これはゾンビですか? はい、ゾンビとスライムです。 (三度の生より一度の我儘)
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はい、本編ってやつです。
第1話 太陽は大体人外の敵


皆さんページを開いてくださりありがとうございます。
成海と申します、初心者なので暖かい目で見てください


 

 

 

 

「じゃあ行ってくる」

 

『いってらっしゃい』

 

あ、どうも皆さんこんにちは。

俺の名前は海波夏楓、スライムです。

そしてこちらのメモで返答している方がユークリウッド・ヘルサイズさんです。

 

「おーいそろそろ出ないと遅刻するぞ」

 

「りょーかい」

 

で、こいつが相川歩。困ったらブレイクダンスをするゾンビです。

とはいえ、まだ時間は余裕にあるし、遅刻するとは思えないのに何故こんなにも急いでいるかと言うと…

 

 

 

 

 

俺と歩は太陽に弱いんです

 

 

 

 

 

「ァァー……ァァー……」

 

「ふ、踏ん張れ!もう少しで着くぞ」

 

壁を背に奇妙な移動をしている俺と歩だが、普通に道を歩いていたら数分で…いや、数十秒でお陀仏なのでこうしてお壁様と日陰様に助けられている訳だ。

 

ポタ…ポタ…と汗(スライム液)がこぼれ落ちる。

それと反対に身体中の水分が絶滅しかけているカサカサ歩。

 

もうこいつ声も危ういな

 

 

こんな感じで炎天下の日の登校は苦難極まりない訳だが、

何とか無事(?)学校に辿り着く

 

「やっと着いたな」

 

「アァ」

 

まだ回復してないこいつはほっといて、とっとと自分のクラスに向k

 

「待てぇぇい!」

 

「冗談だよ、はい水」

 

「ありがとな」

 

俺は鞄から取り出したペットボトルの水を歩の頭にかける

 

「ふぅ、生き返ったぜ!夏楓にはいつも感謝だな」

 

「そりゃどうも」

 

「てか前にも聞いたけど、特別お前は人として(・・・・)登校しなくてもいいんじゃないか?」

 

「だから前にも言ったろ?そりゃ俺は何かの小道具になってお前の鞄の中に入ればいいけどよ、いつかの日学校に着いて元の姿になったら」

 

「不審がられてたな」

 

「だろ!?目撃はされなかったから良かったけどさ」

 

「やっぱり無理かぁ」

 

キーンコーーーン、カーーンコーーーン

 

そんな事を話していたらチャイムが鳴ってしまった

これで遅刻扱いになったら歩を1日家のベランダに干そう、もちろん炎天下の日に

 

「やば!早く教室行かないと!」

 

「前にも話した与太話なんかするんじゃなかったよ全く!」

 

 

 

「えーですのでこうして歴史的人物の…」

 

授業中、そんな事はお構い無しに俺と歩は天気が曇っていく様にニヤケが止まらないでいる。

あぁ本当に最高だな、お天道様さよなら☆

 

 

 

 

ほとんどの人が気付かずに一生を終えていくが

世界には決して触れてはいけない秘密が溢れている。

 

その秘密に触れた時、人は・・・。

 

 

 

 

 

太陽が苦手になる!多分!多分だ!

というか人じゃなくなるぞ!大体!大体な!

 

 

 

曇っていくと思われていた天気が夏という事を象徴するかのように太陽は負けじと、てか雲に勝った。

もう眩しくて暑くて死ねる。あ、片方はもう死んでる奴だったわ。

 

「「あー最悪だ」」

 

俺と歩の小声がシンクロナイズドなんちゃらみたいな

そんな事より、今日も帰りは遅くなりそうだなこりゃ

 

 

 

 

「おーい海波ー、相川ー」

 

近づいてくるメガn、じゃなかったクラスメイトであり親友の織戸。

気づいたら午前の授業は終わり、休み時間になっていたようだ。

 

「織戸か、なんだ?あ、歩そっちまでカーテン引っ張るから」

 

「そうだな、そろそろ日差しがヤバそうだし閉めるか」

 

「お前らホント似たもの同士だな」

 

「「似てるようで似てないんだよ俺達は」」

 

「いや、充分似てるだろ」

 

「で、なんだ織戸」

 

「昼飯にしようぜ!」

 

「フッ、という事はいつものやつをやるという事だな?織戸」

 

「フッフッ、決まっているだろう?海波氏」

 

「またあれやるのかよ!?夏楓も乗り気だし!?てか氏ってなんだ!氏って!」

 

説明しよう!何故昼食時にここまで騒いでいるのかと言うと…そう!それは今日の昼飯、購買のパンは誰の奢りにするかという勝負を今からするからである!

そして、その勝負の内容というと・・・

 

「じゃ〜ん!け〜ん!」

 

・・・ジャンケンである

 

 

 

 

 

 

カァー カァー カァー

 

もう今日の学校は終わりに近づいている時間帯。

だが、夏という事もあり、この時期は日が落ちるのが遅くて困る。

昼間の勝敗はというと、歩の負けで終わった。

 

 

「もう大丈夫かな、歩ー帰ろうぜ」

 

「いや、今日は少し寄ってから…」

 

「"今日は"じゃなくて"今日も"だろ?」

 

「うっ…し、仕方ないだろ!俺はあいつを」

 

「はぁ、分かったよ俺も一度帰ってユーに話してから向かうよ、それまで危ない事に足突っ込むなよ?」

 

「分かった、いつもありがとな夏楓」

 

「いいってことよ」

 

歩はゾンビになってから夜中に出歩く事が多くなった、理由は自分を殺した犯人を探すためらしいが…

 

「犯人、ね」

 

帰路についた俺は一人呟いていた




主「ヒロインなのに出番が少なくてすまない」

ユ『大丈夫、気にしてない』

(´;ω;`)



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第2話 キックしような?な!?

?「タイトルで察しろよな!」



 

「ただいま〜」

 

『おかえり』

 

あの後、俺は真っ直ぐ家に帰ってきた

ユーにはあらかた事情を説明し終え…

 

「という訳で今夜もちょっと歩に付き合ってくる」

 

『気をつけて』

 

「分かってるよ、てかスライムだしな

痛みは感じるから不憫だけど」

 

『スライムだからとか関係ない』

 

ユーはメモを続けて書き出す

 

『夏楓に危ない目に合ってほしくない』

 

「…」

 

俺は返答に困っていた。

何故なら歩やユーの為ならば命を捨てる覚悟でいるからだ。だから俺が出す言葉は…

 

「…善処、するよ」

 

そして俺は家を後にする

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても、あいつ何処まで探しに行ったんだ?」

 

こんな独り言を言うなんて俺もいよいよだな

だって仕方ないじゃん?近隣の家の周り見てもいないし、かと言ってコンビニとか公園にもいないしさ。

まさか、もしかしてあいつ…

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅー、やっぱり此処は落ち着くなぁ」

 

「なーにが落ち着くだ、墓地なんかで油売りやがって」

 

「ぬわぁっ!何だよ夏楓か、ビックリさせんなよな」

 

「お前が何処にもいないから探したってのにその言い草かよぉー」

 

「わ、悪い悪い」

 

「にしても、墓地は森の次に落ち着くな」

 

「何で一番が森なんだよ、やっぱりスライムだからか?」

 

「んー、かもなぁ」

 

 

ガキィィン!バギィン!

 

何やら近くで金属音が聞こえてきたが、例の犯人とやらだろうか?き、気のせいだよな、犯人が墓地で人殺し?死神かっての、そうだよ、気のせい気のせい。

 

「おい夏楓、今」

 

「ナニモ、キコエテナイヨー」

 

「ダ、ダヨナー」

 

「めっっっっっちゃ!死ねぇぇぇ!」

 

「「ええぇぇぇぇ!?」」

 

状況を説明すると学ランを着たクマ的存在が、ピンクとリボンを基調としためっちゃ魔法少女みたいな格好した少女が、チェーンソーでクマをめっちゃ殺そうとしてる。

 

「おい!そこの二人!危ないから下がってろよな!」

 

「いやいやいやいや!え?えぇー!」

 

「歩落ちとぅけ、まずはタイムマシn、じゃなくて神様を探そう」

 

「お前が落ち着けぇ!って、ぐはぁっ!」

 

「あゆ、ぐっ!」

 

二人同時に巨大グマの爪にぶっ刺さるとは、全く命とは呆気ないものである。

ゾンビとスライムだけど。

 

「くっ、仇は取ってやるからな!」

 

「死んだ事になってるし、まあ、当たり前か。てか、夏楓重いんだが」

 

「し、仕方ないだろ、ぐはっ!つ、爪が変な風に刺さってて上手く抜けないんだよ」

 

腹から大量出血してるとは思えない会話をしてる間にも、謎の少女は決め技?を繰り出していた。

 

「ミストルティン!キィィィック!」

 

ギュイィィィィン!

