ハリー・ポッターと黒の女神 (ふわふわ毛布)
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ホグワーツ入学前
アストレア誕生


グリモールド・プレイス12番地にある大きな館、ブラック邸の一室で元気な赤ん坊の声が鳴り響く。

 

「よく頑張った!後は私に任せろ‼」

 

苦しみを耐え抜き、ぐったりとした表情で呼吸が荒い母親に対して、シリウス・ブラックが激励の言葉をかける。

 

 

シリウスはすぐに魔法で赤ん坊を綺麗にした。クリーチャーは赤ん坊を清潔な布で包んだ。

 

この赤ん坊は彼女とシリウスの弟であるレギュラス・ブラックとの間に生まれた子だ。死んだレギュラスの代わりにシリウスとクリーチャーが立ち会っている。

 

シリウスが赤ん坊を抱き上げる。シリウスの腕の中で、赤ん坊はまだ元気に泣いている。

 

「元気な子だ‼すごいじゃないか。」

 

感極まって泣き出しそうな声で、シリウスがそう言いながら、彼女に赤ん坊を手渡す。

彼女は赤ん坊をいとおしげに抱く。なんて美しい親子の光景だろうか。

 

 

 

しかし、妙に彼女の呼吸が荒い。

 

シリウスはぎょっとした。彼女はさっきよりも状態がひどく、虫の息だった。

 

「おい!大丈夫か!?」

 

「ご主人さま!!」

 

今度はクリーチャーまでもが泣き出しそうになっている。

 

 

彼女は全く大丈夫そうではなかった。それでも二人に必死に言葉を伝えようとしていた。

 

慌てたシリウスが治療をしようとする。

 

「いいわ、シリウス。治療なんて無駄よ。」

 

しかし、彼女はか細い声でシリウスの行動を止める。

 

「どうしてそんなこと!?」

 

「そうですご主人さま!早く治療を!」

 

二人はわけが分からず、つい声を荒げてしまう。

その声で赤ん坊の泣き声がひどくなる。

 

「いいえ、二人とも。自分の事だから分かるの。私はすぐ死ぬわ。」

 

「そんな…」

 

絶望したシリウスの口から言葉がこぼれた。

クリーチャーも自分の無力さに対し、苦虫を噛み潰したような顔で悔しがっている。

 

「だから、二人に約束して欲しいの…」

 

彼女はたくさんの伝えたいことの中から一つ一つ言葉を選び出してそう言う。

彼女の言葉一つ一つが二人に重くのし掛かる。

 

二人は真剣な表情で言葉を絞り出す。

 

「分かった、なんでもすると誓おう。」

 

「仰せの通りに…」

 

「じゃあ…この子、アスト…レアを…二人で…仲良く…育て…て。愛称は…リア…よ。」

 

だんだん声が小さくなり、息も絶え絶えになっていく。

 

シリウスもクリーチャーも見ているのが辛いが、目をそらすわけにはいかない。一つも言葉を聞きこぼしてはいけない。

 

「きっと…可愛…くて立派な…子に…そ…だ…つわ………」

 

腕の中のアストレアを見つめながらそう言った。

 

 

彼女はついに息絶えた。

 

 

 

シリウスがそっとアストレアを彼女から引き離す。

 

アストレアの泣く声が大きくなる。

 

 

 

 

 

 

少しの沈黙のあと、シリウスがボソッと呟く。

 

「逝ったか…」

 

「…………………………」

 

彼女は笑顔で安らかに死んでいった。

 

 

二人の目から涙が溢れる。

それでもアストレアは元気に泣いている。

 

そんなアストレアを見て、少しの間、考えに考えて二人は約束を守ると決意した。

二人の意志は固く、まっすぐとアストレアと未来を見つめていた。

 

 

 

その時にはアストレアはすっかり泣き止んで、眠っていた。

 

 

こうしてアストレアが誕生し、母親は亡くなった。

 

 

 

 

 

シリウスとクリーチャーはそれぞれの決意を胸に秘め、自分達の歩むべき道を歩き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




単純にアストレアが生まれるだけなので短くなりました。

というか一話目から展開が激しくなってしまいました(笑

あんまり更新が遅くならないように頑張るので応援よろしくお願いします。

それでは、また次回お会いしましょう!


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ポッター家の悲劇

アストレアが誕生してから一週間がたった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほーら泣かないで、シリウスおじさんだよ。」

 

 

 

 

 

「おぎゃぁあぁあ」

 

 

 

 

 

アストレアの世話は予想よりも難しいもので、シリウスは苦戦していた。

 

特に泣いているアストレアをあやすのが苦手のようだ。

 

また、シリウスはよく被弾していた。(何がとは言わない。)

 

 

 

 

 

クリーチャーは今まで似たような経験があるのか、難なくアストレアの世話をこなしていた。

 

内心では、四苦八苦しているシリウスを嘲笑っているのだろう。

 

 

 

 

 

しかし、良い意味でも悪い意味でも関わりが増えた二人は、アストレアのお世話を通して、日に日に心が通じあい、少しずつ仲が良くなっていった。(それでもまだ小言を言いあうときはあるが)

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでアストレア誕生から一年ちょっとたった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リアちゃん、これからご飯ですよー」

 

 

 

 

 

シリウスが優しげな声でアストレアに話しかける。

 

 

 

 

 

「リー(アストレア)とシー(シリウス)……ごはん?」

 

 

 

 

 

片言ながらも一生懸命リアが話す。

 

まだ難しい言葉は言えないのか、自分やシリウスの名前がちゃんと言えない。

 

 

 

 

 

「よく話せましたーそうだね。これから一緒にご飯たべようか。」

 

 

 

 

 

「クー(クリーチャー)は?」

 

 

 

 

 

「もうすぐ料理を作り終えてこっちに来るはずだよ。三人で一緒にご飯食べるんだよー」

 

 

 

 

 

「うん。」

 

 

 

 

 

そんな何気ないほほえましい会話をしている二人は本当の親子のように見えた。

 

そのまま二人でクリーチャーを待っていると、クリーチャーが何やら慌てた様子でこちらに向かってくる。

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、館の中で走るなって言ったのはお前だろ?」

 

 

 

 

 

 

「のんきなこといってる場合じゃありませんご主人!」

 

 

 

 

 

 

クリーチャーがいつになく真剣で焦った表情でシリウスにそう言う。

 

 

 

 

 

 

どうやら本当に大変なことのようだ。

 

 

 

 

 

 

まさか…とシリウスは思ったが、そのような不吉なことは考えないようにしようと思った。

 

いや、そのときはそんなこと考えたくもなかったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

しかし、そんな希望も虚しく崩れ去り、非情な現実がクリーチャーの口からシリウスに突きつけられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ポッターの家が闇の帝王の襲撃を受けて、ジェームズ・ポッターとリリー・ポッターの死亡が確認されました。」

 

 

 

 

は?え?なに?なんていった?クリーチャーはなんていったんだ?全く理解できない

 

 

 

 

 

ジェームズとリリーがしんだ?そんなわけない…うそだ…うそだ…うそだ…

 

 

 

 

 

「嘘だぁぁあああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

シリウスが悲鳴のような罵声のような叫び声をあげる。

 

 

 

 

 

 

クリーチャーの言葉がシリウスの胸に深く深く突き刺さる。

 

 

 

 

 

 

 

それから何分たっただろうか。

 

シリウスはあの後も言葉にならない叫び声をあげ続けた。今は声を出し尽くして、目の焦点が合っていないシリウスが座り込んでいる。

 

 

 

 

 

それだけ彼は現実を受け入れられなかった。

 

 

 

 

 

 

「ご主人、確かに二人は闇の帝王に殺されましたが、息子であるハリー・ポッターはまだ生きています。」

 

 

 

 

 

 

「どういうことだ!?」

 

 

 

 

 

 

クリーチャーの言葉で、シリウスは少し元気を取り戻し、困惑した表情で声を荒げる。

 

 

 

 

 

 

「話によると、闇の帝王がハリー・ポッターに死の呪文を放ったところ、それが反射して、逆に闇の帝王が死んでしまったようです。」

 

 

 

 

 

 

 

「よかった。…………でも二人は……」

 

 

 

 

 

 

またシリウスは気持ちが沈んでいき、踞ってしまった。

 

 

 

 

 

「いい加減にしろ!くよくよしてるんじゃない!!」

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

なんとクリーチャーが突然シリウスに罵声を浴びせた。

 

シリウスも屋敷しもべに罵声を浴びせられるとは思わなかったのか、驚きの表情が隠せない。

 

 

 

 

 

 

「あんたがそうやってくよくよしてどうする!あんたにはやるべきことがたくさんある。だったら素早くそれを片付けるのがあんたの仕事じゃないのか!」

 

 

 

 

 

 

クリーチャーの言葉にシリウスが胸を打たれる。

 

 

 

 

 

 

「それにアストレア様にこんな情けない姿を見せて恥ずかしくないのか!そんなんじゃあの人との約束が守れなくなる!」

 

 

 

 

 

 

ついにこのクリーチャーの言葉が止めとなったのか、シリウスははっとした顔で立ち上がった。

 

 

 

 

 

「そうだった。いつも私はそうだった。目先の悲しみだけに囚われて視野が狭くなる。私は彼女との約束を果たさなければならない!」

 

 

 

 

 

シリウスが大きな声で宣言する。

 

先ほどまでのシリウスとはうってかわって、強い意志を持った勇敢な魔法使いになっている。

 

その目はまっすぐとクリーチャーを見つめている。

 

クリーチャーもシリウスの目をまっすぐ見つめている。

 

 

 

 

 

 

 

「それでこそご主人です。先ほどのご無礼お詫び申し上げます。」

 

 

 

 

 

 

「いや、いいんだ。むしろありがとう。お前が言ってくれなかったら、私はずっとこのままだったかもしれない。お前はもうただの屋敷しもべじゃない。私の立派な家族だ。」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

シリウスが心を込めて一つ一つの言葉をはっきりと言う。

 

クリーチャーは動揺が隠せないのか、開いた口が塞がらない。

 

また、余程その言葉が嬉しかったのか、涙を流している。

 

 

 

 

 

「勿体なきお言葉。」

 

 

 

 

 

「これからもよろしく頼むクリーチャー。」

 

 

 

 

 

「もちろんです、シリウス様。」

 

 

 

 

 

 

二人とも皮肉が一切ない本心からの言葉だった。

 

 

 

 

 

こうしてポッター家の悲劇の裏側で新たな絆が芽生えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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時は流れる

今回からアストレア視点がメインになります。


あれから約10年がたった。

 

シリウスはあのあと

 

「裏切り者のペティグデューを捕まえに行ってくる。絶対に戻ってくるよ。」

 

と言って家を出ていった。しかし、なぜかシリウスが犯罪者として捕まり、アズカバンに収容されてしまった。それっきりシリウスとは会っていない。

 

あの時は、あまり記憶も確かではないし、話がよくわからなかったけど、何となく嫌な予感がしていた。泣きじゃくってシリウスを止めたけどシリウスは結局出ていってしまった。もちろん私は悲しかったけど、一番心にダメージを受けていたのはクリーチャーだった。目に見えて表情が暗くなっていた。それでも私のために数日で元の自分に戻す辺り、クリーチャーは尊敬できる。屋敷しもべ妖精はもっと評価されるべきだと思う。そんなクリーチャーのためにも強いコになろうと思った。

 

それからは、少しずつクリーチャーに魔法や言葉、礼儀や家事など色々なことを教えてもらった。クリーチャーは本当に色んなことを知っていて、驚いた。

 

だいだい三歳になる頃だろうか。クリーチャーの英才教育で文字がすらすら読めるようになっていた。また、その影響なのかは分からないけど、私は知る楽しさ、つまり勉強の楽しさを知った。ブラック家は大量の魔法に関する書物を保持しているので、私は積極的に読書をして魔法を学んでいた。

 

そして、6歳になる頃には、大抵の魔法は理解し、大量の知識を溜め込んでいた。たしかそのとき、マグルの文化にはまって、色んな資料をクリーチャーに集めてもらった。特にそのなかでも格闘技とテニスと食文化は素晴らしいと思った。今では格闘技もテニスも料理もかなり上達したと思っている。

 

あと、魔法の研究にもはまって、最初は臭い消しの魔法具を作った。そのときはまだ魔法を使っても、頻度が異常じゃなければ大丈夫だったけど、こそこそばれないように魔法を使うのは疲れたので、頑張って発明した。

 

そこからは自分で魔法を作って遊んだり、難しい魔法の練習をしていた。

 

 

そして今私は11歳。一生懸命魔法の勉強をしていた私は、世に知られている魔法はほぼ全て使いこなせるようになった。自作の魔法もかなりの数がある。(失敗作も数知れず)クリーチャーが熱心に教えてくれた礼儀作法は既に完璧。頼んで教えてもらった屋敷しもべ妖精流の魔法は、簡単な魔法ならできるようになった。ただ一番使える姿現しだけは頑張ってすばやく習得した。

 

今考えると私って結構変わってるのかな?でもダンブルドア校長も入学当時からとんでもない実力だったそうだし、問題ないよね!

 

そんなことを考えているとクリーチャーの声が聞こえてくる。

 

「お嬢様。」

 

「どうしたの、クリーチャー?」

 

「お嬢様は本当に忘れんぼうですね。折角優秀なのにそこだけが玉に瑕です。明日はダイアゴン横丁に行く予定ですので、準備物の確認等をお願いします。」

 

クリーチャーはすこし呆れた表情でそう伝える。

今日は7月31日なので明日は8月1日だ。

 

「ごめんなさい。すっかり忘れてました。」

 

情けなさすぎて、敬語になってしまう。何この立場逆転。あと少し落ち込んだ。

 

「まぁそんな少し完璧じゃないお嬢様だからこそ愛着が湧くのだと思いますが。」

 

「うふふ。嬉しい、クリーチャー。」

 

こんな風に何だかんだで優しくしてくれるクリーチャーが私は好きだ。クリーチャーは私の大切な家族なんだ。

 

「あと1ヶ月でホグワーツ入学かぁ。長かったな。楽しみだなぁ。」

 

その日は明日への期待を膨らませながらほんわかとした気分で過ごした。

 

ただ興奮しすぎてあんまり眠れなかった。眠い…

 

 

 

 

 

 

 

 




なかなか進まないので頑張らなくちゃと孤軍奮闘しております(笑

さてさて、ついにアストレア視点になりました。今までは前置きでしたが、今回からやっと原作に入りました。ここからおもしろくできるかは私の腕次第、少し緊張しますね(笑

ドラコはアストレアと関わっていたことで、性格は丸くなり、純血主義ではありません。むしろアストレアと同様にマグルを受け入れてます。さすがに気まずくなるので両親の前では純血主義の振りをしています。

それでは今回はここまで!是非感想やお気に入り等よろしくお願いします!

また次回お会いしましょう!


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アストレアとダイアゴン横丁(1)

そしてー8月1日ー

 

 

 

 

「お嬢様、起きてください。お嬢様!」

 

「はっ……!」

 

朝っぱらからクリーチャーにたたき起こされたまる

 

「いやぁ。本当に昨日は興奮しすぎて、結局12時過ぎくらいに寝たから寝坊しそうになっちゃったよ。」

 

「私が起こさなければ寝坊でしたよ。」

 

「昨日に引き続きごめんなさい。」

 

「まぁこれが私の仕事ですから。」

 

二人は目を見合わせて微笑み合う。

 

 

 

数分後

 

 

 

「クリーチャー、準備はできたよ。」

 

「はい、では出発しましょう。」

 

ちなみに移動方法は付き添い姿現し。さすがに私が姿現しすると不味いのでクリーチャーに手伝ってもらう。

 

パチンという音と共に私は渦のなかに飲み込まれた。

 

 

 

 

 

着地する。ダイアゴン横丁についたようだ。私は普段から慣れているので、着地はもう失敗しない。

みんな屋敷しもべ妖精と手を繋ぐ少女を奇っ怪なものを見るような目で見てくる。

アストレアとしてはもう慣れっこだが、それが屋敷しもべ妖精への差別だと分かっているので腹立たしい。

 

「では、何から買いますか?」

 

クリーチャーも気にしていない様子で尋ねてくる。

 

「そうね、鍋は家にあるものを使えば良いから要らないわね。じゃあ私はふくろうと制服を見に行くからクリーチャーは教科書と望遠鏡をお願い。オリバンダーのお店で待ち合わせしましょう。」

 

「承知しました。迷子にはならないようにお願いします。」

 

「そんな簡単には迷子にならないから安心して。じゃあまたあとで。」

 

私がそういってイーロップのふくろう百貨店に向かって歩き出すと、クリーチャーも本屋に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

イーロップのふくろう百貨店にて

 

 

そこには辺り一面にふくろうがいた。

 

「わあ。いっぱい可愛いコたちがいるなあ。」

 

「何をおっしゃる。お嬢さんも大変可愛らしいじゃないですか。」

 

良い笑顔のおじいさんの定員らしき人が話しかけてくる。

正直少し照れた。

 

「いえいえそんな。」

 

「美人は謙虚!これが一番ですな!まあそんな話は置いておいて、お気に召すものはございましたかな?」

 

どうやら定員さんだったようだ。それより本当に元気なおじいさんだ。おじいさんに言われたので、一通り見渡してみると気になるコがいた。

 

「あのコは何て言うコですか?」

 

「ああ、あれはアビシニアンワシミミズクって種類ですわ。値段は50ガリオン。少々値が張ります。」

 

「結構長い名前ですね。じゃああのコにします。」

 

「なんと、即決ですか。お嬢さんは見た目通りのお金持ちのようですな。」

 

50ガリオン、ブラック家にとっては大した金額ではない。まぁ財産であって、私が稼いだ訳じゃないから何とも言えないけどね。

 

「まぁそうですね。申し遅れました、私ブラック家の令嬢にして当主、アストレア・ブラックと申します。」

 

「あぁ!ブラック家の!私共のお店をご利用いただき誠にありがとうございます。」

 

言葉は丁寧だが、ブラック家には特に興味がないようだ。

 

私としては、うやうやしい態度をとられるのは苦手なので、そっちの方がいいと思っている。

 

「ではこちらがアビシニアンワシミミズクです。性別はメスです。代金を頂戴いたします。」

 

最初にふくろうちゃんを受け取ってから、私は50ガリオンぴったりとりだし、定員さんに渡した。

 

「はい。ぴったり50ガリオンいただきました。ではまたのご来店をお待ちしております!ありがとうございました!」

 

つくづくサービス精神満点で元気なおじいさんだなと思いながら、お店を出た。

 

「君の名前はヴィクトリアよ!よろしくね!」

 

「くわぁ」

 

ここでも一つの友情が生まれた。

 

 

 

 

 

 

それから少し歩いて、マダムマルキンの洋装店に入った。

 

何やら奥の方で二人の少年が話している。

 

「なあマグルって面白いと思わないか?僕も知り合いから教えてもらったんだけど、テニスっていうスポーツがクイディッチ並みに面白いんだ!」

 

「テニスなら僕も知ってる。従兄弟が世界一位のサインを貰ったんだ!」

 

「うわぁ、それはうらやましい!」

 

どうやら結構楽しげに話している。片方は見たことがあったので、話しかけてみることにした。

 

