空の堂 (みょこみょこ星人)
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無彩風景

これはとある少女の数刻の物語


コツコツと革靴特有の硬い足音が路地裏を満たす。

足音の原因であるくたびれたスーツを着た青年は少し気だるげに歩を進めていた。

曲がり角を用心深く見ていく。何かを探すように。

しばらく歩いて青年は深くため息をつく。今日も外れかと呟き帰路につこうかと考えた途端、何かの気配を感じた。

咄嗟にスーツの内ポケットにしまってたナイフを抜き取り鞘から刃を出す。

ゆっくり、ゆっくりとナイフを構えながら左手で眼鏡を外し、鞘と一緒に内ポケットになおす。その時、目の色が少し変わった。

1歩1歩と距離を縮め、気配があったところにダンっと飛び出てナイフを気配に向けて構える。しかし、青年はその構えを解いた。

 

「………女の子?」

 

いたのは、青年の探していた者ではなく女の子がいた。

黒髪で赤いメッシュを付けた女の子。多分高校生だろう。近くの高校の制服を着ているから青年はそう判断した。

 

「何故こんなところにいる。ここら辺は色々と物騒だぞ」

 

内ポケットから鞘を取り出してナイフをしまう。ついでに眼鏡もかけ直す。

ナイフや青年の顔を見たから怯えていたが、怯えた表情を出さないよう歯を食いしばってキッと青年を睨んでいた。

芯がしっかりした少女だ。

そう青年は感じた。気も強く、しっかりしている。だから"家出なんてしてしまったんだろう"と思った。

 

「何か話したらどうだ?………それとも――ん?」

 

青年は何かを伝えようとしたが中断する。少女も青年の見る方に顔を向ける。

空からポツリ、ポツリと冷たいものが落ちてきた。

 

「…………はぁ」

 

ポリポリと頭を掻きながら青年は

 

「とりあえず雨宿りするか?」

 

と少女に手を差しのべたのだった。

 

 

 

20:00、雨のせいかいつもより外はどんよりと暗い。

 

「で?何故お前はあんなとこにいた」

「それよりもなんであたしを部屋に上がらせたの?まさか」

「そんなR18な展開を俺は求めていない。つかそんな貧相な身体でよくそんなこと言えるな」

「な!?貧相!!?」

 

青年は少女を自宅で雨宿りさせることにした。あーだこーだ言いそうだと青年は身構えていたが、少女はすんなりと着いてきた。それに対して不気味さを感じたが、青年は何も言わずに少女を自室に上がらせた。

カップにお湯を注いで机に置く。

 

「飲め。少し濡れただろ……インスタントだけどまだマシな味だ」

「…………ありがと」

 

少女は渡されたインスタントコーヒーを啜る。少し睨みながら三角座りに座りなおす。

 

「で、何で部屋に上がらせたの?」

「すんなり着いてきたくせに何言ってんだか…」

「で、何で部屋に上がらせたの?」

「睨むな睨むな。……あのままあの路地裏にいたら危険だったからだ。見た感じ家出少女で、泊まるために友人の家になんて行ける状況じゃなかったんだろ?だからあんなとこにいた。家出にも2つあって数日前から念入りに計画するタイプと自暴自棄になって飛び出すタイプ。お前は後のタイプと見たんだ。違うか?」

「……………」

 

その沈黙は肯定と見なされるぞと言いながらクローゼットを開く。

青年はごそごそと何かを取り出そうと漁っている。

 

「答えになってない」

「は?」

 

青年は手の動きを止める。そして少女の方を見る。相変わらず少女は強く睨んだままだった。

 

「私をこの部屋に上がらせた理由を答えてない。それが理由ならネカフェとかに突っ込めば良かったじゃない」

「…………お前、今自暴自棄になってるだろ。そんな奴を放置して大変な目に会ったなんて後から聞かされたら目覚めが悪い」

「………本当にそれが理由?」

「残念ながらな。初対面の人間にホイホイ着いてきてるのが良い例だ。お前、何があったのか知らないが、このままだと壊れるぞ」

「……………」

 

はぁ……と青年はため息をつき、作業に戻る。

タオルやTシャツとか出していたら急に着信音が部屋中に鳴り響いた。

 

「出ろよ。親御さんだろ?」

「………やだ」

「ワガママ言うな。こんなところより自宅の方がずっと安全だ。さっさと仲直りして帰れ」

「仲直りなんて絶対にできない!」

 

鳴り響いた着信音は止み、静寂が訪れる。少女は涙目になりながら青年を睨んだ。

曰く、彼女は幼なじみ4人とバンドを組んでるらしい。中学の時からやってるらしく、今ではライブハウスの常連とも言えるレベルに達してるそうだ。つまりかなりの腕前を持ってるということだ。しかし、それは彼女の父親には伝わってない。ちゃんとコミュニケーションを取ってなかったそうだ。それですれ違いが起きてしまった。

 

「モカたちとぶつかったりしたけど、仲直りして父さんと話してみるって言ったんだ。でも……」

「父親さんは取り合ってくれなかった」

 

こくりと頷く。コーヒーを飲み干してお代わりを要求するが、青年は飲み過ぎると寝れなくなると言ってカップを取って洗い始めた。

 

「あたしの話を聞いてと言っても忙しいから後にしろや、辞めないなら話しても無駄だとか言って聞く耳持たずだった」

「………」

「ねぇ…あたしが悪かったの?父さんと全く話をしなかったから?ねぇ………」

「そこにタオルとか置いてるから風呂に入れ。雨に当たって寒いだろ」

「……………ねぇ、あんたがあたしを泊めたのって………やっぱいい」

 

そう言って少女は脱衣場の方へ歩いていった。

シャーというシャワーの音が微かに聞こえてくる。それと外の風の音が静寂な部屋を満たしていた。

 

少女が風呂から上がったのと同時に少女の携帯から着信音が鳴り響いた。

 

「誰からってなってる?」

 

脱衣場の方から少女は青年に質問した。

 

「"お父さん"となってる」

「出て」

「は?」

「あんたが出て」

「何で?」

「いいから早く」

 

青年は何度目か分からないため息をついて少女の携帯……スマートフォンをスワイプさせる。

 

「……………」

『…おい、蘭。蘭!無事か!』

「……………」

 

青年は無言のままスマートフォンを机の上に置いて、スピーカーに切り替えた。

 

『蘭!蘭!返事をしろ!蘭!』

「だそうだ。返事をしたらどうだ?」

「っ!何でスピーカーにしたのよ!」

「ちゃんと髪の毛拭けよ。風邪引くぞ」

 

ダダダと駆けるように少女……蘭は近づいてきた。風呂上がりでブカブカのジャージにTシャツを年頃の女の子が着たら何か……意外と色気があるなと青年は思ってしまった。

 

『おい、今男の声が聞こえたんだが…蘭!今どこにいる!っおい、何をする!』

『蘭!無事なの!お願い返事をして!』

「っ…ひまり…………」

 

どうやら今の声が少女蘭の幼なじみらしい。

 

『蘭!何か言ってくれ!大丈夫なのか!』

『らーん、声出してー。モカちゃん心配なんだよ?』

『蘭ちゃん!大丈夫?男の人の声が聞こえたって蘭ちゃんのお父さんが言ってたんだけど……今どこにいるの?』

 

無言で蘭の方を見ると、彼女は下を向いてギリッと歯を食いしばっていた。心配させたことに自分に対して苛立っているのだろう。

青年は、またまたため息をついてスマートフォンのスピーカーに顔を近づける。

 

「もしもし、私はえーと………彼女を保護したものだ」

『!?』

 

スマホの向こう側で息を飲む音が聞こえる。それを無視して青年は話を続ける。

 

「彼女は今かなり混乱している。見知らぬ男の家に上がり込むほどにな」

「ちょっ―モガッ」

 

何か言い出そうとする蘭の口を手で押さえる。

 

「明日には帰らせる。だが、今一度考えてほしい。何故こんなことになったのかを」

『それは……』

「確かに彼女の自暴自棄も原因の1つだが、自暴自棄になってしまった……事件の根源を見直してください」

『おい、お前!蘭に手を出していないだろな!』

「そんなこと心配する暇があれば、これまでの娘との会話を思い出してろ」

 

相手の返事を待たずに電話を切る。口から手を放して切ったスマホを蘭に向けて投げる。それを危なげにキャッチし、危ないじゃないかと蘭は怒った。それを無視して青年は牛乳の入ったカップを机に置いた。

 

「少しは頭、冴えてきたか?」

「…………うん」

 

蘭はまた三角座りして机に置いてあるカップを手に取った。

 

 

 

 

 

「ねぇ……何か話して」

「……どうした急に」

「コーヒーのせいで目が冴えてるの。何か話して」

「何か……ねぇ」

 

時刻は0:00。あの後青年は1度外に出て、色々と食材を買ってきた。それで夕食を作り、食事をしながら蘭はポツリポツリと話をした。学校のこと、バンドのこと、色々なことをポツポツと話していった。青年はそれを相づちを入れながら聞いていった。

気づけば時刻は23:30。寝るかと言って青年は蘭にベッドを使うように言った。蘭もそれは悪いと言って承諾しなかったが、寝ないとナイフで刺すぞと脅して無理やりベッドに寝かした。青年はクローゼットから毛布を取り出して床に寝転がった。

 

「何でもいい。何か眠りにつくまで話して、修也」

「うーん………美竹、俺に面白い話を求めても何もないぞ」

 

