異世界はスマートフォンと秘密道具とともに (シャト6)
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1話

「まことに申し訳ありません!」

 

目が覚めると、20代前半位の女性が俺に土下座していた。

 

「…はっ?いきなりなに??」

 

当然、起きて目の前で土下座されてれば、普通混乱するよな。

 

「実はですね、貴方は私のミスで死んでしまったんです」

 

「……」

 

「それでですね、貴方と同じく死んだ人がいますので、その方と一緒に転生していただきたいのです」

 

「はあ…」

 

転生ねぇ。ま、別に前の世界に未練はないしな。

 

「別に構わねぇけど」

 

「ありがとうございます。そして、転生していただきますので、特典を授けます」

 

「限りはあるのか?後、行く世界はどんな世界だ?」

 

貰える特典の数と、行く世界によってどんなのを貰うか考えたいしな。

 

「貴方が行く世界ですが、少し貴方がいた世界と似ています。そして、魔法や魔物が存在します。後、特典は差し上げます」

 

「魔法か…となると、召喚獣とかもいるのか?」

 

「そうですね」

 

「なら特典は…」

 

そして暫くし、特典が決まったのである。

 

「それでは、これから転生していただきます。身体能力等は、此方でサービスとして上げておきます。これで、余程の事がない限り死にません。では、向こうで目が覚めれば、一緒に転生した人がいますので」

 

そして俺の意識はそこで途絶えた。次に目が覚めると、芝生の上で寝転んでいた。

 

「んん~…」

 

横から声が聞こえ、見ると見知った格好をした男が寝ていた。歳は俺と同じか少し年下だな。

 

「あれ?貴方は」

 

「よう。俺もお前と一緒で、神と名乗る女神から転生させられたんだよ」

 

「そうだったんですか。俺は望月冬夜って言います」

 

「冬夜か。俺は谷川飛翔だ」

 

冬夜「谷川さんですね」

 

飛翔「あ~、堅苦しいから名前で頼む」

 

冬夜「分かりました飛翔さん!」

 

お互い挨拶も終わったし、これからどうすっかな。

 

飛翔「とにかく、こんな場所にいるより人がいる場所に行かなきゃな」

 

冬夜「そうですね」

 

すると、どこからか着信音が聞こえてくる。冬夜を見ると、ポケットからスマホを取り出していた。

 

飛翔(この世界でスマホ?使えるのか?)

 

電話が終わり、スマホの事を冬夜に聞く。

 

冬夜「ああ、これは神様からの特典でお願いしたんですよ」

 

飛翔「特典でスマホって、欲がねぇんだな」

 

冬夜「飛翔さんは、何を貰ったんですか?」

 

冬夜は逆に俺が貰った特典を聞く。

 

飛翔「色々だよ。随分気前のいい女神でな。ま、特典は追々教えてやるよ。で、どうすんだこれから」

 

冬夜「えっと…ちょっと待ってください」

 

すると冬夜は、スマホをいじりだす。

 

冬夜「マップを見た感じ、西の方に町があるみたいです」

 

飛翔「なら、とにかくその町に向かうとするか」

 

冬夜「そうですね」

 

そして俺達は、冬夜のスマホを頼りに歩き始めたのだった。果たしてこれから、どんな事が起きることやら。ま、退屈はしなさそうだな。



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2話

暫く歩いてると、冬夜があることに気づく。

 

冬夜「飛翔さん、今思ったんですけど」

 

飛翔「あ?」

 

冬夜「町に着いたところで、僕達この世界のお金持ってませんよ」

 

飛翔「……」

 

そう言われ俺は言葉を失う。そうだよ!新しい世界に転生して、前の世界の金が使えるわけないわな!

