如月くんと7人の魔女 (桂ヒナギク)
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1.入れ替わり

 俺の名は如月 京太郎(きさらぎ きょうたろう)朱雀(すざく)高校の二年生だ。

 成績最下位の俺は今、職員室にいた。

「如月、全教科赤点ってどういうことだ?」

「さー」

「お前、このままじゃ進級出来ないぞ」

「……………………」

「……取り敢えず、補修やるからな。合格点取れるよう勉強しとけ」

 教師の話が終わり、俺は職員室を出た。

 帰るか。

 俺は教室に向かう。

 廊下を真っ直ぐ進み、突き当たりで右に折れて階段を上る。

 と、そこへ進行方向から端正な顔立ちをした長髪の女子生徒が現れる。

 彼女は白石 聡美(しらいし さとみ)。成績学年トップの優等生だ。

「きゃ!」

 足を踏み外した彼女が俺にぶつかって一緒に転げ落ちた。

 そこで俺の意識はブラックアウトし、気が付くと保健室のベッドの上にいた。

「痛……!」

「気が付いたのね。如月くんなら先に教室へ戻ったわよ」

 そうかそうか。如月くんは先に戻ったか……如月?

 嫌な予感がした。

 俺は廊下へ飛び出し、トイレに駆け込んで鏡を見る。

「し、白石!?」

 鏡には白石が映っていた。

「俺、白石になってんじゃん!」

 ということは、今の白石は俺の姿?

 俺はダッシュで教室に向かった。

 そこには俺の姿があった。

「お前、白石か?」

 頷く俺、元い白石。

「もしかして、入れ替わったってこと?」

「そうなるわね」

「何でこうなったんだよ!?」

「たぶん、転げ落ちたときのショックかも」

「じゃあまた同じことすれば!」

「嫌よ。痛いし」

「じゃあどうしたらいいんだよ!? もう!」

「如月くんの補修やってあげるから、それ終わるまで待ってて」

「いいの!?」

「それより、帰りましょう?」

「あ、ああ」

 俺と白石は帰路に就く。

「てか、帰るってどこに?」

「私が如月くんの家、如月くんが私の家、でしょ?」

 俺が白石の家!?

「ところで、股間に変なの生えてるんだけど、これ取れる?」

「取れるか──っ!」

「冗談はさておき」

「冗談かよ」

「如月くん家はどっち?」

「ああ、案内するよ」

 俺は白石を自宅に案内し、俺は白石に教わった住所の家に向かった。

 白石の家に着き、鍵を開けて中に入る。

「ただいま」

 シーンとしている。

 誰もいないんだから当然か。

 俺は階段を上り、白石の部屋に入る。

 鞄を置き、ベッドに横たわった。

「このまま寝て覚めたら夢だったってことにはなんないかな」

 俺はそのまま眠りに就き、翌朝目を覚ました。しかし、元の姿には戻っていなかった。

 取り敢えず、俺は支度をして学校へ登校するのであった。

 



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2.元に戻る

 学校に登校した。

 下駄箱の前で白石と遭遇する。

「おはよう、如月くん」

「あ、ああ、おはよう。てか、夢じゃなかったのな」

 白石は無言で教室へ向かう。

 俺も後を追う。

「如月くん、今日は補修だったわね」

「うん」

 教室へと入る。

 俺は白石の席に着き、白石は俺の席に座る。

 教師が入ってきてホームルームが始まる。

 ……。

 …………。

 ………………。

 放課後。俺は鞄を手に教室を出る。

「白石!」

 呼ばれて振り返る。

「今日のお前、変だな」

「そ、そんなことないわよ?」

「お前、如月だろ」

 そう言うのは、生徒会書記でクラスメイトの黒川 智樹(くろかわ ともき)だ。

「何言ってんの? 如月くんはあそこで補修受けてるじゃない」

 俺は補修を受けている白石を指差した。

「ちょっと来い!」

 俺は黒川に空き教室へと連れ込まれた、

「な、何するつもり?」

「今日のお前を見てて分かった。お前は如月だ」

「根拠はあるのかしら?」

「5で割ると3余り、6で割ると4余り、7で割ると5余る最小の自然数を8で割った余りは?」

「そんなもん答えられるか!」

「やっぱり如月だろ。白石なら速攻で答えるぜ。因に答えは0だ」

「ああ、そうだよ」

「どうやって入れ替わったんだ?」

「知らねえよ。階段から一緒に転げ落ちたら入れ替わってたんだ」

「そうか……」

 黒川は考え込む。

「もういいだろ。俺は帰る」

 俺が空き教室を出ると、白石が現れた。

「補習は?」

「もう終わったわ」

「マジか!?」

「ええ」

「早いな」

「ついでだから、試してみましょう?」

「何を?」

「元に戻るのを」

「どこで?」

「あの階段で」

「痛いの嫌だな……」

「このまま元に戻れなくてもいいの?」

「それは……」

 俺たちはあの階段へ移動した。

「やるわよ」

 俺と白石は階段から転げ落ちた。

 だが、何度やっても元に戻らない。

「何で戻らないんだ?」

「まだ他に試してないことがあるわ」

「何を試してない?」

「キスよ」

「き、きき、キス!?」

「昨日、落ちる時、偶然キスをしたわ。兎に角、やってみましょう?」

 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。

 白石の唇が近付いてくる。

 そして次の瞬間、俺は元の体に戻っていた。それは白石も同じだった。

「どういうことなんだ?」

「きっと私たちはキスをすることでお互いの体を交換することが出来るのよ」

「それって、白石が魔女ってこと?」

 黒川が訊ねた。

「「魔女?」」

「実はこの学校には魔女伝説ってのがあってな、全部で七人の魔女がいるらしい。その内の一人が入れ替わりの能力を持つ魔女だ」

「何でそんな情報知ってんだ?」

「生徒会長から聞いた」

「あそー……って、えええええ!?」

「という訳で、君たちを超常現象研究部に招待する」

ついてこい──と、黒川は歩き出す。

 俺と白石は黒川の後を追った。

 



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