あーしとヒキオと。 (よっちい)
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あーしとヒキオと。

 初めまして。よっちいと申します。八優作品がもっと欲しい。ならば自給自足してみようと思って、執筆にチャレンジしてみました。至らぬ点が多々あると思いますが、ご容赦ください。


 2年生もそろそろおしまいだし、少しは隼人と近づきたい。そんなある日の放課後、あーしは気持ちが昂って、放課後に隼人を特別棟の空き教室に呼んだ。

 

「やぁ、優美子」

「隼人……来てくれて、ありがと」

「なんだい改まって。話って何かな?」

「……あーし、隼人が好き。これからは友達じゃなくて恋人になりたい」

「……優美子、ありがとう。でも、ごめん。君とは付き合えない」

「……理由、聞いてもいい?」

「俺は、誰とも付き合えない」

「……それだけ?」

「ああ」

 

 あーしは隼人の言った理由が本当だと思えなかった。もちろん、思いたくなかっただけなのかも知れない。

 

「2年はすごく楽しかった。優美子や、皆のおかげで」

「……うん」

 

 隼人の言う、「皆」という言葉。あれだけ一緒に居たあーしでさえも、周りの女の子達と変わらないんだと思い知らされた言葉だった。

 

「じゃあ、俺は部活行くから。優美子も気を付けて帰ってくれ。来年もよろしくな」

 

 そういうと、隼人は教室から出て行った。

 来年もって、関係は変わんないじゃん……なにそれ。

 何で舞い上がってたのかな。2年最後だから? 3年になったら受験とかあるしその前に楽しみたかったから? もう、頭の中はパンクしそう。帰って、お風呂でゆっくりしよう。

 

 

     × × × × ×

 

 

「ねえ、君一人? 俺達楽しいとこ知ってっから、遊びにいこうよ!」

 

 帰り道、ラッシュも一波終わってやや人が疎らな駅。あーしはナンパに絡まれている。あんなことがあった手前、あーしも気が滅入っているんだろう。いつもの覇気はなかった。

 

「……あーし、急いでるから」

「急いでるならもっと早く歩いてるでしょ? ウソはよくないな~」

 

 図星だ。でも、今日は言い返せない。このままじゃあーしはきっとこの男達にどこかへ連れてかれてどうにかなってしまうんだろう。

 

「あの、その人うちの連れなんで、その辺で勘弁してくれませんかねぇ」

 

 ふと、あーしの後ろから声がした。何だか聞き覚えのある声だ。あーしは、恐る恐る後ろを見た。

 

「ヒキオ!?」

「……お、おう」

 

何故、ヒキオがここにいるのか。そう思った次の瞬間、ナンパ男達はちょっと機嫌が悪くなっていた。

 

「なんだお前! 俺達はこの子と遊んでんだよ! ガキはさっさと帰れ!」

「嫌がってる顔してるのに、どこが遊んでるんですかねぇ。それと、もうすぐ警察も来ますよ。ここ交番から近いですし」

「……チッ。いくぞ!」

 

 ナンパ男達は立ち去った。程なくして、ヒキオの言った通りおまわりさんはすぐにやってきた。

 

「こらこら~。駅前で何を騒いでるんだい? 君が女子高生にナンパしてるって男か?」

「え、いや、俺じゃなくて……」

「おまわりさん。こいつはあーしの友達。ナンパから助けてくれたんだし。ナンパ男は向こうに走ってったし」

「ひょっとして君がナンパされてる人がいるって通報してくれたのかな?」

「さぁ。ちょっとわかんないです。たまたま居ただけなんで」

「とにかくありがとう。僕たちは交番に戻るから、何かあったらまたおいで。それと、君達も早く帰るんだぞ」

「うす」

「はーい」

 

「で、ヒキオ。あんたなんでこんなとこ居るし」

「本屋行った帰りだったんだよ。困ってる人が居て顔見たら三浦だったからな。あとで由比ヶ浜にぶーぶー言われるのが嫌だっただけだ」

「ふーん、そっか……でも、ありがと」

「お、おう……」

「じゃあ、あーし帰っから」

「平気か?」

「何が?」

「一人で帰って平気かって。あんなことあった後だろ。近けりゃ送るが」

「なにそれ。あんたあーしのこと狙ってんの?」

「違ぇよ。さっきから言ってる通り、由比ヶ浜に何か言われるのが嫌なんだよ。あと、小町にも言われちゃうからな」

「小町? 誰?」

「妹だ。超可愛い」

「シスコン?」

「違う。ただ妹が好きなだけだ」

「それがシスコンなんだし。まぁ、いいや。せっかくだし送ってもらおうかな」

「おう。助かる」

「なんでヒキオがお礼言うし。それはこっちのセリフっしょ」

 

 そのまま、ヒキオに家の近くまで送ってもらうことにした。駅を離れて住宅街に入ると歩道はない。そんな狭い道でヒキオが車道側を歩いてくれるし、さっきみたいなのがいないか結構周り警戒してる。いいとこあんじゃん。

 車の走る量が減っていくに連れて、沈黙が気になった。

 

「なんか喋れし」

「ぼっちにそんなこと言うなよ。他人と会話なんてほとんどしないんだから、話題提供とか絶対無理」

「あんた、結衣や雪ノ下さんとか生徒会長とかとよく一緒にいるじゃん」

「あいつらはクラスとか部活が一緒だったり、こき使われてるだけだ。友達は戸塚だけだ」

「なんで戸塚だけなんだし。じゃあ、あーしが2番目の友達ね」

「は? なんで?」

「さっきおまわりさんに言ったっしょ。あーしの友達だって」

「あれは建前だろ」

「1回言ったんだし、もういいっしょ」

「……わかったよ」

「最初からそう言えっての。じゃ、これあーしの連絡先だから」

「なんで、連絡先?」

「友達だからこれくらいは持ってないとっしょ」

「そうなのか」

「そう。今日は助かったし。あいつら今までで一番めんどくさかったし。ありがと」

「おう、そんな気にするな」

「ここまででいいから。じゃあね」

「おう」

「ヒキオ」

「なんだ」

「ありがと」

「お、おう」

 

 

     × × × × ×

 

 

 翌日、結衣に昨日の話をした。

 

