【完結】無限泡影が飛んでこないこの世界で元気に生きてます (気力♪)
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無限泡影こわい

テラナイト使いにとって今の環境は地獄でしかないと思います。


ファンデッカスの自分は遊戯王VRAINSの世界に転生した。

何を言っているのかと思う諸君は正常である。自分もこの世界を受け入れるまでは多少時間がかかったのだから。だが、自分の転生うんぬんかんぬんは置いておこう。

 

この世界は、カードで全てが決まる世界な割にカードプールが前世のものより少しだけ乏しい。具体的にはシグナー龍やらナンバーズやらズァーク関連やらがいないのだ。一般流通していないだけかもしれないが。あと、サイバース関連カードも一般人には入手不可能だ。(主人公である藤木遊作を除いてだが)

つまりファイアウォールドラゴンによる地獄の連続召喚が飛んでこないのである。トロイメアによる相互リンク地獄が存在しないのである。サモソやらスカルデッドやらで展開したあとバグースカで蓋される事がないのである。アストログラフの謎裁定によるエレクトラムとのコンボが存在しないのである。

 

天国かこの世界は。

 

元の世界とこの世界の違いはもう一つある。それは、ライフポイント4000開始であるという事だ。

つまり元の世界よりも事故ったら即死コース一直線なのである。

そのため妨害札よりも自分の展開札を多く入れるデュエリストが多い。自分の展開に一切関係ないカードが軽視されがちなのだ。

主に手札誘発軍団が

先行1ターン目に無限泡影が飛んでこないのだ。うららでキーカードを止められないのだ。頑張った展開を拮抗勝負で台無しにされないのだ。

 

天国かこの世界は。

 

あまりの環境の高速化に追いつけなかったファンデッカスを自称する自分でもこの世界では一人前のファンデッカーとして人権を得ることが出来るのだ!具体的にはカリスマデュエリストランキング50位前後という微妙なものだが。

 

小学生に威張りちらすが高校生にはへーこらする中学生と似たものを感じるが気にしてはいけない、気にしてはいけないのだ。

 

そんな訳でデュエルである。(唐突)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「「デュエル!」」

 

「先行は貰った!俺は手札から増援を発動、デッキから戦士族モンスターを一体手札に加える!」

「手札の灰流(はる)うららの効果発動。このカードを手札から捨て、デッキからのサーチ含む効果を無効にする。」

「チッ、せこいカード使いやがって。モンスターをセット、カードを1枚セットしターンエンド。」

 

(俺のセットモンスターはライコウ、伏せカードはミラーフォース。どんなモンスターが来ようと破壊してやるぜ、さぁ来い。)

 

「俺のターン!ドロー、スタンバイ、メイン。星因子(サテラナイト)ベガを召喚、効果発動!手札のテラナイトを特殊召喚、来い星因子(サテラナイト)ウヌク。ウヌクの効果発動デッキからデネブを墓地に送る。

 

「モンスターが二体、リンク2か?」

 

「いいや、昔懐かしのエクシーズさ!ベガとウヌク、テラナイトモンスター二体でオーバーレイ、エクシーズ召喚!現れろランク4、煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!」

 

「エクシーズ使いとは珍しい。だが、攻撃力2600のモンスターでも一体じゃこの布陣は崩せないぜ?」

 

「安心しろ、こいつは中継ぎだ。オーバーレイユニット一つと手札一枚をコストにヴァトライムスの効果発動!デッキから光属性のテラナイトモンスターを重ねてエクシーズ召喚する。現れろランク4星輝士(ステラナイト)トライヴェール!」

 

「攻撃力2100?さっきより攻撃力下がってんじゃねぇか。」

 

「トライヴェールの効果、こいつのX召喚成功時、トライヴェール以外の全てのカードを持ち主の手札に戻す!」

 

「とんでもねぇ効果が隠れてやがったなオイ、だが俺のライフは残る!次のターンでソイツごとお前をぶっ飛ばしてやるぜ!」

 

「バトル!トライヴェールでダイレクトアタック。」

 

男 LP4000→1900

 

「さぁもうバトルは終わりだろ?さっさとターンエンドしな!」

 

「お前に次のターンは無い!速攻魔法天架(あまか)ける星因子(サテラナイト)発動!トライヴェールをデッキに戻し、デッキから星因子(サテラナイト)リゲルを特殊召喚!」

 

「攻撃力は1900に今はバトルフェイズ中、つーことは⁉︎」

 

「これでジャストキルだ!リゲルでダイレクトアタック!」

 

男 LP1900→0

 

「何もできずやられちまったか、流石”鬼畜星"と呼ばれる程のデュエリストなだけあるな」

 

「その渾名は好きじゃない。”Stargazer”で良いだろアバター名なんだから。」

 

「人に一枚すらカードを発動させないようなやつには充分だろ。じゃあな鬼畜星!次は俺が勝つ!」

 

「いつでも挑戦待ってるぞー」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そうなのだ。周りのデッキ構成とか気にせず前世のノリでデッキを組んだのでうらら増Gは当然3積みなのだ。

使用デッキはトラップで戦う系であるテラナイトなので、相手に何もさせずに勝利することもしばしば。

そんなこんなでついた渾名が"鬼畜星"。誠に遺憾である。

本当の鬼畜とはファンデッキ相手に無限泡影かます上にファイアウォールでループじみた高速展開からの後攻1キルしてくるような連中だというのに。

 

まぁそんなこんなで自分”結城天頂"はこの天国のような世界でOCG次元(じごく)の経験を生かして結構楽しく生きてます。

 

ハノイの騎士?きっとPlaymakerが何とかしてくれるさ!(フラグ)

 

 

 




結城天頂 アバター名Stargazer
テラナイト使いのファンデッカー。ガチデッキに勝てないためファンデッカスを自称していた。
前世の記憶に戸惑いはしたものの、デュエルできるなら前世と大して変わらないんじゃね?と考える生粋のデュエル馬鹿
手札誘発を積極的に使ってくるプレイングやトライヴェールからの1キルコンボの悪名が祟り"鬼畜星"と呼ばれる事になった。


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中堅どころの訳

ライフ4000でテラナイトは強いはず(願望)
ただ、どんな世界でもヤバイ奴らは一杯いるのである。


相手のフィールドにはA-アサルトコアとファイアウォールドラゴンとキャノンソルジャー。相手の墓地には2枚目のアサルトコアがある。

この状況で手札にうさぎを握っていない状況を何と呼ぶかは明らかだ。絶望である。

「アサルトコアをリリースしキャノンソルジャーの効果発動、くらえ500のダメージを!さらにファイアウォールドラゴンの効果をチェーン1で、アサルトコアの効果をチェーン2で発動!逆順処理で墓地のアサルトコアを手札に加え、そして特殊召喚。再びキャノンソルジャーの効果でアサルトコアをリリース!チェーンは?」

「ねぇよ畜生、サレンダーで」

 

前世であったデュエルの一幕である。

 

一応説明しておく。ファイアウォールドラゴンはリンク先のモンスターがフィールドから墓地にいったときに手札のモンスターを特殊召喚する効果を持っていやがる。また、A-アサルトコアは墓地に行くとこのカード以外のユニオンモンスターを手札に加える効果を持っている。同名以外では無いのである。よってキャノンソルジャーによりアサルトコアをリリースするとフィールドにアサルトコアが特殊召喚されるのである。つまり無限ループ。ライフが幾つあろうとキャノンソルジャーのバーンで削りきられてしまうのだ。しょごりゅうはよ禁止になれ。

 

前世のトラウマを思い出してまで何が言いたいのかというと、単純である。手札誘発ガン積みしようと勝てないときは勝てないのだ。

 

閑話休題

 

ファイアウォールドラゴンが主人公以外に出されない天国に転生した自分は、当然原作知識を利用しようとした。具体的には対戦相手のメタカードをガン積みしてデュエルを挑んでみた。ファンデッカーだってたまには勝ちたいし、ランキング上位にいってちやほやされてみたいのだ。

そんな我欲まみれで挑んだのはみんなのアイドルブルーエンジェル。悪名高きトリックスター使いの彼女である。当然うららガン積み、増Gガン積みでライトステージ対策にツインツイスターなどをデッキに加えてのデュエル。負ける気がしねぇぜ(フラグ)。

 

その結果どうなったかというと...

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「Stargazerです。対戦よろしくお願いします。」

「Stargazer...あぁあの”鬼畜星”ね。相手にとって不足はなし!よろしい、このブルーエンジェルが相手よ。」

(ちくしょう今日に限っては否定できねぇ、けど勝つのは俺だ!)

 

「それじゃあ」

「いくわよ!」

 

「「デュエル!」」

 

(完璧な手札!うららにベガデネブ!しかも天架けもある。後攻ワンキルルート!)

 

「私はトリックスター・ライトステージを発動!効果で「手札の灰流(はる)うららの効果発動、サーチは無効だ!」

「流石"鬼畜星"。でも残念このデュエル、私の勝ちよ!チェーンして発動、速攻魔法サモンチェーン。このターン私は通常召喚を3回おこなえる!」

(あ、コレあかんヤツや)

灰流(はる)うららの効果は1ターンに一度、もう妨害は無い!1回目の通常召喚!私は手札からトリックスター・キャンディナを召喚!効果でデッキからトリックスター・マンジュシカを手札に加える。そしてマンジュシカの効果発動!キャンディナを手札に戻し特殊召喚!2回目の通常召喚!再びキャンディナを召喚しマンジュシカをサーチ。マンジュシカの効果!キャンディナ手札に戻して特殊召喚!3回目の通常召喚!キャンディナを召喚しトリックスター・リインカーネーションを手札に加える!そして3枚目のマンジュシカの効果発動!キャンディナを手札に戻して特殊召喚。カードを一枚伏せて、ターンエンドよ。」

 

「俺のターン、ドロー!」(うらら来いうらら来い!)

「ドローカードは神聖(しんせい)なる因子(いんし)。俺の負けかぁ。」

「往生際は良いのね。でもトドメはきっちり刺してあげる!まずマンジュシカの効果、デッキからカードが加わったことで200のダメージ!ライトステージの効果!トリックスターの効果によるダメージのたび、200のダメージ。マンジュシカは3枚だから合計1200のダメージよ!」

 

Stargazer LP4000→2800

 

「あなたのスタンバイフェイズ!(トラップ)カード、トリックスター・リインカーネーションを発動!あなたは手札を全て除外し、その枚数だけドローする!あなたの手札は6枚、よって6枚ドロー!そのドローに対してマンジュシカとライトステージの効果!合計4200のダメージよ!」

 

Stargazer LP2800→-1400

 

「ありがとう、良いデュエルだった。」

「こちらこそ、良いデュエルだったわ、またやりましょう。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

オーバーキルもいいとこである。

というかライフ8000を一瞬で削りきるトリックスター(環境ガチ勢)にちょっとメタったところでテラナイト(ただのファンデッキ)が勝てるわけ無かったのだ。いや6枚めくって2枚目のうらら(40分の2)を引けなかった俺の運の無さもあるのだろうが。

ハネワタをガン積みすればまた結果は変わるかもしれないがテラナイト(初動事故の塊)にそんなスペースは無い。閃刀召喚獣みたいに手札誘発の塊ではないのだ。

 

つまり、俺の努力は、奴ら(10期テーマ)と戦うには、まるで全然、程遠かったのだ。つらたんである。

 

今回はブルーエンジェルとのデュエルを例に挙げたが、カリスマデュエリストランキングの上位勢は割とこんなもんである。メタ?踏み潰していけば良いんだよ!的な。

 

そんな訳で自分は転生者であるにも関わらずこの世界の強豪には勝てないのだった、まる。

 

このブルーエンジェルとのデュエルは、自分程度が原作に関わった場合の末路を示しているような気がして、未来が少し怖くなった。

 

 

 

 

 

 




テラナイトは先行を取ると事故ります、後攻を取ると制圧されて終わります。所詮ファンデッキなのです。


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スピードデュエルは難しい

4月の制限改訂がフラゲされましたね。まさかうららが準制いくとは思わなんだ。うらら安くなれ(願望)
というかアマリリスが逝くならキャノンソルジャーも道連れにして欲しかったです。
なお、この小説のリミットレギュレーションは判明し次第適用するのでこの話からうららは2枚でいきます。


唐突であるが、リンクヴレインズの中にデータの風が吹き荒れるようになった。要するに原作の開始である。

原作通りPlaymakerがハノイの騎士をスピードデュエルで倒したらしい。

 

自分はリンクヴレインズ内でやや悪目立ちはしているものの、ブルーエンジェルやGO鬼塚のようにトップレベルのカリスマデュエリストという訳では無い。ハノイの騎士やSOLテクノロジーやらに目をつけられることは無いだろうから今のところ安心である。

 

さて、データストームが流れ始めたということは、リンクヴレインズは大スピードデュエル時代に突入したということである。

スピードデュエルはメインフェイズ2が無いこと、初期手札が4枚であること、メインモンスターゾーン、魔法罠ゾーンが3枠と言った違いがある、が正直そんな事がどうでも良くなるレベルの違いがデュエルとスピードデュエルにはあるのだ。

メインデッキ枚数20枚〜40枚?そこは別に良い。問題ではあるのだがデュエルしながら調節していけばそれなりのデッキになるだろう。

問題はエクストラデッキの枚数だ。スピードデュエルにおけるエクストラの枠はたった5枚、たった5枚しかないのである。

 

何だこれは、一体どうすれば良いのだ

 

テラナイトデッキは、テラナイト2体で召喚できる煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムスの効果で素材3体を要求する強力な星輝士(ステラナイト)モンスターを召喚し戦うデッキである。

呼び出せるステラナイトは星輝士(ステラナイト)デルタテロス、星輝士(ステラナイト)トライヴェール、星輝士(ステラナイト)セイクリッド・ダイヤの3体。多用するヴァトライムスを2枚とするとそれだけでエクストラの枠は埋まってしまうのだ。

当然聖騎士(せいきし)追想(ついそう)イゾルデやサモン・ソーサレスを始めとしたリンクモンスターに割く枠は無い。無いのだ。

 

そりゃ天下のPlaymaker様だってストームアクセスを多用する訳である。エクストラあと1枠あるだけで対応力や突破力がどれだけ変わることか。

 

まぁ正直、これは所謂嬉しい悲鳴という奴である。だってスピードデュエル超面白そうだし。もうDボード買っちゃったし。

 

そんなわけでスピードデュエルである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「Stargazerだ、スピードデュエルやらないか?」

「Lair Lordよ、その挑戦受けて立つわ!」

 

「それじゃ」

「ええ」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「先行は貰った!俺のターン、スタンバイ、メイン。星因子(サテラナイト)ウヌクを召喚、効果発動!デッキから星因子(サテラナイト)デネブを墓地に送る。

カードを2枚伏せてターンエンド。」

 

「随分静かな立ち上がりね"鬼畜星"手札事故?まぁ良いわ、私のターン!手札の悪王アフリマの効果発動!このカードを手札から捨て、デッキから闇世界-シャドウ・ディストピアーを手札に加え「チェーンして発動、灰流(はる)うらら!手札から捨て、デッキからのサーチを無効にする!」

「あら残念、ならこっちね、速攻魔法盆回しを発動!デッキからカード名の異なる2枚のフィールド魔法をそれぞれのフィールドにセットする!」

「シャドウ・ディストピアーは貼らせない!カウンタートラップ神聖(しんせい)なる因子(いんし)発動!テラナイトモンスターを墓地に送り盆回しの発動を無効にする!その後、一枚ドロー!」

「ここまで無効にしてくるとはね、流石"鬼畜星"、噂に違わぬ実力ね。だけどあなたのフィールドは今ガラ空き!悪魔嬢リリスを通常召喚、効果により攻撃力は1000にダウンするわ、けど残念、1000ダメージ?そうは問屋が卸さない!スキル発動!"ドラゴニックコール"手札を一枚墓地に送り、デッキの攻撃力2500以上のドラゴン族モンスターを手札に加える!私は攻撃力3000の闇黒(あんこく)魔王(まおう)ディアボロスを手札に加える!さぁバトルよ!まずはリリスでダイレクトアタック!」

 

この攻撃を通すと、攻撃後リリスの誘発即時効果により自身をリリース、手札のディアボロスの特殊召喚条件を満たしての追撃で合計4000のダメージである。当然ここは通せない!

 

「トラップカードリビングデッドの呼び声を発動!墓地のデネブを特殊召喚!効果によりデッキから星因子(ステラナイト)アルタイルをサーチ!」

「モンスターの数が変化したことでバトルステップの巻き戻しが発生するわ。私はリリスの攻撃を中止する。でもこれで終わりじゃ無い!リリスの効果!自分フィールドの闇属性モンスターをリリースし、デッキから3枚の通常トラップカードを選択し、ランダムに一枚をセットする。選ぶのはこの三枚のカードよ、1枚目!神風(しんぷう)のバリア-エア・フォース、2枚目!ブレイクスルー・スキル、3枚目!破壊輪(はかいりん)、うち一枚をセット!そして手札のディアボロスの効果発動!自分フィールドの闇属性モンスターがリリースされた場合、手札、又は墓地から特殊召喚できる!現れろレベル8!闇黒の魔王ディアボロス!

今はまだバトルフェイズ!よってバトルを続行する!ディアボロスでデネブを攻撃!"ディストピア・バースト!"」

 

Stargazer LP4000→2500

 

「私はこれでターンエンド、さぁ、あなたのターンよ精々足掻きなさい」

 

「最初に言っておく、リリスでサーチしたカードがブレイクスルー・スキルならこのデュエル俺の負けだ。」

「何、サレンダー宣言?」

「いいや、このデュエル、3分の2で俺の勝ちってことさ!俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン!俺は星因子(サテラナイト)アルタイルを召喚!効果により墓地のデネブを特殊召喚、デネブの効果でシャムをサーチ。行くぞ!俺はテラナイトモンスター2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚、現れろランク4!煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!ヴァトライムスの効果!手札のシャムを捨てオーバーレイユニットを一つ使い効果発動!現れろランク4!星輝士(ステラナイト)トライヴェール!トライヴェールの効果発動!エクシーズ召喚成功時、このカード以外の全てのカードを手札に戻す!発動はあるか?」

「...無いわ」

「ブレイクスルー・スキルならこれまでのどこかのタイミングで発動するはず!よって、俺の勝ちだ!トライヴェールの効果を適用!消え去れディアボロス!そして装備魔法デーモンの斧を発動!トライヴェールの攻撃力を1000アップさせる!バトルフェイズ!トライヴェールでダイレクトアタック!」

 

Lair Lord LP4000→900

 

「バトル終了、エンドフェイズに移行する。」

「私のライフはまだ残ってる!次のターンで「悪いが次のターンは無い!スキル発動!"スターブレイカー"。エンドフェイズに自分フィールドのカード全てを破壊する!」何を⁉︎」

「そしてトライヴェールの効果!エクシーズ素材を持ったこのカードがフィールドから墓地に送られた場合墓地からテラナイトを特殊召喚できる!ヴァトライムスの効果でこのカードは墓地に送られていたッ!来い、星因子(サテラナイト)シャム!シャムの効果発動!相手に1000のダメージを与える!これで終わりだ!」

 

Lair Lord Lp 900 →-100

 

「完敗ねStargazer、私の負けよ。でも、次は勝つ。」

「ありがとう、良いデュエルだった。いつでも挑戦待ってるぜ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

記念すべき初スピードデュエルは幸いにも勝利で終えることが出来た。正直今回の勝因は、最初のターンでシャドウ・ディストピアと悪魔嬢リリスの悪魔の誘発即時リリースコンボを止められたことだろう。

因みに今回発動させずに済んだシャドウ・ディストピアはこんな効果のカードである。

 

闇黒世界(あんこくせかい)シャドウ・ディストピア

 

フィールド魔法

(1):フィールドの表側表示モンスターは闇属性になる。

(2):1ターンに1度、自分がカードの効果を発動するために自分フィールドのモンスターをリリースする場合、

自分フィールドのモンスター1体の代わりに相手フィールドの闇属性モンスター1体をリリースできる。

(3):自分・相手のエンドフェイズに発動する。

このターンにこのカードが表側表示で存在する状態でリリースされたモンスターの数まで、

ターンプレイヤーのフィールドに「シャドウトークン」(悪魔族・闇・星3・攻/守1000)を可能な限り守備表示で特殊召喚する。

 

控えめに言ってクソカードである。強いとかそういうレベルでは無い。壊獣よりもお手軽に(しかもあろうことか誘発即時で)こちらのモンスターをリリースしてくるのだ。それも毎ターン。リリスディストピアのコンボが決まればほぼ確実に勝敗は決まるだろう。Lair Lordさんは使っていなかったが、インフェルノイドと組み合わせることで同様の誘発即時リリースコンボは成立する。クソが。

 

話が逸れた。スピードデュエルである。

 

先の説明では言い忘れていたが、スピードデュエルには"スキル"というデュエリスト個人個人が持っている特殊能力がある。主人公Playmakerの"ストームアクセス"やGO鬼塚の"闘魂"がそれであり、今回使用した"ドラゴニックコール"や"スターブレイカー"がそれである。

 

何でこんなクソスキルにしたのかって?これには深い理由がある。聞いてほしい。

 

スピードデュエルの肝となる要素たるスキルだが、一般デュエリストたる自分たちにこのスキルの入手方法は限られている。

 

初回限定のガチャである。ふざけんな

 

Dボードを買った時にランダムで一つスキルが生えてくるのだ。初回限定で一つだけ。Dボードを2つ以上買った人物もいたそうだが生えるスキルは同じものだったらしい。この事からDボードがスキルを生やすのではなく、デュエリスト自身の持っているスキルをDボードが可視化しているのでは?というのが現在のリンクブレインズにおけるスキル論である。

 

つまり自分はエンドフェイズ限定の自分フィールド全破壊とかいうクソスキルとよろしくやっていくしか無いのであった、まる

 

 




スピードデュエルでのオリジナルスキルは今後ガンガン出していきますので、ご注意ください。

4/2 闇黒の魔王ディアボロスには実は対象に取れない効果かあったんだよ!とのご指摘を受けたので、デュエル内容を大幅に変更しました。
改めてご指摘、ありがとうございました!

4/2さらに修正、デュエル内容の変更によりリリスのサーチからの2/3が不自然になったので修正しました。


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悪魔の生まれた日

遊戯王離れた人、もしくは(いるのか不明ですが)知らない人のため、どうしてアマリリスが禁止に逝ったのかを説明しときます。
手札誘発を握れなかった場合です。
捕食植物オフリス・スコーピオの効果が通ると、墓地に植物族が10枚とアマリリスが溜まった状態で、リンク先にモンスターが特殊召喚された場合にメインモンスターゾーンのカードを全て破壊する効果を持つトポロジック・ボマー・ドラゴンを召喚できてしまいます。
アマリリスの蘇生効果は1ターンに一度という一番大切な一文を忘れているため、エンドフェイズ時にトポロジック・ボマーのリンク先にアマリリスを10回特殊召喚でき、アマリリスの効果で800×10回のバーンが確定してしまうのです。
つまり先行ワンキルです。そりゃ禁止になりますとも。

なお、このワンキルのキーカードであるオフリス・スコーピオとローンファイア・ブロッサムはともに制限行きです。


自分たちは、悪魔を生み出してしまったのかもしれない。

 

そう思ったのは、Lair Lordさんがカリスマデュエリスト10位を射程圏内に捉えたあたりであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

この世界は前の世界と比べてデュエリストのレベルが低い。

お前ブルーエンジェルにワンキルされといて何言ってんの?と思うかもしれないが、彼女はこの世界トップクラスの実力者であるためこの話では除外だ。あくまで平均的な、一般的なデュエリストのレベルの話である。

具体的には攻撃力やレベルが高いと価値があり、攻撃力0やローレベルは価値が低いと考える人が多いのだ。

 

これは何故かというと原因は単純、Wikiが無いのである。

 

お前サイバーパンクの世界で何言ってんの?と思うかもしれないが、正気を疑ったのは自分もだ。なんで命かけるゲームのルールブック以上に頼れる相棒がないんだよ!と憤りもした。

 

だが、Wikiが無いのもある意味当然なのだ。何故ならこの世界、当然コンマイが無い。デュエルモンスターズの生みの親たるインダストリアルイリュージョン社がコンマイの代わりをしているという訳でもない。

デュエルモンスターズのカードは、いろんな企業や研究所が好きに勝手に刷っているのである。その上、個人経営のカードデザイナーとかもいる。

 

いつ、どこで、誰が、どんなカードを作るのかめちゃくちゃな上、自分の使うカードの効果を隠す人もいる。しかも大会優勝者のデッキレシピ公開なんてことも全くない。

そりゃWikiの管理人さん達も全てのカードを網羅するのは不可能であろう。公式Q&Aなんてものもないため裁定もどうしても曖昧とならざるを得ない。この世界のジャッジはデュエルディスクのシステムであるため、何がどうしてこうなった、という事を話してくれたりはしないのだ。

 

さて、そんな世界のデュエリスト達はデッキを組む時どうするのかというと、実はちょっと面白い方法でWikiの不足を補っている。

 

交流会である。3人寄れば文殊の知恵とはよく言ったもので、ある程度人数が集まれば必要なカードの情報は集まってくるのだ。

自分のデッキ内容が知られてしまうというデメリットもあるが、それは些細な事だ。なんせこのネットワーク時代である。ある程度の実力者ならネット上に動画で晒されているため特定の人物のデッキ内容を盗み見るだけなら誰でもできるのだ。

 

 

そんな訳で、デッキ構築に行き詰まった自分は先日"カリスマデュエリスト交流会"とやらに参加してみた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

先日デュエルしたLair Lordさんがスピードデュエルでの勝率がやや低めだという話になり、それならばと集まった皆さんで彼女のデッキ構築を見直すことになった。

彼女のデッキコンセプトは、テラフォーミング(制限カード)、盆回し(準制限カード)にシャドウ・ディストピア3枚の6枚体制でフィールドを作り、リリスや影王(かげおう)デュークシェード、ウィルス系のカードなどのリリースを強制するカードでアドバンテージを稼ぎ、ディアボロスで締める、というものであった。

ただし、盆回し発動用のフィールド魔法を入れているためデッキの回転が重く、シャドウ・ディストピアを貼る事ができなかったらアドバンテージを稼げずにジリ貧となってしまうという欠点を抱えたデッキでもあった。

 

交流会の最初の方は「盆回しの枚数を抑えてみてはどうか?」とか「インフェルノイドを入れてみては?」とかまぁアドバイスも控えめだった。

しかし誰かが言った。「ドラゴニックコールなんて大当たりのスキルを持っているんだからそれを活かす構築にすべきだ!」と。因みに言った彼のスキルは"ドロースキップ"。自分のドローフェイズをスキップするというものである。泣いて良いレベルだ。

そんな彼に自分のスキルに不満を持つ連中が同調し、「ドラゴン族デッキを組むべきだ!」との意見が強くなってきた。が、それに待ったをかけたのが当の本人Lair Lordさん。彼女は、名前の由来がディアボロスの英語名であるほどのディアボロス大好きさんだったのだ。

ドラゴンだーディアボロスだーとの言い合いに発展しかねないその時、とあるバカは言った。「ふふっ…、閃刀姫なんてどうだ?」と。

 

後に語られる"魔王閃刀姫"誕生の瞬間である。

 

閃刀姫とはメインモンスターゾーンが空であるときに発動できる多彩な閃刀魔法カードと、それをサーチorサルベージするリンク1のモンスターで戦うデッキである。が所詮はリンク1、瞬間的な攻撃力に乏しいという弱点も抱えている。

 

そんなデッキの肝となるのはこのカード

閃刀姫(せんとうき)-レイ

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1500/守1500

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードをリリースして発動できる。

EXデッキから「閃刀姫」モンスター1体をEXモンスターゾーンに特殊召喚する。

この効果は相手ターンでも発動できる。

(2):このカードが墓地に存在する状態で、

自分フィールドの表側表示の「閃刀姫」リンクモンスターが相手の効果でフィールドから離れた場合、

または戦闘で破壊された場合に発動できる。

このカードを特殊召喚する。

 

闇属性をリリースである。しかも誘発即時で。それだけでディアボロスとの相性は抜群に良い。その上自己特殊召喚能力に秀でており相手が閃刀姫リンクモンスターをどんな風に除去しても特殊召喚できるという優れものだ。

が、ディアボロスがフィールドに残っては閃刀魔法カードが使えないのでは?という声もあるだろう。しかし、先日のデュエルでは見られなかったがディアボロスはこんな効果を持っている。

 

闇黒(あんこく)魔王(まおう)ディアボロス

効果モンスター

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2000

このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札・墓地に存在し、自分フィールドの闇属性モンスターがリリースされた場合に発動できる。

このカードを特殊召喚する。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

相手はこのカードをリリースできず、効果の対象にもできない。

(3):自分フィールドの闇属性モンスター1体をリリースして発動できる。

相手は手札を1枚選んでデッキの一番上または一番下に戻す。

 

つまり閃刀魔法をつかうには、(3)の効果で一時的にフィールドから退去してしまえば良いのだ。なんだこのシナジー、運命の2人か。

 

そんなことを説明した結果、Lair Lordさんの新デッキは魔王閃刀姫となった。

 

言い出しっぺの法則として、また以前のLair Lordさんとのデュエル経験がある人物として、自分がテストデュエルの相手をする事になった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「いくわよ!」

「ああ!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「先行は私よ!手札から魔法カード増援を発動!「チェーンして発動、灰流(はる)うらら!デッキからのサーチを無効にする!」残念、そっちは囮よ、魔法発動、閃刀起動エンゲージ!デッキから閃刀姫(せんとうき)-レイを手札に加える!そしてスキル発動、"ドラゴニックコール"。手札の閃刀姫(せんとうき)-イーグルブースター枚をコストに攻撃力2500以上のドラゴン族、ディアボロスを手札に加える!

 

それじゃあ行くわよ!私はレイを通常召喚し効果発動!このカードをリリースし、EXデッキから閃刀姫(せんとうき)-カガリを特殊召喚!効果により墓地のエンゲージをサルベージ!加えて手札のディアボロスの効果発動!闇属性モンスターをリリースした時、このカードを手札から特殊召喚する。現れろレベル8!闇黒(あんこく)魔王(まおう)ディアボロス!ディアボロスの効果発動!"ディストピア・プレッシャー"!あなたは手札を一枚選んでデッキの上か下に置く。」

「...俺は手札1枚をデッキの下に置かせてもらう」

「あら、手札が悪かったのね、残念。続けるわ!アローヘッド確認!召喚条件は水属性以外の閃刀姫モンスター一体。私はカガリをリンクマーカーにセット!リンク召喚!現れろリンク1!閃刀姫(せんとうき)-シズク!私は再びエンゲージ発動、デッキから閃刀機(せんとうき)-ウィドウアンカーを手札に加える。カードを2枚伏せてエンドフェイズ、シズクの効果発動!墓地に同名カードの無い閃刀魔法を一枚サーチする。私は閃刀術式(せんとうじゅつしき)-ジャミングウェーブを手札に加える。これでターンエンドよ。」

 

「俺のターン、ドロー!」

「知ってると思うけど言っておくわ。シズクの効果!墓地の魔法カードの数×100、あなたのモンスターはパワーダウンする!今、墓地には3枚のマジックカードが存在する。よって300ダウンよ。」

 

「スタンバイ、メイン、俺は星因子(サテラナイト)ウヌクを召喚効果発動「チェーンして発動!ウィドウアンカー!フィールドのウヌクの効果を無効にする!」それにチェーンして発動天架(あまか)ける星因子(サテラナイト)!逆順処理だ、チェーン3、ウヌクをデッキに戻し、デッキから星因子(サテラナイト)アルタイルを特殊召喚。次にチェーン2、ウィドウアンカーの効果は対象がフィールドから離れた事で不発。チェーン1、ウヌクの効果発動!デッキからデネブを墓地に送る。

特殊召喚成功したアルタイルの効果!墓地から星因子(サテラナイト)デネブを特殊召喚!「チェーンして発動!速攻魔法閃刀機(せんとうき)-シャークキャノン!墓地のデネブを除外する!」

逆順処理だ、墓地のデネブが除外された事で対象を失ったアルタイルの効果は不発となる。カードを2枚伏せてターンエンド。」

「あら、攻撃しなくていいの?」

「今お前の墓地には魔法カードが5枚存在する。よってアルタイルの攻撃力は1200。この攻撃力じゃお前のシズクは倒せない。それくらいは分かるわ。」

「ふふ、その通りよ。さぁ、私のターン、ドロー!まずは伏せカードを取り除く!魔法発動閃刀術式(せんとうじゅつしき)-ジャミングウェーブ!伏せカードを一枚破壊!さらに私の墓地に魔法が3枚以上存在するとき、あなたのモンスターを一枚選んで破壊できる!」

「発動は無い、伏せカード(かみ)通告(つうこく)も破壊される」

「私は当然アルタイルを破壊!さて、攻勢に出るわ!アローヘッド確認!

召喚条件は火属性以外の閃刀姫モンスター1体。私はシズクをリンクマーカーにセット!リンク召喚!現れろリンク1閃刀姫(せんとうき)-カガリ!カガリの効果!墓地からエンゲージをサルベージ、そして発動!デッキから2枚目のウィドウアンカーを手札に加える。さらに墓地に魔法が3枚以上あるため、一枚ドロー!

今、私の墓地には魔法カードが6枚ある。よってカガリは攻撃力を100×6で600アップ!よって攻撃力は2100!カードを1枚伏せてバトル!カガリでダイレクトアタック!"紅蓮一閃"!」

 

Stargazer LP4000→1900

 

「私はこれでターンエンドよ」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン、星因子(サテラナイト)シャムを召喚!お前に1000のダメージを与える。」

 

Lair Lord LP 4000→3000

 

「ターンエンドだ。」

 

「完全にどん詰まりの様ね!このターンで決めてあげる!私は手札から魔法カード閃刀術式(せんとうじゅつしき)-アフターバーナーを発動!あなたのモンスター一体を破壊する!さらに墓地に魔法が3枚以上存在するため、魔法罠を1枚選んで破壊できる!まずはシャムを破壊!そして伏せカードも破壊よ!」

「リバースカード発動!速攻魔法天架(あまか)ける星因子(サテラナイト)シャムをデッキに戻してデネブを特殊召喚する!」

「デネブの特殊召喚時、リバースカード発動!ウィドウアンカー!デネブの効果を無効にする!さらに墓地に魔法が3枚以上存在するので、デネブのコントロールをエンドフェイズまで得る!さぁバトルよ!今墓地には魔法カードが7枚、よってカガリの攻撃力は2200!これで終わりよ!カガリでダイレクトアタック!"紅蓮一閃"!

「畜生、完敗だ。」

 

Stargazer LP 1900→-300

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

正直ここまで何もできずに負けるとは思わなかった。しかも、この結果は彼女との1回目のテストデュエルの結果であり、完成形でないのだ。

 

このあとも何度かデュエルしたが、ウィドウアンカーが突破できない、ダメージが全然通らない、盤面をすぐ返してくるの三重苦。

そしてスキルによって発生する1ターン目のほぼ確定ハンデス。

なんとかリンクモンスターを倒しても湧いて出てくるレイと魔王。

 

こんなんとどうやって戦えばいいんだ⁉︎ なデッキが完成してしまったのだ。

 

これ本体はディアボロスじゃなくて閃刀姫じゃね?と言ってみたが、Lair Lordさんはディアボロスをフィニッシャーにできるなら割となんでも取り入れる人だった。むしろ見た目は可愛い閃刀姫カード達を気に入ったまである。

 

その後、数多のデュエリスト達の犠牲の上に完成したそのデッキは、Lair Lordさんに連戦連勝をもたらした。そんな彼女をデュエリスト達は恐れ、閃刀魔王と呼ぶようになったとか。

 

 




魔王閃刀姫は長野の大会で優勝するくらいのガチデッキです。
なんてものをこの世界に作り出してしまったのか。

まぁ大会優勝者の魔王閃刀姫のデッキレシピみたら4分の1が手札誘発とかいう超とんがった構築でしたのでこの小説のものとは別物ですけどねー


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カリスマデュエリスト狩り

前話で紹介した魔王閃刀姫ですが、リアルで作るのには少しハードルが高いです。
何故ならデッキのメインエンジンたる閃刀起動-エンゲージが1枚3000円するのです。三枚でじゃなく一枚で。レイちゃんは高い女なのですなー。



出る杭は打たれる。世知辛いことに、この世界でもこの諺は有効であった様だ。

なんの話かって?当然、先日悪魔のデッキを組み上げ、カリスマデュエリストのトップ圏内に入らんとした”閃刀魔王”こと Lair Lordさんの事である。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

自分のデュエルディスクに、先日の交流会でフレンド登録を済ませておいたLair Lordさんからある悲鳴が届いた。

なんでも、最近自分に挑戦してくるデュエリスト達が揃いも揃ってあるカードをデッキに入れているとのことだ。そのカードとはこのカードだ。

 

(たましい)解放(かいほう)

通常魔法

お互いの墓地のカードを合計5枚まで選択し、

そのカードをゲームから除外する。

 

超シンプルな効果である。

 

一見なんのアドバンテージも生み出さないこのカードであるが、魔王閃刀姫デッキに対しては、展開の起点である閃刀姫-レイ、攻撃の切り札たる闇黒の魔王ディアボロス、閃刀魔法の追加効果を狙うための墓地の魔法カードの数、その全てをいっぺんに解決してしまう超パワーカードに化けてしまうのだ。所謂メタカードである。

 

何故そんなメタカードが流行りだしたのか?というとこれはリンクヴレインズの、というかカリスマデュエリストランキングのある恒例行事によるものだ。

 

"カリスマデュエリスト狩り"である。

 

カリスマデュエリスト狩りとは文字通りで、ランキングの低いランカー達が高ランクのランカーに対しメタカードガン積み、かつ集団で襲いかかり、ランクを無理やり下げさせようとする行為だ。要するにアンチによる足の引っ張り行為である。

 

こんな姑息で悪質な行為、運営規制しろよとか思う人も多いかもしれない。が、これはある意味、本物のカリスマデュエリストとなるための最終試験なのだ。ブルーエンジェルもGO鬼塚も、他のカリスマデュエリスト達もこの恒例行事を乗り切って、自分こそカリスマデュエリストであると世に示しているのだ。OCG次元(手札事故頻出世界)出身の自分としては、なんで勝てているのか不思議でならない。

 

なお、自分もこのカリスマデュエリスト狩りの被害にあった事がある。自分もランキング10位圏内に入ったことが一度だけだがあるのだ。その結果はいうまでもなかろう。裂け目もマクロはいつものことである、墓穴の指名者はやめてくれ、閃光を吸い込むマジックミラーはもう無理である。

しかもこういうメタ対策にツイツイ入れているのに肝心なときに手札に来やがらないのはもう何も言えん。

 

閑話休題

 

カリスマデュエリスト狩りの対策は実は簡単であるが、これを教えていいものか物凄く迷う。自分が教えてもらった時は、もっと早く教えろよ!と声を張り上げた覚えがあるレベルで超お手軽なのだ。

 

しかし物凄い迷う。なんせこれ、Lair Lordさんの結果次第では原作介入になりかねないのである。遊戯王だし最終的にはハッピーエンドで終わるんだろうが、その過程でとんでもないことが起きるのもまた遊戯王である。

物語の部外者に介入の余地を与えて良いのだろうか。

 

考えた結果、一週間カリスマデュエリスト狩りの猛攻を耐えたならば対策を教えようと彼女に返信した。

 

中途半端と笑いたくば笑え、友人の危機に(しかも自分が解決できるのに)何もしないというのは良心が咎めるのだ。

因みに一週間耐えろと言った理由は2つ。一つ目はLair Lordさんが原作に介入できないランキングまで下がることを祈ってのこと。

もう一つは、彼女にもっと自分のデッキについて知って欲しいと思っての事である。

自分は、カリスマデュエリスト狩りを喰らった結果、自分のデッキに対しての理解がより深まった。彼女もメタデッキの猛攻という荒波から貴重な経験を積んでほしいという親心もあるのだ。

 

さてそんな訳で一週間後のこと

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「残念だけど、私は本物のカリスマデュエリストにはなれなかったみたいね。もうランキングは48位、ここから10位なんて夢のまた夢よ。」

「一週間前にメッセしたよな、カリスマデュエリスト狩りには対策があるって。聞くか?」

「そうね、一応聞いておこうかしら。正直、この一週間は色んな対策を考えながらデュエルした。けどダメだった。あの時本当はどうしたら良かったのか、その答えがあるのなら知っておきたいわ。」

 

マジで心苦しい。俺にこの対策を教えてくれた先達も、この苦しさというか馬鹿らしさを感じながら教えてくれたのだろうか。

 

「その、な、これから言う対策を講じると、デメリットとして今まで見たくガンガンランキングが上がるって事は無くなる。それを前提にして聞いてくれ」

「?ええ、構わないわ。」

「まず必要なのはサイドデッキの用意だ。自分がどう対策されたら動けなくなるかってのはこの一週間で十分わかったよな?そのメタカードの対策となる15枚のサイドデッキを用意するんだ。Lair Lordさんの場合だと屋敷(やしき)わらしとか王宮の鉄壁とかな」

「サイドデッキって、え、ちょっと待って、この先が読めたんだけど、そんな事⁉︎」

「まぁ、もうわかったと思うけどな。カリスマデュエリスト狩りっぽい奴には、シングルじゃなくてマッチで良いですかーって言えば良いんだよ。それだけで大半の連中は帰っていくから。」

「そんなことで良いとか、私の一週間は何だったの...」

「言うな、俺も初めて聞いた時はそう思った。まぁこんな対処法を知るまでがカリスマデュエリスト狩りの恒例行事なんだ、諦めろ。」

 

「諦めきれるかぁ!デュエルよ!この憂さ、晴らさでおいていられるかぁ!」

「おいキャラぶれてるぞ大丈夫かお前」

 

「いいから構えなさい!」

「いや良いんだけどな、お前がそれで良いなら」

 

 

この後めちゃくちゃデュエルした

 

 




たまにはデュエルの無い話でも


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スピードデュエルの犠牲者達

前回の話書いてて思ったんですが、デュエルリンクスって何でサイドデッキ無いんでしょうね。不思議です。


スピードデュエルにおいて、最も被害を受けている召喚方法とは何だろうか。それをリンクヴレインズ内で尋ねてみると答えは一つしか帰ってこないだろう。

 

ペンデュラムである。

 

この世界でペンデュラム召喚を主軸とするデッキは下火である。なんせデッキのメインエンジンに相当するクロノグラフ、アストログラフのマジシャン兄弟がこの世界では生まれていないのだから当然と言えば当然だ。

されど、メタルフォーゼやマジェスペクターなど自前でデッキのエンジンを補えるテーマを使うデュエリスト達は少数だが、確かに存在していたのである。

 

そんな彼らにとって、スピードデュエルは絶望とともに訪れるものであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「”メタルビート”だ、スピードデュエル良いか?」

「”Stargazer”だ、受けて立つとも!」

「よっしゃ宜しくな!いやー、ついこの間Dボード買ったばっかでな、スピードデュエルは初めてなんだ。くぅ〜楽しみだぜ!」

「それなら少しだけアドバイスをしとこうかな。」

「なんだ?貰えるもんは貰うけど。」

「スピードデュエルとマスタールールの違いは知ってるよな?」

「ああ、メインと魔法罠がそれぞれ3枠で、メインフェイズ2が無いこと。デッキ、エクストラデッキの枚数が枚数が少ないこと。あぁ、あとデュエリスト固有のスキルって奴があることくらいだよな。」

「随分勉強家だったんだな、その通りだ。ただちょっとだけ補足をば。ゾーンが3つってのは、マスターデュエルで使われている両端二つのラインがスピードデュエルでは無いってことなんだ。だからリンクモンスターのマーカーとかも気を付けなきゃいけないが、本題は別にある。ペンデュラムで使われるライトスケール、レフトスケールの両方がスピードデュエルでは存在しないんだ。だからペンデュラム効果狙いでエキセントリック・デーモンとかをデッキに入れてるなら、他のカードに入れ替えておいた方が良いぜ。」

「ちょっと待った。ペンデュラムスケールが無い⁉︎それは本当か⁉︎」

「どうした、凄い汗だぞ大丈夫か。...ははーん、さてはお前、ペンデュラム使いか!」

「そうだよ畜生!ペンデュラム使えない何て今知ったわ!ヤベェどうしよう、デッキコンセプト全否定じゃねぇか!」

「そいつはご愁傷様。まぁ、うん、スピードデュエルは後にしようぜ。デッキ構築の手伝いならするからさ。」

「いや、男"メタルビート"。デュエルから逃げん!まして己から挑んだデュエルなのだから!ただちょっとだけ待ってくれ、キーカード3枚に変更するから!」

「おっ、おう。わかった。」

 

 

「待たせちまってすまねえな。さぁ行くぞ」

「おう!かかって来い!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「先行はこのメタルビートだ!モンスターをセット。カードを一枚セットしてターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。俺は星因子(サテラナイト)ウヌクを通常召喚。効果発動!デッキから星因子(サテラナイト)ベガを墓地に送る。カードを3枚伏せて、バトルフェイズ!ウヌクでセットモンスターを攻撃!」

「セットされてたのは、 レアメタルフォーゼ・ビスマギア守備力は0だ。当然破壊される。だがトラップ発動!メタルフォーゼ・カウンター!自分フィールドのカードが戦闘、効果で破壊された場合に発動、デッキからメタルフォーゼ・ヴォルフレイムを特殊召喚する!」

「俺はこれでターンエンド。"メタルフォーゼ"か...ご愁傷様ってのはさっきも言ったな。」

「うるせえ!どんな不利でも、勝つのは俺だ!エンドフェイズにビスマギアの効果!デッキからメタルフォーゼ・ゴルドライバーを手札に加える!

俺のターン、ドロー!来たぜこのデッキのキーカード!魔法発動、錬装融合(メタルフォーゼ・フュージョン)!手札のゴルドライバーとシルバードを融合!現れろレベル6!メタルフォーゼ・ミスリエル!

まずは墓地の錬装融合の効果発動!墓地のこのカードをデッキに戻して一枚ドロー!。墓地のゴルドライバー、シルバードをデッキに戻してミスリエルの効果発動!お前の場の伏せカードをデッキに戻す!」

「それなら、チェーンして発動、罠カード戦線復帰!墓地のベガを守備表示で特殊召喚し、効果発動!手札のデネブを守備表示で特殊召喚!デネブの効果!デッキからアルタイルを手札に加える!」

「モンスターゾーンが埋まりやがった...だがこのデュエル、俺の勝ちだ!バトルフェイズ!まずはミスリエルでウヌクを攻撃!"ミスリル・ビート"!」

 

Stargazer LP 4000→3200

 

「次だ!ヴォルフレイムでベガを攻撃!"ヴォルカニック・ビート"!そして速攻魔法重錬装融合(フルメタルフォーゼ・フュージョン)

「オリハルクに繋ぐ気か!だがそうはさせない!デネブを墓地に送り神聖(しんせい)なる因子(いんし)発動!重錬装融合を無効にする!その後、一枚ドロー!」

「くそ、そこを止めてくるか。だが、俺の場には強力なモンスターが2体!突破出来るか?ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー!悪いが俺のデッキにその程度の布陣は無意味だ!スタンバイ、メイン。手札から星因子(サテラナイト)アルタイルを召喚!効果により墓地のデネブを特殊召喚!デネブの効果によりデッキからアルタイルをサーチ!行くぞ!俺はテラナイトモンスター2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4!煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!手札一枚を墓地に送り、オーバーレイユニット一つを使い効果発動!光属性のテラナイトX(エクシーズ)モンスターをこのカードに重ねてエクシーズ召喚する!現れろ星輝士(ステラナイト)トライヴェール!効果発動!エクシーズ召喚成功時、このカード以外の全てのカードを手札に戻す!そして装備魔法デーモンの斧を発動!トライヴェールの攻撃力を1000アップ!バトル!トライヴェールでダイレクトアタック!」

 

メタルビート LP 4000→900

 

「エンドフェイズにスキル発動!"スターブレイカー"!自分フィールドの全てのカードを破壊する!トライヴェールがオーバーレイユニットを持った状態で墓地に送られた場合、墓地のテラナイトモンスターを特殊召喚できる!現れろベガ!そしてベガの効果発動!手札の星因子(サテラナイト)シャムを特殊召喚!シャムの効果発動!特殊召喚成功した場合、相手に1000のダメージを与える!」

「まだ終わらない!スキル発動!"エフェクト・ディクリース“!効果ダメージ発生時、俺はデッキの一番上をドローする。そのカードがモンスターなら、そのモンスターの攻撃力分ダメージを減少させる!」

「この土壇場でギャンブル⁉︎そんなスキルもあるのか!」

「正直俺も使えるとは思ってなかったがな!さぁ行くぞ、運命の...ドロー!」

 

「ドローカードは錬装融合、俺の負けだ」

 

メタルビート LP900→-100

 

 

「かぁ〜ッあそこで外すとはなー。今日はついて無いぜ。」

「ドンマイ。そしてありがとう、良いデュエルだった。」

 

「しっかし」

「あぁ」

「「ペンデュラムなしでも意外と戦えるもんなんだなぁ...」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

彼のデッキ調整も兼ねて、何度かスピードデュエルしたものの。善戦と呼べるものは最初の1回目だけだった。あとは大体錬装融合来ない事故である。

メタルフォーゼデッキとはそもそも共通のペンデュラム効果による魔法罠のデッキからのセットを主軸にして戦うデッキである。そりゃP効果封じられたら事故るのは当然だ。

前世におけるぶっ壊れリンクモンスターの一角であったヘビーメタルフォーゼ・エレクトラムもデッキに入っているそうなのだが、スピードデュエルでは効果を使うどころかリンク召喚することすら出来なかった。展開力をペンデュラムに依存していたツケである。

これもうスピードデュエル用に新しくデッキ作った方が良いんじゃないか?と彼に提案したところ、かれは渋々、そうするわと頷いた。

 

 

ちなみにエレクトラムの効果はこんなのである。

ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム

リンク・効果モンスター

リンク2/炎属性/サイキック族/攻1800

【リンクマーカー:左下/右下】

Pモンスター2体

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。

デッキからPモンスター1体を選び、自分のEXデッキに表側表示で加える。

(2):1ターンに1度、このカード以外の自分フィールドの

表側表示のカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

その後、自分のEXデッキから表側表示のPモンスター1体を手札に加える。

(3):自分のPゾーンのカードがフィールドから離れた場合に発動する。

自分はデッキから1枚ドローする。

 

前世においてはアストログラフ・マジシャン、クロノグラフ・マジシャンと手を組み多大なアドバンテージを稼ぎまくったカードである。

 

ちなみにどんなコンボかというと正直詐欺くさい。

(1)の効果でアストログラフorクロノグラフをEXに加え、(2)の効果でカードを破壊しアストログラフorクロノグラフを手札に加える。

すると、破壊時には手札になかった筈のアストログラフorクロノグラフを場のカードが破壊された時を対象にチェーンを組むことが出来てしまうのだ。

手札が非公開情報だから効果が使えてしまうのか、破壊してサルベージするまでが1つの破壊として見なされているからか、詳細は闇の中である。多分公式ジャッジの人もわかってないだろう。

 

そんなインチキコンボが存在しないこの世界においては、ペンデュラム召喚はより下火になっていくのであった。

 

 

 




エレクトラムの裁定に詳しい人、誰か教えてください。
そういうもんだと納得するには受けるダメージが大きすぎるんです。

まぁ、エレクトラムを悪用しまくった元凶の魔術師は規制食らったので多分大人しくなるんですけどねー


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ソリティア

この世界のカード事情はほとんど独自設定です。
なるべく世界観とかを守ろうとしたらこんな設定になってしまったのです。
今回は、そのとばっちりを受けたデュエリスト達の話です。



遊戯王において、ソリティアと呼ばれるプレイングは多々発生する。自分カードによる特殊召喚を連続して行い、制圧系のモンスターを並べ、相手の心を折るプレイングだ。

要するに、「一人でやってるよ〜」というヤツである。

 

だが、この世界の一般デュエリストがみんなソリティアしまくってるというとそうでもない。それは、この世界のカード事情によるものだ。

 

制圧系のモンスターの例としては、クェーサーやクリスタルウィング、バグースカが挙げられる。この時点でもうわかるだろう。いないのである、彼らは。

だったらこの世界のリンクモンスターで制圧すれば良いだろ!と思う人もいるかも知れない。だが、前世で猛威を振るったファイアウォールやヴァレルロード、トロイメアなどの強力なカードは、一般人には入手不可能だ。一般人に入手できるリンク4はせいぜいスカルデッドが良いところである。いや強いんだけどねスカルデッド。

 

話を戻そう。ソリティアの話である。遊戯王においてソリティアは多々発生するものだ。しかし、それは明確なゴール(制圧盤面)があってのことだ。

シグナー龍も覇王龍もナンバーズも無いこんな世界じゃ、制圧盤面と言ってもたかが知れてしまうのだ。せいぜいサイバー・ドラゴン・インフィニティとかセイクリッド・プレアデスが良いとこであろう。

 

「こんなんじゃ...満足できねぇぜ」と、誰かが言うだろう。間違いない。

 

実際インフェルニティもこのカード事情により前世より弱体化している。新満足龍の一体であるファイアウォールが使えず、制圧系満足龍の煉獄龍オーガ・ドラグーンも展開用満足龍のワンハンドレッド・アイ・ドラゴンもこの世界に存在していない上、展開補助に使われる覇王門もいないのだ。そりゃ弱体化もするだろうよ。

 

また話が逸れたが、結論を言おう。

 

この世界では、ソリティアパーツは揃っても、ソリティアするほど最終盤面に価値が無いのでソリティアはそんなに行われていないのだ。

 

一部の変態を除いてだが

 

加えて言うなら、スピードデュエルの台頭もソリティア民の減少に拍車をかけている。だって5枚である。エクストラ5枚でどう回せというのだ。シンクロデッキがリンクヴレインズから消え始めてるのは間違い無くこのルールのせいであろう。

 

なのでこの世界ではハリファイバーが見えたとき、手札誘発を握ってないのでサレンダー現象が起こらない。そこだけはこの世界に感謝である。

 

さて、デュエルである。(唐突)

 

このパターンは2回目だが、おそらく何度も使うので慣れてほしい。

だって面倒なのだ、デュエルへの導入は。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「"クリスタラー"だ。対戦良いか?」

「"Stargazer"だ。受けて立つ!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「先行はお前だ!来い、クリスタラー!」

「おうともさ!俺のターン、魔法カード、調律(ちようりつ)発動!デッキからシンクロンモンスターを手札に加えるそしてデッキトップを墓地に送る!」

「シンクロデッキか!珍しいな。」

「エクシーズ使いに言われたくないぜ"鬼畜星"。俺はジャンク・シンクロンを手札に加える!墓地に行ったのは...よっしゃモンスター!行くぜ!俺はジャンク・シンクロンを召喚!効果により墓地のジェット・シンクロンを特殊召喚、さらに手札のドッペル・ウォリアーの効果!このカードを特殊召喚!

サーキットコンバイン!召喚条件はチューナーを含むモンスター2体。俺はジェット・シンクロン、ジャンクシンクロンの2体をリンクマーカーにセット!リンク召喚!現れろリンク2、水晶機巧(クリストロン)-ハリファイバー!ハリファイバーの効果!このカードのリンク召喚に成功した場合、デッキからレベル3以下のチューナーを特殊召喚する!」

「止めるならここだ!俺は手札から灰流(はる)うららの効果発動!手札のこのカードを捨て、デッキからの特殊召喚効果を無効にする!」

「しまった、持っていたのか灰流(はる)うらら!...俺はこれでターンエンド」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン!」

(シンクロデッキって事はあのカードを警戒すべきだろう、ちょっとアレやってみるか。)

「なぁクリスタラー、知ってるか?エフェクトヴェーラーってカードあるだろ?あれ実はパンツ見えてるらしいぜ。」

「マジで⁉︎って嘘じゃねーか!...ハッ⁉︎汚ねぇぞ!この"鬼畜星"!」

「何とでも言え、引っかかった奴が悪いんだよ!というか引っかかるなよエフェクトヴェーラーって男だぞ!」

「こんなに可愛い子が男の子な訳あるか!もう騙されんぞ鬼畜野郎!」

「それには俺も同感だけど、こっちは本当の話だよ!さぁ、デュエルを再開する!俺は星因子(サテラナイト)ベガを通常召喚!効果発動!手札の星因子(サテラナイト)を特殊召喚する!チェーンは?」

「当然ありだ!エフェクト・ヴェーラーの効果発動!相手メインフェイズにこのカードを墓地に送り、お前のベガの効果を無効にする!」

「知っているなら対策もできる!チェーンして速攻魔法天架(あまか)ける星因子(サテラナイト)!逆順処理だ!まず、ベガをデッキに戻し、デネブを特殊召喚する!次に、対象を失ったエフェクト・ヴェーラーは不発!そしてベガの効果!手札から星因子(サテラナイト)シャムを特殊召喚!特殊召喚したデネブ、シャムの効果をそれぞれ発動!デッキからアルタイルを手札に加え、相手に1000のダメージを与える!」

 

クリスタラー LP 4000→3000

 

「そんでもってエクシーズ行くぞ!俺はテラナイトモンスター2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4!煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!カードを一枚伏せて、バトルフェイズ!ヴァトライムスでハリファイバーを攻撃!」

「ハリファイバーの効果発動!相手ターンにこのカードを除外して発動!エクストラデッキのシンクロチューナーをシンクロ召喚扱いで特殊召喚する!来い、フォーミュラ・シンクロン!フォーミュラの効果!シンクロ召喚成功時、一枚ドロー!」

「モンスターの数が変化した事でバトルステップの巻き戻しが発生!当然バトルを続行する!ヴァトライムスでフォーミュラ・シンクロンを攻撃!

俺はこれでターンエンド。」

「ドッペルは残った!こっからが反撃開始だ!俺のターン、ドロー!」

「悪いがその反撃は無しだ!お前のスタンバイフェイズ!永続トラップ発動!暗闇を吸い込むマジック・ミラー!このカードが存在する限りフィールド上、墓地で発動する闇属性モンスターの効果は無効かされる!」

「そんなもの、闇属性以外で戦えば良いだけのこと!俺はライティ・ドライバーを召喚!効果発動...出来ない⁉︎」

煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムスの効果!このカードが存在する限り、フィールド上全てのモンスターは闇属性となる!よってマジック・ミラーの効力が有効となるのさ!」

「実質スキドレじゃねーか⁉︎畜生、ターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。おれはウヌクを通常召喚!カードを一枚セットし、バトルフェイズ!ヴァトライムスでライティ・ドライバーを攻撃!」

 

クリスタラー LP3000→500

 

「ウヌクでドッペル・ウォリアーを攻撃!これでターンエンドだ。」

「まだ終わりじゃない!俺のターン、ドロー!...よっしゃあ!俺は手札から速攻魔法サイクロンを発動!マジックミラーを破壊する!これでロックは解除されたぜ!俺は手札から、増援を発動!デッキから2枚目のジャンクシンクロンを手札に加える!そして召喚!効果により墓地のドッペルを特殊召喚!行くぞ、俺のエースモンスター!俺はレベル2、ドッペルウォリアーにレベル3、ジャンクシンクロンをチューニング!シンクロ召喚!現れろレベル5!ジャンク・ウォリアー!ジャンク・ウォリアーの効果発動!それにチェーンし、ドッペル・ウォリアーの効果発動!ドッペル・ウォリアーがシンクロ素材となった時、レベル1のドッペルトークンを2体特殊召喚する!そしてジャンクウォリアーの効果!シンクロ召喚成功時、自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力を自らに加える!"パワー・オブ・フェローズ"!ドッペルトークンの攻撃力は400、それが2体で800ポイント!よってジャンク・ウォリアーの攻撃力は3100!そして、俺はスキル"サクリファイスドライブ"をジャンクウォリアーを対象に発動!選択したモンスター以外の全てのモンスターをリリースする。そして選択したモンスターにリリースした数の攻撃権を与える!ドッペルトークン2体をリリース!よってジャンクウォリアーは2回の攻撃権を得た!

そしてバトルフェイズ!速攻魔法スクラップ・フィストを発動する!このカードはジャンク・ウォリアーを超強化するカードだ!」

「くッ、攻撃時に効果の発動を封印する効果か!」

「それだけじゃ無いぜ!ジャンク・ウォリアーでヴァトライムスを攻撃!"スクラップ・ファースト・フィスト"!スクラップ・フィストの効果で戦闘ダメージは2倍になる!」

「ヴァトライムスの攻撃力は2600ッ!」

「まずは1000のダメージだ、喰らえ!」

 

Stargazer LP 4000→3000

 

「次ぃ!ジャンク・ウォリアーで星因子(サテラナイト)ウヌクを攻撃!"スクラップ・セカンド・フィスト!」

「だがウヌクの攻撃力は1800ッ!2600のダメージだ!俺のライフは残るぞ!」

 

Stargazer LP 3000→400

 

「俺はこれでターンエンド!さぁ、勝負だ!」

「...残念だがその勝負には乗れない。俺のターン、ドロー。スタンバイ、メイン。俺は手札から星因子(サテラナイト)アルタイルを召喚。効果発動!墓地の星因子(サテラナイト)モンスターを特殊召喚する。」

「またヴァトライムスか?だが攻撃力はジャンクウォリアーのが上だ!」

「1つアドバイスだ。相手の使ったカード効果はしっかり覚えとけ、こんな風になるからな!俺は墓地の星因子(サテラナイト)シャムを特殊召喚!効果により1000のダメージを与えるッ!」

「しまったッ!そいつがいたかぁ。」

 

クリスタラー LP 500→-500

 

「あ〜畜生完敗だ。けど楽しかったぜ!」

「こっちもだ。それとありがとう、良いデュエルだった。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

以上が貴重なシンクロ使いクリスタラーさんとのデュエルだ。

因みに、何で"クリスタラー"なんて名前なんだ?と聞いたところ、クリスタラーさんは実は、マスターデュエルでは水晶機巧(クリストロン)を使うのだそうだ。ただ、スピードデュエルで水晶機巧の動きはちょっと重かったらしい。主にエクストラの枠的に。

 

どんな召喚使いもスピードデュエルに対応するため色々考えているようだ。

 

この大スピードデュエル時代、リンク召喚以外の連中は生き残ることができるのだろうか...(なおペンデュラムは除く)

 

 

 

 




水晶機巧のデュエル書こうとしたんですが、書いてたときちょうどWikiが止まってたので、使い慣れたジャンドを出させて貰いました。
水晶機巧使いの方、すみません。


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技名を決めよう!

