遊戯王5D'sー疾風の決闘者ー (佑馬)
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第1話
遊戯王。日本では最も有名なカードゲームの1つでありそのカードプールの広さから構築の幅広さが特徴だ。同じテーマのデッキでもプレイヤーによってそのデッキ内容は大きく異なる。そしてここにもその魅力にとりつかれた青年が1人いた。
「うーん…これ入れてもありきたりで面白くないしなぁ。かといってこっち入れても噛み合わないし…」
見るからに頭を抱えて悩んでいるのは神代悠吾。どこにでもいるごくごく普通の大学生だ。そして彼を悩ませているのは今組んでいるデッキについてだった。安定性をとるか爆発力をとるか、使いたいカードを最大限活かすにはどうすればいいか。考えることが多くあるがそれがデッキ構築の楽しみともいえる。
「ちょっと行き詰まったし散歩がてら外の空気でも吸うかなー」
外に出てみるともう日が傾きかけていた。いくら休みとはいえ朝からぶっ通しでデッキ構築をしていたので軽く伸びをしただけで体がバキバキと大きな音をたてた。ひと仕事終えた心地よい疲労感と共に翌日には学校が控えているという憂鬱感もわいてきた。
『もう少しで完成しそうだし早速明日持っていってデュエルするか!あ、やべレポートすんの忘れてた…今日は徹夜だな…』
そんなことを考えながらブラブラと歩いているうちに横断歩道に差し掛かった。そして信号を確認しながら交差点を渡る。その時だった。隣からものすごい勢いで突進してくる鉄の塊が視界に入った。ートラックだー。そう思った瞬間には手遅れで気づけば体が宙に浮いていた。体が地面と接触した瞬間も不思議と痛みは全くなく、ただ意識だけが遠のいていくのを感じた。
『う、嘘だろ……こんな形で死ぬなんて…まだやりたいことだって山ほどあんのに…大学生活だって全然エンジョイしてないし親孝行だってしたいのに…』
薄れていく意識とは裏腹に頭は驚くほどクリアで多くの事を考えていた。これが走馬灯というものかと納得してしまうほどだった。段々止まっていく心臓の鼓動を感じながら彼はこう願っていた。
『あーあ。。もっと…デュエルしたかったなぁ……』
閉じていく視界のなかで彼が最後にみたのは血に染まった道路とあわてふためいている通行人だった。その光景を最後に彼の心臓は動きをとめた。それと同時に彼のコートの中にあるカードが光ったことには誰も気づかなかった。
そのカードは彼が最も信頼し、いつも持ち歩いているカード、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。次回はデュエルがあると思うのでもし興味がある方は次回もみていただけると嬉しいです。
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第2話
ーピピピピ、ピピピピ、ピピピピ……
耳障りな音が部屋中に響く。この音を朝に聞くと憂鬱に感じる人が多くいるのではなかろうか。その正体は毎朝7時にセットされている目覚まし時計だった。
「うるっせーな…もう朝かよ……」
そう1人ぼやくと目覚まし時計の上に設置されているボタンを静かに押しアラームを止める。どこぞの漫画の主人公のように壊れるほど叩いたりはしない。ましてや投げつけるなどもっての他だ。モノは大切に、が彼のモットーである。
まだぼやけている視界で自分の部屋を見渡し頭を覚醒させる。そして覚醒していく意識のなかで思いだされるのは昨日確かに自分がトラックに跳ねられたということだ。
「そうだ…俺確か昨日トラックに跳ねられたんじゃなかったっけ?なんで無傷なんだ…?確実に終わったと思ったんだけど…」
よくできた夢だと考えることもできたがあの感覚は夢と言って終わらせるには鮮明すぎだった。色々考えても頭が混乱するのでとりあえず後回しにしようと思いカーテンを開けるとそこに広がっている光景に愕然とした。
窓から見えた景色はいつも彼が見慣れている東京の景色ではなく見たこともない高層ビル、3Dの立体映像、それはまるで漫画で見た近未来の光景そのものであった。そして最も驚いたのがデュエルモンスターズという文字が至るところで目についたことだ。
まさか…と思い急いでテレビをつけるとそこに流れていたのはライディングデュエル、サテライト、ネオドミノシティというアニメ遊戯王5D'sで見た懐かしい単語だった。
「これってまさか…いわゆるトリップやら転生とか言うやつか?」
二次小説では王道な、死んだと思ったら漫画やアニメの世界に飛ばされているというものだが現実で、しかも自分がそうなるとは夢にも思ってなかったので激しく動揺してしまう。
『落ち着け~俺。とりあえず状況を整理するんだ。まず昨日の事故は夢なんかじゃない、現実に起こったことだ。そしてここは東京じゃなくて遊戯王、しかも5D'sの世界である可能性が非常に高い…』
現時点で分かってる事はこの二つだ。幸運なことに自分の部屋は昨日までいた部屋と変わらなかったのでとりあえず何か以前と違っているモノはないか調べることにした。
「通帳はなくなってないな、よしよし。免許証も……Dホイール用になってるけどある…と。学生証は…なんだコレ、『デュエルアカデミア』?年齢も17になってるし…。細かいとこは色々変わってるけど大体前と同じ感じだな。あれを除いては…」
そう言って目を向けた先には前の世界にいた時には絶対に見かけない機械があった。それは遊戯王のアニメや漫画でしか見たことのないデュエルディスクだった。
「コレ見ちゃうともう遊戯王の世界だって信じるかしかないよなぁ…とりあえず動かしてみるか!」
デュエルディスクに触れると機械音と共に起動する。それは正にアニメで見て憧れていた光景だった。
「おー!すっげ!早速デュエルしてみてぇな!あ、そういやデッキどうなったんだろ。」
思い出したようにデッキを探し回る。ここが本当に遊戯王の世界ならデュエルをすることが重要になってくるのは間違いない。ならばこの世界ではデッキは命と言っても過言でない。
「うっそ…。これだけしかねえの?」
部屋中探し回って見つけ出せたのは昨日事故に遭う前に組んでいたデッキのみだった。エクストラデッキに至ってはシンクロのカード以外全て無くなりしかもその一部のカードも消えていた。
「あんなに必死こいて集めたのに…まあこのカードがあるだけよしとするか。」
分かりやすくヘコむ悠吾だったが1枚のカードを見つけてその表情も和らぐ。そのカードは彼がずっと気に入って使ってきた『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』だ。
「そーいや事故の瞬間も財布ん中いれてたっけ。こいつが俺をここに飛ばしたのかな…。つうか俺これからどうなるんだろ。」
漠然とそんなことを考えていた。とりあえず住むところはあるが貯金はそう多くないからいつまでも働かない訳にはいかないだろう。デュエルアカデミアに通っているようだがそこはどんな場所なのだろう。そもそも自分は本当に生きているのだろうか。一度考えるととめどなくそんな思いが浮かんでくる。
「ハァ~色々考えてもしょうがない。今日は月曜日だし多分学校あるよな。とりあえずデュエルアカデミアに行ってみるか!」
悩んでいるといつまでたっても動けないので無理矢理気持ちを切り替えることにした。アカデミアの制服らしき服を見つけて着替えるとデッキとディスクを持つと部屋を後にする。
『近くで見るとホントにデカイビルだ。道行く人もほとんどディスクつけてるしデュエルが生活に根付いてるってマジなんだな。』
先ほど窓から見たとはいえ実際近くでみてみるとその迫力はまるで違う。また、周りを歩いている人からもこの世界が遊戯王の世界だと実感させられる。
《いよいよWRGPの開催まであと300日!Dホイーラーよネオドミノシティに集まれ!》
ふとビルに設置されているディスプレイに目を向けると『ワールド・ライディング・デュエル・グランプリ』通称WRGPに関する宣伝映像が流れていた。
『WRGPってことはもうダークシグナーの件は終わってるみたいだな。サテライトもシティも1つになってイリアステルが来る辺りかな。』
アニメを見ていた頃の記憶を呼び起こし時系列を整理する。幸いなことに彼が知っている時系列で物語が進んでいたのでネオドミノシティがいまどのような状況なのかは安易に知ることができた。
「ナビによるとここの角を曲がって…あ、これか。」
携帯電話のナビ機能を頼りにたどり着いた施設は巨大で学校というよりは何かの研究施設のように見えた。
「ここがデュエルアカデミアか。教室とか全然分かんないけど大丈夫かな…。」
「よぉーユーゴじゃん。おーっす。」
どこから入っていいのか分からず校門の前でぼんやり呆けていると後ろから挨拶と共に肩を叩かれる。するとその瞬間悠吾は自分のなかに何かが流れ込んでくるのを感じた。
それはこの世界で生まれて今まで生きてきたという別の誰かの記憶だった。自分が知らないはずの人物の顔、その人物と仲良く話している自分の顔。最後に浮かんできたのは自分がDホイールを巧みに乗りこなしているという記憶だった。
「ーッ!?」
時間にすると一瞬の出来事だったが彼にとっては数時間ほどにも感じた。なぜ今この記憶が流れ込んできたのか、それについて考え込もうとしたとき先ほどあいさつをしてきた少年が心配そうな顔で声をかける。
「ユーゴ、大丈夫か?腹でも痛いの?」
「いや、いきなり声かけられてびっくりしただけだよ。それよか早く教室行こう。リュウジ」
何事もなかったかのように反応するが内心悠吾は混乱していた。理由は分からないが自分が今までこの世界で生きてきた記憶が急に頭のなかに流れ込んできたので無理はない。しかし今取り乱してしまうと目の前にいる赤髪の少年、万丈竜二に怪しまれてしまう。
悠吾の記憶によると竜二とは幼なじみで親友でありデュエルの腕を競ってきたことになっている。自分の記憶のはずなのに全く身に覚えがないというのはなんとも変な感覚だが今は何もない風を装うしかない。
「つーかなんで昨日メール返信しなかったんだよ。おかげで宿題めちゃ苦労したんだぞ。」
「あー…、昨日は早めに寝ちゃってケータイ見てなかった。てか宿題くらい自分でしろ」
そんな他愛ない会話をしながら教室を目指す二人。まさか自分が事故にあって今日の朝この世界に初めてきたとは口がさけても言えない。言ったところで信じてもらえるかも怪しいのだが。
「そういや今日スタンディングデュエルのテストあったよな。成績にも大きく関わるからデッキ調整してこいって言われたけど、ユーゴちゃんと調整してきた?」
「マジか…忘れてた。まあなんとかなるか。」
たとえ知っていたとしても今持っているデッキは1つだからあまり関係はないのだかテストと聞くとやはり少々身構えてしまう。
「ユーゴはそんな強くねーんだから下手したら落第かもな~。あの十六夜アキくらい強かったら何の不安もねーんだろうけどよ。」
「えっ、あの十六夜アキ?リュウジ知り合いなの?」
「なに言ってんだよ。俺もお前も同じクラスだろ。」
「あっ…そうかそうか、そーだった!何でもなーい。」
この世界での記憶があったとはいえついさっき戻ったばかりで整理もできていないので細かいところは抜け落ちている。これからボロがでないように注意する必要がある。
「変なやつ…。まあ兎に角テストはお互い頑張ろうな!」
「おう!絶対最高評価とってやる!」
考えることは山ほどあるがまずは目の前の問題を片付けるのが優先だろう。テストを乗り切らないことには何も始まらない。その上アカデミアの授業もどんな内容なのか気になる。そう考えて改めて気を引きしめる。
教室のなかに入ってみると30人ほどが座れる意外とこじんまりした広さだった。外観が巨大であったので教室も大学のような広い講義室を予想していただけに、ユーゴからすると拍子抜けだった。
『えーと…俺の席は確かあそこだったよな。』
自分の席を思い出すだけで一苦労なのは我ながら滑稽だと感じた。正直竜二以外のクラスメイトはまだ顔と名前が一致しない。今日1日かけてゆっくり思い出すしかないと心のなかでため息を吐く。
「はーい全員席つけー、授業始めるぞー」
1人考えているうちにチャイムがなり、担任教師が教室に入ってきて授業が始まる。テストがあるのは午後の1番最後の授業でそれ以外は普通の座学の授業らしいので先生には悪いが授業そっちのけで記憶の整理に当てさせてもらおうと悠吾は心のなかで決めた。
***********
「ふぅー…記憶整理するっていうのもなかなか疲れるな。」
机の上に突っ伏してぼやく悠吾。先程決めた通り授業全てを自分の記憶整理と今後の身の振り方について考えていた。おかげで授業内容はさっぱり覚えていない。しかしその甲斐あって学校生活で困らない程度にはなった。
「ユーゴぉ~次いよいよテストじゃん。やっべ、緊張してきた」
見るからに不安げな表情をして近づいて来たのは竜二だった。朝は自信げにしていたのに直前になった途端弱気になっている。
しかし一方悠吾はというとこの世界に来て初めてのデュエルということで、テストとはいえ楽しみの気持ちの方が大きいほどだった。
「まあ負けても死にはしないんだし、デュエルだから楽しんだほうがいいでしょ。」
「そうなんだけどさー、強いやつとあたってフルボッコにされたらと思うと…」
「お前…派手な髪色してるくせに気が小さいな。」
「俺は気が小さいんじゃなくて繊細なんだよ!!それに髪色関係ないだろ!」
顔をその赤い髪と同じくらい真っ赤にしてまくしたてる。その瞬間次の授業開始を告げるチャイムがなり担任教師が教室に入ってくる。
「はーい。じゃあ今日は以前から言ってある通り実践のテストするぞー。対戦の組み合わせはこっちで決めたからこのリストの順番でしてもらう。」
教室の前にあるディスプレイに対戦相手が表示されていく。生徒のなかには自分の対戦相手をみて嘆く者や歓喜の声をあげるものもいた。まだ勝敗も決まっていないのに呑気なものだと思いながら悠吾も自分の名前を探す。
『えーと…神代悠吾、、と。あった。対戦相手はツァン・ディレ?誰だっけ…?』
記憶をたどってもツァン・ディレという生徒のことは顔ぐらいしか分からない。元々絡んだことがあまりなかったのかもしれない。
覚えていることといえば男子生徒にあたりが強く近寄り難い雰囲気があるということぐらいだ。
『うだうだ考えてもしょうがないし俺は俺のできる全力をだそう。』
そう考えてデッキケースから自分の魂とも言えるデッキを取り出した。元の世界では何個もデッキを持っていたがこのデッキは何度も構築し直している悠吾が最も気に入っているカテゴリだ。この世界に持ってこれたのはこのデッキ1つで最初はショックだったが1つを選ぶのだったら間違いなくこのデッキなので結果としては良かったかもしれない。
『よーし。デビュー戦だからな、頼むぞお前たち。』
アニメで見たようにカードに心のなかで語りかけてみる悠吾。改めて考えると恥ずかしさが込み上げてきたがそれと同時にドラゴンの咆哮が聞こえた気がした。
「じゃあ次、神代悠吾とツァン・ディレ演習場に来ーい」
いよいよ自分の出番になり気を引きしめる悠吾。席を立って教室をでようとすると血相を変えた竜二に呼び止められた。
「ユーゴ!お前の対戦相手最悪じゃねーか!あのツァン・ディレが相手なんて、負け確定じゃん。」
「え!?そんなにあの人強いの?」
「お前…ツァン・ディレといえばこのアカデミアでも指折りの実力者だろ!勝率だけでいえば学年トップだぞ!」
「へぇーそれは面白いこと聞いた。精々ボコられないように頑張るよ。」
相手が強敵ということを聞き悠吾は不安がるどころか逆に喜んで笑みをこぼすほどだった。
その気持ちのまま演習場へ向かうと対戦相手であるツァンは既に到着しており不機嫌そうな顔をしながら待ち受けていた。
「早くしてよね。さっさと終わらせてボク帰りたいし。」
「わりわり、待たせちゃって。じゃあ早速初めるか!」
『神代…あまり知らないけど今までの成績見る限りパッとしないしボクの楽勝で終わりそうだね。』
ツァンは内心そんな事を考えながらデッキをシャッフルしディスクにセットする。二人ともいつでもデュエル可能だ。
「二人とも準備はいいな。それではデュエル開始ィ!」
「「デュエル!!!」」
悠吾LP4000
ツァンLP4000
教師の一声でデュエルが開始される。ディスクに表示された先攻を知らせる表示。先攻は悠吾からスタートのようだ。
「よっし!俺のターンドロー!」
悠吾がもといた世界では先攻ドローは廃止されていたがここではマスタールール2が適用されているようだ。この世界では先攻から発動できる手札誘発などの妨害カードが少ないので手札6枚で先攻をとれるのはそれだけで有利に働く。
「んじゃ、初っぱなから飛ばすぞ!俺は手札から《SR三つ目のダイス》を通常召喚!」
SR三つ目のダイス/ATK300
「更にフィールドに風属性がいることで手札から《SRタケトンボーグ》は特殊召喚できる!」
SRタケトンボーグ/DEF1200
フィールドに2体のモンスターを並べる。悠吾が使用する【SR】は竹トンボなどの昔のおもちゃをモチーフとしたテーマで主に風属性のモンスターを展開することに長けている。
「さあ、いくぞ!俺は《タケトンボーグ》に《三つ目のダイス》をチューニング!」
《三つ目のダイス》が光の輪となり、《タケトンボーグ》がその中心を3つの光となり駆け抜ける。
「十文字の姿持つ魔剣よ!その力で全ての敵を切り裂け!シンクロ召喚!レベル6!《HSR魔剣ダーマ》!」
HSR魔剣ダーマ/ATK2200
けん玉をモチーフにしているであろうモンスターが現れる。悠吾はソリッドビジョンでのシンクロ召喚は初めてだったので内心興奮しまくっていた。
『ヤッベー!ホントにシンクロ召喚成功した!そういやテンションあがって口上言っちゃったけど大丈夫かな?こっちの世界では普通だよね!?』
「何ニヤニヤしてるの?気持ち悪いんだけど…」
シンクロ召喚が成功して大満足の悠吾を尻目に若干引いた目をするツァン。その視線に気付き悠吾はハッと我に帰る。
「ス、スマン。じゃあ続きだ!《魔剣ダーマ》の効果発動!墓地の【SR】モンスターの《タケトンボーグ》を除外することであんたに500ダメージを与える!」
「やってくれるね…」
ツァンLP4000→3500
