モンハン世界で狩猟ツアー【完結】 (糸遊)
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第0話 プロローグ的な何か

初投稿です。
駄作なので全く期待は持てません…


自分は恵まれた人生だったと思う。

 

いい両親の下に生まれ、兄や妹との仲だって良かった。

学校でだって友達もけっこういたし、バカやったり部活も勉強も頑張ったりしてなかなかの成績を残せた。

 

このまま、いい人生を歩んでいけると思っていた。

 

 

 

 

だから、自分が難病で死ぬなんて思ってもいなかった。

 

 

 

 

 

「俺の今までの頑張りを神様は見てくれてるのかねぇ…」

 

「どうだろうな。まぁ、地獄じゃなくて天国には行けるくらい頑張ってたさ。」

 

兄がそっけなく俺の独り言に応える。

成績や運動神経では全てにおいて俺の一歩上をいく野郎なのに兄弟喧嘩は全然なかったな… それだけ兄ができてる人間なんだろうってことなんだけど…

 

「お兄が死ぬなんて信じられないなぁ… 別の人が代わりに…なんてことは言わないけどやっぱり家族がいなくなるのは…さみしいよ…」

 

妹は俺の余命宣告が出たときなんて泣いてくれた。

最近だとこんな出来た妹はなかなかいないんじゃないんだろうか。

 

ともかく俺達3人は仲が良く、それでいて全員がなかなかデキる人間だった。まぁ兄貴は頭ひとつ抜けてる感じはあるけどさ。

両親は大して高学歴…というわけでもなくどうして俺達みたいなのが生まれたのかが謎とよく言われてきた。

 

「お前がいなくなるのか… もう3人で遊べなくなるのは確かに残念だな。」

 

「そうだなぁ… ワールドだって発売したてなのに全然やり込めんかったし… あとゴーヤを狩りたかった。」

 

「もう3人でモンハンできないのかぁ。あ、やば、アタシちょっと泣きそう。」

 

そうか… もう、モンハンできないのかぁ… それはショックだなぁ。

3人での協力プレイはホント楽しかった。それがもう出来ないとなると… あ、俺もちょっと泣きそうだわ。

 

「まぁ、お前は俺の誇れる弟だ。お前が弟で良かったと俺は思ってるよ。」

 

「アタシも自分の兄貴がお兄で良かったよ!」

 

 

うん… 心に来ること言ってくれるねぇ。

 

「おう… 俺もお前らの家族に生まれることができて本当に良かった…」

 

 

 

だから、俺は幸せだったと思うんだ。

 

 

 

そしてこれが兄妹との最後の会話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

「やあ、調子はどうだい?」

 

声をかけられて意識が覚醒した。

 

「あ…はい、まずまずですかね…」

 

「それは良かった。じゃあまずまずの調子の君に質問だ。君から見て私は何に見える?」

 

そう言われて初めて目の前に人…?がいるのに気付いた。なんか…男とも女ともいえる顔立ちをしているな。

 

「あー…っと、アークSシリーズのハンターさんですかね?」

 

「何でじゃ、地獄にいきたいのか?」

 

おおっ…コワッ。

 

「あー、じゃあ天使さんですかね?」

 

「えっへん。確かにその通り、私はいわゆる天使とか言われてる存在だね! 」

 

おぉ… 死んだら天使さんに会えた。

ん?じゃあ俺は天国にでも行けるのかね?

 

「今回、君の前に現れたのはね。君の生前の頑張りが認められたからだ。」

 

お?生前の頑張り?勉強とか運動とかボランティア活動とかかね?

 

「そうそう、そうゆう頑張りさ。そして、そんな頑張りを認められて君にはご褒美が与えられることになった。」

 

いや、心読めるんかい…

そして、ご褒美とな?

 

「そう、ご褒美だ。気になるその内容についてだが…2つのうち、どちらかを選べる。」

 

フムフム

 

「1つ目だが、君が元いた世界にかなり恵まれた環境で生まれ変わることができる。ただし、新しく生まれる。つまり、いまの君の記憶はここで終わりだ。」

 

「そして2つ目だが、君が元いた世界では架空だった世界で新しく生きることができる。これについては今の君の状態で架空の世界行きだ。」

 

 

えっ…なんかいきなり急展開。web小説かなんかですかこれは…

 

「もちろん、本来あるべき形である輪廻転生の道を辿ることも出来るが…どうする? もちろんこの場でじっくり考えてもらっても構わないが。」

 

なるほど…悩みますなぁ…

現実世界に戻れるとしても、今までだってかなり恵まれた方だったから正直現実世界は無しかなぁ。

 

となると…ちょっと異世界に心引かれるなぁ。

 

よし、決めた。あいつらだけが楽しむのはちょっと癪だからこっちも楽しんでやろうじゃないか。

 

 

「モンスターハンターの世界に行かせてください」

 

その答えを聞いて、天使さんはニンマリ笑った。

 

「君もチャレンジャーだねぇ。いいだろう。君はあの世界でも頑張れそうだ。それじゃあ心の準備が出来たら言ってくれ。」

 

 

モンハンの世界かぁ… 危険もいっぱいだろう。

だけど… それが面白い。

ゲームだってそうだった。難しいからこそ努力してクリアすることに意味があると思っていた。

それが現実に味わえる。 怖いけどそれ以上にワクワクしてきてる。

やるからには「モンスターハンター」の称号を目指してやる。

 

 

俺は準備が出来たと天使さんに告げた。

 

「いい顔してるねぇ。よし、君なら向こうでもうまくやれそうだ。それじゃあ…準備はいいかい?」

 

あぁ…ばっちこいだ。

 

「それじゃあ…いくよ?

ゆめと ぼうけんと! モンスターのせかいへレッツゴー!」

おいっ…なんか混ざってんぞ…

 

そこで俺の意識は途切れた。

 

 

 

-------------------------

 

 

「う~ん、ここは…」

 

目が覚めると、目の前には豊かな緑で彩られた丘陵地帯が広がっていた。

 

「えと…船の上じゃないの?」

 

 

いきなり前途多難の予感…

 

 

 




文章って難しい…
そして文字数はどのくらいがいいのかがさっぱりワカラナイ…


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第1話 ランポスたちを討伐せよ!

ゲーム準拠でいこうかなと思ってます。


「ここは…森丘か。」

 

正直、いきなり狩猟フィールドだとは思わなかった。

もっとこう…船の上でパンツ一丁で古龍に立ち向かうことになるかと思ってました。

そして気付いたことが1つ。

「たしかこのエリアってベースキャンプから遠いよな…」

 

そう、ここは…エリア3だったかな? ここからいろんなエリアに行ける分岐点みたいな場所のイメージがある。

 

そして、今になってやっと気付いた。

 

「モンスターだ…」

 

そこでは草食竜の代表格であるアプトノスが呑気に草を食んでいた。

 

「うわぁ…!生きてる! 本物だ!」

 

アプトノスはこちらがけっこうな距離に近づいても警戒の色は示さなかった。

 

「本当に来たんだな…」

 

実際に生きている命を見て初めてモンスターハンターの世界に来たという実感を持てた。

 

 

 

「安全なのは…ベースキャンプだよなぁ。」

 

しばらくアプトノスを眺めてからどこに向かうべきか考えていたけどやはりベースキャンプが安全だという考えに行き着いた。

 

「となると…一番近いのはエリア2、1経由のコースだけど…」

 

近いのはそのコースだ。だがそのコースを選ぶとするとエリア2でランポスたちに鉢合わせる可能性がある。

 

「武器が無くてどう戦えっていうんだ… 挑発アクションの真似でもしてみるか?」

 

まぁバカな考えは捨てよう。あのエリアはケルビがいる可能性だってある。遠目に観察してからだって遅くないはずだ。

あの天使さんが武器を持たせてくれたら楽だったんだけどなぁ… さてはあの天使さん、へっぽこだな?

とか考えてたらなぜか空から悪寒を感じたので先に進むことにした。

 

 

-------------------------

 

 

「さて…なにが出るか…」

 

エリア2がギリギリ見える距離から様子を探る。

 

「おぉ…ケルビがおる…! あっちょっと可愛いかも…」

 

ケルビに近づいてみると、アプトノス同様に警戒の色は示さずにのんびり草を食んでいる。

 

「角とか触ったら怒るかな… 触ってみよう」

 

幸い、ケルビはこっちの存在など目にもくれていないようで角も簡単に触れた。これがいにしえの秘薬になるのか…

 

 

次は雄のちょっと大きいケルビに触ってみようかなと思ったところで

 

 

 

 

 

ケルビが一斉に逃げ出した。

 

 

 

 

嫌な予感がして俺は一目散に近くにあった木の陰に隠れた。

 

 

その直後、竜…というよりは鳥に近いような鳴き声がエリア2に響いた。

 

あぁ…ランポス来ちゃったよ…

 

「ケルビと戯れてこんな状況に陥るとか笑えねぇわ…

さっきまでの俺をぶん殴りたい…」

 

さて、ここからどうするか…

幸い今隠れている木はエリア1に近い場所に生えているからダッシュすれば撒けるか…?いや、でもそれゲームの話だよなぁ…

 

 

 

よし、ちょっと様子を伺ってこっちに注意が向いてないときにダッシュかな?

自分の中で方針が決まり、木の陰から少しだけ顔を出してランポスの様子を伺おうとする。

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、後ろから押し倒された。

 

 

脳が即座に襲われた、と警報を発する。

 

 

俺はランポスを全力で蹴り飛ばした。獲物が予想以上の力を持っていたことに驚いたのかランポスは仰け反った。

 

 

俺を押し倒したランポスが声を上げ、獲物を見つけたことを他の個体に知らせる。

 

 

その隙にエリア1へダッシュをする。

 

 

 

 

(これならいける)

 

 

 

 

そう思ったのが不味かったのかもしれない。

 

 

 

 

いきなり、エリア6に繋がる高台からランポスが飛び掛ってきて吹っ飛ばされた。

 

 

ヤバイ。 本格的に命の危機を感じ始めた。

 

 

 

体勢を立て直すと、エリア1への道はすでにランポスに塞がれていた。

 

 

ランポスたちが獲物に向かってジリジリと近寄る。

 

 

(あぁ…これはゲームオーバーかもな… この世界に来てちょっと浮かれすぎたか…)

 

そんなことを思いながら、申し訳程度の抵抗に落ちてあった木の棒を手に取った。

 

ランポスが俺に向かって威嚇をする。

 

 

獲物に向かって飛び掛かる。

 

 

 

そして―――

 

 

 

そのランポスは空中で吹っ飛んだ。

 

 

「走って!はやく!」

 

 

 

そんな声がして我に返り、俺は一目散にエリア1に向かって走った。

 

 

そして、気がつくと俺はエリア1に辿り着いていた。

 

 

いい走りでした。これなら100m走を12秒切れるかもしれない。いやいや、いまはそれどころじゃない。

 

あれは…ハンターだよな?

 

お礼をしないとな…

本当に命の恩人だ。

 

一足先にベースキャンプで待っていることにした。

 

 

-------------------------

 

十数分後、さっきのハンターと思われる人がベースキャンプにやって来た。

 

「あっ、さっきはどうもありがとうございました。本当に命を救われましたよ…」

 

 

ひとまずお礼の言葉を。

 

 

「いやー、危なかったね!あんなところで丸腰で何してたのさ?」

 

 

あら、女性ハンターだったとは。

綺麗な赤い髪が印象的でなかなか美人じゃないか。

しかも…レウスX装備? えっ、強くない?

 

「いやぁ… まぁ迷子みたいなもんで ハハハ…」

 

 

赤髪のハンターさんはかなり訝しげにしていたが無理矢理納得してくれたようでした。

 

ともかく、これで一安心かな?

 

 

 




字数ってどのくらいがいいんでしょうね?
あと、ランポスを討伐してる描写がないですが許してくだされ…


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第2話 ハチミツ×ニトロダケ=元気ドリンコ

正直、転生物はそこまで好きじゃないんですが
モンハン世界にいく方法が思い付かなかったのでこれにしました。


「ほいっ!これ飲んでみなよ!眠気も疲れもスッキリさ!」

 

そんな言葉と共に、黄色い甘い香りの飲み物を渡された。俺の予想だと90%の確率であれかな…

 

「あっ、おいしい」

 

「でしょ!?やっぱり狩りの後は元気ドリンコに限るよね~ 体の疲れも抜けやすくなるし何よりおいしい!」

 

あぁ、やっぱり元気ドリンコだったか。

実際に飲んでみた感想は…元気ハツラツゥ!とかデカ○タみたいな味だなぁ。ま、なんとなく予想はしてたけど。

 

「君もなかなか波乱万丈な人生を送ってるね~。あんな場所で迷子になって丸腰でランポスに襲われてるとかなかなかないよ…」

 

「いやぁ…方向音痴なものでして…ハハハ…」

 

断じて俺は方向音痴ではない。ないったらない。

 

 

「この辺りだと見かけない顔だよね… あっ、もしかして新しく来ることになってるハンターって君のことかな?」

 

んん?そうゆうことになってるのか?

あの天使さん適当に放り出すからよくわからないよ…

 

「あー、そうかも…しれませんね。」

 

「なんだよ~、ハッキリしないなぁ。まぁその家を見てみなよ。じきにココット村に着くからさ。」

 

 

 

-------------------------

 

 

「村長!この人、森丘で迷子になってたんだけど新しく来るハンターさんってもしかしてこの人のことかな?」

 

ココット村につくやいなや、早速村長に紹介された。

この人がハンターの始まりなんだよな…

あと、村長の場所にいくまでにチラッとヒーローブレイドの場所見てきたけど…何もなかった。

…なんでだよ。

 

「おお、そうじゃそうじゃ。この人が新しく龍識船所属のハンターになった方じゃな。」

 

えっ?龍識船所属扱いなんですか?

つまり…時系列はダブルクロスなのか。

 

「おおー、龍識船のハンターはみんな優秀だって聞くね!これからクエストにいくことがかったらヨロシク!

わたしの名前はレイリスっていいます!覚えといてね!」

 

レイリスさんか。よし、覚えた。右も左もわからない新米なのでよろしくお願いします。

 

 

 

 

-------------------------

 

そして、次はマイハウスへ招待された。

 

うーん、ゲームと同じだなぁ…

おっ、プーギーがいる。 あれ?でもなんで天使のレオタード着てるんだ?最初は裸の王様じゃないっけか?

 

一人で疑問に思っているとレイリスさんが設備について説明してくれた。

説明してくれたのだが…

 

「明日になったら君の装備や雇っているオトモアイルーが到着するらしいから今日はゆっくり休んだ方がいいかもね。」

と言われた。

 

…ん?装備?オトモアイルー?もう雇ってる扱いなのかね?

とりあえず、明日になればわかるだろうから今日はのんびりするか…

 

というわけで、今日はココット村でのんびり過ごした。プーギーは温かくて最高のペットだね、うん。

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

次の日…俺の装備だというものが届き、オトモアイルーもやって来た。

 

ただ…

その装備が超強かった…

オトモも超精鋭部隊だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

というか、俺のセーブデータまんまだった…

 

 




強くてニューゲームにするか悩んでます。


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第3話 グギグギグ

お気に入り登録してくれた読者さんに感謝です


う~ん…これはちょっと予想外だったなぁ…

まさか、いきなりこのレベルの装備を使えちゃうとは…

昨日、森丘で丸腰で迷子になってたやつがいきなりグギグギグ着てバルカン棍担いできたらいくらレイリスさんが相手でも怪しまれるだろう。そもそもバルカン棍なんて出回っていい武器なのか?

なーんて事を考えていたら誰か訪ねてきたっぽい。

 

 

 

-------------------------

 

「おはよ~、装備届いたかい?」

 

噂をすればレイリスさんでした。

なんとか、武器防具は隠したけどどうしたもんか…

 

「ええ、いい具合に仕上がってましたよ。」

 

「それは良かった!じゃあこれから受けていくクエストについて村長がお話したいらしいから来てくれるかな?」

 

「わかりました。じゃあちょっと準備してきますね。」

 

 

初クエストかぁ…

キノコ集めとかかな?

 

 

 

 

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「オヌシは既にG級レベルの力は持っておるとの報告が龍識船ギルドからきておる。なのでオヌシにはレイリスと共にG級レベルの高難度クエストに臨んでもらいたい。」

 

 

おおっと…そうきましたか。

強いけどニューゲームではないのね。なるほど。

 

 

「オヌシの力は龍識酒場『ホーンズ』のマスターの御墨付じゃ。期待しておるぞ。」

 

 

御期待に添えるように頑張りたいと思います。

 

「おおー、ただの迷子じゃなかったんだね。ヨロシク!」

 

何度も言うけど俺は方向音痴ではない。ないったらない。

 

 

 

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いまはどんなクエストが受けれるのかを見に来ました。

たしか…ベッキーさんでしたっけ?獰猛化リオレウスを狩りに行こうとしてたのは記憶に残ってます…

ギルドガールズの面々ってなかなかにキャラが濃いよね…

まぁこの話は置いといて、今はクエストだ。

 

「あら?あなたが噂の新しいハンターさんね?

ウチのレイリスと一緒にめざましい活躍を期待してるわ。」

 

「おぉ…期待が大きいですね。 頑張ります。」

 

 

 

「ベッキー、今日はどんなクエストが来てる?」

 

「今日は…森丘にリオレイアが出てるわね… 家畜への被害もけっこう出てる様だからリオレイアの狩猟を頼みたいわ。」

 

「了解!頑張ってきます!」

 

 

初陣はリオレイアとなりました。よし、頑張ろう。

 

 

 

 

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よし、じゃあ俺もガチの装備で良さそうだから愛用してた装備で行っちゃおう。

 

武器はミラバル棍。

頭:グリードXR

胴:ギザミXR

腕:グリードXR

腰:ギザミXR

脚:グリードXR

龍の護石 痛撃5 ○○○

発動スキルは切れ味レベル+2、見切り+2、業物、弱点特効、超会心

 

いわゆるグギグギグと呼ばれる装備だ。切れ味をカバーできるこの装備は切れ味以外はほぼ完璧なミラバル棍との相性は良い。

で、俺はブレイヴ操虫棍が好きなんだよね。

オンラインとかで全然見ないけどブレイヴ操虫棍はギルドスタイルより強いんじゃないかなんて思ってたりしてる。

 

 

 

まぁ、ともかく今回は俺の力がどれだけ通用するか。

あと、レイリスさんはどのくらい強いのかを見てみる感じかな?

 

 

 

というわけで、リオレイアの狩猟いってみよー。

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

森丘に到着後、レイリスさんと一緒に飛竜の巣のエリアへ向かう。

 

そして、いた。

陸の女王、雌火竜リオレイア…!

 

さて、俺はうまく立ち回れるかねぇ…

まず頭に虫を飛ばして赤エキスをゲット。咆哮をイナシ。そのまま脚に虫を飛ばして白エキスをゲット。

で、俺はトリプルアップ大好き人間なので隙を見つけて首の辺りからオレンジゲット。これでトリプルアップ完了だ。

よしよし、ここまで順調かな。

 

多少余裕も持てたのでレイリスさんの方をみると…

リオレイアの尻尾回転を大剣でイナシていた。

あれ?レイリスさんもブレイヴスタイルなのか。

…しかもあれ、ネブタジェゼルじゃないか?

…マジかよ。ラスボス武器も案外出回ってるんだな。

 

そんなことを考えているとレイリスさんが抜刀攻撃をレイアの頭にぶち当てた。そしてなんとスタンが発生。

えっ?スタン?じゃあレウス装備に抜刀減気を付けてるのかね?

スタンから回復したリオレイアは怒り状態へ。

俺は咆哮をイナシて即閃光玉をなげた。

リオレイアは目を眩ませて落下。そこへ俺とレイリスさんが切り込む。

 

 

 

 

そこからは、けっこう一方的だったと思う。

特に危険な場面もなく順調に狩猟を進めることができた。

ただ、最後の一撃を決めるときにちょっと躊躇ってしまった。これではいかんな… はやくこの世界の倫理観に慣れないと…

 

 

 

ともかく、俺の初クエストはこんな感じになりました。

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

 

「かんぱーい!」

 

「イエーイ!」

 

レイリスさんの乾杯に合わせて俺もグラスを鳴らした。

「いやぁ、やっぱりただの迷子じゃなかったね!あんなにスムーズに狩猟ができる人はなかなかいないよ!」

 

「いつまで迷子を引っ張るんですか… まぁでも初めてにしちゃ上出来だったんじゃないですかね?」

 

「上出来も上出来さ!あんな気持ちいい狩りが出来たら達人ビールだって美味しくなっちゃうよ!」

 

あ~あ~、そんなに飲んで大丈夫なんですか?

俺はお酒が苦手だから飲んでないけどハンターって酒癖わるいイメージあるぞ…

 

あっ、そういえば聞きたいことがあったんだ。

 

 

「そういえばレイリスさんの今日の装備ってどんななんですか?」

 

 

「わたしぃ~?わたしはぁ、ブラックX一式にお守りで弱点特効と超会心つけた装備だよぉ~エヘヘ」

 

おいおい…酔い始めてるじゃねーか…

てか、ブラックX一式に弱点特効超会心だと…?

 

…神おま使ってるのかねぇ

 

 

 

 

 

俺のハンター生活1日目は成功と神おまへの嫉妬で終わりましたとさ。




そんなお守りあったらいいなぁ…


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第4話 上手に焼けました

前回装備の詳細を書きましたが、ちょっと面倒だったのとそこまで面白くもないかなと思ったのでおおまかな紹介だけにします。


そういえばレイリスさんの防具、見た目はレウス装備だったよな…。となると防具合成もできるのか?

と、疑問に思いレイリスさんに聞いたところやっぱり防具合成は出来ちゃうらしい。

これは…やるしかないな。でもどんな見た目がいいかねぇ…

ゲームでやってたころはユクモシリーズが好きだったから大体ユクモシリーズで行ってたけどこっちではちょっと気分を変えていきたい。

そんなことを考えていたら… おやおや?良さげなのがあるじゃないですか。

「アスリスタXか…見た目もいい感じじゃん。」

 

イカ… オストガロアの防具であるアスリスタXシリーズを見つけた。 俺、こんなの作ってたっけな…?

ただ、見た目は王道の騎士って感じでとってもカッコいい。俺こうゆうの大好きよ?

というわけで、アスリスタXをメインにして、装備BOXに入っていた見た目がいい感じになる組み合わせを試行錯誤して小一時間ほど経った。

「ふぅ…じゃあこの装備を… あれ? どこでどうすればいいんだ?」

 

原作だと龍識船の研究室だったけど、こっちでも同じなのかな?だとしたら龍識船に行かないことには始まらない…

 

「うーん… まぁ、困ったときのレイリスさんですね。」

レイリスさ~ん、出番ですよ~

 

 

 

 

-------------------------

 

「君、なんだかいっつもどこ行けばいいのかわからなくなってない? やっぱり迷子の素質あるよ」

 

「迷子の素質ってどうゆうことですか…」

 

「アッハッハ。ん~、で防具合成の話だっけか?

防具合成なら、どこでもいいから武具屋さんにいけば

やってくれるはずだけど… まず行ってみなよ。引き

受けてくれるはずだから。」

 

なるほど。武具屋さんでも出来るようになってるっぽいな。これは便利だ。

 

じゃあ武具屋さんへレッツゴー。

 

 

 

 

-------------------------

 

 

「防具合成かい?もちろん出来るさ。それでどの防具を合成するんだい?」

 

俺はグギグギグ装備と選んできた装備を渡した。

 

「おっ、なかなかいい防具を使ってるねぇ。君、もしかして噂になっている龍識船所属の迷子のハンターかい?」

 

…おい。…なんだ迷子のハンターって。

 

「あー、…えぇ、まぁ、それは自分のことかと。」

 

「やっぱりそうかい。 実力はすごいのになぜかいっつもフラフラして迷子になっているって噂になってるよ?

こうして見た感じ、迷子になりそうな感じではないけどねぇ…」

 

「ご主人、ちなみにですがその噂。どこから聞こえてきました?」

 

「そりゃ、レイリスちゃんさ。『新しいハンター仲間が増えた! よく迷子になってるけど、とってもいいハンターだよ!』って嬉しそうにしゃべってくれたよ。」

 

…レイリスさんは俺を迷子のハンターにしたいらしいな。 まぁ、いいか。

 

「出所はレイリスさんか…。 あ、ご主人、この防具はいつ頃取りに来ればいいんでしょう?」

 

「うーん、全身が終わるのは明日の夕方ってところかねぇ。」

 

oh… 今はお昼の前だから一日以上あるなぁ…

 

「わかった。じゃあその頃に取りに来るよ。かっこよく仕上げておいてくれ。」

 

「もちろんさ。これでも腕には自信があるんだぜ?

新任祝いのプレゼントで最高の仕上がりにしてやるよ。」

 

それは頼もしいな。 自信満々の顔でいる武具屋さんを俺も笑顔で後にした。

 

 

 

 

 

「今日はどうすっかねぇ…」

 

自室のベッドでプーギーとぐってりしながら今後の予定、正確には明日の夕方までの予定を考えていた。

 

「防具はグギグギグだけってわけじゃないからまぁ狩りにも行けるけど… ちょっとのんびりしたいなぁ」

 

ただ、ココット村で今日一日をずっと過ごすのはどうかと思うなぁ… 村長にはわるいけどちょっと何もない感じなんだよなぁ…

 

と、ここで妙案が浮かんできた。

 

「別に狩猟だけがモンハンじゃないよな… よし、決めた。」

 

 

 

今日は採取ツアーだ。

 

 

 

-------------------------

 

「よし、行こうか!」

 

いや、なんでいるんですか…

 

「そりゃあ、君を一人にしたら迷子になって帰ってこれなくなっちゃうからね!」

 

し、失礼な… 俺は方向音痴ではない。ないったらない。

 

「まぁ気にせず行こうよ! 私の装備は自動マーキングの効果が発動してるけど大型モンスターは見当たらないみたいだしさ!」

 

はぁ… まぁ行きますか。

 

 

この前はエリア3の明るい方にいたんだったな…

じゃあ、今日は木の生い茂るエリア9からいってみますか…

 

 

 

 

 

 

「おおっ!厳選キノコ! ふっふっふ。すごいでしょ?もっと私を崇めてもいいんだよ?」

 

レイリスさんテンションたけぇな…。たしかに珍しいっちゃ珍しいけど崇められるほどの物ではないと思いますよ…。

 

「なんだよ~。つれないな~。あっ、厳選キノコどころか特産キノコすら見つからないからすねてるんでしょ!まぁまぁそうゆうときもあるって!」

 

むむっ、そこまで言われちゃ黙っていられないな。

そうして、俺は全力でキノコを漁る。

 

「おっ、ムキになっちゃって~。そうやって探しても物欲センサーに反応しちゃうぞ~?」

 

おおぅ… 物欲センサーあるんかい。

 

となると、無心で行くか…。

 

 

 

深呼吸…。

 

 

 

そして、雑念がとれたところでまた、キノコを漁る。

 

 

 

無心だ、俺。いいぞ、その調子。

 

 

 

その調子でいけば厳選キノコはきっと応えてくれる…!

 

 

 

 

…! あった!

 

 

 

 

 

 

 

「厳選キノコ!ゲットだz…

 

 

…なんか猪が走ってきて吹っ飛ばされた。

 

 

…レイリスさんはもうお腹を抱えて悶絶している。

 

 

野郎‼ぶっ殺してやらぁ‼

 

 

 

 

 

…猪さんは生肉になりましたとさ。

 

 

 

 

-------------------------

 

その後、粗方森丘を回り終え、時間がくるまでエリア11で釣りをすることにした。

 

「おっ、トロサシミウオだ。これ美味しいんだよね~。」

 

レイリスさんばっかりに食いつくな… 俺だって採取装備で来てるから釣り名人は発動してるのに…

 

「やっぱり普段の行いじゃないかな?私は迷子にならないでしっかりしてるしね。」

 

…もう、泣きそうだ。

 

「いやー、でもこうして多人数でクエストに行けるってのも楽しいね!」

 

それはたしかにわかる。ソロで極めるのもいいがマルチでワイワイガヤガヤも楽しいもんな。

あいつら楽しくやってるかなぁ…?

あぁ…思い出すと新大陸のイビルジョーが狩りたくなってきた…

 

「私、迷子君がくるまでほとんどソロだったんだよね~、もちろん馴染みの仲間もいるけどいまは各地に散らばってて忙しいし…」

 

「ヘルブラザーズさん達ともいったりするけどあの人達もだいぶ年配になってきてるし、毎日クエストをこなすってのは難しかったんだ~」

 

「それに、ソロっていうのは危険性が跳ね上がるからね…最近は亡くなったりする事例はギルドの支援が充実してきたからぐんと減ったけど、大ケガをしてしまう可能性は低いわけじゃないんだ…」

 

「だから、迷子君が来てくれたのは本当にうれしいな。

これで久しぶりに協力して狩猟ができるからさ!」

 

「亡くなる」の単語を聞いて息がつまった。

そりゃ、あるよなぁ… あのときの俺だってレイリスさんが来てなかったらやばかっただろうし…

レイリスさんの装備を見るとたしかにこの辺りでは周りとの装備のレベルが段違いだ。

周りとレベルが違いすぎても合わせづらいしなぁ…

たしかにブラックX一式に弱点特効超会心とか元の世界でも見たことない気がする。

となると俺みたいな力量を持った人が近くにいるのはいいのかもしれないな…

 

「さて、そろそろ時間かな… 迷子君にも私の話聞かせちゃって悪かったね。」

 

「いえ、全然ですよ。ただ… 最後にちょっとやっていきたいことがあるので…いいですか?」

 

そこで俺は肉焼きセットを取り出した。

レイリスさんもなにをやるかわかったのか笑顔で了解してくれた

 

 

 

さっきのブルファンゴからいただいた生肉を火にかける。

 

 

頭のなかで例の曲が流れ出す。レイリスさんもリズムをとってるみたいだ。

 

そして… タイミングは完璧。

 

 

 

俺とレイリスさんは顔を見合わせ言った。

 

 

 

 

「「上手に焼けました~!!」」

 




今回は3000字です。
平均5000とかはすごいなぁ…と思います


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第5話 攻めて攻めて攻めまくるニャ

オトモアイルーを書いていなかったなと思い出しました。
あと、前話の最後の方を少し書き換えました。
目を通していただけるとありがたいです。


「旦那さん、起きるニャ。」

 

頬を誰かにつつかれる感触があり、目が覚めた。

体を起こすとそこには

 

 

 

 

 

猫がいっぱいいた。

 

 

 

 

 

 

 

「旦那さんはボクらのことを忘れてるんじゃないかニャ?」

 

あぁ…猫さんたちちょっと不機嫌だ…

ごめんなさい、だって作者も忘れてるんだもん。そりゃあしょうがないよ。

 

「そうゆう生々しい話はなしニャ。ともかく、ボクらも旦那さんのお役に立てるように頑張ってきてるのニャ。

それを忘れてたの一言でバッサリはあんまりニャ。」

 

「ボクらは3話でやっと出てきて次から猫奮迅の活躍を見せられると思ったら旦那さんが迷子になる話ばっかり見せられてうんざりだニャ。」

 

おいコラ、君たちも充分生々しい話をしてるじゃないか。3話とかそうゆう単語を使うんじゃない。

 

「ともかく、次のクエストからはボクたちをしっかりつれていって欲しいニャ。もちろんモンニャン隊でも構わないけど出来れば活躍が文章に残されるクエストの方がいいニャ。」

 

おいバカやめろ。メタ発言をするんじゃない。そんな発言をしたら番外編でモンニャン隊を書かないといけなくなるでしょ…

 

 

………まぁ、ともかく。

こいつらは頼りになるやつらだ。

それは俺が一番知っている。原作でどれだけ助けられたことか。なんだか前世からお世話になりっぱなしだなぁ。まぁよろしくたのむよ。

 

「任せとけニャ。超特訓と超休憩を繰り返して鍛え上げたこの体でバリバリ活躍してみせるニャ。」

 

…メタ発言がなければもっとかわいいんだけどなぁ。

 

 

 

 

-------------------------

 

「あっ!ネコさんだ!かわいい!抱っこさせて!いいでしょ?いいよね?ありがとう!うわぁ…毛なみサラサラだぁ…!うわぁ…モフモフ!ほんとかわいいなぁ…!」

 

…なんかレイリスさんが俺のオトモをものすごい速さで奪っていったぞ。

俺のオトモ「イクラ」も「ニャ!?」「ニャニャ!?」とか言ってるし…。 鍛え上げた体はどうした。

 

 

「この子、迷子君のオトモなんだ!いいね!よく育てられてるよ!それにスキルやサポート行動も…おぉ…強いね…!」

 

 

イクラはトレンドがファイトのオトモだ。

ニャンタークエストなんかではよく使ってたなぁ。

いわゆるブーメラン猫に育て上げている。 ニャンターだってうまく育て上げれば下手なハンターより火力が出ることだってある。

それに、生存力においてはニャンターはなかなかのもんだと思うしね。

 

「ボクの凄さがわかるとはなかなかできるニャ。これからはボクだけじゃなく、旦那さんオトモ一同でクエストをサポートしていこうと思ってるのでよろしくニャ。」

 

 

「えっ!キミ以外にもネコちゃんいるの!?天国じゃん!ヤッター‼」

なんかレイリスさんテンションたけぇな…

イクラもちょっと戸惑ってるぞ…

 

レイリスさんが落ち着いてから俺たちはクエストを探しに行くことにした。

 

 

 

 

-------------------------

 

「あなたたちレベル向けの森丘でのクエストはないわねぇ… 沼地でのゲリョス狩猟のクエストなら届いてるけど… どうする?」

 

ベッキーさんに聞いたところ森丘での狩猟クエストは無いけど、沼地にならゲリョス狩猟のクエストがあるみたい。

 

「私は全然構わないけど… これでもいいかな?」

 

「俺も大丈夫ですよ。イクラはどうだ?」

 

「ボクも大丈夫ニャ。」

 

 

「それじゃあ決定ね。沼地でゲリョスの狩猟。頑張ってきてください。」

 

 

というわけで、沼地でのゲリョスの狩猟、いってみよー。

 

 

 

 

-------------------------

 

 

沼地へと向かう竜車が、ココット村からでたのはクエスト前日の夜。

現地到着はクエスト当日の朝だった。

竜車はもうちょい揺れるもんだと思ってたけど案外揺れなかったのでそこそこ眠れた。

ネムリ草のお香なんてものを使うハンターもいるらしいけど俺には必要なさそうだ。

 

 

「沼地は初めてだな… もっとぬかるんでるものかと思ってたけどそうでもなかった…」

 

「あぁ、それね~。どうやらハンターをやっている人たちにだけ働く不思議な力があるらしいんだよね。アタリ…なんたら力学とかいうやつ。だから私たちはあんまりぬかるみに足をとられないらしいよ? 普通の人だと大変なんだってさ。」

 

流石に無理矢理すぎやしないか…?

なんか今回メタな話多いなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

さて、沼地を進んでいくと…いた。

 

 

毒怪鳥…ゲリョスだ。

 

 

う~ん。リオレイアに比べると迫力に欠けるなぁ。

 

 

「旦那さん、油断してる感じがするニャ。アイルーは1匹のサシミウオにも全力を尽くすニャ。油断は禁物ニャよ?」

 

 

 

…こいつに諭されるとは。

まぁたしかに油断してたかもな。ゲームだとこんな助言はオトモはくれなかったけどこの世界だとほんと頼もしいな。

 

 

「それじゃあいくよっ!」

 

レイリスさんが先陣を切ってゲリョスの頭に抜刀攻撃をぶちこんだ。

 

 

さあ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

……戦いはじめて気付いた。

ゲリョスあんまり強くないな。

 

 

 

いや、ゲリョスが弱いというより、俺達が強いのか。

レイリスさんは的確に抜刀攻撃、イナシを使いこなしてるし、俺だってエキス効果広域化虫で全員にブーストをかけている。

なにより、イクラがこんなに強いとは思わなかった。

ガンガン鬼人笛吹いてくれるし、睡眠武器を持ってるお陰で睡眠を狙える。

そこにレイリスさんのW抜刀溜め3なんてぶちこまれた日にはたまったもんじゃないだろう。

 

途中、ゲリョスが地面に倒れ伏し、緊張感が消えたがレイリスさんは容赦なく溜め3をぶちこむしイクラはメガブーメランぶちこむしで、もうなんかゲリョスがちょっとかわいそうだった。

 

 

 

 

と、まぁこんな感じでゲリョスの狩猟はあっさりと幕を閉じた。

感謝の念をこめてしっかり剥ぎ取らせていただく。

 

 

うん、今回もいい狩りだったかな。

 

 

 

 

-------------------------

 

「乾杯!」

 

「イエーイ!」

 

「ウニャ!」

 

 

二人と1匹の小気味良いグラスの音が鳴り響いた。

 

 

「うん!やっぱり迷子君はいいハンターだね!オトモだってこんなに活躍してくれたし!」

 

「まぁざっとこんなもんニャ。ボク以外にも精鋭たちはたくさんいるニャ。期待しててニャ。」

 

「うん!期待して待ってるよ!」

 

 

確かにオトモがこんなに強いとは思ってなかった。

 

 

今回の狩りではそれを発見できたのが大きな収穫かな?

 

「迷子君と、オトモのみんながいればクリアできないクエストなんてない気がするよ!ほんとに君達が来てくれて良かった!」

 

「それは良かったニャ。だけどハンターは油断は禁物ニャ。いつどんな異常事態が起きるかわからないから、備えはしっかりしておくべきニャ。」

 

こいつしっかりしてるなぁ…

まぁたしかにこいつの言う通りだ。

油断はしちゃいけない。特にこの世界だとそれが死に繋がってしまうかもしれない。

 

 

 

 

今のところはうまくいってるかなぁ…

このままうまく行き続ければ平和だなぁ…

 

 

 

 

 

そんなことを思いながら俺はグラスの中のハチミツ入ミルクを飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっとメタ発言多かったな…
感想、アドバイス等お待ちしております。
ただ、返信は出来るかわかりません…


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第6話 狩人のための舞台~森丘~

猛ホロロパラソルって強いですよね。


「というわけで今回は森丘での大連続狩猟となるわ。

ターゲットはドスランポス、イャンクック、リオレウスの3頭です。今までよりは、かなりハードなクエストだから用心して臨んでね。」

 

 

ココット村の村長に呼ばれた俺たちは、森丘に現れた大型モンスターの大連続狩猟を依頼された。

大連続狩猟は初めてだな… まぁしっかり準備して臨もう。

 

「ドスランポス、イャンクックはまぁ比較的楽な部類だからあまり問題はないかな~ やっぱり危険なのはリオレウスだよね。 まぁこのパーティなら大丈夫だとは思うけど。」

 

最近の俺たちのパーティ構成は

俺、レイリスさん、俺のオトモ2匹という構成になっている。この間のゲリョス戦ではオトモは1匹だけだったけど。レイリスさんの枠でオトモをつれていけるらしい。

 

そして、今回つれていくオトモは

アシストトレンドのネギトロ。

回復トレンドのアマエビ の2匹だ。

 

俺がもとの世界で1番オトモとして使ったのはこの2匹だったと思う。やっぱり罠と回復はありがたい。

 

「よろしくですニャ!」

「よろしくお願いしますニャ~」

 

「ネコちゃん2匹と狩りができるなんて…!なんて幸せなの…!」

 

そして、レイリスさんはなかなかのアイルー好きらしい。よくマイハウスに訪ねてきてうちのオトモをぶんどっていく。

 

「リオレウス以外はあまり問題ないかな…

でも油断せずに行きましょう。」

 

閃光玉も調合分持ったし、念のためのアイテムもある。

これで大丈夫だとは思う。

 

 

 

 

それじゃあ、初の大連続狩猟いってみよー。

 

 

 

 

-------------------------

 

 

森丘はココット村から2~3時間で着く。

 

 

 

「よし!まずはドスランポスだね!」

 

たしか…ドスランポスはエリア9とかその辺りにいるはず… まぁ遠くはないな。

よし、いってみよう。

 

 

 

 

 

 

エリア9にはいると早速………いた。

 

ドスランポスだ……。

 

 

 

「そんじゃあいくよっ!」

 

レイリスさんが切り込んだ。

 

後ろから俺も続く。

 

ドスランポスは操虫棍のエキスを三色揃えることができない相手だ。つまり、操虫棍はスーパーアーマーを得ることができない。

ドスランポスは細かくすばしっこく動く相手だからレイリスさんの攻撃範囲外から攻撃するとなるとなかなか難しい…

 

 

 

そう思っていた時期が僕にもありました。

 

 

 

 

 

「迷子君はとりあえず殴りまくって!私は抜刀メインにするから位置取りも楽だから!」

 

 

ヤダ…レイリスさんカッコいい…。

 

 

 

 

そんな感じのレイリスさんの神対応があってドスランポスはあっという間に沈んだ。

もちろんドスランポスだからって剥ぎ取らないなんてことはない。いただいた命だ。大切にしないと。

やっぱりこのあたりの感覚はゲームと大きく違うなぁ…

 

 

さて、次はクック先生だ。

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

30分ほどクック先生を探しているとエリア4でその姿を見つけることができた。

 

おぉ…クック先生だ…。たしかに他と比べると可愛らしい顔かもしれない。

 

それではクック先生、狩猟よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

レイリスさんが抜刀攻撃を的確に頭に当て、俺は側面から翼を攻撃。

 

 

二人とも、ときどき尻尾回転に引っ掛かったり突進に轢かれてしまうときがあったけどその程度の消耗なら回復オトモのアマエビがすぐに癒してくれた。

 

 

そしてオトモ達がクック先生に睡眠をとってレイリスさんが抜刀溜め3をぶちこんだところで、クック先生は倒れた。

 

 

クック先生、ありがとうございました。

素材、いただきます。

 

 

さて、次は空の王者か…

 

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

リオレウスといえばモンハンの看板。

初心者はその相手をしただけでなかなかうまい立ち回りが出来ずに、力尽きてしまうこともあるんだろう。

なにより、空の王者の異名を持つだけあってその滞空時間が長いのが厄介だ。

 

 

だけど、そんなリオレウス。

あるアイテムを使えば簡単にその飛行能力を封じることができちゃうんです。

それは閃光玉。

リオレウスが飛行を始めたら慌てずに目の前に向かって閃光玉を投げてやるとあっというまに墜落する。

もちろんダウンしてる間にタコ殴りにだってできちゃう。

だからリオレウスは閃光玉があるかないかで、難易度が大きく変わるモンスターだと俺は思っている。

 

 

 

 

さて、そんなことを考えながら俺たちはエリア5、いわゆる飛竜の巣のなかに足を踏み入れていた。

 

 

はいると同時にけたたましい鳴き声を浴びせられた。

うーん、ランポスがいるか…。

ここはあれの出番かな?

 

「そうだニャ。ここは1回追っ払っておくのが吉だニャ。」

 

そういってアシストオトモのネギトロは高い音の笛を吹き始めた。

吹き終わりに一際甲高い音が鳴り響いたかと思うとランポスたちは巣へと戻っていった。

 

「ついでにこれもおいておくニャ。ボクの予想だとそろそろリオレウスが現れそうニャ。」

 

そういうとネギトロは、毒々落とし穴を設置してくれた。

落とし穴にはめると同時に毒状態にする優れものだ。

 

 

そうして、狩りの準備をしてから数分後。

 

 

 

大きな羽ばたき音が聞こえてきた。

 

 

 

 

来た…!

火竜…リオレウス…!

 

 

こうしてみると確かに漂う威厳のようなものは今までで1番だ。

 

リオレウスはこちらの気配には気付かずに、巣のなかを悠然と闊歩する。

 

 

そして…

 

 

 

毒々落とし穴を踏み抜いた。

 

 

 

リオレウスが落とし穴の中でもがく。

 

 

さて、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

レイリスさんがリオレウスの頭を抜刀攻撃で狙ってスタン値を稼いでいく。

 

俺は、落とし穴でもがいているうちにエキスを3色集めて、レイリスさんの反対側から頭を殴る。

 

リオレウスが落とし穴から脱出する。

 

そして怒り状態へ移行。

 

 

 

だけど―――

 

怒り状態へ移行後、確定行動のバックジャンプブレスに合わせて俺はリオレウスの目の前に閃光玉を投げ込んだ。

 

 

 

閃光―――――

 

光が収まった後にはリオレウスが地面でダウンしてもがいていた。

 

すかさず先程の落とし穴の隙にブレイヴ状態になっていたレイリスさんがW抜刀溜め3をぶちこんだ。

 

俺も後に続いて頭を殴る。

 

そして、再びレイリスさんの抜刀溜め3がリオレウスの頭に叩き込まれ―――スタン。

 

その間も俺たちは攻撃を続ける。

 

そして、スタンから回復したリオレウスはオトモ達が持っている睡眠武器によって睡眠状態へ。

 

そして、そこへレイリスさんがまたも抜刀溜め3をぶちこんだ。

 

……まだ落ちないか。でも後少しだ。そう考え、頭を殴っていたところで

 

 

 

 

 

 

自分の攻撃モーションがおかしい。

 

そんなことに気がついた。

 

 

これは……エキスの効果が、

 

 

 

 

そこまで考えたところでリオレウスが咆哮をあげる。

 

あっ、マズッ。

 

ここは…ブレスが… 直撃する場所…

 

 

 

そしてブレスをぶち当てられた。

 

 

 

 

 

熱い!?熱い!!これが火属性やられか!?

 

 

 

 

 

ブレスが直撃したあたりの皮膚が痛みを訴える。

 

 

 

これは…回転回避をすれば治るのか…?

 

 

幸いリオレウスは今、こちらを狙ってはいない。

3回ほど回避行動をしたところで皮膚が持っていた熱は消えた感じがした。だが痛みはまだ残っている。

 

そこでリオレウスが俺に狙いを定めた。

これじゃあ回復薬なんて飲めないぞ…どうしたもんか…

と、思案していると体に心地よさが走り、痛みが急に引いた。

 

「旦那さ~ん。真・回復笛の術ニャ~。」

 

 

ナーイス!流石俺のオトモだ。

 

何だかこの世界に来てからオトモに助けられてばっかりな気がするなぁ…

 

 

 

…さて、ちょっと痛手も負ったけど終わりにしようじゃないか。

 

 

 

 

そうして、俺は再びリオレウスに向かって操虫棍を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大連続狩猟が無事に成功したことを祝って~…」

 

 

「カンパ~イ‼」

 

「カンパ~イ!」

 

「「ウニャ!」」

 

 

 

途中、俺がリズムを崩してしまったときがあったものの、力尽きることはなく今回も無事にクエストをクリアすることができた。

 

今回はオトモに助けられたなぁ…

 

あと、回りが見えてなかった。操虫棍を使っててエキスが切れてるのに気付かないとはなんたることか。

 

「珍しくあんなミスしてたからちょっとヒヤッとしたよ~。油断は禁物だよ?」

 

「すいません… 以後精進します…。」

 

「今回のブービー賞は旦那さんで決まりだニャ。」

 

「そうだニャ~。」

 

あぁ… 泣きそう。

 

 

 

 

今回は自分の未熟さを改めて見つめ直せた狩猟だったかな…

 

 

 

 



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第7話 リモホロ・ミックスグリル

自分の文を読み返して思うのは
内容が浅いことと、「…」をよく使ってるなぁという
ことぐらいです。


「そういや、しっかりした料理を食べてなかったな…

今日辺り、食べに行ってみよう。」

 

この世界に来てから、食べ物は簡単に肉を焼いたものしか食べてないことにさっき気付いた。

 

原作だと、食堂はガッツリ屋外型の屋台って感じだったけど

この世界だとどうなってるもんかね…

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

 

初めて訪れた食堂は、なかなかの賑わいを見せていた。

 

建物としては屋内にもしっかりお客さん用の席が用意されており、でも屋外にも原作と同じように飲食スペースがある感じか。

 

そして、来てるお客さんもイメージしていたムサいオッサンばっかり…なんてことはなく、普通に女性客や親子連れなんかも見受けられる。

 

正直、ココット村は辺境に位置する集落であり、あんまり人で賑わっているイメージはなかった。

 

これもあれかね…? 飛行船技術の発達で観光客の往来が盛んになってるからなのかね?

 

 

「さて、メニューはどんなもんかな…」

 

壁に書かれてあるメニューを眺める。

 

おぉ…。 なんだか見覚えのあるメニューがいっぱい書かれているぞ?

それに、ゲームでは見られることのなかった料理なんてのもメニューに連なっている。

これはしっかり吟味せねば…。

 

 

 

 

5分ほど考えたところで、「リモホロ・ミックスグリル」

と「シモフリトマトのサラダ」を注文することに決めた。

 

また肉かよ… なんて言わないでください。 やっぱりお肉って美味しいでしょ?

それに、俺はトマトも好きだ。

シモフリトマトなんかは俺の中の食べてみたい食材ランキング上位に食い込む位だからこの機会に実食してみよう。

それに、お肉だけじゃバランス悪いですしね。

 

 

 

 

店内は賑わっており人も多かったので、俺は屋外の席で料理が出来上がるのを待つことにした。

幸い、今日は晴天だ。

 

 

 

そして、のんびりと数分ほど待ったところでいい香りと音を響かせながら料理が運ばれてきた。

 

 

うわっ…。 めっちゃウマそう!

 

 

 

目の前に置かれたらよだれが溢れてきた。

今日は食堂で食べると決めてから、朝飯をセーブしたんだ。

 

今の俺の胃袋なら、いっそう美味しくこの料理を味わうことができるだろう。

 

 

それでは…

 

 

「いただきます。」

 

 

 

 

うまぁ~い! うわっ、ウマッ!

何だこれ!? ジューシーなのにぜんぜんクドくない!

最近だったら現実のファミレスのこういう料理もなかなかのレベルになってきてると思ってたけど、これはその味の数段上をいっている気がする。

 

やっぱり素材の質なのかねぇ…?

味付けは無難なのにここまで美味しさを引き出せるとはビックリだ。

 

 

 

そして、次は期待のシモフリトマト…。

 

一口、口に含んでみた…。

 

 

甘ぁ~い! トマトなのにフルーツと間違う位の甘さだ。

 

ヤバイ、止まらない。 こんな空腹の時だったらいくらでも行けちゃいそうな気がする。

現実だとこんなトマトは食べた時なかったなぁ…

超高級なトマトならこんな味なのかもしれないけど、庶民が手を出せる料理にこんな美味しいトマトが使われてる辺り、モンハンの世界の食材の質はもとの世界より高そうだ。

 

 

 

 

そんな感じで、俺はあっという間に料理を平らげた。

 

 

 

 

 

 

食後の休憩をとっていると二人組ハンターと思われる格好のオッサンが近づいてきた。

ん?この二人組どこかで見たときあるな…。

そんな疑問は二人組の口調を聞いて解決した。

 

「ドハハハハ!貴様がレイリスのいっていた迷子のハンターとやらか!」

「バハハハハ!たしかにぼんやりしてウロウロしてそうな面をしてやがるな!」

 

 

おおぅ…いきなりバカにされた気がするぞ…。

そして…この二人組でしたか。

 

 

 

ヘルブラザーズ。

赤鬼、黒鬼と呼ばれる二人組のハンターだ。

 

自称、「泣く子も黙る最強ハンターコンビ」で、二人揃えばどんなモンスターでも裸足で逃げ出すと言われている。

 

こう書くとなんだか噛ませな感じに見えがちだが、実際のハンターとしての実力はかなりのものなはずだ。

なんと、この二人。あのラオシャンロン亜種やナナ・テスカトリをそれぞれ単騎で撃破するほどの大功績を挙げている。

また、クロスの時にも主人公がアカムトルムやウカムルバス、各種古龍や古龍級生物に挑む際にアドバイスをくれることから、それらを相手にもしているらしい。

 

最近は、寄る年波で全盛期ほどの力は出しきれなくなっているらしいけどそれでも引退はまだまだ先のことになりそうだ。

 

ともかく、この二人はこの世界でもトップクラスの実力があるハンターだろう。

 

 

それで…そんな二人組が俺に何の用だ?

 

 

「ヘルブラザーズのお二人じゃないですか。活躍は聞いてますよ。」

 

「ドハハハハ!そんなに謙遜するな!貴様の活躍は俺たちの耳にも届いているぞ!ちょっと方向音痴だが、狩りの力はレイリス達にも引けをとらない一流ハンターだとな!」

 

「バハハハハ!俺たちはさっきクエストを終えたばかりでな!クエスト成功を祝っての一杯といこうとしたらここで飯を食っている貴様の姿を見つけたのだ。それで軽い挨拶でもしてやろうとな!」

 

 

なるほど。そうゆうことか。それじゃあ俺も一緒に一杯やらせてもらおう。

 

そんなわけで俺はさっきメニューで狙いをつけていた「シモフリトマトジュース」を追加で注文した。

 

 

 

 

 

 

 

「ドハハハハ!いつか貴様ともクエストに行ってみたいものだ!いくら俺達といえどもいつまでも全盛期ほどの動きを出来るわけでもないからな!」

 

「バハハハハ!たしかにそうだ赤鬼よ!やはり俺達の力をこの迷子にも見せつけてやらんとな!」

 

 

話してみるとヘルブラザーズの二人組は豪快で気持ちのいい人たちだった。俺もいつか一緒にクエストに行けたらいいね。

 

 

 

「しかし、お前ほどのハンターが来てくれて正直俺達も安心しているよ。 お前が来るまでは、レイリスは何だか辛そうな顔をしていたからな… 」

 

「俺達も力になってやりたいのも山々だったがあいつと一緒のレベルとなるとなかなかいなくてな… 全盛期ならまだしも、今の俺達だとレイリスのレベルにはついていくのはちょっと難しい。」

 

今日はレイリスさんはポッケ村だか、ユクモ村の方に遠出している。俺もいつかいきたいな。

 

それにしても… あのレイリスさんがねぇ…

 

一回釣りをしたときにもそんな話をしてくれたけど、俺はレイリスさんと会ってからそんな雰囲気をあまり感じなかった。

 

まぁ、俺がレイリスさんにいい影響を与えることが出来たならそれはいいことなんだと思う。

 

その後も、二人の武勇伝や最近のハンター情勢、その他諸々の話をしてとにかく盛り上がった。

 

そんなこんなであっという間に夕方になり、ヘルブラザーズの二人とはお別れ。

 

これから二人はベルナ村の方へ向かうらしい。頼りになるハンターは忙しいねぇ…

 

何はともあれ、予想外の出会いでいい話ができた。

今日はいい一日だったな。

 

そんなことを思いながら俺はマイハウスヘ向かった。

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、俺はプーギーのお腹をプニプニしながら考え事をしていた。

プーギーも気持ち良さそうにぐってりしている。

 

「俺はこの世界でモンスターハンターと呼ばれる存在を目指すと決めた…。だけど…どうすればそういう存在になれるんだろうな…。」

 

 

 

 

この世界に来てからそれなりの時間がたった。

 

 

 

 

だけど…目標への道標は未だに見えては来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

モンスターハンターへの道のりはなかなかに険しそうだ…。

 

 

 




シモフリトマトは栄養価が高いという設定もあります。
素晴らしい野菜ですね。

完熟シナトマトなんてものもダブルクロスには出てきます。
こっちも食べてみたいですね。


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第8話 私と迷子のハンター君

レイリスさん視点に挑戦です。




私には、どうやらハンターの素質があったらしい。

なら、ちょっとハンターになってみようかな。

 

そんな簡単な気持ちで私のハンターライフは始まった。

 

 

 

 

 

 

私の故郷のココット村は、森丘フィールドに比較的近い場所にある集落だ。

 

なんでも、このココット村の村長である竜人族のおじいさんが作り上げたらしい。

 

そしてその竜人族の村長。

聞けばハンターという職業がまだ存在しない時代にモンスターに立ち向かい、モンスターを狩ることを生業としていたらしい。

そして、ハンターというものが広まっていったのだとか。

 

…えっ、ウチの村長すごいじゃないか。

小さい頃からちょっと怖い雰囲気が漂ってるおじいさんだなぁなんて思ってたけど、よくこの村を訪れる豪快な二人組からも「ココットの英雄」なんて呼ばれてるみたい。

そんなにすごい人だったのか…。

 

 

ハンターになった私は憧れた。 それはもう、強烈に。

 

 

私のハンター仲間も、私と同じく憧れを抱いたみたい。

 

 

 

そこから、私達は強くなろうと決めた。

 

 

それこそ、「英雄」と呼ばれるくらいに。

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

私達は、着実に力をつけていった。

 

 

もちろん普通に比べて才能もあったんだろう。

 

 

 

「バハハハハ!俺達から言えることか!そりゃあ、決して無理はしないことだな!古龍を撃ち破る俺達だって調子が悪いときには他のハンターに依頼を代わってもらうことだってある!命あっての物種だ!」

 

「ドハハハハ!それに、名の知れたハンターなんてものは強大なモンスターを倒すからなるもんじゃねぇ!生き延びて、それでもモンスターに対峙する内にいつのまにか回りから称えられるようになるもんだ!」

 

 

 

だけど、無茶な狩猟はほとんどしないようなパーティだった。

力があるパーティが、万全に万全を期した状態でクエストに臨めば、その成功率がどうなるかは誰が考えても明らかだろう。

 

 

 

私達はどんどん名を広めていった。

 

飛竜、獣竜、牙竜、海竜。

 

さまざまなモンスターの狩猟経験を積んだ。

 

 

 

 

 

そして、遂には風を纏う古龍を撃ち破った。

 

 

 

 

そこからだろう。 一流と呼ばれるようになったのは。

 

だけどまだ、英雄には程遠い。

 

そのレベルに達しても私達は慢心せずモンスターに対峙し続けた。

 

難易度の高い大連続狩猟、古龍級生物、そして山のような古龍。

 

 

そのすべてにおいて、私達は持ち前の用意周到さで対峙したモンスターを撃ち破り続けた。

 

 

 

 

そして… ドンドルマに迫る、身体中に重油を纏った古龍を撃破したとき…

 

 

 

 

 

私達は遂に「英雄」と呼ばれた。

 

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

「じゃあ森丘でガララアジャラの狩猟となります。

初めてのソロクエストね。頑張って!」

 

「ありがとうベッキー。それじゃあいってくる!」

 

 

私達は英雄と称えられた。

 

だけど…ハンター達の手が足りてない場所に私達はそれぞれ一人ずつ散らばることとなった。

 

つまりはパーティの解散だ。

 

 

寂しかった。

 

そして、怖かった。

私は一人でも大丈夫なのか? 今までクエストを成功できたのはみんなと一緒だったからなんじゃないのか?

そんなことばかり脳裏をよぎった。

 

 

そんなことを考えて臨んだガララアジャラ狩猟は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

成功はしたものの2回力尽きるという、英雄と呼ばれるハンターが行う狩猟には程遠いものだった。

 

 

 

 

 

 

 

そこからモンスターと戦うことが怖くなった。

いや、戦うことが怖いというより負けることが怖かった。

 

私は所詮一人だと何もできない紛い物の英雄なんじゃないか?

 

頭にそんな考えばかりちらつく。

 

 

だから負けてはいけないと思い、鬼気迫る勢いで私はモンスターを狩り続けた。

 

 

 

だから…その頃の私の顔はよっぽど悲惨な顔をしていたんだろう。

 

ある日、ココット村の村長と話す機会があった。

 

 

「これは…ギルドの関係者がいった言葉らしいのじゃが

 

真のハンターとは

力ではない、強い装備でもない、

ましてや狩ったモンスターの数でもない。

すべてを自然の一員とみなし、

それを調え、制する者を指す。

 

…どうも最近のおぬしをみているとただ対峙する相手を倒す。その意識に駆られているように見える。

 

あまりに辛いなら休んでも構わん。このままじゃおぬしに取り返しのつかないことが起こりそうでな…

 

代理のハンターも心配はいらん。龍識船のハンターをこちらに回してくれるらしいでな。」

 

 

………そんな当たり前の事を忘れていたことに気づかされた。

 

最近の私は、英雄と呼ばれるハンター像とは全く違う。そのことに気付いて涙が溢れた。

 

 

私、なにやってるんだろ…。

 

 

 

 

 

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「たまには採取ツアーでも行ってみれば?気晴らしになるかもよ?」

 

ベッキーからそんなことを言われてなぜか自分もその意見に乗り気になった。

 

気晴らしかぁ…。たしかに自分を見つめ直すには採取ツアーもいいかもね。

 

そんなことを考えて私は森丘の採取ツアーに向かった。

 

 

そこで待っていたのは、木の棒をもってランポスに囲まれている丸腰の青年の姿だった。

 

 

 

 

 

 

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ベースキャンプに着くと、さっきの青年が待っていた。

 

 

「あっ、さっきはどうもありがとうございました。本当に命を救われましたよ…」

 

そんなことを言ってきた。う~ん。怪しいなぁ…

まさか、あんなところで迷子になってるわけないし…

 

「いやー、危なかったね!あんなところで丸腰で何してたのさ?」

 

とりあえず様子を伺うことにする。

 

「いやぁ… まぁ迷子みたいなもんで ハハハ…」

 

 

迷子って… どうゆうことさ…。

 

 

 

 

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ココット村に向かう竜車に彼も乗せて帰る道中、彼はなんだか疲れている様だったので元気ドリンコをゆずった。 元気ドリンコの感想は上々だった。

元気ドリンコが嫌いなんて人はなかなかいないんじゃないかな?

