新・魔法少女リリカルなのは〜剣神と夜天の輝き (パッチェ)
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剣神と夜天……始まります
プロローグ


は〜い、どもパッチェです。
やっぱりやっちまいましたリメイクです。
んまぁこの作品はパッチェが何も分からない時にノリで書いた作品なんでちゃんと投稿するならこの未来は見えてましたね。(笑笑)
『旧』の方にお気に入りしてくださった読者の方には申し訳ないないですがこちらをお気に入りしてください。(笑笑)

リメイク理由としては書き方の迷走、編集作業が面倒いという理由です!(ドヤっ)
後、40話近く残ってますがそろそろ休みがあるので三月中には終わるでしょう!!(多分)

————頑張るぞい♪





  少年は、異端だった。

 それ故に、全てから否定された。

 

 

 

 

  _____________________

 

 ______________

 

 _______

 

 

 

 

 何も無い白に染まった空間で、少年は目を覚ます。

 

 

  「ここは!?」

 

 

 痛む身体を無理矢理起こし、少年は周りを見渡しながら自分がここに居る経緯をおもいだそうとする。

 

 ———ここは一体?僕は……あの時死んだ……はず!?

 

  記憶を辿り思い出そうとしていると背後に気配を感じる。

 

 

「おお、目が覚めたか!」

 

 

  後ろから声を掛けられ振り向くと、白い髭を胸元まで垂らし杖をついている老人がいた。

 

 

「お前……だれ?」

 

 

 殺気を放ちながら目の前の老人を警戒する。

 

 

「うおっ!こやつ見た目に違い恐ろしい殺気を放つのう」

 

 

 一瞬殺気に怯んだが、今では平然と立っていることに少年は驚いたがこの老人には()()()()()感じ殺気を収める。

 

 

「やっと殺気を収めたか。老人にはキツイわい」

 

 

 平然と立っている老人の言葉にイラつくが、冷静になり今の状況を説明してもらうために頭を切り替え目の前の老人に質問をする。

 

 

「一体此処は…何処……お前…だれ!」

 

 

 その質問に対し老人は後頭部をかき

 

 

「そうじゃな。いい加減説明せんとな」

 

 

 ふぅーと息を吐くと

 

 

「まず儂の名前から、儂は人から見れば"神"になる」

 

「…………ん」

 

 

 気配からして嘘のような返答に少年は疑いの目を向けるが、自称"神"は話しを続ける。

 

 

「そして此処は、儂が作った空間じゃ」

 

 

 本当の神を知っている少年からすれば、もう何処から突っ込めばいいか分からないが、少年は話しを続けていく。

 

 

「その……自称"神"が、…僕に何の用?」

 

 

 老人は、白い髭を触りながら

 

 

「お主には、転生してもらいたいんじゃよ。よくある神様転生というやつじゃ」

 

 

 言ってみる意味は分からないが、えへっん!と、胸を張る老人に対し疑問を思った少年が質問を続ける。

 

 

「何故……僕?他にもいたでしょ?」

 

「気まぐれじゃ。よう言うじゃろ'神は気まぐれ'と」

 

 

 軽く言う理由に少年はあっけなく思うが、次の言葉で空気が変わる。

 

 

「それに……深海よりも深〜い理由は一番お主が知っておるじゃ

ろ?」

 

「…………チッ」

 

 

 少年は自分の禁忌事に触れられ、また殺気を放ち絶対零度の視線で神を睨む。

 

 

「なんで……知ってる!」

 

 

 老人は二度目の殺気を軽く受け流し、話しを続ける。

 

 

「だから儂は、神じゃ。そのくらいたやすくできる。そんな事よりも転生はしてくれるのかの?」

 

「………」

 

 

 何事も無かったように話を続ける神に諦めたのか少年は質問に対しての答えを出す。

 

 

「いいよ……転生してあげる……で、何処…に行くの?」

 

 

 答えを聞くと神は嬉しそうに何かに勝ったかのように、()()ながら

 

 

「おお!転生してくれるか。場所はリリカルなのはじゃ、アニメの世界に転生じゃ」

 

「リリカルなのは?アニメの世界?」

 

 

 少年はよく意味が分からない。

 

 

「まぁ、場所は世界は次元はどうでも良いのじゃ。それより転生といえば特典じゃがどうする?なんでも良いぞ!」

 

 

 神は少年の疑問を無視し特典は何にするかワクワクしながら待っている。()()()()()()

今まで何人も神を見てきた少年も諦めたのか特典とやらを考え出す。

 

 

「じゃあ…」

 

「決まったか‼︎」

 

「うむ……僕の眷属と一緒に転生…したい……その世界の武器…ほし

い」

 

「…………それだけか?」

 

 

 あまりにも欲が無い答えに軽く呆けてしまう。

 

 

「普通もっと欲をだすのに、例えばよくあるのは王の財宝とかの。」

 

 

 他に無いのか?と、聞いてくるので少年は

 

 

「…別に要らない……今ある()()()()……でいい…」

 

 

 少年が信じるのは己の極めた技のみ。

 

 

「そうか…それでは仕方ないの」

 

 

 これ以上は言っても無駄だと感じ神も掘り下げるのは辞めた。それに変わり今後の説明と、質問をし始める。

 

 

「お主の眷属には儂が説明するとして、武器は何がええかの?」

 

 

 ————剣

 

 

 すぐに答える少年に神はクククッと笑い、バカな質問したな、と自分を貶す。

 

 

「そうじゃよな。お主は()()だったな!剣以外で選ぶものはないの」

 

 

 ウンウン、と神は納得したように首を縦にふる。

 

 

「よし!儂が神の力を持って最高の武器、いやあの世界ではデバイスだったな。まぁ良い儂が最高のデバイスを送ろう」

 

 

 張りきる神に少年は「これで終わり…?」と、声をかける。

 

 

「おお。すまんなこれで終わりじゃ。あとはお主を転生させるだけじや」

 

 

 興奮が落ち着いたのか神は転生の準備に取り掛かる。

 

 

「この門をくぐればお主は転生している。眷属達もすぐに会えるじゃろ。向こうに着いたら最高のデバイスが届くはずじゃ、いやあるはずじゃ、安心して行くと良いぞ。質問はあるかの?」

 

「……無い……」

 

 

 

 この答えに安心したのか神は高らかに宣言する。

 

 

「よし!それでは行くと良い」

 

 

 ひょこりと立ち上がって門をくぐっていった1()0()()くらいの見た目の少年を見送った神は深い溜息をつく。

 

 

「ここまでは予定通り……ああ、難儀なものだ。だが、これが本当の———」

 

 

 

 少年の後ろ姿に哀愁感じ……心が…心が痛くなる。

 

 

 

 その後重苦しく開いた言葉は………

 

 

 

「【剣神】八雲 ◾️◾️、お主のその呪いを解きはなたれ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 —————どうか幸せになって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 八雲が目を覚ますとまず現在の状況を確認する。

 さっきまで立って歩いていた身体は縮み少年から赤ちゃんになり、今いる場所としては、周りには誰もおらず家の中ですら無い。

 完全に捨て子のようだ。

 

 その時八雲は浮遊感を感じた。

 

 

()様。お待たせして申し訳ありません。我ら眷属いま主の前に」

 

 

 三人の中の、金色の髪を持ちお尻に狐の尻尾9本を持つ女性が、八雲の前に跪く。

 残りの二人は後ろで見守っている。

 

 

「それでは行きましょう」

 

 

 9本の尻尾を持つ金色の女性は、赤ちゃん姿の八雲を大事に持ち上げ歩き出す。

 後ろで見守っていた二人もついて行くように歩き出す。

 

 八雲は、赤ちゃん姿の事もあり自分が信用できる人に抱えながら静かに眠りにつく。

 それに気づいた女性は、

 

 

「ゆっくりとお休み下さい。我が主人様」

 

 

 と、声を静かにかける。

 

 後ろの二人も気付いたようで

 

 

「夜さんは、寝ちゃたんッスね」

 

 

 首に長いマフラーを巻き忍者のような制服を着たポニテの少女

 

 

「オロー。夜様寝ちゃいましたねー。」

 

 

 緑色のチャイナ服を着ていて、赤髪のストレートの女性が続く。

 

 

「お前達!少しうるさいぞ。主人が起きたらどうする‼︎」

 

 

 九尾の女が怒るが2人は逆に反論する

 

 

「イヤ。あんたの方がうるさいッスよ」

 

「そうです!睡眠は大事ですからね!!」

 

 

 そんなくだらない事を喋りながら三人の眷属達は、小さい主を守るように歩いて行く。

 

 

 

 これが【剣神】八雲 夜 (やくも よる)

 

 

 この世界に降り立った最初の日

 

 

 

 

 ———そして物語が始まる。

 

 

 

 

 

 

 それでは開幕〜開幕〜

 

 

 




【あとがき】

うむ、文才−100だったのが−50くらいにはなったであろう!!
いや、マジで読み返していたら酷かったんだよなぁ……もう今は無いけど。

ではまた新しくこの作品をお願いします。
『旧』を読んでいた人も新しく読み始めた人も頑張って完結させるので長い目で読んでね♪

何かあればTwitter、感想にお願いします。


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設定

どもパッチェです。

気づいたかな?『どうも』が『ども』になってる事に。どうでもいい事だけど。
今回は設定だ!!ネタバレ部分もあるからそれが嫌な人は読まない方がいいぜ!
因みにパッチェは東方が大好きです♪


あ、後半に番外編あり。




【八雲夜】

 性別 男(の娘)

 本作の主人公

 転生前年齢?歳

 

 好きな事 剣で斬ること。藍の尻尾をモフモフする事。

 

 見た目 髪が銀色の東方project秦こころ(男版ショタ

 

 身長 110cm

 

 魔力量 S

 

 リリカルの魔法適正

 無し

 

 

 

 

 

 性格 感情をあまり知らず興味を持た無い。身内には物凄く甘い 。天然ちゃん

 

 戦闘 基本的には剣で斬るのみ。ただ夜は、程度の能力を持っているので能力を使う事もある。リリなのの魔法は使えないが夜刀の力でバリアジャケットは着る。

 

バリアジャケット・落第騎士の【西京寧音】の頭にリボンの付いて無い『着物』姿。

 

 重力を操る程度の能力

 

 干渉する程度の能力

 

 愛刀【夜刀《ヤト》】

 

 

【八雲藍 】

 眷属の一人 眷属統括

 

 年齢?歳

 

 好きな事 夜の事全て

 

 種族 九尾

 身長 165cmぐらい

 

 

 リリカルの魔法適正 無し

 

 性格 夜が大好き♪夜の為にあり夜の為にいる。 参謀と言う役割りのため眷属をまとめたりする。しかし夜の事になると暴走する。たまに鼻血を出す。気分が高まったり、錯乱、興奮状態になると一人称が変わる。

 

 

 戦闘 指示というより幻術、妖術でのサポートがメイン。しかし場合によっては自ら闇術を使い殲滅する。

 

 式神を操る程度の能力

 

 夜との関係 夜とは式神として名を貰っている。

 

 

 

 夜の呼び方 主よる

 

 

 東方projectキャラ

 

 

 

 

 

 

【紅美鈴】

 眷属の一人 護衛兼家の門番

 

 性別 女

 

 年齢?歳

 

 好きな事 夜、武術

 

 種族 元龍王 (オリ設定)

 

 身長 172cmぐらい

 

 性格 基本的穏やかなでほのぼのとしているが夜の罵倒、何か不都合があると殺しにかかる。

 

 

 リリカルの魔法適正 無し

 

 戦闘 気と武術を扱い能力で強化して戦う。使うのは自分の身体のみ。

 

 

 気を使う程度の能力

 

 

 夜との関係 過去の夜との関係が深くある罪を抱えている……。夜は自分の全て。

 

 

 夜の呼び方 夜様

 

 東方projectキャラ

 

 

 

 

 

【風間レヴィ】

 

 眷属の一人 夜の影

 

 性別女

 

 年齢17歳 (成長が止まっている)

 

 種族 人間?

 

 好きな事 セクハラ、忍者感、夜

 

 身長148cmぐらい

 

 

 性格 忍者なので基本感情を表に出さずのらりくらりとしているが夜の事になると別。残虐な部分も持っているが、よくセクハラをする。

 会話では語尾に「〜ッス」と付く。

 

 リリカルの魔法適正 自分の魔術の方が強いので接続する時の、巻物をデバイスと偽っている。非殺傷にもできる。

 

 戦闘 かつての世界で世界トップクラスで、5本の指に入っていた。この世界の魔法は、使えないが忍法術、(シャーマニック・スペル)を使い、魔法では無く魔術。魔術を使う時書庫に接続して利用する。近接戦闘ぽいが奇襲や力比べしたりと幅が広い。

 

「書庫」は嫉妬(インウィディア) 「テーマ」は期待(エクスペルト)

 

 夜との関係 他の眷属と違い簡単な契約しかしてないが、夜に惚れ、ストーカー故に眷属になった。

 

 夜の呼び方 夜さん

 

 

 トリニティセブンキャラ

 

 

 

 _______________________________________________________________

 

 

 八雲の日常 オマケ

 

 

 

 

 これは夜が転生して3年たった時の日常

 

 

 

 

 あるマンションと借りて住んでいた八雲家は、今緊急事態に陥っていた。

 

 

 机に座りある事をしている夜が

 

 

「みんな……話しがある」

 

 

 夜の一言に眷属達は皆、手を止める。

 

「どうしたんっスかー」

 

 テレビゲームしていたレヴィが夜の話しの説明を聞こうと机に付いた。

 レヴィが返事をしている時に藍は、洗い物を片付け机に向かおうとする。

 美鈴に関しては、ソファーで寝ているだけなので藍が叩き起こす。

 

「痛!?藍さん何するんですか?」

 

 美鈴は、叩かれた頭を抑えながら起き上がる。

 

「主ヨルが呼んでおる。さっさと起きんか!」

 

 流石八雲家のオカンである。

 全員が席に付くと話し合いが始まる

 

「主ヨル、全員席に付きました。話しを」

 

 夜は、頷くと今回のお題を話し始める。

 

「実は今……我が家の貯金が……無くなりそう」

 

『『ブッ!?』』

 

 衝撃の告白に眷属達は事の重大さを感じていた。

 

「夜さん、あといくら残ってるんっスか」

 

「……20万」

 

『‼︎』

 

「ヤバイじゃないですか」

 

 美鈴が叫ぶ。

 

 みんな分かっているのだ、20万とは今の家賃。

 今月の家賃だけで底をつくのだ。この世界は今までとは違い()()な世界。いわば金が全ての世界。弱肉強食の世界だった時とは違うのだ。

 

「働くしかありませんね」

 

 藍が答えを出すが簡単な事ではない。

 今まで力のみで生きてきた彼等に社会性はあるのか?という疑問もある。しかも———

 

「何をするんですか?」

 

 当たり前の質問に誰もが沈黙する。

 

 《少し良いでしょうか?》

 

 沈黙した空間に機械の言葉が聞こえた。発生源は、夜の首から掛かっている十字架のようなペンダント、神が改造したデバイスである。

 

「何か案がある………【夜刀】?」

 

 《ハイ!案としては、会社を作る事をオススメします。》

 

 

「その心は」

 

 藍の質問に対して夜刀は事細かに説明し始めた。

 

 《主は、天才ですが見た目がアウト。レヴィさんは微妙なライン。藍様は幻術で働くとしても体力的に効率が悪いです。見た目は美鈴さんしかいません。しかし美鈴様に働けと言っても無理です!》

 

『確かに』

 

 美鈴以外が同意してしまった。

 

「皆さん、酷いです。(◞‸◟) 」

 

 落ち込んだ美鈴は無視する。

 

「夜刀………話しを続けて…」

 

 夜は夜刀に話しを続けさせる。

 

 《デワ。美鈴様に期待出来ない以上できる事は限られて来ます。だったら主の天才性を使い株などで元金を増やし会社をいちから作る事が皆さんも手伝いやすいと思います。しかも()()はメイドや執事達がおりますし人材には困らないでしょう》

 

 デバイスの予想外の答えに眷属達は戸惑う。

 確かに夜刀の言うことにも一理ある。見ず知らずの場所で知らない人達とするより、顔見知りの()()()とする方がいいだろう。更に夜を守りやすいというメリットもある。

 この事を考え眷属達は、夜に最後の決断を求める。

 

 

「…いい…と思う…。…少し楽しそう…だし」

 

『『ッ!?』』

 

 眷属達は驚きに満ちていた。

 しかし眷属達が驚いていたのは、デバイスの案を採用した事より夜の一言『楽しそう』に心底驚きそれと同時に長年使えた眷属達が、たった数年一緒のデバイスに手柄を立てられた事が眷属達のプライドを傷付けた。

 

 

 だからこそ

 

 

 

『—主ヨル‼︎、

 

  —— 夜様‼︎、

 

 ——夜さん‼︎』

 

 ————何かあるなら私(自分)が!!』』

 

 

『チッ!』

 

 三人共考える事は同じようだ。

 

「此処は眷属統括の藍が!」

 

「この時こそ、忍者の出番っス」

 

「わたし……は、何でも出来ます」

 

 《主。私を使って下さい。私はいろんな事に使えこの中て私が有能です。》

 

 夜刀まで入って来てカオスな光景が茶の間に見られる。

 

 しかし夜は、何も無いように

 

「じゃあ…みんな…よろしく…ね♪」

 

 顔は、無表情で笑ってないがとても機嫌が良い声で言われた為

 

『お任せ下さい!』 (眷属達は一目見れば夜の気持ちが分かる)

 

 

『チッ!被りやがった!』

 

 どんどん口が悪くなる眷属達を夜は、気にもとめなで何処から出したのかパソコンを使って会社の事を考える。その間にも眷属達は、

 

 

「夜刀貴様さっき主ヨルの役にたっただろう。私に譲れ」「そうっスよ!わたしに譲るっス」《イヤです。私だったて主の役に立たいですよ》「皆さん。私も入れて下さいよ!」『うるさい!サボリ魔』

「みんな……ひどい(T ^ T)」

 

 

 一人ひどい目にあっているが、これが今の八雲家の()()()()()()()である。

 

 

 

 

 

 ★☆★☆

 

 

 

 最後

 

 夜のデバイス

 

【夜刀[ヤト]】

 

 神が()()した、夜の相棒。

 待機の時は、十字架のようなペンダントとして武器形態は日本刀。

 

 ()()は折れず曲がらず斬る為にある剣である。

 

 




【あとがき】

イエーイ!!
………やっべ………何も言うことないわ。

次回もよろしこ。


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1話

どもパッチェだよん。

時が……飛ぶよ。飛んじゃうよ!!






 八雲夜と眷属達が転生して6年の歳月が経った。

 夜が3歳の時に建てた会社は見事に成功した。

 今では、世界で一家に一台の家電や人気チェーン店などで世界で10本指に入るお金持ちになっている。

 というよりそういう()()()()()()

 

 

 

 

 それ故に———

 

 

 

「もう…………イヤ……」

 

 夜は、社長室で書類の山に埋もれていた。

 

 

 世界でトップレベルのお金持ちになった八雲達は、毎日の仕事が入り徹夜がなどが当たり前になっていた。

 

 

 夜はこれで三徹なのだ。

 いくら前世の記憶があっても身体は6歳。子供の身体で三徹するといくら天才でも疲れ起きているのが辛くなってくる。

 

「ハァ……書類の山が…減らない……」

 

 軽く鬱になっていると、ドアからノックが聞こえ、開く音がする。

 

「主よる、入りま……って、大丈夫ですか!?」

 

 金髪で9本の尻尾を持つ狐、藍が入ってきたが書類の山に埋もれている

 夜を見つけ助け出す。

 

「ふぅ……助かった……藍」

 

「主よる。いい加減休んで下さい。皆、心配しております」

 

 

「でも……」

 

 渋る夜に藍はため息を吐き、

 

「主は今子供なんですから休んで下さい!倒れたらどうするんです!!」

 

 この言葉に夜は、言う事を聞かないと藍が面倒くなり説教が始まるので素直に言う事を聞く。

 

「わ、分かった。じゃあ2時間だけ寝る」

 

 そう言うと夜は、社長室の奥にある寝室に入って行った。

 

 

 

 ★☆★☆

 

 

 

 

 ———やっと休んだか。主よるは働きすぎなのだ。6歳の子供が三徹などしていたらいつか仕事中毒(ワーカーホリック)になってしまう。しっかりと私がささえねば!そう………

 

 

 

 

 

 

 ———久しぶりの…平和なのだから。

 

 

 そう決意する藍。

 

 

 

 この時、藍は知らなかった。

 将来多くの子供達が仕事中毒(ワーカーホリック)になる事を……。そうなれるのが幸せな事に……。

 

 

 

 

 

 ☆☆★

 

 

 

 

 

 

(そろそろ夜様を起こす時間になりますね)

 

 

 美鈴は腕に付けた時計を見ると夜が居る寝室に向かう。

 

 

 基本的に美鈴は、夜の護衛なので他の眷属達と違って仕事が無いので

 夜の身の回りの事をしていのだ。

 何も無い時は、お昼寝をしているのでよく他の人達にキレられたりするのだが彼女はある意味学者能力が無いので徹夜明けの人達の前で寝ていると攻撃されている。

 

 

(夜様。最近休んで無かったのでいい機会ですね)

 

 

 美鈴は社長室の奥にある寝室のドアを開ける。

 

「夜様、起こしにきましたよ〜」

 

 静かに声を掛けるが返事が無いので中に入り、夜の寝ている前まで行く。

 

 

「あらー、まだ寝てますね」

 

 

 ベットの上で小さく息を立てながら寝ている夜のほっぺたをプニプニする。

 

「もう少し寝かせてあげましょう。最近徹夜で寝てませんでしたもんね。この位なら藍さんも許してくれますし、私も眠くなりました」

 

 

 その言葉と共に、しれっと夜のベットに入ると、まるで夜の母親のように抱きしめると、

 

 

「ゆっくり休んで下さいね………今だけは…ゆっくりと…」

 

 

 こうして美鈴は眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 ★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 藍は今焦っていた。

 

 夜を起こしに行った美鈴が戻って来ずもう2時間もたつのだ。

 

(まさか美鈴、主よるを襲ってるんじゃ!?主よるにあんなことやそんなことを!?全く発情龍が!!)

 

 鼻血を出しながら急ぐ藍はブーメランと言う言葉がお似合いである。

 

 

「主よる入ります!」

 

 

 そう言うと藍は部屋の中に入り、目の前の光景に思考が止まる。

 

(な、何故起こしに行った美鈴が主と一緒に寝ているのだ?全く

 羨まし……ゲフンゲフン、このサボり魔羨ましい事を!!)

 

 

 藍は全く隠せていない思考を引っさげ

 美鈴を叩き起こし

 

 

「さっさと起きんか、この馬鹿物!!」

 

「痛い!何するんですか藍さん」

 

「主よるが寝ているのは良い。おぬしが何故主よると一緒に寝ているのだ‼︎」 

 

「そんなの事決まってます。私が眠かったからです!」

 

「ドヤるな、この馬鹿物」

 

 

 言い争いをしているは二人の声が夜の耳に入る。

 

 

「うにゅ…?………うるち…ゃい」

 

「ブハッ」(鼻血を噴き出す)

 

「藍さんっ!?」

 

 

 寝起きの夜を見た藍はあまりにも可愛い過ぎて愛が噴き出す。

 美鈴は耐性があるが藍は一度寝起きの夜に興奮して襲いかかり夜の寝室には出禁になりそれから寝起きの夜を見れなくなり耐性が無かった為、色々な物が噴き出してしまった。

 

 

(主よる………その姿は、寝起きで衣服が乱れまだ意識がはっきりして無く幼児言葉。この藍もう耐えれません。襲ってしまいたいですが、

 あっ、やべ血が足りない)

 

 

 

 ドサッ

 

 

 欲望満載の藍は、愛(鼻血)を噴き出し身体の必要な血が足りなくなり倒れた。

 

 

 

 ———10分後

 

 

 

 

「もう…大丈夫?」

 

 

 夜に心配される藍は血を補給する為、点滴刺しベットで横になっていた。

 

 

「えぇ。もう大丈夫です主よる」

 

「藍さんは、相変わらず変態さんっスね」

 

 

 藍が倒れてから丁度外から帰って来たレヴィが弄る。

 

 

「変態じゃ無い。愛だ!!(キリッ」

 

 

 キメ顔をする藍にレヴィは呆れを隠せない。

 

 

「その言葉、どっかの完璧で瀟洒なメイドも言ってたっス」

 

「あいつと一緒にするな!あいつはただのロリコンだ!!」

 

「イヤ。藍さんも変わらないですよ」

 

 

 美鈴からの的確なツッコミが入る。

 夜は話についていけないようだが、藍はこのままでは不味いと思い話を強引に変える。

 

 

「そ、それよりレヴィがいると言う事は、依頼か!?」

 

「なんか強引に話を変えられた気がするすっスけど、まぁいいっス。その通り依頼っス!」

 

「おっ、久しぶりですね〜」

 

 美鈴はゴキゴキと肩を回し張り切ってる。

 

「今回の依頼……久しい…」

 

 

 依頼とは、夜達がしている一種の退治屋の事だ。転生する前まで裏の仕事をしていたので今も自分達の会社と違い別枠でしているのだ。依頼する人達は裏関係者が多く知り合いの大妖怪も依頼したりするのだ。

 

 今回もその枠に当てはまる。

 

「今回の依頼主は地底からっス。内容は鬼退治っスね」

 

『⁉︎」

 

 他の三人は地底からの依頼にびっくりする。地底とは地上から追いやられた妖怪などが住む場所であり、鬼が多く住むことでも有名なのだ

 

 

「何して……る?……あそこの…鬼…そんな活発…?」

 

 地底をよく知ってるからこそ、夜は疑問持つ。

 

「それがっスね。どうやら一部の鬼達が地底の主を殺して、地底を支配しようと行動したらしくそれに気づいた怪力乱神が退治しようとしたらしいですが、地上に逃げたらしくてこれ以上追えなくて地上の自分達に依頼だそうっス」

 

 

 レヴィの長い説明を受けた三人は、呆れながらも納得いく部分に顔をしかめた。

 

 

「確かに地底の連中は、地上に来れないから我らに依頼は妥当か」

 

 藍の言葉に皆頷く。

 

「受けていい……久しぶり…に斬れる…!」

 

 主人が決めた事に意義は無い、と眷属達も了承する。

 

「……鬼退…治…れっつ…ごー…!」

 

 夜の言葉は絶対。

 

 故に——主の仰せのままに、と眷属達は声を合わせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ________________________

 

 ______________

 

 _______

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法の森それは多くの妖怪がおり魔女が住んでいることで有名な地。

 ここに空間がくぱっと割れ大量の目玉が現れると一人の少年と三人の女達が現れる。

 

 

「ふぅ、久しぶり…魔法の……森」

 

「やっぱり夜さんの能力は、便利っスね」

 

「…疲れるけど……ね」

 

 

 そしてレヴィが言っているのは夜の能力、干渉する程度の能力のことだ。この能力は、その名の通り何にでも干渉できる能力なのだ。この能力の恐ろしい所は、干渉した物、成分、法則すらも好きなようにできる点だ。

 例えばナイフに干渉し切れ味を強化も出来るし、今回のように空間に干渉すればしっかりと座標に固定してワープのように使える汎用性だ。ただし使いこなすには、能力を掌握しないといけないが夜は完全に能力を掌握しているこそチート級なのだ

 

 

 

「あまり魔法の森は身体によくありませんね…」

 

 

 魔法の森は普通人間だと足を踏み込んだ時点で生きては帰れない。それはこの森の特徴でもある生物全てが魔力を持っているからだ。彼等にとって魔力とは一般人にとって毒でしか無い。

 だからこそ、この森に近づく者はいないに等しい。その為に身を隠すには最適なのだ。

 

 まぁ全く夜達には問題は無いが。

 

 

 

 

 ——閑話休題

 

 

 

 

 

 

「……ここから気が感じますね」

 

 

 美鈴の気の探知により魔法の森にある洞窟前に着いた夜達は、そこの中に鬼がいる事を確信した。

 

「皆、問題は無いと思うが油断はするんじゃないぞ」

 

 念の為と藍が皆に声を掛ける。

 

「それじゃあ……行く!」

 

 前を行く夜の後ろを眷属達は行き洞窟の中に入っていく。

 

 中は薄暗く、光は岩と岩と隙間から少々といったところだ。その為藍が狐火を各々に付け前を照らす。

 洞窟に入って最深部に進むと夜達は広い空間で約50体の鬼達を見つけた。

 

「あれ……今回のターゲット…鬼……良い……?」

 

 夜は他の人からみれば相変わらず無表情だが眷属達は気づいていた。

 

(ふむ。主よるが生き生きしている。良いことだ!)

 

(夜様ヤル気だなぁ。私出番あるかな?)

 

(うわぁ、夜さんめっちゃ殺るきじゃないっすか!鬼達大丈夫っスかね)

 

 

 一人は夜主義を発動し、一人は自分の出番を疑い、一人はこれから酷い目に合う鬼達の心配をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 鬼とはプライドが高く、下位の鬼達はとても傲慢。しかし絶対的強者には従う。だからこそ地底の主に従う怪力乱神に不満を持っていた。

 

 

「何故勇儀姉さんはあんな奴に従う!!」

 

 

 一体の下位の鬼が怒鳴るように不満を言い散らす。

 

 

「妖怪でも最上位の鬼がただの悟り妖怪に従わなければならん。我々はなんだ?我々は鬼だ。鬼は、最強だ。だからこそ地底は、我々が支配するのだ!」

 

 

 鬼の演説が洞窟内に響き渡り、これに賛同する鬼達が声を上げる。

 

 

「そうだ俺たちは、最強だ」「あんな小娘捻り潰せば良い!」「我々鬼が地底を支配するのだ!」など復唱する鬼達は、自分達に近づく死の足の音など聞こえなかった。死がもう来ているのに、鬼達は疑わなかった。自分達が最強だと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 そして死が鬼達の前に……

 

 

 

 

 

 

 ——————来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………お前…達…が鬼?」

 

 

 鬼達は、戸惑う。目の前にいる子供に、何故こんな所にいるのかと?

 しかし目の前にるのは子供、警戒はすぐに油断に変わった。

 

 一人の鬼が話しかけてきた子供に話しかける。

 

「どうして此処に、子供がいるんだ?迷子か?迷子なら鬼ちゃん達が返してやろう。帰ればの話だかな!ギャハハハハ」

 

 下劣な嗤いをする鬼。周りの鬼達も嗤い出す。

 

(……うむ…もういい…」

 

 夜はあまり感情を持たない。いや、この言葉には語弊がある。彼は()()の感情を知らない。

 しかしある鬼の言葉は夜の逆鱗を踏み抜いていた。

 

 

「…夜刀…我が…刃となれ」

 

 

 《YES!武器モードに移行します。》

 

 と言うとペンダントだった夜刀は、一瞬で俗に言う日本刀に変わる。近くにいた鬼が気付いた時には遅かった。

 

「…シィ!」

 

 —————一閃

 

「…………へ?」

 

 

 鬼達は何が起こったのかわからなかった。気付いた時には、仲間の首は飛び、残った身体の切られた部分から血が噴き出す。分かった事は、仲間切られすでに死んだ事、そして日本刀を持った子供は敵だという事。いくら下級の鬼達といってもそこはやはり鬼。意識を子供から敵に切り替える。

 

「やっと……殺る気…なった?」

 

 鬼達の殺気が充満した空間で、夜は平然として鬼達に挑発する。

 

「調子に乗んなよクソガキ」

 

 挑発に乗った鬼が夜に襲いかかるが、

 

 

「……遅…い」

 

 襲って来た鬼を一瞬でバラバラに切る。

 

 

 この光景を目の当たりにして他の鬼は身体が止まる。鬼達はわからなかった。仲間の一人が切られたのは分かった。しかしどうやって斬ったのか誰もわからない。誰一人として夜が振るう刃を見れていないのだから。

 

『『ッッッ!???』』

 

 そして恐怖した。鬼達は恐怖した。そして理解した。この子供に勝てないと死の恐怖を感じた。

 もうそこにプライドは無い。逃げても殺される…そのイメージが脳裏に浮かび上がる。

 だからこそこの場にいる全員で向かっていった。

 

『ウオォォォ」

 

 全ての鬼が夜に襲いかかる。

 

「良い判断……でも…弱い!」

 

 夜は夜刀を鞘に納め鬼達がいる前に横に振るう。その刹那夜刀が鞘に収まっていた音がチャリンと聴こえる。

 

 

 ————絶技・鈴ノ音

 

 

 すると鬼達の上半身と下半身はサヨナラし50体いた鬼達は、皆死んだ。

 彼らは、知らなかったのだ。目の前にるのは剣を極めた者…

 

 ——— 【剣神】だと言うことに。

 

 

 全ての鬼を切った夜は

 

「本物…鬼…は…もっと…強い」

 

 と言い残し死体になった鬼達に目もくれず眷属たちへの元に戻る。

 

「夜刀……戻る」

 

 《了解しました。待機モードに入ります》

 

 そう言うと夜刀は、日本刀から十字架のペンダントに戻る。この状態の夜刀を首にかけて広い空間の入り口で待っていた眷属達の元へと走る。

 

「…終わっ…よ」

 

「お疲れ様です。主よる」

 

 蘭は言いながら夜に付いた血を拭き取る。

 

 レヴィと美鈴は、切られた鬼達の残骸を見て

 

「うわー、みんな真っ二つっスね」

 

 少し顔を引き攣るレヴィと

 

「やっぱり、私の出番無かった。(T ^ T)」

 

 涙目の美鈴だった。

 

 

 

 

 

 ★☆★☆

 

 

 洞窟の外への帰り道、藍は今後の予定を確認する。

 

「主よる。これからどうしますか?」

 

「……むぅ〜〜…」

 

 何も考えてない夜は頭を捻り、どう…しよう…と呟く。そこに提案を出したのはレヴィだった。

 

「久しぶりに運動だったんッスから温泉とか行かないッスか?」

 

「そうだな。主よるも血の臭いが少々するし妙案じゃな」

 

 夜の着ている和服は所々血が付着していて、銀の腰まで伸びたストレートヘヤーにまで付着している。

 それを洗い流す為にもいい案だ、と藍も賛成の意を示す。

 

「…うむ…では…お風呂…行く」

 

 夜も賛成した事で藍はこれまで何もしていない美鈴を指名して、

 

「美鈴よ、主よるが入れる温泉を見つけろ!」

 

「ん?藍さん……見つけろとはどういう意味で?」

 

「なに、貴様の能力で温泉がある地脈くらい探せるだろ?やはり一般的な湯は主ヨルが危ないからな」

 

 いや私の能力そんな事に使うのは……と渋った美鈴出会ったが、目の前には敬愛すべき夜の姿が

 

「…美鈴…おね…がい♪」

 

「夜様がおっしゃるのでしたらこの美鈴今すぐ探し出し掘り起こしてみせましょう!」

 

 

 夜の上目遣いのお願いは即堕ちで美鈴を魅了したのであった。

 

 

 その後美鈴は一時間もかからず魔法の森に偶々あった沸いている水脈を掘り当て、夜達一行は一緒に温泉を堪能したそうな。

 

 

 

 

 

 この世はまた平和である。

 

 




【あとがき】

やだ…リリなの要素無さ過ぎ……(衝撃)
次回、原作キャラ出るよん。

しばらくはこのノリでいきます。

続きが気になった人はお気に入り、感想などなどおなしゃす。
Twitterもよろ。


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2話



どもパッチェやでぇ〜。

ささ、リリなのキャラが出るでぇ〜〜。
あ、今更ながら注意だせ!!

作者はほとんどにわかで通してるオタクです。
リリなののアニメしか観てません。てかアニメ観て書いてるよ。
時系列も変えます。

東方も原作ノープレイ。周囲のガチ勢から情報得てます。なので偶に程度の能力を間違えたり、変えます。言わば勝手な解釈、変更。

そして作者は影響を受けやすいです。(例・ポプテとか銀魂とか生徒会役員共とか)
そんな自己満足の塊でいいのでしたら是非読んでね!!




 

 

 

 夜達が鬼退治をしてあれから2年の歳月が経った。

 五月の初め。

 8歳となった夜は今、転生史上最大の危機に陥っていた。

 

「今夜…どう…する?」

 

 夜は、誰もいない会社の食堂で一人お昼を食べ、藍から言われた絶望的な話を思い出していた。

 

 

 

 

 この話は、数時間前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

「えっ!?会社……一ヶ月間…使え…ない!?」

 

 社長室に夜の声が響く。

 

「その通りです。主よるが紅魔館に行っている時に馬鹿どもが暴れ部屋や機材などが壊れた為、修復及びついでに色々改築しちゃえ!と思いまして」

 

 唖然とする夜に、藍はさらに追い打ちをかける。

 

「なので、主よるには何処かに泊まって欲しいのですが……」

 

「…ッ!?…藍達…は…どうする…の?」

 

 

 すると藍は血の涙を流しながら

 

 

「私も主よるの側に居たいのですが、今日から海外に一ヶ月間飛ばなくてはいけなくなってしまいました」

 

「そ…それじゃあ……美鈴と……レヴィ…他の皆は?」

 

「美鈴とレヴィは依頼のようで、ある秘境に行っております。夜刀は工事の設計に関わっており、工事現場から手が離せません。なので…主ヨルにはこの一ヶ月間一人で生活をしてもらう事に……不思議な事に……誰もが()()()()()()()()()()て…」

 

「……」

 

 

藍のぐちゃぐちゃに濡れた泣き顔に夜はもう何も言えなくなる。藍の話はまだ続き

 

 

「本当に申し訳ありませんが私も飛行機の時間が来ており、もう出なければいけません。主よるには自分で泊まる所を探して欲しいのですが……大丈夫ですか?」

 

 

 夜の答えは決まっていた。

 

 もしここで否定などをしたら藍は、全ての仕事を放り投げてしまうのでNOとは言えず、夜は藍の仕事の重要性を分かっていた。

 

 世界で有数の金持ち達は、よくパーティなどを開き人間関係や取り引きを持ちかけたりする大事な事だ。

 もちろん夜達も呼ばれたりするが、基本的に夜は他人に興味を持たずビジネスでしか喋れない俗にゆうコミュ障であり、その容姿のせいかよく男どもにナンパされるので(ナンパは美鈴や藍が撃退している)夜は苦手にしているせいで、八割方藍に任せているのだ。

 

 だからこそ夜は、謎の自信を発揮した。

 

 

「大丈夫………多分……藍は…安心し…て行っ…て来る」

 

 

 藍は流していた血の涙を拭き、

 

 

「分かりました。それでは行って参ります。主よる何がありましたらすぐに戻ってまいりますのでご連絡を!!」

 

 心配症の藍が「ご飯をちゃんと食べてください、仕事ばかりしないで休みを取ってくださいね!あと睡眠をしてください。他にも…」

 

 時間だというのにぐだくだと言う藍を夜は、'大丈夫だから!と言う夜を見てやっと終わったのか喋るのをやめ

 

 

「主よる。食堂に昼食を作っておりますので食べてから泊まる所をお探しください」

 

 

 と言い残しの空港に向かった。まるでそれが当たり前のように。

 

 

 

 

 

 これが転生史上最大の危機の全貌である。

 

 

 

 

 ☆★☆★

 

 

 

 

 昼食を摂る夜は、これからの事を考えていた。

 

 

(ハァ…大丈夫だと…言った…けどこれどう……しよ?この体…ホテルに泊まる事…も出来ない…今じゃ…何も出来ない)

 

 

 不安な事に今月の八雲は力を出せない月であった。それは夜もであり藍もである。この世界自体に純粋な魔力というものが少なく、数ヶ月に一度力が9割近く無くなるのだ。 それが()()()()だっただけである。

 

「……ん」

 

 食事を終わり箸を置く。

 

「……考えても…した方ない…行動あるのみ…!まずは…夜まで時間を…潰す!それから…夜までは………何をしよう?」

 

 

 まるで計画性の無い考えだが1つ思い当たる節があった。

 

 

(そう言えば……美鈴が…海鳴市…に市立図書……館がある……って言って…た!図書館……なら……時間を潰せる…。決めた…図書館に行く!)

 

 そう決めると夜は食器を片付け目的地に向かう。何故か食器たちは粉々になっているが……気にすることではない。

 

 

 

———外に基本出ない夜が、外に向かうのはおかしいことでは無い

 

 

 

 _____________________

 

 _______________

 

 __________

 

 

 

 

 

 

 

 そう何も、誰も、この思考に気付くものはいない

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★☆☆★

 

 

 

 

 

 

 

 夜が()()()()()は、海鳴市中丘町の近くにあり、会社から市立図書館まで歩いて1時間半かかる。

 なかなか遠い距離なのだ。

 

 

 だからこそ夜は今、

 

 

「ハァ…ハァ……図書館が…こんな遠いな…んて聞いて……ない!」

 

 死にかけていた。

 

 夜は剣神と呼ばれる剣の達人であり本物の最強と言える人間だ。しかしそれは、剣を持った状態の時だけであり、剣を持って無いと体力や運動神経が格段に落ちる体質であり、まるで病気なのだ。

 

 今、夜は剣を持っておらず体力が夜と同じ年齢の子供の百分の一くらいになっているのだ。

 

 

「…はぁ……はぁ…ここな…はず…」

 

 ゼイゼイと息を吐きならがやっと図書館の入り口についた夜は頭がクラクラして

 

 

(やばい……意識が…)

 

 

 体力の限界を迎えた夜は意識をなくし地面に倒れた。

 ぼんやりと遠目に、車椅子に乗る少女が見えながら夜は意識をなくす。

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 ______________

 

 _______

 

 

 

 ここである一人の少女の話をしよう。

 

 ある少女の名前は、八神はやて。

 

 この少女は、周りからは俗に言う〔不幸な少女〕と思われている。

 

 両親は事故で死に一人になり、はやて自身は足が悪く車椅子と言うハンデを抱えている。

 

 その事ではやての印象は、一人て頑張る可哀想な少女である。

 

 しかしはやて自身は、自分を不幸だと思ったことは無かった。

 何故なら、自分の担当の医者は困った時に助けてくれるし、近所の人達もはやてを気にかけたりしてくれているからだ。

 

 だからこそ彼女は、自分は幸せだと感じていた。

 

 だが本物にそれは、幸せなのか?

 

 それは感じているだけの、外の幸せでは無いのか?

 では、どうしたらはやてが幸せになるか、幸せだと思うかは、誰も分からない。

 

 しかし今日という日は、はやての運命が変わる日だと言う事は、はやて自身誰も知らなかった。

 

 この変わった運命が、幸福を得られるか!絶望を得るか!

 すべては、はやて次第なのだ!

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

ピピピピピピピ〜

 

 

 

「なんか幸せな夢を見ていた気がするなぁ〜」

 

 

 はやては、夢から醒めると目覚ましがなっていた時計を確認しベットから起き上がると、車椅子に乗り朝の準備に取り掛かる。

 

 朝ごはんを一人で食べている時、今日見た夢の内容を思い出す。

 

(今日の夢は、幸せな夢やったなぁ。顔は覚えとらんけど私がいて、側に家族を纏めるお姉さん達、ドジなお姉さん達や妹みたいな存在あとペットもいたなぁ。

 そして…あの男の子誰なんやろ?いやあれは男なんか?でも、幸せそうやったなぁ〜()

 ………あかん、私は今も幸せなんやこれ以上幸せを求めちゃ、バチが当たってしまうで!)

 

 そう自分に言い聞かせかながら食事を終わると車椅子を走らせ窓際に行き外を見る。

 

「今日は、いい天気や。いい夢も見れたし、なんかいい事ありそうやなぁ。」

 

 そんな事を口にするはやては読み終え重ねて置いている本の塔を見て、

 

(そう言えば、読む本がなくなってきとったなぁ。空も晴れとるし図書館でも行こか!)

 

 図書館に行く事を決める。いつも通りの外出用の服に着替えはやては外に出る準備をした。

 

「ほな行こか」

 

 そう言うとはやては車椅子を自分で押しながら家を出た。

 

 

 

 

 はやての家から図書館までは、30分ぐらいで着くがはやては車椅子なので、図書館でも遠く感じるのだ

 

「あ、相変わらず車椅子で外に出るときついなぁ。少女の可愛らしい腕に筋肉がついてまうで」

 

 などと、つまらない事を言いながら車椅子を走らせる。平日のお昼時の時間なので周りには、誰もいなく一人て走らせるしかない。

 

 はやてが一人で車椅子を走らせて1時間ぐらいたつと図書館が見えてくる。

 

「おっ、やっと見えてきたわ」

 

 はやてがいる位置から図書館の入り口を見ると自分と同じぐらいの子供がいるのが分かる。

 

(何でこんな時間に私と同じぐらい子供がおるんや?しかもフラフラやんか!大丈夫なんかなぁ)

 

 心配しているはやては予感は的中する。

 

 ————ドサッ

 

 はやての予想通り子供倒れてしまった。

 

(あぁ!やっぱりや。あんなフラフラやったら倒れると思ったで!」

 

 急いで子供の側に車椅子を走らせ声を掛け、意識があるか確認すると少し声を上げたので少し安心する、はやてだった。

 

(よかったわ!この子疲れで倒れただけや)

 

 はやては、倒れた子供も自分の膝の上に乗せ図書館の中に入って行った。

 

 

 こうして、ある意味衝撃的の出逢いを二人はしたのであった。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

(うーん……ここは!?確か……僕は……倒れ…て!?)

 

 ベンチに寝かされていた夜は、

 意識が戻り今の現状を理解できない。

 

「あっ!やっと起きたんやな!大丈夫か?」

 

 と声が聞こえたので横を見ると車椅子に乗った関西弁の少女がいた。

 

「お前……は?」

 

 全く表情が無い子供の声。

 冷たい視線がはやてを貫く。

 

「むうっ!私はこれでも君を助けたんや!それに名前を聞く時は、自分から言うことやで」

 

「………ん?」

 

 夜も目の前の少女が軽くキレている事を感じる。

 夜は、現場を確認し目の前の少女が助けてされた事が分かると少し考え、

 

 

「えーと…その…助けてくれて……ありがと。僕は……()()()

 

 夜の表情は無表情のままだが、夜の返事に少女はくすりと笑い。

 

「なんや、ちゃんと言えるやん。私は、八神はやてやぁ、よろしくな!夜ちゃん」

 

「違う…僕…男」

 

 これが二人の初めての会話だった。

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

 

 

 

 私、八神はやては倒れた子供をベンチに寝かせているところだ。

 

 

(ふぅー!いくら私より小さいと行っても車椅子で運ぶのは、大変やな。大丈夫やろかこの子?)

 

 

 そんな事を考えていると倒れた子供が起き上がったので声をかける。

 

「あっ!やっと起きたんやな!大丈夫か?」

 

 

 はやては優しい声をかけたのだが返って来たのは、警戒心が高く無表情と冷たい視線。言われた返事に軽くイラつき思わず、

 

 

「むうっ!私はこれでも君を助けたんや!それに名前を聞く時は、自分からやで」

 

(何やねんこの子は、せっかく助けたのにその言い方は無いやろ!)

 

 プンプンと怒っているはやてだったが次の少女の言葉を聞き、

 

(なんやちゃんと言えるやん。それによく考えれば、倒れて目を開けると知らない人がおったら警戒するわな。にしても何て可愛い子や)

 

 はやては、くすりと笑いながら

 

「なんや、ちゃんと言えるやん。私は、八神はやてやぁ、よろしくな!夜ちゃん」

 

 この時はやては、完全に夜の事を女の子だと思い込み

 

「違う…僕…男」

 

 この言葉に

 

「嘘やろ!」

 

「嘘…違う…男」

 

 驚愕の真実にはやては、

 

(う、嘘やろ?こんな可愛い子が男って、これが男の娘かぁ!

 完全に負けとる!?)

 

 女として何か負けた気分のはやてはこれ以上聞くとさらに何かを失いそうになるので、全力で話を変えた。

 

「そ、それよりどうしてあそこで倒れていたんや?聞かせてくれへんか」

 はやてが疑問に思っていだ事を聞くと夜はこれまでの話をし始める。

 

 

「と、言う事は、夜君は1カ月間泊まれるとこを探しとるんやなぁ」

 

 

「うん」

 

 

 はやては夜の話を聞くと急に考えだし、ニッコリとした笑顔ではやては普通ならあり得ないことを言った。

 

 

「なぁ夜君。私の家に泊まらへん?」

 

「えっ…?……どういう…事!?」

 

 夜は、想定外の返答に戸惑う。

 

「そのままの意味や!夜君が私の家に泊まらへんか?」

 

「でも…はやて……迷惑かかるし…」

 

 遠慮している夜に

 

「大丈夫や!私に迷惑はかからんで!…それに家には、私一人やねんよ」

 

 この言葉と共に夜が見たのは、哀しみの瞳を見せるはやての我慢している表情。それを()()()夜は、

 

「本当に良いの?」

 

「もちろんや!夜君大歓迎やで」

 

 ここまで言われると夜は断れなかった。

 

「……じゃあ…お願い」

 

 はやてはニヤッと笑うと

 

「それじゃあ我が家にレッツゴーや!」

 

 はやての車椅子を夜は押しながら図書館を後にし、はやての家へ向かっていった。

 

 

 

 

 _____________________

 

 ______________

 

 _______

 

 

 

 

 

 

 

———何もおかしなことはない。

これが当たり前で、これは必然である。そうなっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 夜は戸惑っていた。

 それは、いきなりあった少女に泊めてもらう事ではなく。自分がはやてと一緒にいることに戸惑っていた。

 

 確かに助けてくれたとは言え、強くもなく戦闘もできそうに無い少女に興味を持った事を。

 

 

 夜の興味を持つ者は、皆何か持っていたり強かったりとそうゆう人が多く、だからこそ少しだけしか話てないはやてに興味を持ったのか分からなかった。

 

 だからこそ夜は戸惑っていた。

 

 

(どうして僕が…はやてと…少しだけしか話…てないのに…興味を持ったんだろう?……でもなん…かはやてと…いると暖かい?はやてと一緒にいればこの…事が分かる…かな?)

 

 感情の無い心で考えながら夜は、はやての車椅子を押して歩いていた。

 

 

 ———ねぇ?…何故こんなに懐かしいの…と

 

 

 

 

 

 

 

 

 





【あとがき】

無理矢理過ぎるなの出会い。
これも伏線だったりしないかなぁ〜〜
はやての口調はおおめに見てくれww



では、感想、お気に入り等々おなしゃす。Twitterもおなしゃす。


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3話

どもパッチェです。

暫く平和が続くなう。
はぁ……なぜ俺が書くと変態系と男の娘系ばかりになるのか……むーー分からん?




 

 

 これは夜とはやてが一緒に暮らし初めて一週間たった後の話である。

 

 

 ☆☆★☆

 

 

(な…なんや?体を締め付けられる感じが?)

 

 朝、ベットではやては寝ていると何か違和感を感じる。別に苦しいという訳では無いがふにゃふにゃと柔らかい。

 

「!?」

 

 目を開いたはやては驚愕する。

 そこには、夜がはやてに抱きついており目の前には、男の子とは思えない可愛らしい顔立ちをしている夜の顔がキスする間際か!というレベルで近かった。

 はやては少し驚きながら一緒に寝ていた経緯を、思い出していた。

 

 

(そう言えば!あまりにも夜君が寝ないから強制的に

 私のベットに連れ込んで一緒に寝たんやったわぁ!)

 

 

 はやては勢いでやってしまった昨日の自分に軽く後悔するが、目の前にあるスヤスヤと眠る夜の顔をまじまじと見る

 

(でも、本当に夜君は可愛いわぁ!女の子って言った方が納得するんよな)

 

 はやては夜のほっぺたをプニプニしたり頭や髪を撫でたりしている手を休めず、

 

(この銀色に輝く腰まで伸ばした髪に薄ピンク色の目、無表情の顔やけどたまに見せる表情が、それが良いって言うかなんと言うか!これが萌えっちゅうやつなんやな‼︎昨日なんか一緒にお風呂に入った時は鼻血が出そうになったで!アレは反則やあかん思い出すとまた鼻血が!?)

 

 高ぶる興奮を頑張って抑えていると

 

「うにゅ?はやて…おはにゃ…うー…」

 

 

 —————ブハァ

 

 

 まるでどこかの狐みたいに寝起きの夜にやられた。

 

 鼻血を出すはやては多量出血でクラクラする頭を抑えて。

 

(…あかん…あれはあかんよ夜君、いきなり起きてからの幼児語は、反則や…)

 

 意識をなくすはやてを、夜は寝起きのためよく分かっておらず話しかける。

 

「……あへ?……はにゃて……また寝……た?………いいや」

 

 鼻血を出しながら寝ている、と思い夜は起き上がり顔を洗いに洗面所に向かった。

 

 因みにほっとかれたはやてはこの後、15分後に意識が戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で、はやてが鼻血を出して気絶している時だった。

 

 むっ!誰かが主ヨルの可愛さに萌えたな!と、

 

 感じる狐がいたり。

 

 

 ☆☆☆★

 

 

「美鈴さん!感じたっスか!?」

 

 

 

「えぇ!レヴィちゃん私も感じました!誰かがこちら側の世界に来ましたね!」

 

「そうっスよね…この感じは…誰かが、夜さんの可愛さにやられた感じっスね!」

 

 

「レヴィちゃんもそう思いますよね…。夜様はまたやってしまったんですね。あれは、耐性が無いと耐えれませんからね〜」

 

「藍さんみたいにならない事を願うっスよ…」

 

『…はぁー』

 

 二人は身内にいる変態狐の様にならないように願った。

 

 

 

 

 ★☆☆★

 

 

 

 はやては意識が戻ると朝ごはんを作る。夜と一緒に食事を摂るという幸せで楽しい食事だとはやては感じる。

 

「ご飯は、美味しいか?夜君」

 

「……ん…はやて…ご飯…うまし」

 

「良かったわ!」

 

 夜の返事にはやては嬉しそうに喜びながら、

 はやては、夜が八神家に来た一週間の事を思い出していた。

 

「どうした…の?」

 

 考え込むはやてに夜は問いかける。

 

「夜が家に来て一週間も経つんやなぁー、と思ってな!こんな楽しい朝を迎えてまるで、家族みたいに感じてな」

 

「……………」

 

 顔に影がかかり黙り込む夜に、いきなり何言ってんねん!とはやては自分を責める。

 

「ごめんな!いきなりこんな事、言われて迷惑やろ…」

 

「………」

 

 楽しい朝食が重苦しい空気に変わる。暗く重苦しい沈黙が続く食卓に、夜は喋り出す。

 

 

「ねぇ……はやて」

 

「……どうしたん?」

 

「僕には……家族が……分からない」

 

「……夜君」

 

「…よく……感情が…無い…言われる…それに……」

 

 ————僕は化け物

 

「…ッ!?」

 

 この言葉にはやての唾を飲む音が聞こえる。

 しかしすぐに小さな溜息を吐くと、はやては満面の笑みで語り始める。

 

「あんな夜くん。私は言ったはずやで……」

 

 それは一緒に住んで3日目の事だった。

 あまり今月制御できていない干渉する程度の能力が軽く暴走して、スキマや大量の剣など化け物の力をはやての前で見せてしまったのだ。

 

 流石に言い訳はもうできないと、夜は全てを話した。

 

 自分が剣神だと

 程度の能力を持っていると夜は話した。嫌われると思って。

 

 しかし化け物、と言われてもおかしくない事を話したのに、はやては「凄いやん夜君!」と興奮している。

 

「…なんで…恐れない…の?」

 

 夜の言葉は少し震えており、恐れないはやての考えが分からない。一旦興奮を収めたはやては夜に言う。

 

「そんなの決まってるやん。いくら強い力を持ってても夜くんは夜くんやろ?別にそれくらいじゃ恐れもせーへんわ」

 

 

「……意味…が分か…らない」

 

 唖然と夜はするしかなかった。

 こんな事言われたのは……いつぶりだ?人間から言われたのは()()()()()()()

 それでもはやては続ける。

 

「ふふふ、夜君化け物違うやん。私から見れば可愛い顔した男の娘や!それに別に…その…何や…程度の能力やったか?それを持つ事で化け物呼ばわりは私はせんよ。そういったのは使い方次第やん?ある意味無限の可能性を秘めてるでぇー!」

 

 夢あるわ〜!、と言っているはやてに呆然ととするしかなかった。

 

「それになぁ…」

 

 落ち着いたはやては、手招きしそのまま夜を抱き締めると、

 

「それに私は夜くんを信じとるんや!見る目はある方やと自負しとるしな!」

 

「………暖か…い」

 

 抱き締められている夜はこの時、はやての暖かさを知った。だから夜ははやてを受け入れた。そしてはやても夜を受け入れた。

 

 と言うことがあったのだ。

 

 

 

 ここで話を戻そう。

 

 今、夜が自虐をしているのは、はやてに出会う前の様に、自分は化け物だからでは無く、受け入れてくれたからそこである。

 

「ありがとう……はやて。でも…やっぱり…感情とか……がまだ…分からない……」

 

「………」

 

 淡々と言う夜にはやては何も言えなくなる。

 

「…だから……はやて…

 

 ————僕に…感情……教える…!」

 

「えっ!?」

 

 少し予想外の言葉に戸惑うはやて。

 

「はやて……僕に感情や……家族……を教える…!最近はやて…といると何か……知らない事…………なんかを感じる…!………それ…知りたい」

 

 その事を話す夜の表情は何かイキイキしている、初めて見た笑顔のような表現。

 

「……」

 

 八神はやては自分の心が色々な感情で埋め尽くされていた。

 自分と夜を家族みたいと言った事

 それが引き金となり、夜に悲しいことを言わせた事

 夜の言葉を否定したい

 そんな感情に埋め尽くされていたからこそ、夜の次の言葉に戸惑いが隠せず言葉が出てしまった。

 

(そうか夜君は、分からない事が分かって分からないから私の言葉に戸惑ったんなや!)

 

 

 一緒に暮らしてきて初めて見る夜の笑顔にはやての気持ちは、決まっていた。自分が持っていた気持ちも伝えよう。

 

 

「…教えたる!私が夜君に感情を教えたる!全部夜君に教えたる」

 

「は………はやて!?」

 

「感情だけじゃなく家族の事も何でも全部教えたる!だからずっと側におってなっ!」

 

 はやての永遠を意味する言葉に夜は少しびっくりする夜だったが、これ以上とない弾んだ声で。

 

「…ん!……よろしく……ね!」

 

「よし!それじゃあまず残りのご飯を食べるで」

 

 こうして、夜とはやての本当の家族の様な生活がまた始まった。

 

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

 二人はが朝ごはんを食べ終えリビングでゆっくりしていると

 

「はやて。今日なんか用事ある?」

 

 

 夜の疑問に記憶の奥底を辿っているとある事を思い出す。

 

「あぁ!そうや今日病院やったわ。今何時や!?」

 

 

 はやては急いで時計を見るが、その針は非情だった。

 

「もう!9時半!確か病院は10時からあかんもう間に合わへん!?」

 

 オロオロするはやてはある提案をだす。

 

「はやて…いい…なら……能力ですぐ着く……どうする?」

 

 夜がそう言うとはやては動きを止めズィ!と顔を近づける。

 

「ホンマか!?夜君!」

 

「ん……僕の能力……速い…今ならそこまで…暴走…多分…しない…」

 

「か、神はいた!」

 

 など意味わからない事言うはやて。

 すぐさま外出準備を終えて、夜に声をかける。

 

「夜君!準備できたで」

 

「じゃあ……行く…」

 

 そう言うと、夜は干渉する能力を使って通称'スキマを開ける。

 これを見たはやては少々引いてします。

 

「やっぱり……この目ん玉いっぱいの所に入っていくんよな」

 

 一度見たことはあるが、これに入るのか?と戸惑っていたが文句を言っている場合じゃないのではやては決死の思いでスキマの中に入り自分が通う病院に行くのであった。

 

 

 

 

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 はやてが通う病院、海鳴大学病院には、はやてが足を悪くした頃からお世話になっており、はやてには、担当の医師が付いている。

 

「うん!今回はやてちゃんの足は麻痺の侵食は無いわ。安心して大丈夫だから」

 

「そうですか!ありがとうございます。石田先生」

 

 今、はやてを診察しているのは、石田幸恵ことはやての担当医師だ

 最初の頃からお世話になっておりはやては石田医師の事を信用していた。

 

 診察が終わるとカルテを片手にはやての暮らしを大人としてはやてに聞く。

 

「そういえばはやてちゃん、一緒に暮らしている子とは、最近どうなの?」

 

 質問の意味を取り間違えたはやては、今日朝の出来事を思い出していたせいで顔が少し赤くなる。

 

「…な、何もなかったですよ…」

 

 完全に動揺しているはやてに石田は勘違いをして

 

「…はぁー。何かあったのね!何かされたの?」

 

「…いや!されたんじゃ無くて、逆にしそうになったと言うか…何と言うか…」

 

 顔を真っ赤にしたはやての表情を見てこれ以上聞いても無駄だと思い質問を変える。

 

「この話は、終わりにして夜君も診察したいから呼んできてくれる?」

 

「分かりました。それじゃあ夜君を呼んできます。

 

 そう言うと車椅子を走らせ診察室を出て言った。

 

 

 石田医師は、はやてが出て行くと書類に目を通していた。

 

 

 ガラガラ

 

 扉が開く音が聞こえると

 

 

 石田医師は扉の方を向き、

 

 

「よく来たわね。夜君」

 

 夜に向かって言うのであった。

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

 

 

 はやてが診察を受けている時、夜は診察室前のベンチに座ってパソコンを使って仕事をしていた。

 

 

 

(やっぱり……仕事が少ない……多分藍辺り……が仕事量を……減らしている……そのおかげではやて…と…遊べる)

 

 

 夜は無くなった仕事量を嘆くと言う、見事な仕事中毒になっており、仕事はしたいがはやてとも一緒に居たい、と言う複雑な気持ちになっていた。

 

 パチパチとパソコンの音を鳴らしていると

 

「夜君、石田先生がおよびやで〜」

 

 と、言っているはやてが隣におり

 

 

(あ……はやて、…診察終わった……石田先生が呼んでる?何の用…?)

