IS~fighting‐soul~ (肉焼きマン)
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第1話 小学生の記憶

side一夏

 

小学校が終わり、俺は家と懇意にしている神社に併設された剣道場に来ていた。

 

そこで双子の弟と試合をしているわけだが・・・

 

「面!!」

 

バシィィィン!!

 

「胴!!」

 

スパァァン!!

 

はい、今ボロッかすにやられてるのが俺です。乱取りルールは辛いね、しかも実戦力を磨くとか言って防具も着けてないし、まあ竹刀そのものはそれなりに軟らかいのを使ってるから大事に至ることはないけどさ。

 

「おらどうしたよ!!そんなんじゃ子犬一匹追い払えねえぞ!!」

 

「んなこと言われてもこれが俺の力だからどうしようもねえよ。」

 

「ふざけんな!そんなんだから出来損ないってバカにされんだろうがよ!!」

 

お前を筆頭にな。

 

「ケッ、行こうぜ箒、白けちまったよ。クソ・・・」

 

「あ・・・ああ、共に部屋で宿題でもするか。」

 

箒ちゃん、少し引いてるけど止めてくれないか、まあ仕方ないね。

 

さて、今のやりとりを見ていたら察しは付いただろうが、俺は学校でいじめを受けているのだ。弟と姉が才能にあふれていてね、俺は特に結果を出してないから足手まとい呼ばわりで。

 

最初はちょっとした弄り程度だったんだが、他ならぬ弟が加わってからは一気に悪化したね。

 

まあ幸いというかなんというか姉や先生方、箒ちゃんのお姉さんなんかは普通に接してくれている。

いやホント意外だよ、箒ちゃんのお姉さんがまさか俺とも普通に接してくれるなんて、てっきり虫けら扱いされるものとばかり。

 

さてと

 

「家に帰って晩飯の準備でもするか。」

 

 

side千冬

 

親が蒸発して、まだ学生でしかない私と幼い弟二人だけで生活するために私はいつもバイトをしており帰りが遅くなってしまうのだが、弟たち二人は晩御飯を食べることもなく私の帰りを待ってくれている。

 

「今日は一夏が作ったのか」

 

「うん、なかなか良く出来てるでしょ、そのシチュー。」

 

「悪くはねえな」

 

「兆秋、お前はもっと素直に一夏を褒めることはできんのか。」

 

「別に俺は構わないよ姉さん。兆秋も難しい年ごろなんだし、多少のことは仕方ないさ。

 

お前も同い年だろうに

 

「お前はいつもそんなんだから・・・!」

 

「落ち着け兆秋、せっかくの晩御飯だ、楽しく過ごそうじゃないか」

 

少しプライドが高く粗暴な面もあるが、正義感があり勉強も運動もこなす兆秋。

 

運動も勉強も平均程度だが小学生とは思えんほど落ち着きがあり穏やかで気遣いのできる一夏。

 

どちらも私にはもったいないくらいの出来た弟なのだが二人の仲がどうにも噛み合っていないのが悩みの種だな。

 

 




双子プロフィール

織斑 兆秋(おりむら きざあき)
原作の一夏よりも少しガッチリした身体と、鋭い目つきをしている。
運動でも勉強でも非常に優れた結果を叩き出している。
性格は多少プライドが高いところがあるが、一夏以外には優しく正義感も持ち合わせている。今作においては箒をいじめっ子から助けたのは兆秋だったりする。
なお、名前のことで「キザな奴だなww」と言われたらキレる。

織斑 一夏(おりむら いちか)
見た目は原作と変わらない。
運動でも勉強でも平均から少し上程度の結果しか出さず、周りからは出来損ないと言われていじめられているが本人は涼しい顔をして気にもしていない。
真面目ではあるが闘争心が無く、プライドが無いと取られることもある。
どういう訳かいじめの中心人物であるはずの兆秋のことをそこまで嫌っていない。



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第2話 中学生の記憶

side一夏

 

さて、これまで色々な事があったな。

 

まずは女性にしか扱えない最新兵器、IS(インフィニット・ストラトス)の登場だろう。

神社のお姉さんこと篠ノ之束さんが開発した宇宙に羽ばたくためのマルチフォーム・スーツだったらしいが、注目された切っ掛けが悪かったね。

 

全世界の軍事基地が何者かにハッキングされて、世界中のミサイルが日本に標準をあわせて発射されたのだが、それを登場者不明のIS、白騎士がすべて撃墜したのだ。しかもその後白騎士を捕らえようとした戦闘機や戦艦などを一人も犠牲を出すこともなく無力化して逃げきったのだ。そら兵器扱いされるわ。

 

そして束さんはISのコアを467個作った後に雲隠れしてしまったのだった。そりゃ数が限られてるなら兵器にせざらおえんわ。

 

その煽りを受けて重要人物保護プログラム(だっけ?)で篠ノ之家は離散してしまい、箒ちゃんも転校してしまったのだった。

 

それが原因か兆秋が少し荒れていたのだが、入れ違いで転校してきた新たな鳳鈴音ちゃんと親しくなることで寂しさもまぎれたのか落ち着きを取り戻していった。

 

親しくなった経緯は外国から来たということで虐められていたところを助けたそうな。

その優しさを俺にも分けてくれよ、いやマジで。

 

そうして小学校を卒業し中学校に通うことになったわけだが・・・

 

「なんだよその点数、千冬姉の顔に泥を塗るつもりかよ!」

 

「いいじゃん別に、そこそこいい点だろ?93点って」

 

「ふざけんな!オレみたいにキッチリ100点、ケアレスミスをしても95点以上はとれよ!」

 

「そーだぞ出来損ない、ちったあ兆秋を見習えよ」

 

「恥ずかしくないの?出来損ない」

 

学校ということもあっていじめっ子どもも一緒になって絡んでくるなあ。

 

「ちょっと、やめなさいよ兆秋!今のアンタちょっとおかしいわよ!」

 

「うるせえぞ鈴!これはオレとこいつの問題だ!!」

 

「だったら後ろの奴らは何なのよ!文句があるなら二人っきりで話せばいいじゃない!」

 

「それで済んだらオレがどんだけ・・・もういい・・今日は白けた、帰る。」

 

「ちょっと!まだ話は終わってないわよ!」

 

「俺は大丈夫だから追ってあげなよ鳳さん。慣れないことして本人も傷ついてるだろうし、慰めてあげなよ」

 

「アンタも少しは・・いいわ、ありがとう。じゃあ、また明日ね」

 

「うん、また明日」

 

ちぇ、つまんねえの・・・、なんて声が周りから聞こえてくる。ボスの兆秋が帰ればそうもなるか。さてと、

 

「俺も帰るか。」

 

こうして俺の中学校の毎日は過ぎていくのだった。

 

 

side鈴

 

アタシには思い人がいる・・・

 

虐められているアタシを助けてくれて、友達になってくれた、ちょっとキツイところもあるけど優しくて素敵な男の子・・・

でもどうして?どうして自分の兄にはあんなに苛烈なの?どうしてあんなに非道いことができるの?何より・・・

 

「どうして虐めてるアンタが一番苦しそうなのよ・・・」

 

おしえて?兆秋・・・




短くてすみません。小学校と中学校のころに関しては早めに終わらせたかったんで、次からは長くしていきます。

一夏の受けた虐めの程度については、各々の想像にお任せします。ただ、後遺症が残るような傷をつけられそうになったりや、冤罪のようなことはありません。


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第3話 入学

side一夏

 

ふーむ、俺は兆秋とともに藍越(あいえつ)学園の受験を受けに行ったはずなのだがなあ。

 

「織斑君、自己紹介をお願いします。」

 

((((じ~~~~~~~))))

 

何だって兄弟共々IS学園に入っちゃったかねえ、しかも兆秋は1組で俺は3組で別れちゃったし・・・普通こういう場合って一か所に固めておくもんじゃないのかねえ。

 

「織斑一夏です。趣味はテレビ鑑賞で、主にバラエティーを見ます。

ISに関しては小学生程度の知識なので分からないことが多いと思いますが、頑張っていきますのでよろしくお願いします。」

 

「落ち着いてるね~」

「大人っぽいね。」

「覇気にかけた感じ?」

 

「はい、ありがとう織斑君。次、オリヴィアさん」

 

とりあえず失敗したわけではなさそうだな。

 

さて、何故男である俺が女性しか操作できないはずのISの専門校に通うことになったのかというと、ざっくり言うと兄弟そろって試験会場を間違えてそこでISに好奇心で触ってみたら反応しちゃった。何ともまぬけな話だが仕方ない、自分たちだけ男でもISを操縦できるなど誰が想像できようか。兆秋なんかビックリしすぎて、ルフィに雷が効かないことを初めて知ったエネルみたいな顔になってたからな。

 

そうして皆の自己紹介が終わって休み時間になった。男性用トイレが廊下の端のほうにしかないから早くトイレに行きたいのだが・・・

 

「ねえねえ、織斑くんって1組の織斑くんと関係があったりするの?」

「双子の兄弟だよ。どういうわけかあんまり仲が良くないけどね。」

「じゃあ織斑先生とは?」

「年の離れた姉だよ。まさかこの学校で教師をしてたなんて、俺も今日初めて知ったよ。」

「好きな食べ物とかある?」

「和食系かな。魚が好きなんだ。」

「じゃあ嫌いな食べ物は?」

「特にないね、よっぽど変な物じゃなければ何でも食べれるよ。」

 

まいったな、抜け出す暇がないや。

 

「皆、そこまでにしておきなさい。織斑君が困っているでしょう?残りの質問は次の機会に取っておきなさい。」

 

「はーい。ごめんね一夏くん。」

「また色々質問させてね。」

 

「うん、構わないよ。ありがとうございます、エイミー先生。」

 

「早く行ってきなさいな。間に合わなくなっても知らないわよ。」

 

「はい。」

 

担任のエイミー先生はいい先生らしいな。気配りもできるし適度に力も抜けているから話しやすいし相談しやすい。

 

「急いでいても廊下は走るなよ。」

 

副担任のジェイミー先生、居たんだ。

 

そうして、俺は休み時間内にトイレを済ませることができたのだった。

 

IS学園は始業式の日から早速授業がある。さて、一週間で叩き込んだ分厚い参考書の知識がどこまで通用するかな?

 

 

「この問題、織斑君は解けるかしら?」

「拡張領域・・・ですか?」

「短い期間にしては良く出来てるわね、えらいわ。」

「ありがとうございます。」

「だがこれで満足するなよ、お前にはISの知識を基礎からしっかりと覚えてもらう。」

「ジェイミー先生、書類を職員室に届けに行ったはずでは?」

「さっき戻ってきた。」

 

 

「教師も初日はいろいろ忙しいから、この時間は自習よ。ただ、私がいないからって遊んでちゃだめよ。」

『はい!』

 

「宴じゃあああ!!」

『イェエエエエエイ!!!』

「何をしようとしているんだお前たち!!!」

「バカな、ジェイミー先生も職員室に行ったはずでは・・・」

「ずっと残ってたわ馬鹿者ども!!」

 

 

「午前の授業はこれで終わりよ、ここの食堂は美味しいしメニューも多いから楽しみにしていなさい。」

「食堂で皆で宴じゃああああ!!!」

『イェエエエエエエイ!!!』

「限られた昼休みに何をしようとしているお前たち!?」

「ジェイミー先生!?さっきの授業のときは居なかったはずでは・・・」

「最初っから居たわ馬鹿者ども!!」

 

 

 

 

 

色々あったが午前の授業はこうして終わった。

一般科目には問題なくついていけるようだが、ISの科目については努力が必要だな。100倍以上の倍率を勝ち抜いてきただけあって皆スゲーわマジで。

 

授業の疲れと空腹を癒すためにこうして美味いと評判の食堂に来たわけだが、

 

(((((((じ~~~~~~~~)))))))

 

他のクラスや学年の人が来ているだけあって視線の量が半端じゃないな、食べづらい。

 

そんなことを思っていると前の方から兆秋が箒ちゃんと共に俺の座ってる席にやってきた。

篠ノ之束の妹も1組にいるとは噂で聞いていたけど、本当だったんだな。

 

「前、座らせてもらうぜ。」

 

「構わないよ、むしろありがたい。」

 

「・・・だろうな」

 

いつもなら学校で一緒に食べるなんてこともないし、同じ食卓を囲んでも罵詈雑言ばかり飛び出してくるが、今回ばかりはまあ、ねえ。

 

・・・もっそもっそ

 

兆秋、スゲー居心地悪そう・・・。多分兆秋から見た俺も似たような感じなんだろうなあ。

 

「あー・・その・・二人はまだ決着はついていないのか?」

 

ギン!!!

 

おい兆秋、見るからにコミュ力不足の箒ちゃんがわざわざ話を振ってくれたんだぞ。そんなに睨むな。

 

「す・・すまない・・・一夏もまだ周りを見返す気は起きないのか?」

 

「ないね。俺はそんなことで苦労したくない、敵対よりは嘲笑のほうがマシさ。」

 

「テメエいつまでそんな腑抜けたこと言ってん「大声を出すな、食堂だぞ。」・・チッ。」

 

男二人でいれば気も紛れるかと思ったが、こんな険悪な雰囲気を出してたら注目も跳ね上がっちゃうよな~。せっかくの焼き魚定食が砂の味しかしねえ・・・。

 

無言で箸と口を動かしていたらいつの間にやら食べ終わっていたので、さっさと教室に帰ることにする。初日から嫌な空気出してごめんね、食堂のみんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「午前の授業と昼食を通して、みんなある程度クラスメイトのことが分かったと思うから、これからクラス代表を決めるわね。自薦と他薦、どちらでも構わないけど、嫌がってる人に押し付けるのはダメよ。」

 

クラス代表か、学級委員長みたいなものかな?だったら遠慮したいな。

なんせこっちはまだ素人なんだ、みんなより勉強しなきゃいけないのに人の面倒なんて見られるわけがないけど・・・

 

「織斑くんを推薦します!」

「あたしも!」

「たった2人の男性操縦者だもんね!」

 

「ちょっと待ってくれ、俺はまだ勉強不足だしISの搭乗時間だって1時間足らずだ。とてもじゃないが代表なんて器じゃない。」

 

「ISに乗ったことがないのはみんな同じだから大差ないよね。」

「それに適度に目立たせないと他のクラスの娘に恨まれちゃうし。」

「どうしても嫌というならアタシが代表になって毎日を宴に・・・」

「テメエは一番器じゃねえよ座ってろ。」

 

「でもなあ・・・」

 

そんな風に悩んでいると、誰もいないはずの教壇の隣から声がした。

 

「やりたくないなら強制はしないが、ISを学ぶということに関して言えば代表になっておいた方が得だぞ。」

 

「ジェイミー先生いt・・じゃなくて得とはどういうことなんですか?」

 

「習うより慣れろと言うだろう。確かにクラス代表は委員会や生徒会の会議などで時間も取られるが、それ以上に代表戦などでISの試合をする機会が非常に多い。そのため、毎年生徒の中で最も成長するのは、決まってクラス代表の人間だ。学ぶ事の多いお前にはもってこいの役職だと思うが?」

 

成程、確かに代表になったほうがメリットはありそうだな。

 

それに・・・

 

「分かりました。まだまだ未熟ですが、精一杯やらせていただきます。」

 

「じゃあクラス代表は織斑君で決まりでいいわね。

 

『はい!』

 

男の俺が満場一致で決まるってことは、変な女尊男卑に染まった人がクラスに居ないってことだもんな、喜ばしいことじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の授業はこれで終わりよ。初日はあんまり寄り道せず、まっすぐ寮に帰ること。いいわね。」

 

『はい!』

 

俺と兆秋は一週間の自宅通学だったな。寮が決まるまでは多少早起きしなくちゃあならんな。

 

「おい、織斑兄。」

 

!?

 

「ジェイミー先生、脅かさないで下さいよ。」

 

「普通に話しかけたつもりだがな、まあいい。お前の寮の部屋が決まった。」

 

「一週間は自宅通学では?」

 

「世界に二人だけの男性操縦者だからな、身の危険などを考え急遽決まった。最低限の荷物は織斑先生が用意してくれたそうだから心配するな、ゲームや漫画の類は休日にでも取りに戻ることだ。IS学園の寮は持ち物の規則が緩いからな、プレステ4でもニンテンドースイッチでも持ってきてかまわんぞ。」

 

「はい、わかりました。それじゃあ織斑先生から荷物を受け取りに行ってきます。」

 

「ああ、それともう一つ。女子と同室だから部屋に入るときはノックをしろよ。」

 

!!?

 

「ちょ・・待ってくださいジェイミー先生!」

 

「部屋割で色々揉めたのだ。まあ心配するな、相手側にも説明しておいた。」

 

「まってくださいジェイミー先生!説明の問題じゃないですよ!女子と同室って・・・ジェイミー先生が消えた!?どこにいるんですか!!まって!!話を!ジェイミー先生ぇぇぇ!!」

 

(普通に廊下を歩いてるだけなんだけどな・・・)

 

 

 

 

なんてこった、部屋に着いてしまった・・・

ク・・クソ、まさかこんなことになるとは・・・

 

しかし、ここで棒立ちしていても始まらない。俺は勇気を出してノックをした。

 

コンコン

 

「入ってもいいですか?」

 

「はーい。」

 

自己紹介の時には聞かなかった声だな。別のクラスの人かな?

そんな事を思って部屋に入ってみたら・・・痴女がいた。

 

「ご飯にします?お風呂にします?それともわ・た・し?」

 

「へ・・・変態だああああああああああ!!!!」

 

「ちょっまって!冗談だから逃げないで!!ああ!!!寮長室に駆け込まないで織斑先生に殺されちゃう!!!!」

 

 

 

~しばらくお待ちください~

 

 

「成程、あなたは俺の護衛として同じ部屋になったわけなんですね、生徒会長。」

 

「そういうことよ、3人部屋は無いから私が2人の面倒を見るわけにはいかないのよ。」

 

「ほう、それで兆秋には誰が護衛についているんですか?」

 

「篠ノ之さんよ。幼馴染だから気心も知れてるし、何よりこの世界に篠ノ之束の宝に手を出そうなんて愚か者はいないもの。」

 

「あ~、おっかないですからね、束さん。」

 

「まあそんなわけでこれからよろしくね。あ、私の名前は更識楯無よ。たっちゃんでもいいわ♪」

 

「織斑一夏です。お好きに呼んでください。」

 

こうして、握手とともに俺のIS学園最初の1日は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

side楯無

 

「お前には織斑一夏と同室になってもらう。」

 

そんなことを学園のお偉いさん達に命じられた私は内心穏やかじゃなかった。

 

そりゃそうだ、いかに暗部の人間とは言え私だってうら若き乙女なのだ。ある程度情報が集まってからならまだしも、入学初日の書類でしか知らない男の子と一緒なんて出来れば避けたい。

とはいえ私にも仕事があるのだし、危険だといわれている子を放っておくわけにもいかないし、仕方ないわね。

 

さてと、そろそろ同室になる織斑一夏くんがこの部屋にやってくるころだ。

まずはこの水着エプロンで様子見といきましょうか。一応情報では穏やかで紳士的とあったけど、実際どうか確かめるためにもこの程度のイタズラは許してほしい。

 

これで襲ってくれば適当に弱みでも握っておちょくってやればいいし、照れて慌てるのならある程度安心してもいいだろう。

 

コンコン

 

来たようだ。

 

「はーい。」

 

ガチャ

 

「ご飯にします?お風呂にします?それともわ・た・し?」

 

さあ、どう出てくる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ・・・危なかった・・・あのまま寮長室に駆け込まれていたら私は織斑先生にお仕置き(処刑)されるところだったわ。

 

でもその後ちゃんと話は聞いてくれたし、部屋のルール決めの時も紳士的に配慮してくれた。うん、いい子だわ。

 

そしてもう一つ何となくわかったことがある。

 

この子、冷静に見えて案外脆いわね。心の容量が限界まで一杯になっても変わらず冷静を装えるけどちょっとでも超えたら暴走するって感じね。




教師プロフィール

エイミー・アルバーン(二十代後半)白人
だいたい平均くらいの身長とふんわりとした長い金髪、明るい水色の瞳をした豊満なスタイルの美女。
たれ目でどこか気だるげな雰囲気を出しているが、教師としての義務感は強く、どんな生徒とも根気よく向かい合っていく隠れた熱血教師。
元はアメリカ代表候補で過去の代表とも互角の戦いをするなど、限りなく代表に近い実力者だったらしい。現在彼氏募集中。

ジェイミー・ドラモンド(二十代前半)黒人
低めの身長と黒いショートヘア、暗い茶色の瞳をしたスレンダーな美女・・・と美少女の中間、凛々しい顔つきなのに童顔。
ピシッとした雰囲気で、キツイ言い方をするときもある厳しい先生。
しかしただ厳しいわけでもなく、反抗する相手に論理的に物事を説明したり、時には自らの非を認めて生徒を相手にもちゃんと謝罪をするとても柔軟な教師。
元はオーストラリア代表候補で、同期の代表とは人種の壁などから険悪だったものの、戦いを通して無二の親友となっているらしい。
おっかない先生のはずなのに地味。とにかく地味。
地味に結婚している。


外人キャラの名前は人名録から適当に取っております。


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第4話 弟の晴れ舞台

未だ一夏のISが出てこない、うっすい人間模様、なんか入ってこない文章、大丈夫なのかこの小説。


side一夏

 

どうやら俺はそこそこ図太い人間らしく、同じ部屋であれだけの美少女が寝ていたというのに熟睡していたらしい。疲れていたのかな?

