機動戦士ガンダム00IF  些細な因果 (とある睡魔の榴弾砲)
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1 Sorrow brings sorrow

某局でガンダム選挙があったので10周年でも踏ん切りがつかなかったものを書き始めました。センスのない文にしかならないと思いますが、皆様の暇潰しになればと思います。

追記/短すぎたり、完全な一見さんお断り状態に申し訳なく思ったりしたため本文を加筆修正しました。


 西暦2307年。世界は世界は大きく3つの国家群に分かれていた。

 1つは、米国を中心とした世界経済連合ー通称ユニオン。

 1つは、中国・ロシア・インドを中心とした人類革新連盟。

 そして最後の1つは、新ヨーロッパ連合ーAEU。

 赤道上に建造された三本の軌道エレベーターの太陽光発電システムのもとにそれぞれ結束した三国家群。

 それぞれが己の威信と繁栄のため冷たい争いを続けていた。

 その状況下において、突如として世界に対し武力による戦争根絶を掲げて活動する組織が現れた。

『ソレスタルビーイング』 機動兵器ガンダムを所有するその私設武装組織。

 彼らは宣言通りに戦争関係者に武力介入を開始した。時には戦争の関係両国への武力行使を。時にはテロリストから民間人を守るかのような行動を。

 

 ユニオンの勢力圏。その西の果てにある島国。その首都であり経済特区でもある東京。ハイスクールの最寄り駅にほど近い高層マンションの一室。その薄暗がりに彼は居た。

 沙慈・クロスロード。ごく普通のハイスクールの工学部の学生である。正確には本来なら今もごく普通に生活しているはずであった。

 

 

 

 突然の事だった。姉さん、絹江・クロスロードが亡くなった。

 目の前のテーブルには遺品が並べてある。

 手を伸ばして触れたのは、雨で汚れてしまった家族写真入りのパスケース。

 汚れてしまった幼いころの姉弟と、父親。

 

 姉さんは報道機関の記者をしていた。

 ジャーナリストであった父の影響だったのだろう。

 父は取材相手に犯罪者の濡れ衣を着せられ投獄された。

 今度は姉さんがいなくなってしまった。

 

 姉さんの葬儀や埋葬を手伝ってくれた編集デスクの言葉を思い出す。

「絹江は、イオリア・シュヘンベルグの追跡取材を専任でしていた。」

 イオリア・シュヘンベルグ。ソレスタルビーイングの創始者と目される人物。

 ソレスタルビーイング。紛争根絶を標榜していながら、武力を行使する武装組織。

 常々武力で紛争を根絶することに困惑してきた沙慈はここに至って、やっと自分の認識が甘かったことに気付いた。

 どこか遠くの出来事であると思っていた。市街地での爆破テロを見て、分かった気になっていた。

 姉さんを奪ったソレスタルビーイングが。ただ「ソレスタルビーイングのやってることは矛盾だらけで変だ」と口だけ達者に語っていた自分の甘さが腹立たしい。

 今までどこか傍観者気分であったのだ。遠い世界での出来事だと感じていた。戦争は嫌だと、テロは怖いと。簡単に口に出していた。これはそんな生半可な感情じゃない。

 

 姉さんはソレスタルビーイングに深入りしたことで()()()()のだ。

 腹部刺創による失血死。雨のせいか犯人に関する情報は全く現れず、事件の真相は闇の中に消えた。

 

 

 最後に姉さんに会ったのはもうずいぶん前だった。少なくともこうなるなんて考えたこともなかった。唐突に会えなくなるなんて考えもしなかった。

 今まで自分を育ててくれたお礼も、恩返しも、手伝いも。何もできていない。

憎悪、自己嫌悪、後悔。負の感情が捌け口もなく回り続ける。

 

 

 

 

 

 時間を忘れる程に続いた沈黙を破って明るい電子音が鳴り響く。

『はーい、沙慈?…聞いてる?』

「…うん、こんばんは、ルイス。」

 ルイス・ハレヴィ。一応ガールフレンド。いつもは無駄に元気でたじたじになるけれど、今はその元気さが有難い。

 

『ちょっと!ほんとにどうしたの!?沙慈、顔色が…』

「姉さんが…。今はいいんだ。そっちはどう?」

 彼女はAEU出身であり、ちょうどスペインに試験休みで帰国して、従兄の結婚式に出ることになっていた。

 今の自分は笑えていないのだろう。不謹慎ながら電話を挟んでいる会話で運が良かったと感じた。

 

『ああ、うん。こっちは楽しんでるよ。えっと…沙慈?』

「ルイスは今は楽しむ時間でしょ。後で話すからさ…」

『沙慈のくせに生意気いうな!私の事は良いから話をしt……』

 ツーッ ツーッ ツーッ

 

 唐突に携帯の電源が切れる。間違えて終話ボタンでも押したのだろうと、いつものルイスを想像して思わず笑みが零れた。

 

 お節介で、わがままで、でもかわいい自慢のガールフレンド。

 彼女がいれば何とか乗り越えられる気がしていた。

 予定では結婚式は丁度こちらで朝には終わると聞いていた。

 だから、話はその時でいいと。

 今すぐ電話したら続きをされてしまうからと。

 

