【ネタ】登校中にサッカーボール踏んだら、イナイレの世界にTS憑依した。 (五十歩百歩)
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【ネタ】登校中にサッカーボール踏んだら、イナイレの世界にTS憑依した。

勢いだけで書いたものは、振り返ると黒歴史。だからネタとして投稿します。


【ネタ】登校中にサッカーボール踏んだら、イナイレの世界にTS憑依した。

 

 

 

 冬休み。高校サッカー選手なら夢見る舞台がある。通称冬の高校サッカーまたの名を冬の国立。その夢の舞台まで後一歩まで迫った一戦は、俺たちの惨敗に終わった。

 学生時代の全てをサッカーに捧げ、青春を過ごしたかいもあり、1年の時からレギュラーで背番号は10。俺は、チーム一番の得点力をほこる、エースストライカーだ。

 だが、俺は当日インフルエンザにより、決勝のグラウンドに立つことができなかった。

 

「お前のせいじゃない」

「勝てなくてごめんな」

「すまん」

 

 チームの奮闘もかなわずPK負けだった。夢の舞台に行く希望は泡のように消えていった。

 チームメイトも監督も、優しい言葉を投げかけくれたが、俺は自分がピッチに立っていればと悔しさしかなかった。

 もし、自分がインフルエンザにならなければPKの心理的不安は少なかっただろう。そもそも、今のチームなら、俺はゴールを最低でも2本以上決める自信があった。

 生まれ変われるのなら、健康で丈夫な体にしてほしい。あわよくば、美人な幼馴染付きで。と冗談交じりで仲間に話したものだ。

 

 まぁどんな精神状態であれ、風邪が治れば学校に行かなければならない。

 

――冬休み前最終日ぐらい休んでもいいじゃねーか。

 

 はっきり言って悪夢だったのだ。あの試合は思い出すことすらしたくない。チームメイトを信じていた。けれどやはり、俺はあの舞台(冬の国立)に立ちたかった。

 そんなことをずっと考えていたからだろう。

 不用意に転がっていたサッカーボールを無意識に踏みこんだ。

 しかし、リフティングしようとしたサッカーボールは、俺の脚に吸い付くことなく、2つに分かれた。

 

 

「あれ?」

 

 

 何が起きているのか理解できない中、呆然と立っていると、サッカーボールはひとりでに進んでいく。

 サッカーボールは2つに分かれたまま、前方に進むと、1つのボールに戻り、

 

「ゴットハンド!!!」

 

 サッカーボールを蹴った音ではない音と、某アニメ超次元サッカー少年の声が聞こえた。

 その瞬間、俺は強烈な頭痛に襲われ、意識が暗転した。

 

 

 

 

「…い……おい!大丈夫かよ!」

 

 目を開くと、オレンジ色のバンダナをした少年の顔が目に入った。仰向けになっていた俺は、状況を理解し、慌てて起き上がろうとして、唇に何か温かい物が触れる感触が襲う。

 

 おげげ――。最悪じゃねーか。俺はBLの趣味なんてねーぞ。よりにもよってファーストキスが!!!

 

 小学生より前の円堂守と接吻していた。

俺は、小さくなった体を使い、ぎこちなく両手で払いのけると、転びそうになりながらも急いで駆け出していた。

 

「別に何でもねーよ!じゃあな」

 

 俺はこの黒歴史を忘れることにした。今の出来事は夢に違いない。早く目覚めないかなこの夢。

初めて見るはずの街並みをいつも見に来ていたかのような錯覚、いつの間にかあった雷門町で過ごしてきた記憶を頼りに帰途についた。

 

 夢だと願って床に就いた俺だったが、元の高校生の身体に戻ることなく。

 

 

幼女の体で目が覚めました。

 

 

――何でイナズマイレブン世界にいんだよ。彼女欲しいと願ったけど、女の子になりたいなんていってねーー!まじで、ふざけんじゃねーよぉぉ!!!!

 

 一人鏡の前で声にならない叫びをあげていると、下の部屋から物音がすることに気づいた。

そういえば、昨日帰ってきた時、誰もいなかったな。

記憶にある限りだと、俺はこの家のひとり娘のようだ。おそらく両親が帰ってきたのだろう。

 階段をゆっくりと降り、リビングの扉を開ける。すると、知らない顔の人が荷物の整理をしていた。

 

「おはよう……なあ、おっさん。母さんたちはどこにやったんだ?」

「っ!?あなたのご両親はこの前亡くなったのよ」

「これからは私たちがあなたの親だと思ってよ、由宇ちゃん」

 

 え?亡くなった?どうゆうこと?

 

 吹雪さんの話によると、母さんとは仲のいい従妹で東京に行った時は一緒に買い物したりしていたらしい。この前も東京で買い物をしたばかりで、この()の両親は、東京から帰って来る途中に交通事故に巻き込まれ、亡くなったようだ。

 そんな、右も左も分からない中、親戚の家に引き取られ、円堂に引き続きどこか見覚えのある双子が挨拶してきた。

 

「よお!俺はアツヤよろしくな!」

「僕は士郎」

「お、おう。俺は由宇ってんだ」

 

 何が起きたのか知らねーが、この体の精神と高校生だった時の精神が両方とも自分だという認識はできる。何となく元の世界が別の世界のように感じるし……仕方がねー。とりあえず、プロを目指してサッカーしますか!

 まずは士郎、目を合わせないと何も見えないぞ!

 アツヤ!シュートの勝負しようぜ!

 

 

 

 と、思っていた時期が俺にもありました。

 でも、思い出してください。

 どうして吹雪が円堂に会う時、彼は1人だったのでしょう。

 

 答え。吹雪夫妻とアツヤが雪崩に巻き込まれて亡くなるから。

 

 ええ。身内がいなくなった俺は、なんとか園に引き取られました。

 いや、だってさ。サッカー一筋で今まで生きてきたわけじゃん。いちいちアニメの内容なんて覚えてねーよ。

 サッカーの試合で疲れて爆睡していたら、病院だったよ。

 不幸体質で気味が悪いと引き取り先が見つからなかったよ。あれよあれよと流されていると、孤児になっていたよ。

 気がついた時には、その園にいる子供たちと一緒に温かいスープを飲んでいました。

 

 何でこんなこと言っているかだって?

 

 それは、園のみんなとサッカーしていたら、ある時から自分たちは宇宙人だとか言い始めたからです。

とりあえず周りに合わせていたけど、ダサい服に、黒いサッカーボールに、エイリア石。はい、どう見たってエイリア学園です。

 ありがとうございました。

 

 

 なんで気がつかなかったんだろうな。

 俺には分からん(すっとぼけ)。

 

 いや~。気がついてはいたんだけどさ。はっはっは。

14になったばかりのお子様を雇ってくれる場所も、保護者がいない場合育成所にも入れなかったし、居場所がここしかないからどうしようもできなかったんだよね。はー。

 

 俺はため息を尽きながら、待っていると、シャッターが開く。

 シャッターをくぐれば、瞳子監督が率いるイナズマイレブンがいた。

 

 円堂。フットボールフロンティア優勝おめでとう――(棒)。

 おい。こっち見んじゃねーよ。

 

 こんなことを思っている俺は、赤髪の男の子がキャプテンをするチームの一人。

 

 俺の名前は、伊豆野由宇(いずのゆう)

 前世では、キャラ名かぶりでいじられ、今はエイリア学園ジェネシスのFW――ウィーズを名乗っています。

 

 ん?ウィーズを知らない?

 原作だと確か、これがジェネシス最強の必殺技(笑)スペースペンギンをヒロトと一緒に蹴っていた水色髪の男の子です。

 まぁ。俺は、肩まで届く水色の髪をした女の子になっているけどな!

 

 

 

 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 

「とうとう来たね。円堂君」

 

 緊張感が張りつめた空気を遮って、ヒロトが発した。

 俺たちは雷門に続いてグランドに整列する。

 ついにこの時が来たのか。勝ってしまうと戦争が始まるけど、わざと負けるのも嫌なんだよな。

 

「ああ。お前たちの目を覚まさせるためにな」

「俺はこの戦いで、ジェネシスが最強の戦士であることを証明する」

 

 もう目は覚めているので、早く始めてください。戦士なんてどうでもいいんだが、最強のサッカープレイヤーは誰にも譲らねー。

 

「……最強だけを求めたサッカーは、本当に楽しいのか」

「俺は……それが、父さんの望みなんだ」

 

 え?超次元サッカーですよ?かつての世界で培ったボールテクニックと、この世界で増えた謎エネルギーを使うサッカーは楽しいじゃん。絶対にゴールを割らせないと思わせるGKから、点を取った時の爽快感はいいものだぜ?

