自由な魔導師の日常 (ナタク)
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プロローグ

幻想郷。

 

人と人外が共存する世界。

 

妖怪、妖精、魔法などが当たり前の様に存在している。

 

日本の山奥に存在するとされる、結界で隔離された土地で、いわゆる「異世界」じゃなく、外の世界と陸続きに存在する世界だ。

 

共存すると言っても、妖怪が人を喰えば、その妖怪を退治する人間もいて共存とは言い難いが、それがこの世界の在り方だ。

 

この世界は妖怪の賢者と呼ばれる、一人の妖怪の力にて生まれた世界で、その賢者が作ったルールが存在する。

 

そのルールを破れば、この世界から追放されるか、最悪その賢者に亡き者にされるかだ。

 

この幻想郷には、博霊大結界と呼ばれる結界が覆っている。

 

管理人は代々の博麗の巫女が担当している。物理的な結界ではなく論理的な結界であり、それは思いを通さない壁と言う機能で存在し、同時に思いに影響を受ける。

 

基本的に強力に遮断・隔離されて、時折結界をまたいで人や物が結界の外から中に流れ込み、逆に中から外に出てしまうことが何度もあった。

 

神隠し。

 

それが主な実行犯は結界を弄ることが出来るのは妖怪の賢者ただ一人だげだ。結界を管理している博麗の巫女も結界を緩めたりし、幻想郷の中のものを外に出したりできるらしい。

 

幻想郷は元から隔離されてはいなく、多くの妖怪が暮らしていた土地に、それを退治する家業としていた人間がやって来て住み始めた辺鄙な土地だった。

 

いくら共存関係であっても、色々と問題は多々発生していた。

 

結界が張られた後は幻想郷を維持するために、人間と妖怪の間に数や勢力のバランスが必要になり、

 

そのため人間はこれ以上妖怪が減っても増えても困るため妖怪を完全に退治しなくなり、

 

妖怪もこれ以上幻想郷の人間が減っても増えても困るため幻想郷の人間を襲うことはほとんどなくなってしまい

 

その代償として幻想郷の妖怪たちは存在意義を失ったことに、気力が衰えていった。

 

そんな時、外の世界から吸血鬼達が現れ、気力を失いかけた妖怪達と共に、幻想郷を支配しようと企んで暴動を起こしたが、博霊の巫女や妖怪の賢者達が行動して難して、事が収まった。

 

そんなこんなで生まれた幻想郷にて自由気ままに過ごすのが普通になって来たのを感じる今日この頃。

 

おっと自己紹介が遅れたな。

 

俺はシンヤ。しがないただの魔導師で、

 

妖怪の賢者が起こした神隠しによって、この幻想の地に辿り着き、もう何年生きているかもわからなくなった旅人さ。

 

と言っても、自由気ままには過ごせないのがここの生活なんだなこれが。

 

 



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博麗霊夢との日常

博麗神社。

 

博麗の巫女が代々受け継いできた神社で、前に話した博麗大結界の管理場所な所で、外の世界と幻想郷の境に位置する。

 

博麗の巫女は、妖怪退治や異変と言った仕事に全うしている。

 

博麗の巫女が幻想郷にとっても重要な存在で、どれくらい重要かというと、

 

妖怪退治をしようとも妖怪は巫女を襲うことはおろか、博麗神社の境内に来た人間に手出しするのを禁じられているまで。

 

そんな博麗神社の巫女、博麗霊夢は境内の清掃に専念していた。

 

異変や妖怪退治の仕事がない時などは、普段からこんな感じである。

 

音を立てながら掃除している霊夢は時々、神社の縁側にて熟睡する人物に、視線を送る。

 

縁側にて熟睡するのは、青を基準とした長い髪をしており、親友の魔法使いとは違う白い服装を着込み、魔法使いが使う特有の枝を持ちながら熟睡するシンヤだった。

 

天気日和の時は、こうして日向ぼっこしながら熟睡している。

 

清掃が終え、清掃道具を片付けた霊夢は、熟睡しているシンヤの隣に座り込む。

 

そして、熟睡するシンヤの隣にて霊夢はお茶を啜りながら、庭を眺める。

 

霊夢「しかし良く寝るわね、おじさん」

 

熟睡するシンヤの寝顔を眺めながら、そう呟く。

 

