死にたがりの少年と、輝きたい少女達 (ミサエル)
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序章

初めまして、ミサエルと申します。初投稿なので、至らぬところが多々あると思いますが、少しでもお楽しみいただけたら幸いです。


草木も眠る丑三つ時。

なんて比喩が通じたのは、昔の話。

現代のこの国は、眠らない。

否、眠ろうとしない。

それはこの、沼津も例外ではない。

人間の営みが灯す明かりは、消えようとせずに、この国を照らし続ける。

その灯火を、ビルの屋上から見つめる影が一つ。

 

異形。

 

そう呼ぶのが相応しいだろう。

その影は確かに人の形をしている。

だが一つ、明らかにおかしい箇所がある。

『翼』だ。

その影の背中には、一メートルはあるであろう翼が生えていた。

 

影は呟いた。

 

「どこにいる、E...。」

 

そして影は翼を広げる。

この世の光を全て吸収するかのような、漆黒の翼だった。

 

「待っていろよ...。」

 

影は、闇の中へと飛び立った。

 

 

 

これから語る物語は、少年少女の物語。

 

 

永遠の輝きを求める少女達と、

 

 

刹那の命を求める少年の、

 

 

青春の物語。

 

 

※※※

午前6時30分

久永 悠(ひさなが はるか)の1日は、波の音で始まる。

いつも通りの時刻に起床した悠は、まず部屋の窓を開ける。

途端に、磯の薫りが部屋に入り込んでくる。

その薫りをいっぱいに吸い込むと、今度は海に向かって、深々とお辞儀をする。

その間、30秒。

それが終わってようやく、悠は着替えを始める。

この一連の"儀式"は、死んだ両親から教わったものだ。

死んだ両親はよく悠に、

『この世で絶対に忘れてはいけないものは、女の子との約束と、海への敬意だ。』

と、言っていた。

この沼津の海は、悠のことをずっと見守ってきた。

悠が嬉しいときも、悲しいときも。

気がつけば悠にとって、海は心の支えになっていた。

悠の両親は、悠が8歳だった9年前に亡くなった。

二人揃って大型トラックに跳ねられ、即死だったらしい。

当時の悠はそのトラックを運転していた運転手に怒り狂い、そして憎んだ。

ー何で、父さんと母さんが。

ー許さない。

ー絶対に、許さない。

何度も何度もそう思い、また、実際に本人に言う寸前のところまでいった。

その心が鎮まったのは、ある女性が悠に訪ねてきたときのことである。

その女性は、悠に礼を言いにきたのだった。

どういうことなのか聞くと、両親はその女性の娘を助けるために道路に飛び出したらしい。

なんでも、その女性の娘はひったくりに突き飛ばされ、縁石に躓き、その拍子に車道側に転んでしまったところに例のトラックが来たそうなのだ。

そこに偶然居合わせた悠の両親が、その娘を助けるために、二人揃って道路に飛び出したというのだ。

結果的にその娘は助かったが、その代わりに悠の両親が犠牲になった、というわけなのだそうだ。

その話を聞いて、悠は両親の安らかな死に顔を思い出した。

ーあの顔は、そういう理由だったのか。

それから悠は、頭を下げ続ける女性を帰らせて、そして、両親が死んでから初めて、泣いた。

ひたすら泣いて、泣き続けて、涙が枯れたのは真夜中だった。

それから悠は、満月にある誓いを立てた。

 

『誰かを守るために、生きる。』

 

そんな誓いを。

それから9年。

仏壇の両親に挨拶をしてから、悠はいつものように呟くのだった。

 

「...早く死にたい。」

 




お楽しみいただけましたでしょうか?

果たして9年の間に悠はどう変わってしまったのでしょうか?

そしていつ変身するんでしょうか?

Aqoursも次回からしっかり登場させますので読んでいただけたら幸いです。

感想、評価お待ちしております。


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code A-0/私と彼と一つの約束

どうも、ミサエルです。

前回の後書きで予告した通り、Aqoursから3人ほど、登場します。

お楽しみいただけたら幸いです。


気がつけばその男の子は、私のすぐ近くに居ました。

 

その男の子、「ユウ君」と出会ったのがいつだったかなんて覚えていません。

 

生まれたときから一緒だった気もしますし、3歳ぐらいだったような気もしますし、それよりもっと後だったような気もします。

 

でも、恐らくそんなことは関係ありません。

 

とにかく私たちはいつも一緒でした。

 

実は前世でも一緒だったのではないか。

 

そう思ってしまうくらい。

 

私と、ユウ君と、あと2人の幼馴染の子たちと、毎日日が暮れるまで遊んでいました。

 

10歳くらいの時のことです。

 

私たちは公園で木登りをしていました。

 

「おい見ろよ皆!こんなところまで登れたぞ!」

 

ユウ君はその公園で一番高い木の3分の2ほどまで登っていました。

 

3分の2といっても、8メートルはあったと思います。

 

「ユウ君!危ないよ!」

「そうだよー!降りてきなよー!」

「お父さんたちに言っちゃうぞー!」

 

私たちはユウ君に呼びかけました。

 

でも、ユウ君は

 

「へへっ、平気。平気。」

 

そう言ってもっと上へ登ろうとしました。

 

しかし、次の瞬間、手を滑らせて根元の茂みに落ちてしまいました。

 

私たちは一瞬、何が起きたのか分かりませんでした。

 

10秒ほどかかってようやく、ユウ君が落ちたと理解すると、慌ててユウ君に駆け寄りました。

 

ユウ君は気を失っていました。

 

「ユウ君!!」

「起きてよ!ねぇ!」

「ユウ!ユウ!」

 

幸いにも血は出ていないようでしたが、返事がありません。

 

「ユウ君!ねぇユウ君ったら!」

「私、お父さん呼んでくる!」

「私も行く!」

 

私以外の2人は、それぞれの家に向かって走っていきました。

 

「ユウ君!ユウ君!」

 

いくら呼んでも、揺すっても、ユウ君は起きません。

 

「ユウ君!死んじゃ嫌だよ...。」

 

私は、泣き出しました。

 

大声で、泣きました。

 

すると、不意に手が、ガシッと掴まれました。

 

驚いて手を見ると、それはユウ君の手でした。

 

ユウ君は笑って、

 

「...痛ぇ。」

 

と、言いました。

 

そして起き上がって、私の頭に手を置き、

 

「俺が千歌たちより先に死ぬわけないだろ。」

 

そう言いました。

 

「ユウ君!!」

 

私は泣きじゃくりながら、ユウ君のことを抱き締めました。

 

その時、ユウ君は私に言いました。

 

 

「千歌、約束する。俺はお前たちより先に死なない。例えこの先、何があっても。」

 

 

そう、約束してくれました。

 

 

 

だから私には、目の前に広がっている光景が、信じられません。

 

きっと、何かの間違いです。

 

ユウ君が、私の足下で、血を流して倒れている。

 

 

そんな光景が。

 

 




どうだったでしょうか?

恐らく、思ってた登場の仕方と違うと感じた読者の皆さまが多いでしょう。

すみません、どうしても必要だったんです。

次回からはしっかりと現代のAqoursを登場させますので、読んでいただけたら幸いです。

あと、お気に入り登録してくださった

ぴんころさん、ハイパームテキさん

ありがとうございます!