 

 石田先生が呼んでいる事に疑問を持ちながら、パソコンを干渉する程度の能力で空間にしまい立ち上がると診察室に入っていく。

 

 

 夜が診察室を開けると当たり前の事だが石田先生がおり

 

 

「よく来たわね、夜君」と、言ってきた。

 

 

「僕に何の用?石田……?」

 

 

 

 

 

 

 

 ★☆☆★☆

 

 

 

 

 

 

 実は、夜と石田医師が合うのは、これで二回目なのだ。

 1回目あった時ははやての家に泊まる事になった次の日にはやては、

 夜を病院に連れて行き石田先生に紹介と診察を頼んだときが2人が初めてあったのだ。

 石田医師は最初はやてから、一緒に暮らしてる'と聞いた時、夜の事を

 疑ったが話してみると夜の言葉に嘘は無く悪い子じゃないと判断して

 夜の事を信じでいるのだ

 

 

 

「それで石田……何の用?」

 

 

 石田医師は、溜息を吐くと凄みをきかせた表現を作る。

 

「はやてちゃんから聞いたんだけど、あなた最近仕事ばかりして寝てないそうね!」

 

 うっ!と夜は声を上げ萎れていく。

 

「それの診察!それと夜君の耳に入れときたい情報があるのよ」

 

 情報?夜は首を傾げる。

 

「それは後にして、まず診断よ!まず服を脱いで」

 

 それから夜は5分間診断を受けた。

 

 

 石田医師は今日何度目かの溜息を吐く。

 

 

「やっぱり夜君、疲れが相当溜まってるわよ。夜君休みなさい!仕事が有るのは分かるけど、これは医者としての命令です」

 

 そう言われると夜は、ハイかYESしか言えなくなる。医者の言うことは絶対!これは自分が一番分かっている。

 

「これで診断はお終い。次は夜君に教える情報ね」

 

「………情報…って?」

 

「実は6月4日は、はやてちゃんの誕生日なの」

 

 

「えっ……?」

 

 石田先生の発言に夜は少しびっくりし、ある疑問が浮かぶ。

 

「どうして……情報を僕に……?」

 

 

 溜息が止まらない石田先生は仕方の無い事情を話し始める。

 

 

「いつも毎年私が祝っていたのだけど今年は、行けそうになくて……

 夜君がはやてちゃんの家に後3週間しか居ないのは知ってるけど夜君に祝って欲しくて、はやてちゃんも夜君と一緒に居れば寂しくないと思うからよ。これは夜君を信用して言ってるの、頼めるかしら?」

 

 そう聞いてくる石田先生にうむ…と胸を張り。

 

「ん……はやての誕生日……を祝う」

 

 夜の返事に石田先生は、ふふっ!と笑い

 

 

「じゃあ、お願いね!」

 

 少しホッとした石田先生は夜の今後の用事などは無いのかと心配なる。

 

「でも本当のにいいの?夜君忙しくないの?」

 

「大丈夫…それに……一緒にいる……って()()…した」

 

 普通の人なら恥ずかしがる様なセリフを平然と言う夜に微笑ましく見ながら

 

「そう…それじゃあはやてちゃんをお願いね!今日の診断は、これで終わりよ」

 

 石田先生が終わりの言葉を夜にかける。

 

「任せる………石田……またね」

 

 と、言い残し夜は診察室を出て言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が出て行くとニヤつきならが、

 

(あんな恥ずかしい約束をはやてちゃんはしていたのね。そりゃ言いたく無いわよね〜ふふっ!夜君自身あまり意味を分かってない様だけど)

 

 '多分はやてちゃん堕ちてるわね!などと思い残りの仕事に取り掛かる石田であった。

 

 

 

 

 

 ☆☆★

 

 

 

 

 車椅子に乗って帰るはやては、

 

「なぁ!夜君。石田先生と何の話をしてたんや?」

 

 

「………?はやて…には…内緒!」

 

「なんや、いけずやな」

 

 そんなことを、喋りながら車椅子を押す夜であった。

 

 

 

 

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 時間とは楽しい事ほど過ぎるのが早いもので有る。気付いた時には終わるっているものだ。

 

 夜が八神家に泊まって丁度1カ月、6月2日の夕方の事。

 八神家のリビングにて。

 

「えっ!夜君今夜、帰るんか?」

 

 哀しそうにするはやてに夜の心に罪悪感が湧く。

 

「ごめん…ね…藍……連絡があった……工事が終わった……から戻らなくちゃ…いけない……だから今夜…はやての家を出る」

 

「謝らんといて夜君。分かってた事や、夜君は1カ月間家に泊まる予定やもんなぁ。だから謝らんといて」

 

 少し目尻に涙が溜まっているはやてに朗報とばかりにある事を伝える。

 

「安心する……はやて……明日仕事を全て終わらせて……はやて……誕生日を祝う……!」

 

 

「えっ!?なんで夜君私の誕生日の事知ってるんや?」

 

 

 はやては教えてない自分誕生日を夜が知ってる事に不思議に思ってはいると

 

「石田……が教えた……今年は……祝えない……はやてと一緒に居て……と!」

 

 夜の説明に納得したはやては、涙を拭き少し嬉しそうに

 

 

「じゃあ夜が私の誕生日、祝ってくれるんか?」

 

 

「うん。今年は僕がはやての誕生日を祝う。その為に今日帰って仕事終わらせる」

 

 

「それじゃあ仕方ないな!」

 

 

 さっきのはやてと違い今は、とても上機嫌だ。

 

 

「……4日お……昼に……眷属……連れて…はやて……家に行く…0待ってる……!」

 

 

「分かったわぁ。それじゃあ待ってるで夜君!」

 

 こうして夜とはやてに約束は交わされ今夜、夜は帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 6月3日

 

 

 

 

 社長室で夜は大急ぎで書類を山を処理していた。

 

(明日……はやて…誕生日…今日中…仕事全部…終わらせる…!誕生日……祝う…!)

 

 はやてにの誕生日を祝うために全力で仕事をする夜であった。

 

 

 一方で夜の仕事っぷりを見ていた眷属達は、その迫力に物珍しさを感じる。

 

「物凄い勢いでやってるっスね〜」

 

「そうですね。やっぱり夜様が泊っていたはやてちゃんという子為に頑張っているみたいですね」

 

 レヴィと美鈴が会話している時、藍はギリギリと歯を食いしばり血の滲むような思いで。

 

(一体どこの泥棒猫が主ヨルに?明日会いに行くのであれば、この藍がその泥棒猫に引導を!)

 

 など、邪念に囚われ黒い瘴気を出していた。

 

 この光景にレヴィと美鈴はドン引きする。

 

「うわー、藍さんめっちゃ瘴気だしてるじゃないっスか!」

 

「これは、会いに行くはやてちゃんに'引導を!って考えてますね。

 明日は私達が藍さんを止めなくちゃいけなくなりそうですね!」

 

 

『はぁー…』

 

 こちらも溜息が止まらない眷属の2人であった。

 

 

 

 

 

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 八神はやては、早く明日にならないかと!考えながらベットの中に入っていた。

 

 明日になれば夜がはやての誕生日を祝ってくれると思うと眠れずにいた。

 

 だからこそいつも11時には寝るはやてが寝れず、後1分で0時になる事に気付かなかった。

 はやての部屋に飾っている本が怪しく光ってくる事も。

 

 

 

 そして部屋の中に黒い光が広がった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本来は出会うはずの無い2人が出会った時、運命が変わり動き出す。

 

 では、変わる運命とは!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 まだ寝ていないはやてはベットの上で興奮して眠れていなかった。

 

(あかん!楽しみすぎて眠れんわぁ、後1分で日付かわるやん!?早く寝なきゃ)

 

 後1分に日付を変わる事を見たはやては、ベットの中で目をつぶった瞬間、時計は、全ての数字を0にした時……

 

 

 

 

 ————黒い光が部屋中に広がった。

 

 

「な、なんや!?」

 

 それに気づいたはやては、ベットから起き上がり周りを見渡すとその元凶をはやて見つける。

 

「…本が……浮いとる…」

 

 実際にはありえない現象に、はやてに思わず口から言葉が漏れる。

 

「…なんや…これ!?」

 

 はやての思考は無視し、本はこの少女だと自らの機能を使って力を解放する。

 

 《封印を解除します》

 

 本が喋りながらはやての前に降りてくる。

 

 すると…

 

 《起動》と言う声と共に部屋の中は、眩い光に覆われると、光が集まり人の形にを成形しているのを最後にはやては、気を失った。

 

 

 

 

 

 ——こうしてはやての運命が変わる。

 

 




【あとがき】

はい、少し時を早めました。
日常編が書きたいのよ。ではまた会いましょう。

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4話


どもパッチェや!!
出ますよ!あの4人が。

大丈夫…俺ならできる。……あの2人を影が薄い何で言わせない!!
シャ———とザフ———。





 

 

 

 6月4日 午前7時

 

「…や、やっと…終……わった!」

 

 夜は、はやての誕生日を祝うために2日の夜20時から今のまで寝ずにずっと仕事をしていた。

 

「うぅ…はやての家に行かなきゃ…」

 

 

 いつもの五倍の仕事を約30時間で終わらせた夜は、意識が朦朧としながらも八神家に行こうとしていた。

 

 夜が社長室のドアを開けるとホスッンと何かに当たる。

 

「夜様!何処に行こうとしているんですが?」

 

 美鈴が立っており、夜を通さない!と、威圧する。だが美鈴の威圧に怯む夜では無く、ここは譲れないと声に出す。

 

「…美鈴…そこ邪魔……はやて…家……行けない」

 

 夜も威圧を出そうとするが、疲れで今にも倒れそうな夜が出せる訳も無く、美鈴は全く怯まない。

 

「全く…その体調じゃあ、倒れるのがオチですよ。ですから寝て下さい!」

 

 少し呆れの入った美鈴の言葉。

 

 

「で…でも…早くはやて……家に……」

 

 まだ、駄々を言う夜に美鈴は優しく諭す。

 

「今の夜様がはやてちゃんの家に行ったって、迷惑になるだけです。まだ約束の時間もあるし少しだけ寝ましょう」

 

 はやての迷惑に……と表情を落とす。

 

「…今の僕が行く……はやて……迷惑?」

 

 夜のとてつもない落ち込みに美鈴は、罪悪感が襲ってくる。

 だが、夜の為これから行くはやての為に美鈴は、涙を飲んで夜を寝かそうとする。

 

 美鈴「その通りです。だから寝て下さい夜様。ちゃんと時間になったら起こしますから!」

 

「……分かった……寝る」

 

 そう言うと夜は、フラフラとしながら寝室に戻って行った。

 

 

「……やっと寝ましたか」

 

 フラフラと戻って行く夜の背中を、美鈴は見送りながら小さなため息を吐くと予想通りだったでしたねと思いながら、はやてと言う少女の事について考える。

 

(それにしても夜様にあそこまで想われてる八神はやてちゃんですか、

 どんな子何でしょうね〜?夜様が信用してる事は、大丈夫だと思いますが………もし夜様に危害を加えるなら、藍さんじゃぁないですけど

 

 

 

  —————私達が潰すしかないですね

 

 

 そんな事を考える美鈴の目は、いつもの優しい目では無く獲物を狩る目をしながら社長室の前に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

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 _______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 八神はやては、目を覚ますと昨日の出来事を思い出す。

 

(わ、私は確か昨日の夜、本がピカッー!って光ったらなんか色々な光が飛び出てそしたら、その光が人の形に変わって……あれ?そこから記憶がないわ!?もしかして夢…? )

 

 などと考えてベットから周りを見渡すと、ベットの端に大型の蒼い犬が見えると、それに気づいた犬がはやての方に近づき声をかけてくる。

 

 

「おはようございます、主人!よく眠れましたか?」

 

 いきなり喋りかけてくる犬に白目を剥きながら。

 

「あかん!?どうやら私は、まだ夢の中のようや!」

 

 はやては頭を抱える。

 

「むっ!主人どうされました。もしや体調が!?」

 

 シグナム主人が!などと叫ぶ犬に、はやては頭が痛くなる。

 

(…やっぱりこれは……)

 

「主!?ご無事ですか?」

 

 今度は、桃色髪のポニテの女性が剣を持ってドアを破って入ってきた。

 

(…夢じゃあ無い?と言うことは、今の状況は何なんや!?)

 

 喋る犬にいきなり剣を持ってドアを破って入ってくる女性に色々な思いが爆発する

 

「誰か私に、今の状況を説明してぇー!」

 

 ベットの上で叫ぶはやてに、一階にいた他の2人も気づき慌てて、はやてを落ち着かせようとする4人?がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 何とか落ち着かせた4人?は、はやてをリビングに運び自分達の説明を始めた。

 この本は闇の書といい"その(あるじ)に選ばれたのだと。

 

「それじゃあ、この本の主人が私ちゅう事やな!」

 

「そのとうりです、主。この闇の書の全頁(666頁)を蒐集する事で膨大な力を手に入れる事が出来ます」

 

 はやては手に持っている本をいじりながら、興味ないわぁ〜とあくびをしながら否定する。

 

「そんなもの要らんよ」

 

『!?』

 

 発言に驚く4人にはやては話を続ける。

 

「それより、皆んなの名前を教えてくれるかぁ?ちなみに私の名前は八神はやて'や。よろしゅな」

 

 自らの名を言い、驚く4人を余所に質問をしたはやては4人はそれぞれ自己紹介を聞く。

 

 まずは、さっきまで犬だった、ガン黒の犬耳を付けた男が最初に名乗り出た。

 

「失礼しました。私の名はヴォルケンリッターの一人 "盾の守護獣のザフィーラと申します」

 

 次は、金髪のショートボブの女性が。

 

「私の名前は、シャマル。ヴォルケンリッターの一人で参謀であり、湖の騎士と言われています」

 

 今度は、赤い髪の二つのおさげが付いている幼女が元気よく。

 

「あたしの名前は、鉄槌の騎士ヴィータだ!よろしくな」

 

 最後に、桃色髪のポニテにし、凛々しいという言葉が似合う女性

 

「ヴォルケンリッターの将、剣の騎士シグナムと申します」

 

 全員の名前が分かるとひぃ、ふぅ、みぃと数え、うまうまと頷く。

 

「ザフィーラ、シャマル、ヴィータ、シグナムやな、よし覚えたで!これから家族やな!よろしくな!」

 

 ヴォルケンリッター達は、はやての'家族と言う発言に首をかしげる。

 

「主はやて。…その家族と言うのはどういう意味ですか?」

 

「どういう意味って、そのままの意味や!私達は、家族や」

 

 ヴォルケンリッター達は皆戸惑う。

 

 

 

 ここでヴォルケンリッター達の事を話そう。

 

 ヴォルケンリッターとは、古代ベルカの騎士である。

 では何故古代の騎士が現代にいるのか。

 

 その理由は、彼等は人間では無くプログラムだからである。

 闇の書と言うプログラムである彼等は、強大な力を持ち主がいれば永遠に戦え彼等四人だけで国を落とす事が出来ら為、闇の書の主になった人達は皆、暴君の王になっていたからである。

 

 そんな記憶があるからこそ、今のはやての発言に皆戸惑っているのだ

 

 一度も家族などと言われた事は無く、自分は道具だと兵器だと思っていたヴォルケンリッター達は、意味がわからないのだ。

 

 それ故に———

 

「主はやて。我等に家族などと勿体なきお言葉。ですが我等はプログラム、道具なのです。なのでどうぞ蒐集の命令を!」

 

 

 シグナムの言葉を聞き、はやてはため息を吐く。膨大な力など別に要らないと言っているのにまだ聞き分けがない。

 

「ええか!シグナム達がプログラムだろうと関係ないねん。それに、私は強大な力なんて要らんのよ。だから蒐集なんて他人に迷惑になる事せんでええんや!」

 

「「………」」

 

 あまりにも力強い言葉にヴォルケンリッター達は何も言えないなる。

 

 それにな、とはやての言葉が続き、

 

「主の私が家族になってと言うてるんや、主の命令は絶対なんやろだったら黙って聞いとればいいんよ!」

 

 はやての発言はある意味暴君の発言だ!

 しかしヴォルケンリッター達からすると、絶対の命令を、 " 家族になれ!と言ってきた主は、今までいなかった。

  だからそこヴォルケンリッター達は、はやての発言を悪く思う者は、誰一人いなかった。

 

 そしてヴォルケンリッター達の気持ちは決まった、

 

「分かりました。主八神はやての命令に従い、我等ヴォルケンリッターは八神はやての家族になりましょう!」

 

 他のヴォルケンリッターもシグナムの言葉に異議は無く、はやてはにっこりと笑い満足する。

 

「良し!それじゃあよろしくな」

 

 そう言いながら手を差し出すはやて。彼等はその手に手を伸ばした。それは初めての繋がり。絶対に切れることのない繋がりを彼等は手に入れたのであった。

 

 

 

 これは、夜が来る前の出来事である。

 

 

 

 

 





【あとがき】

あ、あれ?
シャマルとザフィーラが喋ってないだと!?
やはり時代はシグナムか……。何となくシグナムって『このすば』のドM担当に似てねぇ?髪色以外。


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5話

どもパッチェ。

は〜〜なしは進まない。



 今日、6月4日は私八神はやてにとって最高の日になるはずだった。

 一番の友人であり家族である少年と一緒に自分の誕生日を迎えるはずだった。

 

 それが………

 

(どうして…コウナッタンヤ…)

 

 八神はやては、目の前の状況を確認する。

 

 目の前では、今日家族になったシグナムが剣を構え狐の尻尾が9本ある金髪の女性と睨み合い、ヴィータも鉄槌を肩に担ぎ、巻き物を口に咥えた忍者と撃ち合おうとし、シャマルとザフィーラは赤い髪の中国風の服をた女性とほのぼのと話あっている。

 一部一触即発の空気の中一番の友人こと夜は、無表情の顔で自分に抱きついてる。

 

 現実逃避したい気持ちを抑えどうしてこうなったか今一度考える為、

 1時間前の出来事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 これは八神はやてとヴォルケンリッター達が家族になった直後に遡る。

 

 

「八雲夜ですか?」

 

「そうや!夜君や」

 

 はやてはヴォルケンリッター達にこれから来る八雲夜の事を話していた。

 

「そいつ信用できるのか?」

 

 永遠の幼女こと(誰が永遠の幼女だ!)ヴィータは、はやての友人である八雲夜に警戒していた。

 しかしそれは、はやてが許さない。

 

「こらヴィータ!そんな事言っちゃいかんで!」

 

 

 明らかに怒ってるはやてにやっちまったと萎れるヴィータ。

 

「ご、ごめんなさい」

 

「私の事心配してくれとるんやろうれど、夜君は大丈夫やからもう言っちゃいかんでぇー!でもちゃんと謝れたし撫でてあげるわー」

 

「えへへ〜」

 

 素直に謝るヴィータにはやては、いい子'と撫でているとシャマルが、ニヤニヤとして問い掛ける。

 

「でも、そこまではやてちゃんが言う夜君の事を、知りたいわね〜!」

 

 

「えっ!?」

 

 いきなりの事にはやては戸惑い慌て出す。一方でシャマルの発言に乗っかる者も此処にはいた。ギラギラと獣の眼をしているピンクポニテの剣士様だ。

 

「主はやて、私も知りたいです!何かあった時の対策にしなければいけませんから」

 

 何かシャマルとシグナムで質問の意味がズレているような気がするが気にせずはやては、夜との出会いからの事を喋り始める。

 

 途中、はやての嬉し恥ずかしい発言を誤魔化そうとした所でシャマルに突っ込まれ根掘り葉掘り聞かれ恥ずかしさで悶えそうになるが主としての威厳を保つ為にギリギリ堪える。

 

 一緒に暮らした一ヶ月間全てを話し終えると、

 ヴォルケンリッター達は、各々感じた事を喋る出す。

 

「あらあら!青春ねー」

 

 などとニヤニヤする者や、

 

「ふむ!剣神か。剣を交えてみたいな!!」

 

「ああっ、戦ってみたいなぁ」

 

 戦闘狂二人が燃えていたり、

 

「無表情系の可愛いって?、どんな奴なんだろ?」

 

 容姿を気にしたりと、最初の警戒は無いようだ。

 

 はやては、約一人に殺意を持つがヴォルケンリッター達が夜の警戒を解いた事に安心していた。

 

「それじゃあ、もうすぐで夜君来るから攻撃とかせんでな!」

 

 念を押すはやての言葉にヴォルケンリッター達は、皆頷く。

 

 

 それから30分後、

 

 はやてとヴォルケンリッター達が居たリビングに、くぱっ!、と音が聞こえると皆、音がした所でを見る。

 

「な、なんだ!?この変な目玉達は!」

 

「これが主はやての言っていた、スキマ'という奴だろう」

 

「少し気持ち悪いなぁ…」

 

「そうねー、これは…ちょっとね……」

 

 

 各々スキマに対しての感想を言っていくがスキマに対しては高感度は低い。

 

「これが出きた、言うことはもうすぐ来るんやな!」

 

 はやては、シャマルに車椅子をスキマの前に押してもらい、夜が来るのを待つ事15秒後、はやてぇー、と声が聞こえると、バフッ!とはやてのお腹に飛びつく夜が出てきた。

 

「おかえり。夜君」

 

「ただ…いま……?」

 

 ふたりは、見つめ合いながら言うのであった。

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

 

 はやてと夜が見つめ合いをしている時、初めて見る夜の姿に心底信じられないと言う表情をしていた。

きめ細かい白い肌に、銀髪の腰まで伸びたストレートヘアー。無表情ではやてよりも小さい背丈。赤の着物が可愛さだけではなく可憐さも引き立てる。

 

『お、おい!私の聞いた話は八雲夜は少年?のはずだが、あれは、少女に見えるのだが!」

 

『え、ええ…私も少年と聞いたわ。だけどあれは……』

 

『どう見ても少女だな』

 

『確かに少女の様に見えるが、そこまで驚く事か?』

 

 ヴォルケンリッター達特に女性陣は、、後ろの方でコソコソと夜の容姿について議論を交わしていた。

 

『何を言っているの!ザフィーラ!あの姿は、女として…女として…

 

『ザフィーラよ。男のお前にはわからんだろうが、剣を持ち女を捨てたと思っていた私だが、あの少年?を見るとな……

 

『あぁ、あの姿は反則だ…ほんとあいつを見ていると…

 

『『『女としてのプライドが粉々に砕け散るんだ……』』』

 

 orzと手を床につく女性陣。

 はやてが言っていた無表情系の可愛いの意味が分かった女性陣は、女としてのプライドがボキボキと折れていた。

 

『はやてちゃんの言う意味が分かったわ。あの姿を見たら私って女だっけ?、と思うわね…』

 

『確かにな!てか、もう女って言っても疑問をもたねーよ!』

 

『むしろ言って欲しいな!』

 

 そんな事を話している三人にザフィーラは頭を捻らせていた。

 

(女心は、何年たってもわからんなぁ?)

 

 何百年と一緒にいる女達の心を不思議がっていた。

 

 この時、プライドを砕かれ落ち込んでいた為、ヴォルケンリッター達は、スキマから聞こえる声に反応が遅れた。

 

 

 ☆☆★☆

 

「そういえばなぁ〜夜くん。この———」

 

 はやては未だ抱きついてる夜に、ヴォルケンリッター達の説明をしようとしていた時だった。

 

 主よるゥゥゥー!、と言う声がスキマから聞こえると、スキマから金色の髪と9本の尻尾を持つ女性がいきなり出てきた。

 

「誰や!」

 

 出てきた金髪の女性に驚くはやてだが出てきた狐…まぁ、藍なのだが、その藍は充血させた目をはやてにギロリッ!と睨みつける。

 

「貴様が、主よるを誑かした泥棒猫!いや泥棒狸!」

 

「誰が誑かした狸やねん!」

 

 初対面の人に狸呼ばわりに、はやてもツッコム。

 

「黙れ!貴様が主よるを誑かしたのは知っているのだ!さっさと主よるから離れろ!」

 

 あまりにも酷い言われ様に気付いたシグナムが、長剣を藍に向けて剣気を放つ。

 

「貴様!主はやてに、何をしている!」

 

「何をしているだと?主よるに付く狸を剥がすのだ!」

 

 ここでシャマルも話に入ってくる。

 

「はやてちゃんは狸では無いわ!はやてちゃんは……」

 

「そうや!シャマル言うたれ!」

 

 流石に狸呼ばわりにキレていたはやてもシャマルの発言に期待する。

 

 

 

 だがシャマルの言葉は………シャマルであった。

 

 

「はやてちゃんは、子狸よ!まだ大人狸では無いわ!」

 

 シャマルの言葉にはやては、藍の時よりキレる。

 

「…シャマル。後で説教や!」

 

「何故!?ちゃんとフォローしたのに?」

 

 

 シャマルのズレた発言にヴィータは呆れるしかない。

 

「いや、フォローになってねーから!」

 

 ヴィータは、しっかりツッコム。

 

「いや…その……悪かったな狸呼ばわりして、周囲まで狸呼ばわりされてしまって………人望あるのか?」

 

「やめて!謝らんといて。もっと惨めになるやん!」

 

 あまりにも可哀想な、部下の発言に流石に藍もはやてに同情の目を向ける。

 

「ゴホン!まぁその話は置いといて、貴様らは、何だ!主よるは車椅子の少女しか居ないと言っていたが?」

 

「あたしらは、はやての騎士だ!お前こそ誰だよ!あたし達も少年?の事しか聞いてねーぞ!」

 

 

 ヴィータの発言に藍はヴィータには無いポヨンとした双丘のモノを見せつけるように胸を張る。

 

「私は、主よるの眷属だ。こんな奴らが騎士だと?笑わせる!」

 

 品定めするように4人を見ると鼻で笑う。

 

「……なんだと!」

 

 キレたシグナムは、藍と睨み合う。

 

 

 だがその一瞬、スキマから更に2つの声が聞こえて、2人の女の子が出てくる。

 

「全く、藍さんは行くのが早いッスよ!…あれなんスか?この空気は?」

 

「…ハァー。また藍さんが暴走したようですね〜。」

 

 出てきたふたりは、悪い空気に気付きその元凶を見るとため息を吐きながら戦闘態勢に入る。しかし戦闘態勢と言っても形だけだが。

 

「この人達は、誰なんッスか?そして何をやらかしたんッスか?藍さん」

 

「此奴らは、はやて言う少女の騎士らしいぞ。笑えるな」

 

「確かに、少し笑えるッスね!特にそこの赤髪幼女」

 

 

——ブチ‼︎

 

 騎士道を大切にするシグナムは、笑われた事にキレ、ヴィータも名指しで忍者に笑われたのでキレた。

 

「いい度胸だなぁ!そこの黒髪ポニテ!あたしに喧嘩売ってるだろ!そうなんだろ!」 

 

 ヴィータは、自分を馬鹿にした忍者に、鉄鎚を向ける。

 

「私の騎士道を馬鹿にするとは、切られる覚悟はできているだろう」 

 

 シグナムも藍に向けている剣が燃え盛る。

 

 そんな中美鈴とシャマルは、

 

「いや〜すいませんね、うちの者が失礼な事を」

 

「いえいえ、こちらも戦闘狂ばっかで!」

 

「「お互い苦労しますね〜」」

 

 ほのぼのとお互い苦労話をしていた。

 ザフィーラも自分に被害が来ないようにシャマル達の所に避難していた。

 そんなカオス空間の中はやては白目を剥き、

 

「だれかぁぁー、私に今の説明をしテェェェーー!

 

 今の状況についていけないはやては、叫ぶのであった。

 

 その中で夜は、

 

「………はや…てぇ♪〜」

 

 と未だ抱きついていた。

 

 

 

 




【あとがき】

…………(ネタ切れ)

感想、お気に入りなどおなしゃす。
Twitterもフォローしてちょ。なんかネタくれ。


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6話

どもパッチェです。

よかった…『旧』を読んでいた読者の方々がこっちに気づいてくれて。


 

 

 

 

 

 八神はやては、疲れていた。

 

 今日は楽しい誕生日のはずだったのに朝からヴォルケンリッター達が現れはやては、一度目の絶叫し色々あったが家族として迎えた。それだけなら嬉しい話で終わるのだが今度は、祝いに来てくれた夜の眷属達とヴォルケンリッター達の一部が喧嘩を始め、はやては二度目の絶叫する事になり真っ白に燃え尽きた。

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?主はやて」

 

「……もう大丈夫や」

 

 燃え尽きていたはやては、仕事終わりのサラリーマンの様な目をしており哀愁ただよう雰囲気にヴォルケンリッター達や眷属達も静かにリビングに座っていた。

 

 夜は、目の前に座っているはやてが落ち着いた事を見ると、ヴォルケンリッター達をジロジロと不思議そうな表情をして観察している。

 

「………はやて……後ろの…そいつら…教える」

 

「…そうやったな!夜君に説明してなかったな!」

 

 夜の質問に、さっきまで光を失っていためはやての目は輝きだし朝の出来事を夜に話した。

 

「……じゃ……はやて…闇の書の主……?」

 

「そうみたいやでー!そして後ろにいるのがヴォルケンリッター達や」

 

「…本……出た…騎士……」

 

 夜はもう一度はやての後ろにいる本から出たと言うヴォルケンリッター達を見る。

 

 その様子を見たはやてはんまぁ普通はそう反応やなぁ〜と信じてくれるのは難しいと思っていた。

 

「……やっぱり、信じられへんよなぁ…」

 

「……?……普通……信じる」

 

『えっ!?』

 

 普通なら信じられない話を当たり前の様に肯定する夜に、はやてだけじゃなく話を聞いていたヴォルケンリッター達も思わず声を上げる。

 

「よ、夜君!信じるんか?こんな嘘みたいな話を!?」

 

「……疑う…話?」

 

 夜の言葉にはやて達は唖然とする中、後ろに座っていたシグナムが手を挙げはやてに声をかける。

 

「主はやて。八雲夜に質問があるので少し宜しいですか?」

 

「えっ!?ええけど…何を話すん?」

 

 いきなり声を掛けられはやては驚きながらも返事をするが、シグナムが夜に何を話すか気になっていた。

 

「ありがとうございます。ご安心を主はやて。少し質問があるだけです」

 

 そう言うとシグナムは、夜に話しかける。いや、問い掛ける。

 

 

「主はやての許可も出たので……八雲夜、で良いか?」

 

「うむ……夜…良い」

 

 シグナムは、夜に確認を取ると夜も了承したので質問をする。

 

「では、夜。何故お前は、主はやての話を信じられる?普通なら疑うのが正しいのではないか?」

 

 シグナムの質問は、ヴォルケンリッター達の質問だった。

 普通なら信じない様な話を軽く信じた夜にヴォルケンリッター達は、信じられなかった。今まで幾度となく転生し人を見てきたヴォルケンリッター達は、こんなあっさり信じる人を見た事が無かった為に夜の真意を聞き出そうとしていた。

 もし夜が、強大な力を求めて信じたのであれば、主はやてから嫌われても夜を攻撃する気でいた。例え、目の前の存在が格上の強者でも。

 

 だが夜の言葉は、あまりにも当たり前で予想外の返答が返ってきた。

 

「何で……?僕…知ってる……お前と同じ様……存在…」

 

「…それは、どう言う事だ?」

 

 答えの意味がわからず思わすシグナムは、聞き直すが夜は余り前でしょ?とこれ以上言い様がない。それに気づいた藍が主の説明を引き継ぎをした。

 

「私が喋って宜しいでしょうか?主ヨル」

 

「……藍……言う……」

 

 夜は言葉の意味を藍に任せる。

 

「それでは。主よるの意味を教えよう。その前にだがお主ら目からと予測からして、私は何に見える?」

 

 藍はヴォルケンリッター達に問いかける。私はどう観える?どんな存在だ?と。

 

「何って、狐の使い魔だろ!」

 

 ヴィータの答えに藍は顔を歪めて、

 

「あんな奴らと一緒にするでは無いわ!」

 

「そ、それじゃあ何なの?」

 

 軽くキレる藍にビビリながらもシャマルは、話を続ける。

 

 

「………ゴホン。すまない、あやつらと一緒にされてキレてしまった。それで私の正体だが、私は九尾。使い魔では無く、式神と言うやつじゃ」

 

「何が違うんだ?」

 

「そうじゃなぁ〜お主ら使い魔の原理は、分かるか?」

 

「たしか、動物などと盟約を結び使い魔契約をする事。ではなかったか?」

 

 シグナムの言葉に他のヴォルケンリッター達も頷く。

 

「そこからの説明だが、まず先に使い魔との違いを言うと、私は動物では無い。私は……」

 

「妖怪やな!」

 

 予想外からの返答に夜達は少し驚いた。今の時代妖怪を知っていてこの状況下で妖怪と言い当てる事に。

 

「はやて…知って……た?」

 

「私はよく図書館に行くから、妖怪の本やったり見たりするんや」

 

『『よ、妖怪?』』

 

 それで分かるのもどうかと思うが、妖怪'、と言う言葉によく分かって無いのかヴォルケンリッター達は皆首を傾げている。

 

「そこの小娘の言う通り私は妖怪。生命から生まれたのでは無く、人の想像や想いなどから生まれたのだ」

 

 ヴィータやシグナムといった脳筋は頭を抱えているが、何となくザフィーラとシャマルは分かった。

 

「成る程…話を聞くに藍殿達は……我々と同じ命あるものから生まれた訳では無いと言うことか?」

 

「まぁ、少し違うが同じ様な存在と言っておこう」

 

『『お、おう…』』

 

 脳筋組ヴォルケンリッター2人も分かった様だった。

 

「しかしそれがどの様な関係が?」

 

 シグナムが最初の話に戻す。

 

「詳しく言うとな私だけでは無く、美鈴も人間では無いし、レヴィは………コイツの場合は人間とは言い難い。要するに主よるの周りには人間と呼べる存在がおらん。だからお主らが本から出ようと人間ではなかろうと主よるは気にしないと言う事じゃ」

 

 簡潔にまとめるとじゃがな!と最後に付け加える。しかし実際のところは夜自体が()()()()()とも()()()であろうとも()()()()なのだから気にしないが正しいが、この場合、はじめに説明したものの方がこの後がやりやすいのだ。

 

 

 

 一方でヴォルケンリッター達は、美鈴やレヴィが人間では無い事に驚く。

 何処から見ても人間にしか見えないからだ。

 そして夜がヴォルケンリッター達を否定しない理由も分かった。

 

 それを踏まえた上でこれからの事を念話で話す。

 

 《お前達、八雲夜の事をどう思う?》

 

 将たるシグナムが代表として皆に問いかける。この者達は信用するな値するか?と。

 

 《あたしは、信じて良いと思うぜ!だが、狐と忍者は嫌いだがな》

 

 《私も信じて良いと思うわ。ヴィータちゃんは、ああ言ってるけど眷属達さんも悪い人達では無いと思うわ》

 

 《俺も反対の理由は無い。眷属達とやらも無理やり従っているのでは無く八雲夜を王として従っている感じだしな》

 

 シグナムも他のヴォルケンリッター達と同じく八雲夜の事を疑って無いが一つだけ気になる事があった。

 

 《八雲夜は、魔力を感じたが管理局と関わりがあると思うか?》

 

 シグナムは、夜の首に掛かっている剣に似た十字架のデバイスに気付いていた。管理局と闇の書の因縁は深く転生のたびに壮絶な戦いを繰り広げてきた為に管理局には最大の警戒をしていた。

 

 だが彼等との魔力とは違う魔力という事を知らないシグナムはリンカーコアの魔力と勘違いして、夜がデバイスを持っていた事でシグナムは少々警戒はしていた。

 しかし他の三人の答えはある意味予想外の展開で予想通りの答えが返ってきた。

 

 《それは無い!》

 

 《……一応理由を聞こう》

 

 《いや!普通に無いだろ!あいつら確かに裏の匂いがするけど、管理局との関係があるとは思えない》

 

 《私も同じ考えよ。魔法の事もよく分かってない感じだったしね。それにもし管理局の人間だとしてもはやてちゃんを裏切る事があるとは思えない》

 

 ヴォルケンリッター達の考えはシャマルの言葉が全てだった。もし夜が管理局の人間で、闇の書を持っている事を知りはやてに近づいたのであればヴォルケンリッター達を見た時に、何かアクションを取るが夜はヴォルケンリッター達の事など目もくれずはやてに抱きついていた。ヴォルケンリッター達に気付いたのは、はやてが絶叫したからなのだ。

 

 そしてヴォルケンリッター達の事を話した時、夜ははやての言葉を信じると言ったのだ。ある意味はやてしか見ていないがヴォルケンリッター達からすればそれで十分なのだ。

 

 その事からヴォルケンリッター達は、答えを決めた。

 

 《一応、管理局の事を聞くが八雲夜達を信じる'、と言う事で良いな」

 

 《あたしは元から構わねーよ!》

 

 何となくだが、勘のいいヴィータは夜達の事は気に入っていた。特に夜には何か同族の感じがするのだ。

 

 《同じく》

 

 ザフィーラとシャマルも初対面の時ほど警戒心は無い。2人も感じているのだ。あの眷属達は同じ仲間に近い……いや、()()()()()()()

 

『それでは、八雲夜達を信じるとしよう!』

 

 シグナムはそう言うと皆、安心した顔になるのであった。

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆☆

 

 

 

 

(話し合いが終わったようじゃな。さて、あやつらはどんな答えを出したのか……もし主よるの敵になるなら………)

 

 意味の説明をしながらヴォルケンリッター達が念話で話しているのに気付き少し物騒な考えをする藍は、丁度話が終わったヴォルケンリッター達に声をかける。

 

「これで説明は終わりだ。それでお主らはどうするんじゃ?」

 

 ヴォルケンリッター達は、藍の言っている真意に気づく。

 お前達は敵か?味方か?、と言っている藍にヴォルケンリッターを代表としてシグナムが答えた。

 

「我等ヴォルケンリッターは、お前達を信じよう!」

 

 他のヴォルケンリッター達も頷き、藍達も認めたのか各々この場を包んでいた殺気を収める。

 

「では、自己紹介でもするかの、私は主ヨルに仕える眷属の一人、式神"八雲藍だ。見ての通り九尾じゃ、主に眷属の統括兼参謀をしておる」

「次に私が、主はやての守護騎士ヴォルケンリッター剣の騎士、烈火の将"シグナムだよろしく頼む。立場的にはヴォルケンリッターのリーダーという者だ」

 

「自分の番ッスね〜、夜さんの眷属の一人"風間レヴィ'ッス。諜報などを担当してるッス」

 

「あたしは、はやての守護騎士ヴォルケンリッター鉄槌の騎士、ヴィータだ。狐と忍者は、気に入らないがよろしくな」

 

「自分は、夜様の眷属の一人紅美鈴です。人間見たいですが元龍王ですので。夜様の護衛兼家の門番をしています」

 

「私は、はやてちゃんの守護騎士ヴォルケンリッター湖の騎士シャマルよ。ヴォルケンリッターで参謀をしているわ。後軽い医療もできるわよ」

 

「最後に俺は、守護騎士ヴォルケンリッター盾の守護獣ことザフィーラだ。守りには自信がある。そして犬では無く狼だからな!」

 

 よろしく'、と仲良くしだすヴォルケンリッター達と眷属達に主である夜とはやては、何か置いてけぼりにされていたのでふたりで喋っていた。

 

「主である私を完全な無視って……私って何なんやろ?」

 

「いつもの事…無視し……てあんな感じに……なるから……」

 

 ふたりで慰め合い部下達の会話を聞いていた、夜とはやてだった。

 この日、王に仕える者同士仲良くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 まるで長年の親友達が再び出会ったかのように…………。

 

 

 

 




【あとがき】

『旧』からここまでちょこちょこ伏線が増えてます。
分かった人はいたかな?


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7話

どもパッチェです。

この話で一章が終わります。
やっとここまで終わったぞーー!!


 

 ヴォルケンリッターと眷属達の話が終わると時計の針は、午後3時をまわっていた。

 

「もうお昼の時間帯過ぎとるなー」

 

 時計の針を見ながらポツリと呟く。

 

 夜達は12時ぐらいに来たのだが、色々とあった為お昼の時間を過ぎてしまったのだ。

 はやての家の周りに飲食店は無く、今から行くとなると2時間以上かかる為、後は家で作るしかないのだが材料が無く作ることができずにいた。

 

「ホンマどうしようか?」

 

 はやては、今日何も食べてなくお腹がペコペコだった。

 朝からヴォルケンリッター達の説明に始まり昼には、夜の眷属達との喧嘩、はやての精神も身体もクタクタだった。

 

 はやての呟きに気付いた夜が何か困り事かと、

 

「どうし……たの?」

 

「実は………」

 

 はやては、今考えていた事を夜に話す。

 

「……って、事なんや」

 

「なる…ほど……なら…僕のお店……行く!」

 

「えっ!どうゆう事や?」

 

 約一カ月一緒に暮らして、仕事はしていると聞いていたが、食事処を持っているとは聞いてないので驚きを隠せない。

 

「…僕…食べる店…持ってる…。……はやて……なら…歓迎…」

 

「ホンマにええんか?夜君に迷惑がかかるんじゃ……」

 

「…大丈夫…。はやて……行こ…う…♪」

 

「…うぅ…そんな上目遣いで言われると………分かった。それじゃあよろしゅうな!」

 

 夜の言葉に折れたはやて。

 何より今日くらいは自分の誕生日なのだから少しくらいのワガママは良いかなっと思うしかない。

 外に出るという事で、はやてはシャマルを呼んで着替えを手伝ってもらう。

 

 その間に夜は藍を呼ぶ。

 

「藍……連絡………よろ…」

 

「わかりました。メイド長と執事長に伝えておきます。それで主ヨル、ヴォルケンリッター達はどうしましょう?」

 

「……連れて…いく」

 

 その言葉を聞いたシグナムが、困惑気味の待ったをかける。

 

「良いのか?私達は関係ないが……」

 

「……何故…?…お前…はやて…家族…な…ら一緒…行く」

 

「しかしだな……」

 

「シグナムさん達がいないと、はやてちゃんも悲しみますよ!夜様も良いって言っていますから、交流を深める為にも一緒に行きましょう」

 

「ヴィータさんも行きたそうッスからね〜〜」

 

「うぅ!…そりゃ美味しい物食べれるなら…」

 

 夜が来る前にテレビを初めてみたヴィータはそこに映る食べ物に興味津々だった。たからこそ食べてみたいと乗り気なのだ。

 

「シグナムよ、主はやての誕生日でもあるのだ。行かなくてはどうする!」

 

 他の守護騎士からも此処まで言われるとシグナムも首を縦に降り、主はやての為でもあると納得する。

 

「主はやての為でもあるし、私達も行かせてもらえるか?」

 

 シグナムの言葉に藍はため息を吐き、何を言っとるんかと思った。

 

「だから来いと言っておるじゃろ…まぁ良い此奴らもこう言っておるので主ヨル宜しいですか?」

 

「ん……構わ…ん…ぞ。…藍…準備…する…」

 

「了解いたしました」

 

 そう言うと藍は電話をかけヴォルケンリッター達は、美鈴達に服の指摘をされはやてから借りた服を着て準備を終えた。

 

 こうして八神家は、八雲家のお店に行く事になった。

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 それから一時間後はやて達は、黒塗りの一目で分かる高級車に乗り、気付いた時には信じられない様な建築物が目の前を支配していた。

 

「…何や……これ」(゚д゚)

 

「……ここ…僕の…家…えっ…へん!」

 

 はやての目の前には、名家が住むような屋敷があった。

 昔の屋敷というか御屋敷。風格を感じざると得ない。はやてなどテレビや漫画でしかみた事ない代物だ。

 

「どうしたお主ら(笑)、そんな口を開けて」

 

「……え……えっ?夜君のお店チェーン店って言ってなかったか!?」

 

 聞いていた話と違う、と言っているはやてに美鈴が苦笑し、この場所はちょっと違うと言い出す。

 

「此処は、そのチェーン店の本店なんですよ。チェーン店は、一般人がお金を払える安さに、本店は取引先との食事や特別な人達しか入れないですよ。……まっ、表向きはですけど…ね」

 

 そんな話を聞いたからか常に庶民感覚のはやては、身体が震えだした。身震いが止まらない。

 

「ほ、ほんとに、大丈夫なんか?後から莫大な金額を要求したり…」

 

「フフ!そんな事あるわけ無かろう。此処では主よるがトップ……主じゃ!!お金などを請求したりしないわ」

 

 何を馬鹿なことを、と藍は笑うしかない。

 安心したのか、ホッと息を吐くはやてを見ると夜達は、お店に中に入って行く。

 はやて達も後ろをついて行き中に入いると凄まじい光景がはやて達の目に入った。

 

『『『ようこそお越しくださいました。八雲様、八神様』』』

 

 数千人近くのメイドや執事が八の字に並んでおりはやて達を歓迎しているのだ。一般庶民のはやてにはある意味頭が痛くなる光景だろう。

 

「…すごい!メイドさんたちや!」

 

 ただただはやては驚くしかない。

 

「…これはすごいな!」

 

「ええ!確かにすごいわね!でも…」

 

 過去王族に仕えた記憶もあるヴォルケンリッター達もここまでの光景は見た事が無いと…しかしこの4人は何かズレている感じがした。まるでこの世のモノでは無い……ナニカ!が…。

 

「何か違和感あるだよなぁー?」

 

 ポロリとこぼしたヴィータの一言に反応した藍はほほっ〜と感心した声を上げる。そしてヴォルケンリッター達が違和感であろう事を的確に言葉にして当てて来た。

 

「人の気配がしない!、か?」

 

『!?』

 

「では…やはり…」

 

 何となく思っていた事が確信に変わる。その事をザフィーラが問おうとした時だった。

 

「ええ、私達は人ではございません」

 

 メイド達の間から、執事服を着た厳つい身体をもち、顔も幼い子が見たら泣きだしそうな白髪のお爺さんが出てきた。

 

「…お…おっ!…セバス…久しい…」

 

「お久しぶりでございます。夜様」

 

 セバスと呼ばれた執事は、夜と眷属達の前に立ち一礼するとはやて達の前も立ち一礼しながらも執事としての言葉を述べていく。

 

「貴方様が、八神はやて様ですね。執事長のセバスと申します。どうぞお見知り置きを」

 

「…え…あっ!此方こそよろしくお願いします」

 

 少しセバスの迫力に驚くがすぐに挨拶を交わす。

 

「セバスがいるなら準備はすぐに出来ますねぇ〜。では後の事をお願いします」

 

「勿論でございます。すぐにお部屋にご案内できますがいかが致しましょう?」

 

「それでは、主よると八神を案内をよろしく頼む。後ろの奴らは、ちと話があるからな」

 

 美鈴はセバスがいた事に安心を持ち、この後は全てセバスに任せる。一方で藍はヴォルケンリッター達に聞きたい事があるのだろ?と目で訴えてこの場に引き留める。

 

「かしこまりました。ユリ、ナーベ、夜様と八神様を案内しなさい!」

 

 セバスが返事をするとユリと言われたメイドの一人がはやてに付き、ナーベと言われたメイドが夜に付く。

 

「かしこまりました。夜様、八神様。こちらへ」

 

 4人が離れていくと同時にセバス以外のメイド、執事達が各々の持ち場に付く。

 

「それでお主ら何かあるか?」

 

 今この場には、ヴォルケンリッター達と眷属達にセバスしかいなく、他のメイド達も夜を見送ると自分の仕事に戻って行った為に話をするには丁度いいのだ。

 

 

 藍の言葉にいち早く反応したシグナムが手を挙げる。

 

「それでは私が。セバスさんは、人では無い、と言ってましたが本当ですか?」

 

「本当でございます。此処にいるメイドや執事達は、人と呼べる存在ではありません」

 

「それなら夜くんも私達に驚かないわけね…」

 

「そのとおりッス。逆に人間の知り合いの方が少ないッスね〜」

 

 人間の知り合いが少ない事がいい事なのかは分からないが、少なくともヴォルケンリッター達は、この場に置いては逆に人間と呼べる存在だろう。

 

「なので安心してお過ごしください」

 

 セバスの言葉は、ヴォルケンリッターの事を知っての発言だとシグナム達は気づくが、此処まで来ると疑う事も無く。

 

「なぁ〜。もう話終わっただろ〜、早くはやての所に行こうぜ!」

 

 ヴィータは、話の内容に興味が無く夜達の事を信用しているので早く行きたいと思っていた。

 

 そんなヴィータを見たら皆、力が抜けシグナム達は呆れていた。

 

「そろそろ皆さん夜様の所に行きましょうか!」

 

 美鈴の言葉にこの場にいた全員がセバスの案内で夜達がいる部屋に歩き始めた。少し遠回りをしながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 眷属とヴォルケンリッター達が話している時、はやては部屋に着いていた。

 

 

 

「…………」(大汗)

 

 

「………」

 

 今、はやてはメイドのユリと二人きりなので物凄く気まずい空気だった。夜は部屋に着くと用事あるから、とナーベと2人で何処かに行ってしまい残ったメイドさんに緊張するはやてだった。

 

 この空気に耐えれなったのかはやては、ユリに声をかける。

 

「…あ、あのー、ユリさんも人間じゃなんですか?」

 

 

 はやては、シグナム達の話を聞いておりずっと気になっていた事を聞いて見たのだ。

 

「…………」

 

(あかん!聞いちゃダメな事やったわ!うぅっ…沈黙が重い)

 

 そんな事を考えるはやてを見ていたユリが重い口を開く。

 

「はやて様は、何故私達に怯えないのですか?」

 

「えっ!?」

 

 この時はやては、ユリの言葉の意味が分からなかった。

 

「普通なら人間は、人間ではない者を見ると怯えるか拒絶するかのどっちかの行動をとります。ですが貴方は怯えるどころか受け入れている。貴方に仕える騎士も同じ。話を聞きましたがいきなり本から出てきて何故受け入れられるのですか?」

 

 

 ユリは、はやて事を信じられなかった。今まで見てきた人間は皆異形と聞くと拒絶するか少なからず利用しようとする。だからこそ夜が連れてきた人間だとしてもユリは信じられなかった。

 だから聞いた。率直にストレートにどう思っているのか。

 

 この時ユリは、はやても今まで見てきた人間と同じだと思っていたがはやては、信じられない答えを出す。

 

 

「……なるほどなぁ……何となく言いたい事が分かったわ。要するになんで私が受け入れているかやろ————」

 

 そんなん決まっとるやんけ!と彼女は胸を張って言い切れる。

 

「————夜くんを信じとるからや!!」

 

 この言葉にユリは、衝撃を感じていた。

 

 夜様を信用しているから受け入れている、そんな事を言ってきた人間は今までいなかったからだ。ユリ達にとって八雲夜と言う存在は絶対、が皆の考えてだ。だからはやての言葉に動揺が止まらなかった。

 

「ど、どうして私達を受け入れるのに夜様が関係するのでか?」

 

 はやては、やれやれとため息を吐くと苦虫を噛み潰したような顔で胸糞悪い記憶が蘇る。

 

「私もな別に全てを信用してる訳じゃないでぇ。受け入れられへんものもあるし信用せーへん人もおる。私はそこまで馬鹿やあらへん」

 

「では何故?」

 

「夜君が一番の家族で一番信用してるからや!そんな夜君を信用してる私が、夜君が信用しているユリさん達を信用するのは、当たり前や!」

 

「…………」

 

 ユリは、はやての言葉に何も言えなかった。

 

「それにな、私は今まで一人だったからなんて言うか欲望にまみれた人間が分かるんよ。ユリさんも分かるやろ醜い人間の事!」

 

 ユリは、光の無い目で語ってくるので頷くしかなくなる。少しビビりながらも話を続ける。

 

「そ、それと、どう関係が?」

 

「……私な初めて夜君と会った時、私と同じ目をしている夜君を見て同情してしまったんや。その時の私な今考えると無理して笑って幸せじゃ無いのに幸せだと思っていた。その時に夜君と出会って色々あって一緒に住む事になったんやけど、住んで1週間たった時な今までの幸せってなんだったんだろうって思ったんよ」

 

「………」

 

 ユリは、静かにはやての話を聞いている。

 

「そして夜君と一緒にいる事が幸せだって気付いてしまったんや。あの時一人だった夜君を無理矢理泊めて私だけ幸せを感じてまるで私が嫌いな人間が私やったわ。でも夜君は、そんな私に感情を家族を教えて、と言って私を信用してくれた。だからわたしは夜君を信用するんや。ユリさん達には悪いけど、ユリさん達を信用しとる訳じゃ無い、ユリさん達を信用している夜君を信用しているんや。それにな、シグナム達は受け入れたんじゃなく私が主やから受け入れたんや。最初から信用ある人なんておらん一緒に過ごして信用を得るんや。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ユリは、はやての言葉に唖然としていた。ただ、それと同時に面白く感じていた。ユリの見てきた人間で此処までの身内贔屓を見た事がなかったからだ。

 

(まさか八神様に此処までの闇が会ったとは…まさに闇の書の主にぴったりですね)

 

 ユリは、はやての言葉、ユリ達を信用している訳じゃ無く、ユリ達を信用している夜を信用している、と言う言葉に嫌悪どころか好感を持っていた。だからユリも八神はやてと言う存在を認めた。

 

「…………もう時間ですね。八神様とても有意義な話でした。私は仕事がありますので失礼します」

 

 そう言うとユリは、席を立ちはやてに一礼して襖の前で言葉を溢す。はやてはそれが()()()()()()()()()聞こえてしまった。

 

「…八神様なら夜様を救えるかもしれませんね」

 

(夜君を救える?どうゆう意味や?)

 

 はやては暫くの間ユリの溢した言葉の意味を考えていたが、シグナム達が来たので考えのをやめた。

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 ユリははやてが居た部屋から出て他のメイド達が働いている所に来ていた。

 

「ユリねぇ!何か考えごとッスかぁ!」

 

 ユリは声がする方を見ると、ユリの妹分ルプスレギナ・ベータがいた。

 

「ええ。ちょっと八神様の事を考えていてね」

 

「何かあったのかユリ姐さん」

 

 するとルプーの後ろからナーベラル・ガンマも話に入ってくる。先程まで彼女は夜と一緒にいたのだが美鈴が来たので自分の持ち場に戻ったのだ。

 

「それがね……」

 

 ユリはふたりにはやてとの会話の内容を教えていた。はやての考え方。はやてと夜の依存性。そして………。

 

「……って、事があったのよ」

 

 その話を聞いた2人は内容に驚きつつも人間で珍しいと感じた。自らも含め妖怪や異形系はよくある事だが()()がそこまで夜を好きになる事は彼女達は()()()()()

 

「それはまた、すごい歪んだ子ッスね」

 

「確かに。だが好感を持てるな」

 

「同感ッス!」

 

 三人で笑っていたがユリが真面目な顔になるのでふたりも笑うのをやめる。

 次の一言はそれだけ彼女達には重い問題なのだ。

 

「だからね……八神様なら夜様を……あの方達をも救えるかもしれない、と思うのよ」

 

 この言葉にふたりには表情を歪め、身体全身に苦痛とも取れる痛みが襲ってくる。

 

「………そうだと良いッスけどねー」

 

「……ああ、そうなれば良いな」

 

「……そうなる事を願うわ」

 

 三人のメイドは、自分達の主の事を考え、今日会った少女に希望を思うのであった。

 どうか夜にとっての光であってほしいと…願い。

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 ______________

 

 _______

 

 

 

 

 

 

「……はやて…誕生日…祝う…!!」

 

 畳20畳程の広さがあるこの部屋で、豪華な料理が並んだ3つの机の周辺に座る皆は夜の一声にコップを持ち……

 

「…はやて…誕生日———

 

 

『『『おめでとう(ございます)!!!』』』

 

 と声が部屋に響た。

 

 祝われたはやては少し泣いているのか眼を赤くしている。

 

「みんな、ありがとな!私こんな楽しい誕生日は初めてや!」

 

 はやての言葉にみんな笑顔になりヴィータなど初めて見る食べ物にワクワクと期待が止まらない。

 

「なあなあ!はやて、もう食べても良いか?」

 

「ヴィータちゃんすごいヨダレよ」

 

「…ヴィータお前は……騎士としての誇りはないのか?」

 

「うっせぇ!だって美味しそうな料理が目の前に…」

 

 

 一人物凄く食い意地が張ってあり、シグナムがヴィータに、怒る光景にはやては笑っておりとても楽しそうだ。

 そんな様子を見ていた夜の目は少し悲しそうな目をしていた。何かを懐かしむ様なそんな過去の瞳………。

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 誕生日会が終わりはやて達は、八神家に戻っていた。この日夜だけ泊まり眷属達は仕事があると言う理由で会社に戻って行った。

 

 ヴォルケンリッター達は、酒を飲み(ヴィータを除く)皆熟睡中で八神家で起きているのは、夜とはやてだけだった。

 

 2人はベランダの外で夜空を見上げながら、今日という人生の誕生を祝う日の話をしていた。

 

「今日はありがとな、私の為に色々してくれて」

 

「……はやて…だから…泊めてくれ…たお礼も…ある…」

 

 最高のやったで、と言うはやては夜が見せた目の事を聞いて見た。あの目は知っているから。何か1つでも力になれないか、と家族だから。

 

「なぁ、夜君。どうしてあの時、あんな悲しそうな目をしてたん?」

 

「…別に……何もな…い。…そんな…話すことでも———」

 

「———どんな話でも聞くで!夜君があんな悲しそうな目を見たくないからな!」

 

 この話は絶対に聞かないといけないとはやての勘がそう叫ぶ。夜はあまり言いたくなかったが鬼気迫るはやての表情になくなく話す事にした。

 

「…僕は…生まれた…日が…嫌い…」

 

「それは誕生日が…嫌いという事か?」

 

「…う…ん…………」

 

 無言になる夜にはやてはこれ以上深い理由を聞くことをやめた。語るその瞳が憎しみに埋もれている様な気がして……。

 

「分かったわ。理由は聞かん、話を続けて」

 

「……その日…になると…皆…哀しむ…」

 

 その日は皆が悲しい顔をする。

 誰もが傷付く。嘆く。

 

 故に思う。

 ————この世にいる意味はあるのかと………。

 

「そんな事言わんといてや!!」

 

「…は…はやて…ッ!?」

 

 はやてはガシッと夜の両肩に手を置き、夜を目を真っ直ぐに見つめる。

 この時何故かこうしなければいけない気がした。

 この手が届く様に。何処かへ行ってしまわない様に。

 

「なあ、夜君。約束覚えとるか?」

 

 この言葉に夜は頷く。

 ()()にとっては()()とは誓い。

 絶対なる盟約。だから忘れない。()()()()()()()()

 

「…無論…」

 

「私はあの時、夜君に家族を感情を教える、と約束したんや。だけど悲しい思いはさせたくない。嬉しい気持ち、楽しい事を教えたい!だから教えたる……生まれた日の喜びを!」

 

「……それも約束?」

 

「もちろんや!だから夜君の誕生日を祝う為に、日にちを教えて」

 

「………」

 

 夜は悩んだ。

 本当にここで言っていいのか、また……

 

 ———約束を破られるんじゃないかと………。

 

 深く目を閉じ夜は答えた。

 

「……4月………25……日…」

 

「あちゃー。今年はもう過ぎたんか…だったら来年や!来年から絶対祝うで!」

 

「……ほんの……に?」

 

「もちろんや!!()()()()()()()!!」

 

「……ッ…!!」

 

 こうして八神はやての最高の誕生日にふたりは、新たな約束を交わし、6月4日と言う日を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———忘れない

 

 

 その言葉が夜にとってどれほどの想いと重みになったとは知らず。

 

 その意味がはやてにとって未来に希望を与えるか知らず。

 

 

 

 

 

 

 

 




【あとがき】

次回からはそこまで話は変わりません。
なので速攻で投稿できるかと。(作者の速攻は1週間)


では次回。
感想、お気に入り、高評価等お願いします。
Twitterもフォロー待ってます。暇だから話しかけてぇーー!!


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日常①
8話


どもパッチェです。

何か前書きネタをくれ。リメイクだから書くことがねえ。


 

 これは、はやての誕生日から1週間がたちヴォルケンリッター達も八神家に住み出した日常。

 

 それは束の間の平和。

 戦いの中で生きてきた者達が人並みの生活と幸せを感じ手に入れたそんな僅かな日々の話である。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 朝7時、目覚ましが鳴り響く音が聞こえるとはやては目を覚ます。

 

「…朝や…起きんと…」

 

 目を覚ましたはやては、気だるい体を起こしベットの周囲をを見渡すと、右にはヴィータが左には夜がスヤスヤと寝ていた。

 

(二人とも姉妹みたいやな!…夜君は男の娘やけど…でもこの二人が姉妹なら私はお姉さんやなぁ〜)

 

 この時はやては、二人の頭を撫でながら幸せを感じていた。

 もう一人寂しいの日は無く今では、朝から夜まで誰かがはやての側にいてくれる。

 

 孤独じゃない!1人じゃない!誰かが!皆んなが!隣にいる!とそんな幸せを感じながら二人の頭を撫でるはやてだった。

 

 だかそんなはやてにも心配ごとがある。

 

 それは………。

 

 

「………うみゅ…あ……はやて…おはぁ…〜」

 

「…ニャ……おはよう…はやて」

 

「…おはようさんや、夜君、ヴィータ」

 

 起きたふたりに朝の挨拶をするはやての顔は赤かった。

 

「はやて!ど、どうしたんだッ!?またそんな鼻血を出して?」

 

 ヴィータは気づく、はやての鼻から赤い液体がダクダクと流れているのを!朝が超絶弱い夜は未だ、ボーとしておりその姿がまた、はやての血流を加速させる。

 

「…(ブハァ)」

 

「はやてがまた鼻血を!シャマル来てくれ!」

 

 命に関わるレベルで鼻血を出している事に気付いたヴィータが、一階にいるシャマルを呼ぶ。

 

 

 そうはやての心配とは、夜とヴィータが可愛すぎて色々と愛と言う名の《鼻血》が止まらない事だ。元々夜と言うショタに危ない道を行こうとしておりギリギリのところで我慢していたはやてだったがそこにヴィータと言うロリが加わった事により我慢がきかず、

 

 最近、神と言うものから「ショタコン、ロリコンになろうや!」と幻聴が聞こえ始め毎朝危ない状態なのだ。

 

 ならば一緒に寝なければいいと思うが、ヴォルケンリッター達がいる為に布団が足りず基本的に小さいヴィータは、はやてのベットで寝るしかなく皆んなが仕方なく思っていた。

 夜は週4ではやてのベットにいき残りの日は自分の家で寝ている。最近は眷属達も一緒に、と部屋を物理的に作っている。

 

 ヴォルケンリッター達も普通の男はダメだが夜に関しては、女より女らしく全く不純な動機がない為に許していた。

 しかし最近は、はやての方が不純な事を考えまくっているのでシグナム達は頭を痛めていた。

 

 

 ————閑話休題

 

 

 話は戻り現在はやてはシャマルに輸血をしてもらっていた。

 

「…はやてちゃん。ここ毎日血を失っているけど大丈夫?」

 

 ベットから起き上がり針を外すとあははは…と笑う。

 

「…確かに、毎日こんなんになってたら、いつか鼻血出して死んでまうかもなぁ〜」

 

 そんな笑えない話をシャマルは苦笑いしながら、はやてを抱き上げ朝ごはんを作る為に一階に連れて行く。

 

 

 因みにシャマルが輸血パックを持っているのは、何処かの狐から貰ったと言っておこう。

 

 

 

 こうしてはやての死にかける朝が最近の日常である。ろくな日常ではない。

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 午前11時

 この時間帯八神家にいるのは、シグナム、シャマル、はやてだけである。

 

 

 夜は仕事で会社に戻り、ヴィータは近所のお年寄りとゲードボールをしに行っており、ザフィーラは犬モードでヴィータについて行っている為だ。

 

「シグナムは、よう毎日剣を振れるな〜」

 

 縁側ではやては外で剣を振っているシグナムに話しかける。

 

「私の剣は、主はやてを守る為の剣です。何かあった時の為に腕が錆びつかないようにしなければいけませんので」

 

 まさに騎士の言葉!

