番長三女の戦車道 (バンバニッシュF)
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西住なほという女 1話 西住なほ、入学です!

新しく連載始めました。


ここは、とある学園艦の内部に存在する、学校の管理も行き届かないような、いわゆる無法地帯。別名"大洗のヨハネスブルグ"。


1人は未成年にも関わらず酒を飲み、

1人は他人と殴り合いの喧嘩を繰り広げ、

1人は授業を無断欠席して仲間とポーカーをし、



そして、彼女は…………


「………………」



コツコツという靴音が響きもしない、悪い意味で騒がしいその空間を、我が物顔で堂々と歩いていた。



「はっ!」

「き、来やがった!」

「ば、馬鹿!道を開けろ!」

「アイツには逆らっちゃいけねえ…」

「例の方がいらっしゃいました!道をお開けなさい!」

ある者は彼女の登場に怯え、ある者は大名行列を避けるように道の脇へと避け、ある者は彼女を崇拝する素振りを見せる。



そして、彼女は学園艦深部にあるバーの一角へと足を踏み入れた。

もっと深部には、どん底という名のバーが存在するが、ここはそれとは無関係だ。





「ようやく高校に入学したんですね」

「お待ちしておりましたぜ」





機甲科の、2人の少女が、足を踏み入れた彼女を拍手で歓迎する。


「待たせたな、お前ら」

彼女はそう呟いた。








「「なほの姉貴」」

「お待ちしておりました」
「待ってたぜ」







『〜番長三女の戦車道〜』





_______________







「また大洗女子学園が賑やかになるなァ!」

1人の少女が叫ぶ。その片手には、黒森峰印のノンアルコールビールが握られていた。

「うるさい、そしてなんでノンアルコールビールでそんな酔ったように盛り上がれるんだ。古河美玲」


古河美玲(こがみれい)、3人の中で1番騒がしい。ムードメーカーな部分がある。
実はFPSゲームがめちゃくちゃ上手く、仲間との連携で次々と確実に敵を仕留める有名なプレイヤーでもある。


「黒森峰のノンアルコールビールはなぁ!世界一なんだよ!分かるか鹿島紀香!」


鹿島紀香(かしまのりか)

なほや美玲のストッパー役を務めることもある。なほに強い尊敬を抱いている。
現在高2でなほより年上だが、その尊敬は本物だ。
バイクの操縦技術は確かで、この世界では14からバイクの免許が取れるため、その頃からバイクを乗り回していた。



「まあ、2人とも嬉しいよ。それよりも、私がいない間に勉強の方はどうなった?」


「「……………………」」


その瞬間2人は黙り込んだ。2人は顔を合わせ、汗を噴き出し、なほから顔を逸らす。




「私がいない間に結構サボってたみたいだね…」

「はい」

「ひぇ…」


美玲と紀香は、インテリ女番長のなほの犠牲になったのだった。



「元黒森峰生徒の学力の暴力…」

ボソッと呟く美玲。



「はいはい在籍してたのは初等部のたったの6年だからそれからは私は自力でやってるよ」

そう、なほは元黒森峰女学院初等部の生徒なのだ。

「まあ、とはいえその頃の勉強癖が抜けきらなくてね…。尤も、勉強は自主的にやってたけどね」

「鬼畜…。微積分なんてどうやればいいんだよ…」

「はいはい、頑張ろうね」


その日、大洗女子学園艦の深部はまた1つ賑やかになったという。




___________________



「廃艦…だってね…」

「大洗女子学園は今年度をもって廃校になるんですか…」

「なんでなんですか会長!大洗女子学園が…」


大洗女子学園生徒会室。学校へ大きな影響力を持つ生徒会の3人が、大洗女子学園の廃校の報せをきいて、呆然としていた。


「…大洗女子学園はここ最近過疎化で生徒数の減少が著しく、数年目立った部活や校内活動がないから…だってさ…はは」

乾いた笑いをする生徒会長。


「そんな…」





そんな時、生徒会長がふと思いついたことを口にした。

「そういえば20年前にこの学校戦車道やってたよね」

干し芋を片手に、生徒会長が呟く。



「会長!?」

「戦車道大会で優勝でもすれば廃校は免れるでしょ〜」


無茶な提案に、会長を除く生徒会のメンバーは、ただ驚きを隠せなかった。


「かいちょー!いきなり優勝なんて無茶です!」






「まあ、秘策みたいなのはあるのさ」






「会長、干し芋食べた手を机になびらないでください」

「いいからいいから」




会長は、2つの書類を取り出した。





「西住三姉妹のうち、まさか2人がこの学校に来てくれるなんてねぇ…」

机の上の書類にはこう書かれていた。



編入届け 西住みほ
機甲科入学生徒 西住なほ


「今年度が楽しみだね…」


会長はニヤリと笑みを浮かべた。



設定ミスにより、なほを黒森峰初等部の元生徒に変更。

また、本来大洗女子には機甲科は存在しません。


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2話 みほ編入です!

_______________


「貴女は…西住流に泥を塗るつもり?」

やめて

「なほに留まらず貴女まで…」

なほは関係ない

「戦車道に犠牲は付き物。仲間の救出より貴女がすべきだったことは…」

戦車道は戦争じゃない

「なほは西住流を逃げ出した。貴女もなほと同じ場所へ行って頭を冷やしてきなさい…」


違う…なほは……




















「うわぁ!」

窓から照りつける日光。昨日の大洗女子学園入学式は新1年生のみの参加であったが、本日は在校生含め、全校生徒で始業式となる。

その朝、"西住みほ"は大洗女子学園艦のとあるアパートの一室にて目覚めた。

「はぁはぁはぁ……汗でぐっしょり…」

思い出したくもない悪夢を見た西住みほは、汗だくで朝を迎える。


「編入生も、今日から登校でいいんだよね?」

西住みほは、今年度より大洗女子学園に編入となったため、新1年生ではない故に昨日の入学式への出席は不要であるが、今日からは学校生活が始まるのである。

「シャワー浴びて早く行かないと…」


運命のイタズラか、西住みほは西住なほを追いかける形で、大洗女子学園にやって来たのであった。


_______________________


「なほ姉貴!今日も来てくれたんすか!」

「姉貴、友人出来ました?」

なほは昼休み、美玲や紀香のいる学園艦深部もとい大洗のヨハネスブルグの一角を訪れていた。

「来てやったぞ。友人は残念ながらまだできてないな。午前中はオリエンテーションだけだったからな」

弁当を片手に、なほは2人との会話に花を咲かせていた。

「それに、お前らがいるからいなくても寂しくはないよ」

それを訊いた2人は、


「「姉貴ィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」」

なほに思い切り抱きついた。この2人は本当になほのことが大好きなのだ。




「そうだ、午後に生徒会から重大発表をするから全校生徒は体育館に集まれだそうだ。お前ら、生徒会に単位の件で世話になってるんだから勿論参加するよな?」

「「え」」

美玲と紀香の2人は、自分らが単位の件で生徒会に世話になってることがなほにバレているとは思わず、冷や汗を浮かべていた。




「お前ら…いい加減にしろよ?私はお前らのことで知らないことはほぼ無いぞ?」



「「ひぃ!」」

2人が思い切り縮こまる。








ピリリリリィ~♪



「……悪いな2人とも、電話だ」


「「ホッ」」

なほの電話に救われた2人だった。


「さて、相手は………!?」




携帯に表示されている、相手の名前になほは思わず目を疑った。





"西住まほ"




ピッ




『もしもし、まほだが』
「まほ姉!久しぶり!殆ど連絡してこなかったから辛かったよ〜〜
なに!今回はどんなお話するの!?」


先程の厳格な素振りを見せたなほとは打って変わって、まるで主人に甘えるペットのように、なほはまほの電話に出た。

『………今回は重要な件だ』


「まほ………姉………」


いつもならやれやれ節でなほの話を聞いてくれるまほだが、今回ばかりは重苦しい雰囲気を纏い、お遊び雰囲気は一切醸し出していなかった。











『みほが大洗女子学園に今年度から編入することになった』





「え…」




『…今回電話したのはその件だ』














「やっぱり、()()決勝でのことが……」




『見てくれていたのか。あぁ、あの事件がお母様の逆鱗に触れた…』







「まほ姉やみほ姉は私が()()された以降も、ずっとこっそり応援してるよ。でも…、もう、みほ姉は戦車から距離を置くんだね」





『あぁ、その通りだ』


なほは思わず下唇を噛んだ。



「あのクソババア(母親)…、家族のことを何とも思っちゃいねえな…」


なほは独り言のように、携帯から口を離して呟いた。





『…まあ、なほの気持ちは分からないこともない。ただ、みほを頼んだ。私が伝えたかったのはそれだけだ…』





「……分かった。じゃあまたね」


なほは電話を切った。

しかしこの電話が、後に姉妹を切り裂く引き金の一部となることを、なほもまほも知る由もなかった。



_____________________



「じゃあ、私と一緒に行こうか」

「「ハイ」」

美玲と紀香の2人を単位不足の件で精神的に意気消沈させたなほは、美玲と紀香と共に学園艦上部へと戻った。



「みほ姉…」

なほはただ、あの事件以降心に深い傷を負ったみほの安否が気になって仕方がなかった。

学園艦内部をある程度知っているなほは、午後の授業に間に合うようにある程度ルートを選んでいた。

「…さっきから元気ないすよ姉貴」

「そうです、姉貴はいつもの豪快さがないと…」

「…お前ら」


なほは、怒りや悲しみが態度に出ていたことに気づき、取り繕おうと試みた。


「姉貴、いつでも力になるからよ」

「いつでも私らを頼ってください」

なほの取り繕いは、関係の長い2人には見破られてしまう。
けれど、なほに深く触れようとすることはない。

2人は、この時は深くなほの事情に入り込む時じゃないことを理解した。
長い関係だからこそ、そういった加減が分かるのだ。


ある意味、3人は最高の結束力を持った親友なのだ。


「お前が西住なほだな」

「!?」

体育館までの道を歩くなほたちの前を、突如現れた3人が立ちふさがった。


「あぁ失礼、私たちは生徒会さ。先に結論から言うけど、西住なほさん、今年度から戦車道復活するんだけど、戦車道履修取ってね」

「やだ」

「拒否権はないよ〜。じゃあね〜」

なほたちの目の前に突如現れ、言いたいことだけを話して去っていく生徒会。それに対しなほは、ただ気合いの篭ってない声で一声「やだ」と拒否するだけだった。

けど、生徒会が完全に去った後、なほの様子は一変した。




「…なほ姉貴」

美玲がなほの様子を窺った。




「ひぃ!」

その時のなほは、拳から血を流すほど、怒りに燃えていた。



「まさかアイツら…みほ姉にも同じことを…!」


なほは拳を固めながら、美玲と紀香の方を1度も振り返ることなく、ただ全力で全校集会の行われる体育館へと急いだ。



※なほはシスコンです

あとなんか熱い女番長の友情物語みたいになってきた…w


~追記~

修正加えました。
おかしいところがなければ良いのですが…。

また、このまま行くと極道要素が消滅するということでタイトルも変更しました。
今後ともよろしくお願いします。


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3話 姉妹再会です!

タイトルを変えましたが、やはり極道の意味が多種多様すぎて、上手くタイトルが定まらないです。もういっそこの小説見てる人に決めてもらおう。

というわけで心優しい方は活動報告で意見を下されば幸いです。




『戦車道は…乙女の嗜みの………』

生徒会主体による全校生徒向けの集会にて、戦車道についてのビデオが体育館の巨大なモニターに爆音で映されていた。

「チッ」

「姉貴…」

「間違いない、今のなほ姉貴は相当ご立腹だ…」

そんな中なほは、生徒会との対面以降とても機嫌を悪くしており、ビデオなど最初から見る気もなくバツが悪そうにずっと胡座をかいて生徒会を遠くから睨み続けていた。
全校生徒に向けた今年度より大洗女子学園で復活する戦車道のオリエンテーション集会の中、なほの殺気はドンドン拡大し、1年生の位置を越えて2年の美玲や紀香の場所まで漂っていた。



「姉貴は…戦車道をやりたくないのか?」

「姉貴がかなりご立腹だが…なんでだ?戦車に親でも殺された?」

そんななほの様子を目にした美玲と紀香の2人は、不良特有の頭の悪さから来る勘違いで、それぞれ勝手な憶測を立てていた。


_______________





「………」

全校生徒向けの戦車道オリエンテーションが終了し、なほのクラスの1人1人にも、今年度の選択必修科目を記入するための用紙が配られる。


「(何も書かないと戦車道を選ばされるんだよなぁ…)」

嫌々ながらもヘマをしないように生徒会の話をしっかりと聞いていたなほは、迷うことなくその用紙の忍道の欄に丸を付けた。



__________________




「やっぱり姉貴は戦車道選ばなかったんですか」

場所は変わって放課後の学園艦深部。治安の悪い学園艦深部に堂々と足を踏み入れたなほは、先にいつもの場所に戻っていた美玲や紀香の元へと合流し、いつものようにノンアルコールビールを頬りながら呑気に談笑していた。

「当然だ、わざわざ危ない道を通るか」

なほの機嫌は元に戻っていたわ

「しっかし姉貴のさっきの殺気は恐ろしかったぜ、なぁ紀香」

「えぇ、けど今の美玲()()()()()でダジャレになってましたがねぇ…」

「ちょ、狙ってねえよ!」

ワッハッハと笑いながらノンアルコールの酒を交わす3人。アルコールなしでも、話が弾めばそれなりに酔ったと同じように陽気になる。

「いやいや、先程の不機嫌さはすまない。今日あのオリエンテーションの後にちゃんと各自に選択希望用紙が配られていたからな。それで戦車道を選ばなきゃ良かった話なんだ…。それならみほ姉も戦車道を自ら進んで選択することは無い。いやいや良かった良かった」


ワハハと笑うなほ。
しかし、美玲と紀香から返ってきた答えは予想を上回るものだった。







「え?そんな用紙配られたの?後日かと思ってた」

「私もです。いきなりその日に即選択なんてこたぁないと思ってたからオリエンテーション終わったらすぐこっち戻ってきちまいましたよ」


「は?」


予想の斜め下をいく2人の発言に、なほは開いた口が塞がらなかった。


「え?なんか変なこと言いました?」

「っつーか姉貴の殺気が強すぎてオリエンテーションの内容全く頭に入ってこなかったぜ、なぁ?紀香?」

「そうですよねぇ、はっはっは…」

なほの目の色が変わった。



_____________________


「お前らアホか。あの『大事な事なので1度しか言いません』的矛盾常習犯の悪どい生徒会なんだからちゃんと話は聞いとけ」

「「スイマセンデシタ…」」

2人の頭部にはとても大きなたんこぶが出来ていた。


「用紙未提出だと強制的に戦車道になるんだぞ。私は折角忌々しい戦車道を避けて忍道を選択したのにお前らアホ中のアホか!」

「姉貴、…ってことは用紙書いて提出した姉貴だけ別で忍道やることになるのか?」

「そういう認識で合ってると思う」

「うぅ…」

「そんな…」

美玲と紀香はガックリと膝をついた。



「お前らの馬鹿さにはつくづく呆れる…」

「「返す言葉もない(です)」」

やれやれと溜息を付くなほ。
すると突然、今まで結構重要事項なことでもスルーされてきた学園艦深部に、久々の校内放送が響き渡った。





『1年機甲科"西住なほ" 2年普通Ⅱ科"西住みほ" 会長命令だ。至急生徒会室まで来い』





「これは…?」

「…まさか…姉貴を姉貴の姉貴と同時に呼びつけるとは…」

その瞬間、再びなほに殺気が宿った。


「生徒会…まさか…ね……」

なほのその口調には、明らかに殺意なるものが混ざっていた。



「…おまえら」

「は、はい!」
「あ、姉貴…」







「一緒に行くぞ」

_____________________




なほたちは治安の悪い学園艦深部より、しっかり管理のなされている外へと続く道を歩き、学園艦深部を隠し通路を利用して脱出して近くの校内エレベーターに乗り込む。

ここを利用すれば、10分もしないうちになほたちの学園艦深部拠点から大洗女子学園の校舎まで辿り着くことが出来るためである。

勿論、そのルートを知る者は極僅かで、基本的に学園艦深部、"大洗のヨハネスブルグ"と生徒会の目が行き届いている地上エリアは全くの別世界である。


「さて」

そこからはすぐに生徒会室が3人の目に入った。


「姉貴…」

「行っちゃいますか?」





「行くぞ」









「来てやったぜ生徒会!」

なほは生徒会室の扉を物凄く強い力で開けた。



「…待っていたよ〜、西住なほ〜」

身長と対比しても明らかに大きすぎるデスクと椅子より、なほたちに手をプラプラとやる気なさそうに振る、現大洗女子学園生徒会長の姿がそこにはあった。

そしてそこには、











「…みほ姉」

「なほ…」



金輪際顔を合わせることもないと思っていた1つ上の姉に、なほは再会したのだった。


「はいはい感動の再会は後にしてね〜」

「貴様、なんで呼ばれたか分かっているな?」

「………」

片目グラスをした気の強そうな女を相手に、なほは無言を貫いた。



「…貴様、何黙っている!答えろ!」

やがて痺れを切らした片目グラスの女がなほに対して、耳元で命令口調で叫んだ。




「…うっせえぞ!」

「へっ!」

なほの逆鱗に触れた気の強そうな生徒会の片目グラスは、なほによって頭を鷲掴みにされ、そのまま空中に持ち上げられていた。



「テメェら生徒会には言いてえことが山ほどあるんだよ!」


そう叫んだなほはその手をパッと離し、解放された涙目の生徒会の片目グラス女は重力に従って背中から地面に落ちた。


片目グラスの生徒会の女子は超絶的な痛みにより顔や体を抑えて、美玲と紀香を除く周囲の人間に至ってはその光景にただただ唖然とするしか出来なかった。



「あーあ…、これはなほ姉貴ブチギレてるよ…」

「生徒会さん、無事で済めばいいですけどねぇ……」

美玲と紀香に至っても、ブチギレたなほを目の前に、ただ同情を口にする程度のことしか出来なかった。



※割とこの作品はシリアス以外にコメディ多め。
べる○バブみたいに面白い不良がちょこちょこ出てくるため。

はい、修羅場勃発です\(^o^)/


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4話 修羅場です!

「テメェら生徒会には言いてえことが山ほどあるんだよ!」

なほが手を離すと、片目グラスの女は落下。


「(桃先輩…)」

「(姉貴もこえーし、言い出せねえ…)」

一方で紀香と美玲の2人。
この2人、実は1年生の時、単位問題の件で幾らか片目グラスの女もとい桃先輩に借りがある。

だがしかし、ブチギレたなほはとんでもなく怖いため、なかなか言い出せないのも事実であった。


_______________



みほside


生徒会に呼ばれていきなり戦車道をなぜ取らないのかと言い詰められていた時にやって来たのは、懐かしい人。

久々に顔を合わせた私の妹、なほ。
私が学園艦に移住してから殆ど会ってなかったから、実に4年振りの再会。



でも、なほはあの頃と違って変わり果てていた。


その姿は、まるで番長。


2人の仲間を引き連れて生徒会室に入るなり、いきなり生徒会の1人の顔を鷲掴みにする腕力。
姉妹で1番筋肉質だったけど、まさかそこまで強くなっていたとは思ってもいなかった。

けど、私が1番気になったのは………












…なほは、そんなことする子じゃなかった。



いきなり生徒会室に来ては荒々しい口調で生徒会に暴力的な行為を…。


()()()、私がなほをしっかりと抱きしめていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。
まほお姉ちゃんだって、未だにあの時全く相手にできなかったことを後悔している。


()()以来、私たち姉妹には見えない亀裂が入ってしまった。


みほsideout

_______________



「おい、そこの片目グラス女、なんで呼ばれたか分かっているな?から入るんじゃねえ!私らはエスパーじゃねえんだ。ちゃんとその口で言え!」

なほは床に落ちた涙目の片目グラス女もとい桃の顔を再度掴むと、口を指さして怒鳴りつけた。

「うぅ…ぐす……」

桃は耐えられず本格的に泣き出した。

「あ?最初強気にきいてきた癖に泣いてんじゃねえぞ!泣いたら許されると思ってんのか!! 許されるもんじゃねんだよ!」


「(だめだ…姉貴見てらんねえよ…)」

「(いい加減止めましょうか)」

「「姉「なほ!」」」

紀香や美玲より先に、みほが2人より大きな声でなほを止めた。



「…みほ姉」

なほは掴んでいた桃の頭を離した。


「かいちょぉ〜〜〜〜」

その後、桃は生徒会長の元へと泣きながら駆け出していった。
だが生徒会長は、なほの気迫の凄さに圧倒され、慰めるどころではなかった。



「なほ、いつからなほはあんな風になっちゃったの!あの頃のなほがお母さんから受けていた言葉、そのまま生徒会にぶつけてどうするの!」

「……………」

みほの言葉に、なほは1度固まった。





だがしかし


「もうあのクソババアのこと思い出したくねんだよ! 西住流?そんなのクソ喰らえだ!西住の名を聞くだけで虫唾が走る!なんで西住に生まれてきた!? 自分がその名字を持って生まれてきたことが忌々しい!私はただ認められたかった。でも、認められなかった。助けられなかった。そんなクソみてえな流派なぞ、潰れちまえばいいんだよ!」

なほは叫んだ。最愛の姉に。

「…なほ」

「みほ姉だって分かるはずだ。去年の戦車道大会の決勝、まほ姉から事情は聞いた。つくづく西住流は私たち姉妹を粉々にしようとしてくる」

みほはそれを聞くと黙り込んでしまった。


「姉貴、ちょっといいですか」

紀香がなほの元へと近づいた。

「私ら2人は、そこの桃先輩に単位の件で昨年世話になってるんです。だから、これ以上生徒会とガチでやりあうのは止めてください。借りがあるんでこの件においては姉貴にも生徒会にも味方出来ません」

「紀香…」

それを聞いたなほは、深呼吸をするとやがて口を開いた。


「すまない、少し頭を冷やすべきだった」

「姉貴、早速生徒会から今回の呼び出しの件を聞きましょう」


紀香によってなほがある程度落ち着いたことで、今まで唖然とするしかなかった生徒会長含めその他大勢が現実に引き戻された。


そして、生徒会長より今回の呼び出しの件について話がされる。

「…早速本題なんだけど、私たちは2人には戦車道取ってねと言った筈なのになんで華道と忍道取ってるの?」

「…やっぱりもう一度ブチギレていいかな?」

そして空気が再び悪くなる。


「え?ワンチャン姉貴戦車乗るんですか!?」

「よし!戦車道選んでおいて良かった〜!」




ゴンゴン




本日2回目のゲンコツが紀香と美玲に振り下ろされた。

しかし、この時周囲は全員2人に対してナイスと思ったとのこと。




「……まあね、戦車道どうしても取ってほしいわけよ」

とここで、強引に話を進める生徒会長。しかし、なほはそれが気にくわなかった。


「選択科目は自由選択。なのにこれでは強制だ。何故ここまでして私らに戦車道を取らせたいか。まず理由を言ってもらおうか?」

「…それは」

生徒会長は黙り込んだ。

「と、ともかく、2人とも戦車道は確定。戦車道とるにあたって遅刻見逃し200日、食券も沢山、単位も数倍取れるからいいでしょ?」

しかし、みほもなほも、首を横に振った。


「私は友人と一緒に華道をやるし…もう戦車は…」

みほはあまり強く言えなかった。ここ辺りがみほとなほとの違いだ。

「…みほさんが戦車道をやるなら私もやります」

「え?」

「私も!みぽりんがやるなら…」

なほの想定外のこととなった。

「なら姉の方は決定だね」

生徒会長もこれを好機と見たのか、みほ本人の意見も聞かずに一方的に決定する素振りを見せた。


「待て待て待て!みほ姉!それでいいのか!? みほ姉は…」


それから、なほは語り出した。


去年、黒森峰vsプラウダの時に起こった事件のことを。

川に落ちた戦車をフラッグ車であったみほが助けに行った結果、プラウダにフラッグ車を撃破されて10連覇することが出来なかったこと。
勝利よりも、チームメイトの命を優先したその姿勢は正しかった筈。みほが助けなかったら間違いなくチームメイトは溺死していたこと。

それなのに、西住流師範である西住しほがチームメイトの命よりも10連覇を優先したため、みほは戦車道から離れてこの学校に来たこと。







「けどさ、取ってくれないとほんと困るんだよね」

生徒会にはなほの声は響かなかった。


「テメェら…やっぱりボロボロにされたいか?」

なほは腕を鳴らした。


「いいの?そこの紀香と美玲の単位?今年度はあげれなくなっちゃうよ?」

紀香と美玲の単位を質に、生徒会長はなほを止めようとした。

しかし、それは逆効果でしかなかった。



「テメェらのそういうところが嫌いなんだよ!」

生徒会長のデスクに踵落としを決めた。
置いていた書類が飛び散り、辺り一面に紙が舞った。



「なほ、もうやめて!私、戦車道やるから!」

みほは思わず叫んだ。もう、変わり果てた妹の姿を見ていられなくなったのだ。


「みほ、ほんとにそれでいいのか!?」

やはり本心で言ってるように感じれなかったなほは、みほに向かって叫ぶように問いた。

「いいの!私だってあの時、なほを助けられなかったから…!だから私がやる!それでなほの方は生徒会、諦めてください!」

みほは心に決めたようにそう叫んだ。



「…そう、なら私からはもう何も言わない。みほ姉を守ることさえ出来れば、それでいい」




「…でもさ、妹のなほにも戦車道やってもらいたいんだよね、何よりなほがそこまでして戦車道をする妹を見ていながら、自身が戦車道をしたくない理由も気になるし〜」

先程の脅しに全く動じていない生徒会長は、干し芋を口にしながらそう呟いた。




「…そうか、ならば語ろう。紀香や美玲も、お前らに話すのもこれが初めてだ」

なほは、語り始めた。



次回から過去編突入です。
なほと西住流の因縁や、紀香と美玲の2人との出会い。
そしてなほがグレた理由についても語ります。


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5話 過去編です! 前編


劇場版のシーンなども入れていきます。

みほの幼少期でリトルアーミーといった外伝本がありますが、作者脚本共に見たことないのでネタとして突っ込むことは無いです。

また、原作崩壊のタグも付けております故、ここ原作と違くね的な箇所も存在します。




時は大きく遡り……



西住なほ 6歳



「アイスハズレ…」

「私も…」


「…当たった、みほとなほ、分けて食べろ」


「わーい、お姉ちゃん大好きー」

「まほ姉ー、好きー」


「はっはっは、2人とも甘えん坊さんだな」

まほ8歳 みほ7歳


3人は戦車に乗って田園広がる田舎町をあちこち遊び回っていた。

3人で泥だらけになったり、II号戦車であちこち行ったり。
疲れたら家の中で3人一緒にぐっすりと眠る。それがお約束だった。


近所の人たちからも、とても仲の良い姉妹といった印象が強かった。





そう、あの日までは……。








まほが10歳になった時、それまでの日常は一変した。







「まほ、貴女は西住流を継ぐ者、長女なんだからしっかりなさい」

「はい、お母様…」

10歳になったと同時に、母親のしほのスパルタ指導が始まった。
けど、それは10歳のまほのみに行われた。



「ごめんなさい…お母様…」

「何度言ったら分かるの!西住流に、撤退の二文字はない!圧倒的火力を持って叩き潰す!なのに貴女はなんで的に当てることができないの…」

その様子を、みほとなほはただ見ていることしか出来なかった。

「私も…来年あんなことになっちゃうの…?」

みほは、まほに対する母親のスパルタ指導に怯えていた。

「…多分。でも、私たち姉妹はずっと一緒だから、これからも…大丈夫だよ…きっと…」

それは、なほが自分に言い聞かせるための言葉でもあった。
来年から、みほもスパルタ指導に付き合わされることとなる。それはまほのことを見ていれば百も承知であった。

「西住流に敗北は許されない」

「はい、お母様…」

そしてまほは、やがて母親に対して服従的になっていった。
幼少期の豊かな感情は薄れ、クールで戦車道のことしか考えられないような、そんな姿に変貌していった。
愛する姉は、洗脳されたかのように戦車道にのめり込んでいった。

かつて近所からもここまで仲の良い姉妹はいないとまでいわれた3人の間には、母親の手によって、触れ合いたくても触れ合うことのできない、見えない壁が貼られてしまった。



その姿や現状は、まだ幼かったなほの心を締め付けるには充分だった。



_______________



1年後



みほもやがて西住流のスパルタ指導の対象となり、なほは1人で過ごすことが多くなった。


「……………」

そんな中、来年から自分も始めるであろう戦車道についてある程度前調べをするため、まほとみほが指導されており、一般公開がなされている西住流の訓練場の見学にやってきたなほは、そこで恐ろしいものを目にする。



『パンター2両前進、ディーガー2両は左右より接近している敵の囮を引き付けて……』



あの頃の楽しい思い出は崩れ去った。今では、戦車道をただ母親兼師範の言うことをきくロボットのように遂行する姉2人の姿。

9歳のなほには、姉のそんな姿を受け入れることが出来なかった。





しかし、そんな項垂れているなほに、話しかけてくる子がいた。

「そんなところで何してるの?」

パンチパーマの男の子が、なほに近づいてきた。

「あ…うん…」

今まで友人という友人を作ってこなかったなほは、コミュニケーション能力不足で、曖昧な返事しか返すことが出来なかった。



そしてこれが、なほの初めての友達だった。


_________________



それから、戦車道の修行に明け暮れる姉の代わりに、そのパンチパーマの男の子となほはよく遊ぶようになった。

名前は……なほは覚えてなかった。


「それで、この戦車は凄いんですよ!」

そのパンチパーマの男の子は、戦車に対する知識が物凄く、なほが1年後に控えている戦車道の指導の前哨戦を楽しくやっている感覚だった。


「西住流は確か…ドイツ戦車が多いですね。ドイツ戦車やソ連戦車は癖が強いものが多い分、重装甲で高威力なんです! 扱いやすさだったら英国製戦車とかですかね!」

「英国製戦車かぁ、私ならそっちの方が向いてるかな?」

「そうですね!他にも乗りやすさでいえば、日本製のチハは威力や装甲が低い分、扱いやすさや装填の速さなどにも優れてます!」

「イタリアはどうなの?」

「ヘタリアなので弱いです」

「フランスは?」

「機動力は速いですがヘタレです」

「ソ連戦車は?」

「日本はノモンハンで数的にも質的にも不利な筈なのに、被害数でいえば圧倒的にソ連の方が多かったらしいです!凄いですよね!」


来年から始まるスパルタ指導のことも、彼と会話している時だけは忘れることが出来た。



「あと、島田流ってのも存在してですね」

「島田流?」

そこで、なほは初めて島田流の名を耳にした。

_______________



「なほ、貴女は…」

10歳になったなほ。しかし、なほを待ち受けていたのは師範からのとんでもない言葉だった。



「姉たちを見れば分かる筈です。仮にも貴女は今年から流派の修行を始めるのです。それなのに貴女は異性とよく遊んでると聞きました。危機意識がないのですか?」

何処からの情報かは分からないが、なほがパンチパーマの男の子とよく遊んでいることがバレてしまっていた。

「たまに公園で会っては遊んでいるそうですね…。西住流として、その行為はるき許されざる行為です」

「ちょっとなんでですかお母様!異性とはいえ彼は友人です!友人と遊ぶことの何が悪いんですか!」

なほは叫んだ。

「名前も知らない相手と、ましてやたまに会う関係でしかないのにこれ以上接近するのは禁止だと言ってるだけです!貴女は女性です!仮にその男の子がケモノだったらどうするんですか? 女の子である貴女では敵いませんよ?」

そんなことは無いと、なほは力んだ。元々姉妹の間でも筋力のあるなほは、1番力持ちであった。

「にしても、10歳になっていきなり禁止というのは納得が…」



そんな時、しほからトドメの一言が飛んできた。

「貴女は西住流の血を引いてるのです! 戦車道に興味のあるだけで大した成績もないような子供と戯れると貴女の西住流としての品位が落ちます」


それは遠回しに、『なほが西住以外の人間と触れあえば西住が穢れる』といった、なほの友人を軽蔑した発言でした。


「貴女は許可無しの外出を禁止します」

こうして、なほは2度と彼と会うことはなかった。

そして数ヶ月後、彼が茨城の方へ引っ越したことを知った。



なほを西住流に縛り付けるために、友人からなほのことまで、全てを否定されたなほは怒りに燃えていた。



__________________



この年より、なほは勉学にも精を出すように言われ、更には西住流師範兼母親による厳格な戦車道の指導が始まった。


「貴女はいつになったら的に当てられるようになるのですか!?」

「はい!すいません!」

なほに対する厳しい指導が開始。操縦技術は若干苦手ではあるものの、そこまで問題という訳では無い。
だがしかし、砲撃技術が全くといっていいほど皆無だった。

「まったく…貴女はとても力持ちですから装填だけは物凄く速いんですけどね…」

そう、なほは装填手としては姉妹の中でも随一の実力であった。

「けど、それ以外は西住流としてはまったくです。平凡かそれ以下です」

しかし、装填手のみでは西住流では実力なしに等しい。


その他にも、なほは通信手の機械を扱うのが苦手であり、複雑な機械はよく分からなかった。尚、まほも通信の機械の複雑さによく頭を抱えており、厳しい指導があったというが、なほの機械音痴はその上をいっていた。

極めつけには…


「違う、そこは進むべき所です! なほ、貴女は西住流の掟を分かっているのですか? 西住流はそんな戦い方をしません」

いざ車長をやってみれば、戦法が西住流にとって邪道なものばかりであった。

「西住流とは、撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心。 貴女は的に当てることも出来ない。いかなる犠牲を払ってでも勝つのが西住流。そこに楽観などはないはず。なのに貴女は戦車道をかつての友の姿に重ねて楽しんでやるものだと思っている…。貴女は西住流失格です」



なほの戦法は、主に各個の技術を大事にし、奇天烈な発想力から来る戦法を用いるなど、それはまるで______











___島田流。



____________



そして、半年ほど経った。



「みほ、なほ、元気で…」

「お姉ちゃん…」

「まほ姉…」

まほが、戦車道の名門である黒森峰女学院中等部に入学することとなった。それと同時に学園艦に移住となり、まほは実家を離れることとなった。

「じゃあ、2人とも頑張るんだぞ…」



その時、まほの見せた表情がなほにとっては忘れられなかった。

姉妹でいち早く西住流の厳しい指導が始まり、幾度も挫けそうになった時、姉妹で支えあったこと。

かつて、姉妹で熊本の田舎道を走り回ったことなど、様々な思い出がフラッシュバックした。

それらの思い出を知ったか否か、まほの表情は、なほにとって物凄い悲しみの表情に見えた。




それと同時に、なほの西住流への疑問が顕になっていった。



「(西住流の戦車道は果たして正しいのだろうか…)」



_______________



そして翌年



「みほ姉…」

「1人で、大丈夫だからさ…。心配はしないでよ……」

みほもまほの後を追って黒森峰女学院中等部に入学。それに伴って、学園艦に移住することとなった。




「みほ姉!」

「な、なほ!?」

なほは思いっきりみほに抱きついた。

「…1人になりたくないよ…」

なほは泣いていた。

「なほ…、これだけはどうしようもできないよ…」

みほは困り顔でなほの頭を撫でた。

「分かってる…だからせめて今は暫く抱きつかせて」

「……分かったよなほ…」

そして、長い時間が経った。

みほとなほが抱きつき、おおよそ30分ほどが経過した。




「…みほ姉、元気でね」

「うん、頑張るから応援してて」


厳しい指導の連続で、心の癒しを姉に求めているうちに、なほはいつからかシスコンになっていた。














そして、半年が経過した。



「今日はここまで」

「ゼェゼェ…」

2年も砲撃指導を受けてきたにも関わらず、なほの砲術の進歩は見られなかった。
要するに、全くといっていいほどセンスがないのだ。

それに業を煮やした師範の指導は厳しさを増すばかりで、姉もいない今、なほは日に日に追い詰められていった。




「クソが…」

そして、いつしか西住流を嫌い始めた。






「勉学はさほど問題ないみたいね…」

西住流師範の元で勉学にも励んでいたが、まだ小学生ということもあって定期テストでは毎回90点は確実に取っていた。

この頃からなほは勉強癖が付き始め、大洗女子学園に入学して以降も勉学に手を抜くことはなく、毎回赤点は確実に回避するぐらいの成績を収めることに成功している。





_______________


「ダメだ…西住流は相性がクソわりぃ!」

撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心 それが西住流。
だがしかし、かつてパンチパーマの男の子が言ってきた島田流の個々の性能から来る奇想天外な戦法の方がなほの戦車道と相性がよく、西住流で見られる圧倒的火力と整った隊列を持って叩き潰す短期決戦といったものは、なほと合わなかった。


そしてその長らくなほの続けて来た反西住流の戦法は、遂に師範に最悪の判断をさせてしまった。















「___貴女を、西住流から勘当します」




もう2度と西住流の敷居を跨がないでと言い加え、なほは戦車道のない茨城県の大洗女子学園中等部に進学させられることとなった。




パンチパーマの男の子の時点でご察しください

元々熊本の人で、茨城に引っ越したというのはこの小説オリジナル設定です。

本当はパンチパーマの女の子なんだけど…なほは覚えていない様子。


指導が過酷って面では巨人の星を連想させますよねこれ。


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6話 過去編です! 中編


「嘘でしょ!? なほ…」

みほはなほに対して叫んだ。なほの引越しの準備は整い、あとは自身も新しい住居へと移るだけだった。


「…もうある程度準備は整った。あとは行くだけ…」

「そんな!?」

みほはなほに縋るように止めさせようとした。
しかし、そんなみほの手を掴むものがいた。

「みほ、これはお母様が…お母様が決めたんだ…」


既に泣いていた、長女のまほだった。



_______________



春休みの帰省に伴い、学園艦から西住家に帰宅したまほとみほを待ち受けていたのは、実の妹なほが引越しの準備を進めている姿。

2度と西住流を名乗ることを許されず、この家から出て行こうと準備を進めるなほの姿であった。



「来年から一緒に黒森峰中等部に来るんじゃなかったの!?」

「…2人とも、ごめんなさい」

みほはかなり泣いていた。まほが先に学園艦に移住したため、みほとなほはまほより1年長い時を一緒にこの家で過ごしたのだ。
だから、みほはまほ以上に辛さが上であった。




「まほ姉、みほ姉、ごめんね。もう、会えなくなっちゃいそう…」

そう、なほが西住流を勘当されるということは、今後2度と3人で触れ合う機会はなくなると言ってもいいことなのだ。

遂に耐えきれなくなったなほも、みほとまほに泣きながら抱きついた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」




それから10分間、なほは姉のことを抱きしめながら泣き叫んだ。










「…なほ、折角だから最後にスマホで写真を撮ろう。電話番号は交わしてあるから後で送る。だから、一生の宝物にしてくれ!」

「「うん!!」」

まほの提案に、なほとみほは頷いた。



「「「ハイチーズ!」」」





…そうして写真を撮った3人の元に、魔の手が忍び寄っていた。









ガラッと部屋の扉が開かれた。

「貴女たち、いつまでやってるの?」




「…お母様」

「お母さん…」

「……………」

そこには、なほを勘当した張本人のしほの姿。


この時、まほとみほは強引にしほに懇願して、なほを許して欲しいといえば良かったと、後に何度も後悔することとなった。


「2人とも、自室に戻りなさい」


それを聞いたまほとみほは、しほには逆らえないため、渋々と自分の部屋へ戻っていった。

と、見せかけて、実は部屋の外からこっそりとなほの様子を窺っていた。



そしてやがて、しほの視線の先は部屋に残されたなほへと移った。






「泣けば許されると思ってるの?これは許されるものじゃありません。貴女は戦車道において西住流として恥じるべき行為を幾度も繰り返してきた。そんな子はうちの後継ぎ候補にも置けません」


その言葉を聞いたなほは、今までの自分全てを否定されたような気がした。

かつての友人であるパンチパーマの子と会うことも許されず、姉たちには強大すぎるしほという魔物の手から、誰も救い出してくれない。

来年度から中学生になる12歳の女子には、到底耐えられることではなかった。

「さっさと荷物を纏めたなら出て行きなさい」



なほは、その場に項垂れた。







「…なほ」

そんな中、なほに話しかける1つの低い声。



「お、お父さん…?」

なほの父親、西住常夫が、項垂れて涙も枯れ果てたなほにあるものを託した。


「100万の入った通帳がここにある。お前がもし、戦車をまた始めることがあったら、このお金で免許を取ったりするんだ。免許を取れば大きな公道も戦車で移動できる」

100万円。そんな額、免許を取ってもまだ有り余るほどの額だった。


「…しほには言うな。俺でも西住流の圧力がかかればあっという間に消されてしまう。頑張れよ」

そうとだけ言うと、常夫はそそくさと部屋を出ていってしまった。




「西住流の…圧力…。お父さんすら縛り付けることができる…」






そして、なほは答えを出した。






「"西住流は悪だ"」



__________________



そうしてなほは地元の熊本を離れ、偶然かあのパンチパーマの子のいる茨城県の学園艦に移住し、そこに入学することとなった。

「にしても…西住流…!」


茨城に移住して大洗女子学園中等部に入学して早くも1週間。

「クソが!」

なほはそのイライラをどこかにぶつけるように、喧嘩に明け暮れるようになった。


かつて姉妹の中でも1番の装填の速さだったなほは、筋力や腕力などの基礎的な運動能力に恵まれていたため、あっという間に学内の不良をねじ伏せた。

終いには…


「あいつ、あの西住流の三女だよ…」

「やっべえのに喧嘩売っちまった…」

相手側から西住流を恐れてなほを避けていく始末。なほはとっくのとうに勘当されているが、相手側の勝手な勘違いにより、なほは学内でも恐れられる番長となっていた。



そんな中、なほはある場所に足を運んでいた。





「なんで来てしまったんだ…」


なほは、大洗女子学園艦に存在する、戦車道ショップへと足を運んでいた。かつての縁がそうさせたのか、それとも自分の意思か、気づかないうちになほはふらっと戦車道ショップ内に来ていた。


「うわぁ!」

「逃げろ!」

「なんでエリート番長が戦車道ショップに…」

店内にいた一般生徒たちが、なほの姿を見るなり逃げ帰っていった。なほの存在は学園艦内にも大きく知れ渡り、気づけば姿を見ただけで殆どの人が一目散に逃げ出すぐらいになっていた。

そしてなほに付いたあだ名、エリート番長。
なほは中学入学後、喧嘩に明け暮れながらも決して勉強に手を抜くことはなかった。
かつて西住の元にいた時、戦車道の指導を受ける時間が苦痛なあまり、勉強している方が楽だと思えてしまったが故に、なほは自然と勉強をする癖が付いてしまっていたのだ。


「ん?」

その中で、店内に唯一残っている人がいた。




「戦車道…ゲーム?」

店内に設置してあった戦車道のゲームにて、物凄い高得点を叩き出している少女の姿がそこにあった。



_______________


「よし」

ゲームを終えた彼女は、自身の首に巻いているタオルで汗を拭き取り、席を立ち上がった。


「うわぁぁぁぁぁ!!」

彼女は思わず腰を抜かした。学園艦内でも有名なエリート番長が背後にいたのだから、驚くのも無理はなかった。

「な、な、な、な!?」

この世のものではないものを見たかのような反応をされているが、そんなことは気にせずになほは続けた。

「いや、素晴らしいゲームプレイだと思って見てただけだよ」

「へ?」

なほがそう言うと、先程までゲームをプレイしていた少女はポカーンとしていた。





実はこの少女こそ、





















___後になほの相棒になるうちの1人、古河美玲であった。





ちなみに常夫さんだけは未だになほの味方だったりします。
けど西住に押さえつけられてて大きなことはできないですし、しほになほの件で直訴でもすれば無事では済みませんから。

なお、この小説において、菊代さんは三姉妹が学園艦に移住したために人手が足りなくて雇ったという設定になっております。


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7話 過去編です! 後編




______それから1年の時が経過した。





『関東大会優勝は、古河美玲率いるチーム!』

ドワァァと歓声が上がった。
ここはパフィシコシコ横浜。今日はここでFPS大会の決勝戦が行われる日。

なほは、あの時たまたまゲームプレイを目の前でしていた古河美玲とすっかり仲良くなり、折角なので美玲が出場している有名FPSゲームの関東大会に応援にやって来ていた。

そして、そこで美玲はチームメイトと的確な通信からの連携を見せて、まさかの優勝。狙った敵は動いていようが確実に当てていくスタイルで、敵を寄せ付けずに完全勝利してしまった。



____________________


「お疲れ様」

「うん、なほ姉貴。応援ありがとう」

大会終了後、なほと美玲はある場所で合流した。
尚、なほとの出会いから1年が経過した美玲は、あの時のなほに怯えるような性格じゃなくなり、多少は不良のような素振りに近づいていった。

「姉貴のような方に応援に来てもらえるなんて感激っす!」

ちなみに、美玲はなほのことを姉貴と呼んでいるが、実際には美玲の方が1つ年上で現在中学3年生。そして、憧れのなほに近づきたいという意志からか、段々見た目も派手さを意識するようになり、今回の大会でも結構浮いているレベルの派手な格好をしていた。

「流石にセーラー服にロングスカートはないと思うぞ」

一世代前の女ヤンキーみたいな服装で、美玲は大会に臨んでいた。

「なんとなく姉貴みたいじゃないかな?」

「私はそんな古い格好せんわ。替えの服あるならさっさと着替えんかい」

「はーい」

そうして、美玲の何処か時代も発想もズレた服は、なほによって強制的に着替えさせられた。




「着替え終わったな。んじゃ、お祝いに焼肉食いに行くか!今日は奢るぞ!」

「はい、姉貴!集中しすぎてお腹ペコペコっす!」

「んじゃあ手安く食べ放題行くぞ!」

「はいッ!」

準備を終えた2人は、バイクに跨った。

「近くに安くていい店があるんだよ行こうか!」

「しゃあ!」

そうしてなほと美玲はバイクを走らせた。

この世界において、中型バイクまでなら14歳で免許を取得可能なのだ。尚、車や戦車の免許は15歳の4月から取得ができる。

そのため、なほは中学2年生で14歳で、中型バイクの免許を持っているのだ。




しかしこの後、なほたちはとんでもない事件に巻き込まれることとなる。



_______________


「風が気持ちいい!」

「横浜はやっぱり都会だなぁ!」

ブンブンとバイクを乗り回し、横浜の夜のビル群を駆け抜ける2人。

「大洗じゃ5時なんて殆ど店閉まってるよなぁ…」

「コンビニぐらいしか空いてないもんなぁ…」

信号で止まり、駄べる2人。



「姉貴、そういえば横浜って確か聖グロリアーナ女学院の学園艦があったような?」

「あぁ、英国の影響を受けた学園艦らしいが…、今は冬休みだから多分殆ど誰もいねえぞ?」

「そっすね、変なこと聞いてすんません」


そんな時、背後からブンブンと物凄く煩いバイクの爆音が響いてくる。勿論、なほたちのバイクからしている音ではない。

「物騒だな」

「姉貴、どうしよう?」

美玲は不安そうになほに尋ねた。


「ともかく、今は腹減ったしルート変更して左折すんぞ」

「はい!」

丁度、まっすぐと左折のレーンにいたため、急遽方向指示器を出して左に曲がった。


「やつら、一緒に曲がってきましたよ」

「気にすんな。ちょっとスピード出したり裏道も通るから、美玲もついてこい!」

「え?」

そうしてなほはあえてその後細い道に入る。マップはある程度頭に入れてあるため、美玲の様子を見ながら路地を駆け抜けていく。


「左折!右折!直進でもう1度路地に入ってそこから何件か先を右折して暫くすると目的地の反対に出る。ついてこい!」

「へ?あ、はい!」

嫌な予感を感じ取ったなほたちは、一気に路地や裏道を駆使して目的地まで辿り着いた。



「よし!到着!」

「もうお腹ペコペコっすよ…」

そうして目的地に到着したなほたちは、焼肉食べ放題を満喫したという。




しかし、魔の手はすぐ傍まで迫っていた。



?「こんなところで西住の女番長と会えるなんてねぇ…」



_________________



「いやぁ…食った食った」

「ごちそうさまでしたっと…」

「んじゃ、今から大洗まで帰るぞ」

焼肉店を出たなほたちだが、その目の前には、見知らぬ集団が沢山のバイクと共に陣取っていた。
20人くらいだが、陣取っていたのは全員女性だった。

「………帰るぞ」

そんなバイク集団をスルーして、帰ろうとするなほであったが、



「西住なほさんよぉ…」

なほの名前を呼ぶ集団のリーダーらしき人物。




「……誰だお前は」

なほの目付きが変わった。

「美玲、お前は下がってろ」

「あ、姉貴!」

「…ほう、随分とお仲間には優しいみたいじゃないか」

「…そりゃどうも」

なほは首を鳴らした。

「まずお前らは何者だ。最初に名乗るということを礼儀で習わなかったのかお前らは?」


「おっと、失礼しました。まず私たちは聖グロリアーナ女学院所属、愚露李亜々奈という、バイクに乗りつつここら一帯を仕切ってるグループ。私はそのグルのリーダーをやっております。名を______
























___鹿島紀香」




「…んで、愚露李亜々奈ってグループが私に何の用だ?」







「…西住で名高いお前をぶっ潰せば我々の名も鰻登りだっつーんだよ!」


そうして、なほの周囲にいた愚露李亜々奈の連中が一斉になほに飛びかかった。


「西住なほを潰せ!」

部下に命令した紀香はガッハッハと高笑いしていた。











「……西住の名で私を呼ぶな」

「へっ?」



それは一瞬の出来事だった。


「ボスを捩じ伏せて終了。こういうの、フラッグ戦っていうんだよ」

なほは一瞬で飛びかかってきた目の前の不良だけを殴り飛ばすと、そのまま紀香の方へと向かい、紀香の頭を掴んで宙に持ち上げて無力化させた。


「…そんな、鹿島さんが一瞬で!?」

「鹿島の姉貴!」

愚露李亜々奈の部下たちは、そんなリーダーの様子を見て、ただただ慌てるしかできなかった。


「リーダーを無力化して、勝利ってな」

紀香はその場に崩れ落ちた。


「…一瞬で…負けた…」

紀香はその場で腰を落とした。


「まだやるか?」

煽るようになほは言った。

「いやいい、もう適う気がしませんわ…」




聖グロリアーナ女学院は、世間的にみてもお嬢様学校だ。

しかし、中には親の強引な教育によって入学させられる生徒も度々おり、その結果、生徒の一部は紀香のようにグレてしまうらしい。



_______________



「さて、私からはもう何もすることは無い。愚露李亜々奈だったか、部下どももまだやるか?」

一応なほは、部下にもこれ以上の抵抗の意志があるかだけきいた。


「……………」


その場に静寂が広がり、部下たちは全員首を横に振るだけした。


「そうか…………ちょっと待ってくれないか」


なほが何か異常に気づいた。





「おい、アンタらグロリアーナの生徒か?」

「いいじゃん、金持ってそうじゃん」

「ちょっとくれよなぁ?ついでに遊ぼうぜ?」

なほたちが戦闘を繰り広げていた焼肉屋の駐車場の裏側で、今度は男不良3人が、それぞれ金髪、赤髪、橙髪の3人の聖グロリアーナ女学院の生徒たちから金を脅し盗ろうとしていた。
ちなみに、その3人は冬休みなのにお嬢様気質がそうさせるのか、何故か制服を着ていた。



「なっ、あれはうちの生徒!?」

同じく異常に気づいた愚露李亜々奈リーダーの鹿島紀香は、身構えた。


「女を襲うなんて、男として恥ずかしくないのかなぁ?」

「奇遇ですね、私もそう思いました」

ここで、なほと紀香は意気投合した。


「じゃあ、サクッと助けちゃいますか」







「おい!」


「あ?」


「アンタらうちの生徒に何してんすか?」

男不良3人は思いがけない妨害に舌打ちした。


「なんだよテメーら…」

「兄貴、やっちゃいますか」

「い、いや、兄貴!待ってください!」



そのうちの1人は、異常に気づいたようだ。


「あ、あっち側に大洗の西住番長がいます!西住に手を出したら何されるか分かりませんよ!」

「なに!?お前ら今すぐ逃げるぞ!」

そうして男達は、逃げるかのように一目散に去っていった。






「怪我はないか?」

なほは不良に絡まれていた3人に声をかけた。

「あ、いえ…大丈夫です…」

「他の二人も大丈夫か?」

「「…はい」」

3人ともポカーンとしていた。


「そうか、ならば大丈夫だな…」

そうしてなほはその場を去ろうとした。

「…なほさん」

「…なんだ?」

さっきまで隣にいた、紀香が声をかけてきた。


「先程は生意気いってすみませんでした。また、何処かで会いましょう…」

「………」

聖グロリアーナ女学院の生徒だからか、そこだけは妙に礼儀が正しかった。


「…機会があればな」


そういうと、なほは駐車場に待たせている美玲の元へと戻っていった。




_______________



半月後…



学生寮への帰り道にて、なほと美玲は仲良く駄弁っていた。

「この時期に大洗女子学園中等部に転校してくるやつが?」

「えぇ、中3のこの時期に!しかもそれがなんと…」






「久しぶりっすね、なほさん…いや、なほ姉貴」

「え?」




2人の前に立ち塞がるように現れたのは…





「大洗女子学園中等部、3年生に転校して来ました。鹿島紀香です。これからよろしくお願いしますよ。なほ姉貴♪」



あの駐車場の時の立ち塞がり方で目の前に姿を現した、鹿島紀香がそこにいた。




2人との出会いを描けたかな…?