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code A-1/久永 悠という男(前編)

どうも、ミサエルです。

今回はしっかりと現代のAqoursを登場させます。

前回や前々回に比べると結構長くなってしまいましたが、楽しんでいただけたら幸いです。

最初に言っておきます。


変身します。




物語は、少し前に遡る。

悠は幼馴染の2人とバスに揺られていた。

無論、学校に行くためである。

悠たちが通う浦の星学院は元々女子校だったのだが、生徒数の減少を受け、3年前にやむなく共学化された。

本来なら既に無くなっているはずだったことを考えると、今もこうして通えていることは素直に喜ばしいことなのだろう。

だが、この地区の子供の数そのものが減少している現状を省みると、焼け石に水であることは否めない。

またいつか廃校の危機に陥ってしまうかもしれない。

まぁ、悠が考えてもしょうがないことなのだが。

隣で幼馴染2人が女子トークを繰り広げているのを尻目に、悠はスマホアプリのパズルゲーム、『ハテサテパズル』をプレイしていた。

今挑戦しているのは国内ユーザーの上位30%しかクリアしていない難易度、XX(ダブルエックス)のステージである。

(よし、あとはここをこうすれば...。)

そう考えながら、悠は画面をスワイプする。

すると、液晶に「GAME CLEAR!!」の文字が表示された。

「よっしゃ、クリア!」

思わず声に出す。

すると、隣に座っているオレンジがかった髪色の幼馴染、高海 千歌(たかみ ちか)が悠に話しかけてきた。

「本当にユウ君はゲームが好きだね~。」

「そんなの昔っからだろ。」

そう言いながら悠はスマホをしまう。

すると今度は千歌の向こう側の席から

「昔っていってもほんの二年前からでしょ。」

と、灰色がかった髪色の幼馴染、渡辺 曜(わたなべ よう)が言う。

「そうだっけか。忘れちまったよ。」

悠はそう返し、茶化した。

幼馴染2人は昔から悠のことを「悠」の別の読み方、「ユウ」で呼んでいる。

さらに曜は言う。

「そうだよ~。それまではずっと本読んでばっかりだったのに。」

「別に今でも読書はしているさ。」

嘘ではない。実際に悠は昨日、『機械仕掛けの友情』という小説を読み終えたばかりである。

「ねぇ、何でそんなにゲームが好きになったの?」

今度は千歌が悠に聞いた。

一瞬の間が空き、悠はどこか自嘲めいた笑みで、

 

「ゲームなら、やめたいときにやめられるからかな。」

 

と言った。

「...?どういう」

千歌がその言葉の真意を聞こうとしたその時、バスが大きく揺れた。

「!?何だ!?」

「何!?何なの!?」

悠と曜も動揺する。

何かあったのかとバスの前方を確認すると、そこには。

 

そこには、2体の怪人が立っていた。

 

緑色の鳥のような怪人と、左腕に黒く巨大な鉄球を着けた怪人である。

「ドーパント!」

「何それ!?」

悠が叫んだ謎の単語に、千歌が反応する。

だが、悠はそれに答えず、

「説明はあとだ!とにかくバスから降りるぞ!」

と、窓を開け、歩道に飛び降りた。

千歌と曜も手を貸してもらい、それに続く。

ちなみに、乗客はこの3人だけだったし、運転手は先にさっさと逃げてしまった。

3人が降りた瞬間、鉄球が着いた怪人がバスを持ち上げ、それを道路に叩きつけ粉砕しだした。

「今のうちに逃げるぞ!」

悠たちは怪人とは逆方向へと走り始める。

「!!痛っ。」

だが、千歌が躓いて転んでしまった。

すると鉄球持ちの怪人がそれに気づき、

「ガァァァァァァァ!」

と雄叫びを上げ、さっきまでバスだったスクラップを千歌に向かって投げた。

「千歌ちゃん!!」

「千歌!!よけろ!」

悠と曜が叫ぶ。

しかし、当の千歌はまるで金縛りにでもあったかのように動くことができない。

(あぁ。私、死んじゃうんだ。)

そう思い、千歌は目を固く瞑り、次に来るであろう想像もできない痛みを覚悟した。

が、その時、横から誰かに突き飛ばされ、鈍い音が聞こえた。

一メートルほど横に飛ばされ、千歌はもう一度地面に倒れこむが、今度はすぐに起き上がる。

さっきまで自分が居たところには怪人が投げたスクラップがあり、その下に血だまりと見慣れた靴が見えた。

悠の靴である。

「千歌ちゃん!」

曜が千歌に駆け寄る。

「...曜ちゃん、ユウ君は?」

受け入れたくない現実を拒絶し、千歌は曜に聞く。

「...ユウ君は、千歌ちゃんを庇って...。」

曜は声を震わせながら答えた。

すると、千歌は

「...助けなきゃ。」

と呟いて立ち上がり、スクラップに近づこうとする。

だが、怪人もスクラップにゆっくりと近づいていた。

「千歌ちゃん!逃げよう!」

曜は千歌の後ろから腕を掴んで引き留める。

が、千歌はその手を振り払い、スクラップを持ち上げようとする。

「千歌ちゃん!危ないよ!」

曜もそこへ行き、千歌を説得する。

「千歌ちゃん!!ユウ君はもう駄目なんだよ!だから私たちだけでも」

 

「ユウ君が死ぬはずない!!」

 

「千歌ちゃん...。」

千歌が曜の言葉を遮って叫ぶ。

「約束したんだもん!ユウ君は私たちより先に死なないって!そうだよね?ユウ君!待ってね、今助けるから!」

千歌はそう言って、スクラップを持つ腕に力を込める。

だが、少女の細腕では動かすことなんてできるはずもなく、スクラップは微動だにしない。

その間にも、2体の怪人は千歌たちにじりじりと近づいてくる。

「こっちに来るなぁ!!」

曜が落ちていた棒切れを振り回し、怪人たちに向かっていく。

「ガァ!」

「きゃあ!!」

しかし、敵うはずもなく、弾きとばされてしまった。

「曜ちゃん!」

千歌が曜の方を向く。

曜は顔を上げる。幸いにも怪我はしていないようだ。

「千歌ちゃん!!危ない!」

曜が叫ぶ。

千歌が振り向くと、鳥のような怪人が眼前まで迫っていた。

「ウゥ!!」

「あ...あ...。」

あまりの恐ろしさに、千歌は腰を抜かしてしまう。

後ずさりして距離を取ろうとするが、そんなものは気休めにしかならない。

「アァ...!! 」

「助けて...。」

千歌は呟く。

それでも鳥の怪人はゆっくりと近づいてくる。

 

「助けて!!ユウ君!!」

 

そう叫んだ時だった。

 

 

『ETERNAL!!』

 

 

突然、音声が鳴り響いた。

その次の瞬間、スクラップが爆発し、破片が辺りに飛ぶ。

「グェ!」

ちょうどスクラップの隣に居た鳥の怪人にも一部が直撃する。

その間に千歌は何者かに抱えられ、いつの間にか曜の隣に居た。

ここまでは破片が飛んできてないようだ。

「千歌ちゃん!!」

曜が抱きつく。

千歌は眼前に立つ、自身をここまで移動させた人物のことを見ていた。

真っ白な仮面のような頭部には、昆虫のような黄色い複眼と、アルファベットの「E」を横にしたような3本の白い角。

背中でなびく黒いマントに、手から腕にかけて刻まれている青い炎の模様。

胸部には何かを差し込むのであろうスロットがびっしり着いた黒いコンバットベルト。

そして一際目立つメカニカルなデザインの、赤いバックルが着いたベルトが巻かれていた。

 

「千歌。」

 

その人物は千歌の名前を呼んだ。

 

「...ユウ君、なの?」

 

千歌は問う。

するとその人物は頷き、右手を千歌の頭に置いて、

 

 

「約束したろ。俺はお前たちより先には死なないって。」

 

 

と、言った。

この約束を知っているのは、千歌と悠だけである。

「...ユウ君...、ユウ君!!」

目を涙でいっぱいにしながら、千歌は悠に抱きつく。

悠、エターナルは千歌の頭を少し撫でたあと、

「危ねぇから少し下がってろ。」

と言い、千歌を引き剥がして立ち上がった。

バサリとマントを翻し、怪人たちに向き直る。

「ウゥ...!!」

「ガァ...!!」

「バードにバイオレンス。自我を失っているということはT2か。」

エターナルはよく分からないことを呟き、続ける。

 

「俺の幼馴染を泣かせてくれたんだ。いくら自我を失っているとはいえそう簡単には許せねぇなぁ。」

 

「それ相応の、『地獄』を見てもらわないと。」

 

そう言ってサムズアップした右手を横に突き出し、親指を下に向け、ドスの利いた声で怪人たちに投げかけた。

 

 

「さあ...地獄を楽しみなぁ!!」

 

 

 




いかがだったでしょうか?

