ゼロの使い魔~ハルケギニア上空、敵機なし!~ (疾風海軍陸戦隊)
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プロローグ

1945年 8月13日

 

時は第2次世界大戦末期、とある上空で激しい戦闘が行われていた。銃弾が飛びかう中、その中に一機の戦闘機がそれとは別の戦闘機を追っていた。追っている戦闘機の機体は「紫電21型」別名「紫電改」。大日本帝国海軍が作った、局地戦闘機だ。そして追われているのはアメリカ海軍主力戦闘機であるグラマン社製「F6Fヘルキャット」だ。

 

「くそっ!逃がすかぁ!」

 

紫電改のパイロットがそう言い、紫電改についている自動空戦フラップを使い、ヘルキャットの内側に潜り込む。そしてその照準器がヘルキャットをとらえた瞬間。パイロットは翼についている20ミリ機関砲の引き金を引く。そして翼からは20ミリ機関砲が火を噴き、20ミリ弾がヘルキャットの胴体にあたり大穴が開きそしてヘルキャットは火を噴きながら落ちていくのだった。

 

「よしっ!また一機、撃墜!!」

 

と、パイロットはそう叫ぶ。そのパイロットの顔はまるで少女のように幼げな顔だがその目は血に飢えた狼のごとく鋭い眼力でギラギラと光っていた。

彼に名は宮藤直哉。海軍少尉で今は20機の撃墜記録を持つ若きエースパイロットだ。

 

『こちら大隊長。宮藤少尉。今どこにいる!これ以上は深追いするな!』

 

無線から、彼の上官らしき人物の声が聞こえる。するとまた別のヘルキャットが襲い掛かってきた。宮藤はそれに気づくと

 

「こちら、宮藤。今、ほかの敵戦闘機と交戦中!!」

 

宮藤と呼ばれたその男は無線で上官にそう報告し無線を切り、また空戦に戻る。相手はヘルキャット。ずんぐりした機体だが格闘戦ができるうえ、しかも頑丈だ。だから油断はできない。そう思い彼は慎重にヘルキャットを落としに行く。20ミリ弾を撃つもヘルキャットはその銃弾をよける。

 

「こいつ。もしかして熟練か!?」

 

宮藤がそう言った次の瞬間。

 

「っ!?」

 

急にヘルキャットが脚を出したのだ。脚を出したヘルキャットは空気抵抗ができ減速し、彼の背後に回る。そして12・7ミリ機銃、6丁という火力を彼の乗る紫電改に叩き込んだ。

 

「ぐわっ!!」

 

敵の銃弾を叩き込まれ激しい衝撃が起きた後、激しい激痛が走る。窓ガラスは割れ、額や足からは血が流れ、翼からは火が噴出し、機体はどんどん降下し始めてきた。

 

「くそっ!」

 

宮藤は必死に紫電改のスロットルを上げようとしたが紫電改はそのまま降下する。

 

「くっ・・・・俺も…ここまでか・・・・」

 

そう言い彼の頭の中に今までの記憶が流れ込んだ。走馬燈っというやつだ。幼いころよく、近くの河原で友達と遊んだころ。15歳の時、父親が海軍軍人のため士官学校に入れられたこと。そして空を飛ぶ零戦を見てパイロットに憧れ航空隊に志願したこと。そして初陣でのガダルカナルの戦い。そして343航空隊の戦闘301飛行隊「新選組」の部隊に配属されたことなど、様々な記憶が流れ出した。そして彼は戦死したかつての仲間や上官である人たちのことが頭に浮かんだ

 

「(・・・・菅野隊長・・・・武藤さん・・・・杉田さん・・・・佐々木・・・もうすぐ・・・あなた達に会えますね・・・)」

 

そう思い、彼は自分の最後を覚悟した。すると目の前に大きな鏡が突如現れた。

 

「な、なんだっ!?」

 

彼は驚くが彼の乗る機体はそのままその鏡に吸い込まれるのであった。その間、宮藤はある不思議な光景を見た。その光景は真っ白な空間の通路でその両横には無数の扉がありその真ん中にはデスクワークをしている眼鏡をかけた男が居た。そして自分の乗る紫電改はその男の前で止まっていた。しかも浮いて。そしてその男の机には一枚の書類らしきものがあった。そこには

 

1945年8月13日 宮藤直哉 大日本帝国海軍少尉

 

と書かれていた。

 

「(な、なんだ・・・・・?)」

 

宮藤は訳が分かんないっという顔をするとその男と目が合う。そして・・・・

 

「…次」

 

その男がそう言うと、その書類に何か書いた。すると今まで浮いていた紫電改が急に動き出し墜落時に見えたあの鏡みたいな門へまた吸い込まれる。

 

「なっ!?」

 

宮藤が驚く中、紫電改はその鏡に吸い込まれるのであった。そして一人残された眼鏡の男は腕時計を見て

 

「・・・・次」

 

というとまた一機の紫電改が現れるのであった。

 

「あ”ぁ!!なんだここはバカヤロ!!」

 

 

 

 

 

 

場所は変わってここはハルケギニアにあるトリスティン魔法学院。そこの庭には多くの生徒がいた。今日の授業は『使い魔召喚の儀式』。自分の使い魔を召喚するという儀式でこれができないと進級した生徒がやる重要な儀式でもある。

 

「みなさん今日は使い魔召喚の儀式です。これは二年生に進級した君たちの最初の試験でもあり、貴族として一生を共にする使い魔との神聖な出会いの儀式でもあります」

 

と、先生らしき眼鏡をかけた男の人が生徒たちに説明をする。その生徒の中少し小柄で桃色の髪をした少女が緊張していた。すると

 

「楽しみだわ~あなたがどんなすごい使い魔を出すのか」

 

「ほっといて」

 

と、赤毛で少し大人びた生徒が皮肉を込めてその少女に言う。すると

 

「ルイズ。大丈夫よあなたならきっといい使い魔を召喚できるから」

 

っと、銀と紫が混じったようなポニーテイルの少女がルイズと呼ばれた少女をフォローする

 

「ありがとナオ。」

 

ルイズはナオと呼ばれた少女に礼を言う。その後、召喚の儀式が始まり。ほかの生徒は目玉が大きいコウモリや巨大なモグラ、ドラゴンやサラマンダーなどいろんな生物を召喚していた。

 

「これで全員ですかな?」

 

と、先生はそう言うと赤毛の生徒が

 

「いいえ、まだ。ミスヴァリエールとミスユミエールがまだで~す」

 

と、先生にそう言う。するとみんなくすくすと笑い始める。

 

「わかりました。では最初にミスヴァリエール。」

 

「はい!」

 

ルイズは先生に呼ばれ前に出る。すると

 

「ゼロのルイズかよ・・・・」

 

「何を呼びだすんだろ?」

 

「呼び出せるはずないわよ。ナオならともかくゼロのルイズじゃ爆発するだけで終わりよ・・・」

 

とひそひそ声でルイズを馬鹿にする。するとルイズは杖を振り上げ

 

「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに、応えなさい!!」

 

そう言い、ルイズは杖を振り下ろす。しかし何も起こらない・・・

 

「ふっ・・・やっぱり駄目ね」

 

「あはは!ゼロのルイズは使い魔も呼べないみたいだな!」

 

と、ナオや先生を除いてみんなが笑いだす。ルイズはそれを見て悔しそうにうなだれる

 

「(なんで…なんで私はみんなのようにできないの?)」

 

そう思った瞬間。

 

「ミスヴァリエール。あきらめてはいけません。もう一度やってみなさい」

 

先生が彼女に近寄り優しくそう言う

 

「ミスターコルベール・・・・・わかりました!」

 

コルベール先生の言葉にルイズは頷きもう一度チャレンジした。

 

「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに、応えなさい!!」

 

ドゴォォォォン

 

もう一度唱えた瞬間派手な爆発を起こした。

 

周りの生徒は、「また失敗か」などと呟いていたが、爆煙が晴れてくると、煙の中に何かがいるのが分かった。

 

「(やったわ!成功よ!一体何が・・・・って、え?)」

 

ルイズが嬉しそうに感じたのはこの一瞬だけであった。煙が完全に晴れると、そこにいたのは一人の黒髪の少年であった。ルイズはその少年を引きつった顔で見る。

 

「おい。あれって人間か?」

 

「しかもあの服から見て平民よね?」

 

と生徒たちがひそひそ声で話す中ルイズは少年に近づき

 

「・・・・アンタ誰?」

 

と、少年に問いかける。その少年は訳が分からないといった表情で、周りを見ている。

 

「誰って・・・・平賀 才人」

 

ルイズの問いかけに、その少年、平賀才人は混乱しながらも答える。

 

「何処の平民?」

 

「へ、平民?なんだよそれは?」

 

才人にはルイズの言葉の意味が判らなかった。才人は何でこうなったか、数分前を思い出してみる。

 

「(え~と、確か修理に出したパソコンが直ったから、それを取りに行ったんだ。で、その帰りに道の上に光る鏡のようなものがあったんだよな。それで興味が沸いて、鍵を突っ込んだりとかしてみたけど何も起こらなかったんだよ。それで、その鏡に手を入れたらいきなり中に引き込まれて、気付いたらここにいたと・・・)」

 

才人は、もう一度辺りを見回す。周りには、目の前のルイズと同じように、黒のマントをつけて杖を持った少年少女たちが、たくさんいて、才人を物珍しそうに見ていた。

 

「あははっ!おいルイズ。それがお前の 神聖で美しく、そして強力な使い魔か?ただの平民じゃないかよ!」

 

「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」

 

ルイズが怒鳴る。

 

「間違いって、ルイズはいっつもそうじゃん」

 

「流石はゼロのルイズだ!」

 

と彼女を馬鹿にし笑う生徒たち。

 

「ミ、ミスターコルベール!」

 

「なんだね?」

 

「あ、あのもう一度召喚させてください!」

 

ルイズは先生に言うが

 

「それはできない」

 

「え!?なんでですか!?」

 

「この儀式はメイジとして一生を決める神聖なものやり直すなど儀式に対する冒とくですぞ。君が好むと好まざるに関わらず、彼を使い魔にするしかない。彼は君に使い魔に決まったのです」

 

と、先生が言うがルイズは納得できないのか

 

「でも!平民を使い魔にするなんて、聞いたことがありません!」

 

「平民であろうとなかろうと例外は認められません。儀式を続けなさい」

 

と、先生に言われルイズはしぶしぶその少年、平賀才人を使い魔にすることに決めるのだった。そしてルイズはその少年に近づき

 

「感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから!」

 

そう言い、わけがわからんという顔をした才人を無視し

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 

と、そう言い彼女は才人と口づけをしたのだった。

 

「な、何するんだ!・・・ぐっ!」

 

いきなり口づけをさされ才人は動揺し彼女にそう言うと急に手の方に激痛が走る。

 

「か、体がっ!あ、熱い!」

 

「すぐ終わるわよ!『使い魔のルーン』が刻まれているだけだから、すぐ済むわよ!」

 

才人の悲鳴にルイズが苛立たしそうな声で言った。才人にとってルイズの言っていることは訳が分からない。痛みが治まると左手の甲に何かの文字が刻まれていた。すると彼女らの教師であるコルベールがその文字を見る。

 

「ふむ・・・・・珍しいルーンだな」

 

「な、何なんだよアンタら!?」

 

才人は怒鳴る。

 

「ああ、すまないね。まだ、あと一人いるんだ。詳しいことは、ミス・ヴァリエールに聞いてくれたまえ。では、ミス・ユミエール!」

 

「はい!」

 

コルベールがナオの名を呼ぶと、ナオは返事をし先生の前に出る

 

「な、なあ・・・・」

 

「何よ。平民」

 

と、才人がルイズに話しかけるとルイズは不機嫌そうに言う

 

「あの子。一体何してるんだ魔法の杖みたいなの持ってるけど?」

 

と、才人はルイズにそう言うと

 

「はぁ?だから使い魔の召喚よ。さっきから言ってるじゃない。いいからこれからナオがやるから見てなさい!」

 

「ナオ?」

 

「ナオ・フェメール・ド・ユミエール。私の従姉よ。勉強もできる優等生だけどそんなことは鼻に掛けないでほかの奴らとは違って魔法ができない私を馬鹿にしない優しい子よ」

 

「ふ~ん・・・・」

 

そう言いルイズに才人はナオがいる方を見るのだった。するとナオは杖をあげて

 

「我が名はナオ・フェメール・ド・ユミエール。五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ!」

 

彼女がそう言い杖を振り下ろす。しかしさっきのルイズ同様何も起きなかった。

 

「何も起きない?」

 

「どういうことだ?あのユリエールが失敗?」

 

「まさか。ゼロのルイズじゃないんだぜ?」

 

と、生徒たちはそう話し合う

 

「珍しいわね・・・・・ルイズならともかくあのナオが失敗するなんて・・・・・ん?どうしたのタバサ?」

 

赤毛の女はすぐ隣にいた短い青い髪をした少女に訊くが

 

「・・・・・・上」

 

と、上を見上げてそう言うタバサと呼ばれた少女。

 

「上?」

 

と、赤毛の女が上を見上げるとはるか上の空に、光る鏡のような召喚のゲートが現れた。それを見た生徒たちは

 

「な、なんだ・・・上か・・・」

 

と、ほっとしたような声を出す。するとその光の鏡の中から何かのうめき声のような轟音が響いていく

 

「・・・・来る」

 

ナオがそう言った瞬間。そのゲートから赤い丸の国籍マークをした暗緑色の物体が激しい轟音と共に飛び出てきたのだった。

 

「(あ、あれが・・・・私の使い魔・・・)」

 

ナオはその飛行物を見てそう呟くのであった。

 

「な、なにあれ!?ドラゴンか!?」

 

「いや、あんなドラゴン見たことないぞ!?」

 

「すごい声だっ!?」

 

と、生徒たちは見たこともない空飛ぶものに騒ぎ出す。しかしその中、才人は目を丸くしてその空を飛ぶ物体を見る。彼はそれのことを知っている。昔、自分の祖父が写真で見せてくれたものだ

 

「あ、あれは・・・・紫電改!」

 

そして、その物体の名を大声で叫ぶのだった。そしてその紫電改の中では

 

「いてて・・・・・なんだっ!?なぁーにが起きやがった!!」

 

一人のパイロット宮藤直哉が額から血を流しそう言うのだった・・・・

 

 

 



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私の使い魔はパイロット

ナオたちはこの世界では見たこともないものである飛行機「紫電改」を驚いて見上げている中、その紫電改の中では

 

「いてて…いったい何が起きやがったっ!?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

っと、紫電改のパイロットである直哉はそう叫んだ。すると紫電改のエンジン音が止まり、プロペラも回転が止まり始め急降下し始めた。

 

「や、やばい!このままだと落ちる!ま、まだ堕ちないでくれ!」

 

そう言い、直哉は操縦桿とをめいいっぱい持ち上げる

 

「頼む…俺はまだ落ちるわけにはいかないんだっ!!」

 

直哉がそう言うと、今まで止まっていた紫電改のエンジンが動き出しその下で見上げていた生徒たちの頭の上スレスレに持ち直した。そして直哉は改めて眼下を見渡すとそこには見慣れない大地が広がっていた

 

「おいおいおい・・・・なんだここは?俺は九州沖にいたはずだぞ。ここはどこなんだ?」

 

確か自分は九州沖で戦ってたはずだ。しかし彼の目の前にあったのは見渡す限りの広い大地のど真ん中に五稜郭みたいな大きな建物があった。

 

「な、なんなんだありゃ?あんなの九州にあったか?ていうか本当にここはどこなんだよ!?」

 

直哉がそう不思議に思っていると。再びエンジンが止まり始める直哉が燃料計を見るともうほとんどなくいつ落ちても不思議ではなかった。

 

「くそっ!どこかに着陸できるところは・・・・・・ん?あそこは・・・」

 

と直哉が目にしたのはその建物にある大きく開けた場所

 

「(行けるか?・・・・結構ぎりぎりだが低速してはいればなんとか・・・・)」

 

そう思い、直哉は紫電改をその場所に向けて旋回し低速しつつ高度を落とした。そして紫電改の脚を出し着陸する

 

「(よし!いける)」

 

そう確信した直哉。その後、紫電改は減速しつつ、滑り込む形で着地に成功した。

 

「あはは・・・終わりよければすべてよしってか・・・・」

 

そう言い安心したのか直哉は意識を失うのだった。

 

 

 

 

 

 

「あ、あれが・・・・私の使い魔?」

 

ナオは空から現れた紫電改を見て驚く。すると紫電改のエンジンが止まりだし、急降下してくる

 

「こ、こっちに突っ込んでくるぞ!?」

 

「に、逃げろォ!!」

 

生徒たちはこっちに向かってくる紫電改を見て急いで避難しようとする。すると紫電改のエンジンがまた動き出し急上昇し始め地面との激突を避けることができた。そして紫電改はそのままぐるぐると学校の周りをまわっていた。

 

「やっぱりあれは紫電改だ!」

 

そして才人はその紫電改を見て驚いていた。

 

「平民!あれを知ってるの?」

 

「ああ・・・あれは・・・・」

 

と、ルイズがそう言い才人が答えようとすると紫電改のエンジンが再度止まりだし、紫電改は学校の正門広場へと向かうのであった。

 

「おい!あの飛竜。正門の方へ行くぞ!」

 

「行って見ようぜ!」

 

そう言い生徒たちは正門へと向かうのであった。

 

「行かなくちゃ」

 

「ナオ!私も行くわ!ほら行くわよ平民!!」

 

「痛でで!耳たぶ引っ張るなよ!」

 

と、ナオも正門へ行き、ルイズは才人の耳を引っ張りながらついていくのだった。そして三人が正門広場へ着くとそこには人だかりができて、その人だかりの向こうには着陸した紫電改があった。

 

「おい・・・・これ本当にドラゴンか?見れば見るほど変わった形をしているぞ?」

 

「ほんとね・・・・一瞬見てもカヌーに似てるし・・・」

 

「おい、これピクリとも動かないぞ?」

 

「まさか死んでいるんじゃ?」

 

と、初めて見る紫電改に生徒たちは小声で話していたタバサも本を見ながらちらちらとその紫電改を見ていた。するとそこへコルベール先生がやってきて

 

「みんな下がってください」

 

そう言いコルベールは生徒たちを紫電改から遠ざけ、そして彼は目の前にある紫電改を見る

 

「(これは・・・・・鉄か?とするとこれは何かのからくりなのか?)」

 

コルベール先生は紫電改を見てそれが生き物でないことを理解した。するとそこへナオたちがやってきたのだった。そしてナオは紫電改の方へ近づき興味本位で翼に上る。ルイズと才人は改めて紫電改を見ると

 

「やっぱり紫電改だ間違いない」

 

「平民さっきっから言ってるけど、なんなのよ!そのシデンカイって?」

 

「あれは俺の国のもので飛行機っと言ってなそらをとぶのりも・・・・「ミスターコルベール!?」・・ん?」

 

才人がルイズに説明しようとしたとき、ナオがコルベール先生を呼んだ。才人たちが振り向くとナオは翼の上に乗ってコックピットを覗き込んでいた

 

「どうしたんだね?ミスユミエール?」

 

「このドラゴンの中人が乗っています!それにその人酷い怪我をしています!たぶんこの竜を操っていた人だと思います!」

 

ナオがコックピットを覗くとその中には少年らしき人物が気絶していたのだ

 

「それは大変だ!ミスユミエール。コントラクト・サーヴァントはあとですまずその竜のコントラクト・サーヴァントはあとだ!まずその人の治療をしないと」

 

「はい!」

 

そう言い。その紫電改のパイロットは、医務室へと運ばれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい。バカヤロー。どうしたんだよ直哉!またオヤジに叱られたのか?まったくおめえは昔の俺に似て無茶しやがるからなコノヤロ!』

 

菅野隊長・・・・・・

 

『おい、また誰かにいじめられたのか?よし!俺と隊長でそいつをぶん殴って敵討ちしてやるよ』

 

杉田さん・・・・

 

『よぉ直坊。また空戦の腕が上がったな…この調子なら俺を超えるんじゃねえか?』

 

武藤さん・・・・・

 

 

『いいか、直哉。覚えておけよ。不名誉より死。これが俺たち帝国軍人の誇りだ』

 

 

軍平・・・・・・・

 

 

『直哉・・・もし俺が死ぬときは妹のことを頼むな・・・・・絶対に先に逝くんじゃねえぞ』

 

・・・・・佐々木

 

 

俺の頭に浮かび上がったのはかつての上官や仲間・・・・・みんなあの戦争で死んじまった。俺はなんのために生きている?家族のため?国のため?最初はそう思い戦ってきた。だが、戦っているうちにそれがわからなくなってきてしまった・・・・・俺は一体何のために戦えばいいんだ?俺がそう思った瞬間、光に包まれた

 

「(これは・・・・・?)」

 

 

「・・・・ん・・・・ここは?」

 

目が覚めるとそこは見慣れぬ天井であった。当たりを見ると少し古臭い感じの部屋だった。身体を見ると包帯とかが巻いてあり、傷がふさがっていた。

 

「ここは…いったいどこだ?」

 

俺が首をかしげているとドアが開き、そこから眼鏡をかけた男が現れた。・・・なんだあの服?それにあの顔つき米国人か?いいや、アメリカ人じゃないましてやイギリス人でもない・・・・・誰だ?

 

「おお、気が付かれましたか・・・・ミスユミエール。彼が目覚めましたぞ」

 

と、その眼鏡の男がそう言うと、その後ろから少女二人と少年が入って来た。少年の方は見るからに日本人だがなんともみょうちきりんな服を着ていた。すると少年は俺のところに近づき

 

「な、なあ!あんた日本人か!?」

 

と、いきなり俺に訊いてきた

 

「あ、ああ・・・・そうだが?」

 

「良かった~やっぱ日本人だ~」

 

と少年は安心したように言う。もしかしてここって捕虜収容所?いや、憲兵がいなしそんなわけないか。俺がそう思っていると

 

「このバカ使い犬~~~~!!!」

 

「へぶっ!!」

 

もお色の長髪の子供?みたいなやつがその少年に飛び膝蹴りをした。蹴りを喰らった少年は頭にたんこぶを付けて気絶した。

 

「ナオ。私のバカ使い魔が失礼をしたわ。ごめんなさい」

 

桃色少女はそう言うと、少年を引きずっていく。・・・・・・・なんなんだ?

 

「ゴホン!」

 

その時、眼鏡の男がが咳払いを一つする。

 

「ミスユミエール。どうやら貴女はあの竜と一緒にこの操縦手を召喚したようですが、ミス・ヴァリエールに説明したとおり、この儀式にやり直しはききません。あのドラゴンの主人であるこの少年が貴女の使い魔です。さあ、早く『コントラクト・サーヴァント』を」

 

と、少女に言う。な、なんだ?コントラクト・サーヴァントって?