次回は遠くないうちに投稿したいですね。


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8話 一応?和解です!

なほのCVはイメージでいえばイケメン女子を演じてる時の沢城みゆきさんですかね。


________


「まあ、そんなことがあって、私ら3人は出会ったのさ…」

過去を話し終えたなほは、来賓用のソファーに腰掛けた。



「ふーん、今のなほさんがあるのは西住の戦車道が原因なんだねぇ」

「まあな、こんなひん曲がった性格になったのは西住のせいだな」

杏会長は残り一個の干し芋を飲み込んだ。



「だから私らは戦車には乗らん。その代わり、パンチパーマの男の子との話で戦車には詳しくなったし、今私らはバイクも乗り回して、自分でメンテもしてる。せっかく機甲科に進学したんだ。




___戦車のメンテナンス担当ぐらいならやってやる」



その言葉に、生徒会は唇を噛んだ。



「私は戦車に乗りたくない。けどお前らは意地でも私に戦車道を取らせたい。見ろ、お互いの意見は合致した。交渉成立、win-winになっただろ?」

だが、生徒会は余計に表情を曇らせる。生徒会は、経験者のなほには戦車に乗ってもらいたいと考えている。
しかし生徒会は、なほに前提条件である、戦車道の授業を取れとだけ要求してしまったため、上手い具合に抜け道を作られてしまったのだ。

何も戦車道を授業を取るにあたり、サポート役にでも回れば戦車に乗らずとも戦車道を取っているということになる。


「なぁ?生徒会?」


そして何より、まさか今更要求を変えるんじゃないだろうな?と言わんばかりのなほの眼力や殺気である。
生徒会も、なほの圧力には思わず頷かざるを得なかった。

生徒会は思っていた流れになほを乗せることが出来ず、結果的になほの抜け道が成立した。



_______________


「姉貴、ナイスです!上手く戦車乗りを回避しましたね!」

「姉貴凄いじゃないすか!あの生徒会を黙らせるなんて…」

どうやら2人にとっても生徒会は恩人でありながら中々隙のない集団だと思われていたらしく、なほを賞賛した。

「2人ともありがとう。でも、私らは大変だ。なにせ学校内の何処かにあるという戦車をみんなや自動車部が拾ってくるから、そこから掃除や修理とか諸々しなきゃいけねえからな」

「大丈夫です。ここに転校してきた時から、なほ姉貴と苦労を分かち合う覚悟はできてます」

「よっし!チームワークと掃除は得意ですよ!」

尚、美玲のそれはゲームでの話に留まらない。確かに美玲は敵の掃除やチームワークで追い詰める戦法を得意としているが、それはゲームだけの話ではなく、リアルの方でも生きている。
ゲーム大会に出るレベルともあり、何故か元愚露李亜々奈のメンバーともそれなりに交流を持てるぐらいの社交性の持ち主でもあるのだ。

戦車道をやるなら、砲手と通信手といったところだろう…。


「さて、今日は徹夜かもな」


__________________


「…zzz」

戦車道履修者が拾ってきた戦車5両を1晩かけて自動車部と共に整備し終えた3人は、校舎の1室にある仮眠室にて仮眠を取っていた。




そんな時であった。

「…………」

仮眠室へと入ってくる1つの影。


「お久しぶりですね。なほ殿」

なほにとって懐かしい雰囲気を纏う人物は、やがて仮眠している3人の横を通り過ぎた。


「起きたら食べてくださいね。それと、私はパンチパーマの女の子でした!」

おにぎり6個と水、そしてなほの過去話に訂正だけ加えると、その人物はそそくさと部屋を出ていった。

後に起床したなほたちは、用意されていた飯にがっついたという。
美玲が誤って6個あるうち3個おにぎりを食べるというアクシデントもあったが。



_______________



ー数日後ー


「………………」

「姉貴…」

「まあ、気持ちは分かりますけど…」

先日、生徒同士でとある自衛官の人を招いて練習試合をした。その際、傷だらけの戦車の修理でなほの睡眠時間が削れたこと。それはまだ全然なほにとって許せる範囲内ではある。



しかし、なほにはこれだけは許せなかった。


「テメーらその変なデコレーションやめろ!まさかそれで今後の試合に出るつもりかアホか!すぐ戻せ!」

その場を恐怖で凍りつかせた女番長の一喝により、大洗の戦車は、元の迷彩に戻されたのであった。
みほの隊長車両以外全部ピンクとかにデコレーションされていたのが、仮にも戦車道の流派出身のなほには許せなかったらしい。

「いいか、迷彩というのはな…」


そしてなほの迷彩のメリットやらデメリットやらのウンチクが長い時間にわたって行われるのであった。



__________________



「練習試合か…」

なほたちは、生徒会室に呼ばれていた。近々全日本高校生戦車道大会が開催される。なほたち大洗女子学園がそれに出ることは確実だが、その前に1度練習試合を何処かしらとした方が良い。

「まだ何処とやるか決めてないんだよね〜」

「そこでだ。確か鹿島は聖グロリアーナ女学院出身だったな」



「…はい」

中3の途中まで紀香が在籍していた、聖グロリアーナ女学院にスポットが当たった。

「連絡取れるか?」

グロリアーナは強豪校だが、かつての在校生からの交渉ともなれば、応じる可能性が高いというものだ。




「…分かりました。あちらのリーダーとは連絡繋がりますので」



そして、これがなほの運命を大きく変えることとなる。



__________________




「あら、戦車道復活なされたのですね。おめでとうございます」

電話を受け取ったグロリアーナの隊長がまずは賞賛の意を送る。


「…それで、なほさんもそちらにいるのですか?」

そんなリーダーの口から何故かなほの名前が出る。

「そう、貴女と一緒に戦車のメンテナンス担当をされてるのですか…。彼女には感謝してます。けど、通り名が西住の女番長だなんて…。あの流派の人間ともなれば1度戦果を交えてみたかったものですわ」

クスッと笑う。


「そうですね、週末の日曜日でしたら…。楽しみにしております。恩人のなほさんにもよろしく伝えといて下さいな」




「愚露李亜々奈の方々ですか?彼女たちは元気ですよ。荒々しかったバイク集団が今ではすっかり落ち着きましたし、なほさんには感謝しかありませんね。是非とも戦車に乗って欲しかったのですが仕方ありません。次女もいるみたいですから、彼女と戦うとしましょう。では、また日曜日に…」


そういって、電話は切れた。


「なほさん、あの時はお礼ができませんでしたから、今度こそ…」



え?なほは戦車乗らないの?と思いがちですが、後々なほには戦車に乗ってもらいます。

何の戦車に乗るかですが、何処の国の戦車に乗るかは劇中で何度もヒントを出してます。


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9話 姉妹で仲良しに戻ります!


まずこの話を読む前に。

前話で間違えて途中投稿してしまったために、後々加えた箇所が最後に存在します。まずは前話のその部分をご覧下さい。


鹿島紀香のCVイメージ:大坪由佳さん
古河美玲のCVイメージ:東山奈央さん

美玲は艦これの敷波。紀香は艦これの日向かな…。




___貴女は、私を助けてくれた。


『こいつ!西住の女番長だ!』


私に絡んでいた3人の不良たちを退けたのは、いるとされながら、その存在を確認したことは無い幻のような人物。西住でありながら1番西住流とは遠い存在とされた三女でした。

「また、会えるのね」

私はボソッと口に漏らしてしまった。

「ん?ダージリン様、どうかされました?」

オレンジペコが、私の小声に気づいた。

「いいえ、少々昔のことを思い出していただけですわ」

「昔の…こと…。そういえば、あの戦車道の大会後の帰り道で、私とダージリン様とローズヒップさんが不良に絡まれていたいたところを、助けてくれた人がいましたよね」

オレンジペコは察しがいいみたいで、私の考えていることとシンクロした。


「こんな格言を知ってる? "過去を遠くまで振り返ることができれば、未来もそれまで遠くまで見渡せる"」

「…ウィンストン・チャーチルの言葉ですね」

流石はオレンジペコ。私の格言が誰の言葉かすぐに当てることが出来る。

「えぇ、これから向かう先は大洗女子学園。彼女たちの過去と未来が、繋がろうとしているわ」

「ダージリン様!ダージリン様ァ!」

オレンジペコとの穏やかなティータイムに水を差す様に人一倍元気な子が来ました。



「ローズヒップは賑やかでいいですわね」

「………」

ローズヒップの勢いは、オレンジペコを黙らせてしまった。


「ダージリン様!大洗女子学園は確か!」


「えぇ」










「愚露李亜々奈のリーダーさん、西住流の次女。そして、あの時御礼も聞かずに去ってしまった西住なほさんがいますわ」




_____________________


のんびりとグロリアーナの学園艦が大洗に向かっている中、大洗女子学園では…


「明日が試合本番だからって何も土曜もずっと戦車の整備だなんてねぇ」

「ほら、ボヤく暇があったら手を動かせ美玲」

「なほ姉貴、目のクマが凄いっす…」

土曜日、流石に戦車道履修者も明日に備えて各自が休む中、自動車部となほたちは、お互いに会話することもなく戦車の整備にあたっていた。

「なんでアイツら意味不明な塗装とかやったんだろねぇ…」

「女子高生はなんでもデコりたくなる時期ですから」

「私はよくバイクを魔改造するからな。そういうもんだろ?」

「「それはなんか違います姉貴」」

戦車道履修者が、変な塗装やデコレーションをしたため、なほたちはそれらを剥がす作業などに追われていた。




「そういえば姉貴」

先程までの陽気な雰囲気とは打って変わって、重い口調で美玲がなほを呼んだ。


「…なんだ美玲」

一瞬の無言の後、なほは返事した。





「みほの姉貴でしたか。あの生徒会室での騒動以降、全く会話してないようですが?」

「………ははは、そういえばそうだな」


「なほ姉貴、もしかして自分が生徒会を脅したことでみほ姉貴が自分の気持ちを押し殺してまで戦車道をとったこと。若干後悔してるんじゃないですか?」

「……………」

図星のなほは、黙り込んでしまった。



「あの時の私は、怒りの勢いでみほ姉をやりたくもない戦車の道に引きずり込んでしまったんじゃないかと思ってる。確かに1番の悪は生徒会だけど、私にも非があるんじゃないかなって…」

なほは表情を暗くした。



「何よりも、私はみほ姉と再会したのは4年ぶりぐらいなんだ。最後は泣いて別れたのに、数年後に再会したと思ったら、私は西住の名を嫌い、生徒会にも手をあげるような女番長になってたんだ。みほ姉も理解が追いつかないよなぁ…」


「「姉貴…」」


なほは生徒会室にて、みほだけではなく、その場にいた人全員を恐怖に陥れてしまったのではないかと思っていた。

生徒会の理不尽を突きつけられてなほはキレた。みほも同じく理不尽を突きつけられた後、折れる形で戦車道を履修した。
生徒会も何処か、西住流という流派を彷彿とさせるような圧力の持ち主。そう結論づけたなほが感じたのは、ただ昔の過ちを5年越しに繰り返しただけだったという後悔だった。

「私はまほ姉からみほ姉を護るように言われたんだが、どうも空回りしてしまって、避けられている気がするんだ」

そうしていると、最後の作業が終わった。

「…私は、みほ姉が大好きだ。4年前も、今も、何も変わっちゃいない。ずっと長らく姉妹間の溝があるかもしれない。けど、そんな溝など飛び越えればいいだけの話なんだ。だから、みほ姉としっかり話がしたい」

動かしていた手を止めた。





「…姉貴、なら今からそのみほ姉貴のところ行きましょう」

「え?」

「私たちもみほ姉貴とは話してみたいしな!」

そして、完全下校時間の午後6時のチャイムが鳴った。



__________________



時刻は6時半。なほたちはみほの住んでいるアパートの部屋の前まで来ていた。

「みほ姉…」

「何戸惑ってるんすか」

「こんな堂々としてない姉貴見んの初めてだ。まあとにかく」


ピンポーン


美玲がインターホンを鳴らした。

「ちょ、お前ら…」

「まあまあ」


そして扉が開いた。




「…なほ!?」

扉を開けたみほは、なほとその仲間がいることに驚いていた。




「みほ姉、この際だからハッキリ言う。この前の生徒会室の一件では随分と驚かせてしまった。ごめんなさい!」

「なほ…」

なほは頭を下げた。そして、顔を上げると、みほに抱きついた。



「みほ姉、あの時みたいにもっと姉妹らしいことをしよう!あの時出来なかったこと、やれなかったこと!あの日、私が家を出ていってから感じていた寂しさを…………」

なほの言葉が途切れた。




「なほ…なほ…。あの時、なほの勘当を、お母さんに無理言ってでも引き止めるべきだった…。黒森峰から大洗(ここ)に来て、友達ができて…色々と分かったから…



なほはあの日以降、1人でずっと抱え込んでいたんだね」






「そう…だよ………」


そして、なほとみほは、しばらくそのままずっと、大粒の涙を流しながら抱き合っていた。




「それじゃ、なほ姉貴。私たち邪魔そうだし」

「お先にお暇させて貰います」



「「あ」」

紀香と美玲の存在も忘れて泣き腫らしたなほ。みるみるうちに顔が赤くなる。



「泣き顔初めて拝んだな」

「とても可愛かったです」



「テメーら明日覚えとけよ!」

思わずなほは泣き顔のまま怒鳴るが、

「はいはーい」

「今は大好きなみほの姉貴と思い出話でもしといてくださいな」

そういって2人は即座に退散した。




「なほ、折角だから泊まっていってよ」

「みほ姉…」

みほは、なほの前で4年ぶりに笑顔を見せた。


「泊まるにしても着替えはないぞ?」

「姉妹なんだから服のサイズぐらい合うよ? 私のを使って♪」

そうしてなほはみほの家内に招かれる。



4年も積もり積もった姉妹間での蟠りは、少々ではあるもののなくなっていった。













「ねえ、2人でベッドは狭くない?」

「いいのいいの!あの頃みたいに一緒に寝よ!」

みほに押される形で、なほは同じベッドの上でみほと寝ることになった。


「…やっぱり」

「これでいいの!」

これでは狭いと判断し、起き上がろうとしたなほを、みほは無理やりベッドに押し戻した。

「私は床で寝るよ」

「私はなほと寝たいの!」

「…仕方ないか」

みほの強い要望により、なほはベッドに戻った。
そして、お互いの視線が重なった。

「なんか…恥ずかしいな…」

なほは少し視線を逸らした。

「やっと、あの時のなほが戻ってきた気がする…」

そんななほに、みほは微笑みを浮かべた。

「…そう?」

「うん、口はまだまだ荒いけど、恥ずかしがり屋で甘えん坊で…とても可愛いなほがここにいる」

「うぅ…」

少し昔のことを思い出して赤面するなほ。


「そう、そんな感じ。なほは本当は恥ずかしがり屋で優しい子なんだよ。私が戦車道を無理やり取らされそうになったあの時、本当は知ってたの。なほが私のことで物凄く怒ってくれたこと。あの時は、4年前とのギャップの凄さに戸惑ったけど、今思えばあれは私を守ってくれようとしてたんだね」

「みほ姉…、ありがとう」

なほもまた、みほの前で久々の笑顔を見せた。


「私も西住流には合わなくて…。だから逃げるように大洗に来たけど、今は私は友達もできて、楽しく戦車に乗れてるから、もう戦車の件で私を心配しなくても大丈夫だよ」

「…みほ姉」

気付けば、なほとみほの間にあった全ての問題が解決していた。





「あとね、なほはここが弱かったよね?」

「へ?」

みほはなほの耳たぶを甘噛みした。

「ふぇ…そこは…」

「やっぱり4年経ってもここをやられちゃうと気が抜けちゃうんだね」

「み、みほねぇ…」

「あと何、この大っきい胸。お姉ちゃんも大きくてなほも大きいのに私だけ…」

「や、やめろぉ…揉むなぁ…」

「なほはこういうの敏感だよね〜」

「み、みほねぇ〜、やめてぇ…」

「ふふふっ、ダーメ♪」

「なんでぇ…」




そしてやがて、2人は眠気に勝てず、11時頃に眠りについた。

「なほ、大好きだよ」

「私もだよみほ姉」



姉妹間を隔てていたものが無くなり、なほとみほは4年前のような近所でも仲が大変いいと評判だったあの頃の姉妹の姿へと戻っていた。





夜も更けて、刻一刻と明日の練習試合に向けて、聖グロリアーナ女学院と大洗女子学園、2つの学園艦は大洗町へと進んでいる。





姉妹仲直りってところかな?
次回からvsグロリアーナ編をできればいいなと思っております。

なにせ主人公組とグロリアーナは縁が多すぎるもので。

あと秋山優花里となほはどう再会させるべきか。


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10話 いよいよ練習試合、やります!

新たに西住みほがまほのストッパーに加わった。





翌日、天気は良好。



「久々の本土だぁ!」

「オロロロロロロロロロ!!」

「何吐いてんだ紀香ァ!」

みほと一夜を明かしたなほは、久々の本土に紀香と美玲と共に大はしゃぎしていた。1人、船酔いならぬ陸酔いしている者もいるが。

「お前バイク降りた瞬間吐くなや!」

「バイクは慣れてるけど…。陸は久々すぎて…おぇ…」

「私と同じ量なんて食べれるわけないでしょうが!張り合って朝飯食いすぎだよ紀香ァ!」

バイクに乗って本土へ降りた3人。なほは後ろに、家に泊まらせてもらったみほを乗せていた。

「ふふふ」

バイクを降りたみほは、そんな3人組を眺めながら4年前と同じ笑顔を浮かべる。

「おはようございますみほさん」

「おはようみんな」

メットを脱いだみほは、いつもの4人の元へと向かった。

「あれ?みぽりん何かいいことあったの?」

「うん、あったんだよ」

「そういえば今日はバイクに乗ってなほさんと一緒に来ましたね…」

「もう、なほとは仲直りしたからね♪」

「それは良かったね!」

「…眠いし陸酔う」

「まこさん起きてください!」

「冷泉麻子殿、立ちながら寝ないでください!」

みほの仲間たちも、久々の本土上陸にテンションが上がっていた。
1人を除いて。

みほはなほと仲直りし、なほはみほと仲直りし、お互いの距離が縮まる中で、自然とその仲間たちの間でも距離が縮まるのは当然であった。


「紀香じゃなくってのりりんでいいかな?」

「初めてそんな呼ばれ方したぞ…」

「おぉ!あの戦車道のゲーム、学内で最高得点を叩き出した人がいるとは聞いてましたが、まさか貴女だったとは!」

「あれぐらい楽勝だぜ」

紀香と沙織、優花里と美玲がそれぞれ普通に会話を交わすようになっていた。一方で、華は麻子の低血圧っぷりに頭を抱えていた。



そんな中、かつての幼少期、殆ど姉妹間での関わりしか持てなかったなほとみほは、その光景をずっと眺めていた。

「私は短い間だけど友人はいたんだ。でも、しほの奴に会うことを許されなくなったけどな」

「そうなんだ… 私はなほやお姉ちゃんとしか遊ばなかったから、友達ができて本当に嬉しかったな…」

「あぁ、私にも友人が出来た。その友人が、みほ姉の友人とも関わるようになって、私はとても嬉しいな」


姉妹を隔てた壁がなくなり、それと共にその友人の間に出来ていた壁も消えた。
なほとみほの和解は、2人の間に生まれた蟠り以上のものを齎したのだ。

「今度は黒森峰にいるまほ姉も…」

なほがそう口にした瞬間、


「え、あ、うん…」

みほの表情が曇った。


みほは敗北の責任を押し付けられて、大洗女子学園へと逃げてきたのだ。
黒森峰ときけば、みほのトラウマが想起するのは当然の結果だった。


「みほ姉ごめん、だけどこれだけは言わせて」


浮かない顔のみほを少しでも励ますため、なほはみほに抱きつきながら囁いた。


「西住流が何と言おうと、黒森峰がどんな手段でみほ姉を追い詰めようと、私が絶対に護る。私は喧嘩も強いし、仲間だって幼い時と違って沢山いる。絶対に…あの時のみほ姉を否定させないから」


なほの言うあの時。それは昨年の戦車道大会における、みほの行動。みほが救出しなければ絶対に戦車道大会初の死亡事故となっていた黒森峰10連覇をかけたあの決勝の日。




「今度こそ、みほ姉を守る」

「うん!」


すると、大洗女子学園の学園艦の横に、アークロイヤル級航空母艦を模した学園艦が入港してきた。



___________________




「ご機嫌よう。大洗女子学園の皆さん」

聖グロリアーナ女学院の戦車道隊長、ダージリンがみほたちの前にやってきた。

「今日はよろしくお願いします!」

「初めまして西住の隊長さん。今日はお手柔らかにお願いします」

そんな時、ダージリンの背後より20人ほどの束が我先にと学園艦を降りてきていた。



「鹿島姉貴ィィィィ!」

「お元気でしたか!?」

「会いたかったっす!」

「大洗はどっすか?」

「なほの姉貴も元気でしょうか!」

「楽しくやってますか!」

「お、お前らちょっと落ち着け!」

元愚露李亜々奈のメンバーの20人ぐらいが、かつてのリーダー紀香の元へ一気に押し寄せた。


「「………………」」

これには、ダージリンもみほも唖然とするしかなかった。

「姉貴ィ!大洗回りましょう!」

「私ら愚露李亜々奈と、大洗連合で行きましょう!」

「んじゃあなほ姉貴と鹿島姉貴!仕切ってください!」

「んへぇ?」

急に名前を出されたなほは間抜けな声を出した。

「そういえば昨日のなほ姉貴は凄く可愛かった「その話はやめろ美玲!」あはは」

急激に悪い意味で賑やかさを増したこの空間に、流石にみほは…


「ぷっ、あははははははははっ!」

「んふふふ、とても愉快な方たちですこと」

「とてもお元気な方たちですわ!」

「ダージリン様、ローズヒップさん、流石に笑ってる場合じゃないと思いますが…」

唯一、この空間に呆れ顔を浮かべるオレンジペコであった。



「よっしゃ!新大洗女子連合!出発!付いてこい!行くぜ!」

「「「「「「「おぉーっ!!!!!!!」」」」」」」

そうして、総勢25人前後のなほ率いる新大洗女子連合は大洗町に向けてバイクを走らせていった。


「信号や交通ルール守らなかったら罰を与えるからな!」


「「((優しい…))」」


暴走族らしさもありながら、そこらへんはしっかりとしているなほであった。


「変わっていないようで安心しました」

「ダージリンさんでしたっけ? 昔なほと何かあったのですか?」

みほがそう尋ねると、ダージリンは目を閉じた。

「えぇ、なほさんはグロリアーナではある意味あの荒くれ者を落ち着かせたヒーローですもの」

「へぇ、私が知らないうちになほは色んな武勇伝作ってたんだ…」

そして、聖グロリアーナ女学院と大洗女子学園の戦車道練習試合の時間は、刻一刻と近づいていた。

「なほさんが戦車に乗られないのは大変残念ではありますが、次女のみほさんが乗られるとなれば是非とも砲を交わしてみたいものです」

「はい、今日はよろしくお願いします」


「(あの時のお礼、試合後にしっかりとさせてもらいますわね。なほさん)」
__________________



「まさか2度も吐くとは…」

「路上の嘔吐物どうすんだアレ!」

「マンホールにぶち込んだから大丈夫だろ」

「陸酔い酷すぎるにも限度がある」

「吐いたもんは仕方ないです」

「変な開き直りすな!」

散々バイクを乗り回した後、大洗町は戦車道の試合のために閉鎖され、なほたちは観客席へとやって来ていた。


「(さて、みほ姉。みほ姉の初陣、見させて貰うぜ)」


そして、試合は開幕した。



投稿不定期なので申し訳ないです。


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11話 呆気なく終わる練習試合です!

なほ×みほは確定です。



「馬鹿野郎!味方撃ってどうすんだ!!」

「姉貴ィ!熱くなりすぎ!」

「仮にも10~12歳まで戦車道の指導を受けていましたから、その時の血が騒ぐんでしょう…」

聖グロリアーナ女学院vs大洗女子学園の対決を見守るなほだが、仮にも過去嫌々ながらも戦車道の指導を受けていた身として、体に染み付いた戦車道の血が収まらないらしく、ヘマをかます味方戦車に、聞こえない筈の罵倒を飛ばしたり熱くなったりと、観客席の中でもかなり目立っていた。

「そんな単調な囮作戦バレるだろ!」

1人熱気に包まれるなほだが、そんななほを見て美玲はあることに気付いていた。


「なぁ、紀香」

小声で紀香に囁く美玲。

「どうかしました?」




「姉貴ってさ、本当に戦車道を嫌ってるのかな」

美玲の言うそれは尤もだった。
みほがこの大洗女子学園に転校して来る前から、ずっとなほはみほやまほの活躍を追いかけるように見ており、みほが黒森峰に居づらくなったあの事故のことも殆ど熟知している。
その他にも、なほは西住流を心底嫌いつつも、肝心の戦車道について完全否定することは少なかった。
それどころか、みほとの和解後は自分から積極的に試合観戦したいとまで言う始末。

なほは、戦車道とある程度の距離を置きつつも、完全にスッパリ縁を切るところまでは行っていないのだ。

「みほ姉貴との和解前も、まるで戦車はやらずとも、姉のために整備班に回った辺り…姉貴は本当は戦車をまたやりたいと感じていると思います」


「何やってんだルーキー軍団!大洗はそこ入り組んでるから隠れろ!」





「うちの店がァ!」

ある建物に戦車が突っ込んだ。戦車道連盟が補償してくれるので縁起はいい。


_______________


「あぁ、負けちまったかぁ…」

「他のチームも戦車道を始めたばかりとは思えなかったですけどねぇ」

「アイツら戦車ほっぽり出して逃げてんじゃねえぞワレェ!そこは撃てよ!」

「姉貴、マナーの悪いプロ野球ファンおじさんみたいになってます」

結局のところ、試合は大洗女子学園の敗北。最後の最後まで、みほの戦車が単体粘ったものの、戦車のパワー不足で撃ち負けした。

中でも、気弱な1年生が多くいるウサギチームが戦車を捨てて逃げ出したために、なほは半分ブチギレていた。元々戦車道の厳しい指導を受けていたなほとして、あのような脱走行為は許せないのだ。

「まあ、とりあえず動けない戦車回収は向こうの方でしてくれるみたいですからその間私たちは愚露李亜々奈と絡みましょうか」

「1人さっき試合前に信号無視したやついたけどあれどうすんの?」

「私のゲロが原因なんで今回は許します…。元々この町車通り少ないですし特に問題はありませんでしたから…」

「今は陸慣れた?」

「まあなんとか慣れました」

「姉貴ー、みほ姉貴のところ合流するぞー」

「ん?あ、行くよ」

なほは戦車道観戦モードから正気に戻り、紀香と美玲と共にみほの元へと向かっていった。

「(姉貴絶対戦車道は好きなんだよなぁ…)」

「(ただ西住流が嫌いなだけでね)」

紀香と美玲はそんなことを思っていたが、決して口にはしなかった。

__________________



「とても素晴らしい戦いでしたわ。あの時、砲の威力で負けていたら、今頃悔しさを味わってるのは私たちの方でした」

「いえ、そんな…」

「貴女のお姉さん相手より楽しい試合でした」

みほは思わず姉のことを思い出し、下を向いてしまった。

「あら…?どうされました?」

深い事情を知らないダージリンは、みほの様子がおかしくなったことに気付いた。

「おーい、みほー!」

そんな時、なほがみほの元へとやってきた。それと同時に、聖グロリアーナ陣営とも近づいていた。

「なほ!」

「みほ姉、今日の試合見てたぞ」

「あ、見てくれてたんだ…。でもこのあとはちょっと用が…」

「え?」

「今日、負けちゃいましたから、これからあんこう踊りやらなきゃいけないんです…」

華が顔を赤くしながら言った。

「思い出した…もうお嫁に行けない…」

続いて沙織も頭を抱えた。なほたちも、長く大洗町にいるため、あんこう踊りは充分に知っている。あんな踊りを大衆の前で踊るのかと、なほは思わず息を飲んだ。

「頑張ってねみほ姉…。私らはこれから戦車の整備だから…」

「うん、頑張る…。それとダージリンさん、本日はお疲れ様でした」

みほはそうとだけ言うと、迎えに来ていた生徒会長と共にさっきまでなほたちがいた方面に向かっていった。

「えぇ、お気をつけて」

ダージリンたちは小さく手を振った。


「さて、なほさん」

なほは目付きが変わった。しかしそれは今までのような相手を睨むような悪い目付きとは違い、驚きつつも穏やかな目付きだ。

「…私をいきなりフルネームで呼ばない人は初めてだ」

「えぇ、その点はしっかりと分かっていますわ」

「分かっている…?」

なほは、その言葉の意味が理解出来なかった。

「鹿島さんよりお聞きしたのもありますが、何より私が貴女と会うのは初めてではないですから」

「そうですわ、私とオレンジペコとダージリン様は1度なほさんと会っていますわ!」

「?」

ローズヒップの付けたしを聞いても、なほは心当たりが無いようで、首を傾げて過去の記憶を引っ張り出そうと躍起になっていた。

「会ったこと…」

なほはぐむむと唸る。











「もう!姉貴!この人は!」

なほが本格的に思い出せないため、痺れを切らした紀香が口を開いた。


「姉貴、3人は私と姉貴が初めて会ったあの日、不良に絡まれてるところを助けたあの子たちだよ!」

「え、あ!そうだ!」


ようやく思い出したなほ。

「まさかこんなところで会えるとは…」

「ようやく思い出してくれましたね。実はあの時の御礼をまだ言えてなかったので改めて言わせてください。あの時は本当にありがとうございました」

ダージリン含めオレンジペコとローズヒップはこの場で頭を下げた。

「そっか…あの時の縁がこんなところで…」

「えぇ、実は今日はもう1つ貴女たちに別件で用がありまして…」

「別件?」

なほは首を傾げる。


「えぇ、貴女が西住流に嫌悪感を抱いていて、尚且つみほさんの妹さんであることを知っての上で1つ、貴女たちを…


























___聖グロリアーナ女学院の戦車道部に、スカウトしに来ましたの」



うちの店がァ無しにガルパンは語れない笑
なんとなくぶちこんだだけで特に意味は無いですw

そしていつになったら秋山優花里となほはあの時の思い出を語れるようになるのか…

この小説では、大洗女子学園に西住みほがいることをダージリンは知っているという設定です。まあ、愚露李亜々奈とかグロリアーナと大洗を繋げるパイプがあるのである意味知らない方がおかしいかもしれないですけど…。

そして何故か出番のないルクリリ&アッサム。こればっかりは作者の好みなので仕方ないです。


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12話 まさかの決闘です!

アッサムさん台詞少なすぎて出しづらい…笑

まだローズヒップの方g(ry



「ちょっと待ってダージリン。それ私聞いてないです」

「あら?そもそも今日言うつもりでしたから」

聖グロリアーナ女学院戦車道の隊長ダージリンは、なほと紀香と美玲をスカウトしに来たという。

「鹿島さんに至っては、戻ってきてもらうというのが正しいですね」

「そういうことですわ。是非とも来て欲しいのだけど…」

ポッと顔を赤くするダージリン。
しかし、これにはなほも頭を抱えた。久々の再会と思えばいきなり聖グロリアーナ女学院に来て欲しいと言われたのだ。頭を抱えない筈がなかった。

「元愚露李亜々奈の方々も、貴女たちが来るとなれば歓迎してくれますわ」

「………」


美玲と紀香はどうしようかと考えているが、なほには明確に断る理由があった。





「ダージリンさん、悪いが私はみほ姉を護るためにここにいるんだ。それに、親には勘当されてるもんで、1度決めた大洗を離れることが出来ない」

「あらあらそうですか…」

ダージリンは表情を変えずに残念そうな雰囲気を出した。





「ところで、なんで私が必要なんだ?」

なほは率直に聞いた。

「それについては私から」

オレンジペコから語られるようだ。

「聖グロリアーナ女学院は、昔から卒業生、OGたちの口出しがかなりの影響力を持ってまして、かつて校内で1番の勢力だった愚露李亜々奈の存在を持ってしても、その影響力を弱めることは出来ませんでした。しかし、なほさんのように愚露李亜々奈ですら捩じ伏せるような方がいてくれればOGを抑え込めるかもしれないと…。何より戦車の修理も出来る方たちなので、グロリアーナに少ない修理担当が増えるのもこちらとしてはかなり助かるのです」


「ふむふむ」

オレンジペコの話を全て聞き終えたなほだが、もうその答えなど最初から決まっていた。

「当然ですけど、待遇は厚くしますわ」

ダージリンも続ける。が、なほの答えが覆ることは無かった。


「やっぱりみほ姉のために、私は大洗に残らなきゃならない。勿論、私が残る以上は紀香や美玲もだ。それに、私がいないと大洗女子学園のバランスが崩れちまう。悪いがその話には乗れない」

「そう…ですか。ならば、交渉決裂ですわね。しかし、こちらとしては引き下がれないのです。ここは1つ、決闘で勝負をつけましょう」

「決闘?」

ふと殴り合いの喧嘩かと躍起になりかけたなほだが、流石にそれはないとなほは自分に言い聞かせた。








「戦車道で」














「戦車道で?」

「えぇ、ここは公平な勝負を行うため、聖グロリアーナ女学院の学園艦の演習場で、同じ戦車同士で1対1の戦闘を行いましょう。そのための戦車はお貸ししますわ」

「え、えぇ!?」

なほは思わず困惑した。しかし、すぐに状況を飲み込み、勝負を受ける前提で話を進める。



「私と紀香と美玲の3人で乗ることになる筈だよな。ってことは聖グロリアーナにある3人乗りの戦車といえば…」

「あら、勝負を受けて下さるのですね?」

「あぁ、受けた勝負は逃げない主義だ」

「あら、聖グロリアーナ女学院と同じような考えの持ち主なのですわね?ますます貴女が欲しくなりましたわ」

ダージリンがふふふと笑みを零す。

「さて、私らが乗るなら3人乗りの戦車となるよな…。それなりにグロリアーナに数もあって3人乗りのイギリス戦車となれば…」














「クルセイダー巡航戦車Mk-IIIですわ!!」

ローズヒップが叫んだ。


「その通りですわ。今回はクルセイダー巡航戦車vsクルセイダー巡航戦車になりますわ」

「クルセイダー巡航戦車か…」

かつてパンチパーマの男の子から聞いた戦車情報をざっと思い出すなほ。


『クルセイダー巡航戦車は、北アフリカ戦線で使われたイギリスの戦車です!けど、砂漠の砂がしょっちゅう冷却器を壊すし、中は暑くて狭い上に色々改良を加えた結果、中途半端な性能になってしまったと言われています。しかも速度が速い分、36時間使い続けて壊れなければ奇跡といわれるほどの故障率でした』

「(あれ?この子男の子じゃなくて女の子だったな。名前は…切欠があれば思い出せそうなんだけど、とにかくこの子パンチパーマの女の子だ)」

ついでに何か大事なことも思い出したなほだった。


「ダージリン様、オレンジペコ!一緒に乗りますわ!」

自分の戦車のため、テンションの上がるローズヒップ。



「さて、そこまで案内してくれ」

「了解ですわ」

なほは、ダージリンに続いて、聖グロリアーナ女学院の学園艦へと入った。



未だにパンチパーマの男の子だと思っていたなほ。
ようやく思い出が修正されたところで次回へ続きます。

次回、いよいよなほたちの初戦車戦です!


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13話 クルセイダー決闘だ!

まだなほは実力の半分も出してないぜ!(ガチ)

今回のタイトル読み上げは、なほが担当してますw



「こちらがクルセイダー巡航戦車ですわ」

ダージリンに通されたのは、聖グロリアーナ女学院の戦車道演習場。その一室にある、手入れはされているものの、誰も使っていないというクルセイダー巡航戦車の1つ。

「おぉ…」

「だいたい大きさ的に中戦車ぐらいかな?」

「強そうですね」

なほが声を上げると、続いて美玲と紀香も興味津々に戦車を見つめていた。

「クルセイダーは私が愛用してますわ!今日は練習試合には出られませんでしたけど、ここでその分暴れますわー!!」

ローズヒップは早速、もう1つ別の場所にあったクルセイダー巡航戦車に乗った。

「では、私たちも向かいますから、準備が出来たら始めましょう」

「楽しみですわね」

最後にふふっと笑うと、ダージリンはオレンジペコと共にローズヒップの元へ歩いていった。





だがしかし、この決闘は、最初からなほたちに勝たせる気はないのだと、この時になって漸くなほは気づいたのであった。




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実弾やら必要なものを戦車に運び込んで、なほが一言。

「そういえばまず、私以外戦車操作したことないよなぁ…」

「「あ」」

なほの性格に乗せられてハメられたことに、漸く気がついた3人だが、時既に遅しだった。

「あ、姉貴!!どうすればいいんだ!?」

急に焦る美玲。

「まあまあ、とにかく乗ってみよう」

「…仕方ありません」

早速戦車の中へと入ろうとするなほたちであったが、ここで問題発生。

「狭っ!」

ガタイのいいなほ、紀香、美玲の3人は、まず戦車に入るだけで一苦労となった。

「とにかく役割を決めよう。私はあのクソ流派時代に砲手の腕は…アレだったけど装填スピードは行ける。あと車長も任せろ。クソ流派に縛られないなら色々とやれる。紀香は愚露李亜々奈でバイクとか操作上手いよな?」

「えぇ、仮にもリーダーですから、バイク捌きは誰にも負けません」

「なら操縦士を頼む。ここに操縦方法が書かれてるから」

「了解」

そして残るは砲手兼通信手。

「美玲はスーパーFPSプレイヤー。仲間との連携で狙った獲物は必ず当てる。よって砲手と通信手を頼むぞ」

「任されたぜ!」


そして各自のポジションが決まったところで、エンジンを始動する。



が、





「おい、後退してない!?」

「というか暑いです!」

「クルセイダーは冷却器ないからスピード速い分暑いんだよ…」

紀香が初心者にありがちな前身と後退を間違え、エンジンがついた瞬間上がり始めた車内の温度に大慌てとなっていた。

その様子を遠くから眺めていたグロリアーナの3人は…





「まあ、最初はそうなりますよね」

「もうこのクルセイダー特有の暑さには慣れましたわ」

「いっきまっすわーー!!」

ヤレヤレ顔のオレンジペコ。汗を滲ませながら紅茶を嗜むダージリン。何故か暴走するローズヒップ。



_____________________



「行くぞー!」

「「おぉーっ!!」」

何はともあれ、準備の整ったなほたち。
互いに向き合う形で、2つの同じ戦車は演習場の真ん中にスタンバイした。


「準備はよろしいですね?」

「あぁ!いつでもOKだ!」



こうして、試合の火蓋が切って落とされた。




「おほほほほ!まずはこちらから行きますわ!」

早速その持ち前のスピードを生かして突っ込んでくるダージリン側のクルセイダー巡航戦車。

「いきなり来た!紀香左だ!」

「え、えっと…こっち?」

慣れない戦車の操縦に戸惑う紀香。

「遅いですわ!」

早速一発ほど撃ってくるダージリン側のクルセイダー。


「こっちですか!」

紀香はなんとなく動かしたレバーで左折の方法が分かったらしく、なんとかクルセイダーの初弾を躱すことが出来た。


「なかなかやりますわね」

「今度はこっちから行くぜ!行くぜ美玲!」

「おう!」

辺りの様子を、ハッチを開けて見渡したなほは、確実に相手の戦車に狙いを定めた。


「装填完了!撃てェ!」

そして弾は放たれた。が、



「あれ?外れた…?」

「そりゃFPSゲームと戦車は違うからね」

美玲の初弾は、相手戦車の3m手前ぐらいに落ちる。
しかし、戦車道初見者ということを考慮すれば、誤差3m手前程度で済んでいることは、類稀なるセンスなのだ。


「おほほほ!初心者相手に流石に負けるわけには行きませんのよ!」

お互いにすれ違った弾と戦車だが、次こそ当てると意気込んだダージリン側のクルセイダーがもう1度距離を詰めてくる。

「来るぞ!全速全身だ!」

「は、はい!」

紀香は早速猛スピードで敵から逃げる。


「あれ?紀香普通に操作出来てね?」

「バイクとは違いますけど、操作は大体慣れました」

「紀香すげえな!」

先程のやりとりで、ある程度操作に慣れてきたとのこと。
まるでセグウェイのような感覚で操作を覚えた紀香は、操縦士としてのセンスに恵まれていたと言える。


「ほらよ!もう1発行くぞ!」

一方なほは、片手で戦車の弾を軽々と持ち上げ、そのまま発射口にぶち込むというパワーにものを言わせるスタイルで装填手としての仕事をこなしていた。


「あらあら、たったさっき初めて戦車に乗った人達とは思えませんね」

美玲は紀香が操縦していることを考慮しながら狙いを定めるが、誤差はおよそ1m以内まで縮まっていた。






「FPSは自分も動いて相手も動く中撃つんだ!これぐらいやらなきゃ必中(スナイプレイヤー)の古河美玲だなんて呼ばれやしないぜ!」

「お見事ですわ!私達も本気を出さなくてはいけませんね」

そしてダージリン側のクルセイダーが一瞬動きを止めた。







「行きますわーーーー!」

ダージリンのクルセイダーが物凄い勢いで、なほたちのクルセイダーの横を駆け抜ける。


「まずい!後に回り込まれる!」

なほたちもすぐさまダージリン側のクルセイダーの狙いに気づき、戦車を動かす。

「あ、姉貴!どうするんですか!?」

「とにかく前へ行け!目の前に林があるからその中へ!」


そして、ダージリン側のクルセイダーから再び弾が放たれた。




「まずい!」

その場で一時急停止するなほたちのクルセイダー。



その横を、弾が掠めた。



「外しましたわ…」

「ヒヤッとした…」

弾は目の前に落下し、そこにあった木を薙ぎ倒した。


「林内での戦いも長い間はできないし、ここは聖グロリアーナ女学院の演習場だから、あまり下手に物を壊せない…」

「…どうすれば」

うーんと頭を抱えるなほ。


すると、なほの目の前に、既に薙ぎ倒された木が転がってきた。


「これだ!」



__________________


「追い詰めましたねダージリン様」

「えぇ、しかし相手がどう出てくるかは分からないわ。油断は禁物ですわ」

辺りは木々しかなく、その木々同士の距離は離れているため、戦車という巨体の身を隠せるものがあまりない。そんな状況、初心者のなほたちからすれば絶体絶命の状況だった。


「行きますわ!」

ローズヒップがじわじわと追い詰めるように、ゆっくりとなほチームに迫っていく。


「私らも逃げるに決まってんじゃん」

なほたちも逃げの姿勢を見せた。


「逃がしませんわ!」

なほは砲塔をダージリン側のクルセイダーに向けつつも、しっかりとダージリン側のクルセイダーから距離を確実に取ろうとした。


「前に進んでいる分、弾がより遠く飛ぶのは私たちですわ!!この勝負!貰いましたの!」









「撃てェ!」


そんな中、なほチームのクルセイダーは弾を発射した。


「おほほ、そんなもの当たりませんわ!」

ローズヒップは軽々と戦車を操作して回避する。
やはり美玲とはいえ、弾を避けられたらどうしようもないのだ。

しかし、そこで終わるなほチームではなかった。






「撃てェ!」

「何ですの!?もう2発目を!?」

僅か数秒という時間差で、もう2発目を撃ってきた。

「私の姉妹間でも最強と言われた装填スピード舐めんなよ!」

そう、普通の人なら両手で漸く持てるほどの戦車の弾を、なほは野球のボールでも扱うかのように、利き手に2つ、もう片手には1つ持てるのだ。

「しかも狙ったのはテメェらのクルセイダーじゃねえ!」


なほチームから放たれた弾が狙ったのは、さっきダージリン側が薙ぎ倒した巨木であった。

「なっ!?」


更にその放たれた弾に当たった巨木は、吹っ飛んでダージリン側のクルセイダーに命中。



「なんですの!たかが木!それしきのことでクルセイダーは…」

その時であった。






「動じな………」



ダージリン側のクルセイダーは、エンジンが停止した。

「…やられましたわね」

「ダージリン様、動かなくなりましたよ?」

「なんでですの!?」








「クルセイダー巡航戦車は36時間故障なしで動けば奇跡といわれるほどの故障率の高い戦車なんだ。さっき私らが巨木をそっちのクルセイダーに当てたことで、当たりどころが悪くてエンジンに強い衝撃が加わってクルセイダーのエンジンが壊れて活動停止したのさ」




「動かない的ほど当てやすいものはないですね。もうあちら側は砲塔も回せないですから、いい所まで動かしますね」

そして、いい所まで来たところで、なほが持っていた残り1つの砲弾を装填し、美玲がしっかりとダージリン側のクルセイダー巡航戦車に当てた。


白フラッグが上がり、この勝負はなほたちの勝利という形で幕を下ろした。



戦車を知り尽くし、その戦車の弱点を突きつつ各自の実力とルールブックのスキを突いた手段とフィールドにあるものを活用していき、あらゆるもので多対一すらも制する。

これがなほ流戦術。



次回、隠されていたなほのもっと恐ろしい部分が明らかに!(の予定)

お楽しみに!


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番外編 酒乱師範の屋台での会合

※若干のネタバレあり。
※ここで呟かれたことは後々変更になる可能性もあります。

短いです。
あとネタ要素強めでキャラ崩壊注意です。
らぶらぶ作戦の要素も入ります。
地の文少なめです。


※時間軸的に、アンツィオ戦終了後。


昭和の匂いを醸し出す屋台。
そこに座って酒を飲む、ある幼馴染の家元候補の2人がいた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

「煩いわよいきなり泣き出して…」

「だってちよきちぃ…」

「泣き上戸かしら?しぽりん?」

「そうだよぉ…」

「あ、おっちゃん!カクテル追加で!大で!」

「はいよ!よく飲むねぇ…」


西住しほ、島田千代、共に戦車道における二大流派であり、2人はその師範なのだが、お酒が入るとどうも普段の性格は何処へやら、このように残念な人と化してしまう。
特に西住しほに至っては別人である。


「なほぉ…みほぉ…お母さんを許してよぉ…」

「あらぁ?自業自得じゃないの?」

「師範でいたいからどうしてもォ!なほを勘当したらぁ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

ガン!!と酒瓶を机に叩きつつ、再び大声で泣き出す西住しほ。


「聞いてよちよきちぃ!」

「はいはい…」

「なほを中1で勘当したらぁ。西住流に縛られないからって戦車道で手榴弾使ったり火炎瓶投げたりぃ、無茶苦茶戦法ばかりするのよ?みほも西住流ガン無視で!これじゃあアンタの島田流じゃない!私が育ててきた西住流はなんだったのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「まあ、酷い八つ当たり」

「まあみほは置いとくとして、問題はなほの方よ!」

「あらぁ?なほさん? あの子可愛いわよ? あんな怖い顔して意外に甘いものが好きなんですって!」

「そんなの冗談じゃないわよ!
なほったらまほから聞いたわ!西住流のことクソ流派とか言ってるし、私のこと影でクソババアだなんて言ってるんですって!女ヤンキーに成り下がってるし!私が悪かったから戻ってきてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! あの頃の可愛いなほに戻ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


西住しほ、ご乱心


「しぽりんお酒足りないんじゃないのぉ?」

「いいから寄越しなさいよォ!新しい酒!」

ぐびぐびと飲み干すしぽりんこと西住しほ。


「それにこの前なんか大変よ? なほが西住流をクソ流派だなんて言うから日本中にいるなほの傘下やファンのヤンキーが熊本の私の元に押し寄せる事件なんか起こったの!あの子を勘当したらとんでもない報復が来てぇ!ヤンキーはそんな私を見て口揃えてババアだなんて抱腹絶倒しながら言うし!」

「あら?私もあなたもババアよ?そして報復と抱腹をかけたダジャレぇ?座布団マイナス5万枚!!」


「あっひゃっひゃっひゃ!って誰がババアだ死○ぇ!」

笑い上戸に発展。ついでに爆弾発言も漏らす。



「しぽりん!今日はなほのことも忘れるまで飲みましょぉ?」

「えぇ、なほのバカ!もう知らないんだからぁ!」

「やだぁ?で、そんなしぽりんは娘と何歳まで一緒にお風呂入ってたの?」

「えっ、10歳まで…あ」

「本当に娘大好きじゃない!うちの愛里寿だって可愛いのよ?」

「うちのなほみほまほがアンタのより可愛い!」

「あらら?しかも愛里寿は飛び級で大学行く天才少女でボコが好きなんだって!可愛いでしょぉ?」

「私のみほだってボコが好きよ!ボコを抱いてねる姿は天使だったわあ!」

「でも天才はいないわよねぇ?」

「あら?ちよきちだって子供1人ってことは旦那と全然S○Xしてないのかしら? 愛されてないのねぇ? 私は3年で3人よ? 常夫さん激しいから3回も…ハッハッハ!」

「別に子供の数だけじゃないわぁ? 愛里寿がいるし私だって○○○○○○○○したわよぉ!」


「私だって常夫さんt」

会話が危ないので終了




なんとなく書きたくなって…
酔いが覚めるといつもの師範に元通りです笑


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14話 クルセイダー巡航戦車確保だ!


