【仮面】さん日記 (復帰アークス)
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【仮面】さんは苦労人

一年ぶりにPSO2に復帰してプレイ中に思いついたネタです。古いネタもあるかもしれませんが、分からなかったらすいません。

時系列としてはEp3終盤からとなります。


○月△日

 マトイからダーカー因子を引き受ける。体は変化したが、まだ自我がある状態なので、過去の自分とマトイの元を去った。いつ自分が【深遠なる闇】に変化してしまうか分からないが、全力で抗ってみようと思う。

 というか……、このダーカー因子はマトイの中にあった物……。つまりはマトイが自分の中にい……、ゲフンゲフン。

 【巨躯(バトルバカ)】や【敗者(負け犬)】や【双子(クソガキ)】分のダーカー因子が、自分の中に渦巻いている。こんな連中じゃなく、出来ればババアじゃない方の【若人(ユクちゃん)】からの因子も欲しかった。マトイとユクちゃんの体の中にあったダーカー因子……、これだけで未来でどれだけ叩きのめされようとも自分は耐えられる。若い娘のダーカー因子プリーズ!!!

 

 

 

 ○月×日

 天からナベリウス凍土エリアに逝けとの啓示があった。どうやら、どこかの星の偉人の生誕祭が関係しているらしい。

 現地に集ったアークス達は見覚えのある顔ばかりだ。12人全員が過去の自分の筈……。私は1人なのに過去の自分が12人とはこれ如何に……。だが、(まみ)えたからには刃を合わせなければならない。

 途中、”お前なんてお呼びじゃない。”とか……、”ガル・グリフォン出せガル・グリフォン! グリフォン・ゲルス来い!” とか聞こえて来たが、こちらだって天の声に従っているだけなのだ。

 その他には人型サイズの【巨躯】も来ていたが……、

 

「さあ始めるぞ、猛き闘そ――」

 

出現の前口上中に12人に囲まれPAやテクニックの雨あられを喰らってしまい、全てを言い切る前に膝を突き。

 

「良き闘争であったぞ……」

 

 最早闘争どころか一方的な蹂躙と化してしまっていた。戦闘態勢に入る前にライフゼロ。それでも心が折れない【巨躯】は鋼の精神の持ち主かもしれない。

 

 

 

 ○月□日

 またまた天から啓示があった。15分後にダーカーの巣窟(闇のゆりかご)に逝けという物だ。いくらなんでも急すぎないか? こっちの事情を加味しろ!

 ついでに注文が入り、【仮面】の姿でコートエッジDを持って逝けと。今の私は【深遠なる闇】なのだが、その辺はフォトンでどうにかしろと指示があった。

 仕方なく指示に従い、ダーカーの巣窟エリア2で待機していると、ダーカー達が次々と消されている気配と共に、またしても12人の過去の自分がダーカーなんぞ何の障害にもならないとばかりに目的地まで一直線に駆け抜けていた。

 かつての私もこうしてダーカーと戦っていたが、自分が敵側になると恐ろしい事をしていたのだと認識してしまった。奴らは……ある種の災害だ……。ついでに一緒にいたファルスアームに潰された。痛い。

 

 昔の私から、”今更、【仮面】が出て来てどうするんだ。せめてコートダブリスD持って来い。”とか言われた気がするが、だったら特務先遣調査(アドバンスクエスト )でも受注してくれ。無い物ねだり良くない。

 

 

 

 

 

 理不尽な天の声に、多人数を相手にしてフルボッコにされる……。ダークファルスになって分かった事――ダーカーはブラック企業です。




ダーカーさん達はマジ働き者だと思います。メリクリ2016のエルダーさんは見てて気の毒だった。まあ、自分もボコっていたのですが。
次回からは、思いついたら投稿しようと思っています。


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彼の日を超えた先……

△月〇日 

 

 もう幾度になるかは忘れてしまったが、今日も惑星ナベリウスの上空で【深遠なる闇】としてアークスと対峙している。彼らと戦い、私の中の【深遠なる闇】の支配が弱まった隙に、自身の時間を逆行させ復活前へと戻す。

 これが今まで繰り返してきた全てだ。だというのに……。

 

 いつの間にか、アークスが動物園になっていた!?

 

 巨大な徒花としてアークスと向き合うと、そこにはワンワン、キーキー鳴く犬や鳥らしき生物に、デカい耳の良く分らん生物が指揮棒っぽい武器を持つアークス達と共に戦っている。

 というか……(ワンダ)の爪で引っかかれたり牙で噛みつかれるわ、(トリム)の羽が意外に痛いわでキツイ物があるのだが……。

 そんなのを気にしている間に、もう一種類の畜生(サリィ)からテクニックっぽい物まで放たれている。そいつらの主人であろうアークス達は、指揮棒を振ったり、ついでに体をくるりんぱしたりで動物たちに指示を出しているらしい。

 

 ってか痛い!? 動物の癖して意外に強い!? 奴らの中から星13の気配が感じ取れる。連中の中に何か仕込んでいるのか!? キャンディーって何だ!? 武器の名前か!? 彼の日を超えた先でアークスはどうなった!? いつから動物を身代わりに戦うような組織になった!?

 

 そんな戸惑いとは裏腹に、ライフルを構える女性キャストの姿が目に付いた。ほぼ全員がペット同伴だというのに、その姿は目立って仕方がない。その女性キャストは実に嬉しそうに……。

 

「ふふふ……、良いですねえ……。何度も復活してリサに撃たせてくださいね。好きなだけ撃てるなんて、夢のようですよお」

 

 彼女が、その手に持つのは水色を基調とした星13(レイライフル)。レア武器なら当然改造しているものだと思い、リサの装備を確認すると……。

 

 『レイライフル』――この文字のみであった。"+"の表示も無い全くの無改造。私なら虹色ドロップはフル改造を行っていた。なのに彼女は何もしていない。

 

 何故だ……? ラムダグラインダーが足りていないのか? それともメセタ不足なのか……? 