おじさん。霊夢だけがシンヤを呼ぶ時に使われる名前で

霊夢が幼い頃から、そう呼んでいる。

 

霊夢(まだ、お母さんがまだ現役だった頃かしら。おじさんと出会ったのは)

 

(おじさんに会ったのも、この縁側で今の様に熟睡していて、初対面だったから驚いたけど)

 

(おじさんとお母さんは、異変解決とか妖怪退治の時もいつも一緒だった)

 

(おじさんとお母さんは、お互いに愚痴や口文句を言い合ったことが何度もあって、おじさんじゃなく、お父さんと呼んだ方が良いのかと思う位、仲が良く、皆から夫婦じゃないの?とよく間違われてた)

 

(お母さんがいなくなった後でもおじさんは、私の面倒を見てくれた)

 

(おじさんがいなかったら、今の私はいなかっただろう)

 

色々と懐かしそうに思っていると、傍で熟睡していたシンヤが目を覚まして起き上がる。

 

「あれ?俺結構寝てた?」

 

霊夢「寝てたわよ。気持ちよさそうにね」

 

「あれま」

 

霊夢「・・・、ねぇおじさん」

 

「なんだ霊夢?」

 

霊夢「お母さんから聞いたけど、おじさんは私やお母さんが生まれる前、つまり今までの先代達を見てきたのでしょ?」

 

「そうだよ。俺がこの幻想郷にやって来る前に、いや、幻想郷が生まれるその前にも会ったことがあるな」

 

「初代博麗の巫女から続く歴代巫女達、色んなやり方があったが、誰も素晴らしい巫女だったよ」

 

霊夢「へぇ。私のお母さんとかも?」

 

「当たり前だよ。そして、霊夢も素質があるからねぇ。

歴代の巫女と同じような人になると私は思うよ」

 

霊夢「おじさんがそう思うだけでしょう?」

 

「そうだね」

 

二人で語り合っていると、辺りの空が夕焼け色に変わっていくのがわかった。

 

「夕時か・・・。帰ることは出来るが、どうしたものか」

 

霊夢「もう今日は泊まっていけば?二人分くらいの食材ならあるし」

 

「おや?良いのかい?」

 

霊夢「もう日が暮れるし魔導師と言っても、おじさん人間よ。危なくてしょうが無いわ」

 

「それなら、お言葉に甘えて泊まりますか」

 

霊夢「なら、色々と手伝ってもらうわよ。おじさん!」

 

「はいよ。どうぞ、扱き使って下さいな」

 

二人はそう言い合いながら、夕食の支度の為に台所へと向かった。



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霧雨魔理沙との日常

幻想郷にある森、魔法の森。

 

険しい表情を浮かべたシンヤが、ある一軒家の前で止まる。

 

「霧雨魔法店」

 

とある知り合い魔法使いの弟子の自宅で、何度か訪れる機会があったので、弟子さんとの交流もある。

 

今回は、週の最後にある仕事を行う為に此処にやって来た。

 

シンヤは霧雨魔法店のドアをノックし、おーい。と声を掛けると、

 

(霧雨魔法店は昼時までお休みだぜ~)

 

ドア越しからの室内から聞こえた言葉に、シンヤの怒りがこみ上げて来た。

 

おい!起きろこら!と今度は大きな声を上げるが、ドア越しから聞こえるのは、

 

(うるさい・・・!もう少し眠らせてくれよじじい・・・!)

 

そんな暴言だった。

 

流石に頭にきたシンヤは、ドアを開けようと昔貰った合鍵を使って開けようとしたが、魔法で開けない様にしていたのがわかった。

 

更に頭にきたシンヤは魔法の枝で、ドアに付けられている魔法を無理矢理解除して、こじ開けて中に突入する。

 

ゴミ溜めの廊下を歩いて、この家の主の寝室の扉を蹴破って突入すると、

 

ゴミ溜めの寝室に、白い下着を着けて爆睡する金髪の少女、霧雨魔法店の主の「霧雨魔理沙」がそこにいた。

 

「起きやがれ魔理沙!!」

 

「うわぁ!?」

 

暴言を吐いてもなお爆睡する魔理沙の姿に、堪忍袋の緒が切れたシンヤは、眠る魔理沙をベッドのシーツごと、引きずり下ろす。

 