「先制パンチはもらったぜ!俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
悠吾
LP4000
モンスター
HSR魔剣ダーマ
罠・魔法
伏せ1枚
先攻は攻撃ができないが効果ダメージを与えることはできる。ダメージ量は500と多いわけではないが上級モンスターな加えリバースカードを2枚セットできれば上々といえるだろう。だがそれは相手が並みのデュエリストなら…という場合だ。
「ボクのターン、ドロー。」
静かにドローをして手札を眺めるツァン。彼女がどのような戦略をたててくるのか、どんなデッキなのか、悠吾は楽しみでならなかった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
原作キャラはまだでてないですがTFキャラを出してみました。TFはあまりやったことがないのでツァンのしゃべり方があっているか不安ですが多目にみてくれると嬉しいです。
デュエルのほうはガチ構築にはせずにアニメのようなあまり知られてないカードをなるべく使っていこうと考えています。
では、次回もよろしくお願いします。
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第3話
さて、今回はデュエル部分をガッツリ書いていきました。そしていよいよツァンのデッキも明らかになります。上手くかけたかは分かりませんが楽しんでいただければ幸いです。
1ターン目を順調に終えた悠吾。しかし相手は学年トップの実力者であるツァン。今は順調でもいつひっくり返されるか分からない。
「ボクは手札から《紫煙の狼煙》を発動!デッキからレベル3以下の【六武衆】モンスターを手札に加える。ボクは《真六武衆ーカゲキ》を手札に!」
「げっ!よりによって【六武衆】かよ!こりゃヤバイかもな…」
ツァンの手札から発動された魔法カードをみてデッキ内容は把握できた。しかしそれ以上に【六武衆】というテーマにショックを隠しきれない。なぜなら悠吾のいた世界でも【六武衆】は、環境上位にもなったことがある有名なテーマでその凶悪さは彼も身をもって知っているからだ。
「手札からフィールド魔法《六武院》を発動!更にさっき手札に加えた《カゲキ》を通常召喚!」
真六武衆ーカゲキ
ATK200
六武院
武士道カウンター
0→1
腕が四本ある武士のモンスターが現れる。その強そうな見かけとは裏腹に攻撃力は低い。だがこのモンスターの真価はその効果にある。
「その効果で手札からレベル4以下の【六武衆】を特殊召喚できるわ!ボクは《六武衆の影武者》を特殊召喚!」
六武衆の影武者(チューナー)
DEF1800
六武院
武士道カウンター
1→2
先程の悠吾と同じようにモンスターを2体並べる。しかもそのうちの1体はチューナーモンスターだ。
「そっちもシンクロ召喚か?」
「その通り!ボクはレベル3の《カゲキ》にレベル2の《影武者》をチューニング!」
☆3+☆2=☆5
チューナーと非チューナーのモンスターが揃えばすることは決まっている。合計レベルは5。出てくるモンスターは用意に予想がついた。
「シンクロ召喚!来て!《真六武衆ーシエン》!」
真六武衆シエン
ATK2500
六武院
武士道カウンター2→3
「でたな…六武衆のインチキモンスター」
相手が六武衆のデッキである以上遅かれ早かれ出ることは分かっていたが実際目の当たりにすると落胆を隠せない。
「イ、インチキ!?人のカードに対して失礼ね!」
「う…でもその召喚のしやすさでその効果は強すぎだろ!」
悠吾が嘆くのも無理はない。《真六武衆ーシエン》は攻撃力が2500と上級モンスターレベルであり1ターンに1度相手が発動した魔法・罠カードを無効にして破壊する効果がある。それ単体でも厄介だが【六武衆】が持つ展開力と合わせると更に驚異的だ。
「ったく…フィールドに【六武衆】が存在するので《六武衆の師範》を特殊召喚!」
六武衆の師範
ATK2100
六武院
武士道カウンター3→4
悠吾の反応に憤りを見せつつもちゃっかり次のモンスターを展開する。これで上級モンスターが2体。
「バトル!《師範》で《魔剣ダーマ》に攻撃!」
「え?攻撃力は《魔剣ダーマ》のほうが高いぞ、プレミか?」
「ボクがプレイングミスなんてとんだロマンチストね!フィールド魔法《六武院》は乗っている武士道カウンターの数×100ポイント相手モンスターの攻撃力を下げるわ!今のっている武士道カウンターは4つ、よって《魔剣ダーマ》の攻撃力は400ポイントダウン!」
HSR魔剣ダーマ
ATK2200→1800
「そういうことか!なら、トラップ発ど…」
そう言いかけてぐっとこらえる。確かにこのカードを発動すれば《魔剣ダーマ》は破壊されずにすむ。しかしフィールドに《シエン》がいる以上発動しても無駄打ちになってしまうだろう。
悠吾LP4000→3700
「ぐっ…」
「まだ《シエン》の攻撃が残ってるよ!《シエン》で神代にダイレクトアタック!」
悠吾LP3700→1200
「うおっ!!」
いくらソリッドビジョンで直接的なダメージがないといえどもその迫力は本物さながらだ。初めてデュエルディスクを使ってデュエルをする悠吾にとってその衝撃は尚更大きかった。
「ライフを大きく削られたな…まあこの位はしょうがないか」
「随分余裕ね。ライフもフィールドのアドバンテージも圧倒的にボクが有利なのに」
「まだライフが0になったわけじゃないしこっから逆転した方が面白いじゃん?」
圧倒的不利にも関わらず余裕の態度を続けている悠吾に戸惑いをみせるツァン。
『ボクと対戦した人は追い込まれると大体諦めた表情になるのに何でコイツは…というか神代ってこんなキャラだっけ…』
「ボクはカードを1枚伏せてターンエンド。」
ツァン
LP3500
モンスター
真六武衆ーシエン
ATK2500
六武衆の師範
ATK2100
魔法・罠
伏せ1枚
「よし、俺のターンドロー。」
これで悠吾の手札は4枚。枚数としては心もとないがなんとかドローしたカードを見て何とかなりそうだと安心する。
「先ずは魔法カード《スピード・リバース》を発動!墓地から【SR】モンスターを特殊召喚する!」
「蘇生して展開されると厄介だからここで止めさせてもらうわ!《シエン》で無効!」
今、悠吾のフィールドにモンスターはなく、モンスターを蘇生させる魔法カードも潰されてしまった。しかしここまでの展開は彼にとって折り込み済みだ。
「《スピード・リバース》は不発か…だったらこっちだ!俺は《SRベイゴマックス》を特殊召喚!このカードは自分フィールドにモンスターがいないとき特殊召喚できる!」
SRベイゴマックス
ATK600
「特殊召喚に成功したことでデッキから【SR】モンスターの《SRタケトンボーグ》を手札に!」
「特殊召喚効果の上にサーチ効果まで?そっちの方がよっぽどインチキじゃないの!」
「う、それを言われるとキツいな…」
《SRベイゴマックス》は手札消費1枚でシンクロ召喚まで繋げられる。シンクロ召喚するのに基本2枚以上のカードが必要になるこの世界では反則級の強さだろう。
「《タケトンボーグ》は場に風属性がいるとき特殊召喚できる!更に《タケトンボーグ》の効果でこのカードをリリースしてデッキから【SR】チューナーを特殊召喚する!俺は《SR赤目のダイス》を特殊召喚!」
前のターン《タケトンボーグ》は特殊召喚されそのままシンクロ素材になったが今回はその効果まで使用される。風属性しか特殊召喚できなくなるが風属性主体の【SR】で使う際そのデメリットは無いに等しい。
SR赤目のダイス
DEF100
「特殊召喚された《赤目のダイス》の効果で《ベイゴマックス》のレベルを4に変更するよ!」
SRベイゴマックス
☆3→4
「レベル4の《ベイゴマックス》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!」
「合計レベルは5…《シエン》と同じ…」
☆4+☆1=☆5
「その躍動感溢れる剣劇の魂、シンクロ召喚レベル5!《HSRチャンバライダー》!」
HSRチャンバライダー
ATK2000→1600
「さあバトルだ!《チャンバライダー》で《師範》を攻撃!この瞬間、《チャンバライダー》の効果で自身の攻撃力を200ポイントアップさせる!」
HSRチャンバライダー
ATK1600→1800
「それでもまだ《師範》には届かないよ。もしかして伏せカード…?」
「永続トラップカード《追走の翼》を《チャンバライダー》を対象に発動!そして《追走の翼》の更なる効果発動!このカードの対象となったモンスターがレベル5以上のモンスターと戦闘する場合相手モンスターを破壊してターン終了までその攻撃力分《チャンバライダー》の攻撃力をアップする!」
HSRチャンバライダー
ATK1800→3900
「《チャンバライダー》は1度のバトルフェイズで2回攻撃できる、続けて《シエン》に攻撃!」
「っ…調子にのっちゃって…」
ツァン
LP3500→1900
「俺はカードを1枚伏せる。これでターンエンドだ。この瞬間《チャンバライダー》の攻撃力はもとに戻る」
HSRチャンバライダー
ATK4100→2100
悠吾
LP1200
モンスター
HSRチャンバライダー
ATK2100
伏せカード
1枚
悠吾のターンが始まる前は彼のライフは大きく削られフィールドのモンスターも全滅していたのに終わってみればピンチなのは一転してツァンの方になってしまった。
『《シエン》がやられた上にライフもこんなに…もう油断しない。』
「ボクのターン、ドロー」
『さーて、なんとか逆転したけど多分このまま押しきらせてはくれないよなぁ…』
【六武衆】の強力なモンスターである《シエン》を撃破しライフも大きく削ったにも関わらず悠吾の顔色は優れない。ツァンの手札は今のドローで4枚、【六武衆】の展開力を考えると逆転には十分すぎるほどだろう。
「《真六武衆ーミズホ》を通常召喚!」
真ー六武衆ミズホ
ATK1600
六武院
武士道カウンター
4→5
「《ミズホ》ってことはあれも手札にあるのか?」
「さっきの《シエン》の時といい【六武衆】について知ってるみたいね…残念だけどアンタが考えてる《シナイ》は手札にはないわ」
この《真六武衆ーミズホ》というカードは単体ではそれほど性能が高いわけではないが《真六武衆ーシナイ》と組み合わせることでその強さを発揮できる。しかし今《シナイ》はツァンの手札にはない。
「だからこうするわ!トラップカード発動《諸刃の活人剣術》!ボクの墓地から【六武衆】モンスター2体を特殊召喚させる」
六武衆の影武者(チューナー)
DEF1800
真六武衆ーカゲキ
DEF2000
六武院
武士道カウンター
5→6
1ターン目にシンクロ素材として使用されたモンスターが再びフィールドに舞い戻る。《諸刃の活人剣術》は1枚で2枚のモンスターを呼び戻せる強力な罠カードだがエンドフェイズに呼び戻したモンスターの攻撃力の合計ダメージを負ってしまうリスクがある。
「これで場に【六武衆】が3体…このカードは場に【六武衆】が2体以上存在するとき特殊召喚できる。これがボクのエース!きて、《大将軍紫炎》!」
大将軍紫炎
ATK2500
赤い鎧で刀を携えている姿は【六武衆】を率いる王の名にふさわしいものだった。
「さて、《追走の翼》が邪魔だね…《ミズホ》の効果を発動!《カゲキ》をリリースして《追走の翼》を破壊するわ!」
「やっべ…」
《追走の翼》は戦闘、効果で破壊を無効にし、上級モンスターとの戦闘においては無類の強さを発揮する。ただピンポイトで破壊されるとその強力な効果は意味を持たない。
「レベル3の《ミズホ》にレベル2の《影武者》をチューニング!シンクロ召喚レベル5《真六武衆ーシエン》!」
☆3+☆2=5
真六武衆ーシエン
ATK2500
「《大将軍紫炎》で俺は1ターンに1度しか魔法・罠カードしか発動出来ない上に発動したとしても《シエン》で無効にされるのか…これはキツいな…」
「フン、ちょっと手こずっちゃったけどこれで終わりよ!バトル、《シエン》で《チャンバライダー》を攻撃!」
攻撃力が200アップするが《シエン》の攻撃力を上回るには至らず切り倒されてしまう。
悠吾
LP1200→1000
「でも《チャンバライダー》が破壊されて墓地に送られた時除外ゾーンから【SR】を手札に加えられる。《タケトンボーグ》を手札に。」
「今更遅いわ!《紫炎》でダイレクトアタック!これで終わり!」
《紫炎》の一撃が悠吾を襲いそのエフェクトにより辺りが煙に包まれる。完璧に決まり悠吾のライフが尽きたかのように見えたが…
「ゲホッ…ソリッドビジョンって煙まででんのか、すげえな…」
悠吾
LP1000
「な、なんでダメージを受けてないの!?確かに通ったはずなのに…」
「ああ、俺は《紫炎》の攻撃宣言時墓地の《三つ目のダイス》を除外して攻撃を無効にしたんだ。」
『まさか発動していたって言うときが来るとは…1回言ってみたかったけど本当にアリなんだな。』
「クッ…ボクはターンエンド」
ツァン
LP1900
モンスター
大将軍紫炎
ATK2500
真六武衆ーシエン
ATK2500
伏せカード
なし
なんとか首の皮1枚繋がったが2体のモンスターによるロックは強力だ。正直魔法・罠カードでの逆転は難しいだろう。どうしたものかと考えているとエクストラデッキからドラゴンの咆哮が聞こえた。
『まただ…どうやらお前に頼るしかないみたいだな。』
「俺は《SRダブルヨーヨー》を召喚!効果で墓地から《赤目のダイス》を特殊召喚!」
SRダブルヨーヨー
ATK1400
SR赤目のダイス(チューナー)
DEF1500
「確かあのサイコロモンスターはレベル変更できるんだっけ…ということは狙いは高レベルシンクロ…」
「ま、そんなとこだ。俺は《ダブルヨーヨー》のレベルを6に変更!」
SRダブルヨーヨー
☆4→6
「俺はレベル6の《ダブルヨーヨー》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング、その美しくも雄々しき翼翻し光の早さで敵を討て!」
☆6+☆1=☆7
「シンクロ召喚!レベル7《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン
ATK2500→1800
現れたそれは白い竜。口上の通りその翼の色は美しい緑色をしており対戦相手のツァンでさえその姿に思わず見とれてしまうほどの輝きを放っていた。
「綺麗…それに何か不思議な力を感じる…」
「コイツは俺にとっても特別だからな。んじゃそろそろいかせてもらうよ!バトルフェイズ、俺は《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で《大将軍紫炎》を攻撃!」
「忘れた?《六武院》の効果で《クリアウィング》の攻撃力は1800。《紫炎》に攻撃したら返り討ちよ。」
「勿論知ってるよ!だから罠カード《魂の一撃》を発動!俺のライフを半分払い、それが4000より下回っている数値分《クリアウィング》の攻撃力をアップする!つまり3500を《クリアウィング》の攻撃力に加えるぜ!」
悠吾LP1000→500
「そんなトラップ発動させると思う?ボクは《シエン》の効果を発動して《魂の一撃》の発動を無効にする!」
文字通り悠吾渾身の1枚を非常にも無効にするツァン。しかしこれこそが彼の真の狙いだ。
「それを待ってた!この瞬間《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果発動!レベル5以上のモンスター効果が発動した時それを無効にして破壊する!ダイクロイック・ミラー!!」
《クリアウィング》が己の羽を光らせたかと思うと衝撃波を放つ。その光を浴びた《シエン》は粉々に爆散していく。
「そして破壊したモンスターの攻撃力分《クリアウィング》の攻撃力をアップする!」
「そん、な…?」
「《シエン》の効果が無効になったことで《魂の一撃》が有効になる!」
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン
ATK1800→4300→7800
「こ、攻撃力7800!?…」
「行け!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!旋風のヘルダイブスラッシャー!」
悠吾が攻撃名を叫んだ直後身体を激しく回転させつつ《紫炎》に突進を開始する。
弾丸の如く迫った《クリアウィング》が赤い甲冑の鎧武者に大穴を穿ち、数秒後に大爆発が発生した。
「きゃあぁぁぁ!!」
ツァン
LP1900→0
WIN悠吾
「そこまで!勝者神代!」
審判を務めていた担任教師からデュエル終了の合図がくだされる。それを聞いて悠吾は緊張の糸が切れたのかその場に座り込んでしまった。
「はぁー疲れた…ソリッドビジョンのデュエルってこんな体力使うのか。勝ったはいいけどかなりギリギリだったし…」
ふとツァンの方に目を向けるとデュエルが終わったというのに一点を見つめたままブツブツ何かを言っていた。
「ボ、ボクが負けた…?嘘でしょ…しかもあんなパッとしないやつに…」
「えっと、ツァンさん?大丈夫?もしかして体調でも悪い?」
ツァンの様子を見かねて悠吾が声をかける。その声でようやく我にかえるツァンだがそれと同時に悔しさがこみ上げてくる。
「な、なんでもない!ボク帰る!」
そう言って顔を反らすと一目散に演習室を出ていってしまった。一方1人ポツンと残された悠吾は訳も分からずポカンとしていた。
「行っちゃった…俺何かいらんこと言ったかな…。」
てっきりこの世界ではデュエルをすれば分かりあえると思っていたので勝負に勝ったとはいえ後味が悪かった。
「さーて、俺も帰るかな。あ、教室寄って竜二と一緒に帰ろう。」
テストという目の前の課題を解決して一安心したが彼にはまだ解決しなければならない問題が山積みだ。それを考えるだけで頭が痛くなるが今はデュエル初勝利の余韻に浸ることにした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。なんとか第3話までかくことができました。
もしルールミスがありましたらご指摘お願いします。あと感想もありましたらどしどしお願いします!