「ドラコ。」

 

プラチナブロンドの少年とメガネの少年が振り返る。

プラチナブロンドの少年が目を見開く。

 

「リアじゃないか!こんなところであえるなんて。」

 

「あはは、久しぶり!会えて嬉しいわ!」

 

プラチナブロンドの少年ことドラコ・マルフォイはアストレアにそう言われて顔を赤く染める。純粋で鈍感なアストレアは全く気づいていない。そんな姿を見てメガネの少年は哀れだなと思った。

 

「そっちのメガネのコは知り合い?」

 

メガネの少年はアストレアと目を合わせて思わずドキッとした。アストレアはあり得ないほど可愛かった。

 

「ああ、僕も名前は聞いてなかった。何て言うんだい?」

 

「僕はハリー・ポッター。」

 

アストレアとドラコは顔を見合わせて驚く。

 

「君があの英雄ハリー・ポッターだったのか!!」

 

「うわーなんか今日って素晴らしいなぁ。親友と会ったと思ったら、ハリー・ポッターに遭遇するなんて。」

 

ドラコは興奮気味に、アストレアは嬉しそうにゆっくりそう言う。

 

「でも、そのことはよく覚えてないんだ。だから、英雄とかじゃなくて、普通に接してほしい、かな?」

 

「OK。君がそう言うならそうしよう。」

 

「そうね。」

 

「「よろしくハリー」」

 

「うん!よろしく二人とも!」

 

こうしてまた新たな友情が芽生えた。

 

「ところで、もう採寸は終わったのだけれど…」

 

マダムマルキンが言いずらそうにそう言う。

 

「「「すみませんでした!!」」」

 

良くも悪くも早速息ぴったりな3人なのであった。

 

 

 

お店を出てすぐにドラコが二人に尋ねてくる。

 

「それで二人はこれからどこへ?」

 

「私は杖を買いに行くわ。」

 

「僕も杖を見に行く予定だよ。」

 

「いいなぁ。二人は一緒か。僕はもう帰らなきゃいけないからね。今度はホグワーツ特急で会おう。」

 

そう言うとドラコは手を振りながら去っていく。

 

「「またねー」」

 

二人も手を振り返す。

 

ドラコの姿が見えなくなったところでアストレアが口を開く。

 

「私はオリバンダーの店で待ち合わせしてるんだけど、ハリーは誰か一緒に来てるの?」

 

「うん。ハグリッドと…あれ?」

 

辺りを見渡すがハグリッドはいないようだ。

 

「どこにいったんだろ?」

 

「お前さんたちが話し込んでたもんで、友達かと思ってアイス追加で買ってきたんだが、一人は帰っちまったようだな。で、そちらは?」

 

突然ぬっと現れたハグリッドが喋る。

 

「私はアストレア・ブラックと申すものです。以後、お見知りおきを。あなたはたしか森の番人さんでしたわね?」

 

アストレアが丁寧に答える。

 

「ああ、よろしく。えらく礼儀がいいと思ったらブラック家だったか。ハグリッドって呼んでくれ。」

 

ハグリッドは一瞬複雑そうな表情になったが、すぐに笑顔で手を差し出した。

 

恐らくシリウスのことなんだろうなぁ。とアストレアは思いつつハグリッドと握手した。

 

「じゃあ、オリバンダーの店まで行くぞ。」

 

「「はーい。」」

 

元気に答える二人なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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アストレアとダイアゴン横丁(2)

私たち3人がオリバンダーのお店にアイスを食べながら向かっている。ハグリッドはドラコの分だったアイスと自分をアイスの2つを食べている。これぞ大人の贅沢。そんなことを考えているとハリーが口を開いた。

 

「そういえばドラコが言ってたクィディッチってなあに?」

 

「なんと、ハリー。お前さんがなんにも知らんということを忘れとった…クィディッチを知らんとは!」

 

ハグリッドがはっとしてそう言う。

 

「クィディッチは魔法使いのスポーツよ。箒で空中を飛んでゴールにボールを入れて得点するの。マグルでいうサッカーみたいなものよ。シーカーがスニッチっていう金色の玉を取ったら試合終了。スニッチを取ったら150点貰えるわ。」

 

すかさずアストレアがハリーにクィディッチの説明をする。クィディッチを知らないハリーに丁寧に分かりやすく教えている。

 

「150点…ルールがぶっ壊れてるね。」

 

ハリーは唖然とした表情だ。

 

「そうね。でも、ワールドカップではスニッチを取ったチームが勝つこともあるから、最後までどうなるかは分からない、ドキドキする良いスポーツよ。」

 

アストレアが微笑みながらそう言う。

 

ハリーもつられて微笑む。

 

「そろそろオリバンダーの店が見えてきたぞ!」

 

ハグリッドが声をあげる。ハリーがそちらを見て期待に胸を膨らませている。お店の前にクリーチャーが立っているのが見えた。ここでも不審がられているが、本人は何でもないような顔で突っ立っている。

 

「クリーチャー!」

 

アストレアがあげる。

 

「ああ、お嬢様、どうやらお友だちがご一緒のようで。」

 

クリーチャーがそう言うと、ハリーは緊張した様子で気をつけした。

 

「ええ、こちらはハリー、ハリー・ポッターよ。こっちの大きい方はハグリッド。ホグワーツの森の番人よ。」

 

アストレアがクリーチャーに二人を紹介する。ハリーはこの人は人間なのかな?と思った。ハグリッドは物珍しげな目でクリーチャーを見ている。

 

「初めまして、僕、ハリー・ポッターです。」

 

「わしはルビウス・ハグリッド、アストレアがいっとるようにホグワーツの森の番人をしちょる。今日はハリーの引率だ。」

 

ハリーとハグリッドが改めて自己紹介をする。ハリーはまだ緊張している様子だ。

 

「よろしくお願いいたします。ハリー・ポッター様。ルビウス・ハグリッド様。私はクリーチャーと申します。アストレア様のしm」

 

「家族です。」

 

クリーチャーが丁寧に受け答えしているところを遮って、アストレアがそう言う。クリーチャーが遮ったことを咎めるが、アストレアは無視する。クリーチャーは諦めたようだ。

 

「改めまして、アストレア様の家族のクリーチャーです。」

 

「クリーチャーさんはゴブリンですか?」

 

ハリーが悪気なくクリーチャーに尋ねる。

 

「違うやい、ハリー。クリーチャーは屋敷しもべ妖精だ。」

 

あちゃーといった表情でハグリッドが答える。

 

「妖精!?魔法界には色んな生き物がいるの?」

 

ハリーが驚いて、興奮しながらそう尋ねる。

 

「ええ、他にも色んな種族がいるわ。それより話はここまでにして、中に入りましょう。オリバンダーさんが寂しそうな目でこちらを見つめているわ。」

 

本当にオリバンダーが店の中から寂しそうな目でこちらを見つめていた。

 

「そうだね!また、ドキドキしてきた。」

 

「君ってある意味情緒不安定だねー。」

 

アストレアが微笑んでそういった。皆も微笑む。アストレアが微笑むと笑顔が伝染するように広がっていく。そのまま四人は店の中へ入っていった。



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アストレアは杖を手に入れた

中に入るとどこか奥の方でチリンチリンとベルがなった。ハリーは期待が隠せない様子だ。

 

「いらっしゃいませ。」

 

柔らかな声でオリバンダーが四人に向かっている言った。

 

「こんにちは、オリバンダーさん。」

 

アストレアが笑顔で答える。

 

「これはこれはブラックさん。それにハリー・ポッターさんまで。今日は豪華ですな。」

 

オリバンダーがほっほっほっと笑いながらそう言う。

 

「こんにちは。」

 

ハリーも挨拶する。

 

「お母さんと同じ目をしていなさる。あの子がここに来て、最初の杖を買っていったのがほんの昨日のことのようじゃ。」

 

オリバンダーがハリーの目の前まで近付いてくる。

 

「目以外はお父さんそっくりじゃな。彼はマホガニーの杖が気に入られてな。もっとも、杖の方が持ち主の魔法使いを選ぶんじゃがな。」

 

オリバンダーがさらに近寄って、ハリーとほとんど鼻がくっつきそうになっている。ハリーは微妙な表情だ。

 

「それで、これが例の…」

 

オリバンダーが白く長い指で、ハリーの額の稲妻型の傷痕に触れる。

 

「悲しいことに、この傷をつけたのも、わしの店で売った杖じゃ…」

 

少しの沈黙が流れる。

 

「ルビウス!ルビウス・ハグリッドじゃないか!また会えて嬉しいよ…四十一センチの樫の木。よく曲がる。そうじゃな?」

 

「へえ、その通りですじいさま。」

 

ハグリッドが目を泳がせる。

 

「良い杖じゃったが、お前さんが退学になったときに真っ二つに折られてしまった。」

 

「申し訳ねえです。じいさま。」

 

ハグリッドは足をもじもじさせながら答えた。何それギャップ萌え。

 

「まぁ、そんな話は置いておいて、お二人は杖の購入でしたな。どちらからにされますかな?」

 

「私は母の杖を持っているので、ドキドキが止まらないハリーを先にしてやってください。私はその後で大丈夫です。」

 

「ありがとう、アストレア。」

 

「ううん。」

 

「では、ポッターさん。杖腕はどちらですかな?」

 

意見がまとまったところで早速オリバンダーが質問をしだした。

 

「僕、右利きです。」

 

ハリーがハキハキと答える。

 

「腕を伸ばして。そうそう。」

 

オリバンダーはハリーの色々なところの寸法をとりながら言った。

 

「ではポッターさん。これをお試しください。ぶなの木にドラゴンの心臓の琴線。二十三センチ、良質でしなりがよい。振ってみてください。」

 

少ししてオリバンダーが言った。ハリーはオリバンダーから杖を受けとる。そして杖を振った。すると失敗なのかオリバンダーが杖をあっという間にもぎ取ってしまった。そのようなことをしばらく繰り返した。

 

「難しい客じゃの。ま、心配なさるな。必ずぴったり合うのを探しだしますのでな……さて、こちらはどうでしょう。めったにない組み合わせだが、柊と不死鳥の羽根、二十八センチ、良質でしなやか。」

 

ハリーは杖を手に取った。急に指先が暖かくなった。杖を振り下ろすと、杖の先から赤と金の火花が花火のように流れ出し、店中を走り回る。

 

ハグリッドは「オーッ」と声を上げて手を叩き、オリバンダーは「ブラボー!」、アストレアは「やったね‼ハリー!!」と叫んだ。自分のことを喜んでくれる人がいると知ってなんだか嬉しくなった。それはハリーにとって今までにない経験だった。

 

「素晴らしい。いや本当に素晴らしい。まったくもって不思議じゃ。」

 

「なにが不思議なんですか?」

 

ハリーがオリバンダーに尋ねる。オリバンダーはハリーをじっと見つめる。

 

「ポッターさん。わしは自分の売った杖は全て覚えておる。あなたの杖に入っている不死鳥の羽根はな、同じ不死鳥がもう一枚だけ尾羽根を提供した。なんと不思議なことじゃ…兄弟羽が…なんと、兄弟杖がその傷を負わせたというのに…」

 

ハリーやアストレアが息をのんだ。

 

「三十四センチのイチイの木じゃった。杖は持ち主の魔法使いを選ぶ。そういうことじゃ…ポッターさん、あなたはきっと偉大なことをするにちがいない。名前を言ってはいけないあの人も…ある意味では偉大なことをしたわけじゃ。」

 

ハリーは身震いしたようだった。

 

「まぁこんな重い話は置いておいて、次はブラックさんですな?」

 

オリバンダーがいっぺんかわって明るい顔でアストレアに問いかける。

 

「はい、お願いします。」

 

「では、こちらをどうぞ、イチイの木に一角獣のたてがみ。」

 

アストレアの杖選びも難航し、しばらく時間がたった。

 

「うーん。豪華な客だけあってお二人とも手強いですな。」

 

アストレアとハリーが申し訳なさそうにあははと苦笑いする。

 

「では、こちらはどうです、ダルベルギアの木にデミガイズの毛、おとなしく馴染みやすい。二十センチ。」

 

アストレアは杖を受けとる。その瞬間、膨大な力があふれでてきた。アストレアは「これだ‼」と思った。アストレアが杖を振ると、神々しい光の球が現れて、まばゆく弾けた。またしてもオリバンダーが「ブラボー!」と叫んだ。ハグリッドとハリーとクリーチャーが拍手している。アストレアは大変嬉しそうに笑っている。

 

「なんとかお二人とも見つけられましたな!」

 

「オリバンダーさん、ありがとうございました!僕、本当に嬉しいです!」

 

「私も良い買い物ができましたわ。ありがとうございました。」

 

二人が頭を下げるとハグリッドとクリーチャーも一緒にお辞儀をする。

 

「杖売りの身としてはそんなに喜んで貰えると嬉しいですな。またいつかお会いできる日を楽しみにしておりますぞ。では、ご来店ありがとうございました。」

 

こうしてアストレアとハリーは自分の杖を購入し、店を出た。

 

「そろそろお家に帰らなくちゃ。ハリー!9月1日にまた会いましょう!」

 

「うん!もちろんだよ‼」

 

そういってその日はお家に帰った。

 

 

 

 



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賢者の石
ホグワーツへ


 

 

 

そして9月1日……

 

「おはよう、クリーチャー。」

 

アストレアが満面の笑みでクリーチャーに挨拶する。

 

「おはようございます、お嬢様。朝食を食べたらすぐに出発しますよ。」

 

「はーい。早くハリーとドラコに会いたいなー。」

 

「浮かれた気分で忘れ物などはしないようにしてくださいよ、お嬢様。まぁ忘れたときは私が届けますが…」

 

「大丈夫、大丈夫。昨日気になって仕方なくて10回以上確認したから。」

 

元気にアストレアが答える。あれから約一ヶ月間、アストレアはホグワーツでの生活に期待を膨らませながら、教科書を読んだり、魔法の練習をしたりして生活してきた。(いつもそんな感じではあったが、よりいっそう勉強に励んでいた。)

 

「では、お嬢様、駅に姿現しするので掴まってください。」

 

朝食を食べ終わるとクリーチャーが言ってきた。本当にすぐだなと思いながら、移動でお腹の中の物を戻さないように気をつけようなどと考えながら、アストレアはクリーチャーの手を握った。

 

 

付き添い姿現しが始まり、景色が歪んだ。すぐに地面に着地した。どうやら駅に到着したようだ。お腹の中の物を戻す心配は全く必要なかった。ここは駅の人通りが少ない裏側のようだ。クリーチャーが見られると不味いと思ってここに姿現ししたもだろう。

 

「では、私は帰りますのでお気をつけて。」

 

マグルにみられる前にクリーチャーは帰るようだ。

 

「うん。じゃあまた帰ってくるときまで、さよならクリーチャー。」

 

「はい、お嬢様。」

 

そういってクリーチャーは姿眩ましをして家に帰っていった。

 

「ついに駅に来た!まず、ハリーとドラコと合流しなきゃね!」

 

アストレアは美少女であり、ふくろうをつれていて変な格好だったので色んな視線を集めていた。本人は全くもって気づいていないようだ。

 

アストレアが九と四分の三番線に向かって歩いていると、ハリーが赤毛の家族と話しているのを見つけた。アストレアはすぐに駆け寄った。

 

「ハリー!」

 

アストレアが笑顔でハリーに手を振りながら駆け寄る。

 

「アストレア!」

 

ハリーも笑顔で手を振り返す。

 

「おや?ガールフレンドなの?すごく可愛いじゃない。」

 

赤毛のお母さんが言う。アストレアは照れた様子で、もじもじしている。

 

「それより、ハリーだって!?君ってあのハリー・ポッターなの!?」

 

赤毛の男の子が大きな声で言う。

 

「うん。僕はハリー、ハリー・ポッターだよ。」

 

「すげー。」

 

赤毛の男の子がすごく興奮している。私も最初にハリーに会ったときはこうだったのかな?とアストレアは思った。

 

「ほらほら、仲良くなるのはいいけど電車に乗り遅れちゃ行けませんよ。とりあえずホームに入って乗車しなさい。」

 

赤毛のお母さんが私たちに向かってそういう。私たちは彼女の言うことを聞いて一人ずつ柱の中を通り抜けていった。これが「いしのなかにいる。」状態なのだろうか。

 

そんなこんなでホグワーツ特急に乗車し、私たちはコンパートメントに入った。赤毛の男の子が窓から家族と別れの挨拶をした。そして、ついに汽車が出発する。ハリーはやはりドキドキしている様子だ。かくいう私もドキドキしている。ホームで赤毛の女の子が泣いているのが見えた。汽車が出発した。

 

 

 

 

 

 

出発して少しすると、コンパートメントの戸が開いた。ドラコだ。

 

「アストレア!探したよ!ハリーもいるじゃないか!二人に会えて嬉しいよ!」

 

ドラコはにこやかに言う。

 

「ドラコ!久しぶり!また会えて嬉しいわ!」

 

アストレアは本当に嬉しそうにしている。ドラコとは長い付き合いなのだろう。純粋な言葉にドラコが照れる。

 

「ドラコ!僕も君に会えて嬉しいよ!」

 

ドラコはまたもや嬉しそうにする。

 

「君はウィーズリー家の子かな?よろしく、僕はドラコ・マルフォイ!家の父親が君たちの家族に迷惑をかけていることは謝るよ。でも、僕は君とも仲良くしたい。」

 

「う、うんよろしく。僕はロン・ウィーズリー。父親なら僕の父親が悪いときもあるからお互い様だよ、うん。」

 

ロンは最初、複雑そうな顔をするが、すぐに笑顔で自己紹介した。二人は握手して、ドラコがアストレアの隣に座った。

 

少しして、ロンが杖を取り出してペットのねずみを黄色に変えるといいだした。

 

「双子の兄貴に教えて貰ったんだ。この前は失敗したんだけど、もういっかいやってみるよ。1、2の」

 

するとコンパートメントの戸が開いて、女の子と今にも泣き出しそうな男の子が入ってきた。

 

「誰かヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの。」

 

なんとなく威張った話し方をする女の子だ。栗色の髪がフサフサして、前歯がちょっと大きかった。

 

「見なかったよ。」

 

ロンが答えた。しかし、女の子はカエルの興味をなくして、杖の方に視線を注いでいる。

 

「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ。」

 

女の子が座り込んだ。すでに四人いたのでコンパートメントの中はぎゅうぎゅう詰めだ。ロンがたじろいだ。

 

「あー、お陽さま、雛菊、溶ろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ」

 

ロンは杖を振ったが何も起こらない。

 

「その呪文間違ってないの?」

 

女の子言った。

 

「あいつら、へぼ呪文を教えやがったな。」

 

ロンが今いない双子の兄弟に対して小さく吠える。

 

「まぁ、あんまりうまくいかなかったわね。私も練習のつもりで簡単な呪文を試したことがあるけど、みんなうまくいったわ。私の家族に魔法族は誰もいないの。だから、手紙をもらった時、驚いたわ。でももちろん嬉しかったわ。だって、最高の魔法学校だって聞いているもの……教科書はもちろん全部暗記したわ。それだけで足りるといいんだけど……私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」

 