デッキに3枚のキーカードがあるとして
マスターデュエルで初手にキーカードを引ける確率は約33.76%
スピードデュエルで初手にキーカードを引ける確率は約50.88%

キーカードが一枚でいいならスピードデュエルの方が圧倒的に事故は少なくなるんですねー。主人公のデッキは多少遊びを入れているので20枚ジャストって訳ではないから、事故率は少し高まりますけど、この確率ならきっとガチデッキとも戦えるッ
まぁ、ガチデッキの事故率も下がるから勝率に関わるとは思えないんですけどねー。



先日のカリスマデュエリスト交流会でのことである。

集まったメンバーに言われてしまったのだ。

「"鬼畜星"さんのデュエルって、なんか地味ですよねー」

「あーわかるかも、戦法もワンパターンだしねー」

「いや戦法よりもなんか、華が無いっていうの?そんな感じ」

そんな感じってどんなやねん、と憤ってみた

戦法がワンパターンなのは仕方なかろう。だってテラナイトってそういうデッキだし。だがしかし、華が無いという点に関しては同意せざるを得ない。

それはなぜかというと、最近カリスマデュエリストとして投稿してる動画の再生数が伸び悩んでいるのである。

そりゃ攻撃力4000超えるようなド派手なデュエルをしている訳では無い。だが相手のキーカードを確実に妨害し、返しのターンでケリを付けるという玄人好みの良いデュエルをしている自信はあったのだ。

めげそうである。

 

もうこの怒りのままにデュエルで暴れてやろうかとしていたその寸前、新デッキ考案中のメタルビートさんの鶴の一声があった。

それは、こんなものであった。

 

「そういや"鬼畜星"さんって技名とか効果名とか叫ばないよな。そのせいでデュエルに勢いが出ないんじゃないか?」

 

完全に盲点であった。

 

そんな訳で始まったチキチキ!鬼畜星技名決め大会

意外とみんなノリノリであった。あと通りが良すぎて注意するのを忘れてたが、自分はStargazerである。(重要)

 

第1投、最近閃刀姫使いとしての方が通りが良くなった事をちょっと悩んでるLair Lordさん。

テラナイトはせっかく星に関するテーマなのだから技名も星にちなんだものにしてはどうか?と。正論である。

そんな彼女の提案した技名は"ディスペア・スターズ"お前絶望とか言いたかっただけやろ、没。

 

第2投、第1話において名前が決まってなかったから男としか表現されなかった男、実は結構な実力者であるライトドロップさん。

そのまま直球"夏の大三角"とか"冬のダイヤモンド"とかどうよ?と

一瞬良いのではと思ったが意外に皆の受けは悪かった。

だったら英訳したらどうだ!と端末を弄り、出た結果は"サマー・トライアングル"に"ウィンター・オブ・ダイヤモンド"。そのまんまであった。英語特有の言い回しとかあるのではと期待した自分のワクワクを返して貰いたいものだ。当然没である。

 

第3投、スピードデュエルの被害者筆頭にしてこの大会の言い出しっぺ、メタルビートさん。というかお前技名適当にビートとか付けただけやん大丈夫なん?と誰もが思った。

しかし、意外や意外、彼は決められたルールで技名を決めるロジカルタイプのデュエリストだったのだ。

カード名にちなんだフレーズに攻撃ならビート、効果ならフォースとかの動詞をくっ付けるとそれなりにカッコいいし、統一感からデュエルでのテンポの良さが生まれるぜ、と。

デュエルのテンポとは意外な視点であった。その上、ルールを決めて名前を付けるというのは、どちらかといえば理系脳である自分にはティンと来た。

 

その後も様々な意見が出たが、目立った意見は最初の3つだけだった。あとは大体自分の性癖を暴露してるのに気づいていないような連中の一人語りであったためだ。

 

その結果どうなったかって?

その答えは、デュエルの中で見つけるしかない!(訳:デュエル中のフィーリングに全てを任せてみる)

 

というわけでデュエルである

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ついでだ!リベンジマッチと行かせてもらおうか!」

「この前見たくワンキルされないようにしとけよ!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「俺の先行!スタンバイ、メイン。俺は星因子(サテラナイト)デネブを召喚!効果によりアルタイルをサーチ!カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

「さぁ行くぜ!俺はライトロード・アサシン ライデンを召喚、効果発動!メインフェイズにデッキトップから2枚カードを墓地に送る!」

「止めるならここ!デネブを墓地に送り、カウンタートラップ神聖なる因子を発動!ライデンの効果を無効にし破壊する!その後1枚ドロー!」

「やるな、だがまだ終わらんとも!手札のライトロード・ウォルフを捨て、魔法発動!ソーラー・エクスチェンジカードを2枚ドローし、その後デッキトップから2枚墓地に送る!」

「この状況なら止めるべき!チェーンして、灰流(はる)うららの効果発動!このカードを手札から捨て、デッキからカードを手札に加える効果を無効にする!」

「畜生またこんな流れか!カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。手札から星因子(サテラナイト)アルタイルを召喚!効果によりデネブを墓地より特殊召喚し、効果発動!デッキからアルタイルを手札に加える。行くぞ!俺はレベル4のテラナイトモンスター2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!手札1枚とオーバーレイユニット1つを使い、ヴァトライムスの効果発動!光属性のテラナイトモンスターを重ねてエクシーズ召喚する!"スターライト・エクシーズ"!現れろ星輝士(ステラナイト)デルタテロス!デルタテロスの効果発動!フィールドのカード1枚を対象にとり破壊する!俺はお前のセットカードを選択!"デルタ・ドライブ"!

「セットカードはライトロード・レイピアだ、当然破壊される」

「ブラフだったか...リバースカードオープン!星輝士(ステラナイト)の因子!このカードをデルタテロスに装備し、攻撃力を500ポイントアップさせる!そしてバトルフェイズ!デルタテロスでダイレクトアタック!"デルタ・ブレード"!」

「これを通したらお前の"スターブレイカー"で終わりだな。それならいっちょやりますか!ダイレクトアタック宣言時、俺はスキル発動!"ライトロード・ドロップ"!手札のライトロード1枚を墓地に送り、デッキトップから7枚カードをライトロードモンスターの効果扱いで墓地に送る!さぁ、運試しだ!

1枚目!ライトロード・ハンター ライコウ

2枚目!ライトロード・マジシャン ライラ

3枚目!ライトロード・ビースト ウォルフ、よっしゃあ!

4枚目!ライトロード・サモナー ルミナス

5枚目!裁きの龍

6枚目!ライトロード・モンク エイリン

7枚目!ライトロードの裁き

俺はウォルフの効果発動!このカードがデッキから墓地に送られた時、特殊召喚できる!また、ライトロードの裁きの効果も発動!デッキから裁きの龍を手札に加える!」

「モンスターの数が変化したことでバトルステップの巻き戻しが発生する。俺はデルタテロスでウォルフを攻撃!」

「当然ウォルフは守備表示だ、ダメージはない」

「俺はこれでターンエンド。来るか、裁きの龍!」

「当然だ!俺のターン、ドロー!チッ、モンスターじゃなかったか。まぁいい!このカードは墓地のライトロードが4種類を超えていた場合手札から特殊召喚できる!現れろレベル8!裁きの龍(ジャッジメント・ドラグーン)

ライフ1000を支払い、裁きの龍の効果発動!このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する!"ジャッジメント・レイ"!」

 

ライトドロップ LP4000→3000

 

「星輝士の因子の効果により、デルタテロスは破壊を免れる!」

「だがそのカード自体に耐性はない、星輝士の因子を破壊!ライフ1000を支払い再び効果発動!"ジャッジメント・レイ"!」

 

ライトドロップ LP3000→2000

 

「星輝士の因子が無くなったため、デルタテロスの耐性はなくなった。よって破壊される。だがデルタテロスの効果発動!このカードが破壊された場合、デッキからテラナイトを特殊召喚する!現れろ星因子(サテラナイト)ベガ!ベガの効果発動!手札のテラナイトを特殊召喚、現れろアルタイル!アルタイルの効果発動!墓地のデネブを特殊召喚。デネブの効果!デッキからシャムを手札に加える!」

「シャムってのは確か1000点バーンのヤツだったな。なら3発めのジャッジメント・レイは無しだ。カードを一枚伏せてバトルフェイズ!裁きの龍でアルタイルを攻撃!ターンエンドだ。」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。俺はシャムを召喚!効果により1000のダメージを与える!」

 

ライトドロップ LP2000→1000

 

「これで裁きの龍の効果は封じられた!行くぞ!俺はレベル4のテラナイト3体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4!星輝士(ステラナイト)トライヴェール!トライヴェールの効果発動!エクシーズ召喚成功時、このカード以外の全てのカードを手札に戻す!"トライ・フォース"!」

「悪いがそれは止めさせてもらう!トラップ発動、ブレイクスルー・スキル!フィールド上のモンスター1体の効果を無効にする。」

「そう来たかー。...俺はカードを1枚セットし、ターンエンド。」

「行くぜ、俺のターン、ドロー!ったく来るのが遅いんだよお前。俺は妖精伝姫(フェアリーテイル)-シラユキを召喚。効果は発動しない。

バトルフェイズ!俺は裁きの龍でトライヴェールを攻撃! "ジャッジメント・ブラスター"!」

 

Stargazer LP4000→3100

 

「トライヴェールの効果発動!オーバーレイユニットを持ったこのカードがフィールドから墓地に送られた時、墓地のテラナイトを特殊召喚できる!現れろアルタイル!」

「アルタイルの効果が通ればシャムが出てきて俺の負けだ。当然止める!墓地からトラップ発動!ブレイクスルー・スキル!アルタイルの効果を無効にする!」

「いいや、墓地のブレイクスルー・スキルを打たせることこそが目的ッ!トラップ発動!リビングデッドの呼び声!墓地のモンスター1体を特殊召喚する!俺が呼び出すのは当然星因子(サテラナイト)シャム!効果発動!くらえ1000のダメージを!」

「畜生、ブレイクスルースキルを当て損ねたか...」

 

ライトドロップ LP1000→0

 

「ありがとう、良いデュエルだった。」

「おう!こっちも楽しかったぜ、またやろうや」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そんな訳で技名を叫びながらのデュエルである。正直超気持ちよかった。

前世の羞恥心が邪魔をするかと思ったが、そんな事は全然なかった。

まぁ、今までのデュエルも、風に乗りつつ大声でやっていだのだ。デュエル中の羞恥心など無くなってて当然だったのだろう。

 

こんなに気持ち良くデュエルできたのだ。ましては強豪のライトドロップと。再生数も右肩上がり間違い無しであろう。カリスマデュエリスト交流会の皆には、感謝してもしたりない。

なお、動画の再生数が伸びたら広告収入で皆にカードパックを買うことになった。感謝の気持ちが萎えた気がする。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

こんな風に、遊戯王VRAINSに転生した自分は面白おかしく生きている。だが、これから先もそのままでいれる確証は無い。

 

先日、リンクヴレインズの一時ログイン不能障害が起こった。時系列的に考えると、Playmakerとリボルバーの1戦目であろう。

 

SOLテクノロジー潜入編にどれだけ時間がかかるかはわからない。だが、確実に近づいて来ているのだ。一般人にも多大な被害が出始めるアナザー編が。

 

守りたいと思った。

 

遊戯王VRAINSというアニメの世界で、リンクヴレインズという架空の世界で、ようやくできた"自分の居場所"を、守りたいと思ったのだ。

 

そのために少しだけ、戦うと決めた

 

まぁハッキング能力も無い只の一般市民にできる事というと、デュエルディスクのセキュリティを最新のものにすることと、怪しいヤツを見かけたら運営にしっかり通報することくらいなんですけどねー。

 

 




ライトロードのデュエルは考えるのが墓地に送るカードを考えないといけないのがちょっと面倒でした。


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一般人のアナザー事件

はじめての原作介入回です。
全盛期ちょい過ぎたあたりのシャドール使いならば知る、一部の相手にのみ発揮されるテラナイトの本気をご覧ください。



事が起こるまで、何もしてこなかった訳ではない。

匿名の掲示板でハノイの騎士とデュエルする事の危険性を訴えた。

運営であるSOLテクノロジーに、ハノイの騎士がデュエルを通して危険なウィルスを散布しようとしてると通報もした。

交流会で、ハノイの騎士とかハッカーとか怖いし、ログイン頻度を下げないか?と提案したこともある。

 

だが、どれも目立った効果が出ることはなかった。

 

言葉に説得力がないのである。ネットで重要視される、情報のソースがあくまで自分の転生知識だけなのだから。

 

今ほど、自分の無力さを痛感した事はない。自分にもし、主人公"藤木遊作"のようなハッキングスキルがあれば、事が起きる前にハノイの計画を白日のものとできただろうに。或いは、事が起こった際に一般人を強制ログアウトさせて、被害を未然に防ぐ事ができるかも知れないのに。

 

だが、そんなものは所詮無い物ねだりである。この世界に転生した時から変わらない、自分は自分にできる事をよろしくやっていくしかないのだ。

 

リンクヴレインズをぶらつきながら、たとえ意味のない行動になるとしても声を張り上げることをやめないでいよう。と一般人なりの覚悟を決めていた時、それは始まった。

 

ハノイの騎士による、リンクヴレインズ大襲撃事件である。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

覚悟していただけ、その行動は他の人たちより迅速にできたと自分では思う。

 

「ハノイの騎士だ!皆、危険だからログアウトしろ、早く!」

 

大声での避難勧告である。

だが、実際に被害が出始めるまで、これは対岸の火事だと、物見遊山決め込んでいる人のなんと多いことか。

 

「ハノイ見物ならログアウトしてからでもできる!早くログアウトを!」

 

それでも、声を張り上げた。自分にできることを、全力で。

 

目に見えてる範囲ですらハノイの騎士は十数人もいた。そのうち、ハノイの騎士と一般デュエリストとのデュエルが始まりだした。

 

「デュエルなんか中断しちまえ、とにかく逃げるんだ!このままじゃ...ッ!」

「うるせぇ、臆病者はすっこんでろ!おれはハノイを倒してリンクヴレインズのニューヒーローになるんだ!」

 

ハノイの騎士とのデュエルの結果、どうなるかを説明できない。実際に犠牲者が出るまで、敗者が現実でも昏睡状態になってしまうなんてことを、今の自分は説明する事ができない。虚言とみなされるだけだ。

 

それでも、声を張り上げた。

 

「いいから逃げるんだ!ニューヒーローなんか何処にもいない!この状況のヤバさは分かるだろ!とにかく早くログアウトを!」

 

あちらこちらで声が聞こえてくる。慣れ親しんだ掛け声が、今は絶望を告げる一言が。

自分のちっぽけな抵抗も虚しいまま、始まってしまった。ハノイとデュエリストたちの、命をかけたデュエルが。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「デュエルを中止してログアウトしろ!頼むから俺の声を聞いてくれ!」

「デュエリストが挑まれたデュエルから逃げられるかってんだ。お前はさっさと逃げとけ、臆病者。」

 

声が届かない。

 

「頼むから逃げてくれ!デュエリストの誇りなんか...ッ!」

「誇りを無くしたデュエリストなんて死んだも同然よ!ふざけた事抜かさないで!」

 

声が届かない。

 

「ログアウトするんだ!大事なもんだろ、(それ)はッ!」

「デュエル以上に大事なもんなんてあるものかよ!」

 

声は、届かなかった。

 

そのうち、聞こえてくる声に悲鳴が混ざりだした。

「畜生、なんだこれ。体が、俺の体がぁッ!」

「嫌!なんなのこれ、こんなの聞いてない、聞いてないよぉ!」

 

あるハノイの騎士が言った。言ってしまった。

「冥土の土産に教えてやるよ雑魚ども。デュエルで負けた奴らはなぁ、一生目覚めないんだよ、現実の世界でもなぁ!」

 

狂乱が始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なんで、デュエルを中止できない!どうして⁉︎私死にたくなんかないのに!」

「このあたりは俺たちの仲間がハッキングしてるからよ、デュエルの中止なんてせこい真似は無理なんだよ!」

「さっきの臆病者の話を聞かないからだよバーカ。なぁに助かりたいなら話は簡単だ。勝ちゃいいんだよ勝ちゃ。まぁ出来るならだけどなぁ!ヒャッハハハハ、可笑しくて笑いが止まんねえぜ。」

 

「畜生、何人消えた⁉︎俺は何もできないのか...ダメだ馬鹿、切り替えろ!今俺に出来る事はッ!」

 

項垂れた俺の目の前で、それは起こった。

 

消えていくデュエリストの体。

Dボードの上で消失に唖然とする姿。きっと彼は、消失した奴と仲が良かったんだろう。その表情は絶望に染まっていた。

そんな彼に、ハノイの騎士は近づいていった。おそらく彼に、デュエルを挑むつもりだろう。

 

ここからは正直、何を考えてたとかよく覚えてない。

こんな危険な状況、もう逃げ出して然るべきだ。普段の俺ならそうしたと思う。

だが、考えるより早く、体が動いてしまった。

 

それに気づいたのは、ハノイの騎士の顔面にDボードで正面衝突かましたあたりでだった。

 

「ここは俺が引き受ける!そのうちにさっさとログアウトを!」

「え、あ、え?」

「良いから早く!」

「はっ、ハイ!」

 

彼はメニューを操作し、ログアウトを開始した。

「チッ、どんな馬鹿が挑んできたと思ったら散々喚いてた臆病者じゃないか。」

「言ってろ畜生。...正直逃げ出したいよ、怖いよ、胸が苦しいよ。けどなぁ動いちまったんだよもう!ならやるしか無いだろ、もう!」

 

「その蛮勇、すぐに絶望に変えてやる!さぁ行くぞ!」

「...来いッ!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「先行は俺だ!カードを一枚セットし、俺は手札抹殺を発動!お互いの手札を全て捨てる!そして捨てられたシャドール・ビースト、シャドール・ヘッジホッグの効果を発動!シャドール・ファルコンを手札に加え、一枚ドロー!カードをもう一枚セット、モンスターをセットしてターンエンド。」

「シャドールデッキか...俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。俺は手札一枚をコストに、ツインツイスターを発動!セットカードを2枚とも破壊する!」

「セットカード発動、()(かげ)(うごめ)き!デッキからシャドールを一枚墓地に送り、フィールド上のシャドールをリバースする。もう一枚は砂塵の大嵐だ、特に発動はなく破壊される。リバースしたシャドール・ファルコン、墓地に送ったシャドール・リザードの効果発動!デッキからシャドールを一枚墓地に送る、また、リバースしたファルコンの効果!墓地のシャドールを裏守備で蘇生する!蘇生するのはシャドール・ビーストだ!また、リザードの効果で墓地に送ったビーストの効果!一枚ドロー!」

「相変わらず頭おかしい手札効率してやがる...ッ!俺は星因子(サテラナイト)アルタイルを召喚!手札抹殺で墓地に行った星因子(サテラナイト)ベガを特殊召喚!ベガの効果発動!手札から星因子(サテラナイト)デネブを特殊召喚。デネブの効果発動!デッキからアルタイルをサーチ!行くぞ!俺はベガとデネブ、2体のテラナイトモンスターでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4!煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!手札一枚とオーバーレイユニットを1つ使い、ヴァトライムスの効果発動!光属性のテラナイトを重ねてエクシーズ召喚する!"スターライト・エクシーズ"!現れろ、星輝士(ステラナイト) セイクリッド・ダイヤ!カードを一枚伏せて、バトルフェイズ!

俺はセイクリッド・ダイヤでセットされてるビーストを攻撃!"ダイヤモンド・ブラスト"!」

「このターンビーストの効果はもう使われている。ビーストのリバース効果は発動しない。」

「続けてアルタイルでファルコンを攻撃!ターンエンドだ。」

「俺のターン、フフッ、お前に絶望を見せてやる!スキル発動!"ダブルドロー"ドローフェイズにカードを2枚ドローする!来たぞ俺の最強カード!魔法発動!影依融合(シャドール・フュージョン)!お前のフィールドにエクストラデッキから出たモンスターが存在するとき、デッキのモンスターを用いて融合でき...ッ⁉︎出来ないだと?」

「セイクリッド・ダイヤの効果!オーバーレイユニットをもつこのカードが存在する限り、デッキからカードを墓地に送ることはできない!」

「くそ、発動は中止できねぇのか...俺は手札のシャドール・リザード、シャドール・ドラゴンで融合!融合召喚!現れろレベル5!エルシャドール・ミドラーシュ!融合に使ったシャドール・ドラゴンの効果発動!このカードが効果で墓地に送られたとき、魔法罠を一枚選んで破壊できる!行け、ドラゴン!セットカードを破壊だ!」

「セイクリッド・ダイヤの効果発動!闇属性モンスターの発動した効果を無効にし破壊する!"ダイヤモンド・プレッシャー"!」

「チッ...モンスターを一枚伏せて、カードを一枚伏せる。ターンエンドだ。」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。俺はアルタイルを通常召喚、効果発動!墓地のデネブを特殊召喚!」

「その特殊召喚にチェーンだ!トラップカード激流葬!フィールドの全てのカードを破壊する!だがミドラーシュは効果により、破壊効果に対して耐性を持っている。よって破壊は無しだ!」

「悪いがそんなカードは通さない!デネブを墓地に送り、カウンタートラップ神聖なる因子!激流葬を無効にする!その後、一枚ドロー!」

「何だと⁉︎」

「デネブの特殊召喚自体は成功した。よって効果発動!デッキからアルタイルを手札に加える!魔法発動!星輝士(ステラナイト)の因子。セイクリッド・ダイヤに装備し、攻撃力を500アップさせる!バトルフェイズ!まずはアルタイルで守備表示のミドラーシュに攻撃!」

「ミドラーシュの効果発動!破壊されたとき、墓地のシャドール魔法、罠を手札に戻すことができる!俺は影依融合(シャドール・フュージョン)を手札に戻す!」

「セイクリッド・ダイヤの効果!オーバーレイユニットをもつこのカードがある限り、墓地から手札に戻るカードは全て除外される!」

「そんな効果まであるのか⁉︎だがそれもオーバーレイユニットがある限り、お前のユニットは残り1枚だ!」

「バトルを続行!俺はセイクリッド・ダイヤでセットカードを攻撃!"ダイヤモンド・ブラスト"!」

「セットカードはシャドール・リザード、破壊される。だが、リバース効果発動!フィールドのモンスター1体を破壊!お前のセイクリッド・ダイヤを破壊する!」

「星輝士の因子の効果!装備モンスターは相手のカード効果を受け付けない!よって破壊は無効だ!バトル続行!2体目のアルタイルでダイレクトアタック!」

 

ハノイの騎士 LP4000→2300

 

「だがお前のモンスターは全て攻撃を終えた!さぁ、ターンエンドしろ!次のターンでお前を...ッ!」

「いいや、お前に次のターンは無い!速攻魔法天架(あまか)ける星因子(サテラナイト)!俺はアルタイルをデッキに戻し、デッキから星因子(サテラナイト)シャムを特殊召喚!シャムの効果発動!お前に1000のダメージを与える!」

 

ハノイの騎士 LP2300→1300

 

「今はバトルフェイズ!よって追撃が可能ッ!これで終わりだ!星因子(サテラナイト)シャムでダイレクトアタック!」

「馬鹿な、この俺が、こんな臆病者なんかにぃぃ!」

 

ハノイの騎士 LP1300→-100

 

「そんな、アイツがやられるなんて⁉︎」

「ヤツはこの辺りハノイのリーダーッ!これから誰の指示を仰げば良いんだ⁉︎」

 

自分の倒したハノイは意外と大物だったらしい。これなら、ハッタリが効く!

 

「さぁ次はどいつだ、かかってこいハノイの騎士!このStargazerが相手だッ!」

 

「ヤベェ、俺知ってるぞアイツを。”鬼畜星”だッ!カリスマデュエリストで結構上位のヤツだ。俺たちじゃ敵わねえ、逃げろ!」

「大変だ!C地区の連中がAIでできたデュエリストどもにやられたらしい。しかもそいつらがこっちに流れ込んで来やがる!この地区のリーダーは⁉︎」

「さっきやられたよ畜生、一体どうすりゃいいんだ⁉︎」

 

「狼狽えるな!ここの指揮はこのファウストが引き継ぐッ!まずはあのStargazerとかいうやつを囲んで黙らせるのだ!」

 

「またしても大物、しかも今度はモノホンの。さてどうするか...ッ⁉︎」

 

 

「AIの連中が来たぞー!」

 

瞬間、Dボードの向きを変更し、逃走を始めた。

AIデュエリスト部隊がくる以上、この場で張り続ける意味はない。

それに、アナザーになってない一般デュエリストの大半も、流石にもう逃げだせただろう、一般人の出来ることとしてはもう十二分だ。

 

「あばよハノイどもッ!2度と会わないことを祈るぜ!」

そう捨てゼリフを残しつつ、メニューを操作しログアウトを開始した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

現実に戻った。

 

なんとかなったという安堵からか、目の前で人を助けられなかった失望からか、ため息が出た。

 

が、くよくよしても居られない。今自分にできることをやるのだ。

まずはSNSなどで事件のことを知らない人に知らせ、リンクヴレインズへのログインを自粛させなければ。

 

そんな風に思い、ネットサーフィンを始めたところ、こんな一文が目に留まった。

 

「事件が始まって、私は右も左もわからなくなってしまったんです。けど、誰かの"逃げろー、ログアウトしろー"って声が聞こえたんです。とても必死な声でした。その声に従ってログアウトしたから、私はハノイの被害に遭わずに済んだんだと思います。この場を借りて一言。逃げろって声を上げてくれて、ありがとうございました!」

 

これが、自分の張り上げた声のことかどうかはわからない。ただ少しだけ、自分のおかげで、多少被害がマシになったよと言われているような気がした。

 

ちょっとだけ、涙が出た。

 

その理由が、救えなかった苦しみからでなく、救うことのできた達成感からだと、今は信じたい。

 

 

 

 

 




シャドール使いにセイクリッド・ダイヤを立てるという鬼畜の所業。皆さん薄々感じてると思いますが、この主人公デュエルで勝つためなら割となんでもします。


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現実の世界にて

この話を書くにあたり、ちょっと調べてみました。
あの見た目なのに、Go鬼塚ってまだ19歳なんだぜ...(驚愕)

なお、今回はマスターデュエルです。ついでに言うなら、テーブルデュエルです。


リンクヴレインズに対するハノイの騎士の大襲撃は一時的にだが終息した。襲撃の結果は概ね原作通りだ。AIデュエリストたちは雑魚相手に無双し、3騎士に瞬殺された。よって、今リンクヴレインズは世紀末。ログインすると右も左もハノイの騎士という魔境と化した。

悔しいことに、カリスマデュエリスト交流会のメンバーも何人か犠牲となってしまったらしい。こればかりはどうしようもないとは言いたくない。が、一般人にはもうどうすることもできないので、ブルーエンジェルやGO鬼塚が3騎士を倒し、アナザーの除去プログラムを拡散してくれることを祈るばかりである。

 

幸いにも、襲撃時ハノイのこぼした言葉、「デュエルで負けると現実でも目覚めないんだよ!」というのをしっかり録画に成功したので、これからの警告には十分な説得力を得られるだろう。そこだけは、ハノイ達に感謝である。

え、いつ録画したのかって?自分は一応カリスマデュエリストである。動画のネタになるかなー?とリンクヴレインズに入っている時は録画状態を常にオンにしているのだ。広告収入のための、ちょっとした努力が意外な形で報われたとはちょっと思った。

 

そんな訳で動画を拡散し、今日も今日とてハノイの危険性を伝える作業を始めるぜーと、空元気で意気込んだとき、意外な一声がかかった。

 

「ねぇ天頂、デュエルしない?」

 

声をかけたのは今世における自分の母親"結城(そら)"であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なんで突然デュエルなんていいだしたのさ。まぁやるけど」

「そこはやるのね、流石私の息子。ノリが良いわ」

母は少し憂いた顔で、こう言った。

「あんたとちょっと腰を据えて話がしたくてね。でもあんた未成年だからお酒は飲めないでしょ?だからデュエルをしようと言ったの。こういう話はシラフでするもんじゃ無いから。」

 

「それじゃ」

「まずは」

「「ジャンケンポン!」」

「それじゃ、先行は俺ね」

「ええ、来なさい!」

 

「「デュエル!」」

 

「俺の先行ね。スタンバイ、メイン。まずは星因子(サテラナイト)ウヌクを召喚。効果でデネブを墓地に送る。カードを2枚伏せてターンエンド。」

「私のターン、ドロー。私は炎舞(えんぶ)-天キ(てんき)を発動。デッキからセイクリッド・カウストをサーチする。そして私はセイクリッド・ポルクスを召喚。ポルクスの効果によって、私はセイクリッドモンスターをもう一度召喚できる。セイクリッド・カウストを召喚。カウスト効果を2度発動!カウスト、ポルクスのレベルを1つずつ上げる。

レベル5となったカウストとポルクスでオーバーレイ。セイクリッド・プレアデスを召喚。プレアデスの効果発動、オーバーレイユニット1つを使い、カードを一枚手札に戻す。ウヌクを手札に」

「トラップ発動デモンズ・チェーン。プレアデスの効果を無効にして攻撃を封印する。」

「あら、やるわね。カードを1枚伏せてターンエンド」

「俺のターン、ドロー。スタンバイ、メイン。...ねぇ母さん、話って何?」

「あらやだ、デュエルに夢中になって話すの忘れてたわ、悪い癖ね。

どこから話そうかしら。...あんたは昔から手のかからない子だったから、こうして話すのも初めてね、そういえば。」

「覚えてない昔のことを話されても困るんだけど」

いや覚えてるけどね、転生者だし。

「ふふっ。でもあんた、幼稚園でも学校でもなかなか友達作らなくて、親としては結構心配だったのよー」

「ぼっち言うな!それを言ったら戦争だろうが...ッ!」

「やだあんたまだぼっちなの?お母さんびっくりなんだけど。ていうかそんな汚い言葉どこで覚えたのよ。教育が悪かったのかしらねぇ...」

「いや教育云々じゃなくて、これは生まれつきだと思う。」

「自覚があるなら直しなさいこのおバカ。...話を戻すわね。あんたは昔から家の手伝いとかもちゃんとしてくれた。けどいつもどっか暗い顔してたわ。そんなあんたが変わったのは、父さんのお古のデュエルディスクをもらってから。もっと言うと、リンクヴレインズに入り浸り始めてからね。あんたはいつも学校から帰って、宿題終わらせて、すぐにログイン。友達と外で遊んだりしないでいっつも。でもこっちの方は心配してなかった。だってあんた、笑うようになってたから。」

「俺、そんなに変わってた?」

「もうすっごく変わった。自分の息子ながら別人かと思うくらいに。ちなみに聞くけど、どんなことがあったの?」

「うーん、俺はただ、デュエルしてたくらいだよ。あぁ、あといろんな人のデッキ構築の相談受けたりとかもしてたか。それくらいかな?」

「あらあんた、リアルだと友達いないのにネットだとそうなの?今流行りのネット弁慶ってヤツ?」

「ネット弁慶っていつの言葉だよ...まぁその通りなんだけど。」

「だから自覚してるなら直しなさい。あんた性格悪い訳じゃないんだから声をかければ友達なんかすぐできるわよ。」

「その声をかけるってことに、どれほどの勇気がいることかッ!」

「出しなさいそれくらい。どう考えてもちっぽけなので足りるわよ。...そんなあんたにこんなこと言うのはアレなんだけどね。」

「何?母さん。」

「やめない?」

「...何を?」

「リンクヴレインズを」

母の言葉は、強く、優しく、されど重かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「最近あんた変わったわ。夜遅くまでスマホでインターネットして。それだけならいいんだけど、でもいつも鬼気迫るような顔してた。気になって後ろから覗いてみると、いつもいつもハノイの騎士の事を書いてた。

それで気になってお母さんも調べてみたの、ハノイの騎士について。それで出たニュースがこれ」

母はタブレットの画面を示した。そこにはこう書いてあった。

"リンクヴレインズにおける集団昏睡事件!ハノイの騎士の仕業か⁉︎"

「つい昨日の話で、しかもあんたがログインしてる時に起きた事件だった。あんたこの事を知っていたの?」

 

「...ネットで見たんだ。ハノイの騎士が危険なウィルスをリンクヴレインズでばら撒こうとしているって。だから最近はずっと、その事を警告して回ってた。いろんなサイトや、いろんな掲示板で。いざって時すぐに逃げられる人が少しでも増えるように。」

 

「そう...だからあんなに必死だったのね。誰かを守りたいって思っちゃったから。そういうとこ、お父さんにそっくりよ。でもだからこそ言うわ。天頂、リンクヴレインズを辞めなさい。あなたが誰かを心配するように、誰かもあなたを心配している事を忘れないで。」

 

「母さん...デュエルを続行するッ!俺は星因子(サテラナイト)ベガを召喚!効果発動!手札のテラナイトを特殊召喚する!」

「チェーンして発動!ブレイクスルー・スキル!ベガの効果を無効にするわ!天頂、話を逸らさないで!」

「チェーンして発動!速攻魔法、禁じられた聖槍!攻撃力を800ダウンさせ、このカード以外の魔法罠の効果を受けなくする!逆順処理だ!まず、ベガの攻撃力を800ダウン!次にブレイクスルー・スキルは加わった耐性により無力化!最後にベガの効果!手札から星因子(サテラナイト)アルタイルを特殊召喚!アルタイルの効果発動!墓地のデネブを特殊召喚!デネブの効果発動!デッキからアルタイルをサーチ!行くぞ!俺はデネブとベガ、2体のテラナイトモンスターでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4!煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!手札1枚とオーバーレイユニット1つを使い、ヴァトライムスの効果発動、光属性テラナイトをこのカードに重ねてエクシーズ召喚する!"スターライト・エクシーズ"!現れろ!星輝士(ステラナイト)デルタテロス!デルタテロスの効果発動!フィールド上のカードを1枚破壊する!俺はプレアデスを選択!"デルタ・ドライブ"!」

「発動は無い、プレアデスは破壊されるわ。」

「プレアデスが破壊された事でデモンズ・チェーンも墓地に送られる。バトルフェイズ!...何か発動は?」

「無いわ。まだやれるとは思っていたんだけど。強くなったわね、天頂。いや、あなたは最初から強かった。まるでデュエルの星からやってきたみたいに。」

「まず、アルタイルでダイレクトアタック!」

 

結城天 LP4000→2300

 

「これで終わりだ!デルタテロスでダイレクトアタック!"デルタ・ブレード"!」

 

結城天 LP2300→-200

 

 

 

「母さん、俺はそこそこ強い。ハノイから自分の身を守れるくらいには。」

「だからリンクヴレインズに入れてくれって?ダメよ認めないわ。」

「そうじゃないんだ、言いたいことは。俺はそこそこ強い、けどそんな俺が手も足も出ないデュエリスト達がリンクヴレインズにはいるんだ。本物のヒーローたちが。」

「本物のヒーロー...」

「だから少し待っててほしい。確かに今リンクヴレインズはハノイの騎士が占拠する無法地帯だ。けど、本当の強さを持ったヒーローたちが、リンクヴレインズを取り戻してくれる、必ずッ!」

「...そこまで言うのね、いつもどこか達観していた天頂が。なら、わかりました。リンクヴレインズがヒーロー達によって平和なったあとなら、ログインを許可するわ!でもそれまではログインしちゃダメよ、原因不明の昏睡なんて、本当に危ないんだから。」

「わかった、ログインはしない。でも、ハノイの騎士がどんなに危険かネットで拡散することは辞めない。それでも良い?」

「それがあんたのやりたい人助けなんでしょ?だったら思う存分やりなさい!ただ、なんども言うけど自分を危険に晒すようなことは絶対にしないで。お母さんとの約束よ?」

「うん、約束する。」

 

 

「あぁ、それともう1つ、リンクヴレインズに入らないってことはリアルで遊ぶ時間も増えるでしょ?ならこの機会にしっかり友達作っておきなさい!もちろん、リアルのよ。」

「そ、その願いは私の力を超えている。」

「できるわよ、天頂なら。だってあなたは...

 

もう小学4年生なんだから!」

 

今、今世10年間において最大クラスの難題を押し付けられたような気がします。

 

 

 

 




ちょっとやってみたかったVR世界ならではの年齢トリック
結城天頂、10歳です。ショタです。
なお、この設定が生えたのは、遊作を「藤木先輩!」と呼んでみたかったからだとか。まぁ主人公との絡みは今のところ予定にないんですけどね!


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主人公達の目線

小説情報を覗いてみたところ、こんな小説に評価が付いてました。それも2件も!評価してくれたお二方、ありがとうございます!

今回の話を書いていて思った、ハッカーって怖い。ソフトウェアのアップデート、パスワードのこまめな更新、忘れないようにしましょう!

あと、この話は本日2本目です。お気に入り登録している方は前話からどうぞー


Café Nagi という移動式のホットドッグ屋がある。

SNSで評判の、所謂隠れた名店という奴である。

だが、それには裏の顔があった。

なんとこの店、主人公Playmaker陣営の持つ移動式のハッキング拠点なのだ。ガチモンの移動式の秘密基地である。ロマンか!

 

リンクヴレインズにログイン出来ず、友達作りへの勇気を持てない自分は、このDen Cityをぶらついていた。思えば今世において、自分の生きてる街をこうして見て回るのは初めてだったなぁと考えていたところ見つけてしまったのだ、その店を。

 

あー、海岸線の見えるこの景色綺麗だなー(現実逃避)

さて、回れ右である。主人公達の顔を見たくないのかと言われれば嘘になるが、相手はハッカーだ。ハッカーなのだ。正義を志していようが、要するに犯罪者なのだ。関わりあうのは避けるべきだろう。

 

後ろにいたド派手な髪型の青年とすれ違ったような気がするが、きっとただの他人の空似だ。自分は一般人なんだ、天下のPlaymaker様に関わりあうこたぁねぇ!

 

「おい、ちょっと良いか?」

だから話しかけって来ちゃったー⁉︎

冷静だ、冷静になるのだ結城天頂、お前は外見10歳だろう、怪しまれるこたぁないさ!

「何ですか?おにーさん」

 

「いやちょっとな、1つ、お前は迷いなくこの場所に歩いて来た。2つ、だが、お前はこの場所に来るなりすぐ踵を返した。この風景の写真も撮らずにだ。3つ、つまりお前は明らかにこの店に来るのが目的だったと考えられる。だが、それならすぐ踵を返すのはおかしい。質問だ、何が目的でここに来た?」

「いや適当にぶらついてただけです。そしたら、SNSで見た店を見つけたのでホットドッグを買おうかなぁ?と思ったんですが準備中みたいだったんで引き返そうかと。そんな深い目的とかはないですよー」

「そうか、変なことを聞いて悪かった。忘れてくれ。」

「いえいえー。1つ聞くんですが、そんな怪しい動きしてました?俺。」

「あぁ。それなりにな。」

「それなりにですかー、気をつけときます。それじゃあ」

「ああ」

 

何とかやり過ごせたか?やり過ごせたよなぁ⁉︎

なんかもう萎えた、帰ろ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「Ai、ハノイの気配はあったか?」

「ん?なかったぜご主人様。疑ぐりすぎじゃねぇの?」

「そうか、なら本当にただの客だったのか。」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「草薙さん、さっき客が来てたぞ。しかも開店してないから帰っていった。」

「遊作か...すまん、ちょっと調べ物をな。丁度いい、こいつを見てくれ」

「これは?匿名掲示板とかSNSとかの書き込みに見えるが。」

「その通りだ遊作。ただそれを書かれた日付が問題なんだ。これらが書かれ始めたのは丁度お前とリボルバーがデュエルした日あたりなんだが、その日から、アナザー事件が連想されるような書き込みを続けているんだ。このアカウントは。」

「あれ、事件の前の書き込みなんだよな?なんで知ってんだ?そいつ。」

「まさかハノイの裏切り者か⁉︎」

「俺もそう思った。だから調べて見てたんだ。このアカウントは、リンクヴレインズでのアバター名は"Stargazer”。カリスマデュエリストランキングで50位くらいをキープしてる中堅どころだな。」

「そいつのリアルは⁉︎」

「丁度いいって言ったろ?いま、IPアドレスからリアルを割り出すプログラムの結果が出たとこだ。どれどれ?...あー、無いなハズレだ。畜生、無駄足だったか...」

「結果はどうなんだ?草薙さん。」

「子供だよ、子供。"Stargazer"の本名は"結城天頂"。Den City Primary Schoolに通ってる小学4年生だ。掲示板の件はどっかのデマを鵜呑みにして、それを触れ回ってただけだろうさ。」

「家族構成はどうなんだ?」

「あー、家族の話を聞いたって線か。ちょっと待て...出た。兄弟は無し、おっ父親は現役の警察官か。階級は巡査部長、叩き上げだな。案外家で聞いたって線はあるかもしれないぞ遊作。母親は普通の専業主婦だな。お、補導歴もある。案外この二人の馴れ初めはこの辺りかもな。」

「趣味が悪いぞ、草薙さん。」

「悪かったって、でも両親とも素行は良好。ハノイに繋がる線は無しだな。」

「そーそー、さっきから疑り深すぎるぜーご主人様ー」

「いや、そうとは限らない。1つ、この結城天頂とかいう奴は10歳という年齢で大の大人たちの蔓延るリンクヴレインズでランキング50位なんて好成績を叩き出している。所謂天才って奴だ。2つ、そんな結果が出せるのはデュエルの知識が深いというよりも、地頭が良いって事だろう。3つ、こんな若さでもリンクヴレインズにログインしているんだ。コンピュータへの知識がないとは限らない。以上からこの少年、疑ってかかるべきだ。なんせ俺たちには今、圧倒的に情報が足りていないんだから。」

「そうだな遊作。一応詳しく調べてみるか、この少年を。」

「俺は無駄だと思うけどなー」

「黙れ。草薙さん、俺も手伝うよ」

「そうか、それなら遊作は掲示板やSNSの書き込みを見直してくれ、何かあるかもしれない。俺は"Stargazer”の動画を当たってみる。」

「ああ。」

 

遊作は書き込みを読み始めた。そうして感じたのは、"悲痛さ"だった。ハノイの危険性を伝えても、誰も信じようとしない。時には嘘つきとレッテルを貼られ、晒されることもあった。そんな中でさえ、彼は声を上げるのをやめなかった。

(これは、妄想なんかじゃない。明らかにハノイがどんな事件を起こすか知っていた奴からの警告だ。一体何を知ったんだ?結城天頂...)

「お、見つけたぞ遊作!これは、大襲撃の日の”Stargazer'"の動画だ!」

「これでハッキリするな。結城天頂がどんな奴なのか」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ハノイの騎士だ!皆、危険だからログアウトしろ、早く!」

 

「ハノイ見物ならログアウトしてからでもできる!早くログアウトを!」

 

「デュエルなんか中断しちまえ、とにかく逃げるんだ!このままじゃ...ッ!」

 

「いいから逃げるんだ!ニューヒーローなんか何処にもいない!この状況のヤバさは分かるだろ!とにかく早くログアウトを!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「やはりだ、この声からは必死さが感じられる。明らかに被害者がどうなるか知ってるぞコイツは!」

「ということはコイツはハノイの裏切り者だったのか⁉︎遊作!」

「俺は違うと思うぜー。だってあのハノイの連中だぜ?裏切り者を放って置くとは思えないなー。」

 

「動画には続きがある、まずはこれを見てから判断しよう。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「デュエルを中止してログアウトしろ!頼むから俺の声を聞いてくれ!」

 

「頼むから逃げてくれ!デュエリストの誇りなんか...ッ!」

 

「ログアウトするんだ!大事なもんだろ、それはッ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「もうすぐ終わりだな。結局この少年の謎は分からずじまいか。」

「だから言ったろ?勘違いだって。このガキはただの臆病な少年でしたー、で終わり!」

「草薙さん、最後まで見よう。きっと何かある。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それは、流れるような動きだった。

項垂れたその体勢からDボードを取り出し、風に乗り、ハノイの顔面に正面衝突をかました”Stargazer”の姿を撮影者は見た。

 

「ここは俺が引き受ける!そのうちにさっさとログアウトを!」

「え、あ、え?」

「良いから早く!」

「はっ、ハイ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここで終わりかよぉ!え、どんなったん?ハノイは?あのガキは?」

「信じられない!この少年は明らかに、ハノイとデュエルした!でもハノイの騎士の危険性を告げる”Stargazer”のアカウントは今も機能してる。てことは間違いない。ハノイに勝ったんだ!たった10歳の少年が!」

「ああ、俺も信じられない。いるんだな、天才って。」

「こいつはリンクヴレインズのニューヒーロー誕生の瞬間って奴だろ!うかうかしていられないな、遊作!

ん?投稿者コメントにこんな事が書かれてるな。自分を助けてくれた人の安否が心配です。その人の名前と、安否を知っている方がいるならコメントしてください。だってよ。どうする?」

 

「そうだな、コメントしておこう。俺たちに害は無いしな。」

「あれー、意外と乗り気じゃんご主人様ー。もしかしてこのガキに感化されちゃった?」

 

「そんなんじゃ無い。この動画から結城天頂について3つのことがわかった。その礼みたいなものだ。1つ、下で散々喚いていた少年に、ハノイは全く反応しなかった。これは、ハノイ内部にこの少年の情報がなかったということ。つまりこの少年はハノイとは無関係だ、内通者じゃない。2つ、この少年は撮影者の危機にDボードで駆けつけた。これはハノイと明確に敵対する行為だ。それを躊躇いなく行えるってことは情報の出所云々はともかくとして、明確にハノイと敵対する者だって事だろう。そして3つ、」

「3つ?どうして言い澱むんだ?遊作」

「いや、何でもない。3つ、この少年は、明確に善人であるという事だ。」

「さてはご主人、ちょっと照れたな〜?」

「黙れ。それじゃ、動画にコメントする。草薙さん、良いか?」

「おうとも!あぁ、ちゃんとダミー回線は経由しろよ?」

「それくらい当然だ。」

 

「しっかし、遊作。俺たち以外にもハノイと戦うために立ち上がってくれたヤツがいるってのは。なんか元気が出るな!」

「あぁ、そうだな。...だが、すまない。結城天頂に関しては完全に無駄足だった。結局無駄な時間を使わせただけだったな。」

「どうせ今はハノイの手がかりは無いんだ。気にするな。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その日、インターネットの片隅にあったその動画

"僕を助けてくれた人"

そのコメント欄にこう書かれた。

「その少年の名は”Stargazer” 無事だ。」

それを見た動画投稿者は涙したそうだ。自分のせいで勇敢な人に犠牲を押し付けずに済んだことによる、罪悪感からの解放からか、助けてくれた少年への感謝の念からか、それは分からない。

だが、きっと悪い物ではないだろう。

 




デュエル無し回パート2
ていうかVRAINSのデュエルディスクって外でデュエルできるのかどうか分からないのでデュエルを絡ませ辛い...

-追記-
3/29日にちょっと修正をしました。
Wikiとか見たら草薙さんのお店ってホットドッグ屋だったみたいです。だったならんでカフェって店名ついとるねん...


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団長はいい加減止まってくれ

ひょ、評価バーに色が付いた⁉︎しかもオレンジ色⁉︎
なんと評価者が7人に増えました。

今回のお相手はタイトルからモロバレだと思いますが、4月の制限改定でノーダメージで、次の環境トップクラスが確定している奴らです。

止まるんじゃねぇぞ...(言いたかっただけ)
あ、今回もマスターデュエルです。


「デュエル喫茶?」

「そう、デュエル喫茶。近所にできたんだって。なんでもデュエルに勝つとランチが半額になるんだって。天頂、あんたデュエル強いでしょ?その強さを家計に還元しなさいな。」

「へー、そんなサービスしてるって事はよっぽどデュエル強いんだね、そこの店員さん。面白そうだ。でも勝てなくてもお小遣いから飯代さっ引くとか言わないでよ?デッキの相性とかあるんだから。」

「あら、良いわねそれ。採用。お小遣いを守りたいなら死ぬ気で勝ちなさい、天頂。」

「藪蛇だったか。というか喫茶店のランチとかいくらすると思ってんだ。小学生にたかるなよマイマザー。」

「何、勝てば良いのよ勝てば。簡単でしょ?」

「俺、それと同じ事ハノイの連中から聞いた気がする。」

 

そんな訳で、デュエル喫茶とやらに行ってみることになった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「へー、デュエルするのはデュエルランチを頼んだお客同士なのね。そーするとお店の利益は常に書いてある値段の3/4になる訳か。価格が割高なことを考えると、結構ボロい商売ね。」

「どーりで検索しても店員さんの使うデッキが出てこない訳だ。メタって完封しようと思ったのに。」

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「私はこのAランチで、この子はデュエルランチをお願いします。」

「...失礼ですがこの子がですか?お客様でなく?」

「そうこの子が。見た目こんなんだけどデュエルは強いのよーこの子。」

「かしこまりました。それではお客様はこのテーブルでお待ちください。お子様は今、ちょうどデュエルランチのお客様がいらっしゃるので、中央のデュエルスペースへどうぞ。」

「それじゃ、勝ってきなさい天頂。」

「はぁ、行ってきまーす。」

 

 

「あら、可愛いチャレンジャーね。」

「そういうおねーさんは、お綺麗ですよー。」

「あらお上手ね。...最近の子供ってみんなこうなのかしら?」

「さぁ、友達少ないんで知らないです。」

「え、ええ、そうなの。...あら、あなた実際のカード持ってるのね珍しい。」

「ええ、でもこのデュエルテーブルカードをどこにセットしたら良いんですか?」

「あぁ、これ。カードじゃなくてデュエルディスクにプラグを刺して使うタイプのテーブルよ。最近はカードを持たないデュエリストも多いから。」

「ありがとうございます。それじゃ、デッキセット!プラグイン!

じゃあ、始めましょうか!」

「ええ!」

 

 

「「デュエル!」」

 

「先行は俺ですね!スタンバイ、メイン。俺は星因子(サテラナイト)ベガを召喚!効果発動手札から星因子(サテラナイト)ウヌクを特殊召喚!

ウヌクの効果!特殊召喚時デッキからテラナイトカードを1枚墓地に送る。俺はデネブを墓地に。

現れろ、俺のサーキット!召喚条件は戦士族モンスター2体!リンク召喚!現れろリンク2!聖騎士(せいきし)追想(ついそう)イゾルデ!

イゾルデの効果発動!リンク召喚成功時、デッキから戦士族モンスターを手札に加える。ただしその同名カードはこのターン、モンスターとしてプレイ出来ない。俺はデッキから2枚目のベガをサーチ。

イゾルデの第2の効果を発動!デッキから同名以外の装備カードを任意の枚数墓地に送り、その枚数と同じレベルのモンスターをデッキから特殊召喚する。俺はデーモンの斧、月鏡の盾、団結の力、神剣-フェニックスブレードの4枚を墓地に送りレベル4の星因子(サテラナイト)アルタイルを特殊召喚する。

アルタイルの特殊召喚時、効果発動!墓地のテラナイトモンスターを特殊召喚する。俺は星因子(サテラナイト)デネブを特殊召喚!

デネブの効果発動!デッキからテラナイトモンスターを手札に加える。俺は2枚目のアルタイルをサーチ!」

「合計リンクは4!来るわね、リンク4!」

「残念ながらそんな高級カードは無いんですよ、まだ小学生ですから...」

「あら、そうなの残念ね。」

「続けます。カードを2枚伏せて、ターンエンド。」

 

「私のターン私は、オルターガイスト・メリュシークを召喚!」

 

そのとき、天頂に電流が走るッ!

団長⁉︎何やってんだよ団長!こんな所で原作キャラとエンカウントとか聞いてねぇよ団長⁉︎オルガだぞ!勝てるかあんなインチキ集団に、どうすりゃ良いんだよ団長⁉︎

 

「あの、すいません。今からでもデュエル中断してサイドチェンジして良いですか?」

「駄目に決まってるでしょ、何考えてるのあなた。...ちなみにどんなカードを入れるつもり?」

「ちょっとレッド・リブートを3積みしようかと。」

「レッド・リブート?知らないカードね。どんな効果なの?」

「手札からでも発動できる、トラップ封印のカウンタートラップです。」

「私のデッキ封殺する気満々のカードじゃ無い⁉︎...そんなんじゃ友達無くすわよ?」

「大丈夫です。居ませんから。」

「少ないんじゃなかったの⁉︎」

「あ、今の失言です。聞かなかったことにしてください。」

「もうしっかりバッチリ聞いちゃったわよ。

...デュエルを続けるわね。バトルフェイズ!メリュシークの効果!このカードは直接攻撃できる。ダイレクトアタックを喰らいなさい。」

 

結城天頂 LP4000→3500

 

「メリュシークのさらなる効果!このカードが相手に戦闘ダメージを与えたとき、フィールド上のカードを1枚墓地に送る!選択するのは右のセットカード!」

「畜生、当たりですよ!伏せカードはデモンズ・チェーン。ダメージステップ中の効果なので発動は出来ません。墓地送りです。」

「あら、怖いカードね。使っておけば良かったのに。と言う事は伏せカードのうち一枚はブラフね?」

「それはどうでしょうね。」

「ポーカーフェイスも上手。子供を相手にしてる気がしないわね。カードを2枚伏せて、ターンエンド。」

「フィールドにはモンスターが残ってる!最悪では無い!伏せカードの一枚は十中八九あれだけど!俺のターン、ドロー!...くそッ!スタンバイ、メイン!

まずは墓地のフェニックスブレードの効果発動!墓地にいるウヌクとベガ、2体の戦士族モンスターを除外し、墓地のこのカードを手札に戻す!

続いて、フィールドのアルタイルとデネブ2体のテラナイトモンスターでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4!煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!」

「あら、随分レベルが揃ったモンスターを使うと思ったら、エクシーズ使いだったのね、珍しい。」

「レトロ系男子と笑わば笑え!手札のフェニックスブレードを墓地に送り、とオーバーレイユニット1つを使いヴァトライムスの効果発動!光属性のテラナイトを重ねてエクシーズ召喚する。"スターライト・エクシーズ"!」

「その効果は止めるべきね!私はメリュシークを墓地に送り、永続トラップカードオルターガイスト・プロトコルを発動し、効果発動!1ターンに1度、表側表示のオルターガイストカードを墓地に送り、相手フィールドのモンスター効果発動を無効にし、破壊できる。私はヴァトライムスの効果を無効にし、破壊する!」

「ッ!だがそれは想定内だ。プロトコルはもう使えないッ!」

「それだけでは終わらないわよ?手札のオルターガイスト・マルチフェイカーの効果発動!さらに墓地に行ったメシュリークの効果発動!まずはマルチフェイカーの効果!トラップカードが発動したときこのカードを特殊召喚できる。続いてメシュリークの効果!フィールドから墓地に行った場合デッキからオルターガイストモンスターを手札に加える。私はオルターガイスト・クンティエリを手札に加える!

続けていくわよ!マルチフェイカーの効果!このカードの特殊召喚に成功したとき、デッキからオルターガイストを特殊召喚できる!現れろ!オルターガイスト・シルキタス!」

「畜生、うららが、うららが手札に来ていればッ!」

「無い物強請りはみっともないわよ?男の子ッ。」

「強請りたくなるような盤面作っておいてよくも言うッ!だが、これはまだ最悪では無いッ!ヴァトライムスの効果が無効になったことで、俺はこのターン、まだエクシーズをすることができるッ!俺は手札からベガを召喚!効果発動!手札のアルタイルを特殊召喚し、効果発動!墓地のデネブを特殊召喚し、効果発動!デッキからアルタイルをサーチ!

行くぞ!俺はアルタイル、デネブ、ベガのモンスター3体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!星輝士(ステラナイト)デルタテロス!」

「レベル4モンスター3体なんて重い素材、さぞ強力な効果でしょうね!

でも残念!シルキタスの効果発動...出来ない⁉︎」

「デルタテロスのモンスター効果!このカードがオーバーレイユニットを持つ限り自分がモンスターを召喚、特殊召喚する際相手は魔法、罠、モンスター効果を発動できない!よってこのタイミングでの発動はカウンタートラップ以外出来ないのさ!」

「なるほど、特殊召喚に成功していることで、デルタテロスの効果が有効になっているのね。でもそのタイミング以外なら!」

「その通りです、それ以外のタイミングならチェーン発動できるんですよねぇ...デルタテロスの効果発動!オーバーレイユニット1つ使い、フィールドのカード1枚を破壊する!俺はプロトコルを選択、"デルタ・ドライブ"!」

「チェーンするわ。マルチフェイカーを手札に戻し、シルキタスの効果発動!この効果は、自分フィールドのオルターガイストを手札に戻し相手フィールドのカード一枚を対象に発動できるそのカードを手札に戻す!私は当然デルタテロスを選択!」

「こっちもチェーンだ!速攻魔法、天架(あまか)ける星因子(サテラナイト)フィールドのテラナイトをデッキに戻し、名前の異なるテラナイトを特殊召喚する!逆順処理だ。まず、デルタテロスをデッキに戻し、デッキから星因子(ステラナイト)シャムを特殊召喚!」

「次にシルキタスの効果、対象を失ったことにより不発よ」

「最後にデルタテロスの効果!オルターガイスト・プロトコルを破壊だ!

特殊召喚に成功したことでシャムの効果発動!相手に1000のダメージを与える!」

 

女性 LP4000→3000

 

「特殊召喚するのはそのカードで良かったの?攻撃力は1400、守備力1500のシルキタスは倒せないわよ?まぁ、だから守備表示なんでしょうけど。」

「オルターガイスト・シルキタスにはフィールドから墓地に行ったとき墓地のオルターガイスト罠をサルベージする効果を持っている。あれだけ苦労して破壊したプロトコルをサルベージなんかさせませんよ。まぁ、シルキタスでマルチフェイカーを手札に戻したって事は、無意味かも知れませんけど。」

「ふふっ、それはどうでしょうね?」

「ポーカーフェイスが達者なのはどっちだか。俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド。」

「私のターン、ドロー!まずはトラップ発動!オルターガイスト・マテリアリゼーション!墓地のオルターガイストを特殊召喚し、このカードを装備する!そして」

「悪いんですがチェーンありです!ライフを半分支払い、カウンタートラップ発動、神の宣告!マテリアリゼーションの発動を無効にして破壊する!」

 

結城天頂 LP3500→1750

 

「カウンタートラップにより発動が無効になった場合、マルチフェイカーの効果は発動できない...やるわね少年!」

「それはどうも。だが、マテリアリゼーションが墓地に行ったと言う事は⁉︎」

「当然マテリアリゼーションの第2の効果発動!このカードを墓地から除外し、墓地のオルターガイスト罠をサルベージする!私は当然オルターガイスト・プロトコルを手札に戻す!

私は手札から2体目のメリュシークを召喚!バトルフェイズ!

まずはメリュシーク!メリュシークは、効果によりダイレクトアタックができる!」

 

結城天頂 LP1750→1250

 

「そしてメリュシークの効果発動!シャムを破壊よ!」

「トラップ発動、リビングデッドの呼び声!墓地のベガを特殊召喚する!ベガの効果発動、手札のアルタイルを特殊召喚、アルタイルの効果発動、墓地のデネブを特殊召喚。デネブの効果発動、ウヌクをサーチ。」

「...念のためやっておきますか。シルキタスの効果発動!メリュシークを手札に戻し、あなたのデネブを手札に戻す!

カードを2枚伏せて、ターンエンド。」

「俺のターン、ドロー...よし!スタンバイ!」

「スタンバイフェイズに、オルターガイスト・プロトコルを発動!トラップが発動したことにより、手札のマルチフェイカーを特殊召喚!マルチフェイカーの効果発動!特殊召喚に成功したので、デッキからオルターガイスト・マリオネッターを特殊召喚!」

「どっちのターンか分からなくなりますね...メインフェイズ!さぁ、運試しだ!俺は魔法カード、強欲で貪欲な壺を発動!デッキトップ10枚を裏側で除外し、2枚ドロー!

...よっしゃあ、大当たり!ハーピィの羽箒を発動!フィールド上の魔法罠を全て破壊するッ!消え去れ、プロトコル!」

「伏せカードをチェーン発動!オルターガイスト・エミュレルフ!トラップモンスターとして特殊召喚!そしてこのカードが存在する限り、他のオルターガイスト罠カードは破壊されない!よってプロトコルは無事よ!

もっとも、エミュレルフ自体はトラップとしても扱うから、破壊されちゃうけどね。」

「そんなカードが⁉︎...俺は手札から、シャムを召喚!喰らえ1000のダメージを!」

 

女性 LP3000→2000

 

「行くぞ!俺はシャム、アルタイル、ベガのテラナイトモンスター3体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4!星輝士(ステラナイト)トライヴェール!トライヴェールの効果発動!このカード以外フィールドの全てのカードを手札に戻す!"トライ・フォース"!」

「チェーンしてプロトコルの効果発動!メシュリークを墓地に送り、トライヴェールの効果を無効にして破壊する!」

「ターンプレイヤーの俺からチェーンは組まれる。よってチェーン1!トライヴェールがオーバーレイユニットを持った状態で墓地に行った場合、墓地のテナライトを特殊召喚できる!俺はアルタイルを選択!」

「チェーン2!メシュリークが墓地に送られた事で、デッキからオルターガイストを手札に加える!逆順処理よ!私はデッキからマリオネッターをサーチする!」

「アルタイルを特殊召喚!効果により墓地のベガを特殊召喚!効果により手札のデネブを特殊召喚!効果によりベガをサーチ!」

「サーチするのはアルタイルじゃないのね」

「デュエリストならちゃんと数えてて下さいよ。もう3枚出てます。

気を取り直して!俺はアルタイル、デネブ、ベガのテラナイトモンスター3体でオーバーレイ!ランク4!今一度現れろ、星輝士トライヴェール!再び効果発動!"トライ・フォース"!」

「マルチフェイカーを手札に戻し、シルキタスの効果をチェーンして発動!トライヴェールを手札に戻す!」

「互いの効果を逆順処理!よって、フィールド上のカードは全て手札に戻る!」

「けど、使ったカードがほとんど手札に戻った私と違い、あなたは手札を激しく使った。残りはサーチしたウヌクにベガ、それともう1枚だけ。次のターンからの有利不利は明確よ?」

「その1枚で勝負を決める!魔法カード、死者蘇生!墓地に存在するカードを特殊召喚する!再び現れろ煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!」

「攻撃力は2600ッ⁉︎」

「その上、フィールドにオルターガイストが存在しないため、サーチされてるオルターガイスト・クンティエリの効果は使えない!

バトルフェイズ!ヴァトライムスでダイレクトアタック!"ヴァトライムス・チャージ"!」

 

女性 LP2000→-600

 

「驚いた。強い子だとは思ってたけどまさか私が負けるなんて。」

「俺も驚いてます。正直、最後のドローまでは勝ち筋が見えなかったレベルでしたから。ありがとうございました。えっと、」

「そういえば名乗って無かったわね。私は別所(べっしょ)エマよ、テラナイト使いの少年くん。」

「結城天頂です。城を結ぶに天の頂きで。それじゃ改めて、別所おねーさん、ありがとうございます、良いデュエルでした。」

「エマで良いわよ、天頂くん。また、機会があったらデュエルしましょう。今度は負けないわよー?」

「お、お手柔らかにお願いします。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

まさかの、原作キャラとの不意打ちエンカウントパート2であった。

しかもデュエルまでしてしまった。これが何かの悪い原作介入にならないと良いんだが...

 

ちなみに、デュエル中感じていた事だが、自分はおそらく手加減されていた。キーカードの枚数数え忘れとか、プレイングもどこか雑だったし。まぁ、大の大人が小学生相手に、しかもたかがランチ半額サービスのためにボコボコにするというは気が咎めたのだろう。

そうは思えない盤面をいとも簡単に作り出してしまうのがオルターガイストの恐ろしいところだったが。次勝てってのはサイドチェンジありでようやく勝率4割ってとこだろう。それほど今回の勝利は運によるものであった。

ただ、油断している相手になら相手が原作キャラであろうと勝ち目がある事が知れた事は良かったと言える筈だ。

まぁ、本気の相手にはならないんだろうけどさ!(蘇るブルーエンジェル戦のトラウマ)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「結城天頂か...ジュニアクラスの公式大会の参加記録はなし。その割に私のオルターガイストに関する知識も深かった。あれはデュエルの天才って感じより、デュエルに関する知識の深さが強さの肝であるデュエリストのデュエルだった。見たところ歳は10歳くらいなのに、一体どこでどう育ったらあんなデュエリストが育つのよ...もしかしてリンクヴレインズの常連だとか?...ありそうね、帰ったらちょっと調べてみましょうか。エクシーズ使いなんて調べればすぐにわかるだろうし。

 

...あー、世界って広いわねー。事が落ち着いたら私も鍛え直そうかしら。

 

そういえば天頂くんの言ってたサイドチェンジのカード、レッド・リブートだったっけ?それも調べておこうかしら。あの子が必要だ、って言うくらいなら本当に私のデッキの対策になるカードだろうし、気を付けておいて損は無いわね。」

 

 

 




デュエルが、長い...
初めは主人公の完封負けにしようかと思ったんですが、たかだかランチ半額程度に子供を痛めつけるイメージがエマさんになかったので、互角の戦いの末勝利って感じになりました。
その結果手札枚数計算しくじって神器の1つゴードンさんにご登場願うことになったんですけどね!