引き続き前話と同じくタイトルはなほが読み上げてます。





「完敗ですわ…」

「初心者に負けるなんて!」

「まあまあ、なほさんは一応戦車経験ある訳ですから完全な初心者という訳では…」

初心者のなほたちに負けた悔しさから荒ぶるローズヒップ。それを宥めるオレンジペコ。そんなことはさておきと紅茶を手に戦車のハッチを開けてクルセイダーから出てくるダージリン。

「お見事ですわ」

「まあ、たまたまそこに木があっただけだからな…」

「しかし、貴女は姉のみほさんともまた違った戦法を取るわね。貴女独自のスタイルですわ。敵戦車の弱点を突きつつ、フィールドにあるものを活用する。島田流の忍者戦法に近いながらも、またそれとは異なる巧妙さがあるわね。1人でフィールドを駆け巡るその姿、まさに狼ですわ」


狼、なほたちの戦い方は狼。
そして後に、なほたちは『フィールドを駆け巡る狼』と呼ばれ、恐れられる戦車道選手となるのだが…。





_____________________


場所は変わって聖グロリアーナ女学院内の客室間。

「さて、本題に移りますが、私たちは負けましたから、素直にここは引き下がりますわ。ただ、1つお願いしたいことがありますわ」

「ん?」

ダージリンは紅茶を机に置いた。


「私からこれを、みほさんとなほさんにお送りしますわ」

そう言われてなほが受け取ったのは、2つのティーセットのカップだった。

「私達聖グロリアーナ女学院は、好敵手の認めた相手にティーセットをお送りしますの。是非とも貴女たちとはまた戦ってみたいものですわ」

「…そうだな、私らにはそれなりに縁があるし、また何処かで砲を交わせる。そんな気がする」

なほは頷いた。美玲もうんうんと相槌を打つも、紀香だけは「あれ?」と頭にハテナを浮かべていた。


「美玲、なほ姉貴、私ら戦車持ってないだろ」

「「あ」」

今頃気づいて「あちゃー」と頭をポリポリと掻くなほと美玲。だが、そんな3人を見たダージリン、ローズヒップ、オレンジペコは皆ふふふと珍しく口を揃えて笑っていた。


「その点に至っては、昔不良から助けてもらったお礼として、1つ用意しておりますわ」

ダージリンは紅茶を飲み干すと、その場で立ち上がった。


「ついてきて下さいな」




_____________________



カツカツ…と歩いているのは、先程まで決闘を行っていた演習場の端。すぐ隣には、大洗町を見渡せるほどの展望デッキがある。

要するに、なほたちは聖グロリアーナ女学院学園艦の最端まで来ていたのだ。


「…ダージリン、ここに何かあるのか?」

「えぇ、紹介したかったのはこれですわ」


そして、ダージリンが指差したのは、1つの戦車…らしいもの。



「これ?」

「はい」

なほは再度視線をその戦車らしいものに移す。


「この全体錆び付いてて元の戦車が何かも分からないような物体?」

「そうですわ。それは聖グロリアーナ女学院の工業力の低さが故に、まだ直せるにも関わらず修理出来なかった戦車ですわ」

「しかも直す業者呼ぶよりも新品買った方が安いからと放置していました」

「ちなみにこんなに錆び付いてて原型が分からないかもしれませんが、こちらもクルセイダー巡航戦車ですわ!なんでこんな酷いことに!」

どうやら錆び付いてて黒い物体は、元々クルセイダー巡航戦車だったものだが、聖グロリアーナ女学院に直せる人がおらず、新品買った方が速いし安いとのことで、長い間放置されていたという。


「鹿島さんから聞きましたわ。貴女たち、機甲科で大洗の戦車の調整などもやってるんですって? もしこちらを修理出来るのであれば、そのまま大洗女子学園に差し上げますわ」

美味しい話だ。修理さえ出来れば、タダで戦車を貰えるというのだ。加えて、なほは機甲科としても優秀。1晩でボロボロの大洗の古い戦車を、自動車部と共に完全に使えるようになるまで修復している。


「姉貴」

「これはいい話ですね。勿論?」

なほの答えは決まっていた。






「あぁ、こんなのすぐ終わらせる」



_____________________


「うぉぉぉりゃぁぁぁぁ!!」

ボロボロのクルセイダー巡航戦車を修復するなほたち。そんな3人を見て、オレンジペコは驚愕の目をしていた。

「なほさんタイヤ軽々と担いでますけどあれ何キロありましたっけ?」

「だいたい1つ50kgあるんじゃないかしら」

なほの凄まじい筋力により、修復作業はどんどん予想を遥かに超えるスピードで終わっていく。


「履帯3人で持ってますけどあれ100kgありますよね」

「なほさん凄いですわ!」

「女性の力とは思えないですわね」

普通ならもっと大人数だったりクレーンやらフォークリフトなどの力を借りて行う作業を、なほは軽々と3人だけでこなしていた。

「鹿島の姉貴ィ!」

「なほの姉貴ィ!」

「お手伝いすることないっすか!?」

加えて、元愚露李亜々奈のメンバーも手伝いに来たため、夕方より始めた作業は僅か1時間程度で終わってしまった。


_____________________


「よし、私らがいればクルセイダー巡航戦車が壊れてもすぐ直せるから、相性ピッタかもな!」

聖グロリアーナ女学院の演習場の端でいずれ風化し忘れ去られると思われていたクルセイダー巡航戦車は、ここに復活した。


「姉貴ィ!戦車道デビューっすね!」

「なほの姉貴も戦車に乗る姿マジかっけぇっす!」

「美玲の姉貴!一発ドカーンと決めてくださいっすよ!」



そんな元愚露李亜々奈となほたち3人を見ていたダージリンたちも、自然と笑みを零した。


「大洗港への道は開いてるわ。その姿を皆さんに見せてきてはどうでしょうか?」

「おぉ!いいじゃん!んじゃ、美玲!紀香!行くぞオラァ!」

「「へい姉貴!」」

そして戦車のエンジンを起動させ、その高速で演習場から離脱する3人。


「「「鹿島姉貴!またグロリアーナに来てくださーい!」」」

「また来ますよー!」

そうして紀香が元愚露李亜々奈のメンバーたちにも手を振り、なほたちは聖グロリアーナ女学院の学園艦を後にした。






「次会う時は、また楽しい戦いにしましょう」


_________________________




一方、大洗女子学園艦の前では、大パニックとなっていた。



「なぁ、せっかく本土寄港したんだし、なほの姉貴はいるんだろ?」

「姉貴に会わせろォ!」

「せっかく来たんだが留守か?」


大洗女子学園の周囲を取り囲むような集団が、およそ200名ほど。中には、神奈川や東京などの遠隔地より大洗を訪れた集団もあった。


「まあまあ、まだなほさんは帰ってきてないんだ」

慌てて生徒会長もなほを求めてやってきた集団を宥めるが、その数200人の集団を落ち着かせるのはいささか無理があった。


「なほ姉貴いねえなら待つぞ!」

「いつ来るんだよ!」

「男と遊んでんのか!?」

「姉貴に限ってそれはねえよ」

「姉貴に男なんて聞いたことねえな」

もはや各自言いたい放題のその場所で、生徒会はただ乾いた笑いをするしかなかった。


だが、そんな時。



「おーい!なんだこの集団!」

「なほ!って何故戦車に…」

「おやおや来てくれたみたいだね。なほちゃん戦車で登場だなんてカッコイイじゃん」

「やっとご登場ですね…。って何故戦車に…」

何故戦車に乗りながら来たのかと生徒会も苦笑いを浮かべつつ、漸く登場した不良集団の本命であるなほに、ホッと安堵の息をつくのであった。


「姉貴ィ!」

「折角の寄港なんで顔合わせに来ました!」

「無事そうで何よりですぜ!」

だがしかし、そんな彼女たちの出す声とは裏腹に、なほは怒りに満ち溢れた表情をしていた。
しかも、戦車に搭乗していることもあって、その迫力はまた一段と増していた。


「アンタら何他人に迷惑かけてんの? また私の前に立ち塞がって集団で私にボコボコにされる?」


「「「「は、す、すいませんでしたァ!」」」」

なほの圧力に屈した彼女たちは、一目散にその場から退散した。

この度なほを求めてやってきた集団は、かつてなほに喧嘩を挑んで、なほ1人相手に集団で返り討ちにあった者達。つまり、関東各地に散らばる元なほの敵でありながらなほの傘下にいる不良グループ。
最初は大洗女子学園内、続いて水戸市、茨城、北関東、関東全域、日本全国と次々と有名になるに連れて売られた喧嘩を買っていったなほは、気づけば日本で1番傘下の多い女番長と化していた。

勿論、大洗女子学園艦内にもなほの非公式ファンクラブもとい傘下の人間もいる。
既になほは大洗女子学園艦内を制しており、大洗女子学園艦の地下エリアにて大半の人達は大名行列に直面するが如く道を開け、中にはなほを恐れ、その中には服従を非公式にも誓う人間がいる。

尤も、なほは傘下とはいえ、西住流の束縛を反面教師に、彼女たちには自由にやればいいという精神を貫いていることもあり、なほがこれまで傘下にいるグループを徴収することなど殆ど無かった訳だが。

逆にそのスタイルが各地の不良たちに受け、迷惑をかけない限りはファン活動をしていいといったグループが増えたのだ。
その結果、自由気ままな不良集団はなほに対しての尊敬が強くなり、組織も拡大。

実は、抑止力のような存在となっていることもあり、更にありとあらゆる不良集団を仕切っていることも加わって、普通に無視することができないぐらいその勢力は日本中に広がっているのだ。


「まったく…」

とはいえ、なほは怒りのツボを押さない限り、そこまで厳格ではない。ただ、沸点に到達したり怒りのツボを押せば無事では済まない。

そのなほの抑止力となっているのもまたみほやまほであり、ここには不思議な関係があるのだ。

しかし、そんな複雑な状況下でも圧倒的な傘下を持つのは、なほに人を惹きつけるカリスマがあるからなのだろう。


「んじゃ、これから私らも戦車乗るから会長よろしく〜」

「「「…………………」」」


だがなほ本人は、そんなことに気づいておらず、普通の日常を送るだけなのであった。




西住なほ

西住流を嫌っているため、名字で呼ばれることを嫌う。
15歳の高校1年生。成績は番長であるという点からすれば優秀。たまにボケる。姉のことが死ぬほど好きだが、西住流は嫌いという矛盾により、全国の傘下を使って西住流を叩き潰すことは可能でも、実行には移さないという、ある意味取って付けたような恐ろしい素性の持ち主だった。
実は甘いものが好き。美玲と紀香を信頼しており、基本2人の指導役。でもたまに盛大にボケをかますため、その時は紀香に突っ込まれる。




次回は全国大会のトーナメント決めになります。
一方で、なほはまた事件を起こす…?


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15話 修羅場です! その2

なほ、またやらかすの巻
ちなみに、なほの髪色は元々赤黒でしたが、今は金髪です。



『大洗女子学園!8番!』

みほの引いたクジ。それは、全日本戦車道大会のトーナメントの対戦相手、そして今後を決める大事なクジだ。


「8番…対戦相手はサンダース大学付属高校…」

「それって強いの?」

尚、なほはこの場にあんこうチームや美玲と紀香と共に、大洗女子学園のトーナメントの行先を見守っていた。

「サンダース大附属は米国の影響を強く受けている学校だ。シャーマンやシャーマンファイアフライといった戦車を使ってくる」

「そして何より、裕福で日本一戦車の保有台数が多い学校です!」

「1回戦の使用台数は10両までだから、まあ最初に当たったのが不幸中の幸いだな…」

なほと優花里によるサンダース大学付属高校の解説が行われる。尚、一方のサンダース大学付属高校のメンバーは、名前も聞いたことないような大洗女子学園が相手となったことで歓喜していた。

だが、その歓喜も後に絶望となる。


___________________




ドゴーン!




突如店内に鳴り響く爆音。

「はい、ご注文は」

「戦車ケーキを8つ」

「1つは激甘仕様でお願いします」

「1つは特盛メガサイズで」

「はい、かしこまりました」

あんこうチーム、そしてなほのチームの計8人は、大人数の座れる席に案内され、人生初の戦車喫茶で一服しようとしていた。

「しっかし、呼び鈴が砲撃音とは…」

「なほ姉貴の普段の声より大きいかも」

「そりゃそうだ」




そんな談笑の中、なほの思い出に触れることになる。


「そういえばなほ、お前の戦車の知識、どこ由来だ?」

少々低血圧で眠気を醸し出す麻子がなほに尋ねた。


「そういえば麻子はあの場にいなかったか…。私の知識、幼少期に僅かの間熊本でダチやってたパンチパーマの……女の子から聞いたんよ。その子は後に茨城に引っ越したと聞いたから、もしかしたら大洗にいたりしてな…」

「あれ?パンチパーマの男の子じゃなかったのか?」

美玲が頭にハテナを浮かべながら口にした。

「いや、よくよく思い出してみれば男の子じゃなくて女の子だった。なんか、あの初めて大洗の戦車を1晩かけて整備したあの日の昼、3人で仮眠してる間にそんなことを指摘される夢を見た気がしてな。ダージリンとクルセイダー巡航戦車対決をしていた時に完全に思い出した」

ハハハと笑うなほとその取り巻き2人。みほもくすくすと笑っていた。


「なほ、そんな思い出の友人が目の前にいたらどう?」

「え?」

みほに言われ、なほはピタッと笑うのを止めた。


「……ここにいるの?」

なほは誰なのかと、キョロキョロここにいる人達に目を配った。

「私、秋山優花里は、幼少期貴女と友人だった女です!」


「「「えぇーーーーーーーッ!?」」」

「オオカミさんチーム全員驚いてるじゃん…」

沙織は苦笑いを浮かべていた。一方のなほは思いがけない再会に口をカクカクさせ、腹話術の人形みたいになっていた。
尚、クルセイダー巡航戦車のなほチームは、みほによってオオカミさんチームと名付けられた。

そのネーミングセンスに対しなほは、みほが可愛いから採用、とシスコン振りをカマしていた。




一方で話はなほと優花里の数年ぶりの再会に移る。


「パンチパーマだったのに今ではだいぶ変わったな」

「えぇ、流石に親にダサいからって強制的に髪型変えられましたが、根っからの癖毛は直りませんでした…」

そんな過去の思い出話に華を咲かせるなほと優花里。こんなあっさりした感動もない再会ではあるものの、かつての友との再会に、その場にいた全員は温かい目を送っていた。


__________________


「あ、戦車ケーキ来ましたね」

合計8つの戦車ケーキが軍用車を元にしたであろう小さな車に乗っけられてきた。

「激甘仕様がこれだね…」

「うわぁ…」

激甘仕様戦車ケーキは他の戦車ケーキと比べて、砂糖が明らかに目で確認できるぐらい豪快にかけられていた。

「頂きます!」

「はやっ!」

早速かぶりつき、パクパクと一気に口へと持っていくなほ。

「なほ、昔から甘いもの大好きなんだよね…」

「大洗で名の通った番長だとは思えない光景ですね…」

大洗どころか、日本でもそこそこ有名な女番長は、見かけによらず甘味が物凄く大好きだった。

「んじゃ私はこれー!」

「デカっ!」

「超重戦車級マウスみたいですね」

美玲の特盛メガサイズケーキは、通常サイズのおよそ3倍ぐらいの大きさだった。

「美玲は昔から大食いなんですよ」

紀香が呆れ顔で言う。

そんなこんなで楽しくケーキを食べつつ談笑するなほたち。
しかし、そんな楽しそうな雰囲気をぶち壊す魔の手が迫っていた。






「まだ戦車道をやっていたとはな」

「あら、副隊長さんじゃない」

唐突に、楽しい8人の会話に水を差す2人。

「お姉ちゃん…エリカさん…」

パンツァージャケット。そして黒い黒森峰の制服に身を包んだ彼女たち。2人とも、みほにとって近い人物だったのだが、みほの表情は浮かない。


「あら失礼?"元"副隊長でしたわね?」

罵るような素振りをするエリカという人に、みほは上手く言い返せなかった。

「黒森峰を逃げたと思えばこんなところでノコノコと…」

「そんな…みほさんに失礼です!」

「いきなりなんですか!」

そんなエリカに華と優花里が突っかかる。

「あら?貴女たちこそ失礼じゃないかしら? この戦車道大会、大洗みたいな弱小校はそもそも出場すらしないのが暗黙のルールなの」

そんな時であった。


「おい、さっきから聞いてれば言いてえ放題だな。うちの姉に何か用か?」

気づけばなほは、エリカの胸倉を掴んでいた。

「な、離しなさいよ!」

エリカはなほの足を蹴飛ばした。

「いってぇ」

そう言いつつも、なほはエリカを離さなかった。

「てめえみほ姉に用があんならアポとって出直してこいや!」

なほはエリカを壁に叩きつけた。

「ゲホッ!」

衝撃で肺から空気が一気に出たエリカは咳き込んだ。

「待った!みほ、その人は誰だ!」

まほは、強引になほとエリカを引き剥がすと、みほの真ん前まで近づいた。

「声は聞いたことあるが…誰だ…?」

その言葉を聞いたみほは、戦慄した。
なほはみほを護るために常日頃から動いている。しかし、元々それは姉のまほより依頼されたことなのだが、まほの言葉からまほはなほの現在の容姿や性格を知らないということ。

つまり、みほが固いと思い込んでいた、なほとまほの間のパイプは、想像を上回る脆さだったのだ。みほとなほは仲を寄り戻し、あとは三姉妹の間だけの問題かと思いきや、それはみほの大きな勘違いだった。


「その人は……」

みほは言い出せなかった。

ここで言えば、まほとなほの関係、それどころか本格的に西住流vsなほとみほの戦いが起こると感じていた。
かといってここで嘘を付けば、最悪の場合みほとまほの仲は絶対的に決裂する。要するに、どっちに転んでもその後の選択を誤れば、かつて近所でも仲が大変良いと評判だった姉妹は、家族や流派を巻き込んで崩壊する可能性があった。



「あー、私はなほだ。まほ姉」

「!?」

そんな中、なほはしれっと名乗った。その名を聞いたまほは、血相を変えてなほに迫った。


「なほ!お前いつからそんな暴力的に…」

まほはなほの胸倉を掴んだ。だが、なほはそんなの知らないと言わんばかりの平常心で口を開いた。


「まほ姉、私は悪いがまほ姉とあの頃のように接することが出来ないみたいだ。今でもまほ姉のことは姉妹だし、家族。けど、西住流が私を変えた。それも悪い方向に。そして___」


なほはまほの手を振り払った。


「力勝負では私には適わない。悪いがみほ姉はこんな私を受け入れてくれた。でも、まほ姉がこんな私を受け入れてくれないのであれば、私はまほ姉を含めた西住流と黒森峰と、敵対せざるを得ない」


「あの頃のなほは可愛くて、姉妹愛に溢れていて、そんな暴力的じゃなかった!なほ!どうしてお前は……西住流は…姉妹を決別させるためのモノだったのか…」

まほは涙声でなほに叫んだ。


「そんなに私が憎い? それとも西住流が憎い? 私と共に西住流とは違う道を歩むか? それとも西住流の元で戦車に乗って私を更正させるか…」

それを聞いたまほは、その場で泣き崩れてしまった。無理もない。長い間メールや電話だけのやり取りをしており、数年ぶりに本格的に顔を合わせたと思えば、なほは西住流出身となりながら女番長へと成り下がり、化けの皮が剥がれたなほは、長女のまほとも敵対する覚悟が出来ているというのだ。




「…ごめん」

こっそりと、まほにも聞こえないぐらいの小声で言うなほ。やはり敵対するとはいえ、実の姉なのだからやはり敵対は心が痛むのだ。


「でも、私は西住まほ。西住流を継ぐ使命がある…」

「そうか…」

まほは、意思を固めた。


「じゃあまほ姉に最後1つだけ」

敵対するとなればこれだけはと、まほの耳元でなほは囁いた。












「私のバックには島田流がいる」

「!?」

まほは驚きの表情を浮かべる。相対的に、なほは喜びと悲しみの混ざったような歪んだ表情をしていた。



実は今後オリジナルの学校出そうかなと考えてます。
もしそういうの無理!とあればブラウザバック推奨します。

チューリップ学園という名前のオランダの高校とか考えてはいます。まあまだ思考段階でして、その辺は脚本さんと相談して決めます。


これでまほとも敵対し、西住流vs新大洗連合+島田流の戦争が激化します。
いつか和解する日は来るのか…


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16話 島田流となほ

ちょっとした過去編です。長くはならないと思います。



なほ、中学1年生



『貴女を、西住流から勘当します』


そう言い渡され、大洗女子学園に通うこととなったなほ。
しかし、なほの学費が西住家より支払われることはない。西住家より勘当されたなほは、その辺り全てを無にされたのだ。元々、大洗女子学園は中高一貫の公立学校ではあるものの、教科書代から学内食費、何から何までが自腹となる。
なほの父親、西住常夫からの100万円だけでは到底補えるものではない。


「西住流は…クソ流派。西住しほはクソババア」

この頃からなほは、その合言葉を自分の中で定着させ始めた。未来永劫憎み続けるべき存在として、認識を怠らない為である。



prrrrr…



「ん?」

なほのスマホより電話が鳴った。

「誰だ?」

なほがスマホを開くと、相手は見たことない電話番号だった。


「はい、もしもし」

それでもなほは、電話に応じた。


『もしもし』

相手は女性だった。



「もしもし、なほです。どちら様ですか?」

なほは、この時も決して自分の名字は名乗らなかった。



『はじめまして、西住なほさん』




「…んー?」

なほは表情を(しか)めた。






『あらあら失礼。西住で呼ばれたくないですわよね。何せ勘当されたんですから』


「…いきなりなんですか。用件があればお願いします」

なほは電話相手への警戒心を強くした。そして、いかにもスマホを握り潰しそうなぐらい手を震わせ、身体中から汗を垂らしていた。



『あら失礼、私は島田千代と言います』


島田千代。その名を、なほはかつて聞いたことがあった。
なほのいた西住流と対となる、変幻自在の戦法をとる戦車道の流派。



「島田流の師範じゃないですか」

『正解です。この度お電話したのは…そちらの大洗女子学園に島田流の使者を送っております。貴女とは1度顔を合わせてみたいのです。使者はヘリで参りますので、まずはそちらの方へ…』

「…分かりました」


不思議とこの時、なほは嫌な予感を感じなかった。



_________________



「…来たか」

大洗女子学園艦上空に、その影は飛来してきた。
やがてその影は、なほを見つけると近くのヘリコプターの着地できる広いところに降りていった。

なほもヘリコプターを追いかけて、その広いところまで向かった。




「お待ちしておりました。師範がお呼びです。今すぐお連れします」

「はい」

そうして誘導されるがまま、なほは島田流のヘリに乗り込み、師範と顔を合わせることにした。


_______________


「こちらです」

「…………」

なほは顔を上げた。そこは西住流の邸宅とも並ぶ大豪邸だった。


「師範は中におられます」

「はい」

なほはノックをして、島田流師範と顔を合わせるために部屋に入った。




「貴女がなほさんですね」

「はい」

なほは顔を上げる。そこには、20代前半ぐらいの美人な人が客間の椅子に腰掛けていた。

「…貴女が島田千代さんですか?」

「はい、まあまずはそちらの椅子にお掛けください」

なほは言われるがままに、客椅子に座った。



「この度はお招きありがとうございます」

「あらあら、まだ中学1年生なのに大人へのご対応が上手いわね」

「い、いえいえ… 学んできましたから」

皮肉にも、その礼儀作法は西住流の元で学んでいた。



「…で、今回貴女を招いたのには理由があるの」

千代は紅茶を置くと、なほの目を見て言った。







「貴女、私の養子になって戦車道を続けない?」

それは、なほの運命に大きな変化をもたらすこととなった。


_______________



「…申し訳ないです」


「そう…養子は流石に…」

なほはそれなりに悩んだ挙句、養子になるのを断った。


「流石にそれまでお世話になれません。それに、私は今戦車道と距離を置きたいんです」

「そう…、しほとはそれなりに交流がありますけど、貴女の戦車道は島田流寄りですから、あちらでは受け入れられなかった車長と装填手の腕は保証しますよ」

「それでも、今は頭を冷やしたいし、戦車道から1度解放されたいんです…」

なほは、島田流への養子の案件を受け入れることは無かった。



「その代わりですが」

「うん?」

なほは代替案を出した。






「私のバックに付いてください」

それをきいた千代は興味を醸し出す表情をした。


「…そう、それはどのように?」

千代は、なほを試していた。










「私は一旦戦車道から距離を置くだけで、いずれ戦車に戻るということです。それまで、私は嫌でも西住の忌々しい名を背負い、大洗女子どころか日本中で有名になってやります。それも悪い意味で。西住が私を手放したこと、そのことを一生後悔させてやります」

「なるほど…貴女の最終的な目標は何なのかしら?」

なほは、迷うことなく答えた。











「島田流をバックに、西住流が私を止めたくても止めれない。取り戻したくても取り戻せない。そんな巨大な勢力を作り、いつ私から仕返しが来るのかと、西住流を恐怖に陥れてやりますよ」


「…いいじゃない」


このような経緯の中、なほの裏には島田流が付くこととなった。更に、なほの学費の援助も島田流がしてくれることとなり、なほの抱えていた問題は解決へと向かっていった。



そして、なほは再びこの時の言葉通り、戦車に乗った。
しかも、全国各地に傘下を作って有名となり、姉のまほすら躊躇いながらも西住派として敵対することを選んだ。


もはやもう戻ることの出来ないところまで、なほは復讐を進めていた。


いつか、島田流の戦い方で戦車道へと復帰することを念頭に、なほは島田流すらも利用する覚悟であった。

_______________


そして時は現在に戻る。


「そう…」

「はい」

場所は西住邸宅


「あの子もまた、戦車道を再開したのね」

「えぇ、みほに続いてなほも戦車を…」

しほはここでまほまでが西住流を離れるのではないかと一瞬不安に陥った。

「まほ、貴女は西住流を裏切らないと信じてるわ」

「はいお母様、私は西住流そのものです」

「そうね、撃てば必中すら守れないあの子とは違うこと、それが貴女の西住流としての資質」



しかしこの時まほは、なほの裏に島田流がいることを恐ろしくて言い出せなかった。


大洗女子学園vsサンダース大学附属高校の試合は近づいていた。


「菊代、少し家を空けます。あの子がどうなったか、気になったので」

「はい、かしこまりました」

しほはまほたちを部屋に残して去っていった。


「お母様…」

その後ろ姿に、まほは西住家と黒森峰がどう変わっていくのか、恐怖を覚えた。


そしてまほは、座る人のいなくなった机を見つめた。
そのまま、一生この家族は闇を背負って生きていくのではないかという事実に苛まれている中、まほは唐突にしほの机を正面ではなく真横から覗いてみた。
すると、書類がはみ出しておらず、乱雑に開けられた形跡のない引き出しが1つだけあった。

「……」

菊代も部屋を出ており、周囲をキョロキョロと見渡して誰もいないことを確認した上で、まほはその引き出しを開けた。
恐る恐る何が入っているかを確認すると、そこには到底想像もつかないものが入っていた。

「…これは」

まほは引き出しを開け終えたところで、母への同情からか涙を流した。









そこには、"子供との仲直りの仕方"というタイトルの本が入っていた。




この世界では中学からバイトができます。という設定です。

しほは師範としての顔、母親としての顔を使い分けることが出来ない人なので、心の底では復縁を望んでも師範としてそれを押しとどめてしまう人というイメージが強くなりましたね。
らぶらぶ作戦読んでから本当にこの人鬼畜外道鬼ババアだけの人かなと思いまして…



ー追記ー

とんでもない誤字が発覚したので修正致しました。


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大会編 17話 初陣!! vsサンダース大附属高校!!

前話にてとんでもない誤字とミスが発覚したので修正致しました。まずはそちらもご覧下さい。
今更ですが高評価付けて下さった非非緋想天の娘さん、ハイパー扇風機さん、ありがとうございます。


『潜入!サンダース大学附属高校!』

独特のテロップ、そして音楽から繰り出された、秋山優花里によるサンダース大学附属にスパイとして潜り込んできたという映像。
それをなほとみほは繰り返し視聴し、1回戦に備えるべく作戦を練っていた。


「サンダースは米国の影響が強いらしいな。米国式が相手となると、戦法は数にものを言わせた正面突破…だろうな…」

「なほ、本当にそうなの?」

「あくまで予想…だ」

あの戦車道カフェでの西住流との決別の日以来、みほは元々慎重で大人しい性格だったが、その性格に拍車がかかっていたいた。それは即ち、戸惑いや後悔、西住流との決別から来る不安感だった。
なほがいなければ、間違いなくみほは精神を壊していた。


「…みほのためにも、私が頑張らなくては」

なほはそう決意したのだった。



__________________



「オラオラそこの1年!!って私も1年か、そこのウサギチーム!前みたく逃げんじゃねえぞ!」

なほが演習場でM3チームに向かって叫んだ。

「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「すいません!!」

「キャァァァァァァァ!!」

なほのスパルタ戦車指導が、この前の対聖グロリアーナ女学院戦にて逃亡したM3リーのウサギチームを襲った。尤も、西住流のように出来て当然を前提とした理不尽な指導ではなく、ミスすれば解決法を提示し、上手くいけば褒めちぎるという、ある意味怖いだけで適度な指導とも呼べる。

「私も的に当てたり砲撃は苦手だがな!! お前らは6人いる!!各自のそれぞれの担当さえ極めれば、性能差を諸共しない戦い方ができる!その2つある砲は生かすんだ!! 相手となるサンダースはM3の上位版、M4シャーマンを使ってくんだぞ!!」

「はい!!」

「姐さん!!」

「頑張ります!!」

「そうだ!!それでいい!!」

練習の最中、すっかり打ち解けたなほとM3チーム。厳格ながらも他人には西住流の反面教師からか甘い部分が多く、それは必然とチームの戦闘力を高めていた。
伊達に全国各地に散らばる傘下から慕われるカリスマを持ってはいない。

「姉貴、クルセイダーまた煙出てますけど」

「後で直しておく」

「なほはさしずめ信頼されている女性だからエリザベスなんてソウルネームはどうだ?」

「マリーアントワネット?」

「邪馬台国の卑弥呼か?」

「いや、周囲を奮い立たせるその姿勢はジャンヌ・ダルクだろう」

「「「それだ!!!」」」

「いや、それ処刑される人だろ」

「自動車部の力でもこれ無理っすよ、なほ姐さん」

「なほ、1回戦の作戦はどうだ」

なほの周囲には、いつの間にか大量の戦車道履修者が押し寄せていた。

「…こりゃまた大変だな」

「姉貴モテモテじゃないか」

「男との出会いはないですがね」

「紀香お前あとでシバくぞ」

そんなこんなで戦車道の練習の日々。来たるべき1回戦に備えて各々は自らの技量を鍛えるのだった。


「姉貴、例のものは完成してます」

「そうか、早速1回戦から使うとしよう」


__________________


そしてサンダース大学附属高校との対戦の日。


上空では旧日本海軍の陸攻が色彩やかな煙幕弾を打ち上げ、全日本戦車道大会がいかにどれだけ大きいイベントかを示していた。



「さて、準備整ったな」

なほのオオカミチーム、砲弾からメンテまで準備を終え、あとは試合が始まるのを待つだけだった。



「あら、ナホ!!」

突如、背後からなほに話しかける人物。








「久々だな、ケイ」

「戦車道リスタートしてたの初めて知ったわ!!」

なほに話しかけたのはサンダース大附属の隊長、ケイだった。

「アイツらはどうだ?」

アイツら、それはかつてサンダース大学附属高校周辺、佐世保で活動していた不良軍団。市民からの印象は良くなく、サンダースの生徒ではないが故にサンダース大も干渉しづらく、市民たちが頭を抱える暴力団組織だった。

「ナホがぶちのめして傘下にしてくれたおかけで落ち着いたわ!!サンキュー!!」

なほはかつてバイクを利用して全国各地を巡ったことがあるが、その時に佐世保も訪れていた。各地を巡る度にその都度そのエリアを仕切る不良グループを力で捩じ伏せてきたのだと言う。

「今日はフェアなゲームをしましょう!それと、ここの屋台はいつでもウェルカムだから、是非食べていってね!」

「OK!!OK!!」

「食べていいの!?」

バッと食いついた美玲。

「えぇ、勿論OKよ♪」

「アイツ返事聞く前にもう行ったぞ」

財布を握りしめて屋台へ飛び込むように走っていく、チーム1番の大食い美玲。
美玲の食い意地は、あんこうチームの五十鈴華すら超えているのだ。


「…今日はよろしく頼むぞ、ケイ」

「えぇ、フェアプレイでいきましょう♪」


アメリカ式ビッグサイズハンバーガーを片手に戻ってくる美玲。そして、試合の時間は刻一刻と近づいていた。


__________________



『試合開始!』


「しゃあ!行くぞ!」

サンダースのシャーマン軍団と大洗戦車がそれぞれ動き出す。
ちなみに、M4A1シャーマンがサンダースのフラッグ車。38t戦車が大洗女子のフラッグ車。


「みほの姉貴、どうする?」

試合が始まり、まずオオカミチームを含めた大洗女子はみほの作戦に乗ることとした。

『オオカミさんチームはまず左方向の偵察をお願いします』

「だそうだ紀香」

「はい」

「とにかく森を抜けて行くぞ」


「ってかクルセイダークソ暑い」

「我慢しろ美玲」

クルセイダー巡航戦車は左方偵察に向かった。



__________________


それから僅か数分後のことであった。

『こちらM3!!敵に集中砲火浴びてます!!』

飛び込んできた無線はまさかの、敵に場所がバレたというものだった。

「動きが読まれてたみたいだな」

しかしこの時は、敵の実力だと思って特に気に止めることもなかったなほ。

『6両に囲まれました!!』

M3リーは南東と南西、更には背後からで2両ずつのシャーマン軍団に囲まれていた。

『こちらオオカミチーム、援軍に向かう!!』

『はい、オオカミさんチームは援軍に向かってください!!』

「援軍に向かえだそうだ。姉貴」

「分かった。頼むぞ紀香!」

そんな時であった。




「なっ!?来てる!?」

なほがみほからの通信を美玲を通して聞いたその時、なほは背後から3両のシャーマンが迫っていることに気づいた。


『こちらオオカミチーム!! シャーマン3両に追尾された!!』

同じく偵察に向かったM3を包囲した6両と合わせると、9両というフラッグ車を除いた全車両を大洗女子の偵察組の殲滅に宛てたということとなる。

「まさか全車両の10両中9両を投入してくるとは…」

サンダースの大胆な戦術により、なほのオオカミチームは援軍に向かうどころではなくなった。

「物量国家アメリカだし、正面突破が好きな国だからなぁ、とにかく上手く逃げるぞ!! クルセイダーのスピードならシャーマンを撒ける!!」

『オオカミさんチームとウサギさんチームもこちらへ合流してください。作戦を立て直します!!』




しかし、この時点のクルセイダー巡航戦車を含めた大洗女子の動きは、敵に完全に読まれていた。



『クルセイダー巡航戦車はその持ち前のスピードで仲間と合流しようと計る筈。合流したところを6両のM3リーに付いていたシャーマンとのコンビで包囲して殲滅しなさい!』

隠れているフラッグ車のM4A1シャーマンが指示を飛ばした。








だが、動きを読まれていたのは、ここまでの話だった。





「………紀香、日本海海戦で何故日本が勝てたか知ってるか?」

唐突になほが紀香に尋ねた。


「さぁ、私頭が悪いもので…」

「そうか…」


なほはニヤッと笑い、口を開いた。


「丁字戦法を皆が理解し、ボロジノが逃げようとした際、第2艦隊が"独自の判断"で逃走を阻止したからだ。紀香、言いたいことは分かるな?」


「…そういうことですか」

紀香もなほの意図を理解し、フッと笑った。


「美玲、悪いがみほ姉の指示を一旦スルーするぞ。恐らくコイツら、何かしらの形で私らの行動を読んでいて、全員合流したところを包囲して一気に叩く算段を立てているだろうからな」

「おう姉貴!」

そして、シャーマンに背を向けて逃走を図っていたクルセイダー巡航戦車は一転、戦車へのダメージ覚悟で突如逆ターンした。
これには、クルセイダーを追尾していたシャーマン軍団もただ驚きを隠せなかった。

「へっ?」

砲塔がシャーマンに狙いを定めた。

「撃てェ!!」

クルセイダー巡航戦車より放たれた弾はシャーマンの弱点である下腹部に命中した。そして、シャーマンより白旗が上がった。


「バイク乗り回していた私の操縦に狂いはない!」

「FPS日本全国大会で優勝経験のある私のエイムを舐めんなよ!!」

それぞれ紀香と美玲のコンビネーションにより、追尾してきていたシャーマン3両のうち、まずは1両を撃破。


「まだまだァ!!」

更に持ち前の怪力を生かして、片手で徹甲弾を装填するなほ。

「姉妹1の装填手を舐めんなよォ!!」

なほは両手に3つの徹甲弾を持つほどの怪力の持ち主。装填が片手で出来るために砲撃のタイムラグが少なく、次弾を撃つのにシャーマン軍団に何が起こったかを考える時間の余裕すら与えなかった。

「2発目!!撃てェーッ!!」


そして次弾が放たれ、それは真っ直ぐにシャーマンの装甲の薄い箇所を貫いた。






シャーマンの動きは止まり、その数秒後、白旗が上がった。

「えっ!なんで!?」

あっという間に2両が撃破されて焦る、残った1両のシャーマン。そんな中でも尚、出された指示を全うしようと進撃を止めないシャーマン1両。それに対し、なほは美玲に指示を出しつつ、持っていた3発目の砲弾を装填した。

「次は横の木に当てろ!!」

「へい姉貴!!」

そして、残り1両となったシャーマンの横の木に徹甲弾を命中させる。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

シャーマンを潰すように倒れる木。

「ブレーキ!!ブレーキ!!」

クルセイダーが撃って倒した木は、シャーマンの前方を塞いだ。だがシャーマンがブレーキを踏んで木に衝突し、前方を封じるだけに留まったため、潰して撃破とは至らなかった。

「姉貴、どうする?」

なほはハッチを開けてシャーマンの様子を窺った。

「合流を阻止するぞォ!!」

それでも尚、叫びながらクルセイダーを追おうとするシャーマン1両。

「…………ハァ」

シャーマンは前方を塞がれたため、木を左方から回避してこちらに再び向かってきていた。こんな状況でも課された指示に従おうとする姿勢に、思わずなほは溜息を付いた。

「大きなタイムロスにはなったし、これなら合流にも差し支えない。何より、奴らに混乱を招くことが出来たからな。撤収だ!!」

「「はい!!」」

クルセイダーはその場から一目散に離れた。








「アイツら、余程司令塔の指示を信用してるんだな」

なほは、相手の動きを読んでくるトリックに気づいたようだった。






『サンダース大学附属高校!!シャーマン2両撃破!!』




そしてここは、独自の判断で行動に出た、なほの勝利となった。



原作に沿いつつも、なほのぶっ壊れた作戦をしていければいいと思っています。


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18話 終幕!! vsサンダース大附属高校!!

星7評価下さった明闇さんありがとうございます。
よければ高評価やコメントよろしくお願いします。モチベーションに繋がりますので投稿ペースも早くなります。


『Why!?』

シャーマン2両がやられ、1両がクルセイダーの追尾に失敗したことに、隊長のケイは驚きを隠せなかった。

だが、この時1番驚いていたのはケイではなかった。


「なんで失敗してるのよ! 確かにクルセイダーは仲間の元に合流する筈なのに!アンタたち無能なの!?」

大洗女子を通信傍受していたアリサだった。


「…きっと、今回はまぐれよ。クルセイダーに乗っているのはあの西住なほ。そうね、奴ならきっとそういった独自の判断に出てもおかしくないわ…」

そうして自分の中で、今回の失敗の要因を自己完結させるアリサ。


『シャーマン全軍、一旦撤退してください。きっと奴らは次なる行動に出ます。それまで待ちましょう』

『OK!!撤退するよーっ!!』

そうして大洗女子のM3を追っていたシャーマン軍団は、対策を練り直すために、1度大洗女子に背を向けて撤退していくのであった。



「た、助かった…」

これによりM3のウサギチームは、先程まで浴び続けていた砲弾の雨から逃れ、安堵の息をついた。








「クルセイダー合流しました!!」

数分後、サンダースを狂わせたなほ率いるクルセイダー巡航戦車のオオカミチームも全員無事な大洗女子の隊列に合流した。

「これから作戦を立て直します!」

司令塔のみほがそう言った瞬間の出来事であった。



prrrrr…



「あんこうチームの武部沙織からメール来た」

「はい?」

突如鳴り響いた通信手兼砲手の美玲の携帯。

「なんだろう?」

美玲は携帯を開いた。








「やっぱりな…」

美玲はなほに携帯メールを見せた。

「やっぱりこの大胆な作戦には裏があったか」

遥か上空を見上げると、不自然なものが打ち上げられていた。



「どうします姉貴」

「合流するか?」

紀香と美玲は車長のなほに判断を委ねた。

「隊長に伝えておいて。クルセイダー巡航戦車は偵察に出て、自由にやらせてもらおうじゃないかと」

そう言うとなほは、車内に置いていたあるものを取り出した。


「これの使い道が無くなっちまう」


__________________



「姉貴、フラッグ車何処か分かりますか?」

クルセイダー巡航戦車は、単独でフラッグ車を探すために竹林の中をゆっくりと進んでいた。自由にやるとはいえ、それは何処かに身を潜めているフラッグ車を探すためでもあった。

「傍受機の位置からして、その真下辺りで尚且つ隠れ場所に最適となればこの竹林が怪しいんだよなぁ…」

クルセイダーのエンジンに負担をかけないよう、そして無駄な音を立てないように、まるで忍者の如く偵察をするオオカミチーム。


__________________


一方で、クルセイダーと別行動を取っているみほたちの方にも変化があった。


『囲まれた!!全車後退!!』

みほが通信機でそう言った。


その瞬間、八九式戦車は後ろに付けている草木の束を引きずることで、大きな土煙を生み出した。


「いたぞ!!大洗女子の戦車だ!!」

その土煙を追って、シャーマン軍団は一斉に走り出した。
土煙を上げることで、大慌てで大量の戦車が逃げ惑っていると敵に勘違いさせているのだ。


だがしかし、その時点でサンダースは大洗女子の罠にハマっていた。


「今です!!走りながら撃つ必要はありません。向こうは既に2両を失っている焦りからかあの場にいた全車両が八九式を追いました。落ち着いて、背後から命中させてください!」


そうして、高台に隠れていた本当の大洗女子戦車軍団が、一斉八九式を追うシャーマン軍団に狙いを定めた。



「撃てェーッ!!」









大洗女子の砲弾の殆どは、シャーマンに命中した。


『シャーマン3両撃破!!サンダース、残り車両5両』


「Why!?」

サンダースが背後からの砲撃に気づいた時には既に遅かった。
4両が既に撃破され、残り車両はいつの間にか大洗女子よりも少なくなっていたのだ。

「やったよ梓ちゃん!!」

「203高地から見渡す旅順港ぜよ」

「桃ちゃん、ここで1人だけ外す?」

生徒会チームの38t以外は全員がシャーマンに弾を命中させていた。

「華さんナイスファイトです!!」

しかし、喜んでいるのも束の間だった。





ズガァン





『すいませんバレー部やられました!!』

シャーマンを引き付けていた八九式も流石に追いつかれてやられてしまった。



ドガァン



更に2発目、ナオミのシャーマンファイアフライの砲撃が高台のM3を貫いた。



「すいませんやられました!!」

「崖下から狙うだなんて…」

こうして大洗女子は2両を失った。しかし、サンダースを残り5両までに減らし、撃破数でいえば大洗女子の方が勝っていた。
大洗女子は残り4両、サンダース大附属は残り5両。互いにその数を減らしていった。



しかし、あの混乱の中でしっかりとM3を狙ってくるシャーマンファイアフライに、大洗女子一同はただ恐怖を感じたという。



「皆さん、一旦撤退してください!」

電話を通じて各車に指令を出すみほ。

「はい!」
「はい!」
「はい!」

こうして無線傍受を逆手に取った作戦で成功を収めた大洗女子チームは、今度は一転して逃げに徹することとなった。


「逃がさないわーッ!!回り込むよ!!全車Go ahead!!」

ケイの号令で全車両が高台を回避して、大洗女子の戦車を追跡し始めた。


しかし、サンダース大附属のシャーマン軍団が大洗女子チームの戦車を見るのは、試合中でここが最後となった。


__________________



『サンダース大学附属高校、残り5両!!』

その報せを聞いた、隠れているサンダースのフラッグ車の車長兼通信手、アリサはここまでにないぐらい怒り狂っていた。

「なんでなのよ!幾らまだこちらが数で勝ってるとはいえ、撃破された数ではこちらが多いじゃない!! 弱小校の癖してよく私たちをこんな掻き乱したわね!! つーかなんで無線傍受効かないのよ!!」

そこでハッと我に返るアリサ。

「まさか…通信傍受を逆手に…?」

身体中から嫌な汗を吹き出すアリサ。

「ふざけんじゃないわよ!! 私の作戦に狂いはないはず…ないはずなのに!!」

もはやアリサは平常心を失っていた。

「なんでタカシはあの子が好きなの!! 私の気持ちに気づいてくれないの!! サンダースが負ける筈ないのよ! M4A1シャーマンは5万両も作られた大ベストセラーなのよ!馬鹿でも扱えるし!馬鹿でも操縦できるし、馬鹿でもできるマニュアル付きよ!あんなよく分からない戦車相手になんで敗報ばかりなのよ!ふざけんじゃないわよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」


「「…………………………」」

まだ敗北が確定した訳でもないのに、大洗女子に踊らされたことが気に食わないのか、アリサはかなりご乱心となっていた。
その様子を、同じ戦車の搭乗員はただただ無言で視線を合わさないようにすることしか出来なかった。



「見つけた!!」

クルセイダー巡航戦車が、そんな乱心中のシャーマンを発見した。


__________________


「見つけた!!」

竹林の中をグルグルと探索したところ、なほたちオオカミチームは遂に敵フラッグ車を発見した。

「いたわ!クルセイダー!!蹂躙してやんなさい!」

シャーマンが砲塔を回転してクルセイダーに弾を撃ち込もうとする。

「一旦逃げろォ!!」

砲塔の回転に合わせてクルセイダーもシャーマンの背後に回り込んだ。

「背後なんて取らせないわよ!!」

シャーマンより砲弾が放たれる。

「回避!!」

クルセイダーは一旦後退することでシャーマンの砲弾を躱した。


「こいつにうちは2両やられてるのよ!仇!仇!仇討ちよ!!」

シャーマンは更にクルセイダーに砲撃を加えようとする。


「今だ!」

なほは手に持っていたものをシャーマンに投げつけた。




「な、なによこれ!!」

シャーマンの砲塔の下あたりに落ちたそれは…





「手榴弾だ」



その瞬間、シャーマンを大きく揺らすほどの爆発が起こった。
勿論、その爆発だけでは戦車を撃破することは出来ない。

ちなみに、手榴弾は禁止というルールは存在しない。第二次大戦中も使われていた以上、問題は無い。


「なによこの子たちィィィィィィィィィィィィ!!」

手榴弾の爆発に、アリサはありったけの怒りを込めて叫んだ。


「今だ!紀香、美玲、頼んだぞ!!」

一瞬シャーマンが怯んだ隙を、なほたちは見逃さなかった。


「回り込め!!」

そしてなほが徹甲弾を装填する。


「クルセイダーはすぐ壊れるからあまり使いたくないが…これでどうだ!!」

クルセイダー持ち前の超速スピードを活かしてシャーマンの懐に衝突するように潜り込み、ゼロ距離で弾を発射する。


「負けるかァァァ!!」

負けじとシャーマンもクルセイダーに砲塔を向けてゼロ距離で弾を発射する。


その場には土煙が上がり、どちらが撃ち勝ったのか外部から分からない状況となった。









そして、煙が晴れた。




『大洗女子学園、クルセイダー巡航戦車走行不能。サンダース大学附属高校、フラッグ車走行不能。よって、大洗女子学園の勝利!!』


勝報が辺りに響き渡り、なほを含めたオオカミチームはその場で力が抜けたのかヘタリと座り込んで大きな溜息を付いた。



「ふぅ…、1回戦突破と…」

「姉貴、やりましたね」

「姉貴!やったな!」

「あぁ、お前達のおかげだ」

フラッグ戦である以上、クルセイダーとシャーマンは相打ちとなったものの、ルール上は大洗女子の勝利となる。


『アリサ、途中まで勘が冴えてたのにどうしたの?』

『つ、通信傍受を見破られました…』

『バカモン!!戦いはフェアでっていつも言ってるでしょ!?』

『も、申し訳ありません…』

一方で、先程までクルセイダーと死闘を繰り広げていたシャーマン車長のアリサは、隊長のケイからの説教と敗報に魂が抜けたかのようにその場でヘナヘナと白目をむいて気絶した。

__________________




観客席にて___


「流石ね、私が見込んだだけはあるわ」

島田流師範、島田千代がなほの初陣を見届けに来ていた。

「それにしても、西住みほ…。あの子もなかなか島田流としての素質あるわね…」

島田千代は悪い笑みを浮かべた。





「西住流を完膚無きまでに叩き潰すためにも、あの子たちには頑張ってもらわなきゃ」



今後も原作と異なる戦法で行けたらいいなと思います。
バレー部ポジションがクルセイダー巡航戦車ポジションになった感じに近いですかね。


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19話 次は多分アンツィオ戦です!!


ようやく今後出す予定のオリジナル学校決めました。
国共広山蒙学園です。おおまかな設定はまた次回以降。

また、高評価8を下さった瀬戸の住人さんありがとうございます。




「次はアンツィオ高校だ!!」

桃がホワイトボードとダンッと強く叩いた。

「ふーん…」

そんな決定した対戦相手に対して、あまり強い興味を示さないなほ。というよりも、サンダース大附属に勝利したことが強い自信に繋がっており、1回戦前にあれほどあった緊張感はもはやゼロに等しかった。

「随分余裕だねなほちゃん」

生徒会長の杏も干し芋をプラプラとさせながら、サンダース大附属への勝利が自信へと繋がったためか、なほにつられて若干の油断の雰囲気を醸し出していた。

「マジ?アンツィオ?あそこの飯まじうめーんすよ!! 行きたいなぁ!!」

一方で、なほの隣では美玲がアンツィオに強い興味を抱いていた。


「アンツィオって確かヘタレチームじゃなかったっけ?」

なほは幼少期、優花里がイタリアは色々とヘタレでヘタリアだなんて言っていたことを覚えており、そのためかさほど脅威に感じておらず、ただただ机の上に置かれている煎餅をガリガリと齧っていた。

「去年も初戦敗退だったような…」

「ちょっとなほ!!」

そんな油断を示すなほに、その場にいたみほが油断大敵だと喝を入れようとしたその瞬間のことであった。


「ただいま帰りました!!」

生徒会室のドアを壊すかのような勢いで、秋山優花里がコンビニの服を身に包んで帰還した。

「おぉ!来たか!」

「優花里〜、昔アンツィオはイタリアでヘタレだなんて言ってなかったか〜?」

間の抜けた声で余裕の雰囲気を醸し出しながら言うなほだが、なほにイタリアはヘタレの印象を植え付けた当の本人である優花里は、首の横に振った。


「それは昔の話です。今、アンツィオには安斎千代美という総統がいて、その人の活躍でアンツィオ戦車道は今、それなりの実力を見せております。とはいえ、アンツィオは昨年初戦から強豪にあたってしまったため、運悪く実績もない故にノーデータなんです。でも、それは今までの話です!!」

優花里は背中に背負っていたリュックサックより、USB端子を取り出した。

「…サンダースの時みたいにまた偵察行ったんだ?」

「えぇ勿論です。データ不足だったので、今回も潜入取材してきました!!」


そして、USB端子を生徒会室のPCに差し込み、そこから映写機を通じて秋山優花里のアンツィオ高校潜入動画が放映される。
内容は半分ほど食レポに近かったが、最後の最後にはイタリア重戦車のP40が登場し、これが秘密兵器で大洗女子など一捻りだと余裕の様子。その後のドゥーチェコールと秋山優花里の締めで動画は終了した。



「P40、そして有能な総統…かぁ…」

なほは前言撤回。今回も本気で戦闘に臨むことを覚悟した。

___________________



「この度戦車道にチームとして加わります!!」

大洗女子チームに風紀委員チームがルノーbis1で加わった。

「よろしく〜…………zzz」

「シャキッとしなさい!何度も遅刻してばかりなのになんで貴女は成績学年1位なのよ!!」

と早速眠そうな態度に物申さんとする風紀委員チームのリーダー、園みどり子。

「それと、なんでアナタたちがいるのよ!!」

風紀委員から飛び火する形で絡まれるなほ美玲紀香の3人。

「今年から無遅刻無欠席だからいいだろ〜」

「まあ、姉貴のおかげですがね」

「私は特に成績も目立つほど悪くないし、美玲や紀香と同じく無遅刻無欠席なんだが、何か癪に触ったか?」

「ぐぬぬぬ…」

なほが女番長の道を進んでいても、学業には基本手を抜いておらず、今のところ皆勤賞であるため、風紀委員も強く返せなかった。


「そんなことより、今日から戦車道やるんだろう? 結構辛いから頑張れよ!!」

「も、もう!!アンタに言われなくても分かってるわよ!!」

逆に風紀委員は、なほから反抗されるどころか励まされることになってしまった。






「アンツィオは機動力の高いチームです!ルノー、クルセイダー、八九式をアンツィオ戦車に見立ててスピードに対策しましょう!」

そうして隊長のみほの号令により、アンツィオ戦に備えた練習が始まった。



___________________



「今日の練習は終わりです。お疲れ様でした!!」

一同が礼をして、今日の戦車道の練習は終了。

「さて、早く帰ろ…」

そんな時だった。



prrrrr…



「電話か」

なほの携帯が鳴った。


「はい、もしもし。…久々ですね。今から?みほも連れて?…そうですね、私も腹を括る時が来ました。はい、分かりました」


なほはそれを聞き届けると電話を切った。


「なほー、一緒に帰ろー」

「おっ、丁度いいところに」

携帯をポケットに仕舞ったなほの元に、同じアパートで暮らす姉のみほが近づいてきた。

「丁度いいところ?」

みほは首を傾げた。

「まあまあ、今からみほをある所に連れていきたいんだ。そろそろ来るはず…。そういえば友人は?」

「今日はちょっと残りたいんだって」

「なら問題はないね」

「?」

そんな会話を繰り広げているあいだに、上空からヘリコプターが近づいてきていた。

「来たか」


そのヘリコプターは大洗女子戦車道の演習場に着陸した。

「なほさんとみほさん、すぐお乗り下さい。師範がお呼びです」

「はい」

「え?乗って大丈夫なの?なほ?」

「…大丈夫だから」

「う、うん…」

少々強引にみほはなほに連れられてヘリコプターに乗り込んだ。



そのヘリコプターには、島田流の家紋が刻まれていることも知らずに…。





短いですが次回に続きます。
ここから今度のストーリーの練り直しを始めるので少々遅れます。


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20話 島田流です!