圧巻のマシンガントークにコンパートメント内の皆が唖然どしていた。さっきまでなきそうだった男の子すらポカンとしている。

 

「僕、ロナルド・ウィーズリー。ロンでいいよ。」

 

はっとしてロンが答える。

 

「僕、ネビル・ロングボトムです。」

 

「私はアストレア・ブラックと申すものです。よろしければリアと呼んでください。」

 

「僕はドラコ・マルフォイ。ドラコって呼んでくれ。」

 

「僕はハリー・ポッターです。ハリーって呼んでほしいかな?」

 

「ほんとに?私、もちろんあなたのこと知ってるわ。いろんな本に出てたわ。」

 

ハーマイオニーが驚いた様子でハリーにそういう。

 

「そういえば、あなた方の用件はヒキガエルでしたわね。では私が探しだしましょう。」

 

アストレアが話を切り出し、杖を取り出す。

 

「あら、あなたも魔法を使うの?面白そうだわ。」

 

「では、アクシオ!ネビルのヒキガエル!」

 

コンパートメントの戸が素早く開き、すごいスピードでなにかが飛んで来た。魔法で空中に浮かんでいるのはカエルだ。

 

「はい、どうぞネビル。もう無くさないようにね。」

 

「ありがとう!本当にありがとう!」

 

アストレアが笑顔でヒキガエルをネビルに渡すと、ネビルは感極まってまた泣き出しそうになっていた。

 

「じゃあ僕は自分のところに帰るよ。」

 

ネビルはそういって帰っていった。

 

「それで、君はどうするんだい?」

 

ドラコがハーマイオニーに尋ねる。

 

「ここに残らせてもらうわ!ところでさっきの呪文って何?教科書には載ってなかったわ!」

 

ハーマイオニーはそのまま席に座って、アストレアに問いかけた。

 

「知らなくても仕方ない。あれはホグワーツだと四年生で習うからね。」

 

「あなたも使えるの?」

 

代わりにドラコが答えると、ハーマイオニーが聞き返す。

 

「ああ、リアとそこそこ長い付き合いでちょくちょくリアの家で一緒に魔法の勉強をしてたんだ。だから大抵の呪文はつかえる。まぁリアには遠く及ばないが…」

 

「ドラコ、そんな謙遜しなくてもあなたは十分優秀よ。」

 

「ありがとう!やっぱ君は良いやつだ。」

 

コンパートメント内の空気が和む。

 

「すごいわ!ねえ私にも魔法を教えてほしいのだけれど。」

 

「それなら僕も教えてほしいな。」

 

「僕も兄貴たちを驚かせたいな。」

 

「私もドラコも教えるのが上手かどうか分からないけど大丈夫よ。」

 

アストレアもドラコも3人の申し出を微笑みながら快く了承した。ここで五人の固い友情が結ばれた。

 

「皆はどこの寮がいいと思う?」

 

また少しして、ロンが皆に問いかけた。

 

「うーん。私はやっぱりグリフィンドールかな。」

 

「私はグリフィンドールかレイブンクローがいいと思ってるわ。」

 

それぞれアストレアとハーマイオニーは答える。

 

「僕はグリフィンドールが良いけど、スリザリンに入る他ないかな。父上に僕がグリフィンドールに入ったこととか、純血主義を否定してるなんて知られたら不味いからね…」

 

ドラコは少し落ち込んだ様子だ。ドラコはアストレアと話すうちに純血主義がいかに愚かであるのかを知った。しかし、父であるルシウスにその事を知られては、気まずいではすまないことも理解している。

 

「マルフォイ家の子が純血主義じゃないなんて意外だなぁ。」

 

ロンはほへぇとした感じだ。

 

「リアと出会っていなかったら、ずっと凝り固まった純血主義者だっただろうな。今の僕がいること、君たちと仲良くできていることは、全てリアのお陰なんだ。」

 

眩しいほどの笑顔をドラコが見せる。男女関係なく、一瞬皆ドラコに惚れた。アストレアは非常に照れた様子だ。

 

「で、ハリーはどうなんだ?」

 

ドラコがハリーに聞く。

 

「うーん。僕もグリフィンドールかな。両親がグリフィンンドールだったから。」

 

「じゃあ入りたい寮皆、グリフィンドールなんだね。」

 

ロンがそう言うと、みんながうなずいた。すると、だんだんホグワーツ特急のスピードが落ちてきていた。

 

「どうやら、もうすぐ着くようですね。そろそろ制服に着替えた方が良さそうです。」

 

アストレアがそういうと、男子はこのコンパートメントで、女子はハーマイオニーが荷物を置いているコンパートメントに行って制服に着替えた。すぐに到着5分前を知らせる放送がなり、ついにホグワーツに電車が着いた。

 

「やっと着いたね!」

 

アストレアが元気にそう言った。五人全員がわくわくした気持ちを隠せず、顔に現れていた。

 

「イッチ年生!イッチ年生はこっち!ハリー、アストレア、元気か?そちらは?」

 

すると、大きな声で一年生に呼び掛けをするハグリッドが話しかけてきた。

 

「「元気だよ!(です!)」」

 

二人は元気に返事をする。

 

「僕はロナルド・ウィーズリーです。ロンでいいです。」

 

「おお。お前さんはウィーズリー家か。お前さんの双子の兄貴には困りもんだ。」

 

ロンが自己紹介をすると、ハグリッドが笑顔でユーモアたっぷりな返事を返す。

 

「私は、ハーマイオニー・グレンジャーです。」

 

「マグル生まれの子か?しっかりしてそうだな。ハリーを頼むぞ。」

 

「僕はドラコ・マルフォイです。よろしくお願いします。」

 

「ああ、あの時一緒にいた子か。マルフォイ家ってのは不安だが、ハリーとアストレアと仲良くやってるってこたあ良いやつなんだろうな。よろしくドラコ。」

 

「四人ずつボートに乗って!」

 

ハーマイオニーとドラコの自己紹介にそれぞれ返事をすると、ハグリッドが大声で一年生に呼び掛ける。ハグリッドは忙しくても私たちに構ってくれる本当に優しい人だ。

 

「どうしよう、僕ら5人だぜ。」

 

ロンがそう言うとみんなが困った顔をする。

 

「なあに、この船は丈夫だから、一年生のチビッ子が一人増えたところで水没なんてしねーから、五人でのってきゃぁいい。」

 

ハグリッドの助言を聞いて、恐る恐る五人で船に乗り込んだ。たしかに心配はなさそうだ。

 

「よーし、では、進めえ!!」

 

ハグリッドがそう言うとボート船団は一斉に動き出した。

 

少しして、全部の船が船着き場に到着した。みんなが下船し、ハグリッドの後に続いてゴツゴツした岩の道を登り、湿った滑らかな草むらの城影の中にたどり着いた。

 

私たちの目に壮大で美しい城が入り込んできた。私たちはすぐそこにある素晴らしい世界に期待を膨らませていた。

 

ハグリッドが城の扉を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回は杖購入からホグワーツ到着までやりました。

ドラコはかなりフレンドリーな良いやつになっていますね。ロンとドラコには仲良くしてもらいたかった。

杖に関しては、幻の動物とその生息地を全部読んで、なんとなく良いなと思ったものの中から、他作品と被ってなさそうなのを選んでみました。

ということで今回はここまでです。お気に入り、感想などお待ちしております!

そういえばUAが1000越えました!お気に入りも7件!本当にありがとうございます‼

では、また次回お会いしましょう!


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組分け

ホグワーツの扉が開く。するとエメラルド色のローブを着た背の高い黒髪の魔女が現れた。顔にしわが刻まれていて、とても厳格な顔つきをしている。

 

「マグゴナガル教授、イッチ年生です。」

 

「ご苦労様。ここからは、私にお任せなさい。」

 

そういってマグゴナガル先生は扉を大きく開けた。その先には壮大な空間が広がっている。生徒たちは、マグゴナガル先生についていき、ホールを横切っていった。みんな不安そうな表情でついていく。

 

「ホグワーツ入学おめでとう。」

 

ホールの脇にある小さな空き部屋に入ると、マグゴナガル先生が挨拶をした。

 

「まもなく新入生の歓迎会が始まります。一緒に組分けの儀式も行います。ホグワーツにはそれぞれグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンという寮があります。皆さんの行動には点数がつけられます。もちろん減点もあります。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。くれぐれも、自分の寮にとって損になることをしないよう、規則を守るようお願いします。」

 

ハーマイオニーに負けず劣らずのマシンガントークでマクゴナガル先生は一年生にホグワーツの説明をした。一年生は、わくわくした表情の人もいれば、緊張で固まっている人もいる。アストレアやドラコは前者で、ハリー、ロン、ハーマイオニーは後者のようだ。

 

マクゴナガル先生が一年生に時間になるまで身だしなみを整えるように言って、部屋を出ていった。すると、部屋内の張り詰めた空気は突然緩くなり、皆口々に話し始めた。ほとんどの人が寮の話をしている。

 

「うわっ」

 

何人かの生徒が突然悲鳴を上げた。どうやらホグワーツに住み着いているゴーストたちが現れたようだ。彼らは一年生の方を見て何やら話していた。

 

「おやおや、新入生じゃな。これから組分けされるところか?」

 

一人のゴーストが一年生に微笑みかけた。何人かの生徒が黙ってうなずいた。みんなゴーストにびびって縮こまっている。ネビルなんてカチカチと震えている。

 

「さあ行きますよ。」

 

微妙な空気の中、マグゴナガルの厳しい声がした。一年生は、マグゴナガル先生が来てほっとしている。(ネビルはまだ震えていたが)

 

「まもなく組分けの儀式が始まります。一列になってついてきてください。」

 

そういってまた歩き出すマグゴナガルの後ろを一年生たちが列を作ってついていった。部屋を出て再び玄関ホールに戻り、二重扉を通って大広間に入った。

 

そこには、不思議で素晴らしい光景が広がっていた。一年生はみんな美しい大広間を見渡して呆然としている。マグゴナガルが咳払いをすると、みんな慌てて前を向いた。

 

マグゴナガルは一年生を引率し、一列に並ばせた。全校生徒と先生に見つめられて、また一年生は緊張している。天井の星が綺麗だ。

 

マグゴナガルが一年生の前に黙って四本足のスツールを置いた。椅子の上には小汚なくて古くさいとんがりぼうしが置かれた。何人かの生徒がそれを見て薄ら笑いするが、マグゴナガルに睨まれてすぐに静かになる。

 

みんなの視線が帽子に集まる。すると、帽子が動き出して、歌い始めた。

 

私はきれいじゃないけれど 人は見かけによらぬもの

私をしのぐ賢い帽子 あるなら私は身を引こう

山高帽子は真っ黒だ シルクハットはすらりと高い 私はホグワーツの組分け帽子 私は彼らの上をいく

君の頭に隠れたものを 組分け帽子はお見通し

かぶれば君に教えよう 君が行くべき寮の名を!

 

グリフィンドールに行くならば 勇気ある者が住まう寮 勇猛果敢な騎士道で 他とは違うグリフィンドール!

 

ハッフルパフに行くならば 君は正しく忠実で 忍耐強く真実で 苦労を苦労と思わない!

 

古き賢きレイブンクロー 君に意欲があるならば 機知と学びの友人を ここで必ず得るだろう!

 

スリザリンではもしかして 君はまことの友を得る どんな手段を使っても 目的遂げる狡猾さ!

 

かぶってごらん! 恐れずに! 興奮せずに、お任せを!

 

君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)

 

だって私は考える帽子!

 

歌が終わると広間にいた全員が拍手喝采をした。帽子が静かになった。一年生のみんなは、自分たちは帽子を被るだけでいいと知って安堵している。緊張の代わりに今度はドキドキが抑えられないようだ。マクゴナガルが長い羊皮紙の巻き紙を手にして前に進み出た。

 

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組分けを受けてください。」

 

一年生は早く自分の名前が呼ばれないか、ドキドキして待っている。

 

「アボット・ハンナ!」

 

「ハッフルパフ!」

 

マクゴナガルに名前を呼ばれて出てきた女の子が帽子をかぶると、帽子が彼女の寮名を叫んだ。ハッフルパフのテーブルから歓声が上がる。

 

「ブラック・アストレア!」

 

すぐ次にアストレアの名前が呼ばれた。広間にどよめきが走る。スリザリン生はみんな揃ってひそひそと話している。アストレアがスリザリンに入ると思っているのだろう。アストレアは美しい足取りで椅子の前まで歩き、優雅に座った。見ていた誰もが魅了されたかのようだ。そして、ついに帽子をかぶる。

 

「グリフィンドール!」

 

すると、すぐに帽子が叫んだ。グリフィンドールから歓声が上がる。スリザリンは全員が驚きを隠せないような表情で口をぽかんと開けて座っている。アストレアは満面の笑みでグリフィンドールのテーブルまで歩いていき、椅子に座った。先輩たちと挨拶している。ハリーは僕もアストレアと一緒の寮がいいなと思った。

 

「ボーンズ・スーザン!」 「ハッフルパフ!」

 

「ブート・テリー!」 「レイブンクロー!」

 

「ブロックルハースト・マンディ!」 「レイブンクロー!」

 

「ブラウン・ラベンダー!」 「グリフィンドール!」

 

「ブルストロード・ミリセント!」 「スリザリン!」

 

「フィンチ、フレッチリー・ジャスティン!」 「ハッフルパフ!」

 

「フィネガン・シェーマス!」 「グリフィンドール!」

 

「グレンジャー・ハーマイオニー!」

 

次々と寮が決まっていく中、ハーマイオニーの名前が呼ばれた。ハーマイオニーは待ちきれないように帽子をグイッとかぶった。

 

「グリフィンドール!」

 

少ししてから帽子が叫んだ。ハーマイオニーがグリフィンドールのテーブルに着くとアストレアと握手して、先輩たちと会釈した。そのあとハリーたちの方を見て、微笑んだ。ハリーが微笑み返した。

 

「ドラコ・マルフォイ!」

 

その後、何人かの名前が呼ばれて、ドラコの番がやってきた。スリザリンの視線がドラコに集中する。ドラコが帽子をかぶった。そして、10分ほどたった後だろうか

 

「スリザリン!」

 

帽子が叫んだ。ドラコがアストレアやハリーを見て複雑そうな表情で微笑む。アストレアもハリーも気にするなという意を込めて微笑み返す。するとドラコは肩の荷が降りたようにすばやくするとのテーブルに着いた。

 

ノット・セオドール……パーキンソン……パチル姉妹……パークス・サリー、アン

 

「ポッター・ハリー!」

 

次々と名前が呼ばれて、ついにハリーの番がやってきた。突然広間中が静まり返った。アストレアの時以上にハリーは視線を集めている。ハリーは帽子をかぶってじっと待った。ドラコの時と同じくらい時間がたったとき

 

「グリフィンドール!」

 

帽子が叫んだ!グリフィンドールから大歓声が上がる。ロンの双子の兄貴など、「ポッターを取った!ポッターを取った!」と大騒ぎだ。グリフィンドールのみんながハリーを拍手で迎え入れた。

 

「これからもよろしくハリー!」

 

「もちろん!」

 

そうしてアストレアとハリーが握手して、ハリーは席に着いた。

 

そして、ついに残りは二人になった。

 

「ウィーズリー・ロナルド!」

 

ロンは青ざめた顔で帽子をかぶる。すると、すぐに帽子が「グリフィンドール!」とさけんだ。ロンはさっきとはうって変わって満面の笑みでグリフィンドールのテーブルに向かって駆けていった。

 

そうして、組分けが終わると、ダンブルドアが立ち上がった。腕を大きく広げ、ニッコリ笑った。

 

「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」

 

ダンブルドアは席につき、出席者全員が歓声をあげた。ハリーは以上というよりは異常だなと思った。

 

アストレア、ハーマイオニー、ハリー、ロンの四人は、食事を楽しみながらこれからの生活に話を弾ませた。途中でドラコがやって来て、「スリザリンになっちゃったけど、これからもよろしく」と言いに来たので、四人は「もちろん」と返し、笑いあった。

 

そうして、みんながある程度食事を堪能して落ち着いた頃にダンブルドアがまた立ち上がった。広間中がシーンとなった。その後、ダンブルドアはいくつかの注意事項や、クィディッチについての話をした。すると、ダンブルドアがいきなり真剣な表情になった。

 

「最後ですが、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい四階の右側の廊下に入ってはいけません。」

 

ハリーやロンは何だかおかしくて笑ったがアストレアやロンの兄であるパーシーがすごく真剣な顔をしていたので、本当なんだと思って身震いした。

 

「では、寝る前に校歌を歌いましょう!」

 

さっきとはうって変わって、笑顔でダンブルドアがそう言うと、他の先生方の笑顔が急にこわばった。

 

「みんな自分の好きなメロディーで。では、さん、し、はい!」

 

ダンブルドアが杖でしきをすると、学校中が大声でうなった。とびきり遅い葬送行進曲で歌っていた双子のウィーズリー兄弟が最後まで残った。

 

「さあ、諸君、就寝時間。かけ足!」

 

ウィーズリー兄弟が歌い終わるとダンブルドアがそう言って、一年生は監督生について寮に向かっていった。こうしてホグワーツでの新入生歓迎会が終了した。

 

 

 

 

 



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ホグワーツ初夜

アストレアたちはグリフィンドールの寮内でまた会話していた。

 

「明日からの授業が楽しみだね。」

 

「そうね、今までは教科書でしか勉強できなかったから、魔法のプロの先生に教えてもらえるのはすごく良いことだわ。」

 

「僕もいままで魔法なんて知らなかったからずっとドキドキしてるよ!」

 

「ああー僕、へましないといいな。また兄貴にバカにされちまう。」

 

アストレアが他の3人に向かって言うと、それぞれが自分の思いをはなす。アストレアはこうやって仲良くできる友達ができて嬉しいなと思った。

 

「「俺たちが何だって?」」

 

すると、ロンの言葉に反応したのか双子のウィーズリー兄弟がやってきた。肩を組んでロンにのし掛かっている。

 

「ああ、もううっとうしい‼兄貴たちはお呼びじゃない!」

 

「まぁ、そう言わずに…私はアストレア・ブラックと申します。ロンとはお友達です。」

 

ロンが怒って双子をはねのけようとすると、アストレアがロンを止めて、双子に挨拶をした。すると双子はロンにイタズラをやめて挨拶をした。

 

どうやら兄の方がフレッドで弟の方がジョージだそうだ。見分けられそうにないな、とアストレアは思った。そのままみんなでわいわいやっていると、監督生のパーシーがこっちに来たて「そろそろ寝るんだ」と言ってきた。フレッドとジョージがパーシーのお尻を叩いて逃げた。パーシーは怒って双子を追いかけた。みんなは悪がきだなぁと思った。

 

その後すぐに解散して、みんな自室に入っていった。幸いアストレアはハーマイオニーと、ハリーはロンと同室だったので、困ることは特になかった。

 

 

 

その次の日アストレアは誰よりもはやく起きた。まず身だしなみを整えてから、今日の授業の準備などをしていた。それらが終わって落ち着いた後は読書に励んでいた。

 

 

しばらくするとハーマイオニーが起きた。「おはよう」とアストレアが言うと、ハーマイオニーも挨拶を返してくれた。

 