 

「・・・・待って下さい契約の前に彼に説明させて下さい。いくら使い魔儀式といっても彼の人生を束縛してしまうことを、一方的に行ないたくはありません」

 

と、彼女がそう言うと眼鏡の男はふむふむと頷き

 

「ミスユミエール・・・・なるほど分かりました。あなたの言い分も最もです」

 

「ありがとうございます」

 

彼女はその男に礼を言うと俺の方へ顔を向けた

 

「改めて始めまして。私は、ナオ・フェメール・ド・ユミエールです。目が覚めて混乱されていると思いますが、お名前を伺ってよろしいでしょうか?」

 

と、彼女は丁寧に言う

 

「あ、ああ…俺は宮藤直哉だ。因みに直哉が名前だ」

 

外国だと名字と名が逆だから俺は直哉が名前だと付け加えていった。

 

「ナオヤさんですね・・・・なんだか私の名前と似てますね」

 

「ナオに直哉・・・・確かにそうだな・・・・・・・でここはどこなんだ?」

 

「はい。今からそれを説明します」

 

と、彼女は俺に今の現状を説明してくれた。まずここはハルケギニアのトリステイン王国にあるトリステイン魔法学院であること。その学院で、二年生の最初の試験で使い魔を召喚すること。そして俺は、その使い魔として召喚されたこと。もとの場所に戻るのも今現在では方法が無いことを。

 

「(ハルケギニアなんて聞いたことがない・・・・しかもこの部屋や、周りを見ても戦争中には見えん・・・・それ以前に魔法学校って…そんなの聞いたことがないぞ?・・・まさかというが昔、小説を読む際に菅野隊長に勧められて読んだ「並行世界」ってやつか?となると撃墜されて死んだはずの俺が生きているのも納得できる)」

 

俺がそう考えていると

 

「本当にごめんなさい」

 

「え?なんで謝るの?」

 

いきなり謝ってきた彼女に俺は首をかしげた。

 

「勝手に呼び出した上に、こんな事になってしまって」

 

と彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。なんというか優しい子だな・・・・・

 

「そんな。頭を下げないでくれ。別に故意でやったわけじゃないんだからな。それにいいぞ使い魔になっても」

 

「え?いいんですか?」

 

「ああ、どうせあそこでは俺の居場所なんてないと思うし第二の人生だと思って使い魔をやるよ。それに君もその使い魔契約の試験が合格できなければ困るんだろ?」

 

さすがに死んだとは言えないしな・・・・・それに彼女の言うことが本当ならここで骨を埋めるのもそう悪くはないかもしれないし、それにそれでも帰りたいと思ったときはこの世界にいながらその方法を探せばいいしな・・・・

 

「すみません直哉さん・・・」

 

「いいって、いいって。それとさん付けもいいから気軽に呼んでくれよ・・・・・・で、その契約ってどうすればいいんだ?」

 

「ああ、はい。今からそれをしますのであ、あの・・・少しだけ目と瞑ってくれませんか?」

 

「え?ああ…いいけど」

 

そう言い俺は目をつむる。

 

「我が名はナオ・フェメール・ド・ユミエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 

と、目をつぶっててわからないが彼女は何かの呪文のようなものを唱える。するとなにか口に感じる、柔らかくてしっとりした感触

 

「(お、おい・・・・もしかしてこれ接吻か!?)」

 

俺は目を大きく見開く。ナオが離れると、頬を赤く染めて黙っていた。

 

「も、もしかして・・・・これが契約か?」

 

俺は顔を赤く染めそう言うと彼女も顔を真っ赤にしてそう頷く。すると、急に俺の左手の甲にまるで火鉢を当てられたかのような痛みが襲う。しかしここで弱音を吐くわけにはいかない。帝国海軍の意地に賭けても。まあ、うめき声ぐらいは出るがな

 

「ぐっ!・・・・・・」

 

「だ、大丈夫。使い魔のルーンが刻まれてるの。すぐに終わるから安心して」

 

彼女が追う言うと、確かに彼女の言った通り痛みはすっと消えその代わり手の甲にないかの紋章・・・いや文字が刻まれた。

 

「ふむ・・・・ミスユミエールも無事使い魔と契約できたようですね。それにしてもこの文字ミスヴァリエールの使い魔と同じ見慣れないものだな・・・・早速調べてみるか」

 

そう言うと、その眼鏡男は部屋を出て行ってしまい。残されたのは俺とナオと呼ばれた少女だけとなった。

 

「さてと・・・・じゃあ、よろしくお願いしますナオさん・・・・」

 

「ナオでよろしくお願いします。ナオヤさん」

 

「そっか・・・・じゃあ、よろしくなナオ」

 

俺が不適の笑みでそう言うと急に彼女の顔が赤くなった。あれ?何か変な事でも言ったかな?俺がそう思ってると彼女は急に元気な笑顔で

 

「はい!よろしくお願いします!ナオヤ!」

 

というのだった。はてさて異世界に飛ばされちまった俺・・・・この先どうなることやら・・・・

 

 

 

 

 

 



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登場人物設定

宮藤直哉(みやふじ なおや)

 

本作の主人公で所属は大日本帝国海軍343航空隊、戦闘301飛行隊「新選組」に所属している局地戦闘機「紫電改」のパイロットで階級は少尉。年齢は19歳だが幼い顔立ちの上、身長155センチと小柄なため年下に見えてしまうため仲間から「直坊」っと呼ばれている。正義感が強く明るい熱血漢で困っている相手を助けられずにいられない優しい性格だが少々破天荒な面があるため上官だった菅野直大尉に「俺の昔のころと似ている」っと言われたことがある。

父親が海軍中佐で戦艦「伊勢」の航海長をしていたというその父親の影響があったためか中学卒業の後、海軍士官学校に入学そして霞ケ浦飛行学校も入校し優秀な成績で卒業する。そして1942年のラバウルに配属されガダルカナル奪還のため米軍機と初めて戦う。ガダルカナル島撤退の後、第201海軍航空隊に配属されこの時に菅野直大尉の部下になり、彼が戦死するまでともに空を飛んでいた。

空戦の腕は当時の上官だった菅野や先輩搭乗員の杉田庄一からは「破天荒で激しい戦い方をするが敵を狙い撃つときは慎重な奴だ」と言われ同じく先輩搭乗員である武藤金義からは「腕は未熟だが、コツを掴めば俺よりも強くなるかもしれない」と言われている。また、彼は他の搭乗員と同じく上官である菅野直の人柄に敬愛し、杉田同様、菅野大尉を馬鹿にする奴には容赦なく殴りかかったという。

そして1945年。終戦まじか米軍機と交戦中に被弾し気が付いたらなぜかルイズやナオのいる異世界へ紫電改ごと飛ばされその後はナオの使い魔となる。

同じ日本人である才人のことは弟のように思っており、彼のルイズをからかうところをたまに注意したりする。

所持品は九四式拳銃と予備の弾倉を2個持っている。また父親から剣術も習っているため剣の腕もいい。

 

 

 

 

 

ナオ・フェメール・ド・ユミエール

 

本作のヒロインで直哉を召喚した銀と紫が混じったようなポニーテイルが特徴の16歳の少女で背丈は155センチと少し小柄な少女。ルイズとは従妹であり、また実家が彼女の家の隣ということもあってかルイズとは仲が良い。成績は優秀で魔法でのレベルは風属性のトライアングルで別名は『疾風のナオ』と呼ばれている

公爵家の家柄だが他の貴族のように偉ぶったりしないため、平民達からの評判は良く。性格は心優しく争いを好まない性格だが、その反転好奇心旺盛なところがあり、たとえ平民の仕事とかでも気になったことは質問攻めをしたりまた自分で体験したりすることから「変わり者のナオ」と呼ばれている。また彼女の理解者はナオの父親である。

またルイズとは違いゲルマニア嫌いではなくキュルケやタバサとは仲がいい。また彼女はルイズ同様アンリエッタとは幼馴染の関係でもある。趣味は料理で授業が終わった後は食堂の厨房に行き料理長のマルトーのもとで料理の勉強をし、その努力もあってか腕前は一流のシェフにも負けず劣らずの腕になっていて料理を教えたマルトー料理長も「弟子の中では一番の見込みが早い」とそう言われているほどの腕前である。



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ここは異世界

使い魔の儀式とやらも終わり、ナオは学生のため授業に戻るため教室に行った。因みに俺はというと彼女の授業が終わるまで暇を持て余しあたりをウロウロしていた。

 

「・・・・そう言えば俺の紫電改は・・・」

 

俺はふっと自分の愛機である紫電改のことを思い出し自分の着陸したあの広場へと向かうのであった。そして俺はその広場につくと、

 

「・・・・・あれ?紫電改がない・・・・」

 

広場につくとそこにあるはずの紫電改がなかった。変だな・・・自分で歩いて散歩するわけじゃないし・・・俺がきょろきょろと見渡すとそこには西洋のお手伝いさん。メイドって言うのか?らしき少女が籠に入った洗濯ものを運んで歩いているのを目にした。

 

「ちょっと君。少しいいか?」

 

俺はその少女に近づき声をかける

 

「え?あ、はい!な、なんでしょうか貴族様」

 

と彼女は驚いた顔でそう言う。ん?貴族様?

 

「あ、いや。俺は貴族じゃないんだけど・・・」

 

「貴族様じゃない?じゃ、じゃあ。最近噂に聞いたミス・ヴァリエールかミス・ユリエールが呼び出した平民の使い魔さんの片割れの方ですか?」

 

「ああ。まあ、そんなところかな?で、ちょっと訊きたいことがあるんだけどさ」

 

「なんでしょうか?」

 

「俺の紫電改を見なかったか?」

 

「シ、シデンカイ?」

 

俺が紫電改の場所を聞くと彼女は首をかしげてしまう。ああそうかこの言い方じゃあ、わからないか・・・・

 

「ああ、すまん。あそこの広場にあった大きな鳥?みたいのだけど・・・・」

 

「ああ!あのドラゴンですか?それならミスターコルベールが小屋の方へ運んでいきましたよ?」

 

「小屋?どこにあるんだ?」

 

「あそこを右に曲がってまっすぐ進んだところにあります」

 

「そっか。ありがとな」

 

俺は少女に礼を言い、俺はその小屋へと進むのだった。それにしてもあの少女どこかで見覚えが・・・・・まあ、それはともかく俺はそのお手伝いさんの言われた通りの道を行くと確かにそこには小屋があった。っといっても大きさが戦闘機二機ぐらいは入りそうな大きさだがな・・・・俺はその小屋の扉を開いて中に入る。するとそこには・・・・

 

「・・・紫電改・・・」

 

そこには俺の愛機、紫電改があった。あっちこっち弾丸の痕があり、その痕のところは少し塗装も剥げて銀色のジュラルミン肌が見えていた。そして何よりなのは尾翼に『A343‐32』っと書かれていた。それは間違いなく俺の乗っていた紫電改だ。俺は零戦にも乗ったことがあったが紫電改か零戦かどっちがいいかと訊かれたら俺は紫電改と答えるだろう。零戦は確かに優秀な戦闘機だ。だがしかしこの紫電改と比べると紫電改の方が上だ。たとえているなら零戦は競技用の戦闘機で紫電改は防弾や武双、速度の三拍子がそろっているためまさに戦うための機体といえよう・・・俺は紫電改に手を触れる。

 

「紫電改・・・どうやらここは異世界みたいだ」

 

と、紫電改に語る。ナオが嘘をつくような子には見えなかったし、何より紫電改を探している間、目玉に翼の生えたいきものや、。馬鹿でかいモグラ。そして何よりあの青色の竜。もしあんな不思議な生物が俺の世界にいたらニュースや新聞になって大騒ぎしているだろう。それに先ほどナオから聞いた国の名前も俺は知らない・・・結論から言って異世界で決定だろう。それと、あのルイズっという少女に呼び出されたっという平賀才人って少年も日本人のようだがあの恰好からして俺よりだいぶ先の人間だろう・・・・

 

「ここには俺たちの祖国の日本も存在しない・・・・帝国海軍軍人は俺とお前だけになっちまったな」

 

と俺は紫電改に語ると

 

『そうですね・・・・宮藤少尉』

 

「っ!?」

 

急にどこからか女の声が聞こえ俺はあたりをきょろきょろと見渡すがこの小屋には俺しかいなく人の気配もなかった。っとするとさっきの声って・・・・

 

「いや、そんなわけないか……きっと疲れて幻聴でも聞いたんだな」

 

俺は自分にそう言い聞かせて

 

「紫電改・・・・また来るよ」

 

俺は紫電改にそう言い小屋を出た。すると・・・

 

『いつでもお待ちしてます。我が主』

 

と、誰もいない小屋の中で女性の声がまた聞こえるのであった・・・・

 

 

 

 

そしてその夕方。俺とナオは今ルイズの部屋にいた。なぜかっというと俺がナオに頼んでルイズって言うこの部屋に入れてもらったのだ。なぜかというとあの平賀才人に訊きたいことがあったのだ。今彼はさっきのルイズに蹴られて以来ずっと気絶したまんまらしいが・・・・・因みにナオはそのルイズって言う少女の従妹で、家もその隣だというちなみに彼女は貴族で公爵だと聞いた。俺は一応、軍人であり武士の家系だから士族である。っといってもこの世界では全く関係のないことだけどな。そんなことを考えていると、

 

「う・・・いって~」

 

才人が頭をさすって目を覚ます。

 

「おっ・・・気が付いたか」

 

「いてて・・・・なんか変な夢を見たな・・・・なんかファンタジーな世界にいきなり召喚されて変な少女に使い魔にされた挙句、空から光のゲートみたいなのが出たら、旧日本軍の紫電改が突然現れて・・・・」

 

と、ぶつぶつ独り言を言っていた。てか旧日本軍てなんだよ。旧って失礼な!っということはやっぱりこいつ俺より先の時代の人間だな。

 

「悪いが夢じゃないぞ。未来人」

 

俺がそう言うと才人は俺のかを見て目を丸くする。すると・・・

 

「だ・れ・が変な女よっ!!」

 

と、ルイズが才人の頭を踏んずける。ふんずけられたサイトは驚いて後ろにいるルイズを見て驚く

 

「ま、マジかよ・・・・夢じゃなかったのか!?」

 

「残念だがな。しかもここは異世界だぞ」

 

「んなアホな!そんなこと信じられるわけ無いだろ!」

 

「俺だって信じられないさ・・・・だがあれを見ちゃな・・・・」

 

「あれ?・・・・・っ!?」

 

俺が指でくいッと窓の方をさす。才人は窓の外を見ると

 

「つ、月が2つ!?本当に異世界なのか!?えっと・・・・」

 

「宮藤だ。宮藤直哉。大日本帝国海軍343空301飛行隊「新選組」所属の戦闘機乗りだ。因みに階級は少尉だ・・・・って言ってもここじゃ階級なんて意味ないけどな」

 

と、俺がそう言うと才人はやっぱりかっというような顔をする。

 

「その格好っと言い、やっぱりあんた旧日本軍の人か!?」

 

「旧とはなんだ!旧とはっ!・・・・・確か平賀才人って言ったな。おまえ・・・いつ(・・)こっちに来た?」

 

「え?確か・・・・・20xx年の2月24日だけど・・・・・宮藤さんは?」

 

「俺か?俺は1945年8月13日だ。なるほど・・・・俺よりだいぶ先の人間かと思ってたが73年も先の人間だったか・・・・・・で、才人。大東亜戦争はどうなった?まあ、敗戦になったと思ってるがな」

 

「え?」

 

「俺だって馬鹿じゃない。俺がいた時代の現状を見てそうとしか思わん。現に広島、長崎に新型爆弾落とされたし、何よりの1942年のガダルカナル・ソロモンの戦いで主力ともいえる航空兵力を失いアメ公のB29に本土攻撃された時点で気が付かない奴いないだろ?・・・で、どうなんだ?」

 

俺がそう言うと才人は少し気まずいをしながらこう答えた

 

「太平洋戦争は・・・・第二次世界大戦は宮藤さんがここに来る二日後の8月15日に日本の無条件降伏で幕を閉じたよ・・・」

 

「・・・・・そうか・・・・やはり負けたか日本は・・・・・なら、負けるなら負けるでなんでもっと早くに終わんなかったんだよ。早く終わってれば、菅野さんも杉田さんも武藤さんもそして親友である佐々木も死なずに家族のもとに帰れたのによ・・・・・だが、お前の格好を見ると日本は立ち直ることができたんだな?」

 

「あ、ああ。焼野原だった街の面影すらないほどにな・・・」

 

「そうか・・・・それなら少し救われたな・・・・」

 

その後、才人から戦後のことを訊かされほんの少し安堵した。すると

 

「ねえ、先ほどから聞いてたんだけどあんたたちって本当に異世界から来たの?」

 

と、今まで黙っていたルイズが口を開いた。しかも少し疑うような言い方で

 

「そうだよ」

 

「だったら証拠を見せなさいよ。」

 

と、言うと

 

「それだったら俺の紫電改が証拠じゃないか?」

 

「シデンカイってさっきの竜のこと?」

 

「違うよあれは竜じゃなくて飛行機って言う空飛ぶ乗り物だ」

 

と、才人がそう言う

 

「飛行機?何かのマジックアイテム?何かの魔法で飛んでるの?」

 

「ちがうよ!魔法で飛んでいるんじゃない。科学の力で飛んでいるんだ」

 

「何よ!カガクって!?何系統の魔法の一種?」

 

「だから魔法じゃないってばっ!!」

 

と、才人とルイズはギャーギャーと口論していた。するとナオが

 

「ねえナオヤ。カガクって何なの?」

 

と、興味津々で聞く。俺は少し言葉を考えた。そしてナオに説明する

 

「科学って言うのはそうだな・・・・・簡単に言えば自然の動きとかそれに起きる現象とかを利用する技術って言えばいいのかな?」

 

確か科学ってこんな感じだったと思うが・・・・・こうなること知ってれば中学の授業真面目に聞いてればよかったな・・・するとナオは目をキラキラさせてもっと俺に質問をする

 

「それは誰でもできるの?」

 

「まあ、その技術とかの勉強とかの手間や労力そして時間はかかるが誰でも使えるかな?」

 

現に俺も戦争さえなければ・・・・軍人の家に生まれなければ恐らく学者とか技師とかの道を目指していただろうなな。昔、菅野隊長も「戦争が終わったら大学にいる友人ように静かに暮らしてみたい」とか言ってたしな・・・・・・

 

「じゃあ、じゃあさ、・・・・」

 

と、ナオの質問攻めが続く。あの紫電改はどのくらいの速さなのかどうやったら飛ぶのか。どうやって動かすか。何でできているのかなどいろいろだ。まるで先生と生徒の個人授業をしているみたいだな・・・・ナオってこんなに好奇心旺盛な子なんだな。

ナオはその後も俺に質問をし続け気が付けばもう真夜中になっていた。才人とルイズはというとずっと科学だ魔法だとか抗議し続けた結果なんやかんやで才人はルイズの使い魔になることになった彼はあまり納得していなかったがな。その後俺たちは二人と別れ部屋に戻る。っといっても部屋はその隣だったがな。そしてナオが部屋に入ろうとしたとき

 

「あ、ナオヤちょっと待っててくれる?服着替えるから。終わったら呼ぶからね」

 

「ああ、わかった」

 

俺はそう言いドアの前で彼女が着替え終わるのを待った。別に俺は女の裸を覗き見る趣味はない。もしそんなことしたら杉さんにブッ飛ばされるからな。しばらくして『いいよ』と彼女の声が聞こえ俺は部屋へと入る。するとそこには西洋の寝間着姿の彼女がいた。そこで俺はふっと思い出す

 

「あ、そう言えばナオ。一つ聞いてもいいか?」

 

「なに?」

 

「さっき俺を使い魔として呼んだって言ったよな?使い魔って何すればいいんだ?」

 

と、俺はそうナオに聞くと

 

「う~ん…そうね使い魔は主人の目となり、耳となる能力が与えられるの。何か感じない?」

 

「いや。全然」

 

彼女にそう言われても俺の体に耳でもしっぽでも生えているわけではないし特になんも変化はない。

 

「じゃあ、使い魔は主人の望むものを見つけてくるらしいのよ。例えば秘薬とかそう言うの」

 

「う~ん。そう言われても俺は医者じゃねえからな・・・・」

 

横須賀にいる従妹は診療所の娘だったけど、俺には医術の心得は持ってないし、それにここは異世界。どんな薬があるのかもまったく知らない。

 

「確かに異世界から来たのじゃわからないのも道理ね・・・それじゃあ最後に普通の使い魔なら一番重要なことなんだけど」

 

「うん」

 

「使い魔は窮地から主人を守ることなんだけど、確かナオヤって軍人さんだよね?」

 

「ああ。そうだよ。」

 

因みになんだが俺は柔術や剣道をやっていて、剣道に関しては習っていた道場の先生から免許皆伝の称号を得たことがある。するとナオはもじもじして俺にこう言った。

 

「じゃ、じゃあ・・・・何かあったら守ってくれる?」

 

「ああ任せろ。もう誰かを失うのは見たくないからな。だからナオは俺が守ってやるよ」

 

と不敵の笑みでそう言うと彼女の顔が赤くなる。昼の時もそうだが風邪なのかな?その後、就寝時間となり俺とナオは寝るのだった。無論。男女一緒のベットはいろいろとまずいため俺は彼女から毛布を借りて床で寝た。幸い毛布と着ていた航空服のおかげで暖かく寒い思いはしなかった。因みになんだが隣の部屋。才人たちがいる部屋のところで男性のくしゃみの声がたまに聞こえたりするのだった。

 

 

 

 

 



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異世界の朝

「っ!?」

 

明朝、まだ日も昇らない時期、俺は目が覚め飛び起きた。この時間帯は起床時間の時間だった。だがおかしいいつものように起床ラッパが鳴らない・・・・・あ、そうだった。

 

「・・・・・・あ、そうか・・・もうここは軍用基地じゃないんだったけな」

 

俺は異世界に飛ばされたことを思い出し、辺りを見渡すとベットでナオが寝ていた。しかし、布団が床へ落ちていた

 

「やれやれ。風邪ひくぞ」

 

と俺は床に落ちた布団を手に取り、彼女に掛けた。そんな中ナオはスヤスヤと、気持ちよさそうに寝ている。そして俺は窓を見るとまだ真っ暗であった。こんな時間に起こしても迷惑になるしかといって日の出までにこの部屋にいるのも気まずい・・・・・

 

「そうだ。紫電改の様子でも見ようかな?」

 

そう言い俺はナオを起こさないように静かにその部屋を出たのであった。部屋を出て学校を出た俺は昨日寄った格納庫みたいな小屋にある紫電改の所へ向かう。しばらくして小屋について扉を開く。するとそこには俺の紫電改があったのだがコックピットあたりに人影があった。

 

「っ!?誰だ!!俺の愛機に乗っている奴は!!」

 

そう言って俺は紫電改の方へ近づくと・・・

 

「え?ああ。すまないすまない・・・・」

 

「ん?あなたは確か・・・・ナオの先生だったか?」

 

「はい。コルベールといいます」

 

「・・・・・で、そのコルベールさんがなんで俺の紫電改に乗ってたんだ?」

 

「シデンカイっというのかこのからくりは・・・・」

 

と、コルベールさんが紫電改から降りてそう言う

 

「ああ、我が大日本帝国海軍が製造した局地戦闘機だよ」

 

「きょくち・・・なに?」

 

「まあ、つまりこれは飛行機っと言って空を飛ぶ乗り物だよ」

 

「おおー!!やはりそうでしたか!で、これはどうやって飛ぶのだ?風石を使っているのか?」

 

「あ…いや。これは・・・・」

 

と、俺はコルベールさんにできる限りの飛行機の簡単な説明をした。その時はもう空が真っ白になり朝日が昇るところであった。

 

「なるほど…魔法も使わずに…すごいなこの飛行機という飛行機械は・・・・とこれで君は・・・・」

 

「直哉です。宮藤直哉っと言います」

 

「直哉君か・・・・で、君はここへは何しに?」

 

「ああ、こいつの様子を見にね。言っとくけどコルベールさん。分解は勘弁してくれよ」

 

「安心してくれナオヤ君。分解なんてしないよ、ただ、たまにでいいからこれのこと教えてくれてくれればいいよ。それと整備とかもね」

 

「あはは。いいですよ。それともうそろそろ朝なのでナオを起こしに行きます。では」

 

そう言いうと俺はそう言い、部屋へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして部屋に戻って数分くらいだろうかナオが起きた。

 

「ん・・・・・あれ?ナオヤ?」

 

「応おはようナオ」

 

「おはようございます。あの・・・・」

 

「ああ、わかっているよ俺は外で待っているから」

 

直哉はナオが着替えることを察し部屋を出て待つ。そしてしばらくして、制服に着替えたナオが部屋から出てきた。

 