いきなり引きずり下ろされ、そのまま魔理沙は後頭部をゴミ溜めの床に打ち付ける。

 

魔理沙「いってー!何すんだぜおっさん!」

 

「うるせえ!週の最後は此処に来て、大掃除するから、家の鍵は開けとけと言っているのに、魔法まで掛けるとはな!」

 

魔理沙「だっておっさん、私の秘蔵コレクションや魔道書なんかを全て片付けたり捨てるじゃないか!」

 

「お前の言う秘蔵コレクションは、自分で使い道のわからないガラクタで、魔道書とかは盗んだ物だろうが」

 

魔理沙「なっ!?ガラクタとか言うなよ!それも魔道書は盗んだじゃない!借りただけだぜ!」

 

「はいはいわかったから、ささっと服着て、髪を整えて、外に出なさい」

 

魔理沙「外に出ろだと!此処は私の家だぜ!」

 

「いいから外に出て遊んで来なさい!」

 

魔理沙の反論も虚しく、シンヤから言われた通りに外へと出た。

 

中でシンヤが大暴れ(大掃除)を始めたのが、外でも分かる位、家の窓からホコリが煙の様に吹き出ていた。

 

「あら?おじ様が来ているのね」

 

家を掃除されるのを見て悔しがる魔理沙の所に、同じ魔法使いで、同じくこの魔法の森に住む、

「アリス・マーガトロイド」だ。

 

魔理沙「そうだぜ。あのじじい、いつか覚えていろよ」

 

アリス「毎度言うけどアンタが原因でしょ?、自分で掃除すれば良いのに」

 

魔理沙「だから私なりに掃除しているのに、このありさまだぜ?!」

 

ゴミ溜めなのに掃除したのか。とアリスは心情にて呆れを感じるしかなかった。

 

「うへぇ。ガラクタが多すぎるだろこの家」

 

魔法店の入り口から、大きなゴミ袋を抱えたシンヤが現れ、アリスがいるのを確認すると、ゴミ袋を近くに置いて、アリスの方に向かって来た。

 

「久しぶりだなアリス、お母さんは元気かい?」

 

アリス「ふふ、お母さんはいつも元気ですわ、おじ様」

 

「そうか、あいつに送る手紙を最近書いてないからなぁ、どうしてると思ったが、アリスが言うなら想像がつくな」

 

シンヤとアリス、二人で会話しては昔を懐かしんでいると、シンヤは何かを思い出したのか、アリスに待ってくれと告げて、魔法店に戻っていった。

 

魔理沙「そう言えばアリスは、いつおっさんと会ったんだぜ?」

 

アリス「私が幼い時に魔界で会ったわ」

 

魔理沙「魔界で?そうなると幻想郷に来る前か?」

 

アリス「そうなるわね」

 

魔理沙「幻想郷に来る前で、アリスがまだ幼い頃となると、おっさんいくつだ?」

 

アリス「それは分からないわ。だって、おじ様自体がもう何年生きているか分かってないのよ」

 

魔理沙「じゃあ、会った時から魔法が使えてたのか?おっさんは?」

 

アリス「えぇ、魔界に来る前に、元々から使えてたみたいで、お母さんまで驚いていたわ」

 

魔理沙「へぇ、アリスのお母さんが驚く魔道士なら、大魔法使いになってもおかしくないな、おっさんは」

 

アリス「・・・、もしそうだったら?」

 

魔理沙「大魔法使いだったら、おっさんの持つ魔法を全て教えて貰うぜ」

 

アリス「そう」

 

魔理沙「おい?何だよその反応は?・・・もしかしておっさんはh「おーいアリス」

 

アリスに問いただそうとした魔理沙だが、丁度シンヤが魔法店から出て来た。

 

「ホイこれ、魔理沙の寝室にあった魔道書、持ち主アリスだろ?」

 

シンヤが渡したのは、アリスの魔道書ばかりであり、それを見た魔理沙は渡すなと言う表情で訴えるが、無視される。

 

アリス「ありがとうね、おじ様」

 

「なぁに、今度はパチュリーの所に行って、魔道書を返すだけさ。魔理沙を連れてな」

 

魔理沙「はぁ?!聞いてないぜ?!」

 

その後、シンヤはアリスに別れを告げ、魔理沙と共にパチュリーの所に向かった。



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ルーミアとの日常

今日は雲一つない快晴。

 

