【悲報】魔法じゃなかった件について (ラーメンマン)
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そして私は打ちのめされる

某作品読んでたら自分も書きたくなったのでなんとなく書いてみた。



「まさか、東方じゃなかったなんて……。大誤算だぜ……」

 

そう言いながら私は、辺りを見渡す。

周りには男、男、男。

男の群れといっても、過言ではないような場所に私は居た。

周りの男たちは、筋骨隆々なものが多く、また自信に溢れた雰囲気をしており、それなりに『やる』ようだ。

……そんなところで私は何をしているのかって?

試験を受けにきたのだ。

具体的に言うと『ハンター試験』と言うものを。

これで大体察してほしい。

ありがちな、というか、親の顔よりも見た展開だ。

だってそうだろう?『とある漫画、アニメ、ゲームのキャラに転生した』なんて、今日日、幾らでもある設定だ。

まあ、そのせいで多大な勘違いをしてしまい、割とショックを受けてしまったが、それは後においておくとしよう。

さて、私の名前は『霧雨魔理沙』。普通の魔法使いだ。

……え?ハンター試験ってことは、『HUNTER×HUNTER』の世界だろ?魔法とかなくね?だと?

そうだよ!そんなもんねえよ!今の今まで勘違いしてたんだよ!

それでも信じたくなくて、「ドッキリだろ?(震え声)みんなで私を嵌めようとしてるんだろ?」とハンター試験会場まで行って打ちのめされてるのが今の私である。

だって仕方ないだろ!

死んで気づいたらちょっと昔の日本みたいな国に生まれて、魔理沙だから魔法使えんのかな?と試したらそれっぽい力が出て、幻想郷ではないけど、これから迷い込むのかなーとワクワクしながら魔法の訓練してたら、馴染みの骨董店の店主から一言、「あんたハンターにでもなるのかい?」だ。

よくある二次創作なら「これは……ハンター文字!」とかそんなんで気付けたろうが、ここはジャポン。

普段から漢字や平仮名、片仮名を使うのだ。気付けるわけがない。

ジャポンとか言う国名で気づけよとか思わなくもないが、その時の私は「ジャポン?日本じゃないのか。んー、でも日本って名前よりジャポンの方がなんか東方っぽいよな。強いて言うならジパングのが良かったけど」とかバカみたいなことを言っていた。

あの日の私を殴りたい……

まあ、色々あったけどそれなりに体は鍛えられたし、魔法()も使えるようになったので良しとしよう。

え?魔法じゃなくて『念』だろって?そうだよ!確かに念だよ!

自分の系統が放出系じゃなかったら詰んでたレベルで念だよ!

その辺りは何故か魔法も存在するよ!みたいな御都合主義的な世界ではなかったらしい。

普通に水見式やったらコップの水の色が虹色になってたので、今まで魔法と信じ使ってきたこれは念らしい。

でも私はこれからも魔法と呼ぶ。その方がなんかファンタジーっぽいし、それに念というより魔法とか言ってた方が秘匿できそうだし。

「どうしたの?お姉さん、大丈夫?」

 

さて、そんな風に悶えていると、誰かから声をかけられた。

 

「あー、ちょっとしたアイデンティティクライシスがあっただけで特に問題な……」

 

そう答えながら、声の方を振り返ると、そこには筋骨隆々な男、ではなくここでは珍しい男の子というような子がいた。

ゴンさんである。

そして、その彼の後ろには金髪の、男にも女にも見える中性的なやつと黒髪の老け顔の青年が立っていた。

クラピカとレオリオである。

また、この世界がHUNTER×HUNTERであるという事実を突きつけられ、絶望しかかるが挙動不審になるのもアレだし気持ちを切り替えて行くことにする。

 

「……あー、お前ら名前は?」

 

とりあえず、自己紹介するべきだろう。

というか、自己紹介しとかないと不意に名前呼んでなんか怪しまれそうだしな。

あ、というか普通こう言うところって自分から名乗るべきだよな、失敗した。

 

「俺?俺はゴンだよ。お姉さんは?」

 

だが、そんなことを気にも止めず、ゴンさんは普通に自己紹介してくる。

……コミュ力高えなあ。さすが主人公。こんなところで悶えてる変な少女に名乗るなんて。

原作でも結構プレイボーイだったし、年上の女性の漁師とかに話しかけられてたりしてたみたいだし、こう言うぶっきらぼうな感じに慣れてるのかね?