 

そのことに関してはたっちゃん先輩(流石に先輩相手にたっちゃんだけじゃ駄目だろう)にとっては不満だったらしく裸ワイシャツならぬ水着ワイシャツで密着されたりもしたが、紳士的に彼女を自分から引き離させてもらったよ。

 

回想開始

 

『うわああああ!!!ハニートラップだああああああ!!!姉さああああああああん!!!!』

 

『ちょっゴメン!!ほんとゴメン!!!それだけは勘弁してええええええええ!!!!!』

 

回想終了

 

そうして朝ごはんに来たんだが、食堂で食べる権利は弟に譲ろうじゃないか。俺はテイクアウトして屋上あたりで食べるよ。(同じ場所で食べてたら俺も兆秋も同じ席に座らずにはいられない。視線辛いっす)

 

そうしてテイクアウトした和食弁当を屋上で広げようとしていると後ろから3人ほどの気配を感じた。

 

「ねえ織斑くん、一緒に食べていい?」

 

「構わないよ、園山さん、川本さん、原本さん。」

 

話しかけて来たのは同じクラスの園山さんたち仲良し3人組だった。

気があったのか、この3人は昨日からとても仲良く話し込んでいたっけ。

 

「朝からがっつり食べるんだね。」

「その代わり晩は軽めにするんだ、弟ともども健康に凝っててね。」

「兆秋君とは仲悪いの?」

「俺は嫌いじゃないよ、向こうは昔っから俺のこと嫌いだろうけど。」

「何か喧嘩したとか。」

「まさか、そんなんだったらとっくにこっちが謝ってるさ。双子だから複雑な何かを感じてるのかもね。」

「ごめん、無神経だったかな。」

「いやいいよ、昨日あれだけ目立ったら気になっちゃうよ。」

「ありがとう織斑くん、ところでさ

 

 

兆秋君、6日後にイギリスの代表候補生と試合をするらしいよ。」

 

「・・・なにやってんのアイツ!?」

 

「なんでも売り言葉に買い言葉でヒートアップしていったとか。」

「千冬様の弟だって言うけど専用機持ちに勝てるのかなあ。」

「ISを使えるんだったら男の子のほうが強いのかなあ。」

 

「男女云々はわからないけど、経験の差から難しいんじゃないかなあ。専用機なんて相手取ったら特に。」

 

「あ、やっぱり?」

「操縦時間が違いすぎるもんね。」

「さながら甲子園球児と帰宅部の戦いだね・・・」

 

「でも、兆秋も天才だからなあ・・・もしかしたらもしかするかも。」

 

「ねえ一夏くん、折角だからあたし達と見に行かない?」

「見るだけでも参考になるって言うし!」

「天才と言われたら余計に気になるもんね。」

 

でも天才つっても6日だもんなあ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し巻き戻る・・・

 

side兆秋

 

オレは今、少しムカついている。

 

「何ですって!?」

 

「ギャーギャーうるせーつってんだよ、そんなに文句あるんなら自薦しろよ。それとも他薦されて当然とでも思ってたのかよナルシスト。聞いてるこっちが恥ずかしいぜ。」

 

なんでこうなったかって言うとまあ、この腐れ代表候補生セシリア・オルコットが男であるオレがクラスの代表になることが許せなかったらしく、公然と悪口を言ってきやがったんだ。

 

しかも俺だけじゃ飽き足らず日本まで侮辱し始めやがった。

それに腹を立てたオレが言い返してまあ、現在に至るってわけだ。

 

「決闘ですわ!!」

 

「ああいいぜ。代表候補と聞いたが、この分ならどーせ弱い部類だろ」

 

「こ・・・の・・!!男の分際で・・・!!」

 

「他国を侮辱した代表候補がよく言うぜ。」

 

流石に言い過ぎたか?入学初日の上に祖国を離れてるわけだもんな、仕方ない部分もあるか。

 

「ふ・・・ふん!ではハンデを差し上げましょうか。それだけ大口を叩いて無様に負けるのは耐え難いでしょう!」

 

・・・・は?

 

こいつ今なんつった?

 

ハンデ?

 

少しじゃねえ、滅茶苦茶ムカついたぜ・・・

 

「ふざけんなよ・・・」

 

「はい?」

 

「フザケんじゃねえぞテメエ!!!」

 

コイツぜってえ許さねえ・・・!!ハンデだと!?

 

ブッ殺してやる!!!

 

「ど・・・どうやら要らないようですわね・・!」

 

オルコットやクラスの奴らが軒並み震えあがってるが知ったこっちゃねえ。

 

「舐めたことほざきやがって、一週間後ぶっ潰してやる。」

 

オレはオレに手加減する奴は許さねえ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戻って

 

side一夏

 

やはりエリート校だけあるな。昨日までの視線が嘘のようにみんな集中してる。俺も負けてられないな。

 

「これでこの時間は終わりよ。あ、それと織斑君、あなたに専用機が支給されることになったわ。」

 

『えーーー!!!』

 

「この時期に専用機!?」

「いいなあ、私も専用機ほしい。」

「これでクラス代表戦も楽勝だ!

「宴だあああああ!」

「しなくていい!!」

 

せっかく離れていった視線がまた集まったよ、というか前から気になってたけど凄い宴推しの娘なんなん?

 

「専用機が届くのは6日後だ、弟の機体と一緒に届く手筈になっている。それまでに専用機を使う際のルールブックを読んでおけ。なに、分厚い本だが取り敢えず付箋の付けてあるところだけ読んでおけば間違いは起こらん。残りはゆっくり覚えろ。」

 

「専用機があればアリーナの使用許可だけで訓練ができるわ。その代わり訓練機の使用許可は中々降りなくなるから、打鉄やラファールに乗ってみたいなら今のうちに予約しておきなさいね。」

 

「はい。と言うことは兆秋はぶっつけ本番で専用機に乗るんですか?」

 

「織斑弟のことは噂で聞いたのか?まあ、そうなるな。しかし本人の意向があれば訓練機で臨むことも許可されるだろうな。アリーナを一つ貸し切りにするわけだ。必然、訓練機も余る。」

 

「初めて乗る専用機よりはある程度慣れた訓練機のほうがいい場合もあるものね。」

 

「なんだ、仲が悪いと聞いていだが中々心配性じゃないか。」

 

「兄弟ですからね。」

 

でも何だろう、兆秋ならぶっつけで専用機に乗って戦いそうな気がするな。

下手したら剣道の練習ばっかりでISそのものに乗らなかったりして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なんでお前らまで屋上で晩飯食ってんだよ。」

 

「察しろよ・・・。」

 

「すまない一夏、実は昨日」

 

「ああ、イギリスの代表候補に喧嘩売ったんだって?」

 

「それからテメエの分の注目も全部こっちに来てんだよ。」

 

「だからか、だから昼には人が少なかったのに今はあんな人だかりがあるのか。」

 

 

「あの二人って仲悪かったんじゃなかったっけ?」

「ツンデレじゃない?」

「決闘を前にして意見交換とか?」

「兆秋くんのワイルドさもいいけど一夏くんみたいな柔らかい感じもいいわね。」

「イケメン兄弟のカップリング・・・ハア・・ハア・・・」

 

 

「まあそれは置いておこう、ちょっと置いておけないやつもあるが置いておこう。兆秋、お前専用機が試合当日に来るらしいが、どうするつもりだ?」

 

「どうするってなんだよ。」

 

「ぶっつけで専用機を使うか、これから練習で使ってある程度慣れていくであろう訓練機だよ。」

 

「そんなもん専用機に決まってんだろ。オレはテメエなんぞと違ってその場で物にできんだよ。同じ尺度で計るんじゃねえよクズ。」

 

「環境にも少しずつ慣れてきたようで何よりだ。入学する前の当たりの強さが戻ってきたな。」

 

「馬鹿にしてんのかテメエ・・・!」

 

「止めよう兆秋、せっかくの晩御飯ではないか。あっそうだ一夏、お前は誰と同室になったのだ?兆秋は私と同室になったのだが。」

 

「俺は2年の生徒会長のたっちゃん先輩と同室だ。水着エプロンで待ち構えられて驚いたが、前もって女子と同室とは聞いていたからな。話し合いはスムーズに進んだよ。」

 

「テメエ今なんつった?」

 

「ああ、俺も驚いたよ。まさか水着エプロンなん・・」

 

「そっちじゃねえ、その後だ。」

 

「前もって女子と同室とは聞いていた・・・」

 

「聞いてねえよ!!てっきりテメエと一緒かと思ったわ!!おかげで箒の入ってる風呂場に突撃しちまったわ!!!」

「きっ兆秋!!?やめろ!!!」

 

なにいいい!!??

 

「全裸見ちゃったの!?マジで!?水着エプロンなんてもんじゃねえ!!」

 

「一夏も食いつくな!!!」

 

「おかげで殴り倒されたわ!!全裸の箒に!!!」

 

「篠ノ之さん大胆すぎじゃない!?」

「全裸で兆秋くんに襲いかかったって!」

「兆秋くんも突撃したって!!」

「まさか二人ってそういう?」

「「「「キャーー!!!」」」」

 

「ああっ!!どんどん取り返しのつかない方向に行っているっ!」

 

へ・・・へえ~、兆秋のやつ・・・6年ぶりに会った幼馴染と一晩でそこまで・・・

 

「そ・・・そう、俺は応援するよ?弟をよろしくな箒。」

 

「違う!!私たちはまだそんな関係じゃ・・」

 

「あっ俺食べ終わっちゃったわ。練習頑張れよな!」

 

「まって!誤解を、誤解を解かせてくれ!!!」

 

「そうだ待ちやがれ!!なんでテメエだけ事前に知らされてんだよ!!」

 

「知るか!!」

 

さーて、寮に帰らないとな!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい席取れてよかったね一夏くん!」

 

「うん、そうだね園山さん。」

 

「楽しみだね。」

「兆秋くんの専用機ってどんなのかな?」

「やっぱり第3世代機なのかな?」

 

あれから一回もあの二人に会ってねえ。

もうどんな顔して会えばいいのかわからねえよ・・・

 

「あ、兆秋くんが出てきたよ!」

 

「マジでぶっつけ本番でやるつもりだよアイツ。」

 

さて、どうなることやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side兆秋

 

「これが貴様のIS、白式だ。フォーマットとフィッティングは試合中に済ませろ、出来なければ負けるだけだ。」

 

そんなふざけたことを千冬姉から言われて出撃してきたわけだか、まあいい。

 

さて、戦おうと身構えるとオルコットが口を開いた。

 

「最後のチャンスをあげますわ。」

 

「は?」

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理、ですから、今ここで謝る「黙れ」・・・はい?」

 

下らねえ。聞く価値もねえ。

 

ドヒュン!!

 

ドン!!

 

「かふ・・!」

 

オレはオルコットに速攻で突撃をブチかまして一発ぶん殴ってやった。

意表はつけたが所詮ただの右ストレート、ダメージは微々たるものだったようだ。

尤も、最初からこんなことでリードを奪おうとは思ってなかったが。

 

「この!!もう許しませんわ!!」

 

ドウン!ドウン!ドウン!

 

だいぶ頭に来たみたいだな、ライフルを連射してきやがる。

それでも狙いが正確なのは流石代表候補って言ったところだな。

 

んで、白式の武器は・・・近接ブレード一本。

 

ちゃんと一次移行したら何か別の武器出るんだろうなあ!!

 

だが今のままでも勝てねえこともねえな、正確すぎる射撃は読みやすいぜ。

 

今のままなら、だけどな。

 

ビームを避け続けて何度か接近しようとした時、アイツに動きがあった。

 

「ふん!それなりの力は有るようですわね。でしたら特別に見せて差し上げますわ。わたしのブルー・ティアーズを!!」

 

どうやらオルコットも本腰を入れてきたようだな。アイツの機体の装甲の一部が分離して4機の自立機動兵器となって俺にビームを放ってきた。

 

「フフフ、踊りなさいわたくしとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

厄介な、全方位から射撃を放たれちゃあ攻撃には移れねえな。

 

「まあ、所詮男などこの程度。精々足掻いてみなさいな。」

 

このクソアマ調子に乗りやがって!

 

 

 

side一夏

 

最初は結構いい勝負をしていたようだが、オルコットさんが第3世代兵器を使い始めてからは防戦一方だな。攻撃する余裕が全く感じられない。

 

「もう30分近く何もできてないよ兆秋くん。」

「やっぱり代表候補生相手には無理があったんだよ。」

「十分頑張ったほうだよね。」

 

「そうねえ、このままじゃ負けちゃうわねえ。でも実は一夏くんはそう思ってなかったりするんじゃない?」

 

「たっちゃん先輩・・・」

 

後ろからたっちゃん先輩が歩いてきた。

この試合、見に来てたんだ。全然誘ってこないからてっきり来ないとばっかり。

 

「だって誘おうにも既に約束してたじゃない?」

 

「まあそうですけどって、心を読まないで下さいよ。」

 

「ウソ、生徒会長!?」

「一夏くん知り合いなの?」

「一夏くんの同室の人ってもしかして・・・」

 

「その通り、毎日お姉さんと一夏くんは熱い夜を過ごしているのだ♪」

 

「「「!?」」」

 

なんてこと言うんだこの人は。

 

「人聞きの悪いことを言わないでください。ただトランプやってるだけでしょう。」

 

「んも~つまんないんだから~」

 

「まったく、何時も何時も心臓に悪い冗談ばかりやめてくださいよ。」

 

「まあまあ、そんなに気を悪くしないで。それでどうなの?弟さん、負けちゃうと思う?」

 

そうだな、このままの状態が続けば

 

「兆秋が勝ちます。」

 

「え?こんなに圧倒されてるのに?」

「流石に無理だよ~。」

「相手は代表候補生だよ?」

 

「兆秋は秀才じゃなくて天才なんだ。」

 

「へえ、もっと詳しく聞かせてほしいな。」

 

「兆秋は、どんなジャンルにおいても優れた能力を発揮しますが、一番能力を発揮するのは誰かと戦ってるときなんですよ。たとえ最初圧倒されていても決定的な差を付けられることはなく喰らいつき、短時間でどんどん強くなっていく。だからもうそろそろ・・・」

 

『ワアーーーーーーーーーー!!!』

 

そろそろ兆秋が反撃の狼煙を上げる頃合いだな。

 

 

 

 

 

sideセシリア

 

わたくしはさっきまでこの男を圧倒していたはずでした。

なのに今は・・・

 

「2つ目!次だあ!!」

 

戦い始めた時とは比べ物にならない程の動きで、わたくしのブルー・ティアーズを撃墜し始めたのです。

 

「調子に乗らないでくださいます!?」

 

わたくしも必死でライフルを撃って抵抗しますが。

 

「もうテメエの射撃は見切った!!」

 

最小限の動きで避けられ、3機目と4機目も破壊されてしまいましたわ。

 

「このままテメエも叩き落とす!」

 

ブルー・ティアーズを墜とした勢いのままわたくしに突撃してくるようですが、甘いですわ。

 

「ブルー・ティアーズは6機ありましてよ!!」

 

ミサイル型のブルー・ティアーズで迎撃させてもらいますわ!所詮素人、これで終わり。まあ、少しは認めて差し上げてもよろしいですわね。

 

「甘え!!」

 

!?

 

敢えて加速することでミサイルの誘導を突っ切って抜き去るつもりですの!?

 

「もらったあ!!」

 

ズガン!!

 

「きゃあああああ!!!」

 

かなり強い一撃をもらってしまいましたわ。けれど・・・

 

「なに!?」

 

ドンドンドオオオン!!!!

 

多少の時間があれば迂回してミサイルを後ろから当てることもできますのよ!

 

「まあ、多少苦戦はしましたが、わたくしの勝利ですわね。とりあえず、後でわたくしに謝るのであればISについて教授してあげてもよろし「誰が勝ったって?」なあ・・・!?」

 

 

 

煙が晴れたところには先ほどとは違う姿をしたISを纏ったあの男の姿でした。

 

「やっと一次移行か、さっきよりもしっくりきやがるぜ。」

 

射撃も見切られ、ブルー・ティアーズも破壊され、奥の手でも押しきれず、敵は更に力を強めた。

 

これはもう・・・。

 

「さあ、第2ラウンドだ。」

 

わたくしの負けですわね・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 

 

30分近く持ちこたえた時点でこうなるとは思っていたが、まさか一次移行すらしてなかったとはなあ。

 

「凄かったねえ。」

「一夏くんの言うとおりだったよ。」

「最後は逆にオルコットさんを圧倒してたね。」

 

「どう?一夏くん、弟さん勝ったけど嬉しい?」

 

「どうですかね、嬉しいと言えば嬉しいですけど途中からこうなるのは想像できましたから、そんな感じることはないですね。」

 

「嫌われてるのに信頼してるのね。」

 

「別に俺が嫌ってるわけでもないですからね。まあ同性の双子ですからね、難しい感情があるんでしょう。」

 

「冷めてるわね。」

 

「兄弟でべたべたしても仕方ないでしょう。」

 

「兆秋くんの機体って第3世代機なのかな?」

「でも第3世代兵器なんて使ってなかったよ。」

「勝ったってことは第3世代じゃない?」

「一夏くんはどう思う?」

 

園山さんが話を振ってきた。誘ってくれたのにたっちゃん先輩とだけ話すのは不誠実だったかな?

 

「そうだね、あそこまで高性能なら多分第3世代機だと思う。第2世代機を渡すなら性能を多少低くしてデータ収集のための機能を大量に搭載させるはずだし、高性能機を渡すならしっかりとした第3世代機を渡すだろうしね。」

 

「じゃあどうして使わなかったんだろう。」

 

「自分の身を削るような武装だったんじゃないかな。」

 

「そんな武装あるの?」

「世界は広いからどっかにはあるんじゃない?」

「千冬様の零落白夜とか?」

 

「ホントにそれかも。」

 

「「「え?」」」

 

「兆秋ならその特性もよく知ってるから、練習なしでは使いたがらないと思う。それに、ブレード1本しか持ってない機体なんてそれくらいしか想像がつかないな。」

 

何よりそれくらい見知った諸刃の剣でもない限り兆秋は使いたがるだろうしな。

 

「でも、あれってワンオフ・アビリティでしょ?」

「それって二次移行じゃないと使えないんじゃあ・・・」

「それにそれって武装じゃないでしょ。」

 

「多分一次移行でワンオフ・アビリティを使えるようにしたんじゃないかな?まあ、決まったわけじゃないから何とも言えないけどさ。」

 

さてと

 

「じゃあそろそろ俺も自分の専用機をもらってくるよ。」

 

「うん、また明日ね。」

「カッコいい機体だったらいいね。」

「今度専用機見せて!」

 

「ちゃんと部屋で一夏くんの好きな服着てるわね☆」

 

「「「!?」」」

 

このクソアマ。




生徒プロフィール
園山さん、川本さん、原本さん

とても仲のいい3人組、これといって設定を決めていないモブ代表。
姿すら決めていないので、自分だけのかわいい3人組を想像してください。


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第5話 専用機

やっと専用機を書くことができた。このままでは主人公最強からオリ弟最強になっちゃう。


side一夏

 

「これがあなたの専用機、『色鋼(いろはがね)』よ。」

 

そう言ってエミリー先生は俺に鉛色の角ばったISを見せた。

 

「今は少し不格好だけど、一次移行したらちゃんと他の専用機みたいにカッコイイ機体になるわよ。」

 

「それは何よりですが、乗る前にこの機体のスペックはどうなっているのかを聞いてもよろしいですか?」

 

「ええ。この機体は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、機体も受け取って一次移行も済ませたわけだし、寮に帰るとするかな。

 

「おい。」

 

待ち構えていたのか?俺が通る道のど真ん中で兆秋が待ち構えていた。

 

「・・・あ、どっどうも兆秋さん、きっ今日は篠ノ之さんと一緒じゃないんすね。」

 

「やめろやテメエ!!もう誤解だってわかってんだろ!!」

 

「全裸の箒と絡み合ったのは事実だろうに・・それで、要件は何だ?」

 

「いつか痛い目見るぞテメエ・・・。」

 

大方いつものアレだろうなあ。

 

「まあいい。テメエ専用機を手に入れたみてえだなあ、調子に乗らないよう明日ボコボコにしてやるよ。テメエみたいな恥知らずがオレと同格なんて面されても不愉快なんでな。」

 

「断る。なんでお前と理由もなく模擬戦しなくちゃならないんだよ、そんなに戦いたいならオルコットさんとでもやればいいだろ。」

 

「ああ?何だったら今ここでシバき倒してやってもいいんだぜ?」

 

「お好きにどうぞ。それで済むなら、さっさとやれよ。先生には俺からごまかしといてやるからさ。」

 

「・・・言わせておけばああああ!!!」

 

兆秋が俺に向かってコブシを叩きつけようとしてきた。多少痛いが、それで済むならそれでいいさ。

 

バシッ!