 騎士として生まれ、騎士として生きてきた彼女だからこそ言える言葉だろう。

 

「それじゃあ、ちゃんと守ってなシグナム!私だけじゃなくこの家族もな!!」

 

「はい!必ず守ってみせます!」

 

 そんな微笑ましい光景をシャマルは、洗濯物をたたみながら観ていた。

 昼ごはんの時間になるとヴィータとザフィーラが帰ってくる。特にヴィータはこの世界のご飯が気に入ったのか、いつもお腹を鳴らす。

 

「はやて!ただいま」

 

「主はやて。戻りました」

 

「おかえり二人共。ご飯あとちょっとで出来るから、手を洗ってき!」

 

 

 そう言われるとヴィータは手を洗い席に着く。少しすると料理を持ったシグナムが席に着き、はやての車椅子を押すシャマルも席に着くと、四人は食事を取り始める。平日の昼はこのメンバーだ。因みにザフィーラはドックフードを床で食べている。

 

 

 ————まるで犬の様だ。

 

 

 

「俺は狼だ!!」

 

 

 彼の遠吠えは空高くに響き渡った……(白目)

 

 

 

 

 ☆☆☆★

 

 

 夜になると、八雲家のメンバーも八神家に来る。

 

 なので夜ご飯は、八人の大所帯なので料理は、はやてだけじゃキツイので藍と美鈴も手伝う。この時のシャマルが台所に入りたがるが最初作った時に、料理を作ったのではやてから立ち入り禁止をだされたのだ。

 彼女達は語る。あれは奇激たる過激な料理だった……と。

 

「私も作りたいわ!」

 

「お前の料理でどれだけの犠牲が出たと思っている!お前の料理は、『料理(毒物)』と言うんだ!!」

 

『『うんうん!』』

 

 

 シャマルの料理を知っているメンバーは頷き、散々罵倒されたシャマルは、酷いわ、みんな!と言いながら嘘泣きをする。この時、()()()()()()()()()()()()

 

「ほれ、いい加減にせんか。シャマルの料理が毒物なのは変わらんのだから」

 

「……ぐすん…」

 

 丁度料理を持ってきた藍が完全にトドメを刺す。藍の言葉にいじけだすシャマル。

 そんなシャマルを無視してみんなご飯を食べだす。

 

「みんな!なんて酷いの!落ち込んでいると言うのに無視なんて!」

 

「……シャ…マル…嘘…泣き…」

 

「夜の言う通りだぜ!だからシャマル、はやて達のギガうまご飯を黙って食べろ」

 

 もう此処まで言われると、何も言えることはなくシャマルは静かにご飯を食べだす。

 

 そんな光り輝く様な光景に皆様々な思いを積もらせていく。初めて家族として食卓を囲む今に感激をする者。あの日あの時を思い出し悩む者と過去に色々ある者達だからこそ感じる事があるのだ。

 

 それでも彼等の心は一つの思いに埋め尽くされる。

 

「みんなが来てから、毎日が楽しいなぁ〜」

 

「そおッスね〜。こんな楽しい日々が続いていくと良いッスね…」

 

 レヴィの発言は的確に皆の心に響く。

 はやて以外の者達何となくは分かっている。この日々はいつかは終わるのだろうと。

 それは長年の勘であり、今までの体験。

 

 いつか……いつか必ず武力を持って、力を行使しなければいけない日が来るのだと。どんな事でそうなるかは分からない。

 しかし!その時は決まっている。

 

「……撃ち…砕く……その…力……ある…」

 

 彼等はその力を持っているのだから。

 力強く頷く皆は問題ない。何故ならそうして生きてきたから。過去も今も未来も変わらない。

 

「夜の言う通りだ!我等はその為に存在しているのだから」

 

「いいこと言うぜ!あたしもはやてを守るから安心してくれよな!はやて」

 

「そうやな!みんなで守っていこうな」

 

 それが輝かしい未来になる事を信じて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今の幸せを精一杯感じて()()()()()()ではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【あとがき】


うぃ〜〜!!
日常編開始!!!
……………ああ、この後伏線回収めんどくせぇ〜〜。

ま、やるけどな!!


感想、お気に入り等々おなしゃす。
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9話

どもパッチェやで。

めっちゃ本編と関係ないけど、荒野行動してる人いる?
あれ楽しいぃー!よね。
わかるマン!!の人クソエイムの作者でいいならフレンドなってくれる人いない?(vcする派)


戦闘シーンに手を加えてみました。
まじ戦闘シーン苦手だわ……。



 荒れた大地に佇む二人の剣士。

 1人は凛とした佇まいで燃え盛る様な魔力を全身から溢れ出しギラギラと輝いているピンクの騎士。

 もう1人は静かに可憐な姿で自然体。魔力の漏れは一切無く自然の空気を纏う着物姿の剣士。

 

「ふふふ…やっと…やっとヤレるな!!私の魂が剣士として高ぶるぞ!!」

 

 シグナムは、強者と戦える事で目が完全にイっており、戦闘狂としての姿を見せている。

 

「……いい…剣気…」

 

 夜はシグナムが放つ剣気を感じ静かに闘気を纏う。

 

 

 

 

 

 

 この二人が戦う事になったのは、一時間前に遡る。

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 ______________

 

 _______

 

 

 

 

 

 

 前回の話から約一カ月後、夜達も皆休みで八神家でのんびりとしているといきなりだった。

 

「夜よ!私と戦ってくれ!」

 

『『!?』』

 

 シグナムのいきなりの発言な皆が驚く。

 

「し、シグナム…?いきなりどうしたん?」

 

 まだよく状況を分かっていないはやてが、シグナムに質問をする。するとシグナムは力強く拳を握りその思いを語り出す。

 

「主はやて。私はもう我慢の限界なのです!」

 

「な、何が限界なんや?」

 

「主はやてに夜が剣神だと聞いて、いつか戦いたいと思い眠れぬ夜もありました。ですがもう限界で早く戦いたいのです!」

 

 シグナムの演説を聞いた各々の反応は様々で、他のヴォルケンリッター達は、また始まった、と思い眷属達は、興味なし、とお茶を飲みはやては、シグナムの言葉をよく分かっておらずオロオロとしている。

 

「と言うわけだ!夜よ。どうだ!」

 

 ぐぃっ!と顔を近づけるシグナムに夜はヴィータとのオセロをやめ、無表情で淡々と応える。

 

「…ん…やる…。…シグナム…気に…なって…た」

 

 この場合の気になっているはシグナムに、ではなく、シグナム達が使う魔法に、だと言うことだ。

 

「本当か!やっとだ!やっと戦える」

 

 そこにいつものクールな姿は無い。ただの戦闘狂である。

 そんなシグナムに夜に全てのオセロ駒を白に変えられ落ち込んでいるヴィータはドン引きしながら夜にやめれば?と言う。

 

「…このシグナム面倒くさいぞぉ〜〜。やめとけって」

 

 一見ヴィータは戦うことに否定的だがシグナムは気づいていた。

 

「そう言うお前も少しは気になっているんだろ?そうじゃなければアイゼンを手の中に持たないしな!ついでにザフィーラもな!」

 

『『ビクッ‼︎』』

 

 

 シグナムに見抜かれ目をそらすヴィータとザフィーラ。やはりそこはベルカの騎士。古代から戦い続けた戦士という事だろう。

 

 此処で黙って話を聞いていた眷属の1人美鈴は提案する。

 

「ヴィータちゃん達もしたいのなら私もやりたいですねぇ〜〜。最近動いてませんし」

 

「うげ!?美鈴さんもッスか?

 

「はぁ〜……この脳筋どもめ」

 

 こいつもか!?と顔を引きつるレヴィに藍は脳筋の相手をするのをやめる。

 

「なんか、みんなヤル気満々やなぁ〜。でもシグナムどこでする気や?」

 

 みんな戦うんやぁ〜と脳みそ空っぽにして発言したはやての言葉にシグナムは場所までは、考えていなかったのか急に慌てだす。

 

「むっ!そこまで考えていなかった…。たしか近所に公園が…」

 

「アホ!近所の人に迷惑がかかるわ!」

 

 シグナムの馬鹿な発言にはやてがキレる。魔力で結界を張れば問題ないが藍は面倒いのでわざと黙っていた。ヴィータもあの公園はゲードボール場所だからダメだと言い、何も思いつかないシグナム。

 

「で、では、一体どこで…」

 

「そこで戦わない選択は無いんや」

 

 落ち込むシグナムを哀れむはやて達を見て夜がティン!ときた。

 

「…藍…あそこ…開ける…」

 

「……はぁ主よるの御言葉なら。シグナム(戦闘馬鹿)主よるに感謝するんじゃな」

 

 藍は渋々主人の言葉だからと動くことを決める。

 彼女の記憶でもあそこは禁呪クラスの魔法や隕石を落としても壊れないのでまぁいい場所の選択だろと諦める。

 

「本当にいいのか?使わせてもらって」

 

「……顔が緩んでいるわよシグナム…」

 

 一応確認を取るシグナムだがもう楽しみで仕方ない、と言わんばかりの表情である。

 

「場所も決まったので誰と戦うか決めましょか」

 

 美鈴が言うと4人が手をあげる。

 

「私はパスね」

 

「同じく」

 

「自分もッス」

 

「私もやらへんよ」

 

 医療班のシャマルはこのメンバーでやっても速攻で乙る自信がある。藍は静かに主ヨルのアルバムでも整理したい。レヴィは秘密主義ッスからと言って。はやてはまだ非戦闘員である。

 

「おいおい!これじゃあ人数が合わないぞ。どうする?」

 

「我々の誰かが一人抜けるしかなかろう」

 

 未だ一対一で戦えると思っているザフィーラとヴィータだが、美鈴からしたらお子ちゃまである。

 

「ヴィータちゃんとザフィーラさんは私とやりましょう。2対1で構わないので」

 

 完全に舐めプ。

 しかしそれは美鈴の実力をヴィータ達が知らないだけで美鈴からしたら至って真面目だ。

 ヴィータとザフィーラはそれを完全に挑発と捉える。ベルカの騎士して最強と言われてきたプライドがあるからだ。

 

「美鈴のくせに!舐めやがって!ぜってぶっ潰す」

 

「美鈴殿。その言葉後悔させます」

 

「ふふ、楽しみですねぇ〜」

 

 闘志をむき出しにする二人に、ほんわかとした態度ながらもヤル気を出す美鈴。

 

「シグナム…僕…と……斬…りあう…」

 

「ああ、斬りあおうではないか」

 

 そんな戦闘狂どもを見ているはやて達は、ズズッと一杯。

 

「…お茶がうまいなぁ〜〜」

 

「そうですね〜」

 

「そうッスね〜」

 

「我等は静かにお茶でも飲んでおこう」

 

 

 四人は、のんびりとお茶を飲んでいた。

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 ______________

 

 _______

 

 

 

 

 スキマで場所を移動し目の前に広がる世界は壮大な光景だった。

 

「すごいな…こんな場所があるとは…」

 

 シグナムは目の前に広がる荒野を見て驚きを隠せないでいる。

 

「でもなんで荒野があるんや?」

 

「それはッスね!此処は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんッスよ。こんなのは()()()()()ッスよ」

 

「やっぱり夜くんの力は凄いなぁ〜!」

 

「ほんとに魔力でできたとは思えないくらい本物みたいだわ」

 

 はやては夜の力の一部に驚愕し、本来の性質とこの世界の原理を勘違いしているがシャマルは魔力でここまで出来ることを生きてきて初めて観る。

 だがそんな感心している暇は無い。

 

「お主ら。そこにいたら戦闘に巻き込まれるぞ」

 

 藍は2人を手招きすると夜達からある一定の距離を取り星を砕く一撃でも耐えうる結界を円形状に張る。

 

 その様子を見て夜達は始める準備を進めた。

 

「先に私たちからしましょう」

 

 美鈴の言葉にヴィータとザフィーラは頷き、夜とシグナムは一旦結界の近くに向かう。

 

「美鈴なんか、ぶっ潰してやるぜ!」

 

「美鈴殿。よろしくお願い致します」

 

「では……ヤリマショウ」

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 結界内にいるもの達はそれぞれの心配事があった。

 

「みんな怪我しなければいいんやけど…」

 

 これから始まる試合に心配するはやて。

 彼女はまだ8歳。血に濡れた日々など知らない少女だ。そこは美鈴も考慮するとレヴィは言う。

 

「大丈夫ッス。美鈴さん手加減は上手いッスから」

 

「私もいるから怪我をしても大丈夫よ!」

 

 そんな話をしているとシグナムが今まで思っていた疑問をぶつけてくる。

 

「美鈴殿は、どのくらい強いのだ?」

 

 シグナムは美鈴の強さを測れなかった。強いのは分かるのだ。だが、底が知れないのだ。

 それに答えたのは藍だ。

 

「そうじゃな…近距離戦であれば主よるの次に強く贔屓目をやめて、今の姿でも武術では()()()で五本の指に入るな」

 

「なるほど…だがヴィータとザフィーラも近距離戦は強いぞ」

 

 シグナムの言葉は贔屓では無く実際にヴィータ達は強い。だが藍は、完全にシグナムの言葉を切る。

 

「…ヴィータとザフィーラの実力はよく知らんが厳しい事を言おう。絶対に勝てん。美鈴が近距離戦で負けるのはあり得ん」

 

 彼女はそれだけの力を持っていると藍は断言する。

 美鈴の力を見たことの無いシグナムが疑いたくもなるのも分かる。いつもふぁ〜とほぁ〜としている美鈴からそんな光景は想像できないからだ。

 

「美鈴殿はそこまでなのか?いつもの姿からは想像できんが…」

 

「よく言うじゃろ"能ある鷹は爪を隠す、と美鈴はまさにこの言葉を体現しておる。眷属の中で主ヨルと打ち合えるのも美鈴だけじゃし、主よるが『接近戦では美鈴攻め切れない』、と言わせた程の腕じゃ」

 

「………」

 

 藍の言葉に開いた口が塞がらないシグナム

 

「まぁ見ておれ。主ヨルの護衛と名乗るのは伊達ではない」

 

 そう言うと二人は美鈴達に視線をやる。

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 ヴィータは片手に鉄鎚を持ちながら目の前に仁王立ちをしている美鈴を見て驚愕する。

 

(マジかよ!隙が全くねぇ!)

 

 手に持つデバイス『グラーフアイゼン』を構えながら意識を集中させる。そうしないと一瞬で終わる気がするのだ。

 

 ヴォルケンリッター達のバリアジャケットは、はやてが考え中なので着てなく防御が低いのでヴィータは、ザフィーラとの連携を考える。

 

 《どうするザフィーラ、これは一人で戦えるレベルじゃねぇぞ》

 

 《美鈴殿を舐めていたわけでは無いが…想像以上だな》

 

 念話で二人はいつもと違う美鈴のに驚愕していた。

 

 ヴィータとザフィーラは古代から戦い続ける歴戦の騎士だ。強者を見る目に間違いは一流であり、だからこそ美鈴を見て油断など一切無かったが、美鈴と立ち会って二人の本能が叫ぶのだ'"目の前に敵は次元が違う、と!それに気づける2人は一流の戦士であり、現代まで生き残ってきた強者の証。

 

 《小細工などより正々堂々と向かった方がいい》

 

 《へぇ!あたし達らしい戦法だな!》

 

 ヴィータはアイゼンを構え、美鈴に向かって一直線に走り、完全に美鈴の懐に入ったとアイゼンを振り下ろす。

 

「おら!!喰らえ!!」

 

 ザフィーラもヴィータと同士に美鈴に向かって岩を粉砕するレベルの魔力を込めた右のストレートを繰り出すが……。

 

「いい攻撃です」

 

 そう言いながらまずヴィータの振り下ろしてきたアイゼンをデコピンで打ち返す。

 

「…ハアッ!?」

 

 その威力はヴィータを吹き飛ばすものである。更にそのヴィータが飛ばされた延長線上にはザフィーラが重なってしまう。

 

『『ッッ!』』

 

 お互いの向かう力がぶつかり合う。

 

 《ガハッ!何だよあのデコピン……い、威力がおかしいだろう!》

 

 《……やばいな…今ので肋骨が何本か持ってかれた》

 

 なんとか立ち上がる二人だが、今の一撃で満身創痍であり、あと一撃が自分達の攻撃をするのが限界に近かった。

 

「お二人共限界でしょう。もう辞めますか?」

 

 この時の美鈴の言葉は適切であった。

 

 高い………何と高い壁か…。

 2人は美鈴をそう思うざるを得ない。

 これは模擬戦であり無理をする事は無いがヴィータとザフィーラは否定する。騎士として!戦士として!一撃は入れてみせる!!

 

「……まだだ。まだやれる!」

 

「ヴィータの言うとうりだ。美鈴殿もう少し付き合ってもらいます」

 

 満身創痍の体。

 初めて知る次元が違うという思い。

 

「そうですか…ならば次の一撃で決めましょう」

 

 美鈴は右の拳を突き出す構えに入った。

 

 《ヴィータ。我等の最高の一撃を決めるぞ》

 

 《ああ!悔しいが美鈴は強い》

 

 

 美鈴の言葉は、ヴィータとザフィーラにとって屈辱だった。しかしそれ以上に美鈴に強く情けをかけられたのだ。だからこそ二人は力を込める。騎士のプライドとして……

 

 

 ————次の一撃に全ての力を込める。

 

 

「行くぞグラーフアイゼン!カートリッジ」

 

 《装填》

 

 ヴィータは、アイゼンをラケーテンフォルムに変えカートリッジを使用する。

 

「くらえ!【ラケーテンハンマー】」

 

 カートリッジの魔力を燃料としてロケットのように噴射させ、加速させた上で目標に叩きつける。 推進剤の噴射と回転の遠心力も合わせて打撃力を高める。また先端部が対象の防御に食い込み、受け流しを困難にするという特徴も持っているというヴィータの必殺技の一つ。

 

「ウオオオオオオ!【滅牙】」

 

 右手を空に。左手を地に。

 指を牙のようにして相手の防御ごと噛み砕く狼の牙を真似た必殺の一撃。

 この攻撃は今二人が出せる最大の攻撃だった。

 当たれば今まで何人もの潰し、噛み砕いてきたこの技に何も疑問を持たなかった。

 

 

 ————そう思っていた。

 

 

「……ええ、熟練されたいい技です」

 

「……う…そ…だろ」

 

「ぐぅ…」

 

 ————完全に止められた。

 

 何に一つとして傷も与えずに鉄鎚は完全に勢いをなくし片手でガッチリと掴まれ、牙は合わさる瞬間に手首を掴まれ牙をもがれた。

 

「まだ…………続けますか?」

 

(…ゾクッ!!??)

 

 美鈴の圧倒的な実力に2人は恐怖しその場にヘタリ込む。

 

「…もう無理だ」

 

「…我も力が入らぬ」

 

 その様子を見てニッコリと笑う美鈴は嫌味なく言い切った。

 

「いい勝負でしたね♪」

 

「余裕で捌いて一撃でやられたのに、いい勝負もクソもねーよ」

 

 満面の笑みで話す美鈴にツッコム、ヴィータであった。

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 勝負が終わり一旦ヴィータとザフィーラは、はやて達の所に戻りシャマルから治療を受けていた。

 

「派手にやられたわね〜」

 

「ほんま心配したんやからな!あんな怪我だらけになっても立って勝負を続けるんやから」

 

「ごめん…はやて」

 

 怪我をしているヴィータを撫でながら叱るはやて。

 

「美鈴さんもお叱りッスね」

 

「えーー!何でですか!」

 

「やり過ぎじゃ…アホが…」

 

 美鈴が付けた傷は、ザフィーラは肋骨が数本折れ、ヴィータは腕の骨にヒビが入っている。なかなかの重傷であった。

 

「美鈴…元気…?…明日から……一杯…働く…」

 

「一ヶ月くらい休み無しでいいんじゃないッスか」

 

 色々と勘違いしている夜はレヴィの悪ふざけの冗談を間に受け、それで…いく…と美鈴の休みは消え去った。

 

「……そ、そんな!」orz

 

 美鈴の勝利というものは、休みという犠牲のもとに成り立ったようだ。

 

「それでは私達の番だな!夜よ」

 

 早く戦いたいシグナムは、すでに剣を振っておりやる気満々だ。子供のように目をキラキラさせて闘気を滾らせる。

 

「…う…む…やろう…」

 

 その一声にシグナムと夜は結界内から出て、ある程度の距離になるまで歩くのだった。

 

 

 

 _____________________

 

 ______________

 

 _______

 

 

 

 

 

 そして場面は冒頭に戻る。

 シグナムは、デバイスであり、愛剣【レヴァンティン】の剣先を夜に向け構える。

 しかし夜は、何も構えずただ立っている。愛剣である【夜刀】は日本刀の状態で腰に差している。それがシグナムの癪に触った。

 

「…何故剣を構えない?」

 

 少々苛つきを込めた声だが、夜は動かない。

 剣を持たない事が彼の構えだから。

 

「そうか……。ならこちらからいくぞ!!」

 

 これ以上は言っても無駄だと直ぐに感じたシグナムは、地を力強く蹴り、一瞬で夜の懐に入る。

 

(取った!!)

 

 そう思えるほど、シグナムは自分の剣が届く射程範囲に入っていた。シグナムの目には、まだ何もせず動かない夜の姿が見える。

 

 普通ならこの一撃で決まると思うほどにシグナムの剣は夜の喉元に届く………………筈であった。

 

 —————ガキッン!!!

 

 金属と金属が激しくぶつかって鳴る筈な音がシグナムの耳に入ってくる。

 そして気付いた時にはシグナムが放ったであろう剣の一撃は後ろへと流れている。自分の身体ごと……。

 

(何故…私が飛ばされている……ッ!!?)

 

 余りにも一瞬の事で反応が遅れてしまう。

 しかし何も追撃は来ないので少し慌てながらバックステップで夜との距離を取る。

 

「……シグ…ナム…この…程度?………もっと……」

 

 ————きなよ

 

 夜が言った瞬間、シグナムに凄まじいプレッシャーがのしかかる。冷たい瞳がシグナムを貫いてゆく。

 

「…う…グッ!?」

 

 あまりにも重苦しいプレッシャーに思わず膝をつくシグナム。この交わされた一回の攻防でシグナムは理解した。

 

 

 

 

 自分は圧倒的な弱者なのだと………。

 

 

 

 

 

 それは光景を見ている結界の中にいる者達まで届いていた。

 

「…なんて重苦しいプレッシャー」

 

「あ、ああ。凄まじいな」

 

「シグナム大丈夫か?このプレッシャーをまともに受けて…」

 

 ヴォルケンリッターの面々は遠くからでも首元に刀が置かれ斬られている感じのするプレッシャーに大量の汗をかく。

 

「はやてさんは大丈夫ですか?」

 

「大丈夫やけど…みんなどうしたんや?」

 

 美鈴が夜からのプレッシャーを気を使う程度の能力ではやてを守っている為にはやては何が起こっているのかよく分かっていない。

 

「ヴィータさんもキツそうッスけど、大丈夫ッスか?」

 

 レヴィは先程から顔を歪めているヴィータにプレッシャーに当てられ傷が痛んでいないか聞く。

 

「一応大丈夫だ。お前らは平気なのかよ」

 

「私達これ以上を感じた事があるからの。これくらいなら大丈夫じゃ」

 

「これ以上があるのかよ…」

 

 藍の発言にヴィータは、自分達の将を心配する視線をシグナムに送るのであった。

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

 

 

 

(な、なるほど…な。これが剣神と自負し認められている者……これは少し早かったかもな………)

 

 シグナムはプレッシャーを受けながらも今までの経験と騎士としてのプライドでレヴァンティンを杖の様にしながら立ち上がると、耳に夜の声が響く。

 

「……シグナム……どっち…」

 

『どっち』それは選択肢という事。ここから決まるシグナムがこの先の剣士として選ぶ選択。

 

 そして夜は言う。

 

 ——これは神に対する対等な立場の決闘か?

 

 それとも………

 

 ——神に対する人の挑戦か?

 

 この選択をシグナムが誤れば、下手をすると二度と剣を持てない日が来るかもしれない。

 そのイメージが簡単に想像できる。それほどの実力差をシグナムが察知していない訳がなかった。。彼女は理解している今いる自分の立ち位置を。

 

「……挑戦だ。……私が挑むには力が無い」

 

「…ん……」

 

 この一言でシグナムを押し潰していたプレッシャーが消え失せる。それはこの試合を夜が『己が格上として相手の力を見る』と思考がなったからだ。

 

「……シグナム…魅せる…お前の剣を…!」

 

 夜の纏う雰囲気が変わる。

 直ぐ様それを感じたシグナムも今一度レヴァンティンを構える。

 

 この様な状況で夜は一切動かない。

 自ら攻める気が無いのだろうとシグナムは思った。ならば自ら行くまでとも。

 

 ただ真っ直ぐに素直に夜に向かってレヴァンティンを振るって行く連続で右から下から左から上から、もう一度繰り返し斬りかかるが金属音と共に全て弾かれる。

 

 ここでシグナムは一旦夜から距離を取ると剣を一度降ろす。

 

「なるほど…タネは分かった」

 

 大粒の汗をポタポタと滴らせるシグナムは一度腕で拭いそう発言する。

 

「……む……気付いた…?」

 

 この短時間でタネを見抜いたシグナムに関心しながら、夜はシグナムの答えを聞く。

 

「ああ、お前は私の剣を高速抜刀術で弾いているのだろう。私が視認出来ない速さで。それが刃が見えない理由だな!」

 

 そう言うシグナムは確信を持ったという表現だ。

 まぁ簡単な推理なのだが、まず夜は腰に日本刀を差している。一度たりともシグナムが見える範囲では抜いていない。

 しかし金属音が鳴りレヴァンティンが何かと当たっている感触は最初からあった。

 

 ならば、夜は剣を振るっていると言う事。

 シグナムの記憶の中には幾たびも剣士と剣を交えた経験がある。その経験が抜刀術の答えだと導いた。

 

 

 

 だが、それを信じるには難しい事でもある。

 

 

 

 

「なっ!抜刀術だと!」

 

「ああそうだ。主ヨルの剣は抜刀術の達人だ」

 

 結界内でタネを教えてもらったヴィータは、あまりにも非現実的な答えに頭を抱えていた。

 

「でも漫画とかで見る抜刀術って、ここぞ!って言う時に使うんじゃないんか?」

 

 このはやての質問は当たらずと雖も遠からず。

 普通なら抜刀術は一撃必殺の剣だ。何故かと言うと、抜刀術は一回の動作が長く、連続で出来ないと言う欠点がある。

 

 基本的に剣を扱う者は皆、剣の型が存在する。その型を基本にして技へと昇華する。

 抜刀術は一つの動作、鞘から刀を抜き放つ、と言う動作しかない。それを納めて再び抜き放つには時間がかかり過ぎる。だからこそ一撃必殺の剣なのだ。ではそれを一つの型として基礎としたら?

 

 それはもう必殺技とは言わず抜刀術そのものが型になるのだ。

 

 

 それこそ夜の剣技————

 

 

「————超光速抜刀術じゃ」

 

 

 ヴォルケンリッター達は何も言えなかった。

 古代から生きる彼らは知っている。剣を極めようと毎日剣を振っていた剣士達を。それでも抜刀術を型とした者はおらず剣の天才と言われたシグナムですら鉄を斬るのが最高だ。だからそこ信じられなかった8歳の少年がそこまで極めた事を。

 

 しかし眷属達からすれば……

 

「そんな事が出来るからこそ、夜さんは【剣神】なんッスよ」

 

 

 そんなレヴィの言葉に納得せざるをえないヴォルケンリッター達だった。

 その剣を見ようとヴォルケンリッター達は視線を夜達に戻した。

 

 

 

 

 

 夜はシグナムが夜の剣技を当てた事で藍と同じような説明をしていた。

 

「___と言う……僕の剣技……単純…だ…よ」

 

 多くの剣士が辿り着けなかった領域を軽く言う夜にシグナムは、背筋が震えるのが分かった。

 

(簡単に言ってくれる。抜刀術を基礎にしそれを基本にするなど化け物すぎる。これが【剣神】!面白い!今の私の剣がどこまで通じるか試してみたい)

 

 シグナムはレヴァンティンを顔の前に構え騎士としてのプライドを捨て剣士としての興味が湧き上がってくる。

 

「夜よ。今の私の剣がどこまで通じるか知りたい。不敬を承知で頼む、私が今出せる全力の技を最後の一撃にして斬りあってくれ」

 

「……お…っけー…。…その…一撃…受けて…たつ」

 

 夜もシグナムも気持ちを受け取り、正面から叩き潰す気でいる。

 

「感謝する」

 

 

 その一言と同時にシグナムはレヴァンティンに魔力を込める。

 

 夜も初めて本来の抜刀術の構えを取る

 

「ではヴォルケンリッター烈火の将シグナム参る」

 

「…剣神…夜…来る…!!」

 

 己の名という口上の掛け声と共に夜にに向かっていくシグナムはカードリッジを使用する。

 

「これが今の一番の技"紫電一閃」

 

 レヴァンティンの刀身に魔力変換した炎を乗せ上段から振り下ろす一撃を夜は……

 

「…うむ……良き…」

 

 ———一閃!

 

 夜の光速抜刀術で、一度目はレヴァンティンを弾きバランスが後ろに行ったシグナムの首元には刃が……。

 

「チェック…メイト…」

 

「ああ。私の負けだ」

 

 首元に刀を向けられたシグナムは素直に負けを認める。

 しかし、ただ負けだけで終わらないのもシグナムだ。

 

「夜よ。いつかはお前を斬ってみせる!だからまた斬り合いをしてくれるか?」

 

「いつでも…歓迎…♪」

 

 そう言葉を交わしてヴォルケンリッター達と夜達との勝負は終わった。

 

 

 _____________________

 

 

 ______________

 

 

 _______

 

 

 

 その後八神家に戻りヴォルケンリッター達は、皆が寝静まった深夜リビングで今日の事を話していた。

 

「今日は、みんなボコボコにされたわね〜」

 

「うるさい!見ていた奴が偉そうに」

 

「そうだぞ。ならばお前も戦ってみろ!夜達がどれだけの格上か嫌でも分かるぞ!」

 

「私は非戦闘員だから貴方達みたいに戦闘狂じゃーないんです〜〜」

 

 

 ヴィータとザフィーラはシャマルの言い方にイラつき軽い言い合いをしている。そんな光景に笑っていたシグナムが神妙な面持ちで語る。

 

「しかし…夜達は強かったな」

 

 

『『…………』』

 

 

 シグナムの言葉にヴォルケンリッター達は誰も声を出さない。

 それもそうだろう、古代ベルカの時代に最強と名を馳せていたヴォルケンリッターが圧倒されたのだから騎士としてのプライドがズタズタなのだ。

 

 此処でヴィータがある事を話し出す。

 

「…でもよ、今日試合が終わった後、美鈴に聞いたんだ…どうして100年以上戦ってきた私達より強いんだ?って」

 

「…美鈴は何と?」

 

「美鈴はこう言ってた『確かにヴィータさん達も強かったですよ。昔から生き戦争をしてきた実力はあるます。ですがたった100年で単位では私達眷属の足元にも及びません。私達眷属は千年以上戦っているのですから経験が違います。それにヴィータさん達は人間の相手でしょ、私達の相手は化け物ばっかですから』と言ってた」

 

「千年か…長いなぁ」

 

 ヴォルケンリッター達も時を長く生きているがそれでも眷属達とは桁が違った。だがそうなると一つの疑問が浮かぶ。

 

「眷属達の強さの理由は分かったけれど、夜君はどうやってあそこまでの実力を?はやてちゃんと同じ8歳よね?」

 

 美鈴の話を聞いたヴォルケンリッター達皆が思った事をシャマルは口にする。

 

「ヨルの事も聞いたけど教えてくれなかった。でもよ…あたしはヨル達が味方でよかったと思うぜ!ヨルもいい奴だしな」

 

 この時のヴィータの言葉はヴォルケンリッター達のすべてだった。

 

「ヴィータの言うとうりだな。もし眷属達が敵だったら我等は…………言いたくはないが主はやてを守れなかったかもしれない」

 

「認めたくはないが夜達が敵だったらザフィーラの言う通りになっていたかもな…」

 

「でも夜君達は、私達の…はやてちゃんの味方なんだからちょっとぐらい秘密があるくらいで疑うほど私達は信用していない訳じゃないんでしょ!みんな一緒に過ごして信用したんだから信じなきゃね」

 

 

 ここまで暮らした約一カ月。短い時だが、されど彼等にとって重い、想い一カ月。

 

「そうだな…誰にでも秘密ぐらいあるのだから打ち明けてもらうのを待とう」

 

「はやても言ってたしな!私達は家族だって!家族は信じなきゃな」

 

 

 こうしてヴォルケンリッター達は結論を出す。

 

「もう夜も遅い。そろそろ寝るか」

 

「そうだな。明日も主はやての買い物に行かねばならないしな」

 

 

 ヴォルケンリッター達は誓いを立てる。

 

 

 —————この幸せを守っていこうと。

 

 

 そしていつか彼等に………

 

 

 

 —————()()()()を届かせると誓う。

 

 

 

 

 




【あとがき】

あー、疲れた。
後から確認するとこの話一万文字だったww
昔の俺よく書いたと思うよ。今一万も書けないもんw



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では次回。




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10話

どもパッチェや!

今回は分かる人には分かるネタを挟んでみました。
ようつべ見てる人なら大体知ってると思うよ。

ヒント・勝ち取りたい




 

 12月の初め、この時期は色々な行事がある為、夜達の仕事がいつもの三倍に増える。

 

「…も…う…ダメッス…」

 

「…レヴィさん…頑張りましょう…これが終わらないとまた明日も増えますよ」

 

 大量の書類の束を処理をしていくが全く減らない書類に心が折れかかっている二人。

 

「お主ら…そろそろ八神家に行く時間じゃぞ」

 

 あれからも夜は毎日、仕事が終わると八神家に泊まりに言っている。(もはや泊まると言うより住んでいるが正しい)

 その為眷属達も一緒に夕食を食べる事が毎日の事になっている。

 

「…僕…だけ…先……行く…」

 

 もう一時間も待っている為、待ちきれなくなる夜は書類処理をしている二人を置いて先に行こうとする。

 

「このバカ共がサボらないか見張る必要があるので、先にお行きください」

 

「…う…む…任せた」

 

 そう言うと夜はスキマを開け八神家に向かった。

 

 

 残った眷属達の居残り組は土下座で誠意を表す。

 

「…藍さん…お願いします。手伝ってください」

 

 夜に置いていかれ"ヤバイ、と感じたのか美鈴は恥も無く藍にお願いする。この時のレヴィも期待の目で見ていたが、

 

「嫌じゃ!私がいるのはお主らの見張りじゃからのー」

 

「「エッーー!手伝ってくださいよ(ッス)」」

 

 そんなくだらない話をしている眷属達は、どうして速く仕事を終わらせなかったのかと後悔し、この後地獄を見る事になるとは誰一人思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 

 ______________

 

 

 _______

 

 

 

 

 

 夜が八神家に来るちょっと前のリビングの出来事は慌ただしかった。

 

 

「…我等は今最大の危機に瀕している」

 

「…ああそのとうりだ」

 

「我等の選択でこの後の命に関わるからな」

 

 シリアスムードで喋る三人はさっきあった出来事を話し出す。

 

「まさか……主はやてが左腕を骨折なさるとは」

 

 そう大変な事とは、はやての左腕が折れてしまったのだ。

 

 車椅子生活をしているはやては、疲労が腕に溜まり俗に言う【疲労骨折】になってしまい、今はシャマルが病院に連れて行っているのだ。そのせいで家事が出来なくなってしまった為、シグナム達は慌てているのだ。

 はやての騎士となって半年たち現代の暮らしに慣れたヴォルケンリッター達だが料理だけは誰も出来ないのだ。今いないシャマルなど勿論論外である。

 

「本当にどうする?あたし絶対にシャマルの料理は食べたく無いぞ!」

 

「我もだ!あれは料理などでは無い!」

 

 この半年隠れて、りょ……毒物を作りにいつもザフィーラが犠牲に合うので拒絶反応が出ておりさっきから身体が震えている。

 

「くっ!このままではシャマルのりょ…毒物を食べる事に…」

 

 はやてが料理を作らないだけで絶望するシグナム達は、此処までか!と思っていると………救世主が帰還した。

 

「…僕……来たぞ…♪」

 

「ヨル!よく帰ってきた!」

 

 夜は仕事が多く徹夜でする事も多いので決まった時間に帰るのだ。なので今日はいつもの帰って来る時間になっても帰ってこなかった為もう帰ってこないと思っていたヴィータが夜に抱きつく。

 

「ヴィータ…どうした?」

 

 

 いきなり抱きつかれて戸惑う夜にシグナムが今までの説明をする。

 

「……、と言うわけだ。藍か美鈴に夕食を頼みたいのだが…もしかしていないのか?」

 

 夜に説明をしている時に、全然帰って来ない藍と美鈴に気付くとシグナムは最悪の事を質問する。

 

「む…今は……」

 

 夜も藍達の事を説明をする。

 

「……そうか……今日は終わったな」

 

「もう駄目だ!おしまいだ!」

 

「………」

 

 今までの経験で死を覚悟するザフィーラに某サイヤ人のセリフを言うヴィータ、死んだ目をするシグナム。

 この三人を見た夜はある提案を出す。

 

 

「…なら…僕……作る」

 

『『ッ!!?』』

 

 シグナム達は夜の言葉に驚きを隠せない。

 今まで暮らしてきたが夜が家事などをする姿は見たことが無い。その夜が作ると言ったのだ。

 

「ほ、ほはほ本当に作れるのか!?」

 

「…ん…料理……得意…!」

 

 ヴィータの質問に肯定して胸を張る。

 夜の言葉に"神はいた!と言う表情をする三人

 

 だが此処でシグナムは疑問を持った。

 

「夜よ。何故今まで作らなかったのだ?」

 

 それもそうだろう。

 出来るのであればするのが必然的な考えである。

 しかし夜が料理をしない理由には悲しい哀しい理由があるのだ。

 

『主ヨルは台所に立たないでください。危険なので私達でやります』

 

 と()()()()()()()が絶対に台所に立たせないのだ。

 

 それでも夜としては料理は中々興味がある事で、スキあらば料理をしようと行動が早い。

 

「…任せる…!…()()()()()()()()…料理…作る!!

 

 ここまで言われるとシャマルに任せるより夜の方が安心だと錯覚してしまう。

 

「そうか。では夕食を頼むぞ」

 

「ギガうまいご飯を頼むぜ」

 

「……任され…た」

 

 そう言うと夜は台所に向かい料理を作り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時シグナムは藍の言葉を心配症が行き過ぎた為だと思っていた。

 

 希望に満ち溢れた思いで!

 

 だがこの時のシグナムは思ってもみなかった。

 

 救世主の筈の少年は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———絶望を振り撒く地獄の使者だと誰も思ってもみなかった。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 夜が料理を作り始めて5分後、はやてとシャマルが帰って来た。

 

「いま帰ったでー!」

 

「はやておかえり!」

 

「主はやて。おかえりなさいませ」

 

「うん!ただいまや」

 

 しっかりと主に挨拶していくが、

 

「…貴方達…私には何も無いのね」

 

 皆が当たり前だ!、と声を揃える。

 

「それより…誰か夕食を作ってるんか?」

 

 はやては、台所の電気が付いていることに気付く。シグナム達が料理を作れない事を分かっているので台所に人がいる事に疑問を覚える。

 

「ああ!ヨルが作ってくれてるぞ!」

 

「えっ!?夜君作れたんか!」

 

「主はやては知らなかったのですか?」

 

「う、うん…夜君家事が恐ろしくできないからビックリや」

 

 ここで、あれ?おかしいな?とシグナム達は嫌な予感を覚える。

 

「………………ちなみにどのくらいできないので?」

 

「そうなや……洗濯機を回すと部屋中が泡だらけになるなぁ〜」

 

「そ、それは中々ね…」

 

 この時のはやての目が遠い所を見ていた為、本当に大変な事だったのだろう。

 本当に大丈夫か?と心配なるが某毒物製造機よりは安心安全だろうと自分に言い聞かせ始める。

 

「まぁシャマルの毒物よりマシだろ」

 

『『ウンウン!』』

 

 みんなが頷くのでシャマルが、みんな酷い!といじけだす。

 

「ま、楽しみにリビングで待ってようか」

 

 リビングからは台所が見えないのではやて達は楽しみに待っていた。

 一体どんな料理が来るのだろう?と。美鈴は中華が得意であり、藍は日本食が美味いのでこの両方か?と淡い期待も感じ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さらに五分後、リビングにスキマが開き眷属達が出てくる。

 

「すまぬ。遅くなった」

 

「…すみません…お…そく…なりました」

 

「……ッス」

 

 藍の背後には目が虚ろな二人も続いている。

 

「…忙しそうなや。大丈夫なんか?」

 

「書類の山がずっと目の前から消えないッス…」

 

「た、大変そうやな…」

 

 やっぱり社会人って忙しいんやなぁ〜と思っていたはやては、この時将来自分が書類に追われるなど一ミリも思っていなかった。

 

 

 話は変わり、藍がある事に気付く。

 

「主よるは何処にいるのだ?先に来たはずだが?」

 

「ああ夜なら【料理】を作ってくれてるぞ」

 

『『ホワッツ???』』

 

 シグナムの返事の瞬間、眷属達はムンクの画の様な表情となり大声を上げる。

 

「なっ!主よるが料理じゃと!?」

 

「ヤバイ!ヤバイですよ!」

 

 いきなり慌てだし叫ぶ二人に不安感が一杯一杯だが、ここは聞かざるを得ないだろう。

 

「ど、どうしたんだ?」

 

「お主らどうして主ヨルに料理などさせた!」

 

 藍の目が血走りシグナムに迫る。

 

「そ、それはだな…」

 

 

 シグナムは夜に料理を頼んだ経緯を話しだす。

 

 全てを聞いた藍は膝をつき真っ白に燃え尽きた。

 

「…………終わった」

 

 と絶望する藍の姿を始めて見た、はやて達は思わず聞いてしまった。

 聞かなければまだ!幸せだった事を。

 

「どうして…そんな絶望してるん?」

 

 はやての質問に藍は立ち上がり、逆にはやてに問いた。

 

「………はやてよ、お主なら知っておるじゃろ…主ヨルの家事のできなさを」

 

 はやては頷く。

 それで一度痛い目を見たからだ。

 

「特に主よるは料理がヤバイのじゃ」

 

「どのくらいヤバイんだ?」

 

「……シャマルなど相手にならん…"地獄から来た死神とでも言っておこう」

 

『『……』』

 

 もう誰も声を出せなかった。ただでさえシャマルの料理もヤバイのにそれ以上だと藍は言うのだ。この時ヴィータは質問した事を後悔した。

 

「………見てみろ美鈴とレヴィを」

 

 今まで喋っていなかった美鈴とレヴィをはやて達は見る。

 

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…」

 

「食べたくない食べたくない食べたくない食べたくない…ッス…」

 

 と言葉を永遠と繰り返しリビングの隅で座っている二人を見てしまったはやて達は白目を向いて心の中で確信する。

 

(これマジヤバイ………)

 

「で、でもそこまでなら藍さん達が教えたり私みたいに不味いって言えば…」

 

 自虐を取り入れ涙目のシャマルの言葉にやっと復活した美鈴が、拳を握り締め語った。

 

「シグナムさん達は、自分達の為にと一緒懸命作ってくれた主の料理を不味いと言えますか?」

 

 ———無理である。

 

 そんな事言える訳が無かった。主を慕っているヴォルケンリッターと眷属達はそんな事を出来る訳ないのだ。

 喋る者がいなくなり夜の料理が出来るまでの10分間が死刑囚の様に時間がとても長く感じるはやて達だった。

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 10分後、料理ができたのか台所からそっと料理を運ぶ。

 

「……誰か…味見…する」

 

「「………ビクッ!?」」

 

 さぞ当たり前と言わんばかりに眷属達の前に蓋のついた料理を置く。自然と美鈴の前に。

 

「さ……食べる…。これで……元気…なるよ…♪」

 

 この言葉を聞いたヴォルケンリッター達は藍の言っていた事を理解する。確かにこんな風に言われたら断れない。この考えは正しく今も美鈴が地獄に向かっていた。

 

「…皆さん…これでサヨウナラです。お元気で…」

 

「美鈴さん…漢ッス…」

 

「ああ…先に逝っといてくれ」

 

 あんな話を聞いたはやて達は、眷属達の茶番劇を静かに見守る。

 美鈴は死んだ目で夜の料理の蓋を取るとそこには……

 

 

『『『!?』』』

 

 夜の料理を見た事がないはやて達は、夜の料理を見た瞬間目を疑う。

 

 《な、なんなんだあの物体は!?》

 

 思わずシグナムは念話で叫んでしまった。それもそうだろう蓋をあけるとそこには……真っ黒なソースがかかった蒼いオムライスが皿の上にのっているのだから。

 

 《なぁみんな…あたしの目がオカシイのか?オムライスが蒼く見えるぞ》

 

 《…安心しろ私も見える》

 

 《シャマルの比ではないな》

 

 自分の目を疑うヴィータとシグナム、開いた口が塞がらないシャマルとはやて、思考回路が停止している眷属達。

 

 静かになる空間で夜の声が響く。

 

「……美鈴……ダメだっ…た」

 と泣きそうな夜の声がしたせいで美鈴は覚悟を決めてオムライスらしき料理を食べる。

 

「…南無三」(パク)

 

 美鈴の感想を皆が待っていると、顔を自分の髪色の紅の様に真っ赤になったり青白くなったりと色々である。そして………

 

「……あぎゃああああああああああああああああああ!!!…………ウゴオオオオオオオオオオオオ………口が口がガガガガガガガガガガ…………(ピクピク)」

 

 目から血の涙を流し呻き声を出しながら床をのたうち回ると口から赤い液体を出しながら白目で動かなくなる。

 

(天に昇ったあああああッ!!!?)

 

 とはやて達の思いがシンクロする。

 

 死ん……ゴホンゴホン気絶した美鈴を夜は、小刻みに震えている夜刀をツンツンと突く。

 

「……美鈴…疲れてる?……寝た…」

 

 そんな訳あるか!とツッコミたくなるはやて達だが、自分達も美鈴みたいになると思うと、

 

 《嫌だ!嫌だ!絶対にあたしは食べたくない》

 

 《私も嫌よ!死にたくないわ》

 

 《だが私達が食べなければ、主はやてが…》

 

 《食べるしかなかろう…主はやての為にも、犠牲は我等が》

 

 嫌だと言っていたヴィータとシャマルもはやての為だと聞くと食べざるを得ない。

 

 だが、

 

「ギャアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…口が口が焼けるッス!!???」

 

(ガクガク……)

 

 犠牲者が出るたびに皆の身体が震える。

 

「……楽しい人生やったわ」

 

「はやてちゃん諦めちゃダメよ!まだ、未だ希望を持って」

 

 走馬灯が見えてきたはやてをなんとか元気づけるシャマルを見た藍は立ち上がりはやての元に行き幻術をかけるとはやては気を失う。

 それは藍の良心である。気を失えば料理を食べなくて済むように。

 

「藍よ。感謝する…これで主はやては死なずに済む」

 

「まだ死ぬには早いからな…主ヨルの料理は私が全て食べよう」

 

 そう決意する藍にヴォルケンリッター達は必死で止める。

 

「藍殿!貴女は死ぬ気ですか!」

 

「そうよ!ここにいるみんなで食べれば…気絶くらいで……」

 

「イヤお主らは、主ヨルの料理を食べ慣れていない。そんな者が食べれば一生目を覚まさんだろう。うちの会社でも未だ意識不明の重体の者がおる…私が愛する主ヨルの料理じゃ美味しい頂こう」

 

 もう藍を止めれる者はいなかった。藍は()()()()()()()。藍の主に対する思いを感じたヴォルケンリッター達は皆が涙を流し、

 

「お前の事は忘れねぇ!騎士の名にかけて」

 

「ああ!お前の主に対する思い素晴らしかったぞ」

 

「貴殿は素晴らしい従者だ!」

 

「後の事は任せて」

 

 皆が藍に一言づつ言葉をおくる。

 最後の言葉をして……。

 

「お主らとの半年は楽しかったぞ」

 

 そう言うと発狂しているレヴィを突く夜の共に行き、はやてが食べないように夜に懇願した。

 

「主ヨル。はやてが疲れたのか寝てしまわれたので私が全てオムライスを食べますのでご用意を宜しいですか?」

 

 この話を聞いた夜は、はやて寝てしまっては仕方がないと思い、

 

「……む…それは…残念…けど…全部…食べるの?」

 

 夜はもう一度聞く、はやて達の分5皿に藍の分合わせて6皿たべるのか?と。夜の言葉に藍は逃げ出したくなる思いが出てくるが、此処は夜を慕う気持ちでなんとか堪える。

 

「主よるの料理です。残すのはもったいですから私が全て食べようと思います」

 

「…じゃあ……用意する」

 

 蒼いオムライスをスキマから取り出し藍の前に置く。

 

「主よる。どうして今日料理を?」

 

 藍は最後の会話として、いつもはそこまで積極的に料理を作らないのに今日に限ってした事を質問した。

 すると夜は、よく見ないとわからない程度に顔の頬を赤く染め、

 

「……最近藍達疲れていた……少しでも元気……なる」

 

 そんな事を言われたら藍の涙腺は色々な思いで崩壊し、できれば他の事で表して欲しかったと思ってしまう。

 

「ぬ、主よる我等のためにありがたく頂ます!」

 

 

 そして藍はヴォルケンリッター達が見守る前で蒼いオムライスに手をつける。

 

「グフッ!」

 

 藍はオムライスの衝撃に意識を持っていかれかけるが、主ヨルの思いの為にオムライスを口に運ぶ。

 

「ラン……」

 

「藍…さん…」

 

「なんて我等は無力なのだ!」

 

 三人は涙を流し目をそらしそうになるが……

 

「お前達…藍の勇姿を見るのだ!主の為にあそこまでなれる従者の目を逸らすな…」

 

 シグナムの言葉にヴォルケンリッター達は、藍の勇姿を逃すまいと騎士として食べ終わるまでの時間ずっと見ていた。

 

 その間に藍は食べていく。血泥を吐きそうでも、発狂してしまいそうになろうとも、口が焼けそうになっても、ヤバイ汗が出ても、走馬灯を見ても食べ続ける。

 

 

 自分達の為に作ったくれたオムライスをひたすら食べる。

 

 その中で藍は止まらない。

 

 ———私は止まんねぇーからよ。

 

 ———先に逝った彼奴ら(美鈴、レヴィ)が待っとるんじゃ。

 

「うぅ……ラン」

 

「私達なんかの…為に……」

 

 ———家族を守るのは私の使命。

 

 ———だから止まんねえからよ。

 

 ———おんしら、止まんねえ(食べない)限りその先に私はいるぞ!!!

 

 絶対に生きて帰って見せると。

 オル……ゲフンゲフン、奴の様に死にはしないと。

 

 そして彼女はついに、夜に対する止まらない思いを完食する。

 

「お、美味しかったですよ…主よる」

 

「…ん……?……ら…ん?」

 

 藍は全てのオムライスを食べると、夜に抱きつき最後の力を使って眠らせるとシグナムに夜を預けて歩き出す。

 

「…主よるを…頼む」

 

 と言う藍にヴォルケンリッター達は涙が止まらない。

 

「私は八雲藍だぞ……主よるの事で止まる訳が無かろう」

 

 ——だからお主らも止まるんじゃねえぞ!

 

『『『藍ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』』』

 

『団長ぉぉぉぉぉぁぉぉぉ!!!』(←ヴィータ)

 

 希望の花ぁぁあ♪とエンディングが聴こえるのは気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後藍は1週間意識が戻らず、会社の機能が停止しかけるが1日で目覚めた美鈴とレヴィが藍の勇姿を聞き、藍が起きるまでの間仕事をいつもの十倍頑張った。

 

 

 そして夜は、八神家二人目の料理禁止令が出された。

 

 一方はやては、二度と怪我をしない事を誓った。オルガパロをしない為に……。

 

 ヴォルケンリッター達(シャマル以外)もできるだけ料理を覚えようと誓った。

 

 

 これはまだ平和な八神家の日常である。

 

 

 




【あとがき】

これ知ってる人絶対いるよね?w
もうさ、オルガのネタマジ好きなんだわww


知ってるよって人いたら感想プリーズ。
オルガ殺しましたって人はお気に入りおなしゃす。


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11話

どもパッチェです。

前、前書きのネタが無いと言った時に感想で提案を貰いまして私思い出しました。
名言書いてたわ前。なので次からその話にあった色んな名言を書いていきます。基本、アニメ系から。


あ、今リリなの新作考え中です。
作者がパッチェとなっていたら確実に自分なのでよかったら読んで。次作は憑依系だよ!!
もし投稿したら四作目(仮)です。このバカをお許しください。





 

 

 八神家の近くの公園でカンカンと木刀が打つかる音が聞こえる。

 夜とシグナムの軽い打ち合いである。

 

「……いい…速さ…」

 

「お前に指導されたからな」

 

 とは言いながらも、シグナムの剣技は一向に夜を捉えられない。上手く流されて終わっている。

 

「それにしても夜に指導を頼んでもう半年か…」

 

「…ん…びっくり…」

 

 二人の話は、半年前の試合の後に遡る。

 あの後シグナムは夜との力の差を感じ『私に剣を教えてくれ』と頼んだ。断られると思っていたシグナムだったが夜はあっさりと『良い…よ』と答え、夜との斬り合いと言う指導が始まった。

 

「剣士…は実戦……斬り合うの…が…1番」

 

「ああ…確かに斬り合いながら毒を吐かれたな…」

 

 

 夜の教え方は単純な事であった。斬り合いながら感想を言っていくただそれだけだ。

 元々夜とシグナムのスタイルは違く、夜の剣は斬るだけの剣技。しかしシグナムは騎士としてのスタイルとレヴァンティンの他のモードがあるため純粋な剣士とは言い難い。意外と器用なのだ。それが1番の悪い要因であった。

 一芸を極めている夜からしたら、シグナムの無駄に器用貧乏は『手数で勝負するのにスピードがない』『威力が低いのに一撃で決めようとする』『スピードも無い威力も低い手数も少ない何が得意なの?』と夜は色々な毒を吐けるのだ。

 

 それを言われたシグナムは騎士兼剣士としてのプライドが砕け散り一時期剣を握れ無い事があった事も記憶に新しい(はやて達の説得で最悪の事態は避けた)

 

 それでも夜の教え方は上手く、半年でシグナムは音速一歩手前の速さで剣を振れるようになり夜との打ち合いが出来るようになった。

 

「……そろそろ…ご飯…」

 

「む?もうそんな時間か。主はやてを待たせる訳にはいかないから戻るとしよう」

 

 シグナムは打ち合いを辞め木刀を腰に収める。

 今は朝の7時なのではやてと藍が作る朝ご飯の時間である。

 

「美鈴……戻る」

 

「ヴィータ、ザフィーラ。いい加減に戻るぞ」

 

 二人は後ろの方で組手をしていた三人を呼ぶ。

 組手といっても気も使わず、純粋な身体能力のみの徒手空拳の美鈴とアイゼンで殴るヴィータ、魔力を使って身体をコーティングするザフィーラとの普通ならボコボコにされるであろう組手であるが…。

 

「もう時間ですか〜ヴィータちゃん、お腹も空きましたし夜様も呼んでいるので終わりましょう」

 

 と言いながら、平然とアイゼンを片手で止める。

 

「また片手で…ああそうだな…はやてのご飯はギガうまだからな!」

 

 少し落ち込んだが、はやてのご飯のだと思うと元気になったヴィータは美鈴に気絶させられたザフィーラを叩き起こす。

 

「…はっ!…俺は美鈴殿に」

 

「やっと起きたか!ご飯の時間だから戻るぞ」

 

「むっ!もうそんな時間か」

 

「夜様もシグナムさんも呼んでいますね〜」

 

 ザフィーラは起き上がり三人は夜とシグナムの所に向かう中、何故攻撃が通らないのか美鈴に聞く。

 

「美鈴殿に攻撃が決まらないのですが…」

 

「ホントだぜ!いつも片手で止めると自信を無くしそうだ……」

 

「お二人の威力は中々ですが真っ直ぐ過ぎますね。多分今まではそれで相手を倒せたのかもしれませんが……自分で言うのもアレですけど私達レベルだと簡単に流せます」

 

 この解答に2人はその思いがあるのか苦い顔をする。

 百戦錬磨の2人ですら美鈴達に攻撃を通すのはイメージが出来ない。かつてはベルカ最強と言われたが、今では『井の中の蛙』のことわざがよく似合う。

 

 ここで逆に美鈴はヴィータとザフィーラに問いた。前に私と戦った時どう思いましたか?と。

 その質問に2人は表情を歪めながら————恐怖を感じた…と答える。その答えに美鈴はニッコリ笑いながら、ある体験を反面の元に話す。

 

「その感情を忘れない事です。決して恐怖は恥じる事ではない。それを感じられた事は貴方達が()()()()()()。生きていれば、何か未来はあるかもしれません」

 

 その話に美鈴は例えば、と繋げる。

 

 

 ———強い意志と意思

 

 

 ———恐怖の先にある未来

 

 

 ———譲れないものが相手を上回った

 

 

「その条件が揃った時、貴方達の一撃は届くかもしれませんね♪」

 

 

 その話は2人にとって重いのに心にすっ〜と入ってくる。

 主のために!と設定されてないはずのプログラムがある少女のお陰で感情を得た。ならばどうすべきか?

