天翔ける竜 (アルアール)
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原作前
プロローグ


今まで小説を書いたことはないのですが、ヒロアカをこのサイトで見回っていて、自分の読みたい設定がないなぁって思って書いて見ることにしました。
よければご覧ください。


・・・・トクン。

・・・・トクン。

一定のリズムを刻みながら聞こえるこの音は、生命の鼓動。

この星に住む73億人、その中で日本の一つの病院に一つの命が誕生した。

 

 

 

 

「おぎゃぁぁーーー!」

 

 

 

 

この世界での人口の増加は、1日におよそ20万人が生まれ、1秒に換算すると2.3人が生まれることになる。

命の誕生とは特別ではあるが、世界的に見たらとてもありふれている。

しかしこのとき生まれた子供はそんなありふれた命の誕生でありながらも、のちに空の王と言われるまで名を轟かすそんな命である。

 

 

 

 

「次のニュースです。今日の午前11時ごろに八王子市の駅前で、ひったくり事件が起こりました。しかし偶然にも近くでパトロール中のヒーローがおり、迅速な対応により、一般市民に被害が出ることなく逮捕された模様です。」

 

この都会特有の騒がしい街中で美しい女性とその女性の美貌を将来性に伺わせるような男の子がいた。

 

電気屋の入り口にある大きめのテレビから流れるニュースを聞き、男の子が立ち止まった。

 

「ねぇ、おかぁーさん。ひーろーってなぁに?」

 

そんなことを聞いたのは、まだ4、5歳であろう子供である。

名前は天野翔(あまのかける)。

背丈は100センチといったところで、子供特有のきめ細やかな白い肌。丸みを帯びており触ると気持ち良さそうな頬。母親とよく似た少しタレ目気味で大きく、銀色がかった青の目。

光の反射で輝く綺麗な銀髪。

そして、肌の所々から生えている爬虫類を思い浮かばせるような、銀色に輝く鱗。

 

 

「それはね、悪いことをした人を捕まえて、みんなのことを守ってくれるすごーい人たちよ。」

 

優しさに満ちた声で答えたのは、彼の母なのであろう。

名前は天野飛鳥(あまのあすか)。

168ほどの女性としては高い身長。

緑がかった、腰のあたりまで伸ばしてあるストレートな髪。

細身でありながらも腰、胸共に出るところは出ており、引き締まったくびれ。しっかりと筋の通った鼻、少しタレ目気味のパッチリとしたエメラルドを思わせる綺麗な目。

 

いつも微笑みを絶やさないその姿は、現代の聖母といっても過言ではないだろう。

その証拠にさっきからすれ違った男性たちは明らかに子持ちであろう女性にしばしば目を奪われている。

 

 

「じゃぁ僕もひーろーになる!お母さんは僕が守るからね!」

 

男の子は大きく手を広げてキラキラと輝くような満面の笑みで女性に言った。

 

「ありがとう。でもお母さんにはもうヒーローがいるから大丈夫よ。お母さんはかける君がみんなを守ってあげられるような、強くて、やさしくて、太陽のような、みんなを幸せにできる、そんな人になってほしいなぁ。」

 

女性はそんな男の子の仕草が可愛かったのが光に輝く銀髪を撫でながらそう答えた。

 

 

 

 

 

現在の地球において昔に言われていたように普通の人は少ない。

この世界の総人口は、超能力、通称「個性」という不思議な力を持った人たち、が8割を占めている。

 

いや、すでに8割まで超能力を持った人たちであふれているのならそれが‘普通‘の人になったのだろう。

 

そんな超能力であふれた社会を超人社会とまで言われている。

 

始まりは、中国・軽慶市(けいけいし)で発光する赤子が生まれたことを境に各地で次々と不思議な力’個性‘を持った子供が産まれ出した。

 

それにより人口8割が超能力を持つ超人になるまで次々と増えていった。

 

 

今までが普通であったものが異常に、異常であったものが普通へと。

 

 

 

超能力者が次々と増える中で超能力を使った犯罪が増えるのは必然であっただろう。

超能力を使って犯罪を犯す者、通称「敵(ヴィラン)」、が暴れる中で普通の人では逮捕できない中、ヴィランに対抗するように増えていったのは、通称「ヒーロー」。

ヒーローは政府が超能力使った犯罪者の対処をどうするかで長々と結論を出さないまままごついてる中、カッコよくヴィランを逮捕して行った者たちであるである。

ヒーローが憧れの対象になるのはもはや必然であった。

 

こうして今の現代社会を形作る社会の構造はかたまっていった。

 

 

 

「かけるくーん。そろそろお家着くよー?ふふっ、寝ちゃったか。今日はお買い物ではしゃいでたものね。」

 

飛鳥が今いるのは都会から少し外れた、緑が溢れる住宅街。

平均よりも大きめの、真新しい一軒家が彼女たちの家である。

二階建ての白塗りの清潔感あふれる外装。小さな子供が走り回れて、キャッチボールできるくらいの芝生で覆われた庭。

アンティーク長の、木目が綺麗な大きな玄関を開けて女性は家の中に入っていった。

 

「あなたー、今帰ったわ。かける君が寝ちゃったからちょっと荷物運ぶの手伝ってー。」

 

「あぁ、おかえり。飛鳥。かけるは寝ちゃったかぁ。楽しかったかな?買い物はどうだった?」

 

飛鳥の声に反応し、玄関右脇のあるリビングの扉から出てきたのは飛鳥の旦那であり、翔の父親だった。

 

名前は天野翼(あまのつばさ)。

身長は185ほど長身。

紅を思わせるような輝くような赤い、長髪。

母親と同様に、優しさがにじみ出るような笑顔が似合う優しい顔立ち。

タレ目気味ながらも、強い意志を思わせるルビーのような目。

身長が185もあるのに、そこまで広くない肩幅と、争いごとが苦手そうな風貌から頼りない印象を受けるかもしれないが、シャツをまくった腕、浮かび上がる胸板からしっかり鍛えられているのがわかる。

 

翼が飛鳥から翔を受け抱えるとリビングのソファに寝かせた。

その間に荷物を置き、飛鳥はキッチンでお茶を入れている。

一息つくために夫婦が横長のソファに仲良く座ると飛鳥がさっきの質問に答えた。

 

「買い物は楽しかったわ。かける君は貴方に似てかっこいいから何着ても似合っちゃうもの。

それより、帰りにかける君がヒーローについて聞いてきたから、僕はヒーローになる!だって。やっぱ男の子ね。いや、貴方に似たのかしら?」

飛鳥のそんな楽しそうに答える様子に一瞬見惚れながらも、翼は嬉しそうに答えた。

 

「そうかぁ!翔はヒーローになりたいのかぁ。やっぱ翔も男の子だもんなぁ。」

翼はよほど嬉しいのかソファで寝ている翔の頬をプニプニとつつく。

 

「でも、私は少し心配だなぁ。ヒーローが立派な職業ってのはわかってるけど、危険のものには変わりないもの。これでも貴方のことすごく心配しているのよ?」

いつもの笑顔が真剣なものになり、翼を真っ直ぐ見つめる。

普段から優しそうな表情が真剣な表情に変わるのを見て、翼は少しおどけたように答えた。

 

「もぉ、飛鳥は僕のことが好きすぎるからなぁー。」

そんな翼の様子に飛鳥の表情はジト目になりながらもより一層曇る。

 

「うそうそ、ごめんよ。でも君も知ってるだろう?僕の強さを。これでも、トップヒーローたちと肩を並べてるんだよ?大丈夫。怪我をしないとは言えないけど、絶対に、飛鳥を、翔を置いて行ったりはしない。僕がいつまでも守るから。だから信じて。」

そう翼は飛鳥の頬に手を置いて微笑みかけた。

 

そう。翼は今や人気な職業となっているヒーローなのである。

今やこの時代は個性を使うだけでも資格が必要になる。

それの取得を支えるのがヒーローについて教える、ヒーロー科がある学校である。

そこを卒業しヒーローの仕事についたのが翼である。

翼は、トップヒーローと言われる、個性「ワン・フォー・オール」を持つオールマイト、個性「ヘルフレイム」を持つエンデヴァーなどのように圧倒的とまでは行かないまでも、強力な個性を有しており、かつその甘いマスクで世間からの評判も良く、人気なヒーローのうちの一人である。

 

 

「...。ずるい。また、そんなこと言われたらこれ以上言えないじゃない。」

 

飛鳥は翼に手を添えられ、微笑みかけらことにより、顔を真っ赤にさせながらもそう言った。

 

本人たちは至って真面目ではあるが誰が見ても付き合いたてカップル以上に甘々な空間が出来上がっている。

 

そして翼はそんな飛鳥の表情に我慢ができなったのか顔を近づけキスをした。

飛鳥は一瞬驚いた表情を見せながらも目を閉じてキスを受け入れ始める。

そんなことを数分続けていると飛鳥は視線を感じで横を向くと、目を開けてこちらをじっと見つめている翔と目があう。

そんな翔に飛鳥は驚いて、翼から顔を離した。

 

「お父さんとお母さんまたチューしてるー。」

 

翔は慣れているのかあまり驚いた表情を見せずにそう言った。

 

「お父さんたちってなんでチューしてるのー?楽しいー?」

 

当たり前だがまだキスの意味も知らないであろう純粋な質問が翼たちにとぶ。

 

「翔、チューっていうのは好きな人同士で気持ちを確かめ合う時にするんだよ。翔は好きな子がいるか?」

翼がそう答えながら、翔がなんて答えるのかニヤニヤとしながら翔の返答を伺っている。

 

「そうなんだ!うーん、よくわかんない。でもみんな好きだよ!友達だもん!」

翔の純粋無垢な満面の笑みに翼が少し驚く。

 

「へぇそうなのかぁ。翔、好きな子がいるならちゃんと優しくなきゃダメだぞー。じゃなきゃ好きになってもらえないからなぁ。それに好きな子だけじゃなくて女の子にはみんな優しくするんだぞ。」

 

そう答えた翼に反応したのは翔ではなく飛鳥。

 

「ちょっと貴方、そんなこと言ってかける君も貴方みたいにタラシになったらどうするのよ!」

飛鳥が、可愛らしく頬を膨らませ、翼の肩を叩きながらそう言った。

 

「ご、ごめんごめん!で、でもそんな僕はタラシなわけないじゃないか!君一筋なのは君も知ってるでしょ?ずっと君しか見てなかったし。それに女性には優しくって僕は教わったからそうしているだけで...。」

翼は全く痛くもない、攻撃を食らいながらも少し焦った表情で言い返す。

 

「っ〜〜〜!恥ずかしいこと言わないで!.....貴方のそういう直球なところがずるいのよ。いつも。」

飛鳥は照れながらも嬉しそうに愚痴を漏らす。

 

翼と飛鳥がそんな言い合いを続けている中、翔も父と母の楽しそうな表情を見て自分も自然と笑顔になっていた。

 

 

 

そんなまた甘々な空間を作り出す夫婦に育てられている翔は幸せ者なんであろう。

 

 

しかし、こんな仲良し夫婦、しかも女性に対して恥ずかしげもなく頬に手を添えたり好意の言葉を言える父を見て育つ息子がどのようになるのは想像するのも難しくはない。

 

 

 

こんな何気ない日常、何気ない1日から翔の物語は始まっていく。

 

 

 

 

ヒーローとしての興味を持ち始めたのは翔が4歳に誕生日を迎える少し前の出来事の、穏やかな風の流れる、そんな昼下がりであった。

 

 

 

 

 







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幼稚園

今回でヒロインが一人でます。


今翔がいるところは、住宅街に存在する幼稚園である。

 

翔の父こと、翼はヒーローとして日々活躍しているため、日中に自宅にいることは少ない。

翔の母こと、飛鳥は専業主婦で日中は家事があるため忙しい。

それに、翼や飛鳥は翔に元気に遊んで欲しく、友達を作って欲しいと思っているため、日中は幼稚園に通わせている。

 

「かける君、あっちで砂のお家つくろー!」

 

翔はそれまで、友達の男の子たちと仲良くサッカーで遊んでいて疲れたので、花壇の脇の大きな木に背を預けなら休憩していた。

 

そこに声をかけてきたのはオレンジがかった、ロングの髪をサイドに、一つにまとめて縛っている女の子だ。

 

名前は拳藤一佳(けんどう いつか)。

身長は翔と同じくらいの100センチ前後。

子供特有の白く、きめ細やかな肌。

しっかりと筋の通った高めの鼻。

つり目がかった目はまだ子供であるため可愛らしさが残っているが、少し気の強そうであり、意志の強そうな印象を与えている。

控えめに言ってとても可愛らしい容貌であった。

 

「うん、いいよ!いつかちゃん!」

さっきまで遊んでいて疲れているであろうに、即座に笑顔を向けて返事をするその姿は父の翼の影響を少しずつ受け、紳士然としていた。

 

それから翔と一佳は砂浜で仲良く遊んでいる。

 

「かける君はそっちから腕伸ばしてー。私はこっちからやるね!」

 

彼らが今行なっているのは、なんてこともない砂で作った山に、トンネルを掘る作業。

砂場で遊ぶと言って、はじめに作るものと言ったら大抵はこれであろう。

 

二人とも両腕の裾をまくってはいるが、穴を掘るため手を伸ばしているため顔や服が所々砂で汚れていた。

 

「いつかちゃん!こっちは、もう腕が届かないよ。そっちは届きそう?」

 

そう翔が尋ねると一佳は腕を一生懸命伸ばしながら答える。

 

「ちょっとまってー!んっ〜〜!届いた!やったー!」

 

一佳が砂を崩しながら手を伸ばし、ついに砂壁を崩しもう一方の翔が作っていたトンネルと繋がった。

それがよほど嬉しかったのかトンネルの中で二人は手をつないだ。

 

「いつかちゃん、とどいたね!手、つないじゃった。ははっ。」

 

翔は純粋な笑顔で照れる様子もなくそう答える。

 

 

幼稚園児、4、5歳の男の子が女の子と遊ぶことはあるだろうが、男の子がここまで純粋に女の子と向き合うのは少し珍しい。

この年頃の男の子は好きな子にイタズラしたり、からかったりすることが多いのだろう。

とくにいつかは見た目どうり、少し?気が強い。

見た目も他の子と比べても可愛らしい表情をしているため、男の子が一佳を女の子扱いすることは少ない。

きっと照れているのだろう。

 

 

翔は父の母に対する紳士然とした態度から学び、女の子の扱いがうまい。

父から女の子に優しくするよう教育されているからだろう。

それに、父母ともに、優しめな風貌の美形なため翔も例に漏れず優しい風貌の美形に育ってきている。

翔は女の子にも優しくかっこいいため、絵本の中に出てくるような小さな王子様と言っても過言ではないだろう。

 

そんな翔が一佳に笑いかけているのを見て照れるのは仕方がないだろう。一佳もまだ女の子なんだ。

 

翔と過ごしていく中で好きになるのは当然言ってもいいだろう。

 

 

「そ、そうだね!あ、次は何して遊ぶ?あ、そうだ!かける君の個性見せてー!」

 

一佳照れた様子でそう答えた。

 

「んー。まだお父さんからせいぎょできないから使っちゃダメーって言われたから...。」

 

翔はすごく申し訳なさそうにそう言った。

かけるにとっては本当は一佳に自分の個性を見せたかったのだろう。

しかし、翔は父に言われたため見せることができなかった。

 

一佳はかけるの個性を見れなく残念がっているが、翔の申し訳なさそうな表情を見て話を変えた。

 

「じゃぁどんな個性か教えてよ!私の個性はね、手がおっきくなる個性なの!」

 

一佳はそう言って、左手を大きくしながらそう答えた。

 

 

一佳の個性は「大拳(たいけん)」

拳を大きくする個性。

 

 

翔は自分の個性に誇りを持っているのか、嬉しそうに自分の個性について答える。

「僕の個性はねー、お父さんとお母さんと同じなんだ!

僕はまだうまく使えないけどドラゴンになるんだよー!」

 

そう、翔の個性は父と母と同じ個性である。

 

翔の個性「竜化(りゅうか)」とは分類すると、変身系である。

文字通りドラゴンになることができる個性である。

翔が体の所々に銀色の小さな鱗が生えているのはまだ個性がうまく制御できていないためである。

これがうまく制御できるようになると見た目が人と変わらない姿を維持することができる。

人の姿をうまく維持できないと、竜の鱗は鋭く怪我や、服の破損につながるため翔は生傷が絶えず、服の破損が多い。

しかし初めて個性が発動した時よりはマシになってきている。

 

発動したての頃は制御ができなく服が破損しないように基本家の中は全裸で過ごしていた。

 

前、かけるたちが買い物しに行ってたのは翔が服を破きまくったための補充である。

 

竜化の個性にに伴い副作用として身体強化に補正がかかるので翔の個性の特訓は力加減から始まる。

 

竜化の真価が発揮するのはかけるにはまだまだ先のことになるが、竜化の真価を発揮できることができたら、とても強力な個性となる。

なんといってもドラゴンである。

 

ファンタジーの代名詞とまで言われ、最強の生物といわれているあのドラゴンである。

 

翼を動かすだけで木を吹き飛ばし、前足を薙ぎ払うだけで当たった生物は、簡単に絶命する。

 

それだけ強力ゆえに、翔の父は完全制御ができるのでトップヒーローと肩を並べられるのだが。

 

協力がゆえに制御を誤ると簡単に人を傷つけることができるためあの優しそうな翼でさえ、個性の訓練の時は真剣に取り組んでいる。

 

 

「すごーい!かっこいー!かける君のお父さんのドラゴンかっこいいもんね!」

翔がそう答えると一佳は目をキラキラさせながら興奮しながらも、声を抑えていた。

 

基本的にヒーローは職務中以外で自分の身分を明かすことは少ない。

完全隠蔽とまではいかないが個人情報を公開することはほぼない。あるとすればテレビ出演を頻繁にしており、アイドル系でヒーロー活動を行うくらいであろう。

ヒーローは犯罪者を直接逮捕するゆえに、犯人に怨みを買うことは少なくない。

ヒーローとて家族がいる。

家族を危険に晒すわけにはいけない。

 

しかし一佳と仲良くなる過程で翔が口を滑らせてしまったのだが、一佳にお願いして秘密にしてもらっている。

 

 

「こらー!一佳ちゃん!個性使っちゃダメでしょー!」

 

そこで現れたのは幼稚園の保育士の女性。

子供の4、5歳のこの時期は個性が発揮する時期である。個性が発揮すると大抵の場合は暴走して周りに被害が出る。

そして、子供は制御が稚拙なため、個性の使用は禁止されているのではあるが、子供に個性の使用を禁止しても簡単に話を聞くことは難しいだろう。

なんていったって個性と言ったらヒーローになれる可能性であるのだから、使うなという方が難しい。

 

それ故に、保育士は子供の世話以上に個性の使用に敏感になっている。

子供が意図せずとも個性によっては簡単に怪我をしてしまうのだから。

 

「先生来ちゃった!」

 

一佳慌てて個性を止めて手を元の大きさに戻した。

 

「まったくもう。一佳ちゃん、個性は使っちゃダメでしょ?」

先生は怒りながらも、子供が個性を使用するのはよくあるのだろう、慣れた感じで叱っていた。

 

「はーい。ごめんなさーい。」

 

そんな先生と一佳の会話を聞きながら翔は苦笑いを浮かべていた。

 

先生はそんな時折見せる年に似合わない表情におかしくなり、笑ってしまったが、光に反射して綺麗に輝く銀髪を撫でながら注意した。

 

「ふふっ。かける君も個性を使ったらダメって言わなきゃダメでしょ。」

 

「だって、一佳ちゃん楽しそうで可愛かったら注意するの忘れちゃった!」

翔はどこまでいっても純粋である。

 

そのセリフを聞いて先生は翔君の将来を少しばかり心配するが、自分の子供の頃にこんなこと言われたことなかったと思い出し、少しばかり、一佳を羨ましがっていた。

 

そんな一佳はそのセリフを聞いて顔を赤らめている。

 

 

それから翔はお昼を過ぎるまで一佳と遊び、他のことも交流しながら過ごしていく。

 

 

 

 

 




次回から一気に飛びます。
具体的には中学生3年の秋頃まで



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中学生 三年 秋 ①

作者の願望がすごいですが、主人公をモテモテにしちゃいました。すみません。反省はしません。


・・・・コンコン。

 

「失礼します。影山先生に用があって来ました。」

彼、天野翔が今いるのは、彼が通う中学校の職員室である。

彼に答えたのは、担任の先生である、影山日陰(かげやまひかげ)先生。26歳独身、絶賛彼氏募集中の人だ。

真っ黒な艶のある、肩のあたりで切りそろえてある癖のない髪。

グラマラスと言うほどではないが、しっかりとメリハリがあり、スレンダーな体躯。

鍛えてあるのか、女性特有の柔らかさはあまり見えないが、好きな人は好きであろうたるみが全くない、黒のリクルートスートから覗く太もも。

彼女の黒の髪に驚くほどに映える、真っ白の肌。

鼻筋も通っており、目元はつり目であり、きつい印象を与えるが、素材が良いのだろう、驚くほどに美人である。

 

「来たか、天野。お前の進路調査書を見たが、本気か?」

 

本当に美人ではあるのだが、悲しきかな、それを台無しにするほどの欠点を抱えている。

女性であるはずが、男顔負けの堂々とした口調、疲れが溜まってるのか眉間にシワがよっており、美人は怒ると怖いって言うが、不機嫌そうな表情により、あまり男が寄り付かない。

寄り付いたとしても、付き合って、数日で破局していたのであろう。

酒癖が酷いのである。

そのせいもあってか、26歳にもかかわらず、まだ女になったことがない。

 

 

「はい。もちろんですよ。」

天野が微笑みながらそう答えた。

 

あれから10年。天野も成長していた。

身長は、中学生にしては高く180ほど。髪も少し伸びて、男にしては少し長めの、綺麗な銀髪。

優しめな風貌であり、笑顔でいることが多く、女性に対しての扱いから陰では王子と呼ばれてはいるが本人のあずかり知らぬところである。

 

「そうか。まぁお前の成績なら安全圏だし、個性も強力だからな。受かるとは思うが、まさかお前がなぁ。争いごとが、苦手そうだし、その見た目だ。アイドルでもやるのかと思ったが。」

先生にしては珍しく少しおどけた風に言った。

その証拠に、隣にいる彼女の同僚の女性が少し驚いた風な表情をしている。

日陰は、翔とは個人的な付き合いはないが、ちょくちょくこのように翔を呼び出して話をしていたため、少しばかり気安いのだろう。

 

「僕も男ですからね。やっぱりヒーローに憧れてはいますね。それに、父の背中を見て来た身としては自分も父の隣に立ちたいと思ってます。争いごとは好きではないですけど、個性のせいですかね?戦うことに関しては抵抗はないですね。アイドルですか?それなら先生もアイドルできるくらい、美人で可愛いと思いますけど。」

翔が言っていることは本当のことなのであろう。

父の話をするときの目は普段の大人っぽい雰囲気から、少年のような瞳で、キラキラしていた。その表情に、隣の教員は口をぽかんと開けて眺めていた。

 

日陰も翔に褒められ慣れてるのであろう、顔に大きな変化はないが、少し頬が緩んでいた。

「ん、んんっ!まぁ、わかった。じゃぁ、そこで良いんだな?雄英高校で。」

 

「はい。」

 

「わかった。もう戻って良いぞ。」

 

それに翔は挨拶をして扉から出て行った。

 

「日陰ちゃん、ずいぶん楽しそうだったね?めっずらしぃー!あの日陰ちゃんがねぇ。」

隣の話を聞いていた女性の教員がニヤニヤしながら日陰をいじってきた。

 

「う、うるさい!別に楽しくない。ただの進路相談だ。

それに日陰ちゃんと言うんじゃない!」

日陰はさっきとは違い、頬を赤くしながらそう答えた。

 

彼女と日陰は大学時代から友好関係がある。

それによって日陰をよく知っているのであろう。

それによって、日陰の男っ気のなさに呆れてはいたがまさか学生相手にあんな表情したことにすごく驚いたのだ。

 

「でも、天野くんを呼び出す回数多いんじゃない?問題児ってわけじゃないのに、なんでかなぁ?公私混同はだめだぞ〜?」

彼女はまだ日陰をいじる。

 

日陰も図星であったのであろう。言葉に詰まりながら、答えた。

「...。な、何にもない!いいから仕事をしろ!」

 

彼女としては友人の珍しい春に喜ぶべきか、相手が生徒であったことに対して哀れむべきか、非常に悩むところである。

 

 

 

翔が呼び出されたのは放課後であったため、校舎の中に生徒は少なく、校庭から野球部の元気な声が聞こえてくる。

翔が教室にカバンを取りに戻ると、翔の机の隣に、一人の少女が佇んでいた。

 

彼女は拳藤一佳。翔の幼稚園の頃からの幼馴染である。

あれから身長も伸び、今や166ほどである。

髪型は昔と変わらずサイドに一つにまとめてはいるが、髪は10センチほど伸びており、髪を解いたら腰より少し上ほどである。

体の方も驚くべき成長を遂げた。本当に中学生なのかと、思うほどに丸みを帯びており、制服を押し上げている双丘、女性らしさがにじみ出ている引き締まったくびれ、鍛えているのであろうピチピチの太もも。

 

翔も男であるため、一瞬胸に目が行きそうになるが、彼はあれから成長を遂げた紳士である。

そのようなことはしない。

 

「翔!遅いよ!ほら、荷物持って早く帰ろうよ。」

少し不機嫌な表情を浮かべながらそう言った。

 

それもそうであろう、自分の好きな男が女と会っていたのだから。

一佳は知っているのだ。日陰が翔を見ていた目を。

普通は気がつかないくらい変化がないのであろうが、そこはやはり、恋する乙女の感なのか、一佳は日陰が翔を狙っているのだと思っている。

日陰としては、日々の疲れを癒すため、役得と思うくらいで翔に絡んでいるのである。まぁ日陰としては翔に迫られたら断れないと本能的には自覚しているのではあるが。

 

それはともかく、一佳この10年の間で自分の恋心に気がついた。

気がついたからと言って彼らの関係が変わることはないのだが。

 

翔としても、鈍感なわけではない。

なので先生がなぜ自分を呼び出すのか、一佳が不機嫌なのか気がついている。

しかし、この10年で染み付いたのであろう。

翔は女性には優しくするし褒める。そう教わってきたのでそれを止めることはない。

 

一佳もそれをわかっているため不機嫌な表情で済ませている。

 

翔は苦笑しながらも一佳に答えた。

「ごめんごめん。そんな不機嫌そうな表情するなよ。可愛顔が台無しだよ。」

 

翔の褒め言葉に慣れている一佳は照れながらもそれを流した。

 

 

 

 



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中学生 三年 秋 ②

続きです。



翔が一佳からカバンを受け取ると、二人して仲良く帰路につく。

 

「そういえば翔は高校どこにした?やっぱり雄英高校?」

秋も深くなる、この時期に綺麗な紅葉が咲き誇っている。

そんな並木道を歩いていると一佳は翔にそう尋ねた。

 

「そうだよ。一佳も雄英でしょ?一佳は偏差値も安全圏にあったよね?」

 

今までの話に出てきた高校、雄英高校とはヒーロー科がある、高校である。

しかし雄英高校は、今までオールマイトを始め名だたるヒーローを輩出してきただけあって、他にもヒーロー科のある高校があるにもかかわらず、倍率が300を超えて、偏差値75を超えており、日本一と言われる某国立大も真っ青な学校である。

全11組あり、A、B組がヒーロ科、C、D、E組が普通科、F、G、H組がサポート科、I、J、K組が経営科と分かれている。

A、Bは計40名の募集で内4名が推薦であるため、36の枠を何千人と争うのである。

入学試験は筆記と実技に分かれており、実技ではヒーローとしての素質、個性の能力を見ている。

 

一佳はそれに少し不安そうに答えた。

「筆記は大丈夫そうだけど、実技の方が少し心配かな。」

 

翔はそんな一佳の表情に微笑みかけながら話しかける。

「大丈夫だよ、一佳だって一緒に頑張ってきたでしょ?一緒に訓練だってしてきたし。」

 

一佳は翔とともに、雄英に受かるために個性の練習を重ねてきた。

翔は彼の父親、天野翼から個性の制御を学んでおり、翼のつてで彼の同僚の息子と訓練するなど実戦を学んでいる。

まぁ、同僚の息子は嫌々と不機嫌な様子で訓練しているが。

 

それの他に翔は、中学二年生の頃に出会った彼女に一佳とともに雄英高校について色々と伺っており筆記、実技共に対策はしている。

 

「まぁ、そうだけどさ。」

一佳の不安が消えることはない。

一佳にとって最も不安なのは翔と一緒の高校にいけなくなることへの恐怖なのだ。一佳とて、ヒーローに強い憧れを抱いている。

しかし、一佳にとってヒーローとは、翔がいたからヒーローに強い憧れを抱いたのだ。

翔は、初めてヒーローを志した日から、ちょくちょく幼稚園で仲が良い、一佳にヒーローについて、自分の父親のかっこいいとこについて語り続けた。

そんな一佳が憧れたのは、彼が、翔が憧れるヒーローという職業にである。

 

そんな一佳の表情を見かねたのか、携帯を取り出し、ある人物へメールを送った。

 

「一佳。明日は土曜日だしさ、一緒に運動しようか!」

翔は一佳を安心させるように微笑みながら、そういった。

 

「え?運動?」

一佳は翔のそんな唐突なセリフに目を丸くした。

 

「そうそう。一佳が何に不安なのかわからないけどさ、今まで一緒に頑張ってきたでしょ?なら大丈夫。僕が保証するよ。でも、不安ならさ、運動して気分転換しようよ。」

翔は鈍感ではない。一佳が何を不安がっているかはぼんやりとはわかる。一佳は中学に入ってから翔にはバレないように、こっそりと翔の母の飛鳥に、翔がどこの高校に行きたがっているのか、聞いていたのだ。翔がどこに行こうとも付いていけるようにと。

まぁ雄英高校と聞いて小学校まではあまり力を入れてこなかった勉強に本気で取り組んで、雄英高校の模試判定Aまでこぎつけたのだが。

その場面を翔は偶然にも目撃して、そのあまりの健気さに、可愛らしさに、悶えていたようだったが。

 

まぁそれでも、一佳は勉強より運動が大好きなので、翔は運動に誘ったのだ。

「ありがと、翔。私だって頑張ってきたし、全力出すまでだよね!!」

一佳は満面の笑みで、翔の前に躍り出て、両腕を後ろに組み、体お前に倒しながらそう言った。

 

 

 

一佳とは同じ幼稚園なだけあってご近所さんであったため、このように登下校を共にしていた。

一佳と翔は家の分かれ道で挨拶をして分かれた。

 

翔は、あれから10年が経つ家に着く。新築同様だった家は少し廃れてしまってはいるが、彼の母の飛鳥が手入れを欠かさないためか、綺麗な白色を保っており、庭の手入れも行き届いているため、とても綺麗であった。

 

「お兄ちゃん!おかえりーー!」

 

彼が木目の綺麗な玄関を開けると、人影が飛び込んできた。

彼は胸に飛び込んできた人を慣れた手つきで抱きかかえた。

 

飛び込んできたのは、10歳そこそこの綺麗な金髪をなびかせた女の子だ。

彼の妹である、天野風香(あまのふうか)である。

彼女は翔が5歳の時に生まれた女の子だ。

まだ成長期がきていないのかスレンダーな体。

そして遺伝とも言える、穏やかな風貌をうかがわせる筋の通った鼻に、垂れた目尻と透き通るような綺麗な金色の瞳。

母に似たのか、彼女は母の飛鳥の子供の頃によく似ていると言われている。

彼女はきっと飛鳥に似て女性らしい体、マリア様と言ってもいいくらい穏やかな女性になると、翔は信じている。

こんな可愛らしい子に、反抗期が来て嫌いなど言われた日には父、息子共々泣きわめくであろう。

翔にとって大切な妹であるため、シスコンと認めている。

翔は、妹が彼氏を連れて来た日には父と共謀して危ない橋を渡るくらいの覚悟である。

 

「ただいま、風香。お兄ちゃんは制服を着替えてくるから、リビングで少し待っててね。」

翔はそう微笑みかけると風香を下ろし、彼の部屋がある二階の階段へと向かい登っていった。

 

余談ではあるが、翔と風香の部屋は二階にあり隣部屋である。そして飛鳥と翼の部屋は一階の一室だ。なぜ離れているのかは、ある程度大人な人なら分かるであろう。

飛鳥と翼は付き合ってからも結婚してからもラブラブである。それも、子供が二人だけなのが不思議なくらいである。

そんなラブラブな夫婦が夜になると子供にとってはとても刺激的であり、風香の教育に悪いことがほぼ毎晩起こってしまうので部屋が分かれているのである。

流石に今現在まで夫婦が仲良しなのは翔にとって驚きであったが。

風香が生まれ、部屋が離れるまでは翔は一緒の部屋にいた。翔は見ての通り、周りよりも精神が若干大人びている。

しかし5歳そこそこで大人なことを理解しているわけではないが、無駄に記憶力がいいため、15歳になる今まで覚えていた。

翔は親の背中を見て紳士となった。

翔は紳士である。故に女の子に恥をかかせはしないだろう。

たとえベッドであろうとも。初めてであろうとも。やり方は知っているのだ。

 

 

 

風香にとって兄とは特別である。

いつでも優しく微笑みかけてくれ、楽しそうに彼女の話を聞いてくれ、可愛いと褒めてくれる。

彼女の周りにいるような男とは天と地ほどの差があるのだ。家族の贔屓目を抜いてもそうである。顔は王子様と言ってもいいくらいの美形、女性に紳士的で、お姫様のように扱ってくれるその態度。

彼女の周りにこんな小学生はいない。いや、彼女の周りだけでなく日本中を探してもほとんど見つからないだろう。

そんな彼女が、兄以外の異性に興味を持たないのは当然であった。

 

「また一佳ねぇの匂いがする。」

風香は兄が階段を登りきるのを確認すると、少しばかり口を歪めてこう言った。

個性の副作用であるのか、嗅覚が鋭い風香は一佳の香りを嗅ぎ取った。

 

「まぁ、個性婚があったくらいだし、近親婚もあるよね?なんて言ったって内の家系はドラゴンに変身できる強力な個性だし、血を薄めたくないもんね。」

兄の目をもってしても家族フィルターがかかっていたのかそんな風香の性質に気がつけなかった。

いや、あのリトル飛鳥の風貌の娘がこんな危ない思考を持つなんて想像できなかったのであろう。

 

「一佳ねぇ、2番目だったら認めてあげないこともないよ。一番は私だけどね。土下座したら認めようかな♪」

ドSである。ここまで表裏一体、内面と外面が合わないのは珍しいのではないか。

 

 

その頃二階の自分の部屋へと入った翔は、着替えてると急に強烈な悪寒にさらされた。

本能ゆえか、今まで鍛えられた個性ゆえか、翔は敏感に反応したが彼が風香の本性に気がつくまでその正体に気がつくことはないであろう。

 

 




風香たん怖過ぎ、((((;゚Д゚)))))))


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中学生 三年 秋 ③

翔が部屋着に着替えて階段を降り、リビングの扉を開けるとそこにはソファーの端っこにお人形さんのようにちょぴっと座り、こちらを見て笑顔でいる妹の風香がいた。

風香にとって彼が帰宅してから眠るまでが彼女の女の見せ所、アピールタイムなのである。

 

風香が生まれたのは翔が5歳のことである。

それから、翔が小学校にあがると、放課後は友達とそこそこ話をし、すぐに帰宅していた。

彼は家事に忙しい母の飛鳥に変わり、放課後は彼が風香の面倒を見て来たのである。風香が大きくなり、小学校に上がってからは、風香が帰宅すると、帰って来た兄とリビングでお話をするのが日課であった。

 

 

 

「お待たせ。風香。今日は何のお話をしようか。」

翔は風香の隣に座ると風香を抱えて膝に乗せた。

これは翔が、風香が小さい頃に良くやっていたのだが、風香が大きくなってやらなくなると風香が不機嫌そうな顔するため今まで続けて来たのだ。

 

「そういえば母さんは?」

翔が母の不在に気がつき風香に尋ねた。

 

「買い物に行ってて今はいないよー。それより、今日なんか男の子がちょっかいかけて来たの。」

母の話題もそこそこに風香がそう言ってきた。

彼女は一佳の匂いを嗅ぎ取り不機嫌であったのである。

 

「そうか、きっとその子は風香のことが好きなんじゃないかな?好きな子にはちょっかいかけるのが男の子だと思うし。」

翔が少し眉を歪めながらそう言った。かけるにとって妹は大切なのだ。男に接点を与えたくないため、ここは男子が風香のことを嫌っているから風香も近ずいちゃダメだよ。といえば純粋な風香はそうするだろう、と翔は思っている。しかし、彼もそんな器の小さなことをしたくないため、そうは言わなかった。