 

「生徒会長として、校内の暴力は見逃せないな~。」

 

いつの間にやら現れたたっちゃん先輩が兆秋の腕を掴んで止めていた。

 

「テメエか、この恥知らずのクズ野郎の同室ってのは。」

 

「先輩に『テメエ』はないんじゃないかな?織斑兆秋くん?」

 

一触即発ってのは今みたいな状況を言うんだろうな。

 

「ハッ、飽きたぜ。」

 

そう言って兆秋はその場から去って行った。

 

「一夏くん、兆秋くんって昔からあんな感じなの?」

 

たっちゃん先輩がどこか悲しげに聞いてきた。

 

「そうですね。大昔はそこそこ仲良かった気もしますが、大体はあんな感じでしたよ。」

 

「・・・織斑先生に相談とかはしなかったの?」

 

「両親が蒸発してましてね、苦労かけていた姉の手を煩わせたくなかったんですよ。」

 

「だからって、兄弟とずっとあんななんて苦しいじゃない。」

 

「そりゃあ楽しそうに殴りかかってきたら俺だって手は尽くしますよ。でも殴りかかってくるあいつ自身が苦しそうなんですから、兄の俺も黙って耐えますよ。」

 

そう、そこなんだ。俺が兆秋を嫌わないのはそこが理由なんだ。

だからこそそれを間近で見てきた箒ちゃんも鳳さんも変らずに兆秋に恋心を向け続けられるんだと思う。

アイツが答えを見つけるまでは、俺も耐えてやるとも。

 

そんなことを改めて思っていると、たっちゃん先輩が言いづらそうにしながらも口を開いた。

 

「私も簪ちゃ・・妹と仲悪くなっちゃったから偉そうなこと言えないけど、兆秋くんに全てを委ねるんじゃなくて、一夏くん自身も動いてあげるべきなんじゃないかな。」

 

もちろん、暴力を振るう兆秋くんの方が悪いんだけどさ。と付け加えながらも、自分に言い聞かせるように言ってきた。

・・・この人にも色々事情があるんだろう。もしかしたら俺と兆秋の間に自分の何かを重ねてしまったのかもしれないな。でも・・・

 

「そんなこと言われたってどう動けばいいのかがさっぱり分かんないんですよ。先生たちに言って問題にしたって良い終わり方はしないでしょうし、俺が土下座してもどうにもならないでしょうし、真正面から喧嘩を買って殴りあったらそれこそオシマイでしょう。」

 

だから俺も最善手として今の状況があるわけで・・・

 

「そっか、そうだよね。そんな簡単に家族の仲が修復できたら苦労しないもんね・・・。」

 

「・・・慰めれませんよ、俺には。」

 

「うん、大丈夫。変に慰められたら逆に怒鳴っちゃってたかもしれないし。」

 

「帰りましょう。暗い気持ちになっても仕方ないですし。」

 

「そうだね。帰って一緒にトランプでもしよっか!お姉さん負けないぞー!」

 

空元気だな、俺に出来ることは少しでもたっちゃん先輩の気を紛らわせることぐらいだ。

ああでも、もう一つ出来そうなことがあったな。

 

「たっちゃん先輩。」

「なーに?一夏くん。」

 

 

「俺、たっちゃん先輩のこと結構好きですから、何かあったら頼ってください。全力で力を尽くしますから。」

 

もし向こうから頼ってくれたなら、何だってやってやるさ。

 

 

 

「・・・へ?」

 

「さ、行きましょうか。ババ抜きは結構得意なんですよ。」

 

俺は何となく照れ臭くなって早歩きになってしまった。

 

「あっちょっ待ちなさい一夏くん!」

 

 

 

 

 

side兆秋

 

「クソッタレ・・・」

 

オレはオルコットとの戦いが終わった後、軽い休憩をとった際に千冬姉から一夏に専用機が届くと聞いて、模擬戦を挑むためにわざわざあいつの通り道で待ち伏せしていたが、邪魔が入った。

 

・・・尤も、入ろうが入るまいが模擬戦をあいつが受けることはなかっただろうが。

 

アイツはいつもそうだ、誰とも闘わず、誰にも攻撃を仕掛けず、仕返しや報復といったことに対して「くだらない」「バカバカしい」と言い続ける。

 

努力するが結果を出すことにこだわらず、テストでも平均の10点ほど上の点数で満足する。

なぜ上を目指さない。なぜ埋没しようとする。なぜに織斑千冬の弟として結果を残そうとしない。

 

イラつくぜ、闘うのがそんなに嫌なら最初の敵を完膚なきまで叩きのめせばいいし、敗れても何度でも立ち上がればいい。ともすれば闘ったからこそ通じ合える何かが生まれる可能性もゼロじゃない。

 

そして何より気に入らないのが・・・

 

 

 

「おかえり、兆秋。」

 

ムシャクシャしながら歩いているといつの間にか部屋に着いたみたいだ。

 

「用があると言ってどこかに行っていたが、結局何だったんだ?」

「別に、専用機をもらった一夏の顔を見に行っただけだ。」

「そ、そうか・・・どうだった?一夏の様子は。」

「何も変わりゃしねえよ。殴りかかろうとしても無抵抗だった。」

「殴りかかろうとした?殴り倒したのではなく?」

「邪魔が入ったんだよ、同室のお姉さまだとよ。」

「そうか、殴らずにすんだのか・・・良かった。」

「ケッ・・あの女、守るより必要なこともあるだろうに。」

 

出会って7日間程度のやつにそんなこと求めるのは酷かもしれんが、言わずにはいれねえな。

 

・・・いつまでもこんな空気出してちゃならんな。

 

「悪い、嫌な感じだったな。それより箒、助かったぜ。やっぱ試合前に自分の控室に幼馴染がいると、緊張もほぐれたぜ。」

 

実際、箒がいなかったら体が固まってうまく動けず、負けてたかもしれねえな。

こういう醜い面を見せても見捨てずにいてくれる、良い幼馴染をもったもんだなオレも。

 

「そっそうか!それは何よりだ!・・・そうかそうか、私がいてよかったか・・・」

 

??、突然箒が顔を真っ赤にして悶え始めた。まさかコイツオレのことが・・・

 

・・・止めよう、自意識過剰だし何より違った時が悲惨だ。

こんな女の園でオレのこと好きなの?とか聞いて自爆した場合、オレはまず社会的に死んで次に飛び降りて肉体的に死ぬ。

 

これで学園の4割・・・せめて3割が男なら自爆しても馬鹿話にして受け流せるんだけどなあ。

 

あ、ダメだ。箒に限って言えば自爆した次の日から部屋にいられなくなる、気まずい。

 

やっぱ俺のこと好きなのとか聞くべきじゃねえな、親友親友。

 

「さてと、明日も朝練するし、シャワー浴びたら早めに寝るぞオレは。」

 

「うむ、私もそうしよう。・・・・ところで兆秋、その朝練、私も付き合っていいか?」

 

何言ってるんだ?箒、そんなの。

 

「いいのか?助かるぜ。むしろこっちから頼みたいくらいだぜ。」

 

「そうか!よろしく頼む!」

 

やっぱり刺激し合える相手がいるってのは張り合いがあるからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日のことだった。

 

「では、クラス代表は兆秋くんに決定しました。」

 

そうなんだよなあ、勝ったら勝ったでクラス代表なんだよなあ・・・

 

メンドくさいなあ・・・

 

そんな事を思っているとオルコットが手を挙げて“お時間を少しよろしいでしょうか”と言って立ち上がった。

 

「この間は申し訳ありませんでした。」

 

ほう、謝るのか。プライド高そうだからてっきりもっと時間がかかるもんかとばかり。

 

「わたくしとしたことが兆秋さんやクラスの皆様に対してとても失礼な態度をとってしまいました事、反省しております。」

 

とても素直じゃないか。本当はこっちが素だったのかもな。

 

「いや、オレの方こそ怒鳴ったり弱いとか言ったりして悪かったな。」

 

「他の方々も、わたくしの態度で御不快な思いをされた方もいらっしゃいますでしょう。誠に申し訳ありませんでした。」

 

「いいよいいよ。謝ってくれたわけだし。」

「留学初日なんてそんなもんだよね。」

「寧ろいい戦いもみられたし。」

「うんうん。」

 

クラスの奴らも許したっぽいな。いい奴らじゃないか。

 

「それでその・・・もしよろしければ兆秋さんのISの練習相手としてわたくしが・・・」

 

「その必要はない。何故ならこの私がどうしてもと頼まれたのでな。」

 

どうしてもとまでは思ってねえよ。

というか兆秋さん?名前呼びになるくらいには認められたってことか。ますます無様は見せれなくなってきたな。

 

「あら、ISランクCの篠ノ之さん、ランクAのわたくしに何かご用ですか?」

 

ほう、二人のランクは初めて知ったぜ。ついでに言うとオレはA、一夏はBだ。

 

「ランクは関係ない!そもそも射撃主体のお前が、格闘主体の兆秋に何を教えるというのだ!」

 

「それは「止めんか馬鹿ども。」織斑先生!?」

 

「貴様らのランクなど、まだまだゴミに等しい。殻も破れていないうちから優劣など競うな。」

 

おおう、厳しい発言が出てきたもんだぜ。だが天下のブリュンヒルデの言葉だ、誰も否定できねえ。

 

そうして授業が始まったのであった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兆秋くんクラス代表就任おめでとう!!」

 

夜の食堂ではオレのクラス代表就任パーティーが行われた。

何だろう結構気恥かしいなオイ。

 

「いやー男の子が同じクラスでよかったよねー。」

「ホントホント。」

「これで私たちのクラスにも活気があふれるわよねー。」

「ホントホント。」

「この間の試合もマジで凄かったもんな。」

「ホントホン・・・!?」

 

さっきから相槌打ってるやつ2組じゃなかったか?っていうか一夏、何サラッと混ざろうとしてんだよ、混ざれてねえよ相槌の娘メチャクチャ驚いてんじゃねえか。

 

そんな事を思っていると、ボイスレコーダーを持った眼鏡の先輩がやってきた。ネクタイを見る限り二年生だな。

 

「はいはーい、新聞部でーす。今日は話題の新入生の兆秋くんインタビューしに来ました!」

 

みんながオーと盛り上がる。学校の新聞を見てからなんとなく覚悟はしていたが、ボイスレコーダーまで持ってくるとは本格的だ。

 

つーか一夏、なにコソッと逃げてんだよ。食うだけ食っていきやがって、テメエも少しは弾よけになりやがれ。

 

「あ、私の名前は黛薫子(まゆずみかおるこ)。これ、名刺ね。」

 

名刺まであるのか、本格的だな。

 

「じゃあまずクラス代表になった感想をどうぞ!」

 

そりゃあまあ・・・

 

「代表戦、やるからには絶対に優勝するぜ。たとえ4組の専用機持ちが相手でも負けねえ。」

 

「おお!いい感想だね。じゃあ次にセシリアちゃん!兆秋くんと戦った時の感想を一つ!」

 

「こういったことは苦手ですが、仕方ありませんわね。まずわたくしが「長そうだからいいや、写真だけちょうだい。」ちょっと!?」

 

「いいよ適当に捏造しておくから。兆秋くんに惚れたってことでいいよね。」

 

「そ・・・そんなこと・・・!」

 

あ~あ~あのままじゃあ明日からも弄られまくっちまうなあ。よし、ここは一つオレがフォローしてやるか。

 

「まあ、オレもセシリアみたいな美女に惚れられたら嬉しいけどよ、嘘はいかんぜ。」

 

オレはセシリアと名前呼びをしあう関係になっていた。心からぶつかり合えば余程のことがない限り、距離は近づくもんだ。

 

しかしまあ、このオレの最高レベルのフォローでセシリアの尊厳は守られオレは隣にいる箒から途轍もない力の抓りを頂くことになるわけだだだだだいってえええええええええ!!!!!

 

 

「う・・・嬉しいですのね・・・そ、そうですのそうですの。」

 

「兆秋、しばらく見ないうちに随分女好きになったものだな・・・!!!」

 

「なんだ!俺は何かミスを犯したのか箒うわおいなにするやめr」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酷い目にあった・・・もう新聞部はコリゴリだ。一夏がいればここまでにはならなかったろうに。

うん?廊下の向こうから一夏と誰かの声がするな。こんな時間に何だってんだ。

 

「もっとお聞かせください!生徒会長と水着エプロンプレイをしているというのは本当なんですか!?後、兆秋くんにいたぶられて喜ぶ変態といううわさもありますが本当ですか!?」

 

「そんな事実は一切ございません!!俺はMじゃねえ!!」

 

「水着エプロンは否定しなんですね!!」

 

「もう、もういいだろ!!部屋に帰してくれ文春(ふみはる)先輩!!」

 

もっと性質の悪そうな新聞部に捉まっとる!?

 

 

 

 




補足
一夏は楯無が対暗部であることとロシアの代表であるということは既に知っています。



生徒プロフィール

大筒 文春(おおづつ ふみはる)2年生
平均くらいの身長とそこそこのスリーサイズを誇るサイドテールの生徒

新聞部に新入部員が入ってきて変な方向に力が入ってしまったかわいそうなお方(一夏が)。
平常時は不眠不休でスキャンダルの気配がありそうな所に張り込んだりするなど情熱にあふれた性格。

一時期、部屋からスキャンダルの匂いを織斑千冬の部屋から嗅ぎ取り、2か月ほどの死闘を繰り広げたとか。


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第6話 セカンド幼馴染

さて、一夏の戦闘シーン、どーしよ。


side兆秋

 

やれやれ、昨日のパーティーはありがたかったが、気疲れしちまったな。

 

「ねえ兆秋くん、2組に転校生が来たらしいよ!」

 

「転校生?この時期にってことは相当の実力者だろうな。代表候補か?」

 

そうでもなくちゃ転校なんざ出来ねえよな。

 

「うん、中国の代表候補生だって。」

 

「わたくしの存在を、今更ながらに危ぶんでの転入でしょうか。」

 

中国か・・・鈴を思い出すな。

 

「ふん、今のお前に他のクラスの女を考える余裕があるのか?来月にはクラス対抗戦があるというのに。」

 

「代表候補生だったら代表を交代するかもしれねえだろ。」

 

「それはそうだが・・・」

 

だが・・・まあ・・・

 

「鈴に会いてえなあ・・・」

 

「鈴?誰だそれは!」

 

「そうですわ!今すぐ答えてください!!」

 

なんでこんな怒るんだこいつら。

 

「ああ、声に出てたか。鈴はオレが中学の頃の親友で、中国から引っ越してきたんだが、2年の終わりに中国に帰っちまってな。中国と聞くと無性に会いたくなってきた。」

 

ホント、アイツと過ごす時間は楽しかった。

 

(むう、兆秋め。あんな穏やかな顔をして・・・)

(篠ノ之さんに続いてまた昔のお知り合い、卑怯ですわ!)

((でもまあ中国にいるなら何の問題も・・・))

 

「ここに専用機持ちのクラス代表っている?」

 

「鈴?鈴か!ちょうど会いたいと思ってたところで目の前に来るか!!」

 

「にゃ!?」

 

「「なっ!?」」

 

「久しぶりじゃねえか元気してたか!」

 

予期せぬサプライズにどんどんテンションが上がって行くぜ!

 

「なんだよ言ってくれてもよかったじゃねえかよ!ホントビックリしたぜ!!」

 

オレは辛抱たまらず鈴の両肩をガッチリ掴んでしまった。

 

「あわわわわわわわわわわ!」

 

「「ななななななななな!!」

 

「いやー、会いたかったぜ!!」

 

そして抱きしめた。

 

「おわああああああああああああああああ!!!!」

 

「「のおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」

 

「あっ悪い、きつかったか?」

 

「は・・・」

 

「は?」

 

「はにゃああああああああああああああああああああ!!!!」

 

スドドドドドドドドドドド!!!

 

鈴は走り去って行った・・・

 

「どーしたんだあいつってうん?」

 

なんだ?このプレッシャーは。

 

「兆秋さん・・・」

「兆秋・・・」

 

「「この変態いいいいいいいいいい!!!」

「ぎゃああああああああああああああ!!!!」

 

うわああああああああああああああ殺されるうううううううう!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

危なかった、あの時千冬姉が来なかったら死ぬところだった。

 

「さあ、先ほどの女について詳しく説明してもらうぞ!」

 

「その通りですわ!説明してくださいまし!!」

 

「ああ、飯食いながらでもいいか?昼休みは長そうで短いぜ。」

 

「う・・うむ。まあいいだろう。」

「か・・構いませんわよ。」

 

さーて、何やら死の匂いがするが生き残ってやるぜ!

 

 

「待ってたわよ、兆秋!さっきは良くもあんなこと・・・」

 

食堂では鈴がラーメンを持ちながら待ち構えていた。

 

「ラーメン伸びるぞ鈴。あ、一緒に食わねえか?」

 

「あんたが遅いからよ!もちろん一緒に行くわ!」

 

「「むっ」」

 

こうしてオレと鈴、箒にセシリアの4人で昼食を食べることにした。

 

この日の自主訓練の際、地獄を見ることになるなんて今のオレには想像もできなかった。

 

鈴との再会にはしゃいでいたオレには・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 

 

何やら1組と2組のほうが騒がしかったな。

 

そんな事を思いながら俺は屋上で弁当(自作)を食べていた。

 

「なんでも2組に編入してきた中国の代表候補生が、兆秋くんの幼馴染だったらしいわよ。もしかしたら一夏くんとも面識があるんじゃない?」

 

たっちゃん先輩と一緒に。

 

「ああ、居ましたね。確か名前は鳳鈴音。兆秋とベッタリだった覚えがありますよ。」

 

「一夏くんとは?」

 

「あんまり関わりはありませんでしたね。兆秋にボコられてる時に何度か助けられたくらいです。まあ、助けたかったのは俺よりも苦しい顔してた兆秋だったんでしょうが。」

 

あの時の鳳さんは記憶の中の誰よりも兆秋の正妻してたからなあ。

 

「ふーん。これはやっぱり兆秋くんに攻略されてたり?」

 

攻略って、ゲームじゃないんですから・・・。

 

「ええ、十中八九兆秋に気がありましたよ。俺が絡まなければ良いやつですからね。」

 

紛れもなく本音だ。だからこそ早いところ悩みを乗り越えてほしいところだな。

それまでは黙って殴られてやるさ。

 

「その絡み方が致命的でしょうに・・・」

 

「他ならぬ被害者が許してるんですし構わないでしょう。」

 

たっちゃん先輩が何とも苦々しい顔をしているが、こればっかりは仕方がない。

 

「ねえ一夏くん、この前言ってくれたこと、憶えてる?ほら、困った時は力になるって。」

 

そりゃあ、勿論。

 

「当然、憶えてますよ。忘れるわけがありません。何か俺の力が必要ですか?」

 

今思い出しても照れくさいが、言って後悔はしていない。何だってしてやるさ。

 

「ううん、そうじゃなくて・・・。」

 

そう言ってたっちゃん先輩は俺の目を見た。

 

「そうじゃなくてさ。」

 

とても慈愛に満ちた目で、柔らかくほほ笑んだ()()()()は・・・。

 

「一夏くんが困った時も私に頼ってね。」

 

とても綺麗だった。

 

 

 

 

「・・・ええ、その言葉だけでも力が湧いてきますよ。」

 

ああ、顔が熱い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は放課後のアリーナで色鋼の訓練をしていた。

 

第3世代機だけあってかなりの性能だったな、あれなら全ての距離に対応することもできる。

 

さて、今日の訓練はそろそろ切り上げるかな。

 

そう思い帰り支度をして歩いていると隣のアリーナから戦闘音が聞こえた。

 

こんな時間まで訓練ができるとしたら専用機持ちだろう。クラス対抗戦で張り切っているのかと思い覗いてみると・・・

 

なんか兆秋がめっちゃ攻撃されてた。

 

「まて兆秋!!貴様のハレンチ極まりない性根を叩き直してやる!!」

「そうですわ!!これから対抗戦で敵になるというのに!!」

 

兆秋は2人を同時に相手にしていた。

片方は先日も目にしたブルーティアーズだろう。もう1機は訓練機の打鉄、だぶん箒ちゃんだな。

 

「うおおおおおおおお!!墜とされてたまるかああああああああああああああ!!!」

 

「逃がしませんわ!」

 

「観念しろ兆秋!!」

 

ガガガガガギイイイイイン!!

 

なんて苛烈な攻撃なんだ・・・。

ペアの攻撃を受けてでも兆秋にダメージを与えようとする鬼神の形相からは、最早恐怖以外何も感じない。

 

帰ろう・・・俺は何も見ていなかったんだ。




これだけ時間をかけてこれだけしか書けないとは・・・
次はもっと文字数を増やそう。


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第7話 クラス対抗戦と侵入者

かなり時間かかってしまったな。次はもっと早く投稿しよう


side一夏

 

対抗戦まであと少しか。そんなことを思い、少し高揚するような緊張感を覚えながら俺は過ごしていた。

 

そんな中、園山さんが休み時間中に話しかけてきた。

 

「ねえねえ一夏くん、兆秋くんと2組代表の鳳さんがケンカしたって知ってる?」

 

「知らないなあ。でもあの二人がケンカをするのなんて中学の時はそこそこあったと思うけど。」

 

ケンカするほど仲が良いっていうしな。と思っていたら近くにいた川本さんが補足してきた。

 

「いやいやそれが結構本格的らしくて、クラス対抗戦で決着をつけるんだって!」

 

「なんでも鳳さんが告白したら兆秋くんが勘違いして怒らせちゃったんだって!確か毎日酢豚をどうとか!」

 

最後に原本さんが爆弾を落としてきやがった。

 

毎日酢豚?それってあれか?味噌汁のあれか?私が作った味噌汁を毎日飲んでくれる?っていうあれか?