 2人はどう変わっていくかは自分次第だと気付く。それが未来を繋ぐのだと分かるまで時間はまだ残されている。

 

「「………あたしは(我は)」」

 

 沈黙し難しい顔をして考えている2人を見て美鈴は空を仰いだ。

 

(あはは……何を柄にもない事を言っているのでしょうか…)

 

 今のは無意識だった。

 気付いたらこの話をしていた。

 

 美鈴は知っている

 人間の思い、想いとは時に()()()()()()()()()()()()()事を。人間に憧れた自分が一番よく分かっているから………。

 

 

 彼女は知らないだろう。

 この話が近い未来で、自身を苦しめることになるとは思うまい。

 でもそれは良い事に成るかもしれない。

 

 

 

 

 

 ありもしない事を考えながら夜達と合流し八神家に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「そう言えばはやてちゃん、クリスマスって何かしら?」

 

 八神家の朝食を食べている時、シャマルがテレビの話題に疑問を持ち他のヴォルケンリッター達も何かわからない為質問されたはやてを見る

 

「そうやなぁ…簡単に言えば祝い事やな!」

 

「祝い事ですか?具体的に何をするのですか?」

 

「ケーキを食べたりプレゼントの交換をしたりするんや」

 

「ケーキ食べれるのか!」

 

「ヴィータはそこに食いつくんか〜夜君達はクリスマスって何するん?」

 

「……何それ?」

 

「にゃははは……夜さんは世俗には疎いッスからクリスマスは引き篭もりッスね」

 

「そうだな……リア充どもが私に見せつけるようにイチャイチャしやがって 私だって主ヨルとイチャイチャしたいのに!」

 

「藍さん…貴女はまだこんな事を考えて…」

 

 約一名どす黒いオーラと欲望にまみれた考えを持つ藍に呆れる美鈴を見てはやて達は苦笑いをする。

 更に1人は興味ないと言わんばかりに無表情である。

 

「相変わらずなぁ〜………そうや!」

 

 此処ではやてがある事を思い付き声を出す。

 

「どうなさいました?主はやて」

 

「いやな、みんなでクリスマスをやろうと思ってな!シグナム達はやった事がないだろうし夜君達もどうや!」

 

「…は…やて…する…ならする」

 

「自分も夜さんが良いならやるッスよー」

 

「私は主よるとイチャイチャできば……そのままグヘヘ♪」

 

「藍さんは鼻血を出さない!あっ私は賛成ですよ」

 

 夜と眷属達も賛成し(一人はまだ欲望にまみれているが)ヴォルケンリッター達もはやてが良いなら文句は無い。

 

「私は主はやてが宜しいなら」

 

「あたしも賛成だ!美味しい物を食べたいしな」

 

「私もやって見たいわ」

 

「主はやての御心のままに」

 

 誰一人として反対案が無いので、おっしゃ!とはやては気合を込めてパーティーや!と叫ぶ。

 

「じゃあ1週間後の25日にクリスマス会や!みんな予定あけといてな」

 

 

 はやての言葉に皆は頷くのであった。

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 それから1週間後、今日は25日。

 みんなでクリスマス会をやっている。目の前の食卓には夜達が取り寄せた最高級のチキンや最近人気の翠屋のケーキを並びヴィータなどは目を輝かせている。(本当は夜が手作りをしたいと言ったが眷属達が全力で止めた)

 

「それじゃあみんなで…」

 

「「メリークリスマス(ッス」」

 

 とはやての音頭に合わせてグラスの音を出していく。

 

「おし!食べるぞ!」

 

「あまり食べ過ぎちゃいかんよ」

 

「ヴィータ……アイス…あるぞ」

 

「ほんとか!さすがヨルだぜ!」

 

 そんな子供達の会話を見ている成人組は、ホッコリしながら身体もホッコリする気満々だった。

 

「皆さん、お酒でもいかがですか?今日は無礼講と言う事で」

 

「ほう!良いではないか。気がきくな美鈴」

 

「私は頂こう」

 

「我も飲もう」

 

 美鈴は飲む人間にお酒を入れていく。その様子を見ていた飲まないレヴィとシャマルはこの先の展開に鬱になる。

 

「あの二人が飲むとロクな事にならないのに…」

 

「ホントッスね。こっちの二人も酔っ払いになると夜さんを襲うから(性的な意味で)フォローが大変なんッスよ」

 

『『はぁ………』』

 

 酔っ払いどもの相手をするとなると嫌になる二人はため息を吐く。

 

 

 

 どんちゃんと騒ぎ、暴れ、初めて経験する事に感激しながらも時は過ぎてゆく。

 楽しい時間は直ぐに過ぎるのだ。

 

「ふぁ〜…そろそろ…目が…」

 

「はやてちゃん。もう布団に行きましょか…ヴィータも眠たいでしょ」

 

 はしゃぎ過ぎて疲れ果てたのか机で眠りそうなはやてを背負いヴィータも座りながら寝落ちしそうなので寝室に誘導する。

 

「夜さんも寝ますか?」

 

「……ん……限…界」

 

 レヴィも意識を失いかけている夜をおんぶする。いつもは藍や美鈴の仕事だが今はお酒が入りナニをするか分かったもんじゃないのでレヴィが夜をはやて達の寝室に連れていく。

 

 シャマルにおんぶされているはやてはボソッと言葉が出てしまった。

 

「…また…来年もやるで…クリスマス…」

 

 

 そう呟いたはやての言葉をヴィータと夜以外は聞こえ、お酒を飲んでいたものも、その時に酔いが醒めヴォルケンリッター達と眷属達の想いが一つになる。

 

 

 守ろう!この幸せを!我等の主を!そしてまた来年も…

 

 

 クリスマスの日にそんな決意をする騎士達と従者達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ…今なら主よると…」

 

 せっかく感動的な終わり方をしたのに、あの後さらにお酒を飲んで最高にハイッ!になった藍は今は夜達が眠る寝室に忍び込もうとしていた。

 

「今は皆寝ておる。まずは主よるを確保してその後は…ふふふ」

 

 完全に変質者の考えであり色々とぶっ飛びすぎである。二階の寝室前に来るとサッと中を確認して安全を確保する。

 

「それじゃあ主よるとイチャイチャを……」

 

 ドアを開きかけた瞬間——— プスという音が聞こえ———バタッ!と廊下に藍は倒れる。

 

「やれやれ…やっぱりこの変態九尾は来たッスね。麻酔針を用意して見張っておいて正解だったッス」

 

 藍の後ろから細い筒を構えているレヴィがやれやれと手振りしながら呆れて仕方がない。

 

「今日ぐらいは自重してほしいッス。まぁ…待っている間夜さんの寝顔を見れたのは良かったッスけど」

 

 寝ている藍を引きずりながらレヴィは夜の幸せそうな寝顔を見て嬉しく思うであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方藍は朝から罰として三日間個別の部屋で仕事をする事になったそうな……。

 

「くっ、絶対諦めんからなぁ〜〜ッ!!」

 

 

 

 





【あとがき】

く、全然進まんぞ!!
今週中には闇の書編終わらせるんじゃー!!

……出来るかな(絶望)


ではでは、感想、お気に入りおなしゃす。
Twitterも絡んで下さい。暇です。(じゃあ書けよ!って言うツッコミはダメよw)


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12話

どもパッチェです



ではこの話にあう名言

お嬢ちゃんも若いからって後先考えずに行動しちゃいけないよ~ 人生ってのは長いんだから

銀魂・by長谷川さん(マダオ代表)


 

 

 

皆さんは【ニート】という言葉を知っているだろうか。

 

 

 それは現代社会による闇である。

 

 

 成人した大人達が「働いたら…負けだと思っている!」「外に出たくないでゴザル」「働く?ナニソレシラナイコトバデスナ」などと言い、親のすねをかじり生きている人達の事を世間は『ニート』と言う。

 

 

 あれれぇ〜?おかしいぞぉ〜八神家にもニートの存在がいるみたいだ………

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 〜ある日の八神家〜

 

「そう言えば、シグナム貴女いつまで家にいるの?」

 

 シャマルのこの質問にシグナムは意味が分からずに首をひねる。

 

「どう言う事だ?何故私が家にいたらダメなのだ」

 

 今のシグナムはパジャマ姿でリビングのソファーに寝転がり近くには酒の缶が転がっておりその姿を見たシャマルは頭を抱えてシグナムに、ある雑誌を渡す。

 

「これを読みなさい…」

 

「一体なんだと言うのだ…なになに『貴方の身近に仕事をせずに家でゴロゴロとしており家族などに養われている人はいませんか?」だと?これがどうした」

 

「まさしく貴女よ!」

 

「何を言うのだ!騎士たるシグナムがこの雑誌の【ニート】だとでも言うのか!」

 

「そうよ!今は私達しか居ないからハッキリと言わせてもらうわ!この家で何もしていないのは貴女だけよ!」

 

 現在、八神家にはシャマルとシグナムしか居ないため遠慮なく躊躇なく言うシャマルに困惑するシグナム。

 

「だ、だがお前も何もしてないしザフィーラやヴィータだって…」

 

「ザフィーラは最近工事現場の仕事に就いたし前々からヴィータちゃんなんか夜君の所バイトをしてヴォルケンリッターの中じゃ一番に、はやてちゃんにお金を入れてるわ。私だって料理以外の家事はしているわ料理以外!」(大事な事なので二回言いました)

 

「ダニィ!?」

 

 いつの間に!?とシグナムは驚く。

 

「いいこの家で一番お金を稼いでいるのは夜君達よ!はやてちゃんも子供なのに家事だってしているわ!はやてちゃんの話ではグレアムさんからお金を振り込んでもらっているから大丈夫なんて言っていたけど此処に私達が住んでいるで絶対足りないのよ!だから夜君達が足りない分を出してくれていたのよ!私達は今まで子供に養われていたのよ!それなのに貴女は毎日ダラダラと!!」

 

 もうシグナムは涙目である。それはシャマルに説教なのか自分の不甲斐無さなのかはわからないがさっきの自分の発言が恥ずかしいぐらいである事は分かったシグナムである。

 

「そ、それではどうすれば?」

 

「仕事を探しなさい!まずはそれからよ!」

 

 そう言われるとシグナムはシャマルから渡されたスーツ着替え身なりを整えると猫のように首ともを掴まれる。

 

「さっさと行きなさい!まるでダメダメな女、略してマダオ"

 はやてちゃんの為にも仕事先が決まるまでこの家には入れませんからね!」

 

 女に付けるべきでは無いあだ名を言われ家からつまみ出されたシグナムはシクシクと頬に伝わる雫が地面に落ちる。

 

「…流石にマダオはないだろ」(T ^ T)

 

 家の外で泣いていた。

 

 

「ママ何あれ?」

 

「こら!見ちゃいけません!!」

 

 丁度通りかかった親子の会話にシグナムは無表情で空を見上げるしかなかった。

 

 

 がんば!シグシグ!!

 

 

 

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 一人の騎士がマダオ呼ばわりしていた時、はやては図書館に来ていた。

 

「うーん…あかん届かへん」

 

 本棚の前で一緒懸命手を伸ばし本を取ろうとしている。

 

「くっ!こんな時に誰も居ないなんて」

 

 車椅子のはやては本棚が高く読みたい本が届かない為、いつもはやてと一緒行くシャマルや美鈴が取るのだが、シャマルはシグナムに話があるとかで行けず、美鈴も仕事が重なり送りしか無理で、ザフィーラは工事現場、夜と他の眷属達も仕事だしヴィータは夜達の所で食べ比べをするらしく付いてこれ無い。なので送り迎えだけは美鈴がする事になり今は一人で美鈴が来るのを待っていなければいけないのだ。

 

「どうすれば…」

 

 どうやっても届かないので腕を組み悩んでいると思いがけない事が起こった。

 

「これでいいかな」

 

「えっ!?」

 

 紫色の髪に白いヘアバンドをしている少女が取ろうとしていた本を取りはやてに渡してきた。

 いきなりだったのでビックリするが自分の代わりに取ってくれたのだからお礼はしなければと少女に頭を下げる。

 

「ありがとな!届かへんし周りに誰もいなかったから困ってたんや。私は八神はやて"よろしゅな」

 

「困ったらお互い様だから。あっ私は"月村すずか"よろしくね!はやてちゃん」

 

 お互いに自己紹介をするとはやてとすずかは本好きや同世代だからかすぐに意気投合し仲良くなる。

 

「それじゃあはやてちゃんは迎えを待っているんだね」

 

「そうや皆んな仕事でな今日は私一人やねん」

 

「でも、そのおかげではやてちゃんと友達になったんだけどね」

 

「確かにその通りや」

 

 ()()()って不思議なもんやなぁ〜とほのぼのと話していると、紅いストレートをなびかせて如何にも急いでますと言わんばかりに早歩きをしてこっちに向かってきている美鈴がはやてに声をかけた。

 

「はやてちゃん!遅くなってすいません…おや?そちらの少女はお友達ですか?」

 

「今日あったすずかちゃんや。友達になったんやで」

 

「月村すずかです。今日はやてちゃんと友達になりました。どうぞよろしくお願いします」

 

「これはご丁寧に、紅美鈴と申します」

 

 はやての紹介で自己紹介をする二人。

 

 その後三人で10分程度喋ると今の時間に気付きそろそろ帰らなぁと伝える。

 

「あっ!そろそろ夕食を作らなあかん。すずかちゃん今日の所は皆んな待っているから帰るわ。今日はありがとな」

 

「それじゃあ仕方ないね。でもはやてちゃんの家族の事今度教えてね」

 

「勿論や!私の自慢の家族達ともあって欲しいしな」

 

 次も会う約束をし二人は別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあはやてちゃん行きましょか」

 

 

 そう言うと美鈴は、はやての車椅子を押し八神家に帰る。

 

「良かったですね〜はやてちゃんにも友達ができて」

 

「なんやその私には友達おらん見たいな…」

 

「いや〜はやてちゃんは以外とコミュ障ですからね」

 

 美鈴の言葉にプンプンと怒りだすはやてだがとても幸せそうな姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方ですずかがはやてと別れた帰り車の中で運転しているメイドに今日の事を話していた。

 

「今日は楽しかった様ですねすずかお嬢様」

 

「うん!新しい友達ができたの。なのはちゃんやアリサちゃん————誠君にも紹介しなきゃね!【スノーホワイト】」

 

 《そうですね。すずか様》

 

 

 車の中ですずかの付ける指輪の機械声が響いた。

 それは嬉しい出会いであり運命を決めるあった………のかはすずかもまだ感じではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

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「あははは〜〜なんやシグナムその話は!」

 

 八神家の夕食ではやては、今日の出来事を聞いて腹を抱えて大爆笑していた。

 

 話の内容はこうだ。

 

 シグナムはあの後仕事を探しに行ったがどうやって見付けるのか知らず、困り果てたシグナムはあるポスター【困ったら交番へ】を見て本当に交番に行き「すまない仕事を探しているのだが」と言ったらしく優しいお巡りさんはシグナムの話を哀れんだ目で聞き丁度ある道場の指南を探していた場所に案内をしてもらい、最後警官から「子供に養われているのは警察としてどうかと思うからちゃんと働きなよ」と声をかけられ、剣道の先生として臨時講師になったのだという残念な今日の現実である。

 

 この話を聞いて色々とツッコミどころが満載であり皆んな哀れむ目ものや爆笑するものなど様々な反応がある。

 

「…ごめんさない貴女が此処まで常識がなかったなんて」

 

「将として最近疲れてあるのだろう…そうだと言ってくれ…」

 

「……身内として恥ずかしい」

 

「……シグ…ナム…警察……捕まる?」

 

「今度飲みに行こう…お主は疲れているのじゃ」

 

「ブハハハハ!シグナムさんちょっとそれは無いッスよ……ククッ、ブハハハハ」

 

「シグナムさん…笑えませんよ…」

 

「私は…………」

 

 

 皆から哀れみを受けたシグナムは悲しいオーラを出し不甲斐無さと皆んなの優しさが傷口にしみてさっきから涙が止まらないシグナムであった。

 

 

 

 

 

 ————閑話休題

 

 

 

 

 

 流石にシグナムが可哀相と思ったのか話題を変えるために美鈴が今日の出来事を話し出した。

 

「そう言えば!はやてちゃんに新しい友達が出来たんですよ」

 

「そうなんよ!皆んな聞いてや〜」

 

 他の皆もシグナムの話はやめようと美鈴の話に切り替わる。はやてはシグナムは の事を完全に忘れて、今日の事を素で話し始めた。

 

「…って事があったんや!みんなにもいつか紹介するでー」

 

 月村すずかの事に興味を持つ者もいたが、夜はすずか本人よりすずかが話していた内容に気になる部分があった。

 

「は…やて…温泉……行きたい…?」

 

 いきなりの温泉発言にはやては驚き何のこっちゃ?と不思議に思う。

 

「な、なんや夜君。すずかちゃん達の温泉旅行に興味を持ったんか?」

 

 そうはやての話ですずか達が温泉に行くと聞いた夜はある事を思い出していた。

 

「……うむ…あそこ…温泉…ある」

 

 はやて達は夜の言うあそこが何処かは分からないが温泉と聞いて、この話に一番に食いつかない訳がない。

 

「本当ですか!私テレビで見て一度温泉に行きたかったんですよね〜」

 

 シャマルはテレビの中でしか見た事ないので実際のやつを観たかった。

 一方で藍はそう言えば……と脳裏に浮かんできた。

 

「確かに早く来いと言われてましたね。良い機会かもしれません」

 

「でも…良いんか?夜の関係なら仕事関係じゃ…」

 

 少し遠慮がちなはやてだが、夜は"大丈夫だ…問題ない!とあの人のようにキメ顔で言った。

 

「あれの事ッスね!まぁはやてさん、今回はただのプライベートですから行きましょう」

 

「で、でもなぁ……」

 

「そうですよ!今回は温泉なので遠慮はありませんし家族なのですから甘えてください」

 

 二人の方が行きたく私情が入った説得だがここまで言われると、少しくらいはいいかな?っと思い始めて

 

「それなら…皆んなで行こか!温泉」

 

「やった!また美味しい物食べれるんだな」

 

「…私も行きたいです……心の傷を癒したい…」

 

 食欲と心身傷ついた者達とも意見が揃ったので、夜は連絡は大事だと、

 

「…来週…行く……藍…連絡して…て」

 

「分かりました。何泊の予定で」

 

「3泊……それが……()()

 

「ではその通りに……」

 

 

 

 

 —————地霊殿に連絡を

 

 

 

 

 

 

 こうして八雲家と八神家は温泉旅行……忌み嫌われた物達が住む世界"地霊殿に行く事になるのであった。

 

 

 

 

 




【あとがき】

眠い……寝る

お気に入り、感想よろしく…zzz


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13話 地霊殿


どもパッチェです。

では行きましょう。

☆☆☆☆

皆 後悔してる こんな地獄だと知ってりゃ兵士なんか選ばなかった精魂尽き果てた今…頭にあることはそればっかりだ

進撃の巨人 byジャン




 

 ———地霊殿

 

 世界の何処かにある地底に存在する旧都

 旧地獄と呼ばれ、以前地獄だった場所に建物が建っている。

 

 この地には多くの妖怪がおり地上から拒絶された者や太陽の光を浴びれない者達がこの旧都に暮らしている。

 

 そしてこの旧都には二人の支配者がいる。

 

 一人はある館の主。

 

 もう一人は………

 

 

 

 

 

 

 —————鬼である。

 

 

 

 

 

 

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 4月の下旬

 

 八雲家と八神家は温泉旅行に来ていた。

 

 はやてにとっては初めての家族旅行である。なので今日という日を楽しみにしていた。

 

 夜の一声で場所は地霊殿と言うらしい所に行く事になったのだがこの時はやては、一度夜達の会社に行った時の様にメイドや執事がいるのかと思っていて、少しメイドなどに期待をしていた。

 

 しかし現実は非情である。

 

 

 今彼女は…いや、彼女達は……

 

 

 

 

 ————鬼に囲まれていた。

 

 

 

 

 

「…なぁ夜君」

 

「……どう…した?」

 

「私達は地霊殿って言う温泉に来たはずや…なのになんで…今私達は鬼に囲まれているんや!」

 

 二メートル以上の身長を持つ鬼達がはやて達を囲んでおりヴォルケンリッター達も鬼の威圧に動けずヴィータは完全に涙目である。

 

 しかもさっきから、「おおっ!久々の客だ」「人間がいるぞ!」「子供がいるぞ!」「女子じゃ!女子じゃ!」と、言っており完全に食べられると思っているのだ。

 

 こんな時は眷属達が頼りになるのだが、はやて達がある頼みをしている為先に地霊殿の主の所に先に行っている。その為、夜がはやて達を案内をしている。

 

「よよよよよ夜君!私達は食われてしまうんか!」

 

「よよよよヨルぅー!あたし達このままじゃ…」

 

 はやてとヴィータが夜に泣きつき、シグナムとザフィーラは威圧に耐えようと頑張っており、シャマルに関してはシグナムの後ろに隠れて見ている。

 

 そんな様子の八神家だが、夜は3倍以上の背丈から鬼の眼光で見下ろされているが全く怯んでいない。

 

「…そろそろ……来る…」

 

 

 落ち着いた態度で誰かを待つ夜の姿に不思議と頭に?マークが浮かぶ。

 

「誰か来るのか?」

 

「…ん……迎えが……む!…あれ」

 

 シグナムと話をしていると鬼達の隙間から人影ならぬ鬼影が見えこちらに向かってきている。

 

「ほら!あんたらいい加減退いてやりな!!子供達が怖がっているだろ」

 

 そんな怒鳴り声に鬼達が一斉に退き一人が通れるぐらいの幅が出来ると、はやて達の目にカラフルな着物を着て右手には大きな盃を持ち額の所に星のマークが付いたツノを持つ金髪の女が夜の前に歩いてきた。

 

「久しぶりだねぇ〜夜!」

 

「…久しい…勇儀…酒臭い…」

 

「そりゃ〜私のアイデンティティだからね〜」

 

 ノリのいい友人の様に話す夜にはやて達がポカーンとしていると、勇儀は後ろにいるはやて達をじっと観た

 

「そっちにいるのがあんたの()()で良いかい?」

 

「…うむ…家族…♪」

 

 夜の返事に、勇儀はまるで母親の様な目をした。何かを懐かしむ様に遠い目だ……。

 

「…そうかい。あんたら夜達は私が案内をするからちりな!」

 

 周りで見ていた鬼達をちらしはやて達の前に行く。

 

「私は星熊勇儀。此処にいる鬼達の主…鬼の四天王をしてるよ!」

 

「私は八神はやてです。よろしくお願いします星熊さん」

 

「勇儀で良いよ!にしてもさっきまで怯えていたのに度胸があるね〜はやて!後ろの人達も名を教えて持って良いかい」

 

 勇儀は、はやてがただの少女じゃ無い事に関心し後ろのヴォルケンリッター達の名前を聞く。

 

「失礼した。私はヴォルケンリッターの将シグナムと言います。主はやてに仕える騎士です」

 

「あたしは鉄鎚の騎士ヴィータだ」

 

「湖の騎士、シャマルです」

 

「盾の守護獣ザフィーラだ」

 

 一通り自己紹介を終えると勇儀は品定めをする様にヴォルケンリッター達を見るとシグナムの前に立つ。

 

「シグナムだったね…あんた良い目をしてるね。もしかしてあれかい?」

 

「分かられますか!」

 

「ああ!あんたからはある匂いがプンプンするよ」

 

「流石夜のご友人ですね」

 

「それじゃあ後で、やろうかい…」

 

「ええ…」

 

 

『『———戦闘を!』』

 

『『『やっぱりか!』』』

 

 ガシッと手を握り血をたぎらせる。

 周囲からのツッコミも御構い無しである。

 

「…勇儀……はよ…」

 

「イカンイカン…戦闘の話になると駄目になるな!それじゃあ案内をするよ。ほれ夜乗りな」

 

「うむ……いつ…もの」

 

 勇儀は夜が肩に乗るのを確認すると案内するために歩き出す。はやて達はその後ろをついて行くのであった。

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 地上から来たはやて達は地底の風景に驚いていた。

 

「どうしたんだい?そんなキョロキョロして」

 

「地底の雰囲気に驚いて…」

 

 それもそうだろう。現代っ子のはやて達は地底の科学が使われておらずまるで江戸時代の様な光景にタイムスリップした感覚を覚える。

 

「此処地底では地上のと関係を切っているから流行とか分からんのよ」

 

 勇儀の説明にはやて達は、流行どころじゃねぇだろ!と思った事は余談である。

 

 そんな会話をして歩いていると橋の上にエルフの様に尖った耳に金色の短髪の少女が川を見ている姿がはやて達の目に映った。

 

「おっ!パルスィじゃねぇか!」

 

 勇儀は橋にいたパルスィと言う少女に声をかける。その声に気づいたのかパルスィはこちらを向いた。

 

「あら、勇儀に……夜じゃない久しぶりね」

 

 パルスィも気づいたのか勇儀と夜に挨拶をする。

 

「おー……お久……パルパル…♪」

 

「本当よ!ちゃんと来なさい!」

 

 夜とパルスィが会話をしているので、シグナムは勇儀に彼女の事を聞いた。

 

「勇儀殿。彼女は?」

 

「ああ、あいつは水橋パルスィ。嫉妬妖怪だな」

 

「嫉妬?なぁはやて嫉妬って何だ?」

 

「むぅ〜〜難しい質問や。まぁヴィータにはまだ早い問題やな」

 

 そんな話していたはやて達に、気付いたパルスィが嫉妬深い瞳ではやてを貫く。

 

「夜から聞いたわ。あなた達が夜の家族ね、私は水橋パルスィよ。あなた達仲が良さそうね…妬ましい!」

 

 ブッラクオーラを発するパルスィに顔が引き攣るがはやて達も自己紹介をした。勇儀が夜達の案内をしていると聞くと少し考え込み、

 

「私も付いて行くわ。夜と話したい事もあるし」

 

 と言い、パルスィが仲間に加わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処が地霊殿だ」

 

 そんな事もありながら、地底の中心部にある洋風の建物。この地底の支配者がいる城に辿り着くのであった。

 

「…やっぱりか夜君の関係者ってお金持ちやなぁ〜」

 

「大っきいですねー」

 

「でかいな」

 

「ふぉおおおおスゲー城だぜ城!?」

 

「ヴィータよ、落ち着け」

 

 

 それぞれの感想に、パルパルパルパルとパルスィは妬ましく思う。

 

「いちいち感想を言えるなんて…妬ましい!」

 

「それじゃあ案内は終わりだ。一旦私は戻るよ」

 

「…ん…ありがと…勇儀…」

 

 カカッと笑いながら肩から降りた夜を撫でる。

 その手は大きく暖かい、夜にとって懐かしい想いが蘇る撫で方だった。

 

「礼なんて良いよ。私と夜の仲だしな。それじゃあパルスィ行くぞ」

 

「そうね。じゃあね夜。久しぶりに会えてよかったわ」

 

「……うむ……また……()()…ね」

 

 お互いにそう言うとパルスィは帰って行き、勇儀もシグナムに一言喋るとパルスィの後を追って行った。

 

 二人の背中が見えなくなると夜は門の前に立つ。

 

「……じゃ…入る」

 

「どうやって入るん?門は閉まっているで?」

 

「……藍…僕いる事…気づいてる……だから…すぐあく」

 

 そう言うと夜の言った通り直ぐに門は開き、はやて達は夜に付いて行く。

 

 館の前まで行くと扉が開く。その中にはピンク髪の少女が待っていて夜を見ると満面の笑みで微笑む。

 

「よく来たわね。眷属達も待っているわ」

 

 そう言って夜達を出迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

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 夜達と別れた後、勇儀とパルスィは帰り道に歩きながらはやて達の感想を話していた。

 

「相変わらずパルスィは、はやて達に嫉妬してな」

 

「ふん!仲が良さそう…って言うより仲が良かったから」

 

「あははは!良いじゃないか仲が良い事は」

 

「そうだけど…妬ましいのよ!……でも夜にやっと信用出来ると言える人達ができたわね……」

 

「…そうだな…やっと……あいつら以外の」

 

 勇儀の一言をきっかけに2人は無言となる。

 お互いにそれぞれの過去を思い出し、あの光輝いていた日を脳裏に浮かべながら、今は光の当たらない道を歩んで行く。

 

「……あの子達は…夜達を救えるかしら」

 

「…ああ、救ってほしいな」

 

 情けない………。

 力を生まれながら持つ私達が()()持たない人間に祈っている事が…。

 

 嗚呼———違うだろ!

 私達は……持っているからダメ……ナンダ……だから変われない。

 

「……なぁパルスィ」

 

「…何かしら?」

 

「………何でもねぇや」

 

 2人は願うしかない。

 弟の様な存在とその人を支える従者達の幸せを………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 変われぬ今を見つめながら………

 

 

 

 

 

 

 

 




【あとがき】

最近疲れが取れないや。
肩凝り、腰の痛み、軋む身体、疲れ目。
もう歳か……(白目)成人してないのにw


感想、お気に入り、高評価をおなしゃす。
疲れが取れるかもしれませんww


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14話 地霊殿

どもパッチェです。

眠たいです。

★☆☆☆

食材にゃ…アタリもハズレもねえ。 一つ残らず自然の恵みだ! 俺にとっちゃ、食材は全部アタリなんだよ!

トリコ byトリコ


 

 ———悟り妖怪

 

 妖怪の中でも忌み嫌われる存在でもある。

 相手の心を【悟って】しまう為に、人間だけでは無く妖怪からも嫌われている。

 

 悟り妖怪は相手の心を読む事を制御できないモノ達も多い。

 

 

 だからこそ知っている。

 

 

 全てを…………

 

 人間の闇を……

 

 決して忘れる事のない罪を……そして……

 

 

 

 

 

 ———家族だった者の痛みを悟っている

 

 

 

 

 

 

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 今、はやて達はピンク髪の少女に案内をされ客間にいた。

 

「まず自己紹介でもしましょう。私は古明地さとり、悟り妖怪よ。この地霊殿の主をしているわ」

 

「八神はやてです。本日はお招きいただきありがとうございます」

 

 しっかりと挨拶をするはやてにさとりは関心し、後ろで控えているヴォルケンリッター達の紹介も終える。

 

「それじゃあまず…そうねお互いに質問会でもしましょうか。夜達もいないし聞きたい事もあるでしょう」

 

 そう言うさとりだが、実際は夜達がいないのは、はやて達を見極める為だ。そのために藍にたのんで八神家達と対面しているのだ。本当にこの者達に()()()良いのか

 

 そんな考えを持っているさとりにヴィータは一つの疑問を持っていた。

 

「なぁその胸元にある目は何なんだ?」

 

「これですか…まぁどうせ説明は必要なので丁度良いでしょう」

 

 この時さとりはこの質問を利用してはやて達の心を読もうとしていた。

 

「これは"第三の目"と言いまして、この目を使って悟り妖怪は心を読むのですよ」

 

 

『『ッ!?』』

 

(さぁ、私の事を聞いたらどう思うか読ませてもらいますよ)

 

 

 驚いているはやて達の心を読もうとしているさとりは、夜達が連れてきた人間とは言えに人の心に良い思い出がないため、普通の人間と所詮一緒だろうと思っていた。

 

 

 普通の人間であれば……

 

 

(心を読めるんか!なんて羨ましい力や!この力があれば夜君の気持ちが……(止まらない欲望)

 

(何!はやてのアイスを食べた事がバレてしまう…)

 

(なっ!主はやてに、また警官殿のお世話になった事が知られてしまう………)

 

(ヤバイわね…。はやてちゃんに夜君を抱きしめていた事がバレたら嫉妬の嵐ね)

 

(ふむ。我にやましい事など無いな)

 

(…………はっ?)

 

 と呆れながら(・Д・)この様な顔になり、はやて達のくだらない心にさとりの思考が停止しかける。

 

 さとり自身予想外の答えだったのでもう一度深く心を読むと中々複雑な欲だった。

 

 はやては、夜に対して色々拗らせており思考が完全にショタコンの考えであり藍といい勝負をしている。

 

 ヴィータは、はやての楽しみにしていたアイス食べ最近ドキドキしていた。

 

 シグナムに関しては、夜中に公園で剣を振っていたところを巡回中の警官見られ銃刀法違反で厳重注意を受けていた為、はやての騎士として笑えないのである。

 

 シャマルは八神家第二の夜に萌えた被害者で、まだ初期段階の思考だが、そのうち藍達と同じ思考になると思われる。

 

 ザフィーラに関しては何もなし!(作者が何もネタが無かったなんて言えない)

 

 ある意味危険な心を読んださとりは過去にも同じ事があったようなデジャヴを感じる。

 

「ふふふ……あなた達面白いわね!」

 

 急に笑いだすさとりに、はやて達は何事かと不思議がる人やムッとする思う者もいた。

 

「何が可笑しいんだよ!」

 

「ごめんなさいね…あなた達の考えている事が面白くて(笑」

 

『『!?』』

 

「ななななな何の事かしら?私は何も考えていないわよ」

 

 あくまで何もやましいことは無いと言い張るシャマルに、さとりは少しの悪戯を仕掛ける。

 

「…夜…抱きしめ……この言葉に記憶があるでょう」

 

「ギクッ!」

 

 あからまさに態度と顔に出すシャマルに、はやては直ぐ様突っ込む。

 

「シャマル…夜君に何を…したんや?」

 

「はやてちゃん落ち着きましょう!何もしてないわ。ただ夜君に萌えただけよ」

 

 パルスィ並みの嫉妬オーラを出すはやてにビビりボロを出すシャマルの様子を見ていたシグナム達は、

 

(ヤバイ…これマジでバレてる…)

 

 と危機感を持った。

 

「さとり殿、そろそろ部屋を案内をしてもらってもよろしいでしょうか?主はやても長旅でお疲れでしょうから」

 

「シグナムの言うとうりだ!ヨルとも早く遊びたいしな!」

 

「うむ!主はやてもそろそろ疲労がくるだろう」

 

 全力で話を変える三人に(約一人テンパりすぎて意味不明の事を言っているが)慈悲深いさとりはやれやれと思い話を進める。

 

「そうね。そろそろペット達もくるだろうし…」

 

 ペット?と三人は首をひねっているとバンッと音がした。

 

「「さとり様。準備が整いました。」」

 

 ドアが開き、ゴスロリの様な服を着た赤髪を三つ編みし猫の尻尾が二本生えている少女と黒髪を緑のリボンで纏め背中に大きな漆黒の翼を持ち右手が多角柱状の物体で覆われている少女が入ってきた。

 

「やっと終わったのね。まぁ良いわ…お客様の前よ自己紹介をしなさいお燐、お空」

 

 そう言われると二人ははやて達の前に行く。

 

「あたいは、火焔猫燐。さとり様のペットで火車だよ」

 

「うにゅ〜、私は霊鳥路空だよ〜八咫烏だよ、よろしくね〜〜」

 

「二人は此処に居る時のお世話約よ。こき使っていいからね」

 

 そんな紹介をしているとお空が入ってきたドアから夜が顔を出してさとりを呼んだ。

 

「……さとり……疲れた…」

 

「ごめんなさい、ちょっと話し込んでね。はやてさん達もお疲れでしょうから地霊殿自慢の温泉に案内するわ」

 

 そう言うとさとりは、お燐にはやて達を温泉まで案内を命令し夜と眷属達も途中で合流して温泉に向かう八神家と八雲家であった。

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 〜〜温泉〜〜

 

 それは好きな人からすれば最高の時間であり疲れを癒す場所である。

(作者は温泉が苦手です。)

 

 そんな温泉に入っている女子達は、幸福ぅ〜〜とばかりに背を伸ばす。

 

「ふぅ〜〜〜最高やな〜〜〜」

 

「そうですね〜〜疲れが飛んでいきますねぇ〜〜」

 

「お前に飛んでいく疲れなど無い!」

 

「サボリ魔寝坊助の美鈴さんが疲れがあるなんて初耳ッス」

 

「皆さん!私にも疲れはあります!」

 

「ほう!いつも寝ている貴様に何処に疲れる要素があるのか教えて欲しいの」

 

「うっ…!?」

 

 美鈴は苦い顔をするが藍は冗談だと言って気を休める。そんな楽しい?会話をする者。シャマルやヴィータは2人でゴシゴシしている。

 

「ヴィータちゃん何処か痒くない?」

 

「ああ〜〜大丈夫だぞ〜」

 

 洗いっこをする二人。

 

「なんと素晴らしい温泉。あぁ!心の傷が癒される」

 

 風呂好きなシグナムは温泉に感動し色々あったニートせい……ゴホンゴホンもとい現代生活の疲れを癒している。

 

「それにしても、良い所やなぁ〜」

 

『そうでしょうそうでしょう』

 

「そうですね〜主はやて。心が休まります」

 

 

『休まる♪休まる♪」

 

「染みるわ〜」

 

『染みる染みる☆』

 

「あははは〜シャマルババくさいで〜」

 

『ババアババアw』

 

「誰がババアですか!」

 

『『…………ん?』』

 

 何かがおかしい。

 

「あれ?さっきから誰や?ちょこちょこ喋っているのわ?ヴィータか?」

 

「へ?あたしは喋ってないぞ?」

 

 声質的には少女の声なのでシグナムとシャマルの線はないだろうとはやては眷属達に聞く。

 

「そうか…藍さん達か?」

 

「私達でも無いッスよ」

 

「確かに聴き慣れる声がするな」

 

「本当ですね……あっ!」

 

 美鈴は急に大声を出すと、はぁ……と溜息を吐き額に手を当て呆れ返った表情が伺える。

 

「な、なんや美鈴どうしたん?」

 

 はやての声に無言で美鈴は全員に右を向く様に仕草する。皆が右を向くと———

 

「ありゃ〜バレちゃた☆流石美鈴だね♪」

 

 そこには緑髪の少女がいた。

 

『うおっ!』

 

 何処にも居なかったのにいきなりの登場に美鈴以外の人達は驚く。

 

「…相変わらず心臓に悪い登場ですね。こいしさん」

 

 こいしと言われた少女はニコニコしながら美鈴の膝の上に座る。

 

「だ、誰なんや?」

 

「忍者もびっくりの彼女は、此処地霊殿の主さとりさんの妹さん、古明地こいしさんッスね」

 

 妹!?とまたびっくりするはやて達。

 

「そうだよ〜こいしだよ〜。よろしくね♪」

 

 そう言うと急にいなくなるこいし。

 

「おおおおおおい!消えたぞ!幽霊か」

 

 幽霊と言う言葉にビクつくはやて達。

 

「はぁー…相変わらず自由な奴じゃの」

 

「いきなり出てくるッスから」

 

「お、おいお前達、何をそんなにほのぼのしている消えたんだぞ!」

 

「おっ!なんじゃビビっておるのか?天下の騎士様がの〜」

 

「ビビビビビビビっでは無い!ただ急に消えたから…」

 

「藍さん…大人気ないですよ」

 

「スマンスマン。良い反応をしてな……ゴホン、ではあいつの事を教えよう。こいしはな無意識を操る事が出来てな、その力が働いている時私達はこいしを認識出来ないのじゃよ」

 

「じゃあ何で美鈴は気付いたんだ?」

 

「それはですね!私の気を操る能力でこいしさんの気を感じたからです。無意識は気付かれないだけで感じれば良いですから」

 

「何が違うのかしら?」

 

「要するに、視界に入って気付く!ではなく、そのにある存在を見つけたと言うことです」

 

『『なるほど!』』

 

 

 美鈴の説明に納得しながら、皆は残りの時間を楽しんだ。女子というものは温泉などが好きなのだ。

 

 

 

 

 

 一方男湯〜〜

 

 

「……うぅ♪……いい湯…♪」

 

「ああ……気持ちいいな」

 

 男二人は静かに温泉を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……久しぶり…夜くん(ボソっ」

 

 緑髪の少女が見えない様に背後で、夜の姿を哀しみ苦しみながら……見ていた。

 

 

 

 

 

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 皆が温泉から上がると夕食の時間だ。

 

 さとり達も一緒に地霊殿自慢の料理を食べながらはやて達は食事の時間を楽しんでいた。その姿の中にはお空やお燐なども姿も混じっていた。

 

「それじゃあこの料理はお燐さんが作っているんですか!」

 

「そうだよ。あたい達の仕事は色々あるけど一番は家事だからね」

 

「あー、そう言えば…さとりさんも家事が出来ない組でしたね〜」

 

「そうは見えないのですが?」

 

 さとりを出来る人に見えいたシグナムは意外だ、と思ってしまい、お燐の心のトラウマの扉を開かせた。

 

「そうだね…さとり様は家事が子供より出来ないよ……掃除をすれば壊れていく家電に家具たち、洗濯機を回せば泡だらけになる部屋、そして…一番ヤバいは料理!何故か緑色の玉子焼き!食べれば終わらない悲鳴が聞こえ、意識が戻らない仲間たち!……ほんと誰に似たんだか……」

 

「もういい!もう思い出すな!」

 

 

 発狂しだすお燐を宥める同じ犠牲者の藍。はやて達も夜の料理を知っているので共感する。というか似ている人物がすぐに思い浮かぶ。

 

「……燐さんの前では料理の話は禁止や…」

 

「…それがいいですね」

 

「……もう何な地獄は嫌ですから」

 

 彼等は二度と地獄を見ない為にこの話を封印した。簡単な意味の無い封印だが。

 

 

 

 他の面々も仲良く?楽しんでいる。

 

「おい!レヴィ。それはあたしの肉だぞ!」

 

「あっ!私のお肉ゥ〜!」

 

「ふふふ!取ったもんが勝ちッスよ」

 

「静かに食えんのかお前達は……」

 

(精神が)子供の三人は、肉の取り合いをしており、ザフィーラ がそれを鎮める。

 

 

「夜、美味しいですか?」

 

「…うむ…美味…なり」

 

「あぁ!癒されるわぁ〜」

 

 シャマルが夜を膝に乗せてさとりが夜に食べさせている。

 此処にいる3人は、お燐の話は聞こえておらず好き勝手にしている。

 

 料理と言う名の兵器を作る夜、シャマル、さとりが揃っておりこの三人は恐ろしい会話をしていた。

 

「やはりお燐の料理は美味しいですね」

 

「本当に美味しいですね。さとりさんは料理をしないのですか?」

 

「私自身したいのですが!皆が『さとり様は料理などをしてはいけません!そう言う仕事は私たちの仕事です!』と言ってさせてくれないのですよ」(当たり前です)

 

「さとりさんもですか!私の所も毒物と言って料理をさせてくれないのですよ!私だって出来るのに!」(あれは料理と言いません)

 

「……シャマル…まだ…まだ…」

 

「どう言うことですか?」

 

 

「シャマル……料理は皆んなが……気絶するだけ……美鈴が『料理は血を吐くぐらいが丁度いいんですよ』って言ってた……だからシャマル……食べた人……血を吐くぐらいの……料理を作る……」(そんな事はありません!)

 

「なるほど!血を吐いて死を魅せるぐらいですね!」(そこまで言ってません)

 

「……シャマルさん。明日この三人で料理を作りませんか?」

 

「良いですね!皆んなに私達が出来ることを証明させましょう!」

 

「……僕も……する」

 

 ノリノリの3人はこの時、姫を殺す前の釜を煮詰める魔女の嗤いを思い浮かべら様な表情だったという。

 

「決まりですね。では明日の朝からしましょう」

 

 思わず書いている作者もツッコミをしてしまう内容を話している三人は明日の朝から料理を作る事を約束。この話を誰も聞いてなく止める者はいなかった。

 

 

 こうして1泊目は終わった。

 

 

 

 

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 地底には過激な者はが多くさとりを主と認めて無い者がいる為、古明地さとりは常に命を狙われている。

 

 その為地霊殿には罠が大量に仕掛けられている。

 

 

 ———ビィイイイイイイイイイイイイイ!!

 

 

「な、何や!?」

 

「な、なんだ?」

 

 朝から大きな音が鳴り響き、ビックリしたはやてとヴィータが起き上がる。何事かと音を聞きつけてシグナムとザフィーラも駆けつけてくる。

 

「主はやて!ご無事ですか!?」

 

「…大丈夫や。何が会ったんや?」

 

「我々も何が何だか…」

 

 皆んな何が起こったかな分からないので警戒していると大汗をかいたお燐が部屋に入ってきた。

 

「皆んな大丈夫かい?」

 

「ええ、大丈夫です。お燐殿一体何が?」

 

「どうやら罠が発動したようだね」

 

「「罠?」」

 

「さとり様は結構狙われてね…今お空が確認しに行っているからちょっと待ってて」

 

 

 それから2分後、バタバタを音を立ててお空が叫びながらやってきた。

 

「お燐ぅーーーーーー大変だ!罠が夜が居る部屋に仕掛けた所が発動してる!!」

 

『『なんだってッ!!?』』

 

 お燐はすぐに部屋を出て、話を聞いたはやて達もお燐に着いて行く。夜の部屋と書かれた部屋を勢いよく開く。

 

「夜!大丈夫かい」

 

『『『夜(君)!』』』

 

 6人が部屋に入るとそこには信じ難し光景が広がっていた。

 

「くっ!貴様らいい加減助けろ!」

 

「何が夜さんを襲おうとして『助けろ』ッスか!」

 

「…藍さん…頭…冷やしましょうか?」

 

 網に掛かっている藍に某将来の魔王のセリフを言う美鈴と木刀で叩きまくるレヴィ。

 

 

『『『…………へ?』』』(・Д・)

 

 この光景に今来た者は目を点にして見ていた。

 この後はやて達に気付いた藍が何でもするからと言いなんとか助けてもらう(何でもするとは言ってない)

 

「ふぅ〜、助かったぞ!」

 

「いい加減自重しろよ!」

 

「ヴィータの言うとうりだ!後始末をするこっちの身にもなれ」

 

「何を言うかっ!愛している主を襲って何が悪い!自重?しらんな!そんな言葉覚えてないわ!」

 

「覚えなさい!はやてちゃんも何が言ってやってくださいよ!」

 

「あはは……少しは抑えようなぁ(言えない…私も行こうとしてたなんて…)」

 

 すでに【変態の汚名をうける勇気!】レベルの思考を持つはやては此処である事に気付く。

 

「あれ?夜君は?」

 

 シグナムとザフィーラもそう言えばといない者に気づく、

 

「シャマルはどこだ?ザフィーラは知ってるか?」

 

「知らないな?」

 

「そう言えばさとり様も部屋にいなかった様な…お空知ってる?」

 

「うんうん(・Д・)ノ知らない」

 

 

((あれ?何処にいるんだ?))

 

 誰も知らないので皆んな藍の方を向く。

 

「言っておくが私も知らないぞ!来た時には主ヨルはいなくて思わず『何故…何故いないのですかぁー!主ぃーーーーーー!』と叫んで美鈴にバレたのだから」(・ω・`)ドヤ

 

「何ドヤってるんッスか!」

 

 また木刀で叩かれる藍は無視して皆は考える。

 何故三人はいないのか?何かあったのだろうか?と、でも三人の実力から考えるとそれは無い。では何処に?

 

「お燐さん、今何時ッスか?」

 

「えっ?急にどうしたんだい?まぁ今は『7時』だけど…」

 

「いやッスね、この時間だったら三人で……【朝食】を作ってたりして!と思いまして」

 

『『…………』』

 

 

 空気が凍った。ゾクゾクと背筋が寒気を帯びる。

 

「なななななななにを言っている!そんな訳…」

 

「そそそそそそうですよ!そんな冗談!笑えないですよ〜」

 

「そ、そうやで〜冗談はいかんで」

 

「そんな訳なかろぅー」

 

「ニャにを言ってるんだい?馬鹿らしいニャ」

 

「そ…そうッスよね。そんな事無いッスよね」

 

 アハハと、棒読みで笑うが、ヴィータとお空が青ざめているのが分かるぐらいの顔をしているのでこの場の誰もは嫌な予感がする。

 

「………一応聞くで、どうしたんや?」

 

「あたしな昨日、夜達の近くに居たんだ……その時……今日ご飯を作るって、言ってた様な…」

 

「アハハ(棒)ナニヲイッテイルノデスカ」

 

「…私も聞こえた様な気がする」

 

『『…………』』

 

 ダッ!、全員無言で厨房にダッシュで急ぐ!彼等の身体がとてつもない力を発揮しいつもの二倍の速度で走る。皆の頭から警報が鳴り響き身体と心が急げ!このままじゃ死ぬぞ!言っているのだ。

 彼等はだからこそ急ぐ。あの地獄を見ない為に、

 

 

 

 

 

 

 しかし…時間は………無かった。

 

 

 

 

「あらやっと起きたのね!喜びなさい!私達が朝食を作ったわよ」

 

『『お………』』

 

「お?」

 

 

『『終わった……』』(T ^ T)

 

 土下座の様な格好をし泣き出す。

 それをシャマルは、何を勘違いしたのか夜とさとりを呼んで目の前の死刑囚達を見せる。

 

「あら!皆んなが泣いて喜んでいるわよ!夜君、さとりさん」(違います)

 

「……嬉しい……涙…」(全く違います)

 

「えぇ!私にも心を読まずともみんなの嬉しい気持ちが伝わってくるわ」(心を読みなさい)

 

 天然の三人は皆んなが喜んでいると思い全員を席に付かせる。

 

(おい!?あいつら私達が喜んでいると思っているぞ!)

 

(三人共天然ッスから…おかしな風に捉えているッスね…)

 

(そんな事より!あの料理だけで人を殺せる三人が手を組んだんですよ!)

 

(夜もヤバイのは知ってるけど、シャマルもヤバイかい?)

 

(あぁ!一番の被害者の我が断言しよう!シャマルの料理は食べれば胃の機能が1週間停止すると!)

 

(お前が一番食ってたもんな…)

 

(…そうか……死んじゃうね……お空達)

 

(まだ希望を捨てるな!もしかしたら意識不明で免れるかもしれないのだ!)

 

(それもう死んでるのと同じや)

 

 生きる希望をなくす者たちに容赦無く地獄を見せにかかる三人。

 

「ハイ!これが今日の朝食よ!」

 

 やはり蓋のついた皿を持ってくるシャマル。

 

「今日のメニューはまだ朝なので蒸したジャガイモにしました。シンプルでしたが難しい料理でしたね」

 

 はやて達は蒸したジャガイモと聞くとあれ?と意外なものだと不安感から少し解放させた。

 

(何や話を聞く限りは普通やなぁ!)

 

(そうッスね!今までより大丈夫そうッス)

 

(まて!そんな普通な訳が無い!調理方法が何かあるはずだ)

 

(一理あるな!私が聞こう)

 

(頼んだぞ!将よ)

 

 やっぱり心配なのでシグナムがコホンと注目を集めて、被害者代表としてシャマルに調理方法を確認した。

 

「シャマルよ、ちょっといいか?」

 

「何かしら?」

 

「一体どうやって作ったのだ?普通に難しいと言っていたが…ジャガイモを蒸すだけだろ?」

 

 それの何処が難しいのか?とある程度は家事ができるシグナムからすれば疑問でしかない。

 その質問にシャマルは拳を握りしめ強く語った。

 

「えぇ!難しかったわ……ジャガイモが逃げ出すの!捕まえて鍋に入れる…疲れたわね」

 

『『…ジャガイモが………逃げ出す…?』』

 

 ———意味不明過ぎた。

 

 シャマルの言葉に合わせる様にさとりと夜も文句を言っていく。

 

「全くです。鍋に入れればギャーギャーと泣き出しますしね」

 

「……イラついた…」

 

((それ……ジャガイモじゃ…無いだろう))

 

 心が一つになった瞬間である。

 

 さとりは能力を掌握している1人なので皆の心の声は聞こえていない。

 

(なぁはやて…ジャガイモって逃げ出すのか?)

 

(…私は見た事も聞いた事ないなぁ〜)

 

(あたいも知らないね…てか!ジャガイモが悲鳴をあげるって何だい?)

 

 命懸け過ぎて目で喋る事ができる様になった為に謎の問題にツッコンで行く。

 

 その中でも地獄に叩き落としにかかる夜。

 

「藍…食べる……最近…奇行…多くなった…。……疲れてる…」

 

 それは元々だ、というツッコミは今はしない。藍を犠牲にする為に。

 

「主………(多分命が飛びます…)

 

「藍さん……さぁ食べましょう(さよなら藍さん…貴女の事は忘れません…三秒くらい)

 

「早く逝きましょうッス!」

 

「お前ら……字がおかしくないか?」

 

『『そんな事はない!』』

 

 完全に藍をぎせ……ゲフンゲフン生贄に捧げる二人。その姿は自分が助かりたいと願う醜い姿である。

 

(必死やな二人共)

 

(まず様子を見たいのでょう)

 

 自分達に被害がないと分かると解説モードに入るはやてとシグナム。ここまで来たら逃げられないと藍は覚悟を決める。

 

「ふぅー、いざ南無三」

 

 

 そう言って蓋を取ると………

 

「ふぅ!初めましてだなカラ松ジャガイモガールズ!孤独と静寂のジャガイモの登場だ」

 

 ——カパッ

 

 蓋を取るとグラサンをかけた厨二のジャガイモがいた為、すぐに蓋を閉める藍。

 

「あ、主よる…?…あれは…何ですか?」

 

「…ジャガイモ…だよ」

 

 さとりとシャマル以外の人達は考える、グラサン掛けた厨二のジャガイモって何?と、あれは食べ物なのか?と疑問は尽きない。

 

 藍は幻だと思ってもう一度取るが何も変わらない。

 

「やれやれ…すぐに閉めるとは勿体無い……俺を食べて見ないか☆」

 

 ———かパッ

 

「私の目がおかしいのでしょうか?」

 

「いや……あたいも見えたよ、さとり様あれは何ですか?」

 

「何もジャガイモでしょ?」

 

「いやいやいやいや!ジャガイモは喋ることはないですよ!?」

 

「お燐……ジャガイモは喋るでしょう。ねぇシャマルさん、夜」

 

 さとりの言葉に肯定をする二人。

 その不思議な光景ははやての脳内を侵食していく。

 

(もしかして今までのジャガイモって喋っとたんかな?)

 

 と思いだしたはやて。

 

「主はやて…バカな事は考えないでくださいよ」

 

「な、ナニヲイッテイルノデスカ?」

 

「はやて…カタコトだぞ」

 

 皆んなの頭がおかしくなる中、はよ食べろと夜は藍に対して催促する。

 

「……藍…冷める…はよ」

 

「主ヨル…分かりました。この藍逝きます」

 

 何かおかしい気がするが覚悟を決めてカラ松ジャガイモを食べる。

 

 ——パク、ゴクッ!

 

 藍は食べたが口の中で逃げ回るカラジャガに苦戦する。

 

「ペルプ!誰か!食べられる!ペルプミー」

 

 食べ物?なのに食べられるって何だよ!とツッコミたくなるはやて。

 噛むたびに助けを呼ぶカラ松。藍は何とも言えない思いになる。

 

「あれ?何ともないの」

 

 全てを飲み込むと何も起きない事に疑問を持つ藍。

 

「主よる食べれました!初めて血を吐かずに食べれました!」

 

「……じゃあ行く」

 

「…?何処にですか?」

 

 この時、何故か周囲に誰もいない。急に頬を赤らめ着ている着物を少しだけ裸させる夜に藍は何も疑問を持ってなかった。

 

「藍が言ったんだよ…食べれたら…私を女にしてくれ、って」

 

「………ふぁ!?マジですか!?」

 

「……いこ?」

 

 藍は思う、まるで夢見たいな出来事だと……

 

 

 

 

「アハハハハハ♪主ヨルゥゥゥゥゥゥゥ……♪」

 

 

 

 ……そう【夢】見たいと

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜現実〜〜

 

 

 

 

 

「藍さん!藍さん!起きてください!……ヤバイ意識がない…」

 

「藍さん!起きないとヤバイッスよ!」

 

 藍はカラ松を食べるとダンダン顔色が悪くなり、やはり血を吐き倒れてしまったのだ。

 

 ———これが現実である。

 

「シャマル……これ…吐血…料理」(死にかけてます)

 

「夜君の言っている事が分かったわ!本当に美味しい物は血を吐くのね!これが天に昇るほどうまい!って事なのね」(本当に天に逝きそうです)

 

「シャマル…一体何をしたのだ?」

 

「何って、夜君とさとりさんが料理は血を吐かせる物たと教えてもらったから、蒸しす時に幻覚が見えるキノコを入れただけよ」(絶対真似しないでください!藍様は特別な訓練を受けています)

 

 衝撃の発言に青ざめてしまうはやて達。一応注意書きをしてゆく作者!!

 

「…終わった…ね」

 

「…そうだなぁ」

 

「…サヨウナラッす…楽しい現世」

 

「イヤやまだ死にたくない!」

 

 目の前の光景に取り乱す者たち。

 そんな事は御構い無しにさとり達は料理と書いて兵器と読む、物質を机に並べて行く。

 

「シャマルさん。これが料理よ!」(ただの殺人です)

 

「これが…料理」(違います)

 

「さぁ他の皆さんにも食べてもらいましょう」

 

 

『『ビクッ!』』

 

「……これ…皆の」

 

 夜は生きている者たちの前にカラ松ジャガイモを置く。

 

「じゃあ食べてくださいね!」

 

 躊躇っていた者たちの口に無理やり食わせるシャマル。

 

 

『『ギャアアアアアアアアア…………ケポッ!?』』

 

 

 こうして地霊殿2日目は皆んなが意識不明の重体で終えた。

 

 

 この後、丁度遊びに来た勇儀とパルスィのおかげで何とか生き残れた彼等。

 はやてに至っては本の管理者が頑張りました!

 

 

「お前達は馬鹿ァァァァ!!!」

 

 因みに兵器を作った三人は、皆んなが起きるまで勇儀に正座させられました。

 

 

 

 

 




【あとがき】

今日の報告無し!!


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15話 地霊殿

どもパッチェです。

では行ってみよう。

☆☆☆☆

実現させようと思って動けば、その覚悟が周りを動かすのじゃ。そして現実になるのじゃ。世の中はそうやってできておるのじゃ

テイルズシリーズ byパティ・フルール



 

 

 

 地獄の2日目が終わり3日目の朝の事。

 はやては早く起きていた。

 

「…メッチャ頭が痛いわー」

 

 夜達の料理を食べて死にかけた為に、謎の頭痛がしているはやては、一人で車椅子を走らせある場所に向かっていた。

 いつもはヴォルケンリッター達か眷属達の誰かが押してられるのだが生憎今はみんなベットの上で臨死体験をしており、起き上がれない状態なのだ。

 

「確か……こっちやったはずや」

 

 ある場所に向かっていたはやてはドアの前で、深呼吸をして気合を入れるとノックをして部屋に入っていく。

 

「朝早くからすいません。お話があるので宜しいでしょうか?さとりさん」

 

 薄暗い部屋で本を読んでいたさとりはいきなりの訪問に驚いていたが、パタリと栞を挟んで本を置くとはやてを真っ直ぐに見る。

 

「えぇ、良いですよ。はやてさん」

 

 ニッコリと微笑むさとりだった。

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

「それで話とは何かしら?」

 

 さとりは、朝のティータイムとして紅茶を飲みながら、はやての話を聞く。

 

「…藍さんから()()()は聞きましたか?」

 

「……聞いたわ」

 

 

 ティーカップを音を立てずに置き、はやてが言っている『あの話』を思い出すさとりは苦い顔をしている。

 

「…本当にする気なの?私は反対よ」

 

 あの話にさとりは反対の声を上げる。

 

「…さとりさんの言うことも分かってます。でも私はしたいんです!」

 

「それがあの子為に成らず悲しんでも?」

 

 こう言うさとりだが、本音を言えば『あの話』を受けたいと思っていた。しかしさとりにもある思いがある為、簡単にはやての話を認めれなかった。

 

「違います!悲しませる為にするんじゃ無い……知ってもらうためにするんです!」

 

 はやては本気である。本気で夜の事を思って言っている。

 そんな迷いの無いはやての姿に、さとりは思わず目を逸らしてしまう。あの日の誰かと重なってしまい。

 

「…分かりました。提案を受けましょう」

 

「本当ですか!」

 

 ただし!と、付け加え

 

「絶対に成功させなさい!これが条件よ」

 

 折れたさとりはある意味当たり前であり、不可能に近い条件を出す。

 

「ハイ!もちろんです。絶対にしてみせます。()()ですから!!」

 

「ッ!?………そう…なら良いわ」

 

「それじゃあ失礼しました」

 

 ———バタン

 

「…………はぁ」

 

 一礼をして部屋から出て行くはやての後ろ姿を見てさとりは何とも言えない表情になってしまう。

 

 はやての本気の気持ちに押されてしまいこの話を受けたのは良かったのか?と判断に不安も残る。

 しかしはやての言った『約束』という言葉が頭から離れてくれない。

 

「何で……今更に………なって…」

 

 震える声で呟いた時さとりは………

 

 

 

 

 

 

 

 ————泣いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 夜は、今はやてと二人で地底の名所巡りをしていた。

 

「此処が地底の動物園」

 

「どんなのがおるんや?」

 

 夜は車椅子を押して中に入ると立ち入り禁止と書かれた巨大な森の中に入って行く。

 

「まずは……ATM(アカ○トロム)」

 

 グオオオオオオオオオオと鳴く飛竜種、通称『覇王』は夜の強大な力を感じて早く帰ってくれという思いで鳴いていた。

 

「…でかいなぁー(白目)」

 

「…偶に……資金源……する」

 

『ギャアアアアアアアッ!?』

 

 あぁ…とはやての可哀想なものを見る目にATMは泣き叫ぶのであった。

 次にと夜は牢屋の前にはやてを連れて行く。

 

「……喋るゴリラ(銀魂、近藤さん)

 

「あっ!そこのお嬢さん助けて!」。゚(゚´Д`゚)゚。

 

 小汚そうな男が片手にバナナを持っているので、一瞬はやてもゴリラに見えてしまう。しかしそこはツッコミのエセ関西人、しっかりとツッコンでいく。

 

「…夜君…あれ人間じゃ…しかも助けって…」

 

「はやて…あれはゴリラ」(・ω・)ノ

 

「…そうか」

 

 やはり夜の言うことに間違いはないようだ。

 

「待って!人間だから!ゴリラじゃ無いから!」

 

「次行……く」

 

「……行こか」

 

 はやては考えるのをやめた。

 

 

「……これヅラ(銀魂、桂小太郎)

 

「むっ!ヅラじゃ無い桂だ!」

 

「何科なん?」

 

「ヅラ……科」

 

「だからヅラじゃ無い桂だ!」

 

「珍しいのばっかやなぁ」

 

 

 「ん!流石さとり……珍しい……動物ばっか」

 

 その他にも20世紀のロボットやニコニコ這い寄る混沌など観てまわったはやては一言、動物園ってこんなんやったか?と思ったのは内心に仕舞う。

 

 この後もパルスィが一年中パルパル言っている橋を渡ったり勇儀が作ったクレーターを観に行ったりした。

 

 時間も夕方、地霊殿の帰り道。

 

「いや〜面白かったわ〜〜」

 

「うむ……それなら…良かった…でも…何で急に…地底…見たい…言った…の?」

 

 夜の言葉にはやては少し照れながらある思いとは別の、ただ一緒に居たい想いがあったことを話す。

 

「いやな…その…最近夜君と二人きりはになる事がなかったやん…だから…二人で地底を周りかったんや…迷惑やったか?」

 

「……別に……僕もはやて…一緒…楽しい…」

 

 ぷぃっと横を向いた夜の顔は、地底なのに紅く夕暮れの日を浴びたように染まっていた。

 

「そ、そうか!ほなら嬉しいわ」

 

 それに気づかないはやても、頬を赤く染め夜に車椅子を押されながら地霊殿に向かった。

 

 

 

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 夜とはやてが地霊殿に帰ると、物事が一切せず何も気配を感じない。

 

「……みんな…どこ?」

 

「みんなおらへんな」

 

 さとりの仕事室や客間を見るも誰もいなく夜とはやては探しまわる。探しても探してもいない。シッ〜〜ンと音がしないのは不気味にも思える。

 

 またいなくなるの?と夜の脳裏に焼き付いて離れない。

 

「……皆……いない…」

 

 目の光が消え落ち込み出す夜の姿にこれ以上は不味いと、はやては慌てて、予定を早める。

 

「まだ食堂の方を見てないからそこにおるかもしれへん!今から行こ」

 

 夜は、はやての言ったとうり食堂に向かいドアを開けると、光が目に入り背けた瞬間、夜の耳に大きな音が聴こえていた。

 

 ————パンパンッ!