 

「父さん?」

「俺たちは父さんたちのために最強になる。最強でなければいけないんだ」

「誰のためなんか関係ない。ヒロト、ユウ。お前たち自身はどうなんだ」

 

 おい。いきなりこっちに話を振るなよ。本名を忘れている設定なんだからさ。こういう時は………無視しとくか。

 

「……円堂君。お互いの真意のために全力で戦おう。君たちの相手は、エイリア学園最強にして最後のチーム『ザジェネシス』だ」

 

 コイントスの結果、ジェネシスがボール、イナズマイレブンがフィールドを選んだ。

 

 あ!あの笛は、練習の時に仕掛けた笛だ!どこに行ったのか分からなくて探していたのに!?

 

 ピィーー!!!ヒョロヒョロ

 

 目を見開いて審判を見ていたら、審判の人はすぐに笛を吹き、試合開始のホイッスルが鳴る。

 雷門イレブンたちの足が止まっている間に、俺がボールを蹴り、試合が始まった。

 

 おっしゃ行くぜ!!!……キックオフだからとりあえず、パスしとこ。

 

 俺はゆっくりとした足取りで、駆け上がる。マークについたのは円堂だ。

 俺は緩急を付けた足取りで、円堂の態勢を崩し、その場でジャンプする。するとウルビダからパスされたボールが、胸の位置にくる。

 空中でトラップした俺は、そのまま姿勢を整え、空中でも素早く簡単に放てる必殺シュートを蹴った。

 

「『シングルショット』!」

「止めろ!立向!」

「『ムゲン』――グワァァ」

 

 俺のシュートは、シュートブロックもキーパー技も間に合うことなく、立向ごとゴールに吸い込まれていった。

 

 

 1-0

 

 

 え?まじ!?

 

 俺は簡単に決まったことに驚愕し、この後どうしようか考えていた。

 シングルショット程度であれば、誰かがシュートブロックまたは、立向が止めてくれるだろうと思っており、少し強い流星ブレードが止められるようになるまで待っているつもりであったのだ。

 本当にどうしよう。

 

 その後、俺はシュートを打つふりをしてヒロトにパスを回し、時にはノーマルシュートを蹴った。

 雷門は果敢に攻めるが、ネロが守るゴールが破れず、グランが流星ブレードを決めたことで2点差がつく。

 士郎もフィールドに立ち、雷門は必死にゴールを守っていた。

 

 

 

 

 

 

(僕は誓ったんだアツヤともに完璧になろうって。由宇にワンマンプレーをさせないためにもっと強くなろうって。完璧になれないから、僕は必要ない?由宇は確かにジェネシスのみんなとプレーしているけど、全然楽しそうじゃない。どこかセーブしているような気がする。由宇は僕は、本当のサッカーをしているのだろうか。そもそも本当のサッカーってなんなんだ!!!)

 

 3人がかりの新必殺技パーフェクトタワーや円堂のメガトンヘッド、立向のムゲンザハンドによって、どうにかゴールは守られている状態だ。

 吹雪はただみんなのプレーを目で追うことしかできないでいた。

 

「吹雪!」

 

 円堂からダイレクトパスが吹雪に渡る。その瞬間、吹雪は先程の言葉を思い出していた。

 

『最強だけを求めたサッカーは、本当に楽しいのか』

 

(そういうことなんだね、父さん。完璧になることは僕がアツヤになることではない。仲間と一緒に戦うこと、サッカーは楽しみ続けるってことなんだ。だから僕はアツヤと、由宇の隣で一緒にサッカーがしたかったから強くなろうとしたんだ!!!)

 

 吹雪はボールを受け取ると、豪炎寺と共に駆け上がる。

 ジェネシスのディフェンスは彼らのワンツーでかわされ、必殺シュートがゴールを襲った。

 

「『ウルフレジェンド』――!!!」

「『プロキオンネット』――ギヤー」

 

 ネロの必殺技は破られ、サッカーボールがゴールネットを揺らした。

 

 2-1

 

 

 

 

 やっとか。

 チームメイトが失点に喪失する中、俺は早く本気で戦いたい気持ちを抱いて点数板を見る。

 

「ジェネシスが1点を失うなんて」

「これ以上父さんに恥をかかせるわけにはいかない。いいな」

 

 ヒロトはみんなに活を入れ、1人でゴールに迫る。

 活を入れた直後のシュートは、点を取りに行くも立向に止められてしまった。

 

――言っていることとしていることが違うじゃねーか。

 

「「グラン」」

「たかが!シュート1本を止められただけだ!」

 

 俺はウルビダと共に、グランをジド目で睨んだ。

 シュートを止めた雷門は、自分が止めたかのように喜びあっている。雷門の攻撃に勢いがついてきた。

 

「『ウルフレジェンド』」

「『時空の壁』」

 

 先程1点返したウルフレジェンドをネロはより強いゴール技で止め、跳ね返した。

 跳ね返ったボールは俺の方へ飛んでくる。

 ここで雷門に勢いが傾くのはまずい。エイリア石を解放したらドーピングトレーニングと一緒なため、一瞬のパフォーマンスに対して、身体に相当な負担がかかる。

 俺はグランとウルビダにアイコンタクトをした。

 そしてウルビダにパスをし、グランに向かって走る。

 

「これがジェネシスの力!「『スペース』」

「「『ペンギン』」」

 

 俺はグランと共に、ウルビダによって生み出されたペンギンたちのエネルギーを加算させるようにボールを蹴った。

 スペースペンギン。

 練習当初はスペースペンギン(笑)と思っていたがスーパーノバより断然使いやすい。

 スーパーノバは使いにくいし、3人合わせて打たないとあらぬ方向に飛んでゆくし、お蔵入りとなった。うん。謎エネルギーの調整は不得意なんだ。

 

「『ムゲンザハンド』――!グワァァ」

 

 雷門ゴールにジェネシスのシュートが襲う。

 

 3-1

 

 そこからは、ただひたすらに雷門が一丸となってゴールを死守し、前半が終了した。

 

 

 

 

 ハーフタイムを挟んだ後半戦。

 早々に、雷門がデスゾーン2を決め、点数差は1点となる。

 俺は正直、本気で打ったシュートだったら、立向に止めることはまずできないと思ってしまっていた。

 

「あれをするぞ。グラン、ウルビダ」

「ああ」

「分かっている」

 

 俺は、後半戦が始まる直前に、とある案を持ちかけるためにグランとウルビダに声をかけていた。

 俺はキックオフしたボールをグランに渡し、駆け上がる。

スペースペンギンより強いあれを使おう。

 

 

 

 

 

――『ビックバン』!!!

 

 原作ではイナズマジャパンが使った鬼道、ヒロト、吹雪による必殺技。

 俺が鬼道の役割をすればいけるんじゃね?そう思って試してみたらできてしまった。エイリア学園最強の必殺技である。

 放たれた直後、エネルギーが収縮し、爆発した。

 

 4-2

 

「これがジェネシス最強の必殺技だ!」

 

 いや、ヒロトさん?一々言わなくてもいいと思うんだが?

 

 

 

 

 

 円堂は、試合が始まってからずっとジド目でいる由宇のことを見ていた。

 

(由宇。それがお前の答えなのか。)

 

 円堂は悩んでいた。今のシュートは由宇の本気だったのだろうかと。

 立向が手首を痛めたため、GKにポジションチェンジをしたのだが、円堂は、今の由宇のシュートは魂が籠っていない。サッカーを楽しんでいない。そう感じていた。

 9年前、初めて(・・・)ゴットハンドを使った日。由宇は本当に楽しそうにサッカーをしていた。

 共にボールを蹴り、共に汗を流し、共に必殺技が完成した(・・・・・)あの日。

 

 ゴットハンドと言えば、円堂の代名詞。

 だったら由宇は?初めて完成したあのシュートを使わないはずがない。

 

(目を覚まさせてやる!)

