この素晴らしい世界にΨ難を! (さい)
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Ψ難は唐突に

今日も今日とて一日僕は平凡な日常を過ごしていた筈だった。何時ものように学校に行き燃堂に相棒と呼ばれる。急に話しかけられる僕の身にもなってほしいものだ。産まれたときから僕は超能力を宿していた。超能力のうちの一つ。テレパシーであらゆる人間の思考を勝手に読み取ってしまう。なので驚かされるということ事態本来ならば有り得ないのだが、燃堂は馬鹿だった。何も考えずに近寄ってくるからテレパシーでも読み取れないのだ。話を戻すがそんな日常を過ごしていた僕は何故か現在薄暗い部屋の椅子に座っていた。場所が分からない。仕方ない、千里眼を使うか。

 

.....!何も見えないだと?おかしい。確かに僕は一度見た場所しか見ることは出来ない。逆を言えば一度見た場所なら見ることが出来るということだ。なのに何も見えることが出来ないというのはどういうことだ?

 

「初めまして斉木 楠雄さん。貴方は不幸にも亡くなられました」

 

さて誰かいたような気がするが気のせいだ。何があったのか全く思い出せないが覚えている事は、確か海藤が窪谷須と一緒に席まで来て何故か照橋さんまで来たことで僕の席の周りにはクラスじゅうが集まってきたことだ。全く良い迷惑だ。

 

「あのー斉木さん?」

 

それから燃堂に制御装置を抜かれて....そういうことか。つまり僕の力が暴走したわけだ。成る程やはり燃堂が原因だったか。やはり僕はGもNもNGなんだ。

 

「あのー!!聞いてますか!?」

 

なんなんだ煩い奴だな。

 

「聞こえてるなら最初から答えなさいよね!良い?貴方は死んだの。日本にて若くして死んでしまった人を導くのがこのあたし女神。アクアよ」

 

自分の事を女神と呼ぶ痛い人間を見ると人はどんな顔をするのだろうか。きっとこんな顔をするんだろうな。

 

「な、何よ!その顔は!何か言いたいことでもあるわけ!?」

 

神だの女神だの俺は信じていない。幽霊は信じているが。

 

「とにかく!貴方は死んだの!それで今から貴方には二つの選択肢があります。一つは何もない所に行って余生を暮らす。でもつまらないから却下よね」

 

おいそれは選択肢と言わないんじゃないのか?

 

「良いのよ!煩いわね!二つ目は日本とは別の世界に転生して魔王を倒す冒険者になることよ!勿論記憶はそのままよ。どう良いでしょ?しかも特典ももらえるのよ、ゲームでいうところの所謂チートアイテムよ。この中から選んでちょうだい」

 

何枚もの茶封筒を渡されて中を見ていく。

 

サイコキネシスが使えるようになる。

 

使えるからいらないな。

 

空を飛べるようになる。

 

飛べるから必要ないな。

 

聖剣 エクスかリバー

 

超能力あるからいらないな。接近する必要はないだろう。

 

「ねえ、そろそろ決めてくんない?どれ選んでも同じよ、あたしは忙しいの」

 

そうかならこれにしよう。

 

自称女神と豪語するアクアに一枚の紙を見せる。

 

「...あんたまじで言ってるの?」

 

おおまじだ。むしろこんな素晴らしい能力があったことに歓喜している。他を選ぶ余地すらない。

 

「いやでも...そんな能力でどうやって戦うのよ」

 

そうかお前は何も分かっていないようだな。僕はこれさえあればなんだって出来ることに。

 

そう。

 

”コーヒーゼリーを生成できる力“

 

この僕をもってしてもこんな事は出来ない最高の力だ。



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冒険者登録のΨ難

石造りの町中を、馬車が音をたてながら進んでいく。

 

レンガの家々が立ち並ぶ、中世ヨーロッパのような街並み。日本でよく見かけていた車やバイクは走っておらず、電柱も無ければ電波塔も無い。行き交う人々を観察すると獣耳やらエルフ耳の人間がいる。頭髪も黒が一般的ではないらしく様々な色をしている。日本のようにマインドコントロールで常識を変える必要はないみたいだ。

 

一つコーヒーゼリーを空中に作り出し念力により一口で口の中に運ぶ。素晴らしい能力だ。

 

さて、こんな素晴らしい能力をくれたんだ魔王を倒すために尽力するとしようか。ふっ僕が動くんだ、良かったな女神とやら半端には終わらせないぞ。

 

まずは冒険者組合や、モンスター討伐のための冒険者ギルドがあるはずだ。まあ先程から聞こえているんだがな。成る程こっちか。

 

 

------冒険者ギルド------

 

ゲームに必ずといって良いほど出てくる、冒険者に仕事を斡旋したり、もしくは支援したりする組織。かなり大きな建物で、中に入ると食べ物の匂いが漂ってきた。

 

どんな人物がいるか分からないがこの世界で僕が危惧する人間はそうそう現れないだろう。

 

「ようあんた見かけない顔だな」

 

っ!?テレパシーに反応しなかった!?後ろを振り返ると然堂が立っていた。

 

「よう」

 

いや顔に傷が無い。その他は然堂そっくりな男が立っていた。何てことだ、異世界にも然堂3が存在しているとは、僕の安静した世界は存在しないのか?