 

『夜(君、様、さん)誕生日おめでとう!』

 

 

「………ふぇ…?」

 

 レヴィとヴィータがクラッカーを鳴らし、はやてを除いた全員で夜の誕生日を祝う。いきなりの事に夜はマヌケな声を出してしまった。

 

「……え…え…なに…」

 

 珍しく夜が驚き動揺している。

 

「夜君誕生日が4月25日って言ったやろ。だから今日4月25日に誕生日会を開こう!って思ったんや」

 

「元々から話はあったのですが、地霊殿旅行と時期が重なってしまったのでいっその事、地霊殿でやろうと言う話になりまして」

 

「はやてさん私に頭を下げてきたんですよ。『夜君の為にって!』言ってきたので私も協力させて頂きました」

 

 藍とさとりの話にいや〜そんな事ないですよ〜!と横で照れるはやて。ヴォルケンリッター達も夜に声をかける。

 

「主はやてから誕生日の事を聞いた時は驚いたぞ。そんな話聞いた事なかったからな。全く…少しは我らにも甘えろ」

 

「シグナムの言うとうりだぜ!あたしたちは家族なんだから、遠慮はいらないぜ!」

 

「いつも夜君に負担かけてるから、たまには私達にも何かさせてほしいわ」

 

「うむ、我等にも頼ってほしいのだ」

 

 ヴォルケンリッター達は夜には色々とお世話になっており今まで夜の為に何かしたいと思っていたがハイスペックの夜を手伝える事は無くはやてから夜の誕生日を祝うと聞いた時は、やっと自分達に出来ることが…!と、涙が出てきたのだ。

 

「皆んな夜君の為になにかしたかったんや。それに…約束したからなぁ!」

 

「……あ…ッ!?」

 

 夜は思い出す。

 はやてが言った約束を、『夜君に誕生日の嬉しさを教えたる!』『来年絶対に祝うで!』と言った言葉を。

 

(本当に約束守ってくれたんだ…)

 

 そんな事を思っていると、皆が驚きに満ちている顔が夜の目に移る。

 

「よ、夜君?……ど、どうしたん」

 

 いきなりはやてが動揺し出す。

 はやてだけじゃ無く他のみんなも驚愕の目で夜を見ていた。

 

「……何が…?」

 

 本人が気づいていない事にざわついて仕舞うが、美鈴の一言によって夜の違和感の原因が分かる。

 

「夜様……泣いて…!?」

 

 

 

「………へ…?」

 

 

 

 

 ————夜は泣いていた。

 

 

 

「……あれ…?………何……これ…」

 

 自分自身何故泣いているかわからない夜。どうしても止まらない涙。

 ポロポロと泣いている夜を見て、眷属達はオロオロしだし、はやて達は硬直している。大体が使い物にならない中、唯一さとりだけ夜を抱きしめた。

 

「ごめんなさい……夜……本当にごめんなさい」

 

「…何故…さとり…謝る…?」

 

「お願い…いまは…このままいさせて…」

 

 周りの目も気にせず夜以上に泣き出すさとり。その身体は震えているのがよく分かる。誰も見た事がないさとりの姿にはやて達は静かに見ているしかない。

 

「なぁ美鈴なんで……え?」

 

 未だに何故泣いているのかわからないヴィータは隣にいた美鈴に聞こうと横を向くと、感情の無い目でポロポロと水が落ちていた。

 

「………」

 

 何も言わない美鈴にヴィータも何も言わなくなる。空気的にさとりと夜に声をかけれないので事情をわかっているような美鈴に皆んなが心配する。

 

「一体どうしたのだ?お前がそんなになるなんて……」

 

「…ねぇお燐。あんなさとり様見た事ある?」

 

「そんなのある訳ないよ……あたい達もさとり様と長いけどあんなに泣くさとり様を見た事はないよ」

 

 仕えてから初めてみる主人の姿にお燐とお空はどうする事も出来ない。

 

「藍さんは何か知らないの?」

 

「…知っておるが…わからん……」

 

「え?それってどう言う……」

 

 この時、意味深な藍の言葉に突っ込んでいこうとしたがそれは叶わなかった。

 

「ごめんなさいね。ちょっと色々と思う事があって」

 

「……ん…ごめん…皆…」

 

 丁度、タイミングよく泣き止んだ2人が声を遮ったのだ。こうなれば、はやての意識も夜達にいく。

 

「いやええよ。夜君の泣いた珍しい姿を見れたからな」

 

「私のせいで暗い空気になってしまったわね。せっかくの夜の誕生日会なんだから明るくいきましょう」

 

 この言葉に重苦しかった空気も消し飛ぶ。

 

「そや!もっと明るくいこか!」

 

 こうして夜の誕生日会は再開し、この後勇儀とパルスィも合流して、最高の誕生日会を夜にプレゼントした。

 

 

 

 

 

 

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「ふぅ〜ええ湯やなぁ〜」

 

「癒されますね〜。主はやて」

 

 はやてとシグナムは今温泉に入っていた。

 夜は誕生日会が終わると糸が切れたように眠り今はベットの上だ。ついでにヴィータも夜のベットに入って寝ている。シャマルとザフィーラは眷属達とペットの二人と飲みに行っている。シグナムもさっきまで勇儀と戦闘をしておりボコボコにされて今の姿だ。

 

「傷は大丈夫なんか?」

 

「大丈夫だ!問題ない」(`・∀・´)

 

「…シグナムも染まってきたなぁ」

 

「…一度言って見たくて……まぁ闇の書がある限り傷は治りますので」

 

「だからって怪我ばっかしたらいかんで!」

 

 先程まで傷だらけの身体が幻の様に、何処にも傷は見えない。そんな話をしていると湯けむりの中にピンク色の髪がこっちに向かって来ているのが見えた。

 

「楽しそうね。私もご一緒してよろしいかしら」

 

「さとりさん!もしかして聞いてました?」

 

「ええもちろん、最初のネタから」

 

 はやてだけだと思っていた為に恥ずかしい事をしたシグナムは真っ赤にしながら、先に上がります主はやて!と言って温泉から出て行った。

 

「あらあら…ちょっとイジメすぎたかしら?」

 

「まぁシグナムなんで大丈夫ですよ……それでさとりさん、ただシグナムをイジリにきたんじゃないんでしょ」

 

「あら?どうしてそう思うのかしら?」

 

「シグナムをわざと恥をかかせて二人きりにしたからです」

 

 完全に作り笑いと分かる顔をするはやてに、さとりは誰かと似てるわねー(棒)と思い嫌味を返す。

 

「貴女…将来タヌキっていわれそうね」

 

「もう……言われてます…」

 

「なんか…その…ごめんなさい」

 

 お互いに沈黙の時間が続く中、先に沈黙を破ったのはさとりだった。

 

「…話に入りましょうか…今日はありがとうございます。久しぶりに楽しんでる夜の心を見ました」

 

「いやそんな…私だけじゃなくてさとりさんも話を受けてくれたから…」

 

「謙遜はいけません。はやてさんのおかげで幸せそうな夜を観れただけで嬉しいのです。本当に…本当に久しぶりに……」

 

 そう言うさとりは微笑んでいるが、はやてには無理して笑っているような表情に見えた。

 

「さとりさん一つ聞いてもいいですか?」

 

「私に答えられる事なら…」

 

 今まで疑問に思っていた夜との関係をはやては聞く。

 

「では…さとりさんは夜君とどれくらいの付き合いなんですか?」

 

「それは出会ってから今の瞬間までと言う意味でいいですか?」

 

 無言で頷くはやて。

 その答えにさとりは遠い……遠い地を思い出す様な目を空の無い天に向けて答えた。

 

「長いですよ…本当に長い付き合いです」

 

 何処かはぐらかさせた答え。

 

「そうですか……」

 

『『…………』』

 

 再び無言になる二人。

 流石に小学生にこの対応は無いな、とさとりは自己嫌悪になりながらも話を続ける。

 

「…私からも一つ、どうして夜の誕生日を祝おうと思ったんですか?聞いているのでしょう夜が誕生日をどう思っているか」

 

「もちろん知ってます。でも約束したんです。私が教えるって、夜君に感情を幸せを嬉しさを教えるって約束したんです」

 

 心を読まぬともさとりにはわかった。はやては夜を思っているのだと。それは家族としてか一人の男としてかはわからないがただ思っているのだと。

 ならば、私が言えるのは一つ。

 

「一つだけはやてさんに助言です」

 

「助言ですか?」

 

「目に見えるものが真実とは限りません。時に自分の心のままに想いのまま感じ、見てみると見えて来ますよ————本当の真実が……まぁ年寄りのつまらない話でしたね」

 

「…ん…まぁ……何となく分かった気がします」

 

 難しそうな顔をしているが、はやてならこの意味が分かる時が来ると確信していた。

 だって彼女は夜を想っているのだから。故にこの心が分かった時さとりはある覚悟を決めた。

 

「はやてさん長く温泉に入ってますが体調は大丈夫ですか?」

 

 いきなりの話だったがよくよく考えるとはやては長風呂をしており、さとりに指摘されてのぼせた感じになる。

 その為温泉から上がろうとするがはやてはシグナムがいない事に気付く。

 

「シグナムおらんやん…どうすれば?」

 

「シグナムさんならそろそろ来ますよ」

 

 絶望しているはやてにそう声をかけると、本当にシグナムが息を切らしながら来てはやてをお姫様抱っこで上げて行った。

 

「もう…いませんかね…」

 

 その様子を見たさとりは誰もいない事を確認する。そして誰もいないはずのこの場に声を上げた。

 

 ————こいしいるのでしょう

 

 すると、前触れなくさとりの隣には、彼女の妹である古明地こいしの存在があった。

 

「流石おねえちゃんだね」

 

 こいしが出てくるがその表情ははやて達に見せたほのぼのした顔は無く真剣な目でさとりを見る。

 

「おねえちゃん…覚悟を決めたんだね…はやておねえちゃん達に賭けるの」

 

「ええ…もう私は逃げるのは終わりにするわ」

 

「…分かったよ。私はおねえちゃんについていく。私も……もう…逃げたくないから…」

 

 そう言うとこいしは一瞬で見えなくなる。

 彼女が能力を使ったのかはさとりには分からない。この居なくなる行為が何を示すのかも。でも姉として……数年ぶりに見た妹の考えは分かる。血の繋がった姉として。ひとりの家族として。

 

 一人になったさとりは立ち上がり()()()()()()()。ここは地底だ。地上は見上げるしかない。 その思いも俯く訳にはいかない。

 

「もう私は逃げない……私の罪から…………」

 

 

 

 

 —————妖怪の罪から

 

 

 

 

 

 さとりは決意する。

 自分の罪を償うために……

 

 過去に誓った約束を守るために……

 

 そして……

 

 

 

 

 

 ———叶わぬ願いを一人の少女に託すために!!

 

 

「…私は…私達は託す事しか出来ない」

 

 全てを知っている悟り妖怪は嘆く。

 自らの力の無さに、友も救えぬ弱い自分に、家族との約束も守れぬ自分の愚かさに。

 

 

 それでも!!

 それでもあの地獄を繰り返さないために……と

 

 

 

 —————彼女は決意した。

 

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 

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 _______

 

 

 

 

 〜〜地霊殿旅行4日目の朝〜〜

 

『『ありがとうございました』』

 

 地霊殿前で見送りに来たさとり達にお礼を言うはやて達。

 

 

「私達も楽しい時間だったよ」

 

「また来てね〜〜」

 

「いつでも来ていいからね!歓迎するよ」

 

「まぁ、妬ましいぐらいいい時間だったわ」

 

「今度は私とも遊ぼうね♪」

 

 妖怪とはいえ、はやて達は夜達以外にこんな嬉しい言葉を、聞いたことがないので泣きそうになる。

 

「お、おう!また来るぜ」(T ^ T)

 

「ヴィータちゃん泣かないの!」

 

「そう言うお前も泣いているがな」

 

 色々とあった為、感動系に慣れてないヴィータとシャマルは号泣だ。

 

「素晴らしい時間でした。また次も一戦よろしいでしょうか勇儀殿」

 

「もちろんだよ!シグナムはいい攻めをするからね〜」

 

 他のメンバーは二人の戦闘狂に呆れていると、帰るためにスキマの固定をしていた夜達から帰る準備ができたと声が聞こえてくる。

 

「そろそろ準備OKッスよ」

 

 と声がかかるのではやては一度さとりの方へ体を振り返って一礼した。

 

「それではさとりさんありがとうございました」

 

「いいえ。お礼を言うのはこっちよ。はやてさんのおかげで決意もついたし…お礼としてこれを受け取ってちょうだい」

 

 さとりは懐から魔法陣の書かれたトランプサイズのカードを一枚渡す。

 

「これは一度だけ魔力を込めることで私達を呼べる便利グッズよ。見習い魔法使いのはやてさんなら使えるでしょう」

 

 はやてはさとりから受け取るとお礼を言ってシグナム達とスキマの中に入って行った。

 

「それではさとりさん。またッス」

 

「さとり達よ。久しぶりに楽しかったぞ。またな」

 

 眷属の二人も帰って行く。残ったのは夜と美鈴だけだ。

 

「さとり……楽しかった……久しぶりに会えて良かった……じゃあ……()()()()……」

 

「ええ、会えて良かったですよ夜。ですが『さよなら』じゃあないですよ。次会うための『またね』です」

 

 さとりの言葉にスキマに入ろうとしていた夜は一度だけさとりを見てまたスキマに入って行った。悲しそうな顔を見せて……。

 

「では私もそろそろ行きますね」

 

「————美鈴さん!」

 

 帰ろうとしていた美鈴をさとりは引き止める。

 

「…私はもう逃げません!だから…もう一度地霊殿に来てください!」

 

 もう一度会いましょう!この場で!そんな声を美鈴は……偽りの笑顔で返す。

 

「…ええまた会いましょう。さとりさん、皆さん……」

 

 

 ————さよなら

 

 そう言うと美鈴もスキマに入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆が帰った事でお燐とお空は地霊殿に入って行く。

 

 この場には残ったさとり達だけだ。

 それでも勇儀やパルスィは動こうとはしなかった。あのこいしが姿を見せている。

 

「勇儀さん…」

 

「ああ、こいしから聞いた…」

 

「そうですか…私について来てくれますか?…この罪に汚れ逃げた私に………」

 

「…あれはお前だけのせいじゃないよ…お前だけのせいにするつもりない…あれは私達の罪…妖怪の罪だ。それに…逃げたのはお前だけじゃない」

 

「勇儀さん…」

 

 また、お前1人に背負わせない。

 勇儀の心情が読まなくても伝わってくる。

 

「私も手伝うわ……もうあんなものは見たくないもの」

 

「おねえちゃん私も逃げないよ」

 

 パルスィも出来る事は限られているが全面的なサポートを宣言する。

 

「ありがとう。こいし、パルスィ、勇儀さん」

 

「でもどうするの?……悔しいけど…今の私達じゃ…」

 

 何もできない。

 そんな言葉をパルスィは言いたくもないし、思いたくも無いがそれが真実だ。

 何もできないから彼等は地底にいる。

 

 

 だから———

 

 

 

「この地から抜け出すことが出来ないのでしょう」

 

「…………」

 

『『……ッ!!?』』

 

 

 突如と背後から聞こえてきた第三者の声。

 皆、動揺している中、1人さとりだけは無言で後ろを振り返った。

 

 ———来るのは分かっていた。

 

 そう言わんばかりの視線がさとりと同じくらいの童女に突き刺さる。

 

 

 

 

 この地底元は地獄

 

 ———故に旧地獄

 

 この世に存在し時から変わる事はない真実である。記憶には無いが記録に残っている存在。

 

 

 絶対的な平等で()()を許された唯一の神

 

 

 

 

「閻魔……"四季映姫」

 

 

 

「貴女達の行動に対して白黒決めに来ました」

 

 

 

 ————彼女は地獄の王である。

 

 

 

 




【あとがき】

おやおや〜?「旧」に出て来てない人がいますねぇ〜〜。
という訳であと1話地霊殿編します。ちょっと新しい話考えたくなってね。

一応言っておくと、最後の『贔屓』の意味は次回分かりますよ。
あ、映姫様は幼女の方でおk!!


では次回・地霊殿 裏で会いましょう。

感想、お気に入り、高評価おなしゃす。


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地霊殿 裏



どもパッチェです。

今の内に言っときます。映姫様はチーターです。めっちゃ強くしてます。
性格が完全に崩壊してます。原作の設定は期待しないで下さい。(いつものやつです)



☆☆

一度、愛されてしまえば、愛してしまえば、もう忘れることなど出来ないんだよ。

夏目友人帳 by露神






「やはり来ましたね……」

 

 さとりは予定通りと思いながらも内心焦っていた。勇儀やパルスィですら額に大粒の汗をかいている。

 

「おや…?どうしましたか?」

 

 態とらしく尋ねる映姫の姿は無表情で不動立ち。その中で、胸の前に置かれた悔悟の棒(かいごのぼう)がチラチラと嫌でも目に入って来る。

 

「……何の用だよ映姫」

 

「何ですかその反応は……まるでわたしの登場は歓迎してないようですね」

 

「歓迎してないんだよ!!今、この場の現状においてお前はひじょ〜〜〜〜に面倒くさいんだ!!」

 

 力強く込めた勇儀の言霊は映姫に届く事はなかった。

 

「そんなの知りませんよ」

 

 勇儀の言葉を一蹴。

 

「言ったはずです。白か黒か……貴女達がこれからする行動に対して————わたしが決めるのです!」

 

 暴論とも取れる言葉だが、彼女はそれが出来る。

 彼女の持つ"白黒はっきりつける程度の能力は彼女が持っている絶対的な基準を元として決して迷う事がない。

 

 下手をしたら『カラスは黒い』という定義を彼女の一言で『カラスは白い』と変えられるレベルである。

 

 しかもこの能力を使われ問われた者は絶対に嘘はつけない。弁解も出来ない。一度下された判決を覆す事も不可能である。あるのは絶対的な平等と裁きのみである。

 

 

 ————故に彼女は閻魔

 

 

 ()()()()()()()()、それが故に誰も彼女に干渉出来ず、染められず、惑わせられない特殊な場面を除いて平等。

 

 だからこそ彼女は閻魔となった。

 

「さぁ、わたしの問いに答えてもらいますよ。貴女達は本当に()()()()()()のですか?」

 

『『…ッッ!!?』』

 

 閻魔の威光…とでも言おうか。

 神にも等しい魔力がさとり達を襲い絶対的な差があるのを感じる。

 

 

 

 

 —————だから何だ?

 

 

 

 

 今のさとり達はそれで怯む訳がない!止まる訳がない!もう逃げないと決めたのだ。

 

「閻魔……いえ、敢えてあの時の呼び名で言いましょう。映姫………私達は———向き合います」

 

「…………」

 

「さとりの言う通りだ!私達はいつまで逃げていた……私達はいつまであの日に囚われている……いつまで嘘を付いていると思っている!」

 

 さとりの決心に僅かにピクリと映姫は反応したものの依然としてだんまりを決め込む。

 

「お姉ちゃんの言う通りだよ!わたしはあの日から……ずっと逃げた。現実を見たくないから……誰も守ってくれないから…わたしは目の前のことから目を逸らした…」

 

 こいしが無意識に語る。

 

 目を潰した日からこいしは悟りを辞めた。心を見ることを忘れ、現実を見ることをなくし、少女の目に映るのは灰色だった。その目に光が当たる事はもう無いだろう…と思い続けていた。

 

 

 でも……でもあの少女に…はやてという少女にこいしは光を見た。

 

 

「わたしはもう逃げたくない!!!」

 

 それはこいしが無意識ではなく自分の意思で決めたのだ。もう無意識で決めるのはやめると……自分に嘘はつかないと。

 

「………そうですか」

 

 やっと口を開いた映姫の言葉はこれだけだった。

 

 

 

 

 

 その代わりに———

 

「わたしの力の前でもその決意は変わらないですか?」

 

「「変わらない!!!」」

 

 悔悟の棒を両手で胸の前に持ち脅そうとした、瞬間に帰ってきた返答に映姫は完全に固まった。

 

 一時の沈黙が訪れるが、溜息を吐いた映姫は悔悟の棒を降ろしてさとり達に真剣な眼差しで言った。

 

「まぁ……地上に出ていいですよ」

 

「「「軽いなおい!!!」」」

 

「いや…別に止める気はありませんでしたし…あ、別に貴方達だけが夜と一緒遊んで、お泊まりして、料理作って楽しそうな日を過ごしたのをうらん…ゲフン…羨ましいから嫌がらせ…ゲフン…わたしも遊びたかった!!」

 

「「「本音がダダ漏れな件について!?」」」

 

 もう完全に駄々っ子になっている映姫をみてパルスィは信じられないものを見る目になっている。

 

「え………え?誰これ?さっきのカリスマの塊だった姿は何処に?」

 

 もはや別人と言ってもいいほど雰囲気すら変わっている。1人動揺するパルスィだが、残りを3人はやっぱりか…と残念なものを見る目に変わる。

 

「あー……パルスィは閻魔の映姫しか知らなかったよな…。ぶっちゃけ言うとこっちが本性だ」

 

 勇儀の言葉に唖然として、再び映姫に視線を向けるが何やらブツブツとリアクションを付けながら一人で喋っている。

 

「いつもさとり達の方に行って……わたしの所にも来て欲しいのです。そりゃ余り来れない理由は分かってますが偶には夜の温もりが欲しい!!だってわたしあの場で末っ子なんですよ!!それが今じゃわたしが一番出世したのに…姉達はみんな引きこもって……それなのに夜と遊んでるなんてずるいです!!」

 

「「……ケホ!?(吐血」」

 

 グサッと何箇所かさとり達に言葉の槍が突き刺さる。

 

「嗚呼、よる……ヨル……夜ぅぅぅ!!」

 

 因みに映姫はこれが正常である。

 普段は生真面目で頭が固いと言われる仕事人だが、これが夜が絡んでくるとダメになる。

 彼女の基準は全て『夜』前提に変わり、まさに夜に狂い夜の為に狂うと言ってもいい。

 

 それが許されるのか?と言われると許されていると言うしかない。彼女は閻魔になる条件で『八雲夜以外は平等に』『八雲夜は贔屓する』という閻魔にあるまじき要求を十王達に叩きつけた。

 十王達はそれを容認するしかなく、まぁ夜の事情が特殊すぎるという理由で彼女は閻魔になった。

 

 それでもその本質は変わる事なく、閻魔になる前は『ストーカー地蔵』と言われていた本質を知り合いの前だけに出しているのだ。

 

 

 

 

 そんな夜を愛す映姫だからこそ彼女はさとり達を試したのだ。

 

 

 

「……別に貴方達を信じてない訳じゃありません」

 

「……映姫」

 

 さっきまでのふざけた空気は変わって、映姫の真剣な眼差しがさとり達を射抜く。

 

「…貴方達は……姉達は…みんな塞ぎ込んでしまいました。わたしは……ずっと逃げていた……わたしが……わたし達が…」

 

 ————嫌いです

 

「わたしは閻魔です。あの日から……閻魔となった日から夜を救おうとしている者たちを見てきました。知っていました」

 

 ————知っている。

 

 ————人生を魂を賭けて夜の為に

 

 ————命を対価にのせたモノを

 

「わたしは見ている事しかできません。夜が苦しんでいる時も悲しんでいる時も絶望している時も見ている事しか出来ない!!」

 

 自分の力がどんなに強い能力でも、自分の基準、定義に無いことは何も出来ない。いつも感じていた無力感。

 

「わたしは夜が好きです。あの時間が好きでした!だからこそ半端な覚悟で貴方達が夜の元に行き、何も出来なかった時をわたしは見たくない!!」

 

 ————みんな壊れちゃう

 

「だからわたしは貴方達を『ごめんさない映姫…』……さと姉……」

 

 さと姉……こう呼ばれたのはいつぶりだろうか。

 泣き叫ぶ映姫をさとりは抱きしめて落ち着かせる。勇儀やこいしも映姫の乱れた姿に罪悪感が押し寄せる。

 

 分かっている。一番映姫が夜の為にと心身をボロボロにしながら働いてきたのだ。今、その思いが溢れ出しているのだろう。

 

 だから次は……

 

「お姉ちゃん達に任せて…」

 

「……さと姉」

 

「そう簡単に信じられないのは分かっているわ。でもお願い……」

 

 ———私達は絶対に夜達を救ってみせる

 

 

「だから見ていて……悲劇の物語じゃなく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———ハッピーエンドの物語を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 

 ______________

 

 

 _______

 

 

 

 〜地底の出口〜

 

 

「行くんですね……」

 

 それは閻魔としての言葉か、かつての家族としての言葉かは分からない。でも映姫として心配しているのだろう。その心は伝わっている。

 

「安心しろよ映姫。偶には姉ちゃん達活躍すっから」

 

「うん……勇姉」

 

 カカッと笑う勇儀を見上げる映姫は側から見ると完全に恋人のようなあれだ。

 

「ほんと…あれ誰だろうね…いつも説教ばっかの閻魔の双子じゃないのかい?」

 

「……そこの猫ペットは後で説教です」

 

 いきなり閻魔モードに、ニャニャニャ!!?と下手なことを言ったお燐は後で一日中の説教が始まる事に怯えだす。

 

「ま、頑張んない程度に頑張りなさい…命懸けで!」

 

「ふふ、何よそれ。まぁ分かっているわよ……私達は最終的にどうしようもないわ……でも希望への道は作れるでしょう」

 

 いつだって私達は踏み台。最後は人間が……これって最早方程式よね…っと言うさとりに、そうだなと大体が頷く。

 

「それじゃあお燐、お空地霊殿の管理はお願いね」

 

 お任せくださいというペット達にさとりは微笑むだけだ。

 

「キスメとヤマメも鬼達の相手よろしくな!」

 

 勇儀の声に後ろで土蜘蛛の妖怪"黒谷ヤマメと桶に入って生活をしている"キスメのはーいという返事が聞こえてくる。

 

「行きましょうか」

 

 さとり達の前には本当の光が………何百年ぶりの地上の光が見え始める。

 

「頼みましたよ…こいしも」

 

「うん…映姫ちゃん」

 

(この2人の仲は良くわかりませんね?)

 

 そのまま2人は無言でグータッチをする。この2人の間には何があるのかさとり達ですら昔からよく分からない。でも何か悪い仲では無いのだろうとは感じる。

 

「そんじゃどうするさとり?」

 

「そうですね……ま、映姫風に言うなら引きこもっている妹達を引きずり出しに行きましょうか」

 

「ああ……大変そうだなぁー」

 

 大体のメンバーが分かったのかこいしは棒読みで遠い目だ。でもやる事は分かりきっているのだ、後は進むしかない。

 

 

「「「じゃあ映姫……」」」

 

 

 

 ———行ってきます

 

 

 

「…ッ!?」

 

 3人の揃った言葉に映姫は懐かしさと過去を思い出す。今度はあの日のメンバーで……家族で戻ってくることを願って映姫は言った。

 

 

 

 ———行ってらっしゃい!

 

 

 

 と……もう叶わぬと思った幻を祓うような満面の笑みで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、絶対に失敗出来ないわね」

 

「んまぁ、あんなの想いもの託されて……私らが出来なかったら姉としての立場がなくなるな」

 

「もう無かったりして♪」

 

 久しぶりの太陽の日を浴びながら話す姿は何とも呑気そうだ。だが、真剣な表情である。

 

 

 

「さ、行くわよ…まだ引きこもってる妹達を起こしに!!」

 

 

 彼女達は止まらない。

 

 全ては最愛の人のために。

 あの日取りこぼしたモノを拾いに行く。そして新たなる道を創り出す。

 

 

 

 

 あの子がまた笑って歩んでいけるような未来への希望を持って………

 

 

 

 

 ———全てを託そう!光ある子らにへと……

 

 

 

 

 






【あとがき】


前回と違って夜の過去が少しずつ分かってきてますねぇ〜〜。

こんな映姫様でも可愛いよね♪
因みに映姫様のヤマザナドゥが付いてないのは、楽園(幻想郷)が無いからです。まぁ、東方の原作は殆ど改変しますので悪しからず。そこは2次創作ですし♪


すっごい矛盾ありそう。
それすらも我は回収してみせる!(無理ゲーだなうん)


では次回から闇の書編に入ります。作者は今から布団に入ります。

これで一旦地霊殿編は終了


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17話 その裏の裏で

どもパッチェです。

はい、忘れてましたこの話。
一旦これで日常編①は終了!!



☆☆★☆☆

あたしたちは同じ時代に生きてる。だから、どこかでまためぐり合えるって信じてるから だから、さよならはいわないよ…また、会おうね!約束だよ……!
テイルズシリーズ byナナリー・フレッチ


 これは夜達の裏側であった

 

 

 少年少女達の出会いと別れのお話………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海の見えるこの場所。

 俺の目の前では2人の少女達が別れの言葉を交わしている。

 

「名前を呼んで!フェイトちゃん!ちゃんと相手の目を見て、はっきりと相手の名前を呼べばそれで友達だよ!」

 

 

「……うんっ!なのは!」

 

 良かったな……なのは。

 おっと俺の自己紹介がまだだったな、俺は【直江誠】、なんか神とか言うやつに転生させられた者だ。

 

 今、俺はちょっと離れた所で2人の様子を見ている。

 

「…ウウッ…、フェイトォー!」

 

 隣で号泣しているのは、フェイトの母親【プレシア】だ。最初会った時はフェイトを人形と罵っていたが、実際はフェイトを犯罪者にしない為〈プレシアに操られていた〉と言う口実を作るために色々としていたが、まぁ実際の所ただの……

 

「ああ!泣いているフェイトも可愛いわぁ!」

 

 ————親バカだ!

 

 

「やっぱり私の娘は世界一可愛いわね!貴方もそう思わない直江君」

 

「ええ…可愛いですよ…」

 

「もちろんよ!!なんたって私の娘ですもの!」

 

 ハァー…これだよ。

 罵っていたのが嘘みたいな感じになって……グボッ!

 な、何だ?背中に強烈な痛みが…

 

 アリシア「私だよ!まーくん」

 

 

 誠「早く降りろ!」

 

 

 アリシアかよ……

 今俺の背中に乗っているのは、プレシアのもう一人の娘にしてフェイトの姉【アリシア】。

 今回の騒動の原因と言ってもいいだろう。

 アリシアは昔ある事故で死んだ。そのためプレシアが歪み違法な実験などに手を出して生まれたのがフェイトだ。しかしフェイトをアリシアと見れずアリシアを生き返そうとした。それが今回の騒動ジュエルシード事件又の名を【PT事件】と言われている。

 

 

 え?何で死んだアリシアが生きているのかって?

 

 

 

 それは………俺が神に頼んで生き返させてもらったからだよ…いや語弊があるな。元々アリシアは本当に死んでは無かった。植物人間という奴だ。だが、そこには彼女の魂と身体の繋がりが切れていたという何とも妄想みたいなものがあったようだが……魔法を使っている俺が言えることじゃないな。

 

 まぁ、これは神に言われた話だが、本当に死んだ者を生き返らせるのは禁忌……その罪を犯した者は魂を虚無に落とされるらしい。

 

 何故俺がこんな話を知っているかって?

 

 それはアリシアの魂を身体に戻すのを自称神にしてもらったからだ。俺は転生する際に3つの願いを叶えられた。

 だが、俺が願ったのは2つ、もう1つは保留という事で残っていたからだ。そんなこんなで彼女は……アリシアの意思は再び現世に戻ってきた。

 

「お前はフェイトの所に行かなくていいのか?」

 

「ふふ〜ん♪今は他の子達と話すのが一番だよ。一旦お別れだし、私はまたいつでも話せるからね♪」

 

「確かにな」

 

 まぁ、色々ありながら俺たちは、今仲直りタイムと別れの時間を過ごしている。

 

「なのはちゃんだけじゃなくて私達も友達だからね!」

 

「そうよ!私達もいる事を忘れないでよ!」

 

「ありがとう!…すずか、アリサ!」

 

 すずかとアリサが入って行ったなぁ……。

 

「リニス!フェイトに…フェイトに友達がぁ〜!」

 

 

「ええ!こんな日が見れるなんて…!」

 

 今喋っているのは、フェイトの使い魔アルフと俺の使い魔リニスだ。

 リニスは俺が拾った猫だ。元々プレシアの使い魔だったが魔力が持たず出て行った所を俺が拾い使い魔にしている。

 

「良い光景だね!誠、クロノ」

 

「全くだなぁ…………おい!誠。何だその変態を見る目は!」

 

「何だ?ロリコンだと思ったんだが?それにユーノは淫獣だろ!」

 

「誰が淫獣だ!『ほう!フェレットに化けて女風呂に入ったら男が?』うっ……!」

 

「僕をそこの淫獣と一緒にしないでくれ!」

 

 そんな話をしているのは俺の初めての()の親友だ。

 クロノという少年は時空管理局の執務官の地位についている。融通がきかない堅物なのだ。後マザコン『誰がマザコンだ!』

 

 こいつ……俺の脳内に直接!?

 

 まぁ次だ。もう一人の少年?なのかよく分からない存在であるユーノ。

 こいつのせいで俺の平穏がなくなった!ユーノが落としたジュエルシードを俺たちが集めた。

 

 し!か!も!

 

「今日からもユーノ私の家に泊まるのよね?」

 

「うん。僕はこっちに残るからね」

 

「そ、そう!ならイイわ!」

 

 顔を赤らめるアリサ。

 何こいつら?ラブコメ?イイ雰囲気出してんじゃねぇよ!

 ツンデレの女王がデレデレじゃねぇか!

 妬ましい!ユーノの幸福が妬ましい!パルパルパルパルパルパルパルパルパルパル……

 

「------こ---くん」

 

 パルパルパルパル……

 

「誠くん!」

 

「はっ!…な、何だすずか?」

 

「さっきからずっと呼んでるよ!?どうしたの?」

 

「いや何でもない」

 

「そう?ならイイけど…あっフェイトちゃんがもうそろそろ行くから誠くんも話そうよ!」

 

「もう時間か!悪いすずかちょっと行ってくる」

 

 そう言うと俺はフェイトとなのはがいる場所へ走る。

 フェイト達は今回の事件の主犯として裁判にかけられるためミッドチルダに行かなくてはならない。まぁ保護観察処分で免れるそうだがそこは大人の事情というやつだ。プレシアが悪い顔してたし。

 

「あっ!誠、来てくれたんだ!」

 

「遅いよ!フェイトちゃんが行っちゃう所だったの!」

 

「仕方なねぇだろ…プレシアとアリシアに絡まれたんだよ!」

 

「ご、ごめんね…内の人が…」

 

「いやフェイトが謝らなくていいよ。それよりもう行くんだなぁ…」

 

「うん……その…誠……ありがとう!私が落ち込んでいんる時に慰めてくれて」

 

「礼を言われる事じゃねぇーよ!フェイト自身が乗り越えたからだろ!」

 

「違うよ…私自身誠に勇気付けられたし、誠がいなかったら母さんと姉さん後リニスとも分かり合えなかったと思う…だから受け取って私の感謝の気持ち」

 

「………そうかよ」

 

 

 そう言われるとなんか恥ずかしいなぁ…

 

「そろそろ時間よフェイトちゃん」

 

 クロノの母親リンディさんがプレシア達を連れてフェイトに話しかける。

 

「じゃあ…一旦お別れだな」

 

「うん……また…会えるよね?」

 

「別に一生の別れじゃあないんだ…望めば…また会えるさ」

 

「そうだよね!」

 

「時間ね…フェイトちょっと」

 

 プレシアがフェイトに近づくと何やら耳打ちをしている。

 

「………を……しなさい」

 

「ふぇ!?………そんな…………できないよ!」

 

「…良いから………これを……すれば……落ちるわよ!」

 

「……ホント?………分かった」

 

 なんと言っているか聞こえん?いや〜な予感がする……ん?なんだ?フェイトが顔を赤くしてこっちにくるぞ?

 

「ね、ねぇ!誠……その……目をつぶって!」

 

「え?何で『良いから!』…へーへー」

 

 俺は言われるがままに目を瞑ると、『………(チュ』

 

「へ?」

 

 俺の頬に何か柔らかいものがあてられ思わず目を開ける。

 

「………………じゃあね!」

 

 トマトの様に真っ赤な顔になっているフェイトは一言、言うと走り去っていく。

 

「(ニヤニヤニヤニヤ)」( ´∀`)

 

「あらあら青春ねぇ〜」(*´∀`*)

 

「何だよ……その目」

 

 保護者達の生暖かい目線に苛立ちが止まらない。にしてもフェイトは何をしたんだ?

 

「むっ!フェイトだけズルイ!私もするーー」

 

「はいはい。もう時間だから行くわよアリシア」

 

 アァーーと言いながらプレシアに連れて行かれるアリシア。

 

「それじゃあ、私達も行くわよ」

 

「分かりました母さん。なのは、アリサ、すずか、誠ついでにユーノ『ついで!って何だよ!』……またな」

 

「うん!またねクロノくん」

 

「まぁ悪くない日々だったわ」

 

「バイバイ!クロノくん」

 

「じゃあな、クロノ。初めての男友達よ」

 

「ああ、僕もだ」

 

 素晴らしい男の友情だな。

 

「おい!僕は無視か!無視なのか!」

 

『『チッ!』』

 

「舌打ち!?」

 

 そんな笑い話もありながらクロノ達とフェイト達は行ってしまった。

 

「…行っちゃったね」

 

「ああ……これで俺の平穏が戻るなぁ」

 

「あんたは!またそんな事を行って…………ヒィィ!」

 

 ん?なんかアリサが悲鳴を上げた?あれ〜れ?なのはとユーノが青ざめている?

 なんか後ろを振り返りたくないなぁ〜

 

 

 —————ガシッ!

 

 

「ねぇ?誠くん。フェイトちゃんと何してたの?」

 

 

「あ、あのすずかさん?何故俺の頭を掴むので?それにフェイトとは何もなったぞ?」

 

「そう………あくまでも話はしないと…」

 

 

 何故だろう。俺の平穏がやっと帰って来たと思ったのに……

 

 

「これは……O・HA・NA・SHIが必要だね」

 

 

「たたたたたたたた助けて」

 

 ヘルプ!ヘルプミー!!お、お前ら後ろをむくな!!

 

「サヨナラなの…」

 

「あんたの事は忘れないわ……多分」

 

「ザマァ(笑笑)」

 

 この薄情者ども!ユーノは後で締める!

 

「みんなと楽しそうだね〜……それじゃあ行こう?」

 

 黒すずかさん…1つだけ言わせて……こんにちは俺の平穏…そして……

 

 

 ———さようなら俺の平穏

 

 

「アーーーーーー!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やっぱりすずかちゃん…ヤンデレなの」

 

「…生きている事を願うわ……」

 

「……(笑)」ゲス顔

 

 フェイト達とのお別れが、誠の人生の終わりになる様な微笑ましい日になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 




【あとがき】


【直江誠】《ナオエマコト》

容姿 マジ恋の直江大和主人公似 知らない人は調べてね☆

身長 140㎝

魔力 S

年齢9歳

設定 神に転生させられた。前世の記憶は知識しか無くアニメなどの記憶は無い。元々ハーレム願望が無いので踏み台にはならない。中々の巻き込まれ体質。すずかとフェイトに惚れられているがやっぱり鈍感。性格は平穏に暮らしたいが周りに人外しかおらず常に巻き込まれる。護りたいものだけ守る。正義厨みたいに全てを救おうとは思っていない。


デバイス 魔砲剣【グラウディウス】
空戦魔導候補生の教官のカタナ・エイジが持つものそっくり。

戦い方 補助以外は何でもできるオールラウンダー


【月村すずか】

容姿、身長、年齢 原作どうり


設定 基本は原作と変わらないが、誘拐された時に誠に惚れてヤンデレ化している。誠は吸血鬼と知っており月村家の誓約を誓っている。誠は友達としてと思っているがすずかは結婚と解釈している。

魔力 AA
デバイス スノーホワイト

待機状態 指輪
武器状態 両腕につけるグローブ型 親指、人差し指、中指に外付けの爪が付いている。
戦い方 吸血鬼の身体能力で接近戦を得意とし、氷結変換で氷を操る。

【アリサ・バニングス】

容姿、身長、年齢 原作どうり

設定 性格などは変わらないが此処のアリサはユーノに惚れており、ユーノの前だとツンデレがデレデレになる。もしかしたらヤンデレになるかも?。

魔力 AA
デバイス 刀剣型 フレイムアイズ
待機状態 腕輪
武器状態 大剣
戦い方 炎熱変換を持っており剣にまとわりつかせて振るう。



こんなもんかな。
ん?夜刀は何処だって?……いい奴だったよ。(パッチェ先生シリーズは書くの面倒くさい)








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闇の書編
18話 闇の始まり


どもパッチェです。

ふぅ、やっとここまで終わった。
闇の書編約30話……アニメで2クール…(絶望




☆☆★☆

失くしてしまったもの、起こってしまった出来事、過ぎ去っていった過去の時間は変えることが出来ない。だから、失いたくないと思う。守りたいと思う。守るために強くなりたいと思う。選んだのは、戦っち取っていくこと。見えない未来を、望んだ形に変えていくこと。

魔法少女リリカルなのは by八神はやて





 〜〜6月4日〜〜

 

 この日は八神家にとって大切な日である。

 

「主はやての誕生日と……」

 

「ヴォルケンリッター達と家族になった日を祝って——」

 

『『乾杯!!!』』

 

 今日は、はやての誕生日でありヴォルケンリッター達がはやての家族となって丁度一年。

 

 テーブルには、夜たちが用意した最高級の素材を使った料理が並んでいる。

 最初は夜が料理を作ると言ったが藍たちが全力で止め、美鈴が本店に連絡してセバスが作ったのだ。

 

「ウォォォー!ギガウメー!」

 

「こらこらヴィータ口元が汚れてるで」

 

 はやてはヴィータの口元を拭いてあげる。相当美味しいのだろう。

 この世に顕現して早一年、現代にすっかり馴染んだヴォルケンリッター達も口にしたことのない味だ。

 

「それにしても美味しいわね」

 

「そりゃ素材の値段がいつもと違うッスから」

 

「そんなに違うのか?」

 

 シグナムの問いに藍が指でひぃ、ふぅ、みぃ、といくらだったから数える。

 

「そうじゃなあ〜〜大体百グラムで数十万ぐらいだな」

 

『『………は!?』』

 

 衝撃の値段に食べている手が止まる。

 もうヴォルケンリッター達はお使いも出来るのだ。いつもはやて基準の感覚で数10万と聞いて固まらない訳がない。

 

「え?ええ?数十万?」

 

「皆さん、どうしました?固まって?」

 

 それはそうだろう。

 生粋の庶民であるはやてがこんなに高級な物を食べたら思考回路が停止するのは当たり前の事だ。

 

「……どうした……はやて?」

 

「い、いやな…こんなに高級な物お金大丈夫なんか?」

 

「……ん…余ってるから…問題ない…」

 

「大丈夫ッスよ。自分たちは全く使わないので余っているんッス!だから数十万なんて一割にも満たないッスよ」

 

 夜の返事にレヴィが補足を入れるが、そ、そうか…と頭を抑えて返すしかない。はやてはあまりにも金銭感覚の違いに戸惑ってしまう。だが、今日ははやて達がメインの記念日なのだ。

 

「今日は、はやてちゃんたちが主役なんですからそんな事気にしないで良いんですよ」

 

「美鈴……お前…」

 

 とっても感動的な言葉に目頭が熱くなる……が、

 

「まぁ数千万ぐらいなら10秒もあれば稼げるんですけどね〜」

 

『『…………』』

 

 空気が冷めていくのを感じる。

 

「…美鈴おぬしは…アホか?」

 

「さ、流石ッスね……全て台無しにしていくスタイル」

 

「空気…読む……美鈴」

 

 いい台詞を言っていたのに空気を読まない天然発言に呆れる夜達。それに全く気づいていない美鈴。

 

「え、え?何か可笑しな事言いました?」

 

 皆んなからのジト目で見られるので慌て出す。

 

 そんな様子を見ていたはやては、面白おかしく心の底から笑った。

 

「……フフ……あはははははー!」

 

「な、何で笑うのですかぁー!」

 

「いやな、あまりにも……フフ……可笑しくてなぁ……プフ」

 

 楽しくなる空気に周りのみんなも笑い出す。

 

「やっぱ美鈴は面白いな!ある意味」

 

「ええ…フフ……そのとうりね」

 

「ククク、馬鹿にされておるなぁ」

 

「プギャー(笑笑)」

 

 上のシャマルとヴィータの二人は純粋に笑っているが、下の二人は最近の扱いに不満があるため怨みを込めて笑う。

 

「あなた達はケンカを売って居るのでしょう!そうでしょう!」

 

 鉄拳制裁!と言いなが藍とレヴィに拳を放つ。うご!と言いながら二人はのたうち回る

 

「いや〜笑ったわ………やっぱりみんなと居ると楽しいなぁ〜」

 

 その言葉にシグナムが同意する。

 

「その通りですね。主はやて」

 

「……う…む…楽しい♪」

 

「あたしも(モグモグ)楽しいぞ!(モグモグ)」

 

「ヴィータちゃん食べてから喋りましょうね。…そこの変態ども!良い加減起きろ!」

 

 タンコブが出来ている箇所に再び痛みを与える。

 

「うぅぅ……痛かったッス」

 

「おぬしがしといて…」

 

「ア?」

 

「「いえ、何でもないです」」

 

 完全にキレておりメンチをきられたため美鈴から目を逸らし敬礼をポーズをとる藍とレヴィ。

 

「やれやれね」

 

 その姿に情けないとシャマルが肩をすくめるが、彼女も似たようなものである。

 

「そう言えばお前も最近警官に捕まりそうになったと聞いたが?」

 

「え?な、なななななななんことかしら?」

 

 完全に動揺している事が分かったはやては、またこいつは…と白い目でシャマルを睨む。

 

「どう言うことや?……ちょっとO・HA・NA・SHIしよか」

 

「ち、違うのはやてちゃん!ちょっと小学生に用があって…」

 

 ボロを出しながら言い訳をするため、楽しい祝いのはずが説教会になってしまった。

 

「みんな!助けて」

 

 助けを呼ぶシャマルに藍とレヴィも夜に視線を送るが、本人達は目線を逸らし関わりを持たないようにする。

 

「あいつらはほっといて、私たちは向こうに行こうぜ!ヨル」

 

「…ん……あの…モード…怖い…」

 

「…そうだな」

 

 経験がある二人は見てないフリをして、体を震わせながら見えない所に行く。

 

「我々も行こう、向こうで酒などどうだ?」

 

「うむ!主はやてのお忙しいからな。邪魔にならないようにしないといけないからな」

 

 こちらも逃げ出す。

 

「裏切り者!」

 

「何逃げようとしてるんか?正座しいシャマル」

 

「あなた達もですよ。最近天井から鉄球が落ちてきたり槍が飛んできたりあなた達の仕業でしょう。分かってますから」

 

「いや……その…あれは…」

 

「あ、あれッスよ。友好を深めるために……」

 

「では私も………肉体言語で友好を深めましょう!」

 

 シャマルは正座ではやてのありがたい言葉を聞き、藍とレヴィは美鈴から言語と言う名の肉体を痛めつけらける。

 

「「「いやーーー!」」」

 

 祝い事の日に悲鳴が上がるリビングに他のメンバー達は視界にすら入れない。

 

「これ何なんだ?ヨル」

 

「……フカヒレ…美味しい…?」

 

「やはり美味いなこの肉は!」

 

「そうだな!酒に合う」

 

 我れ関係なしと、ほのぼのと食事を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ————ああ、何と平和な日か…

 

 ————ああ、何と幸せの想いか…

 

 血に塗れた日は無く平和な日々、武器を握らず大切な家族との幸せ日々……何と夢の日々か。無論………

 

 

 

 

 

 

 

 ————そんな平和は長くは続かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 

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 _______

 

 

 

 

 

 季節は秋、10月下旬

 

 

 

 

 ———悪夢は突然にいきなりやって来る。

 

 

 

 

 

「………主はやてが死ぬ!?」

 

 シグナム悲痛な声が室内に響く。

 

「ええ、今の所はまだ大丈夫なんだけど………ここ2ヶ月足の麻痺が侵食しているわ。このままだと、麻痺が内臓などに到達したら内臓機能の麻痺になってしまう。最悪……心臓まで行ったら」

 

「そ、そんな……」

 

「………クッ!」

 

 誰もが非常な宣告に感情をあらわにしてしまう。

 

 始まりは朝だった。いつも通りに起きて来るはやてが起きてこないため美鈴か見に行ったらはやてが倒れていて、急いで掛かりつけ病院に連れて行ったのだ。

 

 今此処には、藍、シャマル、シグナムが診察の説明を受けている。無論はやてを診断したのは石田だ。

 

「一応はやてちゃんには、1週間入院してもらおうかと思っています。はやてちゃんの病は現代の医学では原因不明なのです………私達も全力を尽くしますが……覚悟はしといて下さい」

 

 この時、石田先生が言った『覚悟』は意味を言わずとも分かった。

 いや、分かってしまった。

 

 診察室を三人は出ると何も言えない。しばらく無言で動けなかった。

 

 

「…私が美鈴に着替えを頼んでおこう」

 

「…すまんな……シャマル一応主はやての診察を」

 

「…分かったわ……みんな呼んだ方がいいかも」

 

「……そうだな…美鈴に言っておこう。シャマル、主ヨルとしてくれ。一応別方向から診察をした方がいいだろう」

 

 そう話す三人はそれぞれの役割を果たすために動かない訳には行かなかった。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「おい!どう言う事だよ!はやてが死ぬなんて!」

 

 はやて以外が揃っている中、シグナムから説明を受けたヴィータは病院内のベンチの前で声を上げる。

「…そのままの意味だ……このままでは主はやての命は無い」

 

 シグナムの雰囲気から冗談では無い事を感じたヴィータは顔を真っ青にする。

 

「そ、そうだ!シャマルなら治せるだろ!はやてを診察したシャマル…な…ら」

 

 そう言うヴィータはシャマルの方を向くが、顔を伏せて髪が乱れている姿に言葉が出てこない。

 

「……ごめんなさい私の力じゃあ」

 

「……ん…」

 

 さっきまで診察をしていた夜とシャマルの二人は表情が沈み、シャマルに至っては泣いていた。

 

「…はやてちゃんの病は病気じゃあ無いの…」

 

 シャマルは診察の結果をみんなに話し出す。

 

 はやての病の元凶は、闇の書。

 生まれた時から闇の書と繋がっていたはやては、未成熟なリンカーコアを幼い頃から酷使しており、ヴォルケンリッターを維持するために

 少しずつ魔力を消費していた為にはやてに影響が出ていると、シャマルは判断した。

 

 言わば、闇の書の……ヴォルケンリッターが存在する際とも言えなくはない。

 

「そ、それでは我等のせいで…」

 

「…ごめん……僕は外科医だから…専門外で…」

 

 

 ザフィーラははやてを蝕んでいるのが自分達だと分かり絶望した表情になる。夜は医師免許を持っているが夜の担当は主に手術が基本なので魔法の医学は専門外なのだ。その()()は夜には無い。

 

 皆が沈んだ状態でいるとズズっと夜の影が動く。

 

「すみません!遅れたッス!」

 

 レヴィが夜の影から出て来た。

 

「レヴィか……はやての状態はどうだ?」

 

「不味いッス……自分の目に死期が見えるから、早く何かしないと……あれは……ヤバイ」

 

 レヴィは忍者としての能力ではやての死期が見えてしまった。レヴィの目は特別でありこの関係の能力は性質上絶対に外れる事がなかった。そしてレヴィがヤバイと言うほど深刻な状態であると言うことが嫌でも入ってくる。

 

「……あと……どれくらい…」

 

「……早くて…12月……遅くても正月には…」

 

 約2ヶ月……レヴィの報告は最悪であった。

 

「何か…手はないのかしら」

 

 シャマルの一言に皆がフル回転で考えている中、夜は一か八かの選択を思いつく。

 

「1つあるけど……」

 

「何かあるのか?」

 

「あるけど……はやて命が救えない最後の手段」

 

 救える可能性がある話なのだが、それに乗り気では無い夜にヴィータは思わず怒鳴ってしまう。

 

「何でだよ!はやてが助かるなら……『ダメ』……ヨル?」

 

 夜はヴィータの言葉を遮ってでもリスクの事を言わなければならなかった。

 

「……これ…したくない……はやて……人間じゃ無くなる」

 

「………どう言う事だ?」

 

「…僕……知り合いに……不老不死の医者……いる。……あの医者が何でも治せる薬……ある……」

 

「何でも治せる!?それなら…」

 

「ダメなの……この薬にはある副作用があって…」

 

「一体どんな?」

 

 シャマルの問いに夜は一旦間を置いて口を開いた。

 

「………不老不死になる」

 

『『『なッ!?』』』

 

 夜の答えにヴォルケンリッター達は、思わず声を上げ息を飲む。

 

 「…今のはやては不安定な状態。そんな中不老不死にしたら何が起こるかわからない……死にたいのに死なない状態で生きなければいけない…それは…はやて…苦しむ。…それに………はやてには人間でいてほしい」

 

 夜の説明はヴォルケンリッター達はよく分かっていた。不老不死と言う事は永遠を生きると言う事。不老不死に近いヴォルケンリッター達は知っている。眷属達も言える事だ。どれだけの孤独が待っているか、友も家族も知り合いも死んでいく中たった一人で生き死なず、死ねず永遠を生きる。どれだけ辛い事か、ヴォルケンリッター達は仲間がいた。常に()()で、しかしはやてはもしかしたら一人になってしまうかもしれない。そうなったら辛いのははやてだ。だからこそ夜はこの案を辞めたのだ。

 

「…もう……何も手がないのか!」

 

 皆が絶望している中、顔を下に俯いていたヴィータが目の光を無くしながら言った。

 

「………蒐集………蒐集すれば!はやてが闇の書の主としての力で治るんじゃ!」

 

「ッ!?……だが……それは…」

 

 皆もザフィーラの言いたい事は分かった。蒐集をすると言う事ははやてとの約束を破ると言う事。はやては力を望まず他人を傷つけず迷惑をかけないと、約束したのだ。

 

 しかし今の状況では()()がない。

 

「それが……今の一番の手かもしれません」

 

「闇の書が原因ならいっそのこと闇の書を覚醒させる、か意外と良い案かもしれぬな」

 

 この案が一番であると藍と美鈴も考える。

 

「はやて……と……………約束もある……やっぱりはやて……生きてほしい……シグナムどうする?」

 

 

 皆の視線がシグナムに集まる。蒐集は夜達だけでは出来ないので最終決定はヴォルケンリッターの将であるシグナムに委ねられた。

 

 

「私は……」

 

 

 彼女は————

 

 

 

 

 

 

 

 

 __________________________

 

 

 

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 ____________

 

 

 

 

 

 

 

 あるビルの屋上に佇む人影。

 それは覚悟あるもの達の集まり。

 

「……お前達…今から我らはまた血に濡れる行為をする………それでも付いてきてくれるか?」

 

「当たり前だ!今更後悔はしない!はやてを助けるために!」

 

「貴女一人に背負わせないわ!私達も一蓮托生よ」

 

「我らは主はやてのためにあるのだ!その主が危機ならば動くのは当たり前だ!」

 

 もう人形だった昔とは違うのだ。

 自分の意思で主の為に蒐集を行う。『八神はやての為に』その思いは四人とも絶対に変わらない。

 

 そして昔と違うのはこれだけではない。今は家族と呼べる存在がある。

 

「…僕も…やる…。…僕は……剣…を振るう…しかない…から」

 

「自分もやるッスよ。はやてさんは気に入っているッスから」

 

「そうか……皆ありがとう」

 

 シグナムの素直な感謝に皆が笑顔で返す。

 

「家の番は私達に任せろ」

 

「はやてちゃんは、私と藍さんが絶対に守ってみせますよ!」

 

 藍と美鈴ははやてを一人にしないために残り、そのままはやての護衛につく。

 

 蒐集に行く六人は円になると各々の魂と呼べる相棒を掲げる。

 

「申し訳ありません。我が主ただ一度だけ……貴女の為に、貴女との誓いを破ります」

 

 シグナムの言葉と同時に魔法陣が発動し、全員がバリアジャケットにセットアップする。

 

「それでは……行くぞ!!」

 

 四方八方に飛んで行く者たち。

 

 

 

 

 

 

 ————さあ運命は動き出した!

 

 

 

 

 

 

 闇の守護者たち、神の名を持つ剣士と従者達は大切な人の為に、居場所を作ってくれた者のために、主のため、家族ためもう一度戻る。

 

 

 

 

 ————血で血を洗う戦い

 

 

 

 

 

 また幸せに暮らすために彼等は再び武器を取ろう!

 

 

 

 

 

 ————全ては八神はやてのために

 

 

 

 

 

 彼等は戦いに臨む……先の無い幸せな未来のために戦う事を決意して、たとえそれが————悪と呼ばれようとも

 

 

 

 

 

 




【あとがき】

気分が乗ればもう1話今日投稿します。


感想、お気に入りなどなどおなしゃす
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19話 まだ物語は始まらない


どもパッチェです。

意外と早く出来たので本日2話目投稿。


☆☆★☆

もしも今、お前の苦しみが消せるなら、俺は喜んで自らの身を差し出す覚悟がある!

ヴァンガード by櫂トシキ





 

 

 

 見渡す限り砂漠の土地

 今そこで夜とヴィータは蒐集のために人型サイズのカマキリを狩っていた。

 

「ヨル!そっちに一匹行ったぞ!」

 

「…ん…了解…」

 

 ヴィータが取り取り逃がした生物に夜は斬りにかかる。本人曰く峰打ちをする気だったが簡単にカマキリの首は地に落ちた。

 

「…殺っ…ちゃった」

 

 手加減が苦手な夜は、思わず首を刎ねてしまい殺してしまう。非殺傷設定は?と言いたくなるが、あれは魔力ダメージを衝撃などに抑えるだけで、実際裂傷性は抑えることは出来ない。

 

「…ヴィータ…すまぬ…」

 

「構わねぇーよ。こいつら全然足しにならねーし」

 

 十匹近く蒐集したが、一行も埋まらない生物にヴィータはイライラしている。

 

 《夜様…手加減を…》

 

「…む……確かに……」

 

 蒐集は殺しては出来ないために頑張って手加減を考える。

 

「ヨルの剣技は強過ぎだからなぁ〜例えば…捉える系の技とか無いのか?」

 

「……あ…っ!……あれ使って…みる」

 

 ヴィータの言葉に何かを思いたのか、夜は一度夜刀を鞘に納める。

 

「……夜刀」

 

 《どうなさいました?》

 

「……僕の…剣…成れ…たよね?」

 

 《YES!私が管理を任されておりますので》

 

「う…む…氷結…のあれ…成る」

 

 《了解しました》

 

 ヴィータを後ろに下がらせ、夜は夜刀を抜きその刀の口上を述べた。

 

 ————霜天に坐せ"氷輪丸

 

 そう解号を唱えると、夜の周りに冷気が漏れ出す。

 

「ウォオオオー、カッケェー!何だその刀!」

 

 姿が変わった夜刀を見たヴィータが興奮する。

 

「これ……【氷輪丸】…僕が持つ剣の1つ……夜刀は僕が持つ全ての剣……能力…姿………成れる」

 

 夜は大量の剣を持っているが、全てに非殺傷設定など付いていないため対人戦では使えない。しかし夜刀がその姿に成る事で、剣の能力を使いながら非殺傷設定ができるのだ。

 

「その刀はどんな能力があるんだ!」

 

「丁度…あいつ…狙う……群鳥氷柱(グンチョウツララ)

 

 そう言うと、モグラの様な生物に氷柱が群鳥の様に飛んでいく。

 

 ピギァーーーー、と悲鳴を上げるモグラは、氷柱が当たった所から凍りつき最後は氷像になる。

 

「スゲェー!氷を操れるのか!」

 

「ん……氷輪丸……斬魄刀系……種類…。……その中でも……氷雪系最強だ……から」

 

 これ使い易いと、結構夜のお気に入りである。

 

「他にもあるのか?」

 

「…ほか…も使う…けど…8割…は使えない…」

 

 何でだ?とはヴィータは聞かなかった。

 一度レヴィが言っていたのだ、夜の持つ剣達はその力の強さに大体が封印されていると。

 

(ぜってぇヤバイのばっかだろうな…)

 

 そんな話をしながらモグラの蒐集を終える。

 

「も…う帰る……」

 

「…そうだなぁ………チッ全然足りねぇー」

 

「仕方ない……魔力……持った大物が……いない」

 

「そこはシグナムたちと相談だな」

 

 あまり収穫は無かったと、なるがすぐに切り替えるしかない。夜がスキマを開け、2人は八神家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 

 ______________

 

 

 _______

 

 

 

 

 

「帰ったッスよ〜」

 

「はあはあ……疲れた…」

 

 蒐集から帰った二人がリビングに入ると先に帰っていたシグナムから声が飛んでくる。

 

「む!やっと帰って来たか。予定の時間は過ぎているぞ」

 

 ソファーに座って新聞を読んでいるシグナムに、犬モードで(犬では無い!狼だ!)寝ているザフィーラ。

 

「シャマルさんが遅過ぎて…」

 

「レヴィちゃんが……速すぎる…のよ」

 

 息を切らすながら喋るシャマルに軽く呆れる。シャマルは息を戻して辺りを見回すとロリとショタが帰ってないのがわかる。

 

「あら?夜くんとヴィータちゃんはまだ帰ってないのね」

 

「まぁいい。夜達はもう着くそうだ」

 

 その言葉と同時に虚空にスキマができ、ヴィータと夜が出て来る。

 

「…やっと着いたぜ」

 

「うぅ……お風呂……入りたい」

 

「…どうしてお前達は、血塗れなんだ…」

 

「いや…ちょっと手加減が……」

 

 ヴィータは目を逸らし誤魔化す。流石に血の匂いが臭いので風呂場に催促する。

 

「ほら二人とも、このままじゃあ家が汚れちゃうからお風呂入って来なさい」

 

 そう言われ、夜は自分とヴィータを重力を操る程度の能力で床が汚れないように宙に浮きながら二人でお風呂に向かう。その2人の様子にやれやれと言うしか出てこない。

 

「相変わらず夜さんとヴィータさんは手加減が難しそうッスね」

 

「二人とも容赦が無いからな」

 

「でもヴィータちゃんがちょっと羨ましいわ〜最近夜君と仲良しだし、私なんてみんなから近づくな!って言われているのよね〜」

 

「それは自業自得だろう。ヴィータと夜は見た目的に同世代に見えるから、何かあるのだろう」

 

 夜とヴィータの仲の良さは周知の真実だった。蒐集も二人でしておりはやてを除くとヴォルケンリッターの中で一番の仲が良いのだ。

 

「まぁ見た目的に騙されたら痛い目見ますけどね…」

 

「全くその通りだな」

 

 最近のヴィータ達はと、二人が上がるまで駄弁る4人であった。

 

 

 

 

 

 ★☆☆★

 

 

 

 

「それでは今日の成果を聞こう」

 

 今のリビングにさっきまでの楽しい空間は無い。

 今日の成果…それは簡単に何も無かったでは済まない1日でも大事な時間だ。

 

「悪い。こっちはダメダメだ……魔力を持った生物が少な過ぎる」

 

「こっちもッスね。中々いないッス」

 

「お前達もか………このままでは効率が悪いな…」

 

 実際のところ闇の書は全然埋まっていなかった。まだ始めて5日だが、十ページも行かずこのままでの計算だと全然間に合わないのだ。

 

「やっぱり管理局員を狙った方が良いんじゃ……」

 

「それはダメ……今…襲ったら……後が…キツイ…ある程度集まってからの方が……良い」

 

「私も夜の意見に賛成だ。今バレると後々が面倒だ…」

 

 夜達は、一度シグナム達に管理局の事を聞いたため管理局がどの様な組織か夜は知っているのだ。時空管理局の事を説明聞いたところ、夜達が嫌いな組織だったため物凄く警戒をしているのだ。

 

「もう少し環境破壊生物を狩るッス」

 

 環境破壊生物とは、外来種や増え過ぎによるその星の生態系を破壊する生物達のことである。人を殺さないと言うはやての約束があるので最悪殺しても大丈夫な迷惑生物を狩っている。

 

「それしかなかろう」

 

 ザフィーラもそれに同調する。

 

「今日はもう一度行こう。早く666頁集めなければ!」

 

 シグナムの言葉に皆が頷く。シグナムとザフィーラ、レヴィとシャマル、夜とヴィータ、に別れて彼等はもう一度蒐集に向かう。

 

 

 

 ———彼等は傷付きながら戦い続ける

 

 

 

 はやてを助ける為に……ただそれだけの為に()()()()ながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして裏でも思う者が………

 

 

 

「ああ!また始まってしまった!」

 

 闇の中で彼女は叫ぶ

 

「また繰り返すのか!?」

 

 脳裏に絶望が浮かぶ

 

「守護騎士達よ………そして主の家族たちよ!」

 

 彼女は望むしかない

 

「お願いだ!……」

 

 ———— 止めてくれ!

