魔獣創造に『回帰』の残滓を入れてみた(一時凍結) (ぴんころ)
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回帰の残骸覚醒

 一発ネタ

 タイトルの通り。魔獣創造にFGO7章ボス、回帰の獣、ビーストⅡことティアマトの残滓をぶち込んでみた。

 ビーストⅠが主人公だったり、ビーストⅣが神器だったりする小説があるのなら、きっとこれも許されるんじゃないかな。


 人間界のとある場所、そこで一人の少年は第二の人生を得たのだと理解した。

 

 始まりは5歳の誕生日、彼は頭痛で倒れた。後で彼が聞いた話によると3日ほど眠っていたらしいが、今それはどうでもいい。とにかく、そのタイミングで前世の記憶を取り戻したのだが生活は何も変わらなかった。きっと、前世では得られなかったこの幸せだけで十分だと思っていたからだろう。

 しかし、それは崩れ去った。7歳となった彼は、彼の両親が化け物に殺されているところを目撃したのだ。

 

「キハハハハハハハ」

 

 それを目撃してしまった瞬間、彼の運命は決まった。

 

 両親を殺した目の前の化け物への怒り

 目の前にいる化け物に対しての恐怖

 

 そして

 

 自分を愛してくれる存在が死んだことへの悲しみ

 

 この3つがそろったことにより、彼は人間から、一足跳びで進化してしまったのだ。

 

第一の感情は神器(セイクリッド・ギア)魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)の覚醒を引き起こした。

第二の感情は禁手(バランスブレイカー)の覚醒。目の前の化け物を殺すのに必要なだけの力を持った魔獣の創造を引き起こした。

 

 この時点で彼の両親を殺した化け物は原型をとどめず死んでいた。作り上げた魔獣は主の意志を受け、その化け物を蹂躙し、その後消滅していたのだ。

 そのことに気づくことができていれば、あるいはこのような事態にはならなかったかもしれない。

 

 

第三の感情は残滓へのアクセス。かつて別の世界でビーストⅡ、そう呼ばれた存在の残滓がこの神器には宿っていた。誰も気づくことができなかったその存在に、彼は今接続した。

 

       ──あなたは、だれ?──

 

 そうして彼らは互いを知りはじめる。同時にビーストⅡの残滓は崩れ始める。もとより滅びかけていた欠片を無理やり神器に押し込めただけのもの。何かの刺激があればこうなるのは当然だった。

 しかし、一瞬と、そう呼ばれる程度の時間に彼らは互いの過去を体験することができた。

 

彼はビーストⅡの生涯を

ビーストⅡは彼の前世を含めたこれまでの歩みを

 

 そうしてビーストⅡは知ったのだ。彼が生前愛されることがなかったのだ、と。そして今もまた、愛してくれる家族を失ったのだ、と。

 そうして彼は知ったのだ。ビーストⅡ、かつてそう呼ばれた獣がいったい何を望んでいたのか。

 

 彼らは一瞬であれど、魂が同化していた。だからこそ、こんなことができたのだろう。

 

 魔獣創造の無理やりな禁手でボロボロとなっていた彼の魂を、崩れかけの獣の残滓で埋め合わせる

 

などという所業が。

 

しかし、彼は所詮人間。残滓といえど獣を同化させてただで済むはずがない。彼の精神は汚染され、人間としての自我と獣の人類愛が混じるようになってしまった。

 

──家族がほしい

──愛してほしい

──愛してくれる存在を守りたい

 

そんな彼は、大切な家族と過ごす安寧を手に入れるため、今生きている全生物(エイリアン)を滅ぼす決意を抱いた。

 

──だからこれはきっと

 

「松田、元浜。いい覗きスポットを見つけたぜ!」

 

 ──赤き龍の物語ではなく

 

「な、何なのだ、貴様らは⁉」

 

 ──聖書勢力を取り巻く陰謀の話でもなく

 

「お父様、大丈夫かしら?早く笑っている姿を見たいわ」

 

 ──一人の少年が愛し、愛される家族との幸せを得るまでの、幸せをつかむための物語である。

 

 




 続かない

ちなみに汚染されたって言ってるけど、どっちかっていうとティアマトの方が主軸

人間成分は、かつてティアマトがされた所業を見ての、真面目な対策部分ぐらい?

例えば

・愛しい子供たちが殺しにかかってきた→なら裏切れないようにしておこう

みたいな感じ。

あと「生命を生み出す」っていうのが、素体が人間なため魔獣創造に依存。結果、思い描いた通りの生命を生み出せる


禁手説明

名:創世神話の残骸(レムナント・オブ・ジェネシス)
種別:常時発動型
備考
・ビーストⅡ以下の存在であれば生み出せる

・生み出せるものは転生者である彼の記憶の中にある存在、もしくはそれをモチーフとした存在のみ


 ちなみに、ティアマト汚染のせいで「子を産みたい」と思っているけど、人間部分が「自分は男なので子を産めない」と理解している。
 そのため「ならば父になりたい」という思いがあり、父となるには、何者かが母となる。かと言って現在生きている生命はエイリアンにしか見えない。なら自分で、母となる存在を創造しようと考えている。
 …それが、自らの子に自らの子を産ませる所業だということには気づいていない


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残骸、起動する

 お気に入りが1話だけで11件とかちょっと怖かったので投稿
 今のところ、先のことは全く考えてないから、続きがあったら矛盾が出てくるかもしれない?
 ちなみに主人公は型月について知っている。


──まず、なにをしよう──

 

 考える。原初の母と同化した彼は、これから生み出す我が子のために、自分が先に準備できることを考える

 

──子を育てるのならば、家がいる──

 

 脳裏に浮かぶは、ティアマトと同化する前、未だ人であったころの彼の生活。そこには家族が集まる空間があった。ならばまずはそれが必要だろう。そうして彼は自ら思い描く理想の家を創造しようとした。

 しかし、できない。彼は所詮『原初の()』。かつての人類悪、その残骸を宿しただけの人間(怪物)。彼に命以外は生み出せない。

 

 ではどうする。諦めるのか?──いいや、そんなはずがない

 

 その答えは、彼の生前の記憶にあった。魔術王は自らの固有結界を拠点()としていた。ならばそれを真似ればいい。

 

──我が子よ。家を作るため、お前の力を貸しておくれ──

 

 そうして生み出されたのは1つの()。かつてとある世界で『エインズワース』と呼ばれた置換魔術の担い手。それを元にした存在。

 

「了解しました、父上」

 

 彼の子──後にアインと名付けられる少年──が行ったことは言葉にすれば至極単純。

 

──周囲の空間を自らの父の心象風景と置換する──

 

 無論、彼が生前見ていた物語ではそんなことはできるはずもなかった。しかしここは『エインズワース』が存在していた世界よりも、神秘の濃度が高い。それにくわえ、ビーストⅡの眷属として生み出された今の彼であるならば、難しくはあっても、不可能なことではない。

 

 これにより、両親を失ってから彼がいたとある空間が変貌した。彼の思い描く家族との団欒、それを実現するための空間が顕現したのだ。

 

 後に三大勢力がつけた名を──『混沌の城』

 

 家の外周をケイオスタイドで囲い、その周りに置換魔術をかけることで侵入を防ぐ。グレートレッドやオーフィスが相手ではどうしようもないが、神話勢力程度であれば問題なく防げる代物。そして残骸とはいえビーストと同化している今の彼ならば、グレートレッドが相手でも戦える魔獣を生み出すことも可能。

 ケイオスタイドで囲われた中には、彼とその家族が住まう城、子供が喜ぶような庭など、この世の楽園ではないかというような場所が広がっている。

 

 

 そんな、家族と過ごすための家はできた。では次こそは家族を作ろう、そう考えるのは普通だった。

 だが──

 

──自分は男、子供を産むことなどできはしない──

 

 直前に魔獣創造で子を生み出した存在の考えとは思えない。しかし、彼にとってはそれが真実なのだ。人間時代の常識の中で、残っている部分がそう考えさせる。

 

──ああ、ならば我が子を生み出す『母』となる存在を作ろう──

 

 彼は自らの言っていることに気づきはしない。それはつまり、自らの『娘』に自らの子を産ませるということだ、と。

 

──誰がいいだろうか──

 

 彼は残滓とはいえ、人類悪。その力を持った子を胎内に宿しても大丈夫な少女には誰がいるだろうか。

 

──聖杯の嬰児?

──神の力を宿した少女?

 

 わからない。実際に試したわけではないのだから。ならば試してみるのが道理だろう。そうして彼は新たな子を生み出す(創造する)

 

「はじめまして、お父様」

 

 外宇宙の神の依り代となった少女、アビゲイル・ウィリアムズをモチーフとして、戦闘能力を排除し、神の力をその身に宿すことができる、という部分を強化したことで生まれた──後にアビーと名付けられる──少女

 

「え、えっとはじめまして、パパ」

 

 聖杯たるホムンクルスと人間の間に生まれた自然の嬰児、イリヤスフィールをモチーフとして、生み出された──後にイリヤと名付けられる──少女。彼女は聖杯としての「願いを叶える」という機能を強化することで、他者や彼女自身でも、人類悪の残滓の子を受け入れられる体に強化することを目的としている。

 

──ああ、初めまして──

 

 そうして彼は歓喜する。これでようやく子を生み出せるのだと。そして、それと同時に、こうも思った。

 

──子供たちを外で遊ばせるには、今生きている輩(エイリアン)が邪魔だ──

 

──子供たちが外の連中(エイリアン)に殺されるかもしれない──

 

 ならば排除するという結論に至るのはそう、遠いことではなかった。

 だが、どうするか。彼には戦闘能力などほとんどない。

 

──そうだ。子供たちに自衛のための力を与えればいい──

 

 そうは言っても、相手の実力などがわからなければどれぐらいの力を与えればいいのかわからない。子供たちを危険にさらすわけにもいかない

 

──仕方がない。子供たちの身を守るためにも、外の怪物(生き物)に私の因子を与えよう──

 

 結果、外の世界の魔獣は強化され各勢力に襲い掛かる。彼は、魔獣に植え付けられた因子から、化け物の攻撃に使われる力を理解していく。そして、それと同時に彼らへの攻撃に最も有効となる力、『異形殺し』とでも呼ぶべき力を開発した。

 

 

──外の害獣(生き物)の持つ神器(セイクリッド・ギア)なるものは、我が子に与える力のモチーフとしていいものだろう──

 

 彼は認めたくなかったが、神器の存在はこれから生み出す子供たち、そしてすでに生まれている子供たちに与える力のモチーフとしては最適だった。そのため、神器についてもデータ収集を始めることにしたのだった。

