ブラッククローバー ~武器魔法の使い手 (晴月)
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ページ1 "三人"の誓い

ここは、とある田舎の村。 名前をハージ村という。

 

とある三人の少年達が魔法帝を目指し、日々鍛練を積んでいたのだが、

 

「....なんだこれ。」

 

この物語の主人公 ノア・レイダスは、漸く手に入れた自分の魔導書《グリモワール》のページを確認しそこに載っていた魔法を使ってみたのだ。そして現れたのは"剣"だった。

 

もう一度言おう。"剣"だ。"剣"一本だけだ。その剣の見た目は、赤黒い刀身の両刃の剣で銀色の鍔が付いている。握ってみると以外に持ちやすく。それでいてあまり重くは感じられない作りになっている。

 

「いやまぁ。俺も魔法が使えるようになるのは嬉しいんだけど。なんで"剣"なんだ?...普通、魔法って火や水を出したりするものじゃないのかよ。....訳分かんねぇ。」

 

ノアが一人、川の岸で呟いていると不意に後ろから誰かに声を掛けられる。

 

「どうしたノア?さっきから一人で何をぶつぶつ言ってるんだ?」

 

「ん?....ああ、なんだユノか。」

 

ノアに声を描けたのはノアと共に魔法帝になることを夢見て日々鍛練を積んでいるもう一人の少年だ。ユノはノアの隣に座ってノアの話を聞くことにした。

 

「いや、俺の魔法なんだけどさ、なんで"剣"なんだろうって思ってさ。....普通、火とか水なんだけど何でだろうなって。」

 

「そうか。....もしかしたらお前以外にも武器を使う魔法の使い手はいるんじゃないのか?」

 

「そうかな?.......でもそう考えたら何だか気が楽になった。ありがとうユノ。」

 

「気にするな。それよりアスタのことなんだが。」

 

「ああ。聞いた。」

 

アスタとはノア達と同じで魔法帝を目指しているのだが、ただ二人と違う点があり。それは、アスタには生まれつき"魔力"が無いという事だ。

 

「あいつは生まれつき魔力が無い。だからあいつはグリモワールには選ばれない。....そう村の連中は言ってるが、お前はそう思ってないだろユノ。」

 

「ああ。あいつが選ばれないなんて有り得ないからな。あいつは俺達以上に努力を重ねている。選ばれて当然の奴だ。」

 

ユノは空を見上げながらそうノアに話す。

 

「それで、俺の所に来たのはアスタの事を村の連中と同じ様に考えてるか聞きに来たのか?」

 

「.....ああ。」

 

ユノはノアが話すのを少し待ってから聞く。

 

「俺もお前と同意見だよ。アスタが選ばれない訳ないだろ。俺もお前もアスタは魔法帝を目指すライバルだと思ってる。....だからあいつは絶対に選ばれる筈だ。....違うか?」

 

ノアはユノの目を見てそう答える。

 

「.....そうだな。俺達があいつを信じてやらないとな。....ライバルとして。」

 

ユノはフッと笑い。そうノアに言った。

 

「そうだな。....さてと、ちょっと行ってくる。」

 

「アスタの所か?」

 

「ああ。あいつは絶対に諦めない。なら俺があいつに言う事は一つだけだ。」

 

ノアはユノにそう言い放ち、その場を後にする。

 

─────────

 

教会前。

 

「アスタ。」

 

「ん?なんだノアか。.....まさか、お前まで俺の事を馬鹿にして...」

 

アスタがそう言いかけたが、ノアはそんなアスタにデコピンをする。

 

「痛って~~~~!何すんだノア!?」

 

アスタはノアに食って掛かるがノアはただニコッと笑うだけだ。

 

「バ~カ。俺が何時、お前の事を馬鹿にしたんだよ。俺はお前のその諦めない強い思いが羨ましいんだ。少し嫉妬はするが、お前の事を馬鹿にしたりはしねぇよ。」

 

「お、おう。それでノア、お前の魔法ってどんなのだ?」

 

「ん?俺の魔法か。.....えっと、"武器魔法 炎魔の剣"」

 

ノアが魔導書を開き、そう呟くと魔導書のページから先程の剣が出てくる。

 

「これが俺の魔法。武器魔法....らしい。」

 

「らしいってなんだよ。知らないのか?」

 

「いや、今までそんな名前の魔法。見たことも聞いたこともないからさ、最初にこの剣を出したときも少し戸惑ったんだ。」

 

「ふ~ん。でもいいじゃねぇかよ。俺なんか魔導書貰えなかったし。」

 

「そう言うなよ。お前は必ず魔導書に選ばれる。俺とユノはそう信じている。」

 

「.......そうか。」

 

「...うし!....なら、今からもう一度魔導書貰いに行こうぜ。もしかしたらまだ余ってるかもしれないしな。」

 

ノアはそう言って走る。

 

「ちょっ、おい待てよノア!」

 

そんなノアを追いかけて走るアスタ。二人は何処か楽しげに走って向かうのだった。

 

───────────

 

授与式会場。

 

そこではユノの四つ葉の魔導書を狙った魔法使いがユノを拘束していた。

 

「では魔導書を頂こうか。」

 

男がユノの魔導書を奪ったその時、

 

「「ちょっと待ったー!!」」

 

アスタとノアが男の前に飛び出した。が、アスタは寸での所で転んでしまいそのまま壁に転がっていってしまう。

 

「アスタ...!それにノアまで....!」

 

「よう。ユノさっきぶりだな。....それよりなんだ、こいつは?」

 

「俺の魔導書を狙った盗賊だ。」

 

「成る程。なら渡す訳にはいかないな!」

 

"武器魔法" 炎魔の剣

 

ノアは剣を取り出し、男に立ち向かっていく。

 

「そうだ!魔導書は授かった奴だけの大切なものだ。渡すかよ!」

 

アスタも男に向かって走っていくが、男は魔法で鎖を出してアスタを捕らえ、壁に叩きつける。ノアは男の不意を突いて剣で斬りつけるが、男は鎖で剣を防ぎ、アスタと同じ様に壁に叩きつける。そして男はアスタに向かってこう言った。

 

「頑張ったお前に良いことを教えてやろう。お前には魔力が一切無い。生まれつきだろうな....そりゃあ魔法が全く使えない訳だ...!!」

 

男は更にアスタに言い放つ。

 

「お前はこの世界じゃなぁ~んも出来やしない。何もかも諦めな。生まれながらの負け犬くん...!!」

 

(そうだよな。努力してもどうにもなんねー事もあるんだよな....もう"諦め"─)

 

アスタが諦めかけたその時、

 

「オイ...誰が負け犬だ...!!アスタは、俺のライバルだ!」

 

ユノがそう男に言った。

 

「は?」

 

「そ...うだ。俺のライバルでもあるんだ。アスタを馬鹿にすんじゃねぇよ!」

 

ノアも立ち上がり、ユノに負けじと男に立ち向かっていく。

 

が、やはり防がれてしまう。その時、

 

「まだだ...!!!」

 

先程まで諦めかけていたアスタの瞳に光が灯り、男を睨み付ける。

 

「情けねーとこ見せたな....ユノ、ノア。ちょっと待ってろ...今、こいつを倒す...!!」

 

アスタが男を睨み付けると、突然横の壁から黒く汚れた何かがアスタの前に飛び出してきた。

 

「...魔導...書....!?」

 

「...やっぱりな...アスタが選ばれないなんて...ありえねー...!!」

 

すると魔導書のページから黒く汚れた大剣が出て来てアスタの前に突き刺さった。

 

「やっとか、全く待たせやがって。....アスタ、やるぞ!」

 

「ああ。いくぜノア!!」

 

アスタとノアがユノの魔導書を取り返すため、タッグを組む。

 

「な...何なんだそれはぁー!? 魔力の無いグズがぁぁぁぁぁー!!!」

 

男は鎖で応戦するが、アスタの大剣は鎖が触れた途端に消えてしまう。

 

「俺の魔法を...無効化したー!?」

 

「魔力が無くてもオレは魔法帝になるぁぁぁぁぁ!!!」

 

「魔法帝になるのは俺だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

アスタとノアが男に対して同時に斬りかかり、吹き飛ばして壁に叩きつける。

 

「いょっしゃーい!! 何か知らんけど魔導書手に入れたぁー!!」

 

「やれやれ、やっとだな。....!?」

 

その時、ノアが何かに気付いた。

 

「な、なぁアスタ。その魔導書、ちょっと見せてもらっていいか?」

 

「ん?別にいいぜ。..ほら。」

 

アスタがノアに自分の魔導書を手渡すと、ノアは魔導書の表紙をしきりに眺める。

 

(この魔導書.....俺のと、同じだ。)

 

ノアは自分の魔導書を手に取ると、表紙を確認する。

 

ノアの魔導書とアスタの魔導書には同じ"五つ葉"の模様が描かれている。

 

(俺の魔法って、もしかして普通じゃないのか?.......いや、それよりもアスタは、)

 

ノアはアスタの方に顔を向けるも、アスタは不思議そうな顔をするだけだった。

 

(気付いていないみたいだし、黙ってよう。)「いや、何でもない。俺の勘違いみたいだ。....悪いな、アスタ。」

 

「いや、別にいいぜ。」

 

ノアはアスタに魔導書を返すと、男が落としたユノの魔導書を拾い、そのままユノに返す。

 

「大丈夫か、ほらお前のだ。」

 

「ああ、ありがとう。ノア。....お前に助けられたのは初めてだな。」

 

ユノはノアから魔導書を受け取るとそうに言った。

 

「貸し一つだ。....何時か返してくれればそれでいいからさ。其れよりも。」

 

ノアはアスタの方に顔を向け、ユノに何かを言いたげにする。するとユノは、暫くしてから頷くとアスタに向かって歩いていく。

 

「アスタ。また...助けられちまったな...この借りはいつか必ず返す...!」

 

「約束...憶えてるか?」

 

「ユノこそ憶えてたのかよ。」

 

二人は互いの拳を合わせて向き合う。

 

が、まだ何も言わない。

 

「おい!何やってんだノア。お前も来いよ!」

 

「え!?俺もか?」

 

ノアは突然、アスタに呼ばれ、少し戸惑いを見せる。

 

「...俺は二人の事知ってるから待ってたんだけど。」

 

「何を言っている。お前も魔法帝を目指すなら、俺達とはライバルだ。....それにノア、お前さっき言ったろ。"俺のライバルでもある"って。」

 

ユノの言葉にノアは頭を抱えて踞る。

 

「あ~言わなきゃ良かった!」

 

「何言ってんだ、ほら。」

 

「おっと。」

 

アスタがノアの腕を掴んで立ち上がらせる。

 

「はぁ。分かった。」

 

ノアはアスタとユノが合わせている拳に自分の拳を当てる。

 

「「「誰が魔法帝になるか勝負だー!!!」」」

 

こうして、アスタとユノ。そしてノアは魔法帝になるべく新たな第一歩を踏み出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ2 入団試験

お気に入りが10人にも増えていて有り難いです。これからも頑張って書き続けます。


アスタ、ユノ、そしてノアが約束を交わしてから半年が過ぎたある日。

 

三人は魔法騎士団への入団を目指して試験会場へと出向いていた。

 

「やっぱいろんな人がいるな。」

 

ノアはひとりそう呟いた。

 

「それはそうだろ。ここにいる全員が魔法騎士団に入団したいと思って来てるんだ。」

 

「それもそうか。」

 

ユノはノアの独り言にそう答え、二人は並ぶように会場へと入っていく。

 

すると周りからザワザワと何かを話している声が聞こえる。

 

「オイ。あいつだ...!!最果ての町で四つ葉の魔導書に選ばれたっていう──」

 

「四つ葉ァ!?...マジかよ。」

 

「あれ?そういやあいつの隣に要るのは誰だ?」

 

「さあな。」

 

どうやら周りの人達はユノの事を話しているようだ。

 

「随分人気者だなユノ。」

 

「別に。」

 

「まぁ。それはさておき、さっきから周りの人にたかってる鳥が気になるな。」

 

ノアが気にしている鳥は試験会場では最早名物となったアンチドリという名前の鳥だ。この鳥は魔力が低い人程たかられるという珍しい習性?を持っている鳥だ。

 

しかし、ユノとノアの周りにはアンチドリが一匹もいない。どうやら二人は相当魔力が高い事がこの時点で明らかとなった。

 

さて、アンチドリが魔力の低い者に反応するなら元々魔力が全く無いアスタだとどうなるか。

 

「へっへっへっ。オレ等の誰かが魔法帝になる...その伝説の始まりだなユノ、ノア─!!」

 

ユノとノアの二人が声がした方に顔を向けるとそこには、

 

「半年間のオレの修行の成果─見せてやるからなだだだだだ」

 

ものの見事にアンチドリにたかられていた。それも一匹だけでなくおおよそ数十匹程だった。

 

まぁアスタなら当然こうなるだろう。とノアは一人心の中でそう呟くのだった。

 

─────────

 

そこからいろいろあったが、あえて飛ばされてもらう。

 

アスタが受験生と間違えて『黒の暴牛』の団長の

ヤミ・スケヒロとぶつかってしまい、一悶着あったり。色々な内容の試験を突破したりした。ノアとユノは当然簡単に全ての試験をクリアしたが、アスタは魔力が無いために試験の結果は酷いものだった。

 

そして最後の試験。実戦となった時。

 

アスタはセッケと戦い、簡単に勝利した。ユノも貴族出身の男と戦い、見事勝利してみせた。そしてノアの番がやって来た。

 

ノアの相手はユノと同じ貴族の男だった。

 

「なぁ。一つ聞いてもいいか?」

 

「なんだよ下民風情が偉そうに。」

 

男はノアを馬鹿にしながらそう言った。

 

「それだよ。その下民って呼び方。ただ生まれた場所が違うだけでどうしてそう馬鹿にできる。例えあんたの魔力よりも俺の魔力量が多いとしても何故其処まで俺等最果て出身を馬鹿にできる?」

 

「うるせぇ!!ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ下民風情が!」

 

風創成魔法 砂塵の大竜巻

 

男は魔法で風を作りだし、ノアにぶつける。

 

が、ノアは自分の魔導書から新しい"剣"を出す。

 

その瞬間。周りにいた人達はノアが竜巻に呑み込まれたと錯覚した。だが、

 

竜巻はある一転に収束していく。

 

「な!?俺の魔法を集めた....だと!?」

 

「いいぜ。お前がその気ならこっちも全力全開でいくぞ!!」

 

武器魔法 約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 

「奥義!風王鉄槌(ストライク・エア)ー!!!」

 

ノアは剣に集めた竜巻をそのまま男に撃ち放った。男は会場の壁に叩きつけられそのまま気絶した。

 

「俺はお前と違って魔法帝目指してるんだ。邪魔すんじゃねぇよ!」

 

そう言って会場の隅の方に引っ込む。しかし、

 

(やっちまったー!!あの技は隠しておこうと思ったのになんで使ったんだ俺の馬鹿!!)

 

ひとりで"奥義"を使ったことで項垂れていた。

 

それもその筈。先程ノアが放った技はノアが魔導書を貰う前から考えていた奥義の一つ。それも隠し玉だったのだ。それをつい頭にきて使ってしまったのだから最早取り返しがつかない。後の祭りである。

 

(団長達の反応は?)

 

ノアは気になって団長達の反応を確認する。やはりどこの団長達も自分の団に欲しいと言わんばかりにノアを見ていた。

 

(ん?あの団長。)

 

ノアが暫く見ているとふと、ある団長の反応が気になった。

 

(なんでそんなに"驚いて"いるんだ?)

 

その団長は、まるで自分が長年待ち続けた人を見つけたかのような反応をしていた。

 

(.....よく分からないが取り敢えずはあの人には注意しないとな。)

 

ノアはその団長には気を付けようとその時思った。

 

──────────

 

そして試験が全て終わり。結果が発表された。

 

それぞれ色んな人達が様々な団長達に選ばれ、その団へ入団していく中で、やはり脱落者は出てしまうもので選ばれなかった者もちらほらと出ていた。そしてノアの番となった。

 

「次...163番」

 

(俺か。)

 

呼ばれたノアは前に進む。果たしてどこの団長が手を挙げるのかを目を瞑って待っていると、

 

「え─...」

 

周りがざわつき始め、ノアが目を開けると、

 

「え?マジで。」

 

なんと全団の団長達が挙手していた。

 

さて困ったのはノア本人だ。先程のノアの奥義を見てからか団長達全員が自分の見る目を変えているのは明らか。

 

この中からどこを選ぼうか迷っていると、ふと『黒の暴牛』の団長と目が合った。

 

(ふ─そうだな。そうしよう。)

 

「『黒の暴牛』団でお願いします...!!」

 

ノアがそう言った瞬間。ヤミはニヤリと笑った。

 

『な!?あいつ蹴りやがったー!!!』

 

周りにいた人達は更にざわついた。それもその筈。

 

ノア程の優秀な魔法の使い手ともなると引く手あまたの筈なのに、ノア自身はこの国でも評価最悪の『黒の暴牛』へと進んだのだから当然の反応と言えば当然なのだ。

 

「さてと次はユノの番だな。まぁあいつなら俺と同じで引く手あまただろうよ。」

 

ひとりそう呟き、試験が終わるまでの間。会場の隅の方で待機していた

 

そして次はユノの番となった。

 

「次...164番」

 

呼ばれて前へと出るユノ。すると、またもや周りにいた人達はざわついた。

 

「二人目の全団...挙手─!!?」

 

なんとノアだけでなくユノまで引く手あまたとなった。

 

ノアは『黒の暴牛』を選んだが、ユノは何処に入団するのか。

 

(まぁ、ユノのことだから魔法帝に一番近い騎士団を選ぶだろう。)

 

隅の方で見ていたノアはそうボソリと呟いた。

 

そしてユノは、

 

「『金色の夜明け』団でお願いします...!!」

 

やはりといったところか魔法帝に一番近い『金色の夜明け』団を選んだ。

 

そして最後の受験生。アスタの番となった。

 

「次...165番」

 

アスタが前へと出て選ばれる前に目を瞑る。しかし暫く待っても何処の団も手を挙げない。

 

「そりゃそーだわな。」

 

すると、『黒の暴牛』の団長 ヤミが立ち上がった。

 

「たとえ高い戦闘能力持ってよーがそれが得体の知れねぇ力じゃ誰も手ぇ出さねーわ。」

 

「...なんやかんやで...結局魔法騎士に求められるのは」

 

すると、ヤミの周りの空気が一変した。

 

「魔力だ。」

 

周りにいた受験生達はヤミの膨大な量の魔力を感じとり、震え上がった。

 

ヤミが会場に降りた。

 

「魔力の無いオマエなんざ誰も欲しがらねー...これが現実だ....!」

 

ヤミはアスタの前に立ちはだかるように立つ。

 

「オマエさっき...魔法帝目指してるとか言ってたな...?...つまり...九騎士団長を越えるってことだよな?今オレの目の前でもまだ──魔力の無い分際で魔法帝になるとほざけるか...?」

 

アスタはただ目の前のヤミに怯えたが、少ししてから口を開く。

 

「─ここで魔法騎士団に入れなくても...何度コケても誰に何を言われようとオレはいつか魔法帝になってみせます.........!」

 

そう言ったアスタを見て、周りの受験生達は馬鹿にしたが、ユノとノアだけは少し微笑んだ。

 

「ワハハハハハ!!」

 

すると突然、ヤミが突然笑いだした。

 

「オマエ...面白い!!『黒の暴牛』(ウチの団)に来い」

 

「.........え?」

 

ヤミの勧誘にアスタは目が点になってしまう。

 

「ちなみにオマエに拒否権は無い。」

 

(ええええええ!?)

 

「そしていつか─魔法帝になってみせろ。」

 

 

それはアスタからしたら、初めて自分の事を認めて貰えたのだから嬉しかったに違いない。

 

「───......はいッッ!!!」

 

──────────

 

「さてと、集合までまだ時間があるな。どうしようか。うん?」

 

ノアが会場内をウロウロしているとアスタの対戦相手のセッケと名乗った男がアスタが入っていったトイレの個室を眺めていた。

 

(あいつ....何する気だ?.......まさか!)

 

 

セッケは自分の魔導書から呪詛魔法を発動してアスタに呪詛を掛けようとしていた。

 

が、

 

突如、セッケの首筋にノアが剣を突き立てる。

 

「何してんだ?まさかとは思うが、腹いせのつもりか?」

 

ノアはニコニコとした顔(目が笑ってない)でセッケに詰め寄る。

 

「フッハ!ちょっと驚かそーとしただけさ!別れる前にアイサツしようと思ってね!どっちが出世するか勝負しよーぜって───...」

 

それを聞いてノアは冷たい目をセッケに向けて答えた。

 

「なら失せろ───アスタにはオマエじゃ足りない...!!」

 

セッケはノアの表情に怯えたのかそそくさとその場を後にした。

 

「さて、アスタが出てくる前にヤミ団長のとこ行くか。ん?」

 

ノアがトイレから出てくるとユノがトイレの前で立ち尽くしていた。

 

ノアはユノにすれ違う直前に、

 

「悪いなユノ。これは貸しにしてくれ。」

 

そう言ってヤミの元へと急いだ。

 

「あいつ─吹っ切れたな。」

 

ユノは何処か嬉しそうな様子でそう呟いた。

 

───────────

 

「お待たせしました。皆さん。」

 

ノアはアスタよりも早く『黒の暴牛』のメンバー達と合流していた。

 

「いや、そこまで時間が経ってないから大丈夫だよ。」

 

ノアと会話をしているのが、『黒の暴牛』唯一の空間魔法の使い手、フィンラル・ルーラケイスだ。

 

「あと来てないのはアスタだけか。」

 

ノアがふとヤミを見ると、

 

「..........」

 

明らかに不機嫌そうだった。

 

「あの、これ大丈夫なんですか?」ヒソヒソ

 

「ま、まぁ大丈夫だよ。」ヒソヒソ

 

それから暫くして漸くアスタがやって来た。

 

「あれ?なんでノアが居るんだ?」

 

「お前、俺が『黒の暴牛』選んだの見てなかったのか?」ハァ

 

ノアはため息を吐いて呆れる。

 

「そんな事より、アスタ。」

 

ヤミがアスタを睨み付ける。

 

「オレを待たせるとはいい度胸だな...!!どんだけ長げぇ○○○してんだテメー」

 

「いやホンっっトすんごいの出たんスよ!もうこ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んな極大な...」

 

「いや何言ってんだお前。」

 

その後、ヤミがアスタをアイアンクローの刑に処し、フィンラルが発動した魔法で『黒の暴牛』のアジトへと移動する。

 

─────

 

アスタとノアはアジトに着いた。

 

((ここが...『黒の暴牛』のアジト))

 

先ず、アスタが扉を開こうと近づくが、中から爆発が起こり、アスタを吹き飛ばした。

 

「アスタ!」

 

ノアが吹っ飛んだアスタを尻目に扉があった場所を確認すると、二人の男性が言い合いながら魔法を使って喧嘩をしていた。

 

あるものは下着姿で周りに酒瓶が転がっており、またあるものは我関せずといった様子で食事をしており、またあるものは鼻血を出しながら鏡越しに誰かと話していた。

 

「何だこれ...。」

 

ノアは魔法騎士団らしくない団員達の光景に呆然とした。

 

「ようこそ最低最悪の魔法騎士団『黒の暴牛』へ 」

 

ヤミが自分の騎士団を紹介するが、ノアはその光景を見てもしかして俺、選択を間違えたか? と思ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公のプロフィールです。

ノア・レイダス

主人公。

年齢:15歳

身長:178㎝

誕生日:10月4日(アスタとユノと同じで教会に拾われた為同じ日)

星座:天秤座

血液型:A型

好きなモノ:星空、動物

見た目

銀髪のセミロング。顔は女性寄りの中性的な顔立ちをしている。


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ページ3 黒の暴牛

やっと書ける時間を作れました。これから書いていきますのでよろしくお願いします。


吹き飛ばされたドアを見て、ノアは思った。

 

(もしかして俺....自分からハズレ引いたんじゃ。)

 

彼はそう思うのは、今現在。目の前で起こっている惨劇が理由である。

 

新入団員が増えたというのに、この有り様は酷い。他の騎士団と比較してもここまで酷いのは黒の暴牛位のものだろう。

 

すると突然アスタが口を開いた。

 

「今日から『黒の暴牛』に入るハージ村から来たアスタです!!よろしくお願いしゃァァーす!!!」

 

アスタは意気込んで団員達に挨拶をするが、全員全く聞いていない。

 

「......なんだこれ?ホントにここ魔法騎士団なのかよ。」

 

ノアの口からそんな言葉が飛び出すと、隣にフィンラルが寄ってきた。

 

「これでも一応魔法騎士団だよ。」

 

「そうですか。」ハァ

 

フィンラルはフォローのつもりでそう言ったのだろうが、ノアからすれば自分の進むべき道を踏み違えたのかもしれないと考えてしまい、深いため息を吐くしかなかった。

 

ノアが扉の合った場所に近づいた次の瞬間。

 

「ギャアアアアア」

 

「アスター!!!」

 

そこに居たアスタが団員のひとりの魔法を直に食らってまた吹っ飛んでしまった。

 

暫く団員達の口論が続く中、遂に痺れを切らしたのか

 

「オマエラ...モノ壊すんじゃねぇ!!!」

 

ヤミが壁を壊しながら団員達を威圧する。

 

するとさっきまで暴れていた団員達が一斉に糸の切れた人形の様に動きを止め、全員ヤミに近づいて話しかける。

 

そして、話しかけられたヤミはというと、

 

「だがうるせー」ズゴゴ

 

「「「「「すみません。」」」」」

 

威圧して全員を黙らせた。

 

「このチンチクリンと男装女が残り二人の新入団員だ。死なねー程度にシゴいてやれ。」

 

(えぇえ)

 

(男装女って....俺男だし。)

 

ノアは内心でそうヤミに突っ込んだ。それもその筈。ノアは遠目で見れば男の格好をした女の子にしか見えない程、端正な顔立ちをしており。村にいた頃もアスタとユノだけしか、ノアは男だと認識できていなかった。そして今また、女扱いされてしまう。だがノアは何時ものことだし仕方ないか。と、内心で諦めかけていた。

 

「ハージ村から来ましたアスタです!!よろしくお願いしゃァァーす!!」(2回目)

 

「同じくハージ村から来ましたノア・レイダスです。宜しくお願いします。」

 

二人は団員に自己紹介を済ませる。すると下着姿の女性バネッサが話しかけてくる。

 

「最果て出身で魔法騎士団に入るだなんて...頑張ったのね坊や。ご褒美にオネーサンがイイコトしてあげようかぁ~?」

 

バネッサはノアは女の子だと認識したのか、アスタだけに対してそう言った。

 

そして、誘惑されたアスタは

 

「よろしくお願いされてぇ~~~けど俺にはシスターという心に決めた女神がぁぁぁぁ」

 

一人で理性と戦っていた。

 

(イイコト?...マッサージか?)

