契約者たちへの鎮魂歌 (渚のグレイズ)
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○○ない死にたがりの章 戸塚輪廻は契約者である

過去のネタ帳あさってたら、面白そうなネタを見つけたのでリビルドして一作品創ってみました♪

よろしければお納めください。

七月四日追記――
 あとがきの説明を少し変更しました。


僕の名は、戸塚輪廻。

何処にでもいる普通の少年・・・・・・だった。

 

西暦2015年7月30日

 

突如として人類粛正を始めた天の神は、自らの尖兵、バーテックスを降らせた。

既存の兵器群が通用しないバーテックスに、人類は成す術もなく蹂躙されていった。

 

そんな中、バーテックスに対抗できる力を持った少女たちが表れた。

 

人々はそんな彼女たちを『勇者』と呼び、称賛の声を上げた。

 

そして、僕もまた、『勇者』の力を獲得した少女たちの一人だ。

 

しかし、僕は男だ。

 

これにはちょっとした理由がある。

 

戸塚家には代々から伝わる古い本がある。

 

あの日、この本を使って僕は、男でありながら勇者の力を獲得するに至ったのだ。

 

そして、今―――

 

―――――――――――†――――――――――

 

「あれから三年・・・あ、四年だっけか?いやぁ、色々あったわさ~」

 

「何語なんだ・・・それは・・・」

 

隣に座る少女、乃木若葉が呆れ顔で突っ込みを入れる。

 

「突っ込んだら負けよ?負・け!」

 

「はぁ・・・」

 

若葉の隣、寄り添うように座る少女、上里ひなたがこれまた呆れ顔でこちらを見ている。

 

「ヘイ!そろそろ手伝いプリーズ!りっくん!」

 

遠くで鍬を振るう少女、白鳥歌野がこちらに向かって叫ぶのが見える。

 

「あいよー」

 

側に立て掛けていた鍬を持ち、畑に向かう。

 

「若葉、キミもどうかな?」

 

「うむ!では、やらせてもらおう」

 

予備の鍬を若葉に渡して、二人で歌野の元に行く。

 

畑を耕しながら、ここに至るまでの経緯を思い出していた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

故郷にて勇者の力を獲得した僕は、生き延びたみんなを護るために、その力を奮っていた。しかし、多勢に無勢。一人ではそう出来る事も限られており、絶対に護りたい、大事なたった一人の家族すらも護る事が出来ず、無力感に苛まれ、絶望に身を沈めることになった。

その後、僕と契約した、自称『悪魔』のニック(僕が付けたあだ名)に半ば引き摺られる形で諏訪へと到着。そこで歌野たちに出会い、再起するに至ったのだった。

 

およそ二年程に渡る諏訪での生活、しかし、それも長くは続かなかった。

諏訪を守護する土地神の力が弱まっていたからだ。

諏訪の巫女、藤森水都の話によると、「諏訪は、四国の勇者たちを育成するための時間稼ぎをしていた」らしい。

 

「これまで諏訪を守ってきたこと、人々から希望の光を絶やさないでいてくれたこと、いろいろ感謝されちゃった・・・」

 

静かに、笑いながら、でも、ちょっと泣きそうになりながら、みぃはそう言った。

 

「次の襲撃はこれまでとは比べ物にならないくらいの規模になるそうです。あなたは元々部外者、これは諏訪の問題だから、せめて、あなただけでも・・・」

 

「うっさい!んなモン知るか!全員で四国に逃げるぞ!」

 

神の力が通じない?

 

なら、()()()()()()()()()()()()()

 

僕は、自分の持てる力の全てを総動員して、諏訪の人々全員を四国まで無事に送り届けてみせた。もちろん、歌野とみぃも一緒だ。

 

「あなたって・・・かなりむちゃくちゃね!」

 

「でも、おかげで生きてる・・・ありがとうございます!」

 

あのときの二人の笑顔は、今も僕の心に残っている。

 

『この笑顔のために、僕は何度でも戦おう』

 

諏訪から四国に到達したその日、僕は自らの心に、そう誓ったのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

 

「皆さ~ん、お昼ご飯にしましょ~!」

 

「お、みぃが来たな」

 

「なんだ、もうそんな時間だったのか・・・」

 

「ナイスタイミングよ、みーちゃん!」

 

自転車にお弁当を載せたみぃがやってきたのを見て、三者三様の反応を見せる僕たち。

 

レジャーシートにひなたも含めた五人で座り、みぃの持ってきたお弁当に舌鼓をうつ。

 

「はぁ~、やっぱりみーちゃんのお弁当!スッゴク、デリシャス!」

 

「そんな・・・褒めすぎだよ、うたのん・・・///」

 

「完全に同意。みぃは将来、良い嫁さんになるねぇ」

 

「およっ!?およよよよよお嫁さん!?そんなまだ早いよ私たち中学生なのにああでもりっくんは高校生でいやだからって」

 

「水都さん、水都さん。落ち着いてください。深呼吸、深呼吸」

 

ひなたに促されてすーはーすーはーと、みぃが深呼吸しているのを横目に若葉が一足先に昼食を終えた。

 

「ふぅ、ごちそうさま。ありがとう水都。良い昼食だった」

 

「はひぃ・・・どういたひまひて・・・」

 

「どうした、みぃ?風邪でも引いた?」

 

真っ赤な顔でうつむくみぃの額に手を当てようとしたとき、

 

「わわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!何でもない!何でもないよりっくん!私、大丈夫だから!」

 

その手を捕まれ、寸でのところで阻まれてしまったのだった。

 

「んー、そう?なら良いんだけど・・・」

 

「え・・・えへへへ・・・」

 

なんとなく、ごまかすようにはにかんでいる感じがするが、風邪をひいているようにも見えなかったので、とりあえずお弁当の残りを掻き込む。

 

「さってと!今日も楽しく農作業!」

 

「イエス!ここを立派な畑にするわ!私たちの手で!」

 

えいえいおー!と歌野と共に勝どきを上げ、鍬を振るう。

 

側にはみぃが麦茶の水筒片手にこちらを応援してくれている。(ちなみに、もう片方の手は僕と繋ぎっぱなしなんだけど、いったい何時気づくかなぁ?)

 

諏訪にいたころから変わらない景色。今はそこに、若葉や他のみんなが混じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、今の僕の日常。

 

今度こそ護り通すと決めた、僕の大事な宝物。

 




戸塚輪廻くんについて

年齢:18歳

身長:161㎝

誕生日:8月1日


年のわりに身長が低いのがコンプレックス。
代わりに身体を鍛えている。
戸塚家に代々伝わる悪魔との契約の書を使用し、悪魔『ニック』と契約。勇者の力を獲得する。
以後、その力で自身の護りたいモノのためにバーテックスと戦う。
使用武器は、両手の甲に装着して使うカギ爪。ニックの紅蓮の炎と併用して戦う。
うどんよりそば派。
記憶力がとても良い。


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千の景色と白い夜

ぐんちゃん救済のための布石!

ちなみに小生はハッピーエンドが好きです。

ま、書けるかどうかはわかんないけどネ♪


それは、輪廻たち諏訪からの避難者が、四国に到着する少し前―――

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

千景が勇者になった、という話は瞬く間に村中に広がった。

 

『あの』郡千景が勇者として自分たちを守ってくれる・・・と。

 

人は誰もが危機に陥ればプライドなんてかなぐり捨てて自身が忌み嫌っていた者にすら媚びへつらう。

 

そういうものだってボクは知っている。

 

だから、ボクだけは変わらないようにいよう。

 

きっとそれが、今のボクに出来るあの子の為の行為なんだから・・・

 

―――――――――――†――――――――――

 

バスから下りると、目の前に一人の少年が立っていた。

 

「おかえり、千景。香川はどうだった?」

 

「枢木くん・・・」

 

昔と変わらない無邪気な笑みを浮かべて、彼―――枢木白夜は私を出迎えた。

今日、私が帰郷することを枢木くんは一体何時知ったのか、なんてことは聞くだけ無駄なので、素直に彼の問に答える。

 

「別に・・・・・・ああでも、うどんはおいしかったわ・・・」

 

「本当!?良いなぁ、ボクも食べてみたい!」

 

「あなた、うどんより美味しいものを毎日でも食べられるじゃない」

 

彼の父、枢木誠一郎は現職の総理大臣。今は権限の全てを大社に渡しているらしいから、もはや名前だけの存在なのだが。

 

「昔みたいにはいかないよ。政権すらも大社に移しちゃったから、父さん、今はほとんど無職みたいなものだし」

 

「ふぅん・・・」

 

そうこうしている間に私の実家にたどり着く。

 

「さてと、じゃあね千景。後で家にも寄ってくれると嬉しいな」

 

手を振って駆けていく枢木くんを見送って、私は久しぶりに帰宅した。

 

―――――――――――†――――――――――

 

枢木くんとの出会いは、およそ十年くらい前―――

 

両親の間に確執が生まれ始めたころ、だったか・・・

否、違う。思い出した。私が影口を言われ始めたころだ。

 

一人、村の外れにあるハナミズキの樹の根元で泣いていたら、彼の方から話かけてきたのだ。

 

「どうしたの?どこか痛いの?」

 

「べつに・・・・・・なんでもない・・・」

 

「なんでもなくないよ!『ないてる女の子には手をさしだせ』って父さんも言ってたし!」

 

「・・・・・・はぁ?」

 

真面目な顔で彼はそんなことを言ってきたのだった。

今でこそ思うが、彼は一体どんな教育を受けてきたのだろうか・・・。

その後も何かと私に付きまとう枢木くんに、私は遂に我慢が出来ず、

 

「あなたにはかんけいない!もう、どっかいって!」

 

そう言って、突っぱねてしまった。

 

「う・・・・・・」

 

少し、悲しそうな顔をした後、枢木くんは立ち去っていった。が、その直ぐ後、

 

「ねえ!」

 

懲りもせずまた来たのだった。

 

「・・・・・・なによ」

 

「これ!一緒にプレイしよっ!」

 

そう言って差し出してきたのは、携帯ゲーム機。

この時、私はゲームというものの存在を知ったのだった。

 

「なにこれ?」

 

「ゲーム!やったことない?なら教えたげる!」

 

「いや、まだやるって・・・」

 

「いよっし!今日はノーコンでクリアしちゃる!」

 

「はなしをきいて!」

 

二人の時間は瞬く間に過ぎ去っていき、いつの間にか夕方になっていた。

 

「楽しかった~!またやろうね♪ボクは枢木白夜。君の名前は?」

 

「・・・・・・・・・・郡千景」

 

「こおり・・・ちかげ・・・」

 

名前を言った瞬間、少しだけ、後悔したが、次の瞬間にはそれが杞憂であるとわかった。

 

「キレイな名前・・・・・・。ちかげ・・・だね。おぼえたよ!」

 

屈託のない笑みを私に向けて、枢木くんはそう言ってくれたのだった。 

 

「じゃあね、ちかげ。また明日、ここで」

 

「・・・・・・・・・うん・・・・・・また、ね」

 

それからというもの、私と枢木くんはよく二人で、このハナミズキの樹の根元で遊ぶようになったのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

両親の様子を見て、枢木くんの家に行く。

しかし、私はその先でとんでもないものを見てしまうのだった。

 

「なに・・・これ・・・」

 

村中から『枢木邸』と呼ばれ、敬愛されていたお屋敷は見るも無惨に変わり果ててしまっていた。

 

「(お父さんが、枢木邸に行かないほうがいいって言っていたのは、このことなの・・・?)」

 

私の記憶にあるこのお屋敷は、いつだってキレイだった。

しかし、今目の前にあるのは、たくさんの落書きと張り紙で汚された赤レンガの塀に囲まれた、ぼろぼろの幽霊屋敷。

 

「いったい、なにが・・・」

 

「あ!やっほー、千景。早速来てくれたんだね♪」

 

驚き戸惑っていると、上の方から枢木くんの声が聞こえた。・・・・・・上の方?

 

「・・・・・・・・・・・・あなた、壁の上でなにしてるの?」

 

「とび師の真似事。知ってる?とび師」

 

「知ってる」

 

確か、建設現場で足場を組む人のことを指すのだったか・・・・・・・いやそんなことより!

 

「お屋敷、どうしたのよ。ぼろぼろじゃない」

 

「色々あってね~。あらよっと」

 

持っていたモップを器用に使い、塀の上から降りてきた枢木くんは、照れたように笑いながら言った。

 

「その様子だと、あの噂は聞いてないんだね」

 

「噂って・・・?」

 

「うーん・・・とりあえずさ、中入ろう?多分、長話になるだろうし」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「父さんが、核エネルギー開発に力入れていたのは知ってる?」

 

応接室に通されて開口一番の質問。

渡された紅茶を飲みながら、それに答える。

 

「知ってる。あなたがよく話してくれたから」

 

「・・・・・・・・・バーテックスが降ってきたのは、核開発を進め過ぎたせいだって、そういう噂が流れているみたいなんだ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

「今後来るであろうエネルギー問題を解決するための一大事業だったハズなのにね~・・・」

 

「まってよ・・・・・・何も本当にそれだけが理由ってわけじゃ・・・!」

 

「核とは古来より、『熱かい悩む神の火』と呼ばれ、神にしか扱えない代物とされてきた」

 

唐突になにかを語り始めた枢木くん。

彼はいったい何を言っているの・・・?

 

「大社に務める人の中には、父さんの知り合いがいてね、なにかと『お世話』になってるんだよ。この話も、その人から教えてもらったことなんだ」

 

「なにを・・・」

 

「天の神が人類を粛正しようとしたきっかけは、『人間が神に近付こうとしたから』だそうだよ」

 

「それが・・・なに?」

 

「わからない?」

 

枢木くんが、今まで見たこともないような、うすら寒い笑みを浮かべて、可能性の話をする。

 

「神サマはどうも、人が核エネルギーを自在に操れるようになるのが気にくわないらしいよ?だって、核―――つまり『熱かい悩む神の火』を操れるのは神サマだけだからね」

 

「だからって・・・・・・だからって、枢木くんたちが悪いわけじゃない!」

 

「でも、生き残った市民の中には、それを信じている人もいる」

 

「っ!」

 

「伝聞というものは歪曲する。どこをどう聞き間違えたのかはわかんないけど、少なくとも、このあたりでは、『父さんのせいでバーテックスが人間を襲うようになった』らしいよ」

 

「・・・・・・・・・そんな」

 

ひどい話だ。

今まで散々『応援している』だの『この村の誇り』だのとたくさんの称賛の言葉をかけてきたくせに、何かあった途端にこの手のひら返し・・・!

 

「今さら気にするようなことじゃないけどね~」

 

しかし枢木くんはどこ吹く風。全く気にも止めていないみたいだった。

 

「・・・・・・・・・あなた、それで良いの?」

 

「あんな連中の言葉、耳を傾けるだけ無駄だもん。それよりもボクは千景の話が聞きたいなぁ♪」

 

「・・・・・・・・・・・・もう帰る」

 

昔と全く変わらない、その能天気さに呆れ果てた私は、枢木くんの静止も聞かずにお屋敷から出ていった。

そして、家に帰る途中、

 

「あなた・・・郡さん?」

 

かつて担任だった女性教師に声をかけられた。

 

「どうしてこんなところにいるの?みんな、あなたの家の前で待ってるのよ」

 

「え?」

 

―――――――――――†――――――――――

 

教師に促されるまま家まで戻ると、たくさんの人が家の前で待っていた。

 

「あ!勇者様だわ!」

 

一人が私に気付き、その声をきっかけに全員が私の元に集まってくる。

私を虐げてきた人々が、こぞって私にすり寄ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その裏で、枢木くんを苦しめているくせに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラスメイトが私に許しを乞う。

 

同じ口で枢木くんにひどい言葉を浴びせてきたくせに。

 

 

商店街の店主たちがぜひうちの店を利用してくれ、と両手をすり合わせ媚を売ってきた。

 

枢木くんには、態度をがらりと変えるくせに。

 

 

主婦をはじめとする数多の人々が、私をこの村の誇りだと褒めちぎる。

 

かつてそれを言ってきた枢木くんには、裏切り者だと罵るくせに。

 

 

「(ああ・・・そうか・・・)」

 

私は、納得した。

枢木くんは知っていたのだ。

人間が、こういう生き物だということを。

 

「(だから、あんな態度だった・・・)」

 

納得した瞬間、私の胸に込み上げてきたのは・・・

 

「うおっ、なにこれぇ?なんかのお祭り?」

 

その一言が聞こえた瞬間、私への称賛の声が途切れた。

声の主が誰なのか、見なくたってわかる。

 

「あ、千景~。よかったぁ、まだいたよ」

 

人混みをかき分けてやってきたのは、やはり枢木くん。

 

「ハイこれ。冷凍カツオ!勇者のみんなで食べて欲しいな♪」

 

そう言って渡してきたのは青いクーラーボックス。

多分この中にカツオがあるのだろう。

 

「・・・・・・・・・別に、無理して渡してくれなくても」

 

「いーのいーの!こっちはこっちでどーにかできるから。だから気にせず持ってって・・・」

 

その時、誰かが叫びを上げた。

 

 

 

 

 

「人殺し!」

 

 

 

 

 

、と。

 

その声を呼び水に、枢木くんを糾弾する言葉が広がっていく。

 

「・・・・・・・・・」

 

枢木くんは、それを黙って聞いているだけ。

 

「このっ・・・・・・人類の敵めぇ!」

 

ついに、というべきか、とうとう、というべきか、枢木くんに向かって石を投げつける者が現れだした。

一度投げつければ二度も三度も同じこと。終いには数人がかりで枢木くんに向かって石を投げつけだした。

 

「勇者様はこちらに!」

 

私はその前に誰かに手を引かれて、枢木くんから引き離された。

 

「(これが・・・今の枢木くんの有り様・・・)」

 

村中の人間に忌み嫌われ、蔑まれる日々。

この光景を何処かで見たことがある。

 

「(ああ、そうか・・・これは、()()()()()だ)」

 

あそこで石を投げられているのが、かつての私。

 

今、こうしてそれを傍目で見ているのが、かつての枢木くん。

 

「(なら・・・・・・私が、かつてあの場所にいた私がするべきことは・・・!)」

 

私は布袋に入れたままの大鎌の柄で、地面を叩いた。

大して大きくもない乾いた音は、それでも、群衆を黙らせるには十分だった。

 

「皆さんに・・・・・・訊きたいことがあります・・・」

 

皆の視線が集まる中、私は一つの問いを投げ掛ける。

 

「・・・・・・私は、価値のある存在ですか・・・?」

 

この問いに意味なんて無い。今、目の前で行われていたことを思えば、返ってくる答えなんて容易に想像できるからだ。

だからこれは、ほんの前降り。

私の本題は、答えの後にある。

 

私の問いに人々は怪訝な顔をして、やがて誰かが答えた。

 

「もちろん、だってあなたは勇者様なんだもの」

 

続いて似たような意味合いの言葉が、私に浴びせられる。

わかっていた。こうなることくらい。

彼らは、私というみこしを担いでいるに過ぎない。

そこはかつて、枢木くんのいた場所。

今は、私の場所。

私と枢木くんの許しの一つもなく、彼らは勝手にすげ替えた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「だったら――――――もう、枢木くんには関わらないであげて・・・!」

 

 

その一言で、場の空気が凍り付いたのが、肌で理解できた。

でも、もう言ってしまった。覆水は盆に帰らない。しかし後悔は無い。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

沈黙する人混みを無視して、枢木くんの側に行く。

 

「・・・・・・・・・千景」

 

「大丈夫、安心して。今度は私が、あなたを守るから」

 

これが、私の決意。枢木くんへの恩返し。きっと、枢木くんは快く受け取ってくれる。

だから―――

 

「ありがとう、千景」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、別にいらないかな?」

 

 

そんなあっさりと断られるなんて、思いもしなかった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

結局その日は家に泊まることなく、すぐに香川に帰った。

 

「ふざけてる・・・ふざけてるっ・・・!」

 

なんだってあそこで、あの流れで断わるのか、意味がわからない!

思い返せば、枢木くんはいつだってマイペースなんて言葉では言い表せないくらい、自由奔放だった。

 

「育てた親の顔が見てみたいわ!」

 

それなら、ニュースでも見る?という声が聞こえてきた気がして、ますます腸が煮えくりかえる。

 

「―――かげ」

 

枢木くんの性格からして、決して私のことを馬鹿にしているわけではない。それは理解している。

 

「でも、だからこそむかつく・・・!」

 

「千景」

 

いけない・・・・・・そろそろ切り替えないと・・・。

 

「おおーい、千景?」

 

高嶋さんに心配をかけさせるわけにはいかない。

でも―――

 

『別にいらないかな?』

 

「っ!!あああああああああ!!もう!!腹立たしい!!」

 

「っ・・・す・・・すまない、千景」

 

「あ・・・」

 

いつの間にか目の前に、乃木さんがなんだか少し申し訳なさそうに立っていた。

どうやら気がつかない内に丸亀城についていたようだ。

 

「連絡しようと思っていたのだが、ちょうど、帰ってくるのが見えたから・・・」

 

「・・・・・・いえ、こちらこそ、ごめんなさい。別に乃木さんに怒っていたわけではないの。だから謝らないでほしい」

 

「ン・・・・・・それなら、いいんだ」

 

「それで?一体何の用なの?」

 

「ああ、そうだ!大社から我々に、緊急の依頼が来たんだ」

 

真面目な表情を浮かべて、乃木さんは言った。

 

なんでも、この四国に向かってくる生命反応を確認したらしい。

そこで、私たち勇者がその調査に向かうことになったのだという。

 

「わかったわ・・・すぐに準備する」

 

「重ねてすまない。戻ってきたばかりなのに」

 

「気にしないで。あと、これ。知り合いからのお土産」

 

そう言って乃木さんに枢木くんからもらったクーラーボックスを渡す。

 

「うおっ!なんだこれは?中になにが・・・?とにかく、その人にはありがとうと言っておいてほしい」

 

「感謝なんて・・・するだけ無駄だと思うわ・・・」

 

「?・・・それは、どういう・・・」

 

「それじゃ、先に行くから」

 

「えっ・・・あっ・・・ちょっ・・・待ってくれ!これはどうすれば!!」

 

乃木さんの静止の声を無視して自室に荷物を置きに行く。

そのまま変身して、集合場所である大橋まで跳んで向かう。

 

「(いいわ、あなたがそういう態度を取るなら・・・!)」

 

私は決めた。勇者として大成することを。

そうしてたくさんの人から称賛されるようになれば、あの頑固者もきっと折れるはず。

 

「(そのためには、もっともっとバーテックスを狩らないと・・・!)」

 

決意を胸に、私は大橋にたどり着いた。

 

「(やってやる・・・枢木くんを助けるのは・・・私だ!)」

 

 

 

 

 

 

それが、間違いだと気付くのは、もう少し先の話―――

 




枢木白夜について

年齢:14才

身長:165㎝

第97代日本国総理大臣・枢木誠一郎の息子。
手先が器用で、特技は裁縫と掃除。
ゲームは嗜む程度に得意。
千景とは幼いころからの友達。
自他共に認めるほど、自由奔放。
麺類はそこまで好きじゃない。どっちかというとご飯派。


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諏訪と輪廻と農作業

諏訪でのお話パート1!

うたのんとの出会いのお話です。

それでは、どうぞ、お納めください



「これで・・・フィニッシュ!」

 

歌野の鞭が最後のバーテックスを打ち、今日の戦闘は終了した。

 

「や、お疲れ様だね。歌野」

 

「りっくんもお疲れ!さあ!今日もレッツ農作業!」

 

「やれやれ、歌野は疲れ知らずだねぇ」

 

諏訪に流れ着いてはや二年、もう少しで三年になる。

最初は僕を快く思っていなかった諏訪の人々も、今では軽口を言い合えるような仲になった。

歌野とみぃは成長して、かわいらしくなった。

僕はというと、あの頃となんら変わりないように思う。

特に、身長。

なんだって160超えたくらいでストップするかね。親父だって170はちゃんと超えていたぞ。じいちゃんは知らない。僕も今年で18になったというのに平均すら下回るとはどういう了見なんだ。

 

「まあまあ、私はそんなりっくんもナイスで好きよ」

 

「僕は嫌いなの。というか、心を読まないでよ」

 

「だってりっくん、フェイスに出やすいんだもの」

 

なんだそれは。顔に出やすいだろーが。

 

「うたのーん。りっくーん」

 

「あ!みーちゃん!」

 

「やっほ、みぃ。今日の襲撃も乗りきれたよ」

 

そうこう話しているうちに、みぃが僕らの下に走り寄ってきた。

歌野とみぃ、二人には言葉で表し尽くせないくらいにお世話になった。

 

「(だから、二人のこともこの諏訪も、僕が守るんだ。今度こそ・・・!)」

 

再度、決意を固めていると・・・

 

「・・・・・・オイ輪廻!」

 

「うぉっ!びっくりしたぁー・・・」

 

いきなり後ろから声をかけられた。

黒いシャツとジーンズ、赤いフード付きパーカーをラフに着こなしてるこの男の名前は『ニック』。

僕と契約した悪魔だ。

人間の姿をしているが本人いわく、「その方が都合が良い」からだとか。

 

「出たわねデビルマン!相変わらず神出鬼没なやつ・・・!」

 

「黙ってろ土女」

 

「つちっ・・・!」

 

「ハイハイ、ステイだよステイ。歌野もニックもケンカしなーいの」

 

まったく、顔を合わせればすぐこれだ・・・。

やっぱ神サマ(の加護を受けた人間)と悪魔だから水と油みたいな関係なのかな?

みぃなんか萎縮しちゃって僕の後ろに隠れてるし。

 

「で、何の用?僕はこれから歌野と一緒に畑に・・・」

 

「オマエ、いつまで此処にいるつもりだ?」

 

「!!」

 

みぃの身体が強ばったのを背中越しに感じた。

しかし、気付かないフリをして、ニックに問いかける。

 

「・・・・・・・・・どういう意味?」

 

ニックは鼻で笑って続ける。

 

「ハッ・・・分かってんだろ?此処はもう持たない」

 

「―――――」

 

「今ならまだ間に合う。とっととズラかるぞ」

 

「やだよ」

 

僕が拒絶した途端、ニックが僕の胸ぐらを掴みかかってきた。

 

「りっくん!」

 

「ニック!りっくんに何してるの!」

 

「・・・・・・・・・離してよ」

 

「断わる。このまま連れていく・・・!」

 

「だから嫌だって!」

 

ニックを振り払い、その場から走り去る。

 

「(ふざけんな・・・!僕はもう二度と・・・二度と失う訳にはいかないんだ・・・・・・!!)」

 

しばらく走ると、いつの間にか蕎麦畑が一望できる高台に来ていた。

ここは僕のお気に入りの場所の一つ。

だから、いつの間にか来てしまっていたのかもしれない。

その場に座り込み、蕎麦畑を眺めながらぽつぽつと、思いだしていた。

諏訪に来たあの日のことを―――

 

―――――――――――†――――――――――

 

故郷を滅ぼされ、すべてを失った僕は、ただ呆然と生かされていた。

 

「オイ輪廻!いい加減自分で歩け!」

 

ニックに背負われて、どこかに向かっている。

食事にしたってニック任せ。

でも、それもどうでもよかった。

ただひたすらに、何もしたくなかった。

とにかくさっさと死にたかった。

 

「なんで僕を生かしておくのさ」

 

「オマエには生きていてもらわなきゃ困るんだよ!オレがこちらに存在し続ける為に!」

 

なるほど、それは確かに僕に死んで欲しくないよね。

でも、そんなのどうでもいい。

 

「どうだって良かねェんだよ!いいから来い!」

 

「背負われてる人間に言う?あと、なんで僕の考えてることがわかるのさ」

 

「うるせぇ!何もしねェなら黙ってろ!」

 

「・・・・・・・・・」

 

そうやってニックに背負われ運ばれること数日。

僕たちはバーテックスに襲われた。

 

「チッ―――よりにもよってこんな所でか・・・!」

 

ニックが悪態をつく。その背中をどうしてか、僕は踏み台にして跳躍していた。

 

「―――――――」

 

「ッ!!オイ輪廻!」

 

両腕に僕の武器たるカギ爪付きの小手を装着し、バーテックスを切り裂いていく。

ああ、なんだって僕はこんな無駄なことをやっているのかな。

死にたかったならこんなに抵抗なんてしなければいいのに。

なんで―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでこんなに、身体中が熱いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

叫び、跳び、切り裂く。

自分のことなんてお構い無しの無茶苦茶な戦法。

今、この身体を動かしているのは、きっと、僕じゃない誰かなんだろうな・・・なんて、まるで他人事の様に考えながらも、バーテックスを惨殺していく。

 

そんなだったから、僕は背後から近づくバーテックスに気付かなかった。

 

「輪廻!後ろだ!」

 

「っ!」

 

ニックの声に振り向くが、時すでに遅し。

バーテックスの体当たりをまともに喰らい、吹き飛ばされる。

 

「ガッ!」

 

たったの一撃で僕の身体はズタズタにされた。

 

「(あ、これは死んだな・・・)」

 

やはり他人事の様に考えている。自分のことなのに。

でも、これで全部終わりにできる。

そう思って成り行きに身を任せていたら―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風を斬る音と共に目の前のバーテックスが朽ちる様に消失していった。

 

「・・・・・・なに・・・が・・・?」

 

「キミ!大丈夫?」

 

いつの間にか、鞭を持った少女が僕の目の前にしゃがみ込んでいた。

心配そうにこちらを見る彼女の瞳を見ていると、少しだけ、穏やかな気持ちになったのを今でも覚えている。

僕が少女に何か言おうとしたその時、

 

「輪廻テメェ!」

 

突如として現れたニックに頭をおもいっきり蹴飛ばされた。

 

「ごふっ」

 

「!?!?!?!?」

 

あまりのことに少女は目を白黒させて、ぽかーん、としている。

そんな彼女のことを無視して、ニックは僕の首根っこを掴んでがっくがく揺らしながら叫ぶ。

 

「死ぬなっつってんだろうが!テメェが死んだらオレがこの世に現界し続けらんねェんだよ!」

 

「あ・・・・・・ま・・・・・・ちょ・・・・・・」

 

さっきの戦闘でのダメージ+ニックに蹴飛ばされたダメージ+揺さぶりにより、大真面目に死にかける僕。

それを見かねたのか、それともようやく思考が現実に追い付いたのか、(多分、後者)少女があわててニックを止めた。

 

「ストップ!ストーップ!それ以上やったら彼、本当に死んじゃうから!」

 

「・・・・・・あ」

 

「―――――――――」

 

ちなみにこの時点で僕の意識は、ほとんど吹っ飛びかけていた。

 

「早くこっちに!安全な場所で治療しましょう!」

 

「・・・・・・チッ、一理あるな」

 

少女に導かれつつ、ニックは僕を運ぶ。

その背に揺られる僕は、今までギリギリ保っていた意識を、ようやく手放すことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、僕と歌野のファーストコンタクト。

今だから思うけど、なかなか刺激的な出会い形をしたと思う。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「りっくーん、どこにいるのー?」

 

みぃの呼び声で我に帰る。

どうも少し寝ていたみたいだ。

 

「みぃ、ここだよ」

 

「あ、りっくん。よかった、やっと見つけた」

 

とてとて、と走りながら僕の隣にやってくる。

息を整えて僕の隣に座るみぃを眺めていたら

 

「な・・・なにかな?私の顔になにかついてる?」

 

顔を赤くして、しどろもどろしてるみぃはかわいいと思う。

歌野なら多分、同意してくれるかもしれない。

 

「別に?ただ・・・二年もすれば、人ってこんなにも変わるモンなんだなぁって思ってね」

 

「???」

 

「みぃはかわいいな、って話」

 

僕がそう言うと、みぃは顔を真っ赤にして大慌て。

うん、やっぱりかわいい。

 

「かわっ!!そ・・・そんなことっ!そんなことないって!私なんか別に・・・」

 

「僕は本気だよ?」

 

「っ!―――――」

 

さらに顔を赤くしたみぃが、ふと、半眼になって僕をにらむ。

 

「りっくん、それ、うたのんにも言ってるでしょ?」

 

「あ、バレた?」

 

「むうううう!!やっぱりからかってる!りっくんのいじわる!」

 

頬を膨らませて、みぃが両手でぽかぽか叩いてくる。かわいい。

 

「あはは♪ごめんごめん。でも、僕はホントに本気だよ?」

 

「・・・・・・うたのんのことも?」

 

「とーぜん」

 

「・・・・・・・・・『二兎を追う者は一兎をも得ず』ってことわざ、知ってる?」

 

「僕の脳内辞書には無いねぇ」

 

「それ、絶対壊れてる」

 

「あれ?知らないの?」

 

おもむろに立ち上がり、みぃの方を振り返りつつ、告げる。

 

 

 

 

 

「僕はもう、ずっと前から壊れてるよ。大事なモノをなくした、あの日から・・・ね」

 

 

 

 

その時のみぃの表情は、とても、悲しそうだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

これは、諏訪が崩壊する前の記憶。

 

今の僕を形作る上で必要不可欠な、大事なモノの一つ。

 




ニックについて

CV・三浦涼介(あくまでも個人的なイメージ)

身長・176㎝

輪廻と契約した悪魔。
口が悪く、性格も少しひねくれている。
が、契約した相手にはそれなりに敬意をはらう。
悪魔は普段、別次元に存在しているが『契約の書』を使って契約した人間を通して、此方の世界に自身を投影している。
その為、契約を切られると悪魔は存在を保てなくなり、消滅してしまう。
(本体は別次元に存在しているので死ぬ訳ではない)
好物はアイス。
冬だろうとお構い無しによく食べている。


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樹海と勇者と輪廻の初陣in四国

親知らず抜いた後の違和感を抱えたまま、書いていたせいで、キング・オブ・雑推考!!

それでも笑って許してくださる優しい方々だけ、どうぞお納めください。


僕らが諏訪を出て、四国に移住してから1ヶ月くらい経った。

その間、僕はほとんど病院のベッドに縛り付けられており、歌野とみぃも参加したという勇者の慰安旅行に行くことができなかった。ちくしょうめぇぇぇ・・・・・・

そして、歌野たちが帰ってきて半月くらいした時、ついに僕ら諏訪組(というかむしろ僕)の、四国での初戦闘の日がやってきたのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「ここが樹海かぁ~・・・」

 

「こんなに木々が生い茂っていたら、下まで日光が届かないから、作物が育ちそうに無いわよね」

 

「キノコならどうかな?育ててみたいって、この前言ってたよね?」

 

「ナイスアイデアよ!と、言いたいけれど、こうも空気がカラッとしていると、さすがに無理でしょうね」

 

「テメェらこんなとこまで来て農作業の話かよ!」

 

ニックに突っ込まれたので会話を一旦やめる。

 

「ニックもこっち来れるんだ?」

 

「ハッ・・・諏訪の土地神に交渉の仲介させて、オレもこっちに入れるようにした。その方が都合がいいからな」

 

「相変わらず抜け目無いねえ」

 

さて、そろそろ真面目になろう。

 

「敵の数が、これまでの比ではありません・・・」

 

「そうなのかい?」

 

「はい・・・・・・今までの10倍以上かと・・・」

 

伊予島クンが僕の問に答える。

なるほど、()()()()で多いのか・・・

 

「確かに、この前の時よりもかなり多いわね」

 

「なんで歌野が知って・・・・・・あ、そっか。旅行前の戦いは歌野も参加したんだっけか?」

 

「ええ、あのときは杏さんの作戦勝ちだったけど・・・」

 

「そうだぞ!タマのあんずが大!活!躍!だったんだぞー!」

 

「もうっ、タマっち先輩ったら・・・」

 

やれやれ、二人の仲が良好なのは何よりだね。

 

「今回も私が先頭に立つ」

 

「あ、待ってください!若葉さ―――」

 

伊予島クンの制止も聞かずに、若葉が飛び出していった。おいおい、大丈夫かぁ?

 

「・・・ん?なんだか敵さんの動きが変じゃない?」

 

「まずいです・・・・・・若葉さんが敵に囲まれています!」

 

なるほど、突出してきた奴から叩く寸法ね。バーテックスも知恵が付いてきたじゃないの・・・・・・!

 

「なァんて!感心してる場合じゃない!」

 

急いで彼女の元へ向かおうとして、

 

「オイ輪廻!向こうだ!」

 

「えっ!?」

 

ニックの警告に、若葉の方とは別の方向を見ると、バーテックスの群れの半分が神樹様の方へ向かっていた。

 

「半分が一人を引き付けて、もう半分が本命を狙う・・・・・・なんだか連中、人間じみた作戦を練ってきてるなぁ」

 

「感心してる場合かよ!?どうする?」

 

「でも神樹様の方に向かっている連中は、いつもなら全員で相手をしている数よ!?」

 

「だからって、若葉ちゃんをほっとけないよ!」

 

「―――――」

 

こうやって、言い合いをしている合間にも、バーテックスは神樹様へ向かって刻一刻と迫っている。

 

なら、するべきことは、ただ一つ。

 

 

「歌野、事後処理は「イヤよ」ですよねー・・・」

 

「え?戸塚さん?何をする気ですか!?」

 

「ん?いやなに、別になんでもないよ、ただね・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目には目を、歯には歯を、物量には物量をってことさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「???どういう意味だ?」

 

珠子はまだ言ってる意味を理解できていないみたいだ。

他のみんなは、なんとなく理解できたみたいで、心配そうに僕を見る。

 

「戸塚くん、あなた何をするつもりなの・・・・・・?」

 

「一人でなんてだめだよ!私も行く!」

 

「大丈夫大丈夫、僕の精霊は()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・・・・てな訳で!!」

 

 

 

 

 

「いっちょやったろーじゃん!『千疋狼(せんびきおおかみ)』!!」

 

 

 

 

 

僕が降ろした精霊『千疋狼』は、本来の伝承だと、夜間に狼の群れに襲われた人間が木の上に登り、狼たちが梯子のように肩車を組んで樹上の人間を襲おうとするが後一歩で届かず、狼が自分たちの親玉の化け物を呼びつける、というもの。

しかし、ニックとの契約によって引き出したこの力は、本来の伝承を歪め、狼についての様々ないわく、本来の生態等をミックスし、『孤独な郡狼』という偶像を造りあげて、それに当てはめた。つまり、これを降ろした僕は―――

 

 

 

 

 

「千人に分身できるってわけさ!」

 

 

 

 

 

見渡せば、樹海の至るところに僕。

その数、およそ千人。

 

「ええ!分身!?輪廻くんは忍者だった!?」

 

「・・・・・・七人御先より多い!?」

 

「どっひゃ~・・・・・・・ぶっタマげたなあ!!」

 

「凄い人数・・・・・・これなら、突破できるかも?」

 

みんなが驚く中、歌野は渋い顔で僕を見ていた。

 

「もう、りっくんは・・・・・・無理だけはしないでね?」

 

「ごめんね?後で畑仕事手伝うから、ね?」

 

「・・・・・・・・・りっくんの野菜炒めも追加」

 

「あいよ。野菜の用意は任せるね」

 

それを合図に、千人の僕が一斉に飛び出す。

半分は若葉の元へ。

もう半分は神樹様の防衛へ。

 

「さて、がんばるさ」

 

―――――――――――†――――――――――

 

孤軍奮闘する若葉の元へ到着した時には、すでに彼女はボロボロだった。

 

「大丈夫かい?」

 

「輪廻・・・・・・なぜ来た?」

 

「友達を助けるのに理由がいるかい?」

 

「っ!・・・・・・すまない」

 

「謝罪はいらないよ。代わりに、後で畑仕事を手伝うくらいで許してあげやう」

 

若葉に笑って答える。

さて、この状況を打開せにゃな!

意気込み、バーテックスを掃討していく。

進化体はどこにも見当たらず、通常個体だけだったから、なおのことサクサク駆逐できていた。

『このまま押しきれる・・・!』

誰もがそう思った。

だからこそ、油断していた。

 

「避けろ!輪廻ェ!」

 

ニックの叫びで、ようやく僕らは気付いた。

 

 

 

 

 

それは言うなれば、灼熱の津波だった。

 

 

 

 

 

炎の壁が、僕らめがけて迫ってきていたのだった。

 

 

 

 

 

「な!・・・・・・いつの間に!?」

 

「避けるのは間に合わない・・・ならっ!」

 

ここで僕は分身の自分たちで若葉たちを庇った。

炎の壁はバーテックス共々僕たち全員を巻き込み、辺り一帯を焼き払ったのだった。

 

――――――――view,change:歌野――――――

 

炎が消えた後、そこに無数のりっくんはいなかった。

代わりに・・・

 

「そんな・・・あの炎は、バーテックスを燃やさないというの!?」

 

千景さんの声が聞こえる。

辺りを見れば、樹海も同じく燃やされた痕跡が見当たらない。

 

「さっきのファイア、どうやら人間だけを燃やすみたいね」

 

「そんな・・・・・・・・・そうだ、輪廻さんは!?」

 

そう、りっくんの分身が全部消えた。ということは、りっくんの精霊が解除された、ということ。

 

「・・・・・・りっくんが危ない!」

 

多分、若葉のところに本体のりっくんがいるはず。急いで向かおうとしたけど、

 

「駄目です!まだバーテックスが残って・・・!」

 

「くぅ!どいて!」

 

バーテックスは神樹様に向かおうとはせず、全部こっちに向かってくる。これは・・・

 

「私たちを足止めして、若葉とりっくんをレスキューさせないつもりね・・・・・・!そうはいかないんだからっ!」

 

迫るバーテックスを蹴散らしながら進む。

しかし、数で勝るバーテックスの群れを突破するのは、容易なことではなかった。

 

「だからって!負けてらんないのよ!」

 

後から思えば、この時の私は、少し冷静ではなかった気がする。

だから、気が付かなかった。

 

「?・・・・・・高嶋さん?」

 

もうすでに、事態が悪い方に傾いている、ということに・・・・・・

 

――――――――view,change:輪廻――――――

 

「輪廻!しっかりしてくれ!輪廻!!」

 

身体が焼けるように痛い。熱いじゃない、痛い、だ。

いやはや、火傷ってひどいものだと熱いよりも痛いって感じるんだねぇ。

先ほどの炎を、僕は分身で防いだ。それにより、分身が全部消えた。

消えるまでに分身が経験したことは、本体にフィードバックされるのが、『千疋狼』の能力の一つ。

その『経験したこと』というのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、現在僕は生きているのが奇跡みたいな大火傷を負っている。

 

「若葉・・・・・・・・・無事かい・・・・・・?」

 

開くのもやっとな口を開いて、若葉の無事を確認する。

 

「ああ・・・・・・ああ!お前のおかげで私は平気だ。だから輪廻、お前はもう休め。あとは私が・・・」

 

「・・・・・・・・・若葉」

 

これだけは言っておかなくちゃいけない。

そう思った僕は、痛みで悲鳴を上げている身体に鞭打って、若葉に告げる。

 

「ねぇ、若葉・・・・・・・・・キミ独りで・・・・・・・・・抱えちゃあ・・・・・・・・・ダメだよ・・・・・・・・・?」

 

「?輪廻、お前は何を言って」

 

「怖いことも・・・・・・苦しいこと・・・も・・・・・・・・・みんなで背負えば・・・・・・・・・重くない・・・・・・から」

 

ああ、まずい。意識が遠退く。歌野に野菜炒め作ってあげる約束、したのになぁ。

みぃなんか、めちゃくちゃ泣くだろうし、やばいなぁ。

というか、今現在進行形でヤバいのか。バーテックスに囲まれているし、若葉は僕を抱えて戦っているから、いつものように戦えない。早いとこ、僕を捨ててしまえと言おうとした、その時、

 

 

 

 

 

 

視界の端に桜色の流星が見えた。

 

 

 

 

 

ああ、うん。これなら大丈夫、かな?

しばらくすれば歌野たちも来るだろうし。

問題は、それまで僕の意識が持つかどうか。

あ、違う。持たないのはむしろ生命の方だ。

いやはや、まさかマンガにあるような「オレはもう持たない・・・」ていうの、アレを体験することになるとはなぁ。

まあ、以前とは違って今回は意味のある死だ。

それにみんなならきっと、僕の屍も乗り越えて、進んでいってくれるさ。

自己満足に満たされて、僕は意識を手放した。

 

 

 

 

 

『オイ輪廻、テメェ何やってやがる』

 

否、修正しよう。手放そうとしていた。に。

 

『前にも言ったはずだ。お前に死なれたら困るんだよ。だから――――』

 

やれやれ、今回も僕は死ねないのかい?

困ったなぁ、後でまた歌野とみぃに怒られるじゃないか。

 

『知るか。自業自得だろうが』

 

へいへい、でもまあ、みんなを悲しませるよりかは、はるかにマシか。

暖かい暗闇に意識を揺蕩わせて、僕は静かに眠りについた。

 




戸塚輪廻についてその二

得意料理は野菜炒め

むしろ野菜炒めしか作れない。

他のものを作ると、何故か暗黒物質になる。

しかし、彼の作る野菜炒めのレパートリーがかなり豊富なため、事情を知らない人々からは「料理上手」として扱われてしまう。

しかし、輪廻本人はその事を特に気にしてはいないようだ。


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炎と蘇生と“不“和雷同

(親知らず抜いた後の痛みと違和感が消えて)身体が軽い・・・こんな気持ちで執筆するの初めて・・・!

ということで前回の続き!

どうぞ、お納めください


樹海化が解けた後、輪廻と友奈は救急搬送された。

二人とも、幸い命に別状は無いとのことだが、輪廻は予断を許さない状況が続いているという。

 

「これが・・・あなたの引き起こした結果よ・・・」

 

友奈のお見舞いに来ていた千景に、そう言われた。

 

「なぜこんなことになったのか・・・あなたは分かっているの・・・?」

 

「分かっている。全て私の無策と突出が原因だ・・・」

 

「違う・・・・・・!」

 

私の答えを、千景は否定した。あなたは何も分かっていない・・・と。

 

「一番の原因は、あなたの戦う理由にあるのよ!」

 

「戦う、理由・・・?」

 

「あなたはいつもバーテックスへの復讐のために戦っている・・・・・・だから、怒りで我を忘れてしまう・・・・・・周りの人間を危険に晒しても、気付きさえしない!」

 

千景の言っていることの、意味が分からなかった。

復讐のために戦っている・・・?

怒りで我を忘れてしまう・・・?

 

「あなたにリーダーの資格なんて無い!」

 

ああ、全く持ってその通りだ。私もそう思う。

だが、それならば、私はどうすれば良い?

一体でも多くのバーテックスを殺す。それが、奴らに無惨にも殺された罪なき人々への報いだと、そう信じて戦ってきた。なのに―――

 

「(それを否定されたら、私は、いったい何のために戦えば良い・・・・・・?)」

 

答えは、見つからなかった。

 

―――――――view,change:輪廻―――――――

 

『輪廻――――起きてください、輪廻』

 

「んみぅ・・・・・・だぁれ?」

 

呼び声に応えて起きてみると、僕は炎の中に揺蕩っていた。

ああ、なるほど。ここは夢の中か。

夢の中なのに起こされるとか、矛盾してるなぁ。

 

『すみません。何分、このような場所でしか貴方にお会い出来ませんですから』

 

おや、心を読むのかい。喋らなくて済むのは楽で良いけど、ちょっと気味が悪いねえ。

 

『重ね重ね、すみません』

 

「謝ってばっかりだね、別にいいけど。ところで、キミ、誰だい?どこにいるの?」

 

『貴方の目の前に』

 

いつの間にか、目の前に黒い影がいた。人の形をしておらず、なんというか、大型犬みたいなシルエット。

何者なのかわからないけど、少なくとも敵ではないようだ。

 

『時間がありませんので、手短に伝えます』

 

ういっす。

 

『もうお気付きかと思いますが、私は貴方に力を貸している土地神です』

 

まじか。全然気付かなかった。

 

『神樹となった者たちから知らせがきました。次の戦いは、前回よりも激しいものになる、と』

 

なるほど、そいつはヤバいね。あと、さっきのスルーですか。

 

『神樹は私に貴方への更なる助力を命じました。ですが私は「OK任せて。僕たちがなんとかするさ。だから力を頂戴」・・・・・・は?』

 

「言ったろ?僕たちがなんとかするって。だから早く更なる力を頂戴よ。神樹様からも言われたんでしょ?」

 

『・・・・・・本当に、よろしいので?』

 

「護れなくて辛い思いをするのは、もう嫌なんだ。だから僕は、もっと強くならなくちゃいけない。僕のこの手が、届く範囲にいる人たちくらいは、護れるように」

 

『・・・・・・・・・分かりました。その決意に満ちた瞳、信じさせて頂きます』

 

「ありがと」

 

『では、これにて。そろそろ目覚めの時間です』

 

土地神様に言われて、身体が浮いていく感覚を味わう。

どうやら意識が覚醒していってるみたい。

あ、そうだ。

 

「ねえ?土地神様!もしかしてあなたのお名前って大―――」

 

そこまで言いかけて、僕は目覚めた。

 

―――――――view,change:歌野―――――――

 

突然だけど、私の住まいの話をしよう。

といっても、使っているのは若葉たちと同じ、丸亀城の側の寮の一室。だけど若葉たちの部屋と違って少し広い。

なぜならば。

 

私とみーちゃんとりっくんの三人でこの部屋に一緒に暮らしているからだ!

 

なんでも、大社の人が業者さんに頼んでこの部屋だけ少し大きく改装してもらったのだとか。

それを知ったりっくんが「でかくするくらいなら部屋をもう一つ増設してよォ!!」と叫んでいたけど、正直に言って一緒の部屋にしてくれてよかったと思っている。

 

りっくんは放っておくと自分のことを一切しない。

 

最近でこそ、一人でもちゃんとご飯を食べているけども、出会ったころなんかは睡眠すらもしようとしなかったほど。

そんな彼を救ったのがみーちゃんなんだけど、その辺りはまた別の機会に。

ではなんでこんな話を始めたのかというと、

 

「この部屋・・・・・・こんなに広かったのね・・・・・・」

 

今現在、この部屋に私一人でいるからだ。

 

りっくんがベッド替わりに使っているソファ(前に「三人で一緒のベッドを使おう」、と言ったら顔を真っ赤にして怒られた)に寝転がりながら、ぼーっとしていた。

りっくんは入院中、みーちゃんはどこかに買い物に行ったみたい。

こうやって、広い部屋に一人きりでいると、暗い考えが頭をよぎってしまう。

 

『なんで友奈さんみたいに、無理やりにでもりっくんを助けに行かなかったの?』

 

だってしょうがない。私一人では突破なんて無理だった。

 

『でも友奈さんは行ったわよ?』

 

あの子は強いもの。私よりも。それに、友奈さんの武器はそういうの、向いてるもの。私の武器は逆に向いてない。

 

『それも一つの理由。だけど本当は―――』

 

「うるさい――――っ!」

 

「ただいま~」

 

がチャリ、と音がして、みーちゃんが帰ってきた。

 

「って、あれ?うたのん?何してるの、こんな暗いところで」

 

パチリとみーちゃんが電気を付けてくれて、私はようやく今の時間が夕方だったことに気付いた。

 

「あら?もうこんな時間だったのね・・・・・・気付かなかったわ」

 

「・・・・・・・・・」

 

「ソーリーみーちゃん。今からお風呂、準備するから」

 

そういって、その場を立ち去ろうとした私の腕をみーちゃんが掴む。

 

「・・・みーちゃん?」

 

「・・・・・・ねえ、うたのん。無理しなくて、良いんだよ?」 

 

「っ!!・・・・・・・・・その言葉は、りっくんに言うべきだと思うわ」

 

「あはは、確かにね。でも、うたのんもだよ。最近ちょっと無理してる」

 

「・・・・・・・・・」

 

「私なんかじゃ不満かもしれないけど、話して欲しいな。うたのんのこと、支えたいから」

 

まったく、みーちゃんには敵わない。そんなにまっすぐに見つめられたら断れないよ。

私はみーちゃんと一緒にソファに座って、思いの丈を全部話した。

みーちゃんは黙って私の話を聞いてくれて、私にはそれだけでも充分だった。だけど、

 

「うたのんは間違ってないよ」

 

そう言ってみーちゃんは私を抱き締めてくれた。

 

「私だって、暗いこと考えて、落ち込んじゃうことあるもん。それに・・・・・・ちょっとだけ、嬉しい、かな」

 

「嬉しいの?」

 

「うん。だって、うたのんも、私と同じで、落ち込んじゃうことがあるんだ、っておもったら・・・・・・ね」

 

「そっかぁ・・・・・・・」

 

「そうなんだよ・・・?」

 

「みーちゃんとおそろい・・・・・・ふふっ、なんだかすてきね」

 

「そ・・・そうかなぁ?」

 

みーちゃんが照れてる。かわいい。

 

「サンクスみーちゃん!おかげで白鳥歌野、完 全 復 活!」

 

「ふふっ、やっぱりうたのんは元気いっぱいでないと」

 

「そうね!うじうじしている私なんて、私じゃないわ!」

 

まったく、りっくんがいないせいでナーバスになっていたわ。りっくんは後でペナルティね!

 

「ところでみーちゃん。こんな時間まで、何買いにいってたの?」

 

「あ、そうだった。実はね・・・」

 

どうやらみーちゃんとひなたさんが、大社本社に呼び出されたらしい。しばらく帰ってこれないのだとか。

 

「そっかぁ・・・しばらく会えないのね・・・・・・・・・じゃあ!」

 

みーちゃんをおもいっきり、ぎゅーっ!と抱き締める。

 

「わぷっ・・・苦しいよ、うたのん」

 

「会えない分のみーちゃん成分をチャージしておかないとだもの♪」

 

「もう・・・じゃあ私も・・・・・・ぎゅー」

 

「ワオ!」

 

みーちゃんもぎゅーっと抱き締めてきた。

 

「えへへ・・・うたのん成分補給だよ」

 

「うふふ・・・」

 

その後しばらく、私たちは抱き締めあっていた。

 

 




ここだけの小話―――

うたのんのメンタルが、原作よりも弱めになってるのは、りっくんが増えている、ということと・・・
その方が僕が書きやすいからです(笑)

おかげでみーちゃんも原作より強くなってしまった・・・
こっちは嬉しい誤算かな?

感想、等々お待ちしてます。


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端末と友情と機械オンチ

イロイロ詰め込み過ぎて文字数がえらいことに!

あ、若葉様復活のお話は省略させていただきました。

それと、丸亀城の戦いも省略させていただきます。

この二つ、原作とそう違いがほとんど無いので、今更書くことでもないかなぁ・・・というのと、その辺り入れたら話数が増えて増えて仕方ないので、略せるところは略させてもらいます。ごめんなさい。

というか、ぶっちゃけ書ける気がしない。

こんな僕ですが、それでも応援してくださる方々、どうぞ今後ともご贔屓に!