とうとう変身させることができましたね。

悠が変身するライダーは、仮面ライダーエターナルでした。

次回は戦闘になります。

戦闘描写は初めてなので不安でもありますが楽しみでもあります。

読んでいただけたら嬉しいです。

また、今回の話には仮面ライダー好きなら分かる小ネタを入れてみました。

お気づきになられたでしょうか?

これからもちょこちょこ入れていく予定なので、楽しんでいただけたら幸いです。

それでは、次回もお楽しみください。

そして、新たにお気に入り登録してくださった、

koroさん、三年寝太郎さん、時雨零さん、よっすぃーさん、ペコーシャ(旧名:真姫リコット)さん、TOアキレスさん、ショコラMENさん、Louise0923さん

ありがとうございます!


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code A-1/久永 悠という男(中編)

どうも、ミサエルです。

戦闘描写を書き直しました!

修正前のものは本当に酷いものだったのでこれで少しはマシになったはず...だと思います。

ですがもしかしたら、僕が勝手に贔屓目で見てしまっているということもあるので

「前回と全然変わってねぇじゃねえか!」

と感じた方は教えてくれると助かります。

それでは、どうぞ。


仮面の戦士、エターナルへと変身した悠は幼馴染2人を恐がらせた2体のドーパントに対して、静かに怒りを燃やしていた。

 

鳥、というより始祖鳥みたいな見た目の怪人、バード・ドーパント。こちらは空中からの遠距離攻撃が得意なドーパントだ。

 

そしてもう1体の、左腕に鉄球を装着し、肩に鉄板が刺さっている方がバイオレンス・ドーパント。「暴力の記憶」を内包したメモリで変身する脳筋ドーパントである。

 

(両方とも物理特化のパワーメモリ。おまけにT2メモリの副作用で自我を失っているか。好都合だ。)

 

そこまで強い相手ではないと踏んだエターナルは両腕を横に広げ、

 

「来な。」

 

と2体を挑発する。それが戦闘開始のゴングだった。

 

「ギャォォォォォォォ!」

「ガァァァァァァァァ!」

 

それぞれ奇声を発しながら、2体のドーパントは動き出す。

バードは空中へ飛び上がり、バイオレンスはエターナルに向かって走り出した。

 

バードはマッハ2.5の速度で空中を飛び回りながら、己の羽を鋭利な棒状手裏剣へと変質させ、それを何百とエターナルに向かって打ち出す。

 

が、エターナルはそれを羽織っている漆黒のマント、エターナルローブで防ぎ落とす。

 

バードは自身の攻撃が全て、マント1枚に防がれたことに動揺する。

 

それもそのはず。エターナルローブはただのマントではなく、あらゆる熱・冷気・電気・衝撃を全て無効化するのだ。ただ鋭いだけの刃が防がれないわけがない。

 

羽手裏剣が止み、エターナルは掲げていたマントを下ろして、

 

「この程度か。」

 

と言い放つ。

 

「ガァ!」

 

すると隣まで来ていたバイオレンスが、自身の左腕の鉄球でエターナルの顔面を殴ろうとする。

 

だが、エターナルは

 

「振りかぶりすぎだ。」

 

と呟くとその拳をひらりとかわす。そしてすぐにバイオレンスの背後に回り込み掌底を打ち出す。

 

「グォォ!」

 

空振りした自身の拳の勢いにエターナルの掌底の衝撃が上乗せされ、バイオレンスは自慢の左腕が道路に嵌まってしまう。

 

「背中ががら空きだぞ?」

 

左腕を抜こうとするバイオレンスの背中を、エターナルはどこからか取り出したダガーナイフ状の武器、エターナルエッジで2、3度切りつける。

 

するとそこに、フライングプレスを喰らわせようとバードが急降下してきた。

 

しかしそんな単調な攻撃、エターナルが見切れないはずがなく、5メートルほど横に飛んで回避する。

 

当然、途中で方向転換なんて出来るはずもなく、バードとバイオレンスは激突した。

 

「グギャァァァ!」

「グガァァァァ!」

 

その衝撃により、バイオレンスの左腕はさらに深く嵌まった。

 

「やっぱり...物理型は馬鹿だなぁ。」

 

そう言うとエターナルは紫色のメモリを取り出し、

 

「まずはお前からだ、バイオレンス。」

 

獲物を宣言すると同時に、起動する。

 

 

『JOKER!!』

 

 

地球の記憶の声、ガイアウィスパーがメモリの名前を読み上げた。

エターナルはそれをすぐに右腰のマキシマムスロットに差し込む。

 

『JOKER!MAXIMUM DRIVE!!』

 

マキシマムドライブによって最大限に増幅されたジョーカーメモリのエネルギーが、紫色の電流となってエターナルの体を駆け巡った。

 

「...動くなよ?」

 

そう言ってエターナルはバイオレンスを指差す。

その言葉に本能で危険を感じ取ったバイオレンスは、必死になって左腕を抜こうともがく。

 

そんなバイオレンスに向かってエターナルは走り出す。

走りながら、右足にジョーカーのエネルギーを集中させる。そして残り約1メートルの地点でジャンプし、

 

「ライダー、キック。」

 

あらゆる世界の戦士に受け継がれてきた必殺の蹴りを、バイオレンスに叩き込んだ。

 

「ハァァァァァァァァ!!」

 

直撃する寸前、ようやく左腕が抜けたバイオレンスだったが、時すでに遅し。

 

「ガァァァァァァァァァァ!」

 

断末魔を上げながら、爆発した。

 

バイオレンスが居たところに、サラリーマン風の男性が倒れ込み、その額からメモリが排出された。

 

エターナルはそれを拾い上げる。

 

「まずは、1本。」

 

そう言ってバードに顔を向ける。

 

「...グェ!」

 

その視線に耐えられなかったのか、はたまた同族が倒された恐怖に駆られたのか。バードは飛んで逃亡を試みる。

 

「見逃してやるとでも思ったか?」

 

エターナルはエターナルエッジを取り出すと、付属しているマキシマムスロットにエターナルメモリを差し込む。

 

『ETERNAL!MAXIMUM DRIVE!!』

 

マキシマムドライブが発動した瞬間、バードの体に強力な電流が走った。

 

「ギャァァァァァ!」

 

その電流により、翼を動かすことが出来なくなったバードはたちまち落下し始める。

 

すかさずその落下地点に入り込むエターナル。

もう一度ジョーカーのマキシマムドライブを発動させ、今度は右の拳にエネルギーを集中させる。

 