 

ノアの方も何を勘違いしているのか、イイコト=マッサージだと考えてしまう。すると突然、

 

「オイオイオイオイ、テメェらみたいな弱そうな最果て出のチビとガキが『黒の暴牛』の新入団員だァ~~~!?」

 

見た目ヤンキーの団員。マグナがアスタ達に睨みを聞かせながら話しかけてくる。

 

(輩だァァァァ)

 

(輩だな)

 

「ヤミさんにどんな媚びの売り方したか知らんが...『黒の暴牛』(この)ローブを身にまといたきゃア、ヤミさんの筆頭舎弟であるこの(おとこ)の中の(おとこ)マグナ・スウィングを認めさせてみなァ~~~!!」

 

そう言ってマグナはアスタとノアに勝負を仕掛ける。

 

「「クダサイっっ!!」」

 

アスタとノアはここぞとばかりにローブをマグナに要求する。が、マグナはというと、

 

「『黒の暴牛』入団の洗礼の儀を受けな...!」

 

「「え?」」

 

ありもしない洗礼の儀でアスタ達をアジトの外に呼び出す。

 

─────────

 

先ずは、アスタがマグナと洗礼の儀を行うこととなった。

 

「どんな手を使ってでもいいから今からオレの攻撃魔法を防ぐか避けるかしな...!それが出来たら晴れてオマエも黒の暴牛の一員。このローブをくれてやる。」

 

マグナはアスタに『黒の暴牛』のローブを見せつけ、勝負を始める。

 

「行くぞォーーーーー魔導書(グリモワール)構えろクソチビー!!」

 

「いらっしゃいませ先輩ィィィ」

 

マグナとアスタが同時に魔導書(グリモワール)を構え、魔法を同時に発動させる。

 

炎魔法 爆殺轟炎魔球(ばくさつごうえんまきゅう)

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

が、アスタはその魔法を野球のバットの様に打ち返してマグナに跳ね返した。

 

それを見てノアは一言。

 

「あの剣、魔法を消すだけじゃなく魔法を跳ね返すことも出来るのか。....便利だな。」

 

そう言った。因みにマグナは跳ね返された魔法に自分の魔法をぶつけて相殺したので無事だった。

 

「さて、次は俺の番だな。誰が相手してくれるんですか?」

 

ノアは自分の周囲を見回し、相手を探す。

 

「僕だよ~。」

 

突如、ノアの背後から声が聞こえた。

 

「は?..ってちょっと!?」

 

ノアは背後に(マナ)の高まりを感じ、振り返ると同時に魔法を発動する。

 

武器魔法 雷鳴の剣

 

「うおっ、とと。」

 

ノアはよろめきながら体制を整える。

 

「奇襲とは....中々にやりますね。」

 

「そっちこそ、よく僕が雷魔法を使うと分かったね。」

 

互いに相手の出方を伺いながら話を続ける。

 

「...背後からバチバチ、と音が聞こえたから雷だと考察してこの剣を出しただけですよ。....それで?俺の洗礼の儀はこれで終了ですかね?」

 

ノアはこれで終わりにしたいのか目の前の少年 ラックにそう聞く。

 

「いいや。僕の動きを封じるか倒すかしないと終了にはしないよ。」

 

ラックはニコニコしながらノアにそう言った。

 

「デスヨネー。....なら仕方ないか。」

 

ノアはそう言うと、剣を魔導書(グリモワール)に戻し、別の武器を出した。が、

 

「何、それ?」

 

「....ナイフ。」

 

彼が魔導書(グリモワール)から出したのはナイフだった。その見た目は完全に軍隊が使う M9 バヨネット と呼ばれるタイプのコンバットナイフであった。一つ本物と違う点があるとすれば、それは刀身が黒ではなく"()"一色に染まっている点だろう。

 

ノアはナイフをクルクルと回すと、突然、地面に突き刺した。

 

「何処からでもどうぞ」クイクイ

 

ノアはラックを挑発し、攻撃を仕掛けさせる。

 

「後悔しても知らないよ。」

 

そう言ってラックはノアの周りを高速移動しながらグルグルと周り、ノアに狙いを定めていく。

 

そして狙われたノアは

 

「.......」

 

目を瞑って攻撃が来るのを待っている。

 

それを見ていたアスタは

 

「何やってんだノア!相手を見ろよ!」

 

そう言うが、ノアは

 

「.......」

 

集中しているのかアスタの声に反応しない。

 

そして背後からラックが蹴りを入れようとする。が、

 

ラックはノアの()に捕らえられ、動きを封じ込めらてしまった。

 

そして、ノアが自分の影から地面に突き刺したナイフと同じ形状の真っ黒なナイフを取り出してラックの首筋に突き付け、

 

「チェックメイト。」

 

そう言ってニヤッと笑う。そして突き刺したナイフを抜いてヤミ達に顔を向けた。

 

「さて、これでいいでしょ先輩方。この人の言った条件通りに動きを封じたので...魔法騎士団のローブを....」

 

ノアがそう言うと同時にアスタが走ってきた。

 

「スゲー!!!ノア、なんだ今の魔法は?」

 

アスタは目をキラキラさせながらノアに質問をする。

 

「あ、ああ。今のは俺の武器魔法の一つ 影の小剣(シャドウナイフ)。そして今あの人に放ったのが、拘束魔法 影の拘束(シャドウ・バインド)だ。」

 

「スゲー!!!影で相手を拘束出来るのか!」

 

「ああ。だが、俺の周囲の半径2m以内じゃないと相手を拘束出来ないから。あまり使えないんだけどな。....でも使えれば相手を拘束してしまえる。」

 

説明するとアスタは更に目を輝かせた。

 

「やっぱノアはスゲェ。」

 

アスタへの質問を終えたと同時に騎士団メンバー全員が駆け寄ってくる。

 

「オメェらスゲェな!」

 

最初に話しかけてきたのはマグナ。

 

「まず、アスタ!お前オレの魔法を防ぐどころか跳ね返してくるとはなァァァ!!気に入ったぜチビスタぁー!!」

 

「アスタっすー!」ブフッ

 

アスタはマグナに背中をバシバシと叩かれて咳き込んでしまう。

 

「次にノア!お前のあの魔法は何だ?.......今まであんな魔法は見たことがねぇ!それにうちで一番の戦闘狂のラックを拘束するなんてスゲェじゃねぇか!」

 

「あ、ありがとう御座います。」ゴフッ

 

ノアもマグナに背中をバシバシと叩かれてアスタ同様に咳き込んだ。

 

「けどオレ魔力が少ないどころか全然無いんスよ~」ヘヘヘ

 

「あァん..?魔力が無いだァァ~!?」

 

「!」

 

アスタがそう言うとマグナはまた威圧をするかに思えた。が、以外な反応を見せた。

 

「余計カッケーじゃねぇか!さてはオマエ...(おとこ)だな?」

 

マグナがそう言ったと同時にラック以外の団員達が近づいてくる。

 

「すごいじゃないの坊や達!」

 

「これ食べる~?」

 

「俺の妹には近づくなよ?」

 

こんな感じで団員達との挨拶を済ませ、二人はマグナから魔法騎士団の証であるローブを受けとる。

 

「ほらよ。テメーらのだ!!アスタ!!ノア!!」

 

渡されたローブを二人は身にまとい、魔法騎士団へ入団したことを再度確認する。

 

「ウフフ。ついでに─...」

 

バネッサがアスタの着けているバンダナをクルッと回すと、魔法で『黒の暴牛』のマークを縫い付ける。

 

「これでお前らも魔法騎士団『黒の暴牛』の一員だ─!!」

 

このことにアスタは喜び、

 

「あざああああああす!!!」

 

このように雄叫びを上げ。ノアは、

 

「.........良かった。」

 

感動のあまりに泣いてしまった。

 

そしてそんな二人をアジトの二階から見下ろす人物が一人。

 

「─アレが残り二人の新入団員...小虫ね...」

 

彼女(・・)は二人を一瞥してそう言った。

 

果たして彼女は何者か?.......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ4 もう一人の新入団員

アスタとノアの洗礼の儀が終了し。今現在、マグナによってアジト内部の案内が行われていた。

 

「ココが食堂だァー!!」

 

「おおおっ」

 

「ココが大浴場!!」

 

「おおおーっ。広い!」

 

「.....」

 

マグナが先輩としてアジト内の各施設の紹介をする度にアスタは面白いくらいの反応を返す中、ノアはそんな二人をただ無言で見ていた。

 

「こっから向こうは女共の部屋だ。男が入ったら罠魔法で死ぬぞ。」

 

「えええΣ(Д゚;/)/死ぬの!?」

 

「ああ、でもノアは大丈夫だな。女だし。」

 

マグナはまだノアが女だと信じているのかそう言った。

 

「いや、俺男ですから。」

 

ノア自身。この訂正が何度目になるのかを考えながらそう訂正する。

 

「分かってるって冗談だよ冗談。」

 

マグナは笑いながらそう言うが、明らかに目が泳いでいるためノアはもういいや、と諦めてしまった。

 

───────────

 

そして、次の施設の紹介をしようと移動中、目の前にまだ会っていなかった人物が現れた。

 

銀色の髪をツインテールにしている少女だ。

 

「テメーこんなトコにいたのか。オイ、アスタ、ノアお前らの同期だ。今年のもう一人の入団者」

 

「えっ!Σ(Д゚;/)/」

 

「へぇ。」

 

するとアスタは彼女に挨拶をして握手を求める。

 

「俺、ハージ村のアスタ!一緒に切磋琢磨して頑張ろうぜぇ~」(同期!素敵な響き!)

 

が、彼女はアスタに差し出された手を払いのける。

 

「気安く話しかけないで、魔力の乏しい下民の小虫が。私はノエル・シルヴァこの国の王族よ。」

 

彼女はそう言うとアスタとノアを睨み付けた。

 

アスタは王族に初めて会ったことに対して驚いた。

 

「これはこれは私のような小虫が失礼をば~。」

 

「わかればいいのよ。」

 

アスタはノエルに土下座した。が、

 

「─って..誰が小虫だぁぁ~~~~!!」

 

(おぉっ、ノリ突っ込み。初めて見た。)

 

ノアはノエルの反応に対してくだらないと感じ、視界に入れない様にしていたが、アスタの反応に少し驚いてしまい。ついノエルを見てしまう。

 

「俺とお前は騎士団の同期!王族だとか関係あるかぁぁー!!」

 

「そうだ。アスタ!言ってやれぇぇぇ」

 

「.....」(これだから王族って奴は)

 

「関係あるわよ。」

 

「愚かな下民は言葉では理解出来ないのかしら...」ハァ

 

ノエルはため息を吐くとアスタに向かって構える。

 

「魔力の差でわからせるしかないようね...!」

 

ノエルが放った魔力弾はアスタに向かって...........

 

行かず、近くにいたマグナに当たってしまう。

 

「「えっ」」

 

以外にも自分達の方に向かって飛んでくると思っていた魔法が何故かマグナに向かって行ったため、二人は唖然としてしまった。

 

「このアマぁぁ~~~イイ度胸してんなァァ~~~」

 

「.......アナタの立ち位置が悪いのよ」

 

(えええええΣ(Д゚;/)/)

 

(いくら何でもその言い訳は無いだろ。)

 

ノエルは謝罪するかに思われたが、自分の不備を認めることはなかった。

 

「テメーコラァァァァ俺先輩だぞォォ!?」

 

「私は王族よ!」

 

「王族だが『銀翼の大鷲』団長の妹だか知らねーが、テメーみてぇなじゃじゃ馬引き受けてくれんのはヤミさんだけだからなァァー!!」

 

(ああ、そうか。どこかで見た顔だと思ったら『銀翼の大鷲』団の団長そっくりだな。...妹だったのか。)

 

「.......こんな団こっちから願い下げよ。」バサッ

 

ノエルは少し何かを考えると身にまとっていたローブを脱ぎ捨てた。

 

「テメっ...オイぃぃぃぃ何てことしてんだコラァァァァ。てゆーか詫びは詫びぃぃぃぃ。...俺が必死で手に入れたローブ....」orz

 

((何だったんだ一体...........))

 

───────────

 

「アスタ。ココがお前の部屋だ。」

 

アスタが案内されたのは、見るからにボロボロの家具が置かれた部屋だった。

 

「どーだァ~~切ないくらいに狭くて汚い部屋だろォ~~因みに俺の部屋はこの倍の...」

 

「俺の...部屋............!」ドバァー

 

「!」

 

アスタは自分の部屋が持てたことに感動し、泣いてしまう。

 

「俺自分の部屋とか無かったんで感動っす。めっちゃキレイにしてやる~~~。」フキフキ

 

「おー磨け磨け!任務があるまで自由だ!何かあったら俺んとこ来いや!...ノア。お前の部屋は隣だ。」

 

「ういっす!あざぁぁす。」

 

アスタはそのまま掃除を続ける。

 

「...俺も部屋に行くか。」

 

アスタの部屋を出て隣の自室に入る。だが、中はアスタの部屋と同じようにボロボロの家具が置かれているだけの部屋だった。

 

「......掃除しよ。」

 

先ずは掃除道具を探そうとアジト内を探すのだった。

 

─────────

 

その夜。

 

「凄いな!"●●● "友人として鼻が高いよ!」

 

「いいや、"●●●●"それは私の方もだ。」

 

(何だ.......これ?)

 

ノアは夢を見ていた。それはまるで誰かの記憶を覗いているようなそんな夢だった。どうやら二人は友人関係にあるようだ。

 

だが、二人は互いの名前を呼びあっているようだがまるでそこだけ音が切り取られたようになっていて何を言っているのか全く聞こえない。

 

(誰だ?...この男。)

 

男は耳が長く、それは遥か昔に存在したとされる"エルフ"と呼ばれる種族だと思われる。対してもう一人の男は見るからに普通の人間の姿をしている。

 

(もしかしてこれ....昔の誰かの記憶。...なのか?)

 

ノアはそんな事を考え、暫く様子を見る事にした。

 

すると、場面が変わった。

 

 

「"●●●"結婚おめでとう!」

 

「"●●●●"結婚おめでとう!」

 

どうやら今度は結婚式の最中らしい。

 

(あの"エルフ"の()の結婚式か。相手は...人間の女性のようだな。)

 

ノアは結婚式の会場を見回す。

 

(二人を祝福してるのは二人の友人か?....種族の違う二人が結婚.....か。)

 

この映像が表すのは人間とエルフ(・・・)、2つの種族が手を取り合って助け合っていくという事を表しているようだ。...ノアはその事事態には気付いていないようだが、

 

そしてまた場面が変わった。

 

(な!?...何だ...これは!!!?)

 

ノアが見た光景。それは先程の結婚式のような幸せそうな雰囲気から一変し、そこには凄惨な光景が広がっていた。

 

(何でこうなってるんだ!....さっきまでの幸せそうな光景は何処へ行ったんだ!)

 

その光景では。空から光が降り注ぎ、その光が"エルフ"達を次々に殺害していく。

 

(誰か.....居ないのか!....生きている奴は!)

 

ノアは無意識のうちに誰か生きている人がいないか探す。だが、周りを探しても遠くを探しても其処に拡がっているのは死体の山が出来上がった光景だけだった。

 

(一体...........誰が?.......何でこんな事を。)

 

すると、向こう側から魔導書(グリモワール)を広げた誰かが近づいてくる。

 

(アレは、誰だ?)

 

見るからに魔法騎士のようだが、表情がどうなっているのか見えない。

 

(まさか、あいつ(・・・)が...殺ったのか!?)

 

魔法騎士はこちらを見ると、魔導書(グリモワール)を構えて魔法を撃ってくる。

 

(....!!)

 

──────────

 

 

「うわあああああああ!!!」

 

魔力弾があと少しの所で当たるかに思われたが、ノアはそこで目覚めた。

 

「アレ?」

 

周りを見回すと其処は自室だった。

 

「ああ、そうか俺...魔法騎士団に入団したんだったな。」

 

ベッドから起き上がり、窓から外を見ると、昨日アスタとマグナを馬鹿にしたノエルが魔法の練習をしていた。

 

「......」(やっぱり...昨日のアレは。)

 

何かに気付いたのか。ノアは部屋を飛び出し、急いでノエルの元に向かう。

 

─────────

 

アジトの外にて。其処ではノエルが魔法の練習をしており、幾つもの大きな穴が四方に出来ており。放たれた魔法の威力が凄まじい事を表していた。

 

「──......なんでよ...何で思った通りに....当たらないの..........!?」

 

実は彼女は魔力のコントロールが大の苦手で、何時もこうして皆が起きてくるまでの時間帯に練習しているのだ。

 

(お前のような出来損ないを生ませたつもりは無い。)

 

(魔力のコントロールも出来ないなんて...情けないわねー...)

 

(何だその薄っぺらい魔導書(グリモワール)は...本当に王族かお前)

 

(お前のような一族の恥晒しは『銀翼の大鷲』には必要ない)

 

(この出来損ないめ...)

 

今までノエルは兄弟達に魔力のコントロールが出来ないことで馬鹿にされ、認められなかった。だからこそ必ずコントロールが出来るようになるために今日も練習を重ねる。全ては自分を馬鹿にした兄達を見返す為に。

 

(絶対に認めさせてやるんだから───)

 

だが、どれだけ的を狙って撃っても当たる事なく。軌道が曲がってしまう。

 

「───......何でよ...何で...何で─────...!!」

 

すると魔力弾が急激に膨張し始め、ノエルを呑み込んでしまう。

 

──────────

 

「遅かったか....!」

 

ノアがアジトの外に飛び出した時には既にノエルは魔力弾に呑み込まれてしまっていた。

 

「あらあら~」

 

「なんつー魔力量だ...!アレほっといたらやべーぞ。」

 

「魔力が暴走しちまってやがるな。」

 

するとノエルの魔力を感知してか、ヤミ達がアジトから飛び出してきた。

 

「オイ、ノア。お前魔力を吸収出来ただろ。アレも出来るか?」

 

不意にヤミがノアに話しかけてきて、そんなことを言う。

 

「....無理ですね。半分はなんとか出来ますけど、全部吸収しようものなら俺がパンクします。」

 

「....そうか。...なんて言うと思ったか?今ここで限界を越えろ!....ほらやれったらやれ」ゴゴゴ

 

ヤミはノアが無理だと言ったにも関わらず、ただやれと言ってノアを威圧する。

 

「ハァ...分かりました。」

 

ノアは嫌々ながらも魔導書(グリモワール)を取り出し、魔法を発動する。

 

武器魔法 水神の剣

 

ノアの魔導書(グリモワール)から飛び出した剣。それは刺突することに特化したレイピアと呼ばれる形状をしていた。そしてやはり剣先は海のように蒼く煌めいていた。

 

「行くぞ!」

 

ノアが魔力球に剣先を向ける。すると、剣先に少しずつ魔力の球が小さくだが、出来始めている。

 

「ぐうおおおおおあお!!!」

 

ノアはレイピアを両手持ちに切り替え、そして集中して剣先に魔力弾から吸収した魔力を集めて自身に吸収している。次第に魔力球も小さくなっているように見える。

 

だが、

 

「.....駄目だ、これ....以上は.....!!」

 

どうやら先に、ノアの方に限界が来てしまったようだ。

 

「無理....か。...だが、魔法で攻撃しちまうと中のあいつがただじゃ済まんな...」(魔力を無効化出来るヤツとかいればな~)

 

ヤミがそんなことを考えているとアスタがこちらに吹っ飛んできた。

 

「ちょーどいいトコに飛んで来たなちょっとアレどーにかして来い。」

 

「いやいやいや、あんなんどーすりゃいいんスか!?あんなトコまで飛べないです───...し」

 

アスタはそう言うが、ヤミはアスタを掴んでいた腕に魔力を込め始める。

 

「今ここで限界を越えろ」

 

そして振りかぶってアスタを魔力球まで飛ばす。

 

「うおおおおおおおおおおお」

 

そして魔力球に近づいたところでアスタが魔導書(グリモワール)から大剣を取り出す。

 

「ふんがあああああ」

 

そして大剣を振りかぶって魔力球を斬りつけると、中からノエル落ちてくる。

 

そしてアスタも同じように自由落下する。

 

が、フィンラルが空間魔法を使ってアスタ達を地面に移動させる。

 

「生きてたァーーー!!空間あざああす!!!」

 

アスタはそう言ってフィンラルに感謝の言葉を言う。

 

「よくやった小僧共。」

 

ヤミもアスタとノアに称賛の言葉を贈る。

 

「あっ!おいお前!」

 

アスタは自分の後ろにノエルが居ることに気付くと彼女に声を掛けた。声を掛けられたノエルは兄達に言われた心無い一言を思い出す。

 

『この出来損ないめ...』

 

(また...馬鹿にされる....!!)

 

だが、アスタから返ってきた言葉はノエルの耳を疑う言葉だった。

 

「なんちゅー魔力持ってんだよ!!すっげぇーな!!」

 

「え...」

 

「俺、魔力無いから羨ましーぞチクショオオ!!」

 

アスタは更に続ける。

 

「特訓して自在に扱えるよーになればお前無敵だな!!」

 

其処にノアもやってくる。

 

「昨日の"アレ"....やっぱりわざとじゃなかったんだな。」

 

ノエルを見下ろしながらノアはそう言った。

 

(もしかして、怒ってるの?)