 

にしても、この人… 何者なんだろう…。

この辺りでは見かけないしあんなところで絶体絶命になってるなんて怪しいなぁ…。

 

うん?そういえば村長が龍識船のハンターが来てくれるとか言ってたな…。もしかしてこの人のこと…?

聞いてみることにした。

 

「この辺りだと見かけない顔だよね… あっ、もしかして新しく来ることになってるハンターって君のことかな?」

 

「あー、そうかも…しれませんね。」

 

…なんなんだ、そのハッキリしない返事は。自分のことでしょうが…。 ますます怪しいなぁ…。

 

「なんだよ~、ハッキリしないなぁ。まぁその家を見てみなよ。じきにココット村に着くからさ。」

 

 

そんな感じでココット村に到着した。

 

 

 

 

 

 

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「村長!この人、森丘で迷子になってたんだけど新しく来るハンターさんってもしかしてこの人のことかな?」

 

 

とりあえず村長なら何か知っていると思い、村長に話をふってみる。

 

 

「おお、そうじゃそうじゃ。この人が新しく龍識船所属のハンターになった方じゃな。」

 

 

あら。本物のハンターだったんだ。

 

…じゃあなんであんなところで丸腰で迷子になってるのさ。そんなんじゃ迷子のハンターとか呼ばれちゃうよ?

 

でも、私の代理ってことはなかなかに力量がないと務まらないはず。

まぁ、挨拶はしておこう。

 

「おおー、龍識船のハンターはみんな優秀だって聞くね!これからクエストにいくことがあったらヨロシク!

 

わたしの名前はレイリスっていいます!覚えといてね!」

 

 

とりあえず、よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

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とりあえず、彼のレベルを見たいと思い装備が届いたと思われる時間帯のちょっと後に彼の家を訪ねてみた。

 

 

「おはよ~、装備届いたかい?」

 

 

「ええ、いい具合に仕上がってましたよ。」

 

 

「それは良かった!じゃあこれから受けていくクエストについて村長がお話したいらしいから来てくれるかな?」

 

 

 

「わかりました。じゃあちょっと準備してきますね。」

 

 

…………今ちょっとだけ装備が見えたけど、グリードXRとギザミXRじゃなかった?

まさか、私のパーティメンバー以外にあんな装備を持ってる人がいたなんて…。

なんてこった、下手したら私よりよっぽど強いじゃないか…。

 

ま、まぁとりあえず村長のところへ連れていこう…。

 

 

 

 

 

 

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「オヌシは既にG級レベルの力は持っておるとの報告が龍識船ギルドからきておる。なのでオヌシにはレイリスと共にG級レベルの高難度クエストに臨んでもらいたい。」

 

やっぱりG級レベルのハンターだよね…。

となるとさっきの装備は見間違いじゃなさそうだ。

なんであんな装備をもってるのにあんなところで迷子になってるのか…。

 

 

「オヌシの力は龍識酒場「ホーンズ」のマスターの御墨付じゃ。期待しておるぞ。」

 

 あの高難度クエストがたくさん集まる酒場の御墨付!?

絶対強い人じゃんか…。なんか自信無くすなぁ…。

 

 

「おおー、ただの迷子じゃなかったんだね。ヨロシク!」

とりあえずこの人の弱みは迷子になってたってことくらいかな…。

そこを強調して挨拶しておいた。彼はちょっと不満そうな顔をしていた。

 

心のなかで「俺は方向音痴ではない」とか言ってそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、村長に頼まれて彼と一緒にクエストに行くことになった。

森丘でのリオレイア狩猟かぁ…。

彼の力量をみるにはちょうどいいかな…。

 

そんな気楽な考えでクエスト前に彼と会ったところ、

それはもう驚いた。

 

な、なんなんですか、そのトンデモナイ装備は…

 

以前の私のパーティメンバーが装備していた装備とまるっきり同じじゃないか…

なんだか切れ味関係のスキルが充実する装備だった気がする…

 

そして、それにもましてトンデモナイのが…

 

…なんですか?その武器は?

とっても禍禍しい雰囲気を纏っていてヤバイ香りがプンプンする。

 

私のパーティメンバーは私と同じく、古龍級生物の甲虫種から作られる操虫棍を使っていた。その武器だって鋭い切れ味でとても強力な武器だった。

だけど彼の武器はそれすら上回っていそう…

彼はいったい何者なのさ… こんなにすごいなら私の耳にも入ってきていいはずなのに…

 

 

そんな具合で私はビクビクしながらリオレイア狩猟に臨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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…結論から言うと彼はとても強かった。

 

下手したらもとの私達のパーティの誰よりも強いかもしれない。

 

もちろん持っている武具の性能もあるだろう。

なんなんだあの操虫棍は…振り回してるだけで爆発の嵐じゃないか…

物理性能だって高そうなのに属性値もそんなに高いのかな…

 

 

 

だけど…………彼自身の立ち回りがうまかった。

 

 

 

 

まるで以前の私達が行っていた、被ダメージを抑え安全第一でいくというスタイルの到達点のようにも見えた。

 

それに…

 

 

狩りが終わってからの剥ぎ取りの際にお辞儀をしていた。

 

 

以前の私は忘れていたその感謝の心を彼はしっかり持っていた。

 

 

 

あぁ…これは私より強いなぁ…

 

 

 

なんで彼が無名のハンターなのかが謎だった。

 

 

だけど…

 

私も久々に協力してクエスト達成することができた。

 

なんだか久しく感じていなかった感覚だ。

 

やっぱり力を合わせるのが私には合っているらしい。

 

 

多少、彼の実力に嫉妬したりもしたけど…うん、

今日は久々に美味しいお酒が飲めそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「かんぱーい!」

 

 

 

「イエーイ!」

 

 

グラス同士が当たり、小気味良い音が響く。

 

「いやぁ、やっぱりただの迷子じゃなかったね!あんなにスムーズに狩猟ができる人はなかなかいないよ!」

 

 

 

「いつまで迷子を引っ張るんですか… まぁでも初めてにしちゃ上出来だったんじゃないですかね?」

 

 

 

「上出来も上出来さ!あんな気持ちいい狩りが出来たら達人ビールだって美味しくなっちゃうよ!」

 

 

 

あんなに気持ちのいい狩りは久しぶりだった。

こりゃあ今日は達人ビールを飲みまくるしかないでしょ!

 

久々に達人ビールを飲みまくったなぁ…

 

なんだか彼に装備がどんなもんか聞かれたりしたかも知れないけどよく覚えてないや。

 

 

ともかく、今日は狩猟を楽しめた気がするいい一日だったかな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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次の日、彼が採取ツアーに行くらしいので私もついていくことにした。

彼はなんともいえない顔をしていたけれども私だってこの間は君を助けただけで採取ツアーをほとんどしてないんだ。それくらい許してほしい。

 

そんなこんなで森丘へ。

 

 

私も彼も採取装備で来ている。

採取装備は作っておくと何かと便利だ。

 

新米のハンターにも採取装備はあると便利だということをしっかり伝えておきたい。

 

 

 

 

 

 

森丘ではのんびりキノコ採集をしたりすることにした。あと、彼は森丘での経験が浅いから森丘の案内も兼ねてるかな?

 

 

やけに厳選キノコが見つかるなぁ…今日はいい日になりそうだ。

 

 

彼は毒テングダケしか見つかってないみたい… なんだか自慢したくなったので自慢したところ、彼もムキになって厳選キノコを探し始めた。

 

 

おっ、見つかったかな?

 

 

 

 

彼が厳選キノコを天に掲げて叫ぶ。

 

 

 

 

「厳選キノコ!ゲットだz…」

 

 

 

 

彼はキノコを掲げたままブルファンゴに吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

そりゃもう、大爆笑した。息できなかった。

 

 

 

 

 

あぁ… 楽しいなぁ… やっぱり私は多人数の方があってるかな…?

 

 

 

彼がものすごい形相でブルファンゴに向かっていくのを見てそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後は釣りをして時間を潰すことにした。

 

 

なんか、やけにトロサシミウオが食いつくなぁ…

 

彼はいまいち食いつきがよくないみたい。

 

なんだか見てて楽しい。

 

普段の行いから来てるんじゃないか?なんてことを言ったら彼はしょげた。

もう、目に見えてしょげた。

 

ちょっと悪いことしたかな…

私だって君が来るまでは褒められた行いなんかしてないのにね…

 

 

 

 

「私、迷子君がくるまでほとんどソロだったんだよね~、もちろん馴染みの仲間もいるけどいまは各地に散らばってて忙しいし…」

 

 

 

「ヘルブラザーズさん達ともいったりするけどあの人達もだいぶ年配になってきてるし、毎日クエストをこなすってのは難しかったんだ~」

 

 

 

「それに、ソロっていうのは危険性が跳ね上がるからね…最近は亡くなったりする事例はギルドの支援が充実してきたからぐんと減ったけど、大ケガをしてしまう可能性は低いわけじゃないんだ…」

 

 

 

「だから、迷子君が来てくれたのは本当にうれしいな。

 

これで久しぶりに協力して狩猟ができるからさ!」

 

 

 

本心を彼に打ち明けてみた。

 

彼は穏やかな顔をして私の話を聞いてくれた。

 

危険性の話をしたところでなぜか彼が息の詰まったような顔をしていたけれどなんだろう…?

彼くらいのハンターならそんなことは重々承知しているはずだけどなぁ…

 

ともかく、本心を吐いたらなんだか心が軽くなった気がする。

 

 

ありがとう。迷子君。

 

 

 

おかげで私はまだ折れることは無さそうです。

 

 

 

彼が上手にこんがり肉を焼き上げるのを見ながらそんなことを思った。

 

 

 

 

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「で?彼とはなんかあったりしたの?」

 

「…なんかってなにさ。」

 

「そりゃもう色恋の話に決まってるでしょ!

アンタはハンターとしてのレベルが高すぎるから、今まで一緒にクエストへ行けるような男性なんていなかったじゃない?

そこへあの迷子君の登場よ?そりゃなんか期待しちゃうわよ~?」

 

 

ベッキーがふざけたことを言ってくる…。

 

だ、だいたい彼は龍識船所属のハンターなんだしココット村を拠点にしてる私に好かれても困っちゃうでしょ。

それに私と彼じゃ釣り合わないし…

 

 

「あら、じゃあ私のツテを使って彼のこと貴女の仲間に紹介しちゃうけどいいかしら?彼女たちも貴女と同じようなもんだしね。」

 

 

………なんですと?

 

 

そ、それは勘弁してほしい。

彼女たちが先をいって私だけ置いていかれるのはさすがにゴメンだ。

そんなことをされたらあの頃の私以上に心が荒れそうだ。

 

 

「じゃあ、さっさとくっついちゃいなさいよ。

何でも彼の噂、他の仲間たちにも届いてるらしいわよ…?

彼、なかなか顔立ちも整ってるし実際あったらどうなるかわかったもんじゃないわね。」

 

 

これはマズイ…。 彼女たちならガンガン攻めていきそうなのが何人か思い当たる…。

 

 

…でもくっつくなんていったいどうすればいいんだ。

 

今までハンターとして一直線だったからそんなことサッパリだ…。

 

「う~ん、彼もなんだか色恋沙汰にはサッパリそうね…

やっぱり貴女から、ガンガンいきなさいよ。あれね、最近流行りのイビルジョー系女子よ。」

 

どんな女子だ…それは…。

 

「やっぱり彼が寝てるところを拘束して一思いにガバッといくのが…」

 

 

 

私は逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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今日も大連続狩猟を終えてパッと軽い宴会をした。

 

なんだかベッキーが変な話をするから彼のことを普通に見れなくなっちゃったじゃないか…。

 

 

 

…………でも。

 

彼が来てから私も楽しくハンター生活が出来ている気がする。

 

 

彼となら…なんてこともたまーに、

 

ほんとたまーーーに思ったりもする…かな?

 

 

 

 

ひとまず、色恋沙汰は抜きにするとしても

これからも彼と一緒にクエストをやっていけたらいいなぁ…そんなことはよく考える。

 

 

 

 

こんな私だけど、これからもよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 






書きたいことを書いていたら長くなりました。

彼女の仲間達…後々登場する予定です。
あまり期待しないで待っててください。


使わない裏設定を少々…

レイリスさんのフルネームは

レイリス=レッドイーグと言います。

使わない設定です。





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第9話 電光煌めく飛竜の夜

オトモは全種類のサポート傾向がある設定にしました。

なので、各傾向の使用感を調べたり実際に使用してみたりしてます。

また、オトモはニャンターと同じような動きをする感じにしてます。

……オトモがニャンターと同じ動きを出来たら超強いですね。




「これはあなた達くらいにしか依頼できないわね…

森丘に獰猛化ライゼクスが出現しました。至急狩猟に向かってほしいわ。」

 

獰猛化ライゼクスか…

 

 

ライゼクスは全体的に肉質が柔らかく、それでいて攻撃力はなかなかのもの。

だから俺のなかだと先にやるかやられるかの勝負だと思っている。

 

 

だけど、獰猛化するとライゼクスの耐久力が一気に跳ね上がる。

 

だからなかなかの強敵だ。

 

下手するとこの間の大連続狩猟の難易度を越えちゃうかもしれない。

 

 

 

まぁ…ここで逃げちゃダメだよな…。

実際に周辺の村落や自然環境に大きな被害が出てからでは遅い。

 

俺達は早急に森丘へ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「獰猛化ライゼクスか… なかなかの強敵だね…

でもこのパーティならきっと大丈夫さ! ガンバろう!」

 

「「うニャ!」」

 

いつも通りレイリスさんは元気いっぱいだ。

 

そして、今回は

サポート傾向がカリスマの【ウニ】

サポート傾向がボマーの【マグロ】

の2匹を連れてきた

 

正直カリスマって使いにくいイメージがあったんだけどこの世界だと痒いところに手が届くようになるいい感じの活躍をしてくれる。

ウニはやれば出来る猫だった。

ゲームの器用貧乏な性能とは大違いでビックリした。

 

また、ボマーのマグロは俺が元の世界で愛用していたブーメラン猫の1匹だ。

ジャスト回避が出来るので生存力はなかなかのもの。

そして状態異常武器を担がせればガンガン状態異常をとってくれる。

今回も頼りにしてるよ。

 

俺だって負けてちゃいけない。

ライゼクスはなかなか得意な相手だ。

 

多少ゲームとの違いもあるかも知れないけどきっと大丈夫。

 

それにライゼクスって狩ってて楽しいしね。

 

 

 

 

さて、それじゃあ獰猛化ライゼクスの狩猟いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分間かけて俺達はエリア4にたどり着いた。

 

そして…いた。

 

 

 

電竜……ライゼクス。 電気羊の最終進化では決してない。

 

 

 

そして、今までの狩猟とは異なる点がもうひとつ。

 

 

 

 

「頭から黒い蒸気みたいなのが出てる…」

 

 

 

なるほど…獰猛化はこんな感じになるのか…

 

いいね、ワクワクしてきた。

 

 

 

 

「それじゃあいこうかっ!」

 

レイリスさんが駆け出し、出会い頭にライゼクスの頭部めがけて抜刀攻撃をぶちこんだ。

 

 

 

 

 

さあ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

最初の方は慎重に納刀継続攻撃を当ててブレイヴゲージを溜めていく。

 

怒り状態に移行する前にブレイヴ状態になっておきたい。

 

うちのパーティはみんな強いからあっという間に怒り状態になっちゃうからね。

 

なんてことを考えてるとライゼクスは怒り状態に。

うーん、ブレイヴゲージは7割ってところか…

まぁ、これなら問題ないな。

 

その後も慎重に納刀継続攻撃を当てていく。

 

そして、俺を狙った翼叩きつけ攻撃をイナシたところでライゼクスは電荷状態へ移行。

 

そして俺もブレイヴ状態へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて…ブレイヴ太刀の強さ、見せつけてやんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブレイヴスタイルはほとんどの武器種において、比較的強いスタイルに分類されると俺は思っている。

 

 

だけど…そのなかでもブレイヴスタイルが飛び抜けて強い武器種ってのがいくつかあると俺は感じる。

 

 

 

そのうちの1つがこのブレイヴ太刀だ。

 

 

 

まず、ガード等の防御手段が少ない太刀にとってイナシという回避行動があるのはとてもありがたい。

 

イナシた後は納刀状態なのでその後の対処もスムーズに行える。

 

操虫棍でもそうだけどブレイヴスタイルのイナシはガードできない武器種にはなかなかの革命だったんじゃないかな。

 

そして極めつけがブレイヴ状態時に使用可能なカウンター攻撃だ。

 

この攻撃。

ノーダメージ・スタミナ消費なし・高威力・隙も小さいと強い要素が4つもあり、

その後も気刃斬りのコンボに派生可能、

さらにさらに切り上げを挟めばもう一度カウンター攻撃に繋げることが出来るという、

ちょっと強すぎじゃない?と感じる攻撃になっている。

 

 

もちろん使いこなすにはかなり慣れが必要だけど、うまく使いこなせればその強さは近接武器のなかでもピカイチなんじゃないだろうか。

 

 

 

 

 

 

そして…このブレイヴ太刀でのライゼクス狩猟はとても楽しい。

 

だから、俺は今回操虫棍じゃなくて太刀を担いできたわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

ライゼクスが翼を叩きつける。

 

それに合わせてカウンター。

 

ライゼクスはそのまま逆の翼の叩きつけに繋げる。

 

俺は切り上げを挟み、そのままもう一度カウンター。

 

 

う~ん、この流れ、最高だ。

 

ゲームでも楽しかったけどリアルに体感するとその快感は凄まじい。

 

 

 

だけど油断はしない。

今回は獰猛化ライゼクス。その攻撃は苛烈だ。俺の今回の防具は雷耐性も低いから下手すると1発でキャンプ送りなんてこともありえる。

 

 

この間みたいなミスはもうしない。

 

しっかり気を引き締めていこう。

 

 

 

 

 

俺は翼叩きつけに合わせてしっかりカウンターを決める。

何回かカウンターを決めるとライゼクスは怯んでダウンする。

 

レイリスさんがその隙に切り込み、頭に抜刀攻撃をぶち当てる。

 

レイリスさんのW抜刀攻撃が着実にライゼクスにスタン値を蓄積させていき、

尻尾回転を行った後の小さな隙にレイリスさんはしっかり頭に抜刀攻撃を当ててスタンを奪った。

しかし、上手いなぁ…。

俺も負けてられん。

 

スタンから回復したライゼクスは飛び上がりつつ、尻尾に電気を迸らせながらその尻尾を地面に突き刺した。

 

……来た。

 

俺はライゼクスが攻撃の力を溜めているのにも関わらず、尻尾付近に切り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして尻尾の電気が一層強く迸った瞬間―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

溜まっていた狩技ゲージを解放して狩技を発動した。

 

 

 

 

 

 

【鏡花の構え】

 

 

相手に強力なカウンター攻撃をする太刀専用の狩技だ。

 

 

ライゼクスはたまらず空中で怯み、ダウンした。

 

 

「ナイス撃墜!」

 

 

そこにレイリスさんも切り込んでくる。

 

俺も連撃を加える。

 

 

 

ダウンから復帰したライゼクスは再び怒り状態に移行。

 

 

そして滞空を始めた。

 

 

ブレスは勘弁してくれ… あれすっごく避けにくいんだよ…

 

そんなことを思っていると急にライゼクスは地面に墜落。

 

何だ?と不思議に思ったけどとりあえず攻撃を続ける。

 

 

すると、ダウンから復帰したライゼクスはその場で眠り始めた。

 

…オトモやるじゃん。

なんてことを考えてるとどうやら鬼人笛も吹いてくれたらしい。

いや、ほんとすごいな。

 

 

 

 

 

 

眠ったところへレイリスさんが抜刀溜め3をぶち当てた。

 

 

ライゼクスは起きあがり、咆哮をあげる。

 

 

これでも落ちないのはさすが獰猛化と言ったところだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

…だけど、あと少しなはず。

 

最後の一押しだ。この間と同じミスは絶対にしない。

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、ラストスパートだ。

 

 

 

 

 

俺達は再び身体中に電気を迸らせるライゼクスに向かって武器を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はいっ!お疲れ様!二人とも流石ね~!

あんな強敵をなんなく倒しちゃうなんて私もビックリだわ!」

 

 

 

ベッキーさんが俺達のテーブルに飲み物と料理を持ってきてそういった。

 

 

 

確かに今回はなかなかうまく出来たんじゃないかな?

 

 

被弾だって少なかった。

俺なんて今回はほぼ無傷だったんじゃないか?

 

 

「いやぁ、迷子君はすごいね~。ほとんど攻撃受けてなかったじゃんか!」

 

 

あぁ、やっぱりそうだったみたい。

 

いやぁ、それほどでもありますよ。

 

 

 

オトモ達が冷めた目で見てくるが気にしない。

 

…こいつら心でも読めるのか?

 

 

 

「よし、じゃあクエスト成功を祝ってカンパイ!」

 

「乾杯!」

 

「「うニャ!」」

 

 

 

まぁ最近はなかなかいい調子でハンター生活を出来ているんじゃないかな。

 

 

 

この調子でいつかモンスターハンターなんて呼ばれる日が来るといいなぁ…。

 

 

 

 

そんなことを思いながら俺はシモフリトマトジュースを飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえばベッキーさんがレイリスさんになにか耳打ちをして、レイリスさんがスゴい慌ててたな…

 

何だったんだろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 




何だったんでしょうね…






自分が初めて目にしたモンハンWeb小説はハンマーでモンスターの振り向きに合わせてホームランをぶちこむ作品でした。


それはもうとっても内容に引き込まれました。


なのでこの作品もそれはもう露骨にその作品の影響を受けてしまっています。

どうにかして差別化していかないとあの名作に申し訳ないと今すっごく焦っています。







ここでいくつかまだ書かれてない設定を書かせていただきたいと思います。


主人公について
・名前が思いつかなかったので今のところ名前は考えてません。
・武器種は全ての武器をかなりの技術で使えます。これは元の世界でやりこんでたから出来る芸当ですね。
ただ、メインは操虫棍なので操虫棍の技術は頭ひとつ抜けてます


禁忌のモンスターとその武具について
・すでにミラバル棍が出ましたがレイリスさんの反応のように、英雄クラスのハンターでもまずお目にはかかれません。
武具についてはハンターズギルドが保管しており、使用しても問題ないレベルのハンターになら渡すことがあるという設定にしました。なんだかとんでもない説明文の武器もありますからね… ちなみにレイリスさんならブラックミラブレイドとか使っても問題ないです。

・禁忌のモンスターのクエストについてはまぁいずれは書いてあげたいな、なんて思ってます。



あと基本的に主人公達が相手取るモンスターはG級個体です。
今回のサブタイトルは上位のクエスト名ですがG級個体のライゼクスの登場になりました。



まず…こんなもんですかね。

なにか不明瞭な点があったら感想などで教えてください。


感想、アドバイス等はいつでも待ってます。




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第猫話 モンニャン隊、出動せよ! ~湿原地帯編~


モンニャン隊を書いてみることにしました。

短めですがご容赦ください…



メタい発言が非常に多くなる予定です。






 

どうもニャ、読者の皆様。

 

ボクはファイトオトモのイクラですニャ。

 

 

作者が旦那さんを書くのに連載開始2日目にして行き詰まり気味らしいので、

今回は前々から考えていたらしいモンニャン隊のお話らしいニャ。

 

…2日目にして行き詰まりはなかなかまずいんじゃないかニャ?

まぁとりあえずモンニャン隊出動ニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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今回はサブタイトルにもあるように湿原地帯を訪れてるニャ。

 

出現しているモンスターはゲリョス。

 

…これはつまり狂走エキスをとってきてってことニャ。

 

 

 

読者さまも覚えがあるんじゃないかニャ?

 

いちいち狩りに行く必要がなく、狂走エキスやアルビノエキスが取れるモンニャン隊は使い方次第ではなかなか優秀ニャ。

 

今でもワールドじゃなく、ダブルクロスをやってるよという読者さまでこの話を知らない人がいたらぜひとも試して見てほしいニャ。

 

各種エキスがG級モンニャン隊なら一枠で6つとか出たりするからおすすめニャ。

オトモアイルーだって捨てたもんじゃないのニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで説明してるうちにゲリョスを発見ニャ。

 

今回モンニャン隊で出動してきている4匹は、

 

ボク、アシストのネギトロ、回復のアマエビ、ボマーのマグロの4匹ニャ。

 

 

ゲリョスに対応したサポート傾向で固めてないのは勘弁してほしいニャ。

 

 

というわけでいざ、狩猟開始ニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うーん、ゲリョスは1回旦那さんたちと狩猟したから特段書くことがありませんニャ…。

 

なるほど…これも作者の狙いだったのかニャ…。

 

これじゃあボクたちの活躍は、本編で連れていった時だけしか読者の皆様に紹介できないニャ…。

 

本編でフルフルの狩猟なんてされた日にはボクたちの未来は暗いニャ…。

 

これではいかんニャ。

 

頑張ってみんなで見せ場を作るのニャ!

 

「「「ニャ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを思った時だったニャ。

 

 

突然地面が揺れたかと思うとゲリョスが急に慌て始めたニャ。

 

ニャニャ…?旦那さんは今回はWARNINGマークは出ていないとか言ってたけどこれはどう考えても乱入ニャ…。

 

 

 

 

 

そして、地響きが収まったかと思うと地面から緑色のゴーヤが生えてきたニャ。

 

 

 

 

旦那さん…しっかり乱入してきてるじゃニャいか…。

 

 

 

 

いや、これは作者がボクたちに見せ場を作るためのチャンスをくれたと前向きにとらえるニャ!

 

 

 

「イクラ、こいつにも挑むのかニャ?」

 

マグロがボクに訪ねたニャ。

 

「もちろんニャ。これはあのへっぽこ作者がボクたちにくれた数少ないチャンスニャ。ここでボクたちの活躍を見せないでどうするニャ!」

 

 

「ニャるほど。それならこのゴーヤと戦わない手はないニャ。ボクのアシストでしっかり後押ししてやるニャ。」

 

 

「ボクとネギトロで回復、アシストはバッチリニャ。

火力枠もイクラとマグロの二人がいれば、生半可なハンターには負けないニャ!」

 

 

これはボクたちに追い風が吹いているニャ…!

 

 

 

ボクとマグロはキンダンドングリを食べてサポートゲージの補充。

 

ネギトロが超音波笛で雑魚を追い払って、アマエビが硬化笛のバフをボクたちにかけたニャ。

 

 

「おいっ!そこのゴーヤ!ボクたちの活躍を見せるため、いざ尋常に勝負ニャァァァァッ‼」

 

 

 

そしてボクたちは一斉にブーメランを投げたニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「うわっ!猫ちゃんたちスゴいじゃん!狂走エキスもたくさん持って帰ってきてるしイビルジョーの素材まで!あの相手に引けをとらないなんてスゴいよ!」

 

 

 

フッフッフ… まぁボクたちにかかればそんなこと朝メシ前ニャよ、レイリスさん…

 

 

「あれ…?なんでイビルジョーの素材なんて持って帰ってきてるんだ…?乱入警告なんて無かったよな…?」

 

 

旦那さん、そこはボクたちの活躍したい願いが作者に届いて作者パワーで何とかしてもらったニャ。

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、今回のモンニャン隊は大成功!

 

きっと読者の皆様にもボクたちの活躍は伝わったのニャ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、そうそう、作者が感想欄に「レイリスさんがイビルジョー系女子になるお話が読みたい!」みたいな要望が来てたら書いてみようかな… なんてことを言っていたニャ!

 

そろそろ拠点の移動も考えてるみたいだからそうなってしまう前にそんな話が読みたい人は勇気を出して感想欄に書き込んでみるニャ!

 

 

それではまたニャ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





なんだこれ…


でも書いててなかなか楽しかったです。


レイリスさんのお話については書いた通り、要望がきたら書いてみたいと思います。


感想欄への誘導って不味いんですかね…?


小説投稿初心者なのでそういった知識も全然ないので
感想だけでなく、アドバイスもお待ちしております。




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第10話 孤高の黒狼鳥

本編では書けなかったのですが、主人公は前世で相当な努力家でした。勉強、部活動、ゲーム、何事においてもうまくやりたい性格でそのための努力は惜しまない。
そんな性格でした。


だからあの天使さんの目に留まった…
そんな感じに書きたかったのですが、うまく書き込むことができませんでした…

正直、本編に影響はあまりないと思いますが一応ここに書いておこうと思った次第です。


それでは本編どうぞ。





「えっ!?各地の村に行ってみたい!?」

 

 

どうしたんだ、レイリスさん…。

 

そんなに慌てる質問なんかではないだろうに…。

 

まさか村で超狂暴なモンスターが待ち受けてるなんてことがあったりして…。

 

ハハッ…まさかね…。

 

 

「い、いや~、今は各地の村の付近にとっても凶悪なモンスターが居座っていて飛行船で向かおうにも迎えないらしいんだよね~…。」

 

 

おぉう…。あながち外れてもなかったな…。

 

ん?でも超凶悪なモンスターとな?

 

それはなんだか挑んでみたい気がするぞ…。

 

 

「じゃあ、そのモンスターを俺達で狩猟しちゃいましょうよ。 超凶悪といっても俺達のレベルだってなかなかのもんですよ? どうですか?」

 

 

正直、今のパーティならラスボス級の相手が来ても充分渡り合えそうだけど…どうなのかね?

 

 

「あっ、う…、え~っと ほ、ほら!なんかずっと空に浮いてるモンスターらしいから近接武器だと全然相手にならないらしいんだよね!だから私たちが行っても全然力にはなれないよ!」

 

なんか釈然としないなぁ…。

 

というか、近接武器がダメならガンナーでもいいじゃん。

 

 

「ならあれじゃないですか?ガンナーでいけばいいじゃないですか。レイリスさんはヘビィとライトの扱いに長けているわけですし、俺だって弓の扱いにはけっこう自信があるんで

「あらあらあら~~~!!!二人ともこんなところにいたのね~~!!!ちょっと急ぎの以来が届いてね~~!!森丘にイャンガルルガが現れたらしいのよ~!

周辺への被害がでないうちに早めに狩猟に行ってほしいのよね~!というわけでよろしくね~~!!」

 

 

………ベッキーさんがやったら食い気味に俺達に狩猟依頼を出してきた。

なんか押しつけられたようなもんだな…。

 

というかこっちの顔を全然見てないな。なんかレイリスさんはただ頷いてるだけだし…。

 

はぁ……まぁイャンガルルガを狩ってからでも拠点の移動は遅くないかな。

 

 

そんじゃあ今回は森丘でイャンガルルガの狩猟か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、森丘に着いたわけだが…今回は俺がブラックX一式のブレイヴ大剣、レイリスさんが…レンキンハンマーですか。

 

レンキンスタイルとは珍しいな…

 

でもレンキンハンマーはなかなか強い。

 

俺だって元の世界だと、あのアルバトリオンの狩猟にレンキンハンマーを使っていたときもあった。

 

使用感がギルドスタイルとほとんど変わりないままだし、狩技3つはやっぱり安定する。 レンキンハンマーは一回は使ってみてほしいスタイルかな…。

 

今回のオトモはアシストのネギトロとボマーのマグロだ。

今回も活躍期待してるよ。

さて、今回はハンマーとW抜刀の大剣か。

 

これはスタンが取れまくりそうだ。

 

 

 

 

 

そんじゃあイャンガルルガの狩猟いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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イャンガルルガを探してエリア10に到着した…

 

 

………夜だと暗いな。

 

イャンガルルガが相手だと下手すると戦闘中にですら見失いそうだ。

 

この辺りはゲームと全然違うなぁ…。

 

というか全然いる気配がないな…。

 

「いや~…、全然いないですね…。どこ飛び回ってるんだか…」

 

 

そう呟いた瞬間――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咆哮が轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「跳んでッ!!」

 

レイリスさんがそう叫び、俺も反射的にレイリスさんが跳んだ方向へ回避をした。

 

 

次の瞬間、巨体が俺達のすぐ後ろを猛スピードで通りすぎていった。

 

 

 

「すいません、油断しました。」

 

「いや、私も全然気配を感じなかったからお互い様だよ。」

 

 

 

軽く言葉を交わしてから目の前に現れたモンスターに向かって構える。

 

 

 

 

黒狼鳥…イャンガルルガか…。

 

 

 

 

ゲームだとわからなかったが実際に対峙してわかった。

 

 

こいつ…、殺気がスゴいな。

 

 

 

イャンガルルガは獰猛だという設定があった気がする。

 

 

こいつが発する殺気は今まででダントツだ。

 

周りが夜で暗い状況も相まって迫力がスゴい。

 

 

 

 

だけど…こっちだって負けてないさ。

 

 

 

「じゃあいこうかっ!」

 

 

凄腕ハンター2人に頼れるオトモが2匹。

 

このパーティは強い。

 

だから今回もしっかり勝たせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

さぁ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イャンガルルガの強さはその攻撃の出の速さだと俺は思う。

 

なんなんだあのついばみや突進の馬鹿げた速さは。

 

畳み掛けられるとあっという間にキャンプ送りにされてしまう。

 

慣れない内は本当にしんどい相手だと思う。

 

 

 

 

 

だけど…そんなイャンガルルガにも弱点はしっかりある。

 

 

 

 

まず挙げられるのはスタンのさせ易さかな…?

 

スタンはおまけのW抜刀大剣でもコイツ相手だとスタンはポンポン取れる。

 

耐性上昇値もそこまで高くないのか、2回目のスタンだって充分狙える。

 

頭は弱点でもあるので、スタン中も頭を殴り続けるとかなりいいダメージが入る。

 

しかも、スタンを狙える武器で頭を殴るということは疲労状態を誘発させやすくなる。

 

コイツは疲労状態での弱体化が著しい。

出鱈目な速さの攻撃もゆっくりになり、隙もたくさん見えるようになる。

 

 

今回、俺が担いでいるブレイヴ大剣なら抜刀からイナシへと繋げる速さを活かして攻撃も安全に対処できる。

 

ちょっと危険だけど、振り向きに合わせて大剣やハンマーの溜め攻撃を当てると頭の耐久値の低さから怯みやすく、怯めば充分回避は間に合う。

 

 

 

だからブレイヴ大剣はしっかり頭に抜刀攻撃を当て、攻撃を安全にイナシで対処すればかなり立ち回りやすい相手だと思う。

 

ハンマーだって攻撃の隙を見つけて溜め2のアッパーを叩き込んでいけばスタンもあっという間だ。

 

 

今回はそんな武器で狩猟に来ている。

 

だからスタンを取るのはあっという間だった。

 

レイリスさんは縦3のコンボを叩き込み、

俺は抜刀溜め3、納刀、抜刀溜め3のコンボを頭にぶちこんだ。

 

イャンガルルガは怒り状態へ移行して、動きもかなり速くなった。

 

だけどブレイヴ大剣なら、そこにある小さな隙だって狙える。

 

レイリスさんなんかは耐久値をある程度計算して怯みが取れるように溜め3を叩き込んでいる。

 

そしてオトモが睡眠属性を蓄積させきり、イャンガルルガは睡眠状態へ。

 

 

そこへ俺の抜刀溜め3……ではなく、

 

 

レイリスさんのスピニングメテオの最終撃を叩き込んだ。

 

イャンガルルガは目を覚ます。

 

その隙を見逃さず、俺は抜刀溜め3をぶちかます。

 

そこで2回目のスタン。

 

そこからは速かった。

 

 

スタン中にラッシュをかけると、イャンガルルガは逃げようと足を引き摺った。

 

そこへレイリスさんが駆け込んで、イャンガルルガの頭に溜め2のアッパーをぶちこむ。

 

怯んだ隙に俺がもう一度抜刀溜め3を叩き込んだところ、

 

イャンガルルガは地面に倒れ伏した。

 

 

 

 

 

うん…、なかなか理想的な狩りだったな。

 

 

 

今回はイャンガルルガをサンドバックみたいにしてしまってちょっと悪かったかな…。

 

お前の素材もありがたくいただくよ。

 

ありがとう。

 

 

 

 

 

 

こうして、森丘でのイャンガルルガ狩猟は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「カンパーイ!」

 

「乾杯!」

 

「「うニャ!」」

 

 

 

ふぅ… 今回はかなり理想的な立ち回りができたと思う。

 

被弾も少ないし、お互いに吹っ飛ばしたり転ばせたりもなかった。

 

だんだん、パーティの完成度が高くなっている気がするなぁ…

 

 

 

「よし!イャンガルルガ狩猟も無事に終わったことですし、次は拠点を移しますか!」

 

 

なんてことを言ったらレイリスさんはビールを吹き出した。

 

 

なんなんだ一体…。

 

俺が他の拠点に移ると不味いことでもあるのか?

 

 

「う、うん、そうだね…。じゃあ明日から拠点を移す方向で行こうか…。」

 

 

レイリスさんはなんだか煮え切らない返事を返してくれた。

 

なんだろう、この罪悪感…。 俺、なんか悪いこと言ってるか?

 

 

 

 

クエストはうまくできたけど、いまいち釈然としない気持ちのまま夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうすればあの二人はくっつくかしらねぇ…」

 

ハンターズギルドでは一人のギルドガールが馴染みの女性ハンターのために頭を悩ませていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 





ガルルガってスタンとりやすいですよね…?

あと、スピニングメテオがあの短時間で使えるようになるとはあまり思えませんが大目に見てください…


この2日間でかなりハイペースな投稿をしたので
明日は恐らく更新はないと思います。

せいぜい誤字脱字を探すくらいに留まるかと…




あと、本編で書いてませんが

レイリスさんの得意な武器は
大剣、片手剣、ハンマー、ランス、ボウガン2種です。




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第11話 収納上手・技の書

昨日、更新はしないと思うなんて書きましたが
話を思い付いたら書かないと忘れそうなので書くことにしました。

あと、感想待ってますなんて言っておきながら
非ログインユーザーは書き込めない設定にしておくとかなんなんでしょうね… 申し訳ないです。


それでは本編いってみよー。






そろそろ、拠点の移動を考えるということでそれに備えて準備を始めることにした。

 

でも…レイリスさんによれば持っていくものなんて

アイテムBoxくらいでいいらしい。

 

 

原作だとまんま四次元ポケットなアイテムBoxだけど

この世界だとどんなもんか期待していたけど…

 

部屋にはかなり大きなアイテムBoxが20個以上並んでいた。

 

なるほど…これがページ数ね…。

 

いや、それにしてもあれだけの量の素材が入るとは思えないけど…

アカムの尻尾とかどう考えても無理だろう。

 

 

そして、装備Boxも10個ほど別の部屋にある。

 

まだ、現実味があるけど元の世界で作った大剣、ヘビィボウガンなんかがすべて入るとは思えない…。

 

だけど、アイテムBoxも装備Boxも目当ての素材や武具を考えて蓋を開けると、それが目の前に現れるんだよなぁ…。

 

 

 

まぁアタリハンテイ力学の力ってことにしようか…。

 

 

 

 

 

拠点の移動のための飛行船が次にココット村を訪れるのは明後日の明朝らしい。

そして、その飛行船が次に向かうのはポッケ村だとか。

雪山でのクエストか… 楽しみだな。

 

 

 

そんで、出発は明後日の夜か…。

だったら軽い採集クエストくらいなら行けるかなと考えて、いくつかのアイテムBoxは部屋に置いたままにしておいた。

 

 

 

 

さて、だいたいの準備はできたかな…。

 

 

 

うん、作業を終えたら小腹も空いてきた。

 

久しぶりに食堂に行ってみますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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相変わらず、今日も食堂は賑わっていた。

厨房では料理人やコックアイルーがせわしなく料理を作り続けている。

いつもおいしい料理をありがとう。お疲れ様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今日は何にしようかな…

最近は肉ばっかりだったからなぁ…。トマトも食ってるけど。

 

よし、今日はこれにしよう。

 

 

 

 

 

「【特製チコフグ雑炊】を1つお願いします。」

 

 

 

 

 

今日は海鮮だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日も晴天だったので外のスペースで食べることにした。

 

やっぱり青空の下で食べる飯はうまいよね。

雑炊ってのはどうかと思うけどまぁ気にしたら負けだ。

 

おっ…、運ばれてきたみたいだ。

 

 

俺の目の前に土鍋を置いて、ウェイターさんは戻っていった。

 

そんじゃあ開けてみますか…。

 

 

土鍋の蓋を開けると同時にたくさんの湯気が上がった。

 

 

おぉ…旨そうだなぁ。

 

 

海鮮食材特有の塩の香りが漂ってくる。

 

 

このまま眺めて冷ましてしまうのはもったいないな。

 

それじゃあ…

 

 

 

 

「いただきます」

 

 

 

 

実食いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…うめぇ…。

 

いい感じの塩味だ…。

 

フグって元の世界だと食ったことなかったけどこんなに旨いのか…。

白身だけどとっても弾力がある。元の世界でもこんなに弾力があるもんなのかねぇ…。

 

あっ、だからテレビとかで見たフグの刺身ってあんなに薄いのか? 1回食ってみたかったなぁ…

 

 

チコフグの食べごたえに驚いてたけどお米だってかなりおいしい。

 

俺は元の世界だといわゆる米所とか言われる場所にすんでたけど、悔しいがそこの米にだって負けてないな…

 

モンハン世界の食、恐るべしだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで俺は雑炊をあっという間に平らげた。

 

 

熱い料理を食べて多少汗をかいたので外で涼んでいると、

いきなり目の前にトマトジュースらしきものが置かれた。

 

 

「はい、完熟シナトマトジュースよ。あなた、シモフリトマトジュースばっかり頼んでるけどシナトマトだって捨てたもんじゃないんだから!

それにあなた達にはいっつも助けてもらってるしね。

これはそのお礼よ。」

 

 

ベッキーさんが現れて、俺の目の前の席に座った。

 

休憩時間かな?ギルドガールズって忙しそうだからな…。

 

なんか思い通りにいかないことでもあるんなら愚痴の1つや2つ聞きますけど…。

 

 

「あら、いいの?じゃあ、ちょっと相談があるんだけど聞いてくれる? ちょっと知り合いのハンターが強敵相手につまづいちゃってるらしくてね…。

あなたなら、そんな強敵を前に止まってしまったときどうする?」

 

 

強敵相手ねぇ…。

 

俺はモンハンデビュー作はモンスターハンター3~tri~だったけど、看板モンスターのラギアクルスには相当苦労させられた。

45分近くかかって、やっとクリアできたのは今でも覚えてるな。

 

それでそのときの俺はどうだったかな…

 

 

「そうゆうときだったら俺はアイテムをガンガン使いますね。罠だったり爆弾だったり…、相手によりますけど閃光玉なんかもかなり有効ですよ。あと罠肉とか。」

 

 

「なるほど…そうゆう搦め手か…使ってみることにするわ。

で、他にはなんかあったりしない?」

 

 

「あとは…やっぱり他のハンターに協力してもらうことですかね?やっぱり数は力ですよ。」

 

 

やっぱりマルチプレイは楽だよなぁ。

効率的にクエストを回すにも、友達から助けてもらうにもマルチプレイは便利だったしね。

ただ、他人に迷惑をかけるプレイはいけないけど…。

 

 

「なるほど…数の暴力ね…。うん!参考になったわ!今度使ってみることにするからありがとうね!」

 

 

…数の暴力とはちょっと違うような。

そして「使ってみる」?まさか自分が狩りにいくわけじゃないよな…?

原作みたいな暴走は止めにしてほしい限りだ。

 

 

 

 

そんなこんなで俺の昼飯時は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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というわけで、今回は採取ツアーだ。

 

特にほしい素材なんてものもないけれど、こうゆう自然を眺めてのんびりフィールドを回るのもなかなかいいもんだと思う。

 

今回連れてきてるオトモは

コレクトの【サンマ】と

ガードの【ヒラメ】だ。

 

 

採取ツアーでもいいからクエストにいきたいというので今回は連れてきた。

 

 

「こうしてのんびりお散歩もなかなかオツなもんニャ。」

 

 

「そうだニャ~。あの雲なんてとっても美味しそうニャ~。」

 

 

 

 

自動マーキングに引っ掛かる大型モンスターの気配もない。

 

まぁ、今回は気楽にいこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…まぁ、採取ツアーなんて特筆する点はないかな。

 

 

 

 

薬草や火薬草、解毒草やネンチャク草の見分け方なんかをオトモに聞いたりしたくらいか。

 

ネンチャク草の粘りがスゴくてネコ達が遊んでたら大変なことになってた。

 

あと、マタタビでネコ達が幸せな顔になってたのは和んだ。

 

「マタタビは神がお作りになられた至高の植物ニャ~。

マタタビをたくさんくれるのなら旦那さんを裏切っちゃうかもしれないニャ~。」

 

 

ずいぶんと薄い主従の絆だなぁ…。

こういうところがなければ素直に可愛いのにな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も特段変わったことなんて無く、エリア11で釣りをしたりなんかもした。

今日はなかなかの食いつきだったな。

 

サンマもなかなかの釣り上手だった。

 

ヒラメはなんかそこらへんのチョウチョと戯れてたみたい。

 

 

 

ずいぶん食いつきがいいので少々釣りすぎてしまった。

 

こんなにたくさんの魚がいても困るのでエリア12のアイルーの集落におすそわけすることにした。

 

 

たくさんの魚をもらったアイルー達はお祭り騒ぎ。

 

ウチのオトモ達も加わって、よくわからん踊りをしてたな…。

 

 

帰り際に肉球のスタンプをもらった。

 

ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、こんな感じで緊張感はなかったけど充実したクエストにはなったかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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村に戻ると、レイリスさんがベッキーさんとなにかお話をしていた。

 

何の話だろう…。俺も混ぜてもらえるかな…?

 

 

 

「レイリスさ~ん。何の話してるんですか~?」

 

 

 

遠くからそんな声をかけると、何故か2人は慌てた様子。 なんなんだ…。

 

 

 

「か、帰ってきてたんだね!こんなに帰りが速いなんて流石迷子君だなぁ~! モンスターなんて何のそのだね!イヤ~、サスガダヨ~!」

 

 

俺、今回は採取ツアーですよ?レイリスさん…。

 

 

 

「あっ、そうだ。さっきベッキーさんが言ってた知り合いのハンターさんはどうだったんですかね?俺のアドバイスは参考になったかな…?」

 

 

 

「へ? あっ…あぁ!スゴい嬉しそうにしてたわね!これで攻略の糸口が見えてきた!とか言ってテンション上がってたわよ~!」

 

 

 

それは良かった。 レイリスさんの顔が真っ赤だけど体調でも悪いのか…?

 

 

「なんか、レイリスさん顔真っ赤ですね…。無理はしないで下さいよ? 俺も今日はゆっくりしますから。

それじゃ、お疲れ様で~す。」

 

 

 

 

 

そういってその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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夜、マイハウスで俺は新拠点の妄想をしていた。

 

 

雪山かぁ…フラヒヤ山脈だっけか。

 

 

あの山の印象といったら…ティガレックスだなぁ…

 

他にも雪山なんかの寒い場所にしか出現しないモンスターはたくさんいる。

 

そいつら相手に戦えるなんてワクワクが止まらない。

 

 

 

それに、レイリスさんのパーティメンバーの一人もいるらしいじゃないか。

 

直接会うのが楽しみだな。

 

 

 

 

数々の期待感に胸を高鳴らせながら、俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 




フグは食べたことがありません。一度食べてみたいなぁ…


今はホットドリンクの味を必死に考えてます。





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第12話 雪村の盛り場

レイリスさんが迷子君にガバッと…が見たい!
という声が来なかったので拠点移動することにしました。

次はポッケ村です。

サブタイはポッケ村のBGMの名前にしようと思いましたが
ポッケ村のBGMの名前って「ポッケ村のテーマ」という真っ直ぐすぎる名前なんですよね…

なので、今回は集会所のBGMの名前にしました。
御了承ください。




「はぁ…移動の日になっちゃったかぁ… 何なのよ彼… 全然隙なんて見当たらないじゃない!」

 

彼自身のアドバイス通り、いろいろ試してみた。

 

彼のトマトジュースにこっそりお酒を混ぜてわざと酔わせ、マイハウスでぐっすりしている隙をレイリスに襲わせる…!

 

そんな狙いを持って試してみたけど… 彼のマイハウスの戸締まりはしっかりしていた…。

 

ぐぬぬ…強敵じゃない…!

 

 

他にいろんな作戦もあったけど、いかんせん時間がなかった。

 

 

そんなこんなで、拠点移動の日になってしまったわ…

 

 

 

 

「いい?レイリス。 もうこうなったらポッケ村にいるあの子が彼と会うのは避けられない。何としても誰よりも先に、彼のことを勝ち取るのよ!」

 

 

「えぇ…。もう無理だよぉ〜…。 ポッケ村にいるあの子は私よりずっとお淑やかで優しいし…、もう、私は一生孤独にモンスターを狩り続ける運命なのさ…。」

 

 

「このバカタレぇ!そんなこたぁ関係ないわよ!もう、彼の食べ物や飲み物にしこたま強いお酒をしこんで彼をベロッベロに酔わせて、貴女もなにかそうゆうお薬を飲んで彼に迫ればきっと勢いで結ばれるわ!もう、そうゆう方向で行きなさい!」

 

 

「なんだか彼に悪いなぁ…。でも私だって諦めたくないな…!

よし、私だって英雄と呼ばれたハンターなんだ!それくらいの困難乗り越えてみせる!」

 

 

…うん。貴女、最近いい表情するようになったわよ。

 

これもやっぱり彼のおかげなのかしらね… 親友を救ってくれた彼には感謝だわ。

 

 

そんなことを思いながら、私は飛行船に乗っていく親友を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ひ、飛行船ってこんなに速いのね…

 

レイリスさんは飛行船に慣れてるのか、上昇していくときもベッキーさんに手を振っていたけど、俺は外縁から離れた柱にずっとへっぴり腰で掴まっていた。

 

そんな俺をみてレイリスさんは大爆笑。

こ、怖いわけじゃないんだからねっ

 

俺はムキになって外縁の方へ向かい、そこでガッツポーズ。

 

「俺だってこれくらいのことなら全然へいk…」

 

 

 

飛行船が大きく揺れた。

 

 

 

 

 

「ヤメテーーッ!死ぬーーーーッ!死んじゃううううぅぅぅ!!」

 

 

 

 

もう、なんか悲惨だった。 俺の尊厳なんかあったもんじゃない。

 

 

レイリスさんと俺のオトモ達は腹を抱えて笑い転げていた。

 

 

泣いていいですか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな俺も、時間が経てば飛行船の揺れにも慣れて空の旅を楽しめるようになった。

 

うん、なかなかいい景色じゃないか。この景色でさっきの出来事は忘れよう。

 

 

 

 

そうして、軽く食事をとったり船員さんの人と腕相撲をしたりして過ごした。

船員さんは強かった。あれならブラキディオスと拳で渡り合うのだって夢じゃない。

俺が弱いわけじゃないからね?

 

 

 

 

少しずつ空気が冷えはじめた。

 

「うん、この空気が感じられるようになったらあと少しだね〜。」

 

 

やっぱりあと少しか。胸がどんどん高鳴る。

 

 

そしてそれから数十分後、

 

 

 

 

 

 

俺たちは新拠点に到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「皆さん乗船お疲れ様でしたニャ。ポッケ村に無事到着ですニャ。」

 

 

 

 

 

飛行船を降りると、そこには雪に彩られた綺麗な村が広がっていた。

 

 

 

 

 

綺麗だなぁ…

 

 

やっぱり雪景色は心が洗われる…

 

ちなみに、俺の故郷も雪景色が綺麗な場所でした。

 

懐かしさでなんだか涙が出て来そうだ。

 

 

 

 

「よし!じゃあさっそくハンターズギルドへ向かおうか!」

 

そうだ、感傷に浸るのもいいけど俺は今ハンターなんだ。

 

ここでも頑張っていかないとな。

 

そんなことを思って、俺はハンターズギルドへ足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あら!レイリスさんじゃない!ポッケ村に来るなんてひさしぶりね!

にしても、どうして急にポッケ村なんかに?」

 

 

「ひさしぶりです。シャーリーさん。

いやぁ…最近私とパーティを組んでくれている人がポッケ村に行きたい!ということで今回は付き添いで来ることになってですね…

いや、別に彼についていきたいなんてことはないんですk…

「はは〜ん。なるほどねぇ。

確かに彼、なかなか魅力的じゃない。あの子がいる村に彼1人だけ送り込むとなると確かに心配になっちゃうわね。」

 

シャーリーさんが彼を見ながら私をからかうように言う。

 

彼はこっちの気なんかおかまいなしにネコちゃん達と暖炉の前で幸せそうな顔をしてる…

 

こっちの身にもなってほしいよ…

 

「そうそう、あの子は今クエストに出ていてね。 貴女たちが来る時間を考えて出発していたからそろそろ戻ってくると思うわよ?

あの子も久しぶりに貴女に会えると聞いて喜んでたから、今日はクエストにもいかないでゆっくりしていってほしいんだけど…。」

 

 

なるほど、どうも姿を見かけないと思ったらそういうことだったのか。

そんじゃあ今日はお言葉に甘えてゆっくりさせてもらおうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「今日はどうやら私の知り合いがおもてなしをしてくれるみたい。

だから、クエストに行けるのは明日以降になるかな?」

 

 

レイリスさんがやってきて俺にそう告げた。

 

明日以降かぁ。 まぁ、ポッケ村の観光もいいかもね。

 

あのどデカイマカライト鉱石や、農場の洞窟の奥にある巨剣も見てみたい。

 

それに、あんまり知られてないけどポッケ村にだって温泉があるんだ。

 

雪景色の中での温泉。これは期待しちゃうね。

 

 

 

 

「うーん、それじゃあ今日はどうすっかなぁ…」

雪原の上を走り回って遊んでいるオトモ達を見ながら考える。

 

「おっ、そうだ、あれでも作ってみよう。おーいおまえらー。」

 

 

 

 

やっぱりこれだけの雪があるならあれを作ろうか。

 

 

 

 

「雪だるま作るぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が雪だるまを作ると言ったらネコ達は大喜び。

 

決して妥協はしないニャ!なんていいながら、ものすごい勢いで雪だるまを作りはじめた。

 

おぉ、すごい。みるみるうちに雪玉が大きくなっていく…

 

え?ちょっとデカすぎません?雪玉1つで軽く俺の身長は超えてるような…

 

こんなのどうやって上に乗せるのさ…

 

 

 

 

 

そんなこんなでネコ達はすごい勢いで雪玉を大きくしていき、気がつけば俺の前には2メートルを超えそうな雪玉が2つ並んでいた。

 

お前ら…こんなのどうするのさ?

 

村人のみなさんも集まってきちゃったじゃないか。

 

 

「ここに設置して飛ばせばいい感じに削れるニャ… 細かい細工はあとからできるからとりあえずいいとして、雪玉の距離はもうちょい遠いほうがいいニャ…。ともかくこれで成功率98%ニャ…。」

 

ネギトロがなんだか考えてるな… 何をしようとしてるんだ。

 

そんなことを考えてるとオトモ達が突然動き出した。

 

 

「よしっ!イクラッ!マダイッ!マグロッ!突撃ニャ!」

 

ネコ達が3匹同時にネコまっしぐらの術を発動し、雪玉の1つを吹っ飛ばした。ボマー、ファイト、ビーストの3匹だもんな。まぁあれくらいできるのか。

 

…で、それからどうするんだ?

 

 

「残りでネコ式トランポリン発動!打ち上げるニャァァァッ!」

 

 

残りのオトモ達が雪玉が吹っ飛んだ方向へ駆け込み、ネコ式トランポリンを発動。

 

跳ね上がった雪玉はネコまっしぐらの術で少し削れたところを接地面にして、見事にもう1つの雪玉の上に乗った。

 

 

「大成功ニャ!皆さん応援ありがとうニャ!」

 

 

村人から歓声があがった。

 

 

マジかよ…お前らそんなことも出来るのか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネコ達が最後の仕上げとして、ネコ耳、ヒゲなんかを雪だるまにつけているのをのんびり眺めていると、

レイリスさんがハンターらしき女性と一緒にやってきた。

 

 

 

「うわっ、デカっ!何アレ!?ネコちゃんたちあんなことも出来るの!?」

 

 

 

ウチのオトモは優秀みたいですね…なんかズレてるような気もするけど…

 

 

そして…そちらの方はもしかしてアレですか?

 

 

 

「うん!そうだよ!わたしの元パーティメンバーの1人、クルルナっていうんだ!」

 

 

「初めまして。クルルナと申します。レイリスから噂は聞いていますよ?なんでもすごいハンターらしいじゃないですか?

これからよろしくお願いしますね?」

 

 

「いえいえ、こちらこそ。これからよろしくお願いします。」

 

 

 

 

俺が初めて会ったレイリスさんの元パーティメンバーは、ネルスキュラ素材と思わしき弓を担いだ、吸い込まれるような黒髪の小柄な女性だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ビーストオトモのマダイが初登場です。
こんな登場のさせ方でゴメンネ…。

あと、ポッケ村でのベッキーさんポジションはシャーリーさんです。
本当ならクロスシリーズでポッケ村のクエスト受付をしている子にしたかったけど名前が探せませんでした…。



ほい、というわけで元パーティメンバー1人目の登場です。

これでレイリスさんが彼を独り占めできる展開はなくなった…?

ともかく、これからの展開にご期待ください。

感想、アドバイス等お待ちしております。




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第13話 雪山の主、ドドブランゴ

このクエスト名を初めて見たとき、こんな猿が主なのか?
なんて思った記憶があります。

というわけでクルルナさんデビュー戦です。

早速本編どうぞ。




クルルナさんは見てると吸い込まれるような黒い色をした髪をポニーテールにまとめた、綺麗なハンターだった。

 

レイリスさんの燃えるような赤い髪も好きだけどクルルナさんの髪も俺は好きだ。

 

そして、思ったより小柄だな… 俺の妹と同じくらいの身長だ。

 

 

そんで…ちょっとこれは困ったな…

 

 

 

 

クルルナさんはナルガXシリーズを着込んでいた。

 

 

ナルガXシリーズは…まぁ一言で言ってしまうとエロい。

 

キリンシリーズにならんでファンの多い防具だと思われる。

 

肌の露出が多いんだよなぁ… 寒くないのかしら。

 

ともかくこれでは目のやり場に困ってしまうな…

 

無心だぞ… 俺、頑張れ。

 

 

 

 

 

 

「レイリスからは迷子のハンターで聞いてますよ? ちょっと目を話すとフラフラどこかへ行ってしまうけど、その腕はレイリスも認める一流ハンターだそうですね。 これからしばらくの間、ポッケ村を拠点にしてくれると聞いているので嬉しい限りです。 よろしくお願いしますね。」

 

 

レイリスさんに比べると、こう…おしとやかな女性って感じ。

 

着ている防具も相まって、ファンは多そうだ。

 

レイリスさんも美人だし、この世界の女性ハンターは美人が多いのかね?