 

そう、チェーンソーで俺達ごとクマを真っ二つ…

 

「「て、それキックじゃねぇぇ!」」

 

その後、クマは光の粒子となり消滅した。

 

「戦いに犠牲は付き物だ!しゃーなしだな!」

 

「いや!しゃーなしじゃねぇよ!」

 

「うわっ!なんで生きてんだ?あんた」

 

「ホントだよ何がしゃーなしだ、てか足とか腰取ってくんない?」

 

「あ、俺の下半身も取ってくんない?」

 

「下半身とか腰とか変態かよ、てかあんたら普通の人間じゃないな?」

 

「「スライム(ゾンビ)だけど」」

 

「なるほどな!」

 

((まさか理解してくれるとは…))

 

 

 

 

 

 

 

俺と歩が元の姿に戻り、やっと話が進められる状況になったのだが…

 

「私は天才魔装少女ハルナちゃんだ!」

 

「海波夏楓だ」

 

「相川歩」

 

「それよりもこのチェーンソーなんだ?」

 

「あっ、それは俺も気になってた」

 

俺達がチェーンソーに触れた瞬間…

 

「「!?」」

 

「?なんだよ二人共、天才ハルナちゃんに見蕩れるのは分かるけどな!」

 

「いや、ハルナさん?そのー、服が…」

 

「服?…!?」

 

ハルナが裸になった!裸に!

まあ、この先は何となく読めるのだが…

 

「こっち見んなぁぁ!」

 

「「ぎぃやぁぁぁ!」」

 

これが俺と歩がハルナと出会った瞬間だった

 

てか目が痛い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日、俺達は普通の日常を送っていくだけなのだが…

 

「バエデ!めっっちゃおかわりだ!」

 

「はいはい、分かったからその虫みたいな呼び方やめような?な?」

 

何故かハルナが家に住み着いてる訳だが、本人曰く魔力が戻るまで厄介になる(強制的)らしいのだ。

 

「ばゆむ!お茶くれ!」

 

「あいよ」

 

因みにユーのことは初日に話したので無問題と言うわけだ

 

「ふーん、てことはそのぉメガロ?を倒す必要があると」

 

「さっきからそう言ってるだろ?分かれよな!」

 

「でもハルナ、魔力が無いと変身できなくてメガロを倒せないんじゃないのか?」

 

「だからその魔力が消えた理由が分からないから、厄介になってんだろ!バカ歩!」

 

という訳らしい、まぁ住むことにはユーがいるし何も言うことは無いのだが、ハルナが食欲旺盛過ぎて冷蔵庫がピンチになりそうだ。これからこの問題が日常の一部になりそうだな。

 

「んじゃ、そろそろ学校行ってくるよ」

 

『帰ってきたら話がある』

 

「ん?分かったよ、じゃあいってきます」

 

『いってらっしゃい』

 

「早く帰ってこいよな!」

 

「はいはい」

 

「おーい夏楓早くしろー」

 

「わーってるよー」

 

そして俺達はいつも通り登校する。天気は小雨。

 

((いい天気だ))

 

俺と歩は多分同じ事を考えているだろうな

 

「そういえば気づけばここ数ヶ月で、俺の家に色んな人が住むようになったな」

 

「俺とユーを始めとしてな」

 

「そういや俺がユーと会った時は、既に夏楓はユーと一緒だったけど、冥界の人物であるユーとどうやって夏楓は出会ったんだ?」

 

「そういえば言ってなかったっけか?でも今考えれば結構単純で偶然な出会いだったのかもな」

 

「そうなのか?」

 

「多分、まあその出会いには感謝してもしきれないけどな」

 

「俺もお前達と出会えて良かったと思えてるよ」

 

「そっか…あぁ、でユーと出会った時の話だけど…」

 

 

そうだな、あれは…




主「結構省略しちゃった上にユーの出番がまた少なかった」

ユ『そろそろ出番欲しいかも』

妄想ユー「ユーお兄ちゃんとお話するのも好きだけど、もっと出番欲しいなあ」

主「うん頑張るからねぇ〜、次は出番作るよぉ〜」


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第3話 スライムと冥界は紙一重?


主「ちょっとあとがき多めです、すみません」

?「早く話を進めてください、このクソ虫が!」

主「うっ、す、すびばせん」


 

あれは冬のある寒い日だった。

自分の身体がスライムという事にはもう気づいていた時だが、その話はまた違う話だ。

 

で、そんな心地の良い冷たい風が吹いている中、俺は塾が終わり、コンビニに寄って家に帰る途中でユーと出会った。

紫を基調とした服の上にメイルやらガントレットやらを付けた銀髪ロングヘアーの美少女が電灯の下で佇んでいた。

 

彼女は見蕩れる程に綺麗で可憐で、そして悲しげな目をしている様に見えた。

だが、俺は悪寒というか寒気というか何か嫌な感じがした、正直、彼女からそんな物を感じ取ったと思いたくなかった俺は、その感覚を確かめるべく彼女に話しかけた。

 

「コ、コンニチチャー?」

 

「…」

 

か、噛んだぁー!盛大に噛み倒したぁー!

しかも棒読みだし!英語喋れないし!それより何より無視されて尚且つ、そっぽ向かれたし…シクシク

 

き、気を取り直して

 

「は、ハロー?」

 

「…」

 

『何?』

 

よし!第一関門突破!よしよし!Take2にしては上々だ。

てか何故筆談なんだ?これは、触れない方がいいやつかも知れんな!女の子はデリケートらしいぞ!色々とな!色々!

 

「こんな遅い時間にこんな所で何してるの?」

 

遅い時間、そう、もう日付は回ったのではないかと思えるような時間帯だった。

 

『関係ない』

 

ギュゥゥゥゥ

 

「…」

 

「…」

 

「お腹減ってるの?」

 

何!?何なの今の音!?咄嗟に当たり前の様に聞いちゃったけど!

 

「…コク」

 

彼女が頷き自分は失態を犯してない事に安堵する。

 

「じゃあこのおにぎりあげるよ、コンビニのだけど」

 

『いいの?』

 

「構わないさ、また買えばいいしね」

 

『ありがとう、いただきます』

 

彼女がおにぎりを食べた後、色々と話をした。

最初は筆談という印象からして彼女は無口なのだと思っていたが、書き出していく右手はとてもお喋りだった。

 

『あなたは何者?』

 

「…どんな奴に見える?」

 

彼女は俺を改めて見つめ、考え出す。

そしてメモに書き出す。

 

『優しくて怪しいおにぎりくれた人』

 

「やっぱ怪しいか、ハハハ」

 

時に会話に笑いが起きたり、といっても俺しか笑ってないが…と、とにかく楽しくて癒された。

そんな時間だった

 

「じゃあ俺は帰るから、君も早く帰りなよ?」

 

『さようなら』

 

そしてこれで彼女と最初で最後の別れだと俺は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、俺はまた彼女に出会う事になった

 

消しゴムが無くなったので、消しゴムと次いでに、シャーペンの芯と肉まんを買いに出かけた。

すると、コンビニの前に彼女は座っていた。

 

「また…会ったね」

 

『誰?』

 

「え!忘れちゃったの!?え、えーと俺は」

 

『嘘』

 

「え?う、嘘?」

 

『ごめんなさい』

 

「別に謝らなくてもいいよ、ただ、冗談を言うなんて思わなかったからさ」

 

『ごめんなさい』

 

「だから大丈夫だよ、そ、そうだ、お腹減ってる?」

 

『うん』

 

「ホント!?じゃあちょっと待ってて!」

 

そう言って俺はコンビニで肉まん2つを購入し、彼女に1つ渡した。

 

「はいこれ」

 

『ありがとう』

 

結局肉まん1つでは物足りなかったようなので、2つとも彼女にあげた。

 

「前もこんな時間に出歩いてたけど、家には帰らないの?嫌な事でもあった?」

 

「…」

 

俺はそう聞くと、彼女は俯き、初めて出会った時のような悲しげな目をした。

 

「もし、もしだけど、困ってるなら俺の家に来る?」

 