それでは、お納めください。



僕が目覚めたとき、目の前にみぃの顔があった。

 

「やあ、おはよう、みぃ」

 

「――――――――――――――ふぇ」

 

実に近かった。みぃの吐息が感じられるくらいに。

 

「なんだい、寝起きドッキリ的なアレかい?」

 

「り・・・・・・りりりりりりりっ・・・くん・・・?」

 

トマトみたいに顔を真っ赤にして、まったくかわいいなぁみぃは。

 

「勿体無いなぁ、身体が動けばイロイロ反撃できたのに」

 

「――――――――――――――――」

 

あれ?反応がない。フリーズしてる?困ったなぁ。

 

「みぃ?おーい、みーぃ?」

 

「――――――――――――――――きゅう」

 

僕のお腹に向かってみぃが倒れた。

みぃの頭の重さをお腹で感じる。なんというか・・・すごく・・・いいかも・・・

 

「りっくんそれ、すっごくデンジャラスな考えよ」

 

いつの間にいたのか、歌野が扉のそばに立っていた。

 

「お、歌野か。おはよう」

 

「ええ、グッモーニンりっくん。調子はいかが?」

 

「身体が動かない以外は平常運航」

 

「それはグッドね」

 

扉から離れ、ベッドの脇の椅子に座る。

 

「さて、グッドニュースとバッドニュース、どっちから聞きたいかしら」

 

「悪い方からがいいなぁ」

 

「オーケー」

 

僕が寝ている間に、みぃと上里クンは大社本社に呼ばれ、神樹様から直接、神託をもらったそうだ。

内容は僕が夢でも聞いた、『近々、バーテックスの総攻撃がある』ということ。

 

「でも、それはひなたさんが受け取った神託よ」

 

「まるでみぃは別の神託を受けたみたいな言い方だね」

 

「オフコースよ、りっくん」

 

歌野が、苦虫を噛み潰したような顔をする。

ここまで歌野の表情を苦々しくさせるとは・・・・・・

 

「内容は?」

 

「・・・・・・・・・りっくんと同じ、悪魔と契約した人間が、バーテックスサイドの仲間になったそうよ」

 

なるほど、前回のあの炎はそいつの仕業か・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・あんまり、びっくりしてないのね」

 

「人間なんて十人十色。僕らみたいに、『みんなを守りたい』って考えるやつもいれば、反対に、『人間を滅ぼしたい』って考えるやつもいるだろうからね」

 

「・・・・・・・・・もしかして、りっくんは会ったこと、あるの?そういう人に?」

 

歌野の問いには沈黙をもって、答えとした。

 

「・・・・・・・・・まあいいわ。その件は後でゆっくり話ましょ。はい、バッドニュースはこれでフィニッシュ。ネクスト、グッドニュースよ!」

 

「そういう切り替えの良さ。嫌いじゃないよ」

 

「サンクスりっくん。それで、グッドニュースなんだけど、なんと!四国以外に生存者が見つかったらしいわ!」

 

「本当に!?」

 

思わず飛び起きそうになったが、相変わらず体はまったく動かないので、ガタガタとベッドが揺れるだけだった。

 

「ええ!でもだいぶ遠いらしくって、合流はベリーハードなんだそうよ」 

 

「そっか・・・・・・」

 

でも、生存者が見つかっただけでも、今の僕たちにはグッドニュースに違いない。

 

「それと、もう一つ」

 

「え?まだあるの?」

 

「今はまだ噂に過ぎないのだけれど、本州瀬戸内海側で誰かがバーテックスと戦っているらしいわ」

 

「え?」

 

「しかも!その誰かさんは、これまたりっくんと同じ悪魔と―――いい加減長いわね。略して『契約者』って呼びましょう」

 

こうして、『契約者』の名前は誕生した。

 

「いやいや!ちょい待ち!そんなテキトーでいいの!?」

 

「こういうのは早い者勝ち、言った者勝ちなのよ!」

 

「なんてひどい」

 

「その辺りのお話は、後でみんなに伝えておくとして、今はその契約者のお話ね」

 

伝えておくのか。まあ、今はどうでもいいか。契約者の話の方が重要だ。

 

「とは言ったものの、今はまだ噂程度にしか、確認されてないのよ」

 

「それでも、わかっていることはあるでしょ?」

 

「オフコース!」

 

歌野の話をまとめると―――

①契約者の所在地は不明

②活動時間は日中と予想されている

③瀬戸大橋付近には現れず、内陸部をさ迷っているらしい

以上三点が、現状判明していることだ。

 

「・・・・・・分かってはいたけど、かなりあやふやだね」

 

「仕方ないわ。そもそも噂の存在だもの。逆にここまでわかっているだけでもエクセレントよ」

 

「そりゃそうだな」

 

その後、面会終了時間まで他愛のないおしゃべりをして、歌野たちは帰っていった。

ちなみにその間、みぃはずっとお腹の上で気絶しっぱなし。帰るときは歌野におんぶされて帰ったのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

数日後、何事もなく退院した僕を待っていたのは―――

 

「これが・・・・・・スマートフォン・・・・・・っ!」

 

僕専用に開発された変身アプリと、それがインストールされたスマホだった。

 

「これでりっくんも勇者服に着替えられるわね!」

 

「そういえば、今までそのままの格好で戦っていたんだったな・・・・・・」

 

若葉が苦笑する。僕が寝ている間にイロイロあったらしく、前よりも雰囲気が柔らかくなった気がする。

 

「なあ輪廻、さっそく変身してみてくれよ!というか、タマに見せタマえ!」

 

「タマちゃんにさんせーい!りんくんの変身、私も見てみたい!ね、ぐんちゃん♪」

 

「えっと・・・高嶋さんが、そう言うなら・・・」

 

「おっし、それじゃ・・・あ・・・・・・・・・」

 

スマホを持って変身しようとして、固まる。

 

「・・・・・・・・・輪廻さん?」

 

「―――――――――」

 

「ん?どうした輪廻?なんで変身しないんだ?」

 

「―――――――――えっと」

 

「どうしたの、りんくん?何かあった?」

 

「―――――――――えー、非常に、言い辛いことですが・・・・・・」

 

「なんだ?急に改まって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ、どうやって電気入れるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『えっ・・・・・・?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――三時間後―――――――――

 

「よ・・・・・・・・・ようやく電源はいった・・・・・・」

 

「スマホを起動させるだけで・・・三時間もかかるなんて・・・」

 

「郡クン、みなまで言わないで。自覚はしてるんだから・・・」

 

「だ・・・誰にだって苦手なことくらいあるから、大丈夫だよ!ねっ!」

 

「友奈、スマホ使えなきゃ変身できないんだよ?全然大丈夫じゃないよ・・・」

 

「うぇっ!あ、ええと―――」

 

友奈がわたわたする。言葉が見つからないなら、無理に励まそうとしなくたっていいのに・・・・・・まあ、それが友奈の良さなんだけどさ。

 

「ドンマイよりっくん。使い方さえ判ればりっくんなら平気だもの!」

 

「要は『習うより慣れろ』、ということだな」

 

「イエス!」

 

「ま、それしかない訳だしね!」

 

歌野と若葉の言葉を受け、「よっし、いっちょがんばるさ!」と気合いを入れて、スマホにむかう。

 

――――――――更に二時間後――――――――

 

「よっしゃああああああああああああ!!変身できたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「おおおお!かぁーっこいー!」

 

「ナイス根性だったわ!りっくん!」

 

称賛の言葉が響く中、僕は変身した自身の姿を観察してみる。

 

「あ、これどうぞ。手鏡ですが」

 

「お、さんきゅ」

 

上里クンから手鏡を受け取り、改めて僕の勇者服を眺めてみる。

 

全身を被う黒インナーの上に、羽織るようなイメージで纏う勇者服は、全体的に友奈のそれに近い形状をしていて、その色は上半分が黄色で下が緑。

腰や肩など、関節を保護するように装着されたパーツは白っぽい銀色。

そして、生物的でありながらどこか機械的な感じで、赤いラインがまるで血管のように勇者服全体に描かれていた。

 

「ふむふむ、基本的なところは友奈のと同じ感じかな?」

 

「そうね・・・高嶋さんの勇者服に、似てる気がする・・・」

 

郡クンのお墨付きともなれば、流用を疑うレベルで同じと見ていいだろう。(あくまで個人的な感想です)

 

「それにしても・・・・・・輪廻、お前けっこうムキムキだな」

 

突如として、タマっちクンがそんなことを言いだした。

それに呼応して伊予島クンが、

 

「確かに!何というか、『男の人』って感じだよね!」

 

なんというか、ちょっとこそばゆい。

 

「これでもっと身長があれば・・・・・・格好よかったのにね・・・」

 

「うぼあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

郡クンの容赦のない一言が、僕を傷つけた!!

 

「りっくん!!」

 

倒れる僕をみぃと歌野が支える。

 

「ぐほぅ・・・・・・嗚呼、みぃ・・・歌野・・・僕はもう・・・・・・駄目だ・・・」

 

「何言ってるの!たかが身長をディスられた程度よ!」

 

「そうだよ!こんなことで倒れるなんて、りっくんらしくないよ!」

 

「いいや・・・僕には分かる・・・自分のことだから・・・な・・・」

 

「りっくん・・・」

 

「歌野・・・みぃ・・・あとは、たのむ・・・ぞ・・・がくり」

 

「「りっくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」」

 

「あ、そうだ。輪廻さん、一つお聞きしたいことがあるのですが」

 

「ん?なんだい、上里クン」

 

「あ、起きた」

 

「・・・・・・何だったのよ、今の」

 

関西人のアレみたいなもんだから、気にするな。

 

「輪廻さん、携帯を持ったことがないのですか?」

 

「ああ、うん。そうだね。スマホなんてハイカラなモン、持ってるやつなんて一人もいなかったよ」

 

「そうなの!?」

 

「そうだよ。うちの所で電話と言ったら、『黒電話』が主流だったねぇ」

 

「くろ・・・でんわ・・・」

 

「どんな未開の地域だよ!」

 

「仕方ないね。かなり山奥の方だったし。ああ、でも山降りればちゃんと街があるし、スマホ売ってる店だってあったよ」

 

「持ってないなら・・・意味無いわよね・・・?」

 

「さっきから郡クンの一言が痛い!」

 

「あはは・・・諏訪でもスマホ使わなかったもんね」

 

「そうね。だからりっくんが機械オンチだなんて、全然知らなかったわ」

 

「使わないでいいならそれでいいし、ね」

 

「パソコンはどうなんだ?」

 

「触れたことすらありませーん」

 

「機械オンチというより、知らないだけ、のような気がしますね」

 

その後も、ワイワイと雑談に興じる僕たち。

漂う空気は仲の良い友人グループのよう。

以前はそこに、しこりのような、まだまだ溶けきれてない、わだかまりを感じていた。

 

今は違う。

 

僕らはきちんと、打ち解けあえた。

これならきっと、次の襲来も乗りきれる。

僕はそう、信じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、後に『丸亀城の戦い』と呼ばれ、後世に語り継がれることになる大戦の、少し前のお話。

 




戸塚輪廻について③

低身長がコンプレックスである彼は、それを補うために幼い頃から身体を鍛えている。

そのおかげか、今では現役アスリートもかくやという、素晴らしい肉体を獲得するに至った。

ちなみに、寝ている輪廻のお腹を枕にして寝るのが、歌野の密かな楽しみ。

「低反発枕みたいでベリーグッド!」とは歌野談


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何故、彼はアイスを愛すのか

ニックの謎に迫る(?)回

前回の前書きにて、『丸亀城の戦い』は書かないと言ったな。

アレは嘘だ。(ウワァァァァァァァァ······)

ネタを思いついたので、がんばって書くことにしました。

とりあえず今回分をどうぞ、お納めください。


ある日の授業中、いつも通りに睡眠学習をきめこんでいたら、謎の電子音に叩き起こされた。

 

「っ!?・・・???」

 

周囲を見回すと、教師を含め全員がなんでか僕の方を見ていた。

 

「え?・・・・・・何?え??え???」

 

「りっくん」

 

なにがなんだか分からず狼狽していると、左隣の席のみぃが教えてくれた。

 

「鳴ってるの、りっくんのスマホだよ」

 

「え!?・・・・・・ぅお、マジだ。さんきゅ、みぃ」

 

みぃにお礼を言って、教師に一言謝罪して教室を出る。

 

「おーい輪廻ー。ちゃんと電話でられるかー?」

 

「できらあ!」

 

教室を出る直前、タマっちクンがからかってきたけど元気よくガッツポーズして答えた。

廊下に出てスマホを見る。んで、誰からなんだ?

 

「・・・・・・・・・え?誰の番号?」

 

知らない番号だった。歌野たちの番号は全部入力済みなので、少なくともみんなではない。(もっとも、全員今授業中だからこんなこと出来るわけがない)

 

「とりあえずでてみるか・・・」

 

えっと・・・たしか・・・ここを、こう!

 

「よし!はいもしもs」

 

 

 

 

 

『輪廻テメエ!いつまで待たせやがる!!』

 

 

 

 

 

いきなりの大声で耳がキーン、てなった。

いや、というか・・・

 

「なんでニックが電話かけてくるの?」

 

『んなこたァどうでもいいからさっさと来い!』

 

ブツンッと勢いよくきられた。

 

「・・・・・・・・・・・・来いってどこに?」

 

―――――――view,change:side―――――――

 

輪廻が教師に早退する旨を伝え、足早に去っていった後、歌野は

 

「(あのデビル・・・・・・いつか畑の肥やしにしてやる・・・・・・)」

 

物騒なことを考えていた。

それと並んで水都は

 

「(りっくん・・・・・・またあの悪魔に振り回されてる・・・・・・)」

 

輪廻の心配をしていた。

と、その時授業終了の鐘が鳴り、教師が挨拶して去っていった。

 

「輪廻のやつ・・・・・・なんの用事だろうな?」

 

「さあ?でも、あのニックっていう悪魔に呼ばれたみたいだよ?」

 

授業が終わるや否や、珠子と杏が話し合う。

そこに乗り掛かるようにして友奈が叫ぶ。

 

「きっと人助けだよ!ニックさんって悪魔だけど実はいい人なんだよ!」

 

「高嶋さん・・・・・・あいつになにかされたの・・・・・・?」

 

友奈の発言を受けて、千景が問う。すると、

 

「この前ゴリゴリ君もらったんだー♪」

 

「・・・・・・・・・は?」

 

友奈のこの発言に、千景は困惑した。

何故ゴリゴリ君なのか、そもそも何故持っていたのか、いやそれ以前に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

訊きたいことがたくさんありすぎて、さしもの千景もフリーズしていた。

 

「ゴリゴリ君?こーんな時期によく食えるなぁ・・・」

 

珠子が感心していると、ひなたが

 

「そういえば輪廻さんが、『ニックのやつ、アイス好きでさぁ。春夏秋冬いつでもどこでも食べているんだよ』と言ってましたね」

 

「そうなのか・・・・・・・・・余程身体が丈夫と見える!」

 

「そういうことじゃないと思うわ・・・」

 

若葉の何処かズレた考えに突っ込む千景。

その時、なにか考え込んでいた歌野が

 

「よし!みーちゃん、りっくんをチェイスするわよ!」

 

「いきなり何を言い出すの、うたのん!?」

 

唐突にアブないことを言い出した。

 

「考えてもみてよ!このままだと、りっくんはあのデビルの言いなりよ!?そしたらきっと、最後には私たちから離れていってしまうのだわ!!」

 

「ッ!!」

 

「いや・・・流石にそれは、考え過ぎなのでは?」

 

若葉がやんわりと止めようとするが、火の付いた歌野は止まらない。

 

「みーちゃん!今ならまだりっくんをレスキューできるわ・・・・・・私たちが、あのデビルから、りっくんを守るの!!」

 

「わ・・・私たち、が・・・・・・でも・・・そんなの・・・」

 

「これは私とみーちゃんにしかできないミッションよ・・・・・・二人で、がんばりましょう!!」

 

「うたのん・・・・・・うんっ、私、がんばってみる!」

 

「それでこそみーちゃん!一緒に守りましょう!りっくんを!!」

 

ひしっと水都に抱き付く。

 

「うたのんっ!」

 

水都も負けじと抱きしめ返す。

 

「これが・・・・・・愛のちから・・・・・・!!」

 

「うむ・・・!なんだかよく分からないが、素晴らしいぞ!二人とも!」

 

「ふたりとも、りんくんのことが大好きなんだねー♪」

 

目を輝かせる杏と、よくわかっていない若葉と、呑気に感想を述べる友奈を除いた三人が、額を寄せ合いひそひそと話し合う。

 

「どうする?あれ」

 

「このままは流石に不味いと思いますが・・・」

 

「そうね・・・・・・でも、良い機会なんじゃないかしら・・・・・・」

 

「良い機会・・・とは?」

 

「あの『悪魔』を名乗ってるあいつについて・・・・・・なにか掴めるかも・・・・・・」

 

「なるほど・・・普段の私生活すら謎に包まれている彼ですからね。では、歌野さんたちに協力する、ということで?」

 

「タマはもうなんでもいいぞ。むづかしくて付いていけん」

 

「なら・・・・・・決まりね・・・・・・」

 

その後、三人は歌野に協力する旨を伝え、それを見た杏たちも便乗し、結果、全員で輪廻の尾行をすることになったのだった。

 

「・・・・・・思ったのだけど・・・・・・尾行するには、人数、多すぎじゃない?」

 

「ま・・・まあ、そこは、なせば大抵なんとかなる・・・ということで・・・」

 

「ならないと思うわ・・・・・・」

 

「ですよね・・・」

 

やれやれ、と肩をすくめる千景とひなたであった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

さて、その件の輪廻だが―――

彼は坂出市に来ていた。

 

「ここか―――」

 

正確には、坂出市内の総合ショッピングモール『イネス』内、一階フードコートエリアにいた。

 

「さて、反応はこの辺だけど・・・」

 

 

 

 

 

「遅ェぞ輪廻ェ!!」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・はい、見ーつけた」

 

周囲への迷惑を考えない大声。それに導かれてたどり着いた先に、果たして、ニックはいた。

 

「んー?・・・・・・こっち・・・も・・・?それとも・・・こってぃも?なんて読むの、これ?」

 

「店の名前なんざどうでもいいんだよ。オイ輪廻」

 

「はいはい、お金ならここにありますよー」

 

輪廻がニックに財布をまるごと渡す。

受け取るや否や、ニックはアイスクリーム屋のアイスを片っ端から注文していくのだった。

 

「・・・・・・まあ、どうせ使い道なんてなかったからいいんだけどさ・・・」

 

ふと、後ろを振り返る。

視線の先の柱の影に、見覚えのある・・・なんて言葉がなまっちょろく思える程見知ったメンバーが、そこからこちらを伺っていた。

 

すなわち、歌野たちである。

 

「(バレてるの・・・・・・わかってなさそうだなぁ~。どうしよう・・・・・・)」

 

一方、歌野たち―――

 

「・・・・・・戸塚くん、気付いているわね」

 

「気付いてますね・・・すごく戸惑っているみたいです」

 

(今のところは)まともな思考の持ち主である、千景とひなたが渋い顔をして他の全員を見ていた。

 

「うたのんうたのん、どうしよう・・・りっくんのお財布、ニックに獲られちゃった・・・」

 

「ぐぬぬ・・・忌々しいデビルマンね!アイスが食べたいなら自分で払いなさいよ!!」

 

歌野と水都は輪廻たちの様子を、

 

「ふわぁぁぁ!!三角関係!三角関係だよ!タマっち先輩!変則だけど、それがまた素敵だよぉぉぉ!!」

 

そんな彼女たちを眺めて興奮する杏と、

 

「あんずが壊れた・・・」

 

「しかし、あの『ニック』という悪魔・・・何が目的でアイスを・・・」

 

「アイスが好きなんだよ、きっと!なんだかわたしも食べたくなってきちゃった~」

 

杏を見て若干引いてる珠子と、ニックについて考察している若葉、そんな彼女にピュアな答えを提示する友奈。

 

 

 

 

 

正直に言おう。

 

端から見れば只の変人集団である。

 

 

 

 

 

実際、彼女たちを見た男性客の一人が、顔をひきつらせて去っていったり、子供連れの女性客が不思議がる子供の手を引いて足早に立ち去っていっていた。

と、その時

 

「あ、りんくんからメールだ」

 

「む・・・私にもきたぞ?」

 

「どうやら、全員に送ったみたいですね」

 

とうとうしびれを切らしたのか、輪廻は隠れている(と、本人たちはそう思っている)みんなに対して一声かけることにしたようだ。

 

「りっくんが、私たちにもアイス奢ってくれるって」

 

「タマはチョコ味ー!!」

 

「わたしイチゴが良いー!!」

 

「な!二人とも!待て!」

 

「行ってしまいましたね・・・どうしますか?若葉ちゃん」

 

「はぁ・・・・・・仕方ない、行くか」

 

あっさりと飛び出していった珠子と友奈を追いかけて、全員が輪廻のもとに集うことになった。

 

―――――――view,change:輪廻―――――――

 

ニックに呼ばれてイネスに来たらアイス奢らされるわ、後から尾行してきた歌野たちにも奢ることになるわ、で、僕の財布はすっかりやせ細ってしまった。

まあ、特に買いたい物とか無いからいいんだけどね。

 

「でも、ここのアイス・・・・・・ジェラート?ラインナップがありきたり過ぎるよねー」

 

「輪廻テメェ、いい加減オレにゲテモノ食わせるの止めろ!!」

 

「この前の『ゴリゴリ君信玄餅風味』は良い反応見れて愉しかったなぁ・・・」

 

「お前・・・食べたのか・・・あの信玄餅風味を・・・!」

 

若葉がニックのことを見る。その瞳は驚愕と『こいつ無いわー』の色に染まっていた。

・・・どんな色だ?

 

「食わされたんだ!!自分から食ったワケじゃねえ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・へぇ」

 

郡クンの氷点下の視線がニックを射抜く。

完璧に信じてませんねぇ(笑)

 

「そこまでひどいんですか?その・・・信玄餅風味って?」

 

「伊予島クン、食べたこと、ないの?」

 

「あれは酷かった。中に入ってた餅さえ無ければ最高だったのに、あれが全部台無しにしてくれた・・・」

 

なぜか若葉が味のレビューを語ってくれた。もしかしなくても食べたことがありますね、コレは。

 

「他にはどんなの食べたことあるの?」

 

友奈がニックにそんなことを聞く。いくら友奈でも、ニックが相手じゃ―――

 

「ナポリタン味にコーンポタージュ、カスタードプリンはまだマシだった。一番思い出したくもねェのは、手羽先味だな」

 

ニックのやつ、ここ最近僕があげたゴリゴリ君を全部答えやがった!どういうことなの・・・!?

 

「へえ、ニックさんはいろんなアイスを食べたことがあるんだねー♪」

 

「・・・・・・・・・まぁな」

 

ほ・・・・・・絆されているっ・・・!

高嶋友奈・・・恐ろしい子っ・・・!

 

「はいっみーちゃん、あーん」

 

「あーん・・・うん、おいしい。うたのんのは・・・何だっけ?」

 

「ミックスキャロット味よ!というわけで!みーちゃんのもプリーズ!」パックン

 

「ふぇ!!」

 

向こうは向こうで食べさせ合いっこ(?)してる。

 

 

 

 

・・・・・・・・・うん。最高。

 

「そういえば、りっくんは食べてないのね」

 

「も、もしかして・・・・・・」

 

僕がアイスを食べてないのに歌野が気付いて、それを受けてみぃが申し訳なさそうな顔をする。こっちのことなんて、気にしなくてもいいのに。

 

「お金ならまだあるよ。ギリギリだけどね・・・食べないのは単純に、寒いのが嫌いだからだよ」

 

「あら、それならいいアイディアがあるわ!」

 

言うや否や、歌野がぎゅーっと僕に抱きついてきた。

 

「にゃっ!?!?!?!?」

 

「あら、キュートな声ね♪」

 

ぎゅー。と歌野が更に密着してくる。やばい。何がやばいって、歌野の匂いがすんごい。土の匂いにまじって女の子特有の『なんかいいかおり』がするからほんとやばい。

 

「ほら、みーちゃんも!」

 

「ええ!?私も?」

 

「まって歌野今はダメ今みぃに抱きつかれたら」

 

「えっと、じゃあ、失礼しまーす」

 

ぎゅー。

 

「!!!!!!!!!!!」

 

「ほわぁぁぁぁぁぁ・・・・・・輪廻さん、顔真っ赤です!!」

 

「あらまあ、輪廻さんは案外純情な方なんですね♪」

 

あわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわ

 

「・・・・・・なんか、輪廻のやつ。様子がおかしくないか?」

 

「フリーズしてやがるな」

 

「どういうことなの?ニックさん」

 

「輪廻のヤツは鼻が良いからな。大方、二人の匂いに挟まれて頭の奥がショートしてるんだろ」

 

「・・・・・・・・・・・・戸塚くんって、意外と弱点が多いのね」

 

「りっくんはそこがキュートなのよ♪」

 

「・・・・・・えっと・・・ねぇ、うたのん。これって、いつまでやるの?」

 

「え?」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、次の日の朝になるまで二人に挟まれたままだった。




後日談―――

「ニックさんはどうしてそんなにアイスが好きなの?」

「あ?ああ・・・コイツはオレの体質の問題だな」

「体質?」

「そうだ」

「へぇ~、そうなんだ~」

「・・・・・・・・・詳しく聞かないのか?」

「へ?なんで?」

「・・・・・・・・・・・・いや、いい・・・・・・食うか?ゴリゴリ君」

「良いの?じゃあ、遠慮なく♪」









「ニックのやつ・・・・・・友奈にすごく甘くなってる・・・・・・!!」


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輪廻と水都と心の病

諏訪でのお話、パート2!

りっくんとみーちゃんのなれそめ物語。

どうぞ、お納めください


うたのんが連れてきた彼は、諏訪に来てから今日までの二週間、与えられた部屋から一歩も出ずにいた。

 

「・・・・・・・・・」

 

「あら?どうしたの、みーちゃん」

 

「あ・・・・・・うたのん・・・」

 

彼の部屋の前で固まっていたら、うたのんに呼び掛けられた。

 

「もしかして、彼に用事?」

 

「・・・・・・んと、そういうのじゃないんだけど・・・・・・そういううたのんは?」

 

「私の用事はこれ!」

 

そういって掲げたのはクワ。どうやら農作業のお誘いに来たみたい。

 

「・・・・・・・・・出てくるかな?」

 

「無理矢理でも出させてみせるわ!」

 

「無理矢理はちょっと・・・・・・」

 

「ハロー!気分はどう?ちょっと失礼するわ!」

 

うたのんはドアをノックして部屋に入っていった。

しばらくして―――

 

「ダメだったわ・・・・・・」

 

「お・・・お疲れうたのん・・・」

 

見るからにしょんぼりしたうたのんだけが部屋から出てきた。これで通算十一敗目。

 

「・・・・・・うたのん」

 

「バぁぁぁぁぁぁぁぁット!私は諦めないわ!今日はおとなしく引き下がるけど、明日こそは引きずりだしてやるんだから!!」

 

「うたのんセリフが悪役っぽいよ・・・」

 

そのままうたのんは畑へと向かっていった。

その背中を見送りながら、彼に初めて会ったときのことを思い返す。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「ハロー!調子はどう?」

 

うたのんが部屋に入っていく。私はその後ろに、隠れるようにしてついてく。

 

「・・・・・・・・・ん、とりあえず、ありがと」

 

「大丈夫なのね。なによりだわ。お礼とかはいいから!当然のことをしたまでなのでっ!」

 

「―――――――」

 

彼はぼーっとうたのんを――――違う、()()()()()()()()()()()

 

「―――――――そこにいるの、だぁれ?」

 

「っ!!」

 

「あら?人の気配に敏感なの?ほらみーちゃん、出てきて挨拶しましょ♪」

 

「う・・・・・・うん」

 

うたのんに引っ張り出されて前にでる。

 

「えと・・・藤森水都、で・・・す・・・?」

 

「?どうかした・・・の・・・」

 

「―――――――――――――――――ぁんで

 

わたしの姿を見た瞬間、彼の様子は一変した。

顔を真っ青にして、ガタガタと体を震わせて、まるで、恐ろしいものを見たみたいに、はっきりと怯えていた。

 

「え?・・・えと・・・あの、大丈――」

 

「ひっ」

 

近付こうとしたわたしに反応して、彼は後退った。そのまま壁までさがって、なにかうわごとのように呟く。

 

「――――りえないそんなわけ―――ってあのとき―――でもそれ――――――だれたにんのそら―?―としても―――

 

「だ・・・大丈夫ですか?どうかしましたか?」

 

「こないでっ!!」

 

絞りだすような、それでいて、はっきりとした拒絶。

涙を両目いっぱいにためながら、彼はわたしをにらんで言う。

 

「なんだよ・・・なんなんだよ!あんた!」

 

「ひっ」

 

「くるなよ・・・くるんじゃないよっ!なんだって・・・こんなところまで・・・もうやだ・・・やだよぉ・・・」

 

この時、わたしが怯んだりしなければ、こんなことにはならなかったのかな?

だって、あの時の彼、怖がっていた。

わたしを通して、誰かを見て、それに怯えていた。

このあと彼は、うたのんが呼んだお医者さんが来るまで、そのまま部屋の隅で膝を抱えて震え続けてた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

それから、しばらく経って今、わたしは彼の部屋の前にいる。

 

「・・・・・・今日こそは、ちゃんと話さないと」

 

意を決してドアをノックしようとしたとき、

 

 

がっしゃぁぁぁぁぁぁん!!

 

 

部屋から、ガラスが割れる音が聞こえた。

 

「な・・・何?――――まさかっ!?」

 

嫌な予感のしたわたしは、急いでドアを開けて中に入る。

予感は半分的中。

彼は洗面所の鏡を素手で壊して、そのまま鏡のあった壁をなにか呟きながら殴り続けていた。

 

「死ね―――死ね―――死ね―――死ね―――死ね―――死ね―――」

 

「―――――っ」

 

明らかに異常だった。

まるで狂ったみたいに壁を殴り続けている。

ん?()()()()()()・・・?

そこでわたしは、あのとき彼を診たお医者さんが言っていたことを思い出した。

 

 

 

 

 

『彼は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

うたのんの話だと、諏訪に来たばかりのころはそんな様子は見られなかった、とのこと。なら、原因は一つ。

 

わたしだ。

 

わたしが彼の心の傷に触れてしまったから、こんなことになった。

だったら、どうする?

 

「(そんなの・・・決まってる・・・!)」

 

いまだに壁を殴り続ける彼の左手をとり、話しかける。

 

「だ・・・ダメだよ。それ以上やったら、手がダメになっちゃう・・・」

 

わたしの言葉に、彼は壁を殴る手を止めた。でも、

 

「―――――――――――――――さい」

 

「―――――!」

 

いつの間に装備したのか、右手にカギ爪付きの手甲を着けて、その切っ先をわたしに向けた。

 

 

 

「――――――――――――じゃま、しないで」

 

 

 

正直に言って、すごく、怖かった。でもそれ以上に、

 

わたしは、この人を助けたいって、思っていた。

 

「――――大丈夫、ここには、あなたを傷つける人なんて、いないから。だから、安心して・・・ね?」

 

なだめるみたいに、彼の手を両手で包む。

 

「――――――――――違う」

 

「え?」

 

震える声で、彼は言った。

 

「―――――――違うんだ・・・怖いんじゃない・・・()()()()()()・・・!!」

 

「――――――――――――どういう、こと?」

 

―――――――――――†――――――――――

 

それからわたしは、彼―――輪廻さんの話を聞いた。

悪魔と契約して、故郷を守っていたけど、一年もせずに壊滅。たった一人の家族すらも守れなかった・・・と。

 

「そんな僕に・・・・・・生きる資格は・・・・・・無い。だから、化け物と戦って・・・・・・死ねれば・・・よかった・・・なのに・・・」

 

そんなとき、うたのんが輪廻さんを助けて、そして、わたしと会った。

 

「――――もしかして、わたし、その、あなたの家族に・・・?」

 

輪廻さんはこくり、とうなずく。

 

「責められてる・・・気がした・・・・・・『なんで、まだ生きているんだ』・・・・・・って」

 

「―――――――」

 

「その後も、何度も夢に見た。はっきりと、責められている夢」

 

「声も、聞こえてきた。『なんで助けてくれなかった』『お前のせいだ』『お前が殺した』って」

 

「気がつくと、鏡の前にいた。疲れきった顔が、あった。そのくせ、()()()()()()()()()()()()()()

 

「―――――それが、許せなかった?」

 

いまだ繋いだままの彼の手が強ばった。

 

「だって―――そうでしょ?だれも救えなかった。みんな死んだ!命に代えても守るって約束したのに!巫女都(ミコト)も助けられなかった!!」

 

巫女都さん―――と、いうらしい。話を聞くに、妹さんなのかもしれない。

 

「こんなやつが、なんでまだ生きたがってる!?そんなの!!許せるわけがない!!!」

 

「なら!わたしが許すよ!!」

 

「―――――――――――――え」

 

言ってからすごく恥ずかしくなってきた。でももう言っちゃった。だから、後には引けない。もとより、引くつもりもない。

 

だって、このままじゃ、可哀想だ。

 

輪廻さんも、巫女都さんも、輪廻さんに守ってもらった人たちも。

 

「輪廻さん、これは、わたしの想像だよ。多分、みんなはあなたを恨んだりしてない。あなたが、勝手にそう思い込んでいるだけ。だから」

 

「それは―――分かってる。でもだからこそ!僕は自分が許せない!!」

 

「うん。それで、いいと思う」

 

「―――――――――――――え?」

 

わたしは、笑って輪廻さんに伝える。

 

「輪廻さんは、責任感が強すぎるんだよ。だから、自分を責め過ぎちゃう。そんなあなたには『自分を責めないで』なんて、無責任なこと言えないよ。でも、『死にたい』て思うくらい責める必要なんて、ないんだよ」

 

「―――――――――――――でも、ぼくは、守るために、生きて、きて、守るものがない、僕には、価値なんて、なくて」

 

なんとなく、わかった気がする。

わたしと今の輪廻さんには、共通していることがある。

ずばり、『自分に価値を見出だせない』

でも輪廻さんはまだ良い方だ。

わたしと違って、『自分の価値』を見出だせた。

なら、わたしがするべきは――――

 

 

 

 

 

「なら、輪廻さん。うたのんたちを・・・この諏訪を守って」

 

 

 

 

 

「!!」

 

「輪廻さんも知ってると思うけど、今、諏訪を守っているのはうたのん一人だけ。でも、輪廻さんも一緒に戦ってくれるなら、希望が持てるから・・・だから・・・」

 

輪廻さんは、じっ・・・とわたしを見つめて、それから―――わたしを抱き締めた。

 

「ふぇ!?え?ちょっ」

 

「―――――――――――ありがと」

 

「!――――――――」

 

恥ずかしかったけど、わたしも輪廻さんを抱き締め返した。

どうか、輪廻さんの心の傷が癒えるころには、世界に平和が戻ってますように、そう祈りながら。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「―――――――名前」

 

「え?」

 

「―――そういえば、聞くの忘れてたって・・・思って」

 

恥ずかしそうに顔を伏せる輪廻さんがちょっとかわいいと思いながら、名前を教える。

 

「水都だよ。藤森水都」

 

「ふぅ・・・ん。名前の響きまで巫女都にそっくり」

 

「そうかなぁ?『巫女都』って名前の方が、良い響きだよ?」

 

「そうかぁ?」

 

「そうだよ」

 

ほとんど同時に、二人で笑った。

輪廻さんの笑った顔は、無邪気な子供みたいで、やっぱり、かわいいと思ってしまった。・・・失礼、かな?

と、その時だった。

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・

 

「何の音!?」

 

「サイレン・・・バーテックスが来たっ!!」

 

「そういうこと・・・っ!」

 

サイレンの意味を知るや否や、部屋を飛び出そうとして―――

 

「おっと、ねえ!みぃ!」

 

「――――――――――え?わたし?」

 

「うん。『水都』だから、『みぃ』ね。猫っぽくて良いでしょ?」

 

「えと、輪廻さんが良いな「それと!」ふぁい!?」

 

「僕のことは『りっくん』と呼んで欲しいな」

 

「りっくん・・・?」

 

「親しい人はみんなそう呼ぶ。じゃ、行ってくる!」

 

ダッシュで行ってしまった輪廻さん――――りっくんを見送って、少し思う。

 

「(本当に、これで、よかったのかな・・・?)」

 

もっと別のやり方があったのかもしれない。

でも、わたしにはこれしか方法がなかった。

 

「(―――自分が、嫌になるなぁ)」

 

りっくんが増えたところで、平和が戻るよりも先に諏訪が墜ちるのが早いだろう。

それを分かっていて、りっくんに守って欲しいと言った。

つまるところ、りっくんを利用したのだ。

 

「(いつか、その時が来たら、りっくんだけでも・・・)」

 

そう、心に決めた。

なのに―――

 

―――――――――――†――――――――――

 

「(まさか、こんなことになるなんて――――っ!)」

 

「ん、どぉしたの?みぃ」

 

「な・・・・・・なんでもないでひゅ」

 

今、わたしはりっくんのお腹枕を堪能している。

りっくんがニックさんやわたしたちにジェラートを奢ってから、少ししたある日、りっくんが

 

「歌野ってさ、僕のお腹、枕にして寝るのが好きみたいなんよ」

 

「へぇー」

 

「みぃも、試す?」

 

「へぇー・・・・・・・・・・・・え?」

 

結局、ベッドに横たわるりっくんの誘惑に耐えきれず、こんなことになってる。

 

「―――――――――――ぅう」

 

「ん?寝づらい?」

 

「いいえ!全然!ぐっすり眠れそうです!」

 

「よかった~」

 

「(わたしは全然よくない~!)」

 

りっくんの匂いと体温を感じながら、呼吸と一緒に上下する少し硬い筋肉に頭を乗せる、これだけでも顔から火が出そうなのに、りっくんがわたしの頭を優しく撫でてくるから、もう、恥ずかしくて死にそう。

 

「みぃ、ありがとな」

 

「・・・・・・・・・え」

 

「僕に生きる理由を与えてくれたこと。今でも、感謝してる」

 

「・・・・・・・・・・・・それは」

 

素直に喜べない。だって、わたしは―――

 

「分かってる。みぃが僕を利用しようとしてたの」

 

「っ!そんな、気付いて・・・!」

 

あわてて起き上がろうとしたわたしを優しく押さえつけて、りっくんは話を続ける。

 

「それでも、みぃは最後には生かそうとしてくれたし、僕としてはこれ以上ないくらい感謝しかしてないから、みぃはもう、僕に縛られなくても、いいんだよ?」

 

「―――――わたし、は」

 

「みぃ」

 

優しくわたしの名前を呼んで、りっくんはわたしを抱き寄せた。あのときみたいに。

 

「もし、みぃが罪を感じているなら・・・僕に守らせて?」

 

「――――――わたしを?」

 

「そう」

 

弱みにつけこむみたいなその告白に、なぜだかわたしの心は高鳴っていた。だから―――

 

「――――――うん。わかった」

 

その告白に、OKしてしまった。

 

「――――――――――よかった。断られたら、どうしようかと思ってた」

 

「そうなんだ。なんか、ちょっと意外」

 

「これでも僕は臆病なんだよ?」

 

「知ってる」

 

あのときと同じように、二人で笑う。

 

いつか、遠い未来でも、こうやって笑い合えたらいいな、なんて虫のいいことを思いながら。

 




共依存って・・・良いよね・・・・・・


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円陣と死闘と超越者 前編

ゆゆゆとは一切関係が無い話ですが、『いぬやしき』が実写映画でロードショーされてるそうですね。
しかもメインキャストに野上良太郎くんでお馴染みの佐藤健さんが起用されたと!
今地味に流行(?)している、過去のライダー俳優起用、今後もなにか意外な作品で行われるかも!?


そんな訳で、丸亀城の戦い!開幕!

どうぞ、お納めください。


「この前よりも数が多いな・・・」

 

「そうだねぇ・・・」

 

若葉の言葉に同意する。迫りくるバーテックスの群れは前回よりも多く、()()()()()()()()()()()()と見た。

 

「若葉ちゃん!りんくん!眉間にシワがよってるよ!そんな怖い顔しなくても大丈夫。わたしたちは絶対勝てるから!」

 

「・・・ああ、そうだな」

 

「・・・・・・・・・・・・眉間にシワ、よってた?」

 

「イエス、よってたわよ。りっくんも緊張すること、あるのねえ」

 

歌野に眉間をぐりぐりされる。ぬおお、ちょっと痛い。あ、でも気持ちいいかも・・・

 

「そうだ!みんな、アレやろう!」

 

「・・・・・・アレ?」

 

「ほら、サッカー部の人とかが大会とかでやる、みんなで固まって『えいえいおー!』ってやるアレ」

 

友奈が轆轤(ろくろ)を回しながら説明するが、僕と若葉は首を捻るばかり。

 

「もしかして円陣、ですか?」

 

「そう!それ!」

 

「ワンダフル!いいわねそれ、乗るわ!」

 

「高嶋さんがやりたいって言うなら・・・」

 

「タマも大賛成だぞ!」

 

「成る程、皆の心を一つにするには良い方法だ」

 

みんなが一ヶ所に固まって円陣を組む。

僕はそれを眺めている。

入らないのかって?無茶言うなよ・・・

 

「何してるのよ。りっくんも混ざりなさいよ。ハリー!」

 

「ほら、私と歌野の間に来い。それなら大分マシだろう?」

 

「・・・・・・・・・・・・ちょっとだけ待って」

 

心を落ち着ける。

大丈夫、やましいことは、何もない。何もないんだ。

 

「もう!りっくん!」

 

歌野に手を掴まれ、円陣へと引き込まれる。

 

「ま・・・待って!まだ心の準備がぁぁぁ・・・」

 

抵抗虚しく、若葉と歌野の間にすっぽり収まる。

落ち着け、落ち着くんだ僕。何もやましいことはないんだ。だから大丈夫。平常心を保つのだ。ああ、でも、なんだって歌野も若葉も良い匂いがするのかなぁ!?女の子特有の甘い香り、とでも言うのか?何にしてもこの香りが煩悩を刺激してくるからヤバイ、すごくヤバイ。これから決戦だろうに、平常心を保つのだ。念仏でも唱えて落ち着こう。

 

「ぼんのうたいさんぼんのうたいさんぼんのうたいさんぼんのうたいさんぼんのうたいさんぼんのうたいさんぼんのうたいさんぼんのうたいさんぼんのうたいさんぼんのうたいさんぼんのうたいさんぼんのうたいさんぼんのうたいさん」

 

「・・・輪廻さん、大丈夫でしょうか?」

 

「・・・どう見ても大丈夫じゃないわね」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「それでは、作戦通りに!」

 

伊予島クンの号令と共に、若葉、友奈、タマっちクンの三人がそれぞれ前方、右方、左方へと散会する。

 

作戦はこうだ。

 

僕たちが今いる丸亀城を中心に、正面、東、西にそれぞれ勇者を配置。後方には伊予島クンが待機し、三方を援護。僕を除く残りの二人は控えとして休憩する。

三方に散った勇者たちに疲労が見えたら、控えの勇者と交代。つまりローテーションを組んで戦う訳だ。

 

そんな中で、僕の役割は、“緊急時の切り札“。

 

前回の戦いにおいてこちらが深手を負ったのは、敵契約者による不意の攻撃があったからだ。

今回はそれに対抗できるようにするため、僕を温存しておく作戦に出た。

問題は・・・

 

「ねぇ、ニック。ホントに僕ならあの炎、なんとかできるの?」

 

「出来る。いや・・・これは寧ろ、オレの力を使えるお前しか出来ない事だ」

 

「ふぅん・・・まぁ、いいけどね」

 

この、契約者に対する作戦がニック考案によるもの、というところか。

 

ニックいわく、「悪魔の力には、こちらも同じ悪魔の力で対抗するのが道理」だと。

目には目を、歯には歯を、ということだ。

その理屈は理解できるし、僕としても、これ以上歌野やみぃを心配させるようなことをしなくて済むなら、それに越したことはないと思う。思うのだけど・・・

 

「ねえねえニック。ホントは僕をあまり戦わせないようにするために、そういうこと、言ったんじゃないの?」

 

「ハッ、んなワケあるかよ!テメェがオレの言うことを聞かないのは分かりきってンだ」

 

「じゃ、なんで?」

 

「オレ達悪魔は、人間の願いを叶える為の存在。そんな悪魔が、なんで人間を滅ぼそうとする?」

 

「誰かがそう願ったんじゃ、ないの?」

 

「それだけなら、良いんだがな・・・」

 

「え?」

 

「この戦い、何か裏がある・・・。オレはそう考えている」

 

裏・・・か。ニックのやつは思慮深い。なにか良からぬものを感じているんだろう。

でも・・・

 

「だからって、戦うことを止めてしまったら、それこそ“敵の思うつぼ“ってやつでしょ」

 

「フッ・・・その通りだな。―――――オイ、輪廻」

 

ニックがなにかを投げ渡す。これは・・・指輪?

 

『オレの心臓―――真鍮の指輪だ』

 

おお!?こいつ、直接脳内に!?

というか、ニックどこ行った?

 

『今オマエが持ってる指輪こそがオレの真の姿だ。普段見てるオレの姿は幻見てぇなモンだ』

 

「なるほ・・・ど?」

 

『理屈なんざどうでも良い。とにかく今はオレを身に着けろ』

 

「これを?ん、と・・・それじゃあ」

 

言われた通りに右の人差し指に指輪をはめる。

 

「―――――――――」

 

「―――――――――」

 

「―――――――――何も起きないよ?」

 

『アプリを見ろ』

 

言われてスマホを取り出す。画面にはさっきまで花のマークが描かれていたが、今は羽根を広げた鳥のマークになっていた。

 

「なるほど、これをタップすればいいのか」

 

『今はするなよ』

 

「なんで?」

 

『コイツは使い方を一歩でも間違えるとその途端にアウトだからな。必要な時以外は使わない方が良い』

 

「・・・・・・・・・相当、強いのねぇ」

 

そうこうしてる内に、若葉と郡クン、友奈と歌野が交代していた。

 

この調子で行けば大丈夫そうだね。

 

「あれ?ねえ、りんくん。さっきまでそこにニックさんが居なかった?」

 

「ん?それは本当か、友奈」

 

「あ、うん。もしかしたら見間違いかもだけど」

 

「うんにゃ、今さっきまで・・・というか、今もニックいるよ」

 

「え?どこに?」

 

友奈たちに聞こえないように、小声でしゃべる。

 

「良いよね、ニック」

 

『好きにしろ』

 

良し、言質はとった。

 

「ほら、これ」

 

友奈と若葉に指輪を見せる。

 

「これがニックの正体、だとさ」

 

「へぇ・・・」

 

「何の装飾もない、只の指輪だな・・・」

 

「僕らが見てた姿は、こっちでの仮の姿なんだって。で、これが本体・・・というか、心臓らしい」

 

「ということは、これを破壊されたらこいつは・・・」

 

『死ぬな。間違いなく』

 

「死ぬんだって。まあ、そもそも悪魔に“死“の概念があるのかって話だけど」

 

『ホウ・・・言うじゃねぇか』

 

「・・・・・・なら、大事にしないと、ね?」

 

「?もちろん」

 

なんだろう。今、友奈の様子が変だったような・・・?

 

―――――――――――†――――――――――

 

開戦からしばらくして、若葉とタマっちクンが交代した。

 

「タマちゃんおつかれ~」

 

「へっへー!どーだ見たか!タマの活躍!」

 

「おう、バッチリ刮目させてもらったよ。だから、しばらく休んでな」

 

タマっちクンの頭をわしゃわしゃと撫でて座らせ、若葉が戦っている場所を睨む。

今まさにその場所に、まるで蛇のような進化体が形成されたところだった。

()()()()()()()()()()()()()

切られると分裂する進化体。

()()()()()()()()()()()()()()

 

「伊予島クン!進化体が出てきたし、僕もう出るね!」

 

一声かけて若葉の下に行こうとする。が、伊予島クンから待ったがかかる。

 

「待ってください!相手の能力を把握してからでも・・・」

 

「それなら大丈夫。あいつとは一回戦ったこと、あるんだ」

 

その言葉に、伊予島クンが息を飲むのが伝わった。

 

「・・・・・・対処法も知っている、と?」

 

「あいつは切られると分裂する。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だ」

 

「まぁて待て待て!そーいうことなら、タマに任せタマえ!」

 

そこに、タマっちクンが割り込んできた。

 

「・・・・・・休んでなって、さっき言ったでしょ?というか、あいつを倒せる方法、持ってるの?」

 

「だ~いじょうぶ!タマに任せタマえ!!」

 

 

「いっくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!輪入道!!!!」

 

 

輪入道。確か、魂を運ぶ炎の車輪の妖怪だったっけ。

タマっちクンが輪入道をその身に降ろすと、彼女の旋刃盤がどんどん大きくなっていって・・・・・・ちょっと大き過ぎない?

 

「大丈夫?タマっち先輩。そんな大きな旋刃盤、投げられるの?」

 

伊予島クンも同じことを思ったようだ。

 

「無理にでも投げる!」

 

およそ女子がすることのないような、猛々しい雄叫びを上げて、ハンマー投げの要領で巨大旋刃盤を投てき。タマっちクンの手を離れ、進化体とは別の方向に飛んでいった。

その姿は、昔、テレビ番組なんかで見た未確認飛行物体を連想させた。

 

「タマっち先輩・・・旋刃盤、飛んでいっちゃったけど・・・」

 

「いいんだ!こいつはこう使う!」

 

???タマっちクンは何を言ってるんだ?

そういぶかしむのは一瞬だった。

 

旋刃盤が、ほんとにUFOよろしく勝手に動き出したのだ。

 

「なんとぉー!」

 

 

思わずすっとんきょうな声を上げてしまった。

炎を撒き散らしながら飛ぶ旋刃盤は、そのまま進化体に体当たりをかまして燃やし尽くした。

 

「すげえ、あっという間に黒焦げじゃん・・・」

 

「へ・・・へへっ。どーだ、タマの輪入道は・・・」

 

「大丈夫?タマちゃん。顔色がよくないよ?」

 

どうやら身体にかかる負担は相当のようだ。まあアレだけの質量の物体が飛ぶ上に、脳波コントロールも出来る。と来れば、相当に負荷がかかるのも納得がいく。

 

「タマっちクン、もう休みなよ。キミの大活躍のおかげで残ったバーテックスも少なくなった。後はみんながなんとか」

 

「そうもいかなくなった」

 

いつの間にか、後ろに若葉が立っていた。

 

「どうしたの?向こうの守りは?」

 

「輪廻さん!あれを!」

 

伊予島クンの指差す方を見れば、かなりデカイ進化体が形成されていた。

何というか、子宮とその周辺器官を模した形状の進化体だった。

それ以外にも、さっきの蛇みたいなやつ、針みたいなやつ、噂に聞く射撃タイプのやつに盾持ちのやつ、と、進化体の大盤振る舞いだ。

 

「なるほど、向こうもなりふり構ってられなくなった・・・てところかな?」

 

「一番の強敵は、あの新型の進化体だろう。どんな攻撃をしてくるのか分からん」

 

たしかにそれも気になる。でも僕は、もっと別のことが気になっていた。

 

『いたぞ輪廻。十一時の方角』

 

「・・・ついに来たか」

 

目を凝らして確認する。バーテックスの群れに紛れて、人間が一人、神樹様に向かって樹海を走っている。

 

「みんな、バーテックスは任せるから。僕は僕の役割を果たす」

 

「!!・・・・・・来たのか?」

 

「ああ」

 

「そうか・・・・・・気を付けろよ」

 

「まかせて」

 

若葉の言葉にサムズアップで返して丸亀城を飛び出す。

 

 

「いくよ、ニック!」

 

スマホを取り出しながら、ニックに告げる。

 

『掛け声はどうする?』

 

「決まってるよ!」

 

ボタンをタップしつつ、叫ぶ。

 

 

 

 

 

「超・変身っ・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

刹那、僕の身体は炎に包まれた。

 




運命、クロスする今、空へ高く舞い上がる



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円陣と死闘と超越者 後編

極彩色の木々を舞うように走る一つの影。

 

「やあ、そんなに急いでどこに行くんだい?」

 

その影に、天より光が射す。

 

光の正体は炎。

目映く輝く紅蓮の焔に包まれた輪廻だった。

 

「・・・・・・・・・」

 

影は何も語らず、細剣(レイピア)を構え―――

 

 

 

 

 

ガキィン!

 

 

 

 

 

「あっぶな!?なんかしゃべろうよもう!」

 

影の奇襲を輪廻はカギ爪で受け止める。奇襲を防がれた影は後退して距離を取るのだった。

 

『無駄だな。今のアイツには意識が無い』

 

「誰かに操られてるとか?」

 

『おそらく、な。次、五時方向』

 

「はいよっ!」

 

ガキン!

 

またも防ぐ。

 

「影に沈んでの奇襲。なかなかの手合いだけど気配を隠せてなければ、意味が無いんだよねー」

 

そう。輪廻が影の奇襲を防げている理由がこの、ニックとの連係だ。

ニックが影の気配を読み輪廻に教える。たったそれだけ。

()()()()()()()()()()

 

『九時方向』

 

「ん!」

 

ガキン!

 

『十二時』

 

ガキン!

 

『三時』

 

キン!

 

『十時』

 

キン!

 

『二時』キン!

 

『九時』キン!

 

『十二時』キン!

 

『六時』キン!

 

『一時』キン!

 

『七時』キン!

 

「うおお!ちょーラッシュアワー!!」

 

都合十二度、全ての影からの奇襲を輪廻は裁ききってしまったのだった。

 

「ふぃー、凄いじゃんキミ。悪魔の力をここまで使いこなせるなんて」

 

その言葉は、輪廻にとっては心からの称賛の言葉だったのだが・・・

 

『オイ輪廻、お前それ煽ってンのか?』

 

「え゛!?そう聞こえる?」

 

『聞こえるな』

 

「oh・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

最も、影は何も答えないが。

 

『・・・解析終了。どうやら前回のとは別の奴だな』

 

「このあと出てくる可能性は?」

 

『無いだろうな』

 

「ん、じゃあ―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっさと終わらせようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟・・・!と輪廻の纏う炎が勢いを増した。

影は当然、身構える。

 

が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬られた。影は確かに、そう知覚した。

なのに、身体には傷一つ無い。

そうして自らの身体を調べて、気付いた。

 

先程まで纏っていた影が、取り払われていることに。

 

 

「へえ・・・・・・キミ、女の子だったんだ」

 

影の中から現れたのは十歳くらいの子供。

着ている衣服はあちこち摩りきれてボロボロ。四肢は細く、頬も痩けていることから、まともな食事もできないような、過酷な環境下にいたことが解る。

 

『ホウ・・・・・・輪廻お前、アレが女だって良く判ったな』

 

「ん?ああ、確かに・・・なんでだろ?」

 

『無意識か』

 

「そんなことより、あの子と契約した悪魔の名前、判った?」

 

『ア?何故そんなことを聞く?』

 

()()()()()()()()

 

『・・・・・・本来、悪魔の真名を契約時以外に明かすのはご法度なんだがな・・・』

 

「そこをなんとか!頼むよ!()()()()()()()、さぁっ!」

 

ガキィン!