 

「ようようあんた、どこから来たんだ?お?」

 

こいつしゃべり方まで然堂そっくりだな。そのうち相棒とか言ってきそうだ。

 

「なんだ?冒険者になりにきたのか?お?金持ってるのか?」

 

成る程冒険者になるには一人500エリス必要なのか。1エリスは、日本円にして1円と同じ価値か。だが困ったな金がない。

 

「なんだお前金がないのか?お?なら俺っちがやるよ」

 

お、なんだこの世界の然堂3は良いやつじゃないか。

 

「それじゃあな、相棒」

 

今回は世話になったな。さてさっそく冒険者登録をしに行くか。

 

女性職員は二人。片方は何故か混んでおりもう片方は閑古鳥が鳴いていそうなほど人がいない。やれやれ並んでまで喋りたいのか?並ばなくて済むのだからラッキーと思うべきか。

 

「あ、私の方で良いんですか?」

 

何が言いたいんだ?どちらでも変わらない。僕は冒険者登録をしに来たんだ。

 

「そうですか...男性の方は皆ルナさんの方に並ぶので」

 

そんなことはどうでもいい。早くしてくれ。

 

「あっはい!分かりました!」

 

元気よく走って書類を持ってきた。登録手数料を書類の換わりに渡すと説明が始まった。

 

「冒険者としての簡単な説明をしますね。冒険者とは街の外に存在するモンスター。人に害を与える討伐を請け負う仕事です。とはいえ、基本は何でも屋みたいなものです。冒険者とはそれらの仕事を生業にしている人たちの総称です。そして、冒険者には、各職業というのがございます。先程お渡しした書類の中にこれくらいのカードがあったと思いますがありますか?」

 

これか?

 

「はいそうです。こちらに、レベルという項目がありますね?ご存知の通り、この世のありとあらゆるモノは、魂を体の内に秘めています。どの様な存在も、生き物を食べたり、もしくは殺したりします。他の何かの生命活動にとどめを刺す事で、その存在の魂の記憶の一部を吸収できます。通称、経験値と呼ばれるものですね。それらは普通、目で見ることなどは出来ません。しかし.....このカードを持っていると、冒険者が吸収した経験値が表示されます。それに応じて、レベルというものも同じく存在しています。これが冒険者の強さの目安になり、どれだけの討伐を行ったかも自動で記録されていきます。経験値を貯めていくと、あらゆる生物はある日突然、急激に成長します。俗に、レベルアップだの壁を越えるだのと呼ばれていますが、まあ要約すると、レベルが上がると新しいスキルを覚えるためのポイントが貯まっていきます。様々な特典が貰えるので、是非頑張ってレベル上げをしてください」

 

「それではある程度の説明は終わりましたので、書類に身長、体重、年齢、身体的特徴を記入してください」

 

身長167㎝、体重52キロ。年は17、ピンクの頭髪と頭部に取り付けた2本のアンテナ状の装置が特徴で....。

 

この世界に来たときに既にマインドコントロールでアンテナに関しては何か不振に思われる事はない。

 

「はい、ありがとうございます。えっと、ではこちらのカードに触れてください。それであなたのステータスが分かります。その数値に応じてなりたい職業を選んでください。経験を積むことにより、選んだ職業によって様々な専用スキルを習得できるようになりますので、その辺りを踏まえて職業を選んでくださいね」

 

さて、お約束だが。恐らく僕の数値は逸脱していると思って良いだろう。なんせ元々超能力者だ。そんな僕の数値が低い筈がないのだ。だが仮に魔王を倒すに辺り数値が高い方が騒ぎにならずにすむのか。それならここは敢えて何もせずにそのままで。

 

「えーとサイキクスオさん、ですね。ええと...ええええ!!幸運が最低レベルをカンストしている以外は能力値がどれもあり得ないくらい高いんですが...貴方何者なんですか?」

 

声がでかい。予想より目立ってしまったな。やれやれこれなら少し改変した方が良かったか。そのステータスならなんの職業になれるんだ?

 

「なんにだってなれますよ!!それもいきなり上位職にも!なににしますか!!」

 

テレパシーで先程から聞こえてくる。目の前の女性職員のお薦めはアークウィザードと呼ばれる職業らしい。だが困ったことに好感度メーターがいつの間にか90を示している。何故こんなにも好感度が上がったのか分からない。

 

僕は目立ちたくないんだ。冒険者で。

 

「え?....冒険者ですか?」

 

おお、好感度メーターが75まで落ちたな。

 

「最弱職ですよ?....良いんですか?後からでも変えられますけど、どうせなら最初からでも」

 

心の中で上位職押しが凄いな。だが敢えて言おう。

 

ふっ冒険者でお願いします。

 

 

この日、斉木 楠雄は冒険者になった。



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紅魔族随一の天Ψ現る。

冒険者にはなれたが困ったな金がない。現在の時刻は午後3時というところか。今から何かしら依頼を受ければ宿代くらいは稼げるか。

 

ギルドで依頼を受けると現在のレベルと一人という理由であまり強力なモンスターの狩り討伐はいけないらしい。唯一受けられたのがジャイアントトードの討伐だった。読んで字のごとく巨大な蛙だ。

 

