インフィニット・ジェイデッカー (すし好き)
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第1話 プロローグ

やっちまいました♪

更新速度は遅いでしょうが、頑張っていきます!


21世紀を間近に控えた2000年、電子工学史上最大の発明がなされた。

人間の脳を工学的に再現したAI、『フォルツォイクロン』である。

この発明により、ロボット革命が起こり夢物語であったロボット技術が

現実のものとなった。

そして、後に勝るとも劣らない発明が発表された。

 

インフィニット・ストラトス。通称、IS。

新たなフロンティアである宇宙での活動を想定し、開発された

マルチフォーム・スーツである。

従来の宇宙服やパワード・スーツを遥かに凌駕する性能を

秘めているがある欠点が存在した。

それは、女性しか動かすことができないことである。

また、ISには核であるコアとなる部品があり、数にも限りがあった。

汎用という重大な問題と、開発したのが10代の奇天烈な格好をした女子学生

ということもあり、誰も真剣に見ようとしなかった。

 

そして、ISが発表されて一か月後、ある事件が起きる。

日本を射程距離内とするミサイルの配備されたすべての軍事基地のコンピュータが

一斉にハッキングされ、2000発以上のミサイルが日本へ向けて発射されたのだ。

そのミサイル群を迎撃するために、どこからともなく一機のIS現れ日本を

守ったことで、ISの名と力は世界に知られることとなったが、

同時にある存在がIS以上に世界中に響き渡った。

 

 

 

「全く、束の奴め……。

 いくら、自分が心血注いで作り上げたISが理解されなかったとはいえ、

 こんな馬鹿げたことを……!」

 

顔の半分をバイザーで覆い、全身を白い装甲……ISを身に纏う少女は

大剣を握りしめながら悔しさで唇を噛み締めていた。

普通の方法や兵器では迎撃しきれない量のミサイルを、ISを使って迎撃することで、

その力を知らしめるという親友の愚考を止められなかったことと、

分かっていながらこの自作自演に乗るしかない自分の無力さに。

 

「何であれ、絶対に全て叩き斬る!

 一夏が待っているんだからな……!」

 

IS“白騎士”を纏う少女、織斑千冬は目の前に迫りくるミサイルを迎え撃つべく

剣を強く握りしめながら、自分の帰りを待っている弟の元へ必ず帰ることを

改めて決意する。

 

「行くz……」

 

ミサイルを迎撃しようとした千冬だったが、ISのハイパーセンサーが

背後から近づいてくる物体を感知する。

 

「なっ!全長20m近くの大きさで、時速3750km/hだと!?

 一体何だ!」

 

千冬が振り向くとパトカーを連想させる白と黒の装甲で、

頭部にパトライトをつけた巨大なロボットが、こちらに向かってきていた。

 

「あ、あれは……」

 

ロボット技術が盛んな現代でも、ビルにも負けない大きさのロボットは珍しいが、

それ以上に飛んでくるロボットは、千冬の知るものと違いどこか人間のような息吹を感じさせた。

 

『まもなく、ミサイルの迎撃予定ポイントに到着するぞ、勇太、一夏!』

「よし!ジェイデッカー!ミサイルを撃ち落として、日本を守るんだ!」

「がんばれっ!ジェイデッカー!」

『了解!』

 

この巨大ロボットこそ、多様化、ハイテク化していく犯罪から人々の安全を

守るために警視庁が設立した新しい警察組織――“ブレイブポリス”所属の

ロボット刑事“デッカード”が、サポートメカ“ジェイローダー”と合体した

ジェイデッカーである――。

だが、ロボットであるはずのジェイデッカーが、まるで人間のように通信に

返事をしているのは何故か。

それは、彼がある二人の少年との出会いにより、『心』を持ったロボットだからだ。

 

当初、『心』を持ったことであらゆる性能が設定された数値を上回ったデッカードだったが、

その代償か合体データを呼び出すことができなくなってしまっていた。

しかも、間の悪いことに自称“闇の魔人”キャトー・ノリヤスによる

東京襲撃が行われようとした。

絶体絶命の中、デッカードは二人の少年と戦闘の中で力を合わせて、

初めての合体を見事に成功させたのだ。

形勢を逆転し、キャトー・ノリヤスを逮捕した彼らブレイブポリスだったが、

警視庁に帰還した直後に息をつく暇もなく、緊急出動の命が下った。

ハッキングと大量の小型ロボットの侵入により、ミサイル発射の危機が知らされたのだ。

犯人はご丁寧にも、この情報をカウントダウンと共に

リークし、日本は大パニックとなった。

 

“ジェイバスター!”

「何だよ、こいつ……」

 

ジェイデッカーがミサイルを打ち落としていく姿を、白騎士を通じて見ているのは

インフィニット・ストラトスの生みの親である篠ノ之束であった。

束は、映し出される映像をかじりつくように見つめる。

 

専用武器と思われるライフルと脚部に収納されたビーム砲で、的確にミサイルを

迎撃していき、巨体に似合わぬ華麗なアクロバット飛行。

どれもこれも現存のロボットを大きく上回り、

下手したら自分の自慢のISより上かもしれない性能だ。

 

当初、束はハッキングで知ったブレイブポリス……デッカードを

それほど気に留めてはいなかった。

最新のAIで人語を完全に理解するのは、少々関心したがそれだけだった。

何故なら自分が作ったISには、操縦者と意思疎通するには時間と絆を育む必要があるが

既存のロボットとは違い完全な意思が宿っており、

無限の進化の可能性を秘めているからだ。

だが、ISを世に知らしめるため今回の事件や白騎士の最終調整にかかりっきりだった

束は見落としていた。

 

デッカードが、二人の少年……友永勇太と親友である織斑千冬の弟一夏によって

ISと同じく『心』を持ち無限の可能性が宿ったことを――。

やがて、ジェイデッカーの出現に驚いていた千冬もミサイル迎撃に加わり、

ミサイルは全て打ち落とされた。

 

 

 

歴史に“白騎士事件”と記されるこの事件は、現行兵器を遥かに凌駕する二つの

存在を世界に知らしめた。

一つは、纏うことで空想の中のヒーローの如く人に翼を与える鎧、

インフィニット・ストラトス。

 

もう一つは、『心』を持ったロボット刑事チーム“ブレイブポリス”である。

 

 

 

――ホールド・アップ!ブレイブポリスだ!

 

 

 

 

 

 

 




感想・アドバイス待ってま~す。


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第2話 5年後の始まり


2話目です。
でも、ほとんどが説明となってます(苦笑)
白騎士事件から5年後となります。
1話目の穴だらけの設定を指摘され、ダブルボスではなく
一夏は勇太より5歳年下の弟分でいきます。




「ふふ♪」

「わぁ~……」

 

空き地で、二人の少年が空を飛ぶラジコン飛行機を眺めていた。

リモコンを持って操縦している、小学三年生ぐらいの少年の傍で、

幼稚園児と思われる小さな子供が目を輝かせていた。

 

「ねぇ~ねぇ~。ぼくにもぼくにも~!」

「いいよ♪それじゃあ、一緒に……」

 

ピョンピョンとジャンプして操縦をせがむ子に、しょうがないなぁ~

といった感じで少年が、リモコンを貸そうとしたらラジコン飛行機はコントロールを

失い林の中に姿を消してしまう。

 

「おちちゃった……」

「あちゃ~」

 

落ちてしまったラジコン飛行機を探すために、二人は林へと入っていく。

 

「どこにいったのかな~?」

「う~ん……あった!」

 

ラジコン飛行機を見つけた二人は、早く拾おうとするあまり足元に目が行かなかった。

 

「うわっ……!」

「ひゃっ!」

「「わぁぁぁっっっっ!!!!!」」

 

二人は、まるで落とし穴のように隠れていたダクトに落ちてしまった。

 

「うっ!」

「たっ!」

 

落ちたダクトの先には、幸いなことにダンボールがありそれがクッションとなって

二人にケガはなかった。

だが、落ちた拍子に吹き飛んだダンボールが何かの機械のスイッチに当たり、

そこで作られているものが起動した。

 

「いてて……何だここ……」

「……おもしろーい!もういっかい♪もういっかい♪」

「呑気だな~。……ん?

 わっ!?ロボット!?」

「ほんとだ~。おっきいっ!」

『わたしは、でっかーど……わた、しは……でっかーど』

 

二人が見上げる先には、まだ作りかけなのか人型の基礎フレームに

顔だけのロボットが置かれており、自分の名前らしきものを繰り返し口にした。

 

「はぁ~……僕は勇太……友永勇太だ!」

「織斑一夏だよ!」

『ともなが、ゆ、う、た……。

 おり、むら、い、ち、か……』

 

友永勇太、織斑一夏。

地球で初めて心を持ったロボット“デッカード”の人工知能に

最初に記憶された言葉……それが二人の友達の名前であった――――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「う~~~ん……なんか、懐かしい夢見ちゃったな~。

 さてと!」

 

ベッドから起き上がった10歳ぐらいの少年は、階段を下りて玄関へと

向かった。

 

『おはよう、一夏。今日も早いな』

「おはよう、デッカード。

 家は、揃いもそろって朝に弱いのが多いからな~。

 俺が起こさないと、いつまでも寝てるんじゃない?」

『いつも、ご苦労様だな』

 

玄関に出て、新聞を取った少年……一夏は駐車場に止まっている

パトカーと世間話をする。

もちろんこのパトカーは、ただのパトカーではなくデッカードが変形した

ものである。

普段、彼はここ“友永家”の一員として生活しているのだ。

 

「今日は、懐かしい夢を見たよ。

 俺と勇兄が、最初にデッカードに会った時のさ~」

『あの時か……。

 君達と出会ってから、5年ぐらいになるな。

 小さかった一夏も勇太のように大きくなるわけだ』

「じゃあ、みんなを起こしてくるよ」

『……一夏もブレイブポリスのボスとなった時の勇太と同い年か。

 時が経つのは、早いな』

 

ウインカーを器用に動かしてパトカーのまま感情を表すデッカードは、

感慨深げにつぶやくのだった。

 

「は~い!みんな起きて!

 朝ごはんだよ~」

「ふ……わぁ~~~」

「勇兄、朝ごはんの前に顔を洗ってきたら?」

「う~~~ん……おはよう、一夏」

「おはよう、くるみ姉。

 受験生は、夜遅くまで勉強で大変だね」

「おはよう。いつも悪いわね、一夏」

「気にしないでよ、あずき姉。

 好きでやってるんだから。

 それにしても、千冬姉は今日も最後か。

 本当に、朝は弱いんだから~」

”いつまた、外宇宙から侵略者が来るかわかりません!

日本の……ひいては、世界を守るためにISによる軍備強化を!”

“ですから!これ以上、ISを軍事に取り込むのは危険です!”

“そうだ!

個人の気まぐれで、牙を向く危険があるものなど使えるか!

『フォルツォイクロンの悪夢』を忘れたのか!”

「ま~た、やってるわね」

「全く……。束さんもISは、宇宙に行くために作ったって言ってるのに……。

 それに防衛って言うなら、ブレイブポリスがいるじゃん!」

 

朝食を準備しながら、一階へと降りてくる家族にそれぞれ声をかけながら、

一夏はまだ起きそうにない千冬を起こしに行こうとするとテレビのニュースに

目を向ける。

聞こえてくる内容に、呆れた声を出すくるみに一夏も同意する。

 

 

 

白騎士事件直後――。

現行兵器を遥かに上回る性能を世界に見せつけたISとブレイブポリスは、

瞬く間にその名が広まった。

当初、本来の目的より外れて軍事転用されようとしたが、それはすぐさま

収束した。

ISは、心臓部であるコアが開発者である束でも把握しきれていない

ブラックボックスと化しており、またブレイブポリスの心が宿りAIから超AIと

なった人工知能も人間の脳のように未知のものとなり、

どちらも一朝一夕で解析できる代物ではなかったからだ。

軍事転用をするためには、想像以上に長い時間を必要とするため、

ブレイブポリスは試験運用もかねて警察組織として、

ISは宇宙開発だけでなく災害救助等のパワードスーツとしての研究開発が

進められ、兵器としての利用は見送られるかと思われた。

だが、犯罪史に残る最悪の事件で状況は一変してしまう。

 

“フォルツォイクロンの悪夢”。

フォルツォイクロンを開発したエヴァ・フォルツォイクとその息子

ノイバー・フォルツォイクによって引き起こされたこの事件は、

“白騎士事件”以上に人々の記憶に深く刻まれている。

エヴァ・フォルツォイクは自らが作り上げたフォルツォイクロン

によって来るであろう、ロボット時代を支配するべく密かに

フォルツォイクロンに特殊な回路……シークレットサーキットを組み込んでいた。

“ハーメルンシステム”によってシークレットサーキットが起動したフォルツォイクロン

を搭載したロボットは支配下におかれ、エヴァの思い通りになってしまうのだ。

それは、心を持ったロボットであるブレイブポリスも例外ではなく、

危うく最悪の犯罪ロボットになって、人々に牙を向けてしまうところであった。

同じように世界各国の軍事兵器の大半は、フォルツォイクロンを搭載したロボットであり、

その全てを無力化され、フォルツォイク親子を止められるものはいなかった。

 

しかし、世界の終わりとも言える中でフォルツォイクロンを搭載していなかった

ISが、盾となり剣となってフォルツォイク親子と戦った。

兵器として開発、研究がほとんどされていなかったISだったが、突貫作業で

少ないながらも武器を搭載し、フォルツォイク親子の配下ロボット達を迎撃した。

初めてと言っていい実践に、人間を簡単に握りつぶせるぐらいの巨大な相手、

10機にも満たない数にも関わらず、ISは善戦した。

体格差を利用して、機動力でかく乱し、一体一体を確実に倒していったが、

疲れを知らないロボットに圧倒的な数の差、一つのミスが死に直結するという

極限のプレッシャーに次第に押されていった。

だが、その行動は無駄ではなかった。

ISが防衛に出てくれたおかげで、ブレイブポリスはハーメルンシステムに

対抗する改造をジェイデッカーに施すことができ、その戦いの中で

デッカード達、超AIを持ったロボットは機械の体に心を持った

機械生命体へと進化を果たし、フォルツォイク親子の野望を止めることができた。

 

“そちらこそ、忘れたのか!

超AIを搭載した軍事ロボットの脅威を!

もし、彼らが人間に反旗を翻した時に、対抗できるのはISしか

ないのだぞ!”