夕食中に青年少女は自己紹介をした。その際に少女は青年を修也と、青年は少女を美竹と呼ぶようにした。

 

「いいから」

「はぁ……そうだなぁ。美竹、お前は世界がどう見える?」

「は?世界?」

「言い方が悪かったな。そうだな……目の前で折り紙を折ってる子を想像してくれ」

「え?あ、うん……したよ?」

「折り紙の色は?」

「えっと…オレンジ?」

「折ってる子の服は?」

「水色のパーカーで白のTシャツ………」

 

蘭は疑問に思いながらも修也の質問に答えていく。修也は天井を見ながら息を吸い込んだ。

 

「昔昔のお話だ。ある施設に少年がいました。少年は幼い頃に高熱を出して生死をさ迷ったそうだ」

「………それって…」

「その高熱のせいで少年の目には色が無くなってしまったのでした。モノクロの世界。それが彼の見える世界でした」

「…………」

 

蘭は無言で話を聞いた。そうしないといけない……そう思えるほどにこの話は重要だと思ったのだ。

 

「少年はそのせいなのか"生きる"ことに実感を持てなくなっていて、ある日少年は施設を飛び出してしまいました。少年は生きる実感を求めてさ迷い続けました。迷って迷って、迷い続けて、時には間違った道を歩んでしまったり、自身が壊れかけたりしました。そして、少年自身の色が無くなっていく。そんな気がしてならなくなりました」

 

ここで修也は一息つく。眼鏡を外してまた天井を見る。

 

「少年の身体が黒く塗りつぶされていく。ああ、消えていくんだと思ったとき、待ったと黒の侵食を止めた人がいた…………」

「…………ねぇ」

「お前には手を伸ばしてくれる人がたくさんいるだろ?」

「え?」

「お前にはあるだろ?色が。お前を彩ってくれる人たちが。幼なじみもしかり、高校の友人もしかり。そして、ずっとお前を支えてくれていた親御さんも」

「…………」

「親というのはな。無条件で彩ってくれる人なんだ。絵の具や画材が切れたら買ってきてくれて、風景を描きたいと言ったら描きたい場所に連れていってくれる。被写体になってほしいって言ったらなってくれる。友人とかだと貸し借りとかあるだろ?幼なじみでもしかり。親というのはどんなことがあっても最後に味方になってくれる……そんな存在なんだ」

 

一旦言葉を切る。そして修也はゴロンと寝返りを打った。

 

「少し話しすぎた。もう寝ろ。明日は一緒にお前んとこの家に行くぞ。お前の親御さんには貸しを与えたんだからな。その分しっかり回収しないとな」

 

そう言って話すのを止めた。しばらくしたらスースーと寝息が聞こえた。それは蘭からなのか、修也からなのか、はたまた両者からなのか、この答えは本人たちにしか分からなかった。

 

 

 

 

 

「ありがと……それじゃ」

 

そう言ってあたしは修也の家を出た。

机に置いてあった鍵を使って鍵を閉めて、鍵はドアのポストに入れる。その時ガチャンと結構大きな音がなったので慌ててその場を後にした。

雨は小雨になっていた。これなら走って帰ればそんなに濡れないだろう。まあ、すでに制服は先の雨で湿ってしまっているが。

修也が寝たことを確認してあたしは制服に着替えて借りた服は洗濯機の上に置いた。そして、机の上に世話になったことと、後日お礼をするという置き手紙を書いて彼の家を出た。

 

「4月も終わるというのに寒っ」

 

駆け足で道を駆け抜ける。雨のせいか肌寒く道は薄暗い。

 

後数分で自宅につく所であたしの身体は凍り付いた。

急に動かなくなったのだ。声も出ない、手足が痺れたかのように全く反応しない。まるで金縛りにあったように。

 

「ありゃ?おいらを見たら皆失神するのにこの娘はまだ意識があるぞ?」

 

20m先に"異物"があった。黒髪で学ランの少年。それだけなら普通なのだが、その少年の顔、口の右側がパックリと裂けていた。まるで大きなモノを食べるためのように。そして、学ランの下のカッターシャツは血を浴びたかのように真っ赤に染まっていた。

一目見たら分かる。これは異常だと。

逃げたいのに身体が動かない。

叫びたいのに口から出るのは空気だけ。

 

「まあ、いいか。久々の女の子だぁ。ちょっと嬉しいよ」

 

ズシンズシンと奴が歩く度に地面が揺れているような感覚に陥る。

逃げないと

逃げないと

逃げないと!

5mとなった瞬間身体は動き出し、あたしは来た道を引き返した。

 

「うわぁ、すごい。おいらから逃げ出した人、久しぶりに見た。じゃあ追いかけよう!」

 

異物はあたしを捕らえるためにものすごいスピードで追いかけてきた。

全力で走りながら頭の中を急いで整理しようと頑張った。

あれは何?見た感じ、近くの工業高校の制服に見えたけど、学ランなんて、どこにでもあるから正直正解なのか分からない。

そういえば修也は何かを探すように歩き回ってたような気がする。まさかあれを探していたの?じゃあ、あんな異物を探していた修也は一体何者なの?

分からない。

分からない!

分からない!!

 

気づけば路地裏に入っていて、異物は目の前まで迫っていた。

必死に走るが身体がよろけて転けてしまった。

 

「うっ……コフッ……………はぁ……はぁ……」

 

何度もゴロゴロと転がる。全身に痛みが走りうめき声が吐き出た。

もう声も出ない。恐怖で身体がまた痺れたかのように動かない。

 

「ふぅ……君、陸上部だったの?すごい脚力だったね。でもおいらも走るのは得意なんだ」

 

何か異物が話しているが意識が段々と遠退いていて聞こえづらくなってきた。

 

「うーん、やっぱり今回は一級品だよ。とても芯の強い女の子だぁ。食べごたえがある」

 

だらだらと頬の裂け目から涎が垂れている。見てるだけで寒気がする。でももう、あたしの身体は凍り付いて動かなくなった。

あたしの人生、こんなとこで終わりなのかな?

こんな危険な奴に食い殺されてしまうのかな?

…………結局父さんにバンドを認めて貰えなかったな。もっと早く言っとけば良かった。そうすればこんなことにならなかったのに。

たらればの話をしてもどうしようもない。あたしはもうここで終わってしまうんだ。

 

 

………だよ

…………………嫌だよ。

…………………………嫌だ!こんなところで終わりたくない!

まだまだもっとモカたちとバンドを続けたい!もっともっと楽しいことをしたい!何であたしがこんな目にあうの!ふざけないで!!

 

「んあ?目に力が入った?すごーい。こんな状況でまだそんな目ができるんだ。本当に君は心が強いんだね!今のうちに食べないと!」

 

動いて!少しでも距離離さないと本当に死んでしまう。どこでもいい、早く、早く!

 

「ったく、お前ら陸上部か何かかよ……」

「へ?ゴホッ!」

 

目の前にいた異物がぶれたと思ったら姿が消えた。

異物のいたところに見知った男が立っていた。くたびれたスーツにボサボサの黒髪、少し覇気のない目をした猫背の男。

 

「修……也?」

「嫌な勘というのはよく当たる。この時間にうろついたら危ないだろ。ニュース見てないのか?」

「え………あ」

「連続虐殺事件。あれがあの犯人だ」

 

この近くで深夜頃になると殺人事件が起きると言っていたような気がする。性別、年齢関係なく、この時間に1人でいたら食いちぎられたかのように殺されると、ニュースでやっていたはず。

 

「修也は警察だったの?」

「いや、警察じゃ手に終えない事件を上司が引っ張ってきてな。それを解決するのが俺の仕事。元々俺は用心棒だ。いつの間にかこんな仕事をやらされてたんだ」

 

ため息をつきながら内ポケットからナイフを取り出し、眼鏡をしまった。

 

「痛いなぁもぉ……今の飛び蹴り本当に痛かったよ?」

「そりゃそうだろ。そういうふうにしたんだから」

「だからね?慰謝料として君の肉を頂戴!」

 

フラりと異物は立ち上がったかと思うと、一瞬にして修也と距離を詰め、手を腹に向けて剥ぎ取るように振るった。それを修也はナイフでいなした。

何合か打ち合うと、あたしを中心にして修也と異物は距離を置いた。

 

「お前、生まれつき身体が硬いのか?」

「そうだよぉ?小さい頃からおいらは身体が硬いんだ!注射器も通らない、車に引かれても無傷だよ?でも、君の蹴りは凄く痛かった。何で?」

「そりゃ………いや、マジックのネタバレは面白くないだろ?」

「そうだね!……クフフ、それよりもおいら、とっても嬉しいな」

「どうした急に」

 

修也は怪訝な顔をする。異物はユラユラ揺れながらケラケラと笑い続けていた。

 

「だって、"同類"と会えたんだもん」

 

同類?どういう意味だろう?

 

「君もおいらと同じで、人を殺すことで生を感じるんだろう?」

 

え?

