『オッサンと!』「若造の」『「何故何バイブルー!!」』 (ドラゴン・タトゥーのオカマ)
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おっさんのおしごと

クソ風紀委員が躓いたので新しくこちらを書き始めました。
ドラゴン・タトゥーのオカマですよろしくお願いします。



「霞が関には秘密結社が居を構えている」

最近若者の間で話題となっている都市伝説だ。

荒唐無稽な話だと思われがちだが、噂が出始めた頃からオカルト板で話題になっていた半人半獣の化け物の目撃情報が激減していった。

聡明な読者諸君には言わずとも理解できるだろうが、半人半獣の化け物とははぐれ悪魔の事である。

つまり、はぐれ悪魔が秘密結社の都市伝説が流れ始めたと同時に目撃数が減ったということだ。

はぐれ悪魔が結託して一つの組織となったのか、あるいは……

これは、赤い髪の悪魔リアス・グレモリーと赤龍帝のいる駒王町の外で戦う大人達のお話。

………………

…………

……

 

午後1時 山奥

本来構えられていた古い洋館は見る影もなく無残に破壊され、当たりに散らばる木片と硝子がここに建造物があった事の証左である。

屋敷を破壊したのは二人……否、1人の人間と1体の悪魔の一方的な蹂躙によるものであった。

女の顔は整っており、美人の部類に入る容貌をしていたが顔は2倍に膨れ上がって青黒くなり、歯は3割へし折られた。裸の上半身には無数のガラス片が突き刺さって白磁の如き艶めかしい肌に赤い血が滴り、箇所によって皮膚どころか肉が裂けて骨と桃色の内臓が零れている。

狼のように毛で覆われていながらも走る事に特化した下半身も左脚は捩じ切られ、断面からはどくどくと心臓の鼓動と共に赤が吐き出されている。

常人ならばとうに死んでいるものの、彼女ははぐれとはいえ悪魔。脅威的な生命力でまだ生きていた。

意識を失えたら―または出会い頭の一撃で死ねたらどれだけ良かったのだろう。

 

獲物が来たと襲い掛かった代償はあまりにも大き過ぎた。

飛び掛った瞬間、一瞬何が起こったのか分からなかったが遅れてきた痛みにより、鼻が折れたのを理解しながら壁をぶち抜いて殴り飛ばされた。

体勢を立て直す前に逃げられない様にと脚を捩じ切られ、タオルのようにぞんざいに振り回されて柱や硝子にへと叩きつけられ、既に悪魔には戦う意志は霧散していた。代わりにあるのは理解を超えたものに対する恐怖。恥も外聞もかなぐり捨てて逃げようとしている。それは生き延びる為ではなく、少しでもこの恐ろしい男から逃れたいという一心で、痛む体に鞭打ち手を伸ばす。

 

対する男は初老の、何処にでもいる草臥れた皮の様な風体。しかしその肌は浅黒く焼けており、その肉体は鍛え込まれている。背丈は決して高くはないものの、思わず見上げるような凄味を放つ男の方は、死に体の悪魔とは対照的に五体満足で平然としており、己の所業に関してどこか他人事の様に飄々としている。

 