 

 と、リサの方に視線をやると。

 

 ――決まってるじゃないですかあ。威力が弱い方が沢山撃てますよねえ!!

 

 こちらに向ける視線だけで、その思考を感じ取ってしまった。それに恐怖を感じてしまったが、畜生達に痛めつけられながらも、彼女の変わらぬ言動から、まるで実家の様な安心感に包まれるのは何でだ……?

 

 その動物たちを連れていたのは新クラス『サモナー』だったと知ったのは、それから随分後の事だった。

 彼の日を超えた先――今日もペット達に嬲られた後で、自身に時間遡行を行い【深遠なる闇】復活を抑え込んでいる。

 

 ……私は、動物以下の存在なのか? クスン……。



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NTってなあに?

 ×月〇日

 

 最近、アークス達の装備を確認すると、”NT”の文字が付いている物が見受けられる。コモン武器の『ソード-NT』などは元より、星12の『ノクスクヴェル-NT』なども存在する。

 

 ……NTとは一体?

 

 少なくとも私がアークスの頃には無かった武器だ。自身の知る装備と何が違うのかを調べる事にした。

 

 ――新世武器を表しており、グラインダーやラムダグラインダーと素材となる武器を消費し、『強化EXP』を貯める事で、強化が可能となる。

 

 ふむふむ。私がいた頃のアークスとは異なる強化方式という訳だ。技術は日々進歩しているのだろう。そして説明の続きを読み進めて行くうちに、ある一文が目に入った。

 

 ――新世武器の強化では失敗が発生することは無い。

 

な……なんだってええええええ!!?

 

 失敗がない……。つまりは、強化値が下がらないという事か!? 何という事だ……。星10や星11武器で、大量のメセタとグラインダー、そして強化リスク軽減を使用していたのは遥か過去の話だというのか!?

 

 そう……、アイテムラボ店員が定期的に弱体化ではなく、成功率が上がる期間を待ったりはしないというのか!?

 その時の為に素材を集め、いくら掛かるかも不明瞭なメセタを貯め込み、意を決してアークス最大の敵(ラスボス)に挑む一大イベントが無いというのかああああああ!!

 

 今思い出しても、奴らの言葉は私のトラウマを蘇らせるのだ……。例えば……。

 

 ――うわああ………な、なんてお詫びしたらいいかぁ………。

 

 モニカェ……、お詫びするくらいなら、強化値戻せや、ごらあああ! 

 

 ――素晴らしく運がないな君は。

 

 舐めてんか、ドゥドゥ! アイテム研究所(ラボ)を名乗るなら、成功率くらい上げて見せろ! ……って、私達が人柱? ふざけんな!!

 

 はぁ……はぁ……、少し興奮してしまった。武器一つ強化するのにビジフォンに張り付き金策したり、銀行(クロト)のクライアントオーダーを頑張ったり、エクスキューブを貯めこんだり……。

 強化した武器達に込められていた、愛と憎しみと悲しみと怒りとメセタとトラウマは一体何だったのだ!? この負の感情だけでダークファルスになってしまう自信があるくらいの宿敵だったというのに、奴らは牙を抜かれてしまったのか!?

 

 畜生……、どうせ私はEp3までしか知らないよ……。エンペエンブレイス? んな便利な特殊能力とか……最近のアークスは羨ましすぎだろうがあああああ!!

 

 結論――同じ時間を繰り返してばかりでは見えない未来もある。目からしょっぱい物が流れているが、これは汗だ……、心の汗なのだ……。と自分に言い聞かせながら、新世武器の説明をそっと閉じた。




【仮面】さんはEp3までを繰り返していたので、新世武器は知らないはず……。


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アークス達は時間を持て余している?

 △月□日

 

 今日も今日とて、惑星ナベリウス上空でアークス達と激戦を繰り広げている私だった。いつも通り自身に時間遡行を行い、【深遠なる闇】の復活を抑え込んでいる。それが終了した十数分後、一枚の紙が私の元へとひらひらと落ちて来たので、何かと思い、それを手に取ってみると。

 

 ――これから特務先遣調査(アドバンスクエスト)のエリア2で待機して下さい。もちろん装備はコードダブリスDです。

 

 ちょっと待て!? さっきアークス達と戦ったばかりだ。いくらなんでも急すぎるだろ!?

 

 そんな私の心の声を見透かしたように、またまた紙が落ちてきた。それを読むと。

 

 ――特務先遣調査(アドバンスクエスト)は、いつでも受注できるので日程調整が困難です。ご理解ください。

 

 んなもん知るかああああああ!?

 

 こうなったら【双子】に頼んで、【若人】の複製体を……、えっ? 奴はエリア1にしか出ないからダメ? ファルスアンゲルは? Ep5のストーリーで忙しい? あの全知、後で覚えてろよ!