 

「同類は匂いや感覚で分かる。そうだろ?」

「そうだな。確かに思考はお前らと同じだろうな」

 

嘘、急に何なの?闘ったと思えば、次は修也とあの異物は同類だとか、意味が分からない。

 

「おいらが人を食い殺すのは」

「己が生きているという実感を得るため」

「おいらがやってるのは」

「生物の本能のようなもの」

「そこまで分かってるなら、何故君はおいらの前に立ち塞がる?」

「上司が怖いからな」

 

今度は修也がケラケラと笑いだす。でも目は全く笑ってなかった。

 

「確かにお前らと俺は同類だと周りは定義するだろう。でもな、俺は残念ながらお前らみたいに答えを持ってないんだ」

「は?」

 

異物は怪訝な顔をする。あたしも多分同じ顔をしてるのだろう。彼の言ってることを全く理解できてないから。

 

「俺はな、中途半端なんだ。お前らは人を殺すことで生きることを感じるという"答え"を持っている。本当なら俺も本能に身を任せて人を刺し殺せば良いのに。それはダメだと違う俺が留めるんだ。それは答えではないって。じゃあ、答えって何だ?分からない。今日も答えを求めて宙ぶらりんの生活を送る………でもな」

 

クルクルとナイフを回す。そして身を低くして構える。

 

「少なくとも今はこれだけは分かる。彼女は殺されてはいけない。彼女はまだ彩り始めたばかりだから」

「彩……え?」

 

異物は彼の言葉の意味を考えるが分からなかったのだろう。少しイライラしている。

 

「何、さっきから意味分からない事を言ってるんだ!おいらにも分かるように説明しろ!」

 

さっきより数段も早いスピードで異物は修也に迫る。爪を立て顔に突き刺すように手を伸ばした。

 

「つまり、お前は消えろ」

 

修也はそう呟き、目を見開く。目が青黒く濁った色になり、何本も白い亀裂の走った目に変わった。その瞬間、修也は伸びてくる手を流れるように避けて異物の亀裂の走った頬の近くにナイフを振るった。まるで何かを斬るように。

 

すると異物はへぁ?とすっとんきょうな声を上げて倒れてしまった。

あたしは修也の方をボーッと見ていた。修也はふと空を見上げた。つられてあたしも空を見る。

小雨は止み、雲の隙間から星が見えた。多分一番星だろう………。

 

 

 

 

 

えっと、ここからは後日談。

あの後あの異物は全く動かなくなった。白目を向いて不気味だったけど、修也曰く大丈夫らしい。修也はどこかに電話した後、これからどうするのかと聞いてきた。

それで、あたしは修也と一緒に自分の家に帰った。

帰ると家から出てきたのはモカだった。あんなモカを見たのは初めてだった。モカはあたしに抱きついて

 

「心配したんだよ?本当に心配したんだよ!」

 

と涙を流していた。すると家から幼なじみが続々と出て来て心配したんだとたくさん言われた。

最後に父さんが出て来て、

 

「話があるんだろ?言ってみなさい」

 

と言ってきた。言いたいことがたくさんあるのにそれを我慢して父さんはじっとあたしを見てきた。

あたしは勝手に家出したことの謝罪とこのメンバーでバンドを続けたいこと、それを認めてもらうために今度のライブを見てほしいとチケットを渡そうとしたが、チケットは雨でヨレヨレになってしまっていた。今度渡すと言おうとしたら父さんはあたしの手にあるチケットを取り、

 

「分かった。中途半端な演奏だったらきっちり辞めてもらうからな」

 

と言って修也の方へ足を運んだ。軽く何か話すと父さんは、

 

「ありがとう」

 

とお礼を言って家に入っていき、

 

「まだ深夜だ。今日は皆泊まっていきなさい」

 

と言った。修也は、あたしに近づいてきて

 

「今回のことは内密にな」

 

と言って名刺を渡して去っていった。

 

"空の堂 宇田川修也"

 

そう記されていた。




バンドリしようと開いたらメンテナンスで、深夜のテンションで書き上げまして……もうメチャクチャです。駄文だよ駄文。
でも後悔はありません。1度こんな感じのものを書いてみたいと思ってましたし。

ちなみに空は"カラ"と読みます
分かってる?ですよね


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音収幽霊

これはもうすぐ初夏が訪れる時期の話


「は?ライブハウス?」

 

青年、宇田川修也は頭を掻きながらデスクに座る男の方を見た。男はカタカタとパソコンに文字を打ち込みながら

 

「うん、この近くのライブハウスで妙な事故が多発してるんだ」

 

と言った。黒髪黒い眼鏡に黒のYシャツ。黒一色の男はフゥと息を吐きながら作業の手を止めた。妙な事故ねぇと修也は呟きながら、棚に置いてあるコーヒー豆の入った袋を取り出す。チラッと男の方を見るとA4サイズの紙が入る封筒を見せつけてきた。ミルの横にコーヒー豆を置いて、封筒を受けとって中身を見る

 

「…………ライブ中に客が貧血で倒れる…ねぇ……。確かに少し数は多いですけど、これくらいならどこにでもあると思いますが」

「うん、そう言うと思って……次のページを見てくれないか?」

「…………バラードを聞いてる最中に倒れる……感動極まって倒れたんじゃありませんか?」

 

おおーそう来たかーと苦笑いをする男。修也は資料を読みながらミルにコーヒー豆を投入する。

 

「他のライブハウスと比べて倦怠感が酷い……練習中、いつもと同じくらいの練習量なのにいつもより倍近く疲れた。へぇ、ライブハウスとスタジオが一緒になってるんだ…………3週間前辺りからこの状態になっていると推測……………もう社長が全部調べたら良いんじゃありませんか?」

 

ガリガリガリガリとミルでコーヒー豆を粉砕する音と社長と呼ばれた男の苦笑いで事務所が満たされていた。

 

「まあ、できたらそうしたかったんだけど………残念ながら僕はオカルト関係に強くなくてね……完璧には調べられないんだよ。だからオカルトにはオカルトをぶつけようって思ったんだ」

「なら奥さんに頼んだら良いじゃないですか?あの人ほどオカルトな人はいないと思いますが」

「あー、えーと……その、昨日から体調不良で……」

「は?体調不良?」

 

ピタリと作業の手が止まる。

 

「待ってください、あの人ほど体調不良と縁遠い人はいないと思うのですが」

「あはは……腹痛を"殺そう"としたらたまたま娘の友人に見られてしまって……」

「あー……ナイフで腹を刺そうとしてたら誰だって止めに入りますよ」

 

苦笑いから乾いた笑いに変化する。修也は止めてた手をまた動かし始めた。

ガリガリガリガリ………修也はこの音が好きだ。何か落ち着くから。気持ちが荒れていたらたまにコーヒー豆をミルにぶちこんでひたすら回し続ける。それで社長に怒られたのは記憶に新しい。

 

「今は家でひたすら娘の友達の看病を受けているよ。あの時の顔……ははは、スゴかったな」

「見てみたいです。今からでも見に行って良いですか?」

 

ダメだよ、僕が怒られると言いながらページを捲るよう促した。

 

「それがそのライブハウスの見取り図。行けば分かると思うけど、一応頭に入れといてね」

「了解しました」

 

ミルから挽いた豆を取りだしペーパーフィルターに入れる。そしてお湯を少量入れて軽く蒸らす。

 

「後、娘を見かけたらちょっと探りをいれてくれないかな?」

「は?何かあったんですか?」

「今何かこそこそとやっててね。探ろうとしたら……」

「あー、奥さんに怒られたんですね」

 

だからお願いと手を合わせて頼む社長。そんな社長を見て修也はため息を漏らす。

円を描くようにお湯を注いでいき、注ぎ終えてフィルターからコーヒーが出なくなるのを確認してゴミ箱に捨てる。

 

「修也君には連続の仕事になって本当に申し訳ないと思ってる……このライブハウスの件、お願いできるかな?」

 

カップにコーヒーを注ぎ、男に渡した。

 

「社長なんだから命令とかすればいいのに。そんなんだから若い者に舐められるんですよ」

 

奥さんと娘さんの愚痴を聞かされるこちらの身になってくださいと呟き、コーヒーを啜る。

 

「あはは、ごめん」

 

そう言って男はコーヒーを啜るのだった。

 

「うん、美味い」

 

 

 

 

 

あの人喰事件を終えたことを社長に電話したら明日事務所に来るよう言われた。で、冒頭の話を受けた。社畜はヤダなーと呟きながら修也は目的のライブハウス"CiRCLE"へ向かった。

人喰事件というのは昨日の犯人が起こしていた事件で、人を虐殺して腹やら手足、酷い時は顔までも喰らう、非道じみたものだった。

こう人を喰らって殺すところから某マンガを連想して犯人の事を人喰"グール"と世間は呼んでいた。まあ、本当にグールみたいなものだったし、あっているといえばあっているが。

あの人喰、土谷辰己の力を俺は硬化だと思っていたが、社長曰く変容だったらしい。車にぶつかりそうになったら身体を硬くし、肉を抉るために爪を鋭くし、人を喰らうために歯を尖らせる。確かに硬化ではなく変容だ。つか、本人も自分の力が変容だって気づいてないっておかしくね?まあ、バカだから硬化だと早とちりしたのだろう……。土谷は完全に某マンガの人喰ではない。ちゃんと普通の飯を食う。ただ、普通の飯じゃ空腹が満たされなかっただけだ。空腹を満たすために人を喰らった。今回の事件は少し道の外れた男の本能のままに行われたものだ。眠いから寝る。遊びたいからゲームをするのと同じように、土谷は人を喰らったのだ。あの時、対象が美竹でなかったら食べさせていたかもしれない。美竹のもっと先へ行きたいという願望を目にしてしまったから、奴の食事を止めてしまった。

 

「我ながら壊れているな」

 

そう呟いて、目の前の建物を一瞥した。ライブハウスとスタジオが両方備わっている"CiRCLE"。建物の前はちょっとした広場になっており、カフェエリアになっていた。そこには休日だからか女子高生らしき人たちがちらほら見かけられた。