『それはダメ』

 

「どうして?やっぱり二回会っただけじゃ、まだ怪しいかな?俺」

 

『違う!』

 

彼女はメモを続ける

 

『あなたは優しくていい人、だから迷惑かけたくない』

 

「俺の事なら大丈夫だよ、一人で住んでるし…寧ろ誰かと一緒に食事できるなら迷惑どころか嬉しいくらいだよ」

 

『ホント?』

 

「ホントホント」

 

『迷惑になるかもしれないのに?』

 

「君が自分の口で出ていきたいって言った時は止めないつもりだよ?そうだなぁ、何かトラブルがあった時は、その時は……な、何とかする!多分!」

 

『そこまで言うなら』

 

「決まりだね!じゃあ着いてきて、帰ったら風呂とか布団とか用意しないとね」

 

こうして俺とユーは出会い、一緒に住み始めた。

 

 

 

住み始めてから数日が経ち始めた頃…

 

「お待たせユー、食事できたよ」

 

「!?」

 

『その傷は?』

 

「あぁー、ちょっと包丁で切っただけだから大丈夫」

 

『でも血が出てる』

 

「?あぁ言ってなかったっけ?俺スライムなんだよ、だからほら、血は出てるけど血がゼリー状の液体になってるでしょ?んで、時間が経てば再生してるから」

 

『そんな事聞いてない』

 

「そうだっけ?でもそしたら俺もユーの事よく知らないんだけどなぁ〜」

 

その瞬間、彼女ユークリウッド・ヘルサイズこと、ユーは俯きだし、メモを書き出す

 

『ごめんなさい』

 

「冗談だよ、話す気になったら話してくれればいいさ、あと今度からごめんなさいは一日一回ね?」

 

『どうして?』

 

「んー普通の言葉より、ごめんなさいって言葉の方が多く聞いてる気がするか…ら?」

 

『分かった、頑張る』

 

「いや頑張る程なら別に無理しなくても…」

 

『頑張る』

 

「わ、分かったよ」

 

こんな事言うんじゃなかったと俺はこの時、後悔していた。何となくだが、あまりユーには無理をしてほしくなかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれから数日後、ある事件が起きた。

 

 

俺は学校が終わり、日が沈みきった頃に帰路についた。途中で前回と同じコンビニの前にユーが座っていた。

 

「ユー、今日はまた何でこんな所にいるんだ?」

 

『夏楓を待ってた』

 

「こんな時間まで待ってなくてもいいのに」

 

『次いでに散歩』

 

「そっちが本命ですね、分かります」

 

『違う』

 

ユーはメモを続けようとするが、俺はそれを止める。

 

「俺の名前さ、漢字だと画数多いから面倒でしょ?平仮名でいいよ」

 

「……」

 

『分かった』

 

「じゃあ先に帰ってるから、散歩も程々にね」

 

「…コク」

 

俺はユーにそう告げると真っ直ぐ家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユーは夏楓が去った後、続けて書き出そうとしてた文字をメモに書き、見つめる。

 

 

 

『夏楓が本命』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー、海波夏楓です。スライムです。

あと、家燃えました……って何でだぁぁぁ!?

 

 

家の周りには人集りができ、あちらこちらで話し声が耳に入る。

 

「放火ですって」

 

「やだわ〜怖い」

 

「男の子が一人で暮らしてたっていうけど、家にいなくて本当に良かったわねぇ」

 

放火?あ、あっぶねぇぇ、火とか俺スライムだから消えちゃうよ。にしても、たまたまか?それとも俺の家だと分かってやったのか?…どちらにせよ、後で調べる必要があるな。

とにかくコンビニに戻ってユーにこの事を知らせよう。はぁ、これからどうしようかn

 

キャアアアア!!

 

ひ、悲鳴!?あ、あそこの家からだ!火事(我が家)に悲鳴にどうなってんだ今日は!とにかく、あの家の人を助けるのが先だな、まあ、俺スライムだし何とかなるでしょ。

 

キィィィ

 

中にはもう誰もいないのか?扉は開けっ放しだし、ん?ひ、人が倒れてる!?もう一人の…あれは女の子?かな、とにかく無事な様だ、よかった。

 

「おい!君達大丈夫か!?」

 

「!?」

 

「って、ユー!?どうして此処に!?」

 

『話は後、この人を助けるのが先』

 

「分かった!じゃあ俺がその人を担ごう…で、どこに向かえばいい?」

 

『まずはかえでの家に向かう』

 

「……」

 

『どうしたの?』

 

「…凄く申し上げにくいんですけどね、ユークリウッドさん実は…家、燃えちゃいました」

 

「……」

 

『分かった』

 

現実受け止めのが早くて助かります!正直、俺はまだ逃避中だけどな!

 

「そういう訳で家は無理だからどこに向かう?」

 

『墓地』

 

「何故ゆえ!?ま、まあ分かった!」

 

この助けられた人というのが相川歩だ。

どうもあの後、歩はユーと偶然出会い、美少女と話をして楽しかった事から、気分が上がり人助けをしようとしたら、このザマだったという訳らしい。なんて悲劇。

そして、ユーの手によってゾンビとして生き返った訳だ。

 

 

歩を墓地に運んでる道中で、ユーの事を、ユー自身に教えてもらった。何故かと言うと、墓地に行って何をするのか、そしてユーはコイツ(歩)に何をするのか知りたかったからだ。

それを聞いたら、渋々だがユーはメモでだが、語ってくれた。

俺もこんな形で教えてもらいたくはなかったんだが、状況が状況だった為に教えてもらったという訳だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、俺とユーが出会い、歩がゾンビとして生き返った時に一緒にいたという事だ」

 

「なるほどな、というか夏楓、お前家燃えたんだな」

 

「あぁ、正確には"燃やされた"んだけどな」

 

「まあ俺は構わないから、これからも俺の家に住んでくれて」

 

「ほんっっとに感謝してる!」

 

「イイってことよ!俺も助けられた訳だしな、てそれよりも学校に遅刻するぞ!」

 

「マジだ!天気(小雨)がいいからって長々と話しすぎた!」

 

俺達は折角の天気での優雅な登校を、長話で無駄にしてしまい、結局走る羽目になった。

 





ユ『いっぱい出番もらえた』

妄ユ「お兄ちゃん♪ユーに、い〜っぱい出番くれて、ユーとても嬉しいのぉ♪大好きだよお兄ちゃん」

主「えへへ〜ありがとぉ〜、お兄ちゃん嬉しいよぉ〜」

ユ『また変な事考えてる』

主「えへへ〜…っは!そうだ!早くもお気に入り登録してくださった方々ありがとうございます!」

ユ『ありがとう』

主「まだまだ未熟者ですが、これからもよろしくお願いします」

ユ『夜露死苦』

主「では、次回もお楽しみにしていてください。次回はあの人が出るかもですよぉ?では!お楽しみに〜!」

ユ「お前もスライムにしてやろうか」

主「!?」


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第4話 下僕と付き人と下僕


主「えー、今回は天才魔装少女ハルナちゃんの出番は多分少なめかもです」

ハ「はぁ!?ふざけんなよな!この天才魔装少女であるハルナちゃんの出番が少ないなんてありえないだろ!それくらい分かれよな!」

主「す、すびばせん」


 

「やっぱどう考えてもバエデとばゆむが、私の魔力奪った以外考えらんないんだよ!」

 

「いや、そんな事言われてもな…なぁ?歩」

 

「そうだぞハルナ、奪ったなんて人聞きの悪い」

 

大体の人はここで察しがつくだろうが、説明しておこう。

このアホ毛が特徴的な茶髪ショートヘアの天才魔装少女こと、ハルナさんが言うには俺と歩がハルナの魔力を取ってしまったらしい。どういう訳か知らんがな。

 

「てことで!めっっちゃおかわりだ!バエデ!」

 

「てことでって何だよ…はぁ、はいはい、分かったからその虫みたいな呼び方やめような?」

 

て、なんかこれデジャヴくね?そういえば、確かこの後は追加で…

 

「私はお味噌汁をいただきます」

 

そうそうお味噌汁を追加で……って誰!?黒いポニーテールにナイスバディのお姉さん!?ハルナの知り合いかな?歩の知り合いな訳がないし、もしかして…

 

「えーと、お名前をお聞きしても?」

 

「私はセラフィムと申します。」

 

「…ユー知り合いか?」

 

『おかわり』

 

あ、うん、知らないのね。

 

「ばゆむ!お茶くれ!」

 

「はいよ」

 

「で、この人誰?」

 

「ハルナの知り合いでもないのか」

 

「言っとくけど夏楓、俺の知りa」

 

「あ、うん知ってるから大丈夫」

 

「うっ、最後まで聞いてくれても…シクシク」

 

何か今の歩はキモくてめんどくさいから放っておくとして、セラフィム…さんだっけか?この人、名前名乗って終わったけど、他に何かないのか?まあ聞いてみるのが早いな

 

「え、えーっと、セ、セラフィムさん?他には…」

 

「そうですね…好きなモノは秘剣ツバメ返し、特技は秘剣ツバメ返し、趣味は秘剣ツバメ返しです」

 

こういう風に、技に自信がある人は相手にすると厄介だと俺は思ってる。うん、かなりヤバそうだ、色んな意味で、性格的にも、理性的にも…だ!