 

 もう諦めて、アークス達と戦い疲労困ぱいだというのに指定されたエリアで待機していた。すると、何処からか戦闘している様な音が響き渡っていた。そちらに意識を向けると。

 

「アークスの危機とあらば私が駆けつけない理由はない。助太刀させてもらおう」

 

 アークス上層部の一人、六芒均衡の『一』がエネミー相手にヨノハテを振り回していた。

 

 ……噂ではルーサーがアークスの実権を握っていた頃、憂さ晴らしで出撃していたとか……、そんなのが囁かれていた筈。もう全知はいないのにまだやってんのか? しかも創世器も古いままだし……。なになに? ヨノハテの刀身が折れてても、鞘を付けておけば大剣(ソード)として使える? 折れても酷使させられるヨノハテさん、お疲れ様です。

 

レギアスが去り、自分の相手が来るまで、静かなひと時を過ごしていると、またもや戦闘音が聞こえて来ていた。今度は何かと物陰に隠れて、その原因となっている人物を確認する。

 

「やれやれ、見ちゃいられないね。乗りかかった船ってやつだ。少しばかり手伝ってあげるよ」

 

 今度は六芒均衡の『二』がパルチザンでエネミーに危害を加えている。この人、ルーサーが討伐されるまでは、偶然を装ってレギアスに会おうとして、よくこの地域へ出撃していたとか、どっかの弟子が言ってた気がする。

 というか、いい年して、爺を追っかけてんじゃねえよ! 会いたいなら、普通に会いに行けば良いだろ!!

 

 彼女が装備しているのは、『ディオパティルメリア』。創世器の『閻斧ラビュリス』はどうした? どうせまた壊したんだろうが、ジグとラビュリスの中の人が泣いてるんじゃなかろうか……。

 

 本気ならマザーシップすら破壊できそうな二人が去り、平穏な時間を過ごせるかと思ったが……、甘かった。今度はどこからか爆発音が周囲に木霊している。

 

「おい、貴様! 貴様だ貴様! なんだかおもしろそうなことをしているな! 私も混ぜろ!」

 

 ……六芒均衡の『五』を冠するロリっ娘が炎系テクニックで周囲を焼き払いながら、エネミーを爆破してる。というか……、お前ら曲がりなりにもアークス上層部だろうが! こんなクエストに顔出してるんじゃねえ!! ちゃんと仕事しろ!! 

 

 六芒均衡の半数が自由気ままに出撃しているが、他の3人+(クーナ)は実は真面目に仕事をしているという事だろうか? クラリスクレイスはともかく、古株がこんなのだから、一般人の小娘が総司令に就いてしまったのだろうと納得してしまった。




アドってキャラが古い外見で出るけど、そろそろ変えても良いんじゃないかなあ……。


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それはあり得たかもしれない物語

今回は特にキャラ崩壊が酷いです。

物語的には、Ep2の『果てしなき跋扈の終わり』となります。


?月?日

 

「ぐっ……はあっ……はあっ……。力が削り取られている……。これは……あのアークスの力なのか……?」

 

 シオンを手に入れられず、ダークファルスとしての本性を現してなお、アークス達に敗れ去ったルーサーは、息も絶え絶えの状態でマザーシップの中心部から立ち去ろうとしていた。

 自分が残れば全知への道は閉ざされない。その執念だけで体を漸く動かしている。

 

「ふふ……だがまだだ! 僕が! 僕さえ残っていれば、全知への道は閉ざされない!」

 

 この場に一人だけで高らかに宣言するルーサーだったが、それを真っ向から否定する声が彼の後ろから響いていた。

 

「……いいや、ルーサー。お前の道はここで行き止る」

 

 それはルーサーにとっても、馴染みのある声だった。そう、彼の六芒均衡の『一』、初代三英雄で唯一生き残っている生きる伝説。それに応える様に、彼の方を振り向き……。

 

「レギア……だ、誰だ!? お前は……確か……」

 

 ルーサーの予想とは違っていたものの、彼の顔には見覚えがあった。そう、それは……。

 

「アイテムラボの店員風情が何の用だ? 君が僕をどうにかできると?」

 

 ルーサーからすれば、たががショップの店員如き、力が削り取られていようとどうとでもなる。とはいえ、ここでは出来るだけ消耗を抑えたいのもまた事実。目の前の男性を素通りしようとしていた。しかし――

 

「ふむ……。私が何の意味も無く……、君の前に現れたとでも?」

 

 目の前の中年男性は、鋭い目つきでルーサーを睨みついていた。この場から逃がすつもりはないとの意思表示だろう。ふと、彼の左手に携える武器が目に入ったルーサーだった。

 

「まさか……、そんなカタナで僕と戦おうというのか? レギアスのヨノハテならともかく、そんな物で僕が倒せるはずは無いだろう?」

 

 ルーサーと対峙している男性が持っているのは、ただのカタナ。アークスで正式採用されているといえ、そんな武器で自分と一戦交えようなど、自殺行為にしか過ぎない。ここまで来ると、むしろ滑稽で笑いが込み上げて来そうなルーサーだったが……。

 

「……これを、ただのカタナと思ったのかね?」

 

 男性の問いかけに、自嘲気味な雰囲気で、

 

「カタナ以外の何だと言うんだい? ああ……、中々面白い物を見せて貰ったからね。この場は見逃してあげよう」

 

 ショップ店員の気まぐれには付き合えないとばかりのルーサーは、その場を立ち去ろうとしていた。だが、カタナを握る漢は目を見開き、裂帛の気合でもって。

 

「このカタナは……、アークス達の総力を結集して造られた珠玉の逸品! この刃は貴様を葬る物だ!!」

 

「な……、なんだと……!?」

 

 ただのカタナが珠玉の逸品など、ありえないと……。そう否定したいルーサーだった。しかし、目の前の男の言葉からは無視できない何かを感じ取っていた。

 

「このカタナは武装エクステンドExLv100。そして、装備条件緩和で私でも扱え、しかも属性値は光200なのだよ」

 

「な、なにい!?」

 

 彼から発せられたのは信じられない言葉だった。初級武器(星1~3)の武装エクステンドはExLv21が最高の筈。しかも属性値は最高でも50や60が関の山だ。その動揺を見透かしたように。

 

