上に覆い被さってきた。

 ―っ!?!?

私はパニックになりながら、なおも声を出そうとするが、一向に声は出ない。

 

その間にもジムはどんどん近付いてきて‥

―ドンドン!

その時、激しいノックのような音が聞こえた。

―ドンドン!

ノックは鳴り止まず、叩き続けられている。

―ドンドン!

だが、ジムは聞こえていないのか、全く意に介さず、表情すら変えず、尚も私に身体を寄せてきて‥

―ドンドン!

そして、その右手を私の乳房へと沈み込ませた。

―っ!?

そのリアルな感触に私は顔が沸騰する。

反射的にジムの右腕を掴むが、

直ぐに抑えつけられてしまう。

その間にもジムの掌によって形を変えていく私の乳房。

その優しい手つきに多少の快楽が遅れてやってくる。

どうしたのだろう。ジムが普段から私の胸をチラチラ見ていたのは気付いていたけど、こんな直接的な行動に出るような子には思えなかったのに。

ジムが求めるのであれば‥私としては吝かではないのだが‥

チラリとジムの顔色を窺う。

しかし、そこには相も変わらず、真面目で感情の読み取れない表情があるだけだった。

―ドンドン!

相も変わらずノックは続いているし‥

こんなの嫌だ‥

どうせなら‥もっとロマンチックに‥

しかし、ジムに抑えつけられている体勢は一向に動かせず、やがて、ジムの手が私の下半身に迄伸びる。

―ダメッ!

そう思った瞬間。

―私はソファから起き上がった。

気づけばジムどころか、周りに人の気配すら無い。

見慣れた、自室である。

 

「‥夢‥か‥」

 

未だリアルな感触の残る自分の胸を見やると、自分の右手が左の乳房を握っていて‥

その手に激しい鼓動が伝わっていた。

―ノックの正体はこれか‥

私は頭が沸騰して、そのまま再び、ズルズルと、ソファに横たわるのだった。

その後は自己嫌悪。

あれが現実だったなら‥私はどうしていただろうか‥

その先を考えて、再び私は頭が熱くなり、居たたまれなくなり、寝返りを打って、ソファから転げ落ちた。

 うう‥痛い‥ジムのせいだ‥

痛みのせいで、少し頭が覚醒し、今日はこの後ジムと出掛ける事を思い出した。

気づけば、寝汗でジットリだ。

取り急ぎ、私はシャワーを浴びようと、バスルームへと向かう。

 

◆◆◆

 

 今日はフェイトさんとお出掛けである。

 

何でも行きたい所があるとかで、お供することになっている。

 

ルンルンと、スキップでも踏みたい気分でフェイトさんの部屋へと向かう。

 

部屋前にて、インターホンを押すと、程無くフェイトさんが顔を出した。バスローブ姿のフェイトさんは俺を見るなり、顔を真赤にしていたがどうしたのだろう。

と、思ったがフェイトさんは風呂上がりのようだと、無理矢理納得した。

上気した肌と濡れたたお髪がとてつもなく艶やかで色っぽい。ふわりと香るシャンプーの甘い薫りが鼻孔を擽り‥ムラムラと‥いやいや‥アホかおれは。今日も差し入れのオカズいただきましたー。

早く、妄想の中でフェイトさんに挿し入れしたい。もう帰って良いですかね?

 

「ジム?何してるの?早く入りなよ‥」

 

 

デスヨネー‥

俺は涙を呑んで、フェイトさんの部屋へと入るのだった。

「ごめん‥着替えてくるから適当に寛いでいて‥」

と、フェイトさんは隣の部屋へと消える。

少し早く来すぎただろうか‥

と、時間を確認すると、約束の時間5分前である。

フェイトさんにしては珍しい事もあるものだ。

 

やはり、少し疲れているのではないだろうか‥

 

この間も仕事持ち帰ってたみたいだし。

確かに事務仕事は格段に楽になった筈だが、

訓練をしていた為とはいえ、遅れて事務仕事に合流したエリオとキャロが、スムーズに職場に馴染めるように、かなり気を回していたみたいだし。

まるで母親である。

もう少し、俺に任せてくれてもいいんだけどな‥もっと俺に頼って良いのよ!

まあこんなこと言っても、多分「ジムには十分助けられてるよ‥」なんて言ってくれるだけだろうけど。まだまだフェイトさんにとっては、俺もキャロやエリオと同じく子供で、庇護対照なのだ。それがたまらなく悔しい。

大人から子供をやり直すってもどかしい‥

無論、周りの期待や責任のハードルも自然と下がるし、

人生経験を積んだ状態からスタートだから、勉強の仕方や時間の使い方。人付き合いの仕方を理解した状態で学べる機会が、増えるのはすこぶる有り難い。ただ一人前に見てもらえないのがもどかしいのだ。子供がいくら好きだと言おうが家族の、情愛として見られてしまう。

いや、不安な事がもうひとつある。

 フェイトさんて‥鈍くね?

同じ職場で働くようになってから、フェイトさんに何人かの男性局員が誘いをかけてるのを目撃している。ぶっちゃけフェイトさんはモテる。そりゃそうだ。ハラオウン家と繋りがあり、器量良し、気立良し。そして自身も新進気鋭の敏腕執務官。何だその完璧超人。モテないわけがない。だが本人にはその自覚は全く無い。

自分を卑下している節がある。

男女の機微もわかってなさそうだし、何れ悪い男に引っ掛かるかもしれない。

其処で俺の出番である。

俺はフェイトさんにアプローチを掛けてきた男共を逐一なのはさんに報告した。

すると、あら不思議。

翌日には隊舎のゴミ捨て場に頭から埋まった状態で、八墓村よろしく面白い格好でその男共が発見されるのだ。勿論死んではいないよ?

そして、その後、フェイトさんにアプローチを掛ける者は減少した。

―結論。フェイトさんがモテないのはどう考えてもなのはさんが悪い。

 俺も何れ埋められるんだろうか‥

もっと小宇宙をたかめなきゃ(深刻)

と、そんな事を考えている間に、フェイトさんが戻ってきた。

コーヒーをテーブルに置いて、俺の隣に腰を下ろす。フェイトさんは黒Tシャツに黒パンツ。

すこぶるカジュアルである。

俺はというと、目的地聞いてないので適当にTシャツにイージーパンツである。フェイトさんが黒系好きなので、落ち着いた色合いでまとめてはいるが‥。念のためジャケットは用意してきてあるけど。

ひょっとしたら、そんな俺の服装に合わせてくれたのかもしれない。

俺は失敗したかなと‥苦々しい想いで、コーヒーを一口、含み咽を潤す。何故かコーヒーは冷めていた。そしてソーサーへとカップを置くと、フェイトさんがタイミングを見計らっていたかのように、俺の膝に頭を載せて来た。

ファっ?!

 

俺の膝の上でこちらを見上げるほんのり赤みがかった虹彩の瞳と目が合う。

なにか?みたいな、何でもないことのような表情してるけど、俺気づいてますからね?

頬にほんのり赤みが差してること。

俺でなきゃ見逃しちゃうね。

そんな照れを誤魔化してるフェイトさんが可愛すぎて辛い。

動悸がヤバい。心不全を疑うレベル。

そんな中お互いしばし、みつめあう。

と、フェイトさんがポツリと口を開いた。

「ごろにゃー‥」

 がフッ‥

危うく喀血するところだったぜ。

フェイニャン爆誕である(俺の膝の上で)。

 ごろごろ‥

と、まるで猫のように、俺の膝に頭を擦り付けるフェイニャン。あ~癒されるんじゃあ~。心がフェイフェイしてしまう。フェイフェイダヨー。

なんて暴力的なα波。

問答無用のヒーリングが俺を襲う。

あれ?動悸がヤバい。藥も過ぎれば毒になる。とはこの事か。

フェイニャンは俺の心臓に痛恨の一撃を与えながらも、なおも、甘え続けている。

 俺はせめて一太刀とばかりに、そっとフェイニャンの頭を撫でる。

‥と、フェイニャンの顔がまるで、ボフン!という効果音が鳴ったかのように、真赤に染まった。

 

 まだだ。まだ終らんよ。

俺は続けて、フェイニャンの顎の下に指を這わし、優しく掻くように撫でる。

すると、フェイニャンは一瞬、驚愕に眼を見開くと、やがて、気持ち良さそうに、眼を閉じた。

尚も、頭と顎に同時攻撃を加えていると、

やがて、フェイトさんの息が荒くなってきた。

太股を、もぞもぞと動かしながら、こちらを濡れた瞳で見上げてきた。

 

やり過ぎただろうか‥

てか、よく考えなくても、これ、上司にセクハラ‥やべえ‥埋められる‥なのはさんに‥

そんな事を考えながらも、頭と顎へのアプローチを止めない自分はアホなのだろうか。

だってフェイトさんが甘えてくださってるんだぜ?それならできうる限り、癒してあげたいやん。

 

「ジム‥」

 

フェイトさんが声を掛けてくる。

遂に私刑宣告か‥

 俺が覚悟を決めていると、

 

「撫でるの上手いね‥」

 

続いた言葉は予想したものとは違っていて。

 

「気持ち良かったですか‥?」

 

「うん‥なんか‥胸が凄く暖かくなった」

 

「それは良かった‥フェイトさんはたまには俺にも甘えて下さい」

 

「甘える‥私が‥?ジムに‥?」

 

「はい‥頼りないかも知れないですが‥精一杯‥支えてみせますから‥」

 

どう伝えれば自分の想いが正確に伝わるか、

さっぱりわからず、俺は

下手に言葉を選ばずただ真摯に言葉を、心を伝える事に注力した。

 

姉弟としてでなく‥

 

 

 

 

 

一組の男女として、在りたいんだと。

 

 

 

「そっか‥ありがとう‥」

 

フェイトさんの目を見つめて、吐き出した言葉を聞いて、フェイトさんは少しの沈黙の後、

優しく微笑みながら、そう返してくれた。

◆◆◆

汗を手早くシャワーで洗い流し、

バスルームに出て、バスタオルで身体を拭いている最中にインターホンが鳴り響いた。

わっもう来ちゃった?!

見れば約束の時間5分前。

どうやら思っていたより眠っていたみたいだ。

夢見のせいで、時間を確認せず御風呂に入った事を反省しつつ、とりあえずバスローブを羽織り、ドアの除き穴から外を窺う。

魚眼レンズに少し緊張した様子のジムが立っていた。

ジムなら良いか‥と、ドアを開けて出迎える。

いざジムと正対すると、先程の夢がフラッシュバックして顔が沸騰してしまった。

私は赤くなってるであろう顔を隠すように、髪の毛を拭く。

其処でジムがチラチラと私の身体を見ているのがわかった。

見れば、バスローブが少しはだけてしまっている。

私は急に恥ずかしくなり、中に入るよう促して、私自身もとりあえず中へと退散する。

とりあえず何か着よう‥

何故だか、今日はジムの視線が、無性に恥ずかしい。

 変なの。

いつもはこんなに気にならないのに‥やはり、夢見のせいだろうか。

とりあえずあんな夢を見たなんて言えるわけもない。

私はそそくさと、隣の部屋へと向い、服を選ぶ。

 

 ちょっと態度悪かったかな‥ジム‥怒ってないと良いけど‥

そういえば、コーヒーすら出してない‥

いくら家族とはいえ、私ったらなんて失礼なことを‥

オロオロしながら、とりあえずクローゼットを開けて、服を選ぶ。

今日はジムに服をプレゼントしようと思っていたのだ。とある理由で、近々必要になるであろう正装用のスーツを買ってあげようと思っていて、私の旧知の仕立屋さんに、その内必要になるだろうと、既に頼んでいたそれを受け取りにいくのだ。

 ジム‥喜んでくれるかな‥?

それなりに良い所ではあるので、タイドアップな格好で行こうと思っていたのだが‥

私は先程見たジムの格好を思い出す。Tシャツにイージーパンツ。一応ジャケットは持ってきてたみたいだが、色味的には問題ないがすこぶるカジュアルである。

でも私が行き先を教えてなかったわけだし‥仕方ない。

旧知の所だし、多少は目を瞑ってくれる筈。

私が合わせよう。

私は手に持っていたドレスシャツとネクタイをクローゼットに戻し、黒のTシャツと黒のパンツを手に取る。

これで私もジャケット羽織ればいいか‥

 ん?で もこれって‥良く考えなくても‥

どう見てもペアルックです。本当にありがとう御座いました‥。

少し恥ずかしいかもしれない‥

どうしよう‥

ああ‥でも‥これ以上ジムを待たせるわけにも‥

うーん。腰にデニムでも巻いて、首からニットでも下げよう。

焦った頭で私は適当にコーデを決めて、ドアを開けた。

ジムはソファに坐り、姿勢良く、何だか難しい顔をしていた。

何か考え事をしているのか、こちらには気づいていない。私は手早くキッチンでコーヒーを入れると、ジムのもとへと急ぐ。

戻ると、ジムは全く微動だにせずただ前を見つめていた。

何を考えているのか‥その、真面目な表情からは感情は読み取れなくて、あんな顔のジム見たこと‥いや、あの顔‥何処かで‥。

そして、夢が再びフラッシュバックされる。

 

 顔が熱い。

鼓動が早い。

どうしよう‥近付いたら‥夢が、正夢になったりして‥いやいや‥アホかフェイト。

私はいつからこんなに頭が悪くなってしまったのか。

そんな事あるわけないと頭ではわかっているのだ。

なのに、私の足は一向に踏み出してくれない。

手に持つコーヒーカップがソーサーの上で震えて小さく音を立てる。

 

 

 

彼が気づいてしまうかも‥等とよくわからない心配をしてしまう私はもう駄目かもしれない。

私は何時からこんな風になってしまったのか。

 

 わかってる。この間のデートの時からだ。

彼に男として見てほしいと言われて、

その時は誤魔化したが、私自身はもう彼を家族としてでなく、一人の男として見始めていたのだ。

その結果。この前のオフに彼が私の部屋へと遊びに来た時、お酒を飲みながら、ソファで彼と密着し、彼の男を感じ‥その結果が今日の夢なのだろう。

 

 最初から子供らしくない子だった‥

 学ぶ事が好きで、どんどん私に教えを乞い、

私の知識を吸収していった。

 料理や家事も自分から始め、いつの間にか私よりも上達していた。

 私の仕事も率先して手伝ってくれたし、キャロやエリオの面倒もいつも、見てくれていた。

 気遣いの部分では私も学ぶ事が多かった。

隊舎に入り、彼が別々に暮らすようになった時はとても寂しく感じた。

私は自分で思っていた以上に彼を頼りにしていたのだ。

 姉弟のように振舞いながらも、彼もそのように振る舞ってくれていたけれど‥心の内では、彼に甘えていた部分も多分にあった気がする。

 スーツを贈ろうと思い立ち、密かに彼のサイズを計り、その大きさに驚愕したものだ。

 自分ではとっくにわかっていたのだ。

彼はもう私の比護は必要ないのだと。

身体は大きく成長し、戦闘面ではなのはに肉薄する程になり、事務方面では六課に於いて掛け替えのないポジションになっており‥

考え方も老成しているというか‥常に落ち着いて、自分を持っており‥キャロやエリオに私以上に慕われ‥あっ‥ちょっと泣きそう‥

そこまで考えると、少し悔しさも出てきて‥

というか‥私だけわたわたしてない?

ジムを少しでも慌てさせたい。なんていう悪戯心が芽生えて‥

私はシャーリーから借りた雑誌に丁度良さげな方法があったことを思い出し。

実行することにした。

不思議と、足の重さは消えていた。

それどころかジムの反応が楽しみで私はさっきまでの葛藤も忘れて、ワクワクしていた。

コーヒーをテーブルに置くと、ジムが漸くこちらに気づいたようで、こちらに軽く会釈する。

とりあえず私は自然にジムの隣に腰を下ろす。

ジムは少し驚きながら此方を見ていたが、

私は気にしない。

ジムがとりあえずといった感じで、コーヒーを一口。

 

 ここだ。

そして、ジムがカップをソーサーへと戻す。

そのタイミングで、私はジムの膝に頭を置いた

 

 どうだ?と言わんばかりにそのままジムを見上げる。

が、ここで予想外の、事態が私に起こる。

この体勢‥とても恥ずかしい。

だが、悪戯をしかけといて、自分でダメージを、受けているなんて、ジムにバレるわけにはいかない。お姉ちゃんにも意地があるのだ。

 

私は必死に平静を保つ。

執務官の経験で身に付けた。ポーカーフェイスを発動である。

私じゃなければ、バレてるだろうね。

 

 

尋常じゃないレベルで顔が熱い。

 えっと‥このあとは確か‥

 

「ごろにゃー‥」

私は羞恥を抑え込み‥何とか科白を、吐いた‥

瞬間。ジムが小さくむせた。

よしよし‥効いてる効いてる。

ごろごろ‥更に私は畳み込む。

最早自棄である。時間がたてば経つほど恥ずかしくなる。私はジムの膝に顔を擦り付ける。

 やってしまった‥

とてつもない羞恥が、私を襲う。

心臓の鼓動がヤバい。心不全を疑うレベル。

そんな羞恥に私が、蝕まれていると‥

暖かい大きな手が私の頭に置かれた。

そして優しく撫で始める。

その瞬間私の胸中に広がったのは、何とも言えない暖かい温もり。

だが、ジムの攻勢は止まらない。

更にもう一本の手が私の顎の下にそっと添えられ‥

ど、同時攻撃だと?!でも‥これ‥気持ち‥ぃ‥

ひとさし指と中指が優しくそれぞれ別々の生き物のように動き、掻くように撫でる。

始めはビックリしてしまったが‥その動きが心地よくて、‥私は目を閉じる。

目を閉じると、余計に感覚が研ぎ澄まされ‥触れている部分から安心が得られるようで。

頭と顎の下のジムの手の暖かさが伝わってきて‥

誰かに身を委ねる‥ということの心地よさを私はこの日初めて知ったのだ。

 これが‥甘える‥ということなのか‥

それはとても甘美で、まるで麻薬のように私の身体を溶かしていった。

心臓の鼓動は落ち着くどころか、更に早鐘を打ち。

不思議だ。ジムに触れてると、心が落ち着くのに、ドキドキする。

下腹部に疼きを覚え、私は身を捩る。

何故か少し息がきれている。やはり心不全だろうか。

これ以上は危険だ。

私はジムを見上げて、声を掛ける。

「ジム‥」

彼は答えず、目で続きを問いかける。

「撫でるの上手いね」

 

「気持ち良かったですか?」

ジムに問い返されて、私は考える。

うん。胸が、、ポカポカ暖かい。

母さんに否定されて、ぽっかり開いていた寂しさが‥ジムの優しさで埋められたみたいだ。

心の奥底にずっと刺さっていた刺が、抜けたような‥暖かさで満たされていた。

「うん。なんか‥胸が凄く暖かくなった‥」

出てきた言葉は本心からの言葉。

お姉ちゃんの意地とか最早どうでも良かった。

甘えるということを知ってしまった私はもうお姉ちゃんではいられないかもしれない。

「それは良かった‥フェイトさんはたまには俺にも甘えて下さい‥

「甘える‥私が‥?ジムに‥?」

ジムから帰ってきた言葉は私が、望んでいた答えで‥そっか‥私‥ジムには甘えて良いんだ‥

「はい‥頼りないかも――から」

言葉はたどたどしかったけれど、ジムの気持ちが、一語一句から伝わってきて‥私はずっと、ドキドキしていた。

「姉弟としてではなく―一組の男女として在りたいんだ―」

と、ジムが言葉を言い終わると‥

私はゆっくり目を、閉じて、言われた言葉を反芻する。

胸には再び暖かさが、溢れてる。

きっと今私嬉しいんだと思う。

だって‥私今笑ってるから‥

「そっか‥ありがとう‥」

れだけ何とか返すと、私の瞳からは涙が、溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。
二つに、分けようかなとも、思ったのですが、なんかテンポ悪くなりそうだったので‥無理矢理書ききりました。なげえよ。っていう批判はあえて受け入れます。お気づきの方いるでしょうが、これ‥当初の最終回案です(笑)まだもうちょい続くんじゃ‥申し訳ないけど、もう少しこの駄作にお付き合いよろしくお願いいたしますm(__)mそれではまた来週m(__)m


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その女鈍感につき‥。

今回は前からやってみたかった手法に挑戦(///ω///)♪
結果は‥実力不足を痛感(´д`|||)
無駄に長くなっちゃったし‥
読むの大変かもだけど、頑張って読んで下さいませm(__)m


とりあえず私はジムを連れて、車に乗り込んだ。

ところで、結局ジムは何が言いたかったんだろう?

私と姉弟じゃなく男女になりたいって‥元からそうだよね?

私を姉と呼びたくないってこと‥?

‥嫌われちゃったのかな‥?

でも‥これからも甘えて良いって言ってくれたし‥

嫌われては‥いない‥よね?

考えてみれば私‥家族以外の男性とは犯罪者と捜査官以外の関係になったこと以外、殆どないや‥

どうすればいいのか全くわからない‥

はあ‥何かしちゃったのかな‥

軽く振り返ってみる‥

 この間の台風の時は台風にも関わらず、外に下着を干して、飛ばされるなんていう間抜けな所も見せちゃったし‥

今日はといえば、待ち合わせ時間にも、関わらず、呑気にお風呂に入り、だらしない姿でお出迎え。素っ気ない態度で、コーヒーすら出さずに放置するという旁若無人ぶり‥なんて事だ‥はやてか私は‥

極めつけは猫の真似して甘えるという‥醜態。

私はお姉ちゃんなのに‥

そうか‥これは‥ジムからの姉としてしっかりしろ。というメッセージ。

たったひとつの真実見抜く‥流石は私‥ 。でもジムもジムだ。いくらなんでも回りくどい。私じゃなければ見逃しちゃうよ?

そこで、抗議の意を込めて、ジムを軽く睨む。

だが、ジムはといえば、此方の心中を知ってか知らずか、キョロキョロと、車窓を眺めていた。

何処か落ち着かない様子の、ジムを見ながら考える。

何か話そう‥

でも‥姉弟としてじゃなくだと何を話せば良いのか‥

いやいや‥しっかりしろフェイト。お姉ちゃんなんだぞ‥

ここは、年上の威厳、いや、経験を見せる時。

いつ見せるの?今でしょ!

えーと‥執務官としてこういうときは‥

そして、私は経験に基づき、言葉を発した。

「‥holdUP!」

ご丁寧にひとさし指をジムのこめかみに当てながら‥対応に迷ったら‥とりあえず無力化だよね。

ジムはというと、暫しの逡巡の後、自分の膝の間で組んでいた手を離し、ソロソロと‥両手を上げた‥。

きょとんとしている‥。

 

 やっちゃった‥。無力化してどうするの?ジムは別に犯罪者じゃないんだよ‥?

 

 こんな筈じゃ無かったのに‥

どんどん沸騰していく顔を見られたくなくて‥

 

 ジムのきょとんとした目線から逃れたくて、

気づいたら私は‥

 

「バァン‥!」

 

 拳銃を撃つ真似をしていた‥。ちょっとやってみたかったんだもん‥。

なにやってんの私‥

なにやってんの~~私~~!

なんて子供染みた仕草。

お姉ちゃんなのに‥。

見ればジムはポカンとしていた。

きょとんからポカンにレベルアップしたよ!やったね!フェイト!

果たしてそれはレベルアップなのか‥

頭がぐるぐる回って考えがまとまらない。

こんなときに頼れるのは、やはり自分が今まで積み上げてきたもの。そう。執務官としての経験である。

冷静になった私は‥其処で、ジムをバインドで縛る事にした。

ジムはライトニングバインドで縛り上げられ‥

此方を何故?という目で見ている。

ちょっと可哀相だろうか‥。

でも‥私はお姉ちゃんだから良いんだもん。

何しても良いんだもん。

かといってずっと縛っておくわけにもいかない。

はあ‥今日1日をやり直したい‥

後悔にまみれながら‥私はじんわりと、涙を浮かべながら‥打開策を考える。

 

 

 そうだ‥!とりあえずジムの目と耳もバインドで覆うと、私は通信回線を開く。

程無く相手が出た。

『どうした‥?フェイトから連絡なんて珍しいな‥』

 

「助けて‥お兄ちゃん‥」

 

『っ!?少し待て‥今何処だ?』

 

「‥?クラナガンの街だけど‥?」

 

『それで?どれくらい必要だ?』

 

「エッ?」

 

『お前が助けを求めるなんて‥一個中隊か?大隊か?なんなら僕が出るぞ?』

 

「待って待って?違うの‥ジムがね‥」

 

『ジムが人質に取られているのか?!』

 

「人質?ジムなら今私の隣でバインドで縛ってるけど?」

 

『‥は?少し待て‥初めから詳しく話せ‥!』

そこで私は‥今日1日の出来事を、詳細に話して聞かせた。

話してる最中、お兄ちゃんの表情が、だんだん曇り、こめかみに血管が浮き上がったけど、どうしたのだろうか?

私が話し終えると、お兄ちゃんは額に手をやり、大仰に溜め息をついた。

 

『直ぐにこっちに来い‥!』

 

「エッ?こっちって?」

 

『自宅だ!母さんも交えて、緊急家族会議だ!』

 

「ちょっと待って‥私達これから行くとこが‥」

『良いからさっさと来い!このバカ妹が!』

「バ‥」

私はあんまりな兄の言葉に文句を言おうとしたが、それ以上に初めて見る兄の怒りの形相に何も言えなくなってしまう‥。

 

◆◆◆

俺の拙い告白の後、フェイトさんからの返事はお礼の言葉と、涙。

えっと‥これはOKなんですかね?

バッドエンドなんですかね?

最近の風潮だと、グッドエンドに見せかけたバッドエンドなんてざらにあるからね。油断は出来ない。

とりあえずフェイトさんに連れられ、車に乗り込む。

そう言えばどこに行くんですかね?

未だに目的地知らないんですが。

そして、フェイトさんはというと、さっきからずっと難しい顔をしていらっしゃる‥。た心なしか、此方を睨んでいるような‥

やはり‥先程の事を怒っているに違いない。

上司にセクハラだもんなあ‥

頭と顎を撫でるという暴挙。

どちらかだけにしとけば良かった‥

だってフェイにゃん可愛かったんやもん。

男としてあれは仕方ないと思うの。

つい‥なのだ。気付いたら手が勝手に動いてたんや‥ついで、済んだら管理局いらんもんなあ‥

はあ‥今日1日をやり直したい‥

でも、フェイにゃん可愛かった。

それに出迎えられた時バスローブがはだけてチラリとニアピンした一瞬のお豆さん。

あれだけで後二~三年は戦える。

あ‥しまった‥思い出したら‥俺のバルディッシュが‥張るディッシュに‥

慌てて膝の間で手を組合せ、擬態する。

危ない危ない。俺くらいになると、ムラっと疼いた時には既に擬態は完了している。

即ち、バレようがないのだ。

フェイトさんをチラリと見ると、運転に集中しているようだ。

俺も車窓を見て、愚息を落ち着けにかかる。

かといって、ずっと股間で手を組んでいたら怪しいにも程がある。

クッ。早く鎮まれ‥俺の息子‥!

と、そんな時、いきなり俺のこめかみに指が、突きつけられ、見ると、フェイトさんが大真面目な顔で俺のこめかみを狙っていた。

 

「holdUP‥」

 

なんで英語?

いや‥それよりも、まだ治まってないんだけど‥

まさかバレていたというのか‥

あり得ない‥

さっきもモノローグで語ったが‥俺の息子が張ったのは、俺が、擬態を終えた後だ。

バレる訳がないのだ。

ふ、雰囲気とかで‥バレたのか?

確かに、母さんも雰囲気で察していた節があった。

ええ?女性って‥そうなの?

勃起を、察知出来る能力が、備わってるとかなの?

やだ‥ナニソレ‥こわい。

勃起を察知ってなんか口が気持ち良い。

何度も言いたくなるね。ハーメルンの前のヨイコのみんなは真似しちゃダメだよ?

俺は覚悟を決めて、そーっと、両手を挙げる。

大丈夫。俺のサイズならワンチャンバレない。

 考えてて悲しくなった。

が‥恐る恐るフェイトさんを見ると、頬を赤らめてらっしゃるうううう!

ぶるぁあああ!バレてんのかああ!

しらぬ間に俺の張るディッシュも張るディッシュアサルトにアップグレードしてたのだろうか‥

このまま育てば真ソヌックフォームになる日も近いね。やったねジム。え?手術しなきゃ無理だって?そんな正論聞いてない。

しかし‥これは不味いですよ?

上司にセクハラかました後、あろうことか二人きりの車中で勃ン起ッキー‥言い訳のしようもない。

なのはさんに埋められるな‥これ。

「バァン‥!」

と、フェイトさんから行きなりの銃を撃つ真似事。

見ると、どや顔である。

フェイトさん渾身のどや顔である。

か、かわひぃん‥!

そして、見ないように見ないようにとしていたシートベルトのパイスラが目に入ってしまった。

それその位置じゃないとダメなんですかね?

めちゃくちゃ強調されてるんですが‥

 

あー。無理やこれ。

ならば‥埋められる前に‥せめて想い出を‥

作りたい!

運転中の女性に襲い掛かるとか最悪だけど‥。

でも‥辛坊たまらんのですじゃー‥からだが勝手に‥ってどこぞの華撃団の隊長さんも言ってたし‥ちかたないね。

この間の台風の時といい、今日のフェイにゃんといい、フェイトさんもきっと誘ってるんや!

据え膳喰わぬはなんとやら!

惚れた女にここまでされて‥!

我慢出来る男が、いるものかよ!

いたらいつは只のEDである。若しくはホモ。

俺は健全なお姉さん好きなんで構いませんね?(錯乱)

俺は聖人君子じゃないもんよ!

俺のさくらんぼも錯乱勃起してるんです!

 

 

俺はそーっと、自分のシートベルトをはずした。

よし。往くぞ。

1。 2。 の!

 

3!

次の瞬間。俺はバインドで縛り上げられていた。

 

‥‥あれ?

バカな!

これも察知されていたというのか‥!

あり得ない‥!

これが‥管理局のエース‥!雷神の実力‥!

隙なんてなかったんや‥。

あったのは隙に見せかけた罠だけ。

 

と、俺が、驚嘆していると、目と耳もバインドで覆われ‥聴覚と視角も奪われた。

ああ‥終わった‥バッドエンドの方だったかー‥!

キャロ‥母さん‥ごめん‥!

 

 

 

バカな俺を許して下さい‥。

 

 

 

◆◆◆

次に視角が開放されたとき、俺は知らない部屋に転がっていた。

「知らない天井だ‥」

 

「案外落ち着いてるんだな‥」

声を掛けられ、そちらを見ると、そこには黒髪の

精悍な顔つきの男が立ってこちらを見下ろしていた。

知る人ぞ知る。管理局のチートオブチート。クロノ提督その人である。

面識自体はフェイトさんに連れられ、何度かある。

「これはお恥ずかしい所を‥」

 

慌てて敬礼をしようとするが、

バインドに邪魔され、身動ぎだけにとどまった。

「ああ‥そのままで良いよ‥」

 

いや、俺が、全く良くないんですが‥良く真顔でそんなこと言えますね?

ほどいてくれないのん?

 

俺の抗議の視線を華麗にスルーし、クロノ提督は続ける。

「一応フェイトから大体の所は聞いた‥」

 

えっ‥

大体というと‥セクハラとかセクハラとかセクハラ辺りですかね?セクハラしかしてねえな俺。

不味いですよ。クロノ提督といえば、シスコンで有名なお方。

これは‥死んだな‥なんとか言い逃れを‥

 

「まあ‥大体察してはいるんだが‥一応念の為にな‥君からも話しを聞いておこうと思った次第だ‥」

 

尋問かと思ったらただの確認ゲームだと!?

察してはいるって‥男として気持ちはわかる的な‥?

流石シスコン。

ウチの妹はすげえだろ?的な自慢話でも始まるのだろうか。

 

もしや‥突破口はあるのか?このバッドエンドからの‥

落ち着けジム。

ここから先の受け答えは間違えたら、即‥死。

お前なら切り抜けられるはずだ。灰色の悩細胞をフル回転させるんだ。

俺は脂汗を垂らしながら、色々な問答をシミュレートする。

 

「それで‥どういう意図なんだ?」

えっ?