 

少女が輪廻に襲いかかる。輪廻はニックと会話しながらも、それを受ける。

細剣による乱れ突きをカギ爪で器用に受け、弾き、かわす。

 

「ニック!」

 

『チッ――――――影を纏い、影に潜る能力。即ち『哭影潜行(シャドウ・スナッチャー)』の固有能力。そして、()()()()()()。コイツの真名は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――序列四十位・ラウムだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、少女の動きがピタリ、と止まった。

 

「今!」

 

カギ爪に炎を纏わせ、少女の胸を貫く。

 

「最大火力でぇぇぇぇ!!」

 

炎の出力を上げ、少女を――否、()()()()()()()()()()()()()()

 

ニックの扱う炎は、命あるモノを癒し、命無きモノを葬る炎。

故に、少女と悪魔のつながりを燃やすことで輪廻は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『オイ輪廻。そこまでしてこのガキ助ける意味なんざ無いだろう。何故助ける?』

 

()()()()()()()()。理由なんてそのくらいで充分だよ!」

 

『ハッ!オマエらしいよ。――――OK、終いだ』

 

炎を消し、爪を引き抜く。

細剣を手放した少女はそのまま倒れて―――

 

「おっと」

 

輪廻の胸にすっぽりと収まった。

 

「生きてるよね。()()()()

 

『ああ、問題ない。上手く契約()()を焼き切れた』

 

「そっか・・・・・・よかっ・・・た・・・」

 

ばたり、とその場に倒れる。

まるで死んでいるように見えるが、深く、ゆっくりと、寝息をたてていることから、眠っているだけだろう。

 

「まぁ・・・初回でこの程度なら、上出来か」

 

倒れている二人の側に座ったニックが一人、そんなことを呟いた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

輪廻たちの上空。そこでは、六人の勇者が大型の進化体に挑もうと、巨大化旋刃盤に乗って空を飛んでいた。

 

「りんくんは大丈夫かな?」

 

「ノープロブレム!・・・とは完全に言い切れないけど、でも平気よ。だってりっくんだもの!」

 

なかなかのパワーワードである。

 

「歌野は、輪廻のことを心から信頼しているのだな」

 

「オフコース!」

 

若葉の言葉に、歌野はニカッとはにかむ。

そうこうしている内に旋刃盤はバーテックスの群れに突撃しようとしていた。

 

「数が多い・・・ザコはこのまま蹴散らせるけど、進化体までは・・・」

 

「なら、ここは私の出番だな」

 

そう言って、若葉が一歩前に出る。

 

「オーケー!そういうことなら私がサポートするわ!」

 

その若葉のとなりに歌野が立つ。

 

「歌野?」

 

「一人よりも二人よ!!・・・実はこれ、前にりっくんにも言ったことがあるのよね」

 

「そうか・・・背中は任せた!」

 

「オフコース、ヒーロー!」

 

その言葉を合図に、二人は同時に神樹へとアクセスし、旋刃盤から飛び立つ。

 

 

 

 

若葉が降ろした精霊は『源義経』人間離れした体術を持つ武人。

壇之浦の戦いにおいて、敵軍の舟を飛ぶように渡り歩いたという伝説を持つ。その名も『八艘飛び』

今、若葉は伝説の八艘飛びをバーテックスを使って再現して魅せた。すなわち、バーテックスを蹴り加速、別のバーテックスを蹴りまた加速、また別のバーテックスを蹴り更に加速・・・と、どんどん加速していき、敵とのすれ違い様に斬る。

これだけでも通常のバーテックスは一掃できる。だが、相手には進化体も複数存在している。

 

だからこそ、歌野がいる。

 

歌野が降ろした精霊は『覚』他者の心を読む妖怪。

獲得した能力は至って単純に、『戦況予測』

歌野が知覚できる範囲内限定で、()()()()()()()()()というもの。

その能力故にか、覚は力が全く強化されず、戦闘に向いているとはお世辞にも言えない。その非力さを歌野は、自身のバトルセンスで補っていた。

 

「「ハァァァァァァァァァァ!!!!」」

 

二人の奮戦により、道は開かれた。

 

「いくぞ!突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

珠子が、友奈が、千景が、杏が、大型進化体に襲いかかる。

燃やされ、殴られ、切り裂かれ、射抜かれた大型は成す術もなくその身を崩壊させていった。

誰もが勝利を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、大型の死に際の一撃に、誰も反応出来なかった。

 

 

「っ!!若葉ちゃん!!」

 

放たれた弾丸は真っ直ぐ若葉の方へ飛んでいき―――

 

 

 

 

 

若葉には当たらず、その目の前で爆発した。

 

 

 

 

 

「ぅああっ!!」

 

「若葉!?」

 

「若葉ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「・・・・・・・・・え?」

 

爆風に巻き込まれ、地面に向かって真っ逆さまに落ちていく若葉。

勇者たちが急いだところでもう間に合わない。

そう、勇者たちでは・・・・・・

 

 

 

 

 

「おっしゃトラァァァァァァァァァァァァァァァイ!!!!!!」

 

「りっくん!?」

 

輪廻だ。

落ちてきた若葉を滑り込みで受け止めてみせたのだった。

 

「あー、超いたい」

 

「・・・ぅ」

 

「あ、起きた?おはよう若葉。僕らの勝ちだ」

 

「――――――そうか」

 

樹海化が解けていく。

視界が花の嵐に包まれて、気が付けば丸亀城側の生け垣に座り込んでいた。

 

「―――なあ、輪廻」

 

「なんだい?」

 

「以前、お前は言ったな・・・『独りで抱え込むな』と」

 

「言ったね」

 

「その意味、ようやく理解できたよ」

 

「へぇ」

 

「みんなのお陰だ」

 

「そっか、そりゃよかった」

 

輪廻と若葉の下にみんなが集まってくる。

それを輪廻は手を振って、若葉は微笑んで、出迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

後に『丸亀城の戦い』と称される戦は、こうして幕を閉じた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

数日後―――

 

「・・・なあ、友奈」

 

夕暮れの丸亀城。普段勇者たちが教室として使用している一室にて。

 

「あれ?若葉ちゃんもう帰ったんじゃないの?」

 

「教室にお前の姿が見えたら、つい」

 

「そっかあ・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

二人は無言で夕日を―――否、夕日に照らされる壁と海を見ていた。

 

「・・・・・・・・・あの時」

 

「あの時?」

 

「私が大型の攻撃を受けそうになった時だ」

 

「ああ・・・」

 

「あの時、私に当たる筈だったあの爆弾は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・・・・・・・()()()()

 

「友奈も気付いていたか」

 

「うん。気配をね・・・感じたんだぁ」

 

「そう、か・・・・・・ということは、やはり?」

 

「たぶん、ね」

 

友奈が笑う。しかし、その笑顔は普段のそれよりも弱々しくて、どこか、儚げだ。

 

 

「・・・・・・・・・友悟」

 

 

「・・・・・・・・・友くん」

 

 

二人の呟きは誰もいない教室に飲み込まれて、消えた。

 




瀬戸内海本州側の一角―――

「――――――状況終了」

『ハァイ♪おつかれ~』

「これで・・・四国はしばらく安全だな」

『そうね~。北海道と沖縄で、勇者とオーバードが頑張ってるみたいだからね~』

「・・・・・・逝くぞ」

『会って行かないの?』

「・・・今は、いい。どうせ後で会える」 

『それもそうね~。で?どこ行くの?』

「そうだな―――――」










「諏訪にしようか」


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変態と下着と「病室ではお静かに」

ド直球のド変態を書きたかった。
後悔はしていない。
反省もしていない。
たぶん、前回までシリアス続きだったからその反動のせい。

とりあえず、どうぞ、お納めください。


病院の一室を訪れた若葉とひなたを出迎えたのは、歌野と十歳前後の少女に挟まれて仏の顔をしている輪廻であった。

 

「・・・・・・これは・・・どういう状況なんだ?」

 

「若葉ちゃん、これはいわゆる『修羅場』というやつです。巻き込まれないように今日はもう帰ることにしましょう」

 

「待って帰らないで助けてちょーだいお願いします」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「で?何がどうしてこうなったんだ?」

 

「それについては我輩からお教えいたします!」

 

「うおっ!」

 

突如、若葉の()()()()()()()()カラスが現れた。()()()()()()()()()()()()()()()

 

「へ・・・え・・・あ・・・」

 

「お嬢さん質素なモノを着けてますねぇ。せっかくの美人が台無しですよ~。まあ、これはこれで―――」

 

「!!!!!!!!!!!!」

 

カラスがくわえているのが何なのか理解した若葉は、スカートを器用に押さえながら、刀を構える。その顔は羞恥によって真っ赤に染まり、目には涙すら溜まっていた。

 

「おおwww怖いwww怖いwww」

 

「貴様あ!!それを返せ!でなければこの刀の錆となれえ!!」

 

「返せと言われて素直に従う盗人はおりませなんだなぁwwwwwwてなわけで、ばいちゃ♪」

 

ズブズブと自らの影の中へ沈み行くカラス。だが―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がし

 

「おや?」

 

「うふふふ」

 

満面の笑みを浮かべるひなたによって、阻止された。

その目は、一切笑ってなどいなかった。

 

「おやおや、怖いですねぇ。せっかくの美人が台無しですよ~?そんな怖い笑顔ではなく、心からのスマイルがみたいですねぇ我輩」

 

「若葉ちゃんの下着を返していただけたら、後でゆっくりお見せしますよ?」

 

「ひなた、そいつを離すなよ・・・」

 

鬼の形相の若葉が刀を振り上げる。

 

「おっとぉwwwこれはいけませんねぇwww」

 

「もう逃げられませんよ。さあ、返してください」

 

「あっはっはwwwwwwところがぎっちょんん!!」

 

どぷん、と()()()()()()()()()()、カラスは影に沈み込んだ。

 

「な―――!」

 

そして、

 

「スナァァァァァァァァァァッチィ!!!」

 

「え・・・あ・・・きゃああああああああああ!!!!」

 

ひなたのスカートの中から再度現れた。くちばしに青いひらひらをくわえて。

 

「でゅふふふwwwwwwなかなか良い趣味の聖布でござるのうwwwwww」

 

「貴様ああああああああああ!!!!!!!!」

 

ひなたが被害にあったことで完全にキレた若葉が、カラスに斬りかかる。

 

「おっとwwwwww」スカッ

 

「チッ!何処だ!姿を見せろォ!」

 

「見せろと言われて素直に従う馬鹿はおりませなんだなぁwwwwww」

 

「そこっ!」スカッ

 

「こっちでおじゃるぅwwwwww」

 

「このッ!」スカッ

 

「はwwwずwwwれwww」

 

「貴様ッ!」スカッ

 

「踏み込みが足りんッwwwwww」

 

「ぬあああああああああああ!!!!!!!!」

 

「言い様に弄ばれてる・・・・・・」

 

―――――――――――†――――――――――

 

その後、

 

「その辺にしときなさい。あたしのあげるから、お二人の下着を返してあげて」

 

「ヘイ喜んでェェェェ!!!!」

 

この少女の一言でカラスは二人に下着を返した。

 

「すごく納得がいかない・・・」

 

「私もです・・・」

 

「まあまあ」

 

若葉とひなたの頭を撫でる輪廻。その腰には歌野が抱き付いている。

 

「ハァwwwハァwwwでゅふふふwwwwwwくんかくんかwwwwww」

 

「直接嗅ぐな邪魔」

 

件のカラスは妙齢の女性に変身して少女のスカートの中に頭を突っ込んでいた。

誰がどう見てもまごうことなき変態である。

 

「・・・・・・それで?こいつは一体」

 

「オレと同じ悪魔だ」

 

「あ、ニック。お前今までどこに行ってたのさ!?」

 

いつの間にかニックがいた。

ニックは輪廻の問いに答えず、続ける。

 

「序列四十位ラウム。カラスの姿で現れ、都市を破壊し王族から物を盗む変態野郎だ」

 

「変態とは心外な!我輩は紳士にござりますぞ!」

 

「パンツ頭に被りながら言う事かよ」

 

「というかこの子の下着捕るなよ」

 

「良いのです輪廻さまっ♪あたし、下着が無いくらい平気ですからっ」

 

少女が許したせいか、ラウムと呼ばれた変態女はでゅふふふwwwと笑って下着を外し、そのまま食べた。

 

「・・・・・・ニックも人間以外になれるの?」

 

「残念ながらなれない」

 

「アニキは名が知れてまふからね~モゴモゴ。下手に変身すると、真名が即バレなんすよモゴモゴ」

 

「食うか喋るかどっちかにしろロリコン」

 

「もぐもぐもぐもぐ・・・・・・ごっくん。アニキ、我輩はロリコンと違いますぅ~!ロリも好きなんですぅ~!!」

 

「こいつ下着を飲み込んだぞ」

 

「とんでもない変態だな・・・」

 

「まったくです・・・」

 

輪廻の後ろで着替えていた若葉とひなたが戻ってきた。

そして少女の方を向き、ようやく本題に入る。

 

「さて、それではお前の名前も聞かせて欲しい」

 

「あ、はい」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「あたしの名前は『香草(かぐさ)美空(みそら)』と言います。年は・・・たしか、十一だったかと・・・あ、お家は東京です」

 

「東京!向こうは無事なのか!?」

 

「いえ、あたしが覚えている限りでは、東京もあいつらにぐちゃぐちゃにされて・・・」

 

「・・・そうか。すまない、嫌なことを思い出させた」

 

「ああ、気にしないでください!たしかにいやなことばっかりでしたが、今は輪廻さまがいますのでっ♪」

 

そう言って美空は輪廻の右腕にしがみつく。

それを見た歌野が反対の左腕にしがみついた。

 

「・・・・・・渡さないから」

 

「それはあたしのセリフです」

 

バチバチと火花を散らせる両者。その間で輪廻がため息をつく。

 

「・・・・・・・・・・・・はぁ」

 

「これは・・・」

 

「・・・・・・輪廻さん?」

 

若葉は困惑し、ひなたはジト目で輪廻を見る。

またもため息をついて輪廻が答える。

 

「・・・・・・・・・確かに、この子を助けたのは僕だよ。でも、ここまで好かれるなんて、誰が予想できる?」

 

「まっ!仕方ないですよね~!」

 

カラスに戻ったラウムが、輪廻の頭に乗って喋る。

 

「自分の事を命がけで救ってくれた上に、『オレが一緒にいてやんよ!』みたいなこと言われたら、どんな女子も一発コロリ、てなモンですよ~wwwwww」

 

「輪廻さん・・・歌野さんと水都さんがいらっしゃるというのに・・・・・・」

 

ひなたに白い眼で睨まれ、死んだ目で輪廻がぼやく。

 

「自立できる歳になるまで面倒をみてあげる。って言っただけなんだけどなぁ・・・・・・」

 

「それはそうと、歌野はなぜ此処に?いつもなら畑にいる時間だろう」

 

「そこのクロウに呼ばれたのよ」

 

「呼んじゃったでありんすwwwwww」

 

どうやら修羅場の原因はラウムにあるようだ。

 

「・・・・・・お前のせいか」

 

「でゅふふふwwwwwwサーセンwwwwww」

 

「コノヤロウ・・・・・・(怒)」

 

―――――――――――†――――――――――

 

一段落ついたところで、ニックがラウムに問う。

 

「オイ、ラウム。オマエ、何でこのガキと契約した?」

 

()()()()()()()()()~、それが」

 

「ア?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ンな訳あるかよ。オレ達悪魔は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。一度でも契約すれば、それを切られない限りは此方に居続けられる。が、契約を切られた瞬間、悪魔は本来居るべき場所に戻され―――」

 

そこでニックは何かに気付き、口を閉じる。

 

「そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「バカな・・・オマエとそこのガキとの契約は完全に切れている。何で帰還しない?」

 

「我輩にも解りません。ですが、一つ」

 

「何だ?」

 

「あのときの我輩は()()()()()()()()()()()。そのせいで何者かの操り人形と化していた様です」

 

「・・・・・・成る程な、オレがオマエの名を明かした瞬間に、ガキの動きが止まったのは、それが理由か。だが、それとオマエが此方に居続けている理由と、何の関係がある?」

 

「アニキもお気付きでしょう?()()()()()()()()()。我輩がこちらに存続できる原因も、我輩の名を奪った奴も、きっとこの騒動の中心にいる。少なくとも、我輩はそう考えておりまする」

 

「・・・・・・・・・成る程な。そうなるとやはり、『アイツ』か?」

 

「一体はそうでしょうな。が、元凶という訳ではござりませんでしょう」

 

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

 

「こら、ラウム!輪廻さまがきょとん、としてるじゃない!もっと分かりやすく説明なさい!」

 

美空がラウムを叱る。

 

「此度の戦、悪魔が一枚咬んでいる可能性がありますぞ」

 

ラウムの言葉に、一同は驚愕を顕にした。

 

「・・・・・・だとしても、我々は勝たねばならない。四国に住む人々のためにも・・・!」

 

「若葉ちゃん・・・」

 

「そうね。若葉の言う通りだわ」

 

「・・・・・・・・・はは、僕の言いたいことぜぇ~んぶ、言われちゃった」

 

若葉が宣言すると、ひなたは瞳を輝かせ、歌野は若葉に同意し、輪廻は笑って肩をすくめた。

皆、気持ちは一緒なのだ。少なくとも、ここにいる四人は。

いや、きっと全員、同じ気持ちだろう。

輪廻は一人、そんな事を思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにこのあと、四人は看護婦に怒られた。




ラウムと香草美空について―――


ラウムは序列四十位の悪魔。序列は強さ依存ではなく、生まれた順。

美空は東京に住んでいた少女。バーテックスから姉と共に逃げ仰せたが・・・
母姉と同じ金髪。
ピーマンが苦手。


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廻る円環と落ちぬ太陽

ついに発売に為りました!!勇者の章BDーBOX!!

実は小生、まだ満開祭り3のほうは視聴しておらず、それ以外は、ほぼ!堪能いたしました(ほっこり)

何はともあれりっくんのお話!

どうぞ、お納めください。


「はぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・さんざんな目にあった」

 

あれから少し経った。その間、歌野に添い寝を要求されたり、みぃに半泣きで問い詰められたりしていた。

昨日の夜も、歌野とみぃが一緒に寝たいとゴネてきた為に、あんまり眠れなかった。おかげでちょっと眠い。

 

「だから今日一日寝て過ごしたかったのに・・・」

 

「つまりヒマを持て余していたんだろ?よかったな、いいヒマ潰しになってよ」

 

「他人事だとおもってからに・・・」

 

ベッド代わりのソファーで寝ていたらニックに叩き起こされ、この前行ったジェラート屋にまた行ってきたのだった。(ちなみに今はその帰り)

いい加減にしてほしいよまったく・・・。

 

「アイスならこの前買っておいたでしょ」

 

「ならもっとマシなやつ寄越せ。なんだ『ビーフシチュー味』って。お前はオレにゲテモノ喰わせてどうする気だ」

 

「反応を楽しみたい」

 

「ふざけんな!!てめ―――あ?」

 

「んー?」

 

丸亀城の正面に、見知らぬ車が停まっていた。

黒塗りの・・・・・・なんだっけこういう車。なんかお金持ちが乗ってそうなピッカピカの車だ。

 

「すっげー。モノホンの高級車だよね!?これ」

 

「・・・・・・どうやら、アイツの所有物らしいな」

 

ニックの視線の先に、その人はいた。

丸亀城の周辺をぐるりと廻って来たのか、僕たちが来た方向とは逆から現れた少年。彼がこの車の持ち主っぽいなぁ。雰囲気的に。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

少年がこちらを見つめてくる。

僕も少年を見つめ返す。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「いつまでそうしてるつもりだ!!」

 

スパーン!と小気味良い音を立ててひっぱたかれた。

 

「いったー。ちょっとニック。痛いじゃんかさ」

 

「うるせぇ!お前がいつまでもアイツとにらめっこしてるのが悪ぃンだろうが!!」

 

「だからってなんではたかれないといかんのさ!?」

 

「――――――――ぶふっ」

 

ニックと漫才していたら、少年に笑われた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「改めて、どうもはじめまして。ボクは枢木白夜っていいます」

 

「あー、どうも、はじめまして。戸塚輪廻です」

 

とりあえず両者共に、近くの公園のベンチに座って、自己紹介をする。

にしても、枢木か・・・・・・たしか、首相の名前も枢木って言ってたような・・・

まさかね?

 

「参考までに聞くけど――――」

 

「あ、はい。ボクの父は枢木誠一郎ですよ。内閣総理大臣の」

 

まじか。

 

「戸塚さんのことは聞き及んでおります。悪魔と呼ばれる存在と契約して、勇者の力を獲得したのだとか・・・」

 

「総理の息子さんなだけあって、勇者関連の情報は仕入れ済み、てことですか」

 

「敬語はやめてください。ボクの方が年下なんですよ?」

 

照れたように笑う枢木。

・・・もしかして、良い人?

 

「えっと・・・じゃあ、遠慮なく。枢木クンはさ、何の用事で丸亀城に来たの?」

 

「ボクの用事ですか?んー・・・・・・幼馴染の様子を直に見たくて」

 

「幼馴染?」

 

はて、誰だろう。少なくとも歌野とみぃではないよね。

 

「郡千景、ご存知でしょう?」

 

「へぇ、郡クンかぁ・・・・・・うぇっ!!郡クン!?」

 

「はい」

 

満面の笑みを浮かべて枢木クンがうなずいた。驚いたなぁ。まさか郡クンの友人にこんなすごいのがいたとは・・・

 

「・・・・・・その様子ですと、千景はボクのことも含めて、故郷のことを何も話していないみたいですね」

 

「・・・・・・んー、まぁ、そうだね。でも別に、無理に話す必要もないと思うんだよね。僕は」

 

「ほう・・・・・・なぜ、そう思うのですか?」

 

「誰にだって、知られたくない過去の、一つや二つ、あると思うんだ。郡クンは特に、そんな雰囲気強いし・・・」

 

「・・・・・・あなたにも、あるのですか?」

 

「・・・・・・・・・・・・まあね」

 

「・・・・・・・・・・・・そうですか」

 

―――――――――――†――――――――――

 

自販機でほうじ茶のボトルを二本購入し、片方を枢木クンに渡す。

 

「ああ、ありがとうございます。・・・ほうじ茶、お好きなんですか?」

 

「うーん、別にそういうのじゃないんだ。ただなんとなーく、ほうじ茶の気分だった。それだけだよ」

 

「へー、そうですか」

 

そう言った枢木クンはボトルを開けて、ほうじ茶を流し込むように飲む。

よっぽど喉が渇いていたのかな?

 

「―――――ぷはー。はあ、ふう」

 

「そんなイッキ飲みしなくても・・・」

 

「ああ、すみません。ついクセで」

 

「どーいうクセだよ」

 

「あはは、よく言われます」

 

なんだか変わったやつだなぁ。

こんなんが首相の息子か・・・・・・世も末だな。

あ、実際終わりかけか。

 

「ところで戸塚さん。お好きな異性の方って、います?」

 

「ぼふぉあああ!!げほっげほっ」

 

いきなり何を言い出すのか、この自由人は!?

 

「おお、すごい反応。いるんですね?」

 

「突然そんなこと聞かれたら誰だってびっくりするでしょ!!」

 

「で?誰なんです?」

 

「話を聞いて」

 

わくわくと、期待に胸を膨らませた少年の瞳でこちらを見つめる枢木クン。

 

「――――――――歌野とみぃ」

 

「ほうほう、白鳥歌野さんと藤森水都さんですか。二人もだとか、業が深いですねえ!」

 

「うるせぇ!そういうキミはどうなのs「千景です」うわぁ、食いぎみに来た」

 

なんとなく、そんな気はしていたが・・・・・・郡クンも大変そうだなぁ。こんな何を考えているのかわからないような人に好かれて。

 

「ボクは、千景と一緒にいられたら、それでいいんです・・・・・・それだけ、たったそれだけのことなのに・・・・・・千景はその事に気付いていない。どういうわけか、勇者の力でボクへの恩返しをしようと考えている。そんなの、ボクはいらないのに・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「ねえ、戸塚さんはどう思っていますか?お二人のこと」

 

「え?どう・・・って、好きだよ?」

 

「そういうのじゃないです。『好き』にも色々、あるでしょう?」

 

「色々も何も、『好き』なモノは『好き』でしょう?」

 

「――――――――――――?」

 

「――――――――――――?」

 

なんだか話が噛み合わない。

 

「―――――戸塚さん。いくつか質問、よろしいですか」

 

「なに?なんなの?」

 

「いいから」

 

「―――――わかった」

 

どうしたのかな。さっきまでと雰囲気が違う。

 

それから、五つほど質問をされた。

そのどれもが心理テストみたいだったから、もしかして、僕の内面を暴こうとしてる?

 

「―――――――――戸塚さん」

 

「なんだい?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

「――――――――――――――は?」

 

「『何を言ってるんだこいつ』・・・そう思ってますよね。当然の反応でしょう。理解できます。だからこそ、ボクにはあなたが解らない」

 

「それって、なぞかけか何か?」

 

「さっきボクが出した質問は、『答えた人間の本質を見抜く』為のモノです」

 

「本質ぅ?」

 

「例えば、千景。彼女はとても純粋で、他者の言葉に簡単に振り回されてしまう。だから、心の底からの善意の言葉ならまだしも、利用するつもりの上っ面だけの言葉に引っ掛かってしまわないように、それとなく注意してきました」

 

通じていたかどうかは、わかりませんけど・・・と苦笑する枢木クンを、僕はただ、呆然と眺める。

 

「ほかにも、自分のことしか見ていないような人、自分を見て欲しくて他人にすがる人、さまざまな人がいました。ですが、《あなたにはそれが無い》》」

 

 

「――――――――――――――まって」

 

「思えばあなたの言葉には中身がなかった。正確に言うのならば感情がなかった、と言うべきですね」

 

「――――――――――――――まってよ」

 

「極めつけは、さっきの『好き』発言。ここでボクは思ったんです。『もしかしてこの人は、自分がわからないんじゃないのか』ってね。こう見えてボク、そういうの察する力は強いんです。首相の息子として色々学んできましたから」

 

「――――――――――――――だから、まって」

 

「ですが、蓋を開けてみれば、わからないどころか()()()()()()()()()()()。びっくりです。ボクが知りうる中でそんな人、一人もいませんでしたから。なので一つ、仮説を立ててみました」

 

「――――――――――――――まてって」

 

それ以上しゃべらせてはいけない。なぜか僕はそう思った。でも時すでに遅く―――

 

「あなたはもしや―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■――――と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言を聞いた瞬間、僕の頭に何かが流し込まれた。

なんだ?映像?僕と、バーテックス?戦ってる?いや、違う。これは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、視界がブラックアウトした。

 




その日の夕方―――

「ぅうん・・・あれ?ここ、僕の部屋?」

「ようやく起きたか、寝坊助」

「あれ、ニック?・・・・・・・僕、なにしてたっけ?」

「寝すぎだボケ。お前今日一日中、寝ていやがっただろうが」

「・・・・・・・・・・・そうだっけ?」

「そうだ」

「・・・・・・・・・・・ふぅん。まあ、いいか」

そろそろ歌野たちも帰ってくる。夕飯の支度をしておこう。
そう思って僕は、『少し頭痛のする頭』を軽く叩きながら、台所へと向かった。


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煮こごりと遠征とラッキースケベ

みーちゃんのほっぺたを突っつく園子様(はたらく細胞ネタ)を見て、園子様にジェラるうたのん。
というネタが降臨してきたけど・・・・・どう思う?


突然だけど、僕たちは今、大橋の入り口に集合している。

理由は簡単。これから、四国外調査に向かうためだ。

 

そもそもの発端は数日前、みぃが神託を受けたことが始まり。

それによると、僕らに味方してくれそうな契約者が現在、諏訪にいるらしい。

なので僕たちは、四国の外が今どうなっているのかを調べつつ、諏訪へと向かうことになったのだ。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「よし、全員準備は整ったな?」

 

「僕は大丈夫」

 

「ミートゥーよ!」

 

全員がそれぞれなりの言葉で若葉の号令に応える。

 

「皆さん、ご迷惑をおかけしますが・・・・」

 

「よ・・・・よろしくお願いします」

 

今回の遠征には、みぃとひなたも同行することになっている。

 

「よし!そんじゃ、二人のことを運ぶやつを決めよ―――」

 

タマっちクンが何か言うよりも早く、若葉がひなたをお姫様抱っこし、僕も負けじとみぃをおんぶする。

お姫様抱っこしないのかって?無理言うなって・・・

ちなみに、僕の荷物は歌野が持ってくれてる。

 

『―――――――』

 

「ん?どうした?」

 

「お二人共、ナチュラルにそういうことをなさって・・・・すごいです」

 

「―――――――乃木さんに至っては無自覚だし」

 

「あはは――多分ツッコむだけ無駄だね、こりゃ」

 

「いやいや、おまえもだぞ輪廻」

 

「それじゃあ若葉ちゃんの荷物は私が持つね!」

 

こうして、僕たちは四国の外へと旅立ったのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

神戸に到着した僕たちは、二手に分かれて探索を開始した。

 

「――――――んー?」

 

「どうしたの?りっくん」

 

崩壊した街中を探索する僕たち。そんな中、僕はさっきから気になって仕方ないことをみぃに告げる。

 

「うーん・・・なんか、変なのがうようよしてるんだけど・・・・」

 

「変なのって?」

 

ほらアレ、と言って崩壊した建物の影にいる()()()()を指差す。

 

「・・・・・・・・・・なにも見えないよ?」

 

「・・・・・・・・・・ほんとに?」

 

おっかしいなぁ・・・なんか黒いのが蠢いているのに・・・。

 

「――――――――――」

 

「・・・高嶋さん?どうかしたの?」

 

「――ふぇ?ああ、ごめん。なんでもないよ」

 

・・・・んー?

 

―――――――――――†――――――――――

 

結局、神戸では何も見つからなかった。

途中の街でも、大した物はなかった。

が、バーテックスの卵とおぼしき物体を見つけた。

郡クンが動くよりも先に、ニックの炎で焼き付くしてやった。そしたら歌野に怒られた。しょんぼり。

 

そんなこんなで、夜になった。

 

流石に真夜中に動くのは利口とは言えないので、近場のキャンプ場でキャンプすることになった。

 

の、だが───

 

 

 

 

 

「いいかー?ぜっっっっっったいに!!覗くなよ~?」

「しないから!死んでも頼まれても脅されてもぜっっっっっっっっっっっっっっっっったいにしないから!!」

「・・・・・・輪廻、お前昔何かあったのか?」

「あ・・・・あははは(汗)」

 

女子たちが水浴びをしてくる、とのことで、僕は一人、離れた場所で見張りをすることになった。

え?覗き?しないから。ぜっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっったいにしないから。

みんなかなりレベルの高い美少女だし、そういう所を気にしてくれるのは心の底から助かるよ。

歌野ってば、諏訪でも四国でも僕がお風呂入っているとすぐ、「私もー!」って言って入ってこようとするんだもん・・・・・ホンっっっっっっっっっっっっト、しんどい・・・・・

 

「ハッ・・・ご苦労なことだな」

「・・・・・・ねぇ、ニック。少し前から気になっていたんだけど・・・」

「あの()()()のことを言っているのなら、無闇に首を突っ込むな」

 

ぴしゃり、と黙らせられる。

 

「───────アレが何か、ニックは知ってるんだね・・・・?」

「───────『世界の煮こごり』」

 

煮こごり?なんじゃそりゃ?

 

「アレは、人間の怨念が寄固まって出来上がった、まさしく『煮こごり』みてェなモンだ」

「・・・・触ったら?」

「盗り憑かれる」

「・・・・・・なるほど」

 

訪れる沈黙。まぁ、ニックとはあんまり会話ってしないからね。

 

「・・・・・・・・・高嶋友奈」

「んー?」

「あの女、煮こごりが見えていた様だな・・・・」

「あー・・・・やっぱり、そう思う?」

「見える処か、多分、アイツは煮こごりのことを知っているだろうなァ」

「ふぅーん・・・・そうかぁ・・・」

 

それなら、後で話を聞いてみようかなーと、考えていたその時───

 

「───────いるね」

「───────いるな」

 

自分たちとは別の誰かの匂いをキャッチ。

奇しくもそれはみんなが水浴びをしている川岸の方向からしていた。

 

「みんなが危ない!!」

「行くぞ輪廻」

 

真っ直ぐにそちらへ向かう。

近場まで来て、音を立てないように更に接近。

相手は茂みの中で様子を伺っているようだ。

こちらには─────気付いていない、か・・・

 

「・・・・・・・・ん?」

 

あいつの後ろ姿・・・・なぁんか、見たことあるような・・・・・

 

 

 

 

 

「ハァwwwハァwwwでゅふふふwwwwwwお色気シーンでおじゃるwwwwwwCGコンプしないとwwwwww」

 

 

 

 

 

「うわぁ・・・・・」

 

変態がいた。

 

「中学生にしてあのナイスボディなお二人も良いが、元気っ娘のナインペタんもたまりませんなぁwwwwwwしかし、サムライガールと農業王の鍛えられた肉体美も、素晴らしいwwwwwwああ、いや、シャイガールの程好い肉質も、アレはアレで得点が高いですぞぉwwwwww黒髪美女の疵のあるあの身体も、我輩には美しく見えますなぁwwwwwwうむむ・・・しかしこの中で一番一際輝いておるのは───」

 

「おい変態」

 

「誰が変態だぁ!・・・・・・・・・あ」

 

ニックの呼び掛けに、人間体をとったラウムが、こちらに振り向いた。

沈黙が流れる。

不意に、

 

「ばいちゃ♪」

 

「逃がさないから!!」

 

影の中へ沈んで逃げようとするラウムを捕まえようと、飛びかかる・・・・・・が

 

「あらよっと」

「なんとぉ!?」

 

カラスに変身してそれを避けた。

当然僕はそのまま茂みの向こうへ飛んで行く。

 

「くっそ・・・・あいつ・・・・・・・」

 

取り逃がしてしまい、歯噛みしていると───

 

 

 

 

「あ・・・・あのぉ・・・・・・・りっくん?」

「・・・・・・・・・・あ」

 

 

 

 

 

みぃの声に振り向けば、そこには・・・・

そこに・・・・・・は・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『き・・・・きゃあ「ぶべらばっ!!」あああ・・・・・・・・・・え?』

 

 

みんなが叫ぶよりも早く、僕は鼻血を大量噴射して、気絶した。

 

 

 




『世界の煮こごり』について

主に、人間の怨念がまるで煮こごりのように寄固まって出来上がったモノ。世界の煮こごりという名称は、悪魔たちが付けたもので、魔術世界的に言うと────


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地下と死体と命の価値は・・・ 遭遇編

この物語、本格的始動のための序章


「うぅ~ん・・・」

「あ♪輪廻さまっ」

 

目を覚ますと、目の前に香草クンがいた。

 

「よかった・・・りっくん、気絶する前のこと、覚えてる?」

「・・・・んーと、変態カラスを追いかけてるところまでは覚えてるんだけど・・・」

「そっか・・・・」

 

みぃが少し残念そうにしている。何があったんだろう・・・?と、それよりも

 

「香草クン。どうして──いや、どうやってここに?」

「ラウムと再契約しまして、その能力で輪廻さまの影に潜り込みまして!」

「なるほど」

「納得しちゃうんだ・・・」

 

だからなんでみぃは残念そうにしてるのさ?

まぁ、とにかく色々あったけど僕たちはここで一晩を過ごした。

バーテックスが襲ってくるかも、と見張りを進み出たけど、特に何事もなく、みんなぐっすり眠れたみたい。

 

―――――――――――†――――――――――

 

パーティーに香草クンが参加した翌日──

 

「梅田に来たぞー!」

「今日はりっくん、朝からエキサイティングしてるわね!」

「小さい頃から梅田と銀座に行くのが夢でした!」

「────────モノポ○ー?」

「郡クン鋭い!その通り!」

「ぐんちゃんよくわかったね!?」

「あのボードゲーム、梅田と銀座に止まれれば、大体勝てるって言われてるから・・・流石に、プレイしたことは無いけど・・・・・」

「そうなのか・・・・私はそもそも、モノ○リー自体知らないのだが・・・・」

「うおぉぉぉぉ!!憧れの梅田ぁぁぁぁぁぁ!!!」

「輪廻さん!?何処に行くんですか~!!」

「お前ら、モノポリ○の話は良いから輪廻を止めるの手伝ってくれぇ~!」

 

―――――――――――†――――――――――

 

全員で暴走する僕を止めたり、伊予島クンが潰された古書店を目の当たりにしてバーテックスへの怒りを燃やしたりして梅田を探索するが、やっぱり、誰もいない。

どころか、バーテックスすら見当たらない。

 

「バーテックスもいないとはなぁ・・・」

「・・・・あの、卵のような物体すら、見当たらないわね」

「地上には無い。となると、必然的に───」

 

この街に入る少し前の会議にて、『梅田には大きな地下街がある』と言っていた。

そこなら避難シェルターにもなるし、もしかしたら、生存者も見つかるだろう、と。

 

「──────行こう。もしかしたら、の可能性だって、あるかもしれないし」

「りっくん。良いこと言うじゃない♪」

「なら、それは歌野のおかげだね」

「ふふ、ユアウェルカムよ♪」

 

―――――――――――†――――――――――

 

地下道への入り口はちゃんと残っていた。

周囲にばらまかれた机やらなんやらは、きっと、バリケードの名残だろう・・・・

ということは────

 

「──────行こう。確かめてみなければ、何もわからない」

 

若葉の言葉に促され、僕たちは地下へ入っていった。

辺りは暗く、電気が通っていないのは、一目瞭然。

 

「こんな時は、ニックの炎で「「りっくん!」」ごめんなさい・・・・」

 

歌野とみぃに怒られたので、今度はふざけないでちゃんと懐中電灯を取り出した。

 

「誰かいないかぁ~~~!!!」

「いたら返事プリーズ!!!」

 

若葉と歌野が呼び掛けるが、二人の声が反響するだけで何も返ってこなかった。

 

「生活してた痕跡は、あるみたいですけど・・・」

 

伊予島クンが辺りを見回して分析してくれた。

確かに、空のペットボトルやら何かの包みなんかがまばらに散乱してはいる・・・・けど、やたら少ない気もする。梅田って、人口少ないの?それとも、逃げ込めた人数が少なかった、とか?

 

「─────妙だな」

「ぅわ!?ニック!?」

 

いきなり隣にニックが現れた。びっくりするから止めて欲しいんだけど・・・

 

「妙、とは?」

「生命体の気配が無ぇ。それは解る。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

ニックの言葉に全員が驚愕する。

 

「───どういうことなんだ?」

「さぁな。だが、用心に越したこたァ無いだろうよ」

 

それだけ告げて、ニックはまた指輪に戻った。

 

「─────どう思う?」

 

全員で顔を見合わせて、ニックの発言について議論する。伊予島クンが手を上げて発言し始めた。

 

「ニックさんの発言が本当なら、ここには本当に何も無い、ということになりますが・・・・」

「あのデビルが、こういう時に嘘を付くのはあり得ないわ」

「どうして、そう言い切れるの・・・?」

「ニック・・・さんは、りっくんが死なないように行動しています。こんな所で嘘なんか付くわけ、無いと思います」

「ふーん・・・じゃあ、あいつは輪廻が死なないよう、タマたちに警告してくれたって所か?」

「そう考えるのが、妥当でしょうね・・・」

 

上里クンが難しい顔でそう言った。

 

「うーん・・・とにかく!みんなで注意して進む!これで良いと思うんだけど・・・・どうかな?」

 

友奈がそんな事を言い出した。

 

「─────ま、良いんじゃないの?」

「だな!」

 

そんな訳で、ここからは更に注意して進むことになった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「なんだよ・・・・これっ!?」

 

広い場所に出た瞬間、タマっちクンが叫んだ。

そして同時に───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやぁ・・・?やっと、生存者が来ましたかぁ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広場に積まれた白骨の上に座る少女が、こちらを見て、呟いた。

 

「貴様・・・何者だ!!」

「ははぁ・・・・血気盛んなのは結構ですねぇ。ええ。わたくしですね?」

 

のらりくらりと、少女は立ち上がり、名乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたくしは、七十二の悪魔が一体。序列十六位ゼパルと申し上げます。以後、お見知りおきの程を・・・」

 

恭しく、一礼した少女の瞳は、まるで死体の"それ"のように、ひどく、濁りきっていた。



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地下と死体と命の価値は・・・ 日記編

「悪魔・・・・ゼパルだって!?」

「おい!なんでテメェがここにいやがる!」

 

うわ!?またニックのやついきなり出て来て!

 

「お久しぶりですなぁゼパルどの!・・・・会いたかったぜクソヤロウ」

 

変態も出て来たよ。しかもなんか怒ってる?

 

「ははぁ・・・・これはまた・・・・意外な組み合わせですねぇ・・・・」

「ハッ!テメェが表に出て来てる時点で意外だがな」

「あぁまぁ・・・・確かに、そうですねぇ」

「オウオウ、クソ雑魚ナメクジのゼパルさんよぉ・・・オレとお嬢を操ってくれたオトシマエ、着けさせて貰おうじゃねぇか・・・!」

 

どうしよう・・・変態が変態してない!キャラ崩壊も良いところだよ!?!?

 

「オイ輪廻」

「はい!?」

「アイツを焼け」

「えぇ!?良いの!?あいつの事、なんにも分かってないよ!?」

「アイツはゼパル。名前を奪った対象を意のままに操る能力"生名簒奪(ロストネームド)"であのガキとラウムを操り、四国に攻め込ませた犯人だ」

「よし焼こう」

「りっくん!?」

 

ニックの力を使おうとしたら、みぃが止めた。

 

「はぁ・・・・短絡的ですねぇ。こちらにも事情があるのですよ」

「テメェの事情なんざ知ったことか!!どうせロクでもねェ企みに加担してるだけだろうが!!」

「ああ、鋭いですねぇ。流石は"指輪持ち"、といった所ですねぇ」

「指輪・・・・?」

 

ニックの本体だって言う、アレのこと?

 

「おやぁ?ご存知無いのですか?」

 

ゼパルは心底驚いた様子で、こちらを見ていた。

 

「何の事だ!」

「我ら悪魔の真鍮核(コア)のことですよぉ。それが指輪型の悪魔は、七十二体中十体のみ。本来ならば、自然の摂理に準じた特別な能力を使う我ら悪魔ですが、中でもこの十体は特殊中の特殊でして、自然の摂理に反した能力を持っているのですよ」

「自然の摂理・・・・?」

「ええ、はい。例えば、彼。ええっと────ニック、ですか?奇妙な名前を貰いましたねぇ」

「僕の命名センスにケチ付けるの?」

「あれぇ・・・・あなたが付けたんですか・・・・まぁ、どうでも良いですけど・・・・」

 

どうでも良いのか・・・・

 

「ニックの核が指輪型なのはご存知ですか?知ってる?結構。じゃあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「「・・・・・・・・え?」」

 

ゼパルの言葉に、歌野とみぃが絶句し、僕を見る。

 

「りっくん・・・・アイツの言ってること・・・・本当?」

「正直に答えて・・・・・りっくん」

「───────────うん。そうだよ」

 

バレてしまっては仕方ない。だから、正直に答えた。

 

「・・・・・今は、何も言わないでおいてあげる。帰ったらみーちゃんと一緒にお説教だから」

「──────ごめん」

「ははあ・・・仲が宜しいのですねぇ。良い事だと思いますね。ええ・・・」

「ゼパル!!テメェ・・・何が目的だ!!」

 

ニックが怒鳴る。その怒号をうけてゼパルは──

 

「わたくしの目的は、一つ。この世の全てを解き明かしたい。たった、それだけです」

「この世の、全て・・・・?」

「解き明かす・・・・って、どういう意味だ?」

「言葉通りの意味ですよ。例えば・・・・・・えっと・・・・はぁ、バーテックス?と、呼んでいるのですねぇ・・・・確か、英語で『頂点』の意味・・・・ぷふ」

 

途端に、ゼパルが笑い出した。

 

「何が可笑しい!!」

「ああ、いえ、すみません。───ぷぷ。なにぶん、あんなものを『頂点』などと呼ぶもので───くふふ。いやはや、知らぬ事とはいえ────ふひひ」

「ニック。こいつ燃やそう」

「手伝うぞ輪廻」

「落ち着いてりっくん!!」

「若葉ちゃんも!今は堪えてください!」

 

額に青筋をたてている僕と若葉を、みぃと上里クンがなだめる。

 

「────あー、いやはや、失礼。お詫びと言っては何ですが・・・みなさんがバーテックスと呼ぶアレについて、わたくしの研究成果を教えてあげましょう」

『え!?』

 

ゼパルからのその提案に、流石の僕たちも怒りが引いた。

というか、こいつ、研究成果って言ってた?

 

「────まさか、ここにバーテックスがいないのは」

「はい、全てわたくしの研究材料として、使わせて頂きました。いやはや、連中、見境がありませんからなぁ。おかげで何度も命の危険に晒されましたよ。まぁ、その前に、ここで人間の思考実験もしていたので、その後始末が楽になったのは、行幸でしたけど」

 

そう言って、一冊の手帳を投げて寄越す。

若葉の足元に落ちたそれを、彼女が拾い、黙読。

読み進めていく内に、若葉の顔色がどんどん青くなっていき───

 

「ふざけるなっ!!!」

 

若葉が叫び、手帳を地面に叩きつけた!

 

「若葉ちゃん!?」

「どうしましたか!?」

「────────これは、お前の仕業なのか、ゼパル!!!」

 

若葉が投げた手帳を拾い、中を読む。

書いたのは、どうやら女の子らしい。

この場所で、何が起きたのか。

それが、赤裸々に書かれていた。

 

「思考実験・・・・ね」

「・・・・・・デビルめ」

「・・・・・・ひどい」

 

いつの間にか、両サイドから歌野とみぃが手帳を覗き込んでいた。

簡潔に述べれば、ここに避難した人間たちはどうやら、独占と奪い合いによって自滅した、らしい。

追い込まれた人間が、どのような行動に出るか。

ゼパルの言った"思考実験"と言うのは、このことか・・・・クソったれ。

 

「ちなみに・・・・この肉体は、最後まで生き延びた少女のモノでしてねぇ。あぁ、その日記を書いたのも、この少女ですよ」

「──────御託はいい。さっさとバーテックスについて教えろ」

「冷たいですねぇ・・・・まぁ、いいでしょう」

 

そうして、ゼパルは話始めた。

バーテックスについて、奴の知る事全てを・・・・

 



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地下と死体と命の価値は・・・ 解明編

「端的に言ってしまえば・・・・・アレは泥人形ですよ」

「泥人形・・・・?」

 

ゼパルは頷き、話を続ける。

 

「主の命令に従い、人類を粛清するだけの人形。その材質は─────『世界の煮こごり』です」

「え!?」

「何だと!?」

 

煮こごりって・・・・確か、怨念とかが固まって出来たやつだよな・・・・

 

「それが・・・アレの材料・・・・て、ことは・・・」

「────────クソが。主犯はアイツか」

 

変態とニックが何かに気付き、毒付く。

 

「─────心当たりが、あるのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ」

 

若葉の質問に、ニックが頷く。

 

「教えてくれ。世界をこんな風にした奴とは、一体誰なんだ?」

「────────────オレたち悪魔の中で、唯一、『悪意の泥』に触れることの出来る奴がいる。そいつの名は────」

 

ニックが、名前を言おうとした、正にその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フム・・・・反応を辿って来て見れば────お前か。ゼパルよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰だ!!」

「私の名は、ジュリアス・レイ・ヴェガリオ。七二の悪魔が一体、序列六十六位キマリスを従えし超越者(オーヴァード)である!!」

 

背後から現れたその男は、細身のレイピアを顔前に構え、高々と名乗りを上げた。

 

「超越者だと!?」

「アニキ、不味いですぜ・・・キマリスの超越者ってなると、戦闘能力は・・・・・」

「ほう?そちらの二体はキマリスと同じ悪魔と見受けられる・・・・・が、どうやら契約の超越迄は至っていない模様だな」

 

契約の超越?超越者って・・・・?

 

「フム・・・・?しかし可笑しいぞ。ここから私と同じ超越者の気配もした気がするのだが・・・・まあ、良い。さて、私との決闘に応じる猛者は居るか!!」

 

周囲の瓦礫が吹き飛ぶ程の覇気を飛ばし、ジュリアスはこちらを睨み付ける。

 

「・・・・・どうする?」

「なんとかしてあの人を退けて、ここから脱出しないと・・・・」

「どうした?応じる者は居ないのか?ならばここからは一方的な虐殺が始まるぞ?」

「─────言ってくれるな。お前は一人なのに対し、こちらは七人。数の上ではこちらが有利だぞ?」

 

若葉があえて挑発するような事を言う。が、ジュリアスは意にも介さず、平然と言ってのける。

 

「その程度の差ならば、全く問題にはならんな」

「・・・大した自信ね」

「あまり我々を見くびるな・・・!」

 

戦いの火蓋が、切って落とされた!

 

―――――――――――†――――――――――

 

先手必勝。

郡クンと友奈が共にジュリアスに突っ込む。

 

「はぁぁぁぁ!!」

「フン」

 

郡クンの鎌を、ジュリアスはいとも簡単に弾き、流し、終いに郡クンを蹴飛ばしてしまった!

 

「でやぁぁぁ!!!」

 

その後ろから友奈が突撃。

が、その拳を軽く身を反らすだけで避けてみせたジュリアスは、そのまま友奈の腕を掴み、突撃の勢いを利用しての背負い投げで、郡クンに向かって友奈を投げ飛ばした!!

 

「「きゃあああああ!?!?!?」」

「ならっ!これはどーだぁ!!」

 

タマっちクンと伊予島クンの同時攻撃。

矢弾の嵐の中、旋刃盤がジュリアス目掛けて飛び掛かる。

 

「甘いぞ!!」

 

しかしジュリアスは、矢弾をレイピアで弾くと、旋刃盤をそのままレイピアで絡めとり、二人目掛けて投げ返した!

 

「あぶ────かはっ!?」

「タマっち先輩!?」

 

伊予島クンを庇ってタマっちクンがそれに被弾。

 

「余所見をしていて、良いのかな?」

「あぐ!?」

 

一瞬の隙をついて、伊予島クンの背後に回ったジュリアスは、レイピアの柄で彼女の後頭部を殴り、伊予島クンは気絶。

あっという間に四人がやられた。

だが、ここで怯む訳にはいかない────!

 

「歌野!」

「オフコース!!」

 

僕と歌野による同時攻撃。僕は奴がレイピアを持つ左から、歌野はその反対から攻める。

 

「ほう?」

 

ジュリアスは真っ先に僕を狙って来た!うん。読み通りだ!

ジュリアスが突き出してきたレイピアを、カギ爪でガッチリホールドする。その隙に、歌野が右腕を鞭で縛る。

 

「これで動けまい!」

「考えたな!」

 

そこにすかさず若葉が攻撃する。これなら───!

 

「だが、甘いと言ったぞ!!」

 

ジュリアスは咄嗟にレイピアを手放し、腰にマウントしてある鞘のようなものを取る。

その瞬間、鞘と思っていたそれから、光が刃となって迸る!

光の剣、とでも呼べば良いのか。ジュリアスはそれを若葉に向かって振り抜く。

若葉の生大刀と、ジュリアスの光の剣が交差し─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静寂が、辺りを支配する。

二人は互いに、剣を振り抜いた体勢のまま、固まって動かない。

静寂を破ったのは、若葉の左肩から吹き出した鮮血。

 

「若葉ちゃんっ!?!?」

 

上里クンの悲鳴が響く中、若葉が膝を着く。

 

「──────フム。一つ、諸君等に謝罪しよう。そちらの戦闘力を侮っていた」

 

ジュリアスが静かに、光の剣を下ろして自身の首を撫でる。

ジュリアスの首筋に、一筋の赤い線が真横に引かれている。それが、若葉の一太刀によるものだと、僕は瞬時に気付いた。

 

「貴殿、名は何と言う?」

「─────若葉。乃木若葉だ」

「そうか・・・・ワカバ、貴殿の太刀筋、見事であった。今回はこれで引き下がろう。が、次に会った時は、容赦はしない」

 

それだけ語って、ジュリアスは来た道を悠々と歩いて戻って行った。

 

「はぁはぁ・・・・行っちゃいましたねぇ・・・・・で?どうするつもりですか?」

 

ゼパルが問う。

どうするも何も────

 

「いつの間にか歌野の拘束を解いてるし、あのジュリアスとかいうやつ・・・・今は追いかけない方が無難だね」

 

とりあえず僕は歌野と共に気絶している四人を起こしにかかる。

しかし────超越者、か・・・・・

 

「まったく、大変だ」

 

 



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寂しがり屋のロンリーボーイの章 上里一正は天才児である

ついに、『結城友奈は勇者であるA』のぱるにゃすによる実況動画が配信されましたね。

最後の銀にやられた方々は多いはず。僕もその一人です。

そんな訳で!ミノさん救済ルートを突き進むわすゆ編!

どうぞ、お納めください。


おれが、上里一正(カズマ)としてこの世に産まれて、七度目の誕生日に、両親が死んだ。

両親にねだって連れて行ってもらった遊覧船『あきつ』。その転覆事故に両親とおれは巻き込まれ、結果、おれだけが生き残ったのだ。

だが、大人たちはおれに、悲しむ時間を、心の整理をつける時間を、与えてはくれなかった。

遺産相続、権限委託、難しい言葉を並べて、まくし立てる。

結局、おれの手元に残ったのは、誕生日が一日違いの妹と、大きさは変わらないはずなのに、やたら広く感じる我が家だけだった。

生活費は、ろくに顔をあわせたことのない叔父が出してくれることになった。

一度にたくさんのものを失ったおれたちに、大人たちは口々に言う。「つらかったね」「災難だったね」と・・・

だからおれは、言ってやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その言葉、本心からですか?」てな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に対して何も言い返さない大人もいれば、そうでない大人もいた。

前者には無視を決め込み、後者の、それもおれを心から心配していそうな大人たちには、子供らしくすり寄った。

そうして、自分の顔を変えて、大人たちの間で生きていった。

父さんから託された、あるものを守るために。

 

―――――――――――†――――――――――

 

父さんは、この世界を守護してくださってる『神樹様』を奉る組織『大赦』の中で、最も発言力の高い地位に座していた。それはつまり、父さんの一言で大赦を自由に動かせる、ということ。

しかし、父さんは私的にその権力を利用することを良しとせず、世のため、人のために権力を奮った。

そんな父さんに託されたもの、それは大赦本庁地下に存在する資料保管庫、通称『開かずの間』のカギ。

ここには、西暦から今日までに至るまでの全ての資料が()()()()()()保管されている。

それゆえに、やろうと思えば今の世の中の常識を、根本からひっくり返すことだって出来てしまう。

だがおれは、そんなことをするつもりはない。

このカギを渡された時、父さんは言った。

 

「いつかの未来、お前が私の意思を継いでくれることを信じて、このカギをお前に託そう」

 

おれは、父さんの意思を継ぐ。

継いで、この国を、人々を守る。

だからおれは、大人たちの目を盗み、『開かずの間』に入り浸った。

ここならなにか、役に立つ資料があるはずだと、そう信じていたからだ。

結果としては、それは正しかった。

神樹様と、神樹様が創る結界『樹海』についての考察がまとめられたノートが見つかったのだ。

筆者の名は『伊予島杏』

現代において、大赦を創設した六家、通称『六花』に数えられる、伊予島家の人間にして、初代勇者の一人。

このノートから得られた情報を元に、ある方法を模索する。

 

すなわち、『勇者以外の人間が、勇者と同等の力を手に入れる方法』

 

勇者は、神樹様の力をその身に宿すことで常識離れした能力を獲得する。

もし、勇者の素質を持つ者以外にも、神樹様の力を宿すことができたなら、西暦から続く奴らとの戦いにも、終わりが見えてくるのではないだろうか。

そう考えての研究だ。

 

―――――――――――†――――――――――

 

研究を開始して一月―――

遂に基礎理論が完成した。

 

神樹様に選ばれた少女たちは、アプリを通じて神樹様にアクセスすることで勇者になれる。

また、神樹様に記録された怪異や自然現象を、精霊という形で自身の身体に降ろし、使役していたという。

 

ここで一つ、仮定を立てる。

 

神樹様を『巨大なサーバー』として見た時、そこから伸びる樹海は『ネットインフラ』で、勇者たちは神樹様へのアクセス権限を持つ『アカウント』となる。

 

この仮定を前提として、おれの研究を一言で纏めるなら

 

「現在広く普及しているインターネットのように、誰もが『ゲストアカウント』で神樹様に接続可能になれるシステムの開発」

 

となる。

 

その名も、『ジュカイネット』

 

おれは早速、大赦の上役たちにこの理論を提出。反応を待った。

 

結果、大赦はおれの理論をゴミ箱に捨てた。

 

曰く、「これは神樹様への冒涜に当たる文書である」とのこと。

 

「人類を護ることに繋がるのだから、例え冒涜に当たるとしても、神樹様は大目に見て下さるはずだ!」

 

おれはそう訴えたが、頭の硬い老害どもは聞く耳を持ってくれなかった。

 

「あにさま、どうかお気を落とさず・・・何事にも、挫けずリトライ♪ですよ!」

 

「・・・・・・さんきゅ、佳南(かなみ)

 

この時のおれにとって、妹の佳南だけがおれの味方だった。

そう、思っていた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「へ~いかずくん!今日こそ遊ぼうぜ~♪」

 

おれの理論をゴミ箱に捨てられてから数日後のある日、園子がやってきた。

 

乃木園子―――

『六花』の内の一家で、上里と同等に大赦での発言力が高い乃木家の一人娘。

昼寝とシエスタとかわいいモノ集めが趣味の変わり者。

家柄とその突飛な言動のせいで友達がいないことを少し気にしている。

 

そんな奴だ。

 

「・・・・・・なんか用か?」

 

「かなちゃんはもう準備万端なんよ~?あとはかずくんだけ!さあ!レッツエンジョイカガワラァァァァァイフ!!」

 

「待て、出かけるなんて一言も言ってない」

 

「ええ~!?いかないの~?」

 

おれの予定を勝手に決めるな。

大体、佳南もこいつの誘いに乗るなよまったく・・・・・・

 

「おれにはまだやることがあるんだ。お前みたいに年がら年中ボケ~っとしてる訳にはいかない」

 

「でもでも~、ちょっとは息抜きも大事なんよ~」

 

それは理解できるし、園子もおれのことを考えて行動しているのも分かる。だが―――

 

「今は休む訳にはいかないんだよ。あと少し、もう少しで完成するん「かずくん!」」

 

いつになく、真面目なトーンの園子がおれの顔を両手で押さえて無理やり向かい合わせてきた。

真正面から見る園子の顔は、やはり、というか、なんというか、その、率直に言ってかわいい。

『お人形さんみたい』なんてありきたりな言葉でしか言い表せない自分の語彙力の無さが悔やまれるくらいだ。

 

「ねぇ、かずくん」

 

「・・・・・・あ・・・な、なに・・・かな・・・?」

 

先程、園子のことをとやかく言っていたが、おれも園子と同じく友達がほとんどいない。それを嘆いたことはないが、こういう時に言い淀んでしまうのは、なんとかしたいな、と思っている。

大人相手に演説するのは得意なのだが・・・。

 

「え~い♪」

 

むにぃ、といきなり頬を引っ張られた。

 

「ふぁっ!ふぁ()いおふう(にをする)ぅぅ!!」

 

「わぁ、ほっぺたやわらか~い♪」

 

そのまま、おれの頬をぐにぐにと、いじくり回す。正直、痛い。

 

ほおお(そのこ)

 

でも―――

 

「ん~?なぁに~♪」

 

心底楽しそうに頬をこねくり回す園子がかわいかったので、なんだか止めさせられなかった。

 

「・・・・・・あんへおあい(なんでもない)

 

「ん~、そっか~」

 

なんというか、おれも甘いやつだと思う。

昔からそうだ。何時だっておれは園子には勝てない。頭が上がらない、とか、そういうのではない、と思う。

多分、園子のやることが他人を思っての行動なのを分かっているから、なんだと思う。

そうでなければ、こんな頭お花畑なやつに、こうも好き勝手させたりしない。

 

 

 

 

 

 

このあと、結局おれは佳南と園子と園子の両親と一緒に遊びに出掛けた。

 

帰ってきたおれは、実に数日ぶりにぐっすり眠れた。




上里一正について―――

イメージソング:
・PSI-missing
・Rimless ~フチナシノセカイ~


上里ひなたの子孫。
五歳で自作OS搭載パソコンを造れるほどの天才児。
頭が良すぎて大人たちからは少し気味悪がられているが、家族ぐるみで交流のあった園子の両親は彼に対して偏見をもたず、「子供らしく、無邪気にのびのびと育って欲しい」と思っている。
妹の佳南の世話をしながらも、上里家当主としての責務を全うしようと頑張る努力家。そのせいか、変に気取っている節がある。
実は寂しがり屋。


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時計の針が、動きだす

さて、こっちも動かすとしよう。

そんな訳で、どうぞ、お納めください。


その日、おれの下にとある情報が届いた。

 

 

 

今代の勇者を選定。その結果を記す。

 

乃木園子

 

三ノ輪銀

 

鷲尾須美

 

以上、三名を勇者の御役目に任命する。

 

 

 

これを見たおれは、真っ先に禊の場に向かった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

禊の場―――

 

神樹様から流れる湧水が滝となって流れる場所で、ここから四国中に、神樹様の加護が行き渡っている。

本来ここには、おれのような部外者は入れない。が、そんなことは知らない。

 

「邪魔だ・・・!」

 

「いけません、一正さま!此処より先は・・・」

 

「おれには!いかなくてはならない理由がある!!」

 

警護の神官を押し退け、禊の場に一直線に向かう。

その途中―――

 

「あれぇ?かずくんだ~」

 

いた。園子だ。

どうやら禊は終わったようで、大赦の神事服を纏っていた。

園子の手に握られたスマホを一瞥したおれは、右手を園子に差し出す。

 

「園子、()()を渡せ」

 

「・・・・・・・・・」

 

園子は何も言わず、こちらを見つめる。

 

「おまえには荷が重い。おれが代わりを務める。だから―――」

 

「かずくん」

 

園子はゆっくりと、首を左右に振った。拒絶の意だ。

 

「・・・・・・なぜだ?おまえが背負う必要なんて、どこにもない。『乃木家』に生まれたからと言って、おまえが勇者になる必要はどこにもないんだよ」

 

「・・・それでも、わたしは勇者になるよ」

 

「だからっ!!その必要なんて無いんだって!!」

 

「かずくん!」

 

「っ!!」

 

園子が吼えた。こんなこと、今まであまりなかったから、思わず怯んでしまった。

 

「かずくん。わたしが勇者になるのは、神樹様に選ばれたからじゃなくて、()()()()()()()()()()()()なんよ~」

 

ふにゃり、と笑って、園子は言った。

分からない。命を睹しての戦いなんて、園子には似合わない。そもそも、園子が自らそんなことを進んで受けるだなんて、あいつの性格を鑑みてもあり得ない。

 

「なんでさ・・・なんだって・・・そんな・・・

 

「・・・・・・かずくんが、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――――――――――――――――――は?」

 

訳が分からない。おれが頑張っているから?それがどう関係している?