「このカタナはアークス達がアイテムラボに通った結果の……、貴様に対する血と汗と涙と怒りとメセタの結晶!」

 

「つまり……金の力でそこまでの武器を無理矢理造り上げた……だと!?」

 

 そんな武器を造るには、それこそ創世器に匹敵する資金と技術が必要だ。それとは他にルーサーは先ほどの言葉に反論しなければならなかった。

 

「い……いや……、血と汗と涙はともかく、怒りとメセタは僕のせいじゃ――」

 

「黙れっ!」

 

 一喝され、ビクッと体を震わせてしまったルーサーだったが、カタナを構える男性は申し訳なさそうに。

 

「モニカにも辛い思いをさせてしまった……。あの気の弱い娘の働きに応える為にも……、お前を討つ!」

 

 規格外のカタナを持つ男性は静かに居合の構えを取り……。

 

「一閃せよ……。『導導(ドゥドゥ)』……」

 

 その一撃はダークファルス【敗者】を一刀の下に斬り伏せ絶命させた。そして、刀身は無茶な改造をしたせいか、粉々に砕け散っていた。

 

「……ただのカタナに無理をさせた結果のようだ。今度は対【若人】用に違う武器を――」

 

 つまりは、【敗者】を倒しても、まだまだアークス達からメセタをむしり取るのを止めるつもりはないらしい。

 

 

 

 

 

 

 そんな両者のやり取りを隠れて覗っていた人影があった。

 

 ……な、なんだ!? 色々試して歴史を変えてみようと来てみれば……、ドゥドゥがルーサーを倒している!? ここはレギアスがヨノハテで倒すはず……。私は何かを間違ったのか!? ともかく、今の私はダークファルス。この場を離れた方が良い。

 

 全身を駆け巡る震えを抑えながら、【仮面】は足早にその場を立ち去ろうとしていた……が、ガシッと肩を掴まれ……。

 

 ――素晴らしく運が無いな、君は。

 

 その一言と共に彼の意識は彼方へと消え、気が付いた時にはナベリウス森林エリア、かつての自分が初めてダーカーと戦った時の時軸で目を覚ましていた。



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東京での出会い

 ▼月◇日

 

 最近、アークス達が地球という惑星の東京へと足を運んでいるらしい。とはいえ、何故かダーカーも出没するし、稀に自分を呼び寄せるニャウも現れるようだ。私もあの猫の助けを呼ぶ声で、一目散にそこまで行くこともあるので下見も兼ねて、【仮面】の姿で現地へと降り立っていた。

 一見平和な街並みであり、辺りはアークスシップ居住区の様にビルが立ち並び、その中にあって道端の服屋と思しき店内からはルーサーとマトイがコントをしている様な放送が流れている。

 

 ”ふふっ……。げんきいー?” とか、ルーサーもかなりノリノリでやっている。その一方でマトイはかなり嫌がっているのが声を聞いただけで分かってしまう。あんなのやられたら、私だってサプライズダンクでヤツの頭を叩き潰したくなってしまうだろう。マトイはそれこそ二代目クラリスクレイス時代の無差別複数同時ラ・グランツをやりそうなものだが、よく我慢したと褒めてあげたい。

 

 ――わたしはあなたと漫才しに来たんじゃない……。わたしは、あなたを殺しにきたの。

 

 決め台詞としてはいまいちか……。

 

 とりあえず街の散策をするにあたって、仮面は外しておいた方が良いのでは……、と考えたので、素顔でそこら辺を練り歩いている。服に関しては……、どうやらこの星の一張羅に近い様でそこまで不審者扱いはされていないようだ。

 しばらく歩いているとおでんの屋台らしきものが見えて来たので、立ち寄る事にした。これでも元アークスなので、現地住民とのコミニュケーションも大事な仕事なのだ。今の私は【深遠なる闇】だけど。

 おでんとこの国の酒を味わっていると、後ろの方から女性の声が聞こえていた。

 

「あら……? ご一緒してもよろしいですか? この時間に他のお客さんとは珍しいですね」

 

 長い金髪を三つ編みにし、上品な黒いドレスを着こなす糸目の淑女がそこにはいた。何処かの星の戦闘民族の嫁っぽい気がするが、勘違いだろう。彼女は私の隣に座り、屋台の親父さんと世間話をしだした。どうやらこの店の常連らしい。

 

 

 

 

 

 

 

「聞いてますか! 親父さん、あのバカときたら……いつもいつも……!」

 

「まあまあ、少し落ち着きなって。きれいな顔が台無しだぞ?」

 

 隣に座った女性は、酔っぱらって屋台のマスターに愚痴りだしていた。内容から察するに、別れた旦那の所業が気に食わないらしく、自分がどれだけその旦那とやり合って来たかを熱弁していた。

 

「錬金術に夢中だった頃は、施設ごと蹴り飛ばしたりもしました! それと――」

 

「はっはっはっ! 相変わらず面白いなあ! その旦那も悪気があるわけじゃないんじゃないか?」

 

「悪気が無いから余計タチが悪いんです!!」

 

 隣の方はかなり酔っぱらっている。施設を丸ごと蹴り飛ばすか……。そういえばレギアスとマリアが本気を出すとマザーシップ自体がヤバい事になると、陰険メガネ(カスラ)が言ってた気がするが……。

 

「そういえば……私も、ある施設(マザーシップ)に殴り込みをかけた事がありますよ。今となっては懐かしいですが」

 

 自分もほろ酔い気分になり、遠い記憶の……マトイと共にマザーシップへと赴きルーサーと対峙した事を思い出してしまった。

 

「そっちも面白い人だなあ……。ファレグさんと話を合わせて来るなんてな」

 