何その質問。

どういう糸なんだ?

シミュレートしてたから余り良く聞こえなかった。

意味がわからないよ。主語を抜かすなあ!

勿論そんなこと言えないけど。

「い、糸‥とは?」

 

だから‥どういう意図でフェイトに男と女になりたいといったんだ?」

 

少し苛立ち気味に返してくるクロノ提督。

 

―ど、どういうフェイトで男と女になりたいとイッたんだ?

いや、まだイッてないです。

勃起の事だろうか?

どういうフェイトで勃ったんだ?と。

なんて恥ずかしい事を聞くんだ。

いや、でも聞いたことあるぞ。

痴漢被害者の女性にどんな風に触られたんだい?(下衆顔)なんていう‥

捜査の過程でそんな風に聞き取りをしたりする捜査官がいると‥!いや、あれはAVだっけか?

しかし、火の無いところに煙は立たず。

これが捜査の基本なのかもしれない。

 

ジム知ってるよ。これ‥一種の羞恥プレイだって。はずかしがる俺を見て、愉悦に浸っているに違いない。

「恥ずかしい事を聴いてすまないが大事な事なんだ。きちんと答えてくれ‥」

俺が赤面して黙りこんでいると、急かされてしまった。

止めて下さい。この俺達のプレイを見て喜ぶのはウチの上司達だけです。

せ、正解が解らない。

なんて答えればいいんだ。

勃起の原因‥俺的に1番キたのはフェイにゃんである。

正直に言うべきなのか‥?

クソッ‥クイックセーブはどこだ!

こんなの正解わからないよ‥

「ふ、フェイにゃんです‥」

 

「そうか。やはりフェイトとにゃんにゃんしたいという意味なんだな?」

えっ‥?

そりゃにゃんにゃんしたいですが‥

やはりって何‥?

そうか‥!クロノ提督はフェイにゃんを既に見た事があるのだろう。

それどころか、既に致してる‥兄妹の線を越えてる可能性迄見えてきた‥ガチの近親相姦とかひきますわー。せーのっクロノさん‥ひくわー。

俺がハラオウン家の乱れた姓事情に戦慄していると‥

「すまないが‥僕達が過保護に育ててしまったせいで、あれはかなりの鈍感娘だ‥難しいぞ?」

そ、それはどういう‥鈍感‥?不感症って事ですか?ぼくら‥あなた達が複数で攻めすぎたせいで、フェイトさんは不感症に‥?

「鈍感でも構いません!僕は‥クロノ提督‥あなたと(穴)兄弟になりたいです!」

「フッ‥そうか‥僕を相手にそこまで言えるなら僕から言うことはもう何もないよ‥待ってろ‥今ほどいてやる‥」

と、クロノ提督は微笑みながら此方に近づいてくる。

助かった‥のか‥?

と、クロノ提督がバインドに触れると、バインドは直ぐに霧散した。

俺は慌てて姿勢を正し、敬礼する。

 

「良いよ良いよ。これから兄弟になるんだろ?これからよろしくな‥」

 

なんてことだ‥

きづいちゃったよ‥俺は。

俺じゃなければきづかなっただろうな。

兄弟になるんだろ?これからよろしくな?

この人‥いや、こいつ‥!これからもフェイトさんを抱く気だ‥!

ここは釘を刺しておくべきだろう。

穴兄弟になると誓ったとはいえ‥それでもやはり、俺以外の男がフェイトさんを抱くのは嫌なのだ。我等産まれた時は違えども、果てる時は同じ穴を望む!これが俗に言うフェイにゃんの誓いである。

 

「クロノ提督‥いえ!兄さん!フェイトさんを僕に下さい!」

 

だからもうフェイトさんと、関係を持つのは止めて下さい。僕はntr属性はないんです。

俺はその場で頭を下げる。

 

「気が早いやつだ‥」

 

クロノ提督は苦笑いしながら、ドアの方を見る。

 

「だそうですよ‥?」

 

‥‥?訝しげに俺もドアを見る。

すると、ドアが開き、そこには顔を真赤にしたフェイトさんと、緑の髪の妙齢の美女。

ってリンディ提督?!

俺は慌てて立ち上り、背筋を伸ばし、敬礼する。

そんな俺をリンディ提督は手で制しつつ。

此方に歩みよる。

「気にしないで♪こんな場面で野暮な事言うつもりないもの♪」

こんな場面‥?ハッ!俺がクロノ提督の方を見ると、悪戯が、成功した少年のような笑みを浮かべてらっしゃる。

この場面‥俺はご本人とご本人のご母堂の前で

S○Xしたいです宣言をした男‥いや‥させられたのだ!

セクハラの現行犯で捕まって来たのに、まるで反省の色すら見せず、家族(新旧提督二人)の前で、堂々の更なるセクハラの積み立て貯金。

終わったわ‥。

最早挽回は不可能。

俺は思わず顔を覆ってしゃがみこんでしまう。

そんな俺の肩に優しく手が置かれた。

見ると、そこには穏やかな笑顔を浮かべたクロノ提督。その優しい笑顔に救われそうになる。

でも待って欲しい。この場面を作り出したのはそもそもクロノ提督である。

危うく騙される所だったぜ‥。

俺が暗にフェイトさんを抱くのを許さないという意志表示をした途端にこれである。

流石は若くして提督迄登り詰めた男‥。

この人の好さそうな笑顔の裏ではなに考えてるかわかったもんじゃない。

今迄もこうしてフェイトさんに近付いた男を嵌めて来たに違いない。穴兄弟からのフレンドリーファイヤに俺は愕然とするしかない。

シスコンここに極まれり。である。

あんた可愛い嫁さんいるんだから、そろそろ妹離れしなさいよ。

とは勿論口に出さず、にこやかにクロノ提督の手を借りて立ち上がる。

 

「あらあら。仲良しね?私とも仲良くしてくださる?」

 

突如掛けられるセーラー戦士の水星のような声に俺はハッとする。

 

「これは‥失礼致しました!」

 

「そう堅くならないで?フェイトの良い人なら私も歓迎するわ♪」

あれ?俺とフェイトさん別に付き合ってないんだけど‥多分。‥勘違いしてらっしゃるのかな?どうしよう?訂正するべきか‥?

いや、しかし、もし正直に言ったなら‥俺は交際もしてない娘さんにS○Xしたいと宣う変態。

フェイトさんから遠ざけられてしまうかもしれない‥いや‥そればかりかキャロに迄迷惑かかるかも?どうしよう?

「これだけは聴かせて頂戴?貴方は覚悟は有るのかしら?」

 

「ハッ!覚悟と‥もうしますと?」

俺は敬礼を崩さず聞き返してしまう。

質問に質問で返すなあ!と怒られるかな?と、ドキドキしていると。

 

「勿論罪と向き合う覚悟よ‥」

 

なるほど。セクハラかましたのは事実なんだから、罪は償えと。

 

「勿論です!フェイトさんと、一緒にいられるのなら、如何様にも!」

 

だから何卒、フェイトさんに近付くなという罰だけはご勘弁を‥

すると、リンディ提督は俺の答えを聞くと、何処か嬉しそうな微笑みを浮かべながら、頷いた。

えっ?なんで嬉しそうなんです?

自分で言っててなんですけどお宅の娘さん‥最高にキモいストーカーに狙われてますよ?

罰を与えるのがうれしい‥とか?

リンディ女王樣なの?

ボンテージを着用したリンディ提督を想像して‥俺は‥

 

 ありだな。

 

等と考えていた。

◆◆◆

クロノとの通信を切ってから程なく、私はハラオウン邸へと到着していた。

車から降りると、直ぐにアルフが抱きついてきた。

「フェイト~久しぶり~♪」

 

「アルフ久しぶり‥元気してた‥?」

私はアルフの頭を撫でながら、挨拶を返す。

と、アルフが助手席で縛られているジムに気付いた。

「なあ?ジム坊なんか仕出かしたのか‥?」

「ううん?なんにも?」

「えっ?じゃあなんで縛られてるの?」

と、

そこに、クロノが現れて、クイッと顎で邸内を指した。

「ごめんアルフ。クロノが呼んでるからもう行くね。悪いけど、ジムの事、クロノの部屋に運んでおいてくれるかな‥?」

 

「ん。りょーかい。」

アルフは釈然としない表情のまま、頷いてくれた。

 

◆◆◆

リンディ提督‥いや、母さんの部屋で僕と母さんはフェイトから話しを聴いて、唖然としていた。

どうしてこうなった‥。

兄であり、提督の僕から見ても、フェイトは優秀な捜査官である。

それがどうしてこうも的外れな思考をしているのか‥。これが恋か‥。恋は盲目というが‥これは‥なんか違う気がる。兄としてその成長?を喜んでいいのかどうかも迷う所である。

 

「ところで‥ジムをバインドで縛った経緯が良くわからなかったんだが‥」

 

「うんとね‥姉弟としてじゃなくだと、ジムと何話せば良いのかわからなくなっちゃって‥」

しょぼんと、俯きながら説明されるがもう一度聞いてもやはりわからん‥。ひとさし指をつんつん突き合わせるのを止めなさい。可愛いから‥。

お前もう20越えてるんだよ?お兄ちゃんマジで妹の将来が心配です。

どうしたものかと、頭をひねっていると、

「でもフェイト‥?何話せばいいか解らないからって縛ったらジム君可哀相でしょ?」

母さんが諭すように話し出す。

the、正論である。

「良いんだもん。だって私はお姉ちゃんだから‥何してもいんだもん‥」

 

 妹が何言ってるかわからない件。

と、そんな正論聞いてないとばかりに拗ねたようにそっぽを向いて答えるフェイト‥。可愛い。

てか結局姉として接してるんじゃん。と、突っこみたい。

でも言えない。だって横を向いているフェイトの顔は本当に悲しそうで‥寂しそうで‥自分の腑甲斐無さを必死に耐えてるようで‥後悔に押し潰されそうで、フェイト自身もわかっているのだ。自分のやってることが、めちゃくちゃだと。でもジ ムに嫌われるのが何より恐くて‥けど、やってしまったことは変えられなくて‥。その末に恥を忍んで僕に助けを求める程に追い詰められて‥。

本気で悩んでるのが、わかってしまったが故に、ヘタな事を言えず、回答に詰まり、その場の雰囲気も微妙になってしまう。

俺と母さんは思わず顔を見合せる。

「やあやあ!フェイトちゃん!おっひさー!」

と、そんな雰囲気を切り裂くように能天気な声が響いた。

というかウチの嫁だった。

「エイミィ‥!久しぶり‥!どうしているの?仕事は‥?」

「フッフッフ‥エイミィちゃんの情報網を舐めてもらっちゃあ困りますなあ‥フェイトちゃんが久しぶりに来ると聴いて、サクッと終わらしてきたよん♪おっ。フェイトちゃん今日も可愛いね♪さあさ♪向うで茶あでもシバこう♪」

そしてエイミィはフェイトの背中を押しつつ隣の部屋へと連れていく。

すれ違い様に、ウィンクをひとつくれる。

この隙に今の雰囲気を仕切り直せということだろう。

ウチの嫁はホンとに出来た嫁である。

エイミィとフェイトの二人が隣の部屋へと消えて。

 

「どう思います?」

 

僕は時間が惜しいとばかりに開口一番母さんに話し掛ける。

 

「あの子があんなことを言うなんてね‥」

 

「全く同感ですね」

 

フェイトを引き取ってから‥僕らはなるべくフェイトに愛情を注いできたつもりだ。

それでもプレシアの‥仕打ちのせいか、元の性格もあってか‥フェイトはどこか遠慮がちだったと思う。

別にそれが、悪いとは思っていない。

この世に数ある家族の中、遠慮する家族だっているだろう。じゃあその家族は不幸なのかといえばそんなことはない。

「嬉しくて、悔しい‥なんか‥複雑な気分です‥」

「そうね‥フェイトさんが甘えられる‥我儘を言える場所を見つけた事は喜ばしい事だけど‥願わくば、それは私か貴方であって欲しかったものね‥」

 

「はい‥」

 

言葉足らずな僕の考えを全て当てられ、

僕は苦笑するしか無かった‥。

 

「でもまあ‥とりあえずは先の話しをしましょうか‥」

 

「先と言いますと?」

 

「当然結婚よ♪彼の階級は?」

 

僕は唖然とする。

いくらなんでも気が早すぎじゃないだろうか?

 

「彼は現在執務官補佐ですから‥一士ですね‥」

 

「あら‥あの歳で執務官補佐なんて、エリートね♪ね?クロノ提督♪」

 

「僕は母さんの後を継いだだけですから‥」

 

茶化すような母の問い掛けに、苦々しい思いで答える。

 

「ただ‥彼、学歴がないんですよ‥元々フェイトが保護した子ですので‥」

 

「あら‥そうなの?」

 

母さんの顔が暗くなる。

 

「エリオのような環境下での保護では無いので、ご安心下さい。それと現在、なのはとフェイトが卒業した、訓練校速成コースに通う為に、フェイトに内緒で貯金中のようです‥」

 

「あら感心♪」

 

「ええ‥フェイトが嬉しそうにこの前報告してきました‥妹‥キャロの分の学費も貯めたようですね‥」

 

「あらー♪母さんそういういじましいの嫌いじゃないわー♪でも‥残念だけど‥」

 

そこで再び母の顔が、曇る。

言いたい事はわかる。

 

「ええ‥訓練校卒業で得られるのは三士相当の肩書のみ‥既に一士で、しかも現場に出て、実務迄こなし、なのはの教導迄受けている彼には得るモノは少ないでしょうね‥」

 

「肩書も無いよりマシと言う人もいるだろうけど、実際問題、学費と時間の方が勿体無いわ‥」

 

「それよりも空いた時間で適当な任務をこなしてもらって尉官になってもらいたいわ♪」

 

「尉官クラスになっていれば、フェイトとも釣り合うし、ハラオウン家の威光目当てとも言われないでしょう♪」

 

「そうですね‥それに‥彼は優秀だとはやてからも聞いています」

 

「あら‥はやてさんが?それは朗報ね♪」

 

会った限りでは、威光や地位に目が眩むような人間には見えなかったが実際ハラオウン家の威光目当てかどうかは後で僕自身が確かめればいい。

この場合、彼自身がどうこうより、周りが騒ぐものだしな‥まあ。表立って、僕と母さんに喧嘩売ってくるような根性の据わった輩が今の管理局にいるとも思えないけど‥いや‥一人いたな‥

 

「それと‥もうひとつ‥」

 

母さんの顔が一層曇る。

 

「余計なお世話かもしれないけど‥これだけは‥母として‥確めておかないと‥!」

 

母の瞳に決意の炎が宿る。

 

「もし‥これで‥彼が離れてしまったら‥私はきっとフェイトさんに恨まれるでしょうね‥」

 

母が確認したいことはわかる。

プレシア事件の事だろう。

勿論既にフェイトの無罪は確定しているし、なんら問題は無いのだが、重要参考人であったフェイトは今も時々そういう目で見られていることがあるようだ。そんなフェイトと結婚すれば彼にもそういう目が降りかかるのは想像に難くない。彼にその覚悟があるのかどうか。これは‥フェイトの家族として‥見極めておかなければいけないのだ。

 

 頼むぞ‥裏切ってくれるなよ‥ジム‥!

僕はフェイトに連れられて会った人懐っこい笑顔の青年を思い浮かべ‥切に願うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございますm(__)mもうちょっと、文才ついたら、また挑戦しよう。
鮮やかな勘違いネタ創れる人尊敬するわー(´д`|||)
それではまた来週m(__)m


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第52話

良いタイトルが思い付かなかった。
見たら、もう52話とは‥(´д`|||)ツークール分やって‥予定より話が進んでない‥(´д`|||)
あ、少し遅れてすみませんm(__)m


俺は再びクロノ提督と対峙していた。

話があるということで、フェイトさんと別室に連れられて、テーブルを挟んで向いあっていた。

 な、何の話だろう‥やはりフェイトさんと別れろ。とかそういう類いだろうか?

俺は緊張を誤魔化す為に、エイミィさんが運んできてくれた緑茶に手を着ける。

ひと口含んだ瞬間、口に広がる緑茶の渋み‥いや、暴力的な甘味に思わず吹き出す。

「ブハッ!」

 

「だ、大丈夫か‥?」

 

「し、失礼しました‥ゲホっ!ゲホっ!」

俺は慌てて、テーブルに飛び散った緑茶の残滓を拭き取る。

口の中が気持ち悪い‥。

「エイミィ!」

 

「はーい?」

 

「母さんに茶を淹れさせるなと言っただろう?直ぐに何か新しい飲み物を‥」

「はーい」

そうか‥これがリンディ茶‥忘れていたよ‥

そんなモノがありましたね‥。

これは京都で言うぶぶ漬けのようなもの‥。

やはりハラオウン家の俺に対する好感度は最悪のようだ‥当たり前といえば当たり前の事実に俺は泣きたくなる。

 

「お待ちどー♪」

 

と、エイミィさんが新しい飲み物を運んできてくれた‥。

恐る恐るそのコーヒーに口を付ける。

程好い苦味と酸味が口内をリセットしてくれる。

俺が持ち直したのを見て、クロノ提督が口を開く。

「さて‥本題といこう」

 

「はい」

 

俺も姿勢を正して、聞く姿勢を取る。

「結論から言おう。今の君には‥フェイトはやれん‥」

‥やはり‥か。

当然だろう‥

だが、今の君には‥ということは‥まだ道はあるということだ。

 

「ではどうしたら‥認めて頂けますか‥?」

 

俺は意志と決意を込めて、クロノ提督を見つめる。

クロノ提督はゆっくりと頷くと、

「尉官迄出世してくれ」

返された言葉に俺は言葉を失う。

尉官‥尉官だって‥?

余りに無茶振り過ぎませんかね‥。

えっと‥俺は今‥?一士か‥。

先ずは曹にならないとか‥

戦時中でもない平和な今の時代。

昇進機会なぞ殆んど無いと考えて良いだろう。

なのはさんとフェイトさん、そしてはやてさんは

特殊過ぎる例ですからね?

でもそれ以外道が無いならやるしかない。

 

「わかりました」

 

俺の答えにクロノ提督は少し意外そうな顔をする。

「頼もしいな‥困難な道だと言うことも解ってるだろうに‥」

 

「はい!惚れた弱みですから‥仕方ありません‥」

 

「フッ‥違いない‥男はこういうとき頑張るしかないもんな‥」

 

「はい!」

 

俺とクロノ提督との、間に奇妙なシンパシーが産まれたところで、お互いに微笑み合う。

なんだろう。クロノ提督も色々苦労してらっしゃるのだろうか?

その内飲みにでも行きたいものだ。

 

「餞別として‥とりあえず二曹に推しておいた。

近々試験を受けてくれ‥」

 

三曹飛ばして二曹スタートは有り難い。

 

「ハッ!恐縮であります!」

 

俺は敬礼で応えると、クロノ提督は苦笑いしながら、言葉を続ける。

 

「君が海所属なら話はもっと簡単だったんだがな‥陸の人事には私も、そこまで関われない‥かといって、君みたいな優秀な人材を海に引き抜くと、色々問題もあってな‥」

 

「いえ!勿体無いお言葉とお心尽くしに感謝致します!」

 

そうか‥海を選んでいたら良かったのか‥。

海だと違う次元世界を渡り歩くから、フェイトさんにあんま会えないかもと思って、軽い気持ちで、陸にしたんだよな‥選んだ時はまだ空も飛べなかったし‥

後悔してる場合じゃない。試験に向けて勉強しないと‥!

えっと‥六課だと‥曹は‥ヴァイスさんか‥教えてくれるかな‥?

人懐っこい兄貴分の顔を思い浮かべる。

 

「さて‥あんまり君を捕まえていると、フェイトに怒られてしまうな‥名残り惜しいが‥駐車場でフェイトが待ってる‥行ってやってくれ‥」

 

「ハッ!それでは失礼致します」

 

「しっかりな‥。今度飲みにでも行こう‥」

 

鷹揚に頷きながら、そんな事を言ってくれるクロノ提督は紛れもなく兄の顔をしていた。

激励が何より有り難い。

 

「是非に!機会を楽しみにしております!」

 

俺は何度も頭を下げた。

敬意や礼儀関係無しに、下げたかったのだ。

足早に部屋をお暇し、駐車場へと歩を進める。

 

 早くフェイトさんに会いたかった。

思えば先程、俺の気持ちは知られてしまったのだ。

それに対するフェイトさんのリアクションは解らず仕舞である。

拒絶されるかもしれない。

そんな恐怖心も少なからずある。

拒絶されたらされたで仕方ない。

その時は黙って身を引こう。

無いと思いたいが‥。

駐車場のドアを開くと、厳ついスポーツカーにお尻を預けているフェイトさんが目に入る。

フェイトさんは跳ねたように顔を此方に向ける。

その顔は不安で染まっていて‥。

次の瞬間、俺は抱き締められていた。

 ‥見えなかった‥だと‥。

 

「ジム‥ジム‥」

 

フェイトさんに思いきり抱きすくめられ‥息が出来ない。

うわ言のように、俺の名前を呼び続けるフェイトさんを慰めるようにそろそろと、俺もフェイトさんの背中に腕を回し、抱き締める。

すると顔に感じる、鼓動がどんどん早くなる。

なにこれ‥スゴい柔らかい‥。これってもしかして‥

俺は息をするのも忘れて、更に顔を埋めていく。

 

「落ち着きました?」

 

俺は恐る恐る声を掛ける。

 

「うん‥」

 

スンスン言いながら、

フェイトさんが腕を弱める。

 

「あの‥もしかして‥ノーブラ‥ですか‥?」

 

次の瞬間、俺はバルディッシュで殴り倒されていた。

「なんで‥そういうこと言うかなっ!」

 

俺は痛む頭を擦りながら、フェイトさんを見上げる。

ノーブラだと、思うと、Tシャツがなんか余計にエロく見えるな‥

 

 ‥殺気?!

俺が危険を察知してその場から跳び立つと、先程迄俺が居た場所にバルディッシュが叩きつけられる。

「何するんですか?!」

 

「視線がエロい!」

 

直ぐ様フェイトさんはバルディッシュをサイズフォームにして、追撃してくる。

それを何とかいなしながら、叫び返す。

 

「仕方ないでしょ!男なんですから!」

「エッチなのは‥っ!いけないと思いますっ‥!」

フェイトさんがバルディッシュを横に振りかぶる。

ここだっ!

俺は振り払われるバルディッシュに向かって、拳を叩きつける。

甲高い金属音と共に、起こる反動を利用して、距離を取る。

お互い肩で息をしながら、にらみ合う。

すると、ふとフェイトさんが視線を外し、ボソッと呟いた。

 

「時と場所とタイミングさえ選んでくれたら‥少しくらいは大目に見てあげるから‥」

 

そう言ったフェイトさんは真赤だった。

 

「お、大目に‥?」

 

俺はゴクリと咽を鳴らしてしまう。

時と場所‥そう言えば、今ここは‥

ふと、俺が周りを見渡すと、二つの視線を見つけた。

「ありゃ‥みつかっちった‥」

 

「あ‥私達は気にしないでどうぞ続きを‥」

 

というかアルフさんとエイミィさんだった。

 

「「出きるかっ!?」」

 

俺とフェイトさんの叫びがハモる。

その後フェイトさんは神速で車に乗り込み、発車させると、俺の目の前に付ける。

そして俺達は先程迄の言い合い等無かったように、流れるようなコンビネーションで車を発進させ、ハラオウン家を後にするのだった。

 

「ちぇ~っ良いとこだったのになあ‥」

 

「あれはもうカウントダウンだね‥」

 

と、そんな様子を見て、呟いた二つの影を残して。

 

◆◆◆

私は駐車場でジムを待っていた。

 

さっき迄、リンディ母さんに言われて、クロノとジムの会話を部屋の外で聞いていて、

 

「フェイトさんを僕に下さい!」

ジムがクロノに叫んだ言葉を聞いて、私はすっかり参ってしまった。

ジムの言う男女になりたいとはそういう意味だったのだ。

私は今迄の自分の思考が恥ずかしくなってしまって。

その後、リンディ母さんから、彼の覚悟を確かめたいと言われ、私はまた部屋の外で待機。

リンディ母さんが確かめたい覚悟とは‥聞いてみれば成る程だった。

それは私の過去。後にプレシア事件と呼ばれるそれに私は関わっていた。

色々な事情を鑑みて、私には無罪の温情判決が、出されたが、それでも今も、まだ陰口を叩かれることはある。悲しくはあるが、それでも私はその事実を受け入れている。だって私がそれを否定してしまったら、次元の狭間に飲まれて消えた母さんが可哀相な気がして、

だから、それが例え謂われの無い謗りであろうと、私はそれと共に生きていくと決めたのだ。

だがそれは私の事情である。ジムには関係無いのだ。もし私のせいでジムがそんな謗りを受けるようなら‥それを恐れてジムが離れる事を選択するなら‥私はそれを否定できない。

願わくば、一緒に居て欲しい。

あの暖かい食卓と、笑顔を失いたくない。

私は祈るような気持ちで耳を澄まし続けた。

「震える足でドアに寄り掛かりながら、その時は訪れた。

「フェイトさんと一緒にいられるのなら、如何様にも!」

私はその言葉を聞いて、顔を手で覆ってしまう。

後から後から、涙が溢れて止まらない。

 

 嬉しかった。

 

 なのはのリボンを貰った時と同じ位嬉しかったのだ。

直ぐにでも叫び出したかった。

心が叫びたがってるのだ。

私は嗚咽をこらえてその場に座りこむ。

そんな私を優しく抱き締める者がいた。

「良かったな‥良かったなフェイト‥」

涙で顔をくしゃくしゃにしたアルフだった。

アルフに促され、私はその場を後にする。

私も涙で顔がぐしゃぐしゃなので洗面所に行きたかったのだ。

洗面所で顔を洗い、お化粧を整えて、

私は駐車場へと行くように促される。

道すがら、私は懸念をアルフに聞いてみる。

「アルフ‥」

 

「どうした?フェイト‥」

アルフは優しく微笑んでくれる。

「ジムの希望は解ったけど、じゃあもう私は‥ジムに甘えちゃ駄目なのかな‥?」

「は?」

アルフは心底わからないといった感じで聞き返す。

だって、姉弟じゃ無くなるのなら、

私のお姉ちゃんだから何しても良い理論はどうなるの?

ジムに甘えるの楽しかったんだけどな‥

「別に良いだろ?甘えたって‥」

 

「そう‥なのかな?」

「普通の恋人だって女は男に甘えるもんだろ?」

 

「ならフェイトがどうしたいかじゃないか?」

「私がどうしたい‥?」

 

「ああ。フェイトはジム坊と姉弟でいたいのか?恋人になりたいのか?」

「恋‥人‥解らないよ‥恋人なんて‥いた事‥無いもん‥」

 

「全くフェイトは可愛いねえ‥」

 

と、アルフが急に私を抱き締めて頭を撫でる。

「ならさ‥とりあえずは‥ジム坊の希望を叶えてやれば?そんで‥フェイト自身の希望も、叶えりゃ良いだろ?」

「私の希望も、叶える?」

「ああ‥だって別にお互いの希望が相反しているわけでもないんだからさ、悩む必要ないだろ?」

そっか‥。アルフは賢いなあ‥。

 

「とりあえずぶつけてみなよ?遠慮なんてせずに、友達みたいにさ、フェイトの素をぶつけてみなよ‥」

 

うん。アルフ‥ありがとう。

そうだね。例え、姉弟じゃなくても、ジムには甘えよう。でも‥否定されたら‥

すると、ネガティブな意識が私を支配する。

もし、ジムがしっかりしたお姉さんタイプが好きだったら‥甘えたら、幻滅されてしまうかもしれない‥。

そんな不安な気持ちに、押し潰されそうになりながら、私はジムを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただいた貴方に感謝を。m(__)m話が進まん(´д`|||)


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試験準備。

とあるオフの昼下り、俺はヴァイスさんに勉強を教わる為に、格納庫へと向かっていた。

と、エレベーターでたまたま、ギンガさんとゲンヤさんのナカジマ親娘と出会した。

ギンガさんがエレベーターのドアを抑えて促してくれたので、ご厚意に甘えて、会釈と共に、先に乗せて戴く。

うーん。ギンガさんは相変わらず奥ゆかしいというか、少し日本人的なところがあってジム的にポイント高し君である。大和撫子っぽいというか、

美人だしスタイルも良いし、気だては良さそうだし。ただひとつ難点があるとするならば‥

俺はエレベーターの奥で直立不動でゲンヤさんを敬礼で迎え入れる。

ゲンヤさんも軽く微笑みながら、敬礼で返してくれる。ゲンヤさんとは以前フェイトさんに紹介されて、顔見せくらいは済んでいる程度だ。

そしてゲンヤさんはエレベーターの入り口へと向き直り、

ジッと操作ボタンを見つめる。

この無言の時間‥気不味いよね‥

ゲンヤさんは何か思うところがあるのか、閉めるボタンを押さずに見つめている。

なんだ?俺が押した方がいいのだろうか‥?

だが、位置的に俺とボタンの間にゲンヤさんが入ってしまっているので‥動くのに躊躇ってしまう。

動かないゲンヤさんにギンガさんも流石に訝しげな視線を送る。

と、その時ゲンヤさんが動いた。

すると、ゲンヤさんは

閉めるボタンに手をかざし、

「ハッ!!」

と叫んだ。

当然ドアは閉まらない。

いやいや。

音声認識とかないですから‥手動で押さないと反応しませんから‥。

ゲンヤさんは未來に生きてんのかな‥。

しかし、上官である以上、ツッコミも入れずらい‥はやてさんなら入れられるんだろうけど‥。

そのなんとも言えない沈黙の時間が気不味い‥。

が、ゲンヤさんはめげない。

更にボタンに手をかざして、

「フンッ!」

と、声を放った。

すげえ。メンタル鋼過ぎんだろ‥。

しかし、そこで、ドアがタイミング良く閉まる。

良かった‥。助かった‥。

エレベーター内の空気は守られたのだ‥。

しかし、ゲンヤさんは止まらない。

ギンガさんに顔を向けると、

「な?」

と、ドヤ顔である。

なんだこの人。可愛い‥。

ギンガさんもギンガさんで、そんなゲンヤさんを見て、微笑むばかり。

この二人‥親娘というより、老夫婦である。

 

そう。ギンガさんの難点といえば、この人極度のファザコンっぽいのだ。

普通の男ならこの二人の間に入り込もうとは考えられないだろう‥。

 

「聞いたぜ?ジム坊よぉ‥?今度‥曹への昇級試験うけるんだって?」

 

「はっはいっ!本日もこのあと、ヴァイス陸曹に色々教えて頂く予定です!」

 

「そうかそうか‥俺はもう昔の事過ぎて、大して教えてやれる事は無いけどよ‥教本に載ってない問題なんかも出たよな?ギンガよ?」

 

「はい‥私も当時の先輩方に沢山教えて頂きました」

 

「うん‥よし‥ギンガ‥お前もジム坊に色々教えてやんな?」

 

「私がですか?でも私に教えてあげられる事なんて‥」

「ジム坊が作ったシステムには俺の部隊も相当助けられてる‥挙げ句の果てに、スバルもすげえ世話になってるって聞いてるぜ‥お前、ここで恩返さなきゃいつ返すんだよ‥?」

ゲンヤさんの言葉にギンガさんがハッとなる。

「そうですね!不肖ギンガ、ナカジマ!全力で参ります!」

これは正直有り難い。

ギンガさんも曹なのは知っていたが、同じ部隊になったことも無いので、頼みづらかったのだ。

これで俺は、ヴァイスさんにフェイトさん。はやてさん。リィン曹長といった、優秀な講師陣を得る事が出来たのだ。えっ?魔王樣はって?