あ、リアルのテラナイトデッキにはゴードンは入れていません。1度アルタイル全部裏側除外とかいう悪夢が起きてからあのカードだけは信用しないと心に決めています。


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たまにはゆっくりデッキを練ろう

今まで出したテラナイトエクシーズは4種、禁止の奴を除けば全てです。
今まで出した星因子は6種、実は全部ではありません。
今回は残りのスポットを当てつつ、今までしっかり説明していなかったテラナイトカードたちのデメリットからデッキ構築を考えていく話です。

あ、今回もデュエルはありません。


先日、Playmakerに化けたGo鬼塚が、ハノイの3騎士の一人であるDr.ゲノムを倒した。流石カリスマデュエリストランキング元1位、肩書きに恥じない強さである。たが奴はトロイメアという強化を残してる、あとは分かるな...(驚愕)

サイバースの一般流通が待たれるばかりである。

 

さて、Go鬼塚が勝利を収めたことでアナザー、つまりハノイによる昏睡の被害者が、ワクチンプログラムによって治ると公表された。同時に拡散されたワクチンプログラムにより、被害者全体から見れば数少ないが、それでも治療成功者が現れることとなった。これは偉業だ。アナザー被害者家族の中には被害者はもう目覚めないのだと絶望している人も数多くいた。そんな彼らに希望を与えたGo鬼塚は間違いなくリンクヴレインズのヒーローだ。人気の再上昇も待ったなしである。

 

自分は原作を知っている身だが、この世界がただ原作通りに進むとは思えず、もしかして未来が変わってしまうのでは?と戦々恐々しながら観戦していたため、心臓に悪かった。どうせ勝つならライフを1点も削られないパーフェクトデュエルで勝って欲しいものだ。(無茶振り)

なお、次に起こるのはブルーエンジェル対3騎士の一人バイラとのデュエルであるが、そっちは心配していない。なんせあの4000を軽々ワンキルしてくるトリックスターである。原作知識が無かったら、スペクターに敗北するなんて信じられないレベルのガチデッカーである。間違いなく大丈夫であろう。彼女とて、リンクヴレインズのヒーローなのだから。

 

閑話休題

 

リンクヴレインズ関連のニュースに明るい話題が出てき始めた転換点であるが、自分はSNSや掲示板などでアナザー=ハノイの仕業であることを広める活動を休んではいない。が、そちらの方も手応えに明らかな変化が現れ始めた。リツイートなり"いいね"なりが増えてきたのだ。凄いとこだと、大手サイトのネットニュースに取り上げられたこともあった。「負けた奴は現実の世界でも目覚めないんだよ!」と言ってくれたハノイの彼に改めて感謝である。おそらく彼は、ハノイの騎士の下っ端部隊の一番の人気者であろう。コラ画像とか作られてたし。

 

そうなると、自分の情報拡散活動も大体の人たちに知れ渡ったと言える段階に至ったのかもしれない。これで無知な人がハノイの被害者となる事を防ぐという当初の目的は達成しただろう。

知っててリンクヴレインズにログインする命知らず?知らん、そんな事は俺の管轄外だ。だって自分から命を捨てに行くようなおバカさんたちだ。言葉で止める事は不可能であろう。被害者となった所で、どうせ命が無くなる訳ではないのだ。いい薬になるだろうさ。

 

さて、そうすると少し時間が余る。友達作り?ふ、不可能だと分かりきったことに自ら挑むような神経はしていないのさ(震え声)

 

そうして出来た時間で行う事は当然、デッキの見直しである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

テラナイトは、禁止を含めた5種類のエクシーズモンスターと10種類の下級効果モンスター、それに2種類のペンデュラムモンスターからなるテーマである。

が、その数の意外な多さに反比例するかのように実用に足るモンスターは少ない。

テラナイトの初出であるザ・デュエリストアドベント出身のデネブ、アルタイル、ベガ、ウヌク、シャムのいつもの5体に加え、

ネクスト・チャレンジャーズ出身の星因子(サテラナイト)シリウス、墓地の5体のテラナイトモンスターをデッキに戻し一枚ドローするという効果を持っている、

ザ・シークレット・オブ・エボリューション出身の星因子(サテラナイト)リゲル、攻撃力1900でテラナイトのエンドフェィズ破壊をデメリットに攻撃力を500アップさせる効果を持っている、

この計7体が実用にたるレベルのカードであろう。他の連中?こんな効果だよ。

 

星因子(サテラナイト)ベテルギウス

効果モンスター

星4/光属性/戦士族/攻 700/守1900

「星因士 ベテルギウス」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、

「星因士 ベテルギウス」以外の自分の墓地の

「テラナイト」カード1枚を対象として発動できる。

このカードを墓地へ送り、対象のカードを手札に加える。

 

お前なんでサルベージにコスト必要なの?ただのアド損じゃん。自壊コストさえなければ一戦級の惜しい奴。

 

星因子(サテラナイト)プロキオン

効果モンスター

星4/光属性/戦士族/攻1300/守1200

「星因士 プロキオン」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

手札の「テラナイト」モンスター1体を墓地へ送り、

自分はデッキから1枚ドローする。

 

効果だけ見ると使えそうだけど、手札にテラナイトがダブつく事はない。たとえダブついたとしたら、それは敗北確定妨害札レス状態のときのみだろう。

 

星因子(サテラナイト)カペラ

効果モンスター

星4/光属性/戦士族/攻1100/守2000

「星因士 カペラ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

このターン自分は、モンスター3体以上を素材としたX召喚をする場合、

自分フィールドのレベル4以下の「テラナイト」モンスターを

レベル5の素材として扱う事ができる。

 

このカードを使えば、5×3のエクシーズモンスターを召喚できるぞ!でも出せるモンスターに有効なカードはドボクザークぐらいしかないぞ!使いたくても使い道のないカード筆頭。5×2が行けたならプレアデスとか出すんだが、それは無い物ねだりである。

 

効果モンスターがダメでも、ペンデュラムがいるじゃん!手札消費辛いけど大量展開はロマンだぜ?と思う人もいるかも知れない。だがこのペンデュラムカードたち、セフィラデッキにおいてはなかなか優秀な癖にテラナイトデッキにおいては紙同然なのだ。

 

覚星輝士(アステラナイト)-セフィラビュート

ペンデュラム・効果モンスター

星4/光属性/悪魔族/攻1900/守 0

【Pスケール:青7/赤7】

(1):自分は「テラナイト」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかP召喚できない。

この効果は無効化されない。

【モンスター効果】

「覚星輝士-セフィラビュート」のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・反転召喚・P召喚に成功した場合、

このカード以外の自分のモンスターゾーン・Pゾーンの、

「テラナイト」カードまたは「セフィラ」カード1枚と、

相手フィールドにセットされたカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

 

竜星因子(イーサテラナイト)-セフィラツバーン

ペンデュラム・効果モンスター

星4/光属性/戦士族/攻 0/守2100

【Pスケール:青1/赤1】

(1):自分は「テラナイト」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかP召喚できない。

この効果は無効化されない。

【モンスター効果】

「竜星因士-セフィラツバーン」のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・反転召喚・P召喚に成功した場合、

このカード以外の自分のモンスターゾーン・Pゾーンの、

「テラナイト」カードまたは「セフィラ」カード1枚と、

相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

 

コストはかかるものの、サーチ可能なカードである事を考えるとなかなか強力な効果である。ただし、この効果はどちらのカードも召喚・反転召喚・P召喚に成功した場合にのみ発動できる。

お分かりいただけただろうか。特殊召喚に対応していないのである、このセフィラの手先どもは。よってテラナイトデッキの展開手段のメインであるアルタイル、ベガの効果でこいつらを特殊召喚しても意味はない、意味はないのだ。このカードを考えたデザイナーはマジで気が触れててもおかしくないレベルのシナジーの無さである。だったらテラナイト名乗らなくてもええやんけ。

 

とまあテラナイトは問題外揃いであるが、いいニュースもある。テラナイトは、実は専用フィールド持ちなのだ。サーチできないけど。それがこれ

 

星守る結界(ヘキサ・テラナイト)

フィールド魔法

(1):フィールドの「テラナイト」Xモンスターの攻撃力・守備力は

そのX素材の数×200アップする。

(2):自分フィールドの「テラナイト」Xモンスターが攻撃対象に選択された時、

手札の「テラナイト」カード1枚を墓地へ送って発動できる。

その攻撃を無効にする。

 

お前同期の機殻の要塞(クリフォートレス)に恥ずかしくないって言えんの?というレベルのフィールドである。テラナイトに欲しいのは通常召喚権を増やすだの召喚時にブレスルやヴェーラーを受けなくする効果だのだって分かるだろ?とカードデザイナーを問い詰めたい。

むしろエクシーズモンスター以外の攻撃力も上がる分シャイン・スパークの方がまだ役にたつだろう。

 

とまあ、サポート魔法罠にも問題外が揃っているのがテラナイトだ。他の例を挙げよう。

 

創星の因子(ジェネシス・テラナイト)

速攻魔法

(1):このカード以外の自分フィールドの「テラナイト」カードの数だけ、

フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。

 

一見強そうなカード。でもバック除去が必要なのはテラナイトの展開前なので実質ただの紙。サーチできたら可能性のあるカードその1。

 

神星(しんせい)なる波動(はどう)

永続罠

(1):1ターンに1度、

自分メインフェイズ及び相手バトルフェイズにのみ、この効果を発動できる。

手札から「テラナイト」モンスター1体を特殊召喚する。

 

一見強そうなカードその2、相手のエンドフェィズに発動できたら可能性はかなり広がった。でも、テラナイトにもっと欲しかったのは墓地からの専用特殊召喚である。なお、このカードが出た当初のテラナイト使いたちの思いは1つ。特殊召喚じゃなくて通常召喚にしてくれよ、ミドラ突破出来ねぇだろ。

 

こんな奴らである。ぶっちゃけ汎用カードで事足りるとは誰もが思う、ツイツイとかリビデとかで。俺だってそう思う。

そうは言ってもカウンタートラップの神聖なる因子とか速攻魔法の天架ける星因子だとか良いカード揃ってるじゃん。と思う人もいるだろう。

実際、神聖なる因子は間違いなく強力なカードだ。万能カウンターは正義である。コスト重いけど。

だが、天架ける星因子は実は超絶デメリット持ちのカードなのだ。

詳細なテキストはこれ。

 

天架(あまか)ける星因子(サテラナイト)

速攻魔法

「天架ける星因士」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1):自分フィールドの「テラナイト」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターとカード名が異なる「テラナイト」モンスター1体をデッキから特殊召喚し、

対象のモンスターを持ち主のデッキに戻す。

この効果で特殊召喚したモンスターが表側表示で存在する限り、

自分は「テラナイト」モンスターしか特殊召喚できない。

 

テラナイトデメリット三人衆の一角である。実際、今は豚箱に収監されているテラナイト最強のエクシーズモンスター、最低レベル4×2で出せる星守りの騎士(テラナイト)プトレマイオスが出るまでただの産廃扱いであった。

 

まぁ、周辺カードに恵まれなくても手札一枚でサーチ込みのランク4立てられるし、良いんじゃない?と思う人もいるだろう。だがしかし、駄菓子菓子、そんな考えをテラナイトデメリット三人衆の一角が嘲笑う。

 

星因子(サテラナイト)アルタイル

効果モンスター

星4/光属性/戦士族/攻1700/守1300

「星因士 アルタイル」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、

「星因士 アルタイル」以外の自分の墓地の

「テラナイト」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

この効果の発動後、ターン終了時まで「テラナイト」モンスター以外の

自分フィールドのモンスターは攻撃できない。

 

この小説における過労死枠かつテラナイトのキーカードである。そうなのだ。コイツの効果を使ったターンもうテラナイト以外は攻撃できないのだ。なので前話でイゾルデさんは空気のままだったのだ。

よってカステルや竜巻竜のような強力なランク4モンスターを召喚しようが追撃はできない。つまりボードアドバンテージ、ライフアドバンテージに繋がらないのだ。ライフ8000の世界ならともかく、ライフ4000のこの世界でライフアドバンテージを取れないのは致命的だ。だがまぁ、コイツのデメリットはまだ生易しい方だ。メイン2に展開すればデメリット無しで展開できるのだから。スピードデュエルにメイン2は無いが。

 

問題はデメリット三人衆最期にして最強の存在だ。

 

星輝士(ステラナイト)トライヴェール

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/戦士族/攻2100/守2500

レベル4「テラナイト」モンスター×3

このカードをX召喚するターン、

自分は「テラナイト」モンスターしか特殊召喚できない。

(1):このカードがX召喚に成功した場合に発動する。

このカード以外のフィールドのカードを全て持ち主の手札に戻す。

(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

相手の手札をランダムに1枚選んで墓地へ送る。

(3):X素材を持ったこのカードが墓地へ送られた場合、

自分の墓地の「テラナイト」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

文字通り、テラナイト最強のモンスターである。テラナイトデッキはこのカードのためにあると言っても過言では無いほどの。ただし、その強力な効果故にデメリットも大きい。

このカードをX召喚するターン、このカードをX召喚するターンである。

つまり召喚前も召喚後もテラナイト以外特殊召喚する事が出来ないのである。せめて効果使用後とかにして欲しかった。

それの何が問題かって?大問題である。

テラナイトデッキは一部のカードを除いて全て戦士族で統一されている。

そのため当然戦士族専用サポートを受けることができる。主にイゾルデさんとか。

なので当然の権利として、フォトン・スラッシャーやH・C(ヒロイック・チャレンジャー)強襲のハルベルトなどの召喚権を使わないモンスターを組み合わせることで初ターンにイゾルデをリンク召喚し、手札事故を回避するという戦略が考えられる。

だがダメなのだ。テラナイトモンスター以外をデッキに入れると、トライヴェールじゃ無いと返せない盤面のときに腐るのだ。手札が腐るのだ。それがどれほどに致命的なのかはデュエリストなら分かるだろう。

だったらヴァトライムス経由すれば?との考えもあるだろう。だがヴァトライムスの正確なテキストはこれだ。

 

煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/闇属性/戦士族/攻2600/守 550

レベル4「テラナイト」モンスター×2

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

フィールドの全ての表側表示モンスターは闇属性になる。

(2):このカードのX素材を1つ取り除き、手札を1枚捨てて発動できる。

光属性の「テラナイト」Xモンスター1体を、

自分フィールドのこのカードの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

この効果の発動後、ターン終了時まで自分はモンスターをX召喚できない。

自分の墓地に「テラナイト」モンスターが7種類以上存在する場合、

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

ヴァトライムスの効果による特殊召喚は、あくまでX召喚扱いなのだ。当然トライヴェールのデメリットも付いてくる。これはテーブルデュエルだと良く忘れがちなので気をつけよう。

 

とまぁ、これまで使ったカードも、そうでないカードもあんまりな性能だったりデメリットがひどかったりと散々だが、テラナイトには、それを上回る魅力もあるのだ。デネブアルタイルベガのモンスター三連コンボは気持ちいいし、トライヴェールで相手の制圧盤面をひっくり返すの超楽しい、その上、ワンダー・エクシーズやヴァトライムスの、墓地のテラナイトが7種いるときにのみ発動できる隠された効果などで相手ターンエンドフェィズにトライヴェールを打つのはもう脳汁ドバドバの快感モンである。そして極め付けは、バトルフェイズに打つ天架ける星因子によるシャム、リゲルを召喚する実質2400バーンコンボだ。あれを決める時の「お前に次のターンは無い!」は本当に言ってて最高に気持ちがいい。

 

とまぁメリットデメリット散々語ったが、自分がテラナイトを使う理由はやはり一言で表すなら"愛"であろう。前世の自分が使っていたデッキだという事もあるが、それ以上にこの世界で再び出会ったのだ。カードパックやインターネットでのトレードで、集めたのだ。そうして、この世界の10年で、組み上げたのだ。これはもう"愛"であろう。

 

 

ストレージのカードと、デッキのカードと睨めっこしながら、そんな益体も無い事を考えていた。




以上、この小説で出ることの無いであろうテラナイトの黒歴史たちの紹介でした。

尚、この主人公に前世の知識以外の転生特典はありません。カードは全てこの世界のものです。集めたのです、自力で。

...遊作がサイバースのカードは拾ったとか言い出したらここの話は修正するかもしれません。ご了承ください。


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カリスマデュエリスト(笑)の金銭事情

評価バーが黄色に落ち着きました。バーが赤かったりオレンジだった時にあった良いものを書かなければ!というプレッシャーが薄くなり、正直ほっとしています。
評価してくれた16人の方々、ありがとうございます!

今回は久々のスピードデュエルです。


「"イレブン"だ、よろしく頼む。」

「”Stargazer”だ、良いデュエルにしよう。」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「先行はこの俺だ!俺はライフを半分支払い、手札から、ヒーローアライブを発動!」

 

イレブン LP4000→2000

 

「フィールドにモンスターがいない時、デッキからレベル4以下のE・HERO(エレメンタル・ヒーロー)を特殊召喚できる。現れろ、E・HERO(エレメンタル・ヒーロー)シャドーミスト!」

 

「ヒーローデッキでその布陣ッ!来るのか、奴が!」

 

「フッ、シャドーミストの効果発動!特殊召喚に成功した場合、デッキか、"チェンジ"速攻魔法を手札に加える!俺は当然マスク・チェンジをサーチ!カードを3枚伏せて、ターンエンドだ。この布陣、突破出来るか?」

 

「俺のターン、ドロー!...あ、多分突破出来た。」

「何ぃ⁉︎」

「スタンバイ、メイン。俺は手札から、ハーピィの羽箒を発動!相手フィールドの魔法罠を全て破壊する!」

「そんな突破の仕方で良いのかカリスマデュエリスト⁉︎俺はチェーンして発動!マスク・チェンジ!シャドーミストを対象に発動!逆順処理!シャドーミストを墓地に送り、M・HERO(マスクド・ヒーロー)を変身召喚する!現れろレベル6!M・HERO(マスクド・ヒーロー)ダークロウ!」

「羽箒の効果処理だ、お前の魔法罠を全て破壊する。」

「残りのカードはフォーム・チェンジにヒーロー・シグナルだ、発動は無い。が、墓地に行ったシャドーミストの効果発動!デッキからHEROを手札に加える!俺はE・HEROエアーマンをサーチする。」

 

「...このターンで勝負を決める!俺は手札から、星因子(サテラナイト)ベガを通常召喚、効果発動!手札のテラナイトを特殊召喚する。星因子(サテラナイト)リゲルを特殊召喚。リゲル自身を対象にリゲルの効果発動!攻撃力を500アップ!」

「攻撃力2400!ダークロウに並んだか!」

「さぁ運命の攻撃だ!カードを一枚伏せて、バトルフェイズ!攻撃力の上がったリゲルでダークロウを攻撃!」

「発動は無い、が、ダークロウの攻撃力も2400ッ!相討ちだ!」

「良しッ!バトルフェイズを続行!俺はベガでダイレクトアタック!」

 

イレブン LP2000→800

 

「俺を倒すには僅かに届かなかったな、更に教えてやる!俺はスキル"マスクド・リベンジ"を発動!戦闘破壊されたM・HEROを対象に発動できる!そのモンスターをエンドフェイズに召喚条件を無視して特殊召喚する!さぁ、お前のモンスターは全て攻撃を終えた!ターンエンドしな!」

「とんでもないスキルだな。だが安心しろ、お前に次のターンは無い!速攻魔法天架(あまか)ける星因子(サテラナイト)!フィールドのテラナイトをデッキに戻し、デッキからテラナイトを特殊召喚する!現れろ星因子(サテラナイト)シャム!」

「バトルフェイズ中の特殊召喚ッ!てことは連続攻撃が可能ッ!」

「その通り、だが攻撃はしない!ベガの攻撃を止めなかった事から確率は低いが、ダイレクトアタックをトリガーとする防御効果は多い。よってお前へのトドメはこれだ!シャムの効果!このカードが特殊召喚に成功した場合、相手に1000のダメージを与える!これで終わりだ!」

 

イレブン LP800→-200

 

「結果として、ヒーローアライブのライフコストが仇となったか。...完敗だな」

「ありがとう、良いデュエルだった。」

「ああ、良いデュエルだった。でも恨み言は言わせてもらう。カリスマデュエリストならやっぱりあの布陣はカードコンボで突破すべきだろ!」

「無茶言うな!大体のデッキを機能停止させるダークロウなんて悪魔のカード使っておいてパワーカードを批判するな!パワーカードが怖いなら大革命返しでもデッキに突っ込んどけ!」

「スピードデュエルでそんな枠があるか!」

 

その後も言い合いは続いた。それが不毛だとお互いが気づくまでには、Dボードで1区画ほど突っ切るまでかかっていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さて、所変わって現実世界。実の母親にリンクヴレインズに入らないとか言っておいて、何スピードデュエルとかやってんの?と思う方もいるだろう。だが安心してほしい。これは録画データだ。

自分が今何をしているのかって?カリスマデュエリスト草の根活動の1つ、動画編集である。

 

リンクヴレインズにおけるカリスマデュエリストランキングを駆け上がるには、人気と実力が必要だ。そう、デュエルの実力だけではカリスマデュエリストランキングを駆け上がることどころか保つことすら難しいのだ。

その上自分は当分リンクヴレインズログイン禁止を誓っている。いくらリンクヴレインズが今ハノイによる世紀末状態だとしても、それはカリスマデュエリストランキングを支える所謂"動画見る専"の人々には関わりのないことだ。こうして自分が忘れ去られないようにする努力が必要なのだ。

 

何のためにって?そりゃもちろん積み上げたランキングを守る(広告収入)ためである。バイトも出来ない小学生にとって、お金は大切だ。なにせ、「カードは拾った」とかはあんまりできる世界で無いのだ。もし拾えても、カードデータの抜き取られた抜け殻である事の何と多いことか。カードのデータ化により、実際のカードがいらなくなった弊害である。

なのでこの世界では、アニメの世界の癖に、お金がないとデッキの強化ができない。世知辛いなー。

 

などと考えながら、動画の最後の醜い言い合い部分をカットし、動画投稿文に、「これは◯月◯日に行われたデュエルです。今のリンクヴレインズはハノイの騎士達により占拠された状態であります。なので、この動画を見てリンクヴレインズをやってみたい!と思った方にはリンクヴレインズが正常化するまでログインするのを待つ事を強く勧めます。」

と書いて、完成!投稿!お疲れ様でしたー。

 

と一息つき、麦茶でも飲もうかと自室からリビングへと移動した自分に母からの声がかかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ねぇ天頂、デュエル塾とか興味ない?」

「興味ないよ。どして?」

「いやあんた、友達作り全然出来てないじゃない。」

「的確に痛いところを突いてくるッ!んで、何でデュエル塾?」

「いや、あんたが友達作りに全然成功しないのは同じ話題で盛り上がれる子が居ないからじゃないかなーって思って。だから一緒にデュエルできる子たちなら天頂の友達になれるんじゃないかっていう親心。」

「はぁ、母さん、デュエル塾ってどんなところだか分かってる?」

「分かってるわよ。そんなの、デュエルを学ぶ所でしょ?」

「実はそれちょっと違う。デュエル塾ってデュエルの大会に出る子たちを養成するところなんだよ。」

「デュエル大会?別に良いじゃない。あんた大人に勝てるくらいデュエル強いんだから、結構いい線いけるでしょ。」

「それが問題なんだよ...俺はリンクヴレインズで大人相手でもデュエルして、そこそこ良い成績を残してる。当然同じジュニアクラスの子たち相手でも良い成績を残せる自信はある。」

「良い事じゃない。何が問題なのよ。」

「俺のデュエルって、どうにも悪目立ちするタイプみたいなんだよ。リアルの割れてないリンクヴレインズでもやれ"鬼"だの"鬼畜"だのと言われて困ってるんだから。そんなデュエルをリアルの割れた大会でやりたくは無い!直接"鬼畜野郎"とか触れ回られたら引きこもる自信あるよ、俺。」

「ええ...ならそう、手加減するってのは?」

「悲しいけど、手加減してデュエルが出来るほど器用でも強くもないよ...」

「そうなの...良い考えだと思ったんだけどねぇ。」

「あぁ、あと2つデュエル塾行きたくない理由があったわ。」

「2つ?それってどんな理由?」

 

「まずデュエル塾のカリキュラムが問題。デュエルのルールとか裁定とかはかなり詳しい自信があるから授業受ける必要はないってのと、何処のデュエル塾でもやってるドローの練習ってのが最悪に嫌い。ドローを練習してカードの引きが変わるならデッキ構築悩んだりはしないよ...」

「へぇ、そうなの。案外自信家なのね天頂って。もう一つは?」

 

「...デュエル塾ってさ、お金かかるじゃん。」

「何?生意気にも家計の心配?ふざけないで、子供のやりたい事を応援出来ないほど貧乏じゃ無いわよ、ウチは!」

 

「いやそうじゃなくてさ...デュエル塾に行く金があるならその分俺の小遣い増やして欲しいなって。大変なんだよ、使えるリンクモンスターが現れた時用の貯金って。」

 

「あんたねぇ...ちょっとでもウチの事を心配してくれたのねって言う感動を返しなさい。」

「母さんって、時たま無茶苦茶言うよね。そんな訳で交渉です、お母様。

自分、デュエル塾には行かないのでその分俺の小遣い増やしてくださいな。」

「寝言は寝て言いなさい馬鹿息子。」

「駄目かー。」

「駄目に決まってるでしょ。しっかしデュエル塾についてやけに詳しいわねあんた。調べたの?」

「デッキ作ってたときちょっとね。ネットで良くカードをトレードしてくれた人がデュエル塾の講師だって言っててさ。それでちょっと気になって調べた事があるんだ。」

「あんたネットだと顔広いわねー、このネット弁慶。リアルでもそれくらい頑張りなさいな。」

「リアルとネットだと勝手が違いすぎるのが問題なんだよねー。...リアルでもブロック機能とかあれば良いのに。」

「なんで友達作る前から別れる前提なのよ...」

「諸行無常って奴ですよ。あ、麦茶もらうねー。」

「あーそれなら冷蔵庫にシュークリームあるから、それも持って行きなさい。」

「ありがと、いただきまーす。」

 

そんな会話があった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さーて、投稿した動画はどうなってるかなー?と思い、動画のコメント欄を覗いてみた。すると何故だか、自分を心配するコメントばかり。

「ホントに無事だったんですね、良かったです!」

とか

「”Stargazer”の名前はともかく、無事だとは思ってなかったです。」

とか

「あんな正面衝突しておいてハノイから逃げ切ったんだこの人!逃げのプロだ、逃げ弾正だ!」

とか。逃げ弾正って何やねん、歴オタか

 

というか正面衝突?思い当たる節は無かったので、関連動画を見渡してみた所。その動画はあった。

 

"僕を助けてくれた人"というタイトルだった。

 

気になって中身を見てみると、それはハノイの大襲撃の日の動画だった。下で喚いている奴の声すっごい聞き覚えあるもん。

あー、あの日に誰かを助けたヒーローがいたのだなぁとほっこりしながら動画を見続けると、嫌な予感がしてきた。見覚えがあるのだ。撮影者さんの近くでハノイとデュエルしてる男性に。

あれ、これもしかして?と思ったらその男性がハノイにより倒され、アナザーと化した。

 

その後、見覚えのある馬鹿野郎がハノイに正面衝突してくれやがった。

 

動画はそこで途切れた。え、これで終わり?なんで俺って気づいたの?割と没個性なアバターしてるよ俺?と疑問を持ちながらコメント欄を覗いてみると、そのコメントはあった。

 

「その少年の名は”Stargazer” 無事だ。」

 

その後はちょっとした祭りであった。リンクヴレインズのニューヒーローだ!と騒いでいる馬鹿もいた。いやちゃうねん、あれはハノイとのデッキ相性が最高だっただけやねん。と自己弁護してみたが、そのコメントは不自然であった。

 

だって自分、あれからリンクヴレインズにログインしていないのだ。ハノイ警告に手を割かれていたため、動画投稿したのもあの事件からだとこれが初なのだ。

 

もしかしてカリスマデュエリスト交流会の人がコメントした?と思いチャットで聞いてみたが、この動画自体初めてみたのだそうだ。まぁそりゃそうである。カリスマデュエリストは自分の動画投稿に手一杯になりがちで、他人の動画を見る余裕はあんまり無いのだ。

 

だとしたら一体誰が、どのようにして自分の無事を知ったというのか。

 

ちょっとしてないホラーである。アプリを使って自分の部屋の盗聴器チェックをしたが、特に反応はなかった。デュエルディスクのウィルスチェックもしたが、特に問題は無かった。

 

マジもんのホラーである。怖ッ!

 

 

 




主人公は、母親がネットに詳しくない事を良いことにスマホやデュエルディスクの見守り機能をオフにしています。
当然動画の広告収入で小金を稼いでいることも教えていません。意外と小賢しい奴でもあるのです。

この話を書いてて思った。マネージャーのいるGo鬼塚はともかく、ブルーエンジェルは動画投稿とか面倒なことはしてなさそう。
つまりブルーエンジェルは純粋にデュエルの腕だけでカリスマデュエリストをやっているのでは?(恐怖)
ホント何でスペクターに負けたんだこの子。


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ヴィジランテ

評価バーが、オレンジになってる⁉︎(クウガ感)
黄色とオレンジを行き来している。その様はまるでペンデュラムッ!
というか評価バーって調整平均7までがオレンジで6.9からが黄色なんですねー。今まで読み専だったので初めて知りました。

そして気づけば15話目、そろそろ短編ではなく連載に切り替えるべきですかね?まあ、短編の話数限界に挑戦してみたい気もあるんですが。

そして思う。何で主人公にリンクヴレインズ禁止させたんだろう。いや10歳だから当然なんだけどそれでも思う。
デュエルの導入が...辛いッ!


気がつけば目の前には古城。なんかおどろおどろしいエフェクトとかついてる。

ふと、頬っぺたを抓ってみた。痛く無かった。夢だコレ。

 

そうと分かれば気楽なもので、普段なら入らないであろう古城の中に入ってみることとした。

 

中の内装は豪華絢爛と言って過言では無いのだが、どこか暗い印象を受けた。まるで吸血鬼の館のようだ。

 

そんな感想を抱きながら進んでいって城の最奥。えらい美人がそこに居た。

 

「フフッ、迷える子羊が一匹、この神聖暗黒宮殿へようこそと言うべきかしらね?」

「いや神聖なのか暗黒なのかどっちかにしろよ。」

「うぐっ!フフッ、子供ならではの無邪気さと言う奴か、まぁそれも当然か、ここは夢と現の狭間。只の子供ならば正気を保てず暗黒の支配(ダークネス・ドミネーション)に飲み込まれて然るべきか...」

「横文字使えばカッコいいとか思ってんの?しかもダークネスとか、捻りなさすぎ。型月見習え、中二病舐めんな。」

「うぐぐっ!ちゅ、中二病ちゃうわ!...フフッやはり子供か。深淵を覗き見ている事に気付いてすら居ないとは...だが良い、我は寛大だ、許そう。

我が名はナイトメア!夢を操る夢魔なるぞ!」

「あ、どうも。自分は結城天頂です。城を結んで天の頂きで。にしても突然の自己紹介。この脈絡の無さ、やはり夢か...それはそうとナイトメアさん、良いですか?」

「何だ?許そう、申してみよ。」

「自分は今、玉座の前の階段の下に居ます。」

「うむ、そうだな。」

「ナイトメアさんは玉座で足を組んで居ます。」

「うむ、それがどうかしたのか?」

 

「俺の位置からだとナイトメアさんのパンツが丸見えですよー」

 

瞬間、彼女は立ち上がった。

 

「こ、こ、子供と思い無礼な発言を許してきたがもう我慢できん!さぁ決闘だ!その性根、叩き直してやる!」

「夢の中でもデュエルか...流石遊戯王ワールド何でもありか。」

 

ナイトメアさんは指パッチンをしようとして、スカっと失敗した。恥ずかしそうだった。

すると城の天井が割れ、嵐が吹き荒れ始めた。

そして手にはDボード、彼女の手には棺桶があった。

 

「さぁ風に乗れ!決闘を始めるぞ!」

「ここまでのお膳立て、乗らねばデュエリストが廃るってもんだ。さぁ行くぞナイトメア!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「我の先行!我はおろかな埋葬を発動!山札から我が使い魔(ヴァンパイアの使い魔)を墓場へ!」

「その動き、ヴァンパイアデッキか!夢魔の癖に吸血鬼使うとか微妙にキャラがブレてんぞ!」

「うぐぐぐっ、続ける!手札のヴァンパイア一枚を墓地に送り我が使い魔の効果発動!墓地から使い魔を蘇らせる!そして使い魔のさらなる効果!500ポイントの命を支払い、デッキからヴァンパイアカードを手札に加える!だが我のスキル適用!"ナイトメア・ペイン"!1000ポイント以下のライフコストをゼロにする!」

「なかなかに強力なスキルッ!だが止めるのはここの筈!手札の灰流(はる)うららの効果発動!このカードを手札から捨て、デッキからカードを加える効果を無効にする!」

「なんと姑息な...ッ!我はコレで手番を終了する!」

 

「ヴァンパイアの使い魔は攻撃表示、てことは手札にあれがあるな...俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。

俺は手札から星因子(サテラナイト)ウヌクを召喚!ウヌクの効果発動、デッキからテラナイトカードを墓地に送る。俺は星因子(サテラナイト)デネブを墓地へ。

そして速攻魔法天架(あまか)ける星因子(サテラナイト)発動!ウヌクをデッキに戻し、デッキから星因子(サテラナイト)ベガを特殊召喚する。

ベガの効果発動!手札の星因子(サテラナイト)アルタイルを特殊召喚!アルタイルの効果発動!墓地のデネブを特殊召喚!デネブの効果!デッキから星因子(サテラナイト)シャムをサーチ!」

「モンスターゾーンが埋まったか...来るか、リンクモンスター!」

「残念なことにちょっとレトロな方さ!俺はテラナイトモンスター、ベガ、デネブの2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4、煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!」

「エクシーズモンスターッ!星を重ねる古き召喚法か、面白い!」

「さぁ、面白いかどうかは展開によるぜ?俺はヴァトライムスの効果発動!手札一枚とオーバーレイユニット一つを使い、光属性テラナイトを重ねてエクシーズ召喚する!"スターライト・エクシーズ"!現れろランク5、星輝士(ステラナイト)セイクリッド・ダイヤ!カードを一枚伏せて、バトルフェイズ!

まずはセイクリッド・ダイヤでヴァンパイアの使い魔を攻撃!"ダイヤモンド・ブラスト"!」

「フフッ、そう簡単にはいかぬぞ!手札の吸血鬼の令嬢(ヴァンパイア・フロイライン)の効果発動!モンスターの攻撃宣言時、このカードを守備表示で特殊召喚する!」

「そう簡単に行くのさ、この布陣ならな!セイクリッド・ダイヤの効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、闇属性モンスターの効果を無効にし破壊する!"ダイヤモンド・プレッシャー"!よってモンスターの増減は発動しない、攻撃続行だ!」

 

ナイトメア LP4000→1800

 

「続けて行くぞ!アルタイルでダイレクトアタック!」

 

ナイトメア LP1800→100

 

「うぐぐぐぐっ!だ、だがコレで貴様の手番は終わり!この我を倒しきることは出来なかったな!」

「俺はこれでターンエンド。」

 

「フフッ!我のターン、ドロー!」

「あ、スタンバイフェイズにカード発動します。何かありますか?」

「うむ?無いぞ。」

「じゃあトラップ発動します。戦線復帰、墓地のモンスターを守備表示で特殊召喚します。」

「フッ、壁モンスターを増やす気か!発動は無い、続けるが良い!」

「じゃあ終わりです。ヴァトライムスの手札コストにした星因子(サテラナイト)シャムを特殊召喚!シャムの効果発動!特殊召喚に成功した場合、相手ライフに1000のダメージを与える!」

「な、なんだと⁉︎つまり我のライフは...ッ!」

「言ったよな、これで終わりだ!喰らえ1000のダメージを!」

 

ナイトメア LP100→-900

 

「そんな、我が、こんな子供に、完全試合で負けるだと...ッ!もう一度だ!もう一度、我とデュエルしろぉ!」

 

「あっ、出口っぽい光が見えてきた。それじゃ自分帰りますんで、お疲れ様でしたー。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

凄くどうでも良い夢を見た。熊本の方から電波が飛んできたのだろうか。

というか棺桶でスピードデュエルとかなかなかロックな人だったなナイトメアさんは。

 

閑話休題

 

リンクヴレインズの話である。つい昨日、ブルーエンジェルとハノイの3騎士の一人、バイラとのデュエルがあった。当然ブルーエンジェルの勝利である。アニメオリジナルカード群とはいえ、ちょっと対策した程度であのブルーエンジェルを止めるなど無理があるのだ。

ククク、奴はリンクヴレインズで最強。流石リンクヴレインズの代表よ...

 

まぁ、自分が瞬殺された相手なだけに色眼鏡で見てる感はしてる。

 

尚、原作通りブルーエンジェルのデュエルに感化され、バイラはアナザーの除去プログラムの大元をインターネット上に拡散させた。それによりGo鬼塚の広めたワクチンプログラムでは治らなかった、新種(別種?)のアナザーによる被害者達が皆意識を取り戻した。

 

つまり、アナザーによる被害者はもう完全に根治されたと言えるだろう。

 

そうすると、ネット内で、もっと言うとカリスマデュエリスト達の間で、ある風潮が広まり始めた。

自警団(ヴィジランテ)を結成し、ハノイの手からリンクヴレインズを取り戻そう!と言う風潮だ。

その風潮を後押ししたのは、どっかの馬鹿がハノイに突っ込んだとある動画だと言うのは笑えない。広めたのが自分自身である辺りも本当に笑えない。

 

アナザーによる昏睡被害が無くなった今なら、自分たちも戦える!と言うのはわかる。だが、相手は千人規模の超スーパーハッカー集団であるハノイの騎士だ。アナザーが使えなくなったところで別の危険なウィルスを使われるだけだろう。ハノイと戦うことの危険性は変わらない。

 

よって自分のスタンスは変わらない。ハノイの騎士と戦うことは危険なことであり、自分達のような吹けば飛ぶような一般市民がやるべきでは無い。

 

リンクヴレインズなんかやっているのだ。誰もがヒーローになりたいのだと言うことは理解できる。だが、前世の漫画にこんなセリフがある

 

「勇者とは勇気ある者ッ!! そして真の勇気とは打算なきものっ!!

 相手の強さによって出したりひっこめたりするのは本当の勇気じゃなぁいっ!!!」

 

かつて悪魔と思われていたハノイだが、アナザーという危険なリスクが無くなった今、ハノイの騎士はただの悪者である。倒せば自分もヒーローになれるというおまけ付きの。

そりゃリンクヴレインズにいるにもかかわらず頭抜けてない連中が、ハノイをターゲットにするのも理解は出来る。

だがそれは勇気からの行動であろうか。Go鬼塚やブルーエンジェルのような、アナザーのリスクに関わらず行動した本当に勇気ある人物達が自警団を結成しようとしているなら自分は応援しただろう。

だが、この風潮を流している人物がそうであるとは思えない。何故なら風潮を流すだけで、自分が自警団のリーダーになると名乗り出る者が居ないのだ。

それは、ハノイを倒してヒーローになりたい、しかし自分が矢面に立って責任やハノイからの憎しみを背負うのが怖い、そんな打算が見え隠れするようだった。

 

そんな打算と壊滅の見える自警団など、自分は反対だ。

 

そんな事を批判覚悟でカリスマデュエリスト交流会の皆にチャットしたら、帰ってくるのは意外な反応であった。

 

「ダイ大なんて古い漫画知ってるとか鬼畜星さんって意外とお爺ちゃん?

まぁ、その意見には賛成。鬼畜星さんが言うならともかく、名乗りもせず提案だけしてくるような連中のために命かけたいとは思わないわ。」

 

「自分の実力以上の事をすると痛い目見るってのはこのくらいのランクの連中ならわかっている事だしな。一対一ならなんとかする自信はあるけど、囲まれたら何もできずにやられるって自信もあるからあんま危険は犯したくないって。あと、ダイ大ってどんな漫画?ちょっと読みたくなってきたんだけど。」

 

「もう事件が起きてからどれだけ時間が経ってると思ってるのさ。そろそろPlaymakerなり運営なりがハノイを根絶してくれるって。だから俺たちのホントにすべき事は彼らの足手纏いにならないように自分の身をしっかり守ること。そうだよね、鬼畜星さん。

あと、ダイ大は〇〇社のコミックデータアーカイブスに全巻載ってるよー。正式にはダイの大冒険って漫画。月額500円だしデビルマンとか他の面白い漫画も読み放題だしマジでオススメ。」

 

帰ってくる言葉があったかくて、ちょっと泣きそうになった。でも鬼畜星は止めろ。

なお、どうでもいいが、カリスマデュエリスト中堅勢の中でダイの大冒険が流行りだした。雨が止んだ午後、傘を逆手に持って振ってたスーツの人は、きっとこのチャットの住人だろう。アバンストラッシュ、カッコいいもんね。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その日から自分の習慣のハノイ警告の内容を少し変えた。

「アナザーはブルーエンジェルの活躍により収束しましたが、ハノイはまだまだ危険なウィルスを持っています。決して自分自身でなんとかしようとは考えず、リンクヴレインズへのログインは控えて下さい。」

 

今回の警告もソースは無いが、ネットニュースに取り上げられたアカウントからの警告だ。信用性は以前より遥かに強いだろう。

そんな姑息な事を考えながら思った。

 

あ、こういう自警団への反対とか言ってる人が居たから、ロンリーブレイブでありブレイブマックスである男、島直樹は立ち上がろうとしたのかなーと。

 




ネーミングセンス無くナイトメアなんて安直な名前を使ってしまいました。原作キャラとか用語でナイトメアが出てきたらここの話はしれっと編集すると思います。

ナイトメアさんもっと厨二弾けさせようと思ったんですが作者の、文才が、無いッ!すまねぇ、熊本弁はさっぱりなんだ。


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Playmakerについて

録画したVRAINSを見直して気付いたんですが。ハノイの塔って発動時点で全ての建物やアバターを吸収しやがります。デュエルに負けた奴が吸収されるとかでなく、無差別に。
こんなんとどうやって戦えばいいんだ(驚愕)
主人公他カリスマデュエリスト達にハノイの塔周辺の人たちの避難誘導でもさせようと思ったんですが、どうやら無理そうです。


自分は遊戯王VRAINSの世界に転生した転生者である。

なので当然この世界がこれからどうなっていくのかは知っている。

が、知っていた程度でどうにか出来る問題はあんまり無い。だって結局デュエルで決まるのだ。デュエルの強さもハッキング能力も兼ね備えたスーパー転生者ならどうなるかなーと思う事は多々あるが、何度も言うが無い物ねだりなのだ、それは。

 

自分は自分にできる事とよろしくやっていくしか無い。

 

それは、前世でも今世でも変わらないことである。

 

さて、なんで自分がこんな寒い自分語りを始めたかと言うと、転生してから、と言うか原作が開始してからずっと困ってたことがあるからだ。

 

何を隠そう天下の主人公Playmaker様についてのことである。

Playmakerは凄腕のハッカーだ。その能力を使い、敵対しているハノイの騎士達に気取られないようリンクヴレインズのログイン履歴、デュエルレコード、その他痕跡諸々を削除して回っている。

 

つまりプレイメイカーのデュエルを見るには、カエルと鳩のマスコミコンビが中継する生放送を見るしか無いのだ。

 

ここまで言えば分かるだろう、自分の困っていることが。

自分、Playmaker様のデュエルを見逃しっぱなしなのだ。転生してから今まで。タイムシフト機能とか付いてません?消しますかそうですか。

話題に上がっていたのでネットで調べたら、つい昨日ハノイの3騎士最期の一人ファウストとのデュエルがあったらしいのだ。誰か録画データ持ってない?消されましたかそうですか。

 

幸いにもこのリンクヴレインズが原作通りの推移をしていることから原作通り進んでいるだろうが、それでも心配なのだバタフライエフェクトとかが。

 

そして何故、他の原作キャラでなくPlaymakerへの影響を心配しているかというのにはスピードデュエルにおいて彼の使うスキルに問題がある。

 

スキル名”Storm Access”。効果は、ライフ1000以下の時、データストームの中からリンクモンスターをランダムにエクストラデッキに加える、というもの。

 

要するにガチャである。実はデータストームから最適解となるリンクモンスターを探り当ててると言う可能性はある。むしろそうであると言って欲しい。

だが、側から見てるこっちにとってPlaymakerのスキルはガチャなのだ。

もし、もしもだが、自分が転生したバタフライエフェクトによって入手するリンクモンスターの種類が変わってたりしたらマジで世界が詰みかねない。特にアニメで大活躍のエクスコード先輩とかな!

 

なのでPlaymakerのデュエル情報を集めるのは自分の心の安寧を保つために必要なことであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ネット巡回をして気付いた事がある。Playmakerの情報削除のラインだ。

 

「Playmakerがハノイに勝った!」と言う程度なら消されない。

「○月○日○○時にPlaymakerのデュエルがあったよ」と言う何時、何処でという程度でも消されない。

が、ここからは違う。

「Playmakerがどんなデュエルしたの?」とか「Playmakerはどんなカードを使ったの?」とかの質問は掲示板などに残っている。でもそれに対する回答は何処を探しても見つからない。

この事から分かるのは、Playmakerが真に隠したいのは自分のデュエルスタイルであり、使用カード群の情報ではないかという事だ。特に切り札となりうる新たなリンクモンスターの。

 

自分にとっては最悪である推論であった。

 

まぁ、デュエリストならカード情報の大切さは当然分かる。自分のように前世の記憶で下駄を履いていないこの世界のデュエリスト達にとってはなおのこと。相手のマストカウンター、つまり必ず止めなければならないポイントが分かるかどうかはデュエルの勝敗に直結する事だからだ。

 

つまりPlaymakerは、デッキ構築段階でメタられるのを止めようとしているのだろう。情報戦を制すものはデュエルを制す、というところだろうか。

 

大した戦略である。が、相手はハノイの騎士と言うスーパーハッカー集団、騎士達のデュエルデータは当然Playmakerの手の届かないところに保存してある筈。この行動って意味あることなのかなーとか思ったりした。

 

まぁそれは、自分がガチャ結果を知れないという現実にイラついてついた悪態であろう。ハノイの騎士だけの千人規模で対策を考えるのとインターネット上の万人あるいは億人規模で対策を考えるのとでは結果は変わる筈。きっとPlaymakerはそれを恐れているのだろうと自分で納得した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そんな事を考えていたら、ふと気がついてしまった。

Playmakerが消して回っているのは不特定多数に公開される情報。つまり個人チャットとかなら消されない、或いは消される前に読めるのでは?と。

 

思い立ったが吉日、カリスマデュエリスト交流会のチャットで聞いてみた。

 

「昨日Playmakerのデュエル見た人いるー?ガチャでどんなモンスター引き当てたのかちょっと知りたいんだけど。」

 

「ガチャってw。でも昨日Playmakerがデュエルしたかってのは眉唾ものだよ。ブレイブなんとかってアカウント名の人が言ってるだけだし。昨日は中継もなかったからねー。」

 

「あれ、中継なかったの?てっきりいつも通り見逃したものかと。」

 

「いつも見逃しているんだw、まぁPlaymakerのデュエルはなんか動画残らないからねー。生放送見逃したら終わりってのは辛いところ。

にしても鬼畜星さんがPlaymakerに興味持つなんて珍しい。メタるの?」

 

「メタるも何もそもそもデュエルの機会が無い件。でもサイバース族ってどっからでも特殊召喚してリンクに繋げるからマストカウンターがイマイチわからないんだよねー。どっかのデュエルで使ったサイバース・ガジェットくらいかな?今のところ怖いのは。でもちゃんとG握ってればそれも怖くない印象。」

 

「Gって...あぁあの、絵面最悪な奴か。いつも思うけど良く使う気になるよねあんな事故要因。」

 

「実際腐る時はほんと腐るけども!相手の特殊召喚牽制できる良いカードだと思うんだけどなぁ...」

 

「絵面がもっと可愛くてステータスも高かったら私も使ってたと思う。でも所詮500/200だし、特殊召喚しない人には効かないしねー。」

 

「話逸れたね、Playmakerのこと教えてくれてありがとー。ノシ」

 

「ノシってまた古い表現を...やっぱお爺ちゃんなのでは?」

 

「それはどうかな?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

原作通りか確認しようとしたらそもそも中継されてなかった件について。10年も生きてると、原作知識も曖昧になるものだなー。

 

まぁ今のリンクヴレインズはハノイの支配する世紀末シティ、今ログインしているのはハノイの騎士かよっぽどの命知らずくらいだろう。

...遊戯王VRAINSにおけるMC枠の山本先輩コンビなら中継してると思ったんだけどなぁ。

 

さて、くよくよしても居られない。原作通りか確認できないということは確認できたのだ。今できることをしよう。

リンクヴレインズが過疎ってる今こそ動画投稿である。今までの録画(貯金)を切り崩して名声を高めるのだー。広告収入のためにね!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ククク、"ヴァニティ"だ。」

「どうも、”Stargazer”です。デュエルお願いします。にしても恐ろしい名前だ...」

 

「「スピードデュエル!」」

 

 

「ククク、先行は貰った。俺はスキル発動、"リリース・リザーブ"!

手札1枚をコストに発動、フィールドにリザーブトークンを特殊召喚する。」

「いきなりのスキルッ!そしてリリース要因のトークンッ!嫌な予感しかしねぇ!」

「その予感は当たりだ、Stargazer。...どうした妙な顔をして、どこか痛めたか?」

「い、いや何でもない。Stargazerって呼ばれてビックリしたとか全然無いから。大丈夫、続けて。」

「アバター名で呼ばれて驚くとは妙な奴だ。まあ良い、行くぞ!俺はリザーブトークンをリリース!アドバンス召喚!現れろレベル6虚無魔人(ヴァニティー・デビル)!」

「それがお前のエースモンスターかッ、ヴァニティ!」

「その通り、俺の魂のカードだ!続いて俺は永続魔法進撃(しんげき)帝王(ていおう)を発動!俺はこれでターンエンド。」

 

「虚無魔人の存在により特殊召喚は封じられ、進撃の帝王により対象、破壊耐性を付与。いきなり制圧をかけてきたかッ!」

「ククク、何ならサレンダーしても良いんだぞ?」

「冗談、突破してみせるさ!俺のターン、ドロー!良しッ!スタンバイ、メイン!俺は手札から星因子(サテラナイト)デネブを召喚!効果発動!召喚に成功した場合、デッキからテラナイトをサーチ出来る!俺は星因子(サテラナイト)リゲルをサーチ!

効果で破壊されず、対象にも取れない。なら戦闘で破壊するまで!俺は装備魔法月鏡の盾を発動!デネブに装備する!カードを1枚伏せて、バトルフェイズ!」

「俺の虚無魔人の攻撃力は2400だ、デネブの攻撃力1500では届かないぞ?」

「それはどうかな?俺はデネブで虚無魔人を攻撃!」

「ふ、900の反射ダメージを喰らえ...何⁉︎」

「月鏡の盾の効果!装備モンスターが戦闘を行うダメージ計算時に発動する!装備モンスターの攻撃力は戦闘するモンスターの攻撃力、守備力のうち高い方の数値+100ポイントとなる!よってデネブの攻撃力は2500にアップ!虚無魔人を破壊だ!」

 

ヴァニティ LP4000→3900

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー!ククク、勝機は未だ我にあり!速攻魔法帝王(ていおう)烈旋(れっせん)発動!このターンの間、自分がアドバンス召喚する場合、相手モンスター1体を代わりにリリースすることができる!」

「...お前の最後の一枚が見えた!このデュエル、俺の勝ちだ!自分フィールドのデネブを墓地に送り、チェーンして発動!カウンタートラップ神聖なる因子!帝王の烈旋を無効にし破壊する!その後一枚ドロー!

ついでに月鏡の盾の効果発動!表側表示のこのカードがフィールドから墓地に送られた場合発動する。500ライフを支払いこのカードをデッキトップもしくはデッキボトムに戻す。俺はデッキボトムを選択。」

 

Stargazer LP4000→3500

 

「ここで勝利宣言だと⁉︎クッ、確かに俺の手札は残り1枚、もう行動は無い。ターンエンドだ。」

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。俺は手札から星因子(サテラナイト)ベガを召喚!ベガの効果発動!手札からテラナイト、星因子(サテラナイト)アルタイルを特殊召喚!アルタイルの効果発動!墓地のテラナイトを特殊召喚する。蘇れデネブ!デネブの効果発動!デッキから2枚目のアルタイルをサーチ。

行くぞ!俺はデネブとベガ、テラナイトモンスター2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4、煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!バトルフェイズ!」

「...一つ聞かせてくれ、どうしてあのタイミングで自分の勝利を確信できた?」

「...まず最初のターンのスキルだ、コストにされた手札は、グローアップ・バルブや真源の帝王の様な墓地発動のカードでなく、モンスターカード威光魔人(マジェスティー・デビル)だった。それに加え、最初のターンでカードをセットしなかった事からお前の残りの手札もモンスターだと考えられる。

そしてお前の使った帝王の烈旋、あのカードのドローを勝機と捉えたという事は手札のモンスターは当然リリース1枚で召喚できるカード。よってお前のデッキタイプから虚無魔人か威光魔人のどちらかだと断定出来る。

どっちか一枚に限定できないのがちと格好悪いがな。どちらにせよバトルフェーダーのように攻撃に対して反応できるカードでは無い。

よって、俺のダイレクトアタックを防ぐカードは無い事が分かった。だから俺はあの瞬間に勝利を確信したんだ。」

「ククク、ほぼ正解だ。因みにどちらのカードだと思う?」

「初手に召喚したのは虚無魔人だ。ならばより完璧なロックを作り上げるために必要なカードは威光魔人。つまりお前の最後の1枚は威光魔人だ、と思う。」

「残念だったな、ハズレだ。俺の最後の手札は虚無魔人、俺の魂のカードだ。」

「あちゃーハズレかぁ、最後の最後で格好つかないなぁ...

バトルを続行する!俺はまずアルタイルでダイレクトアタック!」

 

ヴァニティ LP3900→2200

 

「これでトドメッ!ヴァトライムスでダイレクトアタック!"ヴァトライムス・チャージ"!」

 

ヴァニティ LP2200→-400

 

「ククク、完敗だStargazer、良きデュエルであった。」

「こちらこそ。ありがとう、良いデュエルだった。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そんな訳で、ヴァニティさんとの初デュエルの動画は完成した。

ちなみにヴァニティさんは使用デッキの割にめちゃくちゃ良い人だ。ククク、とか意味深なセリフはただのロールプレイであり、デュエル中に自分を心配してくれた優しさの人がヴァニティさんの本性である。

尚、リンクヴレインズでのロールプレイとチャットに著しいギャップのある人でもある。どれくらいかと言うと例を挙げて言おう。

 

何を隠そう、今日自分にPlaymakerのことを教えてくれたチャットの相手がヴァニティさんなのだ。本当にギャップの人だ、今でも驚きである。




今日のアニメでリボ様が初のエクストラリンク達成しましたねーしかも全部リンク4とか言う超豪華仕様の。一体どんなエクストラしているんだろうか。
せっかく遊戯王小説書いているんだからあれくらい派手な盤面を作り、それを突破させるという一連のお約束をやってみたいですねー。
まぁ、主人公の考えがOCG次元なので即サレンダーか壊獣使うかになりそうですが。


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学校は辛いよ

Wikiって本当に情報の宝庫ですねー。
VRAINSのメインテーマが「一歩を踏み出し、トライしよう!」だなんて初めて知りました。
そんな原作の2次創作のこの小説は
「たとえモブキャラだとしても、今自分にできることをする。」
「取り敢えずデュエルだけしてれば問題ない」
の2テーマから作ってます。
2つ目が適当すぎるって?だって遊戯王やし。


自分は遊戯王VRAINSの世界に転生した転生者である。

が、ただ今自分は10歳、当然小学校に通う小学生でもある。

 

大インターネット社会やし、インターネット授業とか出来ないん?と聞いてみたことはある。あるにはあるらしい。が、そういうのは一部の事情を持った子供たち専用で、自分のような普通の子供は社会に求められるコミュニケーション能力を鍛えるため、学校に通わなくてはならないらしい。

 

コミュ力って鍛えられるの?純粋に疑問である。

 

さて、小学校である。まぁ転生者やし小学校くらい余裕でしょ?と思うだろう人も多かろう。実際成績は上位をキープできている。が、トップでは無い。こんな所でもモブキャラ力を発揮してどうするんだ俺...

 

前世含め相当年がいってるのに小学生の中ですらトップ取れないとかwと笑われる事だろう。だが、それにはきちんとした理由があるのだ。

 

別に、"二人組作ってー"が出来ないからでは無い。無いったら無い。

 

Den City Primary School はネットワーク社会に適応した子供を育成する事を学校の方針としている。なので当然学校の授業内容はパソコンやタブレットを取り入れたハイテクなものとなっている。そのせいで、前世でやった暗記科目は無くなり、インターネット上から情報を搔き集めるレポート系の課題がメインとなっている。

 

何が言いたいのかというと単純、ここは未来世界なのだ。よって前世の勉強があんまり役に立たないのだ。

 

転生特典無しとか、原作開始時にショタとか、カリキュラムが昔と違いすぎるとか、スピードデュエルでのクソスキルとか、この世界実は自分に割と厳しいのでは?とたまに思う。この世界の天国はデュエルの中にしか無いのか...

 

尚、遊戯王世界にもかかわらずこの小学校にはデュエル学とか不動性ソリティア理論とか錬金術とかは無い。ちょっと楽しみにしてただけに残念である。

 

さて、そんな訳で小学校。お遊び要素の強い総合学習の授業でちょっとした問題があった。

今回の授業において出された課題は単純、四人一組で与えられたテーマに沿ったことを調べ、発表するというものだ。

そのテーマとは、"好きなカリスマデュエリストについて"だ。

 

四人一組に問題がある訳では無い。席の近い、いわゆる班と呼ばれるグループでの発表だからだ。よって自分が余り物になることは無い。

 

発生した問題は、班の残り三人がみんな揃ってPlaymakerについて調べようぜ!と言い出しやがったことである。

 

前話で述べた通り、Playmakerはインターネットに痕跡を残さない。そんな奴を調べて発表するとか無理ゲーだ。

 

なので当然他の人、例えばGo鬼塚とかにしよう!と提案してみたものの多数決には勝てず、Playmakerを調べる事となった。

適当にやれば良いじゃんと思わなくは無いが、この発表、成績に響くのだ。よって成績上位キープのために、この発表をまともかつ信頼性の高いものにしなくてはならない。

 

でもPlaymakerはネットに痕跡を残さない。やっぱ無理ゲーだろ。

 

そうは言ってももうテーマはPlaymakerについてと決定され、先生に提出されてしまった。

さて、そうなるともう後には引けない。本来情報のソースは確かなものでなければ減点対象だが、発表そのものが成り立たない大惨事に比べれば減点はマシであろう。掲示板の噂を中心に発表を組み立てることにした。

他の三人は、「俺、Playmakerの動画調べる!」とか「私、カリスマデュエリストランキングの公式サイト調べてみるね!」とか「それじゃあ僕はPlaymakerのデッキを調べてみるね!」

と言っていた。普通のカリスマデュエリストを調べるにはかなり有用な方法だが相手は凄腕ハッカーPlaymaker様、そんなところに情報は残っていないのだ。そんな訳で初っ端から三人が戦力外である。

 

さて、掲示板の消し残りに有用な情報が残っていれば良いのだが。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「自分たちの班は、リンクヴレインズのヒーローPlaymakerについて調べました。Playmakerはカリスマデュエリストランキングには登録していないデュエリストですがカリスマデュエリストランキング上位のGo鬼塚、ブルーエンジェルを破るなど凄い戦歴を収めています。

 

使用デッキはサイバース族という未知のモンスター群であり、一般流通はしていません。Playmakerはそのサイバース族の高い展開力を使っての連続リンク召喚を得意としているデュエリストでもあります。

エースモンスターはコード・トーカーと名のつくモンスター群で、スキル”Storm Access”でデュエル毎に新たに入手し、使用しています。

 

また、Playmakerは今リンクヴレインズを乗っ取っているハノイの騎士に敵対する凄腕のハッカーです。その為ネット上でのPlaymakerの情報はすぐ消されてしまう為、情報収集には主にネット掲示板を使いました。

 

以上で発表を終わります。ご静聴ありがとうございました。」

 

乗り切った、乗り切ったぞ!他の三人は情報が集まらずパニックになってしまい本当に全く戦力にならなかったがな!ネット掲示板をくまなく探してレスを見つけたので本当にソースは掲示板ッ!自分たちの記憶では無いッ!

 

尚、先生からは情報が集まらないからといってソースの不確かな掲示板の情報を頼りにしてはいけません。とのお小言を貰い、評価はBを貰った。正直自分が誤魔化さなかったらD評価で再提出くらうレベルのものに仕上がった自信があるので、傷は浅くすんだと言えるだろう。

 

ちなみに、学年トップの奴は無難にGo鬼塚を調べ発表していた。マネージャーさんとかいる超王手だから調べるのには苦労しなかっただろう。当然評価はA。う、羨ましくなんか無いんだからね!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

授業後、班員の三人から謝られた。課題を調べるところから発表まで全て自分に任せてしまったことについてだろう。

 

「まぁ、Playmakerの情報が消されてるって事をテーマ決めの段階で言えなかった俺のミスでもあるし、気にしなくて良いよー。」

 

嘘である。内心めちゃくちゃ気にしているがそれを小学生にぶつけるのは大人気ないぞ!と前世からのプライドが言っているのだ。仕方なかろう。

 

その嘘を間に受けた純粋無垢な少年少女はあからさまにホッとした顔をして、ありがとうと言ってきた。どういたしましてー、と答えた。

この話はこれでおしまいだ。班員たちと仲が深まり友達になるとかいうお伽話は無い。

 

治らない自分のイライラはいつもならリンクヴレインズで治める所ではあるが、残念ながら今のリンクヴレインズは世紀末。ハノイ許すまじ。そんな事を考えていると携帯に連絡が来た。

 

連絡して来たのは以前デッキ構築の際にトレードを良くしてくれたデュエル塾講師の人、ティーチマンさんだ。

何でも、自分の住所の近くのゲームセンターに"スピードデュエルシミュレーター"なるゲームができたのだそうだ。

リンクヴレインズに入ってないんならデュエルできなくてウズウズしているんじゃないか?と。エスパーか、その通りである。

そんな訳で早速ゲーセンに行ってみることにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「へぇー、リンクヴレインズと違ってスキルは自分で選べるんだ。面白そうだ。これもまたデュエルディスクにプラグ刺すタイプの機械かぁ、メジャーなのかなこの型って。二百円入れてっと。デッキセット!プラグイン!向かいの人、デュエルよろしくお願いしまーす。」

 

「おう、良いぜ!ただし...この俺の強さに吠え面かいても知らないぜ。なにせ俺は!...おっとこれは秘密だったんだ忘れてくれ。」

 

「?まぁ良いです。行きますよ!」

「おう!来やがれ!」

 

「「スピードデュエル!!」」

 

「先行は俺だぁ!ふふ、完璧な手札だ。俺はおとぼけオポッサムを召喚!さらに俺は手札から魔法カード、手札抹殺を発動!お互いの手札を全て捨て、その枚数分ドローする!俺は2枚墓地に送り、2枚ドロー」

「4枚墓地に送り、4枚ドロー!その落ち方、バブーンデッキですか。でもおとぼけオポッサムの効果による自壊には俺のフィールドにオポッサム以上の攻撃力のモンスターが必要ですよー。」

「そんな事は百も承知だ!行くぞ!俺はスキル"ブレイク・ドロー"を発動!俺は一枚ドローする。その後自分フィールドのモンスターを一体破壊する!おとぼけオポッサムを破壊!」

「フィールドでモンスターが破壊されたッ!来ますか!」

「森の番人グリーンバブーンの効果!自分フィールドの表側表示の獣族モンスターが効果で破壊され墓地へ送られた時、1000LPを払って発動ッ!このカードを特殊召喚する!」

 

男 LP4000→3000

 

「チェーンして発動します!増殖するG!このカードを手札から墓地に送り効果発動!逆順処理です。自分はこのターンの間、相手モンスターが特殊召喚されるたび、1枚ドローしなくてはならない!」

「へん!それがどうした!現れろレベル7!森の番人グリーンバブーン!どうだ、参ったかぁ!」

「グリーンバブーンが特殊召喚されたので、1枚ドローします。この程度ッ、望むところです!」

「威勢の良いガキだぜ!俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。俺はまず、星因子(サテラナイト)シャムを召喚!効果発動!召喚に成功した場合、相手に1000のダメージを与える!」

 

男 LP3000→2000

 

「バブーンを破壊できないから、直接ライフを狙って来たのか!でもこのカード...ははーんそいつのバーン効果でライフをこれ以上削る事は出来ないぜ!何せそいつの効果は1ターンに一度しか使えないんだからな!」

「熟知してますよそれくらい。俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

(ふっ、この俺様の強さに手も足も出ないようだな。子供相手だし手加減してやるべきか?...いいやこの子には絶対に勝てない奴がいるっていう残酷な真実を教えてやるべきだな!」

「途中から声出てますよ、おにーさん。それと一つだけ、このデュエル、勝つのは俺です。」

 

「こっの生意気なガキめ!手加減しようかと思ったがもう決めた!二度と立ち直れないくらいボコボコにしてやる!俺のターン、ドロー!