そんなことを考えながらもとりあえず名乗る。

「そうか、私は魔理沙、霧雨魔理沙だぜ。よろしく」

 

「私はクラピカという。よろしく」

 

「俺はレオリオだ。よろしく」

 

そう答えると後ろにいるクラピカとレオリオも同じように自己紹介をした。

……自己紹介した後ってなんかちょっと無言になるよね。

次何話したらいいかわかんなくなるし。

そうして、お互いに黙っていると、ゴンさんが話しかけてきた。

 

「そういや、ここに何人くらい来てるんだろうね?」

 

おお、さすが主人公コミュ力高い。

まあ試験が始まるまで無言でいるのもなんだし、この会話を続けるか。

自分の番号から400人くらいだと当たりをつけて話そうとするとそれを遮るように上から声が降って来た。

 

「君たちで406人目だよ」

 

……また原作キャラである。

たしか、新人潰しのトンパ。

私が話しかけようとしてたのに遮るんじゃねえよ……

 

「よ、俺はトンパ。よろしく」

 

そう言うとトンパは座っていたところから降りて来てゴンに対し握手を求めた。

そして同様にゴンも名乗り、互いに握手をした。

お前ら、コミュ力ほんと高いな……

まあ、トンパは新人潰しなんてやるくらいだし、気さくな先輩キャラやらないと怪しまれるからだろうけど。

というか、そんな努力するくらいなら別の方に努力しろよ……

と、そんなことを考えながらもゴンとトンパの会話は続く。

35回も試験を受けて来たというプロフィール紹介に始まり、他の受験者のことも簡単にレクチャーする。

……新人潰しの何が楽しいのか私には理解できないがご苦労なことである。

 

「ギャー!!!!!!」

 

ある程度説明が終わったそのときだった。

突如として男の叫び声が聞こえて来た。

その叫び声につられ、私たちは、いや、その場にいた全員がそちらの方を見た。

 

「あーら、不思議❤️腕が消えちゃった♠️」

 

そこには、ピエロのような格好をした男と、腕の無い男がいた。

 

「ちっ……危ない奴が今年も来やがった」

 

それを見て、トンパが舌打ちをする。

まあ、あんなのいたら嫌な気分になるよな。

私はまだ目をつけられてないっぽいからいいけど来たら逃げよう……

そして、あのピエロ、ヒソカの紹介をトンパがして、漂う嫌な雰囲気を払拭するように缶ジュースを差し出して来た。

 

「お近づきの印だ。飲みなよ。お互いの健闘を祈って乾杯だ」

 

「ありがとう」

 

ゴンが感謝を述べる。

おお、あの下剤入りジュースか。なんか感動した。

たしかに東方じゃなかったのは残念だけどこれはこれでありかもしれない。

東方も東方で、『本当は怖い幻想郷』みたいなこともあり得るんだし、最初からやばいって分かってるこっちの方がむしろ安心できるかもしれない。

そう前向きな気持ちになりながら、なんかに使えるかもしれないしと、ジュースを懐にしまった。

あとは、だいたい原作通り。

ゴンがジュースを吐き出し、トンパが謝りながら離れていき、しばらく経ったところで試験開始のベルが鳴った。

さーて、まあ成り行きで来たけどせっかくだし頑張るか。

ハンター資格って結構お金になるみたいだし。

そう私は決意しながら、ベルを持ったカイゼル髭の男性を眺めていた。

私を見ていたピエロに気づくこともなく……




HUNTER×HUNTER世界に一番いそうなのが魔理沙(一番平凡だしねw)だったので魔理沙で行くかーとこうなった。
あんな感じを期待してた人はごめん。
とりあえず、週1更新を目処に頑張ります。


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そして私以外は走り出す

長文かける人羨ましいです……
あんな長いのかける人どうやってるんですかね?


ハンター試験が始まり、その場にいた私たち受験者は走っていた。

ベルを鳴らし、ハンター試験の開始を宣言した男、サトツが告げた一次試験の内容は二次試験会場までついてくることだったからだ。

そういうわけで私たちは走っていた。

いや、訂正する。

正確には『私以外は走っている』のが正しい。

え?私?そりゃお前飛んでるに決まってるじゃん。

 

「凄いね。それどうやって飛んでるの?」

 

走りながらゴンは箒に跨り飛んでいる私に聞く。

 

「これか?そりゃ魔法だぜ。さっきは言わなかったけど私は魔法使いなんだ。だからこの程度朝飯前だぜ!」

 

ゴンが驚いてるのを見て少し気分が良くなる。

さっきまでの暗い気持ちはどこかに飛んで行ってしまった。

……そういや念による性格診断だと放出系って短気で大雑把だったな。

こういうところが影響してるのだろうか?