一応頼んだのだが、

私は感覚派だから、座学を教えるのは無理。と断られてしまった。

「それじゃ、ジムさん♪明日から早速初めていきましょうか♪」

「はい!お手を煩わせてしまって申し訳ありませんが、どうかよろしくお願い致します!」

「はい♪ふふ‥私も久しぶりに教本見直しますかね‥♪」

 

 

 




読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
ゲンヤさんの口調がいまいち掴めていなくて、なんだかべらんめえ口調に(笑)ゲンヤさんは茶目っ気を忘れない可愛いおじいちゃんだと思います。
異論は認める。


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ギンガの監察日誌。

最近、好きだったSSが更新再開されて、嬉しかったstanです。更新再開に伴い、もう一度最初から読み直してやはり、面白いなあとしみじみと一気読みしてしまいました。
お蔭様で執筆のモチベが上がりました♪
私も頑張ろう(///ω///)♪週1の亀更新ですがね(´д`|||)このペースは守り続けたいと思います。



どうも。ギンガ=ナカジマです。

私は現在六課に来ています。

用事はひとつ。ジムさんに勉強を教える為です。

曹への昇進試験の難易度は並じゃありません。

だから、お仕事を手伝って、勉強時間を確保してあげようと思ったのです‥が。

 

ここは本当に六課なのでしょうか?

え?何故って?

だってつい先日迄は六課と言えば、デスマーチ。

全員死んだような目。正に死兵とも、言えるような雰囲気で、ぐったりばったり、どーんより♪の空気がお馴染みだったんです。

そんな阿鼻叫喚の光景が当たり前だったんですよ?だからこそ、私もお手伝いに来たのに‥

それが‥なんということでしょう。

今ではみんな、穏やかな笑みを浮かべながら、談笑しながらお仕事しています。正にアットホームな雰囲気です。既に本日分の仕事を終え、帰り支度を始めてる人もちらほら。

 話には聞いてましたが、六課で作成されたシステムはだいぶ効果を上げているようです。

まるでオセロみたいなブラックからホワイトへの変わりっぷりに私は呆然とするしかありません。

あ、もうひとつ用事がありました。

件のジムさんですが、なんと私の憧れのフェイトさんとお付き合いしてるという噂が‥

フェイトたそとお付き合いなんて‥なんてうらまや‥コホン。恨めしい。

フェイトさんと付き合う価値のある殿方かどうか、私‥不肖ギンガが見極めさせていただきます。

‥顔は平々凡々ですね。

うん。お仕事は真面目にしてるみたいです。キャロちゃんにお仕事教えてあげてるみたいです。

兄妹らしいですが、あまり、似ていません。

でも仲は良さそうです。まあ、私とスバル程ではありませんが‥。

 むっ?! 真面目な横顔はなかなか‥かもしれません。

スバルがよくお世話になっているときいています。

あの娘がなつくなんて‥お姉ちゃん少し寂しいです。‥が、人柄は良いのでしょう‥。少し直情径行な所もある妹ですが、人を見る目はある娘なのです。多少‥アホですが‥まあ、そんなところが、可愛いんですけどね♪

正確な年齢は知りませんが、若く見えます。

ヘタしたら私より‥コホン。

その若さで曹への試験を受けるとは‥自分で言うのも恥ずかしいですが‥優秀なんでしょう‥。

私は父の娘として恥ずかしくないように、自分を律して、必死にこれまで駆けてきた自負があります。その結果、今は過分にも曹の階級を拝官頂いてます。

そんな自分と同じ程度の位置にいるのです。

伺い知れます。

彼を分析していたらいつの間にかお昼の時間になっていました。

スバルに誘われ、食堂へと移動します。

勿論ジムさんを視界の端にロックオンしながら‥

食事は‥その人の人となりが自然と出るものです。

しっかり見極めます。

食堂で彼を視界に納められる位置の席へと座ります。

見ていると、彼はアジフライの定食にしたようです。

すると、彼はいきなり、定食を前に両手を合わせて、軽く御辞儀をしました。口が微かに動いていましたが、多分いただきます。と動いたと思います。

私はびっくりしました。日本を祖とする我が家では当たり前の作法ですが、それをするとは‥彼もルーツは日本なのでしょうか?俄然彼に興味が沸いてきました。

 

 少し‥ボーッとしていました。

そのせいで、反応が遅れたのです。

不意に彼が顔を上げ、こちらを見ました。

ガッツリ目が合ってしまいました。じっくり見過ぎましたね。不覚です。

彼は少し考え、目の前の定食と、合わせた自分の両手を交互に見ました。

不躾な事をしてしまいました‥。

すると、彼はもう一度此方へ視線を向けると、

少しだけ。そう‥少しだけ恥ずかしそうに微笑みました。

その微笑みに、何故か鼓動がひとつ大きく跳ねました。照れ臭そうにはにかんだその表情は‥なんというか、可愛くて、父さんに似ている気がして‥私の姉心を刺激しました。不思議ですね。歳は若い筈なのに、何だか父さんと同年代位の雰囲気を感じてしまいました。こんな事、ご本人には当然言えませんが‥。

懲りずに更に見ていると、メニューをきちんと左から順番も完璧に美しい所作で食べ終えていました。最後にやはり御辞儀をしてごちそうさまをしたようです。そんな彼の顔はとても幸せそうで、私もつい食べたくなってしまいます。彼はお盆を持ち、最後にテーブルを軽く拭いて、食堂のおば様方に美味しかったと報告して食堂を後にしました。おば様方の嬉しそうな顔と打ち解けた様子を見るに、普段から同じようになさっているのかもしれません。

良いでしょう。人柄は認める方向で‥!ですが、其れだけでは認められません。

だってフェイトたそは完璧ですから‥

そんな方に相応しいのはやはり並大抵の男の人ではないのですよ。この後も、しっかり観察していこうと思います。とりあえず、日本ルーツなのかだけ確認するとしましょう♪

◆◆◆

機動六課からおはこんばんちは♪

どうも。ジムですよ。

今日も今日とて、お仕事頑張ってます。

曹への試験の勉強したいんだけどね。

いや、八神司令は勉強してて良いって言ってくれてるんだけどね。流石八神司令。ブラックなんて無かったんや。でもやっぱね。曹への試験は俺の都合だし、それで仕事ほっぽりだすっていうのは、どうもね。心持ちが悪いというか‥なんていうか、チンポジが安定しない感じ。わかるかな?わかるよね?ありがとう。でもちゃんと対策はとってるんだよ。一応仕事後はギンガさんが教えてくれる予定だし。

この間の何気ない口約束を早速遵守してくれるナカジマ家には頭が上がらない。今度、ゲンヤさんにもお礼しなきゃな。

ところで何でもう居るんですかね?

約束は仕事後だよね?

何故かギンガさんも六課の仕事してるし‥まあ、助かるけど。しかも何だかものっそい見られてる。

違うから。自意識高い系男子とかじゃないから。

間違いなく見られてるから。

だからそこ。キモーイとか乙とか言うのをやめなさい。

 

「ジム兄~‥」

 

其処で声を掛けてきたのは我が愛する妹、キャロである。

 

「どうした?」

 

「ここ教えて‥ケリュケイオンの指示通り操作してるんだけど‥エラーが出ちゃうの‥」

《sorry Mr.》

 

「どれどれ‥?」

 

システムに不具合でもあったかな?

「ああ‥ここだ‥ほらここ。入力抜けがあるだろ?」

 

「あ‥ほんとだ‥」

 

申し訳なさそうな顔で俯くキャロの頭にそっと

手を這わせる。

「引き継ぎ前のヤツがミスったんだな‥キャロのミスじゃないから気にすんな?」

 

身内贔屓に思われるかもしらないが、意外にキャロは仕事は丁寧だ。入力等の単純作業もコツコツしっかりダブルチェックしながらキチンとやってるのお兄ちゃん知ってるよ。責任感ある娘に育ってるようで、お兄ちゃん誇らしい。

 

 

「っ‥うん!」

 

デバイスに入れてあるマニュアルシステムはあくまでも関数の操作方法やexcelの基本的な操作方法のみなので、

こういう基本的なミスには弱い。場面場面でその時、高率的な関数や操作方法を提案して操作方法を出すだけなので、こうした元のデータにミスがある場合は対応が難しい。

トラブルシューティング的なモノも追加するべきだろうか‥。いや、このくらいなら紙媒体で小冊子作った方が早いか。使った関数ごとに起こりうるエラーの対処マニュアルを作るだけで対応出来る筈だ。

 

「ジム兄‥ありがとうございました!」

 

《Thank Your helped Ilearning a lot from that(助かりました勉強になります)》

 

「おう‥ちゃんとお礼言えて偉いぞ‥ケリュケイオンもな」

 

《Thank YouMr》

 

「えへへ‥」

 

褒めながらキャロの頭を撫でてやる。

キャロはくすぐったそうに微笑みながら、

嬉しそうにはにかんだ。

いつの間にか、キャロも少し大人になったんだなと、寂しい想いがほんの少しだけ胸に去来する。

しかしこのキャロ‥外見が全く変わらない。

何時まで経っても、ロリコン御用達、合法ロリのままである。胸も一向に育たないし‥なんか呪いでもかかってんのかな?戦闘モード時はきちんと育ってるのにな‥

この間、部屋の鏡に向かって、胸にテニスボールを詰めてポージングしている姿には涙を誘われた。つい見かけてしまったのだ。だってドア開いてたんやもん。その後鏡越しにキャロと目が合い、顔を真っ赤に染めたキャロにテニスボールを投げつけられながら半日追いかけ回された。

やべえ。俺‥超リア充?

さて。お昼だ。

食堂は本日も盛況だ。

ここの食事は値段の割に美味しいからな。仕方ない。キャロとエリオはフェイトさんに呼ばれてるらしく、俺は一人で席を取る。

うーん。今日は、魚が食べたいな‥。

お母さんこんちは♪」

 

「あら♪ジムちゃん‥今日は一人?」

 

おばちゃん達には、何度か、味に感動した煮魚のレシピを教えて頂いて、すっかり打ち解けている。

 

「ええ‥今日は振られちゃいました‥」

 

「あらあら‥腕によりをかけて作ってあげるから元気出してね♪」

 

人懐っこい笑顔のおばちゃんと、世間話をしながら、何にするかと思案する。

「ありがとうございます♪お母さんの料理全部美味しいから迷っちゃいますね‥」

 

「あらあらお上手♪」

 

魚フライにするか‥焼き魚にするか‥煮魚にするか‥ここの魚系料理の魚は毎日日替わりである。

その日活きの良い魚を漁師の方が卸してくれるそうだ。

毎日飽きさせない趣向でとても良いと思います。

 

むう‥煮魚って季節でもないし‥

 

「今日のフライの魚は何ですか?」

 

「今日は鯵だよ」

 

アジか!良し!

「フライの定食で♪」

 

「あいよ♪ジムちゃんは相変わらずアジフライが好きだねえ♪ジムちゃんアジフライ定食!」

お母さんが厨房に声を掛けると、直ぐに返事が帰ってきた。

どうでも良いけど、注文者の名前も言う必要あるんですかね?

「ジムちゃんアジフライ定食かしこまり~」

 

それだと定食名が変わって聞こえるんですが。

 

「はい!大好物です♪」

 

「クス‥それじゃちょいと待っててね‥」

 

と、お母さんが奥へと消えると、直ぐに、油の跳ねる良い音が聞こえてきた。

そして、そんなかからずに、お母さんがお盆を手に戻ってくる。

 

「おまちどおさま!アジフライ‥ちゃんと噛んで食べるんだよ?」

 

「ありがとうございます」

 

流石の速さである。

丸亀製麺も真っ青の速さに俺は嬉々としてお盆を受けとる。

受けとったお盆を見ると、キツネ色に耀く大きなアジフライに目が行く。

デカイ。なんてデカさだ‥

お盆の3分の1位有りそうだ。

まだ少し‥脂の焼ける音が微かに聴こえ、繊細で仄かな薫りが鼻孔をくすぐった。

その途端、俺の腹がオーケストラを奏で出した。

気持ち足早に取っておいた席へと向い、

手早くテーブルを布巾で拭き、

ワクワクしながら腰を落とす。

手を合わせ、お盆の上の定食メニューを見ながら、感謝を込めて‥いただきます。

さあ。食うぞ!と、思ったら、

またもや視線を感じた。

見ると、ガッツリとギンガさんと目が合った。

ほらー!やっぱ見られてるじゃん!

その視線は俺の合わせた両手に注がれていた。

ああ‥成程。

この作法はフェイトさんや八神司令、なのはさん達地球出身者達との間では一般的なのだが、

それ以外では、あまり馴染みの無い行動みたいだ。

こういう事でここが異世界であることを想い知る。最近食事をフェイトさん達と一緒に食べる事が多かったから、ついやってしまった。

ギンガさんからしたら、今の俺は料理に対して話し掛けるやべえヤツなのかもしれない。

そう考えると少し、恥ずかしさを感じ、

未だにガッツリこちらを見てくるギンガさんに照れ笑いを浮かべる。

そんな俺の表情にようやくギンガさんも視線を外してくれる。

まあ、個人的な作法やルールなんですと説明してもいいのだが‥其々の家庭には其々のルールがある。当たり前の事である。ゲームは1日一時間とかね。何も恥じる事はしていないわけだし。

それよりアジフライである。

いきなりメインにいきたいのは山々なのだが、

こうしたメニューでは左端のモノから食べるのがルールである。一人前のダンディーとして当たり前なんだから!

だってお母さん達もきちんと其れを想定して、

配置してくれてるから。そういった思い遣りをきちんとくみ取るのが和の心なり。

空腹も相まって俺は幾分早いペースでお盆の上を駆逐していく。駆逐してやる‥一品残らず‥!

汁も菜物も全部俺好みの味付けである。

有り難い。お母さん一人くらい嫁にほしい。

やがて‥ようやくたどり着いた‥!

 

アジフライである。

 

 

「本日のメインイベント~!アジ~フラ~イ~」

心の中でケロちゃんのリングアナウンスが響く。

俺の心の後楽園ホールでリングの中央のアジフライに、ビニールテープの雨が降り注いでいる。

そんな脳内妄想を繰り広げながらも、アジフライにかぶり付く。

 

えっ!?

 

 

サクサク!フワフワ!

なにこれ!?

超美味しい‥!

今日のアジフライは前世から今生迄合わせて、ナンバーワンに躍り出た。ご飯が止まらない。これには山岡さんも文句のつけようが無い。まさに、至高のアジフライ‥!前々前世から探し始めたい。

美味いよぉ!おふくろ‥もう一杯。

脳内に武田鉄矢さんのナレーションが響き、脳内後楽園ホールにはストンピングが鳴り止まないでいた。

全て食べ終わり、もう少し、余韻に浸っていたいところではあるが、一人でいつまでも席を占領するのも申し訳無い。

手早く、テーブルを片付け、お盆を返却する。

お母さんにお礼も当然忘れない。

ああ‥美味かった‥。

午後もお仕事頑張ろう‥。

幸せな気分で食堂を出ようとした時、

「あの‥!」

 

 声を掛けられた。

 

ギンガさんに。

走って追いかけてきたのか、息が弾んでいる。

胸も弾んでいる。

ひと目で尋常じゃないたゆんたゆんだと気付いたよ!

 

「ジムさんも日本出身なんですか?!」

なん‥だと‥。

 

「私の‥父の先祖も‥日本出身で‥」

そうだったのかー。

確かにナカジマは日本姓だわ。

磯野君の友達だわー。

どうする?

はいと答えるか?

調べられたら、一発アウトである。

転生してきました?ガチで頭やべえヤツになる。

どう答えるのが、正解なんだ?

フェイトさんに教えて貰った作法です?

うん。それっぽい。

けど、やはり聞かれたら一発アウト。それどころかかえって不信感を煽る結果になりそうである。

 

どうする?ぐるぐると思考が廻りだす。

最初に考えた通り、家の独自ルール推しでいくか‥幸いキャロもいただきますごちそうさまはちゃんとするし。

日本とはあの‥フェイトさんや八神司令の出身地の地球の地名でしたかね‥?」

俺の答えにギンガさんはあからさまにガッカリした表情をする。

何でやねん。

「はい!ということは‥違うんですか?」

 

「ええ。私はクラナガンから少し離れた所にある自然保護区の小さな村の産まれです」

簡潔に小まめに情報の答えを返す。

こういう場合は喋り過ぎない事が鉄則である。

ヘタに情報を増やすと、思わぬボロが出るのが世の常なのだ。

俺がそれ以上は語らないのを見ると、ギンガさんはひとつ嘆息し‥

「そうでしたか‥すみません。私の勘違いだったみたいです‥お時間とらせてすみません‥」

「いえ!こちらこそ‥本日の勉強会‥よろしくお願いいたします‥」

「クス‥はい。こちらこそよろしくお願いいたしますね‥それでは午後もお仕事頑張りましょう!」

と、ギンガさんはむんと力こぶを作ってみせる。

おお‥後光が差していらっしゃる。

これがお姉ちゃんオーラか‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少し、プロレスネタを入れすぎたかもしれません。わからない人は申し訳無い。
それではまた来週m(__)m


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妹魄(シスコン)共鳴。

こんにちはm(__)m今週も何とか出せました。
今回後書き少し長めかもしれません。くだらない事しか書いて無いので、
読み飛ばして問題ありませんm(__)m
あ、作中のギン姉の胸度等は、あくまで作者の想像です。実際の数値は関係ありません。フィクションです。悪しからずm(__)m


仕事も無事終わり、自室へと帰ってきた。

季節は処暑。

仕事終わりで日も傾き始めているとはいえ、無人の部屋はムワッとした熱気が立ち込めていた。

最早しっかり自分の城と化した、隊舎の自分の部屋へと鍵を開けてただいまーと呟きながら入る。いや、誰も居ないんですがね。

そんな俺の後ろからもう一人の侵入者‥

 

「お邪魔しま~す‥」

 

深い青のロングヘアーを揺らしながら、俺の三歩後ろを歩いていたその人は‥?

 

どうしてこうなった。

 

仕事も終わり、さて、勉強会を何処でするか?という段になり、流石に俺の部屋は不味いよな‥と、考えていたのだが、勿論ギンガさんの部屋は論外である。

キャロとエリオはまだ、フェイトさんに呼ばれているのか、姿が見あたらない。

六課の自習室を使おうかと思っていたのだが、

生憎、空いていなかった。

どうしたものかと思っていたらギンガさんが、

 

「私は‥別に‥構いません‥よ?」

 

等と、頬を染めながら、上目遣いで提案してきた。

そういう仕種は男を勘違いさせるからやめて欲しい。まあ‥俺はフェイトさん一筋だからね。

余裕で耐えきりましたよ?

  ホントだってば。

ギンガさんをリビングに案内し、ソファを薦める。

 

「コーヒーとお茶どちらがよろしいですか?」

 

「あら‥お構い無く‥」

 

ギンガさんは微笑みながら、柔らかに遠慮する。

慎み深いというか‥。

 もしくは‥お前の出した飲み物なんざ何入ってるかわかんねーからいらねーよ。

って意味だったらどうしよう。

どうしよう‥用心深い女の人だったらそういう思考もあり得る‥のか?

 

わからん‥。

 

 

「そういう訳にもいきませんよ」

 

怖い考えを振り払い、俺は苦笑いしながらも答える。

とりあえず、おもてなしをしないわけにもいかないという結論に至り、

俺はお茶を淹れる事にした。

ギンガさんならお茶かな?と、勝手に判断してしまったが平気だろうか?

お茶請けに、割れせんをお供に、

リビングへと戻る。

 

「大したおもてなしもできず申し訳ありませんが‥」

 

「あら‥私、割れせん大好きです♪」

 

「それは良かった‥どうぞお召し上がりください」

 

。「良い香り‥ほうじ茶ですね‥これも、大好きです‥」

 

「それは重畳」

 

二人して微笑み合い、同時にほうじ茶を口に含む。

うん‥美味しい‥。

落ち着くわあ‥

時間がすごくのんびり流れている気がする‥。

大和撫子というか‥どこかはんなりした雰囲気を纏っているギンガさんの空気はどこか落ち着く。

日本然とした空気なのだ。

 

「はあ‥美味しい‥とても‥落ち着く味です‥」

 

同じような感想がギンガさんから出てきて何だか嬉しくなる。

 

「ありがとうございます」

 

「では始めましょうか?」

 

ほんわかした表情から一変キリッとした顔になり、勉強開始を宣言するギンガさんに俺も気を引き締める。

 

「‥っ‥はい!」

 

お茶と煎餅を脇にずらし、筆記用具を準備する。

とりあえず、暗記が手っ取り早いということで、

法務関係の教本をノートにひたすら書き写していく。

しばらく、カリカリと、ペンを走らせる音だけが、

室内に響く。

と、ギンガさんが唐突に制服を脱ぎだした。

ふう。と息をひとつ吐いて、制服をきちんと畳み、自分の横へと置く。

見ると、じんわり額に汗が浮かんでいた。

 

「暑いですか?すみません‥冷房いれます?」

 

「いえ、それにはおよびません‥殿方の部屋に殿方と二人きりと考えてしまうと、ちょっと緊張してしまって‥」

 

制服の下は白のブラウス一枚で、胸の前でフルフルと両手を左右に振るギンガさん。

そういうものかと納得し、胸の前で振られる手の向こう側に視線が吸い寄せられる。

いかん‥!大丈夫。俺はフェイトさんで耐性付いてる!乳適性sの意地を見せてやる!

白ブラウスからほんのり青と白の縞模様が‥透けている事なんて知らない。

 

 

やはりデカイ‥!

ニュートン先生の定理に全力で逆らいつつ、ペンを走らせる。

少し、解釈に迷った所があり、ギンガさんに問い掛ける。

「すみません‥ここなんですが‥」

 

ギンガさんはどれどれと、正面から身を乗り出し、こちらを覗き込む。

 

テ、テーブルに乗っているだと‥

俺の眼前に突然現れた、肉のカーテンならぬ胸のカーテンに圧倒される。

‥超人胸度‥80‥85‥バカな‥まだ上がるだと‥

ユッサユッサと質量を主張するその双丘に理性をゴリゴリ削られながら、

何とか、疑問を質問する。

 

「あの‥あんまり‥見ないで下さい‥」

 

頬を朱に染めたギンガさんが困り顔で注意してくる。

 

「ギクゥ」

 

思わず声が漏れてしまう。

しくじった‥。いかんいかんと、慌てて取り繕う。

 

「‥なんの事だかわかりませんねぇ‥」

 

「最初のリアクションからのその誤魔化しは無理があるでしょう‥」

 

腰に手を当て、胸を張りながら突っ込むギンガさん。

それ以上いけない。それは逆効果です。

 

おうふ‥。

即座に‥冷静に突っ込まれてしまった。

いやだって‥すっごい迫力だったんだもん。

もう‥ダッダーン!ボヨヨンボヨヨン!って感じ。いや別に、アマゾン川から出てきてないけど。

すっごいバインバインしてた。オーラバトラーかよ。

脳内のアホな思考が止まらない。

 

「フェイトさんに言いつけますよ?」

 

と、いきなりの死刑宣告。

 

「‥とんへ~‥♪ムルグヮっ♪」

 

「何でいきなり細かすぎて伝わらないモノマネ始めたんですかっ?!」

 

おお‥軽快に突っ込まれてしまった。

意外と気さくな方なんだなあ。等と考え、チャンスとばかりに話を逸らしにかかる。

 

「意外にご存知なんですね?」

 

「ふふ‥小さい頃にスバルと見てました」

 

と、懐しんだのか、表情を緩めるギンガさん。

 やったぜ。 スバルさんGJ。

 

「あはは‥俺もキャロと見てました」

 

「ふふっ♪妹って良いですよね♪」

 

「ええ。とても可愛いです‥まあ‥ウチのキャロが一番可愛いんですがね♪」

 

「は?」

 

瞬間、空気がピリッとした。

 

「ウチのスバルが一番に決まってるでしょう‥?ぶち殺しますよ?」

 

と、左手のナックル型のデバイスが金属音を響かせながら、回転を始める。

「ふふ‥ならば聞きますか?ウチのキャロの可愛さを‥!」

「良いでしょう‥!ならば私も聞かせて差し上げます。妹というものを体現した現人神‥スバルの魅力を‥!」

 

二人の間で火花が散った。

そして俺は語りだす。

 

「俺のターン!」

 

「俺は想い出から、テニスボールを胸に詰めて、鏡に向かって悩殺ポージング♪を攻撃表示で召還!」

 

「ブハッ‥!」

 

突然ギンガさんが鼻血を吹き出し倒れた。

「くっ‥それは可愛い‥ですね‥いけない‥妹愛が迸ってしまいました‥」

 

いや、他人ん家の妹に愛を迸らせないで下さい。

ティッシュを鼻に詰めながら、身を起こすギンガさん。

ならば、私も想い出フォトグラフから、夕桜デート~スバルと一緒~を守備表示で召還!」

ぐっ‥!ロリスバルさん‥だと‥っ!

 

「これは‥なんて愛らしい‥」

「ふふん♪そうでしょうそうでしょう?」

「まだ私のターンは終わりません!想い出から、スバル‥大きくなったら、ギン姉と結婚すゆ‥!‥を攻撃表示で召還!」

「ガハッ‥色々間違い過ぎでしょう‥だがそれがいい‥」

先にロリスバルを見せられているだけに、破壊力倍増である。

‥この姉‥策士である。俺も鼻から妹愛が迸ってしまった。

 

「ふふ‥降参しますか?」

 

と、ギンガさんはティッシュを差し出してくる。

俺はそのティッシュを受けとり鼻に詰めこみながら、軽く会釈で礼をしながら、ギンガさんを睨み付ける。

「まだですよ‥確かに良いエピソードでした‥だが、それは両刃の剣‥ギンガさん‥貴女もまた鼻血出てますよ?」

「あらいけない‥」

再び、俺が差し出したティッシュを鼻に詰めこみつつ、ギンガさんも会釈で礼を返す。

 

「そろそろトドメを刺させて貰いますよ?」

 

「あれは、俺がまだ六課に配属されたばかりの頃でした‥あの頃の俺はまだ六課の仲間と上手くいっていなくて‥仕方無いですよね?見た目もあの頃はまだ子供でしたし‥そんな子供が、事務仕事を自分たちより早く終わらせてしまうんですから最初は奇異の目で見られましたし、色々な、言い掛りのようなものもつけられたりしました‥」

そこで俺はひとまず言葉を区切る。

正直あの頃の事を思うと、今でも少し落ち込む。

仕事を教えようとしても素直に聞いて貰えず、

かといって、謙虚に仕事の出来ない振りをして教えを乞うて、自分の仕事をスピードダウンさせる余裕もなかった。

毎日がギリギリだった‥。

「そういう事もあって、一時期少し落ち込んでいたんです‥」

 

「自室のベッドで膝を抱えて落ち込んでいたときです‥」

 

「キャロが猫の縫いぐるみを抱えてやって来て言うんです‥」

「にゃんにゃん♪ジム兄元気出すにゃん♪‥って‥」

 

「うぼあー‥」

 

ギンガさんは後ろに勢い良く倒れ伏した。

やっぱこの人、意外にノリが良い。

後、めっちゃ乳揺れた。

 

「良い‥お話‥ですね‥」

 

と、目元の涙を掬いながら起き上がるギンガさん。

 

というか勉強しましょう!」

 

「‥あっ‥」

 

俺の間抜けな声にお互い暫し、見合い、どちらからともなく吹き出してしまう。

そこからは止まらない。

堰を切ったように二人して笑い出してしまった。

 

瞬間、気付く。

 

部屋の温度が下がっている。

冷房はつけてないのに‥だ。

視線を感じ、見ると、ドアの隙間から‥生気の失せた顔でフェイトさんが覗いていた‥。

 

「‥そう‥」

 

と、小さく呟いた気がした。

そしてその横には目を血走らせ、顔も真赤に染め上げた、キャロもいた。

 

 あ‥

 

これ‥あかんやつや‥。

 

俺はとりあえず、姿勢を正し、ホームポジションである土下座のポジションをとりながら、二人の女神を迎え入れる準備をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ん~なんか上手くまとまらなかった(。>д<)どうも。最近戦国アスカ零というアプリでなのセントのコラボが始まり、久久に戦国アスカにカムバックしました作者ですm(__)m
なけなしに少しだけ課金してガチャ回したところ、フェイトそんと王さまをお迎えできて満足しております。いや、はやてが欲しかったんですけどね(´д`|||)
物欲センサーが発動してそうなので、もう回しませんがね(´д`|||)なのは様とシュテルンは普通に貰えるので良きコラボイベだったと思います(///ω///)♪ニューゲームとのコラボの時は全く欲しいのでなかったので、思えばコラボの時しかやってへんな‥(´д`|||)容量邪魔だしもう‥消そうかな(´д`|||)


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綻び。

このキャロが嫌われませんように‥(人)ナムナム


「風が騒がしいですね‥でも‥この風‥泣いています‥」

ポツリと、窓の外を眺めながら呟いたギンガさんにツッコミを入れたくて堪らない。

まあ絶賛土下座中の俺には望むべくもないことだが。

俺を土下座させている帳本人のお方の顔をチラリと、盗み見ると、これでもかというくらいまでにほっぺを膨らませて、私、不機嫌です。アピールをしていた。

なんとも可愛らしい。嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい‥ゲフンゲフン。いかん。なんか、混線してる‥。

そんな俺が一瞬和んだ雰囲気が察知されたのか、

床に擦り付けている頭のすぐ横にバルディッシュが叩きつけられる。

ヒヤヒヤしながら、バルディッシュを眺めていると、スッとバルディッシュが退かれた。

 

「ちゃんと反省しているのかな?かな?」

 あっ‥フェイトそんの言葉から「‥」が消えてる‥

これ‥ヤバいヤツや‥。

「反省と言われましても‥勉強を教えて頂いてただけで‥」

 

「してなかったよね?」

 

即座に否定されてしまう。

 

「部屋に連れ込んで?二人で楽しそうにおしゃべりして?」

 

全部事実である。

 

「ギンガ?」

 

何も反論出来ない俺にあきらめたのか、今度はギンガさんに問い掛けるフェイトさん。

 

「ひゃいっ?!」

 

「ウチの‥いや、私のジムが迷惑掛けてごめんね?」

 

何で言い直したんですかね。

 

「いえいえ‥殿方の御部屋に、《二人っきり》というのは、私も初めてでしたので、貴重で、とても楽しい経験をさせて頂きました‥」

 

「それにジムさんにはスバルがいつも、お世話になっているようですし‥可愛い後輩に《私が》《頼られる》のは嬉しかったですよ?」

何で所所単語を強調させるんですかね。

それを聞いたフェイトさんもこれにはにっこり。とはいかず、余計に威圧感がマシマシで「‥そう‥」

と、再び呟いた。

 

これは確かに風が騒がしいわ‥。俺の部屋限定で、でも‥俺が泣きそうだわ。

 

「やれやれ‥ジム兄は本当に仕方無いなあ‥」

そんな俺をキャロがヨシヨシと慰めてくれる‥。

やっぱりキャロは天使だった‥。

空の上から愛の種を撒き散らして、この部屋から憎しみ消したかった‥。

「それはそれとして‥人の恥ずかしいエピソードを勝手に他人に話すのはどうかなぁ‥かなぁ?!」

 

と、優しく撫でられていた手に、突如力が籠り、言葉にも不穏なオーラが乗せられる。

天使がご乱心!?

 

「イタイイタイ!いや、アツい?!キャロちゃん?あんまり強く頭皮擦らないで?!お兄ちゃんハゲちゃう?!ハゲちゃうから?!」

 

スクラッチばりにゴシゴシ擦るキャロの手を掴み、何とか止める。

「節操の無いジム兄なんて‥ハゲちゃえば良いんだ‥」

プイっと、拗ねたように唇をとがらせて、顔を剃らすキャロちゃん可愛い。

「おやおや?ヤキモチかな?キャロは本当に可愛いなあ‥」

 

「は?はぁ?そんな可愛いなんて言葉じゃ誤魔化されないんだからねっ?!」

 

その割りに口角緩みまくってるけど‥。

 

「全く‥妹迄口説き始めるなんて‥ジム兄はあれなの?清竜人でも目指してるの?龍座だけに‥」

 

と、ドヤ顔でそんなことを宣うキャロちゃん。だれうま。

一瞬、脳内で、フェイトさんや なのはさんと はやてさんの三人娘が、スケベコールをしてる姿が思い浮かんだ‥。

‥‥良い‥!