 

「いくぞ!」

 

 円堂の声が、雷門の人達の目にやる気を灯させる。

 後半戦が始まったばかりということもあり、雷門の動きはどんどん良くなっていく。

 

「『爆熱ストーム』――!」

「『クロスファイヤ』――!!」

 

 ネロは防ぎきることができず、雷門の速攻によって、同点に追いつかれた。

そして、エイリア石を解放した状態で、ビックバンを放つも、

 

「『ゴットハンド』――!!!」

 

 神の手によってゴールを奪えないでいた。

 

――これだ。これだよ。どんなシュートを止めてしまうかもしれない。そう思わせるGKから、俺は、ゴールを()ぎ取りたい!!

 

 

 

 ニヤっ

 

 

 

 俺は無意識のうちに頬が上がっていた。

 キックオフ早々、俺はウルビダにパスを回すとオフサイドにならないギリギリまで駆け上がった。

 

「俺によこせぇぇ!!!」

「ウィーズ!」

 

 ウルビダがサイドからセンタリングを上げ、俺はそのボールを勢いよく踏みつける。

 するとボールは2つに分かれ上昇していく。

 左は青、右は赤。前世は男、今世は女。この不安定な俺だったからこそできた必殺技。

 俺は頂点に達した2つのボールをオーバーヘッドキックの要領で蹴り下ろした。

 

「『ダブルショット』ォォ――!!!!」

 

 登校中にサッカーボール踏んだら、ベータの技を使っていた。

 今の円堂なら止められない。

 俺は自分のこの技に自信があり、円堂の正面に撃っていた。

 

「『ゴットハンド』――――!!!グぅ――」

 

 

 

 エネルギーの衝突の末、虚空のエネルギーは

 

 

 

 円堂の神の手に収まった。

 

「「「「「ウィーズのシュートが止められただと!?」」」」」

「反撃だーー!」

 

 

 終盤戦。

 ジェネシスの守りが固くなったことで、4-4のまま点数は動かなくなっていた。

 ジェネシスのみんなはエイリア石の反動で動きが鈍くなる一方、雷門の動きは徐々に良くなってきている。

 

(何がエースストライカーだ!!!)

 

 俺は、自分の慢心を後悔していた。この試合ゴールを奪ったのは立向からのみで、雷門の守護神からは1点も取ることができていない状況。

 次こそ決める。最後の力まで振り絞って!絶対に取る。

 

「守ぅ――!!」

 

 白熱した試合の中、無意識のうちに昔呼んでいた名前を叫ぶと、誰しもが目をくぎ付けになっていた。

 

 

――虚空の女神アテナ

 

 

 どういうわけか。由宇が使えていた化身。虚を象徴とする魔人。

 

「アームド!!『ダブルショット』――――!!!」

 

 誰しもが見たことのないエネルギー。

 木山の後ろに控えていた男は思わぬ出来事に立ちあがり、歓喜で震えていた。

 

 大人でも、子供でも、世界で初めての光景に目を奪われ、動けないでいたが、この男だけは違った。

 

「このシュートは絶対に止める!魔人グレイト……『グレイトザハンド』ォォォ!!!」

 

「「「「なにぃ――!!!」」」」

 

円堂の化身は、由宇のシュートをゴールポストに弾いた。

 

 

 

 

((渾身の一撃だった))

 円堂も由宇も共に同じ事を思っていた。しかし直後の行動は同じではなかった。円堂は立ち上がり、由宇は膝をついたまま立ち上がらない。

 

 

 流石は円堂守だ。

 俺はボールを守りに行く円堂を、膝をついてみることしかできなかった。ボールを取れと誰かが叫んでいる。俺が一番近くにいるのに、動かない。鉛を担いでいるかのように全身が重い。

 

 ゴールポストに跳ね返されボールは、鬼道に渡った。

 

 4-5

 

 化身を使った円堂は膝を着くことなく、全員サッカーをした雷門が、『ジアース』によって5点目を取った。それと同時に、雷門に勝利を知らせる試合終了のホイッスルが、甲高く鳴った。

 

 

 

 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 

 

『2点以上とる』

 

 

 試合に出ていれば、決める自信があった。

どんなに強い選手でも、体調を崩すこともあれば、怪我に悩まされることがある。俺のスタイルは、後半のことを考えない全力プレー。だから俺は、チームメイトのパフォーマンスの発揮できる力を把握していなかった。

 

 冬の国立に進むための決勝戦。

 俺は周りの選手がスタミナ切れを起こしていることにも気がついていなかった。俺がいない中、みんなは少しでも勝てるようにと全力プレーした結果、いつもより早く動きが悪くなっていたにもかかわらず。いや、気がついていても止められなかったのかもしれない。

 ただ、あの時、立っていたかったと思う気持ちと、チームメイトが無理をして消耗していく姿を見ていたくないという気持ちがあったのだ。

 

 

 

 だからだろう。

 俺は、雷門戦、最後の最後にシングルショットを打つチャンスが残っていたのだが、身体は動かなかった。いや、動かせなかった。結局、円堂から点数を取ることができなかった。

 エースストライカーとしてなら失格だろう。

 けれど、終盤最後のチャンスを決めたとしても1点。円堂守なら、必ず反応し、止めきったに違いない。

 それに、俺にとって、園のみんなが無事の方が重要だ。

 

「由宇、早くいくぞ」

「わかった!」

 

 俺は、怜奈の言葉に慌てて、リフティングしていた足を動かす。

 

「おっと」

 

 俺は脚から零れたボールを無意識に踏み込むと、ボールは分かれることなく、道路に転がった。

 まるでボールの方に意識があるかのように、不規則に跳ね返ると、再び由宇の周りをリズミカルに動いていた。

 

 

 

FIN~登校中にサッカーボール踏んだら、TS憑依した~

 

 

 




短編完結


読み返してみても恥ずかしい。

でもこれなら、消さなくてもいいかな。


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IF 円堂を魔改造してみた1

 作者の作品がお気に入り登録されているだと!?
 私の作品を評価していただきありがとうございます!


 ネタを名作と言ってくれる方がいたので、IF編を書いてみた。




 

 

 

 俺、伊豆野由宇(いずのゆう)は、イナイレの世界にTS憑依していた。しかも、体にあった記憶によると、両親を亡くし、お金なし、家なしのハードモード。普通であれば市役所の人が保護するはずであったが、それもなし。

 目から涙が流れる理由は、もう一つの人格によるものか。男性にファーストキスされたよるものなのか。

 ただ、とりあえず憑依したこと以外ありのまま伝えたら、円堂の家に居候することになりました。

 な、何が起きたのか知らねーが、この体の精神と高校生だった時の精神が両方とも自分だという認識はできる。何となく元の世界が別の世界のように感じるし……仕方がねー。とりあえず、プロを目指してサッカーしますか!

 ついでに円堂の魔改造もしてみよう。くっくっく

 

 

 

【IF】下校中にサッカーボール踏んだら、未来から来た人に遭遇した。

 

 

 

 春。出会いもあれば別れもある。雷門中に入学した俺は、今月から女子中学生だ!

 そんな意気込みのもと、幼馴染とサッカー部に入部しようとしたが、案の定言うべきかサッカー部はなかった。

 前世で培ったサッカーをより磨くため、小学生の頃はドリブルやシュート練習、パス練習等基礎ばかりしてきたが、俺は今でも心はエースストライカーだ。

 だが、部活がなければ正式な試合ができない。点を取ることだってできはしない。

 

「「それだったら俺たちが部活を立ち上げる!」」

 

 円堂と部室の掃除を始めると、秋が現れた。女子力皆無の俺たちには女神のような存在だ。

 二人で掃除をしていた頃より、断然はやく終わった。

 試合ができれば俺が得点を取り、円堂がゴールを守ってやるぜ!……え?そもそも女の子は全国大会に出られない?