 

 

 こうして、彼は自らの子と過ごす楽園を作り上げるための活動を開始した。その果てにいったい何が待っているのか、それはまだ誰にもわからない。




 
 実はこの作品、近親相〇と光源氏が混じっているのでは…と書いてて思いました。

とりあえず今回出てきたキャラの簡単な紹介。
尚作られた魔獣は全員異形の攻撃に対する耐性を持つ。そして魔獣創造を軸にしている以上、神器無効化能力には弱いと思われるが、獣の残滓が宿主と融合した影響ですでに魔獣創造は神器から変質しきっているため、弱体化程度で済む。

・アイン…置換魔術で家の維持を行う人型魔獣。見た目はプリズマ☆イリヤのジュリアン。恐らくもうでてこない。

・アビー…主人公が自分の子を産ませるために作り上げた母体その1。見た目はFGOのアビゲイルで、生み出された後に彼により、召喚能力、空間転移能力を付けられる。召喚するのは、これまた彼が作り上げたアビーのペットとなる対異形用スキルを持った触手くん

・イリヤ…主人公が自分の子を産ませるために作り上げた母体その2兼ほかの魔獣たちの肉体を強化する支援ユニット。見た目はFateのイリヤで、生み出された後に彼により、主神クラスの攻撃にも耐えられるバリア、分身作成、戦闘用の魔術礼装(カレイドステッキ)を与えられる。


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戦力確認

今回原作キャラが登場します。

それと感想欄を見ていると前回までの時間軸についてのことを聞かれ、意見などももらえましたので

前回までは原作の10年前。当時主人公7歳。

となりました。

今回は原作1年前の話です。あと前回の感想では、この前書きを書いてるタイミングでは一切言及されませんでしたので、一応言っておきますと、アビーは第一再臨です。でこビームを発射するときの姿です。

現在の主人公の見た目:16~17歳
現在のイリヤの見た目:18歳
現在のアビーの見た目:18歳
です

 主人公の話し方に人間性が戻って来たとか、微妙に神様っぽい部分があるとかはすべて、ティアマトと主人公が混じった結果です。人間としての部分も9年の間に浮かび上がってきました。
 言い方はわるいけれども、即戦力となる子がほしい場合は魔獣創造、普通に子供として育てる余裕がある場合は産ませるっていう区別。
 前者なら主人公の創造できる範囲までしかできない代わりに、こんな子であってほしいという願いは確実にかなう。
 後者だったら予想通りの成長をするとは限らない代わりに、主人公の予想を超えてくることもある。
 ちなみに、未だ後者の方向性で生まれて来た子はほとんどいない。というか、産む余裕がなかったので、出てくることになったとしてもかなり後。どれだけ早く生まれたとしても、年齢的には5歳ぐらいにしかなりませんからね


──さて、どうしようか──

 

 自らの()玉座(椅子)に座り彼は考えていた。かつて自らが人類悪の残滓として新生(顕現)してから、人としての時間軸で9年。それに伴い、俗にイケメンと呼ばれる見た目に成長した彼は、その9年で得て来た情報をまとめていた。

 

 時には悪魔(汚物)

 時には天使(塵屑)

 時には堕天使(害獣)

 

 作りたくもないそんなものを作り、三勢力に紛れ込ませてきたのは、すべて彼と彼の子が平穏に暮らすため。

 

 例えば、かつての大戦で神が死んでいる

 例えば、大戦で神が死んだのは二天龍なる存在のせいである

 例えば、その二匹の龍は今神器(セイクリッド・ギア)になっている

 

 こういった情報を得て来た彼は今、1つの情報を手に入れた。

 

──今代の赤龍帝は現魔王とやらの妹が管理しているという土地にいるらしい──

 

 この情報はとても大きいものだった。龍は争い事を呼ぶ。それならば龍を悪魔(汚物)の眷属とすることで、堕天使(害獣)天使(塵屑)など別の存在と戦争を引き起こし、勝手に滅んでくれるのではないかと考えるのは至極当然であるともいえる。

 

 ではいったい彼は何に悩んでいるのか

 

──この少年(兵藤一誠)を裏の世界に巻き込んでしまってもいいのだろうか──

 

 普通であれば、本来の人類悪であれば自らが生み出した子以外は異星人(エイリアン)でしかない。

 しかし彼には、人間として親から与えられた愛情がある。そして裏に巻き込まれたことでそれを失ってしまったという現実もある。

 だからこそ思ってしまうのだ。

 

──今代の赤龍帝の姿は、自分という『人間』が奪われた人生である──

 

 常軌を逸した変態性などの差異はある。けれど、人外に狙われるほどの強大な力を持っている、という部分に関して彼と赤龍帝は共通しているのだ。

 

──これを行えば、自分は両親を殺した化け物と同類になるのではないか──

 

 これこそが彼の悩みである。例えば赤龍帝が悪魔に転生していたならよかった。汚物とみなすことができたから。

 しかし現実は変わらない。赤龍帝はただの一般人で、その人生を台無しにしかねないことを自分は考えている。

 

 そうして、彼が悩んでいると──

 

「どうかしたのかしらお父様?」

「大丈夫、お父さん?」

 

──そう言って、2人の美しい少女が彼のそばに侍っていた。

 

 1人は金色の髪の少女。黒いドレスを着た、彼よりも少し年上のような見た目の少女だった。

 もう1人は白銀の髪の少女。白いドレスを着た、1人目の少女と同じぐらいの年の少女だった。

 金色の髪の少女の名はアビー。白銀の髪の少女の名はイリヤ。彼女たちこそは、彼が最初に生み出した、自らの子を産む母となる少女たちである。

 

 だからこそだろう。強い信頼関係があるとわかっている彼は、一切ためらわずに悩みを吐露した。

 

──この少年を巻き込んでもいいのだろうか──

 

 彼女たちは、彼が魔獣創造に目覚める前の彼のことも知っている。だからこそ、何がいいたいのかすぐに理解することができた。

 そうして彼女たちの出した答えは

 

「それなら監視をしてみればいいんじゃないかしら」

「ただし手は出さない方向でね」

 

 というものだった。それを聞いた彼は困惑した。一切かかわらせないか、誘導するかのどちらかだと思っていたのだから。

 

──どういうことだろうか──

 

「私たちが手を出せば、それがどういった目的であっても、その瞬間に彼の人生を私たちの手で歪めたことになるわ」

「けど、彼がこれから生きていく中で襲われたりしないとは限らないでしょ。それなら襲われて神器に覚醒して生きていくのもあり、殺されて悪魔に転生するのもあり。そこで人生終了することになっても彼の人生を私たちが歪めることにはならないんじゃない?」

 

 少女たちの言葉を聞いて、彼は得心した。自分たちの手で歪めるのではなく、赤龍帝の人生が自分たちの目的に沿う形になったなら利用する。つまり、彼が人間であるうちは介入せず、いつ悪魔になってもいいように準備と監視をしておけ、ということなのだ。

 

──わかった──

 

 そう言って彼は、監視するための人材を考え始めた。

 

──送る子は、不測の事態にも対応できる子がいいか──

 

 どういった子がいいのだろうか。そもそも監視に向いている子などいただろうか。彼の中にはそんな思いがあふれている。

 監視には魔力などの特殊な力は使わないほうがいいだろう。何か餞別も渡さなければ。そうやって考えて1時間程度。彼はようやく決断したようだった。

 

──決まったよ──

 

 それを聞いて両サイドの少女たちがほほ笑む。父が決断できたことがうれしいようだ。

 

──エミヤを送ろうと思う──

 

 その言葉によって少女たちの脳裏に浮かぶのは、白髪褐色肌の紅い弓兵。この城の料理人の一人でもある彼をなぜ選んだのか聞こうと思ったが

 

──彼は今家にいる子のなかで最も目がいい。それに、作ることのできる武器は多彩だ。何かあっても、ある程度は対応できるだろう──

 

 そう、説明された。

 

──無論、正体などは隠す。流れの傭兵か何かとグレモリーたちには認識させておこう。そういった経歴も偽造しなければな──

 

 魔力などを使わずに遠距離から監視することができる人材であり、魔剣創造持ちと認識させておけば、グレモリーの騎士(ナイト)と戦わせることで、相手方の戦力を調べることもできる。そうすれば、奴らが敵わない相手をリストアップしやすくなる。そいつらを駒王に誘導し、魔王の妹を殺害させれば、後は勝手に滅ぼしあうだろう。

 

 父にそう説明された少女たちはそれ以上問うこともなくただほほ笑み、呼ばれたエミヤが来るまで父に抱き着いていた。

 

「呼んだかね、父さん」

 

 それから10分程度たち、エミヤがやってきた。自らを生み出した父からの頼みと聞いて彼のテンションは平時よりもあがっていた。しかし、話を進めるたびに顔を顰めていく。

 それもしょうがないことではあるだろう。忌まわしい異形どもが住まう地に潜入しろ、ということなのだ。さらにこれは、兵藤一誠という少年が死ぬか、悪魔になるまで続くものなのだから。

 

「了解した」

 

 溜息をつきながらも、エミヤはその任務を請け負った。それは父からの頼みだということもあるし、自分の任務期間が長ければ長いほど、一人の少年が人の世でそれだけの期間生きていることの証にもなるのだ、ということに気付いていたからだ。

 

──すまないな──

 

 そう言って彼は自らの息子(エミヤ)を送り出した。

 

 

 しかし一年後、エミヤからの報告で運命が動きだすことになることを彼はまだ知らない




イリヤが「お父さん」呼びなのは、見た目18歳になり主人公の子として、そして主人公の子を産む母として「パパ」呼びが恥ずかしくなったため。

本文での主人公の原作主人公放置について

 彼はティアマトという存在と出会ったことで、人間から外れました。現在彼はそれで幸せですが、『人間』兵藤一誠と出会ったとき、自分がティアマトの立ち位置になる可能性があるのではないか、彼が人間から外れたとき彼は幸せになれるのか、ということに怯えています。
 だからこそ、彼の人生を自分の手で歪めることになる、俗に『原作介入』と呼ばれる行為はしません(彼は原作知りませんが)
 しかし、『悪魔』となってしまったら話は別です。彼にとって悪魔は滅ぼすべき存在ですので、利用することには一切ためらいません。

ついでに、彼の生み出した子たちは人外への嫌悪感はあれど、人間に対する嫌悪などは特にありません。なぜなら、生み出してくれた父を愛してくれたのは人間だからです。ただ人間界は今異形が隠れ住んでいるため、結構苦手ではあります。