資料を見た感じ、粗方聞き込みも終えているだろうから、実際にライブを見て調べた方が良いかと判断した。

眼鏡を取ってから建物に入り、辺りを見渡す。特に異常は無いと見て眼鏡をかけ直す。

 

「すみません、今日のライブのチケットって売ってるんですか?」

 

そう近くを通ったスタッフに聞いてみた。

 

 

 

 

 

「ライブまで………後5時間ちょっとか」

 

あの後スタッフと軽く話をし(あのスタッフはこの頃入った新人スタッフらしい)、チケットを購入した。

入った時期と事件がちょうど被っていたから魔眼で調べてみたが、オカルト系統とは全く無縁の存在だった。つか、たまに倦怠感に襲われている被害者だった。

ライブまでかなり時間がある。1度家に帰って仮眠を取るのも1つの選択肢ではあるが、確実に外に出たくなくなる……働きたくなくなるので選択肢から除外。じゃあ、このカフェエリアで時間を潰すか…これから5時間も?それは店側に失礼すぎる。一旦ここで休憩した後、別件を進めておく…これが無難か。そう思ってカフェエリアに足を運んだ。

 

「ドラム辞めなかったんだね」

「うん……成り行きで………でも、今度は頑張ってみるよ!」

 

「もうそろそろ………練習の………時間だね」

「ふっふっふ……魔界のドラムテクニックを見せてやろう!どうりんりん!かっこよかった?」

 

スタジオ兼ライブハウス前のカフェエリアだからかバンドや音楽の話をしてる人が多い。何となく場違いな感覚に陥る修也だった。

適当にブレンドを注文して空いてる席に座る。

ポケットからスマホを取って机に置き、カバンから資料の入った封筒を出して中身を取り出した。

 

(見れる範囲には特に異常は無かった。"感情が流れ込んでいる起点"とか、"思考があやふやになる場所"とかがなかったし。毎日来てる新人スタッフも"たまに"と言っていた。どういうカラクリになってるんだ?)

 

頭を掻きながら資料を眺めていたら前の方から人の気配を感じた。

チラッと見たら見知った人が立っていた。

 

「何やってんのよ?」

「……………………美竹か」

「今、絶対あたしのこと忘れてたでしょ」

「名前を忘れてただけだ。顔は嫌ってほど覚えている」

 

座るか?と聞くと頷いて椅子に座った。

 

「そのギターケースかベースのケースか分からないが、楽器を持ってるってことは今日も練習か?」

「うん、今日はここで練習するんだ」

「ふーん………」

 

修也は少し考える。ここで練習をしてて倦怠感を覚えたバンドがいたと資料に書いてある。別件は後回しにして美竹の練習を見学できたら、何かカラクリが分かるかもしれない。だが、残念ながら俺は彼女とそこまで友好関係が高いわけではない。さらに言えば他のバンドのメンバーとは初対面だ。

 

「無理だな」

「ん?何が?」

「いや、こっちの話だ。で?近づいてきたってことは何か話があるんだろ?」

「……………」

 

無言のままじっと修也を見た。そして軽く深呼吸をして

 

「あの」

「あ、悪い。メールが来た。ちょっと確認する」

「……………」

 

スマホをスワイプしてメールを確認する。読み終えたら

 

「悪かった。で、何を聞きたい?」

「………サイテー」

「悪かったって。聞きたいことってあの事件と俺のことだろ?」

「………………本当にサイテー」

 

電話が鳴るが、修也はそれを切って蘭の方を見た。蘭もその姿を見て少し機嫌を治す。

 

「事件のことから教えて」

「分かった」

 

そう言って修也はカバンから1つの封筒を蘭に渡した。不思議そうに蘭は封筒を受け取り中身を出すと少し驚いた顔をした。

 

「これ、あたしが見てもいいの?」

「ああ、社長に聞いたらある程度まで情報を開示していいって」

 

それとこの資料もと、黒いファイルも蘭に渡した。

 

「ファイルの3ページ目を見てくれ」

「………!この男………」

「土谷辰己についての情報だ」

「ねぇ、これは流石にヤバいんじゃないの?この情報って………」

「知りたいんだろ?事件の全容を。俺もどうかと思うが、社長は良いと言った。つか今のメールがそれだ」

 

スマホの画面を蘭に見せる。蘭は読んでいくにつれて少し怪訝な顔をする。

 

「見せたら、捜査の協力をしてもらえって………これは?」

「今追っかけている事件があってな。それに協力してほしいんだよ。難しい事を要求しない。まあ、ある意味難しいやもしれんが」

「は?」

「それは後で話そう。今は土谷辰己の話だろ?」

 

スマホをポケットにしまって、机に置いていたCiRCLEの資料を封筒に片付ける。

カバンに入れたら修也は蘭と向き合った。

 

「土谷辰己は花咲川工業高校の3年。学校では内気な性格で、あまり周りと友好関係を築いてなかった人間だ。第一次進路希望調査では就職を選んでいた。家は裕福でもなく貧乏でもない、普通の家庭。まあ、どこにでもいる一般人だな」

「でもあれは一般人とかけ離れてた。内気な性格には全く見えなかったけど」

 

修也はページを捲るよう促してコーヒーを飲む。ちょっと薄いなと呟いて

 

「それは2年の終わりまでの奴のデータだ。3年になってからは1度も学校に顔を出しておらず、家にも帰ってなかったそうだ」

 

と言った。

 

「え?」

 

蘭は1度修也の方を見た。修也は面白くなさそうに話を進める。

 

「最後に家にいたのは3月の下旬、つまり春休みの時だ。春休みの最中に急に何度も家で暴食を繰り返していたらしく、"満たされない"と呟いたと思ったら家を飛び出したとのこと。で、数日後に最初の人喰事件が起こった……何が言いたいか分かるか?」

「…………分からないわ」

「土谷辰己は元々普通の人間だったんだ。しかも内気で人に優しい性格だった。つまり"誰かに何かされた"可能性がある」

「え?じゃあ、土谷みたいな奴がまだ出てくるってこと?」

「あくまで可能性だ。もしかしたら自分で起源をこじ開けたのかもしれないし……」

「起源?」

 

こちらの話だと言って手を振り話を戻す。

 

「まあ、不安になるようなことを言って悪かった。もう一度言うがこれはあくまで可能性だ。こんな事件が度々起きたらこっちがたまらないわ。で、人喰事件についての依頼が来たのは1週間ほど前で、資料がまとまったのは………5日前だったな。そこから土谷探しをしていたら……」

「昨日偶然あたしと遭遇」

 

そうだと言って、またコーヒーを飲む。また薄いなと呟いたらじゃあ飲まなかったらいいじゃないと呆れた声で蘭は言った。

買ったものは最後まで使うのが俺の流儀だと言ってコーヒーに口をつける修也を見て蘭はため息をついた。

 

「さて、今出せる情報はここまでだ。昨日逮捕されたばかりだからまだ事情徴収のデータはここにはない。開示の許可が降りたら話そう」

「じゃあ」

「俺の事はまた今度だ。つか、社長から開示の許可が降りてない。つかお前が聞きたいのは"目"についてだろ?」

「っ………そうよ。その目は何?」

「残念ながらそれは教えれない。これに関しては迂闊に話せない。これには社長に同意だ。少しどころかかなり危ないからな」

「………土谷よりも」

「土谷よりも」

「じゃあ、これだけは教えて。あなたに妹とかいる?」

「妹?いないけど」

「そう……分かった」

「?」

 

まあ、あの社長だからいつか許可出すだろ。と言ってファイルと資料を蘭から取ってカバンにしまう。

 

 

 

「さてと……話が変わるがお前、幽霊を信じるか?」

「へ?…ゆ、幽霊?」

「…………」

 

あ、こいつ、こーゆー系は苦手なタイプかと直感した。でもこの話をした方が入りやすいんだよなーと修也は悩んだ。

 

「いいわよ、続けて」

「………声震えてるぞ」

「震えてない!」

 

ダンと机を叩く。その音で周囲がこちらを見た。蘭は顔を赤くし

 

「いいから続けて」

 

と下を向いた。

 

「気は紛れたか?」

「叩くわよ」

「へいへい。続けるって言ってもお前に質問したんだけどな。で、どうなんだ?信じるか?信じないか?」

「信じてない」

「即答だな。まあ、幽霊がいるいない談義をしたって時間の無駄だから……お前、あの"CiRCLE"の噂を聞いたことあるか?」

「噂?」

 

チラリと蘭が腕時計を見る。時刻は13:40。

 

「練習は」

「2時から。まだ少し余裕はある。続けて」

 

少し手に力が入ってる……軽く眼鏡をずらして蘭を見て……あーなるほどねと修也は思った。タイミング悪かったかな……いや、逆手に取れるか?