 だからこの胸騒ぎは気のせいなのだと思い込んでしまったのだ。

 いつでも終わりは唐突なものだと痛いほどに知ったはずなのに。




今回1011文字です。少ないですね。進んでませんし。
とりあえずこんな感じで二つの悲劇のタイミングがズレたことで沙慈・クロスロードという青年もズレてしまう話です。
きっと最後は大団円になると思いますが。
のんびり気が向いた時に書いていきたいと思います。

追記/1804文字になりました。
形態→携帯
思いっきり漢字を間違えておりました。
最初におなじみのイントロを加筆したり弄ったり。


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2 Unavoidable fate

随分放置しましたが2話です。
まあ他作品放置をごまかそうと匿名投稿してるので今更ですが。


 不幸なことは続くものだ。

 何を呑気なことをことを考えていたのだろう。一瞬でも感じた嫌な予感は的中していた。スペインで事件が起きた。

 

 

 

 バイトはもとより休み中だけの契約。幸い()()は休みの始めのうちに買うことが出来ていて、その後のバイトのお蔭もあって移動費には困らなかった。

 道中メディアからは嫌というほど状況が流れて来た。

 曰く。死者重軽症者合わせて87名。襲撃された。ガンダムの襲撃である。最近現れた赤いガンダムが映像に映っていた。襲撃されたのは地域の資産家の結婚式である。件の資産家は紛争幇助をしていたのではないか。云々。

 

 

 死屍累々とした光景が嫌でも思い浮かぶ。東京でのテロ。その時の炎、血の匂い、親の、子供の泣き叫ぶ声。まだ鮮明に覚えているそれが想起され。その中央にルイスが…。

 

 

 だから速足で踏み入った病室で。病院着でベッドの上に座って、空を見上げているルイスの姿を見て安堵した。

 

「沙慈…?」

「ルイス…。良かった…良かった…」

「どうして…学校サボって」

「そんなのどうでもいいんだ、ルイスが生きてて。それだけで僕は…僕は」

「どうしたの?沙慈。なんか…変だよ?ッ!?」

 

 感極まって抱き着いてしまう。

「ううん、ちょっと…ね。今はいいんだ。って、ああ!?。ごめん、ん、 あ…」

 

 そして突然抱き着いたことに謝って、離れようとして、違和感と、その正体に気付く。

 

 咄嗟の抱き着きに対して、抱き返してくれたルイスが回してくれた腕。離れかけたときに背中に触れた掌が。その数が1つしかないことに。

 たぶんその困惑と気づきの表情を見てしまったルイスは、今にも泣きそうな顔をして。

 

「ごめん。」

 だから、さっきよりも強く抱きしめた。無意識に近い。

 目の前の大事な人が居なくならないように。壊れ物を触るように臆病に、それでいてきつく。きつく。

 

 先に涙が決壊したのは沙慈だった。ただよかった、生きていてよかった、と壊れたビデオテープのように繰り返す。

 沙慈の姿を見て、ルイスはむしろいつもを思い出し、すこし笑みが浮かぶ。

 

 

 暫くして。

 

「沙慈は、泣き虫だなぁ…」

「ごめん。本当は、ルイスのほうが…」

「ホントだよ。私を差し置いて泣き始めるとかおかしいじゃん。」

「うん。ごめん。でも良かった。ルイスが生きてて。」

「無事ではないけどね。でもそっか。生きてれば、いいこともあった…ね。」

 今まで沙慈のほうから抱きしめたことは一度も無かった。

「ごめんってば。大丈夫?」

 

 

「親戚のみんなが亡くなって…。ママはテロメアに異常が出て大きい病院…。私はこの通り…。 うん、すこしは落ち着けたみたい。沙慈も、何かあったんだよね。」

「姉さんが、死んじゃった。殺されたって…」

 互い声が震えている。

 

 

「電話した時にはもう、そうだったんだよね。早く言いなさいよ…」

「ルイスは気遣いしすぎなんだよ。お見舞い、ってのもおかしいけど。でもそっか、左手か…。右手出してくれるかな」

 

 取り出した四角い小さな箱。その中には2つの指輪。

 

「ホント沙慈は変なんだから。だって…私…」

「前に欲しがってたやつ。   さっきは泣いちゃったけど。僕がずっとルイスを支えるから。ルイスと一緒にいるから、ルイスとだけはわかれたくないから」

「こんな時にだけ、かっこつけるんじゃないわよ…バカ。…沙慈はかなえたい夢があるんでしょ、それを叶えてほしいから。受け取れない…。後で辛くなるよ…」

「それじゃダメなんだ。確かに僕の夢はある。でもそれ以上にルイスと一緒に居たい。そうじゃなかったら、また失っちゃうかもって…。だから、右手、出してくれないかな…」

 

 

 

 病室で抱きしめあったまま、二人で泣き続ける。

 互いが失ったものを補い合うように。あるいはこれからを分け合うように。

 二人の右手には銀色の光が温かく輝いていた。




右手の薬指、安心とかあるそうですよ。


ルイスの状態はママさんに受け渡されました。
原作通りの心づもりだったのですが。
ルイスの心理描写を薄くした結果ルイス当人の被害量が減った形ですね。


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