「お待たせ。これから食堂に案内するからついてきて」

 

「ああ」

 

俺がそう言うと、隣の部屋から才人とルイズが出て来る。

 

「ああ、ルイズおはようあなたも食堂?」

 

「おはようナオ。ええ、そうよ。さっ・・行きましょ」

 

と、二人が朝の挨拶をし食堂へと向かう。

 

「ん?どうしたんだ平賀。顔がすぐれないみたいだが眠れなかったのか?」

 

「え?ああ・・・・宮藤さん。あなた昨日はどこで寝たんですか?」

 

「え?俺はナオの部屋の床下で寝ていたよ。寒かったからナオから毛布は借りたけどな」

 

「そうですか・・・俺も床下でしたけど毛布なしで寝ていましたよ」

 

「それは・・・・・気の毒だな」

 

と、話しながら二人もナオやルイズの後について食堂へと行くそこには多くの生徒が座っていてその前には朝食が置かれていたのだが・・・・

 

「これは・・・・・朝からすごいな・・・・しかも野菜がない・・・・」

 

「胃もたれしそうですね・・・」

 

二人が見たのはかなり重たく豪勢な食事であった。朝食から・・・・いや夕食でもこんな豪勢な料理は戦時下で質素な生活をしていた直哉はもちろん。平和で豊かになった生活をしていた才人も見たことがない。すると・・・

 

「確かに、私も朝からこれは重いかなっていつも思っていたんだけど・・・・」

 

「何言っているのよナオ。これのどこが重いって言うの?これこそ貴族の食卓に相応しいものじゃない」

 

と、苦笑して言うナオに対しルイズは首をかしげてそう言う。そして二人は席に座る。

 

「ナオヤは私の隣に座って」

 

「いいのか?雰囲気からしてこれって貴族とかが座るんだろ?」

 

「かまわないわ。それに隣は誰も座んないし・・・」

 

「そうか・・・・それじゃあ、お言葉に甘えて」

 

そう言い直哉はナオの隣に座る。一方、才人とはというと

 

「朝から何にも食べてないからな…‥ってなんだルイズ?」

 

才人が席に座ろうとしようとしたがルイズが嫌そうな顔をし

 

「あんたはこっちじゃなくてここよ」

 

とそう言い床の方を指さすすると床には一枚の日々の割れた皿が置いてあった

 

「皿が一枚?」

 

「この椅子に座れるのは貴族だけよ。平民のあんたが座るのは床よ」

 

「そ、そんな・・・・・」

 

ルイズにそう言われ才人はガックシとうなだれる。なんか哀れだ・・・・すると周りにいた生徒たちがキリスト教徒がよくする構えをし始める

 

『偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします』

 

と祈りを唱え始めそれを聞いた直哉は

 

「(ささやか?これがか?こいつら・・・・平民がどんな食事をしているか見たほうがいいと思うぞ)」

 

直哉はそう心の中でつぶやき、そして食事が始まった。宮藤の食事はナオが分けてくれたパンとステーキ半分とスープだった。ナオ曰く『私少食だから』とのこと。それに比べ床に座っているサイトの食事はパン一個であった。それを見た宮藤は

 

「平賀、そのパンよこせ。その代わり俺のをやるから」

 

「え?」

 

「いいから俺の西洋料理とお前のそのパン交換してくれ」

 

「え?で、でも宮藤さんは・・・・」

 

「いいって。いいって・・・・俺そんなに食えないしさパン一つで十分だよ。それに比べお前はまだ育ち盛りだろ?しっかり食べて元気ををつけろ」

 

「あ、ありがとうございます。・・・・・・あ、あの宮藤さんいくつなんですか?」

 

「おれ?そうだな・・・・・満19になるな・・・・・」

 

「え?それじゃあ、宮藤さん19なんですか?」

 

「なんだ?そんなに老けて見えたか?」

 

「いいや。その逆ですよ・・・てっきり14歳くらいかと思いました・・・・」

 

「あはは・・・・確かに俺は童顔で背は小さいがれっきとした19歳だぞ」

 

と、そんな話をし俺は自分の食事と才人のパンを交換した食事を楽しむ俺はパン一個だがガダルカナルの戦いで食料が不足して3日間何も食わなかったあの出来事に比べれば大したことはない。俺はそのパンを一口食べる。

 

「あっ…このパンすごく美味い」

 

そう言い俺は異世界に来て初めての朝食を楽しむのであった。

 



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ゼロと変わり者

朝食が終わりナオやルイズは授業を受けるため教室に向かっている。無論一応使い魔の契約をした俺や才人も一緒だ。

 

「宮藤さん。さっきはありがとな」

 

「いや、別にお礼を言われるようなことはしていないよ」

 

と、そんな風に話しながら歩いていると

 

「あら、ルイズにナオじゃない」

 

すると腰まで長い赤い髪に褐色肌の女がやってきてナオたちに話しかける

 

「ああ・・・・キュルケね」

 

「キュルケおはよう」

 

ルイズは嫌そうな顔でそう言うがナオは笑顔でそう言う。するとキュルケと呼ばれた女は俺や才人の方を見て

 

「あら?ルイズ貴方の使い魔って、それ?」

 

才人を指差し、馬鹿にした口調で言った。なんだこいつは失礼な奴だ。

 

「そ、そうよ・・・・」

 

ルイズはそう言うとキュルケは大笑いし始めて

 

「あっはっは!ホントに人間なのね!凄いじゃない!『サモン・サーヴァント』で平民を召喚しちゃうなんて、流石はゼロのルイズだわ。」

 

と、完全に馬鹿にした口調でそう言う。なんだこいつは?あまりにも無礼な奴だな。というよりさっき言っていた『ゼロのルイズ』ってどういう意味だ?何かのあだ名か?

 

「うるさいわねキュルケ。その言葉同じ平民を召喚したナオまで馬鹿にしていることになるわよ」

 

と、ルイズがジト目でそう言うがキュルケは

 

「ナオはあなたと違って優等生だしね~もしかしたらあんたの使い魔の平民よりは優秀な平民かもしれないかもしれないわよ。ね~フレイム」

 

と、キュルケはそう言うと彼女の後ろから大きなトカゲが現れた

 

「うわっ!?真っ赤な何か!?」

 

「ふむ・・・・・南方で見たミズトカゲの一種かな?」

 

才人は驚き、俺に関しては昔南方にいたころ見たミズトカゲの一種か何かと考えていた。すると

 

「あら?あなた達サラマンダーを見るのは初めてかしら?それにしてもルイズこれがあなたとナオの使い魔の差よ。ナオの使い魔あまり驚いていないじゃない」

 

と、そんなことを言う中俺はそのフレイムっといったか?そのオオトカゲこと、欧州神話に出てくる(昔、士官学校の図書館で見た)サラマンダーをじっと見てそしてしゃがみ

 

「・・・・・お手」

 

とそう言い右手を出すとそのオオトカゲはポンと俺の手に手を乗せる

 

「おお、まさかほんとにお手をするとわな。まるで大型犬のように人懐っこいな」

 

そう言い俺はそのトカゲの頭をなでる。俺にはそのトカゲを見て怖いっという感情はなかった。逆に創造の生物と言われたサラマンダーを見て興味を持つくらいだ。すると

 

「(ふむ。もう少し右のあたりをなでてくれるか若者よ)」

 

「・・・・・ん!?」

 

あれ?気のせいか?このサラマンダー鳴き声とともになんか喋ったような・・・・・いや、気のせいだ。きっとこの前、紫電改の声が聞こえたかのようにきっと疲れているのかな?・・・・もう一度撫でてみるか。そう思い俺はさっきのサラマンダーが言っていた少し右側をなでてみる。

 

「(ふむ・・・・そこだ。そこだ気持ち良い)」

 

・・・・・やっぱり気のせいじゃなかった。確かにこのサラマンダーが喋っている・・・なんだろう・・・・この世界に来てから摩訶不思議なことがたくさんだ。まあ、それが決行面白いところだ

 

「・・・・どうしたのナオヤ?」

 

不思議そうにナオが俺を見ると

 

「え?ああ・・・こいつの喋っていることがわかたんだよ。あはは…変だよな?」

 

「動物の言葉がわかる?それってすごいじゃないの。・・・・・あ、ナオヤあなたの右手のルーンが光ってる。もしかしてそのルーンの力かもしれないわね。。使い魔の中には契約することで特殊な能力を持つ時があるから」

 

「ああ…なるほど。それでか・・・・・」

 

じゃあ、紫電改の声も・・・・・

 

「へ~動物の声がわかるなんてそれにあの緑色の竜もそうだし、やっぱルイズとナオじゃ同じ平民でも天と地の差があるわね。まあ、ゼロのルイズにはただの使い魔の方がお似合いね。そう言えばあなたたち名前は?」

 

「平賀 才人」

 

「宮藤直哉。因みに隣にいる才人もそうだが、直哉が名前で宮藤が苗字だ」

 

「ふ~ん・・・・ヒラガサイトにミヤフジナオヤね~それに苗字と名が逆なんて変ね?まあ、良いわそれより二人とも早くしないと授業に遅れるわよ~お~ほほ!」

 

と、高笑いしてキュルケは去った。なんだあいつ・・・・もし男だったらぶん殴ってるな…絶対。一方ルイズは

 

「な、なんなんのよ、あの女は!!」

 

「ま、まあ・・・ルイズ。キュルケの言葉はあまり気にしないほうがいいわよ。それよりも早く授業に行きましょ。急がないと遅れるわ」

 

「あ、そうだったわね。ほら行くわよ!!」

 

とそう言い俺たちは急いで教室がある方へ走るのであった。そして教室につき教師であるシュヴルーズと名乗る中年の女の人が魔法にある『4っというつの系統』やその数による魔法階級?などの授業を行なっている。

 

「ふ~ん・・・・魔法って言ってもいろんなのがあるんだな。それも4つ」

 

「ええ、系統には『火』『水』『土』『風』の4つがあるわ。あそこにいるシュヴルーズ先生は土属性のメイジよ?」

 

と、横にいるナオが教えてくれた。・・・・ン?ちょっと待て?

 

「明治?」

 

「メイジって言うのは魔法の使える人のことよ。大体は貴族や王族が多いわ。もしかしてメイジを知らないの?ナオヤ。」

 

「ああ、俺の知っている明治って言うのは昔、俺の国の年号の文字しか知らないよ」

 

「ふ~んそうなんだ。そう言えばナオヤはこの世界の人じゃないんだったわね・・・・・で、ナオヤ、ネンゴウってなに?」

 

「え?ああ、年号って言うのは簡単に言えば特定の年代につけられる称号だよ。因みに俺がいた世界の年号は『昭和』だったよ」

 

「へ~、でそのショウワだったけ。それって意味があるの?」

 

「え?う~ん。俺もあまり詳しくはないんだけど確か昭和はたしか国民の平和および世界各国の共存繁栄を願う『百姓昭明、協和萬邦』の昭和からとったって聞いたよ。因みに俺がさっき言った明治って言うのは『明るく国を治める』・・・・だったけな?」

 

「へ~そうなんだ・・・・」

 

と、俺の言葉にナオは納得したのか頷いた。因みに明治の元号の由来は『易経』の「聖人南面而聴天下、嚮明而治」からきていることは直哉は知らなかった。

その後も授業は続き今度は魔法の階級、こちらではレベルというらしいがその話をしていた。その内容は興味深く俺はその話を聞く。それによると、魔法使いのレベルは、系統を足せる数で決まり、1つだと『ドット』、2つで『ライン』、3つで『トライアングル』、4つで『スクウェア』となるらしい。俺はそのことを胸ポケットに入れていたメモ帳を鉛筆で書く。すると俺はナオにあることを訊いた。

 

「なあ、ナオ。一つ訊いてもいいか?」

 

「なに、ナオヤ」

 

「ナオってレベルっていくつ?それと属性は?」

 

「わたし?私は風属性のトライアングルよ」

 

「なるほど・・・・結構高いんだな。そう言えばさっきキュルケがルイズのことをゼロって呼んでいたけどナオもそんなあだ名とかあるのか?」

 

「うん。私のあだ名は『疾風のナオ』って呼ばれてるの。でもみんなはたまに変わり者のナオって言うこともあるわ」

 

「変わり者?なんで?」

 

俺が不思議そうに言うとナオは少し顔を暗くする

 

「うん。私ってね昔から好奇心旺盛でね。よく小さい頃から疑問があったらメイドさんやコックの人そして職人さんに質問したり、またはそれを真似て魔法を使わずに何かを作ろうとしたことがあるの。でね、学園に入学した時もそう言うことしたら、みんなから『優等生なのに貴族らしくない変わり者』って言われちゃってね・・・・ねえ、ナオヤ。私って変かしら?」

 

「いいや、変じゃないよ。何かに疑問を持ち興味を持つことは大切なことだよ。だから誰が何と言おうとナオはナオの好きにやればいいんじゃないかな?」

 

と、俺が小声で言うとナオはふふっと笑い

 

「どうしたんだ?」

 

「いえ、ただお父様と同じこと言っていたからつい」

 

「ナオのお父さんに?」

 

「うん。お父様って公爵なんだけどね。身分とか地位にとらわれない自由な発想の人でね。昔なんかは平民の格好をして畑仕事とかしたことがあったんだって。それでね、周りの貴族が変な目で見てもお父様は『誰が何と言おうと気にせずナオのやりたいことをすればいい』って言ってるの」

 

「へ~いいお父さんだな。俺もあってみたいよ」

 

「うん。実家に帰るとき一緒に会いに行こうね」

 

と、そんな話をした後、俺とナオは授業の話に再び耳を傾けるのであった。そして俺が疑問に思っていた才人の主?のルイズのあだ名の『ゼロ』の部分の疑問はその後の物を別のものに変える『錬金』っという魔法の時にわかることになった。先生が誰かに実演させようとあたりをきょろきょろ見廻っている時丁度ルイズと目が合って彼女にその錬金の実演をさせようとしたのだが・・・・

 

「先生、止めといたほうがいいと思います」

 

生徒たちを代表して、キュルケが言った。

 

「どうしてですか?」

 

「危険です」

 

キュルケが言うと、教室の殆ど全員が頷いた。

 

「危険?錬金のどこが危険なのですか?・・・・まあとにかくミス・ヴァリエール。こっちに来てやってみなさい」

 

「はい」

 

と、先生が首をかしげる中ルイズを呼び錬金をやらせる。それを見た生徒たちは全員顔を青くしそんな中一人の青い髪の眼鏡少女が立ち上がり本を読みながら部屋を出る。

なんだろう・・・・ガダルカナルの時のような嫌な予感がする・・・・

 

「な、なあ・・・・ナオ。い、いったい何が起きるんだ?これって話に聞けばただ物を別の物に変換させるだけだろ?なんで他の生徒たちが後ろの方へ避難しているんだ?」

 

「ナオヤ。とりあえず、何が起きても対処できる心構えだけはしといてね」

 

俺がそう訊くとナオは苦笑いしつつそう言う。ナオがそう言った瞬間ルイズは呪文を唱え杖を振り下ろした瞬間、錬金に使う石が大きく爆発し教室は爆音と黒煙で充満される。そして煙が晴れるとそこには椅子やら机やら倒れ散らかりまくり、そして才人はっというといきなりの爆音と爆風のせいでの目を回しのびていた。そしてルイズは煤まみれになりそれを始動した先生は才人と同様、目を回し倒れていた。てか、すごいな今の爆発と爆風。大体60キロ爆弾級だったな・・・・・

 

「ナオ・・・・大丈夫か?」

 

「え、ええ・・・大丈夫よいつものことだから。ナオヤは?」

 

「え?ああ、こんなのアメ公の爆撃に比べればなんともないよ」

 

「アメコウ?」

 

と、俺の言葉にナオが首をかしげているとその爆発の原因であるルイズがコホンと咳をし

 

「ちょっと失敗したみたいね」

 

そう言うと生徒たちは

 

「どこがちょっとだよ!!」

 

「今まで成功の確率ゼロじゃないか!」

 

「そうよ!ゼロのルイズ!!」

 

と、ナオ以外の生徒たちがルイズに罵声を浴びせる。この時、俺はなぜ彼女がゼロなどというあだ名が付けられているのかわかったのであった。

 

 

 

 

 

一方、別の部屋ではコルベールが何かの本を読んで調べていて、とあるページを見た時

 

「こ、これは!?」

 

そのページに書かれたものを見てコルベール先生は驚きの声をあげるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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決闘の引き金

ルイズが教室を爆発させた後、俺とナオは廊下を歩いていた。因みにルイズとその使い魔である才人はシュヴルーズ先生に罰として教室の掃除を命じられ今教室を片付けている。ナオや俺も手伝おうとしたのだが、それだと罰の意味がないと言われた。

 

「なあ、ナオ。一つ訊いてもいいか?」

 

「なに?」

 

「さっき教室でみんながルイズのことゼロって呼んでいたけど・・・・あれってもしかして」

 

「・・・・・・ええ、察しの通りよ。ルイズは貴族が当たり前のようにできる魔法が使えない。だからみんな彼女のことを『ゼロのルイズ』って呼ぶのよ。・・・・でもそれが何なのよ。魔法が使えなくてもルイズはルイズよ。みんなが何と言おうが私は馬鹿にすることはしないわ」

 

「そうか・・・・ナオは優しいんだな・・・・なあ、ナオもう一つ訊いてもいいか?魔法って失敗すると爆発するものなのか?」

 

俺がそう言うとナオはピタッと立ち止まる

 

「いえ、普通、魔法が失敗すると何も・・・・・・・・・・あれ?そう言えば変だわ」

 

と、ナオもその違和感に気付く。するとそれで何かのスイッチが入ったのか

 

「普通、失敗した時は爆発なんてしない・・・・・でも爆発が起きた・・・・じゃあ、なんでルイズが呪文を唱えた時爆発したのかしら?・・・・・呪文を間違えた?いや努力家のルイズがそんなミスをするわけもない・・・・じゃあ、何が原因なのかしら・・・・・」

 

と、なにやらぶつぶつ唱え考え始める。ナオってなんか考えている姿を見るとまるで学者っぽいな・・・・

 

「・・・・とにかくそれは後で調べるとして・・・・・ねえ、直哉。この後昼休みだけど、どうするの?」

 

「ん?そうだな・・・・俺はこれから紫電改の整備に行くとこだよ。幸い整備道具はあの紫電改にあったしね」

 

そう、なぜだか知らないがあの朝早くコルベールさんと紫電改の話をしていた時コックピットの中に整備道具が入った道具箱があった。出撃前まではそんなものがなかったから、きっとコルベール先生が入れたのかと思っていたが当の本人は知らないっと言っていた不思議なこともあるな・・・・・俺がそう思っていると。

 

「ねえ、直哉。私も一緒に行ってもいい?私、前に直哉が言っていた飛行機っという魔法を使わない飛行機械のこといっぱい聞きたいし」

 

「油臭いとこだぞ?いいのか?」

 

「大丈夫!私、小さい頃、お父さんが良く言っている武器職人のおじさんの手伝いしたことがあったのよ。だからそんなの前々、気にしないわ」

 

清々しいくらいの笑顔でそういうナオ。

 

「そうか・・・・・じゃ、行こうか」

 

「うん」

 

そう言い俺とナオは紫電改が置いてある倉庫へと向かうのであった。一方別の場所、塔の最上階にある学園長室には、このトリステイン魔法学院の学園長がいるのだが・・・・

 

「あだっ!年寄りを。君。そんな風に。こら!あいだっ!」

 

その学園長という学園のトップの肩書きを持つオスマンという長い髭の老人は、現在、秘書であるロングビルという女性に蹴られていた。

 

「だったら、使い魔を使って覗きなんてしないでください!」

 

「いいじゃないか!下着の覗きの一つや二つくらい!年寄りの楽しみを奪うでない、それだから婚期を失うんじゃ!!」

 

「ッ!?まだ言うんですか#!!」

 

ロングビルは怒ってそう言いもっと強く蹴るのであった。すると・・・・

 

「たたた、大変です!オールド・オスマン!!・・・…て、なにをされているのですか?」

 

「おお、これはコルベール君・・・・いや、なに・・・まあ、親睦を深めてというか・・・何というか・・・まあそんなことはいいんじゃ。何か用かね?」

 

「え?ああ、そうでした!実は昨日、ミス・ヴァリエールとミス・ユミエールについて話しましたよね?」

 

「うむ・・・・確か平民の使い魔を召喚させたという話じゃったな。確かにそのような前例は今までない・・・・・それがどうかしたのかね?」

 

オスマンがそう言うとコルベールは、手に持っていた書物をパラパラとめくり

 

「はい。実は昨日二人が召喚したあの二人の使い魔のルーンが珍しく手いろいろと調べていたのですが・・・・これとこれに酷似していたのです」

 

そう言い、コルベールはそう言いとあるページを開き指を指す。そこには上の方にはサイトノルーンと同じ文字そして下の方には直哉と同じ紋章が刻まれていた。それを見たオスマンは顔色を変えた

 

「ミス・ロングビル。すまないが・・・・」

 

「はい・・・・」

 

オスマンがそう言うとロングビルは頷き一礼をしてて部屋を出るそして、オスマンはいつもとお茶らけた顔ではなく真剣な目でコルベール先生の方を向く

 

「コルベール君・・・・・このルーンは・・・・・」

 

 

 

 

一方その頃、直哉の紫電改が置かれている小屋の中では、直哉が紫電改のエンジンの整備をし、ナオがそれを手伝っている

 

「ナオ、レンチ」

 

「はいどうぞ。・・・・・・どう?ナオヤ?それって大丈夫なの?」

 

「う~ん・・・・幸い動力源のエンジンは死んでねえんだけど」

 

「エンジン?それって前に直哉が話してくれた飛行機の心臓って言ってたやつ?」

 

「ああ、これで燃料が満タンなら・・・・・ん?」

 

直哉がコックピットを整備しているとあることに気が付くそれは燃料の量を示す燃料計であった。その燃料計には空だったはずの燃料が満タンになっていたのだ

 

「(・・・・空だったはずの燃料が満タンになっている・・・・・コルベール先生が入れたのか?いやいや、コルベール先生やナオの話では、ここには飛行機どころか車や電話もない俺の世界で言うと中世の時代のような世界だ。そんな世界にガソリンがあるとは思えないし・・・・・どうなっている?)」

 

「ナオヤ?どうしたの?」

 

「え?ああ、いやなんでもないよ・・・・さて今日の整備はここまでにするか?少し疲れたんじゃないかナオ?」

 

「ううん、全然平気よ。それどころかやっぱりこの飛行機ってすごいわね!この一つ、一つハルケギニアでは作れない代物ばかりよ!!」

 

ウキウキしながら紫電改を触っていた。するとナオのお腹の虫が鳴り始める。そう言えばナオ朝、少ししか食べていなかったけ・・・・

 

「あ・・・・///」

 

ナオは顔を赤くしお腹を押さえる。俺はふっと笑い、紫電改から降りると

 

「少し休憩するか?」

 

「・・・・・・・うん」

 

そう言い俺とナオは小屋を後にし広場に向かう。するとそこには椅子やテーブルが叱れて生徒たちがお茶屋ケーキなどを食べて楽しんでいた。そしてナオと直哉は席に座り紅茶を飲んでゆっくりといていた。すると

 

「あれ?宮藤さん?」

 

と、声が思振り返るとそこには才人がいた

 

「おお、才人か。・・・・・ん?お前ルイズはどうしたんだ、一緒ではないのか?」

 

「え?あ~それがその~」

 

と、才人が言うには教室の片づけをしているさい、彼女の『ゼロ』っという部分をいじくり倒した挙句彼女の逆鱗に触れてそのゼロって言った数だけご飯抜きと言われたらしい・・・・俺はその言葉を聞いてため息をつく

 

「はあ~それはさすがにお前が悪い。からかいすぎはよくないぞ才人。親に調子に乗りすぎると痛い目にあうって教わらなかったか?」

 