 

「私が好きなのは、お兄ちゃんだけだし、迷惑だなぁー。」

風香は翔の眉毛が下がるのを見て少し満足したのか、そう言った。

 

「僕も風香が大好きだよ。」

翔は鈍くはないが今まで同じように接していたため、兄として好かれていると思っているので自分も同じように、好きだと返した。

風香は、このセリフに胸を高鳴らせて、やはり好きだと、再確認した。ドSであり、近親婚などと考えてはいるが、やはりまだ10歳、純粋なのである。

風香は顔を赤らめながらもその話を切り、次の話題へ移っていった。

 

 

 

彼らの父と母が帰ってくると、母が夕食の準備をしているうちに彼は、父の翼と話をしていた。

「やはり、高校は雄英高校のにするのか?」

あれから10年が経ち、彼は35歳となったものの、鍛えられた体は衰えることなく、顔も昔とあまり変わらず若々しいままである。

 

「うん。そうだよ。やっぱ父さんと母さんの母校だし、そこに行きたくって。それに、ねじれ先輩が行ってる高校だしね。」

彼のそんなセリフに嬉しくなったのか、翼は嬉しそうにそうかそうかと頷いた。

彼の父と母の出会いは、雄英高校である。

同じような個性なためか、すぐに仲良くなり、そのまま、付き合うことに。

そして高校卒業と同時に、彼らは籍を入れた。

翼はそのままプロヒーローに、飛鳥は専業主婦へと。

その2年後の20歳の時に翔が生まれる。

 

翼は気にはしていないが、台所で聞いてた飛鳥はねじれ先輩と言われた時にやはりか、と思った。

小さい頃から危惧していた通り、彼の父に似て、随分と女性の扱いがうまくなり、とてもモテるようになってしまった。

ねじれと翔が仲良くなってねじれがうちへ遊びにきた時に、感じた限りでは、限りなく確信に近い脈を感じていた。

飛鳥としては、自分も高校の時に翼のモテように苦労したため、彼女が応援する、一佳に頑張って欲しがっている。

一佳に聞いた話では、先生が翔に気があるんじゃないかと聞いたときは、流石に呆れたが。

それに飛鳥はふと思う時がある。風香が今もそうだが、翔がねじれ先輩と言った時にしていた目を見て、まさかと思ったのだ。

流石にそれはないなと思ったが、女の感故か、その微笑みの向こうに何かがあると感じ取っていた。

彼女は、好きならばしょうがないと既に諦めの感情を持っているが、翔がいつか、刺されるのではないか?と、ヒーロー活動での怪我よりそっちの方が多そうだ。と少し、笑ってしまった。

 

それから、家族団欒で食事を楽しみ日が沈んでいった。

 

 

 

翔の休日の朝の日課は、5時に起床しての1時間のランニングである。

彼の個性「竜化」はとても強力な個性だが、デメリットがないわけではない。

彼の個性のデメリットは個性の使用時の体力の消耗の激しさである。

彼の竜化の特徴として、三段階のレベルがある。

一つ目は通常時の人間形態。これは普段通りであるため、体力の消耗はない。

 

二つ目は、彼が10歳の時にできるようになった、部分竜化。

これは、変化しているだけでも、体力を使ってしまう。そこそこの激しさの戦闘では、1時間がリミットである。それからは休憩を20分は挟まないと変化することすらできない。

これでもかなり時間が伸びている。

はじめの頃は1分変化しているだけでも、バテていたのだ。

体の変化は、体を銀の鱗が覆い隠し、150センチほどの尻尾が生え、瞳が爬虫類のようになり、全体的により筋肉質になり身長が2メートルほどになる。

そして背中の肩甲骨あたりから生える、一対の銀色に輝く大きな翼、直径150センチほどもある。

 

 

そして三つ目は、竜の完全体である。

これは文字通り竜となる。

最大で全長7メートルくらいで、全身銀の鱗で覆われており、完全なドラゴン形態となるのだ。

しかしこれのデメリットもひどく、時間にしておよそ10分。間に20分ほど挟み、次に変化できるのは、第二形態のみ。

いや、無理をすれば第三形態まではいけるだろうが、第三形態になると疲労が酷いため、彼はまだ一日に1回のみと決めている。

 

翔は体力を増やすために毎日1時間は朝に走っているのだ。

 

彼がランニングから帰ってくると、向かう先は庭である。

そこそこの広さのため、彼はそこで父の翼と組手を行なっているのだ。

翼と向かい合った翔は精神を集中させる。

体のうちにある力を感じ取り、全身に行き渡らせる。

感覚としては心臓にある熱を動脈を通し、全身に行き渡らせるような感覚だ。

通常の人間形態のみの時でも、力をより引き出すためである。

通常時では他の人より少し力が強く、頑丈であるくらいではあるが、訓練のため力を引き出した。

彼はこれを5秒ほどかかっているが、彼の父はコンマ5秒ほどでできてしまう。さすがプロである。

二人とも準備を終えると、はじめに動いたのは、翔だ。即座に足に力を込め3メートルほどあった間合いを一瞬にして詰めた。

翔が翼の顎にめがけて拳を振るうが、翼が大きくバックステップをして躱した。

 

「かける、普通に急所狙ってるじゃん!」

翼は、訓練ではあるが躊躇わずに狙うその姿勢に冷や汗をかいた。

いや、そのように教えたのは翼ではあるが。

 

そこからは、翼が動いた。翔と目があっていたのを利用し、目線で誘導して、その隙に一気に翔の左脇に周り込み、右足を大きく動かし、回し蹴りを放つ。

翔は、目線で誘導されたことに、一瞬反省しながらも、とっさに腕をクロスさせてガードした。

 

「父さんもすっごい重いの放ってくるね。」

翔は、腕をぷらぷらと振り、より一層笑みを深くしながらそう答えた。

それからは激しい攻防戦である。

基本的に、技量差ゆえに、父が攻撃に回り、翔に反撃の隙を与えないのではあるが、息子の鋭い一撃が飛んでくることがあるため、彼の訓練としても十分に活用できている。

 

それから、30分ほどして彼の母の飛鳥に朝食に呼ばれるまで組手は続いた。

ちなみにこの時、風香は二階の窓から身を隠しながら兄の勇姿をビデオに収めていた。

この風香に気がつかない兄と父ではあるが、戦闘中であり組手をしていたせいというのもあったが、それだけでなく、それだけ風香は気配を消すのがうまかったのであろう。

なんていっても、兄の盗撮歴3年である。

貫禄が違うのである。




風香さん。なんてこったい。


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中学生 三年 秋 ④

ヒロイン二人目登場!


朝食を終え翔は汗をシャワーで流し、朝に着た服とは別に運動用の服を着た。

昨日に、一佳に言った運動についてである。

彼はメールである人物に今から向かうことを伝えて、家を出た。

「じゃぁ、出かけてくるねー!行ってきまーす!」

 

彼が家を出て、木々の紅葉を見て秋を感じ、しばらく歩いていると交差点についた。

彼が交差点で待ってると、信号の向こうから一佳が走ってきた。

昨日のうちに今日の待合場所と時間を決めていたのだ。

 

「おはよう!翔!」

元気に挨拶をする一佳に対し、翔は普通に返した。

 

「おはよう、一佳。今日も髪型が似合ってるね、可愛いよ。」

紳士である彼が褒め忘れるなんてことはない。

一佳は毎度のことながらも照れてはいるが、二人して歩き出した。

彼らが向かっていたのは大きめの公園である。

 

 

 

 

 

ーーーートン。

「あっ、ごめんなさい!ぼ、僕急いでいるので!」

翔とすれ違いざまにぶつかってしまった緑の天然パーマの少年は、急いでいるのか謝まると直ぐに走って行ってしまった。

 

「あの子、おっきなゴミ袋抱えてたね。ゴミ掃除でもしてるのかな?」

一佳が不思議そうにそう言うと、翔も同じく同意した。

 

それから二人は、そのことを気にすることはなくまた公園へ向けて歩き出す。

 

これが彼らの初めての出逢いである。

 

まだ彼らの物語は交差しない。

 

彼らの物語が始まるのはまだ当分先である。

 

 

 

 

 

 

翔たちが公園に着き、中の方へ入って行くとそこには、

カールがかっている、薄青色のロング髪の女の子がベンチに座って待っていた。

彼女の名前は波動ねじれ(はどうねじれ)。

身長は164前後。一佳と同じくらいのスタイルであり、彼女のジャージを押し上げる立派な双丘。

日に焼けたことがないのかと疑うほどのきめ細やかな白い肌。

鍛えられたくびれに健康的に足。

そして、すっと線の通った鼻筋ではあるが、中学生と言っても良いくらい、幼い顔立ちをしている。

そして特徴的なのが彼女の口調である。

 

「あ、かけるくーん!いつかちゃーん!ここだよ〜。」

とても幼いのである。

体は十分に育ってはいるが、顔と心は幼いのである。

 

彼女は、翔が中学二年生の時に出会った雄英に通う先輩だ。今現在雄英高校の2年生であり、当時は1年生であった。

出会ったのはこの公園。

彼がジョギングをしている最中に休憩のために立ち寄ったのがこの公園だった。

そこで、同じく走ってきたのであろう、ジャージ姿のねじれと翔は出会った。

その時に、ねじれがかっこいい男の子が走ってると思って翔に話しかけたのが始まりではあったが、

ねじれは彼の女性の扱いがとても紳士的なその姿勢に興味をより一層持ち、翔はねじれが雄英高校の生徒だということを知り、下心ゆえに仲良くなった。

 

ねじれは週一の土曜日に、走っていることを知ってそれからは土曜日は彼女と話すことが多くなった。

 

「ねじれ先輩、お待たせしました。」

翔と、一佳がそう挨拶した。

 

「うぅー、逢いたかったよ〜。かけるくーん!いつかちゃーん!。ねぇ、ねぇー、それより、私のことはねじれちゃんって呼んでって言ってるでしょー!」

ねじれが翔にに抱きつき、それを見て一佳が少し不機嫌にはなったものの、そのまま見続けた。

「僕も逢いたかったですよ。ねじれちゃん。」

そう翔は微笑み返す。

彼は気遣いができる男である。このようなリップサービスなど朝飯前である。

 

昨日に一佳に言った通りに、ねじれに一佳の組手の相手をしてもらうのである。

 

彼らは広い芝生へと移動して、一佳とねじれは向かい合った。

 

そして、互いに気を沈め、精神を集中させる。

ねじれはあんな様子ではあるが、バリバリの武闘派である。

彼女は雄英でビック3の一人と言われるほどの腕前である。

 

はじめに動いたのは一佳であった。

軽く左腕で、ジャブをして、それを交わした隙に、一佳は右腕を個性により大きくして追い討ちをかける。

ねじれはそれを予知したかのごとく綺麗にしゃがんでかわし、足払いをかけた。

一佳はかわされたことに動じず、バックステップすることによりそれを回避する。

 

「いつかちゃん、動きがはやくなったね〜。うんうん!」

 

彼女としては、度々訓練に付き合ってきた者として嬉しいのであろう。さっきまでの真剣そうな表情とは一変し、彼女特有の幼い口調とともにニコニコと笑っている。

 

彼女はビック3と言われるほどの腕前だ。それゆえに、彼女は個性を使わずに組手に挑んでいる。

ビック3とは、雄英の中で誰が一番強いかという話題が上がった時に、いつ上がるメンバーが三人いるためそう呼ばれるようになった。

 

そもそも彼女の個性はとても強力である。

彼女の個性は、自身の活力をエネルギーに還元しそれを衝撃として打ち込む。その威力は大型ヴィランを一撃でのす程である。そのため、彼女自身は威力は高いが、調整が難しく、それを課題とはしているのだが、人に使うには、中学生相手には危険すぎる。

 

一佳は手が大きくなる。という個性ではいるものの、正直ヒーローとしてやっていけるのかと疑問にはなるくらいの個性である。

しかし、彼女のヒーローへの憧れゆえか、翔とそばにいたいがゆえか、翔の父に頼み込み、度々訓練に参加しては、格闘技の技術を伸ばしている。

正直、翔は竜の力により身体能力、反射神経によるゴリ押しが多いため、技量が高いわけではない。

それに比べ、一佳は格闘技しか後がないためか、メキメキと力をつけていった。

技量だけなら高校卒業する頃には技量では翼に並ぶのではないかと言われている。

翔としても幼馴染が頑張ってる姿が嬉しく、強なっていく姿に興奮していた。

 

 

それからは、一佳が攻撃し、ねじれが交わして反撃を繰り返していく。

 

それが30分ほどして組手は終了した。

 

「はぁ、はぁ、っ。」

一佳が息を切らしながら芝生に横たわっており、翔がそんな彼女にタオルケットとペットボトルの水を渡した。

 

一方でねじれの方は、多少息を乱してはいるものの、まだまだ余裕がありそうである。

さすが雄英高校のヒーローの卵である。

「かーけーるーくーん。えへへぇ。どうだった?私の動きー。」

何がそこまで嬉しいのか、満面の笑みで、翔の腕を胸に押し当てながら話しかけてきた。

 

「前より速くなってますね。目で追うのがやっとですよ。」

翔は鈍感ではない。ゆえにこんな露骨なアピールで気がつかないわけがない。しかし、かけるにとってねじれは嫌いな相手ではないため役得と思い受け入れていた。

 

人間時、それも、力を引き出さない状態だとさっきの攻防は目で追うのがやっとである。

 

 

それを聞いたねじれはより一層楽しそうに微笑んでいた。

 

 

ねじれにとって翔とはなんであろうか。

そう聞かれたら彼女は、きっとこう答えるであろう。

気になる男の子。

彼女は見て分かる通り、精神が少し幼い。それにより、自分がかけるに抱いている感情を正確に理解していない。

なんとなく、好き、好きかも?くらいである。

彼女がこのような感情を抱いたことがないため戸惑いも多いが、女の本能ゆえか、自分の武器となる箇所を正確に理解し使っている。

彼女は本能で生きるタイプなのであろう。自分のやっていることを正確に理解はしてないが感情的には正しいのかもしれない。

 

 

 

そこから一佳が息を整えると、世間話もそこそこに会話を切り上げ、雄英高校の入試について話を始めた。

「ねぇねぇ、えっとねー、筆記の方は前に行ったからいいかもだけど、実技の方はねー、んーん、言っていいのかぁー?まぁいいや。

ヴィランに見立てたロボットを相手にした形式で評価するんだよー。」

ねじれの話によると、各ブロック、半径500メートルほどのブロックへ数百人ごとに分けて試験をする。

そのブロックでは、1ポイントから3ポイントまでの3種類のヴィラン型ロボットがおり、それを倒した者がポイントを獲得し、それの合計で競うものだ。

しかし、例外がある。それは数十メートル級の巨大なヴィランロボットがおり、それは0ポイントとポイントがない。

 

ねじれの予想ではあるが、自分の敵わないヴィランに対してどのように対処するのかを、ヒーローの資質を見ていると推測した。

 

あと、他にもポイントの取得方法があるらしいのだが、流石にそれ以上はずるいと判断したねじれが口を閉じた。

ロボットのことまでは各年の受験者が何千人もいるためある程度はネットに載っているから分かる情報であるからだ。

 

翔は、推測している。

実技は、ヒーローとしての戦闘力だけを見ているのだろうか?

さっきねじれが言ったように、0ポイントのヴィランと対峙した時の対処を評価すると推測したように、戦闘力だけではなくヒーローとしての総合力を見ているのではないかと考えた。

ヒーローの主な仕事はヴィラン逮捕のための戦闘、災害時にその力での救済活動が主な仕事となる。

 

なら1から3ポイントのヴィランとの戦闘でポイントを得るように、救済活動、もしくは援護行為でポイントが入るのではないか?と考えた。

しかしこれは、ねじれが言ったように本当に隠しポイントがある場合ではあるが。

 

ここまで考えていると、ねじれがこのあと用事があるとのことで解散となった。

「じゃぁ、かけるくんに、いつかちゃん!またねー!」

そう言ってねじれは大きく手を振り、走っていった。

 

翔は一佳と帰りながら空を見上げる。

雲ひとつない晴天であり、なんとなくだが、

こんな日がずっと続くと良いのにと少ししんみりと願った。

 

それからは毎日を同じように過ごしていく。

学校へ行き、訓練をし、を繰り返して過ごしていく。

 

 

そして時は過ぎてゆく。秋の紅葉も散って行き、ポツポツと空から雪が降ってくる。

 

そして夜中に響く、除夜の鐘。

こうして日々は過ぎてゆく。




んーどうでしょうか?
面白いですか?
やはり進みが遅いですかね?


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ヒーローへの憧れ

一人称-翔-

 

僕が、ヒーローへの憧れを抱いたのはいつだろうか?

 

 

もし、いつ?と聞かれたら、多分4歳の頃にヒーローについて母に聞き、その時にヒーローになりたいと思った、と答えるだろう。

 

しかしその答えは本当に正しいのだろうか?

 

あの時ヒーローになりたいとは思ったが、あれはきっかけに過ぎない。

 

周りから少し驚かれほど、自分はヒーローへの憧れが強くはないと思われていると思う。

日陰先生にもそう言われたし。

僕は、自分の見た目を自覚している。

自覚しているし、その見た目を最大限活かせるよう努力している。

女性の喜ぶ扱い方、好きな話し方。

自分の元からの性質よるものか、争いごとが苦手そうと言われることが多い。

 

 

僕は、ヴィランを直接間近で見たことがあまりない。

それもそうであろう。

僕の住む地域は、閑静な住宅街、学校は、都会から外れ、緑豊かな森に面している。

よって、ヴィランが好き好んでここら辺で犯罪を犯すことは少ない。

まぁ、閑静な住宅街であるので、コソ泥が侵入なんてことがあるが、もともと住宅街に侵入するような人たちは凶暴な人が少なかったため、個性を使って暴れることがなく、本物の、個性を使って暴れる「敵(ヴィラン)」をあまり見たことがない。

 

そんな僕だが、一度だけ、間近で見たことがある。

 

多分その時であろう。

 

僕が本当にヒーローになりたいと思ったのは。

 

 

この感情が、深く、強く、僕の心に居座るようになったのは。

 

 

今日はその時のことについて話そうか。

 

僕は部屋の隅に置いてある大きなぬいぐるみをちらっと見た後、机に座り、置いてあった日記を開いた。

 

 

 

 

 

 

翔が小学校3年生の頃、翔の父、翼が珍しくヒーロー業の休暇を取っていたらしく、家に居た。

翔と翼は仲がいい。

翔に反抗期が来ないせいかもしれないが。

そんな翔と翼はリビングでレンタルショップで借りた海外映画を見ていた。

 

「かけるー、今日は父さん休みなんだ。良かったら買い物に行くか?」

 

彼も普段日中に家にいなくて、翔と出かけられていないことに申し訳ない気持ちを抱いているんであろう、翔に翼はそう話しかけた。

 

今は土曜日のお昼前。

彼の母、飛鳥は学生時代の友人と買い物へ行った。

4歳の風香は、母に連れられて一緒に行った。

多分服を買いに行くのであろう。

服の補充である。

彼女にも来たのだ個性の発揮が。

個性が発動すると調整が難しくなるため、鱗が生え、それで服を破いてしまい使い物にならなくなってしまう。

よって服の破損数が半端ないのだ。

今日はそれを買うために、友人と会うのをついでに、買い物しに行った。

 

今リビングにいるのは翔と翼のみ。

 

 

「うん!いいよ!どこへ行くー?」

 

翔は、父の翼と出かけられるのが嬉しいのだろう、目をキラキラさせ、少しソファーから身を乗り出しながら答えた。

 

「よし!じゃぁ、うーん。とりあえず、東京駅まで行って着いたらお昼を食べようか。そのあとはかけるの好きなものかってやるぞー!」

 

翼も翔のそんな姿に嬉しくなったのか、ソファーから立ち上がりながらそう答えた。

 

 

<12:30>

所変わって、今彼らがいるところは、東京駅改札前。

 

 

「ついたね!」

「あぁ、そうだな!じゃぁお昼は何にする?翔は好き嫌いがないから迷うんだよなぁー。」

 

翔は翼と出かけられることも嬉しいのであるが、翔は少し出不精であるため、珍しく来た都会にテンションが上がっているのだろう。

 

翔は、外出が嫌いではない。ならなぜ、出不精なのか、彼には妹の世話があったからである。

それも、親から強制されたわけではない。

彼は妹がの世話が好きであったのだろう、よほどのことがない限り帰ったら妹の世話をしていたのである。

 

 

「うーん。今日はね、ラーメンかな!ラーメン行こうよ!」

 

特別好きではないが、何に刺激されたのか、そう答えた。

 

「そうか、じゃぁ父さんがオススメするとこに行くかな!」

 

そう翼は答えると、翔の小さな右手を掴んで歩き出した。

 

 

 

<1:30>

翼の案内により、行ったラーメン屋で昼食を済ませると、翼と翔は公園のベンチで一服していた。

 

「かけるどうする?なんか欲しいのある?僕はなんでも買ってあげるけど。」

「じゃぁね、お父さんのヒーローグッズが欲しい!ドラゴンの大きな人形!」

翼が今後の予定について聞くと翔は楽しそうにそう答えた。

 

「っ。そっか!そうかそうかー!翔は僕のグッズが欲しいのかー!いいよ!おっきなぬいぐるみを買おうか!」

 

翼も自分の息子が自分のグッズを買う事に少しばかりの恥ずかしさはありながらも、やはり息子にすかれていることが嬉しいのであろう。

 

 

彼の父、翼はヒーローである。

ヒーロネーム「赤い竜(ウェルシュ・ドラゴン)」通称ウェルシュと呼ばれている。No.3のヒーローであるウェルシュは、自身が経営する、ヒーロー事務所、ドラゴニックソウルに勤めている。

 

彼のヒーローコスチュームはいたってシンプルだ、バリバリの肉体戦闘派ということもあるが、ゴテゴテした装飾品がついてると変身する際に邪魔なのである。

第2形態になると身長が210ほどになり、体を覆う筋肉も盛り上がり、全身を鱗で覆うため生半可な素材だとすぐさま自分の鱗によってボロボロになってしまう。

彼はそれをなんとかするために、伸縮、防刃に特化された、パンツと黒い少しダボついたズボンを特注してそれを着ている。これは第三形態の本物ドラゴンになる際は、ズボン脇に設置してあるボタンを押すと、そこに収納されているハイテク仕様である。

上は、すでに諦めているのであろう、破れてもいい安物の服。

 

さすがに、上まで揃えるほどの金がなかったのだ。

いやあるにはあるが、自分の肉体にある鱗でさえ、彼に取っては武器なのである。

それを覆うのはいささかもったいなかったっていうのが本心だ。

強靭な鱗で覆われたの肉体、拳を当てるだけでも、腕はボロボロ、生半可な威力じゃ全く刃物を通さない強靭さ。

 

そんな彼ではあるが、やはりドラゴン。ファンタジーの代名詞。強さだけではなく、見た目も彼の人気に繋がった要因である。

子供の人気度で行ったら、驚く事に、あの平和の象徴オールマイト、と並ぶ程である。

それゆえ、グッズ、二次創作、などから莫大な利益を得ており、すでにヒーローとして働かなくてもいいくらいに稼いでいるという、大人の事情もあるが、翼にとってヒーローとただ金を稼ぐ職業ではない。

彼にとってヒーローは憧れのままであり、息子が憧れている対象なのだ。お金が貯まったからと行って簡単には辞められない。

 

彼らが向かった先は、駅前にある大きなビルの中にあるヒーローショップ。

今や、ヒーローショップは一駅一駅探せばすぐそばにあるくらい多い。

その中でも、一番大きいと言われているショップへ来ていた。

 

ヒーロー人気がすごいのか、あちこちで、目を輝かせた子供たちが、それぞれ親に買って欲しいものをねだっている。

床で転がっている子もいて、親が困り果てていた。

 

そのショップの中で大きなスペースを締めるのが、我らが平和の象徴オールマイトスペース、もう片方が翔の父、翼のウェルシュスペースである。

翔と翼はそのスペースに来ていた。

翔が一番に駆け寄ったのは150センチほどのサイズの龍人形態のぬいぐるみのあるとこである。

150センチであるものの他はほとんど再現されていた。

それに大きな槍も持っている。

 

翼は、格闘技全般で戦うが、大きなヴィランの場合は殺さないよう、刃を落とした、大きな槍で戦うため、それが印象に残る場合も多い。

 

 

翔が欲しているのがわかったのだろう。

それからはトントン拍子て買い物が終わり、今大きなビルを出たところである。

 

 

<3:20>

この時間が翔の運命の歯車が動き出す、彼の将来を決めた決定的瞬間である。

 

 

 

 

 

一人称-翔-

僕とお父さんは今ビルを出た。

僕は今日はお父さんと映画を見て過ごすと思っていたが、お父さんから買い物に行く事を言われて嬉しかった。

お父さんは、僕が欲しがっていたぬいぐるみを見たらすぐに僕の気持ちがわかったのであろう、それをショップ店員に言って、買う事にした。

150センチでは持てなくはなく、電車に乗るときに邪魔になるけれど、僕はこの人形が買えたことが嬉しくて、どうしても自分で持って帰りたかった。

お父さんは苦笑いをしていたけど許してくれた。

 

それから、僕たちがビルを出て、駅に向かっている頃、それは聞こえた。

 

人々の悲鳴である。

父さんは即座に悲鳴の内容を確認するために、僕とぬいぐるみを抱えて走り出した。

僕はこんな切迫した人の悲鳴を間近で聞いたことがなくただ、唖然と少しばかりの恐怖で固まっていた。

 

僕らがついた頃は、日中の駅前にもかかわらず人気がなく、いるのは、2メートルほどの、二足歩行っぽいワニの形をした人だった。

あとは、所々にいる、怪我した人であろう。うめき声をあげて少しでもヴィランから離れようと体を引きずりながら後ずさってある。

 

翼はそんな光景を見て毎度のことながらも、怒りに震えたが、見たところ死者が出ていない事に安堵していた。

 

僕は、その光景にただ震えて見ていただけだった。

僕は今まで血を見たことがない。

いや自分の血は、生傷が絶えなかった頃によく見ていたが、こんな怖いと感じる血を見たのは初めてだった。

 

そこからお父さんの対応は早かった。

僕を近くまで来ていた警察官に預けて、懐に忍ばせていた、ヒーローマスクをつけて、直ぐに竜人形態へと変化した。

 

お父さんは怪我人へと注意が向かないように、ヴィランを挑発しながら、距離を詰めて行く。

ヴィランの目は少しおかしかった。充血しており、視線がぶれぶれで、口からよだれが垂れていた。

 

後から聞いた話だけど、ヴィランは薬物の使用により精神異常をきたし、とっさに駅前で暴れてしまったとのこと。

 

お父さんは、今までの訓練で見たことがないくらい、早く鋭い一歩で距離を詰めて、相手の懐に拳を打ち込み、気絶させた。

 

それからは警察の出番である。

警察に特殊な機械で体を拘束されて連れられて行く。

お父さんは周りにいた人たちから賞賛されていた。

 

僕はただこの心に渦巻く気持ちを、なぜこんなにも心臓がばくばくと動くのかを、なんで父が賞賛されてすごく嬉しくなっているのかを理解するのに必死だった。

 

それからお父さんは、警察の事情聴取をそこそこで切り上げて、僕たちは家に帰った。

 

家に帰ってからは、お父さんたちによると、僕は生返事しかしなかったらしく、父がやっぱりあの現場を見せた事に後悔をしていたらしいが、そうではない。

僕は考えることに必死だったのだ。

 

僕はその日は寝れなかった、この心臓のときめきをずっと感じていたかったのだ。

 

その日の僕は驚く事に10ページに渡り延々とその日のことを事細かく日記に記した。

 

 

 

決してその時の気持ちを忘れないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、あの時だ。

僕が本当にヒーローに憧れるようになったのは、みんなからしたらなんてことはない。戦闘を近くで見ただけだろうと思うだろう。

 

でも僕にとっては違ったのだ、あれが僕の人生を変えたのは疑う余地はない。

 

 

僕はあの時の気持ちを再び思い出し、気持ちが高揚していた。

それから僕は、日記を閉じて、部屋着から運動着へと着替えると、そのまま庭へ出て、妹に夕食だと告げられるまで訓練をし続けた。

 

 

妹によるといつもとは違って凄く笑顔が怖かったらしい。

少し獣っぽかったそうだ。

これも本能ゆえか、個性ゆえか。

 

風香は怖かったとは言っていたが、しっかりビデオ撮影を済ませて、兄の珍しい表情に満足してから声をかけていた。

 

 




どうでしょうか?

今まで三人称だったせいで、主人公が淡白に見えないかな?って思ったので一人称を交えてヒーローを志した理由を書いて見たのですがどうでしょう。

それと誠に申し訳ないのですが、自分はナンバー9ヒーローのリューキュウについて知らなかったのです。
ですが自分の中で竜化できるヒーローは翼だけって設定でしたので、大変、大変リューキュウ好きな方には申し訳ないのですが、主人公の父親のポジションをそっくりそのまま入れさせていただき、順位を3まであげさせていただきます...。それに伴いそれ以下の順位を下げたという認識でお願いします。
ごめんなさい。


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もう一つの物語 ①

この話は本来の僕のヒーローアカデミアの内容に沿って書いてます。
原作知ってるよって言う方は読まなくても良いかもしれません。


春が少し過ぎ、桜が散り始めている、今日この日。

 

ここは都内のある地域にある平凡な中学校。

そこでは今、帰りの学活を行なっている。

 

 

教室の後ろの方には、席に座っており、ビクビクと肩を震わせている少年がいた。

166センチほどの身長。

童顔であり、少し頬にそばかすのある顔立ち。

天然パーマなんであろう膨れ上がった緑色の髪の毛。

彼の名前は緑谷出久(みどりやいずく)。

通称「デク」。

主にある少年に呼ばれているあだ名だ。

 

どこにでもいる普通の中学生である。

いや、彼が無個性という、人類の残り2割側にいるということを考慮した場合は普通とは言えないのかもしれない。

 

 

「えー、じゃぁ進路希望調査についてだけれど.....。

みんなヒーロー科志望だからいいよね!!!」

そう言った教壇の前に立っている男の教師は、進路希望調査表を掲げながらそう言った。

 

「イイェェエエエエイ!!」

一人を除きほとんどの生徒がそれに答えるように声を上げた。

 

「それに今年は雄英高校志望者の爆豪くんもいるし!!!」

先生がハイテンションで、そう言った。

 

「あったりめーだろ!!!俺がそこらにいるような没個性な一般人と一緒の高校に行くわけねーだろ!!この俺が!この学校初の、雄英合格者になるんだからなぁ!そうして、将来は高額納税者リストに名を乗せるんだよ!!」

 

緑谷少年の斜め前に座るいかにも不良といった出で立ちの少年がそう答えた。

彼の名前は爆豪勝己(ばくごうかつき)。

身長にして172そこそこであり、少し暗めの金髪が癖っ毛なのかあちこちに爆発した髪型をしており、目元は獣のように鋭く、獲物を狙うが如く、獰猛に笑っていた。

 

彼はこんな不良のような見た目をしているが、この学校ではトップの成績であることから頭が凄くいいことがうかがえる。

それに、この学校随一の強力な個性の持ち主だ。

 

「爆豪うるせーぞ!」

爆豪のその台詞に、周りの生徒が色々と反論していた。

 

「いや、爆豪だけじゃなく、もう一人雄英志望の人はいるよ。緑谷だ。緑谷は頭がいいからな!」

先生は自分のクラスに二人も雄英高校志望の生徒がいるのが嬉しいのか、少し嬉しそうに答えた。

 

そのセリフに、不満を爆発させた生徒がいた。

爆豪である。

彼は知っているのだ、緑谷が無個性であることを。

彼は、自分の現状を理解してなく、愚かにも夢を見て、付け上がってる奴が大嫌いなのである。

個性もないやつが、ヒーロー科がある学校の中でトップと言われている雄英高校を目指すのが我慢ならないのだ。

夢見る少年が嫌いなのだ。

 

それだけではない。

彼は気の強い性格ゆえか、自分が常にトップでないと我慢ならないにである。

この学校始まって以来の雄英高校合格者は自分であると疑ってはいなかった。

その根性だけで、嫌いな勉強を雄英安全圏内、いや余裕の域まで押し上げるほどに頑張っていた。

 

そこで、無個性であり、かつ学力だけなら雄英に合格するかもしれない緑谷が雄英に志望しているのが許せなかった。

 

「あぁああ?!?緑谷ダァぁあ?!お前何勘違いしてんだよ!雄英は個性がねーと無意味じゃねーーか!!!記念受験かぁ?」

 

それに他の生徒も同意するかのように爆笑していた。

 

「む、無個性でもいいじゃないか!こ、個性がなきゃ受けちゃいけないなんて決まりはないし....。そ、それに小さい頃からの夢なんだ...。」

 

彼もわかっているからだろう。強く反論ができない。

彼はわかっているのだ。

 

どれだけ自分がヒーローに憧れようとも、

 

どれだけヒーローについて研究しようとも、

 

ヒーローという物は無個性というだけで、可能性からはじき出される職業なのだと。

 

それからまた爆轟たちにばかにされて帰りの学活は終わった。

 

 

 

 

 

 

意気消沈しながらも緑谷が帰っている。

 

 

 

彼が桜並木を歩き、トンネルに差し掛かった時、それが現れた。

 

 

 

ヴィランである。

緑色のドブのような液体で体を形作っており、体の所々から札束が溢れている。

そして焦っている様子から、強盗を終えた後なのだろうと、震えて動かない体とは対照的にそう推測した。

 

「ひぃっ!」

緑谷ヴィランを見て少し後ずさる。

緑谷は突然のヴィランの出現に震えることしかできない。

 

 

緑谷が震えていると、ヴィランは緑谷を人質にしようとしたのか体を器用に動かし少年の体を瞬時に拘束した。

 

拘束する際に液状の触手のようなもので口を拘束されたため、息ができなく、緑谷はもがくことしかできない。

 

彼が今思っていることといえば、死の恐怖であろう。

 

いやそれ以上に、彼の心を覆っているのは

無能、

何もできない、

自分自身への落胆であった。

 

ーーやっぱ、無個性じゃ、自分の身すら守れないのか....!!

 

緑谷の意識が遠のいて行くその時に彼は現れた。

 

 

 

 

「私が来た!!!!!!」

 

 

 

そうヒーローである。

ただのヒーローではない。

このセリフは平和の象徴オールマイトの登場時のセリフだ。

 

 

 

ヒーロー名「オールマイト」

身長220センチほどもあり、ボディビルダー以上に筋肉が隆起しており、人々を安心させるような太陽のような笑顔、オールマイトの特徴的な、雷を思わせるように逆立っている金髪の髪。

 

 

そこからは早かった。オールマイトか瞬時に近づく。

右手を振りかぶり、渾身の一撃を叩き込んだ。

オールマイトの一発のパンチで敵は吹き飛んだ。

それからヴィランはオールマイトの手によってペットボトルに詰められて拘束された。

 

「大丈夫か、少年!これでもう安心だ!それでは私はこれで!」

 

オールマイトは焦っているのか即座に踵を返し、立ち去ろうとした。

オールマイトが足に力を込めて思いっきりジャンプした時、

緑谷は何を思ったのか、彼の足にしがみつき一緒に飛んでしまった。

 

 

「ぼ、僕はまだ!あ、貴方に!貴方に聞きたいことがあるんです!!!!!!」

 

 

オールマイトも空中で落とすわけには行かず、近くのビルの屋上に着地した。

 

オールマイトは時間がないのであろう、緑谷を降ろすと直ぐに立ち去ろうとする。

 

 

 

しかし緑谷は止めた。

 

 

 

「ま、待ってください!!!!!!ぼ、僕にはまだ!!」

 

 

 

 

彼は思い出す。

 

過去の言葉を。

 

諦めたあの感情を。

 

 

ーーー残念ながら無個性ですね、この時代には珍しいなんも持ってない。

 

医者にそう言われた。

 

ーーーごめんね!出久!ごめんね!

 

泣き崩れるように出久を抱きながら母はひたすら謝った。

 

ーーーテメェになにがやれるんだぁ?!無個性のくせによぉ!!