まあいいや、とそこで考えを打ち切り他の奴らを見回す。

 

「あ……ありえない……魔法だと……いや、どこかにエンジンのようなものが……」

 

クラピカ……残念ながらエンジンなどついていない。

魔力(まあオーラだけどこれは魔法なんだ!)を使い飛んでいる。

別に今では箒に乗らなくても飛べるくらいには魔力の使い方には慣れて来てはいるが、ぶっちゃけ疲れるので箒を使っている。

なんというか箒にまたがってると魔力の消費量が段違いで減るのだ。

具体的にいうと箒なしでは1時間くらいしか飛べないけど、箒で飛べば1日中飛んでも余裕なくらい。

多分、というか十中八九『制約と誓約』だろう。

本当に魔理沙をイメージして箒で飛んでてよかった。

ちなみに、この箒はその辺で売っている(といっても丈夫でそれなりに良いものではあるが)竹箒である。

ただ、もう10年近く魔力を込めて使って来ているせいか、そこそこ使えるものになっている。

また、この箒にまたがって飛ぶことが魔法(念)の訓練、主に『練』の訓練になっていたらしい。

本当に良かった……

これが無駄な努力だったら灰になっていたところだぜ……

 

「てか、ずるくねえか?これ持久力のテストだろ?」

 

レオリオが飛んでいる私を見てそう言った。

 

「別に持ち込み自由だし、それにこれもこれでそれなりに体力もとい、魔力使うんだぜ?今後の試験に魔力を温存したほうがいいとも考えるとトントンだぜ」

 

「へー、そういうもんなのか。まあ確かに後の試験を考えるとそうなのかもな」

 

そして、しばらくそんな風に移動しているとスーッと横を通り過ぎて……は行かない影を見つけた。

スケボーに乗っている銀髪の少年だった。

何故か私の隣をスケボーで走っている。

 

「何か用か?」

 

「いや、それ凄いなと思って。どうやってんの?」

 

銀髪の少年がそう、感心したような様子で私を見ている。

お、なんだこれ。結構楽しいぞ。

どうやら私は褒められて伸びるタイプらしい。

さっきから素直に驚いてくれる奴らばかりで楽しくなって来た。

 

「そうかそうか、どうしても知りたいというなら教えてやるぜ」

 

「いや別に知りたくないからいいや」

 

……撤回する。いきなり梯子外されて気分を害された。

これだから気まぐれで嘘つきな奴は……

って嘘つきってことはホントは知りたいんじゃね?

お、なんだ照れ屋か。それなら言えよー。

 

「いやいや、本当は知りたいんだろ?特別に教えてやるぜ?」

 

「本当にいいから、そういうの。あ、そこの君いくつ?」

 

「俺?もうすぐ12」

 

「ふーん」

 

……本格的に無視しやがった。

これだから変化系は……。

そして、銀髪の少年はゴンの方を見て何か思ったのかスケボーから降りて走り出した。

 

「オレ、キルア」

 

「オレはゴン」

 

本格的に私を無視して同年代で話し始めている……

なんだよ!これ結構努力したんだぞ!もっと関心を持ってくれてもいいんじゃないか?

 

「私……先に行くぜ……」

 

もうなんか色々とどうでも良くなったので私は彼らを置いて飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

一次試験開始から、6時間が経過しおおよそ80kmほど走った(私は走ってないけど)あたりだろうか、目の前の景色に変化が見えた。

先の見えない階段、それが私たちの目の前に現れたのだ。

 

「さて、ちょっとペースを上げますよ」

 

それに続きサトツがスピードを上げる宣言を行い、階段を二段飛ばしで駆け上がって行く。

そして、その急なペースアップによって、受験者達はじりじりと離されていった。

まあ私は離されてないけど!

というか、ずっとぴったり後ろについて飛んでいる。

努力が報われるのって最高に気持ちがいいな。

あの銀髪野郎も置いてけぼりにしていけるしな!

ハッハッハと高笑いしそうな感じで飛んでいると後ろから追い抜いてくる二つの影が見えた。

 

「ゲッ……!」

 

ゴンと銀髪野郎である。

畜生、なんでついてこれんだよ……

確かにあいつら主人公組でなかなか体力あるけどさ、もう少しくらい勝者の余韻というものに浸らせてくれてもよろしいんじゃないかしら?