 

搭載すれば、ロボットに設定された以上の性能を引き出す超AIだったが、

それは一歩間違えば、心を持った悪魔を造り出してしまう危険もあった。

実際、初めて超AIを搭載した軍用ロボットであるチーフテンシリーズは、

人間には制御できず、何人もの犠牲者を出し、ブレイブポリスも圧倒する程であった。

これらの事例も踏まえ、各国は制御できない危険性のあるロボットに代わる兵器として

ISに注目するようになったのだ。

数に限りがあるというのも逆に、厳重に管理すれば均衡を保てるということであった。

 

無論、ISにもフォルツォイクロンのように開発者である

束の気まぐれによって暴走等の可能性があるため、

兵器への運用はそれほど大きくは進んでいないのが現状である。

中には、これを機に兵器を破棄してはという意見もあるのだが、数えるほどしか

ない意見など無いも同然であった。

 

「はぁ~。兵器だのなんだのって、このままじゃハイジャス人の言うように

 本当に地球は滅びちゃうよ……」

「勇兄……」

 

ハイジャス人とは、銀河警察として宇宙の監視者を名乗る宇宙人達である。

かつて、地球へ侵入した宇宙の犯罪者を追ってきたのをきっかけに、

ブレイブポリスとコンタクトを交わし、同じ平和を守る者同士、共に

歩んでいけるかと思われたが、平和への考えは異なっていた。

ハイジャス人達は、種としての生命をまっとうさせるために人々の心に干渉し

感情を消し去る“精神浄化”を地球に対して行おうとしたのだ。

このまま行けば、地球の文明は人間の悪しき心によって滅びてしまうという

判断の下に。

実際に精神浄化を受けてしまった人がどうなってしまうかを、運よく免れた

宇宙人カピアから伝えられた勇太達ブレイブポリスは、精神浄化を阻止するべく

ハイジャス人達に、自分達の意志を伝えた。

地球を滅ぼしてしまうかもしれない、犯罪と言う人の悪とは自分達が戦っていくと――。

それを聞き届けたハイジャス人達は、受け入れたのか見限ったのか、

宇宙のいずこかへと去っていった。

 

「な~に、落ち込んでんのよ勇~太~!」

「いたっ!く、くるみ姉ちゃん……」

「ブレイブポリスのボスが、そんなんでどうするの!」

「そうよ、勇太」

「うん!今日からは、俺も皆と一緒に戦えるんだからさ!」

「あずき姉ちゃん……。一夏……。

 そうだね……。悩んでても、何も解決しないよね!」

 

家族の励ましを受けて、落ち込んでいた勇太の表情は明るさを取り戻した。

 

「おはよう……みんな……。

 ん?どうかしたのか?」

「千冬姉……」

 

いい感じでまとまったと思ったタイミングで、家族にしか見せないだらしない姿で

現れた千冬に一夏は脱力するのであった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「待っていたよ、一夏君」

「こんにちは、冴島さん!」

 

時間は流れ、小学校の授業が終わる放課後。

一夏はブレイブポリスの基地、デッカールームへと来ていた。

そこには、デッカードや他のブレイブポリスのメンバーに、ボスの勇太、

警視総監の冴島十三が一夏を歓迎していた。

 

「では、改めて……織斑一夏君。

 本日をもって、君を正式にブレイブポリスの一員に任命する!」

「はい!精一杯、がんばります!

 ……ぷっ……ハハハハハ!」

 

任命を受け、デッカード達とお揃いの警察手帳をもらった一夏は、

背筋を伸ばして敬礼をし……耐えきれなくなったように笑い出す。

 

『ハハハ!そうだよね~。何だか、今更って感じだよね?』

『そうだな、ドリルボーイ。

 最初から一夏は、ブレイブポリスの一員みたいなもんだしな?』

 

一夏につられて、ビルドチームのドリルボーイとパワージョーは笑い声をあげる。

 

「うむ。

 確かに勇太君のように一夏君も刑事にしたかったが、流石に5歳の子供を

 任命するのは無理があったからな」

『最も、それも形だけのようなものでしたがね』

『そうです。昔から、一夏も我々の大切な仲間であります!』

 

実に残念と言った感じで冴島が、一夏を刑事にできなかった理由を言うが、

マクレーンとダンプソンはそれこそ今更と言うように続く。

勇太程ではないが、一夏も度々ブレイブポリスの一員として

事件解決の力になっていたのだ。

 

『やれやれ~。

 おチビさんもちょっとは、大きくなったと思ったのに今度は、

 別のおチビさんかよ~』

『そう言いなさんな。

 これでこそ、ブレイブポリスって感じじゃないですか』

 

ガンマックスが憎まれ口を叩くが、本気で言っているのではないのは

誰の目にも明らかであり、シャドウ丸がたしなめつつ、

ブレイブポリスらしさが戻ってきたと微笑む。

 

『それで、総監?

 一夏はどういう役割に就くんですか?』

「ああ、それなんだが、藤堂の下について君達のメカニックを

 担当してもらおうと思う」

 

和やかな雰囲気の中、デュークが一夏の任について尋ねると

冴島は、思い出したように説明した。

 

「へぇ~。てっきり、僕達と一緒に現場に出ると思ったのに」

「へへへ♪

 機械いじりは、昔から好きだったしね。

 それに、現場にも出るよ?

 皆が、ケガをしてもすぐに治せるようにさ!」

『一夏……』

 

一夏が任されたことに意外だったのか、勇太が覗き込みながら傾げると一夏は

照れくさそうに笑うのであった。

そんな一夏の優しさにデッカードは感慨深くなるが、それは他の皆も一緒であった。

 

「ははは!頼もしいな~♪

 じゃあ、よろしく頼むよ一夏」

「任せてよ、勇兄!」

「違うだろ、一夏。ここじゃ、僕のことは……」

「あっ!そっか!こほん……。

 任せてよ、ボス!」

『ああ、よろしく頼むぞ一夏』

「オッケィ!」

 

ブレイブポリスの始まりの時のように、一夏は勇太とデッカードに

ピースサインで応えるのであった。

 

 

 

 

 





白騎士事件直後は兵器として注目されたISと超AIでしたが、
未知の部分が多すぎるということで、兵器開発はそれほど進んでおりません。

しかし、チーフテンやフォルツォイク親子の事件で、
ロボットに防衛を任せるのは危険と次第に、兵器としての
研究がされてきています。

ISとブレイブポリスの強さですが、飛行能力や人とロボットとしての
違いもあるため、一概にどちらが上とは明確に決められません。
一部の者は、ISこそ!ロボットこそ!と言い争っております。
また、合体すれば総合能力はISを上回ると思いますが、体の大きさの
違いから起動力の差で、ジェイデッカー達が翻弄されると思います。
むしろ、もし戦うなら合体前の方が戦いやすいのでは?

一夏は、今回より放送時の勇太と同じ小学4年生で
正式にブレイブポリスの一員となりました。
最も、当初からちょくちょく事件には首を突っ込んでおりましたwww
メカニック担当の背景や、友永家にいる理由はまた次回で。

友永勇太:15歳となり、子供らしさが抜け始めているが、
     根本の優しや勇気は変わっていない。
友永あずき:21歳の大学生。柏崎と順調に交際中。
友永くるみ:18歳の高校生。現在、受験生。


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第3話 山の中で


花粉症の季節ですが、たまに薬を飲んでも鼻がすごいことに
なることがあって辛いです(苦笑)

月末にはISの最新刊が出ますが、
また延期とかにならないだろうな(ジト目)

おそらく、登場は今回だけになるでしょうが、ゲストキャラ勢を何人か。


「それで、どうだ藤堂。一夏君は?」

「大したもんでさ。

 昔から、筋はいいと思っていやしたが、教えたことは

 砂が水を吸うみたいに吸収していきやす。

 あまり好きな言い方じゃありやせんが、血は争えないってやつですね」

「織斑冬輝(ふゆき)博士か……」

 

冴島は藤堂と共に自宅で昼食を取りながら、最近の一夏の様子を尋ねる。

藤堂は笑いながら彼の成長を語り、その背にある男の姿を感じ取っていた。

一夏と千冬の父、織斑冬輝。

ロボット工学の第一人者であり、従来の技術にとらわれない自由な発想

の数々で、ロボット技術を発展させた天才科学者である。

彼がいなければ、ロボット技術は半世紀の遅れがあったと言われている。

 

「俺は、あの人の発明は好きでしたね~。

 なんて言うか、こう……夢があふれているっていうか!」

「私もだ。

 特に彼は、人間の“友達”としてのロボットの研究に力を入れていた。

 それが、デッカード達ブレイブポリスの基礎理論にもなっている……。

 その息子の一夏君が勇太君と共に、デッカードと出会ったのは

 まさしく運命だと思うよ」

「研究発表先の海外で事故にあって、亡くなったと聞いた時は、

 誰もが悲しみましたさぁ……。

 ロボット技術者で、織斑博士と関わらなかった奴はいませんからね」

「一緒に行っていた奥さんも共に亡くなったらしく、一夏君と千冬ちゃんは

 親交のあった勇太君のご両親に引き取られたらしい……」

 

目を輝かせて懐かしむ昔話から一転して、二人の間に重い空気が流れる。

 

「ところで、旦那?

 わざわざ一夏君のことを聞くために、俺を呼んだですかい?」

「いや、お前を呼んだのはその織斑博士のことについてだ。

 これは、まだ可能性の域を出ない話なのだが、どうも織斑博士が亡くなったのは

 事故ではないかもしれないんだ……」

「な、何ですって!?」

「下手なことを言ったら、一夏君と千冬ちゃんを混乱させてしまうからな。

 まず、お前だけには話をしておこうと思って呼んだんだ。

 もしも、事故でなかったとしたら、我々ブレイブポリスは強大な組織

 と戦うことになる」

「強大な……組織?」

「ああ。お前も、聞いたことがあるはずだ。

 第二次世界大戦の頃から、存在していると言われる……世界の裏で

 暗躍する謎の組織……」

「まさか!」

「そう。亡国企業……通称、ファントム・タスクだ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「おーい!お前ら~。早く来いよ!」

「待てよ、虎太郎!」

「流石、忍者の息子だね」

「どこでも元気だよな、虎太郎は」

 

一夏は今日、山に遠足にやってきていた。

同じ班である霧隠虎太郎は、水を得た魚の如く元気いっぱいに駆け回り、

クラス委員である野球のユニフォーム風の服を着ている少年、

流崎力也は彼をなだめるのに四苦八苦している。

 

「もう、虎太郎君!集団行動を守りなさい!」

「亜衣子先生もいつも以上に、大変そうだね」

「そうだな、鷹介」

「虎太郎君!ちゃんと先生の言うことを聞きなさーい!」

「う~ん、何かイマイチピンと来るものが無いわね……」

「千夏ちゃん、カメラを回しながら歩くと危ないよ?」

「テンション上がっている奴もいれば、平常運転の奴らもいるな」

「ははは……」

 

自由気ままな虎太郎を注意する担任の立花亜衣子と女子のクラス委員である武田桂に、

学校新聞の記者でいつもスクープを狙っている結城千夏、そんな彼女に

注意をうながす小牧百合香。

遠足でも普段の学校とやっていることが変わらない面々に、一夏はクラスメートの

風祭鷹介と共に肩をすくませてヤレヤレといった感じである。

 

「そんでもって、あいつは……はぁ~。

 ほら、お前もこっち来いよ~、箒~」

「う、うるさい!余計なお世話だ!」

「……ったく」

 

クラスメート達から少し離れて歩く少女、篠ノ之箒に一夏は声をかけるも

返ってくるのは如何にも不機嫌といった尖ったものだった。

最もそれは、ただの照れ隠しであることは、一夏を除くクラスメートや

担任にはバレバレであった。

 

「一夏も変わらないよね~」

「何だよ、一体?」

「(全く、どうしてお前はそうニブイのだ!)」

 

鷹介の呆れ顔に首を傾げる一夏を、箒は後ろからムムムと唸りながら

鋭い視線を送る。

 

「(ただでさえ、ブレイブポリスに入って一緒にいられる時間が少なくなってきた

 と言うのに!)」

 

心の中で地団駄を踏みながら、箒は今の自分と一夏の関係に不満を漏らす。

もう、お分かりだろうが、彼女は一夏に淡い思いを抱いているのだ。

 

「(はぁ~。一夏と会った時は、こんな風になるなんて夢にも思わなかったぞ……)」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

一夏と箒の出会いは、二人の姉を通してのものであった。

箒は、一夏の姉である千冬の親友にしてISの生みの親である束の妹であり、

千冬が箒と束の実家である剣術道場に一夏を連れてきたことで知り合ったのだ。

知り合った頃は、馬が合わなかったのがたびたび衝突していたが、何より箒が

一番気に食わなかったのは、自分以上にあった剣の才能だった。

幼い頃から、剣道を学び同年代の男子にも負けない腕前であったが、一夏は

そんな箒より短い期間でほとんど変わらない腕前となったのだ。

もちろん、剣道を始めた当初は一夏の黒星続きだったが、勇太やデッカード達

ブレイブポリスと共に大きく心が成長している一夏はメキメキとその

腕を上げていったのだ。

 

「(最初は負けん気だけは一人前で、腕の差もわからないのか何度負かされても

 向かってきて……そして、あっという間に追い付かれた……。

 しかも、ブレイブポリスも手伝っていて、鍛錬は私よりも少なかったはずなのに)」

 

剣は己を映す鏡と言うように、一夏が短期間で腕を上げたのは

それこそブレイブポリスで過ごした時間が大きかった。

向かうところ敵なしで、無敵と信じて疑わなかったジェイデッカーの敗北。

人の果てしない欲望と業の深さによる、クローン技術やバイオ生命体等の

決して人間が踏み込んではいけない領域を犯した犯罪の数々。

そして、ハイジャス人による精神浄化……。

子供が、経験するとは思えない悲しみや苦難を乗り越えてきた一夏は、

本当の意味で強くなっていったのだ。

もちろん、それは一夏だけでなく勇太やデッカード達も同じである。

彼らと言う共に歩む仲間、追いかける目標があったからこそ、

一夏はまっすぐに成長できたのだ。

 

「(一夏に完璧に負けたと思ったのは、あの時だな……)」

 

箒が思い出すのは、2年生だった時……。

いつものように男子に、からかわれていた時だった。

古今東西、男子と言うのはからかった相手の反応を楽しむ……

相手の気持ちなど考慮せず。

竹刀を持ち歩き、しゃべり方もどこか侍を感じさせていた箒は、

良くも悪くも目立ち、そういう男子から格好の的となっていた。

 

そこへ口を挟んだのが、一人教室のそうじをする一夏だった。

別に箒を助けようとしたわけではないが、他のそうじ当番はさぼり一人でそうじを

していたところに加え、無意味に感じるからかいに少々苛立っていたのだろう。

当然、からかう男子は面白くなく一夏にもやじを飛ばすが、一夏はどこ吹く風で

あった。

しかし、不用意に放った男子の一言で事態は一変する。

 

“まじめにそうじなんかして、バカみてぇー”

“だよなー。この間、交通安全教室で来たダンプソンってロボットも、そこの

男女みたいにバカみてぇにクソ真面目で笑っちまうよなー”

“リボンしてた男女みたいに笑えたよな~”

 

そうやってバカ丸出しで笑う三人の男子は、力づくで黙らせられた。

顔面へ、怒り心頭の一夏の拳を叩き込まれて。

 

“真面目に、やることの何がおかしいんだ!