 

「それで鳳さんが烈火のごとく怒ってるんだって。」

「怖かったよね~。凄くピリピリしてて。」

「邪魔する奴はぶっ潰すみたいな感じだったよね。」

 

まあ告白をそんな風に勘違いされたら怒るよな~って今何て言った?

 

「邪魔する奴はぶっ潰す?じゃあ1回戦で俺と鳳さんが当たったら俺って邪魔者?」

 

「「「・・・」」」

 

「烈火のごとくとかぶっ潰すとかちょっと誇張表現入ってるよな?実際はそこまでじゃないよな?」

 

そうだ、噂には尾ひれが付くもんだ。

 

「「「一夏くん・・・死なないでね。」」」

 

「まって!不吉なこと言わないで!ってかまさかそんな噂が立ったから恥ずかしくなって引くに引けなくなっちゃったんじゃ・・・」

 

「「「あ・・・」」」

 

3人の顔が“ヤッベ”とでも言いたげになった。

 

「・・・初戦は4組と当たることを願おう。」

 

「「「私たちも願っとくよ・・・」」」

 

どーか鳳さんと当たりませんように!!

 

 

 

 

 

 

 

side鈴

 

信じらんない信じらんない!!

 

普通あんな勘違いする!?

 

何よ毎日酢豚を奢るって!!告白に決まってるでしょ!!それに何より・・・

 

「鳳さんが兆秋くんに告白したって。」ヒソヒソ

「勘違いされちゃったんだって?」ヒソヒソ

 

この噂よ!!なんでこんなに噂が広がってるのよ!!しかも肝心の兆秋には要らない気を使って一切入っていかないし!!

 

「あれもこれも全部兆秋のせいよーー!!!」

 

絶対対抗戦でボッコボコにしてやる!!!

 

 

 

side兆秋

 

何故か鈴を怒らせてしまった。

 

「兆秋、お前には乙女心を学んでもらうぞ。」

「そうですわ。これでは鈴さんがあんまりなので。」

 

箒とセシリアからは有難いお説教を頂いちまっている。

 

「じゃあ何だったんだよ。まさかこくは・・」

「「そういうわけではないだろうが(でしょうけど)!!」」

 

そうだよな、告白かな?とは思ったがもし違ったら・・・

 

 

 

兆秋想像(妄想)ワールドin

 

意を決して聞くオレ

 

「もしかして、告白か?」

 

「え?普通に奢るって話だけどあっ(察し)いやその・・・確かに兆秋はいい男よ?それは違いないわ。けどまあ・・・うん。アタシはそんなつもりじゃなかったっていうか・・・」

 

目を合わせずやっちまった感丸出しの鈴。

 

「うわ~」

 

痛々しいものを見る目の箒。

 

そして次の日・・・

 

「兆秋くんって自意識過剰だよね~www」

「やめなよ~ww本人は真剣だったんだから~ww」

 

「お・・おはよう皆・・」

 

「き・・兆秋さ・・・プフ・・いい朝ですわね・・クククww」

 

「・・・」

 

そして引き籠るオレ。

 

「兆秋、出てこい。振られたのが悲しいのはわかるが、皆待ってるぞ・・・」

 

「千冬姉さん・・・」

 

そして絶望・・・

 

「なんだよこれ・・・」

 

“ネットニューストップ記事・男性操縦者の織斑兆秋、振られてヒッキー化!”

“兄の一夏氏「いつかこうなると思っていた」”

“明かされていく兆秋氏のナルシズム”

 

そして最後は・・・

 

「貴様のようなナルシストがいると男の品位が下がってしまうんだよ。」

 

「何だテメエは・・うわ!!」

 

「安心したまえ、君は自殺として処理されるからね。」

 

「やっやめ・・グワアアアアアアアア!!」

 

 

“号外・振られ男性操縦者兆秋、自殺か!?”

 

 

 

兆秋想像(妄想)ワールドout

 

 

 

 

 

変なことは言えねえ!!

 

「「聞いているのか(いますの)!?兆秋(さん)!!」

 

何か別の乙女チックな何かがあるんだきっと!!

それをここで学ぶんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 

あれから、専用機を園山さんたちやたっちゃん先輩にお披露目して訓練したり、兆秋とギスギスしたり、ガチで不機嫌な鳳さんにドン引きしたりと色々あったがついに来てしまった。

 

クラス対抗戦の日が。

 

「ついに決まるんだね、一夏くんの命運が・・・」

 

やめて園山さん。変なプレッシャーかけるの止めて。

 

そしてトーナメント表が出された

 

第1回戦 1組代表・織斑兆秋 vs 2組代表・鳳鈴音

第2回戦 3組代表・織斑一夏 vs 4組代表・更識簪

 

「やった!!やったぞ!!対戦相手は4組だ!!4組のさらし・・・え?」

 

更識簪?この人ってもしかして・・・

 

「そう、私の妹よ。」

 

「たっちゃん先輩、気配を消して近づかないで下さいよ。」

 

「そう固いこと言わないの☆」

 

結構ビックリするんだぞ。

 

「たしか4組の更識さんは日本の代表候補なんですよね。まだ専用機が完成してないって噂ですけど、どうするんですか?」

 

園山さんがたっちゃん先輩に遠慮がちに聞く。

 

「まさか未完成の機体で出るわけにもいかないし、量産機で出場することになるわね。けど、簪ちゃんも代表候補だからかなり強いわよ。」

 

かなり自慢の妹さんらしいな、どこか自慢げだ。

 

「俺もそう簡単にやられるつもりはありませんよ。これでも織斑家の人間なんでね。」

 

「お姉さんは一夏くんが勝っても恨んだりしないから安心していいよ❤」

 

おおう、『出来るもんならね』って目に書いてあるぜ。

 

さてと、そろそろ選手控室に行くかな、試合を見るにしても特等席だ。

 

「あ、一夏くん行く前に教えて、兆秋くんと鳳さんどっちが勝つと思う?」

 

歩こうとした俺に対して園山さんが慌て気味に質問してきた。急いでるわけじゃないからいいのに。

 

それにしてもあの二人の戦いかあ・・・うーん。

 

「鳳さんの情報が無さ過ぎてわからないかな。けどもし鳳さんがオルコットさんと同じくらいの実力なら五分五分かな。」

 

「え?この前はオルコットさんをあんなに圧倒してたのに?」

 

「兆秋の逆転勝ちの仕組みは二つあってね、一つは成長、もう一つは学習なんだ。だからあの時より成長したとはいえ鳳さんの戦闘は学習してないから、確実に勝てるとは言えないな。それに鳳さんも兆秋の力はよく知ってるからオルコットさんみたいな慢心は期待できない。」

 

「なるほど~、じゃあ鳳さんは短期決戦を狙ってきて兆秋くんは長期戦を狙ってくるのかなあ。」

 

いや、兆秋の場合は長期戦を狙ってるんじゃなくて長期戦になっちゃうんだよなあ。

本人は不利でも攻撃に気をまわしてるし、短期決戦の攻め方で失敗しても中々負けないから格上相手だと結果的に長引くだけで。

でも説明するのめんどくさいし、いっか。

 

「じゃあ俺そろそろ行くな。」

 

「頑張ってね一夏くん、応援してるから!デザートのためにも!!」

 

園山さんのデザートへの熱意が伝わってくるな。

 

「優勝したら私がデザートになってア・ゲ・ル☆」

 

「!?」

 

「また同じ手口ですかいつか罰が当たりますよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side鈴

 

 

とうとうこの日が来たわ・・・兆秋と決着をつけるこの日が!

 

「おい鈴!ぜってえオレが勝って、怒ってる理由を教えてもらうからな!!」

 

アタシの目の前に、ISを纏った兆秋がいる。

 

「絶対教えてあげないわ!!アンタは黙ってアタシに負ければいいのよ!!」

 

「言ったな!!容赦しねえからな!!」

 

試合開始のカウントダウンが始まる。

 

「・・・っし」

 

「・・・!」

 

さっきまでの、不機嫌ながらも友好的な雰囲気は消え去った。

かなりの威圧感が兆秋から放たれる。1年間努力してきて多くのライバルたちと相対してきたけど、ここまでの物はそうそうお目にかかれない。とても初心者とは思えない・・・

 

思えば兆秋とガチで戦うのは初めてかもしれない。

中学の時はいつもアタシがくっついて、一緒に悪ふざけしてたっけ。

ケンカすることはあってもじゃれあい程度。

 

そりゃそうよね。ワルっぽい雰囲気だしてても天才で、何だってできる超人。

何やったって勝負にならないものね・・・

 

でも今は違う。アタシはISで代表候補生になった!専用機だって手に入れた!!

もう兆秋に引っ付いてるだけのアタシじゃない!!!

 

試合が始まった。

 

「うおお「どりゃあああああああ!!!」なっ!?」

 

兆秋は開幕直後の奇襲で先制攻撃しようとしたみたいだけど、甘いわよ!!

アタシは兆秋が奇襲してくる事も考慮して奇襲した。当然アタシが打ち勝つ!!

 

「先制もらったああああ!!」

「ぐううううう!!」

 

ズバン!!

 

アタシの双天牙月が兆秋の胴体に当たった、これで試合の流れをこっちに引き込めそうね。

でも油断せずに攻撃の手を緩めるようなことはしない。

 

「このまま墜ちなさい!!」

 

双天牙月を回転させ、時には分離させてとにかく攻撃をしまくる。

成長される前に叩く!

 

アイツは一本、アタシは二本、ブレードの手数ならこっちが上。

 

ガガガガガガガガガ!!

 

ぐっ!押してはいるけどヒットしない・・・ギリギリのところで防がれるか避けられる。

でもかまわない、兆秋に攻撃させないのが最優先よ!

 

右、左、左、上、右、下、下、上

 

素早く、不規則に攻撃を与える。

どんなに早く攻撃しても規則的になったら読まれて対応される。

どんなに不規則な攻撃でも遅ければ無理やり攻撃を押し込まれる。

 

両方こなさなければ即座に反撃されて逆転される!

正直辛い・・・全く気を抜けない。圧倒されてても兆秋の目から力強さが一切消えない。

でも負けたくない!押し切って勝つ!

 

ガギィン!!

 

兆秋のブレードとアタシの双天牙月の内の一本が火花を立ててぶつかり合う。

でも・・・

 

「双天牙月は二本あるのよ!!」

「クソっ!」

 

ズドン!!

 

2撃目の攻撃が兆秋にヒットした。

 

ここで後ろに下がろうとしてくれるなら読みやすくて助かるんだけど・・・

 

「舐めんじゃねえ!!」

 

ギュオン!

 

兆秋はブーストを使って無理やり体勢を立て直して逆に突っ込んでくる。

 

せっかく攻撃当てて精神的に有利になっても全然気が休まらないから結局余裕が無くなるじゃない!

 

ドガ!ガキ!ズガガガ!!

 

攻撃攻撃!とにかく攻撃!!アイツに反撃させちゃダメ!切り札を使うにももう少し削っておかないと押しきれない!!

 

ガガガガガ!ズバッ!!ドゴゴゴ!!ジョリ!ボゴン!!

 

アタシの気迫が届いているのか、かすり傷程度なら与えられるようになってきた。

このままダメージを蓄積させて優位に立つ!!

 

「はあ!!」

 

アタシが双天牙月を振ろうとした瞬間・・・

 

「オラァ!!」

 

振ろうとした双天牙月の刃に逆に兆秋が突っ込んできた。

勢いに乗っていないブレードじゃあ与えられるダメージはたかが知れてる。

 

マズい!もう片方の手は既に攻撃を終えていて力が入ってない!!

 

「貰ったああああ!!」

 

白式の文字通りの鉄拳がアタシの視界を埋めた。

 

ドゴオオオン!!

 

「おうぐううう!!」

 

顔面にとんでもない衝撃を感じる。

ただISのパワーアシストだけで殴ったんじゃこうはならない。

 

「どうだ!ブーストとPICの制御で威力を叩き出す対IS用格闘術の味は!」

 

「アンタねえ女の顔をなんて威力でぶん殴るのよ!!メチャクチャ痛いじゃない!!」

 

しかも装甲も何もつけてない顔を至近距離から殴られただけあって結構シールドを削られてるわね。

 

「あんな殺気立った攻撃してくれやつに加減なんざ出来るか!!今度はこっちから攻撃させてもらうぜ!!!」

 

いいえ、攻撃なんてさせないわ。

 

ドオオオオン!!

 

「ゴフゥ!?」

 

兆秋に目に見えない砲弾が襲いかかった。

 

悪いけどいいとこなしで終わってもらうわよ兆秋!!

 

「龍咆の力、思う存分味わってもらうわよ!」

 

 

 

 

 

side箒

 

私とセシリアは兆秋の勝利を祈りながら観戦していた。

先ほどまでは兆秋がかなりの劣勢だったが・・・

 

「やった!ついに兆秋が鈴に一撃をくらわせたぞ、ここから反撃だな。」

 

兆秋ならここから鈴を圧倒して倒すことができる力があるはず。

 

「いえ、それはどうでしょうか。」

 

だが、セシリアはそうは思っていないようだった。

 

「なに?あの一撃で兆秋に試合の流れが傾いたのではないのか?」

 

「鈴さんの専用機もおそらくは第3世代。わたくしのBT兵器と同じく切り札のようなものがあるはず。」

 

「そんな!今までは手を抜いていたというのか?」

 

「いえ、そうではないでしょう。一度に出しても押しきれないと判断したのでしょうね。最初に二刀流で奇襲を仕掛け、対応され始めたら第3世代兵器でもう一度奇襲を仕掛ける。2段構えの奇襲で兆秋さんに見せ場を作らずに倒しきる算段ですわね。」

 

「そんな・・・」

 

ドオオオオン!!

 

兆秋が突然轟音を立てて吹き飛ばされた。

 

「何だあれは?」

 

「衝撃砲ですわね。空間に圧力をかけて砲身を作り、余剰で生じる衝撃を撃ちだす目に見えない兵器ですわ。」

 

目に見えない?それでは避けれないではないか!

兆秋が勝つにしても一体何発それを受けることになるのか・・・。

 

「勝たなくてもいいから無事で帰ってこい・・・兆秋。」

 

 

 

 

 

 

 

side兆秋

 

クソったれ!!

さっきからまるで自分のペースがつかめねえ!!

 

「逃がさないわよ!!」

 

ドン!ドン!ドン!ドン!

ガガガガガガガガガガガ

 

チクショウ、なんて攻撃してきやがる。

目に見えない砲撃、龍咆だったか?と二刀の猛撃、攻撃に移る隙が一切ねえ。

だがブレード一本のこの機体で距離をとろうもんなら逆に鈴に余裕を持たせちまう。

こっちも攻撃を狙って攻め入るしかねえ!

 

「ぐうううううう!!」

 

ガガガガガガガガ!!

ドン!ドン!ドン!ドン!

 

今は何とか致命傷を避けているがいつクリーンヒットしてもおかしくねえ。

 

「ウオオオオオオオオ!!!」

ギュン!!ドドドドドド!!!

 

鈴が龍咆を撃ちながら接近してくる。

 

後ろには下がったらジリ貧。

馬鹿正直に前から行ったら龍咆の餌食。

 

蛇行運転で当たらないことを祈って突っ込むしかねえな!

 

ギュイイイイイイン!!

 

ゴウ!ゴウ!ゴウ!

 

すぐ横から風切り音が聞こえる。あと少しずれていたら龍咆に当たってたな。

 

ゴギィィィィィン

 

ブレードから重い音が鳴る。

 

ここでこのまま斬り合ってなんとか一撃喰らわせたいが・・・

 

ドドドドド!!

 

そのまま留まっていたら龍咆で吹き飛ばされる。

急いでそこから離れるしかない。

 

後ろに下がらず上下左右に回避しなくちゃならんが、辛いな・・・回避できるスペースが小さすぎる。

しかもお互い高速移動しつつ戦っているから離れる気がなくても自然と距離が開く。

 

今はまだ何も出来ねえな・・・だが、このまま何とか攻撃の姿勢をし続けてブレードで一撃でも喰らわせられれば勝ち目はある。そう・・・

 

零落白夜なら・・・

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 

俺は選手控室の見渡しのいい所から二人の試合を眺めている。

 

「鈴は昔から兆秋を知ってるだけあって油断が一切ないな。」

 

「そうね。攻撃は最大の防御っていうのをこの上なく表した戦い方ね。」

 

「そ・・・そうですね会長。」

 

「俺さっき一人で控室に来る雰囲気だったじゃないですかなに無許可で入ってきてるんですか叱られるなら園山さんを道連れにしないで一人で叱られてくださいよ。」

 

「ごめんね一夏くん。やっぱり不味かったかなあ。」

「細かいことは言わないの☆」

 

何故かこの二人は俺より先回りして控室にいたのだった。

俺、結構近道しながら来たよ?二人とも変な道使ってないだろうね。

 

「ホントに物凄い攻撃・・・鳳さんってすごく強いんだね。」

 

園山さんは鳳さんの猛攻にすっかり圧倒されてしまっていた。

でもあれは兆秋限定の戦い方だと思うよ?

 

「あれは兆秋がブレード一本しか持ってないこと前提の戦い方だよ。もし他の武装を持っていたら手痛いカウンターを貰うかもしれないからね。」

 

「そうだねえ、あんながっつり攻撃してたらマシンガンやライフルに対応できないものね。」

 

「じゃあ兆秋くんって結構対策しやすい相手だったりするんですか?」

 

対策しやすいかって言われればそりゃあ・・・

 

「「本来ブレード一本だけの奴なんてカモだよ。」」

 

千冬姉さんがおかしかっただけさ。

 

「そ・・そっかあ、じゃあ兆秋くんはこのまま負けちゃうのかなあ。」

 

「それはわからないわ。」

「鈴ちゃんも体力的に追い詰められてきてるからね。」

「え?」

 

「あそこまで派手に動き回って攻撃してるんだから、相当疲れてるはずだよ。兆秋の爆発力も気にしてるんだから余計に。」

 

その証拠に、時折膠着して止まった鳳さんを見ると汗が滝のように流れ、目の焦点がおぼろげになりつつある。

 

「グロッキー寸前ね。でも兆秋くんもダメージが蓄積してるみたい、このまま良いの一発貰っちゃえばエネルギー切れになるかもしれないわね。」

 

「どっちが勝ってもおかしくはないですね。」

 

それに、どっちが勝っても明日明後日でクラス対抗戦の決勝をできるような状態じゃあないだろうな。

 

そうこう言ってる間にも試合は進んでいった。

 

ほう、どうやらついに鳳さんに隙ができたな。

兆秋がそこを狙って斬りかかろうとする。

鳳さんもそれを察知して防ごうとする。

そして二人がぶつかり合おうとした刹那・・・

 

ドオオオオオン!!

 

上からの謎の閃光が二人の動きを止めた。

 

アリーナのバリアが破られた!?

 

「っ!不味いわね、二人とも避難して!!」

 

「え?え?どういうこと?」

 

「空から“2体”のISが侵入してきたようだな。園山さんは逃げる準備をし」

 

ドオオオオオオオオン!!!

 

片方のISが俺たちのいる控室側にビームを撃ってきた。

 

「ヤバいわねえ。私、今ISを整備に出してて持ってないんだけどなあ。」

「え?嘘??え?え?」

 

何か嫌な予感がする。俺は急いでアリーナの出撃ゲートの出口のすぐ外側に出た。これで何かあってもすぐ加勢することができる。

 

そこで最悪の出来事が起きた。

 

「い??一夏くん??何してるの??アリーナの外は危ないよ???」

 

完全にパニックになってしまった園山さんが俺についてきてしまったのだ。

 

「園山さん早く戻ってきて危険よ!!」

 

「そうだ!戻るんだ!!」

 

しかし・・・

 

ガシャァァァン!!

 

アリーナの出入り口がしまった。クソ、完全にロックされてる。

 

パニックになった園山さんを放置するなんて、俺も動揺してしまったということか。

 

「え??え??嫌・・・死にたくないよお・・・!」

 

・・・責任は取るか。

 

「園山さん、落ち着いて。」

 

「で・・・でもお・・・!!」

 

園山さんは涙を流し震え上がってしまっている。当然だ、生身でISの戦場に立つことになってしまったのだ、その恐怖は計り知れない。

 

「俺があの二人に協力して所属不明のISを倒す。だから園山さんはここを動かないで。」

 

「え・・・」

 

「これでも千冬姉さんの弟さ。不審者程度蹴散らして見せるさ。」

 

さーて、戦うか。

 

行くぞ色鋼!




まずい、このままではオリ弟最強どころか主人公交代騒ぎになってしまう!


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第8話 実戦

やっと一夏の戦闘シーンが書ける!


side兆秋

 

いきなりなんだってんだ!

 

鈴にやっとブレードを当てれると思ったら突然2体のISが現れやがった。

全身装甲で顔も見えやしねえ。

 

「何だテメエらは、所属と目的を言いやがれ。事と次第では」

 

ドオオオン!