というか、全部その秘剣ツバメ返しなんですが…せめて、趣味くらいは違っても、ねぇ?

 

「は、はぁ、今回はどんな用件で?」

 

「夏楓、その前に聞くことがある。セラフィムさん、あんた何者だ?」

 

「吸血忍者です」

 

「吸血ぅぅ!?」

 

「忍者ぁぁ!?」

 

忍者とはまた偉い角度から攻めてきたな、てか歩、俺の後に続くなよ!恥ずかしい!

 

「この度はユークリウッド・ヘルサイズ殿にお力を貸してもらいたく参った次第です。勿論、無理矢理では無く、ヘルサイズ殿の同意を得た上でと思っております。」

 

「だそうだが、ユー」

 

『歩 夏楓 追い返せ』

 

「いや流石にそれは」

 

『構わない 追い返せ』

 

「ユーがこう言ってるんだから、諦めろ歩」

 

「ユーがそう言うなら…」

 

「失礼ですが、あなた方はヘルサイズ殿の何ですか?」

 

(お兄ちy)

 

『歩は下僕』

 

「うっ、そこは、せめてお兄ちゃんと…ぐすっ」

 

「いやどんな妄想してんだよ歩。てことは、俺も下僕って事になるのか?ユー」

 

俺がそう聞くと、ユーは少し考えてからメモを書き出す。

 

『夏楓は付き人』

 

「そんな歩と変わらんような…」

 

『嫌だった?』

 

「いや、何でもいいけどさ」

 

「俺より断然マシだと思うんだが」

 

付き人と下僕って、まさか今そんな衝撃的な事実を突きつけられるとは思わなかったが、ユーのやつまた漢字で俺の名前書いてるし、まあ急いでる時とかは平仮名で書いてくれてるけど…まあそこらへんはユーの自由でいっか。

それで、話を進めるけども。

 

「では、私もヘルサイズ殿の付き人、もしくは下僕になりましょう。」

 

『付き人も下僕も一人でいい』

 

「では、どちらがヘルサイズ殿の下僕、又は付き人に相応しいか、ハッキリしましょう」

 

「やっぱそうなりますよねぇ」

 

「あんまり女の子とは戦いたくないんだけどな」

 

『付き人が上だから』

 

ユーはメモを続ける

 

『まずは下僕の歩と戦うべき』

 

「分かりました。では場所を変えましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

場所変わって、現在いつもの墓地。て、何でいつも何かとトラブルが起こった時は、ここにいるんだ?仕様か?デフォなのか?

何にせよ、歩が降参しない限りは、歩がゾンビという事もあって有利なのは揺るがないだろうな。

 

 

と、思っていたんだが…

 

「この程度でヘルサイズ殿の下僕等、お話になりませんね、このクソ虫」

 

歩は既に片方の腕を切られた状態だった。

え?あの秘剣流石に早すぎじゃない?俺だったら数秒でこの墓地がゼリー塗れになる自信あるよ。

 

「これで…トドメ!」

 

その時、歩は自ら刀に刺されに行ったように見えた。

 

「な!?」

 

「これで…秘剣は、使えないだろう?」

 

なるほど、歩のやつ考えたな。

ゾンビの体に慣れてきてる証拠だなありゃ。

 

「250%!」

 

「ぐっ!?」

 

刺されたままのその体勢だと、まあ頭突きしかないわな。てかセラフィムさん?頭固すぎやしませんか?人間の限界超えた250%だよ?

 

ボンッ

 

頭突きをされたセラフィムは身代わり(木)だった。

 

うわっ!忍者だ!いや最初に言ってたけどさ、改めて目にすると感動というかなんというか…

 

翼を広げ空中に飛んだセラフィムは倒れ込んでいる歩に追撃をする。

 

「秘剣ツバメ返し!八連!」

 

秘剣ツバメ返しって、そんな白目の一族みたいに、何連とか繰り出せるのね。もしかして六十四連まであります?

 

「!?ぐぅっ!」

 

土埃の中から歩は自分の切られた腕を投げ、空中のセラフィムに命中させた。

そんな予想だにしない攻撃を喰らったセラフィムは地上に落ちていく。その一方で歩は…

 

「俺、ゾンビっす」

 

キメ顔でそう言っていた。

 

「せいっ」

 

「んぅっ!?……バタン」

 

落下しているセラフィムが投げた手裏剣により、歩は額から血を流し倒れる。

 

言わんこっちゃない、調子乗ってカッコつけてる場合かよ。まあアイツはゾンビだから大丈夫だと思うけどさ。

 

…大丈夫だよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「参りました…流石にヘルサイズ殿の下僕と認めざるを得ないかと」

 

歩がゾンビという事もあり、セラフィムは負けを認める。

 

「それでは、私は家に帰らせていただきます」

 

「おっ、案外潔いんだな」

 

「ええ、吸血忍者のプライドです」

 

そう言ってセラフィムは姿を消した。

 

「吸血忍者…恐ろしく強い敵だった、次会った時は勝てるかどうか」

 

「いや歩、まず血を拭け」

 

「何でもいいから早く帰ろ」

 

ハルナの言う通り、ユーも置いてきてしまったんで早く家に帰ろうと思う。

 

「てかハルナ、ホントにお前何しに来たんだ?」

 

「暇つぶし」

 

「俺の命が掛かってるのに!?」

 

皆さん、現実と妄想は、ちゃんと区別しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜…って、何でまだ家にいるんだよ!?」

 

「家には違いありません」

 

「あぁ〜なるほど、俺の家かぁ…いや!吸血忍者のプライドとやらは!?」

 

『これはどういう事?』

 

(俺が知りたいよぉ)

 

「まあ別にいいじゃないか。ダメなのか?歩」

 

「はぁ、分かりました。では私は、この二人の下僕となりましょう、ですかr」

 

「フッフッフッ…」

 

「ばゆむの奴どうしたんだ?」

 

「いや俺にも分からん」

 

「俺の下僕に?…では色々と言う事を聞いて貰わんとなぁ〜」

 

こいつ!?自分から死地に飛び込みに行く気だぞ!

 

「例えば!朝起きる時は、【ご主人様ぁ、朝ですよぉ〜】そして!お風呂では【ご主人様の背中、大きい】でもその前にまずは、お兄ちゃんと呼んでもらおうか!」

 

「嫌です気持ち悪い」

 

「え?じゃ、じゃあご主人様〜とかマスタァ〜とか」

 

「嫌です、気持ち悪い!…このクソ虫!」

 

「うっ、うっ…」

 

「いやこれはお前が悪いだろ、ねぇセラさん」

 

「気安く話しかけないでください、クソ虫!」

 

「うっ、うっ…」

 

何で俺までこんな扱い、俺何も言ってないのに。

だ、だがこういう時にユーは、いつも俺をフォローしてくれるはず!(妄想)

 

「ユ、ユー?」

 

ゴクゴク

 

「ユーさーん?」

 

『食器片付けて』

 

ハ、ハハハ、目から透明のゼリーが止まらねぇぜ。

いいさいいさ!歩と俺、二人でこの罵声に耐えていくさ!

 

「どちらも気持ち悪いですが、まだそちらのクソ虫の方がマシな虫なようですね」

 

すまん歩!これからも一人で頑張ってくれ!

てかどちらにせよ、俺達は虫なんですね。

 

 

 

今日も今日とて色々あったが、これで何とか一件落着?なようだ。

 

 

 

 

 

 

冥界のネクロマンサー、ユークリウッド・ヘルサイズさんに、アホ毛が特徴的な天才魔装少女ハルナちゃん、そして新しく加わったナイスバディな吸血忍者セラフィムさん。

 

 

これ、あと何人増えるんだ?