「その通報した人って、多分ヒッキーだよ」

「そーなん?」

「うん。ヒッキーが人を助けるときって、恩着せかしましい?ことしたくないみたいだし」

「結衣、それを言うなら恩着せがましいっしょ」

「あ、うんうん! それそれ!」

 

 結衣。姦しいってあーしらのことだからね? っていうか、ヒキオちょっとあざといし。そうだ、いい事考えたし。

 

 

Yumiko

『通報してくれたの、実はヒキオっしょ?』

『ありがと』

 

 

 机でケータイ見てビクッてしてるし。バレバレじゃん。

 

「ふふ。最初っから素直に言えっての」

「どしたの? 優美子」

「んーん。なんでも」

 

 

八幡

『なんのことだか分からん』

 

 

 素直になれし。まぁ、いっか。

 

 

     × × × × ×

 

 

放課後。あーしは奉仕部に足を運んだ。

 

「どうぞ」

「ヒキオいる?」

「優美子? どしたの?」

「なんだ」

 

 相変わらず、不思議な構図だ。長机の両端にヒキオと雪ノ下さん、雪ノ下さん寄りに結衣が座っている。

 

「ヒキオ借りていい?」

「あら、珍しいわね。どういう風の吹き回しかしら」

「相談。ヒキオに相談があるし」

「話聞くだけならここでいいだろ」

「そ。じゃあ、ここで。ヒキオ、あーしと付き合いな」

「はぁ!? 優美子? なんでなんで?」

「結衣違うし。ヒキオと出かけるって話」

「あ、なんだびっくりしたー」

「なんで由比ヶ浜がびっくりするんだよ」

「ヒッキーは知らなくていーの! バカ!」

「なんで罵られなきゃいけないんですかねぇ……」

 

 ヒキオ鈍感過ぎっしょ。なんで露骨に照れてる結衣の気持ちに気づかないし。普通の男子ならイチコロっしょ。

 と、話を戻さなければ。

 

「そんで? 返事は?」

「その、なんだ。出かけるくらいならいいんじゃないか」

「あら、貴方は三浦さんをどう脅したのかしら」

「俺が脅した前提かよ!」

「違うの?」

「違うし。ヒキオは昨日、あーしを助けてくれたんだし。だから、そのお礼。なんか物あげるだけじゃあーしの気がすまないし。とにかく、後で連絡入れるから返事しなかったらわかってるっしょ?」

「うわ、こわっ」

「あん? ヒキオ。なんか言った?」

「なんでもありましぇん!」

 

 そこで噛むなし。ヒキオキョドりすぎっしょ。

 まあ、そんなとこもヒキオっぽいか。

 ……ヒキオっぽいってなんだし。あーし、ヒキオを何を知ってるんだし。

 

 

     × × × × ×

 

 

 その日の夜、あーしはさっそくヒキオに連絡を取ってみた。

 

 

Yumiko

『今度の日曜、11時に千葉駅ね』

 

 

 とりあえず、お風呂に入ろう。今日は色々あったしゆっくり浸かろう。隼人のいう、誰とも付き合えないというのはどういうことなのか。他に好きな人がいるから? それとも何か別の事情? あーしにはわからないし、あんなに仲良くしてたあーしにすら教えてくれない。ひょっとして、あーしってそんなに隼人のこと知らないのかな。もうわかんないや。

 色々と考えている間に、のぼせそうだしお風呂上がろう。

 

 ん? あーし結構長くお風呂入ってたと思うんだけど、ヒキオ返事遅くない? さてはヒキオのやつ、読んでないっしょ。結衣が言ってたっけ。ヒキオに連絡すると妹さんに連絡しないと返って来なかったりするって。

 もういっそ電話してしまおう。

 

『……はい』

『はいじゃないし! あんた連絡したの見てないっしょ』

『あー、すまん。寝てた』

『え? そうなん? じゃ、仕方ないし』

『え、あ、いや。俺が悪かった。連絡返すの面倒でしたはい』

『へぇ? あんたいい度胸してるし』

『いや、マジで怖いからやめてね』

『はぁ。それで、今度の日曜日、11時に千葉駅ね。わかった?』

『いや、ちょっと日曜はアレでアレだから』

『なんも予定ないっしょ。ぼっちだし』

『三浦といい、雪ノ下といい、さりげなく人の心抉ってくるのやめてくれませんかねぇ』

『とにかく来ること! いい?』

『はぁ。わかったよ』

『それじゃ』

『おう』

 

 さて、寝よう。横になりながらあーしは何だか、ウキウキしていた。あーし、ヒキオと遊ぶのが楽しみなん?

 結衣や雪ノ下さん、生徒会長が惹かれるくらいだ。

 なんだ、ヒキオぼっちじゃないじゃん。むしろ超モテてるじゃん。

 あいつのどこが魅力なんだし。

 

 あーし、ヒキオのこと気になってるのかな?

 

 

fin

 




 読んでくださった方に感謝。
 感想やアドバイス、誤字報告ありましたらよろしくお願いします。もっと、上手く表現できるよう次回更にパワーアップしたいです。
 


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あーしはヒキオと。

どうもこんにちは。
多方面から続編を書いて欲しいとのことで書きました。
今回はデート編になります。
こんな八優だったらいいなぁという作者の自己満足です。
そんな少し甘い今回も、お付き合いいただければと思います。

それでは、どうぞ。


 カールよし。化粧よし。服よし。今日は、いい天気だ。早くつきすぎたし。まだ30分あんだけど。仕方ない、待ってるか。って思ったけど、ヒキオもう居んじゃん。

 

「ヒキオ。待ち合わせまでまだ30分あるけど」

「お前だって30分前に来てるじゃねぇか」

「そ、それは! たまたまだし! ってか、それを言ったらヒキオもっと前から居るんじゃないの?」

「違ぇよ。今来たところだ」

「そのかっこよさそうなセリフなんだし」

「俺が言うと台無しみたいな言い方やめて?」

「実際そうっしょ。服はいい感じだけど」

「服はって……お前も、その、なんだ。いい感じだな」

「ふぇっ!? う、うん。ありがと……」

「……いくか」

「う、うん」

 

 なんで、あーしこんなキョドってるん!? ヒキオと逆じゃん! 意識してるみたいでなんか複雑だし。

 