がれきをかき分けて逃げようとする悪魔を冷たく見下ろし

「逃げられると思うのかい?」

と声を掛けると、這いつくばってまで逃げようとするはぐれ悪魔の腰踏みつけ、そのまま力を込めた。

枯れ枝が折れるような感触の後に、水風船が割れたような感覚を覚える。

それはこの悪魔の脊椎が折れ、腹が踏み潰された音だった。

「ぐげぇええ………」

悪魔の口から赤黒い血と胃の中身が逆流する。

潰れるカエルのような醜い悲鳴が響く。

「君が食べてしまった人間はパトロンでね……お人好しの甘ちゃんではあったけど、君なんぞの糞にされるような人間ではなかったんだよ。」

男は悪魔の髪を掴んで無理矢理顔を上げさせる。

「見えるかい?綺麗な花だろう?」

悪魔は頭に走る痛みに呻き声しかあげられない。

「あそこまで綺麗に咲かせるには苦労したと言っていたんだ。まあ奪うしか能のない君達にはわからないだろうけど、大成させるというのはとても大変な事なんだよ。」

まるで我が子に言い聞かせるかのように悪魔に囁くと、両手が悪魔の顔を捉えて押し潰し始めた。

骨の軋む音がする

「散々奪ってきた君に、何かを活かす機会を与えよう。―いい肥やしになるといい。」

その言葉を最期に、悪魔の頭蓋は潰散した。

 

悪魔の潰れた大脳と脳漿をカーテンで拭い取って瓦礫の山に腰を下ろす。

男の名は坂堂紘一郎

都市伝説の秘密結社「鎮護府」に属する幹部の一人。

人知れず人外達から国民を護ってきたこの国の剣にして盾である。

今回の彼の任務は二点。

パトロンを食い殺したはぐれ悪魔の抹殺、これが一つ目。二つ目は、殺されたパトロンに頼まれた洋館の取り壊し。

この館を遺して悪魔共の巣窟にされるのは屈辱だと、己の死後にこの館の破壊を頼まれたのだった。

 

 

坂堂が悪魔を屠ってから十数分後、解体業者を連れて1人の若者が駆け寄ってくる。

名は高藤慶介、坂堂の部下である。

人外を狩る技術はあるが、それ以外がまだまだ青い為、坂堂の補佐をしつつ学ぶようこんびをくまされている。

余談だが最近幼馴染と結婚したらしいので坂堂は此奴を自分の元から後方部門にへと異動させたい。

悪魔の死体は聖油を掛けて焚きあげて処理し、後は解体業者に任せて缶コーヒーを飲む二人。

ふと、高藤が坂堂を労った。

『任務お疲れ様です坂堂さん。相変わらず惚れ惚れとする手際ですね………』

「胡麻擂りはいい。貴様が私を持ち上げる時は決まって面倒なことを持ち込んできた時だ。さっさと言え。」

部下の賞賛を切り捨てる坂堂。

高藤は己の浅い知恵が見抜かれて引き攣った笑みを浮かべていたがため息を吐いておずおずと話し始めた。

『実は、ある青年が鎮護府に入りたいと申していまして………』

なんのことは無い、入団希望者

この時点ではなんら高藤が坂堂に臆する理由はない、故に坂堂は分かってしまった。何故部下が自分に伝えるのを緊張したのか。

「…………その若者は幾つだ。」

高藤、明らかに言い淀むも観念して白状する。

『えーと………17歳……です………』

やはりだ。

鎮護府の未成年の入団は許されていない。

国民を守る役目とはいえ、警察や自衛隊と比べてあまりにも血腥いからだ。

「認められる訳がないだろう。断りなさい。」

『ひぇえ………』

にべも無く切り捨てる坂堂、萎縮する高藤。

妥当である。国民を守る栄えある役目とはいえやる事は殺しなのだ。子供が入るには過酷過ぎる。

「そもそも何故高校生が我々の事を知っている。

漏らしたバカは…………慶介、貴様か。」

坂堂、深淵より睨めつける邪悪な存在の如き目で部下を見下ろす。

『いやいやいや!!待ってください坂堂さん!!