主「今回は少し文字数多めです。読みづらかったらすみません、もう手遅れです。」

夏「諦めるの早すぎだろ!」

主「夏楓さん、アナタ人の事言えます?」

夏「!?…すまん、同士よ」

ユ『夏楓はやればできる子』

夏「短い付き合いだったな、同士よ。ありがとうユー」

主「おい、イチャコラすんな!まだそういう展開少ないからって!」

夏ユ「お前もゾンビにしてやろうか」

主「聞けぇぇ!」


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第5話 変態警報発令

主「今回はすごぉ〜く長いので、そこら辺はご理解ください。」

ハ「私長い話は嫌いだ」

主「ハルナさんに言ってないです」

ハ「ハルナちゃんの事も気にしろよな!」

主「というと思いまして、ハルナさんと夏楓さんの質問回答コーナーを作ろうと思います。」

ハ「バエデと!?たまには仕事するじゃん!」

主「ですので、感想やご質問などよろしくお願いします」

ハ「ハルナちゃんに何でも聞けよな!」

主「では本編です」


 

いきなりですが、皆さんは美少女を信じますか?

美少女と一括りに言っても色々ありますよね、例えばネットで噂された美少女が実際会ってみると、性格がアレだったとか、普段はお淑やかで気が優しい子が、実は裏では性根が腐ってたりとか…

こういう事、ありますよね?

 

あ、どーも海波夏楓です。スライムやってます。

冒頭からぶっ飛んだ話をしてしまいましたが、実はというと、そんなぶっ飛んだ話ではないんですよこれが。

今、俺の目の前には美少女が三人いるんです。しかも!一緒に住んでます!

は?お前殺されたいの?そこ変われよ?とか皆さん思うでしょうが、出来事はそんなキャッキャウフフな嬉しい事ばかりではないんです。というか、悲しい出来事ばっかりだったり…おっと、涙が。

 

あれですよ?俺もトラブル的何かが起きて、何も無いとこで転んで、女の子の下着なんか拝んじゃったりして、ハーレム計画を陰で進められたりしたいですよ?

 

でもねぇ〜、人間ってやつは、いざ非日常が目の前に降り掛かってくると、どうしていいか分からなくなって、パニックになるもんなんですよ。それに比べて、俺ときたら上手くやってる方じゃありませんか?スライムだけど。

 

「バエデはさっきから何処向いてんだ?」

 

「天界へ神様へのメッセージを送信してたんだよ」

 

『なんて?』

 

「ラッキースケベしtじゃなくて!今の無し!そ、そう!安全祈願をね!」

 

「このぉ!バエデの変態悪魔男爵!」

 

「気持ち悪い、見下げ果てたクソ虫!」

 

『夏楓 最低』

 

「うっ、だって…だって…」

 

「夏楓、お前も大概だな」

 

「うるせぇー!妄想大魔神が!」

 

「も、妄想してへんわ!」

 

「あまり喋らないでください、空気が汚染されます」

 

いいよいいよ!ちょっと口滑らせたらコレだもんな!だったら今のうちに全部ぶちまけてストレス発散だ!コンチクショー!

 

『それより 学校』

 

「そ、そうだな、そろそろ出ますか」

 

「弁当ちゃんと持ってけよな!」

 

「まさか…」

 

「ハ、ハルナさん?もしかして、また卵焼きだけですか?」

 

「オチを言うなよな!」

 

「オチとか考えて弁当作らないでくださいよ」

 

「まあいっか、ハルナの卵焼き美味いし、な!歩」

 

「それもそうだな」

 

「あ、当たり前だろ!なんてったって天才なんだからな!」

 

「じゃあ次は、白飯だけでも入れてくれないですか?」

 

「そんなの自分で入れろよな!」

 

「そんなぁ」

 

「もういいから行くぞ夏楓!」

 

「はいはい、んじゃ行ってくる」

 

『いってらっしゃい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピカーン

 

はぁ、あのー太陽さん?そろそろ自重してくださいよ、俺達が燃えるか干からびる前に。

ほら見てよ、歩なんて日陰の中で少し苦しそうに…って何でこいつ傘持ってきてんだよ!いつの間に!?

 

「お前!一人だけ傘なんてズルいぞ!」

 

「すまん夏楓、これ一人用なんだ」

 

「やっかましいわ!寄越せよぉ!」

 

「ちょ、おい、引っ張るなって!」

 

暑くて気が狂ってる中、醜い引っ張り合いをしていたら…傘が落ちた。

その瞬間、直射日光が俺達を襲う。

 

「ハァァ・・・ァー・・・」

 

「も、燃えるぅ・・・てか蒸発するぅ」

 

多分木とか水ってこんな気持ちなんだろうな、すごく可哀想に思えてきたよ。だから俺を助けろ。

 

「み、醜い・・・争いは・・・やめよう」

 

「あ、歩・・・声、枯れてるぞぉ」

 

俺達は必死に傘を拾い、不本意だが!仕方なく!二人で相合傘をして登校した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前らそういう関係だったのか!?」

 

学校に着いた途端、一番厄介な織戸に目をつけられてしまった。

 

「いや、これは」

 

「色々あって二人で住んでるとは聞いていたが、まさかそんな進展をしてしまっていたとは」

 

「だから違うって!歩も説明してくれ!」

 

「そ、そうだよ!俺達はそういうBL的関係じゃないぞ!?な夏楓!」

 

「じゃあ何で雨も降ってないのに傘なんか広げてたんだ!?しかも一つを二人で!」

 

確かに、俺達が暑いの苦手とは言ってあるが、それなら一人一つ傘を用意すればいい話で、いちいち二人で相合傘をする必要は無いよな。

仮に、一つしかなかったと説明しても、相合傘を選択するメリットはないよな。ゾンビとスライムって知らなかったら。

 

「やっぱりお前達…」

 

「た、頼む織戸!この事は黙っていてくれ!」

 

「俺からも頼む!」

 

「海波…相川…」

 

「ホントに色々あってこうなっただけなんだ!信じてくれ!」

 

「…分かった」

 

「てことは…!」

 

「あぁ、親友だからな、黙っててやるよ」

 

「「お、織戸ぉ〜」」

 

織戸めっっちゃ良い奴じゃないか!マジリスペクトだぜ!俺達は織戸と親友で本当によかったよ!

 

「フッ、イイってことよ、じゃあ俺は先に教室行ってるぜ」

 

「あ、あぁ!分かった、ありがとな!」

 

「サンキューな!織戸!」

 

俺達は去っていく織戸の背中に男というものを感じながら、言葉を放つ。

 

「アイツもこういう所を、表にどんどん出せばモテるだろうにな」

 

「夏楓もか、俺もそう思ったよ」

 

「悲しい性を背負ったな、織戸も」

 

これで気兼ねなく、俺達は教室に入る事ができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思っていたんだが・・・

 

ガラガラ

 

「おっ!アツアツのお二人さんのご入場だぞ!おーいみんなー!」

 

前言撤回、コイツ後で埋めよう。

 

「あ、相川くんと海波くん、ふ、二人がそんな関係だったなんて…」

 

「普通にキモイから」

 

「Jesus」

 

平松に三原、それにアンダーソンくんまで…

只でさえ厄介事が多い毎日に、こんなことって…神よ!俺を見放したのか!?

歩むに至っては、隣でガイアがどうとか、ぶつくさ言ってる始末だし。

 

 

 

そんなこんなで俺達の平穏な日常(学校での)が終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺少しトイレ行ってくる」

 

「あぁ」

 

放課後、皆が教室にいなくなった時間帯には俺達の顔から悲しみ以外の表情が消えた。

あぁ、もう終わりだ、トイレなんか行ってる場合じゃないよホント。

 

ドガァァン!

 

!?な、なんだ!?俺達の教室の方から音はしたけど、歩のやつ大丈夫なのか!?