確かに、ダンプソンも篠ノ之も石頭の堅物だよ。

だけどな、お前らと違って相手を思いやれる優しい奴らなんだよ!”

 

そこからは、一夏の独壇場であった。

千冬から体術も教わっていた一夏にとって、自分より弱い相手しかできない者など

何の脅威にもならず、結果3対1でも圧勝した。

だが、そこからは少し大変であった。

一夏にのされた三人の親が、やれ慰謝料だの裁判などと騒いだのだ。

別段間違ったことをしたと思わない一夏は気にすることはなかったが、

それでも友永家の両親や千冬が頭を下げるのは許せなかった。

 

“後で面倒なことになるとか、考えなかったのか?馬鹿なのか?”

“馬鹿じゃねえよ、馬鹿。

後の面倒とか知るかよ、仲間の悪口言われて黙っていられるか。

何にも知らないのに、好き勝手なこと言うのは卑怯者のすることだ。

ダンプソンは、口うるさく言うのは相手のことを考えて出し、

篠ノ之だって倒れた相手が立つのに手を貸せれる女の子だろ?”

 

少し落ち着いてきたころ、箒は一夏にどうしてこんなことをしたのかと

問いかける。

実際、この時一夏は千冬とダンプソンからこっぴどく叱られた。

腹が立ったから、力で相手を黙らせるのは“暴力”だと――。

最も二人は、一夏が殴りかかった“理由”までは、咎めなかった。

 

“感情に任せて力を振るうな、馬鹿者。

怒りのままに振るう力は、ただの暴力だ。

デッカード達は、そんな風に力を使っているか?

だが、そうやって間違っていることを間違っていると言えたのは……

よくやった”

“仲間の悪口を言われて、頭に血が上るのはわかるであります。

自分だって、カチンときます。ですが、一夏。

力づくで相手をねじ伏せるのは、相手のことを考えない

その子達と同じであります。

本当に、今回自分は間違っていないと胸を張って言えるでありますか?

だけど、自分の為に怒ってくれたのはうれしいです”

 

この千冬とダンプソンからの言葉を受けて、一夏は

力についてよく考えるようになり、“穏便”な方法でバカを撃退していく。

この時、箒は一夏の強さを少しわかった。

彼の誰かのために怒れる優しさに――。

こうやって、一夏の優しさに触れた箒は、一夏のことを意識するようになっていった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「おっ、そうだ!なぁ、一夏!

 ちょっと、ブレイブポリスを呼んでくれよ~」

「はぁ~?何言っているんだよ、虎太郎?」

「せっかく遠足で、遠出したんだからさ~。

 ちょっと変わった思い出を作りたいじゃん?

 一緒に遊ぼうぜ~!」

「虎太郎にしては、いいアイディアじゃない!

 ねぇ、一夏君!

 ブレイブポリスを呼んで、写真撮らせてよ!」

「あのな~~~。事件が起きたわけでもないのに、

 デッカード達を呼べるわけないだろ」

 

好き勝手に言う虎太郎と千夏に、一夏はため息をこぼして呆れる。

 

「何、馬鹿なことを言ってるんだ、虎太郎!」

「そうよ!ブレイブポリスは、正義の味方なのよ!

 そんなつまんないことで、呼んでいいわけないでしょう!」

 

学級委員である、力也と桂は当然の如く注意するが、聞き分けがいい方でない

虎太郎と千夏はふくれっ面をさらす。

 

「馬鹿とは何だ!馬鹿とは!」

「つまんないことって何よ!スクープの邪魔しないで!」

「ちょっと、落ち着きなよ」

「仲よくしよ?」

「遠足でまで、喧嘩するなよ」

「何をやっているんだ……」

 

売り言葉に買い言葉に取っ組み合ってにらみ合う4人を

鷹介と百合香が止めに入り、一夏と箒は頭に手をやりながら呆れる。

 

「その辺に」

「ねぇ~ってば……きゃっ!」

「百合香ちゃん!」

「イタタ……あっ!私のハンカチ!」

 

組み合っている内に、突き飛ばされた百合香はその拍子にハンカチを

落としてしまい、崖に落ちるのを防ぐ柵を超えた先にある木の枝に

風で飛ばされ、引っ掛かる。

 

「あちゃ~」

「もう!虎太郎君!千夏ちゃん!」

「う~ん……柵に手を付けても取るのはちょっと難しいな……」

「みんな、危ないから近寄らないで~!」

「亜衣子先生、私のハンカチ……」

 

鷹介が発端の虎太郎と千夏をにらむと二人は怯み、それを無視しながら

力也が取るのは無理ともらすと百合香は、涙目になる。

 

「……わーったよ!俺が取ってきてやるよ!」

「こ、虎太郎君!?」

「おい、やめとけって!身軽なお前でも危ないぞ」

「そうよ、やめなさい虎太郎君!」

「じゃあ、どーすんだよ!」

「…………」

 

自分で蒔いた種だからと、責任を取ってハンカチを取りに行こうとする

虎太郎を力也達が止めようとする中、箒はじっとハンカチに目をやる。

 

「え~っと、確か……あった!

 お~い、虎太郎~。これを使えば、取れるんじゃないか?」

「一夏君、それってロープ?」

「何で、そんなものを持ってきてるんだよ?」

「山はいつどこで、何が起きるかわからないからな。

 役に立ちそうな道具は、持ってきているんだ。

 虎太郎なら、このロープを命綱にして結べば大丈夫だろ」

「すっげぇなぁ~、一夏♪

 よ~し!後は、俺に任せて……」

「何してるの篠ノ之さん!」

「危ないわよ!戻って!」

 

一夏が22世紀からやってきたネコ型ロボットよろしく、

リュックから秘密道具もといロープを取り出して、虎太郎達に

説明していると、桂と千夏が悲鳴を上げる。

見ると、箒が柵に手をかけ崖から生えた樹を足場にして、ハンカチへと手を伸ばしていた。

 

「箒っ!?」

「後少し……」

「篠ノ之さん!」

「……っ!やった!とれ……」

 

ほんの数センチ伸ばせば届く距離まで手を伸ばした箒だったが、

迫る危険の足音に気が付いた百合香の声は届かず、ハンカチを手にした瞬間

体が浮遊する感覚に襲われた。

 

「えっ……」

「箒!!!」

 

何が起きたか理解できないといった顔をする箒が見たのは、自分へと手を

伸ばす一夏の姿だった。

 

 

 

「うっ……何が……」

「大丈夫か……箒……?」

「え?い、一夏!?」

 

意識が少し飛んだ箒は、自分の下から聞こえてきた一夏の声に

驚きひっくり返った声を上げる。

 

「どどどどうして、お前が私の下に!」

「それより、どいてもらっていいか?」

「す、すまん//////!」

「……テテテ。

 ずいぶん、落ちたなぁ~。途中の樹がクッションになっていなかったら、

 こんなかすり傷じゃすまなかったな」

「落ち……た?」

 

急いで一夏の上からどいた箒は、顔を見上げて上を見る一夏と

同じように上を見て、自分達の現状を理解した。

足場としていた樹が折れて、自分は転落したのだ。

そして、そんな自分を助けようとして一夏も一緒に落ちてしまったのだ。

一夏の言うように、何度か途中の樹に引っかからなければ、落下のスピードは

落ちず、大怪我を負うか最悪命はなかっただろう。

 

「……」

「さてと。これは、非常事態だからな。

 デッカード達に救援を……ってあれ?

 ない……警察手帳がない!

 まさか、落ちている時にポケットからこぼれちまったのか!?」

 

一夏はデッカード達に連絡するべく、ブレイブポリスの警察手帳を取り出そうとするが、

ポケットに入れていたはずの手帳が無いことに焦りを見せる。

一夏の言うように、彼の警察手帳は落下中に落としてしまい森の中であった。

 

「くっそ~。これじゃあ、先生達が救助を頼んでもみんな、山に落ちた

 手帳の方に行っちまうぞ。

 こうなったら、自分達で何とかするしかないな……。

 とりあえず、登山道か川を探そう。どっちでも辿っていけば、

 山を下りられるはずだ。

 行くぜ、箒」

「えっ?あっ……ああ」

 

かなりの距離を落ちたのか、上を見ても落ちた柵は見えず、助けを呼ぶことも

できないので、一夏は自分達で行動を起こそうとする。

 

「っ!(痛っ!まさか……落ちた時に足を捻ったのか……?)」

「ん?どうしたんだ?」

「な、何でもない!私はここで待ってるから、早く助けを呼んできてくれ」

「ここで待ってるって……どこかケガして動けないのか?」

「だ、大丈夫だ!ただ、捻っただけ……あっ!」

「こんなことで、意地を張っても仕方ないだろう~。

 ほら、靴脱いで。

 確か、包帯とアイスパックが……あった!」

「うぅ~~~//////」

 

立ち上がろうとした箒は、足に走る激痛に顔を青くし、怪訝に思った一夏に

余計な気遣いをさせぬよう、何でもないとウソをつくがあっさりと看破され

応急手当てを受ける。

 

「よし、できた。ほら、箒」

「何だその恰好は?」

「何って、おんぶだよ。そんな足じゃ、歩けないだろ?」

「なっ!おおおおんぶだとっ////////////!?

 そそそそんなことできゅりゅか!

 きっと私はおみょいぞ////////////!」

「他に二人一緒に動ける、いい方法も無いだろ?

 箒を一人置いておくわけにはいかないし、山の天気は変わりやすい。

 もしも、雨なんかに降られたらそれこそ最悪だ。

 そうなる前に、早くみんなと合流するか山小屋でも見つけないと……」

「~~~///////。わ、わかった。

 だ、だが、私が重いからって文句を言うなよ///////////!」

「はいはい。言わない言わない」

 

好きな男子におんぶしてもらえるという思わぬ展開に、頭が沸騰する

箒だったが、一夏は全く気にすることなく早くおぶさるように促す。

もう一度言うが、テンパって噛みまくりの箒に、全く気にすることなく。

 

 

 

「どうしよう、虎太郎君!力也君!

 一夏君と篠ノ之さんが!」

「くっそ~!こうなりゃ、俺が一夏のロープを使って

 下りてみるぜ!」

「やめろ、虎太郎!」

「そうよ!虎太郎君まで、迷子になって遭難してしまうわ!」

「とにかく、早く救助を呼びましょう!

 先生!」

「ええ。桂さんの言うとおりね。

 ブレイブポリスに……あああっ!

 携帯の充電が切れてるっ!?」

「「「「「えええっ!?」」」」」

 

一方、その頃。

残された虎太郎達は、大混乱になりながらも何とか一夏と箒を助けに行こうとするが、

いい手は思い浮かばず、救助の連絡をしようにも連絡手段もない一同は、山を下りるしか

手は残されていなかった……。

 

 

 

「はぁ……はぁ…ど、どうだ箒?

 方角は……こっちで……あ、合っているか?」

「ああ。大丈夫だ……このまま、まっすぐだ。

 (一夏……すごい汗だ……)」

 

行動を開始した一夏と箒は、持っていた地図とコンパスそして太陽の位置を

頼りに登山路を目指していた。

一夏に背負われた箒は、地図を手にナビをするが汗だくの一夏に申し訳なさで

いっぱいだった。

 

「箒……足は、大丈夫か?

 痛みがひどくなったら、すぐに言えよ?」

「私より、お前の方が大丈夫か?

 さっきから、歩き続きで疲れているだろ……」

「俺は……その……あれだ!男だからな!」

「何だそれは……」

 

箒を不安にさせないためか、ずっと話しかける一夏だったが、多少どころか

かなり強がっているのは明らかだった。

 

「ところで……さ。

 何であんな無茶して、百合香のハンカチを取ろうとしたんだよ?」

「そ、それは……前にあのハンカチは、母に作ってもらったものだと

 言ってたから、早く拾いたいだろうと……」

「相変わらず不器用に優しいよな、お前。

 だけど、それでお前がケガとかしたら意味ないだろ……」

「すまない……私のせいでこんな……」

「まあ、終わったことをグチグチ言っても仕方ない!

 日が沈む前に、早く皆と合流しようぜ!」

「……私より、お前の方がずっと優しいじゃないか」

「ん?何だって?」

「何でもない……!」

 

こうやって二人、山で迷子になったのは自分のせいだと落ち込む箒に

一夏は明るく笑いながら、前向きに考えていく。

そんな一夏を見て、顔を赤らめてか細い声でつぶやく箒の言葉は

幸か不幸か一夏の耳には入らなかった。

 

「あれ?何か聞こえなかったか?」

「いや。何も聞こえないぞ?」

「けど、何か足音のような……」

「ま、まさか……クマとかじゃあ!」

「う~ん、動物の足音って言うよりあれは……もっと大きい……」

『おーい!』

「あの声は!」

 

森の中をさまよい歩くこと数時間。

どこからか、重量感のある足音が聞こえてきて、山の動物かと箒は

一夏に強く抱き着くが、同時に聞こえてきた声に一夏の表情は安心に染まっていく。

 

『一夏、どこにいるでありますかー!

 っ!一夏!』

「ダンプソン!」

『見つかって、よかった。どこか、ケガはしてありませんか?』

「俺は、大丈夫。でも、箒が足を捻ったみたいで……」

『わかりました。

 まずは、みんなに連絡します。

 こちら、ダンプソン。一夏と遭難した子供を、発見したであります。

 これから、ふもとまで連れていきます……では、二人とも』

 

聞こえてきた足音の主は、ダンプソンであった。

彼は一夏と箒を見つけると、ホッとし通信で無事を伝えると二人を手に乗せて

移動をする。

 

「っ!」

『大丈夫。しっかり、つかまっているであります』

「どうだ、箒。すげぇーだろ♪」

「あっ……ああ」

「それにしても、何でダンプソンがここに?」

『連絡を受けたんです。一夏がクラスメートを助けようとして、

 崖から落ちたと。

 それで、動けるメンバーで駆けつけたのであります』

 

ロボットの手に乗るという初めての体験に驚く箒に、一夏はそのすごさを

胸を張って自慢する。

その中で、一夏はダンプソンがここにいる理由を尋ねる。

 

一夏と箒が落ちた後、急いで山を下りていた虎太郎達はその途中で

運よく他の登山客と出会い、何が起きたのかを話してブレイブポリスに

連絡をしてもらっていたのだ。

 

『大変だったんですよ?