「ハァァァァァァ。」

 

溜めを作り、バードの落下のタイミングと合わせそして、

 

「ライダーパンチ!!」

 

ありったけのエネルギーを込めて拳を振り上げた。

 

「オラァァァァァァァァァ!!」

 

その一撃は抵抗する術も体力もないバードに直撃し、

 

「グギャァァァァァ!」

 

バイオレンスと同様に、バードも爆発四散した。

 

地面にはランニングウェアを着た女性が打ち上げられ、彼女の右の太腿からメモリが射出された。

 

エターナルはそれを拾い、先ほどのバイオレンスとジョーカーを取り出すと、

 

「...残り23本か。」

 

そう呟くのだった。

 

 

 

エターナルは千歌と曜の方へゆっくりと歩み寄る。

その姿を見て千歌は何故か、

 

「...仮面、ライダー。」

 

と呟いた。

 

「仮面『ライダー』?千歌ちゃん、どの辺が『ライダー』なの?」

 

曜がもっともな疑問を口にする。

 

本来の『rider』とは『乗り手』を表す英単語であり、エターナルは別に何かに乗っていたわけではない。

 

「分かんない。でも、何かそんな気がしたの。」

 

その問いに対して、千歌は答える。

 

「千歌にしては、良いネーミングセンスじゃないか。」

 

エターナルは千歌にそう言うと、ベルトを閉じ、メモリを引き抜く。

するとすぐに千歌達が見慣れた悠の姿に戻る。

 

「まぁ、この場合は良い『勘』って言った方が良いのかな?」

 

そう言うと悠はいたずらっ子のようにニカっと微笑んだ。

 

「ユウ君!!」

「大丈夫なの!?」

 

千歌と曜が悠に駆け寄る。

 

「さっきの戦い見たろ?平気だよ。」

「でも、足は...?」

「そうだよ!血が出てたじゃん!」

 

スクラップの下に血だまりができていたのだ。千歌と曜が心配しないわけがない。

 

しかし悠は軽い態度で、

 

「あぁ、もう平気。ほら。」

 

そう言ってその場で6回ほどハイジャンプをした。

 

「...うん。」

「...分かった。」

 

煮えきらない態度だが、どうやら2人とも納得してくれたらしい。

 

「うんうん。まぁ、2人が気にすることじゃねえから。」

 

悠は携帯電話を取り出しながら2人に言う。そしてどこかに電話をかけ始めた。

 

「あぁ、もしもし。警察ですか?『ガイアメモリ犯罪』による事故なんですけど...。」

 

どうやら警察に通報しているらしい。だが、千歌と曜にとっては初めて聞く罪状だった。

 

「...はい。はーい。それでは。失礼しまーす。」

 

電話を切ると、悠は2人に向き直り

 

「さて、学校には警察から連絡してくれるらしいから。今日は帰って寝るぞ!」

 

そう言って2人の間を通って歩き出す。

 

 

「...待って。」

「ユウ君、ストップ。」

 

すると、後ろから千歌と曜に両手を掴まれた。

2人は悠に言う。

 

「ちゃんと説明してよ。『仮面ライダー』のことと、あの怪人のこと。」

「それに、ユウ君の足のこともね。」

 

悠は首だけ動かして2人の目を見る。

真っ直ぐな、本気の目だ。

曜ならともかく、一度こうなった千歌は言っても聞かないことを悠はよく知っている。

 

(まぁ、こうなる気はしてたけどな。)

 

そう思い、悠は軽くため息をつく。

 

「分かった。とりあえず、手を放してくれ。」

 

悠に言われ、千歌と曜は素直に従う。

両手が自由になった悠は、左手を腰に当て、右手で頭をガシガシ掻いた。

そして、2人に向かって言うのだった。

 

 

「分かった。教える。...先に言っとくが、後戻りはできないと思え。」

 

 

 




いかがだったでしょうか。

次回は悠の秘密が明かされる回です。

僕は次の話まではゲームでいうチュートリアルのような感覚で書いているので、Aqoursの物語が始まるのは次の次の話からとなります。

楽しみにしていただけたら幸いです。

また、新たにお気に入り登録してくださった、

アーペさん、アスティオンさん、RODEOさん、君更津 宙次郎さん、〈ディザスター〉さん、セイ2015419さん、花蕾さん、綾瀬絵里さん

ありがとうございます!


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code A-1/久永 悠という男(後編)

どうも、ミサエルです。

一日おき更新を目指していたのに何故か久しぶりの投稿となってしまいました。

多分、書いてる人なら分かると思うんですけど

「展開とか全部考えてあるのに肝心の言葉が出てこない」

という現象に陥っていました。

まぁそんなことは置いといて、

最新話、楽しんでいただけるのなら幸いです。

それでは、どうぞ。


「...とまぁ、これがガイアメモリのざっくりとした説明なんだけど。2人とも、分かった?」

 

僕はテーブルを挟んだ向かいに座っている千歌と曜に聞いた。

 

「う~ん。」

「まぁ、なんとなくは。」

 

僕の問いに2人はそんな風に答えた。

 

うん、そんな気はしてたけどね。

 

既に予想していた反応だから僕もさして驚かない。

 

ちなみに僕たち3人が今居るのは、久永家のリビング、つまり僕の家だ。

 

何故僕の家に居るのかについては2つの理由がある。

 

まず、単純な理由としてはあの事故現場から一番近いのが僕の家だったから。

次に、2人に説明するのに色々やりやすいから。

 

といった理由だ。

 

そこで僕は小一時間かけて2人にガイアメモリについて説明した。

 

2人に理解してもらうために要点だけを、できるだけ分かりやすく説明したつもりだったけど、まぁ、しょうがないか。

 

ちなみに2人に説明した内容を要約すると、

 

①ガイアメモリとは、地球上に存在するあらゆる物体や事象のデータを入れたUSBメモリである。

②そのメモリを作ったとある組織により、社会の裏側で高値で取引されている。

③ガイアメモリを使うと先ほどの怪人、ドーパントや仮面ライダーのように超人的な能力を得られる。

④ただし、ドーパントになるとメモリに入っている「毒素」により体が蝕まれ、死に至る危険性もある。

⑤メモリには先発品と後発品があり、ドーパントやエターナルに変身するときに使うのが先発品のT1メモリで、端子の色が金か銀。先ほどの2体のドーパントが使っていたメモリや、エターナルが技を発動するときに使ったジョーカーメモリなどの青い端子のメモリが後発品のT2メモリであり、こちらは人間の体に勝手に入り込み、人をドーパントに変え、暴れさせる。

⑥しかし、ドーパントになるためのT1メモリと、エターナルになるためのT1メモリは作り方が違うので、エターナルメモリはドーパントのメモリに比べてほとんど毒素が含まれていない。

⑦T1メモリはドーパントや仮面ライダーの力で壊すことが出来るが、T2メモリは壊すことが出来ない。

 

といった具合だ。

 

「じゃあ、あの人達は私達に恨みがあったとか、そういう訳じゃないんだぁ。」

 

うんうんといった感じで千歌が納得する。

 

「ねぇねぇ、何でユウ君はドーパントにならないの?そのベルトの力?」

 

曜がそんな質問をしてきた。

 

う~ん。それを説明するのはちょっとめんどくさいんだよなぁー。

...仕方ない。

 

「千歌、曜。」

「ん?」

「はい?」

 

僕は真面目な面持ちで2人に言う。

 

「今の曜の質問だけど、半分はベルトの力で正解。このベルトはメモリの毒素のフィルターの役割を果たすんだ。」

「はぁー。なるほど。」

「でも、『半分』ってどういうこと?」

 