ハーマイオニーがすっかり目覚めた頃、アストレアに「何を読んでいるの?」と聞いてきた。どうしようかな、とアストレアは一瞬迷ったが、結局教えることにした。

 

「これは、神様に関する本よ。」

 

「へえ、魔法族も神様を信じてるの?意外だわ。」

 

「そんな人は珍しいわ。でも、私はマグルの文化は好きよ。それでね、私は両親が亡くなっててね、母親は私を産んですぐ亡くなったらしいわ。」

 

「悪いことを聞いたわね、ごめんなさい。一人で大丈夫だったの?」

 

申し訳なさそうに謝った後にハーマイオニーが心配そうに聞いてくる。

 

「ううん。大丈夫よ。もちろん一人で育った訳じゃないわ。おじさんとクリーチャーに育ててもらったの。でも、おじさんは私が一歳のときに冤罪で捕まったわ。」

 

アストレアが悲しそうな表情で過去を語る。

 

「それは、ひどいわね。いつか、冤罪が晴れると良いわね。」

 

「うん。本当にそう思う。」

 

ハーマイオニーがアストレアを気遣いながら、意見を言った。アストレアもハーマイオニーに同調する。ハーマイオニーは会って1日しかたっていないのにここまで親身になってくれるなんて、なんて良い人なんだろうとアストレアは思った。

 

「それで、何でこれを読んでるかっていう話だったわよね。実は私の名前は女神の名前から取ったみたいなの。だから調べたら母親について何か知れるんじゃないかと思って、ね。」

 

アストレアはさっきとはうって変わってすっきりとした表情で苦笑いしながらハーマイオニーにいった。ハーマイオニーも微笑みながら聞いている。

 

「それで、何か分かったの?」

 

「いいえ。何にも分からなかったわ。でも、私は女神アストレアのような人になりたいとは思えたわ。」

 

ハーマイオニーの質問に残念そうにアストレアは答えたが、収穫もあってよかったことを告げる。ハーマイオニーもその返事が聞けて嬉しそうだ。ハーマイオニーが「心配なことがあったら何でも聞いてあげるわ!」と言うとアストレアも「じゃあ、毎日ハーマイオニーにべったりくっついて歩いてもいい?」と言うと、「それは勘弁ね。」とハーマイオニーが笑いながら言った。なんだか二人はおかしくなって、顔を見合わせて声を出して笑った。

 

こうして今日から愉快なホグワーツでの1日が始まった。



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初授業(1)

 

 

 

 

 

 

 

そして変身術の初授業が始まった。ハリーとロンが教室への道がわからなくて困っているのを見つけたアストレアとハーマイオニーが二人を変身術の教室まで連れていった。二人ともアストレアとハーマイオニーに大変感謝していた。ハーマイオニーは「全く、何してるのよ。」と呆れていたが、素直に感謝されて内心嬉しくおもっていた。

 

教室に着くと大半の生徒が席についていた。すでにマクゴナガル先生が黒板の前に立っていたので四人は慌てて席を探した。四人はちょうど四人分席が空いているところがあったのでとりあえず座った。特に遅れた訳ではないようで、四人は安心した。少しして、みんな席につくと、最初っからマクゴナガル先生はお説教を始めた。

 

「変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なもののひとつです。いいかげんな態度で私の授業を受ける生徒は出ていってもらいますし、二度とクラスには入れません。初めから警告しておきます。」

 

なんとも厳しいお言葉だ。たしかに魔法をふざけて使うと危ないので、ごもっともな意見だなとアストレアは思った。ハリーとロンは冷や汗をかいていた。

 

それから、先生は机を豚に変え、またもとの姿に戻して見せた。生徒たちは感激して、はやく試したくてうずうずした。しかし、さんざん複雑なノートをとらされた後、ほとんどの生徒がグロッキー状態になり、あきらめていた。

 

全員にマッチ棒が渡されたが、完璧に針に変えることができたのは、ハーマイオニーとアストレアだけだった。アストレアに至っては、開始直後に終わらせた上に、めちゃくちゃきれ いな装飾を施し、勝手に動き出しす機能までつけてマクゴナガル先生に絶賛されていた。ハーマイオニーはアストレアに尊敬の眼差しをむけていた。二人のお陰で、グリフィンドールはさっそく20点もらうことができて、みんな喜んでいた。

 

みんなが待ち望んでいた闇の魔術の防衛術は、てんで期待外れだった。教室にはにんにくの匂いがプンプン漂っていた。話に聞くところ、クィレル先生はルーマニアで出会った吸血鬼が怖くて、出会って以来ずっとにんにくの匂いをつけているらしい。いつも身に付けている怪しげなターバンは、やっかいなゾンビを倒した報酬として、アフリカの王子様にもらったらしい。とにかくクィレルの授業は全くもって肩透かしだった。

 

そして金曜日になった。この日ハリーとロンは初めて一度も迷わずに大広間にたどり着いた。二人は大変嬉しそうにしていた。この様子をみて、迷わないのはいいけど、今まではむしろ迷いすぎだわ。全く。とハーマイオニーは呆れていた。

 

「今日は何の授業だっけ?」

 

「スリザリンと合同で魔法薬学の授業よ。担当のスネイプ先生と言えばスリザリン贔屓で有名だわ。」

 

ハリーが尋ねるとアストレアがそう答える。ハリーは魔法界でも贔屓があるのか、嫌だなと思った。アストレアは以前何度かスネイプと会ったことがあるので懐かしいな、楽しみだな、とおもっていた。

 

「マクゴナガルが僕たちを贔屓してくれたらいいのに。」

 

「そうだね。」

 

ロンが軽口を叩くと、ハリーが賛同する。

 

「あなたたちね…少しは自分で努力を…」

 

ハーマイオニーが二人の発言を咎めるように言った。アストレアもその通りだと思った。ましてや先生を呼び捨てにするなんてとんでもないと思った。アストレアは礼儀をクリーチャーに叩き込まれたので仕方ないことだ。

 

「なんだよ、どう思ったって僕らの勝手だろ!」

 

ロンがハーマイオニーの発言に反応して声をあらげる。アストレアとハリーは面倒くさくなりそうだなと思った。

 

「そうですか、じゃああなたが困ってても何もしてあげないから!」

 

「ええ、結構ですとも!そんなのこちらから願いさげだね!」

 

「もう行きましょう!アストレア!」

 

ハーマイオニーがプンプン怒って大広間から出ていってしまった。ロンは全く気にせず食事をしている。アストレアとハリーはあちゃーと思った。アストレアはハリーにロンは頼んだという意を込めてウインクした。するとハリーは顔を赤く染めた。アストレアは了解の意かな?顔を赤く染めて合図するなんて器用だな。と馬鹿げたことを考えながらアストレアはハーマイオニーを追いかけに大広間を出ていった。

 

 

 

 

 

 




はい。今回は組分けからホグワーツでの最初の一週間まで書いてみました。

スネイプ先生はアストレアと何度か会ったことがあって、アストレアが優秀なことをしっているので、多少贔屓目に見ています。まあ実際実力はあるので贔屓というよりは必然的な結果ですけどね(笑

あ、後1、2、3話あたりを大幅編集しました。まぁ削除したり、一話にまとめたりしただけなんですけどね(笑

今回はここまで!お気に入りや感想などよろしくお願いします!誰か感想を恵んでくだしあ。

それではまた次回お会いしましょう!


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初授業(2)

そして、魔法薬学の授業が始まった。魔法薬学の授業は地下牢で行われた。教室は寒く、不気味だった。ろうそくが揺らめいている。ドラコの隣が空いていたので、アストレアはそこに座った。ハーマイオニーはアストレアの隣に座った。案の定ハリーとロンは遅刻してきた。スネイプが出席をとりはじめ、ハリーの番になった。

 

「あぁ、さよう。」

 

ねっとりとした嫌らしい声だ。

 

「ハリー・ポッター。初回から遅刻とは…さすが我らが新しいースターだね。」

 

スリザリンがくすくすと冷やかし笑いをした。ハリーとロンは敵対心むき出しでスネイプを睨み付けた。

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ」

 

スネイプが話始めるとクラス中がシーンと静まり返った。

 

「このクラスでは杖を振り回すような馬鹿げたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。」

 

「フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の新鮮な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……」

 

「諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法であるーただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」

 

大演説の後はクラス中が一層シーンとなった。みんな大抵、よく分からんという気持ちと失敗したくないという気持ちが表情に現れていた。アストレアは、スネイプ先生はやっぱり魔法薬に関しては熱血だなと思いながら話を聞いていた。ハーマイオニーは自分がウスノロではないことを早く証明したくてうずうずしていた。

 

スネイプが突然、「ポッター!」と呼んだ。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギをぜんじたものを加えると何になるか?」

 

どうやらハリーは分からないようで、ロンを見る。しかし、ロンも同様に分からないようだ。ハーマイオニーは早く当ててほしそうに必死に高々と手を挙げている。そのようすをみてアストレアとドラコはマグル生まれなのに答えを知っているなんてすごいなと思い、負けるわけにはいけないと思った。

 

「分かりません。」

 

ついに降参してハリーがそう答えた。

 

「チッ、チッ、チ有名なだけではどうにもならんらしい。」

 

スネイプはハーマイオニーが挙げる手を無視した。アストレアとドラコはスネイプ先生も人が悪いなと思った。

 

「ポッター、もうひとつ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいといわれたら、どこを探すかね?」

 

ハーマイオニーがまた手を挙げている。ハリーはまたわからず、悔しそうにしている。

 

「わかりません。」

 

「では、モンクスフードとウルフスベーンの違いはなんだね?」

 

とスネイプが捲し立てるように言った。ハーマイオニーはついに椅子から立ち上がり、必死に手を伸ばした。

 

「わかりません。」

 

とハリーが落ち着いた口調でいった。

 

「ハーマイオニーがわかっていると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう?」

 

ハーマイオニーはさっきのこともあってか複雑そうな表情をしている。スネイプは不快そうな顔をしていた。

 

「座りなさい。」

 

スネイプがピシャリとハーマイオニーに言った。ハーマイオニーは仕方なく座った。しょんぼりとしている。アストレアは彼女に同情した。

 

「全く。では、ミス・ブラック。これまでの質問、全部答えられるかね?」

 

グリフィンドールを攻めるようなことを言うのかと思ったら、スネイプが突然自分を指名してきたのでアストレアは驚いた。

 

「は、はい。」

 

いきなりの事なので緊張しながらもアストレアは返事をした。ハーマイオニーが羨ましそうな顔でアストレアを凝視している。ハリーとロンはやってやれというような顔で、ドラコは君なら余裕だなといった顔でこちらを見ている。

 

「最初の質問ですが、それらの材料に加え、刻んだカノコソウの根、催眠豆の汁、などの材料を使うことで生ける屍の水薬を作ることができます。生ける屍の水薬は眠り薬で、成分が強すぎると永遠に眠ってしまうと言われています。」

 

スネイプとドラコはさすがだなというような表情だ。ハリーや他の生徒は、アストレアの頭の良さに唖然としている。ロンは目を見開いて「おったまげー」と呟いていた。

 

「次にベゾアール石ですが、山羊の胃から取り出せる石で、大抵の薬に対する解毒剤になります。ただし、入手は非常に困難と言われています。」

 

「最後の質問ですが、どちらも同じ植物です。別名はアコナイト、簡単に言えばトリカブトです。マグル界では山菜と間違えてトリカブトを摂取し、死亡する事故が後を絶ちません。」

 

アストレアが言い切ると、大半の生徒たちはすごいといった表情でアストレアを見ていた。

 

「よろしい。詳しい説明や雑学を付け加えるなど、素晴らしい答えだった。グリフィンドールに10点。」

 

ドラコが小声で「良かったじゃないか」と言って来たので、アストレアは感謝の言葉を返した。グリフィンドールもスリザリンも、スリザリン贔屓で有名なスネイプがグリフィンドールに点をあげたことには驚いている。

 

「さて、諸君。なぜ今の素晴らしい説明をノートに書き取らんのだ?」

 

スネイプが冷ややかにそう言って生徒たちを睨み付けた。生徒たちは焦って一斉に音を立てて羊皮紙に書き込みをしだした。アストレアはどうすればいいか迷いながら、自分の説明を羊皮紙に書き込んだ。

 

「ポッター、君の無礼な態度でグリフィンドールは5点減点。」

 

スネイプのこの一言でハリーは完全にスネイプを敵視した。ロンもハーマイオニーも嫌そうな顔をしている。アストレアとドラコは心の中で苦笑いした。

 

その後、スネイプは生徒を二人ずつ組にして、おできを治す簡単な薬を調合させた。奇数で一人余ってしまうので、アストレアはドラコとハーマイオニーと3人でチームを組んだ。アストレアたちは調合を完璧に済まし、グリフィンドールに2点、スリザリンに5点加点した。これにはグリフィンドールの大半が不満そうにスネイプを睨み付けていた。ドラコは申し訳なさそうに座っていた。

 

アストレアたちの薬を見るようにスネイプが言った時、地下牢いっぱいに強烈な緑色の煙が上がり、シューシューという大きな音が広がった。どうやらネビルがミスをしたようだ。これに対し、スネイプは、ハリーが近くにいたのに注意しなかったことを指摘し、グリフィンドールから5点減点した。アストレアはスネイプ先生は手厳しいなと思った。でも結局2点は加点になっているので、スネイプ先生にしては珍しいなとも思った。ハーマイオニーは「折角アストレアのおかげで加点されたのにッ」と呟いていた。

 

これにはさすがにハリーは言い返そうとしたが、ロンが大鍋の下でハリーをこずいて「やめたほうがいい。スネイプはものすごく意地悪になるって聞いた。」と言ってきたので自分を抑えた。

 

こうして楽しいことや、苦しいことが入り乱れるホグワーツでの最初の一週間が終わった。一体これからどんな苦難が待ち受けているのだろうか、一体どんな幸せな体験ができるのだろうか、とみんな明日への期待と不安を胸に抱いていた。



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初めての飛行訓練

魔法薬学の授業が終わった後、ハリーとロンはハグリッドの家に遊びにいった。アストレアはハーマイオニーといたので誘われなかった。早く仲直りして欲しいなーとアストレアは思った。

 

そして時がたち、次の週の木曜日になった。今日は初めての飛行訓練だ。スリザリンとの合同授業でドラコと一緒に授業を受けられるので、アストレアは楽しみにしていた。ドラコは箒が上手だが、アストレアもなかなかの腕前だ。

 

そしてついに飛行訓練が始まった。またもやアストレアとドラコは隣り合って授業を受けていた。視線が集中したが、二人は無視した。生徒たちの周りにはぼろぼろの飛べそうにない箒が置かれていた。スリザリン生の何人かが「僕たちを殺す気か!?」と憤慨しているのが聞こえた。しばらくすると飛行訓練担当のフーチ先生が来た。いかにも厳しそうな女性だ。

 

「なにをぼやぼやしているんですか!」

 

開口一番ガミガミだ。

 

「みんな箒のそばにたって。さあ、早く!」

 

フーチに急かされて、生徒たちはすぐさま箒のそばに立った。ハリーとロンはこの先生も面倒くさそうだなと思った。

 

「右手を箒の上に突き出して、上がれ!という。」

 

フーチの説明を聞いてみんなが「上がれ!」と叫んだ。

 

アストレアやドラコはもちろんだが、ハリーの箒も上がっていた。純血のスリザリン生は何度か触ったことがあるからか、箒が上がっている。それでも一回目で箒が上がったのは少数だ。どうやら頭の良さは関係無いらしい。現にハーマイオニーの箒は全く上がっていない。

 

次にマダム・フーチは、箒の端から滑り落ちないように箒にまたがる方法をやって見せ、生徒たちの列のあいだを回って、箒の握り方を直した。

 

「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、二メートルくらい浮上して、それから前屈みになってすぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよ。一、ニの」

 

ところがネビルは焦ったのか合図よりも前に箒にのって空中に飛び出してしまった。

 

「こら!戻ってきなさい!」

 

マダム・フーチが怒鳴るが、ネビルはドンドンドンドン上に向かって飛んでいく。箒を全く制御できていない。ネビルは声にならない叫びをあげて、ついに地面にまっ逆さまに落っこちた。アストレアもハーマイオニーもみんな真っ青になっていた。何人かはまるで自分が落っこちたみたいに、ネビルと一緒に絶叫していた。

 

マダム・フーチは真っ青になって、ネビルの上にかが見込んだ。

 

「手首がおれてるわ。」

 

それを想像したのか、何人かの女子が悲鳴を漏らす。ネビルはぐずぐずと泣いている。

 

「私がこの子を医務室に連れていきますから、その間誰も動いてはなりません。箒もそのままにして置いておくように。さもないと、クィディッチの『ク』の字を言う前にホグワーツから出ていってもらいますよ。」

 

「さぁいきましょう。」

 

そう言って、マダム・フーチはネビルに肩をかして一緒にホグワーツ城に向かって歩いていった。みんな箒を退学になりたくないので身動きひとつしなかった。しかし、マダム・フーチがホグワーツ城に入って、姿が見えなくなった頃だった。

 

「あいつの顔を見たか?あのおおまぬけの。」

 

スリザリンのセオドール・ノットがそう言って、ネビルのことをバカにすると、スリザリン生がはやしたてるようにした。グリフィンドールのみんなは憤慨している。ロンなどもう噛みつきそうだ。アストレアとドラコはセオドールを止めようと動こうとした。

 

「ごらんよ!」

 

突然、セオドールがなにかを掲げて叫んだ。よーく見てみると、どうやらネビルの思いだし玉のようだ。

 

「ロングボトムの婆さんが送ってきたバカ玉だ‼」

 

とセオドールが言うと、バカにするようにスリザリンが大笑いする。グリフィンドールにとっては実に不快なことだった。アストレアは、スリザリンはこんなにひどい人達の集まりなの!?と憤慨した。

 

「ノット!それを返してもらおう!」

 

みんなが困惑しているなかハリーが名乗りをあげた。

 

「それなら力ずくで捕って見ろよポッター!俺に追い付けるならな!」

 

そう言うとセオドールは箒に乗って高いところまで飛んでいく。ハリーが箒で後を追いかける。すごいスピードだ。不安定な箒が揺れる。

 

「ハリー!ダメよ!戻ってきて!退学になるわ!」

 

「そうだよ!君が退学になることなんてない!退学になるのはそいつだけで十分だ!」

 

アストレアとドラコが空中のハリーに叫んで呼び掛けた。するとハリーが一瞬止まったかと思うと、「大丈夫!なんか僕、できる気がするんだ!」と叫んでまたセオドールを追いかけ始めた。

 

アストレアとドラコはハリーを諭すことに諦めたのか、ハリーに呆れたのか、やれやれといった表情で見守っていた。ハーマイオニーは本当にバカじゃないの!?とハリーを見て憤慨していた。ロンは「やってやれ!ハリー!」と拳を振り上げ、ハリーを応援している。他の生徒たちは、二人の箒の腕前に唖然としている。

 