そんな落ち込んで行く気分をよそに二人は和気藹々と喋りながら近づいて来た。

 

「いつのまにか一番前まで来ちゃったね」

 

「うん、だってペース遅いんだもん。こんなんじゃ逆に疲れちゃうよなー」

 

……余裕そうだな。

というか私の存在ないものとして扱ってないかこの二人。

飛んでて結構目立つのに……

と、そんな今にも睨みつけそうな私の視線に気がついたのか、私の方を見て話しかけて来る。

 

「あ、魔理沙さんも前まで来てたんだね」

 

「んー、まあ、飛んでるから余裕だぜ。飛んでるからな!」

 

……さりげなく飛べることを自慢する。

別に気にしてるわけじゃないんだぜ!

……なんか微妙にツンデレっぽくなったのでやめよう。

本当に気にしていない。

「ふーん、まあこんなのが余裕でいけるくらいだし結構ハンター試験も楽勝かもな」

 

そして私を見ながらつまらなそうな表情で銀髪野郎は呟いた。

……なんだこいつ喧嘩売ってんのか?

売るなら買うぜ?

あ、やめとこ、保護者が怖い。

それになんとなくこいつが私を下に見てる感じも分からなくもない。

伝説の暗殺一家出身で、その中でも歴代トップクラスとさえ言われる才能の持ち主だ。

つか1、2年であそこまで念の扱いに長けるようになるとかやばい。

魔法(念)を覚えるのが早かった私でもここまで来るのにそれなりにかかってるのに……

それに近接戦闘なら多分速攻で抜かれそうだ。というか今ですら抜かれてそう。

私も格闘術とかもやってみたりしたけれどハンター達からすると平均以下だろう。

まあ、弾幕メインで鍛えていたのでそれを組み合わせた萃夢想とか緋想天みたいな感じの戦い方も加味すればそこそこいいところ行くだろうけど、それでも中遠距離が私のフィールド。

暗殺とかいう近接戦メインでやってる本職の人には負ける。

そういう、「あ、こいつ簡単に暗殺できそう」ってところが私を、いや他のやつも含めて下に見ている原因なんだろうなとそう思った。

まあムカつく事には変わらないけど、ちょっと落ち込むことが多すぎてなんとなく冷静になれた。

さすが私。切り替えが早いぜ!

 

「……キルアはなんでハンターになりたいの?」

 

そんな私の思考をよそにゴンはキルアに質問していた。

 

「オレ?オレはハンターになんかなりたくないよ。ただものすごい難関って言われてるから面白そうだと思っただけさ」

 

拍子抜けだと言わんばかりにキルアは答えた。

それを聞いてゴンは少し黙り込む。

 

「ゴンは?」

 

「オレの親父がハンターやってるんだ。親父みたいなハンターになるのが目標だよ」

 

それからゴンの親父がどういう人かとかそんな感じの話を続けている。

だから、さっきから無視するのやめてくれませんかね……

同い年の子とお互いに初めて会えて嬉しいのはわかるけどさ。

……私泣くぞ。

「あ、魔理沙さんはどうしてハンターに?」

 

そしてまた暗い気持ちになりそうなところでゴンがこちらに質問して来た。

なんなのこの子、素で上げたり落としたりして来るとか末恐ろしいわ……

 

「私は成り行きで。確かめたいことが有ったから来たけどそれはもう終わったし、有ったら便利だから受けてるぜ」

 

ゴンの話にそう返していると、周りにいる受験者達が何かに気づいたらしい。

 

「見ろ!出口だ!」

 

その言葉につられるように前を見ると光が差し込んで来ているのが見えた。

……ようやく半分か。

魔力もかなり残ってるし、これは余裕だな。

そう思いながら目の前に広がる湿原を私は眺めていた。




とりあえず空を飛ばして見た。
原作でもシュートさんが飛んでるからこれくらいは他にもいそう。
念だと気付いてなかったので名前付けてない発だけど一応操作系に分類されるようなやつです。
制約については魔女っぽい雰囲気で飛ばなかった場合、使用するオーラ量がペナルティのような形で倍増します。
具体的にいうと箒を使う。万人が魔法使いだと思うような服装をする。夜に飛ぶ。
といったところでしょうか。
他にも有りますが魔女っぽいというのは本人の主観に影響するので結構曖昧です。