自由な魔道師シンヤは、人里から離れた草原にて日光浴(昼寝)を楽しんでいる。

 

心地よい風、風が運んで来る草木の匂い、風によって揺れる草木達の音。

 

全てを感じながら、日光浴を楽しんでいると、

 

ぐーぎゅるる。

 

そんな感じの腹の虫が鳴く音が遠くから聞こえる。

 

来たなと口ずさんだシンヤは、魔法にて数多くの弁当箱を取り出し、敷物やら飲料水なども取り出しで準備していると、

 

「わはー!」

 

可愛い声でシンヤに抱きついて来たのは、黒を基準としたゴスロリで、カチューシャを着けた金髪の少女。

 

宵闇の妖怪、ルーミアだ。

 

「今日も来たなぁ?、この食いしん坊が」ワシャワシャ

 

ルーミア「来たのだー!シンヤの作る料理は最高なのだー!それが月の一度しかないから楽しみなのだー!」

 

「そうかそうか。だがちょっと待っておけよ、もう少しで終わるからな」

 

ルーミア「わかったのだー」

 

そう言ってルーミアは敷物に腰を下ろし、とびっきりの笑顔で左右に揺れながら待つ。

 

月の一度にルーミアとシンヤは、この草原にてランチを楽しむのが日課である。

 

そもそもこのようになったのも、シンヤが初めて幻想郷にやって来て間もない頃だ。

 

たまたま見つけたこの草原にて先程のように日光浴していると、腹の虫が鳴く音が聞こえた木の裏を確認すると、ルーミアがいた。

 

この時に持ってきていたランチをルーミアに食べさせ、それを気に入り、月一度のランチを楽しむようになった。

 

だがそれは、ある条件をルーミアと約束しているからだ。

 

「寺子屋はどうだった?」

 

ルーミア「楽しかったのだー!今日は、チルノ達と鬼ごっこしたり、大ちゃんに勉強を教わったりしたし、授業中に居眠りして、慧音先生に頭突きされたのだー!」

 

「そうかそうか。最後はルーミアが悪いな、今度は居眠りしないようにしような」

 

ルーミア「わかったのだー!」

 

その条件とは寺子屋に行くこと。

 

人里の寺子屋は、人、妖怪、人種を問わず授業が受けられ、俺の知り合いの妖怪や妖精がそこにいる為、ルーミアを通わせる。

 

1日もサボらずに寺子屋に通えば、此処でランチを食べさせる条件で約束した。

 

一通り準備が終わると、いただくのだー!

 

ルーミアはランチのサンドイッチを口に頬張り、おいしい笑顔でサンドイッチを食べる。

 

そんな笑顔を見ながら、シンヤもサンドイッチを口に入れる。

 

草木の匂いを感じながら、サンドイッチを食べるシンヤとルーミア。

 

終わった後は、二人で日光浴を楽しんでいた。



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チルノ&大妖精との日常

霧の湖

 

妖怪の山の麓にあり、湖近くには紅魔館がある。

 

普段は人が寄り付かない場所に存在する。

この湖の周りは昼間になると霧で包まれ、視界は不良である。

 

視界不良のせいで、湖はとてつもなく大きく見えるらしいが、実はそんなに大きくないと言われている。一周歩いて回っても半刻も掛からない。

 

湖には妖精や妖怪が集まりやすく、特に夏は水場を求めて多くの妖怪が集まってくる。

 

そんな湖の畔に釣竿を片手に持ち、水面に浸っている釣糸を眺める男シンヤがいた。

 

なんの変化もなく、退屈そうに釣糸を見る。

 

先程までは太公望と呼ばれる老人と一緒に釣糸を眺めていたが、急用が出来たかなにかで、この場を去った。

 

あまりにも退屈な為、釣竿を固定させて、持ってきたランチであるサンドイッチを食べようと手を伸ばすが、二人の妖精が眠っていたのを確認する。

 

氷の羽を持ち、この幻想郷にて最強(自称)している氷の妖精チルノ。

 

もう一人はそのチルノの親友の妖精、大ちゃんこと大妖精。

 

そんな二人がランチが置かれていたシートの上にて気持ち良さそうにお昼寝していた。

 