千歌がもっともな疑問を口にする。

 

「そう、そこなんだけど...。それを説明する前に、2人に1つ、試練だ。」

「へ?」

「試練?」

 

2人はきょとんととした顔で僕を見る。

 

「あぁ。試練だ。今から僕はある行動をする。...先に言っておくけど、多分、相当なショックを受ける行動だ。それに関しては今謝っておく。重要なのはその後。2人には『黙ってこの場を立ち去る』か、『ここに留まる』かを選んでほしい。」

 

「...ユウ君?」

「どういうこと?」

 

2人の怪訝な目が、僕に突き刺さる。

 

でもこれは本気で選んでもらわなければ困る。

 

「さっきここに来る前、『後戻りはできない』って言ったけどな。実は今ならまだ引き返せる。この後、ここから立ち去れば。そして明日からまた、いつも通りの日々を過ごすことができる。」

 

2人は黙って僕の話を聞いている。

 

「ドーパントとの戦いは2人が思っているよりもずっと、残酷な世界だ。できれば僕は、2人のことを巻き込みたくない。だから、選んでほしい。頼む。」

 

僕は2人の目をしっかりと見て言う。

 

「...うん。」

「...分かった。」

 

2人は渋々ながら、了承してくれた。

 

「オッケー。ありがとう。」

 

そう言いながら僕は制服の胸ポケットから単色ボールペンを取り出し、芯を出す。

 

そして、

 

「ごめんな。」

 

 

そう言って、そのボールペンを、自分の喉に深々と突き刺した。

 

 

「...ガッ、ハァ...ッ...!」

 

鉄の味が口内に広がり、口元を生温かい血が伝っているのが分かる。

痛い。さすがに痛い。

 

「!ユウ君!!」

「何してんの!?」

 

千歌と曜が大慌てで僕の所に来ようとする。

が、僕はそれを血まみれの左手で制して、

 

「...良いから......。ハァ...。黙って、見てろ...。」

 

と言ってから、ボールペンを思いっきり引き抜く。

さらに血が勢いよく流れ落ちる。

 

2人は変わらず、僕のことを心配そうに見ている。

 

が、その目はすぐに信じられないものを見るような目に変わった。

 

「...嘘。」

「...何で..?」

 

...そろそろかな。

 

自分では見えない所を刺したから感覚でしか分からないけど、多分。

 

 

多分、傷口が完全に塞がる頃だろう。

 

「...ユウ、君?」

「平気なの...?」

 

予想通り、2人はとても混乱しているようだ。

まぁ、信じられない光景であることは確かなんだけど。

 

「あぁ、平気だよ。」

 

痛みが完全に消えたので、僕は傷口が消えたかを触って確認しながら答える。

 

うん。無くなってる。

 

「千歌、曜。これが、僕がドーパントにならないもう半分の理由。」

 

 

「つまり、僕は既に、

 

『半分ドーパントになっている。』

 

ってことだ。」

 

 

そう。そういうことなのだ。

詳細は省くが、僕は初めてエターナルメモリを起動した時に、この不死身の身体になった。

 

「不死身」とはいっても痛みは感じるし、既に流れ落ちた血とかが消えたりするわけではないけど。

 

「......。」

「......。」

 

千歌と曜は俯いて黙っている。

 

まぁ、無理もないか。普通に接していた幼馴染が、実は死なない化け物だったんだからな。

 

「黙ってたのは、悪かったと思っている。でも、千歌達だってこんな化け物が近くに居たところで」

 

 

「...違うよ。」

 

 

千歌が僕の言葉を遮って呟いた。

 

「...千歌?」

 

僕が声をかけると、千歌は顔を上げた。

目に涙がいっぱい溜まっている。

 

震える声で、千歌は言う。

 

「ユウ君は、ユウ君だよ。昔も今も、私のヒーロー。ちょっと人と違うからって、それは変わらないよ!だから...。だから...。」

 

 

「自分のことを、『化け物』だなんて言わないで...。」

 

 

そこまで言って、千歌は僕に抱きついてきた。

突然のことに僕は当然戸惑うが、僕の胸で肩を震わせている幼馴染を見て、不思議と冷静になる。

 

...あぁ、何してるんだ僕は。

 

この世で一番守りたい、大切な幼馴染を泣かせて。

 

「ごめん、千歌。」

 

そう言って僕は千歌の頭をそっと撫でる。

フワッと、オレンジの香りが広がった。

 

「あーあ。ユウ君、千歌ちゃんのこと泣かせたー。」

 

そう言って曜が、ニシシっと笑って僕を見る。

 

「さっきの怪人達に言ってたよね。『俺の幼馴染を泣かせた奴は許さない。』って。」

 

「...あぁ、言ったな。」

 

厳密に言うと少し違うけど、まぁいいか。

 

「だからユウ君は、千歌ちゃんにお詫びをしなきゃだと思うんだ。...というか、そうしなきゃ私がユウ君を許さないよ。」

 

優しい声で、曜が言う。

 

「いや、でもな...。」

「でももへったくれも無いの!第一、私たちが出ていってない時点で、分かるでしょ?」

「......。」

 

確かに、そうだ。

全く、手のかかる幼馴染達だよ...。

 

僕は苦笑しながら2人に言う。

 

「千歌、曜。1つだけ、約束してくれ。」

 

千歌は僕に抱きついたまま頷き、曜もまた、

 

「なに?」

 

と、微笑みながら首を傾げた。

 

「これから2人が、僕の戦いに首を突っ込むのは自由だ。2人の好きにしてくれ。ただ、そうした場合。もし本当に危なくなったら、早く逃げてくれ。それが約束。」

 

「...うん。」

「分かったよ。」

 

千歌と曜はそれぞれの言葉で約束してくれた。

 

「ユウ君、私からも約束。」

 

千歌が顔を上げて、赤くなった目で僕を見上げて言う。

 

「ユウ君が死なないのは分かったよ。でも、さっきみたいに本当なら大怪我しそうなことして私たちに心配かけるのはやめて。ね?」

 

多分千歌が言っているのはバスの下敷きになったことだろう。

 

ぶっちゃけあの時は、心臓と頭だけ奇跡的に残ったようなものだったから自分でも2度とやりたくない。

 

「あぁ。分かったよ。約束する。」

 

僕が約束すると千歌はにっこりとして、

 

「それと!私のお願い、聞いてくれる?」

 

と言ってきた。

 

まぁ、さっき曜にも言われたし、良いか。

 

「良いよ。蜜柑でしょ?何個いるの。」

「違うよ!何で蜜柑なの!?」

 

千歌が突っ込む。

 

「え?千歌のことだからてっきり、蜜柑食べさせろって言うのかと。」

「確かに蜜柑は食べたいけど、違うから!」

 

結局食べたいんじゃないか。

 

「んじゃあ、何?」

 

僕が尋ねると、千歌は僕から離れて、僕に向かって手を差し出しながら言ったのだった。

 

 

「私と一緒に!スクールアイドル、やろう!」

 

 




いかがだったでしょうか。

次回からはサンシャインの本編がスタートします。

それにともなって、各話のサブタイトルが少し変わります。

楽しみにしていただけたら、幸いです。

それでは、次回。

また、新たにお気に入り登録してくださった、

魔王の炎さん、神崎 焔さん、ナツ・ドラニグルさん、シルベさん、邪神イリスさん

そして、評価を着けてくださった、珈琲親善大使さん

ありがとうございました!