 

俺もいずれそんな彼女とかができたらいいなぁ…

 

 

 

「今日は皆さんをこの村へ招くことができたことを祝って宴会でもどうかと思ってるのですが… 迷子さんやオトモさん達はどうでしょうか?」

 

 

 

おっ、そういうことなら喜んで参加させてもらおう。

 

みんなで楽しくわっしょいやるのは大好きだからね。

 

 

「ええ、喜んで。 よろしくお願いします。」

 

 

 

クルルナさんは俺の言葉に微笑みで答えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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宴会は集会所の大きいテーブルを囲んで行われた。

 

ギルドの施設のこんなスペースを借りれるなんてクルルナさん大物だなぁ…

 

そんなことを考えていると料理が運ばれてきた。

 

んん?……あれって天ぷらじゃない? やっぱりそうじゃん!

マジかよ!和食がこんな場所で食えるなんて!

 

ネコ達も魚の天ぷららしきものに目を輝かせていた。

 

 

 

「とりあえず今来ている料理は、なかなかの味のものだと私が保証します。 皆さん是非手にとってみてください。」

 

 

 

よし、それじゃあ遠慮なくいただこう。

 

 

 

「いただきます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

うまいッ!やっぱり天ぷらはいいね! サクサク感が最高だ。

 

きっとこの辺りで取れる山菜なんだろうけど甘みが出ていて塩や天つゆをつけるとその甘みが引き立つ。

 

ネコ達は夢中で魚料理を頬張っていた。

 

 

 

「お気に召されたようで良かったです。他の料理もあるので皆さんどんどん食べてくださいね?」

 

 

 

その後もポポノタンを塩胡椒をかけて焼いた物など、美味しい料理はどんどん運ばれて来た。

 

変わり種にはフルベビ漬けなんてものもあったな…

 

まぁ、お酒のつまみって感じだ。俺はけっこう好みの味でした。

 

 

ともかく、今回の宴会ではたくさん舌鼓を打たせてもらった。

 

明日から頑張らないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会が粗方終わった後、俺たちはデザートのドドブラリンゴを食べながら明日からの予定について話していた。

 

 

「私は今日、雪山を軽く回って採集クエストをこなしていました。

その時にドドブランゴを見かけたので明日はそのドドブランゴの狩猟を手伝っていただければと。よろしくお願いします。」

 

 

ドドブランゴか、まぁそこまで強敵でもないかな?

でも油断は禁物だ。しっかり頑張らないとな。

 

 

 

 

 

……………なんか忘れてる気がするなぁ。

 

あっ、そうだ。あれを食べてなかったじゃないか。

 

 

 

「すいません。トマト食べたくなったんですけど頼めますかね…?」

 

「えっ?トマトですか? え…えぇ、今持って来させますね。」

 

 

 

図々しくてスミマセン…。でもトマト好きなんですよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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次の日、俺たちは雪山のドドブランゴ狩猟の準備を終えてギルドに集会所に集まっていた。

 

 

 

レイリスさんはいつも通りのブラックX一式に大剣。

 

俺もグギグギグにバルカン棍。

 

そして、クルルナさんは……なんの装備なんだろう。

 

武器はネルスキュラの弓に防具の外見がナルガXってことはわかるんだけど…

 

気になったので聞いてみることにした。

 

 

「クルルナさん、ちょっと装備について聞いていいですか? 気になってしまうもんで…。」

 

 

「えぇ、構いませんよ。防具はS・ソルZ、グリードXR、ゴアXRを組み合わせたものですね。お守りも運のいいことになかなかのものがあったので発動してるスキルは

挑戦者+2、弱点特効、通常弾・連射矢威力UP、特定射撃強化、超会心、攻撃UP【小】 ですね。」

 

 

 

 

なんつう装備だよ…。なんなの?この世界のハンターは全員神おま持ってるんですか?

 

 

 

 

 

 

まぁ、しょげていても始まらないか…。

 

 

 

 

そんじゃあドドブランゴの狩猟いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、雪山に着いた。やっぱり山の麓でもひんやりしてるな。

 

それじゃあ、山頂目指していきますか。

 

 

今回はビーストオトモのマダイを連れてきている。

 

弓を使うクルルナさんのサポートになってくれると嬉しいけど…

活躍期待してるよ。

 

 

 

 

 

 

 

山頂へ向かう道の途中では氷の洞窟を通る。

 

ここからはあまりの寒さで何も対策をしないとただそこにいるだけでスタミナを奪われてしまう。

 

だから、あるものを使うんだけど…どんな味がするのかな?

 

 

俺はアイテムポーチから保温性の容器に入ったホットドリンクを取り出し、一気に飲み干した。

 

 

 

へぇ… スパイシーでピリッとしているけど後味は生姜湯みたいだな… まぁ悪くないか。

 

 

よし、これで寒さもへっちゃらだ。

 

どんどん進もう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷の洞窟を抜けるとそこにソイツはいた。

 

 

雪獅子………ドドブランゴ!

 

 

周りに取り巻きのブランゴも何体かいる。これは弓使いのクルルナさんにとっては鬱陶しいかな?

 

俺はマダイに雑魚処理の指示を出してからドドブランゴへ向かって駆け出した。

 

 

 

 

さあ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

ドドブランゴは初心者にとっての大きな壁の1つだと思う。

 

動きも速いし距離を詰めたり話したりする攻撃が多くてイライラする。

 

だけど肉質は全身がかなり柔らかい方で切断武器にいたっては、全身で弱点特効が通る。

 

行ってくる攻撃も直線的なものが多く、相手の周囲を回り続けていれば狙われても充分対処もできる。

 

 

だから俺はけっこう好きな相手だ。

 

 

 

 

 

操虫棍の機動力を活かして俺はドドブランゴにはりつき、斬りまくる。

 

 

レイリスさんも隙の少ない抜刀攻撃→納刀継続のコンボで相変わらず上手く立ち回っている。

 

 

 

 

 

そして、注目のクルルナさんだが………

 

 

 

やはりうまい、ほとんどドドブランゴの顔面めがけて矢を撃ち込んでいる。

 

 

どうやらブシドースタイルで来ているみたいだけど、ブシドー殺しである連続攻撃も1回目はうまく位置取りを変えてジャスト回避をせずに回避。2回目の攻撃で初めてジャスト回避を行い反撃で的確に弱点を射抜く。

 

 

レイリスさんと同様に相当うまいな…。

 

これは今回もあっさり終わりそうかな…。

 

 

 

 

 

 

そんな俺の予想通り、俺たちは見事な立ち回りを見せ、ドドブランゴをほぼ完封といっていいくらいに狩猟した。

 

 

ありがとう、お前の命もしっかりいただきます。

 

 

 

 

今回もクエストは大成功だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「カンパ〜イ!」

 

「「乾杯!」」

 

「うニャ!」

 

 

 

うん、やっぱりクルルナさんはレイリスさんのパーティメンバーだっただけあって相当強いハンターだと思う。

 

俺とレイリスさんのパーティでもあれだけ強かったのにクルルナさんが加われば無敵なんじゃないか…?

 

 

「噂通り、素晴らしい操虫棍さばきでした。お見事です!」

 

「ふっふ〜ん。そうでしょ!なんたって私が認めたハンターだからね!迷子君は!」

 

「俺はいつまで迷子なんですか…。にしてもクルルナさんも相当の弓使いですね。あの立ち回りは惚れちゃいますよ。」

 

「惚れッ…!?ちょっとどういうこt…

「フフッ、ありがとうございます。でもまだまだ改善の余地はあると自分でもあると思ってます。これから皆さんとクエストにいく中でもっと自分を高められればと思っていますけど…」

 

なんかレイリスさんが言ってたけどよく聞こえんかったな…。

 

そして、上昇志向をお持ちとは素晴らしい。

 

一緒に上手くなっていきたいもんだね。

 

 

俺はそんなことを考えつつ、なぜかふてくされた顔のレイリスさんとクルルナさんを見ながら、グラスのトマトジュースを飲み干した。

 

 

 

 




本編に出てきた装備やスキルの説明をしたいと思います。

ブラックXシリーズ
一式装備で大剣に有用なスキルが発動する、組み合わせ装備が主流のモンハンでは珍しい一式運用が強い装備です。自分も愛用していました。

グギグギグ
武器の切れ味をカバーするためのスキルが発動し、他のスキルを追加するための拡張性にすぐれた、テンプレにもなっている装備です。
グギグギグで検索かけるとすぐにヒットするかと。

ネルスキュラ弓
武器銘はスキュラヴァルアローといいます。
定点攻撃ができる、連射弓のなかではトップクラスの性能を誇る弓です。

バルカン棍
ダブルクロスの裏ボス、ミラボレアス亜種、通称ミラバルカン素材から作られる操虫棍です。 非常に高い物理攻撃力に非常に高い爆破属性を併せ持ち、異常な汎用性を誇る操虫棍です。

ここからスキルです

挑戦者
モンスターが怒り状態になった際に自身の攻撃力、会心率を上げるスキルです。会心率は他のゲームでいうクリティカルシステムと似たようなものと捉えていただいても問題ないかと。

通常弾、連射矢威力UP
通常弾、連射矢の威力を上げるスキルです。

弱点特効
攻撃がモンスターの弱点にヒットした際、会心率を大幅に引き上げるスキルです。

特定射撃強化
ボウガンにセットされている武器内蔵弾、弓の剛射、曲射というアクションを強化するスキルです。
弓でこのスキルを採用する場合は殆どの場合、射撃の後に追い打ち射撃をする剛射の威力をあげるために採用されます。

超会心
クリティカルの倍率を上げるスキルです。ポケモンだとスナイパーという特性みたいなものかと。

攻撃UP
武器の攻撃力を上げるスキルです。


書きたくなったのでスキル説明を書いて見ました。


ちなみに、フルベビ漬けはオンラインゲームであるモンスターハンターフロンティアに実在するアイテムです。







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第14話 シナトマ添えサイコロステーキ

クルルナさんの得意武器は
太刀、双剣、狩猟笛、ガンランス、弓です。

あと、機種変更をしたのですがなかなか文字入力に慣れなくて困ってます。
ただ、操虫棍が1発で変換できるのには感動しました。

それでは本編どうぞ。



さっき集会所に顔を出してきたけど、どうやら今日は受けれるクエストはないみたい。

ギルドガールのシャーリーさんが教えてくれた。

 

確かシャーリーさんって、2GでG級受付をしていたあの黄色い服を着た人だったはず。

クルルナさんとも馴染みらしく、軽く挨拶をしておいた。

 

 

なんだか面白そうに俺のことを見てたけどなんなんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、じゃあ今日はポッケ村を満喫しますか。

 

 

 

まずは………温泉に行ってみようか。

 

雪見温泉だ、雪見温泉。 これは多分ポッケ村くらいにしかないだろう。

 

とっても楽しみですね。

 

 

 

 

 

う〜ん。温泉といってもどこに行けばいいんだろう…。

 

このままだとまた迷子のハンターなんて呼び名が定着してしまう。

 

それだけは何としても避けないとね。

 

 

自分だけだと埒があかなかったので、近くにいたハンターらしき男性にどうすればいいのか聞くことにした。

 

聞いたところ、ゲームには無かった温泉施設ができているらしい。

 

なるほどね、助かりました。 俺はハンターらしき男性にお礼を言って、その施設へと向かい始めた。

 

ハッハッハッハー!と、豪快に笑ってるけど親切な人だった。

ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、温泉施設に着いたけど…受付で入浴のための道具を借りたりできるみたい。思ったよりサービスいいね。

 

そして奥に進むと、男湯、女湯、そして…混浴の看板がそれぞれあった。

 

おおぅ…混浴あるのね…。 それじゃあやっぱりここは男として、進む道は決まってるでしょ……!

 

 

 

 

 

 

俺は迷いなく、男湯の看板の先へ進んだ。

 

ヘタレなんです…バカにされたって構わないさ。どうせ俺はリオレウス並みのヘタレさ…。

 

 

 

 

 

 

 

「おおっ、広いね。いい雰囲気だ。」

 

脱衣所から浴場へ進むと、そこには湯けむりと共に温泉が広がっていた。

かなり広い。しかもどうやら俺以外に客はいないらしい。

ははっ、いいね。こりゃ温泉で泳ぐなんて贅沢ができちゃうね。

 

 

俺は軽くシャワーを済ませてから浴槽に浸かった。

 

 

「あぁ…温泉っていいわぁ…。」

 

体の奥から疲労がジンワリとほぐれていく。

 

こっちの世界に来てから基本シャワーくらいだったからね。

 

やっぱり日本の風呂文化が恋しくなってた頃だった。

 

その後も軽く浴槽を泳いだりして温泉を満喫した。

 

 

 

 

さて、次は雪見露天風呂だ。

 

 

 

 

 

外に出ると、雪に囲まれた露天風呂が広がっていた。

 

う〜ん。いいね。 素敵な景色だ。

 

 

おっ、ドリンク屋もあるみたい。これは3rdのシステムのリスペクトかな? 確かに風呂で飲む冷たい飲み物は美味しいもんな。

 

俺はユクモラムネを一本購入した。

 

 

 

 

 

あぁ…いいねぇ… この世界に来てから1番リラックスできてる気がする。

 

 

 

ユクモラムネを飲みながら周りの雪景色を眺める。

確かこの源泉があるからポッケ村の周りは雪解けがはやく、雪に覆われて人が住めないなんてことは起こらないんだよな。

そんな設定があるはず。

 

 

なんてことを考えていたらどうやら俺以外にもお客さんが来たみたい。

 

残念、貸し切りタイムは終了か。まぁ1人増えたからって大した問題じゃない。充分広く使えるしね。

 

そんなことを考えてユクモラムネを飲みつつ、入ってきた…お客さんの方を……見…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お客さんは体をタオルで隠したクルルナさんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブゴッ! ゲホッガホッ!」

俺はユクモラムネを吹き出し、むせた。

 

そんな俺のことをクルルナさんは微笑んで見ている。

 

 

「ななな…なんでクルルナさんが…お、男湯にいるんですか…?」

 

 

俺が慌てて尋ねると、クルルナさんは不思議な顔をして

 

 

「あら?男湯?ここは混浴の看板がたっていましたけれど…。

フフッ、迷子さんったらちょっと抜けてる面もあるんですね。

ともかく、私と迷子さんが一緒に入ってもここは混浴なので何も問題ありませんよ? それじゃあ失礼しますね?」

 

 

なんてことをいいながらお湯の中へ入ってきた。

 

混浴だって?俺はしっかり看板は確認したぞ?ここは男湯の筈だ…

 

本当にそうだったっけ…?なんだか自信がなくなってきたなぁ…。

 

 

「ハハハ… あっ、そ、それじゃあ俺はもう上がりますね!

クルルナさんの邪魔になると思うのd

「いえいえ、そんなことはありませんよ?ぜひ一緒におしゃべりしましょうよ!ね?それがいいですよきっと!それじゃあ私、飲み物買ってきますね!」

 

 

逃げられねぇ…

 

…しょうがないので少しだけお話することにした。

 

 

 

 

 

「正直あの宴会の時、トマトなんて頼まれるとは思ってませんでしたよ。もっとこう…肉!とかくるものだと思ってました。

フフッ、トマトが大好きなんて珍しいですね。これからトマトのハンターさんと呼ばせてもらおうかしら。」

 

 

「迷子よりはマシだけどそれもどうかと…、まともなのはないんですか…?」

 

 

クルルナさんは俺の好物、好きな女性のタイプなんかを聞いてきた。

 

俺に聞いても意味なんてないでしょうに…。

 

そして、トマトのハンターも正直勘弁してもらいたい限りだ。

 

 

「うふふ、なんだかこうしてのんびりおしゃべりも久しぶりで楽しいですね。レイリスもそうだったらしいですけど、私レベルのハンターとなるとなかなかいなくて…。 一緒のレベルの仲間がいるのはこんなに楽しいものだったんですね!」

 

 

ち、近いですよクルルナさん… 俺はヘタレなんだ…

目のやり場に困ってしまうじゃないか…

 

いかん、このままだと数多くいるであろうクルルナファンクラブの皆さんに殺される。 なんとかしてこの温泉から離脱せねば…

 

 

 

「さて、そろそろ来るはずなんですけどね…。」

 

 

 

ん?来るはず? 一体なんのことだ?

 

そんなことを思っていたら、クルルナさんの視点がある一点を見つめて止まった。

 

俺もその視線の先に目をやると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ…なんで迷子君が… 」

 

 

 

 

 

 

 

体をタオルで隠したレイリスさんがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あなたたち、いつの間にそんな関係に…

クルルナあんたまさか…私を差し置いて迷子君に近づいて何かしてないでしょうね……!?」

 

「いえいえ、私は偶然ここでトマトさんと一緒になっただけですよ?

トマトさんったら男湯と混浴を間違えたそうで…なかなかお茶目な一面もあるんですね。なんだか可愛いです。」

 

「迷子君が看板を見間違え…?あ、あんたまさか…看板を入れ替えて……!?

それに、女湯が修繕中になってたのもこの場面を私に見せつけるため……!?」

 

 

「さあ?なんのことやら。ともかく、私とトマトさんは仲良くおしゃべりしていただけですよ?」

 

 

 

むむむ…なんだかピリピリしたムードになり始めたぞ…?

 

ここはいったん落ち着かせないといけない。

 

 

 

「ふ、2人ともいったん落ち着いt

「本当でしょうね!?なんだかきな臭いわ……!

迷子君!本当にクルルナに何もされなかった!?私には本当のことを言って!」

 

 

「本当ですよ?ねぇ、トマトさん?楽しくおしゃべりしていただけですよね?」

 

「あ、新しい呼び名まで……、迷子君、本当に!?変な所とか触られたりしてない!?」

 

「トマトさん?そうですよね?」

 

「迷子君!どうなの!?」

 

 

2人にすごい剣幕で迫られ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は逃げ出した。 ヘタレなんです…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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なんだか緊張してものすごくお腹が空いた…。

 

なんか食べて切り替えよう…。

 

置いてきちゃったけどあの2人大丈夫かな……。

 

 

 

俺は疲れた心を癒すために食堂へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

さて、何を食べようか。

 

この疲れた心を癒すためには……好物を食べるのが1番だな。

 

そして…いい料理があるじゃないか…!

 

 

 

 

 

「『シナトマ添えサイコロステーキ』をください。」

 

 

 

 

 

好物を食べてパッといこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポッケ村の食堂もココット村の食堂と同じく、屋内外両方に飲食スペースが設けられていた。

 

最近は外で食べることばかりだった気がするので、今回は店の中で食べてみよう。

 

 

 

厨房からは美味しそうな調理音が止めどなく聞こえてくる。

 

 

 

おっ……来た来た!

 

 

「鉄板お熱くなっておりますので注意してくださいね。」

 

ウエイターさんがそう言って、俺の前に料理を置いていった。

 

 

 

う〜ん、美味そう!

 

 

いい具合に焼けたサイコロミートと添えられたシナトマトにガーリックソースの様なものがかけられ、いまだに熱々の鉄板の上でジュージューいっている。

 

 

よし、さっそく実食にいってみようか。

 

 

 

 

「いただきます。」

 

 

 

 

 

 

うまいっ。

トマトも肉もうまいっ。

 

この料理に使われてるサイコロミートという肉は確かブルファンゴの肉が原料だったはず。

ブルファンゴの肉って固そうなイメージがあるけど全然だわ。全然柔らかくて美味しい豚肉のサイコロステーキだわ。

 

 

そして、このトマト。

焼きトマトってどうよ?なんて思ってた俺がバカでした。

焼いたことでなんていうんだろう…穏やかな味になった気がする。

刺激が消えるんだ、他の食材との相性も良くなる。

これは今まで焼きトマトをどうよ?とか思ってたのが悔やまれるなぁ…。

 

 

 

そんな感じで、俺は料理に舌鼓を打ちながらあっという間に平らげた。

 

 

ふぅ、美味しかった。

 

モンハン世界の料理はレベルたけぇなぁ…あいつらにも食べさせてやりたい。

 

 

さて、食堂も混んでることだし長居はやめておこう。

 

ごちそうさまでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事を終え、外に出ると…

 

 

 

先ほどの女性2人が笑顔で俺の前に現れた。

 

 

 

あっ…これはヤバそう。誰か助けて…

 

なんてことを思っていたら

 

「迷子君、さっきはごめんね〜!いきなりあんなことされても困っちゃったよね!今後あんなことが無いように反省するよ…。明日からのクエストも頑張ろうね!」

 

 

「私もトマトさんの気持ちを考えてませんでした…。本当に申し訳なく思っています。先程はすみませんでした。」

 

 

 

お、おぅ…なんだか急に素直になってますね…。

 

でも、仲直りできたみたいでよかったよかった。

 

これで明日からのクエストでの連携も問題なさそうだ。

 

「仲直りできたみたいで良かったです。明日からも頑張っていきましょうね。俺も2人に負けないように頑張りますから。」

 

 

俺はちょっと胡散臭さのある笑顔の2人に見送られ、マイハウスに帰ることにした。

 

よし、明日からも頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クルルナ………頑張ろうね………!」

 

「ええ………レイリス………、私達でやってやりましょう………!」

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はかなり調べることが多かったです。

文を打っている途中で何度も気になったことを検索にかけて調べました。

なかなか手間のかかる作業ですがそんな風に書きあげる物語もなかなか楽しかったです。



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第15話 雪山に舞う白き風!

今回のサブタイトルはダブルクロスの村クエストの名前です。

3、3rdにも「凍土に舞う白き風!」というクエストがありますが、クエスト説明文もほぼ同じです。

ダブルクロスでこのクエスト名を久々に見かけてなんだか懐かしくなりました。

それでは本編どうぞ。




温泉での出来事があってから数日後、俺達はシャーリーさんに呼び出された。

 

どうやら、ちょっと難しめの依頼らしい。

 

 

 

 

「雪山にベリオロスが2頭も出現したわ。危険度が高いので今回はあなたたちに依頼をすることにしました。凄腕のハンターが3人もいるからよほどのことがない限り大丈夫だと思うけど、くれぐれも油断は禁物よ?頑張ってね!」

 

 

ベリオロス2頭か…なかなかハードだね。

 

でも俺達のパーティならまず失敗は無いと思う。

 

実際、俺達のパーティは強いからなぁ。

 

 

「きっと私達なら大丈夫だよ!今回もバッチリ決めちゃおう!」

 

「そうですね。この3人にオトモアイルーさんも加われば百人力ですよ!頑張りましょう!」

 

 

 

温泉での一件以来、ちょっと不気味なくらい仲の良さげな2人もやる気を見せている。

 

そういえばあの日以来、いっつも誰かに見られてる気がするんだよなぁ…

 

 

ま、そんなことは置いておこう。今はベリオロスのことに集中だ。

 

 

 

 

 

そんじゃあ、ベリオロス2頭の狩猟、いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、雪山に到着だ。

 

今回のみんなの装備は

 

レイリスさんがナルガクルガのライトボウガンでブシドースタイル。

 

俺がまぁいつものミラバル棍装備でブレイヴスタイル。

 

クルルナさんがディノバルドの双剣でブシドースタイル。

 

オトモはアシストのネギトロだ。

 

 

 

改めて見るとみんなすごい装備だよなぁ…

 

モンハンの世界のハンターってのはこう…性能度外視でレイアシリーズとか着てるもんだと思ってた。

 

こんなの現実とあんまり変わってないじゃないか。

 

まぁ、強いのは大歓迎なんだけどさ。

 

 

 

 

そんな事を思いながら、俺達はベリオロスがいるであろう雪山の山頂へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山頂へと続く氷の洞窟を抜けると…

そこでは白い4足歩行の飛竜が、雪原を闊歩していた。

 

 

 

 

氷牙竜…ベリオロス…!

 

 

 

 

 

いつもの通りなら、このまま狩猟開始といきたいところだけど…

 

今回はちょっと事情が違う。

 

「どうしますか?このまま1体目の狩猟を始めるか…それともアイツにはペイントボールを当ててもう1体を探しに行くのか…」

 

 

 

 

「う〜ん、私はこのまま狩猟開始したいかな。今のパーティなら、うまくいけばベリオロスが合流する前に倒しきれちゃうかもだしね。」

 

「私もその案に賛成です。このパーティの連携なら倒しきれなかったとしても充分な痛手を与えることはできるでしょう。それに…もう1体を探しに行くというのは…」

 

クルルナさんがちょっと気まずそうな顔をしている…俺なんかマズイこと言ったか…?

 

…………………あっ。

 

 

 

「旦那さん…オトモのボクがいるのにそれは流石にひどすぎるんじゃないかニャ………?」

 

 

 

ネギトロがそれはもう、この世の終わりみたいな空気を漂わせていた…。

 

あぁ…ごめんよ……。 今度マタタビフルコースやってやるからさ…。

 

 

「謝罪の意は伝わったけど、心の傷はすぐには癒えないニャ……。

 

今後、そのような真似をしたらどんぐりロケットで空の彼方にゃ…。

 

覚悟しておくニャよ?旦那さん……!」

 

 

……う〜ん。悪いことしちゃったなぁ。

 

これは反省せねば。

 

「まぁ、ネコちゃんも活躍して迷子の旦那さんを見返せばいいよ!

今はベリオロスの狩猟を頑張ろう!」

 

「ありがとうニャ、レイリスさん…。まるで女神のようだニャァ…。」

 

 

 

 

おし、そうだな。

 

まずは目の前のベリオロスだ。

 

そう気持ちを切り替えて、俺たちは目の前の飛竜へ向かって駆け出した。

 

 

 

 

さあ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベリオロスの特徴といえばその動きの速さ、この1点に尽きると思う。

 

目の前のハンターの側面へ一気に回り込み、そこから突進などの攻撃に繋げてくる。

 

また、飛行能力も高く、飛び上がりながらハンターの側面に回り込んでそこからの飛びかかりやブレスなどの連撃を加えられ、そのまま気絶したり雪だるま状態にされて、なすすべもなくキャンプ送りなんてこともしょっちゅうだ。

 

こうして書くと、超絶強そうなモンスターに聞こえてくるがコイツだってしっかり弱点はある。

 

 

まず、コイツの……というより素早いモンスター全般に言えることだけど、耐久力はあまりない。

全体的に肉質は柔らかめで、ダメージの通りは比較的良い方だろう。

だから、うまくこっちのペースに持っていければ沈むのは速いだろうと思う。

 

 

それに、ベリオロスは所々に威嚇行動を挟む。

俺は体感で、威嚇を挟むことが多いのは突進攻撃の後だと感じる。

さっきいった耐久力の低さと合わせて考えると、こういったところで少しずつ着実に攻めていけばそこまで時間はかかることなく、狩猟は出来るはずだ。

 

 

そして最後に…

コイツは滑りやすい雪原の上で機敏な行動を可能にするため、両前脚にスパイクのように発達した、鱗の1種である棘がついている。

 

このスパイクが機敏な行動を可能にするということは、裏を返せばこの棘を破壊されると、その動きは大きく制限されてしまうということだ。

 

実際、棘を破壊したときはベリオロスはダウンを起こし、その後の回り込み行動の際には脚を滑らせ、大きな隙を晒すことになる。

 

 

 

以上のことを考えて狩猟に臨めば、決して狩れない相手じゃない。

 

 

 

 

 

俺はベリオロスから3色エキスを奪った後、棘破壊を狙って棘を攻撃する。

 

ミラバル棍特有の爆破属性の高さもあって、片方の棘はあっという間に壊れ、ベリオロスは脚ダウン。 その隙に最大の弱点である頭にフルコンボを叩き込む。

 

レイリスさん安全な時を見極めて貫通弾の速射を撃ちこんでるし、

クルルナさんもブシドー双剣の安定性を活かして絶え間なく斬撃を入れ続けている。

 

うん、今回もいいペースだ。

 

 

 

「2頭目合流しそうニャ!みんな気をつけるニャ!」

 

 

そんなことを考えてたら、ネギトロが2頭目合流の気配を察知したらしい。

 

 

「OK!私がこやし玉で対処する!」

 

 

レイリスさんの声が聞こえた。

それなら大丈夫だと判断して、俺とクルルナさんは目の前にいるベリオロスの相手に集中する。

 

このベリオロスもあと少しで倒せるってとこだろう。

 

もう一押しだ。

 

そんなことを考えてた時だった。

 

 

 

 

 

「あっ…マズッ……!」

 

 

 

 

そんな声が聞こえ、何事かと思って振り返ると、

 

 

 

雪だるま状態になったレイリスさんが新手のベリオロスに狙われていた。

 

 

 

「ネギトロッ!!サポート行けッ!!」

 

 

「もちろんニャ!」

 

 

ネギトロがすかさずレイリスさんの元に駆け寄り、雪だるま状態を解除する。

 

 

これでひとまずは大丈夫か…

 

なんてことを考えてると

 

 

 

 

「トマトさんッ!危ないッ!」

 

 

 

 

後ろから声をかけられ、嫌な予感がした直後、ベリオロスの突進に引かれた。

 

 

 

いってぇな……って、 オイオイ…マジかよ……!?

 

 

 

俺に突進をぶちかましたベリオロスは速度を落とさず、そのままレイリスさんがいる方向へ猛スピードで突っ込んでいった。

 

 

そして、ベリオロスは回復薬を飲んでいる途中だったレイリスさんとそばにいたネギトロもろとも突進で吹っ飛ばした。

 

「うぅ…」

 

 

吹っ飛ばされたレイリスさんは立ち上がったものの、酷い目眩に襲われているみたいだ…!

 

これが気絶状態ってやつか、クソッ!

 

 

 

マズイ…新手のベリオロスもこやし玉の効果が効いてないみたいだ…。

回転攻撃のモーションを取り始めた…!

 

今回は俺もクルルナさんも生命の粉塵を持ってきていない…。

 

どうする…ッ、どうする…ッ!

 

 

 

 

ひたすらに思考を巡らせているうちにも時間は無情に過ぎる。

 

 

 

 

そして…、ベリオロスの回転攻撃がレイリスさんを襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイリスさんは大きく吹っ飛び、地面に倒れ伏した。

 

………ピクリとも動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『最近は亡くなったりする事例はギルドの支援が充実してきたからぐんと減ったけど、大ケガをしてしまう可能性は低いわけじゃないんだ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつかの会話がなぜか脳内にフラッシュバックした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイリスさんッッッ!!」

 

 

 

俺は叫んだ。

 

 

 

次の瞬間ーーーー、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れ伏したレイリスさんの側の地面から2匹のアイルーが飛び出た。

 

2匹のアイルーはレイリスさんの側に寄ると、何かボールのような物を地面に叩きつけた。

 

その途端、緑色の煙がその場に溢れ……、

 

煙が晴れたとき、そこにいたはずのレイリスさんの姿は消え失せていた。

 

 

 

「トマトさんッ!一旦撤退です!」

 

 

一連の光景を呆然として眺めていた俺に、クルルナさんが強い口調で声をかけた。

 

ハッとなって周りを見ると、クルルナさんがもう一度ベリオロスにこやし玉を当て、撤退するために走ってくる姿が目に入った。

 

 

俺もすぐさま撤退のために走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど…、トマトさんは力尽きる場面に遭遇するのは初めてでしたか…。

あれくらいならレイリスは大丈夫です。今にピンピンしてここに戻ってくるかと。」

 

 

………初めて人が力尽きるのを見た。

 

 

………恐ろしかった。 この世界に来てから、初めて死の可能性を感じた瞬間だったと思う。

 

「………トマトさん、しっかりしてください。レイリスが戻って来てもトマトさんがそんな気が抜けた調子だとクエスト成功が危ういですよ?」

 

 

「あっ…。すいません…。ちょっとショックが強かったもので…。」

 

「旦那さん、しっかりするニャ。いつもの、のほほんとした旦那さんはどうしたのニャ?」

 

2人にダメ出しされてしまった。

 

あぁ…切り替えないとな…。

 

 

 

そうこうしているうちに、レイリスさんがベースキャンプからやってきた。

 

 

「本ッ当にすみませんでしたぁ!消散剤を忘れてた私の失態ですっ!」

 

「全く…そんな初歩的なミスをするとは…英雄の名が泣きますよ…?」

 

 

あぁ…、よかった。いつものレイリスさんだ…。

 

 

「…で、迷子君はどうしたのさ、そんなポケーッとしちゃって。」

 

 

クルルナさんがさっきの場面について、話してくれた。

 

レイリスさんは俺が呆然となっていた話を聞くと顔を険しくさせた。

 

そして、こちらに歩み寄り…

 

 

 

 

 

 

 

「君が今まで無名だった理由がよくわかったよ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の頬を引っぱたいた。

 

 

 

 

 

 

 

「いつだって死ぬかもしれない可能性の上でハンターやってるんだよッ!パーティメンバーが危険に陥ったからって自分の身を危険に晒すなッ!もし、私のせいで君が死んだりしたら私ははどうすればいいのさ!?私にに一生後悔させるつもりなの!?あのときに曖昧な判断をしてしまう程度の覚悟なら、ハンターなんてやめちまえッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すごい剣幕だった。

 

 

 

 

これが、英雄と呼ばれるハンターなんだと思った。

 

 

 

 

そして、この世界で生きていく為には、俺が持っていた意識はどれだけ甘いまでものだったのかを思い知った。

 

 

 

 

 

このままじゃダメだ…モンスターハンターなんて夢のまた夢だ…

 

 

 

 

 

覚悟を持たないといけない…時には残酷な決断をする覚悟を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は立ち上がり、持ってきていた大タル爆弾が密集している場所に歩み寄った。

 

 

「…えっ?迷子君?何するつもり…」

 

 

 

 

 

そして、爆弾を思いっきり蹴り飛ばした。

 

 

大タル爆弾が爆ぜ、俺は盛大にぶっ飛ばされた。

 

 

 

「ちょっ……、大丈夫!?」

 

 

レイリスさんとクルルナさんも唖然として俺を見つめている。

 

 

俺は立ち上がり、言った。

 

 

 

「俺は今まで甘い覚悟でハンターやってきてました。だけど今ので自分の中で何か吹っ切れた気がします。

レイリスさん、クルルナさん…。どうか…、どうか、俺にもう一度、皆さんと一緒のパーティになる権利を下さい。」

 

 

 

レイリスさんは俺の言葉を聞いて……笑った。

 

 

 

「うん…わかった。だからまず、今はこのクエストを無事にクリアできるかどうかだね。もうパーティに加わるための試験は始まってるよ?」

 

 

………望むところだ。こんなクエスト、今の俺にはチョチョイのチョイだ。

 

 

あっという間に終わらせてやんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、新たに覚悟を決めた俺は…、

 

 

 

 

 

ベリオロス2頭相手に無傷で立ち回ってみせ…、

 

 

 

 

 

レイリスさんとクルルナさんですら唖然とするような速さでクエストをクリアした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「クエストの成功を祝って〜…」

 

 

 

「カンパーイ!」

 

「「乾杯!」」

 

「うニャ!」

 

 

 

無事にクエストを終わらせた俺たちは、祝杯をあげていた。

 

いろいろあったけど、無事にクエストをクリアできて良かった…。

 

 

 

「ハイッ!それでは今回の試験の結果を発表しま〜す!」

 

 

 

「私とクルルナで厳正な審査をおこなった結果………」

 

 

 

……ちょっと緊張してきた。 俺大丈夫かな?

 

 

 

 

「見事合格!というわけで迷子君!改めて私達のパーティの一員としてよろしくね!」

 

 

あぁ…良かった。これで俺もこれから頑張れそうだ。

 

 

「ただし!最後の関門がまだ残ってます!これをクリアすれば試験は完全合格だよ!頑張って!」

 

 

 

……なんですと? い、いや、ここまできたからにはどんな難題でもクリアしてやる…!

 

さあ来い…!

 

 

「これから迷子君は私達をさん付けじゃなく、名前で呼ぶこと!あと、丁寧語も使っちゃダメ!絶対だからね!」

 

 

 

 

 

な〜んか小っ恥ずかしいなぁ……。

 

まぁ、パーティの一員になるためだ…。

 

 

「レイリス、クルルナ、これからもよろしくな。」

 

 

そういって俺がグラスを差し出すと、2人もグラスで応えてくれた。

 

集会所に小気味の良い音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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マイハウスに戻ると、天使のレオタード姿のプーギーが珍しくお出迎えしてくれた。

 

 

俺の成長でも褒めてくれてるのかね?

 

 

 

まぁ、なんだかモンスターハンターと呼ばれるための道は歩んでいけている気がする。

 

 

 

 

まだまだ道のりは険しそうだけど…俺は努力することは大好きだ。

 

 

どんな道でもウェルカムだ、絶対に乗り越えてやる…!

 

 

 

 

 

そんなことを思いながら、俺は眠りについた。

 

 

 

 

 




ここまで真面目な話にする予定じゃなかったのになんだかこうなってしまいました。

はい、初乙でしたね。 そして、主人公もモンスターハンターに向かって一歩前進かな…?


今後の展開はまだまだ手探りですが大筋はなんとなく自分の中で決まってはいます。

タグの内容とストーリーがどんどんずれてるような…
こんなんでゲーム準拠なんて言えるのか…?


投稿頑張るので応援してくれるとありがたいです。



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第16話 夢の中で



文を書き終えた後に誤字確認でプレビューを開こうとするのですが、画面に文が表示されない…。

なので、投稿してからガンガン改稿します…申し訳ない…。




今回はちょっと短めです。

そして久々にあの存在が……

それでは本編どうぞ。




 

ふと目を覚ますと、周りの光景がちょっとおかしいことに気づいた。

いや、ちょっとどころじゃないな…なんだこの空間…。

 

俺は立ち上がり、周りを見渡す。

 

言葉では言い表せないような色で構成され、今まで感じたことのない浮遊感を感じる。

そのせいなのか自分が座っている場所だって覚束ない。

 

そもそもさっきは目が覚めたと思ったけど、こんな場所にいるなら本当に自分が起きたのかどうかも怪しい。

なんだか夢の中みたいな世界だしなぁ…

 

いったいどうすればいいのか悩んでいたところ、不意に聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 

「やあ、久しぶりだね。」

 

 

おっ、いつぞやのアークSシリーズの天使さんじゃないか。

 

 

「そんなにアークSシリーズにしたいのか…。

よし、そこで待っててくれ、今すぐ君を地獄へ送りとばしてやるから。」

 

 

ハイ、すみませんでした…。以後気をつけますので今から地獄だけは勘弁してください…。

 

 

「気をつけてくれよ?これでも私は結構偉いんだから…。

こっちの世界でも私にそんな口をきけるのは数える程しかいないというのに…。」

 

 

あら、そんなにすごい存在なんですか?

俺をあの世界に送りとばした時に武器の1つも持たせてくれてなかったから、へっぽこな天使さんだと思ってましたよ…?

 

 

「おや?こんな所に地獄へ落とすスイッチが…」

 

 

 

申し訳ございませんでした。許してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、こうして久々に君の前に姿を現したのはね、君が少しずつ向こうの世界で成長できているからさ。 特にこの間の出来事なんて君を大きく成長させてくれたんじゃないかな?」

 

 

うん…。あれはたしかに、俺に覚悟を決めさせてくれた。

 

あの世界で「モンスターハンター」と呼ばれる英雄になるためには…、まだどこかゲーム感覚が残っていた俺の生半可な覚悟では、到底無理だってことに気づかせてくれたな。

 

 

「うんうん、いい感じじゃないか。私は君みたいな努力家が、目指すものに向かって無我夢中で突き進むのを見るのが大好きなのさ。

前世から君には目をつけていたよ?だけど、君は若くして死ぬ運命を辿ってしまったようだからね。君の努力を見れなくなるのは私だって面白くない。 だからツテを使って君を転生させた。」

 

 

なんだか俺の人生を勝手に見られているようであまりいい気分じゃないな…。

 

 

「まぁそういうなよ。君だって今の生き方は悪くないんだろう?

君の望む世界に行かせてあげたわけだし、それくらいは大目に見てほしいね。」

 

 

う〜ん…確かに天使さんにはこの世界に送ってもらった恩があるな…

 

それに、俺のセーブデータそのままの装備やオトモを送ってくれたのもこの天使さんだろう。

 

 

確かに感謝することはいっぱいだな…。

 

 

「そうだろう?だから私のことはもっと敬いたまえ!ハッハッハ!」

 

 

こういうところがなければ素直にすごい存在だと思えるんだけど…。

 

 

「あぁ、そうだった。

最近の君の頑張りを讃えて、新しくご褒美を用意したんだった。

まぁ…今回のは正直あってもなくても変わらないようなもんだけどね。」

 

 

んん?ご褒美?一体なんだろう…。

 

 

「君には2つのちょっとだけ特別な力を与えることにした。

 

1つ目はクエスト中に装備を変更することができるようになる力だ。

 

確かこのシステムは、元の世界でも最新作にしか実装されてなかっただろう? あれに似たようなことができる。

ただ、こっちは瞬時に装備を変更することができる。ベースキャンプに戻る必要だってない。 まぁ便利な能力だと思うよ?」

 

えっ…強くね?

確かにワールドで実装されたこのシステムは、いろいろと応用が利くので便利だったと思う。

だけど、瞬時に装備を変更できるなんてサービス良すぎじゃないだろうか?

 

「そして、2つ目だが…。

 

オトモを好きな場面で入れ替えることができるようになる。

 

もちろん連れていけるのは最大2匹までだけど、その2匹の組み合わせをクエスト中に自在に変えられる。

これはちょっと強さが伝わりづらいかな…?」

 

 

なんとも言えないご褒美がきたな…。

 

まぁウチのオトモは優秀だし、使えて困ることはないだろう。

 

ご褒美ありがとうございます。

 

 

「ただ、1つだけ注意点だ。

 

今言った2つの力は、人に見られている状態では使用することが出来ない。

だから、パーティを組んでるクエストの最中にはこれらの力を使えることはないだろうね。」

 

 

 

最後にでっかい爆弾を落とされました。

 

じゃあ、ほぼいらないじゃないですか…。使える場面が見当たらないぞ…?

 

 

 

「まぁまぁ、とりあえずもらって損はないだろう?

いずれ使うことだってあるかもしれないし、私からのほんの気持ちだと思って貰っておくれよ。」

 

 

 

そこまでいうなら、まぁいただきますよ…。

 

 

 

 

「うん、ひとまず今はこんなところかな?

 

……さて、君の頑張りは私もずっと見ている。 この場所からも、そして君のすぐそばでもね。

 

これから君に…。そして君の仲間達にも試練が待っているだろう。

 

私に監視されているみたいで癪に触るかもしれないが、必死にもがいて乗り越えて見せてくれ。

 

君は私が認める努力家だからね?『モンスターハンター』なんて呼ばれるような日が来ることを楽しみにして待っているよ。

 

それじゃあ一旦お別れだ。」

 

 

 

はい、俺の出せる力を全て使って頑張りますよ。

 

そう考えると、天使さんはニンマリ笑った。

 

 

 

「おや?なんだか向こうの世界も面白そうな状況になっているね…。

 

これは見てて楽しめそうだ…。」

 

 

 

ん?面白そうな状況?一体なんだってんだ?

 

 

そんなことを思った瞬間、俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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俺はマイハウスのベッドで目を覚ました。

 

んん?特に変わったところなんて無いぞ?

 

面白そうな状況って一体なんなんだ…?

 

 

そんなことを考えながら、ベッドの上で体を起こすと…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「お、おはようございます……。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

両手に、何に使うのか判らないロープを持ったレイリスとクルルナがいた。

 

 

「えっ……?あっ……、お、おはようございます……。」

 

 

う〜ん、今日はよくわからない1日になりそうだ……。

 

 

 





はい、というわけで久々の天使さん登場でした。

天使さんはあのよくわからない世界から、そしてモンハン世界でも主人公の努力を見守っている設定です。

モンハン世界ではどこから見守っているのか……、もう分かっている人もいるかもしれませんね。

この物語では天使さんは基本いい人なので、悪だくみはなにもしていません。
何かそういった展開を期待していた人がいたらゴメンナサイ…。

主人公が使い所に困る力を手に入れましたが恐らく物語中での出番はほとんどないかと…。ただ、一回も使わないなんてことはないです。
いつかの出番をお楽しみに…。

どんどんゲーム準拠から離れていっている気がするのでゲーム準拠のタグが付いていてもいいのか不安です。


こんな方針フラフラな物語ですが、読んで頂けると本当に嬉しいです。


感想、質問などお待ちしております。




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第17話 絶対強者

今回のサブタイトル名は有名ですね。

2nd、2ndG にもクエスト名で登場して、ダブルクロスでもイベントクエストで同名のクエストが配信されてました。

それでは本編どうぞ。




目が覚めたら、目の前にロープを持った2人の女性がいました…。

誰かこの状況を俺に説明してくれ…。

 

 

「えー…っと、

ふ、2人とも俺の部屋で一体何を…? そんな物まで持って一体どうしたんですか…?」

 

とりあえず2人に尋ねてみる。

 

 

「あっ、あ〜…、う…、え、えっとね〜…、

コ、コレニハフカイジジョウガアリマシテ〜…。」

 

 

なんでレイリスは片言なんだ…、俺に聞かれるとマズイことでもあるのか…?

 

 

「まさかとは思いますけど…。 2人ともそのロープを使って俺に何かしようとしてたんじya

「トマトさん!私達が来る前に何か違和感とか不自然なことはありませんでしたか!?」

 

 

おおぅ、クルルナはどうしたんだ。やったら食い気味に質問を投げかけて来たぞ…?

で、違和感とな?

起きるまでは天使さんと話をしてたから変わったことなんて何も…

 

…ん? なんだか2人の後ろの方にある本棚がちょっと荒れているような…。

 

 

「言われて気づいたんですけど…、なんか本棚が荒れてますね…。」

 

 

「ああ…、なんてこと…! いいですかトマトさん?

私は先程、今日はどんなクエストが依頼されているかを確認するために集会所で過ごしていたんです…。

するとそこへレイリスが訝しげにやってきました…。

様子がおかしいので、何かあったのかと聞くと…

『迷子君の家の前でなんだか怪しいヤツがウロウロしてた。』

なんて言うではありませんか!

レイリスと私は、この後どうするべきか相談を始めました…。」

 

 

「えっ…?私達そんなこと全然やってな…

「相談を始めたのです。いいですね?

そして、泥棒かもしれないという結論に達しました。トマトさんは凄腕のハンターですから家にだって沢山の高価な素材を蓄えているはず…。 そう考えてトマトさんの家を狙ったのでしょう…!」

 

 

おいおい…マジかよ…。

泥棒だって? 俺の装備に何かしやがったらタダじゃおかねぇぞ?

 

 

「そして…二人でトマトさんの家を訪れたところ…、家の鍵は綺麗に開けられていました。戸締りのしっかりしているトマトさんがこの日に限って鍵をかけ忘れるなどまずありえません。

これは大変なことになった…!

そう思い、私達は止むを得ずトマトさんの家に入らせてもらった次第です…。そしてさっきの状況になったと、そういうわけですね。」

 

 

鍵を開けられる泥棒なんてこの世界にいるのかよ…。

 

 

「ともかく、家の中が無事か捜索しましょう!」

 

 

俺たちは捜索を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

………うん、結論から言うと何も盗まれてなかった。

 

というか本棚が荒れてただけだった。 泥棒は一体何が目的なんだよ…。

 

鍵をピッキングかなんかで開けて、本棚を荒らして帰っていく…。

訳がわからない。

 

 

「何も盗まれてませんでしたか…。それは良かったです。

それでは、私とレイリスは先に集会所で待ってますね。」

 

 

う〜ん、釈然としないなぁ…。

 

まぁ、何も盗まれてないならいいか…。

 

 

 

 

俺は何とも言えない気持ちのまま、集会所へ向かう準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ついさっき、ティガレックスの狩猟依頼が届いたわ。

周辺環境への影響が心配だから早速クエストに向かってもらいたいんだけど…いいわよね?」

 

シャーリーさんにどんなクエストがあるか届いているか聞いてみると、ティガレックスの狩猟依頼が届いているらしい。

 

「もちろんいいですよ。2人も大丈夫だよ……な……?」

 

問題はないだろうと思いながら2人の方へ振り返ると…

 

 

「ったく…なんであそこで起きるのさ…。まるで夢の中で誰かに起こされたみたいなタイミングじゃないか…。」

 

「本当に謎ですね…、なにか超常の存在が私達の進む道を邪魔しているとしか…。」

 

 

周辺に『不機嫌です。』オーラを撒き散らしながら何かブツブツ言っている2人の姿があった。

 

正直話しかけるのが怖いくらいだ…。 あぁ…ほら、集会所にいる新米のハンターさんなんか泣きそうになっちゃってるじゃないか…。

 

 

 

「な、なぁ…2人とも…。ティガレックスの狩猟依頼が来てるみたいだから今から受けようかと思うんだけど…いいですよね?」

 

 

「チッ…。 まぁ今はクエストかぁ…、困ってる人もいる訳だしね…。」

 

「そうですね…。切り替えていくことにしましょう…。

 

………なんでうまくいかないのかしら?……クソッ。」

 

 

 

ちょ、ちょっと…。舌うちとかが聞こえたぞ…?

 

綺麗な女性がそんなことしちゃいけないでしょ…。

 

 

 

「「綺麗な女性………ハァ………。」」

 

 

2人は溜息を漏らした。 えっ?俺が悪いの…?

 

 

 

「あっそうそう、迷子君!今回の狩猟に行くときは、閃光玉を調合分含めて持ってきてほしいな!ちょっとスカッとしたいから。」

 

「そうですね!私からもお願いします!」

 

 

2人から笑顔でそう頼まれた。やべぇ…笑顔がなんだか怖いよ…。泣きそうだ…。

 

俺はビクビクしながらクエストの準備を始めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、ティガレックス狩猟のために雪山に来たわけだけど…

 

 

「旦那さん…なんだかお二人さんが怖いニャ…。 まるで獲物を探してるけど見つからずにイライラしてるイビルジョーみたいだニャ…。」

 

今回連れてきているカリスマオトモのウニがそんなことを抜かしやがった。

マ、マズイですよ…。

そんなことを今の2人に聞かれたら、俺たちは今回生きて帰れるかわからない。

 

「バカッ…!お前、今のをあの2人に聞かれてみろ?俺たち生きて帰れない…

「ん〜?なんか言ったかな〜…?」

 

 

 

「「何も言ってません(ニャ)!」」

 

 

 

あっぶねぇ…。

 

 

俺たちは2人の後ろでビクビクしながら、雪山を登っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、雪山の頂上に着いた訳だけど……いた。

 

 

 

 

轟竜………ティガレックス…!

 

 

 

 

 

飛行に適さない前脚を持ち、原始的な骨格を色濃く残したままに進化したと言われているその竜は、雪山の頂上で仕留めたと思われるポポの体を貪っていた。

 

 

なかなかの強敵だけど…、このパーティならきっと大丈夫。

 

俺は背中に背負っている操虫棍を強く握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、狩猟開始d

「迷子君!今回はティガレックスを閃光漬けにして倒そうと思うんだ!もちろん、協力してくれるよね?」

 

「そうですね。私もそのつもりで先程トマトさんに閃光玉の準備を頼んだので!それじゃあよろしくお願いしますね!」

 

 

 

 

 

えぇ…、マジかよ…。

 

 

 

 

 

 

な〜んか納得できないけど、今回の俺の役割はひたすらに閃光玉を投げ続けることらしい。

 

まぁ2人に頼まれたならしょうがないな…。頑張りますか。

 

そんなことを考えながら、俺はティガレックスのいる場所へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ…。キミは運が悪かっただけなんだ…。彼が私達の狙いを悉くすり抜けていくような行動ばかりするから…。

だから、キミは私達の憂さ晴らしの標的になっちゃった…。 ただ、それだけのことなんだよ…?」

 

 

「アナタにはご愁傷様…と、それ以外にかける言葉が見つかりませんね…。悪いのは私達じゃないんですよ?み〜んな、彼のせいなんです。だから今回は運が悪かったと諦めて…、黙って蜂の巣になってくださいね?」

 

 

 

た、助けてくれ…。

なんだか2人がヤバイ顔をしてティガレックスに弾や弓を撃ち続けている…。

 

 

レイリスは混沌マガラヘビィのブレイヴスタイルで、各種物理弾をボルテージショットで雨のように撃ち続け、

 

クルルナはこれまたアトラル・カ弓のブレイヴスタイルで、連射矢をティガレックスの頭部にかわいそうなくらい撃ち込み続ける。

 

 

こんなのティガレックスにあんまりだし、怯むから大丈夫でしょ…とか思って閃光玉を投げるのを止めようとすると

「迷子君?何してるのかな?しっかり投げ続けてね?」

と、レイリスがどこか闇を感じずにはいられない笑顔で声をかけてきた。

 

もうね、チビるかと思った。てかちょっとチビッちゃったかもしれない。

 

オトモのウニは鬼人笛を吹きおわったら、体力あるくせに地面に潜りやがった。 俺を1人にしないでくれ…。

 

とまぁ、そんな感じで蜂の巣にされ続けたティガレックスが長く保つわけがない…。

 

 

閃光玉の調合分に余裕を持たせながらにして、ティガレックスは力尽きた…。

 

ふぅ、終わったか…。 って、えぇ……?

 

2人はティガレックスが力尽きたのに気付いていないのか、倒れたティガレックスにむかって未だに攻撃を加えていた……。

なんだか2人とも変な笑い方をしていた気がする。

 

 

 

助けてくれ……。

 

 

 

 

 

 

 

しっかり剥ぎ取りをさせてもらって、クエストは無事…?に終了した。

 

疲れたぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「「カンパ〜イ!」」

 

「か、乾杯!」

 

「う、うニャ!」

 

 

まぁクエストは無事に終了したことだし、いつも通りパッといくことにした。

 

 

「いや〜!なんだか恥ずかしい姿を見せちゃったかもしれないね!

まぁ気にしないでね!次からはいつも通りのスタイルにするよ!」

 

「私もなんだか気分が高揚してあんな姿を…、みっともないですね…。以後気をつけます。」

 

 

うん…そうしてくれると俺もありがたいです…。

 

 

「まぁ…たまにならいいんじゃないかな?うまくいかないことがあるなら俺だって相談にのるしさ、同じパーティの一員なんだからそれくらい協力させてくれよ?」

 

 

 

「「アハハ………ハァ……。」」

 

 

女性2人は頭を抱えた。

 

えぇ…? 俺なんか変なこといった?

 

 

 

なんだか納得いかないことも多いけど…考えても始まらないときだってある。

 

 

俺はグラスのトマトジュースを一気に飲み干した。

 

 

 

 

 

 

余談だけど、マイハウスの鍵は内側と外側から二重にかけることにしました。

 

 

 

 

 

 




最近、クルルナさんを書いてると笑っちゃいます。

おかしいなぁ…もっとおしとやかになるはずだったのに…。


そしてティガレックスくん…、酷い目に合わせてごめんね…。

ティガレックスは好きなモンスターなので、いつかもっとしっかりした場面で登場させてあげたいです。

混沌マガラヘビィはあんまり聞いたことのない人がいるかもしれませんが、狩技『狂竜身』との相性が抜群でなかなかの破壊力があるヘビィボウガンです。 自分は使ってました。


感想、質問など気軽に送ってください。お待ちしております。



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第18話 私とトマトのハンターさん

クルルナさん視点のお話です。

なんでトマトのハンターにしたのか自分でも謎です。

それではどうぞ。




私達は、『英雄』と呼ばれたパーティでした。

 

 

リーダーであるレイリスが決めた方針で、

 

決して無茶な狩猟はしない。自分達の力を過信せず、着実に力を積み重ねて、着実に実績を残していく。

 

そんなやり方をしているうちに、いつのまにかそこそこ名の知れたパーティになっていました。

 

もちろん、クエスト失敗が全くなかったなんてことはありません。

ですが私達は才能に恵まれたのか、そこで立ち止まってしまうなんてことは一切ありませんでした。

 

いつだったかしら…、恐らく風を纏う古龍を撃退した時だったと思います。

 

私達は一流のパーティと呼ばれ始めました。

 

ですけど、私達はそれで慢心したりはしなかった。

 

自分達の力を過信しない。 まだまだ上を目指せる。

 

私達は志を1つにして努力を続けました。

 

 

そして…

 

ドンドルマの街に迫り来る超大型の古龍を倒し……

 

 

私達はとうとう、『英雄』と呼ばれ始めたのでしたね。

 

 

もちろんその高みに辿り着けた時は、みんなで喜びました。

そして、それでも私達は腕を磨き続けようと思っていました。

 

 

 

 

 

ですが…

 

 

 

 

その後、ギルドからの通達があり、私達は離れ離れになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「貴女があの『英雄』の一員ですか!私はこのポッケ村でクエスト管理をしているシャーリーと言います!これからよろしくね!」

 

 

「クルルナと申します。よろしくお願いしますね。」

 

 

 

 

私が配属になった場所は、雪山の麓に抱かれた村でした。

 

 

なんで私だけこんな辺境に……。

他のみんなは穏やかな丘陵地帯や温泉が有名な村だというのに……。

 

ともかく、こんな感じで私の1人きりでのハンター生活は始まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいっ!ウルクススの狩猟お疲れ様でした!

流石、あのパーティの一員なだけあるわね〜。

これくらいのクエストならお手の物だもの!」

 

 

1人になってから、私は頑張りました。

 

下手な結果を出してしまうとあのパーティの面汚しになってしまう…。

 

死に物狂いで頑張っていたと思います。

 

 

 

 

 

ですが…

 

ちょっとだけ不安なことがありました…。

 

 

 

村の人達がなぜか私を避けているような気がするのです…。

 

 

 

向こうから話しかけてくれることなんてまずなく、こちらから話しかけてもなぜか怯えたように応対する…。

 

 

私の中で、小さな不安の芽ができました…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて、パーティを組んでいたときにとある出来事がありました。

 

 

 

 

 

「ハッ、何が一流のパーティだ。 女は女らしくすっこんで給仕でもやってればいいんだよ!

お前らの成績だって本当のもんか知れたもんじゃねえ。

ギルドのお偉い方に体でも抱かせてやってんじゃねえのか、あぁ?」

 

 

 

私達ほどではありませんが、それなりの実力を持ったパーティの1人からそんなことを言われてしまったのです。

 

私達のパーティの短気なあの2人はその言葉にブチギレて、その男に殴りかかりました。

 

すぐさまレイリスと副リーダー、向こうのパーティのリーダーが止めに入りましたが乱闘はどんどんエスカレートして、あのギルドナイトが出張る事態となりました。

 

 

ともかく、危険な職業であるハンターという分野で私達のような女性だけで構成されたパーティというのは極めて異端です。

 

そして、そんなパーティのことをよく思わない人だってもちろんいるのです。

 

 

今までは、みんなと一緒だったから平気だった。

 

だけど、今の私は1人です。

 

村の皆さんから異質な物を見るような目をされてるんじゃないか…?

 

そう思い始めると、私の中の不安はどんどん大きくなっていきました。

 

 

 

 

ですが…、そんな中でもクエストは届きます。

 

 

 

ここでやめたら…、ここで失敗してしまったら…、

あのパーティの名前に泥を塗ってしまう…。

 

 

何としても成功させないと…。

 

襲い来る不安で体も心もボロボロになっていた私は、それでもクエストを受けました。

 

 

だけど…、そのクエストで私は3回力尽き、

 

クエスト失敗をしてしまったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫よ?大陸にその名を轟かせるようなハンターだって何回も失敗してその栄誉を掴んだんだから!誰にだってそんな時もあるわ!

最近の貴女は相当疲れた顔をしていたし…、しばらく休養を取ってみたらどう?」

 

 

「ありがとう、シャーリー……。」

 

 

休養もいいかも知れないですね…。

 

でも…、体の疲れは取れても心の疲れをどうにかしなきゃならないんです…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はしばらく休養をとることにしました。

 

ですが、それでも心は疲れたままでした。

 

どうしても、村の皆さんが私のことを異質な物を見るような目で見ているように思ってしまうんです。

 

体の疲れは癒せても、心の疲れはどうすればいいのか…。

 

解決策は見えてきませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、人に会うのが嫌になって村の外れで過ごしていた時のことでした。

 

 

 

 

 

 

「おやおや、こんなところに人がいるとは珍しい。 『英雄』の一員がこんなところでそんな顔をしてどうしたんさね。」

 

 

 

誰かから急に声をかけられそちらの方を見てみると、そこにいたのはポッケ村の村長さんでした。

 

 

「ふむ…、何か悩んでるみたいだね…。どれ、このオババに話してごらんなさい。なに、不安がることはない。これでも人に自慢できるくらいの時間は生きているんだ。人の相談にのることなんて得意中の得意さ。」

 

 

 

村長さんがそう言ってくれたので、私は胸の中の悩みや不安を打ち明けました。

 

すると…、

 

 

「ハッハッハ。そんなことだったのかい。

『英雄』と呼ばれるハンター殿でもそんな些細なことでここまで落ち込むんだねぇ…。」

 

 

ひ、人の相談を聞いて笑うとは…。

ちょっと失礼じゃないんでしょうか…?