 

金髪の少年は彼にそう言い放った。

 

 

たしかにそうかもしれない。

 

 

それでも、僕は....。

 

 

彼は一世一代の決心をし、彼が憧れる平和の象徴オールマイトへ言葉を放った。

 

「個性がなくてもヒーローは出来ますか!」

 

 

「個性のない人間でも貴方みたいになれますか!!」

 

 

彼はオールマイトになんて言って欲しいのだろうか。

なれると言って欲しいのか、オールマイトに諭されて諦めたいのか。

 

 

それでも、この一言が、

 

 

彼が勇気を出してはなったあの言葉が、

 

 

 

彼を変えた。

 

 

 

 

緑谷出久という少年の、

 

 

 

無個性でありながらもヒーローに憧れ続けた、

 

 

 

平凡で終わるはずだった彼の運命が、

 

 

 

交わるはずのない物語が、

 

 

 

 

こうして始まろうとしている。

 

 

 

 




後少しだけ続きます。原作知ってるんだ、はよ話進めろばーろー!
って方はご勘弁ください。


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もう一つの物語 ②

「くそが!!!!!!」

金髪が逆立ち、不良の出で立ちの少年、爆豪勝己はイライラした感情を、道路に落ちていたペットボトルを蹴り飛ばした。

 

ペットボトルはそのまま壁に激突し、中身が漏れて行く。

 

爆豪の機嫌はそれでも治らなかったらしく、手に持っていた飲み干した空き缶を彼の個性で燃やし尽くした。

 

彼の個性は、「爆破」

手から出る汗が、ニトロのようなもので出来ており、それを自在に着火し、爆発させることができる。

 

それが彼の個性だ。

 

「勝己、そんな機嫌が治んねーなら、近くのゲーセンいこぜ。」

 

彼の友人の一人がそういうと、もう一人の男も同意して、彼に続いた。

 

「じゃぁ駅前のにしよう。あそこならカツアゲ楽にできるぜ。」

 

 

「はぁ?!ふざけたこと言ってんじゃねーぞ!バレたら俺の内申に響くじゃねーか!!」

爆豪は友人のその台詞に、本人は雄英に行きたいがため、そんな内申に響くことは出来ないと、言い返す。

 

 

そう仲間内で話していると突然、爆豪以外の男たちが爆豪の後ろを指差しながら慌て出した。

 

爆豪は振り返ると避ける間も無く、液体に拘束された。

 

 

 

そう、ペットボトルである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わり緑谷とオールマイト。

 

 

緑谷の一世一代のセリフをオールマイトが耳にするがそれどころではない。

 

彼はある事情によりタイムリミットが迫っている。

それが今来てしまった。

 

緑谷が、緊張のためか目を強く瞑っていたため、目を開けると、そこには口から血を吐きながら、身長170前後のガリガリの男が立っていた。

 

そう、彼こそはオールマイトの本当の姿である。

 

「え、えぇぇーーーー!お、オールマイトは?!ど、どこ行ったの?!」

緑谷は突然の状況の変化に慌てるしかなかった。

 

そこでオールマイトは見られてしまったことに諦めたのか、何故自分が、このような姿なのか、色々と他言無用と言って、事情を緑谷に教えた。

 

彼によると、オールマイトの本来の姿は、あれであってるらしい。

では何故筋肉隆々の姿なのかというと、あれは力んでいるからとのこと。

筋肉を強調するときに力んで筋肉を浮かび上がらせると同様に、同じ原理であの姿になっているからだそうだ。

 

そのほかに何故オールマイトは血を吐き出したのだろうか。

 

それは怪我による後遺症らしい。

 

オールマイトは自分の服を捲り上げて怪我の跡を見せた。

 

「ひぃっ!」

緑谷は怪我の痛みを想像してか、ヴィランの恐怖におののいたのか悲鳴をあげた。

 

左わき腹に大きく手術痕が残っていた。

 

彼によると、5年前のヴィランとの戦闘により負った傷らしい。

 

 

「呼吸器官半壊、胃袋全摘出。私のヒーローとしての活動限界時間は一日のおよそ3時間程なのさ。」

オールマイトは悲しさ、悔しさを表情で表しながらそう言った。

 

「プロはいつだって命懸けだよ。力がなくとも成り立つとは、口が裂けても到底言えないね。」

 

残酷にもこのセリフは、緑谷の心を抉った。

 

わかっていたはずだ、

 

これが現実だって。

 

 

「人を助けることに憧れがあるなら警察官っていう手もある。警察官だって、あれも立派な仕事だ。」

オールマイトはそう言い放ち、屋上の扉をあけて出て行った。

 

緑谷にそのセリフは届いていない。

彼は現実を受け止めるので精一杯であった。

 

 

 

彼が、それからしばらくして、家に向かって帰宅していると、人が騒いでいるのが聞こえた。

彼はそれを聞いてとっさに駆けつけた。

彼はいつもヒーローが現れるところには向かっていた。

それは憧れであるからだ。ヒーロの活躍をその目に収めたいからだ。

 

 

しかし今回は、心では向かいたくはないと思っていた。

オールマイトのセリフで沈んだ心がより沈み、折れそうな気がしたからだ。

 

 

現場に着くとそこは商店街であった。

そこらじゅうから火の手が上がり、煙が立ち込めている。

商店街の入り口にはすでに警察官の手によって、出入り口が塞がれていた。

野次馬の隙を縫うように前に出ると、彼は見た。

 

そう、オールマイトが捕まえたはずのヴィランである。

ヴィランが商店街の道の真ん中で暴れていたのだ。

 

それをヒーロー達は、ヴィランの対処のため、一人は、消化活動、また一人は避難活動、また一人はヴィランと対峙していた。

 

そこで考えが至った。

 

ーーーそうだ、あのとき、僕がつかんだから....?!

 

彼がオールマイトが空へジャンプするときに脚につかんだせいでオールマイトがポケットへ入れていた、ペットボトルが落ちてしまったのだ。

 

彼はそのことに気がつくと、後悔、悔しさ、の念で押しつぶされそうになっていた。

 

ーーー僕は....!オールマイトの、ヒーローの邪魔をしていたのか....!

 

彼にとってヒーローになれないとオールマイトに言われたことよりも、自分でせいで、ヒーローの邪魔をし、こんな被害を及ぼすことになった自分の行いが、とても許せるものではなかった。

 

しかし彼は、ヒーローではない。

個性すら持っていない。

彼は野次馬の一人となって、ただただ、眺めていることしかできない。

悔しさのあまり、唇を噛みしめる。

口が切れたのか血が出てくる。

 

 

そこで野次馬の声が彼に届いた。

 

「なぁ、あれ、なんでヒーローは動けないでいるんだ?」

 

そう、ヒーローは迂闊には手が出せないでいた。

それは何故か。

 

「ほら見ろ、ヴィランに学生が拘束されてるんだよ。学生の方は、パニックのためか個性が暴走してるし。あれはつえーな、火の個性なのかさっきから爆発がすげーよ。」

 

そう、人質だ。学生がヴィランに拘束されている上に、学生の個性が強力すぎて迂闊に近づけないでいた。

 

ーーー火?爆発の個性?

 

彼の心に浮かんだのは金髪つり目の彼の姿。

 

 

「くそがぁああああ!こんな所で!俺が!!くそくそくそクソ!!!!!!」

 

緑谷が顔を上げてヴィランに拘束されている学生を探した。

そして、緑谷は、ヴィランに拘束されていた、金髪に鋭い目つきの少年と目があった。

 

そこからは気持ちなんて関係がなかった。

緑谷はとっさに警察の腕をかいくぐって前へ駆け出した。

 

「お、おい!止まれ!」

「君!危ない!止まりなさい!」

 

警察官、ヒーローの制止の言葉はすでに彼に届かない。

 

ーーーなんで、僕は駆け出したんだ....?!無個性の僕が何かできるわけないじゃないか!!

 

それでも彼の足が止まることがない。

 

彼は今までヒーローに憧れる過程で研究していたヒーローノートを思い出した。

 

今まで背負っていたカバンを、ヴィランの前に来ると思いっきり投げた。

 

「かっちゃん!!!!!!い、今解くから!!」

 

ヴィランがカバンから出たものを払っている隙に、流動体の液体で拘束されているにもかかわらず必死に拘束を解こうと手を動かす。

 

「く、くそが!デク!!!なんでテメェがここにいるんだ!!」

爆豪も自分が誰に助けらているか気がついて、そう言った。

 

 

ーーー色々理由はあるんだと思う。なんで動いたのか。でも、でも僕は....!

 

「き、君が!助けを求めているから!!!!!!」

緑谷は両目に涙をいっぱい溜めながらも、精一杯の笑みでそう言った。

 

それの言葉は爆豪の心に響いた。

 

そのセリフは、まさしくヒーローのセリフだ。

 

自分が憧れた、

自分が言うはずの、

自分がなるはずの、

そんなヒーローのセリフだ。

 

その言葉に爆豪の心が動かないはずがない。

 

今までバカにしていた相手に助けられそうになって、

自分が何もできずに、

助けられるなんて、

そんなの爆豪勝己ではない。

断じて違う。

 

その言葉に心を動かされたのは爆豪だけではない。

 

 

 

すでに、タイムリミットは過ぎている。

 

応援が来れば解決するはずだ。

 

同じヒーローを信じて入ればいい。

 

そう自分に言い聞かせていた男だ。

 

彼は、それで良いのか、

自分がしてきた行いに、

信念に、気持ちに、

反してはいないのだろうか?

 

いいや、そんなことあって良いはずがない。

タイムリミットが過ぎているからって、

ヒーローが、自分が、諦めて良いわけがない。

 

自分はヒーローだ、平和の象徴なのだ。

 

自分が....、彼を....。

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫だ!!私がきた!!!!!!」

 

 

 

 

オールマイトが彼を助ける。

 

 

 

突然のオールマイトの登場に野次馬が湧いた。

それもそのはず、なんて言ったって、彼こそは、

この国を代表する、ヒーローを代表する、我らがトップヒーローなのであるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィランは緑谷の抵抗に気がつき、吹き飛ばそうと腕を動かし、薙ぎ払う動作に入った。

それを目で見た爆豪は渾身の力を入れ、腕にニトロをため爆発させた。

それにより、若干拘束が解けたうちに、緑谷を突き飛ばした。

 

「クソが!俺を助けるなんてオメーにできるわけねーだろ!黙って下がってろ、ボケ!!」

彼のプライドが許さなかったのである。

 

しかし、今までの拘束により体力を消耗していたので、もう力が残っていない。

 

ヴィランも爆豪の抵抗にイラつき、拘束をより強める。

 

ヴィランは、イラついた感情を緑谷にぶつけようと、またもや腕を振りかぶる。

 

そんな時だ。

 

 

「もう大丈夫だ!!私がきた!!!!!!」

 

 

そうオールマイト。

 

 

オールマイトは瞬時にヴィランに近づき、左腕で、爆豪を捕まえる。

 

 

「プロはいつだって命がけだ!!」

 

彼は血反吐を吐きながらもそう言い放った。

 

そしてもう一つの腕を大きく振りかぶって、振り抜いた。

 

 

 

 

「デトロイト、スマッシュ!!!!!!」

 

 

 

 

爆豪を除き、ヴィランのすべてが、その衝撃で跡形もなく吹き飛ぶ。

その衝撃により、爆豪を中心に驚くほどの上昇気流が巻き上がった。

 

 

ヒーロー、警察、野次馬、ともに、風圧で吹き飛ばされないよう、体を抱えることに必死だった。

 

 

それからすぐに

ーーーポツポツ。

 

そう、雨が降ってきたのだ。

 

観客たちは唖然とするしかない。

 

「ま、まさか、今風圧で?」

「上昇気流が発生して、雨が降ってるとでも言うのか!!!!!!」

そう、オールマイトの放った一撃により、上昇気流を発生させ、

それによって雲ができる。

雲ができた、ことにより雨が降り出してくる。

その雨が、今まで燃え盛っていた火の手を消し始めた。

 

 

 

この空間を支配していたのは驚きの感情のみだ。

誰もが、今見た光景を疑っていた。

 

 

 

「おいおいおいおいおい、まさかまさか、肩腕一本で天気を変えたって言うのかよぉ!!!!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!」

 

観客がわかないわけがない。

 

これほどの偉業を目にしながら興奮しないわけがなかった。

 

 

彼らは目にしたのだ、これが我らがヒーロー、オールマイトだと。

 

 

 

 

それから数時間してやっと事件は収束した。

彼、緑谷はため息をつきながら帰路についている。

 

「デク!」

 

緑谷に声がかかる。

彼が振り返ると、そこには走ってきた爆豪がいた。

 

「俺は、テメェに助けを求めてなんかいねーぞ!助けられてもねぇ!!おい、なぁ!一人でできたんだ...!無個性の出来損ないが見下すんじゃねーぞ!オンを売ろうって言うのか?!見下すんじゃねぇーーぞ!!くそが!」

 

爆豪は震える声で、自分に言い聞かせるように、そう言った。

爆豪は緑谷の返事を待たず去っていく。

 

緑谷はただ苦笑することしかできなかった。

緑谷は帰ろうと足を踏み出すと、また声がかかった。

 

「私がきた!!」

オールマイトだ。

 

緑谷が混乱していると、彼は話を進めた。

 

曰く、君に感謝している。

それと提案があると。

 

 

 

 

 

 

 

そう、やっと始まるのだ、

 

 

彼の物語が、

 

 

運命の歯車が大きく動き出す。

 

 

彼と、彼の物語が交差するのはこれで必然となるだろう。

 

 

二人が出会うのはもう少し。

 

 

 

 

 

 




やっと緑谷編は終わった...。
所々違うかもしれないけど勘弁してw

原作未読の方はこれが一応原作のはじめでっす。

次から原作開始。
入学試験が始まります。


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原作開始
雄英高校入学試験 ①


冬に降った雪が溶け始めてる、2月某日。

彼、天野翔は日課となっているランニングへ出かけるために、準備をしている。

 

今日は、彼が入学試験を受けようとしている、雄英高校の試験日だ。

彼は、大事な試験日といえども、もはやルーティーンとなりつつある朝のランニングをしたくて、いつもより早く起床した。

 

まだ日の出が出るか出ないかの時間帯のためか、部屋の中でも息が白くなるくらいに気温が低かった。

彼は慣れているのか、気にする様子も見せずに布団から出てクローゼットを開けた。

クローゼットの中からいつもの運動着を着替えるために取り出すと、今着ている寝間着を脱ぎ、着替え出した。

 

「....。あっ。」

ボソッと声を漏らす。寝起きのためか、声少しばかりいつもより低くかすれていた。

彼は着替え終わった後に、自分がTシャツを反対にきていることに気がついたのだ。

いつもと同じ動作なのに間違えたのだ。彼も流石に試験日となると緊張しているのだろうか。

頭をかきながら苦笑していた。

彼が服を脱ぎ、着直す頃には日の出が出始めていた。

 

「....行ってきまーす。」

朝が早いため、家族を起こさないようにと配慮して小さく挨拶をして家を出て行った。

 

いつも通りのペースで、いつも通りのコースを走る。

交差点の信号を渡り、公園に差し掛かる。

公園の入り口に佇んでいるのは、薄青のカールがかかっているロングの髪を持つ少女、波動ねじれだった。

 

翔は、ねじれは土曜日にしか走ることがないと知っているため予想外の出会いに驚きながらも、近づいて挨拶をした。

「ねじれちゃん、おはようございます」

 

その声を聞いて、ねじれは顔を上げた。

かけると会えたことが嬉しかったのか笑顔になりながらも元気よく挨拶を返す。

「かけるくん、おはよう!」

 

その後翔は疑問に思っていたことを聞いた。

「ねじれちゃん、なんでここに居るですか?今日は平日なのに。」

普通なら会わない日に会うので、翔は少し新鮮な気持ちでいた。

 

「それはねー、今日雄英の試験でしょ?だからかけるくんが緊張してるんじゃないかなーって思ってね、会いにきちゃった!この時間走ってるって前聞いてたし。」

ねじれは寒さのせいか、頬と耳を赤くしながらそう答えた。

 

ねじれは、翔が緊張していると言っているはいるが、翔と一佳の合格をほぼ確信していた。

今日、会いに来たのは、ねじれが不安であったからだ。

 

「そうですか、ありがとうございます。」

翔はそれ嬉しくて、つい頭を撫でてしまった。

 

「んん〜。気持ちいい。」

ねじれは一瞬驚きながらもそれを受け入れて、気持ち良さそうにしていた。

 

「かけるくん大丈夫?緊張してない?」

ねじれの質問に、翔はなんでもないように、答えた。

 

「大丈夫ですよ。ねじれちゃんの頭を撫でてたら、緊張が解けたよ、ありがとう。」

 

それからは少しばかりねじれと話すと、時間がないので翔はねじれに別れを告げてランニングを再開した。

 

 

 

翔は1時間のランニングが終わると家に帰宅した。

「ただいまー。」

かけるのその声に反応するように、かけるの妹、風香が飛び込んで来た。

「お兄ちゃんおかえりー!」

風香はかけるのお腹に頭をグリグリと愛情表現をするように抱きついていた。

 

「ただいま、風香。今お兄ちゃんは汗臭いから少し待っててね。シャワー浴びて来るから。」

翔は、家族と言えど汗臭いのに、これだけ至近距離にいることに抵抗があったのであろう。

翔は、妹の風香を体から離すとそのまま風呂場へと向かって行った。

 

翔が、シャワーを浴びてさっぱりし、制服に着替えると朝食に食べるためにリビングへと向かう。

リビングで待っていたのは、彼の父の翼、母の飛鳥、そして先ほどの妹の風香が食卓に座って翔を待っていた。

 

翔が椅子に着き、食事を始めると会話が始まった。

 

「翔くん今日が試験日だね。調子はどう?」

恋する乙女は美しいという。相も変わらずラブラブである。

昔と相変わらず、美しさを保ち、二人の子供を産んだことを感じさせないプロポーションを維持している母が、翔にそう聞いて来た。

 

「大丈夫だよ、筆記も十分対策して来たし、後問題は実技だけかな。」

翔はねじれとの会話である程度緊張も解けていたので、普段通りに答えた。

 

「翔ならどんな実技でも大丈夫だよ。なんて言ったって僕が鍛えたんだから。」

彼の父、翼が気負うことはないとの気持ちを込めてそう言った。

 

「そうだね、父さんが鍛えたんだから大丈夫だよね。」

 

「お兄ちゃんなら大丈夫だって!私が保証するから!」

隣に座っていた妹の風香が元気よく、彼に語りかけた。

 

彼の朝の朝食が過ぎて行く。

 

 

 

彼が朝食を終えると、部屋に戻る。カバンに、腕時計、参考書、受験票、筆記用具など忘れ物がないかの最終確認を済ませる。

彼が最終確認をし、服装の乱れを直して彼は家を出る。

 

 

少し歩いて行くといつもの交差点へ出た。そこには彼の幼馴染の拳藤一佳が待っていた。一佳も緊張しているのであろう、少し顔が強張っていた。

「一佳、おはよう。緊張してるの?」

 

「おはよう、翔。うーん、ちょっとだけね、でももう大丈夫!」

一佳は翔を見て少し緊張がほぐれたのか、少し苦笑いを浮かべながら返事した。

 

翔たちは試験会場に一緒に行くために待ち合わせをしていたのだ。

 

二人はそれから、一番近い最寄り駅へと向かった。

最寄り駅に着くと、同じ雄英受験者なのか、制服姿の学生たちが至る所で電車を待っていた。

電車が来ると二人は乗り込んだ。

電車が雄英高校の最寄り駅までつくと二人は、電車を降りた。

そして、駅前では雄英高校の先生方が雄英までの地図を掲げながら案内していたのでそれに従って歩いて行く。

 

「そろそろ雄英つくね。」

翔が隣を歩く、一佳に話しかけた。

 

「う、うん。翔、筆記で失敗しないでよ。一緒に雄英行こうね。」

流石に雄英高校を前にして一佳も緊張がぶり返していたのか、突っかかりながらもそう答えた。

 

「あぁ、そうだね。」

翔は、一佳にそう笑いかけると、二人は受験番号に従って別れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筆記を終えた翔は、次の試験の実技を受けるため先生の指示に従って大きなホールがある建物に入って行く。

 

そこには試験を受けていた多くの受験者が集まっていた。

 

それから暫くしてホールの中央に、

ヒーロー名「プレゼント・マイク」で有名な、金髪をオールバックにしていて、黒いサングラスをつけた身長180ほどの男が出て来た。

 

 

『受験生のリスナー!今日は俺のライブによーこそー!!everybody say ‘hey’!!!!』

 

ホール中に響く。

 

「........。」

誰もが声をあげない。

 

 

『こいつはしゔぃぃー!なら受験生のリスナーに実技試験の内容をサクッと説明するぜ!』

『Are you ready?! イイェェエエエエイ!!』

 

「.....。」

 

 

プレゼント・マイクは受験生リスナーの無言にも屈しず、実技試験の内容を話し始めた。

 

 

プレゼント・マイクが説明したことはねじれが教えてくれたこととあっていた。

 

内容はこうだ。

受験生をいくつかのグループに分ける。

そのグループを各試験会場に分けて、ポイント別に別れている仮想ヴィランを倒してポイントの量で競うという内容だ。

 

そこで、プレゼント・マイクが、ポイントのヴィランについて説明している時に、大きな声が響いた。

 

「質問よろしいでしょうか!!!」

ガタイも良く、身長も高い、メガネをかけており、いかにも真面目と言った風貌の男は声をあげた。

 

『Ok!!』

プレゼント・マイクは質問を許可する。

 

「プリントには、4種のヴィランが記載されております!誤載であれば、日本最高峰の雄英にして恥ずべき事態!我々受験者は規範となるご指導を求めこの場に座しているのです!.......ついでにそこの縮毛の君!先程からボソボソと気が散る!物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」

 

緑色の天然パーマ髪を持つ少年は怒られて萎縮している。

周りはそれがおかしかったのはすこし笑いが起きていた。

 

それに答えるようにプレゼント・マイクが質問に答えた。

 

それは、0ポイントのヴィランであり、受験者の邪魔をする存在であると。これは以前にねじれが言っていたことである。

 

「ねじれちゃんが言ってたことと一緒でよかった。」

試験内容が同じなことに翔は安堵していた。

 

 

それから試験内容の説明が終わると各人着替えて、指定されたグループの会場に向かっていた。

翔が指定されていたのはEグループだった。

一佳と会うことができなかったため、どのグループにいるかは分からなかった。

しかしプレゼント・マイクが言うには知り合い同士で協力しないように同じ中学校の生徒同士は一緒にならないと言っていたので、一緒のグループにいないなと翔は思った。

 

「一佳とは一緒じゃないのか。まぁ、これで心置きなくできるな。」

翔はいつもとは違い少し好戦的に笑っていた。

 

 

一緒のグループではなくて良かったと思っている。

 

 

翔は一佳がいないと分ったなら他の人の分を気にすることなく倒せると思ったからだ。

 

かけるのこれは決して慢心ではない。

 

翔の個性は強力であり、なおかつ竜人形態になると翼が生えるため、ぐんと機動力が上がるからだ。

 

 

それになんと言っても、試験時間が、10分しかない。

本気を出すなら完全形態で行けそうだが、それだと人への被害がすごくなるので第三形態になることはないのだが。

 

そうしてかけるは、着替えるために更衣室に向かって言った。

 

 

 

 

 

 




あぁ、原作に沿う場合は一々アニメを確認してセリフを間違えないようにしなきゃいけないし面倒だなぁ


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雄英高校入学試験 ②

翔が更衣室で着替え終わり、試験会場に向かうとそこには数十メートルの外壁があった。

 

大きな門にはEと書かれており、Eグループの試験会場ということがわかる。

門の下には多くの受験生が集まっていた。

それぞれの個性を生かすためであろう、それぞれ個性豊かな運動着を着て集まっている。

ちなみにかけるが選んだ服は、至ってシンプルだ。

父から借りている伸縮、防刃がとても優れているズボン。

それのみである。

翔はもともとこの試験では竜人にまではなるつもりでいるため、上着は着ていなかった。

 

流石に上半身裸は目立つのか周りの受験生がチラチラと見ている。

翔はしっかりと鍛えているため、男はその肉体を見て警戒を強め、

女は、翔のかっこいい顔、鍛えられた腹筋を交互にチラチラと見て顔を赤らめていた。

 

 

 

そうしていると、

巨大なEと書かれた門が開いた。

中を見た受験生たちは驚きの声を漏らしていた。

 

「お、おい、すげー!見てみろよ!町があるぜ!」

 

「試験のためにここまで準備する雄英すげーー!財力すげー!」

 

「マジでゲーム見たい!サバゲーっぽいな!!」

 

それもそうであろう、門を開くと目の前には町が広がっていたのだから。

 

翔も本当に驚いている。

「本当にすごいな、これがあと何個もあるのかぁ。雄英の敷地面積どれくらいなんだろ?」

そんな意味もないことを苦笑いしながらつぶやいた。

 

そのようにガヤガヤしているといきなり声が聞こえた。

 

『はい、スタート!』

 

「....え?」

 

翔は一瞬何が起きたのか理解できず体が固まってしまった。

 

周りの受験生たちも同じであろう、戸惑いの声があふれていた。

 

しかし、言葉の意味を理解すると慌てたように、走り出して言った。

 

「や、やばい!じゅ、準備しなきゃ!」

翔も相当慌てており、急いで竜人形態に移行した。

全身を鱗で、覆い被さり、強靭な尻尾と翼が生える。

 

それを見たまだ残っていた受験者が驚きの声を漏らしていたが翔は気にしない。

 

急いで前に走り出し、羽を一気に羽ばたかせて空高く飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、まさか。あいつが、ウェルシュさんとこの子供か。随分と今年は面白いの多そうじゃねぇーか。」

 

 

 

 

プレゼント・マイクは自身がスタートとの合図をする、Bグループの仕事を終えると、別のグループの試験用のモニターを見ていた。

それは偶然であったが、ちょうどEグループの合図が始まったところであった。

その少年は、いきなり始まったことに戸惑っていたのだろう、最初は動くことはなかったが、言葉の意味に気がつくと即座に個性を使って変化した。

 

プレゼント・マイクはその個性を知っていたので驚いた。

彼が個性を理解すると、以前にその個性を持つ、ヒーロー、ウェルシュ・ドラゴンに会ったことを思い出した。

その時彼は言っていた。

 

「来年うちの息子雄英受けるらしいんだよねー。いやぁ、あいつ受かるかなぁ?」

とすこし息子が自慢なのであろう、鼻高々に言っていたの思い出し、プレゼントマイクは苦笑した。

 

「そっかそっか、今年か。エンデヴァーさんの息子といい、ウェルシュさんの息子といい。今年はちょっと面白そうじゃないか。体育祭がたのしみだな!」

プレゼント・マイクは楽しそうに笑って自分のグループの監視に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

翔は慌てて飛び出したものの、前には受験生がいるので今から向かっても無駄だと思い、全体がよく俯瞰できる位置まで飛び上がり、周りを眺めていた。

 

「うーん。近くの敵はすでに他の人たちが倒し始めちゃってるし、どうしよ。やっぱ機動力を生かして誰もいない奥の方から倒して回ろうか。」

会場は直径1キロはある。

それを10分で回ろうなんて機動力が高くない個性の人たちには厳しいであろう。

 

翔は入り口から遠く敵が密集しているところを見つけると羽を動かし、一気に加速した。

 

数秒で、数百メートルを移動した翔は、3ポイントが3体、2ポイントが1体、1ポイントが4体と密集しているところに向かって拳の爪を振りかぶって上空から勢いをつけ一気に降り立つ。

 

すれ違いざまに3ポイントヴィランと、2ポイントのヴィランを切り裂いた。

切り裂いた拍子に爆発した爆風を翼で吹き飛ばしながら楽しそうに笑っていた。

「これで、5ポイントだな!」

 

 

 

 

 

 

 

ここは試験管たちが集まる一室。

試験中の受験生を監視に何かあった際に駆けつけるところだ。

暗い部屋の中で無数のモニターが起動していた。

すべて受験生を映していた。

 

「いやぁ、今年は豊作じゃない?この金髪爆発頭のヤンキーなんてずっと駆け回ってるし、すごいタフネスね。」

 

「うむ、こっちも見てみろ、まさか、こいつは彼の息子か?全く同じ個性だな!この圧倒的な機動力に破壊力。本当におもしろいのがおおいな!」

 

画面の中では、すこし暗めの金髪で爆発した髪を持つ目つきが鋭い少年がいた。

彼は誰よりも早く飛び出し、すれ違いざまに個性の爆破を使い次々と撃破している。

ずっと走っているにもかかわらず息が切れた様子もなく、走りつづけている。

 

違う画面には、体を銀の鱗で覆い、羽を使った機動力を生かし、空からのヒット&アウェーで次々とヴィラン達を撃破していく少年が映っていた。

 

 

どちらも共通して言えるのはとても楽しそう、ということであろう。

よく笑っている。

 

 

 

「いやこれからだよ。本番は。さぁ、君たちの本気を見せてくれ!」

男の人はカバーガラスで覆われていた赤いボタンに触り、スイッチを押した。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ある程度倒し尽くしたし、これで大丈夫かな?あれ何ポイントだっけ?4、50くらいかな?」

翔は自分が倒したポイントを忘れていたことにすこし恥ずかしがっていた。

 

自分でも驚いていた。

この試験をすごく楽しんでいたからだ。

彼は今まで訓練では組手以外ほとんどしたことはない。

それゆえ、これだけ暴れたことはなかった。

翔は自分が此処まで好戦的なことにすこし戸惑っていたが、今の気分は最高に高かった。

 

「周りの人達より圧倒的に倒しているし、大丈夫だとは思うけど。前考えてた追加ポイントがあるか知りたいんだよなぁ」

翔は羽を動かし空に浮かびながら、追加ポイントのことを考えていた。以前考えた通り、翔は、救援活動、援護活動、にポイントが入るのではないかと睨んでいる。

 

 

『残り5分を切ったぜー!受験生リスナー頑張れよー!』

 

プレゼント・マイクの声が聞こえてきた。

 

 

「考えても仕方ないか、どうせポイントは十分稼いだし、そっち方面をやってみるか。」

翔はそう呟くと、受験生が多い密集したところへ飛んで行った。

 

 

 

 

翔がやることは変わらない。危なそうな受験生がいると空から、急降下し、一気に倒すことである。

 

 

「ちょ、ちょっと二体はずるいんじゃないかしら」

ケロケロと台詞の後に続けて言っていた女の子は、絶賛ピンチ中である。

 

カエル型の異形系の個性なのであろうか、すこしカエルっぽい顔をしている。

カエルっぽい顔と言っても不細工なわけではない。

とても可愛い顔立ちをしている。

丸みを帯びてはいるが、可愛らしい範疇に収まる大きさで、目はぱっちりと大きく、カエル型の個性ゆえか、驚くほど肌がみずみずしく潤っている。女の子ならすごく羨むであろう。

それに動きやすさを重視したのであろう、体に張り付くようなピチピチの服を着ていたためスタイルがダイレクトにわかってしまう。

平均以上の胸は、締め付けられることにより、上方向に盛り上がっており、大きく谷間を作っている。

全くたるんだ様子の見えないお腹に、曲線がすごく美しいくびれ。

 

そんな女の子は、前後に3、1ポイントのヴィランに囲まれていた。

周りも自分の対峙するヴィランに必死なのであろう、助けに入る様子はない。

 

カエルの女の子はどうやって切り抜けようかと考えていると、風を切るような音が上から聞こえたと思うと、目の前の3ポイントとヴィランは爆発した。

 

 

 

 

 

 

翔はピンチに陥っている女の子を見つけると片方のヴィランめがけて一気に降り立ち、すれ違いざまに切り裂いた。

 

爆発による煙を羽で吹き飛ばしつつ女の子に声をかけた。

 

「君、大丈夫?怪我はない?もう片方は一人で行ける?」

 

「だ、大丈夫!後は自分で行けるわ!」

かけるの心配そうな表情に、一瞬目を奪われながらも気丈に答えた。

 

そんな女の子の反応を見て翔はもう大丈夫かと次の標的を探そうかと飛び立とうとした時、地響きが響いてきた。

 

 

「きゃっ!」

目の前の体制を崩した女の子を抱きかかえながらも、何があったのか周りを見渡した。

するとすこし遠くの方で、数十メートルはある0ポイントの巨大ヴィランが暴れていた。

 

ここからでも受験生の悲鳴がちらほらと聞こえてきて、逃げて来る生徒が目立つ。

 

翔はそんな状況を見て援護に行こうと決め、抱きかかえている女の子を離すと飛び立って言った。

 

「あ、行っちゃった...。人のお尻触ったといて表情変えないのはなんか悔しいわ。」

女の子はすこし頬を赤くしながらそう呟いた。

翔はとっさに抱きかかえたため自分が何処を鷲掴みしているか気がついていなかった。

 

もちろん普通の男だったらそいつの頬に拳が飛んでいただろう。

しかし、幸か不幸か、翔は側から見たら美形であったため、彼女はとっさに反応することなく、彼は飛び去ってしまったのだ。

 

「もし、一緒に学校受かってたら、一言文句言ってやるわ。」

彼女をそう言葉を残して彼とは逆方向に走っていった。

 

 

翔が駆けつけると、まだ逃げ惑う受験生が多くいた。

しかし巨大ヴィランの足は止まることなく、受験生を追いかけている。

 

翔はこれは危険と判断したため、足止めをしようと決めた。

 

「僕がこいつの足止めをする!今のうちに逃げて!怪我してる人がいたら近くの人が抱えて走るんだ!」

 

翔は大きく声を張り上げると、そのまま羽を大きく動かし巨大ヴィランの顔面へと向かう。

そして、大きく右手を振りかぶり、うちにある力を極限まで練り接近と同時にヴィランの顔面に拳を打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

ーーーどごぉーーーーん!!