 

ノエルはノアの様子を伺う。するとノアの口が開く。

 

「...もしよかったら俺が教えようか?魔力のコントロールも得意だからさ、俺。」

 

ノアは優しく微笑みながらノエルにそう言った。

 

「何だ魔力がコントロール出来なかっただけかよ。早く言えよ出来損ない王族。」

 

するとマグナ達もこちらにやって来る。

 

「俺達は出来損ない集団『黒の暴牛』だぞ。テメーの欠点ごときどーってこたねぇんだよバカタレ。」

 

すると次々にノエルに話しかける団員達。

 

「とにかく無事でよかったねぇ~ところで美味しいパスタの店があるんだけど今度一緒にどう?」

 

「その前にとりあえずコレ食べてみ?な?」

 

「私も魔力のコントロールだけは超得意だから教えてあげるわよぉ~あと大人の女のテクニックとか❤️」

 

そんな光景を目の当たりにしながらも、自分の事を認めてくれた団員達に心から感謝するノエル。

 

「ほいよ!」

 

アスタがノエルに手を差し出す。

 

それに対してノエルは、

 

「...よろしくお願いします。」

 

アスタの手を取って起き上がる。

 

「....やれやれだな。┐(-。-;)┌」

 

ノアはそんなノエルを見てやっと素直になったのかとそう呟いた。

 

かくしてノエルはまた『黒の暴牛』の一員として活躍していくことだろう。

 

「....その日が楽しみだな。」ニヤッ

 

ノアはノエルがいつか、魔法騎士団の一員として活躍してくれる日を想像し、それまで彼女に魔力コントロールを指南することを心に誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ5 初任務へ

「フッ、フッ、フッ.....」

 

夜明け前。『黒の暴牛』アジトの裏手で剣を振って素振りをする一人の青年。彼の名は ノア・レイダス。

 

今日は何時もより早く目覚めてしまったので何かすることはないかと思い、素振りを始めたのだ。

 

「996....997....998....999....」

 

彼は今、素振りを1000回行っている最中だ。

 

「1000!」

 

そして今、彼の素振りが終わったようだ。

 

「よし、次は走り込み行くか。」

 

何を思ったか今度は走り込みとして8㎞走りにいってしまった。

 

(俺もアスタに負けない為にあいつと同じ....いや、あいつの倍はトレーニングしないと!)

 

「やってやらああああああ!!」

 

ノアはそのまま意気込んで森の中へと走っていってしまった。彼が戻ってきたのは団員達全員が起きてきた後だった。

 

───────────

 

「そもそも魔法騎士団って何するんスか?」

 

朝の食堂にて、アスタがそんなことを聞く。

 

「マジで言ってんのか?テメー...」

 

聞かれたマグナは目の前に座っているアスタの首根っこを掴んで揺する。

 

「国護ったり警備したり世界一(おとこ)らしい仕事だぞボケぇぇ!!なんで入ろうと思ったァァァ!?コラァァ~~~」

 

「すみまっせぐええええ」

 

「「.......」」

 

その光景を見ていたノエルとノアは食事をしながら横目でアスタを見る。

 

「.....えーと、それは俺も知らないので教えてもらえませんか?」

 

ノアはマグナにそう質問すると掴んでいたアスタを放す。

 

「そうね~市民の安全守る~~~~?みたいなぁ?護衛で素敵な殿方とお近づきになれるかも❤️」

 

最初に答えたのは朝なのに酒を飲んで酔っぱらっている彼女 バネッサ・エノテーカ。後半は私情が混じっていたが...

 

「敵と戦いまくれるオモシロイ仕事だよ!犯罪者だったらどれだけボコボコにしても怒られないし 」

 

次に答えたのは『黒の暴牛』一の戦闘狂(バトルマニア)ラック・ボルティアがシャドーボクシングをしながら答えた。犯罪者をボコボコって、明らかにやり過ぎだと思うが...

 

「何よりも妹に尊敬される素晴らしい職業だ。給料で妹に好きなモン買ってやれるしな。」

 

鼻血を出しながら答えたのはどシスコン、ゴーシュ・アドレイ。うん。、こいつは論外だな。

 

すると突然、隣にいた団員の一人がおもむろに魔導書(グリモワール)を取り出して魔法を使い、料理を作り出す。

 

「ご飯がたくさん食べられるよー。」

 

そう言った小柄な少女 チャーミー・パピットソンは笑顔でアスタに答えた。

 

次に見た目が完全に マツ●・デ●ックスのグレイがおもむろに魔導書(グリモワール)を開いてアスタの姿に変身する。

 

「ま、とにかく楽しいところさ。そのうち一緒に任務するときはよろしくなっ!」

 

団員全員を見て三人は、

 

(((へ、変な人達ばかりだ....。)))

 

と、改めて「黒の暴牛」の異端児っぷりを見せつけられたのだった。

 

─────────

 

アジトから少し歩いた森の中。

 

そこではノエルに魔力コントロールを教えているノアの姿があった。

 

「.....とまぁ、魔力のコントロールには集中を持続させることとそれが攻撃用の魔法なら、的を狙って当てるという気持ちが必要なんだ。」

 

自らの魔力コントロールについての自論をノエルに教えるノア。

 

「集中力と当てるという気持ち....。」

 

「でもまぁ、集中力の持続が成功してるから後は的に当てるだけだ。.....という訳で。」

 

ノアは何を思ったか、魔導書(グリモワール)と取り出し、そこからレイピアを召還した。

 

「先ずはこれを狙って当てて貰う。」

 

「えっ!?....でもそれアンタの魔法じゃあ...」

 

ノエルは少し躊躇いを見せた。

 

するとノアは近くにあった木の近くの地面にレイピアを投げて突き刺した。

 

そしてノエルにそこから少し離れる様に指示し、そこから魔法を撃つように言う。

 

「よし、じゃあここから撃ってみてくれ。」

 

「わ、分かったわ。」

 

そう言うとノエルは意識を集中させ、レイピアに向かって魔力弾を放つ。だが、魔力弾はまるでレイピアを避けるかの様にしてレイピアの後ろの木に直撃する。

 

その光景を見てノアはというと、

 

「う~ん。.....何が駄目なんだろうか。....ノエル自身は当てると考えながら撃ってる筈なんだけど。」

 

と、一人でブツブツとノエルに対する指摘を考えている。するとそこで、

 

「つまんねぇ~~!俺も何かやらせろ!」

 

ノアの魔法指導を見ていたアスタがつまらなさそうに文句を言う。

 

 

「....アスタ。お前は魔力無いんだから無理に付き合わなくてもいいんだぞ。」

 

と、ジト目になりながら答えるノア。

 

「でもなぁ。」

 

アスタは何かを考え込むような素振りを見せながらノアに何かを求める。

 

「.....ハァ、仕方ない。....ノエル、一先ず休憩に入れ。...俺はアスタを見てくる。」

 

「ええ、分かったわ。」

 

ノアはノエルに休息を取るように指示すると、アスタの方に顔を向け、魔導書(グリモワール)(ページ)を開く。それと同時にノアが召喚したレイピアはその開いた頁に吸い込まれていった。

 

「....それで?一体何を教えて欲しいんだ、アスタ?」

 

「そんなの決まってる!....俺m」「はい、却下。」

 

「って俺まだ何も言ってないだろ!?」

 

「どうせお前のことだ、俺にも魔力コントロール教えろとか言うつもりだったんだろ?.....だとしたら無理だ。お前には魔力が全く無い。...そんなお前に教えたところで"豚に真珠"だ。」

 

「んだとー!」

 

アスタはノアに言われたことに腹を立てて殴りかかる。

 

だがノアはアスタの拳を掴むと、そのままアスタの背後に移動し、脇固めを行う。

 

「あいだだだだだだ!」

 

「落ち着け。....今からお前にも出来る事を教えてやる。」

 

ノアはアスタの腕を離すと、魔導書(グリモワール)から剣を取り出して構えて、目を瞑る。

 

「アスタ。今から何処からでも良いから俺に攻撃を仕掛けろ。」

 

ノアが口にしたのはトンでもないことだった。

 

「いいのか?」

 

「ああ、やってくれ。」

 

ノアからの許可が降り、アスタは自身の魔導書から大剣を召喚してノアの背後から振りかぶった。

 

「きゃあ!」

 

その様子を見ていたノエルは悲鳴を上げながら目を両手で覆い隠した。だが、

 

「......ハッ!」

 

ノアは何処から来るのか分かっていたのか、アスタの方に振り向いて剣を大剣にぶつける。

 

「な.....!?」

 

驚いたのはアスタだった。まさか自分の攻撃を受け止められるなんて思わなかったからだ。

 

「なんだ、今のは?」

 

アスタはノアに今の技をどうやって自分に使ったのかを尋ねる。が、

 

「さあな?.....自分で考えな。」

 

と、それだけ言うとそそくさとアジトに戻っていくノア。

 

「あーそうそうノエル。....今日の練習はここまでとするから。後は部屋で休んで魔力を回復させるんだ。....以上、解散。」

 

「って、おい待てノア!...俺はまだお前にさっきの技のやり方教わって無いぞーー!!!」

 

と言って、アスタはノアを走って追いかけていった。

 

「....なんなのよ、あいつら。」

 

───────────

 

そしてそれから数分後、

 

ノア達三人はマグナとヤミに呼び出されていた。

 

「お前達に任務を与える!」

 

どうやら任務のようだ。アスタとノエルはワクワクしながら聞き、ノアは嫌な予感がするとばかりに目をマグナから逸らしている。その任務内容はというと、

 

「ソッシ村でイノシシ狩りだ。」

 

(((イノ...シシ...?)))

 

「な...何そのダサい任務!」

 

「ダサいとは何だァァ!!」

 

「イノシシなんぞ素手でブッ倒せますよ!」

 

「テメーイノシシナメんじゃねぇぇぇ」

 

「なら焼き斬れば...」

 

「倒し方で文句言ってんじゃねぇぇぇ」

 

「この間二人して賭けに負けちまってな~、何でも一つ言うこと聞くってとあるジジーと約束しちまったんだわ!」

 

と、二人は笑いながらその時の話をしている。

 

それを聞いてノアは思った。この二人、イカサマされてカモられたんじゃないか?.....と、

 

するとアスタが文句を言い始めた。

 

「それって僕達関係無いっスよね!!!」

 

「そうよそうよ。」

 

それに便乗してかノエルまで文句を言い始めた。

 

二人の文句に対してヤミは、

 

「行くのか、死ぬのか、どっちだ??」

 

と、文句を言っていないノアにまで脅しをかけてきた。

 

それに対して三人は、

 

「「「行きます。」」」

 

としか言えなかった。

 

「とはいえ初任務だァァァテンション上がるぜ~~~!!」

 

「この私が...?小汚い村の小汚い老人の為に?小汚いイノシシ退治?」

 

「初任務がイノシシ....はぁ、憂鬱だ。」

 

と、ノエルは小汚いを連呼し、ノアは魔法騎士団になってもイノシシを狩るのかと、憂鬱な気分になっていた。

 

それを見たマグナは、

 

「んだテメェら文句あんのかコラ?」

 

と、ノアとノエルを威圧する。

 

『誰も文句なんて言ってないわ(です。)』

 

だが、ノエルは続けた。

 

「....その...魔力のコントロールも出来ない私が...行ってもいいのかなって.....」

 

するとマグナは、

 

「バーカ!ンなモン任務重ねてりゃ勝手に出来るよーになってんだよ!それにテメーのケツくらい先輩のオレが面倒見てやらぁ!」

 

と、ノエルを励ますように叱責した。

 

「マグナ先輩漢っすね!」

 

「よせよバカスタ。照れるだろ。」

 

その様子を見ながらノアはマグナに訪ねた。

 

「それで、どうやって移動するんです?...フィンラル先輩の魔法で行くんすか?」

 

「いや、今回は無理だ。...フィンラルの魔法は、あいつ自身が行ったことのある場所しか行けないってデメリットがあるんだ。」

 

マグナは更に続ける。

 

「だから今回は箒で移動する。」

 

箒、それは魔法騎士団にとっては移動手段の一つとして用いられる道具である。ただし、殆どの魔法騎士は自分で移動魔法を覚えている者が多いため、現在ではその移動魔法を覚えていない者が利用することの方が多い。

 

「箒は前に説明した物置の右側に置いてある。お前らは奥に置いてある箒を使え。」

 

「了解。」

 

ノアはそう言って物置へと移動する。だが、移動しないものが二人、アスタとノエルだった。

 

「ん?どうしたお前ら、箒は物置だぞ。」

 

すると二人はマグナが忘れていたであろう事実を口にする。

 

「オレ、箒乗れないんですけど。」

 

「私も。」

 

それを聞いてマグナはアスタの肩を揺らす。

 

「何で乗れねぇんだぁぁぁぁ!?」

 

「だってオレ魔力全く無いですからね!」

 

「何で誇らしげなんだ!?」

 

「私は魔力のコントロールが出来ないんだから当然じゃない。」

 

「お前は何で偉そうなんだ!?」

 

三人はそんな感じでワイワイとしていると、

 

「あの~御三人方、箒持って来たんですけども...。」

 

「「「....」」」

 

その後、アスタはマグナの箒に、ノエルはノアの後ろに乗って移動する事となった。

 

───────────

 

箒で移動中、ノアはふとノエルに"ある事"を聞いてみたくなり、質問する事にした。

 

「なぁ、ノエル。」

 

「何よ。」

 

「お前、アスタのことどう思ってる?」

 

「ぶっ!」

 

不意を突かれたからかノエルは吹き出してしまった。

 

「あ~その反応から察すると.....成る程な。」

 

「ちちち違うわよ!?....ベべべ別に私はあいつのことなんて。」

 

ノエルのこの様子だと自ら墓穴を掘っているようなものだ。

 

「....そうか。....でも意外だな。あいつの何処に惚れたんだ?....あいつはガサツだし、煩いし、おまけにしつこい。そんなやつの何処に惚れる要素があるのか不思議なんだが。」

 

「そ、それは....その。」

 

するとノエルは今までの高慢な態度とは裏腹に急にモジモジし始めた。

 

「まぁ、言いたくないなら別にいい。それよりもお前の魔法についてなんだがな。」

 

(話を逸らされた!?)

 

ノエルは話を逸らされたことに対して心の中でツッこんだが、あえてノアの話を聞くことにした。

 

「お前の魔法。確かに現段階では"飛ばす"ことは難しい。だけど"留める"ことは可能だと俺は考える。」

 

「"留める"ことは可能...。」

 

ノエルはノアの発言を復唱し、自分が今、出来る事を見つけようとしている。

 

「まぁ、今はまだ焦らなくてもいい。...地道に一つずつ、自分に出来る事をやればいいさ。」

 

ノアはそう言ってノエルを励まし、焦らず地道に練習を積み重ねるように言う。

 

そうこうしているうちにソッシ村の近くの森が見えてきたのでノアはそこで話を切り上げることにした。

 

────────────

 

そこからはもうなんと言うか、単純作業だった。

 

アスタはイノシシを追いかけて大剣で切り、ノアは魔法でイノシシを焼き斬った。

 

ノエルとマグナは、二人の活躍するその光景をただ、眺めているだけだった。

 

そしてイノシシを全てではないが、狩り終わったところで、三人はソッシ村に移動した。だが、そこにあったのは...

 

「何だこりゃ...?村が霧に覆われてる...?」

 

村一体を包み込むように霧が展開されていた。それはまるでこの村に訪れた訪問者を拒むかのようだった。

 

「ずいぶん天気悪い村ッスね!」

 

「バカね、アンタ!」

 

「アスタ....これは魔法だ。」

 

ノアの発言にノエルは頷く。

 

「恐らくこの中に入っても目的の場所には入れないでしょうね。」

 

「それにこの魔法....まるで俺達に邪魔をされないために発動してるようなものだ。」

 

ノアの発言にマグナは少し思考する。

 

(村一つをすっぽり包み込む魔法....こりゃ恐らく村人の魔法じゃねぇな...)

 

マグナがそうして思考していると、ノアはアスタに声を掛ける。

 

「おいアスタ。お前の剣で霧に攻撃しろ。」

 

「え。...おいおい何馬鹿なこと言ってんだよ、霧は剣じゃ斬れねぇよ。」

 

アスタはそんなの当たり前といった風にノアの発言を馬鹿にする。だが、それを聞いていたマグナは、

 

「馬鹿はテメーだァァ!魔法だったらテメーの剣で斬れるんだろうがァァァ!!」

 

と指摘する。

 

アスタは思い出したかのように急いで自分の魔導書から大剣を取り出して霧を攻撃する。

 

そして、

 

「よし!霧が晴れ─」

 

『!』

 

霧が晴れた先で四人が見たもの。それは村の中心に集められた村人達を殺そうと上空に佇む氷柱だった。

 

すると何処からか声が聞こえた。

 

「処刑」

 

男の声だった。それも村人を殺すことに何の躊躇いも感じない。無機質なそれでいて何処か冷めきった声だった。

 

男の声の後に氷柱は全て村人達に降り注いでいく。

 

だが、

 

《炎魔法 爆殺散弾魔球(ばくさつさんだんまきゅう)

 

《炎生成魔法 鳳凰(ほうおう)翼撃(よくげき)

 

マグナとノアが直ぐ様魔法を発動し、氷柱を全て破壊した。

 

『魔法騎士団が助けに来てくれた─!!?』

 

村人達は歓喜した。最早自分達はこれから全員殺されるところだったのだ。歓喜しない訳がない。

 

「お爺ちゃんの祈りが...通じたんだ─...!!」

 

村人の少年が横たわっている老人に泣きながら報告する。

 

マグナは驚いた顔でその老人に近付く。

 

「ジーサン!オイしっかりしろ────...」

 

だが、

 

「..............ジーサン......」

 

その老人は既に息を引き取った状態であった。

 

(こんなに簡単に...人の命を奪って....!!)

 

それを見ていた三人のうち、ノアは心の中でそう呟いた。

 

項垂れていたマグナだったが、直ぐに誰の犯行なのか気が付いた。

 

「テメェの仕業かァァ────────!」

 

マグナの視線の先にはマントで姿を隠した四人の魔導師と、その中央に懐中時計を見つめる顔に傷のある男がいた。

 

だが、声を掛けられた男はマグナの怒りが込められた言葉に目もくれず。ただ、懐中時計の時間を気にしていた。

 

「よくも時間を狂わせてくれたな、三秒後に全員処刑。」

 

それどころか、邪魔をしてきたマグナを排除するようにマグナの前に巨大な氷塊を飛ばす。

 

(やべぇ...魔力が足りねー...)

 

マグナはその場から動けず、そのまま氷塊に潰されるかに思われた。だが、

 

「ふん!」

 

「オラァ!」

 

アスタが縦に、ノアが横に剣で斬りつけて氷塊を破壊する。

 

アスタとノアは村人達を一瞥すると、傷の男達を睨む。

 

『許さん(ねぇ)...!!!』

 

アスタとノアは怒りを剥き出しにして思った。

 

((俺(オレ)が皆を守る!))

 

そしてこの任務が、アスタとノアのこれからを左右するとはまだ誰も気付かなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ6 続く膠着状態

「何でこんなヒデーことをする........!!」

 

ノア達は顔に傷のある男、ヒース達と対峙し、アスタはヒースに問いを投げ掛ける。

 

だが、男達はアスタの質問を意に介さないのか何も答えない。

 

「魔法騎士団の者が来るとは聞いてません(・・・・・・)ね...」

 

「申請外の任務か何かでしょうか...?それにどうやって我々の霧の結界を破ってこの村に入ってきた...?」

 

それどころかヒースの部下と思わしきローブの男達がヒースに疑問を投げ掛ける。

 

だがヒースはそんな事はどうでもいいとばかりに懐中時計の時間を確認し、呟いた。

 

「『黒の暴牛』...魔法騎士団の中で浮いている粗野な異端の連中か...」

 

ヒースは再度時計の時間を確認し、こう指示を出す。

 

「5分だ。何も知らなかった役立たずな村人もろともとっとと始末し目的の代物(・・・・・)を探すぞ......!」

 

それを聞いてか、ついにアスタが動いた。

 

「無視すんじゃねぇーーーーー!!!」

 

アスタがヒースに斬りかかる。だが、

 

《霧魔法 "幻霧の渦"》

 

「そう簡単にヒース様に近付けると思うな愚か者め。霧に惑え---」

 

部下の一人がアスタに魔法で足止めをする。だが、

 

「誰が惑うかァァァ------!!!」

 

アスタは剣で魔法の霧を斬り、魔法を無効化する。

 

その光景からヒースはアスタに間合いに詰め寄られるのはまずいと判断し、アスタから距離を置く。

 

「なんでこんなヒデーことするのかって聞いてんだよ!!!」

 

アスタは再度ヒース達に自分の疑問を問いかける。

 

するとヒースは仕方なくという様子で口を開いた。

 

「この村は下民が住む『恵外界』だ。恵外界にいる者の殆どは生活で多少役に立つ程度の魔法しか使えない劣等種...まるでモノを扱えない獣だ。私の時間を奪う可能性のある役立たずな獣を先に片付けようとしただけの事だ...オマエら騎士団に入れる程の魔力を持っているんだろう?任務だから助けようとしているだけでオマエらにもコイツらが取るに足りん獣に見えないか...?」

 

ヒースはこの村の住民を"人"ではなく"獣"として扱い、あまつさえその獣をまるで殺処分しようと言うのだ。更にはノア達が村人を助けるのは任務だから仕方なく助けているという解釈をしている。

 

ヒースの発言に対してアスタは、

 

「その━「おい、そこの傷の顔野郎(スカーフェイス)。」

 

否、ノアが何時もの優しい雰囲気ではなく怒りを剥き出しにした様子でヒースを睨み付け、アスタの言葉を遮った。

 

「さっきから黙って聞いてりゃ、ゴチャゴチャとてめぇらの御託並べやがって....」

 

ノアは今にもヒースに対して飛びかからんばかりの様子でその異常な事態に対してアスタやノエル、マグナだけでなく村人達までもを恐怖で萎縮させる程であった。

 

「いいか、俺はどこぞの下民下民と俺らを馬鹿にする貴族共とは違う!助けたいから助ける!...ただそれだけだ!」

 

ノアはそう言ってヒースに切りかかる。だが、ヒースはノアの攻撃をバックステップで回避し、魔法を発動する様子を見せる。

 

「そうか...そんなにその薄汚い獣共が大事か......!」

 

「そんな魔法、俺の炎で━━━...」

 

燃やそうとしたノアだったが、ヒースの部下達までもが一斉に魔法を発動し、その規模は村人達とノア達を包み込む程の大きさとなった。

 

氷霧(ひょうむ)複合魔法 "無限氷轢檻(むげんひょうれきかん)"》

 

「ではこの状況でも獣の群れを守れるか...?じわじわという言葉はあまり好きではないが...これが一番効率が良さそうだ...!」

 

氷が一斉に村人達に迫る。アスタはノアの前に立ちはだかり、大剣で氷をヒースに向けて跳ね返す。だが、

 

《氷解》

 

ヒースは魔法を解除して攻撃を無効にする。

 

「魔法の反射も出来るのか...だがそれでは私は倒せん。氷の礫は次から次へと出来るぞ...!さぁ、守ってみせろ。」

 

氷の礫がノア達に迫る。

 

アスタは大剣を振り回して礫を破壊し、マグナは魔法で礫を溶かす。ノアは剣から炎を放出し礫を溶かしつつ、剣で切って礫を破壊する。

 

ノエルも応戦しようとするが、魔力弾のコントロールが出来ずにあらぬ方向に当たってしまう。

 

「魔力の操作もロクに出来ん者がいるとは...『黒の暴牛』はよほどの人員不足と見える。」

 

ノエルはヒースの言葉に悔しさを覚え、顔を赤くする。

 

「自分の身も守れない脆弱な獣が...そいつらを見捨てればオマエらは助かるぞ魔法騎士団......!」

 

(王族なのに...この中で一番の魔力を持ってるのに...完璧に足手まといじゃない......!)

 

「下がってろノエ公━━!!」

 

(ここにいる意味なんて無いじゃない......!)