 

「わたしはね、いっつもかずくんのこと見てたんだ~。かずくん、気付いてなかったでしょ?」

 

確かに、気付いてなかった。なにせおれにはやることがあったから。佳南のことを見ながら、上里家当主としての責務を全うしなくてはならなかったから。

 

「あ~、かずくんのこと、責めてるとかじゃあないんよ?かずくん、忙しそうだったし、邪魔したりしたくなかったんよ~」

 

よく言う。「気分転換なんよ~!」とか言って、外へおれたちを連れだしたりしてたクセに。

まあ、嫌いなんかじゃ、なかったけど。

 

「同い年なのに、すっごいがんばってるかずくんのお手伝いがしたかったんだけど、わたしじゃ無理だから・・・」

 

んな訳あるか。おまえ、おれと同じくらい頭良いだろうが。

 

「だからね。わたしが勇者の御役目に選ばれたって聞いて、ピッカーンときたんよ。『()()()()()()()()()()()()()()()』って」

 

「――――――――――――それが・・・理由・・・?」

 

「うん」

 

膝から、崩れ落ちた。

そんな理由で?

理解できない。

おれなんかに、そこまでの価値は無い。

おまえに、そこまでされる必要は無い。

ただ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ―――」

 

ああ、そうか。ようやく気付いた。

結局のところおれは、あの時と何も変わっちゃいないんだ。

両親が死ぬ前のころと何も変わらない。甘ったれのガキ。

そのくせ、粋がって独りでも平気だなんて顔してる。

 

「――――――――ようやく、分かったよ」

 

「かずくん?」

 

「園子、おまえが勇者になるって言うなら・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おれは、()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・え?」

 

「じゃ、またな園子。後で会おう」

 

覚悟を決めたおれは、園子の声に耳を傾けることもせず、その場から走り去った。

 

―――――――――――†――――――――――

 

その場所は、大赦本庁の一角、普段使われない第二会議室にある。

壁の黒板を押す。ギィ・・・と軋む音を響かせながら、倒れるようにして、隠し扉が開く。

その先には薄暗い廊下が延々と続いている。

 

「・・・・・・この先、か」

 

意を決して隠し扉の先を行く。

 

「何の用だ」

 

行こうとして、誰かに呼び止められた。

いつの間にか、後ろに青年が立っていた。

黒いシャツとジーンズ、赤いフード付きパーカーをラフに着こなしてる。

 

「・・・・・・・・・あなたは、『お社』の人間ですか?」

 

「ホウ、ガキのクセに良く知ってる」

 

お社―――

 

六花と同じく、大赦創設の頃より存在する組織で、常に大赦の影となり暗躍してきた。

その構成員は全員、『人成らざる存在』であると言われている。

が、真偽の程は定かではない。

そもそも、お社という組織の存在すら定かではなかったのだ。

おとぎ話の存在として民草に語り継がれてはいたが、誰もその姿を見たことがなかった。

 

だが、上里家だけは違った。 

 

そもそもお社を創設したのは上里家なのだ。

故におれも、お社の存在を知っていた。

知ってはいたが、来るのは今日が初めてだ。

 

「ア?――――オマエ、上里のガキか。なんでこんなところに居やがる」

 

「お―――わたしのことをご存知で?」

 

「ガキが猫被ってンじゃねぇよ。来い」

 

青年はスタスタと奥に進んで行く。その後ろをあわてて追いかけた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

しばらく歩くと、講堂のような広い部屋に出た。

良く見ると壁が本棚になっているようで、まばらではあるが本が仕舞われている。

 

「―――オイ輪廻、客だ」

 

「あだっ」

 

青年が床で寝ていた少年を足蹴にしていた。

ん?今、輪廻・・・て、言った?

 

「痛いよニック。起こすならちゃんと起こしてよもう!」

 

「うるせえ、いいから客だ。相手しろ」

 

「えぇ・・・ニックがやってよ・・・」

 

「上里のガキだぞ?」

 

「やあ!良く来たね。歓迎するよ」

 

おれの名前を聞いた途端、輪廻と呼ばれた少年がこちらに笑顔を向けた。

 

「―――――――色々、言いたいことはあるけど、とりあえず、置いておこう」

 

「はっはっはー。さて、何の用事かな?」

 

憮然としないけど、今はどうでも良い。本題に入る。

 

 

 

 

 

「おれに、『悪魔の力』をください」

 

 

 

 

 

「・・・・・・それ、どこで聞いたの?」

 

輪廻さんの表情が一変し、険しくなった。

 

「開かずの間です」

 

「あー、なるほど、ね。じゃあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「はい」

 

迷うことなく答えた。

 

「そっかぁ。んじゃ、OK。ニックー、呂の三番から一冊ちょーだい」

 

ばさり、と輪廻さんの頭に一冊の本が落ちてきた。

革表紙の分厚い本だ。かなり痛そう。というか、首の骨、折れるだろ今の。

 

「―――――ニックさあ、僕が何かした?」

 

「何度もやらかして来ただろうが」

 

「今更になってその精算でもしようっての!?」

 

「だとしたらどうする?」

 

「焼き鳥にして喰ったろかぁ!?」

 

「ハッ!面白い・・・やれるモンならやってみやがれ!!」

 

炎を撒き散らしながら、上空に飛んでいった二人。

よく燃えないなあ・・・。というか、ここの天井高過ぎじゃない?

 

「――――――――」

 

ふと見ると、さっきの本が落ちている。

拾い上げて表示を見る。

 

「『契約の書』・・・かな。多分これ、ギリシャ語だよね」

 

本を開く。

所々読めないが要約すると、この本の魔方陣を使えば()()()()()()()()()()()()()()()()、とのこと。

 

「これを使えば―――」

 

早速、契約の儀式を試すことにした。

 

―――――――view,change:輪廻―――――――

 

「―――まさか、上里のガキが契約者になるとはな」

 

「そうだねぇ」

 

今、僕のはるか下の方では、ヒナの子孫が悪魔を呼び、契約を交わしていた。

え?ニックとケンカしてたんじゃないのかって?

まさかぁ!今更ケンカなんかしないよ~。

 

「―――――次の世代か・・・なんだかしみじみするねぇ」

 

「ガキを死地に送り出すのがか?」

 

「―――――――――今まで聞いた嫌みの中で、一番の出来映えだね、それ」

 

「―――――――――そりゃ良かったな」

 

眼下では、契約が終了したみたいで、悪魔が少年の姿で顕現していた。

 

「―――僕らの時代はとうに終わりを迎えた。後のことは、彼らに任せようよ」

 

「――――――そうか」

 

新たな契約者の誕生に呪詛(しゅくふく)を。

 

願わくば、彼らの行く末に光多からんことを・・・。




お社について―――

神世紀の時代、あらゆる荒事を秘密裏に処理してきた大赦直属の暗部。

代表取締役の名は、『戸塚輪廻』

西暦の時代、人々を護るために悪魔と契約した少年と同じ名だが、その関係は不明。

他にも数名、構成員が存在するが、詳細は全くの不明。

本拠地は大赦本庁内、第二会議室の黒板の奥、『秘密の書架』と呼ばれている場所がそうである。


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はじまりはいつも、突然に

わすゆ編は基本的にサクサク進めたいので、わりと超展開かつ、急展開です。ごめんなさい。

こんな小生を許してくださる心の広いお方は、どうぞ、お納めください。


じりりりりり・・・・・・

 

バン!かち・・・

 

もぞもぞ・・・

 

「んぅ・・・なんだ、もう朝か」

 

「うん。そうだよ」

 

「っ!!・・・・・・て、なんだ。あんたか」

 

上体を起こしながら、おれに話しかけてきた少年を見る。

短髪の黒髪はボサボサで、あまり手入れはされていない。

着ている服も、半ズボンにノースリーブのシャツというラフさ加減。

正直、少しは身だしなみに気を使って欲しい。

と、この前言ったのだが―――

「んー・・・・・・考えとく」

なんて言って、この有り様。

正直、そろそろ佳南が黙っていないころだから言う通りにして欲しい。

 

「おはようカズマ。カナミが呼んでる」

 

「・・・・・・おはようミカヅキ」

 

彼の名はミカヅキ。おれと契約した『悪魔』だ。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「ミカぁ!!いい加減にしやがって下さい!!食べたら磨く!身だしなみはしっかりと!!いつも言っておるでしょうが!!」

 

朝食後、やはり佳南が黙っていなかった。

そもそもミカヅキは自分のことにルーズすぎる。

これを期にちゃんと身だしなみにも気を使えるようになって欲しいものだ。

 

「それより時間。良いの?」

 

「む・・・確かにもうこんな時間・・・」

 

「佳南、おれは先に行くから」

 

「あー!あにさま待つですよ!ミカぁ!外出の際は戸締まり、ちゃんとするですよ!良いですね?」

 

「うん。いってらっしゃい」

 

ミカヅキに見送られておれたちは家を出る。

あいつがうちに来てしばらく経つが、やっぱり、こうやって、誰かに『いってらっしゃい』を言われるのは、ずいぶんと久しぶりに思う。

 

「いってきます」

 

「いってきまーっす!」

 

だから、おれたちの『いってきます』が、少し弾んだものに聞こえるのも、仕方のないことかも知れない。

 

―――――――――――†――――――――――

 

学校へ向かう前に、乃木家に寄る。

理由は明白。寝坊助園子を叩き起こす為だ。

 

「おーい、園子ー。朝だぞ起きろー」

 

ふすまをスパァーンと勢いよく開き、園子の寝室に入る。

布団で愛用のネコ型枕―サンチョさんを抱き締めて眠る園子に近寄り、ゆする。

 

「おーきーろー」

 

「zzz・・・」

 

起きない。が、ここまでは想定内。必殺の起床術をお見せしよう。

 

「サンチョさんに嫌われるぞー?」

 

園子の耳元でネガティブなことを囁く。

こうすることで想像力豊かな園子は、一瞬で悪夢を見る。これぞ、秘技『園子起こし』

 

「んー・・・サンチョさんが・・・あ、まってよ・・・おいてかないで・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

園子が悪夢にうなされている。ものすごい罪悪感にさいなまれるが、心を鬼にして、耐える。

 

「まって!サンチョさぁぁぁぁぁぁんん!!―――――――――あれ?」

 

「おはよ。やっと起きたか」

 

「・・・・・・・かーずーくーんー?」

 

「怒るならさっさと起きること。ほら、準備して」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

園子が黙ってばんざいしたまま動かない。

これは、まさか―――――

 

「お着替え手伝って~?」

 

「・・・・・・おまえ、それでいいのか?」

 

「??かずくんになら、なにされても平気だよ~?」

 

ぽわぽわした笑顔で、そんなことを言う。

やめろ。そんな無邪気な笑顔をこちらに向けるな!

変なこと考えたおれがやらしいみたいじゃないか!

 

「つーか、誰かに聞かれでもしたら―――」

 

ふと、後ろを振り返れば、園子のお母さんと、目が合った。

 

「―――――」ニコッ

 

「―――――」(白目)

 

すごく、しにたい。

 

―――――――――――†――――――――――

 

朝のひと悶着をなんとか収め、学校へ向かう。

園子とはクラスが別な為、教室の前でお別れだ。

そこでも園子のやつがゴネるが、なんとか説き伏せ、自分のクラス(六年二組)へ。

 

「おはよう」

 

挨拶は大事。たとえ、返事が返ってこなくとも・・・

なんだよ。泣いてねーよ。悲しいとも思ってねーよ!

 

「・・・・・・・・・おはよう」

 

「おっはよーう!しょくん!今日も元気かーい!」

 

おれの後から、二人の少女がやってくる。

物静かな方は、山伏しずく

やかましい方は、枢木アスカ

この二人はよく一緒にいる。というか、山伏は枢木の家に厄介になっているそうだ。理由は知らない。多分、知らない方が良い類いのやつだ。

 

「へいへいへーい!カズヤ!おっはようさん!」

 

両手を広げてこちらに突きだしてくる。ハイタッチをご所望のようだ。

 

「・・・・・・・・・・一正だ」ペチン

 

「元気が無いなー!そんなんじゃボクの友達第二号としてなさけないぞー!」

 

うるせえ、そんなもんになった覚えは無い。

と、言おうと思ったが、やめた。こいつに理屈は通じない。

 

「・・・・・・・・・・・はぁー」

 

「・・・・・・・・・・・上里」

 

ため息をついていたら、山伏が話しかけてきた。珍しい。

 

「いつもありがとう。アスカの相手、してくれて」

 

「・・・・・あいつ曰く、おれたちは友達らしいからな」

 

「ん」

 

穏やかに微笑む山伏を見て、

こいつ、こんな顔もできるのか・・・

と思ったのはしゃべらないでおこう。

 

「おっ?ずっくがカズヤとなんかいーふいんき!」

 

「一正だ。いい加減、名前間違えんな」

 

ほんとにこいつは空気を台無しにする天才か。

そうこうしているうちに、担任の先生がやってきた。

 

「ヤバイ遅刻するー!」

 

廊下からそんな声が聞こえてきたが、無視して号令をかける。

 

「起立」

 

「礼」

 

「神樹様に、拝」

 

これが、神世紀における号令。いつも我々を見守ってくださり、ありがとうございます。と感謝の念を捧げてから、朝の学活に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった

 

―――――――――――†――――――――――

 

それは、唐突に訪れた。

 

「ん・・・?」

 

これから担任の高嶋先生による、ありがたいお説教(ノロケ話)が聞かされるはずだった。

しかし――――

 

「時間が・・・・・・止まってる・・・・・・?」

 

そう、周囲の時間が停止していた。つまりこれは―――

 

「園子たちと合流するべきだな」

 

そう思い、教室から出ようとした時、大橋の方角から、目映い光が周囲を包んだ。

 

あまりの眩しさに目を閉じる。

 

光が収まった時、景色は一変していた。

 

「これが・・・・・・樹海化・・・・・・」

 

資料を読んでいて、知識としては知っていても、実際に体験すると、やはり、思うものがある。

 

「あ~。かずくんだ~♪」

 

ふと、後ろから園子の声が聞こえてきた。

振り返れば、園子ともう二人、――たしか、鷲尾須美と三ノ輪銀、だったか――がいた。

 

「お~い」

 

こっちに向かって手を振る園子に手を振り返し、大橋の方を見る。

 

青い異形が、悠然と、大橋を進んでいた。

 

「あいつが、バーテックスか」

 

バーテックス―――

この世界を滅ぼすモノ。

アレが神樹様にたどり着いた瞬間、四国に張られた結界が解け、人類は滅ぶ。

 

「させるかよ・・・」

 

決意と共に端末を握る。

 

「変・・・身っ!!」

 

右手首に巻いたリストバンドに端末を装着。

すると、端末から光が溢れ出し、全身を包み込んだ。

弾けるようにして光が消えた時、おれの纏う衣服は、制服から右腕だけ袖の無い左右非対称な白い勇者服になっていた。

その後、リストバンドから無数のコードが伸び、右腕を被う。その上に無骨な装甲が被さっていく。

赤と青の肩アーマーが装着された後、右手にも装甲が装着される。

五本の指には鋭利な爪、手のひらには電極、そして、手の甲には煌々と輝く光が封じ込まれた宝玉が、それぞれ嵌め込まれた。

 

「ん―――準備完了!」

 

「おおっ!なんかちょーカッケェ!!」

 

「わあ~♪かずくんかっこい~!」

 

「あれが・・・・契約者の・・・」

 

三者三様の反応を余所に、おれは一人、大橋へ向かう。

 

「え!?ちょっと!上里くん!?」

 

鷲尾須美がなにか言っているが、無視だ。あいつ一体、おれ一人でなんとかしてみせる・・・!

 

「覚悟しろバーテックス・・・・・・テメェらはおれが滅ぼす!!」

 




モザイクのカケラ、一つ一つ繋ぎ合わせて描いていく。
貴女がくれた、出会いと別れを―――


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科学と呪術が、交差する時期<とき>

魔神セイバー、20連で来ました♪(大勝利~♪)


あ、やめて!石を投げないで!
聖昌石て刺々しいから刺さるのよ!



そんな訳で、続きをどうぞ、お納めください。(頭に石が刺さりながら)


「――――ふっ!」

 

バーテックスの放出する水球を時にステップで、時に転がって、すべて避ける。

しかし、このままではやつに攻撃できない。

 

「(まだ最終調整が済んで無いけど・・・やるだけやってみるか)」

 

右手首の端末をタップ。画面に円グラフが表示される。

 

「(とりあえず出力設定を20%にして・・・よし、完了)」

 

一応の準備は整った。

早速、試してみよう。

 

「ふんっ!」

 

右手のひらの電極を樹海の根にあてがい、エネルギーを放出。

瞬間、木の根が一部隆起し、おれの目の前に壁を生成したのだった。

 

「・・・よし、成功だ!」

 

これぞ、ミカヅキの能力とジュカイネットを掛け合わせて作り上げた、おれの武器。

 

その名も『覆式波動機関(ふくしきはどうきかん)

 

ジュカイネットにより神樹様に接続し、ミカヅキの能力である、生命エネルギーを操作する能力『波動天鎧(オーラマリオネット)』の力で樹海からいろんな物を生成。それを武器に戦う、というシステムだ。

しかし、これだけではおれはこの武器を使えない。なにせこのシステムで生成される物体は、精度は低いものの、勇者たちのみが使える神威の武器と同質の物だからだ。

 

そこで役に立つのが、これ。『所有権の書き換え能力』

 

おれがミカヅキと契約して獲得した能力だ。

効果は読んで字の如く。『触れた物体の所有権を自分に変える』というもの。

これにより、勇者にしか使えない武器も使用可能になる。

 

「ミカヅキ!!」

 

『わかった』

 

端末からミカヅキの声が聞こえてくる。

今、ミカヅキはこの端末のAIとして機能しているからだ。

 

『調整は今のでだいたい出来た。どれにする?』

 

「三番で」

 

『わかった』

 

間を置かず、先程出来た壁から、身の丈程の、細長い一本の棒が現れた。

それを右手で掴み、エネルギーを流す。

すると棒の上端、エネルギー発振基部から、緑色のエネルギー刃が、湾曲して出現した。それにより、棒は大鎌へと姿を変化させたのだった。

 

「いわゆる『霊力光刃(ビーム)大鎌(シザース)』ってやつだな」

 

大鎌を振り回して、一人心地る。

さて、準備は完了。いざ、勝負―――!

 

―――――――――――†――――――――――

 

おれの科学とミカヅキの能力、そして神樹様の御力を組み合わせて初めて完成するこのシステム、名を『デンドロビウムシステム』と称する。

今回使用する三番兵装は、速度と隠密性を活かした『奇襲用兵装』。

だが、他のモノよりも消費エネルギーが少なく、クセが無く使い勝手がとても良い。

使い勝手の良さだったら一番兵装でもいいのだが、今回の相手には速度を活かした戦い方が合うと思い、こちらにした。

 

「せやっ!」

 

速度にモノを言わせて急接近。大鎌による連撃をくわえる。しかしバーテックスに確かに傷を負わせることができたが、直ぐ様回復されてしまった。

 

「ちっ・・・解っちゃいたけど、こうも簡単に回復されるとは・・・」

 

お返しとばかりに放出された水球を避けつつ、悪態をつく。

直ぐにでももう一連撃喰らわせたいが、先程よりも水球の量が増え、身動きが取り辛くなっていた。次第に追い詰められていき―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かずくん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!園子・・・」

 

おれの窮地を救ってくれたのは園子だった。

槍を回転させ、水球を絡めとるように排除した。

 

「・・・・・・・・・一応、お礼は言っておく。ありがと」

 

「えへへ~♪」

 

にへら~、とはにかむ園子が、こちらに頭を向ける。なんだよ、撫でれ!ってか?

 

「・・・・・・・・・・・・・ったく」ガシガシ

 

「わわわっ!?かずくん、ちょっと乱暴だよ~」

 

「優しくされたけりゃ、もっとTPOをわきまえろ」

 

「ぶ~」

 

頬を膨らませる園子を無視してバーテックスに突撃する。

 

「上里!」

 

「・・・三ノ輪か」

 

途中、三ノ輪銀と合流した。もうここまで来たら仕方ない。ちっぽけなプライドにこだわって全滅、なんてザマは死んでもゴメンだ。

 

「おれは右側から攻める。三ノ輪は左から頼む!」

 

「おう!」

 

「ん!――――――え?」

 

「え?」

 

意外と素直にこちらの指示を聞いてくれた三ノ輪に驚き、つい足が止まってしまう。つられて三ノ輪も足を止めた。

 

「いや・・・・・・案外あっさり指示に従うんだな・・・と、思って」

 

「へ?なんで?」

 

「いや、なんで・・・って・・・・・・」

 

「いやあ、アタシ考えるのとかニガテだし、ガラじゃないもん。そういうのは得意なやつに任せて、その分、アタシが頑張る。『役割分担』ってやつ?『テキザイハイリョ』だよ」

 

「・・・・・・適材適所、な」

 

そうそれ!と笑う彼女を見て、なんとなくだが、三ノ輪が勇者に選ばれた理由が少しわかった気がした。

 

「・・・・・・三ノ輪、これからよろしく」

 

「おう!よろしくな」

 

互いに手を伸ばし、握手する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ことは、出来なかった。

 

「「!?!?!?!?!?」」

 

おれと三ノ輪は、バーテックスの放った巨大水球に取り込まれ、今まさに絶体絶命の状況に陥ってしまった。

水球の中でもがきながら、自分の迂闊さを呪った。

戦場で棒立ちなんて、アホでもしないことだ。

隣を見れば、三ノ輪も同じようにもがいている。このままだと二人とも溺死だ。

 

「(どうする?()()()使()()()、確かにこんな水球抜け出せる。だが、それだけの熱量をここで使えば三ノ輪にも被害が及ぶ。それだけはダメだ)」

 

考えろ。

 

要はこの水をどうにかできればいいんだ。

 

考えろ。

 

水を無くす方法・・・・

 

考えろ。

 

蒸発、撥水、あとは・・・

 

「!」

 

そうだ!()()()()()()()()()!!

直ぐ様三ノ輪にもジェスチャーで伝える。

 

「」コクコク

 

首を縦に振ったのを確認して、作戦開始。

 

ごくごく

ごくごく

ごくごく

ごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごく―――

 

ごっくん!

 

「「ぷはぁ!!」」

 

あ゛あ゛~、死ぬかとおもった~・・・

 

「三ノ輪~、生きてるか~?」

 

「ああ、なんとかな・・・」

 

「そりゃよかった」

 

「・・・はは」

 

「・・・ふっ」

 

どちらからともなく、二人して笑いあう。

すっ――と拳を突きだし合い、それを重ねる。

 

「かずくん!ミノさん!」

 

「二人とも!大丈夫ですか!?」

 

そんなことをしていたら、園子と鷲尾がやってきた。

あれ?なんで園子のやつ、濡れてるの?

 

「かずくんミノさん、バーテックスのお水、どんな味だった~?」

 

「真っ先に聞くことがそれか」

 

つーか見てたなら助けろよ。

 

「ソーダっぽい味からウーロン的な味に変わった・・・」

 

「お前も真面目に答えんなよ」

 

「うえぇ・・・まずそう~」

 

「それより園子、お前どうした?なんでそんなに濡れてる?」

 

「ああ~、これ~?」

 

「ぅ・・・」

 

おれの指摘に鷲尾が小さくうめく。

ふむ、なんとなくわかった。

 

「あのね~、鷲尾さんがバーテックスに狙われて~、それをわたしが助けたの~」

 

「やっぱりか」

 

「でもそのおかげでわたしの槍、盾になることを思い出したんよ~」

 

「忘れてたんかい」

 

自分の獲物のスペックぐらいちゃんと把握しておけよ。

 

「あの・・・乃木さん、先程は・・・その・・・」

 

「鷲尾、そういうのは今は後にしよう。バーテックスの位置がそろそろヤバイ」

 

バーテックスのいる方向を指差す。

現在、橋の中程にて悠然と行進している。

 

「どうする?」

 

「どうする・・・・・・と言われても・・・」

 

「奴は近距離からの攻撃には弱い。それは確認済みなんだ。問題は・・・」

 

「どう接近するか・・・ですか?」

 

「鷲尾の言う通りだ。さて、何か案があるか?ちなみにおれは無い」

 

「「ええ・・・」」

 

おれの発言に、心底がっかりした様子の声をあげる三ノ輪と鷲尾。

なんだよ。文句あるのかよ。

 

「あ!ぴっかーんとひらめいた!!」

 

「よし、それを待ってた」

 

「「???」」

 

こういう時、園子のひらめきは役に立つ。それを元にしておれが作戦を立案するのだ。「いわば!二人の共同作業だね~!」と園子が興奮気味に話していたこともあったな・・・・・・意味分かって言ってんのかな・・・

 

「で、どんなの思い付いた?」

 

「うん。あのね~」

 

―――――――――――†――――――――――

 

作戦はこうだ。

 

まず、園子を先頭に、三ノ輪、おれ、鷲尾の順に単縦陣をとる。

 

「敵バーテックス、水球を放出してきました!」

 

「園子!」

 

「いっくよ~!!」

 

水球を出してきたら、園子が盾を展開。ガードしながら進む。盾で防げない位置の水球は、鷲尾が射ち落とす。

問題は―――

 

「っ!!大型、来ます!」

 

「来たな―――!」

 

先程おれと三ノ輪が呑み込まれた大型水球。しかし、今なら―――

 

「三ノ輪!」

 

「よし来ぉい!」

 

三ノ輪が斧を水平に構える。おれはそこに飛び乗る。

 

 

「うぉおおおおおりゃあ!!!!!!」

 

 

カタパルトの要領で三ノ輪に跳ね上げてもらい、大型水球に右腕を突っ込む。

 

蒸発し(ハジケ)ろ!」

 

エネルギーを撃ち込むと、水球は爆発。辺りに水蒸気となって飛散した。

 

「よし!行軍再開!」

 

所定の位置に戻り、指示する。

突撃可能距離まであと少し・・・!

だが、バーテックスも阿呆じゃない。

水蒸気を切り裂くように、激しい水流がこちら目掛けて照射された。

 

「来るぞ!」

 

咄嗟におれは園子の右後方へ、三ノ輪はその逆、鷲尾はその真ん中に位置取る。

園子を吹き飛ばした一撃。その時園子は一人だった。

だが、今はおれたちがいる。

園子は吹き飛ばされず、しっかりと受け止めることが出来ていた。

 

「かずくんの!言うとおり!なんよ~!」

 

「すごい・・・さっきはあんなにも簡単に吹き飛ばされてしまったのに・・・!?」

 

「一本じゃ容易く折れる矢も、三本、四本、まとめれば折れにくい。つまりはそういうことさ!!」

 

「なるほど!良くわからん!」

 

「三ノ輪ァ!もうちょい考えることをしろォ!!」

 

「よ~し!!このまま行っくよ~!!」

 

園子の号令で、一歩、一歩、確実に前進する。

 

「オーエス!オーエス!」

 

運動会かよ。玉転がしとかじゃあるまいに

 

「ほら、鷲尾さんと上里も!」

 

「ええ!?」

 

「オーエス!オーエス!」

 

「お・・・オーエス!オーエス!」

 

まじか。やるのか、鷲尾。

 

「「オーエス!オーエス!」」

 

「仕方ない・・・オーエス!オーエス!」

 

『オーエス!オーエス!』

 

四人の声が重なり、一つになる。

次第に縮まるバーテックスとの距離。ついに突撃可能距離まで到達した。

その瞬間、バーテックスからの攻撃が止んだ。

 

「今!突撃ィィィィィィィィィィ!!!!」

 

おれの号令に全員散開。

水球を鷲尾が封殺し、左からは三ノ輪と園子が、右からはおれが攻める。

 

「園子!そのまま振り回せ!!」

 

「うん!」

 

園子の槍に掴まった三ノ輪が叫ぶ。

 

「うんとこしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

気合一閃。槍を薙ぐ。

勢いを付けた三ノ輪は、斧から炎をほとばしらせる。

 

「こっから・・・出ていけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

 

その一撃で、バーテックスの左半分が消し飛んだ。

おれも負けていられない・・・!

 

「ミカヅキ!リミットパージ!」

 

『エネルギー0009(トリプルオーナイン)。残り一撃分。これで決めるんだよ』

 

「ああ!!」

 

右肘と肩のアーマーがパージされ、二の腕の強制廃熱口がフルオープンになる。

アーマーがパージされたことで露になった肩のスラスターフィンが起動し、加速。

このままバーテックスへ突撃する。

 

が―――

 

 

 

 

 

「っ!!」スカッ

 

目測を誤り、バーテックスを掴むはずの右手は、虚空を舞う。

 

「かずくん!?」

 

「外した!?」

 

「そんな!?」

 

「まだまだァ!」

 

咄嗟に身体を無理矢理捻り、バーテックスへ右腕を伸ばす。

しかし右手は届かない。だから、()()()()()()()()()()()()()()()。ほんの少し腕を延長させた。

数字にして、およそ数センチ程度の延長。しかし、それだけあれば十分だ。

 

 

右手は確かに、バーテックスを掴んだ。

 

 

「弾けろ・・・バァァァァァァテックスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」

 

万感の想いを載せて放った一撃は、バーテックスの右半分を吹き飛ばしてみせた。

 

「へぶっ」

 

しかし、着地に失敗。

最後の最後で締まらねぇ・・・ちくせう・・・

 

「かずくん、平気~?」

 

「大丈夫か、上里?」

 

「いま、顔から落ちなかった?」

 

「おまえらよってたかって・・・・・・いや、それよりバーテックスは!?」

 

痛む身体を無理に起こしながら、三人に問う。

 

「大丈夫だよ~。ほら、見て」

 

園子に言われて。空を仰ぎ見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大橋が、咲き誇っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実際には花吹雪が舞っているだけなのだが、神聖なその空気に、どうしても、そんな風に見えてしまった。

 

「すげえ・・・・・・これが・・・・・・『鎮花の儀』か・・・・・・」

 

『鎮花の儀』

 

バーテックスをある程度弱らせることで実行可能になる、バーテックスを壁の外へと追い返す儀式。

これが発動した、ということはつまり・・・・・・

 

「おれたち・・・勝った・・・のか?」

 

花吹雪がバーテックスと共に消え、辺りに静寂が流れる中、ぽつり、と呟いた。

 

「勝った・・・?」

 

「勝ったんだ・・・!」

 

「勝ったのね・・・!」

 

 

『やったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 

四人全員で抱き合う。

ちょっとしたおしくらまんじゅうだ。しかし気にしない。

 

おれたちは、お役目を成し遂げたんだ!!

 

そんな充足感が、四人を満たしていた。

 

 




覆式波動機関について―――

造形は紅蓮の徹甲砲撃右腕部。そこに狂スロットの騎士は徒手にて死せず、シェルブリット等を混ぜ込んで造ったのがこれ。

僕の趣味として、いろんなネタをミキシングビルドする傾向にあるので、それが顕著に現れた一品、なのかもしれない。


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初陣のあと、勝利を祝う

明後日9月4日───
ニコニコでくめゆの生放送ですってよ、奥さん!
ついにゆゆゆいに参戦ですのね~!
恵みを貯めてお待ちしておりますッ!!!


翌日───

 

担任の高嶋先生から、おれが大赦のお役目に務めていることを公表された。

 

「神樹様のお役目です。昨日みたいに突然いなくなってしまうけど、みんな、応援してあげてね?」

 

はぁーい、という間延びした返事を聞いて、高嶋先生はうん!と頷いた。おれは全然良くは無い。

 

―――――――――――†――――――――――

 

案の定だ。

 

「ねーねーカズヤ~♪お役目ってさぁ~。どんなことやってるんさぁ~?」

「・・・・・・話せないって言っただろう。あと、カズヤじゃない一正だ」

 

アスカの奴が絡んで来た。こうなると思っていたから、お役目に関しては言って欲しくなかったというのに・・・・

 

「(しかし、言わなくては急に消失することの説明を行わないといけない・・・・・・逐一言い訳を考えるのも面倒だしな・・・・・・)」

 

なんて考えていると、端末から着信が入る。

園子からのメールだ。内容は───

 

「んお?どったの?急に荷造りしだして?ハッ・・・!?まさか・・・・デートのお誘い!?」

「ああ、そうだよ」

「なぁんて、カズヤにそんな相手がいるはずなえええええええええええええええ!?!?!?!?!?」

 

一々喧しい。

相手をするのも面倒だから無視して呼び出し先へと向かう。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「あ!!か~ずく~ん♪」

「おーい、上里ー!こっちだこっち!」

「すみません上里くん。急に呼び出したりして・・・」

「別に構わない。誘ってくれたこと、感謝してる」

 

呼び出し先はイネスのフードコート。

既に三人はテーブル席を確保しており、その手にはドリンクを持っていた。

 

「は~い、これかずくんの~♪」

「わかったから押し付けるな」

 

顔に当てられてるドリンクのカップを両手で受け取り、席に付く。

 

「えー・・それでは・・・」

 

コホン、と鷲尾が咳払いを一つする。

 

「今日を無事に迎えられたことを、大変うれしく思います。えー・・・・本日は大変お日柄もよく、神世紀298年度勇者初陣の祝勝会という事で、お集りの皆様の今後ますますの繁栄と健康、そして明るい未来を─────」

「長い、それと固い」

「そうだぞー、固いぞー。かんぱーい!」

「いえ~い♪かんぱ~い♪」

 

おれたちの言葉に不服そうな鷲尾だったが、三ノ輪と園子が乾杯を始めると、渋々それに従った。

 

「かずくんも、かんぱ~い♪」

「おう、乾杯」

 

掲げたカップに園子が自身のカップをぶつけてくる。

おいあまり強くぶつけるな中身がこぼれる。

 

「全く・・・・はしゃぎ過ぎるなよ。小六にもなって・・・」

「ええ~?」

「良いじゃんかさぁ。それよりも上里!」

 

ずずいっと三ノ輪が顔を近付けてくる。

こいつも目鼻立ち、以外と整ってるんだよなぁ、などと思いつつ、返答する。

 

「近いぞ。で、なんだ?」

「昨日のお前の戦い方だよ!あの右手!すっげーカッコ良かったな!!」

「そうか、あの格好良さが理解出来るのか」

「ああ!あれが、悪魔の武器ってやつか?」

「少し違うな。アレは「んん?あにさまじゃねーですか」」

 

む、この声は・・・

 

「わ~♪かなちゃんだ~♪」

「こんにちは、園子ねーさま。あとのお二人は・・・」

「えっと・・・・・こんにちは」

「ちわー!アタシは三ノ輪銀ってんだー」

「あ・・・・鷲尾須美、です」

「ふむふむ、銀ねーさまに、須美ねーさま・・・・と。佳南は上里佳南と言いやがります。産まれてから今日まで、そこのムッツリ大仏の妹をやってます」

 

誰がムッツリだ。

 

「しっかし、あにさまも隅におけませんなぁ~♪」

「・・・・・・・・・・・何の事だよ」

「とっぼけちゃって~。この状況を見やがれってんです」

 

言われて、周囲を見回す。

ふむ・・・・・鷲尾が居て、三ノ輪が居て、園子が居るな・・・・・

で?

 

「なんだってんだよ」

「両手どころか周りに華!ハーレム状態じゃねーですか!ヒューッ!モテる男はちげーですな!!」

「・・・・・えぇ」

「あはは・・・・」

「・・・・・はぁ」

 

佳南の一言に、鷲尾は困惑し、三ノ輪はちょっと嬉しそうで、おれは呆れて溜息をついた。

 

「わぁ~♪かずくんかずくん。かなちゃんに褒められちゃった~♪」

「お前は楽しそうだな・・・・」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「で、結局お前も交ざるのか・・・・」

「むー!なんですかあにさま!佳南だけ除け者ですかぁー!?」

 

佳南がゴネる。我が妹ながら、流石にウザい・・・・

 

「ふぇぇぇん。園子ねーさまぁぁぁぁ。あにさまがいぢめますぅ。妹虐待ですぅ~(棒)」

「よしよ~し、いいこいいこ~」

「嘘泣きするな慰めるなおれがまるで悪者みたいだろ!!」

「まーまー!良いじゃんか。兄妹揃って祝勝会の続きといこうよ」

「・・・・・三ノ輪、お前なぁ」

「それよりも!上里」

「なんだ?」

 

ずい、と再び顔を近付けてくる。コイツ・・・・一々顔を近付けないと会話できないのか?

 

「なんでアタシのこと『三ノ輪』って呼ぶんだ?」

「お前だっておれのこと『上里』って呼ぶだろう?」

「む・・・・確かに。じゃあ今から『カズマ』って呼ぶから!」

「勝手に決めるな」

「えぇー!良いじゃんかよー!ケチケチすんなって、カズマ!」

「・・・・・・・はぁ、好きにしろ」

「ぃよっし!それじゃ、お近づきのしるしにイネスマニアのアタシオススメの店を紹介してあげよう!」

 

オススメの店?つーかイネスマニアって何?

 

―――――――――――†――――――――――

 

「これは・・・・良いものだ・・・・!」

「あにさまがチョコミント片手に某壺の人みてーなこと、言ってやがります・・・・・・でも、確かに、美味しい・・・・・このストロベリー♪」

「んっふっふっふ・・・気に入ってくれたようで何よりさ」

 

三ノ輪が紹介してくれた店は、このフードコート内にあるジェラート屋。正直、こういった場所には基本的に来ないから知らなかった・・・・・・まさか、こんなにも旨いチョコミントジェラートがあるとは・・・!?

 

「おいし~♪おいしいんよ~♪こんなにおいしいものがあったなんて~!」

「大げさだなぁ、ダチと一緒に食べに来たりしないのか?」

「えへへ~、私友達少ないから・・・・」

「あ・・・・」

「だから今日、ミノさんに教えてもらって、すっごいうれしいんよ~♪メロン味大正解~♪」

 

園子もとても嬉しそうだ。

そんな中───

 

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・須美はどうしてそんな難しい顔をしてるのさ・・・」

「いえ・・・和三盆抹茶味のじぇらーとが・・・・以外と美味しくて・・・・」

「わっしー、あんまり深く考えちゃダメだよ~。おいしいものはおいしい。それで良いんよ~♪」

「・・・・・・・・・そうね!はむっ♪」

 

園子の一言に、考えるのをやめた鷲尾は自身のジェラートにかぶり付く。

つーか園子の奴、いつの間にか鷲尾のことアダ名で呼んでやがる。三ノ輪も鷲尾のこと、名前で呼んでるし・・・・

 

「かずくんが来る前にね~。お話して決めたの~」

「『鷲尾』だから『わっしー』、てか?」

「さっすがかずくんだ~♪ほんとは『すみすけ』とか、『ワッシーナ』がよかったんだけどね~?」

「ワッシーナて・・・・何時の時代のアイドルだよ・・・・」

「それよりは、『わっしー』の方がだいぶマシだから・・・」

「鷲尾、おつかれさん。園子の相手、大変だったな・・・・」

「そう思うのなら、次はもっと早めに来て下さい・・・・・」

「善処しよう」

「かずくんの『善処しよう』は信じちゃだめなんよ~。だいたい治んないからね~」

「あにさまが善処言い出したら大概話を聞いてないときですからね」

 

酷い言われようだ。あと今回の件はおれは悪くないぞ。

 

そんな、下らない話をする。おれたち五人。

端から見れば、なんて事無い普通の小学生たちの交流。

改めて、この日常を護れた事を実感できた。

そんな感慨に耽りながら、自分のジェラートを食べるのだった。




ちなみにこの後、しょうゆ豆ジェラートVSチョコミントジェラートによる仁義無き言い争いが勃発したけど、めんどくちゃいので割愛。


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貴方の、涙

浴びるほど、生クリームが食べたい





わすゆガチャを五周したら、ねんがんの ウエディング銀ちゃんを手に入れたぞ!
ついでにはろえん須美ちゃんもゲット。
名探偵そのっちがいっぱい来た印象しかなかったけど、バレンタインそのっちとか、探偵銀ちゃんとかも来たから、まあ、豊作だよね。お財布の中身すっからかんになっちゃったけど・・・・



祝勝会をやった数日後、再びバーテックスが襲来した。

今回の相手は、天秤型(ライブラ)

初代勇者の残した文献にも、詳細が載ってない未知のバーテックス。

どんな状況にも対応できるよう、今回の兵装は五番を選んだ。

五番兵装は『突撃特化』の『霊力光刃(ビーム)三又槍(トライデント)

形状は園子の得物と同じ普通の槍だが、穂先が三又になっている。

以上である。

 

 

 

本当は、他にも色々盛りたかったんだ・・・しかし、余り盛り過ぎるとキャパオーバーしてしまう為、断念したのだ。だから園子とおそろいにしたとか、そういうのはないから。

 

―――――――――――†――――――――――

 

結論から言おう。

今回に関しては、武装の選択を誤らなかった。

しかし、相手が悪かった。

 

「くぅぅぅぅ・・・・・!!!」

「近付けないよ~~!!」

 

名は体を表すを体現するかの様なフォルムのライブラは、俺たちの接近に気付くとその場で回転を始めたのだった。

次第にその速度は増していき、現在は台風もかくやといったレベルの暴風を起こしている。恐らく風力は11以上あるだろう。

 

「普通だったら、簡単に吹き飛ばされていただろうな・・・」

「で、どうする!?なんか作戦は無いのか!?」

「台風みたいだから~、まんなかは風が吹いてないと思うけど~~・・・・!」

「つーかお前らなんでおれにしがみついているんだ!!!」

 

風に飛ばされないように、三又槍を地面に突き刺して支柱にしていると、園子がおれの腰にしがみつき、園子に三ノ輪がしがみつき、三ノ輪に鷲尾がしがみついてきた。なんだこの株を採ろうとする一家みたいなやつは・・・・

 

「ッ!!園子!」

「かずくんはふんばってて~!!」

 

その時、ライブラの分銅がおれたちを襲った。園子に盾を展開してもらいどうにか防ぐものの、このままではライブラに良いようにされっぱなしだ。

 

「こうなったら・・・」

「あ?鷲尾?」

 

さっきから沈黙したままだった鷲尾の声が聞こえたと思ったら、風に飛ばされていた。アイツ、何をしてんだ・・・・

鷲尾は飛ばされつつも、どうにか姿勢を制御して矢をつがえる。いや、それ無理。届かないから。

 

「鷲尾ぉ!!この風で矢は跳ばない!!無駄なことは止せぇ!!!」

「・・・・・・・・」

 

聞こえていないのか、聞こえていて無視しているのか、鷲尾はつがえた矢をライブラに向かって放った。

が、案の定、放たれた矢は風に飛ばされ、ライブラに届くことはなかった。

 

「そんな・・・・・きゃああ!?!?」

 

鷲尾も風に吹き飛ばされ、遠くの方へと飛んでいってしまった。何をやってんだよ、まったく・・・・!

 

「で!どうするんだよ!本格的にヤバいぞ!」

「・・・・・一つ、思い付いたことがある」

「かずくん・・・まさか・・・・!?」

「他に方法が思い付いたか?」

「・・・・・・でも」

「え?なに?どんな作戦?」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「・・・・・ホントぉぉぉぉに!大丈夫なんだな!?」

「何度も言った。心配ない」

「─────ミノさん。こうなったかずくんは、てこでも動かないんよ~・・・・」

 

わかっているじゃないか。

 

「ッ────!あー、もう!わかった!やればいいんだろ!?」

「頼む」

「その代わり!ちゃんと無事でいろよ!いいな!」

「善処しよう」

 

チッ、と舌打ちをして、三ノ輪も離れていく。

 

「おい園子。お前も───」

「かずくん」

 

ぎゅ・・・と園子が抱き付く腕の力を強めた。

 

「お願いだから・・・・無事でいてね・・・・?」

「──────ああ」

 

悲し気な表情のまま、園子がおれから離れていく。

さて、準備は整った。本来ならここに鷲尾も居て欲しかったのだが、無い物ねだりは出来ない。

 

「ミカ、リミットパージだ」

『エネルギーを全て攻撃に回す。それでいい?』

「無論」

 

右腕が変形し、右肩のスラスターファンが回転する。

出力された推力により、支え無しでもこの暴風の中で自立できるようになった。

右腕を真っ直ぐ構えて、時を待つ。

狙うは、ライブラの分銅。右腕と分銅の中心が重なった時がその時だ。

 

「─────────」

 

吹き荒れる風と、上空を舞う園子たち。

そして、時は満ちた。

 

最大砲火(オーバーブラスト)───!」

 

右掌の電極から、エネルギーの奔流が極太のビームとなって放たれる。

その威力は凄まじく、分銅どころか、ライブラの身体を半壊させるにまで至った。半壊したライブラはバランスを保てなくなり、回転を止めた。

 

 

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

そこに、園子と三ノ輪が突撃。半壊していたライブラを上空から砕いていった。

ライブラがほぼ全壊状態になったところで、"鎮花の儀"が発動。

今回のお役目も、どうにか終わらせることができた。

 

──────view,change:須美────────

 

「ふぅ・・・・今回も、どうにかなった・・・な」

 

そう言って、上里くんは帰路につこうとしていた。

そこに、乃木さんが飛び付いて・・・

 

「かずくん!」

「っ!?・・・・・なんだ?園子。おれはへい」

「じゃあ、これは何?」

 

上里くんの右袖をまくった。

 

 

 

 

 

そこには、白く透き通った肌は無く、内出血により、赤黒く変色した右腕が、あった。

 

 

 

 

 

「カズマ!お前これ・・・・!」

「別に。大したことは無い。こんなの直ぐに直る」

「んなわけないだろ!!とにかく、安芸先生に連絡して・・・・!」

「・・・・・・・・・・かずくん」

「・・・・・・・・・・善処する。そう言っただろう?」

「・・・・・・・・・・ばか」

「泣くなよ。全く・・・・・」

「かずくん。もう、止めて?こんなこと・・・・自分のこと、もっと大事にしてよ・・・・」

「善処する」

「かずくん!」

 

乃木さんと三ノ輪さんが、上里くんを叱る。

けれど、今の私にはその声は、どこか遠くの出来事のように思えて仕方ない。

 

(私が・・・・・私が一人で突っ走ったせいで・・・・)

 

そうだ。あの時、上里くんの忠告を聞いておけば・・・・彼があんな大怪我を負うこともなかったはず・・・・

 

「はぁ・・・・全く・・・・・鷲尾も何か・・・・鷲尾?」

「え?わっしー?」

「どうした須美!?お前もどっかケガしたのか!?」

 

気付けば、私は泣いていた。

 

「ぐす・・・・・違うの・・・・私・・・・私のせいで・・・・・」

「鷲尾・・・・・」

「ごめんなさい・・・・・私が、ちゃんと上里くんの忠告を聞いていれば・・・・・・」

「────────はぁ」

 

ぽん、と私の頭に上里くんの左手がのせられた。

そのまま上里くんは、私の頭を撫でる。

 

「相手が悪かっただけだ。お前は悪くない」

「でも!」

「鷲尾。お前がどう思おうが、それはお前の勝手だ。だが事実として、ライブラとお前の弓は相性が悪かった。今回はただ、それだけのことだ」

 

上里くんが突き放すように言葉を紡ぐ。でも、その声音は優しくて、こちらのことをおもんばかっているのがわかった。

 

「解ったら泣き止め。それと、もう少し、周りに頼ることを考えな」

「────────うん」

「そうだよ。わっしー」

「アタシらダチなんだからさ」

「乃木さん・・・・三ノ輪さん・・・・」

 

ちっちっちっ・・・と、上里くんが指をふる。

 

()()()()?」

「あ・・・・」

 

上里くんの言葉に、二人が目を輝かせて私を見る。

ちょっと・・・・恥ずかしいわ・・・・・

けど────

 

「──────そのっち」

「は~い♪」

「──────銀」

「おう!」

 

私が名前を呼ぶと、二人は嬉しそうに返事をしてくれた。

 

「へへ♪なんか・・・ようやく本当の意味で、須美とダチになれた気がするよ」

「よ~し、それじゃこれからイネスで打ち上げだぁ~~!」

「ほう・・・良いな」

「かずくんはこれから病院なんよ?」

「・・・・・・大丈夫だと言っているd「駄目よ!」うおっ!?」

「そんなひどい怪我しているんだから、()()()()はちゃんとお医者様に診てもらわないと!」「お・・・・おう・・・・」

 

自分のことを省みない一正くんに詰め寄る。

 

「もし悪化でもして切断、なんてことになったら、みんな悲しむわ!だからあなたはしばらく安静にしていて!」

「・・・・・・・園子」

「わたしも~、わっしーと同意見~」

「・・・・・・・三ノ輪」

「残念だったなカズマ。ここにお前の味方はいない」

「────────」(白目)

 

やって来た救急車に一正くんを押し込んで、私たち三人はイネスへと向かって行った。




覆式波動掌について

アクエリアス戦で使用した技。右掌の電極から相手にエネルギーを叩き込み、強制的に飽和させ爆発させる。
また、右腕全部を一つの砲身として使用する『覆式波動砲』はリミットパージ時のみ、使用可能な必殺技。
しかし、機関の配線のみではエネルギー送量が足りない為、この技を使用する際は右腕の血管・神経・リンパ腺も配線として使用する、まさに諸刃の剣である。


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訓練のために、合宿をする

ぱぱぱーっと書いた合宿回への導入回。

導入だから短め。




「──────なぜ、私が怒っているか・・・分かりますよね?」

『はい・・・・』

 

翌日の放課後。おれたちは安芸先生に呼び出され、こってり絞られていた。安芸先生の隣には高嶋先生もいる。

 

「まぁまぁ先輩。みんな無事帰ってきたんですし・・・」

「今回無事だったとしても、次も無事とは限りません!あなただって分かるでしょう?」

「うぅ・・・・おっしゃる通りです・・・・」

 

安芸先生をなだめようとした高嶋先生までおれたちと同じ立場に回った。何をしているのやら・・・・

 

「ハァ・・・・あなたたちに足りないもの。それは、『連携』です」

「連携───」

 

なるほど、確かにそうかも知れない。

個々の戦闘力は十分に足りている。が、おれたちはそれを活かせるだけの戦場造りが出来ていない。樹海の話ではなく、位置取りの話だ。

どんなに強い戦士であろうとも、適正距離というものが存在する。弓兵に近接戦闘をやれ、というのは『死ね』と言っているようなものだ。

そこで重要になるのが、『連携』だ。

 

「あなたたちには、明日より数日間、大赦が用意した宿泊施設にて合宿をして貰います」

「合宿?」

「わぁ~合宿だってかずくん~」

「楽しそうだな・・・・」

 

苦しそうにしてるよりはマシか・・・・

 

「そして、連携の訓練をするにあたって、あなたたちの中から、隊長を決めたいと思います」

 

隊長・・・だと・・・?

・・・・・・まぁ、確かに必要か。

おれを含めたこの四人を纏められるような奴────少なくとも、おれには無理だな。

となると───

 

「乃木さん。お願いできるかしら?」

「え?わたしですか~?」

 

だろうな・・・。

この中で選ぶとしたら、園子か、おれだろう。だが、おれにはそういうのは向いてない。従って、リーダーは園子一択しか無い。

 

「かずくん・・・どう思う~?」

「何故おれに聞く?」

「だって~・・・」

「───鷲尾、三ノ輪。お前らの意見は?」

「うーん・・・・アタシはパス!リーダーなんてガラじゃないもん」

「─────そうね、私も・・・前のお役目のとき、思い知らされたわ・・・・」

「─────と、言うことだ。従って、お前しかいない」

「かずくんでもじゅうぶんイケると思うんよ~・・・」

「自信が無い?」

「─────────うん」

 

まったく・・・・

何時まで経ってもコイツは───

 

「大丈夫だ園子」

「わぷっ」

 

ぐりぐり、と園子の頭を撫でる。

 

「お前になら出来る。なんならおれが副隊長として支えてやる。だから、やれ。心配するな、みんながいる」

「かずくん・・・・」

「────────うわぉ」

「────────はわわ」

 

何故だか三ノ輪と鷲尾が顔を赤らめてこっちを見ている。お前らが照れる要素なんぞ、いったい何処にあった?

 

「んん!こほん・・・では、隊長は乃木さん。副隊長は上里くんで決定します。よろしいですね?」

 

全員が頷く。

この日のミーティングはこれにて終了した。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「あにさまー。右腕の調子はいかがッスかー?」

「問題無い。合宿の最終日にはギプスも取れる」

「そのあいだ~、かずくんの身の回りのお世話は、わたしたちがしてあげるんよ~♪」

 

何故だかそういうことになったらしい。冗談じゃない。

というか・・・・

 

「何故園子がウチに居る?」

「あれ?あにさまは聞いてなかったんですか?」

「何を?」

「園子ねーさまが明日遅刻しないように、今日はウチに泊まっていくことになりやがったんです」

「誰が決めた?」

「佳南とおばさまに決まってるじゃねーですか」

「─────そうだったな。そう言うことを好き勝手に決めるのは何時もお前らだったな」

 

付き合わされるこっちの身にもなって欲しい。というか、良く園子の父親は何も言わないな・・・

 

「えへへ~。お父さんも、『一正くんだったら、園子のことを安心して任せられるな』って言ってたんよ~♪」

「───────詰んだ。出れない」

 

おれの人生は、きっと、こうやって毎日園子に振り回されることになるんだろうな・・・・

畜生めぇ・・・・・




乃木夫妻の一正への印象について──

母「真面目で良い子なんだけど、子供なんだし、もう少し遊ぶことを考えて欲しいなぁ・・・・そうだわ!うちの園子に振り回させよう!」

父「彼は少し、子供らしくすることを覚えた方が良い。でないと将来、彼はきっと苦労する・・・・・よし。園子に遊び相手をさせよう」





似た者夫婦である


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訓練、開始

現在わすゆの進行速度が一番遅いため、しばらくテコ入れ



「遅い!」

「──────zzz」

 

合宿開始日当日。三ノ輪が遅刻していた。

おかげで園子はおれの膝を枕にして寝てやがる。

しかも鷲尾はご立腹ときた。

 

「─────ミカ」

『心配ない。もうすぐ来るよ』

「はざまーす!遅れてごめん!」

 

ミカに三ノ輪の動向をサーチして貰おうとした時、件の人物たる三ノ輪がやっと現れた。

十分の遅刻だ。

まったく・・・・これでも勇者なのか?

 

「銀!いくらなんでも遅すぎよ!何をしていたの?」

「いやぁ、これには事情が・・・・ああ、いや、どんな理由があろうと遅刻したのはアタシだからな・・・ごめん、須美」

「────もう、次は気を付けてよ」

「あはは・・・」

 

何はともあれ、これで全員集合だ。

おれたちはバスに揺られて、目的地へと向かって行った。

 

―――――――――――†――――――――――

 

バスに揺られて数時間。

おれたちは讃州市内のとあるビーチに来ていた。

現在ここは大赦によって貸し切り状態。

おれたちの連携訓練はここでやる様だ。

 

「では、これから訓練を開始します」

 

安芸先生が号令をかける。

 

「あなたたちにはこれから、あの特注のピッチングマシーンから放たれるボールを、銀ちゃんに当てないように、旨ーくやって、向こうの丘に見えるバスまで銀ちゃんを運んでもらいます!」

 

高嶋先生がルール説明をする。

三ノ輪がアタッカー。園子がディフェンダー。鷲尾がスナイパー。そしておれは・・・・

 

「高嶋先生」

「はーい。なにかな?」

「おれの役割、コマンダーって・・・・」

「適宜三人に指示を出す役割だよっ。状況に応じて臨機応変に指示してね♪」

「そう言うことじゃ・・・・つか何気に今かなり難しいこと言った!?」

「では、それぞれの役割が理解できたところで、訓練開始!」

 

安芸先生の号令により、ピッチングマシーンからボールが射出される。

 

「────園子、三ノ輪は直進!鷲尾、仰角三度・左に十二度!三秒後に一射後、仰角そのまま右二十一度に一射!」

 

「は・・・・はい!」

 

こうして、おれたちの訓練は始まった。

 

――――――――――五分後―――――――――

 

「三ノ輪はまだ飛び出さない!園子は五秒制止!鷲尾は園子の頭上に向けて射て!」

「あぐ」

「飛び出さないって言っただろう!?」

「うぅ・・・・・ごめん・・・・・」

 

――――――――――十分後―――――――――

 

「次!三ノ輪はまだ!園子は盾を少し右!鷲尾はその反対!」

「えっと~?」

「あだっ!?」

「園子ォ!?!?」

「ふぇぇ~・・・かずくんごめんなさ~い・・・」

 

―――――――――二十分後―――――――――

 

「鷲尾!次射は三秒後だ!!」

「ご・・・・ごめんなさい・・・」

 

―――――――――三十分後―――――――――

 

「園子!!!」

「ふぇぇ~ん」

 

―――――――――一時間後―――――――――

 

「あー!くっそぉ!?」

「三ノ輪ァ!!!!」

 

――――――――――そして―――――――――

「今日はここまでね」

 

安芸先生のその一言で、三ノ輪と園子がぶっ倒れ、鷲尾がへたれこんだ。

 

「─────今後の課題が多すぎる」

 

早速、作戦の練り直しだ。



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独りの、夜

テコ入れ第二段!!