   キャラ紹介

・エミヤ:言わずと知れた元祖アーチャー。投影魔術なんて存在しないので、魔剣創造と聖剣創造で疑似的に再現している…はずが、主人公の子の手でその2つの共通する「剣を作る」部分がどういった仕組みか解明されたため、剣であれば何でも作れる。固有結界は、うん、まぁ……。現在傭兵として認識されているが、その間は魔剣創造としてしか使用できない。


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原作開始、そして準備


 たくさんの感想ありがとうございます。

 

 主人公が妙に黒幕ムーブしてるような…


──今代の赤龍帝である兵藤一誠が悪魔に転生した──

 

 その一報が入ったのはエミヤを駒王に送ってから一年が経ったころだった。

 

──きたか──

 

 その報告が来た時、彼は自分が喜んでいるのか、それとも悲しんでいるのかわからなかった。目的達成に近づいた、という意味では赤龍帝が魔王の妹の眷属になったことは喜ばしいことなのだろう。しかし、神滅具(ロンギヌス)を持った人間、という意味での同胞が裏に関わることなく、人間のまま寿命で人生を終わらせることが出来なかった、という意味で彼は悲しかったのだろう。

 その二つの感情があわさり、とても複雑な声音だった。横で聴いていた二人の少女が心配そうな顔をしながら彼を見る。報告をしていたエミヤも、自らの父のそのような声を聴き、電話越しであるため顔は見えずとも、心配していた。

 けれど、すぐに全員が意識を切り替えた。なぜならこれで、かつて彼が言っていた龍が引き寄せる災厄に、戦争の引き金を引かせるということの最低条件が整ったからだ。

 

「父さん、私はどうすればいい。これで兵藤一誠の監視期限は終わったが…」

 

 エミヤが聞きたいのは、駒王に残るか、それとも戻るかだろう。彼個人としては戻りたいのだろうが、残って役に立てることがあるのなら残りたい、といったところか。

 

──龍の呼びよせる災厄、その1つ目だけ巻き込まれてくれ──

 

 彼はそう言った。エミヤがいなくなってすぐに大物が来れば、エミヤがその大物とつながっていると思われかねない。だが、その大物の後にグレモリーのもとを去るのであれば、これ以上は巻き込まれたくないと考えて去ったのだと判断してくれるだろうという考えからこれを選択した。

 

──なら、まずはコカビエルあたりかな──

 

 彼はリストアップしておいた中で最も動かしやすい存在を選んだ。三大勢力に恨みを持つ存在は多い。けれど戦争を起こしてもいいと考える連中は少ない。

 だからこそ彼はコカビエルを選んだ。今、三大勢力の水面下では和平が進んでいる。けれどかつて殺しあった連中とホイホイ仲良くできるわけがない、そう考える者は多い。そしてそう考える連中は動かしやすいのだ。かつて創造し堕天使側に潜り込ませたスパイに対し、コカビエルに和平の準備が行われているのではないか、という情報を伝えるように命じた。

 

──実際にコカビエルが動きだすまでに準備は整えておこう──

 

 そう思った彼は、エミヤが空中にいる堕天使とまともに戦えるようにするにはどうしたらいいかを考えはじめた。

 

──弓で遠距離攻撃ができるとはいえ、グレモリーが「正面から倒す」などと言い始めればそれに巻き込まれかねない。今のあいつはグレモリーに雇われる形であの町にいるのだから、それに逆らわせるのは得策ではないだろう──

 

 ならば、どうする。彼は空中戦ができない。装備として仕入れたと言えば、ある程度まではどうにかなる。

 悩んだ彼は、ふと横にいたイリヤを見た。その瞬間、彼は閃いた。

 

──ああ、そうか。空を飛べるようにする必要はない。空を飛べても足場がなければやりづらいだろうからな──

 

 思いついたのは別の世界(魔法少女だった世界)のイリヤの親友。彼女は空中に魔力を使って足場を作っていた。ならば、魔力を込めることで、踏みしめた場所に足場を作れるような靴を作ればいい。

 コカビエルが動き出すと思われる時期まで、まだ時間はある。できることなら、平時から使える武装としたいから、家族のうち道具作成を生業とする子たちに頼んだ。

 

 さすがに、グレモリーと言えど相手がコカビエルであれば、自分たちだけでどうにかなるなどと考えるほど愚かではないだろう。ならば魔王の援軍が来るまでに殺しきれれば勝利、殺しきれなければ敗北とするならば

 

──エミヤが空中戦にどれだけ慣れることができたか、が勝敗をわけるだろう──

 

 ここは悩みどころでもある。下手にコカビエルを倒すと、大戦を生き抜いた堕天使すら倒せる技量と認識される。かと言って空中戦に慣れていなかったせいで、隙が出来て殺されてしまうのは許せない。ではそもそも彼に空中戦をさせずに戦わせるというのも、ただ嬲り殺しにされるだけだから却下。

 

──では、どうするべきか──

 

 一番簡単なのはエミヤにわざと倒させずに時間を稼ぐパターンだろう。しかし、これではエミヤの負担が大きい。

 

──ならば──

 

 彼は選択した。そして、そのために必要なものを準備しはじめる。

 

 

──堕天使コカビエルが駒王に来るまで、あと1月──





 前書きでも書いたけどコカビエルの動向操ったりして主人公が微妙な黒幕ムーヴ始めちゃいました。でもバルパーとかそのあたりは彼にとっても予定外。他者の動向すべて操ることができないなんてポンコツな黒幕だね。

 1日3話投稿はきつい。1話が1500文字弱だったから結局書いたのは6000文字ぐらい。1話が長い人だとこれじゃ1話ぶんにしかならない量ではあるけれど…


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エミヤの実力


 なぜお気に入りが100件超えてるのだろうか(困惑)

 うれしい限りではあります。ありますが…なぜ皆様がこんな主人公の精神の根幹がぶっ壊れてるような作品に入れるのか…それが疑問でなりません。
 こんなの書いてる私が言うことではないのでしょうが、日本は大丈夫なのだろうか……


 今回は、エミヤとコカビエルの戦闘。自分程度でかっこよく描写できるのだろうか……?
 今の自分が出来る限りのことをしました。コカビエルも強化した気がする。その結果、コカビエルが原作よりはっちゃけちゃった気がするのは気のせいだと思いたい。誰か断言してくれませんかね…?


──コカビエルがエクスカリバーを強奪して駒王へ向かった──

 

 その情報を堕天使側に送り込んでいたスパイが届けてくれたのは、朝早く、日が昇る前のことだった。アビーを抱き枕にして、ベッドで寝ていた彼はその連絡がきたことで目を覚ました。そしてその報告を聞き、即座にエミヤへと連絡を入れた。

 

──ついに、コカビエルが動いた。準備はしておくように──

 

「わかったよ、父さん。コカビエルと戦うときは、以前言っていたような形で終わらせればいいのだろう?」

 

 赤龍帝が悪魔になったという報告を受けて、彼はコカビエル戦用の装備をエミヤに渡したときに、コカビエルとの戦闘はどうすればいいかという指示は出している。その指示通りでいいのか、という確認をエミヤはしていた。

 

──ああ、あの時言った通りの形で終わらせてくれ──

 

「わかった。次の連絡はこの案件が終了したときでも?」

 

──ああ、それでいい──

 

 考えていた通りの形で進めてくれればいいのだ、と彼は言う。そしてそれを聞いたエミヤも、次の連絡の時期を確認をしてそのまま通信を切る。

 

──さて、エミヤの様子を見ておこうか──

 

 そうして彼はコカビエルとの戦闘を見るため、駒王の状況を鏡に映して確認しはじめる。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

「すげぇ」

 

 そう、ポツリと言葉を漏らしたのは、リアス・グレモリーの『兵士(ポーン)』にして今代の赤龍帝、兵藤一誠。彼は今目の前で起きている戦闘に対して、そのように表現することしかできなかった。

 自分たちの味方をしてくれている傭兵「エミヤ」が、自分の思っていたよりもはるかに強かったからだろうか。傭兵稼業をしているのだから、戦闘経験はあるだろうと思っていた。けれど、レイナーレは彼が実力を発揮するには弱すぎて、ライザーの時はレーティングゲームには加われなかった。だから本当の意味で彼の戦闘を見るのは、これが初めてだった。

 

「いいぞ、人間!ひよっこでしかないリアス・グレモリーとは違って、貴様との攻防はまさしく戦闘と言えるものだ!」

「ふむ、それは歴戦の堕天使にそういってもらえるとはありがたいものだ。だが、私はこの町を守るという契約なのでな。この戦闘を楽しむことはできんのだよ」

 

 コカビエルが光の槍を彼の心臓にむけて突けば、彼は右手に持つ剣を使い、槍をそらす。逆に彼が切りかかれば、少し大げさな動きでコカビエルはそれをかわす。

 

 おそらくコカビエルにとって技量を競う形での戦闘は少なかったのだろう。戦争のときには、強大な力を持った兵器や、遠距離からの魔力、光力などの種族的な力が最も役に立っていた。そのため、近距離に入られたときの最低限の距離の確保などはできるが、武具の技量という一点においてはエミヤが勝っていた。

 

 そして、その一点があるからこそエミヤとコカビエルは戦闘になっていた。膂力、敏捷性、そういったもののアドバンテージは堕天使であるコカビエルにあるが、技術の一点のみで、攻撃を反らし、次の攻撃を読み、それを捌く。言葉にすればたったそれだけであるが、同じ剣士である木場、そしてゼノヴィアには、エミヤの技量の高さがよくわかった。

 

「なんて…技量だ…!」

「ああ、私たちよりもはるかに強い…!」

 

 二人にはおごりがあった。教会ではぐれ悪魔を討伐してきた自分なら、リアスの眷属である自分なら、傭兵風情(エミヤ)よりも強いに決まっている、と。

 しかし、目の前でコカビエルと切り結ぶ彼を見ると、そんなおごりは木端微塵に砕かれた。自分たちでは視認することすら難しい戦い。かろうじて目で追うことはできているが、例え見えなかったとしても、そんな超速戦闘を歴戦の堕天使(コカビエル)と行える時点で、自分より上であると認めることに否応はなかった。

 

──それだけではない

 

 彼がリアスに雇われて、初めて自分たちと顔合わせしたときに、彼は自らを『魔剣創造(ソード・バース)』持ちだと言った。それはつまり木場からすれば、自らと同じ神器(セイクリッド・ギア)禁手(バランスブレイカー)になることもなく、自分が禁手で作り出した聖魔剣より強力な剣を作っている、ということに他ならない。