この時代にないカードが少しありますがそこはご容赦していただけると嬉しいです。
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第4話
そして気づけばUA数1400突破に加えお気に入り数35となっていました。本当にありがとうございます。
気まぐれで書き始めた作品ですがこれからもよろしくお願いします。
「ユーゴ!昨日のドラゴンどうしたんだよ!?お前あんなカード持ってたのか!?」
「だーかーらー、あれは貰ったって昨日も言っただろ」
翌日教室に入るなり竜二が驚いた様子で悠吾に話しかける。どうやら悠吾がツァンにデュエルで勝ったという噂だけでなく彼が使用する《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のことも噂になっているようだ。教室に来る道中嫌に視線を感じたのは恐らくそのせいだ。
特に竜二には昨日教室に戻った瞬間から質問攻めにされていた。つい最近まで持っていなかったカードを急に使用しているシーンを見るとしょうがないかもしれない。
「あー眠い…朝きっつ…」
そんな回りの噂とは裏腹に悠吾は眠そうに大きなあくびをする。
「また夜更かしか?もしかして面白いゲームでも見つけた?」
「お前はいいよな呑気で…そんなんじゃねーよ」
実はアカデミアから帰宅した後自分がこれからどうすればいいのか、何をしなければいけないのか、そんなことを考えていたらいつの間にか朝になっていた。
結局答えは出ずに今に至るというわけだ。
「つっても噂って1日でこんな広がんのか…学校てのはどこの世界でも同じだな。」
「何だよお前。まるで別の世界から来たような言い回しして。…もしかしてその歳で厨二か?」
悠吾の不自然な物言いに怪訝そうな顔をする竜二。確かに端から見たらイタい厨二病患者にしか見えない。それを否定するかのように悠吾は首をブンブンと激しく振る。
「んなワケねーだろ!只の一般論だ!一般論!」
「ははっ、焦っちゃって。あ、それはそうと気を付けろよ。お前がデュエル強い上にあんなドラゴン持ってるって広まったら挑戦してくる輩も出てくるかもよ。」
「え!?なんだそれめんどくせーな…」
そんな談笑をしている悠吾をじっと見つめる二人の生徒がいた。
『ボクに1回勝ったくらいで偉そうに…でも昨日のボクの態度ちょっと悪かったかも…べ、別にアイツに対して悪いと思ってるからそういうわけじゃないからね!それにしてもあいついつの間にあんな強く…』
心の中で誰に言うわけでもないのに言い訳をしているのは昨日悠吾に敗北したツァンだ。今までほとんど敗北を知らなかっただけに自分に泥をつけた悠吾のことが朝から気になって仕方がない。
その上ツァンが記憶している限り悠吾の強さなどせいぜい中の上といったところだった。それが自分と渡り合えるまで急に実力をつけたというのがどうにも気になる。
そしてツァンと同じような疑問を持った生徒がもう一人
『彼が昨日使っていたドラゴン…あの感じはシグナーのドラゴンと凄く似てる…』
その人物は、これまた成績トップクラスの十六夜アキだ。悠吾のデュエルの強さにも驚かされたがそれ以上に驚いたのは彼が使用する《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》についてだ。それは彼女たちチーム5D'sが持っているシグナーの竜の気配と一致するものがあった。
『もしかして彼もシグナーなの?でも腕に痣なんてなかった…それに彼があのドラゴンを使ってるの見たの昨日が初めてだし…』
アキも悠吾の変わりっぷりに困惑しているようだ。
そんな二人の視線など露ほども気付かず悠吾は今日もアカデミアの授業に臨むのであった。
************
「よーし、じゃあそろそろ帰るか」
授業全てが終了し家に帰ろうと席を立つ悠吾。しかしそんな彼を呼び止める竜二。
「ユーゴ、ちょい待ち!今日暇か?」
「一応予定無いけど…どした?」
予定は無いとは言ってみたものの、放課後はネオドミノシティを見て回るつもりだった。というのもこの街で暮らすことになった以上どんな町並みか少し散策したいと思っての考えだった。
「お!だったらライディングデュエルでもどうだ?なんかお前強くなってるし久々に俺とデュエルだ!」
「Dホイールか…」
『確かDホイールのライセンスは持ってたから一応運転はできるんだろうけど大丈夫かな…』
ネオドミノシティのことを見て回ろうと思っていたので竜二の申し出はむしろ好都合なのだがDホイールの運転というところに少し不安があった。しかし今は何事もやってみることが重要だろう。
「いいぜ!久しぶりにスカッとしたいし」
「そうこなくっちゃ!じゃあ各自Dホイール取りに帰ってダイダロスブリッジのハイウェイ集合な!」
「おっけ、じゃあまた」
そう言うと竜二は嬉しそうに急いで教室からでていく。そんな竜二を見ながら自分もDホイールを運転するのを楽しみにしていた。しかしここである重大なことに悠吾は気づく。
「俺ってDホイール持ってたっけ…」
****************
場所は変わり悠吾宅の駐車場。昨日蘇えった記憶によると自分はDホイールをのりこなしていたので恐らく自分用のものを所有しているだろうと考え自分のマンションの地下にある駐車場に来ていた。そこである白いDホイールが目にはいる。
「このDホイール…《クリアウィング》に似てる…」
自分のエースモンスターに似たDホイールが目に入り思わずその機体に手を触れる。
「うっ…ぐっ……何だ…」
触れた瞬間何かが流れ込んでくる感覚が悠吾を襲った。それは昨日竜二に触れられた時に起きたものとよく似ていた。今回流れ込んで来たのはこのDホイールと自分が幾度となく激戦を繰り広げてきたという記憶だった。
「またこれか…自分の姿で自分の知らない記憶があるってのは変なもんだな…というかこの記憶って誰のなんだ…?俺のもんじゃないのは確かだけど」
この感覚には馴れない上に自分のこの世界での記憶は誰のものなのだろう。考えだすと分からないことはまだまだ多く、謎は深まるばかりだ。
ーピピピピピ、ピピピピピ
突如悠吾の懐でアラームのような音がなる。正体は彼の携帯電話の着信音だ。どうやら竜二からの電話のようだ。
「ユーゴ!お前遅いって!何してんだ!今どこ?」
電話に出るなり怒鳴る竜二。時間を確認してみると約束の時間を大きくすぎていた。
「お、おぅ…わりぃ、まだ家だわ」
「はー!?こっちはもう着いてるぞ!早く来いよ!」
「分かった分かった、なるべく早く行くよ」
電話を切ると急いでDホイールにまたがりエンジンをかける。昨日もテストが終わって家に帰った後夜遅くまで色々考えていたが結局何も分からなかった。ならば考えるより動いてみよう、そうすれば自分の求める答えが見つかるだろう。
「さーてリュウジ待たせてるし飛ばすか!」
アクセルを思い切り踏み込むとDホイールがそれに応えるかのように大きく加速する。
「うお…思ったよりパワー強ぇ…でも風が気持ちいな。」
Dホイールには初めてのるがその風を切る感覚はどこか懐かしさがあった。まるで風と1つになりどこまでも加速していく…元の世界で感じたものとは違う恐らくこの世界での彼の記憶だ。
「お待たせ、リュウジ!」
勢いよくとばしたおかげで思ったよりも早く到着した。しかし遅刻したことに違いはないのだが。
「まったく、待たせすぎだっつの!その代わり今日はとことんデュエルしてもらうぞ!」
「へーへー、分かったっての。でもその前にもうちょいツーリングしね?」
「いいよ、俺ももうちょい馴らしたいし。」
そう言うと二人はハイウェイに繰り出す。いくら操縦の仕方が分かったと言ってもまだ細かい動作をするのは難しい。これからライディングデュエルをするならば緻密な駆け引きや高度なドライビングテクニックが必要だ。なるべくそれを取り戻さなければ自分が思った通りの戦術は出来ないだろう。
『ふう、集中して運転すると結構キツイな。これをデュエルしながらするってのはもっと疲れるだろうな』
今のライディングデュエルのルールでは確かオートパイロットは廃止されていたはずだ。つまり己の運転技術がかなり重要になってくる。
「ユーゴ!そろそろ始めようぜ!」
しびれを切らしたのか竜二がデュエルを始めようと言う。悠吾もこれから始まるライディングデュエルにワクワクしており元気よく応える。
「ああ、いいよ。はじめっか!」
その言葉を皮切りに2台のDホイールが並走を始める。興奮か緊張か分からないが頬を汗が伝うのが分かる。そしてDホイールのデュエル機能を起動させる。
「スピードワールド2、セットオン!」
ライディングデュエルで使用されるフィールド魔法《スピードワールド2》がセットされる。それと同時にコースが設定され、準備が整った合図がされる。
あとはデュエル開始の宣言をするだけだ。悠吾はアニメで遊星が言っていたように叫ぶ。
「「ライディングデュエルアクセラレーション!!」」
竜二も同時に叫ぶ。二人はその宣言を皮切りにアクセルを全開にしてスピードをアップさせる。ライディングデュエルにおいて先攻を決めるのは第一コーナーを制した者だ。悠吾はコーナーが近づいてもスピードを落とすことなく突っ込む。
「ユーゴ!?そのスピードで突っ切るつもりかよ?」
「まあ見てろ!行くぞ!」
コーナーが近づき一瞬スピードを落とした竜二に対しスピードを緩めなかった悠吾のほうがわずかに第一コーナーに入るのが速かった。ディスクには悠吾が先攻と表示される。
「今日は随分攻めるじゃねーか!」
「まあな、悪いけどこのままデュエルも勝たせてまらうよ!俺のターン!」
勢いよくドローする悠吾。Dホイールから手を離して運転するのは正直まだ怖かったがこんなことで恐怖を抱いているようではこの先戦えない。
「俺はモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
悠吾LP4000
モンスター
セットモンスター
魔法・罠
伏せ二枚
勝たせてもらう、と豪語したもののその立ち上がりは堅実かつ緩やかだ。手札があまり良くなく前回のツァン戦のように1ターン目からシンクロ召喚はできない。
「どうした?偉く大人しいじゃねーの!でもこっちは遠慮なくいかせてもらうぞ、俺のターン!」
悠吾
SPC0→1
竜二
SPC0→1
ここでお互いにスピードカウンターが1つずつのる。ライディングデュエルではこのスピードカウンターをどのように使うかが重要になってくる。なぜなら魔法カードは全て《Sp》でありこれを使用するにはスピードカウンターの数がものを言うからだ。
「俺は手札から《Spーオーバー・ブースト》を発動!エンドフェイズにスピードカウンターが1になるかわりにその数を4増やす!」
竜二
SPC1→5
SPCの数が1つでは発動できるSpの数は非常に限られる。しかし竜二はその弱点をSPCを増やすことで解決した。
「更に《Spーエンジェル・バトン》を発動!カードを二枚ドローして手札を1枚墓地に送る!」
ドローしたカードを確認準備が整ったのだろう。その口角をにやりとあげる。
「いいカードだ!俺は《XXーセイバーボガーナイト》を通常召喚!」
XXーセイバーボガーナイト
ATK1900
「【Xーセイバー】か…昨日の【六武衆】と同じで展開力に優れたテーマだな」
悠吾の言ったとおり【Xーセイバー】は非常に展開を得意としているテーマだ。放っておくとてがつけられなくなるだろう。
「《ボガーナイト》の効果で手札から《XXーセイバーフラムナイト》を特殊召喚!」
XXーセイバーフラムナイト
ATK1300
前回のツァンのデュエルを彷彿とさせるスタートだ。モンスター効果により2体のモンスターをフィールドに並べる。あの時は即座にシンクロ召喚に繋げたが今回は違うようだ。
「バトルフェイズにはいって《ボガーナイト》でセットモンスターを攻撃だ!」
《ボガーナイト》の振り上げた刃が悠吾のセットモンスターに襲いかかる。守備表示なのでダメージをうけることはないがモンスターは破壊される。
「守備モンスターは《SR電々大公》だ。破壊される。」
「先制ダメージはもらうぜ!《フラムナイト》でダイレクトアタックだ!」
次のモンスターが悠吾にダメージを与えようと向かってくる。しかしこのままわざわざ大ダメージを与えてやるつもりは毛頭ない。
「トラップ発動!《オフェンシブ・ガード》!モンスターの直接攻撃宣言時攻撃力を半分にして俺はカードを1枚ドローする!」
XXーセイバーフラムナイト
ATK1300→650
「攻撃力が半分に…だがダメージは受けんだろ、食らいやがれ!」
悠吾
LP4000→3350
「ぐっ…これがライディングデュエルの衝撃か…スタンディングとは大違いだ」
直接的なダメージはないにしてもDホイールにのっているだけでその感覚は全く違ってくる。少しよろけながらなんとか堪える。
「メイン2にはいる。そして俺はレベル4の《ボガーナイト》にレベル3の《フラムナイト》をチューニング!」
「来やがったか…」
☆4+☆3=☆7
「交差する刃持ち、屍の山を踏み越えろ!シンクロ召喚!出でよ、レベル7《Xーセイバーソウザ》!」
Xーセイバーソウザ
ATK2500
「決まったぜシンクロ召喚!ダメージも与えたし幸先いいんじゃねえの?俺はカードを伏せてターンエンドだ!この瞬間俺のSPCは1に戻る。」
竜二LP4000
モンスター
Xーセイバーソウザ
ATK2500
魔法・罠
伏せ2枚
「俺のターン!」
悠吾
SPC1→2
竜二
SPC1→2
『《ソウザ》の攻撃力は2500…あいつの攻撃力を越えるにはっと…』
「俺は《SRバンブーホース》を通常召喚!」
SRバンブーホース
ATK1100
「効果により手札から《SR赤目のダイス》を特殊召喚!」
SR赤目のダイス
DEF100
竜二に負けじと悠吾もモンスターを2体揃える。しかしどちらの攻撃力も《ソウザ》には及ばない。
「確かそのモンスターはレベル変更効果を持ってたな!大方《バンブーホース》のレベルを変えてあのドラゴンでも呼ぶつもりか?」
「主役のあいつはまだまださ!まずはこいつでいく!俺は《赤目のダイス》で《バンブーホース》のレベルを3に変更する!」
SRバンブーホース
☆4→☆3
「俺もシンクロだ!レベル3の《バンブーホース》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!」
☆3+☆1=☆4
「幾千の顔を持つ迷宮の影よ、その鋭き刃で混沌の闇を切り裂け!シンクロ召喚、レベル4《HSR快刀乱破ズール》!」
HSR快刀乱破ズール
ATK1300
レベル4のシンクロモンスター。攻撃力だけみると下級のモンスターにも負けてしまうだろう。
「何だよ!御大層にシンクロしたわりには大したことねーな!そんなんじゃ俺の《ソウザ》は超えらんねーぞ!」
「焦んなよ。バトル!俺は《ズール》で《ソウザ》を攻撃だ!」
《ソウザ》の攻撃力は2500に対し《ズール》は1300普通にぶつかっても破壊されしかも大ダメージを食らってしまうのは必至だ。
「ダメージステップ、《ズール》の効果で攻撃力を2倍にする!」
HSR快刀乱破ズール
ATK1300→2600
攻撃力が2倍になりそのまま《ソウザ》を両断する《ズール》。ダメージは100と少ないがシンクロモンスターを破壊できたのはいい流れだ。
「やってくれたな…」
竜二
LP4000→3900
「俺はこのままターンエンドだ!さあお前もそろそろエース見せてみろよ!」
「言われなくても【Xーセイバー】の切り札をいまだしてやるよ!」
まだお互いに1ターンしか経過していないが二人のテンションは最大といっても過言ではない。今から竜二のターン、というところでDホイールの画面にある反応が写る。
「何だ…?未登録のDホイール?」
それは二人の後ろから2台のDホイールが近づいてくることを知らせるものだった。別にDホイール自体は珍しくもないがデュエル中に、しかも未登録のDホイールには不信感をいだいた。
「デュエル中になんだよ…テンション下がるな…」
竜二も気づいたようで露骨に嫌そうな顔をする。一方悠吾はその2台のDホイールにコンタクトをとろうと通信昨日をONにしたそのときだった。
ーバトルロイヤルモード強制発動、これよりこのデュエルはバトルロイヤルルールで行われます。ー
悠吾と竜二のDホイールから急にバトルロイヤルモードに移行するアナウンスが流れ始めた。
「な、なんだこりゃ?ユーゴ、お前なんかしたか?」
「いや、俺じゃない!どうやら向こうのDホイールが起動させたらしい!」
突然の出来事に困惑する二人だがどうやら犯人は近づいてくる2台のDホイールらしい。どうしたものかと考えていると二人のDホイールに通信がはいった。
「クックック…お前たち二人には我らとデュエルをしてもらう」
「それもバトルロイヤルモード方式でな。」
聞こえてきた声は明らかに機械で変えたような不自然な声だった。しかし今はそんなことは重要ではない。悠吾の頭のなかにはある出来事が甦る。
『た、確かこいつらゴーストとかいう機械のDホイーラーだ…それで使うカードは…えっと、なんだっけ…』
肝心なところが思い出せない悠吾だったが今は深く考えている余裕はない。突如現れた脅威に今はただデュエルに集中するより方法はなかった。
第4話最後まで読んでいただきありがとうございます。前回の六武衆に続きXーセイバーと少々テーマが被ってしまいましたがご容赦いただけるとうれしいです。
あと文中でユーゴ君が使っていたトラップカードですがOCG化はされておらずアニメで使用されたカードです。それ、和睦でよくね?と思われる方もいらっしゃるでしょうがロマンがあるのでこれからもこのようなカードを使っていきたいと思います。
さて、次回はユーゴと竜二がゴーストと激戦を繰り広げる予定です。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
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第5話
今回初めてライディングデュエルを書いたのですが凄く難しかったです。ですのであまりライディングデュエルぽくないと思いますがよろしければご覧下さい。
「なんだってんだよ…畜生…」
突如乱入してきたゴーストに対し悪態をつく悠吾。そんな悠吾に対し竜二は未だ状況をつかめずにいた。
「こいつらまさか巷で噂のゴーストとかいうやつか?二人組なんて聞いてねえよ!しかもなんでよりによって俺たちに…」
その様子からかなり動揺しているようだった。ゴーストといえば今ネオドミノシティを騒がせている謎のDホイーラーで遭遇したデュエリストは悉くクラッシュさせられている。そんな相手が自分の目の前にいるとあっては竜二の狼狽っぷりも納得できる。
「私のターン、ドロー!」
竜二
SPC1→2
悠吾
SPC1→2
ゴースト1
SPC0→1
ゴースト2
SPC0→1
そうこう考えているうちにゴーストのターンがスタートしてしまう。このままではまずいと悠吾は竜二に声をかける。
「竜二!今はデュエルに集中だ!二人で乗り切るぞ!」
「お、おう!やってやらぁ!」
悠吾の言葉によって冷静に戻る竜二。しかしゴーストがどんなカードを使ってくるか全く予想できない。
「私は《ワイズ・コア》を召喚!」
ワイズ・コア
ATK0
あらわれたのは何かの卵のように見える機械の玉だ。しかし攻撃力はたったの0、攻撃するのを目的に召喚されたわけではなさそうだ。
『攻撃力0、なんかネタがありそうだな…』
「そしてカードを2枚伏せてターンエンドだ。」
ゴースト1
LP4000
モンスター
ワイズ・コア
ATK0
魔法・罠
伏せ2枚
攻撃力0のモンスターを棒立ちでターンエンドとは予想とは違い静かな立ち上がりだ。それを見た竜二は、ハッと鼻で笑う。
「攻撃力0のモンスター棒立ちでターンエンドかよ?とんだ拍子抜けだな!」
「煽るな竜二!あれで終わりとは思えねえ…」
普段なら悠吾も多少気を緩めるだろうが原作を知っているだけに油断はしない。しかしどうしても肝心なところが思い出せない。
『《ワイズ・コア》…何だ…見たことあるはずなのに思い出せない…そもそもどこで見たんだ…?』
ここで悠吾は自分の前世の記憶が消え始めていることに気づいた。この世界での記憶が蘇るに比例して前世の記憶が消えているようだ。