SSSS.GRIDMAN見たあとだから目が冴えてるゼ・・・!




「ふわぁ~ぁ」

 

合宿三日目の夜。銀はトイレからの帰りにいつものやつ(トラブル)に出会し、旅館内をさ迷っていた。

 

「うーん・・・・困った。本格的に部屋の場所わかんない」

 

さてどうしよう、と頭を悩ませながら歩いていると、視界の端に、なにやら光るものが見えた。

 

「?」

 

そちらを見ると、夜の浜辺に誰かがいた。

少し遠いから人影しか見えないが、それでも、今、そこにいる。

 

「・・・・こんな時間に誰だろう」

 

その人物が気になった銀は、少し迷いながらも無事旅館を出て、浜辺に向かったのだった

 

―――――――――――†――――――――――

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・」

『記録完了。次のパターン、行くよ』

「ハァ・・・・ハァ・・・・頼む」

 

浜辺にたどり着いた銀の視界に映ったのは、一正がたった一人で訓練している姿であった。

 

「あいつ・・・・なにしてんだよ・・・・」

 

銀が呟く。その声が聞こえたのか、一正が銀の存在に気付いた。

 

「・・・・ん?三ノ輪か、何している。明日も訓練がある。寝ろ」

「っ!それはこっちのセリフだって!カズマこそ、こんな時間になにやってんだよ!」

「──────見て分かるだろう?訓練だ」

「訓練?」

 

眼鏡の位置を直しながら、一正は答える。

 

「立てた作戦をこうして実演しながら自分の訓練もする。実に効率的で理にかなった訓練だ」

「いやお前右腕・・・・」

「問題なく動く。だから訓練している」

「そうじゃないだろ!」

 

流石の銀も、一正のその態度にはキレた。

 

「なんだよ・・・・なんなんだよお前は!!」

「・・・・・どうした?」

「どうしたじゃない!なんでお前はもっと自分を大切にしないんだよ!!」

 

 

 

 

 

「なら、お前はどうなんだ?」

 

 

 

 

 

「ッ──!?」

「お前が、お前にとって大事なモノを、その身に代えても護りたいと願うなら、お前はその時、自分の身を案じるのか?」

「それ・・・は・・・」

 

銀は答えられない。

 

「おれは、園子を護りたい」

「──────」

「園子だけじゃない。お前と、鷲尾のこともだ。喩えこの身が朽ち果てようとも、おれの出し得る全力で持って、おれはお前たちを護る。それだけの覚悟を、おれは持っている」

 

銀はもう、何も言えない。

一正の瞳に宿る、絶対不屈の闘志を眼鏡のレンズ越しに垣間見たから。

 

「もう、良いか?ならばおれは───」

 

だから、銀は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立ち去ろうとした一正の袖を、きゅ、と摘まむしか、銀にはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────」

「───────はぁ」

 

そんな銀を見て、一正はため息をこぼし・・・

 

「ミカ」

『うん』

 

ミカヅキにハックさせたピッチングマシーンから、一つボールを出してもらい、

 

「三ノ輪」

「──────なに?」

 

銀に向かってパスした。

 

「──────このままじゃ、眠れない。ちょっとだけ、付き合え」

 

ぶっきらぼうに、そう、告げた。

 

「─────しょうがないなぁ」

 

そうして二人は、夜の浜辺でボール遊びに準じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を、遠くから、羨望と嫉妬が入り雑じった瞳で見つめる視線に、気付かないままで───

 

 

 




一正は眼鏡キャラ。
その理由は後程


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訓練、完了

テコ入れ第三段!

合宿最終日の訓練回。

どうぞお納めください(最近言ってなかった定型文)


そして迎えた、合宿最終日───

 

一正の指揮の下、園子が守り、須美が援護して銀を一定の位置まで運んで行く。

 

「今だ!行け!三ノ輪ァ!!!」

「いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

一正の指示に、銀が跳ぶ。

彼女を迎撃せんと、ピッチングマシーンから多数のボールが放たれる。

それを、両手の斧を振り回して叩き落としていく。

が、如何せん斧は大振りになってしまうために、攻撃後の隙が大きい。その隙を狙ってのものか、はたまた偶然か、迎撃仕切れなかったボールが一つ、銀目掛けて迫り来る。

誰もが、「また失敗した」そう思っていた。

 

 

 

 

 

たった一人を除いて

 

 

 

 

 

「良い位置だ。作戦通り」

 

一正は銀の跳躍と同時に展開していた、覆式波動機関で二番兵装『霊力熱刃(ヒート)三日月刀(ショーテル)』をボール目掛けて投げた。

ミカヅキのアシストにより、投げられた三日月刀は狙い過たずボールを射ち落としてみせた。

 

「行けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

彼女を止める物はもう全て排除された。

徐々にバスと銀との距離が縮まっていき───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォン・・・!!!

 

 

 

 

 

「ゴーーーーーーーーーーーーッル!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスを叩き割った後、今までの鬱憤を晴らすかの如き、回転乱舞によって、バスは粉々に砕け散ったのだった。

そんな様子を見て、園子と須美が遠距離ハイタッチをする。

 

「よし、作戦完了だ(ミッションコンプリート)

「おめでとう。でも上里くんはルール違反でギルティね♪」

「─────────なんでさ」(白目)

 

―――――――――――†――――――――――

 

『はふぅ~~~~~・・・』

 

夜、露天風呂にて訓練の疲れを癒す三人。

ここは女風呂なので、勿論、一正の姿は無い。

 

「毎日毎日、バランスの良い食事と厳しい訓練、そんでもってしっかりとした睡眠────なんというか、勇者って言うより、運動部の合宿みたいだよなぁ・・・」

「私たちの連携のための訓練なんだし、仕方ないわよ」

「なんかこう、必殺技とか授かるイベントはないものかねぇ」

「だから連携の訓練なんだってば・・・」

「あーあ、カズマみたいな必殺技が欲し・・・・・・」

 

ふと、昨晩の一正を思いだして尻すぼみになってしまう。

そんな銀に、園子が訊ねる。

 

「ミノさん。身体の傷は大丈夫?」

「えへへ、へーきへーき!そう言う園子の方は?」

「どっちかと言うと、こっちの方が~」

 

そう言って園子は自身の右掌を見せる。

潰れたマメの上に、更にマメが出来ていた。

 

「年頃の女の子のやることじゃないよなぁ・・・・」

「そうは言っても、私たちがやらなかったら我が国があんなよくわからない奴らに滅ぼされてしまうのよ」

「それはわかってるって。そ・れ・よ・り・~・・・」

 

銀がいたずらっ子の笑みをたたえて、両手をわきわきさせて須美に近付く。

 

「な・・・・なに・・・!?」

「クラス一の大きさを誇るお胸を拝んでおこうと思ってね♪」

「はぁ!?」

「前々から思っていたけど、須美のはまるでチョモランマだよなぁ!親父!その桃くれぇ!!」

 

銀が須美に襲いかかる。勿論須美は抵抗する。

 

「ちょ!?・・・・・止めなさい銀!!」

「いーじゃん!事実を言ったまでだろ!むしろそこまでおっきいクセして恥ずかしいなんて、贅沢言うな!!」

「ふ・ざ・け・な・い・で・!!」

 

二人が激しい攻防を繰り広げている中、園子はのんびりと「サンチョも入れてあげたかったなぁ~」なんて呟いている。

と、そこに───

 

 

 

 

 

すこーん!

 

「あだぁ!?」

 

 

 

 

 

突如、壁の向こうから風呂桶が飛んできて、銀の頭にクリティカルヒットしたのだった。

 

「いったぁ────なぁにすんだよ!カズマ!!」

「バカ騒ぎは他所でやれ。露天風呂は静かにゆっくり浸る物だ」

「そんなこと言って、どうせお前も須美のチョモランマが気になるんだろ~?」

「ちょ!?・・・・銀ってば!!」

「脂肪と乳腺の塊なんぞに興味無い」

 

 

 

 

 

「「えぇ・・・・」」

 

 

 

 

 

あんまりな言い様に、さしもの二人も絶句してしまった。

 

「かずくんはね~、うなじが好きなんよ~♪」

 

すこーん

 

「ふぇぇ~・・・・なんでわたしも~?」

「余計な事を言うからだっ!!」

 

この後、入ってきた安芸先生と高嶋先生に全員怒られた。

 




一正はうなじフェチ。

前に園子がポニーテールにしてうなじをチラ見せしたら一正の理性が蒸発して園子は襲われた(嘗められた)

全てが終わった後、そこには、うなじをべっちょべちょにして、頬を赤らめて息を荒げている園子がいた。とは一正談。この後無茶苦茶謝罪した。




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合宿の夜、共に眠る

これが最後のテコ入れ!!

ほんとはもうちょい詰め込みたかったけど、あんまり詰め込み過ぎるときついから、ほどほどに


「という訳で!上里くんへの罰ゲームは、『四人一緒に寝ること』に決定しましたー♪」

「いやほんとなんでさ」

 

おれの抗議の声を無視して、高嶋先生が準備を終えていた。

 

「へいかずくん!うぇるか~~~む♪」

「なんで嬉しそうなんだよ」

「まあいいじゃん。合宿最後の夜なんだし」

「良い訳あるか」

「婚約もしてないのに殿方と────」

「鷲尾は何を言っている!?」

 

やれやれ、やはりこうなったか・・・・

園子は平常運転だとして、鷲尾は何かしら文句を言ってくると践んでいた。

予想外なのは三ノ輪。彼女はアレでいて乙女だ。鷲尾ほどでは無いにしても、何かしら文句の一つでもあると思ったのだが────まぁ良いか。

 

「はぁ・・・・・仕方ないか。おれは寝る」

「待てって、直ぐに寝るなよ」

 

そう言って、三ノ輪はにやけ面を隠そうともせずにこちらを見てくる。

 

「───────なんだ?」

「合宿最期の夜なんだぜ?簡単に寝られると思うなよー?」

「愛用の枕があるから寝られるよ~」

 

そういう意味じゃないぞ。

しかし、この流れは不味い。相当面倒な事になる。

 

「駄目よ!夜更かしなんて!」

 

良かった・・・・鷲尾が真面目で・・・・

 

「早く寝ない子には・・・・夜中迎えに来るわよ・・・・」

「む・・・・迎えにぃ~~!?!?」

 

なんだろう。園子と鷲尾の想像している物に差が感じられる・・・・

 

「そんな怖いのじゃなくてさ!恋バナしようよ!」

 

ほら来た。この中で唯一普通の女子らしい女子と言えば三ノ輪位だし、彼女がその話題を言い出すのは察しが付いていた。

 

「みんなで一人ずつ好きな人の名前を言い合いっこしよう!」

「というならばお前、誰か好きな奴、いるのか?」

「うぐ・・・・・えと・・・・・しいて言えば・・・・・弟、とか?」

「家族はズルよ」

「そ・・・・そういう須美はいるのかよー!?」

「う・・・・わ・・・・私も・・・・いない・・・けど・・・・」

「わたしはいるよ~♪」

「「え!?!?」」

 

園子の発言に、二人が驚愕の声を上げる。

 

「え・・・誰!?クラスの人!?」

「ついに恋バナ来たんじゃない!?」

「あのね~、ミノさんと、わっしー!」

「「───────えぇ?」」

 

だろうと思った。

 

「─────────」

「・・・・・ん?なんだ?」

「─────────なんでもないよ~」

 

園子が無表情でこっちを見ていた気がしたが、気のせい・・・だろうか?いつも通りのぽやぽやした笑顔を向けてくる。

 

「はぁーあ・・・・・アタシら、これで良いのかねぇ・・・・」

「良いのよ!私たちには神聖なお役目があるのだし!」

「『仕事が恋人』────聞こえは良いだろうが、それはそれで寂しい感じがするな」

「須美は大人になってもそんなこと言ってそうな感じするよなー」

「・・・・・・・・むー」

 

鷲尾が膨れっ面になる。お前が言い出したことだろうに。

まあいい。

さて、そろそろ真面目に寝るとしよう。

 

「消灯する。さっさと布団に戻れ」

「「「はーい」」」

 

パチン

 

周囲が暗くなる。その時───

 

 

 

 

 

「───────は?」

 

 

 

 

 

辺り一面に、星空が広がった。

なんてことはない。園子が持ち込んだプラネタリウムが起動したのだ。

 

「なんでプラネタリウム!?」

「えへへ~♪」

「園子」

「な~に、かずくん」

 

楽しそうに笑う園子。その笑顔を見て、おれは───

 

「───────────楽しいか?」

「うんっ!楽しいよ~♪」

「そうか」

 

園子の頭を雑に撫でる。

 

「いや、消しなさいよ・・・・!」

 

鷲尾が突っ込みを入れてきたので、仕方ないからプラネタリウムの電源を落とした。



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仲間の秘密を、こっそり探る

来期のアニメは豊作じゃのう・・・(ホクホク顔)

『みにとじ』に『けものフレンズ2』に『約束のネバーランド』
けもフレと言えば、降ろされちゃったたつき監督、別のアニメをやるのだとか。
個人的には、そっちも見たいんだよなぁ・・・・


「銀の身辺調査をするわ!」

「・・・・・・・はぁ」

「すぴー・・・すぴー・・・」

 

合宿終了から数日後。鷲尾から園子共々呼び出され、指定の場所に行くと、鷲尾がそんな事を言い出した。訳が解らない。

聞けば、三ノ輪は毎回の如く遅刻し、しかも昨日はランドセルの中に教科書ではなく、猫を入れて登校してきたとのこと。

 

「・・・・・・確かに気になる。が、其処までする事でも無いだろう?」

「さあ!行きましょうそのっち!」

「すぴー・・・(かくん)」

「そのっちもやる気ね!さあ!一正くんも!」

 

待て。園子は頷いてない。というか園子は何で未だに立ったまま寝ている。

そして鷲尾は寝たままの園子の手を引いて、三ノ輪家に向かっていった。

 

「──────はぁ。仕方ない。付き合うか」

 

せめて知り合いに遭遇しない事を祈るとしよう。

 

―――――――――――†――――――――――

 

結論から言おう。

祈りは神樹様に届かなかった。

 

「───────────」

「今度は倒れた自転車を起こしているわ・・・」

「ミノさん立派だぁ~」

「なるほどぉー。さっすが噂の勇者サマ!ねっ、ずっく♪」

「───ん(こくり)」

「銀ねーさま。このような事を毎日してやがりましたか・・・・素直にそんけーです」

 

三ノ輪の家から、彼女を尾行してる途中、アスカと山伏に遭遇した。アスカが「面白そう!」と言って二人も参加。

更に佳南までやってきて「佳南も交ざらせろです!」なんて言って参加を表明。

結果、こんな事に・・・・・

 

「─────────神樹様。恨むぞ」

『アレにそんなこと言っても無駄だよ』

「─────────知ってる」

『なら、諦めなよ』

「─────────畜生めぇ・・・」

 

端末からミカが的確にツッコミを入れてくる。

それに肩を落としていると、園子がこちらを見ている事に気付いた。

 

「────どうした?」

「かずくんは、楽しくない?」

「──────────別に。そういう訳じゃ、無い」

「だったら楽しもうよ~♪」

「・・・・・全く」

 

本当、園子には敵わないな。

仕方ない。童心に返ったつもりで楽しむとしよう。

 

『カズマ、年齢的にはまだ子供だよね』

「そこにツッコミを入れるか」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「えぇ!?じゃあ、今朝から着いてきてたの!?なんか恥ずいなぁ・・・///」

 

結局あの後、イネスでリンゴを落とした女性を手助けしてる三ノ輪を放っておけず、全員でリンゴを拾い集めて女性に渡すと、良い時間だった事もあり、フードコートにて三ノ輪も含めて全員で昼食を取ることになった。

 

「でもこれで、銀が何故遅刻するのか。その理由が判ったわ」

「ミノさんいつもああなの~?」

 

調査結果としては、三ノ輪は重度のトラブル巻き込まれ体質、ということだった。

行く先々でトラブルに遭遇しては、それに対処していたが故の遅刻。

ここで『無視する』という選択をしない辺り、三ノ輪は勇者なのだと感じさせる。

 

「すごいねぇ。シルバーはまさしく勇者様だ!!」

「・・・・・・・シルバー?」

「"銀"だから」

「なるほど」

 

アスカが三ノ輪に勝手にアダ名を付けてる。山伏はそれを止めようともしない。

無駄だって、理解しているからか?・・・・・・違うな。あの山伏の表情は、自分も楽しんでる奴の其だ。

 

「銀ねーさま、カッチョ良いです!!佳南、尊敬します!!」

「うぅ・・・・///」

「ミノさん顔真っ赤~♪」

 

やれやれ・・・・このままじゃ話が進まん。

 

「それで?いつもああして誰かの手助けをしてるのか?」

「え?あ・・・・ああ、うん。そうだよ。いつもいつも、行く先々でトラブルに遭遇してさ・・・・宝くじだって当たったこと無いもん」

「くじ運とお前のソレは別問題なんだが・・・」

 

と、その時だった。

 

「──────────っ!あにさ」

「・・・・・佳南?」

 

佳南が何かを言いかけて、止まった。

これは・・・・・まさか・・・・・!

 

 

 

 

 

鳴り響く鈴の音

 

 

 

 

 

光が全てを飲み込み

 

 

 

 

 

日常が、非日常へと切り替わる。

 

 

 

 

 

「ほらな?アタシって運が無いだろ?」

「ミノさんはアンラッキーガールなんよ~・・・・」

「なんて言ってないで、お役目よ!」

「───────────大丈夫。おれたちは、やれる」

 

合宿の成果を出せば良い。

大丈夫。

 

決意を胸に、おれは変身する。

 



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不屈の喧嘩番長の章 我が名はK -全ての“夜“道を“輝“らす者-

さて、ここらで最期の主人公の物語を綴るとしますか!

てなわけで、どうぞ、お納めください。


神世紀295年、春―――

 

その日、初めて、俺は“俺“を手に入れた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

神世紀の時代となっても、落ちこぼれというものはやはり、存在する。

そういった若者は神樹ではなく暴力を信じ、自分よりも弱い者を食い物にして日々を生きていた。

 

讃州市内のとある公園―――

 

高校生と思われる少年数人が、中学男子を取り囲んでいた。

 

「あ・・・あの・・・今月は・・・ほんとに・・・これしかなく・・・て・・・」

 

「んなこと聞いてねーよ。足りなきゃ誰かから盗れ」

 

「そ・・・そんな恐ろしいこと!」

 

「出来なきゃ痛い目、見るのてめえだぞ?」

 

「ひぃ!!」

 

俗に言うタカリ、というやつか。

男子は怯え、すくみ、身動きが取れずにいる。その有り様を面白がる不良たち。

男子が心の中で助けを求めた、その時―――

 

 

 

 

 

()~♪()()()~↑♪()~↓♪()()()()(ファ)()()()~♪

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

公園にリコーダーの音色が鳴り響く。

不良たちはざわめき、男子はなにが起きたか理解が追い付いていない。

 

「だれだ!!姿を見せろ!!」

 

恰幅のいい不良が叫ぶ。この集団のリーダーなのかも知れない。

 

「いた!あそこだ!!」

 

不良の一人が指差した先には、

 

 

 

 

 

公衆トイレの屋根の上で、ソプラノリコーダーを真横に構えて演奏する、中学男子がいた。

 

 

 

 

 

ぴ~♪ぴ♪ぴ♪ぷぴー!ぴ~♪ぷすぷぴーぴ♪ぴ♪ぴ♪ぴ♪ぷぴー!

 

 

「・・・・・・あいつ、音外してますぜ」

 

「・・・・・・なにがしたいんだ?」

 

困惑する不良たち。リコーダーを吹く少年に気を取られていた彼らは気付かなかった。

隙を見て、中学男子が逃げ出したことに。

 

「あぁ!?アイツ逃げやがった!!」

 

「なにぃ!?」

 

気付いた時にはもう遅い。男子はどこかに去ってしまっていた。

そうなると当然、不良たちの矛先は笛吹の少年に向かう。

 

「やいやい!てめえのせいでアイツ逃がしちまったじゃねぇか!どうオトシマエ付けてくれんだよぉ!!」

 

少年は答えず、ぷすぷぴリコーダーを吹くのみ。

 

「オイてめえ降りてこい!!」

 

「カッコつけてんじゃねぇぞ!!」

 

「そもそも縦笛を横向きに吹いてんじゃねぇ!!」

 

不良たちに散々文句を言われ、少年も流石に演奏を止めた。

 

「やれやれ、人の趣味にケチを付けるなんて、悪い子だ」

 

「気取ってんじゃねぇよ!!」

 

「降りてこい!!ブン殴ってやる!!」

 

「はぁ・・・血気盛んなバッドボーイズだ。OK、ちょっと待ちな。今そっちに行ってやるよ」

 

そう言って屋根から飛び降りた。

ズドン、と音を立てて着地。

 

「――――――――」

 

「――――――――」

 

「――――――――」

 

「――――――――ちょっと、まって、足が、しびれて」

 

「――――――――」

 

不良たちはげんなりしていた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「さぁて、悪い子はお仕置きだ」

 

しばらくしゃがみこんでいた少年が立ち上がったのは、三十分丸々経ってからだった。

 

「調子こきやがって!!」

 

「ブッ殺してやる!!」

 

「おお、怖い怖い」

 

不良五人に対して、少年は一人。

戦力的には圧倒的に少年の方が不利。

だが―――蓋を開けてみれば、終始、少年の方が有利であった。

拳打を最小限の動きで避け、お返しにエルボーを決める。

回し蹴りをかわし、足払いをかけて転ばす。

振り下ろされた鉄パイプを受け止め、そのまま投げ飛ばす。

二人同時攻撃にも怯まず、受け止め、赤子の手を捻るが如く、あっさりと倒してしまった。

 

「相手の戦闘力を過小評価しないことだよ。バッドボーイズ」

 

伸びている不良たちにそう告げて、少年は立ち去っていった。

 

公園を出てしばらくしたら、少年の後ろから何かが蒙スピードで走ってくる音が聞こえてきた。

 

 

「かーーーーーーぐーーーーーーやーーーーーーちゃーーーーーーん!!!」

 

 

「おう、ゆうんぶぅ!!」

 

 

ドッ!!

 

 

突如として現れた赤毛の少女にラリアットされて吹っ飛ぶ少年。

スピードも乗っていたせいか、数回バウンドした後にゴロゴロ転がってようやく止まった。

ボロボロにされた少年は仰向けのまま、少女と話す。

 

「いってぇ・・・・・・何しやがる、友奈ぁ!!」

 

「かぐやちゃんまたケンカしてたでしょ!そんなことしちゃダメだって、いつも言ってるでしょ!!」

 

 

両手を腰に当ててぷんすこ怒ってる少女の名は『結城友奈』

 

起き上がりながら悪態をつく少年の名は『煌月(こうづき)輝夜(かぐや)

 

「はぁ・・・で?なんか用事?」

 

「あ!そうだった!お説教はあとにして、かぐやちゃん。風先輩が呼んでたよ。なんでも猫探しの依頼が来てるんだって」

 

「猫探しか・・・フッ。俺に相応しい依頼だな」

 

輝夜がニヒルに笑う。

 

「かぐやちゃん、猫探しの“えきすぱーと“だもんねー♪」

 

それを受けて友奈がふにゃり、と笑った。

それを見て、輝夜は思う。

 

こんな日々が永遠に続けば良いな―――と

 

 

 




煌月輝夜について―――

中性的な顔立ちの少年。つまりいわゆる『男の娘』キャラ。
腰まで届く長い髪は、三つ編みで一つにまとめている。

その見た目から、たまに女子に間違われる。というか、友奈に初めて会った時に間違われ、その時に友奈がつけたアダ名が『かぐやちゃん』である。なお、輝夜本人はそのアダ名を気に入っているため修正しようとしない。
が、赤の他人に女に間違われると、キレる。

ケンカっ早く、年上相手にも怯まず果敢に挑み、そして勝利してしまうために、一時期『番長』と呼ばれ恐れられていた時期がある。

頭の良さは中くらい。運動神経は天下一。
考えるより行動するタイプ。


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Yの活動記録 -猫探し探偵煌月輝夜-

煌月くんの掘り下げ回。

それとちょっとした伏線仕込み回です。

どうぞ、お納めください。


「チィーッス」

 

「こんにちはー!」

 

ガラリと扉を開けて、入室する。

ここは讃州中の家庭科準備室。

とある部が部室として使用している部屋だ。

 

部の名前は『勇者部』

 

なかなかイカした名前だろ?

友奈なんか眼を輝かせて「かっこいー!」って騒いでたしな。

 

「お、やっと来たわね。遅いぞー、猫探偵」

 

この人は『犬吠埼 風』学年ほ一つ上の三年生。

この勇者部の部長であり、創設者だ。

口を開けば「女子力女子力」とうるさいが、スタイルは抜群で黙っていれば美人な残念ガール。その上、家事全般も全てこなせるのだからホント、神樹サマは人に二物を与えてはくれないんだな。

 

「煌月ー?なんか失礼なこと考えてない?」

 

「はてさて、何のことやら?で、風さん。探して欲しい猫の特徴は?」

 

「露骨に話を反らさない!・・・まあいいわ。あとでお説教ね」

 

またか。今日は厄日だな。

 

「はい、輝夜くん。これが猫の特徴よ」

 

車椅子を動かして、俺に一枚のペーパーを手渡してくるこの黒髪美少女は『東郷美森』俺と同い年(タメ)でクラスも同じ。

おしとやか系の清純派大和撫子って見た目だが、その実、ゴリッゴリの右側思想でスーパーハッカー。おまけに何処を探しても見つからない位のハイパーナイスバディだ。

 

「輝夜くん?私の顔になにかついてる?」

 

「ああ、すまない。なんでもないよ」

 

「・・・・・・変なこと、考えてた?」

 

「―――――――さてね」

 

ペーパーを受け取りつつ、東郷の熱視線を全身で受け止める。

さて、どんな猫チャンかな?

 

「―――あ・・・あの!煌月先輩!」

 

「ん?なんだい?」

 

おっと、忘れる所だった。今年入ってきたダークホースの存在を。

彼女は風さんの妹の『犬吠埼 樹』学年は一つ下で一年。

風さんとほ真逆で人見知りが激しく、いまだに俺相手だと緊張する小動物系女子。女子らしく占いが得意でその的中率は六割弱、らしい。東郷曰く、「樹ちゃんは才能の塊」なんだと。磨くのは良いが、右側思考には染め上げるなよ?

 

「あ―――――えと」

 

「―――――――?」

 

「――――これ、どうぞ」

 

「ばんそうこう?なんで?」

 

「あら?輝夜くん、肘をすりむいてるわ・・・」

 

「え?ホントに?」

 

いつの間に。まあ、心当たりは一つしかないが。

なぁー、友奈ぁー。

あ、目ェ反らした。吹けないクセに口笛吹いてる。

 

「ん、ありがとう樹」

 

樹の頭をわしわしと撫で、ケガの場所にぺっと貼る。

 

「よし、それじゃ行くとするか!」

 

「いってらっしゃーい」

 

「怪我には気を付けてね」

 

「い・・・いってらっひゃい・・・」

 

この三人に、友奈と俺を含めた五人。

これが俺の所属する勇者部のメンバーだ。

 

―――――――――――†――――――――――

 

勇者部の活動目的は、『世のため人のためになることを勇んで行うこと』

まあ、つまる話がボランティアだな。

しかし、ボランティア部だなんてありきたりな名前にせず、あえて『勇者』なんてケレン味のある名前にすることで人々の印象に残りやすくする。そうすれば知名度は高まるし、依頼も増える。

創った風さんにそんな意図があったかどうかは別だが。

 

「さて、ご依頼の猫チャンは・・・と」

 

「かぐやちゃーーーーーーん!!」

 

「ん?」

 

これから猫を探そうとしたところで、友奈が来た。今度はラリアットされることなく、俺のとなりで止まる。

 

「なんだ?俺の手伝いか?明後日の劇の準備はどうしたんだよ」

 

「準備ならほとんど終わったよ。えっと―――」

 

ん?なんだ?少し歯切れが悪いな友奈のやつ。

まさか―――

 

「さっきの、ケガさせたこと。気にしてんのか?」

 

「う」

 

どうやら図星らしい。やれやれ、そんなの今更の事だろうに。まあ、友奈らしいっちゃらしいわな。

まったく、仕方ない。俺は友奈の頭を撫でながら告げる。

 

「いつものことだろ?気にすんなよ・・・・・・て言っても、どうせおまえは気にするだろうからな。ほれ」

 

「ふぇ?」

 

ある場所を指差す。そこには件の猫が佇んでいた。

 

「手伝ってくれるんだろ?俺は()()()()()()()()()()()()()()。捕まえることができない。追い込むから捕獲頼むな」

 

「!・・・うん!まかせて♪」

 

友奈の顔に笑顔が戻る。やっぱ友奈には笑顔が一番似合う。他の表情なんて考えられないくらいだ。

 

「よし、俺が向こうから追い込む。友奈はあっちで捕まえてくれ」

 

「らじゃー!」

 

―――――――――――†――――――――――

 

作戦は途中までは、上手くいっていた。

猫が友奈を踏み台にして近場の塀に飛び乗り、走り去って、それを追いかけたまではいい。

問題は―――

 

「うー・・・・・・・・・ん」

 

「きゅう」

 

茂みから出てきた小学女子に友奈がぶつかってしまい、その子と共に気絶してしまったことか。

 

「わっしー、大丈夫?」

 

「須美ー?無事かー?」

 

更に茂みから二人現れた。どうやらこの子の友人らしい。

 

「おーい、友奈ぁ?おきろー」

 

友奈の頬をぺちぺち叩いて起こす。逃げた猫?どうせすぐに見つけられるさ。今はこっちが優先。

 

「うぅ・・・・・・・・・はっ!猫ちゃんは!?」

 

「おはよう友奈。猫なら逃げたぜ」

 

「うう・・・そっかぁ・・・」

 

目に見えて落ち込む友奈。むぎゅう、と少女を抱き締める。

 

「んむー!んむー!んむむむー!」

 

「・・・・・・おーい、友奈ぁ。いい加減その子を離してやれー」

 

「え?―――――わあ!!ごめんね!大丈夫?」

 

「ぷはあ・・・・・・らいじょうぶれふ」

 

友奈のホールドから解かれた少女は、顔を真っ赤にさせて目を回していたが、ケガとかはしていない様子。うん、大丈夫そうだな。

 

「ごめんね。すっごく柔らかくて、気持ちよかったから、つい・・・」

 

「そりゃうちの自慢の『ましまろぼでー』ですので~」

 

上質な麻布(シルク)のごときロングヘアーの少女がにこやかに笑い笑いながら言った。

その言葉に友奈に抱き締められていた黒髪の少女がさらに顔を真っ赤にする。

 

「それはそうと、猫がどうとか・・・話してませんでした?」

 

もう一人の、どっちかというと快活そうな少女の一言で友奈が「そうだったー!」と叫んだ。やれやれ、忘れていたのかよ・・・

 

―――――――――――†――――――――――

 

猫探しの協力を申し出てくれた三人と共に、周辺の探索をすること、五分―――

 

「いたー!あんなところに!」

 

「木に登って、降りられなくなっちゃったんだね~」

 

最初に来た公園にある一本の木の上に、件の猫はいた。

周り回って振り出しに戻るとは―――。なんて気落ちしている場合じゃないな。

 

「どうする?ハシゴなんて近くには無いぞ?」

 

「よーし!ここは合体だー!」

 

「「え?」」「おお!?合体!?」

 

「おい友奈、お前まさか・・・」

 

予感的中。

友奈が土台となって、黒髪少女、快活少女、の順に肩に乗る。

確かに猫に届くだろうが・・・・・・自分ら、降りるときどーすんのさ。

とか思っていたら―――

 

「あ」てん

「え?」てん

「わ!」てん

 

「いらっしゃ~い♪」

 

友奈たちをハシゴにして、降りて来た。そこをお嬢ちゃんがナイスキャッチ。

 

「おし、ナイスだ」

 

「えへへ~っとと、この子すっごい暴れるよ~!」

 

捕まえられたのが気にくわないのか、それとも俺が隣にいるからか、猫がお嬢ちゃんの腕の中で暴れまわっている。すると――――

 

「あー!ピッカーンとひらめいた」

 

何を思ったのか、まるで泣きじゃくる赤子をあやすみたいにして、猫をなだめ始めたのだ。

 

「大丈夫~大丈夫~。こわくな~い・・・こわくな~い・・・」

 

すると猫は徐々に落ち着きを取り戻し、やがて眠ってしまったのだった。

ヒューっ!やるじゃない。

 

その後、うまいこと分離できた友奈たちと共に、依頼者の元へ猫を届けた。

依頼者はたいそう喜び、お礼に、と和菓子の詰め合わせをくれたのだった。

しかし俺たち勇者部は、あくまでボランティアの一環として行っているに過ぎない。故にお礼を受けとることはできない。しかし、それでは依頼者の気が晴れないだろう。そこで―――

 

「実は、この子を捕まえたのは僕たちじゃないんです。この、三人の小さな勇者たちなんです」

 

と言って、小学生ズに受け取ってもらうことにしたのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「本当にいただいてもよろしいのでしょうか?」

 

「いいのいいの!小さな勇者さんたちへの、わたしたちからのお礼でもあるんだから」

 

「そういうこと。それに、死んだばっちゃが言っていたぜ?『無料(タダ)より高いモノは無い。だが、感謝の気持ちはプライスレス。受け取らないのは礼儀に反する』ってな」

 

「須美、お兄さんたちもこう言ってるし、お言葉に甘えちゃおうぜ?」

 

「・・・・・・・・・そうね。そうします」

 

どうにか折れてくれたようだ。

さて、そろそろこいつらは帰らないと、日が暮れる前に家にたどり着くことができなくなりそうだ。

少女たちの着ている制服。昔、ばっちゃも着ていたという『神樹館小学校』の制服だ。

神樹館は大橋市にある。ここ讃州市からは車でだいたい一時間半はかかる。小学生にはそう簡単にホイホイ行き来できるような距離ではない。

 

「またな、小さな勇者たち。次はぜひとも『勇者部』のみんなとも会ってくれよ」

 

「あ、はい!えっと――」

 

そういえば自己紹介がまだだった。

昔ばっちゃに言われたのに。『初対面の相手には、しっかり自己紹介すること。こちらから名乗れば自ずと相手も自己紹介してくれる』って。

だから、ありったけの感謝その他諸々を込めて、高らかに名乗りを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んだばっちゃが言っていた―――俺の名は、

『“(かがや)“く“月“となりて、(すべ)ての“夜“道を“(てら)“すモノ』―――すなわち、『煌月輝夜』だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か――――カッコいいーーーーーー!!!!」

 

快活少女が目を輝かせてそう言えば

 

「そう・・・かしら・・・?」

 

黒髪少女は半ば引きぎみに答え

 

「はじめまして~。わたし、乃木園子だよ~」

 

お嬢ちゃんがマイペースに自己紹介していた。

うーん、この統一感の無さよ・・・

 

「と、アタシもか。三ノ輪銀です!」

 

「あ、鷲尾須美です。今日は・・・えっと・・・」

 

「こういう時は『ありがとう』で良いと思うな♪あ、わたし結城友奈。じゃあまたね!」

 

「はい、またいつか」

 

「またね」

 

「またね~」

 

三人は出てきた茂みへと戻っていった。

・・・・・・・・・うーん、なんだろう。何かが引っかかる。

 

「かぐやちゃん?どうかしたの?」

 

「・・・・・・須美って子、なんかどっかで見たことあるんだよなぁ」

 

「え、そうなの?昔会ったことがある、とか?」

 

「そうかなぁ・・・?そうかもしれんな」

 

とりあえず今は友奈のその言葉に納得しておくことにした。

 

「それにしても、良い子たちだったね。また会えたらいいなぁ」

 

「大橋の方に住んでいるみたいだったし、そんなホイホイ行けるわけじゃないが・・・確かに、また会えたらいいな」

 

そんな話をして、二人して笑い合う。

 

「さて、そんじゃ俺らも帰るか」

 

「うんっ♪」




煌月輝夜について②―――

幼きころより面倒を見てくれた祖母(煌月は『ばっちゃ』と呼ぶ)を心から尊敬している。

座右の銘は『不味い飯を出す店と悪がこの世に栄えた試し無し』もちろん、ばっちゃからの受け売り。

ばっちゃは二年前に天寿を全うし、この世を去った。
その為、現在一人暮らし。

それを知った結城家に、「時々で良いからうちにご飯、食べにいらっしゃい」と誘われ、月に一度くらいのペースでお邪魔している。

意外と対人スキルは高め。(あるゆる意味で)


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Vの襲来 -終わる日常-

進行マキマキ♪進行マキマキ♪
急展開にはご容赦を♪




・・・・・・すいません。
巻き進行で行きたいので、急展開注意です。

それでも良いと言う、心の広い素敵なお方、どうぞ、お納めください。










ところで、『なんかすごいビーム』って聞くと、クルモンを思い出すの僕だけかな?


「かーぐーやーちゃーん!」

 

「んぉ?」

 

俺を呼ぶ声に振り向くと、友奈と東郷が歩み寄って来た。と言っても、東郷は車椅子なんだがな。

 

「輝夜くん、これから部室へ?」

 

「その前に職員室。今日日直で」

 

「そういえばそうだった、じゃあ先に行ってるね」

 

「おう。すぐ行くから、また後でな」

 

「うん!じゃねー」

 

友奈たちと別れ、職員室へ小走りに向かう。

 

「失礼しまーす。不同せんせー、居ますかー?」

 

扉を開けて雑に挨拶すると、奥の方で一人の教師が手を挙げた。

 

「ああ、煌月くん。こっちですよ」

 

そちらに近づく。

金髪のトゲトゲ頭に柔和な笑みを浮かべるその人こそ、俺たちの担任教師『不同(ふどう) 幕切(まくぎり)』である。

 

「いつも思うんスけど、その頭、どうにかしないんスか?不良感パないッスよ?」

 

「うーん・・・・・・これでも地毛ですからね。剛毛なのも含めて。ほら、染めたりすると将来剥げるって良く聞くじゃないですか」

 

まだまだ若く見られたいので、と言って笑う。

まあ良いけど、別に。興味ないし。

 

「とりあえず、今日の日誌ッス。そんじゃ、おつかれーッス」

 

「おおっと。こらこら、不用意に物を投げない!」

 

すんませーん、と、とりあえずの謝辞を述べつつ、退室。

さっさと部室へと向かうのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「ちわーッス!煌月、入りまーッス」

 

「お、やっと来たわね」

 

「こ・・・こんにちは」

 

「こんにちは輝夜くん、さっきぶりね」

 

部室に入ると、風さん、樹、東郷が出迎えてくれた。あれ?友奈は?

 

「あ、かぐやちゃん!ちょうど良かった。ちょっとそこ押さえて欲しいの!」

 

「うお、そこに居たんかお前」

 

友奈は床で作業していた。これ、昨日の人形劇で使ったセットじゃん。

 

「そーいや、お前が倒してぶっ壊したんだっけか」

 

「こ・・・壊したのはわたしじゃないよー!」

 

確かに倒したのはわたしだけど・・・と小声で呟く友奈。ばつの悪そうに指先をちょんちょんしているのがちょっとかわいい。

 

「あの時はホントびっくりしたわよー。ま、誰にもケガが無くて良かったワ」

 

「風さん、そういう問題じゃないと思う・・・」

 

「固いこと言わない!にしても、なんで壊れちゃったのかしら?」

 

「真ん中くらいでポッキリ折れちゃってるよね・・・」

 

姉妹が首を捻る。

簡単に説明すると・・・

昨日の幼稚園での人形劇の最中、テンション上がった友奈がこの舞台セットを倒してしまったのだ。

園児たちの方へ倒れて行き、あわや大惨事になるかと思いきや、セットが()()()()()どうにか園児たちにぶつからずに済んだ。

―――ということがあったのだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・どした?東郷。俺の顔に何か付いてるか?それとも、俺に見惚れていたのか?」

 

「それは無いから安心して」

 

「あっけらかんとそんなこと言わないでよ悲しくなるじゃん」

 

部室に笑い声が響く。

うむ。()()()()()()()()()()()

 

―――――――――――†――――――――――

 

時刻は過ぎて夕方。

俺達は『かめや』といううどん屋に来ていた。

かけうどんが一杯百円と学生諸君にはとっても優しい値段設定(リーズナブル)になっており、その上、うまい。

おかげで我ら勇者部一同、すっかりここの常連客である。

・・・店員さんにも顔を覚えられる程に通っているし、常連と言っても大丈夫だよね?

 

「ぷはー!すみませーん!おかわりー!」

 

「三杯目・・・」

 

うん。こんだけ食ってんだから、常連客じゃなくても、上客としては扱ってくれてるだろ!←投げやり

 

「・・・風さん、あんまり食いすぎると、肥るぞ?」

 

「んぐっ!!げほっげほっ・・・・・・だ、だだだ大丈夫よ。アタシの場合、栄養は全部女子力に変換されるんだから!」

 

なにその謎理論。根拠はどこよ?

友情パワーと謎理論で並みいる敵をなぎ倒す某プロレス(?)漫画みたいな理論を述べおって・・・

 

「アタシのことは良いの!それより、本題に入るわよ」

 

「そういえば、話があるからって理由でここに来てたんだっけ」

 

「そうよ!今度の文化祭の話をするために来たのよ!」

 

「文化祭ぃ?」

 

「もうですか?」

 

讃州中の文化祭は十月に行われる。現在五月の頭。流石に早すぎやしないか?

 

「去年は色々ゴタゴタしてて、何も出来ませんでしたから・・・」

 

「あー、そういやそうだったな」

 

二杯目を注文したおれは、カバンからビンを取りだし、中の自家製梅干しをやってきたうどんに一粒のせる。そして、食う。

うん。うまい。

 

「あ♪かぐやちゃんの梅干し、いっこもーらい♪」

 

ひょい、ぱく。

 

「あっ。・・・たくもう。ちゃんと味わえよ?」

 

「ひゃーい」

 

酸っぱそうに口をすぼめながらも、元気よく返事をする。

 

「あ、私にもちょうだい?」

 

「いいぞー。ほれ」

 

「ん、ありがとう」

 

東郷はどうやら酸っぱいのは平気らしく、なんとも美味しそうに食べてくれた。

やはり手間隙かけて作った物を喜んでくれる人がいるというのは、とても良いものだ。

死んだばっちゃも言っていた。「一流(プロ)料理人(シェフ)は、自分の為に料理を作らない。自分の料理を食べてくれた人が、満面の笑みを浮かべて、『ごちそうさま』と言ってくれる。この為に料理を作るのだ」と。

 

「・・・・・・あ・・・あのー・・・」

 

「ん?なんだい樹。お前も梅干し、欲しいのか?」

 

「あ・・・えっと・・・そうなんですけど・・・そうじゃなくて・・・」

 

ふむ・・・?

 

「うーん・・・・・・梅干し、ニガテ?」

 

「えっと・・・・・・すこし」

 

「そっかー。そんな樹には、こっちのビンだな」

 

カバンからもう一つのビンを出す。そちらにはラベルが貼ってあり、『甘め』と書かれている。

 

「氷砂糖とシロップを使った『はちみつ漬け梅干し』!これなら、酸味控えめで良い感じだと思うぞ。ほれ、食べてみ?」

 

ビンから一粒取りだし、樹に渡す。

 

「・・・・・・・・・いただきます」

 

はむっ

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・どうだ?」

 

「―――――――――――――おいしい、です・・・!」

 

「そうか!それは何よりだ!」

 

表情から見ても無理しているわけではない。どうやらホントにちゃんと食べられたみたいだ。あー、よかった。

 

「ちょっとちょっと!あんたたち!」

 

風さんが頬を膨らませてこちらを睨む。

 

「何?風さん。梅干し食べたいのか?」

 

「たべるー♪」

 

今日も勇者部は平和です。

 

 

 

 

ちなみに、文化祭の出し物の案は宿題となった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「ただーいまー」

 

『かめや』での会議(という名の食事会)を終え、東郷家が頼んでいるデイサービスの車を、いつも通りに断って、一人徒歩で帰宅。

 

「ああ、おかえりなさい輝夜」

 

出迎えてくれたのは不同先生。

なんでうちにいるのかというと、実は彼、この家の使用人なのだ。その上教職員もやっている。本人曰く、本業は使用人(こっち)らしい。

 

「使用人が副業に教師やるのって、どうなのさ」

 

「今さらですね」

 

「それよりマッキー。今日の夕飯は?」

 

マッキーとは不同先生のあだ名である。俺は幼少のころからこの人のことをそう呼んでいた。

 

「今日はご実家から蕎麦が届きましたので、夕飯は蕎麦にしました」

 

「おー蕎麦か。良いね。うどんの次に好きだよ」

 

煌月家の先祖は、諏訪という地からの移住民らしく、血筋の人間には蕎麦好きが多い。

が、生憎俺は蕎麦よりもうどん派だ。

もっと言うとうどんより梅干し派だ。梅干し万歳。

 

「もうあとは茹でるだけなので、リビングで待っていてください」

 

「はいよ」

 

「ちゃんと手洗いうがいはしっかりやってくださいよ」

 

「わーってる!」

 

―――――――――――†――――――――――

 

夕飯を終え、二階の自室へ。

風呂は寝る前に入る主義なので、今のうちに宿題を片付けることにしよう。

 

ブーッ、ブーッ、

 

と、思ったがメールが来たので先に確認。

 

「む、友奈からだ」

 

『こんやのお月様は、まんまるできれいだよっ♪』

 

「・・・・・・やれやれ、いつの間にこんな言葉を覚えたのか」

 

このメールはいわば()()()だ。

なので早速ベランダへ出て、手摺を使って屋根へと登る。そこで待っていたのは――――――

 

「あ♪待ってたよ。かぐやちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月明かりに照らされて、光輝く桜色の天使であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――やあ、友奈。月夜の密会にお招きいただき、恐縮だよ」

 

「えへへー♪かぐやちゃんがまたむつかしいこと言ってるー」

 

「・・・・・・・・・せっかくカッコつけたんだからさぁ」

 

「あはは、ゴメンゴメン」

 

「んもう・・・」

 

二人して笑い合う。俺と友奈は、時々こうして屋根の上でおしゃべりをする。話題は大抵、今日の出来事。今回は、風さんからの宿題が話題かな?

 

「ありがとね、かぐやちゃん」

 

「んん?なんで?なんかしたか?俺」

 

()()()()()だよー」

 

「・・・・・・・俺は何もしてないよ」

 

「・・・・・・・それでも、言いたいの」

 

「・・・・・・・そうかい」

 

それっきり、二人とも、黙ってただ月を眺めていた。

時々そよぐ風が、友奈の香りを俺に届ける。

それ以外は何もなく、ただただ、時間ばかりが過ぎていった。

どれくらい経ったか、「くちゅんっ」というかわいらしい声が隣から聞こえてきた。

 

「・・・・・・五月だからって、これ以上は体が冷える。そろそろ戻ろうぜ?」

 

「・・・・・・うー。わかったよぉ」

 

そそくさと自分の部屋へと戻っていく。その途中、

 

「かぐやちゃん、また明日ね♪」

 

「ああ、また明日」

 

そういってお互いに手を振り合って、今夜はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、文化祭の出し物について、話し合うの忘れてた」

 

どうしようか?

 

―――――――――――†――――――――――

 

翌日、結局なにも良いアイデアは思い浮かばなかった。

 

「(文化祭の出し物・・・文化祭の出し物・・・)」

 

現在授業中だと言うのに、全く授業内容が入ってこない。

さてさて、ホントにどうする?

 

「(あー、クソ。時間止まんないかなぁ?)」

 

そんな子供みたいなことを思った、その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪~♪~♪~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅおっ!!なんだぁ!?」

 

「誰ですか?携帯の電源は切っておくように!」

 

辺りを見回す。なんか音源がスッゲー近いような・・・

 

「てゆーか、俺じゃね?」

 

あわてて端末を取り出して、ふと、思い出す。

 

「(おかしい、授業始まる前にちゃんと電源は切っておいたハズ)」

 

画面には『樹海化警報発令』と表示されている。

なんだ、これは・・・

 

「・・・・・・これは、一体」

 

呆気に取られていると、けたたましい音が止み、教室は静寂に包まれていた。

 

んん?でもなんか、静か過ぎない?

 

「・・・・・・・・・え?」

 

もう一度、辺りを見回す。

先生も、クラスメイトも、時計の針も、外に舞う落ち葉すらも、なにもかもが止まっていた。

 

「輝夜くん・・・・・・友奈ちゃん・・・・・・」

 

「え?なに・・・・・・なんでみんな止まって・・・・・・」

 

友奈と東郷を除いて。

 

「・・・・・・・・・んだよ・・・これは・・・」

 

訳が分からない。まるで時間が停止してるみたいな状況。そんな中、なぜか動ける俺たち。

 

「・・・とにかく、情報収集だ」

 

思い立ち、行動しようとした、その時―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界が、光に覆われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅお!まぶし!」

 

「!!東郷さん!」

 

「きゃあ!!」

 

あまりのまぶしさにとっさに眼を閉じる。

しばらくして、眼を開けた時―――――

 

 

 

 

 

辺りは、極彩色の木々に覆われていた。

 

 

 

 

 

「――――――は?」

 

 

 

 

 

この日、俺たちの日常は、一旦、終わりを告げたのだった。




キミが願うことなら、全てが現実になるだろう。
キミが、選ばれし者ならば・・・


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Vの襲来 -勇者になる-

「なに・・・?ここ・・・。何処だよ・・・」

 

景色に見覚えは欠片も無い。

そもそも俺はさっきまで教室にいたハズだ。

 

「わ・・・わたし、夢でも見てるのかな・・・?」

 

隣に立つ友奈が自分の頬をつねる。

どうやら痛かったらしく、ちょっと涙目になっていた。

 

「夢じゃ・・・ないみたい・・・」

 

訪れる沈黙。

それを不意に東郷が破った。

 

「そうだ・・・端末・・・」

 

言われて俺も友奈もハッとなった。そうだ。事の発端はスマホが鳴らした謎のアラートだ。

三人ほぼ同時にスマホの画面を見る。

 

「画面が・・・変わっているね・・・」

 

「うん・・・」

 

「その上、メイン画面に戻れねぇと来た」

 

端末を操作しながらそんなことを言う。

む、これ、地図アプリか?友奈、東郷、俺、三人のフルネームが表示されてる。

もう一つは・・・・・・あ?なんだこれ。指輪のマーク?

なんかのボタンっぽいな、押してみよう。

ぽちっとな。

・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・何も起きねぇ!

 

「大丈夫、東郷さん!わたしがついてる!」

 

「友奈ちゃん・・・」

 

俺が端末と戯れている間に、友奈が東郷を元気付けていた。

ぐっとガッツポーズを取るその手が、若干震えている。

友奈はいつだってそうだ。友達のためなら自分が怖い思いをすることを躊躇わない。

だから俺は――――

 

「おい友奈。俺もいるってこと、忘れてねぇか?」

 

「え?あー。ううん!忘れてない忘れてない!」

 

「嘘付けお前ぜってぇ忘れてただろ!」

 

「わ・・・わわわ忘れてないよ~(汗)」

 

「・・・・・ふふふ」

 

ふむ、どうやら気を紛らわせることができたようだな。

よし、とりあえず周辺の探索をしよう。

と、思ったその時――

 

がさがさっ

 

俺たちの背後で物音がした。

咄嗟に振り向くと、そこには風さんと樹の姿が。

 

「ああ、良かった。みんな無事ね?」

 

「風先輩・・・・・・風せんぱぁい!」

 

二人の姿を見た友奈が風さんに抱き付いた。

東郷もほっとした様子。

実際、俺もちょっと安心した。

 

「風さん、樹、二人とも無事で何よりだよ」

 

「あの、風先輩。どうやってここが?」

 

「これのおかげよ」

 

東郷の問いに、風さんは自分の端末の画面を見せる。

画面には、先ほど俺が見ていた地図アプリが表示されていた。

なるほど、それを頼りにここまで来たのか。

ということは・・・・・・

 

「なあ風さん。つかぬことを聞くが・・・風さんは、ここが何処なのか、知ってるのか?」

 

「―――――――――」

 

「その反応、知ってるってことで良いんだな」

 

「風先輩・・・・・・説明、してもらえますか?」

 

「煌月・・・東郷・・・」

 

風さんは、俺、東郷、友奈、樹、全員を一瞥してから、覚悟を決めた表情で答えた。

 

「わかった。とりあえず、安全な場所へ行きましょう」

 

―――――――――――†――――――――――

 

しばらく歩き、少し開けた場所に出た俺たちは、そこで風さんの説明を受けていた。

 

「私は、大赦から派遣されてきたの」

 

「大赦って・・・神樹様を奉っている・・・」

 

「何か、大切なお役目なんですか?」

 

ふぅん、大赦・・・ねぇ。()()()は何も言ってなかったけど・・・別の部署なのかね。

 

「ずっと一緒にいたのに・・・・・・知らなかった・・・」

 

家族である樹にすら、黙っていたのか。これは、よっぽど重たいモン、背負わされたな。

 

「・・・・・・当たらなければ、このまま黙っているつもりだったから」

 

当たる?抽選でもしてんのか?だれが?

 

「ここは、神樹様が造った結界なの」

 

「じゃあ!悪いところじゃ、ないんですね」

 

友奈の言葉にうなずき、風さんは続ける。

 

「でも、私たちはここで、敵と戦わなくてはいけない」

 

「たたかう・・・・・・?」

 

「お姉ちゃん、敵って・・・?」

 

東郷と樹のその言葉に反応でもしたかのように、その時、地図アプリに動きがあった。

 

「なあ、風さん。その敵ってやつはもしかして・・・・・・これかい?」

 

端末に表示された俺たち以外の点。

名前は『乙女型』

 

「来たわね」

 

全員で反応のあった方角を見る。

 

 

 

 

 

異形の化け物が、そこにはいた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・なんだ、ありゃ?」

 

「アレがバーテックス。世界を殺す、人類の敵」

 

バーテックス・・・・・・世界を殺すとは、穏やかじゃないな・・・

 

「アレが神樹様にたどり着いた時、文字通り世界は滅ぶ」

 

「おいおい・・・さっきから穏やかじゃない単語が並びまくりなんだが?」

 

「ここには・・・・・・わたしたちだけ・・・」

 

「私たちに・・・アレを倒せっていうの!?」

 

東郷が叫ぶ。気持ちはわかる。体格差どんだけだよって話だよな。

 

「方法はあるわ!」

 

風さんが見せたのは、さっき俺が押したボタンと同じもの。あ、もしかしてそれでなんかパワー的なのもらえるパターン?

 

「戦う意志を示せば、アプリの機能がアンロックされて、神樹様の勇者になれる」

 

「よしじゃあ早速やってみよう!」

 

「え?ちょっと煌月!!」

 

風さんの静止の声を無視してボタンをタップ。

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

 

「なんも起こらんやんけ!!(怒)」

 

思わずスマホを地面に叩きつけてしまった。でも俺悪くないもん。アンロックされない端末が悪いんだもん。

 

「ごめん。勇者になれるのは『神樹様に選ばれた無垢な少女』だけなのよ」

 

「え?じゃあ俺なんでここにいるの!?」

 

「ええっと・・・・・・(汗)」

 

「!?みんな・・・あれ・・・」

 

東郷の声に俺は風さんいじりを止めにして、バーテックスの方を見る。

下部がなんだか光って、膨らんで・・・なんだろう。チャージ中?的な?

そこから何かが放たれた。

それは真っ直ぐこちらに向かって飛んで来て―――

 

「ヤバい・・・全員伏せろ!!」

 

咄嗟に友奈をしゃがませ、東郷をかばう。

バーテックスが放った何かは、すぐ近くに落下し、爆発した。

爆風と破片が俺たちに襲いかかる。

 

「きゃあ!!」

 

誰かが叫ぶ。樹か友奈どっちかか?

 

「みんな!ケガは無い!?」

 

「ああ、なんとかな・・・」

 

風さんの問いに答える。

どうやら至近弾だったらしい。直撃じゃなくて安心―――

 

「東郷さん!?」

 

とはいかないようだ。

さっきの一撃で東郷が完全に怯えてしまった。

 

「無理よ・・・・・・できるわけない・・・・・・」

 

「―――――東郷さん」

 

やれやれ、いつもの調子は何処へやら。しかし東郷の反応はある意味正常だ。

こんな訳のわからん場所にいきなり連れてこられて、『世界を守る為に異形の怪物と戦え』だなんて、常人なら失神レベルだな。いや、失神で済むかな・・・最悪、失禁するかも?

 

「友奈、煌月、東郷連れて逃げなさい」

 

「でも風せんぱ―――」

 

風さんの指示に、食い下がる友奈を押し留める。

 

「友奈、俺たちがここにいても風さんの邪魔にしかならない」

 

「う・・・」

 

「わかったか?なら東郷連れてさっさとお行き!!」

 

ぱしーん!と友奈の尻をはたく。うん。良い弾力。安産型ね!