実は釣りを始める前に、人里にて道具を購入していた際に寺子屋が終わった帰りのチルノと大妖精に遭遇し、霧の湖にての釣りを始めるが、余りにも掛からない為に直ぐに飽きてしまい、二人はそのまま眠ってしまう。

 

そんな二人の寝顔を見ながら、サンドイッチを頬張ると匂いに釣られたか、目を擦りながらチルノが起き上がる。

 

「あれ?じいさん、魚釣りは?」とまだ眠たそうにチルノに聞かれるが、先に顔洗ってちゃんと目を覚ませよ?と言い聞かせ、冷水が入った容器を前に出す。

 

顔を洗うチルノに続いて大妖精も目を擦りながらこちらに歩いて来る。

まだ寝ぼけているのか、今度は胡座を掻くシンヤの膝を枕に、世に言う膝枕だ。

 

こら大ちゃん起きなさいと優しくは起こそうとするシンヤだったが、自分の膝で気持ちよく眠る姿を見れば、起こすのを諦める。

 

「大ちゃんが寝るならまだあたいも寝る!」と先ほどの目を覚ましたチルノも片方の膝を枕にし頭を乗せる。

 

そんなに膝枕がいいの~?と呟くシンヤに、レティも良いけど、じいさんの膝も気持ちいい!とチルノに返されてそうか~と陽気に返答する。

 

そんなチルノも直ぐに夢の世界に向かう為に、眠りに落ちた。

二人を膝枕するシンヤも、俺も静かに眠りますかー

と自分も静かに眠りに落ちる。

 

それから時が経ち夕時になり、チルノと大妖精を迎えに来た冬の妖怪と花の妖怪に皆揃って起こされ、1日を終える。

 

帰り際、釣竿を持ち上げるが何も釣れていなかった。

寝ぼけてもそれを見たシンヤは、へたくそだな~と呟きながら残念そうに歩き始めた。



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紅 美鈴との日常

紅魔館

 

妖怪の山の麓かつ、霧の湖にある島の畔に建っている深紅の洋館。

 

随分昔ではあるが、この幻想郷にて大規模な暴動を起こした吸血鬼の住む館でもある。

 

湖に面するこの館。よく湖側から館の敷地に進入しようとしてくる妖精などがいる為、ここの門番さんは積極的に迎撃するが、時々だが油断して侵入を許してしまう。

 

そんな俺は今その門番さん、「紅 美鈴」と互いの拳を交え、互いに汗をかいていた。

魔導師ではあるが、こういった武術にも対応しないとね。魔法だけじゃ心配だからさ~。

 

美鈴「いや~、いつ見てもキレがいいですね」

 

「俺は見よう見まねだよ~。美鈴の方が動きがいいよ~、流石」

 

美鈴「誰かに教わったのですか?」

 

「美鈴と同じ太極拳は、知り合いに激辛麻婆豆腐が好きな、君の主の地では神父かな?まぁその神父に教えてもらって、拳法とかは外の世界にある赤心少林拳と言うとこで習ったよ」

 

一通りの説明をしながら拳を交える二人の間に、「美鈴、お昼よ」と瞬間に白銀の髪が特徴なメイドが現れた為、二人は拳を下ろし、美鈴はメイドさんからランチの入ってるバケットを受け取り、「おぉ疲れた疲れた」とその場に腰を下ろすシンヤ。

 

白銀のメイドは、ランチを渡したら瞬く間に姿を消した。

 

メイドから渡されたランチを口に入れ始めた美鈴につられて持ってきていた携行食を食そうと思ったその時、

いつの間にか足元にも置き手紙と共にバケットが置かれていた。

 

置き手紙には「食べると言う文字は人が良くなると教えて下さったのはどちら様でしょうか?」

 

昔自分があのメイドに教えた言葉である、こうしてくれるのはいいのだが、肝心のバケットの中身は、健康食と言うやつである。

 

俺の健康を気遣ってくれているのは助かるけどね~、どうしたものかな~。

 

それから悩んでいたが、考えるのを止めて食べることにシンヤであった。

 

 

 

 

 

 

美鈴「そう言えば、お嬢様とはいつから交流を?」

 

昼食を終え、門の前で日光浴を楽しんでいると美鈴が聞いてくる。

 

「あれ、美鈴あの時いなかったっけ?ほら、まだこの紅魔館がここに来る前に俺一度·····、あぁそうかだから覚えていないのか」

 