 

 

「いや、そう気を悪くしないでくれ。

 

最近、村の皆からよく相談を受けるんだがね…。 いったいどんな内容だと思う?

 

『村長さん!聞いてください!新しく来てくれたハンターさんがなんだか近寄りがたい雰囲気を放っているんですよ…! 元気ドリンコの差し入れでもどうかと思って話しかけようとしたんですが、すごい形相で睨まれてしまって…。

何か悩みがありそうなんですが話しかける隙なんてありゃしません!今度村長さんから何か聞いてみてください!』

 

だそうだ…。

 

いやいや愉快、蓋を開けてみればただの勘違いだったわけだの。」

 

 

えっ…。ただの勘違いだったんですか…?

 

 

「ああ、そうさ。

 

それに…、ヌシは変なところで弱気だねぇ。

 

もっと自信を持った方がいいんじゃないか?

ヌシは仮にも『英雄』と呼ばれたパーティの一員なんだ。

 

かつて、この村にも専属のハンターがいたことがあってね…。

あの『白き神』を単騎で倒してのけるほどの剛の者だったよ。

 

その後、そのハンターは周りのものから賞賛の言葉を雨のように浴びたけど…、

私の目から見るとそのものは周りから讃えられるだけの努力はしていた。

 

そう、周りから讃えられる者というのはそれだけの並大抵ではない努力をしてきているものさ。

 

そして、このオババの目からみてもヌシは相当な努力をしてその高みに辿り着いたと見える。

観察眼にはちょっとだけ自信があるのでね…。

 

ともかく、もっと自分に自信を持ってもいいんじゃないかい?」

 

 

そうか…、そうですよね…。

 

あれだけ頑張ってきたんですから。

 

モンスターの行動を覚える…、武器を使うときのクセや工夫…、アイテムの効果的な使い方…。

 

私は…、いや、私達はあれだけの努力をしていました。

 

そんな私達が自分達を『英雄』と誇るのはおこがましいでしょうか?

 

…決してそんなことはありませんね。

 

なんだ、こんな簡単なことだったんですか。

 

 

「うん…。いい顔をするようになったね。

 

じゃあ、このオババから1つだけ助言を出すことにするさ。

 

かつてのこの村専属のハンターもそうだったが…、人ってのは1人だと思った以上に力を出せないものだよ…。

 

だが…、そんな時はこの村を…、この村にいる皆を頼ってほしい。

 

このオババが保証するよ。この村の皆はきっと、ヌシが助けを求めている時に助けの手を差し伸べてくれるさ。」

 

 

あぁ…、なんだか胸の奥の不安が拭い去られていくような…、そんな感覚がしました。

 

 

「うん、なんだか吹っ切れたようさね…。

 

それじゃあこのオババ直々に、ヌシに依頼をするよ。

 

明日から、是非村人の皆と積極的に関わっていってほしい…。

 

勿論、引き受けてくれるね?」

 

 

えぇ…、勿論です。

 

 

私は満面の笑みで、その依頼を引き受けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから…、ポッケ村での生活は一変しました。

 

村の皆さんは私と打ち解けて、仲良くおしゃべりなんかをしてくれるようになりました。

 

毎日が楽しい。

 

あのときの自分が嘘のように、クエストでもいい動きができるようになりました。

 

 

 

みんな…、元気にしてるかな…?

 

私は村の皆さんのおかげで、充実したハンター生活を送れてます!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「えっ…?レイリスが男性のハンターとペアでクエストに…?」

 

 

「どうもそうみたいなのよ…。なんかベッキーがその2人を応援してるみたいでね…。

ベッキーったら変な事をレイリスさんに吹き込んでないかしら…、彼女ったらモンスターの真似すれば何でも上手くいくと思い込むからねぇ。

『イビルジョーみたいにすれば完璧よ!』とか言ってた日にはその彼が危ないわ。

そのハンターさんはよく迷子になっちゃうハンターと呼ばれてるらしいし、フラフラしているところを一気に喰われたり…って

クルルナ聞いてる…?」

 

 

レ、レイリスに先を越されるとは…、

 

副リーダーはまぁ、出来た人なので先を越されてもしょうがない…なんて思ってましたが

レイリスにも負けるのはちょっと癪ですね…。

 

 

「ねぇ、シャーリー…。 私もその迷子のハンターさんに会ってみたいです…!

なんとか出来ないですかね…?」

 

私のその言葉を聞くと、シャーリーはニヤリと笑い、

 

「任せなさい…!これでもG級クエストを管理できる立場にいるんだから、多少飛行船のダイヤを弄るくらいどうってことないわ…!その迷子のハンターさんも他の拠点に興味が湧いてきてるみたいだし、絶対に何とかしてみせる!」

 

 

よし、何とかなりそうです…!

レイリス…、貴女にだけは先を越されはしませんよ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クルルナ久しぶり〜!元気にしてた?」

 

「久しぶりですねレイリス!私は元気でしたよ?村の人がよくしてくれたので、しっかり頑張れてます。」

 

「それは良かった!じゃあ、いきなり帰ってきたところで悪いんだけど…私達2人だけでいけるようなクエスt

「あぁ!そういえば、最近レイリスとペアを組んでいるハンターさんもこの村を訪れているみたいですね!私、是非一度お会いになってみたいんですがいいですよね?」

 

「あ、え〜っと… 彼はなんだか飛行船に慣れてなかったみたいで疲れてるみたいだk

「お会いになってみたいんですがいいですよね。」

 

「は、はい…、今から連れて行きますね…。」

 

 

よしよし…、いい感じです!

レイリスに主導権を握らせないようにしないと…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

噂の迷子のハンターさんは、村の外れでオトモさん達とびっくりするほど大きな雪だるまを作っていました。

 

あ、あんな事をオトモアイルーさんは出来るんですね…。 正直今まで侮っていたかもしれません…。

 

さてさて、挨拶に行きましょうか。

 

 

「初めまして。クルルナと申します。レイリスから噂は聞いていますよ?なんでもすごいハンターらしいじゃないですか?

これからよろしくお願いしますね?」

 

 

「いえいえ、こちらこそ。これからよろしくお願いします。」

 

 

なかなか私のタイプですね…。ますますレイリスに負けたくありません…!

 

これからどんどんアプローチしていかなければ…!

 

 

 

 

「今日は皆さんをこの村へ招くことができたことを祝って宴会でもどうかと思ってるのですが… 迷子さんやオトモさん達はどうでしょうか?」

 

 

とりあえず予定通り、用意していた宴会に誘ってみます。

 

 

「ええ、喜んで。 よろしくお願いします。」

 

 

あぁ、よかった。この宴会で好きなものなんかを聞き出せます…。

 

こうして徐々に彼のことを研究していかないと…、

常に乙女の戦いは続いているのです…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会はいい感じに進めることが出来ました。

 

彼も出された料理は美味しそうに食べてくれました。

 

これは間違いなく好感度アップですね…!

 

 

 

 

 

「すいません。トマト食べたくなったんですけど頼めますかね…?」

 

「えっ?トマトですか? え…えぇ、今持って来させますね。」

 

 

 

ト、トマトが好物とは…全く予想の範囲に入ってませんでした…。

 

やはり、一筋縄ではいかないのですね…。

 

燃えてきました…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、次の作戦決行の日が訪れました…!

 

今日は大胆な作戦に打って出ます…!

 

 

彼にはオススメスポットとして、温泉施設を教えておきました…!

 

 

これで彼は温泉施設へ向かい、混浴で私とバッタリ!という展開になるはず…。

 

 

私はこっそり彼の後をつけていきました…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて…、温泉施設に来たのはいいんですが…。

 

彼は混浴ではなく、男湯の方へと進んでいきました…。

 

あぁ、もう…、なんでそこで下心を溢れさせて混浴へ進んでくれないのですか…!

 

しょうがないのでプランBです。

 

私は施設の管理人さんに尋ねて、今は彼以外のお客さんが来ていないことを知ると、男湯と混浴の看板を入れ替え、女湯の看板に修繕中の文字を書き足しました…。

 

これで完璧です…!

 

さて、あとは………

 

私が混浴へ突入するのみです……!

 

 

 

だ、大丈夫よクルルナ。あ…貴女ならできる!

 

 

 

恥ずかしさを堪えて、私は混浴へと突入しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は露天風呂でユクモラムネを飲んでいたみたいです。

 

タオル1枚だけで体を隠した私を見ると、ユクモラムネを盛大に吹き出しました。

 

 

「ななな…なんでクルルナさんが…お、男湯にいるんですか…?」

 

 

…………それは私が仕組んだからです。

 

 

 

「あら?男湯?ここは混浴の看板がたっていましたけれど…。

フフッ、迷子さんったらちょっと抜けてる面もあるんですね。

ともかく、私と迷子さんが一緒に入ってもここは混浴なので何も問題ありませんよ? それじゃあ失礼しますね?」

 

 

そういって、私は彼に近づきました。

 

は、恥ずかしさで爆発しそうです……。

 

頑張れクルルナ!貴女ならできる!

 

 

 

「ハハハ… あっ、そ、それじゃあ俺はもう上がりますね!

クルルナさんの邪魔になると思うのd

「いえいえ、そんなことはありませんよ?ぜひ一緒におしゃべりしましょうよ!ね?それがいいですよきっと!それじゃあ私、飲み物買ってきますね!」

 

 

逃がしませんよ? 私はここで好感度をアップさせないといけないのです…!

 

 

 

 

「正直あの宴会の時、トマトなんて頼まれるとは思ってませんでしたよ。もっとこう…肉!とかくるものだと思ってました。

フフッ、トマトが大好きなんて珍しいですね。これからトマトのハンターさんと呼ばせてもらおうかしら。」

 

 

「迷子よりはマシだけどそれもどうかと…、まともなのはないんですか…?」

 

 

なんだかんだで緊張もほぐれ、いい雰囲気で会話ができています。

 

 

好きな女性のタイプや、好物なんかも聞き出そうとしましたがはぐらかされてしまいますね…。

 

でも、慌ててるトマトさんを見るのもなんだか楽しいです。

 

 

「うふふ、なんだかこうしてのんびりおしゃべりも久しぶりで楽しいですね。レイリスもそうだったらしいですけど、私レベルのハンターとなるとなかなかいなくて…。 一緒のレベルの仲間がいるのはこんなに楽しいものだったんですね!」

 

 

さて…、そろそろ時間ですね。

 

 

「さて、そろそろ来るはずなんですけどね…。」

 

 

トマトさんは私の言葉をきいて首をかしげました。

 

 

私は露天風呂の入り口に目をやってみました…。

 

すると…、やっぱりいましたね。

 

 

 

「なっ…なんで迷子君が… 」

 

 

 

フフッ、こうしてレイリスには動揺してもらいます…!

彼女は昔からこういった不測の事態には弱いですからね…!

 

 

 

「あ、あなたたち、いつの間にそんな関係に…

クルルナあんたまさか…私を差し置いて迷子君に近づいて何かしてないでしょうね……!?」

 

「いえいえ、私は偶然ここでトマトさんと一緒になっただけですよ?

トマトさんったら男湯と混浴を間違えたそうで…なかなかお茶目な一面もあるんですね。なんだか可愛いです。」

 

 

仲の良さをアピールして彼女をさらに慌てさせます。

 

 

 

「迷子君が看板を見間違え…?あ、あんたまさか…看板を入れ替えて……!?

それに、女湯が修繕中になってたのもこの場面を私に見せつけるため……!?」

 

 

「さあ?なんのことやら。ともかく、私とトマトさんは仲良くおしゃべりしていただけですよ?」

 

 

実際雰囲気はいい感じでしたからね…!

 

 

 

「ふ、2人ともいったん落ち着いt

「本当でしょうね!?なんだかきな臭いわ……!

迷子君!本当にクルルナに何もされなかった!?私には本当のことを言って!」

 

 

「本当ですよ?ねぇ、トマトさん?楽しくおしゃべりしていただけですよね?」

 

 

「あ、新しい呼び名まで……、迷子君、本当に!?変な所とか触られたりしてない!?」

 

 

な、なんてハレンチな…!?わ、私がトマトさんの体を触るなんて想像をさせないでください…!

 

 

「トマトさん?そうですよね?」

 

「迷子君!どうなの!?」

ついつい慌てて、トマトさんにすごい剣幕で言いよってしまいました…。

 

耐えきれなくなったのか、トマトさんは逃げ出していきましたね…。

 

 

にしても…。これは少々困りました…。トマトさんが予想以上のヘタレです…。

 

 

これは…、止むを得ませんかね?

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイリス、聞きたいことがあります。

 

貴女、彼のことが好きですね?」

 

 

「ななななな、何を言ってるのさ!?

そもそも私と彼じゃ全然釣り合わな…

「好きなんですね?」

 

「うぅ…、そ、そうです…。」

 

 

うん、その答えが聞けてよかった。

 

 

「レイリス…、実は私も彼のことが好きなんです…!

でも彼は1人しかいない……。

 

ここは2人で協力して彼を攻略しませんか!?」

 

 

「………ふぇ?」

 

 

私はレイリスに、考えている数々の作戦を話しました。

 

 

すると、レイリスもその気になってくれたようです。

 

 

「確かに彼は私1人だとどうにもならなさそうだもんなぁ…。

一緒に頑張ろうね!クルルナ!」

 

 

「えぇ、レイリス…!私とレイリスが一緒ならどんな相手でも攻略できますよ!」

 

 

 

 

露天風呂で、エルトライト鉱石よりも硬い同盟が結ばれた瞬間でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、同盟を組んで最初の作戦です。

 

簡単に言うと寝込みを襲って体を拘束し、

動けないトマトさんに私達が…………

 

 

まぁ……、そういう作戦ですね。

 

 

 

 

早速実行に移ります。

 

村の小道具屋さんから教わった、鍵開けの方法を使ってトマトさんの家の鍵を開けました。

 

レイリスが口をあんぐり開けていましたが、気にしてはいけません。

恋愛成就には多少危ない橋も渡らないといけないのです。

 

 

静かにトマトさんの家の中を進んでいきます。

 

「あたっ…、あっ…、ヤバッ……!」

 

 

レイリスがつまづき、本棚に激突。

本が何冊か床に散らばってしまいました…!

 

 

マズイ…!ここで起きられては、私達は犯罪者のレッテルを貼られてしまう…!

 

 

頼むから起きないで……!

 

 

 

あぁ、大丈夫そうです。よかった…。

 

 

 

 

 

さて、それでは最後の仕上げです。

 

 

このロープでトマトさんが抵抗できないように縛り上げ、その後は私達2人でトマトさんと愛の契約を結ぶ………!

 

 

あぁ、なんてハッピーな展開なんでしょう!

 

 

それではトマトさん、大人しくお縄にかかって………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………急にトマトさんが起き上がりました。

 

 

 

 

「「お、おはようございます……。」」

 

 

 

「えっ……?あっ……、お、おはようございます……。」

 

 

………反射的に挨拶をしてしまいましたがこれは大変マズイですね。

 

このままだと、私達は英雄から変質者へと早変わりです。

 

なにか言い訳をしないと…!

 

 

「えー…っと、

ふ、2人とも俺の部屋で一体何を…? そんな物まで持って一体どうしたんですか…?」

 

 

「あっ、あ〜…、う…、え、えっとね〜…、

コ、コレニハフカイジジョウガアリマシテ〜…。」

 

 

レイリス……、頑張って時間を稼いで…!

 

 

………………閃きました!

 

 

 

 

 

「まさかとは思いますけど…。 2人ともそのロープを使って俺に何かしようとしてたんじya

「トマトさん!私達が来る前に何か違和感とか不自然なことはありませんでしたか!?」

 

 

「言われて気づいたんですけど…、なんか本棚が荒れてますね…。」

 

 

「ああ…、なんてこと…! いいですかトマトさん?

私は先程、今日はどんなクエストが依頼されているかを確認するために集会所で過ごしていたんです…。

するとそこへレイリスが訝しげにやってきました…。

様子がおかしいので、何かあったのかと聞くと…

『迷子君の家の前でなんだか怪しいヤツがウロウロしてた。』

なんて言うではありませんか!

レイリスと私は、この後どうするべきか相談を始めました…。」

 

 

我ながら全く不自然な点がない、完璧な言い訳です…!

 

 

「えっ…?私達そんなこと全然やってな…

「相談を始めたのです。いいですね?

そして、泥棒かもしれないという結論に達しました。トマトさんは凄腕のハンターですから家にだって沢山の高価な素材を蓄えているはず…。 そう考えてトマトさんの家を狙ったのでしょう…!」

 

 

レイリスは余計なことを言わないでください…!

 

 

 

「そして…二人でトマトさんの家を訪れたところ…、家の鍵は綺麗に開けられていました。戸締りのしっかりしているトマトさんがこの日に限って鍵をかけ忘れるなどまずありえません。

これは大変なことになった…!

そう思い、私達は止むを得ずトマトさんの家に入らせてもらった次第です…。そしてさっきの状況になったと、そういうわけですね。」

 

 

いい感じです…!トマトさんも信じてるみたい…。

 

「ともかく、家の中が無事か捜索しましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか最悪の事態は回避できましたが、トマトさんは今まで出会ったどんなモンスターよりも強い相手ですね……。

 

だけど、私とレイリスは諦めません…!

 

 

いつか必ずトマトさんをゲットしてみせます…!

 

 

 

 




今まで、直接次話投稿スペースに書き込んでましたが、今回初めて文が途中まで書いていたものが吹っ飛んでしまうアクシデントに見舞われ、メモ帳に書くことにしました…。


はい、クルルナさん視点でした。
相変わらず、他人視点は長くなってしまいます。
キャラがブレッブレな気がします…、後半なんてモンハン要素全然ないし…。


今回、レイリスさんたちのパーティの形態が出ましたが、メンバーは合計で5人います。
ですが、モンハン世界で5という数字は忌み嫌われている数字なので、英雄達のパーティが5人パーティで出撃したことはないです。



今回も一応クルルナさんのフルネームを置いておきます。

クルルナさんのフルネームは 【クルルナ・ヒード】といいます。

ちなみに名前には由来があります。興味がある人は考えてみてください。


感想、評価など気軽に下さい。 お待ちしております。



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第猫話 モンニャン隊、出動せよ! 〜寒冷地帯編〜

ポッケ村でのモンニャン隊のお話です。

短めですが、前例と同じく非常にメタいお話に仕上がっております。

それではどうぞ。




 

 

どうもニャ、読者の皆様。

 

ボクはアシストオトモのネギトロですニャ。

 

 

作者がそろそろネコ達を出さないといけないな…。なんてことを思い始めたのでここで満を持してのモンニャン隊出動ですニャ。

 

今回はタイトル通り、寒冷地帯に来ておりますニャ。

 

寒冷地帯…、なんだかパッとしないですニャ…。

 

やっぱりモンニャン隊が輝くのは湿原地帯だと思うニャ…。

 

 

うだうだ言っててもしょうがないから…、

行くかニャ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、今回は

 

アシストのボク、ビーストのマダイ、

カリスマのウニ、コレクトのサンマ

 

この4匹で出動して来てるニャ。

 

 

コレクトのサンマは、ファイトやボマーの2匹ほど特化しているわけじゃないけどブーメランをそこそこ得意としているニャ。

 

ボクとウニの2匹でサポートも出来るし、なかなかバランスのとれたパーティなんじゃないかニャ〜。

 

 

 

 

「やっとまともな出番が来たニャ!初登場はまさかの雪玉吹っ飛ばし作業だったビーストの僕も、ここでしっかり活躍してみせるニャ!」

 

 

 

作者はビーストのマダイをなんであんな初登場にさせたのかニャ…?

あれじゃあボクたちオトモがあんまりニャ…。

 

 

うん…? ……大変なことに気づいてしまったニャ。

 

 

「ネギトロ、顔を青ざめさせてどうしたのニャ?」

 

 

「大変なことに気づいたのニャ……!

 

作者はレイリスさんの元パーティは5人という設定にしやがったニャ!

 

もしこれからその人達が出てくるとしたら…、

 

そこに旦那さんを加えてハンターは6人……!

3人の現在ですら、ボク達の出番はかなり少ないというのに、6人になったら最早、毎回のクエストクリア後の打ち上げで『ウニャ!』としか言わない存在にボク達は成り下がるニャ…!」

 

 

ボクはその考えるだけでも恐ろしい事態をみんなに話したニャ。

 

 

「な…、なんてことニャ…。あの作者、よりによって癒し枠であるボク達オトモにそんな扱いをするのかニャ…!?」

 

コレクトのサンマが、震えながらボクに言うニャ…。

 

「きっとそうだニャ…。あの作者はボク達オトモアイルーより、容姿端麗な女性ハンターを出しておけばいいとか思ってる野郎ニャ…!

実際この話を書いてる時だって、オトモ達の名前をとトレンドが一致しなくなって、今までの話を見返してきてメモに書き残すようなことをしているようだニャ…。」

 

 

「ひ、酷い扱いニャ…。ガードオトモのヒラメなんてボクと一緒に森丘の採取ツアーに行っただけだニャ…。作者はそんなことを平然と出来る人間なのかニャ…!?」

 

 

これは大変な事態だニャ…。

 

まさか、モンニャン隊のお話だけがボク達の活躍できる機会になってしまうんじゃ…。

 

そんな不安が拭えませんニャ…。

 

 

「みんな、ともかく今は与えられたチャンスを全力で活かすニャ!

作者に目に物を見せてやるのニャッ!」

 

「「「うニャ!!」」」

 

 

ボク達は寒冷地帯の探索を始めたのにゃ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モンスターを探して少し歩いていたところ…、

 

ソイツはボク達の前にあらわれたニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜまたベリオロスなのニャ………!

コイツは本編で2頭同時狩猟をしているモンスターニャ…。

マズイ、マズイニャ…!これは作者が本格的にボク達を潰しにきているニャ!」

 

ボクは慌てたにゃ。このままだとボク達の存在がどんどん薄くなる…!

それだけはなんとしても避けニャいと…!

 

 

「ネギトロ、落ち着くニャ。

ここで慌てても良いことはないニャ。

慌てたままでヤツとの戦いに臨んでもいい活躍は見せられニャい、それどころか負ける可能性だってなきにしもあらずニャ。

 

ここは確実にヤツに勝利するニャ!

それに、ネギトロは個人的な恨みがベリオロスにあるんじゃないかニャ?」

 

 

 

 

 

カリスマオトモのウニがボクに落ち着くように促してくれたニャ。

 

そして、そうだったニャ…!

 

 

 

 

本編でレイリスさんが力尽きてしまったあの時、ボクだってベリオロスの突進で吹っ飛んで痛い思いをしているのに作者はそのあたりの話を一切掘り下げなかったニャ…!

 

 

 

思い出すだけでブチギレそうにゃ…!

 

 

「いい表情ニャ、それならきっとヤツだってチョチョイのチョイニャ!それじゃあ行くニャ!」

 

 

 

ウニがそういってブーメランを手に取ったにゃ。

 

 

ボクもブーメランを持ってヤツに言い放ったニャ!

 

 

 

 

 

「おいっ、そこの○ォルデモート!

顔が若干、名前を言ってはいけないあの人に似ているからってボクを突進で吹っ飛ばすなんて不遜が過ぎるニャ!

 

あの時の恨み、今ここで晴らさせてもらうニャーーーーッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「オトモさん達ったら凄いですね!

ベリオロス相手にここまでの成果を出してみせるなんて…!」

 

 

フッフッフ…。 クルルナさん、ボク達にかかればこの程度どうってことないニャ。

 

 

「お疲れさん、これだけ頑張ってくれたなら後でボーナスのマタタビだな。楽しみにしとけよ?」

 

 

マタタビは嬉しいけど…、旦那さんもとっととレイリスさんとクルルナさんに喰われてしまえばいいのニャ。

 

3人でイチャコラしている間にボク達はニャンターで大活躍すればいいのニャ!

 

 

 

 

 

今、ボクはある野望を抱いたニャ…!

 

 

 

 

いつか絶対に、この物語のタイトルを

 

『モンハン世界で狩猟ツアー』から、

 

『モンハン世界でニャンターツアー』

 

にしてやるのニャ!

 

 

読者の皆様も是非期待しててニャ!

 

 

 

 




はい、というわけでオトモ達のお話でした。

書いてて楽しいです。

実際このままハンターが増えていくと、オトモ達をどうやって書いてあげようかなんてのが大きな悩みになっていきますね…。

アイデアなんかあったら是非感想欄にください。


感想、評価などお待ちしております。




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第19話 はじけイワシ×増強剤=消散剤

ストーリーが進むにつれて、このアイテムは基本的に店で買うことになる人が多くなると思います。

なので、この調合方法がすんなり出てくる人って案外少ないんじゃないんでしょうか?

それでは本編どうぞ。





 

 

「今日来てるクエストね…。

あっ、そういえば雪山でモンスター同士の縄張り争いが起こっているらしいわ。そのせいで観測隊の雪山環境調査が滞ってるとか…。

今、受けれるクエストはそのモンスター達の狩猟となるけど…どうする?」

 

 

今日はどんなクエストが出ているか、いつもの3人で確認しに行ったところ、どうやらモンスター達の縄張り争いが起こってるらしい。

 

ドスギアノスとドスファンゴの2頭で争ってるだとか。 たしかそんなクエストがゲームにもあったよな…。

 

 

「じゃあそのクエストに行くことにするよ! 2人も大丈夫だよね?」

 

 

レイリスが元気にそんなことを言う。

 

 

「あぁ、パパッとやってこよう。」

 

「そこまで強敵というわけでもありませんですしね。頑張りましょう!」

 

 

俺はもちろん、クルルナも乗り気のようだ。

 

そんじゃあ今日戦うモンスターは決まりだ。

 

 

 

 

 

 

ドスギアノスとドスファンゴの狩猟、いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さてさて、雪山に到着したわけだけど…ふむふむ。

 

 

今回のパーティ構成は

 

レイリスがブレイヴ大剣

俺がギルド操虫棍

オトモにはガードトレンドのヒラメ

クルルナが…ブレイヴ狩猟笛ですと?

 

 

ブレイヴ狩猟笛使えるのか…、すごいな。

 

 

 

元の世界でも狩猟笛は多少使った時はあるけど…ブレイヴ狩猟笛はあまりに難しくて使えなかったなぁ…。

 

 

 

音色が攻撃の種類によって決まっている狩猟笛にとって、「イナシ」で納刀してしまうのはかなりのデメリットに感じる。

 

それまでに旋律を整えていたとしてもイナシで納刀すると次は抜刀攻撃につながってしまうんだ。

 

そうなると旋律は1から揃え直し。

俺には旋律効果の維持が難しくてブレイヴ狩猟笛は使いこなせなかった。だからギルド狩猟笛を使ってたなぁ…。

 

もちろん、使いこなせれば相当楽しいんだろうなぁ…、主力の後方攻撃を連続で放てる変態コンボや強演奏攻撃なんかはとっても楽しそう…。

 

よし、この世界でも狩りの腕は磨けるんだ。

ブレイヴ狩猟笛はいつか使いこなせるようになろう。

俺は心の中で密かにそんな決断をした。

 

 

 

 

 

そしてドスギアノスが狩猟対象というわけで、その対策にとあるアイテムを持っていくわけだけど…、

 

 

 

 

「なぁ、2人とも…。 消散剤ってどう使うんだっけか…。」

 

 

 

 

 

『消散剤』

 

体表に付着した物を弾き飛ばし、様々な状態異常を回復するアイテムだ。

 

これ、ゲームだと飲むモーションだったけど…、飲んで雪や糸が弾け飛ぶとは思えない。

 

 

 

「え……、なんでそんなこと聞くのさ…?

流石に言わなくてもわかるでしょ。ほら、パッとやるじゃん。」

 

 

 

うぐぐ……、これはどう言い訳をすればいいのか。

 

 

 

「い、いや〜…、ここ最近そうゆうピンチに陥ってなくてつい使い方を忘れちゃったんだよ…、 ハハハ…。」

 

 

そう、苦し紛れの言い訳をしました。

 

 

「うわっ…、嫌味だわぁ…。 それじゃあ、この間のベリオロス狩猟だって実はヤバかったんじゃんか…。 ちくしょー、なんで私はあの時、消散剤を忘れたかなぁ…。」

 

 

自分でもひどい嫌味だと思う…。

でもごめんね…、俺のへっぽこな頭だとそれくらいの言い訳しか思いつかないんです…。

 

 

「まぁまぁそう気を悪くしないでくださいよ、レイリスったら。

誰でもそうゆう時はありますって。

 

で…、消散剤の使い方でしたっけ?」

 

 

あっ、女神クルルナが舞い降りた。優しいなぁ…。

 

 

「消散剤ははじけイワシの弾ける力を利用したアイテムです。

凍りつき始めたり粘着質の物が纏わり付いた場所に消散剤をかけてから、そこを手で払って衝撃を与えると弾ける力が作用して、雪なんかは簡単に弾け飛びます。

ハンターになるなら誰でも知っていなきゃいけないことですよ?

フフッ、これでトマトさんに貸し1つですね…!」

 

 

なるほど、そういう使い方だったか。

確かに飲み物を飲んで雪が弾け飛ぶのはおかしいしなぁ…。

いいことを聞けた。

……なんだかクルルナは最後の方、不気味に笑ってたけど気にしないことにしよう。

 

 

 

「ありがとう。助かったよ。」

 

「きっとネコちゃん達でもそれくらいは知ってるよ…。あまりに常識的なことだと恥ずかしいよ…?」

 

 

 

スミマセン…、以後精進します…。

 

 

 

 

 

俺はちょっと恥ずかしい気持ちになりながら

雪山の上へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、今回はいつもの氷の洞窟を通るルートではなく、エリア2の崖から山頂を目指すルートで来てみた。

 

 

 

 

エリア7に到達すると………いた。

 

 

 

 

ドスギアノス………、ソイツは周りに何匹かギアノスを引き連れて雪原を走っていた。

 

 

 

 

「うーん、ここはネコちゃんに超音波笛を吹いてもらって取り巻きの数を少なくしてもらいたいかな。」

 

「任せるニャ、それではいくニャ。」

 

 

ヒラメは超音波笛を吹き始めた。

一際高い音が響いた直後、ドスギアノスの周りにいた取り巻きはすべてどこかへ去って行った。

 

……なんだか取り残されたドスギアノスが可哀想だな。 まぁ後でまた呼び出すんだろうけどさ。

 

 

クルルナが味方に旋律効果をかける。

燼滅刃の狩猟笛なので、攻撃UPとのけぞり無効の効果が俺たちにかかった。

いい笛ですよね、燼滅刃の笛って。

 

よし、準備は万端。

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイリスがいつものように切り込み、戦闘が始まった。

 

ドスギアノスは手下を呼んだようで、すぐに何匹かのギアノスが向こうの増援に加わった。

 

 

「ヒラメ!対処任せた!」

 

「了解ニャ!」

 

 

うん、相手がそこまで強敵じゃないのも相まってなかなかいい感じに進めることができているかな?

 

ドスギアノスは広い範囲への攻撃は少ないし、大ダメージの攻撃もない。

強いて言うなら、雪だるま状態になってしまう氷液くらいだけどそれだってまずあたるもんじゃないしね。

 

ドスギアノスはエキスを3色集めることが出来ないモンスターだけど、それもクルルナの旋律効果でカバーしてくれている。

 

このままだとそう時間はかからないんじゃないかな?

 

 

 

 

「ドスファンゴが現れたニャ!みんな気をつけるニャ!」

 

 

「ネコちゃんは挑発をしてドスファンゴを引きつけて!こやし玉もヨロシク!」

 

 

「了解ニャ!」

 

 

うん、ドスファンゴが現れたけど、ヒラメが対処してくれるみたい。これなら問題はないかな?

 

 

そしてそんなことを考えていたら、クルルナの叩きつけ攻撃がドスギアノスにヒットし、ドスギアノスがスタン。

 

 

これは…チャンス!

 

クルルナは後方攻撃を連打し、レイリスは抜刀攻撃を連続して放つ。

 

 

 

そして…、俺は溜まっていた狩技ゲージを解放する。

 

 

 

 

操虫棍の先端に俺のもう1匹の相棒とも言える、バランス広域虫のエルドラーンを引き寄せる。

 

 

行ってこい、エルドラーン…!

3色エキスを奪ってきてくれ…!

 

 

俺は狩技『エキスハンター』を発動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エルドラーン!キミに決めt…………ぼへぁっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんかデカい猪が俺を吹っ飛ばして、エリア6へと走り去っていった……。

 

 

 

レイリスはそんな俺を見て笑い転げていた…。

まだ戦闘中でしょうが…。

 

クルルナは真面目にドスギアノスと戦って……

いや、笑うのを我慢してるせいか攻撃が全然ドスギアノスに当たってないじゃないですか…。

 

 

 

「だ、旦那さん…あれは偶然が生んだ悲劇なのニャ…。 こやし玉の効果がしっかり発動したと思ったらあの猪が何故か旦那さんの方へ走り出したのニャ…。」

 

 

あ、あの猪野郎………!

俺のエキスハンター発動を邪魔しやがって……!

 

 

「ヒラメ………、さっさとドスギアノスを倒してあのクソ猪倒しに行くぞ……!」

 

「りょ、了解ニャ!」

 

 

「ヒーッ、ヒーッ………、笑いすぎて死ぬかと思った……。

そ、そうだね。早いところ、あのドスファンゴも倒しちゃおう!……フフッ。」

 

 

「そ、そうですね。ドスギアノスもあと少しでしょうし、…フフフッ。」

 

 

あぁ…泣きそうだ。

 

 

その後、ドスギアノスを速攻で沈めた俺たちはドスファンゴの狩猟へと向かった。

 

クルルナは旋律効果をかけようとしたら笑いがこみ上げてきたのか、旋律間違えてるし…、もうイヤだ…。

 

 

俺は泣きそうな気持ちのまま、ドスファンゴの狩猟へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきのお返しじゃ、コラァァァァアアッ!!」

 

 

 

 

 

その後の雪山には、なにか酷い恨みでもあるのか、大声をあげながらエキスハンターでドスファンゴを仕留めた、1人の操虫棍使いがいたそうですよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「カンパーイ!」

 

「乾杯!」

 

「乾杯…。」

 

「うニャ!」

 

 

集会所の一角で、グラス同士がぶつかり合う小気味良い音が響いた。

 

 

「いやー、迷子君はホンット面白いねぇ!

厳選キノコのときも良かったけど、今回はもう最高だよ!」

 

「私もあんなに笑ったのは久しぶりです!あんなことって本当に起きるんですね!」

 

 

やめてくれ…、2人は面白かったかもしれないけど俺は悲しい気持ちでいっぱいなんだ…。

 

でも2人はその後も俺を酒の肴にして楽しんでいた…。

なんか俺っていっつもこんな立場だなぁ…。

 

 

 

あぁもう、こうなったらヤケだ。

 

 

 

「トマトジュース5杯ほどくださ〜い!」

 

 

 

自棄酒ならぬ、自棄トマトといこうじゃないか。

 

 

 

まだ手元に残っていたトマトジュースを飲み干しながら、そんな決断をした夜でした。

 

 

 




主人公がクルルナさんに貸し1つですか…。これは何か起こりそう…。

ブレイヴ狩猟笛は使えるようになってみたいです。
見ててすごいカッコいいですね。

突進一族に狩技を邪魔されたことは数え切れないほどありますね。

皆さんも一度は経験があるんじゃないでしょうか?


あと数回でポッケ村編も終わりかな…。


感想、評価など気軽に下さい。お待ちしております。



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第20話 荒れる山神、鎮める狩人

最近、有名なモンスター転生SSの作者さんが復活したのでモンスター転生系の物語の人気がすごいですね。
チートな主人公が無双するのを読むのはなかなか爽快で自分も楽しませてもらってます。

この物語はそういった小説とは雰囲気が違うので、読者さんが求めているモンハン小説ではないかもしれませんが、息抜き程度に読んでもらえたら嬉しいです。

それでは本編どうぞ。




 

それはポッケ村を訪れて数週間が経ったある日のこと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「他の拠点に移動したい!?」」

 

ど、どうしたんだ2人とも?

俺、そんなに困ることでも言ったかな…?

 

「あ、うん…。ポッケ村にも結構な間滞在したし…、そろそろ他の拠点にも行ってみたいかな〜なんて…。」

 

そう俺が答えると、2人はなにかヒソヒソ話を始めた…。

う〜ん、ガールズトークなら2人きりの場所でしてほしいなぁ…。

きっと俺には全然関係ない話だろうし…。

 

 

「シャーリー!ちょっと来てくれないですか!?」

 

 

おおぅ、クルルナは急にシャーリーさんを呼び出してどうしたんだ。

 

 

「どうしたのよ、急に…。

私、まだ窓口の仕事残ってるんだけど…。」

 

「次に飛行船がポッケ村を訪れるのはいつですか!?」

 

「飛行船…? たしか次に来るのはユクモ村行きの船が…4日後だったかしらね?」

 

「4日後…、ならなんとかなりそうですね…!」

 

 

なんとかなりそうなのか。それは良かった。

 

 

「それじゃあトマトさん!残りの4日間はポッケ村での思い出作りのために、私達3人でポッケ村の観光名所巡りをしま…

「おーっと、私の仕事を中断させてまで呼んでおいて、これから観光ですって?

残念だけどそうはいかないわ!」

 

 

そういうと、シャーリーさんは何かのクエスト依頼書を俺達の目の前のテーブルに叩きつけた。

 

 

「雪山で獰猛になったガムートが確認されました。

かなり強力な個体らしく、この辺りで私が依頼を出せるのは貴方達ぐらいね。

ポッケ村観光は、これをどうにかしてからにしてもらおうかしら。」

 

 

「シ、シャーリーったらなんてひどいことを…、

トマトさん!のんびりしてる暇なんてありません!

ガムート狩猟へ行きますよ!」

 

 

お、おう。獰猛化ガムートか…。なかなかの強敵ですね…。

 

 

「何、弱気になってんのさ迷子君は!

早い所ガムートを狩猟して、残り少ない期間を有意義に使わなきゃ!」

 

 

2人ともなんだか急いでるなぁ…。

 

まぁ、獰猛化ガムートなんて周辺にもたらす被害も甚大だろう。

あんまりのんびりしてもいられないかもね。

 

 

 

それじゃあ…

ガムートの狩猟、いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、雪山に到着しました。

 

 

今回のみんなの武器は…

 

レイリスがブシドーライトボウガン、

クルルナがブシドー双剣、

俺がブレイヴ操虫棍か…。

 

オトモはボマーのマグロくんです。

 

 

 

「さて、さっきは早いところ終わらせるなんて言ったけど…。獰猛化ガムートなんてなかなかの強敵だよね…。 しっかり気を引き締めていかないとね!」

 

 

ですよね…。まるでさっきの2人は獰猛化ガムートなんて目にもかけないような態度だったけど、普通だったらそんな気楽に臨んでいいモンスターじゃあないでしょうに…。

 

 

「さっきは2人ともなんだか急いでいるみたいだったけど、そう急いだら足元すくわれちゃうぞ?

相手は強敵なんだ。

レイリスの言う通り、慎重にいかないと。」

 

 

「トマトさんに諭されるとは…。なんだか不思議な気分です…。

でも確かになんだか急いだ気持ちだったかもしれません。切り替えていくことにします。」

 

 

俺に諭されて不思議な気分とはどういうことですか…。

 

 

「3人とも、あんまり長話をしててもしょうがないニャ。

ガムートが待ってるニャよ?」

 

マグロに言われ、俺たちは雪山の頂上へ向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪山を登り始めて数分…、俺たちは雪山の頂上であるエリア8に到着した。

 

おっ…いるな……。

で、でかいなぁ…。生で見るとそのスケールの大きさに驚かされる…。

 

 

 

 

 

 

巨獣………ガムート。

 

 

 

 

 

 

モンスターハンタークロスの四大メインモンスターの1匹。

超大型モンスターに比肩するほどの巨体を誇るその牙獣種は、頭部から黒ずんだ蒸気を吹き出しながら雪山の頂上に鎮座していた。

 

 

 

「よし、小型モンスターもいないみたいだからこのまま狩猟を始めてもいいかな…?」

 

 

レイリスが俺達にそう尋ねる。

もちろんだ、気張っていこう。

 

「それじゃあ、近接武器の俺たちで切り込むよ。よろしく。」

 

そういって俺は操虫棍を強く握りしめ、クルルナも双剣を手にとった。

レイリスは弾を装填し、マグロはキンダンドングリでサポートゲージの補充。

 

よし、準備OKかな?

そう考えたあと、俺はガムートに向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガムートの戦闘スタイルとしてまず挙げられるのは、その巨体を活かしたダイナミックな肉弾攻撃だろう。

雪を押し退けながら頭を突き上げて突進する攻撃や、前足で押し潰そうとしてくる攻撃なんかはあまりのスケールで初見の時は圧倒された。

 

また、その特徴的な鼻を使った攻撃もバリエーションがあり、離れているから大丈夫なんて油断してるとその鼻を使って雪玉をぶち当ててきたりもする。

 

そして、ガムートはその鼻で周りの雪を吸い上げ、自分の身体に散布するなんて芸当もやってのける。

こうなった時の足で踏みつけてくる攻撃は、足に付着した雪が周りに吹き飛んで、とんでもない攻撃範囲を持つのでなかなか厄介だ。

 

 

だけど、そんなガムートだって充分隙はある。

 

まず、今説明した攻撃の殆どはガムートの身体の前方で行われる。

つまり、ガムートの後ろ側に回り込んでいれば強力な攻撃に対してはうまく立ち回れる。

 

もちろん後ろ足で雪を蹴り飛ばして来たり、全く後方への攻撃がないわけじゃないけど、バカでかい範囲を持つ前方への攻撃よりは随分対処が楽になる。

 

それに、遠方への攻撃手段がガムートは少ないんだ。

今回のレイリスみたいに遠距離武器で来れば、

近接武器よりは安定して立ち回れるんじゃないかな?

ただ、弾肉質だと弱点特効が通る部位は鼻しかないんだけどね…。

 

 

 

 

俺とクルルナは地道に後ろ足を斬りまくっていた。

G級個体なのでたまにヒップドロップみたいな攻撃をしてくるけどイナシや絶対回避、ジャスト回避でしっかり対処は出来ている。

 

それに俺は爆破属性のミラバル棍、クルルナはアグナコトルの双剣を担いで来ているので、ガムートの足についた雪を簡単に削ぎ落とすことができている。

 

レイリスは比較的柔らかい頭部を狙って貫通弾を撃ちまくっている。

ナルガライトを使ってるみたいだね。いい貫通ライトだと思います。

 

マグロも相変わらず、素早く動いてブーメランを投げまくっている。

既に麻痺を1回取ってくれているし相変わらずの活躍だ。

 

 

 

 

うん、なかなか順調だね。

このまま無事に終わってくれればいいけど…。

 

 

 

なんてことを考えていたらガムートが大きく立ち上がった。

そして、レイリスの方向へゆっくりと距離を詰め始める。

 

 

「レイリス、気をつけろ!狙われてるからな!」

 

「これくらい大丈夫さ!」

 

 

レイリスはそう言いながらガムートに貫通弾を撃ち続ける。

 

おいおい、大丈夫か…?

 

 

そして、ガムートはレイリスとの距離を充分に詰めると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とクルルナのいる方向へヒップドロップをかました。

 

 

 

 

「え!?………ッ!」

 

「はぁ!?なんでッ……!くっ!」

 

 

 

 

不意を突かれた攻撃に対して、攻め込み過ぎていた俺たちは対処できなかった。

 

いってぇな…。オーラを纏った攻撃だったか…。 だいぶ体力持っていかれた感じがする。

 

 

 

「いてて…、回復を………ッ!?」

 

 

 

起き上がった直後の俺たちにガムートは攻撃を重ねて来た。

 

あ、これは避けるの無理だわ…。

 

そんな感じで俺とクルルナはガムートの鼻に押さえつけられ、そして2人で鼻に絡めとられた。

 

 

こ、拘束攻撃ですか…。なんとか助かったかな…?

 

……って俺こやし玉持ってきてねぇよ!

 

 

 

「ク、クルルナ!こやし玉頼む!俺持ってきてなかった!」

 

 

鼻にぎゅうぎゅうと締め付けられる中、そうクルルナに言った。

……言ったんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、今…私はトマトさんの胸の中に抱かれているのですか……! あぁ、なんていい気分なんでしょう……!まるで天にも昇る気持ちです…!

ハァ…、なんだかトマトさんっていい匂いがしますね…!」

 

 

 

what……? クルルナサンはナニをイッテイルンデスカ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガムートはそんな俺達を容赦なく地面に叩きつける。

 

 

あっ、ちょっ…、痛っ……。

あ…、これはやばいかも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを思った瞬間、俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぷげっ。」

 

「……あうっ。」

 

 

 

気がつくと俺はあのネコタクアイルーの荷台から乱暴に降ろされていた。

 

隣にクルルナもいる。

 

…なんだか気まずい空気だったのでとりあえず喋ってみた。

 

「え〜っと……もしかして2回力尽きた扱いになっちゃってる?」

 

クルルナは申し訳なさそうな顔をした。

 

「は、はい…、そうなりますね…。

スミマセン…。私があの時ちゃんとこやし玉を投げていれば…。」

 

うーん、まぁ過ぎちゃったことはしょうがないしなぁ…。

 

「まぁ、過ぎたことだからしょうがないかな…。

切り替えていこうか。

あと…、さっき言ってたことは聞かないことにしますね…。」

 

うだうだ言っても2乙が1乙になるわけじゃないしね。

さっきはクルルナが何か口走っていたって?

アーアーキコエナーイ。

 

「ス、スミマセン……お恥ずかしい限りです…。」

 

そんな会話をしてたらレイリスがモドリ玉で戻ってきたみたい。マグロも地面から飛び出てきた。

 

 

「ありゃ〜、2人が力尽きるなんて珍しいね…。

迷子君が力尽きるのなんて初めて見たよ〜。」

 

 

スミマセン、やってしまいました。

 

 

「………クルルナ〜?ちょっといくつか質問があるんだけどいいかな〜?」

 

 

ん?レイリスがクルルナに質問タイムらしい。

なんだろう…? クルルナがレイリスの質問を聞いてときどき慌ててるな……、珍しい光景を見れてますね。

 

 

「…なるほどね〜、それはいい感じだ…。よし!ありがとう!

 

それじゃあまた狩猟に向かいますか!

クエスト失敗にリーチがかかっちゃったから慎重にいこうね!」

 

 

よし、リベンジだリベンジ。

やられっぱなしってのは癪だからな。

 

 

リベンジに燃えつつ、俺達は再び雪山の山頂へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガムートはエリア6で俺達を待ち受けていた。

 

 

 

…さてさて、さっきはよくもやってくれたな。

 

もうお前には負けないぞ?

 

俺達は再び武器を構えて、ガムートに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は…、まぁなかなかうまく立ち回れたと思う。

 

 

俺とクルルナでうまく立ち回りながらガムートの足を攻撃し続け、足を破壊してダウンを奪ったら頭にラッシュをかける。

 

レイリスは安全第一で立ち回りながら、貫通弾をひたすら頭部に打ち込む。

 

安全で基本的な狩猟をしっかり慎重に行った。

 

 

 

 

その結果、それ以降ピンチらしいピンチには陥らず、無事にガムート狩猟を達成できた。

 

 

 

 

ふぅ…、なんとか終わったか。

 

 

 

ありがとう、お前はなかなかの強敵でした。

 

そんなことを考えながら俺はガムートの剥ぎ取りを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カンパ〜イ!」

 

「「乾杯!」」

 

「うニャ!」

 

 

 

4つのグラスが互いに打ち鳴らされる。

 

 

「ふっふ〜ん!今回は2人とも力尽きちゃったね〜!そんな中、力尽きなかった私は偉い!

ほらほら、2人とももっと私を称えてもいいんだよ?」

 

 

ぐっ…、何も言い返せない。

 

クルルナもぶすっとした顔をしてレイリスを見ている。

 

 

「おおぅ…、2人ともそんな顔しないでよ。

ゴメンゴメン、言いすぎた。 この間力尽きたのは私なのにね…。

とりあえず、2人ともミスを引きずってないでパッといこうよ!

ポッケ村での時間も残り少ないんだからさ!」

 

 

そうか…、ポッケ村での生活もあと少しか…。

 

確か、次に行けるのはユクモ村とか言ってたな…。

 

う〜ん、楽しみだ。

 

やっぱり3rdは楽しい作品だったし、その拠点であったユクモ村は隅々まで回りたいね。

 

 

「ユクモ楽しみだなぁ…。

まぁ、ポッケ村であと1つくらい大きな思い出を残してもいきたいかな〜…。」

 

 

そんなことを口にすると、なぜか女性2人が目を輝かせて

 

 

「そう!?だったら私達に任せてよ!今、迷子君のためにポッケ村巡りのスケジュールを考えているんだ!」

 

「ええ!トマトさんにもきっと喜んでもらえると思うので楽しみにしててください!」

 

 

おっ、そんなことを企画してくれていたのか。

 

それは楽しみだね。

 

2人のポッケ村巡りツアーに期待を膨らませながら、俺はグラスのトマトジュースを飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか、2人が『やっぱり窓から…!』とか『ベッドにくくりつけるのが…!』とか言ってるのが聞こえたんだけど気のせいだよね…?

 

 

 

 




ほい、というわけでガムートさんでした。

惜しかったですね。あと1回乙らせれば見事ガムートさんの勝利でした。

ちなみに、拘束攻撃で2人同時に捕まるなんてことはなかったハズ…。 オリジナル設定ですね。ご了承下さい。


リアルが忙しくなり始めたのでこれから更新は週1〜2になるかと…

こんな駄作ですが、もし更新されてるのを見かけたら読んでもらえると嬉しいです。

感想、評価等、気軽に下さい。 お待ちしております。



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第21話 暴飲暴食ご用心

ちょっと長くなりました。


イビルジョーは出ません。


それでは本編どうぞ。




「んっ……、朝か……。あぁぁ…よく寝た…。」

 

 

 

ポッケ村に、ユクモ村へと向かうらしい飛行船が到着する前日の朝。ちょいと遅めに俺は起きた。

 

確か今日は…、2人がポッケ村を案内してくれるとか言ってたな…。特にクルルナは長いことポッケ村にいたからこの辺りには詳しいみたいだしね。

 

そんなことを考えていたら、天使のレオタード姿のプーギーがそばに近づいてきた。

 

「おっ、お前も起きたのか。 腹でも減ったか?」

 

そう尋ねたけど、プーギーは俺の横でゴロリと寝転がった。

うーん、反応に困るなぁ…。

とりあえずお腹をつついてみる。

いやぁ、ほんと柔らかくて気持ちいいな…。

プニプニだし温かいし…、ネコ達より癒される気がする。

うん、コイツも喜んでくれてるみたいかな?

 

「…おし、じゃあ俺もそろそろ準備するか。

お前のお腹をつついてたいのも山々だけど…、

今日は約束があるからあんまりゆっくりもしてられないんだ。」

 

そうプーギーに声をかけると、むこうも鼻で返事をしてくれたみたい。

うん、かわいいのに素直とか素晴らしすぎる。

 

 

今日は朝からいい気分だ。

 

 

俺は待たせてしまっているであろう2人のために大急ぎで準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迷子君遅い!何してたのさ!」

 

スミマセン…。ちょっと起きるのが遅かったのとプーギーが気持ちよかったんです。

 

「まあまあ、そうやっている時間ももったいないですって。さあ、今日はポッケ村でいろいろ楽しみましょうね!」

 

 

よし、それじゃあ今日は2人にガイドをしてもらってポッケ村を楽しもうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて…、ポッケ村を回ってみているんだけど、よくよく村を見ると1つ気づいたことがあった。

 

 

「ポッケ村って思ったよりも賑やかだな…。」

 

 

ゲームだとどこか閑散としたイメージがある雪山の集落って感じだったけど、この世界に来て見るポッケ村はゲームとは全く違って見えた。

 

まず、人が多い。 ハンターもそれ以外の人も問わず、それなりの数の人が村の中を歩いていた。

 

そして、村が思った以上に広かった。

一回訪れたことのある温泉施設があるのにも驚いたけど、生活雑貨店や宿泊施設だって結構な数が並んでいる。

 

 

「ふふっ、確かにポッケ村はドンドルマやバルバレなどの主要な都市からは離れていますけど、なかなか人気のある村なんですよ?

『雪山草』なんかに代表されるこの地ならではの特産品もありますし、雪山特有のモンスターの素材を求めてハンターがやってくることだって多いです。

それに、最近は飛行船技術の発達で他の場所との往来が楽になりましたからね。雪がある村として観光客もだんだん増えて来ています。

私の拠点をなめてもらっちゃ困りますよ?」

 

 

なるほどなぁ…。

2ndGの頃は辺境の村ってイメージが強かったけど、モンハンの世界だって時は流れるんだ。

こうして昔の拠点だった場所が発展しているのを見れるのはなんだか嬉しいな。

 

 

 

「それじゃあ観光客向けのお店が並んでいるスポットに案内しますね!たくさんの種類のお店があるので絶対に楽しめますよ!」

 

 

 

うんうん、なんだか期待できるな。

 

俺は胸を高鳴らせながら、観光客向けのスポットへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほいっ!ここがポッケ村の観光通りさ!

飲食店とか屋台、いろんなお店があるから見てみたいのがあったらどんどん言ってね!」

 

 

おおー、すごいな。

元いた世界でのお祭りの時の屋台が立ち並んでる様な光景が目の前に広がっていた。

人もたくさん歩いている。アイルーまでいるな。

あそこなんてアイルーの集団までいるし……って、んん?

 

 

「うニャ?旦那さん達じゃニャいか。

旦那さん達もお店を回るのかニャ?」

 

ウチのオトモ達でした。

イクラが俺達に気付いてそう尋ねて来た。他の奴らはなんか美味そうな串焼きを食ったり、玩具で遊んでるみたい。

 

 

「お前らも来てたのか…。そうか、暇だからってずっと特訓してるわけじゃないしな。」

 

 

「その通りニャ。ネコにも休息は必要ニャ。

それに、この通りの食べ物は美味しいからニャ〜。」

 

 

こいつらも案外ポッケ村楽しんでやがるな…。

じゃあ満喫できてないの俺だけじゃん…。ヘコむわぁ…。

 

 

「オトモさん達も一緒に回りませんか?案内役の私も最近は忙しくてここにはあまり来れてなかったので…、オトモさん達のオススメのお店なんかも見て回りたいです。」

 

 

「それはいい考えニャ。ボク達も手を出すべきか悩んでいるお店があったから、クルルナさんに聞きたいことはいっぱいニャ。」

 

 

そんな感じで、オトモ達も加わってお店を回ることになりました。

まあ、たまにはこんな日もいいかな。

 

俺達は店を回り始めた。

 

 

 

 

 

うん、なかなか楽しいね。

やっぱりワイワイガヤガヤした雰囲気は俺も好きだ。

モンスターの顔が可愛くデフォルメされているお面が売っているお店や、小さなボウガンで景品を狙う射撃の屋台なんてのもあった。

まさにお祭り気分。ポッケ村でこんな気分を味わえるとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ある程度通りを進むと大きな広場に出た。

うん、賑わってるね。

 

 

「ねぇ迷子君!アレすごい楽しそうじゃない?」

 

 

そう言われてレイリスが指をさした方向を見ると、小さなティガレックスの乗り物…?があった。

なんだありゃ…?

こう…、遊園地とかにある100円入れると動き出す乗り物みたいな感じだ。

 

訝しげにそれを見ていると、店番をしていたオヤジさんに声をかけられた。

 

 

「ん?もしかしてそこのお兄ちゃん、クルルナちゃんと一緒にいるってことは最近噂のトマトのハンターさんかい?」

 

 

………どんだけ広まってんだ。 迷子の次はトマトかよ。

 

 

「えぇ…、まぁそうですね。トマトはちょっと不服ですけど…。」

 

 

「おぉ!それは良かった。じゃあ是非やってもらいたいことがあってね…。

 

コイツはドンドルマで今流行の『目指せ!乗りマスター!』という遊具なんだがな、ハンターの乗り攻撃を体験してみよう!というコンセプトで作られたらしい…。

 

初心者用のものと上級者向けの2つがあるんだ。 初心者用のものはあんまり危険もなく、今も向こうで立派にその役目を果たしてるんだが、上級者向けのコイツはなかなか難しくてね…。みんなも怖がってやろうとしてくれないんだ…。」

 

 

あ…、そうですか…。

向こうを見ると、イャンクックの乗り物が子供達に大人気のようだった。

うーん、これは俺がティガレックスの乗り物に乗る流れかな…?

 

 

 

「そこで、君がお客さんの前でぜひ乗ってみせてほしいんだ。 引き受けてくれないかな?」

 

 

やっぱりそうですか…。

 

 

 

「いいね!迷子君やってみなよ!私達も観戦するからさ!」

 

「そうですね。トマトさんのカッコいいところをぜひ見せてください!」

 

 

うーん、こうなったらもう断れないかなぁ…。

 

 

「よし、やってみますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、乗り攻撃開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旦那さん!そこニャ!ティガレックスの動きが鈍ったニャ!」

 

「ああっ、咆哮です!しっかり耐えて!」

 

「迷子君ッ!あと少しだよ!頑張ってー!」

 

 

 

ぬぬぬ…。なかなかに強敵じゃないか…!

 

だが俺だって操虫棍使いとして、乗り攻撃は譲れない…!

 

 

ティガレックスが暴れる。

俺は底が見えてきたスタミナを振り絞り、背中にしがみつく。

 

よし…!暴れるのが止まった…!

いや…、まだだ!

 

ティガレックスは咆哮…、ではなくその場で大きく上下に揺れた。 なるほど、これが咆哮モーションの代わりか…!

 

耐えろ…ッ、あと少し………!

 

 

「そこだあああぁッ!」

 

 

俺は手に持っていたピコピコハンマーでティガレックスの頭を叩いた。

 

 

そこでティガレックスの乗り物の動きが止まった…。

 

 

 

「お見事ッ!大成功だ!」

 

 

店のオヤジさんがそう言うと、ギャラリーから歓声が上がった。

おぉ…こんなに集まってたのね。

 

 

「迷子君ナイス!いい顔してたよ!」

 

「なかなか本格的でしたね…。今度やってみようかしら…。」

 

 

2人も称賛の言葉をくれた。

うん、満足満足。

 

 

「いやぁ、ありがとう!これで上級者向けの方も人気が出そうだ!

これはお礼としてもらっておくれ!」

 

 

そういうとオヤジさんは可愛くデフォルメされたティガレックスのお面をくれた。

ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼飯は屋台で売っていたホロロースの串焼きを食べた。

ホロロース……うまっ。

ネコ達はさっきも食べてたけど、まぁこんな日くらいはいいだろうとゼニーを渡したら大喜びで昼飯を探しに行ったみたい。

 

 

串焼きを食べながら通りを歩いていると、気になる看板を見つけた。

 

「なになに…?『ポッケ村雪だるまコンテスト本日開催!入賞者には豪華景品あり!』だって…?」

 

「それは本当かニャ!?」

 

 

おおぅ…、いつのまにいたんだよ…?

 

 

「あ〜、そうみたいだな。この間、お前らがどでかい雪だるま作った広場でやってるらしいよ?」

 

「こうしちゃいられないニャ!旦那さん!ボク達は雪だるまを作り上げる使命があるニャ!それでは行ってくるニャ!」

 

 

そういって、オトモ達はものすごい勢いで走っていった。キミたち本当に雪だるまが好きだね…。

 

 

 

 

 

 

 

うーん、ネコ達は雪だるま作りに行ったしそろそろ他の場所にも行ってみるかな…。

そんなことを考えていると、

 

 

「あっ、そういえば迷子君あそこに行ってなかったね!