 

「この悲劇を終わらせてくれ………『 』の主を救ってくれ…」

 

 

 

 ———彼女は望む。

 

 悲劇が終わる事を、家族の救いを、一番近くで見守ることしかできない彼女は望んでいた。

 

 

 

 

 

 

 ———自らが死ぬ事を

 

 

 

 

 

 






【あとがき】

夜が扱う剣達の能力はこんな感じだね。
まぁ、色々と手を加えるけどね。


感想、お気に入り、高評価等々おなしゃす。


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20話 動きだす闇

どもパッチェです。

ちょっとここ二、三日体調を崩していました。
この時期は花粉症が辛い!マジで辛い!


今回の名言はお休み




 夜達が蒐集を始めて1週間の時が経った。

 

 1週間と言う事ははやての一時退院日である。皆一度蒐集を辞め、はやての迎えに行く。

 

「もう大丈夫なのか?」

 

「動いて…大丈夫?」

 

「全然問題無しや!…心配かけたなぁ〜」

 

 はやての元気ポーズにヴィータと夜は一先ずは安堵する。はやてもはやてでこの2人に心配は掛けたくなかった。

 後ろの方では、はやて達に聞こえない所で、石田先生と藍、美鈴、シグナム、シャマルで話をしていた。

 

「一旦はやてちゃんは退院ですが、いつ麻痺が侵食するかわかりません……力不足の医者でごめんなさいね」

 

 はやて事を娘の様に思っている石田は、自分の実力の無さに不甲斐ない思いになる。

 

「そんな事はありません!石田先生は、主はやての事を支えておられます」

 

「そうですよ!はやてちゃんも先生の事は信用してます。もちろん私達も!」

 

「………そう言ってくれると助かるわ」

 

 はやての病の原因は闇の書なので、魔法を知らない石田がどんなに頑張っても治療する事は出来ないが、はやてにとって石田先生は母親の様な存在なのでヴォルケンリッター達も信用しているのだ。

 

「それじゃあはやてちゃんをよろしくね」

 

 そう言うと、新たな患者の元に行く石田先生。その後ろ姿に美鈴と藍は関心した。

 

「いい先生ですね」

 

「全くだな……まだあの様な人間がいるとは…」

 

 人間の闇の部分を知っている美鈴達は、石田の様な存在を見て感激していた。

 それと同時に————

 

「心苦しいわね……」

 

『『『…………』』』

 

 シャマルの一言が重くのしかかってくる。

 石田がどう頑張っても助けることの出来ないのを知っているので、心苦しいくなる。

 

「我々がいない時に、主はやてを一番近くで支えてくれたお方なのだ…ならばその恩を返すには、主はやてが元気になったところを見せること…」

 

「要するに、私達が頑張ってはやてちゃんを元気にすればいいのね!」

 

 シャマルの言葉にシグナムは頷く。

 

「……私はそう思っている」

 

「その通りですね!いい事を言います!」

 

「ククッ、絶対に負けられんの」

 

 四人は決意する。それはある意味勝手な約束だ。

 

 

 

 しかしそれが一番の恩返しと信じて……

 

 

 

 

 

 

 _____________________

 

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 _______

 

 

 

 

 

「うぅ……眠い…」

 

 昼の暖かい日の光が窓から差し込みシャマルの身体にあたる。そのせいか、瞼が重いシャマルは眠気を噛み殺して洗濯物を畳む。

 

 はやてが退院した事で蒐集の時間が変わったために、今までの1週間は昼と夜に行っていたが、はやてにバレるのを防ぐために1組は家に残り、他の2組が蒐集に行っていた。はやてが寝ると深夜から朝まで全員で蒐集に向かう様になった為身体を休めない時があった。

 

「なんや眠そうやなぁ〜夜更かしでもしとるんか?」

 

 

 今、家にはシャマルだけが残っており、眷属達は仕事に夜と他のヴォルケンリッターは蒐集に向かっていた。はやてには夜達の手伝いだと偽っている。

 

「え、ええ!ちょっと最近眠れなくて……」

 

「不眠症か?大丈夫なんかシャマル?」

 

「大丈夫よ!そこまでじゃ無いわ!」

 

「…そうかぁ。体は大事にしてな…」

 

 純粋に心配をするはやての心にズキッと胸の奥に痛みが走る。

 

(心が痛いわね……でも、これもはやてちゃんのため!……どれだけ私達が傷つこうと……どれだけ犠牲を払おうと……それではやてちゃんが助かるなら……私達は…………)

 

 そう決意しているシャマル………………いやシャマルだけでは無いだろう。他の皆も同じ思いだ。

 傷付き傷付けばはやてが悲しむ事は知っている。

 

 

 ————それでも生きて欲しいのだ!

 

 

 だからこそもう止まる事は出来ない

 後戻りは出来ないのだから…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう………やるしかない」

 

 はやてが寝ている深夜、シグナムが全員が揃っているリビングで呟く。

 

「……そこまでなのか?」

 

「はい………全く足りません」

 

 足りない……そう魔力が全く足りないのだ。

 闇の書の蒐集行為を始めて約3週間経っているが、百頁もいって無い。それ故に動かざるを得ない。

 

「魔力……持つ人間……蒐集するべき…」

 

「特に管理局員を蒐集した方がいいな」

 

 ザフィーラ の言葉が全てだ。管理局員は魔力を持つ者多く、シグナム達から見れば餌の塊だ。

 

 

 しかしある問題があった。

 

 

「…早すぎませんか?」

 

 

 そう早すぎる。管理局員を蒐集するという事は、蒐集をしていることがバレてしまう。口封じしようにも殺す事は出来ないので必然的に伝わってしまうと分かっていた。

 元々管理局員を襲う事は考えにあり、襲う気はあった。蒐集を始めてからはやて体調も一時安定し、レヴィもこの調子であれば正月までは持つ!と言ったために、早くとも12月になってからする気であった。

 

「確かに美鈴さんの言うとおりなんッスけど………ちょっと急いだ方がいい感じッス」

 

「どう言う事だ?」

 

「お二人にはまだ言ってないんッスけど……確かにはやてさんの体調……死相も一時期より小さいッスけど、自分の目には日に日に黒くなっている姿が見えるッス。初期より暗く、黒く……でも白も見えるんス……むぅ…説明が難しいッスねぇ」

 

「何かが止めていると言いたいのですね」

 

 そんなとこだとコクリと頷くレヴィ

 

「この情報を、踏まえた上での考えだ」

 

 考え込む二人にシグナムはちょっといいか、と意識をこちらに戻してもらう。2人にそうしてもらう必要があったからだ。それも感じてか、2人は真剣な眼差しのシグナムを見た。

 

「藍と美鈴には、はやての護衛をして欲しい」

 

「それは……今までと意味が違いますね」

 

「流石だな。やはり気づくか」

 

 はやての護衛。そこは今までと同じだ。

 しかし今から人間を蒐集…襲いに行く…そう人間だ!今までの蒐集は知識の無い生物だったためさほど問題はなかった。だが人間は生物と違う点がある。それは『知能』と『心』だ。そこには生物には無いある事が関わってくる

 

 

 

 それは………

 

 

 

「はやてを人質……それとお主達の復讐と言ったところか?」

 

「ああ……まさしくその通りだ」

 

 やはりかと難しい顔をする藍に申し訳なさそうにシグナムは首を下げた。

 

「はやてに関してはボロを出さなければバレることはねえ……問題はあたしたちなんだ」

 

「……元から管理局とは色々あって……怨みが半端じゃあないのよ」

 

「うむ。我等の所為で主はやてに危害が及ぶかもしれぬ」

 

 闇の書、と言うよりヴォルケンリッターに怨みを持っている者は多く、いつ復讐者が来てもおかしくはないのだ。

 シグナムたちも自分達に及ぶ危害ならばどうにかなるが、はやてにバレない様に蒐集活動に深夜に行なっている。その時間を狙われたらシグナム達もどうにも出来ない。故に実力者である2人に事を頼むのだ。

 

「実際この問題は我等の問題………お前達には、下手をしたら我々より危険なことはわかっている。だが二人しか頼めない………頼む!」

 

 シグナムだけではなく他のヴォルケンリッターも頭を下げる。

 

 そんな様子に藍と美鈴はやれやれと肩をすくめて、ヴォルケンリッター達の顔を上げさせる。

 

「…頭など下げる必要など無い。……全くもう少し頼れ!」

 

「そうですよ!私達は家族です!家族にお願いはしても頭を下げる必要はないのですよ。ただ一言『はやてちゃんを守ってくれ!』で良いんです!」

 

「ああ!お願いする!」

 

 二人の言葉に感化されたシグナムはただお願いをする。それが家族と言うものだから。

 

「…美鈴…藍…」

 

 二人は夜に呼ばれたことで、夜の前に立つ。

 

「…2人とも…信用…してる…はやて…守っ…て…ね」

 

 夜の言葉は二人にとって絶対の命。それが例え『死ね』と言われても、『殺せ』と言われても彼女達は絶対に実行する。それが()()()忠義なのだ。

 

「この不肖の藍。主よるの命を必ずや応えてみせます」

 

「貴方様がそう望むのであれば……はやてちゃんには指一本、傷一つ付けないことを誓いましょう」

 

 夜の前で膝をつき、敬う姿勢を見せる。

 

「ん……お願い…ね」

 

「「YES!我が主」」

 

 そう誓う二人は澄んだ瞳で夜を見る。

 

「自分は蒐集のお手伝いをするッスよ。忍者は影撃ちが得意ッスから」

 

「…うむ…レヴィ…僕の…手伝…い…」

 

 了解ッスとレヴィの返事に夜は満足するとシグナムに目を合わせで進行を進めろと視線を送る。

 

「それでは明日の夜からやろう。今日はもう寝て万全の状態にしなければ…」

 

 シグナムの言葉に皆は無言で頷くと、残りの時間で皆英気を養う。

 

 

 ———皆分かっているのだ。

 

 

 明日管理局に喧嘩を売る…それがどれ程身を削る行為か。

 

 

 

 そしてその後のことも…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして先の見えない……まだ主役達がいない戦いの幕が上がった

 

 

 

 

 

 

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 今、リンディとクロノはアースラを降り、ミッドチルダにある時空管理局の本局に来ていた。

 

「まだ、元気そうね。プレシア」

 

「当たり前よ。病魔に侵された身体でもまだ死ねないわ!可愛い娘達を見守るのだから!貴女もそのうち糖尿病になるわよ」

 

「ふふ、あの程度の甘味で糖尿病になるほどやわじゃ無いわ。それに私もクロノが結婚するまでは死ねないもの」

 

 嫌味を言いながら悪友の様な会話をする。後ろの方では子供達が、親バカ発言に顔を赤くしていた。

 

「すまない…うちの母親が」

 

「う、うん。こっちのお母さんも恥ずかしいよ…」

 

「ほんと母さんには、場所をわきまえてほしいよ」

 

 親バカどもが喋っている場所は周りにも人がいて、さっきからジロジロと見られている。そのままでは余計なことも話されそうだ。

 

「……止めに行こうか」

 

『『……うん』』

 

 そう言うと三人は止めに入る。

 もう恥ずかしい話はやめてくれと懇願の目で……。それが聞いたのか一度周囲を見回す2人の母親達。

 

「……ちょっとはしゃぎすぎたわ」

 

「……そうね。恥ずかしい」

 

 落ち着きを取り戻したリンディとプレシアは本題に入る。一応人がいない事を確認しながら。

 

「ゴホン…無駄話があったけど本題に入るわ」

 

「そうね貴女がこんな所に遊びに来る訳無いわ。大方裁判の話でしょう」

 

 今、プレシア達はPT事件の容疑者として裁判にかれられている。プレシアのした事は確かに管理局では犯罪だが同情の余地があり、リンディとクロノがちょっとだけ報告書を偽造した。プレシアも娘達を守るために上層部をおど……ゴホンゴホンお話をして現在に至る。

 

「まぁそのとおりよ。結論から言うとね…目論見通り保護観察処分で済んだわ」

 

「でしょうね!私がそうしたもの」

 

「本当に……ね。貴女の娘を守るために何人の汚職をした者が犠牲になった事か…」

 

 プレシアは裁判では不利と考え、丁度よく手元に汚職、不正をした者の資料があり、プレシア達のぎせ……ゴホンゴホン生贄に捧げたのだ。

 

「全く構わないでょう。正義を語る者が犯罪に手を染めているのだから問題も無いし損害も無いわ。あるのはそれに加担していた者達だけよ」

 

「まぁ貴女達の方がマシよね。自分の欲望だけで周りに危害を加えていたゴミムシどもより」

 

 一応管理局の中でボロクソ言っている二人の母親に、子供達は顔が真っ青になっていく。それからも愚痴が止まらない二人に諦め少し離れた所に行き他人のフリをする。

 

「ま、まぁそう言うわけだから、なのは達とは12月には会えるぞ」

 

「あ、ありがとね。私達のために色々してくれて…」

 

「そんな事はないさ。管理局にも今回の事件の発端があったんだ……実際プレシアやアリシアは被害者だからな」

 

「クロくんはいい奴だね〜〜そういえばクロくん達は地球に行ったらどうするの?」

 

「ああ、僕達も地球に引っ越してしばらくの間、休暇を取ろうと思っているよ………母さんがああだし」

 

 クロノはリンディを見ると、プレシアと愚痴会談をしており疲れが溜まっていると見える。

 

 

 しばらくの間お互いに世間話しをいていたが外は常闇の夜だ。

 

「そろそろ行くわね」

 

 リンディは時計を見ると夜八時を回っていて帰る時間だ。

 

「もうこんな時間なのね。リンディには感謝してるわ此処まで上手くいったのは貴女のおかげだから…」

 

 実際今回の裁判は賭けでもあった。プレシアは病魔に侵され長時間戦うことはもう出来ない。アリシアもプレシアの才能は受け継いだがそれは戦闘面では無い。だからこそフェイトに全ての罰が向かうのだ。それが保護観察処分でも例外では無い。管理局はいつでも人手不足だ。その中で才能があり、手頃な罪がある…管理局からしたら喉から手が出るほど欲しい存在だろう。それが管理局という組織である。

 

 しかもフェイトは美少女と言える容姿を持っている。それこそ腐った存在達が良からぬ事をするとも言えない。

 

 元からプレシア自身死にその罪ごと消し去る気であった。自分が死ぬ事で罪を全て死人に付ける。そうすればいくら管理局でも証拠のある罪を他人に押し付ける事は出来ない。敵対はしながらもリンディという本来の善という姿がある人間が間接に関わった存在がいるのだから。きっとこの悪友なら娘を助けてくれると、思って。

 

 でも、彼女はこの世に生きている。時には死んだほうががいい時もあるのだ。()()()()()()()()。それでも彼女は生きてしまった…生き延びてしまった。どっちにしろリンディ達の存在はとても大きかったと言えるが、いるといないでは歴然の差があっただろう。

 

「ふふ、お礼は翆屋のケーキで良いわよ!」

 

 そう言うリンディに、苦笑いのプレシア。しかしそれで自分命と最愛の娘達の人生が救われたのだ。それと比べればお安いものである。

 

「本当に甘いのが好きね〜」

 

「もちろんよ!糖分は私の血と肉ですから!」

 

 普通に考えて糖分で血と肉になるのはおかしいが、リンディが言うと違和感がないのは何故だろう?

 

「そ、そう………そういえば今から帰るなら気をつけなさい。最近管理局員達が襲われている事件を耳にするわ」

 

「……それは計画的犯行?」

 

「いや、不明よ。私が知っている情報は………」

 

 

 ——— 襲われている者は皆魔力を抜かれている

 

 

「という話を聞いたわ」

 

「………ッ!?」

 

「……思う事はあるでしょうけど一応頭の隅に置いておきなさい」

 

「え、ええ情報感謝するわ………」

 

 クロノを連れて帰って行くリンディは思考の渦に飲み込まれる。この話を私は知っているのだと、背筋が凍る感覚がリンディを襲う。

 

(まさか!?いや……確定の情報ではない…でももしかして……………この事件嫌な予感がするわね)

 

 そう考えるリンディは過去の出来事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…グッ…….ウゥ…!」

 

 ある人気の無い場所で一人の管理局員が痛みに耐えかねて声を上げている。その男性の直ぐそばには、鉄鎚を肩に掛けて片手に本を持っている赤い髪のおさげが目につく少女と、魔に飲み込まれそうな刃紋を感じる刀を持つ白銀と漆黒が混じるっている少年が、無表情で地に伏せている者をゴミのように見ていた。

 

 

 ヴィータと夜である。

 

 

「蒐集完了。次に行こうぜ」

 

「…ん…こいつ…もう用ない…」

 

 蒐集を終えた二人が次の獲物を探そうとすると地に伏せている男が意識を取り戻したのか夜とヴィータを睨みつける。

 

「き、貴様ら…我々時空管理局に手を出していいと思っているのか!貴様らがやっている事は正義に反す………『うるさい!』ヒィ!」

 

 ヴィータと夜に蒐集されて、転がされている管理局員がピイピイとふざけた事を喋るのでヴィータが顔の前の地面にアイゼンを突き刺す。

 

「管理局が偉そうに言ってんじゃねぇーよ!こっちの身も知らないで!」

 

「な、何だと!このッ…ガハッ!」

 

 強い衝撃が脳天に突き刺さる。

 

「…うる……さい…」

 

 今度は夜が、男の管理局員に鞘で頭を打ち気絶させる。

 

「ヨルよくやったぜ!イラつく奴だったからな!」

 

「…こんな…ヤツ…嫌い…」

 

 完全に夜は嫌悪しているようだ。ぶっちゃけ夜はこの男を斬り殺したかった。しかしはやてとの無駄な殺生はしないという約束を守る為に気絶で済ませた。

 

 それでもこの男に構う時間は勿体と言うしかしかない。

 

 《夜様。そろそろシグナムさん達との合流時間です》

 

「…む…もう…時間…残念…」

 

「チッ!こいつのせいであんまし蒐集出来なかったな」

 

 この男が無駄に粘ったせいで時間が来たとヴィータはキレる。だが、夜達は特大の大物の存在を知っていた。

 

「……後は……海鳴市…で…強い魔力感じた…ヤツ…を…する」

 

「そうだな……多い魔力を保持してれば……はやてを助けるのが早くなるしなぁ!」

 

 そう言うと二人はシグナム達との合流場所に向かった。高級な肉の匂いを漂わせている存在へと向かう為に彼等は動き続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 12月までもう少し……彼等と主人公達が出逢うのは近いのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 





【あとがき】

目がー!目がー!!痒いんじゃー!!


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21話 襲撃



どもパッチェやで

首寝違えて痛いで御座る。バイトで腰がピキピキと音が……(上も下もボロボロな奴)






 

 

 

街の光を見下ろす四人。

夜、ヴィータ、ザフィーラ、レヴィ達は空中に浮いていた。

 

「どうだヴィータ。感じるか?」

 

「…微妙だなぁ。最近ここらで大きな魔力を感じたりしたんだが………」

 

ザフィーラの問いに淡々と答えながらアイゼンを構え魔力を持つ者を探す。

その後ろではレヴィが膝に手をつき苦い表情をしていて、背中を夜にさすってもらっている。

 

「うぅ…空を飛ぶのは忍者には辛いッス……」

 

「僕……の能力……使う?」

 

「ダメッスよ!自分に使ったら夜さんの負担が増えるッスから!」

 

夜は魔法での空を飛ぶことは出来ないが、重力を操る程度の能力を持っているためその力を使い空を飛んでいる。

レヴィの場合は、『自分は忍者なんで!』と意味不明の理屈で飛んでいるが、長く飛んでいると疲れるらしい。そのために夜が能力でレヴィを使おうと提案するが、夜の能力は強力だがそのぶん燃費が悪いためレヴィは頑張って自分の力で飛ぶ。

 

夜のもう一つの能力、干渉する能力で重力操れば良いんじゃね!と思うかもしれないが、今の夜では干渉する程度の能力は二つ同時に干渉することが出来ない。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は出来ないのだ。故に重力操作の能力は欠かせないものなのだ。

 

 

「大っきな魔力反応四つあり!!」

 

 

『『『!!!?』』』

 

大きな声を上げ、その情報を素早く伝達する。

 

「ヴィータ!」

 

「分かってる……封鎖領域!」

 

ザフィーラの声に素早く結界を張ると人の気配が消え、残っているのは魔力を持つ者だけ。

 

 

 

 

 

 

「さぁ蒐集の時間だぜ」

 

 

 

その声に合わせて4つの影が動き出した。

 

 

 

 

 

 

☆☆★☆

 

 

 

 

高町家に集まり少年少女達は机にノートを開いて、問題を解いていた。

 

「ほら国語の勉強するわよ」

 

「うにゃ〜〜!国語は嫌なのーー!」

 

「ダメだよ〜なのはちゃん国語苦手でしょう」

 

「俺らは勉強遅れてるんだからしなきゃ置いていかれるぞ」

 

彼等はジュエルシード集めのせいで、授業についていけない者がいる為、みんなで勉強会をしていた。

 

「フェイトとアリシアもそろそろこっちに来るんだから、頭の悪い姿は見せれないわよ!」

 

アリサの一言に気合が入ったのかなのはは机に向かっていく。

 

「フェイトちゃん達にそんな姿見せれないの!」

 

その覚悟は素晴らしいのだが、すぐさま儚く散る運命だった。

 

 

 

《警告!緊急事態です!結界が貼られました》

 

 

 

世界から音が消え、複数のデバイスの機械声のみが聞こえる。

 

 

「ど、どう言うこと?」

 

「落ち着きなさいすずか」

 

「一体誰が…?」

 

 

少女三人は少し現状を理解できないでいたが、この場で唯一の男子である誠は自分の相棒(デバイス)であるグラウディウスに今の現状を把握する為にすぐ様問いかけた。

 

「ディウス一体何が起こっている?」

 

《数名此方に近づいています》

 

ディウスの言葉に思考を回転させて、その近づいて来ている数名が何が目的か考える。

 

「三人とも外に出るぞ!」

 

この場で唯一冷静な誠の指示で四人は外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

四人はビルの屋上で佇んでいる。

誠の指示で何処から来ても対応ができる場所であり、4人であれば四方を観れるからだ。

 

「なのは、SOS信号は出したか?」

 

「う、うん。一応クロノ君に教えてもらったとうり…」

 

なのは達は、一応民間協力者なのでクロノ達に何かあったらSOS信号を出せ、と言われていた。まさか使う時が来るとは思ってなかったが……。

 

「……ダメね。念話が使えないわ」

 

「……うん。全然ダメだね」

 

 

アリサとすずかの二人は結界が貼られた時から使えない念話の念の為に確認していた。

 

「できるだけ固まって動こう!念話が使えない以上近くで確認を……」

 

誠が喋っていたその時機械音が鳴り響く。

 

 

《来ます!誘導弾です!》

 

 

 

赤い光の弾が四つそれぞれに向かって来る。レイジングハートの警告にシールドを四人は貼るが、ピキピキとシールドに亀裂が入り始める。

 

「グッ!…威力が!」

 

「うっ…、シールドがぁ…」

 

「うぅ……」

 

「………ヤバイ」

 

誘導弾の威力に押されていた彼等は気付かなかった。

 

 

 

 

後ろから近付く紅い存在に……

 

 

 

 

「———【テートリヒ・シュラーク】!」

 

「え?シ、シールド!」

 

遅れてシールドを重ねるように張ったが振り下ろされた鉄鎚に押されなのはは隣のビルに飛ばされる。

 

 

『『『なのはッ!?』』』

 

 

「そっち……気にしてる暇……無い【氷輪丸】」

 

「ちょっと縛られてもらっうッスよ!忍法【千影手】」

 

なのはの心配をする暇は無く、誠は氷龍に飛ばされ、アリサとすずかは影の手によってその場で縛られる。突如と現れる3つの影。

 

「あたしはあの茶髪をやる!」

 

「………僕…男の方……相手する」

 

「自分はそこの二人ッスね〜」

 

ヴィータと夜はお互い飛ばした方角に向かう。

 

レヴィ「さぁ、自分相手にどれだけ持つッスかね〜〜」

 

 

この場に残ったのは影に縛られ苦渋の顔をしているアリサとすずかに、完全に()()のレヴィだけだ。

 

 

 

 

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ヴィータに飛ばされたなのはは瞬時に機転をきかせた対応をした。

 

「レイジングハート!セットアップ」

 

そう言うとなのはの衣装が変わり地面に落ちる前に空中にとどまる。目の前には赤い2つのおさげが特徴的な自分と歳が変わらない少女が自分を睨みつけている。

 

「どこの子か知らないけど……いきなり襲われる覚えはないんだけど、一体何でこんなことをするの!」

 

「うぉおおおおおお!」

 

なのはの話を聞かず完全に無視してヴィータは攻撃を仕掛ける。

 

「【シュワルベフリーゲン】」

 

指の間に鉄球を作り出し、アイゼンで打ち出す。

 

「…ッ!?全く話ぐらい聞いてよ!【ディバインシューター】」

 

なのはも負けじと誘導弾を打ち出し鉄球にぶつけ相殺する。

 

「チッ!やろう!」

 

「あんまりなめないで!」

 

なのはは指を"クイッ!とすると、ヴィータの後ろ側のビルからディバインシューターが二つ向かってくる。反応が遅れたヴィータは何とか避け用とするが、

 

「しまっ……!?」

 

一つは避けたヴィータだが、もう一つが掠めた。

 

 

 

 

 

いや———

 

 

 

 

 

 

————当たってしまった。

 

 

「……この野郎!あたしの帽子を!」

 

 

ディバインシューターが掠めた場所は頭付近。ヴィータの帽子ははやてが作り出し、ヴィータが好きなのろいウサギが帽子に付いていたために気に入っていた。

 

その帽子がディバインシューターによって破れてしまった。

 

その行為がヴィータの尾を踏み抜く引き金となってしまったのだ。

 

「アイゼン!カートリッジ!」

 

《装填。ラケーテンフォルム》

 

アイゼンがラケーテンフォルムに変わり、カートリッジによって後部に付いている部分から魔力を噴射させ、ヴィータは身体を回転し遠心力を加えて鉄鎚を振り下ろす。

 

「くらいやがれ!【ラケーテンハンマー】!」

 

「し、シールド!」

 

振り下ろされた鉄鎚にシールドを張るが、圧倒的な破壊の力の前に為す術も無くビルに吹き飛ばされる。

 

あまりにも強い攻撃にレイジングハートはボロボロになり、バリアジャケットも解ける。

 

(うぅ……なんて強い攻撃……衝撃でバリアジャケットがぁ……)

 

そんな事はよそにヴィータもビルの仲に入ってくる。

 

「これで……終わりだ!」

 

アイゼンを振り上げトドメを刺そうとした瞬間———

 

 

 

 

———ドガッン!

 

 

 

 

大きな爆音がなり、なのはの隣に人が転がり飛んでくる。想定外の音に思わず二人も爆音のなった方を見る。

 

 

「誠く……ん!」

 

「グゥ……」

 

なのはの視線の先には、 身体中が傷だらけになっている誠が倒れていた。

 

「ヴィータ……ごめん……離すつ…もりがこっ……ちに打っちゃた」

 

誠を追うように夜もビルの中に入ってきた。

 

「おいおいちょっとやり過ぎじゃないか?」

 

「…いろ…い…ろあった」

 

話は、なのはとヴィータが戦闘を開始した時間に遡る。

 

 

 

 

_____________________

 

 

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_______

 

 

 

 

「クッ……ディウス、セットアップ!」

 

《了解いたしました。誠!》

 

氷龍に飛ばされる誠は、セットアップの魔力で何とか氷龍を砕く。

 

「何て攻撃だよ!プレシアの雷が可愛く見えるぞ…」

 

何とか氷龍を砕いたが誠は空中で早くも息を切らし、肩で息をしている。

 

「…見つけた……大人しく…やられる」

 

誠の前には着物姿の夜が夜刀を構えていた。

 

「そう簡単にはやられねぇーよ!」

 

そう言う誠だが、内心は焦っていた。

 

(ヤベェーな……あの三人の中で一番強え。こりゃあプレシアより上かもしれねぇ……この少女何者だ?…まずは少しでも情報を…)

 

夜の外見に勘違いをしているが素早く思考を回転させ、情報を得ることが先決と考える。

 

「一体俺たちに何用かな……嬢ちゃん」

 

夜の背丈を見て年下と思った誠はちゃん付けで呼ぶ。すると夜の目から光が消える。

 

「僕………男」

 

「…………え?お、男!?少女じゃ無くて、男!!?」

 

「ん。男……それに…そんな年…齢低くな……い!()()()()()()()()()()()()()()()

 

(お、俺と同い年じゃねぇーかぁ!しかもあの容姿で男だと!完全に男の娘じゃ……何て格好をしてると思ったら)

 

夜のバリアジャケットは着物姿であり、ちょっとはだけており肩の鎖骨部分と胸元が少し見えているのだ。ある意味で目に毒だ。

 

「その……ごめん。……だが何が目的だ!」

 

一度は謝るが全力で話を変え本筋に戻す。

 

「…お前に…教える事は無い」

 

再び夜刀を正面に構え嫌な威圧が誠を襲う。

 

「…夜刀…」

 

《いつでも》

 

(何だ?一体何を?)

 

 

———散れ【千本桜】

 

 

その言葉と同時に夜刀の刀身が消える。

 

「なっ!?刀身が消え………(ズシャ!)……はっ?」

 

誠が認識した時にはすでに身体中が傷だらけになっていた。訳がわからないと脳が混乱を起こすが誠の目は確かに捉えていた。

 

「う…ぐッ……一体何が!?気付けば身体中が傷だらけに……いや、一瞬だが桜の花びらが………まさか刀身が桜の花びらに!?)

 

「安心する…殺しはしない……約束だから………でも眠ってもらう!」

 

もう一度刀身が無い夜刀を振る。

 

「ぐああああああ!」

 

視えない斬撃と衝撃が誠を襲い地面に叩きつけられる。

 

《大丈夫ですか!?誠!》

 

「…ああ……ゲホッ…一応なぁ……でもカラクリは分かった!今度はこっちの番だ!」

 

痛む身体を無理矢理動かし、ディウスを構えて夜の方に駆け出す。

 

「何が分かったのかは知らないけど……容赦はしない」

 

夜はまた同じ攻撃をするが、

 

「同じ手が効くか!【ディバインシューター】」

 

四つの魔力弾を自分の周囲に生成した事で光ができ、誠の目には桜吹雪が見えていた。

その見えている桜吹雪に二つの魔力弾を当て相殺する。

 

(ビンゴ!やっぱりさっきの桜はこれか!光がある所でしか見えなかったもんな)

 

誠はさっきの攻撃を受けた事で一瞬光が当たっているところで桜の花びらが見えたためにカラクリが分かったのだ。

 

「…驚いた……こんな…早く気づいた……ヤツ……久々」

 

「これで決まりだ!」

 

夜が驚いている間に、誠は懐近くまで来ており、

 

 

(この距離なら決まる!あと数センチ!)

 

 

 

ディウスを振れば当たる!………そう思っていた。

 

 

 

ここで誠の事を話そう。

直江誠は遠距離戦ならなのはに負けるが、近距離戦なら原作組四人より強かった。彼は昔から人外に死ぬ思いで修行をさせられたために身体能力は一般人を軽く超えていた。レベル的になのはの兄"恭弥と互角と言ってもいい。その為に彼には自信があった。

 

 

自分のクロスレンジの距離なら負けないと……それは油断では無く真実———

 

 

 

相手が【剣神】でなければ……

 

 

 

「———ダメ……その速さ……数センチ……遅い…!」

 

 

———ガキンッ!!

 

 

「………は?」

 

 

大きな金属音と共に身体のバランスは崩れている。

更にいつの間にか夜の剣の刀身が戻っており、ディウスが弾かれていた

 

 

(え、………え?何で刀身が戻っている?何で俺は体勢を崩されているんだ?)

 

 

理解不能と脳が一瞬考えることを辞めてしまう。それは人間の癖でもあり、最大の隙を見せる戦場での致命的なミスだ。

 

「僕……攻撃…剣…だけ…違う——【重力球】」

 

夜と誠の間に重力球が出現し、視線と言う名の夜の合図で———

 

 

「———飛ん…でけ」

 

「ブバァ!?」

 

重力球によって顔を強打した誠はカエルが潰れた時の声を出し、クルクルと回転しながら飛んで行く。

 

その様子を見た夜は満足そうに夜刀を納める。

 

「おー………よく……飛ぶ」

 

《あ、あの夜様、飛んで行った方向がヴィータさんのいる位置なんですが……てかあの結構ヤバい勢いなんですが…》

 

焦った声の夜刀の言葉に夜は誠が飛んで行った方向を眺めて一時沈黙する。

 

「ん…………やりすぎた?」

 

《YES、その通りかと…》

 

「今すぐ……ヴィータの……所に行く……!」

 

夜刀の指摘に慌てた様子の夜は急いでヴィータの方向に行った。

 

 

 

———夜は天然おちゃめさんである。

 

 

 

 

 

 

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場面は戻り、なのは達はピンチである事に変わりはなかった。

 

(ヤ…バイ……俺もなのはも…限界…ここままじゃ……)

 

(うぅ……ダメなの…誠くんも傷だらけになって…)

 

ヴィータと夜の攻撃で意識が朦朧として来ており、まともに戦うどころか立つことさえも出来そうにない。

 

「ヴィータ……蒐集する……闇の書…貸して」

 

「ほれ!そっちは任せたぞ!」

 

夜はヴィータから闇の書を借りれば、干渉する能力でリンカーコアに干渉し蒐集が出来るようになっている。

 

ヴィータが投げた闇の書を夜は受け取ると転がっている誠の前に行く。

 

「ちょっと痛いだけ…死にはしない」

 

何とか動こうとする誠だが、夜は誠の範囲だけGを変え重くして動かないようにする。

 

(…グッ…動け…ね…)

 

「…………怨むなら怨んでいいから…(ボソ」

 

(………え?)

 

誠にしか聞こえない声が聞こえどう言う事かと考えようと思考が働きかけるが……

 

 

 

「———闇の書"蒐集」

 

 

 

(があああああああ!?何だこれ!?魔力が…)

 

時間は1分にも満たないがあまりにも激痛に意識が持っていかれそうになる。それと同時にパラパラとページがめくれる闇の書は大量に頁が埋まっていく。

 

「……蒐集終了…ヴィータ……結構…埋まった」

 

夜も闇の書をヴィータに投げ返す。その中身を見たヴィータは今までの何倍もの魔力の埋まり具合に歓喜の声をあげる。

 

「おっ!めっちゃ埋まってる!これで早く助けられる!!」

 

 

一方でこの様子を見ていたなのはは己の力の無さに悔やみながらも、まだ動けると足を引きずりながらレイジングハートを取りに向かう。

 

(誠くんが!助けなきゃ……でも身体が重い!?)

 

無理矢理体を動かし手から離れたレインジングハートを拾ったが急に身体が重くなる。遂にはなのはも限界とばかりに地に伏せた。

 

「ヴィータ……こっち……蒐集する」

 

「わり〜なヨル。じゃ茶髪の蒐集をするぜ!…でもここまで意識があると面倒だな」

 

そう思ったヴィータはアイゼンを振り上げた。

 

「…悪いな……」

 

その一言と同時にアイゼンを振り下ろした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

響いたのはなのはの間抜けそうな声だけだった。

 

「「ッ!?」」

 

目の前の光景に驚きを隠せない夜とヴィータ。なのはもその存在には目を見開くしかない。

 

 

「大丈夫なのは……助けに来たよ!」

 

 

黒い姿の金色の死神がなのはを守っていた。

 

 

 

 

 




【あとがき】

ウエーイ!!最近リア友が今更モンストにハマって手伝いをさせられてます。ちゅかれたよ( ̄▽ ̄)

あと野球ばっか観てます。頑張れホークス!!


感想、評価、等々よろで〜〜す。



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22話 援軍



どもパッチェです。

感想でもらったんですけど、リメイクと言っても丸ごと話が変わったりはしないと思います。またに新しい話は射し込むかもしれませんが。
この作品は旧を基として、付け加えたり、変な所を消したりしてるぐらいです。たま〜〜〜〜に結構変えますが……。
まぁ、一番は台本形式を無くすのが目的ですね。そのついでに編集している感じです。ご容赦ください。






 

 

 

「助けに来たよ…」

 

 金色の死神ことフェイトの登場にヴィータと夜は、薄っすらと額に汗が滲んでいる。かなり焦っているのだ。だが、それを見せてはならない。ポーカーフェイスで余裕を持って対処している風に見せるしか無い。

 

 《ヨルどうする?もう一人いたが……このまま戦るか?》

 

 《……レヴィ……所行く》

 

 《…そうだな…此処で深追いはいけねえーな。そろそろ時間だし……》

 

 今貼ってある結界はヴィータがした物なので全く問題無く二人は念話で話す。

 ヴィータと夜は歴戦の戦士だ。引き際は分かっている。言いたくは無いがこのまま戦っても苦戦を強いられることは間違いなかった。

 

 

 それに———

 

 

「もう……一人…いる」

 

 夜は視線をなのはから誠が転がっている場所に向ける。

 

 

 そこには独特な世界観のある茶色い服を着た、ショートカットに似た髪型の男の娘が誠の背に手を置いて光を当てていた。

 

「大丈夫かい、誠」

 

 フェレットことユーノ・スクライアが誠に治療魔法をかけていた。

 

「…ユーノ…来てくれたか」

 

「うん。クロノもアースラの整備を中止してこっちに来てるよ」

 

 ユーノ達はなのはのSOS信号に気付くとすぐ様準備を終え急いで、この地球に来ていた。

 

「それより動ける?」

 

「すまん……魔力が抜かれて動けそうに無い」

 

 誠の身体はボロボロで蒐集を受けた痛みと魔力不足で動けなかった。これは直ぐにアースラの治療をしないといけないとユーノも気づくと誠の身体の下の地に魔法陣を創り出す。

 

「すぐに転移魔法でアースラに送るよ」

 

 ここで離脱するのは誠としては嫌だったが、ここにいても自分が足手まといになるのは分かっていたので、必要な情報を伝える事を最大の貢献と考える。

 

「ユーノ……アリサとすずかの所に行け…あいつらじゃ多分勝てねぇ」

 

「分かった。すぐに向かうよ」

 

「じゃあ……頼んだ」

 

 その言葉と共に誠は光に包まれて転移魔法でアースラに行った。

 

 

 

 

 _____________________

 

 

 ______________

 

 

 _______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一人…逃げたか」

 

「彼奴……もう蒐集した…問題ない…」

 

 二人はそう呟きながら目の前のフェイトと睨み合う。夜は気付いてはいたがユーノはわざと見逃した。それは誠への情けでもあるが、一番は目の前の少女の戦闘力の高さにある。

 

「民間人に魔法攻撃…軽犯罪ではすまない罪だ!」

 

 そう言うフェイトをヴィータは睨みつけ、何者かと怒鳴りつける。

 

「何だテメェー!時空管理局か?」

 

「時空管理局嘱託魔導士フェイト・テスタロッサ、抵抗しなければ、君達には弁護の機会がある。投降するなら大人しく武装を解除して!」

 

 バルディッシュは構えて威嚇の姿を見せつけるがそれで怯む2人では無い。

 

「誰がするかよ!!ヨル!」

 

「……ん!……そんなこと……する…わけ……無い」

 

 二人は後ろに跳びながら、戦線を離脱する。

 

「逃がさない、ユーノ!なのはをお願い!」

 

 フェイトはそう言葉を残しヴィータと夜を追って行く。

 

 

 

 

「さ、なのはも治療するよ」

 

 残ったユーノはなのはの治療を施す。なのはは一度ミットチルダに戻っていた久しぶりに会う友の顔を見て安心感を持つ。

 

「ありがとユーノくん……でもどうして此処に?」

 

「フェイト達の裁判が終えなのは達に連絡しようとしたら繋がらず、SOS信号が出ていたからね。フェイトだけじゃ無くアルフも急いで来たんだ。………よし!治療終わり」

 

「アルフさんも?」

 

 治療を終え何とか様々な疑問を持ちながらもなのはは立ち上がる。ユーノはアリサ達の所に向かうためこの場から離れて行く。

 

「ごめん、なのは!僕は今からアリサ達の方向に向かうよ!一人でも大丈夫?」

 

「う、うん大丈夫だよ。アリサちゃんとすずかちゃんは向こうだよ」

 

「向こうだね。一応結界を張っとくね【ラウンドガーター・エクステンド】」

 

 結界を張ったユーノはなのはが指をさす方角に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 

 ______________

 

 

 _______

 

 

 

 

 一方その頃アースラでは、大慌てで分析、解析班のメンバー達が空中に浮かぶ空間モニターに現場の結界外の光景を映しながら何台もあるキーボードを弾いている。

 

「まだ……結界は解析できないのか?」

 

「ごめん…この術式ミッドチルダ式じゃ無くて…まだ出来ない」

 

 神妙な面持ちで空間モニターを見ているのは、アースラの執務官を務める少年クロノと、通信主任兼執務官補佐を務める"エイミィ・リミエッタ'だ。

 

 艦長席にはリンディと隣に座るプレシアが静かにモニターを見ていた。

 

「どうかしら…進展はある?」

 

「いえ……全く無いわ。そっちはどうなの?」

 

「…アリシアが頑張ってくれているけど……ダメね」

 

 そう話すプレシアとリンディ。

 アリシアは戦う事は出来ないが、プレシアの娘だけあってハッキングや解析はお手の物だった。しかしそのアリシアでも未知なるベルカの力をすぐに解析するのは不可能であった。

 

「何とか…現場の状況さえ分かればいいのに…」

 

 

 そう呟いた時、アースラに転移魔法陣が現れ、その中では誠が傷だらけで倒れていた。

 

「誠!?艦長急いで救護班を!」

 

 クロノは急いで誠の前に側に行くと小さな声が耳に入る。

 

「……大丈夫だ…ユーノの治療で何とか意識は保てる」

 

「そうか………すまない、向こうで一体何があった?」

 

 クロノもすぐに誠をベットに寝かせたいが状況が状況なので、少しでも中の出来事を知りたかった。

 クロノの言いたい事を理解している誠はさっきまでの出来事を話した。

 

 

 

 その話を聞いたクロノ達は驚愕するしかなかった。

 

 

「嘘!なのはちゃんも戦闘不能!?」

 

「……その話を聞くと、アリサとすずかもヤバイな」

 

 皆の実力を知っているがために、此処まで追い込まれている現状に驚きが隠せなかった。

 

「…全く歯が立たなかった……強いってもんじゃねぇ」

 

 珍しく悔しがる誠の一言に、プレシアの目の鋭さが増していく。

 

「リンディ話があるわ」

 

「貴女…まさか!」

 

 何もしないで観ている訳が無いと言わんばかりに力強く杖を握っていた。此方も動き出した。

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

 

 

 

 途中からアルフも加わり、ヴィータ、夜、フェイト、アルフの戦闘はお互いに攻め切れなかった。

 

「はぁあああああ!」

 

 フェイトは掛け声と共にバルディッシュをヴィータに振り下ろし、それをヴィータは何とかアイゼンで防ぐ。

 

(クソ!潰すだけなら簡単なのに………でもそれじゃあ意味がねぇーんだ!……あとカードリッチ、…ニ発……やれっか?ヨルも苦戦してやがる)

 

 横目に夜を見るが、ヴィータの目には手こずっているというより完全に押されていると感じていた。

 

「【重力球!】」

 

「ふん!あたいには効かないよ!」

 

 夜が生成した野球ボール程度の重力球をアルフは拳一つで殴る。

 

(……ん…キツ…イ……手に…力が…)

 

 ヴィータは倒してはいけない!と言う思いで全力が出せずにいた。一方で夜は先程から重力による攻撃をメインで繰り出しているが全く効いていない。もう時間が()()()()()のだ。

 

 

 

 そのためか————

 

 

 

「【バインド】」

 

「しまったッ!……この野郎、離しやがれ!」

 

 ヴィータは一瞬の隙を突かれ空中に光の輪で固定された。

 

「……ヴィー……タ!?」

 

 夜はバインドに繋がれたヴィータを助けに行こうとしてしまった。だが、一瞬空中でフラついてしまう。

 

「隙だらけだよ!【チェーンバインド】」

 

「……む!?やって……しまった…」

 

 一瞬だけアルフから目線を外してしまったため、アルフの攻撃を避けきれずに体にチェーンがグルグルと巻き付いた。

 

「ぐう!動けねぇ!?」

 

「うぅ……動け…ない」

 

 二人は完全に動きを封じられ、マジでピンチになる。ガチャガチャと足掻くが全く動けない。

 

「これで終わりです。あなた達の目的を教えてください…」

 

「誰がお前なんかに!」

 

 

 フェイトにバルディッシュを向けられ、そう言うヴィータだが、

 

 《ヨ、ヨル!?どうするこのままじゃ、はやての事がバレちまう!》

 

 内心めっちゃ焦っていた。

 

 《うむ。確か…にはやて……事がバレ……たら不味い……でも——》

 

 

 ————もう来る

 

 

 《へぇ!成る程確かにこのままだったらだなぁ!》

 

 

 ある気配を感じて不敵な笑いを浮かべたヴィータにアルフは動物の本能で何かを感じ取る。

 

(何であいつらは焦って無い?この状況で何かが出来るわけが……まさか!)

 

 何かに気づいたアルフは周囲を見渡し、

 

「フェイト!何かがおかしい!気をつけ……」

 

 

 そう言いかけた瞬間であった。

 

 

「はあああああああ!———【紫電一閃】」

 

「え?キャアアアアアーッ!」

 

 剣の騎士こと烈火の将シグナムが、レヴァンティンに炎を纏わせ振り下ろし、防御しきれなかったフェイトはバルディッシュを切断されビルに衝突する。

 

「フェイーーーグハッ!」

 

「隙だらけだぞ」

 

 フェイトがやられたために気がとられたアルフはザフィーラの蹴りをモロに食らった。それでもアルフは耐えきり、目の前の男に睨みを利かす。

 

「邪魔だよ!どきな!痛い目見たくないだろ」

 

「ふん!貴様は此処でやられてもらう」

 

『『………』』

 

『お前がなぁ!』

 

 

 

 沈黙も後お互いに拳をぶつけて殴り合いになる。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 フェイトをぶっ飛ばしたシグナムは、レヴァンティンでバインドに切れ込みを入れヴィータを縛っていたバインドが壊れる。

 

「お前達が此処までやられるなんてどうした?」

 

「うるせ!此処から逆転したんだよ!なぁヨル!」

 

「ん!此処……から…だった」

 

 ちょっと強がる二人に苦笑し、肩で息をしているヴィータに内心来るのが遅くなった事を後悔する。

 

「ふふ、それはすまなかったなぁ……む!もう一人来たようだぞ」

 

 シグナムの目線の先には、レヴィが空を翔けながらこちらに向かっていている。

 

「すいません!ちょっと遅れたッス。今助けます夜さん」

 

 そう言って腰刀(短刀)でバインドを斬る。

 

「…ん……ありがとレヴィ。……レヴィはもう終…わったの?」

 

 夜は、レヴィが相手にしていたアリサとすずかの事を聞くが、レヴィは一瞬顔を歪める

 

「……邪魔者が入ったのでこっちに来たんッスよ」

 

 いや〜、と頭をかきならが言うレヴィに、意地悪い笑みをヴィータは浮かべる。

 

「逃げたんだなあ」

 

「ああ、逃げたなあ」

 

「……レヴィ…逃げた?」

 

「違うんですよ!戦略的撤退ッス!」

 

 それを逃げたと言うのだが断固として認めないレヴィ。まぁ、実際の所は三人を相手するのが面倒いので夜のピンチと感じて飛んで来たのだがそれは心の内に留めた。それに彼女自身元々相手にする気は全く無かったのだから。

 

「今は、さっき飛んで行った子の助けにでも行ってると思うッスよ」

 

「……そうか」

 

 4人は殴り合いをしているザフィーラを横目に観て、和気藹々の雰囲気が消えて無くなる。

 

 

 

 

 残ったのは———圧倒的な敵意のみ

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 シグナムに飛ばされたフェイトは、ボロボロのバリアジャケットを修復しながらアリサ達に傷を治してもらっていた。

 

「ごめん…助かった、ありがとうアリサ、すずか、ユーノ」

 

「お礼なんていいわ。友達を助けるのは当たり前の事よ」

 

「そうだよ!フェイトちゃんは友達なんだからね」

 

「あ、ありがとう二人共」(//∇//)

 

 美しい友情を見せる三人だが、今はそんな事を考えている暇は無い。

 

「みんな仲良いことはいいけど、今はこの状況の打開策を考えないと…」

 

 ユーノの一言にさっきまでのほんわかな空気は変わり、真面目な顔付きになる。

 

「バルディッシュは壊れているけど……フェイトちゃん戦える?」

 

「ううん、本体が無事だから大丈夫」

 

 バルディッシュを手に取ると、自動修復機能で折れた所が元に戻る。おお!とびっくりしながらもアリサは初めてのフェイトとの共闘に喜びを感じる。

 

「これで一緒に戦えるわね。あたしは、あの忍者を相手するわ!あの忍者全くやる気がなかったわ!絶対やっつけてやる」

 

 それにはフェイトは何も文句は無いとばかりに、フェイトは自分を叩きつけたピンク髪の剣士しか狙っていなかった。

 

「私もピンクの剣士としたいから……」

 

「じゃあ私は、鉄槌を持つ子だね!ユーノ君は、着物の少女の相手をお願い」

 

 此処でも夜の性別は勘違いされていた。

 

「はぁ……言い出したら君達は聞かないでしょ……それに彼女には誠がやられたからね……そのお返しもしなきゃ!」

 

 皆、各々自分のデバイスを構え

 

「それじゃあ行こう!此処からが………本番」

 

 子供とは思えない闘志に満ちた目をする者達。

 

 

 

 

 

 

 

『『さぁ、いく()!』』

 

 

 

 

 

 

 

 ————少年少女達の二回戦が始まった。

 

 

 

 

 

 





【あとがき】

ああっ!?もう四月!?春休みが終わるよ………。


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23話 神たる一刀と砲撃

どもパッチェです

特に………ありません(ドヤっ


 

 シグナムとフェイトの戦闘は常人には、見えない速度で行われていた。

 

(…速い!そしてなんて鋭い剣!)

 

(ふむ、速いな。見た目からの年齢を考えれば凄まじい才能だな…)

 

 二人の頭の中にはロングレンジの考えは無く、互いにクロスレンジの距離での勝負を挑む。

 

「はあっ!」

 

「ふっ!」

 

 バルディッシュとレヴァンティンが打つかり合い火花が散る。そこから2人は高速機動で打ち合うが経験の差でフェイトが押され始める。

 

(攻め切れない…ッ!私の攻撃を的確に捌いてくる!……悔しいけど技術は私より上)

 

 フェイトはシグナムの剣技に尊敬する思いと、そこについていけない遣る瀬無い思いがあった。

 

 逆にシグナムも尊敬の念はあった。

 

(素晴らしいな……ベルカの時代でもいなかった、この歳で私の剣技を受けれる者がいるとは、夜もそうだが世界は広い。あれ()は異常だが……しかし……残念だ。この時ではなければ………いや、叶う事のないことは考えるものでは無いな…)

 

 

 

 ———シグナムは認めた。

 

 

 この少女は自分に届きうる戦士だと!そして出逢いが違ければ…………。

 

 

 

 一度、戦闘が止まり硬直状態に入った。お互いに睨み合う中シグナムは一度レヴァンティンを構え直し騎士として好敵手に名乗らずにはいられなかった。

 

「私はベルカの騎士ヴォルケンリッターの一人、烈火の将シグナム。そして我が剣レヴァンティン。騎士として貴殿の名を聞こう!」

 

 自らの口上を言う。フェイトもシグナムに応えるようにバルディッシュを構える。

 

「私は、時空管理局嘱託魔導士フェイト・テスタロッサ。この子はバルディッシュ」

 

「テスタロッサか…いい名だ。レヴァンティン……私の甲冑を」

 

 《【パンツァーガイスト】》

 

 フェイトの名を聞いたシグナムはピンク色の魔力を己に纏う。

 

「いけない!【フォトンランサー】」

 

 シグナムの魔力が上がったことを感じたフェイトは、自分の周囲に魔力で出来た槍を形成し、シグナムに向かって発射するが……。

 

「う、嘘!?」

 

 フェイトは目の前の出来事が信じられなかった。フォトンランサーはシグナムに向かって行ったが、全く動かないシグナムの甲冑に弾かれたのだ。

 

 シグナム「……確かにお前は強いだろう……ただそれはミッドの魔導士ならの話。私を倒すには経験が足りん…それに………」

 

 シグナムはカードリッチを入れ、この一刀に魂を込めた。

 

「1対1なら我らベルカの騎士にもう負けは無い!そして————我等家族に負けは無い!」

 

 

「ぐっ!?キャアアアアッ!!?」

 

 

 フェイトは、シグナムの紫電一閃をバルディッシュで防御してしまい、バルディッシュの本体コアがボロボロに傷付き、フェイト自身もビルに打ち付けられる。

 

 

 

「我等は負ける訳にはいかないのだ!」

 

 

 

 その覚悟と思いは誰にも砕かれはしないのだから。

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

 

 

 

 

 別の所では2人の男の娘達が戦っていた。しかしユーノと夜の戦いは一方的なものであった。

 

「重力よ。行け」

 

「く、………お、重い!」

 

 魔法陣を使用した防御をとるユーノだが、夜の重力球は自分自身の魔力が練りこまれた物であり、6個の重力球を操る夜に押されていた。

 

「…いい加減…倒れる。殺しは……しないから」

 

「それは無理な相談だね。こっちは誠がやられているから、仇もしなきゃいけないし」

 

「お前……僕に勝てない……分かってる…よ…ね?」

 

「それでも時間稼ぎぐらいにはなるでしょ。僕の仲間が勝つまで持てば……(ゾク!」

 

(な、何だ!?今の寒気は!)

 

 ユーノは身体に寒気を感じ、口を閉じる。頭で本能で感じ取ってしまったのだ………。

 

 

 ————これ以上は不味い……と。

 

 

 

「………勝つまで…時間……稼ぎ?そんな事……ある訳ない……でしょ?……僕…達が……」

 

 

 

 ————負けるはずないのだから

 

 

 

 夜は俗に言う『縮地』の1つ『虚空瞬動』を使い、空を空間を蹴りユーノの後ろ側に行く。

 

 

 

 ————【小さく重く黒い洞(スパーライオン・ミクロン・バリュ・メラン】

 

 

 

「なぁ!消え……………だッガハッ!!?」

 

 

 夜の動きを感知出来ず、肩に手を置かれた場所からまるでブラックホールの様な円が弾けユーノを地面に叩きつける。

 元々この技は弾けた場所が吹き飛ぶ技なのだが、それでは殺してしまうので衝撃が生まれる様にしていた。

 

 

 

 

「…僕達は負ける…訳にはいかな…い……絶対……に!」

 

 

 1人の少女の哀しむ姿をもう見たくない…ただその思いを重ねて…。

 

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

 

 

 

 他の者達は一対一だがこっちは二対二の戦闘になっていた。だからと言って実力の差が縮まる訳ではない。

 

 

「はあっはあっ……全然…攻撃が…当たらない」

 

「い、威力が殺せない……」

 

 二対二と言っても主な相手は変わっておらず、アリサとレヴィ、ヴィータとすずかで戦っている。更に先程から立ち回りがレヴィに邪魔させ上手く2人で攻めきれない。

 

「ほらほら休んでたらダメッスよ!」

 

 レヴィは短刀を逆手持ちで持っており、アリサの背中側からまるで暗殺の様な攻撃を仕掛けた。

 

「くっ!」

 

 何とか転がりながら避けるとすぐに態勢を丈直し反撃に出る。

 

「アイズ!【フレイムモード】」

 

 《OKだぜ!アリサ!》

 

 フレイムアイズの声と同時にアリサの大剣にまるで蛇の様な炎がグルグルと巻きつく。

 

「はあああああ!【炎龍衝波】」

 

 振り下ろした大剣から炎龍がレヴィに向かって行くが、彼女からしたら亀の様な遅さだと言う。

 

「遅いッス!そんなんじゃ忍者に当たらないッスよ【影糸縛鎖】」

 

 アリサの攻撃を空中を()()()()()避け、影の手がアリサに巻きつく。

 

「な、何これ!?なんで空中で影が!?」

 

「今は夜……夜の時間は自分の時間……影使いにとって夜とは最高の相性ッスから(パチン」

 

 レヴィは指を鳴らすと、アリサに巻きついていた影が爆発する。

 

「キャアアアー!」

 

 炎熱変換を持つアリサでも近距離の爆発は耐えれず、墜ちていく。

 

 

「自分達は全てを台無しにする訳にはいかないッスよ……」

 

 そう言うレヴィの瞳は漆黒の夜を思い浮かべる色であった。

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

「アリサちゃん!?」

 

 アリサの撃墜を見てしまったすずかは思わず叫んでしまい隙を見せる。その一瞬をヴィータが逃すわけがない。

 

「オラオラ隙だからけだぜ!【テートリヒ・シュラーク】」

 

「ひ、【氷壁】」

 

 ギリギリのタイミングで氷壁を創り出すが、そんな物でヴィータの破壊の力が止まる訳なかった。

 

 ピキピキ……そんな音を立て氷壁にヒビが入り。

 

「カードリッチだ!アイゼン」

 

 《装填!【ラケーテンハンマー】》

 

 ラケーテンフォルムに変わったアイゼンを後部の場所からカードリッチを燃料としてロケットの様に噴射して追撃をする。

 

「ぶっ壊れろ!オラ!」

 

 アイゼンをもろにくらいすずかも地面に叩きつけられる。

 

「ベルカの騎士が毛が生えた程度のひよこに負ける訳無いだろ!!!!あたしたちの邪魔をするな!」

 

 紅く燃える灼熱の思いは消えることは無い。

 

 

 

 

 _____________________

 

 

 ______________

 

 

 _______

 

 

 

 

 

 皆が撃墜されていく様子を高町なのはは見ていた。心に積もるのは無力感。あの場に今立てない力の無さを実感する。

 

(……ッ!何で私は彼処にいないの!みんなが戦っているのに……)

 

 そんな想いを持ちながらも彼女は動けなかった。それは怪我のせいもあるが自分の相棒『レイジングハート』が限界なのだ。

 

(せめて結界を壊せたら……クロノくん達が…」

 

 なのはは無意識のうちに声に出していた。彼女は信じている。この現状を変えるには結界を破壊するべきだと。そして自分にはそれが出来る自身があると。

 

 

 ———だからこそ応えるのだ。

 

 

 《マスター撃って下さい!》

 

「な、何を言ってるの!これ以上レイジングハートに負担が掛かったら……」

 

 レイジングハートのコアは傷付いていた。ヴィータの攻撃からなのはを守り続け傷付いた。

 

 ———しかしそれがどうした?