 屋台のマスターは私の話が冗談だと思ったらしい。この星の人からすればそう感じるのも無理はない。

 

「あのバカは……裏でコソコソと良からぬことを……!」

 

「いますよね、そういうの。こちらの全知(ルーサー)も表舞台には姿を現していませんでしたので、引きずり出すのに苦労しました」

 

 どういうわけか、話が合ってしまった私と隣の女性だった。そして意気投合したのを感じ取ったのか、その女性は……。

 

「この店に来たのでしたら、鯛の揚げ団子を食べないともったいないですよ! 私が奢りますから!!」

 

 どうやら、お勧めを食べさせてくれるらしい。聞くからに旨そうなメニューだ。ワクワクしていると、屋台のマスターが申し訳なさそうに。

 

「悪いけど鯛の揚げ団子は、これで終わりだよ。最近『東京マダイ』が獲れなくなって、価格が上がっててな……。どうにかおでんの値段を下げないで頑張ってきたが、そろそろ限界かもしれねえ……」

 

「あら……、それは大変ですね……。けど、私は少しくらい価格が上がっても食べに来ますから」

 

 今日最後の鯛の揚げ団子に舌鼓を打ちながら、マスターと女性の会話に耳を傾けていた。自然の都合なので、仕方ない部分はあるだろう。すると、マスターから聞き捨てならない言葉が聞こえて来ていた。

 

「ありがたいねえ。『東京マダイ』だけじゃなくて、『東京マグロ』や『東京エビ』も漁獲量が最近眼に見えて減ってるらしくてなあ……。どっかの悪い連中が密漁してんだと思うが、こっちとしちゃあ良い迷惑だ」

 

 ……最近漁獲量が減ってるって、もしかして……?

 

「親父さん、密漁している連中を見かけたら、私が蹴り飛ばしてきますから! 安心して下さいね」

 

 それって、どう考えても私の元所属組織(アークス)の仕業です。申し訳ありません!!

 

 彼女が密漁者に憤りを感じている最中、一人真実を知る私はいたたまれなくなってしまい、足早に屋台を後にした。



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上級クラス……だと!?

 ◇日◎日

 

 最近、異世界オメガにて過去の私が見慣れない組み合わせの武装で戦っている事が多い。大剣(ソード)双機銃(ツインマシンガン)、そして導具(タリス)を持ち、戦場を縦横無尽に駆け回っているのをよく見かける。

 私の記憶では、それぞれ違うクラスで使う武器だったはずだ。打撃系(ハンター)射撃系(ガンナー)法撃系(フォースとテクター)で使用可能な武器だった。一部例外として、全クラス装備可能な物や、専用のクラス以外でも装備できる物は存在したが、そんなのは極一部なのだ。

 

 それよりも、問題なのは……、何故……私の知っている頃と武器の使用法が全く違うのだ!?

 

 例えば大剣(ソード)。見た目で分かる様に重量級の武器だ。攻撃速度は同じハンター専用武器の長槍(パルチザン)に劣るが、高い威力が魅力の武器でもある。それを……、まるで銃剣(ガンスラッシュ)やファイター専用武器の様に、軽々とブンブン振り回しているのはどうしてだ!? あの重量感が良いのだよ! あの重量感が!!

 

 そして双機銃(ツインマシンガン)、これは……射撃武器とはいえ、エネミーの近距離での運用をするための武器だったはずだ。射撃武器にも関わらず、接近戦を行う……、矛盾しているがそれ故にロマンを感じる武器だった。それが、射程も伸びて簡単に敵さんが溶けるようになってしまっている……だと!?

 

 導具(タリス)に至ってはテクニックも使用可能だが、ワープはするわ、普通にフォトンアーツはあるわで全く別物になっている。ってか、通常攻撃でもかなり痛い!? あんな紙切れみたいのが何でこんなに痛いんだ!?

 

 その謎を解明するべく、【深遠なる闇(シオンのコピー)】でもある私は演算を頑張った。この異様な事態は何だろうと、その能力を駆使して経緯を調べ上げていた。いやもう、頭からダーカー因子っぽい湯気が立ち上り、アムドゥスキアの火山エリアの溶岩よりもヤバい熱を発しながら、演算を行い解を導き出した。ルーサーっぽい言い回しだが、それは気のせいだと思う。

 

 ……じょ……上級クラス、『ヒーロー』!? 打撃、射撃、法撃を使いこなす全く新しいクラスだと!? ブレイバーやバウンサーは知ってるが、それよりもずっと能力が高いようだ。そして、緊急クエストに来ているアークス達を見ても、ヒーローの比率が高い事からその力が伺える。……と、いうか……。

 

 ……過去の私が当り前の様にそのヒーローになって、オメガで活躍してる。導具(タリス)を使って赤い竜の頭の上に瞬間移動した刹那、双機銃(ツインマシンガン)でその竜に弾丸を撃ち込んだりしている。

 言ってみれば、あの光景は私の可能性でもあったのだ。自慢ではないが、アークスの中でクラスの自由度がトップとまで言われた私だ。それを考えれば、系統の違う武器をあの様に使いこなすのは、決して不可能では無い。

 だが、昔の自分を見ていると、心の奥底から焦りや羨ましさが滲み出てくるのが分かってしまう。

 それを否定するように……。

 

 く、悔しくなんてないもんね!! コートダブリスDを持つ私は、両剣(ダブルセイバー)のフォトンアーツの他に、スライドエンドだって出来る! つまりは両剣(ダブルセイバー)でありながら、ヒーローの大剣(ソード)の様な範囲の攻撃が可能だ! テクニックだって、コートダブリスDの固有テクニックになっているメギバースが使える!! 