 

「‥なに‥ニヤニヤしてるの?気持ち悪い‥」

 

「うぇっ!?してないよ!?想像して‥ニヤニヤなんかしてねーし!」

 

「‥へえ‥?想像してニヤニヤしてたんだ‥?」

 

おうふ。キャロちゃんの視線の温度がみるみる下がっていく。

オーロラエクスキューションかな?

 

「いや、上手い事言ってやった‥みたいなドヤ顔してるキャロが可愛いくて‥」

 

「うっさい!」

 

ピアキャロッ?!」

 

 

問答無用とばかりに殴り倒される。

殴り倒されるときにふと見ると、

こちらを羨ましそうに見ている、ギンガさんと、目が合った。

ふふん。妹と触れ合っている俺が羨ましいのだろう。

わかるよ。その気持ち。今の俺‥超‥リア充やもん‥。

おもいっくそ勝ち誇った笑顔を浮かべてやった。

その瞬間、ギリイッと音がしそうなほど歯を食い縛り、悔しそうな顔をされた。

やり過ぎたかな‥等と、後悔の波が押し寄せる前に、俺は意識を手放した。

 

キャロちゃんったら‥また強くなったのね‥。

 

◆◆

私とエリオはフェイト姉に呼び出され、自習室でミーティングをしていた。

話題はジム兄が曹への昇級試験を間近に控えているということ。フェイト姉は試験の中に分隊教練が有ること。

なので、私達でジム兄の練習に付き合う事を提案してきたのだ。

そんなの勿論光の早さで可決である。

だが、私には心配事があった‥。

それはもちろんジム兄の事だ。

最近ジム兄とフェイト姉の距離が近付いている。

フェイト姉は良い人だ。

‥おっぱい以外は‥。

おっぱい以外は私も素直に慕っているのは認める。

だけどね‥。こちとら、ジム兄を追いかけて、転生してきている身なんですよ?

ハイそうですか。と譲る程、私は諦め良くないのです。

何よりこのまま、すんなりくっつかれるのは非常に口惜しい。

―だから、私は意地悪をすることにした。

話が終わり、自習室から解散となり、エリオが退室してから、フェイト姉に近付き、耳打ちする。

「‥フェイト姉‥最近ジム兄と上手くいっているんでしょ?」

 

「ヴェッ!?」

 

と、奇声を上げて、フェイト姉は真赤になり固まる。

この人、成人してるんだよね?ちょっと初心過ぎない?

おまけになんかバツの悪い顔してる。

キッと私に悪い‥とか、思っているんだろう。

とりあえず今は味方に思わせておいた方が都合が良いかな‥?

 

「応援してるからね♪愚兄をよろしくお願いいたします‥」

すると、フェイト姉はポロポロと涙を溢し始めた。

‥うん‥ありがとう‥キャロ‥」

底抜けに良い人。

ジム兄の事が無ければ、大好きだよ‥フェイト姉‥。

「そういえばね‥この間、雑誌で見たんだけど‥今は面白い女の人が人気らしいよ?」

 

「尾も白い‥?私尻尾ないけど‥」

私はゴミを見る目を慌てて封印し、言葉を放つ。

 

「フェイト姉‥寒いよ?」

 

「えっ!?はやて直伝のこの、ジョーク‥ダメ?」

 

「‥0点」

 

「ガーン‥」

ショックを受けるフェイト姉を無視して、私も自習室を出る。

と、スバルさんが走って近寄ってきた。

聞けば、ギンガさんがジム兄の部屋に遊びに行ったらしい。

ギンガさんか‥。

大和撫子風‥◎

お姉ちゃんキャラ‥◎

 

巨乳‥チッ‥◎

あれ‥?結構ジム兄の好みに合致してる?

これはあかん。思わぬ伏兵の登場である。

 

私は自習室からフラフラと出てきた、フェイト姉を早速捕まえ、ジム兄が部屋にギンガさんを連れ込んだという情報を教えた。そして、現在、私とフェイト姉はジム兄の部屋の前で聞き耳を立てていた。

中からは愉しげな談笑が聞こえてくる。

どうやら、お互いの妹自慢をしているようだが‥。

何故私の悩殺ポージング練習の事を知っているのか‥小一時間‥(ry

それよかフェイト姉の冷気がヤバイ。

さっきの面白い女性が人気らしいというジャブがタイムリーにジワジワ効いているようだ。

ブツブツと、ナニか呟いている。

 

「ジム‥うわ‥き‥ゆる‥さない‥面白い‥?面白いってナニ‥?‥わからない‥ワカラナイ‥ジムはオモシロイ女がスキ?ウソ‥ウソ‥ウソダドンドコドン」

 

怖いからやめていただきたい。

そうこうしているうちに、ジム兄がこちらに気づいたので、フェイト姉と中に突入することにした。

上手くいけば、ここで仲違い‥。

フヒッ。

先ずは、ジム兄に謝らせない事。

ジム兄はこういう場面では、先ず間違いなく謝る可能性が高い。自分が悪くなくても、先ずは謝るのだ。人の良いフェイト姉はそんなジム兄を許すだろう。

そうはさせない。

謝らせない事で、二人の間に楔を、穿つのだ。

‥てか、既に土下座してるんだけど‥。

早いよ!予想はしてたけど!

案の上フェイト姉はたじろいでいる。

させるかっ!俗物が!

秘技土下座キャンセル!有耶無耶!

「―仕方が無いなあ‥」

すると、ジム兄は此方をキラキラして目で見てくる。

天使。とかとでも思ってるんだろう。

ちょろい。

楔を穿つと、同時に私の好感度も上げてみせる‥私は天才なんじゃないだろうか‥。フフ怖フフ怖♪伊達になのはさんに鍛えられていない。

ジム兄に撫でられ、つい口角が弛んでしまう。

おっといけない。

フェイト姉が此方を羨ましそうにみている。

このままだとフェイト姉の不興を買ってしまうかもしれない。

それは得策ではない。それに、ジム兄にちょろい女と思われるのも、シャクだしね。

私は照れ隠しに、ジム兄の頭皮をDBスクラッチくじ張りに、擦る。

「―龍座だけに‥」

最後にジョークも忘れない。

勘違いしてほしくないのだが、私は決してフェイト姉にはウソは教えていないのだ。

面白い女性が人気という記事は実際に、読んだものだし、ジム兄は面白い女性が好きだと思う。

ドヤ顔を突っ込まれたのは、恥ずかしくて、照れ隠しについ殴り倒してしまったが。

当初の、目的通り、ジム兄には謝らせずに、有耶無耶にするという目的は果たせたので、良しである。

分隊教練の中には、3on3の模擬戦もあるらしいので、ちょっとエリオを鍛えておこう♪

私は本当に出来た妹である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
清竜人知ってる方いるかな?(笑)
一夫多妻制という、新しい形の三次アイドルです。
何より曲が格好いいので、知らない方は是非ググって欲しいですm(__)m実際スケベコールをなのは達三人組で妄想出来た人は作中のジム同様、ニヤニヤ必至だと、思います。
妄想は一人の時にね♪
私は散歩中にニヤニヤしてました‥orz
では、また来週ノシ


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痴話喧嘩はさっさと降参するに限る。

今週も何とか更新‥‥っ!
そろそろ早送りしないと、冗長気味になってますね(。>д<)


 フェイトさんの機嫌が直らない‥。

俺の部屋で、風が騒がしかった日から数日‥。

未だに、フェイトさんは御機嫌斜めだった。

顔を合わせると、プクゥと頬を膨らませ、俺と目線を切って、距離を取られてしまう。頬の膨らませてる姿はまるでリスである。つまり可愛い。リスフェイトさん‥ありだな‥。脳内にブレイブルーのマコトのコスプレしたフェイトさんが現れる。南半球!南半球!つまり可愛い。

 話し掛けようと追っても逃げられてしまう‥。

かと思えば、ふとした瞬間に視線を感じ、顔を上げれば、物陰からこちらを伺うフェイトさん。

そうこうしている間にも試験の日は近付いてくる。

仕事の合間に勉強を進めてはいるが、不安を拭う事はかなわなかった。

試験は年中受けられる訳ではない。今回落ちれば、次受けられるのはまた一年後だ。

まして、落ちたとなれば、推薦してくれたクロノ提督や、リンディ提督を落胆させるだろう‥。フェイトさんとのゴールが遠くなるのは間違いない。

かつて無い程の重圧下で、俺は少し、イライラしてしまっていた。

 ―ペンを走らせながらもフェイトさんの不機嫌顔が脳裏にチラつく。

俺が何をしたというのだ。

ちょっとギンガさんを部屋に連れ込んで、勉強を教えて貰って?妹自慢をしただけじゃないか。

それのナニガ悪いのだ?確かに胸に少し魅了されたのは認める。けどそんなの今更だろ?こど‥男はみんな乳(ニュー)タイプなんだよ!

俺が胸に気を取られるなんていつもの事じゃないか?俺はフェイトさんとの未來の為に頑張っているのに!それなのに何故フェイトさんはわかってくれないのだ。ペンを走らせながらもチラチラとフェイトさんの不機嫌顔がフラッシュバックしている。勉強に集中できていない。

 これは‥不味い流れだ‥。

 

‥クソッ!仕方無い‥。

 

 仕方無いのだ‥。どちらが悪いわけでもなく、惚れた方が、負けなのだ。

自分が悪いとは思わないが。こんな屈託ある状態で本番を迎えて、終わるよりはマシである。意地を張っても良いことないのだ。

俺が立ち上がったのを見て、フェイトさんが物陰に身を潜める。

そんな仕種にも多少の苛立ちを覚えるが、負けを認めてしまった今なら、少しは気持ちも楽になっていた。

俺は、フェイトさんを無視して、ある人物へと会いに向かう。

 

「助けて!シャリえも~ん!」

 

ドアを開けて、目的の人物を確認すると、俺は泣きついた。

シャリオ=フィニーノ一等陸士。

 

 俺と同じく、フェイトさんの執務官補佐であり、

その縁もあり、六課のシステム構築を共同開発するなど、

俺が六課配属当時からなにかとお世話になっているクソオタ‥ゲフンゲフン。

 お姉さんである。

 そして、メカオタク。

 故に、眼鏡可愛い。

 

「どうしたの?藪からスティックに‥?」

 

おっといきなりのルー語でお出迎えである。

 相談する気なくなるわー。

 だが‥俺には選択肢は無いのだ。

 溺れる者はストローをも掴むのだ。

 

「カクカクシカジカ‥ジカウィルスコワイ‥ハタラクサイボウオモシロイ‥」

 

「ふむふむ‥なるほど‥君はほんとうにだめだなあ‥ケッショウバンチャンタチカワイイ‥」

 

すげえ。こんな説明で理解されちゃった。

流石シャリオ姐さん。話が早いぜ。

そして、やっぱりロリじゃないか!

 

「まあ、意地を捨てたのは良い判断だね。拗ねた女に理屈は通じないし‥」

 

 すげえ。この人直の上司を拗ねた女扱い。‥そこに痺れる憧れるぅ!

 まあ‥俺に気を遣ってくれてるんだろうけさ‥。こんな時、味方っぽく接してくれるだけで、涙が出る程うれしい‥。

 辛さをわかってくれる振りだけでも、救われるもんだ‥。

 

「んー。壁ドン&顎クイからごめんって囁きながら‥唇でも奪ってみれば?」

 

ちょ。

乙女ゲーやり過ぎじゃないですかね?

そんなんリアルにやったら、通報まった無しじゃないですかーやだー。

 アニメじゃない♪ホントの事なんですよ?それに俺、そんなキャラじゃないし‥。

 フェイトさんは貴女方貴腐人とは違って、六課の良心‥天使なんですよ?

 

薄い本見て眼鏡クイクイしながら、ニヤニヤしてるオタ‥げふん。とは違うんですよ?

 貴女とはやてさんが、ヴァイス兄と俺のカップリングを餌にしてるの気づいてるんだからねっ!

お陰でヴァイスさん最近、俺と距離取ってるんだからねっ!勉強教わりにくいったら‥。

だから、ホントは頼りたく無かったんだからねっ!

 

「んー。案外イケると思うけどなあ‥」

 

乗り気じゃない俺を見て、シャリオさんは更に思案を巡らせる。

 

「‥オッケ。じゃあお姉さんがフェイトさん宥めて?仲直りのデートでも取り付けてきてあげるよ」

 

 マジで。

 シャリオ姐△

 マジぱねえ‥。

 かっけえっす。

 フェイトさんいなければ、惚れる迄ある。

 

「恩に着ます‥」

 

クソオタ‥扱いしてごめんなさい。

思わず拝みながら、お礼を言う。

と、モノローグだけで、腱鞘炎になりそうなレベルの手の平返しを見せていると、

 

「ほーい。まあ、ジム君は私にとっては弟みたいなもんだしね♪可愛い弟と尊敬する上司がくっつくのはうれしいもんだしね♪応援してるよ」

 

涙出そう‥。

仕事も出来るし‥マジで格好良いぜ。

‥腐ってなければ‥。

天の配剤間違い過ぎだろ‥。

 

「それじゃ‥結果はまた後で連絡するから‥仕事に戻りなさい♪」

 

と、再びデバイスメンテの仕事に戻るシャリオさん。

こうして屈託が晴れた俺は、仕事をさっさと終わらせ、再び、勉強を始めるのだった。

 

 今勉強しているのは、ヴァイスさんから聞いたヘリや、輸送機に関する性能面の暗記である。

 

難しいが、これは暗記するしかない。

ヴァイスさん曰く、こうした専門的な知識も抜き打ちで出題されるらしいのだ。厄介なのは、教本に載ってない点。

ヴァイスさんは趣味が好じて、楽勝だったらしいのだが、普通はこうした問題は教本にも載ってないので、先輩から教えてもらうしか無いのだと言う。俺もヴァイスさんから積載重量や、馬力、速度等を簡単に抜き出してもらい、其れをひたすら暗記している。

 

 興味無い人間には地獄である‥。

 

後は、分隊教練の練習がしたいのだが‥

 

キャロとエリオに頼むしかないか‥。

 

先ずは、基本的な動作の見直しかな。

またギンガさんに頼る事も考えたが、

 フェイトさんが怖いのでやめておく。

 あとギンガさん自体もこの間、キャロと仲良くしてる所を勝ち誇ってから、視線が若干怖いんだよね。教本とにらめっこしながら地道にやるしかない。

 

 時間がいくらあっても足りない‥。

筆記の基本教科は大方大丈夫な所迄来た筈だ。

未だにチラチラと、遠くから伺ってくるフェイトさんをやはり無視して、自分の机に戻る。

すれ違った瞬間のフェイトさんの寂しげな顔に心をかきみだされるが、振り切って勉強に集中する。

 

実際、あまり考え過ぎると、嫌な想いがもたげてきてしまう。

俺はフェイトさんとの為に頑張っているのに‥。

 

勉強教わっていただけで、やましい事は何もない。

それなのに、頭ごなしに浮気だ‥なんて‥

そんなに信用ないのだろうか‥?

 

 ―いかん。この思考はダメだ。

 俺は考えていた事を振り払い、

 ペンを再び走らせ

 頭を垂れて集中する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂き感謝‥‥‥‥っ!
圧倒的‥‥‥‥‥っ!‥‥‥感謝っ!


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ある姉妹の会談。

連続投稿だあー!
ヒャッハアー!
今回は後書きにておまけでNGボツシーンを乗せてます。本編の分岐ifです。やりたかっただけ‥反省はしている。見なくても影響ありません。
でも出来れば御笑覧頂きたいm(__)m


「~♪」

ある日曜日。

朝から私は、ソファにて、鼻唄を口ずさみながら、編み物をしていた。

季節は夏も終わりに近付き、秋の気配が近付いてきていた。

昼間はまだまだ暑いが、夕暮れ時には少し肌寒さを感じる頃合いだ。

季節の変わり目と言うこともあり、普段お世話になっているジム兄に感謝の気持ちを込めて、セーターをアミアミバしている。

「ん~?間違えたかな~?」

少し、手元が狂った所でアミバごっこも忘れない。編み物は好きだ。心を豊かにしてくれる。

編み物は良いね‥。編み物は心!

はぁ~♪たいしたまげた!

おっといけない。何か混線している。

私ってばマジ健気。

可愛い妹からこんなプレゼント貰ったら、ジム兄ったら嬉しくて、悶死しちゃうんじゃないかな。

ジム兄の喜ぶ顔を想像して口角が上がるのを感じながらも忙しく指を動かしていく。

そんな私の肩にガシっと手が置かれる。

見ると、そこには‥

「キャロ~~(泣)」

 

メソメソ泣いてるフェイト姉がいた。

片手にビールの500缶を握り締めているのを見て、察する。

「シクシク‥ジムが、ジムが~メソメソ‥ヒック」

 

 この間の1件から二人の仲の修復はまだされてないようだ。

それは良い。‥良いのだが‥その代償として、これから、この酔っぱらいの相手をしなければいけないのかと思うと、心底めんどくさい。

======================「―ね?酷いでしょ?」

要約すると、ジム兄に構って欲しくて、近くをうろついてみるものの、ジム兄に無視されているという‥。

このたった三行の説明をするのに、何故三時間も時間が必要だったのかと小一時間‥(ry

答えは簡単。話してる最中に何度も思い出して、泣き出したからである。その度に宥めて、泣き止んだかと思うと、振りだしに戻るの繰り返しなのである。エンドレスフェイトかな。

あ。ちょっと上手い事言ったかも。

まあ、なんというか‥話を聞いてて思ったのは‥

あのジム兄がフェイト姉を無視するなんて、あり得ないってこと。

なのにフェイト姉の脳内では、ジム兄が無視した事になってるらしい。

作戦が上手くいっているようで何より。

どうしたものか。このまま、こじれさす為に、このまま聞き流しながら、

エンドレスワルツならぬエンドレスワロスしてても良いのだが、

―うーん。気が乗らない。

だってジム兄が可哀想じゃん!

―仕方ない。

「あのね、フェイト姉?」

私は、姿勢を正して、シリアスな雰囲気で話し出す。

「うん?キャロも飲む?」

 

「15才にもなってない幼女に酒薦めんな」

私がキッパリと断ると、フェイト姉はシュンとして、みるみる目元に涙が溜まっていく。

 あーほんとめんどい。

「‥フェイト姉‥ちょっとそこ、座りなさい」

 

「え‥?もう座って‥」

 

「口答えしない」

 

「‥はい」

 

フェイト姉は首を傾げながらもとりあえず私の正面に座る。

私も編み物の手を止めて、脇にモノをどかして、改めて正座に座り直す。

 

「‥コホン‥それで?フェイト姉はどうしたいの?」

咳払いをひとつして、フェイト姉の目を覗き込みながら、ゆっくり問い掛ける。

「わ、私は‥」

 

目を泳がせながら、黙り込むフェイト姉。

‥ふむ。

即答出来ず‥か。

ちょっと‥ムカついた‥かも。

「まず、私から見てて、ジム兄がフェイト姉を無視するなんてあり得ないんだけど‥本当に無視しされたの?それはどういう状況だった?」

 

「‥ぇ‥?えっと‥」

そこでフェイト姉は虚空を見つめて、考え込む。

時間にしておよそ2分程。直ぐに、お酒で赤くなっていた顔から血の気が引いていく。

 

「ど、どうしよう‥?私‥無視されてなかった‥ううん。むしろ私が無視してた‥!」

 ‥やっぱりか。

「どどど、どうしよ、どうしよう

~‥なのはに相談に‥」

 

それはやめて。ジム兄の生命が危ない。

私はひとつタメ息を吐くと、

「もう一度聞くよ?フェイト姉はどうしたいの?」

 

「ジムと仲直りしたい!」

 

良く出来ました。

 

「ならどうしたらいいかわかるよね?」

 

「‥っ!オハナシだねっ!」

うん。そうなんだけど‥

あれ?なんかニュアンス違う気がする‥。

‥大丈夫かな?

「うう‥私ってばなんて酷い事を‥」

 

 仲直りしたいけど‥今さらどう接したらいいかわからない。といった感じかな。

フェイト姉はなんというか、人間関係の経験が圧倒的に足りてない。人の良さすら仇になっている。仕方ない‥か。この愛すべき姉を放置するのは、夢見が悪くなりそうだし‥。まあ、私のせいという意見もなきにしもあらずだしね。

という私の決意を余所に、

またメソメソと泣き始めるフェイト姉の頬に手を添えて、ゆっくり私へと向かせる。

「困った時は助けてあげるから、もし道を間違えたら、私‥とついでにエリオで連れ戻してあげるから、みんなフェイト姉が大好きだから、だから心配しないで、迷わないで‥やりたいようにしてみなよ‥」

「キャロ‥クスッ‥エリオとも仲良くしてあげてね‥?」

「あー‥。もう少し‥頼り甲斐がでてきたらね‥?」

 

「クスッ‥そっか‥」

 

=======================

それから30分後。

フェイト姉はシャリオさんの取り計らいでジム兄と仲直りのデートをすることになったとウキウキ報告してきた。

やんかムカつくので、また隙あれば嫌がらせしようと思いますまる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




=====NGシーン=====

~もしシャリオ嬢の仲裁がまにあわなかったら~‥
シャリオ姐さんにフェイトさんとの仲裁を頼み、一安心した俺は格納庫への路を急いでいた。
これからヴァイスさんに分隊教練について、動きを見てもらうのだ。
格納庫のドアを開け、中に入ると‥

「よう!ジム坊!‥待ってたぜ‥?」
直ぐにヴァイスさんが出迎えてくれる。
語尾が疑問系になったのは、俺の状態のせいだろう。
何故なら、格納庫に入った瞬間に、俺の身体はバインドで拘束されたから。
 ‥え?ナニコレ?
これは‥ライトニングバインド?!
術者に気付き見れば、格納庫の天井付近にフェイトさんが浮かんでいた。
「私は弱いから‥!これからも‥迷い、間違えながら、進むよ!」
 ちょっとナニ言ってるのか解らないですね。
「だから!オハナシしよ!ジム!」
いやちょ‥
パニック状態な俺を置き去りに、
フェイトさんはバルディッシュを展開させる。

「受けてみて!バルディッシュの全力全開!」
「ホーネットジャベリン!‥ファイヤーッ!」
そして、
金色の電の奔流が俺とヴァイスさんを呑み込んだ。


===BADEND==============



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潮騒の中で‥。

早送り㊥
ホントは昨日出来てたけど、ジムのフェイトへのシーンが上手くまとまらなくて、一晩寝かしてみたけどやっぱりまとまらないのでもう出すことにしました。


明後日14時~フェイトさんのアポイント取っといたよ♪

頑張れ少年。

お姉さんのワンポイントアドバイス♪

たまには攻めの刺激を与えた方が愛は育つもんだぜ。

 

以上がシャリオ姐さんからのメールである。

 

男前過ぎない?

姐さんじゃなくて兄貴と呼びたくなるんだけど‥

 

明後日か‥。

明日美容院でも行こうかな‥。

 

======================

2日後。

 空は快晴。

 もう8月も終わり、秋と呼ばれる暦へさしかかり、気温も大部涼しくなった。

俺は以前、フェイトさんから戴いたネイビーストライプのスーツに身を包み、部屋を出る。

隊舎入り口に14時ジャストに付く。

暫し、待つと、

フェイトさんがブレーキ音とタイヤのスリップ音を響かせながら、愛車を横付けする。

「お待たせ♪」

サングラスを軽く上げながら声を掛けてくる。

 ‥やだ。相変わらずイケメソ‥。

フェイトさんは黒のトップスに白地に茶のチェックがカジュアルな秋の装いのロングのワンピ。

腰横に縦に入る細いスリットから覗く白い太腿が大陽を反射して眩しい。今日は髪を結わず、ストレートに下ろしている。

俺は何とか太腿から視線を剥がし、クルマに乗り込む。

 

「‥‥‥」

 

「‥‥‥」

 

 ‥き、気不味い‥。

ケンカしてたわけでもないのだが‥暫く避けられていた影響からか、何を話せばいいのかわからない‥。

 

「‥っ‥っ‥」

 

それはフェイトさんも同じようで、先程から何か話そうとしては、止めるのを繰り返している。

ここは俺から話を振るべきなんだろうな。

 えっと‥えーっと‥

 

「き、今日はどちらに行くんですか?」

 

「!‥うん‥海沿いに新しくシーフードのレストランがopenしたらしいんだ‥そこに行ってみたくて‥」

意を決して話し掛けたら、

滅茶滅茶嬉しそうな顔で教えてくれた。

可愛い。

てかチョイスがやはりイケメソなんだけど‥。

 

「そうですか♪楽しみです♪」

 

「そう‥良かった♪」

 

そう言ってフェイトさんは漸く笑顔を見せてくれた。

そしてチラチラと、此方を見ている。

 

「‥?」

 

目で何か?と問い掛けると、

少し顔を赤らめて、

 

「服‥着て来てくれたんだね‥」

 

 ‥ああ。なるほど。

 

「はい‥こんな上等のスーツ戴いてしまってすみません‥」

 

と、フェイトさんは首を横にフルフル振る。それに合わせて胸も一緒にブルブル震えている。

 ‥こいつ‥動くぞ‥!

 

「ううん‥思った通り、良く似合ってる‥格好いいよ‥」

 

「あ、ありがとうございます‥」

 

ストレートな褒め言葉に顔が熱くなる。

 

「こんな上等なスーツだとまだ着られてる感が有りそうで恥ずかしいです‥」

 

「そんなこと‥ない!」

 

 と、急に俺の手はフェイトさんの手に握られる。

「ちゃんと‥似合ってる‥!格好いい‥よ!」

と、真剣な眼差しで諭されてしまい、更に顔が熱を持つ。

めっちゃ口説かれてる?

普通逆じゃない?

 

「あ、ありがとうございます‥」

 

しどろもどろでなんとかお礼を絞り出す。

と、フェイトさんもハッと、手を離し、

 

「ご、ごめん‥」

 

「いえ‥全然‥」

 

と、お互い、真赤で俯いてしまう。

 え?フェイトさん運転中だろって?

いつもニコニコ安心のバルディッシュさん自動運転です。

そんなこんなで、なんとも甘ったるい車内のまま、目的地へと、車は走るのであった。

もう既に御腹いっぱいなんですが。

 

「髪切った?」

 

「は、はい‥昨日‥」

 

サングラスも相まってタモさんかな?と、錯覚していると、

「そっか‥今日の為に‥準備してくれたのかな‥?‥」

 

「え?は、はい‥一応‥」

 

「クスッ‥格好いいよ‥」

 

なんて、熱っぽく褒めて下さる。

ホント誰よこのイケメソ。俺のフェイトさんどこ行った?

 

========================

「こんにちは‥予約してたハラオウンですが?」

 

「ハラオウン樣‥2名樣ですね?御待ち致しておりました‥」

 

フェイトさんが店内に入り、名前を告げると、初老の紳士ウェイターが俺達を案内してくれた。

通されたテーブルにて、老ウェイターは少し奥側のイスの前で俺にウィンクしてみせる。

 ‥なるほど。

直ぐに察し、そのイスを引き、フェイトさんをエスコートする。

座らせてから、俺自身も左側からイスへと腰をを下ろす。

 高級そうなレストランである。マナーにはそこまで自信はないのだが‥フェイトさんは流石に堂々としている。

 ‥えっと‥確か手はテーブルの上に置くんだよな‥。

人心地着いた所でソムリエさんが現れた。

 

「いらっしゃいませ‥食前酒にシャンパーニュは如何ですか?」

 

と、問い掛けてくるが、俺には判断出来ない。

情けないけど‥今日俺はホストではなくゲストなのだ。

だから、ソムリエさん。こっちみんな。

そこに慌てたように先程の老ウェイターがやって来て、ソムリエに何事か耳打した。

「失礼致しました‥こちらワインリストでございます。」

と、フェイトさんにワインリストを見せる。

フェイトさんは適当に2~3種選んだようで、直ぐにウェイターはフェイトさんに最敬礼して去っていく。

 ‥ああ。なるほど。フェイトさんが予め、予約した時に、言い含めていたのだろう。

 ‥俺に恥をかかせないように

情けない‥。

やはり、俺はまだまだ子供なのだ。

 

と、落ち込んでいる俺にフェイトさんが声を掛ける。

「私‥マナーあんまり得意じゃないけど、笑わないでね?」

 

 ‥そんなわけない。

気後れしている俺に気を使ってくださっているのだ。

 

「‥だから‥さ?今日はマナーとか気にしないで、お料理を楽しもう?」

 

「はい‥!」

 

そんな不安気な顔で気を遣われたら、例え空元気でも絞り出すしかない。

フェイトさんが、楽しませようとしてくれている。それだけで俺は嬉しくなるのだ。

男の面子。なんて二の次、三の次でいい。

ここで、不貞腐れて、雰囲気を暗くする方が男として情けない。

 

「料理‥楽しみですね?」

 

何とか無難な話題を絞り出す。

 

「うん‥そうだね‥ジムの料理の方が美味しいと思うけどね♪」

 

等と真面目な顔で切り返されてしまい、俺の顔はまた熱くなる。

 

「そんなことありませんて‥」

 

「あっ♪ジム‥照れてる♪」

 

今日のフェイトさんはそこはかとなくSである。

お世辞だとわかっているが、あまり‥謙遜し過ぎるのも‥かと思い、どうしたものかと頭を悩ませていると、先程のソムリエがワイン片手にやって来た。

 ナイスだ。

 さっきの失態は帳消しにしといたる。

 

「お待たせ致しました―」

 

なんかながったるいワインの説明を聞き流し、

恭しく注がれたワインを軽く揺らしてみる。

説明長いよ!何やってんの!

蘊蓄を語り終え、漸く満足したソムリエはごゆっくり‥等と宣い、去っていく。

漸くといった感じでフェイトさんとグラスを掲げ合い、お互い真っ直ぐ目を合わせて

「「乾杯」」

 

もちろんグラスはぶつけないよ。

まあグラスぶつけるのマナー違反にしてるの日本だけらしいけどね。

 

「美味しいね‥」

 

「ですね‥私は余りワインは嗜みませんが、これは美味しいです♪」

 

と、答えた途端、フェイトさんの頬が膨らんだ。

最近見慣れたシルエットである。

あちゃー。ここは、素直に美味しいだけで良かったか‥。

余計な保険が失礼だったかな。と、戦々恐々としていると、

 

「何でいまさら、畏まるの?」

 

「は?」

 

「敬悟‥!今更畏まる関係じゃないでしょ?」

 

 ‥おっと。予想外の事だった。

 

「いや、でも流石に‥フェイトさんは私の保護者であり、上司であり、何より年上ですから‥」

俺の弁解を聞きながら、フェイトさんのほっぺが更に膨れていく。

 その内破裂しちゃうんじゃないかな。

 

「公的な場なら兎も角‥今はプライベートだよ‥?今は二人っきり‥だよ?」

 

 あかん。そんな潤んだ目で見られたら‥さ。

速攻でダム決壊である。

俺の心の堤防、フェイトさんの涙に対しての許容量低すぎぃ。

俺は覚悟を決めて、ワイングラスを一気に飲み干し。

 

「美味いな‥フェイト‥」

 

等とキリッと言ってみる。

 

「‥っ!うんっ!」

 

名前呼捨てにされただけでそんな嬉しそうな顔せんといて。可愛い過ぎるよ。

これは最早テロだよ。

 まるで可愛さの‥総合デパートや!