ハンターなら一回は行っておくべきとか言われてる場所がポッケ村にはあるんだ!」

 

 

「あぁ、そういえば行ってませんでしたね。

それじゃあトマトさん。次はそこへ向かおうと思うんですがよろしいですか?」

 

 

んん?ハンターなら一回は行っておくべき場所?

 

…………あっ、あそこかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、『英雄』パーティのお二人がこんなところでどうしたのニャ?」

 

 

「久しぶりです、洞窟案内ネコさん。今回はここにいる彼にあの不思議な力を感じる洞窟を見せてあげたくて…。」

 

 

2人に案内されて辿り着いたのは…まぁ予想はできてたけどあの巨大な剣が眠っている洞窟だった。

 

 

「ニャるほど、お安い御用ニャ。 ただ…、今日は他にも見に来ているハンターさんが多いのでちょっとだけ待ってもらうことになるけど…、それでもいいかニャ?」

 

 

「ええ、それくらいなら大丈夫です。2人も大丈夫ですよね?」

 

 

俺たちは頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、待つこと十数分。

 

 

「おまたせしましたニャ!それでは洞窟の中にご案内ニャ!」

 

 

そういって洞窟案内ネコは俺たちの誘導を始めた。

洞窟に向かう途中でポッケ農場を見たけど…

うん、しっかり農場として機能してるみたいだね。 懐かしい光景だ。

 

 

洞窟の中はひんやりとした空気が漂っていた。

そして、先へ進むと…………デカっ。

 

10メートルはあるであろう巨剣が突き刺さっていた。

 

 

「初めてのハンターさんがいるみたいなので説明を始めますニャ。

この巨剣はポッケ村の村長の祖先が使ったと言われているものですニャ。

1度は歴史の表舞台から姿を消して失われてたみたいだけど…村長やその知り合いであるトレジィさんという方、そして当時のポッケ村専属ハンターさん達の活躍でやっと見つけ出すことができた…とかいう話らしいですニャ。」

 

 

 

そうだそうだ。

確か2nd、2ndGでティガレックスを倒してから特殊な鳴き袋を使って氷の壁を壊したんだっけか…。 懐かしいなぁ…。

 

 

「うーん、ただ眺めてるだけではつまらないと思うニャ。あの『英雄』のパーティのお二人が認めたハンターならこの巨剣を触るくらいはしても構いませんニャ。」

 

 

おっ、それじゃあお言葉に甘えて触ってみることにするか。

 

俺は巨剣に歩み寄り、その刀身に触れてみた。

 

 

 

う〜ん…なんだかひんやりとしているだけで

特になんか不思議な力を感じるってわけでは無いような気も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強烈な威圧感を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこか…、すごく遠いある方角から睨まれているような…、そんな威圧を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………ッ!?」

 

 

俺は思わず刀身から手を離した。

 

 

「…迷子君?どうしたのさ?なんか汗がすごいよ?」

 

レイリスが俺にそう問いかける。

 

 

「えっ?あっ…あぁ、いや…不思議な力だとかをなかなか感じられないもんだからつい力んじゃってな…。」

 

 

「えっ?感じられなかったのですか?

私やレイリスもここを始めて訪れた時はちょっと普通とは違う力を感じるなんて離したのですが…。 それに今だってちょっとは分かりますよ?」

 

 

2人はそんなもので済んでるのか…。

 

 

「さて、皆さんそろそろお時間だけどいいかニャ? 他のハンターさんも待っているようだしもう充分なら教えてほしいニャ。」

 

 

うん、とりあえずここは充分かな…。

なんだったんださっきのは…。

 

 

 

 

 

 

村へ戻る途中でふと、あることに思い至った。

 

 

「なぁ…2人とも。 あっちの方角で何か有名な場所ってあるか?」

 

 

「あっちの方向?うーん…、私の故郷のココット村とか、ミナガルデの街ならあるけど…それがどうかした?」

 

 

「あ〜…それじゃあ、こう…謎に包まれた場所とかってある?」

 

 

「謎に包まれた場所と言えば…

あっ、確か理由はわからないんですが、あらゆるモンスター…古龍ですら近寄らない、昔栄えた王国の跡地があるとは聞いたことがありますね。

それがどうかしましたか?」

 

 

あぁ…、なるほどね…。

つまりさっきのはそういうことか…。

 

 

「あぁ、なんでもないよ。大丈夫。

次はどうする?俺はウチのオトモがはりきっていった雪だるまコンテストを見に行きたいんだけど…。」

 

 

「うん!それいいね!ネコちゃん達の活躍を見たい!」

 

「そうですね、オトモさん達なら間違いなく入賞はしてると思います。」

 

 

 

うん、じゃあそうしよう。

さっきのは考えてたって始まらない。

今はまだその時じゃないんだろう。

 

そんなことを考えながら、俺は雪だるまコンテストの会場へ足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニャッハッハーッ!まぁボクたちにかかればこれくらいお手の物ニャ!」

 

 

そこには、他の雪だるまとは大きさもデコレーションも次元が違う出来の、アイルーによって作られた雪だるまがあった。

 

「おっ、旦那さん達じゃニャいか。

見事1位の座に輝けたので、高級お食事券5枚と

綺麗なインテリアアイテムを貰えたニャ。」

 

 

1位かよ…。 確かにすごいんだけどなんか方向性間違ってないかなぁ…?

 

インテリアは『雪結晶の植木鉢』というものでした。 うん、綺麗だね。

 

これを貰えたのは嬉しい。 お前らよくやったな。 なんかズレてる気もするけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ夕暮れですね…。じゃあトマトさんは家で待っててください。

私とレイリスで料理を持っていきますので!」

 

その後もいろいろ楽しんでたら、あっという間に日が暮れた。

うん、今日は楽しかった。

 

 

そして、2人が料理を作ってくれるらしい。

な、なんだか嬉しいけどちょっと恥ずかしい展開になってきたぞ…。

 

 

「クルルナは料理上手そうだけど…、レイリスは料理できるのか?」

 

 

「なっ…!?ふ、ふっふっふ…私をバカにしてもらっちゃ困るね!これでも案外料理はできるんだからさ!」

 

 

う〜ん…、これはダメかな…?

まぁ楽しみにしておくよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「「「いただきます!」」」

 

 

 

俺のマイハウスにそんな声が響いた。

2人は見るだけでお腹が鳴るような料理を持ってきてくれた。

レイリスが料理できたのは意外でした。

 

さて…じゃあいただきますね…。

 

 

「おっ、うまっ。 おおー、本当に美味いね。

これなら食堂にだって出せそうじゃないか?」

 

 

「ふふっ、そう言っていただけて嬉しいです。

食堂のコックアイルーさんから料理を教わっていたこともありましたからね!」

 

 

女子力たけぇな…。

俺もこんな料理を作れるようになってみたいかも。

前世では料理ができる、女子力高い乙女座男子で通ってたんです。妹からも嫉妬されてた。

 

 

「ちょっと迷子君!クルルナのばっかり食べてるじゃん!私のはどうなのさ?」

 

 

う〜ん、ちょっと恐ろしいな…。

見た目は良くても味は壊滅…なんてこともあるしなぁ…。

 

 

俺は恐る恐るレイリスの料理を口に含んでみた。

 

 

 

「えっ、ふつうに美味いじゃんか。ごめん、正直期待してなかったわ。」

 

 

「酷くない!? そんなことを言うなら料理没収するよ!?」

 

 

あっ、ごめんなさい…。

 

でもこんなに美味しいとは思ってなかった。

 

 

「いやぁ、2人ともすごいな…。

こりゃ、2人の彼氏は幸せもんだ。羨ましいなぁ…。」

 

 

俺がそんなことを口走ったら何故か2人は固まった。

 

えっ…?なんかまずいこと言った?

 

 

でも、2人の硬直はすぐに解けたので気にせず食事を続けることにした。

 

 

食事も終盤になりかけたところで、クルルナがそこそこの大きさの鍋を取り出した。

 

 

「あの〜…、今からだと迷惑かもしれませんがこれ良かったらどうぞ。

トマトの味を強めにしたビーフシチューのようなものです…。」

 

 

おお〜うまそう。

 

 

「おっ、いいの?じゃあ遠慮なくいただくよ。」

 

 

そういって俺はビーフシチューのようなものを皿によそい、食べてみた。

 

 

「うまっ!えっ、うまっ!なんか美味いしか言えない!」

 

 

今日1番の料理だったと思う。

最初から出して欲しかったです…。

 

 

「そう言っていただけると嬉しいです!どんどん食べてください!」

 

 

うん、俺好みの味だわ。ある程度食った後だけど、どんどん入る。

 

 

「でも、食べすぎには注意してく………ね?

………まり食べすぎて倒れた……たら、大変なこ……………すよ?」

 

 

 

…………うん?なんか変だ…。

 

 

 

「……れ?迷………ん、どう…………、なんか眠そ…………顔し…………。」

 

 

あ、あれ〜…なんか眠くなってきたぞ…?

 

 

「あぁ…、…んなに無防備…………私達…たべられちゃ………すよ?」

 

 

 

なんだか満足気な顔をしたクルルナの顔が見えた気がする……。

 

 

俺はあまりの眠気で意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん……。」

 

 

夜中、俺は目を覚ました。

 

あ、あれ?確か食事をしてたよな…?

 

たしか美味しいビーフシチューみたいなやつを食べたら眠くなって……

 

 

 

「あっ…起きましたか?」

 

「!?!?」

 

 

 

ビ、ビックリした……。

 

………………え?なんでクルルナさんがいるんですか?

 

 

「フフフ…、やっと起きてくれましたか…。

ちなみにですがそこにレイリスもいますよ?」

 

 

言われて気づいた。レイリスもクルルナの後ろにいた。

 

 

 

…………なんで2人ともインナー姿なんでしょうか?

 

 

 

 

「え、え〜っと……、状況が飲み込めないんですが…、」

 

 

「ウフフ…、ホント可愛らしいですね…。

じゃあわかりやすいように簡単に言いますね?

今から私達はトマトさんを食べちゃいます。」

 

 

 

 

 

 

…………………えっ?

 

 

 

 

 

 

「んもぅ、ニブいなぁ!なんで私達の気持ちに気づかないのさ!あんまりに気づいてくれないものだから強硬手段に出たってワケ!」

 

 

「そうですよ?トマトさん。

貴方がもっとへタレで鈍感じゃなかったら、手足をベッドに縛り付けて逃げられなくする必要だってなかったんですから…。」

 

 

 

そう言われて気づいた。 手足がベッドの足にロープでくくりつけられて動けない状態にされている。

 

 

 

 

 

……………………ヤバくね?

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて!

俺なんかじゃ2人に釣り合わないから…

「ぜーんぜんそんなことはありません!

むしろこれ以上ないくらいです!私もレイリスもハンターとしてかなりの立場になってしまった今、交際できて私のタイプなのはトマトさんくらいなのです!」

 

 

 

待て待て待て待て!?

いや、そういうことは早くないですかね!?

もっと一緒に食事とか、休日を一緒に過ごしたりとか…、一緒に狩りにいったり…………

あぁ、してますね……。

 

 

いや、でもR-18タグを増やすのは勘弁ですよ!?

 

 

「大丈夫です。私達に任せてください。トマトさんは窓から見える月でも眺めていればすぐに終わりますから…!」

 

 

「いやいやいや!?もう一度ゆっくり考えてみて!?俺なんか全然ダメで…

「クルルナ、口で言っても無駄みたいだから早いところ終わらせない?」

 

 

あっ……。

 

 

「そうですね。それじゃあトマトさんは私達に任せてゆっくりしていてくださいね…?」

 

 

 

 

 

 

 

えっ、あっ……、

 

 

 

 

あっ……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、俺は朝早くに目覚めた。

 

多少の倦怠感があるような……、いや気のせいだろう。

 

俺のそばには、やけに肌がツヤツヤした2人がスヤスヤと眠っていた……。

 

クルルナは俺の左腕に抱きついて、レイリスは俺の右手を握っていた。

かわいい女性にこんなことをされるのは嬉しいけれど…、なんだかちょっと複雑な気持ちもある。

 

 

 

 

「ハァ……、これからどうなるもんかね……。

 

………頑張るしかないよな。よしっ、ファイトだ俺。

 

2人の足を引っ張っちゃうかもしれないけど…、2人もこれからよろしくな。」

 

 

 

 

 

朝一番で、俺は寝たままの2人に改めてよろしくの挨拶をした。

 

 

 

 




イビルジョー系女子…

次からはユクモ村に移るかと思います。

ポッケ村編のような色恋とはしばらくお別れかと。


感想、アドバイスなど、お待ちしております。



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第22話 秘湯を求めて

前話の最後の方を今回に繋げやすいように改稿したので是非ご覧ください。

ほい、今回からユクモ村編に突入です。

エイプリルフール短編とかは考えてませんでした。

もし、とってつけの話が思いついて間に合う様だったら投稿します。

それでは本編どうぞ。



 

や、やってしまいましたぞ…。

 

 

 

彼とアレな関係になった次の朝、私はかなり早くに目が覚めてしまった。

彼とクルルナはまだ眠ってるみたい…。

 

 

 

昨日の夜、ポッケ村から移動したいという彼の言葉を聞いて私とクルルナは本気で作戦を決行することにした。

 

結果、作戦は大成功。

私達で手料理を作り、怪しまれないようだったらクルルナが強烈に強いワインなんかのお酒を使った料理を彼に食べさせてあげて、彼が眠ったところを私達が…………、

そんな作戦だったけどうまくいった。

 

身動きのできない彼に迫るのはなんだか楽しくて、ちょっとだけ昂ぶっちゃったかな…?

い、今は関係ないことを考えるな私…。

 

 

 

 

 

 

ふと、隣で眠る彼を見る。

 

 

強引に迫っちゃったけど…、彼の気持ちはどうなんだろうか…。

 

この選択を選んだことで、お互いにいつか後悔してしまう日が来るんじゃないだろうか…。

 

 

 

 

そんなことを考えていたら、彼の右手が開いたままなのが目に入った。

 

 

恐る恐る手を握ってみた…。

 

なんだか胸があったかくなるなぁ…。こんな気持ちになるのは私は初めてだ…。

 

 

すると、彼の手が私の手を握り返してくれた。

 

あっ、嬉しい。 ………ん?

 

あっ、彼も起きたみたい。

 

私は思わず、寝たふりをすることにした。

 

 

 

 

 

彼は私達を見てから何か呟いた。

 

 

「ハァ……、これからどうなるもんかね……。

 

………頑張るしかないよな。よしっ、ファイトだ俺。

 

2人の足を引っ張っちゃうかもしれないけど…、2人もこれからよろしくな。」

 

 

…………嬉しかった。

 

ううん、私だっておんなじくらい不安だから大丈夫だよ。

 

だから……みんなで一緒に頑張ろうね?

 

そんなことを思いつつ、私は彼とつながっている手を強く握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クルルナがこの村を離れるのは久しぶりね〜…。 ちょっと寂しくなるけど、まぁ私は大丈夫!3人で頑張っていってね!」

 

「ありがとう、シャーリー。またいずれはポッケ村に戻ってくるから大丈夫ですよ?それまで少しだけのお別れです。」

 

 

ユクモ村に出発する日、俺達はお世話になった村の皆への挨拶を済ませて飛行船乗り場に集まっていた。

 

ポッケ村はなかなか楽しかったなぁ…。

少しだけゲーム感覚が残っていた俺の認識を改めさせてくれたし、初めて力尽きたりもした。

ゲームだとよくわからなかったアイテムの使い方もわかったし、昨日の夜は………ゲフンゲフン。

 

ともかくいい経験をたくさん積めたなぁ。

 

また、他の拠点でもいろんな体験をして一回り大きくなってからここに戻ってこれたら…。

そんなことを思い浮かべる。

 

「迷子君!何ボーっとしてるのさ!出発するよ!」

 

おっと、時間か。

俺は急いで飛行船に乗りこんだ。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ3人とも!しばらくお別れね!

ユクモ村にいる私の後輩にも3人のことは伝えてるから、向こうで困ることはないはずよ!

ハンター生活しっかり頑張ってね〜!」

 

 

 

上昇を始めた飛行船に乗っている俺達にシャーリーさんが励ましの言葉を送ってくれた。

俺も飛行船の縁によって手を振り返す。

ふっふっふ。もう飛行船は怖くないぞ。

 

よし、それじゃあユクモ村に向けて出発だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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飛行船での空の旅も前回でだいぶ慣れたなぁ…。

うん、だんだん風景の雪が少なくなっていく。

こうしてみると空からの景色って絶景だよね。

 

飛行船の中を散歩してみたら案外この前の屋台みたいなのがあることに気づいた。

サイコロミートを焼いたのが売ってたので買って食べました。美味しかった。

 

 

その後も風景を眺めたり船員の人と腕相撲をしたりして過ごした。

この間、飛行船に乗った時に腕相撲で負けた船員さんもいたのでリベンジしてみた。

 

はい、負けました。なんなんだ…、前より強くなってないか?

 

 

 

 

 

 

そんなこんなであっという間に夕日が見えてくるような時間に。

 

 

お昼頃にポッケ村を出たから、まぁかかる時間はこんなもんですかね?

綺麗な夕日を眺めていると、なんだか硫黄の匂いがしてきたような気がする。

 

 

「あら、この匂いがしてきたってことはもうすぐで到着ですね。」

 

 

お〜、もうすぐ到着か。

楽しみすぎて飛行船の上ではずっとソワソワしてたよ。

 

 

 

 

さて、ユクモ村ではどんな人々やモンスターが待ってるんですかね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん乗船お疲れ様でしたニャ。ユクモ村に無事到着ですニャ。」

 

 

 

 

飛行船案内アイルーの知らせを聞いて、俺達は飛行船を降りた。

 

 

そこにはどことなく『和』のテイストを感じさせる、あちこちで湯けむりが上がっているのが見える、賑やかな村が広がっていた。

 

 

「う〜ん、やっぱりユクモ村はいつ訪れても綺麗だね〜。この雰囲気はここでしか味わえないよ!」

 

 

あぁ…なんだか懐かしい。

どことなく元の世界を思い出すからだろうか?

こういう和風なのを見ると少しだけ元の世界を連想しちゃうなぁ…。

 

 

 

「それじゃあトマトさん、私達はハンターズギルドに顔を出してきますが…。

トマトさんはユクモ村を回ってても構いませんよ? どうやら訪れるのは初めての様ですし…。

後で集会浴場前で待っていてくれれば問題ありませんよ?」

 

 

おっ、それじゃあお言葉に甘えていいですかね?

 

 

「じゃあちょっと村を回ることにするよ。オトモ達もワクワクしてるみたいだしね。」

 

 

 

俺とオトモ達はユクモ村へ駆り出すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…、回ることにしたけど何かいいところはないもんかね?

おっ、ユクモ温泉たまごウマッ…。」

 

 

さっき見かけた屋台で売っていたユクモ温泉たまごを食べながら、俺はユクモ村をブラブラ歩いていた。

 

 

オトモ達はなんか食べ物探しに何処かへすっ飛んで行ったし俺は今1人。

また迷子になったりしたらここでも迷子のハンターとか呼ばれてしまう。

 

………迷子もトマトも勘弁だな。

 

 

そんなしょうもない事を考えながら歩いていたところ、ハンターらしき人達が集まっているのが見えた。

 

 

「ん?なんだありゃ…?」

 

 

気になったので、そこにいたハンターの1人に尋ねてみた。

 

 

「あの…、スミマセン。今ここでなんかやってるんですかね?」

 

 

「ん?どうした兄ちゃん…っておいおい、随分立派な装備じゃねえか。その若さでやるねぇ!

 

いや何、ここはただの腕相撲ができる場所さ。

何でこんなに人が集まってるかって言うと…。

 

まぁ、見りゃわかるさ。」

 

 

そう言われて人混みの中を覗いてみると…、

 

 

 

 

「だありゃぁぁああ!

 

へへーん!またアタシの勝ちだな!これでアタシの10連勝だ!

 

うーん…、この辺りにはもっと腕っぷしの強いヤツはいないのかなぁ?」

 

 

 

 

小柄な少女が男性ハンターを腕相撲でコテンパンにしている光景が広がっていた。

 

 

う〜ん…、これは面倒なことに巻き込まれないうちに退散するのが1番だな…。

 

そう考え、俺はその場を後にしようとした……。

 

 

 

したんだけど……。

 

 

 

 

 

 

「おっ?なんかそこのヤツ強そうだな!ちょっと待ってくれよ!アタシと腕相撲で勝負しようぜ!」

 

 

 

 

 

あぁ…、捕まった…。

 

う〜ん、これはまた面倒なことになりそうだ…。

 

 

 




ほい、今回は短めでしたね。
まぁ拠点移動は書くことがあんまりなくて…、スミマセン。

次回以降、本格的にユクモ村でのハンターライフが始まるのでお楽しみに。

感想、評価など気軽に下さい。お待ちしてます。


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第□話 〜番外編〜 急募・炭鉱採掘求ム

やっつけエイプリルフール短編です

本編とは関係ありません。




 

ふと目が覚めると、身体に違和感を感じた。

 

んん…? なんかうまくバランスが取れない…。

 

 

そして、何か液体が吹き上がる様な音が聞こえてそちらを見ると…。

 

 

 

 

 

溶岩の海が広がっていた。

 

 

 

 

…………は?

 

 

 

 

 

 

 

改めて周りを見渡すとあることに気づいた。

 

 

ここ…、地底火山のエリア2だな…。

 

 

 

 

そしてイーオス達がいる。

 

 

……なんで俺に向かって威嚇してるわけ?

 

 

 

 

……………嫌な予感。

 

 

 

俺は自分の腕を見てみた。

 

 

 

そこには拳状の形をした、殴りやすそうに発達した腕があった。

 

 

 

 

………背中の方を見てみる。

 

 

そこには、群青色のハンマーの様な尻尾がついていた。

………具体的に言うと、ディオステイルっていうハンマーそっくりかな。

 

 

 

 

……………マジかよ。

 

 

 

俺は目が覚めたらブラキディオスになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうすりゃいいんだよ…。ジョジョブラキでも目指せってか?

 

 

俺はエリア2で途方にくれていた。

 

側から見たら、なんかしょげているブラキディオスを見てるようで学者とかなら目を光らせるかもしれないね、うん。

 

 

 

そんなしょうもない事を考えているとエリア1の方から何か声が聞こえた。

 

 

そちらを見てみると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん!あれが今回のターゲットだね!じゃあ私がサポートするからみんなもヨロシク!」

 

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 

………レイリスがいた。

 

レイリスだけじゃない。クルルナもいる。

 

他の2人は……見たことないなぁ…。

 

 

 

 

 

 

なんかレイリスはライトボウガンで俺に弾丸を撃ち始めた………んだけど全然痛くない。

 

 

うーん、とりあえず戦ってみるか…。

 

そう考え、俺は咆哮を上げようとした。

 

 

 

 

そこで強烈な眠気に襲われて俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………!!

 

 

何か鋭い痛みを感じて俺は目を覚ました。

 

起きた直後に俺に向かってヘビィボウガンで弾を撃ちまくっている3人が見えた。

 

 

 

 

 

………………ん? ……………これってまさか。

 

 

 

 

 

 

そう考えた瞬間、身体の自由がきかなくなった。

 

 

あばばばばばば…。

 

 

あ、あ〜………これは………麻痺状態か。

 

つまり…、そういうことですか……。

 

 

 

 

俺が痺れている間も目の前の3人は弾を容赦なく撃ち続ける。

 

 

 

 

 

 

やっと身体の自由がきくようになったけど…。

嫌な予感しかしない。

 

 

 

次の瞬間、少しだけ浮遊感を感じたと思ったら俺は粘着性のネットに絡め取られ、落とし穴に落ちた。

 

 

 

 

あ〜……………ハメですか……。

 

 

 

モンスター側はこんな気持ちだったんだな……。

あの時のティガレックスにも悪いことしたけど…、これはそれ以上な気がする…。

 

 

 

 

 

 

そんな事を考えていると、側面から何か強い刺激臭を放つ物体を投げつけられた。

 

 

 

 

 

 

あ…、ヤバ……、意識が…………。

 

 

 

 

 

 

「よし、これで完璧!ギルドがお守りをたくさんくれるらしいから、すぐに帰還しようか!」

 

 

 

 

 

 

 

レイリスのそんな声が聞こえて、俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………ッ!?」

 

 

 

俺は目を覚ました。

 

すぐに自分の体を確認する。

 

 

あぁ…、自分の体だ…。良かった…。

 

 

 

「迷子君?なんかすごい汗だよ?そんなにすごい夢見てたの?」

 

 

「疲れてるならあんまり無理しない方いいですよ?ユクモ村に着くのもそう遠くないでしょうし…。」

 

 

「あー、うん…。大丈夫だ。心配してくれてありがとうな。」

 

 

 

そう返事をすると、俺は空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

「多分あの人の仕業かなぁ……?」

 

 

 

そう呟くと、あの天使さんの笑い声が聞こえた気がした。

 

 

 

 




短すぎたかなぁ…?

30分で書き上げたので許してください。

感想、評価お待ちしてます。


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第23話 落花生クリームのワッフル

前話『秘湯を求めて』でユクモ村に着いた後のクルルナさんの発言を少しだけ変えてます。
読んだ方がすんなり今回も読めると思いますが、読まなくても特に支障はないかと思います。毎度変更してスミマセン…。

それでは本編どうぞ。




「よっしゃあ!それじゃあ言い訳なしの一本勝負だからな!アンタはなんだか期待できそうだ!」

 

 

元気いっぱいの少女に腕相撲勝負を挑まれ、逃げられなくなってしまいました。

さっきは10連勝とか言ってたけど…マジかよ。 ハンターでもなさそうなのにあのゴツい男どもに勝ちまくるとは…。勝てる気がしませんね…。

 

 

「あ〜…多分君が思ってるほど強くはないと思うから…。」

 

 

「む〜…、そんなこと言うならヘタレのハンターってこの村のみんなに言いふらすからな!」

 

 

 

な、なんですと…。

迷子、トマトときて次はヘタレだと…?

 

それだけは何としても避けないといけない。

 

 

よし、ちょいと頑張っちゃいますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2人とも準備はいいか?よ〜い、『ドンッ!』で始まりだからな?」

 

 

「オッケー!いつでもドンと来い!」

 

 

「俺も準備OKだ。」

 

 

さっき話しかけたハンターさんが審判をしてくれるらしい。

 

さぁ、頑張るぞ。

俺もこんなチビっ子に負けるのは癪だ。

 

それに、ヘタレのハンターだけは避けたい。

 

 

 

「位置について………、

 

よ〜い………、

 

 

 

ドンッッ!!」

 

 

 

決戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぬぐぐぐぐ…………!

 

この子、本当に人間か………!?

 

とても小柄な少女が出せる力とは思えないぞ…!?

 

 

 

 

「ぐぎぎぎ……!

 

ア、アンタなかなかやるじゃんか!

 

でも負けないからね…!」

 

 

 

そう少女が言い放つと、俺の腕にかかる力が更に強くなった。

 

おいおい…、マジかよ……!

 

この子、実はラージャンの血が流れてたりしないよな…!?

 

 

 

「ぐぐぐ…!

 

ヘ、ヘタレのハンターだけは何としてでも避けてみせるぞ…!」

 

 

ヘタレのハンターだけは絶対に避けたい。

 

だけど…、俺は少しずつ少女に押され始めた。

 

 

 

 

「おい!若造!まだ頑張れる! ここが踏ん張りどころだ!」

 

 

「俺達に最後の意地ってやつを見せてくれ!」

 

 

 

 

アンタ等、負けたくせにデカイ口叩いてんじゃないよ……!

 

 

でも、このままだと勝機は見えない…。

 

どうする……?

 

 

 

 

 

 

いや、元の世界の高校時代、部活をやっていた時だってこんな場面は幾度となくあった。

 

 

そんな時は……、あの魔法の言葉を心の中で呟くんだ。

 

俺は、その言葉を心の中で唱え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

できるできる

 

絶対にできる

 

どうしてあきらめるんだそこで

 

駄目だ

 

駄目だ

 

あきらめちゃ駄目だできるって

 

 

 

 

 

 

 

 

………………もっと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「熱くなれよぉぉぉぉぉおおおお!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

俺は魂の叫びと共に、右腕に渾身の力を込めて振り抜いた。

 

 

 

 

ハッとなって顔を上げると…

 

 

 

 

「ま、負けた……。」

 

 

 

少女が地面に仰向けに転がっていた。

 

 

 

「ハハハ…、アハハ…、アッハッハ!

 

いやぁ、負けちゃったかぁ!

 

アンタ強いね〜! それだけの装備を身につけているだけあるよ!

全然ヘタレなんかじゃなかったね!

アンタは強いハンターだよ!」

 

 

地面に転がったまま、少女は元気に笑い始めた。

 

 

「いやぁ…、君だって相当なものだよ。

 

そんなに小さい体なのにそれだけの力があるなんて凄いもんだ…。

 

将来は一流のハンターになれるんじゃないか?」

 

 

俺は少女にそんな言葉をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

………瞬間、辺りの空気が凍った。

 

 

 

 

 

 

…………えっ?俺なんかマズイこと言った?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、いや…、ア、アタシはアンタに負けたから……、えぐっ。

 

あ、あんまり言える立場じゃないかもし、しれないけど…ひぐっ。

 

アタシだって今までハッ…ハンターをがんばって…グスッ、来たのに、さぁ。

 

チ、チビだとか…うぐっ。そ、そんなこと、言うなんて、

あっ…あんまりじゃないぃかぁぁぁああうわああぁぁぁぁん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………やってしまった。

 

 

………えっ?キミ、ハンターなんですか?

 

 

 

 

そう聞こうとしたものの、少女は既に大号泣。

 

さっきまで辺りで野次馬していた野郎共も、いつの間にか消えてやがった。

 

 

あぁぁ…、どうすればいいんですか……。

 

 

 

「あっ…、あーっ、すまんかった!

 

ごめんなさい!キミのこと全然知らなくてハンターだってわからなかった!

 

だから…、頼むから泣き止んでください……。」

 

 

 

そうやって宥めること数分、

道行く人たちに白い目で見られながらも、俺はなんとか少女の大号泣を止めることが出来た。

 

 

 

「あぁ…、ゴメンよ…。

俺、この村に来たの初めてでさ…。キミがハンターだって知らなかったんだよ…。

 

だから…、何か俺にできることならするからさ、それで機嫌直してくれないかな…?」

 

 

大号泣は収まったものの、未だにぐずっている少女にそう尋ねてみる。

 

 

 

 

「………………アンタはヘタレのハンターで決まり。

………………そうしてくれたら許す。」

 

 

 

 

おぅふ……。マジですか………。

 

 

う〜ん………、まぁ少女を泣かせるよりはマシかな……。

 

 

 

「あぁ、わかった。じゃあ俺はこれからヘタレのハンターだ。よろしくな。」

 

 

「…………ラディス。」

 

 

 

……………んっ?

 

 

 

「アタシの名前だよ!ラディスって呼べ!このヘタレ野郎めぇ!」

 

 

 

………うん、まぁ元気を取り戻してくれたようで良かった。

 

 

 

「あと、フワッフワッフル食べさせろ!アンタがお金払うんだからな!」

 

 

 

元気がいいようで何よりだ。

俺は少女…、ラディスにフワッフワッフルを買ってあげるために、またユクモ村を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うまいっ!やっぱりフワッフワッフルは落花生クリームが1番だな!ヘタレもそう思うだろ?」

 

 

ヘタレって……。

でも本当に美味い。フワッフワッフルの名前は伊達じゃなかった。フワッフワだ。

 

そして、落花生クリームも美味い。

確か…ロックラッカセイとかいう品種を使っているらしいんだけど…、落花生の風味が効いたクリームが、全然飽きを感じさせない甘い味に仕上げてる感じ。

 

こりゃあ売れるわ。 これを買ったお店も賑わってたしね。

 

 

「ヘタレは他にハンターの知り合いとかいるのか?」

 

 

「俺か?俺は…、

ものすごく頼りになって、かけがえのない存在になった仲間が2人いるよ。」

 

 

「おー!そんな仲間がいるのはいいことだな!アタシも頼れる仲間が4人いるぞ!3人は離れてるけど1人とはこの村で一緒に頑張ってるんだ!」

 

 

へぇ〜、レイリスのパーティ以外にもそんなパーティがあったんだな。

まだまだ世界は広いってことですね。

 

 

「それで…、今日はその3人のうち、2人に久し振りに会えるんだ!だからアタシは今ウッキウキなんだからな!すごいだろ!」

 

 

おぉ…、とりあえずスゴイですね…。

 

 

「あっ!そういえばそろそろ約束の時間だった!

おいヘタレ!集会浴場前に急ぐんだ!」

 

 

 

ヘタレかぁ……、泣きそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて…、集会浴場前に着いたけど…、

 

 

「なぁ、ラディス。その2人って本当にここで待ち合わせしてたのか?全然それらしき人が見当たらないけど…。」

 

 

「あっ、あっれ〜?お、おかしいなぁ…。

アタシはしっかりそう聞いたはずなんだけど…。」

 

 

 

う〜ん…、聞き間違えてそうだなぁ…。

なんかさっきから話してて思ったけど、ラディスってアホの子っぽいし…。

 

 

なんてことを考えていたら、ラディスより先に俺の約束の時間がやってきたみたいだ。

 

 

 

「おっ、迷子君だ〜。ここでは迷子にならなかったみたいだね!うんうん、成長が感じられて私も嬉しいよ!

……って、あれ?なんで2人が一緒にいるの?」

 

 

「あらあら…、これは意外な組み合わせですね…。

 

…………トマトさん?まさか私達が居ながらこの子に手を出したわけじゃありませんよね?」

 

 

 

ク、クルルナさんったら…そんなわけないじゃないですか〜…。

 

でも…、2人の反応からすると…、まさか。

 

 

「な、なぁ?ラディスが言ってた久し振りに会える2人ってこの2人のことか?」

 

 

「うん!そうさ!

私達は『英雄』と呼ばれてるスゴイパーティなんだからな!」

 

 

 

 

………マジかよ。

じゃあラディスも相当な強者じゃないか…。

 

 

 

 

「いやぁ…まさか3人が知り合いだったとは…。

こんな偶然ってあるもんなんだな…。」

 

 

「私も迷子君がラディスと一緒にいるのを見たときはわけがわからなかったよ〜。」

 

 

「私もビックリです。

あっ、そういえばトマトさんに言ってませんでしたね。

この村には私達と同じパーティだった仲間が2人滞在してるんですよ。

 

ラディスにもここで待ち合わせるという話は伝わってたので彼女にも伝わってると思うんですが…、

 

あっ、来たようですね。」

 

 

ふむふむ、レイリスのパーティメンバーがもう1人いるのか。

どんな人か楽しみだな。

 

 

そう思ってクルルナが指差した方向に振り返ってみると……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方がレイリスさんとクルルナさんを誑かして寝取ったクソ野郎ですわね!

 

今からわたくしが貴方に天誅を下してあげますわ!

 

自分が如何に変態であり、如何に大きな罪を犯してしまったのかを後悔しながらくたばりなさいッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開口一番、それはそれは酷い暴言を吐かれた。

 

 

俺が何をしたってんだ…。

 

 

ユクモ村では波乱のハンターライフになりそうだなぁ…。

 

 

 

俺は深い溜息をついた。

 

 

 

 




主人公が全然主人公とは思えないあだ名をつけられていきますね。

でも、少女を泣かせたならこれくらいのバチは当たって当然です。

ラディスちゃんはまぁ…、中学生くらいの背丈と思ってくれればいいかと。 主人公はそんな少女を泣かせたわけですから許せませんね。

そして、4人目のメンバーも登場です。なかなかクセがありそうです。
次回もお楽しみに…。


感想、評価など気軽に下さい。 お待ちしてます。


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第24話 堅骨戦鎚ケミキ

クエストに出発させようと思ったのですが、うまく書き上げることが出来ませんでした。

というわけで、まだユクモ村でのお話です。

それでは本編どうぞ。



 

 

 

金髪をなびかせてやってきた、レイリスの元パーティメンバーの1人にいきなり暴言を吐かれました…。

泣きてぇ…。

というか心が折れそうだ…。

 

 

「あ、あの……、ちょっとでいいから俺の話も聞いて…」

 

「おだまりなさいッ!貴方みたいな変態にかける言葉なんてありませんわ!

 

どんな手を使ってレイリスさんとクルルナさんを寝取ったのかは知りませんが…、ロクな手段でなかったのは想像に難くありませんですわよ!?

 

先輩方がこんな男に無理矢理迫られるなんて…、絶対に許せません!

 

今すぐギッタンギッタンのボッコボコにして、

恐暴竜の餌にしてさしあげますわ!」

 

 

 

イビルジョーの餌ねぇ…。

あの時の2人も案外そんな感じだった気がする…。

そりゃもうガッツリ喰われたからねぇ…。

 

 

 

「な、なぁ…、頼むから俺の言葉にも耳を……」

 

「変態は黙っていなさいッ!

聞いたところによると、貴方はラディスのことも泣かせたようではありませんか!

 

最早ハンターの…、いや、人間の風上にも置けませんわ!

 

貴方みたいな人はここでくたばっておくのが世のためですわッ!」

 

 

「ちょ、ちょっと…、アタシはもう大丈夫だからさ…、その辺にして…」

 

「ラディスッ!ここはわたくしに任せていてッ!

この男を成敗してやりますので安心して見ていてくださいな!」

 

 

あぁ…、こりゃ俺1人だと手に負えなさそうだわ…。

2人に助けを求めよう…。

 

 

「あ〜…2人とも…、ちょっと助けて…」

 

 

そう言って2人の方を見たところ………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはそれは恐ろしい笑顔をしたクルルナが、

尋常じゃないオーラを纏っていた…。

なんだか背後に般若が見えたような気がしたけど気のせいだよね……?

 

 

 

 

「ふ…、ふふふ…、トマトさんの事をそんな風に言うなんて……。」

 

 

 

そう呟きながら、クルルナは元パーティメンバーさんに近寄った。

 

 

 

「あっ、クルルナさん!見ていてくださいね!

今からこの男をケチョンケチョンにしてやります…

「まあまあ……、一旦この場は落ち着きませんか?」

 

 

クルルナがパーティメンバーさんを落ち着かせようと言葉をかける。

 

 

「えっ?いやっ…、でもそれだとこの男に罰を与えることができなくなってしまう……

「ちょっと静かにしてください。」

 

 

…少し口調が強くなりましたね。

 

 

「い、いや…、でもそれだとお2人の仇を取ることが…

「黙りなさい。」

 

 

 

 

そう言ってクルルナは元パーティメンバーさんを黙らせると此方へ振り向き、闇を感じさせる笑顔で言葉を放った。

 

 

「私…、今からこの彼女とちょ〜っとだけ…

 

『オハナシ』してきますね?

 

皆さんはゆっくり待っていてくださいね…?」

 

 

 

「えっ…?クルルナさん、なんでわたくしがそんな…

「いいからいいから。

向こうでた〜っぷりと

『オハナシ』…、してきましょうね?」

 

 

そう言ってパーティメンバーさんを威圧で黙らせると、なんだか目が潤んできているパーティメンバーさんをクルルナは無理矢理引きずっていった…。

 

 

 

 

…………クルルナは絶対に怒らせちゃいけないな。

 

 

 

「レ、レイリスぅ…。なんだかあんな怖いクルルナ初めて見たよぉ…。」

 

 

「だ、大丈夫だよ!きっとすぐに戻ってくるって!」

 

 

 

 

う〜ん、今回は俺が悪いのか?

いや…、そんなことはないと思いたい。

ともかくさっきの人はご愁傷様でした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、クルルナがパーティメンバーさんを連れて帰ってきた。

 

クルルナはなんだか満足気な表情だけど、パーティメンバーさんはなんだか目の周りが赤く腫れ上がっていた…。

 

 

「皆さんお待たせしてすみませんでした。

さぁ?貴女からも謝罪と自己紹介をどうぞ?」

 

 

クルルナがパーティメンバーさんを地面に正座させて言った。

そこまでする必要ありますか…?

 

 

「な、なんでわたくしがこんな男に…

「謝罪と自己紹介をどうぞ。早くなさい。」

 

 

お、おっかねぇ…。

 

レイリスとラディスは肩を抱き合って震えてるじゃないか…。

 

 

「うぐっ…。

さ、先程は…も、申し訳ありませんでした…。

これから…く、悔い改めるのでどうか許して欲しいのですわ…。

 

わたくしは『セレス』と申します…。以後、お見知り置きを…。 」

 

 

「というわけです。

 

トマトさん、さっき言ったパーティメンバーの残りの1人が彼女です。

 

先程は酷い真似をさせてしまい申し訳ありません…。」

 

 

あっ、いえいえ。

確かに心は折れかけたけど、なんとか持ちこたえたので大丈夫ですよ…?

 

 

「あ〜…、とりあえず立ってくださいよ。

噂に尾ひれがついたり、変に捻じ曲がったりすることはよくあることなんで…。

まぁ今回のことはお互いに忘れることにしません?」

 

 

「トマトさんったら…、優しいんですね。

でも、敬語を使う必要はありませんからね?

 

ほら、セレス、お許しが出ましたよ。

トマトさんに感謝してくださいね?」

 

 

「くっ…!か、寛大な処置ありがとうございます…。」

 

 

 

セレスさんは涙目で俺を睨んできてる。

 

う〜ん、まだまだ俺に対して敵意剥き出しだなぁ…。

 

仲良くなれたらいいんだけど…。

 

 

 

 

「そ、それじゃあ今日は一旦お開きにしようか!

迷子君のマイハウスも手配できてたみたいだから荷物とか運び込もう!」

 

 

 

 

レイリスのそんな提案により、今日のところは一旦マイハウスに帰宅。

以降のことは明日に相談することとなった。

 

 

 

ふぅ…、初日から大変だったな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、俺たちは集会浴場に集まっていた。

 

 

「さて、これからのことだけど…。

 

さっき受付のコノハちゃんから聞いた話によると、渓流の漁場にガノトトスが現れて被害が出てるみたい。まずはこれの対処が最優先かな?

 

それで…、これは私とクルルナからの提案なんだけど…。

 

迷子君、ラディス、セレスは出会ったばっかりだからまだお互いのことをよく知らないと思うんだ。

 

だから、今回のガノトトスの狩猟にはこの3人で行ってもらいたいんだけど…。いいよね?」

 

 

 

うん、俺はもちろん大丈夫だ。

 

残りの2人は…、

 

 

 

「アタシも賛成!コイツはヘタレだけど強いハンターだってなんとなくわかるからな!」

 

 

「わたくしはこんな男とはまっぴらゴメンで…

「セレスもいいですよね?」

「…………はい。」

 

 

 

 

…………うん、クルルナの圧力がはたらいたけどOKは出たな。

 

 

 

 

「よし!じゃあ今回は3人で頑張ってきてね!

ケンカとかはしちゃダメだよ?」

 

 

 

善処します。……けど、俺に敵意剥き出しのセレスさんはどうすれば…。

 

やっぱり実力があるって証明すればいいのかな?

 

 

「じゃあアタシとセレスは装備に着替えてくるから!アンタも早くしなよ?」

 

 

そう言って、2人は装備に着替えにいこうとした。

 

だけど…、

 

 

 

 

「貴方のこと、今回のクエストの内容次第では認めてさしあげなくもないですわ…。

とりあえず、今回はよろしくお願いしますわ…。」

 

 

 

 

セレスさんに去り際にそんなことを言われた。

 

 

…………よし、こうなったら頑張るしかないでしょ。

 

 

 

やる気がみなぎってきた俺は装備に着替えるため、マイハウスへと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー!やっぱりヘタレは強い装備だなー!

あんまり見たことないヤツだけど強そうだ!」

 

 

 

うん、確かにこの装備は見たことのある人は少ないんじゃないかな?

 

 

俺が今回担いできている武器は

『鏖弓シャンギー』という貫通弓だ。

 

攻撃力410とバカげた値を誇る弓。強撃ビンを装填できなかったり、マイナス会心をもっている問題はあるけど、スキルでその点を補ってやればその火力はなかなかだと思う。

 

 

貫通矢のモーション値が極端に下がってクロスまでは貫通弓は長い不遇の時代だったけど、ダブルクロスで少しだけテコ入れされて、ギリ実用範囲にはなったかな?

 

そんなわけで、今回はガノトトスにこの武器をチョイスした。 ガノトトスは貫通矢との相性もいいしね。

 

 

 

「そういう2人だってすごい装備じゃないか。やっぱり『英雄』のパーティの一員なだけあるな。」

 

 

 

2人が持ってきた武器は、ラディスがハンマー、セレスがランスだった。

 

 

 

ラディスは『堅骨戦鎚ケミキ』というハンマーを担いでいる。

防具の見た目は頭以外ブラキXシリーズだったけど、今までの感じからすると防具合成だろうな…。

 

ケミキは匠を発動させることで一躍期待値がトップレベルに躍り出るかなりの強武器だ。350の攻撃力にスロット2つは強いよね。

 

 

 

そして、セレスは『鎧裂槍ドツキサシ』というランスを持ってきていた。

防具の見た目は頭以外レギオスXシリーズだったけど、きっとこっちも防具合成を使っているのだろう。

 

そして、切れ味消費の激しいランスにとって極長白ゲージを持つ鎧裂の武器は相性はいいと思う。

 

 

 

う〜ん、ガチだ…。

 

 

 

今回はクリアは難しくなさそうだけど…。

 

2人とうまくコミュニケーションが取れればいいなぁ…。

 

 

 

「おっしゃあ!それじゃあ3人とネコでガノトトスの狩猟だぁ!」

 

 

ホント、ラディスは元気あるね…。

 

 

今回はビーストオトモのマダイを連れてきてます。

スタミナ管理を楽にしてくれたら万々歳だ。

期待してるよ。

 

 

 

 

 

 

 

それじゃあガノトトスの狩猟、いってみよー。

 

 

 

 




初めてこういう終わらせ方にしてみました。

今まで書いてませんでしたが、レイリスさん達女性ハンターは頭装備を防具合成で三眼とか羽飾りにして、顔が周りに見えるようにしています。

次回はガノトトスです。お楽しみに。

感想、評価など気軽にください。お待ちしてます。


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第25話 渓流の水竜

前回、3人の狩猟スタイルを書き忘れてましたが全員ブシドーで来てます。

こういう細かい書き忘れを無くしていかなければ…。

それでは本編どうぞ。




 

さて、ガノトトス狩猟のために渓流にやってきました。

 

 

 

 

「おぉ…、すっげえ山並み…。やっぱりユクモ村周辺は『和』の雰囲気が感じられるなぁ…。」

 

 

 

 

ゲームでは散々訪れたこのフィールドだけど、この世界で渓流に来るのは初めて。

実際に目に入れると、その風景は180度変わって見えた。

 

 

 

「何ブツブツ言ってるんですの?貴方程のハンターなら渓流にはよく訪れているでしょうに…。

よくわからない人ですわね…。」

 

 

…う〜ん。相変わらずセレスの俺に対する態度は厳しいままだなぁ…。

 

 

「ほらほら2人とも!こんなところでのんびりしてたらガノトトスが逃げちゃうぞ?

パパッとやっちまおうよ!」

 

「おし、そうだな。それじゃあ早速向かうとするか。」

 

 

 

俺たちはガノトトスがいると思われる水辺へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、エリア7に到着しました。

 

ゲームと同じく、水場にススキのような背の高い植物が群生していた。

ちょっと視界が悪そうだな…。

 

 

 

肝心のモンスターは…………いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

水竜…………ガノトトス。

 

 

 

 

 

 

浮力が働く水中に適応した進化を遂げたため大型化が進み、多くの陸棲飛竜を凌駕するほどの巨大な身体を持つに至ったらしい。

 

瑠璃色の鱗と大きな背ビレが特徴であるその魚竜は、渓流の水場を悠然と泳ぎ回っていた。

 

 

 

 

 

「いたっ!それじゃあアタシが早速音爆弾をぶっ放して…」

 

 

「あっラディス、ちょっと待ってくれないか?

1つ試したいことがあるんだ。」

 

 

「え〜…、まぁヘタレは何か面白いことをやってくれそうかな…?じゃあ、アタシとセレスは待ってることにするよ!」

 

 

「ありがとう。じゃあ試してくるよ。」

 

 

2人にそう言うと、俺はアイテムポーチからけむり玉と釣りカエルを取り出した。

 

 

 

さて、いっちょ釣りとでもいこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『水竜』の別名の通り、ガノトトスは水の中を泳ぐ。

そして水中にいる間はこちらからのまともな攻撃は通らない。まぁそもそも届かないしね。

 

そうなると何とかして陸上に引きずりあげることになるんだけど…、そのための方法がいくつかある。

 

 

さっきラディスが取り出した音爆弾もそうだ。

ガノトトスは水中にいるときに大きな音を立てられるともの凄く気分が害されるらしく、音爆弾で甲高い音を出せば怒って陸上に上がってきやすくなる。

 

 

だけど…、今回はまた別の方法で陸上に引きずりあげることにした。

それが釣りカエルを使った方法だ。

 

 

ガノトトスはカエルを大好物にしているのはよく知られている。そんな特徴を利用してガノトトスを釣り上げることができちゃうんです。

 

 

俺は気配を勘付かれないようにけむり玉を焚いて、白い煙を辺りに充満させた。

 

 

「これでよしっと…。さてさて…、寄ってくるかな…?」

 

 

俺は釣りカエルを水面に投げ込んだ。

 

すると、ガノトトスが好物のカエルに気づいたのかすごいスピードで泳いでこちらにやってきた。

 

 

よしよし…、いい感じ。

あとはうまく釣り上げられるかだけど…。

 

 

 

すると次の瞬間、釣竿がものすごい力で引っ張られた。

 

 

「来たッ!来た来た来た来たッ!」

 

 

ガノトトスが釣られまいとすごい勢いでもがき始めた。

釣竿が暴れ、限界までしなる。

 

ぬぐぐぐ…、負けてたまるか…!

 

 

「おーっ!すげーっ!

頑張れヘタレーッ!負けるなよーっ!」

 

 

応援してるのかわからない言葉を背に受けて俺は釣竿を持って踏ん張り続ける。

 

今のところ引き合いが続いていて、どちらが有利という状況ではない。

ここは何としてでも釣り上げて順調な滑り出しを決めたいところ…!

 

俺はガノトトス相手にひたすらに粘り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬。

 

ほんの一瞬だけど、ガノトトスの動きが鈍った。

 

 

 

ここだッ……、ここしかないッ!

 

 

 

 

 

いつ釣るのか……?

 

 

「今でしょおおおおおおおおぉぉぉ!」

 

 

気合いを入れた叫び声と一緒に、俺はガノトトスを一気に釣り上げた。

 

 

自らの意図しない状況で陸上に打ち揚げられたガノトトスはもがいている。

 

 

「スッゲーーッ!ナイスだヘタレーッ!」

 

「なかなかやるじゃありませんの!」

 

 

待機していた2人が武器を持ってガノトトスに斬り込んでいく。

 

よし、滑り出しは上々かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それじゃあ……、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

釣り上げられてガノトトスがもがいている間にラディスは頭へ、セレスは腹の辺りへとラッシュをかける。

俺は遠くから貫通矢でガノトトスの体を撃ち抜く。

 

 

ダウンから復帰したガノトトスはそのまま怒り状態へ。

すると、剣士の2人の腕が赤く光り始めた。

 

挑戦者ですか…。いいよね、挑戦者って。

俺も大好きなスキルです。

 

 

 

 

さて…、俺はこの2人とクエストに行くのは初めてだ。

今までの感じだときっとこの2人も相当な腕前だろう。どんなものか今回のクエストを通して見ておきたいな。

 

 

 

ダウンから復帰したガノトトスは尻尾回転攻撃をした。

 

セレスはそれをジャストガードして十字払いに繋げる。うん、やっぱりこの感じだと2人とも強そうだな。

 

 

 

ラディスも尻尾回転のタイミングに合わせてジャスト回避を……

 

 

「むぎゅっ………、いったぁ……。」

 

 

…………うん、まぁたまたまだよね。

きっとそうだ。今のは見なかったことにしよう。

 

 

 

 

ガノトトスはそのままラディスに向かって這いずり突進を仕掛けた。

 

さっきのは偶然だろうから、今度こそきっとジャスト回避を……

 

 

「ふげっ………、いたたた……。」

 

 

え〜っと…、ラディスさん?

たまたまですよね?

 

 

 

這いずり突進をラディスにぶち当てたガノトトスは狙いを俺に変更。

水ブレスをぶっ放してきた。

 

俺はブレスをジャスト回避して、ガノトトスに向かって射撃、そのまま剛射を放つ。

するとガノトトスは怯んだ。

 

 

ちょっと心配だったのでラディスの方をチラッと見てみた。

 

 

 

「おっしゃ!ノッてきた!こんにゃろ〜、さっきはよくもやったな〜!」

 

 

 

そこには、体に赤黒い稲妻の様なオーラを纏ったラディスがいた。

 

えっ…、龍気活性も使うんですか?

なんだか恐ろしい火力が出てそうだ…。

 

 

ガノトトスは次に狙いを定めていたセレスに向かってタックルを放つ。

セレスはそれをジャストガードして十字払い。

ラディスはそのタックルに自分から突っ込み、ジャスト回避。

 

そして……、

 

 

 

「うおぉりゃぁぁぁあああ!」

 

 

 

ガノトトスの頭に向かって強烈なアッパーを叩き込んだ。

 

スタン値が溜まっていたのか、そのままガノトトスはスタン。2人はそのままラッシュをかけ続ける。

 

 

 

「やりますわね、ラディス!」

 

「ナンボのもんじゃい!ほら、ヘタレもボケっとしてないでガンガン攻めなよ!」

 

 

 

なるほど…、龍気活性が発動してから本番なのね…。さっきはちょっと心配したけどこれなら問題なさそうだ。

 

 

 

やがて、ガノトトスがスタンから復帰した。

 

そして、そのまま足元にいた2人に向かってタックルを放ち…、

いや…、溜めが長い…。これは強タックルか。

 

ラディスは落ち着いて対処できそうだけど…、

セレスは既にガードのアクションをしてしまったみたい。

 

 

 

「セレス!大丈夫!?」

 

「これくらいどうってことありませんわ!」

 

 

 

セレスはそう叫ぶと、狩技を発動した。

 

 

盾を構えてガノトトスの強タックルを受け止める。

そして強タックルの威力を取り込み、ランスに黄色いオーラを纏わせた。

 

 

おお、『ガードレイジ』か。

あれは強い狩技だと思う。黄色オーラで攻撃力1.3倍はヤバイよね。火事場と同じですよ?

 

 

そして、強タックルなど無かったかのように2人は攻撃を再開した。

 

 

セレスはしっかりと足に攻撃を加えてダウンを狙い、ラディスはうまくジャスト回避を決めてから頭に向かって溜め攻撃をブチ込む。

 

 

そして、俺は貫通矢をひたすらに撃ち込む。

さっき『アクセルレイン』を発動したから、溜め速度が上がってるのでシャンギーの強みの溜め4貫通レベル5までガンガン持っていける。

 

 

時折、ビーストオトモのマダイが俺たちに強走効果を発動させてくれてスタミナ管理を楽にさせてくれたし、いいテンポで狩猟は進んでいる気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ…、クエストを進めていてある印象を受けた。

 

 

 

 

 

「うぐっ……。攻めすぎましたわね……。」

 

 

 

なんだろう…、あの2人と比べると…。

 

 

俺が今までパーティを組んでたレイリスやクルルナと比べると…、どこか一歩劣っている感じがする。

 

実際、今だってセレスは少々攻め込みすぎて反撃を食らってしまったみたい。

 

ラディスだって龍気活性が発動してから1回だけ攻撃を受けている。

 

 

 

 

 

 

この2人は確かにうまい。

 

だけど…、レイリスやクルルナの様な突き抜けた強さにはまだ届いてないような…。そんな印象を受けた。

 

 

 

まぁ、俺が言えたことじゃないんだけどな…。

 

もし今回のクエストを通して仲良くなれたとしたら、一緒に成長していけたらいいね。

 

 

クエストの途中だけど、俺はそんな事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「うん、今はクエスト中なんだ。目の前のことに集中しないとな。」

 

よし、考え事はここまで。

ガノトトスだって結構体力を削っただろうしもうひと頑張りだ。

 

俺は再び気を引き締めて、ガノトトスに向かって弓を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっし、クエスト達成!2人ともお疲れさん!」

 

「あぁ、お疲れ様。2人とも『英雄』と呼ばれただけあるな。いい動きしてたよ。」

 

 

 

あんな事を考えたりしたけど、クエストは無事終了。

長年組んでいるだけあって、この2人のコンビネーションはなかなかのものだった。

 

 

 

「………正直こんなに早く終わらせられるとは思っていませんでしたわ。

ちょっと悔しいですが、貴方は実力だけは本物みたいですわね…。」

 

 

ハハハ…。実力「だけ」ね…。

 

 

「そうか…。まぁそう言ってもらえるなら良かったよ。

今回だけで君が俺に抱いてる不信感が晴れるとは思ってないけど…、少しでもそれが払拭されたのなら十分さ。

できるならこれからも一緒にクエストに行ったりはしたいんだけど…、いいかな?」

 

 

クエストに出発する前と比べれば随分と態度が丸くなったセレスにそう聞いてみる。

 

 

「…………わたくしは貴方のことが嫌いですわ。

 

ですが…貴方と一緒にいれば、ハンターとしてまだまだ成長できるような気はします。

 

わたくしは貴方のことが嫌いですが…、それを承知の上で組んでもいいというならそのお願いは聞き入れたいと思います。」

 

 

うん、それは良かった。

 

 

「………ありがとう。それじゃあこれからもよろしくな、セレス。」

 

 

「貴方みたいな変態に名前を呼ばれるのは虫唾が走りますが…、まぁよろしくお願いしますわ。」

 

 

 

 

ありがとう、こちらこそよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな具合で、ユクモ村に来てからの初めてのクエストは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「迷子君お疲れ様〜!あの2人とクエストに出てみてどうだった?」

 

 

「ん?ああ…。

確かに技術はあるんだけど…、2人みたいなどこか突き抜けた強さがあるとはまだ言えないかなぁ…。

いや、俺が言えた話じゃないんだけどさ…?」

 

 

 

ガノトトスの狩猟を終えた後、ユクモ村に戻った俺は食堂を訪れ、レイリスとクルルナとの3人で少し話をしていた。

 

ラディスとセレスは温泉に行ったらしい。付き合いが長いだけあってあの2人は仲がいいな。

 

 

 

「う〜ん…。やっぱりトマトさんの目から見てもそうなのですね…。

 

私達も彼女達にはもう1段階上のステージ…。

それこそ、私やレイリス。そしてトマトさん程の力を持ったハンターになってもらいたいのですが…。」

 

 

 

どうやらこの2人にとっても、ラディスとセレスはもっと成長してもらいたい存在らしい。

 

確かにうまく言葉にできないけれど、あの2人にはまだまだ成長の余地が残されているような感じはあった。

 

俺が新しくパーティに加わったことで、いい影響が与えられるといいんだけど…。

ともかく頑張りますか…。

 

 

 

「まぁ、迷子君も私達のパーティに加わってくれたからさ!

それについても今後ゆっくり考えていこうよ!」

 

「それもそうですね。

今はトマトさんのユクモ村での初クエスト達成を祝って楽しくいきましょう!」

 

 

 

そうだな…。

考えたって始まらないことだってある。

今回みたいなのはそれなりの時間をかけてなんとかしていかないとな。

 

ともかく、今はパッといきたい気分だ。

 

 

 

「2人ともありがとうな。それじゃあパッといきますか!

 

俺のユクモ村での初クエスト成功を祝って〜…」

 

 

 

 

「「「乾杯!」」」

 

 

 

 

3つのグラスがぶつかり合い、食堂に小気味良い音が鳴り響いた。

 

 

 

 




ほい、ガノトトスさんでした。
自分はガノトトスさんは戦いにくい相手ですね…。
でも、ガンナーで行くとだいぶ楽です。

今回は主人公はチマチマ弓を撃ってるだけみたい…。まるで主人公していない…。


ここで、主人公達の年齢を言っておきたいと思います。

主人公、レイリスさん、クルルナさんが20歳。

セレスさんが18歳。 ラディスちゃんが16歳。 という設定になっております。

後々出てくるラスト1人は…、まだ明かさないでおきますね。


感想、評価など気軽にくださっても構いません、お待ちしてます。



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第26話 ロイヤルハニーハント

UA3000突破しました。あと、お気に入りも30件突破しました。

読者の皆様に感謝です。

それでは本編どうぞ。




 

「それじゃあ迷子君は留守番よろしくね!