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code A-2 Rの溜め息/輝きの始まりは桜と共に

こんにちは、お久しぶりです。ミサエルです。

今回からラブライブ!サンシャイン!!本編突入となります。

それに伴い、サブタイトルの方を少し変えさせていただきました。

恐らく仮面ライダーファンなら見覚えのあるものになっていると思います。

お楽しみいただければ幸いです。

それでは、どうぞ。


桜の花びらが舞い踊り、これから始まる新生活への期待と不安で胸をいっぱいにした学生達が、次々と浦の星学院の門をくぐる。

一歩校内に入れば、部活に所属している上級生による新入生へ向けた部活勧誘が盛んに行われていた。

 

サッカー部、野球部、バスケ部、吹奏楽部など、その他にも様々な部活が1人でも多くの新入生を入れようと必死で勧誘をしていた。

 

その群衆に紛れ、千歌と曜、そして悠も、勧誘に勤しんでいた。

 

「スクールアイドル部でーす!春から始まるスクールアイドル部ー!」

 

『スクールアイドル愛』と書かれたハチマキを頭に巻き、メガホン持ってミカン箱の上から声を張り上げる千歌。

メガホンを持っていない右手には、「スクールアイドル部」と書かれた名札が握られていた。

よく見ると、「部」という字の下には、ばつ印が上書きされた「陪」の字。どうやら間違えて書いたようだ。

 

悠と曜も笑顔で千歌手作りのチラシを配っていた。

 

肝心の新入生達はというと、チラシを受け取りはするものの、千歌の演説に耳を傾ける者も、足を止める者もいない。

 

とうとう周りから人が消えてしまい、千歌はガックリとうなだれてしまった。

 

「千歌ちゃん?」

「千歌ー?生きてるかー?」

 

悠と曜が声をかける。

 

「...スクールアイドル部でーす...。」

 

「え?」

「何?どうした?」

 

千歌が言ったことがよく聞こえず2人は聞き返す。

 

すると千歌は涙目になっている顔を上げ、

 

「...今、大人気の...、スクールアイドルでぇぇす!」

 

と、叫んだのだった。

 

※※※

「はぁ~。全然駄目だね~。」

「まぁ、最初はこんなもんだよ。」

 

ミカン箱に座って落ち込む千歌を、悠が慰める。

が、それもあまり意味を成さず、千歌は大きな溜め息をついた。

 

「あちゃー。結構、落ち込んでるね。」

「そうだな。ところで、曜。お前、水泳部の方は良かったのか?」

「うん。他の子達がやってくれてるから。」

 

千歌が設立を画策しているスクールアイドル部は現在千歌と悠の2人だけ。

曜は既に水泳部に所属しているため、加入が難しいのだ。

 

「まぁほら、これからだよ。千歌ちゃん。」

「...うん。」

 

曜も千歌を慰めるべく声をかけるが、それでも千歌は落ち込んだままである。

 

すると、

 

「ん?」

 

千歌の目が何かに留まった。

何かと思い悠がその先を見てみると、そこには新入生と思われる2人の女子生徒が居た。

 

2人で談笑しながら歩いている。

 

片方の少女は赤毛をツインテールに結っており、もう片方は黄色いカーディガンを羽織った栗色の髪の少女だった。

 

恐らく世間一般に見ても、美少女と言って差し支えのない2人組である。

 

「美少女...。」

 

千歌の隣に座った曜も思わず呟いていた。

 

「なぁ、千歌。あの2人のこと、勧誘してみたら...って、もういないし。」

 

悠は千歌にそう提案するが、千歌は既にその場からいなくなっていた。

 

慌てて曜も追いかけていき、ミカン箱と悠だけが残される。

 

「はぁ。いっつも考えるより先に動くんだから。あの幼馴染は。」

 

やれやれとでも言いたげに、優しいひとりごとを呟いた悠は、何故か首を大きく右に傾けた。

 

 

すると後ろから、何者かによる蹴りが、空を切って頭の横に繰り出された。

 

 

悠はその足を右手で掴み、そのまま蹴りの主に話しかける。

 

「よぉ、レイナ。やっぱりお前も受かったんだな。」

 

「おかげさまでね。というか、アタシが落ちるわけないでしょ。」

 

「どうだかな。だってお前、『NEVER』の活動も並行して受験勉強してただろ?」

 

「確かにそうだけど、夏からは窓口しかやらなかったから楽だったよ。...ところで足、いい加減離してくれる?」

 

言われた通りに手を離し、悠はレイナと呼んだ少女の方に改めて振り返った。

 

少女の名は、羽田レイナ(はねだ れいな)。今年の新入生であり、悠とはNEVERというグループで活動を共にしている仲である。

 

「というか、賢治が受かったのにアタシが落ちたら京介や剛に何を言われるか分かんないよ。」

 

賢治、京介、剛とは、2人と同じ『NEVER』、いわゆる助っ人集団のメンバーである。

 

主な活動内容は、あらゆる部活や団体の助っ人であり、その度に報酬として金を徴収している。

 

が、さすがに仕事は選んで活動しているので、今のところ危ないことはしていない。

 

5年前に悠が、同い年の泉 京介(いずみ きょうすけ)と立ち上げ、そのまま現在も悠をリーダー、京介を副リーダーとして活動を続けている。

 

とはいっても、あまり褒められたものでないことには変わらないが。

 

レイナと賢治は4年前に加入した最年少組であり、京介は何かとレイナに厳しく、口うるさい。

 

だが、何かと面倒を見てくれていることは分かっているので、レイナもうるさいとは思うものの、別に京介を嫌ってはいなかった。

 

「そういえば、新しい依頼が来たよ。」

 

依頼。その一言を聞いた瞬間、悠の目の色が少し変わった。

 

「何だ?」

 

「野球。京介と剛を指名で、今度の日曜。2人とも空いてるよ。」

 

「報酬は?」

 

「1人につき5000円。」

 

そこで悠は少し考える。

金のことになると周りの声も聞こえないくらい真剣になるのだ。

 

「必ず勝たせるから、2割アップしてもらえるように交渉してくれ。」

 

「はいよ。」

 

そう言ってレイナはスマホを取り出し、メモ帳アプリにメモを打ち込む。

 

打ち込みながら、

 

「ところで、さっき一緒に居たのって千歌さん達だよね?」

 

と、悠に聞いた。

 

「ん?あぁ、そうだけど。」

 

「何してたの?」

 

「千歌の勧誘の手伝い。」

 

レイナはやはりスマホを操作しながら聞き返す。

 

「千歌さん、何か部活やってたっけ?」

 

「今年から新しく立ち上げるんだよ。お前もどうだ。スクールアイドル。」

 

「考えとく。」

 

打ち込みが終わったのか、スマホを鞄にしまいながら、レイナは答えた。

 

そしてそのまま、

 

「それより、大丈夫なの?生徒会長に連れていかれてたけど。」

 

と悠に衝撃の事実を言った。

 

「......は?」

 

悠は慌てて周囲を見渡す。確かに、千歌も曜も、さっきの新入生2人組も、居なかった。

 

やけに静かだと思っていたが、居なくなっていたとは。

 

悠は大きく溜め息をつき、頭をガシガシと掻く。

 

「そ、そんなぁ~!」

 

聞き覚えのある声がどこからか残念そうに叫んでいるのが、悠の耳に届き、悠はもう一度先程よりも大きな溜め息をつくのだった。

 

※※※

同時刻、沼津のとある海岸。

 

ランニング中だった一般男性が、死体となって発見されていた。

 

一見ただ倒れているだけに見えた男性だったが、通報した第一発見者の女性が触れた瞬間、男性の身体中に小さな棘がびっしりと生えたのだという。

 

驚いた女性は慌てて警察に通報した。

 

かなり錯乱しながら。

 

だから彼女は気がついていなかった。

 

その一部始終を少し遠くから眺めていた、異形の視線に...。




いかがだったでしょうか。

今回登場したレイナや名前だけ出てきた京介。

恐らく見覚えのある方もいるのではないでしょうか。

彼らは今後も活躍させる予定ですので、今後も是非、読んでいただければ幸いです。

それでは、次回。

また、新たにお気に入り登録してくださった

めんどくせえええさん、帆金 焔さん

ありがとうございます!