 

「昨日事務所に依頼が来たんだ。変な噂が流れているライブハウスがあるって。その噂ってのが、幽霊がいるかもしれないって類いだ」

 

息を飲む音が聞こえたような気がした。かなり顔が強ばってる。ちゃちゃっと済ませないとと話を進めた。

 

「その幽霊は日夜どんな時間でも現れる幽霊で、昔ミュージシャンになる夢を持っていたそうだ。でも交通事故で死んでしまって……何でこんな目にあうんだ?不公平だろとライブハウスに来た客から体力を奪ってライブの邪魔をしたり、練習中にも現れては邪魔をするはた迷惑な存在に成り果てたらしい。そのせいであのライブハウスの売り上げはがた落ち。調べてもらって幽霊なんてデマなんだと証明してくれ…というのが今回の依頼だ」

 

まあ、所々嘘を織り混ぜているがそこは彼女に協力してもらうための嘘だ。それくらい良いだろと思いながら、コーヒーを飲み干した。

 

「でだ。日中にも現れるらしいからスタジオも調査しないといけない。でも俺1人で楽器を触ってたら幽霊に訝しく感じられる可能―」

「幽霊なんていない」

「あくまで可能性の話だ」

「あんたの言いたいことは分かった。つまり、あたしたちの練習に入って調査をしたいってことでしょ?」

「おお、恐怖のおかけで思考能力が向上しているのか」

 

パチンと頬を叩かれた。速い、恐ろしく速かった。そこまで怖いのか?幽霊が。

 

「いいわよ、来て。幽霊なんて絶対いないんだから!」

「おいおい落ち着けっ――ておい、腕を掴むな引っ張るな!」

 

勢いよく立ち上がったと思ったら腕を捕まれグイグイと引っ張っていった。修也は慌ててカバンを取って蘭に着いていくのであった。




文才は書きまくればつくのかな?ならガンガン書かないと
というわけで早くも2話です。読みなおしても話殆ど進んでないよね。
ただ駄弁っただけの話だよね?
次はちゃんと展開すると信じて……明日から頑張るぞぃ


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音収幽霊Ⅱ

副題は怨讐幽霊


「……………」

「……………」

「えっと……」

「……………」

「………ふん」

「はぁ………」

 

6人が6人色んな反応を示した。

赤いメッシュをつけている蘭は不機嫌な顔でそっぽを向き、灰色のパーカーを着た子はボーッと修也を見ていた。白を貴重としたふわふわっぽい子はじっと修也を観察するように見ていて、赤髪の姉御肌の子も観察するように眺めていた。黒髪のしっかりものみたいな子はあたふたと周囲を見ていて、修也は

 

「はぁ………」

 

とまた頭を掻きながらため息をついた。

 

「何か文句ある?あんたの要望だと思うんだけど?」

「なぜそんなに不機嫌なんだ?やはりそんなに幽れ――」

 

足を踏み抜こうとしたので軽く避けた。革靴だから汚したくないというのが理由。運動靴なら踏まれてたかもしれない。それで気が紛れるのなら、この空気が緩和するなら……いや、痛いから踏まれたくないな。多分避ける。

 

「昨日は色々とお疲れさまでした。まあ、あの家出騒動の被害者の1人の宇田川修也です。そちらにも宇田川がいるみたいなんで"修也"と呼んでくれ」

 

とりあえずこの空気を変えるために発言をしよう、そう思って修也は一歩前に出た。それを聞いてメンバーも名乗っていく。

 

「あ、えと……羽沢つぐみです」

「むー……上原ひまりです」

「青羽モカちゃんでーす。よろしくー」

「こらモカ。目上の人なんだから敬語使えよ。あ、宇田川巴です」

「いいじゃないですかー。蘭も敬語使ってないしー」

 

ワイワイと盛り上がる光景を見て修也はとても仲が良いなと思った。何というか……"見ていて気分が悪くなる"

多分これはいつもいる世界とかけ離れた世界にいるせいだと理解する。これが本来当たり前で、俺は非日常の世界にいる。俺が異分子なんだと分かっていても"やっぱり見ていて吐き気がする"

 

「どうしました?」

「いや、何でもない」

 

そう言って修也は蘭のバンドメンバーに説明をした。

 

「君たちは幽霊がいるって信じるかい?」

 

という言葉から。そして、巴とひまり、蘭が強ばった顔をする。ちょっと待て、蘭はさっき幽霊について話しただろ?少しは耐性ついてるだろ?と修也は呆れた顔をするのだった。

 

 

 

 

 

「つまり……私たちは"いつも通り"練習すれば良いのですね?」

「ああ、俺はいないと考えてくれていい。そうだな……置物みたいなものと思ってくれ」

「こんな威圧感すごい置物があったらちょっと困るよー」

 

準備をしながら修也にメンバーは確認していく。修也も目を使って周囲を観察していた。

 

(ねぇ、蘭ちゃん)

(何?つぐ)

(修也さん、何してるのかな?眼鏡を取ったり掛けたりを繰り返してるけど)

(ああ、それ私も思った。蘭、何か知ってる?)

(あたしも聞いたんだけど、答えてくれなかった)

(なんかあこが喜びそうな事を想像してしまった)

(巴ちゃん?何々?)

(あの目は実は魔眼で、何かを見通すスゴい力を持っている………なんて)

(あはは、そんなわけないわよ。確かにあったらスゴいけど……それはフィクションでの話で…)

(分かってるって!あー恥ずかしい……)

(ん?どうしたのー?蘭ー)

(ううん、何でもない)

 

今の巴の言葉に蘭はしっくり来るものを感じた。魔眼……それなら土谷に取ったあの不可思議な動きが"あの目にしか見えないもの"を斬ったのならこのモヤモヤな気持ちはストンと落ちるような気がした。

 

「でも……まあ、そんなわけないか」

「蘭?」

「始めるわよ」

「え?あ、うん」

 

そう言って彼女たちの練習が始まった。

 

 

 

彼女たちがセッションを行った途端、何か"軋む"のを見た。修也は眼鏡を完全に外して、軋んだ方を見る。微弱ではあるが、何か"感情か何か"が流れているのが見える。何というか歪んだ糸が流れているように見えた。やはりこういった類いは社長の奥さんの得意分野だろと腹痛に悩まされている奥さんを想像して軽く舌打ちをする。

その糸を追うように部屋を出る。一瞬糸が解れかけたが、また元に戻った。

糸を辿ると着いたのはライブハウスの倉庫だった。ドアに"関係者以外立ち入り禁止"と紙で貼られているが、それを無視して部屋に入る。そこにあったのは

 

「………………は?」

 

巨大な"感情の塊"だった。

 

 

「なあ……今の………」

「うん、修也さんスゴい速さで部屋を出たよね。びっくりして手が止まりかけたよ」

「でもー蘭が歌い始めたからー皆演奏に戻ったよねー」

 

1曲演奏を終えると全員が蘭の方へ集まった。蘭は無言でドアの方を見続けていた。

 

「むー………」

「どしたのー?ひーちゃん」

「あの人"宇田川"って言ってたよね?」

「うん、私もびっくりしちゃった。そんな偶然あるんだーって」

「おう、アタシも驚いたよ。"宇田川"ってそれなりに珍しいしな」

「やっぱり巴も知らない人なんだ」

「?」

「いやぁ、もしかして隠し子とかかなーって……でも全然似てなかったからやっぱり違うかなーって」

「ひーちゃん考えすぎー……蘭?」

 

皆で盛り上がってる中、蘭だけ無言だった。

 

「蘭ー、もしかして気になってる?」

「………何が?」

「修也さんのことだよー。もしかして……好きになったとか?」

「………ない、それはない」

「もー、ガチトーンはモカちゃんにつらいよー」

 

それから、メンバーは反省点を述べあった。今度のライブで蘭の父親に認めてもらうために入念に取り合った。

 

「後は……あれ?」

 

粗方言い合い終えるとつぐみが床に何かが落ちていることに気づいた。

 

「これ………眼鏡?」

 

そういえば何かが落ちる音は聞こえたけど修也さんに目がいっていて気づかなかった。とつぐみは思った。さらに、基本修也さんって眼鏡掛けてたよね?視力とか悪いと色々大変だから………

 

「修也さんの所に届けなくちゃ!」

 

と結論を出し眼鏡を取って部屋を出た。結構テンパっていたからつぐみを呼び掛ける声は本人に届かなかった。

 

「ちょっとつぐ!待って!」

「皆待って!」

 

メンバーがつぐみを追いかけようとするが、蘭はそれを制した。

 

「つぐみは修也に眼鏡を届けに行っただけじゃない。すぐ戻ってくるって」

「蘭ちゃん?」

「今はガルジャムに向けて練習でしょ?もう猶予はないよ?」

「………そうだな。つぐならすぐに戻ってくるだろ。それまでアタシたちは練習練習!」

 

蘭と巴は楽器の調整に入った。それを見たモカはニヤッと笑い

 

「分かったー」

 

と言ってギターを構えた。ひまりは納得してない顔だったが、今は練習!とベースを持ち直した。

そして、キーボードなしで練習を再開するのだった。

 

 

 

 

 

「はい、とりあえずかなり危険だったので思わず斬ってしまいまして……はい、はい。今ですか?糸みたいなものが伸びたり途切れたりしてます……肉眼で見れるか……ですか?塊は見えますね…糸は多分見えないかと……はい、分かりました」

 

電話を切って軽く息を吐く。あの後塊が襲ってきたが、単調な動きだったから簡単に仕留めた。まあ、糸が伸びて絡み付くだけだったから、それを斬ってスタジオとかに伸びている糸みたいなものもついでに斬っていった。

で、塊は動かなくなり今は糸がさ迷うように伸びたりしていた。

 

「その手に詳しい人を寄越すって言ってたけど……これって確実に魔術類いのものだよな。床に陣が張ってあるし……詳しい人って誰だ?」

 

休憩がてら壁にもたれ掛かり座る。そしてさっきの電話のことを思い出す。

電話の相手は社長だ。その時に、

 

『少しは自分に色が戻ったかい?』

 

と言われた。色は戻ったのだろうか?相変わらずこの目で見る世界はモノクロで吐き気がする。

でも、彼女……美竹と出会ってから何かが動き出したような気がした。止まっていた歯車が動き出したような、そんな気がした。

確かに彼女のいる世界を見ると気分を害する。自分が異分子のように感じる。

 

「でも、もし……もし、俺があちら側に行けたら……」

 

何か見つかるのかな。もしかしたら俺の求める答えがあるのかな?