なんか急いだ方が良さそうだな。

 

 

「おい歩!大丈夫・・・か?」

 

「か、夏楓!助けてくれ!変なおっさんがお前達が欲しいとか言ってきて、俺とお前の純血の危機なんだ!」

 

俺は咄嗟に、自分の手で尻を守った。

 

「ひっ!?な、なんだそりゃ!?」

 

「お前達が…欲しい!」

 

「「ひぃぃっ!?」」

 

「そいつはメガロだ!」

 

「「ハルナ!?」」

 

「ノモブヨ ヲシ ハシタワ ドケダ グンミーチャ デー リブラ!」

 

魔装少女に変身するハルナ、だがしかし!全裸になる。

 

「何で!?いっぱいご飯食べたのに!」

 

「おいハルナ!」

 

「ヘッヘッヘ」

 

敵のメガロが、何やら息?のようなものを吐き出すと、力が抜けてくように、ハルナが座り込む。

そして、何かを恐れているような表情だった。

 

「おいハルナ!大丈夫か!?」

 

「…」

 

「多分聞こえてねぇよ歩」

 

「…」

 

「ハルナ…もしかして怖いのか?」

 

「…!?な、そんな訳ないだろ!私は天才魔装少女ハルナちゃんだぞ!」

 

「よし、その意気だ!」

 

だが、こっちの事はお構い無しにメガロの攻撃が繰り出される。

ハサミの部分を飛ばしてきたのだ。いやもうそれロケットパンチだろ!?

まあ、歩さんがカッコよく片手で受け止めてますけどね。知ってるよ?絶対このあとカッコつけるのは。

 

「なっ!?人間にこんな力が!?」

 

「教えてやるザリガニ野郎!人間ってのはな!100%の力を出しきれてないんだとよ!だが俺はゾンビだ!そんなの…」

 

受け止めたロケットハサミを相手に投げ返す歩。

 

「お構い無しだ!」

 

そして歩は、メガロに拳の乱打で追撃をする。

 

「200・・・300・・・400・・・」

 

歩は段々と、力のパーセンテージを上げてメガロをタコ殴りするが…

 

「腕が変な方向に折れたぁ!」

 

「フッ、やはり所詮は人間か」

 

そう、メガロの言う通り、歩はゾンビではあるが、防御面が人間と変わりないので、得意の乱打にも限界はある。

 

「私の代わりに変身しろ!」

 

ハルナさん?何変なこといきなり口走ってんですか?魔力吸収したかもしれないからって、それは流石に…

 

「こうなったらやってやる!な夏楓!」

 

「そ、そうだな」

 

何でお前乗り気なんだよ!?苦戦してたのお前だけだよね?まあ俺が代わりに戦ったとしても、無理そうだけどさ!

 

「なんて唱えるんだっけ?歩」

 

「え、えーと」

 

「二人共!私の後に続いて言え!」

 

「「う、うっす!」」

 

「「「ノモブヨ ヲシ ハシタワ ドケダ グンミーチャ デー リブラ!」」」

 

二人が唱え終わると、二人の体にはフリフリの衣装が纏い始める。あとミニスカ。

 

おい!なんっでハルナと全く一緒なんだよ!少しは、こうなんか他にもあるだろ!?てか変身最中に変な喘ぎやめろ歩!

 

「女装の変態が二人か」

 

メガロが現実を突きつける。

 

「さ、最悪だぁ」

 

「でも日差しが気持ちいいぜ!」

 

変身したメリットは攻撃力と日差しに耐性が出来たことくらいだな。ハイリスクだけど。

 

「悪いが最初からクライマックスで行かせてもらうぜ!」

 

この姿見つかると、色々ヤバそうなんでな。

 

 

歩と夏楓は、すぐさまメガロに攻撃を仕掛け、メガロは窓を突き破り、外に飛ばされる。

 

よし、ここら辺でキメないと取り返しのつかない事になるな。

 

「え、えーと、確か」

 

「キックキック(小声)」

 

歩はどうやら、あれを覚えていたらしい。

 

「「ダブルミストルティン、キィィック!!」」

 

「それキックじゃねぇ!」

 

キックとは裏腹に、チェーンソーで、メガロを真っ二つにする二人。

 

「こ、こんな変態にやられるなん、て…」

 

倒されたメガロは、光の粒子となり、消えた。

だが、悪い事は続いて起きる。

 

「あ、相川に海波?そ、その姿は…」

 

今は下校時間。

これで察しがつくだろうが、敢えて悲しい現実を言おう!この姿を、皆に見られたなう!

 

パシャパシャパシャ

 

皆が皆、携帯を取り出し、俺達を激写し始める。

お、終わったぁ!学校生活どころか、この町の笑いものにされるぅ!

 

「BL説に、二人とも女装趣味…」

 

誰かがそんな事を囁いているが、時すでに遅し。

 

そして、悪い事の連鎖は後を絶たない。

歩と夏楓の、魔装が解け、全裸になる。

 

「「ぎぃやぁぁぁ!!」」

 

俺達二人は、咄嗟に股間を手で覆い隠す。

 

パシャパシャパシャ

 

と、そこに教室のカーテンを羽織った状態のハルナがこちらに歩いてくる。

 

「よ、よかったハルナ!皆に説明を!」

 

「そうだハルナ頼む!俺と夏楓のピンt」

 

「今から二人を!魔装少女に任命する!光栄だろ!」

 

安穏の終わりを告げる、そんな鐘(チャイム)が聞こえた気がした。

 

 

 

こうして、俺達はスライムとゾンビに加え、魔装少女になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

結局あの後はどうなったかと言うと、みんなの記憶を消す事で全て解決した。

魔装少女って何でもありなんだな。

現に今日学校へ行っても、いつも通りだった訳で、俺と歩のBL説も、女装趣味説も、皆の口からは一言も出なかった。

 

「いやぁ、ミストルティン先生様様だな!」

 

「これなら、次にメガロが出ても、気にせず戦えるな!」

 

俺と歩は腕をクロスさせ、喜びを確かめ合う。

 

『戦うのはいいけど 前に言ったこと覚えてる?』

 

「あぁ、分かってるよ」

 

「ん?夏楓に何かあったのか?ユー」

 

「変態ならいつもの事ですが」

 

「バエデのやつなら、前に根暗マンサーに叩かれてたぞ?」

 

「え!?そ、そうなのか!?ユーに何かしたのか?」

 

「いや、それが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前。

俺は、登校前にユーから話があると言われていたので、歩が夜の散歩へ、ハルナは眠っていて、セラは私情で不在の時に、俺はユーに話とは何か聞くため、居間に向かった。

 

「で、ユー、話ってなんだ?」

 

『ハルナと出会った時 斬られた』

 

「確かに斬られたが、それがどうしたんだ?」

 

その瞬間、ユーは体を前に乗り出し、俺の頬を叩いた。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「すまん、俺何かしちゃったか?」

 

『斬られる事 普通の人間なら死ぬ事を自分なら大丈夫だと思ってる』

 

「で、でも・・・」

 

「なんか大きな音がしたけど、何かあったのか?」

 

先程の音で、ハルナが起きてきたようだが、俺は気にせずユーと話す。

 

「でも、俺はスライムだし、多少の事は大丈夫だろ?」

 

バチン!

 

もう一度、ユーは夏楓の頬を叩く。

 

「いっつぅぅ…叩く程の事じゃねぇだろ!それに二回も!」

 

俺は半分怒っていた。

何故ここまでされるのか不思議だったからだ。

 

『かえでが何故スライムになったのか 私にも原因が分からない』

 

ユーはメモを続ける。

 

『だから 原因が分からない以上 いつ普通の体に戻ってもおかしくないと思ってる』

 

メモを渡し、次のメモを書く途中、ユーは涙を流し始める。出してはいけない声を押し殺しながら。

 

「ユー…」

 

『一緒にいるって約束したのに かえでは離れようとしてる』

 

「!?そんな事はない!絶対にだ!絶対に!」

 

『じゃあ何で死ぬような 危ない事に関わっていくの?』

 

「ユーを守る為だ」

 

『かえでが死んだら意味無い!』

 

「ユーが居なくなっても意味無いんだよ!」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「途中からだから詳しい話は、私にはよく分からないけど」

 

俺とユーが黙ると、ハルナが口を開き、話しだす。

 

「要は根暗マンサーはバエデに遠くへ行ってほしくないんだろ?」

 

『うん』

 

「んで、バエデは根暗マンサーにもしもの事が起きてほしくないから、自分が戦うって事だろ?」

 

「まぁ、そんな所だ」

 

「じゃあ簡単な話じゃん!」

 

「何が簡単な話だ!俺達は真剣に…」

 

『かえでの言う通り』

 

「ハルナちゃんの話を最後まで聞けよな!」

 

ハルナがそう言うと、二人は黙り込み、ハルナの話に耳を向ける。

 

「そんなにお互い心配なら、二人でお互いを守り合えばいいだろ?もしもの時は、葉っぱの人だって、ばゆむだって、この天才魔装少女のハルナちゃんだって助けてやる!」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