「うっ・・・確かに俺もちょっと言い過ぎたけど・・・・てか、宮藤さんの言い方まるで死んだ祖父ちゃんみたいな言い方だな?」

 

「そうか?まあ、70年以上の差があるんだ。それにお前の祖父ちゃん何年生まれなのか?」

 

「えっと・・・・確か1926年生まれって言ってたぞ?」

 

「大正15年・・・・俺と同い年か・・・・・そりゃあ、言い方が似ているて言われるのも頷けるな・・・それよりも才人。お前なんでケーキを配っているんだ?」

 

「ああ、それは・・・・」

 

と、才人は説明した、才人曰くその後、空腹でうろうろしていたら偶然メイドのシエスタという少女から食事をもらった代わりに仕事を手伝っているのだ。

 

「なるほど・・・・・それは感心だな。手伝おうか?」

 

「いや。俺だけでも大丈夫だよ」

 

「そうか・・・・・・・ん?」

 

すると何やら向こうで人だかりができて何やらもめる声が聞こえた

 

「なんだろう?何かあったのかな?」

 

「俺、ちょっと見てくる!」

 

「あ、おい才人!・・・たくっ・・・・しょうがないやつだな」

 

そう言い俺たち3人はその人だかりの方へ向かった。そして人だかりにの中、俺たちはそれをかき分けて前へ出ると、金髪の巻き髪に、フリルのついたシャツを着た、キザなメイジがメイドにいちゃもんをつけていた

 

「君が軽率に、香水の壜なんかを拾い上げたお陰で、2人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」

 

「あ…あの…私はただ、あなた様の香水を拾って渡しただけでして・・・・・」

 

と、そのキザ男の言葉にメイドさんが困っていると才人が彼女の傍により

 

「シエスタ!大丈夫か何があったんだよ?」

 

と、そう言うとシエスタはおろおろしながらわけを話した

 

「あ、才人さん。実は私、そこの貴族様の香水を拾って『落とし物ですよ』って言ったんです。でもその貴族様は気づかなかったみたいだったのでもう一度声を掛けたら、その香水は恋人さんの香水で、しかもその貴族さん二股してたみたいでその・・・・」

 

ああ・・・何となく話が見えてきた。サイトやナオもそれがわかったのか呆れた顔をするのだったするとそのキザ男ことギーシュは

 

「いいかい?メイド君。僕は君が香水の壜をテーブルに置いたとき、知らないフリをしたじゃないか。話を合わせるぐらいの機転があってもよいだろう?」

 

と、なんとも自分勝手なことを言う。そのことに俺と才人は不機嫌になり

 

「二股かけたお前が悪い」

 

「いい訳とは見苦しいぞ。お前も男だったら潔く過ちを認めてその泣かせた女の子二人に謝ってきたらどうなんだ?」

 

二人がそう言うと周りにいた生徒たちは笑いだし

 

「その通りだギーシュ!お前が悪い!二股かけるのが悪いよ!!」

 

みんながそう言うとギーシュは顔を赤くし二人をギラリとにらむ

 

「君たちは確か、ゼロのルイズと変わり者のナオが召喚した呼び出した平民だったな。どうやら君たちは平民・・・しかも使い魔のの分際で誇りある貴族に対する礼を知らないようだな」

 

「あいにく、貴族なんかいない世界から来たんでね」

 

「それにあんたのやることが誇りある貴族のやることか?」

 

そう言うとギーシュはにやりと笑い

 

「よかろう。君たちに礼儀を教えてやろう。丁度いい腹ごなしだ・・・・・君たち二人に決闘を申し込む!」

 

そう言いギーシュは立ち上がった。

 

「おもしれえ」

 

と、才人もやる気満々だ

 

「で、そこの君はどうするんだい?」

 

と、俺の方へ顔を向ける。すると、ナオが

 

「ナオヤやめて!あなた軍人だけどさすがに危ないわ!」

 

と、心配してそう言う。すると

 

「大丈夫だよ。こんな奴に負けるほど俺は弱かないよ」

 

「でも・・・・ナオヤの世界では魔法はなかったかもしれないけどこっちにはあるの、もし下手をしたら・・・・」

 

なるほどそれも一理ある…しかし

 

「大丈夫だよ。それにな怪我が怖くて帝国軍人なんて務まるかよ。ここで逃げたらあいつは一生平民や自分より弱いやつを馬鹿にし続ける。そう言うやつは俺の一番嫌いな奴なんだよ。特にナオのことを変人呼ばわりしたのが気に食わねえ」

 

そう言いうと俺はギーシュを睨みそして

 

「喧嘩上等だよ!いいぜ。俺も受けてやる」

 

『喧嘩上等』その言葉は菅野隊長の口癖だ。まあ他にも『バカヤロー、コノヤロー』もあるがその喧嘩上等っという言葉は俺たち301飛行隊『新選組』の言葉にもなっている。すると才人が

 

「で・・・・・決闘場所てここでやんのか?」

 

「まさか。貴族の食卓を平民の血で汚したくはない。ヴェストリの広場で待っている。二人とも絶対に僕を怒らせたことを後悔させてやる!」

 

と、そう言いギーシュは去った。そして野次馬達も、ギーシュの後を追い、そして絡まれてたメイドはいつの間にか消えていた。するとそこへルイズがやってきて

 

「あんたなにやってるのよ!!勝手に決闘なんか約束して!」

 

と才人にそう言い腕を引っ張る

 

「お、おい!何処へ連れて行こうとしてるんだよ!?」

 

「ギーシュのとこ、今謝れば許してくれるかも」

 

「嫌だね」

 

「聞いて?平民は貴族に絶対に勝てないの!怪我で済めばいい方なんだから!」

 

と、ルイズがそう言うと才人は不機嫌な顔でルイズを見て

 

「ヴェストリの広場ってどこだ?」

 

才人は歩き出しギーシュの友人の一人に決闘場を訊くと

 

「ああ、あっちだあっち」」

 

「もう!マリコルヌ!!・・・・・ああもう!ほんとに!使い魔のくせに勝手なことばかりするんだから!」

 

ルイズは才人の後を追いかけた。そして俺も才人の後を追う、すると

 

「ナオヤ・・・・」

 

と、ナオが心配ッそうに見ると俺はふっと笑い

 

「大丈夫さ、俺は死なねえよ怪我はするかもしれんが、まあ喧嘩に怪我はつきもんだ」

 

「でも・・・・・」

 

「なあ、ナオ。さっきルイズが平民は貴族に勝てないって言ってたよな?」

 

「うん・・・・」

 

「じゃあ、俺たちがその常識を覆してやるよ・・・・・・何せ俺たちの先祖は勝つのは絶対に不可能と言われた白人と互角に戦え勝った人種なんだからな・・・・・」

 

そう言い俺も、才人の後を追いヴェストリの広場へと向かうのであった。

 

 

 



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ヴェストリの広場の決闘

「諸君、決闘だ!」

 

才人と直哉が広場に来たとき、そう言ってギーシュが薔薇の造花を掲げ周りからは歓声が沸き起こる。

 

「ギーシュが決闘するぞ!相手はルイズとナオの使い魔の平民たちだ!」

 

広場に集まった野次馬の貴族の生徒たちがそう騒ぐ。そしてギーシュは才人と直哉を見て

 

「とりあえず、ふたりとも逃げずに来たことは褒めてやろうじゃないか」

 

と、ものすごいどや顔でそういうギーシュ。なんだろうやっぱ思いっきり殴ってやりたい。すると俺の隣にいる才人が

 

「誰か逃げるかよキザ野郎」

 

「右に同じだ。敵前逃亡は士道不覚悟なんでな」

 

俺と才人は腕を組んでそう言うと

 

「ふ・・・そうか。では、始めるか」

 

と、そう言いギーシュが花形の杖を振りかざそうとしたとき

 

「やめてギーシュ!」

 

と、そこへルイズとナオがやってくる。そしてルイズは

 

「ギーシュ。いい加減にして!大体ねえ、決闘は禁止じゃない!」

 

「禁止されているのは、貴族同士の決闘のみだよ。平民と貴族の間での決闘なんか、誰も禁止していない」

 

ルイズは言葉に詰まる。

 

「そ、それは、そんなこと今までなかったから・・・・」

 

「ルイズ、君はそこの平民が好きなのかい?」

 

ルイズの顔が怒りで赤く染まった。

 

「誰がよ!やめてよね!自分の使い魔とナオの使い魔がボロクソにされるのを、黙って見ていられるわけないじゃない!」

 

「ボロクソって‥‥」

 

「酷い言われようだな・・・・」

 

ルイズの言葉に俺と才人は苦笑いをする

 

「ルイズ。君が何度抗議しても、すでに決闘は始まっているんだよ」

 

と、そう言いギーシュが杖を振り上げ花びらが二枚、宙に舞ったかと思うと、それは、甲冑を着た女戦士の形をした人形になった。大きさは人間と同じぐらいだが、金属・・・・いやあれは青銅か。まあ、とにかく固いもので出来ていた。

 

「自己紹介が遅れたね。。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。したがって、青銅のゴーレム、『ワルキューレ』がお相手するよ。それと僕はメイジだから魔法で戦うけどかまわないよね?」

 

その言葉に俺はうっかり忘れてた。相手が魔法使いであることに。するとそのワルキューレが俺と才人に向かって突進してきた

 

「来るぞ才人!」

 

「おう!」

 

俺の言葉に才人は頷き、俺はその青銅人形の最初の一撃を躱す。だが、才人はよけ遅れたのか腹に一発喰らう

 

「ぐっ!!」

 

才人は腹を抑え込んで蹲る。

 

「才人!大丈夫か!?」

 

「だ、大丈夫。ちょっと油断しただけだから・・・・宮藤さん!また来ます!!」

 

「え?うわっ!!」

 

才人の言葉に俺は前を見るとワルキューレが俺に拳を振り上げ俺は柔道の技でそれを躱しワルキューレを転ばす。まさかここで予科練の時に習った柔道が役に立つなんてな・・・・だがさすがに素手で青銅でできた相手を倒すのはちょっと難しいな・・・・さて、どうするか。そう思い、俺は才人の方を見るとルイスが駆け寄っているんを見た。

 

 

「これでわかったでしょ才人。平民はメイジには勝てないのよ。」

 

ルイズがそう言うと才人は無言で立ち上がる

 

「ちょっとなんで立つのよ。バカ!」

 

「……むかつくから」

 

「え?」

 

「メイジだか貴族だか知らねえけどな。お前ら無駄に威張りやがって・・・・」

 

「何訳の分からないことを言っているの!」

 

と、そう言うとその後ろにいたギーシュが

 

「どうだい?これでわかったろ。もっと痛い目にあいたくなかったら謝りたまえ。そこで善戦している平民君もだ。今謝ればそこまでにしてあげるよ」

 

と、俺とギーシュに言うが、

 

「はっ・・・お前の攻撃なんて全然効いていねえよ!あんたの人形弱すぎ」

 

「俺も降伏するつもりはねえ。帝国男児もとい日本男児に降伏の文字はねえよ。才人・・・・もう一度言う。お前、引く気はないんだな?」

 

俺は才人の方を見ると才人は頷き

 

「ああ、俺は一つ決めたものは絶対に曲げない。たとえ元の世界に変えれなくても、使い魔としてこき使われても、床で寝ても別にかまわない。ただな。俺には絶対に譲れないものがあるんだよ」

 

「それは?」

 

「下げたくねえ頭は、下げられねえ!!」

 

と才人は力強くそう言う。こいつのそのまっすぐな信念はどこか菅野隊長に似ていた。たとえ自分より上官でも自分が不満に思ったことははっきり言う。そんな感じの信念を俺は才人から感じた。

 

「ふ・・・・70年以上たっても変わらないものがあるんだな・・・・」

 

「え?」

 

「いや、なんでもねえよ」

 

と、俺はそう言い再びギーシュの方を見る

 

「というわけだギーシュ。俺たちは降伏しない。だがここで一つ言わせてくれ。この決闘不公平とは思わないか?」

 

「ほう、何がだ?」

 

「考えてもみろ。君は魔法という武器を使えるがこっちはできない。しかもこっちは丸腰だ。だからここで公平にするため俺は君に要求をしたい」

 

「どんな要求かね?」

 

「簡単さ。彼に武器を与えてくれ。それで勝負は公平になる」

 

「なるほど…一理あるな。だが君はいいのかい?」

 

「ああ、俺にはこの拳という秘密兵器がある」

 

「そうかい。なら・・・・」

 

そう言うとギーシュは杖を振るとそこから剣が現れ地面に突き刺さる

 

「受け取りたまえ。だがその剣を受け取った瞬間。僕は容赦しないよ」

 

と、ギーシュが言うと才人はその件を取ろうとするがルイズがそれを止める

 

「だめよ。絶対にだめなんだから!それを握ったら、もうギーシュは本当に容赦しないわ!」

 

「俺は、元の世界にゃ、帰れねえ。ここで暮らすしかないんだろ?」

 

才人は独り言を呟くように言った。

 

「そうよ。それがどうしたの!?今は関係ないじゃない!」

 

ルイズは才人の手を握り締める。才人は力強い声で言い放った。

 

「さっき宮藤さんに言ったように俺は使い魔でいい。寝るのは床でもいい。飯は不味くたっていい。下着だって洗ってやるよ。生きるためだ。しょうがねえ・・・・・でも下げたくねえ頭は、下げられねえよ」

 

才人はルイズの手を振りほどき、地面に突き立った剣を握った。その時、才人の左手に刻まれたルーンが光りだし、

 

「ナオヤ!」

 

「おう。ナオ。どうしたんだ?」

 

「本当にやめるつもりはないの?あなた酷いスリ傷だらけじゃない」

 

ナオは心配そうな目で俺を見る。実際俺はあの青銅人形の攻撃を躱していたが完全に躱し切れてはなくたまに顔に当たったりすったりと体はスリ傷と痣だらけであった。

 

「ああ・・・・ここでやめちまったら。あの戦争で死んでいった戦友たちに申し訳ない。俺はやめねえよ・・・・・」

 

そう言い俺はこぶしを構える。それを見たナオは

 

「・・・・・わかったわ。でも死なないでね」

 

「ああ、わかってるよ。ここで死んでたまるかよ・・・・ここで死んだらお前を守れねえからな」

 

と、そう言うと同時に才人と同様、直哉の左手のルーンが光り始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

学園長室

 

「コルベール君・・・・・この本に書かれている二つのルーンは伝説にのみ存在する使い魔のルーンじゃぞ?ましてはあのヴァリエールの三女とユミエールの長女が召喚するなど・・・・・これは失われしペンタゴンの一角にかかわることじゃ」

 

「ま、まさか・・・・」

 

「ともかくこの件は内密じゃぞコルベール君」

 

「はい。わかりました」

 

そう言い、オスマンは再び先ほどの本を見る

 

「(まさか・・・・・本当にあの二人があの虚無のガンダールヴとかつて古の戦士と言われたドリフターズなのか?)」

 

そう思っていると二人は何やら外が騒がしいのに気づく

 

「なんじゃ?外がやけに騒々しい」

 

「なんでしょうか?」

 

そう言い二人は窓の外を見るのであった。

 

 

 

 

 

再び場所は戻って広場、そこでは驚く事が起きていた。

 

「な、なにが起きているんだ?」

 

ギーシュも驚いていた。あの才人とかいう少年が剣を握ったとたん。瞬く間にワルキューレを真っ二つにした。それだけではないあの宮藤も・・・

 

「剣一閃!!」

 

と、そう叫びワルキューレの顔面を殴るとそのワルキューレにひびが入りそして割れて倒した。そして

 

「よし!あの青銅人形を倒した!あとはあのキザだけだ才人!」

 

「おう!!」

 

そう言い二人はギーシュに向かって突進する。それを見たギーシュはさすがに顔が青くなり焦って

 

「ワ、ワルキューレ!!」

 

とそう言いさらに六体の青銅人形を召喚する。すると

 

パァーン!!パァーン!!パパァーン!!

 

と、すさまじい音が鳴り響きそこにいた6対のワルキューレの内4体が粉々に砕ける。

 

「な、なんだ!?」

 

ギーシュが驚く。よく見ると直哉の手には拳銃があった。その拳銃は旧日本軍の使用していた九四式拳銃であった。そして才人は残り三体のワルキューレを剣で斬り倒し、そして二人はギーシュのすぐ目の前にやってくる

 

「ひっ!?」

 

あまりの恐怖にギーシュは目をつぶる。だが何も起こらない。ギーシュは恐る恐る目を開けるとそこには才人がギーシュのすぐ横の地面に剣を突き立てていて直哉は拳銃を突き付けていた

 

「どうだ小僧?」

 

「まだ続けるか?」

 

二人がそう言うとギーシュは首を横に振り

 

「いいや・・・・僕の負けだよ」

 

と彼は素直に降参を認め、周りにいた生徒たちは

 

「おい、どうなっているんだよ・・・・」

 

「ギーシュが平民に負けたぞ」

 

などという声が飛び交っている。

 

「やったな才人。見事な剣さばきだったぞ」

 

「ええ。それにしても宮藤さん。拳銃があるならあるで初めから使えばよかったのに」

 

「ああ、まあ仕方ねえだろ?ここじゃあ俺の銃弾は補給できるかどうかわからない貴重なもんだし」

 

「ああ、それもそうか」

 

と、二人が話している中ギーシュが

 

「貴族が・・・平民に負けるなんて・・・・・ふ、二人とも…いったい何者なんだ?平民なのにこの僕のワルキューレを倒すなんて・・・・」

 

それを聞くと才人は、剣を肩に担ぐような仕草をし直哉は拳銃をホルスターに戻し

 

「俺は、ゼロのルイズの使い魔。平賀 才人だ!」

 

「そして俺はナオの使い魔で誇りある大日本帝国の軍人だ」

 

と、決めポーズをとってそう言いうと二人はばたりと倒れてしまうのであった

 

「サイト!?」

 

「ナオヤ!?」

 

それを見たルイズとナオは二人に駆け寄ると二人は寝息を立てて気絶していたのであった。そしてそれを見たルイズはため息をつき、ナオは直哉を見てふふっと笑い

 

「(少しだけかっこよかったわよナオヤ)」

 

と、ナオは少し頬を赤らめてそう言うのであった。

 

 

 



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その日の夜、ナオの趣味

「あ~昨日は思いっきり体を動かしたから結構堪えたな~」

 

あの決闘から翌日の夜、俺は廊下を一人で歩いていた。これは俺がこの世界に来てのひそかな楽しみでもある。そしてしばらく歩いていると

 

「ん?才人?」

 

と、廊下の奥で才人がふらふら歩いているのが見えた。俺は才人に近づき声をかける

 

「おい、才人」

 

「え?ああ、宮藤さん。宮藤さんもなんでこの時間に?」

 

「俺はただの散歩だ。それよりもお前、こんな夜中に何しているんだ?」

 

「えっと・・・・それは・・・・その・・・」

 

「お前、まさかと思うがまたルイズをからかったのか?」

 

と、俺が言うと図星らしく才人は頷き、そしてルイズに夕食抜きの宣言をさせられたという。俺はその理由にため息をつき

 

「はぁ~まったくお前ってやつは懲りないな。別にからかうのは駄目とは言わないけどほどほどにしねえと痛い目見るぞ。現に夕食抜きになっているしな」

 

「うっ…返す言葉もない」

 

と、才人はそう言う。やれやれ・・・・仕方がない

 

「まあ、説教はこれくらいにして問題は晩飯をどうするかだな・・・・・・そうだ!」

 

「宮藤さん?」

 

と、俺は懐からあるものを取り出す。それは

 

「宮藤さん。それって・・・・・缶詰ですか!?」

 

そう、俺が取りだしたのは缶詰、しかも牛肉の大和煮と南国の果物が入った奴だ。

 

「ああ、出撃する直前に堀さんと一緒に食糧庫からギンバイしたものだよ」

 

「ギンバイ?」

 

ギンバイとは海軍用語で不正に食料を入手すること。銀蠅とも言う。

 

「ま、いいか。宮藤さん!早く開けて食べましょう!」

 

「ああ、そうだな。えっと・・・缶切りはッと・・・・・」

 

と、俺は懐やらポケットやら探したのだが缶切りが見当たらない・・・・

 

「・・・・・・・あ」

 

「どうしたんですか宮藤さん?」

 

「缶切り・・・・・九州の基地に置いてきたまんまだった・・・・な、なあ才人。缶切りとかナイフだとか持っているか?」

 

「持ってるわけないだろ!?これ取っ手がついている奴じゃないの?」

 

「取っ手がついている?なんだそれ?」

 

才人の言葉に宮藤は首をかしげる。因みに現在使われているイージーオープンエンド式缶詰は戦後に発明されたものであり戦時中にはまだなかった。

 

「どうしよう・・・・刃物が無ければ開けられないし・・・・」

 

と、俺と才人が困っていると

 

「あれ?才人さん?それに武藤さんも」

 

「「・・・シエスタ?」」

 

と、そこへこの学園のメイドであるシエスタがやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がははっ!こんな余り物でよければどんどん食べてくれ『我らの剣』に『我らの翼』!!」

 

俺と才人は今、学園の厨房の中でシチューを食べていた。

 

「いや~すみませんね。才人だけではなく俺まで馳走になって」

 

「いいさ!いいさ!何せあんたらは俺たちのヒーローなんだからさ!」

 

と、がははと大笑いしている太った中年の男性はこの学園の厨房の責任者でコック長のマルトーさんだ。すると

 

「『我らの剣』に『我らの翼』?なんだそれ?」

 

と才人が疑問の声をあげる。まあそれは俺も思った。するとマルトーは

 

「そうさ、あんたたちは俺らと同じ平民なのにあんな偉ぶった貴族に勝ったんだ。だから我ら平民の誇りであり英雄の『我らの剣』に『我らの翼』だ!」

 

「英雄って言われても・・・・俺はそんな柄じゃ・・・それに俺は剣を握っただけで何やなんやら・・・・」

 

「俺もだ。俺はただ腹が立った奴にきつい説教をしただけだ」

 

と正直な気持ちを言ったら、

 

「おい聞いたかみんな。ここが他の貴族たちと違うところだ。真の英雄とはこういうものだ。己の成した偉業を誇ったりはしない!さすがだ!」

 

『うん。さすがだ!!』

 

気持ちが高ぶっているコックたちは、2人の反応をただの謙遜とし思っていない。その様子に俺と才人はただ苦笑するだけであった。すると

 

「マルトーさん。お邪魔します」

 

「おう、来たか、ナオのお嬢さん!待っていたぞ!」

 

「はい。今日もよろしくお願いします」

 

と、そこへエプロンを付けたナオが入ってきてマルトーさんが笑顔で迎える

 

「あれ?ナオ?」

 

「え・・・・・え!?ナオヤ!?なんでここにいるの?」

 

「ああ、俺はただ夕食を・・・・・て、ナオは?」

 

と首をかしげているとマルトーさんが

 

「おや『我らが翼』はナオお嬢ちゃんのこと知っているのか?」

 

とそう訊くと

 

「サイトさんは、ミス・ヴァリエールの使い魔で、ナオヤさんはミス・ユミエールの使い魔なんです」

 

と、シエスタが代わりに説明すると

 

「おおぉー!『我らの翼』はナオのお嬢ちゃんの使い魔なのか?」

 

「え、ええ・・・・・・」

 

と俺は頬を掻いてそう言う。

 

「そうか~そうか~これはナオのお嬢ちゃんに素晴らしい騎士(ナイト)様が付いたってことか。はっはっはっ!!ナオの嬢ちゃん、ますます気に入っちまったぜ!『我らの翼』よ。ナオの嬢ちゃんを、しっかり守ってくれよ!」

 

とマルトーさんは俺の肩をバンバン叩く。結構強烈だな・・・・・杉さん並みに痛い・・・・すると

 