 

ヒースの言葉に揺れるノエル。だが、

 

「ノエル。」

 

ハッとなり、声の聞こえた方に顔を向ける。

 

そこにはノアがいた。

 

「焦らなくていい。お前はお前にしか出来ないことをすればいい。」

 

ノエルの様子を見て悟ったのか諭すように言い放つノア。

 

「でも.....私。」

 

「足手まとい。か?」

 

ノアの言葉にノエルは頷く。

 

「だって...私、魔力のコントロールが...」

 

そこまで言いかけたところでノアがノエルの肩に手を置く。

 

「俺らはそんな事気にしてない。...いいか、今お前がするべき事は何だ?」

 

「私が....すべきこと?」

 

「俺の言葉を思い出せ。....そうすれば答えは見えてくる筈だ。」

 

ノアはそれだけ言うとアスタ達の元に戻り、村人達を守るために氷の礫の破壊を続行する。

 

「私にしか...出来ないこと」

 

ノアの言葉にノエルは思考し、自分が今すべきことを探す。

 

すると、

 

「えっ?」

 

ノエルの服の裾を少女が掴む。

 

「おねーちゃん....助けて。」

 

少女は目に涙を浮かべながらノエルに助けを求める。

 

(そうよ、こんな小さな子が助けを求めてるんだ。...私だけ逃げる訳にはいかない!)

 

ノエルは村人達を守ることを決意し、地面に膝を付けた。

 

(ノアの言葉....."飛ばす"事は無理でも"留める"事は可能。....なら!)

 

その時、ノエルの魔導書のページが輝きだし、新たな魔法が発現した。

 

《水創生魔法 海竜の巣》

 

その魔法は村人全員を包み込み、守るものだった。

 

「私は王族....逃げる訳にはいかないのよ!」

 

ノエルは決意を改たなものにし、ノア達のサポートを行う。

 

「なに!?」

 

ヒースはその様子にただ驚くばかりだった。

 

そして、遂に、

 

「俺には魔力なんて無ぇ。.....だけど俺は!お前を倒す!」

 

アスタの剣がヒースに届いた。

 

「ここから反撃と行こうぜ!ノア!」

 

「ああ!」

 

ここから二人の逆転劇が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ7 反撃開始

「やったか!?」

 

アスタの攻撃がヒースの胸に突き刺さったかに見えたが、

 

(氷で滑らされて...勢いを殺された━━━━!!)

 

ヒースは咄嗟の判断でアスタの足元の地面を凍らせ、アスタの攻撃の勢いを殺して回避した。

 

「剣は魔法を無効化出来ても、やはりオマエ自身はただの人間のようだな」

 

ヒースは冷静にアスタを分析し、次の手を出す。

 

「━━━━━今度は此方の番だ...!」

 

ヒースが魔導書を開き、構える。

 

《氷魔法 天擊氷牙(てんげきひょうが)

 

ヒースの繰り出した魔法はアスタの腹部に突き刺さり、アスタは倒されてしまう。

 

「....くっ...そ!」

 

ノアはヒースを止めようとして向かっていく━━━━だが、

 

「ぐはっ!」

 

アスタと同じ魔法で腹部にダメージを与えられ、そのまま倒れてしまう。

 

「眠っていろ...永遠にな...」

 

「...アスタ...ノア...!!」

 

アスタとノアは倒され、その表情を伺うことはできない程二人の顔に陰りが見えた。

 

「とてつもない魔力の魔法だ...だが...人一人分の侵入口を作るぐらいは出来そうだ......!」

 

ヒースは左腕で氷を展開し、ノエルの放った魔法 《海竜の巣》に侵入しようと試みる。

 

「25秒...といったところか...オマエらは本当に私の時間を奪うのが好きらしい...その代償は大きいぞ...!!

 

ヒースが氷を展開して魔法に穴を開けようとする。

 

(魔力も殆ど残ってねーが...闘うしか.........炎と氷......魔法の属性の相性ではオレの方が有利━━━━...だがそれを覆す程の魔力の差━━━━━━━...!!....相手が...悪かったな......スミマセン、ヤミさん...恐らくオレは......コイツに...勝て━━━━)

 

マグナが諦めかけたその時、

 

「まだだ!!!!」

 

ヒースの背後からノアが斬りかかる。

 

だが、

 

「遅い」

 

先程と同じ魔法で攻撃されてしまう。

 

「よくまだ生きていたな...頑丈なヤツだ...だが...その負傷では存分に剣を振れまい。」

 

ノアはその場に踞り、動けなくなってしまう...だが、

 

「まだだ!!!」

 

今度はアスタがヒースに斬りかかる。

 

「しつこい」

 

ノアと同様に魔法で攻撃を受ける。

 

そして倒される...だが、

 

「まだだ!」

 

今度はノアが立ち上がり、ヒースの行く手を阻む。

 

「まだまだぁ!」

 

「同じ手が通じるか!」

 

ヒースが氷柱をノアに向ける....だが、

 

パキィ!と氷が砕ける。

 

「なに!?」

 

《氷魔法 結晶の想い(クリスタルハート)

 

「喰らえ!」

 

ヒースを斬りつけるが、

 

(手応えが無い...!)

 

ノアが斬ったもの、それはヒースが自身の魔法で作り出した氷の人形であった。

「....っち。」

 

再度ヒースの魔法をバックステップで回避。

 

だが、二人ともその場に倒れ込んでしまう。

 

どうやらアスタもノアも体力の限界であるようだ。

 

「もうお前らに勝機は無い...何故諦めない...!?」

 

何度も立ち向かってくるアスタとノアにヒースが問いを投げる。

 

「あ?....そんなの決まってるだろ。」

 

ノアが立ち上がり、

 

「.....諦めたら...誰が護るんだ........!!」

 

アスタが立ち上がる。

 

「俺は....!!」

 

「俺は....!!」

 

「「皆を護る為に俺は....魔法帝になる...!!!」」

 

《武器魔法燦然と輝く剣(クラレント)

 

ノアが魔導書から新たな剣を取り出して構える。

 

「行くぞアスタ、お前の...洗礼の儀(・・・・)だ...!」

 

「...!!....おう!!!」

 

ノアの言葉の意味を理解し、アスタが走る。

 

「此れこそは....我が父を滅ぼし邪剣!!!」

 

ノアが口上を述べると剣に雷が集まり始める。

 

そして最大限まで蓄積されたそれは━━━━

 

我が麗しき(クラレント).....父への叛逆(ブラッドアーサー)!!!」

 

一点に集中して放出される。そしてその方角には━━━

 

「....ぐっ....!!!」

 

(なんて魔力量だ.....受け流すので精一杯だ...。)

 

即座に氷の結界を展開して防御に徹する。

 

「ここだ!!!」

 

突如ヒースの背後からアスタの声が響く。

 

振り替えると其処には大剣を構えたアスタがいた。

 

アスタがヒースの受け流した雷を反射してヒース達にぶつける!

 

(この雷....消えない....!!?ならば、凍らせるまで....!!!)

 

「うおおおおおお!!!!」

 

ヒースが身体にまとわりついた雷を凍らせようとするが...

 

まだだ...俺の身体はまだ動くぞ━━━!!」

 

「━━━ま...待て...」

 

「待つかぁあアアアアアア!!!」

 

アスタの一撃により、ヒースは氷ごと砕かれてその場に倒れる。

 

どうやら決着はついたようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ8 決着

アスタがヒースとその部下達を倒し、安堵につくノエルとノア

 

「....終わった。」

 

「...いや、まだだ。」

 

するとノアの背後からマグナが現れ、魔導書を開く。

 

するとヒース達の身体に炎の拘束魔法がまとわりついた。

 

《炎拘束魔法 炎縄緊縛陣(えんじょうきんばくじん)

 

どうやらマグナが自身の魔導書から魔法を発動したようだ。

 

「あなた見かけによらず器用なのね」

 

「やかましいわ!俺先輩よ!?」

 

ノエルと漫才のようなやり取りをするマグナ。このまま全員拘束出来るかと思われたが、

 

「...!?」

 

敵の一人がマグナの魔法を打ち消し、自身の魔法を使い逃げられてしまう。

 

「...しまった━━━━...一人逃がした...!やっちまったクソ━━!」

 

「何をしてるの!詰めが甘いわね先輩!」

 

パタン、と自身の魔導書を閉じながらマグナを叱責するノエルだが、魔法を解除したことで村人達を覆っていた水が行き場を失いそのままノエル達の頭上に落ちていった。

 

「..............」

 

「まだまだだなノエ公━━━!」

 

ダハハとノエルを笑うマグナ。

 

一方、ノアとアスタはというと

 

「━━━━━...どうだ...下民でも...勝ったぞ.........!!」

 

どうだコンチクショウォォォ!!!と雄叫びを上げるとその場に倒れこんだ。

 

「アスタ━━━━...」

 

マグナが駆け寄ろうとするが、

 

「んごぉぉぉぉ。」

 

「って寝てんのかいぃぃぃぃ!!」

 

ヒースとの激戦で疲弊し、その場で寝てしまったようだ。

 

村人達がアスタの周りに駆け寄る、するとアスタのローブから小鳥が飛び出した。

 

鳥は村全体を空中から見下ろすとその村で一番大きな建物の中に入り、そこにあった石を咥えてアスタの傍に戻った。

 

「何だ...?...................ツバメ...?」

 

鳥は寝ているアスタの後頭部にキツツキのように嘴で打撃を与えて起こした。

 

「あ?あーーーっオマエは試験会場にいた...えーと...アンチドリ!!?コノヤローこんなところまで俺を馬鹿にしに来たのか!?」

 

鳥は魔力の低い者にたかる鳥として有名なアンチドリであった。

 

「ん?何だその石...」

 

アスタはアンチドリが咥えている石を見ると、それは村のものだと言ってアンチドリから取り返そうとする。

 

「あげるよそんな石でいいのなら、君達は私達の救世主だ...!本当にありがとう..........!!」

 

村人に感謝され、笑って彼らを見るアスタ。

 

ノエルはというと━━━━

 

(な...何あの小憎たらしい目付き━━...か...可愛い...!!)

 

どうやらアンチドリが気に入った様子で、ずっと見ていた。

 

一方ノアは、

 

(.....コイツらの目的は、一体?)

 

倒されたヒース達を見ながら彼らの目的は何だったのか、それだけを考えていた。

 

━━━━━━━━━━━

 

「お?目ぇ覚ましやがったなコノヤロー、もーちょい休んで俺の魔力が戻り次第連行する...一生掛けて罪償うんだなバカヤロー共。」

 

「.....」

 

(魔力が封じられているか...)

 

「テメーらが何者なのか何が目的だったのか、魔法騎士団で何もかも全部吐いてもらうからなァァ。」

 

「断る。」

 

「あ?」

 

するとヒースとその部下達の体内で何かが輝き始めた。

 

(...コイツ、魔導具を体内に仕込んで...)

 

《氷魔法 "氷葬"(ひょうそう)

 

ヒース達の身体は巨大な氷で覆われると同時に砕け散った。

 

「な...ッ...!?」

 

残された彼らの魔導書も後を追うようにして、消えていった。

 

「.............自害しやがった..........!!」

 

(よほどの忠誠を誓った人間が彼らのバックにいるのか......それにしても、情報を漏らさない為に自害を選ぶなんて....なんて覚悟だよ。)

 

異様なヒース達の行動に対してマグナとノエルは言葉を失ってしまったが、ノアだけはヒース達のバックに佇んでいる人物の分析をしていた。

 

「..........バカヤロー.........━━━━...命を...命を何だと思ってんだ..........!!こんなやつら...俺は絶対認めねぇ...!」

 

アスタはヒース達の行動に対して憤りを感じており、彼らと自分は相容れないものなのだと悟った。

 

━━━━━━━━━━━━━

 

「.....さて、帰ったらヤミ団長に報告するとしますか。」

 

ノアがアスタ達から一人離れて、村の周囲で被害が無いかどうかを確認していた。

 

するとそこに、

 

「ニャー。」

 

「ん?」

 

いつの間にか、ノアの足元に小さな黒猫がちょこんと此方を見ていた。

 

「お前、家族は居ないのか?」

 

ノアは何故かこの黒猫から目を放せず、ふとそんな事を質問していた。

 

「ニャー。」

 

黒猫は首を横に振り、自分は一人なのだとノアにジェスチャーを送った。

 

「.....そうか....なら、俺と一緒に来るか?」

 

「ニャア?」

 

「俺と一緒に来れば、寂しい思いはさせない。」

 

ノアは黒猫に手を差し伸べ、自分に付いてこないか訪ねる。

 

「ウニャン!」

 

猫はノアの差し伸べられた手に乗り、そのまま肩に登った。

 

「決まりだな......さて、ノエル達探さないと。」

 

ノアはアスタ達と合流してからアジトに戻ろうと考え、先ずは村の中心を目指すのだった。

 

━━━━━━━━━━━━

 

時間は少しだけ遡り、とある場所にて...逃げたヒースの部下が誰かに報告を行っていた。

 

「━━━━━━━...あのヒースが..........そうか...『魔石』は『黒の暴牛』の手に渡ったか....」

 

(.........だが、『黒の暴牛』程度ならいつでもどうとでも出来る....)

 

あの方(・・・)の復活は...目前だ━━━━━.....」

 

顔はフードでよく見えないが、男の胸には魔法騎士団 『金色の夜明け』のマークが付けられている。

 

彼の正体は一体、誰なのだろうか━━━?

 

それを知るものは━━━未だ、誰も居ない。

 

そしてこの男こそがノア達と対立する人物なのだということすら、まだノア達は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ9 後日談、城下町にて

「お前ら、散々だったな!!...ま、何はともあれご苦労馬鹿野郎共。」

 

「「うすっ!!」」

 

ヤミの激励にアスタとマグナが同時に反応を見せる。

 

「犯人の遺留品を魔法鑑識課が調査中だけど有力な情報は得られてないみたい、残された懐中時計の高価さや彼らの言動から考えると...王貴界の過激派・思想犯じゃないかしら?」

 

ヴァネッサが自身の推測をノア達に語る。

 

(あの男が、王貴界の過激派・思想犯.....本当にそうなのか?)

 

ヴァネッサの推測に対してノアは何かが違うと感じていた。

 

「まぁ何だってよし...魔法帝に活躍が認められ、星一つ授与されたんだからな!!」

 

「星?」

 

「9つの魔法騎士団はこの星の取得数を名誉として競い合ってるのよ....因みに今トップは『金色の夜明け』団の70個」

 

「多っ!」

 

ヤミが持っていた星が壁の中に吸い込まれていく。

 

「よし!!これでキリよくマイナス30だ━━━!!」

 

((えええええええマイナスぅぅぅ━━━━!!?))

 

アスタとノアは自分達の団がどれだけ星取得しているか期待していたが、まさかマイナスからのスタートだとは思ってもいなかった。

 

これを見たノアは再び思った。

 

俺、本当に来る団間違えたかもしれない、と━━━━

 

━━━━━━━━━━━━━

 

その後、ノア達は『黒の暴牛』に入団してから初の給料を貰い、ヴァネッサに連れられて城下町へと来ていた。

 

「オイ...!あのローブ...魔法騎士団じゃねぇか...!?」

 

「あれは...げっ黒の暴牛━━━...」

 

「あんな小僧が...!?」

 

街の人達はアスタを見て口々に言い放つ、

 

それはアスタだけでなく、ヴァネッサやノエル、そしてノアもであった。

 

(なんでアスタは小僧と言われて、俺はリア充爆発しろなんだよ...)

 

どうやらノアがノエルとヴァネッサを侍らせていると勘違いしてノアへの発言が過激なものとなっているらしい。

 

「ちょっと騒がしくなって来たわね。」

 

「いーのいーの、魔法騎士団がいるだけで犯罪の抑止にもなるし........それに素敵な殿方も寄ってくるかもしれないし。」

 

((いや...酒ビン大量に持った状態で言われても....。))

 

「体力回復の薬草や消耗品の魔道具...目ぼしいモノ買ったら次はとっておきの場所に案内するわ。」

 

(とっておきの...場所...?)

 

ノア達はヴァネッサの後に着いていき、とっておきの場所がなんなのかを知りたいと思った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「とっておきの場所って━━━━━...」

 

「ココただの路地裏じゃ..............?」

 

ヴァネッサが案内した場所は街の路地裏であった。

 

「コッチよコッチ」

 

「えっ!?」

 

見ると、ヴァネッサが壁の中から手招きしている。

 

後に続くと、其処には露店商のような店が並んでいた。

 

闇市(ブラックマーケット)よ、ちょっと危険だったり効果が凄いもの置いてるのよ~。」

 

「凄ぇぇぇ!!」

 

「......」

 

「アラ驚いた?王族や貴族は毛嫌いして近寄らないものね。」

 

「まさか、こんな場所が街にあるなんて....」

 

「貴方、まだ魔力のコントロールまだ出来てないでしょう?出来るようになったのはその場に留めておける魔法だけ」

 

「...そ...そうだけど何か?」

 

「ココには魔力を抑えるアイテムもあるわ、相性のいいアイテムを見つけて魔力を調整すればコントロール出来るかもしれないわよ。」

 

「......!」

 

闇市を歩いているとノアとアスタは、近くで賑わっている場所を発見した。

 

「んお?あそこすげー賑わってるな。」

 

「あそこは賭博場よあなた達にはまだ少し早いわね...素人はほどほどにしとかないと身を滅ぼすわよ。」

 

ヴァネッサの忠告の直ぐ後、中から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「っしゃぁぁぁ━━━━どんと来ぉぉぉぉい!」

 

((知ってる人いたぁ━━!!))

 

其処には自分達の先輩、マグナが必死で叫んでいた。

 

「それでヴァネッサさん、魔力を抑えるアイテムって何処に売ってるんです?」

 

「あら?もしかしてノア君、乗り気なの?」

 

「そりゃ.....一応ノエルに魔力コントロール教えてる訳ですし、気にしますよ。」

 

「ふーん...。」

 

ヴァネッサは、ノアの顔色を伺うようにしてから近くの店の商品を手にとってノエルに見せる。

 

「うーん....見た目が....ちょっと....。」

 

「━━━おやおやこんな場所に...どうしたんだい?」

 

「ん?」

 

ノアが振り向くとノエルとヴァネッサをナンパしに来たのか一人の男が近づいてきた。

 

「失せなさい羽虫。」

 

バッサリとノエルに一蹴されて何も言えずにいた。

 

するとそこにアスタが戻ってきた。

 

「あれ?お前は━━━━...」

 

「あれ?お前確か━━━...」

 

「フッハ!」

 

「セッケン!」

 

「セッケだ!...お前は惜しかったけども...!」

 

「....で?ノエルとヴァネッサさんに何か用かよ、ナンパ男。」

 

明らかに敵意剥き出しの表情でセッケに詰め寄るノア。

 

「い、いや...こんな所でお嬢さん達が一体何してるのかなーと思って。」

 

(要するに二人が可愛く見えたからナンパして、あわよくばお持ち帰りするつもりだったと....)

 

流石にアホ臭くて、ノアは呆れるしかなかった。

 

「泥棒━━━━!!!」

 

すると賭博場から老婆の叫び声が聞こえた。

 

それと同時に金の入った袋をかたてに賭博場から逃げる男の姿が確認できた。

 

「アスタ!」

 

「おう、先に行く!」

 

ノアの呼び掛けから直ぐに走って男を追いかけるアスタ。

 

「あんなの余裕だ。」

 

青銅創生魔法

 

「此所は俺に任せなお嬢さん。」

 

明らかにクサイ台詞を言い残してセッケも男を追いかけた。

 

「クサッ。」

 

「キモッ!」

 

セッケに対しての二人の反応は当然というか、かなり辛辣な反応であった。

 

━━━━━━━━━━━━

 

「待てコラァァァ━━━━━!!!」

 

引ったくりを走って追いかけるアスタ

 

(ただ走ってるだけなのに...何でこのスピードについて来れるんだ━━━━)

 

するとアスタは自分の魔導書から大剣を取り出すと、まるでやり投げのように投擲する。

 

(オレの風魔法は斬れやしな━━━━━....)

 

「んなァァァ!?!」

 

引ったくりが油断していると、アスタの投擲した大剣は男の魔法を切り裂き、男はそのまま地面にダイブすることとなった。

 

が、

 

「フッハ!」

 

突如現れたセッケに美味しい所を持っていかれる形で引ったくりにダメージを与える。

 

「...う...ぐ.........」

 

魔導具 "パラライズナイフ"

 

「え?」

 

突然の事に唖然としてしまうセッケ。

 

「こ....の.....野郎!」

 

男も負けじと魔導書から新たな魔法を繰り出す....が、

 

武器魔法 約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 

「往生際が悪いぜ、引ったくり。」

 

やっと追い付いたノアが咄嗟の判断でエクスカリバーを取り出し、男の放った魔法を吸収した。

 

「そんな.....馬鹿....な.....。」

 

男はそれだけ言うとそのまま気絶した。

 

「そのまま眠ってな。」

 

━━━━━━━━━━━━━

 

その後、セッケが大袈裟なリアクションを取っていたが、魔導具によるダメージが低いと分かった途端、恥ずかしくなって逃げてしまった。そして、

 

「コレ全部賭博で勝ったのか!すげーなバーチャン!もう盗られんなよ!」

 

「ありがとうよ~魔法騎士団様~~~~」

 

引ったくりに奪われたお金を全て取り戻し、老婆に手渡すアスタ

 

「気ぃつけてなバーチャ━ン」

 

そしてアスタ達の姿が見えなくなると老婆はいつの間にか姿を眩ませ、その場には一人の男が立ち尽くしていた。

 

「━━━魔法無効化...か...見た事のない種類の魔法だったね.........いや...そもそもあれは魔法かな...?....それにもう一人の少年....彼の魔法も面白い....まるで一国を治める王が所持しているような剣だった....なかなかオモシロイ子達だね」

 

そう言ってアスタとノアの魔法を面白がり、二人の事も何処か気に掛けている様子だ。

 

『━━━やっと見つけた...!』

 

すると突然彼の元に通信が入った。

 

『何してるんですか!?"魔法帝"━━━━━!!』

 

「何って...新たな魔法との出会いを求めて城下町をぶらりね。」

 

『はい!?』

 

通信の声は この人何言ってるんだ? と言いたげな雰囲気を醸し出している。

 

『あなた自分の立場わかっ━━』

 

「魔法との出会いは一期一会」

 

『だから━━━』

 

「どこでどんな魔法に出会えるかわからないからね。」

 

『話聞けよこの魔法マニアぁぁぁぁ』

 

「それではまた新たな魔法に出会いに行こうか━━━」

 

『待てコラァァァァァ!!馬鹿な事言ってる場合じゃないんですよ━━━━━━...異じょ』

 

「異常事態発生...だろう?」

 

『え!?』

 

「大丈夫オモシロイ人材見つけたから。」

 

『えぇ!?!』

 

この後、ノエルがある人物から杖を購入し、その人物の師匠からアスタとノアが剣を使った戦い方を教わるのだが、それはまた別の所で話すとしよう━━━━━。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ10 魔宮(ダンジョン)

「...トリタロウだな!」

 

「いえシルヴァンタスシュナウザーよ」

 

ある洞窟内でアスタとノエルが言い争いをしていた。

 

その前方にはラックとランタンを片手にラックの後を付いていくノアの姿があった。

 

「トリタロウ!」

 

「シルヴァンタスシュナウザー!」

 

「お前ら...まだ言い争ってるのかよ....?」

 

呆れた様子でノアが二人に話し掛ける。

 

「ノア、ノエルに言ってやってくれ...こいつの名前はトリタロウだって。」

 

「いいえ、シルヴァンタスシュナウザーよ...間違いなくそれがいいわ。」

 

「お前らなぁ....任務中にそんな事で言い争うなよ....なぁネア。」

 

「ウニャン。」

 

ノアのローブの中から黒猫が顔を出してノアに同意するように鳴いた。

 

「というかノア、お前いつの間にその猫捕まえたんだ?」

 

「捕まえてねーよ....この前の猪狩りの時、ソッシ村で付いてきたんだよ。」

 

「ニャオン。」

 

合いの手を入れる黒猫ネア。

 

(か....可愛い!!)