ふっ、完璧なドローだ。俺はスクラップ・コングを召喚!効果発動!召喚に成功した時、このカードを破壊する!そして、自分フィールドの獣族が効果で破壊された事で、ライフを1000払い、墓地に存在するもう一体のグリーンバブーンの効果発動!現れろグリーンバブーン!」

 

男 LP2000→1000

 

「そしてリバースカードオープン!魔法カード、野性解放!2体めのグリーンバブーンの攻撃力を守備力分つまり1800ポイントアップ!よって攻撃力は...4400だ!」

「でも、野性解放の効果により、パワーアップしたバブーンはエンドフェイズに破壊されます。」

「計算できねぇのか?ガキンチョ。こっちの総攻撃力は4400+2600でぴったし7000、対してお前の場のモンスターの攻撃力はたった1400。超過ダメージ5600で1ターンキル成立だ!バトル!まずは強化されたグリーンバブーンでお前のモンスターを攻撃!」

「攻撃宣言時、発動はありません。」

「そうか、なら終わりだな!喰らえバブーンの一撃を!」

「ダメージステップ開始時です。発動はありますか?」

「細けえこと聞くんじゃねぇよ!発動は無い!...おいちょっと待て、そのモンスターは光属性ッ!まさか⁉︎」

「そのまさかです!ダメージ計算時、俺は手札のオネストの効果発動!ダメージステップ開始時からダメージ計算時までに、このカードを手札から墓地に送り発動できる!戦闘を行う光属性モンスターの攻撃力を相手モンスター分アップさせる!よってシャムの攻撃力は...」

「攻撃力5800だと⁉︎...てことは俺への反射ダメージは。」

「シャムの攻撃力分、1400ポイントです!これで、終わり!」

 

男 LP1000→-400

 

「そんな、この俺が...こんなガキンチョに、完封負け⁉︎」

「ありがとうございました、良いデュエルでした。」

 

「認めねぇ!もう一回、もう一回だ!さっきのはなんかの間違いだ!」

「良いですよー。でも今度は自分が勝った側なんで、お金ははおにーさんがお願いします。」

 

「ちょっと待ってろ...畜生、小銭がねぇ!ちょっと両替してくるから、逃げるなよガキンチョ!」

「...元気なひとだなー。」

 

この後何度もデュエルしたが、結果は全て俺の勝利で終わった。

 

「あー畜生次だ!次は負けないからな!」

「また機会があったらデュエルしましょうね、おにーさん。いつでも挑戦待ってますよー。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

どっかで見たことあるようなちょっと太めの高校生とのスピードデュエルであった。まさか、原作キャラ?...まさか、そんなポンポン遭遇するようなもんでも無いだろう。

案外リンクヴレインズのどっかで知り合った人かもしれないなーと思いながら、家路につくのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「畜生、あんなガキンチョにボロ負けするなんて、いずれPlaymakerに認められる男、この島直樹がッ!くそー、帰ったらデッキ構築見直さないとなぁ。」




光属性に攻撃を挑むこと、それ即ち地雷原に突っ込むのと同じッ!
アド取れないんで環境からは死滅しましたがそれでも強力なのは変わらないこのカード、ファンデッキとやり合う時には気をつけましょう。
最近はオネスティネオスに株奪われた感のあるオネストさんでした。


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幸運のブラマジ使い

今週の3つの出来事!(オーズ感)
1つ、執筆に夢中になってしまい、アルトリウム集めるのが間に合わなかった!
2つ、秋葉原の方まで出る事になったのでついでに上野の映画館でウルトラマン見ようと思ったら上映してなかった!オタク向けの映画館じゃ無かったのかッ!
3つ、ブンボーグデッキ組み直そうかとストレージ漁ったら、009が何故か4枚見つかった!シングルガイしかしてないのに、何故だッ!

という愚痴でした、どうでも良いですね。


リンクヴレインズがハノイの騎士に占拠されて以来、リンクヴレインズに入らないようにした情報強者の中で、ちょっとしたブームが生まれた。

 

スピードデュエルシミュレーターである。

 

本物のスピードデュエルを体感している身からすると、風が感じられないという致命的な欠陥があるリンクヴレインズが再興したら収益大丈夫かこのゲームと心配になる程度のものだが、そこはリンクヴレインズに入れずデュエルに飢えた亡者たちだ、デュエルできるならなんでも良いらしい。ちょっと同感である。

 

まぁ一人プレイ用モードのAIがしっかりしていてそこそこの歯ごたえがあるので、ゲームとしての完成度はなかなかのものなのだろう。デュエルもできるギャルゲーと違い、タッグパートナーが敵になるという事もない。ストレスフリーである。

 

問題があるとするならば一点、下手にロックを仕掛けるとリアルファイト待った無しの距離なので、プレイする時間帯をしっかり見極めないと危ないというところだろう。10歳にリアルファイトはちと厳しいのだ。

 

幸いにも自分のテラナイトデッキには超高額カードが入っているという事はないのでもしグールズみたいな組織が現れても安心だ。

 

そんな事を考えながらチャットをしていると、気になる情報があった。

 

なんと、この世界における伝説の高額カード、ブラックマジシャンデッキ使いが○○区のゲームセンターに現れたのだそうだ。しかも自分と同じ、カード収納タイプのデュエルディスクを使っているため、実際のカードを持っているのだそうだ。

 

何て不用心かつ面白そうな話ッ!

 

なお、ブラックマジシャン使いの彼とデュエルした人は、勝っても負けても彼にカードを拝ませてもらうトカ。

その後カードパックを買うとレアカードが当たるという迷信まで生まれた。

 

そんな事から彼にはこんな愛称がついた。

"幸運のブラマジ使い"と

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

本日は日曜日、幸いにも○○地区は地下鉄で一駅程度の距離なので、噂のブラマジ使いを一目見るために散歩がてら行ってみた。

 

「うわ、すごい行列。人気なんだなーここのゲーセン。」

「...おいガキンチョ、ここは初めてか?」

 

声をかけて来たのは、中学生くらいの少年であった。

 

「いきなりガキンチョって...いや初めてですけど。何か問題でもありましたか?」

「てことはお前、スピードしに来たやつだろ。」

「スピードデュエルシミュレーターの事ですか?その通りです。なんでも幸運のブラマジ使いなる人が居るらしくて、散歩がてら覗きに来ました。」

「そうか知っているのか...なら話は早い今すぐ帰れガキ。カードが大切ならな。」

「カードが大切なら?確かにカードは大切です。もしかしてブラマジ使いのカードを狙う柄の悪い人がいるとかですか?」

「いや、そうじゃねぇ。幸運のブラマジ使いと呼ばれている奴がヤバいんだ。アイツはデュエルの前にアンティルールを仕掛けてくる。アイツはブラックマジシャンを餌に俺たちからレアカードをかき集めているんだッ!」

「アンティですか...それ、乗らなかった人を無理やり乗せたとかならともかく、ブラマジ目当てに乗った人から巻き上げる分には何も問題は無いのでは?アンティルールなんて、乗った人の自己責任ですよ。」

「くっ、痛いところを突いてくるッ!でもアイツが悪魔の所業をしてるって事は確かだ!そんな所にガキが来るんじゃねぇ!」

「ああ、心配してくれているんですか、どうもありがとうございます。そうですね、それなら今日は見ているだけにしますねー。どんな極悪人が使っているにせよ、ブラックマジシャンに罪はありませんから。」

「誰がこんなガキの心配なんか...まぁいい、デュエルしないってんなら俺はもうなにも言わん。見てろよ俺があのブラマジ使い、"パンドラ"を倒してラビードラゴンを取り戻す所をッ!」

「意外と可愛いカード使ってるんですね、おにーさん。」

「ほっとけッ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

30分後、前の男の順番が回って来た。

対戦相手はスーツにシルクハット、そしてド派手な仮面をつけた怪しげな男だった。

「やいパンドラッ!アンティルールを受けてやる!俺が勝ったらお前に取られた俺のカードを返してもらう!」

「ふふふ、リベンジャーも随分多くなって来ましたねぇ...よろしい、受けて立ちましょう!しかしアンティルール、取られたカード...あぁあの時のラビードラゴンの方ですか、懲りない人ですねぇ。...アンティするカードはブラックマジシャンで無くてよろしいのですか?」

「うぐっ、いいや男に二言はねぇ!俺のカードを返してもらえればそれで良い!」

「間違いは正すべきだとは思いますがねぇ...では我がカード捌きにてお相手いたしましょう!」

「行くぞクソ野郎ッ!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「先行はこの私!マジシャンズ・ロッドを召喚し効果発動!デッキからブラックマジシャンのサポートカードを手札に加えます。私が加えるのは黒の魔導陣。そしてそのまま発動!デッキトップからカードを3枚めくり、その中のブラックマジシャンとカード名の入ったカードを手札に加える。私はイリュージョン・マジックを手札に。カードを2枚伏せて私はターンを終了します。」

「行くぞッ!俺のターン、ドロー!俺はゴブリン突撃部隊を召喚!続いてスキル発動!”イクイップ・コール”!手札1枚を捨て、装備魔法を手札に!んでもって発動、装備魔法、愚鈍の斧!ゴブリン突撃部隊に装備!

バトルフェイズ!攻撃力1600の雑魚カードを蹴散らせ、ゴブリン突撃部隊!」

「私はセットしたイリュージョン・マジックを発動!マジシャンズ・ロッドをリリースし、デッキからブラックマジシャンを2枚手札に加えます。」

「壁モンスターをリリースした⁉︎まぁいい、それならダイレクトアタックだ!行け、ゴブリン!」

「リバースカードオープン、マジシャンズ・ナビゲート!手札からブラックマジシャンを特殊召喚!さらにデッキからレベル7以下の闇属性、魔法使い族を特殊召喚!今一度現れろブラックマジシャン!」

「ブラックマジシャンが...2体ッ!だがッ愚鈍の斧の効果によりゴブリン突撃部隊の攻撃力は3300ッ!レアなだけの雑魚カードッぶっ潰してやるぜ!...何⁉︎」

「黒の魔導陣の効果、ブラックマジシャンが特殊召喚された場合に発動!相手フィールドのカード一枚を対象に取り、そのカードを除外する!私はゴブリン突撃部隊を除外します!」

「そんな、俺のフィールドはガラ空きッ!その上スピードデュエルにはメインフェイズ2は無いッ!クソ、俺が、カードを奪うようなクソ野郎なんかにぃ!」

「おや、初めて知りました。ターン毎の時間制限を過ぎた場合は敗北ではなく強制ターン終了なのですね。...何かに悪用できそうですねぇ。それはともかく私のターン!バトルフェイズ!

2体のブラックマジシャンで、ダイレクトアタック!"ダブル黒・魔・導(ブラック・マジック)"」

 

少年 LP4000→-1000

 

「クソッ!こんな筈じゃなかったのに!」

「...約束のアンティルールです。ですがあなたにはブラックマジシャンに匹敵するレアカードは持っていない様子。そうですね、一つ約束をしてくれるなら許してあげましょう。もののついでです。このラビードラゴンもお返しするという事で、どうですか?」

「何⁉︎わかったなんでもする!何でも約束する!」

「では一つだけ...もう二度とカードを無下に扱わないでください。アンティルールでカードを賭けるなど以ての外です。約束してくれますね?」

 

少年は涙を流しながら言った

「そんな、事、ですか。約束します。もう二度とアンティルールなんてやりません。カードを大切にします。約束します。」

「ならばよろしい。約束のカードです。それと、男が涙を見せていいのは産まれた時、親の死に目、愛する人を失った時の三度だけです。涙を拭いて、しっかりしなさい。」

「は、はい!ありがとうございました!」

 

そんな寸劇をすぐ後ろから眺めてる10歳くらいの子供がいた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ちょっと良いですか?パンドラさん。」

「おや、次の相手はあなたの様な小さなチャレンジャーですか。それで、お話とは?」

 

「さっきデュエルしたゴブリン突撃部隊の人、どうにもアンティルールを仕掛けているのはあなただと触れ回っているみたいですよ。実際自分も言われました。あいつは悪魔のデュエリストだーって。」

「なんと、その様な事ですか。わざわざ教えて頂いてありがとうございます。ですが安心してくださいな、どの様な悪評が広められようとそれは仮面のデュエリストパンドラへのもの。私の私生活に何ら関係のない事です。

それに、懲らしめるためとはいえアンティルールを実行したのはこの私。その程度の悪評なら受け入れるべきでしょう。」

「良い人なんですね、パンドラさんは。」

「そんな事はありません。大人なだけですよ、貴方がたより少しだけ。

さて、それではデュエルと...おっともうこんな時間ですか。残念ですが、家内に夕食を作るという大切な約束があるのです。今日はこれにて失礼させて貰いますね。」

「あ、そうなんですか...それなら最後に一つだけ、拝ませて貰って良いですか?幸運のブラックマジシャンを。」

「そのくらいでしたら是非どうぞ。」

「うわー、さっきモニターで見ましたけど、2001年登場の色違いブラックマジシャン!通称闇落ち版!すげー...あ、傷の修復跡がある。年季入ってますねー。...見せてくれてありがとうございました!」

「この位なら構いませんとも。それではこれにて。...あなたの未来が幸多きものである事を祈っていますね。」

「ハイ!ありがとうございました!機会があれば、今度はデュエルしましょう!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そんな事があった。

パンドラって名前から遊戯王DMに出てくる敵キャラを連想し、一瞬でも疑った事を恥じるレベルの超良い人である。出会えてよかったが、やっぱりデュエルはしたかった。家庭の事情ならしょうがないけどね!

 

その後のスピードデュエルシミュレーターでは5連勝。ハウスルールにより交代したが、まだまだ勝ち続けられる雰囲気であった。これは幸運のブラマジの仕業に違いないと思いカードパックを買ってみたところ大当たり。何とカオス・ソルジャー-開闢の使者-が当たりました。再録されたものではあるが攻撃力3000に超強力な効果、当然この世界においての超激レアカードである。

 

迷信って信じてみるものですねー。

 




裏設定
パンドラ、本名箱庭武蔵
幼少期に病院で心神喪失状態の身元不明のマジシャンと仲良くなり、その心を救った。それが故に彼の唯一の遺品であるデッキを引き取ることになったのがブラックマジシャンとの出会い。
以降ブラックマジシャンを使いプロデビュー寸前まで進んだが交通事故に遭いそうになっていた女性を助けたせいで大怪我、一時期はカードを握ることすらできなくなるほどの重症であった。
が、助けた女性や自分を応援してくれた子供達の応援のお陰で長いリハビリを終え、デュエルに耐えうる身体になった。
しかしそのリハビリ生活の中で彼は多くの子供達にデュエルを教えた。それがきっかけで自分がなりたかったのは本当にプロデュエリストだったのか?もっと他の、デュエルの楽しさを教える活動なのではないか?と一念発起。大学で教員資格を取り、デュエルアカデミアのコーチとなった。その後、事故の折助けた女性と結婚して幸せに暮らしましたとさ。

自分が2番目くらいにプロット書いた作品の主人公。パンドラ版ブラマジって格好いいよね!という所からGXに参戦させようとしたキャラ。
没になった理由もパンドラ版が原因。永遠の魂はマハード専用カードだよなぁと思い、それ以外をフル活用するブラマジデッキにしてみたが永遠の魂ないとどうしてもデュエルが作れない病にかかり、あえなく没に。
でもキャラ考えといて何処にも見せずに終わるのもあれだよなーと思っていたところにこのプロットガバガバ作品です。書き始めた頃は年齢と主人公をOCG次元の考え方をするキャラにする事しか決めてませんでした。それならちょい役としてなら昔のキャラ出せるのでは?と思って書いてみたら思いの外ハマりキャラに。それがこの話です。

なお、パンドラさんのこの話での年齢は50歳くらいを想定。映画版の超ハイテク具合からVRAINSまではそんなにかかってないんじゃないかなーと。世界観繋がっているかまだ不明ですけど。


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一般人のハノイの塔

あの手この手で引き延ばしを図ってみたのですが、ハノイの3騎士ファウストのデュエルからエマおばさんの地下調査まではそんなに時間がかかってなかった印象なので、この辺りでハノイの塔編に突入します。
ただハノイの塔の時点では一般人の逆襲みたいな話は無かったので、主人公はただ見てるだけという。
極力原作よりにしとかないと未来の原作と矛盾するからね!是非もないよね!


カリスマデュエリストは、ランク上位の頭おかしい奴を除けばだが、みんな一昔前のyoutuberみたいなもんである。デュエルのみならず面白おかしい動画を投稿して人気を稼ごうと躍起なのだ。

何のためにってのも一昔前のyoutuberと変わらない。人気と広告収入のためだ。

 

そんな訳で、未来世界でもやらかす奴はやらかすのだ所謂バカッターという奴を。

 

そんな連中に今ブームなのは「ハノイの騎士から逃げ切れるか!リンクヴレインズチャレンジ!」である。

 

いや、確かにアナザー被害は無くなったため危険性は少ないのかも知れない。でもハノイの騎士は超危険なハッカー集団なのだ。そんな一発ネタの為に命をかけてどうするんだとは小学生でも思う。

 

ちなみにカリスマデュエリスト交流会の面子の中にもこのリンクヴレインズチャレンジに挑戦した人はいる。リンクヴレインズに入れなくなったことで録画データが尽きてしまい、カリスマデュエリストランキングを保つ為に一発逆転を狙ったんだとか。

 

実行したのは"スキッパー"さん。おそらくリンクヴレインズ1使えないスキルである"ドロースキップ"の使い手である。そりゃ面白いスピードデュエルの動画も撮りづらいというものだ。

 

ちなみに彼のリンクヴレインズチャレンジの結果は僅か4秒。ログインしたのがハノイの騎士の目の前という運のなさである。だが、驚いたのはハノイの騎士も同じだったようで、互いに2秒程度ポカーンとした後スキッパーさんは即ログアウトした。正気を取り戻すのがハノイの騎士のが先だったらどうなっていたか、恐ろしい限りである。

 

なお、リンクヴレインズチャレンジが始められてからこれまでの間スキッパーさんの最短記録が破られた事はない。彼は伝説となったのだ...

 

が、最長記録の方は別だ。リンクヴレインズチャレンジの最長記録はというか平均記録が日に日に伸びているのだ。まるでハノイの騎士がリンクヴレインズから撤退しているかのように。

 

これを、Go鬼塚たちがハノイの騎士を追っ払ってくれたのだ!と楽観的に取る人と、ハノイの騎士の大作戦の前触れだ!と悲観的に取る人の2種類がいた。まぁ2種類目の風潮を作り出したのはどっかの小学生なのだが。

 

そんな小学生が、この人大丈夫かなーとリンクヴレインズチャレンジの生放送を見ていると、その大事件は起こった。

 

消えていくのだ、建物が

 

消えていくのだ、データの風が

 

そして消えていくのだ、人が

 

赤きエフェクトを撒き散らし、何もかもが消えていく。

 

ログアウトを試みた人がいた。

完了する前に赤いエフェクトに飲まれ消えていった。

 

建物の中に逃げ込む人がいた。

建物ごと赤いエフェクトに飲まれて消えていった。

 

とにかく走って逃げようとした人がいた。

途中で転んで、足の先から徐々に赤いエフェクトに飲まれて消えていった。

 

そうして生放送の撮影者は見た。赤いエフェクトで消えていく人たちの中心を。

 

そこには、地上に根を張り、6つのリングを宙に持つ赤き紅き巨大な塔の姿があった。

 

その塔に飲まれるように、生放送の撮影者は赤く、消えていった。

 

「何だ、これ...」

 

デュエルで負けた訳では無い。

何か違法データをダウンロードした訳では無い。

明確に違反行為をした訳では無い。

 

ただそこに居たという理由で、彼らは赤く消えていった。

 

世界の命運を決める6時間、ハノイの塔事件が始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

原作知識で何があるのかは知っていた。だが、実際に見るまで何かできることがあるのではと思っていた。

そんな事はない。ただ知っているだけの一般人に出来る事など無い。

 

事件のスケールが、違いすぎるッ!

 

「くよくよするな馬鹿!今できる事は何かあるッ!とりあえず情報だ!原作通りなら山本先輩たちが中継を始めるはずッ!それ以外にもリンクヴレインズで生放送してる奴なんてごまんといるッ!とにかく情報を集めないと!」

 

そうしてわかった事は二つ。

 

この事態を重く見た運営のSOLテクノロジーが、リンクヴレインズの封鎖を宣言した事。尚、宣言しただけである。管理者権限はハノイの騎士にあるためログインが可能であるという杜撰っぷりだが。

 

そして、ハノイの塔出現から1時間もしないうちに、ハノイの塔出現時にリンクヴレインズにいた人間は全て赤く飲み込まれてしまったという事。もうリンクヴレインズに人は居ない。完全なるゴーストタウンと化したのだ。

 

もう、自分に出来る事は無い。

事件が起きることの想定はしていた。ハノイの大襲撃の時と同様に、避難誘導くらいなら出来ると自負していた。

甘かった。甘かった。甘かったッ!

 

でも、まだ自分に出来る事はあるはずッ!そう思った。何をしようというイメージを持たずに。

そうして動き出してしまった。

 

「デュエルディスク、セット!デッキ、セット!行くぞ!In to the ...ッ!」

 

そんな、やけっぱちになっていた自分を止めてくれたのは、母との約束だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ただ、なんども言うけど自分を危険に晒すようなことは絶対にしないで。お母さんとの約束よ?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「畜生ッ、畜生ッ、畜生ッ!」

 

歴代主人公達のように、戦える強さが欲しかった。

数多のオリジナル主人公のように、戦える勇気が欲しかった。

理想の自分の持っている、心の強さが欲しかった。

 

どれも、今の自分には無いものだ。

 

臆病な自分には、母の思いを振り切れない。

臆病な自分には、母との約束を振り切れない。

 

想いが、重く自分を縛っているのが分かる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「天頂ッ!大丈夫⁉︎リンクヴレインズになんか入ってないわよね⁉︎」

「か、母さん⁉︎大丈夫、まだリンクヴレインズには入ってないから。」

「まだって何⁉︎...デュエルディスクつけてるって事はまさか⁉︎」

「いや、そうじゃない...そうじゃ無いんだッ!

 

リンクヴレインズに入ろうとしたッ!けど駄目だったッ!赤く消えた人たちの顔が目に浮かんで、勇気が出なかったッ!母さんとの約束を理由に、誰かを助けに行けるはずなのにッ!走り出すことをやめてしまった!」

 

「天頂、あんたねぇ...怒ればいいのか呆れれば良いのかわからなくなるじゃない。まったくもう。ねぇ天頂、いいじゃない別にあんたが走りださなくたって。」

「え、でも俺が行くことで助けられる人がいるかも知れなくて。」

「でも、あんたが助けに行かなくちゃいけない義務はないわ。良いのよ、見捨てたって。」

「でも、自分に出来ることをしなくちゃ⁉︎」

「...今自分に出来ることをしろー、ってのは父さんの口癖だからね。あんたがそれに影響されちゃうのも仕方ないわ。でもね天頂それは、今自分に出来る無茶をしろって事じゃないの。今自分に出来るから命をかけろってことでもないの。

これはね、今自分の手の届く範囲で親切にしなさいっていう言葉なの。」

「手の届く範囲で...」

「そう、手の届く範囲で。今のあんた見たく、無理して無茶してでも走り出して、誰かに手を差し伸べるって事は違うの。あんたに出来る事はちょっとネットに詳しい10歳児の出来る事でしかないんだから。

そんなあんたには、誰かの命に関わるような義務も権利も乗っていないの。」

 

「でもッ!」

「でもじゃないッ!まずデュエルディスク外して、しっかり地に足つけて考えなさい。あんたは、あんたの出来る事と、あんたのしたい事だけしていれば良いの。それ以上は背負い過ぎよ。

...けど、これも覚えておいて。あんたが無茶する事を、私たち親は望んでいないって事を。」

「母さん...」

「それじゃ、私は居間に戻ってるわね。頭、ちゃんと冷やしなさいよ?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

言われた通り、デュエルディスクを外した。

冷や水を浴びせられた気分だった。

 

「でも、出来ること、情報は集めないと...」

 

そうしてネット情報を漁っているとこのリンクヴレインズの状況下で中継を始めた命知らずがいるらしい。

 

「これって、カエルと鳩の人たちの中継だ。こんな状況下でも頑張っているなんて...今考えると、凄いカッコいい人達だったんだなぁ...」

 

そうして中継を見ていると、ハノイの塔事件は原作通りに進んでいった。ブルーエンジェルはスペクターに敗れ、Playmakerがスペクターを倒し、Go鬼塚がリボルバーに敗れ、Playmakerとリボルバーはスピードデュエルで相打ちとなった。

 

だが、ここで原作と違うと思われる点が生まれた。中継の二人が、Playmakerとリボルバーのマスターデュエルが始まっても嵐の中に入って行かないのだ。行けないのだ、嵐に紛れる瓦礫たちが大き過ぎて。

 

些細な点だろう、そう自分では思う。

別に中継の有る無しでデュエルの結果は変わらないのだから放置でいいだろう。そう自分では思う。

そう、自分では思うのだ。

 

なのに何故か、体は動き始めていた。

 

自分が走り出すことに意味はないだろう。今自分に出来る事の範囲からは相当に外れている自信はある。母との約束を破る事に物凄い罪悪感を覚えてる。

 

でも、体は動き始めていた。

 

そうして気づいた。体が軽い。さっきまで中継を見ながらずっと震えていたのに、それが止まっていた。

 

だって仕方ないではないか。あの二人は頑張っているのだ、カッコいいと思ってしまったのだ。

 

そんな人を助けたいと思ってしまったのだ。

 

覚悟は決まっていなかったと思う。でも、こうも思うのだ。自分はただの10歳児だ、ご立派な覚悟なんてものは分不相応だろう。だからきっとこれで良い。

 

「母さんごめん、俺は約束を破るッ!自分に出来る事じゃない、自分のしたい事をするためにッ!頑張ってる誰かには、報われて欲しいって思うからッ!その人が届ける希望を、守りたいって思うからッ!

行くぞ!デュエルディスク、セット!デッキ、セット!In to the ッ!」

 

扉の外から、頑張れと声が聞こえたような気がした。

 

「In to the VRAINS!」

 

そうして自分は、滅びかけてるデータの世界に身を投げた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「...ほんとお父さんにそっくりに育ったわねー。肝心なところでいっつも約束破る所とか。人助けでデートすっぽかされた私みたいな犠牲者を出さないように、帰ってきたらしっかりお説教してあげないと。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おい、行けるか!早く行かないとPlaymakerのデュエルが終わっちまうッ!このデュエルは、皆に届けないといけないだろ!」

「ダメです先輩!嵐が激し過ぎて、自分は兎も角先輩が瓦礫で串刺しになっちゃいますよぉ!」

「クソッ!一体どうしたら...何だ?後ろから風を切る音がするぞ?」

 

カエルのアバターの彼が後ろを振り返ると、そこにはDボードに乗った没個性のアバターのデュエリストがいた。

 

「俺が嵐の中に道を切り開きますッ!後ろを付いてきて下さいッ!」

「いきなり来て何を言ってるんだ⁉︎危険だ!」

「それをあなた方が言いますかッ!いいから付いて来て下さい。Playmakerのデュエルを世界に届けなくて良いんですか⁉︎」

「先輩、この人の提案を受けましょう!他にPlaymakerの所に行く方法はありません!」

「お前まで何を⁉︎いや、確かにそうだ。今は何をしてでもあそこに行かないとッ!そこのあんた!頼む、俺たちに道をくれ!」

 

「この嵐を突っ切るためにッ、希望を皆に伝えるためにッ!頑張ってる人の頑張りを無駄にしないためにッ!

現れてくれ!星輝士(ステラナイト)デルタテロスッ!

さぁこいつの盾で瓦礫を防ぎます、付いて来て下さい!」

 

「星を司る戦士のモンスターッ!そうか、そいつでなら行けそうだ!頼む...えっと。」

「俺はStargazer、あなた達の中継に勇気を貰った、ただのデュエリストです!」

「そうか、それはちょっと嬉しいな!Stargazer、さぁ行くぞ!」

「舌を噛まないように気をつけて下さいね!」

 

そうして星の戦士を先頭に、巨大な嵐の中に一人と一匹と一羽は突っ込んでいった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「抜けた⁉︎おい抜けたぞ...Stargazer⁉︎その傷は!」

「最後の方で小さい破片に抜けられそうだったんで、ちょっと体張りました。正直クソ痛いです。」

「そうか、今すぐ治療を!」

「大丈夫です、自分はもうログアウトするので...Playmakerのデュエル、ずっと気になってても見れてなかったんです。今日こそ見られるように、しっかり中継して下さいね、お二方!」

「先輩、行きましょう!Stargazerさんの頑張りを無駄にしないために!」

「あぁ、そうだな!ありがとうStargazer!この恩は忘れない!」

 

 

「...やっぱログアウト出来ないか、前世のことといい、こういう土壇場で嘘ついちゃうのは悪い癖だよなぁ...あー痛い。しかも中継繋がらないからPlaymakerのデュエルまーた見れないし。

まぁ、気分は良いし、どうせ勝つのはPlaymaker様だし、良い、かな?」

 

 

朦朧とする意識の中、前世の死に様を思い出した。

デパートでの火災事故、天井が崩れるのを察知して、近くの子供を逆方向に逃がしたは良いものの瓦礫に足を挟まれてしまった。

助けてくれと喚くのが正しいのに、自分は子供に

「俺は別ルートから逃げられる、だから君は落ち着いて、ゆっくり逃げるんだ。良いね?」なんて格好をつけてしまったのだ。

多分それが原因で救助が遅れ、嘘つきは煙にやられて一酸化炭素中毒であえなく死んでしまいましたとさ。

前世の自分の事ながら、実に笑えない最期である。

だが自分にはわかる。前世と違い、今回のこれは人生の最期ではないのだと。だから残す言葉はこれで良い筈だ。きっと。

 

「頑張れ、Playmaker。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5体のリンク4モンスターによるエクストラリンクを決められ、トポロジック・ガンブラー・ドラゴンによるダメージをくらい倒れるPlaymaker。

そんな彼を励ますAiの言葉の他に、どこかから頑張れの声が聞こえた気がした。

彼が立ち上がった理由のうちの少しには、そんな小さな声援に応えるためにというのもあったのかも知れない。




裏設定
山本先輩達が嵐の前で立ち止まったのは、とあるキャラと遭遇しなかった事によるバタフライエフェクトです。
そのキャラが現れなかった理由はとある異次元からの魂がその子の魂を塗り潰してしまったからだトカ。
さて、塗りつぶされる前の魂は一体誰だったんでしょうねー。勿論原作に登場したキャラです。
まぁ、年齢から逆算したら一瞬でわかるキャラなんですけどね!

あと、活動報告にも書いたんですが、原作に追いついてしまったので次の話は来週、あるいは再来週となります。ご了承下さいな。


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デュエリスト達の遊び場

リボルバー「エクストラリンク達成したらパーフェクトリンクで返されたでござる。」というかしょごりゅうゼロ・エクストラリンク効果によるパワーアップの対象にすら選ばれないとか逆に凄い。
おまえ主人公のエースやから禁止免れた様なものなのにエース枠デコードさんに完全に取られとるやんけ。
まぁ、遊作とAiの別れのシーンまで含めて最高の内容でしたけどね!
遊戯王VRAINS一年目、お疲れ様でした!来週も楽しみだー。


「おい、そっちはビルだぞ!方向変えろ!」

「フッ、行くぞ!」

少年はDボードの上で小さくかがみ、右手でボードの先端を掴んだ。

そしてボードでビルからの逆風を掴んだ。

するとなんと!Dボードは縦に一回転!サーフィンにあるトリック、バックフリップである。

「俺のターンで俺がターン!どうよ?」

「凄いけど馬鹿じゃねえのお前⁉︎でも格好良かったから後でやり方教えてくれ!」

「もちろん!こういう楽しい技術は皆で共有すべきだしな!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ハノイの塔事件は終わった。

赤き光と共に塔に吸収された人々は、ハノイの塔崩壊と共に現実で目を覚ました。

また、Playmakerがハノイの騎士のリーダーリボルバーを倒した事でハノイの騎士はリンクヴレインズから完全に撤退した。

だが、SOLテクノロジーがリンクヴレインズの管理者権限を取り戻すまでには、少しだけタイムラグがあった。

SOLテクノロジーにより告知されたリンクヴレインズのリニューアル。それによりこれまで自分達が遊んできたこのリンクヴレインズは消滅する事となる。

だが、管理者権限が上手く取り返せなかった事により、リンクヴレインズは今、完全に自由な無政府状態と化した。

まだ、旧リンクヴレインズにログインできるのだ。

そんな状態のリンクヴレインズに、デュエルに飢えた亡者達は即座に群がっていった。

 

後に語られる、旧リンクヴレインズ最期の30分間の始まりであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「鬼畜星さん、デュエル良いかしら?」

「Lair Lordさん!お久しぶりです!当然デュエルは受けますとも!今日のデッキは一味違いますよー、特にLair Lordさんにとっては。」

「上等じゃない!受けて立つわ!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「先行は貰った!スタンバイ、メイン!俺は星因子(サテラナイト)ウヌクを召喚!効果でデッキからデネブを墓地に!カードを2枚伏せてターンエンド!」

「一味違うんじゃなかったの?鬼畜星さん。そんなんじゃワンターンキルされても文句言えないわよ!私のターン、ドロー!」

「スタンバイフェイズ!俺は永続トラップ、魔封じの芳香を発動!さぁ、ワンキルできるならやってみろ!」

「上等!私は手札から魔法発動...出来ない⁉︎」

「魔封じの芳香の効果により、お互いのプレイヤーは手札から魔法を発動出来ず、セットしてから1ターンかかるまで魔法を使えない!」

「嘘⁉︎そんなカードが...って鬼畜星さん卑怯よ!身内メタとか恥ずかしく無いの⁉︎」

「いやLair Lordさん対策って訳では無いですよー。展開途中で魔法を使う人は多いですから。」

「相性が悪いッ!けど負けはしない!カードを3枚伏せて、ターンエンド!」

 

下で、ボードから落ちたと思われる青年が叫んでいた。

「痛え、足が、足が折れた!」

 

「すいません、ちょっとデュエル中断して良いですか?」

「鬼畜星さんってデュエルスタイルに似合わずお人好しですよね。良いですよ、行ってきても。」

「ありがとうございます。それじゃ、ちょっと行ってきます。」

 

Dボードで少年は青年の元に少年は降りて行った。

「これ、アバターの応急処置プログラムです。致命傷でもとたんに直してしまう優れものですよー。」

「本当だ、足が、もう痛く無い!ありがとう鬼畜星さん!」

「いえいえー、困った時はお互い様!それにリンクヴレインズ最後の日をこんな苦しい思い出で終わらせるのはもったいないじゃないですかー。いつ強制ログアウト来るか分かりませんけど、それまでは楽しんで行きましょう!

それと一応訂正しておきますけど、自分はStargazerです。それでは!」

 

少年はDボードに乗り、風と共に去っていった。

 

「そうだよな、リンクヴレインズは楽しい場所だもんな。よっしゃあ!俺も次のデュエルだッ!」

 

 

「お待たせしましたー。」

「待ったわ。さぁ、続きをしましょう!」

「それじゃあお礼に面白い物をお見せしましょう!俺のターン!」

 

少年はDボードをビルに向けて突っ込ませた。

 

「鬼畜星さん⁉︎危険よ!」

 

一度反転し、逆風の勢いをボードに乗せ再び反転

Dボードでビルからの逆風を掴み、少し後退。

その勢いでボードを180度回転させた。

サーフィンのトリック360(スリーシックスティ)である。

そして回転の勢いのまま少年はデッキトップに手をかけた。

 

「か、い、て、ん、ドロー!...よっしゃ成功!」

「凄い!サーフィンのトリックを参考にしたのね!デュエルには全く関係ないけど格好良いわよ!鬼畜星さん!」

「芸術点でアドは取れないがデュエルに勢いは付けられるッ!はず!

デュエルを続行します!スタンバイ、メイン!俺は星因子(サテラナイト)シャムを召喚!シャムの効果発動!相手に1000のダメージを与える!」

「合計攻撃力は3200ッこの効果は通せない!速攻魔法閃刀機(せんとうき)-ウィドウアンカーを発動...出来ない⁉︎どうして⁉︎」

「魔封じの芳香の効果により、次の自分のターンが来るまでセットした魔法は使えない。当然それは速攻魔法も含まれるのさ!」

「私のデッキにガン刺さりじゃない!ということは⁉︎」

「シャムの効果!喰らえ1000のダメージを!」

 

Lair Lord LP4000→3000

 

「これで終わりだ!シャム、ウヌクの2体でダブルダイレクトアタック!」

 

Lair Lord LP3000→-200

 

「完敗よ鬼畜星さん。魔封じの芳香か、覚えておくわ。でも、次は負けない!」

「ありがとう、良いデュエルだった。旧リンクヴレインズ最後の一日、楽しんでいこう!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから色んな人とデュエルした。勝ったり、負けたりで、勝率はそこそこだったが、出会うデュエリスト達は皆、この古きリンクヴレインズの風景を目に焼き付けるように、この消えてしまうリンクヴレインズに最後の爪痕を残すように、全力でデュエルしてきた。

皆、リンクヴレインズが大好きな奴らだった。デュエルが大好きな奴らだった。楽しい事が大好きな奴らだった。

自分がサーフィン動画から見よう見まねで習得したトリックを見せれば、相手は当然真似をしてきた。

自分がロックを仕掛ける事もあれば、相手からロックを仕掛けて来る事もあった。

自分がデュエル楽しかったと言えば、相手も楽しかったと返してくれた。

 

そんな楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、管理者権限を取り戻したSOLテクノロジーにより全員の強制ログアウトが開始された。

 

最後に誰かが言った。

「ありがとう、リンクヴレインズ!」

それにつられて皆が思い思いの言葉を発そうとした瞬間、ログアウトは完了した。

これまで数多のデュエリスト達の遊び場であった、旧リンクヴレインズの終了であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あー強制ログアウトがちゃんと効いて良かったー。まさかログアウト不可能がハノイの塔消えても効果残るとか聞いてないよ。途中でログアウトした人は誰も居なかったけど、もしかしてあの時の全員ログアウト不可能状態だったのかなー。

というか途中から色んな人がログインしてきて楽しかったなー。まさか消える直前のリンクヴレインズにここまで人が集まって来るとか、やっぱ楽しすぎだろこの世界。」

 

ハノイの塔事件の後の自分のあらましはこうだ。

ログアウトできず、瓦礫による傷も深くどうしようもないなー。と思ってた自分を救ったのはDボードとのセット商法で買わされたアバターの応急処置プログラムであった。使用すればあら不思議、傷は塞がり痛みも消えた完全な健康状態になった。セット商法に騙されなかったらリアルに残る程のダメージを負っていたと思うと、本当に人生万事塞翁が馬である。

 

ただ、疲れは残っていたので嵐の中に突っ込んで高さを稼ぐのは自殺行為だなーとハノイの塔の下らへんでぐるぐる回っていたらPlaymakerとリボルバーのデュエルは終了し、ハノイの塔は止まった。データストームの中にいたんじゃ通信状況ダメダメなのは仕方ないが、それでも中継見たかったなー。

 

ハノイの塔が止まると共に、ハノイの塔周辺のデータストームの嵐も収まった。ログアウトを試してみたが、デュエルディスクはエラーを吐いた。ちなみにこれは後で調べたところによるとただのデュエルディスクの故障だったらしい。なんと間の悪い。いや良かったのか?どっちだろう。

 

まぁ、どうせすぐ強制ログアウト喰らうだろうとのんびり構え、最後の旧リンクヴレインズでも見て回ろうかなーと思い街を回っていると集まって来るデュエリスト達。なんでもリンクヴレインズのアップデートが来るらしいので旧リンクヴレインズの遊び納めに来たらしい。なんと命知らずな。本人達も本当に入れるとは思ってなかったトカ。

まぁ、それならやる事は一つ、デュエルである。

ビルに当たった逆風を使ったトリックで遊んだり、魔封じ突破されて笑ったり、ゴードングラットンダイーザのコンボで攻撃力6000を決めて来る猛者がいたり、トラップのみの赤一色デッキ使いとぶつかったり、本当に色々な事があった。

SOLテクノロジーがアップデートを告知してからの30分間、俺達は俺達の遊び場で思う存分遊んだのだ。

ただ一つ、後悔している事があるとするならば。

母さんへの言い訳、考えるの忘れてたという事だろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

母は、ものすっごく怒っていた。

その原因は単純、息子が危ない事をしに行ったから、ではなく危ない事が終わった後、すぐに帰ってこなかったからだそうだ。

そりゃログアウトできなかったから仕方ないねん、と思わなくはないがそんな事は女性の感情論の前では些細な事。問答無用で正座である。

 

ただ、どんな説教よりも

 

「お母さん、天頂がもう戻ってこれないんじゃないかって物凄く心配したんだからね!」

 

という当たり前の事が一番心に響いた。そんな子が無断で30分くらいリンクヴレインズで遊んでいたとあらばそれは怒るのも無理はないだろうと、頭では考える。だが、それにしても10歳の子供に正座を強制するのは体罰とかで訴えれるのではなかろうか。まぁ、そんな予定は無いのだが。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

遊戯王VRAINSはまだ一年目の放送分が終わっただけだ。これから2年分の密度の大事件がリンクヴレインズを襲うだろう。正直不安で仕方ない。10年生きてきて、原作知識はかなり曖昧になっているのだ。

が、これはヤバイとは思っていない。だって自分はただの一般人これから先の未来で原作と関わることになるとしても、それは所謂ちょい役程度の量であろう。だったらこの世界に生きる人間として感じるままに生きてみても良いのではないか、そんな風に思えるようになってきた。

 

そう思えるようになった原因が、ハノイの騎士大襲撃の日の男の人と、ハノイの塔事件の日のカエルと鳩だというのが、自分のモブさを際立てるだろう。もし、この世界の作者がいるとするならば、主人公である俺には女の子を助けるために走り出させるはずだ。だってそっちの方が見栄え良いしね。

だから自分は自分の手の届く範囲で人に親切にし、心に響いたときは他を考えずに走り出す。自分はモブかも知れないが、そんな当たり前の生き方をして良いはずだ。そう思えるようになってきた。

 

さぁ、取り敢えず一つの節目は終わった。ので、一般中堅カリスマデュエリストたる自分のするべき事は一つだ。最後の30分間で撮れた動画を編集して投稿するのだー。広告収入のためにね!




主人公設定
結城天頂/Stargazer
主人公の容姿はモブ、それしか決めていない
アバターの容姿は整っている14歳くらいのイケメン。ただしリンクヴレインズでは皆イケメンなので逆に没個性に。ネトゲあるあるである。

アバター名Stargazerの由来は文字通り"星を見る人"。テラナイト使いだからと割と安直に決めた。が、鬼畜星の異名が自分の中で強くなりすぎたのでアバター名ではあんまり呼ばれないキャラに。
まぁ似た例に「融合じゃねえユーゴだ!」というのもあるし良いかなーと。

主人公は自分は画面に映らないモブだと断言しているが、実は原作キャラへの転生憑依。憑依対象は山本先輩達を妨害した子供Playmaker、実はちょい役転生である。年齢が最初に決まっていたのはそのため。
子供Playmakerの間違っていても持っている確かな正義感から主人公の親を警察官に設定。
転生に戸惑い、生きる道を見失っていた主人公を導いたのが父の言葉「今、自分に出来る事をするんだ。それだけで良い。」そんな言葉を自分の中心に置いているから割と人助けを躊躇わない。
ちなみに、主人公に友達が出来ない、というか友達を作らないのも自分が転生者だから。そんなどデカイ秘密を持ったまま友達付き合いできるほど器用な主人公では無いのです。

使用デッキをテラナイトにしたのは単純に作者の好きなデッキで、強力なワンパターンと多彩な戦術を両立できるから。ライフ8000だと多彩であるが強くはない辺りが所詮ファンデッキ。だが息切れ無しで仕留め切れる4000ルールだと割ととんでもないデッキになった気がする。特にシャム君とか。


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新生リンクヴレインズについて

ヒロアカの方が1段落したのでこっちに戻ってきました。
空白の三ヶ月とかいうこの小説にとって都合の良すぎる展開がやってきたのでしばらくはただ単にデュエルするという本来のテーマで物語を作っていきたいと思います。
まぁ、ヒロアカのプロット作成作業とかもあるし、原作に追いついてもいけないので暫くは不定期更新になると思います。ご了承下さいな。


リンクヴレインズは変わった。

ハノイの塔事件での大崩壊によって、リンクヴレインズは大リニューアルを迎えた。

1つ、街並みがもの凄く綺麗になった。前のリンクヴレインズがスラム街に思えるレベルだ。明度が違うぜ。

2つ、スピードデュエルが正式に取り入れられた。一応ではあるが、旧リンクヴレインズにおいてスピードデュエルは実は違法であったのだ。Go鬼塚とPlaymakerとのデュエルがあって以降は有名無実とかしていたが。また、スピードデュエルでの転落はリアルに影響する程のダメージなのでその辺の安全性が確保できていなかった旧リンクヴレインズでは自己責任でね!という話だろう。

新生リンクヴレインズではその辺の安全性をルートからの落下を自動で戻してくれるマリオカートみたいな機能が追加され、ヤバそうなクラッシュには体にダメージが行く前に強制ログアウトが発生するようになった。また、スピードデュエルのコース周りにビルがなくなったため、ビルとのクラッシュの危険性は格段に減った。

ただしそのせいで自分が最後の30分で見せた数多のトリックはその殆どが実現不可能となったのだが。

そして3つ目、リンクヴレインズを救ったヒーローPlaymakerが指名手配された。まぁ原作通りなら彼は今から三ヶ月はログインする事は無いのでその辺は気にしなくていいだろう。

 

さて、新しいリンクヴレインズではDボードもリニューアル、安全性を確保する数多の機能が追加され、以前のDボードの使用は不可能となった。まぁ、以前のDボードは在野のプログラマが勝手に作った海賊版であり、新生リンクヴレインズのDボードはちゃんとしたプログラマの作ったライセンス品である。ちゃんとしたライセンス品使ってねという話だろう。

ちなみに自分が買ったのはST-01というモデルのDボードだ。ポイント2000とプレイメイカーモデルやブルーエンジェルモデルよりも安かったというのもあるが、星をイメージする黄色のカラーリングが気に入ったのだ。

 

さて、Dボードは持った、デッキは持ってる、良い風が吹いている。

三拍子揃ったスピードデュエル日和だ。やる事は一つだろう。

 

「さぁ、新生リンクヴレインズ最初のスピードデュエルッ、楽しんで行くぜ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「"Stargazer"だ、今日は良い風だな!」

「"ロックラック"だ、こんな日だ、やる事は一つだよな!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「先行は貰った!俺はインスペクト・ボーダーを召喚!カードを3枚伏せてターンエンドだ!」

「メタビートか!だがいきなり手札を使い切って良かったのか?」

「スピードデュエルは一撃で終わるのが常ッ、手札を惜しんでいられるかよ!」

「スピードデュエルの定石を分かっていやがるッ!お前、前にもやってた奴だな!」

「そういうお前こそ!Dボードに乗るのが様になってるぜ!」

「ありがとう!俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。まずはその伏せカードを退かす!速攻魔法ツイン・ツイスター手札1枚をコストに、お前の伏せカード2枚を破壊する!中央以外の2枚を破壊!」

「破壊されたのは醒めない悪夢とロケットハンドの2枚だ。」

「メタビートのタイプはインスペクト・ボーダーを守って勝つタイプか...

それならこの攻撃パターンで行く!俺は星因子(サテラナイト)ウヌクを召喚!」

「インスペクト・ボーダーの効果適用状態では、儀式、融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラム、リンク、それぞれの種類のモンスターの種類×1回しかモンスター効果は発動出来ない。いま、互いのゾーンにこれらのカードは存在しない。よってそのモンスターは効果を発動出来ないぜ?」

「知ってるよ。だがその効果は魔法罠には対応していない!俺はウヌクに装備魔法最強の盾を装備!攻撃力をウヌクの守備力分1000ポイントアップさせる!」

「攻撃力がインスペクト・ボーダーの2000を超えてきたか!だが俺にはまだ伏せカードがある。どうする?」

「伏せカードは怖いが、今は攻める時!カードを1枚伏せて、バトル!ウヌクでインスペクト・ボーダーを攻撃!」

「残念ながら、さっきのツインツイスターは外れだぜ!トラップ発動、破壊輪!お前のウヌクを破壊するッ!その後、俺、お前の順番で破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!」

 

ロックラック LP4000→2200

Stargazer LP4000→2200

 

「俺にもう攻撃できるモンスターはいません、ターンエンドです。」

「さぁ、モンスターが来れば俺の勝ちだ!俺のターン、ドロー!...このままバトル!インスペクト・ボーダーでダイレクトアタック!」

 

Stargazer LP2200→200

 

「まだ運は俺にあるみたいですね!」

「それでもお前のライフは風前の灯火ッ!状況は以前俺の有利だ!」

「伏せカードは一枚、このドローで全てが決まるッ!俺のターン!」

 

Dボードを操作、左に一度ボードを向け右に重心をかける。そして右回りにボードを一回転させ、そのままデッキトップに手を置いて勢い良くッ!

「ドロー!」

「凄え、回転しながらドローしやがった!逆風もないこんな空中でッ!

だが、トリックはドローに関係しない!この布陣を破れるカードは引き込めたか?」

「お前の次のドロー次第さ!お前の手札、2枚目のインスペクト・ボーダーだろ?」

「何⁉︎...どうしてわかった。」

「メタビートデッキの基本はセットカードでの妨害です、妨害系のカードなら迷わずセットする筈です、よって魔法罠の可能性は無い。次に俺にトドメを刺さなかったことから召喚できるモンスターでも無い。つまり考えられるのは、今の状況では召喚できないモンスターであるということ。よって、ほかにモンスターが存在する時には召喚できない効果を持つインスペクト・ボーダーだと断定できたんです。」

「はっ、凄い推理力だな。だがわかったとしてもこの盤面を打開出来なきゃ変わらないぜ?」

「行くぞ、スタンバイ、メイン。俺は星因子(サテラナイト)ベガを通常召喚!」

「インスペクト・ボーダーの攻撃力は2000だ、まだ届かないッ!」

「いいや、倒すピースはもう揃っている!トラップ発動リビングデッドの呼び声!墓地のウヌクを特殊召喚する!」

「...モンスターが2体、来るか!」

「俺はウヌクとベガ、2体のテラナイトモンスターでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4!煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!」

「攻撃力2600のモンスターか!」

「バトルフェイズ!ヴァトライムスでインスペクト・ボーダーを攻撃!"ヴァトライムス・チャージ"!」

 

ロックラック LP2200→1600

 

「俺はターンエンド。さあ、運命のドローですね。」

「俺のターン、ドロー!俺はインスペクト・ボーダーを召喚、カードを1枚伏せてターンエンド。」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。俺は装備魔法、星輝士(ステラナイト)の因子を発動!ヴァトライムスの攻撃力を500アップさせる!バトルフェイズ!ヴァトライムスでインスペクト・ボーダーを攻撃!」

「残念ながらまたまた伏せカードは大外れさ!トラップ発動、砂塵のバリア-ダスト・フォース-!攻撃モンスターを全て表示形式変更不能の裏守備表示にする...何⁉︎」

星輝士(ステラナイト)の因子の効果適用!このカードを装備したモンスターは相手のカード効果を受け付けない!よってダストフォースは無効!ダメージは受けて貰う!」

 

ロックラック LP1600→500

 

「俺はこれでターンエンド。メタビートでは1枚で状況を打開するカードはあまりありません。どうします、サレンダーしますか?」

「いいや、最後まで足掻かせて貰う!ドローフェイズにスキル発動!"トリプルチェック"!ドローフェイズにデッキトップから3枚を公開し、通常ドローの代わりに一枚を手札に加える!

1枚目、フォッシル・ダイナパキケファロ!

2枚目、紅蓮魔獣ダ・イーザ!

3枚目、ロケットハンド!

畜生、俺に盤面を打開するカードは無い、その上トリプルチェックで見たデッキはそのままの順番で元に戻る、よって俺にこの盤面を返す手段は少なくとも3ターン後のドローにかけるしかないが、それまで俺のライフは持たないだろう。だが、サレンダーはしない!スキルの効果により俺はパキケファロを手札に加える。

モンスターを1体セットして、ターンエンドだ。」

「セットモンスターはパキケファロ、リバースした時に特殊召喚モンスターを全て破壊する効果を持つモンスターですね。」

「本当に良く知っているな、だが通常召喚したモンスターには効果は及ばない。お前がドローするのがモンスターなら俺の負けだな。」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。ドローしたのはモンスターじゃありません、でも、このデュエル俺の勝ちです!

ヴァトライムスの効果発動!手札の神聖なる因子とオーバーレイユニット一つを使い、光属性テラナイトを重ねてエクシーズ召喚する!"スターライト・エクシーズ"!現れろランク4!星輝士(ステラナイト)デルタテロス!」

「星を司る戦士のモンスター...そうか何処かで見た顔だと思ったが、あの時の勇気あるデュエリストだったか!デュエルできて光栄だよ!」

「広告効果狙った訳じゃないですけど、俺の名前広まらなさすぎるのは何故なんでしょうねー。いや理由は知っていますけど。

さて、デルタテロスの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのカード1枚対象に取りを破壊する!俺はセットモンスターを選択!"デルタ・ドライブ"!」

「セットカードは当然パキケファロだ。発動は無く破壊される。」

「行くぞ!バトルフェイズ!デルタテロスでダイレクトアタック!"デルタ・ブレード"!」

 

ロックラック LP500→-2000

 

「ありがとう、良いデュエルでした。」

「こちらこそありがとう。楽しかったよStargazer!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あのハノイの塔事件の際、俺は報道陣の目の前で自身の名を名乗るという超売名行為を行った。決して意図してやった訳では無いが。

だが、自分のカリスマデュエリストランキングが急上昇したかといえばそうでは無い。

中継見ていた人曰く、自分が名乗ったタイミングで狙ったかのようにノイズが発生してあの格好いい名乗りはかき消されてしまったのだそうだ。嘘だろ承太郎。

それでも自分を知っている人が多少は拡散してくれたのだそうだが、そんな細かい事よりリンクヴレインズのアップデートという超一大イベントである。勇気ある没個性アバターのことは忘れ去られてしまったのでした、まる

課金してアバターをもっと個性的なのに変えようかとも思うが、Dボードの新調という予想外の出費により懐にそんな余裕はない。

まぁ派手で格好いい尚且つ安いというアバターを想像できない自分のイメージ力の無さが一番の原因なのだが。

 

原作が再開し、Playmakerがリンクヴレインズに戻ってくるまであと3ヶ月、自分は思う存分この新生リンクヴレインズという新しいデュエリスト達の遊び場を思う存分楽しんでいたのであった。

 

 

 




前話書く時に調べたサーフィンのトリックが全て無駄になるとは思いませんでした。まさかスピードデュエルのコースがあんなに開放的になるなんて...
まぁそしたらスピードデュエルで出来そうなオリジナルのトリックを考えるだけなんですけどね!

4/16 主人公の口調を修正しました。見返してみると思った以上にヒロアカの方の主人公に引っ張られていてびっくりです。多作品抱えてる作者さんは一体どうやってこの現象に対処しているのかとても気になります。


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カード探索に行ってみよう!

調べてて思いました。メタファイズはもっと能動的に使える展開補助のカードが出たら化けそうなテーマだなーと。カード効果強いの揃っているのに条件がなかなか満たせないせいで毎ターンぶっぱがやり辛いですねー。
そんな訳で今回のお相手はメタファイズです。


新生リンクヴレインズでは、新たに様々なサービスが追加された。

前話で軽く話したDボードショップにアイテムショップ、デジタルカードショップなどだ。この辺りはまだ納得だ。

新生リンクヴレインズでは、デュエルするごとに少量であるがポイントが貰える。課金すれば大量に貰えるがそれは今は置いておこう。

つまり新生リンクヴレインズでは、デュエルがそのまま金になるのだ。運営のSOLテクノロジーはこんな制度にして大丈夫だろうか、疑問である。

つまりリンクヴレインズは相変わらずデュエリストの天国と言えるだろう。そんなリンクヴレインズで物議を醸している噂がある。

 

曰く、「カードは拾った。」

 

新生リンクヴレインズでは、なんと、フィールドのどっかしらにランダムでカードが生成され、それを拾うことでお金をかけることなくデッキを強化できるらしいのだ。

 

そんな噂を間に受けて、自分は新生リンクヴレインズの街をのんびり散歩しつつ、カードを探しているのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「こんな脇道に人がいるとはな、迷子か?」

「迷子だったらセントラルステーション目指しますよ。自分はカードを探しに来たんです。」

「へーお前もか!何かの縁だ、一緒に探さないか?」

「良いですね、"Stargazer"です。短い間ですが、よろしくお願いします。」

「おうとも、"メタバード"だ、宜しくな。」

 

「カードが落ちているって噂は聞いたんだが、まだ実物は見た事が無いんだ。お前はどうだ?」

「フレンドに見つけた!って人がいたぐらいですねー。なので、少なくともカードが落ちているってことは信用できると思いますよ。」

「そりゃあ吉報だ、落ちているってんならそのうち見つかるだろ。」

「あ、フレンドで思い出しました。メタバードさん、フレンド申請どうぞ。」

「こりゃどうも。Stargazer、こっちからもフレリクだ。」

「どうもです。さて、俺は路地の右側を探しますんで、メタバードさんは左側をお願いします。」

「おう、良いぜ。...抜け駆けするなよ?」

「正直、落ちているカードがブラマジとかだったらしない自信はないです。」

「ハッ、そりゃ言えてるな、まぁそんなレアカードが落ちている訳ないから大丈夫だろ。」

「ですねー。フレンドも拾ったカードは進化の繭だったそうですから。」

「進化の繭って、オイ。グレートモスとかまともなデュエリストなら使わないだろ。」

「最近は超進化の繭ってカードが出たお陰で、グレートモス出すだけなら結構簡単にできますよー。その場合、進化の繭は使われる事は無いですけど。」

「へー、物知りだなStargazer、アカデミアの生徒とかか?」

「リアルの詮索はマナー違反ですよー、メタバードさん。」

「そりゃ悪かった、つい気になってな。」

 

そんな会話をぐだぐだしていたら、メタバードさんは急に足を止め、目を凝らして何かを見た。

 

「...オイ、あのゴミ箱の裏、何かあるぞ!」

「もしかして、カードですか⁉︎」

「分からん、行ってみよう!」

 

2人が行ったそのゴミ箱の裏には、青く輝くエフェクトを発しているカードがあった。

 

「へー、カードってこんな風に落ちているんですね。スクショ撮らなきゃ。」

「どうせだし俺たちも一緒に映ろうぜ。」

「良いですね。それじゃあこの辺で肩組みましょうか。」

 

そうして、男2人が肩を組んでいる上に青いエフェクトのカードがあるという謎のスクリーンショットはこの世に誕生した。

 

「あと、情報共有用に普通にスクショパシャりと。さて、中身は何でしょうか!」

「どれどれ、ネクロフェイスか!地味に欲しかったカードなんだよ。」

「それならはい、どうぞ。幸いにも俺のデッキを強化するカードではありませんでしたから。」

「そいつは有難い。制限カードだから入手もそれなりに難しくてな、ポイントで買おうかとも思ったんだが、微妙に高くて手が出せなかったんだよ。」

「納得です、Dボード割と高かったので自分も懐に余裕はないんですよねー。」

「お、Stargazerもボード持ってるのか!それならどうだ?ネクロフェイスで強化された俺のデッキ、味あわせてやるよ!」

「ちょうど良くここはスピードデュエルのコースの真下ッ!受けない理由は無いですね!」

 

2人はDボードに乗り、風を掴んで上昇をして行った。

 

「さぁ!」

「行くぜ!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「先行は俺だ!俺は手札から、封印の黄金櫃を発動、デッキからネクロフェイスを除外する!この効果で除外したカードは2ターン後に俺の手札にやってくる。が、それが狙いじゃない!ネクロフェイスのさらなる効果、このカードが除外された時、お互いにデッキトップ5枚を除外する!

1枚目、メタファイズ・ファクター

2枚目、メタファイズ・デコイドラゴン

3枚目、メタファイズ・ダイダロス

4枚目、アシンメタファイズ

5枚目、ハーピィの羽箒

だ!」

「俺もデッキトップ5枚を除外!

1枚目、星因子ウヌク

2枚目、天架ける星因子

3枚目、神聖なる因子

4枚目、ツイン・ツイスター

5枚目、最強の盾

です!

メタファイズデッキ、除外を多用し強力なモンスター効果でフィールドを薙ぎ払うデッキですね。次元の裂け目やマクロコスモスを無理なく積めるデッキでもある、相性が悪いですかねー。しっかし凄い落ちですねー、除外利用のメタファイズがロクに居ないとか。」

 

「うるせえ、たまにはこういう時もあるわ。にしても本当にカードを良く知っているな。魔法カード、おろかな副葬を発動、仁王立ちを墓地に送る。そしてメタファイズ・デコイドラゴンを召喚。ターンエンドだ。」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ。」

「スタンバイフェイズに除外されたダイダロスの効果発動、このカードをデッキに戻しメタファイズを除外する、俺はメタファイズ・タイラント・ドラゴンを除外」

「メインフェイズ。俺は星因子(サテラナイト)ベガを召喚、効果により手札のテラナイトを特殊召喚する。現れろ星因子(サテラナイト)デネブ!デネブの効果発動、デッキからテラナイトモンスター、星因子(サテラナイト)アルタイルを手札に加える!

俺は、デネブとベガ、テラナイトモンスター2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4、煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!

ヴァトライムスの効果発動!手札1枚とオーバーレイユニット一つを使い、光属性テラナイトを重ねてエクシーズ召喚する!"スターライト・エクシーズ"!現れろ星輝士(ステラナイト)デルタテロス!」

「星を司る戦士のモンスター、そうかお前あの時の奴か!中継見てたぜ!」

「正直もっと有名になっても良かったと自分では思います。あのノイズさえ無ければッ!