「マルトーさんはナオのこと知っているのか?」

 

「ああ当然さ。ナオのお嬢ちゃんは良く厨房に来て料理を習いに来ているのさ!」

 

「え!?ナオが!?」

 

俺はナオの方を見る。普通貴族とかそう言うのは全部使用人とか料理人に任せているイメージが会ったんだが・・・・・するとナオが

 

「私・・・・・小さい頃頃の趣味が料理だったの。でねこの学園に入学した時にこの学園の料理を食べてね。私もこんなおいしい料理を作れたらな~て、だから私、ここの料理長であるマルトーさんの教えてもらえるようにお願いしたの」

 

「おお!あん時はビックリしたぜ。なんたって、公爵家の大貴族のお嬢さんが、俺に「料理を教えてください」なんて頭を下げてくるもんだから。これは夢かと思って頭をフライパンでぶっ叩いたりしたな。まあ、彼女が冗談で来たんじゃなく本気で習いに来たとわかった時、これは俺も真剣に教えないとなっと思ってよ。今では嬢ちゃんは俺の弟子の中ではナンバー1の腕前でここのシェフにも引けを取らないほどなんだぜ!今ではここのシェフや使用人とも仲良くなって厨房にも気軽に出入りしているのさ」

 

と、マルトーさんは誇らしげに言う。するとマルトーさんは俺とナオの顔を見て何かを察したのか

 

「さてと、では嬢ちゃん。あんたの腕前、『我らの翼』に見せてやりな」

 

「はい!」

 

と、元気よく返事をしナオは料理を作り始める。そしてしばらくすると

 

「で、できたよナオヤ」

 

とナオが料理を持ってきた。ナオが作ったのはオムライスであった。俺はそれを一口食べてナオはそれをそわそわした感じで見る。

 

「ど、どう?ナオヤ?」

 

「ああ・・・・美味しい。美味いよナオ。今まで食べた中で最高の味だ」

 

俺が笑顔でそう言うと

 

「良かった・・・・・」

 

と、ナオは嬉しそうな笑みを浮かべる。

実際にこんなに美味しい料理を食べたのは本当に久しぶりだ。戦争中はろくなもの食べれなかったからな・・・・缶詰生活とかひどい時には野ネズミや蛇とかその場でさばいて食べたことがある。まあ、海軍はまだましだガダルカナルで戦った陸軍なんかは敵に包囲され食糧難に陥り米一粒を刻んで仲間の兵に分配したという噂を聞いたことがあるしな・・・・

 

「俺は料理については詳しくないがやっぱナオみたいに料理のできる女性は魅力的だな・・・・できれば毎日でも食べたいぜ」

 

と、俺がそう呟くとナオは顔を赤くしそして

 

「あ、あのマルトーさん!」

 

「ん?なんだ?」

 

「もっと私に料理の極意を教えてください!」

 

「がはは!よくいった嬢ちゃん!よし!任せときな嬢ちゃんをハルケギニア・・・・いや!世界一の料理人にしてやるぜ!!」

 

「はい!お願いします!!」

 

となぜか二人が燃え上がっていた

 

「な、なあ才人。俺なんか変な事喋ったか?」

 

「お、俺にはさっぱりわかりませんが、ただわかることはここの料理は美味いっということだな」

 

「ああ、それは言えている。本当にここの料理は美味い。俺のいた時代では味わえないほどだ」

 

「そう言えば宮藤さんは太平洋戦争の戦闘機パイロットでしたよね。紫電改の?」

 

「ああ、そうだ」

 

「じゃあさ、菅野直とか坂井三郎とか会ったことあるか?」

 

「ああ、坂井さんなほんの数日ならラバウルで会ったことがある。それに菅野隊長は俺の初陣の時からの上司だよ」

 

「え!?まじか!?やっぱ漫画の時のように『バカヤロー、コノヤロー』とか言っていたか?」

 

「漫画?・・・・ああ確かに菅野隊長の口癖はそんな感じだったよ。でもいい上官だった。あんな仲間想いの人、軍の中ではそうそういなかったよ。菅野隊長だけではない。杉田さんも武藤さんもみんないい人達だったよ・・・・何で戦争ではいい人達が先に死んでいくんだろうな・・・・・」

 

「宮藤さん・・・・・」

 

「すまない。湿っぽい話をしたな。さて食事を続けますか」

 

「そう・・・ですね」

 

なと、ナオとマルトーが燃え上がって料理に励んでいる中、俺と才人は夕食を楽しむのであった。

 



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虚無の曜日

あの決闘から数日後、俺はいつもの小屋で汗と油にまみれながら紫電改の整備をしていた。無論それは俺だけじゃない

 

「どう、直哉?」

 

「ああ、後はこいつを飛ばすだけだな。ここまで治ったのはナオのおかげだよ。ありがとな」

 

「う、うん///」

 

と、お礼を言うとナオは顔を赤くしながらそう言う。するとナオは俺を見る

 

「それにしても直哉。あの決闘のせいで服、ボロボロだね」

 

そう言われ俺は自分の格好を見る。確かに所かしこ破けてたり焦げていたり俺の着ていた飛行服はズタボロだった。まあ、シャツやズボンはまだましだがいつまでも同じ服は衛生的にあまりよくない

 

「まあ、派手に暴れたからな。それ以前にこの世界に来る前の戦闘でもグラマンの銃撃でボロボロだったんだけどな」

 

「グラマン?」

 

「いや、なんでもないよ。それにしても困った替えの服なんてないからな・・・・・」

 

と、そう呟くとナオは

 

「それじゃあ、買い物に行かない?ナオヤの服や日用品とかさ」

 

「え?」

 

「だって、服が無くて困っているんでしょ?それに直哉を何時までも毛布だけで床に寝させとくわけにもいかないし。その他にも必要な物があれば買ってあげる」

 

「い、いや、そんなに迷惑かけるわけには・・・・」

 

「いいの!私は一応貴族なんだよ。そのぐらいの出費は大したことないから遠慮しないで」

 

そう言われ直哉は少し考えそして・・・・

 

「それじゃあお言葉に甘えようかな。確かに服以外にも布団とか欲しいと思ってたしな」

 

「じゃあ、決まりね」

 

「で、いつ行くんだ?」

 

「明日よ。明日は虚無の曜日・・・・つまり休日だからちょうどいいわ」

 

「ふ~ん。で街ってどこにあるんだ?」

 

「トリステインの城下町。馬で3時間の距離よ」

 

「結構遠いな・・・・・という以前に馬か・・・・俺、馬には乗ったことないんだけどな」

 

陸軍の知り合いに騎兵出身の奴がいたけど。こうなることがわかっていたら乗馬とか教えてもらうんだったな・・・・そう思っていると

 

「大丈夫よ直哉。そうだと思ってもう手は打ってあるわ」

 

「へ~どんな手だ?」

 

「それは明日のお楽しみよ♪」

 

「?」

 

その後、ナオは授業があるため教室に向かい俺はというとやることがないため外をぶらぶらしていた。そして広場に着くとそこには生徒たちの使い魔たちが集結していた。

 

「さすが異世界。見たことのない生物がいっぱいだな」

 

とそう呟き壁に寄り添って寝ころぶ。すると一匹の水色の竜が俺のところにやって来た。たしかあの竜っていつも本を読んでいるあの眼鏡っ娘の使い魔だったけな

 

「やあ、竜君。機嫌はどうかな?」

 

と、そう言うと・・・・

 

「(竜君じゃなくて私の名前はシルフィードなの!)」

 

と、頭の中で女の子の声が聞こえ俺手に刻まれているルーンが光る。恐らく今の声はこの龍の言葉だろう

 

「そうかそれは悪かった。で、シルフィードだったけか?今日はいい天気だな」

 

「(うん。いいお天気なの。で君は・・・・・)」

 

「ああ、俺は宮藤直哉。よろしく」

 

「(よろしくなの、あ、そう言えば・・・・)」

 

「ん?どうかしたんだ?」

 

「(うん。明日ね・・・・・・・あ、)」

 

「ん?明日がどうかしたのか?」

 

「(な、ないでもないのね。あははは!)」

 

と、なぜか何かを隠しているようなそぶりを見せシルフィードはどこかへ飛んで行ってしまった。なんだったんだろう。明日、何かあるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝、朝食を終わった後俺とナオはとある部屋に向かっていた。そして部屋に着くとナオはドアをノックして

 

「タバサ、入るね」

 

と、そう言うとドアを開けて部屋に入る。するとその部屋には青い髪に眼鏡をかけたナオと同じぐらいの背丈の少女がベットに座っていた。

 

「おはようタバサ、今日はよろしくね」

 

と、そう言うと彼女は頷く確か彼女はシルフィードの主の眼鏡っ娘か・・・・なるほどナオが言っていたのはこのことか

 

「・・・・・・」

 

と、彼女はじっと俺を見ている。

 

「あ、あの・・・・・」

 

「自己紹介しなくていい。あなたの名は宮藤直哉、ナオの使い魔で平民の深緑の竜使い。前の決闘を見てた。私はタバサ・・・よろしく」

 

「あ、ああ・・・・・よろしく」

 

と、そう言った瞬間、ドアが勢いよく開き、キュルケが入ってくる。

 

「タバサ。今から出かけるわよ!早く支度して頂戴!」

 

入ってくるなり、そんな事を言った。

 

「・・・・先約がある」

 

「わかってる。貴女にとって虚無の曜日がどんな日だか・・・・って、ええっ!?」

 

タバサの言葉を聞かずにまくし立てようとしたところで、タバサの言った言葉の意味を理解して驚くキュルケ。するとナオが

 

「ごめんキュルケ、私たちの日常品の買い物に行こうと思ったんだけど直哉、馬に乗ったことが無いらしくて。それで、自分たちと荷物を運べる移動手段を持ったタバサにお願いしたの。で、キュルケはタバサになんの用なの?」

 

「ああ、そうだった。アタシね!あの才人って平民に恋したの!でね?その人が今日、あのにっくいヴァリエールと出かけたの!あたしはそれを追って、2人が何処に行くかつきとめなくちゃいけないの!けど、馬に乗っていったから、タバサの使い魔じゃないと追いつかないのよ!」

 

と、すごい剣幕で言う。そう言えば才人の奴、前にキュルケのサラマンダーに連れていかれキュルケに誘惑されたって言っていたっけ。あいつも難儀な奴だな

 

「で、才人たちはどこに行くのかあんた知っているのか?」

 

「え?確か城下町の方へ行くとか何とか聞いたような・・・・・」

 

「じゃあ、目的地は同じだな。ナオ・・・・・」

 

「うん。タバサ、彼女も一緒でいい?」

 

と、ナオがそう訊くとタバサは頷き、そして窓の方へ行くと窓を開け、口笛を吹いた。すると窓の外から彼女の使い魔であるシルフィードがやって来た。なるほど移動手段ってこれのことかこれなら馬よりも早いし荷物も運べる。そして俺たち4人はシルフィードに乗り飛ぶあがるのであった。そしてシルフィードの背の上では

 

「なるほど・・・・・昨日シルフィードの言っていたことはこう言うことだったのか」

 

と、そう訊くと本を読んでいたタバサは俺のほうを見て

 

「あなた、なんでシルフィードの名前を知っているの?」

 

「え?ああ、昨日広場でこいつと会話してな」

 

とそう言うとタバサは怪訝そうな顔をすると

 

「ああ。彼、使い魔のルーンの能力で動物の言葉が分かるみたいなのよ」

 

「そう・・・・」

 

と、呟いて、タバサは視線を本に戻す。

 

「やっぱりあなたのシルフィードは速いわね~ほれぼれするわ」

 

とキュルケがそう言うが直哉は

 

「時速150キロほどか・・・・赤トンボよりも遅いな・・・・」

 

と、そう呟く因みに赤トンボとは大日本帝国海軍の練習機の九三式中間練習機のことである。するとナオが

 

「ねえねえ、直哉。あなたの紫電改とシルフィードどっちが速いのかしら?」

 

「さあな。競争させないとはっきりわからないが、紫電改の速度は・・・・・ナオ。ここでの速さの単位ってなんだ?」

 

「え?キロメイルだけど?因みに今のシルフィードが飛んでいる速度は大体100キロメイルぐらいのはずよ」

 

なるほど世界は違えど単位は同じか

 

「そうか。じゃあ俺の乗っていた紫電改はアメ公の戦闘機と互角に戦うために新型のエンジンを積んでいたから大体600キロメイルだな」

 

「600!?うそでしょ竜騎士の操る風竜よりも速いじゃない!!ねえ、直哉今度紫電改の修理が終わったら乗せてくれる?」

 

「ああ、でもあれは一人乗りだから二人乗りに改造するとなると時間かかっちゃうけどいいか?」

 

「うん。約束よ」

 

と、シルフィードの背の上でそう話すのであった。そして一時間後、シルフィードは城下町に到着する。キュルケとタバサは、才人とルイズを待つようで、俺とナオは別行動することになった。そして二人は城下町を歩いていた石造りの町で、人々にも活気があったが

 

「・・・・・狭いな・・・」

 

そう道が狭いのだ

 

「え?これでも大道りなのよ」

 

「え?そうなのか?」

 

ぱっと見大体5メートルぐらいで下町の裏通りを通っているみたいな感じだけどこれで大通りとは・・・・

 

「直哉の世界の大道りって大体どのくらいの広さなの?」

 

「そうだな人以外にも車とかが通るから大体、15~20メイルぐらいだと思うぞ?」

 

「直哉の世界って色々とすごいんだね。ねえナオヤあなたの国ってどんな感じの国なの?どんな習慣があるの?それに・・・」

 

何かスイッチが入ったのかナオの質問攻めが始まった。俺は歩きながらナオの質問に答える。そして一通り質問攻めが終わると

 

「直哉の世界って不思議だね」

 

「俺から見ればここの世界も十分不思議だよ。まあそれはそれで面白いからいいけど」

 

と、そんなことを話していると街の人たちが

 

「あの二人カップルかしら?」

 

「仲良さそうね。デートかしら?」

 

という声が聞こえる。その言葉はナオにも聞こえたのか彼女も顔を赤くする。俺はそういう経験はないからよくわからないが、確かに若い男女が仲良く歩いているのを見たらそう思われるのも仕方がないか。そんなことを考えていると、ナオがそっと俺の手を握る

 

「ん?どうしたんだナオ?」

 

「あ、あの、直哉。手を繋いでもいいかな?ほら人混みで迷子になっちゃうし」

 

と、恥ずかしそうに顔を赤らめそう言う。まあ彼女の言うことも一理あるな

 

「そうだな。その方がいいな」

 

俺はそう言い彼女の手を繋ぐ。そしてナオはなぜかガッツポーズをした。俺は不思議に思ったが聞くのは野暮だと思い訊かなかった。そして俺とナオは買い物をする。服に布団なんかの日常品なんかだ。そして一通り買い終えると

 

「ねえ、直哉。あなた日用品以外にも欲しいものとかある?」

 

と、聞かれ俺は考える。そして

 

「そうだな・・・・・・・そうだ。剣や短剣とかが欲しいな。ほら、さすがにナオを守るとき素手って言うわけにもいかないからな」

 

一様、懐には護身用の九四式拳銃を所持しているが予備の弾倉とかは持ってはいるが今後の弾薬のことも考えると剣とか持った方がいいだろう。ナオに聞けばこの世界の銃といえば19世紀に使われたマスケット銃やフリントロックピストルしかないみたいだからな。そんなのを使うんなら剣を使った方がいい

 

「そう、なら剣を買いに行きましょ」

 

そう言いしばらく歩くと武器屋につき俺とナオはその店に入る。すると・・・・・

 

「あれ?宮藤さん?」

 

「おお、才人か奇遇だな」

 

と、店の中には才人とルイズがいたのであった。

 

 

 



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インテリジェンスソードと天下五剣

虚無の曜日にトリエスティンの城下街へ買い物に来た直哉とナオ。日用必需品を買い終え、次は護身用の武器を買いに武器屋に向かうとそこにはルイズと才人がいた。

 

「あれ?才人?なんでここに?」

 

「え?ルイズが剣を買ってくれることになっったんだよ。宮藤さんは?」

 

「俺も大体似たような物だ。まあ、武器の他にナオが日用品を買ってくれるてな」

 

「へ~いいな。宮藤さんのご主人様は。俺のご主人様とは大違い」

 

「何が言いたいのサイト?」

 

「べつに~」

 

と、ジト目で睨むルイズに才人は目をそらして口笛を吹いて誤魔化す

 

「まあまあ、才人。武器買ってくれるだけでもまだマシと思わないと」

 

「それはそうだけど・・・・・・」

 

と、そう言うとコホンと咳払いが聞こえその声の方へ顔を向けるとその武器屋の店主らしき人が立っていた。

 

「話の途中で悪いんだけど貴族様。この店にはやましいものはないぜ。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目をちけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや」

 

と、手をこまねきそう言う。どうやら俺たちを不正とか不法なものを取り締まる役人と勘違いしている。するとルイズは腕を組み

 

「客よ」

 

とそう言うと

 

「こりゃおったまげた。貴族が剣を!おったまげた!」

 

「どうして?」

 

「いえ、若奥様方。教会の坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖をふる、そして陛下はバルコニーからお手をおふりになる。と相場はきまっておりますんで」

 

「使うのは私じゃないわ。使い魔よ」

 

「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も剣をふるようで」

 

主人は、商売っ気たっぷりにお愛想を言った。客には愛想よくまさに商人だな。それから、全員に目配せをして、視線を才人や俺に戻し、じろじろと眺めた。

 

「剣をお使いになるのは、このお二人方で?」

 

主人は、剣を使う人物を言い当てた。まあ、それもそうだろう。この中にいるのは俺と才人、ルイズにナオの4人。そのうち二人は貴族の証であるマントをしている。消去法で行けば俺と才人になるのが当たり前だ。店主の言葉にルイズは頷き

 

「そうよ。私は武器のことなんかわからないから。適当に選んで頂戴」

 

主人はいそいそと奥の倉庫に消えた。そして店主は4人に聞こえないように呟いた。

 

「・・・・こりゃ、鴨がネギしょってやってきたわい。せいぜい、高く売りつけるとしよう」

 

と、にやりと笑い、一本の細い剣を取り、才人たちのもとに戻って来た。

 

「これなんかいかがですか?軽くてスピードも速いレイピアですよ?昨今は宮廷の貴族の方々の間で下僕に剣を持たすのがはやっておりましてね。その際にお選びになるのが、このようなレイピアでさあ」

 

と、そう言いレイピアをルイズたちに見せるが、ルイズはそのレイピアを見るが

 

「細すぎて折れそうね・・・・・もっと大きくて太いのがいいわ」

 

「お言葉ですが貴族のお嬢様。この御仁にはそのサイズがよろしいかと?」

 

と、店主はそう言うと、ルイズは

 

「いいからさっさと太くて大きい剣を持ってきなさいよ!」

 

「いや、しかし・・・・・」

 

と店主はかたくなにそう言うが、

 

「ダーリンにはそんな細い剣は似合わないわよ店長さん?」

 

「・・・ん?あれ?キュルケ?」

 

いつの間に店に入っていたのか振り返るとそこにはキュルケとタバサがいた。そして

 

「あら、偶然ねダーリン!!」

 

とキュルケは才人に抱き着きタバサは興味なさげにいつものように本を読んでいた。そしてそれを見たルイズは

 

「キュルケ!いきなり出てきて、なに人の使い魔に抱きついてるのよ!」

 

と、けんか腰でそう言うのだが

 

「あ~ら、店内で声張り上げちゃって。貴族とあろうものが恥さらしな」

 

キュルケも迎え撃つ気満々でルイズを挑発すると

 

「ちょっと二人ともやめなさいよ。お店の人に迷惑が掛かるでしょ?」

 

今にも魔法ぶっ放しそうなところをナオが仲裁に入り、ナオが間に入ったところで何とか収まった。そしてキュルケはコホンと咳ばらいをし、店主の方へ近づき

 

「ダーリンを見た目で判断してもらちゃ困るわね。ダーリンは、剣で青銅のゴーレムを軽々と切り裂く腕前を持っているわ。それとも何かしら?あなた貴族である私たちが嘘をついているとでも?」

 

「いえ、いえ、決してそんなことはなく・・・・」

 

「だったら、この店の中で一番の技物を持ってきてちょうだいな。ねえ、お・ね・が・い」

 

と、色気たっぷりの言葉で店主に言い寄ると、店主は鼻の下を伸ばし

 

「へ、ヘイ・・・・すぐにお持ちします」

 

店主は、ペコリと頭を下げると、また奥に消えた。今度は立派な剣を油布で拭きながら、主人は現れた。

 

「これなんかいかがです?」

 

見た目は見事な剣だった。1.5メイルはあろうかという黄金に輝いた剣だった。柄は両手で扱えるように長く、立派な拵えで、ところどころに宝石が散りばめられ、鏡のように諸刃の剣が光っている。一見すれば見るからに切れそうな、頑丈そうな剣であった。

 

「店一番の業物でさ。これ以上のものはどこを探しても見つかりやせんぜ」

 

ニコニコと愛想笑いを浮かべ才人に渡すと

 

「うわぁ~すごいなまるでゲームに出てくる勇者が持っていそうな剣だな」

 

才人もその剣を気に入ったのか、目をキラキラさせて言う

 

「すばらしい剣だわ」

 

「そうね。その剣こそ、私の使い魔にふさわしい剣よ」

 

キュルケもそう言いい、ルイズも満足しているみたいだ。

 

「確かにあの剣きれいだね直哉」

 

とナオは隣にいる俺にそう言うが、

 

「才人。ちょっとその剣貸してくれないか?」

 

と俺は一歩進みサイトに今持っているその剣を渡すように言う

 

「え?別にいいけど?」

 

と、才人は俺にその剣を渡し、俺はその剣をじっと見る。そして、

 

「・・・・・・ダメだな。これはとんでもない鈍らだよ」

 

「「え?」」

 

俺の言葉が意外だったのかみんな驚いたように目を見開き、それを聞いたキュルケは

 

「ちょっと、何言ってるの?こんなに素晴らしい剣を」

 

「そうです!ぜコイツを鍛えたのは、かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿で。魔法がかかってるから鉄だって一刀両断でさ。ごらんなさい、ここにその名が刻まれているでしょう?」

 

と、キュルケがそう言い、同じく店主もそう言って柄に刻まれた文字を指差した。だが俺はこの件の本質を見抜いていた

 

「その剣を作ったのがどんな有名人かは知らないけどさ。この剣。確かに重いが、刃の部分が丸まって切れ味は無いに等しいし、それに少し刃の部分を叩いてみたが中身はスカスカだ。よくて家で飾る程度の剣だな。これは」

 

「宮藤さん。剣とか武器のこと詳しいのか?」

 

「軍人だからな武器の知識はあるし、軍の士官学校で嫌って言うほど習わされたからな。この店にはいろんな武器があるが、この剣だけは何というか武器としての威圧と言うのがないな」

 

「そうか・・・・」

 

才人は俺の話を聞いて考えると

 

「おでれーた、おでれーた。小僧、おめ見る目あるな」

 

『っ!?』

 

と、急にどこからか声がし、俺を含めみんな驚く。そして店主だけがなぜが頭を抱えていた

 

「どこから聞こえるんだ?」

 

と、才人がそう言う中、俺は店の出口当たりに置いてある樽の方へ行くとその樽の中にはいくつもの剣があった。そして

 

「おい、ここだ。ここ」

 

とその武器の中、一つだけカタカタと鍔を鳴らしているのが見えた。俺はその剣を取る。その剣はところどころ錆びていた

 

「こいつか・・・」

 

「・・・・・もしかしてその剣が喋ってるのか宮藤さん?」

 

「それって、インテリジェンスソード?」

 

と、才人の疑問にルイズが答えると、店主が

 

「やいデル公!商売の邪魔すんじゃねえ!」

 

と、その剣に向かって怒鳴るがその剣はまるで笑っているかのようにカタカタと鍔を鳴らし

 

「けけけ・・・商売の邪魔って、この若造はそのなまくらを見破ってたじゃねえか。・・・・ほ~う。若造、おめ、何度も修羅場を潜って来たみてえだな。その歳でてーしたもんだ」

 

と、そう言う中俺はその剣をじっくり見る。そして

 

「才人。その剣にしろ。年季は入って錆があるところがあるが、刃は奇麗で切れ味もいいはずだ。そっちの鈍らよりはいいと思うぞ?」

 

「確かに喋る剣って言うのもいいよなあ」

 

とそう言い才人は俺からその剣を受け取ると

 

「おでれーた!おめ、『使い手』か!?」

 

才人に向かって、その剣は言った。

 

「『使い手』?」

 

「自分の実力も知らないのか?まあいい、てめ、俺を買ってけ」

 

「ああ、いいぜ。俺は平賀 才人だ」

 

「俺はデルフリンガー様だ。『使い手』ならデルフでいいぞ兄弟!」

 

「よし、よろしくなデルフ」

 

才人はルイズの方を見て、

 

「ルイズ、俺これにする」

 

「え~~~?そんなのにするの?もっと綺麗で喋らないのにしなさいよ」

 

「いいじゃんかよ。喋る剣なんて面白いじゃないか。宮藤さんも問題ないだろ?