 連絡がつかないと思って、手帳の反応を探したら手帳しか

 なかったから、しらみつぶしで探したんですから』

「あはは……すみません」

 

ダンプソンの愚痴に一夏は、ガクッと頭を落とす。

 

「ち、違うんだ!私が一人で、先走ったからそれで……!」

『どういうことでありますか?』

 

落ち込む一夏を庇うように箒は、必死にダンプソンに自分が悪いと

伝える。

 

『なるほど……。

 確かに、それはあまり褒められないであります』

「うっ……」

「おい、ダンプソン!」

『一夏。

 こういうことは、ごまかさずちゃんと言わないと

 ダメであります。

 一夏は自分だけでやろうとせず、他の子達と力を合わせようと

 していました。

 最初から、彼らと一緒に落ちたハンカチを拾おうと

 していれば、こんなことにはならなかったはずです』

「……っ!」

『だから、戻ったらみんなにちゃんと謝るであります。

 とても心配していたでありますから』

 

ダンプソンは、凛とした口調でもどこか優し気に箒に語り掛ける。

その言葉から箒は、ダンプソンが自分のことを思って敢えて厳しく

言っているのを感じた。

 

「なんていうかさ~。やっぱり、箒とダンプソンって似ているよな~。

 真面目で頑固だけど、お人好しの優しいとことか♪」

「な、何を言っているんだ!お前は////////!!!」

『誰が、頑固ですか!自分は、やるべきことをやっているだけです』

「はいはい」

 

箒とダンプソンの意外な組み合わせの似た者同士を、褒める一夏

だったが、二人は頑としてそれに抗議した。

最も箒は単なる照れ隠しだが。

そうこうしている内に、一夏達はみんなが待つふもとに到着した。

 

「みんな!あれ!」

「一夏!篠ノ之!」

「心配かけやがって!」

 

姿を見せたダンプソンとその手に乗る一夏と箒を見た鷹介が叫ぶのを

皮切りに虎太郎、力也が喜びの声を上げて他の子達も同じように安堵の声を

上げる。

 

「よかった~。今度の学校新聞のトップは、これで決まりよ!」

「あなたね~」

「でも、二人とも無事で本当によかった……!」

 

カメラを回す千夏に呆れる桂のそばで、百合香は涙ぐむ。

そんな彼女達の元に、ダンプソンの手から降りた箒が一夏の肩を借りて

やってきた。

 

「こ、小牧……こ、これ……」

「私のハンカチ!」

「何とか拾えたからな……/////////。

 そ、それとみんな!

 あの……その……一人で勝手なことして……心配をかけて……

 すまなかった!」

 

普段、孤高といった印象の箒が頭を下げて謝る光景にクラス全員

唖然とする。

 

「いや~こいつさ~。そのハンカチが、百合香の大事なもんだって

 知っていたから早くとってやろうとしたみたいでさ~」

「一夏っ//////////!!!」

「篠ノ之さん……ううん。箒ちゃん、ありがとう!」

「なんだ~、ツンツンしてると思ったら、意外と優しいんだ!」

「全く、素直じゃないわね」

「あ!えっ!わ、私は……!」

 

一夏のフォローにより、箒の元にクラスメートが駆け寄り

矢継ぎ早に褒めるものだから、箒はタジタジとなる。

 

『やれやれ、一夏は相変わらずですな』

『ダンプソン!』

『無事に、解決できたみたいですな』

『パワージョー、シャドウ丸』

 

眼下で騒ぐ子供達を見て、その発端となった一夏にダンプソンが

呆れていると一緒にやってきたパワージョーとシャドウ丸が合流する。

 

『で?この騒ぎは、何なんだ?』

『一夏がいつもの如く、“たらし”を発揮したのであります』

『またですかい。狙っているんじゃなく、素でやっているのが

 末恐ろしいですね~』

『全くだぜ。一体これから先、何人落ちるのやら』

 

彼らの間では共通の認識となっているのか、一夏の天然に

肩をすくませながら、彼の将来を想像して苦笑いをもらす。

そんな彼らの想像がおそらく正しいとばかりに、顔を真っ赤にした

箒が一夏をポカポカと叩いていた。

 

 




本当なら、もう少し短くいくはずだったんですが、
気が付いたら龍の魂を受け継ぐものと変わらない長さに(苦笑)

一夏と千冬の父、織斑冬輝が研究していた友達としてのロボットとは、
カブタックやロボタック、メダロットのようなタイプのロボットです。

一夏のクラスメートとして「元気爆発ガンバルガー」の面々に
出ていただきました。
ミラクル忍者や元気爆発のロボは出てきませんがwww
今後もたまに、何かの作品のキャラがチョイ役として
出てくるかも。

今後の予定としては、ISヒロインズとの絡みをIS本編開始前に
それぞれやってから
IS本編に行こうと思います。
箒とダンプソンのように、ヒロインとブレイブポリスの誰か
を関連付けていきます。
デッカードを除くと、ブレイブポリスメンバーもISヒロインと
同じ7人なのでwww
アーキタイプ・ブレイカーのキャラはやっていないので、
多分登場しないか、ちょこっとだけになると思います。

一夏の天然もとい鈍感は、ブレイブポリス一同に認識されています。



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第4話 おさわがせ娘! 前編


お待たせしました。最新話です。
長くなりそうなので、前後編にしました。


「い~ち~か~!」

「どわっ!?」

 

放課後となった小学校のとある教室で、帰りの支度をしていた一夏は

後ろから誰かに抱き着かれて机に突っ伏される。

 

「いたたた……。何すんだよ、鈴……」

「にししし♪さあ一夏、遊びに行くわよー!」

 

一夏に飛びついた少女は、凰鈴音。

5年生に進級したと同時に、中国からやってきた転校生だ。

小柄な体格にツインテールと人懐っこい性格も相まって、好奇心旺盛な

ネコを連想させる。

 

「鈴!貴様、何をしている!!!」

「ん~~~?コアラごっこ?」

「自分からやって、何で疑問形なんだよ?」

 

一夏の背中に飛びつきながら腕を突き上げる鈴に、箒が怒鳴り声を上げる。

箒の気持ちを知ってか知らずか、鈴はわざとらしく首を傾げてかわいらしい声を

上げる。

 

「~~~っ!いいから、とにかく一夏から離れろっ!!!」

「え~~~、いいじゃん。別に~」

「ぐ、ぐるじぃ。は、ばなぜ……」

 

一夏から鈴を引き離そうとする箒だったが、その鈴は一夏の首を絞めて

きれいな花畑が広がる川へ送ろうとする。

 

『お~い、一夏。迎えに来たぜって、何してんだ?』

「ゲホゲホっ。パ、パワージョー……」

 

昼ドラの修羅場まがいの痴話げんかは、窓の外に現れたパワージョーに

よって、収まった。

 

『あ~なるほどな。いつものことか』

「いつものって何だよ?」

「パワージョー、やっほー♪」

『よう!相変わらずだな、鈴。

 箒もちょっとは、素直にならねぇとこいつに盗られちまうぞ?』

「ふん////////////」

 

せき込む一夏を怪訝に思うパワージョーだったが、傍にいる箒と鈴を見て

どういう状況か瞬時に察して、呆れ顔になる。

パワージョーに元気よくあいさつをする鈴に返事をすると、

ふくれっ面の箒へ、からかいがてらの助言を送る。

 

「盗られるって、箒?お前、誰かに何かを狙われてるのか?」

「……はぁ~~~~~」

「あははははは!元気出しなって!」

『お前は、そろそろ女心を勉強した方がいいぞ。マジで』

『じゃれ合うのは、それぐらいにするのであります』

 

一夏の見当違いの鈍感に箒は、小学生とは思えない深いため息をし

その背中を鈴が笑いながらバシバシと叩く。

放課後のやり取りの中、ダンプソンが止めに入った。

 

『パワージョー、早く一夏をデッカールームに。

 みんなが、待っています』

『っと!いけねぇ。それじゃあな、みんな!

 今度また来るからな。

 行こうぜ、一夏!』

「おう!」

 

教室の窓から一夏は、パワージョーの手に乗り学校を後にする。

 

『さてと。では、箒どうするでありますか?

 このまま、もう少しみんなとおしゃべりでもしますか?

 それとも帰りますか?』

「今日は、帰って稽古をするよ。

 いつもすまない、ダンプソン」

『気にする必要は、ないでありますよ』

 

申し訳なさそうにする箒に、ダンプソンは笑顔で応える。

何故、ダンプソンが箒を迎えに来たか。

それは、重要人物保護プログラムというものが関係している。

ISの生みの親である篠ノ之束の身内となれば、よからぬことを企む者が

出てくる可能性は極めて高く、身を守るために名前を偽ったり住居を

移したりすることを政府が提案してきたのだ。

最も、それは箒達の身の安全というより束とのコンタクトを

取りやすくしたいという政府の思惑からである。

だが、事態はそんな大人の下らない考え通りにならなかった。

冴島がブレイブポリスを、篠ノ之家の護衛につけることを

提案したのだ。

ブレイブポリスが護衛をすれば、それだけで篠ノ之家を脅かす者達への

牽制になり、プログラムを実施する必要もない。

無論、反対する者達もいたが、最終的に束が政府よりも

ブレイブポリスの方が信頼できるし、何より箒も一夏と離れなくて

済むからそっちの方がいいと打診してきたので、ブレイブポリスに

一任されることとなった。

ここで、束の機嫌を損ねれば日本のISだけ機能停止になってしまうことに

なりかねないからだ。

 

「ねえ、ダンプソン。一夏は、どんな事件を解決しに行ったのよ?」

『違いますよ、鈴。一夏は、事件が起きるのを“防ぎ”に行ったのですよ』

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『しっかし、鈴は外国からの転校生だってのに、学校にすげぇ馴染んでるな』

「元々親が日本の料理が好きだったとか何とかで、

 日本に馴染みがあったみたいだぜ?」

 

ショベルカーに変形したパワージョーの中で、一夏は鈴がうまく日本に

溶け込んでいる理由を述べる。

所々で、日本についての知識が間違っていたりしたが、それが

かえってクラスに打ち解ける要素になったようだ。

 

『それで?お前としては、どっちが好みなんだ?』

「好み?」

『素直になれない不器用な大和撫子な幼馴染か、

 元気いっぱいで世話焼きクラスメート。

 お前の本命は、って話だよ』

「本命って、二人はただのクラスメートで友達だよ」

『お前って奴は……』

 

いつも通り平常運転の一夏に、パワージョーはため息をつく。

箒と鈴、どっちが本命かを尋ねたパワージョーだったが、鈴は箒と

違って一夏のことを友達としてしか思っていない。

ただ、一夏に絡んだ時の箒の反応がおもしろくて世話が焼けるから、

箒をからかっているだけなのだ。

それは、パワージョーも分かっているが、彼には確信があった。

いずれ鈴は箒と一夏を巡るライバルになると――。

 

 

 

『わりぃ、遅くなっちまった』

「ごめん、みんな!」

『遅いぞパワージョー』

「まあまあ、マクレーン。

 箒の護衛に出たダンプソンを除いて、これでみんな揃ったんだから

 早速始めよう」

 

デッカールームに到着したパワージョーと一夏は、勇太に促されて

自分達の席に座りメインスクリーンへと体を向ける。

 

「さて、諸君。明日、日本に親善のためにツイール国の国王と王女が

 来日される。

 ツイール国は、小さな島国だが貴重なレアメタルの輸出国だ」

『訪問の途中で、テロリストによる誘拐や襲撃の可能性は十分に

 あり得る』

「二人は、対談の後日本の観光地をいくつか回る予定になっている。

 デュークの懸念が当たるとしたら、そのタイミングになる可能性が高い。

 護衛もそうだが、市民に被害が及ばないようにも十分気を付けてほしい」

「「了解です!」」

 

冴島の言葉に勇太と一夏は、敬礼しデッカード達もそれに続く。

 

『にしてもよ~』

「うん。世の中、そっくりな人が3人はいるって言うけど……」

 

パワージョーと一夏が苦笑すると、勇太達も何とも言えない笑いを浮かべる。

メインモニターには、鈴に瓜二つなツイール国の王女が映し出されていた。

 

『だけど、王女様って一夏と同じ歳だよね?

 それなのに、国王様の外交のお手伝いをするなんてすごいよね~』

『ところが、そうでもないみたいだぜ?ドリルボーイ』

『何でも、早くに妻を亡くしたからか、国王は

 一人娘の彼女を溺愛しているらしいです。

 今回、日本に連れてきたのも王女様が京都やスカイツリーを見たいからだとか

 なんとか』

『こりゃあ、明日は相当難儀な護衛になりそうだぜ』

 

ドリルボーイがまだ子供と言える王女に感心すると、

ガンマックスとシャドウ丸が語る情報に一同は肩をすくめる。

そんな一同の心情を代弁するように、ガンマックスが明日の護衛任務が

厄介なものになるとぼやいた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『……とまあ、何か起きるだろうとは思っていたけどよ~』

「俺達、何かに憑かれているのかな?」

「じゃあ、今からお祓いにでも行く?」

「冗談を言っている場合じゃないだろ……鈴!!」

 

護衛当日。

人目のつかないビルの裏側でパワージョーと一夏は、天を仰いで

現実から目を逸らしたくなるのをこらえていた。

そんな頭を悩ます二人に元凶である鈴は、ケラケラと笑いながら

冗談を言うが、その姿は昨日確認したツイール国の王女とそっくりであった。

 

「いや~、こっそり抜け出した王女様がばったり出会ったのは、

 自分のそっくりさんで、一日だけ入れ替わって思い出作りなんて、

 マンガみたいなことを体験する日が来るなんて夢にも思わなかったわ~♪」

「何呑気にしてるんだよ、お前はっ……!」

 

能天気に状況を解説してみせる鈴に一夏は、本気で頭が痛くなっていく。

空港へやってきたツイール国の国王を出迎え、

会談地へ無事にたどり着いたまではよかった。

だが、しばしの休憩時に付き人がスケージュールを王女に

確認しようとしたら、王女は姿をくらませていたのだ。

その知らせを受け護衛のために残るデッカードとデュークを除くメンバーが、

王女の探索に出たのだが、子供ながらにしっかり脱走ルートを考えていたのか

なかなか見つからなかった。

服を着替えた形跡はなく、王女は日本に着た王族の服をそのまま着ていると思われ

そんな目立つ格好なら目撃者もいると思われたが、思うように情報は集まらなかった。

だが、一夏が王女は人目を避けるのではなく、逆に人目に付く場所を移動して

目立たないようにしているのではと考え、付近のドレスを着ても目立たない場所を

手分けして探したところ、とあるマンガのイベントがあった。

近くにいたパワージョーと一夏がそこに向かうと、コスプレをした人の中に王女

を発見してこの騒動は終わりと思われたのだが……。

二人が見つけたのは、王女の服を着た鈴だったのだ。

一夏の推理通り、イベントにまぎれた王女はたまたま来ていた鈴と出会い

身代わり作戦を思いついて、服を交換したのだ。

鈴もおもしろそうだと、入れ替わり作戦に賛同し一夏達に見つかって

現在に至る。

 

『それで?王女は、どこに行ったんだ鈴?』

「うん?一人で、日本の下町っていうのを見たいんだって~」

「見たいって、お前……」

『どうする、一夏?