少しすると、二人の差が縮まり始めた。ハリーのスピードはものすごく、初心者とは思えない。経験者であるセオドールを打ち負かす勢いだ。ついにセオドールがハリーに追い付かれそうになった瞬間、セオドールが力任せに思いだしだまを放り投げた。みんながついにダメかと思った瞬間、ハリーは先ほどよりも速度をあげて地面に突っ込んでいった。これにはセオドールも唖然としていた。アストレアもドラコもハーマイオニーもみんながとにかく絶叫していた。ハリーは手を伸ばしガラス玉をつかみとることだけに集中していた。

 

ハリーが地面に全速力でぶつかる直前、みんなはハリーの死を連想して、目をつぶっていた。しかし、ハリーは地面スレスレでガラス玉を掴みとり、無理やり箒の方向を変えて今度は全速力で上までぶっ飛んでいった。セオドールだけが目を見開いてすべてを見ていた。

 

「やったー!!」

 

死んだと思っていたハリーの声が聞こえてきて恐る恐るみんなが目を開けた。するとそこには思いだしだまを手にして喜んでいるハリーがいた。グリフィンドールどころかスリザリン生ですら拍手せざるを得ない光景だった。

 

「ノット、僕の勝ちだ‼」

 

とハリーが宣言した。ハリーを辱しめようと思っていたのに、逆に敵に塩をおくっていしまったセオドールが悔しさと恥ずかしさで顔を真っ赤に染めている。拍手喝采でハリーが喜んでいると

 

「ハリー・ポッター…!!!」

 

とマクゴナガルの叫び声が聞こえてきた。

 

みんながゾッとした表情だった。みんな縮こまっている。何人かの生徒たちが「ああ、俺らもう退学なんだな…」と呟くとさらに縮こまった。ハリーなどこの世の終わりかと言わんばかりの魂が抜けたような顔でマクゴナガルを振り返った。まるでギギギというブリキの音がしたように感じた。

 

「まさか、、こんなことはホグワーツで一度も……」

 

マクゴナガルはショックで声が出ないようだった。ハリーはマクゴナガルが非常に憤慨していると思ったのか、もうすでに顔が死んでいる。

 

「……よくもまあ、そんな大それたことを……首の骨を折ったかもしれないのに……」

 

「先生、ハリーが悪いんじゃないんです……」

 

「そうです、ハリーはただ、ネビルのために……」

 

アストレアとドラコがハリーを擁護する。ハリーの目に少しハイライトが戻ったかのようだった。

 

「お黙りなさい、二人とも。」

 

「でも、セオドールが……」

 

「くどいですよ。ミスター・ウィーズリー。ポッター、さあ、一緒にいらっしゃい。」

 

よ言ってマクゴナガルがホグワーツ城に向かっていった。ハリーは、死刑宣告を受けた囚人のような魂の抜けたような顔に再びなり、マクゴナガルの後についていった。ロンは「なんで僕まで!?」と困惑していたが、死んだような顔のハリーに引っ張られて、逃げることを諦め、彼もまた死んだような顔でマクゴナガルの後をついていった。

 

アストレアやドラコを含める、ほとんどの生徒が御愁傷様ですといったように彼らの後ろ姿を見つめていた。そんななか空気を読まず、セオドールが一人笑いのドツボにはまっていた。

 



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箒事件と決闘(1)

夕食時、アストレアはハーマイオニーと一緒に食事をとっていた。あの飛行訓練の後、ハーマイオニーは不機嫌で大変だった。今もまだ不機嫌なのでアストレアはやれやれといった表情でハーマイオニーの隣でステーキ・キドニーパイを食べている。

 

「ロン!すごいんだ‼」

 

「ハリー!何があったんだい?」

 

すると、ハリーが笑顔で大広間に入って来て、ロンに呼び掛けた。セオドールを始めとするスリザリン生は、なぜか笑顔のハリーを見て、不審がっていた。ハリーがロンにこそこそ話をする。ハーマイオニーは何も聞きたくないという表情でそっぽを向いている。

 

「まさか!?シーカーだって?だけど、一年生は絶対ダメだと……なら、君は最年少の寮代表選手だよ。ここ何年来かな?」

 

「百年ぶりだってウッドがいってたよ。」

 

二人は周りの目を気にせずに興奮して大声で話をしている。どうやら話は機密だったようでマクゴナガルがしかめっ面をしている。スリザリン生は「何故!?」といった表情でハリーの方を向いている。セオドールなど二人をおもいっきり睨み付けている。アストレアが二人を咎めようと二人に近づくと、ドラコがやってきて先に二人を咎めた。

 

「なんだい?グリフィンドールだけ特別待遇で悔しいのかい?」

 

とロンがふざけて言うと、ハリーとロンが笑い合う。しかし、ドラコは真剣な表情だ。

 

「そんなこと言ってる場合じゃない、セオドールのやつが」

 

「僕がどうしたんだい?」

 

ドラコがなにかをいい始めると、セオドールがドラコの言葉を遮ってきた。

 

「君、ハリーにやきもち焼いてるんだ。」

 

とロンがセオドールを挑発すると、セオドールがニヤニヤと笑いだした。ドラコはしまったという顔をしている。アストレアは「ロンったら!!」とロンを咎める。

 

「いいさ、挑発に乗ってやろう。今夜トロフィー室にこい。魔法使いの決闘をしようじゃないか。ボロ雑巾にしてやるよ。ドラコ、君はこんなやつらと話すのかい?血の裏切り者め。」

 

そう言ってセオドールは去っていった。ハリーとロンとドラコがセオドールの背中を睨み付けている。アストレアもドラコをバカにされて、憤慨している。

 

「どうする?」

 

「そんなの行くしかないじゃないか!」

 

ハリーが聞くとロンがそう答える。二人は顔を見合わせて笑っている。ドラコは微妙な表情だ。

 

「ちょっと、二人とも。いくらバカにされたからって真夜中に出歩くなんてダメよ。」

 

「アストレアに賛成だわ。夜、校内をウロウロするのは絶対ダメ!もし捕まったらグリフィンドールが何点減点されるか考えてよ。それに捕まるに決まってるわ。まったくなんて自分勝手なの!?」

 

アストレアが二人を止めようとすると、ハーマイオニーがそれに賛同した。ドラコも夜中出かけるのには反対のようだ。

 

「まったく大きなお世話だよ。」

 

「バイバイ。」

 

二人は無慈悲にハーマイオニー"だけ"にそう言って大広間を出ていった。今のがトドメになったのかハーマイオニーは悔しさに顔を歪めている。ついにアストレアも二人に憤慨したのか、「どうしてそんなこと言うの!?」と呟いている。ドラコも「なんてひどいことを言うんだ。」と呟いている。

 

 




はい。今回はおなじみ飛行訓練と決闘ですね。

原作と違って、ドラコの代わりにセオドールを使っています。なんとなくですよなんとなく。

最近思うのは主人公なのにアストレアの出番少なくない?ってことです。これからどうにか出番を増やさねば。

では、今回はここまで。お気に入りや感想などお待ちしております。

また、次回お会いしましょう。


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箒事件と決闘(2)

そしてその日の午後11時半、ハリーとロンはこっそり談話室に降りてきた。そこにはすでにアストレアがいた。アストレアが「私もついていくわ。危なくなったら魔法でなんとかするわ。」と微笑み、自分に目眩まし呪文を唱えて姿を消した。それを見たハリーとロンは心強い味方ができたと言わんばかりに何度もうなずいた。

 

「ハリー、まさかあなたがこんなことをするとは思わなかったわ。」

 

3人がグリフィンドール寮を出ようと立ち上がると、そんな声がした。ハーマイオニーだ。どうやら怒り心頭のようだ。

 

「また君か!ベッドに戻れよ!」

 

とロンがカンカンになっていった。

 

「本当はあんたのお兄さんに言おうかと思ったのよ。パーシーに。監督生だから、絶対に止めさせるわ。」

 

ハーマイオニーが容赦なくいった。今日の夕食の時の仕返しのようだ。ハーマイオニーは「どうよ」と言わんばかりの表情だ。ハリーはここまでお節介なのが世の中にいるなんて信じられなかった。ハーマイオニーの言葉を無視して「行くぞ」とロンに声をかけると、ハリーは「太った婦人の肖像画」を押し開け、その穴を乗り越えた。そんなことで諦めるハーマイオニーではない。ロンと姿を消しているアストレアに続いて肖像画の穴を乗り越え、二人に向かって怒ったアヒルのように、ガーガーいい続けた。

 

「グリフィンドールがどうなるか気にならないの?自分にことばっかり気にして。スリザリンが寮杯をとるなんて私は嫌よ。私が変身術を知ってたおかげでマクゴナガル先生がくださった点数を、あなたたちがご破算にするんだわ」

 

「あっちへ行けよ。」

 

ハーマイオニーがそう捲し立てる。アストレアはごもっともだなと思いながら、申し訳なさそうに文句を垂れるハリーとロンについていった。

 

「いいわ。忠告しましたからね。明日家に帰る汽車の中で私のいったことを思い出すでしょうよ。あなたたちは本当に……」

 

ハーマイオニーがきつい口調でそういいかけた。しかし、本当になんなのか聞けずじまいだった。ハーマイオニーがなかに戻ろうと後ろを向くと肖像画がなかった。太った婦人は夜のお出掛けで、ハーマイオニーは塔から締め出されてしまったのだ。ああ、ハーマイオニーったらなんて不幸なのとアストレアは思った。

 

「さあ、どうしてくれるの?」

 

「知ったことか」

 

「僕たちはもう行かなきゃ。遅れちゃうよ。」

 

ハーマイオニーがけたたましい声で問い詰めると、ロンはそっけなく返す。ハリーに急ぐよういわれてロンとアストレアは先を急いだ。廊下の入り口にさえたどり着かないうちに、ハーマイオニーが追い付いた。

 

「一緒に行くわ。」

 

「ダメ。来るなよ。」

 

「ここに突っ立ってフィルチに捕まるのを待ってろって言うの?三人とも見つかったら、私、フィルチに本当のことを言うわ。私はあなたたちを止めようとしたって。あなたたちは私の証人なのよ。」

 

「君、相当の神経してるぜ。」

 

ロンが大声を出した。アストレアはハーマイオニーらしいなと思った。こうして四人(内一人透明人間。)はトロフィー室に着いた。どうやらセオドールはいないようだ。しかし、なぜかドラコがこそこそと隠れている。ドラコはこちらに気がつくと駆け寄ってきた。

 

「君たち、大変だよ。セオドールは最初っから行く気なんてなかったんだ。はやく戻らないと大変だ。」

 

「何だって!?」

 

ドラコの言葉を聞いて、ロンが声をあらげる。ハーマイオニーは「こうなると思ってたわ」という表情をしている。

 

「リアはいないのかい?」

 

「いや、来てる。」

 

ドラコに聞かれてハリーがそうこたえた。ハーマイオニーはハリーがついに頭がおかしくなったと思った。

 

「はーい。ドラコ。」

 

すると突然、アストレアの声がした。ハーマイオニーはどこからともなく聞こえてくる声にびっくりしている。ドラコは納得した表情だ。

 

「君、目眩まし呪文を使っているな。君がついてくるなんてびっくりだよ。」

 

とドラコが呑気に笑う。ハリーとロンも笑おうとすると「誰かいるのか!!」という怒鳴り声が聞こえた。その声にハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコの四人は終わったという表情をしている。

 

「どうやら…呑気にはしていられないようね…」

 

アストレアは冷静にそう言うと、素早く四人に呪文をかけ、無理やり走らせた。途中でちょうどよく扉があったので、解錠呪文を扉にかけて間一髪逃げ込んだ。みんなぜえぜえと息を立てている。「本当、この人達といるとろくなことがないわ!」とハーマイオニーがぷんすか怒っている。

 

「でも、良かったわ。見つからなくて。私を連れていって良かったわねハリー。」

 

アストレアにそう言われると疲れきったハリーは無言でうなずいた。

 

「それにしても、なんだか獣臭がする。うえっ」

 

「それに、さっきから6つの目がこっちを見ている気が…」

 

ロンとドラコがそう言うとみんな恐る恐る後ろを振り返る。すると、そこには大きな三つの口と三組の血走ったギョロ目があった。三つの鼻がそれぞれの方向にひくひく、ピクピクしている。全員が悲鳴をあげて、全速力で逃げ出した。みんな脇目もふらずに自分の寮へと走っていく。

 

そして、アストレアが合言葉を言って、グリフィンドール寮の扉に逃げ込むと、ハリー、ロン、ハーマイオニーと順番にグリフィンドール寮に逃げ込んだ。またしてもみんなぜえぜえと息を立てている。まったくもって休みがない。アストレアもすっかり目眩まし呪文が解けてしまっている。

 

「あんな怪物を学校の中に閉じ込めておくなんて、連中はいったい何を考えているんだろう。」

 

「世の中に運動不足の犬がいるとしたら、まさにあの犬だね。」

 

やっとハリーとロンが口を開き、息絶え絶えにそんなことをいう。

 

「あなたたち、どこに目をつけているの?」

 

ハーマイオニーが突っかかるようにいった。

 

「あの犬が何の上に立っていたのか、みなかったの?」

 

「仕掛け扉の上ね。きっと何かを守っているんでしょう。きっと大事で危険な何かを…」

 

え?っといった表情の二人の代わりにアストレアが答えた。含むような言い方だ。

 

「アストレアの言うとおりよ。あなたたち、さぞかしご満足でしょうよ。もしかしたら、みんな殺されてたかもしれないのに、、もっと悪いことに、退学になったかもしれないのよ。では、二人とも、おさしつかえなければ、休ませていただくわ。あなたたちには話す価値がないわ。行きましょう、アストレア。」

 

ロンはポカンと口を開けてハーマイオニーを見送った。アストレアはみんなを仲裁できず申し訳なさそうに頭を一瞬下げて、ハーマイオニーを追いかけていった。

 

「おさしつかえなんかあるわけないよな。あれじゃ、まるで僕たちがあいつを引っ張りこんだみたいに聞こえるじゃないか、ねえ?」

 

ハーマイオニーの言ったことがハリーには別の意味でひっかかった。ベッドに入ってからそれを考えていた。アストレアの含むような言い方も気になった。

 

「グリンゴッツは何かを隠すには世界一安全な場所だ。たぶんホグワーツ以外では…」

 

ハリーの呟きが二人以外誰もいない談話室に響き渡った。

 

 



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思考の波

四階廊下の部屋で三頭犬に会った翌日、朝食をとりながらアストレアとハリーとロンがあの部屋のことについて話している。セオドールは、ハリーとロンが罰則を回避したことに憤慨し、二人をスリザリン席から睨み付けている。

 

「一体あの三頭犬はなんだったのかしらね?」

 

「さぁ。でも、僕、絵本でケルベロスって生き物見たことあるんだけど、あの三頭犬そっくりだったよ。」

 

とハリーが昔のことを思い出すようにして言う。

 

「ケルベロス?なんだいそれ。」

 

と間抜けな声でロンが聞く。ハリーは失礼とは分かっているが、ロンは間抜けという言葉がすごく似合ってるなと思った。

 

「うーん。私も神話とかで見たのだけど、ケルベロスはたしか冥界の番犬だわ。」

 

とアストレアも思い出すようにして言う。

 

「神話かぁ。でも、番犬だとしたら何を守ってるんだろう。」

 

とハリーは考えながら言うと、アストレアとロンもケルベロスが守っている物について考え出した。しばらく沈黙が続いた。すると、突然一羽のフクロウが細長くて大きい物をハリーに向かって運んできた。ハリーが受けとると、フクロウは朝食をつついてつまみ食いすると、足早く飛び去っていった。大広間の生徒たちが珍しい物をみる目でハリーを見つめている。

 

「なんだろうこれ。」

 

「きっと箒だよ!ハリー!」

 

ハリーが心底わからなそうに言うと、ロンが器用にもこそこそ声で叫んだ。大きな包みには手紙が添付されていたのでハリーとロンとアストレアの三人は手紙をみた。そこには中身が新品のニンバス2000ということが書かれていた。送り主はマクゴナガル先生のようだ。三人がマクゴナガルの方を見ると、マクゴナガルはにっこり微笑んでいた。ハリーとロンは抱き合って喜んだ。二人はマクゴナガル先生を見直したようだ。アストレアはまったくマクゴナガル先生は人が良いなとほっこりした。

 

「そういえば、今日はあいつと一緒にいなくていいのかい?」

 

しばらくハリーとロンが喜び合った後、ロンが怪訝そうな顔でアストレアに聞いた。アストレアはあいつとはハーマイオニーのことだと解釈した。

 

「あぁー。なんか昨日のことでいつも以上に機嫌が悪くなってて、話しかけずらくてさ。」

 

アストレアがしょんぼりとして言うと、ハリーとロンが哀れそうな目でアストレアを見つめた。「あんな奴に構う必要ない思うぜ。」とロンが言うと、「こーら、そんなこと言わない。ハーマイオニーだって大切な友達でしょ。」とアストレアが返した。「悪いけどあいつとは友達になった記憶はないね。」とロンが切り捨てる。ハリーもロンに同感だなと思った。

 

それからわいのわいのと盛り上がり、箒の話をしていると、ハーマイオニーが話しかけてきた。

 

「ハリー、ロン、あなたたち校則を破ってご褒美を貰ったと思っているのね。」

 

とハーマイオニーが言う。すっかり機嫌が悪く、怒っている。ハリーが持っている包みをけしからんと言わんばかりに睨み付けている。

 

「あれ?僕たちとは口を聞かないんじゃなかったの?」

 

とハリー。

 

「そうだよ。今さら変えないでよ。それに僕たちには話す価値すらないんだろ?話しかけて来ないのは僕たちにとっちゃありがたいんだ。」

 

とロン。アストレアが「ちょっと、二人とも!いい加減に悪口はやめて!」と言うと、二人は一瞬、申し訳なさそうにするが、すぐにもとに戻った。ハーマイオニーはツンとそっぽを向いていってしまった。

 

ハリーは一日中授業に集中できなかった。気がつくと寮のベッドの下に置いてきた箒のことを考えていたり、今夜練習することになっているクィディッチ競技場の方に気持ちがそれてしまった。そんな様子をみてアストレアは呆れていた。

 

ハリーは毎日宿題がたっぷりある上、週三回のクィディッチの練習で忙しくなった。アストレアは宿題をそつなくこなすが、あいにくハリーはそれほど頭が良くないので、宿題一つ一つに苦労している。しかし、ハリーよりもひどいロンがいるので、ハリーは安心していた。

 

 

 

 

 

 



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ハロウィーン騒動(1)

そして、アストレアたちがホグワーツに入学してから二ヶ月がたった。

 

ハロウィーンの朝、パンプキンパイを焼く美味しそうな匂いが廊下に漂ってきて、みんな目を覚ました。もっと嬉しいことに、「妖精の魔法」の授業でフリットウィック先生が、そろそろ物を飛ばす練習をしましょうと言った。先生がネビルのヒキガエルをブンブン飛び回らせるのをみてからというもの、みんなやってみたくてたまらなかった。

 

 

先生は生徒を二人ずつ組にさせて練習させた。アストレアはネビルに丁寧に優しく教えていた。アストレアは「ウィンガーディアム レヴィオーサ。」という美しい発音と美しい杖さばきで呪文を大成功させた。余裕のクリアだったので、みんな尊敬していた。ハリーはシェーマス・フィネガンと組むことになり、二人して四苦八苦していた。シェーマスなど、羽根がピクリとも動かず、かんしゃくを起こして無理やりやろうとしたところ、羽根に火がついてしまい、大変だった。そのときもアストレアが瞬時に火を消していた。フリットウィック先生がその事でアストレアに点をあげていた。