 悪魔になってから、剣の技量は磨いてきたつもりだったし、神器の使い方も工夫してきたつもりだった。それでも、どこかで悪魔の身体能力に頼っている部分があったのだ。それを実感させられた。

 

 

 1つだけ言っておくと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼は確かにコカビエルよりも技量は上だ。魔剣創造も木場よりうまく扱えるだろう。

()()()()()()()。コカビエルは大戦の中で、自らよりも戦闘が巧い輩を幾度となく破って来た。しかも今回の敵はその時のものと違い、身体能力は自らに比べてはるかに劣っているのだ。ならば負ける道理などあるはずがないのだが()()()()()()()()()

 

──その理由は、エミヤが作り上げた魔剣にある──

 

 木場の作る魔剣は属性を宿すものが多い。これは魔剣と言われると大抵の人間が思い浮かべるものが、RPGだからか、木場に限らず魔剣創造の保有者は基本的に属性剣を生み出す。『光を喰らう闇属性の剣』などの例外もあるが、そういったものは少数派である。だからこそ彼らは()()()()()()()()()()()()()()()()()など想像することもできない。『光を喰らう闇属性の剣』などを考えれば、火属性の魔剣も「火を纏っている」という概念を宿した魔剣なのだと気づくことはできそうなものだが……しかし彼らはそれに気づくことができない。

 だが、エミヤは自らに使える手段を増やす中で創造系の神器は「概念を付与したもの」を創造するものだと気づいた。だからこそ、付与できる概念を増やすことに従事した。そうして彼が今握っている剣は完成している。

 この剣に付与された概念は──

 

──『切り結んだ相手の力の使用をジャミングする』──

 

 というもの。結果、コカビエルは全力で戦っているつもりでも、自らの身体能力をフルに使うことはできず、光の槍の構成も普段より粗い。

 無論、木場とエミヤにまったく同じ魔剣を作らせた場合、強度ではエミヤのほうが上となるため、神器を使いこなしていると言えるのもエミヤだ。

 つまり彼が今戦えているのは、技量の高さ、神器の熟練度、そして神器の方向性、その3つが重なっているからだ。

 

「フハハハハッ!楽しいな人間!」

「逃がすかっ!」

 

 コカビエルが笑いながら空中へと飛び立つ。それを追いかけようとするエミヤだが

 

「甘い!貴様の弱点は見切った!」

 

 そう言って、エミヤが空中に足場を作るための靴を、足場を作ろうと魔力を流した瞬間に、自らが飛び立つ瞬間仕掛けておいた視認することすら難しい大きさの光の槍で破壊した。

 結果、空中にコカビエルが逃れてしまった。グレモリー眷属とゼノヴィアは自分たちではかなわないのだから、コカビエルを倒せる可能性が一番高いエミヤの体力を温存するため、せめて地上に落とす部分だけでも自らの手で行おうとするも、攻撃がまったく通用しない。

 

「人間、いやエミヤと言ったか。貴様は強い。だからこそ、確実に殺させてもらおう!」

 

 あの靴がなければエミヤは空中戦ができない。それをコカビエルは理解し、靴があれば負けるのは自分になるだろう、そう思ったからこそ確実に勝利を掴むため破壊した。

 卑怯、汚い、下等種族と蔑む相手にそんなことをするなんて。誰かがそう言うかもしれないがコカビエルには関係ない。

 なぜなら、目の前にいる敵はコカビエルにとって全霊をもって打倒すべき『強者』なのだ。己を殺しうる敵に下等など存在しない。ならば自らの持てる手段の全てを使わなければ、それこそ失礼である。

 

「これで終わりだ!」

 

 そう言って放たれるのは、これまでとは比較することすら馬鹿らしいほどの力を持った光の槍。エミヤの剣と切り結んでいる間は、その効果により全力を発揮できなかったが、今のコカビエルであれば、自らの全力の槍を一発放つだけで駒王町ごと消滅させられる。

 

「ああ、お前がな」

 

 その言葉を聞いた瞬間、コカビエルは歓喜した。自らの全力すら超えるほどの『何か』がお前にはあるのだな、と。また自分の予想を超えてくるのだな、と。

 

投影開始(トレース・オン)

 

 彼が作り出すのは剣にあって剣にあらず。あの槍を撃墜し、コカビエルを倒すのであれば、貫通性が必要だろう。ならばと彼が生み出したのは

 

我が骨子は捻れ狂う(I am the born of my sword)

 

 一見すると異様としか言いようがない剣。きっと周りの面々も魔剣創造で生み出されたものでなければ、本当に剣なのか疑っただろう。その懐疑の目を受けながらも、彼は弓を構えた。

 この中では木場だけが気づいたが、接近戦をできるように両端に刃がつけられている。それで剣と認識させて、弓は作ったのだろう。

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!」

 

 その名とともに放たれたのは、先ほどの()。コカビエルの放った光の槍を瞬時に貫きコカビエルのもとへと向かう。

 

「な、め、る、なぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 だがコカビエルは、自分のどこにその()が刺さろうとしているのか理解し、自らの光力を一点に集中することで防いでいた。剣が少しずつ失速し、コカビエルが防ぎきるかという状況で──

 

「信じていたぞ。お前なら防ぎきると」

 

──背後からエミヤの声が聞こえた

 

「なんだと⁉」

 

 コカビエルが驚いた理由は2つ。まず1つ目は、ジャンプなどでは絶対届かない高さにいる自分の背後から声が聞こえたこと。そして2つ目は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 1つ目の疑問はすぐに解消された。魔剣創造で足場の代わりを作ったのだと。だが2つ目は理解できない。こいつは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだと。自分なら防ぎきるとそう思っていたのだと。もし防ぎきれなかったのなら、自分も貫かれて死んでいたというのに。

 その答えにたどり着いたのはエミヤの剣が自らの首に迫る瞬間。今からでは防ぐことなどできない。

 故にコカビエルは悪あがきをするのではなく──

 

「見事」

 

──そう言って、眼前の男を讃えながら死んでいった。

 

 

 エミヤはそのまま気を失い落下していった。コカビエルの羽とエミヤが地面に落ちたことで戦いが終わったことを理解したグレモリー眷属は即座に治療を始めた。しかし、エミヤの怪我はひどく、しばらくは使い物にならないということを言われた。

 そのためエミヤは、傭兵稼業を退きどこか別の場所で暮らすことにする、と言って駒王を出て行った。

 

◆◆◆◆

 

──そう、ここまでがエミヤが父と呼ぶ存在の考え

 

 コカビエルを倒せるほどの実力ということになれば、どうしても残しておきたい、とグレモリーは思うだろう。だからこそ、もう戦えないのだと誤認させることによって、エミヤが離れることを認めさせたのだ。なぜなら、その怪我は自分たちだけでコカビエルを倒すことが出来なかったからこそ生まれたものなのだから。無論、そう思うようにちょっとした暗示のための装備も渡しておいたのだが…

 その後エミヤは、家族の待つ()に帰り、怪我をすぐに治してしまうのだが、それは些細な事だろう。

 

──こうして、エミヤの任務は終わったのだ── 




 「アビーを抱き枕」でエロい方向考えた読者は挙手しなさい。
 そんな事案はありません。主人公7歳ショタのころからアビーちゃん当時見た目12歳、あるいはイリヤちゃん当時見た目小学5年生に抱き着きながら寝る習慣がそのまま続いてるだけです。


 魔獣創造で他作品のキャラ作ってハーレムする場合って自分が生み出した存在とイチャイチャするのだから、ただの近親相〇ではなかろうか。
 この作品ではその一面を全力プッシュしてる気がする。


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和平会談

 UA10000越え…⁉皆さんありがとうございます。なんだかお気に入りも250件超えててビビッております。

 今回は和平会談。前話ではコカビエルを書く際に気付いたらコカビエルが、自らより強い存在がいることを理解しているから、アザゼルのところから人工神器持ち出した結果、リアスたちの難易度が更にあがりそうになったりして修正が大変でした。
 今回はそんなことはないと思います。旧魔王派のいうところの『真なる魔王の血筋』の力をご覧あれ

 それと、これまで一切言ってきませんでしたが、主人公の前世では「ハイスクールD×D」という物語は存在していました。ただ、彼の記憶からは物語の内容、人の名前などの情報は消えています。覚えているのは「原作主人公は頭がおかしい進化をする」ということのみ。進化の内容も覚えていません。


──さて、会談襲撃は誰に実行してもらおうか──

 

 エミヤが戻ってきてから、はや数日。各勢力に潜り込ませた我が子からは、三大勢力の和平会談が行われるのは確実であるという情報を得た。

 ゆえに、和平会談の時に、テロ組織に便乗して襲撃を行うことを考えている。だが、その時に何を使って攻め込むのかについて悩んでいた。

 

──ここは、彼女の力を借りることにしようか──

 

 この9年間の間に、無限の龍神が接触してきたことがあった。グレートレッドを倒すことを手伝ってほしいとのことだった。

 

──お前、これまでの魔獣創造と違う。お前は何?──

 

 それが第一声だった。そして

 

──人類悪?『回帰』の獣?なら回帰と呼ぶ。回帰、我、グレートレッドを倒したい──

 

 だから手伝ってほしいのだと。静寂を得たいのだと、そう言ってきた。

 だが、オーフィスにとって一つうれしい誤算があった。彼の持つ魔獣創造ならば、本人の思い描いた空間を作り出す魔獣を作ることができたのだ。

 

──静寂、得られる?なら試してみる──

 

 そしてその時、オーフィスは彼とひとつの約束をしたのだ。もしも、その静寂が気に入ったのであれば、オーフィスの叶えられる範囲であれば願いを叶える、と。

 

──我、あの空間が気に入った。約束、果たす──

 

 彼が望んだことは一つ。禍の団(カオス・ブリゲート)にオーフィスがいると誤認させるために、力を半分に分けて、それをもらいうけること。

 

──わかった──

 

 意外にもすんなりとその要求は通った。彼は少しずつ要求のランクを下げていくことを考えていたのだが、オーフィスは静寂を得た後は特に何かする予定はなかったので、力を分けることにも抵抗がなかったのだ。

 

──はじめまして、おとーさま──

 

 そうして手に入れた力を使って、新しい子を生み出した。

 

◆◆◆◆

 

「クッ!こうなれば仕方がない」

 

 それは誰も、使った本人すらも思い描いていなかった結果にたどり着いた。

 

 