 

ナイフで遊んでいたらガチャリとドアの開く音がした。咄嗟に立ち上がり、ナイフをドアに向けて構えたが、驚きのあまりナイフを落としそうになった。

 

「よっ、元気か?」

「詳しい人って……宇田川さんだったのですか………」

 

現れたのは宇田川徹……修也に色々世話してくれた、所謂恩人だった。徹はポケットから小さな箱を取り出して修也に投げつけた。修也は危なげなくそれをキャッチしてその箱の封を切った。

 

「うわぁ、こりゃ酷いな」

「これ、何だか分かりますか?」

 

徹は塊を一瞥した後、床の魔術陣を見てふーむと唸った。

 

「修也君はどこまで推測できている?」

「………これは幽霊を生み出す装置ですよね?」

 

封を切った箱をポケットにしまって徹の近くに寄った。

 

「正解。こりゃあ面白い考えをした魔術師がいたものだ。"幽霊を生み出して根源に至ろうとする"なんてな。蒼崎もこれを見たら笑うだろな」

「そんなに面白いものなんですか?これ」

「面白い面白い。そもそも、幽霊ってどうやって生み出されるのかい?」

 

立ち上がって陣をぐるりと徹は回り込みながら見た。

 

「色々例はあると思いますが、代表的なのは死んで現世に未練がある者が成り果てる存在……ですよね?」

「ああ、つまり…死なないと幽霊は生まれないということだ。で、この魔術師は幽霊を人工的に生み出せないかと考えたのだと思う。何故その発想に至ったかは分からないが、その発想をしたおかげで面白い考えにいたったのだ。もしかしたら人工的に幽霊を作れば根源に至れるのじゃないのかって」

 

普遍的無意識を知ってるかい?と徹は修也に聞く。名前だけはと言うと少し笑顔になった。それを見て、説明したかったんだなと呆れ顔になる修也だった。

 

「普遍的無意識……集合的無意識。カール・グスタフ・ユングが提唱したものでね。全ての人間は無意識の更なる深層領域で繋がっている。つまり、人の思考や感情を深く潜っていけば人の原型にたどり着くと言われてるんだ。で、この原型というのがこの魔術師は"根源ではないか"と仮定したんだ」

 

そして、その根源に至る道として幽霊を生み出そうとしたと徹は推測した。

 

「んで、その幽霊作りにライブハウスを選んだのも中々見所がある」

「何でだ?」

「歌というのはな、喜怒哀楽全てを表現できる優れたモノだからさ。感情を取り入れるには持ってこいだろ?」

 

人の幽霊を生み出すには人と同じ感情や思考を持たなくてはならない。それを歌で感情を覚えさせて、歌に対する思いで思考を作り出そうとした。それをたくさん学習させてより人に近いものを作成しようと考えたらしい。

 

「だからといってライブとかで倒れる人を出すのはやりすぎですよ」

「いや、それはこの魔術師にとって予想外だったのだろう。ここを見てくれ」

 

徹は陣の一角に指を指した。そこには何か擦れた跡があった。

 

「ここは倉庫だ。何かを運搬した際に擦れてしまったんだろう。それで魔術陣は暴走。むやみやたらに人の感情や体力を奪ってしまったんだろうな」

 

で、と説明をしようとしたら急にドアが開く音がした。

 

「修也さん……いますか?眼鏡を届けに……」

 

瞬間、修也は眼鏡を届けにきたつぐみの前に行ってナイフを一振り。

 

「え?修也………さん?」

 

そのままつぐみは倒れた。

 

「宇田川さん……人避けの魔術結界は?」

「………テヘ」

「俺、社長に言ったはずなんですが……」

「悪い悪い………で、嫌な話と最悪な話………どちらから聞きたい?」

「好きな方で」

 

ガリガリと首を掻きながら徹はつぐみを一瞥し、

 

「今の修也君の行動は正解だ。今見たものの思考と感情についてだけを斬ったんだろ?なら彼女は見たものを理解できず、そのまま忘れてしまうはず。だが、君の一閃に恐怖を覚えただろう」

「それが何です?」

「多分、それがこの幽霊擬きに流れ込んだ」

 

びちゃりびちゃりと嫌な音が聞こえる。その音の方を見るとさっきまで糸しか動いてなかった塊から変な液体が漏れ始めていた。

 

「そして、修也君…これをむやみやたらに斬ったんだろ?いや、それで良かったんだ。このままだとこの塊はオーバーヒートして爆発してたんだから。こほん、この塊は謂わば何も知らない赤ん坊なのだよ。だから魔術師は音楽で出てくる感情や思考を分けてもらえという指示しかしなかったんだよ。複雑なものを教えてもパンクするだけだからな。で、その作業をお前に否定されてこの塊はパニック状態に。その状態でつぐみちゃんの恐怖を吸収してしまった」

「説明が長い、簡潔に教えろ」

 

塊から手が何本も生えてきてうねうねと蠢いていた。

 

「今塊は繭みたいに多方面に糸を張り巡らせたろ?あれは恐怖に近い、負の感情を取り入れようとしてるんだ」

「何で負の感情を?」

「パニックになってるからだ。何でもいいからかき集めないとと思ってたまたま入ってきた恐怖に近い感情を取り入れようとしてるんだろ」

「つまり、結界貼らなかった宇田川さんが悪いってことですね」

「いや、本当にすまない!」

 

手が一斉に修也たちに襲いかかった。修也はつぐみの前に立ってナイフで手を斬り刻み、

 

「"Hagel"」

 

徹はルーン文字が書かれた紙を取り出してルーン魔術で手を破壊していった。

 

「こりゃヤバイな。人避けの結界を張らないだけでこんな大事になるとは」

「愚痴を言う暇があったら手を動かせ、頭を動かせ!」

「わーってるよ。修也君、あの塊の感情の起点が見えるかい?」

「………手が邪魔で見えづらいですが見えます」

「手さえ何とかできたら斬れるかい?」

「斬れます」

 

了解したと言って徹はポケットからチョークを取り出して、宙に文字を書く。

 

「"Kenaz"」

 

そう言うと手が一斉に燃え出した。火は塊にまで及び、キャンプファイアの様に燃えていった。それを見ながら修也はポケットから箱を取り出す。徹からもらったものだ。

 

「………ふぅ」

 

箱の中身はタバコだった。それを1本取り出して火を付ける。

口から煙を吐き出したら、目を見開いて感情の起点を見いだす。ナイフを構えようとしたら炎上してる塊から手が伸びてきた。

それをつぐみを抱いて避ける。つぐみのいたところは手によって床ごと抉られていった。

 

「おー、お姫様抱っこ。やるねぇ」

「おい、手はどうにかするんじゃなかったんですか?」

「まさか、ここまでしぶといとは思わなかったよ。あれが俺の持てる最大火力だよ。少なくとも蒼崎のより火力はあると思うけどな」

「蒼崎さんなら人形で触手を食い止めてくれると思いますが?」

 

つぐみを床に置いて再度ナイフを構える。

 

「俺が破壊のルーンを放つ。その活路で修也君」

「了解しました。失敗しないでください」

 

わーってると言ってルーン文字を書いて"Hagel"と呟いた。伸びてくる手は崩壊し、その隙に修也は塊に向かって走った。そして

 

「その思い、斬らせてもらう」

 

起点と思われる糸を思いっきりぶった斬ったのだった。

 

 

 

 

 

えっと、ここからは後日談。

あの後塊は燃えて燃えて、消えていった。宇田川さん曰く魔術陣も燃えてしまったからもう感情が集まることはないだろうとのこと。

で、この魔術を行った魔術師はCiRCLEのオーナーさんだった。

 

「いやぁ、まさかそんなことになってるとは思わなかったよ」

 

はははと笑うオーナーさんを脳内で何度も殴っている中、オーナーさんは色々説明してくれた。曰くCiRCLEを建てたのはこの魔術を効率よく行うためだったらしい。その辺は宇田川さんの予想通りだった。

 

「でも、途中で私は魔術師として壊れてしまったんだ」

「は?」

 

オーナーさんはある日恋をしたそうだ。そして、その恋は実り結婚まで行き着いた。そして、オーナーさんは子供を授かったそうだ。

 

「目の前にいる子供を幸せにすることの方が、根源に至ることよりずっとずっと大切に思えてしまったんだ」

 

魔術師失格だろと乾いた笑いを見せた。魔術師ではなく、1人の父親をこのオーナーさんは選んだんだ。

 

「この装置は放置してても害はないと思ってたんだが、まさかここを倉庫に変えてるとは予想もしてなかったよ」

 

今回の事件の原因はオーナーさんの小さなミスだった。それがここまで大事になるとは…。

 

羽沢さんも記憶があやふやになっていたから特に問題はなかった。

眼鏡を届けてから記憶が思い出せない……そんな感じになってたらしい。

 

「さて、俺は1回家に帰ろうかな。巴やあこに会いたいからな」

 

宇田川さんとは塊を倒した後色々話をした。

 