 

「わひゃあ!!」

 

目尻に涙を溜め、顔を真っ赤にしてこちらをにらんだ友奈は、そのまま東郷と共に走り去っていった。

 

「樹、あんたも「いやだよ!!」」

 

若干食い込みに樹が叫ぶ。

涙目どころか半分泣いているくせに、瞳に宿る意志は屈強で、『テコでも動いてやるものか』と言外に語っていた。

 

「ついて行くよ・・・・・・何があっても・・・!」

 

「樹・・・わかった。私に続いて!!」

 

「うん!!」

 

二人同時に端末のボタンをタップする。

瞬間、風さんからは黄色い花びらが、樹からは緑色の花びらが、嵐の如く舞い上がる。

それが止んだ時、二人の衣装は華やかなモノに変化していた。

 

風さんは、力強さとスタイリッシュさの中に乙女らしさをプラスした、クールな女性を連想する黄色い衣装を

 

樹は、キュート&ロリポップ。フリルがふんだんにあしらわれたプリティでキュアキュアな変身ヒロインチックな緑色の衣装を

 

それぞれ纏っていた。

 

「これが――――勇者の――――」

 

「・・・ちょっと煌月。あんたなんで地面に這いつくばってるのよ」

 

「パンツ見えねーかなって」

 

無言で顔面を踏まれた。しかし見切った!

 

「今日の風さんはホワイト!」

 

「なんてやつ!?」

 

なんて事やっていたら、風切り音が聞こえてきた。

ヤバいなこりゃ。死なないように退散退散。

 

「風さん!今のは黙ってた罰として、しっかり脳内フィルムに焼き付けさせてもらったからな!!」

 

「ぐぬぬ・・・!」

 

「嫌なら二人とも無事に帰ってくること!いいな!?」

 

「わぁったわよっ!!」

 

風さんと樹が跳躍し、俺は物陰に隠れて爆発をやり過ごす。

煙が晴れ、去って行く二人の後ろ姿を見送って、俺は友奈たちのもとへと走りだした。

 

―――――――――――†――――――――――

 

友奈たちと合流した後、俺たちは小高い丘に来た。

ここならあの乙女型とかいうバーテックスがよく見える。

 

「風先輩・・・・・・」

 

友奈のつぶやきに答えるように、友奈の端末が鳴った。

 

「もしもし、風先輩ですか!?今戦ってるんですか!?」

 

どうやら風さんからみたいだ。友奈に近づき、聞き耳をたてる。

 

『こっちの心配より、あんたたちの方は大丈夫なの!?』『数多すぎだよぉぉぉ!!』ドーン!ドーン!

 

「はい!大丈夫です」

 

風さん、こっちの心配より妹の心配しろよ・・・。

 

『・・・・・・ごめん、友奈。こんなことに巻き込んで・・・』

 

「風先輩・・・」

 

「――――――――」

 

「―――――風先輩は・・・ずっと一人で抱えてたんですよね?誰にも言えないで・・・」

 

『―――――――』

 

「勇者になってみんなの為にがんばる―――それって、『勇者部』の活動目的とおんなじじゃないですか!」

 

『っ!!』

 

「っ!!」

 

風さんと東郷が息を飲む声が聞こえた。

友奈は何時だって、他人を気遣って行動する。

その優しさに救われた人間は、少なくない。

 

「風先輩は、悪くない・・・!」

 

『友奈―――』

 

その時だった。

 

『ッ!!しまったっ!!』

 

ドガーン!!

 

「ふ、風先輩っ!?」

 

ドガーン!!

 

更にもう一つ。爆発音。

最悪の事態を連想してしまう。

おそらく、最初の爆発で風さんがやられ、それに気を取られた樹が、続く爆発でやられた。

実際、バーテックスがこちらを見ている。目が何処にあるのか知らないけど。

 

「こっち、見てる・・・」

 

その上チャージ中と来た。こいつはマズイ・・・このままだと全員揃ってあの世行きだ。

 

「友奈ちゃん、輝夜くん・・・私を置いて逃げて・・・!」

 

東郷がそんなことを言い出した。確かに今のこの状況だと、車椅子の東郷は足手まといにしかならない。だからといって、置いていくなんて出来ない。

 

「そんな!?友達を―――」

 

友奈も同じ気持ちだったらしく、東郷を説得しようとして―――何かに気付く。

 

「――――そうだよ」

 

「友奈?」

 

「友達を見捨てるなんて・・・そんなの・・・!」

 

バーテックスを真っ直ぐ見つめる。まさか―――

 

「そんなの・・・!!」

 

「待て・・・友奈行くな!!」

 

 

 

 

 

伸ばした右手は、走り出した友奈に届かず、虚しく空を舞う。

 

 

 

 

 

「勇者じゃないっ!!」

 

 

 

 

 

バーテックスが爆弾を放つ。

それは狙い過たず、真っ直ぐ友奈へと向かい―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着弾した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆風が俺たちを叩きつける。

 

「ああっ!!友奈ちゃん!!」

 

「クソッ!友奈ぁ!!」

 

爆弾の直撃。助かる可能性なんて存在しない。普通なら。

 

「―――――――――ぁ」

 

煙が晴れた時、そこには、桜色に輝く手甲を装備した左手を、天高く突き出す友奈がいた。

 

「嫌なんだ。誰かがつらい思いをする事、嫌な思いをする事が!」

 

友奈はそのままファイティングポーズを取る。傍らには牛っぽいマスコットキャラが浮かんでいる。

 

「そんな思いをするくらいなら!!」

 

更に放たれた爆弾を、右の回し蹴りではじく。同時に、右足に手甲と同じ色の具足が装着された。

 

「私が!!」

 

続く三撃目を、今度は左の回し蹴りではじく。またも具足が装着された。

そのまま跳躍。四撃目はそれでかわす。

だが五撃目が友奈に迫る。

 

「がんばる!!」

 

それを友奈は避けようともせず、右手で殴り飛ばした。

当然、爆発。

爆煙を抜けて、現れた友奈はしかし、無傷だった。

どころか、友奈の衣装も風さんたちと同じく、別のものに変わっていた。

 

友奈らしい、可愛さと格好良さを兼ね備えた、スポーティーかつキュートな桜色の衣装へと。

 

 

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

 

 

 

友奈が雄叫びを上げてバーテックスへと突撃していく。

 

「友奈ちゃん!!」

 

東郷が叫ぶ。

俺はただ、拳を握りしめて、それを見届けるのみ。

 

 

 

 

 

 

「勇者ぁパァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンチ!!!」

 

 

 

 

 

友奈の放った渾身の右ストレートは、バーテックスの身体を半分以上吹き飛ばした。

その向こうで、友奈が高らかに宣言する。

 

「勇者部の活動目的は、『人の為になることを勇んでやること』!」

 

高らかに、宣言してしまった・・・

 

「私は!讃州中学二年!勇者部所属、結城友奈!」

 

「私は・・・勇者になる!!」



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Vの襲来 -撃退、そして・・・-

友奈の一撃で半壊したバーテックスだったが、みるみる内に再生していってる。

なんつーチート野郎だ。

 

「・・・神樹様、どうかみんなを御守りください・・・」

 

となりの東郷は、ついに神頼みし始めた。

その神樹様に『Help me!!』て言われて俺らここにいるんだよなぁ・・・

 

―――――――view,change:友奈―――――――

 

わたしの勇者パンチでバーテックスにダメージを与えることはできた。でもすぐに回復してしまった。

風先輩が言うには、『封印の儀』っていう特殊な手段じゃないと倒せないらしい。

そこで、わたしと樹ちゃんは風先輩の指示に従って、バーテックスを取り囲む位置に移動する。

 

「うわあ!!」

 

途中、バーテックスが布みたいなので攻撃してきたけど、寸でのところでかわしてどうにか移動できた。

 

「位置に付きましたー!」

 

「こっちもいいよー!」

 

向こうを見れば、樹ちゃんもちゃんといる。

 

「よぉーし・・・封印開始!」

 

風先輩が合図を送る。

えっと・・・確か、祝詞を唱える・・・だったよね。説明書は・・・・・・え?

 

「こ・・・これ、全部読むの!?」

 

そこには、なんだかむつかしい文章が書かれていた。

読み方も一緒に書いてあるからいいけど、なかったら絶対に読めないよぉー・・・

 

「え・・・ええっと・・・か、『かくりよのおおかみ、哀れみたまい』」

 

わたしが祝詞を詠むと、さっきも出てきた牛っぽいかわいいのが表れた。

 

「『恵みたまい、さきみたま、くしみたま』」

 

樹ちゃんもわたしに続く。そのそばには、緑色の毛玉がいる。あの子もかわいいなぁ。

 

「大人しくしろぉ!!」

 

「「ええぇぇぇ!!それでいいのぉぉぉぉ!?」」

 

「要は魂込もっていれば、何だっていいのよ!」

 

「早く言ってよ~!!」

 

そうこうしていると、バーテックスの頭がパカっと割れて、中からへんなのが出てきた。

 

「なんかベロンと出たー!」

 

「あれが御霊。バーテックスの云わば心臓みたいなもの。あれを壊せばこいつを倒せる!」

 

「なら、私が!」

 

風先輩の説明を聞いて、わたしは御霊を破壊しようと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、その前に御霊が×の字に斬られて爆発。たくさんの光を放って消えた。同時にバーテックスも砂になって崩れ落ちた。

 

「え・・・えっと・・・今の樹ちゃん?」

 

「ええ!?わ・・・私知りません!!」

 

「私も違うわよ!」

 

風先輩でもない・・・・・・じゃあ、誰?

そんなわたしの疑問に答えるみたいに、わたしたちの目の前に、その人は現れた。

所々ほつれていてボロボロの赤い服を着て、顔には黒いお面を着けている。そのお面には、あるマークが書かれていた。神樹様を模した、特徴的なマーク。それを使っているのはただ一つ、大赦だけ。

でもちょっとおかしい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・・・・あんたが、やったの?」

 

風先輩が訪ねる。でも赤い服の人は両手の剣--持つところが銃みたいになってる変わった剣--を構えて―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バヂィ!!

 

 

「きゃあ!!」

 

赤い服の人の攻撃は、バリアによって防がれた。防がれたけど―――

 

「ちょ・・・ちょっとあんた!いきなり何よ!?」

 

「――――――――」

 

赤い服の人は答えず、両手の剣でまた攻撃してきた。

 

「きゃっ!ま・・・まって!お願い、話を・・・」

 

「――――――――問答無用だ」

 

初めて、赤い服の人がしゃべった。

少し低めだけど、女の子の声だった。

 

「こんの・・・待ちなさいって言ってんでしょぉぉぉぉぉぉ!!」

 

風先輩が赤い服の女の子に向かって大剣を振り下ろす。

女の子はそれを右手の剣で受け止め、

 

「度胸は買う。が・・・力量が足りない」

 

左手の剣で風先輩の大剣を弾き飛ばした。

 

「なっ・・・・・・がはっ」

 

そのまま女の子に蹴り飛ばされて、風先輩は倒れた。

 

「お姉ちゃんっ・・・!!」

 

「風先輩っ・・・!!」

 

「他人の心配してる場合か?」

 

「え・・・あぐっ」

 

今度はわたしが蹴り飛ばされた。すごく、痛い・・・

 

「げほっ・・・なん、で・・・?こんな・・・こと・・・」

 

「―――――嗚呼、私があんた達を攻撃した理由、か?」

 

「あなたも・・・勇者・・・なんでしょ?・・・なのに・・・なんで・・・?」

 

「―――――――――――――――勇者?アタシが?」

 

「そうだよ・・・あなたも勇者でしょ?だったら、こんなこと・・・」

 

「―――――――――――――――フフ」

 

女の子は、突然笑いだした。わたし、そんなに変なこと、言ったかな?

 

 

 

 

 

ふざけるなよ

 

 

 

 

 

 

ひとしきり笑った後、女の子から発せられた声は、分かりやすいくらい、怒っていた。

 

「―――――――――ひ」

 

「アンタ、何も知らないんだな・・・お目出度い奴。もういい」

 

つかつか、と女の子が近付いてきて、わたしの頭を掴んだ。

 

「ああっ!!」

 

そのまま目線(お面で目がどこにあるかわかんないけど)を合わせると、

 

「とっととスマホを渡せ。ぶっ壊して、使えなくしてやる」

 

「えっ!?」

 

どういうこと・・・スマホがなくなったら、わたしたちは変身できなくなっちゃう・・・

 

「勇者なんざ必要ない。『魔人柱』たる私がいれば事足りる」

 

「・・・・・・だから、攻撃してきたの?」

 

「お前たちは分かっていない。勇者がどういうモノなのか・・・」

 

「いたっ・・・」

 

わたしの頭を掴む力が強くなる。

 

「さあ・・・渡せ・・・!」

 

「う・・・ああ・・・」

 

痛みでどうにかなってしまいそうになる。

 

 

 

 

 

誰か・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?――ガァ!!」

 

突然、わたしから手を離したとおもったら、いなくなっていた。違った。()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――――――ま、さか」

 

遠くに飛行機雲が見える。樹海に沿ってまっすぐ伸びたそれが、()()()()()()()()()()わたしは知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――――かぐやちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れた場所に、女の子と()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の後ろ姿が見えた。

 

 

 

 

 

「(―――わたし、()()かぐやちゃんを・・・)」

 

 

 

 

 

いつだって、かぐやちゃんは理不尽にいじめられてる人のために戦っている。

あの日、初めて会ったときから、ずっとそう。

そんな彼を助けたくて、わたしは勇者になったのに―――

 

「友奈ぁ、無事だな!」

 

「―――かぐやちゃん」

 

こちらに背中を向けたまま、かぐやちゃんがわたしを呼ぶ。

そのまま左手を動かそうとして、壊れていることに気付いて、右手でガッツポーズをとる。

 

「こっから先は、俺の担当だ」

 

そう言って、かぐやちゃんと女の子の戦いが始まった。



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煌月輝夜は■■■■である

バーテックスが消えた。

が、嫌な気配は欠片も無くならない。

案の定、向こうで何かが起きた。多分、戦闘。

 

「いったい、何が・・・」

 

「―――――――――――悪い、東郷。ちょっと俺の靴下持っててくれ」

 

靴を脱ぎ、靴下を東郷に投げ渡す。

 

「え?ちょっ、輝夜く・・・ん・・・?」

 

()()()()、とわざとらしく音を立てて足踏みをする。うん。問題無し。

 

「それ――――()()?」

 

東郷が俺の両足を見て、言葉を失う。まあ、そうなるよな。

 

「心配すんな。ちょっち友奈たち助けに行くだけだから」

 

「あ―――――違、私・・・」

 

「東郷」

 

右手で東郷の頭を撫でる。

 

「任せとけって。な?」

 

「――――――――――――」

 

沈黙したままの東郷を置いて、懐から小さな鍵を取り出すと、ベルトのバックルにそれを挿す。そして回す。

 

ドゥルルルルルルン―――!

 

けたたましい音と振動を感じながら、両足がドライブモードに移行したことを確認。

 

「よし!行ってくるぜ!」

 

背を向け、東郷に軽く手を振り、跳躍。

両足の裏から放たれた空気が、それをサポートし、普通では考えられないくらいの高さまで、ジャンプしてみせたのだった。

 

 

『エレクトリックスチームエンジン』

 

 

俺の両足に搭載された特殊機構の名称だ。

俺の霊力を電気エネルギーに変換して動く代物で、衝撃吸収装置にエアクッションを使用している。

 

「――――――あの野郎」

 

高い場所に登り、戦場を見れば、友奈が赤服のガキに攻め立てられていた。

 

「全速力でブン殴る・・・!!」

 

バックル上部に備え付けられた三つのボタンの内、右側のボタンを押す。

バックルに『JET』と表示され、義足の形状が少しだけ変化する。

クラウチングスタートの姿勢を取り、真ん中のボタンを押す。

 

「よーい・・・」

 

エネルギーがチャージされて行く。

向こうでは風さんと友奈が蹴飛ばされ、その上、友奈が赤服に捕まっている。

しかし、ここで焦ってはいけない。

視界の右端に映るメーターが上昇していく。残り、10%。

風さんは動かない。気絶でもしてるのか?流石に死んでは・・・いないよな?残り、8%。

樹はそんな風さんのそばでオロオロしているばかり。こればっかりは仕方ない。アイツは今まで平和に普通に暮らしていたんだ。本来なら、こんな場所に居るべき人間じゃあ無い。残り、5%。

 

「――――――そろそろ、だな」

 

一番左のボタンに手をかける。残り、4%。

 

 

 

 

ピーーーーー!

 

チャージ完了の合図と共に、大地を蹴り、ボタンを押す。

溜め込まれたエネルギーが一気に解放され、圧縮された空気が足裏のノズルから噴射され、推進材となって俺は加速した。

その後も大地を蹴る度に空気を噴射し、どんどん加速していく。

ものの数秒もしない内に戦闘領域に到着した。

そのままの速度で上体をひねり、左腕を引き絞る。

赤服との距離、およそ5メートルの地点まで走った俺は、ノズルを噴かしながらおもいっきりジャンプし、そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渾身の左ストレートで、赤服をブン殴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その衝撃は尋常ではなく、左腕がひしゃげて使い物にならなくなった。

神経接続式じゃなくて良かった、と心の底からほっとしながらも、殴り飛ばした赤服を睨む。

 

「よお。よくも俺の仲間を痛め付けてくれたな・・・」

 

「――――――――お前・・・は・・・」

 

「この借りは倍にして返さなけりゃなあ・・・と、その前に」

 

背中を反らして友奈を見る。

明らかに落ち込んでる様子の友奈がこっちを見て、なにか呟いていた。

 

「友奈ぁ!無事だな?」

 

「――――――かぐやちゃん」

 

だいぶ堪えてるな・・・・・・まあ、仕方ないか。

あいつ、俺がケンカするの、嫌がってるみたいなんだよな。そりゃもう、俺のことを殴ってでも止めようとするレベルで。

多分、友奈のことだし、俺がケンカする理由も分かっててやってるんだろうな。「かぐやちゃんがつらい思いをする必要なんて無い」とか考えてさ。

辛いと思ったことなんざ、欠片もない。それよりも、目の前で苦しんでる奴を放っておく方が、よっぽど、辛い。それが、大事な友人なら。なおさら。

だから、俺は――――

 

「心配すんなって」

 

背中越しにそう言って、左手でガッツポーズ。

 

――――――を、取ろうとして、壊れていることに気付いて、慌てて右手でガッツポーズを取る。

 

「こっから先は、俺の担当だ」

 

―――――――――――†――――――――――

 

赤服で黒い仮面を被っているこいつは、俺がさっき放った渾身の左ストレートを寸での所でガードした。死角からの攻撃にも関わらず、だ。

 

「(つー事は、アイツはかなりの猛者ってワケだ。それも相当の修羅場を超えてきた・・・・・・)」

 

そんなん相手にケンカ吹っ掛けちゃって、どーすんのよ、俺。しかも今、左腕もげてるし。

 

「ええい!ままよ!」

 

先手必勝、ブーストをかけた右足で蹴りを繰り出す。

が、あっさりと受け止められる。

 

「そう来るよなぁ!」

 

真ん中のボタンを押してから、右足をパージ。

 

「―――ッ!!」

 

赤服が何かに気付き、咄嗟に俺の右足を放り投げるが、時既に遅し!

 

 

 

 

 

ドガァァァァァン!!!!

 

 

 

 

 

大爆発が赤服を襲う。ついでに俺も。

 

「ぬおぉぉぉぉ!!威力調整間違えたぁぁぁぁぁ!!!」

 

「かぐやちゃんっ!!」

 

吹っ飛ばされた俺を友奈が抱き止める。

ナイスキャッチだ。後で梅干しをあげよう。

 

「・・・っと、そうだ!アイツは!?」

 

爆心地を見る。そこには、誰も居なかった。

しばらく周囲を警戒するも、襲ってくる気配はない。どうも撤退したようだ。アレで?

 

「調整間違えたのが良かったな!」

 

「かぐやちゃんのバカ!」

 

友奈がおもいっきり頭をはたく。

 

「また・・・そんな無茶して・・・」

 

「―――――――――ケガは?」

 

「―――――――――ない」

 

「―――――――――ん、なにより」

 

右手で友奈の頬に触れる。その手に、友奈が手を重ねる。

 

「――――また、あの時みたいになるかと思った」

 

「―――――――――悪い」

 

「だめ、許さない」

 

「そんなぁ・・・」

 

「―――――――――今日も」

 

「ん?」

 

「―――――――――待ってるから、ちゃんと来て。ね?」

 

「―――――――――しょーがないなぁ」

 

そうこうしていると、風さんと樹がこっちにやってきた。

と同時に、世界がホワイトアウトしていく。

 

「疲れたぁ」

 

「そーだねえ」

 

友奈に抱き抱えられながら、崩れゆく樹海を眺めていたのだった。




煌月輝夜について―――

とある事情により、身体の7割が機械に置き換えられている。
今回使用した『ESE』は、彼の知り合いの技師が考案した代物。
左腕は発泡金属製で、表面に人工皮膚を被せてあるため、パッと見では見分けがつかないようになっている。
『ESE』の操作はベルトのバックルに偽造したパネルの上部にある3つのボタンを使用する。


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輝夜のF -喫茶"嵐ヶ丘"の三人-

とじとものゆゆゆコラボイベ、ちょーたのしい!!
だけど、全財産注ぎ込んでステップアップ二週したはいいけど、かなみちゃんが一向にこないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
ちくしょうっ!ここまで頑張っても来ないなんて・・・
こうなったら食費削って三周目に賭けるしかないっ!
いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!



気が付いた時には、俺たちは学校の屋上にいた。

 

「神樹様が戻して下さったのよ」

 

赤服にボコボコにされたはずの風さんがそう言った。元気そうだねぇ。

 

「あ!東郷さん!」

 

友奈に投げ捨てられ、ゴン!と頭を床にぶつける。ちょー痛い。

 

「大丈夫だった?」

 

「友奈ちゃんこそ・・・」

 

「わたしはへーき!」

 

「俺が平気じゃねぇけどな!!」

 

打ち付けた額をさすりながら、上体を起こす。

 

「じごーじとくでしょ!」

 

友奈があっかんべーして、そんなことを言う。

 

「最近の友奈は、なんか冷たい・・・そんな子に育てた覚えはないぞ!!」

 

「かぐやちゃんに育てられた覚えなんてないもん」

 

「・・・・・・ふふ」

 

そんな、いつものやりとりを繰り広げていると―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーン、コーン、カーン、コーン―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――いまの、何の予鈴?」

 

「授業終了のでしょ。樹海化中は世界の時間って止まったままだから」

 

風さんが、あっけらかんとそんな事を言ってのける。

 

「そっかー、授業終了の予鈴かー・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

「ちょっ!?急になに!?どうしたのよ煌月」

 

「ちくしょうマジかよ無断欠席じゃねえかどうすんだよ最悪だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」

 

「・・・・・・ホントにどうしたのよ?」

 

「大丈夫です。かぐやちゃん、無断欠席とか、そういうのを許さない人なんで」

 

「真面目ねぇ。心配しなくても、後で大赦にフォローしてもらうからへーきへーき!」

 

バシッと風さんが俺の背中を叩く。

そうは言ってもなぁ・・・

 

「それよりも、樹は平気?」

 

「お姉ちゃんこそ・・・」

 

「アタシはホラ!女子力高いから―――おっと」

 

女子力高いとか良くわからんことを口走る風さんに、樹が抱き付く。

 

「ふぇぇぇぇぇぇ・・・こわかったよぉぉぉ・・・もう何がなんだか・・・」

 

「ふふ・・・よしよし。頑張ったわね。冷蔵庫のプリン、食べていいわよ」

 

泣き付く樹を風さんがなだめている。良い姉妹愛だねぇ。

 

「あれ元々わたしのぉぉ」

 

感動を返せ。

 

―――――――――――†――――――――――

 

さてと、欠席に関してはもう諦めた。

勇者部五ヶ条に反するが、死んだばっちゃがよく言っていた。「諦めない心は称賛するが、時には諦めたって良いじゃない、人間だもの」と。

そんな訳で帰宅したいのだが・・・・・・

 

「みんな、大変だ。俺、今、歩けない」

 

『・・・・・・・・・・あー・・・』

 

三人の声が重なる。

そう。今現在、俺には左腕と右足が無い。

立つことくらいなら根性で可能だろう。

しかし、歩くとなると、話は別だ。

 

「どうする?友奈におぶってもらうとか?」

 

「へーいばっちこーい♪」

 

風さんの発言に、友奈がしゃがんで構える。ノリ良いね、キミ。

 

「流石にやだよ!そんなカッコ悪いこと!」

 

「えぇー・・・」

 

ぶーたれる友奈。えぇーじゃねーよ。女に背負われるなんざ、カッコ悪いったらありゃしねーっての。

立ち上がって、うーん・・・と考える友奈。何かを思い付いたようで、ぽん、と手を打った。

 

「あ、そういえばかぐやちゃん。"ほばーそうこう"とかいうの、できるんじゃなかったっけ?」

 

「今は無理。そもそもホバークラフトは左右そろってないとバランス取るのかなりキツイから、片足だけではあんまやりたくない」

 

「・・・・なんか、難しいことを言ってるのはわかった。でも実際、どうやって帰るのよ」

 

「煌月先輩、もういっそ、友奈さんにおんぶしてもらったらどうですか?」 

 

犬吠埼姉妹がそんな事を言う。

 

「・・・・・・・他人事だと思ってからにぃ」

 

仕方ない。

こうなりゃ手段は選ばない!

 

「友奈、マッキ・・・・・・じゃなくて、不同先生を呼んできてくれ。ついでに俺のカバンを持ってきてくれるとありがたい」

 

「先生を?・・・・・・あ、そっか。うん!わかった。いってくるね」

 

友奈が屋上から走り去って行く。

が、すぐに戻ってきた。

 

「あれ?どうした友奈。忘れ物でもした?」

 

「ううん。そうじゃなくて―――」

 

「皆さん、御役目お疲れ様です」

 

屋上に現れたのは、件の人物。即ち、マッキーであった。

 

「・・・・・・お勤めごくろーさん。もしかして、どっかで見てた?」

 

「ええ、木陰からこっそりと」

 

こいつ・・・

まぁ、いいか。

 

「え?見てた・・・て、どういう・・・?」

 

「風さんは、大赦から『契約者』の事を聞かされなかったかい?」

 

「そういえばそんな話・・・てまさかあんたが・・・!?」

 

「残念。()()()()()()()()

 

「ねえかぐやちゃん。"けーやくしゃ"ってなぁに?」

 

「細かい話はまた今度。マッキー、"嵐ヶ丘"まで頼む」

 

「はい」

 

マッキーに肩を貸してもらい、屋上を後にする。おっと、その前に・・・

 

「じゃ、俺は帰るから。また明日ー」

 

軽く挨拶して、その場を去った。

 

―――――――――――†――――――――――

 

郊外の住宅地、その一画に目的の店は佇んでいた。

 

喫茶"嵐ヶ丘"

 

神世紀初頭にオープンした純喫茶でありながら、読書家の店主によって四国中の様々な書籍を読むことのできる場所にもなっている。

 

「こんちはー」カランカラン

 

「いらっしゃあああああああ!?!?!?!?!?」

 

俺がマッキーに肩を貸してもらいながら店に入ると、カウンターで食器を拭いていた男装の麗人が出迎えの言葉の代わりに悲鳴を上げた。

 

「マルさん、そんなビビられると、なんかへこむんだけど・・・」

 

「イヤイヤなに言ってんだよお前!?この前まで元気にしてた奴が見るも無惨な姿になって帰ってきたらビビるに決まってるだろう!!」

 

「・・・・・・・・・・なんつーか、すんません」

 

「謝るくらいなら無茶するなって!!マルも杏子もあとアイツも、お前の事を心配してるんだから」

 

「・・・・・・・・・・・ん、と・・・あー・・・」

 

「こういう時は、『ありがとうございます』ですよ?」

 

「・・・・・・・・・・・杏子さん」

 

喧騒を聞き付けてやってきたのか、店の奥からもう一人、物腰の柔らかな、線の細い女性が現れた。

 

この二人こそ、この店の店主。

男装してる方は『土居円吒(まるた)

もう一人の方は『伊予島杏子(きょうこ)

という。

そして、もう一人・・・・・・ん?

 

「あれ?春さんはどうしたんスか?」

 

「・・・・・・・あー」

 

「・・・・・・・えっと」

 

途端に歯切れが悪くなる二人。なんだ?何かあったのか?

すっ・・・とカウンター内を指差す二人。マッキーと共に中を覗きこむと―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店員が一人、死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んでませんよ。気絶してるだけです」

 

マッキーに指摘され、SANチェックに入ろうとしていた俺の精神は安定した。

よくよく見れば、スマホを片手に倒れている。電話中になにかショッキングな出来事でも起きたのだろうか。

 

「彼、電話していたら急に倒れたんです」

 

「たぶん、例の報告だな」

 

例の報告?

 

「・・・・・・・う」

 

そうこうしている内に、起き出した。どうやら立ち直った(?)みたいだ。

 

「ちぃーっす春さん。ごめんね、ハデに壊しちまった」

 

「ああ・・・・やぁ、かぐやくん。いらっしゃぁぁ――――――――――」

 

俺の姿を見た途端、白目剥いてぶっ倒れた。

あー、まあ、そうなるよな。

 

この人こそ、俺の義手と義足を一手に手掛けてくれた技師。

名前は『三好春信』

大赦直属の技術開発部最高責任者でもある。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「僕の最高傑作ぅ・・・・・」

 

「いや・・・だから・・・ごめんって・・・」

 

春さんがカウンターに突っ伏して、よよよ・・・と泣いている。

 

「はぁ・・・・・・いい加減にしろ春信。オラ、さっさと輝夜の身体治してこい」

 

スパーン、とマルさんに頭をはたかれる春さん。

 

「ふわぁ~い・・・・・・」

 

「ホントすんません・・・・・・」

 

泣きっ面の春さんに引っ張られ、店の地下へ向かう。

 

こここそ、大赦直属の技術開発部、通称『鉄火場』の本部にして開発試験場たる、ガレージである。

 

「―――――――――ぃよっし!こうなったら僕は過去の僕を超える!!」グッ

 

「ははは・・・」

 

「そんな訳で、まずは情報収集から。ものの見事にひしゃげてるけど、何があったの?」

 

俺は春さんにさっき起きた事を話した。

話を聞き終えた春さんが、神妙な面持ちで小さく「連中め・・・」と呟いていたが、なんだろうか。

 

「――――輝夜くん」

 

「うっす」

 

「僕は君に、謝らないといけない」

 

「・・・・・・バーテックスのこと、ですか」

 

こくり、と頷いた春さんを見て、やっぱり、と思った。

 

「本当は、事前にちゃんと話すべきことだったんだ」

 

「――――連中と戦うことになるのは、俺たちになるとは限らなかったんスよね?風さんがそれっぽいこと、言ってました」

 

「違う」

 

「―――――――――」

 

「大赦上層部は、君たちが・・・讃州中学勇者部が、勇者に選ばれることになると、わかっていた」

 

「―――――――――なるほど」

 

つまり、風さんは騙されていたのか。

どこまで本当なのか、わからないけど。

 

「許してくれるとは、思っていない。どんなに罵られても、きちんと受け止めるつもりだ」

 

「―――――――――――――――――別に?」

 

「え?」

 

「ここで春さんを責めたって、どうしようもないでしょ。そんなことしてる暇があったら春さん。さっさと俺の手足、直してよ」

 

「――――――輝夜くん。君はそれで、いいのかい?」

 

「良いも悪いもないでしょ。もう始まってしまったんだから。まぁたしかに、事前に説明くらいは欲しかったッスけど」

 

「・・・・・すまない」

 

「だからね、春さん。俺が生きて帰ってこられるように、身体、パワーアップして直してください」

 

「・・・・・・・・・そうか、君はそういう性格だったね」

 

「へっへっへ~」

 

「褒めてないから」

 

「そんなぁ」

 

互いに笑い合う。

どうやら春さんも吹っ切れたみたい。良かった。

 

「よし!それじゃあどんな感じにアップグレードして欲しいかな?」

 

「んー!それじゃあ――」

 

 

春さんの質問に、俺は自分の要望をこれでもかってくらいに告げて、春さんの顔をひきつらせてみせたのだった。




やりました・・・・・・・



やったんですよ・・・・!

日付変更と共にステップアップ二週して!
それで足りないから、計算してどこまで切り詰められるか考えて!
そうして出来たお金で回した!
なのに出てきたのは巫女ひよりちゃん!
これ以上、何をどう頑張れっていうんです!?


(訳:爆死しました)


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輝夜のF -月下の桃園-

とじとものゆゆゆコラボ、第二弾やるの早すぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・・

もうお金ないよぉ(泣)




ガガァン!!

 

「ぅおお・・・」

 

「どうだい。君の要望を可能な限り叶えてみた結果だけど」

 

「最高」

 

「それはなにより」

 

ガション、と音を立てて二の腕から空薬筴が排出される。同時に強制廃熱機構が作動し、熱気が俺を襲った。

 

「あっつ!!」

 

「ふむ・・・ちょっと向きを考えないとかな?」

 

「そーしてくだちい」

 

このあと、廃熱機構の他、いくつかの微調整を施してもらい、俺は店をあとにしたのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

その夜―――

 

「お・ま・た・せ~♪」

 

「おう。随分と待ったぞ」

 

「んもー、そこは嘘でも『今来たところだ』って言ってよー」

 

「こんなあからさまに時間の必要なセットを用意しておいてかぁ?」

 

今、俺と友奈は俺の家の屋根にいる。ウチの屋根は平たくなっている部分があるため、そこに食器類を持ち込んで、小さいながらもお茶会の真似事ができるのだ。

 

「そんな訳で、本日のお茶菓子は『嵐ヶ丘』のクッキーでーす」

 

「わぁい♪」

 

「寝れなくなるから、あんま食い過ぎるなよー?」

 

「ふぁーい」

 

クッキーを頬張りながら答える友奈。その様はリスを連想させる。

 

「・・・・・・・ふう」

 

紅茶を一口飲んで、空を見上げる。

煌々と輝く満月とその周りで瞬く星々。

杏子さんが言うには、バーテックスとは、頂点、という意味らしい。そして、全部で十二体いるバーテックスには、それぞれ、黄道十二星座から名付けられていることも。

明日辺り、風さんも同じ話をしてくれるだろうけども、その前に予習ができるのならば、それに越したことはない。

 

「―――――――――」

 

ふと、友奈に視線を向けると、空でも、クッキーの方でも無い、別の方向をしきりに気にしていた。

 

「―――東郷のことか?」

 

「あ・・・・・・うん」

 

まあ、アイツ見るからに気落ちしてたもんな。

しゃーない。

 

「友奈、今から特別ゲストを呼ぼうと思うが・・・・どうだ?」

 

「え――――それって・・・」

 

友奈の期待のこもった視線を受けて、俺は夜空を舞った。

 

―――――――view,change:美森―――――――

 

「はぁ・・・」

 

気分が晴れない。

理由は分かっている。今日のことだ。

 

「(私一人、変身できなかった・・・)」

 

輝夜くんに至っては変身せずに単身突撃し、友奈ちゃんの危機を救ってみせた。

だのに、私は――――

 

「(このまま変身できなかったら、私は、みんなの足手まといになってしまう。そんなのは、嫌。でも―――)」

 

寝台に腰掛け、一人、悶々と考えを巡らせる。

と、その時―――

 

コンコン、と窓を叩く音が聞こえた。

そちらを見る。

 

「ハーイ♪こんばんは、お嬢さん」

 

「え?かぐ、や・・・くん・・・?」

 

輝夜くんが、窓に腰掛けて私の方を見ていた。

戸締まりはちゃんとしていたはずだけど・・・

そう思って、窓をよく観察していみると、一部が丸く、切り取られていた。問い詰めるように視線を輝夜くんへ向けると、彼はおもむろに左の人差し指を外した。そこには先端から火花を散らせる細長い針があった。それを使って窓を開けたのだろう。

 

「―――――不法侵入は犯罪ですよ」

 

「これは手厳しい」

 

私の指摘に、輝夜くんは肩を竦めておどけてみせた。

 

「それで、こんな時間に何のご用?」

 

「うむ、ちょっとね」

 

そう言って輝夜くんが私の側まで歩み寄ってきて、

 

「よっと」

 

「きゃ!?」

 

私を抱き抱えた。

こ・・・これは、所謂『お姫様抱っこ』という物では!?

 

「か・・・・輝夜くん!?」

 

「要件は一つ、君を拐いに来た」

 

「え―――――――!?」

 

私が何か言うよりも早く、輝夜くんは私を抱えて、窓から、月光が淡く照らす宵闇の世界へと、私を連れ出したのだった。

 

―――――――view,change:友奈―――――――

 

「きゃあああああああああああああ!!!」

 

夜の町に、東郷さんの悲鳴がこだました。

と、同時にがしゃん、と隣で音が聞こえたから、そっちを向いたら―――

 

「おまたせ」

 

「――――――――」

 

風にたなびく二人の黒髪。

かぐやちゃんにお姫様抱っこされている東郷さん。

 

月明かりの下、わたしの目に映ったのは、そんな、キレイな光景だった。

 

「――――――――――ふわぁ」

 

「?どうした友奈。ボケっとして」

 

「写真一枚、いいかな!?」

 

「思う存分撮りたまえ」(キリッ

 

「輝夜くん!?」

 

かぐやちゃんから許可をもらったので端末でめっちゃ撮りまくった。

 

「うん、良いね!実に良いよ~♪」

 

「そりゃなにより」(キメッ

 

「これでかぐやちゃんがお姫様みたいなかっこしていたら、もっと良かったのになぁ」

 

「俺!?」

 

「―――――ふふふ」

 

―――――――view,change:輝夜―――――――

 

「よっと―――どうだ?」

 

「うん、平気。ありがとう輝夜くん」

 

「呼んだのはこっちだしな。このくらいはやって当然だろ」

 

東郷のために即興で椅子を作り、そこに座らせる。

よし、これで準備が整った。

 

「さてプリンセス。君の悩みを聞かせておくれ」

 

「え・・・」

 

「かぐやちゃん・・・・・・」

 

げんなりした様子で友奈がこちらを睨む。

なんだよ、良いだろ別に。回りくどいのって嫌いなんだよ。知ってるだろ?

 

「―――――輝夜くんは、すごいね」

 

「当然、俺だからなぎゃ!!」スパーン!

 

「かぐやちゃんはもう黙ってて!」

 

「ひどーい」

 

「ぷっ」

 

東郷が笑う。

はたかれた頭を掻きながら、友奈と顔を見合わせて、殆んど同時に二人して笑った。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「二人は、風先輩が黙っていたこと、怒ったりしないの?」

 

ひとしきり笑いあった後、ぽつりと呟くみたいに東郷が聞いてきた。

 

「うーん・・・それを言ったら、俺だって体のこと、みんなに黙ってたんだぜ?」

 

「あ・・・」

 

左腕を叩く。

東郷が気まずそうな顔をしたが構わず続ける。

 

「確かに、俺のことと風さんのことはベクトルが全然違う。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――――――」

 

だからさ、と前置いて俺は東郷に問う。

 

「東郷は、風さんの何に対して怒っているんだい?今まで黙っていたこと?こんなことに巻き込んだこと?それとも、別の理由?」

 

「――――――」

 

「聞かせて欲しい」

 

真面目な顔で東郷を見つめる。友奈は心配そうに俺と東郷を見守る。

少し、間を置いて、東郷がぽつぽつと語りだした。

 

「――――あのね、本当はわかっているの。風先輩は、みんなのことを思って、黙っていた。それが、どれだけ苦しかったか。誰にも、家族である樹ちゃんにすら、言えない。きっと、すごくつらかったんだと思う。それは、わかっているの。でもあのとき、私だけ変身できなくて、そのせいで、すごく、もやもやしてて・・・。『事前に言っていてくれたなら・・・』そんな風に考えてしまって・・・・・・」

 

「東郷さん・・・」

 

「―――――――そう思うのは当然だろ。なにも悪いことじゃない」

 

「でも友奈ちゃんは変身した。輝夜くんだって、変身できないのに戦った」

 

「俺たちは『そうしたい』からやったんだ。別に褒められるようなことじゃない」

 

「でも―――」

 

「『でも』もへったくれもねえ!!」パシーン

 

東郷の頭をはたく。

はたかれた東郷はぽかーんと口を開けてこちらを見る。

 

「死んだばっちゃが言っていた!『時間とは、塞き止められない川である。永遠に流れ続けるが故に、一度過ぎ去ってしまったモノが、還ってくることは無い。だから、前を見ろ。後ろにばかり気を取られるな。でないと次の時、また取り逃がしてしまう』ってな!」

 

「――――――そっか」

 

我点がいったのか、東郷は穏やかに微笑んだ。

 

「――――ええっと?」

 

友奈は首をかしげている。俺の言葉の意味を理解できなかったようだ。

うん。まあ。しょーがないよね。ばっちゃの言葉ってかなり抽象的だからなぁ。そこがカッコいいんだけど。

 

「要はアレだ。『後悔先に立たず』ってこと」

 

「なるほどー!」

 

納得がいったようでなにより。

 

「じゃあ東郷さん。わたし、東郷さんのことを守る!」

 

「唐突だなオイ」

 

えへへーと笑う友奈に少し呆れつつも、東郷を守る宣言には、俺も賛成だ。

 

「東郷さんは無理しなくて大丈夫だよ。わたしが、東郷さんの分もがんばるから!」

 

「友奈ちゃん・・・」

 

「俺のことも忘れてもらっちゃ困るぜ?」

 

「輝夜くん・・・・」

 

「かぐやちゃんもなの?じゃあ二人でがんばろー!」

 

「おう。だがな、友奈。俺はお前のことも、守るつもりだ」

 

「え、わたし!?」

 

なんでそんな意外そうな顔をしてるんだ、こいつは・・・

 

「だってお前。ぜってぇ無理するだろ。ストッパー役が必要になると思うのよ」

 

「そんなのかぐやちゃんだって!」

 

「おう。そうだな」

 

「あっさり認めたー!」

 

当然、俺はお前らよりもオトナだからな!(キリッ

 

「だからさ、友奈。俺が()()無茶をやろうとした時は、傍にいて、止めて欲しい。こんなの、友奈ぐらいにしか頼めないからな」

 

「―――――もう、かぐやちゃんったら」

 

「―――――私も」

 

「ん?」

 

「東郷さん?」

 

「―――――私も、戦う」

 

「ええ!?でも東郷さ―――」

 

友奈の口に指を当てて黙らせる。東郷の瞳には、さっきまでと違い、しっかりとした決意に満ちていたからだ。

 

「私、いつも二人に助けてもらってばかりで・・・だから、今度は私の番。私も二人のことを守る・・・・・・!」

 

「――――そうか。それなら」

 

左腕を天高く掲げる。

 

「「?」」

 

「ほら、二人もやるんだよ」

 

俺に促され、二人も渋々左腕を天高く掲げる。

 

「我ら三人、輝く月下に宣言す。我ら、互いを信じ、互いを守り、互いの為に戦うことを、ここに誓おう!」

 

「――――えっと、かぐやちゃん、なにそれ?」

 

「『三國志』の『桃園の誓い』。まんまじゃなくてかなりアレンジ加えたやつだけど」

 

「おおー!じゃ、わたしも誓う!」

 

「うふふ、私も、誓うわ」

 

ここに、誓いは成った。

この日交わした誓いを俺は、『月下の桃園』と名付けたのだった。

 

 




『鉄火場』について――

西暦時代の科学技術を継承しつつ、更なる発展を目指して日々研究を重ねている大赦直属の組織。しかし、大赦内での地位は低く、与えられる予算も少ない。
その為、喫茶店を経営して予算の足しにしている。
局長は三好春信。


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Vの襲来 -今度は私が・・・-

勇者部メンバーのカップリングは数在れど、どういうわけか『ふうみも』が取り沙汰されることって滅多にないよねぇ


翌日―――

 

特に何事もなく授業を受ける。昨日の事で何かしら追及されると思っていたが、そんなことはなかった。

俺ら、目の前で消えたんだぞ?なのになんで、誰も何も聞かない?

 

「(そういや、風さんがなんか言ってたな。大赦にフォローしてもらうとかなんとか・・・・まさか、それのせい?)」

 

「かぐやちゃん」

 

ぺちぺちと友奈に頭を叩かれて、我に帰る。

どうやらもう授業は終わって放課後になっていたらしい。

 

「大丈夫?ぼーっとしてたよ?」

 

「・・・・・・・やべぇ、授業内容聞きそびれた」

 

まあ、いいや。東郷にノート写させてもらうとしよう。

 

「おーい、東ご―――」

 

「・・・・・・・・・・・・・(ぼー)」

 

ブルータス、おまえもか。

 

「とーごーさーん?」ペチペチ

 

「・・・・はっ!ああ、ごめんね友奈ちゃん」

 

「珍しいこともあるもんだ。おまえが授業内容聞いてないなんて」

 

「・・・・・・その・・・風先輩に、なんて言えば良いのかなって思って・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・えぇ、それ今更ァ?」

 

「うぅ・・・」

 

まったく・・・・ウジウジしやがって。

いい加減でやめて欲しいので、車椅子の手摺を持ち、部室に向かう。それに対して友奈は呆れてはいるものの何も言わない。

 

「オラ行くぞ」

 

「ええっ!?輝夜くん!?」

 

「大丈夫だよ東郷さんっ。わたしが付いてるから」

 

「だいたいが心配し過ぎなんだよ、お前はさ。ちったあ前向きにモノを考えろっての」

 

「友奈ちゃん・・・・輝夜くん・・・・・」

 

「はーい、そんなワケで高速バス『月夜に輝く道標』号。はっしーん!」

 

「え?ちょっ」

 

前降り無しの廊下ランナウェイ!テンションハイウェイ!ゴーアウェイ!

 

「イィィィィヤッフゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「あーあ、またかぐやちゃんの悪いクセが・・・・」

 

このあとむちゃくちゃおこられた

 

―――――――――――†――――――――――

 

「さ・・・・さて、みんな無事・・・で?なによ、り、だ・・・・よね?」

 

「―――――――――」(放心している)

 

「・・・・・・・・・・」(拳骨食らって伸びてる)

 

「え・・・ええっと、友奈さん。東郷先輩と煌月先輩、どうしたんですか?」

 

「気にしなくってへーきへーき。ちょっと爆走バイクしちゃっただけだから」

 

「はあ・・・・」

 

「あー、とりあえず起こそうか・・・・話ちゃんとしたいし」

 

「はーい」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「・・・・と、いう訳なの。わかったかしら?」

 

風さんの解説により、昨日の出来事が良く分かった。

 

「樹海にダメージが入ると、現実にも影響がでる・・・・か」

 

ディバイディング空間的なモンじゃないのかアレ。世の中、そう上手くは出来ていないのね。

 

「・・・・・風先輩」

 

「・・・・・・・何?東郷」

 

「私たちを集めたのは、大赦からの指示・・・・・なんですよね?」

 

「・・・・・そうよ。私はこの地区の担当として選ばれたから」

 

「そ・・・そっか、他にも候補の人たちがいる・・・んですね」

 

「ええ。人類存亡の一大事、だからね」

 

「・・・・・・・・・こんな大事なこと、どうして言ってくれなかったんですか?」

 

「・・・ごめん東郷。でも当たる確率の方が少ないくらいで・・・」

 

「それでも、言ってくれれば何かしらの対策が取れました」

 

「・・・・・・・・・・ごめん」

 

「樹ちゃんや友奈ちゃんも、死んでいたかも知れないんですよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

「と・・・東郷さ」

 

二人を止めようとした友奈を制する。

ここは成り行きに任せよう。目配せでそう伝える。

 

「勇者部五ヶ条にもあるじゃないですか。『悩んだら相談』って・・・・」

 

「っ!!」

 

風さんの顔が強ばる。

無理もない。五ヶ条は俺たちで考えた勇者部の約束事。それを部長たる風さん自身が守っていなかったと、東郷は責めている。

 

「・・・・・・そうよね。部長失格、よね」

 

「そうですね。風先輩は、一人で抱え込んだりせず、私たちに話すべきでした」

 

だから、と一呼吸置いて、東郷が笑って告げる。

 

 

 

 

 

「次からは、ちゃんと話してください。どんなことでも、なるべくなら、受け止めますから」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・え?」

 

風さんはきょとん、としている。どうも東郷が怒っていると思っていたようだ。

 

「・・・・怒らないの?」

 

「怒ってますよ勿論。でも、それはもういいんです。だって―――」

 

 

 

 

 

「勇者部に入ってからの日常が、すごく、楽しかったから」

 

 

 

 

 

「――――――ふぇ?」

 

「御役目のことを黙っていたことは怒ってます。でも、同じくらい、勇者部に入ってからの日々が楽しかったから。だから、私の中では、その二つは相殺されるんです」

 

東郷は語る。怒りは当然あるけれど、それと同じくらい、楽しい日々を送れた、と。

 

「そうですよ風先輩!もし適性がなかったらわたしたちは会えなかったんですから!」

 

「確かにそうだな。む、そう考えると適性に感謝だな!」

 

友奈の言葉に同意する。

 

「でもかぐやちゃん、勇者じゃないよね」

 

「それを今言うのかよ!?」

 

「心配しないで輝夜くん。あなたの分も私が頑張るから」

 

「待った。それじゃ俺が勇者部辞めるみたいに聞こえるんだが!?」

 

「えー?だって、勇者部は勇者のための部活でしょー?かぐやちゃんは勇者じゃないんだから・・・」

 

「え、ちょっ、待っ、まさか俺・・・・クビッスか?」

 

「今までありがとー」

 

「輝夜くんのことは忘れないわ・・・」

 

友奈が手を振り、東郷は涙を浮かべている。

 

「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

絶望に満ちた俺の声が部室にこだまする。

 

「・・・・はぁ、なんだかバカらしく思えてきた」

 

「よかったね、お姉ちゃん」

 

「・・・・・・・うん」

 

と、その時―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪~♪~♪~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海化警報が鳴り響く。

 

「連日強襲!?流石に厳しくねーか!?」

 

「大丈夫よ。今度は私も戦うから・・・!!」

 

端末を握りしめる東郷を見て、頼もしさを感じる。

やだぁ、ちょっち惚れちゃいそう・・・

 



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Vの襲来 -御社の"鉛"-

まさかこのタイミングで有償福袋ガチャをやるとは―――
FGOめ、金もう無いっちゅーに・・・・



昨日も見た、樹海の極彩色。

それをまたこんな早くに再び見ることになるとはね・・・

 

「あれ?そういえば牛鬼は?」

 

「牛鬼って、友奈さんの精霊ですか?」

 

「うん!ビーフジャーキーが大好物なんだー」

 

「え、牛なのに!?」

 

「それにしても、どこに行っちゃったのかなあ」

 

「えー、コホン。あなたの探しているのは、こちらではありませんかー?」

 

そう言って俺は自分の髪を―――腰まで届く長さの、三編みにした艶やかな黒髪を引っ張り上げ、その先端を友奈に見せつける。

 

 

 

 

 

正確には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「・・・・・・・え?あれ!?牛鬼!?なんでかぐやちゃんの髪に!?」

 

「んなもん俺が聞きてェよ!!今朝からこんな調子で噛みつかれて!何時気付くかなーって思って黙っていたら、全ッッッッッッッッッ然!!気付く気配すら無いッッッ!!!一体こいつぁどういうことなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

 

「・・・・・・・・なんというか、ごめんなさい」

 

「うぅ・・・ぐすっ・・・・俺が何したってんだよぉ・・・・」

 

自慢の髪を牛に食まれたことがあまりにもショック過ぎて思わず泣いてしまう。

 

「・・・・よしよし。輝夜くん、大丈夫よ。あなたの髪は無事だから」

 

見かねたのか、東郷が俺の頭を撫でる。

その心地よさはなかなかで、「このまま東郷のヒモに成り下がるのもいいかもしれない」と思ってしまったほどだ。

 

「うーん・・・・はっ!マズい・・・このままではいけないッ!」

 

もう大丈夫だからと東郷のなでなでから脱出。

死んだばっちゃが言っていた。「女のヒモは確かに甘美だろう。しかし、腑抜けた男は只のペットだ。女に甲斐性見せてこそ、真に男と呼べるのだ」と・・・

 

「そういう訳だからッ!俺の甲斐性見せてやるゼ!!」

 

「良く分からないけど、立ち直ってよかったわ」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「それじゃあ、友奈ちゃん、輝夜くん、見ていて。私の・・・・変身」

 

端末を握りしめ、東郷が宣言する。

こちらが何か言うよりも早く、東郷はボタンを押した。

直後、青い花弁が東郷を包み込む。それが止んだ時、そこには―――――

 

 

 

 

 

身体のラインをこれでもかぁ!ってくらいに強調したライダースーツの様な青い衣服。

普段はリボンでまとめている艶やかな黒髪はまとめず、ストレートに垂らしており、後頭部についてる髪飾りから伸びる四本のベルトの様なモノで直立していた。

 

 

 

 

 

敢えて言おう。

 

「エロい」

 

と・・・。

 

「え///」

 

「かぐやちゃんっ!!」

 

思わず口にしてしまった感想を聞かれ、東郷は顔を赤らめ、友奈にはブン殴られた。ひどいやひどいや。なにも殴らなくたっていいじゃん本当のことなんだし。

 

「かぐやちゃんはそろそろ『でりかしー』ってものを覚えるべきだと思いますっ!」

 

「だってホントのことじゃん。文句なら東郷の服をこんなデザインにした奴に言ってくれ」

 

「そういえばお姉ちゃん、私たちの勇者服って誰がデザインしたのかな?」

 

「さぁ?案外神樹様かもね」

 

「まじかよ。神樹様一生付いて生きます」

 

「鉄拳!制裁!勇者パァァァァンチ!!」

 

いつの間にやら変身していた友奈の渾身の右アッパーをモロに食らい、俺は車田飛びで吹っ飛んだ。

 

「・・・・・えーと、友奈ちゃん」

 

「行こっ東郷さん!」プクー

 

「・・・・・あんな風に怒った友奈、アタシ初めて見たかも」

 

「・・・・・・私もだよ」

 

そして放っとかれる俺。ちくせう・・・・・世間は男にきびちぃゼ・・・・・

 

―――――――――――†――――――――――

 

あんたは留守番!と風さんに言われて、四人がバーテックスへと向かって行くのを見送る。

 

「さて・・・・・・・そろそろ出てきたらどうだい?」

 

「・・・・・・・・あれだけの醜態晒しておいて、今更格好付けるのか」

 

嘆息しながら現れたのは、昨日も現れた仮面女。

ガンブレードを二刀流にしている所を見ると、今回は本気なのだろう。

 

「ガンブレードとは通好みだな」

 

「私の好みではない。マルコシアスが勝手に決めた」

 

マルコシアス―――なるほど、そいつが仮面女が契約した悪魔か。確か、序列は三十五位だっけ。

 

「良いのかい?そんな簡単に契約先を教えて」

 

「構わない。どうせお前はここで死ぬ」

 

「『死人に口無し』ってこと?物騒な物言いだ」

 

「連中への見せしめも兼ねてる。だから、ここでお前は死ね」

 

「悪いね。()()()()()()()()、こんな所で喪うなんて、勿体無い。だから、抵抗させてもらう・・・・!」

 

『ESE』をドライブモードで起動させる。

仮面女も、両手のガンブレードを構え、此方の出方を伺う。

 

「ああ、そうだ。せっかくだ。キミの名前を教えてくれよ」

 

「――――――名前はとうに捨てた。どうしても呼びたければ"ナマリ"と呼べ」

 

「・・・・・・・ナマリ、ねぇ。金属の鉛、かな」

 

「・・・・・・・答える必要があるのか?」

 

「・・・・・・・無いね」

 

会話は此処迄、此より先は――――――

 

 

 

 

 

「さあ、俺たちの闘争を始めよう・・・!」

 




風を切り裂く、この足は何時でも
終わらない闇の中、進んで行く、戦う為に―――


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Vの襲来 -輝夜VSナマリ-

『ESE ドライブモード』の真骨頂は、エアスラスターによるジャンプ力の強化にある。

これを使用して俺はまず、空中からの飛び蹴りを繰り出した。

しかし、ナマリはそれを半身を反らしてかわす。

 

「(―――チィ!前回の反省を活かしてやがる)」

 

着地と同時に再び跳躍。ナマリのガンブレードは空を斬る。

 

「(前みたいな絡め手は使えない。それなら――――)」

 

ガンブレードは、その特殊な機構故にとても重い。

なので、あまり小回りが効かず、大抵の攻撃が大振りなものになってしまう。しかし重量がある分、それを活かした斬撃の威力は凄まじく、そこに火薬の炸裂が発生させる衝撃を利用した場合、新生したこの左腕でも受け止めることは不可能だ。

対してこちらは徒手空拳。

リーチも一撃の威力もガンブレードに劣るが、その分小回りが効く。もっと言うと、武器を持たない分相手よりも身軽な点も上げられるだろう。

それらを総て踏まえて、俺が取るべき作戦は、一つ。

 

「(ヒット&アウェイで相手の攻撃を避けつつ、隙を見て攻撃――――だな)」

 

正直に言ってこの作戦がどれ程通用するのか、全く以て判らない。しかし、現状行える作戦はこれ一つのみ。

 

「(そんなら、やるっきゃねーでしょ!)」

 

意を決し正面から突撃。

と、見せかけてジャンプして回り込み、足払いをかける。

ナマリは見事、引っ掛かった。倒れ行くナマリ。

しかしここで油断はしない。そのままの体制で直ぐに後ろへ跳躍。

案の定、奴の鋒が鼻先を掠めた。

倒れる際の勢いを利用しての一撃だ。生身部分の多い頭部に喰らっていたら、スプラッタ間違い無しだっただろう。想像するだけでもおぞましい。

そんな事を考えつつも、視線はナマリから反らさない。

奴の剣が地面に接触するか否かの瞬間、奴はトリガーを引いた。

 

ダァン!!