     × × × × ×     

 

「ヒキオ。今日は、ちゃんと話すこと。いい?」

「え、なに。いきなり」

「この前帰ったときは、全然喋らなかったじゃん?」

「当たり前だ。俺はぼっちだぞ」

「だから今日は話すんじゃん。せっかくあーしと出かけてんだし、それくらいしな」

「なんでそんな偉そうなんですかねぇ」

「なんか言った?」

「なんでもありましぇん!」

「んじゃ、よろしく」

 

 さて、ヒキオは何を話してくれるだろうか。これで、つまらなかったら笑ってやろう。

 

「んで、今日は何するんだ?」

「んー。服見るっしょ。そーいやヒキオってどんな服好きなん?」

「どんな服か。俺はあんまそういうのわかんねえ」

「それ、自分で選んだじゃないの?」

「これか?これは小町に任せたんだよ」

「妹さん、苦労してるし。でも、いいセンスしてんじゃん」

 

 今日のヒキオは、ボーダーシャツにネイビーのジャケットを着ている。

 こいつ、こういうキレイ系結構似合うし。

 

「お前には敵わねえよ。よくそんな服来てるわな」

「ど、どこ見てるし!」

 

 あーしは、オフショルダーを着ている。

 そのせいもあってか、ヒキオは肩や胸元をチラチラ見ている。

 まぁ、男だし仕方ないか。

 

「うっ、その、すまん」

「べ、別に、いいし」

「その言い方だと、見ていいことになるんだが……」

「そ! そういうことじゃないし! ってか、真昼間から何の話をしてるし!」

 

 話せと言ってこんな話になるとは思わなかったし、まぁ、いいっしょ。

 

     × × × × ×     

 

「この服、可愛いっしょ」

「そうだな」

「こっちもいい感じ」

「なるほど」

「これもいいじゃん」

「確かに」

「どれがよかった?」

「そうだな」

「ヒキオ?」

「なるほ……」

「ちゃんと聞いてた? アンタ全然聞いてないっしょ?」

「俺に言われてもわかんないしな」

「じゃあ、聞き方変えるし。こっちとこっちどっちがいい? 着てみるから見て。あと着替えてる間にどっか行くんじゃないよ」

「ど、どこもいかないからね?」

「ふーん。まあいいし。ちょっと待ってて」

 

 まずは、少し露出高めにおへそ出した服から。

 ヒキオがどんなリアクションするか、揶揄ってやるし。

 

「じゃーん。どうよ?」

「あ、ああ。いいんじゃないか?」

「ちゃんとあーしのこと見てる?」

「見てるっての」

「じゃあ、なんで目逸らしてんの」

「これは、アレがアレでアレなんだよ」

「意識してるんー?」

「バッカ違ぇよ! 目のやり場に困るんだっての」

「なっ! どこ見てるし!」

「いや、悪いの俺じゃないよね?」

「ま、いいや。次」

 

 あーしってば、何で照れてるし! 揶揄うどころか、こっちが揶揄われた気分だ。次は、露出抑えめ。キレイ系コーデ。

 

「はい、お待たせ」

「おう、待った、ぞ……」

「なんだし」

「いいと、思うぞ」

 

 あれ、露出は少ないのにヒキオが目を逸らす。何だか変な空気だが、かき消すように店員が来た。

 

「お客様! 先ほどから見ておりましたが、すごく綺麗ですね。彼氏さん的にも露出控えめの方が安心しますよ~」

 

 ツッコミどころ満載な店員だ。って、ヒキオってばあーしが彼女だったらって考えてくれてたん? だったら、こういう服の方が確かに他の男寄って来ないし安心か。

 って、なんでヒキオを意識してるし……

 

「ちょっと店員さん? 俺別にそんなこと考えてませんからね? あと彼氏じゃないですし」

「そうなんですか? じゃあご夫婦ですか?」

「「は!?」」

 

 ヒキオとあーしが結婚……あーしがヒキオの事を尻に敷いてそうだ。我がまま言っても、なんだかんだ受け入れてくれそう。

 って、何考えてるし!

 

「あーしら、まだ付き合ってないし!」

「まだ? ですか?」

 

 余計なところで鋭いし……天然なら天然らしくポカーンとしてればいいのに。

 

「えっと、何でもないし! と、とりあえず! これ、会計して!」

「お買い上げありがとうございます! レジまでお願いしま~す」

 

     × × × × ×     

 

「お待たせ」

「お、おう」

「あーし、お腹空いたし」

「そか。じゃあ、サイ……」

「サイゼとか言ったりしたら、どうなるかわかってるっしょ?」

「いや、冗談だって」

 

 ホントかね。結衣曰く、サイゼとあの黄色い缶のコーヒー大好きらしいし。

 

「じゃあ、あそこにするか」

 

 ヒキオの選んだ店は和食屋さんだった。サイゼが選択肢から消されて選んだのが和食ってのは、落ち着いてるヒキオらしいのかね。しかも、ヘルシーなプレート料理とかある当たり女子ウケいいし、そういうとこやっぱあざといし。

 

「シャレてんじゃん。ヒキオもやれば出来んだね」

「なんか美味そうだったからな。たまたまだ。たまたま」

「ふーん。確かに美味しそうだし」

 

 お昼のピークを過ぎていることもあって、すぐ入れた。

 

「ヒキオは何食べるし」

「俺はこの『南蛮揚げ定食』にする」

「じゃ、あーしこの『豆腐ハンバーグ定食』にするし」

 

 ご飯に種類があるらしく、あーしはキヌア入りご飯でヒキオがひじきご飯。揚げ物にひじきご飯って結構重そうだけど、やっぱその辺は男だなぁと思ってしまった。ってか、ヒョロいヒキオのどこにご飯入ってくんだし。なんで太らないんだし。

 あーしの食べるキヌアは、いわゆるスーパーフード。なんかめっちゃ栄養満点で、女性ホルモンに効くってどっかの雑誌に書いてあったのを読んで以来、たまに食べる。

 