「私のターン!ドロー」
竜二
SPC2→3
悠吾
SPC2→3
ゴースト1
SPC1→2
ゴースト2
SPC1→2
自分のことについて新たな事実を発見したはいいが、今はそんなことを考えている暇はない。
「この瞬間私はトラップカード《スパーク・ブレイカー》を発動!私のフィールドのモンスター1体を破壊する!私は《ワイズ・コア》を破壊!」
「なんだと!?」
二人目のゴーストのターンに入ったと思うと一人目のゴーストが自分のモンスターを破壊する。わざわざ自分のモンスターを破壊するということは何かカラクリがあるのだろう。
「この瞬間破壊された《ワイズ・コア》の効果を発動!デッキから《ワイゼルT》、《ワイゼルA》、《ワイゼルG》、《ワイゼルC》、《機皇帝ワイゼル∞》を特殊召喚!」
ワイゼルT
ATK500
ワイゼルA
ATK1200
ワイゼルG
DEF1200
ワイゼルC
ATK800
機皇帝ワイゼル∞
ATK0
「一気に5体のモンスターを特殊召喚だとぉ!?インチキ効果も大概にしやがれ!!」
どうやら効果破壊をトリガーにしてデッキからモンスターを呼ぶ効果だったようだ。正直5体のモンスターの特殊召喚には驚いたが1体1体のステータスはそれほど高くない。
「クククク…恐ろしいのはこれからだ。私は《機皇帝ワイゼル∞》の効果を発動!このカードの攻撃力は存在するパーツの攻撃力分圧倒的する!合体せよ、機皇帝ワイゼル!」
4体のバーツが《機皇帝ワイゼル∞》に集まっていき1つのロボットへと姿を変える。
「モンスターが合体したのか?あんなカード見たことねえぞ!」
機皇帝ワイゼル∞
ATK0→2500
「ワラワラ湧いてきただけじゃなくてそんな効果まで持ってたのか…」
初めて見る合体するモンスターに各々驚きを隠せない二人。だが今はもう一人のゴーストのターンであることを忘れてはいけない。
「私は《スカイ・コア》を召喚!」
スカイ・コア
ATK0
二人目のゴーストが召喚したのは先ほどと似ているが若干カラーリングの異なったモンスターだ。
「そして手札から《Spーハイスピード・クラッシュ》を発動!SPCが2以上あるときフィールドのカードと自分のカードを破壊する!私が破壊するのは《スカイ・コア》と神代悠吾の《快刀乱破ズール》を破壊する!」
稲妻がゴーストと悠吾のフィールドに降り注ぎ《スカイ・コア》と《ズール》を粉々に粉砕する。本来なら2対1交換でアドバンテージとしてはイマイチだが今回に限ってはそうとも言えない。
「《ズール》が…しかもあの《スカイ・コア》とか言うやつが破壊されったってことは…」
「ククク…その通り。《スカイ・コア》が破壊されたことによりデッキから《スキエルT》、《スキエルA》、《スキエルG》、《スキエルC》、《機皇帝スキエル∞》を特殊召喚する!」
スキエルT
ATK600
スキエルA
ATK1000
スキエルG
DEF300
スキエルC
ATK400
機皇帝スキエル∞
ATK0
「そして合体せよ!機皇帝スキエル!」
機皇帝スキエル∞
ATK0→2200
悠吾の予想どおり《スカイ・コア》が破壊されるとデッキから5体のモンスターが特殊召喚される。《機皇帝ワイゼル》と違い見た目は鳥のような形状をしている。
「ま、また合体しやがった…このモンスターがゴーストの戦術なのか…?」
1ターン目から主力モンスターを出してきたゴースト二人。それに対して悠吾も竜二もフィールドはがら空きでこのままでは大ダメージは免れない。
「バトル!私は《機皇帝スキエル∞》で神代悠吾にダイレクトアタック!!」
ここはライフポイントが僅かに少ない悠吾を狙ってきた。ダイレクトアタックを受けてしまうと2200のダメージを受けてしまう。悠吾のフィールドには1枚の伏せカードがある。これでダメージを軽減できればなんとかなるだろう
「おい!悠吾!防御札あるなら発動しろ!このままじゃやべーぞ!」
「分かってるって!罠発動!《ロスト・スター・ディセント》!。墓地からシンクロモンスターの《HSR快刀乱破ズール》を守備表示で蘇生する!」
HSR快刀乱破ズール
DEF0
その効果により守備力は0、表示形式も変更出来ないがこの攻撃を耐えてダメージを無くすには十分だろう。モンスターを残すことはできないが大ダメージを受けるよりかは遥かにマシだと考えとった行動だった。
「悪あがきを…では《ズール》粉砕せよ!《機皇帝ワイゼル∞》!」
そう言って《機皇帝スキエル∞》から《ズール》に向かってビームが放たれ直撃して破壊される。本来ならソリッドヴィジョンの映像演出のみだが、悠吾の体にはまるで本当に近くで爆発が起きたかのように爆風がふりかかる。
「な、なんだこれ…まるでモンスターが本当に破壊されたみてえに…」
「悠吾!大丈夫か!」
悠吾のDホイールが爆風により左右に大きく振られ危うくクラッシュしてしまいそうになるが懸命にバランスをとりなんとか持ちこたえる。
「今のは一体なんだ?ソリッドビジョンにこんな機能ないはずだぞ!」
悠吾本人は自分の身に起きたことを理解することができなかった。その問いに答えるようにゴーストが笑いながら解説する。
「ククク…気づいていなかったのか?このデュエルではモンスターの攻撃、及びプレイヤーのダメージが実体化するのだ!」
「アァ!?なんだってそんな…」
ソリッドヴィジョンは確かにリアルだがそれが実体化するなど聞いたことがない。にわかには信じがたい話だが今自身の身に起きたことを考えると、それは本当のようだ。
「まだ終わりではない!機皇帝は5体で1つのモンスターだがそれぞれのパーツは1体のモンスターとして扱う!よって追加攻撃させてもらう!」
「ウソだろ…オイ……」
パーツの数は《スキエル∞》を除いて4体。《スキエルG》は守備表示だが他のカードは攻撃表示。大ダメージは避けられない。
「まずは《スキエルA》でダイレクトアタック!」
「う、うがぁぁぁぁぁぁ!」
悠吾
3350→2350
ダメージが実体化すると考え咄嗟に身構えるが予想を遥かに超える衝撃が体全体をかけぬける。意識が飛びそうになるのを必死でこらえる。
「まだだ。次は《スキエルC》でダイレクトアタック」
「う…がっ………」
悠吾
LP2350→1950
追い討ちでダメージが入る。先ほどまでとはいかないが感じるダメージは本物だ。その証拠にDホイールの装甲が一部吹き飛んでしまった。
「がっ…ハァ……。てめぇ後でちゃんと修理代払えよコラァ…」
「まだ軽口を叩く元気があるとはな。しかしその様子を見るにもう限界だろう。次の攻撃でクラッシュするがいい。《スキエルT》でダイレクトアタック。」
最後の攻撃の爆発が悠吾を襲う。辺りに立ち込める煙の中からフラフラと大きく蛇行しながらも悠吾は無事に出てきた。
悠吾
LP1950→1350
「た、耐えたぜ……。アテが、ハァっ…外れたな…」
「強がりを…私はカードを2枚伏せてターンエンド」
「エンドフェイズ、破壊された《ズール》の効果で墓地から《SRバンブーホース》を手札に加える…」
ゴースト2
ATK4000
モンスター
機皇帝スキエル∞
ATK2200
スキエルT
ATK600
スキエルA
ATK1000
スキエルG
DEF300
スキエルC
ATK400
罠・魔法
伏せ2枚
「お、俺のターン…ドロー。」
なんとかデッキからカードを引くが正直長引くと不利になると感じた。速攻で決めないと悠吾のほうがもたなくなる。となるとあのドラゴンに頼るしかないだろう。
『長期戦になるとこっちがヤベぇな…このターンで出来るだけ大ダメージ与えて竜二につなげねえと!』
「自分フィールドにカードが無いので《SRベイゴマックス》を特殊召喚!」
SRベイゴマックス
DEF600
【SR】の中核となるモンスターが特殊召喚される。このカードならばアドバンテージを稼ぎつつ悠吾の切り札を出すことができる。
「《ベイゴマックス》の効果で《SRタケトンボーグ》を手札に加えて…そのまま特殊召喚…!」
SRタケトンボーグ
DEF1200
「通常召喚せずに2体のモンスターを並べたか」
「まだこれからだ…ハァ、《タケトンボーグ》の効果でリリースすることでデッキからSRチューナーを特殊召喚する…俺は2枚目の《赤目のダイス》を特殊召喚!」
SR赤目のダイス
DEF100
「《赤目のダイス》の効果で《ベイゴマックス》のレベルを6に変更する……!」
昨日のツァン戦でも見せた《ベイゴマックス》1枚からの展開パターン。昨日と違う点はシンクロ召喚するモンスターが悠吾のエースモンスターという点だ。
「俺はレベル6となった《ベイゴマックス》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!」
《ベイゴマックス》が6つの光の輪となりそのなかを一筋の光が駆け抜ける。レベルの合計は7。となれば呼び出されるモンスターは1体しかいない。
「その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ!レベル7《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン
ATK2500
「来たぁ!ユーゴのドラゴン!これで一気に逆転だ!」
竜二がガッツポーズをして喜ぶ。昨日のツァン戦を見ていたからこそ《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》がどれだけ頼りになる存在か分かる。いくらゴースト達が未知のモンスターを使っていようと逆転できる、そう考えている2人を見てゴーストはまるで無駄なあがきだと言わんばかりに嘲笑う。
「ククク…。確かに見たことのないモンスターだがシンクロモンスターである限りこの機皇帝に勝ち目はない。」
「ああ、そうかい…だったらオマケだ!俺は手札から《SRシェイブーメラン》を召喚!」
SRシェイブーメランATK2000
「《シェイブーメラン》の効果で召喚したターン攻撃できない…が、もうひとつの効果発動!このカードを守備表示にしてモンスター1体の攻撃力を800ダウンさせる!」
「なるほど。機皇帝の攻撃力を下げに来たか…」
「俺はこの効果を《クリアウィング》を対象に発動する!」
「何!?」
今まで余裕な表情を崩さなかったゴーストが初めて動揺した声をあげる。自分モンスターにデメリットのある効果を使うのだ。悠吾が何か企んでいることは明白だ。
「この瞬間《クリアウィング》の効果発動!レベル5以上のモンスターがモンスター効果の対象になったときそのモンスターを破壊し、破壊されたモンスターの攻撃力を《クリアウィング》に加える!」
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン
ATK2500→4500
「成る程…厄介な効果を持っているな。」
大幅に攻撃力をアップした《クリアウィング》。攻撃するパーツによってはワンショットキルも可能だ。ゴースト2人のフィールドにはいずれも5体の機皇帝パーツが存在している。悠吾は迷いなく攻撃力の低いパーツを狙いに行く。
「てめぇにゃさっき散々イジめられたからな…お返しだ!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で《機皇帝スキエルC》を攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!」
これが通れば与えるダメージは4100。一撃でライフを全て削り取ることができる。
「そんな単調な攻撃が通ると思っているのか?私は罠カード《強制終了》を発動。《スキエルC》を墓地に送ることでバトルフェイズを終了する。」
「なっ…伏せカードか…!」
勝負を焦るあまり相手の伏せカードのケアを怠ってしまった。いつもならそのようなミスはしないがダメージ実体化、初めてのライディングデュエルなどにより心に隙が生じてしまった。
「クソッ!!!俺はカードを伏せてターンエンド…この瞬間《クリアウィング》の攻撃力も元に戻る…」
悠吾LP1350
モンスター
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン
SRシェイブーメラン
ATK2500
魔法・罠
伏せ1枚
相手に大ダメージを与えるチャンスを逃してしまったせいで苛立ってしまう。その様子を見たゴーストが追い討ちをかけるように悠吾を挑発する。
「シグナーにも匹敵する力を持っていると思ったがどうやら見込み違いのようだ。」
「我らの機皇帝には遠く及ばない。」
『ダメージを全然与えられなかった…このままじゃ…』
先程まで冷静だったのにも関わらず激しく動揺してしまう悠吾。スタンディングデュエル又は普通のライディングデュエルならまだしもこれはダメージが実体化するデュエルだ。一歩間違えれば命を落とすかもしれない命懸けの戦いだけに、頭が真っ白になってしまう。
「ユーゴ!あいつらの言うことに耳貸すな!相手のペースに呑まれたら勝てるデュエルも勝てねえぞ!」
竜二の呼び掛けに我に帰る悠吾。このデュエルが始まった時には竜二も今の悠吾のように動揺していたが今は落ち着いておりむしろその目には闘志が宿っている。これはやはり経験の差ということなのだろうか。自分もしっかりしなければと気合いを入れ直す。
「分かってるって!次のターン頼んだぞ!」
「任せときな!俺のターン!」
悠吾
SPC3→4
竜二
SPC3→4
ゴースト1
SPC3→4
ゴースト2
SPC3→4
竜二の手札はこのドローで3枚。相手のフィールドには未知の機皇帝が存在している上に《強制終了》がある。単純に考えれば、ゴーストはあと4回攻撃を止めることができる。《強制終了》を攻略できるかがこのデュエルの流れを掴めるかを決めるだろう。
『ユーゴ…もうこいつを傷つけさせやしねえ!』
悠吾のダメージを受ける姿を見てこれ以上ゴーストに好き勝手させる訳にはいかないと考え己の闘志に火をつける竜二。そして手札から1枚のカードを選び勢いよく召喚する。
「俺は手札から《XXセイバーダークソウル》を通常召喚!」
XXセイバーダークソウル
ATK100
【Xセイバー】は戦士族が多いイメージだが現れたのは死神のような格好をしたモンスターだった。しかしその攻撃力は100と低い。
「トラップ発動!《ガトムズの緊急指令》発動!墓地から《ソウザ》と《フラムナイト》を特殊召喚!」
悠吾に破壊された《ソウザ》とそのシンクロ素材に使われた《フラムナイト》が復活する。条件が厳しいとはいえ1枚で2体のモンスターを並べられるのはやはり強い。
「自分フィールド上に【Xセイバー】が2体以上存在するとき手札から《XXーセイバーフォルトロール》は特殊召喚できる!」
XXーセイバーフォルトロール
ATK2400
「これでシメだ!《フォルトロール》の効果で墓地から《XXーセイバーレイジグラ》を特殊召喚!」
Xーセイバーエアベルン
DEF200
『すげぇ…モンスターを5体も並べた!でも…』
いくらモンスターを並べたとしてもゴーストのフィールドには《強制終了》がある。しかし竜二もそれは折り込み済みだ。
「俺はレベル3の《ダークソウル》にレベル3の《フラムナイト》をチューニング!赤きマント翻し、剣の舞で敵を討て!シンクロ召喚!《XXーセイバーヒュンレイ》!」
XXーセイバーヒュンレイ
ATK2300
「《ヒュンレイ》の効果!お前らのフィールドの《強制終了》と伏せカード2枚を破壊するぜ!!」
《ヒュンレイ》がその手に持った刀を1振りするとゴースト2人の魔法・罠カードが破壊される。
「ぐっ…」
「やってくれたな…」
これには流石に顔をしかめるゴースト達。これで攻撃を妨げる者は何もない。
「もう一丁!俺はレベル6の《フォルトロール》にレベル3の《エアベルン》をチューニング!」
合計レベルは9。【Xーセイバー】最強のモンスターが呼び出される。
「白銀の鎧輝かせ、歯向かうものの希望を砕け!シンクロ召喚!《XXーセイバーガトムズ》!!」
ATK3100
その姿はまさに【Xーセイバー】の隊長に相応しい風格を纏っていた。それに加え竜二のフィールドには2体の【Xーセイバー】シンクロモンスターがいる。これを見て悠吾は正直驚いていた。
『上級モンスターを3体召喚した上に伏せカードのケアまで…俺は《クリアウィング》だけで精一杯だったのに…』
昨日のデュエルアカデミアの試験前には緊張していた素振りを見せていただけに今の竜二に違和感を覚えると共に頼もしくも思えた。
「バトルだ!まずは《ヒュンレイ》で《スキエルA》に攻撃!」
「伏せカードを破壊したからといい気になるな。《スキエルG》の効果。攻撃を一度無効にする。」
「なにっ!?そんな効果までありやがったか…!」
《ヒュンレイ》の一太刀を《スキエルG》がバリアを発生させ弾く。しかし攻撃を防げるのは一度だけだ。
「今度こそぶっ壊してやる!《ソウザ》で《スキエルA》を攻撃!」
ゴースト2
LP4000→3000
「ぐぅっ…」
初めてゴーストにダメージが入り、今まで崩れなかった表情が痛みで歪む。それと同時にまた《スキエル∞》の攻撃力が下がる。これでパーツが2個減ったことになり上昇した分の攻撃力も大きく下がる。
「ユーゴの仇だ!続けて《ガトムズ》で《スキエルT》に攻撃!」
ゴースト2
3000→500
その残りのパーツを容赦なく叩き割る《ガトムズ》。2500というこのデュエルで最大のダメージを与える。しかしゴーストは顔をしかめるが怯む様子は全くない。
「これほど機皇帝のパーツを削られるとは…嘗めてかかっていたがお前の方は認識を改める必要があるな。」
「削りきれなかったか…でも俺にできることはない。ターンエンド。」
竜二LP4000
モンスター
XXーセイバーガトムズ
ATK3100
XXーセイバーヒュンレイ
ATK2300
XXーセイバーソウザ
ATK2500
魔法・罠
伏せ1枚
止めをさすことは流石に出来なかったが機皇帝のパーツを大幅に削ることに成功した上に竜二のフィールドには高レベルシンクロモンスターが3体。対抗するには十分だろう。それを見て思わず竜二に声をかける。
「竜二…お前スゲーな。まさかここまで展開するとは思わなかった…」
「何言ってんだよユーゴ、これくらいいつものデュエルでやって見せてるだろ」
何せこの世界に来たのはつい最近で竜二ともデュエルはしたことがないので驚いてしまった。慌てて平静を装う。
「あ、ああ…!そうだな、このまま押しきろうぜ!」
確実に流れは悠吾たちに傾いて来ている。しかしゴーストは追い込まれているのにも関わらず平静さを崩さない。
「私のターンドロー。」
ゴースト1
SPC4→5
ゴースト2
SPC4→5
悠吾
SPC4→5
竜二
SPC4→5
淡々とカードを引くゴースト。そしてそのドローしたカードを見て怪しく微笑む。
「お前たちに本当の恐怖を教えてやる…しかしお前のそのドラゴンは厄介だ。手札から《Spーシンクロ・シャット》を発動。お前のフィールドのシンクロモンスター《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果を無効にする。」
光の鎖が《クリアウィング》を捕らえガチガチに結びつける。これでは強力な効果を使うことができない。
「これで邪魔者がいなくなった。私は《ワイゼル∞》の効果発動!フィールドのシンクロモンスター、《XXーセイバーガトムズ》を吸収する!」
「なんだと!?」
《ワイゼル》の核から触手が発生し、《ガトムズ》を捕らえ引きずり込んでしまった。そしてその高い攻撃力を我が物としてしまった。
機皇帝ワイゼル∞
ATK2500→5600
「《ガトムズ》が…そうか…!だから《クリアウィング》の効果を…」
《クリアウィング》の効果があれば機皇帝を封殺できるだろう。しかし今その効果は封じられておりなにもできない。
「攻撃力5600…!しかもシンクロキラー効果まで…」
闘志に燃えていた竜二ですらこの光景を目の当たりにして愕然としている。そして悠吾、竜二の二人の頭に同じ感情が浮かぶ。
〝絶望〟
ゆっくりとしかし確実にその言葉が頭のなかを占めていく。その感情は必然的に表情に現れる。
「良い表情になったな、もっと絶望しろ。」
まるでこれからどういたぶるか考えているようにゴースト達は不敵に笑う。
第5話最後までご覧頂きありがとうございます。どうでしたでしょうか?