 

飛翔「すっかり忘れてたな」

 

忘れてた事に頭を抱える。…ん?待てよ。けど冷静に考えて、別に金が無くても衣食住には困らんよな。女神に貰った特典の1つを使えば。

 

飛翔「冬夜」

 

冬夜「はい?」

 

飛翔「確かに俺達は、この世界の金は持ってねぇ。だが、別に持ってなくても衣食住には困らんぞ」

 

冬夜「どうしてです?」

 

飛翔「俺の特典で、それは全てカバーできるからだ」

 

冬夜「へ~!飛翔さんはそんな特典を貰ったんですか」

 

俺の言葉に冬夜は目をキラキラさせている。いや、そこまで大袈裟なリアクションせんでも。すると、俺達の後方から馬車が走ってきた。その馬車は、テレビで見た事のある、いかにも金持ちや貴族が乗りそうな見た目なのであった。

 

冬夜「少し端によりましょうか」

 

飛翔「だな」

 

俺達は邪魔にならないよう、道の端に寄る。そのまま馬車は通り過ぎていった…と思った瞬間、俺達の少し先で止まった。

 

「そこの君達!」

 

馬車から出てきたのは、髭が生えた小さなおっさんが降りてきた。そのおっさんは、俺達の事をジロジロ見だした。なんか気分悪いな。

 

冬夜「な、なにか…」

 

「こ、この服はどこで手にいれたのかね!?」

 

俺達を見てたんじゃなくて、俺達が着てる服に興味あったのかよ。けど普通に考えれば、この世界じゃ珍しいか。

 

「見たことのないデザインだ。それにこの縫製…一体どうやって…」

 

冬夜「飛翔さん」

 

すると冬夜は俺に声をかける。その時俺は、多分冬夜と同じ事を考えてたな。

 

飛翔「なるほど。なら、話はお前に任せる。余程の事がない限り、俺は口を挟まねぇからよ」

 

冬夜「分かりました」

 

そして冬夜は、おっさんと話始めた。暫くすると、冬夜が戻ってきた。

 

冬夜「お待たせしました」

 

飛翔「それで?」

 

冬夜「はい、僕の服を売る代わりに町まで乗せていってくれるそうです。代わりの服も用意してくれるみたいです」

 

飛翔「そうか。けど、どうせ俺が着てる服も売ってくれって頼まれたんだろ」

 

冬夜「あはは~…」

 

やれやれ。ま、別にいいけどよ。値段は冬夜が売った値段5倍で売るか。そして俺達は馬車に乗り、町に連れてってもらった。町に到着し、馬車は一軒の店の前に止まった。因みにおっさんの名前はザナックっていうそうだ。

 

ザナック「ここで服を揃えよう」

 

そして中に入る。

 

「お帰りなさいませオーナー」

 

ザナック「おい誰か、彼に合う服を見繕ってくれ」

 

冬夜「オーナー?」

 

ザナック「ここは私の店なんだよ」

 

なるほど。俺達の服を仕入れ、尚且つタダとはいえ自分の店の商品を渡す。抜け目ねぇなこのおっさん。で、結局冬夜は下着以外の全てを渡した。というか完全に追い剥ぎだろあれ。

 

ザナック「また新しい服を手に入れたら、是非持ってきてくれたまえ」

 

更に要求してきたな。ちゃっかりしてやがる。

 

冬夜「は、はい。ところで、この町に宿屋のような場所はありませんかね?」

 

飛翔「だな。日が暮れる前に寝場所は確保しておきたいな」

 

ザナック「宿屋ならこの先の大通りを右手に真っ直ぐ行けば一軒あるよ。【銀月】って看板が出てるからすぐ分かる」

 

そして俺達は、教えてもらった宿屋銀月を目指すのであった。

 

冬夜「宿屋銀月…ってかあの看板、【ファッションキングザナック】って書いてあったのか」

 

飛翔「すげ~ネーミングセンスだな…」

 

ファッションキングって…

 

冬夜「ところで、飛翔さんはいくらで服を売ったんですか?」

 

飛翔「俺か?確か冬夜は金貨10枚だったよな?」

 

冬夜「そうです」

 

飛翔「元々決めてたんだよ。お前の5倍で売るってな」

 

冬夜「5倍って…金貨50枚!?」

 

流石に枚数を聞いたら驚くか。

 

飛翔「ま、安く売るつもりはなかったからな」

 

冬夜「ひえ~」

 

そんな話をしながら歩いてると、路地裏から声が聞こえてきた。

 

「約束が違うわ!代金は金貨1枚だったはずよ!!」

 

冬夜「なんだろ?」

 

冬夜は気になり、声がした方に向かった。

 

飛翔「やれやれ、面倒な事になりそうだな」

 

俺は呆れつつも、冬夜の後を追いかけた。路地裏を見ると、いかにもガラの悪い男が2人、女性2人に絡んでいた。見た目は俺達と同じくらいか?