 

 もし叶えられるのなら、男の子のままがよかった。あわよくば、秋ちゃんのような幼馴染付きで。と冗談交じりに話したら、守は頬を膨らませ、秋に耳を引っ張られた。

 

 

 解せぬ。

 

 

 ま、まあ、どんな環境だって練習試合が組めれば俺は試合に出れるだろう。

 今日のところは帰ろうぜ。

 

 俺たちは制服に着替えると、三人で校門をくぐった。俺の脚にはサッカーボールが吸い付いているように動き回りながら、俺たちは帰途につく。

 

「由宇ちゃん、スカートがめくれるよ?」

「大丈夫だって!なあ守。……守どうかしたのか?」

「ん?サッカー部できるといいなって思って!」

 

 俺はリフティングを続け、二つに増えたボールの感覚を楽しんでいた。

 そんな俺を生暖かいような視線が双方からくる。

 円堂の方を見てみれば、手を頭の後ろに当て俺の方をガン見していた。

 

「円堂君はサッカー部を作るんだよね」

「ああ、絶対に作って見せる!!」

「うん!できるよ円堂君なら。由宇もそう思うでしょ?」

「ったく。守が作るんだから、何が起きたっておかしくなっと」

 

 強い風が吹き、ボールは前方に転がっていく。

 不用意に転がっていくボールの方のエネルギーを回収し、もう一つのボールを踵の裏で止める。

すると、少し進んだところにダサいユニホームを着た集団が立っていることに気がついた。

 

「円堂あいつら怪しいから別の道で帰ろうぜ」

「ん?由宇がそういうこと言う時は大抵そうだし、そうするか!」

「円堂君?」

「ああ、昔から由宇の直感は当たるからな。この後もサッカーする予定だし、こっちの道から行こうぜ!」

 

 ダサいユニホームを着込んで、黒くて見にくかったけどサッカーボールらしきものもあるし。

 あれ絶対面倒事だから。俺たち最強(笑)とかいう集団でしょ。

 

 脇道にそれ、住宅街を進んでいく。

 街灯がつきはじめ、オレンジ色に染まっていたアスファルトから光が薄くなっている。

 

 

 しかし運命には逆らえない。

 

 

 十字路に差し掛かり、角を曲がると、先程の集団が立っていた。

 不気味さを感じた秋は円堂の方により、円堂が一歩前に出る。

 

「無駄だ。雷門にサッカー部はできない」

「誰かの知り合い?」

「私知らない」

「俺も知らねえ」

「サッカー部はできない。確実に」

「どうしてそう決めつけるんだあ?わからないだろ?サッカー部は作れる。本当にサッカーが好きなやつが集まれば」

「サッカーが好きなやつ……か。そんなやつはいらない」

「ん?いない?なあに……サッカーが好きなやつならいるぜ。此処にな!!!」

「嫌いになる。間もなく」

「俺はサッカーが嫌いになんてならないぞ」

 

 とりあえず、経緯(いきさつ)を見守っていたら、背後には明るい緑色の髪をした少年と、茶髪の少年、動く青いぬいぐるみがいます。はい、これはあれですね。

 

 

――イナイレはイナイレだけど、イナイレGOの方じゃねーか!!!つまり、こいつらって……そ、そんな出会い求めてねえんだけどぉ!?

 

 

 気づけるわけねえよ!

 今月中学生になったばかりだぜ?

 豪炎寺が転校して来るまでサッカーの練習どこでしようかって考えていたところに来るか普通?

 

 12になって少ししか経ってないし、時空転移なんて奇想天外な理論、知るわけねえよ!!!

 

 あ、この世界、摩訶不思議な超次元の世界だったわ。

 

 

 俺の気持ちは誰にも分かるはずもなく、白い光に包まれたことで無の境地に達した。

 

 

 

 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 

「ここは?」

 

 視界が回復し、始めに移ったのはどこかのサッカー場だった。

 俺たちの気持ちを代弁するように円堂が発する。

 お!?ここは。試合が終わったら帰れるのかな。明日も学校があるんですが。

 

お前(・・)がサッカーを奪われるのに相応しい場所だ」

「これはどういうことなんだ」

()にはこれから我々とサッカーをしてもらう。……試合だ」

 

 お前って言ったり、君って言ったり。同じ人に使うんだったらどっちかに統一しようぜ。

 名前を呼ぶのなら、あだ名が混ざったりしてもいいと思うけどさ。

 そもそも自己紹介ぐらいしてほしいんだが。

 

「「試合!!」って……どういうことだよ」

「円堂監督じゃなくて円堂さん!そいつらサッカーを消そうとしてるんです」

「えっとお前」

 

 俺と円堂は試合という言葉につい嬉しくなって反応する。

 二人対十一人は勝負にならないだろう。試合をするには、始めの人数は十一人いるべきだ。

 いや魔改造した円堂ならゴールを守れるかも、後は俺が点を取れば試合にはなるのか?

 そんなことを考えていると、先程背後にいた少年が駆け寄ってきた。

 

「えっと俺、松風天馬って言います。えっとあのー。いろいろ説明するのは難しいんですけど、俺は大好きなサッカーを守るためにここに来ました。このままじゃ大変なことになるんです。信じてください!」

「分かった!」

 

 即答かよ!?

 流石の俺でも、今のは……ん?松風天馬?どっかで聞いた名前だな?(※GOの主人公です)

 

「信じてくれるんですか!」

「ああ。サッカーが好って言える奴は信じるさ。大好きなものには嘘がつけないからな」

「今のこと本当なんだな」

「そうだ」

 

 え?そちらの方も即答するんですか?

 確かイナイレGOクロノストーンは……どっちの方が最終ボス側なんだ?

 とりあえず、いつもどおり円堂とサッカーをすればいいんだよな?

 

「試合やるよ!やってやる!お前たちにサッカーが楽しいってことだと教えてやる!でもそっちはチームがそろってるのか。う~ん困ったな。こっちは」

「大丈夫いるよ」

「みんなサッカーが好きな仲間です」

 

 振り返れば、同じエネルギーを感じる集団が、ユニホームを来て立っていた。

 あれ俺にもできないかな?

 性別を超えて出せるなら、是非とも男の子になってフットボールフロンティアに出場するんだけどな。

 

「奴らは?」

「情報を受け取った。奴らは我々の襲撃を受け、サッカーを取り消そうと時間転移した他のパラレルワールドの我々と既に戦っているようだ」

「成程、どうしますか?」

「円堂守と松風天馬。二人同時にサッカーを奪えばいいだけだ」

 

 俺たちが自己紹介とポジションの話し合いをしている間に、プロトコルオメガの方でも話し合いが行われているようだ。

 俺はFW。伊豆野由宇!一応どこでも攻めれるぜ!

 え?由宇さんはFWで?うん。わかった。

 

「話し合いが終わったら整列しろ」

 

 あ、律儀に整列はするんですね。

 整列すると、お互いに気まずい空気が流れる。

 俺は、突然現れた天馬に似た大人の男性に、同情の目を向けながら、コイントスが行われるのを待っていた。

 

 ボールはプロトコルオメガになった。

 解説と審判を一緒にするんですか?催眠状態とはいえ大変ですね。

 

「さあ!天馬ぁズ対プロトコルオメガの試合が今始まります!!」

 ピィーー!!

「さあみんな!サッカーしようぜぇ!!!」

 

 ホイッスルの音がなると同時に、後ろから円堂の声が聞こえてくる。

アルファがキックオフすることで、試合が始まった。

 

 おっしゃ行くぜ!!!……この俺の方に誰もこないだと!?

 

フェイが近づこうとするも、プロトコルオメガの3人にブロックされる。

フェイを挟んだ反対側をアルファが抜き去っていった。

 

 俺はゆっくりとした足取りで、駆け上がる。マークには誰もつかない。

 後方では、故意的にサッカーボールを当てている。

 ムカつく野郎だな。紳士であれスポーツって言葉知らねえのかぁ、あ?

 

「待てよ。サッカーはそんなんじゃないぞ!!」

 

 アルファと円堂が見つめ合う。

 サッカーでお見合いしてんじゃねえよ!天馬も止まってないでディフェンスに行ってくれよ!

 

「さあ!撃ってこい!」

「自らの能力を把握し切れていない」

「それがどうした。やってみなくちゃわからないだろ!お前がやっているのはサッカーじゃない。ボールは人を傷つけるもんじゃない!」

 

 今の時代、サッカーだって情報戦だぞ?

 おそらくあれは、相手にシュートを撃たせることで、アルファの力量を計っている。うん、そう思っとこう。

 

「そうだ。サッカーが悲しんでる」

「天馬!いいこと言うな!」

「アルファ!サッカーをそんな事に使うなんて悲しむぞ!

 

 サッカーって感情持ち合わせるの!?

 スポーツなんだから、楽しいものだろ。楽しいか、楽しくないかの二択じゃないのか???