 

 

 主を守って傷付いた事はレイジングハートにとっては誇り。相棒として、彼女の道具として主人を守ることが使命。そして友達を守る為に力を望んでいるのなら応えるのがデバイスの役目。

 

 

 《大丈夫です……私は大丈夫ですから撃って下さい!》

 

「で、でも……」

 

 渋るなのはに最後の一押しの言葉を使う。

 

 《信じてますから……私はマスターを信じてます。ですから私を信じて撃って下さい!》

 

「……分かった!私もレイジングハートを信じてる!」

 

 覚悟を決めなのはは魔力を貯め始めた。

 

 

 レイジングハートにピンクの羽が付き、魔力が高まるのを感じ取っていく。

 

「レイジングハート!カウントを!」

 

 《YES!10………9……》

 

 結界を壊す為に【スターライトブレイカー】の巨体魔法陣が成形された。

 

 

 そんな物が出来れば、誰もがそちらに気が向く。

 

「まさか……結界を壊す気か!皆!止めるぞ!」

 

「分かってる!アレはヤベェ!」

 

 ヴィータとシグナムは本能で察した。———アレは撃たせてはいけない!と動き出す。だが、この男は違った反応を見せる。

 

 

「………レヴィ」

 

「何ッスか…って!?」

 

 名を呼ばれ夜の表情を見たレヴィは固まった。

 

「……あれ……なに♪」

 

 

 

 ———その悦びの狂気に……

 

 

 

 

 

「…………ア…ハ♪」」

 

 

 

 

 

 

 ☆☆★☆

 

 

 

 

 

 シグナム達がなのはの砲撃を止めようと気づいたということは無論彼等も分かっている事だ。

 

 

「行かせない!」

 

「なのはちゃんの邪魔はさせないよ!」

 

「撃ちなさい、なのは!あたし達が守ってあげるから!」

 

「此処は通さないよ!」

 

 それぞれ相手の前に立ち塞がりなのはを守る様に立ち回る。その姿と声はなのはの目と耳に届いている。その信頼を裏切るわけにはいかないとなのはは更に力をいらる。

 

 

「アリサちゃん…みんなッ!」

 

 《7………6……5……》

 

「まだ……まだ足りないの……」

 

 《4……さ…さ3…》

 

「レイジングハート!」

 

 レイジングハートの声が段々とかされ始め、巨大な球体となっている魔力の塊が一瞬不安定になるが、すぐさまレイジングハートは立て直した。ここで……自分のせいで失敗する訳にはいかない。主人の想いを無駄にはできない。その思いがレイジングハートを突き動かす。

 

 《だ、大丈夫です。……3……2…1…》

 

 レイジングハートのカウントが残り1となり、響き渡る機械音が終焉の声とかする。

 

 

「く!間に合わん!」

 

 シグナムは横目に他の者達を見るが、皆が邪魔されている。ザフィーラもアルフとの殴り合いが終わってない。

 

 

「レイジングハート……いくよ!!」

 

 静かに目を開いたなのはは魔力を貯め終わったレイジングハートを振り上げ発射の構えに入る。

 

 

 

「いち!スターライト……え!?」

 

 

 

 

「「「————へ?」」」

 

 

 

 この時誰もが目を開き、間抜けな声が出ていく。

 

 

 それはそうだろう完全になのはの準備は終わっていた。それがどうだろう目の前の光景は————なのはの胸から手が生えているのだから……

 

「な、なのはぁ!!!」

 

 目を疑う光景に叫ぶフェイト。

 

 

 一方でシグナム達も戸惑いがあったが誰の仕業がすぐに分かる。

 

「何ッスか!あれ!?」

 

「アレは……シャマルだな」

 

「シャ…マルの……技…なの?」

 

 シャマルの魔法を見た事がない二人はなかなか見た目エグい技に引き気味だ。

 

「ああ、確か……

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 シグナム達から離れだビルの所で、金髪ショートボブの女性ことシャマルは一度腕を引き抜いた。

 

「———【旅の鏡】……おっといけないわ、リンカーコアを外しちゃた」

 

 シャマルの特殊魔法【旅の鏡】は転移魔法に分類され、クラーフヴァイトがペンダルフォルムの時に使える。この魔法は物体を『取り寄せ』する魔法である。その取り寄せる時に物体を触るが故に出来るシャマルだけの技である。

 

 シャマルはリンカーコアを外した為、もう一度やり直す。

 

「ん?これかしら……よし!捕まえた……蒐集開始」

 

 

 

 

 

 

 シャマルに見た目胸を貫かれているなのはは、激しい痛みを感じていた。

 

「ぐぅあああーー!」

 

 蒐集によって魔力を抜かれていくために意識を失いそうになるが、なのはは足に残っている力を入れて踏ん張り倒れない。

 

 

(此処で……撃たなきゃ…いけないの。みんなを守るの!)

 

 

 仲間を守る!という想いが、意思が痛みに耐え不屈の魂であるなのはを動かした。

 

「レイ…ジングハート!いける!」

 

 《YES!撃てます!撃ってくださいマスター!》

 

 残っている魔力を含め最後の力を振り絞りレイジングハートを振り下ろす。彼女の使う魔法の中で最強で最凶なシンプルイズベストを貫いた魔砲。

 

 

 

「————【スターライトブレイカー!!!】」

 

 

 バリバリと魔力が集束し圧倒的な砲撃に結界が壊れていく。

 

「…はぁ…はぁ……これで…」

 

 シャマルに魔力を取られ、集束砲撃魔法を使ったせいで魔力が切れたためにもう限界だった。

 

 

「…よ…かった」

 

 

 ——バタンッ!と地面に倒れる。

 

 しかし結界が壊れたお陰で戦況は動く。

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 アースラでは急に空間モニターに映った現場のに皆が目を向けた。

 

「結界壊れました!映像出ます!……ってアレはなのはちゃんのスターライトブレイカー!?それに彼女達は一体…?」

 

 エイミィやアースラの局員達は現場の状況に理解が追いついていない。

 

 しかしある人物はある姿に哀しみと憎悪の複雑な目を向けるしかなかった。

 

「……やっぱり…ッ!?」

 

 モニターをいや…ヴォルケンリッター達を見てある確信と複雑な思いで見ていた。

 

 

 

 

 

 

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 夜達は結界が破られた事で撤退の考えを持つ。全員とはいかないが蒐集も大量というほどに集まったのでこの場にとどまる理由は無かった。

 

 《じゃあ私は先に帰っているわ。みんな気を付けてね!》

 

 念話でそう話しシャマルは転移魔法で帰っていく。フェイト達がなのは元に行ったので、一旦シグナム達は地上に降り集まる。

 

「そう言う訳だ。結界が破れ一般人が認知するまで2分。この状態で管理局の援軍を相手にするのはきつい………撤退するぞ」

 

「うむ、異議はない」

 

「私もだ!!」

 

「……僕も……賛成……」

 

「迎えが来るッすから、丁度いいタイミングッス!」

 

 反対意見は何も無いと皆の意見が揃った瞬間だった。シグナム達は空に浮かぶ魔導師の気配を察知した。

 

 

 

 

「———あらあら逃がさないわよ【フォトンランサー】」

 

 

 

 

「ッ!?後ろに下がれ!【障壁】」

 

 言葉と共に撃たれたプレシアの誘導弾に、気付いたザフィーラが盾の騎士に恥じぬシールドを創り攻撃を弾き飛ばす。

 

「母さん!何で此処に!?」

 

 なのはの元に行っているフェイト達もプレシアの登場には驚いていた。

 

「可愛い娘とその友達が傷付いているのだから、親が出ないわけにはいかないでしょ!」

 

 バチバチと電気を纏うプレシアは、夜達にキレているのか彼女最強の魔法を放った。

 

「さぁ!誰か知らないけど私の娘と友達を傷付けた罪は重いわよ!【サンダーレイジ】」

 

 プレシアの魔法陣から電気が生まれ束となり、雷としてシールドを張っているザフィーラに向かう。

 

 この魔法はフェイトを一撃で戦闘不能にし、アースラすらも機能が停止した範囲攻撃魔法だ。

 いくら盾の騎士とは言えザフィーラのシールドだけでは防ぐ事は不可能だった。アースラで観ている者もこの魔法を知っているフェイト達もそしてプレシアですら決まった!と思っていた。

 

 

 

 

 だが———

 

 

 

 

「ザフィ…ーラ…退いて……あれ…斬る!」

 

「………」

 

 背後から聞こえた声に無言でザフィーラは場所代わり、夜が皆の前に立つ。誰も止める訳がない。何も言わない。その必要がないから。

 

 

 そして………

 

 

「夜刀……【鳴神】」

 

 《YES!【鳴神】》

 

「…ふふ…あんなの…見たら…火照っ…ちゃ…う」

 

 夜の声に夜刀が太刀に変わり居合の構えに入ると……ただ一言でいい。狂気的な表情で狂気的な行動を———

 

 

 

 

 

 ————【雷切】

 

 

 

 

 

 グゴゴゴゴゴゴっ!と唸りを上げて迫る雷を一閃。ただそれだけで夜は雷を斬った。斬られた雷は夜達の左右に分かれ、そのまま背後で爆ぜた。

 

 

 

『『『………は?』』』

 

 

 誰が声を出したのだろうか?いや………夜を知らない者が皆声を発した。その信じれない光景に……あまりに非現実的な現実に何かの映像かと目を疑う。

 

 

 人間とは本当に驚きがあった時、思考を停止し動けなくなる。無論、実行した張本人は何事もなかった様に、ただ当たり前の事をしただけだと自然体であるのだ。

 

「ふう……中々良い……雷だった」

 

 先程まで見せていた恍惚な表情は消え、いつもの無関心無感情の夜に戻っている。

 

「うおおおお!スゲー流石ヨル!」

 

「いや〜夜さんの雷切はやっぱり凄いッスね〜〜」

 

 夜の剣技に興奮する二人に、その技に関心を寄せる2人。

 

「……将よ…出来るか?」

 

「…無理だ………いや…いつかは!」

 

 遠い目をするザフィーラに、夜の剣技をいつかは!とシグナムは戦闘狂が出てくる。

 想像を超えた出来事に誰もが動けなかったためにこの対処は不可能であった。

 

 

「すまぬ遅くなった。帰るぞ」

 

 

 くぱっ!と夜達のすぐ側にスキマが開き藍が出てくる。

 

「ん……みんな…帰る」

 

『『ああ(うん、ッス)!』』

 

 そう言って夜達はスキマに入っていった。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 アースラでは大半が夜の剣技に固まっていたが、この少年だけは違った。

 

「はやく現場に救護班を!」

 

 戦場ではスピードが命。それが分かっているが故に誰よりも早く指示を出す。

 

「何あれ狐!?探知不可!?………目標ロス…トしました………ごめん……クロノ君…」

 

 エイミィは追跡をしようと試みたが藍の幻の前に目標を見失う。だが、ドンッ!と机を叩き悔しさをあらわにする横ではモニターにシャマルが写り込む。

 

「アレは…ッ!…第一級捜索指定遺失物ロストロギア……闇の書!?」

 

 そう呟く声が聞こえたエイミィは幼馴染の始めて見る焦りの表情に、疑問をぶつけずにはいられなかった。

 

「クロノくん知っているの?」

 

「ああ……ちょっと因縁があるんだ……!」

 

 少年はただ……ただ……強く拳を握り締めるだけである。

 

 

 

 

 

 ————こうしてなのは達は一矢は報いたが完敗で終わるのであった。

 

 

 

 

 

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 それから一時間後、八神家に帰ったシグナムたちは夕食を食べ終わるとごく自然にはやてに接する。

 

「はやてちゃんお風呂に入りましょう!」

 

「そうやな。ヴィータも一緒に入るか?」

 

「おう!あたしも入るぜ!」

 

 そう言ってシャマルがはやてを抱えながらお風呂に行く。これはシャマルの気遣いでもあり、はやてにバレない様にする役割でもあった。

 

「シグナムさん服をめくってください。治療をしますから」

 

 ちょっと渋ったシグナムだが美鈴の目が笑ってないので服をめくってお腹を見せると斜めに傷が出来ており、ザフィーラ など驚きを隠せない。

 

「……シグナムに……傷つけたんだ…」

 

「甲冑を着ていたのだろう?」

 

「ああ……しかし透き通った剣技にだった……もしデバイスが我々と同じだったら苦戦しただろう」

 

 そう言う顔には複雑さと嬉しさが混ざっていた。その間に美鈴が気を当て傷の回復を促進して治していく。

 

「……終わりましたよ。それでは次は夜様ですね」

 

「…な…なん…の…こと?」

 

 挙動不審のバレバレの態度に、笑顔で対応する美鈴は的確に当てていく。

 

「左肩が少し下がっていますよ。多分脇腹でしょ」

 

 夜は完全にバレていると諦めしぶしぶ着物脱いで傷を美鈴に見せる。その傷を見た美鈴は表情を歪め、ゆっくり手を置く。

 

「これは…いつ入れられたのですか?」

 

 夜の脇腹は青くアザが出来ており、隣いるシグナムより酷い。

 

「……剣を弾いて重力球で飛ばした時に、魔力弾を当て……られた見たい…」

 

 あの時誠は、四つ魔力弾を作って二つを千本桜の相殺に使い、残りを飛ばされた時に背後からぶつけていた。元々夜は防御力は皆無だ。夜は力の操作…いわば流れを操るのが上手いのであって、硬さという防御は無い。紙装甲とも言う。

 

 後ろでは藍が『誰だ!主ヨルの肌を傷付けた者は!!』と暴れておりザフィーラが抑えていた。

 

「だから夜刀を使わなかったんッスね。最後の雷切は大丈夫だったんッスか?」

 

「うむ……一撃…ぐらい……なら問題無い」

 

 そんな事を言う夜に心配という思いで美鈴が説教する。

 

「な・に・が大丈夫ですか!雷切なんて負担のかかる技を使ったら悪化するでしょ!」

 

 怒られている夜を見ているレヴィは知っている。あの時の表情、言葉、荒れた気、昔から夜と共にいるからこそ分かる感覚。チラリとレヴィしか見えてない目……。

 

 

(あの時の完全に夜さん…イッてたッスから止められないッス。偶に出るんッスよねぇ〜〜夜さんが感情を出すのはいい事ッスけど…あれは…むぅ〜〜。……あの白い子…夜さんに目をつけられたかもッス)

 

 不幸か幸福か、それは分からないがレヴィからしたら羨ましい()()も含んだ考えだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美鈴の治療が終わると落ち着いた藍が1つの疑問を口にした。

 

「しかしお主らが苦戦するなどそんなに強かったのか?聞くとはやてと同じぐらいの年齢と聞いたが…」

 

 藍の疑問は美鈴も思った事で、此処に居るものは皆強者の部類に入りそんな苦戦するとは思っていないのだ。

 

 

 ———皆の答えは1つ

 

 

『………強かった!(ッス』

 

 その一言に全てが含まれている。

 

「彼奴らは技術的には我等には及ばぬが……」

 

「才能が凄まじいッス…多分経験を積めば…特に最後の砲撃を撃った子はヤバイッスね」

 

「………僕も油断は無かった……あの男…強かった………次は()()()()()()()()()()()()()!」

 

 いつもの無表情の夜がここまで言う事は少ない。それほど彼等を認めたと言うことでもあるし、此処に居る者は夜の剣士としての顔が見え始める。

 

「確かに強かった……だが———我等が負けるはずは無い」

 

 そうだろう!と言うザフィーラの顔に———当たり前だ!と皆は答えるのであった。

 

 

 

 

 

 

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 はやてが寝静まった深夜、屋上に七人の影があった。

 

「管理局も動き出した……少し遠い場所で蒐集をしよう」

 

「うむ…それがいいだろう。はやて事がバレたら面倒だしな」

 

 シグナムの言葉に同意する藍。なぜ藍がいるのかと言うと夜の負担を減らすためと答える。本人は隠しているつもりだろうが眷属達からすればバレバレ。はやての護衛を美鈴に一任して藍も蒐集に参加することに無かったのだ。

 

 

 ———だからこそ彼女もいる

 

 

「ええ、でもこれから管理局も介入してくるわ。気を付けて行きましょう」

 

「そうッスね。まぁ、自分達がいない時にはやてさんが狙われても美鈴さんが居るので大丈夫だと思うッス」

 

「ああ。主はやては美鈴殿が護ってくれて居る。我等は安心して蒐集に行けるからな」

 

 彼等の美鈴に対する信用はかなり高い。だからこそ全てを出して戦える。

 

 

「絶対にはやてを助けるんだ!そしたら……またみんなで…幸せな日々を過ごすんだ!」

 

「…ん…!……はやて…の…為に…」

 

 小さな身体で大きな幻想を叶える為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———彼等は止まらない

 

 

 

 

 ———誰かを傷つけようとも

 

 

 

 

 ———自分達が傷付こうとも

 

 

 

 はやてを救いまたみんなで幸せに暮らす為に。初めての居場所を守る為に。

 

 

 ———そう心に秘めて

 

 

 

 

「行くぞ!主はやての為に!」

 

 

『『『おう(ん、ッス、ああ!』』』

 

 

 

 ———彼等は再び動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 




【あとがき】

休みが終わった……。闇の書編終わらなかったよ。
でもここから頑張るで!!


と言いたいですが丁度新学期も始まるので一応みなさんに言っておきたい事があります。

ぶっちゃけ年齢バレますが今年作者は受験生です。(大の方)もう社会人、大学生の方は分かると思いますが結構今年は大事な年なので投稿ができない時があります。

八月からはキツイと思いますね。なので今のうちに言っておきます。パタリと一ヶ月近く投稿が無い場合は受験モードに入ったと思ってください。失踪はしません。ですのでもし続きを楽しみにしてくださっている方々がいらっしゃれば少しお待ちをお願いします。

Twitterなどで生きてる報告くらいはしますのでよければそちらもお願いします。


あ、6月くらいまでは投稿しますよ。

では次回に会いましょう。


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24話 次への一歩


どもパッチェです

今回夜達サイドは出ません。では行ってみよー。


 

 

 あの戦闘から2日が経った。

 

「それでは、それぞれの思った事感じた事を話してもらえるかしら?」

 

 今彼等は引っ越しを終えたテスタロッサ家で今回の襲撃の情報を話していた。いや、話そうとしていた。

 

『『『………』』』

 

 今居るのは、誠、なのは、フェイト姉妹、アリサ、すずか、ユーノ、アルフ、リニス、リンディ、プレシア、クロノの十二人だ。

 

 それだけの人達が居るが、誰も言葉が出ず重苦しい空気が漂っていた。

 

「………誰か喋ってくれないと僕達も困るのだがなぁ…」

 

 クロノが話が進まない事に頭を抱える。するとこの空気に耐えられなかったのかアルフが立ち上がって周囲を見回す。

 

「あーーも、焦れったい!いつもの感じはどうしたんい!?」

 

「そうね……アルフの言う通りだわ。貴方達はこの事件に関わるのでしょう。だっだら情報共有は大事よ」

 

 アルフの言葉にプレシアが付け加える。

 

 

 今回の襲撃事件は、アースラの管轄下で起きたのでアースラがロストロギア回収を管理局が正式に決定した。

 ならば少しでも危険を減らし、事細かな情報でも大切な事でもある。

 

「そうね!ほらみんなそんな辛気臭い空気にならないの!」

 

「…うん!アリサちゃんの言うとおりなの!」

 

「そうだね。いつまでもくよくよしても仕方ないもんね!」

 

 アリサの叱咤になのはとすずかの二人は沈んだ暗い空気は無くなるが……

 

『『……』』

 

 

 ———この二人は違った。

 

 

「どうしたの…フェイト?何かあるならお姉ちゃんが相談に乗るよ?」

 

 リニスの膝に座っているアリシアがフェイトに声を掛ける。

 

「…ふぇ!?え…あっ…ごめんなさい……ちょっとシグナムの事を考えていて…」

 

「シグナム…と言うのは、フェイトが戦った者の事か?」

 

「う、うん………シグナムの言葉が忘れなくて…」

 

「「「言葉?」」」

 

 フェイトの沈んだ表情のせいで、フェイトの言葉は重く、そして暗い言霊と化した気がする感じが皆を襲った。

 

「シグナムの言葉……『我等家族に負けは無い!』『我等は負ける訳にはいかない!』その言葉を言っている時の目がそっくりだった………私が母さんの為に動いている時と…そっくりだったの」

 

「それは……」

 

 あの時フェイトが見た、シグナムの目は自分とそっくりだった。それが忘れられないのだ。

 そしてその考えを持つ者はフェイトだけでは無かった。なのはもアリサとすずかもそしてPT事件を知っている者皆が同じ考えだった。

 

()も言っていたよ『僕達は負ける訳にはいかない……絶対に!』って」

 

 

『………ん?』

 

 ユーノの発言に何か女性陣は違和感を覚える。

 

「あれ?ユーノはあの獣と戦ったのかい?」

 

「獣?……ああ!もしかして……」

 

 アルフの質問にユーノは女性陣が感じていた違和感に気づいた。

 

「僕が戦ったのは、和服姿の()()()だよ」

 

 

 

『『『………は』』』

 

 

「は?」

 

 

『『『———はあああああああああ!?』』』

 

 

 驚きのあまり近所迷惑レベルの大声を出すが、それを予想していたクロノが防音結界を張っていた。

 

「あ、あれで男の子!?」

 

「……あの容姿で!?」

 

「アレは男の子と言うより男の娘でしょ!」

 

「…私より可愛い…」

 

「これが……地球の萌え!」

 

「何かアリシアはズレてないかい?」

 

「私だって……若けりゃ…ッ!」

 

「貴女が若くても変わらないと思いますが…」

 

「ふぅ……砕かれたわ……女として全て…」

 

 夜の容姿に女としてのプライドがズダズタに裂かれた女性陣は目から光を無くす。何故ユーノが分かったかと言うと『同じ匂いがしたんだ……』と遠い目をしていたそうな。

 

「そこまで考える事か?」

 

「バカッ!女性は面倒いんだよ(ボソ)!だ、大丈夫ですよ皆さん綺麗だと僕は思いますから……誠も何か言いなよ!」

 

 クロノがKY発言するのでユーノが一応フォローを入れるが、さっきから何も喋らない誠に声を掛ける。

 

 

 しかし誠は黙り込んでいて遂には……

 

「………すまんユーノ、クロノ…ちょっと出て来る」

 

 そう言って立ち上がりなのはに声をかけた。

 

「……なのは、学校に一、ニ週間休むって言っといてくれ」

 

「え?ち、ちょっと誠君!?どう言うこ…」

 

 

 ———バタンッ!

 ドアの閉まる音が聞こえ、なのはが言い終わる前に出て行く誠。

 

 

「…リニス」

 

「…わかってますよプレシア」

 

 リニスは膝の上のアリシアを下ろし、猫の姿になって誠を追いかけていった。

 残った面々は誠が出て行ったことにポカーンとして動けなかった。

 

「一体どうしたのよ?ずっとあの調子だけど…」

 

「やっぱり心配…私も…」

 

 すずかが誠を追いかけようした時、待った!の声がかかる。

 

「やめなさい……今は一人にさせてあげるのが優しさよ」

 

「どう言う事母さん!なんで誠を追いかけちゃいけないの!?」

 

 すずかを止めたプレシアにフェイトが少し怒っている。それに対してプレシアは一つため息を吐くと、経験豊富な大人として語り始める。

 

「男には男のプライドが有るのよ。面倒くさいことに」

 

『『『プライド?』』』

 

「そこのフェレットの話で確信が持てたわ……ほら今回、誠は一番最初にリタイアしたでしょう。しかも負けた相手が同い年の男(の娘)……そりゃ〜色々と考える事があるのよ。まぁ、男のプライドほど面倒くさいものはないわ」

 

 プレシアの説明に納得がいったのか皆がスッキリした顔になる。その中で唯一の男二人は……

 

(女子の方が面倒いよなぁ〜)

 

 と思っていた。

 

 

「1人抜けたのでこの話はやめましょう。プレシア行くわよ!」

 

「ええ…」

 

 大人2人はラフな格好からしっかりとした正装に着替える。

 

「あれ?母さん何処か行くの?」

 

「ええ、死ぬかもしれないわね……」

 

「え!?何処か危険な場所に!?」

 

「一体何処に行くんだよ………」

 

 フェイトの驚きの声とまた何かのおふざけか?とクロノは頭を抑えたが、さっきからダラダラと汗が止まらないリンディとプレシアは一言でこの場の空気を変えた。

 

 

『『高町家の親御さんに今回の謝罪を……』』

 

 

『『ああ〜………』』

 

 納得している子供達は知っているのだ。

 

 怒った時の高町夫婦がどれだけ怖いか……

 話はTP事件後に戻る。

 全てが解決した後、管理局の事を説明とプレシアの謝罪に行ったのだが一応プレシアに事情があったとはいえ娘が傷つけられた事に怒らない親はいなく、管理局の対応にリンディが頭を下げ、謝罪から帰ってきた2人の最初の言葉は『死ぬかと思った』と身体がガタガタと震えていた。その様子を見ていた者たちも震えていた。

 

「それじゃあ逝ってくるわ……クロノも死もの事があったら部下達のことはよろしくね」

 

「母さん!いや………艦長…お元気で!」

 

 ピシッと敬礼と嘘泣きをするクロノ。謎の茶番劇を繰り広げる親子に………

 

「ああ…これで最後の娘達の暖かさ…」

 

 フェイトとアリシアを涙を流しながら抱きしめる。

 

 

 

「……一体何が起こっているの?」

 

「……あんたの親のせいでこの茶番劇が起こっているのよ」

 

「あははは……」

 

(…みんなキャラ崩壊酷いなぁ〜)

 

(お肉食べたい〜)

 

 こっちも中々酷かった。

 

 

 

 

 

 

 余談だが高町家のから帰ってきた2人は燃え尽きていたようだ………。

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 一方テスタロッサ家から出て行った誠は畳の上で日本伝統の土下座をしていた。

 

「……そう言う訳だから頼む俺を鍛えてくれ……」

 

 ————母さん!

 

 誠は自宅に帰り目の前にいる女性…直江恵(めぐみ)に頭を下げていた。

 

「全く……情けない。最初に負けて女の子達は最後まで戦っていたって……そんな軟弱者に育てた覚えは無いよ」

 

 黒髪のショートヘアーでタンクトップにジーパン姿の母親はタバコを吸いながら誠の話を聞いている。

 

「分かってる……でも全然相手にならなかったんだ!だから強くなりたいんだ!…それに……ちょっと考える事があってなぁ」

 

 恵はプハ〜〜とタバコをふかすと片手でそのタバコを握りつぶして火を消す。

 

「そうかい…あんたは子供の割に頭がいいから分かってると思うけど一応聞くよ………強くなってどうしたいんだい?」

 

「今回襲撃を受けたが……なんて言うかフェイトと似てると思ったんだ。悪い事をやっている奴が悪い奴とは限らない…と思って………それにフェイトと似てるならなのは達がどうせ『お話しするの!』って言って巻き込まれるからその為のリベンジ!」

 

 どうせ最後まで関わるだろうとなのは達があのまま引かないのは付き合いが長い誠自身が一番分かっている。

 

 恵は誠の言葉に嘘が無いと分かる。昔の誠だったらあり得ない理由に恵は笑みを浮かべる。

 

「そこまでの理由があるなら良いよ!死ぬってほど鍛えてあげる…………死ぬなよ(ぼそ」

 

「あ、ああ…(俺生きていけるかな?でも絶対にあの時の言葉の意味を教えてもらう!)」

 

「誠……生きて帰ってくださいね」

 

「何を言ってるんだい?リニスちゃんもやるんだよ。あんたは誠の使い魔だろ」

 

「………へ?

 

 完全に他人事だったリニスに死刑宣告が降り真っ青な顔になる。

 それから五日間地下の訓練場から2人の悲鳴が聞こえたり聞こえなかったりした。

 

 

 

 

 

 

 

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 メンテナンスルームでマットサイエンティストの様な存在が一人。その少女は不敵な笑みを浮かべてキーボードを打っている。

 

「ふふふ!デバイスマイスターの腕がなりますなぁ〜〜!」

 

 アリシアは先日戦いボロボロになったデバイス達の修理をしている。それは彼、彼女達からの進言でもあった。

 

「でも……本当にいいの?こんなに私はやる気だけど……実際こんな事をしたら…」

 

 《私達は大丈夫ですので》

 

 《今回の敗北は私達の足手まといが原因》

 

 《あたしらのせいでアリサ達が傷付くのは見たくねぇ!》

 

 《マスター達はもう一度立ち上がっている》

 

 《次は勝つ為に!》

 

 《どうか我々を進化させて下さい!マスターの為にお願いします!》

 

 デバイス達はマスターを守れなかったことに悔しさが滲み出ていた。またデバイス達も同じデバイス、アイゼン、レヴァンティン、夜刀に敗北したと思っていた。だからこそ自分達が進化すれば主は負けない!と確信を持って

 

「そう………分かったよ!みんなの気持ちは私が叶えてあげるよ!」

 

 《ありがとうございます!》

 

 

 

「それじゃあみんなに私が最高のカードリッジシステムを付けてあげる!」

 

 キランッとアリシアの目が光る。

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「久しぶりに会うね!はやてちゃん」

 

「ほんまに久しぶりなぁ〜すずかちゃん」

 

 図書館で会話をしている2人は久しぶりの再会であり、すずかはジュエルシード探しや魔法関係で忙しく、はやては入院の繰り返しの日々だったので顔を合わせるのは夏以来なのだ。しかし連絡は取り合っていたので仲は良い。

 

「最近大丈夫?また入院したって言っていたけど…」

 

「問題無しや!すずかちゃんも心配性やな、うちのみんなもいつも心配ばっかしてるわ〜〜」

 

「ふふ、嬉しそうな顔で言っても説得力ないよ。それに心配してくれることは良い家族だね」

 

「そうかぁ〜〜!すずかちゃんもにいつか紹介したいな」

 

「私もいつか友達を紹介するよ!」

 

「お互い約束やなぁ!」

 

「約束だね!」

 

 そう約束する2人はとても仲が良いほのぼのとした会話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな二人を遠くから見ている者が……

 

 

(レヴィさんの報告では紫色の髪の子と戦ったと言っていました。……まさかすずかちゃんがその子では……そうなるとすずかちゃんが言っている友達は……これは皆には言えませんね)

 

 美鈴はレヴィの報告と自分の考えが正しいと確信があり、この事は胸の中にしまった。

 

(やはり………運命とは残酷ですね)

 

 そう目を開ける美鈴の瞳は、黒い絶望の闇に変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 _______

 

 

 それぞれの日常があり、誠が帰ってきてから数日後の事だった。

 

「ハイ!デバイス達は直しておいたよ!」

 

 各々自分のデバイスをアリシアから受け取り、久しぶりにあう相棒に声をかけていく。

 

「ありがとうなのアリシアちゃん!おかえりレイジングハート!」

 

 《ただいま戻りましたマスター!》

 

「姉さんありがとう。バルディッシュ…」

 

 《…今貴女の元に…》

 

「流石アリシアは仕事が早いわね。…アイズ」

 

 《なんだなんだ?いつもの元気はどうしたアリサ?元気に行こうぜ!》

 

「アリシアちゃんありがとう。…ホワイト…ごめんね」

 

 《いいえ、すずかお嬢様が謝る必要はありません》

 

「サンキューアリシア。久しぶりだなディウス」

 

 《そうですねぇ。この数日で貴方が強くなったのは分かりました。どうぞ私を使ってその力を発揮してください》

 

 誰もが喜びの声を出している中だからこそ、突如として異変は起こりうる。

 

 

「……皆さん……ちょっと良いかしら?」

 

 非常に険しい顔をしているリンディがモニターに映った。

 

 

 

 

 

 

 

 






【あとがき】

感想、お気に入りなどよろしゅう


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25話 再び相まみえる

どもパッチェやで。

はい……遅れてすいません。

ここは素直に言おう。FGO始めたぜ☆のせいなんだ…遅れたのは……。仕方ないよね…面白いもんFGO。

あぁ〜ジャックちゃんお迎えできたんじゃ〜。


まぁマジでリアルが忙しいだけなんだけど……時間が欲しい






 とある上空にて、ヴィータとザフィーラは武装隊に囲まれていた。

 

「チッ!管理局かよ!」

 

「結界も貼られているな……我々を隔離する作戦か?」

 

 完全に出待ちだ、とタイミングが良すぎる事に疑問を持つが今は目の前の邪魔者達を蹴散らすのが先だろう。

 

「ふん!その前にこいつらをやっつければいい!」

 

 ヴィータが先に十数人の武装隊に攻撃を仕掛けようとするが、それは虚しく空振りに終わる。

 

「隊員撤退!結界の維持を」

 

 武装隊隊長の声に武装隊達は後ろに下がり始める。ヴィータは武装隊の奇妙な行動に戸惑い、動きを止めてしまう。

 

「何だ?一体『上だ!』…なぁ!?」

 

 ザフィーラの一声にヴィータはすぐさま上を見る。そこには圧倒的量を要する刃が2人を串刺しにしようと待機していた。

 

 

「【スティンガーブレイド・エクスキューションシフト】」

 

 

 クロノは百を超える魔力刃を出現させザフィーラに向かって落とすが、ザフィーラは障壁を作り全ての魔力刃を防ぐ。

 

「大丈夫か?」

 

「全く問題ない。この程度攻撃で盾の騎士の守りは通らん」

 

「へっ!流石」

 

 誰かの前に立ち盾として護る。

 ザフィーラの使命とも言える仕事に、クロノは表情を歪めた。

 

(くっ…今出せる全力の攻撃で傷一つつかないなんて…)

 

 今の現状に危機感を覚えるが、それは1つの朗報で吹き飛ばさせた。

 

 《クロノくん武装隊の配置が終わったよ!それに助っ人も送ったから!》

 

 

 エイミィからの念話が聞こえ、思わずクロノは歓喜の声を上げてしまう。

 

「そうか…来てくれたか………なのは、フェイト、アリサ、すずか、誠!」

 

「また……あいつらか!」

 

 ヴィータの目線の先には待機状態のデバイスを構えている五人に、後ろにはユーノを含む使い魔達。

 

「レイジングハート」

 

「バルディッシュ」

 

「グラウディウス」

 

「フレイムアイズ」

 

「スノーホワイト」

 

 

『『『セットアップ』』』

 

 

 五人はいつもの声と共に光に包まれバリアジャケットに変わるが、

 

「あれ?いつもと違う?」

 

「う、うん?なんか…」

 

 皆が何か違和感を感じていると、ひと枠の空中ディスプレイにアリシアが映り込む。

 

 《みんーなーよく聞いて!みんなのデバイス達には新しい"カードリッジシステムを追加したよ!自分の主の為に、ってデバイス達が望んだの。特になのはとフェイトのデバイスには新しい名前が付いたから呼んであげて!》

 

 

「———レイジングハート・エクセリオン」

 

「———バルディッシュ・アサルト」

 

 

 二人の新しい姿にアリサは少々ぶすっと頬をぷくらましている。

 

「…なんか二人だけずるいわね」

 

 《あははは……時間が無くて。でも三人にもカードリッジシステムは積んでるからね》

 

「いや、それだけでもありがたい。流石アリシアだな!」

 

 《エヘヘへ、そんなに褒めても何も出ないよ〜〜///》

 

「………いちゃいちゃしてんじゃねぇーよ」

 

「お、落ち着いてすずか!怖いわ」

 

 なのはとフェイトの裏側では、誠とアリシアの雰囲気にすずかのヤンデレが発動していた。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 〜結界の外〜

 

 

「これは……我々を捉えるための強装結界か」

 

「中には…ヴィータ……ザフィーラ…いる」

 

「この大きさだと壊すのは難しそうだな」

 

「でも入るだけなら行けそうッス」

 

 四人はここで結界を解くために一人一人武装隊を倒すか、中に入るかで悩んでいたが、ここにいるのは強者達であり、脳筋である。

 

 《行動の選択を》

 

 《夜様。此方はいつでも》

 

 夜刀とレヴァンティンの声に2人は問いかける。

 

「………レヴァンティン、お前の持ち主はここで逃げるような騎士だったか?」

 

 《——否!》

 

「そうだレヴァンティン!私は今までもずっとそうして来た!」

 

 

「……夜刀、斬るよ」

 

 《YES!夜様に斬れぬものはありません》

 

「……ん……僕に…斬れないもの…無い!」

 

 

『『ならば……』』

 

 

 レヴィと藍は2人の剣士を静かに見守る。

 シグナムはカードリッチを使いレヴァンティンに炎を灯し、夜は居合の構えをとり、技を昇華し基礎とした技を放つ。

 

「燃やし斬れ【紫電一閃】」

 

「僕の…刃は全てを絶ち斬る…【一刀・絶】」

 

 二人は結界に向かって剣技を放つのであった。

 

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 

 ______________

 

 

 _______

 

 

 

 

 

「あいつのデバイス……カードリッジをつけてやがる!?」

 

「この前と違うということだな。油断はするなよ」

 

「分かってる!!」

 

 戦闘態勢に入るザフィーラとヴィータに、なのは達(一部)はバリアジャケットを纏いながらも言葉で止めようとする。

 

「私たちはあなた達と戦いに来たんじゃ無い。まずは話を聞かせて!」

 

「闇の書の完成を目指してる理由を!」

 

 二人は戦闘態勢は無いと言うが、この状況下においてそれは信用に値しない言葉だ。

 

「あのさ…ベルカのことわざに『和平の使者なら槍は持たない』って言葉があるの」

 

『??』

 

 急に語るヴィータの言葉に、よく分からない?とばかりに隣の者と顔を合わせると、ヴィータはなのはにアイゼンを向けて、

 

「話し合いをしようって言うのに武器を持ってくる奴がいるかバカ!!って意味だよ!」

 

「なっ!?いきなり有無を言わず襲って来た人がそれを言う!?」

 

 ドングリの背比べとは言ったものだ。

 

「でも相手の言うことも一理あるわね」

 

「俺は………どっちにツッコミを入れればいいんだ?」

 

「「二人とも……相手を肯定してどうすの…」」

 

 アリサと誠は、ヴィータの発言も一理あると考え、それにすずかとフェイトがツッコミを入れていた。

 

「ヴィータ……それはことわざでは無く、小話のオチだ」

 

「うっせぇ!細かいことは良いんだよ!」

 

 ザフィーラのいらないツッコミに軽くキレ、なのはがヴィータに食って掛かろうとした時—————ズドンッ!!

 

 

 紫色の光が轟音をあげ落ちその中からピンクポニーテールの騎士シグナムが見える。

 

「シグナム………斬るのは結界だけでいい……あっ…ヴィータ、ザフィーラ来たよ〜」

 

「うちの剣士様達は手加減を知らないッスかね〜」

 

「そうだな。主ヨルの斬撃が地面をえぐっておるな」

 

 シグナムとは逆に音も無くまるで降臨するかの様に降りてくる夜に、器物を破壊する剣士達にと呆れる藍とレヴィ。

 

「む!すまんな勢いが止まらず…」

 

 謝るシグナムは周りを見たわし今の現状を確認する。

 状況は四人が来たことにより一発触発の空気に戻り、お互いの相手と睨み合い…

 

「みんな、赤髪の子とは私が一対一でやるから手を出さないでね!」

 

「私も…シグナムと」

 

「あたいもあの野郎にちぃっと話があるよ!」

 

「俺も一対一で着物少年とやるから、ユーノとクロノは絶対手を出すな!」

 

「では私は狐の相手を。多分誠の相手の使い魔でしょうから、そこは誠の使い魔として譲れません!」

 

「私は忍者よ!この前こけにした事後悔させてやるわ!」

 

「赤髪の子はなのはちゃんにとられたから、最初の相手の忍者を私もやるよ!」

 

 なのは達は皆勝手に己の相手を決めるが、夜達も気持ちは同じであり喋らずとも相手が決まっていた。

 

 

 

「マジかよ……」

 

「マジだよ……」

 

 残された二人は何とも言えない気持ちになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 

 ______________

 

 

 _______

 

 

 

 

 皆の戦いの合図がなろうとしていた時、未だ物語に入っていない少女は愛しい家族達を待っていた。

 

「最近みんな遅いなぁ〜」

 

「今の時期は忙しいですからね〜〜みんなはやてちゃんのために仕事を片付けいるんですよ〜」

 

 はやては美鈴と夕食を食べながら最近の集まりの少なさに悲しい表情をしていた。

 

「皆さんがいない時は私がはやてちゃんに付いてますから一人にはならないですよ」

 

「…そうなや、もう一人じゃ無いからな。私も何かした方がええかな?」

 

「そうですね……はやてちゃんにはみんなが帰って来た時に"おかえり"と声を掛けてあげて下さい」

 

「そんなんでええんか?」

 

 余りにも簡単でちっぽけな行為にも感じる。しかし彼らにとってそれは………

 

「ええ、それが良いのですよ。皆さんは…」

 

 

 意味深な笑みを浮かべる美鈴に頭を捻るはやてだが、最終的には当たり前のことだと考えることをやめる。

 

「よう分からんけど…それでええならいつでもやるでぇー。何たって私たちは家族やからな!」

 

 今のはやてはさっきまでの悲しい表情は無く、とても明るい笑顔になる。

 

 

 嗚呼、眩しい笑顔だ。

 

(最近ずっと笑顔が見れなかったので心配でしたが良かったです。私たちはこの笑顔を守らなければ………皆さん絶対に戻って来て下さいね)

 

 

 

 ———やっと手に入れた居場所なのだから

 

 

 

 

 遠い場所で戦い続ける家族を想う美鈴であった。

 

 

 

 

 

 

 

 




【あとがき】

あかん。
一ヶ月近く更新せんと何書いてたか忘れてしもうた。
ちょっとリハビリが必要やな。

と、話は変わりFGOやっている方、始めて2週間の雑魚マスターのフレ募集中です。
作者のプロフィールにフレ番書いてるのでよければフレ申請おなしゃす。

では次回会いましょう。


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26話 進化の真価



どうもパッチェです。


本当に遅れて申し訳ございません。
ギリギリ今年中に更新が出来ました。本日は2話投稿しております。
27話のあとがきに今年事、来年の事を書いておりますので読んでくだされば幸いです。







 

 

 

 

 一発触発の空気の中、先に動いた…いや発したのは、なのは側のデバイス達であった。

 

 

 《マスター、カードリッチロードを命じて下さい!》

 

 

「うん!レイジングハート!」「私もだね。バルディッシュ!」「了解、グラウディウス!」「分かったわ。フレイムアイズ!」「もちろん!スノーホワイト!」

 

 

『『『カードリッチロード!!』』』

 

 

 ガシャコンとデバイスのカードリッチが音を立てなのは達の魔力が跳ね上がる。その光景は夜達が警戒度を引き上げるには十分なものであった。

 

 

「デバイスが進化してるッスね……」

 

「そうだな。油断せずに行くぞ!」

 

「ん……油断無し」

 

「言われなくても!!」

 

 

 この場の全員が一度空を舞う中、自然と散り散りになり、己の相手と戦闘が開始される。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 〜〜ヴィータVSなのは〜〜

 

 

 

「へぇん!結局やるんじゃねぇーかよ!」

 

 

 後ろからついてくるなのはに皮肉のように言う。だが、それで止まるほどなのはの意思は柔くない。

 

 

「私が勝ったら話を聞かせてもらうよ!良いね!!」

 

「やれるもんなら……やってみろよ!」

 

 

 ヴィータは魔力で鉄球を作り出し、なのはに向かってアイゼンで打つ。それをなのはが避けたところを見るとヴィータはアイゼンをラケーテンフォルムに変え、

 

 

「うおおおおおおお!」

 

 

 雄叫びをあげながらアイゼンを振りまわし遠心力を使って、ラケーテンハンマーをなのはにぶつける。

 

 

「これで終わりだ!」

 

 

 ラケーテンハンマーを放つヴィータはこれで終わりと思っていた。前回はこの攻撃でなのはを撃退したため今回も防げるはずは無いと思っていた。

 

 

 それが前回のままだったら………

 

 

 《【プロテクション・パワード】》

 

 レイジングハートの声に、なのはは右手から進化した防御魔法を発動する。

 

 

「グゥ……固え」

 

 

 前回は貫通され壊されたバリアはヴィータのラケーテンハンマーを完全に止め、レイジングハートがそのままバリアを爆発させる。

 

 

「ぐああああ…」

 

 

 至近距離で爆発を受けたヴィータは、その衝撃で吹き飛ばされる。そのままレイジングハートは追撃を指示する。

 

 

 《マスター。アクセルシューターを撃って下さい》

 

「うん。【アクセルシューター】」

 

 

 シュート!と合図をするとレイジングハートから12個の魔力弾が発射され、今までのディバインシューターより威力が高くなっていた。そのため一瞬制御を失うが、何も問題は無い。

 

 

 《コントロールをお願いします》

 

 

 レイジングハートの一言に冷静になったなのはは目をつぶり、グルグルとヴィータの周りを回っているアクセルシューターのコントロールを始める。

 

 

「アホか!こんなの制御出来るわけがねぇ!」

 

 

 目をつぶっているなのはにもう一度シュワルフリーベンを放つが、レイジングハートには確信がある。

 

 

 彼女は見てきた。

 ———自分の相棒がしてきた努力を!

 

 

 彼女は知っている。

 ———なのはの才能を!

 

 

 《出来ます。私のマスターなら》

 

 

 レイジングハートの言う通りになのはは一部のアクセルシューターで鉄球を撃ち砕いた。

 その光景に呆然と見ていたヴィータに、なのはははっきりと自分の意思を示した。

 

 

「約束だよ、私たちが勝ったら事情を聞かせてもらうって!」

 

 

 なのはは残りのアクセルシューターをヴィータにぶつける。ヴィータは【パンツァーヒンダネス】を使うが、ヴィータを守る赤い水晶はアクセルシューターでヒビが入りさっきまでの余裕はヴィータから無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 〜〜シグナムVSフェイト〜〜

 

 

 

 

「はあああああ!!!」

 

「うらああああ!!!」

 

 

 バチンッ!とレヴァンティンとバルディッシュが交差しお互いの一撃に火花が散る。

 

 

 互角の一撃にお互いが後ろに飛ぶとフェイトはプラズマランサーを放ちそれをシグナムは紫電一閃で全て弾くが、そのランサーをもう一度制御しシグナムに背後から放つ。

 

 

 それに気づいたシグナムはレヴァンティンを振るい炎の衝撃波でランサーを消すと、シグナムの目の前には攻撃をしようとしているフェイトがおり、

 

 《ハーケンフォルム》

 

 斧の形状から魔力刃で出来た鎌に変わる。フェイトに合わせるようにシグナムも声を荒げた。

 

 

「レヴァンティン!」

 

 《シュランゲフォルム》

 

 長剣からいくつもの節に分かれた蛇腹剣に変わり、お互いの一撃に爆発が起きる。

 

 

「くっ!」

 

「むっ!」

 

 

 この攻撃でフェイトには左腕に傷ができ、シグナムにも胸元を切られていた。

 

 

「強いなテスタロッサ……それにバルディッシュ!」

 

 

 シグナムは己と渡り合えるフェイトと傷を付けたバルディッシュを褒め称える。

 

 《サンキュー》

 

「貴女とレヴァンティンも……シグナム!」

 

 

 お礼を言うバルディッシュにフェイトも、シグナムとレヴァンティンに同じ事を言葉を返す。

 

 

「この身に成さぬべき事が無ければ、心躍る戦いだったはずが……仲間達と我が主の為今はそう言っておられん」

 

 

 シグナムはフェイトとの戦いを嘆きながら、レヴァンティンを鞘に収める。だが、剣先はフェイトに向けられている。

 

 

「殺さず自信が無い……この身の未熟を許してくれるか?」

 

「構いません。勝つのは私ですから……」

 

 

 お互いが言葉を交わし合い刃を向ける。

 これ以上の言葉はいらない。自分の思い、考えを示したいなら斬れ!その重みを示してみせろ!と、2人は自分の信念を貫くためにお互いに力を出し尽くすのであった。

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 〜〜夜VS誠〜〜

 

 

 

 

 一定の距離を夜から保っている誠は、ディウスを片手に魔弾を放つ。

 

 

「【ディバインシューター】」

 

 

 誠は五十を超える魔力弾を操り、夜に向かって放つ。

 

 

「…領域……入った」

 

 

 夜が斬れる居合の領域に入った魔力弾は、誠には見えない速度の抜刀術で一つ残らず斬られ夜には当たらない。

 

 

 先程からこの光景が繰り返しになっていた。

 

 

 別に誠からすれば、これは当たり前の戦法である。誠自身剣術は出来なくはないが、シグナムに勝てる技量はもっていない。ならば、圧倒的技術を持ち格上である夜の土俵の上でやり合う理由はない。

 

 ()()()()()()()()……。

 

 只々その事を考え、じわじわと彼は土俵の外から攻撃していく。

 

 

 

 一方で夜は斬り込みのタイミングを見計らっている。

 

 

 淡々と放たれた魔力弾を斬る、斬る、斬る。夜はそれが全てである。何がきても斬る。何処から来ても斬る。

 誠が100の策で戦おうとするなら、夜は究極の1で応戦する。この場面もそうだ。

 

 

 誠は単純な魔力弾を放っているのでは無く、死角を狙い数の暴力で、緩急をつけて、魔力弾の中に魔法式を組み込み鎖が捕らえに、1つの中に無数のひらめきが夜を襲って来る。

 

 

「……あは♪」

 

 

 嗚呼、楽しい。

 斬っても斬っても斬っても斬っても斬っても、途絶えることのない攻撃が、計算尽くされたことがこの光景に至っている。

 

 

 彼はあるのだろう。特別な才があるのだろうと夜は感じた。だが、それはまだ芽が出た状態であり、自分では気付いてない事だと夜は思う。

 

 

 あれはまだ開花していないと、夜の経験と本能が感じ取り、どんな花を咲かせるのか興味もある。

 

 

(……あいつ……面白い…。…一度枯れた花が…死んで……蒔かれた種…が…再び…開花…前?)

 

 

 どうも不思議な感覚だが、またそれも特別なのだろう。

 

 

(あの…砲撃子も……良い……ふふ…)

 

 

 思わず無意識的に夜の口角が上がる

 

 

「おいおい、笑う程暇か?」

 

「ん……?……笑う……誰が…?」

 

「んあ?………気づいてないのか(ボソッ」

 

 

 前回の襲撃から誠は思っていたが、どうも目の前の少年は情緒不安定なのかと。

 

 

(すずかみたいなタイプか……まぁそれは置いとこう)

 

 

 実際は誠自身、初めからこの戦闘で勝てるとは思っていない。確かに前回のリベンジもしたい。でもその挑戦は今では無い。夜が手加減をしているのか、力が出せないのかは誠は知らない。

 しかし、意思疎通ができる状態であるなら目の前の少年の目的も含めて、今更べきは対話……情報を集める。

 

 

 その為に誠は——()()()()()()()()()

 

 

「……ッッ??」

 

 

 いきなりの事に流石に夜も戸惑い動きが止まる。一方で誠は大剣を地面に刺し、ただその場に立つ。夜からしたら斬ってくれと言ってるようなものだ。

 

 

「……なんの…まね!」

 

「とりあえずお前と話がしたかったからな。俺はその為に何もしない」

 

「………」

 

 

 こいつは馬鹿だと夜は思うしか無い。

 戦場において話がしたいからと言って自分から剣を置く奴がいるのか………もしそのまま斬られたらどうするのか————

 

 

「———でもお前は斬ってないだろ」

 

「………む」

 

 

 ———心を読まれた。

 

 

「てかお前が本気で斬る気なら俺の首は速攻で落ちてるだろうしな。あははははは」

 

 

 自分が苦手なタイプだと夜は感じる。

 さとりの様に本当の意味で心を読んでいるなら対用は簡単なのだが、誠の様に1つの仕草、僅かに動いた表情、そんな簡単なもので心の奥底を見抜いてくる。このタイプは1番の夜の天敵だ。

 

 

「お前は……お前達はそういうタイプだ」

 

「……むぅ…」

 

「ククッ、なんだその膨れ顔」

 

「……はぁ…」

 

 

 夜はヤル気(殺る)が削がれたと言わんばかりに、夜刀を鞘に収める。

 

 

「ん……お前みたいなやつ…嫌い…」

 

「ありがとう。褒め言葉だ」

 

 

 満面の笑みの返しに夜刀は思った。《あ、こいつ性格クッソ悪いやつ》だと。夜に関しては未だ()()は無表情である。

 

 

「……それで…何…」

 

「ん?何がだ」

 

「……何を……何故…僕と…話…たい?」

 

 

 夜からしたら疑問が浮かんで仕方がなかった。

 ずっと誠からは殺意は感じても敵意は全く感じない。普通の人間なら前回の事で強い怨みを持っていてもいいぐらい痛めつけた。

 馬鹿みたいな正義中でも無い。

 

 

 ——夜には見えない。

 

 

 薄笑いを浮かべているように見える誠の表情の裏には何があるのか…。

 

 

「いや、別に深い意味は無い」

 

「……は…う?」

 

 

 《(あ、今の可愛い。保存しなきゃ)》

 

 《ああ、また誠の悪い癖が……》

 

 

 こてんと首を傾げる夜とポロリと出た可愛らしい声に夜刀は"夜の可愛い発言集"に保存し、ディウスは誠の発動した悪癖に無い手で頭を抑えた。

 

 

「実際俺自身そこまで戦闘に興味ないし、もともと勝てない試合はしたくねえー」

 

「…………なら」

 

「勘だな」

 

「……は…?」

 

「だから勘だ。直感ともいうが……まぁそうだな」

 

 

 別にふざけているわけではない。本気で言っている。考えている。そう確信している。

 ただ誠はそんなあるようで無いものを信じ通すほどの理解はない。だからこそ彼が動く理由は単純明快。

 

 

「あいつらがそう感じて思ってる。——それが俺の行動理由だ」

 

 

 なのは達が動いたから、と彼は言った。彼女達の勘は誠が1番信用しているものでもあるし、それを身を以て体験している。そこに疑う理由がない。もちろんそれだけではない。

 

 

 《貴方も素直に言えばいいじゃないですか、彼女達が傷つけられたから!とか、この前のリベンジだ!!とか、この子が昔の自分に似て——》

 

 《———うるせぇ!勘なんだよ勘!!別に気になったからとかじゃねぇ……》

 

 《……男のツンデレに需要は無いですよ》

 

 

 ディウスからの念話を無視して誠は目の前のことに集中する。もしこの発言で夜がキレて、本気で殺しにきたら首が飛ぶことは分かりきっているからだ。

 

 一方で、その夜は顔を伏せて動かない。

 

 

「…………」

 

 

 数秒後、夜は何も発しないまま顔を上げ、その中で———夜は夜刀の柄に手を置いた。

 

 

「…それもまた…一つだろう。…だが、…どんなに…馬鹿らしい…理由…でも…意味のある答えでも…、それが…通じる…のは…勝者……のみ……。故に……今…この場で刀を……交えない……と…いう理由…にはならない」

 

 

 自然と刀が抜かれる音が聞こえる。

 

 

「その…想いが本当なら…本物なら……———語れ、力で」

 

「やっぱそうなるよな………上等!!」

 

 

 誠もディウスを地面から抜き構える。

 

 

「我が…相対…する者よ。名乗ろう……僕は———剣神“八雲夜”我が技によって…お前の…意…を断ち斬ろう」

 

「そんな大それた名はないが、俺は“直江誠”………そうだな言うなれば、友の意の為に貴殿に土をつけよう」

 

 

 

『『いざ尋常に勝負!!』』

 

 

 

 ———1人は家族たる少女の命と家族のために

 

 

 

 ———1人は友たる少女達と共にあらんとするために

 

 

 

 理屈抜きの()()()()()譲れない思いが故の戦いが始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 〜藍VSリニス〜

 

 

 

 

 主達から少し離れた場所に2人の獣系美女が相対していた。無論自分の主がぶつかり合っているのは感じている。

 

 

「…主ヨルも戦っておられる。さぁやろうかのぅ」

 

「そうですね」

 

 

 二人の周りには大量の魔力弾と妖力弾が生成され弾幕合戦が開始されていた。元から魔力と知恵で勝負する2人が戦闘するのであれば簡単に予想できる場面だ。

 

 

「チッ!」

 

「クッ!」

 

 

 お互いの攻撃が相殺瞬間にリニスは管理局で支給されているストレージデバイスを構え

 

 

「【フォトンランサー】」

 

 

 槍状の魔力弾を藍に放つ。

 

 藍も指先に魔力を貯めスペリングを始めた。

 

 

「久しぶりに本気を出そう!綴る…炎は平等なりて善悪混沌一切合財を焼尽し、浄化しむる激しき慈悲なり 【第一階梯 火炎】」

 

 

 

 藍が〆ると空中に浮かぶ文字が魔法陣に変わりそこからの火炎がリニスのフォトンランサーを焼いた。

 

 

「何ですか今のは!?魔法!?」

 

「これは貴様らの機械に頼る様な魔法では無く、私が主ヨルの力になる為に編み出した【闇術】」

 

 

 藍の闇術とは自然界のエネルギーを操作し、ダメージを負わせたり、結界を構築したり、怪我を癒したりといわゆる魔法。闇術は詠唱に中空にスペリングが必要で隙が大きいが、何千年の戦闘経験でスペリングを高速詠唱で補っている。

 

 

「私は主ヨルのためにも負けられん!綴る…氷の子よ 雪の童よ そなたの息吹を貸しておくれ 小さな息吹で凍えさせておくれ【第一階梯 氷の息吹(ホワイトブレス)

 

 

 冷気放射的なものが轟々と唸りをあげリニスに襲いかかる。

 

 

 この攻撃は普通の使い魔であれば防げる攻撃ではなかった。しかしリニスは普通では無い。

 かつて大魔導師と言われたプレシアの使い魔であり、世界でも片手には入る使い魔である。

 

 藍にも負けられない理由があるならリニスにもある。一度は死にかけたが誠に救われリニスは決めたのだ!

 私は誠を守ると!新たな主として。プレシアをフェイトをアリシアをアルフをかつての家族を救ってくれた者を守ると!

 

 

 だからこそリニスも負けられない。———使い魔として!

 

 

「貴女だけが思っていることではありません!【ジェットスマッシャー】」

 

 

 リニスが放つ淡い黄色の光輪が氷の息吹とぶつかり爆発する中リニスは藍に問いかける。

 

 

「今更ですが対話することはできないのでしょうか?此方は話をしたいと思っています」

 

「本当に今更だが……無理だな!こちらにメリットが無いし、お前達の言葉を信用する理由もない」

 

「………では戦うしか無いと?」

 

「…………」

 

 藍からの返事は無い。

 しかし日本には沈黙は肯定とみなすという言葉があるように無言はそれなのだろう。

 

 爆風が収まると同時に藍は決定的なこれ以上ない理由を叩きつけた。

 

 

「主が戦っているのに我らが戦わない理由があるか?」

 

 

 

 ————ッ!!

 

 

 

「………失礼しました。その通りですね。互いの主が戦っているということはそういうことですから」

 

 

 一礼するリニスは己の馬鹿な発言を恥じた。

 

 敬愛する主人が戦っているのに使い魔である自分は平和的解決を図ろうとしていたことに。問い質したことは間違いではないのかもしれない。側にはいない主も同じ事を問い質したかもしれない。———だが戦っている。

 

 

 ほら……答えはでた。

 

 

 ではもういいだろう。ここからやる事は理解しただろう。もう考えるのはやめだ。

 

 

「私はリニス…主人"直江誠“の使い魔です」

 

「我は八雲藍…主"八雲夜“の眷属だ」

 

 

 ———名を交わす。

 これだけで自分が、相手が、お互いが存在の証明がされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこにあるのは、ただ自分の主の想いのために……

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 〜レヴィVSアリサ&すずか〜

 

 

 

 

 高層ビルより高い高度で、火と氷の花が咲き乱れている中、一つの影は淡々と処理をしていく。

 

 

「いい加減諦めてくれないッスか?」

 

 

 レヴィは四方からの氷柱や火の玉を捌きながらすずかとアリサにそう言う。

 

 

「あんたがおとなしく捕まればいいのよ!【炎鳳翔】」

 

「私たちも戦いたく無いんです!【氷華】」

 

「……とか言いながらガンガン攻撃が飛んでくるッスけど!?」

 

 

 戦いたく無いという言葉と同時に飛んでくる火の鳥と氷の花弁をレヴィは空中走行で避ける。

 

 

「はぁ……仕方ないッス【忍法・カマイタチ】」

 

 

 短刀を手元で軽く振るうと風の刃が四つアリサとすずかに向かうが、アリサはアイズの炎で風の刃を燃やし斬りすずかは氷壁で防ぐ。これで終わると思っていたレヴィは防いだことに関心の声を上げた。

 

 

「おー、よく防いだッスね〜」

 

「ふん!こんなの効かないわ!」

 

「油断はダメだよアリサちゃん!」

 

「分かってるわよ。悔しいけどあの忍者は格上…油断は無いわ。アイズ!」

 

 《おうよ!フレイムモード》

 

 

 アリサはもう一度アイズを構え直してカードリッジによって進化したフレイムモードに変えると炎を纏ったアイズをレヴィに振り下ろした。それをレヴィは短刀受け止めるが、前回との違和感に気付く。

 

 

「これはッ!?」

 

 

 この前までのフレイムモードであれば一撃で炎が消えたいのに対しカードリッジを使ったフレイムモードは長時間の炎を纏うことが出来るようになっていた。その火炎がレヴィ襲ってくるのに対し、後方へ避ける事でダメージを避ける。

 

 

「これが新しいアイズよ!今よ、すずか!」

 

「うん!ここで決める【氷爪】」

 

 

 レヴィが避けた背後に待ち構えていた、すずかが右手の人差し指と中指が氷で覆われた爪でレヴィを突いたがいきなり煙が上がりレヴィが木に変わる。慌てて二人は周りを見渡すと少し離れていたビルの屋上に立っているレヴィを見つけた。

 

 

「いや〜惜しかったッスね。変わり身の術ッスよ」

 

 

 余裕感バリバリのレヴィだが、内心焦りが見えていた。

 

 

(ヤバかったッスね…いくらデバイスが進化したとはいえ此処まで動きが違うって……これだから才能を持つ者は怖いッス。それに今の時期は本気が出せないしこの地は自然が無いッス……どうするか…?)