と、俺がKO寸前になっていると、

漸く料理が運ばれてきた。

所狭しと並べられていく料理の数々に圧倒される。

色彩鮮やに盛り付けられた美しい料理の数々に、

ゴクリと喉が鳴ってしまう。

鼻をくすぐる繊細な魚介独特の薫りに食欲のスイッチが否応なしにonにされる。

その美しい料理に二人して三嘆し、喝采をあげる。

どこぞの社長ばりに粉砕玉砕大喝采と高笑いを上げたりはしない。

流れるような所作で料理を口に運ぶフェイトさんに見蕩れながら、フェイトさんの所作をなぞりつつ、俺も食事を進める。

フェイトさんがふつくし過ぎて、料理の味とかさっぱりわかりませんでした。

 

「美味しいね‥♪」

 

「うん‥料理も美味しいけど、ちょっと見てみて?」

 

「うん?」

 

俺につられて、フェイトさんも横を見る。

そこは大きな窓からオーシャンビューが広がっていた。

そして、丁度水平線に夕日が沈んでいく所だった。青い海を茜色に染め上げながら役目を終えて行く夕日を眺めながら、俺達は暫し手を止めて、その光景に見蕩れていた。

 

「素敵‥」

 

 フェイトさんが感嘆の言葉を漏らす。

 

「フェイト‥今日はここに連れてきてくれてありがとう‥俺‥この風景‥一生忘れない‥」

 

「うん‥私も忘れない‥!」

 

 そう言ったフェイトさんは夕日に照らされているせいか、いつもより顔が紅くなっていた。

そんなこんなで、食事も無事に終わり、

車で帰ろうというところで、

フェイトさんが唐突に切り出した。

 

「‥ねえ?‥もう少しだけ‥付き合ってくれない‥?」

 

「もちろん構わないけど?」

 

「ありがとう‥」

 

程無く車は海沿いの通りに止まり、

 

「ここから砂浜に降りれるんだ‥ちょっと‥ジムと散歩したいな‥って‥ダメ‥かな?」

 

上目遣いは反則です。一も二もなく首肯して、俺とフェイトさんは砂浜に下りる。

流石に日没後とあって、もう人気はない。

もう8月も終わりとはいえ、昼間はまだまだ海水浴客で賑わっていたのだろう。

まるで祭りの後のような、砂浜に微笑みが溢れる。

日は沒したが、まだまだ明るい。しかし、流石に、海からの潮風には少し肌寒さを感じる。

フェイトさんは大丈夫だろうか?と、チラリと見ると、フェイトさんは俯いて、何かを考えていた。

が、やがて意を決したように顔を上げると、

ずんずんと俺に近付き、

 

「腕‥借りるね‥」

 

 と、俺の答えも待たず、俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。

「あ‥あああ、歩きづらいから!」

と、顔を真赤にして、言い訳を言い出すフェイトさん。

 

確かに、フェイトさんの靴はパンプスである。

なら何故砂浜散歩なんだと小一時間‥(ry

が、そんな事はどうでもいい。

今はこの腕に当たる至福の感触に気持ちを集中させたい。

フェイトさんの方が背高いのでいまいち格好付かないまま、夕焼けの砂浜を二人で歩く。

「‥ねえ?」

 

「うん?」

 

「今‥楽しい?」

 

 歩く度に腕に伝わるやらかい感触をめっさ楽しんでますが?

 

「はい!」

 

俺は勢い込んで答える。

 

「‥良かった‥!」

 

と、花がひらくように笑顔を見せるフェイトさん。

そこで俺はずっと気になっていた事を聞いてみることにした。

 

「フェイトは‥楽しんでる‥?」

 

 フェイトさんはいつもこうして俺やキャロを気遣ってくれる。‥でもフェイトさんは‥?

フェイトさん自身は楽しんでいるのだろうか?

いや、フェイトさんは俺達家族以外にも、常に気を遣っているように見える。

元犯罪者とレッテルを貼られ、

必要以上に自分を律して窮屈に生きているように見える。

俺はそれが心配なのだ。

問われたフェイトさんは少したじろいで、

 

「もちろん‥!楽しんでるよ‥!」

 

 ウソだ。そんな屈託ある笑顔なんて見たくない。

 

「ねえフェイト?貴女はもう十分苦しんだ筈だ‥そろそろ‥自分の為に‥生きても良いんじゃないかな‥?」

 

「‥自分の為?」

 

心底解らないという顔で聞き返すフェイトさん。

 誰もがこの世に生を受けたなら、自分の為に生きている筈なのに。

この人はそんな当たり前の事すらわからなくなってしまっているのか‥。

「では、貴女は何のために生きているのですか?」

「私、私は自分の持つこの魔法という力で、私みたいな想いをする子供を一人でも減らす為に‥そんな社会を作る為に‥生きているよ‥」

 

 ‥立派な考えだ。

俺が今から伝えようとしている事は、嫌われないだろうか‥?ある意味、今のフェイトの生き方を否定する事にもなる。

 恐い。フェイトに嫌われるかもしれない。そう思うと、とても恐い。

 

でも‥それ以上にフェイトには自分の為に生きて欲しい。

これは俺のわがままだけど‥!

それでも、願わくば、想いよ、伝われ‥!

「少し、友達の話をします‥」

 

「え?うん‥」

 

「昔‥一人の男が居ました‥男は周りに気を遣う事に長けていました‥。」

「来る日も来る日も周りに気を遣って生きていました‥その結果‥男は心を病みました‥」

 

「え‥」

 

「そして男は気を遣っていた周りから切り捨てられました‥」

 

「そんな‥」

 

「人が生きる上で百人の人と出逢ったとします‥大抵その内99人は、自分と無関係に生きる人達です」

「例え自分が死んでも悲しんでもくれない人‥でも‥一人はいる筈なんです‥自分の悲しみを我が事のように一緒に悲しんでくれる人が‥」

「社会の為にと言いますが、その社会を構成するのは大半が99人の無関係な他人です‥」

 

「俺は‥100人の中の‥その一人と出会う為に‥もしくは、誰かにとっての、その一人になるために生きて行きたい‥それが‥自分の為に生きるってことじゃないですかね‥?」

 

「うん‥それって‥ジムの話しなの‥?」

 

「ち、ちちちがいますよ!友達の話です!」

 

「クスッ‥そっか‥そういうことにしとくね」

 

顔が凄い熱いけど夕日のせいだな。うん。

「‥うん‥ありがとう‥ジム‥私も‥その一人と出逢えるよう‥その一人になれるよう‥生きてみるよ‥」

「まあ‥もう出逢ってるかもしれないけどね♪」

と、フェイトさんは腕に更に胸を押し付けてくる。

その感触にあたふたする俺を横目にフェイトさんは尚も先へと歩き続ける。

◆◆◆

 

「ふふ‥」

 

 ジムの気持ち‥伝わったよ♪勇気を出して踏み込んでくれたこと♪

耳障りの良い言葉を並べるわけでなく、

嫌われるかもしれない恐怖を乗り越えて、純粋に私の事を案じて掛けてくれた言葉‥それは‥家族の証。うん。この高鳴る鼓動と、しらぬ間に緩んだ口角が答えなんだろう。

顔が酷く熱いけど、夕日のせいなんだからねっ!

私は赤くなっているであろう顔を誤魔化すように

ジムの腕を引っ張りながら先へと歩き続けた。

そんな私は気付けば抱き締められていた。

夕日の名残りも消え、辺りは薄暗くなっていた。

そのせいか風も少し冷たい。

だけど、ジムに抱き締められている今は身体‥いや、心迄も暖かった。

私を抱き締めながら尚もジムは言葉を続ける。

「そうしなければいけないという気持ちに囚われていませんか‥?例えばエリオ‥エリオはフェイトにこれ以上なく感謝してる筈だ」

「でも‥これから先もずっと‥フェイトが縛られる事を望んじゃいない‥俺が‥伝えたいのは‥貴女は‥もう、そんな事しなくても、価値のある魅力的な一人の女性だってことだ‥!」

私に叩き付けるように耳元で叫んだジムの言葉に

私は‥心が軽くなるのを感じていた。

 そうかもしれない。

 私は今迄、贖罪の為と、理由をつけて、誰かの為に‥生きる事で、自分の価値を見出だしていたのかもしれない。

母さんに存在を否定されたあの時から、ずっと‥。

自然と涙が目蓋から溢れた。

目を瞑り、ジムへと顔を向けると、程無く唇に暖かい感触が触れた。

二度目の口付けは‥潮風のせいか、しょっぱかった。一度目は血の味だっけ。

レモン味のキスとやらはどうやら都市伝説である。

そんな事を考えながら、寄せては返す波の音をBGMに、私達はより深く唇を貪りあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで戴きありがとうございます。これにてストックはめでたく空に(笑)次はいつも通り日曜迄に頑張る所存。
そしてまたシコシコストック溜め頑張ろう。


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蠢きだす悪意。

グハッ‥評価を緑にするとはやってくれるじゃないか‥(。>д<)まあ、好き勝手書いてるし‥仕方ないか‥(´д`|||)そんな時は働く細胞のOPでおねーちゃんの歌声を聞いて癒されるに限る。



 

 

 

「ん?何だ?これは‥?」

 

朝から書類整理をしていたワシが目を止めたモノ‥それは一枚の推薦状と共にファイリングされていた職員の情報書類だった。

訝しげなワシの呟きにオーリスが覗き込んでくる。

 

「近々ある曹昇級試験の‥申請書類です‥ね?懐かしい‥。もう、そんな時期なんですね‥」

 

と、オーリスは珍しく鉄面皮を崩し、目を細める。

 

「それはわかっとる‥問題はこいつの推薦者と、こいつの階級だ!」

 

推薦者はクロノ、ハラオウン。

階級は一士。

 何故海の提督が陸の曹程度の人事に口を出してくる。

おまけに二曹への跳び級推薦だと。

きな臭い。

こいつは匂うぜ。

プンプンしやがる。

 

「オーリス!直ぐにこいつの身元調査を!」

 

「畏まりました」

 

恭しく、ワシの手から書類を受け取り、

オーリスは部屋を出ていく。

 

「何が狙いだ‥!海の若造め‥!」

 

オーリスが退室したドアを苦々しく睨み付けながら、ワシはイスの背凭れに体重をドカッと預ける。

 

=======================

「報告します‥件の職員は、フェイトテスタロッサ一尉が身元後見人の機動六課の事務員ですね」

 

「後見人‥?」

 

「はい‥自然保護区で戦闘行為を行っていた所をフェイト執務官により保護。その後、フェイト執務官の執務官補佐に指名人事により就任。後、フェイト執務官と共に、種々の事件を解決。後、機動六課に事務員として編入‥の流れのようです‥」

 

「思いっきり奴等の身内だな‥。」

 

「そうですね‥その後、J、スカリエッティを逮捕。事務員として、画期的な事務システムを考案。このシステムは現在局内で広く活用されている‥等、一定の部隊貢献を積み、今回の試験に挑戦。‥と。」

 

ふう。と、そこでオーリスはひとつ息を吐き、

ワシへと視線を移す。

 むう‥。ワシは苦々しい思いで、オーリスへと問い掛ける。

 

「どう思う?」

 

「私見を申しますならば‥部隊への貢献度等を鑑みても、今回の跳び級の試験は妥当かと‥また、クロノ提督の推薦も、妹であるフェイト執務官との関係姓を

顧みても、自然な流れであるかと、判断致します」

 

 ‥だよなあ‥いちゃもんつけたろうとウキウキしていたら、たいしておかしな所が無かったという空振り。

ええい‥忌ま忌ましい。

ワシが不機嫌に俯くのを見て、オーリスが

更に声を紡ぐ。

 

「閣下‥今回は自重してくださいね‥」

 

「わかっとる!」

 

「もうひとつ‥気になる情報が‥」

 

「なんだ?」

 

「このジムという青年‥と、フェイト執務官が交際しているらしいという噂があります‥」

 

「なんだと?」

 

ふん。

将来の妹の旦那に、官位をつけようとでもいうのか。小賢しい。

大方、妹と同等の地位でなければ格好付かないとでも考えているのだろう。

 

 ‥はうあっ?!その時、ワシに電流走る‥‥!

 

「閣下‥?酷い顔してますよ?」

 

「やかましいわ」

 

最近娘が酷い。‥思春期かな?

 

 ‥こいつを利用してやれば、忌ま忌ましいあの甘党ババ‥ハラオウン家に一泡吹かせてやることも可能かもしれんな。

 

「なあ?‥オーリスよ?

例えば‥娘の旦那候補が昇級試験に落ちてしまったら‥クックックッ‥」

 

途中で可笑しくて、最後迄言い切れなかったワシをオーリスがうわあ‥といった顔で見ている。

 何故だ。

 

======================

 

 

 

「久しいな‥ゲンヤ‥」

 

「いきなりのご訪問傷みいりますな‥中将‥」

 

「すまんな‥少し、話しがあるのだ」

 

ワシの言葉に、ゲンヤが苦々しい顔をする。

 

「なんだ?その顔は‥?」

 

「中将の少しは‥少しだった試しが、ありませんでな‥これから捜査会議があるんですわ‥出来れば手短にたのんますわ‥」

 

等と苦笑いしながら、言いやがる。

階級差を考えれば、あり得ない物言いだが、

こいつとはもう長いつき合いである。

それもあるが、何処かそういったことを咎めようと思わせない雰囲気がこいつには昔からあった。

 

「まあ‥そういうな笑」

 

ワシがそれでも引かないのを見ると、ゲンヤも諦めたようにタメ息をひとつつき、

向いの椅子へと腰を下ろした。

 

「それで‥どうしたんです‥?」

 

「こいつを知っているか‥?」

 

 俺が見せた写真を見て、ゲンヤの目が細まる。

「六課のジム一士ですな‥存じてますよ‥娘も世話になってますんで‥若いのに、優秀なヤツですわ‥」

 

「ならば話しが早い‥こいつは今度‥海のクロノハラオウンの推薦で昇級試験を受ける‥」

 

「ああ‥そのようですな‥それでそれがどうしたんです?」

 

「気に入らん」

 

「気に入らんて、中将‥まさか‥」

 

ワシの言を受けて、慌て出すゲンヤ。

 

「ーというわけだ‥」

 

「中将‥それは‥ダメだ‥」

 

「海と陸の確執は俺もわかる‥忸怩たるあんたの想いにも理解はする‥でも‥それとこれは違うだろ‥別にジム坊が海に引き抜かれると決まったわけでもあるまい‥?」

 

「あの女狐の事だ!引き抜くに決まっているだろう!」

「なに‥落としてそのままにするわけではない‥」

 

「あん?」

 

「一回落として、その後に何だかんだ理由を付けて救済してやるさ‥そうすれば、その若手もこちらに尻尾を振るだろうよ‥」

 

「アンタってやつは‥」

 

普段なら考える迄もなく、切って捨てる話しだが、

もう長いつき合いの、こいつの頼みだ‥。

地上の平和の為に、強硬な頑固親父のポーズを演出している‥。その為、事情をよく知らない人間が見れば、穏健な正義の本局VS頑固な悪の独裁者。という構図に見えるだろう。その結果、本局内でも心無い言葉を浴びる事もある。少ない予算と人員で恐るべき検挙率を上げ、治安を守り続けている。文字通り身を挺して地上の平和に資しているのだ。地上部隊に身を置いている者は多かれ少なかれ、こいつに借りをつくっているようなもんだ。そんなこいつのたまのストレス発散‥いや、ワガママ位聞いてやっても罰は当たるまい‥。ジム坊には、今度‥飯を奢ってやろう。なあ‥クイントよ‥俺が今からやることは間違ってるかな‥?

 あの若き青年の人なつっこい笑顔を思い浮かべると、胸がチクリと痛むが‥。娘と、はやて達の事を思えば、リターン的には悪くない。そう思い、俺は条件を口にする。

 

 ワシの言にあきれたように手で顔を抑えるゲンヤ。

 

「やれやれ‥その一回の嫌がらせだけだな?」

 

「あん?」

 

「それ以降は、ジム坊にも、ウチの娘達、後‥機動六課にも嫌がらせしないな?‥それなら手伝ってやるよ‥」

 ここが最低ラインの落し所だろう‥。

 

 ふむ‥。元々、ゲンヤの娘に手を出す気等毛頭無い。機動六課にもだ。

なんせ、後ろ楯だけはしっかりしているからな。

表だって敵対するのは非常にめんどくさい。

何かポカでもしない限り、係わる気も無い。

元々、有能な若手の芽を摘む気も更々無い。

落ちて、こちらに尻尾を振るようなら、ワシ自身が引き上げてやるさ。

 

一回落ちてもらい、ハラオウン家の鼻を明かせるだけで満足だ。

 

「うむ‥約束しよう‥」

 

「やれやれ‥で?どうしろと?」

 

「ー‥」

 

「お前‥えげつねえな‥確かにそれなら、ジム坊は落ちるかもしれんが‥高町の嬢ちゃんが黙ってねえぞ‥」

 

む‥。確かに、

それは怖い。

 

「ま、まあ‥ヤツとて、所詮は飼い犬よ‥」

 

「声‥震えてんぞおい。まあ‥流石にそこまで無茶はしないと、信じたい‥がな」

 

 いざとなれば、六課の仲間がヤツのリミッターとなるだろうよ‥。

 

「そいじゃ、俺は、仕事行くぜ?」

 

どっこらしょーいちっと、腰を上げるゲンヤに、

 

「ああ‥すまなかったな?‥今晩どうだ?」

 

と、謝意を示し、晩酌に誘ってみるが‥。

 

「っと、‥悪い。この前の健診で引っ掛かっちまってな‥ちょいと、酒断ち中なんだ‥」

 

「おいおい‥大丈夫かよ‥?」

 

「はっは‥なあに‥身体は元気そのものよ‥!ただ‥娘が‥恐くてな‥」

 

頭の上に当てた指を角に見立てて、おどけてみせるゲンヤに思わず吹き出す。

 

「ガッハッハッ!まあ‥それなら仕方ない‥その内また‥な?」

 

「おう‥!お前もあんまり‥飲み過ぎんなよ~」

 

「ほっとけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も読んで頂きありがとうございますm(__)m
それではまた来週m(__)m筆が乗ったら、明日出すかも(///ω///)♪


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ある兄の試練。①

またやってしもうた。
一話にまとめきれない己の未熟さよ‥。
読みにくくて読者樣には申し訳ありませんが、
多分4つくらいになります。
このシーンが終る迄はなるたけ間を開けずに
投稿する所存。お付き合いくださいませ。


天高く、馬肥ゆる秋。

そんな言葉通り、空も高く見える程、澄みきり、晴れ渡った快晴。爽やかな空気を肺一杯に吸い込みつつ、俺は試験会場の扉を開けた。

中には俺の他にも数名の受検者。

他の受検者に比べ、一回り程度歳若い俺の姿に

好奇の視線が刺さるが取り合わず、黙々と自分の席を探す。

先ずは、筆記前半戦。国、数、英、社等の基本教科。

その後、法務や、専門的な智識に入る。

特に問題も無く筆を走らせ、

概ね問題無く解けたという、安心感、達成感に

頬も緩む。

 そして昼休憩となる。

お昼を食べたら、体力テスト及び、分隊共練の基本動作テストだ。

食堂のおばちゃんにカツ丼ダブルという激励を頂き、午後に挑む。

 体力テストと基本動作は問題無くクリアー。

夕日が沈み出した頃‥次の模擬戦の場所へ向かうよう告げられた。

模擬戦はチーム戦ということで、

予め、申請しておいたメンバーで挑める。

勿論、申請出来るメンバーの階級には制限があるが。

俺はキャロとエリオに頼んでいる。信頼、チームワーク。実力面でこれ以上ない編制で頼もしい。

二人と合流して、所定の場所にて、指示を待つ。

 

「はーい。ちゅうも~くなのですよ~♪」

 

ホロウィンドウにまるで少女のような可愛らしさをまだ残した銀髪の甘ったるい声の美少女が映し出された。

身体のサイズも相まって、より若く見えるその少女。

だがこれでも上官である。俺達は姿勢を正し、敬礼を取る。

「俺達の一糸乱れぬ敬礼を見て、ツヴァイ曹長はウンウンと頷くと、続けてその可愛らしい声を幾分張って発した。

 

「それではこれより、ジム=ニー一等陸士の二等陸曹への昇級試験‥模擬戦を行います!」

 

「ハッ!お願い致します!」

 

「尚、今回の模擬戦は防衛戦を想定して行います!」

 

 防衛戦‥?

 

「人数は3on3‥指定されたエリアにおいて、特定のエリアに敵を進入させないこと!時間は30分!30分間持ちこたえられれば、クリアーです!」

 30分か‥結構長いな‥。相手は誰だ‥?

 

「そちらのメンバーはジム=ニー、キャロ=ル・ルシエ、エリオ=モンディアル、の3名で間違い無いですね?」

「はい!間違いありません!」

 

 曹長の問いに叫ぶように答える。

 

「では、お待ちかね‥仮想敵の発表をします」

 

「‥えっ!?‥どういう事ですか‥?」

 

だ‥誰だ‥?

資料を片手に急に顔面蒼白になったツヴァイ曹長に不安を煽られる。

流石に最強メンバーは無いと思いたいが、

この慌てよう、まさか、あり得るのか‥?

「高町なのは一尉、スバル=ナカジマ二士、ティアナ=ランスター二士、ギンガ=ナカジマ陸曹の以上4名です!」

 スターズかー‥。いやいやいやっ?!4名?4名って言った?

 魔王もいるスターズに更にギンガさん+1?

紹介と共に、なのはさん達の顔がそれぞれウィンドウで映し出される。

なのはさんは若干‥いや、結構キレている。

スバルさんとギンガさんは気不味そうな顔をしている。ティアナさんも多少気が乗らなそうだ。

「先輩方、今回は胸をお借りします。どうか‥本気で‥!よろしくお願いいたします!」

 

俺の宣言になのはさんは一瞬目を見開き、ようやく笑顔を見せた。

 

「上等‥!」

 

「オッケー!手は抜かないからね‥ジム坊!」

 

「妹に良い所を魅せるのは私です!ギタギタにして差し上げます!」

 

「キャー!ギン姉カッコイー!」

 

「ふん‥っ生意気‥」

 

 

「質問はありますですか?」

 

「撃墜判定等は通常の模擬戦と同じく、モニタリングによるHP依存でしょうか?」

 

「その通りなのですよー♪」

 

「では今から30分の猶予を与えます。その間に作戦会議しといてくださいね♪」

 

「あの‥防衛エリアの情報等は‥無いのでしょうか‥?」

場所の情報も無しに、作戦もなにもないのだが。

 

「うーん‥そうですね‥」

 

 俺の質問に迷ったように固まる曹長。

 

「良いよ‥」

 

と、なのはさんが一言漏らすと

 

「‥っ‥コホン‥んっ‥んんっ‥!通常は無いのですが、今回は何故‥か!4対3ということなので、後でデータを送りますですよ!」

 なるほど。

若干プンスカしているところから、今回の件がツヴァイ曹長にとっても想定外であり、許せない事であることが伺える。そしてなのはさんが情報ありでも良いと、許可をくれたのだろう。

 その小さな肩をいからせて、ワナワナしているツヴァイ曹長にこれ以上問い詰める事は出来なかった。

 そして次の瞬間。俺達は大きめの岩が立ち並ぶエリアに立っていた。

岩はとても巨大で、空の上迄届いていそうだ。

そんな岩の壁を見ながら‥俺はボーッと考えていた。

 どういうことなのだ。

 4対3ておかしくね?

 なんで大切な試験でこんな嫌がらせみたいな事されてるのん。

さっきはちょっとこいちゃって、本気で来いみたいな事言っちゃったけど、

大丈夫だよね?みんな良い大人なんだから、

言葉通りに取られてないよね?

なのはさんの笑顔が思い出される。

‥あ‥。あの人絶対わかってないわ。

‥元々、曹を目指してるのは成行きである。

偉くなってナニがしたいとかもない‥いや、ナニはしたいけど。

どこぞのシスコンにフェイトさんを貰う条件として、言われただけ。

そのひとつだけで、動機は品切れである。

ユーは何しにニッポンへの外人達の方がよっぽど動機は多い。

 そうか‥。

‥あの真っ黒クロスケの仕業だな‥。

だってこんな嫌がらせ、よっぽど上の人間でないと出来ないもの。

 シスコン拗らせて、邪魔しにきたわけだ。

‥なんてやつだ‥。

俺は負けない!負けてやるもんか!

キャロ、エリオ‥すまない。

兄ちゃん、いたく身勝手な理由でお前達を死地に付き合わせるわ。腑甲斐無い兄を許しておくれ‥。

さて、なのはさんをどうするか‥。

俺は脳内で対なのはさんシミュレーションを開始する。

 

 

 

 

 

 

それから間もなく、メールが着信する。

‥エリアの情報が来たようだ。

 

 

「うし‥作戦会議といこうか」

 

「うん(はいっ)」

 

エリオとキャロを引き連れて、少し拓けた場所に腰を下ろす。

先程着信したエリアのデータを空間に映し出し、

レーザーポインタでエリアマップを指し示しながら、話していく。

 

「このエリアへの進入を防ぐ訳だな‥この岩に挟まれた狭い通路しか道は無く、岩の部分は、進入不可エリア、と‥相手の進入経路が絞られてるのはありがたいな‥その分、駆引き最低限でぶつからないといけないわけだ‥」

 

「ジム兄はどう考えてるの?」

 

「‥1番怖いのはやはりなのはさんだな‥でも、やりようはある。

 

「というと?」

 

「この三人での3対1の状況を作り出す事だな‥」

 

「二人とも強くなってるし‥三人がかりなら多分倒せる‥!」

 

「ジム兄さん‥っ!」

 

「でも‥総力戦‥数‥力押しできたら?」

 

「それは多分ないかな‥」

 

「何で?」

 

「今回の防衛戦、このエリアへの進入を防ぐ訳だけど‥見ての通り、進入経路である路地が狭い。こんな狭い場所に四人で来たら、なのはさんやティアナさんの良い所を消すだけだ‥」

 

「つまり?」

 

「今回序盤はなのはさんはお留守番で固定砲台の可能性が高い。」俺達三人含め、あっちも、ティアナさん以外はインファイターだしな。

そんなメンバーが狭い場所でぶつかりあったら、

射撃掩護は邪魔にしかならない。

それに狭い場所でのぶつかり合いなら、インファイターの数が多いこちらのほうが有利だ。

 

「よって向こうも数任せの力押しはメリットよりもデメリットのほうが多い」

 

「小数でのチーム戦は一人の価値が大きいしな‥多分お互い、いのちだいじにで牽制だろうな‥でも、人数の拮抗が崩れたら、一気に押し切られる‥」

 

「じゃあどうするの?」

 

「どうするかって?確実で安全な方法を取るんだよ」

 

「先ずは向こうの編成を見てみよう。予想されるのは、ティアナさんをこの路地の入り口で待機させて、掩護要員。突入はスバルさんと、ギンガさんの突破力姉妹コンビ‥ってとこだろうティアナさんはお得意のシルエットで攪乱、陽動位は仕掛けてくるかもしれないが‥それは射撃魔法で落ち着いて対応しよう。キャロ?頼む」

 

「アイアイサー」

 

と、軽い調子で笑顔で敬礼を返す妹が頼もしい。

その後もキャロとエリオの質問にひとつずつ解りやすく答えていった。

 

 

 

 

少しずつ、キャロ達のの目にも、理解の色が浮かぶ。

 

「さて、安全に確実に数を減らしたい‥どうする?」

 

「それこそ数で押せば‥?」

 

「いや、3対1なら兎も角、3対2だと、まだ少し危険だ‥」

 

「どういう事?」

 

「3対2は確かにこちらが優勢だ‥時間をかければ、安全に仕留められると思う‥でも、相手にしてみたらどうだ?時間をかければ、確実に戦力を削られる‥黙ってさせると思うか?俺達はなのはさんを倒さなければいけない‥それには三人とも無事に残る必要があるんだ‥戦闘場所によっては、ティアナさんの本領が出てくるしな。窮鼠に噛まれるわけにはいかない。だからもう一捻りしよう

 

「一捻り?」

 

「先ず、ここら辺‥ティアナさんの射程外‥路地の真ん中辺りで俺が一人でナカジマ姉妹を迎え撃つ」

 

「はっ!?」」

 

「いくらジム兄でも、危険過ぎるよ?」

 

「まあ、聞け‥確かにいくら俺でもあの二人を相手に無傷で倒すのは無理だ‥でも、倒されないようにする事は出来る」

 

「‥ジム兄の狙いがわかったよ♪伏兵‥だね」

 

「お。キャロ正解」

 

そう。俺は囮である。

流石に二人を倒すのは難しいが倒されないようにする事は出来る。

適当にやられた振りして‥逃げるからそこを突いてもらえば良い。

幸いエリオとキャロは突撃力は高い。

不意を突ければ、ワンキルも可能だろう。

 

俺はキャロの頭を撫でてやる。

キャロはくすぐったそうにしながら、言葉を続ける。

「伏兵が尤も刺さる瞬間は相手が勝利を確信したとき‥」

 

「って‥なのはさんが笑顔で言ってたんだ♪エグいなあ‥と思ってたけど、やる側だとワククするね」

 

どうしよう‥妹が魔王に毒されてきている‥。

 

しっかり仕留めてくれよ‥」

 

「俺は適当なタイミングで退く‥其処で二人‥エリオとキャロ同時に攻撃を仕掛けてくれ‥出来れば姉妹同時に倒したい‥」

 片割れが倒された時の二人は多分キレそうだし‥。特にギンガさんはヤバそう。

「ねえ?作戦は解ったけど‥それ、なのはさんがお留守番前提だよね?」

 

 「そう。俺は最初はティアナさんの指揮でくると思っている。」

 

「何で?なのはさんの性格なら最初から自分だけでも突っ込んで来そうだけど‥」

 

「多分ないと思う‥」

 

「何で?」

 

「こういう場面ではなのはさんは先ず、ティアナさんに指揮を取らせると思う。あの人は良くも悪くも、教導官なんだ‥究極的に言えば、確かにあの人一人でひっくり返せる力を持ってる‥だから‥先ず教え子に経験積ませようとすると思う」

 

「なるほど‥ねえ?ジム兄がいきなり一人で迎え討ったら、警戒度上がるんじゃないかな?」

キャロが不安気に疑問を挟む。

 

「一理ある。ティアナさんは用心深い。

先ず、伏兵の存在は警戒されるだろうな‥」

 

「だから‥先ずは私とエリオで2on2挑んだらどうかな?」

 ふむ‥。悪くない。いや、むしろその方が定石だろう。

「だが‥その場合、仕掛ける場所はより路地の入り口に近くなる‥。ティアナさんの射撃援護の射程範囲になるから、危険度はかなり高くなるぞ?やれるか‥?」

 

 中~短距離のティアナさんは判断も早いし、射撃も正確。マルチタスクの並行処理能力は六課随一。ある意味、なのはさんよりも厄介だ。

ナカジマ姉妹の突破力と機動力を考えると、俺の迎撃地点はこれ以上下げられない。

 

「やれるよ!ね?エリオ?」

 

キャロはこちらに視線を合わせて、強い意思で頷く。

「頑張ります!ジム兄さん!任せてください!」

 

 弟妹が頼もしい‥。

 

「わかったよ‥何度も言うが、なのはさんを倒すには、三人の力が必要だ‥くれぐれも、落ちないでくれよ?」

「「はいっ(うんっ)!」」

「さて‥肝心の、なのはさん対策だけど‥」

 

「‥ーとまあ、こんな感じでやってみよう」

 

「面白いけどうまくいくかな?‥そのまま倒せたらそれでよし。と‥最終ステップ迄行くかわかんないよね?」

「ばっか。お前‥なのはさんだぞ?行くさ‥寧ろそのまま倒せる可能性の方が0に近い‥」

「もし作戦㊥になのはさんと3対1の状況になったら、その時点がクライマックスだ‥全力で片付けよう‥なのはさんさえ倒せばミッションコンプリートだ‥あとは、どうとでもなる」

 

 

 

 

 

 

 

 




戦術ガバガバ(笑)
だって魔王樣一人で/(^o^)\なんだもの。
それを覆すには、必殺御都合主義しかないのです。


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ある兄の試練② ☆side。

「ティア~?早く攻めないの?時間無くなっちゃうよ~?」

 

「うっさいわよ!バカスバル!」

 

 私はチラリと、なのはさんを見る。

 なのはさんは、壁にもたれ掛かり、腕を組み目をじっと閉じている。

そこはかと無く滲み出る怒りオーラに、声を掛けるのも躊躇われる。ていうか、掛けたくない。障らぬ神(破壊神)に祟り無しだ。

まあ‥気持ちはわかる。私達だって戸惑ったものだ。今朝突然告げられたジムの試験の相手。それだけならまだいい。

問題は4対3の変則マッチだってこと。

そんなの聞いたことがない。

108陸部隊のギンガさん迄狩駈りだしているという、手回しの良さ‥それはつまり、これが突発的でなく、予め、準備されていた事だという証明。

ナカジマ三佐に協力を取り付けられて、

尚且つ、現在なのはさんが意に沿わない指示に従っている点。

‥きな臭い。

これ‥かなり上が絡んでるんじゃ‥?