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そして私はピエロに怯える

某霊夢に文字数速攻で抜かれた……
凹みながらも書いて見たけど抜き返せない……
本当に長いの書ける人が羨ましいですはい。


ヌメーレ湿原、そう呼ばれる場所に私たちは居た。

別名『詐欺師の(ねぐら)』とも呼ばれ、人間すらも欺き食す、狡猾で危険な動植物たちが生息している。

そんな湿原を眺めながら私は憂鬱な気分になっていた。

 

「はあ……なんかジメジメしてて嫌だぜ。早く出発しないかな」

 

ため息をつきながら試験官のサトツを眺める

一番最初についたため後続の連中が到着するまでの間少々暇なのだ。

受験者は数百人いるため、それなりに時間がかかっている。

大体4列か5列くらいに並んでるから、80行くらいだろうか。

それが、1行毎に1秒としても80秒。

先頭が出入り口付近で立ち止まっているので渋滞しているのも加味して、体感にして5分は待っただろうか。

ただ待っているというのは中々の手持ち無沙汰だ。

そう思いながら、ふと先ほど登ってきた階段の方を見ると、汗だくになり這いながらも上る受験者の目の前で階段の隔壁が閉まるという、そこそこ面白そうな光景が見れた。

運がいいな、あの人。

ほぼ確実にここから先ついてこれないし、来年頑張りな。

そんな感想が頭に浮かんだところでサトツがこの場所についての説明を始めた。

曰く、ここの生き物はあらゆる手段で騙そうとしてくる。

だから、騙されずついてこいよとのことらしい。

まあ、知ってるけど面倒だよな。

大丈夫だろうと思いながらも、もしかしたら騙されてたどり着けないんじゃないかと少々不安になる。

魔獣的なのと正面から戦ったことは少々あるが、こういう『強かさ』みたいな感じのはあまりない。

だからこそ、ちょっと面白そうとも思わなくもないが今の目的はハンター試験の合格であり、そういうのを調べるのは二の次だ。

気をつけようと、気合いを心の中で入れると後ろの方から声が聞こえた。

 

「ウソだ!そいつはウソをついている!」

 

その声に全員振り返ると、階段の陰からボロボロの男が出てきたのが見えた。

 

「そいつは試験官じゃない!!俺が本物の試験官だ!!」

 

その男はサトツを指差しながら私たちにそう告げる。

それを受け、受験者たちは動揺していた。

試験官の方を見て疑うものもおり、ザワザワと混乱する。

そして、男は人間に似た動物の死体を前に出し私たちに告げた。

「コイツはヌメーレ湿原に生息する人面猿!コイツは新鮮な人肉を好むが非常に力が弱い。そこで人に扮し、言葉巧みに湿原に連れ込み、他の生物と連携して獲物を生け捕りにする!!」

……凄いなコイツ。

知識として私はコイツが偽物だと知っている。

見比べればオーラで偽物だと分かる。

でも、知識がなければ、『念』について一切知らなければ私は騙されていたんじゃないかと思うくらい、コイツの言葉には重みがあった。

おそらく命がけの環境であるがゆえに身についた話術だろう。

よく、命がけの修行というがコイツがやってきたのは命がけの実戦。

人間を言葉巧みに騙し、失敗すれば殺される。

そんなハイリスクハイリターンの中で磨かれてきたのだろう。

かなり油断できないなと、この先にいる生物に対し気を引き締めていると、何処からともなくトランプがその男に飛んでいき顔に突き刺さった。

サトツの方も見るとどうやら彼の方にも飛んできたらしく、そのトランプを受け止めている。

そして、そのサトツとトランプの突き刺さった男の中間に一人のピエロ、ヒソカが立っているのが見えた。

「くっく♠️なるほど、なるほど♣️」

 

笑いながらヒソカはトランプをいじっており、先程投げたのはコイツだと誰もが分かる。

そんなヒソカに会場の全員が目を奪われた瞬間、先ほどの男の方から何かが動くのが見えた。

男が持ってきた人面猿の死体である。

それが、この場から逃げるように走り去ったのだ。

どうやら死んだふりをしていたらしい。

しかし、逃げ切ることはできなかった。

ヒソカはつまらなそうに、またトランプを投げると同じく顔に突き刺さり、それから猿は動かなくなった。

 

「これで決定♦️そっちが本物だね❤️」

 

……うん、投げなくてもお前『凝』すれば分かっただろ。

さっき男が現れた時、警戒してサトツは『凝』やってたし。

それにオーラの感じで一目瞭然だ。

何?目立ちたがり屋なの?

それとも品定め的な何かか?