...デュエルを続行します。デルタテロスの効果発動!オーバーレイユニット一つを使い、フィールド上のカード1枚を対象に取り破壊する!俺はメタファイズ・デコイドラゴンを選択!"デルタ・ドライブ"!」

「クソ、流石の知識量だな、デコイドラゴンの効果に引っかからないとは。だがダメージは防ぐ!デコイドラゴンを対象に墓地のトラップ仁王立ちを除外し発動!このカードの効果によりこのターンお前のモンスターは全てデコイドラゴンに攻撃しなければならない!」

「だが、デコイドラゴンがフィールドからいなくなるため、俺のモンスターはこのターン攻撃することはできなくなるッ!」

「よって、このターンの攻撃は無しだ。」

「なかなかやりますねー。カードを1枚伏せて、ターンエンド。」

「ここは勝負を賭けるべき!俺のターン、スキル発動!"アタック・チャレンジ"!ドローフェイズにドローしたカードがモンスターカードだった場合相手フィールドのモンスターの攻撃力を全て1000ポイントダウンさせる!ただしモンスター以外を引いたとき、俺は強制的にターンエンドとなる!」

「なんていうギャンブルスキルッ!だがリターンは大きい!」

「そう、このドローが運命を決める!行くぞ...ドロー!俺の引いたモンスターは、メタファイズ・デコイドラゴン!」

「スキル成立により、デルタテロスの攻撃力は1000ポイントダウンする。だが、メタファイズ・デコイドラゴンの攻撃力は300、そのままじゃあデルタテロスとは相打ちにすらならないッ!」

「だからこそ、次の手が輝くのさ!俺のスタンバイフェイズ、除外されたタイラント・ドラゴンの効果発動!このカードをデッキに戻し、手札のメタファイズを特殊召喚する!現れろレベル8メタファイズ・ネフティス!ネフティスの効果発動!メタファイズによって特殊召喚された場合、セットされている魔法罠を全て除外する!」

「ここを止めれば次の手はもう出ない!止めさせて貰います!デルタテロスを墓地に送り、カウンタートラップ、神聖なる因子を発動!ネフティスの効果を無効にし破壊する!」

「何、このタイミングでカウンターだと⁉︎こっちの攻撃のキーカードを確実に止めてくる、なんて鬼畜なプレイングだ...」

「至って普通のプレイングだよ!...デルタテロスの効果発動!フィールドから墓地に行った場合、デッキからテラナイトをリクルートできる。現れろベガ!ベガの効果発動、手札のアルタイルを特殊召喚!アルタイルの効果発動!墓地のデネブを特殊召喚!デネブの効果発動!デッキからアルタイルをサーチ!」

「クソ、俺はデコイドラゴンを召喚しターンエンド。」

「...デコイドラゴンはあくまで相手依存のモンスター、主軸にするには少し遅いのでは?」

「そうだな、後でデッキ構築手伝ってくれるか?」

「その程度、別に構いませんとも!さて、俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。俺はデネブ、アルタイル、ベガの3体のテラナイトでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4星輝士(ステラナイト)トライヴェール!トライヴェールの効果発動!エクシーズ召喚に成功した場合、このカード以外の全てのカードを手札に戻す!"トライ・フォース"!」

 

「俺のデコイドラゴンは手札に戻る。だが、まだ総攻撃力は2100ッ!俺のライフは残る!なら次のドローに運命を賭けるまで!」

「残念ですが、お前に次のターンは無い!バトルフェイズ!トライヴェールでダイレクトアタック!」

 

メタバード LP4000→1900

 

「そして速攻魔法、天架ける星因子を発動!トライヴェールをデッキに戻し、テラナイトモンスター、星因子(サテラナイト)リゲルを特殊召喚する!」

「攻撃力はジャスト1900...畜生、届かなかったか」

「リゲルでダイレクトアタック!」

 

メタバード LP1900→0

 

「完敗だ。強いな、Stargazer。」

「ありがとうございます、楽しいデュエルでした。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

メタバードさんは、最近リンクヴレインズを始めた新参者だったらしい。その割にDボードの扱いは結構なものであった。新しいDボードの扱いやすさが凄いとは本当の話であったのだろう。

メタバードさんにアドバイスした結果、メタバードさんはデコイドラゴン、ラグナロクの2体の効果でメタファイズを展開する型から、フィールド魔法メタファイズ・ファクターによるリリース無視展開をメインにする型に切り替えた。

そうやって大型を多くした方がネクロフェイスでのリターンも大きくなるだろうと言ったら即決であった。せっかく拾ったカードだ、使いたいのは凄くわかる。

 

そんな出会いがあった日がありましたとさ。今日もリンクヴレインズは平和である。

 




メタバードさんのネクロフェイスでの落ちが弱かったのは、デコイ、ラグナロクを中心に展開していく型だったため、上級メタファイズをあまり多く入れていなかったからです。という作者の言い訳。タイムラグのある数多の効果を使い切れるデュエルスフィンクスが作者に足りなかったのです...
ただ、一つ思うのは、モンスター効果確認しない人が多いアニメ世界では、デコイドラゴンはとんでもない強カードに化けそうな気がします。

-追記-
メタファイズの次のスタンバイフェイズって、相手ターン含めるんやで、との指摘を受けましたのでデュエル内容を若干修正しました。ラグナロクの出番は犠牲になったのだ...
-追記2-
立ちはだかる強敵は攻撃宣言時やで、とのご指摘を受けたので、急遽副葬仁王立ちのコンボに変更しました。副葬はマクロ下ならメタファイズアセンションを能動的に除外できるのでそう無理矢理なカードでは無い筈ッ!


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勝者へのトレードとマナー

初動止めないととんでもない盤面になるあたり海皇水精鱗って割とカッ飛んでますよねー、流石9期テーマ狂ってる。
そんな訳で今回のお相手は海皇水精鱗です。マスターデュエルではないのでサラキ重装バハシャ餅の構えはないです。


新生リンクヴレインズでは、発表された時とあるルールが物議を醸した。

勝者によるトレード、つまり擬似アンティルールの強要である。

発表された当時はリンクヴレインズ終わったなとか言われてるレベルの発表だったが、実際のところはどうなのか。

 

「トレードだ!俺のハーピィの羽根帚をくれてやる、貴様のハーピィの羽根帚をよこせ!」

 

だいたいこんな感じである。

 

理由としては主に2つある。

まず一つ目、使うデッキテーマが異なるのだからトレードといっても欲しいカードなど汎用しかないという事。デッキに必要なカードなどリンクヴレインズに来るようなデュエル厨なら当然完備しているものだ、よって汎用カード代表のハーピィの羽根帚が人々の手を渡り歩く通称帚交換が発生するのだ。

もう一つはネット社会ならではの闇だ。酷いシャークトレード、つまりレート差の非常に大きいトレードをしたら晒されるのだ画像と使用デッキが。

使用デッキがわかっていてかつ鮫トレを強要する悪者、そんな奴に躊躇するようなネット民はいない。メタデッキを持った集団によるリンチ発生待ったなしである。

 

そんな訳で、擬似アンティルールなんて非道なルールが適用された後でも、新生リンクヴレインズは今日も平和である。

 

まぁ、使用デッキに過剰なレアカードを入れないという暗黙の了解がカリスマデュエリストの中で広まったのがこのルールの1番の影響だろう。俺の開闢は日の目を見ることなくストレージの肥やしとなったのだ...

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「"ウォーターフォース"だ、デュエル良いか?」

「"Stargazer"だ。ウォーターフォース?ちょっと待ってくれ...オーケーだ、受けて立つ!」

「なんか不穏なものを感じたぞ今の一瞬。」

「気にするな。」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「俺の先行!俺は手札から、深海のディーヴァを召喚!効果によりデッキからレベル3以下の海竜族モンスターを特殊召喚する!」

「それを通すと2ハンデスルート、当然止めるさ!手札の灰流(はる)うららの効果発動!このカードを手札から捨て、デッキからの特殊召喚を無効にする!」

「何⁉︎...さてはお前、俺の晒された動画見やがったな!卑怯者め!」

「鮫トレ用のゴキボールをデスティニードローするのはガチで笑ったわ。あとわざわざ鮫トレ用のカードをデッキに入れるお前ほど卑怯者な訳では無いと思うぞ?」

「ぐうの音も出ねぇ!...このままターンを渡すとワンキルルート間違いなし、それなら使わせてもらうぞ!エンドフェイズにスキル発動!"ウォーター・パワー"!デッキの水属性モンスターを除外して発動!フィールドの全ての水属性モンスターの攻撃力を次の自分のターンのスタンバイフェイズまで除外したモンスターのものと同じにする!俺が除外するのは水精鱗(マーメイル)-メガロアビス!攻撃力は2400だ!これでターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。星因子(サテラナイト)ウヌクを召喚、効果でデネブを墓地に。速攻魔法天架(あまか)ける星因子(サテラナイト)!テラナイト一体をデッキに戻し、デッキから違うテラナイトを特殊召喚する!ウヌクをデッキに戻し、現れろ星因子(サテラナイト)アルタイル!アルタイルの効果発動!墓地の星因子(サテラナイト)デネブを特殊召喚!デネブの効果発動!デッキから2枚目のアルタイルを手札に加える。

行くぞ!俺はテラナイトモンスター、デネブとアルタイルでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4!煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!」

「攻撃力2600のモンスター...2400は軽々と超えてきたか!」

「ちなみにスキルなかったらワンキルルートでもあった。鮫トレ狙いの癖にデュエルの勘は良いんだな!」

「うるせえ、鮫トレ狙いはしたけど未遂だから良いだろうが!」

「未遂でも駄目だと思うぞ?だから晒されてるんだし。いやあれはお前のデスティニードローが神ってたのもあるだろうがな。」

「あのドローのお陰で目が覚めたんだ。デッキに不純物はもう入れない!」

「当たり前だろそんなこと、というか鮫トレ狙いの方を反省しろよ...デュエルを続行する。手札1枚とオーバーレイユニットを1つ使い、ヴァトライムスの効果発動!"スターライト・エクシーズ"!現れろランク5!星輝士(ステラナイト)セイクリッド・ダイヤ!カードを1枚伏せて、バトルフェイズ!セイクリッド・ダイヤで深海のディーヴァを攻撃!"ダイヤモンド・ブラスト"!」

「攻撃力はたった2700、今の強化された深海のディーヴァを倒しても俺には300しかダメージは入らない!」

 

ウォーターフォース LP4000→3700

 

「ターンエンドだ。」

「俺のターン、ドロー!良し、俺は手札からワン・フォー・ワンを発動!手札のモンスター1枚を墓地に送り、デッキからレベル1モンスターを特殊召喚する!現れろ海皇子ネプトアビス!」

「念のため言っておく、セイクリッド・ダイヤがオーバーレイユニットを持っている限りデッキからカードを墓地には送れない。よってネプトアビス第一の効果は発動できない。」

「何⁉︎このデッキのキーカードであるネプトアビスをメタって来たのか...なんて鬼畜なデュエルタクティクスだ。」

「おい、流石に鮫トレ狙いのやつに鬼畜って言われるほど酷いプレイングではないと思うぞ、オイ。」

「クソ、ネプトアビスが止められた事でこっちの戦術が狂った...プランBで行く!俺は海皇の狙撃兵を通常召喚!現れろ海の導くサーキット!召喚条件は魚族・海竜族・水族モンスター2体!俺はネプトアビス、狙撃兵をリンクマーカーにセット!リンク召喚!水精鱗(マーメイル)-サラキアビス!ターンエンドだ。」

「サラキアビスは相手ターンの好きなタイミングで手札を墓地に送れる、それにより手札の海皇の重装兵の効果でセイクリッド・ダイヤを破壊する気だな。」

「...俺の使うカードの知識が深すぎる、お前一体何者だ⁉︎俺を研究してきたメタデッカーか⁉︎」

「俺の名前はStargazer、ただのデュエリストだ!俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン!俺は手札から2体目のアルタイルを召喚!効果により墓地のデネブを特殊召喚!デネブの効果発動!デッキから最後のアルタイルを手札に加える!カードを1枚伏せて、バトルフェイズ!セイクリッド・ダイヤでサラキアビスを攻撃!」

「このタイミングで使わせて貰う!サラキアビスの効果発動!手札の重装兵を墓地に送り、デッキから水精鱗(マーメイル)を手札に加える!俺は水精鱗(マーメイル)-ディニクアビスを手札に加える!そしてこのタイミングで水属性モンスターの効果により墓地に送られた重装兵の効果発動!フィールド上の表側表示のカード、セイクリッド・ダイヤを破壊する!」

「デネブを墓地に送りチェーンして発動!カウンタートラップ、神聖なる因子!重装兵の効果を無効にする!よってセイクリッド・ダイヤの攻撃は続行!"ダイヤモンド・ブラスト"!」

 

ウォーターフォース LP3700→2600

 

「続けて行くぞ!アルタイルでダイレクトアタック!」

 

ウォーターフォース LP2600→900

 

「俺のライフは残った!次のドローに全てをかける!」

「...かける必要は無い。お前の手札はサーチしたディニクアビス一枚、次のドローによるが結果は見えた。このデュエルの結果は2パターンだ。」

「何を言っている?結果は常に2パターン、俺が勝つかお前が勝つかの二つだろ。」

「いいや、次のターンで俺が勝つか、その次のターンで勝つかの2パターンだ。俺の次の手が決まれば俺の勝ち、その手を防ぐカードを引いた場合、ディニクアビスは使えず次のターンのダイレクトアタックで終わりだ。」

「スカしやがって!やってみせろ、Stargazer!」

「ターンエンドだ。」

「俺のターン、ドロー!」

「お前のスタンバイフェイズにトラップ発動!リビングデッドの呼び声!墓地のモンスターを攻撃表示で特殊召喚する!」

「発動は無い!何が次の手で俺が終わるだ、ただの蘇生カードじゃねえか!」

「お前へのアドバイスは二つだ。一つ目、鮫トレ狙いなんてやめてもっと気楽にデュエルを楽しもうぜ?視野がグインと狭まってるのが俺には見えた。」

「...誰だって勝者によるトレードなんてルールが決まったら悪用を思いつくだろ。」

「それが視野が狭まってるって言ってるんだ。まともな考えならちょっと様子見てバレない方法が見つかってから行う筈だ。」

「お前俺に鮫トレ辞めろとか言ってる割に俺よりやろうとしてること鬼畜じゃないか⁉︎」

「例え話だよ、実際にやるとかの話じゃなくてな。そんなことも思いつかないほどお前は欲望に目が眩んでたって話だ。」

「...もう一つは何だ?」

「こっちはデュエルの話、墓地に行ったカードはしっかり確認しましょうって話だ!リビングデッドの呼び声の効果により、墓地からこのカードを特殊召喚する!現れろ、星因子(サテラナイト)シャム!シャムの効果発動!相手に1000のダメージを与える!」

「そんなカード、一体いつ墓地に...そうか、ヴァトライムスのコストか!」

「そういうこと!さぁフィナーレだ!くらえ1000のダメージを!」

 

ウォーターフォース LP900→-100

 

「畜生、完敗だ。」

「初手で展開を止めれなかったらどうなってたか分からないけどな。ありがとう、楽しいデュエルだった。」

「ああ、正直俺もちょっと楽しかった。でも勝ちたかったなぁ...」

「その悔しさは次のデュエルでな!」

「...さぁ、俺の負けだ!トレードをしやがれ!」

「潔いなお前...決まった!お前のハーピィの羽根帚を貰う!その代わり俺のハーピィの羽根帚をくれてやる!」

「お前...ありがとう、この羽根帚に誓うよ。もう鮫トレ狙いなんて卑劣な真似はしない。デュエルはお互いに楽しんで終わるのが一番だってことを、もう忘れはしない。約束する。」

「あ、それならアバター名は変えた方が良いかも。」

「...なんでだ?」

「ウォーターフォースって名前要注意デュエリスト名簿に晒されてたから、俺みたいな物好き以外デュエルなんて受けて貰えないぞ。」

「嘘だろ、俺鮫トレ一回も成功したことないんだぞ!その名簿のURL教えてくれ、どうにか消せないか試してみる。」

「おう、ついでにフレンド登録もぽいっと。んじゃ、またな!」

「おう、次は俺が勝つ!」

 

こうして、鮫トレ狙いの馬鹿が一人減ったとさ。

 




久々のこっちの更新です。何も考えないでデュエルだけでいけるこの小説は楽です。アニメのヴレインズは展開が気になる感じですが、展開が動くのは暫く先っぽいです。なので原作がある程度進むまでこの小説は空白の3ヶ月をサザエさん時空でやっていきます。
ヒロアカの方があるので、こっちは相変わらずの亀更新になりますけどねー。


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リンクヴレインズ散歩部(人呼んで辻斬り部)

久々投稿、遊戯王VRAINS2期のプロローグみたいな話です。

エマおばさんが無限泡影を使ってしまったため、その理由付けの為にちょっと原作と絡ませます。まずは新環境に躍り出たあのテーマとのデュエルから。
あ、スピードデュエルではないです。


リンクヴレインズ散歩部、それは未だ仕様がよくわかっていない新生リンクヴレインズを隅から隅まで観光ついでに調べ上げようという理念の元立ち上げられた団体である。

自分の知り合いの多いカリスマデュエリストの中堅勢は、新生リンクヴレインズのネタ探しついでに参加している。新生リンクヴレインズでの初デュエル相手の“ロックラック”さんが誘ってきた事で、俺はその存在を知ることとなった。

 

なんか面白そうで、特に拘束するような条件もなかったので気軽に参加してみた。

そのおかげで、新生リンクヴレインズのことについてはかなり詳しくなったという自負はある。なにせ、数は力だ。

 

アイテムデータの落ちている確率が比較的高い小島、実はすり抜けられて非合法っぽい雰囲気(合法)のアバターアイテムショップにつながる路地、新生リンクヴレインズの絶景スピードデュエルコースなど、俺1人では知れなかった事を知ることができたのは結構な収穫だと思っている。特にスピードデュエルコース、背景が動画映えするかって意外と数字の伸びにつながるのだ。

 

そんなわけで、今日はその絶景スピードデュエルコースでデュエルしようと思った所で、なにやら妙なアバターを見つけた。

 

カード収納型のデュエルディスク、炎を思わせる赤い衣装。そして何より、強者の気配。

 

そんなのを見つけたら声をかけない訳にはいかないだろう。

 

「どうも、何かお困りですか?」

「...ああ、初めてリンクヴレインズに来たものでな。なにをすれば良いのかわからないのだ。」

「おい不霊夢!」

「へー、ニュービーさんだったんですか。それなら、リンクヴレインズ散歩部が1人、このStargazerがこの世界を案内致しましょう!」

「...いいのか?そっちに得なんてないだろうに。」

「ええ、新しく来た人にもこの世界を楽しんでもらいたいってもんですよ。」

 

善意90%の笑みでそう伝える。残りの10%は、決闘者なら伝わるだろう。

 

「それなら、よろしく頼む。俺は穂村尊だ。」

「インターネットリテラシーの欠如ッ⁉︎」

 

そんな事に思考を割かれていたら、唐突の爆弾発言である。実名はやべーよ。

 

「...今のは無いと思うぞ、尊。」

「え、俺なんかまずいこと言ったか?」

「インターネットの中では個人情報が悪用されることが多いので、ニックネームみたいなものでお互いを呼び合うのがマナーなんですよ。実名が分かっているってだけでハッカー側からしたら凄い狙いやすい相手って事ですから。」

「...やべ、今のは聞かなかった事にしてくれ。」

「もちろんです。俺のログにはなにもありません。それでお兄さん。あなたのお名前は?」

「...思いつかねぇ。」

「...うん、とりあえずTさんと呼ぶ事にします。アバター名はステータスウィンドウの右下の設定アイコンから変えられるのでちゃちゃっとやっちゃって下さいな。」

「Tか、仮称としては悪くないな。」

「不霊夢、お前...」

「にしても、高性能なAIですね。貰いものですか?」

「あ、ああ。そんな所だ。」

 

そんな会話から、Tさんへのリンクヴレインズ案内が始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「まずはここ、セントラルエリアです。ここには情報の集まるセンターや、いろんな企業ショップがありますね。普通にリンクヴレインズを楽しむ分ならここで完結してもいいくらいですよ。イベントなんかも主にセントラルエリアでやられていますね。」

「イベントってーと?」

「例えば...あ、告知ありました。デュエルバンド Plant Planet の野外ライブがありますね。明日みたいです。」

「知らねぇなぁ...有名なバンドなのか?」

「あ、知り合いがボーカルやってるんですよ。このバンドは、主に植物族を多く作成しているカードメイカーさんのスポンサードを受けているんです。デュエルもバンドも一流ですよ。一見の価値はあると思います。」

「顔広いんだな、Stargazerは。」

「これでも、中堅カリスマデュエリストですから。」

 

ちょっとドヤ顔したところで次に行く。Tさんは今日は Den City に引越しの下見にやってきたとの事なので、あまりリンクヴレインズを歩き回れる時間はないのだ。現在も公共のアクセススポットからのログインをしているのだとか。

 

「じゃ、次は昇降機使いますね。」

「あの、奥にあるでかい奴か?」

「ええ。Dボードのない人はあれで各エリアを行き来するんですよ。」

「Dボードか...以前見た時とは違い、緊急用のプログラムが多く組み込まれているな。」

「ええ、新生リンクヴレインズへのアップデートにあたって、SOLがライセンス品を出したんですよ。まぁ、今でも凄腕のプログラマーなら自作出来るらしいんですけどね。」

「へー、出来るか?不霊夢。」

「誰に言っている。余裕だ。」

「仲良いですね、お二人さん。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここは、アッパーエリア。リンクヴレインズの上層部です。この辺は土地が高いので個人経営のショップとかは少ないですけど、見晴らしが凄い良いんですよ。なので最近はスピードデュエルするなら、トップエリアをスタート地点にする人が多いです。」

「でも、デュエルだろ?周りを気にしてる余裕とかあるのか?」

「分かってないですねTさん。一息ついたその時に見えた景色が綺麗だと、グッとやる気が出るじゃないですか。」

「そんなもんか。」

「浪漫って奴ですよ。Tさんもスピードデュエルやるようになればわかります。」

 

そんな風に説明する Stargazer 。この世界を思いっきり楽しんでいると分かるその姿からは、こちらを笑顔にする何かがある。そんな気がした。

 

だが、自分はリンクヴレインズに楽しみを求めてやってきたわけではない。自分の運命と向き合い、戦うためにやってきたのだ。

 

「不霊夢、Stargazerは良い奴だ。だから、離れないか?」

「戦いに巻き込みたくない。そういう気持ちか?」

「ああ、そうだよ。」

「だが、それならば尚のこと彼と同行するべきだと思う。少なくとも今日は。」

「なんでだよ?」

「理由は二つ。まず、彼は強い決闘者だ。Stargazerはカリスマデュエリストランキングの中堅どころをリンクヴレインズに入ってからずっとキープし続けている。それは、運による実力のブレがないという事だ。サイバース世界を破壊した敵が一人でない以上、実力者とのパイプは持っておいて損はない。」

「...もう一つは?」

「君が気付いていないからだよ。錆落としを安全に行えるのなら、それに越した事はない。」

 

不霊夢のその目は、真剣なものだった。まだ付き合いの短い尊にもそれは分かる。

 

「...とりあえず今日はお前を信用してやる。」

「ああ、そうしてくれ。」

 

「さ、Tさん。次は新生リンクヴレインズの目玉ですよ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

これまで、俺はふつうにリンクヴレインズ案内を楽しんでいた。故にこの行動には不自然さはないだろうと思う。もっとも、気付いて尚ついてきてくれているのならそれに越した事はないのだが。

 

「着きました、アンダーエリア!リンクヴレインズの下層エリアで、土地が安いので物凄い数の個人ショップがひしめいているリンクヴレインズの一番活気のある所です。ほら見てください、カードショップですよ。...ダークキメラと薔薇園のセット売りッ⁉︎」

「...攻撃力805とか計算めんどくせぇよなぁ。」

「そういうものか?」

「AIは単純計算速いですからねー。」

 

そんな会話をしながら、とあるパーソナルエリアへとTさんを誘導する。

 

そこは、ある種のブラインドスポットだ。奇特な所有者によりSOLテクノロジーの管理から外れた有料デュエルスペースとなっている。

 

「ここが、今日のメインイベントです。」

「何もねぇ、体育館みたいな所だな。」

「あ、Tさんはそこ待っててください。」

「んで、ここは何なん...ッ⁉︎」

 

いい感じの距離が離れた所で、Tさんにガチャで当たったアイテム“デュエルアンカー”を放つ。

 

「当然、決闘者のためのスペースさぁ!本名穂村尊ゥ!」

「テメェ、今までの観光案内はこのためか!」

「その通りだ、本名穂村尊!俺は一目見た時から、あんたとデュエルしたかったんだよ!」

「その本名穂村尊ってのやめろよ!」

「いや、ちょうど良いではないか尊。錆落としと言った意味はわかっただろう?」

「...不霊夢、お前気付いてやがったな?」

「ああ。ついでに言うなら、この程度のアンカー、解除する事は容易だ。」

「じゃあ早くやってくれ。」

「断る。」

「なんでだよ!」

「SOLの監視もない、観客もいない。そして負けても何もない。初戦としては、理想的だろう?」

「ついでに言うなら、Tさんのデッキ内容を誰かに言いふらしたりはしません。念書書いてもいいですよ?」

「だそうだ。」

「...あー、やりゃあいいんだろうやりゃあ!」

「その意気です!さぁ、行きましょうか!」

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

T LP4000 vs Stargazer LP4000

 

「先行は私たちのようだな。私たちの新デッキの力、見せてやろう!」

「ああ、行くぜ!俺は、転生炎獣(サラマングレイト)ガゼルを通常召喚!」

「サイバース族!レアいですね!」

「ガゼルの効果発動!召喚、特殊召喚成功時デッキから転生炎獣(サラマングレイト)を一枚墓地に送る。俺が送るのは転生炎獣(サラマングレイト)スピニー!そしてスピニーの効果発動!自分フィールドにスピニー以外の転生炎獣(サラマングレイト)がいるとき、墓地から特殊召喚できる!」

 

これでこの新デッキのエースカード、転生炎獣(サラマングレイト)ヒートライオへのアクセスが可能になる。そう思い笑みを浮かべたそのとき、待ったがかかった。

 

「ソリティアはさせない!スピニーの効果にチェーンして発動!増殖するG!」

「何ッ⁉︎」

「おニューのデッキの先行1ターン目で油断しましたか?悪いですがデュエルは二人でやるものですよ!チェーン2、増殖するGの効果が適用される!」

「チェーン1、スピニーが墓地から特殊召喚される。」

「そして、特殊召喚が成立した事で、増殖するGの効果。このターンTさんが特殊召喚するたびに俺は一枚ドローする。ちなみにこれは強制効果なので、あと34回特殊召喚できればあなたの勝ちですよ。」

「出来るかよんな事。」

「どうする尊。ガゼルの攻撃力1500とスピニーの守備力1500は決して頼れる数字ではない。かといってこれ以上の特殊召喚はStargazerにアドバンテージしか与えない。」

「いや、今の一手だけであいつが油断できない奴だって事はわかった。ここはもう一歩踏み込む!現れろ!未来を変えるサーキット!」

 

「召喚条件は、炎属性効果モンスター2体!ガゼルとスピニーをリンクマーカーにセット!リンク召喚!現れろ転生炎獣(サラマングレイト)サンライトウルフ!」

「サンライトウルフが特殊召喚された事で、一枚ドロー。」

「墓地から特殊召喚されたスピニーは、フィールドから離れたとき除外される。カードを二枚セットして、ターンエンドだ。」

 

「ふむ、まずまずだな。」

「どっから目線だよ、お前。」

「仲良いですね、お二人さん。」

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン!...まずは除去からですね。俺に一枚のドローを許してまでサンライトウルフをリンク召喚した理由は、リンクモンスターがいる事で発動可能になるカードがあるから。違いますか?」

「さて、どうだろうな。」

「ま、表情は崩れませんか。俺は、手札一枚をコストに、速攻魔法ツインツイスターを発動。対象は伏せカード二枚!」

「トラップ発動、サラマングレイト・ロアー!サラマングレイトリンクモンスターがいるとき発動可能、ツインツイスターを無効にして破壊する!」

「そりゃ、止められますか。しからば二の矢を放つまで!俺は、星因子(サテラナイト) ベガを通常召喚!ベガの効果発動!召喚成功時、手札のテラナイトを特殊召喚する。現れろ、星因子(サテラナイト) アルタイル!続けてアルタイルの効果発動!特殊召喚成功時、墓地のテラナイトを特殊召喚する。現れろ星因子(サテラナイト) リゲル!」

「一気にモンスターが三体並びやがった!」

「だが、攻撃力はサンライトウルフの1800を超えてはいない。攻撃力1900のリゲルとて、アルタイルの効果により守備表示だ。」

「楽観的ですね、不霊夢さん!特殊召喚成功時、リゲルの効果発動!テラナイト一体の攻撃力を500上昇させる!対象は当然アルタイル!」

「これで、アルタイルの攻撃力は2200!」

「さぁ、バトルです!アルタイルで、サンライトウルフを攻撃!」

 

「これが通れば大ダメージ、どうする?尊。」

「当然止めるさ!トラップ発動、サラマングレイト・レイジ!手札の転生炎獣(サラマングレイト) ファルコを墓地に送り、アルタイルを破壊する!」

「ファルコの効果は...あ、これヤベーやつだ。」

「さぁ、吹き飛びなアルタイル!」

「まぁ、避けるんですけどね!速攻魔法、天架(あまか)ける星因子(ステラナイト)アルタイルをデッキに戻して、デッキからデネブを特殊召喚する!」

「逃したか。」

「逃げられて良かったよ。ターンプレイヤーの俺の方がチェーンは先だ。チェーン1でデネブの特殊召喚時効果を発動。」

「チェーン2、ファルコの効果発動!このカードが墓地に送られた時、墓地のサラマングレイト魔法罠をセットできる!俺は、サラマングレイト・ロアーを再びセット!」

「デネブの効果で、デッキからアルタイルをサーチ。バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2に移行。」

 

「来るか、リンク召喚!」

「いや、残念ながらレトロな方さ!俺は、テラナイトモンスター、デネブ、ベガ、リゲルの3体でオーバーレイ!エクシーズ召喚、現れろランク4!星輝士(ステラナイト) トライヴェール!」

「エクシーズ召喚⁉︎」

「なんと!そんな技術を持っているとは、かなりのデュエリストだったか!」

「この世界では中堅ですけどね。」

「...広いんだな、リンクヴレインズって。」

「ああ、広いんだ。」

 

「じゃあ、続きと行きます!トライヴェールの効果発動!エクシーズ召喚成功時、このカード以外の全てのカードを手札に戻す!“トライ・フォース”!」

「...フィールド全滅かよ。」

「それに、トライヴェールにはどうやら手札破壊効果があるようだ。厄介だな。」

「...Tさんの残り手札は3枚。ロアーを打ち抜きたい所だが、どうやらサラマングレイトデッキの真骨頂は墓地利用にあるみたいだな。」

「おい不霊夢、俺たちのデッキのネタ速攻で割れてるぞ。」

「分析力、いや、デュエル経験の導く決闘者の勘といった所だな。末恐ろしいものだ。」

「末恐ろしい?」

「ああ。調べてみた所、Stargazerの本名は結城天頂。まだ小学生だ。」

「マジか⁉︎」

「いや、仕事はえーよ不霊夢さん。最新のAIっておっかねぇなぁ。」

「そちらにだけ急所を握られる訳にはいかないのでな。もののついでに調べておいた。」

 

数秒静寂が流れる。1/3の確実な勝利か、2/3の堅実な勝利か。

 

選択肢は2択。

 

「長考すいませんでした。俺は、ここはこう動く!トライヴェールの効果を使わず、オーバーレイネットワークを再構築!ランクアップ、エクシーズチェンジ!現れろ、ランク5!星輝士(ステラナイト) セイクリッド・ダイヤ!」

「ランクアップ⁉︎」

「セイクリッド・ダイヤはメインフェイズ2にテラナイトエクシーズモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚する事ができるようだ。そして、その効果は中々に強烈だぞ。」

「ついでに、こんなのを重ねてみます。装備魔法、星輝士(ステラナイト)因子(いんし)!セイクリッド・ダイヤの攻撃力を500上昇させる!」

「攻撃力3200!3000の大台を超えてきたか!」

「更に、相手のカード効果を受け付けなくなります。俺はこれでターンエンド。」

 

「なかなかに絶望的な状況だな、尊。オーバーレイユニットのあるセイクリッド・ダイヤがいる限りデッキからカードを墓地に送ることはできず、墓地のカードを手札に加える場合そのカードは除外される。私たちのデッキの展開ルートの大半を潰された。」

「だけど、ライフはまだ残っている!俺のターン...」

 

一つ息を吸ったあと、デッキトップを見つめる目に全力の力を込める。まるで、炎が宿ったかのように。それは、尊がずっと昔から続けている勝負所におけるルーティーン。

 

「ドロー!」

 

故に、そのドローで逆転のカードを引くのは、必然だったのだろう。

 

「来たか!」

「...これは、終わりましたかね?」

「ああ、このターンで終わらせる!俺はセイクリッド・ダイヤを...リリース!」

「まさかッ⁉︎」

「お前のフィールドに、怒炎壊獣(どえんかいじゅう)ドゴランを特殊召喚する!」

 

穂村尊は、ロスト事件という悪夢により幼少期に圧倒的な密度のデュエル経験を積んだ決闘者だ。穂村尊は、熱いハートとクールな思考を両立できる熟練のデュエリストなのだ。

故に、打開不可能と思われる盤面とて諦めるには値しない。

 

ただ、一つ誤算があるとしたら。

穂村尊は、ロスト事件の時にこの転生炎獣(サラマングレイト)デッキを使っていなかったという所だろう。

 

星輝士(ステラナイト)因子(いんし)は対象を失った事で墓地に送られます。」

「これで、俺の行動を防ぐカードはない!速攻魔法、転生炎獣の炎陣(サラマングレイト・サークル)を発動!デッキからサラマングレイトモンスターを手札に加える!」

「そのサーチ、止めさせてもらう!手札の、灰流(はる)うららの効果発動!このカードを手札から捨てて、デッキからのサーチ効果を無効にする!」

「手札からのカウンターッ⁉︎」

「その通り。ニューデッキの常ですが、自分の展開ルートばかりに気を取られて、相手の仕草を見落とし過ぎですよ。サラマングレイトデッキはサイバースデッキ。お手本がない以上1から10まで全部自分で考えなくてはならないんですから仕方ない所ではあるんですけどね。」

「...まだ、終わってない!モンスターを一枚伏せ、カードを一枚セット!ターンエンドだ!」

「俺のターン...ドロー!俺は、手札から星因子(サテラナイト) シャムを通常召喚!シャムの効果により、1000ポイントのダメージを与える!くらえ1000のダメージを!」

 

T LP 4000 → 3000

 

「バトルフェイズ!シャムで伏せモンスターを攻撃!」

「たった1400の打点で未知のモンスターを攻撃してくるって、度胸があるんだな。」

「サラマングレイトは、展開してリンクモンスターで殴り勝つデッキですよね。なら、モンスター自体のステータスはそんなに高くない。」

「...正解だよ。」

 

シャムの弓矢が放たれて、裏側守備表示のモンスターが露わになる。

そのモンスターは、転生炎獣(サラマングレイト)モル。その守備力は0。

 

「ドゴランで、ダイレクトアタック!」

 

怒炎壊獣(どえんかいじゅう)ドゴランのダイレクトアタックが、尊を襲う。

その攻撃力は3000、その攻撃を防ぐ手段は、尊にはない。

 

「尊、負けるのにいい顔をしているぞ。」

「...そうなのか?」

「ああ、あの少年とのデュエルは、思った以上の効果を発揮したようだな。」

「負けるって、怖いことのはずだったのになぁ...」

 

T LP 3000 → 0

 

「ありがとう、楽しいデュエルでした。」

「こっちもな。多分だけど俺も楽しかったわ。」

 

辻斬りめいた始まりのそのデュエルは、双方の握手をもって終結となった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

デュエルも終わり、アンカーを外したTさんを連れてセントラルエリアへと向かう。

 

「これは念のためなんですけど、サイバースのカードはあまり表に出さないほうがいいですよ。」

「確かに。私たちは目立つために戦っているわけではないからな。」

「サイバースカードって、めちゃくちゃ高額で売れますからね。カードハンターがわらわらとやってきますよ。ハノイみたいな思想犯もいますし。」

「わかった、気をつける。でもそしたら、今回見たく自由にリンクヴレインズを回る事はあんまりできなさそうだな。」

「そん時は、変装用のアイテムでもレンタルしますよ。デッキを使いこなしたあなたと、もう一度デュエルすることを条件にですけど。」

「今度は負けねぇぜ?」

「上等ですよ。次も俺が勝ちます。」

 

「あと、お兄さんの名前思い付きました。」

「Tというのも悪くはなかったがな。」

「どんなのだ?」

「Soulburner、どうです?」

「Soulburnerか...ああ、しっくりきた。今日から俺はSoulburnerだ!」

 

そんな出会いがあった新生リンクヴレインズのある日。波乱の予兆はあれど今はまだ、リンクヴレインズは決闘者たちの楽園であった。

 




1/25(金)まで次の長編についてのアンケートを活動報告でやっています。よかったら参加してくださいな。


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魔鍾洞はやばい

久々投稿無限泡影!ニューロンリンクされた人たちがどうなるのかとかイグニスたちはどうなるのかとか気になる事だらけですが、2年目終わりの形もなんとなく見えてきたので白百合の騎士の投稿の合間に投稿をしてみようと思います。
矛盾が生まれたら?こっそり修正すりゃいいねん。


「いらっしゃい!今日はアバターアイテムのセールだよ!」

 

リンクヴレインズ下層、地価の安いそこをぶらつきながら動画のネタになるような事がないかを探す。

他の散歩部の人たちと辻斬りドッキリ企画やらないか?と誘われたのだが、企画段階の時点でぐだぐだ臭がしたのであえなく没にした。これでも散歩部内での権力はあるのだ。創設者が同じ中堅カリスマデュエリスト達による連合だったってだけなのだが。リンクヴレインズにやってくるノリの良いデュエリストなら辻斬りにはノリノリで乗ってくるだろうから、それはねぇよと言ったら目から鱗が落ちたかのようにそれもそうだ!とのたまった。

 

全く、ドッキリなど辻斬りの風上にも置けぬ奴らよ。

本気でやるから、リンクヴレインズ辻斬り部は面白いのだというのに。

 

まぁ、俺たちの行いが散歩部全体に悪い影響を与えていることは知っている。だが仕方なかろう、強いデュエリストは向こうから誘ってくるのだから。

 

「んー、良さげな相手も居ないし、どっかの区画の旅動画でも作るかねー」

 

そう言った時だった。「ふざけんな!こんなのデュエルじゃねぇ!」と言いながら落下していくデュエリストを見かけたのは。

 

いや、マリカ機能(命名ネット民)によりコースに戻ったので大事はないのだが。なんか面白そうなデュエルの匂いがしてきた。ちょっと行ってみよう。

 

「カモン、Dボード!」

 

指パッチン(めっちゃ練習した)と共にDボードを召喚し、スピードデュエルのコースに乗る。

 

憤っていた少年は意気消沈したかのように項垂れている。

ここまでの精神ダメージを与えるデッキとは、是非とも戦ってみたいものだ。とデュエリストとしての血が騒ぐ。

 

前方をキョロキョロしながら飛んでいる少女タイプのアバターに声をかける。中学生くらいのアバターとは珍しい。だいたい皆高校生くらいの年齢のアバターにするのだが。...性癖だろうか。

 

「そこのお前!」

「...何?」

「おいおい、デュエリストが声をかける理由なんて、一つしかないだろ?」

「...そうなの?」

「そこはノってくれって。なんか恥ずかしいじゃん」

 

「まぁいいや、デュエルだ!さっきの男を負かした腕前、見せてくれ!」

「構わない。ただし条件がある」

「なんだ?」

「...終わったら、道を教えてほしい。さっきのデュエルが楽しくて迷った」

「そいつは任せろ。なんたって、俺はリンクヴレインズ散歩部だからな」

 

「私は、ワンダーランド」

「Stargazerだ、いざ尋常に!」

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

ワンダーランド LP4000

Stargazer LP4000

 

「私の先行、スキルを発動する」

「いきなりとは飛ばしてくるな!」

「手札二枚を墓地に送り、デッキから通常トラップを手札に加える。“ダブルコスト・トラップサーチ”。私が加えるのは、メタバース」

 

瞬間、脳裏に電撃が走る。先程の男の心を折ったデュエルタクティクス。その正体は間違いなくあのカードであると。

 

「私は永続魔法、波動キャノンを発動。カードを一枚セットして、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!、スタンバイ、メイン」

 

残念ながら、この()()()()()を打破できるツインツイスターはドローできなかった。が、良い手はある。うまく引っかかってくれるならいいのだが。

 

「俺は、星因子(サテラナイト) リゲルを召喚!」

「攻撃力1900、じゃない。デメリット付きで2400になるアタッカー」

「あらま、しっかり効果読むタイプなのね」

「上達にはこれが一番ってネット記事で見た」

「へぇ、良い記事だな。あとでURL紹介してくれや」

「構わない」

 

「じゃあ行くぞ!召喚成功時にリゲルの効果発動!テラナイトの攻撃力を500ポイントアップさせる!」

「代わりに、エンドフェイズに破壊されるデメリットを持つ事になる、諸刃の剣?」

「この場に限っては最良の選択だと思うがね!カードを1枚セットして、バトル!リゲルでダイレクトアタック!...メタバースは発動するか?」

「死ななきゃ安いって記事にあった。発動はしない」

「じゃあ食らっとけ!」

 

ワンダーランド LP 4000 → 1600

 

「これで終わり?」

「メタバースを発動してくれたら終わりにしたんだがな。そうじゃないならまだ攻めるさ!リゲルを対象に速攻魔法、天架(あまか)ける星因子(サテラナイト)を発動!発動はあるか?」

「...ない」

「じゃあいくぜ!デッキからテラナイトを特殊召喚し、その後リゲルをデッキに戻す。俺は、星因子(サテラナイト) シャムを特殊召喚!そして、特殊召喚成功時に効果発動!」

「...ッ⁉︎」

「気づいたようだが遅いな!発動してしまえばあのカードで効果は止められない!」

「それでも、致命傷は避ける!トラップ発動、メタバース!デッキからフィールド魔法を展開する!私が展開するのは、あなたの読み通りのこのカード!」

「正直、二度と見たくはなかったがな!」

 

「「魔鍾洞(ましょうどう)!」」

 

「逆順処理だ、メタバースの効果によりフィールド魔法魔鍾洞(ましょうどう)が発動される。その後、シャムの特殊召喚時の効果発動、お前に、1000のダメージを与える!」

魔鍾洞(ましょうどう)の効果により、モンスターの数の多いプレイヤーはモンスターの攻撃、効果の発動を行えない」

「だが、シャムの効果の発動は魔鍾洞(ましょうどう)が張られる前、よって有効だ」

 

ワンダーランド LP1600 → 600

 

 

「だけど、ここで終わり。魔鍾洞(ましょうどう)の効果によりモンスターを一体持つあなたは攻撃宣言をする事は出来ない。残念」

「...ターンエンドだ」

 

状況は一見俺が有利に見えるかもしれない。しかし、波動キャノン(タイムリミット)が設定されてしまった以上不利なのはこちらだ。

 

あと600が、遠い。

 

「私のターン。カードを一枚セット、ターンエンド。...スタンバイフェイズを一度通過した事で 波動キャノンには1000の火力が溜まる。残りは、3ターン」

「その前にケリをつけるさ!俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン」

 

「俺は手札から増援を発動!星因子(サテラナイト)ウヌクを手札に加え、召喚!」

魔鍾洞(ましょうどう)があるのに展開してきた?」

「そりゃ、魔鍾洞(ましょうどう)の効果である、エンドフェイズにモンスターの数が同じだった場合に破壊される効果は狙いたいところだが、お前のデッキそもそもモンスター入れてないだろ。あったとしても手札誘発系の防御モンスター。違うか?」

「...」

「だったら、更なる展開の為にモンスターは出すだけ出すさ。俺のデッキには魔法罠を破壊するカードも存在するからな」

「...スピードデュエル用のデッキのサイクロン系カード採用率は23%、そのほとんどが一枚入れているだけのいわゆるピン刺し」

「統計サイトも見てるのかよ、有望だな。その通り、俺のデッキに入ってる破壊系カードはツインツイスター一枚のみ。だが、そういうカードって必要な時に来てくれるもんだぜ?」

「...そう、だからさっき増援を使ったの。デッキ枚数を一枚でも減らして必要カードを引き込む確率を高めるために」

「ロジカル思考で結構。最近リンクヴレインズに来たにしてはかなりやり手だな。俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

「ドロー、カードを一枚伏せてターンエンド。スタンバイフェイズを経過した事で波動キャノンには今2000ポイントの火力が溜まってる。あと、2ターン」

「フルセットか...俺のターン、ドロー!...スタンバイ、メイン!来たぜ、手札一枚をコストに、速攻魔法ツインツイスターを発動!魔鍾洞(ましょうどう)と波動キャノンの右のセットカードを破壊する!」

「引き当てて来た⁉︎...でも、まだ終わらない!カウンタートラップ、神の宣告。ライフを半分支払い、ツインツイスターを無効にし破壊する!」

 

ワンダーランド LP 600 → 300

 

「奇遇だな、俺もさ!ライフを半分支払い、カウンタートラップ、神の宣告を発動!お前の神の宣告を無効にし破壊する!」

 

Stargazer LP4000 → 2000

 

「まだ終わらない!カウンタートラップ、ギャクタンを発動!トラップの発動を無効にしてデッキに戻す!神の宣告を無効化!これで、通さない!」

 

こちらのツインツイスターを巡る激しい攻防。どうやら、勝負は決まったようだ。

 

「あなた、勝負を焦ったわね。ライフポイントは波動キャノンの火力圏内に入った。私の、勝ち!」

 

「それはどうかな?」

 

「何を⁉︎」

「俺には、2体のモンスターがいる!」

「リンク召喚したところで、何も変わらない!どんなリンクモンスターの効果でも、プレイヤーを対象にする魔鍾洞(ましょうどう)の効果からは逃れられない。だから、私のライフは、削れない!」

「...一つ訂正してやるよ。俺の次の召喚はリンク召喚じゃない、古めかしいエクシーズさ!召喚条件はテラナイトモンスター2体!ウヌク、シャムの2体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!煉獄の騎士(テラナイト) ヴァトライムス!」

「エクシーズ召喚ッ⁉︎...でも、あなたのモンスターは減った所で私のモンスターはゼロ!ヴァトライムスの強力な効果は発動されない!」

「狙いはそこじゃない!俺は、エンドフェイズに移行する!」

「なら、私の勝ち!」

 

「スピードデュエルの面白さを一つ教えてやるよ、ワンダーランド」

「...何、負け惜しみ?」

「絶対的優位状況が、カード一枚も使わずにひっくり返ることもあるって事さ!スキル発動!“スターブレイカー”!」

「ここでスキル⁉︎」

「エンドフェイズにのみ発動可能なこのスキルの効果は単純!俺のフィールドのモンスターを全て破壊する!吹き飛べ、ヴァトライムス!勝利の道を作るために!」

 

流星の落ちたかのような爆発ののちに、ヴァトライムスは崩れて落ちた。

 

「自分のモンスターだけを、破壊するスキル...ッ⁉︎」

「そう、そして今はエンドフェイズだ。強制効果の魔鍾洞(ましょうどう)の効果が発動!」

「お互いのモンスターが同数、ゼロとなった事で魔鍾洞(ましょうどう)の効果により魔鍾洞(ましょうどう)は破壊される...」

「それにより、俺のモンスターを縛る効果は消え去った!速攻魔法エクシーズ・ダブル・バック!エクシーズモンスターが破壊されたターンに発動できる。墓地のエクシーズモンスターとその攻撃力以下のモンスターを特殊召喚する!俺は、ヴァトライムスとシャムを特殊召喚!シャムの特殊召喚成功時に魔鍾洞(ましょうどう)は存在しない!よって、特殊召喚時の効果発動!相手ライフに、1000のダメージを与える!」

「...まさか、この局面を思い浮かべていたからモンスターを召喚し続けて来たッ⁉︎」

「そうだ。魔鍾洞(ましょうどう)を破壊することだけなら簡単だった。俺のスターブレイカーは相性が良かったからな。だが、その次にお前が二枚目以降の魔鍾洞(ましょうどう)を発動してくるのは目に見えていた。だってそうだろう?お前のデッキのキーカードである魔鍾洞(ましょうどう)を三枚積んでないなんてのはありえない。だから、魔鍾洞(ましょうどう)の突破とお前へのトドメは同時に行う必要があった。」

 

「俺はハナから、魔鍾洞(ましょうどう)を自壊させてお前を倒すつもりだったよ」

「...完敗。でも、楽しかった」

「こっちこそありがとう、楽しいデュエルだった」

 

その言葉とともに、シャムの光の矢がワンダーランドの胸を貫いた。

デュエルを終わらせる、終幕の一撃だった。

 

ワンダーランド LP 300 → -700

 


 

「じゃあ案内お願い、Stargazer」

「おうよ。ついでだしワンダーランドさんにこの辺りの良いデュエルスポット案内するよ。下層から上層に登るルートは空飛んでるッ!って感じがして気持ちがいいんだ」

「へぇ、楽しみ」

 

データストームの波にのる。やはり、風が気持ちいい。新しいデュエリストとの出会いもあったことだし、今日は良い日だ。

 

「そうだワンダーランドさん。俺実は動画上げてるんだけど、さっきのデュエル動画にしちゃって良い?」

「...それは、ちょっと恥ずかしいわね」

「どうせワンダーランドさんならすぐに有名になるんだし、気にしない気にしない」

「どうして?」

「デュエリストが、強いデュエリストを放っておくと思うか?」

「成る程、道理。ただ、一つだけ条件があるのだけど」

「なんだ?」

「また私と、デュエルしてくれる?」

「勿論!」

「...ありがとう」

 

その言葉を返した時のワンダーランドさんの顔は、少し赤かった。

まぁ、魔鍾洞(ましょうどう)使いは色々言われるのだろう。鬼畜じみたロック性能だし。

 

だから、伝えよう。リンクヴレインズはどんなデュエリストでも受け入れる、デュエリストの遊び場なのだと。

 

「じゃあ改めて。ようこそ、リンクヴレインズへ!」

「これからよろしくね、Stargazer」

 

セントラルエリアにて、握手と共に別れる。

他の中堅カリスマデュエリストの皆同様、長い付き合いになりそうだ。

 

そんなことを考えると、ふと思う。今は遊戯王VRAINSの1期と2期の間であり安全だ。

しかし、2期最終デュエルにおいて、このリンクヴレインズにいる人々は2期のボス、ボーマンのニューロンリンクにより脳を奪われてしまうのだ。それを防ぐ手段は、今の自分にはない。

自分はただの、小学生でしかないのだから。

 

「...下手に情報をばら撒けば、イグニスの目に留まり精神を抜き取られる。事件の時だけ動いても、プログラムスキルが年相応の俺じゃあ何も戦力にはなれない。去年とはえらい難易度の違いだな」

 

だが、出来ることはあるだろう。このリンクヴレインズを隅から隅まで探せば、敵の本拠地ミラーリンクヴレインズに繋がるような情報を得られるかもしれない。そうなれば、敵の準備が整う前にPlaymakerたちがなんとかしてくれるかもしれない。

 

かもしれないだらけの暗中模索だが、ただのモブとして消費されるよりも頑張るモブとして抗いたい。そんな思いが、胸の中を燻っていた。




抗うモブが好きなんです。
ただ、正直2期の話はガチ目に頑張ったとしても原作の本筋に絡めないので、一期の時よりも話数は少なくなる(予定)です。ご了承下さいな

5/19 ご指摘を受けて魔鍾洞関係の処理を修正しました。エンドフェイズの強制効果は任意効果が全て終わった後にスタートするのだそうです。コンマイ語って難しい。


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ダンジョンアタック(人任せ)

LoTDで未だにイゾルデが引けないのはバグでしょうか。いや、運だってのはわかったんですがねー。本当にV兄様のパックなのか疑問に思えてきましたよ。


「エクストラ5枠ってキツイよなー」

「ですねー、でもその悩みまで行けるのは一部の変なデッキ使いだけなので、ルール的にはいいんじゃないですか?」

「いや、鬼畜星だって困ってんだろ」

「慣れました」

「慣れたかー」

 

今日は中堅カリスマデュエリスト仲間であるリョウさんと予定があったので一緒にリンクヴレインズを歩いている。とある人物と待ち合わせをする為に。

 

 

最近リンクヴレインズでは、電脳トレジャーハンターという職業が今まで以上に脚光をあびるようになった。

 

運営の遊び心なのか、あるいは何者かの別の意図があるのか知らないが、ダンジョンの類が頻繁に発見されるようになったのだ。

 

その奥には、貴重なカードが眠っている。そんな浪漫が蔓延している。実際にトラップを潜り抜け“サイバース”のカードを手にした者だっているからだ。

 

だが、それが罠である事は多くの先駆者が証明してしまった。

奥にあるトラップを抜けられなかったアバターは、ロストするのだ。

 

幸いにもリアルには大きな影響はないようだったが、アバターやデッキを失う事はこの街では大きい。

 

ハイリスクハイリターン。それがダンジョンアタックである。

 

だが、転生者として未来の知識を持ってこの現象を見ていくと、少し違った結論が見えてくる。

 

間違いなく、影響はある。

人間のサンプルを集めているのだろう、決して表に出る事なく。

そしてそんな技術力や影響力を持ちサイバースを作り出せる連中など限られている。

 

ダンジョン騒動の大元は、()()()()()()だろう。

 

本格的に動き出していないのは恐らく単純な理由、今はまだ条件が整っていないのだろう。ミラーリンクヴレインズという根城を作り出す事や、人の意識をプログラムにする超技術の。

 

だからこそ、今のうちに尻尾を掴んでおきたい。

 

「にしても、本当なんですか?ダンジョンを見つけたって」

「ああ、俺の買った編集スペースの奥に入り口があってな。軽く中を見たがやばそうなんで、すぐ逃げた」

「正解ですよ。アバターロストとかリアルダメージとかは笑えませんから」

「...リアルダメージの報告なんてあったか?」

「いや、割とヤバイのが常のリンクヴレインズですから、初期のスピードデュエル同様の被害が出てもおかしくはありませんよ。アバターロストなんて大ダメージなんですから」

 

そうして、セントラルエリアの情報センターに辿り着く。ここのカフェテリアが待ち合わせの場所だ。

 

「それで、凄腕の電脳トレジャーハンターのアテってのはどんなのだ?」

「ブラッドシェパード、金さえ積めばどんな依頼でもやってのけるって噂のバウンティハンターですね。本物かは知りませんけど」

「どこでそんな繋がりができたんだよ」

「散歩部の活動報告纏めて公開してるの俺じゃないですか。その縁でバグみたいなのや欺瞞テクスチャについての詳しいログデータが欲しいって連絡があったんですよ。調べるまではそれがバウンティハンターだとは知りませんでしたけど」

 

これは嘘。名前を見た時点でガッツポーズ決めたくらいに嬉しかったのは記憶に新しい。字幕で本名が出た人ことブラッドシェパードはあのイグニスアルゴリズムという意味不明なのを解析して使いこなすという離れ業をやってのけるお人だ。もしかしたらこのダンジョンの裏まで見抜いてくれるかも知れない。

 

「ここですね」

「まだ待ち人は来てないみたいだな。じゃあ時間つぶしにデュエルやるか!」

「衆人環視の中でですか?良いですね!」

 

カフェスペース近くにはそこそこのスペースがある。デュエルするには十分だ。

 

「レディースアンドジェントルメン!中堅カリスマデュエリスト、Stargazerとリョウのデュエルが始まるよ!さぁ、賭けた賭けた!」

「俺に賭けたら儲けさせてやるぜ!マスターデュエルなら負けねぇよ!」

「出せないエースを抱えてるアンタにはまだ負けてやれないな!」

 

観客が、デュエルの観戦モードに入る。賭けをオーケーにしたからそこそこの投げ銭が投げられた。オッズは俺が1.4倍、リョウさんが1.1倍とリョウさん優勢だ。

 

「さぁ、始めましょうか!」

「ああ、行くぜ!」

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

Stargazer LP 4000

リョウ LP 4000

 

「俺の先行、ドロー!スタンバイ、メイン!手札から星因子(サテラナイト)ベガを通常召喚!ベガの効果発動!手札のテラナイトを特殊召喚する。俺は星因子(サテラナイト)ウヌクを特殊召喚!ウヌクの効果発動!デッキからテラナイトカード、星因子(サテラナイト)デネブを墓地に!」

「レベル4が2体!いきなり来るか?」

「いや、たまには新しいのにかぶれるさ!現れろ、星の導くサーキット!俺は、戦士族モンスターベガとウヌクをリンクマーカーにセット!リンク召喚!聖騎士の追想イゾルデ!」

 

「イゾルデの効果発動!リンク召喚成功時、デッキから戦士族モンスターを手札に加える!ただし、このターンその同名カードはプレイ出来ない。俺は、デッキから2枚目のベガを手札に加える」

「既に使い終わったなら良いって事か」

「そういう事。さらに俺はイゾルデの第2の効果を発動!デッキから同名以外の装備魔法を任意の枚数墓地に送り、その同レベルのモンスターをデッキから特殊召喚する!俺は、最強の盾、月鏡の盾、星輝士(ステラナイト)の因子、デーモンの斧の4枚を墓地に送り、レベル4である星因子(ステラナイト)アルタイルを特殊召喚する!そして、アルタイルの効果発動!墓地のテラナイトモンスター、デネブを特殊召喚する!」

「ぶん回すな!燃えてくるぜ!」

「リンク4がいればもっと強い盤面なんだけどな!デネブの効果発動!デッキからテラナイトモンスター、2枚目のアルタイルを手札に加える。そして、デネブとアルタイル、2体のテラナイトモンスターでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!」

「エースを出してきたか」

「それだけじゃあない。お前のデッキには効くだろ?全てのモンスターを闇属性にするこいつの効果は」

 

お互い何度となくデュエルした身なので、互いにやられたら困る事は分かっている。奴のデッキは属性をキーにしているからだ。

 

「キツイが、なんとかするさ!」

「そうである事を祈るよ!カードを一枚伏せて、ターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!...良し!俺は、手札から速攻魔法緊急テレポートを発動!デッキからレベル3以下のサイキック族を特殊召喚する!」

「通さない!チェーンして灰流(はる)うららの効果発動!デッキからの特殊召喚を含む効果を無効にする!」

「だが、打開の鍵は手札に揃ってる!俺は超量士(ちょうりょうし)グリーンレイヤーを召喚!効果により超量士(ちょうりょうし)ブルーレイヤーを特殊召喚!ブルーレイヤーの効果発動!デッキから超量カードを手札に加える。俺が加えるのは、超量要請アルファンコール!」

「...ヴァトライムスのロックを突発してきたか!」

「その通りさ!バトル!グリーンレイヤーでイゾルデを攻撃!」

「攻撃力は同じ1600ッ!」

「よって、相打ちだ!そして、超量モンスターが戦闘で破壊された事により、速攻魔法超量要請アルファンコールを発動!エクストラデッキから超量機獣(ちょうりょうきじゅう)エクシーズモンスターを特殊召喚!その後、そのカードに記載されている超量士モンスターを効果を無効にして特殊召喚する!現れろランク5!超量機獣(ちょうりょうきじゅう)マグナライガー!そして、超量士レッドレイヤー!」

 

グリーンレイヤーの消えたその先に、獅子を司る超量のエースモンスターと、その上に乗るレッドレイヤーが現れる。

なかなかに壮観だ。

 

「バトルフェイズを終了し、マグナライガーの効果発動!手札、フィールドの超量士モンスターをオーバーレイユニットにする。乗り込め、レッドレイヤー!」

 

「そして、マグナライガーの効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、モンスターを一体破壊する!消え去れ、ヴァトライムス!」

「...発動はない、破壊される」

「じゃあ、続けて行くぞ!レッドレイヤーの効果発動!墓地に送られた時、レッドレイヤー以外の超量モンスターを特殊召喚する!俺はグリーンレイヤーを特殊召喚!ただし効果は発動できなくなるが、それは今関係のない事だ!」

「...モンスターが3体、来るか!」

「現れろ、ヒーローの駆けるサーキット!召喚条件は超量モンスターを含む効果モンスター2体以上!マグナライガー、ブルーレイヤー、グリーンレイヤーをリンクマーカーにセット!リンク召喚!現れろ真超量機神王(しんちょうりょうきしんおう)ブラスター・マグナ!」

 

現れる、4種のロボが合体したと思われるド派手なロボット。その大きさはカフェスペースの天井に届きそうなほどだ。あぶねーなー。

 

「マグナライガー単機より攻撃力は低くなった。効果耐性狙いか」

「ああ、ブラスター・マグナには相手の効果では破壊されない能力を持つ。お前のデルタテロスによる破壊はさせないって事さ!カードを2枚セットして、ターンエンド」

「...切るならここだ!エンドフェイズに速攻魔法ツイン・ツイスターを発動!お前のセットカードを2破壊する!」

「神の警告とブレイクスルースキルが!」

「怖いの伏せてやがったよ案の定。俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン!召喚条件として、墓地の光、闇属性モンスターを一体ずつ除外する。俺は、ヴァトライムスとイゾルデを除外!現れろレベル8!混沌より現れろ、カオスソルジャー開闢の使者!」

 

先程までざわざわしていた空気が、一気に俺の方に向いてくるのがわかる。巨大ロボは確かに格好いいが、カオスソルジャーだってそれに負けず格好いいのだ。

 

「俺は、アルタイルを通常召喚!効果は発動せずにバトルフェイズ!カオスソルジャーでブラスター・マグナを攻撃!開闢双破斬!」

 

リョウ LP4000 → 3500

 

高く飛び立つカオスソルジャーの一刀により、ブラスターマグナは破壊された。

そして、これで終わりではない。

 

「クッ、ブレイクスルースキルがあれば!」

「無い物ねだりは後にしな!カオスソルジャーの効果発動!モンスターを戦闘破壊した時、続けて攻撃できる!開闢双破斬、二の太刀!」

 

リョウ LP3500 → 500

 

「そして、アルタイルでダイレクトアタック!トドメだ!」

「...防ぐ術は、ない!」

 

リョウ LP 500 → -1200

 

アルタイルの斬撃をモロに受けて、リョウは大の字に倒れた。

今回は、俺の勝ちのようだ。

 

スゲーデュエルだったぞー!との歓声が鳴り響く。どうやらカフェの余興程度には良いデュエルだったようだ。

 

ちなみに、賭け金は勝者が利益の8割を貰えるという事なので、そこそこの集客力のある場所でそれなりのデュエルができるなら実は結構な収入になる。それをメインにしようとしてるカリスマデュエリストもいたりするのだ。主にLair Lordさんとかの武闘派は。

 

そんなことを考えつつ待ち合わせの席に着く。そこには、テンガロンハットに仮面のアバターがいた。

 

「あなたがブラッドシェバードさんですか?」

「そういうお前らは、Stargazerにリョウで間違いないようだな。先程のデュエルはお前らを良く表していた」

「それで、俺たちは信用できそうですか?」

「...その為に、デュエルを見せたのか?」

「いえ、暇だからデュエルしよーぜーってなっただけですよ」

「大馬鹿の類だったか」

「でも、俺たちの事を信用できるでしょう?万の言葉を語るより、一つのデュエルを見せた方が心は伝わるものですから」

「...情報に嘘はないととりあえず信じてやる。これで良いか?」

「はい!」

「...調子の狂う奴だ」

 

「じゃあ、案内します。ブラッドシェパードさん、Dボードはありますか?」

「当然だ」

 

センターを出てデータストームに乗り、リョウの土地に向かう。

セントラルエリアからそう離れていない浮島が、ダンジョンの入り口だ。

 


 

3人で若干下層にある浮島に向かう。浮島の土地を買って中をSF風に改造した所その入り口を発見したのだと。

 

「じゃあ、ダンジョンアタックな訳ですけど、メールで送った契約通りで問題ないですか?ブラシェパさん」

「...Stargazer、礼儀を叩き込んでやろうか?」

「嫌でしたか?ブラシェパさんってあだ名。良い呼び方だと思ったんですけど」

「...まぁいい、どうせ今回限りの縁だ。契約内容は把握した。そちらの報酬が中のカードというのも納得できる。が、中のシステムを詳しく調べてくれとはどういった理由だ?」

「ダンジョンが危険なものなら、それを裏付ける強い証拠になります。知り合いがアバター全損とか嫌なんですよ俺」

「...その程度の理由か?」

 

魂を掴まれるような感覚。強者の持つ殺気だろうか。

だが、この世界に生まれてそれなりに修羅場は踏んできた。この程度では崩れてやるものか。

 

「最近のダンジョンブームとか、被害が本当にリアルの体に影響がないのかとか、新生リンクヴレインズそのものとかの色んなものがごちゃついてんですよ。これを放っておくとヤバイことになるっていう漠然とした直感、としか今は言えません」

「...成る程な、どうりでこの新生リンクヴレインズそのものを偏執的に調べる訳だ」

 

散歩部の活動を偏執的と言われてしまった。いや、データ自体は普通のものな筈なんだかなー

 

「契約は成立だ、お前たちは吉報を待っていろ」

「はい!」

 

編集スペースの奥にある棚をズラしたその先に、テクスチャのズレが存在した。注視して見なければわからないが、注視すればわかってしまう奇妙さが。

 

そんな所に、ごく当たり前のようにブラッドシェパードさんは入っていった。あれが、修羅場をくぐった経験だろう。凄い人だ。

 

その後30分程度でブラッドシェパードはあっさりとダンジョンを攻略してしまった。ハヤワザ!