 しゃ……射撃は……、えっ……えっと……、ト、トルネードダンスでエネミーに突っ込む! つまり私自身が弾丸となる事だ! 銃弾だってジャイロ回転してるんだから、似たような攻撃の筈だ。そうに違いない!!

 

 そんな悲しい思考をしながら、数年後に新しい上級クラスが出来ませんようにと【深遠なる闇】の中で天に祈りを捧げていた。




復帰して思った事……、ヒーロー強すぎワロタ。
おそらく【仮面】さんの祈りは数年後に無駄となってしまうと思われる。


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Ep5 -1章

かなり久しぶりですが、思いついたので書いてしまった。
主人公の【仮面】さん、相変わらず扱いが悪いです。


◇月◎日

 

 私が【深遠なる闇】と成り果ててどれだけの月日が経っただろうか……。

 大体二年程度ではあるが、その間、惑星ナベリウス上空でアークス達に倒されては時間遡行、12対1でフルボッコにされては時間遡行。畜生(ペット)に襲われては時間遡行。そんなのをずっと繰り返している。

 繰り返すことに掛けて、私の右に出る者はそうそういないとの自負はある。何せ、マトイを救うために時間遡行を繰り返すこと幾星霜。その間ずっと一人で頑張って来たのだ。

 たかだか二年程度、瞬きの様なものだ。

 

 ……そう思っていた。それは甘かった! 出来るなら、時間遡行してマトイからダーカー因子を引き受ける前の自分を殴ってやりたい!

 誰か私を助けてくれ!! プリーズヘルプミー!!

 

「あーあ。また負けちゃった。君、情けないぞ」

「所詮は新参のダークファルスだね。だらしないなあ。つまらないなあ」

 

 おいこら止めろ! この【双子】のモンチッチ! アークスと戦ったばかりで疲れ果てて倒れている私を内部空間で足蹴にするんじゃない!

 そんなのをご褒美に出来る奴は極一部の限られた人間だけだ!

 

 私が【双子】にゲシゲシと踏まれている横では。

 

「あんた達、そんなのでも一応宿主なんだから、止めときなさい~」

 

 【若人】……、注意している様に見えて、何だその棒読みは!? しかも目を合わせないで笑いを堪えながら、化粧をパタパタとしてるんじゃない!!

 

「全く……、騒がしいにも程がある。もう少し静かにしてくれないか? 読書も出来ないだろう?」

 

 【敗者】……、丸いテーブルにティーセットを用意して、優雅な午後のひと時を演出してるが……、その本は何だ!?

 

「この本かい? これは暇つぶしに僕が書いた『僕とシオンの蜜月の日々』さ。興味があるのなら見せてあげてもいいが……どうする?」

 

 お前の妄想全開の本なんか誰が見るか! それよりも……【双子】どうにかしてくれ!?

 

「はっはっはっ! 僕は君の片割れのせいで全知への道が閉ざされたんだ。その姿を見ながら溜飲を下げたっていいだろう?」

 

 ちょっと待て!? それをやったのは私だが私じゃない! 八つ当たりだろ、それ!!

 

「ちったあ静かにできねーのか!? フォトナーってのはこれだから始末に負えねえ!!」

 

 ゲッテムハルト! この場ではお前だけがまともだ!? 同じ元アークス同士、手を取り合って――

 

「まあ、まだ甘いか……。【巨躯】なんざ良いだけファルスアームを狩られて、瞬殺された挙句、禄なのがドロップしない……なんてのをどれだけ言われたか……」

 

 あっ……、ゲッテムが小刻みに震えながら……目から液体を流している。辛い思い出を回想するより、この状況を……。

 

「そういやあ……、その中にはテメエもいたのか……。まあ、少しは反省しとけ」

 

 つまり助けてはくれないんですね……。私は【深遠なる闇】だぞ!? ダークファルスより偉いんだぞ!? この扱いはあんまりだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、四人が飽きて私は解放された。奴らの姿が消えてからすぐ何処からともなく声が聞こえて来た。どっか別の次元っぽい感じだが。

 

「あなたが……もし、その状況を抜け出したいのでしたら、アカシックレコードの見る夢と融合すると良いでしょう。そうすれば……おそらく、きっと、多分、他の者にダークファルスが移る筈です」

 

 ……あ、貴女は……一体? こんなボロボロの私に声を掛けてくれる……とは……。女神の様な方だ!

 

「まあ……! 当たらずとも遠からず……と言ったところですね。しかし……、ただ融合するだけではいけませんよ? こう……壮大な物語を紡ぎながら……、それでいて新たな虹ドロップ(☆13や☆14)を用意しなければいけません」

 

 つまり……、今までの宇宙的なモノではなく、中世だったり竜だったり、デカい人型の城だったりを用意すれば……! ついでに騎士っぽい武器とか防具も!!

 

「素晴らしい提案です! 四つの国を股にかけ、万難辛苦を乗り越えながら最後には永代の平和を築く英雄譚……。そんな夢のような結末ならば……、私も元の場所に……コホン、何でもありません。どうですか? 最後には、扱いが悪い貴方にも見せ場を用意すれば……」

 

 ラスボスに斬りかかったかつての私へと力を貸すように、”……この程度の相手に苦戦して、貴様は誰を救うつもりだ? キリッ” ……っとすれば、『メセタが少ないメセタン』とか、『レベルアップクエストにしゃしゃり出て、コートエッジDしか持ってこない【仮面】』など、下降一直線だった【仮面】株がストップ高に……!

 

「決心した様ですね……。では、次に倒されて時間遡行する前に、計画を実行に移してください。では……、いずれまた(まみ)えましょう」

 

 ありがとう。名前も分からない女神のような人。あの人を人とも思わない連中を追い出して、平穏を手に入れます!