 

「あ、それなら大丈夫だ」

 

俺が頷く中、ルイズはぶつくさ文句を言っていたが、下手ななまくらを買うよりも安全そうだったので、それを買うことした。

 

「あれ、おいくら?」

 

「あれなら100で結構でさ」

 

「安いじゃない」

 

「こっちにしてみりゃ、厄介払いみたいなもんでさ」

 

店主の言葉にルイズはため息をつき金額を払う。

 

「まいど」

 

剣を取り、鞘に納めると才人に手渡した。

 

「どうしても煩いと思ったら、こうやって鞘に入れれば大人しくなりまさあ」

 

才人はデルフリンガーを受け取った。

 

「思ったより安く済んだわね」

 

ルイズが呟くとナオが

 

「次は直哉の武器ね。直哉どれがいいの?スペック的にはどういうのがいいの?」

 

「う~ん・・・・・そうだな・・・・・・・」

 

とナオに言われをレは店の中をぐるりと見渡す。どれもいい武器に見えるが、なんていうかみんな西洋ものばっかりだ。まあそれもそうか、第一、日本刀のような業物があるわけが・・・・・・

 

「・・・・・ん?」

 

俺は急に乱雑に剣が積み上げられている棚の上を見て、急に立ち止まる。その剣の中に一本の剣があった。俺はその剣を取ると店主が

 

「ああ、それかい?なんでも異国の剣みたいなんだけどな。刃はレイピアより薄いし、曲がっているし。どう見たって鈍らの剣だよ」

 

と、笑う中、才人は俺の所へ来て

 

「宮藤さん。これって・・・・・・」

 

「ああ、どう見ても刀だな」

 

サイトの言葉に俺は頷く。そして俺はその刀を鞘から抜き眺める。反り返った不思議な剣。極薄の刃。その刃には、美術品としての価値もあるという程、美しい波紋。まさしく日本刀である。しかもその刀身には所々に三日月の様な美しい刃文が輝いていた。

 

「(三日月の刃文・・・・・・まさか!?)」

 

「直哉?どうしたの?」

 

とぼうぜんとしている俺にナオガ覗き込むように聞くと俺は

 

「すまない店主。木槌と杭。それと綺麗な布を貸してくれ」

 

「え?は、はい・・・」

 

と、そう言い店主はいったん奥へ行き、、要求された物を渡す。そして俺は、口にハンカチを咥え、そしてその刀を分解した。

 

「直哉!?」

 

「ちょっと何しているのよあんたは!?」

 

いきなりの行動にナオとルイズが驚くが俺はそれを無視して刀を分解し、そして分解が終わった時その刀は一本の刃となっていた。そして俺は刀の中心に刻まれた銘を見る

 

「(やっぱりこれは)・・・・・む・・・むね・・・ちか?・・・・・・・・宗近?」

 

ポツリと呟き、急にハっとなってもう一度、その刀身を見る。その刃の下半には、刃縁に添って、随所に美しい三日月の紋様があった。そんな刃文を持つ刀はたった一つしかない

 

「・・・・・三日月宗近」

 

そう、今俺が持っている刀はかつて天下五剣の一つと言われた名刀、三日月宗近であった・・・・・

 

 



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三日月宗近

「(これって・・・・三日月宗近か?)」

 

直哉はその刀の柄に彫ってある銘を見て驚く。宗近。それは戦国時代に天下五剣と言われた名刀の中の一つ。そんな名刀がなぜこの世界に・・・・・

 

「ナオヤ。どうしたの?」

 

俺が刀をじっと見つめている姿にナオが心配そうに顔を覗き込んで言う

 

「・・・・・・いいや。なんでもない」

 

そう言い、俺は刀の柄をもとの形に戻すと

 

「店主」

 

「は、はいなんでしょうか?」

 

「この剣の素振りをしてもいいだろうか?」

 

「え?ああ、別にかまいませんが、ほかの商品に当てないようにお願いしますぜ」

 

「ああ、すまない」

 

そう言い俺は少し開けた所に歩き、刀を振る。そしてしばらく振ると俺は刀を鞘に戻し、

 

「すまない店主。これいくらだ?」

 

「え?ああ、それはデル公と同じ値段でいいよ。でも兄ちゃんも物好きだね。刃の模様なきれいなだけの薄っぺらな剣じゃせいぜい鑑賞用ぐらいにしかならないぜ?」

 

その言葉に俺はむっとしたが。

 

「いや、この剣でいいよ。ナオ・・・・すまないけど」

 

「え?ああ。いいよ」

 

そう言いナオは店主にお金を払い。俺と才人は武器を購入することができた。

そして店を出た後、俺たちは大通りを歩いているとナオが

 

「ねえ、ナオヤ。本当にそれでよかったの?」

 

俺が腰に差している刀を見てそう言うとルイズとキュルケが

 

「そうヨ。あの店の主人によれば、鈍らなんでしょ?確かに刃は奇麗だったけど?」

 

「確かにね。歯も薄いし、曲がっているし、これじゃあポッキリ折れるわよ?」

 

そう言う。まあ刀を見たことが無い人が見ればまずそう言う言葉しか出ないだろう。すると才人

 

「まあ、日本刀を初めて見た人はそう思うよな?そうでしょ宮藤さん?」

 

「そうだな。やっぱりこっちじゃ、刀みたいな剣は珍しいのかもな」

 

俺と才人がそう言うと

 

「ニホントウ?」

 

「カタナ?」

 

聞きなれない単語にルイズたちは首をかしげる

 

「ナオヤ。その剣のこと知っているの?」

 

「知っているも何もこの剣は俺の国の剣だよ」

 

「そう、侍が使っていた武器さ」

 

「才人。サムライって何よ?」

 

「そうだなこの世界で言う騎士みたいなものだよ」

 

才人が説明するとルイズが

 

「でも才人。そのカタナだったけ?そんな薄い剣で戦えるの?」

 

とそう訊くと俺が

 

「まあ、剣を創る上での発想が違うからな」

 

「違う?」

 

「ああ、ナオやルイズたちの考える剣は幅広で肉厚、丈夫な物で質量と力で叩き斬ることに重きを置いた剣だろう?」

 

「それが普通じゃない」

 

「もしかして直哉たちの国の剣は違うの?」

 

「ああ、刀は・・・・この剣は徹底的に斬ることを追求した世界でも珍しい形式の剣なんだ」

 

「つまり・・・どういうこと?」

 

「強度をある程度捨てて刀身を薄く軽くすることで切れ味を徹底的に追及したんだ。そうすることにより力で無理やり切る剣が主流なのに対して力を加えることなくその切れ味と技術で敵を斬り裂く剣を生み出したんだ。またその形状の美しさから芸術品としての珍重されることもある」

 

「それに日本刀は錆びない、折れない、曲がらないの三テンポが付くほどのいい剣なんだぜ!」

 

俺が説明し、才人が得意げに言う。いや才人。刀でもちゃんと手入れしないと錆びたり刃が欠けたりするぞ?」

 

「そんなにいい剣なら、なんであの店主。その剣を鈍らなんてい行ったのかしら?」

 

キュルケがそう言うと才人の背中にしょっていた喋る剣。デルフとか言ったか?そいつ

 

『ああ、あいつ。昔から剣の本質を見る目が無いんだよ。あいつにとっちゃ剣なんて見栄えが良く大きいのが剣だと思い込んでいるからま。まあ簡単に言えば見てくれで判断する奴なんだよ』

 

と、デルフは呆れたようにそう言う。すると今まで黙って本を読んでいたタバサが

 

「それだけじゃ・・・・ないでしょ?あの剣を選んだの?」

 

「え?」

 

「あなた、その剣を見た時。故郷の剣とは別に何かを感じていた」

 

「あ、それ俺も思った。宮藤さん。なんで刀の分解をしたんだ?その刀もしかして有名な刀なのか?」

 

タバサと才人がそう訊くとナオも

 

「あ、それ私も思ったわ。ナオヤ」

 

そう興味津々に訊くと俺は

 

「なあ、才人。お前、天下五剣って知っているか?」

 

「え?確か戦国時代に作られたその時の五振りの名刀のことだろ?RPGゲームとかアニメとかで知ってるぜ」

 

「RPG?まあ、良い。じゃあ、お前三日月宗近のことも知っているよな?」

 

「それはもちろんゲームとかのアイテムでよく出てるから知っているけど・・・・・・・て、まさか宮藤さん。その刀って!?」

 

「ちょっと!何二人で勝手に盛り上がっているのよ!私にもわかるように説明しなさい!」

 

ルイズは二人の話について行けずそう言うと俺は

 

「その昔・・・400年くらい昔のころ戦国時代って呼ばれる時代。俺と才人の国が、国内で争ってた時のころだ。その時、天下五剣って言う。まぁ要するに、その当時名刀って言われた五振りがあるんだその一振りが・・・・」

 

「ミカヅキムネチカってわけね直哉?でもなんでそんな名前なの?」

 

「その刀の作者の名前が、宗近ってんだ。だから刀も宗近と呼ばれる」

 

「三日月っていうのは?」

 

「三日月ってのは、刀の刃文。まぁ、模様が所々、三日月に見えるからと。そこから名づけられたらしい。そして、刀の名前。銘は、中心。柄の部分に当たる金属に彫られる」

 

ここまで言われて、ハっと気がついた。

 

「さっき見た時、その刀には何て?」

 

「宗近」

 

「じゃぁっ!?それって・・・・」

 

キュルケがそう言うと俺は

 

「いや、こいつが本物の宗近かどうかは不明だ。第一本物は博物館に保管されてるハズだ。仮にもし、万が一何かが原因で、ソレがこっちにきても、こんな綺麗な物じゃない。一度写真・・・・・絵で見たけど、少しボロボロに見えた。恐らくだがこいつは宗近を模した刀なのかもしれない。まあ俺にとってはどちらでもいい。要するに使えるかどうかだ。俺は剣を二、三回振ったがこいつはいい業物だよ。だから俺にとっちゃ銘とかそんなのは関係ないよ」

 

「そうなんだ・・・・・」

 

俺がそう言った後、俺たちは何も言わなくなった。その後は丁度昼時だったため、食事を済ます一同。その後、一行は街の出口に向かうと出口の傍の大きな木に子供たちが集まっていた。直哉はその子供を見ると

 

「ねえ?取れそう?」

 

「う~ん!あともうちょっと!」

 

少し背の高い子が木の棒を使って木の枝に引っ掛かっている凧を取ろうとしていた。そしてそのそばでは小さな女の子が泣いていた。恐らく女の子の持っていた凧が風とかに流されて掛かってしまいたのだろう。俺はその子供たちを見て

 

「ナオすまないちょっと待ってくれ」

 

「え?」

 

そう言い俺は子供たちの方へ向かう

 

「どうしたんだ坊主たち?何かあったのか?」

 

「え?あ、うん。実は飛ばした凧が木に引っ掛かっちゃって・・・・・みんなで協力して取ろうとしたけど届かないんだ」

 

「そうか・・・・じゃあ兄ちゃんが取ってやろう」

 

「え!?ほんと!」

 

「ああ、任せろって」

 

そう言い俺は木に引っ掛かっている凧の高さや足場がないか確認する。そして・・・・

 

「はぁ!」

 

そう言い走り、そして木の傍にあった少し大きな石を踏んで飛び上がり木の枝の上へと着地する。そして枝に引っ掛かっていた凧を取り木から飛び降り着地すると

 

「スゲぇー!兄ちゃん!!」

 

「シュパッて行った!」

 

「かっこいい!!」

 

と男の子たちは興奮してそう言うなか俺は凧の持ち主である女の子に渡す

 

「ほら、次からは気をつけなよ」

 

「ありがとうお兄ちゃん。またね!」

 

「よし今度は大広間で上げようぜ!兄ちゃんありがとな!」

 

そう言うと子供たちは元気いっぱいに走り出すのであった。そして子供たちを見送る。そんな様子を見ていたナオは頬を赤らめていた。そして直哉が戻ってくる

 

「すまない。待たせたな」

 

「うん。大丈夫。それよりもナオヤすごかったよ」

 

「俺もまるで忍者みたいだった!どうやったらあんなに身軽にできるんだ?」

 

「まあ、予科練での訓練のおかげかな?」

 

海軍飛行訓練生時代には曲芸に近い訓練とかやらされたからな・・・・・

そして俺たちは買い物を終えて学園へと戻るのであった。因みに才人とルイズは馬で来たため馬で、そして俺たちはシルフィードに乗って帰ったのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、ナオたちが寝ている頃、俺は小屋の中にある紫電改の所にいた。そして俺はコックピットに乗り

 

「ふぅ・・・・・やっぱりここの中のほうが落ち着くな・・・・・」

 

そう小さく呟く。部屋の中も悪くないのだがやはり俺は馴染みのある紫電改のコックピット内の方が一番落ち着く。

 

「元の世界・・・・・どうなっているんだろうな・・・・」

 

才人からは俺がここに飛ばされた後の日本のことは聞いた。焼野原になった日本型他の60年で復興し世界と肩を並べるほどの国になった・・・・・だが、俺はできればこの目でその光景を見てみたかった。だが、今更も音の世界には戻ろうとは思わない。戻ってもそれは才人のいた時代。俺の知り合いは皆死んでいるだろう。いや、それ以前に俺の友人は皆、あの戦争で死んでいる。初陣の時からの友人である軍平は南太平洋で・・・・もう一人の友人である佐々木は本土防空での偵察で行方不明に・・・・戻ってきた佐々木の列機に話によれば変な世界に行ったと証言していたらしいが相手にされずそのまま檻付きの病院に入れられたとか・・・・・軍平はともかく恐らくだが佐々木は俺のように別世界に飛ばされたのかもしれないな・・・・まあ、そんなことを思っても仕方がないのだが・・・・・そう思う中、

 

「紫電改・・・・俺たちは祖国のために戦った・・・・だけどこの世界には俺たちの祖国はない。だからこ俺はこの世界でナオの為にこの力を使いたい・・・・なぜだか知らねえけどあいつを一人にしちゃいけないと思うんだ。だからもしもの時はお前も力を貸してくれ」

 

俺は紫電改にそういう。紫電改は何も言わない。まあそれはそうだろうな・・・だが俺は紫電改を機会ともただの兵器と考えたことは一度もない。こいつはずっと共に命を預け、そしてともに同じ空で戦った相棒と思っているからだ。

そして俺は飛行帽を深く被り、そのまま紫電改のコックピットの中で眠るのだった。

すると突如、直哉の傍が光り光が収まると、そこには海軍士官服を着た緑髪の少女が現れ、コックピットん赤で寝ている直哉を見ると

 

「風邪をお引きになりますよ主・・・・」

 

そう言いどこからか出したのか毛布を取り出し彼に掛ける。そして少女は直哉の顔を見

 

「ふふ・・・・可愛い寝顔ですね主」

 

ふふと笑いそう言うと少女は

 

「主・・・・・先ほどの問いですが、私は兵器であり道具・・・・・その兵器に主は共に戦う相棒と言い接してくれました。ですから私の答えは最後まであなたに力をお貸しします。ですから主。安心して自分の行く道を貫いてください・・・・・・」

 

そう言い、彼女は微笑むと彼女の身体が光り、光が言えるのと同時に彼女の姿は消え代わりに紫電改のプロペラがキラッと光るのであった

 

 



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悪夢

「・・・・・・あれ?ここはどこ?」

 

ベットで寝ていたはずのナオはなぜか暗い空間にいた。ナオは訳が分からずあたりをきょろきょろ見渡すと。突如、視界が広がった。青い海、両岸には山々と街並みが広がる。

 

「ここ、ハルケギニアじゃない・・・・・・」

 

見たこともない風景にナオは今見ている場所が自分の住んでいるハルケギニアじゃないことがすぐにわかった。特にナオがその場がハルケギニアじゃないという確信をした理由は空に輝く月だった。自分の知ってる常識では月は二つ。だが今いる空に輝ている月の数は一つであった

 

「月が一つ・・・・・まさか、ここって直哉の世界かしら?」

 

五銭、ナオやから自分のいた世界は月が一つしかないと言われたことを思い出し、ここが直哉の世界だということがわかった。そして風景はある港が映し出された。港にはハルケギニアの飛行軍艦よりも島より巨大な船が水上に浮かんでいたが、どれも緑や黒色のまだら模様をしていた。そしてその甲板にはハルケギニアの大砲には比べ物にならないほどの巨大な大砲があった。一番小さい軍艦らしき船の大砲でもハルケギニアの大砲より大きい。しかもその船はすべて鉄でできていた

 

「すごい・・・・これ全部船なの・・・」

 

見たこともない大きさに、ナオは息を吞む。するとその港の街からまるで叫び声のような甲高い音が鳴り響く。この音はナオの世界にはないサイレン音だった

 

「な、なにこの音!?」

 

いきなりのサイレン音にナオは戸惑う。するとナオの上空から黒い影が差す。その影にナオは上を見るとそこ身は無数の巨大な銀色の飛行隊が飛んでいた。それはまるで・・・・・

 

「か・・・・怪鳥」

 

ナオはその巨大な飛行隊に目を見開き驚いていた。ナオが見た飛行物体は街の方へ飛んでいく。そしてその腹みたいなところが開き小さな玉みたいなのが真下にある街へと降り注ぎ、落ちた玉は瞬く間に街を火の海にし、その街から苦痛や怨みなどの無数の悲鳴が聞こえる。その光景を見たナオは顔を青ざめ、口を手でおおう。

 

「こんなのって・・・・・・」

 

余りにも残虐な光景にナオは目をそむけたくなる。するとその巨大な怪鳥の真上から無数の小さな飛行物体の群れが急降下して襲い掛かる。。濃い緑の塗装、胴体に赤い丸を付け、低翼でずっしりした機体…見覚えがある

 

「あれって・・・・・直哉のシデンカイ?」

 

そう、直哉が乗っていた紫電改であった。そして無数いる紫電改たちは巨大な飛行機に向かい、そこから何機かの航空機が火に包まれ地上へと落ちていく。それを皮切りに激しい空中戦が始まる

 

「まさか、これが直哉のいた世界の戦争・・・・・・」

 

そう呟いた時、一機の紫電改が巨大な飛行機に急降下して襲い掛かる。

 

「出て行けアメ公!日本の空から出ていけぇっ!!」

 

どこかで聞いた声が聞こえてきた。その声は

 

「・・・・直哉」

 

その瞬間ナオの周りは真っ白に光り、ナオはその光りに包まれるのであった

 

 

 

 

「はっ・・・・・・」

 

目が覚めるとそこは自分の部屋だった。どうやら今見たのは夢だったようだ。だが妙にリアリティのある夢・・・・・・もしかしなくても先ほど見た夢は直哉のいた世界の戦争の夢・・・・

 

「ねえ、直哉・・・・・」

 

ナオは先ほどの夢のことを直哉に訊こうとして直哉が寝てる布団を見てみると、そこには直哉はいなかった

 

「・・・・・あれ?いない?」

 

ナオは部屋にいない直哉がいないことに気付ききょろきょろと見渡す

 

「・・・・・もしかしてあそこかな?」

 

なにか心当たりがあるのかナオは服を着替えて部屋を出る。廊下を歩く時窓を眺めてみるとまだ日が昇る前のようで空は黒と白の混ざっ多様な景色であった。そんな中、ナオは階段を降り寮を出て向かった先は直哉の紫電改が置かれているあの小屋だった。恐らく直哉はそこにいるのだろうと思ったのだ。小屋に向かう最中、

 

「それにしてもあの夢・・・・・・」

 

ナオは先ほどの夢を思い出していた。無数にいる巨大な飛行機械が炎の弾を落とし街を焼く。思い出しても恐ろしい光景だった。もしあんなことがハルケギニアもといトリエスティンにも起きると思うだけでもぞっとする。あんな恐ろしい戦争を直哉はどんな気持ちでいたのか・・・・・そう思っているうちにナオは小屋にたどり着き扉を開ける

 

「直哉?いるの?」

 

扉からひょいッと顔を覗かせきょろきょろと見て直哉を呼ぶナオ。そしてナオは小屋に入ると目の前には直哉の愛機である紫電改が置かれていた。

 

「あの中かな?」

 

ナオはそう言い紫電改に近づく。するとコックピット内から人影が見えた。よく見るとそれは直哉であった

 

「やっぱり・・・・・・・あれ?」

 

直哉がコックピットで寝ているとわかったナオは近づこうとした瞬間。一瞬、彼の傍に髪の長い女の子がいるのが見えた

 

「あれ?・・・・・」

 

ナオは目をこすりよく見たが、女の子の姿はなかった

 

「今、女の子が・・・・・・・気のせい・・・・かな」

 

そう不思議に思いながらナオは紫電改によじ登りコックピットの窓を開けるとその中には直哉がすやすやと寝ていた。それを見たナオはふふっと笑い

 

「ねえ、起きて直哉。もう朝だよ?起きて」

 

と、優しく揺り起こすと、直哉はうっすらと目を開け

 

「・・・・・ん?ナオ?そうか、もう朝か・・・・・そっか。紫電改のコックピットに乗ってそのまま寝ちまったのか」

 

そう言うと直哉は頭を軽く掻き立ち上がるとナオが

 

「ねえ、ナオ。さっきナオ以外のも人いなかった?」

 

「ん?いや?お前しかいないぞ?コルベール先生か?」

 

「いや、女の子なんだけど・・・・・」

 

「おいおい、幽霊を見たなんて怖いこと言うなよ?きっと気のせいだよ。この小屋に来るとしたら俺かナオかコルベール先生ぐらいしか来ないんだから。あ、あと才人も来るか」

 

「そ、そうなんだ・・・・やっぱり気のせいだったのかな?」

 

「そ、気のせい。気のせいだよ。さて、そろそろ学校に戻らないと授業始まるんじゃないのか?」

 

「あ、そうだ。その前に朝食だけど。そろそろ行こうか」

 

そう言い二人は紫電改から降りて小屋を出る。すると小屋からは

 

『フフフ・・・・まるで夫婦ね。主とあの子』

 

と女の子の声が聞こえるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を終えた後、直哉とナオは廊下を歩き紫電改のことについて話していた

 

「ねえ、直哉。あの紫電改。いつ飛ばす予定なの?」

 

「そうだな・・・・・今スグって言いたいところだけど。コルベール先生の許可貰わないといけないからな・・・・」

 

と、そう話すとナオは

 

「ねえ、直哉」

 

「ん?なんだ?」

 

「ちょっと訊きたいことがあるんだけど?」

 

「なに?答えられることなら答えるけど?」

 

「私、夢を見たの・・・・・」

 