久しぶりに私達でクエストに行ってくるから!」

 

 

「あいよ〜。頑張ってきてな〜。」

 

 

 

 

 

 

久々に元のパーティメンバーでクエストに出発したいというレイリスの提案で、俺以外の4人が孤島へと向かうことになった。

 

孤島か…。モガの村のすぐ隣にあるフィールドだ。

アイシャさんがいるなら会ってみたいなぁ…。サインとか貰いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで俺はユクモ村に1人で残ることになりました。

 

 

 

1人だと狩猟クエストに行く気も起きないなぁ…。

あっ、でも渓流をゆっくり見て回りたいから採集クエストとかならいいかもね。

 

よし、今回は採集クエストにしよう。

 

 

 

「渓流って何があるのかねぇ…。なんか美味しそうなもの多そうだけどな…。

あっ…、考えただけでヨダレが…。」

 

「旦那さん、流石に汚いニャ。

そんなことしてると読者さんが離れていってしまうニャ。」

 

 

メタ発言は控えなさいって…。

 

 

 

 

そんなしょうもない会話をしながら俺とネコ達は集会浴場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あーっ!貴方が噂のハンターさんですか!

何でも言葉巧みに『英雄』のお2人を家へと誘い込み、そのまま…!

 

キャーッ!なんてこと!『英雄色を好む』とは言いますけど、まさにこれのことですね!」

 

 

やったら高いテンションで言葉をまくし立てる受付嬢さんが集会浴場にいました。

 

………もしかしてこの人、俺の噂を盛って話したりしてないよな?

 

 

「あっ!挨拶が遅れました!

 

私、このユクモ村で受付嬢をしている『コノハ』と申します!

敏腕受付嬢目指してビシバシ頑張っているのでよろしくお願いしますね!」

 

 

あっ、そうだそうだ。

この人の名前はコノハさんだ。

 

受付嬢人気投票ではなかなかの順位に食い込んでいたような…。

実際会ってみるとキャラ濃いですね…。

 

 

「うん、よろしくお願いします。

 

それで…、今日は渓流で何か軽めの採集クエストにでも行こうかな…なんて思って来たんだけど丁度いいクエストはありますかね?」

 

 

「ふむふむ…渓流での採集クエストですか…。

 

あっ!これなんかどうでしょう?

 

ロイヤルハニー5個分の納品依頼が届いてますね!

大型モンスターもいないようなので安心安全で簡単!

さらにさらに、ドスマツタケを納品してくれれば報酬上乗せです!

 

いかがですか!?」

 

 

お、おう…。随分と勢いがありますね…。

 

まぁ、それくらいなら今だと丁度いいかもな。

 

 

「うん、じゃあそのクエストを受けることにするよ。

いいクエストをありがとう。」

 

 

「ふっふっふ〜。いやぁ、これで私も敏腕受付嬢にまた一歩近づけましたね!

 

それではクエストの成功をここで祈ってますね!いってらっしゃい!」

 

 

まだまだ新米な感じはあるけど、元気がいい人は嫌いじゃない。

きっと敏腕受付嬢になるのだって夢じゃないさ。

 

 

そんなことを考えながら、俺はロイヤルハニーの採集クエストへと出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、頑張ってるみたいじゃないですか。

 

今そこで噂のハンターさんとすれ違ったのですが…、もしかして何かクエストでも受けていったのですか?」

 

 

「あっ、ササユさん!

あのハンターさんは私の手腕によって、とってもいい条件のクエストにありつけましたよ!

 

これで私も敏腕受付嬢に近づけましたね!」

 

 

 

「…………コノハ?

一応聞いておきますが…今、渓流付近にかなり危険なモンスターが現れたのは知っていますね?

そして、渓流の狩場にそのモンスターが乱入する可能性があることも、ハンターさんにはしっかり伝えましたか?」

 

 

 

「…………えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、渓流を訪れるのは2回目。

 

今回は自動マーキングに引っかかってる大型モンスターもいないみたいだから気楽に採集して渓流を見て回ろうかな。

 

「渓流はいいところだニャ〜。美味しいお魚もいっぱいいそうニャ。」

 

今回のオトモはコレクトの【サンマ】とガードの【ヒラメ】だ。

採集クエストだとこの2匹で決まりかもね。

 

 

 

それじゃあ、のんびりハチミツ採集と行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリア1を訪れると、ガーグァが何か草を食んでいた。

触ってみようとゆっくり近づいてみると、急に声を上げて俺から距離をとった。

 

別に何もしないのに…。

 

小川のなかにはサワガニらしきものや、カメみたいなのもいました。ここはゲーム通りなのね。

 

 

よし、こんな調子でゆっくり回っていきますか。

 

 

 

 

 

次はエリア2に到着。ジャギィ達の住処である岩場のエリアだ。

 

ここは……、ジャギィノスが寝てるだけで特に目ぼしいものは無いかな…。

 

悪いけどここはスルーしよう。

 

 

 

 

 

次はエリア4の方へと進んでみた。

 

廃屋が立ち並ぶ、かなりの広さがあるエリアだ。

 

今は何匹かブルファンゴがいるみたい…。

 

「超音波笛使うかニャ?」

 

「うーん、まぁこれくらいならいいよ。近づかないようにしよう。」

 

ブルファンゴに気づかれないようにエリアを探索してみることにした。

 

 

 

 

エリアの中央にある大きな廃屋を眺める。

 

これは…あの古龍…。『嵐龍』がもたらした嵐でこうなったんだっけか。

 

触ってみるとギシリと危ない音がしたのでそれ以上触らないことにした。

 

 

うーん、あとは見たいものもないかな…。

 

よし、次だ次。

 

 

 

 

 

 

エリア7に到着。この間ガノトトスと戦った場所だね。

 

光蟲?がススキの様な植物のあたりを飛んでいてとっても綺麗だ。

 

だけど、何匹かルドロスがいるな…。

こっちに気づいたみたい。

 

いちいち相手にするのも面倒だ。

 

「サンマ、超音波笛頼む。」

 

「了解ニャ。」

 

ネコに笛を吹いてもらい、ルドロスを追い払う。

 

 

「さて、ドスマツタケでも探すか。」

 

 

俺はドスマツタケを探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ〜、案外サクッと集まったな。

なんだか今日は俺にしてはついてるな。」

 

 

ドスマツタケは追加報酬条件の3本をあっという間に見つけることができた。

 

すっごくいい香りがする。いつか食べてみたいなぁ…。

ちなみに『キノコ大好き』を発動させればドスマツタケは食べれるんです。

効果はニトロダケと同じ鬼人薬の効果があるね。

まぁ、あえてドスマツタケにする人はまずいないだろうけどさ…。

 

さて、ドスマツタケも集まったことだし次行こう。

 

 

 

 

 

次に訪れたのはエリア9。

なんだか古い社のようなものがあるエリアだ。

 

 

「おっ、ユクモの木がある。どんなもんなのかね…?」

 

試しに1つ剥いでみる。

 

取れた木片は軽い上にかなりの柔軟性がある感じがした。こう…、折ろうとしてもすぐにバキッとならない。しなる感じがあった。

 

 

「へぇ…。こりゃいい木材だな…。武具の素材になるのも納得だ。

 

おっと、肝心のハチミツを忘れないようにしないとな。」

 

 

俺はハチミツ採集を始めた。

 

途中でオルタロスも俺の横でハチミツを集め始めてた。

 

うん、平和でいいね。

 

 

 

 

「う〜ん、5個分集まらなかったかぁ…。

まぁいいや、エリア5に行けばきっとすぐ集まるだろ。」

 

 

残念ながら、指定された5個のビンのうち3本にしかロイヤルハニーは貯まらなかった。

 

残りの分を集めるのを兼ねて、渓流巡りを再開しようとエリア8に向かおうとする。

 

 

 

 

 

 

 

「旦那さん旦那さん、ちょいと待つニャ。」

 

 

ん?どうしたんだ?いきなり引き止めたりして。

 

 

「僕たちのセンサーに何かモンスターが引っ掛かったニャ。この先のエリア8にいるみたいニャ。」

 

 

 

そう言われて初めて、俺の自動マーキングにもモンスターの反応があることに気づいた。

 

ええぇ…、コノハさんったら大型は出ないって言ってたじゃない…。

それだと敏腕受付嬢への道のりはまだまだ長いですよ…?

 

 

 

「マジですか……。今回はのんびり行く予定だったんだけどな…。

 

まぁ、チラッとそのモンスター見てから帰っても問題ないよな…?

 

お前らもそれでいいか?」

 

 

 

俺の問いに、ネコ達は頷いてくれた。

 

 

 

よし、それじゃあエリア8に行ってみますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、エリア8に到着しました。

 

 

到着したんだけど……、

 

 

 

 

 

 

「旦那さん…、アレは1人だとちょっと危ない相手じゃないかニャ?」

 

 

 

うん…、確かにアレは少々…、いや、かなり手こずりそうな相手だな…。

 

 

 

 

 

 

 

そこには、極限の飢餓に陥ってしまったが故に

 

全てを屠り、喰らうものと化した存在…。

 

 

 

 

 

 

 

 

怒り喰らうイビルジョーがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 




ほい、1人で魔物に遭遇してしまいましたね。
主人公はこの後どんな行動を選択するのか…、お楽しみに。

冒頭でも述べましたが、UA3000、お気に入り30突破は本当に感謝です。
これからもちょくちょく更新していくので応援していただけるだけで、作者は幸せです。

感想、評価などお待ちしてます。


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第27話 飢え渇き生態を蹂躙す

評価バーに色がついてる夢を見ました。

起きたら真っ白でした。

滑稽ですね。

それでは本編どうぞ。





 

 

 

 

「お兄ってマゾ気質あるよね。」

 

 

 

昔、妹からそんなことを言われたことがある。

 

 

 

ちょっと、いや、かなり納得いかないけれど、自分の姿がそう目に映る人もいるのかもしれない。

 

 

難しいと言われてることに挑戦するのが、

そしてそれを成し遂げるのが大好きだった。

 

いつからか、率先して難しい道を選ぶようになった。

これならマゾとか呼ばれてもしょうがないかもね。

 

 

そんなちょっと変わったことを繰り返してるうちに、いつの間にか周りは自分のことを努力家なんて呼んでた。

ちょっと難しい道の方が好きなだけなのにこうなってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも…、だからこそ俺の今回の選択は自分らしいものだったと思ってはいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、その選択をしたことにより、俺は大切な仲間に涙を流させてしまった。

 

今回はそういう話だってことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロイヤルハニーの納品クエストだったはずが、なんでこんな魔物がいるんでしょうね…。

 

さて…、どうしたもんか…。

 

 

「旦那さん、どうするニャ? いくらボク達でもアイツを相手にするのはちょっと面倒ニャ。」

 

 

うん、面倒だよねぇ…。

アイテムだって持ってきてないし…。

 

 

「なあなあ。

あんなヤバい奴がうろついてるなら、レイリス達が戻ってきたらまた狩猟に繰り出すことになるのかね?」

 

 

オトモ達に聞いてみる。

 

 

「うニャ〜…。多分そうニャ。まぁ、ヤツがここから別の狩り場に移動しなければの話だけどニャ…。」

 

 

移動しなければ……ね。

 

 

う〜ん…普通に考えれば戻った方いいよな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………でも、こんな強敵とは次にいつ戦えるのかわからないよなぁ。

 

 

 

 

 

 

「なぁ…、ちょっと戦ってみてもいい?

 

絶対にダメ!っていうなら戻るけどさ。」

 

 

俺はネコ達に聞いてみた。

 

 

「うニャ〜…。なんとなくそんなことは言いそうな気がしてたニャ〜…。

 

…………まぁ一回力尽きてしまったらすぐにイビルジョーは無視することにするってことならいいニャ。

 

でも…、装備はどうするのニャ?流石に採取装備だとあっという間にムシャムシャされるニャよ?」

 

 

「あぁ、それについてなんだけど…。

 

俺、実は魔法使いなんだ。」

 

 

「ニャニャ?レイリスさんとクルルナさんに喰われたくせに何言ってるのニャ?」

 

 

うっさいわ。だまっとれ。

 

 

ともかく、あの時の天使さんが言ってたことが本当なら今の俺は装備を変更できるはず。

 

 

 

相手は怒り喰らうイビルジョー。

 

 

俺は目をつぶって、ソイツを相手にするための装備を思い浮かべた。

 

 

そして、目を開けると…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ…?旦那さんは一体何をしたのニャ?」

 

 

 

おし、成功したみたい。

 

 

 

 

 

武器は操虫棍の『天雷宝棍【麒麟帝】』

虫は会心特化のダブルアップ延長虫。

 

防具はエスカドラXシリーズ一式。

 

そして、お守りは俺が持っている数少ない神お守りのうちの1つ

切れ味6 雷属性攻撃12 スロット3

 

 

発動スキルは

『雷属性攻撃強化+2』 『属性攻撃強化』

『無慈悲』 『会心撃【属性】』 『業物』

『属性やられ無効』

 

属性関係のスキルをガッツリ盛った装備だ。

 

物理肉質がだいぶクソな怒り喰らうイビルジョーには属性攻めに限る。

 

 

 

 

「うニャニャ…。あの不思議な夢で言われたことは本当だったのかニャ…。」

 

 

「ん?不思議な夢って何だ?」

 

 

ネコ達が気になることを言ったので尋ねてみた。

 

 

「いつだったか忘れたけど、ボク達の夢の中にアークS防具を身につけた人が現れたのニャ。

 

その人が言うには、旦那さんがちょっと不思議な力を使えるようになったって……。

 

あれは本当だったのかニャ…。」

 

 

あら、天使さんったらコイツらにも伝えててくれたのか。

 

それなら話は速い。

 

 

「じゃあ、アイツと戦うためにお前らも他のオトモと一旦交代だ。結果はどうあれ、戦いが終わったらまた呼び出すからさ。」

 

 

「了解ニャ。武運を祈るニャ。」

 

 

そういってネコ達は地面に潜った。

 

そして、次の瞬間にはアシストオトモのネギトロとファイトオトモのイクラが地面から飛び出して来た。

 

 

「呼ばれて飛び出て参上ニャ!

 

さて、今回はアイツかニャ? ボク達がしっかりサポートするから旦那さんも勝つ気で臨むのニャ!」

 

 

ほい、頼りにしてるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて…、準備は整った。

 

 

戦闘用のアイテムは一切持っていない。

 

 

どう考えたって絶望的な状況に思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど………、そんな状況に立ち向かうのがどうしようもなく面白いんだ。

 

あぁ…、妹が言ってたことがなんとなくわかったかもしれない。

 

この状況を面白いとか言えるのは確かにマゾかもな…。

 

 

 

 

 

ま、今は目の前のゴーヤに集中だ。

 

 

そう考えると俺の中のスイッチが入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ…、狩猟開始だ。

 

 

俺は怒り喰らうイビルジョーに向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イビルジョーの背後から近寄った俺は、猟虫を飛ばして足から白エキスを奪う。

 

こちらに気づいたイビルジョーは天に向かって吠えた。

 

その咆哮をイナす。下がってきた頭に向かって猟虫を飛ばして赤エキスを奪いダブルアップ状態へ。

 

 

前進噛みつきを仕掛けてきたイビルジョーに対して、前転してフレーム回避。

そのまま足元で2連切り上げに繋げる。

 

 

イビルは振り向き噛みつきに繋げてくる。

それもフレーム回避。

そして、足元で2連切り上げ。

 

 

 

 

 

 

だんだん周りの音が消えていく。

 

目の前のイビルジョーとの戦いだけに意識が集中されていく。

 

 

 

 

 

 

足元にいる俺を狙って、イビルは四股踏みをしてくる。

元から左足付近に張り付いていたので、振動をイナす。

そして攻撃の隙に抜刀攻撃、そして飛燕切り。

 

 

そこでイビルは怯んで、体勢を崩す。

 

よろけた方向へ前転回避。

もう一度コロリンしてから、2連切り上げに繋げる。

そして飛燕切り。

 

 

よろけた状態から立ち直ったイビルジョーは

頭に凄まじい量の龍属性オーラを纏い、天に向かって吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

いいね。そうこなくっちゃ。

 

じゃないと面白くない。

 

ここからが本番だ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

怒り状態に入ったイビルはふざけた速さで振り向きざまの噛みつきを俺に放つ。

それをしっかりフレーム回避。

そして2連切り上げ。

 

 

そのままイビルは連続噛みつきを繰り出す。

左右交互に2回ほど噛みついた後に、こちらに向かって拘束攻撃。

それをイナして、抜刀攻撃。

そして飛燕切りに繋げる。

 

 

 

 

 

 

ハハッ…、何だこれ……。

 

めちゃくちゃ面白い!

 

 

 

 

 

 

遠くでブーメランを投げていたネコ達に向かってイビルは近づいていき、前進噛みつき。

距離を離される。

 

 

攻撃を終えて、こちらを振り向いたイビルは口元に龍属性エネルギーを溜めて、薙ぎ払うようにぶっ放した。

 

それを『絶対回避【臨戦】』を使って避けると同時に距離を詰める。

 

足元に潜り込んだ俺はそのまま2連切り上げ、そして飛燕切り。

 

 

そこでイビルジョーはダウン。

 

 

すかさず前転で距離を詰め、弱点である胸のあたり目掛けてラッシュをかける。

 

エキスの効果が切れそうだったので、ダウンから復帰する前に2色のエキスを再び集める。

 

 

エキスを集め終わるとイビルはダウンから復帰。そして、直立して口元に龍属性エネルギーを蓄える。

 

通称『暗黒盆踊り』。

龍属性ブレスを振り上げる様にぶっ放すその攻撃は、遠距離にいると対処しにくいけど足元にいればそれほど脅威じゃない。

 

俺はすぐさま足元に駆け込み、無防備な足に向かって連撃を加える。

 

 

 

ブレス攻撃を終えたイビルは俺に振り向きざまの噛みつき攻撃をしてくる。

 

痛っ…。ちょっと攻撃を欲張りすぎた。

 

俺が今装備しているエスカドラX防具は一式で龍属性耐性が−20と悲惨な数値。

龍属性を纏った攻撃ならば、今みたいな大して強くない攻撃でも平気で3分の1ほど削られる。

 

だけど…、それがどうした。

 

ダメージがでかいなら当たらなければいいだけだ。

 

 

 

イビルは俺に向かってタックルをかましてきた。

それを尻尾方向へ歩いて回避。

攻撃の隙をついて足をひたすらに切る。

 

 

イビルは再びよろけた。

その隙を見逃さずに前転回避から切り上げに繋げる。

 

 

よろけから立ち直ったイビルはこちらに向き直り、ブレスを放つ構え。

そのモーションだとわかった瞬間に、絶対回避で足元に潜り込む。

そして、先程怯ませた足に連撃を加える。

 

 

ブレスを放ち終えたイビルは足元を狙って四股踏み。

それをイナす。

そして、抜刀攻撃から飛燕切りへと繋げる。

 

 

そこで再びダウン。

そして…、俺の体を青い光が包み込んだ。

 

ブレイヴ状態に入った俺は、コロリンからステップへと置き換わった回避で一気にダウンしているイビルへと迫る。

そして、回避から攻撃へ。

 

 

連撃を加え終わると、イビルは立ち上がる。

 

その頭から迸っていた龍属性オーラは消え、代わりに口からヨダレが流れていた。

 

 

 

 

 

 

…………チャンスだ。 一気にたたみかける。

 

 

 

 

 

 

 

俺は休む間も与えず、イビルの足を斬り続ける。

疲労状態に移行した時の威嚇モーションが終わる頃には、再びイビルがダウンした。

 

 

ステップで即座に距離を詰め、弱点の胸付近を斬りまくる。

 

 

ダウンから復帰したイビルは急に戦いを止め、エリア6へと移動し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

よし……、絶好調。

ゲームと同じなら結構削れてるはず。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はイビルジョーを追ってエリア6へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリア6へと移動したけれど、依然としてイビルジョーは疲労状態のままだった。

せめてもう一回はダウンを取っておきたい。

 

 

こちらに気づいてイビルは前進噛みつきをしてくる。

それをフレーム回避。

そして攻撃を加える。

 

 

その後、イビルは尻尾回転攻撃をしてきた。

すぐさま足元の安置に潜り込み、ひたすらに斬りまくる。

 

 

そこでイビルジョーはダウン。

 

 

絶対回避で距離を詰め、胸に斬りかかる。

薙ぎ払い、2連切り上げ、縦斬り、

更に薙ぎ払い、そして飛燕斬りでフィニッシュ。

 

 

一連のコンボを決めるとイビルはダウンから復帰。

 

そして再び龍属性オーラを頭に纏わせ、咆哮を上げた。

 

 

 

 

 

 

さて……、結構殴ってると思うんだけど…。

 

もうひと頑張りってところかな?

 

 

 

 

 

 

怒り状態に入ったイビルは俺に向かって連続噛みつき。

それを足元を潜り抜けるようにステップで回避する。

噛みつきを終えたイビルはそのまま俺を狙って拘束攻撃。

それをイナす。

そして抜刀攻撃、飛燕斬りのコンボに繋げる。

 

 

イビルは後退しながら口元に龍属性エネルギーを溜める。

ブレスか…。絶対回避は溜まってない。

フレーム回避するか…。

 

 

イビルは龍属性エネルギーのブレスを薙ぎ払うようにぶっ放す。

その攻撃を掻い潜るように俺はステップ回避を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして………、吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いってぇ…………ミスったか……クソッ!

 

 

 

 

 

 

目の前がチカチカする。

恐らくダメージは相当なもの。

正直力尽きなかっただけでも儲けものだと思う。

 

 

 

 

そして、吹っ飛んだ俺に対してイビルはタックルをかましてきた。

 

 

あぁ…クソ、これはちょっと避けらんねぇや。

 

 

俺はすぐさまそのタックルをイナす。

 

 

直接攻撃に被弾するわけでは無いものの、イナシでは完全にノーダメージになるわけでは無い。

先程のブレスでほぼ力尽きる寸前だったであろう俺の体力は、今だと恐らくあらゆる攻撃を受けただけでもゼロになってしまうだろう。

 

 

 

悲鳴をあげる体を落ち着かせるために、1度大きく息を吸い込む。

 

 

 

残り体力はきっと1。

イビルの攻撃どころか、ジャギィにつつかれただけで俺はきっと力尽きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど…………こんな状況だからこそ笑ってしまう。

 

あぁ、クソ。

確かにこんな状況で笑う奴はマゾ気質あるわ。

 

不服だけど妹の言葉は認めざるを得ないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、イビルはオトモ達に狙いを定めてるみたい。

 

エキスの効果が切れそうだったので、近くにいたジャギィノスから橙エキスをもらう。

 

そして、俺は今回初めてのトリプルアップ状態へ。

 

 

 

 

 

 

「オイ、クソゴーヤ。

俺も同じなんだけどさ、多分お前も大して体力残ってないんだろ?

 

俺も長ったらしいのは嫌いだからさ、俺がピカピカしている間にケリをつけるってことでどうよ?」

 

 

 

 

 

 

言葉が通じるとは思えなかったけど、そうイビルジョーに言葉をかける。

 

 

すると、イビルジョーは天に向かって一際大きな咆哮をあげた。

 

 

 

 

 

あら?通じたのかね?

 

 

ともかく、恐らくだけどこの1分で決着がつく。

 

 

さあ、正念場だ。

 

 

 

 

 

俺は操虫棍を構えて、イビルへと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駆け寄った俺に対してイビルは大回転噛みつき。

それをフレーム回避して足元に潜り込む。

そして斬り上げ、飛燕斬り。

 

 

足元にいる俺を狙ったのか、イビルは四股踏みに繋げてきた。

だけど、直撃する場所に俺はいない。

すぐさま2連突きを左足に当て、発生した振動をフレーム回避。

そして2連斬り上げ。

 

 

そこでイビルジョーはダウン。

 

 

絶対回避で距離を詰め、胸を狙って連撃を決める。

強化された雷属性攻撃が残り少ないであろうイビルジョーの体力を奪っていく。

 

 

ダウンから復帰したイビルはふざけた速さで振り向きざまの噛みつきを繰り出す。

回避が間に合わず、イナシで対応。

体が痛みを訴える。

 

 

 

 

 

 

 

あと少しなんだって………、

だから言うこと聞けよコノヤロウ。

 

 

 

 

 

 

 

イビルは暗黒盆踊りのモーションを取る。

 

イナシで納刀していたのでダッシュで一気に距離を詰め、足を狙って攻撃。

 

 

 

 

 

 

 

あとすこし……、もうちょっとだ………!

 

 

 

 

 

 

 

攻撃を終えたイビルは再び薙ぎ払いブレスのモーションをとる。

 

俺の立ち位置はなんとも言えない微妙な位置。

 

ブレスに巻き込まれたら問答無用でネコタクのお世話になるだろう。

 

 

 

だけど……、フレーム回避を決めれれば一気に攻撃チャンス。

エキスの残り時間も迫ってきている。

 

ここが勝負だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の光景に集中する。

 

周りの音が消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イビルジョーの口から赤黒い煙が吐き出され、

俺の目の前に迫る。

 

まだだ…、まだ早い。

 

 

 

 

最早ブレスとの距離は1メートルもないだろう。

 

それでも引きつける。

 

 

 

 

そして目の前が龍属性の煙で埋め尽くされ………、

 

 

 

 

 

 

 

 

今だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブレイヴ状態限定のステップ回避。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺の体は龍属性ブレスをすり抜けた。

 

…………アタリハンテイ力学万歳。

 

 

 

 

ブレスを回避した俺は斬り上げ、そして飛燕斬りに繋げる。

イビルは足に攻撃を加えられ、よろける。

 

 

 

 

そこでエキスの効果が切れた。

 

 

 

 

イビルジョーの様子を見る。

 

 

 

 

 

イビルジョーは体勢を立て直すと……、

 

 

 

 

 

 

 

 

エリア8に向かって足を引きずり出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

よっしゃ…あと少しだ。

 

 

あぁ…、だけど一旦待って…。

なんかすごい疲れた…。

体力だってギリギリだ…。

 

 

そう考えると足から力が抜けて、俺は渓流の小川の中に座り込んだ。

水が冷たくて気持ちいいです。

 

 

「うニャ〜…、なんだか今回は旦那さんの動きが凄かったニャ〜。

さすがボク達を雇っただけあるニャ。」

 

 

 

うん、すごいでしょ。もっと敬ってくれてもいいんだよ?

 

 

 

「そいつはどうも…。

あ〜…、でもちょっと待ってくれ…。

流石に疲れたわ…。」

 

 

オトモ達にそう言葉をかける。

 

 

「あの戦いぶりをみてればそうだニャ。

体力だってほとんど残ってないだろうから、

一応薬草笛を吹いておくニャ。」

 

 

おお、助かるよ。いつもサンキューな。

 

 

 

 

 

 

「まぁ旦那さんはそこでゆっくり休んでてくれニャ。

 

今、笛を吹いて……………うニャ!?」

 

 

 

 

 

そう言ってオトモ達はなぜか焦った表情になり、ブーメランを手に取った。

 

 

 

 

 

 

「ん?どうしたお前等…………」

 

 

 

 

 

 

そこで俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ………。いってぇな………。

もっと優しくしろよ……。」

 

 

 

 

何かから振り落とされた様な感覚を覚え、意識が覚醒した。

 

 

とりあえず、周りの様子を伺ってみると………。

 

 

 

 

「あれ……?もしかして力尽きた………?」

 

 

 

渓流のベースキャンプにいました。

 

 

 

「え?でもゴーヤは足引きずっていったし……。」

 

 

 

1人で悩んでるとネコ達が地面から飛び出てきた。

 

 

「あっ…、旦那さん。さっきはちょっと残念だったニャ…。」

 

 

一体何があったんだ…。早く教えて欲しいですね。

 

 

「とりあえずイビルジョーはボク達で捕獲してきたニャ。寝てるところに罠を仕掛けてサクッといったニャ。

 

それで…、旦那さんが力尽きた件については…、

 

まぁ言っちゃえばジャギィノスに突っつかれただけだニャ。

どうもエキスを取られたことに腹を立ててたみたいだニャ。」

 

 

 

えぇぇぇ………。締まらないにも程がある。

 

せっかく力尽きずに頑張ったのに最後はジャギィノスかよ…。

 

 

 

「ロイヤルハニーの残り分はボク達で採集してきたニャ。とりあえず今は村に帰ってゆっくり温泉にでも浸かりたい気分だニャ。」

 

 

おっ、ハチミツも集めてきてくれたのね。

流石は俺のオトモだ。

 

 

んじゃあとっとと帰りますか…。

 

 

 

 

 

 

 

そういうわけで、俺の初めてのソロクエストは

無事に成功した。

 

疲れました。でも追加のゴーヤを倒せたのは良かったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に申し訳ございませんでした!

 

ハンターさんの身を危険に晒す様な真似をしてしまったこと反省しています…。

 

ですから…、ハンターさんからもササユさんにおやつ1週間抜きのお仕置きについてお話してもらえれば…。

 

いや…、でもそれは流石にハンターさんに迷惑ですよね…。」

 

 

 

ユクモ村に帰ってくるなり、コノハさんに物凄い勢いで謝られた。

泣きそうな顔で謝られてもちょっと困るなぁ…。

あとササユさんには俺も何も言えそうにないです。さっきのコノハさんを叱る時の迫力はすごかった。クルルナ並でした。

 

 

 

「ハンターさん…、私の後輩のミスで危険な目に合わせてしまって本当に申し訳ございません…。

 

コノハにはキツく言っておきますのでどうか許してもらえれば…。」

 

 

「あっ、いえいえ、そんなに謝られても困りますよ。

結果だけ見れば無事にイビルジョーを捕獲できたわけだし良かったですよ。」

 

 

「そう言っていただけるとありがたい限りです…。

あっ、そういえばレイリスさん達もそろそろ到着するらしいですよ?

なんでもハンターさんが怒り喰らうイビルジョーに挑んだと聞いて、あっという間にクエストを終わらせたとか…。」

 

 

おっ、レイリス達も終わったのか。

帰ってきたら孤島の話も聞きたいな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「迷子君いる!?」

 

 

 

聞き覚えのある声が集会浴場に響いた。

 

おっ、帰ってきたみたいですね。

 

 

「あ〜い、ここにいますよ〜。」

 

 

俺はそんな気の抜けた返事を返す。

 

するとレイリスは一目散に此方へと駆け寄ってきた。

 

 

「あ…、迷子君…。

 

ぶ、無事だったの…?怒り喰らうイビルジョーに1人で挑んだとか聞いたんだけど…。」

 

 

レイリスはそんなことを俺に尋ねる。

 

 

「ん?あぁ、採集クエストの途中でちょっとね。

 

アイテムも持っていってなかったし最初は戦うか悩んだけど…まぁ無事に狩猟できたよ。

 

結構…いや、かなりギリギリだったけど…。

というか一回力尽きちゃったし…」

 

 

そこまで言ったところで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乾いた音と共に、俺の頬に鋭い痛みが走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬何が起こったかわからなかったけれど、レイリスに叩かれたのだとすぐに気づいた。

 

 

 

 

 

 

ハッとなって、レイリスの方を見ると……、

 

 

 

 

 

 

「なんで君はそう無茶ができるのさ……。

君に何かあったらタダで済まないのは君だけじゃないんだよ………?」

 

 

 

 

レイリスが泣いていた。

 

 

 

 

「お願いだから……、無茶をして私達の前からいなくなるなんてことはしないでほしいんだって……。

 

だって……、君は私が好きになった初めての人なんだから………。」

 

 

 

そういってレイリスは泣きながら、俺の胸に顔をうずめてきた。

啜り泣く声が聞こえてくる…。

 

 

「君がいなくなるなんてのは………本当に嫌なんだよぉ………。」

 

 

 

何も言えなかった。

 

 

 

 

 

自分の力があの存在に通用するのか…。

ただそれだけのために。

自分が挑戦したいという理由だけで今回はイビルジョーに挑んだ。

 

そうだ…、そうだよな……。

 

普通に考えたら"出会ったら即撤退"が常識とされてるモンスターに1人で挑み掛かるなんてどれだけ命知らずな行動なのか誰だってわかることだ。

 

 

 

 

 

以前、レイリスが力尽きた時にこの世界での意識を変えられたと思っていたけどどうやらそうではなかったみたい。

なんだよ……。

俺は全然成長してないじゃないか……。

 

 

 

 

 

クルルナや他のメンバーも沈痛な面持ちでその場を見ていた。

あの元気いっぱいのラディスですら、かける言葉が見つからないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

「レイリスさん、ちょっといいかニャ?」

 

 

 

 

 

そんな中、1人…いや、1匹だけ声を上げる存在がいた。

 

オトモのイクラだった。

 

 

 

 

「旦那さんにずっと付いてきたボク…いや、ボク達から1つだけレイリスさん達にお願いがあるニャ。

 

旦那さんはみんなが知ってる通り、よく迷子になってしまうし、ヘタレだし、変態のレッテルまで貼られるトマト好きのハンターニャ。

 

だけど…、その実力は誰もが認めるものだと思っているのニャ。

実際、今日のイビルジョーと戦った時の動きはそれはそれは凄まじいものだったニャ。

 

ただし…、その強さのせいで危うい行動に出るときもあるのニャ。そして、今までボク達はそうなった旦那さんを止めることは出来なかったのニャ。」

 

 

 

 

えっ…?そんな風に見てたときあったの?

 

 

 

 

「今の旦那さんにはレイリスさんみたいなステキな仲間がいっぱいいるのニャ。

 

多分…旦那さんの無茶してしまうクセはいつまで経っても治るモノじゃないと思っているのニャ。

 

そして、ボク達にはそんな旦那さんを止める術はないですニャ…。

 

だから…、レイリスさん達から見て旦那さんが暴走しているようだったら…、

その時は遠慮なく旦那さんの暴走を止めてもらいたいのですニャ。

 

大剣で斬り上げるも良し、ガンランスで吹っ飛ばすも良し。ハンマーでぶっ飛ばすのも大歓迎ニャ。

ボク達が許すのニャ。

 

このお願い、聞いてもらえるかニャ?」

 

 

 

そんなイクラの言葉だった。

 

そして、それを聞いたレイリスは…。

 

 

 

「フフッ…、迷子君はいいネコちゃん達がついてるね…。」

 

 

………笑った。

 

 

「わかりました。『英雄』と呼ばれたパーティの名にかけてそのお願い、引き受けます。」

 

 

………うん、俺にはそれくらいの監視をつけてもらうのがちょうどいい気がする。

 

どうもこのクセはこの世界でも抜けそうにないからな…。

 

 

「というわけだから…、迷子君。

 

これからは遠慮無くいくから覚悟しておいてね!」

 

 

レイリスは赤い髪をなびかせ、雨が晴れた後の様な…、

見惚れる様な笑顔でそう言ってくれた。

 

 

ありがとう…。

こんな俺と一緒にいてくれるなんて感謝してもしきれないや…。

 

 

 

「ありがとうな。こんな俺だけど…、これからもよろしくお願いします。」

 

 

 

目の前にいるみんなに向かって俺はそう言葉を落とした。

 

 

 

「さて、それじゃあ一旦この場は切り上げることにしましょう!

 

トマトさんの無事を祝ってみんなで祝杯でもあげませんか?」

 

「お〜っ!それいいな!じゃあ早速食堂にいこうよ!」

 

「わたくしも辛気臭い雰囲気よりは明るい方が好きですわね。

ほら、貴方もさっさと行きますわよ?」

 

「あっ、待ってよみんな!私だけ置いていくなんてヒドイよ!?」

 

 

 

そういって食堂へと向かっていくみんなを見る。

 

 

 

 

「旦那さん。

旦那さんにはボク達やレイリスさん達。

ステキな仲間がたくさんいるニャ。

 

だから…、これからはそのことを忘れずに頑張るニャよ?」

 

 

「あぁ…、ありがとうな…。」

 

 

イクラが俺にそう言葉をかけて食堂へと向かっていった。

 

 

 

「さて……、美味しいもん食ってトマトジュースをグイッといきたい気分だな…。

 

食堂行きますか…!」

 

 

 

 

俺にはこんなに頼れる仲間がいる。

 

そのことを強く心に感じながら、俺は食堂へと足を運んだ。

 

 

 




長くなりました。

モンハン好きな人ってマゾ気質の人が多いんじゃ…。
自分も友人からそう言われたことがあります。

主人公がまた女性を泣かせましたね。天罰が下りそうです。


今回書いた様に、主人公はヘタレなクセにかなりの強さです。

ですが、ちょっとメンタルとかその辺りがグラグラしてますね。

こんな主人公でも『モンスターハンター』の称号を目指せるのか…?

今後もお楽しみください。


感想、評価など気軽にどうぞ。お待ちしております。


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第28話 ふわふわゼンマイオムレツ

セレスさんの一人称を「わたくし」に変えました。
そっちの方がですわキャラっぽいかな…と。

それでは本編どうぞ。



 

 

 

「ふぃ〜…。 あぁ…やっぱ温泉はいいねぇ…。」

 

 

 

夜明け…というにはちょっと早い時間。

まだ空は暗く、辛うじて一方の地平線が明るみを帯びている…。

そんな時間に俺はユクモ村の露天風呂に浸かっていた。

 

 

「いやはや…、こんなに早起きするのは久しぶりだわ。

でもそのおかげでこの温泉に貸し切り状態で浸かれるとか素晴らしすぎるな。」

 

 

今、温泉に入っているのは俺だけ。

人っ子一人いないので泳ぐことだって出来る。

 

空を見れば少しずつ明るくなっているみたい。

そういえばこの世界は東から太陽が昇るのかね?

 

 

「しかし、こんな時間にお客さんなんて珍しいニャ〜。

さあさあ、朝の一杯に果実の恵みたっぷりの『ライフルーツジュース』はいかがですかニャ?」

 

 

浴場内に設置されている温泉ドリンク屋のアイルーに声をかけられた。

おっ、フルーツジュースか。いいね。

 

 

「ほいほい、それじゃあ一杯頂くことにするよ。」

 

「毎度ありニャ。ささ、一息に飲み干すのニャ。」

 

 

朝イチのフルーツジュースとか素晴らしい。

ついでにさっきの疑問についても尋ねる。

 

 

「どうもありがとさん。

そういや太陽が昇ってくる方角って東だよな?」

 

「のぼせてそんなことも忘れたのかニャ?

グイッといって頭を冷やした方がいいニャ。」

 

 

うん、まぁそうだよね…。

俺は腰に手を当て、フルーツジュースを一気に飲み干す。

渇いた体に果実の瑞々しさが沁み渡る。

 

 

「おっ、お客さん、なかなかいい飲みっぷりニャ。」

 

 

 

 

東の空から太陽が顔を出し、1日が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…夜が明けたとはいえ、まだみんなは起きてないよなぁ…。」

 

 

どこへ向かうというでもなく、ユクモ村を歩く。

 

ここに来てから数日なので流石に迷子になったりはしない……ハズ。

 

………大丈夫だよな?

 

 

 

 

ちょっとだけ不安になりながら歩いていると、

どこかから金属を叩く音が聞こえてきた。

 

気になってそちらの方へと進んでみた。

 

 

 

「あぅ。こんなもんかぃ。さてぃ次はと……んん?

 

ワレぁ、この間ユクモに来たっちゅう凄腕ハンターけぇ?」

 

 

そこではユクモ村の加工屋の爺さんが何やら仕込みをしているようだった。

 

 

「あ…、はい。多分それは俺のことかと…。」

 

 

「おぅおぅ! こんなトコで会えるたぁ光栄だぁねぇ!

ワレぁの活躍はワテの耳にも届いてるぜぃ?

 

どうでぃ?

今なら時間があるけぇ、少しばかりの装飾品くらいならパッとやってやるが、どうするけぇ?」

 

 

 

おっ、気前のいい爺さんだな。

 

ん〜…、それじゃあこの間のラディスのスキルを見て作りたくなったのがあるからそれを頼もうかね。

 

 

 

「そいつはありがたいや。今すぐ素材を持ってくるからちょいと待っててくれないか?」

 

「あぅあぅ!ここにいるけぇまた来てくんな!」

 

 

 

俺は一旦マイハウスへと帰り、素材を持ってくることにした。

 

 

 

 

 

帰る途中に少し迷子になったのは秘密ですよ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほいっ。それじゃあこれで『龍気活性』の装飾品をお願いしたいんだが頼めるかな?」

 

 

 

俺はそう言ってバルファルク素材をメインにいくつかの原珠や素材を加工屋の爺さんに渡した。

 

さて、ゲームだと一瞬だったけどこの世界だとどうなるもんかね?

 

俺はワクワクしながら作業工程を見ようと意気込んでいた。

 

 

 

だけど…、

 

 

 

 

 

 

「んん?おいワレぁよ。なんでぃこの素材は?

 

原珠や素材はわかるがこの銀色に輝く素材はどっから持ち出したんでぃ?

 

流石に規格を外れた素材を使っての装飾品なんてワテにも作れはしないでぃ。

 

それに……、りゅうきかっせい?

なんでぃ、その聞いたこともないスキルはよぅ。」

 

 

 

…………えっ?

 

 

 

「すまんがちょっち力になれんかったようだなぅ。ワテもそろそろ時間でぇの。

 

もし別の装飾品や装備作りたくなったらもう一回来てくんな。待っとるでぇ。」

 

 

 

そう言って、加工屋の爺さんは作業場へと行ってしまった。

 

う〜ん、何でだ…?

 

だってラディスのアレは絶対に龍気活性だよな…?

 

 

 

俺はそれについて考えながら、またユクモ村を散歩することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

う〜ん、なんで生産できないんだ…?

考えてもさっぱりわからないや。

 

早朝のユクモ村を歩きながらそんなことを考える。

 

 

 

 

 

ふと、いい匂いがするのに気づいた。

 

 

 

匂いの方向を見ると、そこには食堂が。

 

厨房では料理人やコックアイルー達が忙しなく朝の仕込みを行なっていた。

 

看板を見ると『営業中』の文字が。

 

 

「うん、考えても思いつかないならしょうがないかな?

『迷ったら食ってみろ!』ってどこかの編纂者さんも言ってたしな。」

 

 

俺は食堂で朝食をとることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「おお、ハンターさんかい! こんな朝早くから飯を食ってくれるなんてうれしいねぇ!

 

だけどちょいと待っててくれるかな?

まだ仕込みが終わってなくてね…。」

 

 

店に入ると厨房のオヤジさんから声をかけられた。やっぱり忙しそうだなぁ…。

急がなくても大丈夫ですよ?俺だって腹が減って仕方がないというわけでもないしね。

 

「ああ、それなら全然大丈夫。

もし時間ができたなら適当な物を作って持ってきて欲しいんだけどいいかな?」

 

 

「そいつぁ、ありがたい! それじゃあそこら辺に座ってまってておくれよ!」

 

 

ほいほい、楽しみに待つことにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂の端の席に座って数分後、料理が運ばれてきた。

 

 

「お待ちどう様ですニャ。

こちら、『ふわふわゼンマイオムレツ』になりますニャ。

お好きな調味料をかけて召し上がってくださいニャ。」

 

 

おおー、オムレツか。いいね。

 

 

「これってどの辺がゼンマイ要素あるんだ?

一見普通のオムレツだけど…。」

 

気になったので聞いてみた。

 

「それはベルナ屋台のおかみ直伝の秘密の技ですニャ。

ちなみにフワッフワッフルも使っているのでフワフワの仕上がりですニャ。」

 

 

マジかよ…、おかみ凄いですね。

 

まぁ、ただ眺めているだけじゃ料理に申し訳ない。

 

 

「それじゃあ…、いただきます。」

 

 

実食といこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

オムレツにナイフを滑らせる。

それだけでオムレツは簡単に切れた。

……フワフワがやべぇ。どう考えてもこれは美味しいだろう。

 

 

一口サイズに切ったそれに、ケチャップの様なものをつけて口に運ぶ。

 

 

 

「うっまぁ…。」

 

 

 

それはそれは美味しかった。

 

シンプルイズベストという言葉があるけれど、この料理はまさにそれ。

 

オムレツそのものの味は卵の仄かな甘味がしたけれど、その味は付けたケチャップなどの味には負けていなかった。

その他にもソース、塩なんかを付けてみたりしたけれどどの調味料でもオムレツは絶品だった。

 

 

そんな風に夢中になってオムレツを頬張っていると…、

 

 

 

「な、なぜこんな所に変態がいるのかしら…?」

 

 

 

聞き覚えのある声がして、そちらの方を向いてみた。

 

 

セレスがいました。

変態を見るような目でこちらを見ていた。

こんな早い時間にどうしたんだろう?

 

 

「あっ、おはよう。

いやぁ、オムレツマジでうまいね。」

 

 

とりあえずそんな言葉を返す。

 

 

「ふ、ふふふ…!

今気づきましたが、貴方もしかしてケチャップかなんかを付けて食べてますの?

 

信じられないですわね!可笑しくて笑ってしまいますわ!

その様な低俗な食べ方をするとは愚の骨頂!

このオムレツはそのまま何もつけずに食べるのが最も美味しい食べ方ですわよ!

 

やはりわたくしと変態では住む世界が違うようですわねぇ!」

 

 

おぉう…、朝から罵倒されたぞ…。

でも調味料つけた方が美味しいと思うんだけどなぁ…。

 

 

「え〜…、でもこれだって美味しいけどな…。」

 

 

「お黙りなさい!それではこのオムレツを作ってくれた方に聞いてみますわ!

 

あっ、そこのコックアイルーさん!ちょっとよろしいかしら?

 

このオムレツはどういった食べ方が一番美味しくいただけるでしょうか!?

 

もちろん素材の味を楽しむためにそのままいただく方法ですわよね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人それぞれだニャ。だけど、厨房のみんなは何かつけた方が美味しいって言ってるニャ〜。」

 

 

 

そう言ってコックアイルーさんは厨房へと戻っていった。

 

 

 

 

 

セレスの目がなんだか潤んできている様な…。

 

 

「ううう……。なんでわたくしがこんな……。」

 

 

「あ、あ〜…。

まずセレスもオムレツ食えば?

奢ってやるからさ、ケチャップだってなかなか美味しいもんだぜ?」

 

 

 

しょうがないので奢ってあげることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら!ケチャップもなかなかいけますわね!

そのままが一番なんて言ってるのがバカらしく思えてきましたわ!

素材の味とか言っている時代遅れな方々にも教えてあげたいものですこと!」

 

 

コロッと態度をかえましたね…。

 

いや、さっきのコックアイルーさんだって人それぞれって言ってたじゃないか…。

 

 

オムレツを頬張るセレスを横目に見て、俺はさっきの考え事をしていた。

そして、ふと疑問が。

 

 

 

「なあ、セレス。ちょいと質問なんだけど…。

 

この間ガノトトスの狩猟に行ったじゃないか。

 

で、その時ラディスがなんか赤黒くバチバチいってただろう?

 

あれってどういうスキルなのか…わかる?」

 

 

『龍気活性』について、自分も知らないフリをしてセレスに尋ねてみた。

 

 

「あぁ…、あのよくわからないスキルですか?

 

なんでも本人曰く…『いてて…となるとググッと力が湧いてきてヨッシャーッ!』となるスキルらしいですわよ…?

 

確か装飾品で発動させてるとか…。

 

そんなに強いスキルなのかしら…?」

 

 

 

………セレスも『龍気活性』については知らないのか。

 

ん……?でも、装飾品で発動させてる…?

 

 

 

「ん?それじゃあさ。

 

ラディスはどうやってその装飾品を手に入れたのかね?」

 

 

「あぁ…、それなのですが…。

 

以前、わたくしとラディスが別々の人と組んでクエストに出たことがあったのですわ。

 

それでその時にラディスが組んでいたハンターから譲り受けた、だとか…。

 

装飾品の譲渡は禁止されているのですが、わたくし達のパーティの全員が装飾品だとは気がつかずにいましたわ。それでラディスがその装飾品をつけたらあのスキルが発動したというわけですわね。

 

お相手のハンターさんも探してみたのですが結局見つからずじまい…。

流石に白い防具を身につけた少女という手がかりだけでは見つけるのは難しかったですわね…。」

 

 

………どういうこっちゃ。

なんだか見当もつかない話になってきたぞ?

 

 

「う〜ん…、それじゃあさ。天…」

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ!?迷子君じゃん!それにセレスもいるし…。

 

まさか2人で密会……?」

 

 

質問しようとしたら、食堂の入り口の方から声をかけられた。

 

そちらを振り向くとそこにはレイリス、クルルナ、ラディスの3人が。

 

………なんかクルルナの笑顔が怖い。

 

 

「ハハハ…。ま、まさかそんなわけないじゃないですか〜…。」

 

「わ、わたくしだってこんな変態とはまっぴらゴメンですわ!」

 

 

クルルナを怒らせたらどうなるかわからん。

 

そんな疑いをかけられるのは勘弁です…。

 

 

「あらあら?2人とも顔が真っ青ですよ?

まさか私が怒ってるなんて思っているんでしょうか?

フフフ、そんなことはありませんよ?

 

えぇ、ぜ〜んぜんそんなことはありません。」

 

 

アカン、もうダメだわ…。

 

 

「なぁなぁ…アタシ腹減ったよ〜…。

 

早いところ朝ごはんにしない?」

 

 

「それもそうですね。

 

偶然にも5人揃っていることですし、楽しく朝にしましょうか。」

 

 

そう言って後から来た3人が近くのテーブルに座る。

 

 

 

「ク、クルルナさん!

わたくしがあの変態とそんなことをするわけがないじゃないですか!

今のは偶然で…」

 

「あらあら…、未だに彼のことを『変態』呼ばわりですか…?

あとでオハナシが必要なようですね…。」

 

「え…? あっ……。」

 

 

「まあまあ一旦その話は置いておいてさ!

クルルナもメニュー頼みにいこうよ!

ほら、ラディスとかもう行ってるし。」

 

「オッチャン!肉頼む、肉!

ドッカーンとウマイのヨロシクな!」

 

 

 

 

明るい雰囲気で談笑する4人を見る。

 

いい人たちに出会えたよなぁ…。

 

 

さっきの問題だって正直大したことでもないし…、今は一旦忘れることにしよう。

 

 

 

 

「う〜ん…。2人がオムレツ食べてたから私もオムレツにしようかなぁ…。」

 

「おっしゃー! 肉だーっ! 肉食べるぞ〜!」

 

「私は…、何かサラダにしましょうか…。」

 

「ク、クルルナさん!

お願いですからこの間のようなお仕置きは勘弁してほしいのですわ〜っ!」

 

 

 

俺も何か頼みたくなったので近くを通った給仕のアイルーさんに注文をする。

 

 

「トマトジュース1つお願いしていいかな?」

 

「承りました二ャ。待っててニャ〜。」

 

 

向こうの4人は相変わらず楽しそう。

 

 

 

 

うん、今日もいい一日になりそうです。

 

 

 

 

 




日常回と言ってもいいんでしょうか?

ゲームではフワッフワッフル×ゼンマイ米でふわふわゼンマイオムレツが作れます。
……ワッフルと米でオムレツ? 疑問です。


感想、評価気軽にどうぞ。 お待ちしてます。


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第29話 アタシとヘタレなハンター

お気に入り40件突破、UA数4000突破しました。

読者の皆様に感謝です。

今回はラディスちゃん視点です。



 

「うおりゃぁぁぁああああ!」

 

 

「あ〜、それだと届かなくないか?

 

あっ、ほら。やっぱり当たってない…。」

 

 

ロアルドロスがこっちに振り向いた時を狙って溜め2のアッパーをガツンとぶちこもうとした。

けれどアタシはそれを見事にスカした。

 

 

「むぐぐ…。

そんなデカイ口叩けるならヘタレはうまくできるんだな!?」

 

「う〜ん。まぁやってみるか…。」

 

 

そういってヘタレはハンマーを持って力を溜め始める。

 

 

「う〜んと……ここらへんか?

 

ほいっと。」

 

 

そしてヘタレはロアルドロスの頭に綺麗にアッパーを決めた。

そしてロアルドロスは気絶する。

 

むぐぐぐ………。

 

 

「だーっ!なんでヘタレにはできてアタシはうまくいかないんだーっ!

 

おいヘタレ!おまえのハンマー、長さを弄ってるだろ!」

 

 

「メゼポルタじゃあるまいし…。レイリスだってこのハンマー使ってただろ?」

 

 

そういってヘタレは金ピカの四角いハンマーを見せてくる。

 

むぐぐぐぐ……。何も言い返せない…。

 

 

「じ、じゃあ…、えっと…。

 

あ、あれだ!ズルしたな!

このやろー!ズルはいけないんだぞー!」

 

 

「なんだそりゃ…。 言っとくけどズルなんてしてないからな?

まだラディスがハンマーをうまく使えてないだけで…。」

 

 

ア、アタシがハンマーをうまく使えてない………?

そ、そんなぁ…。

 

 

「うぐっ……。 アタシってそんなにダメかな…?グスッ…。

 

こ、こんなんじゃレイリス達と仲間だってのは…バカにされちゃうかなぁ……ひぐっ。」

 

 

なんだか悲しくて涙が溢れてくる。

 

そんなアタシの様子を見て、ヘタレは顔を青くした。

 

 

「ちょっと迷子君!何泣かせてるのさ!

女の子には優しくしてあげないとって習わなかったの!?」

 

 

そこへレイリスがアタシのことを慰めにやってきてくれた。

 

 

「あ…、いや…。え?俺のせいなの…?」

 

「そうに決まってるでしょ! そんなんだから変なアダ名ばっかりつけられるんだよ!?

 

ラディスも泣かないで?ラディスはちゃんと強いハンターだから大丈夫。

私達のパーティに相応しいハンターだよ。」

 

「うぅ…。ありがとうレイリス…。」

 

 

レイリスのおかげでアタシはなんとか泣かないで済んだ。

 

 

「ほら、迷子君も謝りなよ?」

 

「えっ…。でも…」

 

「いいから謝れ。」

 

「あっ…。 あ〜ラディス、すまんかった。

許してください…。」

 

 

ヘタレがアタシに謝る。

 

………それだけじゃちょっと許せないぞ?

 

 

「…………あとでユクモ温泉たまごな。」

 

 

アタシを泣かせた罪は重いんだ。

これくらいで済むのはすんごいことなんだからな!ホントなら死刑だぞ!

 

 

「よし、それじゃあ2人とも帰ることにしようか!

 

ロアルドロスも本当は狩猟対象ではないし、特産キノコも集め終わったことだしね!」

 

 

レイリスがそんな提案をする。

 

そうだな。早く帰って温泉たまごが食べたい気分だ。

 

 

「うん!そうしようぜ!

おいヘタレ!早く温泉たまご食わせろ!」

 

「ハァ…、また奢りか…。

まぁ泣かせたならしょうがないかな…。」

 

 

 

アタシ達はユクモ村へと戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばさ…。アタシ、昨日の夜遅くに喉乾いて起きたんだよね〜。

 

温泉ドリンクでも飲みに行こうかと思って集会浴場に向かう途中で、ヘタレの家の前でレイリスとクルルナがなんかカチャカチャやってるのを見たんだけどさ。

 

あれって何やってたの?」

 

 

ユクモ村へ帰る途中に昨日の夜に見かけて疑問に思っていたことを質問してみる。

 

 

「えっ……?見られてた……?

 

え、え〜っとね。

そう!迷子君の家の近くに泥棒みたいな人が出た!って聞いてね!?

それでクルルナと一緒に迷子君が無事か見に行ってたんだ! アハハ……。」

 

 

「えっ!大変じゃん!ヘタレは大丈夫だったのか!?

 

なんか今日の朝やけに疲れた顔してんな〜と思ったらそういうことだったのか…。

ヘタレも大変だなぁ…。

 

それじゃあ次からアタシも泥棒捕まえるために2人と一緒に行動するよ!」

 

「え゛っ……。 い、いや…。それは大丈夫かな〜?やっぱり危険もあるしさ…。」

 

「アタシだって腕っぷしには自信があるから大丈夫だよ!

ヘタレもそう思うだろ?」

 

「うん……、そうですね……。でも2人に任せておけば大丈夫だと思うぞ……?

というか増えるのは勘弁してほしい……。」

 

 

ヘタレはさっきからレイリスをじと〜っと見ている。

 

自分が危ない目にあったってのにのんきなヤツだなぁ…。

 

 

レイリスがなぜか汗をダラダラ流しているのを見ながら、アタシ達はユクモ村への帰り道をゆっくり戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜!いい湯だ〜!」

 

「うん、そうだね。 狩りの後の温泉は疲れも抜けるし極楽だね〜。」

 

 

アタシとレイリスは混浴の温泉に浸かり、おしゃべりを始める。

おっ、ガーグァのプカプカする人形で遊ぶのも楽しいな!

 

 

「そういえばさ…。

レイリスとヘタレはどうやって出会ったの?」

 

 

ふと聞きたくなったので尋ねてみた。

 

 

「えっ?迷子君と?

 

う〜んとね…。

まぁ簡単に言っちゃうと…私が森丘の採取ツアーに出発したらそこで迷子君が丸腰でランポスに襲われてたのを見つけたのが始まりかな〜。」

 

 

何やってんだアイツ…。

ヘタレはやっぱりヘタレなのか?

 

 

「な、なんかよくわからない出会い方だな…。

ヘタレはなんでそんな所にいたんだ…?」

 

「う〜ん…それは私にもわからないかな…。

彼については私もクルルナも知らないこと多いしね。」

 

 

う〜ん…謎に包まれたヘタレかあ…。

まぁよくわかんないからどうでもいいか。

 

その後もガーグァやクルペッコのおもちゃで遊んでいると、ヘタレも温泉に来たみたい。

 

 

 

「げっ…。まだ2人いたのかよ…。男湯にいけば良かった…。」

 

「おいっ!聞こえたぞ!

『げっ…。』ってなんだそれ!アタシ達と一緒の温泉はイヤなのか!?」

 

 

なんか失礼な言葉が聞こえた気がするぞ?

ヘタレのくせにそんな態度はいけないと思う。

 

 

「いや…目のやり場に困るというか…。」

 

「目のやり場?なんかそんなにイヤなものでもあるのか?」

 

「ちょっ…ちょっとラディス…。そんなに問い詰めなくてもいいから…。

 

ほら、迷子君も一緒に入ろうよ!」

 

 

「あ〜…じゃあ失礼しますね…。」

 

 

レイリスにそう言われるとヘタレは渋々といった表情で温泉に浸かった。

 

 

なんだかその様子が気に入らなかったのでアタシはガーグァのプカプカをヘタレに投げつけた。

ヘタレはビックリしてた。 ふふっ、ざまあみろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ2人とも。

 

アタシの狩りを見てて正直なところどう思ってる?」

 

 

少し3人でおしゃべりした後に、2人にそんなことを聞いてみた。

 

今日少しだけロアルドロスと戦ったけど、アタシはこの2人よりは絶対に下手だ。

 

だけど…なんとかして強くなりたい。

 

そんな思いからの質問だった。

 

 

「う〜ん、ラディスの狩りかぁ…。

 

迷子君はどう思うの?」

 

 

「そうだな…。

 

あれかな? 攻撃を仕掛けるタイミングとかは正直かなりいい線いってると思うんだよな。

 

あとは…やっぱりハンマーのクセをしっかり覚えることとか?

 

ほら、さっきだって溜め2のアッパーが届いてなかっただろ?