正直に言おう。僕は虫の類いが苦手だ。特にGに関しては直視できないくらいには苦手だ。その理由は斉木楠雄のΨ難を見てくれ。巨大ならテレパシーが通じるとも思うが正直蛙の考えていることなんて知りたくもない。だが行くしかないだろう。

 

そしてここは街の外に広がる広大な平原地帯。

先程からゲコゲコと巨大な蛙が跳び跳ねている。見ていて少しくるものがある。駄目だなあれは、超能力を使ってすら触れたくない。ふむどうしたものか。時間は余り無い、ならパーティーメンバーを募集するか。幸いなことに僕は上級職で先程騒ぎになった、それなら誰かしら来てもおかしくは無いだろう。

 

テレポートでギルドの裏まで移動して中に入る。クエストボードの隣に自由に張り紙を貼れる場所があるがあそこで良いだろう。募集要項は、そうだな。誰でも良いだろう。

 

さて後は椅子に座って待っていればそのうち来るだろう。

 

「冒険者募集の張り紙を見たのですが、本当に誰でも良いのですか?」

 

どことなく気怠げな、眠そうな赤い瞳。

そして、黒くしっとりとした質感の、肩口まで届くか届かないかの髪の長さ。黒マントに黒いローブ、黒いブーツに杖を持ち、トンガリ帽子まで被った、典型的な魔法使いの少女が立っていた。

 

おかしいな、僕は冒険者を募集した筈で中二病を患わせたロリを募集した訳じゃ無かったんだが。

 

片目を眼帯で隠した小柄で細身な少女は、突然バサッとマントを翻した。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者・・・!」

 

ダークユニリオンでも探しに行くのか?

 

「だ、ダーク?」

 

何でもない。

 

あまりに言動に近いものがあって海藤を思い出していただけだ。気にするな。

 

「は、はあ....それで、その...パーティメンバーを探しているみたいですが、我をパーティに入れてもらえれば我が力のほどを遺憾なく発揮して見せましょう!」

 

軽快に中二病を発しているが心の声が必死である。

 

(本当にお願いします!荷物持ちでも何でもします!もう、他に頼れる人はいないのです!)

 

ふむ成る程。地雷臭しかしないな。ここは丁重に断りを。

 

(もう...お荷物のように切り離されるのは嫌なのです....)

 

......。

 

分かった。良いだろう、お前をパーティメンバーとして入れてやる。

 

「本当ですか!?」

 

ああ、本当だ。それと近いぞ。

 

「ふふふ、紅魔族随一の魔法の使い手の力を御覧に入れます!我が必殺の魔法は山をも崩し岩をも砕く.....!あの....もう三日も何も食べていないので何か食べさせては頂けませんか?」

 

ふっ仕方ない奴だな。僕の力でコーヒーゼリーを食べさせてやろう。感謝するんだな。

 

掌の上にコーヒーゼリーを生成させて超能力を使用して浮かせている。

 

「な、何ですかこれは!?何もないところから」

 

煩い。早く食べろ。

 

僕は目立つことは嫌いなのだ。

 

 

 

簡単に自己紹介を交えながらコーヒーゼリーを数十個食べ終えめぐみんは満足したので街の外に広がる広大な平原地帯に戻ってきていた。蛙の数は3匹もいる。正直気持ち悪いが今回はめぐみんもいるのだ。この幼き少女に全てを任せよう。これは決して仮ではない。コーヒーゼリーを食べさせた、所謂等価交換だ。

 

依頼の蛙の数は5匹だが問題ないだろう。

 

「爆裂魔法は最強魔法。その分、魔法を使うのに準備時間がかかります。準備が整うまで、あの蛙達の足止めお願いします」

 

足止めを頼まれたが動く気はない。蛙達は此方に興味を示さずにピョンピョン跳ねている、なら此方から干渉する必要もないだろう。

 

「あの...足止めを..」

 

む、僕の意図が伝わらなかったのか。なら仕方ないな、窪谷須にして以来封印していたが使うか。この顔を。

 

「うっ...分かりました!分かりましたからその顔で見るのは止めてください」

 

「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法!」

 

魔法を唱えるめぐみんの声が大きくなり、めぐみんのこめかみに一筋の汗が伝う。

 

「見ていてください。これが、人類が行える中で最も威力のある攻撃手段です!」

 

杖の先が光だし、膨大な光をギュッと凝縮したような、とても眩しい光の塊なる。めぐみんが眼帯を外して、紅い瞳を鮮やかに輝かせ、カッと目を見開く。

 

「エクスプロージョンっ!!」

 

平原に一筋の閃光が走り抜ける。杖の先から放たれた光は、遠くにいる蛙に吸い込まれるように突き刺さると、その直後、凶悪な魔法の効果が現れた。

 

目も眩む強烈な光、そして辺りの空気を震わせる轟音と共に三匹の蛙は爆裂四散した。

 

爆煙が晴れると、蛙のいた場所には二十メートル以上のクレーターが出来ており、その爆発の凄まじさを物語っている。

 

これは中々良い威力じゃないか。見直したぞ。

 

「ふ....我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力により、消費魔力もまた絶大。要約すると限界を越える魔力を使ったので身動きひとつ取れません」

 

まあ、そんなことは知っていたがな。これだけの威力があるなら問題ないだろう。

 