 

火薬の炸裂音が響き、発生させた衝撃を器用に利用して、ナマリは起き上がる。

そこに向かって突撃。今度は右から回り込むように。

そのまま蹴りを入れようとして、飛び退いて下がる。先程まで俺が居た空間を、左のガンブレードが薙いでいった。

勢いを殺さず、更に突撃。左ストレートを繰り出す。

ナマリも反対のガンブレードで迎撃する。拳と刃がぶつかり合う刹那―――

 

ガァァン――!

 

()()()()()()()()()()()()()()()

なんてことは無い。ぶつかり合う瞬間に拳の軌道をズラして、そのままガンブレードの刀身に裏拳を叩き込んだまでだ。

その一撃でガンブレードを手放し――――たりはしなかったが、大きく隙を作ることは出来た。

しかしナマリも只では転ばない。両方のガンブレードで挟み込むように斬り付けてくる。それを俺はジャンプでかわす。

 

ガキィィィン―――!

 

二つのガンブレードがぶつかり合い、けたたましい金属音を響かせる。

その上に着地。

そして左拳をナマリの顔面に突き付ける。

 

王手(チェック)だ」

 

「――――――――――ふっ」

 

鼻で笑われた。次の瞬間―――

 

「ぬわっ!?」

 

()()()()()()――否、()()()()()()()()()()()()()

その行動は完全に予想外で、体勢を崩される。その隙を狙われ、ナマリのボディブローを防ぐことが出来ずモロに喰らう。

 

「がふ」

 

殴り飛ばされた俺は樹海の木の根に叩きつけられる。

 

「どうした?その程度か?」

 

「煽ってくれるね・・・・まったく・・・・」

 

痛みはあるが、まだ立てる。血が出てるっぽいけど大丈夫、まだ戦える。

 

「第二ラウンド・・・・・始めるつもりか?」

 

ナマリが聞く。その問に俺は―――

 

「――――――――――はぁ」

 

「?」

 

「悪い。()()()()()()()()()

 

何を、というナマリの声は上空からの来客によって妨げられた。

ナマリは飛び退いてそれを避ける。

先程までナマリが居た場所にでっかいクレーターが出来ている。その中心、このクレーターを作った本人は―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――許さないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憤怒の表情を浮かべてナマリを睨む友奈だった。

 



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Vの襲来 -ナマリVS勇者部-

バーテックス出てきてない!タイトルに偽りアリじゃん!


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

ナマリに向かって怒涛のラッシュを繰り出す友奈。

それをナマリは、ガンブレードを使って避ける。

 

「煌月先輩っ!」

「――――――やあ、樹。バーテックスは?」

「は・・・はいっ。ちゃんと倒しました」

「そいつぁ重畳の至りだな」

「え?ちょう―――」

「よく頑張りましたってこと!」

 

そんな事してる場合じゃないんだよ。

友奈は現在進行形でナマリと戦闘中。

ナマリは防戦一方だがいつ形勢が逆転するかわからない。

そもそも友奈があんなにも猛っている理由がわからない。

・・・すまん、嘘だ。察しは付いてる。

 

「煌月・・・・って!あんたそんなボロボロで大丈夫なの!?」

「風さん。俺のことは良い。それよりも友奈を・・・!!」

「友奈が心配なのはわかったから、今はあんたの手当ての方が先!!」

 

押さえ付けるように俺の頭を叩いて、風さんは俺の右足の付け根にあるロックを解除して右足を外し、そのまま太腿の収納スペースに入ってる治療キットを取り出した。

 

「ってまって風さん。なんでそれの場所知ってるの!?」

「さっき友奈に聞いた」

 

あんにゃろう!!

 

「ねえ煌月。これ、どうやってくっ付けるの?」

 

治療が終わったのか、風さんはいつの間にか俺のズボンを脱がしていて、外した右足をくっ付けようと奮闘していた。

 

「ちょっと!?風さんそれ逆!あー!違う!そうじゃない!ええい!!もう弄んな!俺がやるから!!」

 

―――――――――――†――――――――――

 

風さんに外された右足を戻す時に一悶着あったが、どうにか手当ては無事終了。さて戦況や如何に?

 

「・・・・なるほど、東郷が遠距離から撹乱しつつ、友奈が攻める、と・・・・なかなか良い作戦じゃないか。少なくとも俺一人では実行できない」

「そりゃそうでしょ」

「一人では無理ですよ・・・さすがに・・・」

「うるさいやい」

 

しかし、おかしい。どう見てもナマリの動きがさっきより鈍くなっている。何故だ?

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」

「──────────チィッ!」

 

友奈の猛攻に耐えるので精一杯だから?そんな訳がない。だとしたら・・・

 

チュイン!

「────クソ、なんで・・・」

 

東郷の援護射撃をナマリが寸での処でかわす。

まさかアイツ・・・

俺は右太腿を前から叩き、ハッチを開ける。

完全に開ききった所で中からスマホが射出された。

それを空中でキャッチ。尽かさず東郷へ電話を掛ける。

 

「ハロー東ご『輝夜くん大丈夫!?ちゃんと無事!?』無事だから耳元で怒鳴るな!!」

『ごめんなさい・・・あまりにもボロボロだったから・・・』

「・・・・・心配かけたのは謝るよ。ゴメン」

『輝夜くん・・・』

「それよりも東郷。お前、ちょっとこっちに来てくれ。援護射撃しながら」

『・・・・・・・・・何か策があるの?』

「ちょっと・・・な」

 

―――――――――――†――――――――――

 

さて、後は・・・・

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」

 

あっちで猛っている友奈をどうにか止めないと、かぁ・・・・正直しんどい。でもやらないと・・・・

 

「・・・・・ぃよっし!覚悟完・了!」

「ちょっと煌月。あんた、どうする気!?」

「こうするの、さ!」

 

言うや否や、俺は友奈とナマリの間に割って入る。

友奈の拳を右手で受け止め、ナマリのガンブレードを左手で反らす。

 

「・・・・・・・・・・・・・・かぐやちゃん?」

「落ち着けよ友奈。俺は大丈夫だから・・・」

「・・・・・っ!」

 

好機と見たナマリはこの隙に後退。俺たちと距離を取った。

 

「そう来ると思ってたぜ!東郷!!」

「了解!」

「ッ!!!!」

 

その退路を防ぐ様にして、無数の弾丸が雨のように降り注いだ。その後、着弾地点に東郷が降り立つ。

そのまま逆手に持った二丁の銃を油断なくナマリに向けた。

 

「・・・・・・・・・・・ぁ」

「投降して。こうなってしまえば、もう貴方に勝ち目は───」

「・・・・・・・・・・・・

「・・・・え?」

 

ナマリが、呻くように呟く。同時に、頭を抱えて苦しみだした。

 

「・・・・・・・・・チッ、()()()()()()()()()?」

「かぐやちゃん?」

 

摘まむように俺の左袖を掴む友奈に目配せする。

一瞬、目を伏せ葛藤する仕草を見せたものの、次の瞬間には決意に満ちた瞳で、こちらを見返してくれた。

 

「樹!縛って!」

「は・・・・はいっ!!」

 

俺の号令と共に、樹がワイヤーを射出。同時に友奈がナマリに向かって突撃。

 

「っ!!!」

 

先程まで苦しんでいたこともあって、ナマリは見事、樹に簀巻きにされた。そこに友奈が飛び込んでいき───

 

「登り───勇者パァァァァァァンチ!!!!」

 

強烈なアッパーカットを彼女の顎に叩き込む。

その一撃でナマリは上空に跳ね上げられた。

 

「風さん!大剣を水平に!」

「え?ちょっと、どうすんのよ!」

「こうすんだよ!」

 

地面と水平に構えられた大剣に飛び乗る。すると風さんも合点がいったらしく、

 

「そういうことね!じゃあ、思いっきりいくわよー?」

「覚悟は出来てる・・・・やってくれ!」

「よぉっし!」

 

両足で大地を踏み締めて、風さんは大剣を振り回して俺を打ち上げた。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!女子力全開じゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「女子力関係ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」

 

叫びながらもESEを稼働させ、フルパワーで噴射する。

その間にナマリは樹の拘束を解いており、突撃してきた俺に対して防御姿勢をとっていた。だが───

 

「そいつはもう対策済みなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

渾身の左ストレートを盾代わりにしているガンブレードに叩き込む。双方共にダメージ無し。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

瞬間───

 

 

 

 

ガガァン!!!!

 

 

 

 

 

バキ───ン・・・!!

 

 

 

 

 

左腕に搭載したギミックが発動。ナマリのガンブレードを砕いたのだった。

 

これぞ、春さんに頼んで造ってもらった一撃必殺の奥の手その一。

 

その名も『バンカーフィスト』!

 

仕組みは簡単。火薬を積めた薬莢を二の腕部分にセット。その爆発を利用して拳を打ち出す。

要はガンブレードとパイルバンカーの合の子ってところだ。

しかしそれだけではない。

なんとコイツは二連射出来るのだ!

そこから取って、この必殺の一撃を俺は、こう命名した。

 

 

 

 

 

「『震足・打金三段』・・・!」

 

 

 

 

「・・・・・なっ!」

 

ガンブレードを砕かれるとは思っても見なかった様でナマリは大層驚いている。その顔面目掛けてガンブレードを砕いた左ストレートが飛ぶ。

ぶっちゃけガンブレード壊しても勢いを殺しきれなくてナマリまで殴っちゃっただけである。

その一撃でナマリは地面に墜落。

後を追うように俺も落ちていくが、ESEを噴かして軟着陸。同時に左腕が展開し、強制冷却&空薬莢排出。今度は熱風が俺を襲うことはなかった。

 

「輝夜くん!大丈夫!?」

「お、東郷。出迎えごくろーさん」

「さっきの・・・・あの人は?」

「向こうで伸びて───」

 

 

 

 

「ぅあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

「────なかったね。元気そうでなにより」

「なんて言ってるつもり!?」

 

迎撃体制に入ろうとする東郷を制して、ナマリに背中を向ける。

 

「輝夜くん!?いったい何を・・・!!」

「まあ、見てな」

 

バックル上部に配置された三つのボタンの内、一番左側のボタンを押す。

 

「ワン」

 

音声は鳴らないので自分で言う。サウンド機能とか、なんで付けてくれなかったのかなぁ?なんて思いながら、真ん中のボタンを押す。

 

「トゥー」

 

背後で爆音。ちらりと肩越しに見てみれば、ナマリがスーパーな戦闘民族みたいな感じで、霊力を放出していた。

なんかすげーことやってんなぁ、なんて思いつつ、右側のボタンを押す。

 

「スリー」

 

三つのボタン全てを押し終えたあと、ナマリがこっちに突っ込んできた。あの感じからすると、逆上して突撃してきた、ってところか。うん。格好のカモだな!

さて、名前は・・・・いいか。友奈、借りるぞ。

 

 

 

 

 

「───────勇者・・・キック」

 

 

 

 

 

バックルに刺さったカギを回す。

瞬間、圧縮されたエネルギーが一気に右足に雪崩れ込む。

俺はそのまま、その右足を、背後に迫るナマリに回転蹴りの要領で叩きつけた!

 

「ぐあッ!!」

 

俺の右足は狙い過たずナマリの顔面にクリティカルヒットした。

吹き飛ぶナマリ。先程の俺と同じように、樹海の木の根に叩きつけられたのだった。

 

 

 

 

 

訪れる静寂。

それを破ったのは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキン───という、ナマリの仮面が割れた音だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・クソ、がァ」

 

起き上がったナマリは、開口一番にそんな事を口走る。

が、そんな事を気にしている余裕はなかった。

何故なら───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前・・・・・・()()()()()()()・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

半分になった仮面から、まず最初に見えたのは、()()()()()()()()()()

本来ならその部位には眼球があると思われる場所。

そこに、何もなかったのだ。

 

「・・・・・・あぁ、これか」

 

まるで古傷を撫でるように、眼腔に指を突っ込んで、ナマリは答えた。

 

「捨てたよ。使えなくなったから」

 

あっさりと、そう答えるナマリの表情は、相変わらず読めない。

だが、その声音が先程までとうって変わって、優しげになっていた。

 

「今日はあんたたちの勝ちだ。おめでとう」

「・・・・・・・そりゃどーも」

 

だが、と言葉を区切り、ナマリは告げる。

 

「此処から先へ行くのならば、覚悟しておけ・・・大事なものを・・・・・喪う覚悟を・・・・な」

 

言うだけ言って、ナマリは何処かへ飛び去っていった。

 

「・・・・・・・とりあえず、勝った?」

「・・・・・・・だと思う」

「・・・・・・・そう、か」

「・・・・・・・そう、ね」

 

糸が切れた人形の如く、その場に倒れる。

あーつっかれた!

 

「お疲れ様、輝夜くん」

「おう、東郷もおつかれ。とんだ初陣になったな」

「ふふ・・・そうね」

 

そうやって、お互い、笑い会う。

どうにか今日も生き延びることが出来た。

樹海化が解けゆく中、俺は今日の夕飯のことを考えていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで・・・・その・・・・輝夜くん///・・・・・・・・ズ・・・・・ズボンは?///」

「あ、おいちょっと待って風さん俺のズボンどこやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

翌日、俺のズボンは『怪異!?校庭に突如舞い降りたズボン!』という見出しで、学校新聞の一面を飾ったなんてことは、実にどうでもいい蛇足である。

 




SSRみーちゃんが来ない・・・・
SSRみーちゃんどこ・・・・?ここ・・・・?

そうそう、忘れてました。
ESE操作用のベルトと、ズボンのベルトは別物です。
なので、ズボンがなくてもESEの操作は出来るのです。


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煌月輝夜の華麗で喧しい日常風景ー墓参り編ー

動物愛護団体に怒られそうな内容が少しありますが、お仕事をサボっている子へのお仕置きです。そもそも動物ではなくて妖精なので、どうか見逃してください。


バーテックス及び、ナマリの襲撃から一週間が経過した。

今のところ、バーテックスが訪れる気配は無いらしく、それに呼応してか、ナマリも襲って来ない。俺としては嬉しい限りだがね。

 

「さて───と、行きますか」

「はい。行ってらっしゃい。坊っちゃん」

 

マッキーに見送られてながら、家を出る。その手に白と黒、二つの水筒が入ったビニール袋を持って───

 

「・・・・快晴だな」

 

雲一つ無い青空を仰ぎ見る。

五年前のあの日も、こんな感じの天気だったな・・・・

 

―――――――――――‡――――――――――

 

少しだけ、昔の話をしよう。

 

 

 

物心付く頃まで、俺はずっと病室にいた。

いや、あれは病室というよりも、実験室と呼んだ方がしっくりくるだろう。

目が痛くなるほどに、真っ白な部屋。

大きな鏡(多分、マジックミラー)とベッドしか存在せず、他には何も無い。

そんな部屋で、俺は育った。

時折来る、カウンセラーを名乗る男に体調を訊かれ、身体中にコードで何かの計測器に繋がれた電極を貼り付けられる日々。

そんな退屈な日々から、俺を救いだしてくれた人がいた。

その人こそ、俺の"ばっちゃ"───白鳥文野(アヤノ)であった。

 

―――――――――――‡――――――――――

 

「やぁ、ばっちゃ。去年ぶりだね」

 

電車で半時ほど揺られた後、少し歩いた先にある白鳥家の墓場。

ここに、ばっちゃも眠っている。

 

「あれから色々あったな・・・・・どれもこれも、全部ばっちゃが俺を拾ってくれたお陰だ」

 

ビニール袋の中から白い水筒を取り出し、中身を墓碑にぶちまける。

 

「今年の出来栄えはどうだい?なかなかだと思うんだ。未成年だから味見なんてしてないけど」

 

中身は俺お手製の梅酒。製造には許可が必要らしいけど、マッキー曰く「バレなきゃ犯罪では無いのです」だそうだ。その時のマッキーのイタズラ小僧の様な笑みは、今でも覚えている。教職員がそれで良いのか。

 

「それにしても、今日はやけに静か───」

 

 

 

 

 

遠くから、誰かの悲鳴が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「────だと思ったよ。まったく・・・」

 

荷物を置いて、悲鳴が聞こえた方角へと走る。

 

―――――――――――‡――――――――――

 

ばっちゃに引き取られ、その娘一家であり、ばっちゃと一緒に暮らしていた『煌月家』に養子として戸籍を入れてもらった日。ばっちゃにより"輝夜"と名付けられた。

名付けられてからは、いろんな事を教えられた。

料理、洗濯、掃除、農業───

様々な技術をばっちゃから学んだ。

やがて、大概の事は出来るようになったころ、ばっちゃは俺を連れて讃州市に引っ越した。

ばっちゃ曰く、「元よりあの家はあの子たちにプレゼントする予定だったし、丁度良い機会だったのよ」とのこと。本当かどうかは知らない。

そこそこ大きめの家に、裏庭に畑まで備え付けられている新しい生活スペース。

そこで、俺にとっての全てが変わる出会いがあった。

つまり────

 

 

 

 

 

「こんにちはー!」

 

 

 

 

 

友奈との、出会いである。

 

―――――――――――‡――――――――――

 

案の定だった。

声の聞こえた場所まで来ると、そこには、真っ黒い大型犬に睨まれて縮こまっている少女がいた。

いつものことなので、いつものように───

 

 

 

 

 

「ギャンッ!!!」

 

 

 

 

 

犬を蹴り飛ばす。

黒犬は自分を蹴り飛ばしたのが俺であることを理解すると、「あ、やべ」と言いたげな顔で固まった。

 

墓守犬(チャーチグリム)。テメェの仕事は女にアプローチすることじゃねえって去年も言っただろーが・・・・」

「・・・・・・くぅん」

「悲しそうに鳴いてんじゃねえ。その毛根こそぎ刈り取るぞコラ」

 

墓守犬は渋々と墓場の見回りに戻って行った。

 

「さて、悪かったな。あいつ、可愛い女の子が好きで・・・・さ・・・・」

「あ・・・・いえ。こちらこそ、助けていただいて・・・・・・あ」

 

会話が止まる。目の前の、先ほどまで墓守犬に睨まれて縮こまっていた少女に目が離せない。

どこかで聞いたことのある声だとは思っていた。

どこかで見たことのある少女だとは思っていた。

でもまさか───

 

 

 

 

 

「なんでこんな所にいるの?樹」

「あ・・・・あはは・・・・・」

 

 

 

 

 

乾いた笑みを浮かべて、少女──犬吠埼樹は、さっき俺に蹴られた後の墓守犬みたいな顔をしていた。

 




墓守犬について──

白鳥文野が埋葬された日。輝夜を女の子と勘違いして「ヘーイ彼女~。ちょっとお茶でもどう?」とナンパしたら、フルボッコにされた上に舎弟として使い魔契約させられた。
可愛い女の子が大好き。
実は犬ではなく、彼女が居ないまま死んでしまった哀れな男たちの怨念が神樹の霊気を浴びて、犬の形になったもの。そこに輝夜が墓守犬という役割を契約の際に当てはめた。


友奈に『クロ』という名前を貰ったが、輝夜は一向にその名前で呼んでくれない。なんでだろーねー?(棒)


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煌月輝夜の華麗で喧しい日常風景ー魔導編ー

ここ最近、いろんなことがありましたなぁ・・・

ルパン三世のpart5が終わり、デジライズにタイタモンやミラージュガオガモンが追加されたり、ゆゆゆいだと防人組がついに参戦!メブのSSR、ゲットしました!
かわりなのかどうか知らないですけど、亜弥ちゃんのSSRが一向にこない・・・・・
巫女の出が悪いなぁ・・・・・みーちゃんに引き続き亜弥ちゃんもか・・・・・
そういや、しずくもこないや・・・・・Rすらこないってどんだけ嫌われてるのさ?
泣くよ?
年甲斐もなく泣いちゃうよ?
これでSSR実装されたときに、Rもこないとかいったら、絶対泣き叫ぶよ?
人目も憚らず、咽び泣くよ?

そんな、雨の日の小生────


「ふむふむ、なるほど・・・駅前で見かけて、気になったから尾行してきた・・・と」

「その・・・・・すみません・・・」

 

樹をバカ犬から救出したあと、俺たちは喫茶『嵐ヶ丘』に来ていた。

 

「別に。構いやしないさ。『探求の心こそ、向上の心』ってね」

「はぁ・・・・」

「輝夜くん、また白鳥先生の言葉?」

 

そう訊ねてきたのは杏子さん。現在嵐ヶ丘は彼女一人だけ。晴さんは大赦本庁に、マルさんは買い出しに出掛けているのだとか。

 

「俺が心から尊敬する御方ですんで」

「マルちゃん言ってたよ。『マルたちのことも、そのくらい素直に頼ってくれたらいいのに』って」

「・・・・・確かに、杏子さんたちには良くして貰ってますけど・・・・・」

「・・・・・えっと」

 

ん、そういえば樹には何も説明してなかったな。せいぜいが「ここ、俺の行き付けの喫茶店」くらい。

 

「この人が伊予島杏子さん。活字中毒でロマンチスト。ついでに身長180超えの大女」

「最後のは余計だよっ!」

「え・・・えと、犬吠埼樹です!よろしくお願いします」

「あ、うん。よろしくね♪樹ちゃん」

「も一つオマケに言っておくとこの人、ロリコンで可愛い女の子が大好き」

「ええっ!?」

「だから気を付けな。お前、狙われてるぜ?」

「そ・・・・そうなんですか・・・・?」

「ひどいなぁ輝夜くんは・・・・・わたしはただ、小さくて可愛い子が大好きってだけなのに・・・・」

 

よよよ、と泣き真似をする杏子さん。 しかし右手はちゃんとコーヒーを煎れて(仕事をして)いる。

 

「そんな杏子さんから見て、樹はどう?」

「超good。わたしの好みドストライク」

「だってさ、気を付けな」

「・・・・・・ならどうしてここを紹介しちゃったんですか」(白目)

 

―――――――――――†――――――――――

 

杏子さんのコーヒーをすする。うん、今日も美味い。

 

「今日の出来も最高ッス」

「喜んで貰えてなによりだよ」

「──────ふぅ」

「樹ちゃんは?」

「はい、とってもおいしかったです!」

「よかった・・・」

 

安堵している杏子さん。そんなに心配しなくてもここのコーヒーは充分美味いのになぁ・・・

 

「ところで樹ちゃん。窓際のあの子は、樹ちゃんの精霊?」

「え?」

 

杏子さんに言われて、窓際を見る。

そこには、樹の精霊である緑色のマリモみたいな奴が、ひなたぼっこしていた。とても心地よさそうにしている。

 

「あれ?木霊・・・・いつの間に・・・・」

「あの子かわいい~♪」

「・・・・・木霊って言うのか、アイツ」

 

三人で木霊を眺める。

静かに、時が、流れて行く────

 

 

 

 

 

「・・・・・・はっ!つい、眠りそうになっちまった」

「あはは。それじゃあ輝夜くん・・・・・・・する?」

 

杏子さんが上目遣いに訊ねてくる。やれやれ、またかい。まぁ、返事なんて決まっているのだがね。

 

「杏子さんからのお誘いだ。無下に断るなんて・・・・・できないよ」

 

まったく、人には『もっと落ち着きを持て』だのとうるさいくせに・・・・・

それと樹。別に疚しいことじゃないから、顔を赤らめなくていいから。

 

「これからやるのは、単なる組み手みたいなモンだよ」

「組み手・・・ですか?」

「おう、それも只の組み手じゃない。魔法によるタイマン勝負だ!」

「ま・・・・・ほう!?」

 

すっとんきょうな声をあげる樹。

 

「ああ、そういや言わなかったな・・・・」

 

 

 

 

 

「俺、魔法使いなんだわ」

 

 

 

 

 

それを聞いた時の樹の表情は、はっきり言って、胡散臭い通販を見ている時の、主婦のそれっぽかった。

 

―――――――――――‡――――――――――

 

ソレに気付いたのが何時の頃だったかは、正確には覚えていない。ただ少なくとも、ばっちゃに外に連れ出された後なのは確実だったと思う。

ある日のことだ。

俺がばっちゃに連れられて通りを歩いていた時、ふと、視界の端に奇妙なモノを捉えたのだ。

その頃の俺は『知ること』に貪欲で、いろんなことに首を突っ込んでいた。

 

だからこそ、起きてしまった事故。

 

それが、俺の最初の罪

 

―――――――――――‡――――――――――

 

「さて、もう何度目になるのかな・・・・?」

「記憶にある限りだと・・・・・・少なくとも、二十回以上ッスかねぇ」

 

"嵐ヶ丘"の地下にある、"鉄火場"の修練場。

核シェルター並みの強度を誇るこの区画に、俺と杏子さんはいる。

隣には、先日俺の身体を直してもらったガレージがあり、樹はそちらで修練場各所に設置されたカメラを通してモニターしている。

 

「ええっと・・・・結局、何をするんですか?」

「─────そういえば、樹には話してなかったわ」

「そうなの?それじゃあ、かんたんに説明しよっか」

 

杏子さんが樹にレクチャーし始めた。

これから行うのは、俺と杏子さんによる魔術決闘。

ルールは単純。どちらかが降参するか、魔力切れを起こすかするまで戦う。ちなみに、体術による攻撃は反則と見なされ、即敗北。

 

「そもそも、私たちの扱う魔術っていうのはね、単純に分けて二種存在するの」

「一つは、『内循環型(魔術士タイプ)』自身の持つ魔力を体内で循環させて、体外に"現象"として出力するタイプのやり方ね」

「もう一つは『外循環型(魔法使いタイプ)』自身の魔力を餌にして、"お隣さん"の力を借りるタイプのやり方よ」

「"お隣さん"?」

「簡単に言えば、精霊みたいなモンさ。ともかく見てなって」

 

言うや否や、俺は右手に魔力を集める。それにつられて、水の妖精たちが集まる。

 

「わぁ・・・・・」

 

やがて妖精はビー玉サイズの水球になって、指先に集まり、それを見計らって俺は、右手を拳銃の形にして、水球を射った。

放たれた水球は狙い過たず、杏子さんがいつの間にか(ホントにいつの間に!?)用意していたベニヤ製のターゲットを粉砕してみせたのだった。

 

「すごい・・・・」

「ベニヤ板程度ならこんなモン軽いって」

「威力調整すれば、鉄板だって撃ち抜けるもんね」

「ふえぇぇ・・・」

 

さて、デモンストレーションはここまで・・・・

 

「んじゃ、はじめっか・・・・・!!」

「ところで輝夜くん、"杖"は使わないの?」

「杏子さんだって、"祈りの大弓"使わないんだろ?」

「─────ふふ♪」

「─────フッ」

 

 

 

 

 

「「上等!!受けて立つ!!!」」

 

 

 

 

 

先手はこちら。

先程使った『鉄砲水』を両手で連射。

杏子さんは動かず、ウィンドガード(風を操作する魔法)でそれを回避。しかし、その手は読んでいた。

その隙に生製した『火杭射(金属の杭を炎で射出する魔法)』を打ち込む。

 

「土よ・・・!」

 

杏子さんはグランドウォール(土で出来た壁)でそれを防御。

 

「いつものか・・・・・予想通り!」

 

パチン、と指を鳴らす。瞬間、杏子さんの土壁に打ち込まれた俺の杭が爆発。壁を粉砕してみせた。

 

「変わらずパワーファイターだね・・・でも!」

 

杏子さんが地面に手を付けた瞬間、俺の足元と頭上から、拳型の土が迫ってきた。

急いでそこから離れる。

それを待っていたかのように、更に炎・水・蔦・針のトラップが次々襲いかかってくる。

 

「ちょっと!陰湿過ぎね!?」

「前回ので私も学習したの。輝夜くんは動き回した方が・・・・・」

 

パチン、と今度は杏子さんが指を鳴らした。瞬間、俺の両足に鎖が巻き付く!

 

「引っ掛かりやすいってね♪」

 

これは───不味い!杏子さんお得意の───

 

「ヘル・スクラッパー!!」

 

俺の前後左右から壁がせり上がり逃げ道を奪った瞬間、天井が一気に落ちて、俺は潰されたのだった・・・

 

―――――――――――†――――――――――

 

「・・・・・この程度じゃないでしょ?もっと、楽しませてよ・・・」

「─────休ませてもくれないとはねぇ、ひどい人だよ」

 

神樹様の影響で俺たちが操ることのできるのは、『五行思想』における元素──つまり"木火土金水"の五属性のみとなっている。五行思想を元にしているので当然、相剋と相生の関係もそれに準拠する。

ヘル・スクラッパーの属性は金。だから、火の魔法を使えば穴を開けて脱出口を作ることなんて造作もないことだ。

 

「まだまだやれるよねっ♪」

「もちろん・・・・トコトンまで付き合ってやりますとも♪」

 

俺たちの狂騒は終わらない。

もっと・・・もっと・・・・もっと・・・・・!!

 

「楽しいねぇ!輝夜くん!」

「楽しいッスね!杏子さん!」

 

 

 

 

 

「「アハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・ひぇぇぇ」

 

この後、樹は今までよりも更に、俺のことを怖がってしまった。一応フォローはしといたので、大丈夫だとは思う・・・・・思いたいです・・・・・




伊予島杏子について──

身長183㎝の25歳。白鳥文野が受け持った最後の生徒たちの一人で"魔導師"。
重度の活字中毒でロマンチストなのは先祖代々の血筋故だが、自他共に認める程のロリコンなのと、案外血の気が多いのは本人の性質。
美味しいコーヒーを淹れることに誇りを持っているため、自分の淹れたコーヒーを飲まない人、無駄にする人にはキツくお灸を据えようとしてくる(輝夜もかつて、一度だけお灸を据えられたことがある)。


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Kの来訪 -自称・完成型勇者との邂逅-

ついにあの子が登場!!
案外ここまでが長かったような気がする・・・


あれから特に何事も無く、およそ一ヶ月が過ぎようとしていた頃───

 

「忘れたころにバーテックス。やれやれだな」

 

遠くに見えるドリルっぽいモンをくっ付けた異形を眺めて呟く。

 

『敵、射程圏内に入りました!』

 

端末から東郷の声が届く。彼女の武器はスナイパーライフルにハンドガン、二丁ショットガンだそうで、別の場所にスポットしている。

 

「一ヶ月ぶりのお役目・・・・ちゃんとできるかな・・・・」

「えっと・・・・ここを、こうで、こう・・・」

「ほうほう」

 

やれやれ、何をやっているのやら。

ちなみに今回は俺もみんなと一緒にいる。とは言っても、バーテックス相手に戦うのは・・・・まだ、無理なのだが・・・・

 

「ええい!!なせば大抵なんとかなる!勇者部ファイトーー!!!」

「「おおーー!!」」

 

風さんに合わせて友奈と樹が、声を上げる。

その時───

 

 

 

 

 

ドン!ドドドン!!

 

 

 

 

 

突如、バーテックスが爆発した。今のは・・・

 

「え?なに?」

「東郷さん!?」

『私じゃない・・・・』

「じゃ、誰だよ」

「あ!あれ・・・」

 

樹の声に、頭上を見上げる。すると───

 

 

 

 

 

「ちょろいっ!」

 

 

 

 

 

自身の勇猛さを表すかの如き真紅の色をした、スタイリッシュかつスポーティーな衣装を纏った、両手に刀を持ったツインテール少女が、空から降ってきた。

 

「・・・・・・・ん?」

 

なんか、見たこと、あるような・・・・?

なんて思っていると、ツインテ少女は刀をバーテックスの眼前に投げた。樹海の、何も無い場所に刺さる刀。

 

「あいつなにを・・・」

「まさか・・・一人でやる気!?」

 

風さんの言葉に、ツインテ少女がやろうとしていることを理解した。

彼女は、一人でバーテックスを倒そうとしているのだ。

 

「封印開始・・・・!」

 

刺さっている刀は抜かず、新しい刀を虚空から呼び出して少女はバーテックスへと突撃していった。

 

「思い知れ・・・・私の実力(ちから)・・・・!!」

 

初めて目にする封印の儀。

バーテックスの頭が開き、そこから逆三角錘型の物体が現れた。あれが・・・"御霊"ってやつか・・・・

その時、御霊が紫色の煙を吐き出した。

直感的にヤバいと感じた俺は、右手に風の妖精の力を集め、俺たちの前方に解き放った。

 

「『暴風壁』・・・!」

「きゃあ!!」

「ちょ・・・煌月!?」

「かぐやちゃん!?」

 

『暴風壁』によって煙は俺たちを避けて行った。その間に───

 

「そんな目眩まし─────」

 

少女は煙の中を突っ切って、そして

 

「気配で見えてんのよ!!!」

 

御霊を十字に切り裂いてみせたのだった。

 

「殲・・・滅・・・!」

『諸行無常』

 

なにあれ。ちょーかっこいー・・・!

 

―――――――――――†――――――――――

 

バーテックスが砂になって消えた後、少女が俺たちの前に降り立ち、一瞥。そして

 

「揃いも揃ってボケっとした顔して・・・・こんな連中が神樹様に選ばれた勇者ですって?ハッ!」

 

随分と失礼なことを明け透けに言い放ってきた。

オマケに鼻で笑うという仕打ち。

 

「えっと・・・・だれ?」

「なによ、ちんちくりん」

「ちん・・・!?」

 

そこに東郷がやってくる。タイミング良かったな。東郷がいる前でさっきの発言は"死"を意味していたぞ・・・・・・多分。

 

「私は三好夏凜。大赦から派遣された、正真正銘、正式な勇者よ!!」

 

んん?三好だと?

 

「つまり、あんた達はお払い箱って事!はい、お疲れさまでしたー」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

他の四人がお払い箱という言葉に驚く中、俺だけは別のことに驚いていた。

 

(こ・・・・こんな奴が、()()()()()だとぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?)

 

―――――――――――†――――――――――

 

三好春信

 

俺が、ばっちゃに続いて、心から尊敬する人物の一人。

文武両道。眉目秀麗。

基本的に物腰は柔らかく、誰に対しても優しく接する。

そんな彼の最愛の妹が・・・・

 

「転入生のフリなんてめんどくさい・・・けど、私が来たからにはもう大丈夫。完全勝利よ!!」

 

こんな・・・面白い性格をしていたなんて・・・・!!

 

「なぜ今になって?どうして最初から来てくださらなかったんですか?」

「私だって、最初から出陣したかったわよ。けど大赦は、二重三重に万全を喫していたの。最強の勇者を完成させるためにね!」

 

東郷の問いに、自身の端末を取り出して語る。

最強の勇者とは・・・・また大きく出たモンだ。

 

「私の勇者システムは、あんたたち先遣隊のデータを元に対バーテックス用の最新のアップデートを施してあるわ!そしてなにより、あんたたちトーシロと違って専用の訓練を長年受けている!!」

 

カッコつけて振り回した長箒の柄が黒板に当たり、ガン、と音を立てた。

さっきからなにこいつ、かなり面白いぞ。

 

「黒板に当たってますよ・・・」

「こりゃ躾甲斐がありそうね」

「なんですって!?」

「け・・・・ケンカはダメですよ・・・!」

 

む、ちょっと険悪な空気。

春さんの手前、こいつとは仲良くしておきたい───というのは建前で、ぶっちゃけこいつ、かなり面白い性格してるから勇者部においておきたい。

というワケで友奈、よろしく。

目配せして友奈に合図。友奈もちゃんと答えてくれた。

まあ、元よりこいつと仲良くなりたがっていたみたいだが・・・・

 

「フン・・・まあ良いわ。とにかく大船に乗った気持ちでいなさい!」

「そっかー!よろしくねっ、夏凜ちゃん!」

「い・・・・いきなり下の名前!?」

「イヤだった・・・?」

「別に・・・名前なんてどうでもいい・・・」

 

照れた風に視線を反らして答える。

なんだろうな、この気持ち。こいつのこと、めっちゃ、からかいたい。

まさかこれが・・・・・・恋煩い!?

・・・・・んなわきゃねーよな。ガキじゃ有るまいに。

 

「ようこそ、勇者部へ!」

 

笑顔の友奈が夏凜に告げる。

 

「は?誰が?」

「夏凜ちゃん」

「部員になるなんて一言も言ってない!」

「ええ、もう来ないの?」

「・・・・来るわよ。あんたたちの監視をしなくちゃだし」

「だったら部員になっちゃった方が良いよ!」

「お、そうだな」

 

その方が絶対に面白いことが待ってるに違いないからな・・・・

 

「・・・・お姉ちゃん、煌月先輩がなんか良からぬことをたくらんでる・・・」

「樹、煌月のアレは、"獲物を見つけた蛇"の顔だから、近付いちゃダメよ」

 

よし!では早速────フフフ・・・

 

―――――――――――†――――――――――

 

好物のビーフジャーキーを食べ終えて、ふらふら飛び回っている牛鬼の前に、俺の髪を垂らす。

じぃー・・・とそれを見つめる牛鬼。と、突然

 

かぷり

 

牛鬼が俺の髪に噛みついた!今だ!

 

「フィィィィィィィッシュ!!」

 

勢いよく、髪の毛を振り回し、牛鬼を引き剥がす。吹き飛ぶ牛鬼。その先には、夏凜の精霊と思われる鎧武者が・・・

 

 

 

 

 

かぷり、と牛鬼が鎧武者に噛みついた!

 

 

 

 

 

よっし!!!作戦成功!

と、ほぼ同時くらいに

 

「んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」

 

夏凜が気付き、牛鬼を引き剥がす。

 

「何してんのよ!?この腐れ畜生め!!!」

『ゲドウメ・・・』

 

うお、こいつしゃべるぞ!?ますます面白い・・・!

 

「外道じゃないよ、牛鬼だよー。ちょっと食いしん坊なんだよねー」

「みんな、牛鬼に齧られてしまうから精霊を外に出しておけないの」

「そいつをしまって起きなさいよ!!!」

「勝手に出てきちゃうんだよー」

「ハァ!?あんたの端末、壊れてるんじゃないの!?」

 

よっしゃぁぁぁぁ!!この反応!!!これを待っていた!!!

 

「煌月先輩が嬉々としている・・・」

「こういう時の煌月って、ホント、生き生きしてるわよね・・・・」




この後、友奈がうどんを食べに誘ったが、夏凜は拒絶し、一人帰宅。

友奈は夏凜と、どうやって仲良くなろうか考える。
対して俺は、夏凜と春さんを引き合わせたら面白い反応が見られそうだなぁ・・・なんて、考えていた。





それが、あんなことになるとは思わずに・・・・


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Kの来訪 ー輝夜と夏凜 パート1ー

今回の話で、なんか設定に矛盾が生まれた気がする。
行き当たりばったりで進めるからこうなるんだぞ・・・と。



翌日───

 

「仕方ないから情報交換と共有よ!」

 

そう言って、昨日同様、部室の黒板の前に立つ夏凜。

昨日と違うところがあるとするならそれは・・・

 

「煮干し?」

 

煮干しの袋を抱えて、バリバリ食べてるところか。

つーか、こいつもか。春さんも煮干し喰ってたな、そういえば・・・

 

「なによ。ビタミン!ミネラル!カルシウム!タウリン!BTA!DHA!煮干しは完全食よ!!」

 

同じ事を春さんも言ってたなぁ!?

やっぱこいつら兄妹か・・・・

 

「あげないわよ」

「いや別にいらないわよ」

「じゃあ、このぼた餅と交換しましょう?」

「はぁ?何よそれ」

「さっき家庭科の授業で作ったの」

「東郷さんはお菓子作りの天才なんだよー♪」

「いらないわよ!」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「これまでバーテックスの襲来は周期的なものと考えられてきたけど、相当乱れている。これは、異常事態よ。帳尻を合わせるために、今後は相当な混戦が予想されるわ」

「確かに、一ヶ月前も三体来ていましたね」

 

夏凜の説明に東郷が、自身の初戦闘の時を思い出す。

あのとき、三体も同時に相手してたのか・・・・

 

「それと・・・・要注意なのが、"御社"」

「おやしろ?」

「──────ナマリの所属する、組織か?」

「察しが良いじゃない」

 

ナマリの名に、全員が反応する。

まぁ、あれだけのことをすりゃあな・・・・

 

「"御社"は本来、大赦の裏組織でね。表立ってはできないような、所謂、"汚れ仕事"を請け負っていたらしいわ」

「汚れ仕事・・・・」

「そんな連中がどうしてバーテックスと?」

「さぁ?ま、私は別に何が来ても対処できるけど、あんたたちは気を付けなさい。命を落とすかもしれないわよ!他にも・・・」

 

そう言って夏凜は、黒板に何かを書き足す。

これは・・・・紋様か?

 

「戦闘経験を貯めることで、勇者はより強くなれる、これを『満開』と呼ぶわ」

「三好さんは、既に満開を経験済みなんですか?」

 

東郷の問いに、夏凜は顔を背けて「まだだけど・・・」と答えた。

満開・・・・ね。

強すぎる力は何かしらの反動がある。実際、()()()()()()()()()()()()しな。

 

「なぁんだ。あんたもレベル1なら、あたしたちと大差ないじゃない」

「っ!あんたたちとは基礎が違うのよ!」

「でもそれって、個人の努力次第だろー?」

「んなっ!」

 

にやけ面を隠そうともせず、むしろ前面に押し出して煽るように問う。

 

「あ!じゃあ私たちも朝練やろうよ!運動部みたいに!」

「良いですね!やりましょう!」

「樹、あんた朝起きられないでしょー」

「あ・・・・」

 

図星を突かれる樹。そんな彼女を友奈が笑う。

 

「友奈ちゃんも、朝苦手だったよねー」

「う・・・・」

 

そんな友奈も、東郷に図星を突かれる。結果、全員が笑った。そんな俺たちの様子を見て夏凜は──

 

「・・・・・・・・なんなのよ、こいつら」

 

すごく、呆れていた。

そんな夏凜に、友奈が言う。

 

「『なせば大抵なんとかなる』!」

「はぁ?なによそれ」

「勇者部五ヶ条だよっ♪」

 

そう言って、黒板の右上に貼られた五つの条文の書かれた紙を指す。

 

 

・勇者部五ヶ条・

一つ 挨拶はきちんと

一つ なるべくあきらめない

一つ 良く寝て、良く食べる

一つ 悩んだら相談

一つ なせば大抵なんとかなる

 

 

「なるべく、とか、大抵、とか・・・・あんたたちらしい曖昧な文章ね・・・私の中で諦めがついたわ・・・」

「あたしたちは・・・・・・アレよ!現場主義ってやつ!」

「それ、今考えたでしょ」

「あーハイハイ。考え過ぎると将来ハゲるわよ」

「ハゲないわよっ!!」

 

うーん、このツッコミの切れよ・・・・!

 

―――――――――――†――――――――――

 

この後、来週末の幼稚園でのお遊戯会のミーティングをやって、今日の部活は終了した。

 

で、翌日

 

この日は特に重要な依頼もなかったので、さっさと帰って新開発の酢漬け梅干しの成果を確認しようと思っていたら───

 

「煌月輝夜。ちょっと付き合いなさい」

 

夏凜に屋上に呼び出された。

いったい何の用だと言うのか。まあ、なんとなく察してはいるんだけどね。

 

「誰もいない屋上に二人きり・・・・まさか!恋の告白!?」

「んなわけあるかぁ!!」

「うん知ってた。他に思い付くのは・・・・あ、来週末のお遊戯会のことか?」

「それも違うわよ!」

「なんと・・・・ではアレか?文化祭の出し物について──」

「いい加減にしろぉ!!!」

「(爆)」

 

あー楽しい♪

なんだろうね、この、"打てば響く"って表現であってるのか?友奈たちと一緒にいるときとはまた違った楽しさがあるね♪

さて、そろそろ夏凜の堪忍袋が切れそうだから、真面目に聞いてあげましょうかね。

 

「で、何か俺に聞きたいことがあるのか?」

「─────────『錬獄』」

「─────────は?」

「『錬獄』という言葉に、聞き覚えは?」

「──────────いや、無いけど」

 

『錬獄』?───レンゴク、ねぇ・・・

あだ名か、はたまた組織名か・・・

どちらにしても、ロクなヤツじゃなさそうだな

 

「────なら、この三人に見覚えは?」

 

夏凜が三枚の写真を取り出して、俺に見せる。

 

「────────────────は?」

 

写真には知り合いの顔が写っていた。

いや、()()()()()()()()()()()()()()

だって・・・・この人たちは・・・・・・

 

「なんで・・・・()()()()()()()()()()()

 

俺の命を救ってくれた人で、ばっちゃ亡き今の、俺の師匠であり、ライバルでもある人たち。

 

「反大赦組織『錬獄』。その三人はそこで、幹部をやってるそうよ」

「・・・・・・・なにかの間違いだろ?だって、あの人たちは、大赦の『鉄火場』で・・・」

「その『鉄火場』。()()()()()()()()()()()()。なんでも、資金不足に陥って経営困難になったとか」

「・・・・・・・嘘だ」

「・・・・・・・・・・信じたくないのはわかるわよ。私だって・・・・信じたくなかった」

 

夏凜の表情が物語る。彼女は、嘘を言っていない。

 

「・・・・・・・・三人の居場所を知って、どうするつもり?」

「─────────────」

「答えてくれなきゃ、教えない」

「─────無理矢理にでも、吐かせてやることも可能だけど?」

 

パン

 

夏凜の髪が揺れる。右手の人差し指に、風の妖精の力を圧縮し、夏凜の真横に向けて放ったのだ。

 

「・・・・・・・・今のは『太刀風』。威嚇射撃と思ってくれれば良い」

「・・・・・・・・そ。なら、私も加減しないから」

 

夏凜が木刀を二本取り出して、構える。

俺は────



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Kの来訪 ー輝夜と夏凜 パート2ー

+春信


「・・・・勇者にならないのか?」

「ハッ。必要ないわよ」

 

俺の言葉に、夏凜は鼻で笑って答える。

・・・・・・なるほど。そういうつもりならば

 

「────わかった。居場所を教えるよ」

「・・・・・・なによ。随分あっさりじゃない。怖じ気付いたの?」

「お前が、他人を気遣えるヤツじゃなかったら、徹底抗戦を唱えていたが・・・・・流石、勇者に選ばれるヤツは違うな」

「─────────なんか、すっごい拍子抜けしたんだけど」

「なんでさ」

「あんた、ちゃんと他人のこと見れる人なんだ・・・・って思って・・・・」

「ばっちゃがそういう事、五月蝿かったからなぁ・・・・」

「ふぅん・・・」

 

夏凜はそれ以上追及してこなかった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

夏凜と共に、"嵐ヶ丘"に向かう。

その道すがら、俺は、春さんとの馴れ初めを夏凜に話していた。

 

「今から五年ほど前だ。俺は、自分の力を御しきれず、"自壊"を起こした」

「"自壊"───魔力の暴走によって、自分の身体が膨張し、限界を越えた瞬間、爆発するっていう・・・?」

「それ。ただまぁ、俺の場合は、どうにか大惨事になる前に抑え込んだから、両足と左腕だけで済んだけどな。代わりに内臓のほとんどが修復不可能な程にズタズタになっちまったけど」

「──────────」

「そんな俺を助けてくれたのが春さん───三好春信さんだった」

「────────わかってると思うけど、その三好春信って人は・・・」

「・・・・・・・・お前の、兄弟・・・か?」

「兄貴から、聞いたの?」

「ちらっと、ね」

「・・・・・・・・そう」

 

沈黙が流れる。

その沈黙を、夏凜が破る。

 

「兄貴は、最初からなんでも出来た」

「・・・・・・万能の天才って、やつ?」

「そんなところ。だから、家族はいつも、兄貴中心に動いていた。両親は兄貴に期待していた。反対に、私のことなんて、見てくれなかった。兄貴のことは誉めるけど、私のことは誉めてくれなかった。兄貴の絵は飾るけど、私の絵は飾ってくれなかった・・・・」

「─────悔しかった?」

「─────そうね。悔しかった。兄貴の背中に追い付きたくて、沢山、努力して・・・・でも、追い付けなくて・・・・」

「────────────」

「そんな私を見て、兄貴もきっと、呆れて見放したんだと・・・・そう、思っていた・・・・なのに・・・・・」

 

ぎゅ・・・と両手を強く握りしめる。

夏凜の瞳には、はっきりと解るほどに、"怒り"が滲み出ていた。

 

「あいつは───()()()()()()()()()()()!あんなに期待されていたのに・・・!!」

 

夏凜の怒気を孕んだ声が響く。

俺は、そんな夏凜に、なにも声をかけられない。

 

 

 

 

 

そんなことをしている内に、"嵐ヶ丘"にたどり着いた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

"嵐ヶ丘"は閉店していた。

構わず、中に入る。

 

「──────いらっしゃい。そろそろ来ると思っていたよ」

「──────兄貴」

 

カウンターの中。

コーヒーを煎れながら、春さんは俺たちの来訪を待っていた。

 

「──────春さん。『錬獄』のこと、本当なんスか?」

「───────」

「──────答えてよ、兄貴!」

 

夏凜が、春さんに掴みかかる勢いで問い詰める。

その肩を掴んで抑え、春さんの返答を待つ。

そして───

 

 

 

 

 

「───────ああ、本当だよ」

 

 

 

 

 

無慈悲にも、春さんは肯定してしまった。

 

「───────そっか」

「輝夜くん、済まない。君を騙そうとしていた訳ではないんだ・・・・」

「理解は出来るッスよ。納得は出来ねェッスけど」

「・・・・・だろうね。君らしいな」

「───────なんでよ」

 

夏凜が、肩を戦慄かせ、呟くように言う。

 

「────お父さんも、お母さんも、みんなが、あんたに期待してた・・・・なのに、なんでよ・・・・!」

「────────」

「ねえ、なんで何も言わないの?なんとか言ってみなさいよ!」

「────────話はそれで終わり?なら、さっさと要件を済ませてお帰り」

「ッ!!!!」

 

再度、夏凜が掴みかかる。今度は止めない。

自分の目線の高さにある、春さんの襟首を掴んで引き摺り下ろす。結果、春さんは夏凜の頭突きをモロに食らった。

 

「ぐおっ!?」

「───────フン!」

 

夏凜の鋭い一撃を食らった春さんは、その場に倒れた。その様を見た夏凜は、鼻で笑ってその場を去って行った。

 

「・・・・・・・・春さん、もうちょい、なんか無かったのかよ。あんたさぁ・・・」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「・・・・はぁ」

「ため息つく位なら、もうちょい上手く立ち回れよ天才」

「如何に"万能の天才"と呼ばれていようとも、妹の微妙な乙女心を理解することは、難しいんだよ・・・」

「いやぁ・・・・アレは結構、分かりやすいと思うけど?」

 

「マジで?」という顔でこっちをみる春さん。

こっちのほうが「マジで?」だよ・・・・

 

「さて、と・・・夏凜も居なくなったことだし、本題に入ろうや」

「・・・・うん。そうだね。君にはちゃんと話さないとだね」

 

 

 

 

 

『錬獄』

 

反大赦組織の名前ではあるが、その実態は"御社"の暴挙に堪えきれなくなった元大赦職員たちの集団。

彼らはほぼ全員が、家族を"御社"の人間に殺されている。その理由は様々だが、どれも正当性の欠片もない、理不尽極まりない理由で殺された。

 

「・・・・・・やっぱ、そういう事だったか」

「うん。僕の場合は、僕自身が殺されそうになったんだけどね」

「・・・・・・もしかして、杏子さんとマルさんも?」

「あの二人は少し違うかな・・・どちらかと言えば、僕と同じ理由だよ」

「・・・・・・成る程ねぇ」

 

春さんの淹れたコーヒーを飲みながら、思考する。

 

"御社"

 

大赦の暗部組織。

それがなぜ、バーテックスとの戦いに手を出してきた?

 

「・・・・・・・あー!もう!!わからん!!!」

「・・・・・・・相手は大赦が創設されたときから存在していて、しかも表だっての行動は全くしてこなかった連中だよ?僕にもわからないのに、君に解るわけないでしょ」

「言い方が腹立つけど、実際その通りなんだよなぁ」

「とりあえず、僕から話せるのはここまで。これ以上のことは、僕も知らない」

「・・・・・・・・・で、夏凜のこと、どうするんスか?」

「─────────」

 

春さんは、寂しげな表情を浮かべて、そのまま黙ってしまった。

 




『錬獄』について

反大赦を掲げる秘密組織。
その実態は御社によって、親族を理不尽に殺された元大赦職員たちによって、作られた組織。
大赦の組織改革を目標に日夜行動している。
現在も、大赦内部にスパイを送り込み、様々な情報を得ている。
"嵐ヶ丘"はカモフラージュのための拠点。


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Kの来訪 ー輝夜と夏凜 パート3ー

シトナイちゃん二枚抜きしてしまった・・・・
初めてだよ、二枚抜きなんて・・・・
FGO初めて3年くらいするのに、今まで星五二枚抜きしたことなかったからね。呼札で星五はたまにあったけどさ・・・・
とりあえず、ウチのカルデアにようこそシトナイ。
盛大に歓迎してあげよう。(お菓子の山を抱えて)


兄貴に頭突きをかましてから、数日経った。

今日は幼稚園でお遊戯会をやる日。

私はいつも通り勇者部の部室に来ていた。

こんなこと、勇者のやることじゃない。

でも、今は、そんなことでも良いから、とにかく何かをしていたかった。

兄貴のことを、なるべく、考えないように・・・

 

「来てやったわよ」

 

部室の扉を開ける。中には誰もいない。

ちょっと早く来すぎた?

仕方ないから待つことにした。

 

 

 

 

 

三十分後──

 

 

 

 

 

「遅い・・・・」

 

十時集合だったんじゃなかったの・・・・?

全く、弛んでる・・・・

 

 

 

 

 

更に三十分後──

 

 

 

 

 

いくらなんでも遅すぎる。

 

「まさか・・・」

 

渡された用紙を確認する。そこには──

 

「『現地集合』・・・・しまった。私が間違えた・・・・」

 

こういう時は、ちゃんと謝らなきゃ。

ああ、でも、なんて言おうか?

正直に話す?

どうしよう・・・・どうしたら・・・・

 

と、その時、手にしたスマホが鳴動する。

 

「うわぁ!?この番号・・・・結城友奈!?」

 

向こうからかけてきた!

どうしよう!?とりあえず、出て・・・・

 

 

「あ・・・」

 

間違えた。出ようと思っていたのに、切っちゃった。

どうしよう。

かけ直す?なんて言って?

こういう時、兄貴なら─────

 

 

 

 

 

そこまで考えて、ふと、まるで冷や水でも浴びたみたいに、頭が冷静になった。

 

「・・・・・なにやってんだろ・・・・私」

 

そうだ。私は勇者として、バーテックスと戦うためにここにいるんだ。

幼稚園でお遊戯会をやるためでも、兄貴のことに悩まされたりするためでもない!