 

「そういえばそのアンチドリの名前だったな....そうだな。」

 

(ネロ)でいいんじゃない(か)?....ん?』

 

ノアが進言するとラックとハモった。

 

するとネロと呼ばれたアンチドリはラックの肩に留まると方羽を挙げたまるでその名前が良いと言ってるように。

 

『えええ』

 

ラックとノアの決めた名前に不服そうにするアスタとノア。

 

話は変わるが四人が来ている此処はただの洞窟ではない。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

数時間前、アジトにて

 

「はい注目~~~~~~~ついさっき新しい『魔宮(ダンジョン)』が発見されました。」

 

シーンと静まり返る一同、だが次の瞬間

 

『『魔宮(ダンジョン)んんんん!!?』』

 

「ダンジョン?」

 

名前からして何があることは分かったがそれが何なのかは分からないな。とノアは思った。

 

「どうしたノア?」

 

ふとマグナが話しかけてくる。

 

「あ~いや、ダンジョンって何ですか?」

 

「あー...そういや説明してなかったな....いいか、ダンジョンってのはな、昔の人間達が遺した遺物が眠る古墳のようなモンで強力な古代魔法の使用法や貴重~~~な魔導具が眠ってるスゲーとこなんだよォォ!!」

 

「うおおおおおお!」

 

マグナの熱が入った説明にアスタもつられるようにして熱くなっていたが、ノアは

 

(相変わらず暑苦しいなぁ....。)

 

と、思うだけであった。

 

「だけど当時の人達が自分達以外の人間に悪用されないようにとんでもない(トラップ)魔法を設置してる超危険な面白い場所でもあるんだよ~♪」

 

マグナの次にラックが説明してくれたが、何処か楽しげであった。

 

「その危険性の高さと邪な理由で遺物が奪われない為に常に魔法騎士団が調査してるのよ~」

 

「ほうほう。」

 

「特に今回の『魔宮(ダンジョン)』は非友好国との国境近くに出現した...!奴らに奪われない為にもより確実な任務遂行が望まれる............!」

 

団長のヤミも何時もの気だるげな感じではなく、鬼気迫る雰囲気を感じるため今回の任務は必ず成功させなければならないと団員は悟った。

 

「......因みに、過去『魔宮』から文明のレベルそのものを変えちまう魔導具を見つけた者や..最強の魔法を使えるようになった者もいたとか。」

 

「俺に行かせてくださぁぁぁい!!!」

 

アスタはヤミの話から行けば自分もその最強の魔法が使えるのではないかと考え、任務に立候補した。

 

「おー行ってこい小坊主...つーか魔法帝のダンナがテメーをご指名だ。......ま お前魔力ねーから最強の魔法使えねーけどね

 

「え...えええええええ!?!魔法帝ぃぃぃぃ!!?

 

何故魔法帝が自分を使命したのだろうか?

 

そんな疑問がアスタの頭を駆け巡った。

 

「そうそう、ノアお前も魔法帝からのご指名だ。」

 

「え!?...俺もですか?」

 

まさか自分まで選ばれると思っていなかったノアは驚いたが、此所で実力を見せておけば、一歩でも魔法帝に近付けるのではないかと考え、任務に向かうことにした。

 

━━━━━━━━━━

 

そして現在、『黒の暴牛』のアジトにて、

 

「何で魔法帝はアスタとノアの事知ってんスかね?」

 

「あのダンナには俺達とは違うモノが見えてるからな...変人だしわっはっは

 

「ノエル大丈夫かしら~」

 

「危険で重要な任務こそ新人は限界を超え成長する多分.....ま、ラックがいるから大丈夫だろアイツの『(マナ)』感知能力はズバ抜けてる貴族以上にな性格さえ破綻してなければどの団でも引く手数多だったんだからなぁ」

 

「その破綻した性格が心配ですけどねー」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━

 

現在、『魔宮』前の洞窟にて、

 

「ちょっと足踏まないでくれる!?」

 

「真っ暗なんだからしょーがないじゃないか~」

 

どうやら灯りを落としてしまい、真っ暗闇の洞窟内を進んでいる様子だ。

 

「アンタが灯り落っことしたからでしょーが」

 

「それはお前が躓いてぶつかってきたからだろーがァァァァ」

 

「何よ私は王族よ!?」

 

「お前ら!いい加減にしないと此処に置いてくぞ!」

 

アスタとノエルのエスカレートした喧嘩を見てノアが止めに入る。

 

「お!此処かな?」

 

ラックは『魔宮』への入り口を探して洞窟の奥の壁を探る。

 

するとガコッ、と何かのスイッチが入る音が聞こえ、壁が崩れて『魔宮』が現れる。

 

すげええええ!!!

 

中の様子は、天井が無く、其処には別の場所へと繋がっているであろう入り口と、川が流れており、重力に逆らっているのか、水が落ちてくる事はなく、まるで滝のように上から下へと水が落ちてくる。

 

「魔法で空間が歪んでるみたいだね。」

 

ラックは中を見渡してそう言う。

 

「此処は外よりも濃~い『(マナ)』が漂ってるねー」

 

「言われてみれば、確かに...!」

 

「こんなに『(マナ)』で満ちた場所、初めてだわ...!」

 

「そうなのかい?」

 

ノア達の感想にただ一人、疑問符を浮かべるアスタ。

 

「まさかアナタ、これだけの『魔』を感じないの...!?」

 

「全然。」

 

「ええええ━━ってまさか『魔』も知らないなんて言うんじゃ.........」

 

「『魔』ぐらい知っとるわァァァ」

 

因みに『(マナ)』とは、この世界と、人の中に存在する超常的なエネルギーのことで魔導士はこの『魔』を利用して魔法を発動させるのだ。

 

「お前のような王族にとんでもなく宿っていて、俺の中には全く存在していない魔力の源━━━━━そう!!それが『(マナ)』!!」

 

アスタが悔しい気持ちを表現しながら『魔』について力説する。

 

だがその時、アスタが叩いた床から魔方陣が現れ、次の瞬間、氷塊が幾つも飛び出してくる。

 

「な...!!『(トラップ)』魔法━━━!!?」

 

突然の出来事にノエルとノアはその場で固まってしまったが、アスタは咄嗟に魔導書から剣を取り出して氷塊を切り裂いた。

 

「あ...危ないわね━━━...!」

 

「この先、こんな罠魔法が幾つもあるのか....。」

 

ノアとノエルがそんな事を呟くと、

 

「ん?」

 

ラックが何かを見つけたらしい。

 

「どうしました?」

 

ノアがラックに駆け寄る。するとラックは、

 

「えいっ」

 

「うわっ!!」

 

咄嗟にノアの背後に回って突き飛ばす。

 

「あ」

 

ノアが踏んだそれは、罠魔法の魔方陣であった。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!?」

 

ノアも咄嗟に魔導書から剣を取り出して、氷塊を破壊する。

 

 

「何するんだぁぁぁ!!?」

 

「凄い凄ーい」

 

「ちょっとアナタ...」

 

ノアがラックに怒りを剥き出しにするが、当のラックは何処吹く風で笑っていた。

 

「あっあそこまたあっ...あ━━━━━っっ!!」

 

ノエルが罠魔法の魔方陣を見つけると今度はラックが自ら罠魔法を作動させていた。

 

ある時は炎、またある時は渦潮、またある時は風が罠魔法から作動して四人を襲ってきたが、ノア達の奮闘により何とか全て破壊していった。

 

「楽しいね~~~~♪」

 

作動させたラックは楽しそうに笑っているが、ノア達四人は

 

(((この人と一緒にいたら...死ぬ!!)))

 

少なからず、命の危機を悟っていた。

 

「それにしても君の反魔法(アンチ)の武器と君の武器魔法、凄いねー!魔法帝もそれを見越して任命したのかなぁ?...二、三年後辺りヤリ合ってみたいなー」

 

ラックは二人の魔法についての感想を述べると最後に一言、

 

「常に武器を振れる状態でいる事を心掛けてればこの『魔宮(ダンジョン)』も問題無いね。」

 

「うすっ!!」

 

ノア達にアドバイスをした。

 

「━━━━━...さてと...」

 

(......そろそろ限界かな━━......)

 

ラックは自身の感知力を使い、周囲の『魔』の流れを読んでいた。

 

すると、無数にある入り口の一つから強い魔力を感じた。

 

(やっぱりいる僕達以外にも....一番強そうなのは━━━...)

 

雷創成魔法 "雷神の長靴"

 

「━━━━━...!?」

 

「え...!?!」

 

「......」

 

 

すると突然ラックが魔法を使い、跳躍する。それに気付いたノア達が頭上を見上げる。

 

「ちょっと大事な用出来ちゃった...とゆーワケで『魔宮』攻略よろしく━━♪」

 

「...ちょ...どこ行...速━━━!!

 

ラックはそのまま強い魔力の流れる所へ行ってしまい、ノア達三人はその場に取り残されてしまった。

 

「なっ...何考えてんのよあの人━━━!ありえないんだけど

 

「か...かっけええええ」

 

ノエルからはツッコまれ、アスタからは羨望の眼差しを向けられる事になった。

 

だがノアは一人、ラックの行き先に検討を付けていた。

 

(そういえばあの人戦闘狂だったな......成る程、そういうことか。)

 

どうやら自分達以外にも魔導師がいることに気付いた様子。

 

ならば、自分達が取るべき行動はただ一つ、他の魔導師達よりも速く、この『魔宮』の宝物庫にたどり着き、宝を守ることだとノアは思った。

 

「考えても仕方ない、取り敢えず三人だけで宝物庫を目指そう。」

 

 

「って、何であんたが仕切ってんのよ!?」

 

「お前らに任せたら、ろくなことにならないと俺が判断したからだ。」

 

「何ですってぇぇぇ!!?」

 

すると突然、ノエルの背後から蔦が伸び、ノエルを拘束した。

 

「ん?」

 

「ん?」

 

「マズイ!!」

 

アスタとノエルは戸惑ったが、ノアだけは即座に自身の魔導書から炎魔の剣を取り出して、蔦を切り裂いた。

 

「ボーッとするな!次来るぞ!」

 

「お、おう。」

 

「あ、ありがと。」

 

ノアに続いてアスタとノエルも応戦する。しかし、蔦は減るどころか増え続け、不意をつかれたノエルがまた拘束されてしまう。

 

「...しまっ━━━━━...!?」

 

拘束されたノエルは蔦の本体であるハエトリグサのような植物に捕食されそうになる。

 

高レベルの植物創成魔法......!!

 

「逃げろォ━━━━━!!!」

 

その時、アスタがノエルを拘束していた蔦を斬ってノエルを解放する。

 

しかし、アスタも剣を持った腕を即座に拘束されてしまう。

 

「「アスタ...!!」」(剣が━━━━...)

 

ノアがアスタの救出に向かうが、蔦の数が多過ぎて、アスタの元に行くことができない。

 

(マズイ!...どうすれば...?)

 

ノアは必死でこの状況を打開する方法を模索するが一向に答えは出てこない。

 

そんなことをしている間にアスタは宙吊りにされ、今にも捕食されてしまいそうになる。

 

(やば...)

 

風創成魔法 "風神の叢雨"

 

すると何処からか魔法が飛んできてアスタを拘束していた植物を倒してしまった。

 

ノエルはこの魔法を放った人物に底知れぬ恐怖を感じた。

 

(......何よこの正確で強力な魔法━━━...!!一体何者.........)

 

ノエルとノアは、魔法が飛んできた方向を向くとそこには━━

 

━━━━━━━━━

 

「━━━━あ、そういえば....『金色の夜明け』団からも数人『魔宮』に派遣されるそうだ。」

 

「えッ『金色の夜明け』━━━━...!?」

 

「あいつら...仲良くやれるかね?」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「━━━━...これで...借りを返したぞ...アスタ...ノア...!!

 

其処には、『金色の夜明け』団のマークが入ったローブを身に纏ったノアと二人の男女が此方を見下ろしていた。

 

「「ユノ...!!」」

 

アスタとノアは再び会えたユノに嬉しさ半分、負けたくないというライバル的闘争心を燃やすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ11 再会

『金色の夜明け』団 アジト

 

「ヴァンジャンス団長!」

 

『金色の夜明け』団団長ヴァンジャンスに一人の魔導師が声を掛ける。

 

「何故あんな下民の新人を大事な任務に.........!」

 

ヴァンジャンスは振り向くと、男に話し掛ける。

 

「君は私を信頼しているかい?」

 

「勿論ですとも...!私アレクドラ・サンドラーはあなたのためなら死ねます━━━!!」

 

「━━━━...では...私が信頼する彼の事も信頼してあげてほしい。彼も『金色の夜明け』団の一員だ...我々の為にこれから更に強くなっていくだろう.........」

 

(彼には強くなってもらわねば....それに、『黒の暴牛』に行ってしまった"彼"にも強くなってもらわねばね━━━━━...)

 

ヴァンジャンスの言う"彼"とは恐らくノアの事であろう。だが、接点の無い彼を気に掛ける理由とは一体━━━━...

 

━━━━━━━━━━━━

魔宮内部、ノア達三人は『金色の夜明け』団に加入したユノに助けられ、現在はノアとアスタ、そしてユノが互いの成長を確認する。

 

「ユノ、何故こんな奴らをわざわざ助けたのだ。我々の任務はあくまでこの『魔宮(ダンジョン)』の攻略...つまりは最深部の『宝物殿』に速やかに辿り着くことだこんな奴らに(かかずら)っている時間など無い...!

 

彼は『金色の夜明け』団の一人 クラウス・リュネット

 

眼鏡を掛けており、見るからに真面目そうな男だ。

 

「オイユノ!いきなり何だこの失礼な眼鏡は!」

 

「先輩。」

 

「メガ...失礼なのは貴様だ!貴族の私と対等な口を訊くな!」

 

アスタの発言に異を唱えるクラウス。

 

「あらぁ...ノエルさんじゃありませんか。」

 

「........」

 

ノエルに話しかけた少女、彼女も『金色の夜明け』団の一人 ミモザ・ヴァーミリオン 見た目はゆるふわ系の少女だ。

 

「ご機嫌よう昨年の王族一同のお食事以来かしら。」

 

「ん?...ノエルの知り合い?」

 

「えぇ...ちょっとね。」(従姉妹のミモザ...!よりによってコイツも来るなんて............!)

 

「『黒の暴牛』は野蛮な団だとお聞きしますわ大丈夫ですか?」

 

突然、ノアの前で失礼な発言が飛び出す。

 

これに対してノアは「.....は?」と言って呆然としてしまう。

 

フン...そっちこそ大丈夫なのミモザ...!貴女みたいなトロイのが『金色の夜明け』団でやっていけるのかしら?」

 

それに対してか、ノエルも負けじと彼女に皮肉で返す。

 

「はい、皆様お優しい方ばかりで...お陰で魔法を臆する事無く魔法を振るえておりますわ...あっノエルさんは魔力のコントロール全く出来ておりませんでしたけどその後どうですか?

 

(相変わらずの天然失礼...やっぱりムカツク~~~~~~~)

 

思い出したかのようにノエルの魔力がコントロール出来ない事に触れるミモザ。ノエルの発言から悪気があって言ってる訳ではないと理解出来るが、それでも悪気が無い分性質(タチ)が悪いように思える。

 

「私達、先日このメンバーでの任務で魔法帝に『星』を受理されましたの...!」

 

それを聞いてアスタはニヤリとほくそ笑むと、

 

「俺達だってこの前『星』貰ったもんね!!」

 

アスタの後ろでどや顔を決めるノエル。まさしく虎の威を借る狐のようである。

 

「嘘をつけ...『黒の暴牛』の新人ごときがそう簡単に『星』を授与される訳ないだろうが、今回の任務を任されているのもおこがましい。」

 

「魔法帝直々に任されたっつーの!」

 

「また見え透いた嘘を...」

 

「嘘じゃねぇぇぇ!」

 

クラウスはアスタの言葉を嘘と決め付け、話を信じようともしない。どうやら『黒の暴牛』の評判はかなり悪いのだと理解出来る。

 

(それ以外にも、『黒の暴牛』は殆どが下界出身の魔導師が多い事もある。)

 

彼ら『金色の夜明け』団は構成メンバー全員が貴族出身という事もあり、やはりそういった面でも下界出身のメンバーが多い『黒の暴牛』を忌避しているのだと理解出来る。

 

「━━━そういえば...貴様らは四人で来ていると聞いたがもう一人はどうした?...まさか貴様らを置いて逃げ帰ったなどと言うまいな、それとも(トラップ)魔法の餌食にでもなったか?」

 

明らかに馬鹿にした様子でこちらを伺ってくるクラウス。

 

やはり下民という事でノア達を下に見ているのだろう。

 

━━━━━━━━━━

 

一方、その頃ラックはというと...

 

「ほっ♪」

 

楽しそうに魔法を使用して敵の位置を探り、其処へと向かっていた。

 

「次を左...と━━━...どれくらい強い相手か...楽しみだな~~~~~~~♪」

 

わくわくしながら先へと歩みを進める様子はまるで子供のように無邪気であった。

 

━━━━━━━━━━

 

(((俺(私)達ほっぽってどっか行ったなんて...言えねー...)))

 

ラックの身勝手な行為により、ノア達が現在被害を被っている事など当の本人は知る由もないだろう。

 

「どちらにせよ新人を置いて行くようなクズのあつまりだ━━━━...『黒の暴牛』...汚らわしい魔法騎士団の恥さらし共めが.........!!」

 

クラウスの発言にカチンときたアスタ。

 

「...上等だコノヤロー...俺達『黒の暴牛』が先にこの『魔宮』を攻略してやらぁぁぁぁ!!見てろよ!!....えーっと...変な仮面のボスの団!!」

 

「変な仮面...だと...?貴様ぁぁぁぁぁ!!我らが崇拝するヴァンジャンス団長を愚弄するかぁぁぁぁ!!?」

 

今度はクラウスもキレた。

 

「大体変なのはそっちの団長の方だろうが!何なのだ筋肉ムキムキにタンクトップって」

 

「何だとコラァァァァ!?男らしくてスーパーイカすだろーがぁぁぁ!!」

 

「......」(凄い係ってる。)

 

「......」(自分から係うなって言ってたのに...あれはいいのか?)

 

クラウスとアスタの口喧嘩を見て、ノアとユノは先程のクラウスの言葉を思い出していた。

 

「いいだろう愚か者共、魔法騎士団トップと最下位との実力差思い知らせてくれる!!━━━ミモザ!」

 

「はぁい。」

 

《植物創成魔法 "魔花の道標"》

 

ミモザは魔法で魔宮の模型を作り出し、内部構造を確かめ始める。

 

「え~~~~~と...この「魔宮」の大体の構造はわかりましたわ。」

 

「ユノ━━━━━!」

 

「...はい。」

 

次はユノが魔導書を開いて魔法を発動する。

 

《風邪創成魔法 "天つ風の方舟"》

 

魔法で生み出した風にミモザとクラウスを乗せる。

 

「せいぜい足掻くんだな。」

 

クラウスはノア達を見下し、嘲笑う。

 

「............人三人を余裕で........!」

 

((さすがだな━━━...ユノ...!!))

 

アスタとノアはユノの成長した姿に感動する。

 

(((誰が先に宝物殿に辿り着くか勝負だ━━━━!!)))

 

ノア、アスタ、ユノはそれぞれ競争意識を剥き出しにして宝物殿へと歩みを進める。

 

━━━━━━━━━━━

 

「━━━━ってどうするのよ!?...私達探索系の魔法なんて使えないのよ!?」

 

「う━━━ん.....どうしようか?」

 

ノエルの言葉にノアは考え始める。

 

「そんなの決まってるだろ!しらみ潰しにすべての道を行く━━━━!!」

 

アスタは罠魔法で生成された魔物を大剣で倒しながら走り出していく。

 

「馬鹿じゃないの!!?...あ、馬鹿だったこのままじゃ「宝物殿」に行くどころか迷子になるわよ!」

 

ノエルの言うとおり、この魔宮は内部構造がかなり入り組んでいる為、迷子になる可能性の方が高い。

 

「......」

 

その時、ノアはその場に留まり、目を閉じて何かを感じとる。

 

(あそこか...。)

 

ノアが見た方向には、別の場所へと繋がっている入り口であった。

 

「アスタ!」

 

「ん?」

 

「あそこの入り口だ。」

 

ノアはアスタ達に次の行き先を提示する。

 

「何で分かったんだ?」

 

「ん~~~直感?」

 

アスタの疑問にノアは直感と答える。

 

「馬鹿じゃないの!?...勘なんかで「宝物殿」に辿り着ける訳ないじゃないの!」

 

ノエルの言うことも一理ある。

 

「.....まぁ、ノエルの言うとおりなんだけど...それでも俺は,この先に進む。」

 

《武器魔法 影の小剣(シャドウナイフ)

 

魔導書からナイフを取り出すと、ノアは入り口に向かってナイフを向けた。

 

するとナイフから黒い影が伸び、入り口付近の壁にくっつく。そしてナイフから伸びた影がゴムのように縮み、ノアを入り口付近まで移動させた。

 

「アスタ達も後から付いてこいよ....それじゃ、お先。」

 

ノアはナイフを魔導書に戻すと、入り口の向こう側に向かって走り出していった。

 

「待ちやがれノア~~~~!!!」

 

ノアの後を追いかけてアスタが壁を登っていく。

 

「何で毎回こうなるのよ~~~~!!!」

 

ノエルもアスタの後に続いて壁を登りながら愚痴を溢すのだった。

 

━━━━━━━━━━━━━

 

一方その頃、ユノ達は

 

「ハン...愚か者共共が...我々に勝てるはずがないだろう...大体、何なのだあいつは全く魔力を感じなかったぞ。」

 

「そうでしたわねー。」

 

クラウスはアスタに対して陰口を叩き、ミモザはそれに共感した返答を返す。

 

「あんなのを採用するなど..「黒の暴牛」団長は何を考えて...」

 

「━━━...クラウス先輩...アイツの事、あまり侮らない方がいいですよ。」

 

「............!!この「魔宮」を生きて出られればいいがな............!私は我が国の為に迅速な魔宮《ダンジョン》攻略を目指すだけだ。」(...恵外界の下民の出が...四つ葉だか何だか知らんが...私はまだお前を認めてなどいないからな....!)

 

━━━━━━━━━━━━━

 

魔法帝の城にて、

 

「お伝えします魔法帝━━!『魔宮』にて魔法騎士団『金色の夜明け』団『黒の暴牛』団調査開始、そしてダイヤモンド王国の魔導士軍隊の侵入を確認しました━━!」

 

偵察を行っていた魔導士が魔法帝に現在の「魔宮」の様子を報告する。

 

「我がクローバー王国の隣国...ダイヤモンド王国...!最近領土拡大に力を入れている侵略国家...!」

 

「あんな国の連中に『魔宮』の古代魔法を奪われたら厄介な事になるぞ...!」

 

「敵の軍の力は如何程だ...!」

 

「............」

 

ザワザワと騒ぎ出す魔導士達、その場には、見知らぬ長髪の男が紛れ込んでいたが、誰も知る由はなかった。

 

偵察の報告は続いて、敵の情報が報告された。

 

「敵の軍を率いているのは『奈落のロータス』です━━━━...!!」

 

敵の名前を聞いた途端、周りがザワつき始めた。

 

「あぁ━━━...!昔戦場で会った事あるよ!強かったね━彼!使う魔法がこれまた面白くて...」

 

こんな時まで呑気でいられるのは彼、魔法帝位のものだろう。

 

「呑気な事言ってる場合ですかァァァ!!」

 

「ウィリアムも面白そうな子を行かせたようだし━━━...大丈夫大丈夫...魔法騎士団(ウチ)の子達も強いよ...!」

 

その時の魔法帝の目は、彼ら魔法騎士団を信用しているのか、とても鋭く真っ直ぐ前を見つめていた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

その頃、魔宮内部 ある場所

 

「あれ~~~~~~...弱いなぁ~~~~~~~」

 

ダイヤモンド王国の魔導士達を倒し、魔法で倒した魔導士の一人を掴んでそう言い放つラック。

 

「...でも君は、そんな事無いよね?」

 

ラックが顔を向けた先には、一人の魔導士がいた。

 

「いやぁ~~~~参ったねどうも...ハードル上がり過ぎるとロクな目に合わないからね~~~~~...勢いある若い力...コワイね全く━━━━━━━」

 

顎を掻きながらそう言い放つ中年の男性魔導士

 

果たして、ラックはアスタ達と合流出来るのだろうか━━━?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ12 ダイヤモンドの魔導士

中年の魔導士とラックが対峙する。

 

中年の方は、ロータスという名前の魔導士である。

 

「強いね~~~~部下が一撃でのされちゃったよ。」

 

何処か飄々とした態度でラックを一瞥するロータス。

 

「所詮は部下だよね...大将の君が強かったら問題ないよ。」

 

そんなロータスの態度に対してラックはそんな事はどうでもいいから自分と戦え。と言い放つ。

 

ロータスはラックの脚を見て、

 

「雷の魔力を纏って戦う訳ね...中々応用がきく上攻撃力高そーだよね~~~~~どこも若い力が育ってる...いや~オジサン怖い怖い。」

 

とだけ言った。

 

「君は一体どんな魔法で戦うのかな?」

 

ラックはワクワクしながらロータスと戦う事しか眼中にないようだ。

 

「うーん...なんかやる気満々そーだけど...君らクローバーの目的もこの『魔宮』の『宝物殿』でしょ?」

 

そう言って突然走り出す。

 

「別に僕ら戦わなくてもよかないかい?...ここは暴力無しで競争しよーよ!そーしよそーしよじゃあね~~~」

 

と言い残して逃げようとしたが、

 

「ヤダ」

 

と、ラックの一言で拒絶されてしまい、雷魔法で魔力を帯びた蹴りを受けそうになる。

 

(速い━━━!)