解せない。

たかが曹への試験程度で、こんな‥嫌がらせのような‥道理を曲げて、妨害してくる意図は何‥?

わからない‥。

 何かの陰謀?

そんなモノに関わっていいの?

 

 

意外だったのはジムだ。

こんな‥イミフな嫌がらせで、大事な試験を邪魔されて、なんで、あんな顔が出来るのか‥。

諦観したような顔で、逆にこちらを気遣うように、本気で掛かってこい。と、来たもんだ。

生意気。生意気!生意気!

お望み通り、本気でやってやろうじゃない!

 

私はひとつ気合を入れて、エリアマップに目を落とす。

路地が狭い。

数的有利が余り活かせない。

チラリともう一度なのはさんを見る。

やはり、動く気配は無い。

先ずは私にやってみろ。という事なのだろう。

単純に遣る気がないだけかもしれないが。

実際、私が失敗しても、なのはさん一人で何とかしそうだし‥。

進入経路は一本道。

私の機動力じゃスバル達に付いていくのは無理。

入り口に私は待機して、スバル達に突入して貰うしかないか‥?

敷かし、そうなると、スバル達は3対2で対峙することにならないか?

目的エリア迄の距離が微妙に長い。

スバル達にスピードを落としてもらい、私も一緒に突入するか?

ゴリゴリの格闘戦では私は足手まといにしかならない。

ゆっくり警戒しながら歩いたら、タイムアップの可能性が高いか?

考えろ!ティアナ!

私の得意分野に引き込むんだ!

シルエットで攪乱するのはどうだろうか?

 

「ねえ‥スバル‥?ギンガさん‥」

 

「ん?(はい?)」

 

「私‥考え違いをしていたわ‥」

 

「どういう事?(です)?」

 

「無理して進入する必要なかったのよ‥」

 

「こっちにはアトミックボム(なのはさん)がいるんだから!」

 

「なのはさんが心置き無く動ける場所を私達で創れば良かったのよ!‥ですよね?!先生!」

 

と、私はなのはさんを見るが、そこには誰も居なかった。

 あれ‥?

と、同時に私のツインテールが左右から掴まれた。

スバルとギンガさんは私の後ろを見て、青ざめている。

 ‥まさか‥

 

「むしるか‥ボソ」

ゾッとする程の低い声が後ろから聞こえた。

同時に私のツインテールが左右に引っ張られる。

「ぎゃああああ!痛い痛い痛い痛い!脳ミソ飛び出るううう!?助けてえええ!?バルス‥」

 

「さりげに、滅びの呪文紛れ込ませてる辺り、余裕あるね‥ティア‥」

 

「余裕‥なんか‥無いわよ‥バカスバル‥ゼエ‥ハァ‥」

漸く痛みから解放され、私はジンジン痛むツイテールを抑えてへたりこむ。

 

「それで、結局どうするの‥?」

 

「アトミックボム(なのはさん)が倒されるとしたら、それはあの三人に3対1で襲われる事‥寧ろ、其れしか無いといえるわ‥だから、私達で先ず一人落としましょう!」

 

「ジムとキャロを秒殺するのは、二人掛りでも厳しいでしょ?だから、狙うはエリオよ!」

 

グッと握り拳を握り、宣言した私の腰に白い腕が廻される。

 

「えっ‥?」

 

「ティアも懲りないよね‥?」

目の前には頬をひきつらせながら、こちらを見て、苦笑するスバルの姿を認識した瞬間、私の身体は重力の制御を喪い、視界は反転した。

そして、後頭部から地面に叩き付けられる。

 

「出たー!なのはさん十八番のディバインスープレックス!」

 

「まあ‥なんて綺麗なブリッジ‥」

 

‥ちょっとナカジマ姉妹黙って。

 私は後頭部の痛みに耐えながら、何とか立ち上がる。

「先ず!私がシルエットで先行する‥その後ナカジマ姉妹二人で突入!目標はエリオよ!キャロとジムは無視しても良いわ!エリオさえ落とせば、私達の勝利よ!」

ぐだぐだになりそうな空気を叫ぶように指示を出す事で引き締めて、私は震える膝を叩いて気合を入れる。

私‥既に撃墜寸前なんだけど‥。

 

「オッケー!解りやすくて助かる♪」

 

能天気なスバルの声に気を取り直し、

「今から5分後にシルエットを先行させるわ!速攻で終わらすわよ!先輩の意地見せてやりましょう!」

 

 

 

 

 

 

 




もうちっとだけ続くんじゃ。


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ある兄の試練。③ 弟side。

心臓の鼓動が何時もより高く跳ねている。

ジム兄さんは言った。

落ちるなと。僕なんかの力でも必要なんだと。

子供の頃から親は居ず、来る日も来る日も訳の解らない実験の日々だった。

 楽しい事なんかひとつも無かった。

生きている。というより生かされている。という方が正しかった。

そんな僕を外に連れ出してくれたのは、フェイトさん。

外に連れ出して、僕に家族をくれた。

フェイトさんは母親代わりと思ってるみたいだけど、僕的には大きいお姉ちゃんといった感じだ。

人並の生をくれたという意味では確かに母親?に近いかも?

そしてキャロ。

こんな事言ったら多分怒るけど、小さくて可愛い。まるで妹のように思ってる。

多分キャロは自分がお姉ちゃんだと言うと思うけど。

そして、ジム兄さん。

 

 とても優しくて、頼り甲斐があって、強くて‥面倒見も良くて、父親って、こういうものなのかな。なんて‥恥ずかしくて、本人には絶対、言えないけど。

全員‥愛すべき、家族だ。

僕の生きる理由になってくれた。

 

 そんなジム兄さんが僕を頼ってくれた。

こんなにうれしい事があるだろうか。

チームの事を頼まれた日は今までの人生で1番嬉しかった日で‥。

それからはキャロに頼んで、訓練も目一杯頑張ってきた。

 

 ‥だから、ジム兄さん‥見ててください。

僕‥頑張るから‥!

模擬戦開始の合図と共に、路地の入り口からティアナさんが一人で走ってくるのが見えた。

‥ジム兄さんの予想通りだ。

キャロが射撃魔法を放ち、その光線がティアナさんを撃ち抜くと、ティアナさんの姿はかききえた。

その後ろから、スバルさんとギンガさんが走ってくるのが見えた。

キャロに視線を送る。

キャロも視線を合せ、首を振る。

まだ早いということだろう。

入り口の死角では間違い無く、ティアナさんが隙を伺ってる筈だ。

と、キャロから念話が飛んでくる。

 

《後50㍍で同時に仕掛けるよ!》

 

《了解!》

《今回の接敵は本命じゃないから、無理はしないこと!いのちだいじにでいくよ!》

 

《わかってるよ!》

 

そうこうしてるうちに、スバルさん達が迎撃ポイントに差し掛かる。

 

《ゴー!》

 

キャロの合図で二人同時に飛び出る。

すると、僕の方に近かったスバルさんがマッチアップと思ったら、キャロ側のギンガさん迄キャロを無視して、僕に向かってきた。

 ‥ちょっ!?

 

「エリオ覚悟ー!」

 

スバルさんの右ストレートをストラーダで受け流しながらかわすと、すぐにギンガさんの右回し蹴りが向かってくる。

「くっ!」

 

穂先を地面に突き立て、柄の方を抑えて、

ストラーダで何とか受けた。

‥ あれ?

その後もスバルさんとギンガさんの同時攻撃は続く。

何発か、かわしきれずに食らってしまう。

劣勢だ。

でも‥僕は‥不思議な感覚に囚われていた。

世界がスローモーションのように見える。

 

 ーキャロの拳の方が重い!

 

 ーキャロの蹴りの方が鋭い!

 

 ーキャロのコンビネーションの方がエグい!

 

 

 ー見える!

 

 ー僕だってやれるんだ!

二人掛りで押しきれない、スバルさん達二人に焦りの表情が浮かぶ。

《エリオ!退くよ!ティアナさんがだんだん近づいて来てる!》

 

キャロの念話にハッと見れば、ティアナさんのツイテールが岩の陰から覗いていた。

スバルさんが殴り掛かってきている。

 

 ー遅い!

僕はストラーダを地面に突き立て、柄を支点にクルリと回り、スバルさんの拳をかわしながら、カウンターの回し蹴りを当て、ティアナさんの方に蹴り飛ばす。

スバルさんが吹っ飛んだところで、

スバルさんの身体の影になるように退く。

チラリと後ろを見ると、ティアナさんの悔しそうな顔がスバルさんの影から見えた。

退いてる最中に、キャロが並走してきて、

 

「やるじゃん♪」

 

と、声を掛けてくれた。

キャロに褒められたの‥初めてかもしれない。

うれしい‥。

緩む口角を必死に引き締めようと試みるが、

 

「何、ニヤニヤしてんのさ‥」

 

無理ダッター。

 

「だって‥キャロに褒められたの‥初めてだよ?」

 

 最早取り繕うのは諦めて、

緩む口角もそのままに、思った事を口に出した。

 

「そうだっけ‥?‥うん‥少しは‥頼り甲斐出てきたかも‥ね?」

 

と、キャロも苦虫を噛み潰したような表情で更に褒めてくれる。耳が真赤だ。

 

「キャロ‥?照れてる?」

 

「て、照れてねーし!照れたらたいしたもんだし!」

 

と、そっぽを向いてしまった。

なんだ。可愛い所もあるじゃないか。

更に走り続けて、ジム兄さんの姿が見えてくる。

 

「エリオ‥良くやったな‥!」

 

スレ違いざまに、ジム兄さんのそんな言葉が聞こえて。

僕は嬉しくて、顔が熱くなってしまった。

そして思わず両拳を握り締め、走りながらガッツポーズを取ってしまう。

 

「いや‥この反応の差はなんか納得いかないんだけど‥」

 

 と、キャロの呟きが聞こえたけど、意味はわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後、ひとつでこのシーン終わらすつもりですm(__)m申し訳ない。


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とある兄の試練④魔王戦。

大変遅くなり申し訳ございません。
予定より、魔王樣が粘ってくれたもので‥。




エリオとキャロとスレ違い、追走してくるギンガさん、スバルさんと正対する。

二人が俺を視界に治め、エリオとキャロから意識を切り替えた所で、エリオとキャロが少し離れた岩影に身を隠す。

俺とスバルさんの間にギンガさんが身を滑り込ませ、

スバルさんを下がらせる。

 

「二人掛りじゃなくて良いんですか?」

 

「言ったでしょう?妹に良いとこ見せるのは私だと‥」

なんて‥大真面目に言うものだから、

俺はつい苦笑を漏らしてしまう。

それが気に障ったのか、ギンガさんはこちらを憎々しげに睨み、構えを取った。

「良い機会です‥どちらがより妹を愛しているか、決着を付けましょう!」

 

「貴方の妹愛を見せてみなさい!」

 

「見せてやるさ!‥まあ‥その時には、あんたは‥八裂きになっているだろうけどな!」

 

「どうしよう‥二人のノリに全くついていけない‥」

ローラーが地面を擦る悲鳴を轟かせながら此方に急加速で肉薄してくるギンガさんの右ストレートを右手で掴み、受け止める。

殺しきれない威力に身体が少し後ろに圧される。

この細い腕のどこにそんな力が秘められているのか。そんな驚きを仕舞い込みながら、空いてる左腕を叩き付ける。‥《トライシールド!》

が、同じように受け止められてしまう。

まさか受け止められるとは思わず、軽く目を見開くが、

見れば、ギンガさんは受け止めた手に小さなシールドを張って、俺の拳の威力を相殺させているようだった。

瞬間、瞬間での判断力に歴戦の猛者の実力を感じ、

戦慄する。

その後、お互いの拳を受けとめ、掴んだまま、押し合い、引き合い、拮抗していると、

 

 こ、これは‥千日戦争‥?!」

 

と、スバルさんが驚愕していた。

随分懐かしいネタ知ってますね。

と、俺が苦笑を漏らした瞬間、ギンガさんの眼が光った。

 

《wingroad!》

 

ギンガさんの思惑に気付いた時には、俺の顎にギンガさんの膝が肉薄していて、

俺は掴んでいたギンガさんの右拳を横に引き、何とか軌道を変えることに成功した。

そのまま、wingroadに乗って離脱するギンガさん。

揺れる双丘に目を奪われる。

そんな俺の懐にスバルさんが飛び込んできた。

 

「隙ありっ!」

 

「なんのっ!」

 

俺は更に1歩近付き、スバルさんの拳の出所を潰す。

勢いを殺された拳は力を失い、簡単に止められる。

その反動で双丘も揺れる。

ん~。感謝っ♪

いかん。おっぱい姉妹の暗器(乳揺れ)

がいちいち俺に効果がばつぐんである。

その後もスバルさんの乳揺れを凝視しながら攻撃をいなしていると、

背後から戻ってきたギンガさんが襲い掛かってきた。

「ちいっ!」

 

姉妹の息の合ったコンビネーションは当たらないようにいなすのが精一杯で‥

 

「スバルっ!合わせてっ!」

 

 

「うん!ギン姉っ!」

 

ギンガさんの掛け声に合わせて、スバルさんが魔力を溜める。

ヤバい。

このまま留まるのは危ない。

俺は上へと跳躍する。

一先ずの緊急避難である。

ひと息つく暇もなく、跳躍㊥の俺の横に二条のwingroadが開通する。

油断無く構えるが、

視界の端に動く影。

苦し紛れな跳躍だったが、とうやら僥倖だったらしい。

すっかり忘れてましたよ‥ティアナさん。

そう‥。あのまま、姉妹の相手をしていたら、ティアナさんに撃たれていただろう事は想像に難くない。

偶然ながら、ピンチを脱せていたのだ。

だが、だからといって、状況は好転しない。

スナイパーの存在に気付いただけで、

ナカジマ姉妹の猛攻は続いているのだ。

風の道を滑走してくる姉妹を見据えながら、考える。

姉妹の攻撃は鋭さを増してくる。

スナイパーの存在を気にしながら、何時までも、相手をするのは不可能に思えた。

ティアナさんの射線を意識しながら、体勢を入替えながら、考えていると、スバルさんが飛び込んできた。

位置、角度共に、ディモールト!グッド。

スバルさんの右拳を受ける寸前に、軽く力を抜く。

踏ん張りを無くす事により、

簡単に後ろに吹っ飛ばされる俺。

そんな俺を追撃しようとティアナさんが姿を見せる。

 狙い通り。

 

「プラズマランサー!」

 

振り向きざまに、高速砲を放つ。

ティアナさんの眼が驚愕に拡がり、

かわすか、そのまま俺を撃つかの一瞬の逡巡。

直ぐにかわす事を選択していれば、

かわせたかもしれないが、

その一瞬の迷いは残酷にかわす選択肢をかきけした。

かわせないと判断したティアナさんは魔法を発動しようとするが、

 

「‥パンツめくれ‥!」

 

発動する前に俺の魔法は着弾した。

 

《デデーン!ティアナー!アウトー!》

 

無感情なシステムボイスがティアナさんの撃墜を告げる。

 

「ティアー!」

 

スバルさんがティアナさんに慌てて駆け寄る。

隙だらけだ。

俺はそーっとスバルさんの背後に忍び寄る。

そして、拳を振り下ろした。

 

「来ると思ってましたよ‥」

 

と、俺の拳を受けとめているギンガさんに声を掛ける。

 

「スバルはやらせません!」

 

「美しい姉妹愛ですね‥だが‥無意味だ」

 

俺の答えに理解不能という表情を浮かべるギンガさん。

‥そんなギンガさんの後ろで倒れるスバルさん。

 

「そんな‥なんで‥」

 

童動揺するギンガさんが視界をさ迷わせると、

そこには無表情に拳を構えるキャロとエリオが立っていた。

そう。ティアナさんが堕ちた時点で、二人が潜む意味は無くなった。

不意を撃てるなら即撃つのみだ。

 

《デデーン!スバルー!アウトー!》

 

そして再び、システムボイスが撃墜を告げる。

 

「さ?ギンガさん3対1じゃ流石に貴女でも勝ち目は薄いでしょ?降参してもらえると助かるんですが‥」

 

「3対1‥?笑わせてくれますね‥」

 

なんだ?この余裕‥?

‥しまっ‥!

 

「キャロ!今すぐにギンガさんを倒すぞ!」

 

「えっ!?‥はいっ!」

 

俺とキャロが前後から同時に襲い掛かる。

 

shellshield!》

 

ギンガさんを包むように魔法のバリアが張られる。

悪いけど時間稼ぎなんてさせない。

俺の拳でバリアを破壊し、破壊した箇所からキャロが潜り込み、ギンガさんの腹へと、ブローを叩き込む。

「ぐっ‥妹にやられるのなら‥我が妹生に一片の悔い‥無し‥ガクッ‥」

 

《デデーン!ギンガー!アウトー!》

 

そして再びシステムボイスが響く。

何とか間に合った‥。

と、ひと息つくと、

 

「あれあれー?みんなやられちゃったのー?」

 

 魔王‥降臨‥である。

そう。ギンガさんの余裕はこれだったのだ。

時間を稼いで、魔王樣が来れば3対2だろうと全てひっくり返る。

 

「さあ‥なのはさんもちょっと遊んでもらおうかナー‥」

 

お断りしたい‥。

「御相手お願いします!飛んで火に入る夏の虫ですよ」

 

ごねても無駄骨なのはわかっている。

覚悟を決めるしかないのだ。

 魔王からは逃げられないのだから。

だから精一杯の勇気の言葉で以て自分を奮い立たせる。

「‥へえ?‥まさか‥だけど‥3対1なら勝てる‥なんて幻想‥抱いてないよね?」

 

怖いんですけど‥。

殺気というか、覇気が漏れていて、言葉のひとつひとつが、俺達の戦意を奪っていく。

答えない俺達をじっくり睨みながら、

 

「ふふーん。ならばその幻想をぶち壊す!‥」

 

と、拳を掲げるなのはさん。

チラリと、俺は俺の周りを見る。

死屍累々‥スバルさん達が倒れている。

 

「場所を‥変えましょう?」

 

「必要ある‥?」

 

「え‥?」

 

いや、流石に倒れている人達の傍で戦うのは色々危ないでしょう?

「そんなのいいからさ‥早く‥闘ろうよ‥」

アッ!なんか変なスイッチ入ってる。スゴいワクテカしてらっしゃる。

俺が煽ったから?

やっぱりわかってなかったの?

 

ジム君‥もしかしてまだ‥自分が死なないとでも思ってるの?」

 

えっ?俺死ぬの?

 

ちょっとなのはさんキャラぶっ壊れ過ぎじゃないですかね?

ごめんな。キャロ、エリオ。やっぱここ死地だわ。

 

「行くぞ!フォーメーションJだ!」

 

「「了解ぃ!」」

 

なけなしの戦意を振り絞り、叫ぶ俺に同調してくれるキャロとエリオ。

先ずは俺が魔王に突撃。

俺の身体に隠れるように

キャロとエリオも追走しているはずだ。

行くぜ!家族ならではの三位一体のフォーメーション。

先制の俺の右フックは簡単にいなされ、魔王はそのまま上へと跳ぶ。

次いで、エリオがそこに向かって、ストラーダで突撃。

接敵の瞬間、エリオが軽く頭を下げる。

そのスペースを狙い、キャロが砲撃。

 

「小賢しい!」

キャロの砲撃を軽く頭を傾けてかわす魔王。

エリオのストラーダは指一本で止められている。

まだまだぁ!

エリオに反撃しようとする魔王の背後から、

プラズマランサーを放つ。

魔王はそれを一瞥もせず、かわす。

だが、ここまでは織り込み済み。

かわされたランサーはエリオへと向かうが、

エリオにもこれは話してある。

エリオはストラーダを振って、ランサーを魔王へ向けて弾き返した。

流石の魔王もこれは予想外らしく、足を止めて、シールドを張る。

続けて、エリオがそこへと突撃する。

キャロのブーストもあり、威力は十分。

勿論俺も背後から突撃。

流石の魔王にも焦りの表情が浮かんだ。

足を止めて、シールドを張らせて、前後から超威力の挟撃。

普通なら‥これでチェックメイトである。

 

でも多分魔王なら‥!

 

魔王はゆっくりと、エリオへと近付き、

突撃で身を低くしたエリオの上を飛び越え、

エリオの背中を軽く蹴り、エリオの突撃をかわしてみせた。

 

「僕を踏み台にしたっ!?」

飛び越えた後にお土産代りに数十の魔力弾をエリオへと放っていく魔王。

 

やっぱりか。

 

でも‥ここまでは読んでいる。

魔王を過小評価なんてしちゃいない。

過大評価でもまだ足りない。

だからこそ、魔王は魔王なのだ。

 

「とにかく‥すっごい‥」

 

エリオを飛び越えた魔王がビクッと下を見る。

そこには、既にチャージを完了したキャロが構えていた。

 ―そう。ここまでは想定内。

魔王が射程内に入ると同時にキャロの超必殺が発動した。

 

「‥ハートフルゥ!パーンチ!」

タイミングはバッチリ。

魔王の回避行動、予想移動地点、

状態。全てを計算しつくして、

その通りに事を運んだのだ。

 

‥ ヤッちまえ‥!

 

キャロの拳と 魔王のシールドが激突した。

爆発が二人を呑み込み‥

なのはさん撃墜のアナウンスが流れない‥?

ウソだろ‥?あれで失敗したのか‥?

油断なく、煙の中心へと眼を凝らす。

そこから現れたのは‥

キャロの右腕を掴み、頭上迄腕一本で掲げた魔王樣だった。

 

「‥ジム兄‥ごめん‥なさ‥ぃ」

 

キャロのか細い声が聞こえる。

掴まれた腕が痛むのか、

顔をしかめながら謝る、愛する妹の姿に‥俺は‥

自分への怒りで頭がどうにかなりそうだった。

作戦が甘かった。

魔王を相手にするには足りなかった。

戦い前の想像通り、俺は‥妹を死地へ送り込んだのだ。

ラスアタは俺が行くべきだった‥

 

《ジム兄‥!》

 

不意に届いた念話にはっとなる。

 

《諦めちゃダメだよ!私はまだ‥やれるよ!》

 

キャロの念話に消えかけていた心に焔が灯る。

 

《すまん‥情けないとこ、見せた‥》

 

《ううん‥それより、さっきの攻撃だけど、少しはダメージ入ってる筈‥だから、きっともう少しだよ!》

 

《二対一ならまだ希望はあるよ!》

 

《そうだな‥!いっちょやってみるか‥!》

 

「作戦会議は終わった?」

 

唐突に魔王が口を開き、俺達の思考はフリーズする。

どこまでこの人の掌で踊ればいいのか‥?

 

「さっきのは結構楽しかったな♪」

 

「また、楽しませて‥ね!」

 

魔王が言い終わる前に俺は飛び掛かる。

それを読んでいたかのように魔王が左腕を一閃した。

 キャロをこちらにほうり投げたのだ。

俺はキャロを受け止めようと両手を開くが‥

キャロの視線を受けて、止める。

一瞬の視線の交錯。

それだけで、

俺は理解したのだ。

キャロがこちらに向いながら、左腕を横に差し出した。

俺もそれに合わせて、左腕を構える。

それを見てキャロはフッと微笑むと、

お互いの左腕をぶつけ、肘を支点にぐるりと回転。

‥そして、その勢いのままに、お互い反対方向へと、飛び出した。

 

「愛の!鉄拳パーーンチ!」

俺はその後ろから更にプラズマランサーを放つ。

そして、キャロは砲撃が当たる寸前に頭を下げた。

魔王の死角から突然高速砲が魔王を狙う。

時間差でキャロの突進技も迫っている。

 

その時魔王は、視線を泳がせながら、キャロを見つめていた。

が‥フッと微笑むと、ランサーを片手で弾き、そのまま、キャロを迎え撃った。

再び、爆発。

 

《デデーン!高町ーアウトー!》

 

数瞬後、流れたアナウンスに俺は雄叫びをあげる。

「ヨッシャー!」

 

「あーん!耐えきれると思ったのにー!くやしー!」

そして、対照的に地団駄を踏む魔王。

 ‥確かに、模擬戦のシミュレートのHpにより、撃墜判定は出たが、魔王樣自体はまだピンピンしているように見える。

そう。模擬戦じゃなければ、落とせていないだろう。

ほんとどんだけだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何でやろ。スタンの妄想のなのはさんが強すぎる。
もうなのはさんとは闘わせません。
長くなるから‥(笑)
本当はね‥キャロの一発目のハートフルパンチで終わる予定だったの。
なのに、いざ書いてみたら‥
これが遅くなった理由です。以上、言い訳でした。スマソm(__)m


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クロノの苦悩。

厄介なシリアスゾーン突入。
シリアスは苦手なんですよね(´д`|||)



ダンッ!!

机に叩き付けた拳がジンジンしている。

音に驚いたのかオーリスが訝しげに此方を見てくる。

 

「中将‥如何いたしました?」

 

「如何も何もないわっ!」

 

ワシは報告書をオーリスに見せる。

それを見たオーリスは暫し眼を瞬かせ、

紙を受け取ると、読み込んでいく。

そして、顔も険しくなっていく。

 

「これはこれは‥あの若者‥本物でしたか‥」

 

そう。報告書はジムとかいうあの若造が試験を問題無くクリアしたという報告書だった。

 

「ナニが本物だ!『父さん?』‥はい‥」

 

突然挟まれる冷たい声にワシは言葉を呑み込む。

 

「私‥言いましたよね?」

 

「今回は自重して下さいと‥」

 

うっ‥。

娘が恐すぎて生きるのがつらい。

 

「い い ま し た よ ね!?」

 

「はい‥」

 

これはあかん。こうなったオーリスには勝てた試しがない。ワシは早々に白旗をあげる。

「こんな無茶をして!相手につけこまれるような隙を与えて!ナニがしたいんですか!?Mなの?!どMなの?!」

 

「うっ‥大丈夫だ‥バレなきゃ問題ない(キリッ)」

 

「バレるに決まってるでしょうが!相手はクロノ提督が推薦してるんですよ?!」

 

オーリスの剣幕にワシはたじたじである。ワシ‥中将なんだけど‥いや、その前に父親なんだけど‥

「ふむ‥しかし、本物だというなら良いでしょう‥」

 

と、眼鏡を光らせるオーリス。

 

「ど、どうするつもりだ‥?」

 

「この件は私に任せて貰います‥」

 

え?それ‥答えになってな‥i私に任せてください」

 

有無を言わせぬトーンでピシャリと言葉と供にキッと睨まれて、ワシは沈黙する。

ふええ‥娘が怖いよう‥

◆◆◆

 

「やあ。クロノ。」

 

「すまないな。ロッサ」

 

自室に訪ねてきてくれた、旧知の友人に相好を崩しながら、ソファを薦め、僕も腰を下ろす。

 

「それで、どうだった?」

 

「ああ。バッチリチリバツ」

 

「僕の無限の猟犬達にかかれば、簡単なお仕事だったよ‥」

 

「仕事が早くて助かるよ」

 

「めったに無い親友の頼みとあれば‥ね」

 

そう。めったにない連絡を受けたのは、僕も一緒だ。

突然のなのはからの連絡‥いや、クレームに近かったが‥せっかく楽しみにしてたのにだの、全く要領を得ない文句を延々聞かされ続け、漸く、ジムの昇級試験で何か問題があったと察し、直ぐにロッサに連絡を取り、調査してもらっていたのだ。

 

 

 

と、ウィンクをひとつよこすロッサに苦笑を溢しながら、

今回のようにいつもヤル気を出せばシスターシャッハの心の安寧も少しは保たれるだろうに。

この親友は‥言ってはなんだが‥余り、勤務態度がよろしくない‥。だがひとたびヤル気を出せば、このように即座に結果を出す優秀な男なのだ。

昼行灯なこの男が本気を出す事をいとわない相手に認定されていることを誇らしく思うと同時に、

いつも頭を悩ませているシスターシャッハに申し訳無く思う気持ちが半半で、大変めんどくさい。

 

「それで、結果は?」

 

「これさ♪」

 

ロッサから報告書の束を受け取り、目を通していく。

‥ナカジマ三佐が加担していたとは‥‥むう‥三佐の心情は、理解できない事もない‥。

三佐が加担したことを明るみにしたり、

三佐を罰するのは、はやてに動揺を与えてしまうかもしれない‥。

なんせ三佐ははやての師匠だ。

おまけに率いる部隊での部下達からの信頼も篤い。

三佐を罰したら、地上部隊の士気が下がるのは避けられまい。

今陸の状況を悪くするのは悪手だろう‥。

 

三佐には、訓告程度が妥当だろうか。

問題は中将か‥。

何でこんなことをしたんだか‥。

まあ‥言うまでもなく、ぼくら、ハラオウン家に対する嫌がらせだろうな。

こちらも対処が難しい。

今、レジアスを落とす訳にはいかない。

間違い無く、陸が荒れるからだ。

海の理念が全次元世界の安定ということで、安定が守られるなら陸はどうなってもいい。なんて悪しざまににいわれたりするが、一部間違いではないんだが、少なくとも僕と母さんは違う。

ミッド地上も大事だと考えているし、ミッド地上の平和を蔑ろにするつもりもない。

しかし、解せない。あの慎重なオーリスが付いてて、こんな軽はずみな行動をとるとは。

しかしジムには、申し訳無い事をした。完全に管理局の対立のとばっちりを食わされた形だ。

それでもクリアしたのは流石といったところか。

頼もしくて結構な事だ。

 今回のような件はあってはならないことだ。

明るみに出れば、レジアスを断罪しないわけにはいかなくなる。

しなければ、全管理局員の士気を下げる結果になるだろう。

かといって隠蔽したら、アイツがどうでるか‥

ったく。レジアスもせめてアイツを巻き込まないでいてくれれば良かったのに‥

今回の件は間違い無くレジアスの独断専行だろう。

陸と海の対立に関しては、直ぐにどうにかできる事でも無いため、今まで、問題を先送りにしてきてしまったが、今回のような件が起きるなら一刻も早く解決に向けて動くべきかもしれない。

‥頭が痛い。

 

 

 

一度、ジムを含めてオーリスと話し合うか。

こんなドロドロした裏側を見せたらジムに幻滅されるかもしれないな‥。

 

《母さん‥厄介事です》

 

《わかったわ‥今晩は早めに帰ります‥ぇ~!?リンディ帰っちゃうのぉ~!?ちょっと‥レティ‥飲み過ぎよ?‥久しぶりの親友との飲み会より息子を優先するなんて‥女の友情って‥本当に儚いわぁ~!びえぇえ~ん!》

 

どうやらレティ提督と晩酌を供にしていたらしい‥。申し訳ない。

レティ提督は、普段は聡明な方なのだが、

お酒が入ると‥少々‥‥やっか‥ゲフン、いや、大変に、なる。それ以外はとても尊敬出来る御方なのだが‥ほんとうだよ?