 王女だけじゃなく、鈴もほったらかしにって訳にはいかないぜ?』

「う~ん……待てよ?

 鈴に、このまま王女のフリをしてもらった方がいいかも……。

 そうすれば王女は俺達といるってみんな思うし、外でうろついている

 王女も誰も王女ってわからない……」

『鈴も一人にするより、俺達と一緒にいた方が安全ってわけか』

「探索はシャドウ丸に任せて、俺達は一端戻ろう。

 というわけで、お前にも責任はあるんだから付き合ってもらうぜ、鈴?」

「まっ、しょうがなわいわね~」

 

面倒ごとを起こした張本人である鈴は、楽しそうにケラケラと笑い声を上げるのを

見て一夏とパワージョーは深くため息をはくのであった。

 





前回から一年経ち、一夏は小学5年生になっています。
ブレイブポリスが護衛をするということで、箒は家族が散り散りになる
こともなく転校もしていません。

鈴は、この時点では一夏のことをからかうとおもしろいぐらいの
認識で、箒とはじゃれ合う友達です。今のところは(ニヤリ)


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第5話 おさわがせ娘! 中編

間が空いてすいません。

プライベートで色々と思うことがありまして、
なかなか筆を進めることができませんでした。

更に前後編で終わらせるつもりが、3話構成に(汗)

連日の暑さに加えて腹の調子も悪く、かなりまいります(苦笑)


「こちら、アント1。ターゲット確認。

 対象はE-37ポイントを、北へ移動中」

「アントK了解。ただちに捕縛準備にかかる。アント1は、そのままターゲット

 の監視を続行せよ」

「アント1了……まて!ターゲットは、ブレイブポリスと遭遇した!

 繰り返す!ターゲットが、ブレイブポリスと遭遇!」

「っ!アントKからアント1へ、ターゲットと遭遇したのは何体だ?」

「遭遇したのは、1体。

 機体の色は、イエロー……BP-302、パワージョーだ。

 そばには、ターゲットの王女と同じ年頃と思われる子供もいる」

「噂に聞く、二人目の少年警官か……。

 よし、アント1は先ほどの指示通り、ターゲットのプリンセスを

 監視しろ。

 ただし、ブレイブポリスの索敵範囲のギリギリ外からだ」

「了解……」

 

静かに相手に悟られず、悪意は忍び寄っていく――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ほらほら、あんた達?

 ちゃ~んと、王女様をエスコートしなさい♪」

「ホントに楽しそうだよな、お前!」

『今の状況、わかってんのかね?』

 

本物の王女をシャドウ丸が見つけるまでの間、王女のふりをしてもらうことになった

鈴だったが、呑気に楽しんでいる彼女に一夏とパワージョーは頭が痛くなるのを

押さえられなかった。

 

「いいか、鈴?

 俺達もお前を守るけど、お前自身も気を付けてくれよ?

 そうやって、気楽に考えていると痛い目に合うぞ」

「平気~平気~。心配しすぎよ、あんたは~」

『こういうのを、何かが起きるフラグって言うのかね~?』

「おい、やめてくれパワージョー!

 それは、本当にシャレにならないフラグだぞ!!!」

 

次々と何かが起きる時のお約束とも言えるフラグを立てていく、

鈴とパワージョーに一夏は大声でツッコミを入れる。

そして、一夏は知る……。

 

「GO――!」

 

一度立ったフラグは、止められないと。

 

『っ!

 気をつけろ、二人とも!何か来る!』

「っ!」

 

センサーでこちらに近づいてくる複数の足音を察知したパワージョーは、

素早く一夏と鈴が自分に隠れるように立つと同時に彼らの視界が

煙でおおわれる。

 

「きゃっ!何よ、これ!」

「煙幕っ!?」

『へっ!こんなんもので、俺の目を封じたつもりかよ!

 ロボットの俺に煙幕なんか……がっ!!!』

「パワージョーっ!?」

 

突然視界を遮られて混乱する鈴と一夏だったが、ロボットであるパワージョーは

各種センサーで周囲を探るが、その体に電撃が走り膝をつく。

センサーが後ろの首元に何かを検知し、それが電撃を放っているようだ。

 

『い、一体何だ……!?』

「思った通り……心を持ったことで性能は上がるが、同時に

 人間のような心理的油断が生まれるのが、ブレイブポリスの弱点のようだな」

 

思うように体を動かせなくなったパワージョーの傍には、暗視ゴーグルのようなものや

体中に特殊装備と思われるものを装備した何者かが立っていた。

声や体格からして男だということがわかるが、覆面で顔を覆っているため

それ以上のことは分からなかった。

オマケに何かの機械を使っているのか、声にも雑音が入り解析できなかった。

 

「油断があったとはいえ、

 貴様たちブレイブポリスから流出した隠密回路や白騎士のステルス機能を

 参考にした特殊スーツは、試作段階だがまずまずの性能だな。

 完全に貴様の隙をつくことができた」

『お、お前は……』

「きゃっ!ちょっと、何すんのよ!」

「うわっ!」

 

自分の前に現れたのは間違いなく敵で、狙いは王女かとパワージョーが

考えた瞬間、鈴と一夏の悲鳴が煙幕の中から響き渡る。

 

『っ!てめぇら、待ちやがれ!』

「動かない方がいい。今、我らの手には王女だけでなく、貴様達のお仲間という

 人質がいる。

 王女はともかく、あの少年はこの場で消してもいいんだぞ?」

『こ、この野郎っ~!』

「もっとも、動きたくても動けないだろうがね。

 倒すことができなくても、運動回路を麻痺させれば動きを阻害することぐらいは

 できる……」

 

煙幕の中から聞こえた悲鳴で、二人ともさらわれてしまうと、

助けようとするパワージョーだったが、

体に流れる電撃によって動きを封じられた上、誘拐犯の一人から一夏の命をちらつかされ

完全に手を出すことができなくなってしまう。

その間に煙幕は、晴れていくがもうどこにも鈴と一夏の姿はなかった。

 

「では、我らの目的が成し遂げられるまで、しばらくここで休んでいるといい、

 ブレイブポリスよ……」

『うわっ!?』

 

パワージョーの傍にいた男は、パワージョーの目に銃口を向けると

ペイント弾を放ちその視界も完全に封じる。

 

『ちっくしょぉぉぉ!!!』

 

体の動きと視界を封じられたパワージョーは、走り去る足音に

叫び声を上げるしかなかった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「はぁ~。あの子は、まだ見つからないのかい?」

「申し訳ありません。手分けして探しているのですが……」

「いや、謝らなければならないのは、こちらの方だ。

 娘が騒がしてしまって、すまない」

 

会談地の会議室で、勇太はツイール国の国王と共に、ブレイブポリスの

仲間達からの連絡を待っていた。

 

『聞こえますかい、ボス?

 ちょいと、面倒な知らせが……』

「シャドウ丸、どうしたの?何かあったの?」

『ええ。

 パワージョーと一夏から、連絡があったんですが……。

 どうも、王女は人目を避けるために一般人の服に着替えて

 人ごみにまぎれたようで』

「あ~~~、それはまた……」

 

シャドウ丸からの連絡に、勇太は天を仰ぎ国王もため息をこぼす。

会談地の護衛もあるため、捜索に割くことができるメンバーも限られている

というのに、捜索が更に困難となってしまった。

 

『そんなに気を落としなさんな。

 朗報もありますぜ?

 王女が向かったと思われる行先と着ている服の情報を入手して、

 しかも鈴そっくりの顔となれば……』

「そうか!シャドウ丸なら、それだけ情報があればすぐに見つけられる!」

『ええ。

 まあ、その行先もいくつか候補はありますが、一夏から知らせを受けた

 近場から探索を開始していきます』

「わかった。頼んだよ、シャドウ丸……あれ?

 そう言えば、それを知らせてくれたって言う一夏とパワージョーは?」

 

シャドウ丸から続いて入った知らせに、勇太は肩の荷が少し軽くなるのを

感じたが、ふと気になったことを尋ねる。

 

『それなんですが、どうも二人は鈴と一緒にいるそうで。

 何でも鈴が王女様と服を入れ替えたとか……』

「え……えっっっ~~~!!!?」

「何をしておるか……」

『それでは、私は捜索に戻りますのでこれで』

「あっ!ちょっ!シャドウ丸!」

 

軽くなった肩の荷が再び重くなるような情報に、勇太は慌てるが

それを知らせたシャドウ丸は早々に通信を切り、後の対処を勇太へと

放り投げる。

 

「はぁ~全く次から次に……」

「重ね重ね、うちの娘が迷惑をかけてすまない」

 

これからまた厄介なことが起きる予感を感じて、勇太が頭を

押さえるのを見て国王が再び謝罪の言葉を口にすると、勇太の手帳に

また連絡が入る。

 

「はい、こちら勇太どうs」

『すまねぇ、ボス!大変なことになった!』

「パワージョー!何があったの!?」

 

勇太の返事を待たず、切羽詰まる慌てた声を出すパワージョーに、勇太は

ただならぬ気配を感じる。

 

『例の王女様と服を入れ替えた鈴と一夏が、誘拐された!

 俺がついていながら、すまねぇっ!』

「な、なんだって!?」

 

些細な出来事をきっかけに、事態は動いていく――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「うっ!」

「――ったぁ~~~。何すんのよ、あんた達!!!」

 

煙幕の中で捕まった一夏と鈴は、誘拐犯達に担がれ車に乗せられると

しばらくそのまま移動し、廃工場と思われる場所に少々乱暴に降ろされる。

 

「噂にたがわぬ、お転婆っぷりだが、

 大人しくしてもらおう。

 交渉のための人質とはいえ、静かにさせるために多少乱暴なことを

 するのも致し方ないからな」

 

自分達の状況が見えていないのか、目の前の相手に食ってかかる鈴だったが、

相手は小動物に威嚇されたぐらいにしか思っておらず、微塵も余裕を

崩さなかった。

それどころか、人質と言えど身の安全も保障しかねると淡々と脅しをかけてきた。

マスクで表情はわからないが、何か信念じみたものを感じて自然と一夏は

身構える。

 

「さて、まずは妙なことをしないように腕を縛るとしよう。

 それから、少年警官君?

 発信機の類を使おうとしても、無駄だと言うことを最初に言っておこう。

 君達を連れてきた車にも、ここにも、電波を遮断する特殊な仕掛けを

 している……」

「電波を遮断ってことは、通信もできないか……。

 お前達の目的は何だ!」

 

アントKと呼ばれていたリーダーらしき男が、手で合図を送ると部下達は一夏と鈴の腕を

後ろで縛って動きを封じると、余計なことをしないように釘を刺す。

残されたパワージョーから、自分達が攫われたことはすぐにブレイブポリスのみんなに

伝わる。だが、自分達が今いるこの場所を探してもらうことも知らせることもできない

状況に一夏は顔をしかめるも、せめてと言わんばかりにリーダー格の男を

にらみながら、誘拐の目的を聞き出そうとする。

 

「わざわざ教えるとでも?

 心配しなくても、君はブレイブポリスを抑えるため、

 王女殿は利用のためという使い道がある以上、命の保証はしよう。

 人質は、生きていてこそ意味があるし価値がある……」

「くっそぉ……」

「ふん!残念だったわね、あんた達。

 色々企んでいるみたいだけど、全部無駄よ!無駄!

 そもそもあたしは……」

「っ!王女様!悔しいのはわかりますが、ここは

 逆らっちゃだめです!」

「はぁ~?あんた、何言って……」

「少年警官の言う通り。しばらくは、大人しくしてもらおう。

 子供を大人しくさせる経験などほとんどないから、何をするかわからんよ?」

 

調子に乗ったり子供だからと侮ったりせず、誘拐犯は一夏に余計な情報は

渡さず取引のための道具として扱おうとする。

負けじと、鈴は目的である王女と自分を間違えて、そもそもこの誘拐が

ご破算になっていることを教えようとするが、一夏に止められ、

そのまま二人そろって物置みたいな部屋に連れていかれ、閉じ込められる。

 

「こらぁぁぁっ!出しなさぁぁぁい!!!」

「落ち着けって……」

「あんたは、何でそんなに落ち着いてんのよ!

 って言うか、何でさっきあいつらの誘拐が失敗してるって

 教えてやらなかったのよ!」

「教えてたら……お前、死んでたぞ多分」

 

腕を縛られながらも悔しさからジタバタと暴れる鈴に、一夏は顔がくっつくかと

思えるぐらい近づけると、耳元でボソッと小声でささやく。

 

「えっ?」

「あいつら言ってただろ?

 人質としても価値があるから、命の保証をするって。

 逆に言えば、利用する価値がなかったら保証しないってことだ。

 そうやって割り切る奴が、赤の他人で利用価値が無い人質にならない

 人質を生かすと思うか?」

 

一夏から告げられる言葉に、鈴はサーっと血の気が失せていくのを感じた。

もし、一夏が止めていなかったら死んでいたかもしれない現実にようやく

理解が追い付き、その場に座り込む。

 

「だから、自分が王女じゃないって言うのは、絶対に言うなよ?」

「う、うん……わかった……」

「よし!それじゃあ、反撃といくか♪」

「反撃って、何する気よ?」

 

部屋の外に声が漏れないよう小声で話しながら、消沈する鈴に不敵な笑みを見せる。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「王女と少年警官を返してほしければ、

 各国に輸出しているレアメタルひと月分を用意し、

 ブレイブポリスは妙な動きを見せるな……要求がなされない場合、

 二人の命の保証はしない……くそっ!