それはどのくらい踏み込むのか、攻撃の出の速さはどのくらいなのかをしっかり覚えなきゃいけないからさ。

 

俺やレイリスはハンマーに限らず、そこがしっかりしてるんだと思うぞ?」

 

 

ふむふむなるほど……。

 

そんなことは考えたことなかったな…。

 

アタシもハンマー以外に大剣とかガンランス、チャージアックスにヘビィボウガンとか使うけど…レイリスやクルルナ、それに副リーダーみたいにうまく使えない。

 

 

モンスターの隙を見つけて攻め込めば正直なんとかなると思ってたけど…武器のこともしっかりわかってあげなきゃなんだな…。

 

 

「なるほど〜…。

 

そんなことは考えたことなかったな。

 

ヘタレのくせにやるじゃん!」

 

 

「おうおう、もっと敬いたまえ。」

 

 

………ヘタレは一体なんなんだろうな。

 

なんだか普段はナヨナヨしていて頼りないクセに、クエストとなるととんでもない動きをし始める。

見てて楽しいくらいだ。

 

この間なんて納品クエスト中の乱入で、あの『怒り喰らうイビルジョー 』に出会ったらしい。

そして、それを1人で倒しちゃったとか…。

 

レイリスやクルルナだってそんな相手に1人で挑むなんて無謀なことは余程の事態じゃない限りしない。

なのにヘタレは挑み、それで倒してみせた。

 

なんだかよくわからないや…。

 

 

「なぁヘタレ。アンタはなんでそんなに強いんだ?

アンタ程の力ならアタシ達の耳に少しくらい噂が届いててもいい気がするんだけど…。

 

今までどこでハンターやってたとか教えてくれよ!」

 

 

アタシはそう尋ねた。本当に軽い気持ちでそんなことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると…………

ヘタレは今まで見たことないような悲しい顔をした。

 

 

…………えっ?

 

 

 

 

 

 

 

「………俺か?

 

まぁ………ず〜〜っと遠いところで兄妹達と楽しくハンター生活してたよ。

 

ちょっと訳があって今は離れ離れさ。

 

………多分もう会えない。」

 

 

 

 

 

悲しげな顔のまま、そんな言葉を落とすヘタレ。

 

 

 

 

 

………それってもしかして。

 

 

 

 

 

 

「ん? あぁ、勘違いはしないでくれ。

()()()死んだわけじゃないからさ。

 

アイツらは今でもきっと楽しくやってるさ。

ただちょいと離れすぎてて会えないだけ。

 

だからラディスもそんな顔しないでくれよ?

せっかくの元気が無くなってるぞ?」

 

 

 

 

どこか違和感を感じる言葉を返されたアタシは何も言えなかった。

 

 

 

 

「……おいおい、頼むよ?

 

しんみりした雰囲気はそこまで好きじゃないんだ…。

 

いつもの元気を出してくれよ?

 

そんな顔したままなら…、ほれっ。お仕置きじゃ!」

 

 

 

ヘタレはそんなことを言いながらクルペッコのおもちゃをアタシに投げつけてきた。

 

 

 

「あたっ…。こ、こんにゃろ〜!やったなぁ!

 

もう怒ったからな!」

 

 

ヘタレのおかげでアタシはいつもの調子に戻れた。

 

あんなこと聞いちゃったのに…。ありがとうな。

 

 

 

 

 

「ガーグァ!やっちゃえ!」

 

 

「フハハハハ!そんなものに当たるかよ!

 

クルペッコ!君に決めたァ!」

 

 

元気におもちゃを投げつけあって遊んでいるアタシ達をみてレイリスは笑っていた。

 

 

………そうだ!いい作戦を思いついた!

 

 

 

「レイリス!ちょっと協力して!」

 

「ん?別にいいけど…どうすればいいの?」

 

「そこに居てくれれば大丈夫!アタシでなんとかするから!」

 

 

 

そう言ってアタシはレイリスの後ろに隠れる。

 

 

「アーッハッハッハ!レイリスに隠れようと無駄無駄ァ!

 

俺はレイリスにだって躊躇なく投げつけ……

 

あっ、ごめんなさい…。

ちょっ、レイリスさん?睨むのはやめて…?」

 

 

チャンス!

 

 

「喰らえヘタレ!

 

レイリスの破壊力を見ろぉぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう叫びながら、アタシはレイリスの体を隠しているタオルをグイと引き下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………ふぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイリスがよくわからない声を出し、

ヘタレが凍りついたように動きを止めた。

 

 

チャーンス!

 

 

アタシはヘタレの顔面めがけてガーグァを投げつけた。

 

 

ガーグァはものすごい速度でヘタレの顔面に吸い込まれていき、ぶち当たった。

 

ヒットした衝撃でヘタレは後ろへ倒れこむ。

 

 

「よっしゃあ!どうだヘタレ!これがアタシとレイリスのコンビネーションだ!

 

レイリスもありがとな!」

 

 

 

周りの女性客がクスクスと笑っていた。

なんでだろう?

 

 

 

「お〜い、ヘタレ〜。いつまで寝てるんだ〜?

 

早く起きないと溺れるぞ〜?」

 

 

そう声をかけてみる。

 

………ヘタレの沈んだ場所に出てきていた泡が消えた。

 

 

 

 

…………えっ?

 

 

 

 

「えっ……ちょ!?ヘタレ!?

 

おい!大丈夫か!?」

 

 

 

急いでヘタレのことを起こす。

 

………ヘタレは鼻血を流してぶっ倒れていた。

 

 

 

 

「………レ、レイリスの破壊力って凄いんだな。

 

あのヘタレが一瞬で気絶したぞ…?」

 

 

 

 

そういってレイリスの方を見ると、

レイリスが涙目になって震えていた……。

 

 

 

あれっ?アタシもしかしてやらかした………?

 

 

 

 

 

数秒後、浴場にはレイリスの甲高い悲鳴が鳴り響いた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうっ!ラディスったらぁ!なんであんな場所で私が迷子君に裸を曝け出さないといけないのさ!

 

絶対許さないからぁ!」

 

 

 

レイリスが涙目になってアタシに怒鳴りつける。

 

ううぅぅ……。

まさかレイリスがこんなに怒るなんて……。

 

アタシも涙目になってレイリスのお叱りを受ける。

 

怒る側も怒られる側も涙目だ。

なんだこれは……。

 

 

 

 

「で、でも…周りに男の人はいなかったから…。

 

レイリスとヘタレの仲ならいいかなぁ…と。」

 

 

そういうと、レイリスは顔を真っ赤にして

 

 

「そういう問題じゃなぁぁぁあい!」

 

 

と、大激怒。

 

 

こ、怖いよぉ……。

 

 

アタシはひたすらにレイリスの怒りが治ることを願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………でも、ヘタレと出会ってからなんだか楽しい日々が続いている気がする。

 

 

アタシも強いハンターになるためのヒントを見つけることが出来た…。

 

 

もしかしたらヘタレのおかげなのかな……?

 

 

 

 

集会浴場の隅で、未だに鼻血を垂れ流しているヘタレを見る。

 

 

 

あんなののおかげで充実してきてる……なんて思うのはちょっと癪だけども、実際今のアタシのハンターライフはとっても楽しい。

 

 

 

 

ふふっ、こんな日々が続くのを考えるとなんだか笑っちゃうな。

 

 

「何笑ってんのさ!ラディスったら反省してるの!?」

 

「あうっ……、ごめんなさい!」

 

 

 

ともかく……ヘタレ。

 

アンタには感謝してるよ。

 

おかげでアタシももっとスゴイハンターになれそうだ…。

 

 

 

あと、いつか絶対に腕相撲リベンジするから覚えとけよ!

 

 

 

レイリスに怒られながら、アタシはそんなことを思った。

 

 

 

 




ラディスちゃん視点でした。

う〜ん…、他の人とくらべると駄文な気が…。
ラディスちゃんのことが好きな人はごめんなさい…。

今回も本名紹介です。

ラディスちゃんは【ラディス=プロード】という名前です。
今回もしっかり由来はあるので暇な方は是非かんがえてみてください。



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第30話 漆黒の影

 

エリアを縦断するように小川が流れている、どことなく涼しさを感じさせる場所。

 

渓流のエリア6にボク達は来ていますニャ。

 

 

 

 

「あっ!いたよ!

おっしゃ、始めにアタシがドカンと一発…。」

 

 

「ラディスさん、ちょいと待つのニャ。

鬼人笛を吹いてからの方がもっとドカンといけるニャ。

というわけでウニが笛を吹き終わるまで待ってほしいニャ。」

 

 

ラディスさんが走り出す前に待ったをかけるニャ。

 

 

「おっ、そうか〜!

キミは…アマエビだっけ? ヘタレのネコ達はみんなスゴイなぁ〜。」

 

「本当にそうですわね…。

あんな変態に雇われているのが勿体ないくらいですわ。」

 

 

今回のターゲットを目の前にして、ボク達はそんな会話を交わしてたニャ。

 

 

「うニャ。鬼人笛吹いたニャ。そんじゃあ一狩りいくニャ!」

 

 

 

 

ウニがみんなに声をかけ、ボク達は漆黒の体毛を持った飛竜に向かって駆け出したニャ。

 

 

 

 

 

今回は旦那さんは訳があってお休み。

ラディスさんとセレスさんにボクとウニのパーティニャ。

 

 

なんでこんなパーティなのかというと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おーい!ヘタレーッ!いるんだろーッ!」

 

 

「ナルガクルガの狩猟依頼が届きましたわよ〜っ。

マイハウスにいるのはわかっているのですから早く出てきなさ〜いっ。」

 

 

 

 

今日の朝、ボクとウニは旦那さんに呼ばれてマイハウスを訪れたニャ。

 

 

するとそこには…。

 

 

 

 

 

「お、お前等……悪いんだけどさぁ…。

 

俺はもうダメだ…。 体力残ってないわ…。」

 

 

 

随分とゲッソリした旦那さんが燃え尽きたオーラを出していたニャ…。

 

 

「ア、アイツ等ってホントに容赦ないのな…。

 

二重に鍵掛けてたから大丈夫なんて思った俺がバカだった…。

窓から入ってくるとかなんなんだよ…。

次からは家中に鍵掛けないといけないじゃんかよ…。」

 

 

あぁ…、そういうことかニャ…。

 

つまり旦那さんは喰われたと…。

 

 

 

「おーいヘタレーッ!10秒だけ待つからなーッ!

出てこなかったらぶち破るぞーッ!」

 

「ラディス…それは流石に問題になりますわ…。」

 

 

マイハウスの外からラディスさんとセレスさんの会話が聞こえるニャ。

 

 

「旦那さん、顔を出さないのはマズイニャ。

とりあえず挨拶はしてくるニャ。」

 

「あぁ…、わかったよ…。」

 

 

そう言って旦那さんは玄関へ。

 

 

「おっ!やっと起きたか…って大丈夫か!?

なんか死にそうな顔してんぞ!?

あれか!?この間言ってた泥棒か!?」

 

「あ〜…まぁそんなもんだ…。

すまん2人とも…。俺は今日ちょっと無理だ…。

レイリスとクルルナに頼んでくれ…。」

 

「レイリスさんとクルルナさんが寝不足で疲れたと言っているからわざわざ来たんですのよ!?

なんで変態も無理なんですか!?」

 

「ア、アイツら……。

自分達で来ておいて寝不足とか…。

ち、ちょっとまっててくれ。」

 

 

そんな会話が聞こえた後に旦那さんはボク達の方へ戻ってきたニャ。

 

 

「お前等…頼むッ! 今日は俺の代わりに2匹で出てくれぇ!」

 

「うニャッ!?ボク達で予定していた温泉巡りはどうなるのニャ!?」

 

「あ〜スマン…。今日はお前達2匹はナシってことで…。」

 

「あ、あんまりだニャ〜ッ!?」

 

 

ボク達が狼狽えている間に旦那さんは再び玄関へ。

 

 

「あっ、2人とも。 俺も今日ちょっと体調良くなくてさ…。

代わりにオトモが行ってくれるらしいからよろしく頼むよ。」

 

「はぁ?オトモさん達は今日温泉を巡るとか言って楽しみにしてたはずでは…」

 

「そ、そんじゃあ俺は寝てるからさ!

が、がんばってね〜!」

 

「えっ、ちょっと!話はまだ終わってませんわ!」

 

 

旦那さんはボク達の方へ戻ってきて…

 

 

「というわけで頼むッ!

いやマジで頼むッ! お、お願いだッ!

俺を助けると思ってくれよぉぉ…。」

 

 

なんだか泣きそうな顔をしているニャ…。

 

 

「そ、そこまで言われると…。

 

しょうがないニャ…。今回はボク達が代わりにいくニャ…。」

 

 

そう答えると旦那さんは涙を流しながら…

 

 

「あ、ありがとううぅぅう!

悪い!あとで埋め合わせはするから!

 

すまんけどもう限界なんで寝ますね…。」

 

 

そう言って旦那さんはすぐさまベッドの中へ。

 

すぐに寝息が聞こえてきたニャ。

 

 

「やれやれ…。そんなんだから変なアダ名ばっかりつくニャよ…。

 

 

さて…埋め合わせは旦那さんが痛い思いをするだけで充分ニャ。」

 

 

 

そういってボクは旦那さんのアイテムボックスから『強走薬グレート』や『硬化薬グレート』、その他ドーピングアイテムを持ち出したニャ。

 

 

「あっ、ラディスさんにセレスさん。

今回はボク達で旦那さんの代わりになるので勘弁してほしいニャ…。」

 

「え、ええ…。わたくし達は大丈夫なのですが…。

オトモさん達はなんだか予定があったみたいではありませんか?それについては…」

 

「あぁ。それは大丈夫なのニャ。

ただ…ちょいとクルルナさんの家に寄っていってもいいかニャ?」

 

「……? まぁ大丈夫ですが…。何か用事でも?」

 

「まぁそんなところニャ。ありがとうニャ〜。」

 

 

そういってボク達はクルルナさんの家に向かったニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら…オトモさん達ではありませんか。

どうかしたんですか?」

 

 

クルルナさんはちょっと髪が乱れていたけれど、どこかツヤツヤしていたのニャ。

旦那さんも大変だニャ。

 

 

「うニャ。ちょいと旦那さんにこれを届けてほしいと頼まれたニャ。旦那さんはマイハウスで待っているらしいのニャ。是非レイリスさんと一緒に行ってほしいのニャ。」

 

 

そういうと、クルルナさんは目を輝かせ…

 

 

「あらあらあら…トマトさんったら…うふふ。

 

わかりました。今からレイリスと一緒に向かうことにしますね…。

 

あんなに疲れていたのにもう回復したなんて…流石は私達が惚れ込んだだけありますね…ジュルリ。」

 

 

な、なんだかヤバイ目をしているニャ…。

クルルナさんったらキャラがだんだんズレていってないかニャ…?作者は何をしているのニャ…。

 

 

ともかく、これで旦那さんへの仕返しは済んだのニャ。

 

 

ナルガクルガの狩猟に出発ニャ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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…………とまぁこんな感じニャ。

 

きっと旦那さんは今頃死んでるだろうニャ…。

 

でもネコの恨みは恐ろしいのニャ。

後悔するべきニャ。

 

 

 

「あたっ…。こんにゃろう!だありゃぁぁぁああ!」

 

 

おっと、今はクエストに集中ニャ。

 

ラディスさんはブシドー大剣…。なかなか珍しいスタイルですニャ〜。

 

 

「ふぐぅっ!? ラ、ラディス! わたくしを吹っ飛ばさないでくださいまし!」

 

 

あぁ…、ラディスさん…。密集地帯で溜め斬り上げはマズイですニャ…。

 

 

「あ〜っ!?ゴメン、セレス!

後でワッフル奢るから…って危なッ!?

 

むぎゃっ…。」

 

 

ありゃりゃ…。なんだか上手いこと連携が出来てないですニャ…。

ラディスさんはナルガクルガの尻尾振りで吹っ飛ばされてしまってるニャ。

 

 

「皆さん〜。癒しの回復笛ですニャ〜。」

 

 

とりあえず回復笛を吹いておくニャ。

ナルガクルガは大技以外はそこまで痛い攻撃は無いと旦那さんも言ってたからこれで大丈夫だと思うニャ。

 

 

「セレスさん、ちょいといいかニャ?」

 

「あら?どうかしましたかしら?」

 

 

戦闘中だけど、ボクはセレスさんにアドバイスを出すために近づいて話しかけたニャ。

 

 

「ナルガクルガは刃翼部分に非常に良く雷属性が通るのニャ。

セレスさんが持っているジンオウガの片手剣なら簡単に破壊、ダウンを狙えるのニャ。

もし攻撃する場所が被ってしまっているのならそこを攻撃するのがオススメニャ。

きっとさっきみたいな吹っ飛ばし事故も抑えることができるニャ。」

 

「……なるほど。変態も知識はあると思っていましたがオトモさん達までそれほどの知識があるとは…。」

 

「それでも旦那さんには敵わないニャ。

旦那さんは狩猟以外はちょっとアレだけど、すごいハンターなのニャ。

残念なところも多いけど、ぜひ仲良くしてあげてほしいのニャ。」

 

「……まぁレイリスさんとクルルナさんを誑かしたのは許せませんが力があるのは認めてますわ。

オトモさんがそういうなら彼への態度を変えてもいいものかしら…?」

 

「うニャ。ぜひお願いしたいニャ。」

 

 

最近は旦那さんとの仲もそこまで悪くは見えないのニャ。いいことだニャ。

 

 

「それじゃあ刃翼部分を攻撃してみてほしいのニャ。」

 

 

「わかりましたわ!はぁっ!」

 

 

セレスさんがナルガクルガの攻撃を掻い潜って刃翼に攻撃を当てていくニャ。

 

 

そして何かが砕けるような音と共に、ナルガクルガはあっという間に転倒。

攻撃チャンスが生まれたのニャ。

 

 

「あら!すごいですわね!

ラディスッ!チャンスですわ!」

 

「がってんしょーち!うおりゃぁぁぁああ!」

 

 

ラディスさんが素早く駆け込み、ナルガクルガの頭部に攻撃を加えるニャ。

 

 

「ラディスさんッ!ボクの攻撃を回避するニャ!」

 

 

そこへウニが近接攻撃を放ちながら近づくニャ。

 

 

「えっ!? ………あっ!なるほど!オッケーッ!」

 

 

ラディスさんはウニの攻撃をジャスト回避。

そこから溜め斬り上げ、そして高速強溜め斬り、最後に強薙ぎ払いの怒涛のコンボを決めたニャ。

 

ダウンから復帰したナルガクルガは目に紅い光を宿らせ、怒り状態へ。

きっと体力だって結構減らしているからあと少しだニャ。

 

 

「きっとあと少しで倒せるニャ!だけど油断は禁物!しっかりいくニャよ!」

 

 

ナルガクルガは今までより更に動きを速くしてボク達に襲いかかるニャ。

 

 

だけど…ボク達だってかなりの力を持ったハンターとオトモだニャ。

 

旦那さんも言ってた通りまだまだ発展途上な2人もいるけれども、今だってそんじょそこらのハンターよりはよっぽど実力があるのニャ。

 

 

 

 

負けるはずが無い。

 

 

 

 

そんな確固たる自信を持って、ボクはブーメランをナルガクルガに投げつけたニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「2人もネコちゃん達もお疲れ〜!無事にナルガクルガ倒せたみたいだね!」

 

「今回は寝不足という理由で2人に任せてしまいましたね…。すみません…。」

 

 

ユクモ村に戻るとレイリスさんとクルルナさんからお疲れの言葉をもらえたニャ。

 

……2人ともお肌はツヤツヤで、どこか満たされたような顔をしていたニャ。

 

 

「うん!全然いいよ!2人の頼みだしね!

それに最近はアタシもだんだん立ち回りがうまくなってきてるかな〜なんて思ってるしね!

いい練習だよ!」

 

「そうですわね。

 

………さて、なんであの変態がいないのでしょう?

普通、労いの言葉の一つでもかけに来るのが礼儀ではなくって?」

 

 

その言葉を聞いた途端、村に残っていた2人の動きがちょっとだけ止まったのをボクは見逃さなかったのニャ。

 

 

「あぁ…、トマトさんですか?なんだか疲れが酷いらしくて…。

貴方達がクエストに行っている間にトマトさんを料理…コホン。

精のつく料理を作ってあげたのですが…流石にそれだけだと疲れは取れなかったみたいですね…。」

 

 

………レイリスさんが引きつった笑いをしているのが気になるニャ。

 

 

「え〜…?ヘタレの奴大丈夫なのか?」

 

「あ…うん。きっと大丈夫だと思うよ…?風邪ひいたとかではなさそうだしね…アハハ。」

 

 

う〜ん、旦那さんがちょっと心配だニャ…。

仕返しとはいえひどすぎたかニャ…?

 

 

 

ボクは急いで旦那さんのマイハウスへと向かったニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああぁぁぁ………、なんでこんなにイビルジョーが…、無限湧きなんて聞いてねぇよ…た、助けて……。」

 

 

 

旦那さんは夢を見てうなされていたニャ…。

イビルジョーに襲われてる夢なのかニャ…?

 

 

 

あんまりにいたたまれなかったので回復笛を吹いておいたニャ。

これで許してほしいのニャ。

 

 

 

 

 




クルルナさんのキャラがブレッブレ…。許してください…。

評価バーに色がつきました。作者は読者様への感謝で胸がいっぱいです。咽び泣いてます。

今後とも応援していただけるとありがたいです。

感想、評価など気軽にどうぞ。 お待ちしてます。


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第31話 月下雷鳴

UA数5000突破しました。読者のみなさんに感謝です。


それでは本編どうぞ。




「うん、足湯もなかなかいいな。」

 

「うふふ、そうですね。

ユクモ村の風景は綺麗なので、ここの足湯から一望できるのはいいものです。」

 

 

お昼が過ぎてからそれなりの時間。

 

俺はクルルナと一緒に足湯に浸かっていた。

 

 

「トマトさんは混浴に入ると何かとトラブルを起こしますから…。

そんなことばっかりしてたら妬けちゃいますよ?」

 

 

うぐっ…。クルルナの目が怖い…。

い、いやぁ…あれは俺が悪いと一言に言えないことばっかりでしたから…。

 

 

「今日もクエストは来なさそうかな…?

いやぁ、しばらくのんびりできそうだ…。」

 

「ふふふ…この間までは疲れた顔をしてましたからね。

一体どうしたらあんな顔になってしまうのか…。

体調を崩してしまわれないか心配でした。」

 

「いや、それはクルルナたちが…

「なにか?」

「あっ…なんでもないです…。」

 

 

あぁもう…。クルルナさん最近怖くないですかね…?

俺なんて最近はイビルジョーに襲われる夢を見るようになってしまったじゃないか。

 

 

「う〜ん、でもクエストが来ないってのはちょっとつまらないかな…。

いや、平和なのが一番なんですけどね。」

 

「あらあら。トマトさんったら今まで1回も私達に勝てていないじゃないですか…。

すぐにへばってしまって…私達はもっと…

「はいダメ。そこまでにしてください。お願いですから。」

 

 

だから作者はなんでクルルナをこんな感じにしているんだ…!?

キャラがブレッブレじゃないか!

 

 

 

 

そんなやりとりをしていると、不意に後ろから声をかけられた。

 

 

「あらあら。仲睦まじい様で…。微笑ましいことです。

少し私も話に入れさせてもらってよろしいですか?」

 

 

穏やかで優しげな口調の女性の声が聞こえてそちらを振り向くと、そこには落ち着いた雰囲気を醸し出す竜人族の女性がいた。

 

 

「あっ…。村長さんですよね…?」

 

「ええ、そうです。 若輩ながらこのユクモ村の村長…ならびに浴場の女将を務めさせていただいてますわ。 以後よしなに。」

 

 

ユクモ村の村長。

竜人族の中では若い方らしいけれど、長命な竜人族だからきっと俺なんかよりはずっと長生きなんだろうな…。

 

生で見るのは初めてだけれど、なんていうんだろう…。

オカメ?っていうんだっけか…。独特の化粧をしていて落ち着いた雰囲気が出ている。

 

うん。ゲームではわからなかったけれど美人さんですね。

 

 

そんなことを思ったら温泉に入っている俺の足をクルルナが思い切り踏みつけた。

 

いったぁ……。心読めるんですか…?

 

「あら?お顔が優れないようですが…。大丈夫ですか?」

 

「いてて……すいません、なんでもないです。

 

それで…俺達と話がしたいってことですけど…。

もしかしてモンスターでも出ましたか?」

 

「うふふ。貴方達ほどのハンターとなると勘も随分鋭くなっていらっしゃるのですね。

 

ええ。今言われた通りモンスターについてのお話がありまして…。

 

先程、渓流に木材を取りに行った村人の子が慌てて帰ってきましてね…。

どうやらかの《雷狼竜》が渓流に現れたらしいんですの…。

 

以前にもユクモ村はこの子の脅威に晒されてまして…今回も森が荒らされ始めているらしいのです…。

 

不安の目は早めに摘み取っておきたいものなので、お2人にあの子の狩猟を頼みに来た次第です。

 

受けてくださいますでしょうか?」

 

 

ジンオウガか…。

1回は実際に目に入れておきたいモンスターの筆頭だ。やっぱりかっこいいもんね。

これは受けないわけにはいかないでしょう。

 

 

「俺はバリバリいけるんだけど…。

クルルナはどうだ?」

 

「ええ。問題ありません。

村長さん。その依頼は私達に任せてください。

バッチリ達成してみせます!」

 

 

俺達がそう応えると、村長さんは微笑んだ。

 

 

「うふふ。頼もしい限りです。

 

 

 

ただ…、何となく違和感を感じるような気がしますの…。

 

ジンオウガが森に居座っているので森に緊張感が漂っているのはわかりますが…どうもそれだけでは説明できないような…。

 

いえ、わたくしの気のせいですね…。

とんだお節介でしたわ。」

 

 

 

村長さんったらフラグを立てるのはやめてください…。

また怒り喰らうイビルジョーなんてのは勘弁ですよ?

 

 

 

 

……まぁ考えてたってしょうがないか。

よし、久々のクエストだ。

 

 

ジンオウガの狩猟、いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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太陽は完全に沈み、空には明るく輝く真ん丸の月が浮かんでいる。

 

俺達は夜の渓流を訪れていた。

 

 

「すっげぇ…。満月だぁ…。綺麗だなぁ…。」

 

「何をブツブツ言ってるんですの…。早く行きますわよ。」

 

 

ちょっとくらい風情感じてもいいじゃんか…。

ケチだなぁ…。

 

 

「………貴方、今失礼なことを考えていませんか?」

 

「い、いや。そんなことないよ。」

 

 

なんなんだ一体…。全員読心能力持ちとかじゃないよね…?

 

 

「旦那さん、あんまりのんびりしていたらジンオウガがどっかに行っちゃうのニャ。

満月もいいけどやるべき事はしっかりやるニャ。」

 

 

ボマーオトモのマグロにもダメ出しされました…。

俺ってなんでこんなに立場弱いんだ…?

 

 

「はいはい…わかったよ。そんじゃあ行きますか。」

 

 

「トマトさんったら…、そんなに拗ねないでください…。

狩りに響いちゃいますよ…?」

 

 

「あ、うん…。拗ねては無いから大丈夫です。」

 

 

俺達は、ジンオウガを探して渓流を回り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジンオウガを探して数分後…。

 

エリア5にその姿はあった。

 

 

 

 

雷狼竜……ジンオウガ。

 

胴体部を覆う青い鱗と、頭部や背面、腕部などに立ち並ぶ黄色の甲殻、

そして腹部や首回りなどを中心に白色の体毛が生え揃っている。

 

険しい山間部での移動を可能とするため、強靭に発達した四肢を持つその牙竜は、薄暗い森の中に堂々と佇んでいた。

 

 

「おぉ…。かっちょいいな…。」

 

「あら、トマトさんがモンスターにそんな感想を抱くなんて珍しいですね。」

 

 

うん、たしかに珍しいと思う。

でも俺だって好きなモンスターはいますよ?

 

ジンオウガはもちろんだし、ラギアクルスとかも大好きだ。

何故か雷属性が多いのは気にしないでおこう。

 

 

「まぁ、好きなモンスターも何匹かはいるかな。

 

でも無駄話してたってしょうがないや。

今はアイツを狩猟することが第一だろ?」

 

 

そう言うと、2人と1匹は頷き返してくれた。

 

そんじゃあ行きますか…。

 

 

 

 

 

 

さあ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クルルナがネルスキュラ弓で頭に矢を撃ち込み、戦闘が始まった。

 

 

今回、俺はブレイヴ操虫棍。

クルルナはブシドー弓、セレスはギルド片手剣かな?

 

 

俺とセレスは後脚を狙い、クルルナが頭をしっかり射抜く。

 

今回はしっかり基本を守っていこう。

 

 

ジンオウガは操虫棍だととても立ち回りやすい。

 

というか、相性の悪い武器なんてほとんどないんじゃ無いかな?

ランスだとちょっと難しそうだけど…。

 

それなりに痛い攻撃を連続で放って来て、

尻尾で薙ぎ払う攻撃や、背中でドーンなんかの大技を持つジンオウガ。

 

だけどその連撃をしっかり対処しきることが出来ればちゃんと攻撃する隙が出てくる。

いわゆるターン制のコンセプトがよく出来ている良モンスターだと思います。

 

 

戦闘開始後、すぐにジンオウガは背中に超電雷光虫を集め始めた。

 

おし、攻撃チャンス。

 

 

「俺は左足を狙う!セレスは逆の方頼む!」

 

 

チャージ中のジンオウガにラッシュをかける。

ジンオウガはたまらずに怯み、チャージを止める。

よし、いい感じ。

 

 

ジンオウガはセレスを狙って連続でダイナミックお手。

 

 

「そんなものに当たりませんわよ!」

 

 

うまく回避して後脚を切りつけるセレス。

 

 

あれ…?でもちょっと攻撃するタイミングが早すぎない?

 

なんてことを思っていたら、ジンオウガはのしかかり攻撃に派生。

あっ…これはマズイですね。

 

 

「えっ…?しまっ…!?」

 

 

そんなセレスの声が聞こえた途端、ジンオウガの攻撃が直撃。

セレスは吹っ飛んだ。

 

 

ありゃりゃ…まぁ大ダメージってわけでは無いだろう。

 

 

あれだな。

セレスはラディスと真逆で『武器の扱いは大丈夫だけど、モンスターの動きの見極めがまだまだ』って感じかな?

まぁ後でちょっと話してみよう。

 

 

その後、ジンオウガは再びチャージに移る。

 

もちろん黙って見ているわけではなく、チャージ阻止のために攻撃を加える。

 

 

まだまだ溜めさせないぞ……ってあれ?

 

………怯まない?

 

 

 

「あっ…セレス!一旦離れろ!」

 

「えっ!?わ、わかりましたわ!」

 

 

 

そうセレスに注意した直後、ジンオウガは超帯電状態へ。

 

やっぱり体力を減らしてるから移行が速いね。

 

 

さあ、面白くなってきたぞ…!

 

 

 

超帯電状態に移行したことにより、ジンオウガの連撃はさらに苛烈に。

 

だけど、超帯電状態になるとジンオウガの肉質は柔らかくなる。

お互いにとってハイリスクハイリターンの状態だ。

 

 

ジンオウガがお手を繰り出す。

だけど、操虫棍の機動力なら回避することは大して難しくは無い。

 

俺は落ち着いて連撃を対処。

最後のダイナミックチャージお手もしっかり避けきり、後脚へ攻撃。

 

そこでジンオウガはダウン。

 

ブレイヴ状態になっていた俺はステップで距離を詰め、頭に向かってラッシュをかける。

 

 

ダウンから復帰したジンオウガは怒り状態へ。

 

 

満月の下で青く光るジンオウガはカッコいいです。

 

だけど、こっちだって負けるわけにはいかない。

 

 

俺はジンオウガに向かっていった。

 

 

 

そんな俺に向かってジンオウガは突進。

それを俺は歩いて回避する。

 

だけど随分と距離を離したな…。

これはきっとアレだろう。

 

走り去ったジンオウガはブレーキをかけながら反転。

そして…大ジャンプ。

俺に向かって背面ボディプレスをかましてきた。

 

 

ほれ見たことか。

だけど…それはこっちにとってもチャンスだな…!

 

 

俺は背面ボディプレスをイナす。

多少、体に痛みが走ったけどこれくらいなら全然平気。

 

そして、そのまま反撃に移る。

抜刀攻撃、そして飛燕斬り。

 

するとジンオウガはたまらず怯んだ。

 

 

「やりますわね!次はわたくしの番ですわッ!」

 

 

怯んだ一瞬の隙を狙ってセレスが駆け込んできた。

 

そして盾を突き上げ、一気にジャンプ。

そこから更に盾を使ってジンオウガの頭を殴りつけた。

 

 

『昇竜撃』

片手剣専用狩技の一つ。

盾を使った強烈な打撃を放つ狩技で、一撃でスタンを奪うことだって出来る強力な狩技だ。

 

 

昇竜撃を喰らったジンオウガはたまらずに超帯電状態を維持することが出来ず通常状態へ。

更にスタンが発生した。

 

セレスったらやるじゃん。ステキです。

 

 

そんなことを考えていたら、クルルナに矢を当てられた。

クルルナは闇を感じる笑顔でこちらを見てました…。

絶対読心能力とかあるだろ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………さて、だいぶジンオウガの体力だって削れているだろう。

 

 

きっとあと少し。だけど油断はしないように。

 

 

スタンから復帰したジンオウガを見る。

 

 

「《無双の狩人》ね…。いい呼び名じゃんか。

 

だけど…俺はもっと上を目指してるからさ。

 

今回は勝たせてもらうぞ?」

 

 

そう呟くと、ジンオウガは軽く咆哮を上げた。

 

 

さあ、ラストスパートだ。

 

 

俺は操虫棍を強く握って、ジンオウガへと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。お疲れさん。

セレスもナイススタンでした。ありがとな。」

 

「わたくしにかかればあれくらい当然ですわ!

少しの被弾はありましたけれど、なかなかのものでしょう?」

 

 

実際強いよな…。

セレスのレベルだって充分強いのにレイリスやクルルナはその上をいってるんだ。

そりゃ『英雄』なんて呼ばれるのも当然だ。

 

 

とまぁ、そんな会話をしながら俺達はジンオウガの剥ぎ取りを終えた。

 

 

 

「そういや、クルルナは今回どうしたんだ?

全然喋ってなかったけれど…。」

 

 

「えぇ…。何か変な気配を感じていて……。

 

でも気のせいですね。何も現れませんでしたし…。」

 

 

………村長さんもそんなことを言ってたよな。

 

………何かいるのか?

 

 

 

「……ま、まぁジンオウガも倒したことだし、今日はもう帰らないか?」

 

 

「そうですね。きっと気のせいでしょう。

早く温泉に浸かりたい気分です!」

 

 

そんな感じで俺達は渓流から帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………旦那さん。………何か来るニャ。」

 

 

 

 

 

 

不意にマグロが立ち止まり、そんなことを呟いた。

 

 

 

 

 

 

「………は?急にどうし…」

 

 

 

 

 

 

すると、背後から何かが着地したような音が聞こえた。

 

 

すぐさまそちらを振り返る。

 

 

 

 

 

 

「なっ、何で…!?」

 

 

 

 

 

セレスがソイツを見て青ざめる。

 

 

 

 

 

 

「なるほど………。そういうことでしたか……。」

 

 

 

 

 

あのクルルナでさえ、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………何でコイツが。」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺だってすぐには声に出せなかった。

 

 

 

 

 

 

だってコイツが乱入してくることは、()()()()()あり得ないことだったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにはジンオウガがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど…そのジンオウガは普通じゃなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのジンオウガは目も眩まんばかりの黄金色に輝く体毛、そして異常に発達した豪壮な右角を持ち、圧倒的な存在感を放つ黄金の雷光が全身を迸っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ただ…、何となく違和感を感じるような気がしますの…。』

 

 

 

なるほど…。

村長さんが言ってたのはこういうことでしたか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

満月が輝く空の下、

渓流に金色の王の咆哮が轟いた。

 

 

 

 




ほい、二つ名初登場です。

評価バーに色がついてから、UAとお気に入りの伸びがグンと良くなりました。ありがとうございます。

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第32話 金色ノ雷公

 

 

 

『二つ名持ちモンスター』

 

その名の通り、『二つ名』を冠する特別な存在。

 

生物学上では通常の個体と同種ではあるけれど、その戦闘力は段違い。性質・形態も大きく異なっている。

 

 

 

 

『特殊許可クエスト』という特別な扱いのクエストにのみ出現して、それでやっと戦いを挑むことができる。

そんなモンスター達へ、この世界の人達は畏怖と尊敬の念を持って『二つ名』を名付けたらしい。

 

 

 

 

 

 

少なくとも俺の中ではそんな認識だった。

 

 

 

 

 

 

通常種のジンオウガのクエストに乱入してくる存在なんかではなかった。

 

 

 

 

 

 

だけど……現実に、その存在は俺の目の前に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『金雷公ジンオウガ』

 

 

雷狼竜ジンオウガの内、その特異性から『二つ名』を与えられたモンスター。

 

 

 

全身に黄金の電気を迸らせるその存在は、今俺達の目の前にいる。

 

 

 

 

 

「クルルナ………二つ名モンスターって乱入してくるものなのか?」

 

 

クルルナにそう尋ねる。

 

 

「いえ……滅多にあることではありません…。

 

そもそも…二つ名は強大な力を持った存在なので、こんな状況になるまでギルドが気付かないとは思えないです…。」

 

 

なるほどね…こっちの世界においてもイレギュラーな状況ってことですか…。

 

 

「なるほどね……。

それで…コイツはどうするべきなんだ?」

 

 

もう一度、クルルナに尋ねる。

まだ金雷公は、本格的な攻撃の態勢には入っていない。

 

 

「正直、万全な状態で臨みたいところなのですが…。金雷公を放っておくのもまた危険です。

 

それこそユクモ村に危険が及ぶ可能性も…。

 

望ましいのはこの場である程度の痛手を与えておく…出来るなら狩猟まで持っていく形なのですが…。」

 

 

なるほど…相手にした方がいいのか。

 

となるとちょっと心配なのは…。

 

 

 

「セレス…。 セレスはコイツと戦った経験はあるの…?」

 

「い、いえ……。他の二つ名なら少しは経験はありますけれど、金雷公のような強大な二つ名は初めてですわ…。」

 

 

 

セレスだな…。

G級金雷公をぶっつけ本番で相手にするなんて正直ハードだ。

 

 

 

金雷公は確かに手強い。

けれど…その本質はジンオウガ。

 

先程の通常のジンオウガの様に、ターン制がしっかりしているモンスターなので俺はそこまで苦手意識は持っていない。

 

 

だけど、それは何回もゲームで相手をしたのだから言えること。

 

 

慣れてない内は俺だって何回もネコタクのお世話になっていた。

そこから数を重ねてやっと得意になっていく。

モンハンってのはそういうもんだと思ってる。

 

 

今聞いた感じだと、セレスは今回が初めての金雷公。

正直言って危険だ。

通常種の延長線…と言い切るには二つ名は少々手強すぎる。

 

 

「じゃあ…セレスは安全を第一に動いてくれ。

なんならアイテムでサポートに徹するなんてのでも構わない。

 

とにかく攻撃を喰らわないこと。

 

ある程度攻撃を見切れる様になったら攻撃に参加しても構わないけど、絶対に無理はするな。」

 

 

セレスにそう言葉をかける。

セレスは悔しそうだったけど、とりあえず頷いてくれた。

 

 

 

「じゃあ…クルルナ。

俺、今回は多分スイッチ入っちゃうから…。

 

あんまりに危険な行動をとる様だったら止めちゃってくれ。よろしく頼むよ。」

 

 

「ふふっ。トマトさんったらこんな状況でもそんなことを言えるなんて頼もしいですね。

 

私も全力で臨みます。それじゃあ行きましょう。」

 

 

 

うん、ありがとう。

 

さてと…準備は整ったかな?

 

 

 

 

 

 

 

相手は『金雷公ジンオウガ』

 

この世界に来てから初めての二つ名持ちモンスター。

 

 

かなりの強敵が予想もしない状況で現れた。

 

 

正直いって俺達には逆風が吹いているだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど………逆境は得意中の得意なんです。

 

自然と、俺の顔に笑みが浮かぶ。

 

 

 

 

行くぞ、金雷公。

 

 

 

俺は汗の滲んだ手で操虫棍を強く握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手始めに胴体から橙エキス、前足から赤エキスを素早く回収。

 

金雷公は素早い動きで俺に背を向けたかと思うと、尻尾叩きつけをしてくる。

それを歩いて回避。

その隙に白エキスを後脚から回収してトリプルアップ状態へ。

更に隙の少ない2連突きで追撃。

 

 

そこで爆発が起こる。

 

 

俺が担いでいる操虫棍は『真・黒滅龍棍【旦明】』

爆破属性値55を持っているくせして、物理期待値もトップクラス。

更にスロット3とかいうバカげた性能を誇る。

 

 

そんな操虫棍によって、爆破ダメージを与えられた金雷公はあっという間に怒り状態へ。

 

 

 

 

 

 

俺の意識の中から、周りの音が消えていく。

 

 

 

 

 

 

金雷公は怒り状態移行の咆哮をあげる。

 

トリプルアップ状態の俺は耳栓効果が発動しているので、咆哮中の隙を狙って後脚を攻撃。

 

咆哮を終えた金雷公はセレスを狙ってダイナミックお手を繰り出した。

 

 

「ホーミング性能高いぞっ!気をつけろっ!」

 

 

セレスにそう叫ぶ。

 

セレスは武器を構えながらも攻撃はほぼしていないみたい。

片手剣の機動力でうまく回避しきれたようだ。

 

その隙にも俺は後脚を攻撃し続ける。

 

すると再び爆破属性による爆発が起こり、金雷公はダウン。

すぐさま絶対回避【臨戦】で頭付近へ近づき、

薙ぎ払い、連続斬り上げ、斬りおろし、薙ぎ払い、飛燕斬りのコンボを決める。

 

金雷公が転んだ時にはこのコンボが綺麗に決まるんだ。

飛燕斬りを出し終わると同時に金雷公は立ち上がる。

 

 

立ち上がった金雷公は再びセレスを狙う。

 

セレスに向かって頭突き。

 

その際に俺が金雷公の足に引っかかって削りダメージを喰らう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで軽い違和感を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……なんか削りダメージがでかくないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胸に僅かな不安を抱えながらも、とりあえず後脚を狙う。

 

……まぁ考えてもしょうがないや。

できることを必死にやるしかないさ。

 

 

 

金雷公は後方へ大きくジャンプ。

そこからクルルナを狙って重雷光虫弾を放った。

 

 

「くっ……!うぁっ……!」

 

 

クルルナは初撃をジャスト回避したけれど、回避先に設置された雷光虫弾に被弾してしまった。

 

 

「うぅ…。」

 

 

そしてクルルナは気絶。

更に、金雷公はクルルナに向かって突進の構え。

オイオイ……マズくないか!?

 

 

 

 

 

 

そんな事を考えた瞬間。

狩場に心地よい香りのする粉末が舞い散った。

 

 

 

 

「とりあえずはこれで大丈夫ですわ!

変態は攻撃の手を緩めないで!」

 

 

 

 

…なるほど。これが生命の粉塵ですか。

助かりました。ありがとう。

 

 

俺達に回復効果が発動したなら、クルルナは今ほとんど体力は全開なハズ。

雷弾だって威力は高い攻撃ではない。

 

 

だから、突進一発くらいならガンナー防具でも耐えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金雷光はクルルナに向かって突進をかます。

 

 

クルルナは吹っ飛ばされる。

 

 

そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地面からネコタクアイルーが現れ、一瞬でクルルナを戦闘から離脱させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………は?

 

 

……い、いや、………いくら何でもおかしくないか?

 

 

いくらガンナー防具だからって…、突進で一撃だと?

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とセレスは、目の前で起こった出来事に唖然とする。

 

 

その隙が良くなかった。

 

 

 

 

 

 

金雷公は一瞬で俺達との距離を詰めると、ダイナミックお手の体勢に。

 

 

「………ッ!避けろッ!」

 

 

瞬間の判断でそう叫ぶ。

 

 

「くぅっ!」

 

 

セレスは何とかお手を避け切ることができた。

 

 

だけど…、そこから金雷公は力を溜めるようなモーションを取った。

 

 

「………ッ!離れろっ!」

 

 

「なっ……!?これは……っ、うぐぅっ!?」

 

 

2連サマーソルト攻撃。

金雷公の放つ攻撃の中で、最大の大技。

 

セレスはそれをモロに喰らった。

 

 

 

 

 

 

空高くにかち上げられたセレスは、地面に頭から落ちる。

 

 

 

 

 

そして……またもネコタクアイルーがセレスを一瞬で戦闘から離脱させる。

 

 

 

 

 

 

これも一撃かよ…………!?

 

 

 

 

 

 

マズい…。

 

さっきの一瞬だけど、頭によぎった嫌な予感が的中したかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二つ名モンスターはそもそも強大な存在だ。

 

 

 

 

 

けれど……その中でも種族の頂点ともいえる…

更に強力な個体が極稀にいるらしい。

 

 

 

 

 

ゲームではその個体と戦えるクエストを

 

『超特殊許可クエスト』

 

と称していた。

 

 

 

 

ダブルクロスの中でも最難関と呼ばれるクエスト群。

 

このクエスト群がプレイヤーのクリアを難しくさせている要因は尋常じゃない強化を施された体力、攻撃力によるものだと思う。

 

あり得ないくらいダメージがでかいんだ。

 

ガンナーなんかは殆どが即ネコタクに繋がり、剣士でも大技ならまずアウト。

()()()()()()()()が体力の半分を普通に奪っていく位には強化される。

 

 

 

そう…目の前にいるこの金雷公の様な攻撃力を持つんだ。

 

 

 

 

 

 

「流石に超特殊はゴメンだろう…!?……くっ!」

 

 

金雷公は動揺する俺にも容赦なく攻撃を仕掛けてくる。

 

マズい…この攻撃力相手に焦りは禁物だ…!

 

ちょっとしたミスで即ネコタクにつながっちまう…!

 

 

金雷公は俺に背を向けサマーソルト。

それを歩いて避け、後脚を攻撃。

 

そこからチャージお手に繋げてくるものの、それも冷静になって回避する。そして後脚を攻撃。そこで金雷公は転倒した。

 

 

すぐさま前転で頭に近づきラッシュをかける。

どうも怯み値関係のタフネスは普通レベルのようかな…?

よし、少しだけ光が見えた。

 

 

とにかく目の前の攻撃を対処する。

 

チャージお手、サマーソルト、尻尾薙ぎ払い攻撃。

全てをきっちり回避して、後脚を狙う。

 

 

金雷公は再びダウン。

すぐさま近づき、頭に連撃を加える。

 

 

落ち着け…!冷静になれ…!

 

焦りすぎない様に自分に言い聞かせながら淡々と立ち回る。

 

 

多少の攻防を経て、金雷公は再びチャージお手。

それをしっかり歩き回避。

そして、目の前にある後脚を狙う。

 

 

 

………次の飛燕斬りを決めれば怯むはず。

 

 

そう考えて、俺は斬り上げ、そして飛燕斬りに繋げる。

 

 

 

 

 

 

 

いや…、飛燕斬りに繋げようと()()

 

 

 

 

 

 

 

俺の体は自分の思い通りに動いてくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

…………何で。

 

 

 

 

 

 

 

 

何故かコンボが途切れた俺の隙を見逃さずに金雷公は力を溜めるモーションに。

 

 

 

 

 

………嘘だろ、待ってくれ。

 

………もう2回力尽きてるんだって。

 

 

 

 

 

 

そんな俺の願いを、金雷公は聞き入れてくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

2連サマーソルト。

 

 

俺は金雷公から強烈な突き上げ攻撃をもらい、空中にかち上げられた。

 

 

 

 

 

 

 

(あぁ…、コンボが切れたのはそういうことね…。俺もまだまだ冷静になり切れなかったってことか…)

 

 

 

 

 

 

 

意識が薄れゆく中、俺はエキス効果の光が切れていた自分の手を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………うっ。」

 

 

意識が覚醒する。

 

 

「ここは……マイハウスか?」

 

 

目が覚めた俺は、マイハウスのベッドで横になっていた。

 

何がどうなったのかさっぱりわからない。

 

とりあえず外に出ようと思い、体を動かす。

 

 

そこで体に激痛が走る。

 

 

「あっ!?…っぅ!」

 

 

あまりの痛みに、俺はバランスを崩して転んだ。

 

その音に気づいて誰かがやってきたみたい。

 

 

「あっ!目を覚ましたか!?

ちょ、ちょっとそのままで待っててくれ!

 

お〜い!レイリス〜!ヘタレが目を覚ましたぞ〜!」

 

 

 

俺の前に現れたのはラディスだった。

 

そしてレイリスを呼びに行ったみたい。

 

 

 

「迷子君大丈夫!? え、えっと、とりあえず横になってよ!」

 

「あ、あぁ…そうしたいところなんだけど…。

体が痛くてうまく立ち上がれないんだわ…。

ちょっと肩貸してくれないですか?」

 

「えっ!?あ、うん!わかった!」

 

 

俺はレイリスの肩を借りて再びベッドに横になる。

立ち上がる時の激痛で顔を顰めてしまい、それを見たレイリスの顔が青くなってた。

大丈夫です。心配しないでね?

 

 

「あ〜…ありがとうな。

 

それで……今はどんな状況なんだ?

クルルナやセレスは大丈夫なのか?」

 

「うん、2人は大丈夫だよ。

迷子君と同じようにそれぞれのマイハウスで横になってる。

 

それで…、金雷公についてなんだけど…。

今は渓流で大人しくしてるみたい。

 

今はハンターズギルドが他の強いハンターさんをユクモ村に収集して迎撃作戦を立ててるみたいだよ?

 

だから迷子君は心配しなくても大丈夫。

今はゆっくり休んでね?」

 

 

あぁ…そうか…。

ユクモ村に被害が及ぶ心配は無さそうでよかった…。

ラディスが変な顔しているけど気にしないでおこう。

 

 

「あぁ、ありがとうな。

 

……スマン、なんかすっごい疲れたからまた寝ることにするよ。

 

もしなんか緊急の事態が起こったりしたら俺のことを叩き起こしてくれても構わないよ。」

 

「そんなことはしないって。

 

わかった。迷子君はゆっくり疲れをとってね。

 

それじゃあ…、また明日。」

 

 

うん、おやすみなさい。

 

 

そして、レイリスとラディスは俺の部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人になった俺は天井を見上げる。

 

 

「3回力尽きたってことだよな……。

 

ハハッ…初めての失敗だ。」

 

 

そんなことを呟いていたら、いつの間にかベッドの傍に天使のレオタード姿のプーギーが来ていた。

 

 

「おっ、久しぶりだな…。

 

なあなあ聞いてくれよ。俺ってば今回クエスト失敗しちゃったんだ…。

 

正直、焦ってたんだろうなぁ…。

エキスの効果が切れてるのに気づかないとか初心者かよって話だ。」

 

 

俺の独り言を聞きながら、プーギーは俺の腰元でゴロリと横になった。

 

 

「なんだろうな…。

 

いずれは失敗してしまう時だってくるんだろうなんて思ってたけれど…。

 

いざ現実になると、受け入れがたいや…。

 

 

 

 

 

ハハッ……悔しいなぁ……。」

 

 

 

 

目の前の景色が若干だけど滲んだ。

 

 

 

 

「こんなに悔しいなんて知らなかったなぁ……。

 

涙流すなんていつ以来だろう……。」

 

 

 

プーギーが鼻を鳴らして心配そうに俺の方を見る。

 

 

 

「ハハッ、ありがとうな。

大丈夫。あることに気づいてちょっとショックだっただけだからさ…。

 

スマン…。悪いけれど眠いから寝るよ。

 

お前も好きにしてくれ。」

 

 

 

そう言うと、プーギーは俺の枕元で静かに寝息をたて始めた。

 

 

 

俺もベッドに横になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の失敗を通して、改めて気づいた。

 

 

………俺は全然強くなんかない。

 

 

たとえ、超特殊許可レベルのヤツが乱入してきたからって本当に強いハンターならソイツごとあっさり倒してしまうのだろう。

 

 

 

とにかく悔しかった。

 

今の自分だとその領域には届いてないと問答無用で気づかされたから。

 

 

そんなことを考えつつも、眠気は俺の意識を引きずり込んでいく。

 

 

 

(………もっと強くならないとだ。)

 

 

 

意識が消える直前、俺はそんなことを思った。

 

 

 

 

 

この日、俺はこの世界に来てから初めてクエストを失敗した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後。

 

 

 

渓流のベースキャンプには人の影があった。

 

 

 

「久々のソロだなぁ…。相手もすんごい強敵だし…今回はちょっとヤバいかな…。」

 

 

 

防具合成により装備の外見をレウスXシリーズで固めている女性ハンターは、金色の輝きを放つ大剣を担いだ。

 

 

 

「………覚悟決めなきゃだよね。

 

よし、頑張ろう。」

 

 

 

その女性は燃えるような赤い髪をなびかせて、渓流の奥へと走って行った。

 

 

 

 

 




ほい、初3乙でした。

たとえゲームだろうと、いきなり超特殊が来たら自分もクリアする自信はないですね…。

というわけで金雷公君はもうちょい続きます。
こんなに長くする予定では無かった…。でも書きたくなってしまったんです。


感想等、気軽にください。 お待ちしてます。


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第33話 彼を守れるように。

ものすごく筆が進みました。
久々の二日連続投稿です。

それでは本編どうぞ。




 

 

 

 

ターゲットのモンスターを探して、私は渓流を走る。

 

頭の中には村を出る前の会話が思い出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「レ、レイリス……。さっきは何で嘘をついたのさ…。

 

金雷公は今、渓流で大暴れしてるんでしょ…?

それこそ…今すぐ対応に向かわないといけないくらいに…。」

 

 

ラディスが不安げな顔をして私に尋ねる。

 

 

「………迷子君のためだよ。」

 

「………ヘタレのため?」

 

 

よくわからないような顔をしたラディスに私は理由を教える。

 

 

「きっと迷子君は…。

自分が倒しきれなかったモンスターが暴れまわっているなんて聞いたら何が何でも狩猟に向かおうとするだろうね…。

自分の体がどれだけボロボロだろうと無理をしてしまうと思うよ。

 

だけど…それはとっても危ないこと。

ラディスだってそう思うでしょ?」

 

「う、うん…。」

 

「ね? だから今回は秘密にしておいたんだ。

 

きっと彼はあんなボロボロでも、この話を聞いたら無理に動いちゃうから…。それは私も嫌なんだ。」

 

「で…でも!レイリスが1人で行くなんて危ないよ!アタシも一緒に…」

 

「ラディス。 もし私に何かあったらその時に行動できるのは貴女だけなの。

 

大丈夫。もしものときはベルナ村にいる副リーダーの彼女を頼ってね?」

 

 

そこまで言うと、ラディスは何も言い返せずに俯いた。

 

……ゴメンね。今回の選択はちょっとだけ私のワガママも入ってるんだ。

 

 

「……それじゃあ行ってくるよ。

 

大丈夫。 無理はしないようにするからさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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無理はしないと言っておきながら1人で来るなんてのは矛盾している、なんて思いながら私はターゲットを探す。

 

正直ラディスと一緒に来た方が安全ではあると思う。

 

けれど……今回のクエストに1人で来た理由は別にある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬱蒼と木々が茂っているエリア5を訪れると、黄金の電気を纏ったモンスターがいた。

まるで私が来るのを待っていたかの様な…そんな感じだった。

 

 

私は背中に背負った、数々の修羅場を一緒に潜り抜けてきた大剣の柄を握る。

 

 

金雷公が天に向かって吠える。

 

 

私と金雷公。

それ以外には誰もいない森の中、静かに戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あっ、さっきはどうもありがとうございました。本当に命を救われましたよ…。』

 

 

 

初めて彼と出会った時のことを思い出す。

 

彼は森丘のエリア2で、丸腰の状態でランポスに襲われていた。

 

それから彼が新しくココット村に配属されたハンターだとわかり、一緒にクエストをこなす様になった。

 

一緒にクエストをこなしていくうちに、私は彼に惹かれ始めたんだっけか…。

どこか頼りないけれど、いざクエストとなるととんでもない実力を発揮する彼。

そんな彼と一緒にいるときはなんだか心があったまる感じがしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金雷公が私を狙って前脚を叩きつけて来る。

それを避け、後脚に抜刀攻撃。更に納刀継続攻撃を当ててブレイヴゲージを溜める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど……彼はなんだか私達とは根本的に違う何かがある気がする。

 

以前に私達が元のパーティの4人でクエストに出ている間、彼が渓流で怒り喰らうイビルジョーに遭遇したと聞いた時は心臓が凍りついたようだった。

 

大急ぎでユクモ村に戻ると…、彼はいつも通りどこか気の抜けた様な振る舞いをしていた。

 

なんでもあの怒り喰らうイビルジョーを回復アイテムなしで捕獲まで持ち込んだとか…。

 

 

 

『なんで君はそう無茶ができるのさ……。

君に何かあったらタダで済まないのは君だけじゃないんだよ………?』

 

 

 

正直信じられなかった。

 

 

私達とは次元の違う様なそんな強さが。

 

 

………そして、そんな危険な行動を簡単にしてしまう彼の考えが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金雷公は素早い動きで頭突きを放つ。

それをイナシ。

 

金雷公はそのまま尻尾叩きつけに繋げてくるけど、納刀状態の私はそれを歩いて回避。

 

更にそこから、金雷公は飛びかかり攻撃。

それもしっかり避ける。

 

すぐに後脚を攻撃。

金雷公は威嚇をしているみたい。攻撃チャンスが生まれたのでそのまま納刀継続溜め3を後脚に放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど…彼のオトモさん達にそう言葉をかけられた時に気づいたことがあったんだ。

 

 

『ただし…、その強さのせいで危うい行動に出るときもあるのニャ。そして、今までボク達はそうなった旦那さんを止めることは出来なかったのニャ。』

 

 

彼にとっては、そんな無茶をすることは普通なことなのかもしれない。

 

どれだけ危険で無謀だと思われるような事にも平然と突っ込み、いつも通りのどこか気の抜けた顔でクエストをクリアしてくる。

 

今までの彼の狩猟を見てきて、私が抱いた印象はそんなものだった。

 

……まるで私達とは生きてきた世界が違うみたいだと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

納刀継続溜め3斬りを受けた金雷公は怒り状態へ。

 

それと同時に私の体も青い光に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だから…、レイリスさん達から見て旦那さんが暴走しているようだったら…、

その時は遠慮なく旦那さんの暴走を止めてもらいたいのですニャ。

 

このお願い、聞いてもらえるかニャ?』

 

『わかりました。『英雄』と呼ばれたパーティの名にかけてそのお願い、引き受けます。』

 

 

怒り喰らうイビルジョーの一件の最後に、

彼のオトモさん達に彼のことをよろしく頼まれたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

だけれど……今の私には彼を守れるような力はない。

 

 

 

 

 

 

 

だから……私は強くならないといけないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金雷公が吠える。

 

 

「貴方はとっても強いみたいだね…。

彼が負けるなんて正直信じられないよ…。」

 

 

金雷公は私にむかって突進をしてくる。

 

 

 

「だけど………私は強くならないといけないんだ。

 

彼を………好きな人を守れるくらいには。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覚悟を決めてそう呟いた途端……

 

 

世界が一気に狭まり、そして深く見えるようになった感覚に襲われる。

 

 

木々のざわめき、大地の鼓動、空気の振動、

そして命あるものの脈動、その全てが聞こえてくるようなそんな感覚。

 

 

まるで、自然全てが自分のものになったかのような心地よさ、そして力強さを感じられた。

 

 

 

(あぁ…、この感覚も久しぶりだな…。)

 

 

 

いつ以来だろう。自分の力をここまで強く感じることができるのは。ドンドルマで巨戟龍の相手をした時以来じゃないかな…。

 

 

 

 

「金雷公。貴方にも負けられない理由はあるんだろうね。

 

だけど、こっちも同じなんだ。

 

自分のために……そして私の好きな人のために、『英雄』の名を持つものとして負けられないんだよ。」

 

 

 

金雷公は再び吠える。

 

 

 

「私の名は レイリス=レッドイーグ。

 

『英雄』と呼ばれたパーティのリーダーとして、今から貴方に挑みます。」

 

 

 

 

一言だけ…そう呟いてから私は金雷公に向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金雷公は私を狙って前脚を叩きつけてくる。

それを歩いて回避する。

 

そして…私は金雷公の斜め後ろで力を溜め始める。

 

何でこんな場所で溜め始めたのかは自分でもうまく説明できない。

 

けれど、うまくいく確信だけは持てる。

 

 

 

力を溜めきって、渾身の力で大剣を振り抜く。

 

 

 

その刀身は、金雷公の振り向きざまの頭に直撃した。

 

 

金雷公はたまらずに怯む。

 

私はすぐさま納刀して、次の攻撃に備える。

 

 

 

金雷公は頭突きを放つ。私はそれを歩いて避ける。

 

そしてそこから尻尾叩きつけ。

私は見向きもせず、金雷公から距離を離す。

 

なぜ自分がこんな動きをしているのかは自分でもうまく理解できない。

けれど、こうするべきだとの直感だった。

 

金雷公は最後に飛びかかりをしかけてきた。

充分に距離を置いていた私は、それを余裕で回避する。

 

そして、大剣を持って力を溜める。

それも金雷公の目の前で。

 

普通に考えたら自殺行為。

 

けれど…金雷公は威嚇のモーションをした。

 

渾身の溜め攻撃が頭にヒット。

再び金雷公は怯む。

 

すぐさま納刀。

そして金雷公から少し距離を置いた斜め前で再び力を溜める。

 

そして………振り抜く。

 

その溜め攻撃はこちらに軸合わせをしてきた金雷公の頭に直撃。今度は怯まない。

 

 

金雷公は後ろに大きくジャンプして突進に繋げてくる。

 

既に納刀していた私は、突進を終えて、こちらに顔を向けた金雷公の目の前で力を溜める。

 

金雷公は背中に電気を溜め始めた。

 

その隙を見逃さずに、溜め攻撃。そして強薙ぎ払い。

異常に発達していた、金雷公の右角が砕け散った。

 

 

金雷公はそれを意に介せずに真帯電状態へ。

 

 

私は直感で再び金雷公の目の前で力を溜める。

 

金雷公は私が目の前にいるというのに再び威嚇モーションをとった。

 

そんな隙だらけの頭に抜刀攻撃が叩き込まれる。

 

 

私の今の装備は、見た目はレウスXシリーズだけれど、それは外見の話。

防具合成によって、本当はブラックXシリーズを装備している。

 

そして、その装備に備わっているスキルの『居合術【力】』の効果により、金雷公は目眩を起こした。

 

 

すぐさま絶対回避【臨戦】を使って金雷公の頭付近に移動。

 

そして力を溜める。

 

体から青い光が溢れ、その輝きが一際大きくなったタイミングで私は大剣を振り抜く。

 

そして、そこから渾身の力で大剣を横に薙ぐ。

 

すぐにステップを挟んで、再び同じコンボを決める。

 

そこで金雷公は目眩から復帰。

 

 

 

「貴方はとても強いね…。

とてもじゃないけど、普通に考えたら私1人でだったら到底相手にはできない…。

 

いや、()()()()()()と思うんだ。」

 

 

 

金雷公は前脚を叩きつけてくる。

 

それをスレスレの位置で回避する。

 

被弾したら間違いなく致命傷になると感じる。

 

 

 

「けれど……今は負ける気がしない。

 

貴方のような強敵が相手でも、まるで負ける気がしないんだ。」

 

 

 

2回目の叩きつけを回避した私は、再び直感に従って力を溜め始める。

 

金雷公も屈むような体勢になり、力を溜めている。

 

 

 

「今の私は、彼のために頑張れる…。

 

不思議だけれど…彼のためならどんなことだって出来るような気がするんだ。」

 

 

 

金雷公は、尋常じゃない威力を持った突き上げ攻撃を私に放ってくる。

 

私も溜めていた力を、その一撃に込めて解放する。

 

 

 

「私は強くならなくちゃいけない…。

 

だから今回は勝たせてもらうよ。」

 

 

 

金雷公の必殺の一撃と私の渾身の溜め攻撃がぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 

絶大な破壊力が衝突し、今回の狩猟で1番の手応えが私の両腕に伝わってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……金雷公は地面に崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ありがとう。いい勝負だったよ。

 

お陰で私はまだまだ強くなれるみたい。

そのことを知ることが出来ました。」

 

 

 

もう動かなくなった金雷公に一言だけそう呟く。

 

 

次の瞬間、集中の糸が切れた私はヘナヘナとお尻から地面に崩れ落ちる。

 

 

 

「ふ、ふへぇ…。疲れたぁ…。」

 

 

 

地面に座り込んだ私は、そのまま仰向けに。

 

長い長い夜を終え、空は明るみを帯び始めていた。

 

 

 

「ふふっ…。綺麗な空だなぁ…。」

 

 

 

ふと東の空から光が差し込む。

 

そちらを見ると、朝日が昇り始めていた。

 

渓流を流れる水と生い茂る緑が太陽に照らされ、瑞々しさを感じさせる輝きを放つ。

 

美しい景色だった。

 

 

 

 

『モンスターハンター』

 

すべてを自然の一員とみなし、それを調え、制する者か…。

 

『英雄』と呼ばれ続けてきたけれど、更に強いハンターならその称号が相応しいのかもしれない…。

 

 

 

「モンスターハンターか…。

彼の隣に立つならそれくらいじゃないといけないね…。

 

ふふっ、目標なんてものを持つのは久しぶりだな…。」

 

 

 

よし、決めた。

 

彼の隣に立つなら『英雄』じゃ物足りない。

目指すは『モンスターハンター』の称号だ。

 

 

 

「さて…と。剥ぎ取りしてユクモ村のみんなに知らせなきゃね。

 

ふふっ。今回は私がすっごく頑張ったんだから迷子君に貸しが出来ちゃったね…。

 

後で何頼んじゃおうか…。むふふ…。」

 

 

 

私は金雷公の剥ぎ取りをしながらそんなことを考える。

 

 

 

 

 

彼の隣に立つために…。

 

彼を守れるように…。

 

強くならないといけない。

 

 

 

 

朝日を背に浴びる私の胸の中には、新しい決意が宿っていた。

 

 

 

 

 




レイリスさんが主人公しすぎている気がしてきました。

今回のレイリスさんは多分主人公より上手かったと思います。

主人公の立場が無いなぁ…。

そして、使わない設定と言っておきながら本名を出してしまいました。第8話の後書きに名前は出ています。スミマセン…。


感想、評価など気軽にどうぞ。 お待ちしてます。


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第34話 竜の合挽ハンバーグ

ちょっと長めになりました。



 

 

 

 

 

「えっ…? 一人で倒したってマジ…?」

 

「ふっふっふ…。まぁ本気を出せばこんなもんですよ!」

 

 

金雷公に負けた次の日。

いざリベンジを…なんて思って、準備を整えて集会浴場を訪れたら、レイリスが1人で金雷公を討伐したとの報告を受けた。

 

えぇ…マジっすか? レイリスさん強すぎない…?