高評価8を下さった3K猫さんありがとうございます。


「みほ姉、着いたぞ」

「あ、うん…」

なほに連れられるがままヘリコプターに乗り込んだみほ。そして到着した先でみほが見たのは、西住流の屋敷にも引けを取らない大きな屋敷と戦車道の演習場のあるライバル流派の拠点であった。

「お待ちしておりました。師範がお待ちです!!」

「すぐ向かいます」

ヘリコプターを降りると、早速島田流の使いがなほの元に駆け寄り、みほはそれを何が起こっているんだという目で見ていた。

そんなみほの手を、なほは優しく握った。

「みほ姉、すぐに向かうぞ」

「えっ…ちょっと…」

みほの手を引っ張り、なほは島田流の屋敷内へと入っていった。


_____________________


「久しぶりです。千代さん」

「久々ねぇ、私のことをお母様とお呼びしてもいいのよ?」

「それは流石に…ハハ」

「えっ…えっ…?」

部屋に入るなり繰り広げられたなほとライバル流派の師範の会話に、何も知らないみほはただ困惑することしか出来なかった。
だが、そんなみほの元に救いの手とも呼べる偶然が巻き起こった。



「お母様…」

「あら、愛里寿…」

「えっ…!?」

「愛里寿ちゃんお久しぶり〜」

「…久しぶり」

偶然部屋に入ってきた島田千代の娘、島田愛里寿。なほは愛里寿と軽い挨拶を交わす。
一方でみほは、彼女の登場にただその場に立ち尽くしていた。


「ボコだ!!」

「!?」

愛里寿の抱いてる熊の人形を見たみほは、先程までの困惑している姿は何処へやら、思いがけぬ同志との対面に興奮状態にあった。

「ボコ可愛い!!こんなところにボコメイトが!!」

「ボコメイト…!?」

一方の愛里寿も、数少ないボコ愛好者に出会えたためか、目をキラキラとさせていた。


「…部屋でボコのDVD特典版見よう」

「うんうん、見る見る!!」

先程までのオドオドした様子は何処へやら、ボコスイッチが入ってあっという間にライバル流派の娘が相手ながら、すぐに打ち解けてしまった。



「………なほ、行ってくる!」

「お母様、行ってきます」

2人の目はこれまでにないぐらいキラキラしていたという。

「いってらっしゃい」

「良かったな、みほ姉」

みほと愛里寿の驚異的スピードな親睦に、まずはなほと師範の千代の2人の間で今回の件について話し合う流れが作られ、最初は難航するだろうとなほも薄らと感じていたのだが、その予想をいい意味で裏切ったため、島田千代となほの会談はスムーズに進んでいった。



愛里寿とみほが部屋を出たため、静寂が広がる室内。
千代はお茶を置くと、なほの方を向いて沈黙を破った。

「……まずはなほちゃん、戦車道に復帰したんですね」

「はい、いずれ戻るというあの時の予告通り、戦車道の方に復帰させて頂きました」

「そんな貴女の初陣となるサンダース大附属との試合。私も観戦させていただきました。…2回戦からルールが変わって手榴弾禁止になったということだけ報告しておきます」

「えぇっ!? 50個ぐらいストックあるのに!?」

なほはガックリと肩を落とす。
戦車道連盟がなほの手榴弾混乱作戦を見て戦車道らしくない行為と判断し、2回戦のルールが見直されたとのこと。


「…そもそも島田流は手榴弾作りを支援した覚えはありません。あれは何処で用意したのですか?」

師範からしてみれば最も気になる所だ。戦争屋から購入しているとなれば問題になるのだから。


「あれは私が戦車の砲弾から火薬を幾らか頂いてそれで自作しました」

「自作!?」

あの手榴弾は、なほが自力で作ったのだ。


「…つくづくなほちゃんは驚かせてくれるわね。けど、手榴弾は没収!! 島田流の支援なしに資格持ちとはいえ、手榴弾なんて作っちゃダメよ!!」

「…はい」

しょぼんとなほは肩を落とした。



「でも、あの時の貴女の作戦。木を使ってシャーマンを潰したり、クルセイダーの速度を活かして相手を混乱させ、相手の通信傍受すらチーム総出で利用する。本当に島田流の戦法をとるのが好きみたいね」

「私は西住流を捨てた以上、あの人殺し流派のようなふざけた作戦は取りません。それに、それらは私と共に戦車に乗るチームメイトたちの技術に寄るものですから」

千代は否定だけするわけではなく、ちゃんとなほの良点も見ていた。


「今日連れてきたみほというあの子も、去年の事件以降、随分と酷い目に遭わされてきたみたいね。あの悪天候の中での試合すら危険だったのに、それを強行した挙句事故が起き、敗北の原因を全て人を救った英雄に擦り付ける。そんな西住流は徹底的に潰すべき。貴女ならきっとそう言う筈。そうでしょう?」

「はい、勿論です」

なほは顔色1つ変えずに真顔で即答した。


「だからこそ、もう一度訊くわ。今度は2人とも、私の養子にならない?」





























「いえ、島田流の名を背負うにはまだ早すぎます。西住の名を背負い、西住流ですら私のことを抑え込むことが出来ない現状を維持した方が圧倒的にメリットがある筈です」

「そう…」

なほは首を横に振ったのだ。

「特にみほ姉に至っては、まだ勘当まではされていないんです。ただ逃走経路として大洗女子学園に通されただけに過ぎず、西住流の敷居を完全に跨ぐなとまではいってないため、西住流より完全に勘当された私ほどスムーズに物事は進まないでしょう」


「そうね、私としては完全に島田の名を背負い、戦車道で活躍してほしいのだけども…」

「残念ですが世間一般から見て私の印象といえば、日本中に傘下の組織を持つ上に、それなりに学力にも精通しているエリート女番長です。そんな私が表立って島田流の名を背負えば、そちらとしても戦車道においては名を上げることが出来ても、戦車道以外のことにおいては島田流の名を汚すというデメリットしかありません。それならば、忌々しい西住の名を背負いつつ、戦車道においては西住流としての戦法を用いず、私が日本各地に傘下を持つ番長ともなれば、勝手に西住の名は地に落ちていく筈です」


「そう…ね…。まだその時は早いかもしれないわね…」


________________________


「愛里寿も喜びますし、今日はここに泊まってどうぞ」

「ありがとうございます。みほ姉もボコで愛里寿ちゃんと盛り上がって疲れて寝てしまったようですし」

「えぇ、それにしても、みほが愛里寿と友達になってくれたのが嬉しいわ」

「みほは私よりオドオドしてて…私より妹っぽいなと思う時があります」

「本当になほちゃんは子どもとは思えないわよね」

「皮肉にも西住から勘当されたことで自立心が早いうちから芽生えましてね」

みほと愛里寿が手を繋いで寝ている光景を、なほと千代はただ微笑ましく部屋の外から覗いていた。



「あと、養子の件は置いておくとして、実は大洗女子学園に頼みたいことがあるの」

「…何でしょうか?」



















「私はそろそろ大学戦車道連盟の統括することになるんだけど、1つ戦車道をやってるっちゃやっているけど問題だらけで殆ど機能してない荒くれた学園艦が那覇にあるの。全国的に名の通ってるなほさんなら上手く改革を進められるかもしれないのよ。このままだと高校戦車道どころか大学戦車道にすら泥を塗ってしまうかもしれない。早いうちに更生したいから、戦車道大会終了後にでも向かってくれないかしら?」

「それぐらいでしたら…ところで、どんな学校なんですか?」

なほは顔を傾げた。





















「国共広山蒙学園、中国の影響を受けた学園艦よ」



オリジナル学校がいつか出るフラグを立てました。
何やら問題だらけの学校らしい…。


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21話 今度こそ本当のアンツィオ戦です!!


アニメに従ってアンツィオ戦はすっ飛ばす予定でしたが書くことにしました。

また、高評価7を下さったアクセルシャドウさん。
更には満点10を付けて下さったステルス★ちりあんさんありがとうございます。
脚本と共に狂喜乱舞しておりますw

投稿頑張ります!




島田流との会談を終えたなほ。千代はみほにも西住流を離れて島田流に行く可能性について問いたが、西住流は追い出されているものの、今は支援をしてくれるだけでいいということで、なほの思った通りの答えとなった。
そして愛里寿と遊びに遊んだ後、島田家を離れて再び大洗女子に戻ってきたなほとみほ。

島田家への訪問で、みほは捨てきれなかった西住流への未練が減り、残るは1人西住流の跡継ぎ候補となった姉のまほを案ずるだけとなった。

そして今、なほは…




「ポルシェティーガー直せそうか?」

大洗女子へと戻り、先日学園艦の旧部室と下層倉庫にて発見されたというルノーB1とポルシェティーガーのメンテナンスに加わっていた。

「これは私たちだけじゃ無理だね〜」

ナカジマは顔汗を拭いながら答えた。
ルノーはすぐにでも試合に出せるが、ポルシェティーガーはあまりの重さに引き上げ作業にも時間を要しており、そこから修理したのはいいものの、特殊構造な戦車のために修理は難航していた。

「しゃーない、力仕事なら私がやれるからアンツィオ戦には出せるようにするぞ」

「助かる!」

なほがポルシェティーガーの修理に加わり、それに伴って作業はスムーズに進んでいこうとしていた。

「まあ、私もクルセイダーっつーよく壊れるもの乗ってるからな」

「ポルシェティーガーも重くてめり込んでエンジンがよく燻る戦車だからなぁ。私たちじゃないと運用は無理だろうねぇ…」

そんな談笑を交わしつつ、放課後練習を終えた後もポルシェティーガーの修理作業に勤しむ自動車部とオオカミさんチームの面々であった。


余談であるが、クルセイダー巡航戦車も36時間連続で稼働すれば奇跡と言われるほどの故障率であり、それぞれ英独の欠陥兵器であった歴史がある。


_____________________



翌日、なほの手伝いもあってポルシェティーガーは試合参加が可能なほどまで修理が完了。そのままアンツィオ戦に出場することが決定した。



「さて、2回戦だ!! お前ら大丈夫か?」

「オェェェェェェッ!!」

「おぉーっ!」


クルセイダー巡航戦車のオオカミチーム。若干1人陸酔いしているが。


「紀香…、吐けるところまで吐いてこい…」

「…あ"い"………」

山岳地帯なので嘔吐物は土に隠せるものの、流石に戦車が大量に並んでいるところでの嘔吐は見せられるものでは無いので、紀香は森陰に誘導されてそこで思いっきり全て吐くこととなった。

一方、美玲はと言うと…

「アンツィオの屋台うめーッ!!」

「ねーちゃんよく食べるじゃないか!」

「こっちのマルゲリータピザもいかがっすかー!」

「行く!」

「グラタンどうだー?」

「後で行くぜーっ!」

アンツィオの屋台にてイタリア料理を大量に頬張っていた。
しかも、アンツィオの屋台は安さでも有名なため、美玲はFPSゲーム大会でも例のないほどの試合前の腹ごなしをしていた。

「あと1時間で試合なのに紀香は吐いてるし美玲は食ってるし大丈夫なのか…」

なほは呆れのあまりガックリと肩を落とした。


「なほー!」

みほがなほの元までやってきた。


「みほ、どうした?」










「この試合、千代さんも来てるよね…」

みほはなほの耳元で囁いた。

「…きっとね。だからこそ、今日は負けられない」




「なほ、私はどうすればいいのかな?」

みほのその声は、震えていた。

「…いつも通りのみほ姉を見せればいいと思う」

なほはしっかりとした声でそう言った。


_____________________




『マカロニ作戦行くぜェーッ!!』

試合開始。早速アンツィオは快速のCV33を利用して山岳地帯を駆け巡る。

『マカロニ展開!!』







一方の大洗女子サイドは、八九式中戦車とクルセイダー巡航戦車がそれぞれ左方と右方の偵察に出ていた。


『八九式、セモヴェンテとカルロヴェローチェ計5両発見しました!!』

「もう来たの!?」


チームがイタリア戦車の快速っぷりにあたふたしている中、クルセイダーのオオカミさんチームは、その味方からの無線に疑問を抱いていた。


「…こっちにも5両いる」

クルセイダー巡航戦車のいる側にも、5両のセモヴェンテとCV33がいた。

「私たちも彼女たちと同じものを発見したのでしょうか?」

紀香は頭にハテナを浮かべていた。
5両と5両を発見したのはいいが、その中にフラッグ車である筈のP-40の姿はなかった。

「いや、偵察してる場所、八九式中戦車とは違うから…だとすれば」


なほはクルセイダー巡航戦車を降りた。

「機銃は位置がバレる可能性があるから撃つな」

美玲にそうとだけ言うと、なほはその辺にあった手頃サイズの石を取った。


「オラァァァァ!!」

フォームも考えずに、テレビで見たプロ野球と同じ感覚で石を投げた。


力任せの投石は、時速120kmを出しそのままCV33に直撃した。



「え…」

しかしそのCV33が反撃してくることはなかった。


「…やっぱり偽物だ。今すぐみほ姉に報告だ!!」

投石はCV33の『絵』をぶち破り、その更に向こう側にあったセモヴェンテの『絵』もぶち破ったところで止まった。

「分かった!!」

そしてそこからの行動は素早かった。




『敵は偽物に私たちを引き付けておいて、その間に反対側から包囲する作戦を取ってくるようです!!』

フラッグ車がいないことで数が合わないと気づいた大洗女子。更になほが偽物作戦を見破ったことにより、大洗女子もすぐさま対応に移った。


「アホで良かった」

なほは呆れつつも、クルセイダーで機銃で偽物をフルボッコにしてその場を立ち去るのであった。






一方で、今回より加わったポルシェティーガーはある問題を抱えていた。


「…速く登れん」

「こりゃあ合流に時間かかるなぁ」

巨体と重量が仇となり、山岳地帯というフィールドに足止めを食らっていた。

「登れないことは無いけどね。折角だし、山岳地帯中腹部辺りで植物カモフラージュでもして敵が勝手に来るのを待った方がいいかも」

果たしてポルシェティーガーのその作戦は凶と出るのか吉と出るのか。


_____________________



「発射!!」

クルセイダー巡航戦車の徹甲弾が、セモヴェンテを貫いた。


「よし、残り5両だな」

更には八九式中戦車やM3リーも健闘し、多くのCV33を撃破していた。




そして、

『姐さぁぁぁぁん!!』

「うわぁぁぁぁぁぁ!!こっち来んなァァァ!!」

「発射!!」

多少乱立したものの、最後はみほのIV号戦車がP-40を撃破し、大洗女子学園の勝利に終わった。













「あれ?私たちは?」

カモフラージュ完了といったところで、会場全域に響き渡る大洗女子学園の勝利というアナウンス。

ポルシェティーガーの初陣は、何とも微妙な形で終わるのであった。




これが本当のアンツィオ戦です笑
なんかアンツィオはこうでなきゃいけないなと思ってしまったw

アニメよりは待遇いい筈…多分w


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22話 次はプラウダ戦です!


ティーガーさん、眼鏡とタバコさん、高評価9下さりありがとうございます。




キエフ級航空母艦を模した某学園艦の一室にて、プラウダ高校の長と聖グロリアーナ女学院の長であるダージリンとのお茶会が開かれていた。


「次は準決勝なのに練習しなくていいの?」

ダージリンはお茶を飲むとホッと一息ついてからそう言った。

「燃料が勿体無いわ。相手は聞いたことない弱小校だもの」

プラウダの長、カチューシャはヘラヘラとしながら答えた。

「でも、相手は家元の娘たちよ。西住流の」

「へっ?」

それを聞いたカチューシャは先程までの油断から一転。ちょっとしたパニックとなっていた。

「ノンナ、そんな大事なことをなんで言わないの!」

「何回も言ってますが…」

「聞いてないわよ!」

もはや八つ当たりのように、チームメイトのノンナに怒るカチューシャ。


「ただし、貴女がよく知る長女ではないけれど…」

「…………なーんだ」

ダージリンのその言葉で、いきり立っていたカチューシャは溜息をついて椅子に戻った。


「けど、油断はなさらない方がいいわ。無名校を引っ張ってきた実力はあるもの」

「そんなのカチューシャには関係ないわ!結局は無名校だもの!」

カチューシャはフンスと胸を張った。

「次女は西住流に囚われない戦法を用いてくるわ。けど、もっと厄介なのは三女の方よ」

「ふぇぇ!?西住に三女なんていたの!?」

今度は驚愕のあまり再び椅子から立ち上がるカチューシャ。

「えぇ、中学入学と共に西住流から勘当されてるから、3年ほど全く戦車とは触れてなかったらしいけど…」

「なんだぁ、次女も三女も王手黒森峰から離れてるんだから、そんな大したことないじゃない」

「そうね、でも、三女の方はあの有名なエリート女番長さんよ」

「「えぇ!?」」

それには、カチューシャどころかノンナも口を揃えて驚きの声を出した。実は、プラウダ高校のある大湊近くにもなほの傘下にあるグループが存在しており、必然的に統括しているなほの名前は籍を置いてる大湊では知られており、プラウダ高校もその名前を知らない筈がなかったのだ。

「しかも、その三女さんとは大洗女子に行った時に1対1でクルセイダー巡航戦車同士で対決したのだけど、翻弄しようと思ったら裏を突かれて負けちゃったわ」

「ダージリンが負けた!?」

「えぇ、でも同じクルセイダー巡航戦車を使っての戦闘だったし、次の準決勝は貴女の得意な雪上と大量の重戦車でしょ?事情は異なるわ」

ダージリンがそう付け加えると、再びカチューシャは胸を張った。

「そ、そうね!カチューシャがそんな奴らに負ける筈ないわ!それに、そんなことを言いにわざわざプラウダまで来たの?」

「…違うわ」

ダージリンは紅茶を飲み干すと答えた。


「美味しい紅茶を飲みに来ただけよ」



_____________________



場所は移り変わって大洗女子学園

「次は去年の優勝校、プラウダ高校だ!!」

次なる相手に向けてミーティング中の大洗女子戦車チーム。


「絶対に勝つぞ!!負けたら終わりなんだからな!!」

力強い声で叫ぶ生徒会広報の河嶋桃。

「なんでですかー?」

そんな桃に疑問の声が出る1年生のウサギチーム。

「負けても次があるじゃないですかー」

「相手は去年の優勝校だしー」

「胸を借りるつもりでー」

その時だった。



「それではダメなんだ!!」

先程よりも強い声で叫ぶ桃。



それには一同、ポカンとなるしかなく、その場にはただ静寂が広がった。

「勝たなきゃダメなんだよね」

それに生徒会長の杏が続けた。






だが、それに納得しないものが1人いた。


「テメェら!! 何か隠し事してねえか!?」

なほだった。なほは、桃と杏の肩に手を置いた。


「今すぐここで全てを話せ。お前ら生徒会が、私とみほ姉に意固地になって戦車道を取らせようとしたあの日から、ずーっと様子がおかしいと思ってた」

なほは、2人の肩に置いた手に体重をかけた。


「20年も前に廃止され、2度と復活する見込みもないとまで言われた戦車道を、何故今更になって再開したのか。そして、私らに執拗なまでに縋ったこと、さあ全て!この場で吐いてもらおうじゃないか!」

なほは生徒会2人の肩に握力を掛け始めた。


「いててててて!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「さっさと言えや!!」

これには周囲も傍観しているだけしか出来なかった。


「さあ、言ってたら言え!! じゃないと私とみほ姉を強引にトラウマのある戦車道に引き込んだこと、一生テメェら生徒会を恨み続けるからな!!」

そう言いながら、なほは2人の肩から手を離して、今度は2人の両腕を掴んだ。

「これが最後のチャンスだ。これでも言わないなら、お前らの腕の骨を戦車に乗れないようにへし折る」


「…………」


生徒会長の杏が遂に折れた。



「大洗女子学園は、今年度3月をもって廃校になる」

「えぇ!?」

一同は騒然となった。



「廃校を阻止する唯一の条件が、戦車道大会で優勝すること…なんだ」

続けて広報の桃も口を開いた。







「よく言った!!」

なほは思いっきり拳骨を振りかぶった。


「えっ」

杏と桃の胸を殴って5mほど吹っ飛ばした。


「よく言った。だからこそ骨を折らない程度に手加減した。これで漸く私らを無理矢理戦車道に誘導した理由もわかった。だから、絶対に負けられないな。私も以後は本気で挑ませてもらう」


なほは腕を掲げた。


「お前ら!!ぜってぇ優勝すんぞ!!」

そして大洗女子戦車道チーム一同はなほに続いて皆が手を上げた。




皆の心が1つに纏まった。段々と学園艦の気温も落ち、来たるべき準決勝の日は刻一刻と迫っていた。




なほは室伏広治並にヤバい伝説の持ち主なので仕方ないです笑


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23話 プラウダ戦です!

おや…、まほの様子が…?

高評価9を下さったyuutaさん、叢雲神さんありがとうございます。
高評価8を下さったどざさんもありがとうございます。


場所は熊本、西住流屋敷。


「貴女は知っていたの…?」

「……はい」

重苦しい雰囲気の中、まほとしほが机越しに会話していた。

「よりにもよって番長だなんて成り下がったと思えば、次は大洗で戦車道を再開。しかもみほはあの子と共にいる…。西住流として恥じるべきことを…」

「…………」

まほは俯いたまま、ただ只管無言を貫いていた。
否、無言でいることを強いられているようだった。

「まほ、貴女は…」

「わ、私はお母様の西住流そのものです」

食い気味にまほは答えた。

「西住流とは、撃てば必中、守りは固く、進む姿は乱れなし、鉄の掟、鋼の心。それこそが西住流の筈。なのに……」

まほは知っていた。

こう言いつつも、しほは娘達との和解を心のどこかに残る母親としての立場が望んでいることを。
けど、しほは頑なに次期家元としての意思であることを臨んだ。


「次の準決勝には私も行きます。みほにも、勘当を言い渡すために」

しほは立ち上がった。


「まほ、貴女は()()()西住流を裏切らないで下さい」

「…はい」

だがしかし、しほのこの言葉は、姉妹と決別したばかりのまほにとって重くのしかかり、後に大事件を引き起こすこととなる。



_____________________



「寒い…」

日本本土は梅雨シーズンだが、そんなことは知らないとばかりに降り続く大雪。何処かもわからないような極寒の地にて、これからプラウダと大洗女子の戦車道戦が行われようとしていた。

「クルセイダー巡航戦車のエンジンあったかい…」

「オェェェェェェェェェッ!!」

また陸酔いする紀香。

「いい加減慣れろや」

白銀の雪に突如降りかかる嘔吐物。

「無理っす…。早く戦車のグラグラ感欲しいです…」

紀香は通常運転だった。



そんな時、大洗女子サイド近くに軍用車が止まった。

「…誰?」

沙織は首を傾げた。

「あれはプラウダの隊長と副隊長…」

「地吹雪のカチューシャとブリザードのノンナですね」

ズカズカと歩いてくるカチューシャとノンナ。

「ほうほう、アイツらが…」

ふむふむとみほの隣で頷くなほ。




「ひっ!!」

なほと目が合ったカチューシャ。カチューシャはなほにビクつき、その場で足がすくんだ。

「どうしましたか?」

副隊長のノンナが怖気付いたカチューシャと同じ目線になって話しかけた。その様子は宛ら子どもに話しかける母親のようだ。

「ノ、ノンナ!!」

そう言うとカチューシャはノンナの肩に飛び移った。

「ちっちゃくて小動物みたいな可愛い隊長さんだねぇ」

「だっ、誰が小動物よ!!」

思わず口を滑らしたなほに、ビクビクしながら反論するカチューシャ。


「肩車してるし、ノンナお母様もさぞかし大変でしょう?」

「よっ、よくも侮辱したわね!! しゅくせーしてやるんだから!!」

ビクビクしているカチューシャが可愛いのか、嗜虐心が刺激されて更に煽りを加えるなほ。

「あらら可愛いでちゅねカチューシャちゃん♪」

「むきー!」

そんな時、


「黙りなさい」

キィと睨みを効かせてくる肩車をしている副隊長のノンナだが、その口元は『お母様』という単語を聞いたこととプンスカ怒るカチューシャの幼さに思わずニヤけてしまい、その睨んでいる表情が緩んでいるのがバレバレだった。
なので大洗女子はその睨みに怯えることはなく、ただただ微笑ましい光景のようになってしまった。

尚、ノンナも若干震えていた。かの有名なエリート番長を目の前にして、カチューシャの身に何が起こるか分からないと警戒しているからだ。

「と、とにかく今日はよろしくお願いします…」

「よっ、よろしく!!行くわよノンナ!!」

軽い挨拶だけ交わすとカチューシャはノンナに指示を出して戻っていった。


_____________________



大洗女子vsプラウダの戦いが幕を開けた。


「私らは別行動する」

『はい、レオポンさんチームのカバーをお願いします』


クルセイダー巡航戦車とポルシェティーガーはみほたちのいる本隊とは別行動を取ることとなった。
ポルシェティーガーは重いためによく雪に埋もれるが、スピードが速いクルセイダー巡航戦車が先導し、尚且つ同行する搭乗員たちが工業に強いために即時に修理できるため、本隊と行動するよりは別で動いた方が都合が良いのだ。



『早速目の前に雪の塊が…』

「ナカジマー、ちょっと退いててー」

なほはあるものを雪の塊にポイッと投げた。

「爆竹投げといたから一旦回避してー」





そして、雪の塊が爆発四散した。



「よし、雪に埋もれないようにゆっくり回り込むぞー」

なほはポルシェティーガーの障壁になりそうなものを、次々と破壊しながら、本隊とは別に敵陣地にゆっくりと忍び込んで行くのであった。


_____________________


一方、みほたちはと言うと…


「向こうの車両は囮作戦の可能性があります。ルノーと38tで囮を引き付けておいてください」

先日の廃校宣言があったため、焦りからか短期決戦をするかと思いきや、寧ろ廃校がかかっているために、作戦1つ1つが兎に角慎重になっていた。

「よし!!T34撃破!!」

「こっちも撃破だ!!」

まずは全員で囮であろう2両を叩いた。すると、敵戦車は一斉に逃げ出した。ここで追撃すれば敵の囮作戦にハマることは目に見えていた。


「一旦離脱します!! その後、本格的に別働隊とも合流し、包囲して各個撃破しましょう!!」

だが、2両を撃破したことにより、数チームが調子に乗り始める。

「III号突撃砲!! このまま行くぜよ!!」

「せっかくだし行っちゃえー!」

「え、ちょっと待ってください!」

歴女チームと1年チームがみほの命令を無視して突っ込んでいく。

「なほのように単独で敵をバカスカしてやれー!」

歴女チームはなほを見て自身にも出来るだろうという根拠の無い自信から突撃をやめなかった。
まさに鵜の真似をする烏。

「なほに続くんだ!行っちゃえー!」

1年生チームも歴女チームの後を追って行ってしまった。



「仕方ありません。M3リーとIII号突撃砲はそのまま前進!! フラッグ車と38tと私たちIV号戦車は別方面から向かいます!!」

果たしてみほの判断は吉と出るか凶と出るか。


_____________________


そしてまた、なほたち圧倒的故障率チーム。

「クルセイダー巡航戦車って加熱しまくっていつも車内熱々だけど今はその大加熱のおかげで少々暖けぇ」

「でも、相変わらず夏は暑くて冬は寒い。戦車内はいつも不快的なもんだ」

「おっ、どうやら目的地が近づいて来たみたいですよ」

紀香の安定した操縦により、ポルシェティーガーもクルセイダー巡航戦車も途中でエンジンが燻ることもなく、更にはなほと美玲がポルシェティーガーの障壁を次々と破壊しながら進んだことにより、予定よりも早くみほから指定された高台へと辿り着いた。


しかし、そんな時だった。


『後方より敵接近!!』

レオポンさんチームより敵接近を知らせる無線が飛び込んできた。

「ポルシェティーガー、応戦だ!!」

『OK!!』

そしてポルシェティーガーより徹甲弾が放たれる。
何かと、これがレオポンさんチームのポルシェティーガーにとって初めての砲撃になる。

『1両撃破!!』

「マジ?」

まさかの初射撃にて、敵戦車を一撃で撃破するという快挙。

「続いて3両接近。どうします?なほ姉貴?」

計4両がポルシェティーガーとクルセイダー巡航戦車に迫っていた。そして、この後の判断はなほの手に委ねられた。






「ポルシェティーガーの重量とスピードでは奴らから逃げきれないだろう。協力して撃破だ!!」

「OK!!」

そうして、まずはポルシェティーガーが動いた。


「すぐ壊れるけど、威力は健在だからな!!」

ポルシェティーガーは一旦右にターン。そこからプラウダからの砲撃を躱しつつ焦点を定めた。


「撃てェェェェ!!」

そうしてポルシェティーガーから放たれた弾は、敵戦車の装甲を貫いた。




「プラウダの使うソ連戦車は装填が遅くて照準もなかなか合わせられないからな。今が攻め時だ!!」

そうしてクルセイダー巡航戦車もポルシェティーガーに続き、残った2両を倒す算段へと入る。



「横に回り込め!」

クルセイダー巡航戦車は、その機動力を活かして、高威力弾と引き換えに失った装填能力と照準能力のスキを突いていく。

「撃てェェ!!」

機動力に勝るクルセイダーは、まず横に並んだ敵戦車の間に入り込む。すると、かなり接近しているのにも関わらず、敵戦車は同士討ちを恐れて砲撃が出来ない。
その間に砲塔を回してドリフトしながら敵戦車の真横に回り込む。そこからの砲撃でまずは1両を撃破。

勿論この荒々しい戦法は、エンジンがオーバーヒートして故障しやすいクルセイダーにとってはある意味賭けかもしれない。
だがしかし、ここは雪原でとても気温が低い以上、普段よりエンジンが熱くなっての故障率は落ちる。

尤も、クルセイダーは大戦中砂漠戦が殆どだったため、それが故の故障率も雪上では事情が異なってくる。


「はい次!!」

続いて残った1両もソ連戦車の運命故、上手く照準を合わせることが出来ずにクルセイダー相手に砲撃を外す。



「喰らえ!!」

安定的に照準も合わせられ、尚且つゲームでの経験が生きた美玲の砲撃により、ポルシェティーガーとクルセイダー巡航戦車を追尾してきた敵戦車群はここに壊滅した。






「…まずはこの場を離れるぞ。4両がこっちに回されたということは、既にこちら側の位置が割れている可能性が高い」

高台から辺りを見渡し、新たな刺客が現れるのを警戒するなほ。

「下には廃民家みたいなものが…」

なほは高台の下に、大きな廃民家らしきものがあるのを発見した。

「一旦あの民家に身を隠そう」

なほはクルセイダー巡航戦車をその建物の中へと進めた。

「ポルシェティーガーは重くて1度高台を降りると2度と上がれないかもしれない。その場で雪を利用してカモフラージュしつつ待機」

建物内に上手く入り込んだクルセイダー巡航戦車は、その場から無線でポルシェティーガーに指示を出した。




しかし、この時点でなほはプラウダ戦車隊の策にハマっており、後にこの建物には同じく策にハマった集団が舞い込んで来ることとなる。


現在大洗女子車両8両
現在プラウダ車両9両



なほが怖すぎて原作のように強気にいけないカチューシャ。
そんなカチューシャが可愛くて思わずニヤけてしまうノンナ。

原作に沿いつつも異なった戦法を取っていく予定です。


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24話 猛吹雪、正に冬戦争だ!

高評価下さったsamasaさん、非想非非非緋想天さん、ありがとうございます。

AnimeJapan満喫してきたため、投稿が遅れました。


「さむっ…」

民家の中へ戦車を潜り込ませたなほたちオオカミチーム。プラウダ戦車に位置が割れていると踏んだ以上、しばらく内部で隠れざるを得なかった。
しかも、当初立てていた作戦は立て直さなくてはならなくなった。

「吹雪いてきましたね…」

それに追い討ちをかけるように、外は猛吹雪となっていた。

「おい紀香、吐くなよ?絶対に吐くなよ?」

「大丈夫…随分揺れたからもう吐きはしない…」

なほが民家の中から外を見渡すと、プラウダ戦車と戦闘を繰り広げた時と比べ物にならないぐらい雪が強くなっており、なほは思わず頭を抱えた。隠れたのはいいが、今度は出にくくなってしまった。

「…みほ姉、かなりの大雪だがそっちはどうだ?」

なほはみほたち分隊の身を案じて無線で連絡を試みた。その時であった。



「いたぞ!!」

「………………」

なほがのんびりと無線を取っていたその時、1両のT34戦車が猛吹雪をものともせずにゴゴゴゴゴと大きな音を立てて民家内へと侵入してきた。



「…急げ!!逃げろ!!」

すぐさま反対側の出口から脱出を試みようとするが…



「わわわわわわわわ!!」

III号突撃砲とM3リーが、クルセイダー巡航戦車が脱出しようと考えていた反対側の入口から逃げ帰るように入ってくる。


「…クソ!! 壁壊して入口を作れ!!」

苦肉の策として、クルセイダーの砲を正面でも背後でもなく真横に向けた。


「撃てェェ!!」

砲弾が発射、そして炸裂。砲弾は廃民家の壁にドカンという轟音を立てて戦車が通れるぐらいの大穴を開ける。

「脱出!!」

そしてクルセイダー巡航戦車はT34を避けるように廃民家を脱出した。


「何ィ!?」

それにはT34の搭乗員たちも驚きを隠せなかった。追い詰めた筈が咄嗟の判断で1両逃げられたのだ。

「1番ヤバいクルセイダーを逃した…」






「III号突撃砲、M3リーも逃げろ!!」

なほはそう叫んだ。





「無理でーす!」


ウサギチームが叫んだその瞬間、M3より白旗が上がった。元より追い詰められていたため、仕方の無いことだった。しかし、敵に追い詰められて一方的に全滅させられるよりはまだマシな展開ではあった。





「III号突撃砲だけでも逃げろ!!」

そう指令するなほ。だがしかし、




「嫌だね、ジャンヌのような女番長に全部手柄を持ってかれはしない!! 元よりこうなったのは私らが隊長を無視して進軍したからだ。せめてもの責任とって1つ報いてやるさ!!」

III号突撃砲は砲を侵入してきたT34へと向けた。


「ソ連戦車は装填に時間がかかる。こんな近距離では互いに外すことはないだろう」

「相討ちになるだろうな…」

「なほ副隊長、後は任せたぞ」




そして、2つの砲塔から砲撃の音が鳴った。




III号突撃砲、M3リー、T34、走行不能。

大洗女子車両残り6両
プラウダ車両残り8両








「アイツら…かっけぇこと言うじゃねえか…」

そして、廃民家を上手いこと脱出したクルセイダー巡航戦車にも受難が待ち受けていた。


「いたぞ!!」

「撃てェェ!!」

「逃がすか!」

猛吹雪をものともせずに立ち向かってくる3両のプラウダ戦車だった。



「クルセイダー巡航戦車の快速で逃げ切れ!!車体は吹雪で見づらい筈。右!!左!!横向くんだよ90度!!」

なほは戦車道を始めてから初めて訪れたピンチに思わず震えた。しかし、それは恐怖や焦りからではない。
大量の敵を前にしてなほは興奮し、武者震いしていたのだ。




「装填は私に任せろォ!! 今だ!!プラウダ戦車隊を撃て!!」

クルセイダーは敵に補足されないようにわざとフラフラと蛇行運転を行った。次に、快速を活かして一気にプラウダ戦車の真横に回り込んだり、突然スピードを落としてみたりと、不規則な動きを取ることでプラウダ戦車群を混乱させた。


「何こいつ!全然当たらない!!」

「狙いづらすぎにも程あるべ!!」

「早すぎんだが!」

そして終いにはプラウダ側にアクシデントも起こる。


「おい!何処撃ってんべか!」

「知らない!! そこにいるのが悪い!!」

クルセイダー巡航戦車を狙ったプラウダの砲弾が誤って味方を貫き、プラウダ車両が1両戦闘不能に。更にそれだけでは終わらない。


「にっ、逃げろー!」

「あっ、バカ!そこの廃民家は…!」

回収車両もまだ来てない。先程III号突撃砲含め3両が走行不能となった廃民家にプラウダ戦車が1両逃げ込んだ。

「あ、やべ」

「さっきクルセイダーの開けた横穴だべそこ!」

クルセイダー巡航戦車が脱出用に開けた大穴から侵入したプラウダ戦車。しかし、そこは猛吹雪のためにまだ回収車両が到着しておらず、右も左も障害物と化した走行不能の戦車。そして前方は崖のため、壁に大穴を開けて脱出を図ろうともあるのは雪壁だけだ。

そして、クルセイダー巡航戦車が背後からプラウダ戦車に狙いを定める。




「…終わりだ!!」

クルセイダー巡航戦車がプラウダ戦車を撃破。
本来であれば、4両でクルセイダー巡航戦車含めIII号突撃砲やM3リーを包囲して撃破していくという作戦だったが、クルセイダー巡航戦車たった1両相手に、プラウダは逆に翻弄されることとなってしまった。


「4両もつぎ込んだのにィ!!」





そうして、プラウダ戦術包囲群戦車隊4両はここに壊滅した。
だがその激戦の最中、大洗女子はIII号突撃砲とM3リーを撃破されてしまった。



_____________________




一方でみほたち分隊は恐ろしい事態に直面していた。


「カモさんチームやられました!」

「プラウダ戦車4両に追われてます!!」

「その中にフラッグ車はいません…!!」

生徒会、みほたち隊長、風紀委員、フラッグ車のバレー部チームは、プラウダ隊長のカチューシャと副隊長のノンナ率いる主力部隊に追跡されていた。
更に風紀委員の操縦するルノーbis戦車がノンナの戦車によって撃ち抜かれて走行不能となり、数的にも質的にもプラウダ相手に不利な状況となっていた。

戦闘を終えて近くに敵がいなくなったなほと自動車部連中と異なり、みほたちフラッグ車チームは切羽詰まった状況だった。


_____________________



「援軍として向かおうにも、フラッグ車の位置が既に相手に割れた以上は長く持たない…。それならば…」

なほは、この状況を打開する奇策を思いついた。


「チームレオポン応答せよ!!」


けど、それはある意味フラッグ車が持てばの話。
ある意味賭けに出た作戦ではあった。




















「…さて、プラウダのフラッグ車は何処だ?」

なほはクルセイダーを走らせながらプラウダ戦車が潜んでいそうな場所に次々と爆竹を投げていく。

「恐らくだが、ソ連戦車は雪に潜伏すれば重いから敵に発見された時に逃げるのは難しくなる故にそんな行動は取らないと思う。だとすれば絶対建物の影とかに隠れている筈。お前らいつでも行けるよう準備しとけ!!」


「「はい!!」」

なほは爆竹に驚いたフラッグ車がひょっこりと姿を現してくるのを只管待った。


「…そして自動車部、移動開始だ」

なほはそう無線に伝えた。











クルセイダー巡航戦車を走らせてから僅か30秒後。

「……一旦ストップ。フラッグ車は近くにいる」

廃民家群の外れにて、なほは微かに動くクルセイダー巡航戦車ではない戦車の静かなエンジン音を聞き取った。

「姉貴、分かるの?」

美玲が聞いた。


「喧嘩はさ、相手がどう出てくるか窺わねえと勝てない。視覚聴覚色んなもんをあのクソ流派の元で鍛えてきた。だから今の私に狂いはねえよ」

そうしてなほはじっくりと周囲の様子をうかがった。







そして、遂にその時は訪れた。


「…見つけたッ!!」

感覚を研ぎ澄まし、なほは五感で敵の位置を特定した。500mほど先の建物の影に、敵フラッグ車はその巨体を隠していた。



「行くぞ!!」

クルセイダー巡航戦車は敵フラッグ車目掛けて走り出した。





「あ、見つかった!逃げろ!」

プラウダのフラッグ車もクルセイダー巡航戦車の接近に気付き、一目散に逃げていく。




「レオポンチーム、準備はいい?」

なほは無線にそう語りかけた。



「はい」









「行くぜ!!」

なほは敢えて全速力を出さず、フラッグ車と同等かもしくはそれ以下のスピードでクルセイダー巡航戦車を走らせる。



「目標まであと僅か!レオポン構えろ!!!!!」


なほは無線に向かってそう叫んだ。













『プラウダ高校、フラッグ車走行不能!! 大洗女子学園の勝利!!』

そして、コールが会場中に響き渡った。




「勝ったな…」


奇策、それはクルセイダー巡航戦車で敵フラッグ車を追いかけ回す。しかし、最初から本気のスピードで追い回しはしない。これなら逃げ切れると敵に思わせるぐらいのスピードで走ることで、敵に油断させる。
そうすると、敵は下手に曲がって事故を起こすより直線でも逃げ切ることが可能であるという慢心から無駄にカーブをしなくなり、そこからある程度の進行方向は絞れる。

そこにレオポンチームのポルシェティーガーが建物の影より登場し、進路を塞ぐ。

敵フラッグ車がポルシェティーガーの巨体に前方を防がれたところで、クルセイダー巡航戦車はスピードを上げて猛ダッシュ。即座に敵フラッグ車の背後へと駆け寄り、装甲の薄い場所を狙って砲撃。そして決着というものだった。



実は、ポルシェティーガーとクルセイダー巡航戦車は、今回雪の戦場ということもあって車体を白く塗っており、敵に感知されづらくなっていたことが今回の勝利へと繋がった節もあった。




___________________________




「お、おめでとう!け、決勝行くから…」

試合後、副隊長のなほ相手に握手を交わすカチューシャ。
だがその様子は終始ビビりまくりであり、なほの強面をみたカチューシャは今にもノンナに泣きつきそうな勢いだった。

「ありがとう…。また頼むぞ」

「ヒッ!」

なほの自然?な笑顔がカチューシャの心に突き刺さったらしく、カチューシャは泣きながらノンナの肩へと戻ってしまった。

「ノンナァァァァァァ!!」

「…………」

カチューシャを肩車するノンナだが、その表情はとても清々しく、更にはなほに対してナイスと親指を立てていた。

「こ、怖くなんてないんだから…!!ヒィ!!」

とはいえ、何度も子供のような見た目のカチューシャになる。ビビられて若干傷ついたなほであった。



没案。
・原作通り廃民家に追い詰められ、なほは自動車部にメンテを押し付けて外へ出る。
・そしてコサックダンスに夢中なプラウダ生徒の目を欺いて戦車のハッチの中に大量に雪をぶち込んで乗れない状態にする。
・砲塔に固めた雪を入れて砲弾を暴発させて撃破する。
・プラウダ生徒(ニーナ)を脅迫して戦車隊の位置を吐かせる。

没になった原因ですが、なほ率いる大洗女子に土下座したら許してやるなんて言ったらまずカチューシャとノンナの命がないから廃民家に追い詰められないようにしました。


次は観戦しに来たしほまほサイドです。


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24.5話 西住と島田


ツインターボさん、bennetさん、みずさん、高評価ありがとうございます。

今回はプラウダvs大洗女子の試合を見ていた観客席サイドのお知らせです。



『大洗女子学園の勝利!!』

高らかに響く大洗女子勝利のアナウンス。
しかし、観客席にはその報に周囲とは異なり、ただ機嫌が悪そうに顔を顰める者の姿があった。



「…西住流を無視した戦い方を…」

西住流師範の西住しほだった。

「まさか無名の大洗女子が決勝まで進むとは…」

しほはただ、流派を無視した大洗女子の隊長、西住みほと、副隊長の西住なほに西住流師範としての怒りを表していた。

「みほが全体を統括して作戦立案し、なほがそれに則って奇策に出る。2人のコンビネーションによってチーム全体の士気を上げ、なほも雪やら爆竹やら道具を用いて敵を翻弄する。みほとなほがここまで勝ち進むとは私も思いませんでした」

まほが戦況分析をした。そしてそれは、待ち構える決勝戦が一筋縄ではいかない激戦になることを示していた。


「まほ、言いたいことは分かりますね?」

「はいお母様」

まほとしほは立ち上がった。

「次の決勝戦、西住流をもって………西住流をもって、2人を叩き潰します……」

まほは、声を震わせながらそう宣言した。



「そう…ね、今回の大洗女子の件はまぐれ。そう証明してあげるような戦いになることを望んでます」

「………はい、しかしお言葉ですが、戦車道においてまぐれは存在しません。それはみほとなほの実力。あれが西住流に縛られなくなった彼女たちの本気であると…」

だがその瞬間。

「黙りなさい」

「………………………」


まほはしほに一喝された。

「…王者黒森峰女学園こそが最強であると証明しなさい」

「はい」

まほは全てを諦めたかのように頷いた。次女と三女を敵に回し、更には姉妹の中で唯一西住流の名を背負わされることとなってしまったために、既にまほの心はボロボロだと言うのに。

「戦車道において、頂点に値するこそが西住流だと、まほも理解している筈よ」

「………はい」

まほは涙を浮かべながら静かに頷いた。


「黒森峰から10連覇の夢を絶えさせたあの子と、西住流から逃げたあの子を、潰してあげなさい」

「………………………はい」

まほは静かに返事をした。




「あらあら、随分と子供に厳しいわね」

突如まほとしほに語りかける1人の女性。その顔は洒落た洋風の傘によって遮られ、更には雪を伴う暗さでよく見えない。
しかし、しほにはその声の主が誰だか理解した。



「何しに来たの、島田流」

しほは表情1つ変えずに千代を見た。

「…私もあの子達を見に来たの。随分と忍者戦法に近い戦法を取るなぁと気になりましてね」

千代はみほとなほが喜びあっている電光掲示板をチラッと見た。

「…だから何、島田流にあの子たちは関係ない」

「ところがそうでもないのよ〜。何せ、なほのバックには私がいるから」








「は?」


しほは顔を顰めた。そして、千代はまほの方をじっと見つめた。まほは思わず千代から視線を逸らした。


「…まほはそのことを知っていたの?」

「………………はい」

しほはまほを睨みつけた。思わず、まほは怯んだ。


「なほは長女さんには伝えたとだけ言ってたけど、長女さんはまさか母親兼師範には伝えてなかったみたいね。意外」

まほはシュンと顔を落とし、更にはその場に座り込んでしまう。
そんなまほを余所に千代は続けた。

「これは警告よ。今すぐあの子に西住流でしてきたこと、謝りなさい。私がいる以上、あの子から西住流に頭を下げるなんて有り得ないわ。第1あの子は死んでも西住流を恨み続けるぐらいの強い執念があるみたい。何度も会って分かったわ」

しほを試すかのように問う千代。その表情からは愉悦に浸った黒さが窺えた。なほの強い怒りを西住流を徹底的に潰すことに利用しているという愉悦感に浸った千代に同調するかのように、雪は勢いを増していった。

「私は……西住流師範!! 流派についていけない者は切り捨てるだけ。私は先代よりそう告げられた…。だからあの子たちはその流派としての流れに則っただけでしかない!」

しほは今までにないぐらいの声で叫んだ。その声は猛吹雪の音に負けることなく、瀕死の西住流と強い味方を得た島田流の勢いに比例することなく、ただその場に木霊した。


「あの子の別名"エリート番長"、ただの成り下がりと勘違いしている節もあるみたいだから追加警告するわ」

千代は続けた。




「前は酒の席だったからお忘れでしょう。あの子の勢いは大洗、元地元の熊本だけに留まらないし、規模でいえば全国レベルよ」


その言葉は、西住流を挫くには充分。
の筈だった。




「ふざけないで、あの子はもう本来であれば西住の名を背負うことだって許されない!! なんなら島田にでもあげるわ。あんな無能な子たち要らないって言ってるのよ!」

しほはその場の勢いでみほを勘当する宣言まで出した。


「……ふふふ、そう?ならあの子たちは私が貰うわ。それに、大洗女子にはこっそりと私がバックに付いてあげるとしましょうか」

「もう、勝手に………………」


この時、しほは自分が言ったことがどういうことか気付いた。怒り任せに発した発言は、実質千代が目をつけていた西住みほと西住なほを合法的に養子にしていいよと言っているのと同じようなことだった。


「…今更取り消しなんてさせないわ。それじゃあ…」

千代はそう聞き届けると颯爽と雪の中に消えてしまった。








「……まほ」

「はい、お母様」

千代が消えて暫くした後、しほは口を開いた。





「次の決勝戦。西住流の真髄を見せなさい。出来なければ…分かるわね?」

「……………………」



来るべき決勝戦の賽はもう、投げられていた。



爆竹は明治時代にもあった上、対戦車には全く使えないという大会のグレーゾーンを突いたなほの勝ち。
戦闘シーンは相変わらず苦手です…。


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番外編2 なほとみほと愛里寿

AYANさん、ツインターボさん、一永さん、高評価ありがとうございます。

今回は戦闘やら殺伐シーンが続きすぎてお疲れ様なので、ちょっとしたほのぼのを描くことにしました。




これは、なほと愛里寿が初めて会った時のお話。


なほ、中学2年生。




「度々お招きありがとうございます…」

なほは島田流邸宅を訪れていた。

「こちらこそお礼を言いたいわ。貴女が島田流に興味を示してくれているおかげで、裏社会においても勝手に西住流は地に落ちて、島田流の株が上がってくれるもの」

紅茶を啜りながら、なほと千代は談笑を交わしていた。

「ところで…なんだけど…」

紅茶を置いた千代がなほを見つめた。

「…はい、なんでしょうか?」

なほも千代と視線を合わした。



「前は紹介出来なかったんだけど、私には10歳になる天才娘がいるの。遊び相手になってくれないかしら?」

「そういうことでしたら」

勿論。と、なほは迷うことなく立ち上がった。

「それで、娘さんはどちらに?」

「2階にいるんじゃないかしら」

「了解です」

なほは客間の襖を開けた。


「…………………」

「…………………」

襖を開けると、そこにはボロボロの熊の人形を手に持ち、可憐で千代と同じベージュの髪をした可愛らしい少女が立っていた。


「…………嫌ぁ!!」

「えぇ!?」

そんな可憐な少女は、なほの顔を見ると何かこの世のものではないものを見てしまったかのようなリアクションを取って一目散に逃げていった。


「…あらあら、いきなり嫌われちゃったみたいね」

「理不尽すぎる」

確かになほの顔は当時中学生だったが、女子中学生にしてはなかなか歴戦を潜り抜けてきたかのような極道の顔をしていた。
加えて体は結構ガッチリしており、ただのゴリラ同然だった。

そんなゴリラ体型と極道顔面は、可憐な少女の恐怖心を煽るには充分だったわけである。


_____________________



「はい王手」

「…参りました」

その後、なんとかなほはそんな少女と馴れ合って遊ぶことになるのだが、なほは天才を目の前にして、ただその頭脳相手にボコボコにされるだけだった。


「本当に愛里寿は10歳だよね?」

「うん、でも飛び級してるから中学1年生…」

そう、なほの目の前にいる島田流の生んだ天才少女もとい愛里寿は、飛び級をするほどのエリートっぷりで、それには西住流で培ったそこそこの頭脳持ちのなほでは歯が立つ相手ではなかった。


「悔しいなぁ。もう1回!」

「うん!」


ちなみに、愛里寿に負けながらも何度も将棋を挑むなほの姿勢が、愛里寿にとってどんだけボコボコにされながらも立ち上がるボコの姿と重なり、愛里寿はなほのことを勝手に『ボコのお姉ちゃん』と呼び始めるのは別の話。

だがしかし、現実は非情である。なほは、ボコボコにされる側ではなく、相手がどんな束だろうとボコボコにする側なのである。

そんな逆ボコ精神を知らない愛里寿は、千代との会話においてもなほのことをボコのお姉ちゃんと呼ぶ。



「ボコのお姉ちゃん、ボコのDVD見よう!」

「お、う、うん…見よっか……」

なほもボコについては理解が追いついていないためか、ボコのお姉ちゃんという渾名について深く考えることは無かった。
_____________________


それから2年後。


「久しぶり、なほ」

「お久しぶりです。千代さん」

みほを連れて島田家を訪れたあの日のことであった。


「ボコだ!」

「ボコ友だ!」

互いに指を差し合い、貴重なボコクラスタを目の前にしてただ興奮状態のみほと愛里寿。


「ねえ、やっぱり養子にならない?」

そんななほと千代との間での真面目な話があった裏で、なほ、みほ、愛里寿の間でその後に結構遊んだのだが…




「ボコはね、ここが偉大でバーっとやられてギャーってなるの!」

「ボコみたいに何度も挑む姿はアレなの!凄いの!可愛いの!」

「………………………」


ボコを愛するあまりに語彙力が低下して何言ってるか客観的に見てもよく分からないボコクラスタ2人に囲まれたなほは、ただテキトーに返事をしつつその場をやり過ごすしかなかった。

「なんでなほはボコの魅力に中々気づかないの?」

「ボコは凄いから…」

「うーん…」

なほは他人をボコボコにしてばっかだったので、いつもやられてばっかのボコの気持ちになって考えるということが全くといっていいほど理解出来なかった。
だが、そんなこと軽々と口走るわけにはいかない。

「なんでボコはあんなにやられるんだろう…。本気でやったら相手の骨折ることぐらい余裕だろ?」

「「えっ」」

だがなほも、天然からか遠回しに爆弾発言をして、2人をたまに困惑させていた。



_______________________



そして時は現代に戻る。



「愛里寿、ボコのお姉ちゃんことなほさんと戦車道で戦ってみない?」

「嘘!!ボコのお姉ちゃんと?」


なほたちが高校生戦車道大会を勝ち進む中、なほと愛里寿によるドリームマッチが組まれようとしていた。




なほvs愛里寿はいつかやります。
今回で幾らかほのぼのしてくだされば幸いです。

次回以降とにかく展開が殺伐しててヤバいので。


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25話 クラスメイトです!/ライバルだ!!

renasuartさん、木原@ウィングさん、高評価ありがとうございます。

最終章のDVD&BDが発売されたため、そろそろネタを解禁していい頃かと思いまして…。尚、これ以降オリジナル学校編を除いてほのぼの系は減ると思います。



プラウダを下した大洗女子学園。
来るべき決勝戦。使用可能車両が20両までともあり、圧倒的な数的不利を少しでも改善するため、生徒一同は戦車整備をしつつ、校内にまだ残されているだろう未使用戦車の探索に出ていた。