 

「サッカーは滅ぶべきもの。よって円堂守のサッカーによってお前自身が滅びろ。これより円堂守のインタラプト修正を行う」

 

 何がよってなんだ?

 つーかボール来ねえな。いや俺は、FWだし、エースストライカーだし。

 さっさとよこせやぁぁ!!!

 俺は足音を殺して駆け戻る。

目と鼻の先で、アルファがシュートモーションに入る。

ゴール前まで戻った俺は、振り返り様に同じくシュートモーションに入った。

 

「お見合いしてるぐらいなら俺によこせ!!『シングルショット』!」

「何っ」

 

 エネルギーの衝突の末、勝ったのは俺だった。

 俺は足を振り切り、アルファは踏鞴(たたら)を踏む。

ボールは矢のように進み、プロトコルオメガのゴールを襲った。

 

「『キーパーコマンド03』うぐわあーー!!」

 

 超ロングシュートは、必殺技を打ち破り、キーパーごとゴールに吸い込まれていった。

 

 

 1-0

 

 

 おう?まじ!?

 

 俺は簡単に決まったことに驚愕し、苛立ちが自然と消えていった。

 化身を出すまでもないな。あともう1点とったら、影分身みたいなあれに挑戦してみよう。

 ボールを二つにできるのだから、俺自身が二人になることだってできるはずだ!

 

 その後、天馬が1点追加し、早くも2点差がついた。

 プロトコルオメガはゆっくりと攻めるが、円堂が守るゴールがは破れない。

 

 

――プロトコルオメガの人達、本気でサッカーしているのか?

 

 

 まるで力だけはあるが、やる気のないチームを相手にしているみたいだ。

 空中にボールをキープしたままのパス回しは見事としか言いようがないのだが、精細さがかけている。大きなロングパスの後には決まってアルファがシュートを撃つ。

 

「『シュートコマンド01』」

「絶対に止める。サッカーが滅んでたまるか!『熱血パンチ』!」

 

 2-0

 

 結局、円堂が守るゴールネットは、揺れることなく前半が終了した。

 

 

 ハーフタイムを挟んだ後半戦。

 観客らしき人が見えるが、降りてこない。

 こんな時間に勝手にサッカー場使ってんだから怒られるよな。管理人かな?

 

 

「天馬!」

「はい!由宇さん!」

「……俺にセンタリングすれば絶対に決める!」

「はい!」

 

 純粋すぎる笑顔だわ~。こっちまで楽しくなってくるな。

 後半開始早々、俺はキックオフしたボールをバックパスし、ゴール前まで駆け上がる。

 ゴール前でポジション取りをし、その場でタイミングを計る。すると天馬からパスされたボールが遥か頭上を通過するイメージがよぎった。

 

――どんなセンタリングだろうとも絶対に決める!それがエースストライカーだ!

 

 天馬がパスを出す直前に、俺はその場から一歩ずれてジャンプする。

ボールは胸の前を通り過ぎ、あらぬ方向に飛んでいきそうになるが、俺が空中で足を曲げたことで、両足にボールが挟み込まれる。俺は、そのまま足を振り下ろすことでノーマルシュートを放った。

 

「『キーパーコマンド03』」

 

 プロトコルオメガがゴールを守り、攻めに転ずる。

 ボールは地面につくことなく、3回のパスでゴール前のアルファに渡った。

 

「天空の支配者鳳凰」

「なんだあれは?」

「あれが化身ですよ!」

 

 円堂が少し首をひねりながら口にしたことを、松風が説明する。

 

「『シュートコマンド01』」

「それなら俺もできるな!魔人グレイト『グレイトザハンド』!!!」

「えっ?」

 

 円堂の右手にはボールが収まっていた。

 

 そう。この円堂守は、既に化身を使えるのである。ちなみにゴットキャッチも使えたりする。

 い、いやさ?PK勝負を7年間毎日してればね?

 まさに守護神だわ。俺の必殺シュートを一日で数千本受けても、1日に2本以上ゴールを許したことないんだよね。

 1本取ると、技を進化させて止めるし、一度化身を見せれば、次の日には会得してたんだよ?

 むきになって数多の方法を試して撃ってたけど、結局止められたんだよね。いい思い出だわ。

 

「俺はサッカーが嫌いに何てならないぞ!頼むぞ由宇!」

 

 円堂がボールを投げる。

 そのボールはハーフラインにいた俺まで届く。

これだ。これだよ。どんなシュートでも止めてしまう。絶対に俺までボールが届く。円堂がゴールを守っている安心感。

 

 

 くっくっく

 

 

 俺は無意識のうちに頬と目力が上がっていた。

 トラップをすると同時に、膨大なエネルギーを一点に集中する。

 あいつ()は存在を証明したんだ。

 

「来い!虚空の女神アテナ!アームド!」

「すげえ!」

「なんだとっ」

 

 俺は、円堂に答えるため、楽しいサッカーを続けるため、化身を見せる。

 プロになって何がしたいのか。プロが男女混合だったら、守護神からゴールを奪いたい。だけど全国大会もプロの世界も男女は別。

 今の俺にはプロになってからの目標がない。

 だから、同世代の女子サッカーの試合観戦は欠かさず行うって目標を探すが、たどり着く答えはゴールを奪いたいという気持ちだけ。

 だけど、必ず思うのは、今はこいつらと一緒にサッカーがしたい。観戦するだけは嫌なんだ!

 エースストライカーという俺の存在をここで証明する!!

 

 俺はボールを力強く踏みつける。

 するとボールは2つに分かれて上昇していく。

 左は青、右は赤。前世は男、今世は女。この世界に舞い降りて初めて使った必殺技。超次元なサッカーを受け入れた原点。

 俺は、頂点に達したボールをオーバーヘッドキックの要領で振り下ろした。

 

「『ダブルショット』ォォ――!!」

 

 下校中にサッカーボールを踏んだら、未来人がいた。

 今の俺は超エネルギーを自由自在に扱える。

 俺は、原点であるこの技に自信があり、背中を守る守護神にも使ったことはない。

 たとえ未来から来た人でも、円堂でも、このシュートは止めることは出来やしない!

 

 俺のシュートは、キーパーを棒立ちにさせたまま、ゴールネットを揺らした。

 

 

((あの技はベータの技だ))

 アルファたちプロトコルオメガは、みな同じことを思っていた。まさか修正すべき存在の一人が、同僚の化身と技を使うなど。いくらベータの先祖でも考えていなかった。

(帰還せよ)

 

「了解。試合を終了。帰還する」

 

 

 3-0

 

 グラウンドを整備することなく、帰還していった。まるで元々いなかったかのように、サッカー競技場は整備されている。

 

――この試合俺が入る必要はなさそうだ

 

 耳に届いたその声の主が何を考えているのかは俺にはわからない。

 ただ、2点取った喜びと、試合が最後までできなかった悲しみを同時に味わいつつ、楽しかったという気持ちでグラウンドにいた仲間とハイタッチを交わした。

 

 

 

 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 

『2点以上とる』

 

 試合に出れば、決める自信がある。

 どんなに強い選手でも、やる気がなければいいプレイはできないし、体調が万全でなければ最高のパフォーマンスはできない。

 そもそも、大会には年齢制限や性別の条件、勝ち進むトーナメント方式など、戦いたくても戦えるとは限らない。

 なんでこんなこと言っているかだって?

 

 未来の人が来てから3週間。

 俺は、いつもの日課に加えてデュブリなるものに挑戦している。

 そう。男体化を目指しているのだ。

 

 

「はーー!!」

「いいぞ由宇!」

 

 俺は エネルギーを集合させ、自分以外のもう一つのエネルギー体を作成する。

 

「「どうだ!!」」

「由宇ちゃんが二人になった!?」

 

 ボールを拭いていた秋は、口と目を大きく開けて驚いている。

 そう。俺はついにデュブリに成功したのであ……

 

 そんなわけあるか!

 たとえ二人になれたとしても、男に成れなければ。フットボールフロンティアに出れねえよお!!