俺がこの子に教えたのは彼が神器を所有していて裏の事情について知っているから有事の際は助けを求めろということで伝えたのであって………』

高藤、慌てる。坂堂思わず舌打ちをするが、高藤の言い分にも一理ある。

親にも教師にも打ち明けられず、己の持つ神器を盲信して無謀な真似をされても困る。

とは言え、機密を漏らした事には変わりはないので高藤は折檻を避けられないだろう。

「たわけ、我々は何のために戦っているか忘れたのか。国民を悪魔や天使、堕天使共の手から守るために戦っているのだぞ。

なのに国民を、それも未来ある若者を巻き込んでどうする?本末転倒だろうが。」

そうなのだ。

例え裏の事情について知っているとしても、坂堂や高藤にとってその青年は守るべき生命でしかない。喪うもののない自分は兎も角、幼馴染と結婚した高藤や、親のいるその青年は陽の下で歩いて生きてもらわねばならない。坂堂は腹の中でそうぼやいた。

『はい……おっしゃる通りです………でも坂堂隊長、そいつは、強くなりたいと言ってました。大切な人を守る力が欲しいと。

………もう何も亡くしたくないんだと。』

正直、未成年の時点で論外なのだが、高藤がそこまで食い下がる相手というのも気になる。

……気骨のある若者ならば、成人後意志が変わらなかったら入団を認めてもいいかもしれない。

「………会うだけ会ってみよう。」

入団させるとは言っていないからセーフだ、セーフ……と己に言い聞かせる坂堂を見て、(俺にも後輩が出来るんだな)と早すぎる期待に胸を膨らませる高藤。

 

この時二人は知らなかった、入団希望者の高校生によって聖書の陣営が関わるごたごたに巻き込まれるなんて思いもよらなかったのである。

 




この作品では鎮護府がHELLSINGのイスカリオテの様な機関であり、支部は日本全国(駒王町以外)にありますが日本各地、地方毎に対化け物戦闘組織はあります。
京都で言うならば陰陽師が該当しますね。
ただ、地方の組織は土着の神や地精の力を借りているのに対し、彼等は人間でありながら人間を超えているので周りからすると噂が独り歩きして本部東京なのに魔境とか色々言われてます。
まあこれくらい出来るようになってから東京でのはぐれ悪魔の遭遇率は激減、神器狩りは起こらなくなったので許してあげてください。

以下、本日オリ主が用いた極意。

鏖の美学
人の枠を超えた人間のみが修得できる技術の1つ。
己の全ての傷害行為に必中の因果と貫通が付与される。これ自体に攻撃力は無いが、使い手次第では文字通り皆殺しを敢行できる。坂堂程の使い手となればデコピンでビルを吹き飛ばす事も可能。
また、防御に転じて敵の攻撃を無力化することも出来る。
反面、貫通の能力があまりにも強い為、己に対する恩恵すら受け付けない。傷を負った場合フェニックスの涙や神器による回復は意味を成さない上に赤龍帝の篭手による倍加による強化等は出来ないが、そもそも下地が出来ていなければこの技術を修めることは不可能なので欠点になり得ない。


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若い女の子の真剣な悩みって聞いてて歯痒くなる

二話目です。
ここから原作に少しだけ関わり始めます。


入団希望者との面会にあたり、坂堂と高藤は色々と手回しをした。

本部に案内をするわけにはいかないので、適当なビルを貸り何かの会社らしくカモフラージュを実行、今現在上手くいっている。

入団したかと言って永久就職とは限らない、やっていけると判断した者のみ正式に入団する事が可能なのだ。

とはいえ未成年だから説得して終わるのだが、と考えてながらコーヒーを啜る坂堂。

先輩として頼りないかもしれないが、後輩を支えていきたい高藤。

この時、楽観的に見ていた過去の自分たちをグーで殴る義務感が生じるなんて知る由もなかった。

 

指定した時間15分前、入団希望者がやってきた。

「初めまして、本日は席を設けてくださり誠にありがとうございます。駒王学園3年生、支取蒼那です、よろしくお願いします。」

「同じく、駒王学園3年生のリアス・グレモリーです。よろしくお願いします。」

上品な学生服に身を包んだ、紅く美しい髪のグラマラスな美女と、彼女に引けを取らない黒い髪の美少女が高藤に対して礼儀正しく挨拶をした。

『……支取蒼那さんにリアス・グレモリーさんですか。担当の者が参りますので暫くお掛けになってお待ちください。』

高藤はブッダの如き穏やかな笑顔を浮かべてそそくさと裏に入っていった。その顔は晴れやかでありながら内心後から突き落とされた気分であっただろう。

 