「ご不要の戦車ございませんかー?」

「それ違うよ」

「見つかるわけないよね…」








『お前らも見つけたら教えてくれ』

美玲も、共にネトゲを楽しんでいる大洗の仲間に、ネトゲを通して戦車探索を手伝って貰っていた。

「は〜」

美玲はパソコン画面に付きっきりで凝り固まった体を解すため、深い溜息を付きながら思いっきり背伸びした。

「まあそんな簡単に見つかるわけないよなぁ…」

美玲は先程ネトゲ仲間に送ったメッセを眺めつつ、諦め節に呟いた。


「…さて、姉貴の手伝いにでも行くか」

他の戦車道履修者と異なり、ただ只管自動車部員たちと戦車の整備を続けているなほの元へと向かうため、美玲は立ち上がって部屋を出ていこうとした。




『新しいメッセが届きました』



「ん?」

パソコンからメッセの着信を示す軽快な音が鳴り、美玲は一応確認はしておこうと一旦席へと戻った。


「まさか見つかるわけないよなぁ…」



そのまさかであった。



「何ィ!? それらしいものが!?」

ネトゲ仲間より送られてきたのは、学園艦の某所にある駐車場と、そこにポツンと置かれた戦車の画像であった。


『これ、戦車じゃないですか?』

ネトゲ仲間より地の文と共に送られてきた画像。それはまさに三式中戦車(チヌ)であった。



「今すぐ姉貴に報告だ!!」

美玲は部屋を飛び出した。





_______________




「姉貴、三式中戦車はどう?」

発見された三式中戦車は即座に自動車部となほたちの元に渡され、レストア作業に入った。


「傷や外傷が少ない。こんな綺麗に残ってる戦車があるとは思わなかったな…。軽い修理をして燃料さえ入れればすぐにでも動くだろう」


そういったなほは、カンカンと金槌を鳴らしながらレストアを進める。そして僅かに数分後。




「あとは燃料入れれば動くだろう。その辺はホシノ、頼んだぞ」

「りょーかいっ!」

そこにはピカピカに磨かれ、今にでも動きそうなレベルまでレストアされた、新品同然の三式中戦車の姿があった。

「西住のドイツ戦車は複雑だったから日本戦車はやりやすい…」

なほは腕を鳴らした。
それは、まだこれで全てが終わった訳ではないということを伝えているかのようだった。


「乗るヤツは決まったのか?」

なほがそういうと、周囲はシーンと静まり返った。
誰も、どんな人が乗るか知らない。というよりも、決まってすらいないのだ。

「姉貴」

「なんだ?」

後ろから美玲がなほに話しかけた。



「私のネトゲ仲間が、ずっと私から戦車道のことをきいてたから、前々から興味があってこの機会に乗ってみたいんだってさ。待ち合わせもしてるから会いに行ってみる」

「なるほど…。とりあえずその辺は美玲に任せよう」

美玲は了解とだけ頷くと、その仲間の元へ向かっていった。


「さて、紀香。まだ校内を探索し回ってるみほ姉たちあんこうチームの5人を連れてきてくれないか?」

「はい」

そういうと紀香もみほたちあんこうチームを探しに向かった。

「さて、私もひと仕事しないとな」

なほは校内のある一室へと足を進めた。


_____________________


「さて、生徒会」

「なーにー?なほちゃん?」

なほは生徒会室になんの躊躇もなく堂々と入室した。


「私含め美玲と紀香もよくいた大洗のヨハネスブルグは探索したか?」

「「…………………」」

広報の河嶋と会長の杏は黙り込んだ。この反応は、つまりまだ探索しようとすらしていないということだった。


「やはりな、私ですらヨハネスブルグのことで知っているのは地上との近道エレベーターから私が統括しているヨハネスブルグ中部地帯まで。その辺は知り尽くしてても、その地下にならまだ戦車が眠っている可能性がある」

なほは淡々と述べた。

「もうあるとするなら…そこしかないと?」

副会長がなほにきき返した。

「そうだな、数人引き連れて地下まで行くから、戦車引き上げの準備をしといてくれ」

「OKOK」

ヒラヒラと手を振る角谷杏生徒会長。
それと共に、なほは後ろを向いて颯爽と生徒会長を出た。


「姉貴、5人を連れてきました」

「ご苦労様紀香」

言われた通り、紀香はあんこうチームの5人をなほの元に連れてきた。

「なんですかなほ殿!」

「もしかして合コンの人不足!?」

「沙織さん、それはないかと…」

「要件早く言え」

「なほ、なんで私たちを…?」

5人は思い思いに色々と言っているが、なほが彼女たちを呼んだのは他でもなかった。


「私だけではどうしても出来ないことが幾つかあるからな……。身の安全は保証するから、私についてきて欲しい」

そうして、なほは紀香とあんこうチームの5人を引き連れて、大洗のヨハネスブルグへ誘導していくのであった。


_____________________



「さて、久々だな…」

戦車道を始めて以降、戻っていなかったヨハネスブルグにあるなほたちの拠点に、彼女たちは集まっていた。


「既にここに来るまでで驚きの連続ですよ全く…」

「みぽりん、妹のなほさん凄すぎない?」

「まあね…ははは…」

あんこうチームの5人全員は揃ってなほの恐ろしさを口にした。唯一血も繋がっている姉妹のみほですら、この度のなほには驚きを隠せずに苦笑いを浮かべるしかできなかった。









「通るだけで皆が避けたり土下座したりするし、まるで大名行列だな」

麻子もこれには低血圧なのも忘れて、ただ呆れつつなほの恐ろしさを口にするのであった。


「そういえば姉貴、何故ここに用が出来たのでしょうか?」

紀香だけは唯一なほの恐ろしさを何度も目にしているため、特に今回の件で驚くことは無かった。








「戦車があるとしたらもうここぐらいしかないと思ってな」

なほが周囲に聞こえるぐらいの声で呟いた。


「こんな荒れたところに戦車なんてあるの?」

「あるならワクワクしますね!」

「なほさんがいれば道中も大丈夫ですし」

あんこうチームのメンバーはなかなかノリノリだった。



「んじゃ、これからもっと深い所に行くから、逸れるなよ?」

「「「「「「おぉーッ!!」」」」」」

そうして戦車探索隊が結成され、大洗のヨハネスブルグを突き進んで行くこととなった。


_____________________



「反応はこの下か…」

なほは島田流の助けも借りつつ制作した戦車探知機で、大洗のヨハネスブルグのどこかに存在するであろう戦車の反応を確認した。

「分かるの?」

「姉貴に間違いはない」

「なほさん凄いですね…」

「もう、何が来ても驚かないぞ…」

「なほって昔から何するか分からないことあるからね…」


戦車探索隊の一同を再度驚かせつつ、なほは大洗のヨハネスブルグ深部にある戦車の反応を追って先を進んでいた。


「…どうやらこれを降りるみたいだな」

そうしてなほたちの前に現れたのは、1番下まで光の届かないような長さの登り棒であった。

「下見えませんけど…」

「本当に降りて大丈夫?」

「ブラジル行きそう」

「いいから降りるぞ」

そんな周囲の心配をものともせず、なほは先陣を切って登り棒に掴まって深部へと向かった。


「姉貴に続いて下さい」

「…私も行く」

「なほさんに続きましょう」

「私も!」

「私もです!」

「なほったらもう…」

なほに続き、紀香、麻子、華、沙織、優花里、みほの順番で登り棒を下っていく。




「みぽりんお尻…」

「ご、ごめんなさい!」

途中でみほの尻が下にいた沙織に激突するなどの事故も起きたが、数十秒ほどでなほたち一行は最下層までやってきた。


「キャァ!!」

「うわぁ!!」

下にはダンボール箱のクッションが大量に敷かれていたために怪我はなかったものの、先陣を切って行ったなほ以外はダンボール箱のクッションに落ちた紀香の上に更に落ちる形となって、それなりのアクシデントは発生した。
ちなみに優花里のみ綺麗にスタッと着地していた。


「遅かったな、戦車の発信源はここら辺だが…」

なほは辺りを見渡した。



「…ダンジョンの最下層みたいですね」

「行き止まりか?」

「閉じ込められちゃったの!?」

「落ち着いてください沙織さん」

「こういうのは壁に恐らく仕掛けが…」

優花里が壁を伝って仕掛けのありそうな場所を探っていた。




コンコンッ




「ここですね…」

優花里は感触で仕掛けを探り当てた。


「あとは私に任せてくれ」

「ではなほさんお願いします」

優花里が仕掛けの位置を探り当てたところで、なほにバトンタッチ。この場を任されたなほは、一旦足を引いた後に1歩踏み込んで思いっきり壁を蹴飛ばした。


「オラァァァァッ!!」

仕掛けがあると思われた場所は、ベニヤ板に石の模様を描いたトリックアートだったようで、周囲の岩にヒビを入れながらベニヤ板は粉々に吹き飛び、そこには新たな通路な出来た。

「んじゃ、入ろう」

何事もなかったかのようにヅカヅカと突き進んでいくなほ。一方で、なほのキックの威力を目の前にしたあんこうチーム+紀香は、絶対になほだけは敵に回してはいけないと誓うのであった。



しばらく歩き続けると、やがて低い女性の歌声が響く場所へと出た。

「…こんなところにバーが?」

「なほ、本当にここに戦車があるの?」

「探知機では段々近づいてるようだが…」

「姉貴に間違いはない」


バーの名前は"どん底"。その内部からなほの持つ戦車探知機が戦車の反応を示していた。


「…しっかし、まさかコイツらの店の中にあるとはな…」

なほはこのバーに何かしらの因縁があるのか、思わずどん底の文字を見て顔色を変えた。

「ん?姉貴、このバーの人と知り合いですか?」

「まあな…、とりあえず入ろうぜ…」

「え?入るの?」

「今はなほさんを信じましょう」

そうしてあんこうチームからも先陣を託されたなほは、バー『どん底』の扉を開けた。








なほを先頭に、店内へと足を踏み入れる一同。

「店に入ったら何か注文するのがマナーよ」

無言で探知機を触って戦車の位置を探るなほに、カウンターにいた女性が睨みを効かせながら言った。

「…悪いが私は不良なもんでな。マナーなんてものは知らねんだ」

「そう…、まあ貴女とは一悶着あった以上強くは言えないわね」

「察しが早くて助かるぜ、カトラス」

そして、再び戦車探知機で戦車を探る作業に戻るなほ。

「………久しぶりだな。エリート番長」

なほが探知機を弄りながらカウンターを素通りしようとした瞬間、その場に先程までとは比べ物にならないぐらいの殺気が漂い始めた。

「あぁ…、随分と久しぶりになっちまったな…。まだお前らがこんな掃き溜めのようなところで海賊ごっこを続けているとは思わなかったな…」

「へぇ、ドレイク船長の愛したハバネロクラブ1口で気絶した甘党お子ちゃまがよく言うじゃないか…」

視線を一切合わせずに続く2人の会話がその場の空気を制圧する中、紀香やあんこうチームの面々はただゴクリと固唾を飲んでこの会話の行先を見守る姿勢だった。


「…悪いが今回は潰し合いに来たわけじゃない。喧嘩でのリベンジはまた今度だ。今回は戦車を探しに来ただけなんでな」

なほはカウンターに座る女を素通りし、戦車探知機に従ってカウンターの奥にある扉を開けようとする。


「…」

「おっと」

カトラスが数本のナイフをなほに向かって投げつけた。なほはそのナイフを近くにあった廃材の鉄板で弾いた。
弾かれたナイフは店内の至るところに突き刺さる。が、店内の人間はそれに全く動じない。

「うほーっ、カウンターの奥に入ろうだなんて宣戦布告か?海戦か?」

店の奥でノンアルコールの酒を煽る赤髪パーマのラムがその様子を見て酔っ払いのように興奮し始めた。


「私はこの奥から出ている戦車の反応が気になるだけだ」

そうして強引に突き進もうとするなほだが、

「おい…ちゃんと勝負して勝ってから言え…。じゃねえと連れがどうなってもいいのか…?」

バーの連中の中で1番ガタイのいいムラカミが、彼女らを人質になほを勝負させる流れに誘導した。

「………分かった」

連れてきたみほたちに危害を加えさせないため、なほはどん底バーの勝負を受けることとなった。



なほが唯一全てにおいて勝てないのなんて実質ギルガメッシュぐらい笑

というわけで、最終章の内容を先取りすることにしました!


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26話 サメさんチーム、加わります!!

Toshikazuさん、高評価ありがとうございます。




「まずはこれ解いてみな」

どん底メンバーvsあんこうチーム+の面々で始まった対決。まずは白のロングスカートと水色のロングヘアーで、先程店外まで響く歌声を披露していたフリントからの複雑な縄結びの紐解きをもって勝負は幕を開けた。

「これなら…」

優花里はプライベートでサバイバルのようなことをするため、これぐらいの紐解きなら余裕らしく、僅か数秒でひょいひょいと縄を解き終わってしまった。


「何!?」

先程まで余裕の表情を浮かべていたフリントもこれには驚きを隠せなかった。



「なら指相撲で勝負!!」

場所は変わってカウンターの上。これには麻子がカトラスに応戦。試合はカトラス有利かと思いきや、麻子が操縦士としての手先の器用さや筋力で上回り、麻子がカトラスの指を根元から抑え、こちらも勝負は僅か数秒で決した。

「もう1回…リベンジ!! 今度は違う人で…」

「なら私が行きましょう」

カトラスのリベンジに、今度は紀香が応じる。

「はじめッ!!」




「そういえば指相撲ってあんまやり方知らないんですけど…これでいいんでしょうか」

紀香は先程の麻子で初めて指相撲というものを知ったらしく、指相撲におけるルールやコツがあまり分からない中、他人と比べても圧倒的に大きな指と筋力をもってカトラスをゴリ押しで捩じ伏せた。

「痛い痛い!!ギブギブ!!」

紀香が剛腕でカトラスの指を爪で押さえつけるといった脳筋的事故も起き、もはや指相撲以前の問題だったが、カトラスの棄権によって2回目もあんこうチーム+の勝利。

「手旗信号、なんて言ってるか見破ってみな」

素早い動きで手を動かしてメッセージを作るチリチリ赤毛のラム。

「分かった!!」



_____________________


こうして様々な勝負を繰り広げたどん底とあんこうチーム+の面々。途中、みほに直接決闘を挑んだ、どん底メンバーでも1番ガタイのいいムラカミが、なほにフタエノキワミの如き大振り反撃パンチをくらって気を失ったのは言うまでもない。
また、リーダーの銀もハバネロクラブ飲み比べを行ったが、華の大食いっぷりには歯が立たず気絶して敗北した。

ちなみにだが、恐らくこの場に美玲がいたらハバネロクラブ程度であれば余裕で食い潰されていた可能性があったため、ある意味華の方がこの勝負には適役ではあったのかもしれない。

尚、ハバネロクラブが出てきた瞬間、なほはそれから漂う激辛の匂いだけで失神するという事故も起きた。メンテから戦車操縦、学問等何かと弱点が存在しない完璧超人と思われていたなほにも、辛味という大きな弱点が存在していたのだ。




「最後は…あたいとカラオケ対決でもしようか!」

フリントから最後の決戦としてカラオケ点数対決を提案された。

「さて、そっちからは誰が出るんだ…?」

ようやく意識を取り戻したムラカミが腕を組みながらあんこうチームの面々を見定めるかのように視線を配った。

「なら私が出るぜ」

なほが参加表明をし、カラオケマイクを手に取ろうとした。

「あ、そうだ。おい、これはなほお前は絶対に歌うな」

しかし、1人リーダーの銀だけはなほのこの対決への参加を強引に制止した。マイクを握ろうとするなほの手を強引に掴んだ。

「そういえば…なほ!絶対に歌っちゃダメ!!」

みほもなほだけには絶対歌わせまいと体全体で通せんぼしてカラオケの機械の前に立ち塞がった。


「お前らどうしたんだ?」

一方のなほは、何故2人とも必死に自分を制止しているのか自覚していない様子。

「ダメ!!絶対にダメ!!」

「お前の歌声は冗談抜きにマジで死ぬ!!」

みほも銀も、全身から汗を噴き出しながら何が何でもなほを止める勢いだった。

「みほ殿がそこまでして止めるとなると、逆に気になりますね」

「「えっ!?」」

優花里がなほの歌声に興味を示すと、みほと銀の2人は思わず間抜けな声を出してしまった。

「なほさんの歌声…気になりますね」

「私も私も!!」

「正直気になる」

「…そういえば姉貴の歌声聞いたことないですね」

周囲一同もそこまで2人が恐れている、なほの歌声に興味を示す。

「……………」

その間、どん底メンバーからも大きな反論が挙がることはなかった。


「よし、じゃあ歌うぜ」

「ひっ…」

「まずい…」

みほと銀は慌てて耳を塞ぐが、時既に遅し。




ボエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!



「ギャァァァァァァァァァァァッ!!」

「うるせぇ!!」

「だから言ったのに…」

「凄い音痴です!!」

「人間から出る音じゃないような…」

「グフ………………」

「カトラスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!死ぬなァァァァァァァァァッ!!」

「うほーっ!!」

「姉貴ィィィィィィィィ!!やめてくれェェェェェェェェェ!!」

なほの恐ろしい地獄の轟音殺戮歌声は、その場にいた全員の意識を刈り取り、気づいた頃には全員が地に伏せて気絶しているという有様だった。

バーどん底のグラスは悉く破壊され、壁にはヒビが入り、その爆音は大洗のヨハネスブルグ全域に轟いたという。



_____________________



「ってなわけで、勝負に勝って店の奥に行ったらMarkIV戦車があったんで、陸の船という解釈の元、どん底メンバーにも戦車道を履修してもらうことになった」

場所は地上。勝負を終えたなほは周囲に寝転ぶ人を見て疑問を感じつつ、邪魔者がいなくなったということで勝手にカウンター奥にある部屋へ進入。
すると、そこには燻製作りのために戦車が利用されており、そのことを学園艦の上の方にいる生徒会へと報告し、無事に引き上げ作業を開始した。

「学園艦存続と危機とあれば仕方ないねえ」

「大洗連合とも今は停戦だ」

「ただなほ、もう2度とマイクを握るな」

どん底メンバーの全員に軽くトラウマを植え付けたところで、どん底メンバー改め、サメさんチームが来るべき高校生戦車道大会決勝戦から大洗女子戦車チームに加入することとなった。



















「あれ、ぼく達は?」

一方で、美玲の誘ったネトゲチームもといアリクイさんチームは、強烈なキャラ属性持ちのなほとサメさんチームの影に隠れ、同じく決勝戦から参加する新メンバーにも関わらず、空気と化していたのであった。



シリアス前のちょっとしたコント要素です。
本当はサメさんチームを出すのはもうちょい先になる予定だったのですが、折角最終章のDVDとBD発売ともあったので、多少強引ではありますが、早めに出してみました。


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27話 決勝前夜です!

春閣下名誉愚民さん、日本兵さん、評価9ありがとうございます。

今回は…ちょっと百合シーンを入れました。




決勝戦前夜。

生徒会チームの38tがヘッツァーになったり、あんこうチームのIV号戦車を強化したり、チームの面々が各々で独自のやり方で決勝戦に備えた練習を行い、そしてその日の練習は終了した。


「全戦車は鉄道で決勝会場まで送ってもらうから、今日の夜は明日に備えて各自自身を奮い立たせるなりしっかり休むなりするんだ」

「「「「「「「「「「「「はい!!!!」」」」」」」」」」」」





「ついに明日か…」

なほは過去を思い出していた。黒森峰は初等部時代に少しだけ世話になっていた。
しかし、10歳以降は殆ど戦車道にどっぷりだったため、優花里と短い間親しくなった期間を除けば、ロクな思い出がなかった。
そして10連覇を逃した責任を全てみほに押し付けた悪徳学校として、なほはみほの屈辱を晴らすため、黒森峰を徹底的に潰すことを考えていた。

しかし今回、それらを差し置いてなほにとって1番重要なのは、黒森峰のバックに付いているものだ。

西住流(クソ流派)…」

なほから幸せを奪い、姉妹の仲をズタズタに引き裂いた元凶。
みほを精神的に追いやった『チームメイトの命より勝利優先』という悪習がいかに狂っているかを理解させるため、なほは独自の戦法で西住流をボコボコにする予定であった。

「この手で、遂に…」

なほは燃えていた。かつて自分を勘当した流派を、自分の手で潰せば西住流は地に落ち、なほの株は上がる。そうすれば、全国各地にいる傘下の者達の力とバックの島田流の時代がやってくる。

なほの目標。それは戦車道における『革命』そのものだった。


_____________________


「まほ、分かってますね?」

「はい」

西住邸宅、しほのいる大部屋にまほはいた。
暗い顔で頷くまほは、確実に日を跨ぐごとに覇気が無くなっていた。

「…西住流は不滅です。貴女がそれを証明してください」

「はい、お母様…」

けど、まほは知っていた。本当はしほがなほと和解を望んでいることを。師範としての顔が立たない故に、母親としての自分を殺していることを。

だがしかし、そんなことまほは口に出来るわけがなかった。

「(お母様…私は………)」

西住流を継ぐ者がまほしかいない以上、明日の決勝戦における西住流の未来は全てまほにかかっていた。
いつもであれば平常心で試合に臨めるまほだが、何故か今回だけは不思議と不安感に襲われていた。

「なほもみほも、西住流の恥晒しなのですから、気に留めることはありません。徹底的に潰しなさい」

だがまほはしほの本心を知っている。そのことを口に出せるものなら早く出してみたかった。しかし、しほは無常にも西住流を優先した。



「(私は…どうすれば……)」

ただまほはその場でいつもは出すことのない冷や汗や震えが止まらなかった。


_____________________


「折角だからご飯会しない?前夜祭として?」

「えっ…いや、私にはアイツらが…」

なほが沙織によってご飯会に誘われた。

「前夜祭って祭りじゃないだろ」

「前夜祭は前夜祭なの!」

麻子に突っ込まれる沙織。
それはさておき、自分には紀香と美玲がいるからと2人の方に視線を配るなほ。

「姉貴、私はネトゲ仲間と明日に備えて色々やるんで…」

「私はバーどん底の連中と色々やりますから」

それは美玲と紀香の気配りであった。

「姉貴、決勝戦前夜は戦車道再開の切欠になった姉といた方がいいですよ」

「そうだな、私らも元を辿れば姉貴の姉さんが切欠だからな」

「お前ら…ありがとな」

紀香と美玲の2人を抱きとめるなほ。2人の背中を叩き、気合を入れた。

「よし、沙織。折角だから参加させてもらうぜ!!」

「うん!! なぽりんとみぽりんの昔のこともききたいし!」

「なぽりんって…」

みぽりんに続く独特の渾名に苦笑いを浮かべるなほ。

「なほ殿も来てください。副隊長なんですからいてくれた方が嬉しいです!…幼少期の思い出も、まだ全て語ってませんし」

「優花里…、そういえばまだ全部話してないな」

「なほの操縦技術がどれだけ下手なのかも聞いてみたい」

「おい麻子、私が下手なのは砲手の方だ」

「砲手が下手って認めてしまうんですね…」

「それじゃあ今日は勝つに準えてカツを食べよう!」

ワイワイと話すあんこうチームとなほ。いつの間にか、戦車道チーム内にあったと思われたクルセイダーのオオカミさんチームとそれ以外のチーム間における見えない互いに避けあっていた壁は消え去っていた。



「そういえばなほ、料理出来るんだっけ?」

「ふぇ!?」

唐突なみほの言葉に困惑するなほ。

「なぜに…!?」

なほはまさかと嫌な予感を感じ取る。

「前なほのお弁当覗いたら、物凄く可愛いタコさんウインナーとかボコのキャラ弁が…」
「やめて!恥ずかしいからやめて!」

実はなほ、料理スキルが結構高い。中1からこの大洗で一人暮らしを余儀なくされた故か、4年間で着いた家事スキルは、別名エリート番長を思わせないような女子力振りであった。

「甘味が好きだったり、なほはところどころ昔と変わらずに可愛いところがあるなぁって…」

みほのそんな発言を聞き届けたなほは、その場でヘタリと座り込んで意気消沈した。

「なぽりん可愛い!」

「なほ殿…可愛いです!」

「意外に女子力あるんだな。私の世話してほしい」

「そういえば鹿島さんと古河さんに対するお姉さん力もありますからね。女子力が羨ましいです…」

「グフッ…」

ギャップ的要素の発覚に、築いてきたなほのキャラが少々崩れた瞬間でもあった。


__________________


そして、みほの家にて前夜祭が開かれた。

「美味しい!!」

「これならすぐ嫁行けるよ!!」

「歌は音痴なのに味は音痴じゃないんだな」

「味付けが丁寧ですね!」

「新三郎辺りを貰ってくれないかしら?」

「もう好きにして…」

散々いじられまくったなほは、すっかり拗ねていた。







「ごちそうさまでした」

「また明日ね!」

「なほ殿との思い出話楽しかったです!」

「また明日…起きられるように頑張る」

「また明日ね!」

玄関先でチームメイトを見送るみほ。一方でなほは、食べ終わった後の片付けや皿洗いをしていた。



「4人とも帰ったよ」

「分かった」

「やっぱり家事スキル高いなぁ…なほ。私の身の回りのお世話もしてくれないかな?」

「おいおい、私は全国の傘下と紀香と美玲で精一杯だよ」

「えー、料理も家事もできるならいて欲しいなぁ♪」

「まったく…、とにかく私もこれが終わり次第帰るよ」

手を動かしながらみほとの会話を続けたなほ。








「……今日は泊まって。お願い」

「…………」

みほに抱きつかれてそう囁かれたなほは、洗い物をしていた手を止めた。

「…うん、いいよ」

「ありがとう!」



決勝戦の前夜___
みほは過去を思い出していた。

なほのいなくなったあの日を。



_____________________



場所はベッドの中。あの仲直りの時と同じように、みほとなほは同じ布団の中にいた。


「…ねえ、なほ」

「なに?」

みほが囁くようになほを呼んだ。


「私ね、怖いんだ」

「怖い?」

なほはその意味が分からなかった。

「私黒森峰では、お姉ちゃんが凄かったってのもあって、西住流の娘だからって入ってすぐ副隊長になったんだ。そしたら上級生からの嫉妬からの嫌がらせが激しくて……」

「…みほ姉は昔からずっと優しかったからな」

なほは悟っていた。みほの優しい性格は、黒森峰における西住流戦車道ではある意味恰好の的であると。

「そんな中であの日、私が仲間を助けたせいで黒森峰は10連覇を逃した。みんなこぞって私を批判した…」

「……………………」

なほは許せなかった。人として正しい行動を、何故誰も賞賛しないのだろうかと。



「みほ姉、あの日のみほ姉は間違いなく人間として1番立派な行動を取っていた。悪いのは黒森峰、そして悪天候にも関わらず試合を強行した戦車道連盟だ。明日、それを奴らに見せつけよう」

「…なほ………うぅ…グス」

「みほ姉!?」

みほはその場で泣き出した。


「なほならそう言ってくれると思ってた。生徒会に無理矢理戦車道を取らされた時も、なほは誰よりも私のために怒ってくれた。戦車喫茶の時も、まさかお姉ちゃんとすら対立する姿勢を見せるなんて…。あの時はどうなるんだろうと思ってたけど、今はなほがいるおかげで全然怖くないし心強い」

「みほ姉…」

なほはこの大洗女子学園に来た目的を思い出した。
いつか、西住流から姉妹たちを救い出し、悪徳流派を潰すことを目的に力を蓄え続けていたこと。

「なほ」

みほは後ろからなほを思い切り抱きしめた。














「私ね、ようやく分かったの。なほがこうして常に私のために動いてくれていることが凄く嬉しい理由」


みほはなほの耳元に口を近づけた。















「私ね、なほのことが好き」

「!?」

「…姉妹や性別の壁すら超えて、もうなほのことが好きなんだ」

みほは告白した。




「みほ姉…?」

「いつも私のために怒ってくれて、あれほど距離を置いていた戦車にも乗ってくれて、ありがとう」


「ちょっと!?みほ姉!?」













「今日は、私と一緒に…」


それから、みほはなほに思いきりキスをした。












やがて夜も耽る。夜明けと共に、彼女たちは様々な想いの元、決勝戦に臨む。

廃校、西住流、両勢力共に大きなものが関わっているのは間違いなかった。





自信に満ち溢れるなほに対し、不安感のみが残るまほ。
果たして勝負の行方は…

そして前半と後半のテンションの差よw

ガールズラブタグ、ここで回収しました。


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28話 黒森峰戦車を駆逐です!!

遂に決勝戦です。




夜が明け、なほは目覚める。


「…なんで服乱れてんの」

「あ、おはようなほ」

「ちょっ…」

なほの隣で寝ていたみほも1枚も着ていなかった。つまりこれは、要するにやってしまったということである…。

「…今日は頑張ろう」

「ウン」

なほは昨日みほにあられもない姿を晒したことなどを忘れることにした。


「なほって責めに弱いね」

「やめてくれ…」

みほは見かけによらず肉食系だった。

_____________________



「ここが決勝戦の舞台か…」

「腕がなりますね」

「屋台の飯うめぇ」

クルセイダー巡航戦車の最終整備をしつつ、試合に備えて腹ごしらえをするなほたちオオカミさんチームの3人。

「なほさん」

「ん?」

日傘を手に、1人の女性が近づいてきた。


「千代さん!!見に来てくれたんですね!!」

その女性は島田流師範、島田千代だった。

「えぇ、なにせ今日は決勝戦。貴女の名声と反比例して落ちる西住流を見届けたかったのよ。それに、今日貴女が戦車に乗る理由を改めて確認するためにね…」

「?」

なほは千代の言葉の意味が分からなかった。なほ自身、廃校阻止のために戦車道をやってるに過ぎなかった。

「楽しみにしてるわ」

「はい」

なほは自信に満ち溢れながらハキハキと言った。






「銀、そういえば戦車動かしたことあるのか?」

「ない、けど陸の船だし大丈夫だろう?」

「えぇ…」

どん底メンバーに不安が残るが、間もなく決勝戦は始まる。

_____________________



『試合開始!!』


そして遂に、決勝戦の火蓋が切って落とされた。

尚、試合前の挨拶にて、エリカの『弱小校だとアンタでも隊長になれるのね』という失言に対してなほが『瀕死の西住流と黒森峰は口しか動かないな。そんなんで勝てんの?』と発言したことによってなほvsエリカの口喧嘩が勃発し、まほとみほがそれぞれ止めなかったら、両校とも失格になり兼ねない事案があった。

お互い、そういったいざこざが発生するぐらいこの試合にはとても大事なものがかかっていた。




『辺りを警戒して進行してください』

みほの司令によって、クルセイダー巡航戦車はスピードを落として周囲の戦車と同じようなスピードで陣形を組んで慎重に進行していた。


「流石にまだ黒森峰は来ないみたいだな」

キューポラから顔を出して周囲を警戒するなほ。

「あとサメチーム、markIVにしても遅すぎる」

通信手でもある美玲がサメチームに無線を通じて話しかけた。


『うっせぇ!仕方ねえだろ海賊船なんてこんなもんだ!!』

もれなく無線から怒鳴り声が響くのであった。




そんな時であった。





ガァン!!



「えっ!?」

何処からか飛んできた砲弾がクルセイダー巡航戦車を掠めた。


「左方より敵襲!!」

黒森峰の重戦車群がそこにいた。


「森を突破してきた!?」

『ちょっとこれはキツい…』

「まるでアルデンヌの森だな…」

なほは突然の敵襲にも関わらず、余裕の笑みを浮かべていた。が、その余裕は一気に崩れることとなる。


「姉貴、ちょっと戦車の調子が悪いみたいです」

「はい?」

「これエンジン煙出てる…」

よく壊れることで有名なクルセイダー巡航戦車だが、このタイミングでエンジンの不調が来てしまったようだった。

「…ちょっと見てくる」

なほはキューポラから体を出し、戦車の弾幕が飛び交う中で砲塔の死角を利用して戦車の整備を始めた。

「…あぁ、低速で走りすぎただけみたいだから問題ないな」

なほは確認を終えると戦車内へ何事も無かったかのように戻った。
尚、隣でポルシェティーガーもエンジンが燻ったために同じく自動車部がなほと同じように戦車を動かしながらメンテをしていた。



「大丈夫ですか?姉貴?」

車内に戻ったなほに紀香が言った。

「問題ない」

そう言うと、なほは反撃のために弾を構えた。

「美玲、どうやらクルセイダー巡航戦車は暴れたいみたいだ。一発当ててやれ」

「OK」

クルセイダー巡航戦車は、まほのお気に入り戦車である1両のパンターG型に狙いを定める。

「撃てェ!!」

そしてクルセイダー巡航戦車より砲弾が放たれた。



『パンターG型、走行不能』

「よし、まずは一体撃破」

その時だった。


「姉貴!!ティーガーIがこちらを狙ってます!!」

「何!?」

砲塔をクルセイダー巡航戦車に向けるティーガー。だが、あまりの敵数に、さすがのなほも見落としていた。

「スピード上げて避けろ!!」

「はい!!」

そして、クルセイダー巡航戦車は一旦加速することで間一髪その弾を避けることに成功した。
だがしかし、


「ってぇ!!何避けてんだなほォォ!」

クルセイダー巡航戦車の後ろにいたサメチームのMarkIV戦車に命中。そのまま白旗が上がった。

「悪ぃな」

なほは悪意に満ちた声で謝る。

「ふざけんな!!」

「ここで終わり…?」

「…うほーっ!衝撃すげえ」

「カトラス泡吹いてる…アタイじゃ手に負えないよ…」

各々不満を漏らすサメチーム。

「勝報なら持ち帰ってやるから」

「初陣だから仕方ないですよ」

なほに続いて悪意に満ちた憎たらしい声でサメチームを宥める美玲と紀香。

だが、サメチームだけで終わると思われた悲劇はここでは終わらない。






『三式中戦車ゲームオーバーだっちゃ!!』

三式中戦車がフラッグ車であるみほのIV号戦車の盾となり、フラッグ車は護れたものの撃破されてしまった。


「しょーがない!また次回!」

初心者集団の2組が一気にリタイアとなり、10両あった大洗女子の車両は8両となり、残り19両の黒森峰相手に圧倒的不利となってしまった。


『もくもく作戦開始!!』

やむを得ず、みほの指示で煙幕を張ることとなった。残り8両の大洗女子全車両が煙幕を張ったことにより、辺り一面は真っ白い煙に覆われる。

「この煙幕じゃ奴らは無駄弾消耗を恐れて撃ってこないだろう」


なほの読みは当たり、黒森峰がその間実弾を撃ってくることは無かった。その隙に、高台を目前にした大洗女子チームは二手に分かれる。

「ポルシェティーガーをワイヤーで引っ張ってあげて。私らオオカミさんチームは生徒会のヘッツァーと共に第2作戦に備えるから」

辺り一面を覆う煙幕は中々自然に晴れず、その間クルセイダー巡航戦車とヘッツァーは左方にある木の沢山生い茂った茂みに身を潜めて、第2作戦に備えた。


そして、肝心のフラッグ車を含めた本隊は、煙幕を利用して敵の攻撃を制限させつつ、ワイヤーを張り巡らせて全員で引き上げることで、重戦車であるポルシェティーガーが苦手としている高台への移動をサポートしていた。


「んじゃ、私らはタイミングになったら向かうぞ」

『分かりました。では、パラリラ作戦です!!』

みほがそう言うと、ルノーB1bisと八九式中戦車が蛇行運転をしながら煙幕を後方より噴出する。
すると、先程高台前に大量に張り巡らされた煙幕とは別に、山頂部付近にも煙幕が立ち込めた。蛇行運転をしながら噴出したこともあり、煙幕は山頂部付近を満遍なく覆い尽くした。


一方、先程までの黒森峰の動向を思い出していたなほはと言うと、

「……いつもの西住流なら、煙幕ぐらいものともせずに突っ込むのに…。さっきのアルデンヌだってそうだ。今回の試合、黒森峰はやけに慎重かつ大胆だな…」



黒森峰が西住流戦車道の流儀の元、今回の試合に臨んでいるのは明確だが、今回はそれに加えて独自の大洗女子対策が入っていることに気づいた。

「まさかね」

そんな時であった。



『パラリラ作戦って何よー、なほさんみたいじゃない!』

「今時のバイク乗りはそんな下品なことしねえわ」

そんな軽い雑談の中で、なほは察していた。

「まっ、島田流がバックにいる私潰しのため他ならないか…」

西住流らしい戦法を取りつつ、慎重に挑むことでなほに挑もうということなのだ。


「素の西住流じゃみほ姉と私のいる大洗女子には適わないことを察したか。いいぜ、尚更潰しがいがあるってもんよ…!!」

それは即ち、この試合が一筋縄ではいかないことを示していた。







「さあ、時が来たら私の戦車道を見せてやる」

来たるべき次の作戦に向けて、自身を奮い立たせるなほ。



番長三女の戦車道は、ここにおいてある程度の確立を見せたのだった。




ちなみにカットしてるけどなほは他の戦車道チームの隊長格とは大体知り合いだったりしますし、挨拶もしてます。
流石に話数跨ぎすぎなのでそろそろ試合しないといけない故にカットしました。

ちなみにサメさんチームを残すやり方も考えていましたが、こっちにしました。ごめんなさい笑




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29話 ウルフプレイヤーなほ

毎度毎度高評価や感想くださる人ありがとうございます。


「おー、やってるやってる」

煙幕を利用して黒森峰戦車群の左方にある茂みに上手いことその巨体を隠した生徒会のヘッツァーとなほたちクルセイダー巡航戦車。

「こちら側と本隊のいる山頂部から挟み込んで大量撃破を狙うぞ」

既に山頂部付近を抑え、更には全部隊が定位置に配置完了した大洗女子と、まだ左方の分隊に気づいてすらいない黒森峰。
この結末はどうなるのか、答えは決まっていた。


『全車、撃ち方よーい!!』


黒森峰戦車群は、全車両が砲塔を前に向けた。みほたちフラッグ車のいる本隊へとその砲塔を傾ける。

「しっかし、なほ姉貴もよく考えましたね」

「まさかフラッグ車すら()に使っちゃうなんてな…」

そう、この作戦を立案したのはなほだ。
西住流を知り尽くしているみほだが、なほは西住流が今試合で間違いなく超絶的な焦りを見せていることを知っていた。その焦りは、フラッグ車に意識を向けがちになって周囲の警戒を疎かにする。


「さぁ、今回は私は撃たん。生徒会には第2の囮作戦の礎となってもらうからな」

『撃てェ!!』

みほの号令と共に、何故か黒森峰戦車群からも弾が発射される。ヘッツァーもクルセイダー巡航戦車も、大洗女子本隊も、黒森峰戦車群も、全ての戦車が射程範囲内にいる。
そんな中、生徒会のヘッツァーが、前方に全ての注意を向けた黒森峰戦車群のIII号戦車J型を貫く。


「何ィ!?」

左方よりの砲撃に黒森峰戦車群は一時の混乱を見せる。

「今だ!!本隊、撃てェ!!」

そして混乱した隙に、みほたち本隊からも黒森峰戦車群に砲弾が飛び、そのうち数発が黒森峰戦車を仕留めた。


『黒森峰女学園、残り15両』




「さて、ヘッツァーはそろそろ離脱だ」

ようやく黒森峰が左方の敵に気づいたところで、生徒会のヘッツァーは離脱を図る。
しかし、これも作戦のうち。



「ヘッツァーが逃げるぞ!! パンターG型追え!!」

なほの狙い通り、ヘッツァーの追尾のために黒森峰戦車群は分断される。


「みほ、戦力分断も済んだし敵戦力を何体か削いだ。そろそろ離脱した方がいい。おちょくり作戦行くぞ!」



ヘッツァー追尾に3両が向かい、この場にいない5両を除けば黒森峰の戦車はこの場にいるだけで7両。


『おちょくり作戦、開始!!』

大洗女子本隊は、砲撃を続けつつも段々後退していく。



「逃げるぞ!追え!」

黒森峰戦車群も、そんな大洗女子本隊を逃がす筈なく、8両全両で本隊を追い始めた。




「やっぱり煙幕を利用してクルセイダー巡航戦車が本隊から離脱したことに奴らは気づいてない…。行くぞ!!」

なほが動いた。


「おい!まだクルセイダーがいた!」

黒森峰もなほに気づいたが時既に遅し。


「あー!こっち撃破されました!」

「なんでちょこまかと…」

「英国戦車相手に何してんのよ!」

「ロンメル将軍でなきゃ無理ですよ!!」

なほはクルセイダー巡航戦車のスピードで黒森峰戦車群の周囲を駆け抜け、暴れるだけ暴れ回った。戦車群の隙間に入ったりスピードで駆け回ることによって黒森峰戦車同士の潰し合いも起こるようにと、背後に回ったり隣に回ったりとにかく暴れるだけ暴れ回った。

その傍らで、大洗女子本隊は密かに戦線離脱に成功していた。
一方で黒森峰は、フラッグ車を含めてこの場にいた7両のうち、3両が既にクルセイダー巡航戦車によって撃破されていた。


「ほいっと」

クルセイダー巡航戦車の砲弾が、ついでにとまほの乗るフラッグ車のティーガーIに命中するも、カァンという音と共に重戦車の堅い装甲に阻まれた。

「やっぱりティーガーの装甲は近距離でも無理か…」

「こんの…ちょこまかと…」

「おっと、避けろ避けろ!」

クルセイダーが瞬間離脱すると、ティーガーIIの撃った弾が誤ってクルセイダーの向こうにいたフラッグ車のティーガーIに命中。

「わー!隊長ごめんなさーい!」

その時、隊長の西住まほは何も喋らなかった。爆風に髪を揺らしながら、ただクルセイダー巡航戦車に対して、何も出来ずにその場で立ち往生し、悲しみの表情を浮かべていたのだ。

しかも、ここで黒森峰には泣きっ面に蜂とも言えるアクシデントが発生する。


「足回り壊れました!!」

「何やってんの!」

なほを捉えようと躍起になっていたティーガーII2両が、重戦車の弱点である足回りを突かれて、履帯が破損した。

「チャーンス!」

このティーガーIIが動けない隙に、厚すぎるが故にクルセイダー巡航戦車では抜けない装甲を持つティーガー3両とヤークトティーガーはガン無視し、ギリギリ装甲を抜けるであろう残り1両のエレファントに狙いを定める。


「くっそォ!」

「背後ガラ空きだよー」

そうして上手く機動力を活かして背後に回り込んだクルセイダー巡航戦車より放たれた砲弾によって、エレファントは弱点を射抜かれて白旗を上げた。


「よし、りだーつ!」

そうして敵戦車を蹴散らしたクルセイダー巡航戦車は、鈍足なティーガーからあっという間に距離を置いて撤退していった。



しかし一方では、大洗女子にも敗報が飛び込んでくる。



『ヘッツァーやられちゃった…。なほちゃん今日だけで5両やってるし上出来だねぇ。敵は残り11両。頑張って〜!』

長い間囮作戦に従事していた生徒会チームのヘッツァーが、3両の戦車相手に撃破されてしまった。
生徒会長の申し訳なさそうでありつつも気の抜けた声が通信機より響く。


「了解。そしてこれからオオカミさんチームも本隊に合流する」


_____________________



なほの去った後、履帯を修復中のティーガー3両…


「…しばらくかかるわね」

「隊長、直したらすぐ追いましょう!」

しかし、隊長のまほは返事をしなかった。



「…まさに狼のごとき疾風、そして攻撃力。なんだあのクルセイダー巡航戦車は…」

西住流に囚われなくなったなほが、あっという間に黒森峰戦車群を壊滅させている光景は、長年戦車から距離を置いていたなほを知っているまほからしてみれば衝撃そのものなのだろう。



「なほ、みほ、妹たちは私を……」

まほは、西住流に生きすぎた結果、西住流を捨てた妹を目の前にしたことでまともな判断力を失っていた。



Twitterです。→@F_bunvanish
今後についてよくツイートしてます。

次回投稿はちょっと間隔空けるかも?


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30話 この戦いに終止符を

いよいよ物語も中盤ってところです。
今後、キャラクターのアンチヘイトが酷くなるかも…



若干のトラブルはあったものの何とか川を超えた大洗女子本隊と、なほのクルセイダー巡航戦車はオンボロの橋の前で合流した。

『これから街にいきます!グロリアーナ戦で出来なかった街中戦の屈辱を、ここで晴らしましょう!』

各々から「おーっ!」と声が上がり、みほを先頭に最後尾をクルセイダー巡航戦車にして、目の前の古びた橋を超える大洗女子チーム。



「よっしゃ!私に任せろぉ!」

美玲がレバーを前に倒す。すると、クルセイダー巡航戦車が前後左右に揺れ、その衝撃で橋を壊しながら前に進んでいく。


「えっ…」

その様子を見届けたみほは唖然としていた。



「何っ!?」

クルセイダー巡航戦車が橋を壊したことは、一方で偵察に来ていた敵戦車にも目撃され、その報告を受けた黒森峰は街中決戦を見据える姿勢を見せた。

散々なほにボロボロにされた黒森峰戦車群だったが、街中にはまだ大洗女子の知らない黒森峰の秘密兵器があった。


_____________________


「着いた!」

森を抜け、ようやく大洗女子は廃団地集落のような場所に到着した。

『皆さん油断はしないでください!敵戦車はまだ11両残ってます!』

みほの声で大洗女子は気を引き締める。
既に生徒会のヘッツァーがやられ、大洗女子の車両は残り7両。そのうち八九式中戦車やルノーB1bisに至っては敵の装甲を抜くことは不可能であり、実質5両での戦闘となる。




「しかし、敵の気配ないな…」



なほがそういった矢先、ゴゴゴゴゴと鈍重な音が周囲に響き渡った。

「…まさか、黒森峰はアレを?」

なほの予感は当たった。








「なんだあれは?」

「何よあれ、大きすぎて通れてないじゃないの!」

「デカい…」

各々がその巨大な砲塔と図体に圧倒される。



"超重戦車マウス"が、その姿を大洗女子の前に現した。




「どうする?」

「どうするって撃つしかない!」

「喰らえ!」

「バカ!無闇に撃つな!」

超重戦車を前にした大洗女子軍団は、焦りからか初心者のようにただ弾を撃ちまくるといった無謀な行動に出た。勿論弾は全てその強固な装甲に阻まれる。

そして、大洗女子の弾がマウスに効いてないながらも当たるということは、当然マウスからの弾も大洗女子に当たる。



「ひゃはー!お前らの攻撃でマウスがやられると思うかー!ぐへぇ!」

一方で、マウスの後ろに隠れていた戦車は、大洗女子のIII号突撃砲によって撃破。何しに来たんだお前はと大洗女子総員を呆れさせた。
しかし、やられたのは背後の戦車だけではない。


『八九式!!撃破されました!』

マウスの砲弾が八九式中戦車を直撃。

『あとは頑張って!』

想いを託された残りの大洗女子軍団は、八九式の犠牲を無駄にしないようにハッと行動を改めた。

「仕方ありません。一旦離脱しましょう!」

超重戦車の機動力や装填の遅さを考慮した上で、大洗女子は即座にこの場からの離脱を計った。


__________________



「せーのっ!」

M3リーがヤークトティーガーの背後に回り込んで、薬莢を捨てる弱点部分を砲撃し、旧式の壁を跳ね除けて撃破した。

「喰らえーっ!」

他にも街中戦を利用した奇想天外な戦法を用いた大洗女子は、各地でマウスを避けつつ戦果を挙げていた。
大柄な黒森峰戦車は、砲塔を狭い街中の路地では回すことができないため、機動力のある大洗女子戦車が背後にさえ回り込んでしまえば、勝負はあったようなものだった。

最初は10対20と圧倒的不利を強いられていたこの戦いも、気づけば互いに多くの戦車を消耗し、先程
M3リーがヤークトティーガーを撃破したことによって、その差は6対9と2:3まで縮まっていた。

元々この勝負はフラッグ戦。フラッグ車さえどうにかしてしまえばいいわけで、機動力のある大洗女子がマウスに追いつかれる筈もなく、マウスは簡単にスルー出来てしまう状況だった。

「撃てェーっ!」

なほのクルセイダー巡航戦車おちょくり作戦も功を奏し、マウスを無視した大洗女子は、各地で確実に戦果を挙げていた。


「………なほ」
「…………なほ」

その様子を、次女のみほはとても頼もしく思い、長女のまほはただ飛び込んでくる敗報を絶望しながら聞いていることしか出来なかった。



そんな中、なほの乗るクルセイダー巡航戦車はある場所で待機していた。

「…姉貴、いつ出ますか?」

「まあしばらくここで待て」

なほと紀香は戦車から降りて高台から、マウスがクルセイダー巡航戦車となほと紀香に気付かずにゆっくりと通り過ぎていく様子を眺めていた。

「1人戦車内に残してきた美玲が可哀想ですよ」

「まあ待てって、今出たら、マウスやその護衛にあたってるヤークトパンターが反射的に撃った弾がクルセイダー巡航戦車に命中する可能性がある。マウスは防御硬いから無敵でやられないと確信してるんだろうな。だから護衛は1両しかいねえ。だから、クルセイダー巡航戦車の機動力で不意を突いて2体とも仕留めるぞ」

「了解です」

「よし、通り過ぎた今だ!戻るぞ!」

なほたちはすぐさま後ろに待機させていたクルセイダー巡航戦車内に戻った。



「行くぜ!」

そうして、クルセイダー巡航戦車はそのスピードを活かして高台の向こうから颯爽と登場する。


「クルセイダーが来た!」

通り過ぎた高台から突如現れたクルセイダー巡航戦車に驚くヤークトパンターとマウスの乗組員。

「遅い」

クルセイダー巡航戦車はヤークトパンターの背後を即座に狙い撃ちし、あっという間に走行不能に追い込んだ。


「こんのォ!」

マウスも車体や砲塔を回して背後のクルセイダー巡航戦車に反撃しようとするが、


「遅い」

超重戦車では動きが遅く、クルセイダー巡航戦車の快速には追いつくことが出来なかった。


「マウスにも弱点はあるんだよ…」

そうなほが呟き、クルセイダー巡航戦車の砲塔が向けたのは、後ろに外付けされたガソリンタンクである。



「くっそォ!動けェ!」

マウス乗組員が焦りからか自暴自棄になる中、クルセイダーはその弱点を見逃さなかった。










「後ろからの攻撃には脆弱だな…」

マウスより、白旗が上がった。


_____________________


「残った戦車はこれだけか…」

大洗女子サイドの残り戦車は、いつの間にかポルシェティーガー、クルセイダー巡航戦車、そしてフラッグ車のIV号戦車のみとなってしまった。

『ウサギチーム相討ちになっちゃいました!』

『III突は出くわしたマウスにやられた』

『カモチームは一方的にやられちゃった…』

しかし、黒森峰に残った戦車も、気づけば残り3両だった。

「相手はティーガーII2両とフラッグ車のティーガーが1両…」



そして、みほたちが最終決戦に選んだ場所は…


「廃学校…」

「敵さんもお出ましみたいだね」

そうしてなほたち3チームのいる廃校内にゾロゾロと入ってくる黒森峰戦車群。


『西住流に……逃げるという道はない!ここで…勝負を、付ける』

まほの纏った重苦しい一言に、黒森峰、大洗女子の全員が無言で頷いた。





「ポルシェティーガーが盾となって、IV号戦車とクルセイダー巡航戦車で1体ずつ仕留める」

『『はい!』』

なほの提案に、全員が乗った。




この時、なほは感じていた。『自分はこの時のために戦車に乗ったのかもしれない』と。

幼少期の自分から全てを奪った哀しみの流派、それが西住流。
勝利のためならチームメイトが事故死しようが関係ないといった横暴さ。その悪夢の如き日々を繰り返した流派を、みほと共にこの場でズタボロにするのが……なほが、戦車に乗る理由だった。



『ティーガーII2両、ポルシェティーガー、走行不能』

「残るはフラッグ車だけだ!みほ姉、やるぞ!」

「うん!」


そして、なほやみほは自分だけの道を歩んだ。
西住流に囚われず、皆で勝つのがみほ流。そしてなほは…
























敵の戦車を知り、フィールドを活かし、忍者の如き動きや戦法で敵を殲滅する。それがなほ流だった。




「装填スピード舐めんな!どんどん撃つから囲え!」


今日、黒森峰を徹底的に潰すため、対重戦車戦闘の作戦を姉のみほと共に立案したなほは、クルセイダー巡航戦車を必死に動かした。




「挟み撃ちだ!」

「ティーガーの逃げた先に…」

「みほ、後ろから撃てェ!」



ティーガー、クルセイダー巡航戦車、IV号戦車、全ての砲塔から最後の砲弾が放たれた。











『ティーガー、クルセイダー巡航戦車、走行不能! 大洗女子学園の勝利!』

その瞬間、大洗女子の観客席はこれ以上ないぐらい沸き立った。








一方で、黒森峰のティーガーとティーガーIIの3両は、

「………………」

「隊長…」

「………お前達はよく頑張った。悔いることは無い…」

白旗を見たまほは、絶望に染まったような顔で俯いた。

「………………隊長、もっと私たちをいつものように叱ってください!今日ずっと覇気がなかったですし、こんなの出来レースみたいじゃないですか!」

「……………………………すまない」

そうとだけ言い残すと、まほは戦車を降りて何処かへスタスタと歩いて行ってしまった。

「隊長ォ!!」

元気の無い後ろ姿を見せつけられた副隊長のエリカは、その場で今まで出したこともないような大声で叫んだ。


そして、まほが2度とこの場に戻ってくることは無かった。



_____________________


「ふむ、彼女たちが大洗女子…」

試合の様子を眺めるひとりの女性がいた。

「彼女たちから教えを乞うアルか…」

その制服は少し色が赤く派手で洒落てはいるものの、何処かボロさの見える中途半端なものだった。


「試合面白かったか?隊長、もう行くヨー!」

「那覇は遠いから早く帰りますぜー」

「あー、今行くアル」

そこにはヴィッカース6トン戦車と、その戦車に刻まれた『国』の文字があった。



最近相撲が揉めましたが、あれこそ西住流のそのものだと思います。人命より土俵に女性が上がってはいけないという伝統からの差別発言。
ガルパンの世界にTwitterがあったらどうなっていたことか笑


最後に出てきたキャラは前々から言ってた例のあの子たちです。


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国共広山蒙学園編 31話 目指します!国共広山蒙学園!