 

何かを破壊するような大きな音を聞き、逃げ惑っていた生徒は一様に振り返った。

そこには驚くべき光景があった。

巨大ヴィランの顔面が深く陥没していて、そのまま後ろに倒れたからだ。

そのままヴィランの顔面は爆発した。

生徒たちはヴィランが倒れた時に響いた地響きを気にすることなく、目を見張っていた。

 

2メートルほどの鱗で覆われた龍人が腕を振り抜いた状態で空を飛んでいたからだ。

 

「お、おい、まさか、倒したって言うのか?!あの巨大ヴィランを...?!」

 

「そ、それにあの個性ってまさか!ウェルシュ・ドラゴンと一緒じゃねーか!!!!!!」」

 

「同じ個性?、いやまさか、息子か?ウェルシュに息子がいるって噂では聞いたことはあったが...。まさか、同期とはな。」

 

彼らはまだ試験中ということを一瞬忘れ、思い思いに驚いていた。

 

 

 

 

『タイムアーーーーープ!!!!』

 

そんな声が、試験会場中に広まった。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、いってぇ....。やっぱ流石に、無茶だったか。拳の鱗が数枚剥がれちゃったか。倒せたなら十分か。」

翔は鱗が剥がれた方の腕を振りながら、自分ができた結果に満足していた。

 

 

 

それから翔は、受験生がそれぞれな表情を浮かべて着替えている中、カバンに入れていた携帯が震えるのを感じた。

 

一佳からだった。

内容は自分がいつも以上に力が出て45ポイントも取ることができたそうで、翔に早く知らせたくてメールしたそうだ。

 

翔はそれに苦笑いを浮かべながらも着替えを済ませた。

 

 

 

試験が終わり、翔は一佳と待ち合わせをしていたところで待っていた。

 

「かけるー!」

そんな声に振り返ると満面の笑みを浮かべた一佳がいた。

 

「翔どうだった?!私は手応えは十分あるよ!」

 

「僕もバッチリだ。」

翔は一佳と同様に満面の笑みを浮かべながら答えた。

 

「そうかそうか!!」

一佳はよほど嬉しかったのかいつもはしないであろう、翔の腕を胸に抱き寄せて腕を組みながら駅に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 




これで試験は終わりです。


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評価

「それでは各生徒の実技成績を、モニターに映します。」

 

彼らが今いるところは雄英高校の会議室のなか。

広さ20畳ほどの大きさで、部屋はモニターの映像を見えやすくするためか少し薄暗くなっている。

モニターがある方向にコの字を向ける形でテーブルが置かれており、そこには十人余りの教師たちが座っていた。

 

今彼らが行なっているのは、実技試験の評価付である。

ポイントで実技が決まるのに評価が必要なのだろうか?と、そう思うだろう。

しかし、いや、やはりといったところか。

彼、天野翔が予測したように、撃破ポイントだけで決まるわけではなかった。

撃破ポイント以外の評価付けの対象となるのは、レスキューポイントである。

レスキューポイントとは読んで字のごとく、試験時間中に自分以外の他者を救済、援護した時に発生するポイントである。

 

やはりあの試験は、戦闘力だけを見てはいなかった。

ヒーローは戦闘だけをするわけではない、ヒーローは平和を守るそんな人たちだ。

よって、災害時の救済活動など、人が困っていたら助けるのも仕事のうちだ。

 

試験ではそれも見ていた。

 

この会議室では、そのポイントを決めていたのだ。

 

今モニターに映し出しているのはポイント付けを終え、ヴィランポイント、レスキューポイントそれぞれを同時に映し、総合ポイント順に並べて表示していた。

 

 

ここにいるのは毎年ポイント付けを行なっている先生たちが多い。

しかし、それでも驚きの声をあげるものが多かった。

 

「しっかし、本当に今年の試験は色々あったなぁ。」

ある一人の教師がそういった。

 

それに続くように次々と各人の感想を述べて行く。

 

「まさか2位と3位の差がここまで開くとはなぁ。一位はやはりといったところではあるが、二位がこれほどとは....。」

やはりみんなが注目するのはトップの二人であった。

 

一人は、爆豪勝己。

薄暗い金髪に、鋭い目つきを持つ少年だ。

度々言動に問題はあるものの、最後まで一人でヴィランを撃破い続けたタフネスボーイだ。

彼はヴィランポイントだけで77ポイントという驚くべき成績を叩き出し、ヴィランポイントだけなら1位をも上回る差をつけた逸材だ。

 

「所々言動に不安はあるが、強力な個性、表面とは裏腹に精密な戦闘、ただの一直線な馬鹿じゃない。あれは頭の回転が速いな。」

 

そう評価した言葉に各人が頷く。

それもそうだろう、雄英高校といえどもここまでの逸材が入ることは多くはない。

彼の言動に問題はあるが、言動で不合格にするよりも、入学してから矯正すれば良いと考える人の方が多かった。

 

 

次に注目が行くのは、爆豪の上を行く、1位となった少年。

天野翔だ。

この少年は知っている人は、知っていたのであろう。

No.3のヒーロー、ヒーローネーム「ウェルシュ・ドラゴン」の息子であるということを。

この成績を見ても納得の表情を浮かべている者が多かった。

 

「彼が、あのウェルシュ・ドラゴンの息子ですか。」

 

彼、翔が獲得したポイントは驚くべきことに123ポイント。

今までにない、類を見ないほどのポイントである。

今ここにいる先生方はこのポイントを見たことがないくらい高ポイントであった。そもそもたった10分で100ポイントを超えることは異常と言ってもいいかもしれない。

 

彼が獲得したヴィランポイントは63ポイント。

見る限り、スタートダッシュを人より一歩遅れた印象があった。

しかし、変化してからが早かった。瞬時に全体を俯瞰できるポイントまで飛び、入り口付近から反対側にいる、生徒が行くことが少ないところにいるヴィランに目をつける判断力。

上空からの急降下による一撃を与えて、その周りのヴィランを即座に戦闘不能にする、機動力に、戦闘力。

彼が後半を、0ポイントの巨大ヴィランとの戦闘、救助目的の戦闘に移らなかったら、ヴィランポイントだけで爆豪を抜いたことは想像が難しくない。

 

一方のレスキューポイントは、60ポイント。

はじめにカエル型の個性を持つ少女の救出により、10ポイントが与えられ、

0ポイントヴィランが現れてすぐに、現場に向かう勇敢さ、即座に状況を把握し、周りの逃げ惑う生徒に指示を出すリーダーシップ、

そして、彼が最後に行った、巨大ヴィランを一撃で粉砕するほどの戦闘力。

これらを持ってレスキューポイントへプラス50ポイントが与えられた。

 

 

入学試験前から翼の息子の翔が入学試験を受けることは知っているものも多かった。

しかし、これだけポイントを獲得するのは予想を超えたのであろう、

ほとんどの生徒から称賛の声が上がっていた。

 

 

「本当に、それだけかねぇ、俺には前半の戦闘が爆豪と同じくらい危うそうだったけど...」

 

誰にも聞こえないであろう声量ボソッと声が漏れた。

そういったのは彼であった。

肩よりも長い髪ではあるが、全く手入れされていないのであろうボサボサの髪、ドライアイなのか、赤く充血した目、大きなマフラーが特徴の男だ。

彼はヒーローの一人だ。

 

ヒーロー名は「イレイザーヘッド」

目で見た人物の個性を抹消させることができる能力からその名をつけたらしい。

 

彼は翔が前半に戦闘に夢中になる程の戦闘好きを危惧していた。

ヒーローが戦闘好きで悪くはない。

しかし、彼は根っからの合理主義者である。

彼の性分は避けられる戦闘は避け、出来るだけ被害を少なくする戦いを好んでいるため、戦闘好きそうな彼とは馬が合わないと感じたのかもしれない。

 

 

 

その二人の評価が終わると残りの生徒の評価が始まっていた。

今年は余程豊作であったのであろう、それぞれが明るい表情で、評価しあっていた。

 

しかし、評価の途中で評価に困る生徒がいた。

緑谷出久、緑色の天然パーマが特徴的な、少し気弱そうな少年だ。

それもそうだろう。

彼が獲得したのは、50ポイント。

ここだけ見れば、普通に上出来と思うだろうが、彼はヴィランポイントは0である。

彼は、爆豪とは対照的にレスキューポイントだけで50ポイントが与えられていた。

彼はスタート開始から他の人とは違い、個性すら使った様子が伺えなかった。

ヴィランに出会っては逃げ惑い、ヴィランに攻撃を与える意思さえないのかと思われ、教師たちはなぜこの子はヴィランに攻撃しないのだ?と思われていた。

しかし、ラスト3分で0ポイントヴィランが放たれ、それに真っ先に逃げるであろうと思われたが、彼が、巨大ヴィランの前で、岩に足を挟まれた女の子を見た瞬間走り出した。

そのまま両足に力を込めて全力でジャンプした。

そのまま、巨大ヴィランに目前までくると、右手を大きく振り絞り、ヴィランの顔面へと叩き込んだ。

ヴィランはこれにより戦闘不能となった。

 

ここだけ見たら、女の子のピンチに駆けつけ、強大な敵に立ち向かい、勇敢にも撃破する。と思われるだろう。

しかし、彼はたったそれだけの動作で、左手以外の四肢がグチャグチャになる程であり、

彼はそこから自由落下をはじめ、着地する手段がないのか慌てていたが、彼が助けようとした女の子に助けられるというなんとも言えない結果となる。

そのあとすぐに試験終了の合図が出て、彼は0ポイントで試験を終えた。

 

この結果を知っていれば、十中八九普通の試験官なら愚かと口にするだろう。

たったひとつの動作で使い物にならなくなるとは、ヒーローとしてはまともに活動すらできない。1を助ける為に全を犠牲ににするのは現実では正しくない。

それが賞賛されるのは物語の中くらいであろう。

 

しかし、ポイント付けを行っていたのは、幸か不幸かヒーローたちである。元々彼らは、そのような物語に憧れ、ヒーローを目指したような人たちが。

そのような人達が、このような熱い展開が嫌いなわけがない。

 

それによって、巨大ヴィラン撃破ということで、かけると同じ50ポイントが与えられた。

 

 

何故、彼らが評価に困っているか、それは今年の合格最低ポイントは総合50ポイントであったからだ。

 

そう、緑谷は本当に、本当にギリギリ合格をもぎ取っていた。

彼らは、まさかギリギリ合格するとは思わなかったのだろう。

あの行いに50ポイントを与えたが、彼を見た限り、1回の個性使用で腕がボロボロ、足がボロボロとなっていた。

それで彼が雄英でやっていけるのか、偶然勝ち取るのなら彼の一つ下の成績の方が安定しているので、彼の方がいいのではないかと、彼らは心の中で思っていた。

 

そんな思考を言葉に出した人がいた。

 

「あんな成績で、雄英に受かるとは。本当に合理的じゃないね。彼がこれからやっていけないことは目に見えている。」

ヒーロー、イレイザーヘッドである。

彼は、誰にも聞こえないであろう声量でボソボソと呟いただけであったが、

思いのほか会議室が静かであった為、他の教師たちの耳に入った。

 

「....。確かにそうだよなぁ。どうせやっていけないならひとつ下の子を入れた方がいいのかも。」

イレイザーヘッドの言葉に誰かが続いた。

 

それから、各人が思っていた言葉を発し始めた。

 

 

 

 

しかしその言葉に待ったがかかった。

「いいではありませんか。面白そうで。私はこの子がどんなヒーローになるのかが、見てみたいです。」

この学校の最高責任者の校長先生であった。

 

流石に校長には反論しにくいのであろう教師たちは口を閉じる。

 

そのまま緑谷の評価を終え、合格者全生徒の論評が終わった。

 



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合格発表

彼、天野翔は緊張した顔でリビングのソファーに座り、コーヒーを飲んでいた。

彼の膝には習慣となっている、彼の妹、風香が座っている。

 

「おにいちゃん!ついに今日だね!」

風香は背中をかけるの胸に預け、真上を向き、彼に顔を向けながらそういった。彼女に緊張の色は見えない。翔への信頼故か。

 

「....そうだね、き、今日だね。」

風香とは対照的に、緊張の色をにじませた顔をしていた。

そう、彼が入学試験を受けてから1週間が経ち、今日が合格発表日となっていた。

彼は合格を確信している。筆記の自己採点では、マークミスがなければほぼ満点に近く、実技に至っては、彼より活躍したものはいない為、最低でも平均以上であろうと思っている。

しかし、緊張はするのだ。

これで自分の人生が決まるのだから。

 

彼が緊張した顔でコーヒーを飲んでいると、玄関の方から声が聞こえた。

 

「か、か、翔ーーーーー!」

 

 

 

「と、届いだーーーー!」

リビングと廊下をつなぐ扉がバンと開かれた。

そこには、彼の父、翼が慌てた様子で、封筒を掲げながら翔に言った。

 

翔はついにきたかと、緊張した顔でそれを受け取った。

翔は一度深呼吸をして、それを開けた。

 

 

すると中から出てきたのは、丸い円盤状の直径5センチほどの機械であった。

 

翔は一瞬驚きながらも、機械の脇につけられた、スイッチを押した。

 

すると丸い機体の中心から光が伸びて、四角状に映像が投影された。

 

「私が投影されたぁ!!」

そこには黄色のスーツを着込んだオールマイトが映っていた。

 

「今回は、私が合否を発表することになっている。なぜ私が映されているかって?それはね、今年から私は雄英に務めることになっているからだ!!天野翔くん。君のお父さんとは随分仲良くさせてもらってね、まさか彼の息子が雄英に来るなんてね、これも運命なのか!はっはっ.....え?もっと巻けって?......んんっ!!君は文句なしの合格だ!!筆記、実技共に堂々のトップだったぞ!!!!私雄英で君がくるのを楽しみに待っているよ!ではっ!!」

 

そこで映像が終わった。

 

「よ、よかったな!翔!」

翼が泣きそうな表情で翼を褒めた。

 

「お兄ちゃんおめでとう!!!!」

風香は満面の笑みで兄の雄英合格を祝った。

 

「ありがとう。」

翔は前半の内容には驚きながらも、緊張から解放され安堵していた。

 

 

「まさか、オールマイトが教師とはなぁ。まぁ彼なら大丈夫か。翔、オールマイトはとても人格者だ。安心するといい。」

翼はオールマイトが教師になることを聞き、驚きながらもかけるにそう告げた。

 

「うん、そうだね。僕もオールマイトには会ったことがないからすごく楽しみだよ。」

本当に楽しみなのであろう、満面の笑みでそう答えた。

なんて言ってもオールマイトはヒーローの中でトップである。

自分の父よりもすごい人など見たことがなかった為、翔は好奇心が溢れ出していた。

 

 

それから翔は翼と風香との会話をそこそこにして、上着を着て家から出た。

彼が向かっているのは、例の公園である。

 

 

公園に着き、なかの方に入っていくとベンチに二人の少女がいた。

カールがかかっている薄青の髪を持つ波動ねじれと、オレンジ色のロングの髪を一つに縛ってる拳藤一佳である。

今日は公園で、ねじれと一佳と翔で結果を報告する為会うことになっていた。

 

「お待たせ!ねじれちゃん、一佳!」

翔は彼女達を見かけたので声をかけた。

 

その声で、彼が着たことに気がつき二人はベンチから立ち上がり彼に近づいていった。

「かけるくーん!おめでとーーーー!」

ねじれは翔の合格がとても嬉しかったのか勢いよく翔の胸に飛び込んだ。

翔は優しく抱きかかえながら、その態度に嬉しくなったのか、感謝の言葉を述べながら頭を撫でた。

 

「翔!おめでとう!!これで一緒の学校に行けるね!」

一佳はねじれの態度に不機嫌になりつつも、翔とともに学校に行けることが嬉しいらしく、笑顔で翔に話しかけた。

そう、一佳も雄英に合格していたのだ。

 

 

「ありがとう、一佳。一佳もおめでとう!これでまた三年間一緒だね。」

翔も一佳と共に入れることが嬉しいのであろう、純粋に彼女の合格を喜んでいた。

 

 

その後に各自用事があるらしく解散となった。

 

翔は、家に向かうことなくそのまま学校へ向かった。

今日の報告を、担任の先生である、影山日陰先生に報告する為である。

翔が学校へ向かい、校門まで来ると彼女は立っていた。

身長は160前後であり、肩で切りそろえられた黒色の艶のある髪、つり目で鋭い印象があるが、顔が整っている為とても美人だ。

 

「あ、影山先生。待っててくれたんですか。」

翔は彼女が校門で待っているとは思わず、驚きながらも彼女に声をかけた。

 

「あ、あぁ。それよりどうだ?雄英の結果は。」

彼女も結果が気になるのであろう、緊張した顔で聞いてきた。

 

翔はその質問に答えるように、満面の笑みでうなずいた。

 

「そうかそうか!受かったか!それは良かったな!」

彼女も翔が受かったのが嬉しいのか今までにないくらい笑顔であった。

翔はそんな顔に驚きました見惚れていた。

 

「ん?どうした?そんな固まって。」

かけるのそんな表情に日陰は疑問を呈した。

 

「いや、影山先生って笑うと本当に可愛いですねって思いました。一瞬見惚れてました。」

翔は思ったことをニヤニヤとしながらそのまま口にした。日陰の面白そうな反応を期待して。

 

「っ!な、何をいっている!教師をバカにするんじゃない!」

日陰も嬉しいのであろう、耳まで真っ赤にしながら頬が緩みそうになるのを耐えながらそう言った。

 

「本当ですよ、教師でなかったらアタックかけちゃうくらいです。」

翔は日陰のそんな表情に満足しながらも最後の追い討ちをかけた。

 

「わ、わかった!今回はおめでとう!また卒業式でな!」

日陰はついに耐えられなくなったのか顔を真っ赤にしながら走り去って言った。

 

 

 

日陰が職員室に戻り、戻り机に座ると、まだ顔の熱が冷めないらしくてをプラプラとして顔に風を送っている。

隣の同僚の女性はそれを見て茶化し始めた。

 

「日陰ちゃん、完全に女の顔になってるよ..。」

若干呆れながらもニヤニヤと言ってきた。

 

「う、うるさい!そんなことはない!後日陰ちゃんと言うんじゃない!」

日陰は指摘されたことに恥ずかしくなり余計に真っ赤になっていた。

 

「....。もう卒業したら教師と生徒じゃないしいいよな....。」

自分に言い聞かせていたのか、そのセリフを隣で聞いた女性は日陰の本気具合に驚きながらも、翔は誰にでもいい顔をするのを知っているので、日陰を少し憐れみながらもその恋が実ることを密かに応援した。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、彼、翔は駅前の時計台の前で立っていた。

 

「おーい!翔!お待たせ!」

 

翔を見つけて話しかけてきたのは一佳であった。

そう、翔は一佳と待ち合わせをしていたのだ。

彼らは受験生であった為特に出かけることができなく、合格したために息抜きに行こうと一佳と出かけることになったのだ。

 

翔が声の方を向くと彼女は立っていた。

 

いつも一つに結んでいた髪を下ろし、綺麗に巻き毛にされていてセットされている。前髪を止める銀色のピンは女の子らしさを前面に出している。

顔には若干薄化粧がされており、口は鮮やかな薄紅色のリップをつけている。

服は膝くらいまでの鮮やかなワンピースだ。そのワンピースを腰の辺りでベルトで止めているので、腰の高さが良くわかり、胸の大きさを若干強調している。

その上からまだ若干肌寒いのであろうジャケットを肩からかけていた。

本当に美人であった。

 

同じく時計台で待ち合わせていた男や女の人たちが一度は目を向けるくらいこの中で一番輝いていた。

 

翔は今までに見たことのない姿に見惚れていた。

一佳の今日のお出かけの本気具合がわかり、翔は嬉しくなった。

自分と出かけるために、付き合ってもいないのにここまで本気を出され、その健気さに抱きしめたくなったが理性で抑えた。

 

「一佳、今日いつも以上に一段と可愛いね。一瞬誰かと思ったよ。髪型もよく似合ってるし、ワンピースを着たのを見たことなかったから思わず見惚れちゃったよ。」

翔は思ったことを口にして褒めていく。

 

一佳はそれが本当に嬉しいのか顔を綻ばせながら、もう一歩勇気を踏み出した。

 

彼女は翔の横まで来ると彼の腕を抱き寄せ胸にあてた。

一佳の平均以上の胸が彼の腕を押し当てたことにより歪む。

 

「....。今日ははぐれるといけないから腕を掴んでてあげる。」

自分でも似合わないとわかっているのか、若干声を小さくしてそう言った。

 

その様子に翔は微笑みながら感謝の言葉を述べた。

 

 

その様子を見た男は唇を噛み締めながら悔しさを表し、

女はイケメンな男の対応が完璧すぎたのか、自分の隣にいる男と彼を交互に見ながらため息をついていた。

 

 

 

周りはカップルと思うだろうが、彼らは付き合ってはいない。

あれだけラブラブにしながらも。

これが1番の驚きであろう。

 

 

それから翔と一佳はカップルのようにデートを楽しんだ。

午前中に恋愛ものの映画を楽しみ、お昼は駅中でパスタを食べた。

午後は駅前のデパートに入りショッピングを楽しんだ。

 

 

夕方の5時頃に彼らは再び待ち合わせのところに来ていた。

 

「今日は楽しかったね、一佳。」

翔が一佳の顔を見つめてそう言った。

 

「うん。そうだね!また一緒に来ようね!」

一佳も余程楽しかったのか、満面の笑みでそう答えた。

 

それから彼らは解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

再び会うのは桜が満開に咲き誇っている、雄英高校の正門。4月7日。

雄英高校入学式である。

 

 

 

 

 

 




次から入学式。


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雄英高校入学式①

4月7日

ヒーロー科のある、全国屈指の高校、雄英高校。

偏差値は75を超え、倍率は300オーバー。

全国各地から雄英の生徒となるために集まって来るがそのほとんどが志半ばで散ってゆく。

 

国立ヒーロー育成学校、雄英高校。

ヒーロー育成学校屈指の偏差値を誇るこの学校に入学を許されたこと自体、強力な個性と認められたエリートである。

 

しかしこの学校には、入学の時点から優等生と劣等生が存在する。

 

 

 

 

翔は雄英高校の前で一佳を待ちながら、そんな電波なナレーションを頭に浮かべていた。

 

しかし言っていることは間違っていない。

この学校を受験する際に、普通科を選ぶ場合は少ない。大抵がヒーロー科志望であり、残りは経営科、サポート科を志望している。

 

では普通科の生徒をどうやって選んでいるのか。

 

それは簡単だ、ヒーロー科40人を決めた後に、普通科を第一候補として選んだ人を考慮し、ヒーロー科に落ちた上から順に普通科への合格資格を与えるのだ。

 

 

 

 

 

 

入学資格を与えられた生徒たちが門をくぐる中翔は一佳を待っていると、声がかかった。

 

「おーい!お待たせ!翔!」

雄英高校の制服に身を包んだ一佳が声をかけてきた。

 

「それじゃあ行こうか。クラスを見に。」

彼らは一緒にクラスを見るため待ち合わせをしていた。

 

一佳が翔の横に並ぶと、二人して歩き出す。

 

大きな門をくぐり、中に入るとそこには両脇を桜が満開に咲き誇る桜並木ができていた。

まるで、彼らの合格を祝福しているようである。

 

翔達が歩いて行き、校舎の入り口の前の階段を上ると、そこには人が集まっていた。

きっとクラスが書いてあるのであろう。

 

かける達も自分たちのクラスを確認するためにその人混みに近づいていった。

 

ヒーロー科はA、B組と別れている。

 

彼らが自分のクラスを確認するとお互いが頷いた。

「翔!一緒のクラスだね!」

あまりにも嬉しかったのか一佳がかけるに抱きついたため少し目立っていた。

 

「そうだね。これからよろしく。一佳。」

翔も同じクラスになれたことが嬉しいのか一佳の頭を撫でながらそう言った。

 

 

そこに声がかかる。

「あなた達目立ってるわよ。」

そんな語尾にケロケロと言葉を続ける少女がいた。

 

彼女は翔が入学試験で仮想ヴィランから助けた少女だ。

彼女の名前は蛙吹梅雨(あすいつゆ)。

身長は150センチと少し小柄。

丸みを帯びた可愛らしい顔立ち、大きめのパッチリと開いた目。

黒に少し青を加えたような綺麗なロングな髪。

一佳ほどではないが、低身長ながらも制服の上からでもわかる胸の膨らみ。

 

 

 

 

彼女は自分のクラスを確認するために掲示板へ近づくと、その前で抱き合っている男女がいた。

一瞬なんだ?と疑問に思いつつも男の顔を見ると、以前に自分を助けお尻を触った男であった。

それを見た瞬間、自分でもわからない胸のモヤモヤを解消するために彼らに声をかけたのだ。

 

 

「あぁ、そうだね。じゃぁ一佳、教室に向かおうか。それと君は、入学試験の時の子だよね?合格おめでとう。これから三年間よろしくね。」

一佳の頭から手を離し、彼女に向き合うと爽やかな笑顔で語りかけた。

 

 

梅雨は翔の笑顔に慄きながらも自分がAクラスに配属され一緒であると伝えた。

 

そのあとは一佳が彼女のことを知りたそうにしていたため軽く自己紹介を交えながら、入学試験でのことを伝えた。

 

翔はお尻を触ったことを言わなかったが、梅雨は流石に空気を読めたのかすでにそのことを言うつもりはなかった。

 

「翔、あんたあのでっかいヴィランぶっ飛ばしたの?」

一佳は呆れながらも改めて翔のすごさを思い知った。

 

「いやぁ...。あの時多分いけると思ったんだよね....。」

あの時は気分が高揚していたため勢いあまってやってしまったのだ。

彼はそれを少し恥ずかしがっていた。

 

そして、3人は揃って自分の教室であるAクラスへ向かった。

 

 

「ハーレムしね!!」

 

掲示板の周りにいたある男子から声が漏れたがそれが彼らに届くことはなかった。

 

 

 

 

 

かける達が教室へつくとポツリポツリと生徒がおり、各自で友好の輪を広げていた。

 

かける達は座席を確認するために教卓へと向かう。

 

 

そこには席順が書いてあったのだが、その人数を見て翔は疑問を呈した。

「あれ?人数が21人だ。募集では20人だったはずだけど....。」

翔の疑問に一佳と梅雨は同意しながらもあまり気にはしていないのは各自で席へ向かった。

 

 

 

 

天野翔はあ行であるため廊下側の一番前だ。

そのためか来る人来る人に挨拶をして愛想を振りまいていた。

 

「机に足をかけるな!!雄英の先輩方や机の製作者の方々に申し訳ないと思わないのか!!!!」

 

そう声をかけたのは、入学試験内容の説明会で0ポイントヴィランについて聞いた彼だ。

名前は飯田天哉(いいだてんや)。

身長も180前後と高く、よく鍛えられているのかガタイも良い。

それ以上にとても姿勢が良いためか、実際の身長以上に以上に背が高く見える。

きっちりと髪を整えており、四角の銀のフレームの眼鏡をかけているため、委員長をしていても違和感がないくらい好青年だ。

 

「あぁ?!思わねーよぉ!!お前どこ中だよ!端役がよぉ!」

威圧を込めてそう返した。

 

その彼の質問に答えたのはまだ入学式であるのに、何年もきているように思わせる、服を着崩してきている少年だ。

彼は爆豪勝己。

薄暗い金髪で、鋭い目つきが特徴であり、翔に続いて入学試験を2位で通過した天才である。

 

 

 

そんな光景を見た翔はこの学校生活に若干の不安を覚えながらも楽しくなりそうだと、柄にもなく思っていた。

 

 

そこで、扉がガラガラと開いた。

そこに立っていたのは、緑色の髪を天然パーマなのか爆発させた髪を持ち、童顔であり、頬に少しばかりのそばかすがある少年だ。

彼が、爆豪達の会話を聞いたのかビクビクしていたので、翔は挨拶をした。

 

「おはよう。僕は天野翔。よろしくね。君は?」

 

翔がニコニコと話しかけるのを見て少し強張っていた顔が治り、自分も挨拶をする。

「ぼ、僕は、緑谷!緑谷出久!よろしくね、天野くん!」

 

それを聞いていた爆豪は、緑谷が現れたことに驚き、そしてより一層不機嫌になりながらも、かけるの挨拶を聞いて余計に苛立っていた。

 

 

「おいおいおい!デクヨォ!お前なんでこの学校にいるんだよ、おい!無個性のオメーがよぉ〜!!!」

 

彼は緑谷にそう言いながら近づいた。

 

爆豪は無個性の奴が入学しているのが許せないのもあるが、

彼は去年のヘドロヴィランに襲われた時に緑谷に助けられそうなになった光景が、頭から離れないでいた。

あの時の緑谷のセリフ、表情がなぜか頭から離れないのだ。

そのイライラのせいもあって、

ヘドロ事件から緑谷に突っかかるのをやめていた爆豪であったか、今回は突っかかってしまった。

 

「か、かっちゃん!」

緑谷は自分の秘密を知られそうになったので、慌てて爆豪に声をかけた。

 

爆豪の言葉を聞いた、周りの生徒達は、驚きをあらわにしていた。

 

「無個性?.....冗談だろ?無個性が雄英にこれるわけないじゃん。」

 

そんな誰かの言葉を皮切りに、冗談だったと周りは思い始めた。

 

 

爆豪は緑谷に突っかかるだけではなく、一番前に翔が座っているのを一瞥した後、威圧しだした。

「おい!お前が、天野翔かぁ?!」

 

「そうだよ。よろしくね。爆豪勝己くん。勝己って呼んでいいかな?」

そんなセリフ怯む様子も見せず、微笑みながら答えた。

 

「あぁ?!なんで名前呼びなんだよぉ?!それよりお前が入試トップの野郎か。舐めてんじゃねーぞ!直ぐにそっから引き摺り下ろしてやる!モブが!」

 

爆豪は大きく舌打ちをして、自分の席に戻ると、先ほどと同じように両足を机の上へ上げて周りを威圧しだした。

 

周りも爆豪の天野の成績を聞いて驚いていた。

 

「面白い子だね。緑谷。あ、緑谷って呼んでいいかな?」

翔は爆豪のそんな様子を笑いつつも、緑谷に声をかけた。

 

「う、うんいいよ!って違う違う!天野くんって入試トップだったの?!す、すごいね!!」

緑谷は、爆豪に一歩も引かず話している姿に少し驚きながらも、入試の成績を聞いて、褒めだした。

 

 

「あー!君は緑のもじゃもじゃ頭の、地味目の子!!!」

そこで緑谷がいた扉の後ろから声がかかる。

 

その人は、女の子だった。

名前は、麗日お茶子(うららかおちゃこ)

身長は155センチほどで、ねじれ以上に童顔な顔。

綺麗な茶髪のボブの髪。

少し太めの眉であるが、タレているためかとても可愛らしく似合っている。

目は大きめでぱっちりしており、より童顔を強調していた。

スタイルは制服の上からはよくわからないが、確かにわかるのは胸元が大きく膨れ上がっていることだろう。

 

 

 

そこから顔見知りなのか、女の子が一方的に色々話しかけていた。

緑谷の方は女の子と話し慣れていないのか顔を赤くしながら照れていた。

 

そこで、翔のことを思い出したのか、慌てて彼女を紹介しだした。

「あ、ごめん、天野くん!彼女は麗日さん。」

 

緑谷のセリフに、天野の存在に気がつく慌てて挨拶しだした。

「あ、私、麗日お茶子!よろしくね天野くん!」

お茶子は翔の顔に驚きながらもそう答えた。

 

「よろしく、お茶子さん。僕は、天野翔。うららかおちゃこ、とても綺麗な響きだね。字はどんな字を書くの?」

翔はそんな綺麗な名前に驚き、挨拶をしたら字を聞き出した。

 

「え、えぇーー?!え、えっと、こんな字だよ!」

お茶子はペンと紙を取り出し自分の名前を書いた。

顔は真っ赤である。ここまで直球に名前を褒められたことがなく、しかもそれが異性のためか、すごく照れていた。

 

「本当に綺麗な名前だね。」

翔はお茶子が書いた字を見て、笑みを深めて再びそう漏らした。

それを聞き再びお茶子は照れていた。

 

それを見ていた、緑谷、その他大勢の男はただただ驚愕するしかない。

恥ずかしげもなく、直球で褒めるその姿勢に、女性との会話に慣れているのか、気負うことなく、簡単に可愛い女の子と仲良くなってしまった、その光景に。

 

 

「また翔のやつ。ばか。」

そんな光景を見ていた、一佳は誰にも聞こえないような声で、頬を膨らませながらそう漏らした。

 

 

 

 

 

 

 




ごめんなさい。一佳がヒロインのためB組だとちょっと面倒なので一人B組へと飛ばします。


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雄英高校入学式②

翔たちが入り口付近で会話をしていると何やら声が聞こえた。

 

「お友達ごっこをしたいならよそへ行け。」

そんなボソッとした、やる気の感じられない声が聞こえたのは廊下からだ。

 

そこには寝袋に包まれて横になっていた男の人がいた。

彼はイレイザーヘッド。

本名は、相澤消太(あいざわしょうた)。

180を超える大柄であり、黒い髪を肩より長く伸ばしているが、手入れをしていないのであろうぼさぼさの髪。

ドライアイなのか充血した目。

そして特徴的な大きなマフラー。

 

 

そんな彼の声が聞こえて教室から生徒たちの声消えると、相澤は寝袋で立ち上がりチャックとおろして、中から出ると、またボソッと声を漏らした。

「はい、君たちが静かになるまでに8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠けるよ。ちなみに、僕は君たちの担任の相澤消太。よろしく」

 

誰もが、彼の挨拶に驚いているとまた言葉を続けた。

「突然だか、これを着てグラウンドに出ろ。」

彼は自分が入っていた寝袋から運動着を出してそう言った。

 

 

 

それから男子は男子、女子は女子と体操着を受け取って更衣室に向かっていた。

 

翔が同じように更衣室に向かっていると後ろから声がかかる。

 

「よう!天野!俺は切島鋭児郎!よろしくな!それよりお前すげーなぁ。あの女の子になんな直球に褒めるなんてよ。」

 

そう声をかけてきたのは、切島鋭児郎(きりしまえいじろう)。

身長は170ほどであり、赤い髪で、真ん中がオールバック風になってるのが特徴の男だ。

 

「ほんとに、マジですげーな!天野!あ、俺は上鳴電気よろしくっ!」

彼に続いて話しかけたのは上鳴電気(かみなりでんき)。

身長は168ほどであり、黄色の髪の毛を右から左に流している、長めの髪が特徴であり、チャラそうな見た目をしている男だ。

 

「くそぉーーー!羨ましいぞおーーーー!オイラに彼女を紹介してくれよぉ〜!」

翔に泣きながらすがりついてきたのは峰田実(みねたみのる)。

身長は100センチほどしかなく、紫のブドウのような髪をしている男だ。

 

翔は、彼らのそんな様子に苦笑いを浮かべながら友好を深めて行った。

 

 

 

一方女子の方では、一佳が積極的にあの女の子、麗日お茶子に声をかけていた。

「私は拳藤一佳。よろしく、お茶子ちゃん。」

 

「うんよろしく!一佳ちゃん!」

一佳に話しかけられたお茶子は友達ができることに嬉しいのか、笑顔で返していた。

 

一佳は着替えながらそんなお茶子の体を見ていた。

しっかりと鍛えられており、すらっとした足。

キュッとくびれた綺麗なくびれ。

一佳ほどではないは少し子供っぽい花柄のブラジャーから覗く大きめの谷間。

シミひとつ見当たらない綺麗な肌。

 

自分より可愛いのではないかと一瞬危惧したが、

胸が勝っていたことに安堵したのか、少し表情を柔らかくして色々と自分について話していた。

一佳は翔と幼馴染であることを、少しばかりの牽制の意味を込めて教えたが、お茶子は全く気にすることなく驚いているだけだった。

 

「そういえば、お茶子ちゃん翔に名前褒められて顔真っ赤にしてたねぇ〜。もしかして?まさかのもしかして?」

一佳は自分が1番気になっていることをさりげなく聞いた。

顔は笑ってはいるが、目が笑っていなかった。

 

お茶子はそんな一佳に気がつくことなく、少し顔を赤らめながらも答えた。

「いやいや!ただ照れてただけだよー!翔君顔はかっこいいからさぁ。私そういうの興味ないよ!!」

 

一佳はお茶子が嘘を言っているようには見えなくそれで、ようやく安堵の息を漏らしていた。

 

 

 

 

 

 

生徒たちがグラウンドに集まると、そこにはボール投げのためか白線を引かれて準備してあった。

 

「えーこれから個性把握テストをする。」

生徒たちが集まるのを確認すると相澤はそういった。

 

それを聞いた生徒たちは各人が思っていたことを口に漏らす。

「えー!入学式は?!ガイダンスは?!」

お茶子は入学式を楽しみにしていたのか残念そうにそう漏らした。

 

 

 

それから個性把握テストの説明が始まった。

 

相澤によると、今まで中学校で行なっていた個性を禁止していた体力テストの個性を使用して測るものらしい。

 

彼によると、今の時代個性を禁止して子供達の運動能力を測ることは無意味であり、合理性に欠ける、とのこと。

これは、文部科学省の怠慢だ。とため息を漏らしていた。

 

一方個性を解禁しての体力テストに興奮してきたのか、各人が喜びの声を上げていると、それを見た相澤は何を思ったのかこんなことを言った。

 

「よし、8種目トータルで最下位の者は除名処分としよう!」

相澤は唇を釣り上げて獰猛そうに笑いならそういった。

 

「「「はぁぁあああああ?!?!」」」

 

生徒たちから驚きの声が上がった。それはそうだろう。まだ入学して1日も立っていたいのに、除名になるかもしれないからだ。

 

しかし、流石にこれは先生の嘘であろうと思っている生徒多かった。

その中で、彼、翔が納得いった表情で声を漏らす。

 

「.....。そうか、だからAクラスだけ一人多めに21人生徒を取っているのか....。これは、予定調和だ。」

 

そう声を漏らした声が聞こえたのであろう、周りの生徒はそのことを理解したのか、より一層顔を青ざめ出した。

 

その中で1番顔を青ざめているのは、緑谷であった。

 

ここで緑谷の個性の説明を使用。

彼の個性は「ワン・フォー・オール」である。

これはオールマイトと同じと思うだろう。

そう、全く同じだ。

もともと、個性「ワン・フォー・オール」とは人へ譲渡できる能力がある。

人から人へヒーローの意思とともに受け継がれてきた個性である。

オールマイトは元々自分の後継者となる者を探しているときに緑谷に出会い彼に託そうと決め、彼はオールマイトの個性を受け取ったのだ。

 

しかし、オールマイトの個性は、強力だ。

強力であるが故に、体もできておらず、受け取って数週間のの緑谷に制御をしろというのは到底無理な話であった。

彼ができるのは、0か100。

個性を使わないか全力で使うかのみである。

しかし彼は個性を使うと衝撃がひどく一発で腕をダメにしてしまうため、今回の個性把握テストは個性なしで受けなければならなかったからである。

 

 

 

 

 

それからお手本ということで初めにボール投げを一人の生徒がすることになった。

 

「えーじゃぁ、見本として今から実技成績1位のやつにボール投げをやってもらうか。こい、天野。」

 

「はい、わかりました。」

 

相澤の言葉に天野は返事をして腕をまくりながら前へ出た。

それを聞いた爆豪は大きく舌打ちをしていたが、彼には聞こえなかった。

 

「あぁ、円の中から出なけりゃ何をしてもいいぞ」

 

相澤のその言葉に翔は準備を始めた。

 

翔は相澤から距離を図れる機械でできた特殊なボールを受け取ると、

体の中にある力を練り込み全身に行き渡らせる。

 

全身に力が行き渡ったのを確認すると右手にボールを持ち、おおきく振りかぶって力を極限まで込めながら腕を振り抜いた。

 

「おぉーー!」

周りから驚きの声が漏れた。

 

投げられた球は半円状を描きながら地面に落ちた。

 

「記録は....。620メートルだな。」

相澤が翔の飛距離をタブレット端末で表示しながらみんなに見せて、教えた。

 

「うぉーーー、すげぇーーー!」

その飛距離に自分も早くやりたいのか、それぞれが言葉を漏らす。

 

 

 

 

そして個性把握テストは始まった。

 

 

 

初めは50メートル走からだ。

基本的に、記録は2回取るため、彼は1回目は普通に人の状態の、力を練りこんだ状態で挑む。

 

翔とともに走る女の子に挨拶しつつ、全身に力を浸透させる。

 

合図とともに、足に力を込め、強く踏み込む。

翔が走り終わりタイムが出ると4秒38であった。

これが翔の人間の時の限界である。

 

翔は再びスタート位置に戻ると言葉を漏らした。

 

「うーん。一部分だけ竜化したらもうちょっと伸びるかな。」

 

翔はそう呟くと、突然、靴を脱ぎ始め、ズボンをまくっていく。

 

「あいつどうしたんだ?靴脱いで。靴擦れでも起きたか?」

切島がそう疑問を口にして、上鳴もそれに続く。

 

「そうじゃね?次のテスト大丈夫か?」

 

「翔は大丈夫だよ。まぁ見てなって。」

上鳴の心配に、一佳が大丈夫と言うと、上鳴が一佳から視線を外し、翔を見た。

 

 

翔は一部分だけ竜化することを少しだけ苦手としていた。

一部分だけ竜化しても戦えなくはないが、全身竜化よりはるかに神経を使うため、戦闘では基本全身竜化している。

しかし、個性把握テストではそれだけに集中すればいいため一部分だけ変化することができる。

 

翔は太ももあたりまでズボンを捲ると部分変化を始めた。

足から鱗が生え始め、足を覆っていく。

太もものあたりまで生え揃うと、翔は準備をするために、地面を掘っていく。

 

「おぉー!足が変化したぞ!鱗か?あれ?なんか生えてきた!」

切島が翔の個性を見て興奮気味に声を上げた。

 

 

「.....。へぇ。」

翔の変化を見た相澤は声を漏らす。

 

「先生!準備ができました!始めてください。」

そして準備が終わったのかスタートと体制に入った、翔は相澤に声をかけた。

 

翔は盛り上げた土でクラウチングの体制に入ると両手を地面につき、獣が走る体制を作った。

 

翔と隣の女子が準備を終わったのを確認すると、スタートの合図を出した。

 

翔はうちにある力を全身に浸透させると身体能力が劇的に上がる。

それは筋力だけではない。

反射神経、時間の認識速度も上がるのだ。

 

0.01秒単位で認識できるためスタートの合図がなった瞬間に、右足にためていた力を利用し、地面を蹴り上げるように前へと飛んだ。

スタート地点から半径1メートルほど地面から2、30センチ沈むほど衝撃により地面が割れた。

 

 

一回の飛びで35メートル弱飛んでいたので、地面につく瞬間に左足に貯めていた力を利用してまた地面を蹴り上げ、飛んだ。

 

 

 

「お、おぉーーーー!は、はや!あいつめっちゃ早いやん!!!!!!」

 

「や、ヤベェ才能マンや、才能マン!」

 

切島や上鳴などがそれぞれ声をあげる。

 

 

 

驚くことに、翔はたった2歩で50メートルを走りきったのだ。

 

 

 

翔のタイムは、2.02秒であった。

 

 

 

 

 

 

 



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雄英高校入学式③

翔は50メートルを走り終わり、みんなが待っている場所へ向かった。

 

「いやー!天野すげーな!!お前!個性はなんかカッコいいし!」

切島が興奮気味にそう言ってきた。

上鳴も同意するように首をブンブン振っている。

 

「ありがと、それより、君たちも頑張ってね。」

翔は疲れた様子も見せずに彼らを鼓舞する。

 

順番が回ってきたのか、切島と上鳴は準備に入った。

 

 

 

それを尻目に、翔は自分の個性について考えていた。

 

実は、翔がさっき行った部分竜化もそうだが、普通に全身竜化をする際にはただ、竜化を行なっているだけである。

 

実際に、人間の時に行う内にある力を全身に行き渡らせるようなことはしていない。

 

そもそも竜化の時点で強力であるため、わざわざ全身に力を行き渡らせずとも良かったからだ。

訓練では、それを行なったりはするが、それをすると竜人化の持続時間が30分ほどに縮んでしまう上に、ひどく疲れるため、よほどのことがない限り使わないと決めていた。

 

 

「もし使ったら、1秒切れたかな?」

なんて少し残念がりながらも、そう呟いた。

 

 

それをたまたま耳にした人がいた。

爆豪である。

 

彼は翔にトップを引き摺り下ろすと宣言してから、個性把握テストを見て彼の個性をどのようなものか先程から考えていた。

 

しかし、蓋を開けて見たら、2秒弱と言う。自分で出来るか?と一緒の敗北感を味わう結果となっていた。

 

その上そのセリフである。

 

(クソが!まだなんかあるのか?!)