 

授業中、アストレアとハリーが一番驚いたことといえば、仲が非常に険悪なロンとハーマイオニーがペアになったことだ。フリットウィック先生は悪気はないだろうが、二人とも大変そうだなとアストレアは思った。

 

「ウィンガディアム レヴィオーサ!」

 

長い腕を風車のように振り回してロンが叫んでいる。ハーマイオニーのとんがった声が聞こえる。

 

「言い方がまちがってるわ。ウィン・ガー・ディアム レヴィ・オー・サ。ガーと長ーくきれいに言わなくちゃ。」

 

「そんなによくご存知なら、君がやってみろよ!」

 

ロンが怒鳴り付ける。形はどうあれ、口をきかないと言っていた二人が会話できて良かったとアストレアは思った。アストレアはどうにか二人がはやく仲直りできますようにと願った。もちろんハリーもだ。

 

「ウィンガーディアム レヴィオーサ!」

 

ハーマイオニーはガウンの袖をまくり上げて杖をビューンと振り、呪文を唱えた。すると、羽は机を離れ、頭上一・二メートルぐらいのところに浮いた。

 

「オーッ!よくできました!」

 

先生が拍手して叫んだ。

 

「皆さん、見てください。グレンジャーさんがやりました!」

 

ハーマイオニーは自分が二番目に呪文を大成功させたこと(一番目でないことを悔しいとは思っていたが)、先生によく褒めてもらったことと、クラスメイトたちからの拍手ですっかり満面の笑みとなっていた。それに対し、ロンの機嫌は最悪だった。アストレアは心配の種が広がったような気がして不安でしかたなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、誰だってあいつには我慢できないっていうんだ。まったく悪夢みたいなやつさ。」

 

廊下の人ごみを押し分けながら、ロンがハリーに言った。誰かがハリーにぶつかり、急いで追い越していった。ハーマイオニーだ。ハリーが顔をチラッと見ると驚いたことに泣いている。

 

「今の、聞こえたみたい。」

 

とハリー。

 

「それがどうした?」

 

ロンも少し気にしていたが、「誰も友達がいないってことはとっくに気がついているだろうさ。」と言った。しかし、その瞬間ロンは、強烈なビンタを頬にくらってよろめき「イタッ!」と叫んだ。叩いたのはアストレアだった。ハリーもロンもあんなに優しいアストレアが怒りに顔を染めて、ロンをビンタしたことに驚愕している。

 

「あなたたち、いい加減にして!なんで友達にあんなこと言えるの!?」

 

初めて聞くアストレアの怒鳴り声だった。

 

「なんでって、そもそもあいつと僕は友達なんかじゃ…」

 

とロンがアストレアの怒鳴り声にびびりながらもなんとかしりすぼみに言う。

 

「女の子を泣かせておいてよくそんなこと言えるわね!これ以上減らず口を叩いたら、あなたたちをお家まで送り返すわ!あなたたち子供っぽすぎるわ!私にとってはあなたたちの方がよっぽど悪夢だわ!」

 

そう叫ぶとアストレアはハーマイオニーを走って追いかけていった。普段よのギャップ、あまりの勢いにハリーとロンに限らず、周りにいた生徒みんなが、もはやアストレアがいないというのにその場の空気に圧倒されていた。普段おとなしくて、優しくて、汚ない言葉など絶対言わないと思い込んですらいたアストレアにあそこまで言われてしまった。今まで、注意はされていたが、罵声を浴びせられるとは思っていなかった。ハリーは自分がハーマイオニーに何てひどいことを言ってしまったのだろうと自分に失望している。ロンは口をポカンと開けて呆然としている。自分達の勝手な発言で、二人を失ってしまった。とてつもない喪失感だった。ハリーは自分達の幼さを呪っていた。

 

 

 

 

 

 



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ハロウィーン騒動(2)

 

 

 

 

 

その後、ハロウィーンのご馳走を食べに向かう途中、パーバティがラベンダーに話しかけているのをハリーとロンは小耳に挟んだ。ハーマイオニーがトイレで泣いていて、アストレアが慰めているが、トイレから出てくるのをハーマイオニーが拒否しているらしい。ロンはまた少しばつの悪そうな顔をしたが、大広間の豪華なハロウィーンの飾り付けをみると、ハーマイオニーのことなど頭から吹き飛んでいた。

 

しばらく、ハロウィーンの食事を堪能し、ハリーが皮つきポテトを皿によそっていたその時、クィレル先生が全速力で部屋に駆け込んできたかと思うと、ダンブルドア先生のところまでたどり着き、「トロールが…地下室に…お知らせしなくてはと思って」と言うと白目を向いてバッタリと倒れた。それを聞いていた生徒たちは大混乱だ。ダンブルドアがその混乱を沈めると、監督生の指示で、生徒たちは各自の寮へと戻っていく。

 

「いったいどうやってトロールは入ってきたんだろう。」

 

階段を上りながらハリーはロンに聞いた。

 

「僕に聞いたって知らないよ。トロールって、とってもばかなやつらしいよ。もしかしたらハロウィーンの冗談のつもりでピーブズがいれたのかもな。」

 

とロンが答えた。みんながあっちこっちの方向に急いでいた。

 

「ちょっと待って……アストレアとハーマイオニーだ……」

 

「二人がどうかした?」

 

嫌みったらしくロンが聞く。ハーマイオニーもちろんだが、厳しく叱られてロンは愚かにも拗ねてしまったのだ。

 

「トロールのことしらないよ。いくらアストレアが強くってもトロール相手に一年生一人で戦えるの?」

 

ロンが唇をかんだ。二人は監督生であるパーシーに気づかれないようにこっそりと列を抜け出し、二人の元へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

その頃アストレアはハーマイオニーを慰めるために、トイレにいた。

 

「ねぇ、ハーマイオニー。二人の言うことを真に受けちゃダメよ。あなたは聡明な魔女のはずよ。」

 

とアストレアが優しくハーマイオニーに言った。

 

「いいえ、二人の言うとおりだわ。私は悪夢みたいな奴なんだわ。強情で、自意識過剰なんだわ。」

 

と泣きながらハーマイオニーが言った。ハーマイオニーはアストレアに慰められるが、かなりの落ち込みっぷりだ。

 

「そんなことないわ。ハーマイオニーはそんなひどい人なんかじゃない。」

 

「いいえ。私はひどい人よ。アストレア、お願いだから一人にして。」

 

力なくハーマイオニーが言った。

 

「だったら変わりましょう。ハーマイオニーなら変わることができるわ。それに、前約束したじゃない。心配なことがあったら何でも聞いてくれるんでしょ?それなのにあなたがこんなに落ち込んでちゃダメじゃない。ほら、元気出して!」

 

励ますようにアストレアが言った。ハーマイオニーが鼻をすする音が聞こえる。

 

「でも、私どうやって変わればいいかわからないわ。友達の作り方なんてもっとわからないわ。」

 

なんとか力を振り絞って、ハーマイオニーが言った。ハーマイオニーの泣いてぐしゃぐしゃになった顔とは対照的に、アストレアは子を見守る母親のように微笑んでいた。

 

「そんなの分かりきってることじゃない。私と一緒に成長するのよ。」

 

「え?」

 

アストレアが言ったことが理解できず、ハーマイオニーが一瞬泣くのをやめて間抜けな声を出した。

 

「だから、私と一緒に考えて、一緒にそれをやるの。それに友達の作り方がわからないなんて、私とは友達じゃなかったの?私たちが自室で仲良くなったときみたいに話しかければいいのよ。」

 

とアストレアが言った。しばらく二人の間に沈黙が流れた。その後、戸が開く音がすると、泣いて顔がぐしゃぐしゃになったハーマイオニーが個室からでてきた。アストレアが「ハーマイオニー!」と言って駆け寄り、ハーマイオニーを抱き締める。ハーマイオニーも「アストレア…ありがとう」と言って抱き締め返した。二人とも満面の笑みだ。

 

「アストレア、私間違ってたわ。たしかにあんな言い方されたら、二人が悪口を言ってきても仕方なかったわ。決めたわ!私きっと変わって見せる!もちろんアストレアと一緒に、ね。」

 

とすっかり泣き止んだハーマイオニーが宣言した。アストレアは「ハーマイオニー!」と言ってまた抱きついた。ハーマイオニーはやれやれといった表情だが、喜んでいるのが見て分かる。

 

「ところで、ハーマイオニー?ここすごく匂うんだけど、まさか流してないとか?」

 

「ちょっと、アストレア。失礼だわ。私、してないわ!」

 

じゃあこの異臭はなんだろうと二人が考えていると、急に辺りが暗くなった。よく見ると大きな人形の影のようだ。誰だろうと思いながら二人がトイレの入り口を見つめていると、突然ヌッと巨大な甲冑を身につけたトロールが現れた。そのトロールはいきなり手に持った派手なハンマーをおもいっきり叩きつけた。刹那、アストレアはハーマイオニーを引っ張って後方に飛ばし、ハンマーを避けた。床にハンマーが直撃し、タイルが砕ける。すると砕けたタイルがアストレアに向かって超速で飛んでいった。アストレアは素早く盾の呪文を展開し、タイルをすべて弾き飛ばした。トロールとは思えない能力に驚きながらも、アストレアは冷静さを忘れていない。ハーマイオニーはすっかり腰が抜けてしまっている。

 

トロールが雄叫びを上げたその時、二人組がトイレに入ってきた。ハリーとロンだ。二人はトイレの壊れた破片などを投げつけ、トロールの気をひいた。するとトロールが今度は二人の方を向いて雄叫びを上げた。そして、おもいっきりハンマーを振り上げる。そのすきにアストレアはハーマイオニーをトイレの外に出して、トロールに向き合った。トロールがハンマーを降り下ろす。ハリーとロンは迫り来る恐怖に目を瞑っている。二人が死んだと思ったその時!アストレアが「エクスパルソ!」と叫んで、トロールごとハンマーを壁まで吹き飛ばした。かなりの勢いで壁に衝突したせいで、トロールの甲冑にはヒビが入っている。

 

「ハリー、ロン!早く外へ!」

 

「う、うん。」

 

アストレアに急かされて、今の状況に戸惑いながらもハリーとロンがトロールが怯んでいるすきにトイレから飛び出た。ハリーもロンもハーマイオニーもすっかり腰を抜かして三人でおしくらまんじゅうみたいに固まっている。

 

トロールが立ち上がり激昂して再び雄叫びを上げた。するとトロールから蒸気が吹き出す。ハリーたちの位置からでも感じ取れるぐらいの熱風だ。自分達よりも近くにいるアストレアは大丈夫だろうか、というハリーたちの心配など無用と言うかのように、冷静なアストレアがカッと両手を広げ、何やら詠唱を始めた。三人は聞いたことすらない言語に戸惑っている。トロールがハンマーを野球のバットのように振りかぶる。アストレアが手を前に回して合掌し、「神のご加護を!邪を払いたまえ!」と叫んだ。すると神々しい光がアストレアから放射され、トロールを包み込んだ。あまりの眩しさに三人は目を瞑っている。すると、ズガァアンという音と共に大きな振動が伝わってきた。恐る恐る目を開けるとそこにはトロールが後ろ向きにぶっ倒れていて、アストレアが笑顔でこちらに歩いてくるのが見えた。どうやらアストレアの勝利のようだ。

 

アストレアが三人に手を差し出す。一人一人なんとか立ち上がった。あまりの恐怖にまだ足がガクガクと震えている。「あはは!みんな大丈夫?」とアストレアが微笑んでいった。三人はあの化け物を倒して呑気に笑っているなんて、アストレアはどれだけ強いんだろうと不思議に思った。

 

 

 

 

 

 

 




はい。今回はここまでです!

ついにアストレアの力の片鱗が少し見れましたね。アストレアの能力やトロールが強化されていることについては物語が進むにつれて分かると思います。

あと、少し投稿間隔が空いてしまったんですが、実は私、風邪をひいてしまいまして、少し休んでいました(笑。皆さんも風邪のは気をつけてください。

初感想いただきました!本当にありがとうございます!嬉しすぎてテンション高いです。指摘いただいた誤字も訂正いたしました!他にもお気に入り、感想、誤字・脱字訂正などよろしくお願いします!

では今回はここまで。また次回お会いしましょう。


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仲直り

「これ、死んだの?」

 

やっとハーマイオニーが口を開く。

 

「いいえ、気絶してるだけよ。」

 

とアストレアが答える。

 

「一体どんな魔法を使ったの?」

 

「そうだよ。君があんなに強いなんて思わなかった。どうやったんだい?」

 

アストレアはハリーとロンに質問攻めされて少し困っている。それを見たハーマイオニーが「話は落ち着いて寮に戻ってからにしましょう。」と言って、みんな黙った。早くここを立ち去ろうとした時、何人かの走ってくる足音が聞こえてきた。マクゴナガル、スネイプ、クィレルだ。

 

クィレルはトロールを一目見たとたんヒーヒーと弱々しい声をあげ、胸を押さえてトイレに座り込んでしまった。スネイプはトロールを覗きこんだ。マクゴナガルは四人を見据えた。みんなはこんなに怒った顔の先生を見たことがなかった。

 

「いったい全体あなた方はどういうつもりなんですか」

 

マクゴナガル先生の声は冷静だが怒りに満ちていた。

 

「殺されなかったのは運が良かった。寮にいるべきあなたたちがどうしてここにいるんですか?」

 

スネイプはハリーに素早く、鋭い視線を投げ掛けた。その時暗がりから小さな声がした。

 

「マクゴナガル先生、聞いてください。二人とも私を探しに来たんです。」

 

「ミス・グレンジャー!」

 

「私がトロールを探しに来たんです。私……私一人でやっつけられると思いました、、あの、本で読んだトロールについてはいろいろなことを知ってたので」

 

アストレアが「ハ、ハーマイオニー?」と小さく言うが、ハーマイオニーが制するように見つめてきたので、もう何も言わなかった。ハリーとロンはハーマイオニーのまさかの発言に驚いている。あのハーマイオニーが真っ赤な嘘をついている。

 

「もしみんなが私を見つけてくれなかったら、私、今頃死んでました。アストレアが守ってくれなかったら、ハリーとロンも巻き添えになっていたかもしれません…」

 

アストレアとハリーとロンも、その通りですという顔を装った。

 

「なんだか疑問は残りましたが、そういうことですか。」

 

マクゴナガルは四人をじっと見つめた。そしてハーマイオニーに向き合う。

 

「ミス・グレンジャー、なんと愚かしいことを。たった一人で野生のトロールを捕まえようなんて、そんなことをどうして考えたのですか?よりにもよって明らかに人の手で強化されたトロールを。」

 

ハーマイオニーは項垂れた。アストレアはハーマイオニーの勇気に感心している。早速ハーマイオニーは変わろうとしているのだ。ハリーとロンはだんだんハーマイオニーがかわいそうに思えてきた。ひどいことを散々言って傷つけた相手が自分達を守ろうとしている。これが二人の心に強く響いたのだ。

 

「ミス・グレンジャー、グリフィンドールから五点減点です。あなたには失望しました。怪我がないならグリフィンドール塔に帰った方がよいでしょう。生徒たちが、さっき中断したパーティーの続きを寮でやっています。」

 

マクゴナガルは今度はアストレアとハリーとロンに向き合った。

 

「先ほども言いましたが、あなたたちは運が良かった。でも大人の野生トロールと対決できる一年生はそうざらにいません。一人五点ずつあげましょう。ダンブルドア先生に報告しておきます。帰ってよろしい。」

 

四人はパーティーをやっているグリフィンドール寮まで無言で帰っていった。その間ハリーとロンはハーマイオニーへの今までの対応を申し訳無く思うとともに、全く活躍していないのに点数がもらえて嬉しかった。

 

その後四人はトロールのことなどすっかり忘れて、パーティーを楽しんだ。

 

しばらくみんなが楽しんで夜がふけた。パーティーが終わるとみんな自室に引き上げていった。その頃、談話室には、アストレア、ハリー、ハーマイオニー、ロンの四人しかいなかった。しばらくの沈黙のあと、ハリーがようやく口を開いた。

 

「ハーマイオニー、そのごめん。それとありがとう。」

 

「うん。僕ら間違ってた。女の子を泣かせたなんて知れたら、ママに殺されちゃうかも。」

 

とハリーとロンが恥ずかしそうに言った。ハーマイオニーは微笑んで答える。

 

「いいわ。もう過ぎたことよ。それに私たちもう友達でしょ?」

 

ハーマイオニーの言葉にアストレアが反応する。キラキラと笑顔を輝かせている。ハリーとロンも愉快そうに笑い、四人は握手しあって友情をたしかめた。

 

「僕らが仲良くなれたところでアストレアに質問なんだけど、君はどれくらい強いの?それにさっきの呪文はなんだい?」

 

とロンが聞いた。ハリーとハーマイオニーも興味津々といった感じだ。特に教えない理由がないのでアストレアは質問に答えることにした。

 

「まず、一つめの質問だけど、まぁホグワーツで習うレベルの魔法は既に熟知してる、としか言いようがないわね。」

 

とアストレアが言葉を選びながら答える。ハリーとハーマイオニーとロンは友達がそこまで優秀だったことに驚いている。

 

「二つ目だけれども、あれは創作魔法。母の手記に残されていた呪文よ。ただ、あの呪文は私にしか使えない特殊なものらしいわ。」

 

「なんて素晴らしいの!?あなたって最高!」

 

「おったまげー。君がすごいのは知ってたけどここまでとは知らなかったよ。」

 

ハーマイオニーとロンが褒めてくれるので、アストレアはすっかり照れてしまっている。ハリーは話の内容が理解できず呆然としている。ハーマイオニーがロンとハリーを引っ張って、こそこそ話をしだした。なんだか仲間はずれのようで少し悲しくなったアストレアであった。

 

「ねえ、アストレア。一つお願いがあるのだけど。」

 

「なあに?ハーマイオニー。ハーマイオニーのいうことなら何でも聞いてあげる。」

 

ハーマイオニーだけでなく、ハリーとロンまでもが大きくすうっと息を吸った。

 

「「「私達(僕たち)を鍛えてください!!」」」

 

と叫んだ。声が大きかったので、監督生が降りてきて怒られないかなとひやひやしながらもアストレアは「もちろん。大歓迎よ。ただし、容赦はしないハードスケジュールよ!」と三人の訓練を了承した。ハーマイオニーはハードスケジュールという言葉に目をキラキラ輝かせていたが、ハリーとロンは「ゲエッ」っと声を漏らした。アストレアが「じゃあ私からもお願い。私のこと愛称のリアって呼んで。」と言うと、三人は「うん、リア、よろしく!」と了承した。こうして四人は仲直りし、再び友達となった。そして、三人の地獄の強化合宿(仮)が始まった。



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アストレア師匠

 

 

そして次の日の放課後、早速アストレアの訓練が始まっていた。アストレアに「こっそり練習できる場所に行きましょう。」と言われて、歩くアストレアの後ろをハリーとハーマイオニーとロンは追いかけていった。すると、アストレアが何にもない壁に向き合って立ち止まった。