脚本さんと一緒に今からアトモス最終章見てきます。
今回よりいよいよオリジナル学校編に突入します。

そういえばルーマニアをモチーフにした学校には伯爵高校ってのが公式にあるらしいですね。トゥラーンとか所持していたのかな…。

紅のSJラビラビさん、高評価ありがとうございます。


長い航海を終え、大洗女子学園艦はある場所へとやって来ていた。

「もうすぐ到着だって〜」

「OK、全員そろそろ準備しろ」

「はーい」

みほから受け取った報告を元に、サメチームとオオカミチームに指示を出すなほ。それに答える一同。尚、高校生戦車道全国大会の後に行われたサメチームvsオオカミチームの対決。その中で、戦車道でもガチバトルでも敗北したサメチームは、晴れてなほの傘下に入った。
といっても、未だに実質ライバル関係に近いが…。

「しかし暑い…」

「まあ、場所が場所だから…」

ムンムンとくる湿気と暑さは、初夏の訪れと共に学園艦が南下していることを示していた。学園艦のデッキからは、目的地が見渡せる。

ちなみに決勝戦の日以降、なほとみほは共に行動することが増えた。西住流に対し、戦車道において引導を言い渡したなほとみほは、過去抱いてきた因縁の払拭に成功し、心のどこかで引っかかっていたことが無くなった故に、ストレスもなく幸せに過ごしていた。


「なほ、いよいよだね!」

「あぁ!」



なほは目的地の港を見据えて叫んだ。


「来たぜ、沖縄!」

なほも初めて足を踏み入れる未開の地、沖縄に大洗女子学園は学園艦ごとやって来ていた。

「けど今回は遊び目的じゃないんだよね…」

「まあな…、それは………」

なほたち大洗女子が、わざわざ学園艦ごと沖縄までやって来ているのには、それなりの理由があった。

それについては、あの戦車道の日の決勝戦の後にまで遡る。


__________________


みほが大洗女子学園の戦車道大会優勝を祝したトロフィーを受け取り、今大会のMVP選手が西住なほと決まってその名誉勲章を受け取った後、2人は応援に来ていたある人物のところを訪ねた。

「MVP選手おめでとう、なほさん」

「優勝おめでとう、みほ…」

「千代さん、応援ありがとうございます」

「愛里寿ちゃんも応援ありがとう!」

試合後、なほとみほは応援に来ていた島田流師範の千代とその娘である愛里寿の元を訪れていた。

「貴女達ならできると思ってたわ」

「みほとなほの戦車裁き凄かった。今度は私と戦ってほしい…」

「ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます」

なほとみほは千代にペコリとお礼をした。勿論、愛里寿にもありがとうとウインクしながら答えるなほ。

「千代さんがバックに付いてくれたおかげで、西住流勢力からの妨害を考慮した上で動く手間が省けました。まあ、奴らには妨害する気力もなかったみたいですが…」

「えぇ、思ったより西住流は虫の息だったみたい…。それに、なほさんが戦車に乗る理由も分かった気がするから今回は上出来よ」

自分が戦車に乗る理由?と首を傾げるなほ。
そう、なほが戦車に乗る理由は、この時点である程度確立していた。しかし、なほはそのことにまだ気づいていなかった。

「それは…きっといつか見つかる筈」

「…そう、なんですかね」

更に首を傾げるなほに対し、千代はふふふと顔を隠して上品に微笑んだ。


「それよりも、この前お話した例の学校の件、大会も終わったことですしお願いできるかしら?」

例の学校の件、なほはその事をハッキリと覚えていた。

「あの時に言われた那覇にある学園艦のことですね」

「そうよ、梅雨入ったりすると次々と出てくる台風で帰宅困難になることもあるかもしれないから、早いところ向かってくれないかしら?」

「はい、学園艦に話さえ通しておけば即座に向かえます」

「頼んだわよ」


_____________________


そういった経緯があって、なほたち大洗女子学園は那覇に向かっていた。

「しっかしなぁ…。今よくよく考えてみれば、幾らなんでも荒れに荒れまくってる学校1校丸ごと改革しろってのは無理な話だよなぁ…」

「いつもみたいにぶっ飛ばして傘下にしないの?」

みほが言った提案だが、なほは首を横に振る。

「プライベートならいくらでもぶっ飛ばすけど、今回は戦車道がかかってる以上はこちらから攻撃して優勝校の名を折りたくないんだよ…」

「うーん、なるほど…」

それならば仕方ないと俯くみほ。なほも、余程のことがない限りは手を出さない。ただ、ブチギレる時は本当に手が付けられないぐらいブチギレる。特にみほのことが関わると、もうみほ以外に止められる人がいなくなる。
現に廃校のことを黙り続けて戦車道を利用した生徒会には少々ブチギレた程度だったものの、みほに強引に戦車道を取らせようとした時の生徒会やみほを罵倒するような発言をしたエリカに対しては、これ以上ないぐらいにブチギレて、圧倒的な力でねじ伏せた。

ちなみに、過去になほは大洗のヨハネスブルグに足を踏み入れた瞬間に周囲の不良生徒に絡まれ、その場で力の半分も出さずに制圧し、そんな武勇伝の噂を嗅ぎつけて挑んで来たヨハネスブルグの不良連中を次々と薙ぎ倒したことが切欠で、大洗女子にいる不良を殆ど傘下にして大洗女子学園の頂をとり、更にはそんな大洗女子での武勇伝を嗅ぎつけた全国の不良たちの間でも噂になったが故に沢山の不良グループに喧嘩を売られ、その喧嘩を買ってぶっ飛ばしては傘下にするというやり方をずっと取り続けた結果、日本中に傘下を持つ巨大なグループになった。
けど、言ってしまえばなほからわざわざ因縁をつけて喧嘩に発展したことは殆どと言っていいほど無かった。

尤も、なほが戦車道をする理由も、実はここに答えのヒントが隠されているのだが。


「相手方の学園艦も見えてきたな…」

そうこうしている間に、大洗女子学園艦は、那覇港に停泊している国共広山蒙学園の学園艦が肉眼で見える距離まで接近していた。


「…なんだか大洗女子より荒れ果ててる感じの学園艦だな」

肉眼で捉えた国共広山蒙学園艦は、船体の各所各所に目視可能な傷がついており、よくこんなので学園艦が成り立つなと思えるほどの荒れ果てっぷりだった。


「なほ殿、なほ殿」

そんな中、みほと2人過ごしていたなほに近づいてくる優花里。

「どうしたんだ?」

「国共広山蒙学園について一通り調べてみましたので、こちらをどうぞ」

優花里はそう言いながらみほとなほにデータレポートを手渡した。


「国共広山蒙は、中国の影響を強く受けた学校です。在校生徒数は全学園艦の中で1番多いらしいですよ。学園艦のモデルにしたのはワリャーグ(遼寧)で、学園艦そのものはオンボロなんですが、中は意外にオシャレで観光スポットになってるらしいです。ただ、艦内にはアンツィオの建物を真似たものとしか思えないような建造物や、サンダースに存在する店と名前も姿も似ている胡散臭い店がちょこちょこあるとか」




なほは察した。









"明らかに地雷原塗れのヤバい学校"であると。






「しかし観光スポットや人通りの多いところ以外は本当に危なっかしくて手が付けられません。その辺は今回我々が調査して改革しなくてはいけませんね!」

「そうか…、ありがとう優花里」

「どういたしまして!優勝してから大忙しでこちらも嬉しいです!今回の島田流師範さんからの任務、成功させましょう!」

「おう!」



_____________________



「さて、着いたのはいいけど…」

なほは大洗女子学園艦から降りて沖縄本土へと上陸。みほはなほに手を引かれて一緒に学園艦を降りたのだが、そこにはありえない光景が広がっていた。












「なんで船着場の目の前で国共広山蒙の生徒っぽいのが殴り合いの喧嘩してんだよ…」

"蒙"と書かれた旗を背負った数百人のグループと、"山"と書かれた旗を背負った同じく数百人ぐらいのグループが、目の前で殴り合いの喧嘩をしていた。


「はぁ…」

「まずはこれから止めないとだね…」

先が思いやられるなほであった。



国共広山蒙学園登場!次回も奴らのヤバさっぷりをどうぞご覧下さい。


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32話 早速なほが折れました!

全国最強!不良率120%!国共広山蒙学園!
というキャッチコピーが存在するとか…




「私こんなヤバいところ見たことないんだけど…ねえ〜」

国共広山蒙との交流開始の夜。なほは既に大洗女子の学園艦の自宅にて、異常なまでの疲れからかベッドに倒れ伏していた。
その状態で、あるところに電話をかけていた。

『そんなこと言われても私は知りませんわ〜?』

「そんなこと言わずにさぁ、同じ甘味愛好家の仲じゃんマリー様〜」

なほが電話をかけていた相手は、国共広山蒙と同じく校内間でエスカレーター組と受験勉強組の派閥同士の争いがよく横行しているBC自由学園。そのBC自由学園戦車道隊長のマリーだった。
なほとマリーは、同じ甘味愛好家としてそれなりの関係を持っていた。なほの岡山のグループ討伐遠征の際に初めて会った。

『そんな初日でへばっていてはBC自由学園では暮らしていけないわ〜』

「…多分BC自由学園のレベルは軽く超えてるぞ」

『へぇー、どんなことがありましてー?』

「実はだな…」

なほは語り始める。お嬢様同士の二大派閥争いどころではなく、大きく五大派閥が存在していて尚且つ争いのレベルがBC自由学園の比ではない本当の争いというものを。


_____________________


それは交流初日、学園艦を降りて港で競り合う山派と蒙派の数百人規模の乱闘を目の前にしたなほ。

「なにこれ…」

なほは数百人規模の乱闘は初見なため、その場で固まっていた。

「我ら蒙派が正式に大洗女子を歓迎する!山派のような荒っぽい雑連中なんかに任せてられるか!」

「あぁ!?知波単信者の蒙派なんか吶喊脳のアホばっかじゃねえかテメェらなんか盛大にズッコケんだよ!」

「るせぇ!サンダース信者の山派なんか能天気の頭クルクルパー連中じゃねえか任せられっか死ね!」

そして戦いは山派vs蒙派の全面戦争状態へ。もうここまで来ると、大洗女子総員がドン引きしているのもお構い無しになっていた。

「まるで平成の関ヶ原の戦いだ」

「長篠の戦いみたいだな」

「奉天会戦か?」

「いや、函館の五稜郭戦争ぜよ」

「「「それだ!!!」」」

それだ!じゃねえよと内心思いつつも、とにかく喧嘩を止めないといけないと仲裁に入ろうとするなほ。


「お前ら!いい加減にするアル!」

「!?」

国共広山蒙学園艦より1人の女性が歩いてくる。

「クソが!国派のヤツらが来やがった!」

「やむを得ん…」

「リーの奴!調子に乗りやがって!」

「とはいえ奴らが1番デカい勢力だからな…」

「国派だって充分ヤバい集団の癖に…」

「蒙派以外滅びればいい」

殺す気満々の殴り合いをしていた手を、悪態をつきながら渋々と止める山派と蒙派の2つの勢力。

「………変なところ見せたアル」

場を一喝してなんとか争いを止めた1人の女性。その女性は、中性的な顔立ちをしており、語尾やら色々と1番日本人の考えたエセ中国人みたいな容姿やら出で立ちをしていた。
ようやくまともな奴が出てきたと内心ホッとするなほ。それと同時に、喧嘩をしていた連中は全員国共広山蒙の生徒であることを確信せざるを得なかった。

「さて、ようこそ国共広山蒙へ!待ってたネ!大洗女子学園の皆サン!私が国共広山蒙学園戦車道の隊長のリーアルヨ!好きに呼んでくれて構わないアル!」

降りてきたなほたち大洗女子戦車道部を歓迎するリー。リーは勢いのなくなった蒙派と山派連中の間を掻き分けて、なほたちの前に姿を現した。

「2週間の短い間ですがその間よろしくお願いしますアル」

みほも大洗女子戦車道の隊長として、リー隊長の元へとゆっくり歩いていく。

「こちらこそよろしくお願いします!」

握手を交わす大洗女子のリーダーのみほと、国共広山蒙のリーダーのリー。なほは胡散臭さを感じつつも、悪態付きながら帰っていく山派と蒙派連中と、まだマトモそうな国派リーダーと握手を交わすみほの様子をホッとしながら眺めていた。

「次に…」

リーは学園艦を降りてきたなほの元までスタスタと歩いて行き、












「なほ選手、貴女のファンです!サインくださいっ!」

これまたエセ中国人というアイデンティティを捨ててまで、丁重な日本語でなほにサインを求めた。
そこには、純粋に戦車道の選手を愛する1人のファンとしての姿勢があった。





















「国共広山蒙学園は観光スポットとしてとても有名ネ!」

なほのサインを手に、ウキウキ気分で大洗女子に学園艦内を紹介するリー。そんなリーと数人の仲間らしき人の後ろを付いていく大洗女子戦車道履修者。大洗女子戦車道履修者の中には、憧れの観光スポットである国共広山蒙学園艦に興味津々だった者達がいた。

「ここが国共広山蒙…」

「うほーっ!」

「1度船で訪れようかと思ってた」

「凄い…」

「アタイらだけで楽しむには勿体無いねぇ…。常連さん連れてきたかったなぁ…」

中でも、普段バーどん底にいるサメチーム全員が目を輝かせていたことがなほにとっては目を疑う光景ではあったらしいが。

「ここはディスティーランド!夢の国と呼ばれている学園艦のレジャー施設ネ!引きこもりネズミのヒッキー○ウスと言われる可愛いキャラが…」

色々とこの小説が消されかねない要素てんこ盛りの胡散臭い施設が存在し、なほは冷や汗を流す。

「ナンデ…ボコヨリニンキアンノ」

何処ぞの夢の国のネズミとボコられグマのボコを足して2で割ったような胡散臭さMAXなキャラクターとレジャー施設を目にしたみほに至っては、普段から愛好している元ネタのボコよりヒッキーマウ○の方が妙な人気があることに、なほでも出したことないような殺気をムンムンと醸し出していた。

これ以上この施設に深く詳しく触れるのは絶対やめようと心に誓うなほであった。





そして様々な箇所を周り、最後にやってきたのは…。

「さて、最後に紹介するのは私たちの学園、国共広山蒙の校舎アル…。ただ、入るにあたってそれなりに覚悟して欲しいネ…」

大洗女子戦車道履修者はなほを含め全員息を飲んだ。既にアウトな施設や大喧嘩の現場を見ていたのだ。とっくのとうに覚悟は出来ている。
そのはずだったのだが…











国共広山蒙、校舎内の食堂にて。焼きそばパンを目の前にした国共広山蒙の"共"と書かれた旗を背負った派閥と、"広"と書かれた旗を背負った2つの派閥が揉めていた。

「オイオイ、広派みたいな田舎が何言ってんだ!?馬鹿じゃねえの?」

「は?共派に言われたくない。皆平等掲げて全員平等に貧乏になってるプラウダ信者さんは困りますねぇ!」

「プラウダ様最高だろ?広派なんぞ南国のクルクルパー頭じゃないのか?」

「るせぇ!プラウダは心も体もあちこち寒いんだよ!それよりマジノ女学院のエクレール様を見たか?あの美貌やら何もかも最高だろう?」

「お前ら使ってんのイタリアのCV33じゃねえか!ヘタリア使ってる癖にフランスのマジノ女学院語るな!」

「この学校金ないから仕方ねえだろ!お前ら共派が賄賂してんじゃねえのか?T26なんぞ無理して買ってんじゃねえよ!」

「CV33は弱すぎるんだよ!そんなん使うぐらいならちゃんとしたT26使うわ!」

「それにBC自由学園だって…」



「見苦しいものをお見せしてるネ…」

やれやれと呆れるリー隊長。

「ちょっと止めてくるアル」

リー隊長が喧嘩の仲裁に向かった。




「お前ら辞めるアr「うるせえアルアル中死ね!」へ?」

仲裁に入ったリーが喧嘩に巻き込まれてしまった。


「ちょっとおいリー!大丈夫か?」

慌ててなほも加わろうとするが、


「るせぇ!外部はすっこんでろ!」

なほは喧嘩中の生徒の1人から麻婆豆腐を投げつけられた。

「辛い…くさっ……」

辛味が弱点のなほは、麻婆豆腐の匂いによってその場で気を失った。



「な、なほー!」

「姉貴ー!」


「よくもやったアル!」

その後、意識を取り戻したなほが見たものは、




拳で抵抗してその場を制圧したバーどん底のサメチームと紀香と美玲の姿と、










拳から血を流しつつも実質1人でその場を制圧した隊長のリーだった。



__________________


話は戻って現在。

「とまあ、初日から激辛麻婆豆腐を投げつけられるわで最悪だった…」

思い出すだけで溜息が止まらない出来事だったという。

『確かにBC自由よりは酷いわ。でも、私は彼女たちが幾ら争おうとそんなこと気にしてないもの』

「そんなこと…気にしてない?」

その時、なほの中でなるほどと納得がいった。


「ありがとうマリー、解決法が分かったぜ!」

『別に〜、私はいつもそうしてるだけよ〜。しばらくしたら沖縄の甘味をお土産に岡山に来てね!』

「うん、サンキュ!」

そうしてなほは電話を切った。



「さて、この惨状が分かった以上、明日からは徹底的に改革してやらないとな…」

麻婆豆腐の恨みを明日ぶつけると誓うなほだった。



BC自由学園の不仲は絶対演技じゃなくて素だと思います。

あと、ヤバいヤンキーっぽい奴の圧倒的英国戦車使用率。
リーの見た目はヘタリアの中国です。中の人も同じイメージで。
なほは早速中華料理がトラウマに…。

ちなみに現状判明している使用戦車
国派
・ヴィッカース6トン戦車
共派
・T26
広派
・CV33

各派閥から1~2ほど出します。
国共広山蒙には、チ派という平和主義の僧たちのいる少数派閥もありますが、特に荒れてないので出番はありません。チ派の元になったチベットは戦後中華人民共和国に侵略されてなくなるまでは永世中立国だった由縁です。


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33話 待っていたぜ!この時をよォ!

サブタイトルは割と関係ない。




2日目の朝


「なにこれ……」

なほは太陽の光と共に背伸びをして目を覚ました。
南国特有のムンムンとした蒸し暑さを紛らわすために冷房を付けてそのままにしていたことに気づいた矢先、なほはもっと目を疑う光景を目の前にしてしまった。


「すぅ…すぅ……」

「………………………zzz……」

「なんで私の布団に!?」

みほと、国共広山蒙学園戦車道隊長のリーが、何故かなほのベッドの上で一緒に寝ていた。

「おい、起きろ」

なほは軽めのデコピンを飛ばして無理矢理2人を叩き起した。

「うん…?あぁ、なほさん、おはようアル」

「あー、なほ、おはよー?」

平然とおはようと口にする2人に、思わずなほはやれやれと頭を抱えざるを得なかった。

「なんでお前らがここにいるんだよ…。みほなら分かるけどリーまで…」

なほはどうしてこうなったのかを、必死に思い出していた。



_____________________


「麻婆豆腐…まじむり…」

「なほ!気をしっかり!」

「しっかりするアル!辛いものぐらいで気を失わないで欲しいアル!」

「中華料理こわい…」

麻婆豆腐をぶっかけられたなほは、意識を取り戻した後もみほとリーに介抱されていた。

「とりあえず合鍵渡しとくから…リーとみほ…ちょっと学園艦まで着替え持ってきてくれないか?」

「分かった」
「了解アル」

麻婆豆腐によって意識が朦朧とする中で、家の合鍵を2人に渡していた。



_____________________


どうしてみほとリーが中に入ってこれたか、なほは全て思い出した。

「ほら、また麻婆豆腐かけられないか心配で…」

「これは善意アル!」

「やかましいわ!」

一緒に寝たいと素直に言えば考えてやったのに。と思いつつ、リーもファン活動の一環で無断侵入という、不良校出身らしいアホ属性があることを思い知ったなほであった。



_____________________



先程の不法家宅内侵入諸々から気持ちを切り替えたなほは、2日目の国共広山蒙の依頼を受けていた。

「リー、ここから先が国共広山蒙の1番闇の深いエリアって本当か?」

バイクに乗ったなほがリーに通されたのは、国共広山蒙内で1番喧嘩の耐えない危ない場所だという。普通の人もそこを歩いてしまうと、いつ起こるか分からない喧嘩や争いに巻き込まれるという学園艦内きっての無法地帯。
そこには薄暗い路地のようなものが延々と続いており、廃工場やら工事現場跡地のような不良の好みそうな要素がたっぷりと詰まった、見るからに危険地帯であった。

「…本当アル、この前の食堂なんかまだマシな方ネ。護衛なしに1人で突っ込むのはいくらなほさんでも危険アル」

リーは生唾を飲む。日本きっての最強女番長であるなほですら危険だというその危険地帯。それでも、なほは千代より直々に学園艦更生の依頼を受けている以上、ここでひくわけにはいかなかった。


「…仲間を連れてきてる。これなら案ずる必要もない」

「え?」

なほの後には数百人単位の大群がついていた。

「なほ姉貴、連れてきましたよ」

「大洗連合の奴らとバーどん底の奴ら。これなら昨日みたいな麻婆豆腐事件なんてことはない筈…」

紀香と美玲が連れてきたのは、普段大洗のヨハネスブルグ内に暮らしているなほの傘下の不良たちと、最近仲間に加わったサメチームの数百人規模の軍団であった。

「なほ姐さん、行きましょうよ。私らが最初に手さえ出さなきゃ好きなだけ動いていいんすね?」

なほはコクリと頷いた。正当防衛の範囲内での殴る蹴る程度であれば許可するということだ。


「何かと大洗連合に徴収かけたのはこれが初めてだな。今回行くのは国共広山蒙内の最も危険な場所。"学園の天安門事変"と呼ばれる場所だ。お前ら、気引き締めて行くぞオラァ!!」

おぉー!と声を上げる大洗連合一同。彼女たちはバイクで先頭に立つなほに続いていくのであった。
















_______________________


「…マジで?」

なほは思わず目を疑った。








「オラオラァ!」

「まだまだァ!」


2つの戦車がその場でずっと撃ち合いをしていた。


「満派の九十七式如きに負けられねんだよ!」

「目の前にいても当てられない新派のIS-2には困るねぇ。プラウダ信者は共派といい馬鹿しかいないんじゃないの?」

「マジで殺すぞ」

「至近距離で当てられるようになってから殺すとか言うんだな!」

車体に新派と書かれたIS-2戦車と、それと同じく車体に満派と書かれた九十七式中戦車が、その場で撃ち合いを続けていた。



「確かにソ連戦車は扱いにくいが、弾当てられないんじゃその威力も意味無いがな…。ってかリーが言ってた1番危険ってこういうことかよ…」

呆れるなほだが、これは彼女たちにとっては戦争であった。
国共広山蒙学園における戦車道とは、即ちスポーツではなく、学園艦内でのカーストまで決めかねない、戦争に等しいものだった。

「姐さん、こんなこともあろうかとクルセイダーの準備は出来てますぜ」

大洗連合のメンバーの1人が、戦車には戦車をとクルセイダーをなほに薦める。

「いや、大丈夫だ」

なほは首を横に振った。そして、懐からあるものを取り出した。


「1回戦で使用禁止になっちゃったから余ってたんだよねー」

ヒュポッとなほは栓を抜いた。

「姉貴、それって…」

美玲がなほに訊く間もなく、ポイッとそれはIS-2の方に投げられた。








「あだーっ!」

「ほれもう1発」

更になほの手からそれは投げられる。今度は利き手じゃない方からも九十七式戦車に向かってそれは投げつけられた。



「こんの…!」

「野郎ぶっ殺してやらぁ!」


完全に注意がなほの方に向いたところで、なほはもう2発ほどIS-2と九十七式戦車のそれぞれ装甲の薄い弱点に向かって例のものを投げつけた。






「姉貴、手榴弾まだ持ってたんですね」

「サンダース大附属戦でしか使えなかったから余っててさぁ…」

2回戦以降使用禁止になったため、ストックがあった自作の手榴弾だった。ちなみになほは制作するための資格持ちである。
火薬は徹甲弾からくすねたとのこと。

そして九十七式戦車とIS-2からは白旗が上がっており、どちらも戦闘不能であった。


「部外者の癖によォ!やっちまえ!」

「新派は強いからな!」

戦車のキューポラから出てきた集団に加えて、どこかに潜んでいた各派閥のメンバーと思わしき連中がそれぞれ数百人規模ほど出てきた。

「おっ?やんのか?大洗連合!総員出番だ!やるぞ!」

そしてまた『おぉー!』という掛け声と共に満派新派連合と大洗連合の争いが始まった。



そして大洗連合の指揮を取っているなほは、薄々とこの学園艦の現状に気づきつつあった。



「国派が実質のリーダーで、その他各派閥は戦車対決でカースト決めをしていると…」

それが本当ならばと、各派閥との関わり方など今後についてある程度方針が定まったなほであった。




活動報告にてアンケートをとっております。優しい人お願いします。

満派→満州国
新派→ウイグル


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34話 改革です!

この度、初めてなほの一人称で物語を進めます。


_____________________


sideなほ


「ふぅー、とりあえずこんなところか…」


私は思い切り背伸びをした。時刻は22時、国共広山蒙の連中と絡み始めてから3日が経過していた。
1日目は観光も兼ねた国共広山蒙学園艦の視察。そこから麻婆豆腐を投げつけられるといった事件も起こり、2日目は国共広山蒙の1番危険なエリアに足を踏み入れて、手榴弾で強引に戦車の撃ち合いを潰して、殴り合いの争いに持ち込ませた上で大洗連合総員で制圧した。

そして今日、3日目は昨日制圧した満派と新派の連中を多少脅しをかけて強引に傘下に引き入れつつ、学園艦の現状を聞き出した上で、国共広山蒙学園の抱えてる惨状を聞き出した。




まず満派視点から。

満派は蒙派とは唯一仲が良いらしい。同じ知波単学園信者として通ずるものがあるらしく、統合しても構わないとのこと。が、統合すれば仲の悪い国派との火種が増える他、蒙派は山派と犬猿の仲であるが、満派は山派のことはそこまで気にしておらず、それ以上に国派との仲が悪いために、統合したら対立勢力が増えてしまうからしたくても出来ないらしい。
また、満派は新派と仲が悪いが、蒙派は新派とそこまで対立したりはしてない。それ以上に西派という規模だけはデカいが戦車を持ってない他戦闘能力が低い派閥と対立しているとのこと。



一方で新派、彼女らには同じプラウダ信者の共派がいる訳だが、実はこちらは蒙派満派パターンとは異なり、新派と共派はどちらがプラウダ様に相応しいかと競り合っているらしい。
満派蒙派と思考が異なり、共有より甲乙なんだとか。


また、国派リーダーのリーにも現状について聞き出した。
この国共広山蒙学園に存在する派閥は、満派、蒙派、西派、新派、チ派、雲派、広派、共派、山派、そして実質最大勢力かつリーダーのリー率いる国派だという。

しかし、私はその中であることに気づいてしまった。それは、リー隊長の一言である。

「まったく、各派閥が好き勝手争ってて困るアル。国派が全て統一してしまえば争いなんて無くなるアル。そのために国派がいるアル」

アルアルうっせえと思いつつ、もしかして各派閥の争いの火種はリーダー格の国派が強引な統一を試みようとしているからではないか。そう感じた。
しかし、この場で言い出すわけにはいかない。指摘するということは、自覚させるためには最も程遠いもの。指摘しても、彼女たちの好戦的な姿勢を3日も見ていれば、これは火に油を注ぐことに等しい行為であると分かる。

自覚、そして結託に追い込むためには、それなりの試練がなくてはならない。失敗や窮地は、自らを育てる。失敗は成功のもととはよく言ったもの。
彼女たちには"窮地"という試練を与えなくてはならない。

「しかしなぁ…」

なほは何も思いつかなかった。各派閥が好き放題やっている彼女たちに結託を強いる方法。
史実では中国はドイツより支援を受けていたと訊く。しかし、彼女たちは各派閥に知波単なりプラウダなり大洗なり特定の崇拝校が存在する。

説明し忘れていたが、国共広山蒙学園は偏差値29と1番低いと言われていたヴァイキング水産の34よりも下。大洗女子学園は中高一貫の公立だから偏差値は存在しない。黒森峰は64の自称進学校。グロリアーナは意外にも55。BC自由は63。マジノ女学院は70。プラウダは59。知波単はバカと天才は紙一重といったところか、まさかの69。サンダースは44。アンツィオは39。

学力のなさ故に憧れの学校に行けずに、国共広山蒙に通って各学校を崇拝しているのだ。というか、彼女たちの学力のなさもなかなかだと思う。
私は所謂エリート番長だなんて変なレッテルを貼られている。学年順位は上の下ぐらいで、そこまで頭がいい訳でもない。けど、売られた喧嘩は買って傘下にし、更にはみほ姉を不幸にする連中がいたら全力で殴り飛ばしてやる。
けど、それでも吐き気のするバカは分かる。バカとは自分の崇拝欲のために他者を蹴り落とすことだ。この国共広山蒙がやってることはまさにそうだ。

だがしかし、この学園艦の発想でいえばバカとは敗者のことだなんて言うんだろう。


話が逸れた。本題に戻ろう。
彼女たちに窮地を強いて、結託を強いる。それこそが、この学園における汚点である勢力争いを解決する方法であると感じる。

満派と新派は黙らせたが、それ以上の勢力を黙らせるのは難しい。チ派のみは平和主義集団なので、崇拝校もなくのびのびと生活しているらしい。西派は戦車不所持な上に戦闘力が殆どないため論外だとして、それ以外の勢力は皆戦車を持ってる上に、戦車を勢力争いに用いているとの事。
だから国共広山蒙は戦車道というスポーツの為ではなく、ただの派閥争いのために戦車を動かしている。これも今回千代さんから改革してほしいと言われていることだ。

ならば各派閥を結託させて戦車道をすればいいと思うが、力技で戦車道を強いたところで彼女たちの派閥争いを一気に解決に持っていけるわけがない。それに、彼女たちが戦車道如きで結託するだろうか?いつも勢力争いに使われている戦車をスポーツを成立させるために持っていけるのか。

答えは否である。私がいくら大洗連合を率いてあちこちの派閥を傘下に入れようとも、根本的に各派閥の争いが無くなる訳では無い。
何よりも、彼女たちのような捻くれ者はまともに戦車道に臨むわけが無い。どうせテキトーにやるに決まってる。


「…とりあえず今日聞いた各派閥の所有戦車は……」


満派
・九十七式中戦車

新派
・IS-2

国派
・ヴィッカース6トン戦車
・M3リー

広派
・CV33

雲派
・ルノー17FT

共派
・T-26

蒙派
・八九式中戦車
・九五式軽戦車

山派
・M3スチュアート


「数は大洗と一緒なんだがなぁ…大戦中では旧式同然だった戦車しかいない点でも大洗と酷似してるけど、いかんせん育成も兼ねなきゃいけないとなれば対決するしかないか…」

正直国共広山蒙の荒れ具合、仲の悪さ、戦車の腕、戦車性能、どう考えたって負ける要素しかない。しかもそれも完全敗北レベル。そんな負け方をすれば戦車道なんてやってられるかと投げ出されてしまう。悔しいと思わせることで、再戦を望ませるぐらいの手加減を前提に戦ってもいいが、それだと余計に国共広山蒙連中のプライドの高さ的に反感を買って気力を奪いかねない。

「はぁ…」

結局、今のところは全く改善案が思いつかなかった。

彼女たちを意地でも戦車道させて、尚且つ結託させ、更に戦車道のレベルも上げる。満派と新派が傘下な以上、強引にやらせることはある程度可能だが、正直今の状況を見てもそれだけでは国共広山蒙全体に変化を起こせる気がしない。

あと1つ、何か彼女たちを羞恥心やら楽しいやら意欲を揺さぶれるものはないか…?無いか。いや、ある筈だ。




「なほー!」

「んへ?」

私は思わず間抜けな声を出してしまった。


「泊まりに来た!」

「唐突だな…」

みほ姉が合鍵を使って堂々と私の家に入ってくる。

「えへへ、なほに会いたくなっちゃってさ♡」

「みほ姉ったら…」

若干呆れつつも、私はみほ姉を受け入れる。私が今こうして戦車に乗ってるのも、元はといえばみほ姉のおかげだから心から許してしまっている部分がある。
それに、みほ姉は私のことを大好きと言ってくれたし、私だってみほ姉のことが好きだ。心の底からみほ姉を受け入れることだってできる。
昔のみほ姉はやんちゃだったのに、今では凄く大人しい子になっていて、そのギャップがまたいい。

…とにかく、私はみほ姉を心から信頼してる。

「今日も…ね?なほ♡」











だから、今日は一旦国共広山蒙のことも忘れて乱れよう。










_____________________


それから私は、何度もみほ姉の手によって昇天させられた後、濃厚なキスをして眠りについたことは覚えている。

けど、それ以上の記憶はない。ただ、私はみほ姉に対しては受けだということは分かった。



「いやー、昨日なほったら何度もアンアン喘いでたねー」

「みほ姉って見かけによらず強引で積極的だよな…」

「まあ、良くも悪くも西住流の血があるから…」

「………………」


西住流、今はどうなってるか詳しくは知らない。
ただ、昨年の黒森峰の連覇ストップ事件について、悪天候で試合を続行して危うく死亡事故になっていたが故に高校生戦車道連盟に責任が問われ、流派を優先して人命無視をした西住流が地に落ちたことに加え、西住流を勘当された私とみほ姉が使い古しの旧式戦車で王者黒森峰を決勝で撃ち下したことなど盛り上がりを見せているのは確かだった。
月間戦車道なんかも、去年はバックに西住流が着いている影響から、みほ姉に対する罵倒しかなかった。が、今年はとにかく西住流が地に落ちたことや姉妹の復讐劇みたいなことが大々的に書かれていて、購読者への受けが良さそうならば去年の友は今年の敵な都合の良い雑誌だなと思いつつ雑誌を投げ捨てたことを思い出す。

ちなみに、今年は去年の反省から、私ら大洗がプラウダ高校と戦った時、あれ以上雪が酷くなったら試合を中止することも念頭に置いていたらしい。
まあ、私がフラッグ車を試合が長引く前に叩いたことでその必要はなくなったがな。


話を戻すが、








決勝で敗北して2年連続準優勝、更には勘当された娘2人に復讐を喰らった黒森峰は、
















なほやみほに手を差し伸べた島田流と反比例して、今年に入ってから評判が良くなかった西住流と共に信頼が地に落ちたのは言うまでもなかった。





_____________________



「なほ、アンアン喘いでていつもと違う1面見れて可愛かった。ってか胸でかすぎ…なんで……」

「ん?アンアン…」



焦がして揺らして……



「あ!」

あんこう音頭。これは使える。



なほ: オラオラァの人とは関係ない。



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35話 戦車戦です!

なほ sideout


_____________________


「というわけで、あんこう音頭をかけて殲滅戦をする」

6日目の朝、なほは国共広山蒙の戦車道チームを徴収し、大洗vs国共広山蒙の戦車道の試合を行うと宣言した。
国共広山蒙学園の全員が集まった体育館はギュウギュウになっていたが、壇上にいたなほの声はマイクを通して確実に連中の耳に届いていた。

「昨日見てもらったと思うが、国共広山蒙が敗北した際は…あんこう音頭を全員でやってもらう」

昨日、国共広山蒙と大洗の交流の一環として国共広山蒙に大洗の文化を紹介するプレゼンテーションを行った。その中で、大洗に存在する罰ゲーム『あんこう音頭』を紹介し、みほ姉たちが聖グロリアーナ女学院戦後に踊った映像が残っており、公開したところその場を爆笑の渦に引き込んだのだが、自分たちが踊るとなれば話は別。

「な、あんな恥ずい踊り、負けたらすんのかよ!」

「容赦ねえ!」

「アタイら初心者なんだけど!」

「つーかなんで戦車道の試合やんなきゃいけねんだよ!」

国共広山蒙連中は、その踊りの恥ずかしさを昨日充分に理解していたため、大半の連中が思い思いに愚痴を叫んでいた。


「敗北は怖いか?悔しいか?これは決闘だ。お前ら、受けた勝負を逃げるわけないよな?」

すると、国共広山蒙連中はカチンと来たのか、一瞬の静寂の後…


「やってやろうじゃねえかこの野郎!」

「チョーシこいてられんのも今のうちだ!」

「ぶっ潰してやる!」

「もう喧嘩売るってレベルじゃねーぞオイ!」

各々言いたい放題ではあるが、全員すっかりとなほのペースに乗せられて叫びまくっていた。
国共広山蒙連中は不良であり、ピュアで馬鹿なのでこういった挑発にはすぐに乗っかってしまう。

ちなみになほ相手に挑発したり喧嘩を売った場合、必要以上にボコボコにされる。なほ相手にだけは絶対に喧嘩を売ってはいけない。


「お前ら、やる気になったネ!行くアル!」

国共広山蒙隊長のリーも、上手く挑発に乗った連中を扇動して各派閥の戦車の元まで誘導。連中はなほがこっそりと修理しておいた国共広山蒙戦車に次々と乗り込んでいく。

尚、国共広山蒙学園は、戦車道履修者こそは多いものの、学内にある戦車が少ないため、大半の履修者は外で応援するだけしかできない。というよりも、戦車は派閥争いのための武器同然なため、戦車履修というシステム事態よく分からないものだったりする。


「おし、私らも行こうか」

なほたちも、戦車の元まで走っていった国共広山蒙連中を追いかけるように自分らの戦車へ向かう。


_____________________



「さあ、試合開始だ!」

今回の試合会場は国共広山蒙学園艦の自然エリアから、いつも国共広山蒙連中が派閥争いに利用している危険地帯、住宅エリアや国共広山蒙校舎を除くほぼ全域となっている。

「おし、みほ姉!今日はどうする?彼女たちのことなら幾らか分かるぞ」

なほは無線をIV号戦車に飛ばした。

『なほ』

みほのIV号戦車から返しの通信が入る。

「どーする?みほ姉?」

なほは通信を受け取った。









『今回の試合、なほが隊長やってくれない?』

「え?みほ姉…それって……」

『今回、彼女たち国共広山蒙の人達の感覚に1番近いのはなほだと思うし、今回任を受けたのはなほだからきっとなほが1番いい勝負が出来ると思う』

それは、願ってもないまさかの隊長交代だった。


「よし、分かった。今日は私が全指揮を取る。全員ついて来やがれ!パンツァーフォーッ!!!」

この掛け声と共に、大洗女子戦車全10両が進行を開始。先頭にクルセイダー巡航戦車、1番後ろにIV号戦車、左にM3リー、右に八九式中戦車。中心にMkIV戦車とポルシェディーガーが入り、それ以外のIII号突撃砲、三式中戦車、ルノーB1bis、ヘッツァーがその2両を取り囲むように菱形に陣形を取った。

「相手の戦車は大洗と同じく、統一感なしの寄せ集めだ。強いて言うなら日本の戦車が多い。その次にアメリカやソ連の戦車だが、どれも旧式戦車ばかりだ。ただ、唯一相手には戦後に中華人民共和国がソ連より譲り受けたIS-2がある。尤も、扱えてはいなかったようだがな。ただ、油断はするな。相手は各派閥ごとに争っているような輩だが、この度はどう出てくるかわからん。立ち向かって来た時は、接待はするな。全力で応えろ」

そのなほの言葉に全員が頷いた。威厳もカリスマ性もあるなほの声が、隊長としての風格を作り上げるのにそんな時間は掛からなかった。



________________________


一方、国共広山蒙の方はというと。


「リー、てめえリーダーぶってんじゃねえよ!ここは山派が隊長だ!」

「新派のIS-2が1番最新だから私らがリーダーでいいだろ!?」

「至近距離でも弾当てられない新派にはリーダーつとまんねえしここは共派だろ?」

「雲派のルノーは現代戦車の祖だぞ!」

「いいや、広派の快速が!」

「CV33なんぞ足でまといだわ。蒙派か満派がリーダーやった方がいい」

「蒙派に同意。アタイら満派か蒙派がリーダーやればいい」

「お前ら落ち着くアル!」

国共広山蒙は相変わらず戦車道の試合中も各々が自分の意見を一方的に言うばかりで全く纏まりを見せそうもなかった。
それどころか、あんこう音頭のことも忘れて味方同士で撃ち合う始末。


_____________________


「とりあえず部隊を4つに分ける。私とみほ姉とM3リー、ポルシェティーガーとルノーB1bis、III号突撃砲とMarkIVとヘッツァー、八九式中戦車と三式中戦車に分かれて、それぞれルノー、ヘッツァー、八九式は各方面の偵察を行え」

「姉貴、分かれる必要なさそうですよ」

「ん? あ…全員分裂中止。即座に合流せよ。敵発見!」

紀香が操縦席から国共広山蒙戦車群を発見した。
それに伴って各車両も敵に気付く。

しかし……


「思っきし味方同士で撃ち合ってる…」

なほの目に飛び込んできたのは、味方同士で撃ち合いをする国共広山蒙戦車たちの姿であった。あまりにも予想通りすぎた展開に、なほは思わず呆れてしまう。


「しょうがねえなぁ…」

なほはクルセイダー巡航戦車内からあるものを取り出した。



















「蒙派か満派にリーダー譲れ!」

「そうだそうだ!」

九七式中戦車と九五式軽戦車、八九式中戦車が新派と山派を砲撃する。

「新派が1番強い!」

IS-2が山派のM3軽戦車スチュアートを砲撃。
が、その弾道は遥か上。もはや狙って外しているとしか思えないレベル。

「当たらねえよ!山派こそ最強!」

そんな新派に砲撃されている山派は、雲派と広派を砲撃していた。

「雲派!」

「いいや広派!」

雲派のルノーFT17と広派のCV33は山派のスチュアートに応戦していた。

「共派が中華統一すんだよ!」

共派のT-26軽戦車が満遍なく全域に弾を発射しまくる。

「お前らいい加減にするアル!」

そんな国派はというと、ヴィッカース6トンとM3A3リー戦車で各派閥を砲撃で強引に止めようとしていた。







『お前らいい加減にせぇ!あんこう音頭確定すんぞ!!!』


響き渡るその声に、各々の戦車はハッと我に返って砲撃を止めた。


なほは、スピーカーとメガホンを用いて国共広山蒙サイドに向かって叫んでいたのだ。


「ちょ、ちょ、やばい」

「はやくたてなおさないと…」

もちろん各派閥はあたふたと隊列を組み直し、体制を立て直して急いで大洗女子戦車と対峙するのであった。

















「さて、相手も場を整えただろうから八九式、三式、満派と蒙派の日本戦車群の元へ。ポルシェとルノーB1はCV33とルノー17にあたれ!III突、markIV、ヘッツァーはスチュアートとT-26の相手をしろ!残りは私らで対応する!」

なほはこの隙に、みほにだけ連絡を送る。



「私とM3で残りはどうにでもなる。みほ姉はこの隙に裏から回れ!」

「分かった!」

みほは通信を受け取ると、すぐさま行動に出た。






「まっ、コイツら程度にはそれぐらいの作戦である程度練習を積ませとくか…」

なほはふふっと笑った。
ベッドの上で何度も喘がされたのが少し悔しかったのか、みほを超初心者の国共広山蒙にすら気づかれてもおかしくないだろうという場所に送り込んだ。









「なにも、今回は勝つための試合をしてるわけじゃない」


なほのその言葉に間違いはなかった。実は、なほは大洗の車両を上手い具合に彼女たちでもまあまあ応戦出来るぐらいに散りばめていた。


「楽しみだな」

なほは再びふふっと笑った。

_____________________


場所は移り変わって熊本。

「…こんな…筈は…」

黒森峰女学園は通夜のような雰囲気が立ち込めていた。




「今回の敗北は…敗北は…」

黒森峰戦車道チームの前にある壇上に立ち、今回の敗因を探ろうとするも、敗因がまさか明らかに西住流にあると言えないしほ。
しほはなほと和解を望みつつも、当のなほは西住流に情けなどかけてくれなかった。
なほの過去故に、和解の余地はなかった。ただ、過去の因縁から次女と共に復讐を果たした。

それだけのことであり、そのために黒森峰と西住流は落ちた。
いや、既になほを敵に回した時点で西住流の命運は決していたと言うべきだろう。

なほは、復讐のためなら仲を保っていた長女のまほとすらも平気で縁を切るような人だ。そんな人相手に、黒森峰に勝利の2文字はなかった。


西住流と黒森峰は、王者の威厳とプライドを保てず、なほに屈したと言える。




西住流は、かつて行ったことのないところまで来てしまったのだ。










なほたちが沖縄で勝利を謳歌する中、熊本はかつてない暗雲に覆われていた。



次回、大洗vs国共広山蒙、決着。


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36話 国共合作です!

ギャグシーン激減します。
ネタシーンがあるのは今回までです。



「サンダース見てるかー!」

山派のスチュアートがMarkIV戦車をまぐれながらなんとか相打ちに持ち込んで撃破。まあ、MarkIVの乗組員は初心者だし、()()()なら上出来だろう。

「共派も負けてらんねぇ!この際新派だろうが徹底的に利用すんぞ!」

「そっくりそのまま返してやる!利用してやんぞ!」

僅かながら、スチュアートの奮闘によって、国共広山蒙全体に結託の流れが来ていた。だが一方の大洗女子サイドはというと…


「またやられた!」

「なんでアタイらがまたやられてんだ!」

戦車道大会決勝の黒森峰戦に引き続き2連続かませ扱いのサメチームが憤怒していた。仕方ない。世界初の戦車であるということは、これ以上ない旧式戦車であるということなのだから。加えて第一次世界大戦当時、MarkIV戦車の役割は即ち塹壕突破であり、装甲も砲の威力も機動も対戦車を想定してない故に、性能全般で同じ対戦車を想定していない歩兵支援の八九式以下の戦車なのだ。






「根性ォ!知波単ファンらしく根性だァ!!!」

「はい!」

「僕たちだって日本戦車にゃ…」

一方、そんな八九式中戦車が2つもいる蒙派と満派と大洗日本戦車群。こちらは中々いい勝負を繰り広げていた。この中では三式中戦車が1番最新のものだが、搭乗員たちは皆ネトゲの中でしか戦車を知らない。それ故、知識以外は素人同然。更には体力や戦車乗りとしては平均以下の力のため、実質性能やら戦車乗りとしての資質、そして2対3ということを考えれば、国共広山蒙にとっては間違いなく有効的な育成になっていた。







そして一方のポルシェティーガー&ルノーB1bis対ルノー17FT&CV33の戦いは別の意味で盛り上がりを見せていた。



「「うちがやる!」」

「「………………えぇ…」」

雲派と広派のどちらがポルシェティーガー相手に善戦するかを勝負していた。とはいえ、雲派も広派も互いに味方内での仲間割れという形ではなく、敵戦車の撃破の競い合いをするという、なほの思惑通りの流れに乗っていた。
彼女たちの競い合い精神を利用し、それを戦車道におけるスコア争いのようなところに持ち込めば、きっと早急な育成に繋がると踏んでいたのだ。

とはいえ、ルノーB1bis相手ならまだしも、ポルシェティーガーは実質重戦車。第一次世界大戦中の旧式戦車であるルノー17FTと、対戦車を全く想定しておらず機銃しか持たないイタリアのCV33では到底太刀打ちできる戦車ではない。


「くらえ!」

「私が倒すんだ!」

とはいえ、ポルシェティーガーは基本鈍重で動きも鈍いため、ルノーとCV33相手には恰好の的であり、それがまた国共広山蒙の悪い頭から来る発想『撃ってりゃいつか死ぬ』によって上手い具合に育成に繋がっていた。
元々派閥争いに利用されていたこともあり、国共広山蒙は決して戦車操縦が苦手という訳では無い生徒も多数いた。壊滅的にチームワークがないだけである。





一方、スチュアートがMarkIVと相打ちしたことによって、同行していた戦車を失ったT-26はピンチを迎えていた。

「ヘッツァーとIII号突撃砲相手にアタイらどう勝てと言うんだい!」

軽戦車のT-26では、中戦車をベースにした突撃砲と軽駆逐戦車相手に武が悪すぎた。
けど、これはなほの作戦である。




「あえてみほ姉を裏から奇襲させるために離脱させたのにはちゃんとした理由がある。みほ姉がマークしていたのは新派のIS-2。マークしているやつがいなくなった。時間も残ってる。そしてピンチの仲間、さて彼女たちはどう出る?」

なほは的確な指示によって、国共広山蒙の戦車道選手たちに試練を与えていた。元よりこの試合は勝つ必要もなく、あんこう音頭など彼女たちを試合に差し向けるための手段でしかない。

ただ、バックにいる島田流の切実なお願いである国共広山蒙学園の戦車道としてのレベリング、そして更生。
学内対立さえ抑え込めば更生はできる。そして戦車道における育成。これら2つを同時に達成するための手段として、あくまで今回の戦車道対決を行ったに過ぎない。









「新派、IS-2。共派を支援する」

「来たか…」

なほの予想通り、マークの薄くなったIS-2は嫌々ながらも共派の元へと駆けつける。

「くらえ!共派の手柄いただき!」

「あ、てめぇ!負けてらんねぇ!」

早速IS-2は大洗女子戦車に砲撃。しかし、その弾はまたもIII号突撃砲の車体の遥か上空へ逸れていく。

「IS-2は相変わらずだな。だがこれでいいんだ」

なほは頷いていた。手柄の横取りだろうが、結果的に国共広山蒙内に結託の意思が強まってきているのは確かだった。なほは確実に良い流れが来ていると実感していた。



「今まで国共広山蒙に蔓延っていた雰囲気はまるで敵同士。今は、ライバル同士ってところかな…」

戦車道によって、国共広山蒙に漂っていた闇が晴れ始めた。




「さて」

なほは視線を正面に戻した。そこには、戦車のキューポラから顔を出す国派リーダーのリーの姿があった。

「なほさん、やっぱりアンタ凄いアル。彼女たちは皆競い合いながらも前までとは違ういい雰囲気になってるアル」

大洗女子サイドはM3リーとクルセイダー巡航戦車。国共広山蒙サイドはM3A3リーとヴィッカース6トン戦車。



「さぁ、決着をつけよう!」








________________________



『勝者、大洗女子学園!』

あれから1時間。ようやく試合に決着がついた。
M3リーとM3A3リーが互いに相討ち撃破。その他、蒙派と満派と大洗女子日本戦車群との対決も相討ち。
IS-2は最後漸く、III号突撃砲を狙った筈のこぼれ弾がポルシェティーガーへの砲撃になり、それが成功し、たまたまポルシェティーガーの弱点箇所であるエンジン部分に命中したため、壊れやすいポルシェティーガーは白旗をあげて撃破された。しかし、T-26がIS-2に負けじと奮戦し、ヘッツァーと引き分けた。
その後IS-2の弾は当たることなく、あえなくIII号突撃砲にやられたが、そのIII号突撃砲はルノーとCVのコンビにまさかの敗北。ルノーB1も雲派と広派のコンビの前に散り、最後は戻ってきたみほがヴィッカース6トン戦車を撃破。

大洗女子はクルセイダーとIV号戦車の2両を残して殲滅戦に勝利。なほによる上手い具合の手加減作戦によって、いい勝負を演出しつつ彼女たちに結託させるためのフィールド作りに努めた結果、国共広山蒙はあと少しというところまで大洗女子を追い詰めた。


「かーっ!悔しい!」

「またやりたい!」

敗北した国共広山蒙だが、そこから出てきた言葉は悔しいや再戦を望む声。自然と、彼女たちの結託は生まれ、戦車道を楽しむ心が芽生えていたのだ。



「さて、私の役目は済んだな…」

なほはフーっと大きな溜息をついた。

「姉貴…」

「姉貴はやっぱりすげえや」

砲塔席と操縦席から響く紀香と美玲の声。

「私は女番長だ。ひねくれ者たちの心を揺さぶるのは、朝飯前だよ」

なほは数々のグループを傘下に持っている。そのため、彼女たちみたいな不良の扱いには慣れており、それらの経験が今回彼女たちを結託に導くのに貢献したのだ。

「さてと!」

そう言ってクルセイダー巡航戦車を降りたなほは、国共広山蒙隊長のリーに歩みを寄せた。

「なほさん!」

「リー隊長、奴らはどうだった?」

キューポラから今回のひねくれ者たちを眺めていたリーの答えは、既に決まっていた。




「今までで1番楽しい顔をしていたアルよ」

隊長が言うなら間違いはない。彼女たち国共広山蒙は、今日が1番輝いていたのだ。

「私が出来るのはここまでだ。あとは彼女たちを支えてやればいい。リーは私のファンだ。それぐらい引き受けてくれるか?」









「勿論アル!」


なほはリーと熱い握手を交わした。





「なほ、お疲れ様」

「おっ、みほ姉!」

試合を終えた夕暮れ時、西日の逆光に照らされつつ、みほがなほの元へとやってきた。

「今日の夜は麻婆豆腐かけられないように守ってあげなきゃ!」

「もう麻婆豆腐なんか投げさせないアル」

そう言うみほとリー。



「麻婆豆腐だけじゃなく食事を投げるのを指導すべきだと思うが…」

ハァ…と戦車道以外のことにおいてはまだ色々と指導する必要があるなと溜息を零すなほ。
















…Prrrr!!