冬眠でもしていたのか地中からは5匹の蛙が出てくる。

 

「蛙が沸きだすとか予想外です...すいません。助けていただけませんか?」

 

何を言っているんだ?僕が助けるわけないじゃないか?さあもう一度立ち上がれ。

 

「あれ?....魔力が戻っています?」

 

めぐみん。もう一度さっきのやってくれ。

 

「で、ですが近すぎて。今度は引き付けて欲しいのです」

 

仕方ないな。

 

めぐみんを抱き寄せると空中浮遊で10メートル程浮かび上がる。ここは日本じゃなく、魔法が存在してるんだ、空を飛んでも不思議じゃないだろう。

 

「な!わ、わたし空を飛んでます!!何ですかこれ!!」

 

撤回。あまり空は飛ばない方が良いみたいだ。

 

それよりも早く蛙を一掃してくれ。

 

「え、ああ、はい!分かりました!一日に二度も撃てるなんて夢のようです!」

 

「エクスプロージョンっ!!」

 

気のせいか二度目は詠唱してないように感じたが。

 

「ああ、忘れてたぁぁああ!!」

 

やれやれ詠唱は必要ないのか。それにしても、合計8匹の蛙討伐が完了したな。これで宿代はなんとかなりそうだ。

 

またコーヒーゼリーを食べさせてやろう、そう思いながら腕の中で力尽きるめぐみんに感謝しギルドに戻っていった。



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このどうしようもない変態にΨ難を!

「はい、確かに。ジャイアントトードを三日以内に5匹討伐。クエストの完了を確認いたしました。それとこれは三匹多く討伐されたようなので追加報酬になります。お疲れさまでした」 

 

冒険者ギルドに戻り報告すると規定の報酬が貰えた。今回の報酬は13万エリス。クエスト事態で受けた五匹で10万エリス。残り三匹は各一万エリス

 

めぐみんとわければ一人6万5000エリス、宿代が3000エリスと考えれば6万2000エリス余る計算になる。やれやれたかが蛙の癖に図々しい値段だな。さて、僕の能力でコーヒーゼリーを生成させて食べるという方法もあるがあくまでもコーヒーゼリーはデザートだ。主食ではない。

 

金に余裕はあるし何か頼むとしよう。

 

ギルド内の空いている席に座りメニューを開くと知りたくもない現実が待っていた。

 

おふっ.....メニュー表の中にビッシリと蛙がいた。少し語弊があるかもしれないが落ち着いてほしい。メニュー表で一番人気の場所に書かれていたのは、ジャイアントトードの唐揚げだった。

 

メニュー表を静かに置いて見なかったことにした。ご飯を食べるために、めぐみんも同席している。めぐみんは、何を注文したのだろうか。

 

暫く待っているとめぐみんの前に香ばしい匂いのするぶつが運ばれてきた。

 

何かの肉だ。

 

それは一目で分かった。問題は何の肉なのか、ということだろう。何かの生き物、そう、蛙によく似た生き物のような足。それをめぐみんは美味しそうに頬張ってる。

 

だが落ち着け、めぐみんが食べている肉は先程討伐した蛙の足よりも小さい。牛蛙の1.5倍はありそうなのでかなり大きい。足の形さえしていなければ七面鳥かと思うほどだ。しかし、肉は肉なのか、中々食欲をそそる匂いをしている。

 

「サイキは何も食べないのですか?」

 

お腹は空いているから、食べたい。だがメニュー表を見てから気分が悪い。めぐみんが肉に頬張りつくと、どうしても蛙が頭をよぎるのだ。あの、ヌメヌメはどうやって取ったのか、とか考えただけで寒くもないのに体が震えてくる。

 

だが流石に何も食べない、という訳にはいかない。オススメは見ないようにしてメニュー表を開くことにしよう。

 

「その、サイキ....まだ言っていなかった事があるのですが...私は先程見せた爆裂魔法しか使えないのです」

 

勿論知っている。だがあれほどの威力があるんだ問題はないだろう。

 

「え?...良いのですか?」

 

何か問題があるのか?

 

「いえ...私は爆裂魔法しか使えないという理由で様々なパーティから断られた続けてきました。ですから...また駄目かと思いまして」

 

確かに、一度しか攻撃出来なくてその後、動けなくなるとかパーティ的には、荷物以外の何者でもないだろうからな。だが僕といれば爆裂魔法は、少なくとも二度は使える。テレポートがあるから移動もそこまで手がかからないし、そもそもピンチの時以外頼るつもりはない。巨大な蛙がいたんだ、巨大なGがいると考えただけで身震いが止まらない。この世界に母さんはいないんだ。なら母さんの代わりをこなせる人物を探さなくてはならない。だが仮にGが出てきた場合だが、誰かが引き付ける役目を負わなくてはならないのか、絶対に無理だ。

 

めぐみんのあの魔法は、発動まで時間がかかる。それまでGが大人しくしているはずがない。しかも奴等は飛べる馬鹿だから自分が飛べる事すらも知らないが奴等は飛べる。考えただけでも恐ろしいな。つまりは、引き付け役が必要だな。あと一人パーティメンバーを募集することにしようか。

 

そうだな、今回は。相手を自分に引き付けておく自信がある人。

 