 

「……おい高藤」

『……なんですか坂堂さん』

沈痛な顔で向かい合うオッサンと若造。

オッサンの表情は全く変わっていないが、その目は目の前で巨大怪獣が横切ったのを見たモブの如く心ここに在らずと放心しており、若造の方は奥さんに最期の言葉に何を遺そうかと今生を諦めきっている。現実見ろ野郎共。

「悪魔だよな、この二人。」

『そうですね。』

しかもグレモリーにシトリーと来た。

現在の魔王を輩出した家である。

そして魔王がどーーーーしようもないシスコンで有名でもある。

「お前神器所有者の若者って言ったよな」

『言いました。』

この様子だと高藤も悪魔だと思ってなかった様だ。郵送してもらった履歴書を再確認する。

うん……うん………

「記載されてる名前と性別からして違うだろうが………!!」

『本当それっすよ………!!』

 

拝啓、天照大御神様。お元気ですか。

こちらは今日もとんでもない案件が飛び込んできています。

 

 

「遅れて申し訳ありません、本日面接を担当します坂堂紘一郎と申します。短い間ですが何卒よろしくお願いします。」

「いえ、お気になさらないでください。定刻通りですし……」

「ソーナさんの言う通りです。ですから坂堂さんが気に病むことは……」

気を取り直して坂堂はこの二人の目的を探ることに決めた。今頃は高藤が本部に必死に連絡しているだろう。成すべきことはこの場面をしのぎ切ることただ一つ、気張れ坂堂!!

というかね君達を待たせたというだけで何をするか分からないんだよあの魔王は。

いやまあ予定より早く行動するのは褒められるべきだと思うけども今回に関しては裏目になってしまったな。

 

 

「それでは面接に移りたいところ……なんですが単刀直入に言いますね。

 

神器所有者を偽って我々に近付いた目的がなんであれ、無事に帰られると思っていたのか?」

「っ!」

圧を掛けた瞬間、二人の顔が険しくなった。

支取蒼那に関しては顔が少し青ざめている。

普段捩じ切ってはもぎ取っているはぐれ悪魔と違い、人間と大差ないその外観故にだろうか。

坂堂、チクチクと良心に突き刺さる………

まるで胃に針で黒ひげ危機一髪されているような気分である。

だが恨まないで欲しい、これも仕事なのだ。

叶うならばここで引き返してくれ。

外交上の問題となっても、敵幹部の元にノコノコ行った君が悪いので追い返されただけで済んだのを喜んでくれ。

坂堂、心を鬼にした。

「答えてもらおうか……ソーナ・シトリー!!リアス・グレモリー!!」

二人には息をするのもやっとな重圧を掛けている。脂汗が両者の額を伝って床に落ちた、流石は貴族と言うべきか。この程度の重圧で潰れる程軟弱ではないと見える。

坂堂、内心舌を巻いている。

「わ、私達は………貴方に頼みがあって来たんです……!!」

ソーナ・シトリーが食いしばって重圧に抗い、椅子から立ち上がった。

「無論貴方が悪魔を快く思っていないことは承知です………魔王様にすら止められました…………!!」

リアス・グレモリーも滝のように脂汗を流しながら椅子から立ち上がり坂堂にへと近付いてくる。

坂堂は腹の中でこの二人を賞賛した。

政治的観点では現トップの身内が敵対組織の幹部と接触しているなど、愚かにも程があるが……

殺されるのを承知で頼み込むその姿勢は嫌いじゃない。寧ろ、称賛に値する行為だとバンドー、思案する。

 

「ほう……私が悪魔に対し、悪感情を抱いているのを知っていて尚ここにいるということは……ここで殺される覚悟が出来ているのだろうな?