 誘拐犯めぇっ!」

 

国王と勇太達の元に送られてきた誘拐犯の要求に、勇太は怒りを

隠せなかった。

 

『身代金として、レアメタルを要求しているとなると、

 単なる誘拐ではないな。

 レアメタルは、確かに貴重な資源だが、金に換えるとなると

 様々な手続きが必要になる』

『デュークの言う通り、犯人達の目的は金ではなく

 レアメタルそのものということか……。

 だが、この私達が妙な動きを見せるなというのがネックだな』

『そうだな。

 どこまでが妙な動きなのかそうでないのかが、ハッキリしていない

 以上、下手に動くことができない』

 

要求してきた内容に、デュークとデッカードは引っかかるものを感じるが、

それよりももう一つの要求に頭を抱える。

マクレーンが言うように、この要求は動きを見せるなと言っているものなのだ。

 

『それじゃあ、このまま黙って指を加えていろって言うのかよ!』

「落ち着いて、パワージョー!」

『そうだよ。動けるようになっただけで、ダメージは

 まだ残っているんだよ』

 

今にも飛び出していこうとするパワージョーをドリルボーイが、止める。

連絡をしたパワージョーは、何とか自力で機械を外し、カメラアイのペイントを

ふき取り簡単な応急修理をしただけの状態でここにいた。

 

『少しは、落ち着けって。

 焦る気持ちはわかるが、頭に血が上ってちゃ、助けられるもんも助けられねえぜ?』

『ガンマックス……』

「すまない、諸君。

 娘のせいで、こんなことになってしまって……。

 犯人達の要求は、攫われたのが娘なら大臣達を説得できるのだが、

 そうでないとなると、申し訳ないが……」

『そんなぁっ!』

 

国王が申し訳ない顔で、攫われたのが自国と関係のない他国の一般人と警官では、

要求を呑むのが難しいと告げると、ドリルボーイが絶望的な声を上げる。

 

『いえ、一国の王として当然の判断です。

 攫われたのは、私達の仲間とその友。ならば、彼らは私達が必ず助けます!』

「大丈夫さ、ドリルボーイ。

 一夏がいるなら、きっと……」

『来ました、ボス!

 一夏からの発信信号です!』

「よっしゃぁっ!」

 

顔を伏せる国王に、デッカードは力強く二人の救出を成功させると

告げると、彼らが待っていた知らせが舞い込む。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「こんなことあろうかと、色々仕込んであるんだよね~」

 

イタズラ小僧の目をして、一夏は靴底から小さなノコギリのような

刃物を取り出し、器用に手の縄を切っていく。

 

「あいつらが、俺のことをなめてくれて助かったぜ。

 手帳を取り上げただけで、身体検査とかもしなかったし、腕を前に

 縛ってくれたからこれを取り出すのも難しくなかったしな」

「色々って……あんたそんなのをいつも持ってるの?」

 

さらりと忍者みたいに、隠し道具の存在をちらつかせる一夏に

鈴は小声で尋ねる。

 

「備えあれば患いなしってね~。

 勇兄も捕まったりすることが、多かったからな。

 こうやって、捕まっても自力で逃げるぐらいの道具は持っているのさ。

 それに、こういうのを仕込むのも作るのも楽しいしな♪」

「あんた……もしかしなくても、この状況を楽しんでいたりしない?」

 

誘拐されて閉じ込められていると言うのに、どこか楽し気な一夏を

鈴は訝し気な眼差しを送る。

 

「そんなわけないだろ……よし!

 何とか縄を切ることができたな。

 次は……こいつだ!」

 

縄を切って自由の身となった一夏は、次に腕時計に手を伸ばす。

腕時計なんか外して何をと思う鈴の目の前で、腕時計はクモへと

その姿を変える。

 

「な、何なのよそれ……!」

「静かに!これは、色んな機能を持ったポリス・ガジェットの一つだよ。

 超AIは無いけどある程度自分で動くことができる。

 それじゃ、スパイダーウォッチ。

 ここに俺達がいることをみんなに知らせるんだ」

 

スパイダーウォッチと呼ばれたメカは、一夏の言葉に了解したとばかりに

うなづくと壁を伝って、子供ではとても届かない高さにある

格子がはめられた窓の隙間から外へと向かった。

 

「後は、あいつが電波を遮断する仕掛けの範囲から出て、勇兄達に

 この場所を知らせてくれれば、俺達の逆転だ」

「……あんたって、警察官よりスパイとかの方が向いてるんじゃない?」

「うん?」

 

マジシャン顔負けの鮮やかな一夏の脱出劇の下準備に、鈴は呆れ顔で

彼が就いている職業が間違っているのではないかと感じる。

 

「さてと……もう2、3個ほど仕掛けるとしますか♪」

 

一夏は鈴の言葉を気にせず、先ほど以上に“ニンマリ”とした笑みを

浮かべながら懐に手を入れた……。

 

 

 

「王女と少年警官の様子はどうだ?」

「閉じ込めたら、すぐに大人しくなりましたよ。

 王族だ、特例だとか言われても、所詮子供は子供ってことですね」

「そうか……。

 間もなく指定した時間となるが相手は、あのブレイブポリス。

 油断しない方が賢明だろう。

 警戒を怠るな」

「そこまでする必要がありますかね?

 ここが知られないよう逆探知対策は、何十にもやってますし、

 何より少しでも動いたら人質の命はないって言ってますぜ?」

「用心するに越したことは無い。

 万が一ということが起きるのが、この世界だ」

 

ドォォォン!!!

 

誘拐犯達がもうすぐ目的を達せられると気を引き締めながらも緩んだ隙を

見計らったように、爆発音が廃工場に響き渡る。

 

 

 

「なになになに!!!?」

「来たか!」

 

爆発音は、当然一夏と鈴の耳にも届き突然のことに鈴は慌てふためくが、一夏は

来るのが分かっていたかのように慌てることはなく、自分達の足元から聞こえてくる

何かを“削るような音”に笑みをこぼす。

 

「今度は何よ!」

『お待たせ、一夏!大丈夫!』

「ドリルボーイ!」

 

一夏と鈴がいた床が盛り上がったと思ったら、そこからドリル戦車が現れ

ドリルボーイへと変形する。

幸い、二人が閉じ込められていた部屋はロボットが動けるぐらいの

広さはあったため、崩れることは無かった。

 

「おい!今の音は……なぁぁぁっ!?」

『お~っと!そこまでだ、誘拐犯!

 ブレイブポリスだ。大人しく投降しろ!』

「くそっ!」

「おじさん、足元にご注~意を~」

 

異変に気付いた見張り役が部屋の中に入ってくるが、

ドリルボーイは素早く一夏と鈴の前に立つと投降を呼びかける。

分が悪いと見張り役は悪あがきとその場から逃げ出そうとするが、

一夏はそんな見張り役に忠告を告げながら“なにか”を

地面に置く。

 

「あん?何だこりゃ?」

 

一夏の言葉に思わず自分の足元を見ると、見張り役の足コンコンとぶつかっている

ミニカー?らしきものがあった。

 

「おもちゃか?」

『……~♪』

 

場違いなソレに唖然としているとミニカー?は、人型へと変形し

手に持っていたものを投げつけた。

 

バババババババン!!!

 

「だぁっ!!たたたたた!!!?」

 

ミニロボットが投げつけた爆竹に驚いて、見張り役は情けない悲鳴をあげる。

 

「今の内だ、ドリルボーイ!」

『わかった!』

 

見張り役が驚いて出来の悪いダンスを踊っている隙に、

ドリルボーイは一夏と鈴を抱えると再びドリル戦車に変形し、

そこから脱出を図る。

 

「ちょっ!何してんのよ//////!?」

「仕方ないだろ、ドリルボーイに乗れるのは一人なんだから!」

 

ドリル戦車となったドリルボーイの搭乗席で構造上、鈴は

一夏の膝の上に抱えられる形となっていた。

お姫様抱っこに見えなくもない体勢に、否が応でも鈴の顔は赤くなる。

 

『二人とも、イチャイチャしている場合じゃないよ!』

「バカなこと言ってないで、急いで!

 さっきの爆竹は、音がすごいだけで相手を驚かすだけなんだから!」

「だ、誰がこいつなんかとイチャイチャしてるのよ////////!」

 

狭い席の中で騒ぎながらも、二人を乗せてドリルボーイは脱出を

開始した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「状況を!」

「はっ!正面入り口に、ブレイブポリスが現れ攻撃を受けています!」

「奴らどうやってここが……いや、それより何のつもりだ。

 人質がいることを忘れているのか……?」

 

奇襲を受けた誘拐犯達は、自分達に攻撃を仕掛けている相手に驚愕する。

人命を優先するブレイブポリスが人質に構わず、攻撃をしているのだ。

 

「待て。今姿を見せているのはビルドチームだが、一体……

 地中を移動できるドリルボーイという機体がいない……。

 それに攻撃も突入や殲滅と言うより……。

 すぐに王女と少年警官を確認しろ。

 まんまとやられたかもしれん……」

 

アントKは、ビルドチームの攻撃に引っかかりを覚え、

一夏と王女(鈴)の様子を確認しようと部下を走らせる。

電波遮断の仕掛けは自分達の間の通信にも影響を及ぼし、

自らの目と足で連絡と確認しるしかないのだ。

そうやって、二人の様子を確認しに行った者達が、一夏が仕掛けた

ミニカーロボによって見張り役と同様に混乱させられ、内部間の

連絡網がズタズタになるのは数分後のことであった。

 

 

 

『全く、ボスも大胆な作戦を立てる……!』

『そうでありますな。

 ドリルボーイの力を使って、自分達が奇襲を仕掛け、

 その間にドリルボーイが一夏と鈴を救出する』

『で、俺達は敵の目を引き付ける囮役……っと!

 こんな作戦、一夏が相手を出し抜かなきゃできないぜ』

 

マクレーン、ダンプソン、パワージョーの三体は廃工場には

当たらないようにしつつ自分達に注意を向ける程度に弾丸を放っていく。

 

『恋愛方面とは別に、一夏の将来が不安になってくるな』

『噂の箒の姉ちゃんみたいにならなきゃいいよ……な!』

『流石にそれは無いと……願いたいであります……』

 

一夏が作ってくれたチャンスだったが、その手腕に一抹の不安を感じる

ビルドチームであった。

 

 





一夏が作ったポリス・ガジェットは、ダブルのメモリガジェットが
モデルです。
他にも色んな道具を作って仕込んでいます。


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第6話 おさわがせ娘! 後編

更新、遅れに遅れて申~~~し訳ありませんm(_ _)m!!!
やはり、オリジナル回となると難しい(汗)




「あの子供を甘く見ていたな……!」

 

アントKは、モニターを見ながら苦々しく呟く。

そこには、こちらに攻撃を仕掛けているビルドチームにドリルボーイが

合流し、一夏と鈴が降りるのが映し出されていた。

 

「奴らがここを突き止めたのも、こちらの連絡網が機能しなくなったのも

 彼の仕業か……。

 徹底的に、身体検査をして動けなくするべきだった」

「どうしますか?」

「……こうなっては、計画は失敗だ。

 後は、被害をどれだけ減らすかとなる。

 “アレ”を起動させる!」

「はっ!」

 

最早、自分達の計画に成功は無いとアントKはすぐさま自分達の失敗を悔やむ思考を

切り替え、今取るべき最善の行動を実行に移す。

 

 

 

「みんな!」

『無事だったか、一夏!』

『よし!後は、突入して犯人達を逮捕するだけだ。

 行くぞ!』

 

一夏と鈴が脱出できたことに、パワージョーは安堵の声を上げ、

マクレーンが最後の仕上げと廃工場に突撃しようとした時、不意に

何かの起動音が、一帯に聞こえる。

 

『な、なんなのこの音!?』

『あの廃工場からであります!』

 

音の出所が目の前の廃工場からだと警戒するビルドチームの前で、廃工場の天井を

破壊しながら、彼らのように工事用車両をモチーフにした巨大なロボットが姿を現した。

 

「うぇぇぇっ!!!?」

「あいつら、あんなのまで用意してたのか!」

「こうなってしまっては、こちらの情報を掴ませないために

 撤退するしかないが、そのための時間を稼がせてもらう。

 連絡が取れなくても、こいつが出たとわかれば全員撤退行動に

 入るよう予め、指示はしてある。

 このボンバー03がなっ!」

「でも、アントK?

 別に、あいつらを倒してしまってもかまわないっすよね?」

「無論だ。ついでに、ボンバー03の稼働データと奴らのデータも

 入手する!」

 

鈴と一夏が驚きの声を上げる中、ボンバー03はハンマーを半分にしたような手を

ビルドチームに振り下ろす。

 

『危ねぇっ!』

『くっ!』

『とんでもないパワーであります!』

『あんなの喰らったら、ひとたまりもないよ~!』

 

一夏と鈴はパワージョーが抱え、ボンバー03の攻撃を躱したビルドチームだったが、

拳一つで簡単に巨大なクレータを作ったボンバー03のパワーに驚愕する。

 

『よし!合体するぞ、みんな!』

「何言ってるんだよ、パワージョー!

 お前、その体ちゃんと修理してないんだろ?

 そんな体で合体なんて、無茶だ!」

『大丈夫、心配すんなって。

 こんなもん、気合で何とかならぁっ!

 それに、万が一何かあっても、お前がいるからな』

「パワージョー……」

「ちょっ!あんたねぇっ!」

 

メカニックの端くれである一夏は、パワージョーが今どんな状態なのか

すぐにわかったが、パワージョー自身もそれを分かった上で言っているのだ。

相手は、とても合体しないで勝てる相手じゃないと。

そんな彼に鈴は、怒鳴り声を上げる。

 

「一夏は、あんたのことを心配してんのよ!

 わからないのっ!」

『そんなのお前に言われなくてもわかっているさ……。

 一夏もボスも誰よりも優しいってことぐらい。

 だけど頼む、一夏……』

「わかった……」

「一夏っ!?」

『サンキュー!』

 

パワージョーの言葉に一夏も意を決して頷く。

鈴が驚きの声を上げたのと同時に、彼が敵を錯乱するのに使ったミニカーロボが

奪われた一夏の手帳を持って彼らの足元に現れる。

 

「戻ってきたか、ミニィ!」

『よし、一夏!合体命令を!』

「おう!って、みんな別に合体命令なくても合体できるだろ」

『それは違うのであります!』

『やっぱさ~。あの掛け声があると気合が入るんだよね~♪』

「わかったよ……いくぞ!」

 

準備は整ったとばかりに、マクレーンは一夏に勇太の代わりに

合体命令を出してくれと頼む。

機械生命体へと進化した彼らは、自分達の意志で合体することができるのだが、

合体命令を出すときの掛け声が彼らのルーティンになっているようだ。

 

「ブレイブアップ!スーパービルドタイガー!!!!!」

 

一夏が警察手帳を掲げると手帳が開き、中にあるブレイブポリスのマークが輝く。

同時に、ビルドチームは空へと上がり合体を開始し、

それぞれが一度、ビークル形態になって変形していく。

ダンプソンは左右に分かれ、両足に。

パワージョーはキャタピラが分離し、車体が左腕に。

マクレーンは車体の後部が回転し、胴体に。分離したクレーン部は、右腕に。

変形した各部は、胴体となったマクレーンとドッキングしていき、

大型ロボットビルドタイガーを形成する。

更に、ドリルジェットとなったドリルボーイが、前後に分かれ

胸部装甲、脚部、大型ウイングとなりビルドタイガーへとドッキングしていき、

合体が完了する。

 

『スーパービルドタイガー!!!』

 

堂々と名乗りをあげるスーパービルドタイガーに、

ボンバー03は若干後ずさる。

 

「スーパービルドタイガー……その名の通り胸に虎の顔がついているが……

 何でそんなものが付いているんだ?」

「かっこいいから……なわけないっすよね」

「何バカなこと言ってるんだ!