 

 

 前回とよりも強い二人に実際は余裕が無いレヴィ。しかもレヴィの戦い方"忍法術(シャーマニック・スペル)は大自然の力を使う。自然があればあるほど強くなるレヴィだが、今の場所はビル街のために力が出せずにいた。

 

 この後どうするか考えいると、背後から冷気を感じたため短刀を持っている手を背中に回して氷の爪を防ぐ。

 

 

「速いッスね!?忍者の背後を取るとは中々ッス」

 

「貴女は格上ですから。逃げてばかりじゃ勝てませんし」

 

「そりゃどうもッス…(ちょっと…キツイッスね。)」

 

 

 すずかは素直な気持ちで言っているのだろうが、レヴィからすればそんな言葉を素直に受け取っていける余裕な無い。しかもすずかは力の差があることで、それが燃料となり、力を増していく。

 

 

「だからもっと攻めます!【アイスチェーンバインド】」

 

 

 すずかが屋上の床を足のつま先で鳴らした瞬間、床に蒼の色でできた魔法陣から氷で出来た鎖がレヴィの身体を蓑虫のように縛る。

 

 

「これは……やられたッス」

 

「やったわね!すずか」

 

 

 今、この場に来たアリサが歓喜の声を上げる。2人でレヴィの前に立ち、もう何もできない状態であろう、と勝ちの意識が生まれる。

 

 

「これで動きは封じました。あなた達の目的を教えてください!」

 

「目的……ッスね〜、どうしてそんな事聞くッスか?管理局員だからッスか?」

 

「違います。確かに管理局と一緒にいますが、私達はお話したいんです」

 

「話をしなきゃわからない事だってあるでしょう!私達はそうやってきたのよ!」

 

 

 ———話がしたい。

 その言葉に疑問しかないレヴィは可笑しなことを言うと、心の中で少し笑ってしまう。ただの愚か者か、馬鹿なお人好しか。

 

 

「………でも自分達は悪い事をしてるッスよ?」

 

「悪い事をしてる人が悪い人だとは言えないでしょう。それにあなた達からは嫌な感じがしませんから」

 

 

 すずかは知っている。

 欲望にまみれた醜い者達を。夜の一族と言う家系に生まれたすずかは、自らを王と思い好き勝手にしている者達を見て育ってきた。

 

 ———そう言う人たちはただ醜いのだ。

 

 しかし襲われたとは言えヴィータやレヴィからはそれを感じなかった。なのは達の中でも悪意という部分に1番敏感なすずかがそう感じている時点で少なくとも一般的な極悪人ではないのである。

 

 だからこそなのはがフェイトと分かり合えたように、レヴィや他の者達ともすずかは分かり合いたいと思っていた。

 

 

(成る程……この歳でそこまで悟っているとはどんな人生を歩んできたッスかね〜)

 

 

 そう思うレヴィはすずかが一瞬見せた養豚場の豚を見る目に少し同乗した。多分本当の悪というものを、この少女は見て来たのだろうと、それを打ち破って乗り越えて、この場に立っているのだろう。そして確かに———

 

 

「———自分は悪では無いッスよ!」

 

「う、うそ…!?」

 

 

 レヴィから伸びている影が飛び出してレヴィを包んだ。それは言葉通り光景である。まるで捕食しているような光景にアリサは恐怖のようなものが背中に伝わるのを感じる。

 

 

「一つ間違いがあるッスね」

 

「バインドが!?」

 

 

 影から声が発しているように思えるほど、レヴィの身体は影と同化しているように見える。顔の所々は見えるが、全身の9割が黒だ。まるで夜の闇のように。

 

 

「な、何が間違いがあるって言うのよ!」

 

 

 恐怖を押し込めてアリサが言葉を放つが、その喉はカラカラで、潤いが欲しくなる。

 そんな恐怖の権化のような姿をしながらもレヴィの見える表情はまだ慈愛あった。

 

 

「自分は悪や善、正義なんかじゃダメなんッスよ。———自分は影…そう、あの方の影じゃないといけないッス」

 

 

 それが長年連れ添って来た主だから。あの時に誓った覚悟なのだから。影であることが風間レヴィという存在なんだ。

 

 

 

 だからこそ———

 

 

 

 

「……戦うしか無いんですか?」

 

「そうッスよ。あの方の為に………残りの時間を幸せに過ごしてもらうために……譲れないッスよ!」

 

 

 レヴィの目が短刀を構える姿が、本気である事が分かり、アリサとすずかも覚悟を決める。

 

 

「こう言う時は美鈴さんが名乗り合うと言ってたッスね………自分は夜さんの眷属の一人"風間レヴィ」

 

 

「レヴィさん……私は"月村すずかです」

 

「私は"アリサ・バニングスよ!」

 

 

「それじゃあお互いの刃をぶつけていくッスよ!!」

 

 

 

 一人の少女は主のために譲れない想いを守るため、その影として………。

 

 

 

 

 二人の少女は友人の想いを……共に憧れた背中を真似て、闇に立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 〜ザフィーラVSアルフ〜

 

 

 

 地上で殴り合いをする二人の獣。二匹の獣。荒々しく拳を振るう姿は鏡に映った己のようだ。

 

 

「———はああああ!!」

 

「———ふぬん!!」

 

 

 アルフの魔力の纏った拳をザフィーラは腕を横にしてガードする。それに合わせてザフィーラがカウンターの拳を放つが、アルフの拳がまた相殺する。

 

 

「あんたは主人の使い魔か!?」

 

「ベルカでは騎士に仕える者を使い魔と呼ばぬ!主の牙…そして盾…主の守護獣だ!」

 

「どっちも一緒じゃないか!!」

 

 

 お互い拳がぶつかり魔力の暴発により軽い爆発が起きる。

 黒い煙が顔近くに舞い踊る為2人は一度距離を取った。その間ザフィーラはバックステップで避ける時に上空で戦う仲間達の姿を捉えた。

 

 

 ザフィーラは戦いながら念話を使用しシャマルに撤退の意思を伝える。

 

 

 《状況はあまり良く無い。ヴィータやシグナム…夜や眷属達が負けるとは思わんがここは退くべきだ!シャマルなんとか出来るか?》

 

 《何とかしたいけど……局員が結界を維持しているの…私の魔力じゃ破れない。シグナムのファルケンかヴィータのギガント級の魔力を出さないと無理よ》

 

 《こっちは皆無理だ。やむを得んあれを使うしか…》

 

 《分かってるけど……でも———》

 

 《ッ!?……シャマル!?どうしたシャマル!?》

 

 

 話の途中で念話が急に切れ返答が返ってこない。今すぐに駆けつけたいが目の前には赤い獣が牙を立てて突撃してくる。

 

 

(く!一体何があった!?)

 

 

 助けに行けないことを悔やみながらも、ザフィーラはまず目の前の敵を潰すことを優先とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ____________________

 

 

 ______________

 

 

 __________

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、そのシャマルは———

 

 

 

「——捜索指定ロストロギアの所持により貴女を逮捕します。抵抗しなければ弁護の機会が貴女にはある。同意するなら武装の解除を!」

 

 

 漆黒の執務官ことクロノがシャマルの後頭部にデバイスを突きつけ、完全な優位な立ち位置にいた。

 シャマルは結界の外からできるだけのサポートをシグナム達にしていたが故に背後からのクロノに気づかなかった。

 

 

(マズイ!?いつの間に局員が!?ここで捕まったらみんなに迷惑が掛かっちゃう……どうする…考えるのよシャマル!!)

 

 

 最悪の状況にシャマルは、フル回転で思考を回しどう切り抜けるがを考える。確実に動いたら撃たれる。魔法を使うにも、発動までのラグがあり過ぎる。どう転んでも詰み、その言葉が脳内をよぎった瞬間だった。

 

 

 

 

「———はあっ!」

 

 

 

 

「え?」

 

 

 突如として、いきなりの攻撃に反応できなかったクロノは謎の仮面を付けた男の蹴りを食らう。その衝撃でシャマルからある程度の距離が生まれる。

 

 

「グハァ!れ、連中の仲間か!?」

 

 仮面の男に睨みつけるような目で、そう言うクロノの無視して仮面の男はシャマルに、まるで命令するかように言った。

 

 

「———使え」

 

 

「え?」

 

 

 一瞬、何のことを言っているか分からなかったが、次の台詞によりシャマルの警戒心はMaxになった。

 

 

「闇の書の力を使って結界を破壊しろ!」

 

「でもあれは!?」

 

 

 この時、シャマルは闇の書の力を使うことに驚いたのではなく、その事を知っている仮面の男に驚いている。何を勘違いしたのか、仮面な男は——

 

 

「使用してページはまた増やせばいい。仲間がやられてからは遅かろう?」

 

「………チッ」

 

 

 完全な部外者に言われるのは癪だったが、それを思っていられる程状況は良くはない。仕方なくといったところだがシャマルは闇の書の力を使う事を決めた。

 

 

 《みんな、今から結界破壊の砲撃を放つわ!上手く避けて撤退を!》

 

 

 不意打ちの一声。普通なら一瞬でも動きが止まったり戸惑いが生まれるが、彼らは違った。

 

 

 《おう!(ッス、ん、》

 

 

 前もって言っておいた訳ではない。戦闘中に話したのはザフィーラだけだ。それでもシャマルの意思は一つの線のように曲がることなく確実に伝わった。

 そのまま———詠唱を始める。

 

 

「闇の書よ、 守護者シャマルが命じます。眼下の敵を打ち砕く力を、今、ここに。撃って、【破壊の雷】」

 

 

 結界の上空でバチバチと音を立てる闇の玉が、結界に落ちる。ピキピキと結界は崩壊し始めた。

 

 

 この現状にヴォルケンリッター者達も即座に反応する。

 

 

「すまんテスタロッサ。この勝負預ける!」

 

「シグナム!?」

 

 

 まさか彼女から逃げるとは思ってなかったフェイトは驚きのあまりシグナムを逃してしまう。

 

 

 

 一方でヴィータは騎士らしく、我、認めたりと言わんばかりに平たい胸を張って、珍しく自らの名を放った。

 

 

「あたしはヴォルケンリッター鉄鎚の騎士 “ヴィータ”!!あんたの名は?」

 

「なのは……高町なのは」

 

「高町なにゃ…なにょ…えーい呼びにくい!」

 

「逆ギレ!?」

 

「ともあれ勝負は預けた!次は殺すかんな!絶対だ!」

 

 

 理不尽な!?と思っていた間にヴィータはなのはから距離を取って、大声で叫びながら夜闇に消えていった。

 

 

 

「……もう……時間」

 

「え?……ちょっ!まっ———!!」

 

 

「リニスよ。今回はここまでだ!」

 

「な——!?」

 

「お主の主を守らぬと、この魔法は当たればヤバイぞ」

 

 

「それじゃあ自分は撤退するッス」

 

「あ!逃げるのッ!?」

 

「次は話をしてもらいます!」

 

「そうなると良いッスね………」

 

 

 夜達も各々一言残して姿をくらました。誠達はその背を見ることもなく……。

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 一方で結界の外ではクロノが仮面の男に足止めをくらっていた。クロノから見て金髪の女性が何か攻撃系の魔法を使用したのは分かっている。

 それを止めようと動こうとするクロノだが、目の前の仮面の男に邪魔させて動けない。

 

 

「お前もアイツらの仲間か!」

 

「…………」

 

「答えろ!!」

 

 

 無言の返事にクロノは杖型デバイスの先を向けた。それに対して仮面の男の返答は見ていろ、ただそれだけだった。

 

「今は動くな……時を待て。それが正しいといつか分かる!」

 

「何ッ!?」

 

 

 先程の一撃から考えて、この仮面の男は自分より格上だとクロノは感じた。いくら金髪の女性に意識を持っていっていたといっても周囲のことを警戒はしていた。それでも何も引っかからなかったと言うことはそれだけの実力を持っているということ。

 

 

(クッ……みんな無事でいてくれ……)

 

 

 下手に手を出せないクロノは見てることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒の雷が落ちている結界の中は、嵐が来たかの様な光景へとなっている。その威力は小規模な都市であれば簡単に全てが破壊され吹き飛んだであろう。

 無論なのは達にも、その脅威は向かって来た。

 

 

「此方に来なさい!!」

 

「こっちだよ!」

 

 

 リニスが誠、アリサ、すずかを守り、アルフとユーノがなのは、フェイトを守って無事でいた。

 

 

「何でアルフがここに…?」

 

「アイツが……守護獣とやらが丁寧に教えてくれてね…」

 

 

 フェイトの疑問にグヌヌと唸りながら答えるアルフ。その答えのお陰で一つの謎は解決されたが、1番の謎はより深まるばかりであった。

 

 

 

 

 ———仲間を守ってやれ、直撃を受けると危険だ、ねぇ〜。

 

 

 

 

「あんにゃろう…一体何が目的なんだい…」

 

 

 

 アルフの脳裏にはザフィーラのある言葉が残り続けていた。こうして二度目の戦闘は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 







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27話 得るものと失ってるもの

どうもパッチェです。

本日の2話でございます。

あとがきで今後の事を書いているので読んでくださると幸いです。



 

 

 疲れきった身体に部屋に満ちた無言の空間。

 リビングでシグナムは淡々と愛刀であるレヴァンティンの整備、シャマルは減ったカートリッジの補充。ザフィーラは狼モードで床に寝そべっている。藍はソファーに座ってズズズッと茶を飲み、美鈴は台所で昼食の炒飯を作っていた。

 

 

 時間は13時。

 あの戦いから数十時間が経ったが彼女たちの疲労は癒されることは無かった。

 

 

「……仮面の男はどう思う」

 

 

 今まで沈黙を貫いていたシグナムから突如として発せられた一言は美鈴以外の手を止めることに値した。

 

 

「シャマルが言っていた奴か…」

 

 

 そう言うと藍は目の前にあるダイニングテーブルに湯呑みを置き、腕組みして目を瞑った。藍も今まで色んな者達を見てきたが話を聞く限り、仮面の男はどーもキナ臭いと感じていた。

 

 

「目的が見えん。助けられた……というには気持ち悪いな」

 

「えぇ、どうにも納得いかない部分が多いわ。まるで恩を売るかのように、信頼を得るかのようにあまりにもタイミングが良過ぎるわ」

 

「………そう感じたのならそういうことだ」

 

 

 ザフィーラの言葉にそうだな、とシグナムは軽く返す。

 彼ら自身何だかんだ言っても目の前の大切な者たち以外信用する気は元からさらさら無い。

 それにある程度のことは予想はしていた。どういった理由であれ、なのは達のように純粋に突っかかってくる者達より、闇の書というヴォルケンリッターに復讐してくる者達の方が多いと予想していた。

 

 

「まぁ、その仮面のものが力を求めるものか、力で成そうとするものかは知らんが、どっちにしても邪魔するものは潰せばいい…わしらの目的を見失うなよ」

 

「分かっている。…と言いたいがどうやら私達にはしつこい純粋無垢なストーカーが付いているようでな。たまに相手をしなければいけないのでな」

 

 

 シグナムが本気で言っているのかギャグなのかは曖昧だが、一理あるので思わず皆"ふふ"とにやけてしまう。

 

 

「いやいや、あなた達から手を出したんじゃないですか!ったく……シグナムさんは戦闘したいだけでしょ」

 

「そうとも言うかもな」

 

 

 丁度調理を終えた美鈴がテーブルに1人一つの炒飯を置きながら、シグナムをジト目で見る。

 今、この場にはやてがいないのも戦闘のし過ぎというのが一つの理由でもあった。

 

 

「……はぁ。美鈴の炒飯は嬉しいが、この匂いはやはり辛いな」

 

「……我も匂いが……」

 

 

 2人……いや、2匹の獣は人より鼻が良すぎる部屋に充満しているお香の香りに不快感を表す。

 美鈴特製のお香は空中に満ちている魔力の濃度を増幅させ、疲労、魔力、細胞の活性など様々な効果を発揮するが、その分独特な匂いとあまりにも濃ゆすぎる濃度のせいで身体が幼い者達は酔ってしまい耐えられないのだ。

 

 

「仕方ないですよ。あなた達は疲労が溜まり過ぎている。はやてちゃんが居ない今だから出来る薬ですから暫くはジッとしていてもらいます」

 

「それは…分かっている。しかし身を以てわかるが、確かにこれは主はやてには早いな」

 

 

 今日は今日からタイミングよく……()()()()()()()()()()()()()()()()()。たまたま友人の家に泊まりに行っている。

 もしはやてがいる中でこのお香をしていたら、唯でさえ悪い体調が更に悪化するのは目に見えていたからだ。

 

 

 

 だからこそ——美鈴は今日を選んだ。

 

 

 

 ヴォルケンリッター達は『自分達は24時間動ける』と言うが、動けると戦えるは別の話だ。もしそれこそ集中力、魔力、体力が切れて途中で脱落されるのが1番の悪手である。過去の過ちは繰り返してはならないのだ。

 

 

「蒐集も大切ですが暫くはお休みにしましょう。はやてちゃんが帰ってきたら皆さん構ってあげてください。最近寂しがってますから……」

 

「……そうだな。刃を交え戦闘もいいが、やはり主はやてと———家族と共にいる方が心地よい」

 

「ふふ、そうねシグナム」

 

「……何がおかしいシャマル」

 

「クク、将が丸くなったということだ」

 

「…お、お前まで笑うかザフィーラ!」

 

 

 彼等は笑えている。それだけで心に少しの余裕ができている。

 毎日命のやり取りとしているが故にいつも張り詰めた空気を纏っていた。勿論その空気も大事だが、普段の生活にすらその空気を纏うのは褒められたことではない。

 

 

 だからこそ今は体を精神を休ませなければならない。

 

 

 それに———

 

 

 

 

 

 

(……そろそろ限界が近いですね。隠してるつもりなんでしょうけど何年の付き合いと思っているのか……帰ったら説教ですよ)

 

 

 

 

 

 

 

 ———夜様

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん」

 

 

 体が重い………走ろうとすれば足がもつれる。刀が……夜刀が振れない。目が見えない……視界が暗い。

 

 足元には大量の飛竜が100を超えるであろう飛竜が、部位ごとにバラバラになっており、夜のバリアジャケットである着物、自慢の銀髪が血の色に染まっている。

 

 

 《夜様!気を確かに!》

 

「………」

 

 

 夜刀はずっと声を荒げて呼んでいるが夜からの返事が無い。

 

 

 夜とヴィータはある世界に蒐集をしに来ていた。連日の戦闘に美鈴やシグナムからは軽めに、と釘を刺されていたが"はやてを助けたい"想いが強過ぎる2人は、いつもの様にいつも以上に蒐集に励んでいた。

 

 

 そして途中から2人が別れた途端、夜がおかしくなっていった。獲物を見つけると無言で無意識で無茶苦茶に壊して殺していった。

 

 夜刀が止めても止まらず、声が聞こえてないようだった。

 

 

 

 ———そしてこのザマだ

 

 

 

「………や……と…」

 

 《…意識が!?夜様身体は———動きますか!!》

 

「……む……り…。…意識…も…やば…し」

 

 《…ッ!!そうですか……今すぐヴィータ様を呼びます(もうきましたか……あの野郎…クソが!)》

 

 

 夜刀を片手に棒立ちの姿は無防備で今襲われると相手次第では逆に()()()()()()。それこそ()()()()()()()()()()

 

 

「…………ね…むい」

 

 

 それが最後に夜は瞼を閉じた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ______________

 

 

 _______

 

 

 

 

 

〜ある星のある場所で〜

 

 

 

 何故だろうか……いま…あったかいものが何かを浄化してれる。目を開ければ———紅の髪が目の前をよぎった。

 

 

「…!………めーりん?」

 

「あん?……お!ヨル起きたか!」

 

「……あ…れ?………ゔぃーた…」

 

 

 気づけばヴィータに背負ってもらっていた。

 小さな体で優しく夜を支えて力強く歩く姿に、何故か背中が大きく感じた。あの日のように……。

 

 

「今は寝てろ。あたしが守るから」

 

「……うん………頼ん…だ」

 

 

 嗚呼、この言葉を聞いたのは——いつだったか…何処だったか

 

 

 

 

 でもなんか———

 

 

 

 

 

 

 

『……夜様…私が…貴方を———』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 懐かしいや…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ…………………………………■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【あとがき】

ここまで読んでくださりありがとうございます。

まず今日まで投稿できなかった理由+言い訳ですが、一つは簡単に言えば時間がありませんでした。
しかし感覚を空けすぎたことは申し訳ない。

後fgoをやりすぎてました(笑笑)


来年ですが三月まではどれだけ投稿できるが不明です。新話までは何話かまとめて出します。

読んでくださる読者の皆様には少々お待ちになってもらう事になるかもですが、頑張って書きたいと思いますので読んでくださると幸いです。


では、今年関わってくださった読者の皆様。出すたびに読んでくださる方々今年一年ありがとうございました。そして宜しければ来年もお付き合いください。



長くなりましたが、良いお年を〜!



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28話 疑問と決意

書けたので投下。

本日も二話投稿しております。


 

 

 八神家が体を癒している中、同時刻。

 なのは達はテスタロッサ家のリビングでクロノから守護騎士の説明を聞いていた。

 

 

「守護者達は闇の書に内蔵されたプログラムが人の形をとったもの。闇の書は転生と再生を繰り返すけどこの四人は闇の書と共に様々は主元に渡り歩いている」

 

「意思疎通の対話能力は今までの事件でも確認されているだけどね。感情を見せた例は無いの」

 

「闇の書の蒐集と主の護衛。彼等役目はそれだけですものね」

 

 

 これが管理局のクロノ達が知っている情報だった。

 

 

「でも帽子の子…ヴィータちゃんは怒ったり悲しんだりしてたし…」

 

「シグナムからも人格を感じました。『成すべきことがあるって、仲間達と主のため』だって」

 

 

 成すべきことか…、とクロノは暗い表情になる。

 

 

「多分仲間ってこの子達だよね…」

 

 

 エイミィが守護者達の画像が映っているモニターに夜、藍、レヴィの画像をプラスする。

 

 

「ある意味1番の謎よね。私達でも管理局のデータベースにも知らない者達……お手上げね」

 

「言えるのは彼らはこの星に……この辺りにいる、という事ね。目的ははっきりしないけど……」

 

「どういうことだい?アイツらはその……闇の書?の偉大なる力を手に入れることだろ」

 

 

 その通りなのだ。アルフの言う通り、力を入れ主に与えることがヴォルケンリッターの存在である。しかし何か引っかかるのだ。その違和感が過去の闇の書を知っているもの達は取り払えない。

 

 

「誠は何かないか?思ったことでも何でも感じた事でもいいから」

 

「ん?…ああ、大体の目的は見えてるな」

 

「へー、流石誠だね〜…………え?」

 

 

 クロノは軽い気持ちで何か少しでもの情報を、と思って話を振ったつもりだったのだが、この誠という男は爆弾発言で返す。あまりの事にファイトも固まる。

 

 

「あはははははは〜まーくんらしいや!」

 

「ど、どういう事なの誠くん?」

 

「んーー俺の想像だよ。合ってるかどうかは分からん妄想さ」

 

「それでもいいから話しなさいな。貴方はそういうの当たる…いや、当てるでしょ」

 

 

 へいへいと軽く手を振り誠は真剣な表情に変わる。

 

 

「そうだな…まず前提として夜…俺と戦った八雲夜は確実に闇の書の主では無いな。そしてクロノ、ヴォルケンリッターは過去に闇の書の争いにて死者を出してるのは間違いないな」

 

「……ああ、記録として死者は出ているし、彼らが直接殺したこともあった」

 

「それを踏まえて今回……今のところ死者は出てない。それどころかあれば殺さないようにしている戦い方だ」

 

「確かに……なの」

 

 

 よくよく考えてみたらヴィータなんかはよく殺す!などと言っているがそんな殺意をなのははそこまで感じなかった。それこそ出会った頃のファイトの方が殺意が高かったくらいだ。

 それにもし彼女らが非殺傷設定を解いていれば、過去ヴォルケンリッターと相対した者達のように殺されていたかもしれない。そう考えると体が震える。

 

 

「そこで考えるのは今のヴォルケンリッターと過去のヴォルケンリッターとの違いだな。何だと思う?」

 

「なるなるほどほど〜〜〜………主だね」

 

Exactly(その通り)!やはり1番の違いはそこだな。まぁここからは完全に想像の域だが、ヴォルケンリッターはプログラムが人の形をとった存在、言うなれば人形だ。人形は意思を持たず、人形を操るのは人…ここでは主に該当するな。だが俺たちが出会い、戦った彼らは意思を持って立っていた。

 

 それは彼らが、人としての意思を与えられたか、元々もっていた物を浮かばせたか……俺としてはどっちも、と思っている。だが人の心を教えるというのは簡単じゃないし、1日2日じゃ無理だ。それこそ何日も何ヶ月も付き合ってないと…な」

 

「……ねぇ、それって………うわ最悪のパターンじゃん」

 

「え?どういう事姉さん」

 

 

 何となくアリシアは見えてきたのか、うえぇ〜とした顔になっている。それに大人組も察してきた。

 

 

「転移頻度からこの辺りにいるのは分かっている。それはこの星に地球にいるという事だ。そして地球には俺たちが使っている魔法は存在しないに等しい。ということは……———主は魔道士ではない可能性があるってことだ。」

 

「おいおいそれって!!」

 

「俺的に今回の主が闇の書の力を求めてるとは何か思えねぇ。それに一つ気になってんだが………」

 

「珍しいね。誠がそこまで言い淀む何て」

 

「ああ……何てゆーか……んーーユーノなら分かるだろ。こう小骨が引っかかる感じ。あー……」

 

 

 

 ———()()()()()()()()()()()

 

 

 

「「んん??」」

 

 

 なのはとフェイトは全く理解できなかったが、ユーノとアリシアは頷きそれに同意した。

 

 

「それは僕も思ったよ。でも…………あ、そうか!確かに目的は見えてくるけど………その先が見えない」

 

 

 一瞬言葉を詰まらせたがユーノは理解した。

 それは脱出ゲームの出口を見つけた訳ではなく、脱出したら海に囲まれた無人島であり、そこからどう帰るかを考えるようなものである。

 

 

「は、話についていけないの……」

 

「まぁ、なのちゃんはまだ分かんないよね。……フェイトもか。じゃあ説明するとね、2人は何の為にヴォルケンリッターとその仲間達が蒐集してると思う?」

 

「それは……闇の書を完成させるためじゃ……」

 

「そう頁を埋めて闇の書の完成。管理局の大まかな記録には【頁(666)を全て埋めれば力が手に入る】ってなってる。けどね、その力が何かとは何処にも無かったの。それこそヴォルケンリッターの情報はあるのに闇の書の情報はほぼ無いんだよねぇ〜」

 

「それにここで大切なのは、"どうして蒐集するのか"ではなく"完成したらどうなるのか"なんだ」

 

「要するに重要な点を纏めると———」

 

 

 

 

 1・目的は闇の書の完成

 

 

 2・完成した後が不明

 

 

 3・闇の書とは何なのか

 

 

 

「まぁ、大まかにこの3つだな」

 

「「な、成る程」」

 

 

 3人による大演説に少しは理解したのか、なのはとフェイトは肩に力を入れて返事を返す。

 

 一方でクロノはこの話で思うところがあったのか、思い出したかのようにユーノと誠にある提案を出した。

 

 

「本局に闇の書の情報があるかもしれない場所があるんだが探すのが苦労するんだ。そこでそう言うのに得意な二人に行って欲しいだが………どうだ?」

 

「行くのはいいぜ。ただ……そういうのはもっと早く言え!」

 

「誠に同意……まぁ行くけど」

 

「あはは……すまないな。でも行ってくれるのは助かるよ」

 

 

 男子の青春というか、そんな空気を感じとった保護者達は涙ながらに語っていた。

 

 

 《誠に…………あの誠に男の友だちが……うぅ》

 

 《分かる…分かるわよリニスちゃん。クロノも年が近い同性の友達がいなくて……》

 

 《あんた達って………色々苦労してたのね》

 

 

 プレシアという親バカが親バカに同情の目で見ていたのはなんとも笑えるものだ。最終的にリニスも手伝いで誠達について行くことになるのだがそれはまた別の話。

 

 

「そういえば今日はアリサとすずかはいないのか?君達はいつも一緒のイメージなのだが…」

 

「あれ?クロノくん聞いてなかったの?」

 

「ん?何のことだ」

 

 

 

 

 

 アリサちゃんとすずかちゃんは———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ああ!?あたしのカートに赤甲羅がぁ!?」

 

「ふふふ、そう簡単にゴールはさせへんで!」

 

「にゃああああ!今度は三連続!?」

 

「あははは…ごめんね」

 

「………そんないい笑顔で言われても説得力無いわよ」

 

 

 赤い帽子をかぶっているおじさんの某カートゲームで真っ白に燃え尽きているアリサ。

 はやては今すずかの家に泊まりにきていた。はやてにとって初めての友達とお泊まりは緊張もあったがすずかが呼んだアリサのコミュ力もあってゲームで遊ぶくらいに仲良くなっていた。

 

 

「それにしてもすずかちゃんの部屋は本だらけやな〜」

 

 

 はやてはキョロキョロと周りを見ると四方八方に本棚が並んでいた。すずかもはやてに負けず劣らずかなりの本の虫である。

 

 

「読みたい本があるとついつい買っちゃて…。はやてちゃんも読書家だよね」

 

「まぁ私の場合は外に出られへんから本しかなかったからな。でも本は好きやでー」

 

 

 燃え尽きているアリサを無視して本の話をする二人。

 

 

「最近は何読んでいるの?」

 

「そうやな〜『()()()()()()()()』は面白いな」

 

「あっ!それ私も読んだことがあるよ。悲しいお話だよね」

 

「確かにな〜」

 

 

 そんな話をしているとアリサがいきなり声を上げ、コントローラーを強く握りしめた。

 

 

「あんた達、早く続きをするわよ!今度こそあたしが一位になるんだから!!」

 

 

 そんな事を言うアリサに苦笑しつつ時間いっぱい甲羅をぶつけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はやては好きな人とかいるの?」

 

 

 寝る前のベットの上でいきなりそう質問する。

 どんなに変態でもツンデレでも病んでいても女子は三度の飯より恋愛話が好きなのだ。

 

 

「いきなりやな……別にいない訳やないけど……」

 

「え?いるの!!」

 

「ほお〜どんな奴なのよ。聞かせなさい」

 

 

 ニヤニヤ顔で詰め寄る二人。いい獲物を見つけたと思っていたがこの獲物は逆に捕食者だった。

 

 

「それがな〜めっちゃ可愛いんや!男の子とは思えないぐらい可愛ええんや!腰まで伸びた銀髪に透き通ったピンクの色の目。無表情からのたまにツンツンしているけどデレた時の表情がなんて言うか萌えちゃうか色々な液体が止まらなくてな!しかも私より身長が低くて……」

 

 「は、はやてもういいわ。あんたが危ないって事は分かったから…」

 

 

 暴走し始めたはやてを止めるアリサ。すずかも顔を引きつらせて苦笑いをしている。

 

 

「そうか?これから長くなるのに…」

 

((まだ長いの!?良かった止めて良かった……))

 

 

 残念そうにするはやてを止めて良かったとつくづく思う二人。

 この後もアリサとすずかの恋愛話をしたりと楽しい時間を過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 何とひどくつまらない夜空だろうか。月も雲もない真っ黒に染まった空。まるで今の自分を表してるようで…。

 

 

「…………はぁ」

 

「こんな時間にお酒ですか?」

 

「む?美鈴か」

 

「ご一緒しても?」

 

「ああ、一人酒もつまらないからな」

 

 

 深夜2時。二階のベランダで酒片手に息を吐くシグナムに声をかける美鈴は、自分もコップいっぱいに入った酒を口に含み味わいながら喉を潤す。

 

 

「夜とヴィータの様子はどうだ?」

 

「今のところは二人仲良く寝ています。夜様に関しては疲れと疲労で身体が持たなかったんでしょう」

 

「そうか…」

 

 

 先ほど帰ってきた夜とヴィータは、シャマルが連れ帰ってきた時二人とも血だらけでその時家にいたシグナムと美鈴は大いに慌てたのだ。

 

 

「……そんなに思い詰めた顔でどうしましたか?」

 

 

 先ほどから一言づつしか喋らず暗い表情をしているシグナムに問いかける。

 暫しの間無言だったが大きく息を吐くとその心中を話し始めた。

 

 

「……多分私は怖いのだろうな」

 

「怖い…ですか?」

 

 

 意外、シグナムの言葉にはそれしか思いつかない。

 

 

「ああ。最近主はやての体調は蒐集し始めてからよくなられている」

 

「確かに麻痺の侵食は止まっていますね」

 

「———だがそれだけなんだ」

 

 

 この言葉で美鈴はシグナムが何を思っているのか分かった。

 

 はやての病気、闇の書の侵食は止まってはいるが治ってはいない。ただ止まっただけ。未だにはやては痛みに襲われているし、相当無理している部分があるのだろう。

 

 

「それに頁を増やすたびに主はやてが苦しんでいる様に見える……」

 

「それは……」

 

 

 この事はシグナムだけでは無く、ヴィータと夜以外が感じている事だった。

 頁を集めるほど侵食は止まるが何かに苦しむはやて。その姿に大人組は不安を感じていた。

 

 

「……いや、、ヴィータと夜も多分気付いてはいるのだろうな。だが彼奴らは私たちの中で一番主はやての為に動いている」

 

 

 

 

 ———信じたくはないのだろう。

 

 

 

 他の者達も助けたいと思っているが、その思いが一番強いのがヴィータと夜だ。

 一番はやてに懐き、一番はやてと居たのがヴィータと夜だ。だからこそ傷だらけになっても戦ってきた。

 

 

 だがもし蒐集のせいではやてが苦しみ助けられなかったら…と思うとシグナムは怖いのだろう。

 

 

 何が起こるか分からないから………

 

 

 

 

「そうですね………」

 

 シグナムの思いも考えも美鈴には分かる…分かるが仕方ないのだ。

 

「……シグナムさんの考えも分かります。が、私たちはこれしか出来ることがない。今できることをするしかないんです」

 

「………そうだな。私達にはこれしか主はやての為にできる事はないな」

 

 

 そう答えるシグナム。いや、この答えしか出ない。

 

 

 

 ———彼等は知らないのだ。

 

 

 何百年何千年と生きてる彼等は誰かを助けるということを知らないのだ。武器を片手に血塗れになりながら人を殺し傷付け戦場を渡り歩き彼等は生きてきた。だから知らない助けるという行為をした事がないのだから。

 

 

 彼等にとって今の幸せは天国でもあり地獄でもある。

 でも彼等は、幸せを……居場所を教えて感じさせてくれた"八神はやてという存在を守りたいと思っている。それが歪んだ想いでも。どれだけを傷付けていこうと傷付こうと守ると誓ったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 だからこそ———

 

 

 

 

 

 

 

「———戦いを続けよう」

 

「決意は固まりましたか?」

 

「ああ、さっきまでの自分は将として情けないな…」

 

「そんな事はありません。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です。だからこそ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 これは心から出た言葉だ。

 決して…………決して()()()()言葉ではない。

 

 

 

「……そうだなお前達も頼りにしている」

 

 

 明るい表情で返事をする。

 シグナムはこの時の会話を……美鈴の言葉を忘れはしないだろう。否、忘れてはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが———未来への道である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





【あとがき】

誠達の予想は結構ゴリ押し理論でお願いします。ジョジョみたいなものです。


本日はもう一話


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29話 逆鱗に触れてはならない


どもパッチェです。


二話目です。





 

 

 

 ———無限書庫

 それは管理局が管理を受けている世界の書籍やデータが全て収められた超巨大データベース。

 

 

 ユーノ、誠、リニスの三人は"ギル・グレアムの使い魔でありクロノの師匠の一人"リーゼロッテと共に闇の書を調べていた。

 

 それと共にクロノの辛い暗い重い過去も聞いていた。

 

 

「……それじゃあクロノのお父さんは11年前の闇の書事件で…」

 

「……死んだよ。クロノのお父さん"クライドくんは私たちの目の前で護送艦ごと沈んでいったよ……」

 

「……ふーん……」

 

「あら、冷たい反応ね」

 

 

 リーゼロッテからつっこまれるが、これでもユーノと誠は最近のクロノに一応心配していた。

 

 クロノもだがこの三人には男友達というものが存在していなかった。誠はなのは達と一緒にいたため男子の嫉妬を買い、ユーノは周りに同世代がいなかったし、幼い頃から管理局にいたクロノは力を付けるためにロッテ、アリアに教えを請い同世代と力の差があり過ぎてエイミィぐらいしか友達もいなかったのだ。(男女の友情は成立しないが…)

 だからこそ同等の、初めての男友達を一応心配はしているのだ。ただし———

 

 

「おれは人の家庭の事情に深く突っ込む気はねぇーよ」

 

 

 冷たい反応のように感じるが、リニスは一人苦笑していた。

 

 リニスは誠が幼い頃から一緒にいるからこそ分かるのだが、確かに誠は家庭事情に関しては良いものではなかった。

 昔の、それこそなのは達と出会う前の誠はかなり捻くれていた。リニスも初めはかなり苦労した思い出だが、今は笑い話だ。逆にあの時があったから誠の側にいると言ってもいい。

 

 

(全く……相変わらず根本は変わらないのですね。まぁ、そこが良いところでもありますが、少しは素直になれば良いのに……)

 

 

 自分で甘い考えだ、と思ってしまうも保護者としての女としての弱みだとリニスは感じている。最終的には甘やかしてしまうのだ。それが良いことなのか悪いのか、そんなことを考えていたら探す手が止まっている。

 

 

 その間にもユーノと誠は捜索魔法を使いながらクロノ愚痴を言っていたが、そんな様子を見たロッテはクスクスと笑いながら

 

 

「それじゃああたしは仕事があるからもう行くよ。クロノをよろしくね」

 

 

 そう言い残し、偽りの仮面を被っているロッテはこの場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「お世話になりました」

 

 

 すずかの姉"月村忍に頭を下げてお礼を言っていた。

 

 

「そんなに畏まらなくても大丈夫よ。はやてちゃんなら、うちにいつでも来ていいからね。数少ないすずかの友達だから…」

 

 

 それは社交辞令とかでは無く、本心の言葉だ。忍からしたら可愛い可愛い妹である、すずかの友達というのはそこら辺にいる100人の人間より大切なものだ。

 もちろんそこまでの気持ちは、はやてに伝わってはないが"ありがとうございます"と返しておく。

 

 

 忍との会話が終わるとすずかとアリサの方に向き、感謝の気持ちを述べる。

 

 

「すずかちゃん、アリサちゃんありがとな。初めてのお泊り楽しかったで!」

 

「私もだよ!はやてちゃんと一緒で楽しかった。また来てね」

 

「そうね、私も楽しかったわ。今度はあたしの家に招待してあげる。楽しみにしてなさい!」

 

「ふふ、楽しみにしとくわ。次は私の家族も紹介するで」

 

「うん、楽しみにしとくね」

 

「こっちもなのは達を連れてくるわ」

 

「じゃあな。すずかちゃん、アリサちゃん!」

 

 

 新たな約束を交わし、月村姉妹とアリサに見送られて、はやてはノエルの車に乗せられ八神家に帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 〜八神家〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「………そろそろ、はやてちゃんが帰って来ますね」

 

 

 先ほどノエルからの連絡を受けた美鈴は、時計を見るとはやてが帰ってくる五分前になっていた。車椅子のはやては一人で車から降りられないので誰かが迎えに行く必要があるので、美鈴は腰をあげる。

 

 

「藍さん、シグナムさん、はやてちゃんを迎えに行ってくるので夜様をお願いしますね」

 

「あ、ああ……」

 

「た、頼んだぞ」

 

 

 そう言って外に出て行く美鈴を、藍とシグナムは止めなかった。それは、はやての迎えには美鈴一人で良いのと———

 

 

 

「ふふ、はやてちゃんが来るまでに———害虫処理をしときましょう」

 

 

 

 ———金色の龍眼に変わっていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外に出た美鈴の目の前には仮面の男が立っている。見た目の特徴からしてシャマルが言っていた仮面の男と同じだろう。

 

 

「一体何用ですか?此方は連絡などは受けておりませんが?」

 

 

 満面の笑みで嫌味のような言葉を仮面の男に言う。

 それに対して仮面の男はスカしているのか、そう言う奴なのか、仮面の男はややカッコつけ気味に言った。

 

 

「ふ、私が来たのは警告のためだ!」

 

「……それはどう言う意味で?」

 

「そのままの意味だ。これ以上八神家に関わるな!痛い目を見たくないだろ」

 

 

 仮面の男はそう言うとカード型のデバイスを片手に出し態とらしく見せている。

 

 

(この人は何を言っているのでしょう?)

 

 

 何も思っていなかった。

 怯えも焦りも怖がりも恐怖も哀しみも憐れみも何も……何も思っていない。

 

 

 ———無感情

 

 

 それが今の美鈴の状態だった。

 前々からちょろちょろと虫がいたのは知っていたが、態と泳がせていた美鈴は余りにもつまらない結果に只々落胆していた。

 

 

 

 仮面の男からしたら脅しているつもりなのだろう。ただそれは同じ()()の話。

 最上位の龍……かつて王の地位まで昇り詰めた美鈴にとって力の差が分からない弱者の脅しは意味がわからない。

 

 人間で例えるなら、1匹の日本の蟻が喋ったとして、同じことを言ったら、脅してきたら人間は恐怖するか?怯えるか?答えは…何も思わずただ潰す!だ。

 美鈴にとってそれが人間だったということ。だから美鈴はただ追い返すだけのつもりだった。価値のない者の為に使って良い時間はないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 禁断の言葉を言わなければ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だんまりか?関わらないと早く言え!でなければ———貴様の主にも危害を加えるぞ!」

 

 

「———あ?」

 

 

 この言葉にあるスイッチが入る。

 もちろんゴミごときが夜をどうこうする事は出来はしないのは分かっている。

 しかし命を懸けて守り、()()()()()()()()()()()()()、と美鈴が魂をかけて誓った存在。彼女にとっての全てである夜に主に危害を加える?

 

 

 

 

 

 

 

 

 嗚呼———排除しなければ

 

 

 

 

 

 

 

 私たちの愛する愛する愛する愛する愛する愛してる夜にが汚れたら大変だ。愛しい愛しい愛しいあの子に埃がついたら大変だ———穢れてしまう。私の————夜様

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ————ポトリ

 

 

 

 何かが地面に落ちる音がした。

 それは仮面の男の近くで鳴っており、何かと思って音がした方を向いたら見覚えのある腕があるではないか。凍りつく体をよそに首を動かして自分の腕を見ると、不思議な事に片腕がない。

 

 

 

 ———あれは自分の右腕だ

 

 

 

「あ、あああ、ぎゃアアアアアアアアアアアアアアッ!?」

 

 

 体がの一部が欠損したのを意識が理解した為、傷口から噴水のように血が溢れ出る。

 更に痛みを感じる前に、ガシッと首を掴まれて10センチほど浮いている。

 

 

「オイ、何つった?夜様を危害を加える?ゴミごときが、夜様の視界に収めることさえ許されてないんだよ!聞いてんのか!!」

 

 

 仮面の男はカポ…と口から音を立て、首を絞めている美鈴の左手は力がどんどん強くなっていく。

 美鈴の結膜が赤く染まり、口元には牙が見え隠れしている。いきなりの豹変……というより戻った、が正しい。いつもニコニコしてるのも素顔と言えるが、美鈴の場合こっちも素である。夜の前では絶対に見せない貌なのである。

 

 

「……ぐ……かぁ……」

 

 

 何も話せそうに無い仮面の男。

 脳に酸素が回らず、意識が遠くなる。目の前が真っ暗になり、天にも登る感覚が襲ってくる。残っている左手で足掻くが力が入らなくてどうする事も出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———ブン……ンンン…

 

 

 

 

 

 

「…ッ!?この音は………しまっ」

 

 

 これは美鈴だから聞こえた音…車がこちらにくる音。

 そちらに一瞬の気を取られ、ほんの僅かに緩んだ手から仮面の男は抜け出し、すぐさま転移で逃げ切った。

 

 

「チッ……おっといけません。この顔でははやてちゃん怖がられます。いけないいけない。手を出す気は無かったのですが、やはり夜様のこととなると、どーも気が早くていけませんね」

 

 

 いつもの優しい笑顔の美鈴に戻り、気を収める。

 

 

「ああ、本当に運がいい。はやてちゃんが来てなかったら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———肉片にしてやったのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 仮面の男ことリーゼロッテは逃げた場所で恐怖に身体を震わせていた。

 

 

(な、何なのあれは!?あんなの人間じゃない!?)

 

 

 震える身体でロッテは考える。

 

 どうしてこんな状況になったのか。

 夜達がはやてと出会う前からずっと監視していたロッテにとって今の状態は想定外だった。

 はやてが闇の書の主だということは生まれた時から知っている。だからヴォルケンリッターがいることは想定内だ。

 

 しかし、はやてと夜が出会ってから全てがおかしくなった。

 孤独の少女は家族を得て、予想よりも早く守護騎士達が出てきた。それから監視を続けたが何事も無く一年が過ぎた。

 ロッテは自分達の計画のためにずっと待っていた。守護騎士達が蒐集に動き出すのを。

 そして10月ついに守護騎士達が動き出したが、そこには夜達の姿もあった。ロッテ達は計画に支障が出ると思い八神家から手を引くように警告をしに行った。

 

 

 

 

 その行為が自らの首を絞めるとも知らず。

 

 

 

 

 別にロッテは油断してたり傲慢になっていた訳ではない。実際ロッテは強い。それこそリニスと同レベルの強さであり管理局員としての経験もある。

 

 それでも美鈴はレベルが違った。

 美鈴の実力を知らなかった…それでは話にならない。

 知らなくても……分からなくても、それで勝てるほど戦闘が簡単じゃないことは知っている。

 

 だがロッテは美鈴を見誤った。

 

 自分の存在にも気付かない人間ごときだ!と思っていた。

 それが大きな間違いだと気づかなかった……いや、気付けなかった。

 

 

 ロッテは知らない。

 美鈴が力を隠していたこと。藍が一度、美鈴の事を『能ある鷹は爪を隠す』と言った。美鈴流に例えるなら『王たる龍は牙を隠す』という事をロッテは知らなかったのだから。

 

 挙げ句の果てに龍の逆鱗に触れ後数秒遅かったら命は無かった。あれは本気だった。本気で殺す気だった。

 

 

(あ、ああんなの聞いてない…!!?)

 

 

 リーゼロッテが逃げれたのは完全に偶然。

 あの時、たまたま一瞬美鈴の気が緩み、掴んでいる手から抜け出せた。元となっている猫としての本能が逃げることに躊躇いを無くし、ロスなく逃げることができた。

 

 

 

 

 自分は狩る者では無く狩られる者。そう思わせられたリーゼロッテ。

 

 

 

 

 それでも計画のために父さまのために悲劇を終わらせるために、何とか拾った腕を付け何とかして足を動かすロッテであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…はやて…おかえり!」

 

「グフッ!?た、ただいまや夜君」

 

 

 美鈴にドアを開けてもらい、はやてが家に入ると夜のおかえりの突撃をくらう。その間に続々と家族が集まってくる。

 

 

「おかえりなさいませ、主はやて」

 

「む!帰ってきたか」

 

「今、帰ったでー」

 

「夜様、はやてちゃん二階で遊んできたらいかがですか?夜様も久しぶりの休みですし」

 

「………ん、はやて遊ぶ」

 

「勿論や!今回は私が勝つで!」

 

 そう言って夜のスキマで二階に行く二人を確認すると藍とシグナムが大きな溜息を吐き、その場で座り込む。

 

 

「美鈴さ……美鈴、いきなりの殺意は抑えてくだ…くれ…びっくりしたぞ。主よるも起きてこられたし」

 

 

 先ほどの美鈴の殺意で周囲にいた人間達は意識を失い、疲れで寝ていた夜も殺意を感じて目を覚ましていた。

 

 

「それより何があったのだ?美鈴さ……お前があんな殺意を放つなど…」

 

「ふふふ、ちょっと下等生物がふざけた事を言っていたので、存在を抹消してやろうかと思いまして……」

 

 

 目のハイライトが消え黒いオーラを出す美鈴を見て二人は思った。

 

 

 

((仮面の男は生きてるのだろうか?))

 

 

 昔の美鈴を知ってる藍からすると、丸くなってる美鈴の方が違和感があるのだが、本気でキレると手がつけられない状態になるので、その状態にしてはならないと心に命じる。

 

 

「安心してください。次は———一撃で殺す。………肉片すら残さん」

 

「待て!?主はやては殺生を望まん!少し考え直せ!」

 

「落ち着いてください!美鈴様、気を落ち着かせて!」

 

 

 思わず昔の口調に戻る藍と慌てすぎて藍の声すら聞こえないシグナムはとても良い笑顔で断言する美鈴を全力で止めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【あとがき】


面白い、続きが気になった方は感想等、高評価、Twitterのフォローをお願いします。励みになります。


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30話 想いは痛み



前作と同じように砂漠の所は飛ばします。


 

 

 

 

 

 冷たい風が吹き抜ける冬の朝。

 まだ日が登らぬ時

 

 

「あーも、何なんだよあいつら!!」

 

「全くだ!また、テスタロッサとの勝負を邪魔してきた」

 

 

 仮面の男に対しての不満が爆発しているヴィータとシグナム。前日にヴォルケンリッター達は三度目の戦闘をしているとまた仮面の男に一対一の勝負を邪魔され、特にシグナムは憤怒している。

 

 

「やはりこの前殺しとけば……」

 

「流石に、今回は私も美鈴に同意だ!な、ヴィータ!」

 

「え、ああ……ウンソウダネ(何こいつら!?怖!」

 

 

 確かにヴィータもイラついてはいるが、ここまで残虐な事は考えてないので同意を求める二人に引いていた。

 

 

「…ごめんね…僕も行ければ…良かった」

 

 

 藍の膝に座る夜はしょんぼりとして落ち込む。

 

 

「バカ!ヨルはまだ体調悪いだろ!暫くは休んでろよ」

 

「そうッス。夜さん、今は安静ッスよ」

 

 

 他の者達もうんうんと頷く。

 前回の蒐集で身体にガタがきていた夜は皆から絶対安静の言葉を受け最近は蒐集に行けていなかった。それでも夜は『痛みは無い』『もう血は吐かない』とアピールするが保護者達は許さなかった。

 

 

「最低でも後3日は休んでもらいます」

 

「……え?…でも…」

 

「ダメです!まだ魔力も回復してないんですから……まだ身体は痛むのでしょう…」

 

「………あぃ」

 

 

 渋る夜だったが、藍が見せた悲しみの表情に頷くしかなかった。

 

 

 

 

 その後は、未だに邪魔をしてくる仮面の男について色々な議論を交わしていると時計の針は朝の9時を指していた。

 

 

「はやてちゃん起きてこないわね?疲れているのかしら?」

 

「最近は外に出ることが多かったからだろう」

 

「でも流石に遅いですね?朝ご飯もまだですし私がちょっと見てきます」

 

「はやてが眠いなら寝かせていいんじゃないか?」

 

 

 ヴィータの言うことも最もなのだが、いつも8時前には起きているはやてが、この時間まで起きてこないことが珍しすぎて心配なのだ。

 

 

「せっかく朝ご飯も作ってありますし、冷めては美味しく無いでしょうから、一応起こしに行ってきますね」

 

「そうだな。主はやてを頼むぞ」

 

 

 そう言って美鈴は二階のはやての部屋に行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(はやてちゃんが寝坊なんて珍しいですね)

 

 

 そう思いながら美鈴ははやての部屋に向かうための階段を登るが、何か嫌な予感がする。

 

 

(最近は友達の家に泊まったりで私たち以外と触れ合う機会が多かったからか疲れが溜まっていたんですかね?)

 

 

 そう思いたい。

 しかし何故かいつもと変わらない足取りのはずなのに、階段を登るのがゆっくりに感じる。———気づけばドアの前

 

 

「さあ、はやてちゃんの部屋に入り…ま…す」

 

 

 ドアを開けようと、ドアノブに手をかけた時に美鈴にある違和感を覚える。

 

 

(あれ?はやてちゃんの気が感じ…………られない!?)

 

 

 ゾッと背筋が凍りつく。

 顔から血の気か引き、急いでドアを開けると———

 

 

 

 

「はやて………ちゃん?」

 

 

 

 

 美鈴の目の前には車椅子から落ちて胸を抑えるはやてが倒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 〜海鳴大学病院〜

 

 

 診察室にて——

 

 

「うん、何も異常はないわね」

 

「そう…ですか。良かった」

 

 

 石田の言葉に皆はひとまず安心する。

 

 

「だから言うたやん。私は大丈夫や」

 

 

 笑いながらそう言うはやては、ベッドのヘッド部分を起き上がらせて、背もたれにしながら座っている。

 

 その姿はいつもの優しい笑顔のはやてだが、誰もはやての言葉を信じてはいなかった。

 

 美鈴が倒れていたはやて見つけた後、急いではやてを抱え、夜のスキマで病院に連れてきた。

 意識を失うほどだ。重症だと誰もが思い、皆が心配した。実際はやてが目を覚ましたのは夕方の5時だ。

 美鈴が見つけてから少なくとも8時間は意識が無い事になる。

 

 

 

 ———もうみんなは分かっている。

 はやての性格上、迷惑を掛けないようにと思いやせ我慢をしているんだと…

 

 

「それじゃあ私はこれで失礼するわ。あっ、夜くんと紅さんはちょっと来てくれるかしら?」

 

「「??」」

 

 

 何事かと不思議そうにしているが、素直に夜と美鈴は石田について行った。

 

 

 

 

 残ったメンバーは石田から言われた言葉をはやてに伝える。

 

 

「え………入院!?」

 

「うん。また少し入院だって」

 

「別に大丈夫なのに…」

 

 

 あからさまな嫌!という顔をする。

 

 

「何が大丈夫だ……お前は倒れていたんだぞ。今は医者の言うことを聞いておけ」

 

「で、でも……私が入院したら誰が家事するん?」

 

 

 入院するのが嫌なのか、何かと理由とつけて拒否したい。しかし藍達からするとここは素直に入院しててほしい。故に、はやての抜け道を彼女らはことごとく塞いでいく。

 

 

「それは大丈夫よ!私がするわ!」

 

「ええ、シャマルがしてくれます。料理以外は」

 

「ええッ!?」

 

「料理だけは絶対にさせないッスから。夜さんも含めて……」

 

 

 大事なことなので二回言った。そこだけは絶対に譲れない部分だ。

 

 

「えぇーと…それじゃあ……」

 

「安心してくれはやて。毎日会いに来るから!」

 

 

 何か入院しないでする理由を考えたが、考えつく前にヴィータに潰された。しかもヴィータの純粋な思いから発せられた言葉は、はやても納得するしかなかった。

 

 

「そうか…それは嬉しいなぁ。ヴィータはええ子や」

 

「うにゃ!?な、なんだよはやて♪」

 

 

 はやてはヴィータを抱きしめていい子いい子と撫でるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 夜の時間、私はみんなが居なくなり、広い個室に独りぼっちだ。ベットに寝転ぶが眠たくはならない。

 

 

「はぁ、なんで入院なんやろ」

 

 

 私は鬱な気持ちになる。

 こんな時間は嫌いだ。一人の時間は嫌いだ。また昔に戻ったように……孤独な時に戻った様な気持ちになるから。

 

 

「………ッ!?」

 

 

 また、胸が痛くなる。

 それは物理的に精神的に痛みが襲ってくる。胸のあたりが、胸の奥が———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———痛い…………痛い苦しい痛い痛い痛い苦しい痛い痛い痛い苦しい痛い痛い痛い痛い苦しい痛い痛い痛い痛い痛い苦しい痛い痛い痛い痛い痛い苦しい痛い痛い痛い苦しい痛い痛い苦しい痛い痛い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう……イヤや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 孤独に耐えきれない思いが脳裏に浮かぶ。

 

  ———その時だった

 

 

「……はやて……大丈夫?」

 

「……へ?」

 

 

 誰もいないはずの背後から、蕩けるような声質で語りかけ、体温を帯びた小さな体がはやてを包み込んできた。

 

 

「よ、夜君?なんで抱きついているん?てか、なんでいるんや?」

 

 

 色々と言いたいことがあるが、はやては夜からの抱きつきにあたふたと慌て始めた。

 

 

「……ん、それは……ね」

 

 

 

 これはちょっと前の出来事。

 

 夜は石田に呼ばれ、はやてとは違う場所の診断室に入ると、第一声が、———貴方も入院ね♪だった。

 

 

 理由はいたって簡単、不眠症、胃潰瘍、風邪などその他諸々。

 

 

 夜からしたら何故知ってる!?となっているが、こういう時の医者はとことん頑固で意思を曲げない為、大人しく言うことを聞いとくしかない。ある不老不死の医者で身にしみている。

 

 それに美鈴すらも『夜様大人しく入院して下さいね』と、威圧的に釘を刺してきた。

 

 

「精密検査も明日するからね♪」

 

 

 こうなったら夜に逃げ場はない。美鈴が手回ししたのか、はやてと同じ病室で大人しく寝るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ということ」

 

「そ、そうか…」

 

 

 確かに最近はよく寝込んでいた。

 記憶を辿れば、はやてが月村邸から帰った時から熱を出してベットの上だった。相当無理をしていたのだろうか。いや、よく昔から体調は崩していた。今更だ。

 そんな事を考えてしまうが、すぐに考えるのをやめた。何故なら———この暖かさに身を任せたい。

 

 

 

「もう……大丈夫…一人にしない…よ」

 

 

 

 ———この甘い言葉に安らぎを感じたから。

 

 

 

「無理…しないで……はやては…甘えていい…の。僕たち…を…頼って…。決して——1人にしないから」

 

「—ッ!?」

 

 

 一人は……孤独は辛いものだ。人は一人では生きてはいけない。

 それは人だけに限らない……龍も狐も人神も神も悪魔も魔女も吸血鬼も鬼も妖怪も妖精も誰も…意思がある生物というのは、誰かが隣にいないと壊れてしまう。だから———

 

 

「僕が…いる。一緒に……いる!」

 

「……ほんまに?」

 

「……うん…はやてが望むなら…いくら…でも」

 

 

 

 ———永遠にでも

 

 

 

「…絶対やで」

 

「……ん」

 

 

 

 ———貴女が望む限り

 

 

 

「ずっと……すっと…やで」

 

「………もち!」

 

 

 

 交わした約束は違えない。

 貴女が覚えてる限り、僕は君と共にありたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———僕はそう願ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






【あとがき】


一緒いたい。王達が望むのはただそれだけ。





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31話 シグナム



今回はシグナム視点です。
これは旧にはなかった話です。


 

 

 

 

 ———光を見た。

 

 

 あの日、私は貴女という光を知ってしまった。

 

 

 初めての感覚でした。

 人に、主に仕える喜びを感じたのは……こんなに人としての意思を思えたのは。

 

 

 私は…私達は生まれた時から道具です。そこに、私達の感情は存在しません。存在意義こそが道具としている事でしたから。

 そう考えると貴女はある意味異端かもしれませんね。普通本から出てきたものを家族とは言えませんよ()

 

 

 でも、それが貴女の良いところです。

 

 ———人を惹きつける才

 

 それは誰にでもある訳ではない。開花させるものでもない。すでに持っているもの。生まれ持った才能…私はそう感じました。

 

 

 私達は生まれて1年と半年しか一緒にいません。他者からすればたった一年。でも、その一年が私達の数百年にも勝る時間なのですよ。

 

 

 

 

 

 ———だからこそ

 

 

 

 

 

「……もう……イヤや」

 

 

 

 

 

 

 

 独りで嘆く貴女の側に居られない事が、酷く辛くて……自分の力無さが恨めしい。

 

 

「やっぱりはやてちゃんは無理してましたね……」

 

「ああ…主はやてらしいと何というか……」

 

「あまり褒められた事じゃ無いッスけど……」

 

 

 病室の外でドアに近い壁に寄りかかっている3人。

 

 

「珈琲あるますけど飲みます?」

 

「……貰おう」

 

 

 美鈴から投げられた缶を片手で取る。ホットの缶コーヒーの暖かさが手に広がり、口に含んだ時の苦味が今の心を表してる気がする。病院の廊下というのはずっと立っていると寒い。それがこの珈琲一つで変わるぐらいには現代に馴染んでしまった。

 

 

「長時間立っているくらいなら中に入ればいいじゃないッスか。そっちの方があったかいッスよ」

 

「……私が中にいると主はやてが強がって、逆に気を使わせてしまう」

 

「あー、分かるッス。夜さん自分が影にいるの察している時、弱音とか吐かないし、意地でも倒れないッスから」

 

「夜もそうなのか?何というかいつも一緒にいるイメージだが……」

 

 

 ———意外

 

 その二文字がすぐに浮かんで来た。

 私の目から見てもこいつらは常に誰かが夜の側にいる。私達といる時はいない時もあるがほぼ一緒いる。

 

 

「別にいつも一緒では無いですよ」

 

「……顔に出ていたか」

 

「そういう訳では無いですが、大体の考えは読めますよ」

 

「そうか……」

 

 

 ムカついた訳でないが飲み終わった缶を潰した。もう一度言うがムカついた訳でない。それを察してか美鈴は一人で話を進めていく。

 

 

「まぁ、色んな人たちから同じこと言われますが、一緒にいるとは言えませんね。私達は夜様の後ろにいるんです。あの方の背中を見ているしかないんです」

 

 

 それはどう言う意味だ?と言わなかった。

 何故なら、これ以上深く突っ込むと箱に入っている闇を開けてしまいそうだから。

 

 

 

(本当に…それでいいのだろうか)

 

 

 

 美鈴の言いたい事が分からなくはない。それもまた一つの仕えるという事だろう。

 しかしこいつらは余りにも——達観しすぎている。それなのに見ているだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———すでに諦めてるような

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思えば眷属達と出会った時から自分はある違和感を感じていたのかもしれない。

 主と眷属の絶対的な信頼関係があるにも関わらず、何処か…何処か決定的な部分がすれ違っている矛盾。

 あれ、それ、これ、で会話が出来るのに、夜はハサミが欲しい『あれをくれ』と言ったら、美鈴は『これですね』と包丁を渡すように。でも切れるから夜は包丁で我慢している。

 

 

 

 

 側から見ると———歪

 

 

 だから彼女達は

 

 

「自分達から…離したのか」

 

「何のことです?」

 

「いや、お前のリークのせいで夜が石田医師から怒られてると思うとな」

 

「まぁ、夜様は強制的に休ませないといけませんから。はやてちゃんと一緒なら逃げ出すことは無いでしょうし」

 

 

 ふふ、と3人の笑い話に落ち着くが、多分美鈴は『話す』と『離す』を勘違いしたのだろう。誤魔化せた。

 

 

「そろそろ私達は帰るか」

 

 

 扉の向こうから二つの寝息が聞こえる。

 夜と一緒なら主はやても安心して共に過ごせる。もう私がここにいる意味は無い。それより早く蒐集をしなければならない。

 それが———家族を救う希望だから。皆が傷付かなくて済むから。

 

 

「レヴィさん、夜様とはやてちゃんは頼みましたよ」

 

「おK丸ッス」

 

 

 レヴィなら確実に主はやてが闇の書の主人であることを隠蔽できるだろう。隠すことにおいての信頼はレヴィが1番ある。

 

 

「それじゃあシグナムさん行きますか」

 

 

 

 

 

 

 ———闇の書の主"八神はやて"の剣として

 

 

 

 

 

 

 

 ———ヴォルケンリッターの将として

 

 

 

 

 

 

 

 ———八神シグナムとして

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、行こう」

 

 

 

 

 私は剣を振るう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






【あとがき】

なんか急にシグナムの話が書きたくなったから書いた。




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