 和平会談の最中、急に乱入してきたテロ組織、禍の団(カオス・ブリゲート)。その中の旧魔王派は、旧レヴィアタンであるカテレア・レヴィアタンを首魁として現政権打倒のためにやってきていた。アザゼルが対峙し、始まった戦闘。旧魔王にすら劣る実力でしかない彼女では勝てる道理もなく、順当に敗北という結末に終わろうとしていた。

 だからこそ、彼女は奥の手を使うことを決意した。自らの力で勝てないのであれば、オーフィスの力を借りる。そのためにもらった『蛇』なのだから。

 そうして彼女が『蛇』を取り込んだ瞬間──

 

「Aaaaaaaaaaaaaa‼」

 

──カテレアの姿は変貌していた。まるで聖書に書かれている通りの怪物『レヴィアタン』に…

 

こうなった原因はいくつかあるが、まず最も大きな理由としては今の禍の団(カオス・ブリゲート)の首魁にあるだろう。

 

 彼はオーフィスからもらった力で、オーフィスの代わりとして禍の団首領となる存在を生み出した。外見はオーフィスと同じだが、その内には自らを生み出した父への愛と絶対の忠誠を持つ。そんな彼女の生み出す『蛇』にはオーフィスのものと違いがあるのだ。

 

──使えば最後、『細胞強制(アミノギアス)』により彼の眷属として新生する──

 

 結果として、禍の団(カオス・ブリゲート)の旧魔王派は、本人たちも知らないうちに彼の手駒となっていたのだ。

 

──だが、それだけがこの変貌の原因ではない──

 

 レヴィアタンという怪物はバビロニアの女神ティアマトとの類似性があげられるのだ。そして、細胞強制(アミノギアス)はティアマトの権能である。だからこそ、カテレアは今変貌している。

 

──皮肉なことに、理性のない怪物となったことで、真のレヴィアタンの脅威が、今ここに示される──

 

「はぁ!」

 

 アザゼルは人工神器の禁手のまま、攻撃を仕掛ける。堕天使勢力のトップに立つほどの男が、本来の実力を上回る状態で放った攻撃。それを見て一同は大きなダメージを与えられたと思ったが

 

「くそっ!まったく攻撃が通用してないぞ!」

 

 一切のダメージを負っていないその姿を見て驚愕することになった。

 この会談に参加している中で一、二を争う実力者の攻撃でもダメージを与えられないということは、この場で打倒することはほぼ不可能であるということ。

 

──これこそがレヴィアタンの持つ力

 

 レヴィアタンの鱗は、あらゆる攻撃を通さないと言われる。しかしそれは、鱗が固いからではない。

 

──体表面からわずか1mmの範囲で『世界を凍結』させることで攻撃を届かせないのだ

 

 だからこそ、世界を抉ることのできる威力の攻撃でなければ意味はない。この場でそれが出来るとすればサーゼクス・ルシファーぐらいだろうが、彼は結界を張っているため動けない。

 

 そして、攻撃が通用しないことに驚愕していた面々は、次の瞬間絶望を覚えることになった。

 

()()()()()()()()()()()()

 

 ティアマトの権能である『細胞強制(アミノギアス)』、それにより怪物(レヴィアタン)として覚醒したのみならず、本来の力である『自己改造、生態変化、生態融合、個体増殖をランダムに得られる』というものも、今のレヴィアタンは発現している。

 

 彼女が手にしたのは個体増殖。一体だけでも苦戦している今の彼らにとっては絶望とも言える知らせだった。

 

「どうなってやがる⁉」

 

 アザゼルの叫びは皆の心の内を代弁していた。旧魔王派が全員このような力を発揮してくるのであれば、自分たちの勝ち目はないのだと。

 そんなことを言ってる間にも、レヴィアタンは増えていく。今では三桁を超えただろう。

 

 カテレアが蛇で自らを強化した瞬間裏切るつもりだったヴァーリは、しかしこの状況では裏切るよりレヴィアタン討伐までは味方のふりでいたほうがいいと考えた。そのため、魔力弾などで援護を行っているが、まったく効果はない。

 しかも、どれだけ力を半減したとしても、攻撃が届かないのだから意味がない。鱗の硬さも半減したが、それも効果がない。自らの長所をすべて潰されているのである。

 

「Aaaaaaaaaaaaaaaaa‼」

 

 カテレアだったものが叫ぶと同時に、アザゼルの右腕が存在していた空間が凍結され、口から発せられた冷気の光線で吹き飛ばされた。

 

「グゥ!」

「アザゼル!」

 

 どんどん増えていくレヴィアタン。そんな中で他に気を取られればどうなるか。次の瞬間ヴァーリは思い知ることになった。

 

「ガッ!」

 

 カテレアの放つ冷気の光線。それは10度半減して尚、鎧を突き破るだけの威力があった。それを受けたことで腹部に穴が開くも、自らに治癒魔法をかけることでどうにか戦闘を続行しようとしたが…

 

──死ね──

 

 その傷口から、カテレアの持つ現悪魔政権への憎悪が呪詛となって入り込み、ヴァーリの体を侵す。すでにカテレアには誰が敵かはわからない。それを理解するほどの知性は残っていないのだ。

 幸いなことに選民思想などが元となっているこの呪詛は実力者であれば簡単に解呪できるものだったので、解呪しながらもヴァーリは意識をレヴィアタンからはなすことはなかった。

 そして、意識をレヴィアタンにむけたままだったからこそ、彼は気づいた。

 

──先ほど増殖した個体の肉体が崩壊している様を──

 

 それを見た彼は何かに気が付いたのか、周囲のレヴィアタンを見回す。そして納得したのかアザゼルに言った。

 

「アザゼル!こいつらは自分の力に耐えきれていない。恐らくカテレアの体では、これだけの力を振るう器としては落第点なんだ!」

 

 それを聞いたアザゼルも周囲を見渡す。自壊している様を見て納得したようだ。

 しかし──

 

「そうみたいだな!だが、増殖スピードと自壊速度なら前者のほうが上みたいだぜ!」

 

 そう、例え自壊して減っていくとしても、それを上回る速度で増殖するのでは意味がない。

 だが、この場には自壊速度を速くすることができる人材が二人いる。カテレアが体に収められる力の量を半減することで、パンクさせられる白龍皇、ヴァーリと──

 

「兵藤一誠!君も戦闘に参加しろ!奴に力を譲渡することで自壊させるんだ!」

 

──保有する力を器に入りきらないほどに増加させられる赤龍帝、兵藤一誠が。

 

「お、俺⁉」

 

 一瞬戸惑った彼だったが

 

「わかった!何をすればいいんだ!」

 

 そう、答えた。

 

 これまでの彼であれば、ここまで即断することはできなかっただろう。だが、コカビエルのとき、何もできずエミヤに任せるしかなかった彼は

 

──次に何か起きたときは、自分も役に立つのだ。自分は部長の兵士なのだから──

 

 そう思うようになった。

 そして、こんな大きな戦闘で自分の力が必要だと言われた以上、彼の中では参加しないなんて選択肢は存在しなかった。

 

 説明を受けた彼は、即座にそれを実行し始めた。白が器を半減し、赤が中身を倍加する。そんな即席で拙いものではあったが、今代で初めて赤と白の共同戦線が行われたのだ。

 

 

──そうして1時間後──

 

「これ、で終わりだ!」

『Transfer』

 

 最後の一匹が自壊していった。そして一息ついた次の瞬間

 

「え?」

 

 兵藤一誠の真横をアザゼルが吹き飛んでいった。それをやった犯人は右手を突き出してこちらを見ている。

 脳が理解してくれない。先ほどまで共に戦っていたのに、仲間意識が生まれかけていたのに

 

「どうしてだ……!」

 

 そいつが裏切者だと認めたくなくて

 

「どうしてアザゼルを攻撃したんだ、ヴァァァァァァァァリィィィィ⁉」

 

 友情が生まれそうだと思っていた相手の名前を、兵藤一誠は叫んだ。

 




ちなみにこんな終わり方ですが、次は駒王会談の続きではありません。ここからは原作通りの流れですからね。

少しでも真なる魔王の血筋(笑)が真なる魔王の血筋(ガチ)になっているように見えればいいなと思います。


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赤龍帝VS白龍皇

 諦めて連載に変えました(挨拶)

 お気に入り300件超えてしまいました。怖い。

 他の作者様方の前書きを見ていると、なぜ自分にはあんな前書きが書けないのか忸怩たる思いであります

 とりあえず、前回入れ忘れてたオーフィス擬きちゃんの設定を少々

名前:フィー(対外的にはオーフィス)
見た目:幼女オーフィス
能力:蛇を通じての細胞強制(アミノギアス)
備考
龍ではないのでサマエルが本来ほどの効果を発揮しない



前回の最後で、和平会談編は終了と言いましたが、続けることにしちゃいました。感想で言われたことがすごい面白そうだったんで、ついやっちゃったんだ。プロットなんて存在しないからできることだね(白目)
 今回は初めてイチャイチャ(?)描写を入れてみました。


「どうしてアザゼルを攻撃したんだ、ヴァァァァァァァァリィィィィ⁉」

 

 そう叫び、ヴァーリを見た兵藤一誠は彼の姿を見て、彼の姿を見て今日何度目かわからなくなるほどの驚愕を得た。

 

 なぜなら、彼の鎧は黒紫に変色し、縦方向に開いた口のようなものが至るところに存在していたからだ。

 

──その理由はただ一つ

 

 カテレア・レヴィアタンの冷気に貫かれたとき彼の体に入り込んだものは、現魔王に対する呪詛だけではない。彼女はすでに細胞強制(アミノギアス)によって別世界において『ラフム』と呼ばれた存在と同一のものになっていた。

 即ちそれは、彼女の肉体はケイオスタイドで構成されているのと同義であり、その内で生成された冷気にもケイオスタイドが含まれるということなのだ。

 アザゼルは時間を凍結させられた空間に存在していた腕を消し飛ばされた。そのため、怪我の部分から入り込むということはなかったが、ヴァーリは違う。彼は気をそらした一瞬に、冷気で体を貫かれただけなのだ。そのため、いくら自らの体を治療し、旧魔王の呪詛を解呪しようとも意味はない。

 

──母なる権能には、その子たる存在は抗えないのだ。

 

 だが、彼も立派だったとは言えるだろう。途中で自らの精神が汚染されていくことに気付き、その汚染に使用されている力を半減することで、レヴィアタン討伐まで自らの意志を維持したのだ。そうでなければ、今頃首脳陣は全滅していただろう。

 

g7ffff(キャハハハハ)

 