 

 

母に連絡を入れた後、とりあえず解散する。

勿論、ロッサにはひとまず沈黙をお願いした。

その後、僕は、名簿を開き、ある連絡先を探す。

これ以上、状況を悪化させない為に、先手を打つ必要がある。

 

《はい‥こちらオーリス、ゲイズ》

 

《突然済まない》

 

《これは‥クロノ提督‥ご無沙汰しております》

 

《ああ、悪いが、社交辞令は結構‥ジムの件で話がある‥》

 

そう伝えると、彼女の目が細まった。

 

《事務の件と申しますと?事務手続きで何か不備でもございましたか?》

 

とぼけてきた。いや、此方が何処まで掴んでいるのか、探っているのだろう。

だが、時間がない

。今回の件がレジアスの暴走であるならば、

何を仕出かすかわからないからだ。

一刻も早く、オーリスにレジアスを抑えて貰う必要があった。

《ジム=ニー一等陸士の昇級試験の件だよ》

 

そう伝えれば、一瞬の沈黙の後、彼女は口を開いた。

 

《‥私に何をお望みで?》

 

本当に聡明な女性だ。

海の提督がわざわざ自分にコンタクトしてきた事で、大体の事を察したのだろう。

 

《話が早くて助かるよ》

 

と、此方が礼を伝えれば、

 

《此方も海の提督が御懸命な方のようで助かります》

 

ははは。こやつめ。

 

《君もわかっているだろう?今回の件は‥行き過ぎだと‥》

 

《‥いまいち仰有られている事がわかりませんが‥其れで何をしろと‥?》

 

《少なくとも僕は君達の気持ちや、理屈、事情も、多少は理解しているつもりだ‥だからこそ、これ以上、拗れる前に、お互い歩み寄りたいと考えているんだがどうだろうか?》

 

《‥調整致します‥明日には御連絡差し上げますわ‥》

 

暫しの沈黙の後、彼女からは、完結な答えが返ってきた。頭の回転が早くて大変助かる。

 

《うん。頼むよ》

 

とりあえず、後は連絡待ちか‥

通信を終え、ひとつ大きく息を吐き、この後は‥母さんと何処まで、折り合えるかの最終調整だ。

今まで、散々議論してきたのだ。

今更、大きな指針変更は不可能だろうけど。

今回の件が良い転機になると良い。

僕は‥重たい頭を振り払うように、未來に想いを馳せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで戴きありがとうございますm(__)m
寒くなってきましたね。みなさまお身体にはお気をつけて。


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オーリスの苦悩。


‥たまたま、時間がとれたので、連日投稿。
オーリスに叱られたいだけの人生だった。



僕はオーリスから連絡を受けて、ジムを連れて、指定された店へと訪れていた。

ジムは上等なスーツを着てきていた。

スーツを褒めると、フェイトがプレゼントしてくれたものだと、嬉しそうに話してくれた。

上手くいっているようで何より。

外観は古めかしい場末の店だったが内装は綺麗なものだった。

成る程。外観からして、こんなところで、管理局のトップが密談してるとは思われないだろう。

だが、内装はラグジュアリーで、場に相応しい雰囲気だ。良い店だ。僕も今度遣わせて貰おう。

カウンターには初老のマスターと思わしき、バーテンが一人。

そして、魅惑的な、ドレスの女性客の相手をしていた。

女性客がこちらを振り返り、僕とジムは止まってしまう。

‥というか、オーリスだった。

 胸元が大きく開き、それどころか脇腹迄見える、深いスリットから見える、ゲレンデを思わせるような、白い柔肌が眩しい。

僕はその白から何とか視線を剥がし、

隣のジムを見ると、ジムは動じていないようだった。

驚いた。

 ‥フェイト以外眼中に無し。ということだろうか。

既に伴侶を持つ身として、見習わなくてはならない。

オーリスはどぎまぎした僕を見て、クスリと蠱惑的に微笑み、僕らを奥の席へと、案内した。

 

◆◆◆

 

試験が終わり、数日、結果を待ちながら、やきもきしながら日々を過ごしていると、

突然、クロノ提督から連絡が来た。

飲みに行こうということだが、

試験で何か不備があったのだろうかと、びくびくしながら、当日、流石に提督と飲むということで、フェイトさんに戴いた、スーツを着込み、

待合せ場所へ。

だってこれが一番の一張羅なんだもの。流石に制服で行くのは野暮だよね。

不安に想いながら、クロノ提督と合流。

スーツを褒めて戴いた。

フェイトさんに戴いたモノだと言うと、゛そうか゛と、微笑んでいた。

良かった。フェイトさんありがたう。

連れられていった店は古めかしい、バー。

 なんか笑うせえるすまんのバー蜘蛛の巣みたいなところだった。

でも反して中はとても綺麗。高級キャバクラみたい。

流石提督。いいとこ知ってるなあと、供に奥に行くと、カウンターテーブル。

バーテンダーが一人の女性客の相手をしていた。

てか、女性客の格好、超エロい。

脇腹と背中が大きく開いた漆黒のドレス

てか、それもう裸じゃない?

ビーティクごきげんようしそうなんだけど。

良い‥横チチしてるわ。

おっといかん。今日はクロノ提督‥いや、義兄が一緒だった。

 

これはあれか、義兄によるハニートラップ。

ここで、女にだらしないところを見せたら、フェイトさんに直通不可避。

あぶねえ。流石提督‥えげつねえ事しやがるぜ。

だが、甘い。

フェイトさんで馴らした俺は乳適性S

そう。海中のゲッター3号みたいなものだ。

この程度の乳では‥乳では‥

そこで女が此方を振り向いた。

てか、オーリスさんだった。

エエエエエエ。

 ヤバい。普段のお堅いイメージのオーリスさんの横チチとか。ギャップってレベルじゃねえぞ。

キッツイ眼鏡の下にこんなエロい身体を隠し持っていたとは‥

ハッ。ヤバい。一瞬見蕩れてしまっていた。

おそるおそる、クロノ提督を見ると、

クロノ提督はどぎまぎしながら、顔を赤くしていた。

‥いや、あんたも照れてんのかよ。

自分で仕掛けたハニートラップに自分で引っ掛かるとかそれなんてマッチポンプ?

レベル高すぎて、もうわかんねえなこれ。

 

そんな俺達を横目にオーリスさんは、俺達を奥へと促す。

ノーブラはまだ良いとして、ケツの割れ目も少し見えてるんですが、それは割れ目に指を入れろってことなんでせうか。

 股間が叫びたがってるんだけど。

 

提督が仕掛けるハニートラップともなると、三左クラスが出てくるのか‥。いや待て、それだと、一慰のフェイトさんやなのはさんも‥?それどころか、合法ロリのヴィータさんも?

‥ゴクリ‥改めて、管理局の層の厚さに恐れ戦く。

何て事だ‥どんなタイプ・プレイにも対応可能なんじゃないか‥?

‥オラワクワクしてきたぞ。

オーリスさんに連れられた席には、レジアス中将が、ムッツリ顔で座っていた。

‥oh‥危なく、チェンジと言いそうになった。

 流石にこのプレイは求めてねえよ?

 

◆◆◆

 

「此れで、調整は完了‥と。あとは‥フフッ」

 

そう小さく微笑を溢すと、オーリスはベッドの上に当日着るドレスを広げていた。

クロノ提督がわざわざ歩み寄りたいと提案してきてくれた。ということは、海の方でも父の価値は認められているのだろう‥。それは喜ばしい事では有るし、今回の件に関しては300%父が悪い。

精々もてなして、差し上げないとね‥。

さて、父をどうやって連れ出すか‥。

 

「中将?よろしいですか?」

 

「ん?なんだ?」

 

「クロノ提督から、会談の要請が参りました」

 

「なんだと?」

 

「例の一士も含めて‥一緒に食事でもとりながら、会談したいそうですわ」

 

「何故ワシがそんなことを?」

 

案の定、父は渋る。

それはそうだろう。そもそも一士に負い目がある状態で一士も含めて会談に挑めば、どんな不利な条件を出されるか、わかったものじゃない。

 だがそれでも‥

 

「私はお受けするべきと存じますわ」

 

「何故だ?」

 

「‥まず1つ‥今回の件は完全にこちらの落ち度です」

 

「うっ‥むう」

 

父がショボンとする。本人としても、自覚はあるのだろう。

 

「二つ‥その上できちんと一士には謝罪をするべきです‥けじめとしてね」

 

「ふむ‥」

 

「3つ‥今回の件を踏まえた上であちらから、会食の要請があったという事‥つまり、歩み寄りたいという向こうの意志も見えます‥それは、あちらかにとっても中将が切り捨てられない価値があるということ」

 

「まあ‥当然だろう‥」

 

満更でもない顔をする父に内心安堵する。

そんなに頑なでないようだからだ。

少なくとも、会食に対してネガティブではない。

もう一押しか。

 

「4つ‥」

 

「まだあるのか?」

 

父がげんなりと口を開く。

おっと。

話が長すぎただろうか

簡潔に話すとしよう。私としては、こちらが本題だし。

 

「ジム一士の中将への心象を良くしたいのです‥」

 

「‥なんだと?」

 

ジロリと此方を睨む父。

おっと。伝え方間違えた。テヘペロ。

 

「何故ワシが一士ごときの印象を気にしないといかんのだ?」

 

父の愚痴のような文句を私は受け流す。

 

「そういえばオーリス?お前、ヤツが本物だのなんだの言っていたな?‥何を企んでいる?言え!」

父の語気が上がって来た。

父の呼吸を見ながら、父が息を吸うタイミングで私は優しく諭すように口を開く。

 

「私は常々、考えておりました‥地上の治安回復の為にエインヘリアルの次の一手を」

「父さんもわかっているでしょう?エインヘリアルだけでは片手落ちだと‥」

 

父の構想としてはエインヘリアルの防衛部隊として戦闘機人の部隊を創設する事だと思うが‥実際問題それは現状難しい。スカリエッティもナンバーズも捕まり、その計画は完全にストップしてしまっている。最も、最高評議会は何やらこそこそ動いているようだが。

少なくとも、奴等が地上の平和に資する事は無いと、私は諦めている。

父もわかっているはずなのだ。このままではいけないと。未來を想うなら、今回の話は良い機会だ。

 

「何が言いたいのだ?」

 

「今中将に必要なのは剣だと、私は存じます」

 

「そう‥過去に喪ってしまった剣‥ゼストさんのような‥」

 

「あの若造がゼストの代わりになるというのか?!」

 

父が激昂する。ゼストさんの名前は未だに父の心の傷であるようだ。

 

「個人的に調査を続けていました所、中将のお考えにも所々理解を示す等、なかなか見所のある青年のようです」

 

「ふむ‥」

 

満更でもない顔で椅子へと腰を下ろす。

うれしいのだろう。

強硬派として、度々悪し様に言われて来た父である。

若き才能溢れる新芽に自分の思想、苦労を理解して貰えている。

 これが嬉しく無いはずが無い。

 娘として‥願わくば、あの若者が‥父の心の傷を癒してくれたなら‥私にはどうやっても出来ない事だったから‥。

 

「可能ならば、此方に引き込みたいと考えております」

 

 私は簡潔に希望を伝える。

父はそんな私を見ると、やれやれと首を振りながら、深く息を吐き、更に腰を沈ませた。

 

「その顔の時のお前は兎に角頑固だからな‥誰に似たのやら‥」

 

「父さんに決まってるでしょう?」

 

私は頷きながら、軽口を反す。

 

「くっ‥違いない‥ダッハッハッ!」

 

二人して、大口を開けて笑ってしまった。

 こんな時間‥久しぶりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも。毎度、お読み戴きありがとうございますm(__)m次回はまた来週の日曜予定ですm(__)m
やはり、一週間せこせこ少しずつ書いて、土曜に校正。の流れが、1番楽です。
それではまた。ばいなら(ノ´∀`*)ノシ


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矯枉過直。

校正が終わったので、少し早いけど投稿。
校正が甘いのは仕様です。



とりあえず礼儀として、中将と三佐に自己紹介を済ませ、所在無さげにクロノ提督の隣へと座らせてもらう。

 

「あの‥?クロノ提督‥?本日は‥どういう‥趣旨なんでしょうか?」

 

「ああ‥すまない‥端的に説明しよう‥実は‥カクカクシカジカ‥マルマルモリリモリ‥」

 

 みんな食べるよっ!って端的過ぎるわっ!

そうか‥先日の試験のアレは中将の嫌がらせだったのか‥てっきりクロノ提督の嫌がらせかと思ってました。ホンマすんません。

等と、クロノ提督とコソコソ話していると、

いつの間にかオーリス三佐が傍に来ていた。

 

「あらあら?仲がよろしいのですね?ジムさん?私とも、お話ししませんか?」

 

と、身を寄せながらそんなことを囁くオーリス三佐。

上官にそんなことをされてしまっては、恐縮するばかりだ。

やはり、ハニトラなのだろうか?

チラリと、クロノ提督を見ると、コクリとひとつ頷きを返された。

まさかのハニトラ肯定である。

 

「うふふ‥それじゃ‥お許しも頂けたようですし、あちらに‥行きましょうか‥?」

 

と、三佐は艶かしい仕種で、改めて俺の腕を抱きき寄せる。

そしてしっかりと力を入れて、俺を立たせた。

勃たせたと変換した人、正座。

そしてそのまま、腕を抱き抱えられながら、俺を奥のスペースに連れていく。

そこは、暖簾のようなカーテンだけで入り口は仕切られ、中から薄く淡い間接照明の灯りだけが漏れていた。

 ヤバい。

え‥ホンマに‥?

俺のJr.食べられちゃうのん?

脳裏にフェイトさんの悲しげな顔が浮かぶ。

 

「‥私のウィンナー食べられちゃうの?」

 

フェイトさん。そこはせめてソーセージでたのんます。

等と、脳内のフェイトさんにクレームを付ける事で、俺は冷静さを保つ。

程なく、奥の部屋に付き、

部屋の入り口にかかる、暖簾のようなカーテンを二人でくぐると、そこには、

 

 中将がムッツリ顔でいた。

 

ウボアアアアア!

息子が萎んだ。

僕の気持ちを弄んだな!

なんて事すんねん。

お前ら、これで俺のJr.がEDになったらどうしてくれんの?

ショックであれだけ叫びたがってた、俺の股間が今や借りてきた猫みたいにシンとしてるよ!

それくらいのトラウマものだよこれは!

テーブルを挟んで、中将の正面に座らされる。

 

「ジム君‥」

 

「ハッ!」

 

中将の呼掛けに立ち上り、敬礼で返す。

 

 

「そんなにかしこまらんで良い」

 

そんな俺を手で制し、着席を促す中将。

 

「は‥はぁ‥」

 

御言葉に甘え、座り直す。

 

「今回は私の不徳のせいで迷惑を掛けた‥どうか、許して欲しい‥」

 

と、頭を下げられてしまった。

 

「お、お止めください‥」

 

 別に命を取られたわけでもない。

 いや、死ぬかと思ったけど。

 この程度の嫌がらせなんて可愛い方である。

 この程度で中将が一士ごときに頭を下げちゃいけない。

 まあ、だから場所変えたんだろうけど。例え密室であってもだ。

 

「私は気にしておりませんので‥地上の平和に尽力し続けておられる日々の中将の心労に比べれば‥今回の事等、些事に過ぎません」

 

 むしろ謝るなら先程のハニトラフェイントの方だからね?尚、ハニトラフェイトは大歓迎です。

 俺の言葉に中将は何とか頭を上げてくれた。

その瞳は不安に揺れており、俺は人間味を隠せないこのオッサンが少し好きになった。

すると、いつの間にか隣にいたオーリス三佐が再び俺の腕に抱き付き、

 

「まあ‥寛容ですのね?それに‥父の気苦労にも心を砕いてくださってるようで、娘としても嬉しく存じますわ♪」

 

ふわりと漂う甘い香りに心を奪われていると、

中将が憎々しげに俺の抱き付かれている腕を見ていた。

 

「さて‥ジムさん?」

 

と、ここで、オーリス三佐の纏う雰囲気が変わった。

 

「はい?」

 

「少し‥真面目な話しを‥致しましょうか?」

 

等と眼鏡の奥の目を細めながら告げてくる。

一応提案の体をとってはいるが、雰囲気は有無を言わせてくれそうにない。

 

「真面目な話‥とは?」

 

ゴクリと、喉を鳴らしながら、問い返す。

 

「うふふ‥そんなに構えないで?貴方は‥今の管理局を‥どう思います‥?」

 

と、目線を合せながら、問いかけられる。

 

「どう‥とは?」

 

「今の有り様です‥問題点を感じませんか‥?」

 

オーリス三佐はじっと俺の、唇を‥見ている。

いや、見ているのは、俺の呼吸か。

 

「そうですね‥システムとして、地上が割りを食ってしまっていますよね‥このままではいけないと存じます」

 

 

俺の答えに三佐は我が意を得たり、と大きく頷きを反す。

ひと息に話して、そこで息継ぎと呼吸を求める。

 

「まあ‥ジムさんは‥聡明でいらっしゃるのね‥」

 

等と、俺の膝を指でグリグリしてくる。

キャバ嬢かよ。

肺に取り込んだ、酸素と共に三佐の賛辞が心に麻薬のように溶け込んでくる。

 

三佐の賛辞の言葉が心地好い。

その時、スッと目の前にグラスが差し出された。

相も変わらぬムッツリ顔で中将が差し出していた。

 

 げんなりした。

 

戸惑いつつも受け取り、グラスを飲み干す。

喉が渇いていたので正直有り難い。

ホッと一息つく俺を幾分和らいだ表情で中将は見つめていた。

 

「‥ではお前の考えるシステムの問題点とは何だ?」

 

いきなりそう問われた。

俺はクロノ提督に一尉になれと言われてから、管理局の状態を調べ、自分なりの問題点を考えていた。

一応、尉官ともなれば、そういった事も考える必要があると思ったからだ。

これはひょっとしたら二曹に上がる為の面接試験のようなものなのかもしれない。ある程度、管理局の未來のビジョンを描けている。ということをアピらなけらばいけない。

俺なりの考えを答えようと、頭でまとめ始める。

 

「はい‥先ずは、人材に於ける問題点として‥先ず、地上が予算を割いて、運営している訓練校。ここで育てられた優秀な生徒が海に吸い上げられてしまっている点。

それは一重に、管理局の花形が航空次元隊であると認識されてしまっていることにつきます。

上を目指す志しの高い者の目標がこの部隊。というレールにも、違和感を感じますね。

海〉地上という現状を崩さない限り、この解決は不可能ではないでしょうか‥」

 

一口に語ってしまい、

周りがシンとしているのに気付く。

 

「す‥すみません‥偉そうに‥」

 

慌てて、謝罪をする。

 

と、そこでオーリス三佐が更に頭をもたれてきた。

キャバ嬢かよ。

 

「フフッ‥本当に‥優秀な方‥」

 

 おっぱいが柔らかい。

 甘い香り。

 中将の顔が怖い。

 げんなりした。

三佐の反応からすると、とりあえず正解だったのか‥でも中将の顔は怖いし‥。

 

「エインヘリアルについては‥どう思う?」

 

と、中将が柔らかく聞いてきた。

これは難しい質問だ。エインへリアル自体は現在の管理局の有り様に逆行した代物。

肯定的な意見を出したらマイナス査定ではないだろうか?敷かし、面接官の中将自体がアインへリアル推進派であるのは間違いない。

否定的な意見を言おうモノならキレちゃうんじゃないかな。とりあえず俺は、自分なりの正直な考えを答えることにした。これで駄目ならしゃあない。

 

 

「ハッ‥AMFの対策が先だろう?等と、批判は色々あるようですが、先程言った通り、AMF対策を扱えるレベルになった魔道師は海に吸い上げられていて、現状では対策しようにも、どうしようもない事ですよね?地上の戦力増強、犯罪抑止力の観点から見ても、とれる方策が少ない中で‥少しでも地上の価値、先程述べました、海〉地上の構図を少しでも改めようとバリューを上げようとした施策かと愚考致しました‥が?」

そこで、俺は言葉を止める。いや、飲み込まざるを得なかったのだ。

何故なら、中将が俯き、その大きな肩を震わせながら、大粒の涙を溢していたから。

そんな中将にソッとオーリス三佐は寄り添い、二人で部屋を出ていった。

 ずっと孤独に闘い続けて来たのだろう。

中将の泣き顔は何故かとても俺の心に残った。

あれ?これ面接試験じゃなくね?

だって面接試験だとしたら、流石に中将も泣かないでしょ?

 

その後、五分程で御二人は戻られた。

中将はおしぼりでガシガシと顔を拭きながら、

 

「失礼した‥」

 

「いえ‥そんな‥」

 

中将の謝罪に俺は恐縮するばかりだ。

 

「中将は嬉しかったのです」

 

と、三佐が説明するかのように、ポツリと呟いた。

「貴方のような優秀な方が‥地上の未來を担ってくださると助かるのですが‥」

 

「は、はあ‥」

 

と、三佐が更に俺にもたれかかってくる。

あ‥二の腕におっぱいが‥

肘になんかツンツン突起物が‥

首に息が‥

鼓動がどんどん早くなっていく。

だが、息子はピクリともしない。

あれ‥?これマジでEDなんじゃね?

と、俺が恐怖していると、

 

「その辺にしていただけますか?」

 

と、不意に入り口から声が聞こえた。

頼れる義兄の登場である。

あぶねえ。やはりハニトラだった。

 

耐えきりましたよ!フェイトさん!

 

「‥スゴいよジム‥大好き♪‥御褒美に‥ずりばいしてあげる♪」

 

脳内フェイトさんが何故かマニアックプレイを持ち出した。

いや、別に俺、赤ちゃんプレイとかそんな趣味ないからね?

だが、勝手に脳が妄想を始めてしまう。

フェイトさんがばぶばぶ言いながら、

此方に尻を左右に振りながら匍匐前進してくる姿が‥浮かんでくる。

―興味があります。俺の上を匍匐前進してほしい!

―そこからどんな御褒美を戴けるのか、私‥気になります!

 

と、そこで、俺は、気付く。股間に血液が循環していくのを感じる。

ホッとひと安心。

大丈夫だ。俺はまだ戦えるのだ。

 それにしても流石はフェイトさんだ。

本来の嗜好と違う提案からでも、俺をこんなにも興奮させてくれる。

 フェイトさんの可能性はまさに無限大。

正に無限の欲望。

一生突いてイキます!

それが俺のsecretambition!

 

と、俺がしょうもない思考をしてる間に、

いつの間にか、クロノ義兄が隣に座っていた。

そんなクロノ義兄を憎々しげに睨む中将と三佐。

その視線を事も無げに、受け流すクロノ義兄は流石と言える。

 

「お話の途中で割り込んでくるなんて、失礼じゃありません‥?」

 

「ゲストを長時間ほったらかすホストも十分失礼じゃないかな?」

俺を挟んで、刺のある会話の応酬である。

息子は再び萎えた。‥お疲れ様です。

 

「まあ‥丁度よかろう‥ジムよ‥決めろ‥」

 

と、中将が真っ直ぐ俺を見て、促す。

 な、何をでしょうか‥?

「先程、話した通り、今の管理局の現状はお前から見ても、歪であろう?海に付くのか?陸に付くのか?」

 

ええっ?

フェイトさんのずりばいからなんでそんな話しに?

どちらを選ぶかと言われれば、どちらも選びたくはない。

だってそうだろう?確かに、地上の状況は悪い。

けど、それで悪=海とはならない。

海には海の存在意義があるし。

それで殊更地上に嫌がらせしているわけでもない。

無い袖は触れないというだけだ。

俺がどう答えるか迷っていると、

 

「さっさと決めんか!」

 

と、中将が怒鳴る。

 

やれやれと、俺は答える。

 

「決める必要があるのですか?」

 

「なんだと?」

 

「僭越を承知で申し上げますが、矯枉過直‥地上と海、どちらも正しい。そんな2つを無理にどちらが正しいかを決めれば後々余計な弊害が出ると存じます」

 

「ならばどうするというのだ?‥地上は今のまま我慢してろと‥?」

 

「そうは申しません」

 

「地上と海は元々、敵対しているわけでは無いのですから、お互い協力して、予算も人員もシステムも最小で最大限の恩恵が出るように、今こそ協力し合うべきではないでしょうか?」

 

「ふん‥こちらは最初からそう提案している!」

 

と、クロノ提督を見れば、苦々しい顔をしている。

まあ、海とて、潤沢な予算があるわけでは無いのだろう。

おまけに言うなら、海が手掛ける事件は難易度も危険度も地上の比ではない。

それこそ、次元ごと消滅なんて危機にも繋りかねない、それこそ、全人類で無条件に協力し合うべき、究極的な危機だ。

それこそ、起こるかわからないからなんて理由で疎かにしていい案件では無いのだろう。

だからこそ、クロノ提督も迷っている。

彼とて、現状を肯定しているわけではないのだ。

起こるかもしれない究極的な危機と今そこにある小規模な危機。

どちらを取るか?と聞かれて、即答できる人間なんかいるわけ無い。

それでも多分、フェイトさんなら‥

 

俺は、両方取りたい。

 

あの底抜けにお人好しなあの女性なら多分、どちらも見捨てないと思うのだ。

できるか出来ないかは二の次三の次。

不可能を可能にするたったひとつの方法は不可能に挑戦すること。

 

「クロノ提督‥レジアス中将をどう思います

か?」

 

「?」

 

唐突な俺の問い掛けに目を瞬かせるクロノ提督。

ですよねー。

クロノ提督どころか、中将も三佐も押し黙っている。

「中将は優秀な方です。百年に‥いや、二百年に一人の傑物ですよ‥」

 

「それに関しては‥異論はないが‥?」

 

唐突な持ち上げに中将も戸惑い、きょとんとしている。

三佐も俺が何を言いたいのかわからないといった顔である。

 

「ですよね‥そして、今現場には、なのはさん、フェイトさん、八神司令。といった、史上類を見ない、精鋭が揃っています」

 

「あ‥ああ?」

 

はやてさんの名前を出した所で中将が眉をひそめた。

どんだけ嫌いなんだよ。

それでも、何とか堪えて、話しの続きを待ってくれている。

 

「そして、言うまでもなく、クロノ提督自身も大変優秀でいらっしゃる」

 

「ん?んん?」

 

「つまりですね?これだけ優秀な人材が揃う事なんて、今後あるかどうか‥ですよ?」

 

「ふむ?」

 

「今、未來の為に動くべきじゃないんですかね?」

 

そこで漸く、クロノ提督の瞳に理解の色が浮かんだ。

そう‥。こんだけ優秀な人材が揃っている時に勝負かけないでどうすんねん?ですよ。

ポーカーでストレートフラッシュが揃ってるのに下りるヤツなんていないでしょ?

 

「ふむ‥それが‥君の考え‥か?」

 

「はい‥生意気ですみません」

 

「いや‥確かに‥だな。今、この歪さを正さなければ、この先ずっと歪なままかもしれない‥そして、その歪さは、いずれ、管理局全体に斜陽を迎えさせるだろう‥どうです?中将?‥これだけ若者に未來の心配されて‥このままじゃいられません‥よね?」

 

「‥当然だ‥」

 

コクリと鷹揚に頷く中将。

その中将の声を受けて、沈黙を守っていた彼女が口を開いた。

 

「提案が御座います」

 

オーリス三佐その人である。

陸と海からスペシャリストを選抜して、特別チームを編制しては如何でしょうか?

クロノ提督、中将と順番に表情を伺い、

一拍の間の後、口を開いた。

 

私はそのチームのリーダーにジム一士を推しますわ‥」

 

エエエ?なんで?

当然ながら、クロノ提督も中将も眉をひそめる。

当たり前である。

これは陸と海の共同の一大プロジェクトになる。

失敗は許されない。そんなプロジェクトのリーダーに何の実積もない一士風情を推す?

あり得ない。

 

「あの‥?何故私なのでしょうか?」

 

 何を企んでいるんだ。

 このハニトラさんめ。

 

「そうですね‥理由は色々ありますが‥」

 

「ひとつ。海、もしくは地上‥どちらかの人間がリーダーを勤めた場合、軋轢が発生するであろうこと」

 

なるほど。あり得る話しだ。

敵対しているわけでは無いけれど、合同の一大プロジェクトとなれば、自分達で先導したいと考えるのは自然な事だろう。

 

「なので、ポッと出のどちらに属しているわけでもない、彼が適任なのです」

 

間違いじゃないけどポッと出って‥もう少し言い方なあい?

 

「何よりジムさん?貴方は今、手柄が咽から手が出る程欲しいのではなくて?」

 

それも間違いじゃないけどさ、やっぱりオブラートに包んでくれないかな?

と、俺がげんなりしていると、

「‥クックックッ‥いやすまん。すまんなジム君。誰に似たのか気が強い娘で‥」

 

と、おかしくて堪らないといったように笑いを溢す中将。

 

 

「中将(父さん)ですよね?」

 

と、三佐と俺のツッコミがハモる。

それを聞いた中将は顔を赤くして、店員を呼び寄せた。

 

「酒を追加だ!」

 

そして間もなく、テーブルに乗り切らない程の酒が並んだ。

その光景を唖然としながらクロノ提督が問う。

 

「結構高価なお酒も入ってますが、これで貴方は何が得られるのですか?」

 

クロノ提督が訝しげに問う。

なるほど。俺にはよくわからんが、こういった席で酒を奢る奢らないでも色々あるのだろうか?

大人の世界ってめんどくさい。

しかし、中将は事も無げに言い返した。

 

「幾ばくかの、二日酔いと、仲間意識だろうよ‥」

 

「くはっ‥違いない‥」

 

それを聞いたクロノ提督は軽く吹き出して、グラスを中将のグラスへとぶつけ、酒をひと口に煽った。

 

 この日、陸と海は揃って歩き出したのだ。

そして、その二人三脚に俺は巻き込まれたのだった。

だがメリットは確かにある。

三佐の言う通り、フェイトさんとのゴールの為に、手柄は死ぬほど欲しい。

おまけにここで、中将、三佐との繋がりを作っておけば、一尉なんてすぐかもしれない。

荷が重いというか、役者不足感が半端ないが、せっかくクロノ提督と中将がいい感じなのだ。

そこに水を差すのも憚られる。

不安ながらも、俺は巻き込まれるのを善とした。

三佐がずっとこっちを熱っぽく見ているのを気付かない振りをして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。次は多分また来週m(__)m
時間がとれたら、明日出すかも?(ノ´∀`*)


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チーム始動。

ちょっと早いけど投稿ですm(__)m


その日、広めの会議室に、数人の男女が集まっていた。

まだ時間には早いが、やる気溢れるメンバーは既に集まり、お互い自己紹介をして、お互いの得意分野等を共有していた。

 ある程度の自己紹介が終えたのを確認し、時間を確認すれば、開始時間1分前。

頃合いかと、立ち上がると、室内の視線が集中する。

この一大プロジェクトの若きリーダーがどんなものかという興味、そして、出来んの?やれんの?という挑戦的な感情。ネガティブもポジティブも合わさった複数の感情が俺に刺さる。

その中でも一際眼光鋭い視線の集団が一団。

同時に先程迄の会話も止まり、静謐が室内を覆い尽くす。

さーて。やったるか。

かかってこい。

ゆっくりと周りを見渡し、十分に自分に意識が向いていることを確認すると、俺は口を開いた。

 

「はじめまして‥本日はお集まり頂きありがとう‥何人かは知った顔もいるけれど、今回は地上と海が、手を携えて、初めて踏み出す一歩になる。いわば、初めの一歩だ‥各々の考え、目論見はあるかもしれないけれど、管理局の一員として、見据える未來は同じだと信じている‥だから君達もこのプロジェクトを利用してやる。くらいの気持ちでいい‥無論、私も君達を利用するつもりだ‥個人の野心は我慢しろ。‥なんて言うつもりは毛頭ない。むしろ野心は仕事をする上で強烈なエネルギーになる‥このプロジェクトを成功させれば、諸君らには確実な栄達が待ってるだろう‥」

 

そこで、ぐるりと周りを見渡す。

ゴクリと喉を鳴らす者。

拳を握り、何かを決意するもの。

真っ直ぐ顔を上げ、此方を見据える者。

それで良い。

志が綺麗かどうかなんてどうでも良い。

やる気さえあれば、それは望むところだ。

間違えそうなら、その都度、此方で修正してやればいいだけの話なのだから。

 

「‥勿論俺にもね」

 

其処で最後にウィンクをしながらひとつおどけて、締める。

そんな様子に、誰かが、クスリと溢し、張り詰めた空気が和らぐ。

表情を緩め、

各々、隣のメンバーの顔を伺う。

 

「よっ♪中々堂に入ってるじゃねえの?」

 

「勘弁して下さいナカジマ三佐‥」

 

俺は慌てて、敬礼で返す。

なんて、声を掛けてきてくれたのは、ゲンヤさんだ。

まさかのゲンヤさんも、チーム入りである。

正直階級も歳も上なので、勘弁してほしかったのだが、中将たっての推薦というわけで、断る訳にはいかなかった。

中将的には地上の発言力を高める為。対外的には

実績も無い若いリーダーに対する保険。いわばお目付け役的な役割なのだろう。

理屈はわかるが、部下に階級も歳も上の人が入るのは非常にやりにくい。

俺のそんな屈託を見抜いたかのように、

三佐は言葉を続ける。

 

「そんな、かしこまらんでくだせえや‥今回は俺はあくまで部下なんですからよ‥」

 

この申し出は正直有り難い。

今回集まったメンバーの中ではゲンヤさんが、言うまでもなく、階級も歳も頂点である。

そんなゲンヤさんが、最初に俺をリーダーと認める。

必然的に他のメンバー。中には、勿論、多少階級も歳も上の人間はいる。そんな、人間達も抵抗なく、俺をリーダーと認めてくれるだろう。

 乗るしかない。このビッグウェーブに!