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code A-2 Rの溜め息/白い魔王は薔薇の花びらに包まれて

どうも、ご無沙汰しております。ミサエルです。

だいぶ遅くなってしまいました。すみません。

言い訳は、見苦しいのでしません。

遅くなってしまいましたが、楽しんでいただけたら、幸いです。

それでは、どうぞ。


静岡県警察沼津中央署。そこにある『超常犯罪課』に所属する刑事である、課長の大泉 マリア(おおいずみ まりあ)頼堂 昇(らいどう のぼる)、そして先月から配属となった新任刑事の古山 大地(ふるやま だいち)城山 螢(しろやま けい)は、今朝発見された変死体について会議をしていた。

 

「―というのが、今朝、被害者の遺体が海岸で発見された時の状況です。」

 

ホワイトボードの前に立って説明を終えた古山が、会議室に居る面々の顔を見渡す。

 

「....古山。」

 

「はい、頼堂さん。」

 

「被害者の身元は判明していないのか?」

 

「あ...すいません。分かっています。」

 

頼堂の周りの空気がピリッと、少しだけ緊張した。

 

「何故、説明しなかった?」

 

「...すいません、忘れていました。」

 

「忘れていた?」

 

頼堂は古山をギロリと睨んだ。

その眼光の鋭さと、低い声から滲み出る威圧感に、古山は一瞬ビクリと肩を震わせる。

かつて捜査一課に居た頃は、「頼堂にかかればどんな容疑者でも30分ですべて吐く」なんて言われたほどの恐ろしさだ。

 

「お前、そうやって先週も情報を言い忘れて、俺に怒られたよな?」

 

「は、はい....。」

 

涙目で肩を震わせながら返事をする古山。

頼堂は背後に鬼が見えそうなほどの剣幕でさらに古山に語りかける。

 

「その時に二度と忘れないって言ったのは...嘘だったのか?」

 

古山はあまりの恐ろしさに最早返事すらできなかった。

 

「はい、ストップ。頼堂君。それ以上やると古山君が何も話せなくなる。」

 

マリアが頼堂の肩に手を乗せて頼堂を落ち着かせる。

 

「...すいません。課長。」

 

「君もたまに抑えが利かないときがある。取り調べの時なら大いに結構だけれど、あんまり日常でやりすぎると敵を増やすだけだから、気をつけたまえ。」

 

微笑を浮かべながら頼堂を諭すマリア。

その微笑みは名前の通り、聖母(マリア)のようだ。

 

「はい。」

 

「古山君も、今後同じミスをしないように。」

 

まだ涙目の古山は首をブンブンと数回縦に降って、マリアの言葉に同意の意を示した。

 

「分かったならよろしい。城山くん。」

 

「...はい。」

 

「被害者の身元については、君も調査していたね。古山君の代わりに、私と頼堂君に説明してくれないか。」

 

「...了解しました。」

 

そう言って城山は立ち上がり、古山に代わってホワイトボードの前に行く。

すれ違い様に、古山が申し訳なさそうに会釈してきたが、城山はそれを黙殺した。

 

城山は女性だが、同期の古山よりも身体的にも精神的にも勝っている部分が多い。

だが、女性にしては少し低い声をコンプレックスに思っているらしく、口数が少ない。

それにより、古山とは警察学校時代からの仲だが、業務連絡くらいしかしていなかった。

 

「今朝発見された遺体のDNAから、沼津市内の大学生である大谷 翔(おおたに かける)という人物だと判明しました。」

 

「なるほど。大学生か。」

 

マリアが相づちを打つ。

 

「はい。さらに、先週発見された同じような変死体の身元も判明しています。そちらの被害者の名前は、佐藤 英介(さとう えいすけ)。大谷とは同い年で、中学から知り合いだったようで、2人ともあまり良い噂はなかったみたいです。」

 

「ということは、犯人は彼らの同級生の可能性が高いということか。」

 

頼堂が素直な感想を言う。

 

「確かに、その可能性が高いですね。俺、被害者達の身辺を洗ってみます!」

 

古山が意気揚々と立ち上がって宣言し、会議室を出ようとする。

 

が、マリアに止められた。

 

「いや、古山君と頼堂君はもう一度現場に行ってもらいたい。犯人の目星は私と城山くんでつけておく。」

 

「分かりました。ほら古山。俺たちは現場だ。」

 

「了解です!」

 

結局はなんとかして先ほどの名誉挽回をしたいだけなので、古山は頼堂と共に今度こそ会議室を出ようとする。

 

「あぁ、頼堂君。」

 

「どうかしましたか?課長。」

 

マリアが、今度は頼堂を呼び止めた。

 

「『彼』にも協力を依頼してあるから、状況説明とかは任せるよ。」

 

そう言われたとたん、頼堂が露骨に顔をしかめ、大きな溜め息を吐いた。

 

「...またですか。しかもなんで俺に。」

 

「仕方ないだろう。本人が頼堂君の方がの方が気が楽だと言っているんだ。」

 

「だとしたら、尚更嫌ですよ。どうせまた、こき使われるだけじゃないですか。」

 

一体、頼堂は何を嫌がっているのか。

気になった古山が、マリアに聞いた。

 

「あの、課長。」

 

「どうした?」

 

「いや、その『彼』って誰ですか?」

 

「あぁ、そうか。新任の君たちは知らないんだったな。」

 

そう言うとマリアは、いたずらっぽくウインクし、

 

「この街の涙を拭う、白いハンカチさ。」

 

と言い、いまだに顔をしかめたままの頼堂は、

 

「めんどくさい奴だ。」

 

と言って、また溜め息を吐いた。

 

古山と城山の頭上には、クエスチョンマークが、大量に浮かんだのだった。

 

※※※

海岸線を走る一台のパトカー。

それに乗っている警察官は勿論、頼堂と古山の2人だ。

ハンドルを握る頼堂は、ずっとむすっと、不機嫌な顔をしている。

例の『彼』に会うのがよほど憂鬱なのだろう。

 

「あの...頼堂さん。」

「ん?何だ?」

 

おずおず、といった風に古山が頼堂に話しかけた。

 

「その『彼』って、 そんなに嫌な人間なんですか?」

「ん~、どうだろうなぁ。」

「は?」

 

頼堂がとぼけたように言ったせいで、古山はすっとんきょうな声が出てしまった。

 

「とりあえず、悪いやつではないさ。でもなぁ...俺は苦手なんだよ。」

「な、なるほど...。」

「あぁ、苦手だ。ああいう、変に大人びたガキは。」

「ガキ?」

 

思いがけぬワードが飛び出たので、古山は思わず聞き返す。

 

「ん?言ってなかったか?今から会いに行くそいつは、まだ17歳の高校生だぞ。」

「17歳!?」

 

古山が驚くのも無理はないだろう。

自分の上司―しかも、所属する部署のトップである課長―が一目置き、捜査情報を公開する相手が未成年だったとは、夢にも思わないだろう。

 