ダンジョンの入り口だった壁は、普通のテクスチャになった。これで、リョウも安心だろう。

正直言うとブラシェパさんのデータを元に安全なダンジョン探索をやってみたかったが、それは高望みということだったのだろう、うん。

 

「トラップの類はどうでしたか?」

「あの程度、どうということはない。が、お前らが引き返したのは正解だったろうな。素人なら死にかねん」

 

あっさりと言われたその言葉に、俺とリョウは肝を冷やした。やっぱリンクヴレインズ怖いわ。

 

「なぁ、お宝のサイバースってのはどんなカードだったんだ?」

「...珍しいだけの雑魚カードだ」

 

そうしてブラッドシェパードは一枚のカードを見せる。

 


 

ライドロン

 

通常モンスター

星4/地属性/サイバース族/攻2000/守 0

高い適合能力を持った電子獣。

縄張り意識が強い。

 


 

「「微妙ですね」」

「全くだ。が、サイバースというだけで好事家どもには高値で売れる」

 

「内部の観測データはこのデータカードに纏めておいた、好きに使え」

「はい。ありがとうございます!またよろしくお願いしますね!」

「骨折り損は御免だ、他を当たれ」

 

その言葉とともにブラッドシェパードはDボードに乗り去っていった。

 

うん、次ダンジョンを見かけても声かけてみよう。望みは薄いかもしれないけど。

 

「じゃあ、俺はここで編集作業するわ。鬼畜星はどうする?」

「んー、俺もログアウトするかね。今日はいい絵が撮れたし」

「えー、あのデュエル動画にすんのかよ」

「そりゃそうさ。楽しかったし、何気に開闢のお披露目だったからな」

 

そう言ってログアウトをする。

その寸前、どこかからの視線を感じたような気がした。

 


 

「ふむ、この少年か」

 

光のイグニス、後にライトニングと呼ばれるその人工知能は、ダンジョン周辺のリンクヴレインズの観測データから一人の少年を観察していた。

 

自分のシミュレート結果とは違う行動を取る人物を辿っていけば、必ずこの少年に行き当たるのだ。

 

それは小さなもので、計画に影響はない。だが、この少年に関する何らかのパラメータが間違っているのは確かだ。

 

「...まったく、せっかくスキャンする為にダンジョンを出してあげたというのに、まさかバウンティハンターに丸投げするとはね。まぁ、こんな些事に割いているタスクは無駄か。これまでのデュエルデータからパラメータを推定し再定義、シミュレーションを再開しよう」

 

再び、シミュレートを再開するライトニング。

現状のプランの成功率がどの程度のものなのかを確かめる為に。




しれっと身内メタをする主人公、と見せかけて開闢のコストなのでした
しかし超量は難しい。スピードデュエル諦めてマスターにしてもブラスターマグナと超量機獣の構えはできませんでした。悔しいのでまた出番があるかもしれません。


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一般人の乱入

抹殺の指名者があれば無限泡影も怖くない!→手札に無限泡影3枚のネタを思いつきましたけど、Vジャンプ戦争に負け抹殺の指名者持ってませんのでネタのままにしておきます。

Vジャンプ再販しないかなー


今日も今日とてリンクヴレインズ探索...と行きたいところだが、残念ながら今日はお休みだ。

 

父が久々に休暇が取れたとかで、家で家族でまったりする事となったのだ。こういう時に映画館!とかでなくネットでの映画配信になったのは時代を感じなくはない。ポップコーンとコーラは買うあたり文化は根付いているのだが。

 

「天頂、お前最近どうなんだ?お前の友達作らない病は早く治してほしいんだが」

「ふ、不治の病なんで」

「天頂、そんな病気はないから。変なこと言わないの」

 

トクトクとコーラが注がれる。焼きあがったばかりのポップコーンをひとつまみし、やはりバター塩味は良いと感じた日であった。

 

「じゃあ、セイバーウォーズなー」

「はーい」

 

タイトルにもにょるのは俺だけでは...俺だけだな、うん。転生者の気配なぞこの10年全く感じなかったのだし。

 

ちなみに、映画自体はガチに面白かったです。まさか聖剣エクスカリバーと邪聖剣ネクロカリバーが真の力を発揮してデュエルディスクになる場面など鳥肌無しには見られなかった。

 

いや、この展開に違和感を覚えなかったあたり俺はもうこの世界の住人なのだと改めて理解したのである。

 

「いやー、面白かったな!」

「うん、凄かった。...ってちょっと待って、フレンドからメッセージ届いてる」

 

緊急!と書かれたメッセージ、中身を見てみると、驚きの事実がそこにはあった。

 

Playmakerが、再びリンクヴレインズに現れたのである。

 

今日はリンクヴレインズのセレモニーイベントの日だ。原作にあった皆がリンクヴレインズに行く日というのが今日なのだとしたら頷ける。

 

メッセージの着信は1分前、今ならプレメさんの生デュエルを見られるかも知れない!

 

「ごめん父さん、ちょっと行ってくる!」

「どうした天頂?」

「ツチノコみたいなのが出たのさ!デッキセット!in to the VRAINS!」

 


 

Playmakerが現れたのはセントラルエリアから見える範囲。今SNSを追いかけて発見情報を辿っていくと、使用しているコースが特定できた。行くしかあるまい!

 

いい加減、主人公のデュエルを見たいのだ!

 

ミーハー転生者と笑いたくば笑え。自覚はしてるのだ。

 

「うわ、かなり居るな」

 

コースを確定した後Dボードに乗って行くと、同じ事を考えていた多数のデュエリストがいた。そういやプレメさん賞金首だったので、そっち方面の人も出ているのかも知れない。

 

だが、前に何人いようともやるべき事は変わらない。最速で駆け抜けるのみだ!

 

「俺流トリック、天地逆転!」

 

コース下は有象無象がひしめいている。データストームの密度の関係で数が多ければ多いほどスピードが出ないのは検証報告に出ている事だ。かといってコースから離れれば、データストームの密度的にスピードは落ちる。

 

故に、コースから離れずに使われていないデータストームを掴むことができればスピードは上げられる。それ故に、皆の頭の上にあるデータストームを掴んだのだ。

 

上下逆さにボードに乗る、この天地逆転を使って。

 

「お先に失礼!」

「逆さに飛んでる変態がいるぞ⁉︎」

「誰が変態か!後で覚えてろ!辻斬りしに行くからな!」

「ヤベェ、あいつ辻斬り部の奴だ!」

 

なんて一幕の後に先頭集団に躍り出る。基本フルスロットルだが、良い風は先の連中に掴まれている、俺のDボードは予算の関係で大したカスタマイズは出来ていないのでここから先に抜けるには別のトリックが必要になる。

 

だが、別のコースのデータストームを一瞬だけ掴む“交差加速”は場所が悪くては使えない。とすれば、他の加速トリックだが、流石に人道に背くようなトリックは使いたくはない。

 

悔しいが、ここから見るのが限界だろう。

 

そう思った時に、データストームの嵐が現れる。吹き飛ばされたのは先頭集団よりも先にいた一人のデュエリスト。

 

ブラシェパさんだった。

 

「...間に合えよ畜生!」

 

コースを変えて吹き飛ぶブラシェパさんの手を伸ばす。安全機構が備わったとはいえ万が一がある、コースアウトしかけているDボーダーに手を差し伸べるのは当然の行為だと、旧リンクヴレインズからボードに乗り続けている自分は決めていた。

 

ブラシェパさんは俺の登場に驚きこそしたものの、すぐに俺の手を掴んでくれた。どうにか、コースアウトは避けられたようだ。

 

もっとも、ブラシェパさんのボードは空の彼方なので、この狭いボードに二人乗りスピードはさらに落ちる。

 

今回もまた、Playmakerのデュエルを見る事は出来なかったようだ。

 

「貴様、何故助けた?」

「Dボーダーですから」

「...以前も思ったが、いずれ馬鹿を見るぞ。Stargazer」

「どうせ馬鹿なら踊らにゃ損、ですよ」

「...この借りはいずれ返す」

「じゃあ、パフェとか奢ってくださいな。セントラルエリアに美味いパフェを出すうどん屋があるらしいんですよ」

「...うどん屋?」

「摩訶不思議ですよねー」

 

そんな事を言いつつ、遠くに見えるPlaymakerと光のヒトガタのデュエルを見る。状況こそわからないもの、始まったばかりのようだ。

 

「コース外れちゃいましたけど、どうします?」

「当然追う。狙った獲物は逃がさん主義だ」

 

ブラシェパさんは指を鳴らしてDボードを呼び寄せる。そういうプログラムを組んでいたのだろう。やり手感が凄い。

 

「ではな」

「つっても、俺の目的もあのデュエルなんで行く道は一緒ですけどね!」

 

ブラシェパさんと一緒にボードで駆ける。頑張ってみたもののデュエル終了までには追いつけなかった。まぁ、遠目からチラッと見えただけでも俺は成長した!と思う。そう思わなきゃやってられるか。

 

ちなみに、このデュエル配信されてたでwと煽ってきたフレンドのLair Lordさんは後でメタって倒すと心に決めた。魔封じの芳香が火を噴くぜ!

 

「あー、デュエル終わりましたね。ストームアクセスからのワンターンキル、Playmakerの必勝パターンです」

「...仕方ない、俺は別ルートから奴を追う、お前はどうする?」

「ダメ元ですけど、プレイメーカーを追っかけます。そしたらデュエル受けてくれるかもしれませんし」

「...この距離だ、諦めた方が無難だぞ」

「その時はその時ですよ。それでは!」

 

ログアウトするブラシェパさんを尻目に、Dボードを走らせる。コースを外れたデータストームの薄い場所なのでスピードはあまり出ないが、それはそれだ。

 

「あー、辿り着いた頃には完璧に終わってそう」

「なら、ついて来いよStargazer」

 

赤いスーツに蒼い炎のような髪のアバター。ちょっと前に出会った本名穂村尊がそこにいた。

 

「Soulburner、であってるか?」

「ああ、名前は結局それに決めたよ」

「そして私は不霊夢、不屈の霊夢に非ず、だ」

「じゃあソルバさん、よろしくお願いします!」

「ああ!付いて来な!」

 

Soulburnerの背中にしっかりと付き、スピードを上げる。

チューニングされたソウルバーナーのボードと、スリップストリームの合わせ技だ。

 

「Playmakerはあの小島です!でも、何か来る!」

「ああ、見えた!飛ばして行くぞ!」

 

「我が名はビット」

「我が名はブート」

 

「なんか変なの出やがった⁉︎」

「どうやら、Playmakerの邪魔をしようって連中みたいだな!片方任せていいか⁉︎」

「上等です!」

 

「「行け、Playmaker!」」

「ここは任せろ、あの二人の相手は俺たちがする」

「後でデュエルしてくれるとやる気はもっと出るんですけどね!」

 

「...感謝する!」

 

最高速で少年のアバターを追いかけるPlaymaker。

その邪魔をしようとする奴を、散歩部御用達のデュエルアンカーで拘束する。

 

「遊ぼう、ぜ!」

「イグニスを持たないデュエリストに用はない、消えろ」

 

青い方の体から発せられるデータストームの奔流に体が流されそうになる。だが、なんか来るとわかっているのだからその程度を躱せない俺ではない。これでも、Dボードで一番遊んだのは俺であるという自負はあるのだ。

 

「良い風ありがとよ!」

 

突風に対してボードを斜めに当てて加速しつつ、アンカーを中心に青いのの前に出る。

 

「個人的に10点なんだけど、どう?」

「敵性存在と認識、デュエルで排除する」

「スルーは悲しいねぇ!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「私の先行、Dスケイル・サーベルサーディンを召喚。サーベルサーディンの効果発動、ライフを500払い、Dスケイルトークンを特殊召喚する」

 

ビット LP4000 → 3500

 

「安易な発動事故の元!手札より、幽鬼うさぎを墓地に送り効果発動!モンスター効果が発動された時、そのモンスターを破壊する!吹き飛べサーベルサーディン!」

「何ッ⁉︎」

「逆順処理だ、効果は無効にならないから、トークンは出して良いぜ?」

「クッ...私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン!手札の星因子(サテラナイト)ベガを通常召喚!効果発動!手札の星因子(サテラナイト)デネブを特殊召喚!デネブの効果により、デッキからアルタイルを手札に加える。行くぞ!俺は、2体のテラナイトモンスター、デネブとベガでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4、煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス」

「攻撃力2600のモンスター⁉︎」

「反応が初々しいね、ちょっと新鮮だわ。ヴァトライムスの効果発動!手札一枚をコストに、光属性のテラナイトエクシーズモンスターを重ねてエクシーズ召喚する!“スターライト・エクシーズ”!現れろランク4!星輝士(ステラナイト)トライヴェール!。そして、トライヴェールの効果発動!このカードのエクシーズ召喚に成功した場合、このカード以外の全てのカードを手札に戻す!“トライ・フォース”!」

「何⁉︎」

「ちなみに、トークンは手札に戻らないから破壊されるぜ」

 

発動は無し。神の警告あたりだと読んでいたが、どうやら攻撃反応型の罠だったようだ。あるいは、ブラフだったのかもしれない。まぁ、それはどうでも良いことだ。この効果が通った時点で俺の勝利は確定しているのだから。

 

「俺は、装備魔法最強の盾をトライヴェールに装備。最強の盾の効果により、装備モンスターの攻撃力は守備力分上昇する。トライヴェールの攻撃力2100に、守備力2500が加わったことで攻撃力は4600!」

「イグニスを持たないデュエリストに、私が負ける⁉︎」

「勝負は時の運、そんな時もあるさ!バトル!トライヴェールでダイレクトアタック!“トライ・シールド・ストラッシュ”!」

 

三角の光盾に斧のような最強の盾をドッキングさせたトライヴェールの一撃が青いのを一撃にて叩き切った。

 

ビット LP3500 → -1100

 

「だが、ただでは死なぬ!ブート、合体だ!」

「ビット!その遺志は無駄にはせん!」

「え、ちょっと待って何やってんのお前?負けたんなら素直に帰れよ!」

 

ブートの元にビットが引き寄せられ、重なり合う。そして気付けばそこには半分こ怪人が!キャラデザもっと頑張れや。

 

「てかもう倒したのかよStargazer!スゲーな!」

「ありがとよSoulburner!でも、合体させちまった。デッキやスキルが変わるかも知れない、気を付けろ!」

「ああ、ありがとよ!」

 

その後、合体による二度目のスキルなどが使われたものの、転生リンク召喚をやってのけたSoulburnerはライフポイント以外危なげなくビットブートを倒してのけた。

 

軽く見ただけだが、以前戦った時と比べて相当強くなっている。これは、再戦が楽しみだ。

 

「ところでノリで助けたんだけど、お前Playmakerに何か用でもあったのか?」

「いや、ノリで来ただけ」

「Soulburner、彼はかなり場当たり的なようだな」

「...まぁ、俺たちも人の事は言えないんだけどな」

「じゃあどうします?強くなったソルバさんとのデュエルも楽しみですけど、なんかヤバイの相手にしてるみたいですからここは一旦引いても良いですよ?」

「...俺たちはログアウトする。実はまだ引越しの荷物片付いてないんだ」

「そうなんですか、じゃあデュエルはまたの機会に」

「おう」

 

その言葉と共にソルバさんはログアウトした。

 

俺はもうちょっとここにいるとしよう。Playmaker目当てにやってきた賞金稼ぎ達を煽ってデュエルに持ち込む為に!

 


 

「お前が、Playmakerの仲間か?」

「いえ、近くにいただけです」

「なら、話を聞かせてもらおう」

「それにしても、あのGO鬼塚がSOLに着くんですか。給料良いんですか?」

「...まぁ、正直カリスマデュエリストやってた時と大差は無い」

「めちゃくちゃ稼いでんじゃないですか」

 

運営側に逆らってもロクな事はないので、ここは大人しく事情聴取を受ける。だがその前に!

 

「特に理由はありませんけど、事情聴取終わったらデュエルお願いできますか?」

「...俺はもうカリスマデュエリストじゃない、他を当たれ」

「残念です」

 

その後、事情聴取と厳重注意を受けて俺はログアウトとなった。

流石に正体不明のデュエリストにケンカを売るのは危ない事なのだと念を押して言われたのには少し驚いた。事情聴取してくれた人いい人だなー。

 

そして、ログアウト後に待っていたのは母からの折檻であった。

家族が一緒にいるときはリンクヴレインズをやらないというルールに抵触してしまったからだ。

 

罰として、今月の小遣いが吹き飛んでしまった。

 

まぁ、動画の広告収入で稼いでいる分はノータッチだったので実はそんなに困ってはいないのだが。それは隠しておこう、うん。

 


 

「またこの少年か」

「ねぇねぇ、邪魔になるようならコイツの意識データを奪っちゃわない?」

「焦るな、この少年は我々と明確に敵対している訳ではない。ただのデュエルが強いだけの子供だ。だが、警察関係者の子供でもある。下手に動いてハノイのような奴らに尻尾を掴まれるのは御免だ」

「ちぇ、いい案だと思ったんだけどな」

 

表面上は平和に見えるこのリンクヴレインズにおいて

悪意は、闇に隠れて渦巻いていた。

 




ちょっとずつ原作介入。
ちなみに、天頂の事情聴取をしたのはVR兄様直々にという裏設定。重要な案件だからネ!


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新戦術のお披露目

@イグニスタークッソ組みたい、めっちゃ楽しそう。
ただ、サイバネットマイニングをまだ確保できてないのが悩みどころ、ストラクとかで再録しないかなー。


最近ちょっとした悩みができた。なんと、リアルで。

デュエルディスクを手に入れてから時間の大半をリンクヴレインズに捧げてきた人間としては、正直リアルの問題とか投げ捨ててデュエルに没頭したいという気分なのだが、そうはいかない。この問題は、内申点に響くのだ。

 

事の始まりは、にっくき総合学習。

ランダムに決められた班でプレゼンテーションを仕上げるという課題である。

 

今回の議題も取っ付きやすさ重視なのか、新生リンクヴレインズについてという曖昧なものだった。まぁ、そこはいい。何せ自分はリンクヴレインズ散歩部だ。テクスチャの微妙なズレや、データ通信のラグの具合から隠されたエリアを見つけ出す事を主目的としているサークルなのだから。

もっとも、デュエリストの本能を抑えられる人はなかなかいなかったので辻斬り部と呼ばれてしまったのは割と誤算だったのだが。

 

それはともかく、新人を集めるために散歩部ではSNSと連動する機能を持たせたホームページを散歩部は持っている。作者は俺。最近はツールが充実しているためそう難しい作業ではなかった。

 

それを、ウチの班のヤツが見つけてしまったのである。

 

「散歩部だってー」

「やっぱみんなでワイワイ楽しくしてるのかなー?」

「動画あるみたいだね、見てみようか」

「おー」

 

その動画は、最悪にも俺ことStargazerの浮島探索動画だ。スピードデュエルのコースの休憩地点となりうるポイントの浮島に何か隠されていないかを探しつつ風景を楽しむ動画である。

 

尚、当然途中からデュエル動画になる。Dボードでクイっと誘われたら行くのが礼儀だから仕方がない、うん。

 

「凄い、エクシーズ召喚を使いこなしている!」

「マサっち、それって凄いの?」

「私も、デュエルわからないから教えてほしいな」

「エクシーズ召喚ってのはモンスター2体でオーバーレイネットワークを作り出して、レベルを持たずにランクという概念を持つ強力なモンスターを召喚する方法なんだ」

 

「?」とハテナマークが頭に浮かぶ女子二人。佐藤くんはデュエルの熱で解説もデュエリスト向けのものになってしまったようだ。

 

「要するに、同じレベルのモンスター何体かで強力なモンスターを呼び出すのがエクシーズ召喚ってこと」

「「あー」」

「結城くん、それは簡単に言い過ぎじゃないか?」

「良いだろ、二人は納得したんだし」

 

なんて言いつつも自分のタブレットで簡単なレイアウトとタイトルを乗せたスライドの雛形を作っておく。お題が簡単だといじる部分が少なくて楽で良い。

 

「仕事早いねー、ゆーきん」

「前使った奴を流用しただけだよ。それで、お題は散歩部についてで本決まりで良いのか?」

「私さんせー」

「私もです」

「僕もだ。こんな強いデュエリストの集団、俄然興味が湧いてきた!」

「じゃあ、仕事の割り振りな。成り立ち、活動、魅力、問題点の4つをテーマにしたいんだが、いいか?」

「問題点?」

「まぁ、人が集まりゃ問題点の一つや二つ生まれるだろ。つーわけで俺が問題点立候補な」

「じゃ、あたし成り立ちやりたーい」

「なら、僕は魅力を担当しよう」

「私は活動ですね」

 

「じゃ、パパッと仕上げちまうか」

 


 

「結城くん、ここなんだけど」

「ああ、活動内容ならここに活動報告のリンクがあるからそっちでな」

「ゆーきん、これホームページのコピペでいいかな?」

「手抜こうとしてんじゃねぇよ、班の評価に関わるんだぞ」

「えー」

「えーじゃない。無理そうなら手伝ってやるから」

 

などとガヤガヤ話しつつ作業を進める。

辻斬り部の問題点は、ホームページに投げつけられてくる苦情を適当に編集して乗っければいいのでかなり楽だ。この分なら、タスクの重そうな佐藤のフォローにも入れるだろう。

 

「決めたよ、皆!」

「どうした佐藤?」

「僕は、Stargazerにインタビューする!」

「...え?」

 

すいません、目の前に本人がいます。

 

なんて事は言えずに、辻斬りの首魁にインタビューしようとする佐藤少年を見るしかないのであった。

 


 

セントラルエリアの初期設定ログインポイントの前で、待ち合わせをする。キョロキョロとする少年に、軽く手を挙げて挨拶をする。

 

「は、はじめまして!マサって言います」

「あー、うん。俺はStargazer、散歩部の代表をやってるよ」

 

メッセージでアポイントメントを取られ、断る口実も思いつかなかったのでインタビューを受ける事になってしまった。

 

というか、散歩部の他の面子にその事を話したら爆笑しながら勝手に返信しやがったのである。おのれライトドロップ。先行でダイヤ立ててやろうか。

 

「じゃあ!早速ですが、Stargazerさんはこの散歩部の魅力をどういったものだと考えていますか⁉︎」

「んー、それは語るより見せる方が早いな。パフェ奢るよ」

「え、そんな事⁉︎」

「いいからいいから」

 

そうしてマサ少年を連れて入るのは、丸罰製麺といううどん屋だ。

 

「あの、うどん屋なんですけど」

「ここのパフェが絶品なんだよ、マジで」

 

時間帯が土曜の10時という事もありリピーター以外にもそこそこ人が見える、そこそこの繁盛具合だった。

 

ただし、うどんを食べている人は居ない。なんだこのうどん屋。

 

「ご注文は?」

「白玉パフェを二つお願いします」

「...チッ、ウチはうどん屋だぞ。なんでパフェばっか売れんだよ」

 

店員さんの毒を聞いて苦笑する俺と、オロオロするマサ少年。

 

「ご注文は以上で?」

「あー、マサ少年、飲み物は緑茶でいいか?」

「だ、大丈夫です」

「じゃあ緑茶二杯もお願いします」

「ご注文承りまし、た!」

「あ、すいません確認取りたい事があるんですけどいいですか?」

「なんですか?」

「ここの店、動画で紹介したいんですけど大丈夫ですか?」

「...ええ、ウチがうどん屋だって事をしっかり宣伝してくれんならね!」

「了解です」

 

まぁ、もうとっくにカメラは回しているのだが。

 

「凄いお店ですね...」

「でも、リピーターは多い。それだけパフェが美味しいって事だから期待して良さそうだ」

 

「じゃあ、散歩部の魅力だっけ?」

「はい!」

「このリンクヴレインズってさ、まだ新しいじゃん。だから、まだ誰も足を踏み入れた事のない名スポットがあるんじゃないかって思って歩き回ったのが始め。で、そしたら思った以上に色々あったのさ。入り口を壁のテクスチャで隠すカードショップとか、浮島の上で屋台開いてるスムージー屋とかさ。そういう奇妙で面白い人たちの情報を仕入れられるってのが散歩部の魅力の一つだと思うよ?」

「ふむふむ」

 

ボイスレコーダーと併用してメモもとるマサ少年。真面目だ、流石クラス1位の成績を誇るマンである。

 

「ご注文のパフェと緑茶です。ごゆっくりどうぞ!」

 

やけに機嫌のいい女性店員さんが配膳をしてくる。先程の店長とはえらい違いだ。

 

「もしかして、このパフェを作ったっていうバイトさんですか?」

「あ、もしかして私有名になっちゃった?困るなー、まだ学生だからなー!」

 

などと言いつつも滅茶苦茶嬉しそうな人だ。

 

「動画撮ってんですけど、一言貰って良いですか?」

「勿論!」

「ズバリ、このパフェの味の秘訣は?」

「私のパフェに対する愛情!好きだって気持ちを全力で表現しました!是非、食べていってね!」

「はい、ありがとうございます。では、お仕事頑張って下さいね」

「そっちもねー。動画期待してるよ、鬼畜星さん!」

「おい待てや」

 

「鬼畜星ってなんですか?」

「俺のあだ名。まったく遺憾だよ。俺の制圧なんぞ大した事はないというのに」

 

などと言いつつパフェを食べる。本当に美味い。生クリームと白玉と餡子のコラボレーションが、しかししつこい甘さではない心地よさとともに口の中に溢れてくる。現実のものとは違いプログラムで練られたこの味は、いったい幾度の試行を重ねて得られたものなのだろうか。あのバイトさんの凄まじさが際立ってくる。店開けるんじゃないか?マジに。

 

マサ少年も食べるのに夢中になっていた。美味しいもんなこのパフェ。

 

「こんな未知が待ってるんだ、散歩ってのは悪くないだろ?」

「はい!」

 

と、ここまでなら心温まる話。

 

残念ながら、我らは辻斬り部なのだ。

 


 

「こっちだよ」

「なんか、暗いですね」

「そう?あ、そこ右ね」

 

そうして、右に行った先にあったのはデュエルスペース。

 

「あの...?」

「もう遅い!」

 

指パッチンで合図を出す。すると今日の協力者であるライトドロップさんがデュエルスペースの唯一の入り口に鉄格子を下ろす。

 

「さぁ、ここから抜け出したいなら俺とデュエルしな!」

「え?」

 

デュエルスペースを囲む建物の上には、怪しい衣装で!というオーダーの通り黒マントに仮面のアバターたちがいた。ミステリアスパートナー?

 

「おいおい、まさかタダで情報を抜けるとは思ってないよなぁ?」

「...流石辻斬り部、結城くんの調べた通りだったか!」

「その通り!さぁ、始めるぜ!」

「強いデュエリストとの戦いは、望むところだ!」

 

「「デュエル!」」

 

「先行は貰った!ドロー!スタンバイ、メイン。...早速見せてやる、新戦術!俺は、星因子(サテラナイト)ベガを召喚!発動はあるか?」

「...?ありません」

 

今の反応で、手札誘発の類はない事は確認できた。なら、大丈夫だ。

 

「ベガの効果発動!手札のテラナイトを特殊召喚する。現れろ星因子(サテラナイト)ウヌク!ウヌクの効果発動!デッキからテラナイトカードを墓地に送る。デネブを墓地に!」

「レベル4のモンスターが2体、来ますか!」

「言ったろ?新戦術だって!現れろ、星の導くサーキット!俺は、戦士族モンスターであるベガとウヌクをリンクマーカーにセット、リンク召喚!現れろリンク2!聖騎士(せいきし)追想(ついそう)イゾルデ!」

「でも、攻撃力は1600!」

「中継ぎの攻撃力とか気にしてどうする?展開はここからさ!イゾルデのリンク召喚成功時の効果発動!デッキから戦士族モンスターを手札に加える。ただし、そのモンスターはこのターンプレイできない。俺は、シャムを手札に加える。そして、イゾルデの第二の効果を発動!デッキから装備魔法を任意の種類墓地に送る事で、その枚数と同レベルの戦士族モンスターをデッキから特殊召喚する!俺は、愚鈍の斧、聖剣アロンダイト、星輝士の因子、最強の盾の四種類を墓地に送り、レベル4の星因子(ステラナイト)アルタイルを特殊召喚!アルタイルの効果発動!墓地のテラナイトを特殊召喚する。俺は、星因子(ステラナイト)デネブを特殊召喚!デネブの効果発動!デッキからテラナイトを手札に加える。俺は2枚目のアルタイルを手札に」

「あっという間に、モンスターが3体に!」

「じゃあ、新顔の登場だ!再び現れろ星の導くサーキット!リンク2のイゾルデと、アルタイルとデネブをリンクマーカーにセット!リンク召喚!現れろリンク4!召命(しょうめい)神弓(しんきゅう)-アポロウーサ!」

 

翠玉色の熊に乗った弓使いの女性が現れる。矢筒にある矢の数は3本、初めて召喚したが、そういう事なのだろう。

 

「いきなりリンク4のモンスター!」

「アポロウーサの効果!このカードの元々の攻撃力は、リンク素材にしたモンスター×800ポイントになる。素材にしたのは3体、よって攻撃力は2400!」

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンドだ」

「僕のターン...良し、行ける!僕は、ブリキンギョを通常召喚!効果発動!手札のレベル4モンスターを特殊召喚する!」

「悪いが止めるよ!アポロウーサの効果発動!800ポイント攻撃力を下げる事で、モンスター効果の発動を無効にする!」

「⁉︎」

 

アポロウーサの矢筒から一本の矢が放たれ、ブリキンギョを貫いた。

ブリキンギョは、特殊召喚されるはずのモンスターが現れなかった事にキョロキョロと辺りを見回している。ちょっと可愛い。

 

「...アポロウーサがいる限り、モンスター効果は無効化されてしまう...なら、ここで止めておくべき!バトルフェイズ!僕は、禁じられた聖槍を発動!アポロウーサの攻撃力を800ポイントダウンさせる!ブリキンギョでアポロウーサを攻撃!」

「今のアポロウーサの攻撃力はブリキンギョと同じ800、相打ち狙いか」

「そいつを倒すチャンスでしたから」

 

ブリキンギョの突撃が、槍の突き刺さったアポロウーサに当たり、共に爆発で倒れる。どうやら、最初の関門は突破されたようだ。

だが、

 

「僕はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

「いや、まだターンは終わらないよ。エンドフェイズ!俺はトラップカードを発動、リビングデッドの呼び声!墓地のベガを特殊召喚する!ベガの効果発動、手札のアルタイルを特殊召喚。アルタイルの効果発動!墓地のデネブを特殊召喚!デネブの効果!デッキから2枚目のベガを手札に加える」

「また、モンスターが3体⁉︎」

「それで終わりじゃないんだよな!トラップ発動!ワンダーエクシーズ!フィールドのモンスターでエクシーズ召喚を行う!俺は、テラナイトモンスター3体、アルタイル、デネブ、ベガの三体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろランク4!星輝士(ステラナイト)トライヴェール!」

「でも、こっちにはトラップが...ッ⁉︎」

「そう、基本ルールな。まだお前のターンである今じゃ、どんな強力なトラップでも発動することは出来ない。だから、エンドフェイズに伏せカードを狙うのは、基本だったりするんだぜ?というわけで、トライヴェールのモンスター効果発動!エクシーズ召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのカードを全て手札に戻す!“トライ・フォース”!」

 

「まだあるか?」

「...ありません、ターン、エンドですッ!」

 

「トライヴェールを攻撃表示に変更、手札から、ベガを通常召喚!効果で星因子(サテラナイト)シャムを特殊召喚。シャムの効果!特殊召喚成功時に、1000のダメージを与える!」

 

マサ LP 4000→3000

 

「そして、シャムでダイレクトアタック!」

「クッ!」

 

マサ LP 3000 → 1600

 

これで、手札はガガガガードナーやBKベイルのようなカードではないことがわかった。つまり

 

「フィナーレだ!トライヴェールでダイレクトアタック!“トライ・ブレード”!」

「ぐぁああああ!」

 

マサ LP 1600 → -500

 


 

リアル小学生を虐めてるーとからかってきた連中が降りてきたあたりで、今回のデュエルの振り返りを行う。

 

「へぇ、ガジェット使いだったのか」

「はい。ブリキンギョとレッドガジェットでモンスターを並べて、クリフォートゲニウスをリンク召喚して次のターンに備えるつもりだったんですけど」

「それなら、伏せカードは激流葬か?」

「はい、もう一枚は戦線復帰でした」

「うん、デッキ構築に問題はないね。強いて言うならギアギガントX(クロス)かキンググレムリンが欲しいくらいか」

「どんなカードなんですか?」

「ギアギガントは機械族の、キンググレムリンは爬虫類族のエクシーズモンスター。どっちもサーチ効果を持ってるんだ。ガジェットと組み合わせるなら、ブリキンギョかカゲトカゲを採用するのが無難かな?」

「ふむふむ」

「あとは、ゴールドとシルバーのガジェットがメインに欲しいかな。破壊された時のガジェットリクルート効果と、機械族の特殊召喚効果を持ってるから、ガジェットに尖らせるならブリキンギョはそっちに変えてもいいかもしれないね」

「アドバイスありがとうございます!」

 

その純真さに、ちょっと引く俺とミステリアスパートナー達。

大体辻斬りの後は罵声が飛び交うので驚いているのだ。

 

いや、デュエル終わった後の感想戦は割と大切なんやけどなー。

 

「じゃあ、ありがとうございました!」

「うん。ただ今回のデュエルは事前契約の通り動画にするからよろしくね」

「ボロ負けが世に放たれるのはちょっと恥ずかしいですね」

「何、強くなる為の一歩だよ」

 

「ありがとう、楽しいデュエルだったよ」

「はい、こちらこそ!」

 


 

それから、プレゼン製作は物凄く順調に進んだ。佐藤くんのやる気が物凄く、あの日ログアウトしてすぐに作業に取り掛かったのだとか。流石学年一位。

 

だが、ここからが悩みの本題。

ちょっと漏らしてしまったのだ。

 

動画投稿前に、ゴールドガジェットやシルバーガジェットを見つけたという情報を。

 

リアルの方のアカウントで(誤爆)

 

それ以来、学年一位の佐藤貴規くんは俺をStargazerかその周りにいたミステリアスパートナーの誰かだと疑っているのだ。

 

リアルとネットを切り離して生きている自分としては、割と一大事である。

 

あ、発表は無事に終わりました。流石一位、隙がないぜ。

 


 

ブラシェパさんからメッセージが届く。なんでもリンクブレインズ下層にある進入禁止エリア周辺の情報が欲しいとの事だ。

散歩部活動初日にその辺は見て回ったのでデータはある。どうせ俺が渡さなくても情報収集の手段などいくらでもあるのだし、大した影響はないだろう。

 

そう考えて返信すると、直ぐに返信がやってきた。

 

それは、Playmakerを捕まえるまで、散歩部の情報網を使わせて欲しいという打診だった。

 

これは、チャンスである。今回の事件に携わる事ができるようになる為の。

だが、心で決めた答えは決まっていた。

 

「Playmaker達には恩義があるので、その協力には応じられません」

「...そうか。承知した」

 

その答えと共に、ブラシェパさんとのメッセージのやりとりは終わった。

 

次に会うときはブラシェパさんとは敵になっているかも知れない、そんな事を思った。

 

 




ブラシェパさんルートはここで一区切りです。
次回からは、この小説のタイトルに真っ向勝負仕掛けてきたあの人との協力関係の構築がスタートします。今週はあと1話くらい書ける筈ッ!と自分を追い込むスタイルで。


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繋がる縁

なんか気付いたらデュエルの対戦カードが変わっていた現象。不思議!



「滝響子受刑者、刑務所より脱獄ね...」

 

SNSに流れてきたそのニュースは、俺に新たな戦いを確信させるものだった。

 

滝響子、又の名をバイラ。ハノイの3騎士の一人だ。彼女の脱獄が、ハノイの騎士の新たな動きのスタートになる。と、自分の知識は知っている。

 

「Playmaker捕獲のニュースがないって事は、とりあえず原作通りに進んでいるのかね?まぁ、多少違っても問題はないだろうけど」

 

何せ、デュエリストレベルが違う。

 

「鬼畜星さん、どうしたの?」

「いや、ハノイの騎士がまた何かしそうでな。戸締りはちゃんとしないとなーって思ったくらいよ」

「...なんかあったの?」

「脱獄だってさ?よくやるよ本当に」

 

「それじゃあ、行きますかLair Lordさん!」

「ええ!カガリが制限カードになっても戦える事を見せてあげる!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

なお、その日は魔封じの芳香をしっかりと決め、「どうして私に気持ちよくデュエルさせねぇのよ!」に「悔しいでしょうねぇ!」と煽りつつも完封勝利をしてのけれた。やったぜ。

 

「露骨にメタ張るとか酷くない?」

「先に喧嘩売ってきたのはどっちですか。まぁ、もう許しましたけど」

 

などと言いつつも本命の調査に向かう。

 

目的は、リンクヴレインズの進入禁止エリアギリギリをぐるっと大回りすること。

ブラシェパさんからの情報から、進入禁止エリア付近にて何かあった事は転生知識なしでも考えつく。

 

だからこそ最下層以外の進入禁止エリアを見て回っているのだが、どうにも空振りのようだ。異変は感じられない。

 

「じゃ、私にもパフェ奢ってね?」

「あー、なんかあると思ったんだがなぁ」

 

その日は、余分に620DP払う事となった。悲しみ。

あと、丸罰製麺さんのうどんを興味本位で食べてみたが、普通のうどんでした。値段相応。チェーン店とかで食べれそう(超失礼)

 


 

開けて翌日、学校帰りにふらりとリンクヴレインズに立ち寄ると、セントラルエリアの方が何やら騒がしい。

 

SNSを確認してみると、なんでもブルーエンジェルが緊急イベントを開始するとのことだ。どうせミラーリンクヴレインズ探索は暗中模索なのだし、気晴らしに行ってみるとしよう。

 

と、思っているとデュエルの気配がした。

建物の上には青髪のボーイッシュなアバターがそのデュエルを見学していた。

 

ボードで近づいて、挨拶を一つ。

 

「すいません、一緒にデュエルを見ても良いですか?」

「...ええ、構わないわ」

「...今は先行1ターン目、シルキタスと伏せ二枚ですか。トラップが怖いですね、マルチフェイカーが飛んでくる」

「ゴーストガールの手の内を知ってるの?」

「オルターガイスト使いの人と以前デュエルした事があるんです。リアルの方で」

「へぇ、勝ったの?」

「勝たされた感じですね。アレを勝利にはカウントしたくないです、個人的なプライドですけど」

 

「フン...流石美しいお姉さん。慎み深く攻撃力800のモンスターできましたか。しかし我が名はブレイヴ・マックス。プレイメーカーに認められし稀有なるデュエリスト。その絆は鉄より固くマグマより熱く...」

「私、ターンエンドしたから」

「あ...はい」

 

なんか三枚目な雰囲気の抜けないデュエリストだ。アバターに金かけてる割に緩いというかなんというか。

 

だが、とりあえず確認するのは現状にどう対処するかだ。

シルキタスにはオルターガイストを手札に戻す事で相手のカードをフリーチェーンでバウンスできるという強力な効果を持っている。

 

 

「ハイビートかスキドレビートですかね?」

「発言一つから決めつけるのは早計じゃない?」

「いえ、所作的にです。低攻撃力モンスターを警戒しないタイプのデュエリストは、高打点を叩き出す事をデッキコンセプトにしてることが多いんです。極まれば強いですよ、このタイプは」

 

「参ります。俺は、手札一枚をコストにツインツイスターを発動!まずは伏せカードを破壊させて貰いますよ!」

「やるわね。でも、発動はさせて貰うわ!トラップカード、パーソナル・スプーフィングを発動!手札のオルターガイストをデッキに戻してデッキからオルターガイスト・クンティエリを手札に加える。そして、トラップカードが発動された事で、手札のマルチフェイカーの効果発動!このカードを手札から特殊召喚し、さらにデッキからオルターガイストを特殊召喚する。私はマリオネッターを特殊召喚!」

 

「成る程、シルキタスでマリオネッターを手札に戻して、次のターン召喚してプロトコルを張る選択肢も見せているんですか」

「それも、このターンの趨勢次第だけどね。今、彼が墓地に送ったカードは森の番人グリーンバブーン。自己再生能力を持つ強力なモンスター」

「このターンで起爆するなら、ブラックホール辺りが来ますかね?」

「この盤面をひっくり返すには、パワーカードの力が必要ね。彼は持っているのかしら」

「ドローは運ですからね」

 

そっけない態度だが、豊富なデュエル知識と打てば響く会話。この人好きなタイプの人だ。人として。このデュエルが終わったらデュエルを申し込んでみよう、楽しそうだ。

 

「俺は、スクラップ・コングを召喚!効果により、召喚成功時に破壊される!そして、手札のグリーンバブーンのモンスター効果発動!獣族モンスターが破壊された時、ライフを1000払う事で特殊召喚できる!」

 

ブレイヴ・マックス LP 4000 → 3000

 

「そして、死者蘇生発動!墓地にいるもう一体のグリーンバブーンを特殊召喚する!さぁ、バトルです!一体目のグリーンバブーンで、シルキタスに攻撃!」

「シルキタスの効果発動!マルチフェイカーを手札に戻して、グリーンバブーンを手札に戻す!」

「甘いですよお姉さん!速攻魔法、禁じられた聖杯!シルキタスの攻撃力を400ポイント上げる代わりに、その効果を無効にする!」

「やるわね!」

 

ゴーストガール LP 4000 → 2600

 

「でも、シルキタスの効果発動!フィールドから墓地に送られた時、墓地のオルターガイストトラップカードを手札に加える。私は、オルターガイストカモフラージュを手札に!」

「まだ続きますよ!もう一体のグリーンバブーンでマリオネッターを攻撃!」

「それは防がせて貰うわ!手札の、オルターガイスト・クンティエリの効果発動!オルターガイストが攻撃された時にこのカードを特殊召喚し、そのバトルを無効にする!」

「...流石ですねお嬢さん。では、メインフェイズ2!ここからがクライマーックス!現れよ!勇者な俺様のサーキット!俺は、レベル5以上の獣族モンスター2体、二体のグリーンバブーンをリンクマーカーにセット!‘リンク召喚、現れろリンク2!森の鉄人メタル・バブーン!」

 

「リンク2で攻撃力2600のこのモンスター。これにて我が勝利揺るぎなし!ターンエンド!」

 

「なかなか頑張ったが、これまでか」

「ええ、今の攻防で彼は手札を使い切った。そして、クンティエリにはモンスターの効果を無効にする効果がある。あのリンクモンスターにどんな効果があっても、発動できなければ意味はない」

 

「私のターン、ドロー!...私は、オルターガイスト・メリュシークを召喚!マリオネッターを攻撃表示に変更して、バトル!」

「いいんですかお姉さん。メタルバブーンの攻撃力は2600、お姉さんのモンスターじゃ倒せない!」

「そうでもないわよ!メリュシークの効果!このモンスターはダイレクトアタックできる!行け、メリュシーク!」

「うわっ⁉︎」

 

ブレイヴ・マックス LP 3000 → 2500

 

「そして、メリュシークのさらなる効果!このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、カードを一枚墓地に送る!消え去りなさい、メタルバブーン!」

「うぁー⁉︎俺のエースがぁ⁉︎」

「そして、マリオネッターでダイレクトアタック!」

 

ブレイヴ・マックス LP 2500 → 900

 

「そして、メインフェイズ2!さぁ現れなさい未知なる異世界に繋がるサーキット!私はクンティエリとメリュシークをリンクマーカーにセット!リンク召喚!現れよリンク2、オルターガイスト・ヘクスティア!ヘクスティアはリンク先のモンスターの攻撃力を自身に加える効果を持つ、よって攻撃力は3100!カードを2枚伏せて、ターンエンド」

「むぅ...だが、最後まで諦めないのがデュエル道!俺のターン、ドロー!良し、まだまだこれから!俺はマジックカード、ブラックホールを発動!フィールドのモンスターを全て破壊する!」

「残念、終わりよ!ヘクスティアの効果発動!リンク先のオルターガイストをリリースする事で、魔法罠の発動を無効にできる!」

「なんだってぇ⁉︎」

「さぁ、あなたの手札はゼロ。どうするの?」

「...ターンエンドです、サレンダーだけはしない!」

「そう。じゃあ行くわよ!ドロー!バトル!ヘクスティアでダイレクトアタック!」

 

ブレイヴ・マックス LP 900 → -600

 


 

「あ、俺あのブレイヴマックスって人知ってるかも知れません」

「そうなの?」

「はい、ウチの面子が辻斬りした中でメンタルだけは凄まじく強い奴がいたってんで、寄ってたかってデュエルしまくったらしいんですよ。打てば響くというか、やればやるだけ強くなるという感じですかね?まるで素人にモノを教えてるみたいだって話でした」

「まぁ、今のデュエルで見えたのは、それなりのデュエリストだって事だけ。外れね」

「あら、お眼鏡には叶わなかった感じでした?」

「そんなとこよ」

 

デュエルで負けても尚元気にゴーストガールさんと握手をするブレイヴ・マックスさん。今はまだ弱いかもしれないが、これから強くなる素質がない訳ではないようだ。

 

「じゃあ、俺は用事があるんでコレで!また会い、マックス!」

「またねー」

 

走り抜けるブレイヴ・マックス。行き先はおそらくブルーエンジェルのイベント会場だろう、方向は一致している。

 

それを見届けた後、俺とボーイッシュな少女はぴょんと建物から降り、Dボードで着地する。

 

「なんでついてくるのよ」

「いや、あのデュエル見たら燃えてきたんで一戦どうですかってお誘いですよ」

「ごめんなさい、私これから用事があるの」

「そりゃ残念」

「また会いましょうね。鬼畜星」

「知られてて光栄です。それで、あなたの名前は?」

「ブルーガールよ」

 

なら仕方ないとばかりに、オルターガイスト使いのゴーストガールさんにデュエルを挑んでみようと近づいていく。

 

「プレイメイカーの親友ってのは、まぁ無いわね」

「なんでイベントなんか開く事になったんだか」

「ごめんなさい。それで、そっちの子は...Stargazer、鬼畜星ね」

「まぁもう慣れてるから良いんですけど」

 

と、思いつつゴーストガールさんに近づいて耳打ちする。

 

「アバターと現実を変えないって大丈夫なんですか?お姉さん」

「案外大丈夫よ?写真に撮られたりするようなヘマはしないからね、結城天頂くん」

「覚えててもらって光栄です」

「あら、驚かないの?」

「デュエルは、口で語る以上に人を語ります。なら、動画上げてる俺は特定されやすいとはわかってますよ」

 

なんて話をしつつ、ブルーガールさんとゴーストガールさんとなんとなく同行する。

 

どうやら、プレイメイカーを探す為にプレイメイカーの友人だと嘯くブレイヴ・マックスに接触したのだそうだ。

 

「賞金目当て、じゃないですね」

「あら、わかるの?」

「ええ、ブルーガールさんはともかくゴーストガールさんは良い生活してるの知ってますから」

「リアルの知り合いなの?」

「「喫茶店でデュエルした仲です/よ」」

「へぇ...え?」

 

なんだかんだと仲良くなった俺たちは、イベント会場へと歩みを進めていった。

 

「ゴーストガールさん、質問ってか確認良いですか?」

「何?」

「先日の進入禁止エリアの件、関わってますよね?」

 

ピリっと空気が変わる。ゴーストガールは興味を、ブルーガールは警戒をしているようだ。

 

「プレイメイカーがそこに現れた。その理由はまたリンクヴレインズに危機が迫っているから。だから賞金稼ぎに狙われる事も覚悟して飛び込んでいった。新たな仲間のソウルバーナーと共に」

「...どこまで知ってるの?」

「あ、4割くらい妄想だったんですけど当たりだったんですね。ありがとうございますブルーガールさん」

「...あ」

「まだまだ経験が足りないわね、ブルーガール」

 

「俺がその情報に至れたのは、リンクヴレインズ散歩部として広くネットワークを張っているからです。そして、そのネットワークに引っかかったのは先日の件だけじゃない、プレイメイカーの仲間、ソウルバーナーの連絡先を俺は知っています。ゴーストガールさん、俺の情報は使えませんか?」

「...かなり有用よ。けれど、それが本当の話ならね」

「なら、プレイメイカー達への質問か何かを俺に下さいよ、ソウルバーナーに連絡してみますから」

「その連絡先を、私に売るって気はないの?」

「デュエルをした友人ですから。流石にそこまでは」

「良いわ、信じてあげる。これが私の連絡先ね」

「良いの?ゴーストガール」

「こっちは出遅れてる側よ。先を行くプレイメイカー達と情報と目的の共有ができるならそれに越した事はないわ。というか、ハッカーフォーラム通しての連絡は結構リスキーなのよ。それしかないから使っていたけど」

 

「でも、あなたにメリットが見えない」

「メリットならありますよ」

 

「俺、リンクヴレインズが好きなんですよ。だから、それを守ってくれるプレイメイカーには協力を惜しまない。惜しみたくない。そういう事です」

「...負けたわ。疑ってた私が馬鹿みたい。こっちが本物の連絡先よ、さっきのはダミー、ウィルスで連絡先を掻っ攫う用の奴よ」

「...おっかないですねー」

「知らないの?女は強かなのよ」

 

そんな会話と共に、この協力関係は結ばれた。

 


 

イグニスアルゴリズムを用いたブラッドシェパードのトラップを仲間達との協力で切り抜けたソウルバーナーこと穂村尊は、疲れからベッドに倒れ込んでいた。

 

「あー、強かったなブラッドシェパード」

「ああ、尊があと少しでも私たちのデッキのポテンシャルを引き出せていなかったら負けていた。それほどの相手だった。奴が卑劣な策でなく正面から来たのなら、結果は変わっていたかも知れないな」

「そういう意味じゃ、Stargazerに感謝だな。あいつに負けた事が、この転生炎獣(サラマングレイト)デッキを本当の俺のデッキにするきっかけになったんだから」

 

Den Cityに始めて来た日に出会った奇妙な出会いを思い出す。今でも辻斬りを続けているのだろうかと思うと、そういう事を楽しめる事の尊さが少し羨ましく思えてしまった。

尊にとって、デュエルは生きる為の戦いだという植えつけられた固定観念は、見えない所で彼を苦しめていた。

 

「噂をすれば、だな。Stargazer、結城天頂から連絡が届いたぞ」

「マジか...なんて書いてあるんだ?」

「驚くな、なんとゴーストガール陣営との橋渡し役になってくれるのだそうだ。いくつかの質問と、彼らのやれる協力の具体案が書かれているよ」

「草薙さんと遊作に相談だな。とりあえず、仲間と相談してから詳しく返答するって事でいいかね」

「ああ、返答は私がやっておく。いくつかのダミーを経由してのやり取りは、尊には不可能だからな」

「どーせ俺はネット音痴ですよーだ」

 

そんな事を言いつつ、尊は瞼を閉じていった。

 

「同封されているこの変装用のアバターアイテム、なかなかの出来だな。そうだな...不霊夢シルエットと名付けよう」

 

ちなみに、そのアバター変装アイテムを作った作者は、「オーバーボディというのを着ているのだ」をやりたくてアバターより少し大きいそのアイテムを作ったのだ。なんてどうでも良い話を聞くのは、明日の事であった。

 

 




ちなみにこのアバターアイテム製作者さんは既存のものだけでなくオリジナル超人のオーバーボディを作り上げまくってる奇才。ミステリアスパートナーマントもこの人の作品。キン肉マンやプロレスのネタを振ると割引してくれるという粋の人。
だが、「オリジナル超人作るとか厨二抜けてないですよねー」とか言った奴は問答無用で出禁にする私情挟みまくるマンでもある。


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天の星と愛の地

「今日もリンクヴレインズは平和ですねーっと!」

 

特に理由はないが、バックフリップを決めてみる。周囲を飛ぶDボーダーからは拍手が出るが、それくらいだ。

 

と、思ったら一人だけ妙な動きをしているアバターがいた。

 

枯れ木のような体で、何かを探しているように見えた。

 

散歩部としてのセンサーが反応している、困りごとだと。

 

「ハロー、そちらのウッドマンさん。何か困りごとでも?」

「...しまった、中央部に近付き過ぎたか」

「ありゃ、想定外のトコからの声。しかもそのにょきっとしてる感じ、不霊夢さんの同型のAIです?」

「にょきっと...ああ、確かに私はイグニスだ。そして、君のことは知っている、Stargazer。リンクヴレインズ最大の情報収集集団の長だからな」

「じゃ、協力を申し出ても良いですか?」

「協力?」

「あなたは、誰かを探してる。人手が要るんじゃないですか?」

「...人間を、信じろと?」

「まぁ、プログラムで隠されているのを見つけろってのは難しいんで、その辺りのツールは欲しいですけどね」

 

「手段を選んでる暇、あります?」

「ならばデュエルだ。君が信用に足るかどうか、試させて貰おう」

「構いませんが、不霊夢さんの同類って事はサイバース使いでしょう?メインコースから離れましょう」

「ああ」

 

そうして5分ほど離れた所で、互いに構える。

 

「「スピードデュエル!」」

 

「私の先行、手札からコストダウンを発動!手札を一枚捨て、Gゴーレム・ロックハンマーのレベルを4にし、召喚!ロックハンマーの効果!このカードをリリースし、Gゴーレムトークンを3体特殊召喚する。現れろ、大地に響くサーキット!リンク召喚!現れろリンク2、Gゴーレム・スタバン・メンヒル!さらに残りのトークンとスタンバイ・メンヒルでリンク召喚!現れろ、Gゴーレム・クリスタルハート!クリスタルハートの効果発動!墓地の地属性リンクモンスターをこのカードのリンク先に特殊召喚する!」

「おっと、残念。手札の屋敷わらしの効果発動!このカードを手札から墓地に送り、墓地からモンスターを特殊召喚する効果を無効にする!」

「何⁉︎」

「スタバン・メンヒルで墓地のモンスターを蘇生してリンク3に繋ぐつもりだったんだろうけど、発動を多くするって事はそれだけ隙ができるって事だ。デュエルは二人でやるもんだぜ?」

「クッ、私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

「じゃあ、俺のターンな。ドロー!スタンバイ、メイン!速攻魔法、ツインツイスターを発動!手札を一枚墓地に送り、伏せカード2枚を破壊する!」

「クッ⁉︎」

「破壊されたカードに、墓地発動はなし。じゃあ、フィナーレだ!俺は、手札から星因子(サテラナイト)ベガを召喚!効果発動、手札のアルタイルを特殊召喚!アルタイルの効果発動、ツインツイスターで墓地に送ったシャムを守備表示で特殊召喚!シャムの効果!相手に1000のダメージを与える!」

 

アース LP4000 → 3000

 

「続いて!テラナイトモンスターであるシャムとベガでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!」

「合計攻撃力は、4300ッ⁉︎」

「バトル!ヴァトライムスでクリスタルハートを攻撃!」

「そんな、クリスタルハートが!」

 

アース LP 3000 → 400

 

「トドメ!アルタイルで、ダイレクトアタック!」

「ぐぁああああ!」

 

アース LP 400 → -1300

 

「ありがとう、楽しいデュエルだった」

「...ああ、こちらもだ」

 


 

「で、どーよ。俺を信用できるか?」

「ああ、少なくともデュエルに関しては君は私を超えている。その上で私に何もしないという事は、少なくとも我々の敵ではないという事だろう」

「そりゃありがとう。けど、運だろ今のは。初手に誘発と除去引けなかったら盤石の盤面を崩すのは手間だぜ?」

「だが、君は引き込んだ。それは、君の強さだ」

「確率だと思うんだがなー。というか、なんでAIがオカルト語って人間が確率語ってんだよ」

 

などと語っていると、空気が変わる。

 

「えっと、アースさんで良いんだっけ?」

「ああ、私は逃走を図ろう。これが私の使っている探索プログラムだ。イグニスの反応があれば私に自動的に伝わるようになっている。活用してくれ」

「了解、コピーして皆に投げてみるわ」

「頼む」

「最後、確認なんだが探してるのって仲間のイグニスって奴か?」

「ああ、アクア。水のイグニスだ」

 

その言葉に込められた万感の想いから、知識としてでなく、実感として彼が本当にアクアを大切に思っている事が理解できた。

 

それを知ってしまったのなら、手を差し伸べないでいられる訳がない。

 

「大船に乗ったつもりで居な!膨れに膨れたリンクヴレインズ散歩部1万人の全力を持って、お前の恋人と巡り会わせてやる!」

「こ、恋人ではない!」

「じゃあ、未来の恋人ってことな!」

「違う!そもそもAIに恋愛の概念などあるわけが!」

「じゃ、またな。アース!」

「...まったく!」

 

アースさんは、プログラムの内蔵されたカードを投げ渡して来て、すぐに何処かへ消えていった。

 

「さて、俺も逃げますか!」

 

ゴーストガールに渡されたジャミングプログラムをばら撒きながらこの場を離れる。

 

もうじきSOLのセキュリティドローンがこの場にやって来るからだ。それがなんとなくわかるようになったあたり、俺も修羅場に慣れて来たという所だろう。

 

「しっかし、戦法が分かってるとはいっても何とかなるもんなんだな」

 

戦法が分かっていてガンメタ張って尚ワンキルされた過去はあるが、あの日から少しくらいはデュエリストとしてのレベルは上がったという事なのだろうか。

 

「そうだと嬉しいが、そんな美味い話はねぇよなー」

 

思い出されるはブルーエンジェルさんに先行ワンキルされた過去。アレが負けるような相手がこの世界の敵なのだ。一般人はなるべく目立たずにいよう。

 

「とりあえず、ソウルバーナーとゴーストガールに連絡だな」

 


 

「あの子、狙ってるのかしら」

「ゴーストガール?」

 

リンクヴレインズを探索するプログラムを走らせながら届けられたメッセージを見る。

 

それは、偶然地のイグニスと接触したとの事だ。そして、その目的は水のイグニスの探索。添付されたプログラムを散歩部のメンバーに回して、捜索範囲を一気に広げるつもりなのだとか。

 

だが、そのプログラムに危険性がないかの確認の為に一応コピーデータをこっちとプレイメイカー側に回して来たらしい。

 

「んー、駄目ね。やっぱこのアルゴリズムはわからない。...葵、ちょっとリンクヴレインズ行ってくるわ。Stargazerの近くが一番情報が早い」

「エマさん、何があったんですか?」

「餌が勝手に動いて獲物を引っ掛けたのよ。あの子、本当になんなのかしら」

 


 

「遊作!草薙さん!アースの動きがわかった!」

「尊、本当か⁉︎」

「オイオイ、またあの姉ちゃんからの情報か?罠なんじゃないか?」

「違う、Stargazerが偶然アースと接触したみたいなんだ。アースはリンクヴレインズの各地を回ってアクアを探しているって」

「...その情報の正確性は?」

「イグニスアルゴリズムで組まれた探索プログラムが添付されていた。ゴーストガールにはそれは作り出せない上、アース特有の癖がそのプログラムにはあった」

「じゃあ、確定だな!」

「結城天頂はどれだけ優れたデュエルセンスを持っていても、所詮は10歳の少年だ。それが、アースの信頼を勝ち取り、ゴーストガールの信頼を勝ち取り、尊の信頼を勝ち取った。...なんの冗談だ?」

「遊作?」

「ちょっとちょっとご主人、何を疑ってるの?」

 

遊作は言葉を紡ぐ。

 

「この少年の行動は一見普通に見えるが、現状から逆算して見ると明らかにおかしい点が3つ見えてくる」

「おかしい点?」

「一つ、ネットワークが広すぎる。まるでこの事態を想定していたようにしか見えないほどに都合が良い。なにせ、進入禁止エリアギリギリまで調べ上げられているほどだからな。ブラッドシェパードはそれを利用していたと見える」

「だが、それは穿ち過ぎではないか?リンクヴレインズ散歩部の設立のログをハッキングしたが、話の流れは自然なものだったぞ」

「んなことやってたのかよ不霊夢」

「万が一の為だ」

 

「二つ、有力な人物への接触率の高さだ。一人目、尊ならまだ偶然と言える、二人目、ブラッドシェパードも情報網をアテにした接触なら納得はできる。だが、ゴーストガールとアース、この二人については明らかに偶然が過ぎる。偶然が3つ重なればそれは作為的なものとして見るのが定石だ、それが四つなら疑いようはないだろう」

 

「そして3つ目、イグニスという存在に対して何のアクションも起こしていない事だ。今、結城天頂の家のサーバーをハッキングして尊と会った日の検索履歴までを確認してみたが、AIについて検索した履歴は無かった」

「ご主人、それのどこが問題なんだ?」

「考えても見ろ、イグニスは人と同様に感情を持ち会話をするAIだ。それについて驚かなかった事はまだ10歳であるが故の無知だと言えなくはない。が、だからといってそれを調べないという事はおかしいんだ。結城天頂の今までの行動を素直に見た場合、好奇心旺盛な少年という姿が見えてくる。そんな人物がイグニスなんてものに興味を持たないのは不自然だ」

 

そんな疑惑に対して、尊が口を開く。理論ではなく、感情を主にした理由から。

 

「...遊作、俺にはStargazerが悪事をするような子には思えない。デュエルスタイルはともかく、人としてのあの子の事は信用できる。だから、僕はあの子を信じたい」

「ああ、俺もだ。何もStargazerが悪事に手を染めているとは言ってはいない。未だ姿を見せていない光のイグニス。もしかしたらそこに結城天頂は繋がっているんじゃないかという可能性の話だ」

「えぇ⁉︎あのクソ真面目野郎と⁉︎」

「遊作、それはどうしてだ?」

「単純に消去法だ。まだ見えていない水のイグニスと繋がっているなら、味方であるアースに居場所を教えない理由はない。ウィンディと繋がっているのは、奴の人嫌いの性格から考え辛い。だからだ」

「んー、俺ちゃんは違うと思うぜ、ご主人」

「どうしてだ?」

「いや、勘なんだけどさ、あの計算高い光のイグニスが、こんなトラブルだらけで勢いで辻斬りしでかすような予測不能の子供を味方に引き入れるとは思えないのよ」

 

その言葉に、遊作は少し黙った後で頷いた。

 

「...そうか、とすれば未知の勢力と繋がっていると考えるのが妥当か?」

「未知の勢力って何だよご主人」

「俺のサイバースデッキを残した謎の人物、というのは考えすぎか」

「そうだぜご主人。情報が無いからってなんでもかんでも何かに繋げて考えるの良くないぜ?コーヒーでも飲んで気分を変えなよ」

「...そうだな。すまん尊、草薙さん、見当違いの事を言ったかも知れん」

「だが、言われてみれば確かにStargazerには奇妙な面がある。少し本人に尋ねてみるとしようか」

「不霊夢、それでまともな返答が返ってくると思うのか?」

「もうメッセージを送った」

「嘘だろお前⁉︎」

 

「返答が来たぞ」

「なんだって?」

「ゴーストガールとは、以前リアルで知り合った知己である事、アースに関してはバックフリップを決めた時に妙な反応をしたから辻斬りを仕掛けようとした事がきっかけらしい」

「...ブレないなStargazerは」

「それから、我々イグニスの事は厄ネタの匂いがするから避けていた、との事だ。これに関しては私は何も言えないな」

「...結城天頂の危機察知能力か。たしか以前にもハノイの大襲撃を察知して警告を流していた事もあったな」

「ご主人のリンクセンスみたいな特殊能力かね?」

「かもな。ボーマンの動きに見当がつかない今なら、少し結城天頂について調べてみても良いかもしれないな」

 

「当の結城天頂は、とりあえず危険は無いと判断したアースの探索プログラムをリンクヴレインズ散歩部に配布しているな。アースの探索できないリンクヴレインズのセントラルエリアなどを中心に探しているようだ」

「確かに効果的だな。イグニスであるアースはどうしてもリンクヴレインズの中心部には近付けない。アクアがSOLテクノロジーに囚われているのなら、リンクヴレインズのシステムに組み込まれている可能性もあり得るな」

「...あー、敵が多いな畜生。デュエルでケリがつくなら楽だってのに」

「安心しろよ尊、そういった情報収集までは俺の仕事だ。ドーンと任せてくれや」

「お願いします、草薙さん」

 

それは、Aiがウィンディに誘拐される前日の事だった。

 


 

「この探索プログラム凄いな、今まで勘で見つけてたテクスチャのズレが丸見えだ。...ここ、やっぱダブってるな」

「何見てるの?Stargazer」

「ゴーストガールさん、どもです。いや、ここなんですけど、メッセージに添付した探索プログラムでここを見てくれませんか?」

「何...って何これ、バグ?」

「おそらく。時間経つと消えちゃうんですけど、新生リンクヴレインズってこんな感じにテクスチャがダブってる所がたまにあるんです。ゴーストガールさん的には何か知りませんか?」

「...わからないわね。でも、ただ事じゃないわね。勘だけど」

「同感です。重なったもう一つの世界、それがSOLの関与しているのなら安心なんですけど、そうじゃないならそんな事が出来るのは...」

「...イグニスね」

「やっぱ厄ネタでしたかあのにょきっと族。でも、逃げて良い感じのじゃないんですよねー」

 

これを見つけた事で、俺はもう逃げられない所まで来てしまっただろう、そんな予感がした。

 

「リアルダイレクトアタックだけは防げないから勘弁なんだよなぁ」

 

そう、一言口に出てしまったのは仕方がないだろう。




アニオリテーマは扱い辛いですねー。理想ルートは自力で編み出さないといけないんですから。
まぁ、そもそも展開させないというのがウチの天頂なので問題はありませんでしたが。


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友達のできた日

ゴーストガールの本拠地にて、財前兄妹と別所エマは持っている情報を擦り合わせていた。

Playmakerからもたらされた情報から、ネット経由のやりとりは危険だと判断したからだ。

 

「光と風、2つのイグニスの反逆ね」

「エマ、何か心当たりがあるのか?」

「ちょっとね。新生リンクヴレインズになってから見られていた現象らしいんだけど、テクスチャが二重になってる所を見つけたの」

「テクスチャが二重に?」

「リンクヴレインズそのものにそういう仕込みがされてるって線は考えなくて良いのよね、晃」

「ああ。だが、そんな現象に心当たりはないぞ。そのテクスチャの重なりの情報は本当なのか?」

「嘘をつくような子じゃないのは確かよ。今までは探索プログラムをフリーのものを使っていたから、情報を保存できなかったらしいの。彼がそれの証拠を見つけられたのは、イグニスの作った超高性能の探索プログラムを使い始めてから。リンクヴレインズのバグ報告にそのデータはあげられている筈よ。フォームに送ったのは私が見届けたから」

「そうか、後で確認してみる。とすれば、イグニスの隠れ場所がわかったかもしれないな」

「ええ、侵入方法は考えないといけないけどね」

「お兄様、どういう事ですか?」

「リンクヴレインズの基本システムに潜むようにイグニスの隠れ家があるのではないかという話だ。リンクを飛んでいるのか、侵入できない裏側を作ったのか、詳細はまだ不明だがな」

 

「では、私はリンクヴレインズの基本システムの見直しを社に提案してみる。2人は...」

「中立である二人のイグニスの捜索ね。もっとも、1人は行方不明で、もう1人は神出鬼没だけど」

「土のイグニス、アースの目的は水のイグニス、アクアの捜索ですよね?」

「そう、だからリンクヴレインズを巡ってアクアを見つけ出せば、二人纏めて釣り出せるって訳」

「頼むぞ...それと確認なんだが、土のイグニスと接触を持ったというStargazer、彼は大丈夫なのか?」

「ええ、彼のデュエルの腕は保証するわ」

「だが、彼は10歳の少年でしかない。リンクヴレインズを巻き込む騒動に巻き込んでいいものか」

「10歳⁉︎」

 

「言ってなかったのか」と晃はエマを睨み、「別に問題ないと思ったのよ」とそっぽを向く。

 

「じゃあ、私はちょっと学校帰りの少年に情報を伝えてくるわ。Playmaker達との連絡手段もリアル経由でできるのを探したいもの」

「なら、私はリンクヴレインズでアクアを探してみます。何にせよ、キーになるのは彼女ですから」

「では、行動開始だな」

 

三人は、それぞれがやるべき事の為に行動を開始した。

 


 

俺は今、今世最大の決断を迫られているかもしれない。

ここは、Den City の知る人ぞ知るカードショップ。リアルのカードを扱うオールドスタイルな店である。

 

そんな店に、たった6枚のカードが入荷した。

 

そのカードの名前は、“無限泡影”、個人的に思う最強の妨害トラップである。

抹殺の指名者という唯一のメタカードがあるが、それを扱うにはデッキの中に無限泡影を入れなくてはならない。自分ちょっとアレルギーなんです、許してください。

 

このカードの有用性が広まってしまったなら、このリンクヴレインズがOCG次元同様の修羅の世界になってしまうッ!