 

彼は自分が1番出ないのが許せないのだ。

 

そしてついに爆豪の番がきた。

 

爆豪とともに走るのは彼が目の敵にしている緑谷である。

彼は、爆豪と走ることが怖いのだろうか、ビクビクと爆豪の顔色を伺っていた。

爆豪がそんな緑谷の様子を見て、先程から、翔に対してのイライラに加えて、余計に機嫌が悪くなっていく。

 

(クソデクの分際でそんな目で見てんじゃねーよ!!!まさか、こいつ俺を憐れんでるのか?!)

 

彼は入学時点で自分が1番じゃなじゃなかったことで少しばかり自信が折れそうになっていた。

ただの自意識過剰であり、疑心暗鬼に陥っていた。

 

 

 

二人が準備につくのを確認すると相澤は合図を鳴らした。

その瞬間に二人は走り出す。

やはり、運動神経は抜群なんであろう、爆豪は緑谷よりも早く一歩を踏み出した。

彼は一歩を踏み出した瞬間に、両手を後ろへ向け、手から出るニトロを爆破させ、爆風により、エンジンのごとく加速する。

一度加速し、空中に浮くとこまめに連続で個性を発動することにより地面へと足とつけると言うタイムラグを消し、走りきった。

 

 

タイムは4.13秒であった。

 

それを聞いた爆豪は走る前の緑谷へのイライラ以上に、自分が1番ではない、翔に負けたことへの悔しさでいっぱいであった。

唇を噛み締め血を垂らす。

 

 

 

 

 

 

 

50メートル走が終わることにより次々と種目を行なっていく。

2種目目は握力測定。

翔は1種目目と同様に、今度は腕だけを部分竜化をして測定した。

 

340キロ

 

3種目目は、立ち幅跳び。

 

翔は今度は翼を使い飛ぼうと考えたため、流石に服を脱がなくてはいけなかったため、上着を脱いだ。

 

 

 

 

そんな様子をお茶子がぼーっと眺めていたため、心配になって彼女の友人の女の子が声をかけた。

「お茶子どうしたの?ぼーっと見つめて、何かあったの?」

友人の女の子はそっち系には疎いのだろうか純粋に疑問を投げかけた。

 

「え、えぇ?!私ぼーっとしてた?!あ、あれーなんでかなぁ〜。」

お茶子は友人の言葉にハッと気がつき顔を赤らめながらもそう答えた。

 

実際なぜ見ていたのか、わからないのである。

彼女の初恋はまだであるため、なぜ見つめていたのか、わからないのである。

 

(か、翔君、かっこいいもんね。見ちゃっても仕方ないよ。うんうん。)

お茶子はそう自分にいい聞かせて一人で納得していた。

 

 

翔は上着を脱ぎ上半身を裸にすると肩甲骨の辺りから羽を生やし始めた。

羽を生やした影響であるか、羽の周りを中心に脇腹まで鱗が所々生えていた。

 

翔は1時間以上は飛んでいられることを相澤に告げたら

「じゃぁ、測定不能ってことでいい。お前以上の記録がいない場合はこの種目のトップで表すから。」

 

翔の記録 無限

 

 

4種目目 反復横跳び

 

 

翔はこれはどのようにもできないため内にある力を全身に行き渡らせ、反射速度と時間の体感速度を上げ、極限まで地面にいる時間を短くして対処した。

 

記録79回

 

 

5種目目 ボール投げ

 

測定の順番は名前順なため翔が1番始めであった。

この競技も翔は握力測定と同様に腕の部分竜化で対処した。

 

 

記録 890メートル

 

 

翔が、記録測定を終え、切島たちと話していると、声が聞こえた。

 

「な、なんで?!い、いま確かに使ったはず!!」

緑谷が記録を図っていたのであろう、円の中にいて、ひどく焦った顔をしていた。

 

「なぁ、天野。やっぱ緑谷やちっとまずいよなぁ。他の種目もほぼ後ろから数えたほうが早い結果だったし。」

切島が真剣そうに緑谷を見ながら天野に話しかけた。

 

「そうだね。でもいま彼は個性を使おうとした。でも、発動しなかったらしい。たぶん、先生に消されたんだ。イレイザーヘッドの個性で。それだけ危険な個性なのかどうか....。」

天野も緑谷を見ながらそう呟いた。

 

 

緑谷は相澤に何か言われているらしいがこちらからは聞こえなかった。

 

緑谷は円の中心に戻ると、何かを決心したかのような顔をしていた。

 

相澤からの合図があり、緑谷は深呼吸をした。

そして右手を牛をまで伸ばし大きく振りかぶり、そして、先程、何もなかったものとは違い、投げると同時に衝撃波が発生し、ボールは勢いよく飛んで行った。

 

 

記録は、705メートル

 

「お、おーーー!緑谷やるじゃねーか!!スッゲーなぁ!!」

切島が興奮してそういうと、周りも同じことを思っていたのか興奮して声を上げていた。

 

「本当にすごい、でも.....。なぜ個性を使うだけであんな負傷を?それほどデメリットがすごいのか...?」

翔も緑谷の記録に驚きながらも、彼の手の人差し指が尋常じゃないほど赤黒く腫れ上がっているのを見てそう分析した。

 

 

「やっとヒーローらしい記録でたねーー!すごいよーー!」

お茶子が興奮した様子でそう言った。

 

 

(な、なんだあのパワーは?!個性の発言はもれなく4歳までに起こる。じゃぁなんだあのパワーは?!無個性のあいつが出せるわけねぇーだろ?!)

 

爆豪は緑谷が無個性であることを知っていたため人一倍驚いていた。

 

(もしかして、もしかしてあいつは、個性のことを俺に今まで、ずっと隠してきたのか?!それでばかにしてたのかよ?!)

 

爆豪はその考えに思い至り、よほど許せないのか怒りを爆発させて、緑谷に詰め寄った。

 

「どういうことだ...。訳を言え!デクテメェ!!!(俺を騙してたっていうのかよ!!)」

爆豪が個性を発揮しながら緑谷に詰め寄ったため、相澤の個性によって爆発が消され、彼のつけていた特殊なマフラーにより拘束された。

 

「ひぃっ!」

緑谷が恐怖で悲鳴を上げたが爆豪の拳が届くことはなかった。

 

「くっっっっそがぁ!!!!」

それからしばらくして、爆豪が落ち着いたのを確認して相澤は拘束を解いた。

 

「ウォー、デクくん大丈夫?!すごい怪我だよ?!」

お茶子は緑谷怪我に気がついたのか心配そうに駆け寄った。

 

 

 

 

 

6種目目 上体起こし、

7種目目 長座体前屈は個性ではどうしようもなかったため

普通に測った。

 

上体起こし、36回

長座体前屈53センチ

 

 

 

そして最後の8種目目の持久走

 

 

これは2回測ることはないらしい。

それはそうだろう。何キロも走る持久走が、2回もあるのは地獄以上のものはない。

 

 

翔は、持久走と言うからには直接走らなくてはいけないのか疑問に思い、相澤に聞きに行った。

 

「相澤先生、持久走は羽を使ってもいいですかね?」

 

そうかけるが尋ねると、相澤はなんでもないように答えた。

「個性ありでって言っただろう?個性を使ったものならなんでもいい。」

 

 

 

21人全員がスタートラインに立つとそれぞれ準備を始めた。

1番目立っていたのは女性にしては身長が170もあり大きめの女の子だ。

彼女の名前は八百万百(やおよろずもも)。

艶のある黒髪をポニーテールに縛っている顔はしっかりと筋の通った鼻であり、少しツリ目気味の綺麗な目。日焼けを知らないのかきめ細やかな肌。

スタイルは身長に比例して誰よりもいいかもしれない。

すらっとした足に高い腰、キュッと引き締まった腰のラインから一佳以上にあるのではないかと思はれる胸へかけてのラインは黄金比といっても過言ではない。

 

彼女は、体の表面から自分の知識にある物を創造することができるらしく、何やら機械のパーツを取り出し、バイクを作っていった。

 

 

翔はこれを見て本当に個性を使うのならなんでもいいらしい、と思った。

 

 

 

スタートと同時に走り出し1番先頭を走っていたのはやはりバイクに乗っている、八百万出会った。それに続くのは左が赤、右が白という特徴的な髪をしていて、赤の髪の方にある目から頭にかけて火傷の跡がある男だ。彼の名前は轟焦凍(とどろきしょうと)。

彼は火と、氷を作り出せる個性も持っており、地面を凍らせて滑ることにより八百万に続いていた。

 

彼らが走っていると突然影か通った。

不思議に思い、上を眺めてみると、翔であった。

翔はみんなが走り出した途端に背中から羽を生やした勢いよく飛び上がり羽ばたいた。

 

 

 

 

 

全ての種目が終わり相澤からの結果を、生徒たちは不安そうな表情で伺っていた。

これで除名処分が出る人が決まるのだから。

 

「じゃぁ一人一人言うのが面倒だから一覧で出すぞ。」

相澤はそう言うと、空中へと順位表を投影した。

 

上から

一位 八百万 百

二位 天野翔

三位 轟焦凍

四位 爆豪勝己••••••

 

••••••二十一位 緑谷出久

 

 

 

と言う結果が投影された。

 

みんなは自分が最下位ではなく喜んで入るが、やはり除名処分にになるのだろうかと、みんな緑谷を見つめていた。

 

 

 

そんな時の声がかかった。

 

「除名処分っていうのは嘘だから。君らの本気を出させるための合理的虚偽。」

相澤はなんでもないようにそんなことを言った。

 

「はぁぁあああああ?!?!」

 

それを聞いた生徒たちは、安堵のためか、怒りのためか、声を上げた。

 

 

「デクくーん!よかったね!」

お茶子が緑谷にそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

それからは、各自更衣室に向かい着替えている。

 

「おーい。緑谷大丈夫か?その指?めちゃくちゃ痛そうやけど。」

切島と、上鳴が若干引きながらそう聞いた。

 

「だ、大丈夫。けれど、一応保健室に行ってくるね!」

緑谷は痛みに我慢して、表に出さないようにししながら着替えを終えて、保線室に向かった。

 

 

 

 

これで今日の行事も全て終わったため、翔は、一佳と仲良く二人で帰っていく。

 

「翔、今日は。楽しかったね。」

一佳が翔に顔を向けることなく歩きながらそう言った。

 

「そうだね、楽しかった。三年間楽しみだね。」

翔も一佳に顔を向けることなく歩きながら同意する。

 

 

 

 

こうして彼らの雄英高校の初めての1日が終わった。

 

 

 

 

 

 



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ヒーロー基礎学①

「お兄ちゃん、学校はどうだった?」

 

翔が今いる場所は自宅のリビング。

キッチンの方からは包丁で何かを切っている音が聞こえる。

彼の母の飛鳥が料理しているのだろう。

 

翔は今、妹の風香の宿題を見てあげているとこだった。

風香は宿題に疲れたのであろう、持っていた鉛筆を机へ置き、翔にそう聞いてきた。

 

「うん、すごく楽しかったよ。雄英だけあって本当に個性豊かな人が多いね。」

翔は、今つけていたテレビを消して風香へと体を向けた。

翔はこちらへ振り向き、質問を投げかけてきた風香の頭を撫でながらそう答えた。

 

「そっか、良かったね!」

風香は兄に頭を撫でられて嬉しいのか、自分から頭を押しつけながらそう答えた。

風香にとって雄英が良いところでも悪いところでも関係ない。

風香が1番気にしているのは兄の翔が楽しんでいるか、幸せでいるかが1番重要であった。

 

 

 

それからしばらくして彼の父、翼が帰ってきたので、夕食を食べることにした。

 

「翔君、学校はどうかしら?やっていけそう?」

母、飛鳥はかけるのことが心配なんだろう、少し不安げに聞いた。

 

「大丈夫だよ、母さん。すごく楽しいし、もう友達もできたんだ。」

翔は母に不安げな表情をさせたことが辛かったので、飛鳥を安心させるように、笑顔でそう答えた。

 

「飛鳥、翔は大丈夫だ。今までの学校でも、友達が多かっただろう?」

父の翼は翔のことを信頼しているのか、全く心配は必要ない、と飛鳥に語りかけた。

 

「そうね、翔君だものね。」

飛鳥は翼にそう言われてやっと安心したのか、食事を再開した。

 

 

 

 

 

 

次の日。

翔は一佳と仲良く雄英高校へ向かっていた。

 

「今日は、普通の授業に、ヒーロー基礎学だっけ?」

一佳は道路に生えている桜の美しさに目を奪われながらもかけるにそう問いかけた。

 

「そうだね、午前中は普通の授業で、午後からヒーロー基礎学が始まると思うよ。」

翔は一佳の質問に、あらかじめ知っていたのか、そう答えた。

 

 

そう、いくらヒーロー育成高校、雄英高校と言えども、世間一般の高校で教えている基礎授業くらい行なっている。

もしも、ヒーローについてのみ教えるのであれば、いくらヒーローが職業として人気になってきたと言えど、国立である限り国からそんなお許しが出るわけがない。

 

 

 

 

 

「おはよう」

翔たちは雄英高校へ着き、自分たちのクラスへ入ると挨拶をした。

まだ、7時30頃であるためかあまり人がいなく、疎らであったが挨拶がちらほら返ってきた。

 

「おはよう!天野君!拳藤さん!」

そんな朝から元気の良い返事を返してきたのは、飯田天哉である。

いかにも彼らしいと言った、はっきりとした発音で彼らへ応えていた。

 

「飯田君はくるのが早いんだね。」

一佳は挨拶もそこそこに自分の席へ向かったので、翔は自分のカバンを席へ置くと、飯田との会話に興じた。

 

「そうだね、いつも何があるかわからないから授業開始1時間前には着くようにしているんだ。今日は何もないが、普段はこの時間を使って予習復習をやってるんだ。」

飯田は翔としっかり目を合わせながらそう応えた。

 

翔は彼の生真面目さぶりに驚きながらも、しっかりと目を合わせられるのが気恥ずかしいのか苦笑していた。

 

それから教師が来るまでは、次々とくる友人たちを交えながらも会話を楽しんでいた。

 

 

扉が開き、担任の相澤消太が中に入ると、彼を認識した生徒達は、昨日の彼から何を学んだのか、訓練された軍人のごとく、口を閉じ席に着いた。

 

翔は自分もであるが、1日でよくこれだけ訓練されたな、と周りの友人らを見て苦笑した。

 

相澤は彼らの行動に満足げに頷きながら、朝のホームルームを始めた。

 

 

午前中の授業を普通に終えて、翔は、一佳や緑谷、お茶子に飯田とのメンバーと揃って食堂へ向かった。

 

雄英高校には大きな食堂が設備されている。

食堂では学生にとってはありがたくも、とても安い値段で料理系ヒーローの手料理が振舞われる。

食堂には、1〜3年までの普通科から経営科まで全ての生徒が一気に集まるせいが、非常に混雑していた。

 

翔達は席を確保し、列に並びながらも食事を受け取り、席へ着いた。

 

彼らが席へ着き昼食をとっていると、午後のヒーロー基礎学について話していた。

「ヒーロー基礎学って何をやるのかな?やっぱヒーロー基礎学っていうくらいだし担当はオールマイト先生かな?!」

麗日お茶子は料理系ヒーローの料理がよほど美味しいのか、口をいっぱいにしながらそう聞いてきた。

 

「オールマイト先生が担当になるかはわからないが、ヒーロー基礎学というくらいだ、きっと素晴らしいに違いない。」

飯田はお茶子の口に入った状態での会話を注意しながらも目を輝かせてそんなことを言った。

 

「そうだね、僕は座学じゃなくて運動系がいいかな。」

翔はお茶子がほっぺたにお米をつけていたので、それを指摘してあげながら、そう苦笑した。

翔は中学までは自覚はなかったが高校入試の仮想ヴィランとの戦闘、個性把握テストでの運動を通して自分が運動が好きなんだと自覚していた。

 

「かけるくーん!いつかちゃーん!やっほー!ここに座ってもいいー?」

そんな会話をしているときにかけるの後ろから声がかかった。

そう声をかけてきたのはかけるの友人であり、この高校の先輩の波動ねじれだ。

薄青色で、カールがかかってある髪を揺らしながら、翔達に笑顔でそう話しかけた。

 

「あ、ねじれ先輩。みんないいよね?僕の隣へどうぞ。」

翔はねじれにそう言われると一佳たちの同意を得ながら、ねじれを自分の隣へ座らせた。

 

一佳以外のメンバーが誰だか知りたがっているであろうと、気がついた翔はねじれを紹介する。

「この人はヒーロー科の3年生で、僕の友人の波動ねじれさん。僕が中学二年生の時に個人的に知り合ってそれから一佳と一緒に仲良くさせてもらってたんだ。」

緑谷達は納得の表情を浮かべてそれぞれが自己紹介していった。

 

「うん、いずくくんに、てんやくん、おちゃこちゃんだね!よろしくね〜!私のことはねじれちゃんって呼んでね!」

ねじれは彼らの名前を繰り返し、覚えるとそう言った。

 

それからはねじれを交え、翔や一佳の過去のことなどを話題に上げながらもお昼をとっていった。

 

 

 

彼らが昼食をとり、教室へ戻るとみんな午後のヒーロー基礎学が楽しみなのか、お昼休み終了のチャイムが鳴る前にみんな揃っていた。

 

 

「わーたーしーがぁーーー!普通にドアからきたーー!」

昼休み終了のチャイムが鳴ると同時に扉をあけて入ってきたのはなんとオールマイと出会った。

 

オールマイトの登場に皆は一瞬唖然としながらも彼の登場に声をあげる。

「おおおおおーーー!オールマイトだ!」

 

「本当に教師をしてるのか!!」

 

「あれシルバーエイジのコスチュームね!」

 

それぞれが思い思いの感想を述べていた。

 

彼、翔も一度は見てみたかったオールマイトの登場に目を輝かせてオールマイトをじっくり見ていた。

 

 

「さて、私が担当するのはヒーロー基礎学だ!そして今日行う授業の内容は、戦闘訓練だ!そしてみんなにはこれを着てもらう!!」

オールマイトそう説明を終えて、左脇の壁を指差すと、壁が動き出し、それぞれの番号が書いてあるロッカーが出てきた。

 

オールマイトの説明によるとそこに入っているものはそれぞれ望んだヒーローコスチュームだ。

 

彼らは入学の前の段階で、提出された個性届けとともに、自分の要望を書いた紙を送ることにより、学校からその要望に沿ったコスチュームが支給されることになっていたのだ。

 

「よし、それをきたものから順次、グラウンドβに集まるんだ!」

オールマイトはそういった。

 

 

翔達がそれぞれのコスチュームに着替えて向かった場所は、入学試験を行った試験会場、市街地エリアであった。

 

そこには様々なコスチュームで身を包んだ、生徒達がいた。

 

 

 

「格好から入るっていうのも大切なことだぜ!

 

 

自覚するのだ!!

 

 

今日から自分は、

 

 

ヒーロなんだと!!!」

 

 

オールマイとは大きく笑いながらそう言って、さらに言葉を重ねた。

 

 

「さぁはじめようか!有精卵ども!!!!」

 

 

 

 

 

 

「かっこいいね!そのコスチューム!」

お茶子は出久の格好を見てそう言葉を漏らし、すぐに自分の格好が恥ずかしいのがモジモジしていた。

 

彼女は自身の要望とはあっていなかったのか、パツパツのスートを着ていた。

黒をベースに、ピンクのラインが入ってる。

そして、制服のせいで分からなかった彼女のスタイルがダイレクトにわかってしまった。胸は大きいとは思っていたが、パツパツスーツにより、より強調されることにとって、ブラジャーじゃ収まらなかったのか歩くたびに少し揺れている。

スーツを着るためか体に下着の線が出ないように下着はきていないのかもしれない。

 

話しかけられた、出久はそのことに考えが及んだのか、それともパツパツスーツに興奮したのたとても慌てながら彼女に返事をする。

「あ、ありがとう!」

 

お茶子は出久と話していると視線の先に翔達が目に入ったので声をかけた。

「おーい!翔君、一佳ちゃん!」

走り出したお茶子に続くように出久も慌てて走り出す。

 

 

お茶子が話しかけると、翔達もこちらに気がつき目があった。

「いやぁ一佳ちゃん良くにあってるね!それに翔君は、そのなんで上着てないの?」

お茶子は一佳のコスチュームを褒めた後に直接は目を合わしづらいのか、チラチラと翔の上半身を見ながらそう聞いた。

 

 

 

一佳のコスチュームはチャイナ服をベースにしているのか、緑をベースに黄色のラインが入ったチャイナ服で、動きやすさのためか丈は膝上くらいまでしかなく、左腿の付け根辺りから布が切れていいるため、パンツが見えるか見えないかのギリギリのラインであった。

パンツは見せパンを履いているためか本人は気にしていない。

 

一方翔の方は、竜人形態になっても耐えれるように特注した伸縮、防刃に特化された黒色のすらっとしたスーツのようなもので、所々に銀色の鱗なようなもので模様付けされているのはサービスであろうか。

上半身は鱗を十分に生かすために裸ではあるが、人間時のコスチュームもある。

それは彼は今首に、特殊合金で作られて壊れることがないであろう銀のチェーンで繋がれた、ペンダント型の機械を付けている。この機械を作動させることにより中に収納されている服が出るのだが、彼は今日はハナから竜人形態で行くことに決めているため、今はしまった状態で首にかけていた。

 

 

かけるはお茶子の反応に苦笑をしてそのわけを話そうとしていたが、オールマイトからの集合がかかり彼の元へ集まった。

 

 



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ヒーロー基礎学②

「さぁ、演習を始めよう!ヴィラン退治は統計によれば屋外で見られることが多い。しかし凶悪犯罪などは屋内で行われることが多い!

監禁、軟禁、裏商売などな!よって今日行うのは室内における戦闘訓練だ!」

 

彼、翔がオールマイトの元に集まると、オールマイトは今日の趣旨を説明し出した。

その後すぐに生徒らから、オールマイトの説明に対して疑問に思ったことをそれぞれ口にする。

流石のオールマイトでも全てを聞くことができなかったのか、慌てた様子で、カンペらしきノートを取り出した。

オールマイとはそのカンペを見ながら生徒の質問に答えていく、

 

オールマイトの説明をまとめるとこうだ。

 

演習内容は、室内における戦闘訓練。

訓練が行われる場所は、市街地エリアにある一つのビル。

5階建くらいのビルだ。

制限時間は15分。

くじにより2対2の、ヒーローチームと、ヴィランチームに分ける。

予め、この訓練の目的を決めていたようだ。

設定は、ヴィランは自身のアジトに直径2メートルほどのロケット型核兵器を隠し持っている。

ヒーローはその情報を独自のルートで手に入れることができた。

ヴィランは1〜5階まで好きなところに核兵器を隠すことができる。

ヴィランの勝利条件は、15分以内に、ヒーローチームに核兵器にタッチされないこと、ヒーローチームを全滅させることだ。

 

ヒーローチームは時間になったらビルの中に侵入し、核兵器を探す。

ヒーローチームの勝利条件は、ヴィランチームを全員倒すか、核兵器にタッチすることだ。

 

この説明をオールマイトが終えると、翔は自分が疑問に思ったことを口にする。

 

「先生、Aチームは21人いるんですが、どうしましょう?一人余ってしまいます。」

他の人もそれに気がついたのか同じく疑問の声が上がっていた。

 

「うーん、そうだね、ヴィランチームとヒーローチームの組みはくじで決めるからそれだけ一人用のくじを用意しよう!最後に2ペアできたグループの代表にまたくじを引いてもらって、残りの一人を選んでもらおうか!」

オールマイトは一瞬、悩んだそぶりを見せるが、そう言葉を告げた。

 

「チームは、くじで決めるのですか?!」

飯田天哉は、くじで決めることに驚いたのか疑問を口にした。

 

「ヒーロは、災害時は即興のグループを作って活動するからそれを見据えたんじゃないかな!」

飯田の疑問を聞いた緑谷は飯田に自分が思ったことを口にする。

 

「なるほどそういうことか!流石オールマイト先生だ!」

緑谷の説明に納得したのか、飯田は感激してるると体で表現しながらオールマイトに頭を下げていた。

 

「貴方達、それよりもっと大切のなことがあるでしょう?

オールマイト先生、15分という制限時間の中でこれ以上バランスを崩すと、流石にどちらかに有利すぎではないでしょうか?」

 

緑谷と飯田のコントのような会話を聞き、呆れた風に言葉を発したのは八百万百。

 

 

 

彼女は自分の体の表面から生物以外の物質を想像できるためか、肌面積が非常に多く、彼女のスタイルがいいことが合わさり非常に卑猥な格好になっていた。

お腹を出した、上着ではあるが、彼女の胸を覆う布面積が非常に少なかった。

彼女は胸の先端にある1番大事な部分を脇の方から少し覆う程度で、動けばめくれるのではないかと思うくらいであった。

 

八百万が質問を投げかけたのを聞き八百万を見ると、八百万を見た翔は流石に理性が働いたのか、一瞬胸に視線が行ったものの強引に顔を彼女の顔に向けた。

「おいおい、流石にあれはやばくないかな。」

翔は苦笑しながらも、誰にも聞こえないような声でそう漏らした。

 

 

 

八百万の質問を聞いたオールマイトは予め考えていたのか、スラスラと言葉を発する。

「そうだな!流石にそれではどちらかに有利すぎだろう!3人チームになった方はハンデとして、仲間内での通信をできないようにしようか!」

 

今回の演習では仲間内での連絡のやり取りをするためにそれぞれ通信用のインカムを渡されるが、3人チームの方は通信機械の故障という設定を盛り込んだ。

 

 

そしてクジを引くようにと、オールマイトは生徒達に自らが用意したクジを引かせる。

 

「僕が一人かぁ。」

翔は自分のせいで自分がいくチームが通信不良という設定が加わってしまうことに罪悪感を覚えながら、そう言葉を漏らす。

 

 

チーム分けは決まった。

 

Aチーム 麗日お茶子 緑谷出久

Bチーム 轟焦凍 障子目蔵

Cチーム 八百万百 峯田実

Dチーム 爆豪勝己 飯田天哉

Eチーム 青山優雅 芦戸三奈

Fチーム 砂藤力道 口田甲司

Gチーム 上鳴電気 耳郎響香

Hチーム 蛙吹梅雨 常闇踏陰

Iチーム 拳藤一佳 葉隠透

Jチーム 切島鋭児郎 瀬呂範太

Kチーム 天野翔

 

 

「よし決まったな!じゃぁ次はKチームのみとなった天野くんをどのチームに入れるか、クジを••••。」

オールマイトがくじが最後まで終わったのを確認すると、翔をどこに入れるかくじで決めると言っている時、生徒達の中から一つ声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

「先生、もしよかったら、俺たちの相手チームに入れてくれないか?」

そう言葉を発したのは、身長175前後の左右で髪の色が、白と赤とのツートンカラーの少年、轟焦凍だった。

 

「轟、本気で言ってるのか?」

流石に自分のチームメンバーのセリフに驚いたのか、障子が本気かどうか彼を横目で一瞥しながらそう尋ねた。

 

「ふむ、別にいいが理由は何かね?轟くん。」

オールマイトも本人達がいいのであればと、気にはしないが一応理由を聞くことにした。

 

「あいつが、入試一位の天野ですよね?それが理由です。俺は自分の実力が知りたい。」

轟は障子の疑問に気にすることなく、いつもはクールであるためか無表情なことが多かったが、今は少し笑っていた。

 

 

 

 

そのようなことがあってか翔は轟の敵チームに入ることになった。

敵チームは試合前に決めるらしく、翔は予めチームメンバーを知ることができなかったが、それもハンデの内と諦めることにした。

 

 

 

そうして訓練は始まろうとしていた。

 

 

 

「よーし、はじめのチームは、こいつらだーーーー!

ヒーローチームがAチーム!ヴィランチームがDチームだ!

残りの生徒は、観戦ががしやすいようにモニタールームへ移動してくれ!AチームとDチームは準備を始めてくれ!」

オールマイトはチームのボールが入った箱から二つのボールを取り出してそう言った。

 

 

Aチーム 緑谷出久 麗日お茶子 VS Dチーム 爆豪勝己 飯田天哉

 

 

翔はオールマイトの言葉に従って皆んなと揃ってモニタールームへと来ていた。

 

 

モニタールームの前では、4つのモニターがありそれぞれ一人ずつ映っていた。

 

 

「よっ!翔!一人になっちゃったね!」

一佳は翔のすぐ隣まで来るとおどけた風にそう言った。

 

「あはは、そうだねぇ。やっぱ味方チームに申し訳ないかな。轟の敵チームになっちゃったし。」

翔は一佳のそんな様子に苦笑しながらもそう言った。

 

 

 

『時間だ!それでは始めてくれ!』

 

そうして準備時間が終わりを告げたのか、オールマイトがマイクを持ってスタートの合図を出した。

 

 

やはりと言ったところは初めに動いたのは、爆豪であった。

作戦外なのであろう、慌てた様子で飯田が爆豪を制止するがそれに止まる爆豪ではない。

 

爆轟の目には何が映っているのだろうか。

その目には一人しか写っていない。

その、彼の個性のように燃え上がる感情を胸に、彼は扉を勢いよく開けて飛び出した。

 

「くそ!爆轟くん!」

飯田もすでに彼に言葉は届かないのであろうと思ったためこれ以上彼を追いかけるのをやめる。

幸い、彼は戦闘力ならトップクラスであるためか、その行動が裏目に出ないことを祈りつつ自分のできることをしようとした。

 

彼が初めに思ったことは相手の個性であった。

「緑谷くんと、麗日さん。

多分だが、緑谷くんの個性は超人的な衝撃を放つだろう個性だ。

見た限りだと、まだ制御ができないのか、一回で腕をダメにしてたから早々使ってこないだろう。それにこっちは核を所有している。あんな威力の個性は使わないか。

問題は、麗日さんだ。彼女の無重力の個性は強力だ。落ちているものなら軽々と放てるからこの部屋のものでも排除するか。」

飯田はそう分析すると、内装もされていないコンクリートの壁、床を見渡し、彼女の武器になりそうなものを排除して行った。

 

 

 

一方飛び出した爆豪の内心は穏やかではない。

「くそくそクソガァ!!!!くそデクが!!やっぱ俺を騙してやがったか!!!」

そう口にした爆豪は少しでも怒りを発散しようとしたのか、個性を使って加速する。

 

彼はこの訓練が始まる直前に飯田にある事を聞いていた。

それは緑谷の個性の有無だ。

飯田はそれにあれは強力な個性だと答え自分の考えを話していったが、それ以上爆豪の耳には届かない。

彼はそこではっきりと、自分は緑谷に騙されていた。と思ってしまった。

彼は常にトップであった。

人よりなんでもできる。それゆえか彼はなぜ周りが何もできないのか不思議でならなかった。

そして個性が発揮すると同時に、気がついてしまった。

 

ーーーそうか....。みんなができないんじゃない。俺がすげーんだ。俺が最強なんだ。

 

と。

 

それからは金魚の糞よろしく、爆豪のすごさに目を輝かせながら彼の後ろをついて回る緑谷は彼にとって当たり前となっていた。

 

 

 

 

(それがだ、それがあいつはあの時、いい気分になっていた俺を騙していたのか?

あいつは、内心では自分の方がすげーって思ってたのか?!)