「今度、蒼崎が来ると思うから、眼鏡の調整とかしてもらえ」

「分かりました」

「そういや、修也君って闘う前に絶対そのタバコを吸うよね?それ美味しくないのに何で?」

「何で?って言われましても……これは一種の願掛けです。戦闘前にこのタバコを吸うと落ち着くんです。でもこれ製造しなくなったんじゃありませんか?」

「ああ、逃亡中にたまたま台湾に行っててね。その時に制作者と会ったんだよ。で、また作ってくれるよう頼んだ」

 

そしたら度々送られてくるようになったんだよ、と笑いながら言った。

 

「残念ながら俺は喫煙者じゃないからな。送られたタバコは修也君や蒼崎、知り合いの魔術師に渡してる」

「……ありがとうございます」

「いいよいいよ。それにしても魔眼を上手く使えていて良かったよ。まあ、彼女ほどではないが」

「いや、あの人がおかしいのですよ。たまに組み手とかやらされるんですけど、何度失明しかけたか」

「あはは。まあ、その"感視の魔眼"は極めて有能だ。彼女には見えない概念を君は触れれるのだからな」

「……………」

 

しばらく無言が続いた後、

 

「しばらくまた日本を離れる。時計塔に呼ばれてね」

 

とポツリまた話始めた。

 

「了解しました」

「できたらでいいのだが、妻の様子をたまに見ててくれないか?あいつ普段は淑やか清楚な雰囲気を醸し出してるけど色々無茶するから。ほい、これ俺んちの住所」

「……………」

「そこにタバコ置いてるから、無くなったら取りに行け」

「…………了解しました」

「うん、よろしい」

 

カップのコーヒーを飲み干し、このカフェ気に入ったとか呟きながら立ち上がり

 

「もうすぐライブだろ?行ってこい」

「…………」

「せっかく買ったんだ。見に行けよ。まさか、事件解決するために買っただけだから見る気はないとか言わないだろな?」

「…………」

「見に行くだけ見に行け。もしかしたら修也君の求めている答えが見つかるかもしれないぞ?」

「まさか」

「言ったろ?歌というのは感情や情景を生み出す万能で優れたモノだ。ヒントくらい落ちてるかもよ?」

 

カラカラと笑いながら徹は去っていった。それを無言で眺めた後

 

「ヒントくらい落ちてるかも……か」

 

と言って立ち上がり、ライブハウスの方へ足を運ぶのだった。




やっとロゼリアの星3以上属性統一に成功したよ
ピュアなのが少し火力不足であるが、それでも嬉しいです
リサのクールが来たら揃うのにな……水着、期間限定…うっ頭が


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守護幻影

これは彼女たちの物語に交わる話


気持ち悪い。

ポタリポタリと少年の右手に持つナイフから赤い液体が滴る。

吐き気が止まらない。

目の前に少女が倒れていて、腹部からナイフと同じ色の液体が流れていた。

最低だ。

耳元でそんな声が聞こえた。ああ、確かに最低だ。でもこうすることでしか"生きている"実感を得れないのだから。

ナイフを逆手に持って高々と構える。俺は今どんな顔をしてるのだろうか。どんな目でこの目の前の少女を見てるのだろうか。

分からない。

多分虚ろな目で目の前の少女を眺めてるのだろう。

 

だから分からない。

なぜ目の前の少女は必死に笑っているのだろうか。

腹部は痛くないのか?いや、痛いだろう。ひきつった顔から痛いのは分かる。それに痛いと彼女を纏っている"糸が叫んでいる"。痛いのになぜそんな笑顔を俺に見せつけるのだろうか。

気持ち悪い。

吐き気が止まらない。

口から声が漏れる。

言葉になってない声が漏れる。

何か割れる音が聞こえたような気がした。そして、何かが動き出した音が聞こえたような気がした。

 

「おい、何をしている」

 

その言葉が聞こえた瞬間、モノクロの世界に小さな有彩色が浮かび上がったような………そんな気がした。

 

 

 

「……………またこの夢か」

 

頭がボーッとする。あれだ、ライブハウスなんて行ったから予想以上に疲れたのだろう。

幽霊事故の後、修也は結局ライブを見ることになった。

初めは帰ろうとしたのだが、circleの人に行かないのかと声をかけられ、さらにたまたま近くにいた羽沢に一緒に行きましょうなんて言われたから行くことにした。何だかんだ押しに弱いなと思う修也だった。

 

4月23日。

ライブから数時間経った夜遅く、修也はある男に呼び出されていた。

花咲川教会。この小さな教会の椅子に腰掛け、呼び出した男を待ち続けた。待ってる時にそのまま寝てしまったのだろう。腕時計を見ると23:00前だった。

 

「すまない、少し知人が来ていてな。用を済ませていた」

 

少しボサついた長髪に光のない黒目、筋肉質な長身のカソックを纏った男が現れ、祭壇に立った。

 

「いや、集合時間までまだ5分前だから大丈夫だ」

「そうか」

 

この男がこの教会の神父である。胡散臭いのだが、人望は厚いらしい。どう見ても悪人にしか見えないが、社長曰く良い人らしい。裏で暗躍とかしてそうというのが修也の印象だった。

 

「もう寝なくても大丈夫なのか?」

「見てたのかよ」

「1度ここを覗いたからな。だがその時はまだ集合時間の30分以上前。寝かしておいて大丈夫だろうと判断した」

「教会の椅子で祈りとかせずに寝る大馬鹿者を見逃してくれる寛大な心に感謝します」

「礼を言うな気持ち悪い」

 

気持ち悪いものを見るような目で見る神父。本当に彼は神父なのだろうか。

 

「で?見ての通り俺はお疲れなんだ。用件は手短に頼む」

 

コツコツと神父は歩き始め、修也の近くまで近寄る。

 

「用件は2つだ。1つはいずれお前の会社に直々依頼が来るだろう。私が依頼しても良いのだが、そこまでするほどのものでもない」

 

ピタッと止まり、修也を見下すように見る。右手にはB5サイズの封筒があり、それを大事そうに持ちながら説明を始めた。

 

「ここから少し離れた所にショッピングモールがあるだろう?」

「ん?ああ、確かにあるな」

「そこからさらに北西に向かうと橋がある。その橋を渡ると住宅街に着く。そこで、行方不明事件が多発している」

「………ニュースになってたな。男女年齢問わず、その付近の住民が消息不明になるという……だが、何人か戻ってきてただろ?」

「戻ってきたというより返されたと言った方が良いだろう」

「………………つまり」

「そうだ、あれは魔術師によるものだ。警察には手に負えん」

 

ショッピングモールをさらに北西に進んだ住宅街で多数の人が消息不明になる事件があった。捜索に出た警察までも消息不明になるのだからかなり危険なことになってると判断し、警察は大掛かりな捜索に出たらしい。

結果は何も出ず。いや、出てきたのは出てきた。消息不明となった少年や老人、捜索に出た警察が公園で発見された。

事情聴取してみたが何も覚えてないらしく、捜索に出たことすら覚えてない警官もいたとのこと。

 

「多分1度社長が視察しに行くだろうな。それで消息不明になったら奥さんが出る………嫌な予感しかないな」

「全くだ。あの男の事になれば奴は容赦しないからな」

 

はぁ…と2人でため息をつく。しばらく雑談を交えた後神父は修也に大事そうに持っていた封筒を渡した。

 

「これが本題だ」

「…………資料に…DVD……じゃない、CD?」

 

入っていたのは数枚の資料とCDだった。

 

「これは私個人がお前に依頼する」

「会社には言うなってことか?」

 

左様と神父は笑みを浮かべる。それを見て嫌な顔をする修也だが、依頼を持ってきたのだからちゃんと内容を見ないといけないと心を鬼にして資料を見た。

 

「…………はあ?ストーカー被害?」

「ああ、被害者はパスパレの白鷺千聖。数日前から黒ずくめの男に付けられている」

「お前じゃなく?」

「バカ言うな。私が付けるならバレないように付ける」

「……………」

 

多分呆れた顔をしてるのだろうなと修也は思う。言動を見るからに目の前に立っている神父はこの"Pastel*Palettes"とやらのファンだ。

 

「………結成して日が浅いのだな」

「ああ、たまたま彼女たちが大雨の中チケットの手売りしてるのを見かけてな。あれから私の心がときめいてしまった」

「そのニヤケ面、どう見ても"大雨の中濡れながら活動している……愉悦"にしか見えん」

「お前は大馬鹿者だな。どうしてあんな健気な子達をそんな目で見れる」

「……………」

 

やばい、こいつ本気のファンだ。あまりに怖くなったから目で確認してみたが、本気でファンしてる。

 

「………で?何故俺だけに言う?社長に言ったら結構安値でやってくれるだろ?自分で言うのもあれだが俺に直接したら結構額取られるぞ」

修也は社長に依頼された仕事は文句言わずにやる。だが、直接依頼してきたらそれなりの額を戴くようにしている。単に社長が出す金額が安すぎるからだ。身内価格とか言って正直食っていけるのか?と思える金額で依頼を受ける。だから修也に直接来た場合、"正式な値段"で依頼を受けた。そうしないと勘違いする客が出てきてしまうから。

 

「お前は本当に大馬鹿者だな。私がパスパレのファンである事をあの男にバラしてどうする!」

「いや、知らねぇよ」

 

単に奥さんにバレて茶化されたくない、恥ずかしいからだろう……正直、見ていて気持ち悪い。

 

「つか、よくこの護衛に俺を組み込めたな。どうやってやったんだ?」

 

資料を見ると明日の16:00から彼女の護衛をすることになっている。どうやって交渉とかしたのだろうか。

 

「それはあの男の娘に協力してもらった」

「奥さんにバレるの一直線だぞ」

「安心しろ。奴は私と同じ同志だからな」

 

つまり社長の娘はPastel*Palettesのファンということか。Pastel*Palettesは資料を見るからにアイドルバンドだから……社長の娘と神父が並んでケミカルライトを振る…………ダメだ、気持ち悪すぎて笑える。

クツクツと込み上がる笑いを堪えながら資料を見ていたらあることに気づく。

 

「………このメンバー、どこかで見たような」

「大手のアイドル事務所だからな。テレビにも出たことがあるぞ」

「いや、最近どこかで見たような………あ、今日のライブだ。こいつら今日のライブで出てたな」

「何っ!」

 

いきなり神父が修也の胸ぐらを掴む。びっくりした、見えなかったぞ。

 

「なぜそれを私に言わない!」

「どうやって教えろと。今初めてあんたがPastel*Palettesのファンだと知ったのに?」

 

胸ぐらから手を離して頭を押さえる神父。彼女たちの動向をチェックし忘れてたとか、知ってたら懺悔なんか聞かずに向かっていたのにとか呟いていた。彼は本当に神父なのだろうか?