 

「危ねえ!!」

 

クソ、躊躇なく高出力ビームを撃ってくんな。

 

『兆秋くん、鳳さん!今すぐアリーナから避難してください、教師部隊が鎮圧に入ります!!』

 

山田先生が通信で避難の指示をしてきた。いつもよりも力強く、そして強い意志を感じる声だ。オレはいい先生に恵まれた。

 

だが・・・

 

「それがそうもいかないみたいです。アリーナの出入り口は全てロックされていて脱出できません。それに敵はアリーナの障壁を破る威力の武装を持っています、ここでオレが足止めしないと観客席がヤバいことになるかもしれません。」

 

『そんな・・・!けれどもしも生徒さん達にもしものことがあったら』

 

「大丈夫です。それに慣れない防戦なんかしたら逆に墜とされてしまいます。」

 

『でも『いいだろう。但し、絶対に無事に帰ってこい。』織斑先生!?』

 

とは言ったものの、かなり不味い状況ではあるな。

 

「おい鈴、この勝負はお預けだ。オレらであのISを倒すぞ。」

 

「はあ・・・はあ・・・そうね・・・あんな奴ら、ぶっ潰してやるわよ・・・!」

 

鈴は大したダメージはないがバテバテだな。

オレは疲れ切ってるとはいえ鈴より余力はあるが、機体がボロボロだ。

しかも敵は2体、絶体絶命ってやつか・・・。

 

「せめて1体だけなら、鈴も守りやすくなるんだけどなあ・・・」

 

そんなことを一人ぼやいていたら、不意に近くから聞きなれた腹立たしい声が聞こえてきた。

 

「じゃあ俺が1体受け持ってやるよ。」

 

黄色く、かなりぶ厚い装甲のISを身に纏った一夏が敵の1体の前に立ちふさがった。

アリーナがロックされる前に出口の外に出たのか。

こいつに借りを作るのは癪だが、しゃあねえな。

 

「出来ればテメエに借りなんざ作りたくなかったが、鈴もいる。遠慮なく手を借りるぞ。」

 

だがこの野郎はとんでもない爆弾を落としていきやがった・・・

 

「借りなら今すぐ返してもらうから気にするな。ほら、あそこに丸腰の女子生徒がいるだろ?あの娘に被害が出ないように立ち回るだけでいい。それで貸し借り無しだ。」

 

「・・・はあ!?」

 

なんでアリーナ内部に無防備な女子生徒が入ってんだよ!?

 

「いやあ、俺が出撃するときにパニックなっちゃって一緒に出てきちゃったみたいなんだ。」

 

「いやあじゃねえよ!助けかと思ったらとんだ爆弾じゃねえか!!」

 

これで死なれたら目覚めが悪いなんてもんじゃねえぞ!!

 

「まあ気にすんな、本格的に盾になるのは俺がやるから、お前は攻撃する方向さえ注意してくれればいいよ。」

 

防御性能がかなり高いからな。と付け加えてくるが、気にするわクソったれ!!

 

「ぜえ・・・ぜえ・・・安心しなさいよ。アタシは代表候補生だから、あの娘に向かって攻撃するようなヘマはしないわ。」

 

「オレはブレードしか持ってねえから当てる心配もねえな。」

 

尤も、俺が避けた攻撃にあの娘が当たる可能性があるから一切油断はできねえがな。

 

「じゃあ、やるか!」

 

「テメエが仕切ってんじゃねえ!」

 

「アタシ達の勝負を邪魔したケジメは付けてもらうわよ!」

 

オレ達は自分の戦うべき相手に向き合った。

 

 

 

 

 

 

 

side箒

 

今、私は動揺していた。

 

「兆秋たちが閉じ込められただと!?」

 

私の大切な人が危険にさらされている。

 

「どこのどなたかは存じませんが、あのISの目的は兆秋さん達のようですわね。」

 

そんな・・・あんなにボロボロなのにあの砲撃を受けてしまったらどうなるか・・・。

 

「どうやら騒ぎを聞きつけた兆秋さんのお兄様も出てきたようですし一先ずはわたくしは観客席の安全を・・・ん?あれはもしや一般生徒?って箒さん!?」

 

私は居ても立ってもいられなくなり、アリーナの出撃ゲートに走って行った。

 

「何ができるか分からんが私も何か一つでも!」

 

せめてほんの少しでもゲートを開ければ・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 

兆秋と鳳さんは上手く連携をとれているみたいだな。

 

俺も俺であの機体と上手く戦わなくちゃ顔が立たないな。

 

俺のIS、色鋼・黄土は移動速度を犠牲にして防御力と制圧力を高めた機体だ。これで園山さんを守りながら敵を倒す。

 

ギュイーン!!

 

敵さんもやる気十分みたいだな。

 

俺は園山さんと敵の間を遮るような位置で待ち構えている。

こっちに気を引きつけて別の場所で戦おうにも1つのアリーナじゃ限界がある。盾で攻撃を受けきるしかなさそうだ。

 

ドギュウウウウン!!

 

高威力のビームが俺に迫る。

 

ドオオオオン!!

 

「やっぱり、黄土の防御力なら耐えられると思ったぜ。」

 

俺は大型のシールドでビームを受け止めた。

元より避けるのではなく受けることを前提にして作られた機体だ。ちょっとぐらいなら全く問題はない。

 

ギュオオオオオオン!!

 

うん?ビームの効果が薄いと見るやすぐさま接近戦を仕掛けてくるか。確かに接近されたらシールドの合間を縫って攻撃されるかもしれないな。

俺はシールドを引っ込めて敵を迎え撃つ姿勢に入った。

 

敵の姿が近付く、そして俺は思いっきり拳を前に突き出した。

 

ドオオオオオオオン!!!

 

俺の右ストレートが当たった敵は勢いよく吹き飛ばされていった。

 

これが黄土の最大の特徴の一つ、“スーパーパワーアシストシステム”

ISのパワーアシストシステムの効果を数倍に跳ね上げた代物だ。これでどんなISであろうとも力負けをすることはない。

 

まあ当然デメリットもある、曲線的に体を動かせないことだ。

軽く動かす程度ならどうにかなるんだが、ある程度力を入れるとどうしてもロボットみたいな直線的な運動しかできなくなる。もっとも、それはそれで速度が出てパンチ力は上がるから悪いことばかりでもないな。

 

ギュイイイイン!

 

流石にこんな堂々と襲撃してくるだけあって立ち直りも早いな。

 

ドンドンドオオオン!!

 

ビームを小刻みに撃ってきやがる。さてはじわじわと削り殺すつもりだな?甘い。

 

「攻撃力も低くはないぞ!」

 

ドドドドドドドドドドドド!!

 

俺は両手に高反動レールマシンガンを持ち、敵に連射した。

本来なら両手に一つずつ持つようなことはせず、動かない相手や拠点に対して放つ武器だが、スーパーパワーアシストシステム、略してSPAシステムの力で少し反動が強めのマシンガン程度の感覚で扱うことができる。

 

ギュウウウガガ・・・ゴオオオガギ!!

 

全弾とはいかないが多少は当たったようだな。そして多少でも十分な威力はあるはず。

 

ゴオオオオオガギ・・・ゴオオオオガガ・・ドオン!!

 

「!?」

 

ドオオオオン!!!

 

「ガフッ!!」

 

あいつどんだけ肝が据わってるんだ!?

レールマシンガンを喰らいながら撃ってきやがった!

クリーンヒットしたからダメージもそれなりだぞ!並みの防御力のISなら今ので負けてたかもしれない・・・

 

ギュイイイイイイイイイイン!!

 

「なっ・・クソ!!」

 

体勢が崩れた瞬間をねらって接近してきやがったか!

ならもう一度殴り飛ばしてやる!

 

ゴウ!ゴウ!ドン!

 

「ぐう・・・」

 

ゴウ!ドオン!!

 

ドオオオオオオオオン!!!

 

崩れた体勢じゃ初撃から当てるのは無理か。

 

ドンドンドオオオン!!

 

また小刻みに撃ってくるのか?じゃあこっちももう一度さっきと同じように削ってやる!

 

ドドドドドドドドドドドドドドドド!!!

 

ガギギュオオオオガギガギ!!

 

さっきと同じように動いているな。おかげで当てやすい。

 

ガガガガガ・・・ドオオオン!!

 

「何度も同じ手を食らうか!」

 

俺は瞬時に盾を構えてビームを防いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side園山

 

とんでもないことをしてしまった・・・

 

アリーナの出撃ゲートの隅っこで私は震え上がっていた。

 

謎のISが学園に侵入してきたとき、私はパニックになり、とっさにISを纏っている一夏くんについていってしまった。

本当なら敵と相対する気の一夏くんについていくなんて自殺行為だったのに・・・

 

自業自得なのはわかっている。けれどそれでも怖い・・・

 

ドンドンドオオオオオオオン!!

 

「ヒッ!」

 

爆発音が鳴り響く。

 

ギュイイイイインガガガガガガガガ!!!

 

戦闘音が止むことがない。

 

「クソったれがああああああ!!!」

 

「まだよ!!」

 

「こいつ恐怖がないのか!?」

 

戦況は芳しくないようだ。

 

私は必死で息を殺した。

 

「お願い、早く終わって・・・」

 

2人がかりだけど満身創痍の兆秋くんと鳳さん、1対1でさらに私の盾になって自由に戦えない一夏くん。

 

ギュウウウウウウウウウウン!!!

 

敵の放ったビームが私に向かってくる。

 

「」

 

ドオオオオオオン!!!

 

「ゴメン園山さん!砲身がそっちに向かっちゃった!」

 

一夏くんが盾で防いでくれた。私は悲鳴すら上げることができなかった・・・。

 

一夏くんは盾で防いでいるがそれでも目に見えて消耗していた。

当然だ、アリーナを破るほどの大出力砲を何度も受け続けたらどんなISでもタダでは済まない。

 

「ぐううううううう!!」

 

攻撃しようにも私のところに来ないように動きを制限するように注意しているからか、攻め方がぎこちないようにも見える。

 

「あ・・・あああああ・・・」

 

“私のことはいいから気にせず戦って”そう言えればよかったんだろうけど、とてもそんなことは言えない。死ぬのが怖い・・・。

 

私は死にたくない・・・。

 

「ヒイイイィィィィィィィィィィィ!!!」

 

助けてえええええ!!!

 

「大丈夫だ!こいつらの正体がわかった!!」

 

一夏くん・・・?

 

「正体さえわかればやりようもある、だからもう少しだけ耐えてくれ!!」

 

その声は確信に満ちていた。

 

「兆秋!お前もそろそろ気がついただろ!」

 

「ああ!こいつら人が乗ってねえ!!無人機ってやつだ!!」

 

無人機?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 

こいつら動きが規則的すぎるし何より人間味が無さすぎる。

今までは突然変則的な動きをされたら困るから大胆な行動はできなかったが、そうゆうプログラムというなら、いくらでも先読みして攻撃を叩きこめる!

 

ドドドドドドドドドドドドド!!!

 

レールマシンガンを放ち、

 

ギュウウン!!

 

ドドドドドドドドオオオン!!

 

回避先にレールキャノンとミサイルを放ち、ダメージを与えた。そうなると・・・

 

ドオオオオオン!!

 

こいつはビームを放ってくる。

 

ゴイイイイイイン!!

 

これを盾で防いで、体勢を崩したふりをすると・・・

 

ギュウウウウウン!!

 

格闘戦をしかけてくるので・・・

 

ドグン!!!

 

殴る。

 

ここまで思い通りに進むなら後は時間の問題だな。

 

さて、兆秋のほうはどうなっているかな?

 

 

 

「零落白夜、最大出力だああああああああ!!!」

 

ズドドドドオオオオオン!!!」

 

背中に龍咆を受けて加速したか!なんて無茶を・・・。

だが、その成果として敵を左肩から右の脇腹まで切り裂いて真っ二つにしたな。

 

「おい。」

 

「ん?」

 

兆秋から通信が入った。

 

「オレも鈴も限界をとっくに超えてるからよ、テメエはテメエで始末しろや。」

 

「言われるまでもないな。」

 

兆秋は意識朦朧な鳳さんに肩を貸してアリーナの端に去って行った。

こりゃあ二人とも検査入院は確実だな。

 

「俺も終わらせるか。」

 

弟が終わらせたのに俺だけダラダラ続けるのもカッコ悪いな。

 

「黄土、全武装フルバースト!!!」

 

音速を超えた速度の弾丸と砲弾が、大量の火薬を詰め込んだ小型ミサイルが、無人機に殺到していく。

 

ドドドドドドドオオオオオオオン!!!!

 

「まだだ!!」

 

ドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

これで確実に破壊する!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side園山

 

今、私の目の前で奇跡が起きている。

 

兆秋くんと鳳さんが相手にしていた敵は切り裂かれ、一夏くんの敵は胴体を砕かれて頭を吹き飛ばされていた。

 

「コアの回収は俺がやるから、兆秋はもう少しそこでゆっくりしてろよ。」

 

「ああ、そうさせてもらうわ。」

 

ガチャガチャとアリーナの出撃ゲートも開いていく。

 

「やっと開いたか!兆秋、無事か!!」

 

兆秋くんと同室の篠ノ之さんは敵の襲撃の際、いてもたってもいられなかったのか避難せずアリーナの出撃ゲートの内側まで来て、兆秋くんたちが逃げられるようにゲートを開けようと奮闘していたようだ。私の横を通り過ぎて兆秋くんに駆け寄ろうとする。

 

やった!3人とも勝ったんだ!!

そう思った私はまた過ちを犯したのだ・・・

 

「兆秋ー!!鳳!!!肩を貸すぞ!!!」

 

「やった!!!私たち、生き残ったんだ!!!」

 

私は歓喜の涙を流しながらはしゃいでしまったのだ、そして・・・

 

 

ピカッ!

 

ボロボロに壊れていたはずの2体の無人機の目が光った。

 

「なに!?」

「再起動したのか!?」

 

そして

 

ギュイイイイン!!

 

かろうじて残っていた無人機たちの腕の砲門が私のほうを向き・・・

 

「オレはオレの相手をやる!」

「俺も自分の責任は自分で取る!」

 

コオオオオオオオオオ・・・・

 

光が集まり・・・

 

「黄土じゃ間に合わない!赤銅!!」

「零落白夜を発動させるエネルギーがねえ!PIS制御全開!!」

 

「「間に合えええええええええ!!!」」

 

ドオオオオオオオオオオオオオオン!!!

 

ドガアアアアアアアアアアアアアン!!!!!

 

轟音が鳴り響いた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ・・・?生きてる?

 

「き・・・兆秋いいいいいいい!!!」

 

篠ノ之さんの悲痛な叫びが聞こえる。

 

「ゴフッ・・・」

 

え・・・?

 

私の目の前にはボロボロになった一夏くんが倒れていた・・・

 

「き・・・キャアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

私は訳が分らなくなって、その後先生たちに保健室に連れて行かれるまでのことは、あんまり覚えてない。




第3世代の兵装を初めて登場させた瞬間に撃墜される主人公。

ここでの箒さんと園山さんはかなりパニクってます。

箒さんは原作より尽くしたい系だから行動力があります。
・・・行動力あふれるパニックが役に立つのかどうかは置いといて。


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第9話 フォームチェンジ

みんな割と気が付いていると思う色鋼の能力の説明。


 

side一夏

 

なんで俺は寝てるんだ?

 

慣れていない感触の布団で落ち着かない。

眩しくてもう少し目をつぶっていたいが、そうも言っていられない。

 

「真っ白な部屋だな。」

 

「そりゃあ保健室だからな。」

 

すぐ隣から兆秋の声が聞こえた。

 

保健室?ああ、思いだしてきた。俺はあの時止めを刺し損ねた無人機と相打ちになったのか。

意識がはっきりしてきたらほぼ全身から痛みが襲ってくる。よく見たら俺包帯だらけだな。

 

「おい。」

 

「・・・なんだよ。」

 

痛くて辛いからそっとしておいてほしかったが、俺と同じく包帯だらけで辛かろう兆秋が聞いてきたのだから、仕方ない。

 

「テメエ、あの機体の防御力ならそこまでにはならなかっただろどういうことだよ。」

 

「なんで自分の機体の秘密をベラベラ喋らなくちゃいけないんだよ。」

 

「ハッ、勝手にしろ。」

 

「でもまあ、俺だけ白式の特性知ってるのもなんだし教えてやるよ。」

 

「じゃあ最初から素直に喋れよ。」

 

「俺の機体“色鋼”はな、フォームチェンジするんだよ。」

 

「だから色なのか。」

 

「そう、赤・青・黄の三つのフォームをもってるぞ!」

 

「なんか信号機みてえだな。」

 

「色の三原色と言え、三原色と!」

 

「それは赤紫・水色・黄だろ・・・。」

 

「細かいことはいいんだよ。話を戻すと、あの時俺は間に合わないと思って機動力のあるフォームにチェンジしたんだよ。その分装甲が薄くなったからこの様ってわけだ。」

 

「ああ、納得。」

 

「じゃあ今度は俺からの質問だ。」

 

「何だよ。」

 

「・・・俺たち、誰もお見舞いに来てくれてないのか?」

 

さっきからこの保健室、俺ら二人しかいねえ・・・

 

「時計見ろよ、もう11時だ。全員帰されたんだろ・・・多分。」

 

さては兆秋もさっき目が覚めたところだな。

全員と、いかにも大勢のような言い方をしたのは本人の願望もあるんだろう。

 

「しかし電気がついているということは保険の先生はまだいるってことだよな。」

 

「ああ、多分電気を消すためにもう少ししたら・・・」

 

ガチャ

 

噂をすればだな。

 

「目が覚めたか一夏、兆秋。」

 

保険の先生じゃなくて姉さんか。

 

「オレらはどれくらい寝てたんだ?千冬姉。」

 

「安心しろ、何日も目が覚めなかったわけじゃあない。数時間程度だ。」

 

どれくらい寝てたかも大事だが、俺が今一番気にしなくちゃならないのは・・・。

 

「園山さんは大丈夫だった?」

 

「ああ、お前のことで強い罪悪感を感じて不安定になっていたからな。お前のベットからかじりついて離れなかったが、少し無理やり剥がしてカウンセリングを受けさせた。今は精神用の保健室に押し込んで寝かせた。鳳はもう既に治療を終えて部屋で休ませている、お前たちのいる保健室よりは疲れもとれるだろう。」

 

鳳さんは怪我よりも体力の消耗のほうが酷そうだったからなあ。しかし、この学園には精神疾患の人のための保健室まであるのか、仮にも兵器を使う学園だけあってしっかりしている。

と言うか兆秋、お前も真っ先に箒ちゃんたちのことを聞くべきだったろうに。

 

「あいつらは大丈夫なんだよ。オレらが無事な以上、すぐに立ち上がれるさ。」

 

「俺まだ何も言ってないだろ。」

 

「ツラ見りゃわかんだよ。まあ、箒と鈴はただの一般生徒とは違うんだよ、多分俺らともな。」

 

当然、動けるようになったら詫び入れに行くけどな。そう付け加えて兆秋は脱力してもうひと眠りする体勢になった。

 

「兆秋の言うとおり、二人とも無人機のことについてはもう気にしていないようだ。」

 

無人機のことについては?ああ、なるほど。

 

「・・・兆秋が傷ついたことについてはかなり気に病んでいるようだったがな。」

 

ぼそっとつぶやくが、この言葉は兆秋には届いていないだろう。

 

「お前ももうひと眠りしろ。明日には見舞いも来るから今のうちに休んでおけ。」

 

「わかったよ。じゃあ、お休み。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side園山

 

昨日の襲撃事件で私は精神的なショックを受けてしまい、今日もカウンセリングを受けることになった。まるで被害者かのように治療を受けるのは気が進まなかった。私のせいで一夏くんがあんな目にあったのに・・・。、

 

「お願いですから無事に目を覚ましてください、お願いしますお願いします・・・。」

 

昨日は4時くらいまで寝付けず、さっき目が覚めたのが7時だ。

体がとても重たい、でも寝れそうにもない・・・。

 

 

コンコン

 

 

扉からノックが聞こえた。いったい誰だろうか、カウンセラーの先生だろうか。

 

「園山、起きているか。」

 

織斑先生の声だ。弟さんが酷い目にあったのに私にも気をかけてくれる優しい先生だけど、その優しさが今の私にはつらい。

いっそ責めてくれた方が楽かもしれない。

しかし織斑先生が放った言葉は私を責めるものでも慰めるものでもなかった。

 

「織斑兄弟が目を覚ましたぞ。何か言いたいことがあるならさっさと言いに行って吐き出してこい。」

 

!!!

2人とも目が覚めたんだ!

 

「ありがとうございます織斑先生!!」

 

「おい、廊下を走るな!」

 

後ろから聞こえる織斑先生の声にも気付かず、私は一夏君たちのいる保健室に走った。

 

よかった!本当によかった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 

「うーん、いい朝でもないなあ・・・。」

 

二度寝での就寝だったが、実戦の疲れというものは思った以上に大きいらしく、ぐっすりと眠れた。

でも、相変わらず体は痛いし保健室のベットは慣れないし、早く少しでも慣れた寮に帰りたいなあ。たった1日とはいえ、たっちゃん先輩とのやや気の休まらないルームシェアが懐かしい。

 

「なんで朝っぱらからテメエなんぞの顔を見なくちゃなんねえんだよ。」

 

「なんで朝っぱらから文句を言われなくちゃならないんだよ・・・。」

 

まあ、文句を言われつつも一緒に暮らす相手だけはこっちのほうが落ち着くんだよなあ。

 

 

ドタドタドタドタ!