 

爆轟の内心は穏やかではない。

緑谷の個性を見て一瞬すごいって思ってしまった自分、今まで自分を騙していた緑谷。

 

彼はこの感情を発散できないままでいた。

 

 

 

 




この回でわかったと思うのですが、尾白くんにはB組に移動してもらいました。



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ヒーロー基礎学③

爆豪はヒーローチーム、緑谷を探していると足音がきたためとっさに身を隠す。

心の中では激情が渦巻いてはいるが、彼はこれでも、誰よりも戦闘センスが高い。

 

 

「おらぁ!!!!」

爆豪が通路の脇に身を隠し、緑谷の姿が見えると同時に飛び上がって殴りかかった。

 

緑谷も、爆豪の声が聞こえたためか、殺気を感じたためか、反射神経のごとく反応することができたが、彼にできたことといえば、お茶子を寸前に脇へ突き飛ばし防御態勢に入ることだけだった。

 

緑谷は爆轟のパンチの威力に負けて壁に激突する。

「かはっ!」

 

「で、デクくん!!!」

お茶子は、爆豪の声で襲撃に気がついたもののなにもすることができなかった。次に気がついたのは、自分が緑谷に突き飛ばされて、彼が壁に激突していたことだった。

 

 

それをモニターで見ていた者の反応は賛否両論であった。

 

「爆豪、あいつずりーな!!」

ヒーローであり、漢であるなら奇襲なんて卑怯な手ははできるか!!!と言う、切島。

 

「いや、本当に爆豪の戦闘センスは高いね。見た感じすごい切れてたように見えたけど、足音を聞いた瞬間一瞬で身を隠したよ。」

翔は初めから注目していた爆豪の行動に、さすがと言うふうに賞賛した。

別に翔にとって爆豪がどのような性格であろうと気にしない。

ただ爆豪に自分をトップから突き落とすって宣言されたためか、少し他の人より注目していたのだ。

 

彼のセリフを理解できたのか、数名頷いていた。

 

「そうですわね、あんな性格ですが、彼は戦闘においてはこのクラストップかもしれませんわ。」

八百万が胸の下で手を組んでいるためか、胸が持ち上げられて強調されながらも、爆豪の行動を見ていた。

 

翔はその胸を横目でチラッと確認しながらも、再び爆豪のモニターに注目した。

 

 

「わ、私の言うことが....。」

オールマイトも爆豪の行動を擁護しようとしたのか、言葉を発しようとしたが思った以上に彼の行動を見ていた二人に言われてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

爆豪の目にはすでにお茶子は入っていない。

彼はこの試合を利用して、どれだけ緑谷でイライラが発散できるかしか考えていなかった。

 

「試合が中断されないように手加減してやっからヨォーー!!!!」

爆豪はそういいながら、自分の癖とも言える、右手をおおきく振りかぶって殴りかかった。

 

 

緑谷はそれを知っていたかのように、とっさに体を半身ずらして躱すと同時に、爆豪の右腕を両手でつかみ、背負い投げを打った。

 

「っっっ!ぐっ!」

爆豪は自分の攻撃が躱されるとは思っていなく、ましてや反撃が来るなんて夢にも思っていなかった。

 

 

「クソが!!!なんで俺の動きがわかりやがった!!!」

爆豪は焦った様子で立ち上がり緑谷の反対側にバックステップで距離をとった。

 

「どれだけ見てきたと思ってる!僕がどれだけ君にのそばにいたと思っている!!!僕は、君がすごいと思ってる!僕は自分がすごいと思っているヒーローは必ず研究してたんだ!僕がどれだけ君を研究したと思ってる!!!」

緑谷は、怒れる爆豪に向かって意を決したかのように声を上げた。

緑谷にとってこれが、爆豪へ近ずく第一歩であった。

 

 

 

そんな爆豪の内心は穏やかではない。

ーーーなぜだ、なぜだ、なぜだ!!!!!!

 

ーーー俺がすごい?!ふざけんじゃねぇぞ!!!

 

ーーーお前は嘲笑ってたんじゃねぇのか!!!

 

ーーー今まで俺を騙しておいて!!!

 

 

爆豪は緑谷に言われたことが心に響いたのかはわからない。

これは、怒りが爆発したのかもしれない。

 

それでも、彼の心では、

あのヘドロ事件で感じた胸の痛みが再び強く感じた。

 

 

 

 

 

「おおおおーーー!!!緑谷やるじゃねーか!!」

それぞれの生徒がそう口に漏らす。

 

 

「あれ完全に緑谷くん、爆豪の動き読んでたわね。」

ケロケロと語尾に続くように、いつのまにか、一佳とは逆方向の彼の横にきていた梅雨がそう声を漏らす。

 

入学試験と同様の、体にピタッと張り付く緑色のコスチュームを着ていたため胸の大きさがダイレクトにわかり、

そのコスチュームを押し上げる胸を見て、翔はこの学校には巨乳しかいないのか、と慄きながらも平常心を保って梅雨に言葉を返す。

 

「そうだね、幼馴染だって聞くし、もしかしてあの動きが癖なのかもね。」

翔は梅雨に顔を向け笑顔でそういった。

 

 

 

それから、何かの作戦なのか緑谷は爆豪の注意を引くように、逃げ出した。

爆豪は、自分の個性を使って、それを追っていく。

 

その隙に動いたのは、今まで息を潜めていたお茶子だ。

彼女は核兵器を探すために虱潰しに部屋を回っていった。

 

すると5階の部屋でそれを発見した。

お茶子は中の人にバレないようにしていた扉から瞬時に中に入り、部屋の中にある柱に身を隠す。

幸いにも中にいた、飯田は自分がヴィランになりきるように、練習していたのか、高笑いをしていたため気がつくことはなかった。

 

しかし、そこでお茶子はミスを犯した。

 

 

「ぷっ....!」

彼女は飯田のそんな姿を見たことがなかったために声を漏らしてしまった。

お茶子がとっさに口を両手で塞ぐも遅かった。

 

「うむ?今のは!麗日くん!君だね!うわははは!!

俺は君対策のため、この部屋にあるすべての道具をかたずけてやったぞ!!!わははは!どうするヒーロー!!!」

彼なりのヴィラン像がそれなのであろう、役になりきっていた。

 

 

 

 

モニターに声は届かないが、飯田の演技が上手いのであろう、身振り手振りでヴィランを表現していたため声無しでも何をいっているかがわかりそうだった。

 

 

 

 

 

「あはは、もしかして飯田はヴィランになりきってるのかな?すごい、迫力だね。」

翔は飯田の行っていることに気がついたのか苦笑いを浮かべていた。

 

一方、八百万は少し苦い顔をしていた。

 

「これは訓練とはいえ、麗日さんはヒーローですのよ?いくら飯田くんが面白いからって笑ってはいけませんわ。」

そう頬を膨らませて言葉を漏らす。

 

 

 

 

「デクくん!バレちゃった!あれをやって!!!」

お茶子は気がつかれては仕方ない、と思ったのか、前もって立てていた作戦を実行するため緑谷に通信を入れた。

 

 

 

緑谷は緑谷の方で絶賛ピンチ中である。

 

「コラァ!!!クソデク!待てやコラァ!!!ぶっ殺してやる!!!」

爆豪は緑谷の逃げる様子にイラついたのか、そこらじゅうの壁を個性で壊しながらも緑谷を追っていた。

 

(こここ、殺しちゃダメでしょ!!!)

緑谷は自分が挑発しすぎたか、脂汗をダラダラと垂らしながら必死で走る。

 

緑谷は逃げるのをやめたのか、何か作戦があるのか、ある一室に入るとそこで爆豪を待ち構えていた。

 

 

 

 

「何か始まりそうだね。緑谷の表情が変わった。」

モニターで見ていた翔は緑谷の変化の気がついたのであろう。

そう言葉を漏らした。

 

それを隣で聞いていた一佳からも同意の声が聞こえる。

「そのようだね、何するのかな?」

一佳も楽しみなのであろう、目をキラキラさせながら興奮気味にそういった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑屋は部屋に着くとインカムがなるのを感じた。

 

ーーーデクくん!バレちゃった!あれをやって!!!

 

 

それを聞いた緑屋は意を決したように爆豪の対峙する。

 

 

 

 

 

爆豪はイライラしていた。自分が途中で放った大技、自分の手から分泌されるニトロのようなものを貯めて、一方向に一気に爆発させる大技。

 

それを使ったのはいいが、観戦していたオールマイトから愚策と言われ、次やったら中断すると言われているからだ。

 

 

 

爆豪はそのイライラをぶつけるため、緑谷がこちらを振り返るのを確認すると爆発を利用して一気に接近した。

緑谷もそれに対処するため拳に力を入れて殴りかかった。

 

そこで爆豪は緑谷の動作に対処するため、右手を緑谷の前で爆発させ、それと同時に自分を上方向に吹き上げ、緑谷の背中に回ると左手を爆発させそれ以上行かないように軌道修正をする。

そしてすぐさま次は右腕で緑谷の背中めがけて爆発させた。

 

 

 

 

 

 

「すっごいな!なんだ今の動き!!!」

切島が興奮した様子でそう声をあげている。

 

そこで、八百万は自分が見て思ったことを告げて繊細な戦闘をするのね、と声を漏らした。

 

「あーあ、ヤダヤダ、才能マンじゃん!」

上鳴はその才能に嫉妬したのかそう声を漏らした。

 

 

翔はそれを見て、個性ゆえか本能ゆえか少し戦いたいなとおもっていた。

 

 

 

 

 

 

それでも緑谷は強い意志を感じる目を爆豪に向けて立ち上がった。

 

それを見て何を思ったか爆豪のイライラは最骨頂に達した。

 

 

「このクソナードがぁぁあああ!!!!!!」

爆豪はそう言葉を漏らすと思いっきり緑谷を吹き飛ばすため個性を使って殴りかかった。

 

緑屋はそれを見て決心したかの様子で自分も殴りかかる。

 

 

拳が当たると同時に、爆発した。

 

 

 

 

いや爆風が巻き上がった。

 

 

 

 

 

その爆風は壁を気にすることなく、緑屋の上にある天井をぶち抜いていって、彼女、お茶子がいる、床をぶち抜いた。

 

 

 

 

 

そう作戦である。

 

 

 

お茶子はハナから知っていたのか、衝撃に驚きながらも行動に移った。

 

お茶子はその爆風により壊れた柱を無重力にして抱きかかえる。

 

それをバットのようにふりかぶり、爆風により巻き上がった瓦礫を野球のごとく核兵器の前にいる、突然の出来事に動揺していた飯田に向かって打ち込んだ。

 

そしてお茶子はその瓦礫をガードしている飯田を横目に、核兵器にタッチした。

 

 

 

 

『ヒーローチームwinnerrrrrrrr!!!』

 

 

 

 

そうオールマイトの声が響いた。

 

 

 

それからAチームもDチームもモニタールームに集まって講評が始まる。

 

 

「色々言いたいことはあるが今戦のベストは飯田少年ではあるがな!わかる奴はいるか?」

オールマイトのその評価に飯田は驚きの声を出し、周りもなぜ勝ったお茶子や緑谷ではないのかと戸惑っていた。

 

「勝ったお茶子ちゃん達ではないの?」

 

そう疑問を漏らした梅雨に、八百万は自分が答えると手を上げて、発言した。

「それは飯田さんが1番状況設定に順応していたからです。爆豪さんの行動は見た限り私怨丸出しの行動に、独断専行。

緑谷さんも同様、受けたダメージから鑑みてもあの作戦は無謀としか言いようがありませんわ。

麗日さんは中盤の気の緩み、そして核を背にした飯田さんへのあの攻撃。

二人とも、相手が核を所有しているってわかっていたのかしら?

核の設定をきちんと理解し、相手への対策をこなし、核の争奪を理解してたからこそ、彼は対応に遅れた。

核に向かって緑谷さんに麗日さんみたいなあれほど危険な攻撃が来るとは思っていなかったのでしょう。

飯田さんがベストなのは火を見るより明らかですわ。」

そう言葉を着ると同時に納得の感情が広まる。

飯田は、それほど自分が評価されていた事に感激したのか、目に涙を浮かべていた。

 

「そ、そうだね!その通りだ! (全部言われちゃったな....。)」

オールマイトもそこまで正確に言われると思っていなかったのか、そう言葉にするしかなかった。

 

「天野さんはどう思いますの?」

八百万は中盤に自分と同じ評価をした、天野が気になり、彼の方向に体を向けるとそう言葉を投げかけた。

 

 

「そうだね。Aチームの危ない行動はいけなかったけど、彼なら対処できたはずだよ、爆豪。彼が、独断専行をせず、飯田と協力すれば余裕を持って対処ができたはずだ。それをできるだけの力と頭脳は、爆豪は持っている。

緑谷に何があるのかはわからないけど、勿体なかったね。」

天野は自分に質問に投げかけられた事に驚きながらも自分が思っていたことをそう口にした。

 

彼らの評価を聞いた、お茶子は自分の行いに反省していた。

 

「あぁ?!うっせーんだよ!バカが!そんなのわかってるわ、ぼけ!!!」

 

一方で爆豪の方も、冷静になってみればそのとうりであったためか、うまく言い返すことができずにそう言い返すことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ヒーロー基礎学④

そうして講評を終えると、次の試合に移っていく。

 

 

「じゃぁ次の試合を始めようか!!!次はヒーローチームはBチーム!ヴィランチームはIチームだ!今言われたチームは場所を変えて準備をしてくれ!」

 

オールマイトは箱の中からボールを取り出しながらそういった。

 

 

第2戦目 Bチーム 轟焦凍 障子目蔵

VS Iチーム 拳藤一佳 葉隠透 ➕Kチーム 天野翔

 

「決まったな、天野。試合だ。」

自分が呼ばれた、轟は天野を一瞥し、そう言葉を発して自分のスタート位置へと向かった。

 

 

 

 

 

翔は自分のスタート位置へと向かいながらチームメンバーと話していた。

「二人ともごめんね、通信できなくなるし。」

翔は申し訳ないのかそう言葉を二人へ発した。

 

「大丈夫だよ!翔!ね!透ちゃん!」

一佳はなんとでもないという風に翔を慰めながら、葉隠へ同意を求めた。

 

「そうだよ!翔君!その代わり、3人になったんだから!!!」

そう一佳に続いて透が同意をする。

 

彼女の名前は葉隠透(はがくれとおる)

彼女の個性は透明化。

常時透明になっているため何も見えない。

 

身長は不明、髪も顔も、スタイルも不明。

いや制服を着る事によってスタイルがわかるため、平均よりいいというくらいしかわからない。

そんな今の彼女の格好は、手袋、靴のみ。

そう全裸である。

いや、透明であるため何も見えないのだが、それを考慮しても全裸である。

 

「ありがとう。それより葉隠さん大丈夫?寒くないの?それって全裸でしょ?」

かけるもそれが気になったのか質問を投げた。

 

「ぜっ!.....。そ、そうだけど!この方が見えないし便利だしね!」

葉隠はすでに慣れているのであろう、全裸になる事に中途はないがそう面と向かって言われるとまだ羞恥心が残っているのか、恥ずかしがっていた。

 

 

 

翔たちが核の置いてある部屋に着くと作戦会議を始めていた。

今回は、通信機が使えないため、前もってしっかりと作戦を立てなくては行けなかった。

それぞれが相手の個性を考慮しながら意見を発し、作戦をまとめていく。

主な役目はこうだ。

葉隠がその隠密性を生かし、逮捕テープを持って隠れる。そして隙を見つけて、相手を拘束。

 

一佳は核の前に陣取って核を守る事。

 

そして、翔は室内であるため翼をうまく使えないがその竜人としての戦闘能力を期待して、相手が来るであろう階段などに待機して、見張り。

 

という、大まかではあるがそんな役割だった。

 

 

「よーしじゃぁ本気出すから全部脱いじゃうね!」

恥ずかしくはないのか、翔がいる事に気にすることなく靴と手袋を脱いで全裸になった。

 

「これでどこにいるのかわからなくなっちゃったね。」

翔は葉隠が全裸になった事に、女としての羞恥心はないのか、と疑問に思いながらも苦笑していた。

 

「じゃぁ僕も準備を始めるね。」

そう翔がいうと、彼の体から、鱗が生え始め、尻尾が生えた。

今回は室内であるため翼は出してはいるが畳んだ状態を維持している。

 

「お、おおおおーーーーー!翔君!かっこいいよ!!!!!!プロヒーローウェルシュ・ドラゴンそっくりだよ!!!!!」

葉隠がはじめて見た翔の姿に興奮気味にそう答えた。

 

「そうだね、似ていて当然かな。僕は彼の息子だから。」

翔が葉隠の声がする方向に向かって笑いかけた。

 

「......。」

葉隠は黙っていた。いや少し見ほれてしまったのだ。あのヒーローの息子と知った事も驚いたが、自分が彼にファンであったゆえか、彼女に胸に憧れに似た感情が巻き上がっていた。

 

 

一佳は彼女の気持ちを知ってかしらずか、女の感で察知したため、翔の足をぐりぐりと踏んでいた。

しかし竜人形態になったためか全然痛みは感じられなかったが。

 

 

開始時間まで残り少しとなったときに、翔はふと思った。

 

もし、轟の個性でこの建物を凍らせることができたら、核も無力化し、自分たちも危ういんじゃないかと。

 

 

しかし翔は幾ら何でも学生でそこまでできるとは思ってはいないが、万が一があるため、それを二人に伝え、対策に講じる事にした。

 

 

一方モニタールームでは興奮の声がそこら中から上がっていた。

 

「か、かっけーーー!!!竜だよ!竜!あれウェルシュ・ドラゴンと一緒じゃん!!!」

切島や、峰田が興奮した声をあげていた。

 

「本当にそっくりですわね。まさか親族者なのでしょうか?」

翔を見ていた八百万はそう判断した。

 

その翔を見て、やはり、まだ力を隠していたか。と、爆豪は唇を噛み締めながらモニターを睨みつけていた。

 

 

 

すると翔たちは何を思ったのか、翔が核を持ち上げ、葉隠たちが翔に抱きつき、翔は翼を利用して空中に浮かんでいた。

 

 

「ううぉおーーー!あ、あいつ、女の子に抱きつかれていやがる

!!お、おいらだってーーー!やおよろっっぱーーーい!」

峰田が悔しそうに、血の涙を流しながら、八百万の胸にめがけてダイブした。

 

「死んでください!」

それを八百万は、今まで見た事ないようなゴミムシを見るかのような目で峰田を殴り飛ばした。

 

 

 

「本当にあいつら何してんだ?」

その光景を呆れながらも、切島は同じく思ったことを口にした。

 

 

 

 

翔は今混乱していた。

自分が轟対策で言ったものの、核を持ち上げるまでは良かった。

しかし、飛ぶために、葉隠と一佳が抱きついた事によって彼女たちの胸が、体の柔らかさがダイレクトに伝わるため、激しく動揺していた。

いや、ただ抱きついただけではそこまでにはならなかったかもしれない。

しかし葉隠は全裸である。

彼女に抱きつかれているため、服というバリアがないからか、

彼女が抱きついた左腕から一佳以上に、正確な感触が返って来る。

この、潰れた胸の中心から感じるシコリはなんだろうかと、バカなことを考えながら飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

そしてオールマイトによる、スタートの合図が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

その瞬間凍った。

 

 

 

彼の目に入ったのは、氷で覆われた床に壁である。

 

 

 

「まさかとは思ったが!!!!やっぱそれができたか!!!!」

 

 

 

翔は当たって欲しくない予想に、歯ぎしりをしながらも、葉隠にすぐに靴を履くように指示をして、確保テープを持ち隠れるように指示をした。

核兵器も、氷ながらも、安定してそうな床に降ろし、一佳と共に地に着いた。

 

「さささささむむむむうううううううう!!!」

葉隠は流石に寒かったのか歯をガタガタと震わせながら隠れていった。

 

一佳も寒いのであろう、口から息を出してを温めながら震えている。

 

翔は竜人形態になっているため、ほとんど寒くなく、戦闘に全く支障はないがこれでは短期決戦しかないか。と思っていた。

 

相手は自分たちが凍っていると思っていると予想し、一直線でこちらに来るであろうとかけるは判断したため、葉隠と一佳を呼んで短期決戦用に軌道修正した作戦を伝える。

 

「わ、わかったけど、か、翔は大丈夫なの?」

寒いのであろう一佳は震えながらそう聞いてきた。

 

「多分としか言えないけど、もうこれしかないよ。

信じてるよ、二人とも。」

翔は真剣な顔でそう言った。

 

翔にそこまで言われてはやるしかないと思ったのだろう、葉隠と一佳は自分が与えられた仕事を全うするために、部屋の扉をあけて駆け出して言った。

 

 

一方モニタールームでは。

 

「まじかよあいつ!!!!ビル全体を凍らせやがったぜ!!」

 

「あ、あぁあんなことまでできるのかよ....!」

 

切島と上鳴がそのような驚きの声を漏らした。

 

「まさか、天野さんはあれを予想していたのでしょうか?」

八百万は神妙そうな顔でそう呟く。

 

「そうだね、もしあれがなかったら、生身の葉隠くんに、拳藤くんは足を氷ずけにされ、戦闘不能に陥っていただろう。

それにあれが、核兵器の場合は、内部まで氷ずけにされて既に起動不可にされ、その時点でヒーローチームは勝利していただろう。」

オールマイトは生徒たちの疑問に答えるようにそう説明した。

 

そうあれが本物の核として扱った場合は、彼が核を抱えて宙に浮いていなければ、その時点で試合は終わっていた。

 

(さすがは彼の息子といったところか。状況判断が正しい。それによく、その可能性に思い至ったものだ。)

 

 

 

 

 

 

葉隠と一佳が部屋から出て数十秒後に部屋の扉は開き、轟が入ってきた。

 

翔は安堵の息を漏らした。

彼女たちと彼が出会うのは2分の1の確率であったからだ。この会へ来るためには左右のどちらかの階段で来るしかないため、これはかけであった。

 

 

轟は部屋の中に、翔しかいなく、足を氷ずけにされていなく、核も無事であったため驚いていた。

 

「まさか、こうなることがわかってきたのか?」

轟はは自分の驚きをそう口に出して翔に聞いた。

 

「予想はしていたけど、まさか本当にビルごと凍らせることができるなんてね。」

翔は轟の顔をじっと見つめながらそう苦笑していた。

 

 

かけるの役目の本質は時間稼ぎだ。

彼が、彼女たちに指示をしたことは、轟は一人で来るであろうことは予想していたため、今のうちに二人で協力して障子を確保してほしいとお願いしていた。

障子の個性は、どこからでも耳を生やし、情報収集が得意なためか、戦闘用の個性ではない。

それに対して、一佳はバリバリの武闘派であり、葉隠は彼女の個性を生かし隠密がうまい。

この2対1ならすぐに決着がつくだろうと翔は思っていた。

 

その後すぐに彼女らが合流したら3対1のため、時間稼ぎであれ、確保するのであれ、余裕を持ってできると睨んでいた。

 

 

 

轟は翔たちが自分の先制攻撃が全く通用しなかったことに対して、相手への評価を一段上げて、警戒を強めた。

 

「へぇ、まぁあれを交わしたからって今度は直接倒すまでだ!!」

轟はそう言い放つと同時に、右を振るう動作をし、氷の礫を翔に放った。

翔は、後ろに、核があるためか思うように、動けなかったため、翼で身を包むようにしてガードする。

攻撃が終わると翼を払うようにして広げた。

 

「おいおい、後ろには核があるんだけど。」

かけるは呆れながらもそういった。

 

「そんなことはどうでもいい、さっさと始めるぞ!」

爆豪と同様に戦う方が重要なのであろうか、轟は気にした様子もなく、再び攻撃を始めた。

今度は凍えるような氷の風を放ち近くの地面から順のどんどん凍って行く。

 

 

「そうかよ!それならこっちも気にしないで行くか!!!」

相手がそう来るのであれば自分のそうしようと思ったのか、それとも自分も戦いたかったためか、翔は笑いながら、氷を気にすることなく駆け出す。

 

翔は足に力を入れて瞬時に距離を詰め、右拳を相手の顔面めがけて振り抜いた。

 

轟は先ほどの攻撃が通用しなかったことに一瞬動揺しながらかけるの素早さに目を見張り、なんとかギリギリで身をかがむことで対処した。

 

しかし翔は竜人形態になると驚くほど反射速度が上がるため、轟がしゃがもうとしているのが見えた。

それを見た翔は、腕が避けられると直ぐに、体をずらしながら、彼の後ろに生えている太く、強靭な尻尾でしゃがんだ轟へ追撃した。

 

轟がそれに気がつくことができたが、しゃがんで対処したことにより、バランスを崩したため、バックして交わすことができなかった。

 

彼はなんとか左腕を前にし、腕をクロスさせて防ごうとしたが、彼の尻尾の強力さゆえか、轟の体を浮かし吹き飛ばした。

 

轟はその衝撃に歯を食いしばりながらも、隙を与えないため、空中で態勢を立て直し、両足と無事であった右腕を使い地面にを削りながらも立った。

 

 

彼の尻尾の衝撃と、鱗の鋭さにより、表面の肌はズタズタに裂かれ、先ほどの衝撃により少し日々が入っていた。

 

 

「くっ....!随分と早い反応だな。目がいいのか?」

轟は怪我を悟られないように左腕を隠しながら翔にそう聞いた。

 

「そうだね、この状態だと、僕凄く早いよ?」

翔は轟と戦うことができて楽しいのであろう、そう、少し挑発気味なことを言いながら、楽しそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ヒーロー基礎学⑤






モニタールームでは。

 

「あいつ早いなおい!!!しかも尻尾の威力ありすぎだろ!!!」

誰かがそう口に漏らす。

 

「あぁ、しかも、あれを見てみろ。轟の腕。天野尻尾の威力だけじゃない。鱗で腕がズタズタだ。」

 

 

 

そんな天野の高評価が気に入らないのか、爆豪はイライラしながら口を開いた。

「黙れモブども!奴は俺がぶっ飛ばす!」

 

「いやいやいや、さすがのお前でもあれはきついだろ?」

切島は何時もの様子の爆豪に呆れながらもそう口に出した。

爆豪は自分が緑谷に負けたことがよほどショックだったのか、ずっと黙っていたが初めてのセリフがそれであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟は基本的に個性ゆえか近接戦を得意とはしていない。

いや、人並み以上はできるがそれまでだ。

彼の本領発揮は距離を開けての個性を使って作った氷での攻撃だ。

 

 

しかしさっきの攻撃でわかったのだろう、あの鱗は驚くほど丈夫であったため、轟が作った氷はただの打撃目的になってしまっていた。

 

しかし、これほど至近距離でこれ以上強力な技を放つと、爆豪のようにオールマイトから中断の声が入ると思ったのか放てないでいる。

 

 

 

そんなことを考えていると、オールマイトの声が響いた。

 

 

『ヒーローチーム、障子くん確保ーーー!!!残り時間は3分だ!』

 

それを聞いた轟は思った以上に時が経っていることに驚き、すでに時間がないことに気がつき、焦り始めた。

 

 

この声を聞いた翔はすでに勝ちを確信していた。

先ほど戦って見て、轟には自分の個性が十分通用すると思い、それにこれから葉隠と一佳が援護に向かって来るためである。

そう、慢心していた。

 

 

 

 

 

轟は左腕をダメにしてしまったせいか思考を、戦闘優先から勝利優先へと切り替えていた。

この試合に勝つにはどうすればいいか。

 

彼は、左を使わない。

 

炎を使わない。

 

彼の個性は、正確には氷だけではない。

 

「半冷半燃」

左から炎を出し、右から氷を出す個性だ。

しかし彼は自分の右側、炎の個性をを嫌っていた。

いや嫌悪していた。

それはなぜか、それは、彼の左側の個性は自分の父エンデヴァーと同じであるからだ。

 

彼はエンデヴァーに私利私欲のため生み出された存在だ。

 

個性婚を利用し、彼の母、氷の個性を持つ彼女と無理やり交わり彼を生んだ。

 

エンデヴァーはヒーローナンバー2である。

そんな彼がナンバー1になれないとわかると自分の子供でナンバー1になろうとしたのだ。

 

 

 

彼、轟焦凍はそれを知っている。

しかし彼は、それを知っただけではそこまで嫌悪することはなかっただろう。

彼は聞いてしまったのだ。

自分が愛する母から漏れた言葉を。

 

ーーー本当に嫌!日に日に焦凍の左側があの人に似て来るの?憎らしくて仕方ない!!!!

 

彼が聞いたのは5歳の頃であった。

 

そんな幼い頃にそのことを聞いた轟は自分の父であるエンデヴァーを憎むようになっていった。

 

 

 

 

 

 

 

この試合に勝つにはどうすべきか。

 

 

 

彼は行動に移した。

 

 

 

 

 

 

 

翔は突然黙り込んだ轟を不審に思いながらも警戒していた。

もしかしてまだ何かあるんではないかと。

 

 

すると突然、轟が右腕で氷を作りながらそれを打ち出し、翔へ駆けていった。

 

翔はその攻撃を見てとっさに避けてしまった。

翔は自分が避けたのを見て、轟は追い討ちをかけるようにこっちへ向かって来ると思っていた。

そうであるため、右に大きく着地すると、相手を正面に見捨て構えなおした。

 

 

「.....え?」

 

翔は驚いた。

轟が翔が大きく右へジャンプして躱したことを確認すると、そのまま止まることなく核の方へ駆け出しながらこちらを見て笑っていた。

 

 

「悪いな!」

 

 

 

 

「しまった!!!!!」

翔は轟が何をしようとしていたのか気がついたのか、足に全力で力を込めて飛んだ。

 

かけるの速度は轟を大きく上回るものの、いかんせん、初動が遅すぎたのだ。

 

あと一歩で間に合わない。

 

 

 

轟があと1歩分で核に届くのに対して、翔はまだ2歩必要であった。

 

 

「まにあぁえええええええ!!!!!!!!!!」

翔は焦った表情で叫ぶも虚しく、彼の腕は届かない。

 

 

 

 

 

轟が、核へタッチしようとして、勝利を確認したその瞬間自分の左腕へ感じた衝撃で、痛みにより顔をしかめた。

 

 

 

それでもタッチした。

 

 

 

 

 

 

『ヴィランチームwinnerrrrrrrr!!!!!』

 

 

 

 

 

勝者は翔達であった。

 

 

 

「....え?」

これには翔も、轟も呆然としてしまった。

 

「な、なんでだ?!俺がいまタッチしたはずだ!!!」

轟は確かにタッチしたのを確認したために、オールマイトへ向かって声を荒げた。

 

『轟くん、自分の左腕を確認したまえ!』

 

 

オールマイトのその言葉に、先ほどの感じた衝撃で感づいてしまった。

まさかと思った。

 

そのまま自身の左腕へ視線を向けると、腕には逮捕テープが巻き付いていた。

 

 

 

『そう逮捕テープだ、君が核へタッチする寸前にそれが君の腕へ巻きついた。よって君たちの負けだ』

 

その言葉に続くように、声が聞こえた。

 

 

「いやぁー、翔くん危ないとこだったね!油断しちゃダメでしょ!」

そう言ってカツカツとこちらへ靴だけの状態で歩いてるのを確認して、翔と轟は理解した。

 

翔は、自分の油断していたことへ恥じていた。

轟の言動から、核へのタッチの前に自分との戦闘を望んでいるのだと勘違いしたのだ。

 

轟は、あと一歩及ばずの状況に悔しがっていた。

 

 

「本当に、何やってるんだろうね僕。ありがと、葉隠さん。」

翔は自身の竜人形態を解きながら苦笑しながら、謝っていた。

 

 

 

 

 

その後一佳も合流してみんなでモニタールームへと向かった。

 

 

 

 

「じゃぁ、講評に入ろうか!まぁ、みんなも予想していると思うが今回のベストは葉隠くんだね!」

オールマイトはそう言うと、そのまま講評を続けた。

 

「拳藤くんは自身の能力をしっかり理解して、障子くんとの戦闘はバッチリだった。障子君も、2対1ながらもしっかりを時間を稼げたと思うよ。轟君は、始めの、ビル全体を氷漬けにする作戦は見事であった!

しかし、核のある部屋についたら、核より天野君との戦闘を優先したのはいけなかったな。

天野君は轟君の先制攻撃を予想理解それに対処するのも素晴らしかった!

しかし、やはり油断してしまったね。轟君が、戦闘を優先したため、核へのタッチがないと思ったのだろうけど、最後まで気を抜いちゃダメだよ!葉隠君は自身の個性を十分に発揮し、障子君に確保テープを巻き、核のある部屋についてからも、自身の身を隠して相手の様子を伺い、確保テープを巻いた!