「そ、そんな少年マンガみたいな高校生、本当に居るんですか!?」

「残念ながら、居るんだなぁ。」

 

軽い口調で、古山の質問に答える頼堂。

怒らせさえしなければ優しい、気さくな人間なのだ。

 

「まぁ、あいつの推理力がピカイチだってのも捜査に協力してもらう理由の1つではあるが、それとは別の理由もあるんだがな。」

「別の理由?それって、」

 

『何ですか?』と、古山が聞こうとしたときだった。

 

 

『二人とも、聞こえるか?』

 

 

署に居るマリアから、無線で連絡が入った。

 

「こちら、頼堂。どうかしましたか、課長。」

『頼堂君か。緊急事態だ。君たちが今居る辺りから1キロ程先の三津海水浴場で、ドーパントが暴れているとの通報が入った。すぐに向かってくれ。』

「了解。」

 

無線が切れる。

頼堂は一気に険しい表情になり、パトランプを点け、サイレンを鳴らし始めた。

古山も真剣な眼差しで、前を見つめる。

配属されてから初めて、ドーパントと対峙するのだ。

緊張しないはずがない。

 

「...古山。」

「はい。」

 

緊迫した空気の中、正義を貫く警察官の顔になったが2人が、会話をする。

 

「分かっているな?最優先すべきは、」

「一般市民の命、ですよね。」

「そうだ。よく分かっているじゃないか。」

 

通報を受けた海水浴場に、到着した。

 

「行くぞ。」

「はい!」

 

拳銃を片手に、パトカーから降りる2人。

すると、砂浜を見た古山の目が、驚愕に染まる。

 

―2体!ドーパントが、2体も!

 

そこには確かに、2体の異形が居た。

薔薇のような見た目の、生体的な異形。

白い体躯に、黒いマントを羽織った黄色い複眼を持つ異形。

白い異形は、サバイバルナイフのような武器で、薔薇の異形を何度も切りつけている。

 

―戦っている?

 

その光景は、古山にとっては未知の世界だった。

 

「ぼさっとするな!古山!」

 

頼堂に一喝され、我に還る古山。

 

「すみません!」

「あそこのドラム缶の陰に、一般市民が2人隠れている!救助に行くぞ!」

「はい!」

 

異形達に銃口を向けながら、古山と頼堂は砂浜を走って進む。

 

「大丈夫か!?」

 

ドラム缶にたどり着き、そこに居た2人の少女に、頼堂が聞く。

 

「はい!!大丈夫です!」

 

オレンジ色の髪の少女が大きな声で答え、隣に居る紅い髪の少女は、首を縦に振った。

 

「良かった!さぁ、早くこちらへ!」

 

古山がオレンジ色の髪の少女の腕をとり、パトカーへ連れて行こうとする。

しかし、

 

「駄目!ユウ君が!」

 

と、少女はそこを動こうとしなかった。

 

「ユウ君?その子はどこに?」

 

離れたところに隠れている友人でも居るのか。

古山はそう思い、少女に聞いた。

 

すると、少女はあろうことか、白い異形を指差した。

 

「まさか、ドーパント!?」

「違います!ユウ君はドーパントじゃありません!」

「でもあそこには、2体のドーパントしか居ないじゃないか!」

 

いくら友人だとしても、メモリを所持することは犯罪だ。

その、ユウ君とやらは古山達が逮捕しなくてはならない。

 

「頼堂さん!」

「何だ?」

 

異形達の戦いを見ていた頼堂がこちらを向く。

 

「この子の友人が、白いドーパントみたいです!」

「だから!ユウ君はドーパントじゃないです!」

 

古山の言ったことを強く否定する少女。

 

「お嬢さん。あの白いのと知り合いか?」

 

頼堂がこちらに近づき、少女に聞く。

 

「はい!!」

 

少女は、頼堂をまっすぐ見つめ、答えた。

頼堂も、少女をジッと見つめる。

すると、不意にニヤリと笑った。

 

「どうやら、本当みたいだな。」

 

そう言って、少女の頭にポン、と手を置いた。

突然の頼堂の行動に、古山と少女は驚く。

 

「安心しな。おじさん達も、あいつの知り合いさ。」

「え?頼堂さん、どういうことですか。」

 

古山に聞かれた頼堂は、振り返って、異形達の戦いをもう一度見る。

 

 

「おらぁぁ!!」

「ぐっ...!!」

 

 

白い異形が、薔薇の異形の腹にアッパーパンチを見舞う。

あまりの痛みに、薔薇の異形が膝を着いた。

 

「どうした?もう終わりか。」

 

2メートル程距離をとった白い異形が、挑発的に言う。

その言葉に薔薇の異形は、怒りを覚え、うなり声をあげながら立ち上がる。

右の手のひらを白い異形に向けると、そこから何枚も薔薇の花びらが飛び出し、白い異形へと飛んでいく。

花びらは白い異形に当たった瞬間、それぞれが小さな爆発を起こした。

砂が巻き上げられ、白い異形の姿は隠れる。

勝利を確信したのか、薔薇の異形は右手を下げた。

 

「...こんなのが本当に、効くと思ったか?」

 

砂煙の中からそんな声が聞こえたかと思うと、薔薇の異形の目の前に、白い異形の拳が迫っていた。

 

「はぁっ!!」

 

気合いの雄叫びと共に、白く、鋭いパンチが、薔薇の異形を襲う。

薔薇の異形は避けられるはずもなく、背後の海へと飛んだ。

 

「これで終わりだ。」

 

そう言うと白い異形は腰に着いたスロットに、白いメモリを差し込んだ。

 

 

「さぁ、地獄を楽しみな。」

 

 

 

『ETERNAL!!MAXIMUM DRIVE!!』

 

 

 

電子音声が鳴り響くと同時に、白い異形は飛び上がった。

 

「...古山。」

「はい。」

 

黙って戦いを見守っていた頼堂が、口を開いた。

 

「あれが、そうだ。」

「え?」

 

白い異形は回転し、ドリル状のエネルギーの渦を纏いながら、薔薇の異形に向かって行く。

 

「あいつが、例の『協力者』だ。」

「あいつが?」

 

どんどん距離を詰める白い異形。

薔薇の異形は、そこから動く体力も残っていないようだった。

 

「あぁ。いけ好かなくて、めんどくさい。」

 

白い異形の足が、薔薇の異形の腹に衝突する。

 

「この街の涙を拭う、白いハンカチ。」

 

 

「『仮面ライダー』、エターナル。」

 

 

頼堂がそう言ったと同時に、薔薇のドーパントが大爆発を起こした。

エターナルの蹴りから送り込まれた過剰エネルギーに、身体が耐えきれなかったのだろう。

その爆風を背に受け、エターナルはマントを靡かせる。

そのまま無言で、サムズアップした右手を横に突き出し、親指を下に向ける。

 

その姿はまるで、魔王(ヒーロー)のようだった。

 




いかがだったでしょうか。

まだAqoursのメンバーが全員揃っていないので、早々になんとかしなければと思っています(笑)。

また、例によって、下手くそな戦闘描写を入れましたが、前よりは良くなったと、個人的に思っています。

ご指摘がございましたら、感想欄や、作者のプロフィールページ(?)に貼っておいたTwitterのアカウントでも、受け付けております。勿論、感想も待っておりますので、気軽に書いてもらって大丈夫です。

次回はなるべく早く更新したいと思っています。

楽しみにしていただけたら、幸いです。

また、新たにお気に入り登録して下さった、


碧雷さん、極み無限さん、ほっかさん


ありがとうございます!






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