 

 

うん?外から結構な数の足音が近づいて・・・

 

 

ガチャ!!

 

 

「「一夏くん!!!」」

「「「兆秋(さん)!!!」」」

 

「あ、いらっしゃい。」

「心配掛けたな。」

 

俺の名前を呼んだのがたっちゃん先輩と園山さんで、兆秋を呼んだのが箒ちゃんと鳳さんとオルコットさんだ。少しして、後ろから千冬姉さんも付き添いで入ってきた。

 

「鈴、お前もう体力は大丈夫なのかよ。」

 

「1日寝れば大体の疲れは吹き飛ぶわよ。」

 

「本当に心配しましたのよ!」

 

「ああ、悪かったよ。」

 

 

「一夏くん、無事でよかったわ・・・!」

 

「たっちゃん先輩の教えのお陰ですよ。」

 

さて、一番の問題は・・・。

 

「一夏くん・・・。」

 

「兆秋・・・。」

 

「園山さん・・・。」

 

「箒・・・。」

 

 

「「「「あの時は危ない目にあわせて悪かった(ごめんなさい)!!!」」」」

 

ん?

 

「なんで一夏くんが謝るの?悪いのは足を引っ張っちゃった挙句に敵の前に出た私だよ!!」

 

「いや、あの時の園山さんを放置した俺の落ち度だ。そのせいでただの制服姿でISの前に立たせてしまった。誤って済む問題じゃないけど、本当にゴメン。」

 

 

「兆秋、あの時私が余計なことさえしなければ・・・!」

 

「あれは俺も勝ったと思っちまったからな。どの道、撃たれて今と同じだったろうよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side兆秋

 

うーん、しばらく話してるが、謝罪合戦になってさっぱり埒が明かねえ。

 

「じゃあ、オレも箒も落ち度があったってことで一緒に成長しようぜ。」

 

「あ、じゃあ俺らのほうもそれで。」

 

「「え!?」」

 

「ぐ・・・それでは私の気が済まない!何か償いをさせてくれ!」

 

「そんな!あんなに迷惑かけちゃったのにそれだけなんて・・・っていうかぞんざい!隣から丸パクリで済まそうとするなんてぞんざいだよ!」

 

「だってこのままじゃあ延々と謝罪合戦になっちゃうしあんまり気を遣わせるのは俺も本意じゃないし。」

 

「うっ・・・そう言われると私も・・・。」

 

別にパクるのはいいけどよお、“じゃあ”は無いだろう・・・ホントにぞんざいじゃねえか。

まさかとは思うが途中から面倒臭くなってきたわけじゃねえだろうな。

 

(そんな訳ないだろう。)

 

目線で話しかけてくるんじゃねえ!って言うかそこまで察っせるってことは図星じゃねえか!!園山さんへの申し訳なさはどこに行ったんだよ!!

 

(だって埒が明かないし、別の形で償えばいいかなーって。)

 

その意見そのものがぞんざいだわ!つーかあんまり目線で話しかけてくるんじゃねえ!!仲良いみたいで気持ち悪いわ!!歪んでいたとはいえ積み重ねてきた双子としての時間が憎い!!

 

(そろそろ教師として話があるから切り上げろよ。)

 

千冬姉、ややこしくなるから入ってくるんじゃねえ!

 

(だって私だけ家族からはぶられてるみたいで寂しいだろう。)

 

(そうだぞ兆秋、それにいいじゃないか。どうせ俺たちこれやってる最中も普通に皆と会話してるわけだし。問題はないだろ。)

 

自分でやっててなんだけどホントなんなんだよオレらのこの特殊能力。

 

((親なし3人暮らしの苦労で培った物だ。))

 

まあ、昔は苦労したからな・・・

 

(あ、それとお前らまだしばらく体が痛むだろうが明日から普通に出席な。)

 

「「なにぃ!?」」

 

「「「「「いきなりどうした(の)一夏(兆秋)くん(さん)!!」」」」」




旅行してたんで投稿遅くなりました。

色鋼は平成ライダーをモチーフにしました。


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番外編1 エイミーの新しい日常

じわじわと投稿が遅くなってきていますが、エタらず頑張っていきます。


 

はあ、毎年のことながら年度替りは忙しいわ。しかも今年は世界でたった二人の男性操縦者が入学してきたんだもの、いつもの倍は忙しく感じるわね

 

「でも、かわいい生徒なんだしケアしてあげなくちゃあねえ。」

 

「うむ、その通りですな。エイミー先生。」

 

「ジェイミー先生、い・・まお帰りで?」

 

危ない危ない、もう少しでジェイミー先生を少し落ち込ませるところだったわ。

 

「ええ、ちょうど書類が終わりまして。」

 

うん、一人で夜道を帰るのも寂しいし、このまま一緒に話しながら歩くのもいいでしょう。

 

「しかし、私たちもかなりの重役を任されたものよね。」

 

「そうですね。織斑兄だけでなく男子慣れしていない女子にも気を張らなくてはなりませんからね。」

 

「そうねえ、でもよかったじゃない。意外と皆、グイグイいってたし。もしかしたら私たち教師よりも男性慣れしてたりして。」

 

「ああ、たしか1組には・・・。」

 

山田先生、大丈夫かしらね。

 

「でも1組はいいんじゃないかしら、織斑先生は姉なんだし、慣れてるなんてもんじゃないでしょ。」

 

「厳格な人ですからね、変な肩入れや依怙贔屓はしないでしょう。」

 

「逆に肩入れしなさすぎるのも問題だと思うけどね、今までISの勉強なんて一切してなかったみたいだし。」

 

「そう考えると二人とも才能あふれる人間で良かったかもしれませんね。その辺の男子高校生では今の時点で潰れていたかもしれません。」

 

「ああ、ずっとIS学園で教鞭とってると忘れがちになるけど、うちって倍率100倍越えの超実力主義の軍事学校みたいなもんだったわね。」

 

でも私、その辺の男子高校生のことなんてさっぱりわからないわ。もう少し若者の流行とかに敏感になったほうがいいのかしら。

 

「その点、織斑兄はよく食らいついてると思います。しっかりと努力を積み、争いを避け、問題も起こさない穏やかな性格。立派な模範生ですよ。」

 

「ホント、いい子よね。皆あんな子なら楽なんだけどねえ。」

 

「闘争心の類がないのが少し残念ですね。」

 

「そんな子なのになんで兆秋君と仲が悪いのかしらね。」

 

「どちらかと言うと織斑弟が一方的に嫌っているようでしたね、兄以外には気のいい性格らしいのですが、不思議な話です。」

 

そうなのよねえ。現に一触即発にまでなったオルコットさんともすでに仲直りしてるらしいし、あの様子じゃあかわいい女の子限定ってわけでもなさそうなんだけど。

 

「もしかしたら一夏君にも原因があったりして。」

 

「どちらに原因があるにしても、更識姉の話では暴力沙汰になりかけたらしいですからね。そうなれば私たちも首を突っ込む必要があるでしょうね。」

 

だから二人のクラスを離したのね。それで気の強い兆秋君を姉の織斑先生が面倒を見ると。

 

「相性そのものは悪くないんでしょうけどね。」

 

「聞いた話では、険悪な仲になっていたオルコットと織斑弟は試合を通して仲直りをしたとのことですが、織斑兄もその方法ではダメでしょうか?」

 

「うーん、難しそうねえ。一夏君は授業や行事でもない限りそういう争い事は嫌がると思うわ。」

 

戦わなきゃいけない時は全力を出すと思うけど、戦わなくてよさそうなら絶対避けるでしょうね。極端に争い事が嫌いそうなのよねえ。

 

「・・・もしや、その気質のせいで拗れに拗れているわけでは無いですよね。」

 

「いやそんな・・・まさかね。」

 

なんだろう、一夏君をやる気にさせて兆秋君と戦わせたら全部解決しそうな気がしてきたわ。

 

「負けん気や闘争心が無さすぎるのも、考え物ですね。」

 

「この件は例外中の例外よ、多分。」

 

「いえ、世界でたった二人しかいない男性操縦者ですし、もしかしたら各国から転入生がくるかもしれません。」

 

「ええ、でもうちに転入なんて、それこそ代表候補クラスの実力者じゃない限り無理よね。」

 

「そうです。そして代表候補生となるとプライドが高く、加えて1年生となれば実力だけあってもまだ精神的に未熟な娘の方が多いでしょう。」

 

そうねえ、オルコットさんなんて正にそれだったものねえ。そういうところを直していくのが私たち教師の仕事でもあるのよねえ。

 

「そして国の指示で来たとなれば織斑兄と接触するでしょう。そして機体のデータを採るために模擬戦を挑もうとするかもしれません。そうなれば・・・。」

 

ああ、何となく話が見えてきたわ。

 

「一夏君がその模擬戦を断ったら角が立つと。」

 

「そうです、普通に挑むならともかく挑発をされるようなことがあれば、喧嘩を売られたと判断して引き下がるでしょう。しかもあいつは卑屈に断るのではなく飄々とかわしていきますからね。そしたら第2第3の織斑弟が出来上がるかもしれません。」

 

うーん、自信満々の娘は上から目線で挑みかかるでしょうねえ。

 

「シャレにならないわねそれ。」

 

相手にもされないっていうのは転入できるような娘にはさぞ屈辱でしょうねえ。

 

「ほとんどが憶測にすぎませんが、決してあり得ないことではないと思います。」

 

ジェイミー先生も昔はそれはそれは獰猛だったらしいものねえ。

 

「ええ、ご想像の通り、昔の私だったらどうするかを考えた結果が今の憶測です。」

 

「・・・顔に出てたかしら。」

 

「何となくそう思われている気がしまして。」

 

「しかし、どうしたものかしらね。問題がわかっても多分本人は悪気があってやってるわけじゃなさそうだものね。」

 

むしろくだらない争いを避けるとかいって善意でやってる節があるものねえ。

 

「無自覚ゆえに、かえって相手の神経を逆なでするでしょうねえ。」

 

「そしてそれを理解させてやるのも骨が折れそうですね。」

 

お、そうこう言ってるうちに分かれ道になったわね。

 

「では、私はこっちなので失礼いたします。」

 

「あら、一緒に居酒屋にでも酔っていかないかしら?」

 

「ああ、申し訳ありません、今日は夫の誕生日なんで外せないんです。」

 

・・・・・・・・

 

「あ、そうだ、これどうぞ。」

 

「・・・これは?」

 

「夫の誕生日プレゼントを買ったときにくじ引きがありまして、それに当たって貰った和菓子セットです。本来1000円くらいになるものだそうで、いつもエミリー先生にはお世話になっているのでお礼に差し上げます。」

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

「そう、ありがとうねジェイミー先生。」

 

「どうなされましたエミリー先生?そんな沈んだ顔をして。織斑兄弟のことなら心配せずとも私も微力ながら力になりますからきっとどうにかなりますよ。それに男心も私の夫に聞けば力になってくれると思いますし、安心してください。」

 

「あ、うん・・・ありがとう、頼りにしてるわ。後、お菓子、おいしく食べさせてもらうわね・・・。」

 

「ええ、私たち二人で1年3組を立派なクラスにしていきましょう。」

 

そう言って彼女は歩いて行った。

 

悪気がなくって無自覚ゆえに・・・かあ。

重たいなあ、この和菓子。

 

「・・・結婚したいなあ。」

 

我が家で独りぼっちで食べた和菓子は、どこか色あせた味をしていた。

 




余談ですが、ジェイミーは今でもちょくちょく連絡を取り合っているオーストラリアの代表(独身)に、無自覚で惚気てメンタルにダメージを与えています。


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第10話 ドイツ軍人と3人目の男

せめて2週間に1度の投稿を下回ることは避けたいと思ってます(避けきれるとは言ってない。)


side一夏

 

やれやれ、この間の無人機との戦いでは酷い目にあったけど、これでしばらくは平和に過ごせそうだな。

休み時間の教室でそんなことを思いながら過ごしていたら

 

「ねえ一夏くん知ってる?1組に転入生が入ったんだって、しかも二人も!」

「しかも片方は男の子なんだって!」

「もう片方は初っ端から兆秋くんの顔を引っ叩いたんだって!」

 

園山さんたち3人がそんな噂を教えてきた。

鳳さんに続いてまた二人もねえ、しかも片方は男か。

 

「その男の子とはぜひ仲良くなりたいな。」

 

もう片方は面倒くさそうだからパスで。

 

「ああ~、兆秋くんと仲悪いらしいもんね。」

「うんうん、同性の友達は大事だよね。」

「きっと一夏くんなら仲良くなれるよ!」

 

でも会いに行くには1組に行かなきゃならないんだよなあ。

 

「そもそも、俺と兆秋が違うクラスなんだから、その転入生も2組か4組にいれるべきだろう。」

 

「「「言われてみれば確かに・・・。」」」

 

「もう一人くらい男性操縦者が現れないかなあ。そうしたら3組にも来てくれるかもしれないのに。」

 

「もう望み薄じゃない?」

「今までずーっと見つからなかったわけだしね。」

「さらに同い年となるとねえ・・・。」

 

そうだよなあ、他に男性操縦者がいるとしても、そいつが4歳とか70歳とかの可能性が十分あるんだよなあ。

 

「そう言われると、なんか男性操縦者が3人とも高校1年生っていうのも作為的なものを感じちゃうよな。俺と兆秋だけなら双子だからって説明できたけど。」

 

「もしかしたら一夏くんたちが動かしたから同い年の男の子たちも動かせるようになったのかも。」

「ああ、ISのコアってネットワークで繋がってるらしいもんね。」

「学習ってやつ?」

 

だったらいいなあ。

 

「男の方が衝撃で忘れてたけど、もう一人の娘は兆秋のこと引っ叩いたんだって?」

 

「そうそう、教室に入ってきて早々に叩いたんだって。」

「なんでも“お前をあの人の弟とは認めない”とか何とか言ってたみたい。:

「一夏君も気をつけたほうがいいかもね。」

 

なにそれメチャクチャ面倒な奴じゃん。兆秋頑張れよ、兄は安全圏から見守っているぞ。

 

「さて、俺は認められているのかな?」

 

「「「多分、認められてないんじゃない?」」」

 

「だよなあ。」

 

認められる理由もないし、多分俺も嫌われてるんだろうなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side兆秋

 

 

バシーン!

 

弾かれたような快音が俺の頬から鳴る。

 

「私は認めない、教官の足を引っ張った貴様を教官の弟とは。」

 

このクソちび・・・!

 

「テメエいきなりご挨拶じゃねえか・・・」

 

オレは席から立ち上がり拳に力を入れる。

 

「フン、今ここで身の程をわからせてやってもかまわんぞ。」

 

この刺すような威圧感、見た目や振る舞い通り本物の軍人らしいな。

上等だ、やってやる!

 

「そこまでだ馬鹿者ども。」

 

「ああ!?」

 

「ふっ、命拾いしたな。」

 

「多少の不仲なら気にせんが、時と場所をわきまえることだ。」

 

ボーデヴィッヒは馬鹿にしたような眼でこちらを見ながら席に着いた。

その鼻っ柱必ず叩き折ってやる・・・!

 

 

 

side一夏

 

「うーむ。」

 

休み時間中、俺はトイレから帰ってくるときに考え事をしていた。

 

新しい男性操縦者に会いたい!でも兆秋とはち合わせたらトラブっちまう!どうしたもんかな。

そんなことを考えていると後ろから声をかけられた。

 

「貴様が織斑一夏か。」

 

「そうだけど、アンタ誰?」

 

振り向いてみると背が小さく、可愛らしい少女がいた。

しかしこの眼帯に制服。ああ、成程ね。彼女が兆秋をひっぱたいた娘ね。

 

「フン、軽薄そうな奴だ。足こそ引っ張ってはいないようだが、教官の家族にふさわしいとはとても思えんな。」

 

足を引っ張る?そうか、この娘はドイツ軍の出身か。そういえば姉さんはドイツ軍にISの操縦技術の教導をしに行ったことがあったな。

その理由が第2回モンド・グロッソで観戦に行った兆秋が誘拐され、その捜索にドイツ軍も協力をしたからその礼だっけ。

その時俺は、家を空にするのも難だからって留守番してたな。

つまり・・・

 

「まあいい。貴様がごとき有象無象、いちいち構うまでもない。」

 

俺に被害は来ねえ!

 

「そっか。じゃあ俺は急いで教室に帰らなきゃいけないんでね。」

 

そうして俺はさっさと教室に戻って行った。

 

「フン・・・。なんと惰弱な。」

 

何とでも言えばいいさ、変な争い事になるよりはマシだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな訳で俺は安全さ!」

 

昼休み中、園山さん達と弁当を食べながら俺は何故か自慢げにそんなことを言っていた。

 

「よかったね一夏くん。」

「平和が一番だもんね。」

「一夏くん殴られたら多分泣き寝入りしちゃうもんね。」

 

泣かねえよ。

 

「しかし本当によかったよ。あれはマジな軍人だったし、襲われたら大変そうだな。」

 

「そうなってくると兆秋くんの方は大丈夫なのかな?」

「ああ、兆秋くん売られたケンカは買いそうだもんねえ。」

「ボコボコにされちゃったりして・・・」

 

「ああ・・・」

 

確かに兆秋は立ち向かっちゃうんだろうなあ。昔、姉さんにエロ本捨てられた時に、俺は止めとけって言ったんだけど・・・

『オレは勝てるかどうかで戦う相手は決めねえ!』とか言って勇敢に姉さんに立ち向って行ったっけ。当然ものの数秒でボッコボコにされてたけど。

 

「けど俺が行ってもなあ。」

 

俺の弟に手を出すな!→よくも教官の二連覇を!→兄貴ぶっ殺す!→俺の弟(ry

 

「うん、碌でもない三竦みにしかならないな。」

 

「そっかあ。」

「でもそんな状況なら兆秋くんも協力してくれるんじゃあ・・」

「むしろ邪魔者として一夏くんが集中攻撃されちゃったりして。」

 

「何それ一番困る。」

 

何にせよ俺が首を突っ込むべきことじゃないな。この件はホントに全部兆秋に任せるとしよう。

 

「まあ、もし一夏くんが標的にされちゃっても私たちは陰ながら無事を祈ってるよ。」

「ちゃんと保健室に運ぶからね!」

「・・・」

 

「いやいやそこは助け船を頂戴よ。」

 

言ってみたものの、一般人にすぎない彼女たちが軍の関係者を相手にするのは無理があるだろうし、保健室に運んでくれるだけかなり優しい部類に仕分けされるな。

最も、俺が標的にされる可能性なんて今はもうすでにかなり低くなっているから、彼女たちも俺も冗談で言っているに過ぎないんだけどな。

 

「おっと、もうこんな時間か。早く教室に戻らなくちゃな。」

 

「ホントだ、結構な時間だね!」

「早歩きで行かなきゃ。」

「一緒に行こう!」

 

「悪い、菓子パンのゴミ捨てて行くから先に行ってて。」

 

「そっか、急いでね!」

「おっ先ー!」

「・・・」

 

そう言って彼女たち2人はさっさと教室に戻って行った・・・2人?

 

「園山さんは行かないの?」

 

そう聞くと園山さんは顔を少し赤くしながら意を決したように言葉を吐いた。

 

「転校生の娘が一夏くんに襲いかかってきても、私は味方になるから!」

 

そう言って彼女は小走りで去って行った。

 

「そんな事にはならないって園山さんもわかってるんだろうけど・・・。」

 

ああ言ってもらえると、すごく嬉しいもんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さーて放課後だ。ちょっと売店近くでもぶらぶらしてから帰るか。そう思っていたら後ろから声をかけられた。

 

「君が織斑一夏くん?」

 

「そうだけど君は・・・!」

 

このズボン、平らな胸・・・こいつは!

 

「君が噂の三人目の男性操縦者か!!」

 

「う・・・うん、そうだよ。」

 

おっと、いかんいかん。テンションが上がってつい食いつきすぎちゃったな。ちょっと引かれちゃった。

 

「悪い、学園の同姓が弟しかいなくてな、つい舞い上がっちゃったよ。」

 

「気にしなくていいよ、ちょっとビックリしただけだから。」

 

ふーむ、背は低めで体も細い、声も高いし顔も中性的だ。存外俺や兆秋よりも楽に学園に溶け込めるかもな。

 

「僕はシャルル・デュノア。フランスから来たんだ、よろしくね。」

 

「織斑一夏だ。改めてよろしくな。」

 

人柄も柔らかいし、仲良くなれそうだ!