 しかし、それももう終わり。今の彼はもはやヴァーリ・ルシファーではない。名付けるとするならば『ヴァーリ・ラフム』である。

 

 その姿を見て、この場にいるすべての存在がヴァーリはもう手遅れだと理解した。

 

qqt5、s@oeh@(たたかえ、ドライグ)

 

 兵藤一誠には、すでにラフムと化したヴァーリの言葉の意味はわからない。けれど、自らとの闘いを望んでいることだけはわかった。

 

「いいぜ…!お前がそれを望むんだったら…!」

 

 それが、ラフムとしてではない、ヴァーリ・ルシファーとしての望みだと思えたからこそ、自らよりはるか格上との対峙を決意した。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 それは戦闘と呼べるほどのものでもなかった。

 

 歴代最弱の赤龍帝(兵藤一誠)歴代最強の白龍皇(ヴァーリ・ルシファー)の対峙だったからか、その場にいる全員が兵藤一誠の死、あるいはヴァーリと同一の存在になることの覚悟をしていた。

 それでも動けなかったのは、他に守るべきものがあったから。首脳陣は自分たちの勢力を。護衛は首脳陣を。リアス・グレモリー眷属はレヴィアタンとの闘いで、もう動くことができない。

 そして、全員が覚悟していたからこそ、眼前の光景には目を疑った。

 

「ウォォォォォォォ‼」

4&&&&&&&&&&&&(ウォォォォォォォ)‼」

 

 兵藤一誠とヴァーリ・ラフムが殴り合い、兵藤一誠が打ち勝っているのだ。

 

 

──理由としては単純だった

 

 神器は所有者の思いに応える。だからこそ『友人となれたであろう宿命のライバルをこんな化け物のままにはしたくない』という、これまでにないほどの強い思いを持つ兵藤一誠がカタログスペックをはるかに超える力を発揮し、ラフムと化したことでそういった強い思いがなくなりカタログスペック通りの力しか発揮できないヴァーリ・ラフムをわずかに上回ったのだ。

 しかも、今ドライグは宿敵であるアルビオンがこんな化け物になってしまったことに憤慨している。だからこそ、兵藤一誠とドライグはこれまでにないほどに同調することに成功した。

 

 

「すげぇ…」

 

 アザゼルはそう呟いた。今代の赤龍帝は最弱だ。そう言ったときのヴァーリはとても残念そうだった。スペックも低い。戦闘への意欲よりも女への興味が強い。そんなものが自分のライバルなのか…と。

 

「ヴァーリ…お前のライバルは最弱じゃねぇよ…」

 

 確かに技巧などなんにもない。ただ正面から殴り合うだけ。これでは、ほとんどの相手には敵わないだろう。

 けれどこの瞬間、相手も正面から殴り合うしかない現状では、歴代最強クラスのパワーを誇っている。

 魔王が、天使長が、全力で張った結界が赤龍帝の拳の風圧だけで消し飛びそうになっている。拳だけで、ラフムと化したことで他のラフムの特性──レヴィアタンの鱗──を得ているヴァーリの拳を弾き飛ばしている。それだけのパワーを持つ者がどれだけいるだろうか。

 そうして戦況を見ていると、ヴァーリ・ラフムの様子がおかしいことに気付いた。

 

 

『相棒。奴の様子がおかしいぞ』

「ああ、わかってるさ。ドライグ」

 

 それは赤龍帝も一緒だった。目の前でヴァーリだった者が何か笑っているように見える。それは、鎧にある縦方向に裂けた口が開き、笑い始めたからだろうか

 彼らが次の行動に対して備えていると

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼らは理解できなかったことだが、この瞬間にヴァーリ・ラフムは理解したのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()と。白龍皇アルビオンのスペックならば兵藤一誠は抵抗できずに死ぬのだと。

 そして彼は進化した。白龍皇アルビオンがラフムと化した『アルビオン・ラフム』と、旧魔王ルシファーの末裔がラフムと化した『ルシファー・ラフム』へと。

 

「クソッ…!」

 

 結果として兵藤一誠は敗れ去る。赤龍帝の力ですでにボロボロだった彼は、分離したことでダメージが消え去ったラフムに敵わなかった。

 ルシファーへ攻撃しようとすれば半減される。アルビオンへ攻撃しようとすればルシファーがばら撒いた魔力弾で動きを止められる。そんな状況から起死回生の一手をもたない彼では抜け出すこともできず、アルビオンの息吹(ブレス)を受けたことで兵藤一誠は敗北した。

 けれど、彼もただでは負けなかった。カテレア・レヴィアタンの時に彼は知っている。本来耐えきれないほどの力を入れれば自壊することになるのだと。

 

『Transfer』

 

 だからこそ彼は最後の最後で、2匹のラフムに力を譲渡した。お前風情では天龍の力もルシファーの力も、ヴァーリという男の一部ですら貴様(ラフム)には荷が重いのだというように…。そしてそれが正しいかのように、ラフムの体が崩れてゆく。

 

「イッセー!」

 

 そう言って兵藤一誠に駆け寄るリアス・グレモリー。兵藤一誠は眠っているだけだと理解し、安堵の息を吐いた。

 

 こうして駒王会談は終わった。結果として今代の白龍皇が死亡。今代の赤龍帝が意識不明の重体。これらによって禍の団(カオス・ブリゲート)を明確な脅威として三大勢力は定めることとなったのだ。

 

 

◆◆◆◆

 

──けれど、彼らは知らなかった

 

 ラフムと化したら、その大本である今現在オーフィスとして存在している少女(フィー)のところにそのデータが送られ、次から生み出されるラフムはこれまでのラフムの持っていた形質をすべて得ることができるということを。

 

 そして

 

 ラフムと化した存在(ヴァーリ)の攻撃を受けた兵藤一誠も、すでにラフムと化していることにも…彼が表面上変化していなかったから大丈夫だと、そう思い込み気づかなかった。

 

 

──よもや、二天龍の力を得ることができるとはな──

 

 そう、言ったのは『回帰』の獣、その残滓。彼は今回の実験で思わぬ成果を得た。本来ならば、カテレアに襲撃させるときに蛇を使わせ、首脳陣の能力のサンプルデータを得ようとしていただけだったのだ。

 結局はアザゼルのデータしか得られなかったが、二天龍のラフム化とレヴィアタンの血筋の覚醒により、それらを魔獣創造で生み出せる戦力とすることができた。

 では、次はどうするか

 

──アビー、アルクを呼んでもらえるか?──

 

「わかったわ、お父様」

 

 そう言ってアビーは空間転移を行い、次の瞬間金髪の美女を連れて戻ってきた。

 

「どーしたの、おとーさん?」

 

 

 美女──アルク──はニコニコ笑いながら問いかけてきた。

 

──確か、夏に冥界でパーティーがあるらしい。おそらく次の禍の団の動きはそこだろうから、冥界にいる君の端末には、そこに注視しておいてもらいたい──

 

「オッケー!」

 

 アルクはそう言って了解の意を示した。

 

「今回の任務はそれだけ?」

 

──ああ──

 

 そう言うとアルクはニコニコ笑ったまま去っていった。

 

「お父様?」

 

 アルクが去ったあと、アビーが怪訝な顔をしてこちらをみていて

 

「禍の団にも端末はいるのだから、わざわざ冥界側に注視させる必要はないんじゃないかしら?」

 

 そう、言ってきた

 

──一番襲撃しそうなのは、グレモリーの戦車(ルーク)の姉だろう。ただ、彼女が所属していたヴァーリチームが崩壊してから、彼女は禍の団の中でも微妙な立ち位置でね。接触するのが難しい──

 

 この程度のことは聡いアビーならわかっているはずなのだが、と思っているとふと気づいた。

 

──ああ、もしかして嫉妬かな?──

 

 彼女は最初期からいる自分よりも、後に生まれた子ばかりが仕事を与えられているという現状に嫉妬していたのだろう。自分では役に立てないのではないか、と

 

「ち、違うわ!ただ純粋に疑問に思っただけで──」

 

 そう否定するも、慌てているのと顔が真っ赤な時点で図星なのだとよくわかる。だから

 

「──だから嫉妬してるとかそういうのじゃ──ってお、お父様⁉」

 

 アビーのことを抱きしめた。

 

──アビーの出番はもう少し後だよ。アビーにも仕事はあるけれど、そのための下準備がまだだからね。もう少し待っててもらえるかい──

 

「……お父様がそう言うなら……」

 

 顔を真っ赤にして、俯きながらもアビーはそう言った。

 

──とりあえず今は冥界の方だ。それも下準備の一つだからね──

 

 そうして次のイベントにむけての準備を整えていった。




 あれ?もともとの予定ではヴァーリ・ラフムがアルビオン・ラフムとルシファー・ラフムに分離して、これからのラフムにその形質が受け継がれるだけだったはずなのに、なんで一誠もラフムになってるんだろう……?

 
もう一人の最初期メンバーであるイリヤは現在修行中。気づけばあの子の出番がほとんどなかった。そろそろ出してあげないと…

 ルシファー・ラフムとラフム・ルシファーなら後者のほうが言いやすそう。けどルシファー家のラフムくんみたいな感じがするので前者にした。

今回のキャラ紹介

・アルク…皆ご存じ月姫メインヒロイン。本来なら彼女自身が『星の触覚』だが、今作では彼女の触覚が様々なところにスパイとして潜り込んでいる。ちなみに今回登場していないが、使い魔の森のほうはネロ・カオスが細胞強制を延々と押し広げている。


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冥界にて


 原作をハイスクールD×Dにして今週UA数多い順にこの作品が一番前にあった……怖い。
 なぜこんな駄文を皆さんは見に来ているのか…

 原作を持っていないので、「ん?」となるところもあるかと思いますが、そういった場合はご指摘いただけると幸いです。

 今回は冥界編です。黒歌がどうなるのか、小猫がどうなるのか。少なくとも前書き時点ではどうするか決めてないので自分もハラハラしております。




 薄暗い森の中、一人の美女が走っている。幾度か後ろを振り向くところを見るに、何かから逃げているようだ。

 

──フフッ、いつまで逃げられるかしら──

 

 後ろから追ってきているのは、見るもおぞましい触手の怪物たち。恐らく、並大抵の存在では、見ただけで狂気に駆られることだろう。そんな存在から逃げ続ける彼女は、未だ振り切れないことに、そして自らの持つ攻撃手段が一切効かないことに対して恐怖を感じていた。

 

──それじゃあ、次はこれね──

 