ハルナが話し終えると、俺とユーはお互いを見つめ始め、徐々に笑いが起きた。

 

「…ぷっ、あははは」

 

ユーは声に出しては笑わないが、口元はニヤけていた。

 

「な、何が可笑しいんだよ!ハルナちゃんがアドバイスしてやったんだぞ!」

 

「いやぁ悪い悪い、ハルナの言う通りだった」

 

『同感』

 

「そ、そっか!それならいいんだよ!」

 

「ユー、悪かったな、ごめん」

 

『私こそ自分勝手だった』

 

「いや、死ぬ事を軽く考えてたのは、少なからずあったから、すまん!今度から気をつけるよ」

 

『私もすぐ手が出てしまった』

 

「これからも、俺はユーを守るために戦う。でも、俺が危ない時は、ユー…俺の事を助けてくれるか?ハルナも頼む」

 

『当たり前』

 

「根暗マンサーの言う通りだ!」

 

「ありがとう…」

 

話は何とかまとまり、いつもの日常の空気に戻る。

 

「ふぅ、力が抜けたら、どっと疲れたぁー」

 

「よし!根暗マンサー!バエデに今までの気持ち全部ぶつけろー!」

 

「へ?」

 

『了解』

 

その後、ユーのビンタの乱打により、俺の頬は膨れて、事は終わった。

 

『これでおあいこ』

 

「う、うん…ホント、ずびばぜん」

 

 

こうして、ユーとは仲直りをして、話は終わった。




主「気づいたら6000文字弱も書いてしまった」

セ「読者の事もちゃんと考えてください、クソ虫」

主「す、すびばせん」

セ「全く、ヘルサイズ殿もお疲れでしたでしょうに」

主「ホントごめんなさい(どうせイチャコラするんだからいいじゃん…チッ)」

セ「秘剣ツバメ返し!」

主「ぎぃやぁぁぁ!」

セ「クソ虫は成敗です。あなたもクソ虫にしてあげましょうか?」

主「じ、次回もお楽しみ、に…」


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OS これはゾンビですか?そう、特別な話!
第1話 そう、ハメを外したいんです!


主「デレン!いきなりですが皆さん、問題です!タイトルのOSとは何の略でしょう!」

ユ『おじさん』

主「いや、うん、違うよ」

ハ「分かった!オーケーサイン!」

主「なんのだよ!」

セ「クソ虫」

主「も、もういいです。皆さんは分かりましたか?」



夏ももうすぐ終わる。

今は八月の半ば、そして今外は夜の夏祭りに向けて準備が行われており、少し騒がしい。

まあ、祭りと言っても商店街の小さなお祭りではあるが、テンションが上がらない訳ではない。

 

今回はユーもいるし、ハルナに、セラ、そして歩がいる。

このメンバーでお祭りに行って楽しくないはずがない!

・・・厄介事は多少ありそうだがな。

 

 

 

「まっつり♪まっつり〜♪」

 

「ハルナは楽しそうですね」

 

「当ったり前だろ!葉っぱの人は楽しみじゃないのか?」

 

「楽しみですが、歩と夏楓がいつもの変態っぷりに拍車をかけないか心配です」

 

『同感』

 

「そんな度胸がバエデ達にあるわけないだろ!」

 

「それもそうですね」

 

「てか早く帰ってこいよな!バエデ達は何してんだよ!」

 

現在、夏楓と歩は花火と女性陣の浴衣を買いに出かけている。

正直に話すと、帰りが遅いのはハルナ達の浴衣が原因だ。

 

「そう焦らずとも、まだ夕方ですから大丈夫ですよ」

 

「変な浴衣持ってきたらめっっちゃ目を潰してやる!」

 

「いえ、それでは足りません。あのクソ虫二人には花火になってもらいます。」

 

『汚い花火だ』

 

「根暗マンサーって、時々さり気ない毒吐くよな」

 

「た、ただいまぁ〜」

 

「夏楓、やっぱり少しくらい俺も持った方が良かったんじゃないか?」

 

「いや!これは勝負に負けた俺の仕事だ!男として二言はないぞ!」

 

玄関先で何やら話している二人。

この会話を聞く限り、おおよそは買い物が終わった後に、どちらが荷物を持つか勝負事をした結果、夏楓が負けて荷物を持たされたという所だろう。

 

「よい…しょと」

 

「おっそい!ハルナちゃんをあんまり待たせるなよな!」

 

「まあ、そう言ってやるなよハルナ。夏楓はハルナ達の浴衣を真剣に選んでたんぞ?」

 

「うっ、そ、それならしゃーなしだな」

 

「という事は、歩は私達の浴衣など眼中になかったという事でしょうか?」

 

『歩 ギルティ』

 

「ま、待て!眼中になかった訳じゃないぞ!?でも、代わりに物凄い花火を買ったから、期待しとけ」

 

「そうですか、ではその花火が大した事なければ、歩が空に散るという事で」

 

『許可♡』

 

「じ、じっくり選んで良かったぁ〜(小声)」

 

本音を言うと、丁度日陰だったから長居してただけなんだけどさ。

あ、ちゃんと選びはしましたよ?ホントに。

 

「日陰万歳」

 

「ん?バエデ今何か言ったか?」

 

「んや!何でもないよ!うん!」

 

買ってきた物をバックに詰めて、整理し終えた後、いつも通り座り込む。

すると、横からユーが服の袖を引っ張ってきた。

 

「ん?どうした?ユー」

 

『日陰万歳?』

 

「!?し、しぃ〜!頼むから今は見逃してくれ」

 

『貸し』

 

「わ、分かったよ」

 

そんなやりとりもありながら、俺達は夜を迎え、商店街に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外はすっかり暗くなり、夏楓達が商店街に向かうと、商店街には既に多くの人で賑わっていた。

 

「ばゆむ!あの赤いやつ買って!」

 

「りんご飴か?別にいいぞ」

 

「私はあれが気になりますね」

 

「セラさんは…射的?ですか」

 

「一度、銃器を扱ってみたかったので」

 

『夏楓とあれやりたい』

 

「お?金魚すくいか。俺と勝負するか?ユー」

 

『望むところ』

 

ハルナは歩とりんご飴を買いに、俺とセラとユーは射的に向かい、各々が夏祭りを満喫しているようだった。

 

「らっしゃい!」

 

「あ、おっちゃん、射的一人分お願い」

 

「あいよ!」

 

セラさんがやりたがってた射的に着いた俺達は、屋台のおじさんにお金を渡し、一人分の弾を貰った。

 

「弾は六発ですか」

 

「おや?セラさん、もしかして自信ないとか?」

 

「生意気ですね…五発命中させます」

 

「へ?」

 

なに?今この人六発中五発命中させるって言った?

 

パンッ!・・・ポトッ

パンッ!・・・ポトッ

パンッ!・・・ポトッ

パンッ!・・・カス

パンッ!・・・ポトッ

 

おいおい、あと一発当てたら宣言通り五発当てちゃうよ!?しかも当てるだけじゃなくて、ちゃんと全部倒れてるし。

 

『あのぬいぐるみが欲しい』

 

「ヘルサイズ殿、承知しました」

 

ぬいぐるみって、あのどデカいヒヨコのぬいぐるみ?いやいや、流石に一発じゃ無理でs

パンッ!・・・バタン

 

カランカランッ

 

「嬢ちゃんすごいね!大当たりだ!」

 

「マジかよ…」

 

一発で倒すとか、運がいいのか?それとも気合いですか?

今度からは、銃を握りしめたセラさんをセラ13と呼ぼう。

 

「どうぞ、ヘルサイズ殿が欲しがっていたぬいぐるみです」

 

『ありがとう』

 

「セラさんマジかっけぇ」

 

銃なんか扱う機会は、まずないだろうが、セラさんに弟子入りしようかな。

 

クイクイッ

 

「ん?」

 

『早く 次』

 

「お?やるかぁ〜?ユー」

 

ユーも楽しそうで何よりだ。やっぱりお祭りは、こうでなくっちゃな!