良いだろう、今際の言葉として聞いてやる。」

圧を解いて二人を解放してやる。

突然己の身に掛かっていた力が霧散し、二人はよろけて椅子にへと倒れ込んだ。

顔は死人のように真っ青であり、

圧に真っ向から逆らったリアス・グレモリーは過呼吸気味で暫く話せる状態では無さそうだ。

坂堂はソーナ・シトリーに話すよう促した。

 

「あなたの力を貸して欲しいのです。」

「ほう、私に眷属になれと?」

「いいえ違います、貴方に教導して欲しいのです。」

「………は?」

えっ

 

 

えっ

何を言っているんだこの子は。

坂堂は思わず頭の残念な子を見る目になった。

「既に貴方がたはご存知でしょうが、駒王町は私とこちらのリアス・グレモリーによって統治しています。」

「う、うん。」

有名である。無論あまり良くない意味で。

「統治、と言っても主な役目は駒王町におけるはぐれ悪魔の排除や契約の統括等を行っているのですが……最近、はぐれ悪魔による被害者が前任者と比べてあまりにも多過ぎる事が発覚しました。」

「そ、そうかい。」

東京も人のこと言えないのだが、確かに駒王町の被害は酷いのだ。

鎮護府は悪魔達との協定により駒王町に一切手を出せないのでどうなっているのか不明であるが、坂堂は狩ったはぐれ悪魔共は東京から駒王町に逃亡しようと計画する奴が何体か居たのを思い出した。

彼処に逃げ込めば安心と思われているのだろう。

実際思われてたいた。

下品な話だが、特に表立って行動するリアス・グレモリーは「彼処の締まりと同じでガバガバ」と馬鹿にされていた。

「……その表情からして、私達の醜態はあなたがたにも届いているのでしょうね……私たちは愚かでした。未熟な小娘二人に治められる程、政治は甘くはなかったのです。」

人間でもいい歳した大人がろくな事をしていないので、まだ若いこの二人を責められる立場ではないので坂堂、その辺はなあなあで流した。

 

「………君たちの事情は置いといて、だ。何故私に君達の指導を頼もうと思ったのか理由を聞かせてもらおう。」

坂堂、個人的には力を貸すのは吝かではない。

吝かではないが、彼は秘密結社の幹部である。

己個人の意思でそうホイホイ動く事が出来ないのだ。

一応、立ち入りが禁止されていた駒王町の調査並びに、最もはぐれ悪魔による被害が多い駒王町に進出するのは日本国民を守る事を理念とする鎮護府としては受けるべき提案なのだが、坂堂である必要が無い。ぶっちゃけ高藤で事足りる。

すると息も絶え絶えだったリアス・グレモリー、何とか回復しソーナ・シトリーに変わって理由を述べた。

 

「お恥ずかしい話ですが、我々悪魔は人間と比べて政治の面で大きく遅れをとっています。

封建制が根強く、貴方がたの言葉を借りるなら『貴族以外は人ではない』といった状態です。

冥界での帝王学は封建制しか学びません。無論、こちらに来てから勉強が不十分であるのも一因でありますから、言い訳はするつもりはありませんが………

兎に角、私達は駒王町を治めるに当たり適切な知識、そして視点を持てていないのです。」

回復したとはいえ、まだキツいらしい。

一旦言葉を切ってペットボトルの水を口に含んでゆっくり飲み込み、乾いた口の中を潤すと再び喋り始めた。

「貴方に指導を頼んだ理由は、第一に、貴方は対化け物のスペシャリストである事。第二に、この国で、裏の事情について熟知している機関の幹部である事。最後に、人間の視点で忌憚なく意見をしてくれそうだったから、です……」

成程、はぐれ悪魔に襲われても殺されず、自分達を肉体的にも鍛え上げてくれそうで鎮護府の幹部だから悪魔の上層部も提案を無碍にせず、自分達とは異なる視点で気が付かなかった点を指摘してくれるからか、坂堂は納得した。