 

「見ろ、ここに傷があるだろ?だから銀貨なのさ。おらよ」

 

すると男は、1枚の銀貨をあいつらの前に投げた。

 

「たったの1枚!?そんな小さな傷、傷物の内に入らないわよ!!」

 

「お姉ちゃん」

 

「…もういい、お金はいらない。その角を返してもらうわ」

 

ロングヘアーの方がそう言う。

 

「おっと、そうはいかねぇ。もうこれはこっちのモンだ♪」

 

なるほど、女だから甘く見てるな。やれやれ、どの世界にもこんな連中はいるんだな。

 

冬夜「飛翔さん」

 

飛翔「ま、見て見ぬふりは気分が悪いからな」

 

そして俺達は、4人の所に行く。

 

冬夜「お取り込み中すみません。ちょっといいですか?」

 

「なんだてめぇら」

 

「何のようだ!」

 

飛翔「お前らに用はねぇ。俺達が用があるのは向こうだ」

 

「私達?」

 

突然出てきた俺達に対し、疑問の表情をする。ま、絡まれていきなり話しかけられればな。

 

冬夜「その角、金貨1枚で僕に売ってもらえないかと」

 

「…売るわ!」

 

飛翔「なら、後は俺達の自由だな」

 

冬夜「そうですね」

 

冬夜は地面にあった石ころを投げ、男が持ってた角を粉々にした。

 

「な、何しやがる!!」

 

冬夜「それはもう、僕達の物だから」

 

「ヤロー!!」

 

もう1人が冬夜に襲い掛かる。が、こいつも俺同様神に身体能力その他諸々底上げされてるから、この程度のザコ問題ないだろ。なら俺は、もう1人の相手でもするか。

 

飛翔「おい、男が女に手ぇ出してんじゃね~ぞ。首肉(コリエ)シュート!!」

 

「ぶげら!!」

 

男の顔が、見事地面に埋もれたのだった。

 

飛翔「って一撃かよ!?」

 

そこまで力いれてないんだけどなぁ。軟弱すぎるだろ。

 

飛翔「まぁいいか。おい、無事か?」

 

「え、ええ…」

 

「だ、大丈夫です」

 

どうやら2人とも無事らしい。見ると冬夜の方も終わっていた。

 

冬夜「お疲れ様です」

 

飛翔「お前もな」

 

すると冬夜は、先程約束した金貨1枚を渡した。

 

冬夜「はい、金貨1枚」

 

「いいの?私達は助かるけど」

 

飛翔「気にするな。砕いたのはこいつだし、キチンと約束したんだ。例え口約束でも、約束を破るなんてチョーしにのったことはしねぇよ」

 

冬夜「その通り。構わないから受け取ってよ」

 

「じゃあ、遠慮なく」

 

ロングヘアーの方が、そう言いながら金貨を受け取った。

 

「助けてくれてありがとう。私はエルゼ・シルエスカ、此方は双子の妹のリンゼ・シルエスカよ」

 

リンゼ「ありがとうございました」

 

ショートヘアーの方が丁寧にお礼を言う。

 

冬夜「僕は望月冬夜」

 

飛翔「俺は谷川飛翔だ」

 

エルゼ「望月?谷川?珍しい名前ね」

 

冬夜「あ、名前が冬夜で、望月は名字」

 

飛翔「俺も同じだ。名前が飛翔で名字が谷川だ」

 

この世界じゃ、珍しいって言われても仕方ねぇな。

 

エルゼ「へ~、名前と家名が逆なんだ。イーシェンの人?」

 

冬夜「イーシェン?」

 

飛翔「ま、そんなところだ」

 

どうやら、この世界にも日本と似たような場所があるみたいだな。

 