 気を引き締めろ!」

 

ボンバー03のコクピットで、合体したビルドチームの姿に名前通り虎の顔が

ついていることに首を傾げるアントKと部下二人だったが、

その理由があり得ないとつぶやいた

“カッコイイから”というのがまさかの正解だとは夢にも思わなかった。

 

「先手必勝だ!」

 

ボンバー03は、半円状の手を合わせ巨大なハンマーにするとスーパービルドタイガーに

向けて射出する。

 

『くっ!すごいパワーだっ!』

 

スーパービルドタイガーはハンマーを受け止めるが、押し返すこともできず

拮抗状態となるが長くは続かなかった。

 

『うっ!』

『パワージョー!』

『ヤバイ!押されるっ!』

 

やはり、パワージョーが受けたダメージは少なくないのか、左腕の力が

一瞬緩み、そのままスーパービルドタイガーはハンマーに吹き飛ばされる。

 

「どうやら、相手は万全でないようだ。

 あの少年警官を誘拐したのは、無駄ではなかったようだな!」

 

スーパービルドタイガーの不調を見抜いたアントKは、一気に攻勢に出る。

ボンバー03は飛び上がり、その腕をスーパービルドタイガーに叩きつけようと

振り上げる。

 

『っ!なめんなっ!』

 

振り下ろされた腕をかわしたスーパービルドタイガーは、攻撃をかわされてできた隙を

突いて、ボンバー03の顔に飛び蹴りを入れる。

 

『なっ!』

『効いていない!?』

「バカめ!

 その程度の攻撃で、ボンバー03の装甲はビクともせんぞ!」

 

飛び蹴りのダメージが入った様子のないボンバー03は、逆にスーパービルドタイガーの

懐に拳を叩き込む。

 

『『『『うわっっっ!』』』』

「スーパービルドタイガー!」

「ああ、もう!言わんこっちゃないのよ!」

 

劣勢となるスーパービルドタイガーに鈴は、頭をかきむしる。

 

「やっぱり、無茶だったのよ!

 早く逃げないと……一夏っ!」

「……」

 

このままでは負けてしまうと、鈴は逃げようと言うが、一夏は視線を動かさず

あるものを見つめる。

 

『どうしよう!このままじゃ!』

『確かに、少し厳しいな……』

『ははは……ちょっとカッコつけすぎたかね?』

『今更そんなこと言っても仕方ありません!』

『ダンプソンの言うとおりだ、ドリルボーイ。

 忘れたか?

 心を一つにした我々は――』

『『『『無敵のブレイブポリス!』』』』

『ごめん。ちょっと弱気になってた!』

『俺もだ。わりぃ。

 俺達が力を合わせれば、どんな敵も怖くない!』

『本番はここからであります!』

「みんな!ちょっと聞いて……」

 

ボンバー03に吹き飛ばされたスーパービルドタイガーが、

反撃に出ようと立ち上がろうとすると、一夏から通信が入る。

 

「噂のブレイブポリスもここまでみたいですね」

「所詮、噂は噂。それに技術は日々進歩してるんだ。

 奴らが過去の遺物になるのも当然さ」

「……」

 

ボンバー03のコクピットで、もう決着が見えたのか緩んだ空気が

流れるが、アントKはこのままでは終わらないと感じていた。

 

『『『『うぉぉぉ!!!』』』』

「性懲りもなく!」

「しかも正面からかよ!」

 

何の策もなく正面から突っ込んでくるスーパービルドタイガーに、ハンマー攻撃で

迎え撃とうとするボンバー03だったが……。

 

「今だ!ブレイブアウト!」

『『『『おう!』』』』

 

ハンマーが当たろうとした瞬間、スーパービルドタイガーは合体を解除し、

攻撃をかわす。

 

「何ッ!?」

『そこだっ!』

『シュ~~~ト!』

 

予想外の事態に、ボンバー03が動きを止めた隙にマクレーンとドリルボーイが

ボンバー03の膝関節を狙って攻撃する。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「みんな!ちょっと聞いて。

 あのロボット、パワーもすごいけど、多分ビーム攻撃も通じないと思う」

『どういうことだ、一夏!』

「あいつが攻撃を受けた部分。

 攻撃を受けたにしても、塗装が剥がれすぎている。

 簡易的な塗料タイプの耐ビームコーティングをしているんじゃないかな?」

 

ボンバー03を観察し、弱点を探していた一夏はスーパービルドタイガーに

見抜いた敵の能力を説明する。

 

「耐ビームコーティングの塗料は、黄色っぽくなるし衝撃で剥がれやすいから

 十中八九間違いないと思う」

『それじゃあ、奴に勝つには……』

『物理攻撃しかないということでありますな』

「うん。だから、そのために……」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『(パワー自慢のロボットの一番重要な箇所、自分の体を支える

 下半身の関節部分!)』

『(そこを狙うために、敵の攻撃を引き付けて分離。

 ピンポイントを狙えて破壊力もある僕のサッカーボムとマクレーンの

 ショットガンで攻撃!)』

 

マクレーンとドリルボーイの攻撃が関節に命中し、ボンバー03は

体勢を崩し、バランスを取ろうと両腕を開いてふらつく。

 

『ほぉ……たぁっ!!!』

『ぬん!』

 

ボンバー03がふらつき生まれた隙を狙って、

パワージョーとダンプソンが無防備に近い、

両腕のハンマー部分にそれぞれの武器で攻撃を仕掛ける。

 

『(二人の攻撃で、バランスが崩れたところを、俺とダンプソンが

 こいつのハンマーを破壊する!)』

『(球状のハンマーを正面から壊すのは難しくても、ハンマーになる前!

 両腕が接合する面を狙えば……!)』

 

こちらの奇襲攻撃に、敵は対応できず一夏の作戦通り、メイン武器である

ハンマーを破壊できると誰もが思った――。

 

『なっ!?』

『うおっ!?』

 

だが、パワージョーとダンプソンの攻撃は破壊するどころか、強固な

装甲にはじき返され今度は二人が無防備な姿をさらしてしまう。

 

「吹き飛べ!!!」

『危ない!』

『やらせるか!』

 

ボンバー03の反撃を受けそうになったパワージョーとダンプソンは、

紙一重でマクレーンとドリルボーイに助けられる。

 

『もう一度、合体だ!』

『『『おう!』』』

 

攻撃を躱したマクレーン達は、再びスーパービルドタイガーへと合体する。

 

「ふん。

 万策尽きての奇襲だったのだろうが、ここまでだ!」

 

アントKは、合体を解除して意表を突いた奇襲を仕掛けてきたことから、

最早敵に打つ手はないと、止めを刺すべくボンバー03のフルパワーでハンマー攻撃を

放とうと両腕を構える。

 

「……よし。作戦通りだ!」

 

戦いの様子を見ていた、一夏は狙い通りに事が運んで、拳を握りしめる。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『正面から突っ込むと見せかけて分離し、相手の武器を

 破壊するか……』

『悪くないと思います』

『それじゃあ、早速……!』

「待って。

 分離して相手の隙を作っても、合体前のみんなの攻撃力じゃ

 あのハンマーは壊すことができないと思う」

『おいおい、それじゃあ意味ねぇじゃねぇか』

 

自分で言った作戦でありながら、それを否定することを口にして、パワージョーが

呆れた声を上げる。

 

「確かに壊せないだろうけど、完全にってわけじゃない」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『(一夏の狙い通り、俺達の奇襲攻撃を乗り切ったと思って、

 フルパワーの攻撃をしようとしてやがる!)』

『(そう、さっきの自分達の攻撃の本当の狙いは……

 両腕がハンマーとなった時、攻撃がめり込みやすくなるような

 傷をつけること!)』

『(一点集中!その傷に、僕たちの全力と……)』

『(敵の全力が加われば――)』

「終わりだ!ブレイブポリス!!!」

 

スーパービルドタイガーでも受け止めきれない程の威力のハンマーが、

今度はフルパワーで放たれる。

 

『『『『(勝てるっ!!!)

タイガーギムレット!!!』』』』

 

スーパービルドタイガーは、ドリルボーイを先頭としたビークル形態での

直列状態となり、向かってくるハンマーに正面から突撃する。

 

「なっ!?」

「あぁぁっ!」

「……いっっっけぇぇぇ!!!!!」

 

アントKと鈴がそれぞれ驚きの声を上げ、一夏がビルドチームを後押しするように

大声を上げる。

均衡したのは一瞬――。

タイガーギムレットは寸分たがわずに、パワージョーとダンプソンの攻撃によって

できたくぼみにドリルの先端をねじ込み、ハンマーをボンバー03が後押しする形も

相まって、ハンマーを容易く破壊する。

そして、その勢いのまま、ボンバー03の体を貫き風穴を開けた。

 

「な、なにぃっ!?」

「そんなバカな!」

「ちっ!脱出だ!

 センサー攪乱チャフ、光学迷彩……急げ!」

 

止めを刺す攻撃をしたはずが、一転して自分達が敗北するという信じられない事態に

アントKは混乱する部下二人を叱咤し、急いで脱出装置を作動させる。

 

 

 

「やったぜ、みんな!」

「勝っちゃった……」

 

タイガーギムレットによって貫かれたボンバー03が爆発する様を

一夏が声を上げて喜ぶのとは対照に鈴は呆然とした声で呟いた。

 

『後は、あのロボットを動かしていた犯人を捕まえるだけだ!』

『逃しはしないぜ!』

『その通りでありm……ぐっ!』

『な、何これ!?』

 

スーパービルドタイガーは、最後の仕上げとボンバー03に乗っていた犯人を

逮捕しようとするが、その視界に突然、ノイズが走る。

 

「どうしたんだ、みんな!」

『セン……サー……働……い』

 

スーパービルドタイガーが、頭を抱えるようにして動きを止めるの見て

通信を試みる一夏だったが、ラジオのチャンネルが合わないように返ってきたのは、

途切れ途切れの言葉だった。

 

「ちょっと!ホントに、どうしたのよ!」

「通信妨害?いや……違う!

 何かが、センサーを攪乱してるんだ!」

 

突然起きたセンサー系の異常に、一夏は急いで辺りを見回すがもう手遅れであった。

戦闘以外でセンサーを狂わせるなど、逃走する以外に考えられないと、

一夏は最後の最後で誘拐犯達にしてやられたことに悔しさで、拳を叩く――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「そういうわけで、犯人達には逃げられちゃいました……」

『すまねぇ、ボス。油断しちまった』

 

アントK達誘拐犯には逃げられたものの、ボンバー03を撃退した

一夏達は、会談地へと戻り勇太へ事件の顛末を報告した。

 

「ううん。一夏も鈴も、無事でよかったよ」

「ブレイブポリスの皆さん。

 この度は、私の娘が迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ない」

 

事件解決とは言い難かったが、勇太はそれよりも二人が無事に戻ってきたことに

安堵し、ツイール国の国王は頭を下げて謝罪をして、勇太達を慌てさせた。

 

「あ、頭を上げてください、国王!」

「俺も鈴も大丈夫だったんですから!」

『一夏とパワージョーの話からすると、誘拐犯達は用意周到に準備を

 していたようです。

 王女が抜け出すことを想定していたプランが、立てていたいくつかの中に

 あったのでしょう』

『王女が抜け出さなくても、何らかの形で事件は起きていた……か』

 

一国の王が頭を下げるなど、それだけで大事である。

勇太と一夏は、大慌てで問題ないと告げ、デッカードとデュークが擁護する。

 

「それでも娘の軽率な行動がきっかけなのは事実だ。

 だからこそ、謝罪せねばならない」

『お取込み中、失礼しますよ』

『待たせたな』

「シャドウ丸!ガンマックス!」

『よう、一夏。色々とスパイ顔負けの活躍だったみたいじゃねぇか?

 本格的に、シャドウ丸に弟子入りでもしたらどうだ?』

『それは、おもしろそうだ。私は構いませんぜ?』

「スパイや忍者な一夏……。

 何だろう。とんでもないことになる気がする」

「ん?二人が戻ってきたということは……」

 

そんな中、シャドウ丸とガンマックスが姿を現し、

今回の事件で一夏を軽くからかうと、鈴は何故か笑えないと引きつった笑みを浮かべた。

そこで勇太が、王女を探索していた二人が戻ってきた意味に気が付く。

 

「あの~……」

「っ!王女様!」

「えへへ……何だか、大変なことになってたみたいで……。

 ごめんなさい」

「リエル!」

 

気まずそうに顔を見せるツイール国王女リエルは、乾いた笑みを浮かべて、

鈴へと頭を下げる。

国王は、一夏達ブレイブポリスに迷惑をかけたことへの怒りと

無事なことへの安堵が混ざった何とも言えない表情を浮かべて、リエルに近づく。

 

「ごめんなさい、お父様……。

 どうしても、これを持って帰りたかったの……」

「一体、何を……」

 

素直に父である国王に謝るリエルは、カバンからあるものを取り出す。

それは、日本の国旗が描かれた折り鶴であった。

 

「これは……」

「子供の時に、お母様と一緒に日本に来て、ツイール国の国旗が描かれたのを

 買ってくれたのを覚えてる?

 これなら、お母様にもまた日本を見せられるし……」

「リエル……」

『ねぇ。確か、王女様のお母さんって……』

『ええ、病気で亡くなっています』

『なるほどね。母親との思い出の国を、見せたかったってことか』

 

リエルの目的を知り、パワージョー達は納得したとばかりに、笑みを浮かべる。

 

「……はぁ~。

 リエル。確かに、お前の気持ちは分かった……。

 だが、その勝手な行いで多くの者達に迷惑もかけた。それは、わかるな?」

「はい……」

「ならば、しなければならないことがあるはずだ」

「……。

 ブレイブポリスのみなさん、本当にご迷惑をおかけしました。

 ごめんなさい!」

「ねぇ?こうやって、謝ってるんだからもういいでしょう?」

「一番迷惑かけられたお前がいいなら、俺も別にいいけど」

『そう言うと、思ったぜ』

「うん!」

 

リエルの二度目の謝罪に、鈴がこれで許すよう勇太や一夏達に願うと、

一夏は元から気にしていなかったのか、鈴本人がいいのならと許す。

パワージョーと勇太も、一夏がそう言うだろうとわかっていたのか、つられて

笑顔で頷く。

 

「ありがとうございます!でも、悔しいなぁ~」

「何が、悔しいの?」

「私とそっくりな顔で、そんな素敵な恋人がいるなんて~。

 ああ!私の王子さまはどこにいるの!」

「ちょっ!恋人?こいつが?