「キヌアって、美味いのか?」

「味はわかんないけど、なんかめっちゃ栄養あるんだし」

「なんだそれ。ざっくり過ぎてわからん」

「スーパーフードはモデルさんも食べるし、健康そうっしょ」

「まぁ、確かに、そういうことなら、三浦の見た目的にも納得できるわな」

「なっ!? なんだし、突然!」

「あっ、いや、そういう意味じゃなくてだな」

「じゃあ、どういう意味だし!」

「いや、なんてーか、言葉の綾だ」

「じゃあ、あーしがブサイクだっての!?」

「いや、そうじゃねぇよ! お前モデルみたいだから納得って話」

「えっ、あっ、そう……」

「おう……」

 

「お待たせしました~! 定食2点お持ちしました~」

 

 ナイスタイミング。

 変な空気をかき消すように、料理がきた。

 

「「いただきます」」

 

 豆腐ハンバーグ。味が濃すぎないから、しつこくなくて食べやすい。食べ応えはあるけど、豆腐が入ってるからカロリー低いし、女子的には嬉しいし。サラダや味噌汁なんかもいわゆる「優しい味付け」だから、メインを邪魔しない。キヌアは……やっぱ味わかんないし。でも、健康にいいんだろうなって感じするし。

 

「ヒキオ、美味しい?」

「ああ。美味え」

「こっちも美味しいし」

「そうか」

「食べてみ? ほい」

「え、いや、いらん」

「あーしの飯が食えないっての!?」

「その嫌な上司みたいなのなんなんですかねぇ」

「さっさと食えし! はい」

「ん、んん」

 

 お、赤くなってるし。そんなに顔赤くされると、こっちまで照れるっての。

 

「ど? 美味いっしょ」

「まあ、美味いんじゃねえの」

「なんだしそれ」

「あんなことされたら、味なんてわからねえっての」

「あーしに食べさせてもらったんだから、素直に美味いっしょ」

「んじゃあ、美味かった」

「最初からそう言えし」

 

「「ごちそうさまでした」」

 

     × × × × ×     

 

「さて、次はどうすんだ。帰る?」

「帰らないし! そんなにあーしといるの嫌なん?」

「や、別にそういうわけじゃ……」

「そ。じゃあ、いいじゃん。今度はヒキオの服見るし」

「いや、俺のはいいだろ。服とかよくわからんし」

「いいから行くよ」

 

 

To be Continued…

 




もしかしたら、ご存知かもしれませんね。
実際にあるお店をオマージュしてます。
あそこのひじきご飯美味しいですよねぇ……

ということで、UA2,000ぴったりであげようと思ってた今回。
気づいたら3,000リーチでした。
たくさんの方に読んで頂けて、とても嬉しいです。
不定期とはなりますが、どうぞ首を長くしてお待ち頂ければと思います。

それでは、また次回。
読んでくださった方に、感謝。


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あーしはヒキオに。

 遅くなりました。就活したり、ロケハンしたりで1か月空いてしまいました。
ブログ内では、モチベの話をしたりしていましたが、ようやくひと段落です。

それではどうぞ。


 それから、あーしとヒキオは、ヒキオの服を見ることにした。

 

「ヒキオ。普段服どーしてんの」

「母ちゃんが適当に買って来てるのを着てんだ。だからファッションなんて全くわからん」

 

 その割にはオシャレしてんじゃん。どういうことだし。気になって聞いてみると……

 

「これは小町が見立ててくれたんだよ。」

「ふーん。林間学校で見た感じからしてオシャレそうだし、納得したわ」

 

 ということは、ヒキオの趣味ではなく妹の趣味でこのファッションか。全く変ではないけど、違うヒキオも見てみたい。そんな好奇心が湧いて来たところで、あーしはお店を見つけた。

 

「ここ見るし」

「えっ、ホントに俺の服見るのか」

「当たり前だし」

 

 色々とメンズの服を見る。そういえばあーし、男の服選ぶのはしたことないな。意識し出したら変な緊張してきた。こんなのヒキオに見られたらなんか癪だし、冷静を保たねば……

 

「……うら……おい、三浦」

「ふぇっ!? な、なんだし!」

「いや、それは俺のセリフだからね。それ、着ればいいのか?」

「え? あ、ああ、そーだし。これちょっと着てみな。上着は持っとくから」

 

 あーしは無意識に黒のMA-1を手に取っていた。ヒキオが羽織る間に、落ち着こうとする。ヒキオが試着する間、あーしがヒキオのジャケットを持つ。

しかし、手に持っているヒキオのジャケットからヒキオの香りがする。男の香りだと思うと妙に意識してしまう。そのせいで余計な緊張がまた増えたし。

 

「顔赤いけど平気か? 熱あったりしないよな?」

「へ、平気だし! それより、服見せて」

「見せても何も着てるだろうが」

「ちゃんと立てっての」

 

 案外、こういうストリート系ファッションも似合うじゃん。まぁ、よく見ると目以外のパーツは比較的整ってるし、当然っちゃ当然なのかな。目以外は、だけど。

 

「なんだ。変か?」

「変じゃないし。まぁ、なんつーか、似合ってるし」

「お、おう」

 

 なんでこんな変な空気なんだし。確かに服一つでこんなに変わるのはびっくりしたけど。

 

「それ、買いなよ」

「三浦が言うなら似合うんだろうし、買うか」

「ったりめーだし!」

 

 ヒキオを待っている間に少し考えていた。あーしは今日楽しかった。もしかしたら、都合のいい女なのかもしれない。それでも、ヒキオと居て楽しかった。隼人の事を忘れたのかと言われたら完全にそうではない。でも、何かモヤモヤがある。

 

「おい。大丈夫か」

「あ、おかえり」

「おかえりじゃねぇっての。何度も呼んでんのに返事しなかったろ。具合悪いなら言ってくれ」

「別に。ただ、考え事してただけだし」

 

 実際考え事をしていたのは本当だ。ヒキオを心配させてしまったのは悪かったし。

 

「そか。この後はどうすんだ」

「……もう少し、居たい」

「お、おう」

「景色。夜景が見たいし」

「夜景? この近くだとポートタワーが一番近いな」

「んじゃ、ポートタワーいくし」

「わかった」

 