エルゼ「この町へは何しに?」

 

冬夜「えっと、まずは【銀月】って宿屋を探して、それから考えようかと。ね、飛翔さん」

 

飛翔「ああ」

 

急に此方に話かけるなよな。

 

エルゼ「銀月って」

 

リンゼ「私達が泊まってる宿ですよ」

 

そうなのか。なら丁度いい。

 

飛翔「悪いが、銀月に案内してくれないか?まだこの町に来たばかりで、場所が分からねぇんだよ」

 

エルゼ「勿論いいわよ!」

 

リンゼ「はい」

 

そして俺達は、エルゼとリンゼの案内で宿屋銀月に向かうのだった。リンゼ達の案内で、俺達は無事に宿屋【銀月】に到着したのだ。

 

飛翔「1泊いくらだ?」

 

「ウチは1泊、朝昼晩食事付きで銅貨2枚だよ。前払いだけどね」

 

飛翔「なら、俺達2人金貨2枚で泊まれるだけ頼む」

 

「はいよ。金貨2枚なら、2人で50泊だね」

 

飛翔「流石に長いな。なら、2人とも1ヶ月分で頼む」

 

そう言い、俺は自分の財布から金貨2枚を出す。

 

「はいよ、1ヶ月ね。最近お客さんが少なかったから助かるわ♪ちょっと今銀貨切らしてるから、悪いけど銅貨でお釣りね」

 

そして俺はお釣の銅貨80枚を受け取った。1人辺り、1ヶ月銅貨60枚か。小銭が増えたな。ま、四次元ポケットに入れておけば問題ないか。

 

エルゼ「チェックイン終わった?」

 

冬夜「うん、今済んだとこ」

 

リンゼ「でしたら、ご一緒にお茶などどうでしょう」

 

エルゼ「いいわね」

 

「あら、あなた達知り合いなの?なに、もう男引っ掻けたの♪」

 

エルゼ「そ、そんなんじゃないわよ!」

 

そして茶に誘われた俺達は、他愛ない話をしだす。2人は紅茶で冬夜と俺は緑茶だ。けど、この世界に緑茶あるんだな。因みに、先程話したのは、この宿の娘であるミカって名前らしい。

 

エルゼ「全く、今日は酷い目にあったわ。な~んか、胡散臭いな~とは思っていたんだけどさ」

 

リンゼ「だから止めようって私は反対したのに…お姉ちゃん、言うこと聞いてくれないから」

 

リンゼって苦労してるんだな。エルゼの場合、考えるより先に行動ってタイプだしな。姉がこんなんじゃ、妹の方がしっかりするはずだ。

 

冬夜「2人は何であいつらの依頼を受けたの?」

 

エルゼ「ちょっとしたツテでね。あたし達、前に水晶鹿を倒して角を手に入れてたんだけど、欲しいって話がきたから丁度いいやって思ってさ。でもダメね~。やっぱりギルドとか、ちゃんとした所からの依頼受けないと、やっぱりトラブルに巻き込まれるのね」

 

ギルドか。なるほど、だから町中歩いてて武器を持ってる連中が沢山いたって訳か。

 

エルゼ「この機会にギルドに登録しよっか、

リンゼ」

 

リンゼ「その方がいいと思う。安全第一、明日にでも登録に行こう」

 

ギルドに登録か。ギルドに登録しておけば、金には困らんだろ。この金もいつまでももたないしな。

 

冬夜「良かったら明日、着いていっていいかな?僕もギルドに登録したいんだ」

 

冬夜がエルゼ達にそう言う。俺と考えは同じって事か。

 

飛翔「俺の登録しとくか。流石に金はあるが、働かねぇと資金もいつか尽きるしな」

 

エルゼ「なら、明日一緒に行きましょう」

 

リンゼ「はい、一緒に行きましょう」

 

そして俺達は、明日宿屋の前で集合することを決め、今日は眠りにつくのだった。



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3話

翌日、俺達4人は登録するためギルドにやって来た。

 

エルゼ「早速登録しましょ」

 

冬夜「そうだね」

 

受付にいる女性に話しかける。

 