 

 俺は、転がってきたサッカーボールを踏みつけると、ボールは部室のドアの方に進んでいく。

 すると、

 

「そんなんじゃあ!?は?……いや何でもねえ」

 

 丁度扉を開けて円堂と話していた少年の顔に、ボールがぶつかる前に消滅した。

 サッカーボールと同じで、エネルギー体を動かすのは造作もない。

 まるでもう一人自分がいるみたいで、痛みも感覚も正常に働いている。いつもの倍以上の感覚と二重で動かさなければいけないので、試合で出すのは無理そうだがそれは対した問題ではない。

 ただ、影分身みたいに服も都合よく出てくるわけではなかった。

 

「「「サッカー部にようこそ!」」」

 

 素早くもう一人の俺を戻すと、円堂が握っている少年――染岡に挨拶する。

 きっと俺は、公式試合にはでることはできないだろう。そう半ば諦めても諦めきれない。

 

俺は、サッカー選手。ポジションFW、エースストライカー。

プロを目指している。

 

 

 

 続 ~下校中にサッカーボール踏んだら、未来から来た人に遭遇した~

 

 

 




 俺  サッカー部始動!!
 円堂 サッカー部員だ!
 秋  驚愕(え?円堂君今の見てなかったの?)
 染岡 「サッカー部の部室を尋ねたら、裸の少女がいた。何があったのか分からねが、俺にも分からねえ。ただボールが襲ってきた幻想を見たと思ったら、そんな少女はどこにもいなかった」


短編完結!もし円堂のそばに残っていたらシリーズ1


 読み返してみても前回ほどの落ちではなかった。
 きっと続かない。うん。



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IF 円堂を魔改造してみた2

 ガラスのハートの作者。お気に入りが増えたから嬉しくて続きを書く。

 円堂のもとに残ったら。IF編2




 俺、伊豆野由宇(いずのゆう)は、イナイレの世界にTS憑依していた。しかも、体にあった記憶によると、両親を亡くし、お金なし、家なしのハードモード。普通であれば市役所の人が保護するはずであったが、それもなし。

 なんやかんや円堂の家に居候になり、未来人を撃退して1年経つ。

 昨年、中学1年の春。未来人は突然やってきて、俺たちに置き土産を残していった。

 そう、試合が楽しかったという多幸感とエネルギーの新しい使い方――デュブリなるものをどう使うかの探求心。

 俺と守は、試合に飢えていた。人数がいないから仕方がねー。プロを目指して今日も練習するか!

 円堂!PK勝負しようぜ!

 あれ?染岡、いつの間に必殺技使えるようになったんだ?

 

 

 

【IF】PK勝負でサッカーボール踏んだら、背後で観察していた人が膝をついていた。

 

 

 

 中学生2年。所謂(いわゆる)中二病を発症するといわれている時期。俺が最強だといっていたが、今の俺は違う。違うったら違う。

 円堂とのPK勝負で化身アームドを使うもゴールネットを揺らすことができなかった。俺は超次元の必殺シュートの限界を感じていた。

 8年間『シングルショット』『ダブルショット』だけだったが、新しい必殺技が必要だ。

 俺はそう思っているが、ピンとくるシュートがない。

 いや、あるにはあった。

 

『マボロシショット』

 

 二つのボールが右と左に分かれていくシュートだ。ちなみにエネルギーを回収すれば、後出しができる。どちらかに反応すれば止められない。

 ただ、全体を守るキーパー技であると防がれてしまうし、強力なシュートではない。

 円堂からは、所見だったらゴールを奪えたが、『ゴットウォール』ってなんだよ。あっけなく弾かれたわ、こんちくしょぉぉ―!!!!

 

 

 

 新しい必殺技が思いつかない。

 エネルギーを集めて、放つシュートは『シングルショット』であるし、混沌のエネルギーを放つのは『ダブルショット』だ。

 エネルギーを一転集中にして、解放するだけでは、守からゴールを奪えない。

 

「由宇!入って大丈夫か!」

「別に大丈夫だぞ」

 

 そんな事を考えていれば、守がお風呂に突入してきた。

 夕飯前に風呂に入るのが円堂家のルールであり、俺も例外ではない。

 前世では、寮生活だったため、違和感はないし。

 大した問題にはならないだろう。

 ただ入浴するだけだしな。

 

 髪を洗っている時に、堂々入って来ることもあれば、湯船に浸かっている時に入ってくる時もある。

 居候をはじめた時からずっとそうだったため、俺も守も平然と自分の体を洗い、さっさと出ていく。

今更感もあるが、守はサッカー以外に強い興味は引かれないならしい。前世の仲間たちとは、くだらない話もしたが、守とはサッカーの話しかしない。

 

 嫌なことと言えば、ドアを開けた時に冷気が入って来ることぐらいだろうか。まあ、守と俺が揃わないと夕飯にありつけないこともだろうか。

 

 俺が、そんなくだらないことを考えながら、ボーとして守を見ていると。

 

「由宇!今日さ!綺麗なシュートをうつやつがいてさ!俺あいつと一緒に試合がしたい!」

 

 ん?もしかして豪炎寺か!?

 

 前世の記憶など薄れてきており、豪炎寺が転校してきてからイナイレが始まる程度しか覚えていない。

 でも豪炎寺が来るということは、一緒に例のものもくるのである。

 

 そう。帝国学園から練習試合の申し込みだぁぁぁ――――!!!!

 

 守とは別の意味でテンションをあげた俺は、二人そろって、おかんに怒られました。

 

 

 解せぬ。

 

 

 ま、まあ、試合ができるのだ。今の部員は10人(・・)だし、後は風丸を誘えば試合ができるだろう。

 

 

 

 ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 

「鬼道さん、なんでこんなチームと試合を?うちのスキルが上がるとは思えませんけど?」

「面白いものがみられるかも」

「面白いもの?」

「ああ、楽しみにしていることだな」

 

 練習試合当日。眼鏡を含めて12人。

 巨大な自動車からはぞろぞろと大人数の少年が出てきた後、ユニホームを来た選手が登場した。

 大型車両の規定人数って何人だったっけ?

 荷台扱いなら、人は乗ってはいけないし。絶対に定員オーバーしてそうだよな。

 

 水泳でもないのにゴーグルを付けた少年が笑みを浮かべながら、隣を歩いている少年と談笑している。

 面白いもの?

 雷門に面白いものってあったか?

 

 鬼道と呼ばれた少年の左腕にはキャプテンマークがついている。

 彼が帝国学園のキャプテンなのだろう。

 そのことに気がついた守が、駆けていった。

 

「雷門中キャプテンの円堂守です!練習試合の申し込みありがとうございます!!!」

「初めてのグランドなんでね。ウォーミングアップしてもいいか?」

「はい!どうぞ!」

 

 守は頬を上げている。

 昨晩は、守のテンションを落ち着かせるのが大変だったな。

 今回の試合は、性別制限がないため、俺も出られるのだ。

 守も俺も今日の試合が楽しみでしょうがなかった。っくっくっく。早く試合がしたいぜ。

 

 帝国学園がボール回しやドリブルのボールの跳ねを確認している。

 そんな彼らのプレーを観察していると。

 

「サイドに動いたな」

「そうですね」

「守はどう見る?」

「ああ!試合が楽しみだ!」

 

 染岡が睨みを利かせ、宍戸が相槌をうち、帝国学園の癖を探している。

 戻ってきた守は、俺たちと会話しながら片手でボールを受け止めると、危ないですよと声をかけて投げ渡した。

 

「早く試合をしたいぜ!なあみんな!」

「「「「「「「「おう!!!」」」」」」」」

「なんでお前らそんなにテンション高いんだ?」

「そんな事、僕に聞かれても知りませんよ!?」

 

 

 

 帝国が練習を終了し、軽めにグラウンドの整備も終わると、整列する。

 整列するのはこれで二回目だが、整列にはいい思い出はない。

 今回も何か起きるのだろうと思っていると。

 帝国学園の選手が失笑するのを我慢しているのが目に映った。

 

「雷門は女子が10番なんだな」

「あ?」

「おほん。これより帝国学園対雷門中学の練習試合を始めます。ではキャプテンコイントス……な!?鬼道君コイントスを」

「必要ない好きに始めろ」

 

 守は目を点にさせ、固まった。

 まあ、いいよな。お望み通り俺たちがボールにしようぜ!

 この俺を舐めやがって。女子がエースで何が悪いんだ!?あ!?