 ないないないない!絶対なぁぁぁいいいっっっっ!!!!!」

「うん?恋人?

 ……パワージョーって、鈴の恋人だったのか?」

 

リエルの唐突な恋バナに、鈴は顔を真っ赤にして全力で首を振りながら

否定するが、一夏はとんでもなく的外れなことを言いだし、その場にいた全員を

ズッコケさせた。

 

「ん?どうしたんだ、みんな?」

「い、一夏……」

「この……おバカぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

「ス〇ニングダ〇スっ!?」

 

本気でみんながズッコケたことに首を傾げる一夏に、勇太は呆れ、

鈴はハートの仮〇ライダーの必殺技のように回転キックを顔面に叩き込んだ。

 

『あれ?鈴なら、笑いながら否定すると思ったけど……』

『ええ。おそらく、間違いないかと……』

『本人は、まだ気づいていないかもだがな』

『一夏が大人になったら、どうなるんだろうね?』

 

一夏にゲシゲシと蹴りを入れる鈴を見て、パワージョー達は鈴も落とされたかと

気付くが、当の鈴は戸惑いを隠せていなかった。

 

「(だぁ~~~!

 何で、こんなにイラつくのよ!

 そりゃあ、私達はただのクラスメートだけど!

 それでも、他にあるでしょうが!

 ていうか、これが箒と同じKOIって奴?

 いやいやいやいや!

 そんな要素、無いでしょう!

 あんなイタズラ小僧な顔をしたかと思ったら、私をお姫様抱っこしたり?

 みんなにはカッコイイ顔で指示を出してたけど!

 てか、危ない所でかっこいい所を見せられて落ちるとか、

 どんだけチョロいのよ、私!)」

 

どうやら、箒のライバルに本格的になるにはまだ少し時間がかかりそうである。

 

 




前回、登場したミニカーロボはミクロマンのゼンマインのイメージです。
ビークル形態とロボ形態を使い分け敵を翻弄します。
ネーミングは、ミニカーだからミニィとwww

ボンバー03は、まんまガオガイガーのEI-03です。
もちろん、本家と違って完全なロボットなので再生とかはしませんし、
ゾンダー胞子をばらまいたりもしません。

今回で鈴は、落ちる一歩手前ですが、次話では完全に箒と同じくな
予定ですwww

てか、我ながら今回は無理やり感がひでぇや(汗)


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第7話 暴走特急! 前編

一年以上の間が空いてしまい、申し訳ありませ~~~んm(_ _)m
何とか仕上げられました(汗)

この話をやるならと決めていたゲストキャラが登場します。


「ご覧ください、皆さん。

 ブレイブポリスと旋風寺コンツェルンが共同開発した、

 超AI搭載の新型特急“ロコモライナー”です!」

 

女性ニュースキャスターが、期待にあふれた声で紹介するのは、蒸気機関車を

思わせるフォルムをした新型列車だ。

 

「超AIがロボット以外に搭載されるのは、世界初!

 危険物の持ち込みや怪しい動きを見せる不審者も瞬時に感知し、

 乗客の安全が守られます。

 また、最新のリニアモーターが採用されているので、スピードも

 世界最速でありながら、騒音もほとんどないと言う、驚きの列車なのです!」

 

キャスターの説明に、周囲にいる報道陣から関心の声が上がり、カメラの

シャッター音が鳴り響く。

 

「明日の開通式では、旋風寺コンツェルンの若き総帥、旋風寺舞人さんだけでなく、

 我らが女王陛下もゲストで招待されて……」

「盛り上がっているね、デューク」

 

画面から流れるニュースを聞きながら、一夏はビークルモードの救急車になっている

デュークに話しかける。

 

『当然だよ。

 超AIを搭載したロコモライナーもだが、

 開発に携わっているのは近年急成長中の旋風寺コンツェルン。

 そこに、イギリスの女王陛下もとなれば、話題にならないわけがない』

「おまけに、総帥さんは勇兄と同じ17歳だもんね~。

 しかも、すっごいかっこよかったし」

『無駄話は、これぐらいにしておこう。

 今の所、何か異常は?』

「うん、大丈夫。問題ないよ」

 

現在、一夏はデュークと共に、明日ロコモライナーが走るルートの

安全確認を行っていた。

この開通式の警備のため、ブレイブポリスはイギリスへとやってきているのだ。

日本の方を完全に留守にするわけにはいかないので、勇太と一夏。

そして、デッカードとデューク、ガンマックス、シャドウ丸が担当となった。

 

「線路上に、爆発物や不審物は見当たらないね」

『こちら、シャドウ丸。

 駅の方も見て回りやしたが問題ありませんね』

『ガンマックスだ。

 明日女王が通るルートを確認したが、こっちも問題ない』

『だが、油断はできない。

 もしテロが起きるとしたら、当日に行動を起こす可能性は十分にある。

 明日の朝の確認もしっかりと行おう』

 

警戒しすぎてしすぎることはないと、デューク達は気を引き締める。

 

『みんな、旋風寺総帥との打ち合わせは終わった。

 そっちに、何か異常はないか?』

「デッカード!ううん。何も問題ないよ。

 勇兄は?」

『勇太なら、レジーナと話してるよ』

「久しぶりだもんね~」

『……』

 

デッカードからの通信に黙り込むデュークだったが、それを感じ取った

シャドウ丸とガンマックスは肩をすくめるのであった。

 

『デュークの旦那、仏頂面の難しい顔してるのが丸わかりですぜ?』

『そこの鈍感おチビより、マシだろ?』

『別にそんな顔はしていない……』

「ん?どうしたの、みんな?」

 

そんな彼らのやり取りを一夏は、不思議そうに傾げるのであった。

 

 

 

「じゃあ、ロコモライナーの方は頼んだよ、一夏」

「了解、ボス!」

 

翌日、勇太達は警備とロコモライナーの最終チェックを行っていた。

勇太とデッカード、デュークは駅と走行ルートの確認を。

シャドウ丸とガンマックスは、イギリス女王の護衛。

そして、一夏はロコモライナーのチェックを、開発を担当した旋風寺鉄道青戸工場長の

大阪次郎と共に行うことになった。

 

「さてと、工場長さんはまだ来てないな。

 しょうがない。

 変なものが取り付けられていないかどうかだけでも、見ておくか。

 頼むぜ、ミニィ?」

 

一夏は、工具箱からミニィを数台取り出し、ロコモライナーの周りや車体の下へと

走らせる。

 

「次は……」

「ちょっと、あなた!」

 

先に、ロコモライナーの中に入ってチェックをと思った一夏だったが、

背後から突然、声をかけられる。

振り向くとそこにいたのは、余所行きのドレスに身を包んだ

自分と同い年に見える金髪の少女で、何故かこちらをにらんでいた。

 

「子供が、こんな所で何してますの!」

「何してるって……お前だって、子供だろ。

 てか、お前こそ、何してるんだよ。迷子か?」

「なっ!ま、迷子っ!?

 このセシリア・オルコットに向かって、何て……!」

 

一夏は、いきなり絡んできた少女に眉をひそめ迷子かと尋ねるが、

気に食わなかったのか、セシリアはワナワナと体を震わせる。

 

「許しません……許しませんわ!

 あなたみたいな礼儀知らずは、わたくしが成敗してくれますわ!」

「成敗って、何を言って……」

「関係者以外立ち入り禁止のこの場所にいるだけで、

 怪しさ満載ですわ!」

「いや、俺関係者……」

「問答無用っ!!!」

「話を聞けぇぇぇ!!!」

 

思い込みが激しいのか、一夏の物言いに頭に血が上っているのか、

セシリアは一夏を捕まえようとする。

無論、一夏も黙って捕まるわけもなく、ちょっとした鬼ごっこが

始まってしまう。

 

「お待ちなさーい!」

「そう言われて、待つ奴がいるかぁっ!

 うおっ!?」

 

ドレスを着ているにもかかわらず、セシリアの足は速く、

一夏は必死に逃げるも足を滑らせて転んでしまう。

 

「捕まえましたわっ!」

「ぐへっ!」

「さあ、観念してお縄につきなさい!」

「そのお縄につけるの俺の仕事!」

 

転んだ一夏に馬乗りし、身動きできないようにするセシリア。

必死に抵抗する一夏だったが、体勢が悪く振りほどくことができない。

 

『セシリア・オルコット。彼を放してください』

「誰ですか!?」

『驚かせて申し訳ありません。

 私は、ロコモライナーです』

 

突然二人に話しかけてきた、ロボットの声。

それは、今日開通式を迎えるロコモライナーのものであった。

 

『セシリア・オルコット。

 彼は、日本のブレイブポリスの少年警官、織斑一夏。

 不審者ではありません』

「ブレイブポリス……嘘おっしゃい!

 こんな礼儀知らずの子供が、あのブレイブポリスのはずありませんわ!」

「嘘じゃねぇよ!俺は、ブレイブポリスだ!

 ほらっ!」

 

一夏のことを怪しい不審者と決めて疑わないセシリアは、ロコモライナーの言葉を

信じようとしない。

何とか警察手帳を取りだし、それを彼女に見せる。

 

「~~~っ!

 で、でも!だったら、何でウロウロしてましたの!」

『それは、私の体に不審物がないか確認していたからです。

 今も、彼のメカが私の体をチェックしています』

「これで、分かったか?

 お前こそ、あんなところにいて、何か企んでいるんじゃないのか?」

「何ですってっっっ!」

『いえ。それは違います、織斑一夏。

 彼女は、今日の開通式に招待されているオルコット家の令嬢です』

「令嬢!?

 こんなお転婆が!?」

「誰がお転婆ですの!」

「おーい、セシリア~」

「一夏くーん」

 

不審者の誤解は、互いに解けたが一夏の発言で第二回戦が起きそうなった時、

彼らをそれぞれ呼ぶ男の声が聞こえる。

 

「あっ。こんな所にいた……って、どうしたんだ一夏君?」

「セシリア……っ!

 見つかって、よかった~」

「工場長さん!」

「……お父様」

 

年配で如何にも職人といった感じの男性、大阪次郎は一夏の状況が

どういうことか分からず、驚きの声を。

気弱で人が良さそうに見える男性は、安堵の声を上げた。

 

『旋風寺鉄道青戸工場長の大阪次郎と、

 オルコット家のジェイク・オルコットですね。

 どうやら、セシリア・オルコットが織斑一夏を不審者だと

 勘違いしているようなのです』

「ええっ!」

「どういうことだい、セシリア?」

「どういうこともこうしたもありませんわ!

 こんな子供が、うろついているなんて怪しいですわ!」

「だ~か~ら~!

 ロコモライナーのチェックだって、言ってるだろう……!」

「セシリアちゃんだっけ?

 一夏君の言っていることは、本当だよ。

 チェックの手伝いを頼んだんだ」

「うっ……」

 

大阪工場長の言葉に、自分の勘違いだとようやく理解したのか、

バツが悪くなりセシリアは言葉に詰まる。

 

「ハハハ……。

 うちの娘が、ご迷惑をおかけしました。

 さあ、セシリアも謝って?」

「うぅぅ~~~……あ、あなたが誤解されるような紛らわしいことを

 しているのが悪いんですわ!」

「はぁ~?何だよ、それ!」

「えっ、ちょっ!セシリア……っ!」

 

自分の間違いを認めたくないのか、セシリアは理不尽な責任転嫁をすると

その場から走り去ってしまう。

 

「すいませんすいません。

 セシリアが失礼なことを……。

 セシリア~」

「あっ!ちょっと!……行っちゃった」

「災難だったね、一夏君。

 とにかく、チェックをしようか」

『お二方、よろしくお願いします』

 

一夏は呆気に取られながらも、大阪工場長と共に、ロコモライナーのチェックを

行うのであった。

 

「各センサ―、正常に作動……っし!

 大阪工場長、チェック完了。

 異常なしです」

「わかった。こっちも今やっているこの調整で、完了だ」

『大阪工場長。

 何故、わざわざ手作業で作業を行ったのですか?

 メンテナンスシステムでも、各機能、センサーに問題はありませんが』

 

ロコモライナーの操縦席で一夏と大阪工場長が最終チェックを行っていると、

効率が悪いのではと、ロコモライナーが問いかける。

 

「ハハハ。

 確かに、そうだねロコモライナー。

 だけどね?

 いくら技術が発達しても、こういう確認は人の手で行なうのが大切なんだ。

 ましてや君は、最初から変形を想定しているブレイブポリス達とは違う、

 世界初の超AIを搭載した列車だ。

 念入りにチェックを行うにこしたことはない」

『そういうものなのですか』

「勉強になります、大阪工場長」

 

そうやって、談笑しながらも二人は最終チェックを完了させる。

 

 

 

「了解。お疲れ様、一夏。

 向こうの最終チェックは、終わったみたい」

『そうか。

 こっちも線路上や駅に、不審物や不審者は見られなかった。

 このまま、無事に終わってほしいが……』

『女王陛下は、無事に駅に着いたようだ。

 私達も配置につこう』

 

一夏からの報告を受け、デッカードとデュークはそれぞれの配置位置へと

移動する。

 

「はじめまして、キャサリン・オルコット代表。

 旋風寺コンツェルンの旋風寺舞人です」

「はじめまして、旋風寺総帥。

 お会いできて光栄です。

 こっちは、夫のジェイクです」

「ジェイク・オルコットです。

 いや~、お若いのに総帥なんてすごいですね。

 僕なんかと大違いだ」

「……っ。

 そして、娘のセシリアです」

「セシリア・オルコットですわ。

 以後お見知りおきを」

「こちらこそ、よろしく。小さなレディ」

「この度は、お招きいただきありがとうございます」

 

その頃、ロコモライナーの出発駅では旋風寺コンツェルンの総帥と

一目会おうと有名企業や財団の人々が押し寄せていた。

中には、一夏を追いかけまわしたセシリアと両親もいたが、

キャサリン・オルコットは夫の腰の低い態度に眉をひそめていた。

 

 

 

 

 

「ミッション開始まで後30分……」

 

ロコモライナーの開通式開始まで後20分――。

 

 

 




はい。セシリア編のスタートとなります。
後編で終わらせられるよう、早くできるようがんばります(汗)

ゲストキャラは勇者シリーズで、列車とくれば彼しかないと
嵐を呼ぶナイスガイの旋風寺舞人に登場してもらいました。
勇者特急隊が出るかは、未定です。

ロコモライナーはもちろん、ロコモライザーを小型化した
イメージとなります。声はガインでwww

勇太×レジーナな所が出ましたが、うまく描いていけれるかな。

一夏は前回から一年経って、12歳の小学6年生になっています。


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