美鈴「あ。もしかして、まだ私がメイドを勤めていた時ですか?」

 

その言葉に応えるようにそうそうと頷く。

 

美鈴「そう言えば、まだ咲夜さんが幼い頃でもありましたね。随分と可愛いかったですが」

 

「そうだね。私も放浪の身だし、いつまでも俺に付き合う必要はないと思ってね、当時噂の吸血鬼の館なら咲夜も頑張れるかな~と思って連れて来たんだ~」

 

へぇーと相槌を打つ美鈴は、何かを思い出したのか

 

「シンヤさん魔法使えますよね?」

と聞いてくる。

それに対して使えるよーと促すシンヤ。

 

美鈴「初めてシンヤさんと咲夜さんがこの館に現れた時私は侵入者撃退の為にシンヤさんに近づいた途端、私が燃えたのは何かの魔法ですか?」

 

それを聞くシンヤは思い出したのか、あの時は流石にすまないと思っているよ。あれなら謝るよ。と美鈴に謝るが気にしないで下さいと聞いて、話を戻す。

 

「あれはね、周囲の物質を構成する原子や分子を操ることで、物質をプラズマ化し発火、炎上させたんだ。わからないなら、パチュリーに聞くと良いよ」

 

大体分かりました!と親指を突き上げ、グッジョブというのか、そういうやつで応えたので大丈夫そうだ。

 

「しかしあの時は本当にすまなかった、発火させたのがいけなかったね。あんな真冬に服までやってしまったし·····」

 

やってしまったと頭を抱えるシンヤに、本当に気にしないで下さいと慰める美鈴。

 

美鈴(シンヤさんはもう忘れているけど、あの時に服が燃えた直ぐに自身が羽織っていたコートを私に着させてくれて、そのコート未だに私は持っています。あのコートを着ているとあなたのことを思い出しますから)

 

それからも日光浴を楽しんでいた二人に一本のナイフがシンヤの足元に飛んで来る。ナイフには手紙を巻き付けていた。手紙の内容は、

 

「美鈴だけずるい!私もおじ様と遊ぶの!!」

 

と可愛いらしい文字で書かれており、今回シンヤがこの館に尋ねたのはこの館の主の妹さんと遊ぶ為であったのを思い出し、ナイフを回収して美鈴に別れを告げて、シンヤは館の中へ入っていく。

 

美鈴に別れを告げたシンヤ美鈴には聞こえない声で、

あのコートはあげるよ。と呟くのだった。



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パチュリー&小悪魔との日常

ヴワル魔法図書館

 

紅魔館の地下にある、幻想郷最大の蔵書量を誇る図書館。主に魔導書、希に入ってくる外の世界の本も置いている。

この図書館はよく利用者も多く、シンヤもその利用者の一人である。

そしてこの図書館の主であり、この館の主の友人である。

 

「パチュリー·ノーレッジ」

 

図書館の実質的な館長で、保管されている本は全て彼女の蔵書として扱われる。

ほとんどを図書館に引きこもって過ごす俺と同じ魔法使い。

 

パチュリー「あらいらっしゃい。今日は何の用事かしら?」

 

「いやなに、今回の分を持ってきたよ~」

 

そうシンヤがパチュリーの机に置いたのは前回魔理沙の家で清掃した際に回収した、この図書館の魔導書である。

いつも「死ぬまで借りていく」その言葉通りに借りパクし、いつもパチュリーを困らせる。だから週一に家を訪ねる。

 

パチュリー「いつもご苦労様。小悪魔」

 

誰かに呼び掛けると上の階から「はーい、只今」と西洋の妖怪であり、赤い髪が特徴的で、その名前のように悪魔の「小悪魔」が現れた。

 

小悪魔「あれま、シンヤさんではないですか。いつもご苦労様です」

 

そちらこそいつもご苦労様と返事をし、小悪魔に今回持ってきた魔導書を確認させる。

確認を終えた小悪魔は、何冊の魔導書を手に持ち上の階へと飛んでいった。

 

シンヤも何冊か手に持ち、魔導書を元ある本棚に収納する為に歩きだす。

何度も魔理沙が借りパクした本を返しに図書館に来ているので大体の場所はわかっている。

 

パチュリー「小悪魔に任せればいいのに」

 