 

ロータスは即座に自身の魔導書から魔法を発動して"煙"を作り出す。

 

(避けられた━━...!)

 

「いや━━━...怖い怖い、君らクローバーの国民が怒ってるのもわかるよ?自国をちょこちょこ侵略されてちゃそりゃねぇダイヤモンド王国(ウチ)が迷惑かけてごめんね~~~~ただ僕らの国も資源不足で大変でさぁ、生きる為にしょーがないんだよね~~~~オジさんも娘が三人いてね~~~」

 

その時、ラックがまたもや魔法でロータスを攻撃する。

 

「僕は強い奴とやれればそれでいーから♪」

 

と、楽しげに答える。どうやら本来の目的を忘れているのか、それとも元から任務を遂行する気が無かったのか...ラックの中では任務よりも強い相手と戦う事が最優先事項として認識されているようだ。

 

「とんでもないのに目ぇつけられちゃったよ...オジサン泣きそ。」

 

左頬から血を流してラックの様子を確認し、戦うしかないと諦めた様子だ。

 

━━━━━━━━━

 

「ふんぐぐぐぐぐ。」

 

一方その頃、アスタとノエルは...

 

「うぐおおおお」

 

「きゃあああああ!!何ココ!!重力が滅茶苦茶じゃないの~~~~!?」

 

重力がが不安定な通路を通っていた。

 

「ったく、ノアの野郎~~~ホントにこっちであってんのかよ...ん?」

 

その時、アスタの目にあるものが飛び込んできた。それは、足の生えた箱が何処かへと歩いていくというかなりシュールなものであった。

 

「アレが宝物だぁぁぁ━━━━!!」

 

「いや絶対違うっ!!」

 

アスタが目をキラキラさせながら箱を見ていたが、ノエルは絶対違うとツッコミを入れる。しかし、アスタはノエルの言葉に耳を傾けず、箱を追いかけ、そして一緒にノエルの所へと落ちていった。

 

そして、

 

「よし....さてお宝はっと...」

 

箱を捕まえ、開けてみるとそこには━━━━

 

心臓、胃、腸などの様々な臓器がどっくんどっくんと蠕動していた。

 

それを見たアスタはドン引きし、見せられたノエルはあまりのショッキングな光景に思わず口を押さえてしまう。

 

「なんてモノ見せつけてくれるのよチビスタ~」

 

「いいやコイツの見た目が悪い!!」

 

ノエルはアスタのせいで臓器を見てしまい、アスタに怒りをぶつけるも、アスタは箱に責任転嫁する。

 

その光景を見ていたネロはやれやれといった様子で二人を近くの窪みから見ていた。

 

━━━━━━━━━

 

その頃、ラックは

 

ロータスと戦っていた。

 

ラックは"雷神の長靴"で攻撃し、ロータスは煙でガードするというようにラックの攻撃を防いでいた。

 

「血気盛んだね~~~~」

 

「避けてばっかいないでヤり合おうよ!」

 

ラックはロータスに戦えと言ったが、ロータスは戦いたくないといった様子。

 

するとロータスがラックが身に付けているローブを見て何かを思い出す。

 

「あぁそのローブ...!思い出したよ黒の暴牛!...君のとこの団長が若い時 一度戦った事あるよ。」

 

「!団長の事知ってるの?」

 

「こんな大層な傷残してくれちゃってね~~~~おしっこ漏らして逃げたよ~~変わった戦闘スタイルだったな~~年下で勝てなかったのは彼だけだったなー。」

 

ロータスは胸を傷をラックに見せながらそう語った。

 

「俄然やり甲斐が...」

 

その瞬間、ラックは身体の平衡感覚がおかしくなっている事に気付く。

 

「おっとっと...」

 

「あれ?どしたのどしたの?」

 

ラックがロータスに近付いて攻撃を行おうとするものの、

 

「遅~い!」

 

寸でのところで避けられてしまう。

 

「じわじわと いってらっしゃい 奈落の底へ」

 

(何だコレ............!魔法...!?けどそれらしい魔法を喰らった覚えは━━━━━...)

 

「実は今この空間は、僕の魔力で覆われてるのさ...目に見えない程の薄~~~~~~い煙でね。」

 

ロータスが発動した魔法は "煙弱体魔法 "侵奪の煙庭""という魔法。

 

(体が言うことを効かない...身体能力を下げる遅効性の魔法━━...?)

 

「目に見える攻撃だと...君には避けられちゃいそーだからね...君に気付かれないよーに極限まで魔力を絞ってコソっと使わせてもらったよ...君が僕の部下と戦ってる時にね...彼らは無駄に倒された訳じゃないよ...僕がこの魔法を使う為の犠牲になってくれたのさ....いやぁ~~~~大事だよね...チームプレイ...!

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

一方、ユノ達は...

 

「もうそろそろですわ...!」

 

三人は『宝物殿』の入り口までやって来ていた。

 

「すっごいですわね~~」

 

魔宮(ダンジョン)とはこんなものか...大した事なかったな」

 

「どうやって入るんでしょう...?」

 

「黒の暴牛の方達はまだのようですね」

 

「当たり前だ奴らが我々より早い訳がないだろう。」

 

その時、ミモザの背後から鉱石が近付いて彼女に攻撃を━━━

 

"武器魔法 "斧剣 射殺す百頭(ナインライブズ)""

 

仕掛けようとした途端、彼女の背後に突如として巨大な斧剣が彼女を守るようにして突き刺さり、ミモザの盾となった。

 

「危ねぇ~~~間一髪だったな....えーと、ミモザ...だっけ?」

 

斧剣の柄の上に誰かが立っている。

 

「ノア...!」

 

「よぉ、さっきぶりだなユノ。」

 

「き、貴様....一体、どうやって....」

 

立っていたのはノアであった。

 

ユノは誰よりも速く、ノアであると気付き、クラウスは一体いつ此所に来たのかを問い質そうとしたが、

 

「あー...悪いけど、今そんな時間、無いと思うよ....ほら。」

 

ノアが指差した方向にいたのは....

 

「誰だ...俺の道にいるのは...どけ

 

額に宝石のような石が埋め込まれている魔導士の男が、ノア達を睨み付けていた。

 

「俺の道....ハッ!...女性を傷付けようとした奴が言うセリフでは無いな。」

 

男を睨み付け、吐き捨てるように言い放つノア。

 

「それに、どけ...だと?.....ダイヤモンド王国(侵略者)が...魔宮(ここ)クローバー王国(俺達)の管轄だ...そっちこそ、出ていってもらおうか...!」

 

自身の魔導書から"刀"を取り出して構えるノア。

 

二人は互いを睨み、対峙する。

 

 

 

 

 

 

 



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ページ13 対峙する魔導士達

「出ていけ....だと?」

 

ノアの言葉に反応を見せたダイヤモンド王国の魔導士 マルス

 

「ここは俺達クローバー王国の管轄....出ていくならばお前らの方だ....!」

 

マルスは魔導書(グリモワール)を開いて魔法を発動する。

 

《鉱物創成魔法 "ハルパー"》

 

マルスの周囲に無数の剣が出現し、刃をノア達に向けている。

 

「成る程....鉱物から創り出す魔法か....なら、」

 

ノアは刀を魔導書に戻すと別の剣を取り出した。

 

《武器魔法 "炎魔の剣"》

 

「その鉱物...硬さは"ダイヤモンド"並かな?」

 

剣の面に指を這わせ、マルスに向かって走り出す。

 

「無茶だ!」

 

クラウスがノアに制止の言葉を掛けるもノアの脚は止まらない。

 

「先ずはお前だ...!」

 

ハルパーの刃は全てノアに向けられており、マルスが右腕を振り下ろすと同時にノアに向かって飛んでいく。

 

「ハアッ!」

 

ノアが横凪ぎに剣を一閃すると、無数あったハルパーは溶けていく。

 

「な!?」

 

それを見ていたクラウスは驚いた。あの無数に現れた刃がノアの放った一撃で溶けるとは思わなかったからだ。

 

「成る程、その鉱物...やっぱりダイヤモンドだったか。」

 

「どういう事だ?」

 

疑問に感じたクラウスがノアに聞いた。

 

「鉱物の中でも最高の硬さを誇るダイヤモンド....だがそんな鉱石にも弱点が存在する。」

 

「弱点?」

 

「ダイヤモンドってのは...炭素の塊なんだ....炭素は"火"に弱い。」

 

なら、答えは単純だ。と言って剣を(かざ)す。

 

「ダイヤモンドには火を当てて溶かせばいい...こんな風にな!」

 

《炎魔法 "蒼炎の盾壁(じゅんへき)"》

 

剣を地面に突き刺し、蒼い炎の壁を横一面に作り出す。それによって、ハルパーを次々に溶かしていく。

 

「ほら来いよ....こんなもんじゃない筈だろ...ダイヤモンド王国。」

 

手招きをしてマルスを煽るノア。

 

「いいだろう、その安い挑発に乗ってやろう...!」

 

再びハルパーを大量展開していくマルス。

 

「な...!?」

 

その数は、先程展開されていたものの約5倍程の量であった。

 

「この数を見てまだそんな減らず口を叩けるのならな...!」

 

次々にノア目掛けてハルパーがどんどん迫ってくる。

 

(蒼炎の盾壁で俺に物理攻撃は効かなくなっている....どうするつもりだ...?)

 

《鉱物創成魔法 "レーヴァテイン"》

 

ハルパーは一つの巨大な大剣となり、ノアの発動した壁を通り抜けた。

 

「蒼炎の盾壁を....越えた!?」

 

慌てて魔法を解除し、剣を魔導書に戻してマルスの攻撃を回避するノア。

 

「くっそ...予想外過ぎて固まっちまった...!」

 

(奴のあの剣....恐らく、さっきのナイフよりも硬度は倍以上の筈....どうしたもんか)

 

ノアは自分の後ろで立ち尽くしているユノ達を一瞥した。

 

(アレ(・・)を、使うしかないのか....だが、アレ(・・)は反動がデカイうえに発動までに時間が掛かる....だが、そんな悠長なこと、言ってられる状況でもない!)

 

「ユノ、二人を連れて少し下がっていてくれ。」

 

「何か考えがあるんだな?」

 

コクッ、と頷きでユノに返答する。

 

「分かった。ノア....お前の判断を信じる。」

 

ユノはクラウス、ミモザを連れて扉付近までノアから離れた。

 

「さて、と。」

 

ノアは、天井を仰ぎ深呼吸をするとマルスに向かって左腕を突き出す。

 

「お前に俺の技を見せてやる。」

 

突き出した左腕を右腕で掴み、その場で目を閉じて直ぐに開く。

 

「体は剣で出来ている!」

 

ノアがその言葉を放った途端、彼から計り知れない威圧感が溢れ出した。

 

「血潮は鉄で心は硝子。」

 

(何だ今のは、一体....何なんだコイツは━━━!!?)

 

「幾度の戦場を越えて...不敗...!」

 

ノアは更に詠唱を続ける。

 

(止めなくては、これ以上....この男に、手出しさせる訳にはいかない!)

 

危機感を感じ取り、ノアに向かってレーヴァテインを振り下ろすマルス。だが、

 

「な....!?」

 

レーヴァテインは寸でのところでユノによって防がれる。

 

「邪魔はさせない....!」

 

「貴様....!」

 

「たった一度の敗走もなく、たった一度の勝利もなし。」

 

ノアの詠唱はまだ続く。

 

「遺子はまた独り、剣の丘で砕氷を砕く...けれど!、この生涯は今だ果てず...」

 

そしてノアの詠唱はあと少しで完了する。

 

「ならば━━━━!!」

 

マルスはレーヴァテインを解除し、全てハルパーに戻してノアに投擲する。あと少しでノアに当たる....その時、

 

「死ねぇ、クローバーの魔導士よ!」

 

「偽りの体は、それでも剣で出来ていた━━━!!!」

 

ノアの詠唱が終わり、その瞬間、ノアの周囲に地中から飛び出した無数の剣によってハルパーの投擲は全て弾かれる。

 

「なっ....何だ、コレ(・・)は....!?」

 

マルスは戸惑いの表情を見せた。

 

魔宮内部が一瞬にして、無数の剣が刺さった雪原へと変化したからだ。

 

「内と外を入れ換える魔術(・・)...."固有結界"だ。」

 

突き刺さっていた剣を一つ手に取り、マルスに向ける。

 

魔術(・・)....だと...!?」

 

聞き覚えの無い言葉に、驚きを隠せないクラウス。

 

魔法ならば、自分達が所有する魔導書を用いて発動することが可能だと理解はしていた。しかし、初めて魔術という言葉を耳にし、一体どういうものなのかと思考を巡らせるが一向に答えは導き出すことが出来ない。

 

「行くぞ、ダイヤモンド王国の魔導士よ...武器の貯蔵は充分か...!」

 

近くに刺さった剣を一つ抜き、マルスに向かって走り出す。

 

「...ッ....舐めるなよ、こそ泥風情が...!」

 

「それは...こっちのセリフだ!」

 

マルスはハルパーを、ノアは剣で互いに受け止め、押し合う

 

所謂、鍔迫り合いの状態となっていた。

 

「貴様....その力、"魔法"ではないのか...」

 

「だからさっき言ったろ...."魔術"だって...」

 

互いの力量は互角だと覚ったノアはバックステップで一時離脱し、持っていた剣をその場に突き刺し、両手から新たな剣を"創り出した"

 

「武器魔法 干将・獏耶....お前を倒すにはこれが一番いい。」

 

そう言ってノアは双剣を真横に投げる。

 

「何のつもりだ....武器を捨てるなど....勝負を捨てたか...貴様ァ!」

 

レーヴァテインを発動してノアに振り下ろそうとしたその時、

 

「いいや、捨ててはいない....むしろ、俺の勝ちだ。」

 

ノアがそう言うのが先か、先程ノアが投げた干将・獏耶はマルスの両肩に突き刺さった。

 

「な.....に......!?」

 

「干将・獏耶は夫婦剣.....互いに引き寄せ会う性質を併せ持つ。」

 

(これで終わりだ。)

 

「━━鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎむけつにしてばんじゃく)

 

「━━心技、泰山ニ至リ(ちからやまをぬき)

 

「━━━心技黄河ヲ渡ル(つるぎみずをわかつ)

 

「━━━唯名別天ニ納メ(せいめいりきゅうにとどき)

 

「━━━両雌、共ニ命ヲ別ツ(われらともにてんをいだかず)......!」

 

再び干将・獏耶を創り出し、また真横に投げ、今度は詠唱を始める...そして、

 

ノアは両手に干将・獏耶を握り締め、飛び上がり、マルスの頭上目掛けて双剣を振り下ろす。

 

鶴翼三連(かくよくさんれん)!!!

 

二つの双剣は同じタイミングでマルスにぶつかり、マルスの身体はその場に崩れ落ちていった。

 

「.......終わった。」

 

「いや、まだだ」

 

「なっ!?」

 

崩れたマルスの声が別の場所から聞こえ、直ぐ様その場から飛び退いた。

 

「何で....!?」

 

《鉱石創成魔法 "タロスの人形"》

 

先程ノアが倒したマルスは彼が魔法で造り出した人形であった。

 

「お前の攻撃など....俺の前では無力に等しい。」

 

「..っく...なら!」

 

《無属性武器 "加州清光"》

 

「はっ!」

 

マルスに刀の一撃を叩き込む。...だが、

 

《鉱石創成魔法 "ネメアの鎧"》

 

マルスはノアの攻撃を魔法で造り出した鎧でガードした。

 

ノアは衝撃で仰け反ってしまうが直ぐ様体制を立て直す。

 

「っく....やっぱ硬いな。」

 

「まだ続ける気か?....無駄な事を...」

 

ノアに呆れ果てて溜め息を漏らすマルス。

 

「無駄ではないぜ...少なくとも...なっ!」

 

ノアは再び刀でマルスに斬りかかり、何度も弾かれる。

 

「無駄だと...言っているだろう!」

 

《鉱石創成魔法 "ハルパー"》

 

「ぐぁあああ!!!」

 

「ノア!」

 

ノアはマルスのハルパーに切り裂かれ、身体の至る箇所から出血し、その場に倒れる。

 

「来るな、ユノ!....大丈夫だ....こんなの、かすり傷だ。」

 

強がっているのか、それともホントに大丈夫なのかノアは何とか立ち上がりながらユノにそう言った。

 

(そろそろ...俺の魔力が尽きる....次で...決める!)

 

ノアは刀を構え、目を閉じて深呼吸するとそのままマルスに向かって突進していく。

 

「血迷ったか....」

 

「いいや、ここだ!」

 

ノアはスキップをするように一歩一歩、マルスに近付いていく。

 

 

「一歩音越え...二歩無間...三歩絶刀...!」

 

「なっ!?」

 

マルスの目には、ノアが見えたり、消えたりしている。

 

ノアは今、マルスの死角に入り徐々に近付いて行っている為、マルスの目には映ったり、消えたりしているのだ。

 

「無明...三段突き!」

 

一点集中 ノアの刀はマルスの鎧中心部目掛けて、突きを放ち、ノアはマルスの背後に背中を合わせるようにして立っていた。

 

「愚か者....俺のネメアの鎧を砕く事など...」

 

「知ってるか、魔導士?....どんな物体にも必ず核となる場所が存在する事を。」

 

「?....何を言って...」

 

その時、マルスの鎧からピシピシ、と音が響いた。

 

「なっ!?」

 

見るとマルスの造り出したネメアの鎧は、中心部から亀裂が入り、今にも砕けそうになっていた。

 

「無明三段突きは一点集中の技....だから、その鎧の一番薄い箇所...つまり、核となる中心部を狙って突きを放った。」

 

「な....に!?」

 

マルスの鎧は更にピシピシ、と音を響かせて亀裂が次々に増えていく。

 

「更に言うなら...あの技は本来、敵を殺す為の技なんだが...極力、力を抑えたから後ろに吹っ飛ぶ...防御は不可能だ。」

 

ピシッ、と音が止まると同時に、バキィン、と何かが割れる音と同時に鎧が砕け散る。

 

「ぐ....ぐぁあああ!!!」

 

ノアの宣言通り、マルスは後ろに吹っ飛び...魔宮の壁に激突して気絶した。

 

「全く、久々に使ったのに....これじゃ、締まらないな...全く。」

 

ノアの体は魔力を使いきり、その場に立っていられるのがやっとの状態であった。

 

「やれやれ...だ。」

 

ノアはその場に崩れるように倒れた。

 

「ノア!」

 

ユノ達が駆け寄るも、ノアの返事は無い。

 

果たして、ノアは目を覚ますのだろうか━━━━?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ14 宝物殿の中へ

あらすじ

隣国、ダイヤモンド王国 との間に出現した魔宮(ダンジョン)の探索を進めていたノア達『黒の暴牛』は同じ国の魔法騎士団であり、ノアとアスタのライバル ユノが所属している『金色の夜明け』と遭遇し、互いに宝物殿へと急いでいたが、ダイヤモンド王国からの刺客 マルスによってミモザが襲われそうになるも、ノアが彼女を助けマルスと戦う。辛くも勝利したノアだったが、その場に崩れ落ちる用にして倒れてしまう。


「ノア!おい、しっかりしろノア!」

 

ユノが身体を揺さぶるが、ノアは苦しそうな表情を見せるだけで目を覚ます気配は感じられない。

 

「ユノさん、ここは私が...」

 

《植物回復魔法 "夢癒の花籠"》

 

ミモザが魔導書を開いて魔法を発動し、ノアを回復させる。

 

「...!...これは...!」

 

ミモザはノアの状態を把握して驚く。

 

「どうしたミモザ?」

 

ミモザの驚いた表情を見てクラウスが訪ねる。

 

「今、彼には魔力がありません...恐らく、先程の攻撃で使い果たしてしまったのではないかと...」

 

「なんだと!?」

 

ミモザの言葉を聞き、クラウスはノアを一瞥した。

 

(この男...下民の癖になんて強力な魔法を...いや、待てよ?)

 

クラウスはノアの言葉を思い出していた。

 

(内と外を入れ換える"魔術"......"固有結界"だ。)

 

(確かにあの男は"魔法"ではなく"魔術"と言った....ということは、魔法のように何度も発動することが出来ないのか!?)

 

クラウスの読みは当たっていた。

 

ノアの発動した固有結界....《Unlimited Blade Works(無限の剣製)》はノアの心象風景、つまりはノアの心の中に思い描いている風景を現在、彼が見ているモノと文字通り、そのまま入れ換える(・・・・・)といったにわかには信じられない方法...即ち、それこそが魔術(・・)である。

 

(そんな技を...わざわざ私達を助ける為に...どうやら、間違っていたのは、私の方だったらしい。)

 

ノアの行動に対してクラウスは、自身の愚かな考え方を変えるべきだと悟った。そして、今後一切ノアやアスタを馬鹿にすることはしないようにと、改めるのであった。

 

━━━━━━━━━━━━━

 

「それで、ノアがミモザの治療を受けているのね。」

 

「ええ...私を助けた後、ダイヤモンドの魔導士と戦って気絶してしまったんです。」

 

その後、ラックを助けたアスタとノエルが宝物殿まで駆けつけてノアの倒れている理由を訪ねている。

 

「全く、相変わらず無茶するのね。」

 

「相変わらず?」

 

「ええ...この男、任務ではアスタと一緒に先人切って突っ込んでいくしね。」

 

やれやれといった様子で呆れ果てた様子のノエル。

 

それを見てミモザは微笑ましいモノを見たように穏やかな笑みを見せるのだった。

 

━━━━━━━━━━━

 

「これでよし...!」

 

ノアが倒したマルスを回収し、クラウスは自身の拘束魔法で拘束する。

 

(それにしても、まさか...『黒の暴牛』に助けられる事になろうとは......)

 

ミモザの治療を受けているノアと体力回復の為、薬草を食べているアスタを一瞥した。

 

「この拘束魔法大丈夫か?」

 

「大丈夫に決まっているだろうが!手負いの者に解かれる程脆くないわ!」

 

「まぁそうカリカリしなさんな。」

 

 

「先にこの場所に辿り着き勝負に勝ったのは我々だが、特別にお前らも宝物殿に入る事を許そう━━━!」

 

クラウスはアスタとノエルに対し、一緒に宝物殿に入ってもいいと遠回しに伝える。

 

「何でそんなにえらそーなんだこのメガネはぁぁ!!......どーもありがとうございますコノヤロー!!」

 

この場面。ノアが見ていたら、『あれ?そもそも勝負なんてしてたっけ?』などと突っ込んでいただろう。

 

「.........」

 

だが、現在のノアはマルスを倒す為に自身の内にあった魔力を全て使い果たし、倒れてしまっている。

 

目覚めるかどうかは、ミモザの治療が終わるまで誰にも分からない。

 

「いざ宝物殿へ━━━━!!」

 

アスタが勢いよく扉を開けようとした時、アスタ達は気付いてしまった。

 

((どうやって入るんだろう.........))