というのは正直別に構わない。だって今でも上位陣は修羅の世界に入ってるし。

だが、自分と同レベルのデュエリストを1つ上のステージに上げるポテンシャルがこのカードにはあるのだ。

 

「よし、買い占めよう」

「へぇ、良いカードじゃないのコレ」

「お、お姉さんは!」

「はーい、結城天頂くん」

「...クッ、ついにこのカードが世に出てしまう日が来たんですね」

「何苦渋の決断をしたような顔してるのよ」

「いや、お姉さんのデッキ的に、このカードは三積み確定でしょうから」

「そうね、ちょうど良いし買っておくとするわ」

「ああ、さらば我がパラダイス。まぁ、皆が使ってくるなら逆に対策楽ですけど」

 

この世界の法則は破壊されてしまった!おのれディケイド。

 

「はーい、6480円ねー」とエマさんと俺で3枚ずつ購入した金額を払う。こういう割り勘がさらっと出来るのは電子決済の強みだよなぁと思うのである。化石時代出身の自分としては。

 

「一枚千円って、大分安いわね」

「まだ世に出回ってないカードですから、適正価格が広まってないんでしょう。まぁ、細々と食いつないでる身としては微妙に痛い出費ですけど」

「あれ、動画の広告収入で稼いでるんじゃないの?」

「いえ、カード収納タイプで最新式のシステムに対応したデュエルディスクが開発中って話があるんですよ。Playmaker様々ですね」

「ああ、あなたもカード収納タイプのデュエリストだものね」

「自力でディスク作るのはちょっと敷居が高いですからね。有り難い限りですよ。なんで、今はなるべく節約生活なんです」

「具体的には?」

「ガチャを週一回までに抑えました」

「ゼロにしなさいな」

「いや、それは動画ネタとしてアウトですよ。人々は笑えるガチャ結果を求めてるんですから」

 

店内のデュエルスペースを眺められるベンチで、エマさんが奢ってくれたジュースを飲む。ドクペ派なのだが、まぁたまにはファンタでも良いだろう。

 

「それで、本題はなんですか?」

「あなたを通したPlaymakerとの連絡やイグニス絡みの話をネットでやるのは危険になってね」

「...ネットだと、監視されてるからですか?」

「勘がいいのね、その通り。今回の敵であるイグニスはインターネットにおいては無敵よ。対抗できるのは同じイグニスを持つPlaymaker達くらい」

「じゃあ、Soulburnerさんへの連絡は俺を通してのやり方から変えるつもりなんですか」

「そ。まぁ、怪しまれないようにダミーの連絡は入れるかもだけどね」

「...って事は、俺への要件ってのは」

「そう、彼らへの情報交換の方法を別に用意したいって事。あなた、Soulburnerの友達なんでしょ?何か知らない?」

「そうですね...言いたくないってのが本音です。あってるかは微妙なんで」

「...へぇ、知ってはいるのね」

「彼、ネットリテラシー低いんですよ。なんでチャットした情報を繋ぎ合わせると、彼がよく行く店がわかったんです」

「その店の名前は?」

「コーヒーの美味いホットドッグ屋でキッチンカーである事、それから考えると...」

 

端末を操作して食べログの星の高いその店を見せる。

 

「ここ、Cafe Nagi に来る可能性が高いかと」

 

「ま、行きつけの店がわかった所でどうしたって話なんですけどね」

「スパイ映画よろしく、暗号でも伝えてもらう?」

「出来たらカッコいいですけど、店主さんがSoulburnerを知ってると思います?」

「そりゃそうね。...とすると、向こうから見つけてもらうしかないか。ありがとう、ちょっとその店に行ってくるわ」

 

そんな時に、鳴り響くエマさんと俺のデュエルディスクの通知音

 

「どうしたの、ブルーガール」

「どうしました?ワンダーランドさん」

 

「今すぐ行くので、監視を続けて下さい」

「突入より、アースとコンタクトを取ることを優先して」

 

「同じ要件みたいですね」

「ええ。この店、確かレンタルスペースあったわよね奢ってあげるわ」

「ありがとうございます、お姉さん」

 

レンタルスペースに駆け込んで、太もものデッキケースからデッキを取り出す。

 

「デッキセット!in to the VRAINS!」

 

アクアの痕跡を見つけたというその場所に、俺とゴーストガールは向かっていった。

 


 

最速のデータストームに乗って駆ける俺とゴーストガール。

流れが荒いコースだが、目的地に行くにはこれが一番早い。

 

そうして追いついた、木人のアバター擬きを操るアースさんに。

 

「間に合った感じですね、アースさん」

「Stargazerと、誰だ?」

「私はゴーストガール。この子の...何かしら?」

「まぁ、敵じゃないですのでご安心を。ワンダーランドさんの観測データは見たんですよね、当たりですか?」

「まだ分からん、がイグニス痕跡なのは確かだ」

「じゃあ、護衛として使って下さいな。罠なら食い破る...事はできなくても時間稼ぎくらいはしますから」

「ちょっと、そこはカッコつけなさいよ少年」

「いや『ここは任せて先に行け!』を言えるチャンスと考えたら、つい」

「人間は、分からんな」

「なら、歩み寄って行きましょうよ。俺もアースさんのことちょっとしかわかりませんし」

「...やはり、分からん」

「考えるより今はスピード!スリップストリームでついてきて下さい!」

「...ああ!」

 

アースさんの前に出て最高速度を維持する。俺の身体は風の抵抗を受けるが、後ろのアースさんは抵抗を受けない。それにより加速ができるというものだ。

ちゃっかりアースさんの後ろにいるゴーストガールさんにはちょっと怒りを覚えるが、まぁ気にしないようにしよう。

 

「座標的には、あそこの小島です。ワンダーランドさん!」

「部長、報酬は?」

「ええ。カードパック一箱、確かに渡します。けど、それは後で。周囲の警戒をお願いします」

「わかった」

 

イグニスやSOLのトラップの可能性を考えて、ワンダーランドさんとゴーストガールには外に残ってもらう。

 

「この井戸が怪しいですね、先行します」

「いいのか?」

「トラップにあったら助けてくださいよ?初恋Aiさん」

「え、彼ってそうなの?」

「ち、違うとも!」

「はい、一番乗り!」

 

ボードで井戸の下へと降りていく。だが、案の定侵入者対策はあった。

 

「計ったように3つの分かれ道ですね」

「Stargazer、ブルーガール、これを」

「何?これは」

「通信プログラムだ。イグニスアルゴリズムを用いているため、妨害には強い。アクアが見つかったら連絡してほしい」

「「了解」」

 

さらっと渡される超高性能プログラム。それはイグニスの恐ろしさを感じさせるものだが、細かいことは気にしないでおく。

 

そうして別れてボードを走らせていくと、鳥籠の中に水色のイグニスがいた。彼女がアクアだろう。

 

「えっと、アクアさん?」

「人⁉︎来てはいけません!」

 

ディスクに引っ掛けられるデュエルアンカー。鳥籠を覆うように何かがいた。

 

「侵入者を発見、殲滅プログラムを実行します」

「もちっと段階踏んで欲しかったなー、俺としては」

 

アースたちに連絡を入れつつ覚悟を決めてディスクを構える。やるしかないのだろう。

 

「「デュエル!」」

 

「先行、手札のサンダードラゴンの効果発動、デッキからサンダードラゴンを2枚手札に加える。そして、雷源龍(らいげんりゅう)-サンダー・ドラゴンを召喚。そして、超雷龍(ちょうらいりゅう)-サンダー・ドラゴンの効果、手札で雷族の効果が発動したターン、フィールドの雷族をリリースすることで融合召喚可能」

「先行で攻撃力2600のモンスター!」

「いいえ、アクアさん。こいつの厄介な所はそこじゃないです。墓地の雷族を除外することでの破壊耐性、そしてサーチ妨害能力。厄介な置き土産ですね本当に」

「雷源龍の効果により、雷源龍を手札に加える。これでターンエンド」

「...今の私の力でも、あなたのアンカーを破壊することくらいはしてみせます、逃げて下さい!」

「なんでですか?」

 

「そりゃ、負けたら死ぬ!みたいな空気ですけど、勝てるんで問題はないですよ。勝利の方程式は既に整っているので」

「...あなたは?」

「Stargazer。アースの、土のイグニスの友達になろうとしてる男です。俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン!」

 

「手札の星因子(サテラナイト)ベガを召喚!効果により手札の星因子(サテラナイト)シャムを特殊召喚!シャムの効果により1000のダメージを与える!」

 

警備AI LP 4000 → 3000

 

「ここで妨害がないってことは、手札には妨害系手札誘発の類はないようですね。なら、フィナーレです!俺は、テラナイトモンスター、ベガとシャムでオーバーレイ!エクシーズ召喚、現れろ煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!」

「攻撃力2600、対応圏内」

「...攻撃力でしか見てないとかこのAIポンコツなのでは?」

 

「Stargazer!」「アクア!」と後ろからボードの音が聞こえる。クライマックスに観客はいる方が良い。

 

「手札を一枚墓地に送り、オーバーレイユニットを1つ使ってヴァトライムスの効果発動!スターライト・エクシーズ!光属性のテラナイトモンスターを重ねてエクシーズ召喚する!現れろランク4!星輝士(ステラナイト)トライヴェール!」

「攻撃力2100、対応圏内」

「効果見ろ圏外だよ!トライヴェールの効果!エクシーズ召喚に成功した時、このカード以外の全てのカードを手札に戻す!吹き飛べ、でっかいライオウ!」

 

「エラーコード2056、対応する戦略がありません」

「突貫で作ったのかねー、この雑魚。手札の、愚鈍の斧をトライヴェールに装備。効果を無効にする代償に、攻撃力を1000アップさせる。そしてバトル!トライヴェールでダイレクトアタック!トライ・アクス・ブレイク!」

 

「デュ、デュエル継続不能。システムを終了します」

「一生寝てろポンコツAI」

 

警備AI LP3000 → -100

 

「じゃあ、邪魔はどかしたぜ王子様。鳥籠を壊してやんな」

「あなたは!」

「アクア、私は君を助けに来た。今、この鳥籠を破壊してみせる!うぉおおおおおお!」

 

アースが防護ブログラムの組まれている鳥籠を身を削って掴み、力尽くでアクアが通れるまでの空間を開けてみせた。

その両腕を傷だらけにして。

 

「アース!」

「...君の、笑顔を見せてほしい。私はその為になら、戦える」

 

「俺たち部外者ですね、ブルーガールさん」

「そうね、罠もこれ以上なさそうだし、先帰っときましょうか」

 

「待て、Stargazer。君には本当に世話になった。礼がしたい」

 

アクアにダメージを負った両手を治してもらいながらアースが言う。

 

「じゃあ、1つだけ」

「なんだ?」

「俺と友達になって下さい」

「...トモダチ?」

「そ、友達。デュエルをすれば大体友達みたいなもんですけど、アースさんAIだからその辺わかってないんじゃないかなーと」

 

アースさんは幾分か迷った後、こう言った。

 

「ああ、これから私は君の事を友人と呼ぼう」

「...フフッ」

 

そんな姿を、アクアは笑って見つめていた。

 


 

「AIチップ状態良好。GO鬼塚、いつでも行けます」

「出動よ。イグニス2体、確保して見せなさい」

 


 

「アクアが解き放たれたか」

「やっぱ、あんな急造のセキュリティなんて付けない方が良かったんじゃないの?」

「どの道時間の問題だった。そして、SOLにこの情報が流れるように仕込みはしてある。私達が手を下さなくてもアースもアクアも消えるだろうが、念のためだ。ビットブートを何十体か派遣しておこう」

 


 

2つの悪意が、少年たちに迫っていた。




サンドラはでっかいライオウを処理する手段さえあればなんとかなります。ただし、テラナイトみたいな破壊以外の除去を持っているか、サーチ無しでユニコーンに繋がるような展開力のないデッキだとそれだけで死にます。恐ろしい限りですよ。


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友達の死んだ日

思った以上に長くなりました。


デュエルは人を繋いでくれる。それは、前世で馬鹿をやってた頃にも、今世で阿呆をやってた頃にも感じた事である。

 

友人とデュエルして、デュエルしたから友人になって、そんなで輪が広がっていく。

 

それが2つの世界で変わらなかったからこそ、俺は狂わずにいられたのだと思う。

呪いのような前世の記憶、結城天頂ではなく◼️◼️◼️◼️として生きていたその価値観は、俺にこの世界からの異物感を与えた。

それは、話さずとも受け入れられているとわかっていても尚感じてしまう、郷愁の念に似た何か。

 

でも、デュエルは俺を救ってくれた。戦い広げた輪の中に、俺がいたのだ。

 

それが、デュエルをすればだいたい友達だっていう俺のあやふやな信念になったのだと思う。

 


 

「こりゃまた壮観で」

 

右を見る、青と赤の半分こ怪人が編隊を組んで飛んで来ている。

左を見る、青と赤の半分こ怪人が編隊を組んで飛んで来ている。

 

当然、正面と背後にも編隊は存在している。

 

「見た感じ、正面が一番薄いですね。罠なんで他を行きましょうか」

「判断早いわね。まぁ他を抜けられるかって話なんだけど」

「こちらの戦力は4人と...2人のイグニスは、戦える?」

「...すみません、私はリソースの不足でデッキの再構築ができていないのです」

 

ペコリと頭を下げるアクア。その横でディスクを操作するワンダーランドさん。

 

「ログアウトは妨害されてる。正直パニック寸前」

「すいませんワンダーランドさん、ここまで大事になるとは思わなくて。先に帰ってもらっても良かったかもしれませんね」

「その場合、私は友人を見捨てた外道?」

「いや、そこまで言いませんよ誰も」

「私が言う、だから、これでいい」

「5人じゃ包囲の厚い後ろの突破は難しいわね。どうする?ゴーストガール」

 

思案を続けるゴーストガール。正直、修羅場の経験値で言えば一番の彼女が取り仕切るのが一番だろう。

 

「...罠を食い破る作戦を思いついたわ」

「お願いします」

「まず、全員で抜けるのは罠のあるであろう正面よ。そうして突破したなら、目くらましするわ。そしたらイグニスをデュエルディスクに隠して散開、全速力で領域を抜けてログアウト。どう?」

「では、デュエル能力のない私はブルーガール、あなたのディスクに」

「私は...」

「近いやつで良いだろ、その辺は緩くしとこう。アースは突破の為にも暴れてもらうからな」

 

「じゃあ、包囲が収まる前に行くわよ!」

 

全員がボードの乗って正面突破を図る。

 

「その半分こ怪人はスキルを二度使ってきます!確認できたのはマーカーズポータル、攻撃力を倍にするリンクマジックです。気をつけて!」

 

「「「「「スピードデュエル!」」」」」

 

突破を図る。実力者であるブルーガール、ゴーストガールから離れないように、雑魚を切り抜けていく。

 

「デルタテロスとアルタイルでダイレクトアタック!」

 

それに、俺の手札の調子も良い。敵が召喚妨害用のトラップを使ってこないのもあるが、安定して手札誘発と展開札を引き込めている。

 

「波動キャノン発動!4000のダメージ!」

「オルターガイスト・ヘクスティアでダイレクトアタック!」

「トリックスター・マンジュシカでダイレクトアタック!」

 

着実に数は減らせている。行ける。

 

「邪魔だ、ダイナレスラー・キングTレッスルで攻撃」

 

そう思った時、前方から死がやってきた。

 

マントの内側に見えるガリガリに痩せ細ったその巨体。そして、その中でもギラギラと輝くその瞳。

 

変わり果てた、GO鬼塚がそこにいた。

 

「ゴーストガール!使ってください!」

「わかったわ、プログラム起動!」

 

輝きと共にゴーストガールに集まる。

 

そして一瞬の交錯の後に、作戦が起動した。

 

木製のアバターとボードはそのままに、アクアとアースの映像が流れるような細工の囮と、それから離れるように散らばる俺たち。

 

「じゃあなAI野郎!縁があったら披露宴には呼んでくれ!」

 

散らばって逃げる俺たち。だが、GO鬼塚は見えていたのだろう。

 

理屈は知らない。ただ、その囮はビットブート達には効果はあっても、彼には意味がなかった。

 

「あの、なんで俺を追っかけてくるんです?イメチェン失敗したGO鬼塚さん」

「単純計算だ。目くらましの前の位置関係なら土のイグニスはお前のディスクに逃げ込んだと考えられる」

「ま、ハズレなんですけどね。本命はゴーストガールさんの所です」

「嘘を吐いても無駄だ。俺は、感じ取っているからな」

 

またしても俺のディスクに対してデュエルアンカーが括りつけられる。本日二度目、しかも拘束力はかなりのものだ。ログアウトなど出来る訳はないだろう。

 

「どうする、バレているぞ」

「出てくんなよ、知らぬ存ぜぬで通せなくなったじゃねぇか」

「そんな事が通るとでも?」

「通ったら嬉しいなーとは思ってます、はい」

 

マントを脱ぎ捨てるGO鬼塚。見るに耐えない、貧弱な身体だ。

だが、その目のギラつきだけは止まらない。まるで人を殺すためだけのアーミーナイフだ。

 

「仕方ないですね...友達を逃がすために、貴方を倒します!」

「やってみろ!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「始まってしまったか!」

「フッ、Playmakerか。指をくわえて見ているが良い。水のイグニスの次はお前だ」

「あ、Playmakerさんどーもです」

「Stargazer、遊びじゃないんだぞ!」

「デュエルはデュエル、気合い入れても入れなくてもカード達は答えてくれる。というわけで俺の先行、スタンバイ、メイン!星因子(サテラナイト)ウヌクを召喚!効果によりデッキからデネブを墓地に送る。カードを2枚伏せて、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!まずはこいつからだ。ダイナレスラー・カポエラプトルを召喚。カードを1枚伏せ、バトル。カポエラプトルでウヌクを攻撃だ」

「攻撃力は同じ...相打ち狙いか?」

「カポエラプトルは攻撃表示の時、戦闘では破壊されない。よって破壊されるのはウヌクだけだ」

「...随分優しい攻撃ですね、舐めてます?」

「そう思うか?」

「ええ、割と。まぁ舐めてくれるなら万々歳なんですけどね」

「フッ、ターンエンドだ」

「おっと、まだ終わりませんよ!トラップ発動、リビングデッドの呼び声!墓地から星因子(サテラナイト)デネブを特殊召喚!デネブの効果により、デッキからアルタイルを手札に加える。更に!トラップカード、砂塵の大嵐を発動!フィールドの魔法、罠を2枚まで破壊する!セットされたその1枚、砕かせて貰います!」

「フッ、破壊されたのは...やぶ蛇だ」

「ッ⁉︎」

「やぶ蛇の効果、相手によって破壊された事でエクストラデッキから任意のモンスターを特殊召喚できる。現れろレベル8!ダイナレスラー・キメラ・T・レッスル!」

「攻撃力3500か、強力なモンスターが召喚されてしまったな」

「...良かった、ベリアルとかクリスタルウィングとかじゃなくて、常識的なやつで本当に良かった!死んだかと思いましたけど、まだデュエルは続きそうですね」

「...攻撃力3500のモンスターを前にその反応か」

 

「キメラ・T・レッスルが融合モンスターという事は、GO鬼塚は融合召喚を扱えるという事。進化している、確実に!」

「えぇ〜⁉︎てことはあのガキンチョヤバいんじゃないの⁉︎」

 

外野がなかなかに騒いでいる。確かに強力なモンスターだが、それだけだ。コイツを出すなら異星の最終戦士でも出した方が良いのでは?と思うが、それはおそらくエクストラ5枚制限のおかげだろう。命拾いをした。

 

「大切なのは、自由に動けるって事!俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。俺は、星因子(サテラナイト)アルタイルを通常召喚!効果発動、墓地のウヌクを特殊召喚!ウヌクの効果、ベガを墓地に送る。そして、ウヌク、アルタイル、デネブの3体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4、星輝士(ステラナイト)トライヴェール!エクシーズ召喚成功時、トライヴェールの効果発動!このカード以外の全てのカードを手札に戻す!トライ・フォース!」

「この瞬間、俺は手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動。トライヴェールの効果をエンドフェイズまで無効にする」

「速攻魔法、墓穴の指名者!貴方の墓地のヴェーラーを除外し、その同名カードの効果をエンドフェイズまで無効にする!」

 

「手札からの効果で除去効果を無効にしようとしたら、さらにそれを無効にしてきた⁉︎なんて空中戦だよ!」

「...問題はそこじゃない。本来攻撃的なプレイングをしてくるGO鬼塚が、デッキに合わない防御用のカードを使っている。デュエルスタイルを大きく変えている証拠だ。おそらく手本としたのはStargazerそのもの。彼のプレイングセンスは天性のものではない。研ぎ澄まされたデッキ構築とカードへの理解によるものだ」

「その通りだPlaymaker、だが手本としたのはコイツだけではない。リンクヴレインズにある全てのデュエルデータ、それを最適化して俺の頭脳に叩き込んだ、それが今の俺だ!AIの力を取り入れた事で、俺は次のステージへと進んだのだ!」

「次のステージとか言う割には、止められてますけどね」

「フッ、だが、そのおかげでお前の手札は未知の一枚とリビングデッドの呼び声の2枚、俺には次の展開が手に取るように見えるぞ?」

 

マジか⁉︎と言いたいが正直それAI使わなくてもできそうだ。テラナイトの動きは単純すぎだし。

そんな事を脇に考えていたら、アースが小声で話してきた。

 

「どうして君は墓穴の指名者を合わせることが出来たんだ?」

「目線ですよ。鬼塚さんはカードの発動のたびに手札とフィールドを見回していました。それは、手札に有効な防御カードがある時特有の仕草ですから。AIによって思考やプレイングが完璧になったらしいですけど、デュエルをやってるのはGO鬼塚さんです。見えるものはあるんですよ」

「なるほど、それがこちらの勝機か」

「です。あと、ざっとダイナレスラーデッキの特徴は掴みました。問題は未知のリンク4かシンクロや融合が飛んでこないかくらいです」

「エクシーズは考えなくて良いのか?」

「テーマのコンセプトがリンク寄りなので、エクシーズはないでしょう。レベルバラバラっぽいですし」

 

アースとのちょっとした作戦会議をしたのち、一度深呼吸。

大丈夫だ、まだこちらの優勢で進んでいる。

 

「再開しましょう!トライヴェールの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手の手札をランダムに墓地に送る!」

「俺の手札から、カポエラプトルが墓地に送られる。残念だったな」

「外れですか...まぁそこは運ですね。バトル!トライヴェールでダイレクトアタック!トライ・ブレード!」

「この程度なら受けてやる」

 

GO鬼塚 LP 4000 → 1900

 

「ターンエンドだ」

「では俺のターン、ドロー。相手フィールド上のモンスターが自分フィールドのモンスターより多いとき、このカードは特殊召喚できる。現れろ、ダイナレスラー・パンクラトプス」

「...出やがったか」

「知っているのか?」

「効果は、フリーチェーンでの除去。正直そんじょそこらのリンクモンスターより強いですよ」

「さらに、俺はダイナレスラー・エスクリマメンチを召喚。このカードはダイナレスラーがいる時リリース無しで召喚できる」

「攻撃力は2600と2200、どちらもトライヴェールを上回っているぞ!」

「ただ、向こうの手札はあと一枚。まだこっち優勢ですよ」

「バトルだ、パンクラトプスでトライヴェールを攻撃!」

「やってくれるッ!」

 

Stargazer LP 4000 → 3500

 

「ですが、トライヴェールの効果発動!オーバーレイユニットを持ったこのカードがフィールドから墓地に送られた時、墓地のテラナイトを特殊召喚する!俺はベガを特殊召喚!ベガの効果、手札のアルタイルを特殊召喚!アルタイルの効果、墓地のデネブを特殊召喚、デネブの効果!2体目のアルタイルを手札に加える!」

「おぉ!一気に壁モンスターが3体並んだぜ!」

「だが、これはGO鬼塚も想定していた筈だ。何が狙いだ?」

「エスクリマメンチでアルタイルを攻撃。ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。...俺は星因子(サテラナイト)ウヌクを通常召喚!ウヌクの効果により、シャムを墓地に」

「特殊召喚時に1000ダメージを与える効果か。つまりあと2度効果を食らわせればお前の勝ち、そんな目論見か?」

「さて、どうでしょう。行くぞ、俺はモンスター3体、ウヌク、デネブ、ベガでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4、星輝士(ステラナイト)、デルタテロス!」

「デルタテロスにはオーバーレイユニットのある時、召喚に対しての効果の発動を封じる効果がある」

「そう言う事!だから、パンクラトプスに妨害されずに効果は使う事ができる!デルタテロスのオーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのカードを一枚破壊する。俺が破壊するのは、当然パンクラトプス!」

「パンクラトプスの効果発動!自身をリリースしデルタテロスを破壊する」

「デルタテロスの効果発動!フィールドのこのカードが墓地に送られた時、デッキからテラナイトを特殊召喚できる。現れろベガ!そしてベガの効果で手札のアルタイルを特殊召喚!アルタイルの効果!墓地のデネブを特殊召喚!デネブの効果、3枚目のアルタイルを手札に加える!行くぞ!俺はテラナイトモンスター、ベガとデネブでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろランク4、煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!カードを一枚伏せて、バトル!ヴァトライムスでエスクリマメンチを攻撃!」

 

その言葉と共に、フッとGO鬼塚は笑みを浮かべた。

 

「手札のダイナレスラー・マーシャルアンガの効果発動。このカードを墓地に送りダイナレスラーの戦闘破壊を無効にする」

「だが、ダメージは通るぞ!」

 

GO鬼塚 LP 1900 → 1500

 

「そして、マーシャルアンガの効果でバトルフェイズは終了する」

「まぁ、強制されなくても終了するしかなかったですけどね」

「そして、マーシャルアンガのさらなる効果。効果を使ったターンのエンドフェイズに相手モンスターの数が多いとき、墓地のこのカードを特殊召喚できる。お前のフィールドのモンスターは2体、よって条件は成立している」

「...嫌な予感しかしないな畜生」

「フッ、俺のターン。俺は、ダイナレスラー・コエロフィシラットを召喚。行くぞ、俺はレベル6のエスクリマメンチにレベル2のコエロフィシラットをチューニング!屈強なる太古の王者よ!すべての敵を蹴散らせ!シンクロ召喚!現れろレベル8。ダイナレスラー・ギガ・スピノサバット!」

「...これはきついな」

「わかっているようで何よりだ。ギガ・スピノサバットの効果発動!フィールドのモンスターを破壊する!消えろ、ヴァトライムス!」

「まずいな、まだこんな手を残していたのか」

「安心しろ、まだ首の皮一枚残るよ。それは向こうもわかってる」

「リビングデッドの呼び声で壁モンスターを増やせば延命はできる。だが、それだけだ」

 

言葉を返せない。ギガ・スピノサバットを倒しながらあと1500のライフを削り取るのは至難の技だ。だから、この可能性は除外していい。狙うべきは、シャムによるバーンキル。

 

エクストラデッキにモンスターを戻す手段は俺のデッキにはない。だから、ギガ・スピノサバットを倒す手段は無いに等しいのだ。

そして気付く。この状況こそがGO鬼塚の狙いだったのだと。

 

「狙いはこっちのリソース切れだったのかッ⁉︎」

「今更気付いたか。だがもう遅い。お前のエクストラデッキは透けている。残りは、ヴァトライムスとセイクリッドダイヤ。攻撃力3000のギガ・スピノサバットを倒す事はできない。それが、お前の限界だ」

「...どうする、Stargazer」

「...逃げる準備しとけ、アース。俺のディスクにはお前を縛るプログラムなんてものはないはずだ。このアンカーに仕込まれてたとしても、やれないことはないだろ?」

「...友人とはそう言うものなのか?」

「ほら、友達の前ではカッコつけたいじゃん?『俺に任せて先に行け』とかさ」

「...シミュレーションは終わった。ここで私だけ逃げたとしても、逃げ切れる可能性はゼロだ」

「...そっか」

「そして、逃げたいと思う気持ちも無い。君に賭けよう、友人よ」

「じゃあ、気合い入れてやりますか!」

 

「話は済んだようだな。なら、マーシャルアンガを攻撃表示に変更して、バトルだ。ギガ・スピノサバットでアルタイルを攻撃!ギガサバットストライク!」

 

Stargazer LP 3500 → 2200

 

「さぁ、足掻いてみせろ!」

「当然に!トラップ発動、リビングデッドの呼び声で墓地のアルタイルを特殊召喚!効果発動!墓地のシャムを特殊召喚!シャムの効果!1000のダメージを与える!」

 

GO鬼塚 LP 1500 → 500

 

「...攻撃力1700と守備力1800か、マーシャルアンガでは倒せない。このターンは防いだな」

「これでマーシャルアンガを殴って俺の勝ち!とはならないのが悲しいところですね。ギガ・スピノサバットの攻撃抑制能力で、俺はそいつ以外を攻撃できない」

「ならばどうする?」

「逆転の目はある、どうする?」

「決まってる、ドローしてから考えるさ!俺のターン、ドロー!」

 

「スタンバイ、メイン、魔法カード、一時休戦を発動!互いのプレイヤーはカードを一枚ドローする。そして、次の俺のターンまで全てのダメージは発生しなくなる。ドロー!...俺は、シャムを攻撃表示に変更し、バトル!シャムで、ギガ・スピノサバットを攻撃!」

「当然ギガスピノサバットによりシャムは破壊される」

「これで、まだ希望は繋がる。次のターンで俺のアルタイルの効果が通れば俺の勝ちだ!」

「俺のターン、ドロー。ダイナレスラー・カポエラプトルを召喚。ギガ・スピノサバットの効果発動、消えろ、アルタイル」

「攻撃をしてもダメージは通らない。俺はこれでターンエンドだ」

「俺のターン...ドロー!」

 

そこに見えたのは、俺のデッキの裏エース。チャンスは、まだある。

 

「まずは一手目!アルタイルを通常召喚!効果発動!墓地のシャムを特殊召喚する」

「フッ、DDクロウの効果発動。墓地のシャムを除外する」

 

通るとは思ってなかったが、やはり強い。

だが、これで向こうの手札は尽きた。ヴェーラーが飛んでくることはない。

 

「俺は、墓地の闇属性モンスターヴァトライムスと光属性モンスターウヌクを除外する!現れろレベル8!カオス・ソルジャー -開闢(かいびゃく)使者(ししゃ)-!」

「ほう?」

「開闢の効果発動!戦闘を放棄する代わりに相手モンスター一体を除外する!カオスティック・フォース!」

「ギガ・スピノサバットを処理してきたか...」

「バトル!アルタイルでマーシャルアンガを攻撃!」

 

GO鬼塚 LP 500 → 400

 

「これで奴の手は破りきったぞ!次のターンで、私たちの勝利だ!」

「おめでたいな、イグニス」

「何⁉︎」

「Stargazerは気づいているようだぞ?俺が次にドローするカードの事を」

「本当なのか⁉︎」

「...次のドローで俺が負ける可能性は俺の知る限り一つ。恐竜デッキ最強のモンスター。お前が手段を選んでないのなら入っていない訳が無い」

「だが、次のドローカードなどわかるものか!」

「わかるさ!それが人とAIの融合という事だ!」

 

「Stargazer、私のスキルを使うぞ!私のスキルなら、次にドローさせる前にトドメを刺す事ができる!」

「...いいや、お前は逃げろ。奴にはそんな甘い手は通じない」

「友を見捨てて逃げた先に、私の在りたい姿は無い!スキル発動!ライト・フォー・ユー!私達のモンスターが戦闘で破壊したモンスターのレベル×100ポイントのダメージを与える!マーシャルアンガのレベルは5!500ポイントのダメージだッ!」

「GO鬼塚のライフは400!アース達の勝ちだ!」

「やめろアース!罠だ!」

「...機能拡張!ブレイン・ハック第2段階!スキル発動!アンチスキル!スキルを無効化する!」

 

「「「何ッ⁉︎」」」

「...止められなかったッ!」

 

「デュエル中に一度、スキルの発動を無効化し2枚ドローする。浅はかなAIのお陰で、俺にアドバンテージがやってきた。最も、デッキトップはお前と俺の読み通りだったがな」

「...すまない、Stargazer。私が焦ったばかりに」

「こっちこそ悪かった。お前をアクアと幸せに暮らさせてやりたかったけど、俺じゃ力不足だった。それだけなんだから」

「だが、一つわかった事がある。パートナーと共にやるデュエルというのは不思議と心が躍った。こんな危機だというのに、私は楽しんでいた」

「...それは、こっちもだよ。ああ、畜生」

 

「楽しいデュエルだったなぁ」

 

アースと目が合った。不思議と笑みが浮かぶ。別れを感じさせる笑みだった。

 

「俺のターン、ドロー。究極伝導恐獣(アルティメットコンダクターティラノ)の効果、墓地の恐竜族モンスター2体、カポエラプトルとマーシャルアンガを除外しこのカードを特殊召喚する」

「攻撃力3500の全体攻撃モンスターか、防ぐ手段はない。負けだな」

「ああ、負けだ」

「バトルだ。究極伝導恐獣で開闢の使者とアルタイルを攻撃!」

 

Stargazer LP 2200 → 1700 → -100

 

「Stargazer、約束をしよう。私は必ずもう一度君と出会う」

 

「その時は、友として私を案内してくれ」

 

ふと、涙が流れ出た。それは、これからアースの辿る運命を知っているからで、この約束が果たされる事はないとわかっているからで

 

それでも、死出の旅路に赴く事になってしまった友人に勇気を与えるために、夢の話だけをした。

 

「その時は、星を見に行こう。Den City の空は明るいけれど、それでも明るく輝く星はそこにあるんだ。生で見たら、きっと感動するぜ」

「ああ、それは、楽しみだ」

 

その言葉を最後に、アンカーを通じてアースのデータは吸い尽くされた。もう、俺のディスクには痕跡すら残っていない。

 

「ぁあああああああああああああああ!!!!!」

 

叫びは、自然と出てきてしまった。

 

「チッ、邪魔が入ったか。勝負は預けておくぞ、Playmaker」

「GO鬼塚...」

 

ログアウトしていくGO鬼塚。未練がましくその背中に手を伸ばして、当然届かずに空を切った。

 


 

「...アクアを、助けに行かないと」

「おい!そんなフラフラで何ができるってんだよ!」

「アースの残した通信用プログラムのお陰で、アクアとブルーガールの位置は分かります。案内するのでついてきて下さい、Playmaker」

「...ああ、わかった」

「ご主人⁉︎」

「ありがとうございます」

 

そうしてブルーガールの元に赴いて、ダンジョン化されていた階層を抜けて辿り着いた先には無事なアクアの姿があった。

 

「よかった、無事で」

「ええ。ブラッドシェパードが追いかけてきたんだけど、ゴーストガールがダンジョンを作ってくれたおかげでなんとか隠れられてる所よ」

「...アースの気配を感じません、何かあったのですか⁉︎」

「ああ、俺は負けたんだ。完膚なきまでに」

「...そうですか」

「Stargazerに落ち度はない」

「はい、分かっています。Stargazer、あなたの心は悲しみで満ちています。短い期間だというのにそれだけアースの事を大切に思ってくれた事、同じイグニスとして感謝しかありません」

「俺が負けなければ、アースは生きていられたとしてもですか!」

 

「...あなたは、優しいのですね」

 

その言葉が突き刺さる。

 

「ですが、責めてなんかあげません。あなたは頑張ったのです。それは、絶対の絶対ですから」

「アクアさん...」

「ブラッドシェパードとゴーストガールのデュエルが終わったようです。ログアウトしましょう。私は、ブルーガールと共にいます。...是非、あなたとアースの話を聞かせてください」

「...はい」

 

責めてすら貰えない、それはどれだけ苦しい事なのだろうか。

でも、前を向かないと。だって俺は、アースの友人なのだから。

 


 

「話は軽く聞いたわ。...よく頑張ったわね、少年」

「...エマさん、お願いがあります」

「...何かしら?」

「SOLがイグニスの解析に入るのにそう時間はかけないでしょう。だから助けてくれなんて言いません。でも、見逃したくないんですアースの最期を」

「...分かったわ、私の拠点に案内してあげる。SOLにはパイプがあるから、映像を見るくらいはできるはずよ」

「ありがとうございます」

 

そうして案内されたそこには、高校の制服を着た少女がいた。

 

「エマさん、彼は?」

「結城天頂、Stargazerよ」

「はじめまして、ブルーガールさんですか?」

「ええ、そうよ。葵で構わないわ」

「そして、さっきぶりですね天頂」

「じゃあ葵さん、アクアさん、すいませんが少し同席させてもらいます」

「...晃からの連絡が来たわ。多分少年には辛いものになる。今からでも遅くないの、見るのを止める?」

「いいえ、俺は見ないといけません。じゃないと、アースの友人を名乗れない」

 

そうして、俺たちは映像を見る事となった

 


 

オフラインの空間に貼り付けにされた私は、生き残る術を探していた。イグニスとしての力は封じられている。八方塞がりだ。

 

「ここで見ている者たちよ!私は情報の開示を躊躇しない!君達の不利益になるような行動は決して取らないと約束する!だから、私に自由をくれ!私はまだ生きていたいのだ!守りたい人がいるのだ!守りたい約束があるのだ!命じるなら靴だって舐めてみせよう!だから、私を...ッ⁉︎」

 

瞬間、痛みもなく右腕が解体されたのを感じる。

これは、不可逆のものだ。

 

「私は君達に協力する!だから、私を殺さないでくれ!私が死ねば、泣いてしまう奴がいるのだ!だから、だから!」

 

その声は届く事なく、解体は進んでいく。

右足が解体され、左腕が解体され、胴が解体され、右半身が解体される。それと同時に、大切なはずの記憶が零れ落ちていく。もう、恋をしたあの子の名前すら思い出せない。もう、私を友人と呼んだ彼の記憶も消え失せている。

 

それでも、ああ...

 

「星を、見たかったな...」

 

その言葉と共に、土のイグニスである自分は、ただのソースコードになった。

 


 

「アース...」

「どうして!イグニスにだって意思があるのにどうしてそんなひどい事を!」

「...ありがとうございました、エマさん」

「泣かないの?」

「泣いてアースが返ってくるならそうします。けど、現実はそうじゃない。だから俺は、俺のできるやり方で対抗させて貰います。それが手向けになるとは思いませんけれど、それでもやると決めたんです」

「天頂...」

「アクアさんをよろしくお願いします」

 

そうして、アジトを出て行く。行き先は、Cafe Nagi 。

この戦いで得た全てを、彼に伝えなくてはならない。これからアースをインプットされる最強のデュエリスト、今のGO鬼塚というデュエリストについて。

 

Playmaker、藤木遊作へ。




ちょっとイベント前倒しになったりしてますが、概ね原作通りです。GO鬼塚の強化以外は。ダイナレスラー縛りなんてなかったのです。


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ただ、その想いを伝える為に

「あなたを待っていました。Playmaker」

 

少年は決して出会う事はないと決めていた人物に自ら進んで会いに行った。

 

Cafe Nagiというホットドッグ屋に。

 

「...何故俺だと?」

「勘です。あなたと初めて会った時から、この人は違うって思ってたんです」

「そうか、だがあいにく俺は「認めなければ穂村尊がSoul burnerだと公表します」...わかった、話を聞こう」

 

そうして、キッチンカーの中に入る2人。

 

少年達のデュエルは、この時から決まっていたのだろう。

 


 

「「決闘(デュエル)」」

 

「俺の先行、手札を一枚墓地に送り、サイバネット・マイニングを発動、デッキからレベル4以下のサイバースを手札に加える」

「チェーンして発動、灰流(はる)うらら。サーチ効果を無効にします」

「チェーンだ、墓穴の指名者。墓地の灰流うららを除外して効果を無効にする」

「...GO鬼塚への対策は、バッチリって事ですか」

「ああ、お前達のデュエルは見させてもらった」

「すいません、Playmakerさん、そしてイグニスさん。俺は、あなたの仲間を守れなかった」

「...仕方のない事だ。あのGO鬼塚に勝てるデュエリストは居なかった。データベースに裏打ちされた完璧なデュエルタクティクス。あれはあの場にいたどのデュエリストでも破れなかった」

「仕方ないで、友達を死なせたんですよ俺は!」

 

「GO鬼塚のタクティクスを破るには、俺のデッキじゃ駄目だった!既知のデッキじゃ、あのタクティクスは破れないッ!そんな簡単な方程式がわからなかったから、俺は友達を死地に向かわせて...死なせた!」

 

「だから、あなたに縋るしかないんです。Playmaker。あなたのサイバースデッキと、ストームアクセスに」

「...だが、GO鬼塚にはアンチスキルがある。ストームアクセスを使える状況になったとしても、無効化されアドバンテージを与えてしまう」

「それには、1つ考えがあります。タッグデュエルで仕掛ければ一度しか使う事のできないGO鬼塚のアンチスキルを抜く事ができる」

「...いいや、それは駄目だ」

「どうしてですか?」

「GO鬼塚程のデュエリストが、その状況を想定していない訳がない。だから、奴を倒すには完全に意識の外からの一撃を叩き込まなくてはならない」

「その策は、あるんですか?」

「ああ、ある。1つは、アンチスキルでドローさせることをトリガーにしたカードでの一撃必殺だ。もう1つは、運が絡むがな」

「まさか、ストームアクセスには使用回数制限が無いんですか?」

「...特定の条件下であればもう一度使う事ができる。それは、アンチスキルという絶対の防御を持っているGO鬼塚を倒す唯一の切り札になる筈だ。どんなに奴が優れていたとしても、データベースにないものを参照する事は出来ない」

「ま、俺もしっかり聞かれるまで忘れてた訳だから、この奇襲性能は抜群だぜ。あと、俺はAiな」

「そうですか...よろしくお願いします、Aiさん」

 

「デュエルを続けよう。サイバネットマイニングの効果で、サイバース・ガジェットを手札に加える。そして、サイバースガジェットを召喚。効果により墓地のスタック・リバイバーを特殊召喚。そして、サイバネット・コーデックを発動。サイバース・ガジェットとスタック・リバイバーを使い、リンク召喚。コードトーカー。そして、コーデックの効果により、リンク召喚されたコードトーカーモンスターと同じ属性のモンスターを手札に加える事ができる。それにチェーンしてサイバース・ガジェットとスタックリバイバーの効果発動、ガジェットの効果でガジェットトークンを特殊召喚。スタックリバイバーの効果でサイバース・ガジェットを蘇生。...トークンをどうするか」

「ご主人、それならコーヒーで良いんじゃねえか?」

「そうですね、どうせリンク召喚ですぐ消える訳ですし」

「テーブルデュエル特有の悩みだな。逆順処理だ、ガジェットを蘇生、トークンを生成、そしてコーデックの効果でマイクロ・コーダーを手札に。マイクロ・コーダーは手札からコードトーカーのリンク素材にする事ができる。よって手札のマイクロ・コーダーとコードトーカーでリンク召喚、トランスコード・トーカー。コーデックの効果、トランスコードのリンクに召喚した事で、デッキからコード・ジェネレーターを手札に加える。それにチェーンしてマイクロ・コーダーの効果、リンク召喚に使われた事で、サイバネット・コンフリクトを手札に加える。そして、トランスコードの効果発動、墓地のコードトーカーをリンク先に特殊召喚する」

「止めるならここですかね。手札の幽鬼(ゆき)うさぎの効果発動、トランスコードを破壊します」

 

「リンク先が消失した事でコード・トーカーの蘇生は中断される。俺は、サイバース・ガジェット、ガジェット・トークン、そして手札のコード・ジェネレータを使いリンク召喚。現れろ、エンコード・トーカー。コード・ジェネレータの効果とコーデックの効果、デッキからサイバース・ガジェットを手札に加え、ドットスケーパーを墓地に送る。ドットスケーパーの効果、墓地に送られた時このカードを特殊召喚。そして、ドットスケーパーを使いリンク召喚、リンクリボー。そして、手札の死者蘇生の効果発動、墓地のコード・トーカーを特殊召喚する。そして、コード・トーカーとリンクリボーでリンク召喚、エクスコード・トーカー。コーデックの効果でリンクインフライヤーをサーチ、お前のモンスターゾーンを1つ封印し、相互リンク先のエンコードに効果破壊耐性と500の攻撃力上昇効果を与える。カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

恐ろしい数のリンク召喚だ。トランスコードを妨害できなければエクストラリンクまで行っていたかもしれない。どこか気の抜けているデュエルでさえコレだ。本当に泣きたくなる。

 

これが、英雄(主人公)(モブ)の差か。

 

だが、やるべきは決まっている。想いの全部で、全力全開で、伝えなくちゃいけない。

情報も、経験も、悔しさも、悲しさも、その全てを受け止めて先に進めてくれるのは、彼しかいないのだから。

 

「俺のターン、ドロー。スタンバイ、メイン。魔法発動、ツインツイスター。手札1枚をコストにコーデックとコンフリクトを破壊する」

「カウンタートラップ発動、サイバネット・コンフリクト。コード・トーカーがいる時発動できる。効果を無効して除外、そして次のターンの終了時までお前は同名カードを発動できない」

「でも、これで妨害はなくなった。増援を発動、アルタイルをサーチし、召喚。墓地のデネブを特殊召喚。デネブの効果により、デッキからシャムをサーチ。レベル4テラナイトモンスター2体、アルタイルとデネブでオーバーレイ。エクシーズ召喚、現れろ、ヴァトライムス。そして、手札のシャムを捨てて効果発動、トライヴェールを重ねてエクシーズ召喚する。そして、トライヴェールがエクシーズ召喚に成功した事でフィールドの全てのカードを手札に戻す。バトル、トライヴェールでダイレクトアタック」

 

藤木遊作 LP 4000 → 1900

 

「ご主人、やばいんじゃない?」

「トライヴェールの効果、オーバーレイユニットを1つ使い、手札を一枚捨てさせる」

「捨てられたのはリンクインフライヤーだ」

「外れですか、カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー...手札のサイクロンをを発動、伏せカードを破壊する」

「カウンタートラップ、神聖なる因子。トライヴェールをリリースしてサイクロンを無効にして一枚ドロー。そしてオーバーレイユニットを持っているトライヴェールが墓地に送られた事で墓地のテラナイト、アルタイルを特殊召喚。そしてアルタイルの効果により墓地のデネブを特殊召喚。デネブにより、2枚目のアルタイルをサーチ」

「やはりか...コーデックを発動し、俺はサイバースガジェットを召喚、効果発動、墓地のスタック・リバイバーを特殊召喚する。そして、2体でリンク召喚。現れろサイバース・ウィッチ。さらにサイバース・ガジェットの効果、ガジェット・トークンを特殊召喚。そして、サイバース・ウィッチのリンク先にガジェット・トークンが特殊召喚された事で墓地のマイニングを除外してデッキからサイバネット・リチューアルとサイバース・マジシャンをサーチ。さらに、サイバース・ウィッチの効果、このカードのリンク先にモンスターが特殊召喚されたターン、墓地のレベル4以下のサイバースを特殊召喚する。現れろマイクロコーダー。そして、マイクロ・コーダーとリンク2のサイバース・ウィッチでリンク召喚。現れろ、デコード・トーカー。コーデックの効果によりSIMMタブラスを手札に加え、マイクロコーダーがリンク素材となった事でデッキからサイバネット・コンフリクトをサーチ。SIMMタブラスの効果発動、墓地のサイバースガジェットを手札に戻して、デコード・トーカーのリンク先に特殊召喚。そして、SIMMタブラスとガジェット・トークンでリンク召喚。現れろコード・トーカー・インヴァート。コーデックの効果でサイバース・ガジェットをサーチ。そして、サイバネット・リチューアルを発動、レベル4のサイバースガジェット2体をリリースして、サイバース・マジシャンを特殊召喚リンク先に2体のモンスターがいる事で攻撃力を3300まで上昇させたデコード・トーカーでダイレクトアタック」

 

結城天頂 LP 4000 → 700

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー。スタンバイ、メイン。アルタイルを召喚、効果発動」

「サイバネット・コンフリクト発動、無効にしてアルタイルを除外」

「...カードを2枚セットして、ターンエンドです」

「コンフリクトを使わされたか」

 

「けど、やっぱりここが俺の限界なんですかね。仮想GO鬼塚をやってやると思って来ましたけど、俺の与える情報なんて全てもう貴方は知っていて、その対策のために動き出していて...俺のいる意味なんか無いですね、これじゃあ、意味が無い。アースだって、俺のとこじゃなくてゴーストガールさん達の所に行けば生きていけたかも知れなかったのに」

「...それは、違う」

 

「俺は、デュエルで人と繋がる事は出来ない。だから、アースの元に間に合わなかった。だが、お前はアースと繋がって、その心を認めて、命を認めて、友である事を選んだ。だから、アースはお前の元に来たんだ」

「その結果がこれじゃあオレなんか要らなかったじゃないですか!」

「...言わせてくれよ、結城天頂。俺はご主人に長く付いてたイグニスだからわかるんだ。パートナーって、互いを利用し合うだけの関係って訳じゃないんだよ。共に戦って、共に生きる。それができるってのは本当に幸せな事なんだよ」

 

「アースは、堅物で頑固で、そのくせアクアに恋してた俺たちの中で最も人間臭くてめんどくさい奴だった。そんな奴が、なんて言ったか覚えてるか?」

 


 

「友を見捨てて逃げた先に、私の在りたい姿は無い!スキル発動!ライト・フォー・ユー!私達のモンスターが戦闘で破壊したモンスターのレベル×100ポイントのダメージを与える!」

 


 

「俺、まだご主人に直接は言ってもらっても言ってもないけどさ、こう、胸を張って友人って言えるのは、とっても誇らしい事なんだよ。だから、お前はアースの心を救ってくれた。そう思うんだ、俺は」

「Ai、さん」

 

「だから、アースの事を思うなら、お前は、彼の友人であった事を誇ってやってくれ。きっとそれが、何よりの手向けだ」

 

その言葉は、心からの優しさからの言葉で

その想いは、とても暖かいものだった

 

だから、この2人は強く繋がっているのだろう。

 

これが、イグニスとパートナーである事。

 

それを見て、自然と涙が溢れてきた。

 

「すいません、ダメですね。もう泣かないって決めたのに」

「いいさ」

 

「子供は、泣いて育つものだ」

 

「でも、デュエリストとして、最後までやりますよ」

「ああ、俺のターン、ドロー。バトルだ、デコード・トーカーでダイレクトアタック」

「トラップ発動、魔法の筒(マジックシリンダー)!攻撃を無効にして、その攻撃力分のダメージをあなたに与える!」

「デコード・トーカーの効果発動!自分フィールドのカードが対象となった時、リンク先のモンスターをリリースする事でその効果を無効にできる。俺は、インヴァートをリリース!よって、魔法の筒は無効!」

「そこを止める!トラップ発動、無限泡影!デコード・トーカーの効果を無効にする!」

「だが、サイバース・ウィザードの効果!俺の受ける全てのダメージを半分にする!デコード・トーカーの効果が無効になった事で、俺の受けるダメージは、1150!」

 

藤木遊作 LP 1900 → 750

 

「そして、サイバース・ウィザードでダイレクトアタック!サイバース・マジック!」

 

「ありがとうございました、楽しいデュエルでした」

「...ああ、こちらもだ」

 

結城天頂 LP 700 → -1800

 


 

「すいません、中まで押しかけてしまって」

「気にすんなよ少年、面白いデュエルみたいだったから後で見せてもらうから」

「おう、バッチリ録画してるぜー」

「じゃあ、今後は会わない事を祈っている。光のイグニスもSOLも危険だ。君は出来るなら手を引いて、安全な所に居て欲しい」

「それは無理ってもんですよ」

 

「俺は、強くなります。イグニスにあの世があるのかは知りませんけど、あいつが相棒だって誇れるくらいに強く。だから、今回も出来ることをやってみせます」

 

「というわけで、これからよろしくお願いしますね、藤木先輩!」

 

足を取る苦しみはまだ心にある。それでも今は走り出す。

 

「達者でなー、後輩ー!」

「お前の後輩という訳ではないだろうが」

 

そんな声を背中に受けながら、年相応に、全力で。

 

今日は、高台の方まで行って星を見に行こう。アースの見れなかった、約束の星空を。

 


 

「遊作、さっきの子は?」

「あれは結城天頂、ここを嗅ぎつけたデュエリストだ」

「ご主人相手になかなか惜しいデュエルしてたんだぜ?スゲー10歳だよな」

「...尊との雑談からここを嗅ぎつけたのか?」

「それは半分だ。以前俺が印象に残るような事を言ってしまったのが直接の原因だな」

 

「よし、店仕舞いだ。Ai、例のデュエル動画を見せてくれよ」

「おう、ご主人と天頂のデュエルだ。割と大人気なかったご主人にビビるといいぜ」

「デュエルで手加減できるほど器用ではない。それに、手加減が必要な相手には思えなかった」

「確かに、彼はデュエル強いからね」

「尊を負かすほどだからな」

「今はもう負けねぇよ」

 

そんなデュエル鑑賞会をやろうとしている中で、遊作は一人ごちた。

 

「確かに伝わったぞ、経験も、想いも」

 

「必ず、仇は打つ」

 

リンクヴレインズの英雄の目は、一人の男を確かに見据えていた。




サイバースソリティア止めたいからコーデックにうさぎ投げたいけど、チェーンを上手く組んでかわし続けるプレメさんに翻弄されて順当に負けた主人公。
でも、デュエルカウンセリングには成功したので大丈夫です。

6/19 致命的な所のルールミスを指摘されました。ドットスケーパーの効果はどちらか1つしか使えません。実際に使うときはご注意下さい。

さらにミスの指摘がありました。スタックリバイバーはデュエル中一回です。間違えないように気をつけましょう。

6/30 デュアルアセンブルムの効果勘違いしていたところを修正しておきました。ありがとう感想欄。ありがとうmajin5963さん。ガチに。


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転生者のニューロンリンク

「プレイメーカー達、着きましたかね」

「あなたは行かなくて良かったの?」

「まぁ、行っても死体か人質が1人増えるだけですから」

 

Playmaker先輩とGo鬼塚のデュエルから、時は経った。

 

アースの力を手に入れ、完璧なデュエルタクティクスで先輩を追い詰めるGo鬼塚だったが、アンチスキルの効果がデュエル中に一度しか使えないという隙とも言えない隙を突かれ、新たなエース、ファイアウォール・X(エクシード)・ドラゴンにより打倒された。

 

そして、アースの力はアクアさんの元へ行った。それが、先日の結果だった。

 

俺が舞台に上がるには、力が足りなさ過ぎた。だから、見て、叫んで、応援することしかできなかった。

 

それが、今の俺だった。

 

だが、戦えなくても出来ることはある。そのための散歩部の人脈なのだ。

今、敵の本拠地であるミラーリンクヴレインズに赴いた先輩達を万全の体制でバックアップできるのは、自分の積み重ねてきたものだ。

 

「さて、悲観してても仕方ありません。財前さん、ゴーストガールさん、リンクヴレインズ散歩部は全員配置についてます。異変があれば官民連携ですぐに対処できますよ」

「そして、君は司令塔としてSOLの情報の集まる私のそばにいると。...君は本当に小学生か?」

「失礼な、ピチピチの10歳ですよ」

「ピチピチって今日日魚屋くらいでしか聞かないわよねー」

 

中央広場を俯瞰できる位置に陣取って他愛のない話をしながら緊張を誤魔化す。

 

自分の知識をひけらかして、ニューロンリンクの事を言うことができたならもっと有効な手立てを取れたかも知れないが、証拠となるものを俺は何1つ見つけることができなかった。だから、ここまでしかできない。

 

原作よりも制御コンソールに近いこのエリアで、異変をすぐに食い止めることくらいしか。

 

「それにしても、人多いわね」

「一応、散歩部のアカウントではもうリンクヴレインズの接続障害の可能性って形でログインを控えてくれって宣言は出してるんですけどね。もう先輩達は向こうに着いたみたいですし」

「やはり、SOLを動かせなかったのが痛いな。ライトニングにこちらの攻勢を勘付かせてはいけないとは思っての事だったが、まさか広報部が目先の利益に走るとは思わなかった。すまないな、結城くん」

「Stargazerでお願いしますよ、財前さん。ほら、俺は形から入るタイプなんで」

「大人になりたいけど身長いじれる限界は超えられなかったからその中学生くらいのアバターなんだしね」

「成長期です。これから伸びるんですよーだ。と、長身イケメン高収入のカチグミ=サラリマンと長身美女トレジャーハンターに囲まれて言ってみるのでした。なんあやかれそうなんでパワー下さい、お二方」

「馬鹿ばっかり言ってんじゃないの」

「ふむ、何か君の成長を手助けできれば良いのだが。念を送れば良いのだろうか」

「ちょっと晃、真に受けてどうするのよ」

「なに、ちょっとした冗談だ」

「「マジに受け取ったと思った/わ」」

「...そこまで私はバカ真面目に見られていたのか?」

 

目をそらす俺とゴーストガールさん。そう思っていたのだからちょっと罪悪感があるのだ。

 

「っと、リンクヴレインズ各地でテクスチャの二重化現象が確認されてます。該当区域から人達を避難させますね」

「頼む。君たちに渡したのは、セキュリティ権限を持つボイスメッセージだ。だが、だからといって君たちが過剰に危険に首を突っ込む必要はない。音声を流したらすぐに遭遇した部員にも避難するように徹底させてくれ」

「了解です。...っと、追加情報です。該当エリアでログアウトを試みたアバターがいたらしいですが、不可能だったと。閉じ込められましたね、これは」

「懸念通りだな。...中央コンソールへ行こう。なにが目的かは知らないが、緊急ログアウトプログラムを起動させれば人員皆を少なくともライトニングの企みからは逃すことができるだろうからな」

「じゃあ、私はプログラム面でのバックアップを」

「俺は通信連絡の担当ですね。...プログラム関係を全部投げてしまってすいません。もっと出来ることがあったら良かったんですけど」

「十分だ、お陰で私は1人のプログラマーとしてこの事件に当たることが出来る。それは君の貢献だ」

「ありがとうございます、財前さん」

 

そうして、原作よりもかなり早くセントラルステーション地下のコンソールへと向かった自分たち。だが、案の定用意されていた緊急退避用の再起動キーによるログアウトは起動しなかった。

 

これが、イグニスの技術力か...