「ん?」

なほの携帯電話の元に着信が入って来た。

「誰だ?」

なほは携帯の画面を見た。

「電話の相手は……お父様!?」

電話の相手は数年ほど一切会話を交わしていなかった西住常夫。

「珍しい…お父さんが電話だなんて……」

みほも常夫とは全く連絡を取り合っていない故に、これには大層驚いていた。なほはかつて常夫から100万の支援金を貰っており、そのお金はバイクや戦車の免許取得、更には中学生時代の雑費に利用されていた。

そのため、しほに勘当されているなほにとって、常夫は唯一の保護者であり理解者なのである。





「はい、お父様。お久しぶりです」

迷うことなく電話に応じるなほ。
















「…え?」

なほは耳を疑った。


「分かりました!あのクソババアがいるのは癪ですが、みほ姉を連れてすぐ向かいます!」

なほは急いで電話を切った。

「な、なほ………いったい何が!?なほがこんな慌てるなんて……!」

滅多に人前に見せることのないなほの慌てぶりを見たみほは、只事じゃないことが起こっている現状を受け入れた。
































































「まほ姉が…………自殺した………!」




次回、急展開



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西住の再建 37話 その時、番長三女は何を思う

『急げ、黒森峰のピンチだ!』

『1番最初に我が校を支援してくれた黒森峰の隊長が危機だ!』

今日の朝まで対立していたのはどこへやら。
黒森峰のピンチと知るやいなや、各派閥は戦車道関係なしに勝手に協力の姿勢を見せた。

国共広山蒙をいち早く支援した黒森峰のためなら否が応でも結託し始め、この度結託を強いるために催した試合は、結局何だったのかということになるが、今はそんなことをおちおち考えていられる状況ではなかった。
そしてなほは千代が何故国共広山蒙みたいな荒々しい高校を気にかけるのか理解した。それは国共広山蒙が恩義から実質西住流の傘下となっていたためだ。

「すぐに那覇空港に行って熊本に向かうぞ」


なほはクルセイダー巡航戦車のエンジンを起動した。
なほは4年前、常夫からの資金援助によって公道での戦車の運転免許を取得しているため、クルセイダー巡航戦車を公道で動かすことが可能である。同じく、紀香も戦車を公道で動かせる免許を取得済みである。

「紀香、帰りのクルセイダーを頼む。私とみほ姉はこれからすぐに熊本に行く!」

「はい、すぐに向かいましょう」

みほと紀香も戦車に乗り込む。彼女たちのそこからの行動は素早く、クルセイダー巡航戦車に搭乗したなほ、みほ、紀香の3人は、那覇空港に向けて公道を突っ走っていった。


既に那覇空港までの道中は、国共広山蒙学園が持ち前の大量の生徒を用いて上手いこと閉鎖しており、クルセイダー巡航戦車は常にMAXスピードで空港までの道を走行していく。



_________________________




「まほ姉!」

熊本に到着したなほとみほの2人は、常夫から訊いたまほのいる病室に慌てて駆け込んだ。


「…………」

「まほ姉」

まほのいる病室に入った瞬間、なほとみほは思わず固まった。

















そこにいたまほはやせ細り、顔色の悪い状態で全身を管に繋がれていた。心拍数は安定を見せているが、その様子は殆ど別人であった。
その隣には、浮かない顔で涙を流すしほの姿があった。

「なぁセンセー!まほ姉の容態はどうなんだ!?」

なほはその場にいたまほ姉に付いている医者に向かって叫んでしまった。







「もう少し発見が遅れていたら間違いなく死んでいた…。首を吊っていたんだ。今はなんとか生きているが…。期限は2週間。その間に目を覚まさないとそのまま衰弱死してしまうだろう…」

「そんな……」

みほはその場で膝をついた。
だがしかし、医師のその言葉を聞き終えたなほは明確な怒りを表した。






「テメェ!! まほ姉に何をした!!決勝の時もまほ姉は全然浮かない顔をしていた!いったいまほ姉に何したんだクソババア!」

なほはその場に項垂れているしほに掴みかかった。

「わ、私は…流派として……」

しほはなほの気迫に圧倒され、思わず小さな声で言った。

「流派?それが実の娘を追い詰めていい理由か!?アァ!?私の時もそうだ。テメェは島田流と違って流派のことしか頭にねえのか!なぁ!? 流派のことしか考えないからまほ姉の心情を1番近くにいながら全く理解せず、無理矢理流派としての責任を全て背負わせたな!?だから負けたんだよ黒森峰は!そしてまほ姉に至っては自殺。ふざけんなゴラァ!!!」

しほの胸倉を掴んだなほは、その手をブンブンと前後に振る。

「みほの時もそうだ。西住流を大事にしすぎるあまり尊い人命より勝利を優先し、挙句の果てに敗北の責任をみほ姉に背負わせて勘当同然のことをした。私もテメェに早々勘当されたからそっちの事情はよく知らねえけど!西住流とテメェが家族から戦車道まで全て引き裂いたという自覚はねえのか!?あぁ!?」

なほは病院内にいるということも忘れて怒鳴り散らした。しほがどんな哀れんだ顔をしていようが構わない。周囲がどう思ってようが関係ない。

なほはただ、目の前にいる全ての元凶が憎かった。


「てめぇはなんでまほ姉の、みほ姉の、私の、母親やってんだよ!精神虐待しといて何が親だ!師範としても母親としてもこの結果は最悪以外の何にでもねえよ!娘をこんなになるまで追い詰めておいて何が流派だ!戦車道だ!西住流は人殺し流派だ!」

「……………」

しほは何も言えなかった。否、何も言い返せなかった。

まほに流派の全てを背負わせた。その責任の重さ、そして姉妹との決別や、その挙句の果ての決勝における王者黒森峰の歴史的大敗。
しほが師範としての顔を改めていれば、黒森峰も肩に変な力は入らず、あんな惨敗を喫することはなかったかもしれない。一方のなほとみほは、西住流における未練を断ち切るために決勝戦に臨んでいた。

あの日あの時、どう考えても黒森峰に勝算はなかった。


そしてこのザマ。こんな最悪な結果の何もかもを作り出した元凶が目の前にいる。
それだけで、それが、そのことがなほは何よりも許せなかった。


「クソババア!なんで私はテメェみたいなクソと血が繋がってんだよ!娘1人殺しかけといて何が西住流だ!何が母親だ!この際だからハッキリ言ってやるよ!!!島田流に生まれればよかった!」

言い切った。なほは言い切った。

島田流は、娘も戦車も大事にしていた。元より、西住流はライバルだから潰すに越したことはない故に、西住流が関わると多少厳格なところがあったが、島田流は母親としての顔と師範としての顔を持っていた。その切り替えはしっかりと出来ており、娘の愛里寿は明らかに戦車道以外のことにおいても輝いていた。







「なほ!」

後ろにいたみほがなほを呼んだ。

「…みほ姉!」

なほは、ようやくハッと我に返った。






「……もう帰れよクソババア、娘を殺しかけたテメェがここにいていい義理はねえ。娘より流派が大事ならさっさと仕事に戻れよ」

なほは先程より声のトーンを落として言った。

「…分かったわ」

そう言ったしほは、重い足取りで帰路についた。なほはその帰っていくしほの後ろ姿をただ怒りに満ちた表情で眺めていた。





「みほ姉」

「なに?」

なほは重い口を開いた。


















「私、タイムリミットの2週間、ずっとまほ姉の近くにいる。学校どころじゃねえよ。みほ姉は…どうする?」

「なほ…」

みほの答えは決まっていた。















「私もここに残る」

みほもこの場に残るとハッキリ言い切った。だが皮肉にも、まほ、みほ、なほの三姉妹で共に過ごすのは今日が4年ぶりだった。



ちなみに国共広山蒙は、元々巨大化したなほへの対抗措置として黒森峰や西住流の傘下におこうとしたが、リー隊長がなほのファンになって失敗したという裏設定があります。
黒森峰と国共広山蒙の繋がりは、史実の中独合作から来ています。

まほはまだギリ生きてます。


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38話 幻夢現


私は、いつの間にか1人だった。





みほが昨年の事故をきっかけに黒森峰を離れることとなり、私はなほに続いてみほまでも助けることが出来なかった。

昨年の事故は、試合を強行した戦車道連盟に1番の非があるというのに、あろうことかお母様と戦車道連盟はみほを戦犯に仕立てあげた。


お母様は、私が10歳を超えた頃から何を考えているのか読めなくなってしまった。
西住流として、西住流として、それしか口にしない人になった。






















中学生に上がった頃、なほが全国各地で暴れ回っているという噂を耳にした。
勿論、その情報は西住流本家にも入ってくる。




お母様は、そんななほを恐れた。




かつて浴びせるだけの毒を吐いて勘当されたなほが、西住流に復讐するために力をつけてきているという根も葉もない噂が、西住流及び黒森峰女学園全体に蔓延した。


"なほは、戦車道を嫌っている故に復讐なんて出来る筈もない。"



そう思って、私はなほとたまに連絡を取り合っていた。電話に出たなほは、至って普通の女の子であり、復讐のために動いているだなんて想像も付かなかった。

そんななほがいるならみほも大丈夫だろうと思い、私はみほをなほがいる大洗女子学園に送り込むことを支持した。
あそこには戦車道はない。20年ほど前に無くなっており、なほが戦車片手に私たちに牙を剥く筈などないと、信じていた。



だが、お母様はなほの復讐を恐れ、次第に私に西住流としての全てを背負わせてくるようになった。

かつて三姉妹で戦車をやっていたあの頃がとても懐かしかった。あの日々は、もう、戻ってこない…。


なほは中学生入学を境に西住流から切られ、みほは昨年の事故を切欠に切られ、西住流に残っているのは私だけ。


そして、私が高校3年生になった時、私は衝撃の事実を知ってしまった。










"なほが、みほと共に戦車道を再開していた"





しかも、多数の仲間を引き連れて…




そして、私は知らない方がいいことまで知ってしまった。






お母様が言っていたことは、確かに正しかった。

なほは全国各地で暴れ回って、多数の傘下を持つ番長に成り下がっていた。そんななほの姿を、みほは認めていたのだ。
そしてエリカに掴みかかったあの力、それは過去になほが西住流において三姉妹随一の装填手として誇っていた剛力、そのものだった。

装填手としての力は、暴れ回る力に変換されていたのだ。



そして、私は更なる事実までなほの口から告げられる。






『なほのバックには島田流がいる』




聞きたくなかった。これはもう、なほが西住流に復讐をかけようとしていると言ってるようなものではないか。
何度も耳を疑ったが、なほの目は本気だ。なほの戦車の車長としての腕は西住流においては邪道だが、西住流がなくなれば話は別。


西住流を知り尽くしたみほとなほが向こうにおり、更には島田流まで背後にいる。




私はこの事実を、お母様に告げるわけにはいかなかった。
というよりも、恐ろしくて報告出来なかった。







その後、私はなほの試合を全て観戦した。






圧倒的ではないか。





なほが乗っていたのは西住流において主流のドイツ戦車ではなく、ここでも西住流における対抗意識があるのか、英国戦車。

名をクルセイダー巡航戦車。よく壊れるというが、そのスピードは当時随一であった。
それに幾らか改造が施されているようで、それはなほのメカニックとしての実力までも語っていた。サンダース大学付属高校戦では、まさかの手榴弾を使用。基本的にこういったものは自作にするのがルールらしい。

そして、圧倒的数的大差を跳ね返して、なほは無数の敵戦車を愚弄して勝利。対多数戦闘において、なほの戦車は無敗を誇った。


この頃になると、お母様も本格的に私に西住流の全てを背負わせてきた。私は確かに西住流そのもの。
けど、なほ相手に勝てるかどうかは別。
それでも、お母様や西住流は敗北を許さない。私は幾度も勝つための算段を研究した。そして、何度も大洗女子学園の試合に足を運んだ。



その度になほは、敵戦車の弱点を的確に見抜いて圧勝してしまう。
砲塔を史実の範囲内で自力強化できるなほのメカニックとチームの操縦技術。
もう、なほに適う気がしなかった。

みほもそんな荒々しいなほを全力で支持している。


あのみほが、なほを………



私は孤独なのだと察した。みほもなほも、もう遠い存在であると認識せざるを得なかった。


一方の私も、準決勝の相手にも上手いこと勝利し、決勝進出までは決めた。
なほとみほ率いる大洗女子学園は、戦車道連盟やファンの予想を裏切って強豪相手に勝利を収めていた。だが私は、2人が決勝まで来ることなど予想していた。


それと、私にとってもう1つ解せない出来事があった。







島田流家元と顔を合わせてしまった。






そこで私は、お母様に黙っていたなほのバックに島田流がいることを島田流家元本人の口から語られてしまい、お母様の逆鱗に触れてしまった。

その後は、とにかくなほを潰すことばかり。




でも私は知っていた。




お母様はなほとの和解も画策していたことを。







けど、お母様はあくまで西住流家元としての顔であり続けた。



決勝で負けたら私はどうなってしまうのか。ただ、その不安だけが私を蝕んだ。










そして迎えた決勝の日






結果は、黒森峰女学園の歴史的大敗とも呼んでよかった。なほ1人に、黒森峰の戦力の半分がやられたといってもいい。
更に、なほは超重戦車マウスの燃料タンクを的確に砲撃し、ミリ単位の撃ちどころの悪さでマウスを一撃で仕留めた。

西住流から解放された狼とは、このことを言うのだろうか。



みほは優勝トロフィーとフラッグを背負い、なほに至っては今年のMVP選手に選ばれた。MVP選手となったなほの口からは、過去に西住流から受けてきた全てが語られた。







もう、西住流も黒森峰も終わりだ。






後日、私はお母様に呼ばれ、黒森峰女学園の戦車道選手たちと共に、説教及び流派とは何か、敗北の当てつけと言わんばかりの地獄を過ごした。

既に精神的に蝕まれていた私にトドメを刺すには充分の威力だった。



敗北、その2文字が私には深くのしかかった。
私はお母様から、流派を背負えなかったものとして、今後どんなことになるのか、とてつもない恐怖に襲われた。











もう、私に生きる価値はない。
最後に、なほとみほの声を聞きたかったが………。


首を吊って、楽になろう。














「………………ねぇ」

「起き………………ゃん」



聞き覚えのある声が聞こえる。


















「お姉ちゃん!」
「まほ姉!」


声に気づいた私は、重い瞼を開いた。







気づけば、私は病院のベッドに横たわっていた。



まほ、生存。
こっからが大変です…


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39話 流派

高評価ありがとうございます!



ただ私は、代々続く流派としての流れを遂行しただけ…。




娘達が10歳を迎えるまでは、自由気ままに育ててきた。10歳にもなれば、絶対に否が応でも戦車道と向き合わせなくてはならないから。
かつて私も、先代よりそう指導されてきた。

まずはまほ、その次にみほ、そして最後になほ。
3人を黒森峰女学園の中等部に入れるまで2年間、地獄を見せなくてはならない。
それが、西住流なのだから。



_____________________



数年後、予定通り3人の娘達に、西住流の戦車道として厳格なる指導を行った。


まずは長女のまほ。まほはしっかりと西住流としての戦車道をこなしている。まほは早々才能を開花させ、ドイツから派遣された中学生の戦車道プレイヤーに圧勝してしまった。西住流を継ぐのはまほだと、この場で断定しまっても良いレベルだった。けれど、将来万が一ということも考えて、次女のみほと三女のなほにも手を抜かず指導を続ける。そして、その万が一は近い未来起こってしまう。それは後ほど話すとして次だ。

次は次女のみほ。この子は西住流戦車道を分かってない。西住流における指導の中で、無邪気だった性格は控えめへと変化したものの、戦車の上ではかつての無邪気だった性格が顕著に表れた。西住流は隊列を組んで高火力重装甲で捩じ伏せる。撃てば必中、守りは固く、進む姿は乱れなし。それが西住流。
けど、みほは西住流において邪道な作戦が多かった。西住流戦車道と、忌々しい島田流を合わせたような作戦。しかしみほにはそれすら目立たせない別の力があった。不測の事態に対応する力の不足は、西住流の弱点であるが、みほはその力があった。みほは柔軟な発想でピンチに対応できる。しかも砲手、通信手、操縦手として、何ら問題は無い。ただ、まほもみほもあまり力が強くなく、装填手としては絶望的だった。

最後に三女のなほ。この子は、みほを超える曲者だった。
まず、砲手としてのセンスが壊滅的だった。撃てば必中とある西住流だが、なほはかなりの近距離でも弾を当てることができない。というより、近距離にも関わらず命中100%を出せないのだ。近距離で100%の命中率を出せないのは、どう考えても西住流どころか流派を背負う者として汚点でしかない。操縦手は平凡だが、西住流として失格なレベル。平常運転をする程度なら全く問題ないが、戦車戦においては全くダメ。その代わり、姉妹1番の腕力を持ち、装填手としての腕はピカイチ。
けど、装填の遅いドイツ戦車使いの西住流で、装填の速さというのは全く輝かない。
更に車長。この子の車長技術は西住流において完全なる邪道。挙句の果てにドイツ戦車は使いづらいから英国戦車を使いたいだの、島田流の名前を出すわもうめちゃくちゃだ。
この子は完全に因縁の島田流の人間だ。ドイツ戦車でもまだ機動力のある軽戦車のレオパルドのような戦車を好んでいる。更にその軽戦車を使って重戦車ティーガーを翻弄するだけ翻弄するものだから、西住流履修者を大混乱させる作戦を好み、三姉妹で海外からやってきた戦車道選手相手に戦い、なほは周囲を混乱に陥れた挙句、みほとまほのサポートをしてチームを勝利に導いた。


私は、この頃から島田流のようななほが恐ろしくて仕方なかったんだと、そう感じている。



聞けばなほの戦車知識は、ある少年から得たものらしい。なんということ、西住流の後継者とあろう者が11歳にして男と…。さっさとなほとその少年を引き剥がさないといけない。




その後、なほとその少年を分断することに成功した。そして、これまで以上になほだけには厳しく指導し、島田流戦術を矯正。西住流戦車道としての自覚を持たせるべく、姉妹とも会話をあまりさせないようにした。
まるでオランダのインドネシア支配のような過酷さをなほに強いた。



その末に、なほを西住流戦車道後継者の見込みなしとして、勘当した。
後々、私の夫の常夫がなほに対して支援を行っていると知ったが、常夫も西住流の権力の上では手の平の上。見逃しているだけで、無駄なことをするのであればいつでも消せる。






その筈だった。




_____________________



数年後、なほに引き続いて流派としての責任を果たせなかったみほを西住流戦車道から間接的に追い出した。

なほの時とは違って勘当まではしてないが、下手な行動に出れば即座に勘当する気があった。



けど、私にはただ一つ気がかりなことがあった。





なほの存在だった。





僅か数年で、なほは西住の名を持つ女番長として、日本中で有名になっていたのだ。
しかも、なほは全国各地を回って学園艦近くの不良グループをほぼ1人で制圧し回っているらしい。潰した不良グループは、傘下に入れれることで、監視も兼ねながら治安維持までしている。そのせいから、予想に相反して全国各地になほの熱狂的ファンや支持者、更には治安維持にと誘致する街まで出て来る始末。そのなほの人気と反比例して、なほが西住の名を背負っているという面で、淑女育成の戦車道における汚点の西住流は、信頼を落としている。

気づいた時にはもう、なほは西住流の権力で捩じ伏せることが出来ないぐらいその勢力を大きくしていた。



更に、なほはみほと共に大洗女子学園で戦車道を再開していた。
このままではいけない。すぐさまみほに勘当を言い渡し、なほとみほの矛先がなんとしてもこちらに向かないことを祈った。




_____________________




切欠は些細なことだった。


『親子の向き合い方』



そういった本をたまたま本屋で手にした。

興味本位で買って読んでみた。


すると、私の娘達との向き合いは、現代において古風なものだと知った。
戦車もいずれ旧式化してしまうのと同じように、私もまんま先代からされた扱いを娘達にするのではなく、向き合うことも大事なのだと…
更に私は一人っ子だが、なほたちには姉妹がいる。その違いになぜ今まで一切気づかなかったのだろう。

それらのことを知るには、既に手遅れだった。



なほが、西住流を潰すために大洗女子学園で戦車道大会を勝ち上がっているのは明白。何としても、黒森峰に残ったまほには頑張ってもらう必要があった。

まほには、幼少時代にドイツの派遣選手相手に圧勝した時のような大きな期待をかけた。黒森峰には何としても勝ってもらわなくてはならない。
西住流を、存続するために。



________________________



よくよく考えれば気づくことだった。
私は、ダメな親だった。













まほ1人に何もかも背負わせすぎた。
大洗女子学園は黒森峰女学園に大差をつけて圧勝。黒森峰女学園は歴史的大敗を喫した。

なほの戦車道は、因縁の島田流をも味方につけて黒森峰を翻弄、かつて幼少時代に望んだ英国戦車で、黒森峰女学園を圧倒。
今年のMVP選手にまで選ばれることになった。

そして、なほはMVP選手に選ばれた時、壇上で思いっきり西住流戦車道が過去になほに与えた苦痛を全て明かしてしまった。
ただでさえなほの傘下が西住流邸宅に抗議しに来るのに、なほのインタビューでの発言は、火に油を注ぐ同然だった。
世間的な批判も、傘下のグループの抗議も、これ以上ないくらい過激さを増した。





みほはなほといる現状に満足し、その結果未練なく黒森峰と西住流を完膚なきまでに潰し、今では西住流の勢力圏だった国共広山蒙にまで手を伸ばされた。







西住流は、一部を除いて完全に信頼を失った。もう、この流派はおしまいだ。






そして、まほはあらゆる期待とそれに答えられなかった結末として、精神的に病んで首を吊った。



私がすぐに自殺に気づいたおかげで未遂に済んだものの、私は泣くだけ泣いた。私の行いは姉妹を粉々にし、挙句代々続いてきた西住流戦車道を破壊してしまった。


数年ぶりに顔を合わせたなほからも胸倉を掴まれて酷く怒鳴られた。私は何も言い返せなかった。全て流派に囚われすぎた挙句姉妹の仲を粉々にした私の責任だ。
なほは言っていた。娘を殺しといて何が親なんだと。人命より流派や勝利のことしか頭にないのはいったい何事なんだと。
全てなほの言う通りだ。これはなほから報いを受けるべき事案だった。私は今、受けるべき罰と報いを受けているんだ。




そんな私を、どうか殴るだけ殴ってもいい。まほを追い詰めたのだから私だってその報いを受けてもいい。

だけど私は、親としてなほに対し、最後の可能性をかけよう。




まほも半植物状態から目覚めた。




西住流戦車道も落ちぶれた。







娘達との向き合いも、戦車道も、流派も、ゼロからのスタートをかける。



それが、今私が出来ることなのだから。




次回投稿はちょい未定です。


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40話 島田と西住

アクスマシさん、Toshikazuさん、高評価9ありがとうございます!

今回はなほ視点です。




まほ姉が目覚めた。
2週間もの間、風紀委員にも無理を言って、みほ姉と共に遅刻欠席見逃しの特典を利用して、生死の狭間のまほ姉に付きっきりだった。

タイムリミットの2週間、ずっと付きっきりだった甲斐があった。
そう思っていた。まほ姉が、目覚めるまでは…。

「ここは…?」

「おはよう、まほ姉」

まほ姉は辺りをキョロキョロと見渡し、自分の手の平を見つめた。












「なんで…なんで私は死んでない!?」

「ちょっ!まほ姉!」

まほ姉はガバッと勢いよく起き上がると大粒の涙を流しながらそのまま立ち上がろうとした。
私はそれを多少強引に抑えつけた。


「なほもなんで私に構う!私は西住流を守れなかったしなほやみほからも捨てられた!生きてる価値なんてないのに!」

「いいから落ち着いて!」

「やだ!もう死にたいし私に戦車道も黒森峰も背負う価値なんてない。さっさと殺してくれ!!」

まほ姉は今にも飛び上がって屋上から飛び降りそうな勢いだった。私はそんなまほ姉を力で強引に制止するしか出来なかった。

「なほだってあの時私に刃向かったじゃないか!やっぱり私はなほからもみほからも嫌われてるんだ!なんで逝かせてくれないんだよ〜!!」

まほ姉は同時に幼児退行も起こしていた。こんなまほ姉、もはやまほ姉ではない。完全に決勝での敗北や西住流の圧力によって、まともな思考力や判断力を失っていた。

「まほ姉!西住流が潰れた以上は私と新しい戦車道を見つけ出そう!」

「いや、私は西住流の唯一の後継者…。敗北したから責任も果たせなくて潰した。私はもう死ぬしかないんだ〜!!」

まほ姉は私の手を強引に振りほどこうとする。しかし、私の腕力は姉妹どころか戦車道選手随一レベルなため、まほ姉が簡単に私の手から逃れられるわけなかった。

とはいえこの状態が長続きすると、目覚めたばかりということや点滴に繋がれていることも考えて、危険な状態であることは確かだった。
挙句、まほ姉は私に向かってとんでもない一言を漏らした。

「もう、なほはみほと一緒にいればいいだろ!」

「………まほ姉!」

私はついカッとなってまほ姉を強引にベッドに捩じ伏せた。

「…いいかまほ姉!今回の全ての元凶は西住流だ!あんなクソ流派に操られんな!まほ姉はあの流派に囚われすぎだ!」

私はまほ姉の四股を強引に抑えつけた。これならまほ姉は絶対に動けない。病人にすることではないかもしれないが、みほ姉は買い出しに行っていて私1人しかいない以上、こうして時間を稼ぐしかない。



「あらあら、ちょっとなほさん退いてくださいな」

「え?」

私は急いでまほ姉の上から退いた。そして、当人の手からあるものが発射された。




「弱めの麻酔銃ね」

そんな麻酔銃を撃ったのは、島田流家元の千代さんだった。麻酔銃を撃ち込まれたまほ姉は、その場で再び目を閉じた。
ある意味、千代さんの麻酔銃は強引ではあったものの、このまま暴れさせておくより正しい方法だったかもしれない。
まほ姉の病室は1人部屋ではあるものの、今思えば放置しておくと危険なものが多かった。まさか起きていきなり暴れ出すなんて思わなかった。しかも1人部屋だったが故に周囲に人も私以外にいなくて、どうしようもなかったから千代さんには助けられた。



「千代さん…色々とありがとうございます」

私はこの場に現れてくれた千代さんに感謝を言った。

「しかし、どうしてこちらが?」

そんな駆けつけてくれた千代さんの口から飛び出したのは、驚くべき事案だった。





「…西住しほに頼まれたの」

「…あのクソババア、プライドもないのか…」

まさかあのクソババアが、千代さんに頼み込むとは思ってもなかった。いくら交流があるとはいえ、ライバル流派に洗脳した自分の娘見させるとか正気の沙汰ではない。


「しほ、相当悔やんでるみたいね」

「そんなの自業自得だよ」

もうあのクソババアのことなんか眼中に無かった。まほ姉のメンタルケアを終え次第、西住流戦車道から距離を置いて、千代さんが過去に提案してくれた養子となり、姉妹全員で島田流にお世話になる気満々だった。

「なんで千代さんはあんな奴のお願いきいたんですか?」

「んー、気まぐれよ」

「気まぐれで島田流の指導する大学選抜のある山梨から熊本まで来ます?それに私は国共広山蒙との交流の途中に千代さんのライバル的立ち位置にある西住流と接触したんですよ?それに、千代さんは何もなしにライバル流派のお願いを気まぐれできくような人ではありません」



「……察しがいいわね」

千代さんは全てを見透かされたことに対する驚きの表情を浮かべた。

「千代さん、教えてください。何故ここまで来たこともそうです。やけに私たちに献身的過ぎません?それも結構最近、エスカレートしている気がします」

その時であった。


「なほー、ただいま……」

丁度みほ姉が買い出しから帰ってきた。

「丁度いいわ、みほさんもこちらへ…」

麻酔銃によってぐっすり眠っているまほ姉を背に、千代さんは重い口を開いた。





「かつて、私の先代は鬼畜で厳格だったの」

それは私ですら初めて耳にすることだった。



「……どういうことですか?先代が厳格だったことが愛里寿や私たちに反面教師に生きてるということですか?でもそれだけじゃ他所の流派の娘たちにまで献身的になる理由にはならないでしょう?」

「いいえ、確かに先代の厳格さが反面教師というのもあるけど、実はもうひとつれっきとした理由があるの」

そして、千代さんの口から再び驚きの事実が飛び出した。


























「私、実は一時期流派の圧力に耐えかねてスケバンだった時期があるの の」

それは紛れもない、千代さんは私を過去の自分に重ねていると言っているようなものだった。




千代さんが昔女番長だったという設定は、当然ながらこの小説オリジナルです。
現在、再びオリジナル学校を出すか悩んでます。
・ブエノス高校(アルゼンチン)
・神話学園(ギリシャ)
・マジャル学院(ハンガリー)

次回作に回す可能性もあり


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41話 再出発です


超短いです。



「千代さん、それは本気ですか?」

「えぇ、話した通りよ。私は先代と和解できなかった。先代は事故死してそのまま私が島田流師範を受け継いだ」



千代さんは全てを話してくれた。
島田流戦車道に嫌気が差し、不良に変貌した過去を。

そして、










戦車道から距離を置いて好き放題暴れていたら、師範が事故で亡くなったこと。

和解できぬまま先立った先代島田流師範。その未練をもう目の前で見たくないから、もし私とあのクソババアの間で、互いに和解する気があるなら協力するという。


「貴女は過去の私。だから放っておけない。これは立派な理由じゃないかしら?」

千代さんがわざとらしく子供のように首を傾げる。
私はそんな千代さんと視線を合わせると、自然と過去のことを思い出された。

今思えば、私も戦車道カフェでのあの時、まほ姉を救い出せなかった。西住流から距離を置いたことが、流派や姉妹を巻き込んだ人生の分岐点だった気がする。
家族の歯車を狂わせたのは西住流でもあるが、

私でもあった。


「私はなほといられて幸せだけど…やっぱりお姉ちゃんもいないとダメな気がする」

みほ姉も考えは同じだった。



私は千代さんの過去を聞いて思った。千代さんは、過去のことを引きずってなどない。私たち西住流を救うことで、昔の自分にケリをつけようとしている。





私も、いつまでも西住流に虐げられた過去に引きずられていてはダメだ。
もし、クソババ…いや、しほが私と和解する気があるなら、私は許そう。それが流派の垣根すら超えた千代さんの願いなら、叶える必要がある。

だけど…けれども……心の底ではまだ彼女を憎んでいるのも事実だった。





だから、答えは出ていた。





「私が許しても、まほ姉は許さない。西住流が本気で私たちと和解を望んでいるのなら、クソバ…しほに具体案を出してもらおう」

それが私の答えだった。




「まあ、懸命ね。今のまほちゃんじゃ、まともな思考もできないし、戦車道どころではないものね。暫くの間、心のケアに努めましょう」

私はコクリと頷いた。まほ姉は何とか目覚めてくれた。私もみほ姉も、もう2週間も大洗女子学園を離れている。流石にこれ以上間を空けるのは紀香や美玲、更にはどん底のメンツも、大洗女子学園のヨハネスブルグの治安維持も限界が来るはずだ。


だから、私はあることを提案した。


「しほをここに連れてきて、2人で暫く過ごさせて欲しい」

自分の犯した罪は、自分で拭ってもらおう。





「あと、私ら大洗女子学園にはやるべきことが残ってる」


私は顔を上げた。



「エキシビションマッチだ」


_____________________



「西住流が潰れたか…」

七三分けの男が呟く。

「西住流に無くなられては困ります」

禿げた和服の年老いも同調する。

「西住しほさんには高校戦車道連盟会長をやってもらうつもりでしたからねぇ。やはり大洗女子学園のなほは…西住流を取り戻すために邪魔になりますね」

「………だからといって約束を反故にして廃校など…」

大洗女子学園に暗雲が差し掛かっていた。

「…大洗女子学園の戦車道選手は皆素人でした。しかも寄せ集めの中古戦車だらけ。それを優勝まで導いたみほ、そして明らかに多対戦に強いクルセイダー。廃校にして分散すればなほとやらの勢いも弱くなり、各学校のレベルも上がります」




西住しほも知らないところで、勝手に西住流復興を狙った勢力による、大洗女子学園廃校の話が進んでいた。


















しかし、彼らは後に後悔を味わうこととなる。




短くてごめんなさい
怒涛の展開ですが、千代の意志をきいたなほは果たしてどう動くのか。


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42話 大洗のピンチです!

知波単学園の出番はまあございません。
彼女らはキーパーソンではないので…

というわけでエキシビションマッチはアンツィオ高校戦並にカット。

まあ本作品では知波単学園以上に国共広山蒙が活躍されますから…

ちなみに前話より1ヶ月ほど経過してます。
そして最近紀香と美玲の出番少なくて申し訳ないです。色んなキャラ出ちゃったので…。彼女たち好きな人います?



「吶喊!」

「おい!」

なほが叫ぶも届かず、知波単学園戦車は次々と聖グロリアーナ女学院とプラウダ高校の連合チームに無茶な突撃を敢行した。

「やられました!」

「だろうな!」

なほも思わずそのアホっぷりに叫ぶ。


これが国共広山蒙の蒙派と満派が崇拝している知波単学園の姿なのだと思うと溜息の止まらないなほであった。偏差値は必ずしも作戦に響かないのかと、バカと天才は紙一重なのだとなほは感じた。

吶喊作戦が通じたのは、史実で戦車も持たない中国が相手だったから。その分戦車の発展に遅れが生じたが故に、九七式中戦車主力の知波単学園では、まあプラウダや聖グロリアーナ相手には部が悪すぎる。

その上で吶喊とは、無謀行為でしかなかった。








『プラウダ高校聖グロリアーナ女学院の勝利!』


案の定、知波単学園が足を引っ張ったことによってみほの立てた作戦は総崩れ。なほはそのイカれた吶喊精神相手に喝を入れたくて仕方なかった。


_____________________



「それがお前達の!やり方かァァァッ!!」

試合後、なほは知波単学園に大洗の銭湯の中で問い質した。

「そうであります!」

「吶喊にあり!」

「吶喊こそ我が知波単精神!」

「吶喊!」


「……………」

ダメだこりゃ、ともう突っ込む気すら失せたなほであった。


「まあ、気にかけることないですよ姉貴」

「そうだ、私もFPSでは稀に突撃敢行しますし」

フォローにならないフォローをする美玲と紀香。

「そもそも機体性能差もあったよな…寄せ集めと、弱い汚点を貼られた日本陸軍戦車がメインの、大洗女子と知波単の間ではソ連とイギリス戦車主体の相手に無理があったかもしれない…」

なほも思わず今回の敗北は免れないものだと感じていた。1度なほは、プラウダとも聖グロリアーナ女学院とも戦っているため、その戦法は結構知られてしまっている部分もある。
が、それでもなほの奇想天外な作戦遂行力と紀香や美玲との的確な連携プレーにより、プラウダと聖グロリアーナの戦車を計10両以上も仕留めている。

「私にとっちゃ初めての敗北だったな。まあ、撃破されはしなかったけど…」

なほは思いっきり身体を伸ばした。




『至急、生徒会長角谷杏。繰り返す、生徒会長角谷杏。役人がお呼びです』

なほが身体を伸ばしたと同時に風呂内にまで流れてきたアナウンス。そのアナウンスは、後になほどころか、現在入院中のまほ、それに付きっきりの菊代としほ、西住流全ての運命を大きく変えることとなるのだが、そんなことも知らんと言わんばかりになほは大洗の温泉を満喫していた。



______________________







銭湯を出て、プラウダ高校、聖グロリアーナ女学院、知波単学園の面々も各学園艦に戻ったところで、なほたちも大洗女子学園本校に戻ろうとした。
が、



「なんだよこれ…」

校門には、大量のKEEP OUTテープが巻かれており、遠回しにそれは生徒を含めた誰もが立ち入り禁止であるということを示していた。

「姉貴、どうします?」

「姐さん…」

美玲とフリントがきいてくる。なほは顔を顰めるが、すぐに答えは出た。

「破るか」

なほは手始めに手前のKEEPOUTテープを腕力で強引にビリビリに引き裂いた。

「ヨハネスブルグは校内以外からも行けるが、メインルートは校内から行くからなあ…。ここ閉ざされると大半の連中が逃げ場失うし、行くぞ」

そうしてなほが残りのテープも引き裂こうとした時。

「君達、何入ってるんだ?」

「あ?」

なほが振り向くと、そこには七三分けの眼鏡の男が立っていた。


「私らの学校に入って何が悪い!」

「そうだそうだ!」

「立ち入り禁止など許されることではない!」

なほたちのそんな訴えに対し、役人の言葉は非情であった。

「君たちはもう、大洗女子学園の生徒ではないのだよ。詳しいことは彼女から聞くが良い」

そう言って役人は去っていった。
そして、その役人の後ろには、先程入浴中に役人に直々呼ばれていた角谷杏生徒会長の姿があった。
















「大洗女子学園は、8月31日をもって廃校が確定した」



それは思いもよらない、優勝すれば大洗女子学園の廃校を撤回するという約束事を反故にした、役人の裏切り行為であった。



______________________


『廃校!?』

「はい、何でも口約束はしっかりとした約束事ではないから、今回の件を覆すことは出来ないと…」

なほは、薄暗く夕日に照らされた大洗女子校門前にて、千代さん相手に電話していた。その手には激しい怒りからか汗が吹き出ていた。

一方、なほの仲間の美玲も紀香も、廃校撤回の約束を反故にされた憤怒のあまり、バーどん底のメンバーと共に大洗女子学園の壁に役人の悪口などをスプレーで落書きしまくる始末。流石に今回ばかりはなほもそれを許した。廃校なのだから最後に廃校と言ってきた役人の悪口を散々書きまくってやろうという抵抗の粋だった。





「千代さん、今回の件、いくつか疑問が残るんです」

なほには、今回の廃校の件でいくつか思い浮かぶ疑問があった。

『何かしら?』

千代もなほが気になった点について興味を示す。




「はい、まず普通廃校は3月とか学年度末にする筈です。本来この時期の廃校だなんて、自然災害なり余程のことがなければありえないんです」

『なるほどね……』

千代はなほの示してきた疑問に興味を寄せる。




「それだけじゃありません。西住流が虫の息の中、廃校を強行してきたことです。優勝した大洗は、西住流の影響が強い黒森峰を決勝でこれでもかというばかりに叩き潰しました。まあ殆ど私ですがね。西住流は、高校戦車道連盟に大きな影響を及ぼしていると聞きました。














今回の件、戦車道連盟に残った西住流勢力が大洗に対する復讐返しをしているとすれば、廃校強行の件、辻褄が合いません?」

『…そうね』

なほは率直な疑問を投げかけた。


『なほさんの憶測は素晴らしいわ。半分正解…ってところかしら?』

「ん?違うのですか?」

なほは千代に聞き返した。


『そうよ、その辺は御本人の口から語ってもらいましょう』

「え?」

そうして千代相手の電話が切れる。

「……?」

なほは首を傾げる。













「なほ」

「!?」

なほの背後より、随分と耳障りな声が響く。










「何しに来たんだよ…!まほはどうした!」

そこには因縁の相手、西住しほが立っていた。



「まほなら菊代に見てもらってる…。貴女が西住流を離れた後、西住流邸宅のお手伝いさんとして来てもらった方よ。といっても、全て私の責任…」

"自分の責任"

そうきいたなほは、身構えるのをやめた。




「今回の件、私は一切関与してないわ。今回の件、どうやら高校戦車道連盟の学園艦役人たちが、私をスムーズに高校戦車道連盟理事長に就任させるため、なほの勢力を削ぐために勝手に行ったことらしいの」

そうきいたなほは、身構えるどころか散々恨んできた西住流に対して耳を傾けていた。




「私はケジメを付けなくてはいけない。西住流再建のために、失った信頼の回復のために。だから、ここは私も大洗女子学園廃校の件に、全力で抗うつもりよ。なほも……今回ばかりは結託して、好きなだけ高校戦車道連盟やら学園理事役人を、徹底的に問い質すのよ」

そうとだけきくと、なほは……













「分かった、まほ姉の件といい西住流は確かにダメだ。けど、もし本気でその覚悟があるなら、その手を取ろう」

まだ悪夢の中に囚われているまほのためにも、大洗の未来のためにも、なほは全ての主犯である西住しほの手を取った。







「けど、次はねえぞ、母さん」

「えぇ」

これは、初めてなほがしほを母さんと呼んだ瞬間でもあった。





__________________



「なほ…私は…」

まほが目を覚まし、上半身を起こした。その様子に、付きの菊代は驚きを隠せなかった。


「まほさん!?」


必然か、不必然か、病室のまほにも動きがあったのだ。



大洗女子の廃校の件を切欠に、覚悟を読み取ったなほは西住流と手を組んだ。

最終回は近い…


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43話 大洗の反撃だ!!

毎度高評価やコメントくれる人ありがとうございます。



「こんな非常時ではな…」

なほは、しほと手を交わした。

「えぇ、高校戦車道連盟の身勝手な行いで、来年黒森峰が大洗にリベンジする機会を無くされては困るわ。だから、今回の件は協力してくだ…さい……」

しほは喉から突っかかっていたであろう言葉を口にした。





そしてこの合作は、後にしほとなほの復縁の第1歩となると世間に大きく認知される。


______________________


早速大洗に戻ったなほは、一旦は学園艦役人の指示に従って大洗女子学園を降りた。勿論、その間も反撃の準備を怠らない。

「これから私たちはどうなるんだ…」

「姉貴、それって本気ですか?」

「あぁ、お前たちには迷惑をかけるが、今こそ決起の時だ」





そして戦車道履修者は、一時的に、レトロチックな木造の旧校舎のような場所で転校先が決まるまで待機を命じられた。

その間も、なほは反撃ののろしをあげるタイミングをうかがっていた。全ては、しほの好機と捉えたタイミングである。











そして、その時は来た。

『角谷杏生徒会長さんと連盟まで直談判しに行くことになりました。あとは…分かりますね?』

「了解、既に島田流への連絡も済ませた。喜んで手配してくれるということだ」

『そう…、身勝手な奴らの困惑する顔を見るのが楽しみね』

そう言うとしほからの電話は切れた。なほも電話を仕舞うと、ふふふと悪い笑みを浮かべた。


「行き先は霞ヶ関だ。傘下ども、初仕事だ」



________________________



交渉の席についたしほと角谷と蝶野1尉の3人と、役員の2人。

「どうもどうも、これは西住流家元のしほさん。果てには陸自の蝶野1尉まで…。よくぞ連盟まで足を運んで下さいました…」

そんな連盟役員の社交辞令に対して、しほは机をダンっと強く叩いた。



「率直に問います。何故今年度戦車道大会の優勝校の廃校を強行したのですか!?」

しほは睨みつけるように役員たちを見据えた。

「…おやおや、まさか家元の口からそんな言葉が出るとは思いませんでした」

役員は顔色を変えた。しかし、それは決して悪い方向にではなかった。

「いつ私が大洗を廃校にしろとなど言いましたか?」

「……そう来てしまってはこちらも反応に困りますねぇ。もうとっくに西住流は用済みなんです。ここまで落ちぶれてしまってはもはや私たちが西住流の上にいるようなものですから」

「何!?」

西住流は、最後の勢力下だと思っていた高校戦車道連盟にも裏切られていた。

「しかしです。新聞にも大きく書かれています。『頑張った少女達、裏切られる』と」

ここで角谷杏が切り出す。

「そこは考えようですよ。世間的には、大洗が西住流の勢力にある黒森峰を負かしたために、西住流が復讐として廃校にした…みたいに認知されていますからね」

余裕の笑みでそう答える学園艦役員。実質、世間的な認知としては役員の言った通り、西住流が復讐の一環として大洗を廃校したことになっている。
西住流のクズっぷりを徹底的に演出した結果、西住流が復讐で大洗を潰したことになっていた。


「更に廃校措置によって西住なほという反西住流勢力を分散出来ました。西住流と反西住流勢力が戦車道で争った結果、落ちぶれた西住流に代わって我々連盟が大きな力を持てました。こういうの、漁夫の利っていうんですよね。今回の件は、非常に助かりました」

かつて西住流の配下にあったとは思えない連盟の態度に、しほは顔を顰めた。


「それに、必ずしも大洗の廃校は悪い事ばかりではありません」

「何処がですか? 少なくとも廃校措置をとった連盟ですらそれなりに世間的なバッシングを受けています」

角谷杏が反論する。ここまでの話、連盟が大きな力を持ったこと以外に何も大きいメリットなんてなかった。lose-loseの関係とも呼んでいいものであった。



「寄せ集めの戦車と素人集団の中、初出場で全国優勝まで導いた大洗のノウハウを持った生徒達を各学校に散りばめることで、高校戦車道の大きな発展が見込めます」

フフフと悪意に満ちた笑い顔を浮かべる学園艦役員。

「特に西住姉妹の次女と三女。次女の作戦立案、そして三女の作戦遂行力。2人とも西住流に囚われないからこそ生まれた自由な戦法。中でも三女は、番長として傘下を沢山持ち、大きな勢力を持っていると聞いてますからね。早いところ分散して戦力を削いでおきたかったんですよ。結果的に、連盟の独り勝ちってところですねぇ…」

1人部屋で高笑いをする学園艦役員。しかし、しほ、蝶野1尉、角谷の表情はというと、こちらも余裕の笑みを浮かべていた。







「そんな西住三女、なほがここ周辺に来てるとなれば…どうします?」

「へ?」

役員の間抜けな声がその場に響いた。






「た、大変です!!」

そして一瞬の静寂の後、連盟役員の1人が交渉の部屋に息を切らしながら入ってきた。

「どうした騒がしいぞ!!」

「それが…」

役員は酷く慌てた様子で、呼吸が間に合っていなかった。




「西住なほとその傘下と思わしき集団が、この戦車道連盟ビルを取り囲むように…」

「はぁ!?」

役人は大慌てでビルの窓から下を見渡した。

「なっ!?」


そこには、『大洗を返せ』という横断幕が掲げられ、バイクや戦車なども徴用された、2万人規模のデモであった。

「馬鹿な!!西住なほ勢力はあんな数いるのか!?」

その中には、大洗のヨハネスブルグの全員、日本中にいるなほの傘下がいた。


「すぐに通報して辞めさせろ!!」

役員は怒鳴った。しかし、息を切らしたもう1人の役員はそれに対して渋々と答えた。

「そ、それが…今回の件を警察に通報したところ、今回のデモ行為は許された行為であると…」

「はぁ!?一体誰が許可した!?」

次の瞬間、驚くべき単語が飛び出た。















「…島田流です」

「はぁ!?西住なほは西住流とも島田流とも繋がってるのか!?」

この時、役員は自身のなほの勢力に対する戦力の憶測が驚く程に外れていたことを知る。



「なほには他人を惹き付けるカリスマもある。伊達に日本各地に傘下を持つ番長なんてやっていません」

しほが言った。
外からは引き続き、幾度も戦車による空砲と拡声器による『大洗女子学園の廃校を撤回せよ』という声。
そしてその声は、連盟のあるビルを360度囲むように響き渡っており、役員が目視で確認できた数は序の口でしかないということなのだ。










「ダージリン様、そんな強行的な策をとっていいのでしょうか?」

「あら?別に私はグロリアーナから大量に戦車を持参して、大洗女子の廃校を撤回しないから来年から聖グロリアーナ女学院は戦車道大会に一切出ないと宣言してやっただけですわ」

「たまにダージリンって凄いことするわよね…」

「愚露李亜々奈もおります!姐さんたちの力に!」

「クルセイダー主砲ぶっ放したいですわ!」

聖グロリアーナ女学院も、デモに参加していた。



「佐世保の治安守ってくれた恩、ここで返すわ!」

「まさか大洗女子の廃校撤回がなければ来年以降戦車道大会へのボイコット宣言とは…」

「冷戦時のモスクワ五輪のようだな」

サンダース大学付属高校もデモに参加。




「なほさんのメンツを立たせるアル!!」

「国共広山蒙の底力を見よ!!」

遥々南の沖縄から、国共広山蒙もデモに参加していた。




「ドゥーチェアンチョビも参加だ!!」

「来年以降の大会ボイコットとは思い切ったことを…」

「ノリと勢いがあれば行けるぜ!」

アンツィオ高校も来年のボイコットを掲げて参加。



「プラウダだって!」

「ここで折れてはシベリア送り25ルーブルよ!」

「ボイコットだなんてまるでロサンゼルス五輪だべ!」

「カチューシャ様、なほさんの顔見てビビってたとは思えないべ」

プラウダ高校も参加。




更に北からはメイプル高校。伯爵高校、ビゲン高校、ギルバート、ヴァイキング水産、BC自由学園など全国各地の戦車道の盛んな高校より、全員が大洗女子学園の廃校を撤回しないと来年以降大会には参加しないとボイコットを掲げて、デモに参加していた。

大会参加校がいないと戦車道連盟は大ダメージを受けるので、このボイコットは戦車道連盟にとって最悪であった。








「……クソッ!!」

戦車道連盟は一転攻勢。追い詰められることとなった。

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44話 なほの追討ちです!