意外と筋の通った理由だったので、ボスに提言しても一蹴される事はまずないだろう。

「君たちの事情は分かった。分かったが、答えは直ぐには出ない。今日のところは帰りなさい。後日返答させてもらおう。二人とも酷い顔色をしているからね、気をつけて帰るんだよ。」

十割ほどお前の重圧のせいだよ、という態度を微塵も出さずに二人は退出した。

ぶつけてきた思いは真摯なものであった、故にこちらも出来る限り真摯に応えねばなるまい。

億劫であるが坂堂は机に向かい、今回の事の顛末について書類を書き始めた。




元のプロットでは二人は土下座して頼み込むシーンがありましたが、二人のファンに殺されそうなのでやめました。
ソーナ嬢は兎も角、リアス嬢も敬語だったのは彼女達は頼む立場であったからです。決してキャラ崩壊ではありません。
寧ろ上から目線のタメ口で頼み込む方が可笑しいのでこれがベストのはずです……はずなのです……
拙作のうち駄作な風紀委員と違い、こちらの魔王妹sは決して有能ではありませんが、己の無能さを知っていて改善しようと頑張っております。

また、坂堂の対応について不満を持つ方もいらっしゃるでしょうが、そもそも書類を偽造してまで敵対している組織の幹部に会いに行く方が可笑しいので、手加減はしても容赦はないだろうな、と。

坂堂の名は冥界でも(悪い意味で)広まっていまして、その名前しか分からない(遭遇した悪魔はきっかり全員首をもいでいる)為、名前を騙るだけで治安部隊を呼ばれます。この調子だと里帰りの際も出禁でしょう。

以下、本日坂堂が用いた極意の解説

【神と家畜のおしゃべり】
対等に話せると思ったか?お前が下で俺が上だ!!
主に同じ事をべらべらべらべらとほざく事しか能のない相手に対して使う技術……だったのだが坂堂が使うと相手を地べたに伏せさせる重圧攻撃と化した。細かな調節が可能、というか前回で使うと一般市民は気絶するし気絶しなくとも範囲内の人間の身体に不調を齎すので易々と使えない。
最近使うと湯のみにヒビが走るようになってきた。
尚、高藤には効きが薄い模様。


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オッサンが攻めてきたぞ!(尚今回若造はイチャついているだけです)

今回は少々魔王少女に対するヘイト表現があります。
お気をつけてお読みください。


霞が関の本部にて正式に辞令を受け取ったオッサンと若造。

内容は言わずもがな駒王町への異動である。

前人未到、魔王の身内がいる街に客将として招かれるのだ、上も好機と考えたのだろう。

これは向こうへの貸しを作るだけではなく、鎮護府にとってもかなり利がある。

独り身の寂しいオッサンこと坂堂は身支度を手早く済ませたものの、若造こと高藤は単身赴任で暫く帰れないと新妻に話すも凄味のある笑顔で「じゃあ私も一緒に行けば寂しくないよね、慶ちゃん?」と坂堂ばりの圧力を掛けられてポッキリと折れた。

まあ新婚だからね、仕方ないね。

 

『ふぇえ……嫁の圧が強いよぉ……』

「気色悪い声を出すな、吐き気がする。」

『くっそ!!知ってたけど辛辣だわこのオッサン!!』

こんな事を言っているが高藤の駒王町への異動は反対してくれていた坂堂である。

一応悪魔側が拠点となるオフィスマンションを用意してくれているらしいので、京都の蘆屋道満の直系子孫である花開院の護符を以て結界を張ることを条件に出して渋々高藤の嫁がついてくる事を認めた。

素直じゃねえなオッサン。

 