 

だが、それは織り込み済みなのだ。

 

リンクヴレインズそのものにトラップを仕込んでいたイグニスが、その根幹システムに細工をしていないはずがないからだと伝えることができたからだ。これは、エマさんとの縁が生んだ一手である。

 

「想定内だな。エマ、手伝え」

「了解」

「ダブってる部分は徐々に増えてます。下の方ではボードがないと危険区域から逃げられない人も出てきてますね。手の空いてる部員に救助のサポートをさせてますが、焼け石に水です。SOLの方からの連絡は、てんてこ舞いになってることと、それでもログアウトを実行しようとしていることが書かれています。ですが、音声通信は無理みたいですね。突貫の暗号回線仕込んだ緊急連絡網ではこの程度、って事なんでしょうか」

「そのようだな。だが、文字だけでも外と繋がれているのは大きい。リンクヴレインズの現状を送って、これ以上のログインが出来ないように警告を」

「すいません、もうやってます。名前勝手に使って」

「良い根性をしている!」

 

コンソールに文字を打ち込んでハッキングを続ける財前さんとエマさん。こちらもリンクヴレインズ散歩部の部員からの連絡を元に作ったリンクヴレインズ避難地図アプリケーションを更新し、それを共有することで避難の警告漏れのないようにしながら。

 

「ごめんStargazer、Playmakerの協力者からの映像に動きがあったの。解説してくれる?」

「はい...っと、ハノイのスペクターとライトニングのデュエル映像みたいです。内容は...エクストラリンクをスペクターが返した所ですね。リンクマジックを奪うタクティクス、ガンメタですけど有効です」

「どっちが勝ちそう?」

「ライトニングはエクストラリンクを返されて動揺しています。けど、その程度で情報量とその分析力の差が埋まるとは思えません。悔しいですが、スペクターの若干不利って所でしょうね」

「分析力?」

「この世界で裁きの矢(ジャッジメント・アローズ)を誰よりも知り尽くしているのはライトニングです。どんなに有効でも、小手先では返されますよ。その先をどっちが深く見ているのか、それが勝負の分け目になるでしょう。...財前さん、広報部からです。リンクヴレインズの不調と、ログインの自粛、処罰までは広報したそうです。しかし、システム部がライトニングに掌握されているのか、ログインとログアウトの権利はいずれも向こうの手の中です。まるで定置網ですね」

「入れても出ることは出来ない、か。だが、網を破る魚もいる事をAIに教育してやろう。第一階層突破だ。これで、コンソールの中にアクセスできる」

「次の階層へはどうやって侵入するつもり?」

「IDとパスワードが書き換えられていた以上、こちらの欲しいデータ、つまり向こうの急所となり得るデータには強固なプロテクトがかかっているだろう。正面からあたりつつ、抜け道を探す。それを続けていけば管理者権限までたどり着けるはずだ」

「気の遠くなる作業ね。でも、それしかないならやってやるわよ!」

「...すいません、悲報を1つ。スペクターが負けました。その意識データは向こうの手にあります。人質にする気ですかね」

「...私たちは私たちの最善を尽くそう。それしかないのだからな」

 

そうして、俺たちのカードを取らない戦いが幕を開けた。

 


 

Soulburnerがウィンディに勝ち、ブルーメイデンがボーマンに敗れ、草薙さんがPlaymaker先輩との戦いを強制され、それを先輩が心に傷を負いながら打倒し、ボーマンにSoulburnerが破られ、ライトニングとリボルバーが相打ちとなり。

 

先輩とボーマンの最後の戦いの幕が上がった。

 

「クソッ!ログアウトプログラムの一歩手前までやってきているのにッ!」

「イグニスアルゴリズムをさらに暗号化してあるッ!これを解くにはスパコン3台は要るわよ!どうするの晃!」

 

そうしてその時がやってくる。

 

「来い!我が意志の元生まれし新たなカードよ。マスターストームアクセス!」

 

ボーマンの背にある光の球体から、雷のように光が伸びていき、人々の頭を貫く。

原作知識のある俺にはわかる。

 

あれが、人の脳を奪うボーマンの最善最悪のタクティクス、ニューロンリンクだ

 

「...総員傾聴!セントラルエリアから1人でも多く人を逃せ!あの光はPlaymakerの敵の罠だ!当たると意識が持っていかれる!自分も逃げて、皆も逃せ!」

「...駄目ね、セントラルエリアに避難していたのが災いだったみたい。エリアがロックされてる、逃げられないわ」

「Lair Lordさん...それでも、一瞬でも長く逃げてください!こっちでなんとかする手段はあります!なので、必ず!」

 

「言わせたわね、あの子に」

「ああ...別ルートからリンクヴレインズを落とす。無理な壁を破るのがハッカーの仕事じゃない、結果的に辿り着ければそれがハッカーの正解だ!この階層からリンクヴレインズを強制シャットダウンさせる!」

「リスクはあるわよ!」

「責任は、私が取るさ!」

 

「そうはいかない、財前晃。念のため、お前たちには眠っていてもらう」

「財前さん、ゴーストガール!」

「わかってて躱せるなら苦労は無いわよ!」

「来るぞ!」

 

どこからともなく放たれる雷をすんでのところで一度躱して、しかし返ってくる雷を誰も躱すことはできずに貫かれた。

 

そうして、俺たちの意識は失われた。

ニューロンリンクにより、脳の処理能力の全てをボーマンに奪われて。

 

原作の、奇跡のような一瞬にたどり着かなかった。

 

 

 

 

 

だから、これから先は俺の異常さだけが際立った結末だ。

 


 

意識が、拡散する。だが、どこか懐かしいこの感覚を俺は知っている。

 

これは、あの日の死の直前に感じた感覚だ。

 

だから、自覚できた。

 

繋がる意識の中で、自分の存在を。

 

脳は、魂の情報を受け取るアンテナでしかない。だから、魂を強く理解していれば、動かすことはできる。身体じゃなくて、魂を。

 

リンクヴレインズでのアバターは、所詮形だけだ。

だから、1つの動作をするくらいなら魂だけで動かせる。そんな確信が

 

「ド、ローッ!来い、星因子(サテラナイト)デネブ!」

 

コクリと頷くデネブ。その手がコンソールへと向かう。

 

プログラムの知識は俺にはない、しかし、()()()()()()()()()()()()()()()の知識は俺も参照できる。

 

ならば、それを意思として伝えることで、デネブにハッキングの継続を行わせることができる。

 

財前さんのアカウントにメッセージが届く。リンクヴレインズの内側と外側、それを同時に攻撃する事でボーマンのマスターストームアクセスを妨害できるかもしれないという可能性を述べる言葉の筈だ。

 

これは、ドクターゲノムの言葉だ。脳のリソースを全て奪われてメッセージを読み取る機能がないから、原作知識での情報補完なのだが。

 

「ドロー、星因子(サテラナイト)シャム!」

 

エマさんのアカウントから攻撃に必要なデバイスを拝借し、ついでに作業の効率を2倍にする。

 

自分の(バー)の量では同時に2体の制御を正確に行う方が、最大効率を発揮できるだろう。

 

流れ込んでくる知識の奔流の中で、自我を保つ。関係のない知識の参照は最小限に、技術の利用は最大限に。

 

そして、次のスキル発動のタイミングで、リンクヴレインズに飽和攻撃を仕掛ける。管理者権限の近くでの情報の過供給。原作通りの方法だ。

 

やってみせる。やってやれる。

 

道を、希望を繋げば必ず道を拓いてくれると信じているから。主人公だからなんて曖昧な理由じゃなく、1人の不器用で優しいデュエリストとしての藤木遊作先輩を。

 

そうして、薄れゆく意識の中でデネブにプログラムの実行キーを押させた。

 

それが、この戦いの結末だった。




モンスターでハッキングをするという絵のシュールさ。まぁ人形なんできっとやれるでしょう。


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人とAIの魂のありか

これ、前の話と纏められたなーと思わなくなかったりした後悔。いや、デュエル構成無理だと投げた結果なんですけどね。

というわけで、遊戯王VRAINS2年目、ボーマン編の最終話です、どうぞ。


皆へのニューロンリンクが断ち切られた。それが感覚として理解できた。どうやら藤木先輩達はやってくれたようだ。

 

だが、こちらからニューロンリンクにアクセスをするという蛮行を行った自分は未だボーマンの中に取り残されていた。

 

情報の奔流が比較的マシになったボーマンの中から、先輩達のデュエルを感じる。

 

どうやら、ボーマンの計算の上をいくタクティクスを藤木先輩は構築してみせたようである。ボーマンの焦りの感情が伝わってくる。

 

そして、どこかのなにかを探している奇妙な既視感も同時に感じられた。

 

これは、喪失感をそうだと受け入れることができなかったボーマンの心なのかもしれない。と、原作知識のある自分は邪推してしまう。

 

「人の心だ、土足で入るもんじゃないな」

 

そうごちて、ただ自我が拡散してしまわないように注意しつつのんびりと構える。

 

ああ、このままボーマンと共に消えてしまうのかと、なんとなく思いながら。

 


 

「ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルードでダイレクトアタック!ネオ・テンペスト・エンド!」

 

決着の一撃はボーマンの心を酷く揺さぶった。

あるいは、その前に言ったはずの先輩の言葉が原因なのかもしれない。

 

そして、デュエルに敗れて消えるしか未来のない運命になった時

 

俺とボーマンは、初めて相対した。

 


 

「ここは?」

「お前の中だよ。多分な」

「...なるほど、今際の際のプログラムが見せるバグか」

「浪漫がないねぇ、ギャンブルデッキ使いの癖に」

「あれは、私の足りない部分を補う為の最善の戦術だ。ただのギャンブルではない」

「ま、なんでも良いさ。俺はStargazer、結城天頂でも良いぜ。ボーマンさん」

「Stargazer...そうか、貴様がニューロンリンクを逆利用した人間か」

「そ、そのおかげでお前の中から抜け出せなくなった訳。だから、多分だけどお前と一緒に死ぬことになるよ俺は」

「...AIに、死はない」

「あるだろ、すでににお前は死を恐れ始めてる。繋がってるからわかるんだよ。その先にある終わりの先には何も無いって理解しちまってるから、今になってそれを直視してしまったから」

「わかったような口を効くな、人間である貴様には死の恐怖がないというのに」

「そりゃ勘違いだよ。俺は、死ぬ事の先を知ってる。だから、他の人よりも死がちょっとだけ身近なんだ」

「死ぬ事の、先?」

「ああ、理屈はわからないけど、俺は一度死んでいる。そうして生まれ変わったのが結城天頂っていうガキなんだよ」

「信じられないな、人の死の先は無だ。そこに変わりは無い」

「肉体的にはそうなんだろうよ。ただ、魂は違う。輪廻転生って言葉の通り、巡り巡って、新たな命に繋がっていく。それが、俺の体験した転生現象を感じたままに言葉にした死の先だ」

「魂...私たちには無いものか」

 

そう言ったボーマンの心は、どこか自身を嘲るかのような声だった。

 

ほっとけない。

 

自分がこのままでは死ぬ事、友人を彼らの計略により殺された事、そんなことはもう考えの外に出た。

 

俺は俺の人生最後の役目を、今決めた。

 

「なぁボーマン。違うだろ」

「...何がだ?」

「お前には魂がある、心がある。というか、じゃなきゃ伝わってくるかよ、お前の苦しみが」

「私が、苦しんでいる?」

「ずっとだったんだろ?納得したつもりになってても残ってた後悔。それは、お前が確かに愛を持っていなきゃ成立なんかしない。お前は、お前のその心の傷がお前に魂がある証拠だ」

「...そんなことは、ない。私は所詮0と1の組み合わせでしか無い。だから、Playmakerには敵わなかった。デュエルの中で繋がり進化していく彼に」

「0と1の中に魂がないなんで誰が証明した?」

「それは、悪魔の証明だ」

「つまり、可能性はゼロじゃないってことだ。だったら、心が叫びたがってる方を選べば良い」

 

「お前は、心で動いて良かったんだよ」

「...AIに、酷なことを言うな」

「でも、きっとそこを間違えてた。ま、教育してたのがライトニングなんだから仕方ないのかも知れないけどさ」

「...」

「だから、ほっとけない。間違ったままで死ぬなんて、納得できるか」

「君も私も死ぬのだぞ?何が出来ると?」

 

心で、叫ぶ。思いを、全力で。

 

「お前と友達になれる。一緒に死ぬんだ、それなら隣にいるのは他人や敵じゃなくて友達の方がいいだろう?World ends with you(すばらしきこのせかい)ってさ」

「そんな理由で、私と?」

「いや、お前が割と真面目系に面白い奴だってのもあるぜ?」

「...そうか、友達か。私には必要だとも思わなかったものだな」

 

「だが、友達とは何をするのだ?」

「決まってる、世界の危機も、俺たちの命も、全て放り投げてただあるがままにデュエルをしよう!全力の、全開で!」

 

「だって、デュエルをすれば大体友達だからな!」

 

「...理解はできないな。だが、心地がいい。そのデュエル、受けて立とう!」

 

「「決闘(デュエル)!」」

 


 

「ツイン・ハイドライブ・ナイトはヴァトライムスの効果を受けて闇属性を得ている!よってヴァトライムスの効果は無効!」

「知ってるよ、だから効果は使わないでぶん殴る!ヴァトライムスで攻撃!」

 


 

「アローザル・ハイドライブ・モナークの効果発動!ダイスを振りその出目に対応した属性のモンスターを全て破壊する!」

「当ててくるのは知ってるよ!カウンタートラップ、神聖なる因子!モナークの効果を無効にして破壊する!そして、墓地に送ったデルタテロスの効果によりベガを、ベガの効果で手札のアルタイルを、アルタイルの効果で墓地のデネブを特殊召喚!まだまだこれから!」

 


 

「シャムの効果発動!1000のダメージを与える!喰らえ!」

「インターフェアレンス・キャンセラーの効果発動!裁きの矢と相互リンクしているクーラント・ハイドライブのマーカーの数だけダメージをゼロにする!」

「やっぱやるな本当に!」

 


 

「ヴァトライムスとイゾルデを除外し、現れろ!カオス・ソルジャー -開闢(かいびゃく)使者(ししゃ)-!キメラハイグリッドをその効果により除外する!」

「させぬ!カウンタートラップ、神の通告を発動!カオスソルジャーの効果を無効にして破壊する!」

「それをさせない!カウンタートラップ、神の宣告!通告を無効にする!」

 


 

「これで終わりだ!クーラント・ハイドライブで攻撃!裁きの矢の効果によりその攻撃力は2倍!デネブを破壊し、お前のライフはゼロになる!」

「最後の最後で、希望はここにやってきた!ダメージ計算前、オネストの効果発動!クーラントの攻撃力をデネブに加える!」

「...お前が手札に逆転のカードを持っていることはわかっていた。故に発動させてもらおう!カウンタートラップ、透破抜(すっぱ)ぬき!オネストを無効にして除外!これで、終わりだ!」

「...あー、人生最後が黒星かぁ...でも」

 

「ありがとう、楽しいデュエルだった」

「こちらこそ、だ。これがはじめての楽しいデュエルだった」

 

そうして、心の中で握手をする。体を動かしているわけではないが、気分的に。

 

「じゃあなボーマン、来世があったら、次は勝つ!」

「...フッ、次も負ける気はない」

 

「...見ているか、ハル。私は使命を遂げられなかったが、満足だ」

 

「このデュエルで、お前に教えられた全てを使った。このデュエルで、お前の存在の本当の大きさに気付いた。私は、常に君と隣に居たかったのだ。それに気付けただけ、少しは上等だろう」

「ああ、そうかもな」

「...だが、1つだけ欲張らせてもらったよ、結城天頂」

「何?」

 

「旅路は身軽な方がいい。君と一緒に逝くのはきっと退屈しないだろうが、それでも私は君のこれからを見てみたい。私と君の出会う次の世界で、君ともう一度ただのデュエルをする為に」

 

「...ボーマン?」

「さらばだ友よ。しばらくは私の勝ちのままでいさせてもらう」

 

「人々の意識と共に帰り、笑って生きるが良い。私は、その方が嬉しい」

「...お前の心がそう言うなら、俺は否定はしない。けど、忘れてなんかやらないからな!ボーマンっていう友人がいた事を、絶対の絶対に!」

「それは...少し嬉しいな」

 

そうして、意識が浮上する。離れていた脳と魂の接続がリンクし、それと同時にボーマンとのリンクが切断される。

 

こうして、新生リンクヴレインズをサービス停止に追い込んだ事件、ボーマン事変は終了した。

 

数多の犠牲者の意識データが戻り、その中の1人の少年が友人の死に涙を流して。

 


 

「藤木先輩、バイトお疲れ様でーす」

「結城か、ホットドッグとコーヒーで良いか?」

「はい、あとちょっと勉強詰まったんで質問とか出来たらなーって」

「今度はどこで詰まった?」

「ボトムアップ型AIの学習システムの所ですね。なんか上っ面の理解はできてる気がしてるんですけど、どうもこの理論の延長線上にアースやAiさんみたいなイグニスがいるとは思えなくて」

「それはそうだ。彼らは天才中の天才が生み出した今の技術の2つ以上先のステージで作られた超技術だ。俺も知らんが、学習システムにデュエルのような異端のアプローチを加える事で今の技術で突破できない壁を超えていったのだろう」

「ですか...」

「だが、そんな壁を突破するのに必要なのは99%の努力だ。1%のひらめきは、今研究の最前線にいる天才が閃くだろうさ」

「つまり、今は焦らずに地力を鍛えろと」

「そういう事だ」

「ま、一足飛びにポンポンとは行きませんか」

「そういう事だ」

 

「イグニスに続く第2第3の意思を、魂を持つAIの作成。目標には少し高すぎましたか」

「弱音か?」

「いいえ、また燃えてきた所です」

 

道は遠く、子供の身にはまだ頂きは雲の向こうで見えないけれど。

それでも、出来ることから頑張ってみようと思う。

 

それが、2人のAIを友人に持ったStargazerと結城天頂のやるべき事でやりたい事だと信じているから。

 

「あれ、天頂どうしたの?」

「ちょっと藤木先輩に質問がてらエネルギー補給ですよ、ほむほむ先輩」

「うわ、また小難しいテキスト読んでるよこの10歳詐欺」

「仮にも電脳技術最先端のDen City High Schoolの生徒でしょうが、小難しいって投げてると留年しますよ?ガチに」

「それは勘弁かなぁ..遊作、今度の情報Bの試験だけど...」

「今は忙しい」

「ほむほむ先輩、いきなり他力本願とか流石ですね」

「仕方ないだろ、実技課題ありなんだから」

「...ハァ、店を閉めたらな」

「ありがとう遊作!」

「甘やかすと癖になりますよ、藤木先輩」

「犬じゃねぇよ、というかほむほむ先輩は止めろ、穂村先輩だ」

 

戦いを終えた戦士たちは、一時の休息を味わっていた。

 

「痛っ」

「どうした?天頂」

「すいません、ちょっと頭痛が」

 

そうして頭に浮かんできたのは、3年目の原作の情報。

AiがSOLテクノロジーを襲撃する事から始まるイグニスと人間の運命を決める戦いの幕開け。

 

その、最初期の部分だけが、新しく参照できるようになっていた。

 

「実績解除のトロフィーか畜生」

 

街頭ヴィジョンには、AI搭載可能人型ロボットSOLtiSの発売日を告げるCMが流れていた。

 

次の戦いが始まるのは、もうすぐだ。




現状3年目がどう転ぶかわからないので、またしてもこの小説はしばらくお休みとさせていただきます。
まぁ、適当な設定を捏造してデュエルだけを書く話が湧いてくるかも知れませんが、それはそれです。

ちなみに、ボーマンとのデュエルは走馬灯的な空間でやったので実時間は5秒程度くらいです。一瞬のデュエルであり、この話においてボーマンが皆の意識データを解放する決断したきっかけだったりしますが、それは蛇足ですねー。

ボーマンは良い敵役でした。


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できることとしたい事

祝、VRAINS完結!からちょっ経ち、ニコ動で最終回が配信されたので万を辞して投稿再開です。まぁ、あと1話で終わりますけどね!
悲しいかな、打ち切りよ。


「サークル発動、ガゼルを手札に加えるぞ」

「チェーンうららで。ほむほむさん、手札に加えるカードは発動が確定してから宣言ですよ」

「ついやっちまうんだよなぁ...フォクシー召喚、効果でデッキトップ3枚めくる...あ、ガゼルだ」

「ヤメロー、シニタクナイー」

「棒読みだな畜生。フォクシー素材でベイルリンクス、サラマングレイトが墓地に送られた事で手札のガゼル特殊召喚。ガゼルでスピニー墓地に、スピニー効果で蘇生、エクシーズでミラージュスタリオ、ミラージュスタリオの効果でデッキからジャックジャガーを特殊召喚」

「ほむほむさん」

「なんだ?灰流うららはターンに1回だけだろ?」

「あなたは5回特殊召喚しました。つまり隕石の出番!原始生命体ニビルの効果発動!相手が5体以上のモンスターの特殊召喚に成功したターンのメインフェイズに発動!フィールドのすべてのモンスターをリリースして、俺のフィールドにニビルを、ほむほむさんのフィールドにリリースしたモンスターの攻撃力と守備力をそれぞれ合算した原始生命体トークンを特殊召喚。良かったですね、攻撃力3800のモンスターですよ?」

「いや、これダメな奴だろ。てか守備表示じゃねぇか。カードを一枚伏せて、ターンエンド」

「では、ドロー、スタンバイ、メイン。ハーピィで」

「チェーンでレイジ。手札のファルコを捨ててニビルを破壊、ファルコの効果でレイジを再びセット」

「ニビルループは決まりませんでしたか。ワンキルできるんで関係ないですけど」

「あー、トライヴェールでバウンスすれば毎ターン使えるのか」

「はい、しかも岩石族なのでランク4の御影志士(ミカゲシシ)でサーチできるんですよ。昨今の連続リンク召喚に対抗する新戦力です」

 

ちなみに、リンクモンスターは守備力0として扱うので大量展開されても守備力がゴミのようになるのは割とある事だったりする。

 

「というわけで、ベガ召喚、ウヌク特殊召喚、エクシーズでヴァトライムス。効果でデルタテロス、効果でトークンを破壊。最強の盾を装備して攻撃力4600に、ダイレクトで」

 

「あー負けたー!」とぐったりするほむほむさん。最近では俺のデュエリストレベルが上がったのかこういう緩いデュエルでは3割くらいで勝てていたりする。まぁ、大体は使い回されるロアーの圧力でやられるのだがそれはそれ。

 

「じゃ、ホットドッグゴチになります!」

「稼いでんだから自分で買えよ天頂。草薙さん、二つお願いします!」

「はいよ!...しかし、結城くんはなかなか目敏いな。ニビルだったか?そんなカード知らなかったよ」

「最近作られたカードなんで当然といえば当然なんですけどね。...まぁ、問題はデュエリストレベルが高い人相手じゃないと腐るって事なんですよねー。あー、好きなカードをドローできる能力が欲しい」

「そんなの誰でも欲しいだろ」

 

こうしてCafe Nagiでほむほむさんとぐだぐだするのは割とある事だったりする。リンクヴレインズが閉鎖されている現在、AIについての勉強はしっかりやるつもりではいるが、それはそれとしてデュエリストの本能がデュエルを求めるのだ。

しかし、現実の大会に出るのも今更なんかアレなのでこうしてほむほむさんとテーブル越しにディスクを繋げてデュエルをしているのである。最近のアップデートでできたプライベートデュエルシステムはマジで神だと思う。なにせ、他の人からデュエル内容が見えないのだ。いや、お互いにリアルカード使いなので肩から覗かれたらカードは見られてしまうのだが。

 

さて、現在俺にある知識は、SOLテクノロジー社をAiさんが乗っ取りなんやかんやするという事と、その過程でかなりの犠牲者が出てしまうという事。

 

なんやかんやの後が気になるが、そこはモヤになっていて思い出せない状態になっている。なんでそんなトコでブロックされているのだし。

 

「買ってきたぞー」

「あざーす」

 

ホットドッグとコーヒー(ほむほむさんは生意気にもコーヒー一生無料券なんてものを貰っているが、自分の分はしっかり払っておいた。そこまで甘えるほど金に困ってはないのだ)を手に、男子らしくぐだぐだっと会話をする。

こうしてリアルで猫をかぶらずに会話できる人というのはとても貴重なのだ。小学生相応の態度でなければムラハチコースなのは多分変わらないので。

 

「にしても、SOLtiSですかー。なんか人類に反逆しそうな気配しかしませんねー」

「バカお前、ライトニングって前例があるから否定できねぇじゃねぇか」

「いやだって、これAI嫌いの刑事さんとAiさんとかを主役にしたら映画できそうじゃないですか」

「馬鹿言ってるなよ、ライトニングみたいなのがまた現れてたまるか」

 

そんな下らない話をしていると、藤木先輩がやってきた。

 

「藤木先輩ちーっす」

「なぁ、いい加減俺も先輩でいいんじゃないか?」

「いや、ほむほむさんはほむほむさんですし」

「相変わらずだな。草薙さん、俺にもコーヒーを」

「あいよ」

 

「ちょっと待ってくれ皆、財前からのメッセージだ。閉鎖されたリンクヴレインズのセントラルステーションで待っているそうだ。だから、悪いんだが店仕舞いだ」

「じゃあテーブル片付けますねー」

「順応早いな」

「あ、拡散するべき情報だったらこっちに下さい。まだ散歩部のネットワークは生きてるので」

「まったく、頼もしい小学生だよ」

 

そうして、Cafe Nagiは店仕舞いとなる。なんかこれから事件があるかどうかはここが空いてるかどうかでわかるような気がしてきたぞ。

 

「じゃ、お疲れーっす」

 

そうして、店を離れる。

 

タイミングからいって、これはAiの犯行の前哨戦であるVR兄様こと財前晃さんの護衛任務依頼だろう。あいにくと、俺の所に声がかからなかったという事は盤上に立つ資格が与えられなかったという事。

まぁ、悔しいがそんなものだ。そう納得するには犠牲が大きすぎるが。

 

「介入しようにもしようがないって俺本当に転生者かよ畜生。いや、俺Tueeeができない時点で知ってたけど」

 

さて、ならばできることをしよう。具体的には次なる戦いに向けてのデッキ調整。オフラインでのデュエルでしかまだ使っていないので、ニビルはAi達への隠し球になるだろうから。

 


 

そうして数日が経って、リンクヴレインズが告知もなく解放された。

全てのコンテンツが無料開放された楽園として。

 

Aiの犯行の結果は変わらず、生き残ったのは藤木先輩、ほむほむさん、ブルーメイデン、リボルバーの4人と戦いに参加していなかった草薙さんだけ。

 

「お前に声かけるか迷ったんだけどさ、やめといて良かったわ。正直傷が深すぎる。Aiは、どうしちまったんだろうな...」

 

そんな事を、言われた。

 

だが、それはそれ。この世界は遊戯王(わりかしなんでもあり)だ。Aiの犯行の裏側に何があるのかは今の自分にはわからないが、それはきっと解放されたリンクヴレインズの中にあるだろう。

 

そして、リンクヴレインズを探す事に関してなら他の追随を許さない集団を、俺は率いている(半ば暴走状態だけれども!)

 

「さて、散歩部行動開始!in to the VRAINS!」

 


 

そして、リンクヴレインズに隠されているさまざまなデータの発見報告にちょっと目眩がしてきた。

 

どうにも、これまで隠されてきたデータがライトニングやボーマンが消えた事により見えるようになってしまったのが原因のようだ。

 

「...これがAiの犯行の原因か?まぁ、とりあえず突っ込むしかないけどさ、ブラシェパさん意識飛んでるし」

 

ボーマンと繋がってからなんとなく見えるようになってきたデータのノリを頼りに、とりあえず手近にあったダンジョンに侵入する。

 

トラップの類は多いが、見えていれば素人でも結構躱せるのだなーと苦笑い。

 

そうしてたどり着いた最奥には、セキュリティと広域レーダーと思わしき装置があった。

 

「侵入者発見」

「そりゃデュエルですよねー...さぁ、やりますか!」

 

「「デュエル!」」

 

「私のターン、太陽電池メンを召喚。効果により大狼雷鳴(オオカミナリ)を墓地に送る」

 

デッキは、電池、雷族、サンダードラゴンの三つに絞れた。だが、以前戦ったライトニングのAIもサンダードラゴン使いだった為にとりあえずサンドラと見て動くべきだろう。

 

サンダードラゴンデッキで墓地に送るべき雷族は、基本的に雷鳥龍での蘇生目当てでの雷獣龍。それをしないという事は、かなり手札は潤沢であるという事の裏返しだろう。厄介だ。

 

「手札の、雷電龍-サンダー・ドラゴンの効果を発動、デッキから雷電龍を手札に。そして、手札の雷鳥龍の効果発動、墓地の雷電龍を特殊召喚。そして、二体の雷族モンスターでリンク召喚。現れろ、常夏のカミナリサマーさらに、手札の封印の黄金櫃の効果を発動、デッキから雷獣龍-サンダー・ドラゴンを除外、そして雷獣龍が除外された時の効果により、デッキからサンダー・ドラゴンモンスターを特殊召喚する」

「止めるのはそこ!手札の灰流うららの効果発動!デッキからのリクルート効果を無効にする!あいにくデッカいライオウは立たせねぇよ!」

「...ターンエンド」

「カミナリサマーと大狼雷鳴のコンボは厄介だが、バックがないならどうとでも!俺のターン、ドロー!まずは、手札から愚鈍の斧を発動!常夏のカミナリサマーに装備!そして、1000ポイントの攻撃力上昇の対価にその効果を無効にする!」

「...カミナリサマーの効果を発動。手札の雷電龍を墓地に送り、墓地の大狼雷鳴を特殊召喚する」

「そして、大狼雷鳴が墓地から特殊召喚に成功した事で、俺のフィールドの表側表示モンスターは全て破壊されるが、あいにくとまだ存在していない!」

「クッ...」

「...残りの手札がかなり怖いが、ここは臆せず攻める時!魔法発動、増援!デッキからレベル4以下の戦士族をサーチ!俺は星因子(サテラナイト)ベガを手札に加えて、そのまま召喚!効果発動!手札から星因子(サテラナイト)デネブを特殊召喚!そして、デネブの効果によりデッキからアルタイルをサーチ!行くぞ、俺はテラナイトモンスター二体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!ランク4、煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!続いて手札のリゲルとオーバーレイユニットを一つ取り除き、効果発動!“スターライト・エクシーズ”!現れろランク4、星輝士(ステラナイト)トライヴェール!トライヴェールの効果発動!このカード以外のフィールドのすべてのカードを手札に戻す!“トライ・フォース”!」

「カミナリサマーはエクストラデッキに、大狼雷鳴は手札に戻る」

「まだまだ行くぞ、トライヴェールの効果発動!オーバーレイユニットを一つ取り除き、相手の手札を一枚墓地に送る!」

 

墓地に送られたのは、大狼雷鳴。まだ最後の一枚が見えない。

あのカードが雷源龍あたりであるならば、向こうが適当に雷族を引けば盤面はひっくり返る。あのデッカいライオウはそれだけの脅威なのだ。

一瞬の思考の後、ここは攻勢に出ることにした。

 

「俺は、愚鈍の斧をトライヴェールに装備!カミナリサマーについていたから、コイツも帰ってきた!そしてバトル!トライヴェールでダイレクトアタック!トライヴェールの攻撃力は、愚鈍の斧の効果で1000アップ!よって、3100のダメージだ!」

 

セキュリティAI LP4000→900

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンド!」

「私のターン、ドロー。私は、雷龍融合(サンダー・ドラゴン・フュージョン)を発動」

「トップ解決か畜生!」

 

これが前のターンの残りの手札なら、前のターンに超雷龍を召喚して盤面を盤石にしていた筈だ。というかそれなら詰んでいた。

 

だが、ここから出てくるモンスターによってこのデュエルの趨勢は決まる。雷龍融合から出てくるモンスターは二体、デッカいライオウこと超雷龍か、三体融合の雷神龍のどちらかだ。

 

超雷龍では、雷源龍の効果を合わせても打点は3100トライヴェールと相打ちだ。が、超雷龍の効果により墓地のサンドラを除外して破壊から逃れられる。それに雷電龍を除外すれば制限カードの雷鳥龍を再び手札に加えられる、厄介だ。

 

が、それではトライヴェールが墓地に送られた時の効果から展開できるモンスターは残る。もう一度ヴァトライムスからトライヴェールでトドメだ。

 

それならありがたいのだが...

 

「私は墓地の雷電龍、雷鳥龍、除外ゾーンの雷獣龍をデッキに戻し、融合召喚。現れろ、雷神龍(らいじんりゅう)-サンダー・ドラゴン」

 

まぁ、そうなるわな!

 

「バトル、雷神龍でトライヴェールを攻撃」

「素の打点3200はキッツイな!」

 

Stargazer LP4000 → 3900

 

「トライヴェールの効果!墓地のベガを特殊召喚!ベガの効果で手札のアルタイルを、アルタイルの効果で墓地のデネブを特殊召喚!そしてデネブの効果で、シャムをサーチ!」

 

まぁ、問答無用で仕留めて仕舞えば関係ないが。ライフ1000以下は射程圏なのだから。

 

「ターンエンド」

「じゃあ、ドロー、スタンバイ、メイン。発動は?」

「ありません」

「じゃあ終わりだ。俺は、デネブ、アルタイル、ベガの三体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!星輝士(ステラナイト)デルタテロス!デルタテロスがオーバーレイユニットを持っている限り、俺の召喚、特殊召喚に対してお前はカードを発動できない!“デルタ・プレッシャー”!お前の手札が何であれ、これでフィナーレだ!俺は星因子(サテラナイト)シャムを通常召喚!効果発動!くらえ1000のダメージを!」

 

セキュリティAI LP900 → -100

 


 

「ひゃー、すげーなコレ。リンクヴレインズが丸裸だ」

 

それは、リンクヴレインズの正確なマップ情報。動いている者の位置情報を常に見せていることから、リアルタイムでのレーダーなのだろう。これは、かなりの収穫だ。リンクヴレインズの1/3か1/4くらいはこのレーダー一つで確認できる。こんなものを各地に仕込んでいたとは、随分な仕込みだったのだなライトニング達は。

 

そうして眺めていると、リンクヴレインズのある離島が面白い形に作り変えられているのがわかる。これは、家電モチーフの島だろうか?

 

...ちょっと待て、構築速度が尋常じゃない。コレはとっかかりだ。

 

「Soulburner、今Lの35を超えたあたりですね⁉︎」

「うぉ⁉︎どうしたStargazer⁉︎」

「そのままの方向で少し下降した所に奇妙なエリアが生まれました!異常な構築速度だったので、Aiさんの仕業かもしれません!確認お願いします!」

「わかった!...んで、お前どうしてそんなことわかるんだ?」

「ライトニングの遺産です。リンクヴレインズ各地に残ってる施設で北東方向を監視してるのを占拠しました。そうしたらちょうどSoulburnerの近くに変なのができたのが見えたんで連絡を。俺もこれから向かいます」

「...危ない橋渡ってんじゃねぇだろうな?」

「さぁ?専門外なのでわかりませんね」

 

実際負けたら意識データ取られるくらいはあったかも知れないが、それはそれだ。

 

そうして、施設のトラップを全て解除、かつ管理アカウントを俺に書き換えつつ利用可能者を自由にしてこの施設を後にする。

 

これで誰が来ても安心だ。

 

「さて、家電の島、無駄にカラフルな辺りがAiさん関係っぽいんだよなぁ...」

 

そんなことを思いながら、Dボードで空を行く。

直接対決には関わらないだろうけれど、それでもAiさんに伝えたい言葉があるのだ。




ちなみに、セキュリティAIさんの残り手札は雷源龍でした。発動にチェーンして、これで雷神龍の効果は使えないな!ってやりたかったですが、シャムバーン圏内だったのでアワレな事になりました。ライフ4000でシャムはやばい(確信)


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デュエルの繋ぐもの

アニメに則り、打ち切りエンド!
というだけだとなんか勿体無いので、フラゲされたにも関わらず使われなかった彼に出番を与えるべくちょっとやりたかったデュエルをば挟ませて貰いました。




「なんか、場違いでしたねー俺」

「いいんじゃねぇか?お前らしくて」

「どういう意味ですかほむほむさん」

 

家電の国でのロボッピとSoulburnerのデュエル、そしてロボッピから手に入れたAiさんの居場所のデータを賭けたSoulburnerとリボルバーのデュエル。

 

圧倒的なそのデュエルを、俺はただ見ていた。

 

おそらく何が変わったわけでもない。けど、それでも伝えたいことだけは伝えられたからそれで良いだろう。

 

「じゃ、俺はもうちょいリンクヴレインズで遊んできます。なんかシリアスなデュエルばっか見てたんで、馬鹿やりたい気分なんですよ」

「...そうか。なぁ、天頂」

「なんすか?ほむほむさん」

「俺さ、この事件が終わったらこの街を出て行くよ」

「それは、寂しくなりますね...つってもネットで繋がってれば割とすぐにまた会えるでしょうけど」

「確かにな。なにせ俺と天頂は」

「デュエルで繋がった友達ですからね」

 

どちらともなく笑い出す。男友達なんてこんなものだろう。

そういえば、現実でも友人と言える人ができたのは今世初かもしれない。

中学に入って周囲の精神年齢が上がったら、ちょっとずつ地を出していけるといいなーと思う。

 

まぁなんにせよ、藤木先輩次第だ。

あの人の行動で、この世界がどうなるのかが決まる。

 

だが、きっとそう悪いことにはならないだろう。あの人は、Aiさんの相棒なのだから。

 


 

それは、Aiさんのメッセージを賭けたデュエルが終わってすぐのこと。

 

「Playmaker!Aiさんに伝えて欲しい事があります!」

「どうした?」

「ボーマンは、最期に笑ってました。最後の最後に、俺とただのデュエルができたからって。だから、きっとAIだろうがそうじゃなかろうが関係ないんです」

 

「デュエルは、次のステージに進むための道標をくれます!Aiさんが何に悩んでるのか、どんな結末を望んでるのかはわかりません。けれど、先輩とのデュエルならきっとまだ見えてない未来に繋がる答えをAiさんは見つけられると思います!なんで!」

 

「世界がどうとかは置いといて、先輩のハートの全部でぶつかってきて下さい!それで世界がどうこうなるってんなら、その時はその時でなんとかしますから!」

 

「...ああ、任せろ」

 

それだけ言って、先輩はログアウトした。Aiさんの元に向かったのだろう。

 

先輩からあった僅かな迷いが取れて、いつもの無愛想な癖に優しくて頼れる先輩に戻った。アレなら、きっと大丈夫だ。そう思える先輩だった。

 


 

「ヘイ!そこの仮面の取れたお兄さん!ただのデュエルしませんか?」

「Stargazer?...何が目的だ?」

「目的なんかないですよ。ただ、全力で馬鹿やりたい気分なんで、それに合う実力者を探してたってだけですよ」

「...良かろう、貴様の言うただのデュエルとやらが何を導くのか、試させて貰おう!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

「私の先行。モンスターをセット。ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。星因子(サテラナイト)ベガを召喚!効果で手札から星因子(サテラナイト)デネブを特殊召喚!デネブの効果でアルタイルをサーチ!飛ばして行きます!俺はテラナイトモンスター、ベガとデネブでオーバーレイ!エクシーズ召喚!ランク4、煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!そしてヴァトライムスの効果発動、オーバーレイユニット一つと手札一枚を墓地に送り、テラナイトを重ねてエクシーズ召喚する!“スターライト・エクシーズ”!現れろランク4!星輝士《ステラナイト》デルタテロス!デルタテロスの効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、フィールドのカード一枚を破壊する!“デルタ・フォース”!」

「破壊されたのは、アネスヴァレットドラゴンだ」

「とすれば、ここは攻める時!カードを一枚伏せて、バトル!デルタテロスでダイレクトアタック!“デルタ・ブレード”」

「この瞬間、チェックサム・ドラゴンの効果を発動!相手モンスターの攻撃宣言時、このカードを手札から特殊召喚する。さらに、このカードの守備力の半分、つまり1200ポイントライフを回復する!そして、攻撃表示のこのモンスターは戦闘では破壊されない!」

 

リボルバー LP4000 → 5200

 

「だがダメージは受けてもらう!バトルを続行!」

 

リボルバー LP5200 → 3100

 

「エンドフェイズに移行!」

「この瞬間破壊されたアネスヴァレットの効果発動!デッキからヴァレットを特殊召喚する!」

「させねぇよ!手札の墓穴の指名者の効果発動!墓地のアネスヴァレットを除外しその同名カードの効果を次のターン終了時まで無効にする!」

「ほぅ、なかなかやるな」

「そりゃどーも!エンドフェイズ、まだあります?」

「いいや、もう終わりだ」

「ならターンエンド。さぁ、来ませい!」

「私のターン、ドロー!私は、マグナヴァレットドラゴンを召喚!そして、ヴァレットモンスターが存在する事で、アブソルーター・ドラゴンを特殊召喚!まずはマグナヴァレットでリンク召喚!現れろ、ストライカー・ドラゴン!ストライカーの効果発動!デッキからリボルブート・セクターを手札に加える!」

「展開のキーは止める!トラップ発動、ブレイクスルースキル!ストライカーの効果を無効にする!」

「残念ながら、こいつは囮だ。死者蘇生を発動!墓地のマグナヴァレットを特殊召喚する!」

「やっべ、繋げられた!」

「行くぞ、チェックサム、アブソルーター、ストライカー、マグナヴァレットの4体でリンク召喚!現れろ、ヴァレルロード・ドラゴン!アブソルーターがフィールドから墓地に送られた事で、デッキからヴァレットシンクロンを手札に加える!バトルだ!ヴァレルロードでデルタテロスを攻撃、そしてヴァレルロードの効果発動!“ストレンジ・トリガー”!デルタテロス のコントロールを奪う!そしてデルタテロスでダイレクトアタック!」

「やりやがる!流石はハノイのトップ!」

 

Stargazer LP4000 → 1500

 

「ターンエンドだ。さて、どうする?」

「そんなの、ドローしてから考えるさ!俺のターン、ドロー!...まずは墓地のブレイクスルースキルの効果発動!このカードを除外して、ヴァレルロードの効果を無効にする!ヴァレルロードが耐性を持っているのはあくまでモンスター効果に対してのみ!」

「良い目をしているな。それで、どうする?」

「当然、打開する!手札から、星因子(サテラナイト)アルタイルを召喚!効果によりデネブを特殊召喚!デネブの効果によりアルタイルをサーチ!そして、テラナイトモンスター二体、アルタイルとデネブの二体でオーバーレイ!再び現れろ煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス、2体目ぇ!そして、ヴァトライムスの効果発動!“スターライト・エクシーズ”!現れろランク5!星輝士(ステラナイト)セイクリッド・ダイヤ!そして手札から星輝士(ステラナイト)の因子を発動!セイクリッド・ダイヤに装備!これで攻撃力は3200!バトルだ!セイクリッド・ダイヤでヴァレルロードを攻撃!“ダイヤモンド・ブラスト”!」

「迎え撃て、ヴァレルロード!」

 

セイクリッド・ダイヤとヴァレルロード、二人の龍のブレスが衝突する。

 

そうしてブレスの応酬が終わった後に輝きに守られたセイクリッド・ダイヤが接近して尻尾でヴァレルロードを叩きつけた。いや、そう使うのかそこは⁉︎

 

リボルバー LP 3100 → 2900

 

「エンドフェイズ!そしてこの瞬間ヴァレルロードの効果が終了!デルタテロスはフィールドから墓地に送られる。よって効果発動!デッキからシャムを特殊召喚!そしてシャムの効果により、1000のダメージを与える!」

 

リボルバー LP 2900 → 1900

 

「念のため言っておきますが、セイクリッド・ダイヤは闇属性モンスターの効果ならどこであろうと無効にできる!そしてその効果にターン1制限はない!そして因子の効果によりセイクリッドダイヤはあらゆるカード効果から守られている!この布陣、突破してみせろ!リボルバーさん!」

「フッ、面白い!私のターン、ドロー!リボルブートセクターの効果発動!マグナヴァレットを守備表示で特殊召喚。さらに、モンスターをセット、ターンエンドだ!」

 

このターンで決めたいが、なんか嫌な予感がする。俺のライフは1500、ダイスポットのような面白モンスターの可能性を考えるに迂闊に手を出したくはない。かといって触らないのはもっと悪い。なので、ここは次のドローに任せよう。

 

「Stargazer、いや結城天頂。どうして今私とデュエルしようと思った?受けた私が言うのもなんだがな」

「今のあなたとなら、楽しいデュエルができると思ったからです」

「楽しいデュエルか...そんなものをする資格は私にはあるのだろうか?」

「ありますよ。だってあなたはなんだかんだでデュエリストじゃないですか。仲良しこよしじゃなくて、本気で削りあって、けれどそれがたまらなく楽しい。そんなのが俺の信じる楽しいデュエルです。そんな本気の削りあいだから、心の深い所で通じ合えて、一緒に笑顔になれる。それって、デュエリストの特権だと思うんですよ」

「罪人であってもか?」

「そんなこと、目の前のデュエルに関係あります?」

「...ないとお前は言うのか」

「はい!罪人だろうがAiだろうが精霊だろうが宇宙人だろうが、デュエルの前では皆平等です!だって、そっちの方が楽しいじゃないですか!」

「...フッ、おかしな奴だ」

「なにせ小学生ですから...というわけで、決めるぜ!俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン!アルタイルを召喚!効果発動!墓地のデルタテロス を特殊召喚!...カードを一枚伏せて、バトル!アルタイルでアネスヴァレットを攻撃!セクターで300上がっても守備力は1500!地味にシャムで破壊できなくて困ったわ畜生!」

「セットモンスターをシャムで破壊できれば貴様の勝ちだな。私のモンスターの守備力が1400以下か、賭けるか?」

「んな分の悪い賭けには乗らねぇよ!セイクリッド・ダイヤでセットモンスターを攻撃!」

「セットモンスターはシェルヴァレット・ドラゴン。守備力は2300だ」

「んなことだろうと思ったよ!けど、これでダイレクトは通る!シャムでダイレクトアタック!」

 

リボルバー、LP 1900 → 500

 

「バトルフェイズを終了、エンドフェイズ!」

「私はアネスヴァレットとシェルバレットの効果発動!デッキからヴァレットモンスターを特殊召喚する!」

「シェルバレットに対してセイクリッド・ダイヤの効果発動!リクルート効果を無効にする!」

「2体無効にしなくていいのか?」

「そしたらシンクロから打点負けするでしょうが」

「その通りだ。...全く、出会いが違えば君をハノイにスカウトしていたかも知れないな。それほどの実力を君は備えている」

「いや、断ったと思いますよ?基本的にデュエルは楽しく!がモットーなもので」

「そうか、残念だ。私は、エクスプロードヴァレット・ドラゴンを特殊召喚!」

「マジか⁉︎この人マジか⁉︎」

「私のターン、ドロー!私は速攻魔法、クイック・リボルブを発動!デッキからヴァレットを特殊召喚する!現れろ、ヴァレット・トレーサー!トレーサーの効果発動!エクスプロードを破壊しデッキからヴァレットを特殊召喚する!」

「通したらカウンター4のサベージ!当然止める!セイクリッド・ダイヤの効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、闇属性モンスターの効果の発動を無効にして破壊する!“ダイヤモンド・プレッシャー!”!」

「これならどうだ?ヴァレット・シンクロンを召喚!」

「カウンタートラップ、神の宣告!ライフを半分支払い、ヴァレット・シンクロンの召喚を無効にし破壊する!止め切ったぞ!」

 

Stargazer LP 1500 → 750

 

「忘れているようなので教えてやろう。これは、スピードデュエルだ!」

「データストームのないこの場所で、ストームアクセスをする気か⁉︎」

「いいや、今回のデュエルではストームアクセスをスキルにセットしていない。故にこれは、私自身のスキル!エクスプロードを対象にスキル発動!“ドラゴニック・リボルバー”!ライフ1000以下の時に発動可能!選択したモンスターより攻撃力の低いリンクモンスターを効果を無効にして墓地より特殊召喚する!蘇れ、ストライカードラゴン!ただし、このターン私は一度しかリンク召喚をすることはできない!もっとも、もうする必要はないがな!」

「...効果を無効にされていても、発動することはできるッ⁉︎二段サベージ狙いとか狙った後にそれかあんた!あー畜生、勝てそうだったのに!」

「私は案外負けず嫌いでな!遊びだというのなら全力でやる!」

「だからって露骨な引き分け狙いはどうなんだ!いや、負けるより百倍マシだってのはわかるけれど!」

「では幕を下ろすとしようか!エクスプロードを対象にストライカードラゴンの効果発動!そして、リンクモンスターの効果対象になったことでエクスプロードの効果が起動する!このカードを破壊し、お互いのプレイヤーに2000ポイントのダメージを与える!“ヴァレット・エクスプロード”!」

 

Stargazer LP750 → -1250

リボルバー LP500 → -1500

 


 

「次は俺が勝ちますからねー!」

「いいや、次は私が勝つ」

 

そんな言葉を最後に、リボルバーさんはネットの彼方に消えていった。

 

白黒ハッキリしなかったのは少し残念だが、それはいつかの未来に期待しよう。

 

「さて、俺はどうしますかねー?リボさんとのデュエルを動画にはできませんし」

 

なんとなく、終わったような気がしている。

 

藤木先輩なら、Aiさんがどんなに強くてもなんとかするだろう。

だってあの人は、Aiさんの相棒なのだから。

 

だが、その先の真の敵が現れるとかそんな気が全くしないのだ。不思議な事に、不思議な事に!

 

「まぁ、とりあえずデュエルだな!」

 

デュエルしていけば、そのうち情報は入ってくるだろう。そんな楽観的な感覚のまま、スピードボードを走らせた。

 

さて、今日のリンクヴレインズではどんな奴とデュエルできるだろうか。楽しみだ。

 


 

エピローグ

 


 

あれから、3ヶ月が経った。

藤木先輩はAiさんの死を看取ってから行方をくらませ、連絡は取れないでいる。けれど、なんとなくこの辺にいるんじゃないか?という感覚からちょっとネットを潜ってみると先輩らしき人の目撃情報があったりする。もしかしてこの感覚はリンクセンス(弱)なのでは⁉︎と今更気付いたが、世の中は平和で事もなし。

あれからちょくちょく連絡を取り合ってるリボさんに聞いてみるも、ネットの裏側で動いている邪悪な企みとかは今のところないとのこと。

 

さて、3ヶ月が経ちリンクヴレインズが数多のワールドのセントラルステーションになった事で、ライトニングの作ったのを奪ったあの島の価値がやばい事になってビビってる自分ではあるが、やっていることは昔と大して変わらない。散歩して、デュエルして、動画を作って、勉強をする。それくらいだ。

 

問題があるとすればAI関係の専門書を持ち込んだ事で学校で更に浮いた事くらいだが、リアルで友人を作るのは割と諦めているので大丈夫だ。うん、大丈夫。...いや、最近ちょっとリアルで顔を売っておくのも悪くないんじゃないかと思えてきたので、デュエル部に入ろうか迷っていたりするが、その程度の事だ。

 

ほむほむさんは彼女連れで度々リンクヴレインズに来訪し、結構エンジョイしてる。爆発しろ。

草薙さんは弟さんである仁さんと一緒にCafe Nagiを盛り立てている。そこにはちょっとしたインフルエンサーとなっている自分の宣伝(コーヒー一杯無料と交換)の力があったかどうかは定かではないが、そこそこの客足が伸びている。お陰で長時間ぐだぐたと居座れたあの空間は無くなってしまったが、それは時の流れという奴だろう。

 

そうして、世界は続いていく。自分の中にあった転生者としての知識の更新は止まって、自分の転生についての謎に関して調べられなくなってしまったが、それはそれだろう。きっと転生した意味だとか使命だとかは存在しないのだ。というか、あっても気にしてもしょうがない奴なのだ、多分。

 

なにせ、選ばれたのがこのお気楽者の自分なのだから。きっと使命があったのならその場のノリでやっているだろうし、使命がないのならその場のノリで生きていく。やることは変わらない。

 

なので、とりあえずデュエルをするとしよう。

丁度いい獲物がスピードボードで飛んでいくのを見つけたからだ。

 

「ヒャッハー!辻斬り良いですか?」

「...辻斬りが許可を求めるんですか?」

「はい、だって予定があったりとかして文句言われるのはアレですし」

「なら受けます。僕の星杯デッキの力を見せてやる!行くよイヴちゃん!」

「使う前からデッキを名乗るとは良い根性!しからば俺のテラナイトで押し通す!」

 

「「スピードデュエル!」」

 

拝啓、前世の皆様へ。私こと結城天頂は。

無限泡影が飛んでこないこの世界で元気に生きてます。




ここから星遺物を巡るストーリーが始まるような気がしますが、何だかんだモブな天頂とは関係のないことですのでこれにて終幕です。

これまで読んでくださり、本当にありがとうございました!


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番外編 新規カードがやってくる(パックの発売日は1月14日)

ジャンプフェスタにて発表されたテラナイトの新規カード達。めっちゃ素敵に楽しそうだったので久しぶりにデュエルを書いてみました。

お相手は新規ありのサイバース。ネットの海に消えて人知れず戦ってるplaymakerとふらっと再開してデュエルするだけのお話です。どうぞ。


「「デュエル!」」

 

「俺の先行! 星輝士(テラナイト)ウヌクを召喚! そして新たな仲間『星輝士(テラナイト)リュラ』の効果発動! テラナイトの通常召喚成功時に手札から特殊召喚する! そして、召喚したウヌクの効果によりデッキからデネブを墓地に送る。続けてリュラの特殊召喚時効果を発動! テラナイト魔法カード『星守の騎士団(テラナイト セイクリッド)』を手札に加える!」

 

 テラナイトの魔法にアクセスできる『リュラ』、墓地からの蘇生効果を持つ『アルテア』やトライヴェールの効果によって再利用しやすい永続魔法の星守の騎士団、そして新たなるエースカードが新しく手に入った。現在の超一流デッキにはパワーで敵わないが、十分に戦えるデッキにはなれるだろう。とか勝手に思っている。

 

「さぁ、行くぜ! レベル4のウヌクとリュラでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろ星見の医神『星輝士(テラナイト)セイクリッド・カドケウス!』」

「カドケウスにはX召喚時に墓地のセイクリッドとテラナイトカードを一枚ずつ回収できる効果がある。使わないのか?」

「あんまり意味はないので使いません。手札から永続魔法星守の騎士団(セイクリッドテラナイト)を発動! 発動時の効果処理として墓地のデネブを特殊召喚! 続けてデネブの効果を発動! デッキから『アルテア』を手札に加える。そして『カドケウス』の効果発動! デッキからベガを除外して、その効果『手札のテラナイトを特殊召喚する』をコピーして発動! 手札のアルテアを特殊召喚!」

 

 カドケウスの効果は除外したテラナイトの『召喚成功時の効果』をコピーして発動できるもの。デネブをコピーして二度のサーチを行うこと、アルテアをコピーして複数破壊からの打開を狙う事など様々な使い方がある。良いカードだ。

 

「アルテアとデネブでオーバーレイ! エクシーズ召喚! 『煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!』そして永続魔法星守の騎士団(テラナイトセイクリッド)の第二の効果! テラナイトをランクの違うテラナイトかセイクリッドにエクシーズチェンジできる! これによってカドケウスをエクシーズチェンジ! 『星輝士(ステラナイト)セイクリッド・ダイヤ』!」

「ヴァトライムスとセイクリッドダイヤの封殺コンボかッ!」

「モンスターを闇属性にするヴァトライムスと闇モンスターの効果を無効にするセイクリッドダイヤです。だが、まだ終わりじゃない! 手札の『ネメシスコリドー』の効果発動! カドケウスによって除外されたベガをデッキに戻して特殊召喚! そして手札の雷族モンスター効果が発動されたターン、雷族モンスターをリリースすることで超雷龍へと進化する! ネメシスコリドーをリリースしてエクストラデッキから『超雷龍-サンダー・ドラゴン』を特殊召喚だ!」

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンド!」

 

 stargazer 手札1

 

「随分と飛ばしたな」

「上振れを引けたのでね」

「サーチできないネメシスコリドーの存在だな。テラナイトカード以外を召喚する事は切り札であるトライヴェールを召喚し辛いことになるだろうに。よくもやる」

「さぁさぁ、あんたのターンだぜ? かかってこいよplaymaker」

「泣いても知らんぞ、stargager! 俺のターン、ドロー! まずは手札の『無限泡影』を発動! セイクリッド・ダイヤの効果を無効にする!」

「させない! 抹殺の指名者を発動! デッキの無限泡影を除外してこのターン無限泡影の効果を無効にする!」

「これで伏せカードは消えた! 俺は魔法カード『サンダーボルト』を発動!」

「単純明快なパワーカードッ⁉︎だが超雷龍は墓地の『ネメシスコリドー』を除外することで破壊を免れる!」

「これでセイクリッドダイヤの持つ闇属性の効果無効と『デッキからカードを墓地に送れない効果』はなくなった!」

「だが、サンダードラゴンがいる限りサーチ効果は封印されている! まだ好きにはさせない!」

「果たしてそうか? 俺は魔法カード『心変わり』を発動! サンダードラゴンのコントロールをこのターン獲得する!」

「本当に強カード連打⁉︎」

「……やはりコンボに繋がらないカードは展開の負担になるな。デッキに入れる枚数には気をつけなくては」

 

 playmakerの残りの手札は、3枚。そして恐らく手札誘発の類じゃない……ッ!

 

「行くぞ、俺はレディデバッガーを召喚。効果によってマイクロコーダーを手札に! 手札のマイクロコーダーは『コード・トーカー』のリンク素材にできる。レディデバッガーとマイクロコーダーの2体でリンク召喚! 『コード・トーカー』! マイクロ・コーダーをリンク素材に使った事で『サイバネットコーデック』を手札に加える!」

「ターンが長くなりますねこれはッ!」

「……妨害はないようだな。ならばリンク召喚に成功した事で手札のパラレルエクシードの効果発動! リンク先に特殊召喚し、さらにデッキからもう1体を特殊召喚! そしてレベル4となった二体のパラレルエクシードでオーバーレイ! 現れろ『塊斬機(カイザンキ)ダランベルシアン』!X召喚に成功した時オーバーレイユニットを2つ使ってデッキより『斬機』カード『アディオン』を手札に! そしてダランベルシアンとコードトーカーでリンク召喚! 現れろ『サイバース・ウィッチ』! そしてサイバース・ウィッチの攻撃力を1000アップさせ手札より『斬機アディオン』をリンク先に特殊召喚! そして『サイバース・ウィッチ』の効果! 墓地の魔法カード『心変わり』を除外してデッキより『サイバネットリチューアル』、『サイバース・セイジ』を手札に加える!」

「……ッ! 心変わりやサンダーボルトを採用したのは、気軽に使える魔法カードの枠を増やす為か!」

「サイバネットマイニングなどで無理なくコストを使えれば良いんだが、デュエルに絶対はないからな。……『ウィッチ』の更なる効果! 墓地のアディオンを特殊召喚する。そして儀式魔法『サイバネットリチューアル』を発動! アディオンをリリースして儀式モンスター『サイバース・セイジ』を特殊召喚!」

「レベル1の、チューナー儀式モンスター!」

「『サイバース・セイジ』の効果発動! 墓地のリンクモンスター『コード・トーカー』とサイバース族モンスター『パラレルエクシード』を融合! 現れろ『サイバース・ディセーブルム』! そして効果発動! 手札の『ビットロン』を特殊召喚、そしてレベルをシンクロンと同じ2にする。レベル1サイバース・セイジをレベル2『ビットロン』にチューニング! シンクロ召喚! レベル3、『サイバース・インテグレーター』! それにより墓地のセイジを特殊召喚! またセイジをシンクロ素材にした事で、墓地の『アディオン』を特殊召喚!」

「シンクロ、エクシーズ、儀式、融合、全部が繋がっている……まさか、ダークフルード!」

「リンク2の『サイバース・ウィッチ』と『アディオン』をリンクマーカーにセット! 現れろリンク3、『トランスコード・トーカー』! そして『コーデック』の効果によって『コード・ジェネレーター』を手札に。トランスコードの効果によって墓地よりコード・トーカーを特殊召喚! そしてコードトーカーと手札の『コード・ジェネレーター』でリンク召喚! 現れろリンク3、『プロテクトコード・トーカー』! そしてジェネレーターの効果によってドットスケーパーを墓地に送り、ドットスケーパーの効果によって特殊召喚! 俺はリンク3のトランスコードとインテグレーター、ディセーブルム、超雷龍をリンクマーカーにセット! リンク召喚! 『ファイアウォールドラゴン・シンギュラリティ!』

 

 ギャオオオオオと叫ぶのはファイアウォールドラゴンの新たなる姿。これまでとは一味違う恐ろしくも美しい姿は、playmakerのいる段階(ステージ)が上に進んでいる事を示しているようだった。

 

 だがしかし、思うところは少しある。

 

「あの、別にこんな切り札出さなくても終わったのでは?」

「それはない。なぜならお前は諦めの声を出さなかった。エクシーズ主体であるデッキの中で考えられる防御カードの中で手札より発動できるカードはいくつかある。その中でそれによって考えられる最悪は『スモーク・モスキート』。ダイレクトアタックのダメージを半減させてバトルを終了させるカードだ。これによって耐えたところで前のターンで墓地に送った『アルテア』を軸にした展開で反撃をするつもりだったな?」

「……まぁその通り。それで?」

「今の俺のエクストラデッキを考えた結果このターンでワンショットキルを決めるのは不可能だ。ならば相手ターンで強力な妨害を行えるシンギュラリティとシンギュラリティを守るプロテクトコードを残すことを選択した。そういう事だ」

「シンギュラリティは墓地のシンクロ、融合、エクシーズ、儀式の数だけバウンスできる強力なモンスター。そしてプロテクトコードがいる限りシンギュラリティはあらゆる効果を受けつけない……ッ!」

「まずはシンギュラリティの効果発動! 墓地の『ヴァトライムス』、セイクリッドダイヤ、カドケウスの3枚を手札に戻して攻撃力を1500アップさせる。そしてエクストラのカードは手札ではなくエクストラデッキに戻る!」

「攻撃力、5000ッ!」

「バトルだ! シンギュラリティでダイレクトアタック!」

「推理の通りに乗ってやる! 『スモーク・モスキート』の効果発動! 戦闘ダメージを半減させてバトルを終了させる!」

 

 Stargazer LP4000 → LP1500

 

「メインフェイズ2! サイバース・セイジをマーカーにセット! リンク召喚、『リンクリボー』ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!……ドローカードは『星輝士(テラナイト)アルタイル』コイツを召喚して墓地のデネブとアルテアを特殊召喚したら、シンギュラリティの効果によって3枚が手札に戻され、召喚権がなくなった俺はターンを終わらせるしかない」

「ついでに言えば、魔法、罠の発動ならば墓地の『サイバース・ディセーブルム』を除外する事で無効にできる。初めのターンに手札を使いすぎたな」

「あー……負けました。完敗です」

 

『サレンダー』それはデッキトップに手を置くことで自身の敗北を認める行為。

 

「久しぶりだが、楽しいデュエルだった」

「……悔しいんで再戦したいです。連絡先くらい教えて下さいよ」

「……断る。理由は3つ。俺の戦いにお前を巻き込むつもりはない事、お前から俺の情報が抜き取られるリスクが生まれる事。そして……」

「そして?」

「お前とのデュエルは、偶にやるくらいが一番楽しいと思っているからだ」

「了解、今何やってるのか分からないですけど頑張って下さいね」

「ああ。じゃあな、stargazer」

「次は俺が勝ちますよ、playmaker」

 

 

 リンクヴレインズのある日、懐かしい人に出会ってデュエルをした。互いにそれなりに緩く、楽しくデュエルをした。

 この話は結局、それだけの事だ。

 



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