 

「ふん、まぁ…今後は気を付けることにして。この依頼、受けるかね?」

「………………」

 

どう見ても受けないと面倒な事になる。だから修也はため息をつきながら、依頼を受けることを決めたのだった。

 

 

 

 

 

「という訳で依頼を受けたのでしばらく事務所に顔を出さないと思います」

「了解。依頼者は花咲川教会の神父さんで良い?」

「はい」

「依頼内容は修也君に対しての依頼だから会社に話さない……か」

「個人的な依頼だからとのことで」

「………了解。何かあったら言ってね」

 

翌日、修也は依頼を受けたことを社長に伝えるべく事務所を訪れた。人喰と幽霊事故の資料作成も兼ねて。

 

「そういえば、人喰から何か情報は出ましたか?」

「まだ捕まって2日しか経ってないよ?しかも彼、全然話さないから進展もないって」

 

ただ、と一旦一息ついて

 

「彼はずっと自分の左腕を噛んでいたんだって。君に"喰らう意思を斬られた"というのにね」

 

と言ってキーボードで字を打ち込むのを止めた。

 

「…………本能じゃないですか?己の起源が食べることだから」

「………本当に喰らうことが起源なのかな?」

「?」

「いや、何でもない」

 

再び文字を打ち始める。それを見て修也は頭に?マークを浮かべたが社長の思考を読み取るより仕事を終わらせるのが先だと考え、作業に戻った。

 

「………ふぅ。つかもうこんな時間か」

「14半時過ぎか……早いけど支度し始めたら?」

「そうですね。"考察"を書き終えたら行きます」

 

ノートパソコンを閉じて横に置いてあったノートを開く。そこにはびっしりと文字が書かれていて、これまで関わった事件について事細かに書かれていた。

 

「今回の人喰事件と何か関係のある事件はあるかな?」

「去年から出ている"蛇女"と関係は?」

 

去年の10月辺りから出没し始めた"蛇女"と呼ばれる存在がいる。

痕跡である長い髪や遺体の腕に残された手で掴まれたような痣から女性と判断。さらに痣から絡み付くように鱗のような痣を残していて、世間からは蛇女と呼ばれていた。残念ながらそれ以外の痕跡や目撃情報を残していないため未だに警察の手から逃れている。

 

「蛇女かぁ………確かに蛇のような噛み跡とかあったらしいから"食べる"という意味で言えば共通したものと言えるかな?」

「え?それ初耳なんですけど」

「え?」

「え?」

 

沈黙が事務所を満たす。

 

切り換えるように社長は

 

「2週間前の遺体に噛み跡が見つかったんだって。もしかしたら人喰のように肉を食らったのかもしれないな」

 

と言った。表情から察するに言い忘れてたのだろう。たまに抜けてるところがあるよなと修也は思った。

 

「同じ地域に人を噛んでるだけじゃ、ちょっと弱いかな?黒幕がいるという仮定で話を進めるには」

 

ここの所この近辺で事件や事故が多発しているからもしかしたら何者かの陰謀が働いているのかもしれないと践んで社長と修也は捜査を続けていた。しかし、欲しい情報は中々集まらなかった。

 

「そうだね。やはり、人喰の証言待ちかな」

「…………ですね」

 

そう言って修也はノートに考察を書き終え閉じた。クルクルとペンを回していたら

 

「ふーん、修也君って鉛筆で書くんだね。シャーペンとか使わないの?」

「いや、シャーペンありますよ。貰ったロケットペンシルを使いきろうと思って今使ってるんですよ」

「………………ロケットペンシルって何?」

「え?」

 

また沈黙が事務所を満たした。

 

「知らないんですか?ロケットペンシル」

「知らないよ、ロケットペンシル」

 

またまた沈黙が事務所を支配する。

 

「あ、ちょうど良い時間なんで行ってきます」

「え?あ、うん。行ってらっしゃい」

 

修也は立ち上がって鞄に封筒やノートパソコンを入れると社長に向けてロケットペンシルを投げた。社長は危なげにそれをキャッチするのを確認し、

 

「それがロケットペンシルです」

 

と言って事務所を後にした。

 

「…………社長の年代だと思うんだけどな。ロケットペンシル」

 

と、事務所の外で呟く修也であった。

 

 

 

時刻は15:49。約束の時刻まで約10分のところまできた。

修也は割りと急ぎで歩いていた。

あの後、年代が別なのか社長の奥さんと宇田川さんの奥さん、宇田川さんに蒼崎さんに電話をしてみたら社長の奥さんと宇田川さんの奥さんは分からなかったようだ。宇田川さんと蒼崎さんはばっちり知っていた。というかその話で盛り上がった。蒼崎さん、年齢バレますよと思いながらも楽しい2人の会話に心を踊らされた。それが原因で集合時間に間に合わないとか笑えない。

 

「…………集合時刻まで後7分…。何とか間に合ったか」

 

集合場所は花咲川女子学園…から少し離れた公園。よく分からないがそこを集合場所と書類に記されていたので向かったのだが、そこには誰もいなかった。まだ集合時間ではないから来ていないのだろうと修也は考え、目に入ったベンチに座って書類を取り出し目を通し始めた。

護衛対象は白鷺千聖。俳優として有名人らしく子役時代、かなりのドラマに出演していたそうだ。

そして、加害者の黒ずくめの男。見た目は黒のコートにヘルメット。身長は180強の高身長。

特に手を出したわけでもないが、ただずっと後ろを付きまとってくるそうだ。それなら警察に連絡すれば良いと思うのだが、しないということは何か理由があるのだろう。

 

「あ、修也さーん。ちゃんと来てましたね」

 

ちらっと声の方を見ると見覚えのある灰色の制服に身を包んだ女性2人と見覚えのない制服を着た女性がいた。

 

「そりゃ、依頼だからな。普通来るだろ……」

 

彼女は社長の娘さん。神父と共同で依頼をしてきた高校2年生。隣に立っている2人も見覚えがある……というかこの資料に載っている。

片方の灰色制服が大和麻弥。元々メンバーではなく代理のドラマーだったらしい。何か色々あって正式メンバーになったらしい。

で、隣にいるのがストーカー被害者の白鷺千聖。

 

「ふふ、光溜さんと違って真面目ですね」

「瓶倉さん、真面目だろ。依頼はきっちりこなしてるし」

「そりゃこなせる依頼だけ回してるのですから」

「………………」

 

このことは聞かなかったことにしよう、と修也は思うのだった。

 

「それで?俺はこれからどうすればいい?」

「修也さんにはこれを着てもらいます」

 

娘さんから少し大きめの鞄を受け取り中身を確認する。

 

「……スーツ?」

「そう」

 

娘さん曰く、この相談を受けたのは大和麻弥からだそうだ。この頃バンドメンバーがストーカー被害を受けていると。警察とか話して大事になったら今後の活動に影響を受けかねないから最小限に治めたいと聞いてその時に娘さんが思い付いたのが修也だった。

修也にマネージャー兼護衛をしてもらって、帰り道にそのストーカーを発見したらボコってもらおうと考えたらしい。

 

「物騒な考えだな。で?神父に連絡して俺に依頼を受けるように仕向けたと」

「そういうこと。私が依頼したら絶対パパに言うでしょ?」

「………まあな。社長に言われてるし」

 

依頼内容までは話さなくていいが、誰が依頼してきたかは話さないといけない。これは会社ルールで決まっていた。

 

「すみません。何か未那ちゃんから聞いた感じ忙しそうに聞こえたんッスが、大丈夫ですか?」

「ん?確かに忙しいが……まあ、何とかなるだろ」

「じゃあ、修也さん。そこのトイレで着替えてくださいね。着終えたら事務所に移動してもらうから。では、麻弥ちゃんよろしくお願いします」

 

と言って娘さんは公園から去っていった。先程から千聖が話さないのが気になるが、後々分かるだろうと判断し、修也は鞄を持って公衆トイレに向かうのだった。




まず、謝罪から
本当に遅くなってすみません
色々と忙しくて書く暇もありませんでした
さらに風邪を引くという厄介なことに巻き込まれて…………
頭が痛いと執筆も捗りませんね
次はいつ投稿できるか分かりませんが早く上げれるよう努力します


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