ここでサトツ死んでたら私ら全員不合格じゃん。

いや、死なないのは分かってたけどさ。

それでも、もし受け止めるの失敗してたらと思うと少しヒヤヒヤする。

 

「我々が目指すハンターの端くれともあろうものが、この程度の攻撃を受け止められないわけがないからね♣️」

 

「褒め言葉として受け取っておきましょう。しかし、次からの攻撃はいかなる理由でも試験官への反逆行為とみなし失格にします」

 

「はいはい♦️」

 

そう言うと、どうでも良さそうにヒソカは立ち去っていった。

それから、緊張がほぐれ弛緩した空気が漂った瞬間、鳥の群れがやってきて先程死んだ男、人面猿たちの死体の方に群がった。

 

「自然の掟とはいえ、えぐいもんだぜ」

 

鳥達は死体を啄ばみ貪っている。

そして、1分もしないうちに鳥達は死体を食しきり、その場には何も、骨さえも残ってはいなかった。

 

「おそらく私を偽物扱いして、何人か連れ去ろうとしたんでしょうな。こうした騙し合いが日夜行われているのです。それでは参りましょうか。二次試験会場へ」

 

ひと段落ついたところでサトツはそう告げ私たちは、また走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、また飛んでいるわけだが空飛べて良かったなと、これほど思うことはない。

湿原のため地面がぬかるんでおり、先ほどの舗装されたトンネルよりも格段に体力を消費するようだ。

他の受験者達はそれに足を取られ苦戦している。

また、少しずつ霧が出始め徐々に視界も悪くなってきている。

本当に魔法使えて良かった。

あー、魔法使えない君たちは苦労しろよと、なんとなく調子に乗ってると背筋にゾワっとしたものが走った。

……あのクソピエロ、ロクなもんじゃねえな。

そちらには、視線は絶対に送らないが(送るとなんか来そうだし)、殺気が霧に混じっているのを感じる。

 

「……サトツさん?もう少しスピード上げようぜ!」

 

そう、前にいるサトツに提案するも、

 

「あいにくですが、それはできませんな」

 

そう、こともなげに返された。

くそう、あのピエロほんとロクでもない。

いや別に殺気はいいんだよ。

真正面から叩きつけてくるような感じのやつは。

でも、こう言う風に隠そうとしてるけど漏れちゃったみたいなのは、なんとなく気色が悪い。

いつ来るかわからないから、そう思うんだろう。

正直に叩きつけてくれればすぐ来るんだろうなって構えられるが、こういう湿っぽい殺気はいつ来るのかわからないので気を張り続けなければならない。。

ホラー映画とかと同じだ。

あれはいつ来るかが分からないから怖いのであって、ずっとあの手のキャラが120分間出っ放しなら全然怖くない。

だから、こういうのやめろ。まじやめろ。

私のどこか知り得ないところで勝手にくたばりやがってください。お願いします。

そう心の中で唱えていると、すぐ後ろの方から声がした。

 

「レオリオー!!クラピカー!!キルアが前の方に来た方が良いってさー!!」

 

「ドアホー!!行けるならとっくに行っとるわー!!」

 

どことなく緊張感のない声に気を削がれたのかほんの少しだけ殺気が霧散する。

お、やるじゃないかゴン!レオリオ!

ありがとう、本当にありがとう。

そんな一時の清涼剤をくれた彼らに心の中で感謝した。

だが、そんな空気は長くは続かない。

そうして走り続けていると、またさらに霧が濃くなり、前にいるサトツさんの影すらもボヤけるようになった頃だった。

真横に近いところから沢山の悲鳴が聞こえたのだ。

どうやら、騙された連中がいるらしい。

その悲鳴によって受験者達の間に緊張が走る。

私もちょっと辛くなって来た。

いや別に魔力切れとかそういうのではないし、体力的に辛いというわけでもない。

まだまだ十分な余力がある。

何が辛いかというと単純に『重い』んだ。

具体的にいうと霧の中を飛んで来ているので衣服が水分を含み重く感じる。

それに重みだけじゃない、このジトッとした布の肌触りがどことなく気持ち悪い。

別に雨の中を飛んだこともあるし、なんならば嵐の中を飛び交う破片なんかを避けながら飛んだこともある。

なのに気が重くなっているのを感じた。

おそらく誰かが襲われたことによる受験生達の緊張感、不安感、ヒソカの殺気、動物達の獲物を狙う気配などが合わさったことによるものだろう。

一つ一つは経験していても複合した状況になるとこれほどのストレスになるのかと、状況を整理する。

……出来ることなら全力でぶっ放して霧を吹き飛ばしたい気分だが流石に自重する。

まあ、我慢出来ないほどでもないし我慢しよう。

そして気を新たに飛んでいると横に並ぶ影が見えた。

キルアである。

他には誰もおらず隣にいたはずのゴンもいない。

 