今回は、葉隠君がベストであったがみんなよかったんじゃないかな!!」

オールマイトが嬉しそうにそう講評して言った。

葉隠はオールマイトに褒められて嬉しかったのだろう、腕にはめられた手袋が上下に動き喜びを表していた。

 

「いやぁ、葉隠さんありがと。危うく核にタッチされるとこだったよ。」

翔は自身の油断のせいで招いたせいもあってか恥ずかしそうにしながら葉隠に感謝していた。

 

 

 

 

それから他の生徒からも感想などを述べられて彼らの試合は終わった。

 

 

 

 

 

彼らの試合が終わると、次々と試合を消化していく。

 

全ての試合が終わると確実着替えるために更衣室へ向かっていた。

 

「おーいかける!!!お前凄かったな!あの尻尾の鱗!」

そう言って着替えていると、切島が肩を組んできた。

 

「あぁほんとすごいよな!あれ一発で轟左腕ズッタズタだったしよ!!」

上鳴がそう言ったことを聞いて、翔は思い出したのか慌てて轟へ声をかける。

 

「そ、そうだった!轟大丈夫?ごめんね、試合とはいえ、保健室に連れて行こうか?」

翔は少しの罪悪感とともに、着替えていた轟へと声をかけた。

 

 

「いや、大丈夫だ。一応保健室にはいくが、そこまで深くはない。すぐに治るさ。」

本当にそうなのであろうか、我慢しているのかなんでもない風にそう答えた。

 

「そっか、そかったぁ。」

翔はそれを聞いて安堵していた。

 

 

 

 

 

 

女子の方は、運動でかいた汗を流したいのかそれぞれがシャワーを浴びていた。

 

「いやぁ轟君に翔君!カッコよかったねぇ!!!」

シャワーを浴びていた女子が格子越しにそう言った。

それを聞いていた女子は、やはり恋バナが好きなのであろう、それぞれがどっち派か意見を述べあっていた。

 

「か、翔はやめたほうがいいよ!うん!」

それを聞いていた一佳はこれ以上ライバルが増えてたまるものかと、根拠も言わずそう言った。

 

それを聞いていた女子たちは、流石に彼らが幼馴染と知っているのであろう、自分の好きな人が取られないようにとの牽制にすぐに気がついた。

 

「へぇ、ふーん!一佳翔君が好きなんだぁー!」

誰かがそう言った。

 

「ち、ちちがうし!」

一佳再び慌てた様子でそう言った。

 

「ねぇねぇ、お茶子は誰がいい?」

その女子は自身の隣でシャワーを浴びているお茶子に声をかけた。

 

 

「え、えぇ?!そんそんな人いないよ!!」

お茶子は突然の恋話に焦りながらも、そう答えた。

 

無意識に脳裏に翔の裸のことを思い浮かべながら。

 

 

「あら、私は選ぶのでしたら、翔さんですわね。」

このような恋話など興味がないであろうと思っていたこのクラス1のスタイルを誇る八百万が自身のスタイルに自身があるのか、大きく膨らんで入るが、全く垂れておらず、ツンと上を向いている胸を張りながら、そう答えた。

 

「ええええーーー!」

それにお茶子はとっさに声を上げてしまったが、ほかに一佳や梅雨などの女子が声を上げていたため、自身の声がバレることはなかった。

 

 

それからは恋話に盛り上がるが、チャイムを聞いて女子たちは急いで教室に戻って行った。

 

 

 

教室に着くと、1番前の席のためか翔が扉の前にいるため女子たちは、先ほどの話題に上がっていた翔をじっと見つめていた。

翔は自身がなぜそこまで見られているのかがわからずに困惑していた。

 

翔は、少し顔を赤らめながら見ているお茶子に気がつき笑顔で声をかけた。

「どうしたの、お茶子さん?」

 

お茶子は自身が翔をじっと見ていたことに気がついたのか、慌てた様子でなんでもないと言ってた自身の席へ戻って行った。

 

翔はお茶子の反応を見てまさかと思っていた。

 

彼が中学校で何百とされてきた告白の前の女子の反応にそっくりであったからだ。

 

 

 

翔はそう、思考の海へ潜っていると、帰りのホームルームが始まったため、考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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繋ぎ

翔は帰りのホームルームが終わると、一佳が用事があるため先に帰る、との事で教室でぼーっとしていた。

 

放課後の教室にもかかわらず、数名は残っており、友人たちと会話を楽しんでいた。

 

翔も暇であったため、近くにいたお茶子と話していた。

「お茶子さん、君はなんで残ってるの?」

翔は疑問に思っていたことを口にした。

 

「え、えっとね、デク君が怪我したでしょ?いつも一緒に駅まで帰っていたからここで戻ってくるのを待ってたの!」

お茶子は先ほどの事を思い出し顔を赤らめながらもそういった。

翔はそんなお茶子が可愛くて頭を撫でたくなったがそこまで親しくはなっていないので自制した。

 

すると前の扉が開き、ヒーロー基礎学中に大怪我をし、保健室に搬送された緑谷出久が入ってきた。

 

みんな彼が大怪我押して保健室に送られたため心配そうな表情で声をかけていく。

 

「おい!緑谷大丈夫か?!まだ怪我治ってねーじゃねーか!」

教室に残っていた切島が心配そうにそう声をかけた。

 

「そうだよデク君!まさか直してもらわなかったの?!」

お茶子もそれに続くように緑谷を心配し、まさか治療していないのではないか?と声をかけた。

 

「緑谷大丈夫?今日は一人で帰れるの?」

翔もクラスメイトの包帯姿に心が苦しくなりそう声をかけた。

 

「だ、大丈夫だよ!直してもらったけど、昨日も直してもらったから、体力が足りないんだって!直しきれなかったんだ。」

流石に2日連続で保健室行きは恥ずかしかったのか、みんなにそう説明した。

 

「そうなんだぁ。良かったよ!」

お茶子たちはそれを聞き安心して息を漏らす。

 

 

 

 

 

そうした緑谷は、お茶子から鞄を受け取り二人で帰っていった。

 

翔も話し相手がいないためまた一人で待っていたが、また扉が開いたかと思うと、そこには彼の友人である波動ねじれが立っていた。

 

「遅れちゃったね!さぁ帰ろうか!かける君!」

満面の笑みでそう話しかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今かけるたちは二人仲良く帰っている。

ねじれはいつも嬉しそうながらも今日は彼と帰れて嬉しいのであろう、彼の腕を胸に抱きかかえて腕を組んで歩いていた。

 

翔はなんとなくではあるが彼女の気持ちを察していたため、空いた片方の腕で、頭を撫でながら話しかけた。

 

「ねじれちゃん、嬉しそうだね。」

翔は自分と帰れて嬉しいのかと暗にその意味を込めてニヤニヤとしながら聞いた。

「うん!かける君と帰れて嬉しいよ?大好きだから!」

ねじれは翔のニヤニヤに気にする事なく純粋にそう返した。

 

翔はその言葉、笑顔に一瞬理性を失いかけた。

内心ここが外で良かったと思っていた。

もし彼の部屋、室内であったならは何が起こったかは簡単に想像できた。

 

「そっか、僕も大好きだよ。」

翔はそう微笑み返すと、二人は仲良く帰って言った。

 

 

 

 

 

次の日、翔は一佳と仲良く学校へ向かっている。

「ふんふーん♩」

一佳は何が嬉しいのか鼻歌を歌いながら歩いている。

 

「一佳楽しそうだね。」

そんな一佳に疑問を投げながらも、彼女の機嫌が良くて嬉しいのか、翔も笑っている。

 

「ちょっとね、昨日いい夢見たんだ!」

一佳はスキップをしてかけるの前に出て、両腕を後ろで組みながらそう言った。

 

 

翔たちが雄英高校の校門前にさしかかろうとした時そこには人が溢れていた。

なんだと疑問を抱きながらも、彼らがいるのか校門であるため、翔たちは学校に入るためその集団へ近づいた。

 

 

「ちょっといいですか?!そこのカップルの方々!雄英高校の教師となったオールマイトの授業を受けました?!オールマイトの授業はどうでしたか?!」

翔たちが、彼らを横切り学校の中へと入ろうとした時、集団の中から声がかかった。

 

どうやらオールマイトが雄英高校の教師となった事を取材するために集まっていた記者たちらしい。

 

 

「すみません、彼女が怖がっているので。僕たちはこれで。」

翔たちはそのことに気がつくと、面倒ごとを避けるため、一佳の腰に手を回し爽やかな笑顔でこう言った。

 

翔は、彼女と言われて赤くなっている一佳を連れて学校の中に入っていった。

 

翔たちが教室へ入ると同じく記者陣の質問を受けていたのか、疲れた様子のクラスメイトが何人かいた。

 

「おはよう。切島たちも記者?まだ授業も始まってないのに疲れた感じだけど。」

翔は自分のカバンを机に置いて、疲れた様子で机にうなだれていた切島に近づき、

翔が切島の前の机の椅子を引きそこに座って、切島の方を向いてそう言った。

 

 

「あぁ、天野か。ハァ、ほんとあいつらしつこかった!!」

切島はバッと顔を上げて翔にそう言った。

「お疲れ、飴ちゃんをやろう。」

翔は切島の様子に苦笑しながらも、ポケットへ入れていた飴を取り出し切島に渡した。

「あぁ、サンキュー。......って!飴で元気になるような子供じゃねーよ!!」

切島はそう悪態つきながらも飴を受け取り口へ放った。

 

それからは飴で若干元気を取り戻した切島とチャイムが鳴るまで話し続けた。

 

 

 

 

 

 

「昨日の戦闘訓練おつかれ〜。昨日のVTRと成績見させてもらったんだが....。爆豪、お前もうガキみたいな真似するな、能力あるんだから。

次は緑谷、また腕をぶっ壊して一件落着か。個性の制御、できないから仕方ないなんて思うなよ。」

ホームルームのはじめに、そう言ったのは担任の相澤消太だった。

彼はそのまま、ホームルームのついでにと、口を開いた。

 

 

「今日は、学級委員長を決めてもらう。」

 

 

(((ふ、普通のイベントが来たああ!!!)))

 

 

今彼らの心の声は一致していた。

 

「委員長俺やりたいです!!」

 

「いえ、私がやりますわ。」

 

「はいはい私!」

 

相澤のセリフを聞くとほとんどの生徒が自分がと主張しながら手を挙げた。

 

ヒーローを目指しているだけあって、人をまとめる事、トップになること、そう言ったことに積極的なのであろう。

 

 

「ウルセェ!お前ら!!!こいつは俺の仕事だ!!黙って座ってろ!!!」

あの面倒事が嫌いそうな爆豪でさえ、周りに自分がやるからと威圧しながら手を挙げていた。

 

そんな場が混沌とした状況になり、翔は自分はやろうかどうか、手を挙げかねていると飯田の声が聞こえた。

 

「待ちたまえ!!!学級委員とはみんなの信頼があってこそだ!ここは投票で決めるべきだ!この短い期間で信頼を得られたものこそが真の学級委員長として相応しいに違いない!!」

飯田は投票にすべきだと主張しながらも誰よりも手を高く挙げていた。

 

「俺は時間内に決まれば何でもいいよ」

相澤は面倒そうに言葉を漏らすと、自分の仕事は終わったかのように持っていた寝袋に包まって横になった。

 

そんなやる気のない担任を尻目に、投票は始まった。

 

投票には紙を使って行うため言い出しっぺの飯田が紙を配っている。

 

 

「じゃぁ投票結果を黒板に書いてくぞー。」

相澤は集められた投票を集計し、その結果を黒板に書いていく。

 

結果はこうだ。

 

緑谷 3票

八百万 2票

天野 2票

切島1票・・・・・

 

 

という結果になった。

 

「あれ2票入ってる。」

 

翔は自分がやりたくなかったのか、違う人に票を入れたため0票となると思っていたが、案外信頼を勝ち得ていたらしい、2人から票を入れられていた。

 

 

「はぁーああああ!!何でデクに入ってんだよ!!!誰だ入れやがったやつ!!!」

爆豪は緑谷2票が入ったのが納得いかないのか椅子から立ち上がり、周りを睨みつけていた。

 

「ぼ、僕に1票入っているだと?!?」

飯田は自分以外に入れたらしい。

自分であれだけやりたそうにしていたにもかかわらず自分以外へ入れるとは、余程真面目であったみたいだ。

 

 

しかし、今回決めるのは委員長と、副委員長であるため、2票で被った八百万と翔でどう決めようかと悩んでいると、翔は自分より八百万の方が相応しいだろうと辞退したため、結果は八百万が副委員長となり、3票獲得していた緑谷が委員長ということになった。

 

 

これで終わったということで、相澤がホームルームの終わりを告げて教室を出て言った。

 

 

そのまま、時間が教えていたため廊下に待機していた数学の教師が入ってきて、授業は始まった。

 

 

 

そしてお昼。

彼、翔は一佳、飯田、お茶子、緑谷とともに学食で昼食をとっていた。

 

「しかし、いったい誰が僕に入れてくれたんだ?」

飯田は疑問に思っていたことを口にした。

一佳たちも誰だろうねと同意しながら昼食を食べる。

 

「あ、僕だよ。」

そこでかけるは自分が入れたことを告げた。

 

そう、飯田へ入れたのは翔であった。

翔は放課後の一佳との帰宅を密かに楽しみにしていたため、放課後が潰れそうな委員長は辞退したかったのだ。

それでと、自分以外に誰に入れようかとなったときに、如何にも委員長とした、飯田に入れていたのだ。

 

「そうか!!!天野くんだったのか!僕に入れてくれてありがとう!」

飯田は自分に入れられていたことがよほど嬉しかったのだろう、席から立ち上がり、天野の手を取るとブンブンと振りながら感謝の気持ちを伝えた。

 

翔はなんとなくで入れたが、そこまで感謝されるとは思わなかったのか、なんとなくで入れたと言える雰囲気ではなくなってしまっていた。

 

「いや、いいよ。僕は君を信頼しているんだ。」

翔には初めから君を信頼していたというほかなかった。

 

 

またもや飯田に感激されて翔が苦笑いをしていると、いきなり構内にベルの音が響いた。

 

 

 

「な、なんだこれ!」

 

周りも異常事態に気がついたのであろう、ガヤガヤしていた。

 

 

『セキュリティ三が突破されました。生徒の皆さんは直ちになんしてください』

機械的な音声でそう放送が入った。

 

これを聞いた生徒たちは状況を理解したのであろう、我先にと避難しようと、食堂から出ていく。

しかし、お昼時は生徒のほとんどがここに集まるため人が多い。

混乱があちこちで発生して、所々から悲鳴が上がっていく。

 

「わ、私たちも避難しないと!」

一佳が自分たちも、と避難しようと翔達にそう言った。

 

「一佳ちょっとまって、今動いたら危ない、ちょっとまってて。」

慌てる一佳に翔がそう話しかけると、

上着を脱いで部分竜化を行い翼を生やした。

そのまま羽ばたくと、外の様子を確認しようと窓へ飛んでいく。

 

外には、学校の校門を超え、不法侵入したのか、大量の報道陣が校舎へ侵入していた。

翔は非常ベルがなった理由がこれだろうと推測し、一佳たちの元へ戻った。

翔が一佳達にそう告げると、みんなも理解したのか、少し落ち着いていた。

しかし、周りは外の状況を確認していないため、落ち着くことができない、翔達が声を上げて落ち着くようにいうが周りはそれ以上にガヤガヤとしているため声が届かなかった。

 

「天野くん!僕を抱えて飛んでくれ!」

飯田がそれではダメだと思ったのか、かけるにそう言った。

天野もそれで飯田がやろうとしたことを理解したのか、飯田を抱きかかえると1番目立つであろう、みんなが目指している入り口上空までくると、飯田は息を大きく吸うと、先ほど異常の声を上げ生徒達に注意した。

 

「皆さん!だいじょーーぶ!!ただの報道陣です!安心してください!我ら雄英高の生徒にふさわしい行動をとりましょう!!!」

 

 

その声が聞こえたのか、窓の近くの生徒がそれを確認して、混乱していた場が落ち着いていく。

 

 

後にホームルームで緑谷は彼の行いをみんなに伝え自分より相応しい、と飯田へ委員長の座を譲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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繋ぎ if

夜の変なテンションで書き上げてしまったが、後から見直すと流石にやりすぎたなと思って書き直したのですが、やはり消すのはもったいないな、とifとして投稿します。

本来の話で一佳が言っていたいい夢が、翔にブレスレットを渡しキスをする。という内容です。


翔は帰りのホームルームが終わると、一佳が用事があるため先に帰る、との事で教室でぼーっとしていた。

 

放課後の教室にもかかわらず、数名は残っており、友人たちと会話を楽しんでいた。

 

翔も暇であったため、近くにいたお茶子と話していた。

「お茶子さん、君はなんで残ってるの?」

翔は疑問に思っていたことを口にした。

 

「え、えっとね、デク君が怪我したでしょ?いつも一緒に駅まで帰っていたからここで戻ってくるのを待ってたの!」

お茶子は先ほどの事を思い出し顔を赤らめながらもそういった。

翔はそんなお茶子が可愛くて頭を撫でたくなったがそこまで親しくはなっていないので自制した。

 

すると前の扉が開き、ヒーロー基礎学中に大怪我をし、保健室に搬送された緑谷出久が入ってきた。

 

みんな彼が大怪我押して保健室に送られたため心配そうな表情で声をかけていく。

 

「おい!緑谷大丈夫か?!まだ怪我治ってねーじゃねーか!」

教室に残っていた切島が心配そうにそう声をかけた。

 

「そうだよデク君!まさか直してもらわなかったの?!」

お茶子もそれに続くように緑谷を心配し、まさか治療していないのではないか?と声をかけた。

 

「緑谷大丈夫?今日は一人で帰れるの?」

翔もクラスメイトの包帯姿に心が苦しくなりそう声をかけた。

 

「だ、大丈夫だよ!直してもらったけど、昨日も直してもらったから、体力が足りないんだって!直しきれなかったんだ。」

流石に2日連続で保健室行きは恥ずかしかったのか、みんなにそう説明した。

 

「そうなんだぁ。良かったよ!」

お茶子たちはそれを聞き安心して息を漏らす。

 

 

 

 

 

そうした緑谷は、お茶子から鞄を受け取り二人で帰っていった。

 

翔も話し相手がいないためまた一人で待っていたが、また扉が開いたかと思うと、そこには彼の友人である波動ねじれが立っていた。

 

「遅れちゃったね!さぁ帰ろうか!かける君!」

満面の笑みでそう話しかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今かけるたちは二人仲良く帰っている。

ねじれはいつも嬉しそうながらも今日は彼と帰れて嬉しいのであろう、彼の腕を胸に抱きかかえて腕を組んで歩いていた。

 

翔はなんとなくではあるが彼女の気持ちを察していたため、空いた片方の腕で、頭を撫でながら話しかけた。

 

「ねじれちゃん、嬉しそうだね。」

翔は自分と帰れて嬉しいのかと暗にその意味を込めてニヤニヤとしながら聞いた。

「うん!かける君と帰れて嬉しいよ?大好きだから!」

ねじれは翔のニヤニヤに気にする事なく純粋にそう返した。

 

翔はその言葉、笑顔に一瞬理性を失いかけた。

内心ここが外で良かったと思っていた。

もし彼の部屋、室内であったならは何が起こったかは簡単に想像できた。

 

「そっか、僕も大好きだよ。」

翔はそういうと、そこで立ち止まって突然ねじれに顔を近づけた。

 

彼女も何が起こるのか察した様子で、耳まで真っ赤にしながら目を閉じる。

 

 

 

ーーーちゅっ

 

と音が聞こえた。

 

翔はねじれから顔を離すと固まって動かないねじれを引っ張りながら再び歩き出した。

「ほら、行こうか。」

翔はそう微笑んだ。

 

 

「ちょっとーーー!ほっぺじゃん!!!」

ねじれは自分がされた事を理解したのか、頬を膨らませながらそういった。

 

そう翔は頬にキスをした。

 

路上であるため、理性で気持ちを押しとどめていたが、この可愛い生物を自分のものにしたいという独占的な欲求が優ったのか、唇では理性は飛びそうと判断したため頬にキスを落とした。

 

 

 

「ねぇねぇ、もう一回!もう一回、口にして?」

ねじれは首を傾げて可愛らしくそう尋ねた。

 

その時翔は、ねじれの髪を手でかきあげ、耳元に口を近づけ言葉をボソッと漏らした。

 

「二人っきりの時ね。」

そう笑顔で言った翔にねじれは何を想像したのか顔を真っ赤にさせながら文句を言っていた。

 

 

 

 

 

翔がねじれと別れ家に帰ると、彼は今シャワーを浴びていた。

訓練後に男は浴びることが少ないためシャワーが少なく、みんなも浴びていないため自分だけ浴びることができなかった。

 

その為、今シャワーを浴びていたのだ。

 

 

翔がシャワーを浴び終わり、湯船に浸かって一息ついていると、突然扉がバッと開く。

 

「お兄ちゃんお帰り!」

そう言ったのは彼の妹、風香である。

腰まで伸びた綺麗な金髪のロングの髪をお風呂へ入るためか頭の上で結んでいた。

彼女は全裸であった。

まだ成長期が来ていない裸体を兄の翔に惜しげも無く晒していた。

 

「風香、はしたないよ。バスタオルを巻きなさい。」

翔は入って来た風香にため息をつきながらもそう言った。

 

風香はたまにこうして、兄の翔が入っているときに乱入してくるのだ。

風香も両親がいないときに限って侵入してくる為、あまり強く言えなかった。

 

風香がバスタオルを巻くと湯船に入って来た。そして定位置とも言える彼の膝に座った。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、さっきチューしてたでしょ?」

風香は翔に顔を向けて、口だけ笑った笑顔を向けていた。

 

「....。見てたの?」

翔は見られているとは思っていなかったのであろう。恥ずかしさに顔を赤くしながら、そう言った。

 

「そうだよ!学校から帰ってるとき、お兄ちゃん見かけたから声をかけようと思って近づいたの。そしたらチューしてたんだもん!」

風香は私焼いてますというニュアンスを含みながら、頬を膨らませてそう言った。

 

「いやぁ、恥ずかしい、恥ずかしい。」

翔はそう口にする。

 

「ねえねえお兄ちゃん!チューってどんな感じなの?私もチューして見たい!お兄ちゃん私にしてよ!」

風香はあの光景を見て先を越されたと焦ったのか、一歩踏み出すことにした。

 

 

翔は流石に兄妹ではだめだと思い、断ろうと思って口を開けたが、それを別の口で塞がれた。

 

妹の風香だ。

 

風香は翔が口を開けた一瞬の隙に自分の舌をねじ込んだ。

「んっ。ちゅ、くちゅ。」

息継ぎがしにくいのは風香の口から音が漏れる。

 

翔が流石にまずいと思ったが、ねじれにキスだけ済ませていた為色々溜まっていたせいもあってか、流れに身を任せて自分も舌を動かしていく。

 

 

 

それから十数分経つ頃に満足したのか風香がよだれで糸を作りながらかけるの口から離れた。

「キスっていいね!また今度しようね!」

風香は恥ずかしさから顔を赤らめながらも、またしようと約束を焚きつけた。

 

「....。そうだね。」

かけるも思った以上にキスに熱中してしまい思わずそう返してしまった。

 

 

それから翔は諸事情により湯船からでれなかった為、風香だけを先に上がらせて、鎮まるのを待ってから風呂を上がった。

 

 

 

それから翔は夕食を済ませて部屋のベットの上でゴロゴロしていた。

 

すると机の上に置いていた、携帯が鳴った。

一佳からであった。

 

用事がある為いつもの公園へ来て欲しいとのことだった。

何かあるのかと、疑問に思いながらも家族に外出を告げて家を出た。

 

彼が公園まで行くと、月明かりに照らされて、幻想的な雰囲気を醸し出してる一佳がいた。

 

翔はそんな一佳に一瞬見惚れながらも近づいた。

 

「一佳、こんな時間にどうしたの?」

翔は疑問に思っていたことを告げた。

 

「わ、渡したいものがあるんだ。」

一佳は緊張した様子で自分の腕の中にあるものを彼に手渡した。

それはブレスレットであった。

銀色の輪っかに、オレンジでラインが入っている綺麗なブレスレットだ。

 

翔はいきなりのプレゼントに驚きながら何故か理由を聞いた。

 

一佳によると、雄英高校の入学祝いとのこと。

なぜ今なのか、疑問に思いながら感謝の言葉を述べた。

 

すると一佳はまだ用事があるのか腕をもじもじさせ、顔を赤らめながらもかけるの顔を見ると、自身の顔を上げて目を閉じた。

 

 

翔はそれで何のことかわかったのか、密かに苦笑いを浮かべていた。

 

まさか1日で3人の女の子とキスをするとは思わなかったのだ。

 

しかしここでかけるがキスをしないと一佳に恥をかかせてしまうと思ったのか、一佳頬を両手で掴みながら自身の口を彼女の口へ合わせた。

 

ーーーちゅっ

 

と一瞬キスをすると翔は顔を離す。

 

一佳は顔が離れたのを感じると目を開ける。

 

よほど恥ずかしかったのであろう、そのままお休みと言うと走り去って言った。

 

 

 

 

そう、今日彼女が用事があると言っていたのはこれを買う為であった。

 

シャワー室での恋話で危機感を覚えたのか、今日少しでも関係を進めようと行動に出たのだ。

 

彼女の予定では、キスするまでが計画であった。

しかし、彼女はこれ以上に何かがあってもいいように、高級のランジェリーショップで店員のお勧めを買うと、家に帰り、シャワーを浴びて身を清め、今日買った下着を見にまとい準備をしていた。

 

しかし、キスした恥ずかしさに耐えかねたのか、そのまま走り去ってしまった。

 

 

 

 

「どうしよ。」

 

 

そんな翔の疑問に答えるものはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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USJ①

今日のヒーロー基礎学の時間となり、教室に入ってきた相澤は生徒達に今日の内容を告げる。

 

「じゃあ今日のヒーロー基礎学だが俺とオールマイト、それともう一人の三人体制で見ることになった。授業内容は、レスキュー訓練だ。」

 

レスキュー訓練と聞き、それぞれが感想を述べていく。

レスキューはヒーローらしい、今回も大変だな、どんなことするのかな?

など、生徒達は楽しそうに話している。

 

翔もレスキュー訓練の内容を予想しながらも、今日も面白そうだ、と声には出さず笑っていた。

 

 

「おーい静かに、訓練場は少し離れた場所にあるからバスで向かう。それぞれコスチュームに着替えてバスへ乗り込め。」

相澤はそう話し終えると、自身も準備があるのか教室から出て行った。

 

翔達が更衣室で着替え終わるとみんなでバスがある駐車場に向かっていた。

 

駐車場に着くと、早速自分の仕事を全うしようとしたのか、飯田がバスに乗る順番を決めて2列に並ぶように指示をしていた。

 

翔は本当に真面目なんだなと、思い苦笑いを浮かべていた。

 

 

しかしバスは、遠足などで使うようなバスではなく、市営バスのような壁際に長く座れるようになっているため無駄に終わったが。

 

着くまでの間、バスの中では誰が派手で強い個性かが話題に上がっていた。

「やっぱ爆豪に、轟、それに天野は強い個性に、かっこよかったな!」

昨日の訓練を思い出したのか、切島がそういった。

周りも異論はないのかそれぞれが同意の言葉を返す。

 

「俺が1番だ!!こんな腐れツートン、上半身裸野郎に負けるわけねーだろ!!!」

爆豪は席から立ち上がりながら自分が1番と主張している。

 

「今日は上着着ているんだけどな。」

翔は爆豪のその言葉に訂正した。

翔は訓練の内容がわからなかったため、今はペンダントにしまっていた上着を着ている。

下の黒のスーツのようなものにマッチした、同じく黒状のジャケットに、白のTシャツを着て、その上からペンダントをかけていた。

 

「爆豪ちゃんは切れてばっかだから人気出なさそう。」

蛙吹梅雨は爆豪を見ながらそう呟いた。

 

「あぁ?!出すわ!人気!!!」

爆豪は自分の人気が出る将来像を疑っていないのか、梅雨にそう言い返した。

 

「この付き合いの浅さで、糞を下水で煮込んだような性格って認識されてるってすげーよ。」

と上鳴は言外にお前では無理と笑いながら告げた。

 

「はぁ!?なんだお前のそのボキャブラリーは?!殺すぞ?!」

爆豪はまた自分がバカにされていると気づいたのか、周りに怒鳴り散らしていた。

一方緑谷は周りにいじられるような、爆豪は見たことがなかったのか、頭を抱えていた。

 

 

 

 

「く、くふふははは!

あぁ、本当入学してよかった。楽しいや。」

翔はこの光景を見て入学を間違ってはいなかったと窓の外を見る眺め、声を上げて笑いながらそう呟いた。

 

「そうだね!!」

隣に座っていた一佳はこんなに笑う翔が珍しいのか嬉しそうにそう答えた。

 

 

「何そこで笑ってんだ!!!クソががああああああ!!!」

爆豪はまだいじられていた。

 

 

 

 

それからバスは十数分走らせ、森の中の舗装された道を進んでいくと、東京ドームのような、ドーム状の大きな建物が見えてきた。

 

バスがドーム状の建物の入り口に止まると生徒達は降りていく。

 

 

『みなさん待ってましたよ。』

 

ドーム状の建物の入り口で彼らを迎えたのは、130センチほどの身長で、宇宙服を身にまとったヒーローであった。

 

ヒーローネーム「スペースヒーロー13号」

災害救助で目覚ましい活躍をしている人気ヒーローだ。

 

 

お茶子はスペースヒーローのファンであったのかジャンプしながら喜びの声を上げている。

 

 

早速中へ入ろうと13号はみんなを中へ連れていく。

 

横幅5メートルほどの白い階段を登って、横幅3メートル、縦5メートルはある大きな扉をあけて、中に入った。

 

「スッゲェ!USJかよ!!!」

切島が興奮した様子でそう感想を述べた。

 

中に入ると、まるで某遊園地のようなアトラクション風な光景が広がっていた。

 

 

『水難事故、土砂災害、火災、暴風、エトセトラ。

あらゆる事故や災害を想定して僕が作った演習場です。

その名もUSJ(嘘の災害や事故ルーム)!!!』

13号が両手を広げながらこちらに向き直しそう説明した。

 

(((本当にUSJだった!!!)))

 

 

「仕方ない始めるか。」

 

オールマイトには何かが起こったのか、相澤は仕方ないと、ため息をついてそういった。

 

 

『始める前にお小言を、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ....。と。

皆さんご存知とは思いますが、僕の個性はブラックホールでなんでもチリにしてしまいます。

しかし、これは簡単に人を殺せる力です。みんなの中にも、そういう個性を持つものもいるでしょう。今の社会は個性を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているように見えますが、しかしそれぞれが人を容易に殺せる個性を持っていると忘れないでください。』

 

彼の言葉に誰もが真剣な表情で耳を傾けていた。

 

 

「よし、んじゃあ、まずは....」

相澤が訓練を始めようと彼らに指示をし出すと、突然異変が襲ってきた。

空中に一瞬電気が走ったこと思うと、

階段を降りて少しいったところにある噴水のところが、まるで空間が歪んでいるように蠢き出した。

 

それが異常事態とわかったのか、相澤と13号はとっさに生徒達を後ろにかばいながら警戒を露わにした。

 

「一塊になって動くな!!13号、生徒を守れ!!!」

 

 

歪んだ空間から突然闇が広がったと思うと、空間移動の個性によるものか、そこから個性を発動させた状態の人が大量に出てきた。

 

 

 

 

 

 

奇しくも、命を救うための訓練の時に翔達の前に現れたのはヴィランであった。

 

 

 

 

 

切島がもう入試の時同様に、始まっているパターンかと口を漏らすが、それが聞こえた相澤は首にかけていた黄色い大きめのゴーグルをつけて、鋭く生徒達に告げた。

 

「あれは、ヴィランだ!!」

 

そのセリフを聞いた翔は瞬時に上着を脱ぎ捨て、竜人形態に移行した。

そしてそのまま、前にいた、一佳、梅雨を守ろうと、彼女らの前に出て警戒を露わにする。

 

「一佳、梅雨!下がって!!!」

 

 

 

黒い闇の中からぞくぞくとヴィラン達が出てくる中闇をだし、闇で人型を形成しているヴィランが口を開く。

「イレイザーヘッドに、13号。おかしいですね、先日いただいた教師側の名簿ではオールマイトがいるはずなのですが...。」

 

「やはり先日のマスコミ事件の隙にやられたか...!」

それを聞いた相澤は大きく舌打ちをし、相手を睨みつけながらそう言葉を発した。

 

 

噴水の周りに展開された闇からぞくぞくとヴィランが出てくる。

 

既に数十人。

 

 

「どこだよ....?これだけ大量に引き連れてきたのに....。オールマイト...。平和の象徴....。子供を殺せばくるかな...?うひゃははは!!」

彼らのリーダーなのであろうか、1番真ん中から出てきた手袋を顔や腕などそこら中につけているため容姿はよくわからないが、20代半ばくらいであろうその男性は、オールマイトがいないのを確認すると、不気味そうな声を上げて笑い出した。

 

 

 

 

 

プロヒーローが何と戦っているのか。

 

 

ヴィランとはどのような存在なのか。

 

 

彼らはまだ入学して間もないであろうに、出会ってしまった。

 

 

ヴィランに、途方も無い悪意に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相澤はリーダーらしき男のセリフを聞くと、特殊な物質でできたマフラーを起動し、器用に操り出し、戦闘態勢に入った。

彼らと、ヴィランまでの距離は数百メートル。

 

しかし、ヒーロー、ヴィランにとっては関係ない。

鍛え抜かれた肉体に、一般人にとっての数百メートルなどあってないようなものだ。

 

 

「....。これがヴィランか。ちょっと多いかな....。完全体になるか....?」

流石にこの人数はまずいと思ったのだろうか、翔は冷や汗をかきながらそう言った。

 

翔は、わざわざオールマイトを殺すと言っているくらいだ、全員では無いだろうが、ほとんどがプロヒーロー並みの戦闘能力を持っていると思っている。

 

普通のプロヒーロー並みに戦闘能力だと、翔が第三形態、完全体になると何十人が相手であろうが渡り歩ける。

ただし、相手の生死を問わずではあるが。

 

元々、翔の竜人形態は完全体のチカラを人に止めるため、半分以下の能力に落としている。

翔や、彼の父、翼の個性は完全体が完成系のために、中途半端な竜人形態にでは力を抑えるしかなかったのだ。

 

 

 

当たり前であろう、竜の肉体を人にとどめるなど、出来るわけがない。

 

 

 

 

「はぁ?!雄英高校に侵入とか馬鹿だろ?!」

切島が驚きの声を漏らす。

 

 

「先生!侵入者用センサーは?!」

八百万が焦った様子で13号にそう尋ねるが、あるはずだが....。と芳しい答えが帰ってこない。

 

「まさか、ヴィランが現れる前にドーム一体に走った電気か?」

翔はヴィランが現れる前の出来事を思い出し、そう口にした。

 

 

「現れたのがここだけか、学校全体か。なんにせよセンサーが反応しないってことは、そういう個性も持つ奴がいるってことだ。この時間に俺らがくるって知っていたこと、教師の把握。馬鹿だが阿呆じゃねぇ。これはなんらかの目的があって、用意周到に画策された奇襲だ。」

 

轟が相手を見て現状を冷静に分析した。

 

「先生、通信が不可能なら、誰かを学校にやるべきです。僕は空を飛べるので自分が向かいましょうか?」

翔は流石にこのヴィランの人数相手にプロヒーローが二人だけでは勝てると思っていないので、応援を呼ぶべきと先生に主張した。

 

「いや、天野お前は残れ。俺が知ってる限り、俺前は爆豪、轟に続いてクラスでトップクラスの戦闘力を持っている。しかも空を飛べるなら万が一があった場合お前がみんなを連れて逃げられる。

まぁその万が一を考えたくはないが....。」

相澤はヴィランを睨みつけながらも翔にそう答えた。

 

「そう、ですか...。」

翔は相澤先生も自分達だけでは対処ができないと思っていると感づいたのか、再び不安が頭をよぎる。

 

自分が怪我をするのは別に構わないが、クラスメイト、一佳などが怪我、もしくは取り返しがつかない事になるのではないかと危惧していた。

 

 

 

 

 

 



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USJ②

「先生はあの数を一人で相手するつもりですか?!イレイザーヘッドの戦闘方法は個性を消しての捕縛。あれを一人で相手するのは...。」

 

相澤が戦闘態勢に入ったのを見ると、緑谷は自分が戦力にならないと思っているのか、悔しそうに相澤にそう語りかけた。

 

 

「一芸だけじゃ、プロヒーローは務まらん。

任せた13号!」

相澤は緑谷の心配そうな声にそう返すと、13号に生徒たちの保護を頼み、こちらへ向かってくるヴィラン達と戦うため地をおもいっきり蹴った。

 

数百メートルあった距離が、相澤が走るたびに、どんどんと距離が縮まっていく。

 

ヴィランも相澤が向かって来るのが見えたため、一度足を止めて攻撃態勢に入った。

 

まずは射撃隊の遠距離攻撃が可能なヴィランが前へ出てそれぞれの個性を発動していく。

銃であったり、氷であったりと数十の攻撃が相澤へ向けて発射された。

相澤は流石プロヒーローといった所か、足を止めることなく、向かって来る攻撃を最小限の動きだけでかわし、かわしきれないものは特殊なマフラーを器用に扱い、弾いていく。

 

それから相澤がヴィランとの距離が詰まると、奴らの中心部へおもいっきりジャンプした。

相澤は次に自分の個性で相手の個性を消し、相手が戸惑っている隙に近接格闘技で殴り倒し、マフラーで拘束して地面へと叩きつけた。

 

 

それを遠くから見ていた翔達は、流石プロヒーローだと思った以上に、相澤の戦闘力に驚いていた。

 

 

それを見ていた13号は大丈夫と判断したのか、生徒達に指示を出してこのドームの出口に向かうように指示を出す。

 

それを聞いた翔達は先生の指示に従い、出口へと走って行くが、奴が現れた。

 

彼らがここへ来るために使用した、ワープ個性持ちの、黒い靄で体が拘束されたヴィランが出現したのだ。

 

「初めまして、私達はヴィラン連合。この度はヒーローの卵達の巣窟、雄英高校に侵入させて頂きました。私達は平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたく存じます。残念ながら予定とは違い、オールマイトはいらっしゃらないご様子ですが..。

まぁそれとは別にあなた達には死んでいただきます。」

ワープヴィランの目的を聞いた翔達はオールマイトの殺害と聞き、動揺を表していたが、そこで、気が短かったのであろう爆豪と切島が個性を発動してワープヴィランに襲い掛かった。

 

「馬鹿!単独で突っ走るな!!!」

翔は普段見せない表情で、敵に襲い掛かった爆豪達を止めようと、手を伸ばすが遅かった。

 

爆豪の個性により爆風が生じ、前が見えなくなったので、翔は状況を確認するために急いで翼を広げ、煙を吹き飛ばした。

 

そこには爆豪達の攻撃が全く効くことなく揺らめいているヴィランがいた。

 

ワープヴィランは個性を発動し、翔達をワープで吹き飛ばそうとする。

13号がブラックホールを使ってその靄を吸い込もうとしたが、前に爆豪達がいた為、個性を使うことができなかった。

 

 

ヴィランの黒い靄が翔達を囲むように広がっていき、襲いかかろうとしたときに、翔はとっさに近くにいた一佳を抱えて一気に上空めがけて羽ばたいた。

 

一方で、このクラスの委員長である飯田もとっさの判断で、お茶子と砂藤を抱えて脱出した。

 

それ以外のメンバーは抵抗虚しく、靄に包まれその場から消えた。

 

「くそ!!」

翔は一佳しか抱えられなかったことに後悔しながらも地面に降り立つ。

 

「みんなーーーーー!!!」

一佳もみんなが消えたことに不安を覚えたのか悲鳴をあげる。

 

 

この場に残ったのは、13号、一佳、翔、飯田、お茶子、障子、砂藤、瀬呂、芦戸の9名のみであった。

 

流石の13号もやばいと思ったのか学級委員長であり、足の速さに自信がある飯田に応援を呼びに向かうように呼びかけた。

 

「しかし!自分は学級委員長です!みんなを残してはいけません!」

正義感が強い彼が自分だけが逃げることが許せなかったのだろう。

 

『天野くんは、本当に危なくなった時の脱出作のため残って欲しいのです。彼以外に早く学校につけるのはあなたしかいません。』

13号はワープヴィランを睨みつけながらも、飯田しかいないと説得した。

 

「....!わかりました!」

飯田もそれしかないと思い至ったのか了解の言葉を返した。

 

「私の前で作戦会議ですか。行かせるわけがないでしょう。」

ヴィランも目の前で作戦が聴こえて行かせるわけがないと言った。

 

翔達はどうにか飯田をヴィランの向こう側にある扉から脱出させるために、動き出そうとしていた。

 

翔はこの中で1番頑丈だと理解しているのか自分が初めに動こうと、足に力を入れる。

 