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、歩とハルナはというと・・・

 

「お〜い、ハルナ〜!りんご飴買えたかぁ〜?」

 

「バッチリだ、ばゆむ!」

 

「いつの間にそんなに買い込んだんだ」

 

ハルナはりんご飴だけでなく、チョコバナナ、わたあめ、たこ焼きなど色々な物を両手で抱えていた。

頭には、赤鬼のような顔のお面を付けていた。

 

「いっぱい買うのはいいけど、転ぶなよ?」

 

「天才は転ばないの!」

 

「それならいいけど、夏楓達がさっき、金魚すくいの方に向かって行ったから俺達も合流しようぜ」

 

「なんだそれ!めっっちゃ楽しそうだな!私もやる!」

 

「分かったから、俺から離れんなよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして金魚すくいに着いた夏楓達は、お金を払い終えて網を手にしていた。

 

「ユー、やり方は分かるか?」

 

『テレビで見た』

 

「じゃあ説明は不要だな」

 

『夏楓には負けない』

 

「それはこっちも同じだ。どうせなら何か賭けるか?」

 

『構わない』

 

「夏楓は本当に賭け事が好きですね」

 

「盛り上がってる時には尚更好きだな」

 

『何を賭けるの?』

 

「んー・・・」

 

「あっ!いたいた」

 

「ハルナちゃんにも人魚すくいやらせろよな!」

 

「歩にハルナ、そっちは終わったのか?てか人魚じゃなくて、金魚な」

 

「あぁ、寧ろ色々買いすぎた。で、金魚すくいなのに、金魚もすくわずに何話してたんだ?」

 

「何を賭けてユーと金魚すくい対決をするかって話だ!」

 

「また勝負事かよ」

 

「セラと同じような事言うなよ」

 

「クソ虫と同じにしないでください。それよりも早く何を賭けるか決めてください」

 

『魂』

 

「コインに封じ込めてコレクションしないし、そもそもそんなもの賭けません!」

 

『今日一日言う事を聞く』

 

「んー…分かった!それでいこう」

 

「ハルナちゃんもやるからな!」

 

こうして戦いの火蓋は切って落とされた。

 

シュッシュッ

 

カス・・・カス・・・

 

シュパッシュパッ

 

ユーは安定したすくい方を、ハルナは勢い任せではあるが、しっかり金魚をすくっていた。

一方、俺はというと…

 

カス・・・カス・・・

 

一匹もすくえないでいる。そして網は破れる始末。

 

シュッシュッ

 

シュパッシュパッ

 

結局、ユーとハルナの戦いになり、激戦の末に勝ったのは…

 

「ハルナ、二十一匹。ヘルサイズ殿、二十五匹。よってヘルサイズ殿の勝利です」

 

達人か何かですか?カメラはどこだ?ドッキリかなんかなんでしょ?・・・もう、こいつらに勝負事ふっかけるのはやめよう。

 

「あれ?海波に相川?」

 

そんな言葉をかけられた気がした。

嫌な予感がする。予想はしていたが、こうもあっさり…と言っても、これだけ金魚すくいで人集りができて目立ってたらそりゃ気づくか。

よし、退散!

 

「逃げるぞ歩!プランBだ!」

 

「了解した!ハルナ達も早く!」

 

「な、なんだよ!まだ見たい所が…」

 

「やれやれ、やはりこうなりますか」

 

『運命』

 

俺達は全力疾走してその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このミンチ飴?とかいうのめっっちゃ美味いぞ!」

 

現在は近場の河川敷。

先程まで、まだ見たい屋台があったと拗ねていたハルナも、食べ物を食べて機嫌が良くなったみたいだ。

それよりミンチ飴ってなんだよ!?そんな物騒な食べ物なわけないだろ!

 

 

 

 

現在、ここには歩の姿はなく不在だ。

理由は、歩が買った花火を用意するべく、家に取りに行った。

 

「最後はドタバタしたけど、祭りはどうだった?」

 

『また行きたい』

 

「そっかそっか、それなら良かったよ」

 

『そういえば まだ聞いてない』

 

「何を?」

 

『浴衣 似合ってる?』

 

説明が遅れたが、ユーが着ている浴衣は紫を基調とし、白い蝶のシルエットが描かれている。ハルナの浴衣は、ピンクにオレンジ色の髑髏が描かれている。セラさんは、黄緑を基調としたデザインに、黄色のラインが入っている。

 

「あ、うん、似合ってるよ」

 

『ありがとう』

 

「私にも聞けよな!」

 

「ハルナも似合ってるよ」

 

「ふん!当ったり前だ!」

 

「夏楓にしては、いい物を選びましたね」

 

「おーい!持ってきたぞぉ!」

 

そうこう話していると、歩が花火とバケツを持ってこちらに向かってきた。

 

 

そこからは大変だった。

何が大変だったかと言うと、まずハルナが花火を持って四刀流をし始めた。そして、その火の粉が歩の服に引火しかけて川に飛び込んだり…そこで落ち着いたと思いきや、少しテンションが上がったセラが大きな花火で、秘剣ツバメ返しを披露して、その火の粉のせいで俺まで川に飛び込むハメになったりした。

 

で、やっと落ち着いて普通に花火をしているというわけだ。はぁ、念の為に替えの服を持ってきといて正解だった。でなきゃ、今頃びしょ濡れの服を着て風邪をひいていたところだ。

まあでも、普通に今はあいつらが花火を楽しそうにしてるし、それで良しとするか。

 

 

 

夏楓は川沿いに一人座り、夜空を見上げていた。

 

「こんな日がずっと続けば・・・こういう時、人間はいつか今日みたいな日を忘れてしまうと思うと、時間が過ぎていくのが少し怖いな」

 

ジャリ

 

「?なんだ、ユーか。いいのか?ハルナ達と遊んでなくて」

 

『貸しの話』

 

「げっ!覚えてたのかよ」

 

『一緒にこれをしたい』

 

「線香花火?そんなんでいいのか?」

 

『これがいい』

 

「あははは!分かったよ」

 

『何かおかしかった?』

 

「いやごめんごめん、ユーも案外子供っぽいなってさ。あ、いつもか、あははは」

 

『ハルナ呼んでこようか?』

 

「調子乗ってすみません、もう替えの服ないです」

 

そんな微笑ましいやりとりを終えると、二人は静かに線香花火に火をつけ始めた。

 

「・・・なあ、ユー」

 

「?」

 

「俺と二人だけの時さ、俺が帰ってくるまで寂しくなかったか?あの時…少し、心配だったんだ」

 

夏楓がそう聞くと、ユーは返答に困ったような顔をした。

 

「…やっぱり寂しかったんだろ?…ごめんな、嫌な思いをさせて」

 

その言葉にユーは首を横に振る。

 

「いいよ、本当の事言っても。結局あの時も、今でさえも、俺はユーに何も与えてやれなかった。この前は"ユーを守る為!"とか偉そうな事言ったけど、俺は守るどころか、ユーを心配させてばかりだったしな」

 

ユーはゆっくりと夏楓に近づき、自分の線香花火の親玉を、夏楓の線香花火にくっつける。

そしてユーはメモを取り出し、書き出す。

 

『夏楓からは 色々なものをいっぱいもらった』

 

「大したものは何一つあげられてないよ」

 

『そんな事ない』

 

ユーはメモを続ける。

 

『ご飯だって、暖かい布団だって、夏楓からはいっぱいもらった』

 

『おにぎりだって、この浴衣だって夏楓からもらった』

 

「そんなの別に」

 

『だから ありがとう』

 

ユーは笑顔で、"ありがとう"と書かれたメモを見せる。

 

「ユーの笑顔、何気に初めて見たかもな」

 

『私の心が揺らぐと 夏楓達を危険な事に巻き込むかもしれない』

 

「だから普段見せないのか?」

 

『そう だからこれが最初で最後』

 

「・・・フッ、じゃあ俺の今後の目標は、ユーの笑顔を増やすことかな。あはは」

 

『夏楓は分かってない』

 

「分かってるさ、ユーを守るって事」

 

『やっぱり分かってない』

 

「今はこれでいいんだよ。今はこれで、ね…」

 

ずっと、これからもずっと、忘れられない日々が続く事を祈りながら、彼女達の夏祭りは幕を閉じた。

 




主「はい、という事で特別編一話は終了です」

ユ『夏祭り楽しかった』

妄ユ「お祭りは、い〜っぱい屋台があって、ユー楽しかったぁ〜♪」

主「そっかそっかぁ〜、良かったねぇ」

ユ『花火も楽しかった』

妄ユ「花火ってすごい綺麗なんだよぉ〜♪今度はお兄ちゃんと二人っきりで、したいな♪」

主「うんうんそうだね、今度は二人っきr」

ユ『また夏楓と行きたい』

主「・・・」

ユ「お前も花火にしてやろうか」


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