「ん?ゴンはどっか行ったのか?」

 

「……レオリオを助けに後ろに行っちまったよ」

 

そう、話しかけるとキルアは寂しそうに答えた。

初めて出会えた同年代の奴がどこかに行ってしまいショボくれているようだ。

 

「ふーん。寂しいのか?」

 

「別に……」

 

そう返すキルアだが言葉の端に滲む寂寥感は消せていない。

そんな雰囲気を掴まれていることを自覚したのか、少し恥ずかしいのか黙り込む。

……さっきのこともあるし、ちょっとムカつくから悔しがっているところは見たいなとは思ったがこういうのはなんか微妙だな。

私が見たいのはクッソーと言いながら地団駄を踏んでいる様であり、こういう感じではない。

そこに私が努力したことで、と入れば最高だ。

そして私は仕方ないなと頭を押さえるとキルアに言った。

 

「まあ、なんだ。ゴンはちゃんと戻って来ると思うぜ」

 

「……別に気にしてないって言っただろ!」

 

「そうか?友達がどっか行ってショボくれてるようにしか見えないぜ?」

 

「べ、別に友達じゃねえし!」

 

ツンデレか!野郎のツンデレ見ても面白くないな。

 

「またまたー、照れんなよ」

 

というわけで、とりあえず揶揄(からか)って遊んでみる。

鬱屈とした空気もなんか吹き飛びそうだし。

そして、キルアを揶揄いながら飛んでいるといつのまにか霧は晴れ、二次試験会場らしきところにたどり着いていた。

ちなみに終始顔を真っ赤にしながらキルアは否定していたが、後からゴン達が現れると速攻でそちらの方に向かって行った。

 

「素直になれば良いのになー」

 

そんな様を見ながら二次試験会場と思われる建物を見る。

そこからは獣の唸り声のような音がしている。

また、その建物の扉の前には『本日正午より、二次試験スタート』と張り紙がされている。

 

「あと、5分くらいかな」

 

そして私達は開始時刻を今かと待ちながら12時になるのを待っていた。




書いていてキャラクター同士の距離感が難しかった3話。
初対面だしそこまで深く関わったわけじゃないしでなかなか苦戦しました。
こういうのうまく書ける人が羨ましいです。


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そして私は毒を盛る

ハンターになってたら遅くなりましたすいません。
あれ、今までのシリーズより採集にストレス溜まらなくて楽しすぎる……


 

「二次試験後半、わたしのメニューはスシよ!!」

 

二次試験担当官のメンチは私たちにそう告げる。

ハンター試験の二次試験の内容は料理であり、試験官の出したメニューを作り、満足させることだった。

え?前半はどこに行ったのかって?

いや、豚の丸焼きだったんだけど、特に語るまでもなくクリアしたので割愛する。

だって、空から撃つだけの簡単なお仕事だよ。

何を語ればいいのか……

 

「しかし、スシかー」

 

そのお題を聞いて私は頭を抱えていた。

原作だと誰も合格できずに終了し、ハンター協会の会長が現れ二次試験のやり直しがされるから受けるまでもない気がするんだが、それはなんとなく負けた気がするので選択肢から除外する。

まあ、スシについては前世でも今世でも知っている料理、というか前世なら日本人以外も普通に知ってるレベルの料理だ。

しかし、今世においてはあまり国外の人間には知られていないらしい。

そこから試験官は、与えられたヒントを頼りに答えを導きだす思考力を問うているのだろう。

メンチは、お題としてあげた寿司の中でも『ニギリズシ』以外認めないらしい。

まあ、『ニギリズシ』は一口サイズに握ったシャリの上にそのご飯を覆うくらいの魚などの切り身を乗せた料理なので作るだけならば、簡単だ。

ただ問題があるとすれば、この辺りに海がないと言うことだろう。

スシに使われるネタは殆どが海水魚であり、淡水魚を使うスシは殆どないと言っていい。

例外はあるにはあるが、その殆どが鮒寿司に代表されるように『なれずし』だ。

というか淡水魚は海水魚より寄生虫が多くあまりニギリズシのような生食に適していない。

それを発酵させることで生で食えるようにするか、普通に火を通して食うかしかないんだけど……

 