 

「リア?ここなの?」

 

「ここだと丸見えのバレバレだぜ?」

 

「いいえ、まだ早いわ。ここからが面白いところよ。」

 

とアストレアはハーマイオニーとロンの質問に答えると、辺りをぐるぐると回り始めた。ハリーは今までの喧嘩云々のストレスで狂っちゃったのかなと思った。そんな失礼なことを考えながらアストレアを見ていると、突然壁に扉が浮かび上がってきた。ハリーはハーマイオニーをチラッと見るが、ハーマイオニーもこれは知らなかったのか、驚いている。

 

「ようこそ、ここは必要の部屋よ。」

 

「もしくはあったりなかったり部屋ね。」とアストレアはウィンクしながら扉に入っていった。ハリーとハーマイオニーとロンの三人もアストレアに倣って扉から中に入っていった。

 

なかはどんなだろうとドキドキしながら入っていったハリー達が見たのは変な部屋だった。ジムのように筋トレ用の器具が揃えられている場所もあれば、甲冑を身につけた大きなマネキンのようなものが並んでいる場所もあった。

 

「甲冑は的にするってことだって分かるけど、筋トレ器具なんて何に使うんだい?」

 

「え?もちろんそのまま筋トレ用に使うんじゃない。」

 

何を当然なことをといった表情でアストレアがハリーの質問に答えた。

 

「え?聞き間違えかな、筋トレに使うの?」

 

「ええ。そうよ」

 

ロンが聞き返すが、またしてもアストレアに何が変なの?といった表情で返される。

 

「で、でもリア。魔法使いに筋肉なんて必要あるかしら。」

 

ハーマイオニーもアストレアの発言に疑問を抱き、質問する。ハリーとロンも同じ気持ちのようでウンウンと頷いている。

 

「ええ、もちろん必要よ。肉体を鍛えておけば、鍛えていない相手にはアドバンテージがとれるし、杖を奪われても油断していれば相手を余裕で倒せるわ。大抵の魔法使いが鍛えないからこそこの技能が生きるのよ。それに反射神経や運動神経を鍛えることは、上級者同士の戦いでは重要になってくるわ。だから強くなりたいのなら筋トレは必須だわ。」

 

とアストレアが熱心に語る。三人は、なんだかすごく納得できるなと思った。ハリーはアストレアの言葉を聞いて、気合いを入れ直した。

 

「まあ最初のうちは筋トレはしなくていいわ。まずは基本から固めていきましょう。はい、これがとりあえずのカリキュラムよ。」

 

そう言ってアストレアが三人に紙を渡した。

 

そこには

 

カリキュラム1

 

基本中の基本の呪文を学ぶ。戦闘において必須といえる呪文や、遊び心のある優しい呪文などを中心に練習する。コンセプトは呪文に慣れる。

 

習得呪文一覧

 

エクスペリアームス アロホモーラ ウィンガーディアムレヴィオーサ オーキデウス グリセオ タレントアレグラ テルジオ フリペンド リクタスセンプラ ルーモス ノックス

 

 

カリキュラム2

 

少し実践的な呪文を練習する。このカリキュラムからは筋トレと軽めの決闘を実施する。コンセプトは堅実な戦いかたを学ぶ。

 

習得呪文一覧

 

アグアメンティ インカーセラス インセンディオ インパービアス インペディメンタ エイビス オパグノ シレンシオ ステューピファイ ディフィンド フルガーリ

目眩まし呪文

 

カリキュラム3

 

高レベルの戦闘では必要不可欠な呪文を習得する。このカリキュラムから格闘技を学び始める。決闘もより本格的なものにする。このカリキュラムの呪文は今までのカリキュラムの呪文よりも数段難しくなっている。コンセプトは挫折を乗り越え、精神を鍛えろ。

 

習得呪文一覧

 

アクシオ エクスパルソ エクスペクト・パトローナム エピスキー オブリビエイト コンファンド サルビオ・ヘクシア スペシアリス・レベリオ セクタムセンプラ フィニート・インカンターテム プロテゴ プロテゴ・トタラム レジリメンス 姿現しまたは姿眩まし

 

カリキュラム4

 

高難度レベルの呪文を取り扱う。このカリキュラムから、アストレアが決闘に参加する。コンセプトは基礎を完成させ、極める。

 

習得呪文一覧

 

プライオア・インカンタート プロテゴ・マキシマ プロテゴ・ホリビリス 悪霊の火 インペリオ クルーシオ アバダケダブラ

 

カリキュラム5

 

魔法研究。呪文を研究し、創作していく。コンセプトは呪文を極める。

 

 

 

 

ハーマイオニーはこれからの練習を楽しみにして目をキラキラさせている。ハリーとロンは覚える呪文の多さによって、グロッキーになった。

 

「私はカリキュラム1の呪文はすべて使えるからカリキュラム2からでもいいかしら?」

 

「ええ、もちろんよ。」

 

ハーマイオニーが自信ありげにそう言うとアストレアが笑顔で肯定した。

 

「それと少し疑問なんだけれど、闇の魔術や禁じられた呪文まで使うの?」

 

ハーマイオニーがちょっと恐ろしそうに言った。ロンも最後の欄のインペリオを見て、恐ろしくなった。ハリーはよくわかっていないが、闇の魔術と聞いて良いかおはしていない。

 

「ええ。なぜ、学ぶ必要があるかというと、実際に使いこなせるようになった呪文の方が私達からしても対処しやすいでしょ?だから、人に対して使わなくても、使えるようにはしておいた方がいいわ。」

 

ハリーとハーマイオニーとロンは相変わらずアストレアは説得力があるなと思った。それに疑問も解消したのでよりいっそう練習を頑張ろうと思えた。

 

 

その後三人はみっちりしごかれた。

 

 

 

 

 

 




はい。今回はここまで。

ハリー、ハーマイオニー、ロンの三人はアストレアに師事してもらうことになりました。テンプレ展開で申し訳ありません(笑

闇の魔術や禁じられた呪文は少し悩みましたが、結局やらせることにしました。まぁこじつけの理屈でどうにかしましたが(笑

UAが2300突破しました‼お気に入りも16件!皆さんありがとうございます‼是非お気に入りや感想をお願いします!

それでは、また次回お会いしましょう。


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忍び寄る風

十一月に入ると、とても寒くなった。学校を囲む山々は灰色に凍りつき、湖は冷たい鋼のように張りつめていた。

 

そんななかハリーは期待と不安が入り交じった気持ちだった。なぜなら、ついにクィディッチシーズンに突入したからだ。土曜日はハリーの初試合である。

 

アストレアは練習の度に見に来てくれるし、毎日のように応援してくれる。ハーマイオニーは忙しいハリーに勉強を教えてくれる。そのおかげで宿題が楽になった。ロンはハリーが上手くいったときに自分のことのように激しく喜んでくれる。ドラコもスリザリンでありながら、皆の目を盗んでこそこそ応援しに来てくれている。いい仲間を持つことができて、ハリーは前向きな気持ちになることができた。

 

ハリーのデビュー戦の前日のこと、五人は休み時間に凍りつくような中庭に出ていた。ハーマイオニーは魔法で鮮やかなブルーの火をだしてくれた。背中を丸めて暖まっていると、スネイプがやってきた。片足を引きずっていることにハリーはすぐ気づいた。すると、スネイプが近づいてきた。

 

「ポッター、そこに持っているのはなにかね?」

 

ハリーは「クィディッチ今昔」を差し出した。

 

「図書館の本は校外に持ち出してはならん。よこしなさい。グリフィンドール5点減点。」

 

五人全員があんまりだといった表情だ。ハリーとロンに関しては憤慨の表情が隠しきれない。

 

「ドラコ。君はいつまでこのような輩と付き合っているのかね?」

 

「い、その…」

 

スネイプの剣幕にドラコはたじろいだ。ドラコはさほど本命ではないのか、フンと鼻を鳴らし、今度はアストレアに話かけ出した。

 

「それと、ミス・ブラック。話があるので我輩の部屋まですぐに来るように。」

 

アストレアが返事をするのを確認すると、スネイプは本を持ってそそくさと帰っていった。

 

「私、何か悪いことしたかしら?まぁとりあえず、行ってくるわ。」

 

とアストレアが言うと、ハリーとハーマイオニーとロンが心配そうにアストレアを見つめる。大丈夫よ、とアストレアがウィンクすると、ドラコも頷いた。そのままアストレアは駆け足でスネイプの部屋向かっていった。

 

「失礼します。アストレアです。」

 

コンコンと扉をノックし、中にいるであろうスネイプに対してアストレアが声をかける。すると、「入れ。」とスネイプが一言だけ言った。どうやら何か作業をしていたのか、ものがかなり散らかっている。薄暗い部屋も相まって不気味だった。「ここは廃れた精神病院かなにかか!」とアストレアはつっこみたくなった。

 

「それで、何のご用件でしょうか。」

 

「一つ忠告がある。」

 

アストレアは何だろうと思いながら、忠告という言葉に、真剣に話を聞くことにした。実を言うとアストレアは幼少期に何度かスネイプと会っている。ドラコの父親とスネイプは仲が良いらしく、会う機会があったのだ。アストレアはその実力を見せ、スネイプに師事するように何度も頼み、ついにスネイプが折れて稽古をつけてくれるようになったのだ。今のアストレアが強いのはこの人のおかげなのだ。

 

「クィレルには気を付けろ。今年は荒れるぞ。」

 

「なぜ、クィレル先生なのですか?たしかにあの人からは邪悪な気配がしますが、何の関係が?」

 

「ふん。仮にも我輩の弟子ならば、それぐらいのことは自分で考えろ。とにかく、やつに近づけば死の危険があるとだけいっておこう。まぁあの強化されたトロールを余裕で倒す君が、簡単にやられることはないと思うが。さて、話はこれで終わりだ。談話室にでも戻りたまえ。」

 

そう言うとスネイプは自分の作業に戻った。アストレアは失礼しました。と言ってドアを静かに閉めて、立ち去った。「さてクィレルに気を付けろとはどういうことか」と考えながら。

 

その夜、グリフィンドールの談話室でアストレアとハーマイオニーとロンが話していると、ハリーが談話室に入ってきた。どうやら、本を返してもらいにスネイプ先生の部屋に行ったそうだが、「うせろ、ポッター!」と怒鳴り付けられて収穫なしに戻ってきたようだ。

 

「アイツ本当にヤバかった。あと、いまいましいやつだ。三つの頭に同時に注意するなんてできるか?とかなんとかいってたんだ。今日、足を怪我してたの見たろ?スネイプは絶対何か盗もうとしてるんだ。箒をかけてもいい。」

 

「いいえ、スネイプ先生は私にクィレル先生に気を付けろと言ってきたわ。スネイプ先生は信用できる人よ。あの人がそう言うならクィレル先生に近づかない方がいいわ。」

 

「そんなの、アストレアを騙そうとしてるだけだよ。スネイプの言うことなんか信じちゃダメだ‼」

 

ハリーがスネイプを責めるので、アストレアが擁護するが、ロンに反対された。ハーマイオニーにも「今回ばかりは二人に賛成よ。スネイプ先生ったら怪しすぎるわ。クィレル先生はちょっとビビりなだけじゃない。」と言われてアストレアは黙った。アストレアはその夜、ずっとその事について悩んでいた。何がここで守られていて、誰がそれを狙っているのか。



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はじめてのクィディッチ(1)

夜が明けて、晴れ渡った寒いあさがきた。大広間はこんがり焼けたソーセージの美味しそうな匂いと、クィディッチの好試合を期待するウキウキしざわめきで満たされていた。

 

「朝食、しっかり食べないと。」

 

「トーストをちょっとだけでも」

 

アストレアとハーマイオニーが優しく言った。

 

「お腹空いてないんだよ。」

 

ハリーは本番当日の緊張感に呑まれてすっかりグロッキーになっていた。アストレアとハーマイオニーが元気づけてくれるが、今回ばかりはさすがに何とかなりそうもない。

 

十一時には学校中がクィディッチ競技場につめかけていた。双眼鏡もっている生徒がたくさんいる。アストレアとハーマイオニーとロンは、アストレアの拡大モニター呪文という、メガネのレンズをばかでかくしたみたいな膜を張る呪文のおかげで、楽々試合を観戦できそうだった。周りにいる生徒たちも興味津々で、膜を覗き込んだり、触ったりしていた。デパートにあるテレビみたいに人があまりにも密集してしまったので、アストレアは苦笑いしていた。

 

そんなことをしていると、ついにクィディッチの試合が始まった。今日の試合はグリフィンドール対スリザリン。普段から険悪な寮同士のぶつかり合いだけあって、大注目の試合だ。ハリーがシーカーとして、初出場するというのにも皆注目していた。それを知ったハリーが余計グロッキーになったのはまた別のお話。

 

試合が始まると、十五本の箒が空へ舞い上がる。グリフィンドールのマイケル・ジョーダンの解説が聞こえてくる。私事を交えながら実況しているので、ちょくちょくマクゴナガル先生に怒鳴られている。それでもめげずに同じ事を繰り返す辺り悪がきだなと皆思った。もっとも、ジョーダンがロンの双子の兄、略してフレッジョの親友と聞いたとき、アストレアは納得した。

 

グリフィンドールのアンジェリーナ・ジョンソンが点を入れて、先取点となった。これで早速10ー0だ。先取点というのは相手に大きなプレッシャーを与えられるのでとても大きいものだ。グリフィンドール席で生徒たちの雄叫びが響く。ふだん、おとなしい人ですら、拳を振り上げて叫んでいる。誰かが、あのマクゴナガル先生も興奮すると、そうなると言っていたのを聞いて、アストレアはびっくりしていた。アストレアとハーマイオニーとロンはハリーの活躍をよりいっそう期待した。

 

「ちょいと詰めてくれや。」

 

「ハグリッド!」

 

ハグリッドが来たので、アストレアとロンとハーマイオニーはギュッと詰めて、ハグリッドが一緒に座れるように場所を広く開けた。アストレアの呪文で人が集まっていたので少し大変だったが何とかなった。ハグリッドがアストレアの呪文について聞いてきたので、アストレアは丁寧に説明しながらも、器用にもハリーを応援していた。

 

「俺も小屋からみとったんだが…」

 

首からぶら下げた大きな双眼鏡をポンポン叩きながらハグリッドがいった。

 

「やっぱり観客の中で見るのとはまた違うのでな。スニッチはまだ現れんか、え?」

 

「まだだよ。今のところハリーは何もすることがないよ。」ロンが答えた。

 

「トラブルに巻き込まれんようにしておるんだろうが。それだけでもええ」

 

そんななか、ジョーダンの実況が耳に入ってきた。

 

「さて今度はスリザリンの攻撃です。チェイサーのピュシーはブラッジャーを2つかわし、双子のウィーズリーをかわして、ものすごい勢いでゴ……ちょっと待ってください、あれはスニッチか?」

 

エイドリアン・ピュシーは、左耳をかすめた金色の閃光を振り返るのに気をとられて、クァッフルを落としてしまった。観客席がザワザワとなった。

 

ハリーはスニッチをみた。すぐさまハリーが急降下した。スリザリンのシーカー、テレンス・ヒッグズも見つけた。スニッチを追って二人は追いつ追われつの大接戦だ。

 

ハリーの方がヒッグズより速かった。ハリーは一段とスパートをかけ、スニッチへと手を伸ばした。

 

グヮーン!グリフィンドール席から怒りの声が沸き上がった。マーカス・フリントがわざとハリーの邪魔をしたのだ。ハリーの箒ははじきだされてコースをはずれ、ハリーはかろうじて箒にしがみついた。

 

「反則だ!」

 

グリフィンドール寮生が口々に叫んだ。珍しくアストレアも叫んでいた。フーチ先生はフリントに厳重注意を与え、グリフィンドールにゴール・ポストに向けてのフリーショットを与えた。ゴタゴタしているうちにスニッチはまた見えなくなってしまった。

 



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はじめてのクィディッチ(2)

 

試合が再開し、しばらくするとハリーの箒が不規則に暴れ始めた。グリフィンドール席から心配の声が上がる。ハーマイオニーが「大丈夫かしら」といっているのが聞こえた。スリザリンは盛り上がっていて気づいていない。

 

「一体ハリーは何をしとるんだ。」

 

双眼鏡でハリーを見ていたハグリッドがぶつぶつ言った。

 

「あれがハリーじゃなけりゃ、箒のコントロールを失ったんじゃないかと思うわな……しかし、ハリーに限ってそんなこたぁ……」

 

突然、観客があちこちでいっせいにハリーの方を指差した。箒がぐるぐる回り始めたのだ。ハリーはかろうじて箒にしがみついている。次の瞬間全員が息をのんだ。今やハリーは片手で箒にしがみついている。落ちたら怪我では済まされない。あちこちで女生徒の悲鳴が上がる。

 

「フリントがぶつかったとき、どうかしちゃったのかな?」

 

シェーマスがつぶやいた。

 

「そんなこたぁねえ。強力な闇の魔術以外、箒に悪さはできん。チビどもなんぞ、ニンバス2000にはそんな手出しはできん」

 

ハグリッドはぶるぶる震えていた。その言葉を聞くと、アストレアが膜を先生が並ぶ観客席に向けた。「いきなりどうしたんだ」と不満げに呟く生徒が何人かいたが、アストレアは気にしなかった。ハーマイオニーなるほどとうなずいていた。

 

「見て、スネイプ先生とクィレル先生が呪いをかけてるわ。」

 

「絶対スネイプだよ!あいつしかいない!」

 

ハーマイオニーが言うと、ロンが犯人はスネイプだと断言する。たしかにあの人は怪しいが、そんなことをするような人ではないとアストレアは思った。

 

「いいえ、口の動きを見るに、呪いをかけているのはクィレル先生よ。スネイプ先生はむしろ解呪。ハリーを助けてるわ。」

 

ロンの意見にアストレアが反対する。みんな、え?と思ったが、実力者のアストレアの言葉の説得力の前には反論などなかった。

 

「うーん。よくわからないけどクィレル先生をどうにかすればいいのね。私に任せて。行ってくるわ。アストレアはスネイプ先生を手伝ってあげて。」

 

そう言うとハーマイオニーは人混みの中を急いで駆け抜けていった。こっちはクィディッチ以外のことで盛り上がっていてなんだか不思議な光景だった。アストレアが解呪に協力すると、箒の暴れが多少おさまり、ハリーは何とか両手で箒にしがみついた。

 

少しすると、ハリーの箒が暴れるのを止めた。どうやらハーマイオニーは成功したようだ。クィレル先生のターバンに火がついて、クィレル先生が高い声で「アッーーー!」と叫んでいる。アストレアはハーマイオニーも手荒だなと思い苦笑いした。途中スネイプ先生がこっちを見てきたので、大袈裟に口パクで「ハリーを助けてくれてありがとうございます」と言ってお辞儀をすると、やっぱりお前かという表情でこちらを見た後、素っ気なく視線を外した。スネイプ先生らしいなとアストレアは思った。

 

そしてハリーが完全に復帰すると、あちこちから歓声が上がった。すぐさまハリーは急降下した。観客が見たのは、ハリーが手で口をパチンと押さえたところだった。まるで吐こうとしているかのようだ。四つん這いになって着地した。コホン。何か金色のものがハリーの手のひらに落ちた。

 

「スニッチを取ったぞ‼」

 

頭上高くスニッチを振りかざし、ハリーが叫んだ。アストレアは丁度戻ってきたハーマイオニーとロンとハグリッドと抱き合って喜んだ。

 

こうしてハリーのクィディッチのデビュー戦、晴れ舞台が終わった。




はい。今回はここまで。

いやークィディッチ難しいですね。

最初は何かそれっぽいこと書こうと頑張ったんですけど結局あきらめてほとんど消しました。そのせいで本日二日目書き直しです(笑&泣

原作とは少し違うところがありましたね!でも、この程度の違いはそこまで影響ないので大丈夫です。ここからが大事なんですよ。もうすこしでオリジナル設定の部分に突入するので、お楽しみに!