 ヒキオは、あーしのわがままを聞いてくれた。

 あーしたちはそのまま、モノレールにのって千葉みなとまで向かうことに。休みの日とはいえど、千葉みなとに向かうモノレール内はほとんど人が居ない。

 宙づりのモノレールのぷらぷらとした揺れ、たまに聞こえるガコンというレールの音がやけに大きく感じる。日没が近づいてきたのか。昼前から集まって疲れたのか。はたまたお互いに何か思うことがあるのか。いずれにしても、あーしたちはさっきまでの会話はない。

 程なくして、千葉みなとに着いた。

 

「どのルートでいくんだ」

「せっかくだし、海に沿って歩くっしょ」

「あいよ」

 

 人も車も疎らだ。たまに犬の散歩をしている人、ランニングやジョギングをしている人はいる。でも、波の音が聞こえるくらいには静かだし。

 

「風、強くなくて良かったし」

「そうだな」

 

 昼の温かさを残した空気に混ざる少しひんやりした海風を浴びながら、2人でしばらく海を眺めた。

 

「おめでとー!」

「ふぅー!」

 

 急に聞こえた声に2人でびっくりして振り返る。結婚式場があり、締まり切った窓越しにも関わらず聞こえてきた盛り上がっている声が正体だった。

 ヒキオと目があった。なんだし、その顔。

 

「ふっ……あはははは!」

「ふっ」

 

 思わず、2人して笑ってしまった。お互い変な雰囲気に当てられて緊張していたようだ。その緊張の糸が切れた瞬間だった。

 

「んじゃ、ポートタワーいくか」

「ん」

 

 千葉県民とて、ポートタワーに来る機会はそんなにない。今となっては都内に出る方が便利だし。あーしも最後に来たのは中学生だし。昔、お母さんがお父さんとよくきたって話をされたことはある。

 

「あれ、これってこんな高かったっけ」

「わからん。俺も最後に来たのは小学生の頃だし」

「あーし中学の頃来たことあるんだけどなぁ」

「日の向きとか、なんかそんなんで変わるんじゃねえの? 多分、知らんけど」

「ふーん」

 

 チケットを発券して、エレベーターを待つ。乗ったエレベーターにはエレベーターボーイが居た。ボーイさん除いたら、あーしたち2人だけ。

ゆっくりと上っていく。上に上がってみると何組か家族連れやカップルが居たが、やっぱ人が少ない。

 

「西側いくか」

「とりあえずまだ時間あるし、ぐるっと見るっしょ」

「あいよ」

 

 エレベーターから正面には、海がある。下を見れば浜が少しある。工場群もあるし、暗くなってから光って綺麗だといいけど。

 そこから、反時計周りに見ていく。ポートタワーは、その高さもあって海も陸も色々見れる。一度海を離れ、陸を見ていく。奥の方は一面の緑で、海景色とはまた違って楽しい。そごうのマークを見つけ、あの辺りに千葉駅があるとわかる。日中はあそこにずっといたのか。近いような遠いような。

 ヒキオとあーし、普段は全く関わりないのに、今日は近かった。依頼だからとは言ってたけど、ヒキオも楽しんでくれたのかな?

 

「ねぇ、ヒキオ」

「どした」

「今日、楽しかった?」

「おう」

「ホント?」

「そうだな、普段服とか見ないし、飯も美味かったし、良かった」

「ふーん、そ。ならいいし」

「なんだ、気を遣ってくれたのか」

「ったりめーじゃん。あーしが頼んだ依頼とはいえ、あーしだけ楽しいんじゃ面白くないし」

「お前、ホントおかん体質だな……」

「あん?」

「いや、なんでもない。優しいって言ったんだ」

「き、聞こえてっから! 最初から素直に言えっての。ほら、次行くよ」

「へいへい」

 

 そこから、西側に移動する。日の入りまでもう少し。富士山とスカイツリーの間に沈んでいく。あーしたちは、しばらくゆったりと波を眺め、雲を眺め、飛行機を見て過ごした。

 

「夕焼け見て、そのまま夜景も見るのか。なんか、1度で2度美味しいみたいだな」

「実際そうっしょ。時間制限はないんだし、明るい街と暗くなって光る街と違う味を楽しめる方が楽しいし」

 

 夕焼けは綺麗だった。ジリジリと沈んで行く太陽に寂しさを感じる。時期のせいもあって沈むペースが速い。やがて日が沈み、今度は夜景が見るために千葉駅側へ。上から見る千葉も綺麗だ。

 

「夜は夜でいいし」

「そうだな」

 

 ヒキオのその顔、何を考えているんだろう。一見、無表情のようで何かを考えていそうな顔。今日1日で、いや、前に助けて貰った時からかもしれない。隼人に抱いていたものと同じものを抱えてる。

 いっそ、聞いてしまおうか。あーしの気持ち。ヒキオの気持ち。

 

「ヒキオ」

「なんだ」

「あーし、あんたがす……「落ち着け」」

 

 最後まで言うことなく、ヒキオがあーしの声を遮る。

 

「三浦。続く言葉が何であれ、それは勘違いだ。俺は、たまたまあの場にいてお前を助けた。けど、それでお前が情けを感じる必要はないんだよ。お前は優しいから、きっと、それこそ気を遣ってんだ」

「なんだしそれ。あーしがバカだっての?」

「誰もそんなこと言ってねえだろ。俺はただ勘違いだって言ってんだ。全部たまたまなんだよ。お前に何があったか知らねえけど、葉山はどうした」

「隼人にはフられた。そんで、その日の夜、ヒキオが助けてくれた。最初は勘違いかもしれないって思った。それを確かめるためにも今日出かけたんだし」

 

 さっきまで色々考えてた。ヒキオと一緒にいること。ヒキオを結衣たちから取ってしまうこと。色々考えた。

 

「でも、それでも、あーしはヒキオと。比企谷八幡と一緒に居たいと思ったんだし。だから、あーしの気持ちを勘違いなんて簡単な言葉で片付けないで欲しいし!」

「……わかった。少し待ってくれ。俺も頭の整理がついてない。俺なんかに言ってくれる人がいるなんて思ってなかった」

「俺なんかなんて言うなし。あーしが選んだ男なんだし、もっと自信持てっての」

 

 それに、ヒキオの周りにはたくさん想ってくれる人いるじゃん。絶対本人には言わないけど。

 