 

扉を開ける方法が無い事に。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

「どうすんだよ!?」

 

「落ち着け、恐らく何処かに暗号か何かが━━━...」

 

「頑張れ!考えろ!メガネ!」

 

「やかましいわ!」

 

アスタとクラウスが漫才をしているとラックが扉に近付き、触れてみる。

 

「この扉魔法で出来てるみたいだからアスタ、斬っちゃいなよ。」

 

「は?...魔法を、斬る?」

 

ラックから飛び出した予想外の発言にクラウスは戸惑いを見せる。

 

「うらぁぁ━━━━!!」

 

ラックの言葉を信じ、剣を振って扉を破壊する。

 

「な.....何故、魔力の全く無い下民が....!?」

 

「魔力の無効化...それがアスタの能力なのよ。」

 

「...無効化...だと............!?」

 

ノエルの言葉に、クラウスは何かの間違いではないのか?と思ったが、今はそれよりも宝物殿に入る事を優先すべきと判断し、頭の片隅に放置した。

 

━━━━━━━━━━━━━

 

「すげええ~~~~~~~お宝の山だぁぁぁぁ!!!」

 

中に入るとそこには辺り一面に金塊や宝剣、他にも様々な装飾品などが散らばっていた。

 

「うん?....ここは?」

 

「お、ノアが起きた。」

 

ユノに担がれていたノアが目を覚ます。

 

「宝物殿の中だぜノア。」

 

「宝物殿.....ああ、そうか。」

 

混乱していたが、アスタの言葉に周りを見回してから自分のいる場所を理解した。

 

「取り敢えず.....ユノ降ろして。」

 

「ああ、大丈夫か?」

 

ユノがノアの事を心配して訪ねる。

 

「ああ、大丈夫...もうあらかた回復したからな。」

 

ユノの背中から降りて宝物殿内を散策する。

 

(にしてもこの財宝の数は....多すぎる気もするが...)

 

中に散らばっている財宝類を見て、そんな事を考えていたが、もしかしたら自分も何か新しい魔法を手に入れられるのではないか?

 

と考え、ワクワクしながらアスタ達と一緒になって中を見て回るのだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ん?...なんだ?」

 

中を歩いていると、ノアの魔導書が突如として淡い光を放ち始めた。

 

「....新しい魔法....なのか?」

 

ページを開いてみると光は壁に向かって、突き刺すようにして何かをノアに教えている。

 

「壁しかないんだけど...?」

 

光の当たっている壁を叩いてみたり、押してみたが、何の変哲もないただの壁なので、ノアは何かの間違いじゃないのか?

と思い、その場から離れた。

 

━━━━━━━━━━━━

 

「.....」

 

一方、ユノもアスタやノアと同様にクローバー王国に持ち帰る物品を探していた。

 

するとある巻物がユノの目に止まった。

 

(何だ...?この文字━━━...見た事がないな...)

 

開いてみたが、中には何が書かれているのか分からず首を傾げたユノだったが、

 

「...!?」

 

突如として巻物が光を放ち始め、そしてそこに書かれていた文字が消えていた。

 

(文字が...消えた━━━━...?)

 

「何だったのだ?今の光は」

 

「............さぁ...」

 

ユノ自身も何が起きたか分からず、ただ首を傾げるだけであった。

 

「あだだ...あだだだだだ!何引っ張ってんだネロぉぉ~~~」

 

一方、アスタはネロに髪を咥えて引っ張られて何処かへと連れていこうとしていた。

 

「?此処がどうかしたのか?」

 

連れてこられたのはノアの時と同様、何の変哲もない壁。

 

ただ一つだけ普通の壁と異なっているのは、何かの"装置"のようなものが中心に付いている事である。

 

これは、ノアの魔導書から発した光が示していた壁と同じ物に見えた。

 

「ただの壁じゃねぇかだだだだだ!」

 

ネロは「何処を見ている、もっとよく見ろ。」と言わんばかりにアスタに向かってキツツキのように嘴を突き刺す。

 

「何かオモシロイの無いかな~~」

 

ラックが宝の山に立って周りを見回している。

 

「!」

 

すると、何かを感じ取ったラック

 

「皆逃げ━━━━...」

 

ラックが言い切る前に、巨大な鉱石の巨人が宝物殿に侵入してきた。

 

《鉱石創成魔法 "タイタンの重鎧"》

 

巨人の正体は、ノアが倒し、クラウスが拘束したマルスであった。

 

マルスは宝物殿に侵入すると同時に、アスタとノア、ノエル、ミモザ以外の全員を自身の魔法で拘束した。

 

(━━━ば...馬鹿な...!!この短時間に...どうやって復活したというのだ━━━━!?)

 

クラウスはマルスの速い復活に戸惑いを見せたが、直ぐにその理由にも気がついた。

 

《炎回復魔法 "不死鳥(フェニックス)の羽衣"》

 

(炎魔法...だと......!?馬鹿な━━━...魔力の属性は一人一つの筈............!!)

 

クラウスの言うとおり、魔法を使う魔導士には火・風・水・地の所謂、四大元素のいずれかの『(マナ)』が宿っており、その魔からもしくはそこから派生した属性の一種類の魔力しか使う事が出来ないとされている。

 

魔力が元から無いアスタや複数の属性の武器を魔法として使用するノアは例外としても、そんな魔導士は普通存在しえないものなのだ。

 

(その法則を無視して奴は二種類の魔力を持っている...!!しかも明らかに攻撃魔法の使い手だったのに回復魔法だと!?あり得ない━━━━!!....まさか、これが...ダイヤモンド王国の実験の成果...なのか...!?)

 

アスタ達と対峙したマルスは、頭の中に流れるイメージが何なのかを探っていた。

 

(マルスはきっとすごい戦士になるね)

 

(ごめんねマルス...こうするしかないの━━...)

 

思い浮かぶのは、一人の少女の姿。

 

ズキズキと痛みを訴える頭に、マルスは動けないでいた。

 

それを好機(チャンス)と見て、

 

「その炎...私が消すわ!!」

 

ノエルが杖をマルスに向かって構える。

 

「!」

 

しかしマルスの反応の方が早く、ノエルはマルスの巨大な腕で後方に吹っ飛ばされる。

 

「ノエルさん━━...!」

 

慌ててミモザが駆け寄る。

 

ノエルは胸部から大量に出血し、ノエル自身はマルスの攻撃の衝撃により気絶してしまう。

 

「ノエル━━━━!!!!」

 

アスタが魔導書から剣を取り出し、マルスに向かっていく。

 

「テンメェェェェ!!!」

 

「何だ?...お前は....」

 

《鉱石創成魔法 "レーヴァテイン"》

 

マルスは向かってくるアスタに対し、巨大な剣 レーヴァテインを頭上に振り下ろす。

 

「なんの!」

 

振り下ろされた剣をアスタは自身の剣で真っ二つにする。

 

「何だと...!?」

 

マルスは、立ち向かってくるアスタに今までに感じた事の無い得体の知れない感情に囚われる。

 

「何だ...あの下民の力は...!?」

 

「魔力の無効化....それがアスタの能力だ。」

 

ミモザの魔法 "姫癒の花衣"での治療を手伝っていたノアがクラウスの疑問に答える。

 

「...無効化...だと............!?」

 

(何だその下民に似つかわしくない力は....)

 

「ただの幸運(ラッキー)で能力に恵まれたってことか。」

 

自身の勝手な解釈で納得するクラウスにノアは、イラッとしたが直ぐに気持ちを切り替えて、

 

「あんたがなんと思おうが、あいつの能力が幸運かどうかは...見てれば分かる。」

 

ノアはアスタを仲間としてそしてライバルとして認めている。だからこそ、信じているのだ...必ず勝ってくれることを。

 

(ホントはアイツに加勢してやりたい所だが....まだ戦えるだけの魔力が回復しきれてねぇ...)

 

ノアはアスタに加勢出来ない悔しさを圧し殺して、ひたすらノエルを死なせない為に、ミモザに協力して治療を行う。

 

「どうだろうか?」

 

「今はまだなんとも言えないです。」

 

「その魔法...使用者の魔力が多ければ回復する時間は速いのか?」

 

「ええ、それなりには...。」

 

「なら...!」

 

ノアはミモザの手に自分の手を重ねた。

 

「え...あの...?」

 

突然の事にミモザは驚いて戸惑ってしまう。

 

「悪いが、説明してる暇は無いんだ....ノエルを助けるためだと思って、今は我慢してくれ。」

 

「は、はい。」

 

ノアのノエルを助けたいという気持ちが籠った言葉に、ミモザはそれ以上...何も言えなくなった。

 

「今から、周囲の魔を集めて、ミモザ...君に渡す。」

 

「え...!?」

 

「行くぞ......!」

 

するとノアに周りに散らばっていた魔が集まり始め、それがノアの手からミモザの中へと流れていく。

 

(なんて優しい力.....これが...この人の....)

 

ミモザの中でノアへの評価は益々上がっていく。

 

(でも今は、)

 

直ぐ様思考を途絶し、ノエルの傷を再び癒し始める。

 

その時ミモザは、過去の事を思い出していた。

 

まだ小さかった頃にノエルに助けて貰った事、自身が周囲に認められ、対してノエルが揶揄されていた事を、

 

「私なら...諦めていたかもしれません............王族の皆は...努力を馬鹿にします...それは生まれながらに力が無い者のする事...王族のする事ではないと━━━━...けど...努力できる貴女を...私は尊敬しています...!!死んじゃ駄目ですわ...ノエルさん...!!」

 

「!!」

 

ミモザの言葉を聞き、ノアはミモザの手を強く握った。

 

「え!?....あの.....?」

 

突然の出来事にミモザはどぎまぎしてしまう。

 

「努力は力の無い者がする事...か....それは違うな。」

 

「違うのですか?」

 

ミモザの問いかけにノアは頷く。

 

「誰しも、最初から強い訳じゃないんだ....だからこそ、人は努力し、それを積み重ねていく....努力は力の無い者がする事?....そんなセリフは、努力をしたことが無い奴が言うことだ....努力しないで強くなれる奴なんて何処にも居るわけが無いのに....貴族ってのは....」

 

明らかに貴族を侮蔑して悪態をつく。

 

「だけど....ノエルとミモザ、君達は別だ。」

 

「別....?」

 

「貴族は努力する事を良しとしない...だけど君達は、努力する事を否定しなかった....だからこそ、俺は君たちに好感が持てる....」

 

「......」

 

「ありがとう.....努力する事を認めてくれて。」

 

ニコッ、とノアはミモザに笑いかけた。

 

その表情に何故かミモザはドキッ、と自分の心が揺れ動いた。

 

(な...なんですの...今の感じ....?)

 

「ミモザ...?」

 

「うひゃう!?」

 

「うひゃう....?」

 

突然ノアに声を掛けられて変な叫びをあげるミモザに驚いたが、魔の供給は引き続けて継続する。

 

「あ、ごめんなさい.....」

 

「あぁいや、今のは俺が悪いな。」

 

まぁ、とにかく、と前置きをしてから、

 

「それよりも今は、ノエルの治療に専念しよう。」

 

「ええ。」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ハァ....ハァ....ハァ....」

 

息も絶え絶えでマルスに立ち向かうアスタ。

 

「なんだ....お前は....」

 

「俺は...生まれつき魔力の無い人間だ。」

 

アスタはマルスを睨み付けながら自身の事を語る。

 

「ハッ!....やはり運に恵まれただけの下民では...」

 

クラウスの言葉はそこで途切れた。

 

「だから証明する....魔力が無くても魔法帝になれることを...!」

 

アスタの身体に刻まれた様々な傷痕を見て、言葉を失ったからだ。

 

(なんだ...あの傷痕は...!?...こいつ、一体どれだけの鍛練を...)

 

「お前を倒して、俺はまた一歩、魔法帝への道を駆け上がる!」

 

アスタがマルスに向かっていく。

 

「お前の攻撃パターンは分かった。」

 

《鉱石創成魔法 "ハルパー"》

 

(あの魔法は.....!)

 

「アスタ!お前の剣じゃ対処しきれない!...兎に角避けろ!」

 

一度対峙したノアがアスタに指示を出す。

 

「んなもん....やってみなけりゃ分かんねぇよ!!」

 

剣を振り回して、マルスのハルパーを凪ぎ払っていく。

 

しかし、アスタの剣は大剣

対してマルスのハルパーは複数の巨大な投げナイフの様なもの。

 

どちらが速いかと聞かれれば、マルスのハルパーの方が早い事は明らかである。

 

(速い...!!)

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!!!」

 

「アスタ!」

 

アスタはハルパーを全て凪ぎ払う事が出来ず、後方の壁に叩き付けられ、そのまま壁を破壊して中へと侵入する。

 

「......ぐ...く......!」

 

アスタの使っていた剣は、地面に突き刺さりアスタはそれよりも後方に叩き付けられる。

 

(...剣が......!つーか...俺の剣のデカさと重さじゃあの魔法は捌ききれねー...!!)

 

アスタは既に満身創痍であったが、次に狙われるのはノエル達である事を考えると、ここで倒れる訳にはいかないと何とかしてもう一度戦う為に起き上がる。

 

(アイツ...!ノアの時と違って、戦い方を変えそれに合わせた魔法を.........!!)

 

「早くしねーと...ノエル達が...!...どーすりゃ━━━━━━...!」

 

どうすればマルスに太刀打ち出来るのか、そう考えていると目の前を何かが横切った。

 

「...ネロ......?」

 

ネロはアスタの後方に突き刺さった"剣"の柄に止まった。

 

「この...剣は....?」

 

大剣を魔導書に戻し、剣に恐る恐る近付く。

 

「これで....ノエル達を守れるのか?」

 

疑問に感じながらも、アスタは剣を握りしめていた。

 

━━━━━━━━━━━━━

「クソッ!」

 

アスタが壁の中へと入った後、今度はノアが剣を取り出してマルスに立ち向かう。

 

「駄目よ....ノア、あんた....まだ魔力が....」

 

「ノエルさん...!?」

 

「大丈夫だ....さっき、魔を握りしめていた吸収して俺も少しは戦えるまでに回復したから。」

 

そう言ってマルスに立ち向かう姿勢を見せる。

 

(とは言ったものの、流石にコイツの相手はまだ出来ない....出来るとしても、精々時間稼ぎくらいだ。)

 

ノアの魔力は確かに回復はした。だが、まだ満足に戦える程ではない。

 

彼の言うとおり、今はアスタが戻って来るまで時間を稼ぐしかマルスに勝つ手段が無い。

 

「....ここまでの逆境ほど、燃えるものはないな

 

マルスに再び立ち向かうノア。

 

だが、

 

「お前の能力は分かった。」

 

《鉱石創成魔法 "タロスの人形群"》

 

「な....!?」

 

マルスは一度に魔法で複数体の分身を作り出す。

 

(流石に今の俺じゃ....厳しすぎる....!!!)

 

「くっ....そおおおお!!!」

 

ノアは自身の半径300m以内に注意を払い、次々と近付いてくる分身を倒していく。

 

だが、ここまで連戦だった為か次第に疲れが見え始め、そして遂に、

 

「!...しまった!」

 

振るっていた剣を手放してしまう。

 

「終わりだ....!」

 

「!!!」

 

マルス本体が、鎧の拳をノアに向かって打ち込む。

 

「ぐうう....!」

 

咄嗟に両腕でガードするも、アスタ同様に壁に叩き付けられてそのまま壁の中へと入っていった。

 

皮肉にも、その壁は先程ノア自身の魔導書が示した場所であった。

 

━━━━━━━━━━━━━

 

「く...っそ...!」

 

(やっぱり、まだ完全に回復しきってないからか....戦いにすらならねぇ..!)

 

「せめて、魔力が完全に回復していたら....」

 

その時、ノアの魔導書が再び光を放ち始めた。

 

「この光は....さっきの...?」

 

(まさか、此処って...さっきの壁か?)

 

立ち上がって、奥へと進む。

 

そこには、大きな棺のようなものが鎮座しており、表面には剣を抱えた人が彫られていた。

 

「これは...棺か?」

 

人型のレリーフに触れる。

 

「この棺は....一体...?」

 

ふと、レリーフが抱えている剣が気になり、触れてみる。

 

すると、剣は淡く光を放ち始めてノアの身体に吸い込まれるように入っていった。

 

「え....今...!?...え!?」

 

慌てて剣が入っていった身体に触れるものの、傷痕らしきものや出血は見られない。

 

「気のせい....ではないよな?」

 

ノアが安堵した時、身体から先程の剣が出現し、ノアの周りを回り始めた。

 

「この剣は....?」

 

ハッ、となり急いで魔導書のページを捲る。

 

《武器魔法 "ファントムソード"》

 

「一ノ剣 "賢王の剣"」

 

新たに追加されたページには、そう書かれていた。

 

「!.....ぐっ!....何だ?....この映像は....!?」

 

突如として激しい頭痛がノアを襲う。

 

ノアの頭の中にある映像が流れ込んでいるのだ。

 

「この剣の...使い方か?」

 

(なら、試してみるのもいいかもしれない。)

 

そう考え、入ってきた穴へと顔を向けるのだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

ノアが飛ばされてからその後、

 

マルスは次に、ミモザ達に狙いを定めた。

 

「死ね...!」

 

マルスは大量に召喚したハルパーをミモザ達に向けて、飛ばす。

 

しかし、

 

「!!」

 

アスタがミモザ達を庇うようにマルスに向かい、ハルパーを剣で凪ぎ払う。

 

その剣は、先程ネロが止まっていた剣であった。

 

(何だ...!?あの剣は━━━━...!!)

 

再び立ちはだかったアスタの持つ剣に何処か違和感に近いものを感じ取ったマルス。

 

「お前の相手は...俺だぁぁぁ!!!!」

 

アスタはマルスに向かって突進していく。

 

マルスは近付かれまいとしてハルパーをアスタに向かって投擲する。

 

「━━━━...!!」

 

しかし、アスタはそれを全て、剣で破壊する。

 

そして、マルスの"タイタンの重鎧"に一撃を与える。

 

「━━━━!!!」

 

斬られたマルスの身体に纏っていた、"タイタンの重鎧"それと同時に発動していた炎回復魔法の勢いを、一度だけ弱めた。

 

慌てたマルスはアスタを吹っ飛ばし、攻撃を中断させる。

 

(攻撃魔法は捌けるようになったけど...あの炎の回復魔法がある限りこの剣じゃ止めは刺せねぇ...!)

 

どうすれば倒せるのか考えていると、

 

「━━━...なにやってるのよ...バカスタ......」

 

「!ノエルさん...!」

 

「ノエル...!」

 

意識を取り戻したノエルがアスタに声を掛ける。

 

「...アンタは...王族の私が...認めてあげた下民よ......あんな奴...さっさと倒しちゃいなさいよ...アスタ...!!」

 

それは、ノエルからの激励の言葉であった。

 

アスタ、アンタを信じている。

 

ノエルからのそういった思いの籠った言葉だった。

 

すると、アスタの剣の中央部にある黒い部分にに青い光が集まり始めた。

 

「どけ...そいつらを消してやる...!!」

 

再びマルスがミモザ達を殺す為に向かってくる。

 

「そんな事させるかァァ!!」

 

再び立ち向かうアスタ。

 

「俺には魔力が無い...!!だけど俺には━━━━━」

 

 

仲間がいる!!!!

 

 

剣を振ると、青い斬撃が大きくなり、マルスに向かって飛んでいく。

 

(何だ...コレ━━━━━...!?)

 

(どういう事だ━━━━...!?奴には魔力が無いはず......!!)

 

(水の魔力の斬撃...!!これは......ノエルの魔力を...借りた━━━━━...!?何なんだあの剣は━━━━...!!?)

 

「こんなもの━━━!!」

 

マルスが斬撃を押し返そうとするも、斬撃の威力はマルスの想像を越えており、喰らってしまう。

 

「どうだ....見たか」

 

やってやったぞとばかりに、マルスに向かって言葉を放つ。

 

だが、

 

「!......」

 

「アスタ...?」

 

見ると、アスタの腹部にはマルスのハルパーの欠片が突き刺さり、貫通していた。

 

「しく...った...」

 

「アスタ━━━━!!!」

 

アスタはその場で倒れ、動かなかった。

 

そしてマルスが立ち上がり、アスタを見据えて

 

「お前みたいに甘い奴が...俺に勝っては駄目なんだ...!」

 

脅迫観念にも見えるほどのマルスの言葉にノエルは怯えてしまう。

 

マルスはレーヴァテインを発動し、アスタに振り下ろそうとしたその時、

 

マルスの近くに剣が飛んでくる。

 

「何だ?....この剣....は...!!!」

 

マルスは気付いた。今、この場に居ない...自分が吹っ飛ばした人物の事を、

 

そして遂に、現れる。

 

「そこまでだ、デカブツ....!」

 

飛ばされた剣を掴み、先程マルスに吹っ飛ばされた人物である、

 

ノアはマルスを睨み付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ページ15 新たな(ちから)

マルスの眼前に剣を手にし、立ちはだかったノアが彼と鍔迫り合いの状態となっている。

 

「フンッ!」

 

マルスはノアの剣を弾き、ノアはそのまま後方へと下がる。

 

「ミモザ、下がってアスタの回復を頼む。」

 

「は、はい。」

 

ミモザにアスタの治療を頼み、ノアはマルスに再び向き直る。

 

「何故だ...何故俺の前に立ちはだかる。」

 

「決まってるだろ....お前が俺達の邪魔をするからだ。」

 

マルスを睨み付けたノアは、剣をマルスに向かって投げつける。

 

「こんなもの......!」

 

剣を弾き飛ばし、ノアを攻撃しようとするマルス。しかし、

 

「なっ...!?」

 

その直後、ノアは彼の前から姿を消したが、

 

「くっ...!!!」

 

背後に気配を感じ取り、更に守りを固める。

 

「くっ...やっぱ硬いな。」

 

マルスの背後に現れたノアは再び剣を投げ、マルスの眼前に姿を現す。

 

「貴様...何だその力は...!?」

 

「ファントムソードだ。」

 

「ファントム...ソード...?」

 

聞いたことの無い名前にマルスは疑問符を浮かべる。

 

「聞いたことが無いのも仕方ない....これは遥か昔の時代に存在した国の、歴代の王が使用した武具の総称だからな。」

 

「過去の...国?」

 

「この武器の使い方は...手に取るように分かる...こんな風にな!」

 

再度、ファントムソードである賢王の剣を投げる。

 

するとまたもやマルスの眼前に移動を成功させたノアがマルスに斬りかかる。

 

「くっ...またか...!」

 

マルスは、巨大な腕でガードして攻撃を受け止める。

 

「やるな...だったら、これはどうだ?」

 

自身の魔導書から複数の剣や短剣を召喚し、ノアは四方に投げ付けた。

 

「さぁ行くぞ魔導士....覚悟はいいか?」

 

ノアが目の前から消えたと思ったら、背後に、続いて左右に、移動を続けて攻撃を繰り返す。

 

「まだまだ行くぞ....オラッ!」

 

最初は見えるスピードで移動と攻撃を繰り返していたノアだったが、次第に速度を上げ、現在マルスの目には残像しか見えなくなっていた。

 

(くっ....どこだ....一体奴は....何処に!?)