 

FW 伊豆野、染岡

MF 風丸、半田、松野、栗松

DF 影野、壁山、宍戸、少林

GK 円堂、

ベンチ メガネ、木野、音無、監督

 

 

「さあみんな!楽しんで行こうぜ!」

 

 円堂が手を叩き、声を響かせる。

 その掛け声で、少し冷静になる。

 いつも思うが、聞きなれた声を聞くと安心するよな。まるで洗脳だ。

 

 ホイッスルの音の後、俺はキックオフしたボールを染岡に渡し、駆け上がる。

 染岡は帝国のダブルスライディングを、ジャンプすることでかわし、空中で風丸にパスをだす。

駆けていた風丸の足に、吸い付くようにボールは出された。

 

「すごい。こんな正確なパスがだせるのか」

 

 風丸とは小学生のころ、一緒にサッカーをしていたため、ある程度のフットワークができることは知っている。だが、まだサッカープレイヤーではない。そんな風丸に正確なパスを出すのだ。

 パワー選手である染岡でも、パスぐらい朝飯前だ。

 染岡は既に覚醒済みである。走り方を見るだけで、どこにパスを出せばいいのか分かるのだ。

 

 ゴール前でポジション争いをする俺は、緩急を付けて相手を翻弄する。

 その間に左サイドから染岡、松野、宍戸にパスがわたり右サイドにボールが運ばれる。

 

 今だ!

 

 俺は更なる緩急で相手を尻餅させると、センタリングで上げられたボールにヘディングを合わせる。

 左上ギリギリをとらえたボールは、帝国学園のGK――源田が反応し。

 

キャッチングする前に、半田のヘディングによって右下にコースが変わった。

 

「っ!?っふう。鬼道。俺の役割はここまでだ」

「ああ。はじめようか帝国のサッカーを」

 

 源田はボールをキャッチすると、鬼道にスローし、髪の毛をかき上げた。

 あっ(察し)。あいつら絶対に中二病だ。

 

 帝国学園は、鬼道のドリブルで正面突破してくる。半田、松野、壁山を華麗なボールテクニックで(かわ)していく。

 

「僕は器用なんでね」

「抜かせないぞ!」

「させないっす『ザ・ウォール』」

「行くぞ少林!」

「おう!『シューティングスター』ぁぁ――!!!」

 

 鬼道は壁山を無視して左サイド進む。すると、少林と宍戸の連携防御(ディフェンス)技でボールをカットされた。

 ハーフラインまで戻っていた俺は、雷門のFWとMFのパスワークに参加する。

 帝国学園の選手たちは、近づいてくる素振りがみられない。

 きっと格下に見ているのだろう。

 ここ一年は、練習試合もグラウンドでの練習もしていなかったのだ。知るはずもないだろう。

 スパイからは、町で遊びほうけているとでも聞かされたのかな。

 

 

 半田が前線に山なりの高いパスを出す。

 帝国学園の選手たちが頭上を見ている隙に、俺は駆け上がる。マークには誰もつかない。

 俺は、そのままジャンプし、10()mの高さまで落ちてきたボールを胸でトラップした。

 

 いくぜ源田。守には止められたが、てめえにこれが止められるかな。

 

 空中で素早く姿勢を立て直し、着地する前に、必殺シュートを放った

 

「『シングルショット』!」

「『パワーシールド』っふ……何!?」

 

 俺のシュートは、ゴットウォールには遠く及ばない、薄い膜を一瞬で砕き、ボールはゴールに吸い込まれていった。

 

 

1-0

 

 

 この1年は、みんなで町で基礎体力づくりと、フットワークの練習、円堂とのPK勝負をしてきたのだ。

 グラウンドなどなくても、その辺の河川敷でできるのである。

 必殺シュートの威力は、土台となる身体能力の向上と共に、上がっていた。

 

 やっと動き出した帝国学園だったが、俺一人にDFのマークを付けたことによって。

 

「『ドラゴンスレイヤー』――!!」

『レボリューションV』

 

 染岡の必殺シュートと、半田と松野による連携必殺シュートで点を許した。

 天才ゲームメーカーには、既に雷門の弱点が見えているのかもしれない。だが前半だけでは他のメンバーの心理的ダメージを回復させることはできなかったようだ。

 

 DFのマークも薄くなり、俺は一人でマークしていた選手を振り切ると同時に、パスされたボールは左足の甲にあたる。左膝と足首を柔らかく使うことで、まるで吸い付いているかのように、ボールはピタッとくっつく。

 そして俺は無数のエネルギーの塊を生成し、ボールを覆う。

 

「『マボロシショット』!!」

「『フルパワーシールド』――!!グワァァ」

 

帝国学園は、何が起きたのかわからないまま。俺のシュートがゴールネットを揺らした。

 

4-0

 

 終始、雷門のペースで試合は動き、帝国学園はゴールに近づくことも出来ずに試合の折り返しを迎えたのだった。

 

 

 ハーフタイム。前半戦と後半戦を挟んだ休憩できる時間。

 軽めの汗をかいている雷門と、大粒の汗を流している帝国。

 正直、雷門有利のようにも見えなくはないが、帝国はおそらく選手を大幅に変えてくるだろう。

 40年無敗の帝国学園だ。流石に心理的ダメージも改善させてくるだろう。前半より攻撃になるのは、簡単に予想がつく。

そして雷門の弱点をついて攻撃してくるに違いない。

 ボールテクニック、パス、シュートどれをとっても問題はない。いやうまいからこそ、弱点が誰でも分かってしまう。

 

 選手層が薄く、変えの選手がいないこと。

 攻撃的なチャージなら俺たちサッカー部なら。簡単に躱せるが先週から調整に参加した二人は違う。

 

「後半は、風丸はベンチで休んでくれ」

「たしかに今の俺は、他の奴より下手かもしれないが、何でだ?」

「帝国は前半戦、点を取れなかった。点を取るために攻撃的プレーも増えるはずだ。今、風丸にけがをされたら困るからな」

「お、おう」

 

そしてもう一つの弱点は、司令塔がいないこと。裏を返せは各々自由にプレーができることだが、終盤に近づくにつれて、精神的疲労もたまり、隙はどうしても生まれてしま……

 

 いや、守がいるから、あとはボールをキープしていれば、勝てるのか。

 

「よし、みんな!後半も楽しんでいこうぜ!」

 

 まあ、雷門(うち)に、そんな事を思っても、実行する選手はいないんだけどな。

 

 

 後半戦。雷門は10人、帝国は11人。

帝国がキックオフし、早々に仕掛けてきた。

 

「前半戦とは、まるで別人の動きじゃねえか!」

 

 いや、染岡。源田と佐久間、鬼道以外はメンバー入れ替えだから、別人だろ。

 俺は、前半戦と攻撃の仕方が違うことに、個人技からチームで攻める姿をみて、舌を舐める。

 天才ゲームメーカーの本気の指揮を味わってみたかったのだ。

 一体どうやって人を動かしていくのだろう。実際に観戦したり、テレビを見てりして研究するのには限界がある。

 試合をすることで、その時その判断。一瞬の出来事で攻防が変化し、状況も変わっていくもの。

 俺はまだプロになったことはないのだ。

 プロも舌を巻く戦術を早く見せてくれ。

 

「「「『デスゾーン』!!!」」」

「『ザ・ウォール』――!」

 

 壁山がデスゾーンを止め切り、半田にボールが渡る。

 

「『サイクロン』!!」

 

 帝国がディフェンス技を使いボールを奪おうとする。

だが、半田はスルーし、突破した。

 

「「『レボリューションV』!!!」」

「『フルパワーシールド』ォォォォ――!!!」

 

 跳ね返り、高々と上がったボール。

 見上げても、太陽が眩しく、ボールがどこにあるのか見当たらない。

 跳ね返った角度から、大まかに予想はできるが、空中でそのボールを確実にキープすることは難しい。

 

「いまだ!」

「「「『デスゾーン』」」」

「『百烈ショット』」

 

 真下に蹴り降ろされたボールは、その下で待っていた選手に渡り、シュートチェインが起こった。

 

「間に合わないっす!」

 

「『熱血パンチ』!」

 

 おい。こら。なにナメプしてんだよ!?

 

 4-1

 

 雷門の守護神が、ボールが来なかったことにいじけてただ観戦していただけだったなんて。

 気づけるわけねえだろうがぁ――!

 昨晩から試合を楽しみにしていただろ!