「とりあえず、返事はよく考えてからでいいし。今大して考えないで返されるのは嫌だし」

「お、おう」

「そんで、しっかり考えてから返事ちょーだい。ちゃんと返事しないと、あーし怒っから」

「怖ぇよ」

「ふふっ。そんだけ、返事が欲しいんだし」

 

 伝えるべきことは伝えた。結衣達にも話をしなきゃいけないし。あーしだけ抜け駆けなんて嫌だしね。

 




 誤字、脱字等ありましたら、感想にお願いします。

 このまま終わらせて、この先の話は皆さんのご想像に任せるか。
それとも、続きを書くか迷っています。

 単発で書こうと思っていたこのシリーズ。
続きが読みたいと言ってくださる方が多く、駄文ではありますがやってきました。
だからこそ、ここで終わるかどうかのせめぎ合いがあります。

 逆に、他のカップリングや八優の新シリーズなどもやっていきたい次第です。
諸々の意見なども、ブログや感想やリプライにて是非頂ければと思います。

それでは、読んでくださった方に感謝。


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あーしがヒキオに。前。

どうも、お久しぶりです。
働いたり、インプット不足だったりでなかなか進んでません。

でも、完結はさせたいのです。
さて、今回はすごく短いです。
後書きに理由を。

それでは、どうぞ。


 それから数日、気分転換がしたくて買い物をしていた。

と言ってもほとんどウィンドウショッピングだ。

歩き疲れ、今はカフェで一息ついている。

 

 外の見えるガラス張りのカウンターでダラダラと人を眺めていると、一人の女と目が合う。

髪は青みがかった黒のロングヘアー。

 

 川崎沙希。

あーしのクラスではヒキオとは違うひとりぼっち。

最近は海老名や結衣が絡んでいる様子から今の考え方は悪かったかな。

 

 そして、一緒に歩いている中学生くらいの男の子と小学生かどうかの女の子に一言言って、あーしのいるカフェに入ってくる。

 

「隣、いい?」

「別に。なんか用なん?」

「とりあえず飲み物買ってくるから」

「わかったし」

 

 普段は全く話さないし、奉仕部で出くわした時はお互いに意見が合わなかった。

あーしは、控えめに言ってこの人が得意ではない。

嫌いではないが、単純にソリが合わないのだ。

 

 川崎さんは、席を取るなりレジへ行きコーヒーを頼んで戻ってきた。

 

「それで、なんか用があったんじゃないん?」

「由比ヶ浜から聞いた。あんた最近比企谷と遊んでるんだって?」

「だったらなんだし」

「由比ヶ浜や雪ノ下の気持ち、気づいてるでしょ」

 

 確かに、ヒキオに対しての彼女達の気持ちは何となくわかっていた。結衣に関しちゃあからさまだし。

彼女達への後ろめたさを感じてか、あーしは川崎さんから目を逸らしてしまった。

 

「あんた、酷いことしてるって自覚はある?」

「あんさー、それのどこが川崎さんに関係あるの」

「あるよ。……あたしだってそうだもの」

 

 少し驚いた。

今までそんな素振りは一度だって見た事がない。

もちろん、あーしが知らないだけって可能性もあるけど。

ヒキオってば、なんだかんだモテてない?

 

「でもさぁ、あーし以外誰もヒキオに近づこうとしてないじゃん。それって、皆狙う気ないっしょ。待ってたってヒキオから来るわけないじゃん」

「そんなのわかんないじゃない!」

 

 川崎さんの口調が強くなる。

でも、さすがに期待しすぎでしょ。

それでヒキオが来るなら、今頃あの二人のどっちかと付き合ってるだろうし。

どいつもこいつも、甘ったれんなっての。

 

「はぁ。言いたいことはそれだけ? そんな下らないことなら、あーし帰っから。ヒキオとどうしようが関係ないっしょ」

「ちょっと! まだ話は終わって……」

「終わってるでしょ。じゃあね。明日、話に行くから文句あるならそこで言いな」

 

 あーしは我慢出来ず、店を出た。

もうすぐ日が沈む。

あれ? こんなに寒かったかなぁ。

カラっとしている夕空は、今のあーしには重く感じた。

 

 × × × × × × 

 

Yumiko

『結衣。明日集合ね。雪ノ下さんと川崎さんと一色も呼んで。大事な話するから』

 

 昨日、あーしは要件だけ結衣に送りつけた。

カフェでお茶がてら、4人を待った。

皆、待ち合わせをしてきたらしく同時に入ってきた。

揃いも揃って、ホットコーヒーを注文する。

あーしも甘い物を飲む気分ではなかったので、おかわりはホットコーヒーにした。

 

「それで、話って何かしら」

 

 雪ノ下さんは少し気が立っている。

まぁ、この前は無茶を言ってヒキオを借りたし、今日これだけ集めるなら何を話すのか察しているのだろう。

 

「さっそくだけど。あーし、ヒキオに告ったから」

 

 皆、驚いていた。

結衣は相変わらずのオーバーリアクション。

雪ノ下さんは目を丸くした。

一色はじっとあーしを見ている。

川崎さんは息を飲んでいる。

 

「優美子!? なんでそうなったの!?」

 

 結衣の言うことも最もだ。

でも、人の心が分かるなら機械はとっくに進歩してるってどっかのテレビで言ってたし。

だから、なんでそうなったかよりもこれからどうするかが大事なんだ。

 

 あーしの気持ち、皆の気持ち。

それぞれ、想うことはあるが、全てはヒキオ次第。

でも、このまま何もしないのもどうかと思うので、あーしは皆に発破をかけることにした。

 

「あーしだけが言うのはちょっと違う気がするし。だから、皆も言いたいことは言った方がいいし。言わないならあーしが貰っちゃうからね」

「そんな……」

 

 結衣が今にも崩れそうな顔をして喋る。

その後、しっかりと何かを考えた様子だった。

生徒会長と川崎さんは結衣よりもしっかりした顔つきになった。

 

 しかし、雪ノ下さんだけが違う。

少し覇気のない、焦りと戸惑いと諦めの混ざった表情。

 

「とりあえず、あーし帰っから。いつまでも期待してちゃダメだかんね?」

 

 店を出て見上げる空は昨日とは違う曇り空。

空気の重さは相変わらずだ。

 

 × × × × × × 

 

 to be continued...