こんな所か。流石に直ぐには来ないと思うが待っていればそのうち来るだろう。僕は冒険者ではあるが、もう一人のめぐみんは、上位職のアークウィザードだ。

 

 

 

2日経過して気付いた事がある。

 

僕が貼り出した募集要項を見て足を止める者は複数いた。だが誰も入ろうとはしない。その原因は。

 

「メンバーを募集し始めましたが、誰も来ませんね」

 

目の前に座っているこいつだ。募集要項にめぐみんの名前を書いたのは誤りだった。名前が珍しいからなのか、めぐみんを覚えている冒険者が多かった。そのせいで皆首を横にふり地雷だと心で思い立ち去っていく。

 

「な、何を睨んでいるのですか」

 

誰も来ないのがお前のせいだからだ。

 

「な!何を言うのですか!?私はアークウィザードですよ!数少ない上位職なのです!代わってサイキは最弱職の冒険者ではないですか。どちらに原因があるかなんて火を見るよりも明らかではないですか」

 

因みにめぐみんは知らないが僕はそこそこ優秀なのが知れ渡っている。僕も馬鹿じゃない。パーティメンバーが集まらない間何もしなければ金は無くなる。朝、昼、夜のご飯代が一日に約2500円。一日の宿泊費3000円。合計。一日に5500円使うのだ。少なくともこの金額は使うので手持ちは多い方がいい。そこでめぐみんがトイレに行っていたり、用事があると行って席を外している隙に一人でもこなせるクエストを受注していたのだ。

 

初日こそジャイアントトードしか無かったが、次の日からは、様々なクエストが発注されていた。

 

その中で僕が選んだのは、

 

-----迷子になったペットのホワイトウルフを探して欲しい

 

というクエストと、

 

----魔法実験の練習台探してます。※強靭な肉体か、強い魔法抵抗力のある人!

 

という二つのクエストだ。

 

ホワイトウルフは念写を使いある程度の場所を調べ依頼があった場所に向かいテレパシーで見付けた。どうやって広大な森の中で見付けたかだって?格好いいホワイトウルフに絶望してしまうかもしれないぞ?時には知らない方が良いこともあるのだ。見付けた後は暴れるので脳内子守歌で眠った所を瞬間移動で飼い主に届けて依頼完了だ。

 

二つ目は単純にバリアを張っていた。全てを無に反したが問題ないだろう。抵抗するな、とは言われてないのだからな。二つのクエストをこなした僕は15万エリス程貰っていた。暫く困ることは無いだろう。

 

受けたクエストの難易度が始まりの町である、この町では高いので、受付のお姉さんが少し騒いだせいで、僕は少し有名になってしまったのだ。

 

一人の女性が貼り紙の前で立ち止まり此方に向かってあるいてくる。その姿はまるで歴戦の剣士を彷彿とさせる。身長は170㎝と高く、頑丈そうな鎧に身を包んでいる。

 

一見すれば優秀そうに見える外観に喜ぶのかもしれないが、僕は非常に悩んでいた。現在目の前にいる

女騎士(変態)をパーティにいれるべきかいれないべきか。

 

恐らく募集要項にあった、相手を引き付ける役目は果たしてくれるだろう。だが先程からテレパシーを切りたくて仕方がない程の雑念が脳内に流れてくる。

 

(相手を引き付ける役を募集するとは....一体どのうような..はっ!まさか、やはりそうか...この男は私にわざとモンスターのタゲを取らせ、観察し、モンスターに防具が少しずつ剥がされていく様を悦にしたりながら眺めるつもりだな!!なんて男だ!素晴らしい!!)

 

「.....すまない。ちょっといいだろうか」

 

脳内で考えていることを隠しているだけましか、と鳥束を思い出す。あいつがいれば全てを押し付けていた所だ。

 

「私の名前はダクネスという。この募集。貴方のパーティの募集だろう?もう人の募集はしていないのだろうか」

 

募集はしている。だが斜め上の人物に戸惑っているだけだ。

 

流石の僕も中2病を患わせたロリと変態のパーティなんて嫌である。

 

「で、では!ぜひ私を!ぱぱぱ、パーティに!!入れてもらえないだろうか!」

 

手をがっしりと掴みながら鼻息を荒くする女騎士。正直顔もスタイルも良いのに台無しである。

 

「壁役が必要なのだろう!?私ならその役目を誰よりもこなせる自信がある!むしろ私にその役をやらせてくれ!!」

 

壁役を募集したわけではない。あくまで、相手を引き付ける役を募集したのだ。まあ大差無いだろうが、語弊が生まれては困るからな。

 

「いや違う!あんな年端もいかない少女に何かあっては可哀想だ!!私はクルセイダーというナイトの上位職だ!必ず守ってやれる!」

 

良い感じで言っているが本音はこうだ。

 

(ああ、あんなことやこんなことを...勿体無い!!私にやらせてくれ!!)