今さらながら竜二とユーゴの性格設定について説明したいと思います。
ユーゴ君の性格は普段は冷静に物事を考えられますが、不足の事態や馴れない事が起こると少し平静さを失ってしまうという感じで設定してます。
また竜二は普段少し弱腰ですが、本番になると普段以上の実力を発揮できるという感じです。
今後機会があれば、この後書きでちょくちょく設定について書こうとおもっているので気が向いたら読んでください笑
オリジナルスピードスペル
Spーシンクロシャット
SPCが5以上の時に発動できる。相手フィールドのシンクロモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
さて!次回はいよいよゴースト達と竜二、ユーゴのデュエルに決着がつきます。エースモンスターが封じられ、心も折れかけている二人は逆転できるのでしょうか?
次回もよろしくお願いします!
※皆さんのお力を貸して頂きたく活動報告にお願いを書きました。よろしければそちらもご覧ください。
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第6話
ライディングデュエルの出来はあまり良くないですが楽しんでいただけると嬉しいです。
それでは第6話お楽しみください!!
『《クリアウィング》が封じられた上に攻撃力5600…どうする…!?』
悠吾と竜二、そしてゴースト2人による命懸けのデュエルも中盤に差し掛かっていた。しかしその戦況は明らかに悠吾達の不利的状況だった。
「ククク…ようやく良い顔になってきた。今まで何人もDホイーラーを葬ってきたが自分のエースであるシンクロモンスターを吸収すると決まってその顔をする」
この瞬間を待っていたかのように下劣な笑みを浮かべるゴースト。ただDホイーラーを潰すだけではなく如何に残酷に倒すかを楽しんでいるようだ。
「バトルだ!今度こそ引導を渡してやる!機皇帝ワイゼル∞で《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を攻撃!」
《機皇帝ワイゼル》のコアの部分からレーザーが放たれてクリアウィングを撃ち抜こうとする。この攻撃を通れば悠吾の食らうダメージは3100。ライフは0になる上にクラッシュではすまないだろう。
「させるか!罠発動!《ガード・ブロック》!ダメージは0になりカードを1枚ドローできる…ドロー!」
「フン…モンスターを盾に自分はライフを繋いだか…だがまだパーツモンスターの攻撃が残っているぞ?《ワイゼルA》で神代悠吾にダイレクトアタック!」
《クリアウィング》が破壊されてしまいフィールドががら空きになってしまった悠吾。その矛先が再び悠吾に向かう。
「それもとおさねえ!俺は手札から《SRメンコート》の効果発動!このカードを攻撃表示で特殊召喚して攻撃表示モンスターを守備表示にする!これでお前のパーツはただの木偶だ!」
「チッ…これも防ぐか。私はこれでターンエンドだ。」
ゴースト1
LP4000
フィールド
機皇帝ワイゼル∞
DEF0
ワイゼルA
DEF0
ワイゼルT
DEF0
ワイゼルG
DEF1200
ワイゼルC
DEF600
魔法・罠
伏せ1枚
ゴーストによる猛攻を紙一重でかわす悠吾。今はなんとか凌いでいるか長くは持たないだろう。
「私のターンドロー。」
ゴースト1
SPC5→6
ゴースト2
SPC5→6
悠吾
SPC5→6
竜二
SPC5→6
次は竜二によってライフを大きく削られたゴーストのターンだ。ライフだけでなくモンスターも残るパーツは《スキエル∞》と《スキエルG》の二枚だけだ。
「勿論私も《機皇帝スキエル∞》の効果を使わせてもらう!《XXーセイバーソウザ》を吸収する!」
《ワイゼル∞》と同様に《スキエル∞》も同じ効果を持っているようだ。先に核の《スキエル∞》を破壊すべきだったと心の中で悔やむ竜二。しかしそんな後悔もむなしく《ソウザ》は吸収されていく。
機皇帝スキエル∞
ATK200→2700
「《ソウザ》まで…」
自分のモンスターを2体も吸収されてしまい悔しそうな表情をする竜二。まさか自分の信頼するシンクロモンスターがこのような形で利用されるのはいい気分ではない。
「更に《スキエルA3》を通常召喚!」
まるで昆虫のトンボの形を模したモンスターが召喚される。その名前から察するに先ほどの《スキエルA》の上位モンスターであることが伺える。
機皇帝スキエル∞
ATK2700→3900
《ワイゼル∞》程ではないにしてもその攻撃力は並大抵のモンスターでは突破できない高さになる。
「《スキエル∞》を攻撃表示に変更。そしてバトル、《スキエル∞》で《SRメンコート》に攻撃!!」
狙うのは勿論ライフポイントが少ない悠吾。今まで紙一重で攻撃をかわしていたが正直もう防ぐ手立ては、ない。
『クソッ…もう防御札がねえ…交通事故で死んだってのに今度はバイクでクラッシュして死ぬなんてな……』
前触れなく死んだと思ったら遊戯王の世界に別人として甦った。それなのにたった数日でまた命の危機に晒されるとは思わなかった。覚悟を決めて目を閉じた悠吾の耳に竜二の声が響く。
「罠発動、《地縛霊の誘い》!」
その宣言と同時に悠吾を狙っていた《スキエル∞》の動きがピタリと止まる。
「このカードの効果で《スキエル∞》の攻撃対象は俺が決める!対象を《XXーセイバーヒュンレイ》に!」
《スキエル∞》の放つレーザーが悠吾から《ヒュンレイ》に照準を変え粉砕する。幸い《メンコート》の効果で守備表示になっていた為ダメージは無いのだが衝撃はそのまま襲う。
「うおっ!ダメージ無いのにこの衝撃かよ…!危なかったな…」
「サンキュー竜二…正直かなりヒヤヒヤした。」
「なーに、気にすんなって!これくらい屁でもないっての!」
自分のシンクロモンスターを利用され歯がゆい思いをしているのは竜二の方だろうに明るく振る舞っている。ならば自分も最後まで諦める訳にはいかない。
そんな二人の掛け合いを見てゴーストが顔をしかめる。
「くだらん庇い合いを…ならば貴様もこの痛みを味わうがいい!《スキエルA3》で万丈竜二にダイレクトアタック!」
「うおぉぉぉぉぉ…ッ…!!!…確かにこりゃキツいな…」
竜二
LP4000→2800
先程の攻撃で自分のモンスターを失ってしまったので竜二のフィールドはがら空きだ。《スキエルA3》の攻撃をモロに受けてしまう。何度かDホイールを回転させるがクラッシュしそうなのを何とかこらえる。
「竜二!大丈夫か!?」
「お、おう…正直どんなもんかと思ってたけどこりゃ予想以上だな…」
悠吾ほど連発で受けてはないにしろ流石にダメージ実体化は堪えたようだ。
「メイン2に入り私は《スピード・ワールド2》の効果発動。SPCを4つ取り除き手札のSp1枚につき800のダメージを与える。私の手札のSpは1枚。よって800のダメージを万丈竜二に与える。」
ゴースト2
SPC6→2
「ぐっっっっ…!効果ダメージまで…」
竜二
LP2800→2000
《スピード・ワールド2》の効果を使い確実にライフを削ってくるゴースト。たとえ守備モンスターでターンを稼いだとしてもこうして地道にライフを削られてはいつか負けてしまう。
「私はこれでターンエンド。」
「俺のターン…ドロー!!」
ゴースト1
SPC6→7
ゴースト2
SPC2→3
悠吾
SPC6→7
竜二
SPC6→7
このドローで手札は2枚。このターンで逆転できなければ勝ち目は薄いだろう。そう考え恐る恐るドローしたカードを見る。そしてそのままドローしたカードを発動させる。
「俺はSpーシフト・ダウン発動!SPCを6つ取り除いてカードを2枚ドローする!」
悠吾
SPC7→1
「ここでドローカードをひいたか…!」
新たに2枚のカードをドローする悠吾。その2枚のカードをドロー見て悠吾の頭の中で一筋の光の道が浮かぶ。
これなら…いける!
「俺は手札から《SRダブルヨーヨー》を通常召喚!」
SRダブルヨーヨー
ATK1400
「このカードの効果で墓地から《SR赤目のダイス》を特殊召喚する!」
SR赤目のダイス
ATK100
再び特殊召喚されるこのデッキの核となるチューナーモンスター。チューナーとそれ以外のモンスターが揃えばすることは1つだ。
「俺はレベル4の《メンコート》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!その躍動感溢れる、剣劇の魂。シンクロ召喚!《HSRチャンバライダー》!」
HSRチャンバライダー
ATK2000
「何かと思えば高々攻撃力2000のシンクロモンスターか…その忌まわしきモンスターもすぐに機皇帝に吸収させてやる。」
折角のシンクロモンスターも機皇帝の攻撃力の前には無力に見えてしまう。しかし悠吾はチャンスを見逃さなかった。
「お前の機皇帝は攻撃力はあげられても守備力はどうやらそのままみてぇだな!さっきの《メンコート》で《ワイゼル∞》は守備表示になった上にその守備力は0だ!今なら竜二の《ガトムズ》を取り戻せる…!」
「ちっ…気づいていたか…」
《機皇帝ワイゼル∞》の効果は吸収したシンクロモンスターとフィールドに存在するパーツの攻撃力を上昇させる効果であり守備力までには影響しない。それが今回仇となったのだ。
「バトル!俺は《ダブルヨーヨー》で《機皇帝ワイゼル∞》を攻撃!!」
「させるか!《ワイゼルG》の効果で攻撃を1度無効にする!」
《機皇帝ワイゼル》の腕パーツがバリアを展開して《ダブルヨーヨー》の攻撃をかわす。しかしそれは前のターンで見ているので折り込みずみだ。
「まぁそう来るよな。でもその効果はもう使えねえ!《チャンバライダー》で《ワイゼル∞》を攻撃!この瞬間《チャンバライダー》の効果で攻撃力を200上昇させる!」
HSRチャンバライダー
ATK2000→2200
無敵かと思われた《機皇帝》は《チャンバライダー》の一撃であえなく粉々にされてしまう。そして《ワイゼル∞》が破壊されたことにより竜二の墓地に《XXーセイバーガトムズ》が帰ってくる。
「ぐぅぅぅっ……《ワイゼル∞》が破壊されたことにより、残りのパーツモンスターはすべて破壊される…」
核が破壊されるとその周りのパーツもそれに呼応するかのように次々と破壊されていく。
『あの∞って名前のつくパーツがシンクロモンスターを吸収したり他のパーツを繋げる心臓部になってるのか…』
シンクロモンスターを吸収したり、一気に5体のパーツを展開するという未知のモンスターだったがどうやら弱点はあるようだ。
そしてゴーストのフィールドはがら空きだ。
「《チャンバライダー》は2回の攻撃が可能だ!ゴーストにダイレクトアタック!」
HSRチャンバライダー
ATK2200→2400
ゴースト
LP4000→1600
このデュエルではじめてライフを削る悠吾。そのダメージはライフポイントの半分以上を削る大ダメージだがこれ以上は何もできない。
『クソッ…決めきれなかった…あとは竜二に任せるしかないか…』
「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ。」
悠吾
LP1350
モンスター
HSRチャンバライダー
ATK2400
SRダブルヨーヨー
ATK1400
魔法・罠
伏せ1枚
「あとは俺に任せろ!ドロー!」
ゴースト1
SPC7→8
ゴースト2
SPC3→4
悠吾
SPC1→2
竜二
SPC7→8
「スタンバイフェイズ!罠発動、《シンクロ・ソニック》!俺のフィールドに存在するシンクロモンスターの数まで魔法、罠を破壊する!俺のフィールドには《チャンバライダー》が1体…よって装備カード状態の《ソウザ》を破壊する!」
悠吾が前のターンに伏せたトラップカードを即座に発動させる。破壊するのは機皇帝の力の源となっている《XXーセイバーソウザ》だ。
機皇帝スキエル∞
ATK3900→1400
「《ソウザ》が…サンキュー、ユーゴ!俺も《スピード・ワールド2》の効果を使う!SPCを7つ取り除きカードを1枚ドローする!」
竜二
SPC8→1
「…!これなら…どうやらてめぇら2人を一気に片付けられるぜ!」
「調子に乗るな!今Spを引いたとしても貴様のSPCは1!効果ダメージは与えられない!」
「効果ダメージで終わらせるなんて野暮な幕引きはしないさ!俺も真っ正面から機皇帝をぶっ倒してやる!」
ゴースト2人のフィールドは弱った機皇帝、そしてもう1人はがら空きだ。【Xーセイバー】の展開力を発揮出来れば竜二の言うとおりこのターンで2人まとめてライフを削り取ることも可能だろう。
「俺は《XXーセイバーボガーナイト》を召喚!」
XXーセイバーボガーナイト
ATK1900
再度召喚される【Xーセイバー】デッキの要となるモンスター。
「効果により《XXーセイバーレイジグラ》を特殊召喚!」
XXーセイバーレイジグラ
DEF1000
新たにトカゲのようなモンスターが特殊召喚される。このモンスターは見た目に反し強力な効果を有している。
「《レイジグラ》の効果で墓地の《XXーセイバーフォルトロール》を手札に加える。そしてそのまま特殊召喚!」
XXーセイバーフォルトロール
ATK2400
こうなるともう【Xーセイバー】は止まらない。
「《フォルトロール》の効果で《エアベルン》を墓地から復活!」
Xーセイバーエアベルン
ATK1600
「出来るならシンクロモンスターでケリつけたかったが…確実に勝たせてもらう!バトル!《エアベルン》で1人目のゴーストにダイレクトアタック!」
もうゴーストのフィールドには壁となるモンスターはいない。その攻撃をモロに受ける。
「ぐおぉぉぉぉぉ!!!まさか私が負けるとは…」
ゴースト
LP1600→0
ライフが0になると同時にゴーストのDホイールが煙をあげ速度を落とす。
「よし、1人は倒した!次はお前だ!《ボガーナイト》で《スキエル∞》を攻撃するが…」
「《スキエルG》の効果で攻撃を無効にする!」
「だろうな!その為にモンスターを並べたんだ!《フォルトロール》でもう一度《スキエル∞》を攻撃する!」
「発動するカードはない…まさかシグナーでもない一般人に我々が敗北するとは…」
フォルトロールの一振りが《機皇帝スキエル∞》を真っ二つに両断する。それと同時に周りのパーツも砕け散りゴーストのDホイールが煙を上げて爆発する。
ゴースト2
LP500→0
「やべぇ!爆発したぞ!」
「おいおい…大丈夫かアンタ!」
いくらいきなり襲ってきた不審者といえども目の前で木っ端微塵になられては夢見が悪い。Dホイールから降りてゴーストのもとへ駆け寄るがその姿を見て2人は凍りついた。
「マジかよ…」
「こいつ、ロボットだったのか…」
とれかけたゴーストの腕から見えていたのは機械の配線のようなものでありその体からもバチバチと火花が飛んでいた。
「ユーゴ!こっちのゴーストもロボットだぞ!こいつら一体なんなんだ…」
竜二がもう1人のゴーストの方を確認するとそのゴーストも壊れかけており完全に機能を停止させている。
「こいつらの正体は分からねえけど…とりあえずこれでDホイーラー狩りは終わりそうだな。」
「ってことは一先ず一件落着ってことか?はぁー…なんか一気に気が抜けてきた…」
まるで緊張の糸が切れたかのようにその場にへなへなと座り込む竜二。悠吾もデュエルで受けたダメージが蓄積されたのか急に疲れが襲ってくる。
「そうだな…俺ももう限界だ… あとはセキュリティに任せるか」
携帯端末を取り出しセキュリティに連絡する悠吾。しかしその陰で停止したと思われたゴーストが再び起動し先程までとはまるで違う機械的な音声をだす。
「ギッ…ホ、ホウコ…ク……し、ぐ…なー、イガイ…ニ、モ…キョウイ…ナ、ル…ソンザイ……ア…リ……」
それだけ言い残すと今度こそ完全にその機能を停止する。この世界で何が起きているかは分からない。しかし確実にネオドミノシティに一筋の不安が差し込まれたのだった。
第6話最後まで読んでいただきありがとうございます!