 

「恐縮です‥」

 

精一杯の謝意を瞳にのせて、目礼する。

こんな一言だけでは表せない程、俺は今、モーレツに感謝している!

 

「私もご一緒出来て嬉しいです‥父共々、よろしくお願いいたしますね♪」

 

と、ギンガさんも挨拶に来てくれた。

ゲンヤさんを押し退けているのはご愛嬌だ。

 

「先日は‥父が大変ご迷惑を‥おかけしました‥」

 

等と、眉を下げて、敬礼してくる。

ご迷惑‥ああ。例の試験か。

そういえば、ゲンヤさんも絡んでいたらしい。

 

「いえいえ、お気になさらず‥」

 

敬礼を返しながら、穏やかに返す。

 

実際、俺は中将にも伝えた通り、全く気にしていない。

それより、この話はあまり拡げないように。と、クロノ提督から厳命を受けている。

 

「そういうわけには‥」

 

だが、ギンガさんは引き下がらない。

なんだなんだと、周りも此方に、注目し初めている。

これはあかん。

なおも、口を開きそうなギンガさんの手を取る。

 

「本当に大丈夫ですから!ほら!仲直りの握手握手!」

 

と、手を握り、ぶんぶん振ると、ギンガさんの顔が紅に染まった。

え?何で?

 

「あの‥すみません‥手を‥」

 

と、消え入りそうな声でギンガさん。

 

「あ?す、すみません‥」

 

と、慌てて手を離す。

そうだよね。いきなり手握るとか、どんなセクハラだよってね。

すみません。すみません。通報だけはしないでください。謝りますから!何でも島村!

 

「ぁ‥」

 

そして何でそんな名残惜しそうな声を出すんですかね

 

「ほぉ‥」

 

そんなギンガさんをゲンヤさんがニヤニヤしながら見つめている。

 

「ち、違うの!父さん!まだそういうんじゃ‥」

 

「まだ?‥そういうのってどういうのだ?」

 

そう切り返され、ギンガさんは更に顔を真赤にし、

 

「‥っもおぉ~~!」

 

と、叫び声を上げて、両手をぶんぶん振りながら、ゲンヤさんを威嚇する。

そんなギンガさんをどうどうと宥めながら、ゲンヤさんは悪怯れることなく、此方に振ってくる。

 

「大変だ!ジムリーダー!室内に牛が居るぞ!」

 

と、ギンガさんの額を片手で抑えつつ、おどけてみせる。

牛って‥いや、確かに、胸部装甲は牛みたいですけど‥

てか、ジムリーダーって‥。何?ポケモンで対決でもすればいいの?

バッヂなんか無いよ?

ゲンヤさんの言に益々顔を赤くするギンガさん。

そんなギンガさんが可愛くて、二人のやり取りがほほえましくて。俺は笑ってしまっていた。

いや、俺だけじゃなく、全員が。

 

「コホン‥僕もいいかな?ジム?」

 

「おお‥グリフィス。良く来てくれたな」

 

 こいつはグリフィス=ロウラン。

六課で地獄のデスマーチを共にした戦友である。

歳が近いのもあって、階級は准尉と上なんだが、仲良くさせて貰っていた。レティ提督の息子とあり、階級も若くして准尉とエリートまっしぐらなイケメソと男が嫌う要素満載のチートボーイなんだが、その気取らない性格と、真面目さに裏付けされた優秀な実務能力を俺は好いていた。

グリフィスはレティ提督のたっての推薦枠だ。

流石はレティ提督。政治の機微を見逃さない。

しかし、裏の思惑は兎も角、こうしたしっかり働きが期待出来る顔見知りがいるのは有り難い。

 

「しっかり働けよ?でないとレティ提督と彼女に言い付けるからな?」

 

「なっ‥?!言われなくても‥君こそリーダーなんて出来るのかい?役者不足って顔に書いてあるぜ?」

 

ハハハ。こやつめ。

俺は優しくグリフィスの靴を踏む。

そんな俺の足を更に上から踏むグリフィス。

頬がヒクヒクひきつってるのはご愛嬌だろう。

 

「君こそふ抜けた指揮をするようならフェイトさんに言い付けるからな?」

 

「!‥てめえ‥!」

 

滅茶滅茶こきつかってやるからな‥

と、俺が静かに決意していると、

 

「言っとくが、僕は上司だろうと、無能な指揮には従うつもりはない。意味のわからない指示を跳ばすようなら、ガンガン突き上げていくからよろしく‥」

 

「上等だコラ」

 

 それで良い。

こいつの優秀さはわかってる。

もし、そんなことになるなら、こいつを使いこなせない俺の責任だ。

特に異論を挟まない俺にグリフィスも微笑を浮かべ、此方に向かって拳を掲げる。

 

「しっかり僕を使いこなせよ?リーダー?」

 

「あいよ‥」

 

俺も拳に拳を合わせて、軽く微笑み合う。

そんな俺達の横顔に何やら赤く熱い液体が突然降りかかった。

二人でギギギギ‥と、横を向くと、そこには鼻から大量の血を流しながら、シャリオ=フィニーノ技術主任がサムズアップしながら満面の笑顔でこちらを見ていた。

俺とグリフィスは反射的に顔を逆に逸らす。

 関わりたくない。

二人の思いは300%シンクロしていた。

技術‥マギテク方面のスペシャリストとしてシャリオ=フィニーノ技術主任もチーム入りしていた。

 

「はいはーい‥!なんかグダグダになりそうだから、ここで私もいっちょカマすぜい!」

 

と、能天気な声が響く。

此方はクロノ提督たっての推薦枠。エイミィ=リミエッタ嬢である。

彼女はこのチームの金庫番。所謂経理役として召集された。

 

「私のお財布のヒモは超‥堅い‥ぜえ‥!

誰が呼んだか知らないが!チームの金庫番!その名は‥エイミィ~!リミエッタ!私‥!参‥上!」

 

と、背後に爆発効果でも入りそうなポーズ付きで自己紹介。

乳が揺れている。うむ‥尊し!

更に、グダった気もするが、あえて突っ込まない。

大人だからね!

それに後でクロノ提督が怖いし‥

大体、メンバー紹介は終わったかな。

と、思いきや、俺の目の前にはちょこんと、少女が一人。

肩位迄の長さの緩いウエーブがかった茶髪の大人しそうな美少女だった。

「あ、あの‥!自分‥1321航空部隊から参りました!シボ=レーと申します‥」

「1321‥ああ、ヴィータさんのとこの‥?」

 

「は‥はい!ヴィータさんは尊敬する先輩です!」

「そっか‥私もヴィータさんには時々お世話になってます‥」

 

主に戦闘訓練でハンマーで適度にボコボコに殴られてます。

 

 

こんな大人しそうな娘が武装隊だなんて、世の中解らんね。

「ジムさんのお噂はかねがね‥御一緒にお仕事出来るなんて光栄です♪」

 

等と、敬礼しながら伝えてくる彼女に俺は戸惑う。

噂って何?

 

「噂って何の事ですか?」

 

思わず尋ねると、

 

「武装隊では、力の大小がそのまま、上下関係に直結しますから♪ジムさんの昇級試験での模擬戦での御活躍は私の部隊にも轟いております♪」

 

「え?誰から聴いたの?」

 

何で拡がってるの‥

 

「スバルさんから聞きました♪」

なん‥だと‥。

俺がゲンヤさんを見ると、三佐は頭を抱えてしまっていた。

 

「ごめん‥シボ=レーさん‥その話、余り拡げないように、配慮、お願い出来るかな?」

 

「はい!ジムさんが仰るなら!」

 

と、ニコニコしながら答えてくれる。

良い子そうではあるんだけど。

ある程度自己紹介が済んだようなので、

眼光鋭かった一団は挨拶に来るつもりは無いようだ。まあ、別に構わない。

皆を着席させて、今回のプロジェクトの目的を共有する。

先ずは現在の地上部隊の状況。

現在のミッドの治安は中将の指揮のお陰で保たれていること。

魔道師等、代えの効かない、人材に頼る事を善しとしない中将自身が代えの効かないピースになっているのが、どんな皮肉だよと。だが、残念ではあるが、中将自身もかなりのご高齢に差し掛かっている。今すぐどうにかなる訳ではないだろうが、

中将自身が実際に御体を壊されてからでは遅いのだ。人の命が永久不変なモノで無い以上。何時までも中将に甘えていて良いものか?

つまり、中将が、倒れた後にも、問題無く回るシステム作り。が急務である。

そして、人材、予算は勿論、原状維持でだ。

 

ここまでひと息に話し、

ぐるりと周りを確認すれば、

プロジェクトの深刻さを察し、表情を引き締める者。

俯き、資料を読み込みながら、色々思索に更ける者。半々だった。

挨拶に来なかった一団は早くも集中を切らし、興味無さそうにしている。だが、異論を挟むつもりはないようで、此方を見ないようにしている。

とりあえず、今の所、異論は無いようで何より。

其処で、俺は、一計を案じる。

無茶振りに近いがな。

 見せてやれ。お前の優秀さを。

「さて、以上を踏まえた上で、‥グリフィス?」

 

「はい?」

 

「このプロジェクトで求められてる事がわかるか?」

 

「そうですね‥誰でも出来る‥予算も人材も最小限で最大限の効果、を得る方法の追及‥それが僕らの命題ですね?」

 

「その通り」

 

流石の理解力で助かる。

 

こうして、名指しで質問し、答えられる人間が居るだけで、会議の雰囲気は引き締まる。

事実、会議室の温度が気持ち上がった気がする。

さて、もう少し‥俺の時間に付き合って貰おう。

「さて、これを達成する為の叩き台を俺の方で作ってきた。」

 

其処で、プロジェクターのスイッチを入れると、

前日に作り込んだ資料が画面に映し出される。

既に配ってある資料と同じモノだけどね。

時間経過で次々と代わるプロジェクターの画面と手元の資料を見比べているメンバーに資料についての説明を始める。

 

「―このデータは‥とある管理外世界の治安に関するデータだ。

このように、この地域は空き巣被害等が多く、

治安が良いとは言えない、地区だった。

其処で‥ここの政府がとった、対応策が、これだ。

―花壇を造った。‥それだけで、空き巣被害が減ったそうだ。

―何故か?近隣の住民が花壇の世話をするために、表に出る事で、

自然と、人通りの少なかった路地に人の目を作ったのだ。

また、花壇の世話をしながら、近隣同士でコミュニティも出来た。

その結果、住民同士に仲間意識が芽生え、

個から団へと、変化した。

お互いに声を掛合い、

見はり合い、その結果、犯罪者にとって、犯行をしにくい地区が自然と出来上がったのだ‥これが、我々の目指す、ひとつの形では無いだろうか?

つまり、住民自身に防犯意識を植え付け、自分の身は自分で守る。という風潮を作り上げ、その為に必要な事は積極的に協力、投資していく‥これ以外に今回の命題を解決する術は無いと考える‥異論汎論は認める」

 

其処で、プロジェクターの映像も終了する。

パチパチ‥と、音の方を見ると、グリフィスが拍手をくれていた。次に、ゲンヤさんとギンガさんも続いてくれる。

 グリフィス。ありがとよ。お前が居てくれて良かった。

拍手の波が照れくさく、軽く手を上げ、

 

「えーと。ご清聴ありがとうございました‥流れとしては、このあと軽めのディスカッション。各自、休憩は自由にどうぞ‥それで、次回の会議迄に各自、ひとつ案を持ってくること。其れを宿題にしたいと思います‥それじゃ、煙行ってきま~す」

 

タバコ吸わないんだけどね。

俺が居なくなった後の反応が見たいのだ。

と、グリフィスに軽く視線を送り、会議室を後にする。

休憩室の壁に背中を預けて思案を巡らせながら突っ立っていると、

 

「よっ♪大将♪」

 

ゲンヤさんがタバコに火を付けながら、こちらに歩いてきた。

 

「お疲れ様です!」

 

「あ~良いから良いから‥」

 

スッと俺の隣に立ち、煙を俺と逆の横に吐き出す。

こういう細やかな気遣いが出来る所を本当に尊敬する。

階級も歳も下の人間にキッチリ敬意を持って接してくれていると感じる。

 

「あの後、どうでした?」

 

おそるおそる、不安に思い聴いてみる。

 

「ん?グリフィスの坊やが上手くまとめて、ディスカッションしてたぜ」

 

その答に安心し、息を吐く。

「まあ、御輿が無くても、担ぎ手がきちんと動くかは心配だわな‥」

 

と、苦笑しながら、ゲンヤさんがタバコの灰を落とす。

―仰る通り。

流石。俺の不安等、見透かされているようだ。

まあ、今回はグリフィス以外にもエイミィさんもシャリオさんもいるから、だいぶ楽な部類だが。

其れ以外だと、シボ=レーといったか。あの娘。

会議中も真面目に話しを聞いていて、一向にモチベが落ちなかった。

あの娘は使えそうだ。

 

「良いメンバーが集りましたね‥」

 

「ん。ギンガもこういう仕事は割とどうして、出来る奴だからよ?しっかり使えよ?」

 

「勿論。頼りにしてますよ?ゲンヤさん。当然貴方にも御指導ご鞭撻賜れますよう‥お願い申し上げます」

 

きちんと目を合わせて、最敬礼する。

 

「バカヤロ。老いぼれにんなもん期待するんじゃねえよ‥」

 

と、慌てたように仰るゲンヤさんに思わず吹き出す。

「あー‥それとな‥すまなかった‥!」

 

と、いきなり頭を下げられる。

 

「ちょっと‥やめてくださいよ‥」

 

「中将に頼まれて、どうしても断れなかった‥本当にすまなかった!」

 

「本当に気にしてないんで、もう勘弁して下さい‥」

 

「だがな‥恩を仇で返すような不義理をしちまったのは事実だ‥」

 

「じゃあこうしましょう!」

 

「ん?なんでも言ってくれ?」

 

「ゲンヤさんのお薦めの飲み屋で一杯奢って下さい!(ギンガを幸せにしてやってくれよ!)」

「「へ?」」

なんかとんでもないことを言われたような気がする。

其処で、俺は時計を見て、

「おっと‥そろそろ参加しとかないと‥すみません。ナカジマ三佐‥俺、先に戻りますね?」

 

「あいよ」

 

ジムが去り、一人になった喫煙室で、ゲンヤは一人呟いた。

 

「‥なんだよ‥ギンガ‥おめえ‥全く脈無いじゃあねえかよ‥」

 

娘に伝えるべきか、そんなことを悩みながら、漏れ出た言葉は、溜息と共に吐き出された紫煙と、共に宙に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
なんか、魔法少女の欠片もない展開ですみません。え?もとから無い?本当にすまないと思っている!
次回からは早送りするつもりでいます。


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恋を諦めた日。

時間が取れたので、書けました(ノ´∀`*)
だいぶフライング気味ですが、どうぞm(__)m


 

「おにーいちゃん♪」

 

そんなねこなで声が聞こえた瞬間、俺の身体はダッシュしていた。

が‥過ぎ行く視界の片隅にピンク色のアホ毛が一瞬見えた瞬間、俺の腹部に強烈な痛みが走った。

 

「ぐ‥ぁ‥」

 

突然の衝撃に、肺の中の酸素が全て押し出され、

身体から力が抜けていく。

 

そのまま俺の足腰は踏ん張りを失くし、後ろへと、無様に倒れ伏した。

 

「知らなかったのか?‥妹からは逃げられない‥!」

 

 と、物騒な事をドヤ顔で物騒な顔で宣う愛しのマイシスターが俺を見下ろしていた。

ちょっとなのはさんに、似てきたな‥

 

「ぐふっ‥いきなり何‥しやがる‥マイシスター‥」

 

「お兄ちゃんがいきなり逃げるからでしょ‥?」

 

だって兄ちゃん知ってるよ。キャロが俺の事をジム兄じゃなくお兄ちゃんて呼ぶ時はろくでもない事を考えてる時だって‥!

未だ横たわる俺のわき腹に腰を下ろしながら、

マイシスターはゆっくりと俺をねめつけるように視線を這わせる。

打たれた腹に痛みはまだあるのだが、其処に乗られているにも関わらず、重さと痛みは全く感じない。

腹に尻の温度を感じながら、時折わざとらしく、妙に熱い吐息が俺の首筋の肌を灼く。

まるでヘビに睨まれたカエルのように‥脂汗を流しながら、俺はその視線に耐える。

 

「今日のオフ‥一緒だよね?キャロ‥一緒に遊びに行きたいな♪」

 

バチコーンっ♪と効果音がしそうなウィンクと、上目遣いのバリューセットが俺を襲う。

Imloveinit!

可愛い。あかん。それオーバーキルや。

可愛い妹の笑顔‥プライスレス。

 

 いやでも‥お兄ちゃん‥お仕事しないと‥

 

「妹とお仕事どっちが大事?」

 

と、ジト目でキャロ。

 

モノローグにカットインするのやめなさい。怖いから。

因みに勿論妹です。

 

「キャロはここのところ、寂しい思いをしてるのです‥」

 

 ‥うぐっ!?

 確かにここのところ余りキャロに構ってやれてなかったのは事実だ‥。

 

「知ってる?お兄ちゃん?‥妹って寂しいと死んじゃうんだよ?‥」

 

 スイマセンデシター。

俺は即時降伏した。

妹に寂しい思いをさせる兄等、兄ではない。

 

「何処に行きたいんだ?」

 

「流石お兄ちゃん♪だから大好き♪‥ところでいつまでヤムチャスタイルで倒れてるの?」

 

 お前のせいだろ。

‥そんな俺の恨みがましい視線もなんのその、俺の足をガシッと掴むと、そのまま出口に向かって引摺りだした。

部屋の敷居とかに背中や頭がガンガン当たって痛いんだけど。

俺のそんな不満は届く事無く、キャロは俺を引き摺ったまま、外へと出るのだった。

 

「えっと‥何を、してるん、ですか?」

 

そうして、表に出たところで、声を掛けられた。

ギンガさんだった。

 

「こんにちはギンガさん。今日はお兄ちゃんとあそぶんです♪」

 

「あらー♪良かったですねえ♪キャロちゃん」

 

「はい♪そういえば、ギンガさん、今ウチの愚兄と一緒にお仕事してるんですよね?」

 

どうしよう。すげえ朗らかに会話が弾んでる。

ギンガさんはこの状況を不審に思わないのだろうか?

あ。この人全然、不審に思ってないわ。

それどころか少し羨ましそうにしてるわ。

 

 そしてキャロちゃん。さらっと、粗茶ですが、みたいな感じで愚兄扱いするのやめて。‥まだ体力は動ける程回復していない。

なので、俺は無様に引き摺られたままである。

なんせ、生身に不意打ちで、カウンター気味に良いの貰っちゃったからなあ。

 

「それでは♪」

 

そしてキャロはペコリーヌッ!と、音がしそうな勢いでギンガさんに御辞儀をして別れる。

 

「うん♪行ってらっしゃい♪‥妹に引き摺られる‥アリね。今度、スバルにやってもらおうっと♪」

 

ギンガさんもニコニコと手を振る。

あれ?ギンガさん本当に俺の事見えてない?

 

 ギンガさんはもうダメだ。

 

そうして、ギンガさんとの会話を切り上げ、再び、俺の足を掴んで引摺り始めるキャロ。

 

「‥お兄ちゃん?いい加減、自分で歩いてくれない?」

 

虫の息の兄に対してなんて惨い仕打ち。

 

「ならせめて回復魔法かけてくれよ‥」

 

「逃げない?」

 

疑わしげに聞いてくるキャロ。

 

「ニゲナイヨ」

 

妹から逃げる兄なんて居るわけナイジャナイデスカー。

 

それから、キャロはひとつ溜息をつくと、俺に回復魔法をかけてくれた。

漸く身体に力が戻ってきた。

俺はスックと立ち上がると、キャロに向かって、手を差し出す。

キャロはそんな俺の手を不思議そうに見ると、

 

「何?」

 

「‥出掛けるんだろ?」

 

そう言うと、すぐに察して満面の笑顔を浮かべながら、俺の手にしがみついた。

そうして、手を繋いだまま、俺達は歩き出した。

その後、適当に街に出て、アイスを食べたり、ゲーセンで遊んだりした。

 

 

◆◆◆◆

 

 

夕日が木々を茜色に染めていく。

 

 終わった。

 

 終わってしまった。

 

ジム兄は飲み物を買いに行ってくれている。

今は休憩がてら、たまたま通りがかった公園のベンチに座ってジム兄を待っている。

 今日一日で気付いた。

 気付いてしまった。

 いや、わかってはいたのだ。

 ジム兄の一番はもう私じゃない‥と。

 

 想い知らされた。

 

 前世では、正兄に彼女が出来ても、一番は私のままだったから。

仕方無いなあ。なんて、笑っていられたけど。

今回は違う。

一緒に歩いていても、遊んでいても、歩幅、視線の高さ等で嫌が応にも気付かされてしまった。

もう、兄の目には私は映っていない。

私と居る時でも‥見てるのは唯一人。

 

 あはは‥わかってはいたのだ。勝てる訳が無い‥と。なんだ。あの、おっぱい‥

此方ときたら、二度目の人生だというのに、待てど暮らせど、一向に生えてこない。

はぁ~背も伸びねえ!

胸も生えねえ!尻もそんなに丸くならねえ!

何だこのロリボディ。心のロリ幾三が歌い出してしまう。

誰かが言ってた。

おっぱいには夢が詰まっていると。

 つまりなにか?おっぱいの無い私には夢も見れ無いと?ふざけんな。

 お兄ちゃんと‥結ばれたかったな‥

優しい正兄の事だ。私がダメ元でも告白したら、

応えてくれるかもしれない。

だが、その結果は‥?

同情や憐れみで結ばれても、その先にあるものは‥?兄が屈託無く笑ってくれることはなくなるだろう。受けいれてくれても、受けいれてくれなくても‥だ。

 兄にそんな屈託を抱かせる?

妹の誇りにかけて、そんなこと‥出来やしない。

兄の幸せが第一なのだ。

其れが妹として当たり前のMassiveWonders!

 

 わかってる。‥そんなことわかりきってるのに。

 心では、理解してるのに‥なんで‥こんなにも‥胸が締め付けられるのだろう

 なんで‥こんなにも、涙が溢れてくるのだろう‥。

いっそ、フェイト姉が嫌な女だったら良かったのに‥残念な事に私はフェイト姉も大好きで‥

 

 ああ‥本当に残念だなあ‥

 

 諦めない理由すら みつからないなんて‥

 

 顔を上げろ、キャロ。

 上を向いて‥涙が溢れないように‥。

ジム兄にこんな顔を見せてはいけない。

 ‥でも‥好き‥

 大好きだよ‥ジム兄‥

 

 拭っても拭っても、止まらない涙と、鼻水まみれの顔を隠すには‥下を向くしかなくて余計に涙が溢れた。‥そんな時、ふと視界の端にゴミ箱が目に入った。

私はソッと背中にしょっていたリュックを下ろす。

そして、中から漸く完成したばかりの、手編みのセーターを取りだした。

トボトボとゴミ箱へと歩き出した。

 ‥そして、それを 棄てた。

すると、不思議と気分はスッキリした。

何故だろう‥とても清清しい気分だった。

とめどなく溢れてくる兄への想いで、私の心が壊れないように‥脳が思考に自動的に蓋をしてくれたようだった。

 

そして、私は飲み物を手に帰ってきた兄を笑顔で‥出迎えた。

 

「もう!遅いよ~お兄ちゃん!」

 

ウソだ。もう少し早かったら、兄を困らせていただろう。

 

 涙は既に、止まっていた。

鼻水はリュックで拭った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございますm(__)m
あ。次回最終回です(ノ´∀`*)現在八分程書けてるので、時間がとれれば割とすぐ目にm(__)m
2作目も何とかここまできたかあ‥(ノ´∀`*)一作目もそうだったけど、寂しくなりますね(笑)
え?9課?なんぞそれ?(笑)こんな作品にお付き合い頂いた方方には感謝しかありませんm(__)m
御指摘&ご感想、氷菓頂けた方。感謝の念しかありませんm(__)mそれでは、また~。


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恋が実った日。

最終回でございますm(__)m



肌に刺さるような夜風が二人の間を通り抜ける。

火照った身体には丁度良い心地好さだが、

身体を冷さぬように、手のグラスの中に残った液体を煽る。

咽を灼きながら、食道を液体が伝り抜けると、再び身体が火照るのを感じる。

グラスを傍のテーブルに置き、隣に立つ彼女にチラリと、目をヤると、頬を朱に染めながら、肩に掛けたストールをキュッと握りしめていた。

寒いのだろうか。

外に出たいと言ったのは彼女だが、

薄着な彼女にはこの季節の夜風はツラいだろうと、ソッと隣に寄り添う。

俺の肘に悪戯っぽく自分の肘を当ててくる彼女の肘はやはり‥冷えていて。

俺は照れ臭く思いがらも、ソッと彼女の肩を抱き寄せた。

 

「寒いなら‥中に戻りますか?フェイトさん?」

 

すると、彼女はみるみる頬を膨らませて、

フルフルと首を振った。

 

「もう!いつまでさん付けするつもり?ジム=ニー一等陸尉?」

 

「つい‥癖で‥」

 

「もう、奥さんをさん付けする夫婦なんていないでしょ?」

 

いや。それは割りと居る気がします。

それにまだ‥結婚して‥n(ry

なんて勿論、言わないけどね。これ以上拗ねられても困るし。

しかし、そんな俺の、心を読んだかのように、

フェイトは更に俺に近付くと、

 

「‥駄目?」

 

と、上目遣いを繰り出してくる。

 

ディストーションfinish!

 

降参である。

 

「悪かったよ‥フェイト?」

 

「‥よろしい」

 

呼ばれると嬉しそうにドヤ顔である。

何この可愛い生き物。

 

 俺達は明日‥夫婦になる。

 

プロジェクトを成功させた俺は、程無く、一尉になることができた。

 

リンディ提督、クロノ提督どころか、オーリスさんに中将迄、推薦してくれて、滞りなく早々と昇進することが出来た。

それを受けてハラオウン家は光の速さで、フェイトと俺の婚約を発表。

その時のキャロの顔がガッシュベルのウマゴンがウマゴンと名づけられた瞬間のような表情をしていたのは、見ない振りをした。

 そんなキャロだが、一時期程、俺にべったりすることは無くなった。

 今はエリオといい感じっぽい。

 まあ、エリオがガンガン背伸びて、それを憎々しく見つめているのが御愛敬だが。

式の招待客が豪華な事もあり、

各々のスケジュール調整に少し時間が掛かってしまったが、漸くである。

 

「‥ねえ?」

 

「ん?」

 

「私、幸せ‥だよ?」

 

なんてニコリと頬笑む彼女に

 

「何言ってんのさ‥」

 

「ぇ‥」

 

「これから幸せになるんだよ?‥一緒にね」

 

「‥そっか‥うん‥そうだ‥ね」

 

そう、呟くと、彼女はゆっくりと瞳を閉じて、俺へと頭を預けた。

「私達、明日

、家族になるんだね?」

 

「うん‥漸くだ‥」

 

「漸く?」

 

「フェイトは気付いてた?‥俺‥最初から、フェイトの事好きだったんだよ?」

 

「ええっ!?そ、そうなの?」

 

「うん‥フェイトに保護されて、保護者と居候の立場になって‥それから、上司と部下の立場になって‥それから、恋人になって‥同階級に成るために色々努力して、もしかしたら色々回り道をしたかもしれないけど、漸く、最初に夢見たゴールに辿り着けた‥」

 

「そっか‥ううん。回り道なんてしてないよ‥初めに君を保護して、安らぎと暖かさを一杯貰って、上司と部下になってからは、一杯助けて貰って、信頼出来る相棒になって‥恋人になってからは、一杯、愛を貰って‥そして、明日、新しい家族をくれる‥君と過ごした日々に無駄な事なんて何も無かった‥全部、必要な事だったんだよ。それを回り道というなら、きっと、これが最短コースだったんだよ‥」

 

「そっか‥そうかも‥待たせてごめん‥」

 

「全然待ってないよ?‥一尉迄上がるの大変だったでしょ?ごめんね?クロノと母さんが無理言って‥」

 

「ううん。必要な事だったと今では純粋に思うんだ‥何より、管理局が一体になったのは喜ばしい事だし‥」

 

「ふふ‥本当にお疲れ様♪」

 

プロジェクトは成功し、ミッド地上の治安はとても良くなった―

お陰で中将も今では療養入院に入っている。

やはり、相当身体はボロボロだったらしい。

それに伴い、長官の位置にはオーリスが就いた。

レジアス政権下よりは、海との連携はとれていそうだ。

 

「油断すると、予算を搾り取られるよ‥」

 

とは、クロノ義兄の言だ。

そして、オーリスは陸にも、海の次元航空部隊のような精鋭部隊を創設を宣言した。

それが、彼女なりの海と陸のバランスを是正するための秘策だったようだ。

 

メンバーには、なんとナンバーズを編入しようというものだ。戦闘機人を部隊運用すると言うことには、まだまだ障害も多い。

しかし、先ずは、自然保護部隊に編入するなど、少しずつ、規制事実を作り上げるつもりのようだ。

正直オーリスならその内に達成するだろうと思う。

ふと思う。オーリスは、最初からこれが目的だったのではないか。

バランス是正の為という大義名分を隠れ蓑にすることで、戦闘機人の部隊運用という、ある意味ジョーカーをバーターにしたのではないか‥。

そう考えると、背筋が寒くなり、思わず身震いしてしまった。

 俺はというと、その部隊の部隊長での着任を打診されたのだが、正直、興味はあるし、手伝いたい気持ちはある。

チンクちゃんprprしたい。

でも‥固辞した。(血涙)

 

 だって、フェイトと一緒にいたいし。

そう言ったらフェイトも喜んでたから、まあ、良いのだろう。

 

「‥」

 

見ると、フェイトの顔が優れない。

何だろう。まさかさっきのチンクちゃんprpr思考を読み取られたのだろうか‥

フェイトは俺の邪な思考に鋭い。

それと同じくらい、俺もフェイトのネガティブな思考には鋭い。

これは、怒ってるわけじゃなく、何かまた下らない事をウジウジ悩んでる顔だ。

俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

「どうしたの?」

 

と、声を掛けると、フェイトは少し驚いた後、微笑んだ。

「ジムには‥何でもわかっちゃうんだね?」

 

「フェイトの事なら大抵は‥ね?」

 

「家族になったらさ‥」

 

「うん?」

 

「いつかは、子供も出来るでしょ?」

 

「そうだね」

 

「その子にさ、良い親って思ってもらえるかな‥って‥ほら?私の、母さん‥あんなでしょ?」

 

「ああ‥」

 

フェイトには親子像というのがわからないんだろう‥

「ていっ」

 

俺はフェイトに軽くチョップする。

 

「あうっ」

 

チョップを受けて、目をバッテンにして小さく呻くフェイト。

何この可愛い生物。

 

「難しく考え過ぎ‥親子なんてさ‥子供を愛したい親がいて、親に愛されたい子供がいれば‥それだけで、成立するんだよ?何より、俺もいるんだからさ‥一人で悩むとか‥これからは無しだよ?」

 

そう言って、俺はフェイトを優しく抱き締めた。

子供が出来るような事もまだしてないのに‥何悩んでんだかね、ウチの御姫様は‥。

でも‥こんな御姫様が俺は好きなのだ。

前世から続くこの劣情、早く受け止めて欲しい。

 

 ―悲しいけどこれ‥R18じゃないのよね。

 二次元の壁は越えられても、Rの壁は越えられなかったよ‥チャンチャン♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




70話も使った割にオチが弱い。等色々御指摘はあるかもしれませぬがそこは申し訳ないm(__)m
まあ、それもひとつのボケの形なんじゃないでしょうか。(それっぽい言い訳)
何はともあれ、最後までお付き合い頂いた皆様に感謝をm(__)m次作があれば、またお付き合いお願い致しますm(__)mはやて、フェイトと来たので‥次は‥???‥ゲフン。明言は避けます(笑)
それでは‥りりなのSSもっと盛り上りますように(///ω///)♪



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