 

流石の僕も怖くなってきたぞ。こんな恐怖は照橋さんと二人で街中を歩いたとき以来だぞ。所々で聞こえる、攻撃が当たらない、というのは別に構わない。此方にはめぐみんもいるし、最悪、僕が倒せば良い。あくまで相手を引き付けてさえくれれば良いのだ。

 

目の前の女性。ダスティネス・フォード・ララティーナと言うらしいのだが。本名を言わなかったのは、大貴族ダスティネス家の令嬢だからだろう。

 

先程問題が増えたがダクネスという女性が騒いでいるせいで、周りにいる冒険者達が僕達のパーティを変人が集まっているパーティだと言っている事だ。やれやれ、僕は変人ではない。僕以外は変人であっても僕は変人ではないのだ。一緒にしないでもらいたい。

 

だがこうなると、これ以上のパーティメンバー募集を見込めないだろう。気は乗らないが、仕方がない。精々引き付け役をやってもらうとするか。

 

「本当か!それでは今日からよろしく頼む」



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女神エリスからのΨ難。

一年以上も放置してしまい本当にすいませんでした!ようやく続編が書ききれました!



新しく仲間に加わったダクネスとめぐみんの3人で遅めの昼食を酒場で取っていた。

 

ダクネスを仲間に入れたその日から誰かに見られている感じがしていた。ダクネスは隠しているが大貴族だ、だから最初は隠れて護衛でも付いているのかと思ったがそれは違ったようだ。やれやれ本当にめんどくさい事になってしまった。その日、僕は確かめることにした。誰が僕達を付けているか。

 

ダクネスとめぐみんと別れた後、千里眼を使って僕の後を追っていない事を確認する。顔や容姿は既に酒場で確認済みだ。おいおい覗きなんて人聞きの悪い事を言うじゃないぞ。僕は僕を付けているやつを確かめただけだ。それがたまたま女だったがそんなものは些細な事だ。

 

千里眼を使うとダクネスと一緒にいる。どうやら知り合いのようだ、やれやれもう少し早く気付いていればダクネスをパーティーに入れなかったんだがな。瞬間移動で移動して近くの建物の影に隠れる。話し声が遠くて聞こえないがテレパシーで全て聞こえている。話していない内容すらも。ダクネスと一緒にいる銀髪の女の子がきな臭い。透明化をしたまま会話が聞こえる距離まで近づく。

 

「それでさ、ダクネスは今のパーティーをどう思ってるの?」

 

「な、なんだ藪から棒に。気に入っているさ、みんなこんな私にも良くしてくれている」

 

「そっか。ダクネスがそう言うなら良かったよ。あ、そうだ今日少し用事があったの忘れてたよ」

 

「何!?それは大変じゃないか」

 

「うん、ごめんねダクネス。また明日ね!」

 

「ああ!先程行っていた通り皆んなにクリスを紹介しよう!きっと仲良くしてくれる筈だ!」

 

不味い。こんな感覚は久し振りだ。テレパシーでクリス?という銀髪の女の子の声を聞いてすぐに瞬間移動を使いたくなったが止めた。どうせ明日会うなら今、解決しておいた方が良いだろう。

 

「...ねえ、ダクネスはもう行ったから姿。見せてくれないかな?」

 

透明化を見破ったのは鳥束以外では初めてだ。

 

お前は何者だ?

 

「聞かなくても分かってるんじゃないかな?」

 

詳しく言うと違う。テレパシーはあくまで相手が心で考えていることを聞くことが出来るだけで知りたい事を知る能力ではない。だから確認に来たんだ、お前が誰なのかということを。今のやりとりで分かってしまったがな、やれやれ本当にめんどくさいものだ。

 

「ふーん、そっか。これはお願い。いえ少し違いますね、強制的な約束となりますね。私のことは誰にも言わないでください」

 

急に態度が変わったクリス。私の事というのは、女神である自分のことを言わないでほしいということなのだろう。そもそもこんな話誰に話したところで信じる筈がないし、めんどくさいから話す事はないな。

 

「ふう、良かった。君のことは知っていたよ。アクア先輩は、あ、アクア先輩っていうのは」

 

一度会ってるから説明はいい。

 

「そっか。そうだよね。この世界に来てるってことは、アクア先輩に会ってる筈だもんね」

 

それより僕の能力について知っているようだが誰に聞いたんだ?この世界に来てから、僕は大人しかった筈だ。少し飛んだり、瞬間移動したりしただけだ。あとは終始発動している透視とテレパシーくらいだ。...いやこの世界に来た時に念力を少し使ったか、やれやれやむ得ない事情があったにしろ使うところは見極めないといけないな。

 

「いやいや少し飛んだり、瞬間移動するのは大人しかったとは言えないからね!?むしろ念力の方が少しじゃない?はあ、気になってるみたいだから言うけど私達女神は死んだ者の過去を見ることが出来るの。どう言う経緯で死んでしまったのか、とかね。まあ悪人もたまに流れてきちゃうからその予防線。アクア先輩は何故か確認してなかったみたいだけど、この世界に来た時に君の過去を確認してるんだよ」

 

そうか成る程。それで知っていたのか。

 

「うん。それでテレパシーなんて持っていたら私の事バレちゃうから釘を刺しにね。まっ女神って言われても誰も信じないし残念な人って思われるだけだけど。あ、それとあんまり此方に来た人に前の世界の事を教えるのはいけないことなんだけどね。君は君の力の暴走によって死んでしまった。だけどね意思の無い状態でも周りにいた友達は皆んな無傷だったよ。君に対して皆んな涙を流してた。勿論家族もね。だからかな。こんなにも慕われてる人ならボクの秘密も守ってくれるって思ったのは。それじゃ、また明日ね!ダクネスの事よろしくね!」

 

ふ、女神が地上に降りて来ていることは内緒にしておくか。まったくやれやれ。

 

「無事だっ「あ、あ...あぁぁぁぁああああ!!」」

 

「異世界だ。おいおい、本気で異世界だ!え、本当に?本当に、俺ってこれからこの世界で魔法とか使ってみたり、冒険とかしちゃったりすんの?」

 

先程まで誰もいなかった場所に突然現れた男女。喋っている言葉を聞く限り男が僕と同じ転生者だ。しかし...どうして隣に女神アクアがいるんだ?