だから・・・・・良いんだ。

 

「・・・・・・・・・帰ろ」

 

扉の取っ手に手をかけて、開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、いた」

 

「んぎゃぁぁぁぁ!!!!!!」

 

目の前に、煌月輝夜がいた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「・・・・・・いきなり叫ぶのはひどいと思うなぁ・・・」

「あ・・・・あああんたがいきなり前に出てくるからでしょうが!!!」

「出てないよー、扉の前に立ってただけだよー」

「同じことでしょ!!!てか、いったい何時から・・・」

「友奈から電話かかってきたときから?」

「居たならあんた呼びなさいよ!!」

 

ゲラゲラと目の前の男が笑う。

こいつは最初に出会った時からこうだ。私の事を小馬鹿にしている。実に腹立たしい。

 

「─────ふぅ。あー楽しい♪さ、そんじゃ行こうか」

「え・・・・あ・・・・」

「跳んで行けば直ぐに着く。ほら、みんな待ってるぜ?」

「待って!」

 

煌月が立ち止まる。

 

「────────どうした?」

「あ・・・・えと・・・・その・・・・」

 

どうしよう・・・・・咄嗟に呼び止めてしまった・・・・

煌月が訝しげにこちらを見る。

 

「────────ふむ」

 

左腕を振り上げる。するとそこからスマホが飛び出した。それを右手で掴んで、どこかにかける。

 

「──────────────あ、風さん。俺。煌月」

 

相手はどうやら犬吠埼風のようだ。そりゃ当然か・・・一応アイツがこの勇者部の部長だし・・・・

 

「・・・・・・うん。夏凜だろ?実はさぁ───」

 

きっとこいつは全部しゃべる。私が間違えたことも、結城友奈からの電話を間違えて切ってしまったことも。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・・」

 

 

 

 

 

え・・・・・

 

「うん。そっちはこれから。その場合はもう俺ら合流できないと思うから、そん時はよろしく。んじゃ!」

 

 

「・・・・・・・・なんで?」

「なにが?」

「なにが・・・・・って・・・・・」

 

煌月の"黒をベースに赤と青を混ぜ合わせたような(自壊によって魔力が混ざった)"色の瞳が私を見つめる。

 

「ほら、帰るんだろ?」

「────────────うん」

 

何故だか、私は、その瞳の彩に何も言えなくなってしまい、素直に頷いていた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「ふーん。ここが夏凜の家?マンションの一室借りてんだ」

「─────て、なんでウチまで付いてくるのよ!!」

「だってさっき風さんに『夏凜の家まで様子見てくる』って言っちまったもーん」

「─────────はぁ、もういい。ちょっと訓練してくるからあんたは・・・」

「お、なんか楽しそう。ついて行っても良い?」

「・・・・・・・・・・・・勝手にしろ」

 

そんな訳で、いつもの浜辺に来た。

─────────煌月も一緒に。

 

「へぇ・・・・ここで自主練してんだ」

「───────話しかけないで、気が散る」

「あーい」

 

煌月が黙ったところでいつものように素振りをする。

私の勇者の武器は二本の刀。

元々は二丁斧だったらしいが、取り回しを考慮して刀になったらしい。

だから、今やっている素振りもそれに合わせたものとなっている。

二刀流になる、ということで様々な文献を読み漁った。

二刀流と聞いて真っ先に思い付く『宮本武蔵の剣術(二天一流)』に始まり、それっぽい流派の技の数々。

読んで、学んで、実践して、自己流に改良していった。

それが今、私が扱う剣術。

 

「──────ふぅ」

「────────へえ、すげぇモンだな」

 

見れば、煌月が感心したような顔でこちらを見ていた。

 

「完成型勇者として、当然のことよ」

「でもさ・・・・ちょっと、迷いが出てたぜ」

「っ!?」

 

いたって真面目な顔で煌月が言う。

なんだってこいつは────

 

「・・・・・・・・うるさいわね。あんたには関係」

「無くは無い。だろ?」

「──────────」

 

その時、煌月が立ち上がって私の正面に立った。

 

「・・・・・なによ」

「いやなに。ちょっと手合わせ願おうと思ってね」

「・・・・・・は?」

「こっちは手加減してあげっからさ、全力でおいでよ」

「・・・・・・・・」(プチッ)

 

煌月の態度に、正直色々溜まってた私はあっさりキレた。

 

「上等じゃないの!吠え面かかせてやる!!」

 

叫び、煌月に向かって突撃していった。



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Kの来訪 ー輝夜と夏凜 パート4ー

SSSS.GRIDMANを先週位から某動画サイトにて見始めました。

グリッドマンかっこよかったわぁ・・・・(恍惚)



輝夜は突撃してきた夏凜を前に棒立ちのままでいる。

夏凜が左の木刀を振り下ろす。

輝夜は、それを最小限の動きでかわし、追撃で来た右の木刀を左手で弾いた。

 

「やるじゃないの!」

「まあね」

「なら・・・・これはどう!!」

 

右払い、左振り下ろし、右振り上げ、左突きによるコンビネーション。

やはり輝夜は、それを最小限の動きでかわし、最後の突きに至っては左手で掴んでみせた。

 

「─────く!?」

 

慌てて引っ張るが、木刀が輝夜の手から抜ける気配は微塵も無い。

 

「─────一つ、」

「!?」

 

咄嗟に夏凜は、輝夜が持ったままの木刀から手を離し、距離を取る。

 

「昔話をしようか」

「────────は?」

「ほれ」

「あ」

 

木刀を投げ返される。夏凜は慌ててそれを拾った。

 

「──────」

「ほら、どうした?打ち込んで来なよ」

 

このまま輝夜の言うことに従うのは癪だったが、一本も取れないままの方がもっと癪だったので、夏凜は打ち込むことにした。

 

「これは、俺の知人たちの話をまとめたものなんだがな・・・」

 

そんな前置きをしてから、輝夜は話を始めた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

春さんには奥さんがいたって話、知ってる?あ、知ってる。ならOK。

その奥さん──名前は『三好結女』っていうんだけど・・・それも知ってる?ああ、会ったことあるんか。じゃ、話が早いね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結女さんは五年前、何者かによって連れ去られて、そのまま亡くなったんだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・動き、止まってるよ。

─────そうそう。もっと激しく打ち込んでおいで。

さて、続きを話そうか。

当時、結女さんは妊娠していたらしいよ。多分春さんのことだし、産まれてくる子供の名前でも考えながら、毎日を幸せに過ごしていたんじゃないかな?

でも、それも唐突に終わりを向かえた。

その日、産気付いた結女さんを救急車に乗せて、自分は後からタクシーで、掛かり付けの病院まで向かったそうだ。

病院に着いた春さんを待っていたのは、何者かによって結女さんの乗った救急車が結女さんごと持ち去られた。という知らせ。

当時、春さんは大赦内で結構上の地位にいたんだってね。自身の権限で可能な範囲で結女さんの行方を探し回ったそうだよ。

結局、見つからなかった訳なんだけどさ。

それから数日後───

春さんの家に連絡が来たそうだ。

 

 

 

 

 

結女さんが、遺体となって、発見されたって、連絡が───

 

 

 

 

 

・・・・・・だから、動きが止まってるってば。

それとも、もう、止める?

────────そう。それで良い。動いて。もっと。

よし。それじゃ、続けようか。

と言っても、俺が話せるのはここまでなんだけどさ。

こっから先は誰に聞いてもわからなかった。

多分、春さん自身にしかわからないと思う。

だから、俺の話はここまで。

打ち込みも、ここまでにしようか・・・

お疲れさん。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「──────────」

「どうだった?自分の知らない春さんの事を知って」

「──────あんた、いったい何がしたいの?」

 

夏凜が怨めしそうに輝夜を見る。

その視線を受けて輝夜は

 

「・・・・・・強いて言うなら、仲直りして欲しい・・・かな」

「──────なによ、それ」

「春さんには色々世話になってるからさ。余計なお世話なのは百も承知だけど・・・」

「──────そう」

 

夏凜が、自分の顔を拭う。

 

「あんたの言うことが本当かどうか、確かめる。その上で、考える」

「うん。今はそれで良いんじゃない?」

 

輝夜が薄く笑う。

 

「さ、帰ろ帰ろ。多分みんなもう待ってるかもな」

「へ?みんなって───」

「あ、いや。なんでもない。さー!帰ろー帰ろー」

「へ?え?ちょっと!?」

 

輝夜に引っ張られて、夏凜は自分の家に帰宅したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、勇者部により、夏凜の誕生日パーティーが開かれたのだった・・・

 

―――――――――――†――――――――――

 

数日後───

 

「───輝夜」

「ん?」

 

夏凜が輝夜を呼ぶ。

二人は屋上に移動して話を始める。

 

「大赦に連絡したけど、兄貴の事については知らぬ存ぜぬを決め込んできたわ」

「─────なるほど、そう来たか」

「まさか、大赦がここまで真っ黒な組織だったとはね・・・」

「こんなんでも、神樹様を祀ってる組織だからな。影響力目当ての薄汚い奴がいてもおかしくはないさ」

「────あんたって、意外と頭良い?」

「まっさかぁ!」

 

ハハハと笑う。

そんな輝夜に嘆息する夏凜。

 

「───────私、もう少し探りを入れてみる。結女さんがなぜ死んだのか、それを調べるために」

「そうか、頑張れよ。そんなお前さんに─────ほれ」

 

輝夜が何かを夏凜に投げ渡す。夏凜はそれを受け取る。

 

「・・・・・箱?」

「匿名希望さんからのバースデープレゼント」

「!それって・・・・」

 

輝夜は唇に指を当てて沈黙。

その様子から察した夏凜は、渡された小箱を暫く眺めて、意を決し、包装を開けた。

 

「─────リボン?」

 

中には、鈴付きのリボンが入っていた。

 

「─────へぇ、なかなか洒落たモンプレゼントするじゃん」

「─────────」

 

夏凜は今着けているリボンをほどき、プレゼントされたリボンを新たに着ける。

 

「・・・・・似合ってるぞ、夏凜」

「──────────────ありがとう。そう、伝えておいて」

 

赤い顔で輝夜にそう告げた夏凜には、年相応の少女らしい柔らかさがあった。

 



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煌月輝夜の華麗で喧しい日常風景ー覗き編ー

単なる番外編。
執筆練習とも言う。
特に考えないで頭空っぽにして書いた。


夏と言えば、プールである。

 

 

プールと言えば、水着の美女である。

 

 

ここ、讃州中学では、一昨年から女子更衣室の覗きが多発していた。果ては下着の盗難事件まであった程だ。(ちなみに盗まれた下着は、被害にあった女子生徒たちが鬼の形相で犯人を追い詰め、フルボッコにした挙げ句に簀巻きにして逆さ釣りしたため、犯人が泣いて土下座しながら謝罪と同時に返還した)

被害に合った女子生徒の一人は「いやぁ!アタシの女子力が暴発しちゃったワ♪」などと、訳のわからないことを言っていたが、これは由々しき事態である。

 

 

 

 

 

なにせ、この騒動に関わる生徒は、讃州中の男子生徒全員だったのだから!

 

 

 

 

 

実行犯の少年たちが、犯行をしやすいように、全員で一丸となって幇助し、黙認したのである。

教師たちはこれに頭を悩ませた。

「このままではマズイ。しかし、全男子生徒が関与しているとなると、流石に・・・・」

この問題に対し、去年発足したばかりの勇者部が立ち向かった。

正確には、勇者部部員・煌月輝夜が、である。

一部の教師からは勿論、反対意見も出た。

しかし、彼がある条件を出したところ、反対派の教師たちも沈黙した。

その辺りについては今回は割愛させていただく。

さて、輝夜が防犯に着いた結果なのだが───

 

 

 

 

 

見事、覗き被害及び盗難被害0件を達成してみせたのだった!

 

 

 

 

 

それでは、どのようにして達成したのか。

これから諸君にご覧いただくのは、実際に実行犯たちが経験したことであり、ありのまま起こった現実である。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

「くそ・・・なんで・・・こんな・・・」

 

炎(演出用)にまかれながらも、少年たちは進む。

不意に、銃声が鳴り響く。

 

「!?くっ・・・」

 

少年たちがしゃがみ、その頭上を弾丸(非殺傷)の雨が通り過ぎる。

 

「・・・・・うぅ、もうやだ・・・こんなはずじゃ・・・」

「諦めんなよ!」

「だってよぉ・・・・」

「チッ・・・・もういい!オレは一人で───」

 

『行く』という言葉が彼の口から出ることはなかった。なぜなら───

 

 

 

 

 

彼の頭部目掛けて、バズーカの弾頭(非殺傷)が飛んできたのだから。

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」

 

爆発によりアフロヘアになって倒れた少年を置いて、泣き言を言っていた少年が来た道を全速力で戻りだす。

 

「もうやだ!!僕おうち帰るぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」

 

幼児退行まで始めた少年は、しかし、家に帰ることが出来なかった。

 

「!?!?!?!?!?」

 

少年の右足が、何かによって引っ掛けられる。転んだ先には落とし穴。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

 

少年も敢えなくリタイアとなった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「クソ・・・今ので『コンバットヤマーダ』と『グレッグタニィ』が殺られたか・・・・」

「おい、どうするんだよ御木本(みきもと)

 

すぱーん!

 

「『モールドミッキー』と呼べって何度言わせる!!」

「だからお前のコードネームはセンス無いって何度も言ってるだろうが!?!?」

「ちなみにお前は『対魔忍』な」

「なんでそんな敵にすぐ捕まっちゃいそうなコードネームにしたのさ!?!?」

「だってお前の名前、『広末忍』だろう?」

「無理矢理こじつけなくていいよ!?それだったら本名で呼んでよ!?!?」

 

馬鹿な会話を続ける御木本と広末。

ふと、御木本が真面目な顔で広末に告げる。

 

「オレ、この作戦が終わったら・・・結城に告白しようと思ってるんだ・・・」

「え!?結城って・・・・同じクラスの、あの結城か!?」

「ああ・・・・いやまぁ、勝率低いのはわかってんだけどよ?でも・・・・オレは・・・・」

「御木本・・・・オマエ・・・・」

 

その時だった!

 

「アブねぇ!?」

「うわっ!?」

 

突如として襲いかかったレーザー(きっと非殺傷)から御木本が広末を庇って突き飛ばした!

 

「うぅ・・・・・御木本・・・・大丈・・・ぶ・・・」

 

起き上がった広末が見たのは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レーザーによって、頭髪が大破した、御木本の姿だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「み・・・・・・御木本ォォォォォォォォ!?!?!?!?」

 

駆け寄る広末。御木本は弱々しく、告げる。

 

「く・・・・オレはもう・・・ダメだ・・・」

「何を言ってる!?たかが髪の毛が燃え尽きただけだろ!?」

「いいや・・・・自分の事だ・・・・よぉく、わかるさ・・・・」

「御木本・・・・」

「対魔忍・・・オレを置いて・・・先に行け!」

「!?何を・・・!?オマエを置いて行けるかよ!?」

「ワガママを言うな!!」

 

御木本が広末を叱責する。

 

「良いか・・・・オマエがここで諦めたら、何のためにアイツらは犠牲になった・・・!アイツらの死を無駄にしたくないなら、オマエは行かなくちゃならねぇんだ!!」

「でもよ・・・でもよぉ!!」

「どうしても行きたくねぇってんだったら仕方ねぇ・・・・オマエが東郷に『養豚場のブタでも見るような眼で見下して欲しい』と思っていることを全校生徒中にバラしてやる」

「!?!?!?」

「バラされたくなかったら迷うな!とっとと行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

広末は走り去って行った。

 

「そうだ・・・行け・・・オマエが止まらねぇ限り・・・オレたちはオマエと共にいる・・・だから・・・止まるんじゃねぇぞ・・・!」

 

か細いその言葉は、辺りの炎(演出用)に呑まれて消えた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「うぅ・・・・・クッ!?」

 

涙で視界が滲む中、広末はひた走る。

 

「山田・・・谷口・・・御木本・・・オレは・・・・オレはぁ!!」

 

その瞬間、広末の中の何かが弾けた!

 

「─────────!!」

 

広末に向かって放たれる無数の弾丸(非殺傷)

その全てを、広末は避ける。

 

「ああ・・・・見える・・・・見えるよ・・・・!オレにも敵が見える!」

 

いったい彼は何を見ているというのか・・・・

 

「──────そこ!」

 

飛び交う弾丸(非殺傷)の軌道から発射地点を予測。そこに向けて小石を投げる。

投げた小石はタレットに命中。見事、爆発。

しかし、射線はまだ彼を捉えて離さない!

 

「────────!!」

 

広末はそれを、最小限の動きで誘導。タレット同士が撃ち合うように仕向けてみせた!

見事、その試みは成功し、ほぼ全てのタレットが爆発四散。

残りの障害は目標までの距離のみ!

 

「このまま────」

 

しかし、そうは問屋が卸さない!

 

御木本の頭髪を全損させたレーザーが、広末を襲う!

 

「!?」

 

しかしなんと!広末はそれをいとも簡単に避けてみせた!

そして───

 

「邪魔だッ!!」

 

レーザータレットに急接近。そして、破壊。

爆発を背中に受けて、広末は最後の加速をかける。

 

そして────

 

「やった!ついに────!」

 

広末はそのまま女子更衣室(ゴール)の窓ガラスをぶち破り、内部に突撃。

衝撃を転がることで相殺。

 

 

 

 

 

し終えた、その時────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

べちん、と顔面が何かにぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、不同先生の股間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、広末くん。もうみんな着替え終えた後ですよ」

 

広末は動かない。

 

「この後は私の授業です。広末くんも遅れないように」

 

それだけ告げて、不同先生はその場を立ち去っていった。

 

 

 

 

 

静寂が、辺りを支配する。

 

 

 

 

 

「う・・・・・・う・・・・・・」

 

 

 

 

 

行き場を無くした、青春の律動(リビドー)が、少年の慟哭となって、辺りに響き渡っていった・・・・・

 

 

 

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

「────以上が、今年の防犯の成果だ」

「はーい。煌月もお疲れさん。先生には私から報告しておくワ」

「いやいやちょっと待てぇ!?!?」

 

?を頭に浮かべる輝夜と風。

 

「いったいこれは何!?」

「更衣室の防犯設備」

「ここまで厳重にする必要性!?」

「だって~、下着ドロまで出たのよ?このくらいはしておかないと!」

「死人が出るわよ!?」

「非殺傷タイプだから大丈夫!」

「んなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

夏凜のツッコミは、今日も冴え渡っていた。




元ネタは『フルメタルパニック?ふもっふ』のアレ。
単なる息抜きだからね、しょうがないね。
今回出てきたモブが、今後出てくるかは不明。


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少女たちのM ー私と彼の、微妙な関係ー

友達以上、恋人未満な関係って、良いよね・・・・
恋人同士でいちゃラブするのも良いけど、それとは違った味わいがある、と言うか、なんというか・・・・


「東郷~?これの配置はこんなモンで良いか~?」

「どれ?──────うん、良いと思う」

 

ある日の勇者部。

友奈ちゃんと夏凜ちゃんは、剣道部のお手伝いに。

風先輩と樹ちゃんは、花壇の草むしりに行っていて、残った私と輝夜くんは、部室にてホームページの更新作業を行っていた。

基本的には私の担当ではあるのだが、諸用で部活に参加できない時等は、輝夜くんが代理を務めてくれている。

その腕前は、ともすれば、私よりも早く正確なのではないか、なんて言われる程の物なのだが、今日まで誰も、彼の作業している所を見たことがなかった。

 

「まさか、こんな方法でプログラミングを行っていたなんてね」

「ふふん♪誰にも真似できない俺だけの技よ!」

 

輝夜くんの操作により、高速で英語を並べていく画面。しかし今、彼はキー操作をしていない。そもそもキーボードを使用すらしていない。ではどうやってタイピングしているのか?

それは、輝夜くんの左腕に注目すればわかる。

今、彼の左腕からは管が伸びており、それがパソコンと繋がっている。

輝夜くんに曰く、左腕とパソコンを繋ぐことで、頭で考えるだけでほとんどの操作を行えるのだとか。

 

「左腕のことを知らないと、何をやっているのか分からないわね」

「別に秘密にしているワケじゃー無いんだが、説明とかめんどいから。基本、しゃべらないようにしてんのさ」

「・・・・・そこを面倒くさがって、隠蔽工作は面倒がらないあたり、輝夜くんらしい考えね」

「それ褒めてる?」

「ふふ、どうかしらね?」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「イチイチ日本語に変換せにゃアカンっつーのがめんどいんだが・・・・」

「最初から日本語で組んでおけばよかったのに・・・」

「俺は基本ADAしか使わないの!」

「えい・・・・?」

「だー、もう!!わーったよ!!ちくしょーめ!!!」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「・・・・・・終わったぁ」

「お疲れ様。はい、ぼた餅」

「あー」

 

口を開けてこちらを向く輝夜くん。

 

「・・・・・・食べさせて欲しいって?」

「あーー」

「駄目です」

「・・・・・・・ちぇ、しょーがねーなぁ」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「・・・・・・・輝夜くん。一つ、聞いても良いかしら?」

「答えられることなら」

「この前の人形劇のとき、舞台が倒れたでしょ?あのとき、園児たちにぶつかりそうになって、そのあと壊れた。あれ、輝夜くんがやったんじゃないの?」

「───────まぁ、もう隠す意味も無いから良いか」

 

輝夜くんはそう言って、右手を広げた。

その右手の中に、風が渦巻く。

 

「これは────」

「『魔法』だよ」

「魔法・・・・・?お伽噺の?」

「ゲームとかにあるやつみたいに、便利に使えるワケじゃねーけど」

「そう・・・・それで、舞台を壊したの?」

「こっそりやればバレないかなー・・・って思ってたんだけどなぁ・・・・」

 

右手の中で渦巻く風をそのまま握り潰して、輝夜くんは机に突っ伏した。

 

「別に責めるつもりは無いわよ?」

「とーぜん。誉められこそすれ、責められる理由なんてあるもんか」

「舞台壊しておいて?」

「コラテラルダメージ。園児たちを救うための、必要な犠牲だったのさ・・・・」

「はいはい。そういうことにしておいてあげます」

 

何もする事が無い時の私と輝夜くんは、大抵、こうしてとりとめの無い会話を繰り広げている。

 

「東郷の足」

「え?」

「二年も動かして無いってのに、なんでそんな美脚なん?」

「ええ・・・?」

「知り合いに聞いたことがあるんだがね?筋肉ってのは、使わないとドンドン衰えていくそうだ」

「ええ、私もそれは知ってるわ」

「だったら、二年も使ってない東郷の足はさ・・・・筋肉痩せ細ってかなり可哀想な感じになっていても、おかしくは無いハズだよな?」

「えっと・・・・・ほら!私、定期的にお医者さんに診てもらっているから・・・」

「────────ふぅん?」

「─────────理由に、なってない?」

「────────とりあえず、そういう事にしといてあげよう」

「納得してくれた・・・・ということ?」

「疑問は尽きないけどねー」

 

輝夜くんは、勉強はそれほどできないけれども頭はそこそこ良い。回転が早い、とでも言えば良いのだろうか。

だから、そんな彼が疑問に思うと言うことは、私たちの知らない何かがあるということで────

 

「まあいいや。それより東郷!膝枕ぷりーず!!」

「は?」

 

さっきまでの真面目な態度は何処へやら、私にそんな事を要求してくる。

 

「なんで私?」

「今ここに東郷しかいないから」

「なんで膝枕?」

「俺が足フェチだから」

「それ、理由になってないと思うんだけど・・・・」

 

やっぱりこの前の責任、取らせようかしら?

 

「いやさ、ここんとこ色々忙しかったから・・・・東郷の素晴らしいおみ足様に癒してもらいたくて・・・・」

「─────────」

「うわぉ。ゴミを見るかのような視線。その手の人にはご褒美なんだろうなー。俺は違うけど」

「─────────────────」

「頼むよ東郷~。ね?」

「──────────もう、仕方ないわね」

 

なんだかんだで、輝夜くんにはいつもお世話になっているし、時々なら、甘えさせてあげても良いかしら?

 

「ちょっと待ってね」

 

車椅子を操作して、輝夜くんの隣に移動する。

 

「─────うん。これでよし。はい、どうぞ」

「わーい」

 

ぽふ

 

「────────なんで顔面から飛び込んだの?」

「東郷の太腿を堪能したくて」

 

無言で輝夜くんの頭を絞め上げる。

 

「あだだだだだだだだだだだだだだ!!!!!!!!わかった!わかったから!!」

 

今度こそ、輝夜くんが私の膝にちゃんと頭を乗せた。

 

「────────その、どうかしら?」

「─────────────────」

「─────────輝夜くん?」

「───────────────すぅ・・・・すぅ・・・・」

 

安らかに寝息をたてて、輝夜くんは眠っていた。

なんて早い。

 

「・・・・こうして見ると、輝夜くんってほんと、女の子みたい・・・」

 

子供みたいな可愛らしい寝顔を眺めていると、いつの間にか、彼の頭を撫でていた。

 

 

 

 

 

この後、友奈ちゃんたちが戻ってくるまで、私は眠る輝夜くんを撫で続けたのであった。

 




煌月輝夜の左腕について──

輝夜の要望により、様々なギミックが搭載されている。
しかしそのせいで、耐水性に難があり、水に滅法弱い。
対して義足の方は、ESEが搭載されているくらいなので、一応の防水処理が施されている。その為、入浴くらいなら可能だが、水泳は残念ながら不可能。
よって、輝夜の弱点は『水』である。


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少女たちのM ー俺とアイツの曖昧な関係ー

アノシラスちゃんぐうかわ。
お風呂入れてあげたい。


「ただいま・・・・・って、そういやマッキー今日は遅くなるって言ってたか・・・・」

「おかえりー♪」

「おう、ただいま────って待て。なんで友奈がウチにいる?」

 

東郷に膝枕してもらったその日の夕方。家に帰ったら友奈まで着いてきた。

 

「だっておにーさんに頼まれちゃったんだもん、かぐやちゃんのこと」

「マジかよ・・・・マッキーの野郎・・・・」

「えへへー♪いろいろと頑張っちゃうからね!」

「なんだよ、いろいろって・・・・」

「もちろん!」

 

にっこり笑って友奈は告げた。

 

「かぐやちゃんの身体洗ってあげたりとかだよ♪」

 

―――――――――――†――――――――――

 

断固として拒否したが、結局押しきられてしまい・・・

 

「はぁー・・・なんでこんなことに・・・」

「かぐやちゃーん。かゆいところはありませんかー?」

「無い。はぁー・・・・」

 

現在、俺と友奈は一緒に風呂に入っている。今は背中を流してもらっている最中だ。

入浴の際に、防水加工を施されていない左腕は外さなければならない。そのため、右腕だけで身体を洗ったりしないとならないのだが、そこは長年の経験。一人でも充分上手くやれる。それは何度も説明したと言うのに・・・・友奈の奴・・・・未だに俺を要介護認定してやがる。

 

「~♪」

 

楽しそうにしやがってからに・・・・

改造のおかげで欲情しにくい身体になっているからといって、少しばかり近すぎだろうが・・・

 

「ねぇ、かぐやちゃん」

「・・・・んだよ」

「東郷さんの膝枕、気持ちよかった・・・?」

 

友奈が、自分の身体を密着させながら、そんな事を聞いてきた。

こいつ・・・・・そんな事を気にしてやがったか・・・・

 

「ああ、なかなかだったぞ。オマエも頼めば?」

「──────ふぅん。そっか・・・」

 

いい加減に離れて欲しいのだが、友奈はこちらの思いも気にせず、そのままの体制で腕を前に持っていった。

 

「友奈?お前、何を」

 

気付いた時には遅かった。

両足を外され、俺は友奈に抱き抱えられたのだった。

 

「・・・・・・放せよ。つーか、足取るな」

「────────────」

 

友奈は何も言わず、ぎう・・・ときつく抱き締めるのみ。

 

「──────何が気に入らないのか、言ってくれなきゃわかんねーんだけど?」

「────────────やだ」

「あ?」

「──────ぜったい、いわない」

 

ホント、めんどくせぇなぁ・・・・

 

「友奈」

「──────────────」

「おい友奈」

「──────────────」

「・・・・・ッチ」

 

沈黙したままの友奈と、この方法しか思い付かない自分に舌打ちすると、俺は右腕だけで自身の身体を持ち上げて友奈の拘束から脱出してみせた。この時ばかりは、ほぼ達磨状態の自分に感謝である。

 

「あ・・・・」

「・・・・よっと」

 

空中で反転し、友奈と向かい合う。

案の定、友奈は少し泣いていた。

 

「ったく、嫉妬なんざお前らしくもない・・・」

「─────────うるさいよぉ」

「ぶーたれんなって」

「ぜんぶかぐやちゃんが悪い」

「そーかよ」

 

頬を膨らませてそっぽ向く友奈。

そんな友奈の顔をぐい、とこっちを向かせる。

 

「大丈夫」

「─────────」

「お前が俺の手を離さない限り、俺は必ず、お前の隣に帰るから。だから、心配なんかすんな」

「─────────ほんと?」

「俺が約束破ったこと、あったか?」

「いつもケンカしてる」

「ケンカしないなんて約束、した覚えありませーん」

「むぅ!」

「はっはっはー♪」

「まったくもう・・・・」

 

やれやれ、ようやく機嫌が治ったか・・・・それにしても・・・・

 

「─────お前も、一応、成長しては、いるのな」

「?してるよー。成長期だもん」

「いやいや、そういう意味じゃなくてだねぇ?」

「??」

 

目線をちょっとだけ下に向ける。

友奈もそれに従い、下に向けると──

 

「・・・・・・・・・!?!?!?!?」

 

俺の言葉の意味を悟った友奈が、ゆでダコみたいに顔を真っ赤にする。かーわいー♪

 

「か ぐ や ち ゃ ん の ! !」

 

あ、これはマズイパターン

 

 

 

 

 

「バカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

「ぶぉっふ!?」

 

浴槽に向かって、背負い投げの要領でぶん投げられた俺は、頭から湯船に落ち、犬神家状態になった。

 

「えっち!変態!すけべ!変態!変態!変態!」

「ごぼごぼごぼ」

「しばらくそこで反省してなさい!!」

「っぷはぁ!あ、おい友奈!?俺の足持ってくな!」

 

俺の声を無視して、友奈は両足を持って風呂から出ていってしまった。

 

「俺の足ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、半分のぼせながらも謝罪しまくった。




輝夜の両足について──

ESEは、輝夜の排泄物を消費してエネルギーを得ている。
そのため、輝夜はトイレに行く必要がない。
よって、改造手術の際に、某十万馬力の人型ロボットみたいに下半身部分がのっぺりしている。


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少女たちのM ー煌月輝夜は男の娘であるー

しずくちゃん・・・・・・・・どこぉ・・・・・・・?(爆死死体)


煌月輝夜

一月二十日産まれの十三歳。

勇者部唯一の男子部員である。

そんな彼が─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、フリフリのメイド服を見事に着こなして、丈の短いスカートを抑えつつ、顔を真っ赤にして、写真を撮られていた。

 

 

 

 

 

「──────────しにたい(涙目)」

「うんっ♪良いよ良いよ~!かぐやちゃんすっごく良い!!!」

「本当!被写体がこんなにも素敵だと、撮影してるこっちも、俄然やる気が出るわ!!!」

 

鼻息荒く、写真を撮りまくる友奈と東郷。その二人を睨み付けながらも、スカートからは手を離さない輝夜。

そんな三人を、私は少し離れた位置から見ていた。

 

「・・・・・・ねえ、風。アレ、大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫♪・・・・・・・・・多分」

「お姉ちゃん、多分て・・・・」

 

確かに、普段の様子からはかけ離れたその姿は、十分に嗜虐心をくすぐられる。

が、それに従い輝夜をいじり倒せば、その分、後になって仕返しが来る。しかも倍で。

 

「・・・・・・ほんと、あいつって見た目だけは女の子みたいなのよね」

「中身はまるで正反対なのにねえ」

「よし!それじゃあかぐやちゃん!」

「─────────やっとおわりか?」

「次はゴスロリでいってみよー♪」

「──────────なんでさ(白目)」

 

―――――――――――†――――――――――

 

さかのぼること二日前。

 

「貸衣装屋さんから依頼が来たわ!」

「貸衣装?」

「ということは、コスプレして接客とかですか!」

 

友奈が嬉しそうにそんなコメントをしていると、輝夜のやつは、微妙な顔をしていた。

 

「─────友奈のあの顔は、俺を着せ替えて遊ぼうとたくらんでる時の顔だな」

「あんたを?」

「おう。これでも見てくれだけは良い方らしいからな、俺」

「ふぅん────────ぶふっ!」

 

ふと、タキシード姿の輝夜を想像してしまい、思わず吹き出してしまった。

 

「───────おいヤク中女。今何を想像した」

「誰がヤク中だ」

「あわわわ。ケンカしないで・・・・!」

「ハイハイ。煌月も夏凛も、ケンカしてないで話を聞きなさい」

 

風に言われて、睨み合っていた視線を外す。

 

「・・・・命拾いしたな」

「・・・・そっちこそ」

「はぁー。まったく、煌月。この依頼はあんたが居なくちゃ始まらないんだからね?」

「────────────まじで?」

「マジよ」

 

―――――――――――†――――――――――

 

内容によると、宣伝用の写真を撮る為に、モデルになってくれる美人が欲しい、とのこと。

 

「うん。それは理解できる。でも何で俺なん?」

「この中で美人って言ったら、あたしか東郷か煌月でしょ?」

 

風のその発言に、友奈がうんうん、と首を縦に振る。

 

「じゃあ風さんがやれよ!!」

「向こうからのご指名なのよ!!」

「だからなんでさ!!!」

「この写真見せたらそうなっちゃったのよ!!!」

「ごふっ!?」

 

風が一枚の写真を取り出した瞬間、輝夜が吐血してぶっ倒れた。

 

「え!?ちょ・・・・輝夜!?」

「わぁ!懐かしい!去年演劇部のお手伝いした時のやつだぁ♪」

「無視されてる・・・・」

「煌月はそのうち復活するから、ほら、二人も見てみなさい」

 

釈然としないが、写真が気になるので仕方なく放ってそちらを見る。

舞台後の集合写真のようで、演劇部のメンバーとおぼしき男女数名に交ざって、友奈、風、東郷の三人が写っている。輝夜の姿は無い。

と、思ったら────

 

「────あれ?お姉ちゃん。このお姫様役の人は・・・・?」

「さすが樹。鋭いわね。()()()

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

今、風は何と言ったか?

この、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「風。騙そうったってそうはいかないわよ。こんな良いとこのお嬢様みたいな女の子が、輝夜な訳無いじゃない」

「まぁ、そう思うわよねぇ。普通」

 

死んだ目をして風が視線を反らす。

 

「・・・・・・・・東郷?」

「夏凛ちゃん。残念だけど、これは真実なの」

「・・・・・・・・友奈?」

「あのときのかぐやちゃん、すっごく可愛かったなぁ♪」

 

─────────────────マジで?

 

―――――――――――†――――――――――

 

なんて、衝撃の事実が明らかにされたのが、つい先日の話。

 

「─────────『女は化粧をすれば化ける』って、よく言われてるけど、まさか男もだなんて」

「夏凛さん。多分違うと思います」

 

わかってるわよ。ちょっと現実逃避してただけ。

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・良い・・・・良いよ~♪すっごく良いっ!!!」

「やっぱり輝夜くんは、黒よりも白い服の方が似合うわね♪甘呂梨(ロリ)というのも、悪くないわ!!」

「─────────────(虚ろ目)」

 

フリフリで真っ白でふわっふわな衣装を着せられた輝夜が、終始鼻息が乱れっぱなしの友奈と東郷に撮影され始めて、既に一時間が経過した。

その間着せ替えられた回数は、計六回。

どれもフリフリがいっぱい付いた、かわいい系の衣装だ。

 

「(無)」

「かーぐーやーちゃん!もっと笑顔で~」

「そうよ!せっかくの可愛い衣装なんだから、笑顔を頂戴!!」

「(無無)」

 

輝夜も、撮影が始まった当初は、恥ずかしさから顔を赤らめていたが、現在は最早、悟りの境地にでも立っているかの如く、無表情を貫き通している。

 

「・・・・・・そろそろ、良いんじゃない?」

「・・・・・・そうね。多分大丈夫でしょ」

 

時計を見て、そう判断した私と風は、いまだにハッスルしまくってる友奈と東郷をなだめ、依頼を完了することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宣伝の結果、その貸衣装屋は大繁盛したそうだ。

 



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煌月輝夜の華麗で喧しい日常風景ー帰郷編ー

お久しぶりのこの作品!

ゆゆテの方が忙しくてねぇ・・・・言い訳にしかならんけど


煌月家の実家は玉藻市にある。

白鳥家の分家であるが、そこそこの農地を持っており、シーズンになると、地元民向けに『収穫体験』を行っていたりする。

 

「親父ぃ!カゴが足りねぇけど!!」

「いつもの所に置いてねぇかぁ!!」

「無いから聞いてんだろぉ!!」

 

現在、輝夜は実家にてトマトを始めとする夏野菜の収穫を手伝っている。他の勇者部員はいない。依頼で別の場所に行っているのだ。

 

「ちょっと輝夜ぁ。あんた、どうして風ちゃんたち呼ばなかったんよ?」

「言ったろうに。別の依頼で今日は来れないって!」

「まぁったく!あんたと違って風ちゃんや美森ちゃんは、あーんなしっかりしてるのに!!」

「それ今関係あるか?」

「あたしがもう少~し若けりゃ、あんな良い娘放って置かなかったのにぃ~」

「あーハイハイ。そーですかい!」

「あ。言っておくけどあたし、ちゃんと旦那のことも愛しているからね?これでも若い頃は『両刀使い』なぁ~んて言われてたんだから!」

「聞いてねーよ」

 

―――――――――――†――――――――――

 

収穫が一段落して、輝夜は母親に一言告げる。

 

「ちょっと出掛けてくる」

「おん?どこに?」

「プラモ屋!」

 

―――――――――――†――――――――――

 

プラモ造り。

これは、輝夜にとっては趣味と言うよりも日課に近い。

幼少の頃より、文野に教えられてきたことの一つに、『なにか細かい作業をこなして、手先の器用さを鍛えるべし』というものがある。

それを輝夜は、ボトルシップ作成やプラモ造りでもって行っているのである。

おかげで、現在の彼の腕前は、木組みとはいえ、かなりの完成度を誇る駆逐艦雪風を、ボトルシップで作成して魅せる程のレベルで、それを東郷の誕生日にプレゼントした事がある。

 

「~♪~♪」

 

鼻歌を歌いながら、行き付けのプラモ屋まで歩く。

プラモ屋の前までやってきた、その時──

 

「もしかして・・・・・輝夜?」

 

後ろからの声に振り向くと、そこには、二つのおさげを前に垂らした同年代くらいの少女がいた。

 

「────────ええっと?」

「・・・・・覚えてない?私よ、楠芽吹」

「楠───────ああ!棟梁んとこの頑固娘!」

 

輝夜は思い出した。目の前の少女の事を。

彼女は楠芽吹。

大工の父を持つ少女で、輝夜にとっては所謂ファースト幼なじみというやつだったりする。

 

「誰が頑固だ。あと、別にパパは棟梁って訳じゃないから」

「知ってる。大赦御用達の宮大工だろ?」

「分かってんじゃない」

「棟梁ってのはただのアダ名だ。深い意味はねーよ」

「──────それ、パパは知ってるの?」

「返事してくんないけどねー」

「────────あんた、嫌われてるんじゃないの?」

 

ジト目で芽吹にそんな事を言われて、輝夜はとりあえず高笑いしておいた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

プラモ屋で、目的の物──『スーパー安土城ロボ・パーフェクトアーマー』を購入した輝夜は、楠家にお邪魔していた。

 

「棟梁!お久しぶりッス!!」

 

作業中だった芽吹の父に挨拶する。彼はちらりと輝夜の方を見て、再び作業に戻るのだった。

 

「──────変わんないなぁ、棟梁は」

「だから棟梁じゃないって・・・・まぁ、良いわ」

 

芽吹と共に、彼女の部屋に上がらせてもらう。

 

「相変わらず女っ気の無い部屋だこと」

「なによ、ぬいぐるみでも置いておけっての?」

「ほう、ぬいぐるみかい?」

「・・・・・そうね、私なんかには、似合わないわよね」

 

自虐的に、そんな事を言う芽吹。だが、輝夜は──

 

「んー、案外そうでも無いと思うなぁ」

「・・・・・・・慰めかしら?」

「なんでさ。確かに、意外に思われるかも知れねぇけど、似合わないなんて事ぁねーよ」

「・・・・・・・なんでそう言い切れるのよ」

「んー。根拠は無い!」

「自信たっぷりに言うな」

「はっはっはー」

 

―――――――――――†――――――――――

 

パチ・・・パチ・・・とニッパーでランナーからパーツを切り取る音だけが響く。

芽吹と共同で先程購入した『スーパー安土城ロボ・パーフェクトアーマー』を作成しているのだ。

こうなると、二人は一言も喋らず、作業に没頭してしまう。

 

「──────右腕完成っと」

「素組だけ?塗装は?」

「持って来るの忘れた」

「戸棚の上から二番目奥」

「ん、遠慮なく」

 

がさがさと戸棚の中を漁る。

 

「──────お前さ、学校かどっかで、なんかあったのか?」

「え?」

「なぁんか・・・・覇気が無いっつーか・・・・気力が無いっつーか・・・・なんか変だぞ」

「──────私の事忘れてた癖に、そういうのを見抜くのは、相変わらず得意なのね」

「言うなよ・・・・・・話、聞かせてくれるか?」

「──────一昨年の事よ」

「──────大赦に呼ばれたっていう、アレか・・・・落ちたんだっけか」

「ずいぶんとハッキリ言う・・・」

「事実だろう。んで?」

「───────私のしてきたことは、いったい、なんだったのか・・・・・って・・・・」

「───────ふむ」

「必要なもの以外全部切り捨てて!必死に努力して!その結果がこの有り様・・・・・!いったい、何が足りなかったの・・・・・?」

「──────────」

「ねぇ、輝夜。あなただったら分かる?私に足りないもの」

 

ゲートを切り落とす手は既に止まっており、芽吹は懇願するように、輝夜に問う。

 

「─────────切り捨てちゃいけないモンまで、捨てたからじゃねぇかな?」

「切り捨てちゃ、いけないもの・・・・?」

「例えば・・・・・"他人"とか?」

「───────どういう意味?」

 

輝夜も、戸棚を物色するのを止め、芽吹に向き直る。

 

「死んだばっちゃが言っていたことだがね・・・・『孤高であるならば、孤独になるべからず』・・・ってな」

「────孤独」

「思い当たる節でもあったか?」

「────────わからない。けど、私が選ばれなかった理由は・・・・・なんとなく、理解できた・・・・かな」

「そうかい。そりゃ、なにより」

 

満足そうに頷いて、輝夜は戸棚の物色に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────なぁ、ホントにここにあるのか?お前のパンツしかねーぞ?」

「───────────────右じゃなくて、左の戸棚よ(怒)」

 

 




ー芽吹と輝夜の関係についてー

輝夜が煌月家の子になって、初めてできた友達が芽吹。
以降、竹馬の友として、輝夜が讃州市に引っ越すまで共に過ごした。
手先の器用さを鍛える特訓として、プラモ造りを教えたのも芽吹だったりする。
風呂に一緒に入ったことは、流石に無い。


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少女たちのM ー女子会 in the 温泉ー

明けましておめでとう!
新年一発目の鎮魂歌は輝夜のいない勇者部だ!!
・・・・・のっけから主人公いないとか(笑)


輝夜を除いた、勇者部の少女たち五人はとある温泉旅館にて、老人会向けの演劇を行うことになっていた。

今日はその当日の朝。

友奈、風、樹の三人が朝風呂を堪能している最中であった。

 

「はぁ~・・・・良いお湯~♪」

「ほんとうですね~・・・・」

「ハイハイ、和んでるとこ悪いけど、本題入るわよ」

 

手を叩き、自分に注目させる風。

東郷と夏凜は現在就寝中。というのも、現在時刻は朝の四時。流石にまだ起きている人間はほぼいない。

 

「えーっと、何の招集でしたっけ?」

「まだねむいよぉ~~・・・・」

「我慢なさい」

 

手厳しい事を言って、風は今回の議題を提示する。

 

 

 

 

 

「ズバリ!私たちの女子力向上についてよ!!」

 

 

 

 

 

「──────女子力?」

「──────向上?」

「そうよ!」

「具体的には?」

「うーん・・・・・・・・・・・・・胸とか?」

 

胸、という言葉に脳裏に過るはある少女。

勇者部一、というか、中学生一の胸部を誇る彼女の顔だ。

 

「─────確かに、欲しいかも」

 

自身の、金床の様な胸板をぺたぺたと触り、ぼそりと樹が呟いた。

 

「い・・・樹ちゃんはこれからだよー(汗)」

「─────余裕の発言ですね」

「樹ちゃん!?」

 

励ます友奈に対して、冷ややかな目を向ける樹。

その視線の先には、起伏こそ乏しいもののきちんと()()といえる大きさのモノが存在している。

 

「ふ・・・流石、彼氏持ちは違いますね・・・・」

「ふぇ?彼氏?私、お付き合いなんてしてないよ?」

 

温泉に浸かりながらも、心が冷えきった樹の、冷めた発言に対して、友奈はきょとんとするばかり。

 

「───────お姉ちゃんどうしよう。友奈さんと煌月先輩、無意識だ」

「───────幼なじみが、恋愛に発展しないのって、こういう理由(コト)だからかぁ・・・・」

「え?え?なんでここでかぐやちゃんの話?」

 

戸惑う友奈に対して、犬吠埼姉妹はそっと、ため息をつくのであった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

 

結局この後、東郷と夏凜も入ってきたので、東郷にバストアップの秘訣を教えて貰う三人。

 

「え・・・ええっと・・・・和食、なんてどうでしょう?」

「よし、犬吠埼家は明日から朝は和食よ!!」

「目指せ!メガロポリス!!」

 

そんなこんなで犬吠埼家の朝食が和食になった。

 

「はぁ・・・・・・胸なんて、剣振るのに邪魔でしょうが」

「おい、華の中学生」

「なによ。私たちには『勇者』っていう大事なお役目がある事、忘れてんじゃ無いでしょうね?」

「確かにお役目も大事だけど、それ以前に私たちは女子中学生なのよ?勉学、スポーツ、それに恋愛!日常の尊さを知るからこそ、お役目にも身が入るってもんよ!」

「そういうもんかしら?」

「そういうもんよ」

 

ふぅ・・・ん、と素っ気ない態度の夏凜だが、『そういえば、この前兄貴にも似たようなこと、言われた気がする・・・』なんて事を思っていた。

実は夏凜、あれから時々"嵐ヶ丘"に顔を出しているのだ。表向きは、兄春信の監視の為。その本音は────きっと、言わずもがな、だろう。

 

「恋愛かぁ・・・・」

「友奈ちゃんは、どんな殿方が好み?」

「東郷が友奈にそんな事を聞いてる!?」

 

驚愕する風を他所に、友奈が頭を捻ってうんうん唸る。

 

「うーん・・・・・一緒にいて、楽しい!って思える人・・・・かなぁ?」

「なら、私は?」

「えへへ♪もっちろん!楽しいよ!!」

「うふふ♪私もよ」

「あ・・・結局はそこに行き着くのね・・・・」

 

驚いたり落胆したりと、テンションの落差が激しい風であった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

湯から上がり、演劇を終わらせ、依頼主の女将に「せっかくなので、お土産でもどうでしょう?お一人一つまででしたら、お譲りしますよ?」と誘われた勇者部一行は、女将の厚意に甘え、土産屋を覗いている。

 

「結構充実してるのねぇ」

「食べ物にストラップ・・・わ!パズルなんかもある!」

 

そんな中───

 

「はっ!?あれは!!」

 

東郷が何かを見つけた。

 

「東郷さん?何を見つけたの?」

「友奈ちゃん!あれを!!」

「ん?─────はぅわっ!!あれはぁぁぁぁ!!!」

「なに?二人とも何を見つけたのよ?」

 

爛々と輝く瞳で二人が見つめる先を、夏凜も覗いてみる。そこには────

 

 

 

 

 

「─────『丸亀城ロボ』?なにこれ?」

 

 

 

 

 

「えぇ!?夏凜ちゃん知らないの!?!?」

「『古城呂菩(ロボ)しりーず』その記念すべき最初の一体目よ!!」

「こ・・・・古城ロボ?」

「神世紀二百年を記念して、日本プラモデル協会の有志たちが毎年一体ずつ発売している日本のお城を原型(モデル)にしたしりーずよ!」

「今年は十周年だ、ってことで二体発売されることになってたんだよー♪あ、そういえばその発売日って、今日だ」

「『(スーパー)安土城呂菩・完全武装形態(パーフェクトアーマー)』ね!」

「かぐやちゃん、たぶんいつものプラモ屋さんでもう買ってるよね」

「もう買ってる頃合いよね」

「ね!東郷さん!」

「うふふ、私も同じ考えよ、友奈ちゃん♪」

 

呆然とする夏凜を他所に、友奈と東郷が口を揃えて女将に告げる。

 

 

 

 

 

「「これください!!」」

 

 

 

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

お金を払おうとする二人に対して、女将は「どうせ売れ残りだから、お代は結構」と言って無償で渡してくれた。

 

「なんだか申し訳ない気分・・・」

「良いじゃない。くれるって言ってるんだから。遠慮なく貰っちゃいなさいよ」

「夏凜ちゃん・・・・・うん、そうだね♪」

「ふふふ♪輝夜くんに良いお土産が出来たね」

「うんっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、帰宅した輝夜を待っていたのは、『丸亀城ロボ』を持って満面の笑みでこちらに手渡してくる、友奈と東郷の姿だった。

輝夜は柄にもなく、泣いた。

 




『古城ロボシリーズ』について

武者◯伝の日本城バージョンみたいなもん。
輝夜はこのシリーズの一体目、『丸亀城ロボ』以外の全機体を所有しており、「最初の一体だけがどうしても手に入らないぃぃぃぃ~~~」と嘆いていた。


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少女たちのM ー樹、お歌の特訓をするー

そろそろこっちも本編入らなきゃ─────

入りたくねぇよぉ・・・・・でも進めなきゃ・・・・・


物語ってのは、ちゃんと終わらなきゃ『物語』とは言わないんだから・・・・・・

ちゃんと、『めでたしめでたし』で、終わらせる為にも・・・・・今は、進めなきゃ・・・・・



そんなことより今回は四話のカラオケ回!
カラオケと言えば、この前小生が贔屓にしてる某動画サイトで、久々にガガガFINALの燃えたら負けMAD視聴してまして・・・・・二番サビのジェネシックがドーン!で負けましたよ。からのラスサビの、静かに入るところからのジェネシックが立ち上がると同時に曲が盛り上がるところでオーバーキル。
あの動画、勝てる気がしないぜ・・・・・・!(真っ白に燃え尽きながら)



「ちわーっす」

「あ!かぐやちゃん。今からカラオケ行くよー♪」

「なんだかわからんが、わかった」

「いやなんでさ!?」

 

ある日のこと、諸事情で遅れた俺が部室に顔を出すと、なんでか知らんがカラオケに行くことになっていた。

夏凛がなんかツッコミを入れてきたので、とりあえずカラオケに行く事になった経緯をカラオケ屋に向かいながら聞く事にしよう。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「なるほど、歌のテストねぇ・・・・」

「すみません・・・・私の事情に付き合わせてしまって・・・・」

「気にするなって。悩める後輩助けんのも、先輩の仕事さ。それに────」

 

ノリノリで歌う風さんを見る。友奈と東郷がそれに合わせて合いの手やらマラカスやらで盛り上げる。

 

「みんな楽しそうだしなっ♪」

「───────はい♪」

「イエーイ!聞いてくれてありがとー♪」

 

おや、話している内に終わったか。

さて、点数は─────────────ほう!92点か!

 

「良かったよ、お姉ちゃん」

「さんきゅー♪」

 

樹の言葉に風さんが答える。

さて、お次は──────

 

「夏凛ちゃん夏凛ちゃん。この曲知ってる?」

「ん?知ってるけど・・・・」

「じゃ、一緒に歌おうよ!」

「はぁ!?ちょ・・・・冗談じゃないわよ!馴れ合う為にここにいる訳じゃないんだから!!」

「そうよね~~。私の後じゃあねぇ~~。ゴ・メ・ン・ねぇ~~~」

 

風さんが自分の出した点数を指差して、夏凛を煽る。

 

「───────────友奈。マイクを貸しなさい」

「へ?」

「早くっ!!!」

「は・・・・はいっ!!」

 

―――――――――――†――――――――――

 

友奈と夏凛の抜群のコンビネーションによるデュエットで、叩き出された点数は──────92点!

 

「はぁ・・・・はぁ・・・・」

「はぁ・・・・はぁ・・・・夏凛ちゃんすっごい上手~~♪」

「ふ・・・・・フンッ。この程度、どうって事無いわ!」

 

相変わらずのツンデレ台詞、頂きましたァーーーーーーーーー!!

 

「─────ちょっと輝夜。なによ、こっち見て」

「いえいえ別に何も~~?2828」

「ぐぅ!!こ~~い~~つ~~・・・・!!」

「まぁまぁ、次は樹ちゃんの番だよっ♪」

「は・・・・・はいっ」

 

緊張気味の樹が歌う。

結果は──────まあ、言わぬが花だな。

 

「あうう・・・・」

「まだちょっと硬いかなぁ」

「誰かに見られていると思うと、それだけで緊張しちゃって・・・・」

 

だいぶ重症だな、こりゃ。

 

「まぁまぁ、今は練習なんだし。ほら!お菓子でも食べて──────って、無い!?」

「お菓子なら牛鬼が全部喰っちまったぞ?」

「んなぁ!?!?!?」

「あはは、牛鬼は食いしん坊さんですね~」

「ううう~~・・・・食べ過ぎだよぉ~~・・・・」

 

涙に濡れる友奈をなだめていると、突然、軍歌が流れ始めた!

これは────!

 

「あ、私の入れた曲」

 

東郷がマイクを握ると、夏凛以外の俺たち四人は立ち上がり、敬礼する。

 

「ぅえっ!?何!?」

 

呆然とする夏凛を他所に、東郷はがっつり歌い切る。

音楽が止み、採点画面に切り替わったところで四人同時に着席。

 

「──────何、今の?」

「私たち、東郷さんが歌う時はいつもこんなだよ~♪」

「こうしないと、後が怖いんさー・・・・『護国の心が足りーん!』って────」

「そ・・・・・そう・・・・・」

「そうよ。という訳で・・・・・・・・・夏凛ちゃんには後でお話があります」ゴゴゴゴゴゴ・・・・・

「ひぃ!?」

 

あーあ、東郷の心に火ィ着いちまったな・・・・

おっと、そうだ忘れてた。東郷の次は俺の曲だ。

 

「よし───────俺の歌を聞けェ!!!!」

 

今回歌うのは、俺の『48のカラオケ十八番』の一つ。

旧暦時代、初の合体変形ロボットアニメとして有名になったシリーズの三大OVA作品の一作目にて、物語後半のOP曲として使用された曲だ。

 

「───────上手いわね、輝夜」

「そりゃそうだよ!なんたってかぐやちゃんの『48のカラオケ十八番』の一つだもん!」

「───────────突っ込んだら負けかしら?」

 

気持ちよく歌い上げた俺は、採点結果を期待して待つ。

さて、結果は────────────────83点か。

 

「まぁまぁだな」

「でも上手でした!さすがです、煌月先輩!」

「フッ─────まあな!」(ドヤァ)

「それじゃ、次はなに歌おっか?」

「そうねぇ───────」

 

いつも通りに雑な扱いを受けつつ、次に歌う曲を選んでいると、風さんが部屋から出ていった。

なんだろ、便所かな?

 

───────view,change:風────────

 

水の流れる音が響く中、私は洗面台の鏡に写る自分の顔を見た。

ひどい顔だ。とてもじゃないけど、みんなには見せられない。

 

「大赦からの連絡?」

 

その時、髪紐の鈴を鳴らしながら、夏凛が入ってきて私に訪ねる。

 

「─────『最悪の事態を想定しておけ』、って」

「ふぅん・・・私には連絡してこない癖に・・・・・」

 

夏凛はそうぼやくと、私を見据えてはっきりと言った。

 

「怖いの?」

「──────────」

「なら、あんたは統率役には向いてない。私の方がうまくやれるわ」

 

夏凛のその言葉に、私はそれまで流しっぱなしにしていた水道の蛇口を止める。

 

「これは私の役目で、私の理由なのよ」

「──────────」

 

黙る夏凛の横を通って外に出る。

 

「後輩は黙って先輩の背中を見てなさい」

 

通りがかりに、一言だけ告げて。

 

―――――――――――†――――――――――

 

夕暮れの帰り道。

カラオケの後は、勇者部のみんなでこうして並んで帰ることが多い。

 

「歩いて帰るのって久しぶりね・・・・」

「うん。でも、樹ちゃんの歌の訓練にはならなかったねえ・・・・」

「でも楽しかったです!」

「そりゃなにより。昔、死んだばっちゃも言っていた。『楽しむ事こそ、上達の道』とね」

 

前を歩く樹たちが、楽しげに会話している中、私は、大赦から送られてきたメールの事で、頭が一杯だった。

 

「風さん?聞いてる~?」

「ぅえ?な・・・何?」

 

だから、煌月の声に反応するのに、ワンテンポ遅れてしまった。いつもなら即座に反応していたのに・・・・

 

「樹の歌のことよ」

「あ・・・・ああ・・・そうね」

 

夏凛がフォローを入れてくれる。

おかげで私は会話に追い付く事ができた。

 

「うーん・・・・樹はもうちょい練習が必要かな?」

「α波出せるように・・・・・!」

「α波から離れなさいよ・・・・」

「久々に見たなぁ・・・・東郷のα波信仰・・・・」

 

何気ない平凡な中学生らしい日常。

私たちは、この平和な日々を守るために、戦わなくてはならない。

 

(もしもの時は──────)

 

大赦がああ言ってくるという事は、最悪の場合、この中の誰かが─────

 

「ふ~~~う~~~さんっ!」

「ぅわっ!?びっくりしたぁ!」

 

いつの間にか、目の前に煌月が居た。

いろんな色がごちゃ混ぜになって出来た漆黒の瞳で真っ直ぐに私を見つめて。

 

「なんか、悩み事?」

「───────やっぱ、分かる?」

「分かりやすいねぇ。風さんが会話に乗っかってこないもん」

「────────そっか」

 

幼馴染なだけあって、友奈と煌月の二人は、他人の感情にとても敏感だ。

本当、素直に凄いと思う。

 

「敢えて聞くようなことはしないよ。でもね────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもの時は、俺がなんとかしますから・・・・ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────煌月?」

 

初めて聞く、煌月の"ですます口調"に少し驚く。

でも、それだけじゃない。

さっきまで黒かった瞳の色が、何故か一瞬、()()()()()()()()()()()()()()

目をこすり、もう一度見直す。

けれど煌月の瞳は、いつも通りの黒い色。

 

「──────今のは・・・・いったい・・・・」

「ん?何、風さん。俺に惚れた?」

「それは無い」

「ひどーい」

 

良かった。いつもの煌月だ。

 

「─────ありがと、煌月」

「your welcome」

 

瞳と同じく黒い、三つ編みの髪を揺らして、煌月が笑う。

その笑顔を眩しく思いながら、私たちは帰路に付くのだった。

 




輝夜の瞳と髪の色について───

人によって説明が異なるが、基本的には『様々な色を混ぜ合わせて出来た黒』である。
そのため、見る角度によっては黒の中に別の色が時折見える。


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