冬夜「すみません。ギルド登録をしたいんですけど」

 

「はい。かしこまりました。そちらの方達を含め、四名様でございますか?」

 

飛翔「ああそうだ」

 

「四名様とも、ギルド登録は初めてでしょうか?よろしければ、簡単に登録の説明をさせていただきますが」

 

冬夜「宜しくお願いします」

 

そして俺達は、受付嬢からギルド登録等について説明してもらった。基本的に依頼者の仕事を紹介してその仲介料を取る。それがギルドだそうだ。仕事はその難易度によってランク分けされているらしく、下級ランクの者が上級ランクの仕事を受けることはできない。だが、同行者の半数が上位ランクに達していれば、下位ランクの者がいても、上位ランクの仕事を受けることができるそうだ。それに関しては、昔遊んだゲームと一緒みたいだな。依頼を完了すれば報酬がもらえるが、もしも依頼に失敗した場合、違約料が発生することがある。そらそうか。自分のレベルにあった依頼を受けなきゃな。さらに数回依頼に失敗し、悪質だと判断された場合、ギルド登録を抹消というペナルティも課せられるそうだ。そうなると、もうどの町のどこのギルドも再登録はしてくれないらしい。他に、五年間依頼をひとつも受けないと登録失効になる、複数の依頼は受けられない、討伐依頼は依頼書指定の地域以外で狩っても無効、基本、ギルドは冒険者同士の個人的な争いには不介入、ただし、ギルドに不利益をもたらすと判断された場合は別…と、いろいろ説明された。

 

「以上で説明を終わらせていただきます。分からない事があれば、その都度係の者にお尋ね下さい」

 

リンゼ「分かりました」

 

「では、此方の用紙にご記入下さい」

 

簡単って言った割には、随分と長かったな。さて、ここで1つ問題だ。俺と冬夜は日本からこの世界に転生した。ということは、当然この世界の読み書きができるわけない。まぁ、読むに関しては秘密道具を使えば済むが、流石に書くのは…結局、冬夜はエルゼに、俺はリンゼに代筆を頼んだのだった。情けねぇ…そして記入した用紙を渡すと、受付嬢は黒いカードをその上に翳し、ブツブツと呪文らしいものを唱え始めた。そして何故か血が必要と言われ、俺達はピン先で指を少し切り、カードに押し当てた。なんかN○R○T○の“口寄せの術”みたいだな。

 

「はい、これで登録は完了です。このギルドカードは、ご本人以外が触れますと、数十秒で灰色になる魔が付与されております」

 

飛翔「何でそんな事を?」

 

「偽造防止の為ですね。また、紛失された場合は速やかにギルドに申し出て下さい。お金はかかりますが、再発行させていただきますので」

 

冬夜「ありがとうございます」

 

そして登録を済ませた俺達は、受付横にある依頼ボードで受ける仕事を探す。 エルゼとリンゼは、どの依頼にするか話ながら選んでるな。その点、俺と冬夜は…

 

冬夜「マズイ…本格的に読み書きをどうにかしないと」

 

俺と同じで、読めないからただ突っ立ってるだけだな。仕方ねぇ、早速初めての秘密道具を使うか。

 

飛翔「ほんやくコンニャク~」タタタタン♪

 

やっぱり秘密道具を出す時は、この台詞と音楽だよな~♪

 

冬夜「ど、どうしたの飛翔さん…急にド○え○んみたいな声だして」

 

飛翔「…気にするな。それより冬夜、これを食え。書くことは無理だが、読むことはできるだろうさ」

 

冬夜「これって…」

 

冬夜は俺が出したコンニャクを見つめる。言いたいことは分かるよ。で、取り合えず俺達はほんやくコンニャクを食べる。すると当然、今まで読めなかった文字が読めるようになる。

 

飛翔「取り合えず、これで読むのは問題ないな」

 

冬夜「そうですね。だけど驚きました。飛翔さんの特典が、まさか秘密道具だったなんて」

 

飛翔「貰った特典の1つだけどな。暫くは色々と役立つだろうよ」

 

エルゼ「ねぇ」

 

すると、エルゼが1枚の依頼書を持ってやって来た。

 