 

「アクア先輩?どうして?」

 

女神は自由に下界に来られるのか?

 

「来れる筈無いじゃないですか!天界規定に定められているんですから!」

 

叫ぶクリスは焦っているのか口調が女神であるエリスに変わっている。つまり、あそこにいる転生者が特典で女神であるアクアを選んだのか。

 

それは有りなのか?

 

「有り...なのでしょうね」

 

こめかみに手を置きながら困っているクリス。

 

「はあ...アクア先輩が来ちゃったって事は、動きにくくなっちゃうなぁ。ああ、君は聞いちゃったけど本来女神は下界に来てはいけないの。バレるのが一番駄目だけどね。私の場合は転生者が持ってくる特典が死後も残っていて世界のバランスを崩してしまうから回収してるの。武器なんかは、何処かの家の秘宝になっていたりダンジョンの奥に眠ってたりするから回収も中々進まなくてね」

 

それは大変だな頑張ってくれ。それじゃあ僕は帰らせてもらう。

 

「え?ここまで聞いたら回収手伝ってくれるんじゃないの?」

 

どうしてそうなる。僕はめんどくさい事が嫌いなんだ。

 

「お礼もするからさ!ね?」

 

ね?じゃない。僕は絶対に探さないからな?

 

「君の世界に存在しなかった超高級コーヒーゼリー...これでどうだい?」

 

ふ、僕も甘く見られたものだ。コーヒーゼリー一つでこの僕が動くはずがないだろう。

 

その依頼受けよう。

 

いや別に元の世界に存在しなかったコーヒーゼリーに乗せられたわけじゃない。僕は常識人として世界の均衡を保つために動くのだ。

 

「そっかー!ありがとねサイキ君!それじゃアクア先輩達もどこかに行ったみたいだしこれで!またね!」

 

先程まで騒いでいた二人は既に移動したのかいなくなっておりクリスもスキップしながら帰っていった。

 

翌日。

 

冒険者ギルドに行くとめぐみんとダクネスは既にいつもの席に座って朝食を食べていた。

 

「あ!サイキ、昨日はどこに行っていたのですか!?あれから凄い事が起こったのですよ!」

 

凄い事?

 

「昨日冒険者登録をしにきた男女のペアがいたんだが、その一人は最初から上級職になれるステータスで大騒ぎだったんだ」

 

男女のペアということは昨日見た転生者と女神の事だろう。

 

それでどちらが上級職になったんだ?

 

「女の方でしたよ、男の方は幸運の数値が並外れて高くはありましたが幸運なんて冒険者に必要有りませんし、商売人に向いていると言われていたくらいです」

 

「本人の希望で冒険者を選んでいたがな」

 

転生者が高ステータスで始まるという王道では無かったんだな。

 

「オウドウ?なんですかそれは」

 

何でもない。

 

「それでもう一人は上級職のアークプリーストになった、というわけだ」

 

「あ、ダクネス。ごめんね遅くなっちゃって」

 

「おお、クリス。待っていたぞ!皆紹介させてくれ、私の親友のクリスだ」

 

「クリスです♪よろしくね、職業は盗賊をやってまーす」

 

「名乗ってもらったからには此方も名乗らなければいけませんね!我が名はめぐみん!誇り高き紅魔族であり史上最強の攻撃魔法。爆裂魔法を操りし者!」

 

爆裂魔法しか操れない者だけどな。

 

「う、うるさいですよ!サイキ!」

 

僕の名前は斉木楠雄。

 

「それだけか?」

 

他に何がある?

 

「あはは、大丈夫だよダクネス。サイキ君の噂は耳にしてたからね」

 

「そうなのか?クリス」

 

「うん。何でもね最初は上級職になれる高ステータスなのに冒険者を選んだり高難易度のクエストをいくつも一人で達成したりね」

くっこのタイミングでその話をするなんて、僕に喧嘩を売っているようだな。この話は、めぐみんやダクネスは知らない。それをこの二人の前でしたら。

 

「そんな話始めて聞きましたよ!サイキ!どうしてこの私を誘ってくれないのですか!?」

 

「そうだぞ!一人で高難易度クエストを受けるなんてうらやm、危ないではないか!!確かに戦力面では役に立たないのかもしれない。だがせめてモンスターの盾に使ってくれ!はぁはぁ」

 

「ちょ、ダクネス。少し落ち着いて?」

 

この二人を誘わなかったのは理由がある。

 

あまり周りの人に超能力を見せたくなかったという理由と、この二人を連れて行くと効率が悪いからだ。一人なら瞬間移動や空を飛んで迎えるが二人と一緒だとそれが出来ない。

 