マルスは必死でノアの姿を目視しようと試みるも、やはり残像しか見えないでいた。

 

「これで...終いだ...!」

 

ノアが再びマルスの眼前に姿を現した時、彼の手には新たな大剣が握られていた。

 

淡い光を放つそれを片手で回し、マルスに斬りかかった所で、

 

「甘い!」

 

マルスに受け止められてしまう。

 

「勝負あったな。」

 

勝ち誇ったようにマルスはニヤリと笑みを浮かべた。

 

だがノアは、

 

「どうかな?」

 

マルスと同様、勝ち誇ったようにニヤリと笑みを浮かべた。

 

「なに?...まさか..!」

 

その直後、大剣は四つの剣に分離し、ノアの持つ一本を残して空中に浮かび上がった。

 

「オラッ!」

 

残った剣でマルスを打ち上げ、ノアは飛んだ。

 

「これで決める...!」

 

先程のファントムソードでの瞬間移動...シフトブレイクほどでは無いものの、残像を生み出しながらマルスに次々と攻撃を繰り返していく。左右から次々と、残像を作っては斬撃を加えていく。そして、計15回もの斬撃を加え、ノアは地上に降り立った。

 

「合体剣1st...奥義、超究武神破斬Ver5...!」

 

空中に分離した剣は全て、ノアを中心として彼の周囲に円を描くように突き刺さった。

 

「これなら....奴も......動けない...筈だ。」

 

流石に連戦だった為か、ノアは肩で息をしていた。

 

「ミモザ、アスタの回復が完了したら次は...!」

 

奥義を決めたノアの身体は、背後から無数のハルパーによって貫かれた。

 

「な...に...?」

 

ノアはその場に倒れ、身体はハリネズミのように串刺しになり、召喚していた剣は全て彼の魔導書に戻った。

 

「お前みたいな甘い奴が...俺に勝っては駄目なんだ...!!」

 

ノアの身体に穴を開けたマルスは、うわ言のようにそれを呟きながらノアへと迫っていく。

 

(奴の炎回復魔法はアスタの斬撃で解除されている...!!今なら止めを刺せるというのに━━━...!!)

 

(もう少し...!!もう少しでこの拘束を解ける...のに━━...!!)

 

((間に合わな━━━━━))

 

そしてマルスが近付いてレーヴァテインを振り下ろそうとした時、

 

「ノア━━━━!!!」

 

いち早くマルスの鉱石を破壊してノアの助けに入ったのは、ユノであった。

 

(俺の魔導書のどの魔法を使っても間に合わない━━━━こんなところで...死なせない!!!!)

 

ユノの思いが確固たる意志となった時、彼の魔導書に描かれた四つ葉が輝き始め、ユノは眩しく感じて目を閉じる。

 

(━━━━...?)

 

直ぐ様目を開くと、自身の周囲の時が止まったようにアスタ達は静止していた。

 

右隣を見ると、妖精らしき存在が眠そうに欠伸をしている。

 

(一体....何が?)

 

ユノはこの現象の正体に未だ、理解が追い付いていなかった。

 

妖精が目を擦ってから息をフゥッ、とマルスに向かって吹き掛ける。

 

すると時が戻り、マルスはタイタンの重鎧から背後の壁に叩きつけられていた。

 

『!?』

 

ノエル達は何が起こったのか理解できず、衝撃を覚えていた。

 

「...ユノが...やったのか............!?一体何を━━━...!!」

 

マルスが倒れた事により、クラウス達を拘束していた鉱石が解除されていく。

 

「魔法が...解けた......!今度こそ...倒した.........!!」

 

ユノが再び妖精のいた場所に目を向けるも、そこには何も居らず、魔導書のページを捲るとそこには新たな魔法が追加されていた。

 

(...これは...さっきの巻物の文字.........!?)

 

どうやら妖精の息吹きとも言うべき攻撃がユノの新たな魔法のようだ。

 

アスタの使用した剣も、彼の魔導書に吸い込まれていき、アスタの魔導書も新しいページが追加された。

 

「ミモザ...俺はいい...ノアを...」

 

「は...はい━━!」

 

アスタの治療に専念していたミモザ、アスタの容態が安定した事を確認すると、直ぐ様ノアの治療に移ろうとした時、

 

突如として魔宮内の崩壊が始まる。

 

「.........!!これ...は...!!」

 

「魔宮が...崩壊する...!!」

 

「............!!」

 

どうすべきかと悩んでいたノエル達だったが、そこでユノが動いた。

 

《風創成魔法"天つ風の方舟"》

 

みんな乗れ...脱出する!!

 

ラックが直ぐ様ノアを抱えてユノの魔法に飛び乗り、他の面々もそれに続いて乗り込む。

 

「ミモザ...ノアを頼む...!!」

 

はい━...!.........!!」(これは..........!私の残りの魔力で治せるか━━...)

 

「ユノ」

 

「アスタ...!」

 

回復したアスタがユノに話しかけた。

 

「あいつも...助けてやれねえか?」

 

指を差した方向には、先程ユノが倒したマルスが転がっていた。

 

「な.........!!何を言っているのだ...!?奴は我々を殺そうとした敵国の者だぞ━━━━...!?」

 

「アスタの...言うとおりだ...」

 

「...喋らない方が......!」

 

ノアはミモザの言葉が聞こえていないのか、そのまま言葉を続けた。

 

「...俺...達は......魔宮を攻略しに...来たんだ.........敵を...殺...しに...来たんじゃ...ない.........」

 

それだけ言うと、ノアは気絶した。

 

ユノは倒れているマルスを凝視し近付こうとしたが、マルスとユノの間に巨大な瓦礫が落ちてくる。

 

「...もう無理だ!間に合わん...!行くぞ━━!」

 

ユノは皆を乗せて、出口を目指そうとする。しかし、頭上からは魔宮を構築していた壁や天井がどんどん崩れ落ちてくる。

 

「............」(どこに行けば━━━...!?ミモザは今"魔花の道標"を使えない...!)

 

その時、ラックがユノに言った。

 

「右だよ。」

 

「!」

 

「僕が案内する!!」

 

「はい━━━...!!」

 

ラックが感知能力を駆使して出口までの道のりをユノに伝える。

 

だが、瓦礫は次々にユノ達の脱出の妨害となっているため、次々と落下してくる。

 

《鋼創成魔法"旋貫の激槍"》

 

《雷魔法"迅雷の崩玉"》

 

瓦礫をクラウスとラックが魔法で破壊する。

 

(━━━━絶対に...)

 

(ノアを...)

 

(死なせません.........!!)

 

(((((生かして...ここから出る━━━━!!!)))))

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

「な...なんだ━━━...!?」

 

「魔宮が崩れるぞ━━!!」

 

崩れる落ちた魔宮、その瓦礫の中から飛び出す一団。

 

『助かった━━━...!!』

 

それは、魔宮に入っていったアスタ達であった。

 

ノア以外、全員が無事に脱出を成功させて瓦礫の中から飛び出す。

 

「...ノアをあっちに運ぼう━━━━...」

 

時を同じくして、ユノ達から少し離れた場所で、

 

「...いや~~~~~彼らが道を作ってくれたお陰で助かったね.........!」

 

そこにはアスタ達が戦ったダイヤモンド王国の魔導士 ロータスが宝物を積んだ自身の魔法で創成した乗り物に乗っていた。

 

「オジサンのとっておきの隠し玉透明になれる"隠者の濃煙"で実はずっとそばにいたのバレなかったね~~~~...何はともあれ生きててよかったよかった。」

 

ロータスの隣には、倒されたマルスがいる。

 

━━━━━━━━━

 

マルスは夢を見ていた。過去に体験した...辛く、悲しい記憶を...

 

「...なんで...なんで━━━━━━━」

 

"ファナ"を手にかけ、絶望しているマルスの顔に触れる手。

 

そこから炎が上がり、マルスを癒す為に包み込む。

 

「............!!」

 

(傷が...癒えていく...!?)

 

『...ああでもしないと...マルス...私を殺せないから............』

 

「............!」

 

『一番強いマルスが...一番...生き抜ける可能性が高い.........』

 

 

『私の文まで...外の世界を見て来てね...マルス......!』

 

それが、マルスの見た"ファナ"の最期であった。

 

━━━━━━━━━━━

 

目覚めたマルスは、まだハッキリとしない意識でボーッとしている。

 

「お、気がついたかい?マルスくん」

 

「.........ロータス...?」

 

「いや~ご苦労様!君のお陰でこんなにお宝が手に入ったよ~」

 

ロータスの言葉と周囲の様子を見て、思い出す。

 

(...すべて...思い出した.........)

 

"ファナ"とした約束を....

 

「ロータス...」

 

「?」

 

「助かった...感謝する。」

 

マルスの言葉を聞いて、ロータスは嬉しそうに微笑みを見せた。

 

「なぁんだ...そーゆーことちゃんと言えるんじゃん。」

 

━━━━━━━━━━━

 

「あいだだだ...」

 

「俺...生きてる...のか...?」

 

「アスタ...ノア...!」

 

「よかった...!」

 

魔宮から脱出してから数分後、漸くアスタとノアは目を覚ました。

 

「無事ならいいのよバカスタ、ノア。」

 

「信じられませんわ━━━とんでもない回復力です...!」

 

「ノアは兎も角...アスタは丈夫なとこだけが取り柄だから。」

 

「何だとユノォ~...!他にもなんか色々あるわぁぁ...!」

 

それに、とアスタが続けて、

 

魔法帝になるまで死んでたまるか...!

 

魔法帝になるのは俺だ...!

 

そんな二人を見て一言、

 

「俺も忘れるなよ~」

 

と、弱々しくノアも口を開いた。

 

「おう!」

 

「当たり前だ...!」

 

そんな三人を見て、

 

「お前ら.........」

 

「クラウス先輩」

 

クラウスが詰め寄ってくる。

 

「本当に...」

 

何をするのかと、ユノが構えていると、

 

すまなかった!!

まさかのハグしながらの謝罪であった。

 

「下民だのとお前らを認めなかった自分が恥ずかしい...!!...お前達はクローバー王国の素晴らしい魔法騎士だ...

 

「メガネのダンナ...イタイ...」

 

「先輩...暑苦しいです...」

 

抱き締められたアスタは吐血し、ユノは冷めた様子でクラウスに言い放った。

 

なんだと!?せっかく私が━━━...

 

「なんだお前イイメガネだったのか...!」

 

イイメガネとはなんだ貴様あああ!!

「クラウスさんは真面目すぎるだけですわ。」

 

「ねぇねぇユノくん!今度僕とやろうよ!」

 

「え イヤです。」

 

「ん?ノエル服がすげー破けてるぞ」

 

「キャアアアアア///」

 

「ノア...」

 

「やれやれ...って、クラウス...さん?...なんで、俺の方に近付いて....って、まさか...!...いや、今はやめましょう?....俺一応、重病に...」

 

すまなかった!!

 

ギイヤアアアアア!!!!

 

最後の最後にクラウスの抱擁+謝罪によって塞がりかけたノアの傷口が開いてしまい、大量出血を起こして再び気絶。

 

結局、最後まで締まらないノア達であった....

 

 



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ページ16 王都召集

魔宮(ダンジョン)攻略から数日後、

 

アスタとノエルは、王都へと来ていた。

 

「う...おおおおお...!!すっっげぇぇぇぇぇぇ」

 

「ちょっと...!恥ずかしいから騒がないでくれる!?」

 

王と魔法帝が住む王宮を前にして騒ぐアスタと、それを嗜めるノエル。

 

(アスタと...二人きり...)

 

そんな事を考えて顔を赤くしているノエルだったが、

 

(とか、考えてるんだろうなぁ....生憎、俺もいるから二人きりではないんだがな。)

 

と、ノエルの考えを読んで心の中でツッコミを入れるノアが二人の後ろから見ていた。

 

━━━━━━━━━━━

 

数時間前、アジトにて...

 

「....」

 

「........」

 

アスタはガツガツと食べ、ノアも負けじとガツガツ食べている。

 

「おう目ぇ覚めたか小僧共、今回もよくやったな━毎度クソボロだけど。」

 

「あざす!!」

 

「...うす。」

 

元気よく返事するアスタと一言だけ返して直ぐ様食事に戻るノア

 

どちらも対称的な返答である。

 

「テメーらそろそろ歩けるよーになったろ騎士団本部が報告を聞きたいそーだから行って来いや。」

 

「「えッ!?」」

 

まさか騎士団本部から召集されると思っていなかったアスタとノアは驚きのあまりハモってしまう。

 

「騎士団本部!?」

 

(強い奴いっぱいいそ~♪戦っても...いいかな...?)

 

近くを通りかかったラックが騎士団本部の言葉に反応し、そんな事を考えたが、

 

「ラックは何か問題起こしそーだからダメです。」

 

ヤミの言葉にショックを受けて真っ白になるが、

 

「代わりに戦闘任務入れたからマグナと行って来い。」

 

「任務!」

 

次にヤミの口から出た言葉にラックの体色が戻り、瞳が輝き始める。

 

「一緒に頑張ろうね!マグナ!」

 

えッッ!!?気持ち悪!?お前本当にラックか!?」

 

マグナも普段のラックとは言動が異なり、グレイの変身なのでは?と疑う程のものであった。

 

「はいはぁーい!!じゃあ私が代わりに行きまーす!!」

 

今度はチャーミーが名乗りを挙げる。

 

その本心は、

 

(王貴界にはどんな美味しいものがまっているんだろう...)

 

といった感じで、食べ物のことしか考えていなかった。

 

しかし、

 

「いやいやお前が行っていいワケねーだろ毎日食ってるだけなんだから。」

 

ヤミの正論に対してラック同様、ショックを隠しきれなかった。

 

しかし、ヤミの発言も最もである。何せ、チャーミーが任務に行った姿を団員の誰も見たことがないからだ。

 

これでは騎士団本部のある王貴界に行かせるとラック同様、何かしらの問題を起こしてしまう可能性がある。そう考えての発言である。

 

その後、チャーミーは行方を眩ませるもそのうち帰ってくるだろうと誰も気に留めなかった。

 

━━━━━━━━━━━━

 

そして現在、

 

「すげーな~~~家が一個いっこデケーぞ!」

 

「そう?」

 

子供みたいにはしゃぐアスタと少し離れた所から付いていくノエル。

 

そして、その二人の邪魔をしないようにと更に二人から距離を取った後ろから付いていくノアとこれまたかなり変わった三人組が出来ていた。

 

「お」

 

するとアスタが目の前の何かに気付く。

 

「ん?」

 

目の前には、以前の魔宮(ダンジョン)攻略の際に協力した魔法騎士団《金色の夜明け》団のメンバー クラウス、ミモザ、そしてユノが三人の前を歩いていた。

 

「やあやあ金色の皆さんじゃないですか!」

 

「おお!一週間ぶりだなアスタ!怪我はもう大丈夫なのか!?」

 

一週間ぶりに再開したアスタの心配をするクラウスに対してアスタは、

 

「おう!いっぱい寝ていっぱい食べたからな!」

 

と返答する。

 

「「子供か」」

 

それに対してノアとユノがツッコミを入れるといったこれまたシュールな絵面になっていた。

 

(そういやまだミモザにお礼言ってないな。)

 

その事を思い出したノアがミモザにお礼の言葉を伝えようとミモザを見る。

 

「....!?.......」サッ

 

ミモザはノアをチラリと一瞥すると、即座に頬を紅潮させて目を反らした。

 

「?」

 

何故ミモザがそんな顔をしているのかノアには分からなかったが、取り敢えず自分が助かったのは、ミモザの回復魔法のお陰だと伝えなければと思い、ミモザに近付いていく。

 

「え~と....魔宮の時はありがとう...お陰で助かったよ。」

 

「...」ビクッ!

 

「それで、今度お礼でも...」

 

「..........」たっ

 

ノアが言い切る前にミモザはノアから逃げていってしまう。

 

「....あれ?」

 

「?...ミモザ、何でノアから逃げたんだ?」

 

「さあ?」

 

その様子を見ていたアスタとノアは顔を合わせて意味が分からないといった様子で首を傾げた。

 

「どうしたのよミモザ?」

 

さすがにミモザの反応が気になったノエルはミモザに聞いてみようと近付く。

 

「...どうしましょう...ノエルさん...!あの...私...ノアさんを見てると胸が苦しくなって...あの日からノアさんのことばかり考えていて...私...どうしてしまったんでしょうか...!?

 

「え...?」

 

ミモザの反応にどう答えればいいのか分からず、戸惑いを隠しきれないノエル。

 

間違いなくミモザはノアに対して"恋してる"反応なのだが、一体ノアの何処に惹かれたのかノエルは気になり、尋ねてみることにした。

 

「...何でノア?」

 

「それは...かっこよくて、背が高くて、髪も綺麗ですし...」

 

聞けば聞くほど、ミモザのノアに対する惚気が溢れだし、どうすれば止まるのだろうか?とノエルも困ってしまう。

 

「そういえば、ノエルさんもアスタさんのこと好きなのではないですか?」

 

えッ!?...いやいやいや!!あんな下民で馬鹿でうるさいチビなんて━━━━...」

 

「でもノエルさん、先程アスタさんを見る目が、私がノアさんを見ている時に似ていましたわ。」

 

いやいやいやあんな筋肉バカ...」(ってアレ?何で私こんな必死なの...いやいやいや!!私はあんなやったぞなんとも~~~~~)

 

(ハッ...私ったらまたノアさんのことを.....////)

 

ミモザとノエル、二人の乙女は自分の恋心を受容...あるいは否定するなど葛藤し、唸りをあげている。

 

「?...何をうめいておるのだ?」

 

その様子を見ていたクラウスは、何がなんだか分からない様子であった。

 

━━━━━━━━━━━━━

 

そして暫く歩いて待ち合わせして場所に到着したノア達、

 

「確かこの辺りのはず━━━━━...」

 

辺りを見回して待ち合わせしている人物を探すクラウス。

 

「こっちだよ~~~~~~~!」

 

「!」

 

声がした方向に振り向くとそこには、

 

「やぁやぁ、いらっしゃい...若者達よ」

 

髪を短く切っており、勲章が幾つか付いたローブを纏った男性がノア達を見ていた。

 

「こっ...これは...まさか貴方様直々に━━━...」

 

男性を見るや即座にクラウスは男性にひれ伏した。

 

「誰だ?この派手なオッサン?」

 

アスタは誰だか分からないといった様子でいきなり失礼な発言をする。さすがにクラウスも失礼だと思い、大声で...

 

馬鹿者ォォ~~~~~!!!この方は現魔法帝 ユリウス・ノヴァクロノ様だァァ━━━━━!!!

 

 

 

「えええええ━━━━━━!!!《b》」(((《b》この人が今の...魔法帝...!!!)))

 

アスタ達も男性の正体を知ると驚きを隠せない様子だった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━

 

魔法騎士団本部内

 

よくぞ手に入れたね!この魔法が恐らくあの魔宮の最重要遺物だ!

 

ユノの魔導書のページを見てそう答える。

 

そのページには、魔宮でマルスを倒したあの"風属性魔法"が載っている。

 

「!...読めるんですか...?」

 

「何となくね!」

 

ユリウスが何となくでユノも読めないページの文字を読めることに驚きを隠せないユノ。

 

ねえねえ!この魔法使ってみせてくれないかい!?頼むよ!

 

次の瞬間、ユリウスはまるで新しいオモチャを与えられた子供の様に目を輝かせながら魔法を発動してとユノに頼み始めた。

 

(このハシャギぶり...魔法帝は無類の魔法マニアという噂は本当だったのか...!)

 

噂の真偽が明らかになり、少し引いている様子のクラウス。

 

「...すみません...魔宮で一度発動したんだと思うんですが...あの時以来使えなくて━━━...」

 

えっ!?...そうか~~~いや━━残念。

 

ユノが使えないとユリウスに伝えると、分かりやすく落ち込んだ。

 

「............」 (四大属性の内、風の精霊"シルフ"この時代では彼を選んだんだね。)

 

「今言えるのは...この魔法は君と共に成長しいずれとてつもない力になるということ...大切にするんだよ。」

 

そう言って魔導書をユノに返す。

 

「次は...!」

 

次にユリウスはノアを見て近付いてくる。

 

「君はどんな魔法を...?」

 

「あ...え~と...ですね。」

 

キラキラと少年のような瞳を向けられてたじろぐノアだが、直ぐに新たな力 "ファントムソード"を展開する。

 

「この"力"ですね。」

 

「おおおおお!!!」

 

それを見た途端、ユリウスの反応が変化する。

 

「それをどう使うんだい...?!」

 

ワクワクしながら早く使ってみせてと言わんばかりにノアを見る。

 

「そうですね....!....」(アレならいいかな?)

 

ノアの視線の先には一本の木。

 

「では、失礼して...!」

 

ノアは木に向かって剣を投げると同時にその場から姿を消し、剣が木に刺さった瞬間、剣を掴んで木に移動していた。

 

「こんな感じ...です。」

 

「凄い凄い!その力は瞬間移動が出来るのかい!?」

 

「ええ、場合によっては相手に奇襲を掛けたり、敵から距離を取ることも可能です。」

 

「凄いね!...うん、その力はいずれ君を遥かな高みに連れていってくれるはずだ...だから、頑張ってね。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

続いて、

 

「魔法帝っっ!!俺の魔導書にも変な文章出たんス!」

 

見てくださいと言わんばかりにページを開いて見せるアスタ。

 

「............これは...!」

 

それを見たユリウスは、

 

「まっったく読めない...!文献でも見たことがないね。」

 

頭を悩ませながら分からないと返答した。

 

するとアスタはそのページから剣を取り出してユリウスに見せた。

 

「こんなん出ますッ!!」

 

おぉっ!二本目の反魔法の剣だねっ!

 

再び、嬉しそうにはしゃぎ出すユリウス。

 

自分が新しい剣を出せたことでユノに勝ち誇ったような顔をするアスタ。それを見ていたノアは、

 

(そんな事で勝ち誇っても対して凄くないんだけどなぁ...)

 

と思うも、口には出さなかった。

 

「反魔法の力...さ...触ってもいいかい?」

 

キラキラとしたフォントを放出しながらもユリウスは、剣を指差した手に震えを見せている。

 

「どうぞ!!」

 

対してアスタは、まるで大名に武器を献上する鍛冶屋の如く跪いて剣を渡した。

 

って重ッッ!!

 

大丈夫ですか魔法帝ぃぃぃ!!

 

アスタの剣が予想よりも重かった為、ユリウスは危うく剣を落としてしまいそうになっていた。

 

「よくこんなの振り回せるね............!」

 

その瞬間、ユリウスは何かに気が付いた。

 

(魔力を...吸われる...!?)

 

「...成る程...」

 

反魔法の力の理由に納得したのか、ユリウスは出さなかった口角を吊り上げた。

 

「ありがとう返すよ...これは私の手には負えない。」

 

「へへぇ~~」

 

この剣は魔力が無い君だから持てるんだね!

 

俺が魔力無いの何で知ってるんですか!?

 

「さ~て何でだろうね~~~~」

 

正解は魔法で変装してアスタを見ていたから...なんて言える訳もないのでユリウスは言葉を濁した。

 

まぁ兎に角素晴らしい活躍だったよ!お疲れ様!

 

...あああ...あののっっ...ちょちょちょちょっといいですか!?

 

ユリウスが労いの言葉をノア達に掛けた所で、アスタが声を震わせながらユリウスに尋ねた。

 

「?何だい?」

 

「.........」

 

少し黙って呼吸を整えるとアスタは、ユノ、ノアと一緒にある事を尋ねていた。...それは、

 

どうやったら...魔法帝になれるんですか!?

 

一瞬、ユリウスの時が止まった様になったが直ぐに反応を返してくれた。

 

そうか、君達は魔法帝を目指してるんだね騎士団員足るものそうでないとね!

 

笑いながらノア達を見てそう言った。

 

「お前達そんな事直接聞くのは魔法帝に失礼だろ!!いいか魔法帝とは気高い心を持ち民の信頼厚き者が━━━...」

 

いや...

 

クラウスの言葉を遮った魔法帝の言葉は次の通りである。

 

実績だよ

 

その言葉にノア達は黙って聞いている。

 

「プライドだけでは人を守れないし信頼は実績の後についてくるものだ..."魔法帝"に求められるものはただ一つ..."最強"と言わしめる実績だ...実績を出せひたすらに実績を積むこと...それが全てだ...それが出来ない者は頂点に立つことなど出来はしない...!

 

最後までユリウスの言葉を聞いて、ノア達は身体の震えが止まらなかったが、拳を握りしめて、

 

望むところです...!!

 

そう返した。

 

(いい目の新人を持ったね...ウィリアム、ヤミ。)

 

三人の熱い眼差しを見て、二人の魔導士の名前を出すユリウス。

 

これからのノア達の活躍を見てみたいとさえ思った。

 

さてと!実は今日『星』取得数が特に多い騎士団員達を集めて戦功叙勲式をするんだ君達も是非参加してってくれ!

 

『え...!』

 

そしてユリウスの後に続いていくとそこには大きな扉が、

 

それを開けるとそこには...

 

...さて...

 

複数の魔法騎士団の団員達が並んで此方を見ている。

 

君達は彼らより実績を出せるかな...?

 

 

 

 



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