「夢?」

 

「うん。大きな港街でね。その港に大きい鉄の船があったの。それで空には月が一つあって、その空から銀色の巨大な怪鳥みたいな飛行機械が真下にある街に火の玉を落としていたのよ・・・・・」

 

ナオがそう言うと直哉はピタッと立ち止まる

 

「ねえ、直哉。もしかして私の見た夢って直哉の世界の・・・・・・」

 

そうナオが言いかけた時

 

「昭和20年、西暦1945年。7月1日の呉空襲。そして呉の街に爆弾を落としたのはアメリカ軍の爆撃機だ」

 

「え?」

 

「あの日のことはよく覚えている。夜中に敵の爆撃機が襲来して呉という街に爆弾・・・・火薬を詰めた樽って言えばいいか?それを一般市民の住む住宅地に翌日の早朝にかけて落としやがったんだ。俺と仲間はすぐに紫電改に乗って迎撃しようとしたんだが、街を完全に護りきることができなかった・・・・・・」

 

悔しさと悲しさの入り混じった表情で直哉はそう言う

 

「(やっぱりあれはただの夢じゃなかったんだ・・・・・・)ごめん直哉。いやなこと訊いちゃって・・・・・」

 

「いや、ナオが気にすることはないよ。夢で見たんならしょうがないよ・・・・・・」

 

「直哉・・・・・戦争って怖いのね・・・・」

 

「ああ、恐ろしいほど怖いよ。よく芝居や本なんかで戦争の最中、英雄が活躍し栄光云々とかが多いけど、実際には違う。戦争で活躍する人の栄光と彼の背景には多くの人間の血が流れている。まさに生き地獄っといったところだ。そして戦争は何もかも破壊する。家族を・・・街を・・・国をそして平和も・・・・・そして残るのは悲しさと虚しさだけだ」

 

「直哉・・・・・」

 

「・・・・すまない。湿っぽい話をしちまったな忘れてくれ」

 

そう言いうと、直哉は何か話題を変えなくちゃと思っていると

 

「・・・・あ、ナオ。そろそろ授業に戻らないといけないんじゃなかったか?」

 

「え?あっ!そうだったわ!!ごめん直哉。私授業に行ってくるね」

 

「ああ、俺は、適当にブラブラしているからさ、また昼休みに会おうな」

 

「ええ、またね」

 

と、そう言い、ナオは走り出すのであった。そしてそれを見送った直哉はしばらく歩き、外に出て壁によりかかると

 

「・・・・・・ナオが俺の世界の夢をか・・・・・・」

 

そう呟き、遠い目で空を見上げていたのであった・・・・・・

 



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土くれのフーケとゴーレム襲撃

ナオと別れた後の、直哉は一人、学園の庭を散歩していた。そしてしばらく歩き、庭の中央の木の下で座り、ナオの授業が終わるまでゆっくりしていた

 

「タバコは・・・・・ないか。まあ、俺タバコだめだしな」

 

と、そう呟いていると・・・・

 

『キュイ。お前何しているの?』

 

「ああ・・・・シルフィードか」

 

そこへタバサの使い魔であるシルフィードがやってくる。それだけじゃない

 

『おう、お若いの。のんびり昼寝かい?』

 

『ケロケロリ。確かにそこは日影ができて涼しいから気持ちいいケロね』

 

『モグ。僕たちも混ぜてほしい』

 

と、キュルケやギーシュたちの使い魔のカエルやオオトカゲ…サラマンダーに大モグラなどの他の生徒たちの使い魔がやってくる

なぜ、俺が動物たちの言葉が分かるのか、最初はわからなかったが、手の甲にある紋章が光っていてナオいわく。。それが原因じゃないかと言われた。まあ、小さいころは動物と話してみたいなんてことを考えたこともあったし、今になってそれが実現できて少しばかり喜んでいる自分もいた

 

「ああ、いいよ。別のここは俺の貸し切りじゃないわけだしな」

 

俺がそう言うとシルフィードたちは俺のそばにより、木の下で涼んでいた。そして俺は彼らと話せることをいいことに彼らと会話し交流会をしていた

 

「ほう…あのギーシュにそんな秘密が」

 

『そうモグ。あの人はあれが趣味なんですモグ』

 

『そう。それに私のご主人様であるモンモランシー様も・・・』

 

「え!?まじか!?てかそれ言っちゃっていのかよ!?」

 

と、なぜか使い魔たちは自分の主人の愚痴やら秘密やら暴露していた。てか、そんなこと聞いちゃっていいのかよ・・・・・そんなこんなで時間は過ぎ、チャイムが鳴る

 

「おっ、どうやら授業が終わったみたいだな。よし、今回第一回の使い魔の会議は終了。では解散!」

 

俺の言葉に皆は返事をし、その場は解散となった。因みに使い魔会議で俺が会長ということになったらしい、副会長はフレイム。書記はシルフィードていう形になったが、あくまで形だけなので、普通に楽しく話をするだけであった

まあ、そんなこんなで使い魔同士の交流も終わり、俺は校内へと入り廊下を歩くと

 

「ナオヤ」

 

「ああ、ナオ。授業は終わったのか?」

 

「うん・・・・・」

 

「ん?どうしたんだナオ?」

 

俺はナオが何処か元気がないことに気が付きナオに訊くと

 

「ごめんナオヤ」

 

いきなりナオが謝ってきた。

 

「どうした?」

 

俺が聞き返すと、

 

「三日後、使い魔品評会があるの」

 

そう言うナオ。

 

「使い魔品評会?」

 

「うん。毎年恒例の行事で、生徒たちが召喚した使い魔を学院中にお披露目するの」

 

そう言われ、自分がナオの使い魔だったことを思い出した俺は、

 

「つまり、俺がお披露目されるってか?」

 

「そう。あと、使い魔が何かを披露するって言うおまけ付き」

 

「・・・・休めないのか?」

 

「2年生は、全員参加なの」

 

「そうか・・・・・」

 

俺はそう言い何か案がないか考える

 

「本当にごめんナオヤ」

 

「いや、ナオが謝ることじゃないよ。そうだな・・・・・・あ、ならいい方法があるぞ」

 

「え?」

 

方法があると言われナオは俺の顔を見る

 

「ほら、紫電改さ。ちょうどコルベール先生やナオのおかげで整備も終わって飛べるようになったしさ。その使い魔品評会てやつで曲芸飛行でもするさ」

 

「ああ、ナオヤの乗っていたあの飛行機械・・・・・ナオヤ。お願いできる?」

 

「任せとけ。なにより俺も早くあいつを動かしたいと思ったからさ。後はコルベール先生に飛行の許可貰わないとな」

 

「なら、私も一緒に行く」

 

そう言い俺とナオはコルベール先生の元へ向かい、そしてコルベール先生に使い魔品評会で紫電改を動かしたいと相談すると

 

『おおっ!ついにあの飛行機械を動かすのですか!え?飛行許可ですか?もちろんいいですとも!!』

 

と、清々しいくらいの笑顔で承知してくれた。飛行許可をもらった俺とナオは紫電改の様子を見に紫電改が置かれている小屋へと向かう。

その途中で才人とルイズと出会た。二人ともどこか気落ちした表情だった

 

「ああ、やあルイズ」

 

「どうもナオ・・・・」

 

ルイズはなんだか元気がない。

 

「如何したの?」

 

ナオは尋ねる。

 

「使い魔品評会の事、すっかり忘れててさ」

 

ルイズはそう答える。

 

「え?ルイズも?」

 

「私もってことは、もしかしてナオも?」

 

「うん・・・・でも一応ナオヤが対策考えてくれたから・・・」

 

と話す中、俺は才人と話していた

 

「才人も使い魔品評会で悩んでるみたいだな」

 

「もしかして宮藤さんもですか?」

 

「ああ、でも幸いこっちには紫電改があってそいつに乗って曲芸飛行する予定だよ」

 

「いいな~宮藤さんは。俺なんか何もないから・・・・」

 

「そうか・・・・複座の航空機があったら共同の曲芸飛行ができたのにな・・・・」

 

「本当です・・・・」

 

「なら、才人。一緒に漫才でもやるか?」

 

「え?宮藤さんの時代にも漫才あったんですか!?」

 

「当たり前だろ。ラバウル時代ではよく仲間がやってたぞ?まあ、あくまで何も思いつかなかった時の話という事だが」

 

「そうですね。その可能性になる確率が高いんだけど・・・」

 

「そうか、なら明日から、打ち合わせでもするか」

 

「でも、漫才のないこの世界でやっても滑るだけだと思うけど・・・・」

 

とまあ、いつの間にか俺と才人は漫才の打ち合わせの話をしてしまっていた。するとルイズが

 

「ところでナオ。これからどこに行くの?」

 

「ナオヤと一緒にナオヤの乗っていた紫電改のところに行くの。ナオヤが正常に動くかチェックしたいんだって」

 

「ふ~ん」

 

ナオの言葉にルイズは興味なさげの表情をしていたが才人は

 

「え!?宮藤さん。紫電改のところに行くんですか!?」

 

「ああ。そうだ」

 

「じゃあ、俺も行っていいか?あの幻の戦闘機、紫電改をまじかで見たい」

 

「幻?ああ、構わないけど下手に触って壊すなよ」

 

そう言うのと同時だった。

 

――バコォォォォン

 

いきなり爆音のような音が響く。

 

「な、なんだあ!?」

 

「爆撃か!?」

 

爆音と揺れで俺たちが驚くとルイズとナオは

 

「広場の方よ!」

 

「うん!行きましょ!!」

 

そう言い二人は広場へと生き、それを見た俺と才人も後を追いかけるのであった。そして4人が広場に向かうと、そしてそこには20メートル近くの岩でできた巨人が本塔の壁を殴りつけていた

 

「な、なんだよあれ!?」

 

「だいだらぼっちか!?」

 

俺と才人が叫ぶ。

 

「あそこって確か、宝物庫じゃ・・・・」

 

ナオが殴っていた場所に気付く。

 

「じゃあ、盗賊!?」

 

ルイズが叫んだ。

 

「あのゴーレムは恐らくトライアングルクラスのゴーレムよ。多分最近巷を騒がせている『土くれ』のフーケとか言う盗賊よ!」

 

ナオがそう予想する。

 

「とりあえず、どうすればいいんだ?」

 

俺は割と冷静に聞く。

 

「宝物庫を守るに決まってるでしょ!!」

 

ルイズが怒鳴った。才人はデルフを抜き、俺は三日月宗近と九四式拳銃を取り出し構える。そしてナオはゴーレムに向かって風の魔法弾をぶつける。

そして魔法弾をぶつけられた足を粉々にされたゴーレムは倒れかけたが、すぐに破壊された足が再生したのだ

 

「再生するのか!?」

 

才人は驚きそう言うと、ゴーレムは標的を壁からナオとルイズへと変え襲ってくる。

 

「ルイズ!!」

 

「ナオ!!」

 

それを見た俺と才人は慌ててルイズとナオのところに向かう。そして迫りくるゴーレムの巨大な手にルイズが動けないでいると

 

「ルイズ、危ない!!」

 

と、ナオがルイズを突き飛ばし、ナオはゴーレムにつかまってしまう

 

「きゃあああああっ!?」

 

「くっ、ナオ!!」

 

悲鳴を上げるナオに俺はそう叫ぶと急に手のルーンが光だし、それと同時に三日月宗近も光りだしていた

 

「な、なんだ?刀が光って!?」

 

俺は突如刀が光ることに驚いたが、何かその刀にすごい力を感じた。

 

「(なんだ?この刀は・・・・・でもこれでナオを助けられるのなら!)」

 

そして俺はナオを掴むゴーレムの腕を睨み刀を振り上げ、

 

「烈風ッーーーー斬っ!!!」

 

俺は勢いで技のような?名を叫び刀をゴーレムの腕へと振り下ろす。その瞬間、刀から鎌鼬のような衝撃波が飛び出て、ナオを掴んでいるゴーレムの腕を切り裂き、そしてその衝撃波はゴーレムでもビクともしなかった宝物庫の壁にものの見事な大穴を開けてしまった。

これには一同唖然とした。だが、俺は気にせずナオを助けに行く。

そして俺がナオを助けている間、ゴーレムは学園を去っていったのだった

 

「ナオ!大丈夫か!!」

 

「う、うん・・・・・」

 

俺の言葉にナオは頷くと俺は安心する。その後先生たちが駆け付け破壊された宝物庫を調べると壁に文字が刻まれた。

 

『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』

 

と・・・・・・

 

 

 



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貴族の誇りと帝国軍人の志願

フーケの襲撃から、一夜明けたトリステイン魔法学院では大騒ぎになっていた。秘宝である『破壊の杖』が盗まれたからだ。

 

「それで、犯行現場を目ていたのは誰だね?」

 

オスマンが切り出した。

 

「この4人です」

 

コルベールが自分の後ろに控えていた4人を指差した。その人物はナオにルイズにキュルケにタバサの4人である。

直哉と才人も傍にいたが、使い魔なので数には入っていない。

 

「ふむ・・・・君たちが?」

 

オスマンは興味深そうに才人を、そして直哉を見つめた。

 

「詳しく説明したまえ」

 

ルイズが進み出て、説明を始める。

 

「あの、私達が大きな音を聞いて広場に向かった時です。大きなゴーレムが宝物庫の壁を殴りつけていたんです。私達は何とかくい止めようとして、使い魔達がゴーレムを倒すことには成功しました。ですが、その隙にナオがゴーレムに捕まってしまったんです。ナオを助けている内に、黒いローブを着たメイジが宝物庫に開いた穴から中に入って、何かを・・・・・、その『破壊の杖』だと思いますけど・・・・、盗み出した後、倒されたゴーレムの土を使って、一回り小さなゴーレムを作って、それに乗りました。ゴーレムは城壁を越えて歩き出して・・・・・その後を、ミス・タバサが風竜で追っていたんですけど、最後には崩れて土になってしまいました」

 

「それで?」

 

「後には、土しかありませんでした。肩に乗っていた黒いローブを着たメイジは、影も形も無くなっていました」

 

「ふむ・・・・」

 

オスマンは髭を撫でた。因みにルイズの言ったことに嘘は無い。

宝物庫の穴を開けたのは直哉であったのだが、先程の説明には、「ゴーレムが宝物庫の壁を殴りつけていた」と言っただけで、ゴーレムが穴を開けたとは言ってない。

そんな事を言えば、どんな責任を取らされるか、分かったものではないからである。

説明していたルイズは、内心冷や汗ものであった。

 

「後を追おうにも、手がかり無しというわけか・・・・・」

 

それから、オスマンは、なにか気付いたようにコルベールに尋ねた。

 

「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」

 

「それがその・・・・・・朝から姿が見えませんで」

 

「この非常時に、何処に行ったのじゃ?」

 

「どこなんでしょう?」

 

そんな風に噂していると、ロングビルが現れた。

 

「ミス・ロングビル!何処に行っていたんですか!?大変ですぞ!事件ですぞ!」

 

コルベールが興奮してまくし立てる中、ロングビルは落ち着いた態度でオスマンに言った。

 

「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」

 

「調査?」

 

「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこの通り。すぐに壁にフーケのサインを見つけたので、これが国中を震え上がらせている大怪盗の仕業と知り、すぐに調査をいたしました」

 

「仕事が早いの。ミス・ロングビル」

 

そして、コルベールが慌てた調子で促した。

 

「で、結果は?」

 

「はい。フーケの居所が分かりました」

 

「な、なんですと!?」

 

コルベールは素っ頓狂な声を上げる。

 

「誰に聞いたんじゃね?ミス・ロングビル」

 

「はい。近在の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。おそらく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」

 

「黒ずくめのローブ?それはフーケです!間違いありません!」

 

ルイズが叫ぶ。その言葉にオスマンは目を鋭くして、ロングビルに尋ねた。

 

「そこは、近いのかね?」

 

「はい。徒歩で半日。馬で4時間といったところでしょうか」

 

「すぐに王室に報告しましょう!王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」

 

コルベールが叫んだ。だが、オスマンは首を振ると怒鳴った。

 

「馬鹿者!!王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ!その上、身にかかる火の粉を己で振り払えぬようで、何が貴族じゃ!魔法学院の宝が盗まれた!これは、魔法学院の問題じゃ!当然我らで解決する!」

 

ロングビルは、まるでこの答えを待っていたかのように微笑むとオスマンは咳払いすると、有志を募った。

 

「では、捜索隊を編成する。我と思うものは、杖を掲げよ」

 

だが、誰も杖を掲げようとはしない。困ったように顔を見合すだけであった。

 

「おらんのか?おや?どうした!フーケを捕まえて、名を上げようと思う貴族はおらんのか!?」

 

オスマンは更に言うが、教員の誰も杖を掲げない。しかし、一人だけ名乗り出るものがいた

 

「自分が行きます」

 

それは直哉であった。彼は一歩前に出てオスマンにそう言う。その行動に全員が驚いた

 

「宮藤さん。なんで?」

 

才人が尋ねる。

 

「一応、その宝が盗まれた原因を作ったのは自分ですから」

 

「如何いう事じゃ?」

 

直哉の答えに疑問を持ったのか尋ねる。

 

「ええ。宝物庫に穴開けたの、自分なんで」

 

その言葉に、ルイズ達は、「何でバラすのよ」といった表情になり、他の教師達は驚愕し、ここぞとばかりに直哉に責任全てを擦り付けるために、言葉を続ける。

 

「貴様、フーケの仲間か!」

 

「貴様のような平民の所為で我らが学院の宝が!」

 

などという言葉を直哉に浴びせるのだが・・・・

 

「止めんかっ!!」

 

オスマンの怒号が響き、教師達は黙ってしまう。

 

「少なくとも、フーケの仲間という事はないじゃろ。そうだったとしたら、こんな所で名乗り出るなどという真似はしないはずじゃ。それで、君はミス・ユミエールの使い魔の少年じゃったな。先程言ったことをもう少し詳しく教えてもらえんかの?」

 

オスマンに言われ、話を続ける。

 

「はい。自分はナオがゴーレムに捕まったの見て救出しようとし、刀・・・剣でゴーレムの腕を斬り裂きました。ですが、その時の衝撃で、宝物庫の壁に穴を開けてしまったんです。そしてナオをを助けに行った隙にフーケが宝物庫に侵入したんです」

 

そう言うと、1人の教師が直哉に言った。

 

「貴様!何故その場で宝物庫を守らなかった!」

 

「先ほど申し上げた通り、ナオが捕まったからです。したがって人命を優先としました」

 

「だから、何故秘宝を守らなかったと聞いている!その場にはミス・ユミエールの他に貴族が3人もいたのだろう。何故秘宝を優先して守らなかった!?・・・それでも・・・」

 

教師がそう言葉をつづけようとしたとき

 

「黙れっ!!!」

 

「「「っ!???」」」

 

小柄な直哉に似合わない大きな怒声にその場にいた皆は固まる

 

「秘宝がどんな物か知りませんがね、秘宝だろうが国宝だろうが、人命の前ではただの置物にすぎん!!命とは尊い物だ!!ましてはたった一つの命だ!物は奪われてもいつかは奪い返せる。しかし失った命は戻ることはない!!貴様それでも教師の端くれか!!」

 

「ひっ!?」

 

直哉の殺気のこもった眼で睨まれ、その教師は恐縮してしまう。するとオスマンは

 

「やれやれ・・・秘宝を置物扱いとか少し言い過ぎじゃが、命と物、天秤にかければどちらが重いか言うに及ばんじゃろ。どうも貴族たちは命を軽視しすぎていかん」

 

「しかし、オールド・オスマン・・・・・・」

 

「それに彼は、ミス・ユミエールの使い魔じゃ。使い魔が主を優先して助けるのは当然じゃろ」

 

「・・・・・・・」

 

その教師は何も言えなくなってしまった。

直哉は別にナオが主だったから助けたわけではないのだが、それを言うとまた面倒なことになると思ったので黙った。

 

「それで、君は何故名乗り出たんじゃ?」

 

オスマンは話を戻し、直哉にそう問いかけた

 

「今回の件。先ほど申し上げた通り盗まれたのは自分にもあります。他のものが名乗り出て解決するのならそれもいいですが、誰も志願しないのであれば今回の原因を作った自分が責任を取るため志願することにしました」

 

直哉はコルベールを除き周りの教師に向けた嫌味と嫌悪も含めてそう告げた

 

「ふ~む・・・・」

 

オスマンは髭を撫でながら考えると

 

「宮藤さんが行くなら俺も行くぜ」

 

「才人?」

 

「宮藤さんだけ、かっこつけさせるわけにはいきませんよ。それに同じ日本人であり兄貴分の宮藤さんが行くのであれば俺も行かなければ日本男児の名が廃る・・・てね?」

 

「カッコつけやがって・・・・・まあ、ありがとよ」

 

才人の言葉に直哉は嬉しそうに礼を言うと俯いていたルイズがすっと杖を掲げた。

 

「ミス・ヴァリエール!?」

 

シュヴルーズが驚いた声を上げた。

 

「何をしているのです!?あなたは生徒ではありませんか!ここは教師にまかせて・・・・・・」

 

「誰も掲げないから、使い魔達が行くと言っているのではありませんか。そして、私は貴族でメイジです。使い魔だけを行かせるわけにはいきません!」

 

そのルイズを見て、才人はポカンとした。ルイズが杖を掲げているのを見て、キュルケはしぶしぶ杖を上げた。

 

「ツェルプストー!?君は生徒じゃないか!」

 

コルベールが驚いた声を上げる。

 

「ふん。ヴァリエールには負けられませんわ」

 

キュルケはつまらなそうに言う。キュルケが杖を掲げるのを見て、タバサも掲げた。

 

「タバサ。あんたはいいのよ。関係ないんだから」

 

キュルケがそういったら、タバサは短く答えた。

 

「心配」

 

キュルケは感動した面持ちでタバサを見つめ、ルイズも唇をかみ締めてお礼を言った。

 

「ありがとう・・・・タバサ・・・・」

 

そして、杖の先が震えながらも、もう一つの杖が掲げられた。

 

「ナオ!?」

 

これには、さすがの直哉も驚いた。

 

「ナオ、無理すんな。唯でさえ昨日怖い目にあってるんだから・・・・」

 

直哉がそう言うが、

 

「わ、私も、友達を守りたい・・・・・それに・・・・自分に嘘はつきたくないから・・・・」

 

「・・・・・そうか」

 

ナオの強い意志を見た直哉はこれ以上言うのをやめた。言ったところで彼女は引き下がらないだろうと思ったからだ。

そんな様子を見て、オスマンは笑った。

 

「そうか。では、頼むとしようか」

 

「オールド・オスマン!私は反対です!生徒たちをそんな危険に晒すわけには!」

 

「では、君が行くかね?ミセス・シュヴルーズ」

 

「い、いえ・・・・私は体調が優れませんので・・・・・」

 

「彼女たちは敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いているが?」

 

教師達は驚いたようにタバサを見つめた。そのタバサは、返事もせずにぼけっと突っ立っている。

 

「本当なの?タバサ」

 

キュルケも驚いている。

 

「ルイズ、『シュヴァリエ』って?」

 

才人はルイズに尋ねる。

 

「『シュヴァリエ』っていうのは、王室から与えられる爵位としては、最下級なんだけど、他の位の低い爵位と違って、純粋に業績に対して与えられるものなの。つまり、実力の称号ってことよ。私たちの歳で持ってる人なんて滅多にいないわ」

 

「そうなのか」

 

そう話している間にもオスマンの言葉は続く。

 

「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いているが?」

 

キュルケは得意げに髪をかきあげる。

そして、ルイズが自分の番だと言わんばかりに胸を張った。だが、オスマンは困っていた。褒めるところがなかなか見つからなかったのだ。コホン、と咳をすると、オスマンは目を逸らしながら言った。

 

「その・・・・ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール家の息女で、その、うむ、なんだ、将来有望なメイジと聞いているが?しかもその使い魔は!」