今回のデュエル完全に主人公竜二でしたよね汗むしろ足手まといっていうレベルかもしれません。
最初はユーゴが無双してゴーストを軽く蹴散らす展開も考えたんですけどそれはあまり面白くないなあと思いまして…笑
ユーゴはこれから様々な経験を経て成長していく予定ですので是非これからも読んでください。
それでは次回もよろしくお願いします。
※前回に引き続きシンクロ口上、攻撃名を活動報告にて募集しているのでよろしければそちらのご協力もよろしくお願いします。
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第7話
そして出番は少ないですが新キャラ登場です。
「俺はレベル4の《ダブルヨーヨー》にレベル3の《三つ目のダイス》をチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」
悠吾のデッキの象徴である白竜が召喚される。このドラゴンは何度も悠吾の危機を救ってきた相棒的存在である。
「どうだ!これが俺のエースモンスターだ!」
「ククク…シンクロモンスターをだしたな?《機皇帝ワイゼル∞》よ!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を吸収しろ!」
機皇帝から延びてきた触手が《クリアウィング》を捕らえその核へと吸収してしまう。
「そんな…《クリアウィング》が…」
「シンクロモンスターを使う以上私に勝つ術などない!《機皇帝ワイゼル∞》よ!神代悠吾にダイレクトアタック!」
「あ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
次の瞬間目を開けるとそこは見慣れた部屋の天井だった。そして部屋の中に鳴り響くのは聞きなれた携帯電話のアラーム音だった。
「なんだ…夢かよ…死ぬかと思った。」
先ずは今のゴーストとのデュエルが夢であったことに安堵するがそれと同時にあのデュエルの光景が鮮明に蘇る。未知の機皇帝というモンスター、そしてシンクロモンスターを吸収するシンクロキラー効果。デュエルから数日経っているにも関わらずその記憶は薄れるどころか日に日に強くなりこのような夢まで見る始末だ。
『結局あいつらは何者だったんだ…』
ベッドから体を起こしてデュエルアカデミアに行くために制服に着替える。この生活にも大分慣れたものだ。
デュエルが終了した後セキュリティがゴーストの体を解析したが、データは全て消去されていたらしい。誰がどのような目的でDホイーラーを襲っていたのか、何も分からなかったようだ。
『あのデュエル、正直俺は足手まといでしかなかった…竜二がいなかったら危なかったな…それにもう1つ気になることが…』
もしもう1度ゴーストとデュエルして勝つことが出来るのか、そう聞かれれば答えはNOだ。自分はこの時代よりカードパワーの強いカードを持っている。だから負けることはないだろうと考えていたがそれは大きな間違いだった。それは悠吾にとって自信をへし折られる気持ちだった。
もう1つ気になることとは彼の前世の記憶についてだ。本来彼はこの世界のことについて熟知しておりゴーストがシンクロキラーの効果を持っていることを知っていたはずだったのだ。しかしデュエル中、そのことを思い出すことはできなかった。しかもそれだけではなく彼が前世で過ごしてきた全ての記憶が日々消えていき代わりに神代悠吾としてネオドミノシティで生きてきた記憶に書き換えられていった。
「はぁ…俺もすっかりこっちの世界の住人てことか…」
そのうち自分が憑依してこの世界に来たという事実すら忘れてしまうのではないか、そんなことを考えながら今日もデュエルアカデミアに向かう。
「おい見ろよ、あいつ神代悠吾だ。」
「学年トップクラスのツァンに勝っただけじゃなくてDホイーラー狩りまで倒すなんて何があったんだよ。」
アカデミアの中を歩いているとそのような噂話が嫌でも入ってくる。ツァンとのデュエルに勝ったときもそうだったので特に気にならなかったが今回は以前よりよく耳に入る。
確かにいつもはあまり目立たなかった生徒がこうも立て続けに勝ち続ければおかしいと思われても仕方がない。自分が注目されるのは最初は気持ちのよいものだったが今回は尾ひれがついてるだけに複雑な気持ちだ。
「よぉー、ユーゴ!相変わらず今日も噂になってんな!」
「茶化すなよ…それにツァンとの試合は兎も角ゴーストとのデュエルはお前にかなり助けられたのに俺1人で勝ったみたいになってるし」
「確かに噂が事実以上に一人歩きしてるとこあるな。まあ人の噂もなんとやらだし1週間もしたら飽きるんじゃねえの?」
「ったく…たまったもんじゃねーな」
そう悪態をつく悠吾。竜二の言うとおりそのうち生徒達も飽きるとは思うが力不足で悩んでいるというのに必要以上に噂されるというのは何か気分が悪い。
「なんか今日機嫌ワリーじゃん。気晴らしに今日の放課後ライディングデュエルでもどうよ?Dホイールもそろそろ修理終わっただろ。」
「あーゴメン、俺今日バイト行かねーとダメなんだ。」
「あれ?お前バイトやってたっけ?」
「まあ色々物いりなんだよ俺も…」
以前まで悠吾はバイトをしていなかったがゴーストとのデュエルで破損したDホイールの修理費、また生活費を稼ぐためには両親の仕送りだけでは心許なかった。
「へぇー、お前がバイトねぇ…因みにどんなバイト始めたんだ?」
「なんだよその意味深な返しは…トップス地域の清掃員だよ。」
「プッ…こりゃまた渋いバイト選んだな!お前だったらてっきりデュエル関係のバイトすると思ったのに。」
余程意外だったのか悠吾の答えに吹き出した竜二。確かに清掃員のアルバイトはアカデミアの生徒が進んですることはない。大抵デュエル関連のアルバイトをする生徒がほとんどだ。
「笑うなっつの。まあ俺もできるならそっちの方が良かったけど時給が1番高かったし。背に腹は変えられないってことだ。」
トップス地域ということだけあって時給は普通の地域より高い。しかも普段あまり立ち入ることができないトップス区画を見て回れるのもいい機会だと考えこのバイトに決めた。
「なるほどなー、じゃあ今日はカードショップでも行くか。バイト頑張れよ」
「おう、ガッツリ稼いでくるわ」
実は少しデュエルから距離をおこうと考えていた。ゴーストとの1件がありデュエル自体に恐怖を抱いたからだ。デュエルに関係のないアルバイトを選んだのもその考えがあったためだった。
『デュエルは楽しいもんだと思ってたのに…あんな生き死に決めるデュエルは流石にもう嫌だな。』
「どーした?ユーゴ、腹でも痛いのか?」
辛辣な顔をしていたのか、竜二が悠吾を見て不思議そうに聞く。
「いんや、ちょっと考え事してただけだ。」
「そっか、それならいんだけどよ…最近よくそんな顔して考え込んでるけど悩みでもあんのか?相談のるぜ?」
自分はそんなにいつも気難しい顔をしているのか、気を付けようと思うと同時にこの悩みを共有できる仲間がいないのは心苦しい。竜二は親友だがこんな突拍子もない話をいきなりするわけにはいかない。いつか話せる日が来ればいい、そんなことを考えていたら始業を知らせるチャイムが鳴った。
***************
昼休憩、それは学生にとって長い授業時間の中でオアシスとも言える時間だ。デュエルアカデミアでも今まさに昼休憩が始まり学生たちが羽を伸ばしていた。
「ユーゴ、学食行くぞぉ!」
授業中はほとんど寝ている癖に昼休憩になった瞬間、飛び起きている。
「ハイハイ、俺トイレ行ってくるから先に席とっといてくんね?」
「おっけ。混むから早くこいよ!」
そう言うや否や一目散に教室から出ていってしまった。自分もさっさとやることを済ませて学食に行こうと席を立ち教室を出ようとするとその行く手を阻むようにある人影が立ちふさがる。
「神代君、ちょっといい?」
そう声を掛けた来た人物には見覚えがあった。赤い髪、特徴的な髪飾りに目のやり場に困る大きな胸。遊戯王5D'sのヒロインである十六夜アキその人であった。
一方話しかけられた悠吾は内心テンパっていた。
『ッ…アキじゃん!まさか原作キャラが向こうから話しかけに来てくれるなんてな…何の話だ…?』
自分の記憶から察するにアキと個人的に接したことはない。つまり悠吾がこの世界にきてからの行動について何か聞きたいことがあると考えられる。
「えっと…神代君?」
内心いろいろ考えて上の空だった悠吾が気になったのかアキが不思議そうな顔をする。
「…あぁ!うんうん、大丈夫大丈夫!んでなんだっけ?」
「ここじゃなんだから別の場所で話さない?」
「ああ…行こうか。」
場所を移して話すということは他人に聞かれたくない内容を少なからず含んでいるということだ。思わず肩に力が入る悠吾。
『女の子に呼び出されるのはなんかワクワクするけど絶対そんな色っぽい話じゃねーよな…まあ大方何の話か予想できるけどな』
人気のないアカデミアの校舎裏に到着する。昼休みとはいえど、この場所に近づく生徒はそういない。
「呼び出してごめんなさい…けどどうしても聞いておきたいことがあって…」
「大丈夫だよ。ところで聞きたいことってもしかしてゴーストについて?」
「ええ…それと神代君の持ってるドラゴン、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》について聞きたいの。」
そう言ってアキは自分の制服の袖をめくる。そこにはドラゴンの爪のような痣そして自身のデッキから1枚のカード《ブラック・ローズ・ドラゴン》を取り出し悠吾に見せる。
「その痣は?ケガって訳じゃなさそうだけど…」
「これはシグナーといって5000年周期でダークシグナーと戦う者達に刻まれる赤き竜の体に一部を模した痣なの。そしてこれがシグナーの竜の1枚である《ブラック・ローズ・ドラゴン》よ」
「なんか途方もない話だな…でもそれと俺の《クリアウィング》と何か関係があるのか?」
「ええ。貴方が初めて授業でそのドラゴンを召喚した時私も見てたのだけど、確かに私たちの持っているシグナーの竜と同じ気配を感じたの。だからそのカードをどうやって手に入れたかを教えてもらえない?」
初めて召喚した時は確かツァンとのデュエルのときだ。あのデュエルをアキも見ていたのだろう。しかし困ったことになった。まさか交通事故にあって目が覚めたら別人になっていてその時に《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を手にいれたと言っても信じてもらえないだろう。
シグナーやダークシグナーの存在も十分オカルト染みているがそれ以上に自分の境遇も現実離れしている。
「このカードは…そうだな…ある人にもらったんだ。それに確かにこのカードは特別だけど十六夜さんの言うシグナーとは関係ないと思う。俺の腕にはそんな痣もないしね。」
そう言って己の制服をまくり腕を見せるが確かに腕に痣はない。それを見たアキは多少残念そうな表情をするが新たな提案を持ち出す。
「そう…なら、私達のチームと一緒にゴースト、その裏で手を引いているイリアステルと戦うために力を貸してくれないかしら?神代君ならデュエルの腕も立つし、どうかな?」
「あー…お誘いは嬉しいんだけど俺は力になれないや…あんな命懸けのデュエルはもう懲り懲りなんだ」
「…分かったわ、ありがとう。時間を取らせてしまってごめんなさい」
「いや、こっちこそ力になれなくてゴメン。」
チームに誘われたこと、自分の力を見込んでくれたことは素直に嬉しかったが今の自分では足手まといにしかならないだろう。それに面倒事にこれ以上首を突っ込みたくない、そんな本音があった。
そう考えながら竜二の待つ学食へ向かった。
「ユーゴ、遅いって!どんだけ長いウンコしてんだよ!」
「ちっげぇーよ!しかもデカい声でんなこと言ってんじゃねーっつーの!」
デリカシーなく大声で悠吾を呼ぶ竜二。やれやれと思いつつ竜二の横に座り食事を口に運ぶ。先程のアキの落ち込んだ表情が脳裏に浮かぶが頭をボリボリかいてそれを必死で振り払う。後ろめたさは多少あったが後悔はしていなかった。それほどに悠吾にとってゴーストとのデュエルは恐怖でしかなかった。
『ハァ……俺に出来ることはない、ないんだ!』
そうやって自分に何度も言い聞かせて食堂を後にする。
***************
今日1日の授業がすべて終わり終業のチャイムがなり響く。悠吾は帰り支度を済ませると教室を出て廊下に出る。竜二は教室でまだ駄弁っているが悠吾はバイトの予定が入っているので久しぶりに1人で下校する。
「神代、悠吾さんですか…?」
廊下を歩いている悠吾に後ろから声をかけられる。振り替えるとそこには肩にまで伸びたウェーブのかかった髪、身長は悠吾より10センチほど低い女子の中ではそれなりに大きな部類に入る身長、そして何よりも目につくのはアキに負けず劣らずの豊満な胸だ。
『何でこの世界の女はどいつもデカパイなんだよ!?』
「そうだけど何?」
心のなかではそんな風にシャウトしていたが表面的は極めて冷静に対応する。それにしても今日はよく呼びとめられる日だ。まあ2人共美人なので男の悠吾からしたら悪い気分はしない。
「少し話がしたいと思っただけですよ。申し遅れました北条エリと申します。」
「北条…?」
その名字には聞き覚えがあった。確か竜二との雑談の中で聞いたことがある。北条グループと言えば有名な財閥でそこの令嬢らしい。つまり超お嬢様ということだ。思えば雰囲気や話し方からも育ちの良さがにじみ出ている。
「話ねぇ…あんまり時間ねーから手短に頼むわ」
「あらあら、つれないですね。では手っ取り早くデュエルでもどうですか?」
「何でそうなるんだよ…」
この後予定もあったためさっさと終わらせたいと考え、突き放した返事をしたつもりだったが相手は全く動じた様子がない。お嬢様だと考え、打たれ弱いと思ったが案外図太い神経をしているようだ。
「あなたの噂は聞いています。学年トップのツァンさんに勝利し、その上ゴーストまで退けたらしいですね。それにとても面白いドラゴンをお持ちとか…私もデュエリストの端くれとして1度手合わせしたいと思っただけですよ。」
どうやらエリの目的は悠吾で腕試しをしたいということらしい。確かエリは幼い頃から数々のジュニア大会で優勝や入賞を果たしている実力者という話も聞いたことがある。それならば悠吾に興味を持っても不思議ではない。
「デュエルなら尚更ダメだ。この後予定あるし今そんな気分じゃねーんだ。」
「む…それならしょうがないですね。また後日お願いさせてもらいます。」
「…いきなり声をかけてきたわりには直ぐに引き下がるんだな」
「私はそんなに無礼者に見えましたか?心外ですねぇ」
傷ついたという風な仕草をするがその声色から察するに全くそんな様子はない。いきなりデュエルを申し込んで来るところといい、飄々とした態度といい、何を考えているのか分からない。
「まあそのうち機会があればこっちからお願いさせてもらうよ。じゃ、俺は予定あるから」
適当な社交辞令を言ってくるりと背を向け歩きだす。その背中にエリも声をかける。
「ええ、それではごきげんよう。……また直ぐに会えると思いますが」
お嬢様らしい挨拶を述べるがその後の台詞は悠吾にも聞きとれない小さな声でありその言葉を聞いたのはエリ只1人だけであった。
第7話最後まで読んでいただきありがとうございました。今回は文章量が少ないですがキリが良かったのでこの量にさせてもらいました。
さて、今回デュエルはなかったですが次回はエリとユーゴのデュエルをたっぷり書いていこうと思います。エリがどんなデッキを使うのか楽しみにしてください。
では失礼します。
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第8話
前回のお話から実に1年以上経過しての投稿になります。お待たせして申し訳ありません。
前回までご覧いただいていた方も今回初めて見るという方もお楽しみいただければと思います。
ではどうぞ。
「じゃあ神代君、今日はこの地域の清掃をお願いね。」
「うぃーす、了解です。」
場所は変わり、悠吾は今アルバイト先の事務所に来ていた。トップス地域の清掃と1言と言っても1人で全域を掃除するわけではない。担当する職員が区画毎に決められている。今回悠吾が担当するのはある公園のようだ。
事務所からでると修理が終わったDホイールに乗りトップスを目指す。
『やっぱトップスってすげえ…ネオドミノシティ全体が近未来て感じだけどここは特にその色が強いし何より大きい建物が多いな』
そしてその警備も強固なものだった。トップス区画に入るだけでセキュリティが駐在するゲートを通らなければならない。
『えーっと…指定された住所はここだな。うおっ…でっけぇ公園だな、見た感じは綺麗だけど意外にゴミとか汚れてるとこあるっていってたっけ』