さて、久しぶりだというのにすごく短くなってしまい申し訳ないです。

ここのところ続きをどうしようかという点で皆様の声が聞きたかったのです。

ここまでは書けていたのですが、この先を悩んでいます。

①優美子視点だけで書き続ける
②八幡視点でも書く

個人的に②はあまりやりたくなかったのです。
しかし、②を選べば比較的あっという間に話が進むのです。

ここまで優美子視点で書いてきたこともあるのと、こういったネットという世界ですから、力のない私に皆様からの意見を取り入れたいという試みです。

感想でのご意見を是非お待ちしています。

それと、評価する際にコメントできる機能を初めて知り、コメントを頂いていたことに気づきました。
ありがとうございます。

誤字報告もお待ちしています。

後編も今月中には書きたいです。

それでは最後まで読んでくださった方に感謝。よっちい。


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あーしがヒキオに。後。

ご無沙汰しております。よっちいです。

「中編ないし後編はまだなのか!」と思っていた方がいらっしゃったら、
遅くなりまして本当に申し訳ありません!
そして、そんな感情を持ってくださりありがとうございます。

前回から実に2年半ぶりの投稿となります。
これ以上長くなるとあれなので、残りはあとがきで。
それでは、どうぞ。


 結衣、雪ノ下さん、川崎さん、生徒会長の4人と話した後店を出たあーし。この1年一緒に居た結衣の気持ちを考えてあーしの気持ちと告白した事を話した。雪ノ下さんも結衣と同じ奉仕部として色々相談に乗って貰った手前、あーしのことは話しておかなきゃいけないと思った。

 

 川崎さんは昨日のこともあったし、ちゃんと話したいと思った。生徒会長は隼人を隠れ蓑にしてヒキオにベタベタしてるし、お互い隼人を意識してたのに気づいたらお互いヒキオを意識してるんだからこいつも言っておかなきゃいけないと思った。

 

 4人はそれぞれの驚き方をしてたけど、あーしとしてはちゃんと話が出来て良かったと思う。ほとんど一方的だけどね。

 

 家に向かって歩き空を見ると、真っ黒な雲が覆ってる。いくらもしないで雨が降るかなーって思ってたら降ってきた。傘無いし、閉めかけの文具屋さんで少し雨宿りさせて貰おう。この文具屋さんオンボロ過ぎてちょっと気味悪いけど、こういう時代にも残ってる辺りちょっと老舗っぽい感じあるね。

 

 とりあえず近くのコンビニをスマホで探す。走っても5分・・・・・・。これは雨の弱まり次第だけど、ずぶ濡れは覚悟しなきゃいけないか。少し弱くなるか待ってみる。

 

 なかなか弱くならない雨、人通りも車通りも少ない。色々混ざって薄気味悪さを感じる。

 そういえば、ヒキオに助けてもらったあの日も雨こそ降ってなかったけど同じように人が少なかったっけ。

 

『あーし、急いでっから』

『急いでるならもっと早く歩いてるでしょ? 嘘は良くないな〜』

 

 何人かの男に絡まれてた。あの時はほんと危なかったけどヒキオのおかげで何とかなったんだよね。ヒキオは警察官に間違えられてたけどね。

 

『もうすぐ警察来ますよ。ここ交番から近いですし』

 

『こらこら〜。駅前で何を騒いでいるんだい? 君が女子高生にナンパしてるって男か?』

 

『ひょっとして君がナンパされている人がいるって通報してくれたのかな?』

『さぁ。ちょっとわかんないです。たまたま居ただけなんで』

 

 あの時のヒキオは意味のないところで見栄を張ってたっけ。あーしにはバレバレだっての。思い出して少し声に出して笑っちゃったけど、誰も聞いてないよね? と辺りを見ると遠くから黒い影が近づいてくる。服は上下黒で、傘も黒。アレは明らかに怪しいっしょ。普通に怖いし、絡まれないようにケータイいじっとこ。

 

 近づいてきた上下黒の人。やっぱり怖い。何もありませんように。

 

 祈りが届いたのか、歩く速度はゆっくりなものの過ぎ去ってくれた。あーしもしかして観察されてた・・・・・・? だとしたらつけられてた? とりあえず表情に出ないようにしなきゃ。

 

 過ぎ去った方を見ると黒の人は止まった。え。怖い。普通に怖いし。いや、最悪後ろの文具屋さんに助けを求めれば・・・・・・

 

「あの、三浦か? 間違ってたらすみません」

 

 上下黒の人はヒキオだった・・・・・・。脅かすなし! ほんとに!

 

「ひ、ヒキオ・・・・・・?」

「おう。よかった。あってたわ。どしたのこんなところで」

「傘、無くて。あと全身黒の怪しい人が近づいてきて怖くて・・・・・・」

「暗いもんな。不審者みたいでなんかごめんね?」

 

 確かに不審者みたいだった。そりゃそうだ、全身黒で猫背でのっそり歩く。怪しいことこの上ない。

 

「でも、ヒキオでよかったし」

「そ、そうか。アレだったら送るぞ」

「へ? あ、じゃあ・・・・・・お願い」

 

 ちょっとびっくりしたけど、濡れずに済むし怪しい人に絡まれずに済むし、送ってもらうことした。

 

「しかし、ずいぶん変なところにいたな」

「出かけてて帰る途中で、こんな雨がね。ちょうど良いところに閉まりかけの文具屋さんがあったから屋根を借りたってわけ。そんでコンビニ行こうとしてたら怪しい人が来たんだし」

「怪しい人で悪かったな」

「まあ、結果的に傘買う金が浮いてラッキーだけどね」

 

 結構な雨が降る中、家を目指す。時折小話はするものの、さすがヒキオ。あんまり話が続かない。でも、傘と地面に当たる雨の音がある中での相合い傘は乙女的にはエモい。

 これで黒の傘じゃ無くてもっと映える色だったらきっともっとエモさに浸って居たかもしれない。

 

 ヒキオも最初の頃と違い、気まずい感じはないようだ。やっとあーしに慣れてきたのかね。

 

「ねぇ。ちょっと寄ってかない?」

 

 あーしは通りがかった公園を指さす。雨だから当然誰も居ない。電気が付いてはいるものの決して明るくはない公園だった。

 

「ん。わかった」

 