お気に入り、評価、感想などなど、お待ちしております!

それではまた次回お会いしましょう!


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聖なる日と邪悪な影(1)

クィディッチの試合終了後、アストレア、ハリー、ハーマイオニー、ロンの四人はハグリッドの小屋で、濃い紅茶を入れてもらっていた。

 

ロンがクィレルが呪いをかけた張本人だと説明した。しかし、スネイプも今までに何度も怪しい動きがあったことで疑われた。

 

今度はクィレルもしくはスネイプが盗もうとしているものの話になった。ハグリッドがうっかり口を滑らせ、三頭犬やニコラス・フラメルのことを言ってしまった。すると、ハグリッドは突然おろかな自分に怒りだして、四人を追い出してしまった。

 

そのあと、アストレアが「ニコラス・フラメルと言えば賢者の石かしらね」と言うと、ハリーとロンは真実に近づけて喜んでいた。ハリーとロンはまだスネイプを疑っていたが、結局アストレアのスネイプに対するフォローでとりあえずはクィレルを疑って動くことにした。

 

 

 

 

 

 

それから何日かたったある日のこと。クリスマス休暇がやってきた。アストレアはホグワーツ特急に乗って、ハーマイオニーと一緒にキングス・クロス駅まで行った。そこで待っていたハーマイオニーの両親に挨拶をして、ハーマイオニーにハグをするとアストレアは駅から去っていった。アストレアは駅の外に出るとすぐに駅の陰に行った。すると、パチンという音と共にクリーチャーが姿現しでアストレアを迎えに来た。

 

「あら、クリーチャー。久しぶりね。元気にしてた?」

 

「はい、お嬢様。しばらくお嬢様がいないと寂しいですな。」

 

とクリーチャーが言うと、アストレアが「そう言ってくれて嬉しいよ。ありがとーう!」とクリーチャーに抱きついた。

 

「お嬢様、そろそろ屋敷に戻りますのでしっかり捕まってください。」

 

アストレアが返事をすると二人は付き添い姿眩ましで屋敷へとテレポートしていった。屋敷に戻ると早速クリーチャーが紅茶を用意しだした。アストレアは椅子に座ってくつろいでいる。久々に家でくつろいで、安心している。クリーチャーが紅茶をだし、二人はゆったりと紅茶をのみ始めた。その後、学校での体験やクリーチャーの屋敷事情など、久々の家族の会話を楽しんだ。その日は長旅でくたくただったのでアストレアは話の途中で寝てしまった。クリーチャーは「まだお嬢様も子供ですな。全くの無防備だ。」などと呟きながらも、アストレアをベッドに運んで布団をかけた。

 

そして、数日が経過し、クリスマスの朝がやってきた。アストレアは友人からのプレゼントにわくわくしながら飛び起きた。すると、そこには今まで見たことがない量のプレゼントが重なっていた。アストレアは駆け足でプレゼントの山のもとまで行くと、早速大きな箱から開け始めた。

 

「お嬢様。手伝いましょうか?」

 

「あら、クリーチャー。頼んでもいいかしら?」

 

とアストレアがクリーチャーに頼むと、クリーチャーはすごいスピードで箱を開け始めた。なにやら愛の妙薬が含まれた菓子などもあったようで、クリーチャーはアストレアにそれを知らせると、差出人の名前を読んでアストレアが何か言う前に全部燃やした。差出人の名前はなくとも魔法で差出人を当てるのだから対策しようがない。妖精の魔法はすばらしいなとアストレアは改めて思った。一番最初にアストレアが開けた箱はどうやらハーマイオニーからのもののようだ。

 

「ふふっ。ハーマイオニーだわ。」

 

「たしか、マグル生まれのお友達でしたか。お嬢様に女の子のお友達ができて、私は本当に良かったと思いました。」

 

「そうね。今度の休みに招待してもいいかしら?」

 

「もちろんです。歓迎いたします。」

 

クリーチャーの快い返事を聞くとアストレアは安心して、ハーマイオニーからのプレゼントの確認に戻った。ハーマイオニーのプレゼントはおしゃれな髪どめだった。アストレアは初めての女の子の友達のプレゼントに感動していた。ハーマイオニーの手紙には早くアストレアに会いたい、あの二人が何かやらかさないか心配などということが書かれていた。

 

例の二人、ハリーとロンのプレゼントはそれぞれ蛙チョコレートの箱詰めと魔法使いのチェスとその参考書だった。ロンの手紙には「頭の良い君と勝負してみたい。」と書かれていたのでアストレアはロンと勝負するためにチェスの練習を始めた。

 

ドラコからのプレゼントは高級菓子の詰め合わせと最高級の香水だった。多分ハリーとロンとハーマイオニーも同じような物を受け取っているはずなので、三人ともビックリしちゃうだろうなーとアストレアは思った。かくいうアストレアも高級菓子の詰め合わせと渾身の自作魔法具をプレゼントしたのでなんとも言えないが。

 

「そう言えばクリーチャー、私あなたにもプレゼントがあるの。」

 

そう言うとアストレアは小さなお守りをクリーチャーに渡した。ハリーたちに渡したプレゼントと同じ魔法具だ。

 

「それには守護の呪文がかかっているわ。死の呪文も一度なら防ぐことができるの。だから、それを私だと思って大事にしてね。」

 

「はい、お嬢様。大切にします。実は私もプレゼントがあります。」

 

アストレアのプレゼントに感激しながら、クリーチャーはアストレアにプレゼントを手渡した。

 

「え、これは破魔石じゃない!?」

 

アストレアが驚いた。破魔石は世界に3つしか存在せず、邪悪なる者、悪魔や吸魂鬼を滅ぼすことができる究極の石。(魔法界でこれを知っているのはアストレアとクリーチャーぐらい)

 

「私が聞いた話では、ホグワーツに邪悪なる者が潜んでいるとか…」

 

「なるほど…今年は荒れるわね…」

 

その時屋敷の外では灰色の雲が空中を覆い、鋭く突き刺すような凍てつく風が吹き荒れていた。

 

 

 

 

 

 

 



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聖なる日と邪悪な影(2)

それから数日後、アストレアは再びキングス・クロス駅に行き、ホグワーツ特急に乗ってホグワーツに着いた。途中、ハーマイオニーとドラコに再開し、コンパートメントで会話していた。特急がホグワーツに着くと生徒たちは寒さに耐えかねて我先にと校舎へと急いだ。アストレアたちはアストレアの防寒魔法でちっとも寒くなかった。

 

その後、大広間での食事を済ませ、アストレアとハーマイオニーはハリーとロンに急かされて談話室に入っていった。夜になり、談話室に四人以外誰もいなくなるとハリーが話を切り出した。

 

「聞いてほしいことがある。まず僕、誰からか知らないけどお父さんの透明マントを貰ったんだ。」

 

ハーマイオニーは「透明マント」と聞いて「魔法なら普通じゃないの?」と思い反応が薄かった。アストレアはハリーのお父さんが亡くなってから十年近く経つのに十分利用できるのは不思議だと考え、透明マントをあちこち調べた。

 

「すごい…これきっと死の秘宝のひとつよ。」

 

「死の秘宝だって?」

 

とロンが間抜けな声で言った。ハリーはハーマイオニーをチラッと見たが、ハーマイオニーも知らないようで顔を横に振っている。

 

「うーんとね、死の秘宝は強力な魔法を持った物体で、死によって作られペベレル家の3人兄弟に与えられたそうだよ。秘宝は無敵のニワトコの杖、死者の魂を呼び出す蘇りの石、使用者を見えなくする透明マントの3つ。その内の一つ、透明マントは従来の物と違って効果が永続するらしいわ。そのマントは処置なしで十年以上存在してる。普通なら処置しないといけないし、それでも十年経てば劣化するわ。だからそれは大変貴重なものよ。」

 

アストレアの説明を聞いてハリーは「これからはもっと大切にしよう」と思った。ロンはいつも通り羨ましがっていた。ハーマイオニーはアストレアの物知りに改めて感心していた。

 

「話が反れたけど結局何の話?」

 

「あ、ああそれで透明マントを使って夜にみぞの鏡っていうのを見ていたんだ。そしたら鏡に両親が映ってね…でもその鏡は人間の一番の望みを見せる物だって校長先生が教えてくれたんだ。」

 

「大変だったんだぜ?ダンブルドアが場所を移すって言うまで毎日通ってたんだ。」

 

「みぞのかがみなんかに取りつかれちゃダメよ?」

 

「うん。もう行く気はないし、場所も分からないよ。」

 

アストレアに言われてハリーはすっかり反省している。ハーマイオニーは「結局この人たちは何かしらやらかすのね。」と呆れていた。

 

「まぁその話よりも重要な話があるんだ。スネイプとクィレルのことなんだ。」

 

「それも透明マントで?」

 

「うん。危険なのは分かってる。でも僕はきっとやらなくちゃいけないんだ。」

 

ハーマイオニーが咎めるように言うが、ハリーはハーマイオニーが何か言う前に自分の言いたいことを言い切った。

 

「それで、二人がどうしたの?」

 

アストレアが話を戻すとハリーが話し始めた。

 

「えーと、スネイプがクィレルを脅してたんだ。どちらに忠誠を誓うのか…とか怪しげなまやかしとか…」

 

「絶対スネイプが石を狙ってるんだ‼この前のクィディッチの時もクィレルを脅して、クィレルに罪を被せようとしたんだ‼」

 

とロンが叫ぶ。

 

「そうとは限らないわ。スネイプ先生が犯人ならわざわざ見せびらかすように呪いをかけないわ。」

 

「なんでそう言えるの?」

 

ハリーが反論する。

 

「だって私、スネイプ先生の弟子よ?」

 

「へー…………え?」

 

「「「えーーー!?」」」

 

数分後

 

「うふふ、理解できたかしら?」

 

「う、うん。君がスネイプの弟子だなんてびっくりしたけど。」

 

「まぁたしかに弟子ならスネイプ先生に詳しくても納得行くわ。」

 

「でも、リアには見せてないだけとかは?」

 

「それはないわ。私、そんなズルい人に師事を頼まないわ。」

 

アストレアがはっきり断言する。結局誰も反論しなかった。

 

「それじゃ、やっぱクィレルなのかな?」

 

「うーん。まぁ一番疑うべきなのはクィレル先生ね。あの人から邪気を感じるもの。」

 

「ニンニクの?」

 

「あはは、ロンったら」

 

「「「「あはははは」」」」

 

そのあと、そろそろ眠くなってきたのでお開きにすることにした。これからはクィレルに気をつけて動く方針になった。一応、スネイプにもあまり近づかないことにした。

 

 

 

 

 

 




はい、今回はここまで!

いやーほんと投稿遅れました。待ってくださった方々ほんとにごめんなさい。そしてありがとうございます。

今回はこの物語の大事な部分邪悪なる者の片鱗が見えましたね。この邪悪なる者とかタイトルとか中二病すぎて書くのがすごく恥ずかしかったです(笑。まぁ神話とかそこらへん扱うなら仕方ないと妥協しております。

今回はドラコがとりつかれましたね。邪悪なる者がどんな存在なのかっていうのは後々分かってきます。因みにインセンディオを選んだのは適当です(笑。なんとなく強そうな呪文にしておきました。

スネイプ先生がかっこよく助けてくれましたね。アストレアは皆を守らなければっけない+ドラコを傷つけたくないっていう状況なので上手く立ち回れませんでした。今はまだ経験が浅いのでアストレアさんもそこそこな強さになっております。

お気に入り、感想、評価などお待ちしております。

それではまた次回お会いしましょう!


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聖なる日と邪悪な影(3)

翌日

 

アストレアたちは、今日の授業を終えて人がほとんどいなくなった廊下を歩いて談話室へと向かっていた。ここの廊下は中庭に面している。アストレアたちは中庭で雑談することが多いのでよくこの廊下を通る。いつもは華やかで素敵な中庭が今日は雲ってどんよりとしているせいで不気味だった。四人が廊下を歩いていると、中庭にポツリとたたずむ人影が見えた。

 

「あれ、誰だろう?」

 

「あれ、きっとドラコだ。そういえば、今日は合同授業に出てなかったよな?」

 

「ええ、そうね。」

 

不気味に一人でたたずむドラコを不思議に思い、四人はドラコに近づいていった。ドラコは珍しくボーッとしている。「こんな表情見たことがない」とアストレアは思った。

 

「どうしたの、ドラコ?」

 

アストレアがドラコに声をかけると、不気味な笑みを浮かべて、ドラコが振り返った。四人はゾッとした。ドラコが杖を取り出す。危険を感じたアストレアがプロテゴ・トタラムで皆をおおった。

 

「インセンディオ!燃えよ!」

 

「くっ!…なんて威力なの!?」

 

ドラコが放ったインセンディオはアストレアの盾の表面を焦がし、破壊しようとしていた。あまりの熱気に全員が一瞬で汗だくになった。ドラコが狂ったように笑っている。

 

「一体全体ドラコはどうなっちまったんだ!?」

 

「知らないわよ!!」

 

「ちょっと、ロン、ハーマイオニー、喧嘩してる場合じゃない‼これほんとに死ぬかもしれない!」

 

盾全体にひびが入り、破壊されかけている。もうダメかと思った次の瞬間、横から飛び出してきた紅い光線によってドラコの体が吹き飛ばされ、攻撃が止まった。ドラコを吹き飛ばしたのは全身黒ずくめのコウモリのような男

 

「スネイプ先生!」

 

「ふん…貴様にしては手こずりすぎだな。」

 

「まさかスネイプが自分たちを助けるだなんて!」とハリーとロンが驚いていた。ハーマイオニーも少しだけそう思っていた。そして、これによりアストレアとスネイプの師弟関係を再確認することとなった。

 

「ええ、どうやら邪悪なる者が本当に忍び込んでいたようですね。これ以上ドラコの体を好きにはさせません!神のご加護を!邪を払いたまえ!」

 

神々しい光がドラコの体を包み込む。その瞬間、男の雄叫びが聞こえたかと思うと黒い瘴気のようなものがドラコの体から出ていった。すると、ドラコはすっかり気絶した。アストレアはドラコに駆け寄り、悪いところがないか調べて、一応治癒呪文をかけた。スネイプはアストレアの呪文に感心したのかうなずき、ドラコとアストレアの方へあるっていった。アストレアがスネイプに感謝した。

 

「さて、ドラコは我輩が保健室まで運ぼう。さっさと寮に帰らねば減点とする。」

 

そういってスネイプは足早に立ち去ろうとする。そこをハリーが走って前に飛び出した。

 

「ス、スネイプ先生。」

 

「なにかね?」

 

緊張するハリーに対して、スネイプはものすごく嫌な顔をしている。

 

「その、ありがとうございました!」

 

「………グリフィンドール3点減点…とっとと帰れ…」

 

え?といった表情で突っ立っているハリーを無視してスネイプは去っていった。アストレアが「ほんと、スネイプ先生って正直じゃないなぁ」と言うと無言で失神呪文を飛ばしてきた。

 

一つの不気味な事件を通して、ハリーとロンとハーマイオニーはスネイプのことを思い直した。アストレアは「厄介なのが乱入してきたなぁ」とため息をついていた。

 




ほぼ失踪状態だったんで投稿スタイル変えてみました。

簡単に言えば一話の文字数を少なくすることで、更新頻度を上げました。今までは一話8000文字とかだったんですけど、私は1日で書き上げたい人間なので中々時間がとれないんですよね(汗

そんな言い訳は置いておいてこれからは失踪せずに頑張っていきたいと思います♪

追記

リアルが忙しいので多分一週間くらい空いてから更新します


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ハリー・ポッターと黒の女神(完)

アストレア達は復活した闇の帝王を見事打ち倒し、魔法界、マグル界ともに平穏が守られることとなった。その活躍を讃えられ、彼女らは歴史に大きく名を刻む偉人となった。しかし、そのまま平和な世界が保たれることは無かった。

××が死に際に放った呪いは1000年の時を経てその効果を発揮した。死の呪文を装ったそれは、消耗し切ったアストレアたちの目を見事に欺き切った。死に際まで狡猾に目的を遂行する、それこそが呪いの王である××の真骨頂であった。そして、その呪いは全世界のマグルの記憶に魔法の存在と脅威を刻み込んだのだ。魔法が一般世界に暴かれ、その異常なまでの力を恐れたマグル達は圧倒的な火力と物量で魔法使い達を淘汰していった。

 

さらに時は経ち100年後の未来。魔法使い及び魔法はその存在を完全に消し、誰もが過去の虐殺を忘れ去っていた。当時の記録を残そうとしたものは片っ端から不審な死を遂げ、それは完全に無かった出来事にされた。

 

その後、死んだはずのアストレアは1000年の時を経て覚醒する。アストレアにかけられていた呪いが解けたのだ。××は、アストレアにも恐ろしい呪いをかけていたのだ。それは、初期化の呪い。

 

元々、アストレアは歴代最強と賞賛される女神として生まれ、人類を最悪の未来から救うために自ら人間界に干渉するため、輪廻転生の輪に入り込んだ。神といえど、無条件に干渉することはできず、肉体の初期化を余儀なくされた。それでも、精神や知識は損なわれることはないはずだった。しかし、呪いの神である××は抜かりなかった。その存在を誰にも悟られることなく、最大限の呪いをアストレアにかけた。アストレアの力が強大すぎたために彼女を殺すことは叶わなかったが、それは十分すぎるまでに効果を発揮した。彼にとって闇の帝王は注意を引かせるためのコマに過ぎなかった。

 

人類に絶望した女神アストレアは、その全てを地球上から消し去り滅ぼした。それが果たしてただの個人的な感情によるものだったと言い切れるだろうか。もう後戻りすることのできない人類への救済だったのかもしれない。しかし、誰よりも強く、孤独な彼女の考えは誰も理解し得ないものだろう。

 

そして、見事にその術中にハマり、すべてを失い使命を果たすことができず、人類を最悪な未来から救い出すことができなかった自分自身こそ最も愚かであったと考え、自らも罰し、苦痛の中で息絶えた。

 

××は死んでも目的を遂行したのだ。人類を、神々を最大限に苦しめると言う目的を。

 

Bad End

 




正直テキトウに書きました。1000文字書かなきゃいけないのえぐすぎる。
作品を削除するのは嫌だし(エゴ)、放置するだけなのも嫌なので続きを書く決意が固まるまではこの出鱈目な最終回を置いておくことにします。


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