 

 こうして私は、女神様(?)の導きの通り、マトイと一緒にいて羨ましいと嫉妬心に駆られながら、かつての私と相対した後、惑星シオンがあった場所へと転移を行った。




終の女神「計算通り」


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後輩

ネタは色々あったのに、仕事やアークス業が忙しくて漸く書けた。
相変らずのギャグです。


 □月■日

 

「センパーイ!」

 

 声が聞こえる。聞き覚えの無い声だが、懐かしい呼ばれ方だ。

 私をこの呼称で呼ぶのは……。

 

「わたしなんかじゃ力不足と思いますが……”先輩”に誘ってもらえるのなら……、わたし頑張ります!」

 

 私がアークスだった頃、ショップエリアにいた研修生の一人だ。名前はロッティだったか……。研修生の制服に身を包み、仔犬の様な眼差しで私にクライアントオーダーを依頼してきたものだ。

 まだ実戦経験がない研修生の筈なのに、依頼内容が難易度ベリーハードのブーストエネミー撃破なのは深く考えてはいけない気がする。

 まあそれよりも……、彼女の最大の特徴は……。

 

 多分、十四歳程度だというのに、素晴らしく発育をしているスタイルだろう!

 その胸囲たるや、双子の情報屋の妹の方は軽く超えている! しつこいようだが、ロッティはまだ十四歳。これからまだまだ成長する(おおきくなる)余地が十分にある。

 マトイを救うための時間遡行の旅が無ければ、あの娘の成長をこの目で確かめたかった! 

 

 だが、それは最早叶わぬ夢。仕方ないので、そこはまだアークスをやっているかつての私に任せておこう。なにせ自分自身の思考だ。ヤツだってそう思っているに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 そう言えばもう一人、私を”センパイ”と呼んでいた娘がいたか。確か……。

 

「センパイ……その、助かった。来てくれて、ありがとな」

 

 女性デューマンの特徴である二本の角、そしてオッドアイでボーイッシュなショートカット。女の子だというのに、一人称が”おれ”なイオだ。

 

 自分の容姿や性格にコンプレックスを持っている様な発言をしていた。確かにロッティに比べれば胸は小さいかもしれない。

 しかし! あれはスレンダーというのだ! あの体のラインがはっきりと分かるエーデルゼリンを着ている彼女は健康的な色気を醸し出し、会うたびに会話をするのが楽しみだった。

 

 胸の大きさなんてのは、いちいち気にしてはいけない。私はどっちも良いものだと思っている! これだけは自信を持って言えるのだ!

 

 ……ふぅ。少し思い出に浸りすぎたか……。そういえば誰が私を”センパイ”と呼んでいるのだろう? まあ、私を先輩と呼ぶのは、おそらく可愛い女の子に違いない。今までの二人がそうだったのだ。

 三人目の希望としては、一人称が”わたし”と”おれ”の中間の”僕”で、小悪魔的なのが良いな……。

 

 と、その人物が目の前に現れた。

 

「セーンパイ。お望み通りの僕っこ小悪魔系後輩のエルミル君だよ。やっぱりセンパイにはちゃんと挨拶しとかないと――」

 

 なんか野郎が私に語り掛けている。野郎なんてお呼びじゃない。こいつは一体何なんだ!?

 

 そんな一瞬の放心の隙に、ダークファルスとしての力と私の記憶を奪われた。これはマズい! だがこの場は一旦離脱して、体勢を立て直さなければ……!

 この屈辱……忘れない……。絶対に借りを返してやる!!

 

 

 

 

 

 

 

 そして、”その時”が訪れた。かつての私は迫りくる魔物種の大軍をオメガで知り合った人々や初代クラリスクレイスが呼んだ先代の六芒、そしてダークファルスの依代達まで味方につけ、これを撃破。ついにはエルミルを追い詰めていた。

 あの野郎は、しぶとく戦おうとしていたが、ルーサー達が昔の私の中に戻り……。

 

「調子に乗ってんじゃねェ!!」

 

 ダークブラスト――『エルダーフォーム』からのアッパーがエルミルに炸裂。ヤツの体が空に舞う。

 

「きみは、邪魔!」

 

 次は『ダブルフォーム』。花火のような攻撃で追撃。汚い花火でないのが救いだ。

 

「目障りなヤツ!」

 

 追い打ちをかける様に『アプレンティスフォーム』に変化し、偽【仮面】を叩き落す。

 

「その所業、万死に値する」

 

 最後は美しい翼を持つ『ルーサーフォーム』からのビームの様な攻撃でエルミルを完全に捕え、かつての私は元の姿に戻ったあと、コートダブリスを振りかぶりエルミルに止めを刺そうとしていた。

 

 ここまで来たら、私も力を貸さないでどうする! ついでにあの憎っくき野郎に一撃入れるチャンス!!

 

 そうして、かつての私にありったけの力を分け与えていた。いくら偽【仮面】が憎かろうと、ここは格好良く決めておくところだ。私は空気が読める【仮面】なのだ。本音は隠しておかないと。

 

「この私の期待と純情と男のロマンを裏切った罪、その身で償え! 野郎なんてお呼びじゃなかったんだよ!! 私が来て欲しかったのは、”僕っ娘”の可愛い娘ちゃんだ! この怒りを思い知れえええええ!!」

(……この程度の相手に苦戦して貴様は誰を、救うつもりだ?)

 

「「「「……えっ!?」」」」

 

 なんか、昔の私を含む、ダークファルスの依代達まで固まっている。

 

 し、しまった!? 本音と建前が逆になってしまった!? 時間遡行でやり直しできないか!? こんなの黒歴史だろ、チクショウ!!