 捻くれた事を何か言うかと思っていたが、素直に受け入れてくれた。

 

 雨はまだそこそこに強く、止む気配はない。時々車が打ちつける雨を潜る音が公園の向こうから聞こえた。少しお互いにダンマリだった。

 

「今日・・・・・・」

「ん? なんだ?」

 

 雨の音であまりうまく聞こえなかったようだ。もう少ししっかり・・・・・・

 

「今日さ、結衣達と話をしてたんだ」

「そうか」

「それで、あーしの気持ちを、あーしの言ったことを話した。分かってると思うけど、結衣達だからいう必要があったんだ」

「ああ」

 

 『結衣達』とは言ったものの、厳密に誰とは言わない。そこまで言ってしまうのは女の子的にさすがに憚られる。分かりきってる子はともかく、ヒキオの性格上分かりにくい子に関してはあーしの口から言うことじゃないし。

 

「前にで、デートしてからいくらか経ってっけど、あーしの気持ちちゃんと言わせて貰えなかったじゃん」

「それは、その、悪かった・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

「だからねヒキオ。あーしはヒキオが好き」

 

 

 

 

 

 

 先週、ヒキオはあーしの言葉を遮った。勘違いだと言ってあーしの気持ちを拒んだ。でも、待って欲しいと言われた。ヒキオの中で整理がついてない事もあるだろうし、純粋に捻くれた理解をしたのかもしれない。それでもヒキオは考えると言ってくれた。だからこそ、あーしの気持ちをちゃんと言いたかった。

 

「ありがとな。三浦。あの時、遮っちまった手前、本当は俺から言うべきだったのに、わざわざ言い直してくれてありがとう」

 

 素直なヒキオの言葉。ちょっとびっくりした。

 

「三浦が想ってくれたこと、話してくれたことをこの1週間、ずっと考えてた。なんで俺なんだろうって。俺は知っての通り捻くれてるから、なんか裏があるんじゃないかって、つい疑ってな・・・・・・。もちろん、まっすぐ向き合ってくれる三浦にそんなこと思うはずないのに、内心そんな気持ちを感じた」

「ふーん・・・・・・。そっ」

 

 ヒキオなりに色々考えてくれていたのが嬉しいけどちょっと恥ずかしい。ヒキオは頭の後ろをガシガシしながら、そんな話をしてくれた。

 

「年末にな、由比ヶ浜と雪ノ下と色々話したんだ。本当に色々。その前に平塚先生とも色々な話をした。色々聞いて、色々話して、色々考えて。傲慢だと分かっていても俺の本心は他人を理解したい。穿った考え方を持ってるのも自覚してる。それでも俺は本物が欲しいと言った」

 

 平塚先生まで出てくるのは驚いたけど、何かと絡んでるし納得と言えば納得か。奉仕部の顧問だし。それに深くは教えてくれなかったけど結衣達とそんなにしっかり話しているとは思ってなかった。

 

「先週ポートタワーで聞いてくれたろ。楽しかったかって。俺もその、なんだ、楽しかった。1日一緒に居てもっと三浦を知りたいと、もっと一緒に居たいと思った。だからな、三浦。俺はその本物が三浦であればいいなと思ってる。」

 

 

 

 

 

 

 

「俺も三浦が好きだ。俺と付き合って下さい」

 

 

 

 

 

 ヒキオが・・・・・・ヒキオがここまで考えてくれた。それだけでも嬉しい。その上で告白してくれて。あーしの気持ちが届いて嬉しい。これからあーしがヒキオと一緒に入れることが嬉しい。だから、あーしは・・・・・・

 

「・・・・・・はい!」

 

 嬉しくて声が裏返ってしまいそうになる。ヒキオがちゃんと考えて出してくれた答え。ヒキオが考えた上で発してくれた言葉。それにちゃんと答えたい。そんな返事。

 

「その、なんだ。俺はボッチだから、ダメなとこもあると思うけど、許してくれ」

「もうボッチじゃないっしょ。あーしがいる。あーしとヒキオでいる」

「そうだな」

「でも、根っから叩き直してやっから、覚悟しとけし!」

「お手柔らかに頼むわ」

 

 そんなこんなで、あーしとヒキオが恋人になった。

 

「じゃあヒキオ。帰ろっか」

「おう」

「来年はクラス一緒かなー。あーしも文系だし」

「早速甘々じゃん! ってか俺の進路知ってたのか」

「結衣が散々言ってたからねー。でも、やっぱり一緒がいいし」

「だな」

 

 公園を後にするあーしとヒキオ。長いこと話していたからか、雨はほとんど降ってない。遠くの方には青空も見えてるし、今日はもう止んで降らなくなるかな。

 

 

 

〜Fin〜




誤字脱字などありましたらご指摘願います。

たった5話ですが、処女作が無事描き終えました。
本当に拙い文ですが、この作品が好きと言ってくれる方も居ました。
それも、執筆していた時だろうがそうでない時だろうが。
本当にありがたい話でした。

この作品を描き始めた頃はまだ学生でしたが、今では一端の社会人です。
投稿期間長い割には、文は短いねと言われたらその通りです。
ただ、短いながらも皆さんの心に何かしら届いたら良いなと思います。

社会人になってからはある意味処女作ですが、また何か新しい作品を始めたいと思ってます。
何せ優美子が描かれる作品は少ないですからね、自給自足ですね。

ところで今まで何してたの?って方もいらっしゃるかと思います。
他の趣味としてゲームがありますが、せっかくプレイしているものを思い出として残そうと動画編集したりしていました。
もしご興味ありましたら、下記URLよりご覧いただければ幸いです。
https://youtube.com/channel/UCalysaCuiAhCSdWCoBr3XAg

本投稿までにUA約30,000、PV約46,000と思っても見なかった数の方にご覧いたたげました。
読んでくださった方々皆様に、心より御礼申し上げます。

もし、感想などいただけましたらしっかり拝見させていただきますので、ぜひお願いいたします。
もちろん、叱責なども真摯に受け止めていきたい所存です。

改めてになりますが、最後まで読んでくださり、誠にありがとうございました。
それではまたどこかでお会いしましょう。
決してさようならではありません。
読んでくださった方に感謝。

Twitter: @sea258xyz


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