「………本気で駒王町に進出するつもりなのか。。」

オッサン、思わず呆気に取られ口のぽかんと開く

端末を起動させて、指定された地点と現在地が間違っていないか確認した。合ってた。

目の前に聳え立つ建物はあまりにも豪華だった。

喩えるならパリの目を惹くデザインでありながら街全体の景観を損なわない、調和の取れた先鋭的なオフィスマンションである。

しかも9階建てである。でかい、掃除が大変。

オッサン、上層部がどれだけ悪魔側にふっかけたのか察して思わずあの若い悪魔二人に内心合掌した。悪魔を過剰に嫌う裏方や他の幹部から相当虐められたんだろうなと涙を禁じ得ない。

 

余談だがまあ相当ふっかけていた、それも二人の兄姉である魔王二人へと。

「お前らのガバガバクソ人口増加政策のせいでこっちまで被害貰ってんだけどいい加減にしろや。あとそこのお前この場でそれってナメてんの?(※意訳)」

に対し

『えー、そんな事ないよ!仮にそうだとしても60億のうちのひと握りなんだから大したことないって☆彡(原文ママ)』

と外交担当が失言したので鎮護府は駒王町に最高戦力であるオッサンの投下を決定した。時が来たらオッサンに冥界を落とさせるつもり満々である。これにはカテレアも激おこなのは仕方ないよね。

 

一方その頃高藤は嫁さんと一緒にベッドを買いに行っていた。さては完全にここに住むつもりだなオメーら。

 

荷解き、と言っても独り身で身軽な坂堂は着替えと自分のPC程度しか荷物は無いため、30分もしない内に済んだ。

今は各階ごとに霊符を壁に貼りつけて結界を張っているところである。

この霊符は護符と一組になっており、護符を所持していない者が踏み入るとオフィスマンションの外に弾き出される仕組みになっている。

力押しで結界を破壊して侵入することも可能ではあるが、それが出来る程の力量の者が近付いた時点で坂堂と高藤が『処理』しに来るので実質無敵の防衛システムである。

こちらも全て貼り終わるのには1時間程しかかからなかった。

 

そしてその頃高藤は昼食でちょっといいレストランにて嫁さんにアーンされていた。頓死しろ。

 

来週の始業式の後、新しい用務員として坂堂と高藤は駒王学園に就職する。

その後リアス・グレモリー、ソーナ・シトリーとの眷属と顔合わせを済まし、暫く彼女達の仕事ぶりを見学し、改善するべき点を挙げて話し合う様に進めるつもりだ。

まあ、自分の未熟さを知っていて、プライドを捨てて敵に頼み込んだ若者だ。そこまで指導する事も多くはないだろうと、この時オッサンと若造は楽観視していた。

 

この後二人は己の能天気さに絶句する事になる、古い悪魔の頑迷さというものに………

 

つづくわ




日本(with鎮護府)と冥界が交わした約定
・正式な手続きを経ずに直接日本に来るのを禁ずる
また、手続きを怠って入国した場合はぐれ悪魔として処分する。
・正式な手続きを取って入国しても監視役として鎮護府の精鋭二人を監視役に付けること。
・入国は駒王町からのみ。正式な手続きを踏んだとしてもそれ以外の場所から入国した場合はぐれ悪魔と見なして処分する。
・日本国民に眷属として引き込む場合、脅迫や合意の得られない眷属勧誘をした際処分する。
・上記三点を守るならば鎮護府は駒王町より手を引くが、其方から請われた場合鎮護府は駒王町に在留する。

悪魔側に恐ろしく不利ですが、悪魔はこれを受け入れざるを得なかった。何故か?
鎮護府と戦争した場合勝てても悪魔の滅亡は免れられず、負けたら皆殺しだからです。
原作でも戦争する余裕がないから和平を結んでいますし、多少はね?

あと、どうでも良いのですけど悪魔の駒による転生悪魔を増やす理由って、貴族悪魔達にとっての奴隷を増やしたいだけなんじゃないですかね………
種の滅亡とか子供作って冥界の開拓を進めようよ………


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