 

それから才人を熱っぽい目で見つめた。

 

「平民ながらあのグラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという噂だが」

 

オスマンは思った。

 

「(彼が、本当に伝説の『ガンダールヴ』なら、土くれのフーケに、遅れを取ることはあるまい)」

 

更に、コルベールが興奮した調子で、オスマンの言葉を引き取った。

 

「そうですぞ!なにせ、彼はガンダー・・・・・」

 

オスマンは慌ててコルベールの口を塞いだ。

 

「むぐ!はぁ!いえ、なんでもありません!はい!」

 

オスマンは落ち着くと言葉を続ける。

 

「そして、ミス・ユミエールは、現在このトリステイン魔法学院で成績優秀な優等生であり、ミス・タバサに及ばないながらも、中々の風の使い手であるトライアングルメイジと聞いておるが?更にその使い魔もミス・ヴァリエールの使い魔同様、グラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ち先程の報告が正しければ、フーケのゴーレムを破壊したのは、ミス・ユミエールの使い魔じゃ」

 

教師達はすっかり黙ってしまった。オスマンは威厳のある声で言った。

 

「この4人に勝てるという者がいるなら、一歩前に出たまえ」

 

と、そう言うのだが、誰もいなかった。オスマンは、直哉、才人を含む6人に向き直った。

 

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」

 

「「「「杖にかけて」」」」

 

ナオ、ルイズ、キュルケ、タバサの4人は、直立して真顔になり、そう唱和した。

 

「では、馬車を用意しよう。それで向かうのじゃ。魔法は目的地につくまで温存したまえ。ミス・ロングビル!」

 

「はい。オールド・オスマン」

 

「彼女たちを手伝ってやってくれ」

 

「もとよりそのつもりですわ」

 

ロングビルは、頭を下げそう告げた。こうして6人は秘宝「破壊の杖」を盗んだ、土くれのフーケを捕まえるべく立ち上がったのだった

 

 

 

 

 



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破壊の杖捜索

6人は、ロングビルを案内役に、早速出発した。

馬車といっても、屋根無しの荷車のような馬車であった。

襲われたとき、すぐに、外に飛び出せるように、という理由らしい。

道中、キュルケが御者を買って出たロングビルに、何かと話しかけようとして、それを止めようとしたルイズと口論になっているが、直哉はそれよりも、隣のナオを気にしていた。

ナオは、馬車に乗ってから殆ど喋っておらず、座ったまま俯いている。

よく見ると、その手は微かに震えていた。

 

「ナオ・・・・怖いのか?」

 

直哉はナオに話しかける。

 

「・・・・うん・・・少しね」

 

ナオはか細い声で呟く。

 

「恐怖を感じるのは仕方ないさ。誰だって、怖いときは怖い」

 

「うん・・・・・ナオヤは・・・・本当に怖かった時・・・・どうしたの?」

 

ナオは恐る恐る訊いた、すると

 

「俺か・・・・・そうだな…怖くなかったって言うのは嘘になるかな。やっぱり命を懸けたそれこそ戦争で恐怖を感じない奴なんていなかったと思う・・・・・でも戦っている最中はそんなこと忘れていたな」

 

「・・・・忘れる?」

 

「それに近い物って言えばいいのかな?あの時の俺たちは自分の命を国に預けていた。そして俺たちのするべきことは愛する国をそこに住む人をそして家族を敵から守るため命がけで戦ってきた。だからこそ俺たちは逃げちゃいけない。時には勇気を出して戦わなければいけないんだってな。確かに、怖いときは怖い。でも、そこで逃げずに、その恐怖に立ち向かう勇気が大切なんだよ」

 

「恐怖に立ち向かう・・・・勇気・・・」

 

ナオの言葉に直哉は頷く

 

「ナオ。人間だれしも勇気を持っている。もちろんナオも勇気を持っている。でなきゃ、ここにいるはずがない。ナオに足りないのは自信だけだ」

 

「・・・・・・・・」

 

ナオは、その言葉を聞き、考え込む。

 

「ナオ。もっと自信を持て。ナオは俺を召還したんだ。しかも今までの召喚で前例がなかった異世界人をしかも大日本帝国軍の戦闘機のパイロットをな」

 

「ナオヤ・・・」

 

一行を乗せた馬車は深い森に入っていった。暫くして、馬車から降り、徒歩で森の小道を進んでいると開けた場所に出た

真ん中に廃屋がある。

7人は小屋の中から見えないように、森の茂みに身を隠したまま廃屋を見つめた。

 

「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」

 

ロングビルが廃屋を指差して言った。

タバサの作戦で、先ず、偵察兼囮役が廃屋の様子を確かめることになった。

 

「で、偵察兼囮役は誰がやるの?」

 

キュルケがそう言うと

 

「俺が行く」

 

「宮藤さんが行くなら俺も行くぜ」

 

と、直哉と才人が志願した。そして直哉は刀と九四式拳銃をもち、そして才人はデルフに手をかける。

そして二人は慎重に小屋に近づき、

 

「行くぞ才人」

 

「ああ・・・・」

 

直哉の言葉に才人は小さくうなずき、直哉が静かにドアを開ける。そして二人は中へ入り、直哉は拳銃を才人はデルフを構えあたりを警戒する

 

「・・・・・誰もいないみたいだな?」

 

「そうだな・・・・」

 

二人は小屋の中に誰もいないことを確認し、待機しているルイズたちに合図を送った。合図を確認したルイズたちは小屋に恐る恐る近づきそしてタバサがドアに向けて杖を振った。

 

「罠は無いみたい」

 

そう呟いて、ドアを開け、中に入っていく。ルイズは外で見張りをすると言って、後に残った。

 

ロングビルは、辺りを偵察すると言って、森の中に消えた。

 

小屋に入った拓也たちは、手がかりが無いか調べ始めた。

 

そして、タバサがチェストの中から、

 

「破壊の杖」

 

なんと、『破壊の杖』を見つけ出した。

タバサはそれを持ち上げると、皆に見せた。

 

「あっけないわね!」

 

キュルケが叫んだ。

 

それを見た直哉と才人が呆然としている。

 

「おいこれって・・・・・・」

 

「宮藤さんこれは・・・・・」

 

二人が驚いた顔をし、直哉が

 

「なあ。これは本当に『破壊の杖』なのか?」

 

直哉が驚きながらも尋ねる。

 

「うん。宝物庫を見学したときに見たことがあるから、間違いないよ」

 

そう答えたのはナオ。

 

直哉と才人は近寄って、『破壊の杖』をまじまじと見つめた。

そして、互いに顔を見合わせる。

と、その時、

 

「きゃああああああああ!」

 

ルイズの悲鳴が響く。

 

「どうした!?ルイズ!!」

 

才人が叫び、一斉にドアに振り向いたとき、小屋の屋根が吹き飛ぶ。

 

そこには、巨大なフーケのゴーレムの姿があった。

 

「ゴーレム!」

 

キュルケが叫び、タバサが即座に反応した。自分の身長より大きな杖を振り、呪文を唱える。

杖の先から巨大な竜巻が巻き起こり、ゴーレムにぶつかっていく。

しかし、ゴーレムはビクともしない。

キュルケが胸にさした杖を引き抜き、呪文を唱えた。

杖から炎が伸び、ゴーレムを火炎に包むが、ゴーレムは全く意に介さない。

 

「無理よこんなの!」

 

キュルケが叫ぶ。

 

「退却」

 

タバサが呟く。

 

キュルケとタバサは一目散に逃げ始めた。

ナオに至っては、恐怖で身体が動かない。

才人はルイズの姿を探す。

ルイズはゴーレムの背後に立っていた。

ルイズが呪文を唱え、ゴーレムの表面で小さな爆発が起こる。それで、ゴーレムがルイズに気付いて振り向いた。

小屋の入り口から才人は叫んだ。

 

「逃げろ!ルイズ!」

 

「嫌よ!あいつを捕まえれば、誰ももう、私をゼロのルイズとはよばないでしょ!」

 

そう言うルイズの目は真剣だった。ゴーレムはルイズを狙うか、ナオを狙うかで迷っているようだ。

 

「あのな!ゴーレムの大きさを見ろ!お前があんな奴に勝てるわけねえだろ!」

 

「やってみなくちゃ、わかんないじゃない!」

 

「無理だっつの!」

 

才人がそう言うと、ルイズはぐっと才人を睨みつけた。

 

「あんた、言ったじゃない」

 

「え?」

 

「ギーシュとの決闘のときに言ったじゃない。下げたくない頭は下げられないって!」

 

「そりゃ言ったけど!」

 

「私だってそうよ。ささやかだけど、プライドってもんがあるのよ。ここで逃げたら、ゼロのルイズだから逃げたって言われるわ!」

 

「いいじゃねえかよ!言わせとけよ!」

 

「私は貴族よ。魔法が使えるものを、貴族と呼ぶんじゃないわ」

 

ルイズは杖を握り締めた。

 

「敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!」

 

ゴーレムはルイズに狙いを定めたらしい。

 

ゴーレムの巨大な足が持ち上がり、ルイズを踏み潰そうとした。

 

ルイズは呪文を詠唱し、杖を振るが、ゴーレムの表面で小さな爆発が起こり、僅かに土がこぼれただけであった。

 

「ルイズッ!!」

 

才人はデルフリンガーを構えると飛び出した。ルイズの視界に、ゴーレムの足が広がった。

 

ルイズは目を瞑った。

その時、烈風のごとく走りこんだ才人が、ルイズの身体を抱きかかえ、地面に転がった。

才人は身を起こすと、思わずルイズの頬を叩いた。

乾いた音が響く。

 

「死ぬ気か!?お前!!」

 

ルイズは呆気に取られて才人を見つめた。

 

「貴族のプライドがどうした!?死んだら終わりじゃねえか!馬鹿!」

 

ルイズの目からぽろぽろと涙がこぼれた。

 

「泣くなよ!」

 

「だって、悔しくて・・・・・・私・・・・・・いっつも馬鹿にされて・・・・・」

 

目の前で泣かれて才人は困ってしまった。

しかし、ルイズが泣いても敵は待ってくれない。

振り向くと、大きなゴーレムが拳を振り上げている。だが才人は

 

「悔しいからって泣くなよバカ」

 

才人が小さく呟く。

 

「なんとかしてやりたくなるじゃねえかよ!」

 

才人はデルフリンガーを構え、ゴーレムを真っ向から睨み付けた。

 

「それでこそ、才人だな」

 

それを見た直哉は頷き。才人の横に並ぶ。

 

「行くぞ!宮藤さん!」

 

「おう!」

 

そして直哉は才人と同じく三日月宗近を構える。そして太陽の光に反射され妖しく光る

そして直哉は刀を構えこう言った

 

 

 

 

 

「・・・・・不名誉より・・・・・・死を」

 

 

 



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ナオの勇気、吹き荒れる紫電の嵐

「「うおおおおっ!」」

 

襲い掛かるゴーレムに二人は斬りかかる。普通なら岩でできているゴーレムには傷一つつかないはずだが、二人は使い魔としての力が発動しているのか、まるで豆腐を斬るように両足を切断した。

ゴーレムはバランスを崩し、転倒する。

だが、すぐに欠損部を再生させ、立ち上がる。

 

「くっ、これじゃあキリが無い!」

 

「相棒、ああいうゴーレムは胴体を一気に吹き飛ばさないと駄目だ」

 

デルフリンガーが才人にアドバイスをする。

 

「一気に吹き飛ばすってったって・・・・」

 

「それじゃあ、戦車か野砲が必要になるぞ!くそっ!」

 

考えている内にも、ゴーレムが標的を才人に定め彼を踏み潰さんと足を振り上げる。

 

「やべっ!」

 

才人が飛び退こうとしたが足が動かない。

 

「なっ!?」

 

見れば、土の手が足を掴んでいた。上を見れば、視界いっぱいに広がるゴーレムの足の裏

 

「やっべぇ・・・・」

 

才人はまずいと思った瞬間

 

「才人!伏せろ!!」

 

死を覚悟した瞬間、聞こえた直哉の声に、咄嗟に身を屈めた。

 

「はぁ!!」

 

直哉が飛び出て才人を踏み潰そうとするゴーレムの足を斬り落とし、ゴーレムを転ばせる

 

「いい切れ味だな・・・・ふっ・・・・今宵の虎徹は血に飢えている」

 

「宮藤さん。それは宗近じゃ・・・・」

 

「わかってる。わかってる。雰囲気だ。雰囲気。それより大丈夫か?」

 

「ああ・・・・宮藤さん!前!!」

 

「っ!?」

 

直哉は見上げるとそこには足を修復させたゴーレムが直哉を踏み潰そうとしていた。そして直哉を踏みつけたが、なんと直哉は刀で受け止め、支えていた

 

「(くそっ!火事場の馬鹿力とはよく言ったものだが・・・・これじゃあ長くはもたねえ)」

 

「宮藤さんっ!今助けます!!」

 

才人は、デルフリンガーを構え、足に斬りかかろうとしたが、ゴーレムは器用に直哉を押さえつけたまま、才人に拳を放ってくる。

 

「くそっ!」

 

その攻撃で、足に斬りかかる隙が無い。

才人は一旦距離を取る。

それでも、ゴーレムは直哉を一番の脅威としているのか、彼を逃がす心算はないらしい。

ナオとルイズは苦戦する直哉と才人を、はらはらしながら見つめていた。

 

「なんとかしないと・・・・」

 

ルイズは、自分が出来ることを考える。

その時、タバサが抱えた『破壊の杖』に気付いた。

 

「タバサ!それを!」

 

タバサは頷いて、ルイズに『破壊の杖』を手渡す。

 

「ナオ!私に『レビテーション』をお願い!」

 

そう言って、ルイズはシルフィードから飛び降りた。

ナオは慌ててルイズに『レビテーション』をかける。

ルイズはゆっくりと地面に降り立つと、ゴーレム目掛けて『破壊の杖』を振った。

しかし、何も起こらない。

 

「ホントに魔法の杖なの!?これ!」

 

ルイズは怒鳴る。

その時、ルイズに気付いた才人は、

 

(あのはねっかえりめ。上で、大人しくしとけばいいのに!・・・・って、あいつが持ってる物って・・・・・)

 

才人は考えを巡らす。

 

(そうだ。アレなら何とかなる!)

 

才人はルイズ目掛けて駆け出した。

 

「サイト!」

 

「貸せ!ルイズ!」

 

才人はルイズから『破壊の杖』をひったくる様に受け取る。

 

「使い方が、わかんない!」

 

ルイズが叫ぶ。

 

「これはな・・・・こう使うんだ」

 

才人は、『破壊の杖』を掴むと、安全ピンを引き抜き、リアカバーを引き出してインナーチューブをスライドさせた。

ふと才人の頭に、自分は何故こんなもの扱えるのか、という疑問がわくが、今はそんな事を考えてる余裕は無い。

チューブに立てられた照尺を立てる。

ルイズはその光景を唖然としながら見ていた。

そして、用意が整ったところで、ゴーレムを狙おうと標準を合わせようとした時、それより僅かに早く、ゴーレムが行動を起こしていた。

ゴーレムが、周りをゆっくりと旋回しているシルフィードに、左腕を向ける。

そして次の瞬間、ドンッ、という音と共に、ゴーレムの腕がシルフィードに向けて発射された。

 

「きゅい!?」

 

突然のことで、シルフィードは完全に虚を突かれた形となり、反応できなかった。

腕を諸に受け、その衝撃で、乗っていたナオ、タバサ、キュルケは振り落とされる。

振り落とされた3人は『レビテーション』を唱え、何とか無事に着地する。

だが、シルフィードを掴んだゴーレムの腕は、そのままゴーレム本体に引き寄せられ、元の腕の位置に戻った。

 

「シルフィード!」

 

タバサが叫ぶ。

 

「きゅい!きゅい!」

 

シルフィードはもがくが、抜け出せそうにない。

 

「やべえ!アレじゃあ、シルフィードを巻き込んじまう!」

 

才人は構えていた『破壊の杖』を一旦肩から下ろす。

 

「くそっ!コイツじゃ破壊力がありすぎるし、タバサやキュルケの魔法も効かない。どうすりゃいいんだよ!?」

 

才人が叫ぶ。タバサもキュルケも打つ手が無い。

 

(一体・・・・・どうすれば・・・・)

 

ナオがそう思った時、ナオの脳裏に、馬車での会話が思い浮かんだ。

 

『確かに、怖いときは怖い。でも、そこで逃げずに、その恐怖に立ち向かう勇気が大切なんだ』

 

「恐怖に立ち向かう勇気・・・・・」

 

ナオはポツリと呟く。

 

『ナオ。人間だれしも勇気を持っている。もちろんナオも勇気を持っている。でなきゃ、ここにいるはずがない。ナオに足りないのは自信だけだ』

 

「自信・・・・」

 

先程のルイズ、才人、直哉の姿を思い出す。

 

『私は貴族よ。魔法が使えるものを、貴族と呼ぶんじゃないわ。敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!』

 

魔法が使えないのに、巨大なゴーレムに一歩も退かなかったルイズ。

 

『悔しいからって泣くなよバカ・・・・・なんとかしてやりたくなるじゃねえかよ!』

 

ただそれだけの理由で、ゴーレムと戦うことを決意した才人。

その才人を救うために躊躇いもせずゴーレム向かっていった直哉

それらの行動は、見方によっては無謀と取れるかもしれない。

だが、それは全て大切なものを守ろうとする勇気だった。

 

「勇気・・・」

 

そして、馬車の上で、最後に言われたことを思い出す。

 

『ナオ。もっと自信を持て。ナオは俺を召還したんだ。しかも今までの召喚で前例がなかった異世界人をしかも大日本帝国軍の戦闘機のパイロットをな』

 

 

ナオは、杖を握り締める。

 

「大切なものを守りたいと思う気持ち・・・・」

 

ナオは自分に言い聞かせるように呟き、一歩踏み出す。

 

「自分の力を信じる、自身・・・・・」

 

皆の前に進み出る。

 

「ナオっ!?」

 

ルイズ達が驚いている。だが、今のナオは前を見続ける。

 

「そして、恐怖に立ち向かう・・・・勇気!」

 

そしてナオは杖を掲げた。

呪文を唱えだす。そして彼女の体から青白いオーラがまといそして周辺から強力な風が吹き上がる

そしてナオはカっと目を見開き

 

「シュトゥルム!!!!」

 

その名を叫ぶと共に、ナオは杖をゴーレム目掛け振り下ろした。

そして杖の先から巨大な竜巻がまるで槍のようにゴーレムへと向かっていく

ナオが狙った場所は、直哉を押さえつけている足の膝。放った『シュトゥルム』は、見事ゴーレムの膝を突き破り、貫通する。

その光景に、ルイズ、キュルケ、タバサは声が出なかった。

その隙を突いて、直哉は大きく飛び退く。

 

「ふぅ…危うく潰されるところだった」

 

そう言い直哉はナオを見て

 

「すげぇじゃねえか…やっぱナオは」

 

と笑うとが拓也に駆け寄る。

 

「ナオヤ!大丈夫!?」

 

心配そうな顔で声をかけてくる。

 

「ああ、大丈夫だ。ありがとうナオ。お陰で助かったよ」

 

直哉はは立ち上がり、一旦、才人達と合流する。

 

「宮藤さん、大丈夫か!?」

 

「ああ。ナオのお陰でな」

 

その時、ゴーレムが足を再生させ、再びこちらに歩いてくる。

 

「くそ、何とかシルフィードを助けないと、ゴーレムに止めを刺せねえ」

 

直哉は才人が持っているものに目がいく。それを見て、少し考え、口を開く。

 

「おい、才人」

 

「何だ?」

 

「シルフィードは俺が助ける。止めは任せた」

 

「は?」

 

直哉は皆の前に出る。そして、一度振り向き、

 

「直哉。お前の勇気、無駄にはしない!」

 

そう言い、拳をボキボキ鳴らすと、ルーンが光り、そして宮藤の右こぶしが光り出す、そして物凄い速さでゴーレムに向かっていく

 

「見てろ!菅野隊長直伝の大技だっ!!」

 

そう言い、飛びあがると

 

「喰らえっ!!剣一閃っ!!!」

 

そう叫びめい一杯、シルフィードを掴む腕を殴った。そしてゴーレムの腕は粉々に砕かれたのだった

 

「嘘っ!」

 

「えっ!?」

 

その光景にキュルケはおろかルイズや才人も驚いていた

 

「きゅい!?」

 

シルフィードは自由になるが、体制が悪く落下する。

持ち直せそうにないので、地面が近付いてくるのを見て、シルフィードは目を瞑る。

しかし、突如落下感が消え、何かに抱えられる感覚がする。

 

「きゅい?」

 

シルフィードが目を開けると、

 

「ぐぬぬぬ・・・・・お、おい大丈夫か?」

 

苦しそうな表情ながら直哉がシルフィードを抱え上げていた。そしてシルフィードは頷き

 

「だ、大丈夫なのね」

 

そう言った。

 

「そうか・・・・・って、ん?」

 

その時直哉は違和感を感じた。いつものテレパシーではなく口で話したような・・・・・

 

「お前、今、口で喋らなかったか?」

 

「きゅ!?きゅいきゅい!(き、気のせいなのね!)」

 

「そうか?」

 

「きゅいきゅい!(そうなのね!)」

 

直哉は少し釈然としないが、才人に向かって叫ぶ。

 

「今だ!才人!!」

 

才人は『破壊の杖』を肩に担ぎ、既に狙いを定めていた。

 

「後ろに立つな。噴射ガスがいく。」

 

才人はその場にいる4人に言う。4人は才人の後ろから退いた。

才人は安全装置を抜き、トリガーを押した。

しゅぽっと栓抜きのような音がして、白煙を引きながら羽をつけたロケット状のものがゴーレムに吸い込まれる。

そして、狙いたがわずゴーレムの胴体に命中した。

吸い込まれた弾頭が、ゴーレムの身体にめり込み、そこで信管を作動させ爆発する。

ゴーレムの上半身がばらばらに飛び散った。

ゴーレムの下半身が残っていたが、やがて崩れ去る。

昨日と同じように土の小山が残された。

ルイズはその様子を呆然と見つめていたが、腰が抜けたのかへなへなと地面に崩れ落ちた。

 

「サイト!凄いわ!やっぱりダーリンね!」

 

そう言って、キュルケが才人に抱きつく。そこに、シルフィードと直哉がやってきた

タバサが駆け寄って、シルフィードの状態を診る。

 

「怪我はなさそうか?」

 

直哉がタバサに聞く。

 

「骨に異常は無い。傷も擦り傷だけ。けど、無理は禁物」

 

「そうか。なら、帰る時は、シルフィードは馬車に乗せてゆっくり帰った方がいいな」

 

「その方がいい」

 

直哉の言葉にタバサが頷く中、そのシルフィードは直哉を見つめていた。

 

(きゅい~、なんて逞しい御方なのね・・・・)

 

シルフィードは心が熱くなるのを感じた。

 

(きゅい!?な、なんなの?今の気持ちは?)

 

直哉はふとシルフィードの視線に気付く。

 

「ん?どうかしたか?」

 

そう尋ねる。

 

「きゅ!?きゅいきゅい!(な、何でもないのね!)」

 

「ならいいけど・・・」

 

その時、ポツリとタバサが呟いた。

 

「フーケは何処?」

 

全員がハッとなる。

すると・・・・辺りを偵察に行っていたロングビルが茂みの中から現れた。

こちらに歩いてくる。

 

「ミス・ロングビル!!」

 

「無事だったのね!」

 

そう言いみんなが駆け寄ろうとすると宮藤が手で制しする

 

「ナオヤ?」

 

その行動にナオが首をかしげると

 

「おっとそこを動くな。ロングビルさん」

 

そう言い、直哉はホルスターから九四式拳銃抜き、そして彼女に向けるのだった

 



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