 

「変態【仮面】を追い出す方法知りませんか?」

 

 昔の私が、汚物を見るような視線を向けている。彼の中にいる依代達も”変態”とか、”これはない”とか、”駄目深遠”とかヒソヒソ言っている。

 その後、エルミルが意味深な捨て台詞を吐き、かつての私がそれに注目している間、自分はひっそりと姿を晦ましたのだった。



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ノーマル

 ★月※日

 

 何故かは知らないが、最近になって私へと色々な者達から懇願の様な苦情の様な電波が届くことが多い。私に届く理由は分からないが、おそらくはフォトンが何らかの相互作用を起こしているのだろう。

 問題はその内容だ。例えば――

 

「爪先に激痛が走った瞬間、絶命していた。我を倒すには、頭や腹の護石を破壊しなければならないはず。ありえない。これはありえない。足だけ攻撃されて地に伏せるとは……理屈が分からない……」

 

 これは惑星ハルコタン在住のギグル・グンネガムさんからのメッセージ。

 

 

 

「自分達専用のBGMが流れる前に倒されてしまった。もう赤箱になってしまってから音楽が聞こえて来るとか虚しいにも程がある」

 

 こちらは惑星アムドゥスキア在住のヴォル・ドラゴンさん、クォーツ・ドラゴンさん、ドラゴン・エクスさんからのメッセージ。ついでに色んな場所に現れるクローム・ドラゴンさんのものも入っている。

 

 

「ええいっ!? こちらの通信が追い付かん!? 守護輝士(ガーディアン)は化け物か!?」

「ど……どうやったら、正確に情報を伝達できるのでしょうか!? シャオに至急連絡を!」

「ええっ!? 何これ!? こっちが伝達する前に敵が倒されてる!?」

「報告が追い付きません。至急改善を!」

 

 これに関しては、アークスのオペレーター四人娘……。いや、三人娘とおばさんが一人からの狼狽えた声だ。

 あれ? 今一瞬ゾクッと来た!? すいません!? おばさんではなく、お姉様です! 私もアークスだった頃は大変お世話になりました。ヒルダお姉様!!

 

 

 

 敵味方問わず、こんなのばっかり来ていたら私だって気が滅入る。どうやら原因はかつての私にある様だが、ヤツは何をやっている? 何をするのも勝手だが、私に迷惑が掛からないようにして欲しい。こう見えても私だって忙しいのだ。

 緊急で【深遠なる闇】になったり、いつ来るか分からない深遠トリガーでアークスと対峙したり、アドバンスクエストで待機したり、闇のゆりかごで理不尽な12対1の戦闘をしなければならなかったりと、これ以上面倒事を増やさないでくれ。

 

 そんなことを考えていると、頭の中にどこからか助けを求める声が響いていた。

 

 ――ニャウ~! 誰か助けてニャウー!!

 

 これは……あれだ。(ニャウ)の声だ。仕方ない。助けに行ってやるか。

 

 少々気乗りはしなかったが、ワープをした先には人影が見える。どうやら敵は昔の私らしい。

 場所は惑星ナベリウス森林エリア。愛用のコートダブリスDを構え――

 

 ――パンッ

 

 なん……だと!? ワープする際の黒い靄が晴れる前に……倒されてしまった……!? 相手からアサルトライフルの銃声のようなものが聞こえて来たが……意味が分からない。どうして私が倒れている!?

 

 

 

 命からがら別の場所へとワープしたが、何が起こっているのか理解できなかった。不可解な現象だ。このラスボスでもあり主人公でもある私がいとも簡単にやられてしまうとは……!?

 

 先程の事象を頭の中で解析している最中にまたしてもニャウの声が頭に響いていた。さっきやられたばかりだというのに、またヤツに喧嘩を売って泣かされたらしい。

 

 だが、これは私にとってもチャンスだ。先程の雪辱を晴らさねば!! こうなったら、私も本気をだして【深遠なる闇】(ディーオ・ヒューナル )で戦うとしよう。レッツワープ!

 

 この【仮面】の本気を目に焼き付けるがいい! さて、相手は……どこだ?

 

 そこには、かつての私が確かにいた。まあ最初は装備でも確認するかとヤツの持っている武器を見る。

 

 星がひとーつ、ふたーつ、みっつ、よっつ……えっ!? 星がじゅう……ご……!? しかも武器の強化値は+35。あれー!? 星って13までじゃなかったっけ? あっ、【深遠なる闇】の私から星14もドロップしたっけ。

 じゃあ、目の前にあるのはなんだろう? しかもヤツのレベルは90。だがレベルは私だって少し低いだけで、そこまで負けていないはず。

 

 そんな事を考えながら、自分自身のレベルを確認すると。

 

 ――Lv20

 

 なに、この無理ゲー。よく見たらここって難易度ノーマルだ。そりゃあ私のレベルだって下がるなあ。はっはっはっ。

 ってか、どうしてノーマルに来てるんだ!? 黙ってエクストラハードにでも行ってろ! 

 

 そんな文句を言ってやろうかと思ってしまったが、敵は何やら呟いている。

 

 何ブツブツ言ってるんだ!? 楽してレベル上げしたい? 強化素材のエンペ・エンブレイス!? おすすめクエストで『ボーナスキー【金】』来い!? ラッピーフィーバーでも良い!? 目を血走らせて怖いんですけど!

 そんな強すぎる武器をこっちに向けんな!? うわああああああああ!!?

 

 こうして、Lv20の【深遠なる闇】(ディーオ・ヒューナル )はいとも簡単に倒され、逃げた先でガクガクブルブル震えてしまっていた。

 




エネミー視点で考えると割と理不尽だなあ……。


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