本棚に収納しながら歩き回っていると、そんなパチュリーの声が聞こえて来る。

いいよ~、俺が好きでやっているから~と奥の方から呑気なシンヤの声が聞こえて来た。

 

先に上の階の本棚に収納していた小悪魔が降りて来て、次の魔導書を手に持とうするが「小悪魔。先に紅茶を、シンヤにはコーヒーね」と命ぜられた小悪魔は「では、失礼します」と告げて退室する。

 

小悪魔が退室し、静寂が図書館を包み込んだがそれもつかの間、「パチュリー。耳塞いでてね~」と奥からシンヤの声に応じるように慣れているように防音障壁の魔法で自分を包み込んだ瞬間、

 

魔理沙「ヤッホー!!パチュリー、死ぬまで借りt「チャオ~」ジジイ居たのかよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

図書館の扉を勢いよくこじ開けた魔理沙であったが、来ることを予知していたシンヤが扉の前で小型のブラックホールを造り出し待ち伏せされていて、何の抵抗することもなく吸い込まれていった。

 

「いや~、あいつには困ったもんだ。あっ、いいよパチュリー解除しても」

そう言われて解除するパチュリー、「魔理沙は大丈夫なのブラックホールなんかにぶちこんで?」と聞くが、

「なぁに、ブラックホールと言ってもあいつの家に送り返しただけ」と答えるシンヤに「あら、なら安心ね」と少しも心配する様子も見せないパチュリーにシンヤもご満悦であった。

 

その後、紅茶などをお持ちした小悪魔と一緒に一休みすることにしたシンヤとパチュリー。

 

小悪魔「シンヤさんは何用で紅魔館に?」

その一言でシンヤは思い出す、しまったあの子との約束があったことを、魔理沙の件ですっかり忘れていた。

急いで向かおうとしたその瞬間、

「おじ様ー!!」図書館の上から元気な声と共にシンヤの胸に急降下ダイブ!シンヤも受け止めるが、パチュリー達から離れる位の衝撃とシンヤの腰にも悲鳴が少しだけであるが聞こえる。

 

「こら。いきなりは駄目とこの間言っただろ、フランドール」

 

フランドール「だっておじ様。フランはずっと待っていたわ。ずっとよ?だから我慢出来なくて、それで咲夜に聞いたら図書館にいるって聞いたら飛んできたの!」

 

シンヤに飛び込んで来たのは、この紅魔館の主の妹であり吸血鬼

 

「フランドール·スカーレット」である。

 

毎度シンヤが紅魔館を訪ねる度にこうしてシンヤに飛び付いては、シンヤに軽く怒られる。

 

「そうかそれはすまなかったなフランドール、御詫びにたくさん遊んでやるぞ~」

その言葉が嬉しいのだろう、吸血鬼の特徴とも言える羽を上下に動かし、フランの顔も花が咲いたように笑顔が満開であった。

 

その微笑ましい光景にパチュリー達も微笑む。

 

咲夜「フランドール様。お楽しみの所申し訳ありません。お嬢様がお呼びであります」

そんなフランとシンヤの前に現れたのは、この紅魔館のメイド長である、十六夜咲夜である。

 

フラン「お姉様が?え~、折角おじ様と遊ぼうと思ったのに~」

両頬を膨らませて不貞腐れながらも、シンヤから離れ

「じゃあおじ様、また後でね」と笑顔でこちらにそう言い、図書館から退室する。

 

フランが退室し、「そろそろあいつに挨拶するか~」とのんびり向かおうとするが、

 

(あいつの部屋何処だっけ?)

恥ずかしいが、何度も紅魔館には来るのだがいつもあいつの部屋の場所を忘れる。これならフランと一緒に行けばよかったと思っていると、

 

咲夜「シンヤ様。お嬢様のお部屋までご案内致します」

 

悩んでいたシンヤに救いの言葉。そのお言葉に甘えて、咲夜によろしく頼むと返事する。

 

咲夜「では、後ろに付いてきて下さい」

 

シンヤはパチュリー達に別れを告げて、咲夜の後に付いて行った。ここの主がお待ちだろうしね。

 



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十六夜咲夜との日常

「十六夜咲夜」

紅魔館を管理する者の中で、彼女程の働き者はまずいないだろう。

彼女は、この紅魔館の主に仕えるメイド長で、多分この紅魔館に住んでいる唯一の人間である。実質的に紅魔館の一切を取り仕切る立場におり、家事一切をほぼ一手に引き受けている。