 

そうして俺はシャルルと話をしながら売店を回り、寮に戻って行った。

この時、俺は自分の平和を信じて疑っていなかった。眼帯娘とは関わらず、シャルルと仲良くなり、何事もなく日々が過ぎていくと思っていた。

 

この数日後、タッグトーナメントで波乱が起こるとも知らずに・・・

 

 




おかしい、元々園山さんはただの名前付きモブ以外の何物でもなかったはずなのに。


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第11話 学年別タッグトーナメント ペア決め

未だに主人公の一夏が1回しか戦ってないので、トーナメントは試合数を多くするつもりです。


side一夏

 

「「「「一夏くん、私とペアになって!!」」」」

 

どうしてこうなった。

 

事の発端は学年別トーナメントがタッグ戦になった事と、兆秋に関するある噂のせいである。

あの野郎どういう訳か『優勝者は兆秋と交際できる』等という噂を流されてしまったらしく、大勢の女の子たちはこのタッグトーナメントにかなりの熱意を燃やしているのだ。

そして、手っ取り早く優勝する確率を上げる方法は強い生徒、つまりは専用機持ちのタッグになることだ。

 

しかしここで一つ問題が発生する。

優勝者は二人存在することになる。そうなるとその二人が戦い、勝利したほうが兆秋と付き合う権利を得ることになる。そうなれば一般生徒が勝てる確率は0に等しい。

 

つまり兆秋との交際に興味のない専用機持ちを選ぶ必要がある。

そして1年の専用機持ちは・・・

 

オルコットさんと鈴→兆秋に好意があるため不可。

 

眼帯娘→兆秋と付き合う気はないだろうけどなんか怖い。

 

兆秋とシャルル→もうこの二人で組んでいる。

 

俺→絶対に権利に興味を示さない上に襲撃事件である程度の力は示した。

 

 

つまり俺にタッグの申し込みが大量に来るのは当然のことだった。チクショウあの野郎、男が来た事に舞い上がってさっさと誘いやがったな。

 

「いやあ、悪いけど俺、今回は抽選で決めようと思うんだ。」

 

「ええ!なんでえ?」

「デザートおごるからお願い!!」

「絶対足引っ張らないから!」

 

一応言っておくと、この集団の中に園山さんたちはいない。

 

「一期一会って言うかな、このドキドキ感が好きなんだ。」

 

抽選を選んだ理由は二つある。

一つは、一般生徒にすぎない園山さんたちからペアを選んだ場合、変なやっかみを受ける可能性がある。

そして・・・

 

「それにほら、わざわざ俺がそんな風に自分から贔屓するような真似をしたらさ、他の専用機持ちの娘が怖いじゃん。」

 

これがもう半分の理由。

今はまだ兆秋ハーレムの3人からの接触はないが、俺がアグレッシブに誰かを兆秋に勧めるような真似をした場合、何が起こるかわかったもんじゃない。

下手したら外堀から埋めていくと言わんばかりに俺に自分を売り込んでくるかもしれない。

そうなったら俺の平和な(女子高にいるにしてはだけど)学園生活は終わりだ!

 

「「「「ああ~、なるほどねー。」」」」

 

「そんなわけで、諦めてくれ。」

 

そうしたら皆、仕方ないといった雰囲気で諦めてくれたようだ。

 

いやー、よかったよかった。

 

その夜、俺は噂を聞いた。

鳳さんとオルコットさんが眼帯娘と戦いボロボロにされ、大ケガを負う寸前のところで兆秋が何とか助けだしたらしい。

その際、兆秋は敗北に近い形で事態は収束したらしい。

 

 

 

 

 

 

 

時は少し巻き戻る

 

side兆秋

 

「やめろおおおおお!!!」

 

ガキイイイイイイン!!

 

「感情のままに突っ込んでくるとは、やはり愚図か。」

 

オレはシャルルとISの訓練のために第3アリーナに足を運んだのだが、そこでは先にセシリアと鈴がボーデヴィッヒと戦っていた。

2対1で鈴とセシリアが有利なはずだが、ボーデヴィッヒは凄まじい強さで2人を圧倒していやがった。それだけなら不快だが何の問題もなかったが、あろうことかボーデヴィッヒは戦闘不能に近い2人に対して過剰な攻撃を加えていた。

このままではヤバいと感じたオレはアリーナのシールドを零落白夜で切り裂き、シャルルと共にボーデヴィッヒを止めに入った。

 

「シャルルは2人を安全な場所に運んでくれ、オレはこのチビの相手をする!」

 

「兆秋!無理はしないで、すぐに先生を呼ぶから!」

 

そう言ってシャルルは2人を出口に運んで行った。

先生が来るまで逃げ回ってればいいんだろうけどよお、流石にこのままへっぴり腰で引き下がるのは性に合わねえな。

 

「覚悟しろよテメエ・・・」

 

「フ、彼我の実力差もわからんか。」

 

分かっちゃいるさ、認めるのは癪だがこのアマは今んとこオレより遥かに強え。

 

だけどな、

 

「勝てる勝てないで相手を選ぶ趣味は無えんだよ!」

 

ガキイイイン!!

 

俺のブレードとボーデヴィッヒのプラズマ手刀がぶつかり合った。

 

ガガガガガガガガガガ!!

 

「貴様のそれは勇気ではなく愚昧というのだ。」

 

クソ、わざわざ格闘戦で戦われてるっていうのにこうまで捌かれるか!

 

「ウォォォオオオオオオオオオ!!!!」

 

「フム、格闘能力だけは及第点をくれてやってもいいが・・・。」

 

ボーデヴィッヒの機体から無数のワイヤーが飛び出てきてオレに襲いかかってきた。

 

「ぐうっ、クソ!」

 

「あくまで及第点、教官のように戦おうなど100年早い。」

 

完全にオレの距離だってのに攻撃する隙がねえ!

 

「どうした、そんなものか?」

 

「舐めるなあああああああああ!!!」

 

こうなったらある程度の被弾は覚悟の上でぶち込んでやる!!

 

「それはこちらのセリフだ青二才。」

 

「なに!?」

 

ボーデヴィッヒに手を向けられた瞬間、オレは身動き一つ取れなくなった。

 

「軍属であるこの私に、そんな手が本当に通用すると思っていたのか?」

 

ボーデヴィッヒはオレに対して、まるで余裕を見せつけるかのようにゆっくりとレールカノンの標準を合わせてきた。

 

「チクショウ・・・!」

 

どれだけもがいてもこの拘束を引きちぎれる気がしねえ。打つ手なし、完全にオレの負けだ。

このままいいようにボコされるのかと思ったが・・・。

 

「そこまでだ馬鹿者ども。」

 

凛とした存在感を放つ声がアリーナに響き、オレとボーデヴィッヒはまるでDVDを一時停止したかのようにピタリと動きを止めた。

 

「ハッ・・・まさか千冬姉が来るとはなあ。」

 

「教官がそう仰るならば。」

 

「模擬戦をやる分には構わんが、アリーナのバリアを破壊するだの重傷者を出すだのと言ったことは看過できん。これよりはタッグトーナメントが終わるまでの模擬戦を禁じる。決着はトーナメントでつけろ。」

 

「ハッ!」

 

「了解ですよ。織斑先生。」

 

ボーデヴィッヒは軍人らしく敬礼をし、オレはぶっきらぼうに返事を返した。

 

そうしてボーデヴィッヒとは反対の、シャルルが2人をアリーナから運んで出て行ったゲートに歩いて行くと、向こう側からシャルルが駆け寄ってきた。

 

「兆秋、大丈夫だった?」

 

「オレは大丈夫だ。それより2人は?」

 

「幸い大きな怪我は無かったようだけど、機体のダメージが大きすぎるからタッグトーナメントに出るのは無理だって・・・。」

 

そうか、あいつらとの再戦を楽しみにしていたんだがな。

 

「ちょいと慰めに行ってやるかな。」

 

「うん、きっと兆秋が行ったら2人も喜ぶよ。」

 

「何か悪かったな、巻き込んじまって。」

 

元々、ボーデヴィッヒが恨みを向けているのはオレだからな。そう考えると鈴とセシリアも半ばオレのせいで巻き込んだようなもんか。

 

「気にしなくていいよ。流石にあんなのは僕としても見過ごせなかったし。」

 

「そう言ってもらえると助かるぜ。」

 

「じゃあ、僕は先に戻ってるね。」

 

「ああ、サンキューな。」

 

「うん。」

 

そうしてオレはシャルルと分かれて保健室に足を運んだ。

 

 

 

 

 

「よう、怪我の調子はどうだよ。」

 

そう言ってオレは保健室に入って行った。

 

「こんなの怪我の内に入らないわよ!」

 

「その通りです。機体が直ったらすぐにでもお灸を据えてさしあげますわ!」

 

確かにそれほど大きな怪我は負ってないようだな。

 

「それよりあんた大丈夫だったの?あいつを一人で食い止めてたんですって?」

 

「ああ、負けだよ負け。完敗だな。千冬姉が止めに入ってなきゃあオレもここで寝てただろうよ。」

 

「確かに、ボーデヴィッヒさんの機体の第3世代型兵器、AIC、慣性停止結界は兆秋さんの白式とは相性がとても悪いものでしょうし。」

 

「AIC?あの体が動かなくなるやつはそれだったのか。」

 

「そうよ、そんな長い距離まで延ばすことはできないと思うけど、絡まれたら運動エネルギーを持ってるやつは全部止められるわね。」

 

「零落白夜で斬・・・ろうとしても足や腰を狙われたら終わりか。」

 

「そうゆうことですわね。」

 

「しゃあねえな。悔しいがタッグトーナメントでは大人しくシャルルの手助けを全力で借り続けるか!」

 

「あんたそんな情けないことを全力で言うんじゃないわよ・・・。」

 

 

 

 

しかし今、冷静になって思い返すと驚愕だな。あの2人があんなにあっさりやられちまって、連戦のはずなのにオレのことだって完全に負かしてた。これほどの衝撃はそうそうないぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、オレはシャルルが入っているシャワーにボディーソープの替えを渡しに行き、シャルルが女であることを知ってボーデヴィッヒの強さが霞むほどの大きな衝撃を受けたのであった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 

 

オレは寮の中でたっちゃん先輩とくつろいでいた。

 

「で、どう一夏くん?ボーデヴィッヒさんに勝てそう?」

 

「どうでしょうねえ。勝ち目は薄いかもしれないですね。」

 

「ふーん?ボーデヴィッヒさんがあの2人を倒したことに関しては驚かないんだ。」

 

「2人同時に倒したことには驚いてますよ。ただ、貴族家の当主でその他の仕事もあるオルコットさんや、まともに訓練してまだ2年程度の鳳さんより、軍人としてみっちり長い間鍛え上げたボーデヴィッヒさんの方が強いっていうのは、なんとなく予想してました。」

 

聞いた話じゃあBT兵器とは相性が悪いらしいが、軍で使われてるのだから第3世代兵器以外の武装も十分強いだろうし、まあ負けは避けられないだろうな。

 

「とりあえず、俺とペアを組む人が決まってからいろいろ考えますよ。1対1ってわけじゃないですからね。」

 

「そう、生徒会長としては誰か1人の生徒に肩入れすることはできないけど、怪我をしないように祈るくらいなら自由だろうから祈ってアゲル☆」

 

「不吉なこと言わないで下さいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてと、今日がトーナメント表の発表日か。だれと一緒になるのかな?

そう思いながら廊下を歩いていると、前からボーデヴィッヒさんがやってきた。

 

「貴様、噂で聞いたぞ?随分と腑抜けた性格のようだな。」

 

「いきなりなんだ?ボーデヴィッヒさん。」

 

「ふん、殴られても貶されてもヘラヘラしているような惰弱な愚図など、教官の家族にふさわしくはない。トーナメントで私が叩きのめしてくれよう、精々怯えて、少しでも長い間私とアリーナで会わないことを祈れ。」

 

そう言って彼女は去って行った。どうすんだよ、結構な人に見られて決闘騒ぎになってるじゃないか。こんな見せものみたいに変な注目を集めたらタッグを組む人に悪いぞ。

 

 

 

そうして俺とタッグを組むことになった人はこの注目のせいで顔を真っ赤にすることになった。そして、ボーデヴィッヒさんとは初っ端からアリーナで会うことになった。

 

と言うか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボーデヴィッヒさんがペアになっちゃった。

 

「あっ、そのお・・・気にしないほうがいいぞ。」

 

「・・・黙れ。」

 

「まあ、なんだ、頻繁にアリーナで顔を合わせることになるだろうし、多少はお互いのことを知っておかないとさ。」

 

「・・・だまれ。」

 

「恥ずかしがるなよ、この程度のミスは誰にだってあることだって。」

 

「・・・ダマレ。」

 

「とりあえずお互いの武装や特性を把握だけでもしておこう。そうしないとお互いに足を引っ張り合うことになるぞ。」

 

「・・・何も言うな。」

 

「話してないと俺も恥ずかしいんだよ。メチャクチャ周りから見られてるじゃねえか。」

 

「何もしゃべるな・・・だが私から離れるな・・・。」

 

「・・・わかったよ。」

 

 

前途多難すぎる・・・。




次回作のアイディアが溢れるように出てくる!

でもこの作品のアイディアがまったく出てこねえ!

チクショオオオオオオオオ!!


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第12話 学年別タッグトーナメント 疑惑

ええ、次の投稿からは、3人称視点を入れようと思います。私にキャラクターの視点のみでやるのはきつかったようです。


side一夏

 

一応、フレンドリーファイアを避けるためにもお互いに訓練だけでもしようぜと言ったんだが、

 

「貴様なんぞに付き合う時間はない、私の手を煩わせるな。」

 

この通りまったくと言っていいほど聞き入れてくれない。

 

「仕方ない、その場で息を合わせるしかないか。」

 

「貴様は壁際で黙って見ていろ。手を出されても邪魔なだけだ。」

 

「生憎と、俺にも成績ってのがあるからな。それになるべく動かしてデータを取らなきゃならないし、ガンガン動かせてもらう。」

 

もしそんなことしたら企業の人や先生方から大目玉だわ。

 

「勝手にしろ。だが、巻き込まれても責任はとらんからな。」

 

前途多難すぎる・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideシャルル

 

 

「はあああああああ!!」

 

ガキンガキン!!

 

「やるね兆秋!」

 

僕は兆秋とアリーナで訓練していた。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 

「マシンガンはもう見切ったぜええええええ!!」

 

ドギュウウウン!

 

「うそお!?」

 

兆秋は僕の放ったマシンガンの弾丸をかわしきって接近してきた。

最初は僕の武器の多さに対応しきれずに押されていたけれど、瞬く間に成長していき、もう既に僕の武器の半分以上が通用しなくなっていた。

 

「ああ、目に見えて分かるぜ。どんどんオレが強くなっていくのがな!」

 

ドドドドド!ドンドンドンドン!!バアアアアアアアアン!!

ギュギュギュギュウウウウウウン!!

 

僕も組み合わせや高速切替で捉えようとするけど、悉く避けられ、捌かれる。

 

「なんでそんな淀みなく捌けるのさ!?」

 

「勘だあああああああ!!」

 

ドドオオオオオオオオオオオオン!!

 

理不尽なくらい鋭い勘だな。でもそのおかげで予想外の出来事にも落ち着いて対応できるようになってきたし、僕のほうも強くなってる手ごたえを感じるよ。

 

「まだまだ僕もこんなものじゃないよ!!」

 

腕を磨いた僕と兆秋なら、ボーデヴィッヒさんにも確実に勝てる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 

何だろう、今すごい勢いで俺ごとボーデヴィッヒさんの足がすくわれそうになっている気がする。

 

「でも他にやりようもないし、自分でどうにかするしかないか。」

 

そう呟いて、俺は一人でISの訓練を再開した。

 

一つ一つの形態の癖が大きいな。全部それなりに使いこなせなきゃ、下手したらフォームチェンジしても格の違いで纏めて叩き潰してくる相手も出てくるかもしれないし。

 

「模擬戦にしてもたっちゃん先輩も他の皆もペアの人との訓練に忙しいだろうし、この調子で大丈夫なのか?」

 

大丈夫じゃないよなあ・・・。だって兆秋とか絶対強くなってトーナメントに臨むだろうし、シャルルにしたって代表候補生でしかも実家がIS企業の大手デュノア社だ、鳳さんやオルコットさん以上の実力を持っていても何らおかしくはない。

 

「ん?いかに強いとはいえ、たった3人の男性操縦者がこんなにすんなり国家の代表候補になれるものなのか?それなら兆秋なんかはとっくに日本の代表候補になっていてもおかしくないはずだよな?」

 

オルコットさんを破って鳳さんにしたってギリギリまで追いつめたし、早すぎるといってもシャルルは俺と兆秋よりは後に見つかった上で代表候補になったわけだし・・・。

 

「血筋だけを言うなら“織斑千冬の弟”っていうこの上ない血筋があるわけだし、日本の代表候補にすることに何の問題もないよな?」

 

どういうことだ・・・?

 

「・・・考えすぎだよな。」

 

さて、練習再開だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

side兆秋

 

さーて、遂にトーナメントの開催日になったわけだ。

 

「どうやら僕らとボーデヴィッヒさんたちは決勝まで行かないと当たらないみたいだね。」

 

「そりゃいいな。こういうのは1回戦とかじゃ燃えねえよな!」

 

まさかあいつらも決勝まで上がれないってことはないだろうし、ここは実戦を積みまくってシャルルとの連携に磨きをかけるか。

 

「さて、俺たちの最初の相手は・・へえ。」

 

1年2組 佐別 巻子(さべつ まこ)& 1年4組 弾 渥美(はじき あつみ)

 

「兆秋はこの人たちを知ってるの?」

 

「いや、さっぱりだ。聞いたこともねえや。」

 

ただ、同じ学年なのにこうも情報が入ってこないやつがいるのかと。

 

「あらあら、これはラッキーね。」

 

「初戦が男風情だなんて、勝ったも当然だわ。」

 

後ろ側から、明らかに馬鹿にしていますという声色の声が聞こえた。

 

「テメエらがオレ達に最初に負ける可哀想なタッグか?」

 

オレも負けじと挑発的に返す。

 

「ハッ、負けるですって?私たちが、男に?世迷いごとよねえ。」

 

「もしかして、代表候補に勝ったからって調子に乗ってる?」

 

それにしてもまた絵にかいたような女尊男卑主義者どもだな。

 

「女に生まれたってだけで調子に乗ってるやつらは言うことが違うなあオイ。」

 

「代表候補って言ってもボーデヴィッヒさん1人に負けちゃうような人たちでしょ?」

 

・・・は?

 

「それなら私たちのほうが強いわよ。所詮は金持ちとあんたと知り合いってだけでハニートラップをしに来たような奴らじゃない。そんなの雑魚よ!」

 

「テメエら、いい度胸してんじゃねえか・・・。」

 

「ハン、こんなやつら相手にしてても仕方ないわ。もう行こう渥美。」

 

「そうね。ま、せいぜい私たちを美しく見せることね。引き立て役として。」

 

そう言って2人は去って行った。

 

「兆秋、僕もあの2人にはイラっときたかなあ。」

 

「ああ、全くだ。」

 

「「あの2人は叩きのめす!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 

さて、俺とボーデヴィッヒさんの初戦は明日になったわけで、俺は園山さん(他の二人は自分たちの試合や調整に重なって来ることが出来なかった。)と共に弟の試合を見に来たわけだが・・・

 

「これは大人げないな。」

 

「なんかあの2人、怒ってない?」

 

専用機持ちでもない一般生徒を相手に、兆秋はすさまじいまでの猛攻を見せていた。

 

『偉そうなことほざいといてその程度かああああああ!!』

 

『きゃああああああああああ!?』

 

ズガンズガンズガン!!

 

まるでお前に使うまでもないとでも言うかのように、兆秋は零落白夜を発動させなかった。

 

『君の動きは全部読めてるよ!』

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 

『いやああああああああああああ!?』

 

シャルルもシャルルで相手の心を圧し折るかのようにゆっくりと追い詰めていっている。

 

「あの娘たち、男女差別がものすごく激しいって1年の中で有名だから、もしかしたら試合前に兆秋くんたちをなにか怒らせるようなことを言っちゃったのかも。」

 

「それは何とも・・・。」

 

ドンドンドンドンドン!!

 

『なんで当たんないのよ!』

 

ギュイイイイイイイイイイン!!!

 

『シャルルの射撃に比べたらこんなのハエみたいなもんだ!』

 

「へえ・・・。」

 

「随分と上達したみたいね。」

 

射撃の回避がうまくなってるな。前は大きくよけて隙ができたら突っ込むって形か、被弾覚悟の突撃だったが、今回はコンパクトによけてフェイントを入れて隙を作らせることまでしている。

 

「シャルルは兆秋の良い教師になったみたいだな。」

 

「確かに、前に見た試合の時より楽そうによけてる。」

 

これだけ動きの無駄を減らせたなら、ただでさえとんでもないスタミナを抱えている兆秋は更に激しい攻撃が出来るようになっただろうな。

 

それはいいとして問題はシャルルだ。

 

『君の攻撃は直線的で読みやすいね!』

 

ドオオオオオン!!