事務所から支給された掃除道具を手に早速掃除に取りかかる悠吾。確かに見えないところにゴミが結構落ちている。外側からみると分からないことがあるものだ、そんなことを考えながら手を動かす。
ゴミ掃除のバイトなど前の世界にいたときもやったことがなかったので少々不安であったが、作業中誰とも喋れず少し寂しく感じる以外は順調に進んでいった。案外自分はこのバイトが向いているのかもしれないとすら思った。
あらかた作業を終え、あとは出たゴミを片付けて帰るだけ、となったとき公園の前に如何にもお金持ちが乗っていそうな大きなリムジンが停まる。トップスにいるのだからリムジン自体は珍しくないが、ドアが空き中から見知った顔の人物が出てくる。
「アルバイトお疲れ様です。それにしても奇遇ですね。こんなに早くまた会えるとは」
ニコニコと胡散臭い笑顔を浮かべてリムジンから出てきたのはなんと北条エリだった。それを見て悠吾は唖然として固まる。
「な…なんでここにいるんだよ!?まさか…後つけてきたんじゃねーだろな!?」
「私がそんなストーカー紛いの真似をすると思いますか?家がこの近くでたまたま通りかかっただけですよ。」
確かにエリの実家がこの近くだということは嘘ではないだろうしそんな偶然もあるかもしれない。しかし悠吾の今までのエリに対する印象からするとその言葉を素直には受け入れられなかった。
「あ。そー…んで、何の用?見ての通り俺バイト中なんだけど」
「そうなのですか?確かそろそろシフトの時間が終わると聞いたのですが」
「そうなんだけど……ってなんで俺のバイトのシフト時間知ってんだよ!?」
「まあ、細かいことはいいじゃないですか。」
手元の手帳を見ていたかと思うとそれをパタンと閉じて笑顔で答える。今まで生きてきてこれほど人の笑顔が怖いと思ったことはない。校内ではお嬢様で誰に対しても平等に接する人格者という噂を聞いたのだが猫を被っているようだ。
『マジでこの人は敵に回したらいけない人だ……!!』
つい最近決まったバイトの情報を知っているとは思いもしなかった。これが権力の力といったところか。エリの持っている手帳にどれだけの人間の情報が載っているのか考えただけでも恐ろしい。
「ん?今何か失礼のことを考えていませんでしたか?」
「い、いや…何でもない。」
下手なことを言ったら何をされるか分かったものではない。ここは黙っておこうと口を紡ぐ悠吾。
「まあいいでしょう、それよりこれからデュエルで対決といきませんか?」
「いきなり来たと思えばデュエルかよ…お嬢様つってもワガママは大概にした方がいいぜ。」
自分に用事があるとしたら放課後デュエルを挑まれた件以外に思い付かない。しかし悠吾はバイトで疲れていた上に気が進まなかった。
「つまり断るということですか?」
「そういうことだ。ワリーけどこれで俺は帰らせてもらうわ。」
そう言うとくるりと背を向けて公園から出ていこうとする。それを見るとエリはやれやれといった表情をし、再び手帳を開く。
「神代悠吾君、年齢17歳、出身地はネオドミノシティ。成績は中の上ですが、最近急にデュエルの腕が急激に上がったとか…好きな女性のタイプは年上キツめでしっかり者…成る程、見かけによらずドMなんですねぇ。」
「ちょ、ちょっと待ってやコラァ!」
猛スピードで振り替えるとこれまた目にも止まらぬ早さでエリに詰め寄る。
「年齢とか住所は兎も角なんでそんなことまで知ってんだ!」
「あら?違いましたか?」
「いや…確かにあってる……じゃなくて!どっからそんな情報仕入れてきてんだよ!」
「それら企業秘密というやつです。しかし困りましたね、デュエルを受けてもらえないとなるとうっかり口が滑って全校生徒の前であらぬことを喋ってしまうかも…」
『こ、この女……』
どうやらあの手帳には個人情報以外にも他人に知られたくないような恥ずかしいことまで記されているようだ。いよいよ本格的に恐怖を感じるが、ここで歯向かうと何をされるか分かったものではない。喉まで出かかった悪態をぐっとこらえる。
「わ、分かったよ。デュエルすりゃあいいんだろ!」
「快く受けて頂いて何よりです。」
そう言ってペコリと頭を下げるが脅されているようなものだ。気は進まないがこうなった以上デュエルを受けないわけにはいかないだろう。
「やるならさっさと始めようぜ」
Dホイールに内臓されているデュエルディスクを取り外し腕にセットする。それを見たエリも鞄からデュエルディスクを取り出し構える。その表情は先程の柔らかい笑顔ではなく、まるで獲物を前にした肉食獣のような目をしている。
『北条エリ、か…雰囲気から察するに間違いなく実力者だ。《クリアウィング》、今回も頼りにしてるぞ』
ツァン戦の時のように心のなかで《クリアウィング》に声をかけて願掛けをする。しかし前回と違い白竜が悠吾の呼び掛けに答えることはなかった。
『《クリアウィング》……?』
「さあ、始めましょう!デュエル!!」
「デュ、デュエル!!」
エリ
LP4000
悠吾
LP4000
若干違和感を覚えつつもデュエルをスタートさせる。懸念はあるが今は目の前の相手に集中すべきだろう。
「私の先攻ですね、ドロー!」
その華奢な見た目とは裏腹に勢いよくカードをドローする。エリのデッキ内容が分からない為、油断は禁物だ。下手をすれば先攻1ターン目で大量のモンスターを展開され、手をつけられなくなってしまうだろう。
「あまりいい手札ではないですね、まずは手札交換といきましょうか。魔法カード《天空の宝札》を発動します。手札の《光神機ー轟龍》を除外してカードを2枚ドローします。」
素早く手札交換をするエリ。除外した《光神機ー轟龍》は強力なモンスターだが高レベルな為手札では腐ると判断したのだろう。そして直ぐにドローしたカードを発動させる。
「さて、下準備といきましょうか。《神秘の代行者アース》を通常召喚!」
神秘の代行者アース
ATK1000
先程の《轟龍》と同じ天使族モンスター。男性なのか女性なのか分からない中性的な見た目をしている。これまででプレイしたカードの枚数は3枚だがどのようなデッキかを特定するには十分だった。
「【代行天使】か…こりゃまた厄介なデッキだな」
「正解です。では《アース》の効果でデッキから《創造の代行者ヴィーナス》を手札に加えます。もう少し展開したいですが…《天空の宝札》の効果で特殊召喚はできませんのでカードを1枚伏せてターンエンドです。」
エリ
LP4000
モンスター
神秘の代行者アース
ATK1000
魔法・罠
伏せ1枚
「俺のターンドロー、さてどうするかな…」
エリのフィールドには《アース》が攻撃表示で棒立ちしており戦闘破壊は容易だが、伏せカードも気になる上にコンバットトリックの可能性もある。
悠吾の手札も良いとは言えないうえに手札交換カードもない。
『この手札じゃシンクロ召喚はムリだな…墓地も肥えてないし手堅くいくか』
「俺は《SRパチンゴーカート》を召喚!」
SRパチンゴーカート
ATK1800
「【SR】ですか…聞いたことのないテーマですがおもちゃをモチーフにしていて可愛いですね」
「見た目で判断しない方がいいぜ!《パチンゴーカート》の効果発動!手札から機会族の《SR電々太鼓》を捨てて《アース》を破壊!」
キリキリと音をたて《パチンゴーカート》が《アース》に狙いを定めると勢いよく弾を発射する。そのまま着弾しアースは破壊される。
『伏せカードは発動なし…か。』
「バトル!《パチンゴーカート》でダイレクトアタック!」
「攻撃宣言時、永続罠、《奇跡の降臨》を発動して除外されている《轟龍》を特殊召喚します。」
光神機ー轟龍
ATK2900
除外されていた《轟龍》を直ぐに呼び戻す。恐らくこの展開も考えて先程除外したのだろう。
「2900…!攻撃はやめてメイン2にはいる。カードを2枚伏せてターンエンドだ。」
悠吾
LP4000
モンスター
SRパチンゴーカート
ATK1800
魔法・罠
伏せ2枚
「私のターン、ドロー。さて、そろそろ本気で行きましょうか。」
明らかにまとう雰囲気が変わる。手札は5枚、打てる手はいくらでもある。
「《創造の代行者ヴィーナス》を通常召喚して効果を発動します!何かありますか?」
「いや…発動するカードはない」
やはりと言うべきか、前のターンにサーチした《ヴィーナス》を召喚し、効果を発動させる。出来るなら止めたいが、その術は悠吾にない。
「ではライフを1500支払いデッキから《神聖なる球体》を3体特殊召喚します。」
エリ
LP4000→2500
神聖なる球体×3
DEF500
ライフポイントを削ってしまうがデッキからモンスターを直接リクルートできるのは強力だ。あっという間にエリのフィールドがモンスターで埋め尽くされる。
「ワラワラ出てきやがって…まるであいつらみてーだな。」
1ターンで複数体を並べるのはゴーストが使用する機皇帝を彷彿とさせる。
「普通は低攻撃力だとバカにする人が多いのですが貴方は違うようですね。ではもうひと押し、《神聖なる球体》を除外することでチューナーモンスター、《異次元の精霊》を特殊召喚します。」
異次元の精霊
ATK0
「チューナーにそれ以外のモンスター、くるか…」
「私はレベル2の《神聖なる球体》2体とレベル3の《ヴィーナス》にレベル1の《異次元の精霊》をチューニング!」
4体にもよるシンクロ召喚、合計レベルは8
「大いなる閃光、星々の輝きを束ね断罪の剣閃となせ。シンクロ召喚!力を貸してください!《神聖騎士パーシアス》!」
神聖騎士パーシアス
ATK2600
「オイオイ、手加減無しだな」
「ええ。貴方には全力でお相手させていただきます。私のエースモンスターもご覧にいれましょう。
墓地の《創造の代行者ヴィーナス》を除外しモンスターを特殊召喚します。」
「この召喚条件…代行天使のリーダーのおでましか」
天空から光が降り注ぐ。
「天空に住まいし、太陽神よ。矛向ける敵を焼き払え!来てください、《マスター・ヒュペリオン》!」
マスター・ヒュペリオン
ATK2700
これでエリのフィールドには上級天使が3体。その1体1体が高い攻撃力と強力な効果を備えている。
「流石にやるな、一気にケリつける気か?」
「そうですね、ですがその前に邪魔な伏せカードを除去させてもらいます。《マスター・ヒュペリオン》の効果!墓地の《ヴィーナス》を除外して伏せカードを破壊します。」
破壊されたカードは《聖なるバリアー・ミラーフォース》ドンピシャで攻撃反応型トラップを撃ち抜く。
『《ミラフォ》が…!』
「《ミラーフォース》ですか、物騒な罠をしかけていたようですがこれで安心ですね。バトル!《パーシアス》で《パチンゴーカート》を攻撃!そして効果を発動します!」
《パチンゴーカート》が防御の姿勢を取り、守りにはいる。
SRパチンゴーカート
DEF1000
「なるほど、表示形式変更効果か…でもそれじゃあ戦闘ダメージは与えられねーぞ?」
「焦らないでください。《パーシアス》は貫通効果を持っています」
表示形式を変更できるうえに貫通効果を持っているということは攻撃力、守備力が2600未満のモンスターを戦闘破壊した上でダメージも与えられる。中々に優秀な効果を持っている。
悠吾
LP4000→2400
勿論《パチンゴーカート》の守備力が届く訳もなく呆気なく破壊されてしまう。しかしまだエリには天使2体の攻撃が残っている。
「これで終わりですか?《マスター・ヒュペリオン》でダイレクトアタック!」
《マスター・ヒュペリオン》が発した炎が悠吾に襲いかかる。
「クッソ…!罠発動、《ピンポイント・ガード》!墓地から《パチンゴーカート》を蘇生し、このターン如何なる方法でも破壊されない!」
「まだ踊れるようですね。《轟龍》で《パチンゴーカート》を攻撃!《轟龍》も《パーシアス》と同じ貫通効果を持っていますよ。」
「んだと!?ぐぅぅ……!」
悠吾
LP2400→500
あっという間にライフポイントが500まで追い込まれる。これがライディングデュエルだったらデッドラインを越えていて危ないところだった。
『畜生……ライフが尽きねえように立ち回るので精一杯だ』
「私はこれでターンエンドです。そろそろ例のドラゴンを見せていただけますか?」
エリ
LP2500
モンスター
マスター・ヒュペリオン
ATK2700
神聖騎士パーシアス
ATK2600
光神機ー轟龍
ATK2900
魔法・罠
奇跡の降臨
「俺のターンドロー…どうやらお望み通りあいつを呼べるみたいだぜ」
ドローしたカードを見てニヤリと笑う悠吾
『今引いたのは《三つ目のダイス》。こいつと《パチンゴーカート》で《クリアウィング》を呼べる…!』
「俺は《SR三つ目のダイス》を通常召喚!そしてレベル4の《パチンゴーカート》にレベル3の《三つ目のダイス》をチューニング!」
レベル合計は7。呼び出すシンクロモンスターは勿論決まっている。
「その美しくも雄々しき翼翻し、光の早さで敵を討て、シンクロ召喚!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」
エクストラデッキに手を伸ばし当然のようにそのモンスターを召喚しようとするが、一向に召喚時のエフェクトが起こらない。
「え……?どういうことだ!?おい、《クリアウィング》!何で召喚できねえんだよ!」
何度もディスクに反応させようとするが《クリアウィング》がその呼び掛けに答えることはなかった。
『こんな時にディスクの故障か!?他にレベル7のシンクロモンスターはいないってのに』
「どうしました?シンクロ召喚はしないのですか?」
「クソッ…俺はこのままターンエンドだ…」
シンクロ召喚は出来ない上にこれ以上モンスターを展開することもかなわない。手札をみたが、伏せカードで逆転も難しそうだ。例えブラフで伏せたとしてもエリは躊躇しないだろう。
悠吾
LP500
モンスター
SRパチンゴーカート
DEF1000
SR三つ目のダイス
ATK300
魔法・罠
無し
「私のターンドロー…聞いていた話と随分違いますね」
エリのターンとなりゆっくりと自分のデッキからカードを引く。そして少し期待はずれと言った表情をしていた。
「どういう意味だよ?」
「もっと歯応えのあるデュエルを期待していたのですが…さっきターンの立ち回りといい、正直期待外れですね。」
散々な言われようだが確かに悠吾も思い当たる節がある。ゴーストとのデュエル以降どうしても気持ちが半歩下がってしまう。クリアウィングを召喚できなかったのもこのことが原因かもしれない。そう思い何も言い返せずに項垂れてしまう。
「……残念です。興が冷めました。悪いですがデュエルはここまでとさせてもらいます。」
「な、何!?」
そういうとエリはデュエルディスクの電源を落とす。それと同時にモンスターも消える。しかし悠吾はそのエリの行動に納得していないようだ。
「なんでデュエルを…」
早々に立ち去ろうとするエリの背中に向かって悠吾が叫ぶとエリは立ち止まり振り返ると冷たくいい放つ。
「先程も言った通り今のあなたに戦意を感じません。何があったかは知りませんが心に迷いがあるようですね。無理矢理誘ってしまいすいませんでした。また機会があればお手合わせ願います。」
「あぁ…そうかよ…」
迷いがあるという図星をつかれてしまってこう言い返すのが精一杯だった。確かに無理矢理誘われたという形とはいえ、デュエルになった以上は本気で相手をしようと考えていた。しかし実際にデュエルをして、思っていた以上に自分は上の空だったようだ。そのせいかクリアウィングも呼びかけには答えてくれない。
『どうすりゃいいんだよ…』
大好きだったデュエルがゴーストとの一件以来『恐怖』を感じる対象へと変わってしまった。そのせいで満足にデュエルを出来なくなってしまった。どうすれば解決できるか考えたところで何も思いつかなかった。
エリが去った後もしばらくその場に立ち尽くしているとポツポツと雨が降り始めた。空を見上げると先程までの快晴とはうって変わって曇天の空が広がっていた。
まるでそれは悠吾の心を表しているかのようだった。
最後までご覧いただきありがとうございました。
エリさんのデッキは【代行天使】にさせていただきました。代行天使は私もかなり思い入れのあるデッキとなっています。マスターヒュペリオンカッコいいですよね。
さて、物語の方は悠吾君がスランプに入ってしまいましたね。彼はこの逆境を乗り越えれるのか、それともこのまま潰れてしまうのか。気になる方は次回もお楽しみに!
感想などお待ちしてます。
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第9話
さてさて今回は第9話です。
悠吾君ははたしてスランプから抜け出せるのでしょうか。それともこのまま潰れまうのか…
それではどうぞ!