「……コンロすらないとか死にたいのか?」

 

ヒントとして与えられた調理場を見て私は呆然としていた。

あるのは、まな板、包丁、洗い場、以上の三つである。

コンロとフライパンがあれば出汁とって出汁巻き作って玉子が行けたけど、どうやらこの試験官は生食で食中毒がご所望らしい。

いっそのこと毒でも出してやろうか、と思ったところで思いつく。

 

「よし、毒キノコでも出すか」

 

某配管工がお姫様助けに行く物語に出てくる例のキノコのような見た目の奴なら毒キノコだが味は保証されている。

あれならば、かなり美味しい。

それに毒と言っても、寿司ダネ程度の量ならばほぼ死なない。

というか、私の主食だし。

家を飛び出してから森に住み始めたけれど、最初の頃は食うものに困ってとりあえずその辺に生えている野草やキノコばかり食っていた。

もちろん腹を壊したり、寝込んだりしたこともあったけど最近は慣れたのか耐性がついたのか分からないが大体、大丈夫になった。

グルメハンターならば美味いものを求めてそういう普通じゃ食えなさそうなものまで食ってそうだし大丈夫だろう。

というか大丈夫じゃなかったら、きっとこんなお題は出さないだろう。

不安要素があるとすれば植生がジャポンとは違うので無い可能性だろうか。

まあ別のやつとかも何個か色々集めて味見してから出せばいいだろう。

と、そこで一つの疑問が浮かんだ。

 

「あれ?なんで全員合格できないんだっけ?」

 

まあいいか。

美味いの作れば合格だろうし。

そして私は森の方へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大漁♪大漁っと♪」

 

私は歌いながらホクホク顔で森を歩いていた。

手に持っている籠がわりの帽子の中には色とりどりのたくさんのキノコが盛られている。

中々豊かな森らしい。

例の超キノコも取れたし、他にも色々と美味しいキノコが取れたので万歳だ。

余るようなら私の夜食にしよう、そうほくそ笑み、皮算用しながら先ほどの調理場まで戻っていると何か騒がしい声が聞こえた。

 

「ざけんなテメー!一流の寿司職人になるまで10年はかかるって言われてんだ!それを貴様らのようなトーシローが少し頑張った程度で作れるか!」

 

「だったら、なんでこんな試験にしやがった!」

 

「っせーよ!コラ!ハゲ!殺すぞ」

 

調理場の中に入ると試験官のメンチがハゲ頭の男の襟を掴みながらガミガミと叱りつけている。

そこで私は失敗に気が付いた。

そういやあの同郷の忍者が試験の答えバラしたせいで味で審査する事になったんだった。

そして、すごすごと忍者は去っていくと、他の受験者達は作った寿司を持ってメンチの元へと殺到する。

 

「や、ヤバイぜ。早く出さないと味がどうとか言ってる場合じゃ無い」

 

私は焦りながらも採ってきたキノコに魔力を使って火を通していく。

流石に火を起こしている暇はなさそうなので急遽、魔力を使う事にした。

私が魔力を込めると、それに覆われているキノコからいい匂いが漂っていき火が通っているのが分かる。

え?それ変化系じゃねえのって?

……そうだよ。

放出系で大体使える魔法は空飛ぶのとか念弾飛ばすのとかで相性良くて運が良かったけど、何から何までそういうわけにはいかなかった。

だって、例のアレは熱と光をレーザーみたいに飛ばすやつだし仕方ないだろ!

それに魔法の初歩でイメージするのは某りゅうおうを倒しにいく例のアレに出てくる○ラとか、最後の幻想的な作品に出てくる○ァイアだし、多分アレをイメージしていなくても、きっとこの手の変化系は身につけたと思う。

電気に変化させたり、冷気にしたりとかそんな感じで。

習得に何年かかるか分からないけどな。

実際これ身につけるまでに5年。

豚の丸焼き作れるくらいの火力を得るまでにそこから2年くらいくらいかかっている。

まあ別にそればかりしていたわけじゃ無いけれども、それだけに専念したとしてもかなりの時間を要するだろう。

そうこうしているうちにキノコに火が通ったので、すぐに短冊型に切り一口大に握ったシャリの上に乗せ皿に盛る。

しかし時すでに遅く、その寿司は試験官が食す前に試験は終了した。




今までよりもさらに短い第4話。
早く戦闘させたいので色々とすっ飛ばしました。
多分次か次くらいに戦わせると思います。


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