エルゼ「これなんてどうかしら?初心者にはもってこいだと思うのよ」

 

飛翔「何々…『東の森で魔獣の討伐。一角狼を五匹、報酬は銅貨20枚』か」

 

エルゼ「なんなら、私達とパーティ組む?あんた達強いから心強いし♪」

 

リンゼ「うんうん」

 

エルゼの提案にリンゼが頷く。

 

冬夜「是非」

 

飛翔「だな」

 

エルゼ「分かった。それじゃあ受け付けに申請してくる」

 

こうして俺と冬夜は、エルゼ達とパーティを組むことにしたのだった。

 

冬夜「あっ」

 

リンゼ「どうしました?」

 

冬夜「僕、武器とか持ってない」

 

リンゼ「えっ!?ええ~」

 

飛翔「そう言えば俺もだな」

 

特典の1つの【秘密道具】はあるけど、普通の武器でどこまで戦えるか知りたいしな。そして申請を済ませたエルゼが戻ってき、先程の事を説明して出発前に俺達の武器を買うことにした。武器防具屋は、冬夜のスマホで簡単に見つかった。店に行き中に入ると色々な武器や防具が飾られていた。

 

「らっしゃい、何をお探しで」

 

店の置くからかなりガタイのいいオヤジが出てきた。毛深いしパッと見熊だな。けど、武器防具屋のオヤジだし、ガタイよくて当然か。

 

エルゼ「この2人に合う武器を探しにね。少し店内を見せてもらうわ」

 

「あいよ、ごゆっくり」

 

俺と冬夜は、それぞれ自分に合いそうな武器を探す。俺にはリンゼ、冬夜にはエルゼがついてる。

 

リンゼ「飛翔さんは、どんな武器がいいんですか?」

 

飛翔「そうだな~」

 

武器か~。どうするかな…ゾロとかみたいに日本刀もいいし、ミホークのような剣、ランサーみたいに槍、拳で殴るのもいいな。けど…やっぱり刀だな。すると、店の壁に前世で見た日本刀が飾ってあった。それを手に取ろうとすると、冬夜とぶつかる。どうやら、冬夜もこれがいいみたいだな。

 

飛翔「見事に被ったか」

 

冬夜「みたいですね」

 

どうするかな。見た感じ、これはこの1本だけみたいだが…

 

飛翔「なぁ、この刀って他にもあるのか?」

 

「悪いが、ウチの店にあるのはその1本だけだ」

 

冬夜「因みに値段は?」

 

「1本金貨2枚だ」

 

エルゼ「金貨2枚!?高いわね」

 

値段を聞いてエルゼが驚く。

 

「滅多に入手しないからな。使い手も限られるしそんくらいにゃなるさ」

 

冬夜「う~ん…」

 

飛翔「冬夜、買うなら今回はお前に譲るぞ」

 

冬夜「い、いいんですか!?」

 

飛翔「ああ」

 

驚く冬夜に、俺は頷く。

 

リンゼ「ですけど、飛翔さんはどうするんですか?」

 

エルゼ「そうよ!いくらなんでも武器なしは危険だわ!」

 

飛翔「だが、依頼書を見た感じ、そんなデカイ相手じゃないだろ?狼くらいならなんとかなるだろうよ」

 

リンゼ「で、ですが…」

 

飛翔「心配すんなって」

 

こうして、刀は冬夜が買い俺は素手で戦うことになった。特典貰ってるし、狼相手なら武器秘密道具なしでどこまで戦えるか知りたいしな。

 

冬夜「それじゃあ、行きましょうか」

 

エルゼ「そうね」

 

リンゼ「はい!」

 

飛翔「よっしゃ!」

 

冬夜「けど飛翔さん、あまり無理はしないで下さいね。大丈夫とは思いますけど」

 

最後の部分だけ、俺にだけ聞こえる声で話しかけてきた。

 

飛翔「分かってるから心配すんな。女神のお陰で鍛えることもできたしな。使ってみたい技もあんだよ」

 

そして討伐に出発した。さて、どれくらい歯応えがあるか楽しみだな♪



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