「これで終わりだ!《ナチュル・ガオドレイク》でダイレクトアタック!」
「ッ…ライフで受ける…」
悠吾
LP700→0
エリとのデュエルから数日経ったが、未だに悠吾は《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を召喚できずにいた。理由は分からないうえに授業でもデュエルの勝率はどんどん下がっていった。
カードゲームである以上運が絡むためずっと勝ち続けることは容易ではないが悠吾の場合は今回のデュエルのように一方的に負けることが多くなっていた。
「やった〜!!神代悠吾に余裕勝ちしたぜ!もしかしたら俺アカデミア最強?」
「アホ、あんなんだったら俺でも勝てたわ。全然シンクロもしないし防御だってお粗末すぎんだろ」
先程対戦した生徒とその友人であろう生徒の話し声が聞こえる。散々な言われようだ。普段なら聞き流しているが今は状況が状況だけに心に深く突き刺さる。
悠吾としてもあのような無様なデュエルなどしたくはなかった。しかしエリとの試合以来、《クリアウィング》だけではなく、デッキ全体がまるで今のまでとは違うデッキかと思うほど回らなくなっていた。具体的に言うと手札事故が極端に多くなっており、先程のデュエルのように手も足も出ないことが多かった。
「悠吾!デュエル終わったのか?」
ギリっと歯軋りをしたところで話しかけられる。竜二だ。どうやら彼も対戦相手とのデュエルを丁度終えたようだ。対戦していたと思われるフィールドを見ると快勝したようだ。
「あぁ…まあ見ての通りボロ負けだけどな…」
フッ…と自嘲気味に鼻で笑う。自分とは対照的に勝利している竜二になんて言っていいのか分からずこう返す他なかった。
「おぉ…そうか…」
また竜二も、そんな悠吾を見て言葉を濁す。最近、特にゴーストとのデュエル後悠吾の様子がおかしいことには気付いていたがなんと声をかけていいか分からなかった。というのも以前と人が変わってしまったかのように無気力になってしまったからだ。
今の彼に何を言っても無意味だろう。
「じゃあ俺教室戻るわ」
どうしたものかと考え込んでいると悠吾は足早に教室に戻ってしまった。その背中は酷く寂しそうだった。
その背中を見て歯痒く思いながら竜二はある決意をする。
「悠吾…」
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
放課後になり、下校時刻となる。生徒たちは部活をしたり友人と遊んだりと思い思いの時間を過ごす。悠吾も帰り支度を済ませて席を立つ。
『今日はバイトないから帰って寝るか…』
いつもならDホイールでも転がして野良ライディングデュエルか、カードショップでスタンディングデュエルをしているところだが最近はめっきり辞めてしまった。
帰ろうとした悠吾だが後ろから呼び止められる。
「ユーゴ!ちょっとまて!」
振り向くと声の主は竜二だった。そういえば最近まともに話していない。今日も授業後に話した気がするが上の空で何を話したかよく覚えていない。
「どうした…?俺今から帰るんだけど」
「俺と勝負しろ!」
「は…?」
いきなりの申し出に思わず間抜けな声が出てしまう。少年漫画ではよくありがちな光景だがまさか自分が言われるとは思わなかった。
「最近デッキを新しくしたからな。アカデミアトップクラスのお前にどれだけつうじるか試してーんだ。」
確か竜二の使用していたデッキは【Xーセイバー】だ。こちらの世界に来てから日が浅いのですぐにデッキを変更したように思えたが竜二はこのデッキを長く使っていだはずだ。愛着のあるデッキを何故変えたのかはとても気になるところだ。
「まさかお前が【Xーセイバー】のデッキから乗り換えるとはね。」
「【Xーセイバー】は
「そうかよ。でも残念だけどその新デッキでの初デュエルは無理。」
「は!?なんでだよ?今日バイトなくて暇だろ!」
バイトが無いからと言って暇だと言われるのは心外だった。もしかしたらプライベートの用事があると思ってくれてもいいものだ。今回は家に帰って寝ようと思っていただけなので竜二の言う通り暇なのだが。
だから理由は他にある。
「お前も見たろ…授業のデュエル。あんなお粗末なデュエルしかできないんだよ俺は。デッキの試運転は他の人に頼んで。」
「いや!俺がお前とデュエルしたいんだ!」
「人の話を聞けよ…兎に角無理、帰る。」
竜二はこちらの都合を全く聞いてくれない。悠吾としてもできるなら協力してあげたいが今の自分が付き合っても迷惑をかけるだけだろう。そう思って回れ右をして帰ろうとした。
「逃げんのか?」
ガシッと悠吾の腕を掴む。引き止めるにはあまりにも稚拙な挑発だ。こんな見え見えの挑発にのるのは小学生ぐらいだろう。
「なんだってんだよ…」
理由は分からないがここまで竜二が食い下がるのは珍しい。掴まれた腕を振り解こうとするが竜二はその手を離さない。こうなったらテコでも動かないだろう。
「はぁ…分かったよ。ただし一戦だけだからな。」
「よっし!じゃあDホイール乗ってアカデミアの練習用サーキット集合な」
「はいはい…」
気は進まないが約束してしまった以上やるしかない。そう覚悟を決め約束の場所のサーキットに向かう。
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場所は変わりデュエルアカデミアのサーキット。テレビで見るような大会のようなサーキットとまではいかないがそれでも十分な広さだ。悠吾達以外にもこの場所にライディングデュエルをしにきた生徒がちらほら見受けられる。
「お、来たかユーゴ!」
重い足取りで竜二を探しているとDホイールのメンテナンスをしている竜二を見つける。
「サーキット使える時間限られてるからな。早くスタートしようぜ。」
そう言うとすぐさまスタートラインにDホイールにつける。どうやらグチグチとゴネている暇は与えてくれないらしい。
「わーったよ。じゃあカウント始めてくれ。」
悠吾もスタートラインにつく。思えばライディングデュエルはゴーストとの一件以来だ。体に緊張が走り、心拍数も上がる。
緊張で気づかなかったが周りには生徒が集まってきている。悠吾と竜二のデュエルを見に来たようだ
「ギャラリーも集まってきたな!じゃあカウント開始だ!」
3、2…
久しぶりの感覚に若干戸惑いながらもアクセルに力を入れる。深呼吸して呼吸を整え、前を見る。今はこの瞬間に集中しなければならない。
1
「「ライディングデュエル・アクセラレーション!!」」
悠吾LP4000
竜二LP4000
開始のブザー、そして2人の掛け声とともにライディングデュエルが始まる。勢いよくアクセルを踏み一気に加速する。久しぶりだったがスタートダッシュは上手くいった。
『よし!このまま第一コーナー先取だ!』
「させるかよ!」
だがそう簡単には行かせてくれず、竜二もアクセル全開で追随する。
両者一歩も譲らず第一コーナーにさしかかったが、その直前に悠吾と竜二のDホイールが接触しそうになる。
「…!やべ!」
一瞬悠吾の脳裏にゴースト戦での衝撃がフラッシュバックする。その一瞬にアクセルを緩めてしまう。
「そこだ!」
その隙を竜二は見逃さなかった。コースを目一杯使って悠吾を追い抜かし第一コーナーを先取する。一瞬の気の迷いで第一コーナーを譲ってしまったが引きずっている余裕はない。
「第一コーナーは俺がもらった!ドロー!」
竜二 SPC0→1
悠吾 SPC0→1
『竜二のやつ…デッキの枚数増やしたのか?』
体勢を立て直し竜二の出方を伺う。先程の話が本当なら彼のデッキは【Xーセイバー】とは別物ということだ。情報がないため、どのような出方をしてくるため全く予想が出来ない。
「俺は、《カードガンナー》を通常召喚!》
カードガンナー
ATK400
現れたのは目からライトを発するロボット。
「《カードガンナー》の効果発動!デッキの上からカードを3枚墓地に送る。」
デッキトップからカードが3枚墓地に送られる。墓地肥やしとして優秀な効果と言えるだろう。
「墓地に送ったカード1枚につき《カードガンナー》の攻撃力は500アップする。つまり《カードガンナー》の攻撃力は1900だ。」
カードガンナー
ATK400→1900
墓地にカードを送ると同時に攻撃力を1900までアップさせる。下級モンスターの中でも最高と言える攻撃力だ。
「カードを2枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズに《カードガンナー》の攻撃力は元に戻る。」
竜二
LP4000
モンスター
カードガンナー
ATK400
魔法・罠
伏せ2枚
「俺のターン!」
「スタンバイフェイズ、【針虫の巣窟】を発動!デッキからカードを5枚墓地に送る。」
更にデッキからカードを墓地に送る。1ターン目ですでに10枚近くのカードが墓地に送られている。
「随分カードを墓地に送るんだな。デッキ切れおこしちまうぜ。」
「んなヘマはしねーよ。おっ、いい落ちじゃねえか…墓地に送られた《エクリプスワイバーン》の効果発動!このカードが墓地に送られた時、デッキからレベル7以上の光、または闇属性のドラゴン族モンスター1体を除外する!俺は《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を除外!」
「《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》…!?っつーことはドラゴン族のデッキか?」
「どうだかな…デュエル進めりゃ分かるんじゃねえか?」
竜二 SPC1→2
悠吾 SPC1→2
『ドラゴン族デッキなら早いとこ手を打たないと高打点モンスターがポンポン出てくる。でもこの手札じゃ…』
今ドローしたカードを合わせてみても展開出来そうなモンスターはいない。かといって魔法カードで突破しようにも今はSPCが少なく使えるカードがない。
「どうした!?こんな時に考え事か?」
攻め方を決めあぐねていた悠吾を見かねて竜二がヤジを飛ばす。
「俺は《電々大公》を通常召喚!バトルフェイズ!《カードガンナー》を攻撃!」
SR電々大公
ATK1000
電々大公が手に持っているでんでん太鼓で《カードガンナー》をぶっ叩いて粉砕する。先制パンチは決まったがアドバンテージを稼いでいるのは竜二だ。このくらいのダメージは意に介さない。
「おっと!まあこれくらいはしょうがねぇか」
竜二
LP4000→3400
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ。」
悠吾
LP4000
モンスター
SR電々大公
ATK1000
魔法・罠
伏せ 2枚
「どうした?随分控えめじゃねーか!でもこっちは遠慮しねーぞ!俺のターン!」
悠吾SPC2→3
竜二SPC2→3
「まずは《SPーエンジェル・バトン》を発動!カードを2枚ドローして手札から1枚墓地に送る。」
デッキが回らない悠吾に反して竜二は流れるように手札交換、墓地肥しをしていく。そしてドローしたカードと墓地に送ったカードを見てニヤリと笑う。
「おい、ユーゴ!まだ始まったばっかりだけどボヤボヤしてっとこのターンで終わっちまうぞ!」
「キーカードを引いたか…」
まだ3ターン目だが竜二の墓地にはカードが溜まっている。何か仕掛けてきても不思議ではない。
「あぁ、いくぞ!墓地の《エクリプス・ワイバーン》と《聖刻龍ートフェニドラゴン》を除外して《ダークフレア・ドラゴン》を特殊召喚!」
ダークフレア・ドラゴン
ATK2400
「《エクリプス・ワイバーン》が除外されたってことは…」
「そうさ!除外されてる《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を手札に加える。」
「《レダメ》といい、墓地肥やしとこの召喚条件…デッキは【カオスドラゴン】ってどこか…」
「正解…。だけど主役はまだ出番じゃねーぜ。俺は墓地の《アックス・ドラゴニュート》と《暗黒龍 コラプサーペント》を除外して《ライトパルサー・ドラゴン》を特殊召喚!」
ライトパルサー・ドラゴン
ATK2500
フィールドに白と黒のドラゴンが並び立つ。デッキ名の【カオスドラゴン】を象徴するドラゴンと言ってもいい。
「俺はまだ通常召喚をしてない!手札から《ギャラクシーサーペント》を通常召喚!」
ギャラクシーサーペント
ATK1000
「《ギャラクシーサーペント》はチューナーか…」
「その通り!俺はレベル6の《ライトパルサー・ドラゴン》にレベル2の《ギャラクシーサーペント》をチューニング!シンクロ召喚!レベル8《混沌魔竜カオス・ルーラー》!!」
混沌魔竜 カオス・ルーラー
ATK3000
ここに来て初のシンクロ召喚。その攻撃力は3000と大台にのっている。
「こいつが俺の新しいエースモンスターだ!特殊召喚時の効果発動。それにチェーンして墓地に送られた《ライトパルサー》の効果も発動!まず《ライトパルサー》の効果で墓地の闇属性ドラゴンを特殊召喚する!俺は《ダークストーム・ドラゴン》を特殊召喚!」
ダークストーム・ドラゴン
ATK2700
竜巻を纏った暴風竜と言うべきドラゴンが召喚される。おそらく墓地肥しの段階で墓地に送られていたのでだろう。
これで竜二のフィールドには上級ドラゴンが3体。だがまだ終わらない。
「続いて《カオス・ルーラー》の効果でデッキトップからカードを5枚墓地に送り、その中の闇か光属性のカードを手札に加える…けどそう何度もいい落ちとはいかねぇか。魔法と罠ばっかで加えるカードがない。」
先程とは打って変わって墓地に送られたカードは魔法や罠カードだけのようだ。運がないと言えばそうだが流れは竜二にある。その上まだ切り札を召喚していない。
「さァていよいよ主役の登場といきますかぁ!フィールドの《ダークフレア》を除外して《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》を特殊召喚!」
レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン
ATK2800
咆哮と共に現れたのは全身を鎧に包まれた黒いドラゴン。攻撃力もさることながらその真髄は効果にある。
「《レダメ》の効果で墓地から《ライトパルサー・ドラゴン》を特殊召喚!」
ライトパルサー・ドラゴン
ATK2500
墓地からドラゴン族モンスターを特殊召喚するという単純だが強力な効果。その緩い召喚条件とも相まってドラゴン族を多用するデッキには必要不可欠ともいえる。
「ドラゴンが4体…!」
攻撃力2500以上の上級ドラゴンが4体。いくらソリッドビジョンとは言え物凄い圧力を感じる。
『クソっ…この状況じゃあもう…』
「《カードガンナー》を破壊するためとはいえ《電々大公》を攻撃表示は迂闊だったな。バトルフェイズ!まずは《ライトパルサー》で《電々大公》を攻撃!」
「これを通すとヤバい! 罠発動!《ハーフ・アンブレイク》!このターン《電々大公》は戦闘で破壊されず受けるダメージも半分になる。」
「なるほどなぁ、防御手段を持ってたってことか。だが俺の攻撃に耐えられるかな!?一撃目!」
《ライトパルサー・ドラゴン》の口から光線が放たれ《電々大公》を直撃する。本来なら消しとんでしまうが、カードの効果で場に残る。
悠吾
LP4000→3250
「《ダークストーム・ドラゴン》で《電々大公》を攻撃!戦闘破壊はされないがダメージは受けてもらうぜ。」
悠吾
LP3250→2400
少しずつだが確実にライフが削られていく。だがまだ2体のドラゴンの攻撃が残っている。
「3撃目ぇ!《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》で《電々大公》を攻撃!」
悠吾
LP2400→1500
赤黒いブレスで三度《電々大公》を焼き尽くす。その衝撃でハンドル切るのが遅れてしまいDホイールがクラッシュしかける。だがそれをなんとか立て直す。
「ラストォ!《カオスルーラー》で《電々大公》に攻撃!」
光と闇が合わさったブレスが炸裂。攻撃力3000というだけあって衝撃は今までで1番強かった。土煙がもうもうと立ち込める中なんとか体勢を立て直す。
悠吾
LP1500→500
「首の顔1枚だな。カードを1枚伏せてターンエンドだ。」
竜二
LP4000
モンスター
ライトパルサー・ドラゴン
ATK2500
ダークストーム・ドラゴン
ATK2700
レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン
ATK2800
混沌魔竜 カオスルーラー
ATK3000
魔法・罠
伏せ2枚
ライフとモンスターをかろうじて残したはいいものの状況はかなり悪い。ドローしようとデッキに手をかけるが手が震える。
「お、俺のターン…」
ゴーストとのデュエルやエリとのデュエルが頭の中にフラッシュバックする。不利な状況で自分にターンが回ってくるこの状況はあの時によく似ている。また醜態を晒してしまうのかという恐怖が心を蝕んでいく。
「何をビビってんだ?」
その考えを読んだかのように竜二が問いかける。
手が震えたのを見られたのか?いや、竜二は前を走っている。手元は見えないはずだ。
「なんだよ…急に何いってやがる」
「気付いてないと思ってんのか?」
その言葉に悠吾は目を見開く。竜二の纏う空気が今までと明らかに空気が変わった。
「ゴーストとのデュエル後…いや、1ヶ月前くらいから違和感は感じてたんだ。」
1ヶ月前といえば丁度悠吾がこの世界に来たくらいだ。違和感がないようになんとか隠していたつもりだったが気付かれていたようだ。しかしよく考えれば当然だ。姿が同じで、こちらの世界の記憶があるとはいえ、全く違う人物になったのだ。全く同じ人物のように振る舞えるわけではない。
「お前が何に悩んでるのか、話したくないなら無理には聞かねえよ。だけどなぁ…!!」
そう言うと前を走っていた竜二が勢いよくハンドルを切りぐるんとDホイールを反転させる。そしてそのまま後ろ向きで走っている。
「何を迷ってんだ!ユーゴォ!!」
静かな雰囲気から一転、声を荒げる竜二。ビシッと人差し指をこちらに向けその表情からは怒りの感情が伺える。
「え…?」
竜二の予想外な行動に間抜けなリアクションをとってしまった。
「俺がデュエルで諦めかける時、スランプになってた時、お前はいつも『デュエルを楽しむもんだ。その気持ち忘れなきゃ強くなる!』そう言ってくれた…お前の言葉に何度も俺は救われてんだ…そのお前がそんなツラしてんじゃねぇ!ぶっつぶれそうなシケたツラしてんじゃねえよ!!」
口調は悪いが、その言葉からは竜二の熱い気持ちが伝わってくる。そのまま言葉を続ける。
「負けるのが怖えなら、強くなりゃあいい。ゴーストが怖いならあいつらブチのめせるくらい強くなればいい!どんなに絶望的な状況でも最後までデュエルを楽しむことを忘れねぇ、俺の知ってる神代悠吾っていう男はそういう男だ!!」
ドクンっと心臓が脈打った。まるで自分の中にある何か熱いものが叩き起こされたかのような感覚だ。その瞬間、悠吾の意識が飛び、気がつくと何もない真っ白な空間にいた。どうやらここは悠吾の潜在意識のような場所のようだ。
しばらく周りを見渡していると次第に様々なシーンが映像化されて流れていく。
この2つの記憶が混ざり合って悠吾の周り中を駆け巡っていく。初めて遊戯王をプレイした時や、大会で優勝したとき、初めてDホイールでライディングデュエルをしたとき等様々であったが、共通していたのが共通したいたのがいつも『デュエルを心から楽しんでいること』だった。
ふと気づくと目の前に人が立っており、それは自分と同じ顔をした人物だった。直感で、
『その気持ちがあればお前は誰にも負けねえよ!』
そう言って彼はニカっと笑うと1枚のカードを差し出す。それは悠吾のエースモンスター、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》だった。
『ありがとな』
それに応えるように悠吾も返事をかえす。
その一言と共にカードを受け取るともう1人の悠吾は光の粒となって消えてしまう。だが彼が消滅したわけではなく、悠吾の中に流れ込んでくるのを感じた。今2人は完全に1つの存在になったと分かった。
意識が現実世界に引き戻される。Dホイールの上、猛スピードで流れる景色。そう、今は竜二とのライディングデュエルの途中だ。
あの真っ白い空間にそれなりに長い時間いたと思っていたが、現実世界では一瞬のことのようで、今は竜二に檄を飛ばされた直後だ。
「るっせーんだよ…んなこと言われなくても分かってるっつーの!!」
口では悪態をつきつつもその目にはもう以前のような迷いはなく、口元には笑みが溢れている。グッと一気にアクセルを踏み込み、後ろ向きで走っている竜二を追い抜く。
「あ!テメ…追い抜きやがった…!」
慌てて竜二も体勢を整えて、悠吾を追いかける。先程まで向かい風だった風も今は追い風として悠吾を援護してくれている。
「俺のターン、ドロー!!」
悠吾SPC3→4
竜二SPC3→4
勢いよくカードを引き、ドローしたカードを確認してそのまま発動させる。
「《SPークラッシュ&ドロー》を発動!SPCが4以上ある時、お互いに手札を全て捨て、捨てた分だけデッキからカードをドローする!」
オリジナルSP
SPークラッシュ&ドロー
SPCが4以上ある場合、お互いのプレイヤーは手札を全て捨てて捨てた分だけカードをドローする。
「ここで《クラッシュ&ドロー》か!いいカードを引きやがったな」
「俺は4枚捨てて4枚ドロー!」
ドローした4枚は今までが嘘のように噛み合う手札だ。頭の中でいくつもルートが浮かぶ。まるで世界が一変したかのようだ。
「さあ、反撃開始と行こうか!お楽しみはここからだ!!」
最後までお読みいただきありがとうございました。
さて、今回ほかなり悩みました…というのも竜二のデッキ変更や親友として竜二がユーゴにどんな声をかけのかというとこですね。
竜二のデッキに関しては登場開始から変更はしようかと思ってたので交換早すぎって思った方もいらっしゃると思います。ちなみに【Xーセイバー】はまた出てくる予定はあります。
竜二の檄についてですが実は結構気に入っています。ここでは少年ジャンプの掛け合いみたいなものをやってみたかったので…作者の願望丸出しですがご容赦いただければ思います。
さて、次回は遂にユーゴと竜二のデュエルがクライマックスです!調子を取り戻したと言ってもユーゴのライフはわずか500。逆転できるのでしょうか?乞うご期待!!
感想、いいね等お待しています。
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