 

『そんな!?』

 

「デュノアくん、戦い方が上手くて参考になるなあ~。」

 

「・・・上手すぎやしないか?」

 

「え?」

 

園山さんが首を傾げて俺のほうを見る。

 

「シャルルの戦い方は丁寧すぎないか?」

 

「確かに、デュノアくんの戦い方は教科書みたいに綺麗だけど、兆秋くんだって初めからオルコットさんをあんなに圧倒してたし。」

 

「強いことに疑問はないさ。でも、あれは才能のみで出来る戦い方なのか?あれは基礎をしっかりと修めた者の戦い方じゃないのか?」

 

「それは・・・確かに。」

 

園山さんも疑問に気がついたようで、考えるようなそぶりを見せ始めていた。

 

「努力をするといってもシャルルにあそこまで基礎を叩き込む時間があったのか?少なくともシャルルは俺と兆秋よりも後にISを動かしたはずなのに。」

 

そう、本来シャルルのあるべき戦い方とは、兆秋のように荒削りで、大味な物になるはずだ。こんな磨き抜かれた戦い方になるはずがない。

 

「もしかしてデュノアくんって・・・女の子?」

 

「可能性は高いよな・・・。」

 

 

そしてその瞬間、試合終了のブザーが鳴った。

 

 




あろうことか事情を何も知らない一夏や一般生徒に疑惑が広がるという恐ろしい事態に。


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第13話 学年別タッグトーナメント 初戦

3人称視点も難しかった。

そんなわけで3人称視点は別の機会に。


side一夏

 

結局あの後、俺と園山さんは何事もなく帰路につき、今日という日を迎えた。

そして今、俺とボーデヴィッヒさんはアリーナで対戦相手と対峙している。

 

「さてと、遂に俺たちの戦いが始まるわけだが・・・。」

 

俺は洗礼されたフォルムで軽装備の色鋼・赤銅を身に纏っていた。

 

「私の邪魔さえしなければ好きにしろ。」

 

ボーデヴィッヒさんは俺のことをまったく意識せず、軽蔑した目で対戦相手を見ていた。

俺たちの初戦の相手は、小林恵理子さんとエリー・アーモンドという名前で、2組の仲のいい2人組らしい。面識は無いが、見た限り緊張して浮足立っている。恐らく実力も一般生徒の平均から大きく外れてることもないだろうな。ついでに言うと、黒い髪の小林さんは打鉄を、金髪のアーモンドさんはラファールを纏っている。

 

「じゃあ俺は黒い髪の娘と戦わせてもらうぞ。」

 

俺は小林さんと戦うことにした。連携が取れないなら、単純に各個撃破するぐらいしかフレンドリーファイアを避ける方法がない。

 

「好きにしろ。ただし、その程度の相手に時間をかけるようなら貴様ごと私の手で叩き潰してやるから覚悟しろ。」

 

おいおい流石に失礼だろうが。聞いてたあの2人、かなり怒ってるぞ。

 

そうして試合開始のブザーが鳴った。

 

赤銅はマシンガンとブレードが主武装の格闘機で、その速度は黄土を超えるどころか兆秋の白式にも食らいつける程の物だ。

俺は速攻で小林さんに接近してマシンガンを撃ち、アーモンドさんと引きはがしにかかった。

 

ダダダダダダダダダダダダダ!!

ギュウウウウウウン!!

 

「連携すらとらないなんて余裕だね一夏くん、専用機持ってても私ら以上の初心者なのに。」

 

さっきの会話がよほど気に障ったんだな、かなり険しい目で睨んできている。

 

「仕方ないだろ小林さん、ボーデヴィッヒさんに連携を取る気がないんじゃ俺にはどうしようもない。」

 

試合後が怖いから言外にさっきの悪口に俺の意思は入っていないことを匂わせることにした。

その思いが通じたのか小林さんは“ああ・・・成程。”というような顔をして表情を緩ませた。そして・・・。

 

「ふーん。それと後もう一つ言いたいことがあるんだけどさ・・・。」

 

瞬時に物凄い殺気に満ちた鬼のような形相になった。

 

「私がエリー・アーモンドだ!!間違えるな!!!」

 

「ええ!?」

 

ガキイイイイイイイイン!!

 

黒髪黒目の黄色人種なのに!?顔のパーツとか見ても完全に日本人じゃん!!

それに向こうのほうなんか金髪で目が青いし肌もめちゃくちゃ白いじゃん!!どうみても外国人じゃん!!エリー・アーモンドって感じじゃん!!

 

「お父さんの方のおじいちゃんが日本人でお母さんも日本人なのよ!!」

 

ドガガガガガガガガガガガガ!!!

 

「成程ねー!!!納得!!!!!」

 

ズドオオオオオオオオン!!!!

 

さっきから物凄い剣撃を俺は浴びせられている。捌くので精いっぱいと言うか、気迫が凄過ぎて押されちゃう。めっちゃ怖いぞこの人。

 

「じゃあ小林さんは何で!?」

 

「謎の先祖返りよ!」

 

ズドドドドドド!!

 

くっそ!強え(というか怖い)、だがそろそろ反撃の時間だ!!

 

「赤銅、スーパージャンプ起動!!」

 

ドン!ドン!

 

そして俺はアーモンドさんの視界から消えた。

 

「なんですって!?」

 

彼女は動揺して一瞬の隙を見せた。

 

「ここだ!!」

 

ズバアアアン!!

 

「ぐうう!」

 

俺は後ろからブレードで一撃を加えた。

 

「調子に乗らないで!」

 

ダダダダダダダダダダダダダ!!

 

アーモンドさんは俺に対してマシンガンを連射してきた。散らばらせるように撃っているため、外れろ物も多いが、その分逃げずらいな。

 

だが・・・

 

「赤銅なら話は別だ!」

 

ドンドンドン!

 

「嘘!!?」

 

スーパージャンプとは、簡単にいえば空気を蹴って方向転換する装備で、これを使えば高速で曲がる際のブレーキや遠回りを無くしてスーパーボールのような軌道で動き回ることができる。

 

「それにマシンガンはそっちだけの武器じゃないぞ!」

 

ダダダダダダダダダダダ!!

 

高速で動きまわってるから狙いが定まらないが、7割当たれば牽制には十分。

ジャンプした瞬間は減速ができなくなるのが弱点といえば弱点だな。

 

「ま・・・マズイ!!」

 

マシンガンの威力でアーモンドさんの体勢が崩れた、このまま一気にけりをつける!

 

「オオオオオオオラアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

 

俺はアーモンドさんの360°全方向から跳ねまわるようにブレードで斬りかかった。

 

「きゃああああああああああ!!!」

 

彼女のシールドエネルギーが0になったようだ。

 

「こっちは終わったけど、そっちは?」

 

「フン・・。あの程度、相手にもならん。」

 

どうやらボーデヴィッヒさんは俺より早く小林さんを倒したみたいだな。

 

「うう・・・っ」

 

様子を見る限り、小林さんはよほど酷い負け方をしたらしいな。機体には大した傷は付いていないが、その表情は恥辱にまみれているように思える。

 

「どんな勝ち方したんだよ・・・。」

 

「余りに弱かったのでな、暇つぶしに足だけで戦ってやったまでだ。」

 

それでもなお戦いにならなかったから叩き潰してやったがな。と言って彼女は出撃ゲートに去って行った。

 

「チクショウ・・・!」

 

・・・対戦相手の俺が彼女にかけられる言葉は無いだろうし、それならここにいても仕方ない。

俺もボーデヴィッヒさんに続いてゲートに戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side兆秋

 

マジかよ・・・。

 

オレはシャルルと一緒に一夏の試合を見に来たが、

 

「黄土とあそこまでコンセプトが違うのかよ・・・。」

 

「この分だと残り一つの形態も全くの別物だろうね。」

 

今回は赤銅の初の実戦ってことであれ一つで戦って慣らしたようだが、やろうと思えば無人機の時みたく戦闘中に変形できるだろうしな。

 

「残り一つの形態にも特殊な武装が積まれてるよな多分。」

 

「うん。それに予想だけど、最後の形態はオルコットさんのブルー・ティアーズみたいな遠距離射撃型だと思う。」

 

距離を選ばない重装備型と、中距離くらいなら軽く翻弄できる近接格闘型ときたら、次はそうなるわなあ。

 

「でも、その装備が実弾かビームかで対策が違って「ビーム兵器だろうよ。」え?」

 

「黄土も赤銅も実弾やブレードみてえな質量兵器しか持ってねえようだし、最後の形態くらいはビームみたいなエネルギー主体の武器が中心だろうよ。」

 

オレは一夏がビーム兵器を所持していることに確信を持っていた。

 

「でももしかしたら色鋼そのものが実弾兵器をメインにしたISかもしれないよ?だからまだ決めつけるのは早いよ。」

 

「ああ、言いたいことは分かる。オレだったそんな安直な理由だけで言ってるわけじゃねえ。」

 

そう、あいつはあの時。

 

「あいつは無人機と戦ってた時、ビーム兵器に対して慣れすぎてたんだよ。」

 

そうでもなけりゃ、あんな鮮やかに防ぎきれるわけがねえ。

 

「ああ、僕が転入する前にあったっていう襲撃事件だね。でも兆秋も初戦でビーム兵器を使うオルコットさんに勝ったらしいけど。」

 

「30分近くたっぷり慣らしたからな、それまでは大きく避けてたよ。」

 

だが一夏は初撃からシールドで完璧に防いで、しかもあの迷子まで守りきって見せた。とてもビーム兵器にはじめて向き合ったとは思えねえな。

 

「そっか、間近で見てた兆秋がそう言うんだったらもう異存はないよ。」

 

「サンキュ、だが問題は、」

 

「特殊武装が何なのか、だよね。」

 

こればっかりは幾つかのパターンを想定するぐらいしか対処法はねえな。

 

「まあ偏向射撃みたいなのは流石にねえだろうな。」

 

流石にこれでそんなもん積んでたら第3世代の枠から飛び出しちまうだろうし。

 

「偏向は出来なくても拡散ならできるかも。」

 

「なるほど、それなら最初から決まった数値かなんかをブチ込めば済む話だもんな。」

 

 

こうして、オレとシャルルは色鋼の最後の形態の予想を語り合いながら帰路について行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 

「まあ、まず間違いなく兆秋は色鋼・青天がビーム主体の形態だって当たりをつけてるでしょうし、次の試合でがっつり慣らしておきますよ。」

 

「ふーん。でも特殊兵器までは兆秋くんたちも分からないんじゃない?」

 

既に午後8時過ぎ、俺は寮室でたっちゃん先輩と自分たちのトーナメントの手ごたえやこの先の方針について駄弁っていた。

 

「別に第3世代兵器レベルってわけでもないですからね、あの2人に隠したところで多少押したらすぐ持ち直すでしょうし、それぐらいなら完成度を高めて真っ向から打ち合いますよ。」

 

やっぱり実戦をこなすとこなさないとでは、同じ訓練量でも差が出てくるものだし。

 

「そう言うたっちゃん先輩はどうなんですか?確か次の次で専用機持ちのサファイア先輩と戦うそうじゃないですか。」

 

2~3年生なら時折専用機持ちに勝てる人が出てくると聞いたことはあるけど、勉強がてら学園の試合の映像や結果を調べた限り今の先輩方はそんな下剋上を許したことはないらしい。(飽くまで俺が調べた結果ではあるんだけど)

 

「ん~?普通に体調を整えて最高の状態にして挑むだけだよ?」

 

「対策とかは練らなくても大丈夫と。」

 

「まあそうだね。」

 

余裕だなオイ・・・。

 

「あの娘相手なら大層なことをする必要はないかな、そりゃあ候補生の中にも代表に近いレベルの実力者はいるけど、彼女はまだまだ青臭いわ。3年のダリル先輩と組んだら危険だけどね。」

 

「・・・好奇心で聞きますけど、ボーデヴィッヒさんはどうなんですか?たっちゃん先輩から見て。」

 

「代表候補の中なら結構強い部類に入ると思うよ?」

 

うん、つまり代表のたっちゃん先輩から見たら強くないって訳ですね。

兆秋、お前あの時とんでもない人に喧嘩売ってたんだな・・・。

 

「んで一夏くんの話に戻すけどさ、兆秋くんとデュノアくんに勝てる目処は立ってるの?ラウラちゃんは連携とる気ないんでしょ?」

 

そうなんだよな。寧ろ肝心の決勝でこそ1番足並みがそろわないと思う。

 

「そうですね。このままトーナメントの試合で色鋼の操縦技術を上達させることと、、」

 

「うんうん。」

 

「兆秋とシャルルの成長を考えたら、」

 

「考えたら?」

 

「大体70%ぐらいの確率でこっちが負けますね。」

 

「勝率低いわね。五分五分くらいじゃない?」

 

口ではこう言っても、顔には“妥当な判断”と書いてある。

 

「戦力の足し算なら負ける気はしませんよ。」

 

自信の源は自分の実力じゃなくてボーデヴィッヒさんの力というのが情けないな。

 

「でも兆秋たちは掛け算してくるでしょうからね。」

 

大してこっちは足した後何割か減らしてしまいそうな勢いがある。

 

「停止結界にしたって研究されてると思いますし、このままいけば各個撃破されて負けます。」

 

「じゃあ、一夏くんはどうする?」

 

「どうしようもないですから、残りの3割にかけますよ。」

 

「・・・なるほどね。」

 

「どうかなさいましたか?」

 

たっちゃん先輩が一瞬何かを察したような顔をした

 

「ん~ん、何でもないよ。」

 

・・・まあいいか。

 

「お手並み拝見させてもらうね。」

 

「やるだけやってみますよ。」

 

今は次の試合のことを考えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、ペアの娘に『一夏くんは全裸よりセクシーランジェリーが好き』って教えちゃったけどいいよね☆」

 

「えっなにその情報!?マジでぶっ殺しますよ!!」

 

 

 




楯無さんが周りのキャラを何て読んでるのかがさっぱり分からぬ・・・。


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第14話 学年別タッグトーナメント 兄と妹 前

遂にみんな大好き簪さん登場!

他のヒロインたちがアンチされる作品はいくつも見たことがあるけれど、簪アンチだけは見たことがないなあ。いや別に見たいわけじゃあないけど。


side一夏

 

「たっちゃん先輩も人が悪いなあ。第3世代兵器が未完成とはいえ、更識さんの専用機が出来上がってる事をを黙ってるなんて。」

 

俺は園山さんと共に次の対戦相手になるであろうペアの対戦を見に来ていた。(普通ペアのボーデヴィッヒさんと来るんじゃないのか?とか言ってはいけない。)

 

「うんうん、荷電粒子砲といい薙刀といい、素人目に見てもかなり綺麗に使ってるよね。」

 

こりゃ次の試合に青天の実戦経験を積むなんて嘗めた真似できないよなあ。

 

「この洗礼された戦い方。これは才能じゃなくて、地味な反復練習や体力作りといった努力の賜物だな。」

 

これは参ったな。オルコットさんや兆秋みたいな特化型なら色鋼のフォームチェンジで弱点を突き続ける事もできたんだろうけど。

 

「万能型相手じゃあ少し慣れられたら効果半減だな。」

 

「一夏くんと更識さんって相性悪いの?」

 

「相性が悪いっていうか、操縦者として完全に負けてるって感じかな。今まではフォームチェンジや特殊武装でテクニック不足を誤魔化してきたけど、多分更識さんには通用しないだろうな。」

 

それぞれのフォームの特殊武装も1回は効くだろうけど、零落白夜と違って極端な火力はないし、押し切ることはまず不可能。ただ、積極性が足りないのが傷だな。これでもう少し強気な戦い方ができていれば、文句なくオルコットさんや鳳さんより強敵だって言えるんだけど。

 

「それにペアの布仏さんもいい動きしてる。実力は飛びぬけてはないが、あれだけ更識さんの力を引き出せるのは優秀な証拠だ。」

 

「一夏くん、何か作戦はあるの?」

 

「俺らにできるのはもう分断からの各個撃破ぐらいなもんだから。いっそ更識さんはボーデヴィッヒさんに丸投げしちゃうっていうのも・・・ん?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、一瞬更識さんがこっちを見たような・・・?」

 

それも、割と強い目線を。

 

「もしかして会長と同じ部屋だから意識されてるとか?それともクラス対抗戦での戦いをこのトーナメントでやろうとしてるとか?」

 

会ったことがないってだけで、俺と更識さんってそれなりに因縁はあるんだな。

 

「それとも第3世代兵器、『マルチロックオン・システム』の最初の実験機を打鉄弐式から色鋼・黄土にしてしまおうっていう倉持技研の考えのせいかな?」

 

「それだ!確実にそれだ!!」

 

そんなことになれば更識さんはさぞ屈辱だろう、努力も何もしてこなかった男にテストパイロットっていう栄誉を奪われるのだから。

 

「っていうかなんでそんな動きが出てるんだ?俺の色鋼の第3世代兵器はフォームチェンジのはずだろ?」

 

「何でも、黄土のミサイルとマルチロックオン・システムはそこそこ親和性が高いらしくて、他の武装を減らしたら搭載できる可能性があるんだって。そうしたら一機のISに2つの第3世代兵器を積めるって言う話が出てるとか。」

 

成程、そんなことが可能なら色鋼は3.5世代、実験がうまくいけば第4世代にもなり得るかもしれないな。

 

「そしてなんで園山さんがそんなこと知ってるんだ?」

 

「ああ、私の両親は倉持技研で働いてるんだ。」

 

「へえ、共働きなんだ。ところでそんな仕事の話ししちゃってよかったの?」

 

「大丈夫だよ、お父さんもお母さんも言いふらしてもいいことしか私に話さないから。多分、バレなくてもよし、バレてもそれでやる気を出してくれればよしみたいな感じで考えてるんじゃないかな。」

 

それに私以外にも倉持技研の社員を親に持ってる人、多いし。と付け加えて園山さんは席を立った。

 

「それじゃあ私、ペアの娘と作戦会議があるから。」

 

「ごめんな、付き合わせちゃって。」

 

「いいよいいよ、会議って言ってもそんなに話すことなんてないし。」

 

そう言って彼女は出口のほうに歩いて行った。

 

「さて、どうしたものかな?」

 

俺が勝ったら第3世代兵器の話、更に進んじゃうよな。

 

重いなあ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って言う事があったんですよ。参っちゃいますよね。」

 

「それで一夏くんとしてはどうなってほしいのかな?」

 

俺は寮でたっちゃん先輩に観戦中の出来事について愚痴っていた。

 

「出来れば受けたくない話です。かと言って、ド素人なのに最新鋭の機体を貰ってる身としては断りづらいですね。」

 

別に確定したことなわけでもないし、まだ話が出てるって程度なんだろうけどさ。

 

「ふーん。まさかとは思うけどさ、タッグ戦で簪ちゃんと戦う時に適当に流して終わらせようとか思ってないよね。」

 

たっちゃん先輩は険しい目線で俺を射抜いた。

 

「試合には勝つ気で行きますよ。」

 

「答えになってない。簪ちゃんとまともに戦う気はあるの?」

 

はぐらかすことは許されなさそうだな。

 

「まともに戦っても勝てるかどうか分からない強敵ですからね、本気で戦いますとも。ええ、一方的に負ける気はありません。」

 

「つまり、最後の最後に負ける気はあるんだね。」

 

はあ・・・

 

「そうですね、ここだっていう局面になったらわざと負けるかもしれません。俺としては更識さんからやっかみを買うのも、2つ目のの第3世代兵器を背負うのも御免です。今だって2人きりの男性操縦者だとか第3世代機の色鋼だとかで一杯一杯なんですから、これ以上なんて想像もできません。」

 

そう、それが・・・

 

「それがたとえどんなに低い確率でも、自分から上げに行くなんて考えられません。」

 

「・・・」

 

たっちゃん先輩は手を顎に当て考え込んだ。

 

「なら・・・」

 

「たっちゃん先輩?」

 

「ならその話が来たら私のほうから断わっておくから、真剣に戦ってくれないかな?」

 

「いや、そこまでしてもらうのは流石に「いいから!」はあ・・・。」

 

なんだかやけに余裕がないな。

 

「何か事情でもあるんですか?」

 

「・・・前にも言ったでしょ?妹と仲が悪くなったって。」

 

ああ、色鋼を受け取った日にそんなこと言ってたなあ。

 

「私は簪ちゃんと・・・その、仲違いをしちゃってさ。昔、あの娘を傷つけちゃって、それでもうまともに話も出来なくて・・・だからせめてこうゆうところの手助けぐらいはしてあげたくて、一夏くんと本気で戦うのは簪ちゃんにとってプラスになるはずだから。」

 

「・・・ボーデヴィッヒさんじゃダメなんですか?」

 

「簪ちゃんが戦いたいのは多分一夏くんだし、彼女に任せたら絶対に叩き潰されちゃうから。」

 

まあ、そう言うことなら。

 

「分かりました、ならありがたく甘えさせてもらいます。」

 

「うん、お願い。全身全霊で簪ちゃんと戦って。」

 

そのためにはフォームチェンジに磨きをかけなくちゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで次の相手の更識とやらを貴様に譲れと。」

 

「いいでしょ?俺だって決勝では絶対に兆秋に手出ししないわけだし、そのくらいの役得があっても。」

 

次の日の休み時間中、俺はボーデヴィッヒさんに直談判していた。

 

「ふむ、まあいいだろう。所詮は有象無象、それに貴様の実力を試す良い試金石になるだろう。」

 

意外とあっさり了承をもらえた。

 

「但し、余りにも惨めな戦いをした時にはその更識ごと貴様を叩き潰す。」

 

怖!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして・・・。

 

「織斑一夏、私にはあなたと戦う理由がある。」

 

「らしいね。」

 

「らしいってことは知ってるんだね。」

 

「ああ、聞いたよ。」

 

「そうなんだ・・・私の機体があなた達兄弟の機体を準備するために放置されたことも、私が受け取るはずのマルチロックオン・システムをあなたに渡されそうになってるってことも、そもそもフォームチェンジ機能付きの色鋼のせいで打鉄弐式の計画そのものが凍結されかかったことも知ってるんだね。」

 

「え?なにそれ、2番目以外の話聞いてないんだけど!?」

 

「!?、絶対に許さない!!」

 

「聞いてた話と違うぞ!」

 

 

試合が始まった。

 

 




文字数の驚きの少なさ!


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