「飯田行ってくれ!僕達が時間を稼ぐ!」

翔は飯田に大声でそう告げると足にためた力を解き、一気にヴィランへ接近した。

その衝撃で地面が割れ、飯田は一瞬体勢を崩しながらも、自分の仕事を全うするため、個性を発動し全力で走り出した。

 

「行かせるわけないでしょう!!!」

ヴィランは飯田を行かせないために彼の前へ移動しようとしたが、一瞬目の前から視線を外した隙に翔がヴィランの目の前へと移動していた。

 

「やらせるわけないでしょう!!!」

翔は走り出した勢いを殺すことなく、右手を大きく振りかぶって弱点に当たらないかと、探るように、爪を立てて切り裂く動作をした。

 

「は、早い.....!!!くそ!!!」

先ほどまでの丁寧な口調が崩れ、爆豪の攻撃が効かなかったにもかかわらず、焦った様子で後ろへ後ずさった。

 

翔はヴィランが下がったため表面の靄にしか、かすらなかったが、途中で何か金属を切り裂くような感触がした。

 

ヴィランが後ずさったため隙ができたのでそのうちに飯田が全力で出口へ向かう。

 

「先生!今何か金属を切り裂きました!ヴィランも何か焦ってます!きっと弱点です!」

翔は弱点と思わしき情報を仲間へと告げる。

 

「ちっ!!!」

ヴィランはこんなにも早く弱点がばれるとは思っていなかったのか焦った様子で翔から目が離せないでいた。

飯田が出口へと向かっているものの、先程の翔のスピードを見ていたため安易に彼から視線が外せないでいた。

 

流石にここで飯田を行かせるのまずいと思ったのか、飯田を止めようと動き出す。

それを見ていた、翔は行かせまいと先程、特定した弱点の場所をより正確に把握するために、大ぶりで引き裂いた。

 

 

「外したか!!!」

しかし今度は当たらなかったのか靄の部分だけを切り裂く。

 

ヴィランはそのまま飯田のところへ向かおうとするが突然左側から影が落ちる。

 

「行かせるわけないでしょう!!!」

ヴィランの靄を含む部分より大きくした、一佳の左手が、風圧を生みながらヴィランへ襲いかかる。

流石のヴィランも避けきれず、弾かれてしまった。

 

「翔!中心よ!顔の部分より少し下に金属のようなものがあった!」

一佳は今吹き飛ばしたときに掌に感じた感触を頼りに弱点を探り出した。

 

「ありがとう!一佳!!」

翔は一佳が弱点を教えてくれたことに感謝を述べた。

 

ギギギと扉の開くような音が聞こえると飯田も全力を出したのかターボのような音を出しながらここから離れていく。

 

「あぁ....。逃してしまいましたか。これでゲームオーバーだ。」

ヴィランは落胆したような口調でそう述べた。

 

ヴィランは目的の失敗を確認したため、翔達と戦うことなくワープゲートでリーダーの元へ移動した。

 

翔はリーダーのとこに移動したヴィランを確認しようと相澤が戦っていたところへ視線を向けると翔の顔は驚愕に染まった。

 

「なっ.....!」

 

 

あれほど敵に立ち回っていた相澤だが、ほとんどのヴィランを地に伏せることはできたが2メートルはあるような、全身黒色のヴィランに殴り倒され、拘束されていた。

 

「やばい!!!」

2メートルヴィランがそのまま、拘束している左手とは逆の右手でとどめを刺そうと相澤へ振りかぶったのを見て、やばいと思い、全力で地を蹴り飛んで行った。

 

「か、翔!!!だめ!!!!!」

「翔君!!!!」

 

他のメンバーも相澤が負けたのを見て驚愕していたが、翔が飛び出すのを見て、一佳とお茶子がとっさに腕を伸ばした。

 

 

翔は今までにないほど全力で翼を動かした。

一回羽ばたくごとに速度が上がり、周りにすごい風を巻き起こす。

 

2メートルヴィランは相澤へ向けて腕を振りかぶっていたが、何かが接近していることに気がつき、腕を止めて顔を上げると、すぐそばまで怒りの表情で顔を歪ませた翔が迫っていた。

 

翔は顔を上げたヴィランを気にすることなく、空中で体をねじり、1番威力が出て、鱗が鋭い尻尾を思いっきり、ヴィランめがけて薙ぎ払う。

 

ヴィランは顔を上げる動作と同時であったけれども、驚くべき速さで相澤を拘束していた腕を解き、腕をクロスさせ、防御態勢に入った。

 

振り抜かれた尻尾の威力は速度を増して、上に打ち上げるように振り抜いたため、ヴィランの腕を骨まで切り裂きながら吹き飛ばし、数十メートル先の壁を陥没させてながら叩きつけた。

 

「先生!!!大丈夫ですか?!今避難させます!!!」

翔は意識が朦朧としている相澤を抱きかかえると、少し先に立っていた、手袋をあちこちに付けたリーダーと、ワープヴィランを一度睨みつけて13号の元に羽ばたいた。

 

ヴィラン連合のリーダーは2メートルのヴィランの無事を確信しているのか、一瞬翔の強さに驚きながらも、余裕の態度だった。

 

「....。やはり早いですね...。」

ワープヴィランは自分も先ほど対峙したため、翔のスピードを知っているからかそう言葉を漏らす。

 

 

 

「13号先生!!!相澤先生を連れて来ました!!!」

翔の焦った表情を見た後に、相澤の症状を見た彼女たちは息を飲んだ。

 

左腕が、崩されたかのように、肘のあたりから壊死し出しており、顔面からは止まることなく血を流していた。

 

 

13号は、災害救助で慣れているのか、一瞬相澤の症状に息を呑みながらも、周りにいた生徒達に応急処置の指示を出していく。

 

「か、翔!危ないよ!」

 

翔は相澤をみんなへ預けると再び飛び立とうとしたため慌てて一佳が止めに入る。

 

「今、相澤先生を叩きのめした、ヴィランを相手する奴がいない。

それに、リーダーとワープヴィランを放っておくとどうなるかわからない。僕が相手してくる。」

翔は真剣な表情で、翔に受けた傷を再生しながら立ち上がるヴィランを指差しそう答えた。

 

「な、なら私も行く!!!」

一佳も止められないと悟ったのか自分も同行すると翔に呼びかけたが、静かに微笑みながら首を横に振って飛び立った。

 

それを見た、一佳は自分の頼りなさに、翔の隣に立てない弱さに涙を流し、唇を噛み締めていた。

 

「い、一佳ちゃん。私たちは私たちのできることをしようよ!」

それを見ていたお茶子は慰めにならない、そんなことしか言えなかった。

 

 

 

 

 



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USJ③

「や、やばい!」

 

今緑谷、梅雨、峰田がいるのは相澤が戦っている広場から少しばかり離れた水場の中にいた。

彼らは自分が飛ばされた水難エリアで、そこで待ち構えていたヴィランたちをなんとか撃退し、相澤の様子を見るために来ていたのだ。

 

「緑谷ちゃん、だめよ、あなたじゃ無理。」

「そ、そうだよ緑谷ぁぁあ!!オイラたちには無理だって!!!な?急いでみんなの方へ行こうぜ!!!」

 

梅雨と峰田は相澤が2メートルヴィランにやられているのを見た緑谷が飛び出しそうになるのを止めていた。

 

「で、でも!!相澤先生が!ぼくが個性を使えば....!」

緑谷が悔しさで、両手を握り締めながらそう言った。

 

緑谷が、相澤の敗北を眺めていると2メートルヴィランが相澤にとどめを刺そうと腕を振りかぶっているのが見えた。

 

 

「く、くそ!!」

「相澤先生ぇええええええ!」

峰田が泣きながら相澤の名を呼んだ。

 

 

緑谷がもう我慢できないと水から上がり、相澤を助けようとした時、突然こちらの方に激しい風圧が飛んで来た。

 

「な、なんだ?!いまの?!」

 

「う、うぉぉーー!!」

 

緑谷が突然の風圧に驚き、風圧から身を守り、峰田が風圧で飛ばされないように、とっさに梅雨の胸を掴んでいた。

 

梅雨は突然の暴挙に拳を怒りで震わせ、峰田の頭を鷲掴みにして水に突っ込んだ。

 

緑谷が、突然の風圧に目を守り、風が止むのを確認するとそこには翔が2メートルヴィランを尻尾でぶっ飛ばしているのが見えた。

 

「うぉぉーー!さっすが天野ーーー!」

峰田が水から顔を出してその光景をみるとそう叫ぶ。

 

「そうね、さすが天野ちゃん。」

 

「す、すごい!天野くん!」

 

そのまま翔は相澤を回収し飛び立っていくのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

翔は相澤をみんなに預け、再びヴィランの元へ向かっていた。

 

「おいおい、嘘だろ、再生能力あるのか!」

 

2メートルヴィランは相澤を戦闘不能にするだけの攻撃力だけでなく、強力な再生能力まで備えていた。

 

 

翔が再びリーダーとワープヴィランの元まで来ることが声が聞こえた。

 

「死柄木弔(しがらきとむら)。思いのほかできる生徒がおりまして、13号は無傷、一人の生徒を逃がしました。」

 

 

「.....はぁ?・・・・・・はぁぁぁあああああああ!!!!!」

ワープヴィランの報告を聞いたリーダー死柄木は一瞬唖然として、突然自分の首を掻き毟り声を上げた。

 

 

「黒霧(くろぎり)、・・・・・お前...!お前がワープゲートの個性じゃなかったら粉々にしたよ...!!!」

死柄木は首を掻き毟りながら怒りに震えた声で、ワープヴィラン、黒霧へそう言った。

 

 

「あーあ。流石に何十人ものプロには敵わない、ゲームオーバーだ。あーあ、今回はゲームオーバーだ。帰ろっか。」

死柄木は落胆して息を吐きながらそう言った。

 

 

 

(帰るのか....?ここまで用意周到に襲撃しといてあっさり帰るのか....?)

翔はその手のひら返しを疑問に思った。

 

「でもその前に、平和の象徴としての矜持を少しでもへし折ってからにするか!!!!」

死柄木は今まで黙って見ていた翔を見てニヤっと笑うとそう言うと、足で地面を蹴り翔の前に躍り出た。

 

 

「は、はやい....!」

翔は竜人形態になったことに上がった反射神経でそれをとらえた。

 

 

死柄木が、個性を発動しながら翔へ手を伸ばす。

 

(こいつの個性はなんだ!!!...くそ!!)

翔は相手の個性がわからないため強く出ることができず、相手の伸ばした手をとっさに左腕で掴み上げ、死柄木に腹へと右の拳を叩き込んだ。

 

「...かはっ!・・・・・。でも掴んだ、あははははは!!!」

死柄木は翔に腹を殴られて口から少し血を出しているが、掴まれた逆の方で翔の左腕を捕まえながら、口を歪めて笑った。

 

(くそ...!接触することによる発生する個性か!!!)

 

翔はそのセリフを聞いて掴まれた腕を離そうとするが、少しだけ遅かった。

 

 

「あはははははは!!」

 

 

翔の鱗が少しずつ崩れていく。

 

「.....あれ、少し侵食が遅いなぁ。まあいっか。そのまましね。」

死柄木はそのままもう片方の腕で翔の顔を掴みに行った。

 

(そうゆう個性か!!!)

 

翔は痛みに顔を歪ませながらも左足お思いっきり引いて、死柄木の腹に再び叩き込んだ。

 

その衝撃で、死柄木は耐えられなかったのか、翔の腕を離して吹き飛んだ。

 

 

「いてて、ずいぶん危ない個性だね。」

 

翔が崩れた腕を見てみると、鱗が頑丈であったのか、数枚剥がれ落ちて皮膚が見えているだけで、そこまで深くはなかった。

 

「.....くそ。ほんと硬いなぁ。おい、脳無(のうむ)お前の出番だ。いけ」

「あはははは、そいつは対オールマイト用に作られた超強力な再生能力に、力がある!これでお前も終わりだ!!!」

 

 

 

死柄木は痛みで顔を歪ませながらも地面から立ち上がり、近くまで来ていた2メートルヴィランへそう言い放った。

 

 

「対オールマイト用の超強力な再生能力と、力か。」

翔も対オールマイトと聞いて自分で対処できるかと悩んでいると、脳無が動くのが見えた。

 

 

いや、一瞬で視界から消えた。

 

(なっっ!!さすが対オールマイト用か!!!)

 

翔は一瞬でかき消えた脳無をギリギリで認識して、両腕で相手が殴りかかるのをガードした。

 

「ぐぅっ!」

 

翔は地面を2メートルほど引きずりながらもガードに成功した。

 

「重いなぁ、父さん以上に重いや。」

翔は焦った様子で笑いながら言った。

 

 

「へぇ、脳無の攻撃をガードしたんだぁ。」

 

「死柄木、そろそろプロヒーローが来ます。撤退の準備を。」

 

 

「まだまだ大丈夫だって、アイツを殺してからだ。」

死柄木は翔を見て口を歪めた。

 

 

 

翔は襲ってくる脳無をガードし、躱し、その隙に反撃をしていた。

 

翔が思いっきり拳を叩き込んで入るものの聞いた様子がない。

 

(まさか、攻撃を吸収してるのか...?いや、でも鱗のせいで表面は傷ついてる。)

翔は、流石に効かなすぎて疑問に思っていた。

 

(なら試してみるか。)

 

翔は自分の鱗を意識して立たせるようにした。

これで余計に傷を負うことになる。

 

 

脳無の大ぶりの一発を加速した思考でなんとか認識して躱し、拳を叩き込んだ。すると、さっき以上に表面が傷つき、肉を割いた。

それでも、再生能力で、次から再生していくが。

 

(やはり切り裂くことはできた。なら、次は毒で行くか。)

 

 

翔は指から生えた爪の先から紫色の分泌液を出し始めた。

 

 

 

 

そう、翔の能力はドラゴン形態になって、身体能力が上がるだけではない。

 

今までは訓練しかしてこなかったため使う機会がなかったが、翔の爪から分泌される紫色の液体は即効性の強力な麻痺毒である。

 

翔は脳無からの攻撃を躱した隙に、思いっきり奴の腹を引き裂いた。

腹を思いっきり引き裂いたため傷が深いのか血がドバドバと溢れ出す。

 

毒が効いたのか、脳無は動きが鈍り膝をついたが、腹が再生すると同時に毒が解毒された痺れることなく立ち上がった。

 

(効いたのか?いやでも再生で解毒されたか....。)

 

翔は爪で切り裂けたことから奴の攻撃吸収のではなく吸収するのは衝撃ではないか、と思い今度は、傷をつけないように、思いっきり拳で殴りかかった。

 

予想通りといいうか、衝撃が相手へ伝わることはなかった。

 

 

(攻撃吸収じゃない、衝撃吸収能力か....!)

翔はやっと解けた疑問に攻撃の糸口を見つけたのか、頬を吊り上げた。

 

 

(ならあれならいけるか!!!)

 

翔は周りに人がいないのを確認すると、

 

ついに個性の真価を発揮した。

 

 

 

翔は全身に力を入れて個性を発動する。

 

 

体がぐんぐんと大きくなり、流石に耐えられなくなったのかズボンがはじけた。

 

脳無も相手の変化に警戒したのか、一歩下がって様子を見ている。

 

 

翔が変化を終えるとそこにはドラゴンがいた。

 

 

全長は6メートル程であり、

全身を覆う銀の鱗は一つ十数センチ程の大きさだ。

鋭そうな、爪で地面にしっかりと立ち、体を支える強靭な足。

背中から生えていた翼は腕から背中に伸びるように生えて来て、

両翼合わせて10メートルはあった。

尻尾が数メートル伸びて、尻尾の先が大きく膨らんでいた。

 

縦に伸びた首の先にある顔は大きな牙が生えており、薄い銀色の光を放つ青い瞳が輝いていた。

 

変化を終えた翔は、威嚇のため大きく息を吸い込んで口を開けた。

 

 

 

 

『グガァァァアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

 

 

このドームのどこにいても聞こえるような大きな咆哮が放たれた。

 

 

 

 

 

「....なっ!!!!」

「や、やっベーよ!!!天野やべーよ!!ちょぉかっけー!!」

「あ、天野ちゃんドラゴンになっちゃったわね。」

 

緑谷達は翔の咆哮に本能からか体を硬直させてしまう。

それが解けるとそれぞれ声を漏らした。

 

「やっぱり!あれはウェルシュ・ドラゴンだ!!!やっぱ天野くんは彼の息子だったんだ!!!

初めて天野くんの個性を見たときはまさかと思ったけど、彼に似てる。いや、もうそっくりと言っていい。もし彼と同じ個性だとしたらボソボソボソボソ....。」

 

緑谷はこんな状況であったが、ナンバー2ヒーロー、ウェルシェ・ドラゴンと同じ個性を間近で見れて、目を輝かせながらブツブツと独り言をつぶやいている。

 

 

 

天野は、変化を終えると、翼を大きく広げて飛び上がった。

 

「おいおいおい、まさかウェルシュか?いや息子か.....?こんな情報なかったぞ.....!あぁぁああああ!」

死柄木は予定にないことが起こりパニックになったのか、再び首を掻き毟りながら叫び声をあげた。

 

「死柄木、流石に撤退しましょう。」

黒霧もこれはやばいと思い、撤退を死柄木に言うは、彼は聞こえていない。

 

 

 

翔は上空から脳無目掛けて一気に襲いかかった。

脳無も思いっきり、拳を振りかぶりドラゴンに殴りかかるが、翔は一瞬怯みながらも両足で、脳無を張り倒し地面に叩きつけた。

 

 

(再生能力あるから死なないよね.....?)

翔はそう危惧しながらも息を大きく吸い、脳無の両足へ向けて火の玉を口から吹き、燃やし尽くした。

 

 

 

(なっ!まさかここまで再生能力強いのか!!!)

 

脳無は痛みがないのか苦しむ様子もなく、足をどけようともがいてて、両膝まで燃え尽きた足が焦げ目から順に再生していった。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、今の鳴き声ってあのドラゴン?!」

 

お茶子たちは突然ドーム中に響いた声に怯みながらも声がした方向の噴水を眺めた。

 

「で、でっかーー!もしかしてあれって天野くん?!」

 

「か、翔だ!」

 

一度見たことがあったのか一佳はお茶子の声にそう答えた。

 

 

「......。ん。今の声、天野か....。」

今の声で気がついたのか、相澤が仰向けになりながら言葉を漏らす。

 

「せ、先生!大丈夫ですか?!」

お茶子や、瀬呂、芦戸と言ったメンバーが相澤に駆け寄った。

 

「あ、あぁ大丈夫だ。それより、俺も援護に....!」

相澤は痛みに震えながらも立ち上がろうとしていた。

 

そこで声がかかった。

 

生徒ではない、13号でもない、

 

声が聞こえたのはこのドームの出口からだった。

 

 

 

 

「相澤くん。もう大丈夫だ!私が来た!!!!」

 

 

 

「オールマイト!!!!!!」

 

出口へ視線を向けるとそこにいたのはオールマイトであった。

 

 

 

「1-Aクラス委員長!飯田天哉!ただいま戻りました!!!」

飯田が雄英高校まで走り彼らを呼んで来たのだ。

 

「ごめんよみんな、遅くなったね!すぐ動けるものをかき集めて来た!手分けして生徒達の保護を!」

 

それに、雄英高校の校長である、白鼠のような見た目の男を筆頭に、彼によって集められた十数名のプロヒーロー達が集まっていた。

 

プロヒーロー達はそれぞれが自身の個性を使い、ヴィランの残党を退治し、生徒を保護するために駆け出して行った。

 

 

「相澤くん、もう大丈夫だ。君は休んでいてくれ。」

 

そう言うと、オールマイトは巨大なドラゴンの元へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

翔が脳無を地面に縫い付けながら、これからどうするか迷っていると、オールマイトの声が聞こえた。

 

(オールマイト先生がきた!)

 

 

 

 

「くそ、くそくそ、オールマイトも来た。もう無理だ本当に、ゲームオーバーだよ...。」

「えぇ、撤退しましょう。」

 

彼らが諦めて撤退しようとすると、プロヒーローの中の個性により死柄木の両腕と両足は撃ち抜かれた。

「くっ!」

死柄木は突然の痛みで体を崩すが、黒霧はすぐさま死柄木を抱えてワープして行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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後始末

「あぁ?!?なんだこのバカでけぇトカゲは!!」

翔が声がした方向を向くと爆豪と轟がこちらへ向かってきた。

 

 

「こっちが終わったから来てみれば...。もう終わったか。」

轟は冷静にそう分析した。

 

「おい、お前天野だろ?」

 

 

「グルゥ....。」

 

翔はこの姿では声帯が人間と大きく違うため鳴き声で返事をした。

 

 

彼らがそう話しているとオールマイトがこちらへ駆けて来た。

 

 

(あぁ....。疲れた.....。)

翔が完全体になっていた時間は3分。しかしそれまで脳無の攻撃を何発も体に受けていたため、すでに翔の体力は底をついていたのだ。

 

翔はオールマイトが駆け寄ってくるのを確認すると流石に個性を使いすぎたのか、完全体が解けて倒れてしまった。

 

「天野くん!大丈夫か!よくやってくれた、天野くん。君のおかげで相澤君を死なさずに済んだ。」

オールマイトは急いで翔の元へ駆け寄ると抱き上げそう言った。

オールマイトは生徒である翔にここまで戦わせたことを悔やんでいるのであろう、少し表情が暗かった。

 

 

「せ、先生。とりあえず何か服くれませんか?」

翔は完全体になったため服が弾け飛んでいた。

翔は恥ずかしそうに股間を隠しながらオールマイトに服がないか尋ねた。

 

「あ、あぁ、すまない!ではこの服を着てくれ!」

オールマイトは翔の裸に気がつき自分が着ていたスーツのジャケットを彼に渡した。

 

 

翔は疲れた体でフラフラしながら立ち上がると、彼のジャケットを自身の腰に巻きつけた。

 

 

 

 

 

翔がオールマイト、爆豪、轟らとともにドームの入り口へ着くと、そこにはヒーローに助けられたのか、プロヒーローとともに生徒たちが集まっていた。

 

 

「翔!大丈夫か!」

一佳が心配そうに駆け寄ると、翔は心配させないように少し笑いながら一佳の頭を撫でた。

 

「大丈夫だよ、一佳。少し疲れただけだから。」

 

翔はもともと鱗が頑丈であったため怪我という怪我は、少しの打撲くらいであった。

 

 

 

「おいおい大丈夫か、天野!!!もしかしてさっき聞こえた咆哮はお前か?!すげー声だったな!」

 

「えぇ、私たちの方まで聞こえていましたわ。」

 

「オイラ達は間近で見たよ!めっちゃデケェドラゴンになってた!!!!」

 

切島や八百万が疲れた様子の翔の元へ寄って来てそう声をかけた。

 

そこで、近くで見ていた峰田はどれだけドラゴンがデカかったのかと、両腕を思いっきり広げて表現していた。

 

「あぁ、すごい疲れたよ。あはは。」

翔は疲れた様子でそう苦笑いをして返した。

 

「天野さん、私がよければ洋服をお作りいたしますわ。少し待っててください。」

八百万は腰にジャケットだけを巻きつけた翔を見て自分の個性、創造で翔の服を作ると言ってきた。

 

「そう?ありがとう。八百万さん。」

 

八百万は自身の露出してある腹のあたりから、シンプルな黒のジャージと、同じく黒のパーカーを生み出した。

 

それを翔に手渡すと、翔は腰のジャケットを外してそれに着替え出した。

 

 

「あ、ああああ天野さん!私の目の前ではしたないですわ!」

八百万は翔が突然着替え出したため、思わず直視してしまい、顔を真っ赤にさせながらそう注意した。

 

「あ、あぁごめんね。少し疲れてて。」

翔は疲労のせいかそこまで注意が回らなかった。

 

 

「お、お前大胆だな。」

 

「お、オイラでもそんなことできねえよ。」

切島と峰田も流石に女子の前で全裸になった翔に呆れていた。

 

「あはは。」

 

「何があははだ。私もいるんだぞ!」

一佳も側にいたためそれを見てしまったのか耳まで赤くさせながら翔の脇腹を肘で突きながらそう言った。

 

 

 

それから暫くすると警察がやって来たため、事情聴取をされた。

 

事情聴取から解放されるとみんなは疲れた様子でこちらへ来ていたバスへと乗り込み、雄英高校の校舎へ向かった。

 

 

 

彼らが、先生達から聞いた情報によると、怪我人は擦り傷などの軽症を負った生徒数名と、腕や脚、顔など全身に重傷を負った相澤先生であった。

 

 

みんなはバスの中で自分たちが何をしていたのか話していた。

 

「みんなの方はどうだった?こちらはほぼチンピラ同然であった。」

 

「あぁこっちもそんな感じだったぜ!」

 

「てか途中の天野の声すごかったよなぁ。」

 

 

常闇の質問に、切島と上鳴が答えてゆき、再び天野の話題が上がった。

 

「天野、やっぱ天野はヒーローウェルシェ・ドラゴンが父親なのか?」

 

やはり気にはなっていたのであろう、常闇がそう聞いて来た。

 

所々でこちらに耳を傾けているものがいる。

 

「うん、そうだよ。うちの父さんだよ。」

 

翔は隠すつもりもないため普通にそう答えた。

 

「やはりそうであったか、あのドラゴン。非常に素晴らしかった。」

カラスの顔を持つ常闇はドラゴンに憧れを持つのかそう感想を述べた。

 

「天野ちゃん、すっごく大きかったわ。」

梅雨は自分が見た天野について話した。

 

「ええ声も体も色々と大きかったですわね。」

八百万も何を思ったのか遠くの景色を眺めながらそう答えた。

 

 

 

 

 

オールマイトは彼らを助けに行くため活動限界ギリギリであったが、無理やり変身したため疲れを癒すため保健室のベットで横になっていた。

 

そこで扉が開くと帽子をかぶり、茶色のコートを着た男性が入ってきた。

 

「失礼します。オールマイト、久しぶり。」

 

「塚内くん!君もこっちにきていたのか。」

オールマイトは彼の登場にベットから起き上がり、彼を出迎えた。

彼は塚内直正(つかうちなおまさ)。

オールマイトにとって、彼の事情を知った最も親しい警察官であった。

 

「今日の襲撃について報告に来たんだが、もしイレイザーヘッドが彼らのため戦わなければひどい被害が出ていただろう。」

 

 

「ひとつ違うぜ、塚内くん。生徒達もまた戦い身を呈した。こんなにも早く実戦を経験し、生き残り、大人の世界を知り、恐怖を知った一年生など今までに居なかっただろう。ヴィランも馬鹿なことをした。このクラスは強い。強いヒーローになるぞ。」

 

オールマイトは窓から見える夕焼けを眺めながらそう訂正した。

 

 

 

 

そう、このクラスは強くなるであろう。

 

敵を知った。

 

恐怖を知った。

 

己の無力を知った。

 

彼らはきっと成長するであろう。

 

自分のために、誰かを守るために、もう負けないために。

 

 

 

いいや、彼らは成長するしかない。

この襲撃は後から起こる事件の始まりにすぎないのだから。

 

 

 

 

 

翔は今一佳とねじれと帰って居た。

 

「ねぇねぇ、ほんとにだいじょうぶ?かけるくん。」

ねじれは今日の襲撃を知ったため、翔が心配になり帰り道について来たのだ。

 

「大丈夫だよ、ねじれちゃん。心配してくれてありがとう。」

翔は心配してくれたねじれの頭を撫でながらそう言った。

 

「翔は本当に強かったな....。私ついていけなかった....。」

一佳は自分が翔の隣に立てなかったことに悔やんで居た。

 

「じゃぁ、強くなろうか。一緒に。」

翔は一佳に顔を向けると目を見つめてそう言った。

 

 

「うん....。そうだな。」

一佳今度は自分も彼の隣に立てるようにと決心してそう答えた。

 

 

「よーし!私も強くなっちゃうぞぉーー!!」

ねじれは場を明るくするように笑顔で腕を上げながらそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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休日

「お兄ちゃーーーん!朝だよーーー!!!」

 

「ぐはっ!!!」

 

今は朝の7時。

昨日の襲撃事件から日を跨いだ次の日だ。

 

昨日の襲撃事件があったため、今日は平日であるが雄英高校は休校になっていた。

 

普段の翔は5時30には起きて、1時間のランニングに出かけるところではあるが、

昨日の個性の使いすぎにより出て来た疲労が抜けきっていなかったため、ランニングには行かなかった。

 

ランニングを休んだ翔は珍しく、それに自分が兄を起こしたことがなかったため、妹の風香はそんなイベントがしたかったらしく翔のベットへダイブしたのだ。

 

 

風香は兄の部屋の扉を開けると兄が寝ているベットへ向けて勢いよくダイブをした。

 

「ふ、風香かな?お兄ちゃんちょっと痛いかな。」

 

翔は突然起こされたことにイラっとしながらも風香であるためか怒れないでいた。

翔は今の衝撃で目が覚めてしまったのか、左手で目をこすりながら、右手で、布団の上にまたがっている風香を抱きかかえてベットから降りた。

 

「お兄ちゃんがランニング行かないなんて珍しいね!」

 

「昨日の事件で少し疲れが抜けなくてね。それより風香は今日も学校だろう。準備しておいで。」

翔は少し寝癖のついた金髪を撫でながら風香を送り出した。

 

風香も兄を起こすというイベントに満足したのか素直に出て行った。

 

 

翔は朝食をとるためリビングへ向かうと、父である翼と母の飛鳥がいた。

 

「あら?今日はランニング行かなかったの?」

飛鳥は朝食の準備をしながら翔のパジャマ姿を見るとそう言った。

 

 

「きっと昨日のことで疲れたんだろう。ヴィラン連合かぁ、これから忙しくなるなぁ。」

 

「そう。昨日の疲れが抜けてなくてね。」

 

翼は朝食をとりながら、朝のニュースを見ていた。

翔も自分の席に座ると朝食が出てくるまで自分もテレビへと視線を向ける。

 

『では昨日の雄英高校襲撃事件でヴィランの動きが活性化するのでしょうか?』

『えぇ、そうでしょうね、このニュースを見た、自分の個性を持て余したヴィラン達の動きは活発になるでしょう。まぁ、逆にこれによるヒーローの警備強化を警戒してなりを潜める者もいますがチンピラ程度のヴィランの動きは活性化するでしょうね。』

 

テレビではニュースキャスターとコメンテイターがそう議論を交わしていた。

 

「父さん、やっぱヴィランの動きは活発化するの?」

翔は朝食を持って来てくれた飛鳥にありがとうと告げてつ翼に質問した。

 

「凶悪犯罪を犯すような奴は、出てこないだろうが、このニュースを聞いたチンピラ程度のヴィランは自分も暴れよう!と動き出すだろうね。多分今回のせいでヒーローの地域警備が強化されるだろうし。」

 

それを聞いた翔はそこまで興味がなかったのかふーんと話を流した。

 

それから暫くすると風香は学校へ行き、翼は仕事へ向かったため暇を持て余していた。

 

飛鳥は家事で忙しいため話をすることはできない。

 

翔は家にいても仕方ないと思い家から出ることにした。

 

「母さん、ちょっと出かけてくるねー。お昼は外で食べてくるよ。」

 

「気をつけて行ってらっしゃい。夕食前には帰ってくるのよー。」

 

「わかったー。」

 

翔は部屋で寝巻きから外出用の服に着替えた。

下は紺のジーパンに、上は灰色のパーカーと少し地味めの格好、

首にはヒーローコスチュームが収まっているペンダントをかけた。

 

 

翔は家から出ると、とりあえず都心へ行こうと電車に乗った。

 

平日の日中であるためか思ったより人が少なく、こんな平日の日中に出かけることはないため、翔は新鮮な気持ちでいた。

 

翔が都心で電車を降りると、どこで暇を潰そうかと駅前をぶらぶらしていると、

少し暗めの金髪が爆発したような髪を持つ少年がいた。

その少年は今、ゲームセンターに入ろうとしていた。

 

彼は暗い迷彩色の少しダボついたズボンに、黒を基調とし派手めの色でペイントされたTシャツを着ていて、大きくピースサインのしてある帽子を後ろに被っていた。

そう爆豪だ。

 

翔は外で爆豪を見たことがないため、珍しいと思いながらも、声をかけて見ることにした。

 

「よっ!爆豪!こんなとこで何してるの?」

翔が爆豪の後ろから肩を叩くと爆豪は振り向いた。

 

「....あぁ?なんでオメーがここにいんだよ!」

爆豪が翔の姿を確認すると眉間にしわを寄せ、チッと舌打ちをしながら言った。

 

「まぁまぁ、僕も暇してるんだよね、一緒にやろうよ。」

翔はいつもの爆豪の様子に気にすることなく話しかける。

 

「あぁ?!なんでオメーなんかと遊ぶんだよ!ついてくんじゃねーぞ!!」

 

爆豪は翔の腕を振り払うとそのまま歩いて行ってしまう。

 

 

 

翔は暇であったためここで暇を潰そうと爆豪の後をついて行く。

 

「へー、爆豪ってUFOキャッチャー上手いんだね。」

爆轟がUFOキャッチャーをほぼ一発で成功するため驚いた表情で爆豪に話しかけた。

 

「...まだいんのかよ。チッ。」

 

「ぼっちの爆豪について行ってあげてるんだよ。」

 

翔は不機嫌な様子の爆豪に、ニヤニヤしながらそう言った。

 

「はぁ?!誰がぼっちだ!!!舐めてんのか?!」

爆豪はその言い分が許せなくて翔に対してキレるが翔は、まぁまぁと気を沈めながら隣の台で自分もやり始める。

 

「あっれー。意外と難しいな。」

予想以上に難しかったため翔は苦笑いをしていた。

 

それでも翔は諦めることなく続けていたが、爆豪はそんな様子に我慢ならなかったのか月を挟む。

 

「チッ。下手くそが。もっと隙間を狙え。そこだそこ。」

爆豪はめんどくさがりながらも翔にアドバイスをした。

 

「へぇ。あ、取れた。」

それから翔は爆豪のアドバイスにより2回めで景品を獲得した。

 

「いやぁ、サンキューサンキュー。爆豪ってうまいんだね、ゲーセンにはよくくるの?」

 

「....あぁ。たまにだ。もういいだろ!俺は行くからな!ついてくんじゃねーぞ!!」

爆轟はかけるの質問に答えると怒りながら去っていった。

 

「あーあ、いっちゃった。それより、楽しかったな。」

翔は爆豪とこんなことするとは思っていなかったため、予想以上に楽しめていた。

それと同時に爆豪に少し近づいた感じがした。

 

 

それから翔はゲーセンを出ると再び街を歩き回る。

 

翔が空腹を感じたため時計を確認するとすでに12時を回っているため昼食をとることにした。

 

 

昼食を終えて、これからどうしようかと考えていると、珍しことにお茶子に出会った。

 

今日1日で同じクラスの二人に会うことに運命的な何かを感じつつも、一人でいたため話しかけにいった。

 

「お茶子さん、こんにちは。」

 

お茶こがその声を聞くとこちらを振り返り、驚いたような表情をしていた。

「あれー?!翔君?!奇遇だねぇ!こんなとこで会うなんて。私は買い物してたんだよー!翔君は?」

お茶子は、足がすらっと見える薄茶のチノパンをはき、少しヒラヒラした可愛らしい花柄の短めのワンピースを着ていた。

 

「僕は暇だったからちょっとぶらぶらとね。お茶子さんは買い物なんだ。今日の私服似合ってるね。」

女性の私服を褒めることを忘れない翔だ。

 

「ありがとう。私はもう買い物終わったんだ!よかったらお茶してこうよ!」

お茶子は自身が買った袋を翔に見せながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

翔達が喫茶店につきそれぞれドリンクを頼むと翔から話し始めた。

 

「実は今日の午前中には爆豪と偶然あったんだよね。」

 

「え、えーー!大丈夫だったの?!」

お茶子が何故か翔の身の安全を聞いてきたことに、爆豪はどれだけ危ないやつと思われているのか少し不憫に思いながらも、大丈夫と伝えた。

 

「大丈夫だよ。爆豪とはゲーセンで遊んできたんだよね。爆豪意外とUFOキャッチャーがうまっかよ。」

 

「あ、あの爆豪君がUFOキャッチャー....。」

 

翔のセリフを聞いたお茶子は爆豪の意外な姿に驚いていた。

 

それから、お茶子は自分が買った服などを見せ、色々と話題を振りながら会話を楽しんでいった。

 

「あ、もうこんな時間に!私そろそろ帰るね!今日は楽しかったよー!またねー!」

 

翔達は2時間近く話していたため、すでに夕方になっていた。

 

翔は楽しそうに話すお茶子を可愛いと思いながらも、時間が潰せたことに満足していた。

 

 

 

 

それから翔は寄り道することなく家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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