お金の余裕が欲しくて空いた時間にやっていたことだし問題ないと思っていたが...バレるとこんなにもめんどくさいとはな。やれやれクリスも余計なことを言ってくれたものだ。

 

正直二人とも虫対策要員だ。それ以外は僕一人だけでどうにかなる。めぐみんの爆裂魔法で一掃してもらうのも楽だが。そういう多人数倒すクエストは、一人の時には受けていない。だから爆裂魔法も特に必要じゃなかった。

 

「そ、それなら仕方ないですね...我が爆裂魔法を使うに値しなかったという事ですもんね!」

 

うん、そうそう。

 

「それじゃあさ。今から少し高難易度のクエストを受けないかな?私も一緒に行ってみたいし、今日だけパーティー組んでもらっちゃ駄目かな?」

 

駄目だな。今日は忙しい。

 

「クリスが一緒なら心強い!私は賛成だ!」

 

「サイキ、今日予定なんてありましたか?無かった筈ですが...私は賛成です」

 

用事なんて無い。ただめんどくさいだけだ。

 

「サイキ君、もしかして私と一緒じゃ嫌だったかな...」

 

凄いな、一言でギルド内の男女問わず敵にした気分だ。これが女神の力なら照橋さんも同じような力を持っていたんだな。

 

分かった、一緒に行くことにする。

 

「やったー!サイキ君ありがとね!」

 

表ではこんなことを言っているが裏では、僕が行くようにわざとしたことがバレバレである。何が女神だ、僕の能力を理解している分、照橋さんよりもタチが悪い。神に愛された照橋さんが女神なら目の前の女神はさながら悪魔に見えてくる。まさか照橋さんが可愛く思えてしまう時がくるなんてな。やれやれ本当にめんどくさいな。

 

「サイキが意見を変えるなんて珍しいですね」

 

ジト目で見るな。そういう理由じゃ無い。

 

「それにしても、用事の方は大丈夫なのか?サイキ」

 

ああ、問題ない。最初から用事なんてないからな。

 

「そうか!これで全員でいけるな!」

 

「そうですね!私もサイキがいないと1日に一回しか爆裂魔法が撃てないので良かったです!」

 

あ、おい...。

 

「サイキ君がいると爆裂魔法を二回撃てるの?」

 

「はい!よく分かりませんが魔力が一瞬で回復するのです!ああ!爆裂魔法が二回も...サイキ!いますぐいきましょう!!今すぐ爆裂魔法を撃ちたいです!」

 

「へえ〜それは凄いね♪」

 

クリスはこの世界に来る前に、僕が使っていた力はある程度知っているだろう。だが逆にこの世界に来る前に使ったことのない能力なら知らない筈だ。

 

前の世界でも何回か使った事があるがそれは、壁を直したりタンスの角に小指をぶつけた怪我を治したりしただけで能力の内容は知らない筈だ。だが魔力が一瞬で戻ってしまうと時間の巻き戻しだと気付かれてしまう可能性がある。

 

これ以上余計なことを言われる前にクエストを受けに行くか。

 

「それではそろそろクエストを受けに行きましょうか!」

 

「そ、そうだなめぐみん。何故か分からないがいつもよりやる気だな」

 

その理由はサブリミナルを使いクエストと爆裂魔法という単語を複数回囁いたからだ。

 

「よーし!私も頑張るよ!」

 

「今日はいつもより爆裂魔法を撃つのです!」

 

残念だがそれは無理だ。

 

「えー!どうしてですか!?」

 

何故なら今回向かうクエストは、ダンジョン探索だからだ。

 

 

 

 

 

最近低レベルの冒険者がよく使うダンジョン内に隠し扉が発見された。そのダンジョン内は、高レベルのモンスターが数多く存在し、高レベルのモンスターが外に溢れでてきてしまわないか心配だということでクエストの依頼をもらっている。

 

「どうしてダンジョンなのですか!ダンジョンでは私なんて何も役に立てないではないですか!」

 

ほお理解はしているんだな。

 

「当たり前じゃないですか!ねえ、サイキ?やはりダンジョン探索は辞めて他の依頼にしましょうよ。ダンジョン以外なら何処にでもいきますから!」

 

ダンジョンの入口まで来たのに、未だに騒いでいるめぐみんは放っておくとして一番の問題は楽しそうに準備している女神であるクリスだ。ダンジョン内なら薄暗いから誤魔化せると思ったが甘かった。どうやら暗くてもよく見えるようだ。

 

「な、なあ。サイキ、めぐみんが可哀想になってきたのだが...」

 

ならついて来なければいい。元々このクエストは、僕一人で受けようとしていた物だ。この依頼をパーティーで受けると女性店員さんの目が死んでいたのを僕は見逃さなかった。そこまでパーティー内の二人に問題があるようだ。

 

「まあまあ、今回は私もいるからさ!」

 

君がいるから心配なんだ。

 

「二人とも...ありがとうございます!」

 

「安心してくれ。めぐみんは私が命をかけて守ろう!」

 

なんだこの盛り上がりは...。この洞窟の先に何があるのか分かっているからこそめぐみんは置いて行きたかったんだがな。やれやれ本当にめんどくさい。

 



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