この徐の能力での効果か、館の空間操作まで行っているので、実質彼女無くして「紅魔館」は成り立たないだろう。

 

そんな彼女の後に付いていくシンヤは、最近どうなの?と聞いたりしてこの静寂を消そうと気楽な言葉をかける、そんなシンヤに彼女は「そうですね、最近はどこかの誰かさんの為に健康食のご勉強が楽しみであります」

と皮肉を言いながら返して来た。

 

これには流石のシンヤも思い当たることが多すぎて、言い返すこと出来なく小さな声で「面目ない」と呟き、

「しかしなんで俺に健康食なんかを?」と聞き返すと彼女はこう言い返してきた。

 

「父親が娘の心配するように、娘が父親のことを心配するのは当然のことです」

 

父親。彼女が自分に向かってそう言うようになったのは随分昔のことである。

 

あの寒い冬。まだ幻想郷も誕生する前。ある国で放浪していた私は、裏路地で寒さに震えやつれ、寒さを防ぐ為か踞っていた銀髪の女の子が見つけた。

 

私がその子に近づこうとすれば、女の子は怯えているのだろう、私から距離を置くが私は近づいて怯える女の子を抱き締めた。

女の子の耳元である言葉を囁いた。

 

「ようやく見つけたよ可愛い我が子よ」

 

それが私と咲夜との出会いであり、咲夜が私をお父さんと呼ぶようになった出来事であった。

 

未だにお父さんと呼ばれるのは中々なれないけどね。

 

「お父さんは相変わらず。誰かの世話になりやすいのだから普段から気を付けてよ?」

 

だってこうして自分の娘に説教されてるから、時々父親としての威厳がないのかな~と思ってしまうことが多々感じられる。

 

この前も可愛がろうと頭撫でたら、流石にもう恥ずかしいのか顔を真っ赤にして怒られた。もう昔の自分とは違うと言うことかな~、巣立ちした子供がいるとこんなにも心に虚無を産み出すのか、改めて子を持つ父親の気持ちが理解できた。

 

「お父さん」

 

咲夜に呼ばれて咲夜の方に俯いている顔を上げると、急に抱き締めてきた。

 

「ふふ、やっぱりお父さん匂いは落ち着くわ」

 

突然のことでオドオドしてたシンヤであったが、そんな咲夜の満悦な顔を見れば落ち着きを取り戻し、こちらも抱き締め昔の様に頭を撫でたりする。

 

「くすぐったいわお父さん。だけどこれが大好きよ昔も今も。恥ずかしいけど、さっきお父さんが妹様の頭をこうして撫でている場面を見てて嫉妬しちゃって」

 

といってきた咲夜に対してシンヤは自分の娘可愛い過ぎないか?マジ尊過ぎて、顔がにやけていた。

 

俺今度からここに住み着こうかな~と呟くと、駄目ですわと答え、自分から離れる咲夜。

 

「お父さんがここにずっといたら、お父さんを縛り付けてしまう。旅に行かせない様にしてしまう。お父さんから自由を奪ってしまってはならない。確かに私や御嬢様たちは喜ぶけど、こうしてたまに来てくれるだけでも喜んでくれるわ。それに」

 

「お父さん言ったよね?普通に生きるのが俺の夢だって。だからお父さんは今までのように、私も頑張るから」

 

昔俺がある人から教えてもらった言葉である、それを咲夜にも教えた、「夢なんてなくても生きていける、普通に生きるのが俺の夢だ」と。

 

咲夜がどれだけ自分の事を思っているのかがわかったシンヤの後ろから、巨大な殺気を感じ、恐る恐る後ろを振り返って見ると、フランとは違う吸血鬼の特徴である羽を持ち、この紅魔館の主「レミリア・スカーレット」が激怒してこちらを見ていた。

 

助けてもらおうと咲夜の方を見るが姿はなかった。

時を止めてる間に離れたのだろう、まぁ仕方ないと諦めたシンヤは激怒状態のレミリアに引っ張られながらどこかに連れてかれる。

 

そんな途中で、ごめんねお父さんと言う声が聞こえたシンヤは改めて娘は可愛いと再確認するのだった。



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