「本気ですか!?」

「悪いですが本気ですよ」

角谷、しほ、蝶野の3人との交渉の席を一旦外した学園艦役員辻は、部下の男にこの蛇に睨まれた蛙のような状況を打開する案を打診していた。
しかしそれは、大きな賭けでもあった。




「1階の扉を全部締め切りました。こちらはこのビルという要塞に籠城します。それだけで奴らはこちらに手を出せませんし、戦車も実弾や榴弾を流石に街中で打っ放す訳にはいきませんから。所詮ただのハリボテみたいなものですし、よく良く考えればこちらが奴らの体力が切れるまで耐えれば済む話ですからねぇ」

そう、辻はただ只管なほたち大洗連合とかつての仲間たちが体力切れを起こすまで、ビルという要塞に立て篭もることにしたのだ。
なほは所詮女子高校生であり、何日も耐えれるわけがないと踏んだ訳である。


「しかしそれでも、我々は360度囲まれている訳です!締め切ったところで奴らの勢いが収まるとは限りません!特に今回の件で西住なほは相当に怒り狂ってます。島田流も関わってる以上は何されるか…」

部下の男はこの状況下を恐れていた。元はといえば上司である辻が西住なほの力を見誤ったからこのような窮地に追い込まれているのである。なほは全国各地に暴力団の傘下を持っているため、集団で襲いかかって蜂の巣にされては…と、部下の男は自分の身以外にも高校戦車道連盟の未来すら危ぶんでいる。

それなのにも関わらず、随分と余裕の表情を浮かべる辻に対し、部下の男は不信感すら超えて、ただ謂れのない恐怖を覚えていた。





「君はこの状況を見て何も思わないか?西住なほとやらは所詮番長。考える能はないと…外ばかり見ているようではいけない。この建物には今誰がいるんだ?」

「……はい?」

その時、部下の男に嫌な汗が流れた。



















「西住しほ、角谷杏、蝶野亜美1尉は、3人とも言うところの人質ですよ」

「…ひと…じち」

この辻という男は窮地のあまり狂ってしまったのではないかと、不安に駆られた部下の男だが、辻の表情は本気だった。
大洗の廃校を強行したがためになほによって逆襲され、窮地の中で遂には高校戦車道連盟どころか人として恥ずべき行為にまで手を出そうとする辻に対し、部下の男は恐れをなして何も言い返すことが出来なかった。

「…さて、休憩もそろそろ終わりだ。私は人質たちの待つ交渉の席に戻るとする。君も頑張りたまえ」

辻は部下の男の肩をポンと叩くと、スタスタとゆっくり、先程の大洗廃校の件の交渉の席へと戻っていった。




「(辻さん…、西住なほを侮りすぎです…)」

拳を強く握りしめながら、先程口に出来なかったことを、部下の男はただ唇をかみしめて酷く後悔した。
そんな、交渉の席に戻る辻の後ろ姿の先に、部下の男は巨大な西住なほの幻覚を見た。

黒森峰の試合も、各地の学園艦にボイコットを起こさせたことも、西住なほの影響力の強さも、部下の男はしっかりと知っていた。だからこそ、ここで西住なほが終わるわけないと、勘が告げていた。
















そして部下の男が抱いたその不安は、奇しくも的中してしまうのであった。



「大変だ!!」

戦車道連盟のある職員が、辻の部下の男の元へと駆け込んできた。

「ど、どうしたんですか…!?」

息を切らし、随分と慌てた様子の職員に対して、ただ辻の部下の男は嫌な予感を覚えていた。






















「西住なほが…屋上から2人の仲間を引き連れて戦車道連盟のビル内に侵入しました!」



_____________________



学園艦役員の辻が再度交渉の席に戻る少し前…

「さて、目的地に到着!」

「まったく姉貴は随分と大胆なことを…」

美玲と紀香がまずは屋上に着地。


「千代さんにありがとうございますと伝えておいてください」

なほがそう言うと、島田流専属のヘリコプターの操縦士がグッと親指を立てる。そして、なほが最後にそのヘリを降りると、ヘリは遥か上空へと飛びだっていった。

「さて、紀香、美玲、傘下どもにはビルを囲んでもらった。それに、各学園艦にも連絡して、貸しを返してもらった。あとはその隙に私らが戦車道連盟に直談判する。いいな!?」

2人は「おう!」と声を揃えて言う。

「おし!じゃあ行くぞ!」

なほは早速屋上より、ビル内部への突入を開始した。















「何しているんだ!非常扉を閉めてこちらまで来られないようにしろ!」

油断しきっていた辻は、なほたちの侵入に慌てた様子で交渉の席で怒鳴り声をあげてしまった。
しかし、角谷杏、西住しほ、蝶野亜美1尉の3人は口角をあげてニヤリと笑っていた。

「そ、そ、それが…実は……」















「非常用の扉みたいですね」

「しかし非常用なのか脆そう…」

なほたち3人は辻の指示で貼られた非常用扉の前にいた。

「ちょっとどいてろ2人とも」

「OK!」
「了解です」

なほの指示で紀香と美玲はなほの後ろへ下がった。

「ホイッと」

紀香と美玲が背後に下がったのを確認したなほは、非常用扉に向けてある物を投げ込んだ。


その投げ込んだものは、次の瞬間眩い光を帯びて大爆発を起こした。その爆発によって非常用扉は粉々に吹き飛び、高校戦車道連盟の脆い扉がまた1つ壊れた。

「さ、次行くぞ」

こうしてなほたち3人は、戦車道連盟の貼った非常用扉をものともせずに突き進んでいった。
そんななほの投げ込んだものはというと…


「しっかし姉貴、まさかあの時大量に作った手榴弾がまだ残ってたとは…」

「威力も半端ないですね」

「まあ私の腕があればな…」

対サンダース大学付属高校の際に大量生産し、後に使用制限のためかなり在庫を余らせてしまっていた手榴弾だった。


「さて、もうすぐだな…」















「なんということだ…」

応接間にて、学園艦役員の辻は頭を抱えていた。
屋上からは予想しておらずに侵入を許し、非常用扉は全く機能せず、止めに入った職員はなほの腕力によって捩じ伏せられ、更には島田流の影響力によって外部に協力者が全くいないという状況。
明らかに、高校戦車道連盟の敗北であった。


「もうすぐ到着するでしょう…」

「ホントになほちゃん味方に加わると頼もしいねぇ〜。2度と敵に回したくない……」

「同じく…流派1つ潰すとは思いませんでしたよ…」

噂をすればなんとやら、応接間の外から足音が響いた。














「待たせたな」

なほとその仲間の紀香と美玲が、大量の書類を抱えて応接間に現れた。

「なほちゃんお疲れ様〜」

「なほ!」

「3人ともよく頑張ったわ!」

蝶野亜美1尉がパチパチと手を叩いて3人を迎える一方、なほたちが持ってきた書類を目にした役人は、青ざめた後に泡を吹いてその場に倒れ伏した。



「言われた通り、それらしい書類全部抱えてきました」

総重量30kgの書類の束を抱えて、なほはその場に腰を下ろした。



「まあ、一通り目を通したが、やはりやらかしてたみたいだな」

なほは書類の束から数枚ほど取り出してパラパラと捲り始めた。



「談合、脱税、そして昨年の戦車道大会の決勝で悪天候の中の試合決行を指示したのは辻健太とガッツリ証拠が揃っちゃってますねぇ。更には戦車道連盟職員への過酷労働から天下り、賄賂、更には戦車道選手に対するセクハラやわいせつ行為など、挙げてみれば挙げてみるだけ戦車道連盟全体の隠蔽された犯行の数々が出てきましたよ…。さて、これを見てどうお考え直ししますかぁ?」

なほは態と煽るような敬語を使い、泡を吹いてぶっ倒れた辻に対してトドメの一言を突き刺した。














_____________________




「そうか…なほが…」

「えぇ、案件は無事に片付いたそうなので、すぐにこちらに向かうとのことです」


まほは、時間と共に平常心を取り戻しつつあった。
最愛の妹と顔を合わせられるときいたまほは、あの自殺を志願していた時とは違い、自然と笑みが零れるようになっていた。




最終回は近い…


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45話 熊本に戻ります

並行作品が今まで人気だったので優先してましたが、ペースが落ちたのでこちらに戻ります。



なほは、姉のみほと共にある場所を訪れていた。

「まほ姉、起きたみたいだね」

「お姉ちゃん!」

まほが入院している病室。まほは、前回顔を合わせた時と異なり、かつての光の点った表情を取り戻しており、自殺行為に及ぼうとしていた時の自暴自棄さは無く、落ち着きを取り戻していた。



「もう…大丈夫?」

「あぁ、迷惑をかけた」

まほはなほの方を向いて静かに頷いた。

「お姉ちゃん…良かった…」

まほの平常さを見たみほは、思いっきりまほに飛び込んでそのまま抱きついた。まほは、なほが西住流と和解の第1歩を踏み出したことや、大洗女子学園の廃校を文科省と高校戦車道連盟に撤回させたという話を聞いたことで、不安の種として残っていた西住流と反西住流勢力の争いに終止符が打たれたことを確認し、更には時間経過としほと菊代の懸命なケアによって、精神面で安定さを取り戻していった。

そして、まほはなほと視線を合わせる。

「…なほ、ただいま」

まほは、ニコリと微笑んでなほにそう言った。


「あぁ、ただいま」

なほもニコリと微笑み返す。

かつて近所でも話題の仲の良い姉妹と謳われた三姉妹の絆は、数年ぶりにこの場に復活した。


「まほ姉、退院はいつになる?」

「…すぐにでも出来るかもな」

「そうか…」

なほはクスッと笑った。
みほは未だにまほのことをぎゅっと抱きしめている。そんなみほを、まほはただひたすら撫でていた。西住三姉妹の、長女として…。


「…まほ姉、みほ姉」

なほは病室のカーテンを全開に開けた。







「……久しぶりに、3人でこの辺りを回らないか?」

なほは、病院の駐車場に止めてある1台の戦車を指差した。







「思い出の…II号戦車で」

そう聞き終えたまほとみほは、もちろんと静かに頷いた。

「もちろんだけど、まほ姉のことはみほ姉と私がしっかり見てるよ」

「まあ、それは当然だな」

「やった!久しぶりに3人で出掛けれるんだ!」

このかつて幼少期に描いた光景を再現するのに、なほたちは8年もかけてしまった。
いや、僅か8年だけだったと考えるべきなのだろうか…。



_____________________



II号戦車は、原付バイクと同じぐらいのスピードでゆっくりと走っていた。

「なほ…公道での戦車の運転できるの…?」

「まあね、バイクと同じく戦車も免許とったし」

熊本の田舎町を、II号戦車でゆっくりと走る。たまに行われる三姉妹同士の会話以外は、II号戦車のエンジン音とたまに水溜りを踏んだ時の水音、そして鳥のさえずりなどの環境音がただ響き渡るだけだった。

「…………………」

「…………………」

「…………………」

なほが運転し、まほとみほが夏の晴天の中で戦車の上に乗る。幼少期とはいる位置が変わっているものの、三姉妹という枠組みなのは一切変わっていなかった。

「懐かしいね…」

「そうだな…」

「数年前の夏は、私が運転してたかな…」

聞こえる虫の鳴き声、たまに水溜りを踏み、三姉妹揃って川に飛び込んだりした数年前の夏。皆、考えていることは同じだった。
その頃はまほが主に戦車を操縦しており、みほに至ってはカエルを捕まえて投げてきたり、なほとまほの2人を小さい池に突き落としたり、ホースをぶっかけてきたりたまにII号戦車を操縦してはガンガンスピードを飛ばしたりと1番ヤンチャだった。3人とも考えることが通じあったのか、まほとなほはその時のことを懐かしくハハハと笑い、みほは黒歴史なのか顔を赤くしてあうあう言っていた。

「…全部、昔の日常が戻ってきたじゃないか」

「…そう、だね」

「8年もかかってしまったな…」

気づけば、三姉妹が皆望んだ関係に戻るまで8年もかかってしまった。まほは9歳から17歳、みほは8歳から16歳、そしてなほは7歳から…15歳…。


「みんなすっかりあの時と変わってしまったな」

まほがそう言う。
まほ自身は西住流戦車道そのものとしてどっぷり。みほはヤンチャさが消え失せて独自の戦車道を歩み始めた。

そしてなほは、全国的に有名な番長。更には西住流から勘当され、その後は、戦車を知り尽くした上で、フィールドを機動力で駆け回り、敵戦車を次々と葬る戦法で大洗女子学園を優勝に導き、今年度のMVP選手にまで選ばれた。


「私だけ…随分と濃い8年間だったかもな…」

なほは自分の髪の毛を弄りながら言った。唯一三姉妹の中で長い髪をしており、みほとまほが殆ど同じような髪型をしている中で、なほだけは金髪ストレートロングヘアといった別路線状態だった。

「なほ、折角だしその髪の色、黒に戻してみたら?」

みほがなほに提案する。行こうと思えばすぐにでもII号戦車で美容院やら床屋には行ける。

「…こればかりは…、バッサリ髪を落として姉さんたちと髪型を合わせるとかならいいけど…色は…」

ついついいじっていたために唐突に髪の毛について触れられたなほだが、髪型は譲っても金髪でいたいことは譲れないらしい。

「…今から美容院行って姉妹でお揃いにするか? なほだけやけに長くてガラの悪い不良感消えないからな」

まほがニヤリと笑いながら言う。

「まほ姉、私は元々不良だぞ?これでも西住流潰したんだからな?」

「今のはジョークに聞こえないよなほ…」

「今は西住流と仲悪くないからいいだろう?」

ハハハと笑うまほとなほ。なほに至っては、つい先日対立した挙句黒森峰も丸ごと西住流を潰した人の発言とは思えなかった。


「んじゃ、美容院向かうか」




___そして今日、なほはその長い髪を切り落とした。











「これでなほも、また西住家の一員だね!」

なほは、まほやみほとお揃いの髪型になった。尤も、髪色はかなり明るい金髪のままだが。

「…そうだな、ずっと忌々しいと思っていたその名字をまた背負うことになるなんてな」

なほはフフフとほくそ笑んだ。最後まで西住であり続けた結果プレッシャーに押し潰されたものの無事に復活を遂げたまほ、昨年の事件以降深く心に傷を負っていたところをなほに救われたみほ、西住流から勘当されたが故に西住流が深く深く反省するまでずっと憎み続けた挙句復讐を遂げたなほ。

辿った8年間はそれぞれ違えど、3人は血の繋がった姉妹であり、何があろうと結局最後には皆1つに集う。
家族、姉妹の絆とは、簡単に切り離せるものでは無い。

だから、なほは()()()、島田流の存在を示唆してまでまほとも対立する姿勢を取れたのだ。
尤も、巻き込まれたエリカは、なほに対してトラウマを植え付けられたとのこと。一方ではプラウダ高校のカチューシャも然り、見た目の厳つさに加えて、圧倒的戦力差の中敗北を喫したため、なほのことがすっかりトラウマとなっている。

しかしなほたちはそんなことなど知らない。けど、3人の心は童心に帰った故に、どこまでも清々しく晴れやかだったという。


夏の青空と太陽は、なほたち三姉妹を明るく照らし、その姿は数年前の彼女たちそのものであった。

















けど、なほは唯一1人だけまほについて気づいていることがあった。

















『まほ姉は、まだ戦車道には復帰できない。…というより、ティーガーに乗せたら精神面で…』


ただ1人、今後について考えていく中で、なほは1つの答えに行き着こうとしていた。




_____________________





「大学選抜と高校選抜の殲滅戦での試合…?」

島田千代は、とある人物より電話を受け取っていた。

「いいわね…でも条件付きでとは…?」

とある人物は、その条件について話した。





「…なるほど、面白いわね。いいでしょう、その案、乗らせて頂きますね___





















___しほさん」



あと数話続きます。
もうすぐ最終回です。


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46話 大学選抜vs高校選抜、開幕です!


お久しぶりです。この作品が終わり次第、バッドエンドルートもやっていこうと思います。




「ついに、この日が来たわね…」

「はい…」

試合会場から遠く設けられた観客席。そこには日本戦車道二大流派の家元、島田千代と西住しほの姿があった。

「あの子の…()()()戦いよ」

「………………」

あの子とは、言うまでもない。


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「まほ姉、準備はいい?」

「…あぁ、いつでも大丈夫だ」

試合開始前、なほはチームメイトたちと共に準備にあたっていた。


「そういえば、こんなルールよく考えたね?」

みほがなほに言う。そう、この試合企画を持ち込んだのは、言うまでもなく西住なほであった。




「あぁ、母さんに頼んだら快く承諾してくれた。これなら…、まほ姉もまたティーガーに乗れるようになるかもしれないからな」

なほはそう小さな声で呟くように言った。

かつて西住流を恨み、救命行動を取ったみほを流派という縛りの中で虐め抜いて追い出した黒森峰ですら粛清対象として行動していたなほは、そんな黒森峰の主将かつ自分の姉であるまほのために行動していた。



「しかし、よく大学選抜がこんなルールで頷いてくれましたね」

聖グロリアーナ女学院のオレンジペコが言った。


「まあ、しほさんには幾らか顔が通るし…それに、今回はプラウダや黒森峰のような重装甲の高性能ばかりを重視していた戦車道の風潮を改革する切欠になるからね」

今年、大洗女子学園がプラウダや黒森峰などの強豪校を次々と倒していった伝説は、必ずしも重装甲戦車ばかりが最強という訳では無いということを証明した。
そして大会の最中で急遽生まれた、各車長の戦闘力がチーム全体の強さにも比例するという方式に基づき、各々隊長の後継となる人物やそれ以外レギュラーとして活躍する車長たちにも自力で判断する力というものが必要となった。

そしてこの度、重装甲ばかりが最強ではないことを証明するために、『隊長車以外全て20t以下の戦車を使用する』という縛りで20両vs20両の殲滅戦をすることとなったのだ。

「次期隊長候補の育成にも繋がるし、何より今まで日の目を見ることなかった戦車たちにも活躍の場はあるかもしれないってことよ。クソ弱っちくて公式戦では一切の活躍も出来なかったかもしれないけど、これを機に活躍の機会を見出せるかもしれない」

そしてなほはある人物の元へと近づいた。

「なぁ、ヤイカ」

「うるっさいわね!」

なほはヤイカの肩をポンッと叩く。
ボンプル高校は、ポーランドという第二次世界大戦中にドイツとソ連に滅多打ちにされた国家の影響を受けた学園。所有戦車の大半が豆戦車と軽戦車で、巷で流行りの強襲戦車競技という10t以下戦車しか出れない非公開の大会があるのだが、そこでボンプル高校は特徴を生かして優勝を繰り返しているものの、公式戦では毎回1回戦負けに加えて滅多打ちが当たり前という散々な高校である。

「まっ、頼りにしてるよ」

「やかましいわね!」

ヤイカはハンカチを噛みながら悔しの表情を浮かべる。今大会もプラウダにフルボッコにされてた模様。



「なほ」

「うん?」

まほがなほに話しかけた。

「もうすぐ始まる」

「…そっか」

なほは1度目を閉じると、

「隊長、お願いね」

「あぁ、任せてくれ」

まほを奮い立たせた。



「国共広山蒙も、なほさんの力になるネ!」


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「さて、試合開始だ!」



高校選抜と大学選抜の戦いが幕を開けた。





大学選抜
センチュリオン×1(愛里寿隊長車)
M24チャーフィー×19(アズミ、ルミ、メグミ車両含む)

14
高校選抜
ティーガー×1(まほ隊長車)
IV号戦車×1(20t以下改造済みのみほ車両)
クルセイダー巡航戦車×2(うち1両なほ、もう1両ローズヒップ)
セモヴェンテM41×1(アンチョビカルパッチョペパロニ車両)
BT-42×1(継続高校車両)
三式中戦車(ネトゲ廃人さんチーム)
八九式中戦車(バレー部チーム)
II号戦車(エリカ&赤星チーム)
ヴィッカース6トン戦車(国共広山蒙)
M3スチュアート×3(サンダースからそれぞれケイ、アリサ、ナオミ車両)
BT-7×2(ニーナ、アリーナ車両)
T-26×2(カチューシャ、ノンナ車両)
巡航戦車MarkIV×2(ダージリン&ルクリリ車両、オレンジペコ&アッサム車両)
7TP軽戦車×1(ヤイカ車両)


次回、最終決戦開始。




次回をお楽しみに!


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47話 最後の戦い 前編


ちまちま修正入れつつやってます。



「油断するなよ…」

『大学選抜チームの実力は恐ろしいと聞いているからな』

周囲を警戒しつつ、まほのティーガーを先頭に高校選抜チームの各車両が続く。周囲は左方に森がある以外何の障害物もない平地な上に試合は始まったばかりだから会敵はないだろうがそれでも警戒は怠らない。
一方なほは、クルセイダー巡航戦車の中で今後の作戦を練っていた。

「チャーフィーもセンチュリオンも大戦末期の戦車だからな…」

「性能面でいえばこちらより遥か上ですね」

「どうする姉貴!?」

大学選抜車両は、とにかく質で圧倒的優位。美玲や紀香の意見も交えて、なほはクルセイダー巡航戦車のキューポラから顔を出して周囲の警戒をしつつ、いい策はないかと考えていた。

『とりあえず高台の奪取は先決だな』

そんななほたちの目の前には、高く聳える大きな山があった。まほの言う通り、間違いなくその大きな山こと高台を占領してしまえば、死角は幾らかあるものの辺り一面見渡せることから今後の試合運びが有利になることは間違いない。

「そうだな、しかしまほ姉、それは多分相手も同じだと思う」

『…そうか…。なほ、お前はどうするべきだと思う?島田流と親密だったなほなら行動も幾らか読めるんじゃないか?』

この瞬間、なほは実質隊長から今後のチーム全体の動きを委ねられたも同然であった。つまり、なほの判断次第で試合運びが大きく変わる。
なほは少し首を傾げるとすぐに答えを出した。

「…とりあえず偵察に行かせるぞ。ヤイカ、頼んだ」

『了解よ』

ヤイカ車両の7TP軽戦車が戦列を離れた。ポーランド戦車特有の軽さからか、グングンと森の中を突き進んでいく。

「チームを分けるぞ。相手はチャーフィー軍団だ。対抗するために、こちらも似たような性能持ちの戦車たちで3つに分割する。高機動型、自走砲突撃砲中心型、威力型だ」

そうして、将来的に7TPも合流することを踏まえてチームを3分割する。尚、ティーガー、IV号戦車、クルセイダー巡航戦車は同じチームとなった。


威力型
・ティーガー
・IV号戦車
・クルセイダー巡航戦車
・T-26×2
・三式中戦車

自走砲突撃砲中心組
・セモヴェンテ
・BT-42
・M3スチュアート×3
・巡航戦車MarkIV×2

機動型
・クルセイダー巡航戦車(ローズヒップ車両)
・BT-7快速戦車×2
・II号戦車
・八九式中戦車
・7TP
・ヴィッカース6トン戦車


一見バラバラに見えるかもしれないが、後に役立てることを信じてなほは編成を組んだ。

「さぁ、敵の裏の裏をかいてやろうぜ!まほ姉!」




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一方その頃愛里寿サイドは…


「(なほさんとみほさんはどう出てくる…?あの人たちは私の想像を遥かに超えてくる。特になほさんはフィールドすら利用する…)」

1人センチュリオンの上で今後の作戦を決める愛里寿。

「…高台を取りにくると予測。三方向から包囲して殲滅する作戦に出る。各班は配置に移動して」

愛里寿はタブレットで各戦車に指示を送る。





しかし、愛里寿は知らない。
なほたちは既に高台を捨てており、別作戦に出ているということを…。


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『本当にこんなところにいていいのか?背後から来られたら全滅だぞ?』

まほやなほ含め威力型班が配置されたのは先程奪取しようと考えた高台の下腹部。その他のチームだが、自走砲突撃砲中心組は森林といった天然の隠れ家でカモフラージュしつつ待機。
機動型には作戦を伝えて高台へ登らせた。

「大丈夫だ、ヤイカがしっかり情報送ってきてくれたし役目を果たしてくれたからな。ヤイカのおかげで敵は大きな勘違いすることになるからな」

『え?私は囮だったの!?』

ヤイカは今気づいたようで、思いきり叫んだ。
ヤイカの7TPは敵を発見した後、出会したチャーフィーによって呆気なく撃破された。とはいえ、これがなほの目的。撃破された地点は高台に登る際に障害となりうる敵がいないか確認してくるためにどうしても通らなくてはならない道。そこに偵察車両が来たということは、これから高台奪取に出ますよと言ってるようなもの。
これによって、敵によりこちら側のチームが高台狙いであることを確信させた。

「機動型チームを高台に登らせたし、奴らはきっと機動型チームを狙うだろう。そしたら行動に移れ!」

なほは既に作戦に出ていた。フィールドを知り尽くしたなほは、既に全員が手のひらの上だった。









そして、これがなほにとって最後の戦いとなることになる。







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「いた!敵部隊発見!」

チャーフィーによって発見された機動部隊組。センチュリオンに乗っている愛里寿は1人考えていた。

「(罠?でも頂上地点は下見ではカルデラのようなところがあったから、既に移動している?それに加えてあの7TPの理由は引き付け役?ますますなほさんの作戦が読めない。背後を狙う?しかしそんなのすぐに気づかれるしチャーフィーと戦力バラバラのチームでは軍配が上がるのは確実にチャーフィー側…)」

愛里寿は混乱していた。しかし、最終的な答えを自分の中で定めた。

「まだいる可能性がある。進め」

僅か6両しかいないものの、高台は下からでは全てを見通しにくいため、カルデラ部分に敵が潜んでいると予測。
こればかりは見ないと分からない。


「地面が結構ぬかるんでいる。勾配も急だから気をつけるように」

地面は先日の雨でぬかるんでいた。梅雨のため、雨が多いのは仕方ないのだが、戦車であれば進行に問題は無い。


「(しかし急な坂だ…泥濘……敵も移動に相当時間がかかっている)」

高校選抜の機動型チームも泥濘に苦労しているが、チャーフィーと同じぐらいのスピードを維持しており、チャーフィーとの距離は互いに縮まらない状況だった。


「(泥濘…勾配?まさか!)」


なほは、それを見逃さない。


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「撃てーっ!!」

なほの指示で威力型分隊全車両が一斉砲撃を開始。

『自走砲突撃砲中心組も敵別働隊を射程距離に捉えた』

「了解、そちらも一斉砲撃!」

そうして、自走砲突撃砲中心組も別方面の敵に一斉砲撃。



「チャーフィーが慌てふためいてるぞ!」

「いいぞ、敵には当てるなよ!」

バンバンと砲弾が放たれるが、その弾は全て戦車を逸れて山の斜面に突き刺さる。











そしてその時、地面が微かに動いた。

「来たか」


ゴゴゴゴゴと大きな音を立てて、泥濘のある高台の斜面が崩れ始めた。

「今だ!威力型班全員離脱!」

即座に威力型分隊は地滑りに巻き込まれなさそうな地点へ移動する。
チャーフィー部隊はその地滑りを諸に受けて、山の下腹部まで押し戻される。加えて泥に塗れてひっくり返る車両まで出てくる始末。


「よし、機動型チームはその地滑りに乗れ」

『了解!』

そして機動型チームは言われた通りに地滑りに乗る。ただ…

『無理だべ!』

『そんな無茶だべな!』

機動型班のBT-7快速戦車が、上手く土砂崩れに乗っかることが出来ずにチャーフィーと同じくひっくり返ってしまい、行動不能判定を受ける。



『ニーナ!アリーナ!アンタ達シベリア送りよ!』

『『ひえーっ』』





「今だ!奴らを撃ち抜いてやれ!」

土砂崩れに巻き込まれて上手く行動が取れなくなったチャーフィーをティーガー、クルセイダー巡航戦車、IV号戦車などの威力型班が撃ち抜いていく。


『自走砲突撃砲チームも2両ほどやったわよ!って…こっち後ろから狙われてる!』

「なに!もう奴らは反撃してきたのか?」

大学選抜も、ようやくなほの作戦に気づき、様子がおかしいことに気づいたのか、せめてものとして自走砲突撃砲チームに報復を喰らわせようと近づいてくる。

「とにかく逃げろ!こちらも退散だ!こちらは3両やられたが向こうを8両仕留めた!それだけで充分だ!」

大学選抜はなほの作戦に引っ掛かりはしたものの、その後の対応が思ったよりも早かった。



「撤退!撤退ィ!自走砲突撃砲中心組も逃げろ!」


なほの予想以上に素早い対応をとってきた大学選抜チーム相手に、








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「あれがなほの戦い方…」

観客席にて、島田流家元の千代と西住流家元の2人が佇んでいた。

「親離れしている間に、随分と立派に育ったんじゃないの?」

千代は皮肉を込めて冗談交じりに言った。

「そうかもしれませんね…」

しほは自分を陥れたなほが味方として戦車で駆け巡る姿を初めて目にした。その姿に圧倒されたからから、千代の言葉にも普通に耳を傾けていた。


「あの子が戦車に乗る理由、西住流はようやく理解した?」

「えぇ」



しほが話そうとしたその瞬間、声が掻き消されるぐらいの物凄い突風が吹き荒れた。




「そう…ね」

だが千代には聞こえたようで、千代は頷いて見せた。



















「だから、あの子が戦車に乗るのは、今日が最後になるでしょうね…」



なほが戦車にもう乗らなくなる理由とは…
最終回までもうすぐです。


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48話 最後の戦い 中編

バッドエンドルートのストーリーが固まってきたのですが、あまりに残酷かつ過激なエロ描写で18禁指定かもしれないです。

なんとかヤバいシーン省いて書くかもしれませんが。



「突撃砲自走砲中心チーム、そっちの戦況は!?」

なほは現在敵の集中攻撃を浴びている突撃砲自走砲別働隊リーダーのケイにコンタクトを試みた。

『今全速力でそちらへ合流を測ってるわ!今のところ至近弾はあっても撃破までは至ってない!』

通信機の向こう側からは、砲弾の音や爆発音が鳴り響いていた。

「そうか…無理はするなよ!そして慢心なんてものはもってのほかだ!」

『OK!!』

そうしてなほとケイとの通信は切れた。






しかし、この時点で高校選抜チームは、大学選抜が苦境の中で編み出した策に溺れようとしていた。



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「やっぱりあの三姉妹は強い…」

一方の大学選抜チーム。こちらはなほの土砂崩れ作戦で、高校選抜チームの戦車を3両仕留めたものの、20両あるうちの8両を失い、早速数的に不利な状況に追い込まれていた。

「あの分隊は本隊との合流を試みる筈。チャーフィーの機動力を活かして西住三姉妹のいる本隊を包囲して各個撃破してください」

そんな苦境の中で逆転を狙って作戦を編み出した愛里寿。この愛里寿もまた、みほと同じ策士家であり、なほと同じ戦車操縦技術の持ち主である。搭乗している戦車を仲間と息を合わせて自分の手足のように動かす天才だ。


『包囲して各個撃破?』

『じゃあ私たち』

『バミューダ三姉妹の』

『『『出番ね!』』』

「えぇ、思い切り暴れてきてください」

愛里寿は幼い声で年上の隊員達に次々と指示を出していく。





「なほさん、みほさん、複雑な気持ちです。かつて流派を恨んで捨てた貴女たちが、その流派を率いてこうして戦車を交えて戦うことになるというのは…」

愛里寿はセンチュリオンのキューポラから顔を出して、小さな声でそう呟いた。


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突撃砲自走砲別働隊との合流を先決とした作戦を練って早くも5分が経過。

「まだ来ないのか…」

森の茂みに大きな車体を隠すこと5分。いつもだったら何気ないこの5分という短い時間は、戦車道という競技の中ではとても大事な5分間だ。

「別で動いている機動型チームも…合流地点を教えた筈なのに…」

なほはとても嫌な予感を抱いていた。

『…大丈夫なのだろうか?』

「…まほ姉」

この戦車道の試合においての隊長であるまほがなほに通信で連絡を入れた。
今回の試合は、次期隊長候補育成や今年の大洗の優勝を受けて重装甲高威力至上主義を改めることが表向きとしているが、本来この試合は西住流の期待の圧力に潰れてしまったまほを精神的ショックから解放するために、まほを傀儡隊長に据えて実質なほが隊長職を背負ってかつての縁である島田流率いる大学選抜と砲を交えるエキシビションマッチとしての役目を持った試合なのだ。

『私は…1度戦車道にうつつを抜かした臆病者だ…。今私がここにいるのも…実に不安でしかない……』

まほは確かに1度未遂ではあるが自殺までしようとした。そんな震え声の長女のまほに対し、末っ子のなほはクスリと笑うと口を開いた。





















「心配いらない、姉さんたちは何が何でも私が護る。誰かのために剣を振るう騎士のようにな。それが私の戦車道だ」

それは遠回しに、この試合を最後まで見届けたらなほは戦車道から足を洗って引退すると言っているようなものだった。

『…なほ、お前』

まほが何か言おうとしたその瞬間のことであった。







『ソーリー!!遅れたわ!!』

『敵も引き連れて来てしまったが…』

遅れて敵戦車より逃走中の突撃砲自走砲チームがやってきた。

「来たか!全員出るぞ!」

なほがそう言うと各戦車はマナーモードにしていた戦車を動かし始める。しかし、それと同時になほはある違和感に気づく。




「(突撃砲自走砲を追尾してる戦車隊…チャーフィーの割に砲撃の間隔も空いてるし中には一切砲撃しようとしてない車両もいるな…まさか!)」

なほが気づいた時には既に遅かった。






『反対方向より敵戦車接近』

『もう一方からも来てます!』

「なに!」

別で動いている機動型チームはまだ来ていない。

『囲まれた!』

『三方を囲まれた!』

「クソっ!機動型チームではチャーフィー相手には火力不足なのがバレたか…」

大学選抜チームは、なほが別に作っておいた機動型チームには一切目もくれずに突撃砲自走砲チームと威力型チームの2つを集中攻撃する作戦に出た。

「これじゃ高校選抜チームの方が不利だ…」

数的優位に立ったと思いきや、大学選抜の咄嗟の判断により一気に追い込まれる高校選抜チーム。

『巡航戦車MarkIV2両とも撃破されてしまいました…』

『なほさんの策が敗れるなんて…』

早速自走砲突撃砲中心組の巡航戦車IV号がやられてしまった。

「今から機動型を呼び戻すのもリスクが高い…」

機動型チームは遠くには行かせてないものの、下手に呼び戻して突っ込ませるのも愚策のため完全に行き詰まった。特に国共広山蒙のリーは初心者も相俟って中々危険だ。

「喰らえ!バミューダアタック!」

「スチュアートがチャーフィーに適うか!」

『Oh!!スチュアートが3両ともやられちゃったわ!』

「クソっ!」

なほも反撃とばかりにチャーフィーを1両葬るものの、依然として高校選抜チーム不利で試合は進んでいる。

『アリクイチームやられちゃった…』

『T-26やられてしまいました!ご武運を祈ります!』

三式中戦車とT-26軽戦車2両もあっという間に撃破されてしまう。

『2両潰せたけどBT-42もやられちゃったね…』

『ノリと勢いも限界だったよ…』

続いて継続とアンツィオがダウン。遂に自走砲突撃砲中心組が全滅してしまい、大学選抜チームの残り戦車を9両にまで減らしたものの、高校選抜チームの残り戦車はそれより少ない7両まで減ってしまった。


「次にIV号戦車だ!」

遂にチャーフィーの波状攻撃が、みほの乗るIV号戦車に迫った。

「なんかあるか…」

なほは苦し紛れに戦車の中を漁った。







コツン







「…これは?」

なほは戦車の中で懐かしいものを見つけた。


「よし!残存車両、次の手に出るぞ!」


なほは声を出すと同時にキューポラから顔を出して思い切り振りかぶった。








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「…なんとか上手くいった」

包囲作戦が成功し、高校選抜チームの戦車を7両にまで減らした大学選抜チーム。
大学選抜チームの高い練度が無ければ成功しなかったため、本当に瀬戸際での成功となった。

「…けど、なほさんがあれぐらいのことで終わるとは思えない…」

愛里寿はなほの次の手を引き続き警戒していた。

『隊長、やりましたよ!』

『上手く行きましたね!』

『数的不利を覆しました!』

愛里寿の通信機に向かって喜びの声を上げるバミューダ三姉妹。しかし、愛里寿は彼女たちのテンションとは裏腹に表情を強ばらせていた。

「なほさんの…行動が予測できない…」


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一方、追い詰められた高校選抜チーム。ここでなほは、とんでもない行動に出た。






「オラオラオラオラァ!在庫処理じゃあ!」

なほの手から大量のあるものが投げつけられる。




















「ん?」

やがてそのうちの1つがチャーフィーの砲塔の上に落ちる。









そしてそのチャーフィーの車長は叫ぶ。

「手榴弾だァァァァァァ!!!」

「はぁ?手榴弾!? アイツなんてモン持ってんだ!」

「逃げろ逃げろ!!」

なほの手によって辺り一面にばら撒かれた手榴弾に、大学選抜チームは大混乱。統率や隊列を乱してバラバラに逃げ惑う。

「アイツ、高校戦車道大会の2回戦で手榴弾攻撃をルール上で禁止にするという1文を加えさせた張本人だからな!」

「え、ちょっと待て禁止なんだろ?」

「あぁ、禁止…あ…」

時すでに遅し。なほたち三姉妹は、大学選抜チームの作った包囲網を抜けると置き土産にチャーフィー1両を撃破して戦列を離れることに成功していた。







「私が投げたのは火薬抜いた偽物だぜー。とはいえ火花とか煙は出るから本物と間違えちゃうよな!」

なほはそう言い残すと、機動型チームにも合流を言い渡して戦線を離脱した。



「みんな、後は任せてくれ」

姉たちと共に、なほは機動型チームを率いて最終決戦の場に移動した。

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49話 最後の戦い 後編

まだこの回では終わりません。



現高校選抜チーム残存車両
・ティーガー
・IV号戦車
・クルセイダー巡航戦車
・クルセイダー巡航戦車
・II号戦車
・八九式中戦車
・ヴィッカース6トン戦車

現大学選抜チーム残存車両
・センチュリオン
・チャーフィー×7




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「これより全軍テーマパークと街中エリアへ突入」

なほは無線で全車両に指示を送った。
そんな時であった。

『なほ…』

「ん?なんだまほ姉?」

突如まほより連絡を受け取るなほ。

『私はこのまま突き進んでていいのか?なほに縋ってていいのか?ティーガーに乗り続けていいのか?』

先程高校選抜チームの車両が大量に撃破されたため、まほは一気に不安感に襲われていた。それでも尚自信を持ち続けるなほが、まほはとても恐ろしく感じたという。

「まほ姉、いいんだよ?私がいれば、絶対に大丈夫だから」

『なほ…』

なほのその言葉に、確実なる根拠はない。
けど不思議と、まほの心の支えとなるには、その言葉はあまりにも充分すぎるものだった。

「だから、私についてきて欲しい」

『…分かった、最後まで…戦おう!』

まほからは再び光の篭った声が出てくるようになった。


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『すいません!全部仕留められませんでした!』

『やられた…あの三女の切り返し半端ない…』

一方こちらは大学選抜チーム。追い詰め追い詰められの繰り返しをしている中で、高校選抜チームより残存車両は多いものの、偽物手榴弾攻撃だったり土砂崩れ攻撃だったり度々パニックを起こされたため、心身共に疲れ果てている搭乗員が大半だった。

「しかも街中とテーマパークを模したエリアに退避…追いかけたいけど…」

なほ率いる高校選抜チームは、偽手榴弾作戦で大学選抜チームが混乱している間に、今回のバトルフィールドの端にある廃テーマパークへと逃げていた。
搭乗員がバミューダ三姉妹を除いて殆ど疲れ果てている現状、今触敵しても高確率で撃ち負ける。ならば少し待って搭乗員たちの回復を図るべきだ。

「今は一旦一息つきたいけど……」

変になほに時間を与えてしまうと、彼女の持つメカニック能力で現残存車両を修復されてしまう可能性がある。
なほはクルセイダー巡航戦車を度々走りながら修理するなどして、故障率の高いクルセイダー巡航戦車を乗りこなしている。履帯が切れようものなら持ち前のパワーをもって手作業で修復してしまう。
30分もあれば粗方の戦車の様子ぐらい点検することが出来るだろう。

つまり前者をとっても後者をとってもそれ相応のメリットデメリットが存在するのだ。
これには大学選抜チーム隊長の愛里寿も悩みに悩んだ。そして、決めた。



「今しか……」

なほのメカニック能力を恐れ、愛里寿は短期決戦に臨むことにした。

「皆さん、私に続いてください」

愛里寿は残ったチャーフィー7両を引き連れて、なほの向かった街中戦場へと戦車を進めた。
そして、無線をとるとあの3人にもう一度繋いだ。

「もう一度、お願い。ルミ、アズミ、メグミ」

例のバミューダ三姉妹だ。

『またバミューダアタックするの?』

『了解』

『今度こそ仕留めるわ!』

この3人は、再び高校選抜チームを陥れることになる。

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「何かしら勝負に使えそうなところは…」

街中にやってきたなほは早速フィールドを探索していた。

『なほサン、いざとなったら敵に戦車ごと突っ込むアル!』

国共広山蒙の脳筋さからか、リーよりとんでもない自殺発言が飛ぶ。

「流石にそんな知波単精神はダメだ、街中殆ど関係ないだろう。そうだなぁ…」

なほは古びたジェットコースターのレールを見て思いつく。



「リー、あれに乗ってGPS役頼む」




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「もうすぐ着きます」

なほたち高校選抜チームが街中及びテーマパークを模した戦場に到着しておよそ10分ほど、大学選抜チームも追いかけるようにテーマパークエリアに到着した。

『しかしどちらに逃げたのでしょうか』

『死角が多いですからね』

大学選抜チームはゆっくり辺りを警戒しながら進んでいく。

「(なほさん、いつでも大丈夫です!)」



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「リー、南にチャーフィー3両は本当か?」

『本当ネ、囮の可能性がアルよ』

「そうか…」

なほはニヤついた。


「機動型チーム、ヴィッカース6トン以外、囮のチャーフィーに向かえ!」

『え!?わざわざ罠にかかるんですの!?』

機動型チーム臨時隊長のローズヒップがそう言った。

「いや、囮作戦ということは間違いなく本隊がいる筈。私らはソイツを探す。囮作戦ということはそこまで強い連中ではないし、間違いなくさっきの手榴弾作戦で疲弊した連中だ」

『なるほどですわ!』

こうして裏をかいた作戦に乗り出すなほ。果たしてこれは吉と出るか凶と出るか。















『チャーフィー3両、接触しましたわ!』

あれから僅か数分、機動型チームはチャーフィー3両と接触した。

「よし!暫く引き付けておいてくれ!本隊を探す!リー、そっちから本隊は見つかったか?」

なほはGPS役のリーに無線を繋ぐ。しかし、リーから返ってきたのは予想外の言葉だった。

『…本隊が見当たらないネ』

「なに?」

ジェットコースターレールのそれなりに高い箇所にいるが、敵戦車が見つからないという。ヴィッカース6トン戦車の場所的に、近くに敵が隠れていようものなら即座に見つけることが出来る位置ではあるが。

「3人がいるところは開けているから隠れる場所もないし、本隊ぐらいすぐ見つかりそうなものだが…」

『でも見つからないアル!少なくともここにはいないアル。遠いところにいるネ!』

「どういう作戦なんだ向こうは…」


そして、これはなほが大学選抜チームの戦力の中心を担う人物を知らなかったが故に犯した失敗となってしまった。





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一方の大学選抜チーム。囮だと思われていた戦車がいきなり機敏に動き始めた。

『な、なんですの!?』

いきなり高速で動き出した戦車に、じわじわと距離を詰めていたクルセイダー巡航戦車含め残りの機動型チームは大慌てになっていた。


『かかったわね!』

『私たちは囮ではない』

『装甲の薄い3両なら私たちで充分!』


『『『我ら3人、バミューダ三姉妹の恐ろしさを今一度知るといいわ』』』


囮だと思われていたチャーフィー3両は、なんとバミューダ三姉妹の車両だった。大学選抜チームは皆チャーフィーを使用しているため、搭乗員がどんな人物かまでは基本特定出来ないのだ。

「なほさん、貴女なら裏をかいてくると思いましたよ。ならば私はその裏の裏の裏だってかいてやります」



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『チャーフィー3両は副隊長車両よ!』

「何っ!?」

II号戦車に搭乗中のエリカから通信が入る。

「すぐ向かおう!」

そしてそんな西住三姉妹の背後には、センチュリオンの影があった。

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『行くわよ!』

『我ら三姉妹の!』

『バミューダアタック!』

チャーフィー3両は早速II号戦車に狙いを定めると動き始める。

『喰らえ!』

クルセイダー巡航戦車と八九式中戦車の間を抜けたチャーフィー3両は、II号戦車を取り囲むように回転し、逃げられないようにしたところで一斉砲撃を浴びせる。

『II号戦車撃破!』

『次は八九式!』

そして次はバレー部の八九式中戦車がバミューダアタックの犠牲となる。

『最後にクルセイダー巡航戦車!』

チャーフィー3両が砲塔をクルセイダー巡航戦車に向けた、その次の瞬間。

『私も一糸報いてやりますわ!』

ローズヒップのクルセイダー巡航戦車は急発進し、そのままチャーフィー1両の脇を抜ける。

『『『何っ!?』』』

ローズヒップのクルセイダー巡航戦車も、やられっぱなしとはいかないようで、せめてもの報いとしてチャーフィーに砲塔を向ける。更にはクルセイダー巡航戦車持ち前のスピードを生かし、限界速度までスピードを上げるとチャーフィー1両に向かって思いっきり突っ込む。

『馬鹿な!捨て身覚悟で向かってくるなんて!』

『まさかとんでもない自殺行動に出るとはね…』

クルセイダー巡航戦車は一気にチャーフィーに突っ込むとゼロ距離でチャーフィーに砲撃。勿論大戦後期の高性能戦車であるチャーフィーとはいえ、ゼロ距離の砲撃に耐えることは出来ず、バミューダ三姉妹は戦力を1つ失った。



『あとは頼みましたわ!なほさん!』

それと同時にクルセイダー巡航戦車もバミューダ三姉妹のうちの2両によって撃破された。




_____________________



「残る戦力は4両か…」

『相手側は6両…』

『ヴィッカース6トン戦車と私たちか…』

残った西住三姉妹は今後の動向について考えていた。まさか囮だと思っていた連中がよりにもよってバミューダ三姉妹という隊長の片腕的ポジションだとは思っていなかったのだ。

「ヴィッカース6トン戦車の偵察がバレていたのか?」

なほは作戦がうまくいかなかった要因を見つけ出そうとしていた。
そして、そのなほの発言は奇しくも当たってしまう。



『こちらヴィッカース6トン戦車!なほさん、偵察がバレていたみたいでジェットコースターのレール壊されたアル!』

「何だと!?」

無線を送ってきたリーだが、既に撃破されていた。ジェットコースターのレールを壊され、重力に従って地面に落ち、地面に叩きつけられた際の衝撃で白旗判定が出た。

「ジェットコースターのレールを壊されて地上に叩き落とされたところでリタイアか…」

これで機動型チームは全滅。残ったのは西住三姉妹だけとなった。

「…まほ姉、みほ姉」

なほは姉2人に通信機で無線を送った。

『どうした?』
『どうしたの?』

姉は2人ともなほに耳を傾けた。


「今、奴らは本隊と共にこっちに向かって来ている筈だ。つまりいよいよ最終決戦、行くぞ!」


『うん!』
『ああ!』


みほとまほ2人の姉の返事を聞き届けたなほは、テーマパークの端にあるとある箇所へと移動を開始した。



次回も極力早めに投稿できるようにします。


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50話 決着



現高校選抜残存車両
・ティーガー
・IV号戦車
・クルセイダー巡航戦車

現大学選抜残存車両
・センチュリオン
・チャーフィー×5


_____________________



「バミューダアタックか…」

『3両のチャーフィーが1両の戦車を取り囲み、一斉砲撃することで確実に撃破することを念頭に置いた戦法アル』

撃破されたヴィッカース6トン戦車の隊長であるリーが、機動型チーム全滅の詳細を事細かに見ていたため、なほは突破案を模索することができた。

『凄い連携アル。ローズヒップさんが一体捨て身覚悟で仕留めてくれたアル。けど、まだバミューダアタックが出来る連中がいるかもしれないネ…』

「わかった、情報ありがとう」

なほはリーからの無線を切った。そして、フッと鼻で笑った。









「そろそろ奴ら到着したみたいだな」

なほがそう言うと、センチュリオンを筆頭にチャーフィー3両がなほたちの構える廃テーマパークの奥地へと正面から突入してくる。

「いよいよだね」

「あぁ」

もう使われなくなったであろう錆びた白い椅子や机が、次々と突入してくるセンチュリオンやチャーフィーに潰される。


「さぁ、まほ姉、みほ姉、最終決戦だ」




__________________


「やっぱりなほさんたち強い…」

最終決戦でまず先手を取ったのは西住三姉妹側だった。撃ち合いが始まると共にチャーフィー3両のうち1両が早速IV号戦車の強力な砲撃によって沈んだ。愛里寿はそれを見て一瞬背筋がゾクッとしたという。

「これまでの相手とは全然違う…」

愛里寿はセンチュリオンの上でそう呟いた。西住三姉妹は、高校選抜チーム内で最強の練度の持ち主たちなのだ。

『こちらチャーフィー2号車…ギャッ!!ティーガーにやられたぁ!!』


無線が入ると同時に、続いてチャーフィーが2両目も撃破され、バミューダ三姉妹のうち2人がまだ到着していない以上、現段階で大学選抜チームは数的不利に陥った。

「やっぱりあのなほさんのクルセイダーが起点…」

西住三姉妹の戦車には弾が当たらないのに、何故か大学選抜チームには砲撃が百発百中といった、本来であればストレスの起因になってしまいそうな状況になっていた。

「クルセイダー巡航戦車はちょくちょく修理してるし、喧嘩は相手のパンチを見極めねえと勝てねえ。だから今、まさしく私ら、最強だから」

そう言うと、なほはクルセイダー巡航戦車の機動力を生かしてチャーフィーの背後に回り込む。


「チェックメイト」

そしてクルセイダー巡航戦車から砲撃が飛ぶ。
この場にいた最後のチャーフィーが撃破。


____________________


「…来たか」

クルセイダー巡航戦車が撃破されたチャーフィーから距離を置くと、チャーフィー2両が戦線に合流した。


『なほさん!勝負です!』

「おう!」

愛里寿が大きな声で叫んだ。






「みほ姉、威嚇射撃だ!まほ姉、スタンバイ」

『分かった』

『そういうことか』

なほの言葉を聞いたみほは、なほの言葉の意味を理解した。

「発射!」


IV号戦車より弾が発射される。

「発射!」

時間差でティーガーからも弾が発射。

『退避!退避!』

『違う!IV号は脅しだ!』

しかしIV号戦車から発射されたのはただの空砲。ティーガーから出たのが本物の砲弾だ。

『くっ!』

やむを得ず、愛里寿がチャーフィーの盾となる。愛里寿は狙って当たりどころのいい場所を狙ったため、ティーガーの弾はセンチュリオンに弾かれた。

そんな愛里寿のセンチュリオンの弾き技術を見ていたなほは首を傾げた。改めて愛里寿の技術の恐ろしさが身に染みたという。



『伊達に島田流の名を背負ってません、なほさん』

愛里寿はニヤッと微笑んだ。










一方、クルセイダー巡航戦車とチャーフィー2両はと言うと。

『次はこちらから行くわよ!』

『2人でも!』


『『バミューダアタック!!』』

残ったアズミとルミによって高校選抜チームに攻撃が仕掛けられる。

『狙いはクルセイダー巡航戦車!』

1番最後まで残しておくと恐ろしいと考えられたのか、なほのクルセイダー巡航戦車が西住三姉妹の中で1番最初に狙われることとなった。


『『喰らえ!!』』

相手の出方を窺うように遅めのスピードで走っていたクルセイダー巡航戦車の前後にチャーフィー2両がやってくる。

『クルセイダー巡航戦車』

『討ち取ったり!!』

そうしてチャーフィー2両が弾が発射されたその瞬間の出来事であった。

「ターン!!」

クルセイダー巡航戦車は斜め右に空砲を撃ち、その反作用でその場で空中回転しながらチャーフィーの包囲網を脱出。
その様子はさながらカール自走臼砲の砲撃を喰らった戦車のように吹っ飛んだというが…。



「私らは大洗連合」

「私の操縦に狂いはない」

「狙った獲物は逃がさない」

クルセイダー巡航戦車はしっかりと着地に成功する。



一方、チャーフィー2両は大変なことになっていた…。




『ちょっと!』

『味方同士で!?』

クルセイダー巡航戦車が間一髪で避けたため、お互いが発射した弾でお互いに白旗判定を出してしまうこととなった。本来、クルセイダー巡航戦車に当てるはずだった砲弾は、自らの戦力を大幅に削ぐことになってしまい、大学選抜チームの残存車両は愛里寿のセンチュリオンを残すのみ。




_____________________




「これで…残り1両…」

大学選抜チームの残存車両がセンチュリオン1両のみとなった。愛里寿はキューポラから顔を出し、汗を拭っていた。

「だが、最後まで油断はできないぞ」

「そうだね、慢心はできない…」

なほ、まほ、みほの3人はキューポラから顔を出し、目の前にいる最後の1両であるセンチュリオンを見据えた。


「…さっき、愛里寿ちゃんはティーガーの砲弾を無理矢理弾いてた。あの技術は早々出来るものじゃない…」

みほが言い、それにまほもなほも頷く。

「センチュリオンはまだ動かないな…」

「出方を窺ってるみたいだ」

まほに対してなほが言う。センチュリオンはまだ動かない。愛里寿もじっと西住三姉妹を見つめ、どちらかが動くのを待っていた。


「どうしよう?」

みほが言い、まほは首を傾げた。





「なぁ、まほ姉、みほ姉、いい考えがあるんだけど…」

なほが口を開いた。



「うん?」

「何かあるの?」

みほとまほがなほの方に振り向く。




「そろそろコイツも燻って来たしな…」

なほはクルセイダー巡航戦車をコンコンと叩く。




「これで決めよう。今度は本物の三姉妹全員でやろう」



_____________________



「(なほさん…数的有利とはいえ、あの人は絶対に最後の最後まで油断はしない筈…。だから何としても次の手を読まないと……)」

チャーフィーが全て撃破され、1人残された愛里寿とセンチュリオン。西住三姉妹の次の出方をじっと窺っていた。

「…くる!」

愛里寿はIV号戦車がエンジンを強くしたのを聞き逃さなかった。



「喰らえ!」

「くっ…」

なほのクルセイダー巡航戦車から砲弾が飛んでくる。クルセイダー巡航戦車の砲手は古河美玲というFPS全国覇者。砲弾をほぼ確実に当ててくる猛者で、決して油断できる相手ではなかった。
愛里寿もそれを前になほの口からきいていたため、集中力を全力で研ぎ澄ませていた。

「回避!」

愛里寿のセンチュリオンはその場で右方へと急発進。何とかクルセイダー巡航戦車の攻撃を回避した。






しかし、まだ終わらない。






「まほ姉、みほ姉、今だ!」


「…!?」

なほが声高く叫んだ時には、既に遅かった。






センチュリオンは前方をクルセイダー巡航戦車、右斜め後ろをIV号戦車、左斜め後ろをティーガーによって塞がれた。



「…やられた」

愛里寿は敗北を悟った。







『これが!』

『私たち』

『西住三姉妹の!』












『『『バミューダアタック!!!』』』


そして、西住三姉妹の戦車から一斉に砲弾が飛んだ。




_____________________








次回、最終回。


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