 

「悪いみんな!」

「「「「「「「「「キャプテン?」」」」」」」」」

「はい!この俺がゴールを守るから、みんな楽しもうぜ!」

 

 ゴールを守りきった時に言っていれば名台詞になり得たかもしれないが、たった今ゴールを奪われたGKに言われても、説得力がない。

 まあ、これは一年ぶりの試合だからしょうがないのかもしれない。

 今までPKばかりしてきたのだから、予想外なシュートは防げないのだろう。

 

 ここにきて、守護神の経験不足が浮き彫りになった。

 経験不十分ばかりはどうしようもできない。

 PK勝負であれば、圧倒的守護神ではあるんだけどな。

 

 

 

 後半中盤戦。

 点数ボードは4-1で雷門が優勢。

 このままいけば、帝国は無敗伝説が途切れることになる。絶対に何か仕掛けてくる。

 染岡と俺は徹底的マークされ、シュートをうつチャンスを潰されていた。

 唯一マークが薄くなるのは帝国が攻めている時であり、カウンターの際には素早くマークがついていた。

 

「ここまでか。帝国学園相手にすげえな!あいつら!勝っちゃいそうだぜ!」

 

 誰だ!?フラグを口にしたのは!

 観客が褒めるが、勝利まじかな時に言われると、フラグにしか聞こえない。

 初めて、サッカー部以外の同級生から褒められたことは嬉しい。

 あ、他のみんな浮き足立っている。

 

 守と俺以外は初めての試合。しかも相手は王者帝国。

 アデショナルタイムを含めても20分後には試合は終了している。

 このままいけば、最弱サッカー部が帝国に勝つのだ。

 

 勝者の喜び。

 未来人との試合を思い出す。それ以前の勝利はいつの頃だっただろうか。

 

「今だ!行くぞ佐久間!」

「『ツインブースト』」

 

 百烈ショットからのシュートチェインが放たれた。

 

「僕だって!『コイルタ』グハっ」

 

 円堂はゴットハンドを出す構えをしたが、DFごとゴールに接近してくることに対応できず、守護神が2つ目になる点を許した。

 

 終盤戦。

 雷門はゴール前までボールを運ぶことができるが、激しいチャージでボールを取られ、シュートにつなげることができないでいた。

 

 俺と染岡をマークされただけでシュートを奪えない。

 MFである半田と松野のレボリューションVでは、源田のフルパワーシールドを破ることができないでいた。

 しかしそれは帝国にもいえたことだった。

 

 佐久間は、親指と人差し指で輪を作り、赤いペンギンを呼び出す。

 

「『皇帝ペンギン』」

「辞めろ佐久間ぁ!!それは禁断の技だぁ――!」

「『1号』――!」

 

 身を犠牲にしてでも点数を取る。それは、佐久間の執念の技だった。

 

 この試合で誰よりも強いシュート。

 観戦している素人でも、膨大なエネルギーであることはわかった。

 誰もがこのシュートは決まる。そう思っていた。

 

 だが、雷門のゴールを守るのはPKで2点以上許さない守護神だ。

 この試合で2点取られたが、まだあの技を使ってはいない。

 

 円堂守の代名詞。円堂大介が考案した神の右手。

 虹色に輝き、眩い光が集合する。

 

 

 

「『ゴットハンド』!」

 

 

 

どこかのおじさんが、幻の技と踊りく中。

 神の手はペンギンを粉砕し、守の右手にボールは収まった。

 

 

 

「くそがああぁああ――!!!!」

「諦めるな!最後の一秒まで全力で戦うんだ!まだまだ終わってねえぞ!」

 

 守の声で、動きが悪くなってきていた雷門の動きがもとに戻る。

 俺は無意識のうちに頬が上がっていた。

 帝国が鬼道を中心としたチームなら、雷門は円堂を中心としたチーム。

 そして雷門のエースストライカーは誰だ?

 

 10番を背負っているのは誰だ?

 

 たった4人にマークされてシュートを打てないのをエースストライカーといっていいのだろうか。

 

 俺は、認めない。

 

 エースストライカーのあるべき姿は、どんな状況でもパスを受け取り、ゴールを決めること。俺はそう思ってエースストライカーとして過ごして来た。

 だから、そのボールは。

 

「俺によこせぇぇ!!!」

 

 DFを振り切り、守から投げられたボールを受け取る。

 松野とのワンツーで5人目のDFを引きはがし、帝国のDFが立て直す前にシュートモーションに入った。

 勢いよく踏みつけたボールは、2つに分かれて上昇していく。

 左は青、右は赤。状況を判断するためには冷静に、突破するためには情熱に。心を冷静にして熱いシュートを蹴れるエースだからこそ進化を遂げる必殺技。

 

 俺は頂点に達した2つのボールをオーバーヘッドキックの容量で振り下ろした。

 よりはやく、より強く!誰よりも強いストライカーを目指すために!

 

「『ダブルショット』ォォ――!!!!」

 

 染岡が初めて見た時は、膝をついたこのシュート。

 シングルショットもマボロシショットもこれだけの威力は発揮しない。

 2つのシュートを止められなかったGKに止めることはできない。

 

「『ビースト』ぐわぁ――」

 

 

5-1

 

 

 この試合、誰よりも強いエネルギーの集合体を操ったのは円堂守だった。

 

 

帝国の車が生徒を残して去っていく中、雷門中には守の声が清明に聞こえた。

 

「この試合が俺たちの始まりだ!」

 

 

 

 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

『2点以上とる』

 

 試合に出れば、決める自信はあった。

 どんなに強い選手でも、ゴールを絶対にわらせない。そう思わせるGKから2点以上奪ったのは帝国だった。

 

「『ダブルショット』――!!」

「『マジンザハンド』!!」

 

 ラグビー部からグラウンドを借りることはできない。

 いつもの河川敷。だが練習内容は、帝国戦の前と後では劇的に違う。

 

 5対5の練習形式。

 攻撃側が、防御側にボールを取られてハーフラインまで運ばれたら攻守交替。

 より実践に近づけての練習だった。

 

 雷門が帝国に勝った。

 まだ噂程度でしかないため、情報収集するために他校の生徒が訪れてはいない。

 きっと、フットボールフロンティアが始まれば、ここでの練習も変わるだろう。

 

「いいシュートだな!」

「守こそ!つぎこそはゴールネットを揺らして見せるからな!」

 

 攻守が変わり、俺は背番号が10の選手――豪炎寺(・・・)のマークにつく。

 運命と言うのがあるから、恐ろしいと感じる。

 豪炎寺は俺を振り切り、ボールを踵で上げ赤い炎を纏ったシュートを放つ。

 

「『ファイヤトルネード』!」

 

 今のままでは、エースになれない。

 プロを目指すにしろ、円堂世代であるからには、急成長を遂げる選手も多いだろう。

 

 俺は膝をついて、息を整えた。

 

 

 豪炎寺を思われるほど圧倒的情熱的で、そして確実に決めるような冷静さ。

 

 圧倒的必殺技、すべてを突破できる必殺技を探している。

 

 

 FIN ~PK勝負でサッカーボール踏んだら、背後で観察していた人が膝をついていた~

 

 

 




俺「守!PKしようぜ!」
円堂「グラウンドはまだ使えるから、5対5しようぜ!(GK俺しかいないじゃん)」
風丸「円堂たちってこんなすごい選手だったんだ!一流の選手とか……悪くないな」
染岡「伊豆野には負けねえ!」
半田「中途半端とは言わせない!」
松野「器用貧乏とは言わせない!」
壁山「キャプテンたちについていくッす!」
栗松「流石、由宇さんでやんす!」
少林「小柄な自分でも、サッカーならできる!」
宍戸「DFか。ほとんどMFみたいなものなんだけどな」
影野「っふっふ。注目されるのはいいもの。ではなかった。ズーン」
豪炎寺「なんなんだ、あいつらは」
木野「やっぱりそうなるよね」
鬼道「春奈、俺はどうしたらいいんだ」
音無「お兄ちゃん」
眼鏡「あれ?僕の出番は!?」
影山「これで終わりだ。データ収集はもういい(;´・ω・)」
アフロディ「僕が神だ」




ベータの技
『アテナ・アサルト』はまだ使えません。だってあれ化身技やん。
由宇は、化身技を作ろうとかそこまで頭柔らかくないでしょ。
柔らかかったら短編本編みたいにはならない!


これにて円堂を魔改造してみたを終わりにします。
このIF編では女子は公式試合に出れない設定ですしね。

出すとしたらやっぱり白恋中かエイリア学園でしょ。




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