 奥へ、奥へ、彼女は森の奥深くへと潜っていく。道を誘導されているのはわかっている。けれど、転移などが封じられている以上、そちらにしか逃げられないのだ。ゆえに彼女は恐怖を感じる時間が長くなる。諦めてつかまってしまえば楽になれるかもしれないのに…

 

 そして森の中を進んでいると、光が見えて来た。森の出口にたどり着いたのだろう。そして、そこへ抜け出すと

 

「そんな……嘘……」

 

 そこには後ろから追ってきているのと同種の怪物が大量に存在していた。この光景を見て彼女の心は折れた。膝をついた彼女の元へと、今すべての触手が殺到した。

 

──これで終わり?つまらない幕切れだったわね──

 

 その後、彼女──はぐれ悪魔『黒歌』──を見た者は誰もいない

 

◆◆◆◆

 

「すみませんでした、部長!」

 

 そう言って眼前にいる紅い髪の持ち主に頭を下げ謝罪しているのは、今代の赤龍帝である兵藤一誠。彼は先日の和平会談のとき化け物と化したヴァーリと戦闘を行い、意識不明の重体となっていたのだ。

 しかし、夏休み直前に彼は目を覚まし、今日から部活に参加することができるようになったのだ。

 

「謝る必要はないわ、イッセー。あなたがちゃんと目を覚ましただけで十分よ」

 

 そう言ってほほ笑むリアス。彼女はアザゼルから言われていたのだ。

 

──ヴァーリがあんなことになった原因として考えられるのは、カテレアの攻撃だ。もしかしたら、カテレアからヴァーリ、ヴァーリから赤龍帝、とウィルスみたいに赤龍帝の体に入り込んでいる可能性もある──

 

 それはつまり、イッセーが敵対するということで、彼のことが好きなリアスには到底認められるものではなかった。

 だからこそ、彼女は言うのだ。目覚めてくれてよかった、と。貴方が化け物にならなくてよかった、と。

 

「え、えっと、それで夏休みって部活はどういう形になるんですか?」

 

 しんみりした空気になってしまったので、それを変えるために彼は聞いた。それを理解しているからか、リアスも何も言わずに答えた。

 

「夏休みは全員で冥界へ行くのよ」

「冥界…ですか…?」

 

 これまで部活に参加できていなかったために、他の眷属はすでに聞いていることではあっても、彼は知らない。そのため彼のために説明を行うこととなった。

 

「──というわけで、要するに合宿みたいなものよ」

 

 そこまでリアスが話したところで、アザゼルが話に入って来た。

 

「ただし、イッセー。おまえには常に俺が付き添うことになる」

「え?先生が…ですか…?」

 

「ああ、お前はヴァーリと……ヴァーリだった化け物と戦った。あいつがどういった理由で化け物になったのかはわからないが、一番可能性として高いのはカテレアの攻撃を受けたタイミングだ。その後から少しずつ動きが鈍くなっていたからな。ヴァーリは旧ルシファー、そしてカテレアは旧レヴィアタン、それぞれ旧魔王の血を継いでいる」

「ちょ、ちょっと待ってください先生!ヴァーリが旧魔王ってどういうことっすか⁉」

 

 一誠は、ヴァーリが旧魔王という情報をここで初めて聞いたため、驚いて話を途中で遮りながらも叫んでいた。

 

「ああ、言ってなかったか?あいつは人間とルシファーのハーフだ」

「聞いてませんよ!!」

 

 それを聞いてさらに驚愕する一誠。彼が少し落ち着くのを待って話を再開した。

 

「まぁ…今のお前は悪魔であっても特殊な血筋があるとかそういうことじゃない」

「それなら……」

「けど、赤龍帝を宿しているだろ?あの時ヴァーリはアルビオンらしき化け物と悪魔を原型とした化け物の2つに分裂していた。つまり、二天龍に反応する可能性がある。だからこそ、外から何か変化が起きていないか確かめる役割で俺がお前と一緒にいくのさ」

 

 それを聞いた周りの雰囲気は少々重いものだった。なぜなら──

 

「要するに化け物になりそうだったら先生が俺を始末してくれるってことですよね」

 

 そう、今一誠が言った通り、もしもの時には一誠を殺害する役割をアザゼルは持つことになるのだ。仕方がないことだと理解はできるものの、納得は難しかった。

 

「それなら、安心です。俺は自分のパワーアップのことだけ考えてればいいわけでしょ?」

 

 そう言って話を終わらせる一誠。のんきなことに冥界に何を持っていくか、すでに考え始めている。

 そして、それが周りに気を遣っているのだと理解できたから、彼らは何も言えなかった。

 

「それじゃあ冥界に行くための準備をしておくこと…!」

 

 そうしてその日は解散した。

 

◆◆◆◆

 

 そして今、冥界の片隅で兵藤一誠は戦闘を行っている。相手はヴァーリと同じ化け物(ラフム)。そして仲間の言を信じるのであれば、あれは恐らく小猫の姉であるらしい。見た目としては巨大な黒いネコ科動物のような何か。

 本人からは、殺してあげてほしいという言葉をもらったが、純粋な力量差のせいで攻めあぐねている。

 

「ドラゴンショット!」

 

 放った一撃は大量の魔力弾と衝突しその度に()()()()()()()()()()()()()()()。それを最初に見たときは驚きしかなかったが、もう認めるしかない。

 

──この化け物は別個体が得た力を自らのものとすることができるのだと──

 

「くそっ!」

 

 そしてそれを理解してからは、彼の中から神風特攻という考えは消えた。なぜならそれを行えば、確実に半減を受けることになる。そうなれば勝ち目など完全になくなってしまう。

 だからこそ、迂闊に近づけなかった。そして、それは敵に時間を与えることになり、彼の敗北を決定づけた。

 

「な……!」

 

 黒歌が放った魔力弾、それらをすべて捌くことは不可能だと思い、ある程度の被弾を覚悟していたのだが、よけきれないタイミングで放ってきたものの最初に、仙術が使用されていた。それにより気脈が乱され、動けなくなった。

 そしてその隙をつかれ、360度全方向から発射された魔力弾を受けることになる。

 

「グッ…ガァァァァ!」

 

 彼が今受けている魔力弾にはアザゼルがウィルスと呼称したケイオスタイドが大量に含まれている。そしてそれにより彼は浸食され続けることになる。

 魔力弾による全方位射撃が終わり、それにより起きた煙が晴れるタイミングでその場にいた全員が聞いた。

 

『Welsh Dragon Beast Drive!!!』

 

 そして煙の中から現れたのは、本来のものとは少し意匠が違う、より有機的な赤龍帝の鎧を身に着けた兵藤一誠だった。

 

「ふぅん……名づけるなら赤龍帝の獣王鎧(ブーステッドギア・ビーストメイル)ってところか…」

 

 その鎧を見た瞬間、その場にいた全員が『兵藤一誠も化け物になってしまった』と思った。鎧には、化け物(ラフム)となったヴァーリと同様の意匠が施されているところがあったからだ。

 しかし、声を聴いたことでそんなことはなかったのだと安心した。……話し方が変わっていることにも気づかずに…

 

「さぁ、それじゃあ続きを始めようか!」

 

 そうして彼は敵に対して向かって突撃を開始した。




間違えて触手を職種と変換しちゃったときに「眼鏡をかけた七三分けのウェアジャガーが『納期』とか『借金』とか呟きながら追いかけてくる」っていう情景が思い浮かんだ

アビーのペットの触手くんについて

この子は本体が家にいて、アビーはその一部を召喚する形で使役しています。そして触手くんの持つ能力ですが
・再生能力
・異形に対する特効
の2つがデフォルト。そして、異形を殺しきれなくともダメージを与えた面からケイオスタイドが侵入し、ラフムへと変化させます。えぐい

とりあえず禁手については、次回に説明を入れようかな…と


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赤龍帝の獣王鎧


どうも、平均評価と調整平均が下がってきていてちょっとほっとし始めたぴんころです。
オレンジのときはちょっとビビってました。

やっぱり他の人たちの人類悪がHSDDに突撃する話を見てると、如何に自分の作品がしょぼいかよくわかる。

 今回は禁手の能力お披露目会かな……そろそろラフムくんたちにも頑張ってもらいたいところ


──ほう、あのような形になったのか──

 

 兵藤一誠の至った禁手を見て、彼はつぶやいた。横には勝手な行動(黒歌のラフム化)をしたために怒られたアビーと、それを慰めているイリヤがいる。

 

──ラフムと化した存在が禁手に至るとどのような形になるのか──

 

 それこそが、兵藤一誠がラフムとなったことでできた、彼の確かめたかったことの1つである。兵藤一誠は和平会談の時点でラフムに変化している。しかし、表面上は何も変わることなく日常を過ごすことができていた。無論、父である彼の力があればすぐに他のラフムと同じ状態にはなるが、それでも貴重な意識を残したままのサンプルだった。

 だからこそ、ラフムへの変化が神器にどのような影響を与えるのか。それを知るための観察対象としては、これ以上ないほどのものだったのだ。

 

──さて、これは彼の勝利かな──

 

 そう言って、ここからどうなるのかを彼は観察する

 

◆◆◆◆

 

 赤龍帝とラフムの戦いは、先ほどまでとは全く違う状況になっていた。それは、鎧を得たことで空中戦がしやすくなったから……ということではない。

 

「そらそら、どうしたぁっ!」

 

 放たれる魔力弾、その一発一発は小さいものだが、それに含まれる魔力の性質が問題だった。誰も気が付いていないが、彼の魔力弾には現在白龍皇の持つ『毒』の属性が付与されている。

 それだけではない。普通であれば、いくら鎧をつけたことで防御力があがったからといって、今の黒歌の攻撃を無傷で抜けることなど不可能である。しかし彼はレヴィアタンの鱗の力──空間凍結──により鎧の表面をコーティングしている。

 つまり、今の彼はアザゼルたちが見たことのある化け物(ラフム)たちの特性を使用しているのだ。

 

──ラフムの大元とのラインをつなぎ、別のラフムの特性を得る──

 

 これこそが、彼の禁手『赤龍帝の獣王鎧(ブーステッド・ギア・ビーストメイル)』の力である……そう、見ていたものたちは認識した。

 

h@g@'########(ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ)

 

 そして、彼の放った魔力弾が黒歌(ラフム)に当たった瞬間、毒により黒歌だったものは溶けて消滅していった。

 そして、それを見た兵藤一誠は鎧を解除した。それと同時にすさまじい疲労感がやってきて、体勢を崩す。その状況を見た仲間たちはすぐに駆け寄っていく。

 

「イッセー!」

「大丈夫だ。寝てるだけみてーだからな」

 

 アザゼルのその言葉を聞きホッとするリアス。

 

「しかし…まさか、アルビオンの毒まで使用できるとはな…」

「毒…?」

 

 白龍皇の力については『半減』しか知らない若い世代は、その言葉に対し疑問をもった。それを見たアザゼルは溜息をつき

 

「知らねぇのはしょうがないが、とりあえず話はイッセーを医務室まで運んだ後だ」

 

 そう言って話を中断させた。




説明

名:赤龍帝の獣王鎧
備考
 ラフムの大元とのラインをつなぎ、別個体のラフムの特性を得る…というのがアザゼルの見解。しかしそれは、兵藤一誠がラフムへと変質した時点で手に入れている。ただ、人間時代の意識がそのまま残っていて他のラフムとは違う特殊な個体である兵藤一誠には使えなかった。これには、ラフムとしての『兵藤一誠』の力を補助する役割がある。


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一方そのころ


今回は、一誠がなんやかんや頑張ってたタイミングでのパーティー会場。

お気に入り500件、UA25000件ありがとうございます。




 現在冥界で行われている若手悪魔のパーティー。その会場にいた者たちは、現在の状況は質の悪い悪夢なのだと思いたかった。

 

 テロ組織による襲撃ならば理解できた。しかしそれも、旧魔王派がそのまま攻め込んでくる、という程度の貧困な発想のもの。なぜなら旧魔王派は、『魔王の座を奪い取り自らの手で冥界を統治する』ということを目的としている、そう考えていた。しかし、実態は違った。すでに彼ら(旧魔王派)にとって、今の冥界は何の価値もなかったのだ。贋作の魔王に尻尾をふった輩など治める価値もない、ということなのだろう。

 そのことを理解できなかったからこそ、今このパーティー会場は混沌としているのだ。

 

──ラフムによる襲撃──

 

 それこそが今この場で起きていることの真実。旧魔王の血族が、ただ今の冥界を滅ぼすためだけに、オーフィスの蛇を使用した結果、起きている惨劇である。

 

「クッ!」

 

 ヴァーリの時のことを考え、魔王は接近戦ではなく遠距離で戦うように指示を出す。しかし、魔力を扱うことのできないサイラオーグはそのようなことができないため、接近戦を行うしかない。

 すでにレグルスを身に纏っているとはいえ、レグルスを通じて汚染されかねないので、拳により引き起こされる風圧だけで敵を吹き飛ばし、それらを魔法で消し飛ばすというのが今の彼らの戦い方であった。

 

 しかし、そんな戦い方が長く続くはずもない。若手悪魔は、どれだけ倒そうとも無限に増え続けるラフムを相手にできるだけの戦力ではないのだ。

 かと言って魔王が出ることも難しい。なぜなら彼らの攻撃では、ほんのわずかなミスで前線に出ている若手悪魔を殺しかねないからだ。そして、それだけではなく今現在彼らも攻め込んできた旧魔王と戦闘になっている。だからこそ、救援など望むことはできないだろう。

 結果として、戦闘開始から約3時間。そこで彼らの魔力は尽きた。これ以上の抵抗をすることはできず順当にラフムに殺されることとなった。

 

◆◆◆◆

 

 魔王は魔王で攻め込んできた、旧魔王派のシャルバ・ベルゼブブだったラフムと戦闘になっていた。ラフムが攻め込んできた当初は、彼らも若手の指揮をとることが出来ていたのだが、ラフムと化した魔王が攻め込んできたことで、そちらで手一杯となり、若手への指揮がとれなくなったのだ。

 

d<、jt@emks@m(死ね、紛いものども)!」

 

 今のシャルバは蠅の王たるベルゼブブではない。三大勢力との会談のときにカテレアがレヴィアタンに回帰したことを知っていたオーフィスは、かつて他の神話の神、その分霊であったころへと回帰させるための蛇を旧魔王には渡していた。

 ゆえにこそ、この場にいるシャルバはベルゼブブではなくバアル・ゼブル。嵐と慈雨をつかさどる神格へと、ラフムになることで立ち返った存在である。

 

 今の彼は自らの起こす嵐、そして降らせる雨により悪魔を滅ぼしにかかる。なぜなら彼の起こす慈雨とは、人間のためのもの。人間を食い物にする異形に対しての慈悲など込められているはずがない。人類が異形による搾取という長い冬を超えるための恵みの雨は、遍く人外へダメージを与えるのだ。

 

「ハァッ!」

 

 サーゼクスの滅びの魔力により、降り注ぐ雨を防ぐ結界が張られる。他の者では、悪魔の張った結界という点に対して特効効果のある、異形を滅ぼす雨を防ぐことはできない。そして、彼が結界を張ることに集中しなければならないということは、他の面々でバアル・ゼブルとの戦闘を行うということ。そのため、彼の持つ雨と嵐を抜くことが難しかった。

 

「えーい」

 

 そう言って放たれたのはセラフォルーの魔力弾。直線状にある雨粒を凍らせ進みながらも、その上から降り注ぐ雨により、すぐに消滅していく。サーゼクス以外には、敵の攻撃を防ぐ結界を張ることはできないが、防御に回っているサーゼクスが攻撃に回らないとバアル・ゼブルを倒すことはできない。

 それに加えて、若手のほうにはラフムが行ったのだ。そちらの救援に向かう必要もあるのだから早めに倒さなければならない。唯一の救いとしては、この異形殺しの雨を結界を破るためだけに使い、若手のほうには一切降っていないという事実があることだ。そうでなければ、きっとすでに若手は全滅していた。

 

 そうして戦うこと2時間。彼らはついに決定的な破綻を目にした。

 

「え?」

 

 その言葉を言ったのはセラフォルー。彼女は目に映った光景を信じたくはなかった。まさか──妹が化け物に心臓を貫かれ、目から光が消えているなんて、信じられなかった。

 

「あ、ああああああああああああ!!」

 

 その叫びとともに結界を飛び出し、ラフムの元へと駆けるセラフォルー。しかし、結界の外に出れば、バアルの雨を全身に受けることになる。

 彼女は全身に纏った魔力である程度まで防いでいたが、結局妹の亡骸のもとへたどり着く前に死亡した。

 

 そして、それに少し遅れて完成した、アジュカの結界。これによりサーゼクスは防御にまわる必要がなくなり、そのまますぐにバアル・ゼブルは討伐された。

 

 

 こうして、冥界のパーティーは終了した。魔王セラフォルー・レヴィアタンと、リアス・グレモリー以外の若手悪魔。それこそが今回の襲撃での死亡者。

 そして、それと同時にリアス・グレモリーは敵と通じているのではないか、という疑惑が出始めた。





今回はここまで。ちなみにラフムやらを誘導していたのが、アルクの端末。もともとはケイオスタイドで作られた端末ってことで、原作では「聖杯の泥で反転した」という生まれの黒王が、真祖クラスのスペックで出る予定だったけど、なぜか出ることなく終わってしまった


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冥界のパーティー、その後

 なんか気づいたらUA数30000超えてたしお気に入りも700件超えてた……いったい何があったんだ……

 そろそろ実家に寄生してる状態から一人暮らしに戻るため、おそらく投稿頻度が下がります。

 今回はセラフォルーとか死んだ後ですね

追記

今気づきました。日間ランキング34位⁉これでいろんな人が見に来てたんですね…
というか、なぜここまで上がったんだ……


「ふざけるなっ!!」

 

 現在、魔王サーゼクス・ルシファーは一つの噂のせいで憤怒に燃えていた。それは冥界のパーティー後に貴族間で広まった噂が原因である。

 

──リアス・グレモリーはテロ組織と通じているのではないか──

 

 当たり前のことだが、サーゼクスはこれを信じていないしリアスも否定している。それでもこんな噂が広まり続けていることにはわけがある。

 

──魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタンすらも殺せる輩を相手にしながら、ただの若手悪魔が二度も生き延びている──

 

 これこそが噂が広まった理由。実際には戦った個体による戦闘力の違いはあろう。けれど彼らにとってはそんなことは関係ない。魔王すらも殺せるテロ組織を相手にしながらも生き残っているということが重要なのだ。

 そしてこの噂が信憑性を増すことになったのは、化け物(ラフム)が攻め込んできたときに、彼女がパーティー会場を抜け出していたという事実があったからだ。

 この時龍王であるタンニーンは彼女が抜け出すことに気が付き、彼女のことを追いかけていた。しかし、向かう途中で化け物(ラフム)に襲われ重傷を負った。このことが貴族の間で「リアス・グレモリーは禍の団(カオス・ブリゲート)と通じている。タンニーン氏が襲われたのは、その現場を見られないようにするためだ」という形で広がることになったのだ。

 

 とはいえ、彼女と近しい立場の人物はそれを否定している。特にその現場にいて重傷を負った兵藤一誠、そして塔城小猫は彼女の身の潔白を主張しているものの、大王派の面々はこれをいい機会として魔王派の力を削ごうとしている。

 そうして、サーゼクスは決断を迫られることとなった。

 

──身内の情で冥界を混乱に陥れるか、魔王として冥界を守るためにリアス・グレモリーを処罰するか──

 

 結果、彼は魔王としてリアスを謹慎処分とした。ここで下手にリアスをかばった方が、リアスへの風評被害がひどいものになると思ったのだ。だからこそ、彼女の疑惑が晴れるまで実家に謹慎するように指示した。

 けれど、それは悪手だった。この処分は大王派にとって「魔王が、自らの身内がテロ組織と通じている」と認めたようなものだったからだ。

 

──魔王サーゼクス・ルシファーの妹、リアス・グレモリーはテロ組織と通じている──

 

 この噂は、リアスの謹慎により民衆にも広まり、毎日のように屋敷には民衆が押し寄せ「リアス・グレモリーを処罰せよ」と言われるようになった。そしてそれと同時にサーゼクスを魔王からおろすべきなのではないか、という声も上がるようになった。

 リアス・グレモリーに動きを読まれる可能性の高いサーゼクスも、次代のレヴィアタンを決めるのと同時に一貴族に戻し、別のルシファーをたてるべきではないか、ということだ。

 

 そうして、冥界内部でのごたごたが起きている間も時は過ぎていき、ついに夏休みが終わるときがきた。

 しかし、学校にきた一般生徒たちは気づく。生徒会メンバーも、学年で人気のあった人たちもいない、ということに──

 




 今回は普段よりもさらに短め。敵の戦力が大きくて、強大な力を持つ奴まで殺されてるのに、同じ奴を相手にして雑魚が撃退してたら八百長疑っちゃうよねってこと


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