せっかくいにしえの秘薬とかをガッチリ準備して臨もうと思ってたのに…。

 

というか…いくらタフネス関連の強化はなさそうだったとはいえ、超特殊許可レベルの攻撃力を持った奴をソロで倒したんですか?

なんて無茶をしてるんだ…。

 

 

「これで迷子君に貸し一つだね!

というわけで早速お願いがあるんだ!」

 

 

とかなんとか考えてたらレイリスからそんな言葉をかけられた。

んん?お願いとな?

 

 

「迷子君は今日、私と1日デートね!」

 

 

 

 

………はい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レ、レイリス…?まさかトマトさんを独り占めなんてことをするわけじゃないですよね…?」

 

 

クルルナがワナワナと震えながらレイリスに問いかける。

 

 

「いやぁ〜、今回ばっかりはクルルナ相手でも退けないなぁ!

でもでも〜?クルルナが負けちゃった相手を私が頑張って倒したんだし?クルルナにも貸しが1つあるんだよね!」

 

「うぐっ…!それを言われると…!

 

ハァ…、しょうがないですね…。わかりました。

トマトさん、今日はレイリスを労ってあげてください。

レイリスも頑張ったみたいですし…。」

 

「それじゃあそういうわけだから!迷子君も行こうか!」

 

「え…、いや…、ちょっ、俺の意見は…。」

 

 

俺の声はレイリスの耳には届かなかったみたい。

レイリスは俺の手を引っ張って歩き出した。

 

 

「えへへ…私デートなんて初めてだな…!

 

……まぁデートなんて言ってるけれど、おしゃべりしながらユクモ村をブラブラしてくれるだけでいいからさ!今日は私のワガママに付き合ってほしいな!」

 

 

う〜ん…まぁレイリスも頑張ってくれたみたいだから多少のワガママなら聞いてあげてもいいかな…?

……えっちなのはダメですけどね?

 

 

「うん、わかったよ。そんじゃあ適当にブラブラすることにしようぜ?

最初はどうするよ?なんか食べたいとか買い物したいとかなら一緒に付き合うけれど…。」

 

「う〜ん…それじゃあちょっと早めだけどご飯を食べたいな!昨日は疲れて眠っちゃって今朝起きたのもすごい遅かったんだ〜。だから朝ご飯食べてないの!お腹ぺこぺこだよ〜。」

 

 

あらら、そんなになるまで頑張ってくれたのね。

これは感謝しないと。それじゃあ今日は出来る限りのお礼をしないとだな…。

 

 

「うし、じゃあまずは食堂だな。

オススメのメニューとかあったら教えてくれよ?」

 

 

レイリスにそう言葉をかける。

 

 

「うん!私も食堂はよく通ってるからね!

迷子君のほっぺが落ちる様なメニューを教えてあげるよ!」

 

 

レイリスは見惚れる様な笑顔で俺にそう返してくれた。

 

 

…なんだか振り回される様な感じで始まった1日だけれど、楽しくなりそうだ。

 

 

そんな事を考えながら俺たちは食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ランチタイムというには少々早めの時間。

俺達が訪れた時間だと食堂はあまり混み入ってはいなかった。

 

 

「私のお気に入りはやっぱり『竜の合挽ハンバーグ』かな〜。 迷子君も食べる? すっごく美味しいんだから! 五穀豊穣米とかとの組み合わせは最高だよ!」

 

 

おっ、ハンバーグか。いいね。

そんじゃあ俺も頼んでみよう。

 

 

「そんじゃ、俺も同じのを頼むことにするよ。」

 

「オッケー!それじゃあ…

 

あっ!アイルーさん!注文お願いします!

 

『竜の合挽ハンバーグ』と『五穀豊穣米』を2つずつヨロシク!

迷子君は他にない?」

 

「う〜ん、あっ。 トマトジュースも1つよろしく頼むよ。」

 

 

注文を受けたアイルーは厨房へと駆けていった。

 

 

「迷子君って本当にトマト好きだよねぇ…。

なんか理由があるの?」

 

 

う〜ん…、トマトが好きな理由か…。

何でだろうね?自分でもよくわからないや。

 

 

「いま考えてみたんだけどよくわからんや…。何でだろうな?」

 

「ふふっ。迷子君はやっぱり変わってるね。」

 

 

レイリスはクスリと笑った。

 

 

「そういや…昨日の夜だっけ? 1人で金雷公の狩猟に向かったんだろ? どんな感じだったんだ?」

 

「どんな感じって言われてもなぁ…。

私はすっごく集中してたよ!きっとあの姿を迷子君が見たら一目惚れ間違いなしだね!」

 

「いや…、えぇ……?

もっとこうさ…何かないのか? こんな立ち回りをして倒したとかさ。」

 

「う〜ん…そう言われてもなぁ…。

物凄く集中してたから正直よく覚えてないんだよね…アハハ。」

 

 

う〜ん…その話を詳しく聞けないのは残念だなぁ…。

でもレイリスがすごい集中力を発揮したらとんでもない動きをしそうだなぁ…。

それこそ振り向きざまに、怯み計算有りきの溜め斬りブチ込んだりとかしてたりして…。

 

 

「そうか…。

ん?でもさ、何で1人で行ったんだ?村にはラディスもいたよな?」

 

「あっ、それかぁ。

ん〜…まぁそれについては後でゆっくりお話ししたいな。

今日は時間もあることだしね。」

 

 

金雷公の狩猟に1人で向かったということに疑問を覚えて、レイリスに質問してみた。

けれど、うまい具合にはぐらかされてしまったみたいです。

まぁ後で話してくれるならいいかな?

 

 

そんな具合で時間を潰していると、俺達の前に美味しそうな音を立てている料理が運ばれてきた。

 

 

「お待たせしましたニャ。『竜の合挽ハンバーグ』と『五穀豊穣米』ですニャ。

鉄板がお熱くなっているので注意してニャ。」

 

 

目の前には鉄板の上で未だにいい音を立てているハンバーグ。

デミグラスソースみたいなのもかかってるな…。

こりゃ美味そうだ。

 

 

「そんじゃあいただきます。」

 

 

俺は箸を手にとった。

 

 

 

まずは食べやすい大きさにするために箸で切れ目を入れてみる。

 

その途端、中から大量の肉汁が溢れ出した。

鉄板に流れ出した肉汁は、ジュージューといい音と匂いを辺りに響かせる。

 

こりゃ相当熱そうかな…?

でも熱いうちに食べないと損しそう…。

 

俺は意を決して、熱々のハンバーグのかけらを口に運ぶ。

 

 

 

「あっ…ふ!?あふぁ!?」

 

 

 

あっつ!?熱すぎないですかね!?

レイリスはそんな俺を見て大笑い。

 

というかレイリスは普通に食べてるし…。

何?ハンターはそんな所でも人外なんですか?

 

ともかく、口の中を落ち着かせるために口を開いたまま呼吸をする。

 

ある程度落ち着いてきたので、ゆっくりと肉を噛み締めてみた。

 

 

 

あぁ…。こりゃ美味ぇや…。

 

 

 

噛みしめるたびに、塩コショウの風味が効いたうまみたっぷりの肉汁が溢れ出す。

肉はやや粗挽になっており、しっかりと肉の歯ごたえを楽しめるようにもなっている。

何よりデミグラスソースが絶妙な味付けだった。

甘みと酸味、塩気が効いたそのソースは、肉の旨みを更に引き出すのに一役かっていた。

 

 

これは…あれだ。

米と一緒に食わにゃ勿体無いな。

 

 

すぐさま俺は五穀豊穣米をかきこんだ。

 

すると、今まで口の中に広がっていた肉の旨みに米のほんのりとした甘みが加わった。

もう絶品だった。

そのままだと少々味付けが強いかな?なんて感じるハンバーグも米と一緒に食べると絶妙な塩加減となり、別格の味だった。

 

俺は無我夢中でハンバーグを食べ続けた。

 

 

 

 

 

数分後…、俺はあっという間に料理を食べ終わっていた。

 

 

 

 

 

「ふぃ〜…、うっまぁ…。」

 

「……プッ、アッハッハッハ!

迷子君ったらがっつきすぎだよ!見てるこっちもすっごく面白かったじゃんか!

汗ダラッダラでハンバーグを頬張る迷子君…。

おかげで食べ物吹き出しちゃうところだったよ!」

 

 

えぇ…?そんなにがっついてたかなぁ?

でもレイリスの皿だって空になっていた。

 

 

「でもレイリスだって食べ終わってるじゃんか…。」

 

「私は丁寧に食べてたからね!迷子君みたいに汗水垂らしながら食事はしてませんよ〜だ。」

 

 

う〜ん、釈然としないなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

食後に少しだけ談笑してから、次の予定の話になった。

 

 

「次はどうするよ? 俺はレイリスに合わせるけど…。」

 

「う〜ん…どこに行きたいって感じでもないしなぁ…。

それじゃあ適当に散歩でもしない?」

 

 

散歩か…。今日は天気もいいし、良さそうですね。

 

 

「うし。それじゃあ適当に歩くことにするか。」

 

 

というわけでお散歩をすることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「当たった!……けど倒れないね。」

 

「ムググ……。なぜ倒れないんだ…!?」

 

 

ユクモ村を歩いていると、射的の屋台を見つけたのでちょっと遊んで行くことにした。

 

だけど…景品が全然倒れないんです。

こりゃイカサマしてやがるな?

 

 

「どれどれ、ちょっと私にやらせてみてよ。

私はボウガン得意だからね!」

 

 

いやいや…ボウガンが得意だからってそんなにうまくいくわけが…

 

「あっ、やったぁ!倒れたよ!ふっふっふ。見たかね迷子君?」

 

……マジかよ。

 

 

「はっはっは!ハンターの兄ちゃんも可愛い彼女さんの尻に敷かれてるねぇ!

そんなんじゃ彼女さんに愛想つかされちまうぞ?」

 

 

あ、愛想をつかされてしまうですと…?

それは勘弁して欲しいところだけれど…。

 

 

「店主さん!彼ってば普段はこんな感じで頼りないんだけれど、いざクエストになるとすごい動きをするんだから!

やるときはやってくれるカッコいい人だよ!」

 

「おっ、そうなのかい。

俺なんかが口出しするのは野暮だったみてえだな!

兄ちゃんも頑張れよ!こんなべっぴんさんがつきあってくれてるんだからよ!」

 

 

ちょっと弱気になっていたところで、レイリスが俺のことを褒めてくれました。

正直言って嬉しい。ありがとう。

 

 

「そんじゃあ2人のハンター生活に幸があることを願って景品はオマケ付きにしておくぞ!

また来てくれよな!」

 

 

店主のオヤジさんは俺達にリオレウス、リオレイアのデフォルメされたぬいぐるみをくれた。

気前いいじゃんか。ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空が夕焼け色に染まり、太陽もそろそろ山の陰に帰ろうとする時刻。

 

 

射的を楽しんでから俺達はまた村をフラフラと歩いていた。

うん、さっき買ったユクモラムネが冷たくて美味しいです。

 

 

「あれっ! ヘタレとレイリスじゃんか!

こんなところでなにしてるんだ?」

 

 

なにか面白そうなもんは無いかと歩き続けていると、急に後ろから聞き覚えのある声が。

 

振り向くと、そこには予想通り小柄な少女のハンターがいた。

あと、隣には高飛車な性格をしてそうな金髪の女性ハンターも。

 

 

「ありゃ?セレスとラディスはこんなところで何してるんだ?」

 

「何って…ラディスと一緒に渓流での採集クエストにでも行こうかと…。

 

……まさかレイリスさんに無理矢理迫ってるわけではありませんわよね?」

 

 

セレスが鋭い目をこちらに向けてくる。

なんで俺ってセレスに変態扱いされてるんだろうな…?

 

 

「アッハッハ!セレスったらそんなんじゃないよ〜。

今回は私が迷子君にお願いして付き合ってもらってるだけ。 まぁデートってやつだね。」

 

 

レイリスがセレスにそう応える。

 

 

「むっ…。それならいいんですけど…。

くれぐれも変態は変な行動をしないように…

「え〜っ!?デートってあのデートか!?2人ってそんな関係だったのか!」

 

 

……なんかセレスの話を遮る勢いでラディスが食いついたな。

こうゆう話には興味なさそうだと思ってたけれど…。

 

 

「なになに!?どこまで進展してるの!?

お泊まりとかしたの?ほっぺにちゅーとかしちゃった?

ねえねえ教えてよ!」

 

 

ラ、ラディスさんったらグイグイ来ますね…。

これにはレイリスも困り気味。

さてどうしたものか…。

 

 

「ラ、ラディス…!レイリスさんに向かって何を言ってるんですの!?

今はレイリスさんがせっかく楽しんでいる時間なんだから邪魔をするのはまずいでしょう…!?はやいところクエストに行きましょう…!」

 

「ん…?そっか〜…、コノハからよくそういう面白い話を聞くからレイリスにも聞いてみようと思ったんだけど…。

 

それじゃあ、またの機会にするよ!じゃあ2人は楽しんでね〜!」

 

 

そう言ってラディスとセレスはクエストに赴いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

「お〜い、ヘタレ〜。 あんまりキスしすぎると責任が〜とか赤ちゃんがどうとか〜ってコノハが言ってたからな〜。

アタシはよくわからんけど、ヘタレも気をつけてな〜。」

 

「ラ、ラディス!何を言ってるんですか!?」

 

 

 

 

 

去り際にそんな声をかけられて、俺はユクモラムネを噴き出した。

 

 

「ア、アハハ…。なんだか台風みたいだったね…。

 

それにしてもコノハちゃんったら……。

あとでクルルナやササユさんに頼んでシメて貰わないとね…。」

 

 

レ、レイリスさん…?闇を感じる笑顔はやめてもらいたいのですが…。

 

 

「あっ、ごめんごめん!ちょっと考え事してたよ!

それじゃあ…次はどうする?

あんまりやりたいこともなくなってきたし…。

 

そういえば今日はユクモ村の花火があがるみたいなんだよね!

ちょっと案内したいところがあるんだけど……いいかな?」

 

 

レイリスがどこかモジモジしながら俺に尋ねてくる。

アレな感じではないなら俺はOKなんだけれど…。

 

 

「え、いいけど…。どこに行くんだ?」

 

「え〜っとね…。 ササユさんに頼んでちょっと貸し切りの温泉を頼んでおいたんだ…。

 

……ダメかな?」

 

 

 

………oh。……温泉ですか。

 

俺が混浴に入ると何かしらトラブルが起こるから避けたいところなんだけれど…。

 

 

 

「俺は全然OKかな。

……まぁアレな事をしないってならだけど。」

 

 

「うん!それなら大丈夫だよ!

 

人のいないところでお話したいだけだしね!」

 

 

うん、これなら大丈夫そう。

 

それじゃあ温泉に行ってみることにしますか。

 

俺達は温泉に向かって足を運びだ………

 

 

 

 

 

 

 

 

そうとしたんだけど、急に声をかけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ!そこのカップルさん!ちょっとウチの商品を見ていってくれないかい?」

 

 

声をかけられた方に顔を向けると、そこには如何にも胡散臭そうな雰囲気を醸し出した露天商があった。

 

………てか、こんなところに露天商なんてあったか?まるで一瞬で此処に現れたような…。

 

 

「カ、カップルだなんて…!照れちゃうなぁ…。

 

……でも胡散臭そうなお店だね。どうする?迷子君?」

 

 

「ちょ、ちょ!ちょいと待ってくれ!

これでも品質には自信があるんだ!少しでいいから見ていってくれないか?」

 

 

そう言って露天商は品物を広げた。

 

すると、そこには様々な装飾品が並べられていた。

 

 

「えっへん!なかなかのものだろう?

数は少ないけれど、品質は保証するよ!」

 

 

なんだこれは…? ただキラキラしてるだけじゃないか…。

 

 

 

なんて思っていたけれど…。

 

 

「……えっ?これってエルトライト鉱石の加工品ですか?」

 

 

レイリスが驚いたような声をだした。

 

 

「えっへん!お嬢さんにはこのアクセサリーの価値がわかるみたいだね!

 

そのとーり!数々のツテを使ってついに出来上がった希少鉱石の加工品!

これほどの質のアクセサリーは世界を見てもなかなか無いとの自負があるね!」

 

 

…マジかよ。胡散臭そうなクセして品質は一流なのかいな。

 

………今気づいたんだけど、この露天商。なーんか聞いたことあるような声してるんだよなぁ。

 

 

「というわけでそこのお兄さん!彼女に1つ、プレゼントでもどうだい?

私もいっしょに品定めをしてあげるよ?」

 

「おっ、迷子君からのプレゼントかぁ。

そんなのがあったら嬉しいなぁ〜。 センスが感じられるものだったらいいなぁ〜。」

 

 

そして、露天商とレイリスのおかげで自然と俺がプレゼントを買う流れに。

……この露天商やりおるな。

 

まぁ、普段お世話になってるお礼かな?

今回は買ってあげることにしよう。

 

 

「ほいほい…。そんじゃあ選ぶからレイリスは一旦離れといてくれ。

 

さて、露天商さん。どんなのがいいかね?」

 

「そうだねぇ…。彼女は燃えるような赤い髪が綺麗だから…。

こんなのはどうかな? 火竜を象ったエルトライトのネックレスさ。」

 

 

そういって渡されたネックレスは、燃えるような光沢を放っていた。

おぉ、綺麗じゃんか。

 

 

「うん、じゃあこれにするよ。値段はおいくらかな?」

 

「これはなかなかの上物だから、60000zは下らないかな…。」

 

 

高ッ!? ……はぁ?ボッタクリじゃねえか!

 

 

「いやいや、これはそれに見合う価値はあると思うよ?

何より彼女の笑顔を見れるなら安いものだとは思わないかい?」

 

 

う、うぅん? そう考えると安いような…。

 

 

「ほらほら、善は急げっていうだろう?

早く彼女にプレゼントしてあげなよ?それにぶっちゃけお金には困ってないんだろう?

装備を作り終えたハンターなんてそんなもんでしょ。」

 

 

おいおい、メタメタしい発現は控えなさい。

な〜んか納得いかないけれど、お金には困っていないのは確かだ。

 

よし、決めた。

 

 

「よし、買うよ。 なんか綺麗な包みとかある?」

 

 

そう言うと、露天商はニヤリと笑い

 

 

「あぁ、もちろん。 シンプルに気持ちがこもっていると伝わるようなヤツを用意させてもらおう。」

 

 

そして、露天商はネックレスを包み俺に手渡した。

 

 

「ありがとう。そんじゃあプレゼントしてくるわ。」

 

「あぁ、頑張ってくれ。あと最後に1つだけ……

 

 

そう言うと、露天商は俺に近づいてきた。

 

……なんだなんだ?

 

そう訝しげに思ったのも束の間、

 

 

 

「別にクエストを失敗したからってそう落ち込むことはないさ…。

一応様子を見に来てみたけれど、仲間達のおかげで気を落としている様でも無いみたいでよかったよ。

 

私はこうやってたまに君の側に現れる。

けれど、気にせずに頑張ってくれ。

 

期待しているよ。

 

 

……ただし、君が君らしく頑張れなくなったらその時は何が起こるかはわからないけどね。」

 

 

 

そう呟かれた。

 

 

 

「…ッ! アンタ…!」

 

「さて、それじゃあしばらくは会うことは無いだろう。

 

ま、君らしく頑張ってくれ。」

 

 

露天商はそう言うと、その姿を一瞬で変えた。

 

 

 

 

胡散臭そうな外套姿から、アークSシリーズの防具へと。

 

 

 

 

そして、瞬きする間にその姿は消え失せた。

 

 

 

 

 

 

………ドッキリはやめてくれよ。なんか気になることも言ってたし…。

 

でも…いいものをくれたな。

 

 

 

 

 

「迷子く〜ん。まだかな〜?」

 

 

おっと、レイリスを待たせてるんだった。

 

 

「はいよ〜。

ほい。こんなのを選んで見たんだけれど…どうですかね?」

 

 

そう言って俺はネックレスをレイリスに渡した。

 

 

「……わぁ。……綺麗だね。

 

………大事にするよ。ありがとう。」

 

 

うん、喜んでくれたみたい。早速つけてくれてるし。

 

ネックレスはレイリスの胸のあたりで、淡い真紅の輝きを放っている。

 

…天使さんったらいいセンスしてるじゃないか。

 

 

「あれ?露天商の人はどこに行ったの?」

 

「あぁ、きっと忙しいんだろうな。すぐに消えて行っちゃったよ。」

 

 

そう教えると、レイリスは残念がっていた。

お礼を言いたかったみたいです。

 

でもそんなことするとあの天使さんは調子に乗りそうだ。

 

 

「さて…それじゃあ今度こそ温泉に向かいますか?」

 

「うん。そうしようか。それじゃあ出発!」

 

 

俺達は改めて、集会浴場へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「こんな所貸切できるって…レイリスさんったら権力あるのね…。」

 

「や、やだなぁ! ちょっとギルドの人達にも顔が利くだけだってば!」

 

 

 

レイリスに案内された温泉は、ユクモ村を一望できる高い場所にある、静かな露天風呂だった。

 

こんな場所はゲームだと来れなかったなぁ…。

 

景色が素晴らしい。

というか、ユクモ村の夜ってすごい綺麗だ。

 

全体的に優しい感じの灯りに照らされていて見てると心が落ち着く。

 

 

「う〜ん…今日は花火が上がる日だって聞いてたんだけどなぁ…。

 

……あっ!ほらほら!花火だよ!」

 

 

 

夜空に一筋の光が走り、消える。

 

そして、夜空に大きな光の花が咲いた。

 

 

 

「おぉ…、すっげぇ。 綺麗だな…。」

 

 

その後も花火は打ち上げられ続けた。

 

夜空が光の花で彩られる。

 

俺とレイリスは言葉を出す暇もなく、食い入る様に花火に見入っていた。

 

 

 

「……迷子君。 さっき、なんで1人で金雷公の狩猟に向かったのかって聞いてくれたでしょ?」

 

 

レイリスが不意に喋り始めた。

 

俺は黙ってその話に耳を傾けることにした。

 

 

「私ね……強くなろうと思ったんだ。

 

今まででも、それなりの力は持てていたと思う。

それこそ、『英雄』と呼ばれる位には。」

 

 

「けれど、迷子君は私よりずっと強かった。

 

正直、怒り喰らうイビルジョーを回復アイテム無し、1人だけの状況で捕獲に持ち込むなんて次元が違う強さだって感じたんだ。」

 

 

……次元の違う強さか。

……俺は自分がそこまで強いとは思ってないけれどなぁ。

正直レイリスやクルルナより強いかと言われれば何とも言えない。

 

そんなことを考えながら、俺は話の続きを聞く。

 

 

「だから、強くならないとって思ったんだ。

 

このままじゃ迷子君を守れない… ネコちゃん達からの依頼も達成できないからね。

 

それで、昨日は金雷公に1人で挑んだんだ。」

 

 

「無事に勝てたわけだけど…。 私、その場で思ったんだよね。

 

迷子君を……好きな人を守るなら『英雄』だと力不足だ、

『モンスターハンター』なんて呼ばれるくらいじゃないと…ってさ。」

 

 

「だから決めたよ。

 

私、『モンスターハンター』と呼ばれるようなハンターになる。

世界中に、ほんの数人しかいない存在らしいけれど…それでもその領域に到達してみせる。」

 

 

レイリスの放ったその言葉はどこか力強かった。

何というか…覚悟を感じられた。

 

すると、レイリスはこちらを向いて微笑んだ。

 

 

「………私の話を聞いてくれてありがとう。

 

最後に1つだけ言いたい事があるんだけど…いいかな?」

 

 

ん?何だろう。 別にぜんぜん構わないけれど…。

 

すると、レイリスは真剣な表情になってこちらを向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迷子君……。私は迷子君が……貴方のことが好きです。

 

だから……これからもずっと私の……私達の側にいてくれますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………胸の中で何かが跳ねた。

 

………うまい言葉が出てこない。 考えようとしても頭が全然働かない。

………あぁもう、なんで俺はこうヘタレなのかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………約束する。……と言いたいところなんだけど、俺では決められないことかもしれないんだ…。」

 

 

……あの天使さんは、俺をこの世界に転生させてくれた。

 

けれど、それはまた同じようなことを俺にさせるかもしれないということ。

 

正直、さっきの天使さんの言葉はゾッとした。

 

 

「もしかしたら………行き先も告げずに、急に消えてしまうかもしれない。

ちょっと窮屈な身分なもんでさ…。」

 

 

「………でも、俺だってレイリスと。

 

みんなと一緒に楽しくやっていけたらいいなって思ってるよ。

 

だから、もし俺が抱えているものをハッキリと終わらせる事が出来て、そこにみんなといれるって道が残っていたなら…。

 

俺はきっとその道を選ぶと思う。」

 

 

「だから……、もし約束できる時になったら改めて言うことにするよ。

 

そういうことでお願いできるか…?」

 

 

俺はそう応えた。

 

 

 

「………ふふっ。 ………はぁ。 言質はとれなかったかぁ…。

 

迷子君は強敵だね…。今まで相手してきたどんな相手よりも攻略が難しいや…。」

 

 

レイリスはどこか残念そうな…、そして憂を帯びたような顔で呟いた。

……すいません。けれど、複雑な事情があるんです。

 

 

「うん、わかりました。 ゆっくり待たせてもらうことにするよ。

 

私も『モンスターハンター』って呼ばれてからのほうが色々と気分がいいしね。

 

……でも迷子君も自身のことで悩みがあったりしたらちゃんと相談してね?

私達はパーティなんだからさ!」

 

 

……ありがとう。 本当にいい仲間に巡り会えたよ。

 

 

「あっ!あの花火でっかい!いやぁ〜綺麗だね!

迷子君もこの露天温泉気に入ってくれた?」

 

 

うん、素晴らしい場所だと思います。

 

 

「それは良かった!

 

それじゃあしっかり疲れを抜いて、また明日からのクエストに備えないとね!」

 

 

またレイリスはいつも通りの元気いっぱいの調子に。

 

……ハッキリとした返事を返せなくてごめんな?

いつか必ず、改めて約束するからそれまで待っててほしい。

 

 

 

「た〜〜まや〜〜!!」

 

 

 

隣で叫んでいるレイリスを見る。

 

 

『モンスターハンター』か…。

 

今までは1人で頑張っている感じだったけれど、頼りになる仲間も同じ高みを目指しているみたい。

同じ場所を目指すなら手を取って頑張りあえる。

 

なんだか一歩前へと進めたかな?

 

それに…自分のためだけじゃなく、レイリス達のために頑張るってことになるんだ。

 

自分以外の何かのために頑張るとなった時の俺は、なかなかの力を出せちゃうんですよ?

 

 

 

 

「絶対にその高みに辿り着いてやるからな…。

待ってろよ…?」

 

 

 

 

夜空には、一面に光の花が咲き乱れる。

 

 

咲いては枯れてまた咲くことを繰り返す、夜空を彩る花を見ながら、俺は新たな決意を胸に固めていた。

 

 

 




ほい、デート回…?でした。
うまく纏めて終わらせる事がすっごく難しい…。
綺麗に〆て終わらせれる作者さんは本当に尊敬します。


感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。


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第35話 柔能く剛能く狩人を制す

 

 

 

 

「ううぅ……。クルルナさんとササユさんのコンビがあれほどに恐ろしいなんて……!

私はラディスちゃんとセレスさんにちょっと面白いお話をしただけなのに…。

 

あぁ…神さま…。 これから私はどうやってユクモ村で生きていけばいいの……!?

 

この悲劇のヒロイン、コノハにどうか救いの手を…。」

 

 

緊急の依頼が届いたとの報せを受け、俺は集会浴場を訪れていた。

いざクエストを受注……なんて思っていたんだけれど、クエストカウンターではコノハさんの小劇場が開かれていました。

 

 

 

「あ、あの〜…コノハさ〜ん?大丈夫ですか…?

緊急の依頼が来たとかで呼ばれたんだけど…。」

 

 

自分の世界に入ってしまっているコノハさんに、とりあえず声をかけてみる。

 

 

「……はっ!? 皆さんいつの間に!?

 

この敏腕受付嬢である私の視線を掻い潜るとは流石ですね!

 

ですが、私の実力はこんなものでは……」

 

「コノハさん?早い所、マジメな話に移りましょう。

この間みたいな仕打ちは嫌でしょう…?」

 

「は、はいぃ……!すみませんでしたぁ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え〜っとですね。 今回は獰猛化タマミツネの依頼が届きました。 困難な依頼になると予想されるので皆さんレベルのハンターにクエストをお願いしてもらいたいのですが…。」

 

 

ふむふむ、獰猛タマミツネさんですか。たしかになかなかの強敵だな。

獰猛化モンスター特有のディレイがかかった攻撃は避けにくいったらありゃしない。俺はタマミツネさんにはしょっちゅうぶっ飛ばされてた。

個人的にはタマミツネは苦手なんです…。

 

 

「オッケー!それじゃあ早速向かうことにするよ!ちょっと難しめの依頼だから…私にクルルナ、迷子君の3人にネコちゃん1匹でいいかな?」

 

 

うん、それなら全然問題はなさそうかな。

自分で言うのもなんだけれどこのパーティはめちゃくちゃ強い。

元の世界の兄妹達も、一緒にモンハンすればクエスト失敗することはないくらい強かったけれど、今のパーティは下手したらそれすら越えるかもしれない。

 

 

「それじゃあ後で村の入り口に集合だね!また後で!」

 

 

そう言ってレイリスとクルルナはそれぞれの準備をしに行った。

さて、俺も準備してくっか…。

 

 

それじゃあ、獰猛化タマミツネの狩猟。

いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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抉られたような岩場の陰に隠れるように設営されたベースキャンプ。俺達は装備やアイテムの準備を終えて渓流を訪れていた。

もう時刻は夜になってしまっているので、満月が綺麗です。

 

俺はいつも通りにブレイヴ操虫棍。レイリスはブレイヴ大剣。クルルナは……ブレイヴ双剣ですか。

ブレイヴ双剣、面白そうなんだけどうまく使えないんだよなぁ…。

あ、オトモはアシストのネギトロ君です。

 

 

「旦那さん。タマミツネはエリア4にいるみたいだニャ。」

 

 

ほいほい、ありがとう。こういう時にネコがいると本当に便利。

この世界だとゲーム通りの初期位置じゃなかったりもありそうだからオトモは最低1匹は連れていった方がいいのかもしれないな。

 

俺達はエリア4へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて……エリア4に来たわけですが…。

 

 

「……うん、いたね。 じゃあ私が斬り込むよ。

2人は後に続いてください。ネコちゃんは超音波笛を吹いて、ブルファンゴを追い払ってくれたら嬉しいな。」

 

「了解したニャ。」

 

 

エリアの東側。

ソイツは頭に黒い霧を纏いながら闊歩していた。

 

 

 

泡狐竜………タマミツネ。

 

MHXメインモンスターの内の1匹。

"妖艶なる舞"の異名を持つだけあってその姿は幻想的で美しかった。

けれど今回のタマミツネは獰猛化個体。

黒い霧を纏ったその姿は、美しさの中に恐ろしさが入り混じったような荒々しい雰囲気を感じさせるものだった。

 

 

 

「そんじゃあ…行きますッ!」

 

 

レイリスが駆け出し、俺とクルルナが後に続く。ネギトロは超音波笛でブルファンゴを追い払う。

 

 

さあ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイリスが出会い頭に抜刀攻撃をタマミツネの頭にぶち込んだ。俺はその横から頭に虫を飛ばして赤エキスを回収。クルルナは武器を構える。

タマミツネが咆哮。それを俺達は一斉にイナす。

 

……今気づいたけれど、みんなブレイヴスタイルか。狩りに個性を生むっていうのはいいと思うんだけれど、どうにも強さを求めるとある程度スタイルが固定されちゃうのはしょうがないことなのかな?

もし、軽めの相手と戦う機会があったらエリアル麻痺棍担いでみよう…。ピョンピョン跳んでみたい願望はあるしね。

 

さて、今はタマミツネに集中だ。

 

咆哮をイナしたレイリスは再び頭に抜刀攻撃。

ブラックXで来てるはずだから頭にスタン値が溜まっていってるはず。このパーティの火力でスタンを取れるならすごいと思う。

 

クルルナはタマミツネの周囲を細かく動き回り、隙を見つけては納刀継続攻撃を入れていた。

 

俺は尻尾から白エキス、胴体から橙エキスをゲットしてトリプルアップ状態に。猟虫は広域虫だからパーティメンバー全員に効果が発揮される。 攻撃防御UPも大きいけれど、会心+15%の効果は超会心の時代だったダブルクロスの環境ではなかなかのブーストになると思います。

 

体をピカピカさせた俺はタマミツネの後ろ脚付近に陣取り、斬りまくる。

納刀継続攻撃はほとんどしない。

ブレイヴ操虫棍の強さってのはブレイヴ状態が強いんではなく、非ブレイヴ状態の時でも充分な火力が出せるところにあると思うんだよね。

コンボなんかはギルドスタイルとほぼ同じだから、使い心地は狩技枠が1つ減った代わりにイナシを使えるようになったギルドスタイルだ。欠点はセルフジャンプしにくいことくらい。

だけど、このパーティなら乗りを狙う方が時間がかかってしまいそうなのでその点も問題ナシ。遠慮なくブレイヴ操虫棍で戦える。

 

タマミツネは俺達の攻撃によって、あっという間に怒り状態へ。

さて、気を引き締めないとな。

 

怒り状態に移行したタマミツネは前脚での叩きつけ攻撃。

俺を狙った攻撃らしく、俺はタマミツネの体の内側に避難するように移動。初段の叩きつけから2回目の叩きつけに繋げてきたけれど、それも同じように移動して回避。

その隙にクルルナが納刀継続攻撃を当て、ブレイヴ状態に入ったみたい。

 

叩きつけ攻撃を終えたタマミツネはバックジャンプしながら前方に泡を飛ばす。

更にそこから再び泡を撒き散らす。

そして、大ジャンプ。

回転しつつ、泡沫を巻き起こしながら俺達に突っ込んで来た。

 

俺は絶対回避【臨戦】でそこへ飛び込む。

そして、横薙ぎに斬りつける。

クルルナも斬り払いをしつつ、突っ込んで来た。

 

2人ともノーダメージ。そして地面に広がる滑液によって足元が安定していなかったのか、タマミツネはダウン。

 

そこにレイリスが駆け込む。

いつのまにかブレイヴ状態になっていたレイリスは高速抜刀溜め3を頭にぶち込む。

そこから最速で納刀。更に抜刀溜め3。

そこでタマミツネは起き上がる。

 

けれどレイリスは攻撃の手を緩めずに、再び頭に抜刀攻撃を溜め無しで素早くぶち込んだ。

 

そこでタマミツネはスタン。

おぉう…。なんだか素晴らしい連携ですね…。

というかレイリスさんマジかっこいい。

 

暢気な考え事もすぐにやめ、俺は後ろ脚のあたりに連撃を叩き込むためにすぐさま駆け寄る。

 

クルルナとレイリスは頭のあたりでザクザク斬りまくってるみたい。

 

そしてラッシュをかけ終わり、そろそろタマミツネもダウンから復帰するかな?なんて思ったその時。

 

 

「はああああぁっ!」

 

 

珍しくクルルナが大声で叫び、タマミツネの頭に錐揉み回転をしながらドリルのように突っ込んだ。

 

うわ…すっご…。 え?まだ回転するんですか?うわうわ…うわわ…。

強烈な連撃を加えたクルルナはそのまま地面に着地した。

なんじゃありゃあ……まるで人間のする動きじゃねえぞ? だって空中で5回転くらいしてなかった?しかも横方向に突っ込みながら。

 

 

双剣専用狩技 【ラセンザン】

 

弱点目掛けて錐揉み回転しながら抉るように斬りつけ、大ダメージを与える狩技。

ゲームでもその人間離れした動きにはドン引きしていたけど、生で見るとそれはもうトンでもなかった。お前ら人間じゃねぇ。

 

 

とまぁ、そんなことを思いながら俺はタマミツネの後ろ脚や尻尾を斬り続ける。

そして尻尾に攻撃がヒットした途端、タマミツネは再びダウン。

 

あらら…なんか怯みハメみたいになっちゃってるな…。

まぁ順調に進んでいるかな?

強敵に挑んでいくのも面白いけれど、仲間達とこんな風に見事なコンビネーションを決めるのだって相当に面白い。

モンハンはソロでの挑戦も楽しいけれど、仲間達とワイワイやるのも最高だもんな。

 

さて、油断は禁物だ。

いくら順調だからといっても相手は獰猛化の強敵。一瞬で形勢が変わってしまう可能性だってある。

最後までこっちは全力でいかせてもらうよ。

 

俺は操虫棍を強く握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ふぅっ!お疲れ様! 今回はすっごく順調だったね!

怯みがいい感じに続くし、ネコちゃんが罠だったり武器で麻痺させてくれたりでいい感じだったよ!」

 

 

それから数分後、俺達の目の前には捕獲されたタマミツネがスヤスヤと眠っていた。

今回は今までで1番スムーズだったんじゃないかな?

レイリスの言った通り、相手の攻撃に合わせてクルルナが斬り払いで突っ込んで転倒を奪いまくるわネギトロが罠を設置しまくるわダメ押しで麻痺も奪うわでなんかタマミツネが可哀想だった。

 

「にしても迷子君はなんで力尽きかけてるのさ! なんかボケーっと突っ立ってたみたいだけど…。」

 

「あっ…。いやぁ、ちょいと気になるものが目に入りましてね…。」

 

 

そんな俺達の会話を聞いてクルルナはクスクスと笑っていた。

 

いやいやクルルナさん…。アナタのせいでしょうが…。

ヘタレの俺には、滑液でヌルヌルになった容姿端麗なナルガX装備の女性はレベルが高すぎます…。

しかも戦闘中にいたずらっぽく笑ってくるしさ…。おかげで死にかけてしまいましたぞ…?

 

 

「………まさか泡まみれになったクルルナを見て鼻の下伸ばしてたわけじゃないよね?」

 

「いいっ…!?いやいや!全然そんなことはありません!ホントです!信じてください!」

 

 

必死で言い繕う。レイリスは相当訝しげな顔をしていたけれどなんとか納得してくれたみたい。

ハァ…無事にクリアは出来たけれど、心はなかなか休まらないなぁ…。

 

こんな感じで、獰猛化タマミツネのクエストは無事に終了した。

おつ狩り様でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ユクモ村への帰り道、竜車に揺られながら俺は夜明け前の空を眺めていた。

レイリスは相当疲れていたのかグッスリ俺の前で眠っている。

 

 

「あら?手を出したりはしないんですか?

今なら襲い放題ですけど…。」

 

 

急にクルルナがトチ狂った事を言い始めた。

な、なんなんですか一体…。

だいたい俺にそんな事をする度胸はありません。

 

 

「何を言いはじめるんだよ…。

……で、なんか用でもあるのか?急に話しかけてくるなんて珍しいよな。」

 

「えぇ、私の滑液に塗れた艶かしい体は如何程のものだったかの感想を聞きたくて…」

 

 

おいバカやめろ。作者は一体何をしているんだ。これ以上、クルルナのお淑やかなイメージを崩すんじゃない。

 

 

 

「というのは冗談ですよ?ふふっ、トマトさんったらいちいち慌てちゃって可愛いですね。」

 

「……ほっといてくれ。で、本題はなんなんだ?」

 

「えぇ、この間トマトさんはレイリスと1日のお付き合いをしたじゃないですか?

その時の話をこの間レイリスとしたもので…。」

 

 

……うっ、その話か。レイリスにはいい返事を返せなかったから心の奥にしまって置きたかったんだけど…。

 

 

「あぁ、いえ。別に責めようってわけではないんですよ。

ただ、私からもトマトさんに聞きたいことがあるだけです。」

 

「聞きたいこと?できる範囲でなら答えるけど…。」

 

「えぇ、でもその様子だとトマトさん自身の事を聞いても話してくれなさそうですね…。

生い立ちとか、なぜそこまでの力がありながら今まで無名のハンターなのかを聞きたいと思ったんですが…。まだその時じゃないんでしょう?」

 

 

うっ…痛いところを…。

ま、まぁ確かにその話はまだ早いんじゃないかと思います…。

なんか吹っ切れるような出来事があれば別なんだけど…。

 

 

「大丈夫ですよ?私もレイリスもトマトさんのためならいくらだって待ち続けれます。

だから急ぐことはないんです。"急がば回れ"なんて言葉もあるわけですしね。

トマトさんはトマトさんなりの努力で目標に進めばいいんです。

私達も頑張りますから!」

 

 

「………ありがとう。ホント俺なんかにゃ勿体無いパーティだよ。」

 

 

そう言葉を返すと、クルルナは微笑んだ。

 

 

「そんなことはありません。トマトさんは素晴らしいハンターですよ…。」

 

 

そうですか…。でもまだ自分に自信は持てないや…。

 

 

「う〜ん…、ごめん。眠くなってきちゃった。

俺も少し寝ることにするよ。」

 

「ええ、ゆっくり休んでください。」

 

 

ありがとうございます。それじゃあ遠慮なく…。

そう考えた途端、俺の意識は眠気の底へと引きずりこまれていった。

うん、今日もいい1日でした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………滑液を使って襲うのも良さそうですね。どんどんバリエーションが増えていきます…!」

 

 

 

 

…………なんか聞こえたような気もするけれど、気にしないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 





戦闘描写が短い…? 勘弁してください…。

そろそろユクモ村編も終わりに近づいてきました。
副リーダーさんを出してあげれる日も近そうです。

感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。


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第36話 わたくしと変態ハンター

セレスさん視点です。

あと、ちょっと汚いと思われてしまうかもしれない表現があるのでお食事中の方は気をつけてください。

それではどうぞ。



 

待ち合わせの時間まであと少し。

わたくしは集会浴場への階段を大股で登っていました。

 

 

「待っていなさい、変態クソ野郎…! わたくしが自ら天誅を下してあげますわ…!」

 

 

コノハから流れてきた、先輩方が酷い目に遭わされたという噂…。

それがもし本当だったら、その男はタダじゃおきません。 ギッタンギッタンのボッコボコにしてモンスターの餌にしてやります。

 

そしてわたくしは集会浴場に辿り着きました。

そこには、レイリスさんとクルルナさんの先輩方2人、そしてラディス。

 

……そして、どこかナヨナヨしていて放っておけば迷子になりそうな男が。コイツですわね。

 

わたくしはその男を指差して、高らかに宣言しました。

 

 

「貴方がレイリスさんとクルルナさんを誑かして寝取ったクソ野郎ですわね!

 

今からわたくしが貴方に天誅を下してあげますわ!

 

自分が如何に変態であり、如何に大きな罪を犯してしまったのかを後悔しながらくたばりなさいッ!」

 

 

 

これが彼との出会いでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ほいほいっ……と。

結構倒したと思うけどなぁ…。お〜い、セレス〜。ブルファンゴってどんくらい倒したっけか〜?」

 

「今ので15頭目ですわ。あと5頭で依頼は達成ですわね。」

 

「おし、狩技ゲージも溜まってきてるから最後はアレを試して、へぶぅ…。」

 

 

どこかのほほんとした様子で返事を返す途中に、遠くから走ってきたブルファンゴに吹っ飛ばされる彼。

こんな様子を見てばっかりなので、とても凄腕のハンターだとは思えませんわね…。

 

 

「ねぇ、変態。 貴方って普段の姿を見てると、とても凄腕のハンターには見えないんですが…。 こう、強者のオーラというかそういうものを何一つ感じませんのよね…。

普段はそうなのに、いざという場面になるとどうしてああも強いのです?」

 

「やばい…。変態と呼ばれるのに慣れ始めている自分がいるぞ…。

 

あ〜っと…、強い理由ねぇ…。」

 

 

彼はその場で少し考え事を始めたようです。

そして、少しの間を置いた後に答えました。

 

 

「そりゃあ、単純にたくさんのモンスターを狩猟したからかな…。

あんまり言いたいことではないんだけどさ。俺はみんなと出会う前は兄妹と本当にたくさんのモンスターと戦ってたんだ。

場数を重ねりゃ嫌でも強くはなるさ。 逆に、そんだけの練習をしてるってのにこの間なんかはクエスト失敗しちまったからなぁ…。

俺なんかみんなと比べれば才能なんて全然だよ。」

 

 

怒り喰らうイビルジョーを1人で倒しておきながら才能が無いなどとほざくとは…ムカつきますわね。

 

 

「あら…そこまで自分を卑下しているならよっぽどの努力をしてきたみたいですわね。

それじゃあ、今までで1番多く相手取ってきたモンスターはどのくらい戦ってきたんですの?」

 

 

ちょっと気になったので、聞いてみることに。

まぁ多くても30体くらいだとは思いますけど…。

 

 

「ん〜……。これは言ってもいいものなのかね…。

 

とりあえずダブルクロスだけだと…、

イビルジョーは少なくとも150頭は倒したと思うなぁ。」

 

「ひゃっ…!? はぁ!?」

 

「うん。150頭。 すごいでしょ。

まぁそんだけ努力したってわけだ。 でも俺の力はこんなもんさ。

きっとレイリスやクルルナ。セレスだってそれくらいの経験を積んだら俺なんかよりもずーっと強いハンターになってると思うよ。」

 

 

……正直信じられませんわ。イビルジョーは何処にでも出没するモンスターだとはいえ、その強さはかなりの物。古龍にすら匹敵する力を持つモンスターだというのに…。

あと…『だぶるくろす』?なんのことでしょう…?

 

 

「そ、そんなハンターがいるならわたくし達の耳にだって届くはずですわ!なんでそんな噂が一切聞こえて来ないんですの!?」

 

「う〜ん…。まぁ、俺の住んでた所ってちょっと特殊だからなぁ…。噂が届かなくてもしょうがないかと…。 兄なんて俺よりずっとやり込んで…いや、たくさんの狩猟をしていたはずだよ。」

 

 

ち、ちょっと目眩が…。彼より更にたくさんのモンスターですって…? 住んでる世界が違いますわ…。

まるで戦闘狂で有名な副リーダーのようです…。

 

 

「はぁ…。 ともかくこれ以上はやめましょう。なんだか途方も無い話になりそうですわ…。早い所ブルファンゴを倒しましょう…。」

 

「ほいほい。なんか疲れさせちゃったかな…?ごめんなさい…。」

 

「気にしないでほしいですわ…。」

 

 

そんな会話をしながら、わたくし達はブルファンゴを探し始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「なんだよ…。1エリアに1匹しかいないとかめんどくさいな…。」

 

「うだうだ言わないでくださいます?わたくしだってイライラを抑えているというのに…。」

 

「おぉう…なんかスミマセン…。」

 

 

ブルファンゴを探し始めたのはいいのですが、なぜか目に付くブルファンゴの数が激減。

居て欲しくない時にはうんざりするほどいる癖に、こんな時にはパッタリと隠れるとは…。

ハンターに嫌われてる理由がわかりますわね。

 

 

「そういやさ…。セレスってなんか言葉遣いが…なんだ…上品というか、上流の言葉遣いだよな。

そういう家の出だったりするのか?」

 

 

急に彼がそんな質問を。 わたくしの家柄なんて聞いてどうするつもりでしょう…?

 

 

「えぇ、まぁ結構な家柄だとは自負しておりますわ。王族の一家とも親密な間柄ですもの。」

 

「え゛っ…? セレスってすごい人じゃん…。セレス様とか呼んだ方いい…?」

 

「やめなさい!?虫唾が走りますわ!?」

 

「あっ、ごめん…。 え?それじゃあセレスって王族?の知り合いとかもいたりするの?

というか、よくハンターやること許されたな…。」

 

「えぇ、まぁ父が貴族でありながらハンターの資質もあったようで…。そんな父親の姿を見て育ちましたから。

王族にも仲の良い幼馴染はいますわよ?

次女…、第3王女は昔からよく遊びましたわね。

今でもハンター生活のことを文通したりはしてますわ。」

 

「あ、あの…第3王女と知り合い…!?

俺のこと変に伝わってないよね? 不埒な行為ばかりする変態ハンターだとか…。」

 

「い、いえ〜?べべべ、別に変な脚色を加えたりはしていませんわ?」

 

「おいコラ、変に伝えやがったな?

俺もう王族に変な目で見られるじゃねえか!

あぁ…、ギルドナイトに狙われたりしないよね…?」

 

 

彼が慌て始めましたが気にしないことにしましょう。

 

 

「それより今はブルファンゴです。

あと1頭ですわ。 あ、ほら。あそこに最後のブルファンゴが…。

あと少しだから落ち着いてください…。」

 

「だぁもう!こうなりゃヤケだ!

おいクソ猪!俺のラセンザンの実験台になりやがれぇぇえ!」

 

 

そう言って、彼はブルファンゴに全力のラセンザン。

今回が使うのは初めてだと言ってましたが…なかなか上手くできているじゃありませんか。

……ハンターの才能もわたくしよりあるんでは?

 

 

「ふぅ…。とりあえずお疲れ様でした。

早い所ユクモ村に戻って……ってどうかしまして?」

 

 

ラセンザンを放ち終えた彼はその場で立ち止まったまま。

わたくしの言葉にも全く反応しませんでした。

 

 

「……ちょっと?無視するのはあんまりじゃないかしら?

ほら、早く帰りますわよ…。」

 

 

わたくしは近づき、動かないままの彼の背中を軽く叩きました。

 

 

 

「あっ……背中はマズッ………ぉぇ。」

 

「……え?どうかしまして?」

 

 

彼が苦しげに言葉を発しました。

その目にはなぜか涙が溜まっています。

 

 

 

 

 

 

…………まさか。

 

 

 

 

 

 

 

「ラ、ラセンザン放ったら回りすぎて…。

 

き、気持ちわるぇぉぉぉろろろろろrrrrr………」

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「全く……あんなものを目の前で見せつけられるなんて……。」

 

 

クエストを終えて村に戻ったわたくしは、温泉で疲れを抜いていました。

ここからの美しい眺めでさっきの汚ない記憶を消し去らなければいけませんわ…。

 

 

「おっ!セレスじゃん!そっちも終わったところ?」

 

 

ふと声をかけられてそちらを見ると、そこにはラディスがいました。

 

 

「ええ。さっき無事に……とはいきませんでしたけどまぁ終わってきたところですわ。」

 

「むむ…?ヘタレがなんかやらかしたでしょ?

アイツは毎回何かしら仕出かしてる感じだもんな!」

 

「まぁそんなところです…。思い出したくもないですわ。」

 

 

ラディスと話していると、さっきの光景を思い出しそうになってしまいます。

 

急にえづいて涙目のまま下を向き、口から汚物を…いえ、これ以上はいけませんわね。

 

 

「おー、そういえば郵便屋さんがセレスの家に手紙届けてたな!

いつもの人からじゃないかな?」

 

「あら、もうそんな日でしたか。それじゃあわたくしはそろそろ上がりますわね。」

 

「はーい!アタシはもうちょいぷかぷかしてるよ!」

 

 

わたくしは温泉に浮かんでのんびりしているラディスを後ろに見ながら、その場を後にしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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マイハウスに着くと、ポストに随分と豪華な包装が施された手紙が届いていました。

 

馴染みの友達からの便りを手に取り、今回はどんな面白おかしいエピソードを書いてきたかを楽しみにして目を通します。

 

 

 

『久しぶりじゃの!我が友セレスよ!

最近は侍女達がわらわの監視だとかなんとかいってわらわをなかなか部屋から出してくれぬ。

つまらないのう。

 

それで…、この間くれた手紙に書いていた新しいハンターとやらがなかなかの手練らしいの!

ぜひ今後もそのハンターの活躍を書いてわらわに伝えて欲しいのじゃ!よろしく頼む!

 

ただ、なんか問題があるようだったらしっかりわらわに伝えるのじゃ!

父上に頼んで痛い目にあわせてやるからの!』

 

 

 

手紙を読み終えたわたくしは、無性に笑いがこみ上げてきました。

 

 

「ふふっ…。貴女のわがままにはいろんな人が振り回されてばっかりですからね。そうやって監視をつけられるのも当然ですわ。」

 

 

彼女からの手紙は私がハンターを頑張れる理由の一つです。

その立場から自由に動くことのできない彼女の代わりにハンターとして活躍し、それを彼女に伝える…。

小さい頃に彼女と約束したことですわ。

 

 

「新しく出会ったハンターについても問題ないですわよ?

あの変態…、彼はあのレイリスさんが信頼を寄せるほどの実力ですもの。

きっと貴女の無茶な要望にも応えてくれますわ。」

 

 

そう呟きながら、わたくしは机に腰をかけペンを手にしました。

 

 

「さて…、今回はどんなお話を伝えましょうか…。

彼が怒り喰らうイビルジョーを1人で倒したお話なども喜びそうですわね…。

レイリスさんの単騎で金雷公討伐のお話もいいかしら…。」

 

 

 

村も沈み帰った夜の中。

雷光虫のランタンが照らす机の上で、わたくしは友へと送る手紙を書き始めました。

 

 

 

「彼のことを『変態』だなんて呼んでいるけれど、別にそこまで嫌悪感はないのですのよね…。

ふふっ、でも彼はそんな風に呼ばれるくらいがちょうどいいでしょう。

さて、今回はどんな脚色を加えましょうか…。」

 

 

 

静まり返った部屋の中、ペンを滑らせる音だけが響きます。

 

 

 

うん、今回も満足のいく報告ができそうですわ。

 

 




ほい、セレスさん視点でした。

思いつきで第3王女様と仲良し設定を作ってしまったけど大丈夫かなぁ…?

さて、今回も恒例のフルネーム紹介です。
セレスさんのフルネームは【セレス・レギオーナ】と言います。
そろそろ由来に気付く人もいるんじゃないかな…?

感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。


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第37話 収納上手・力の書

拠点を移動する事にしました。

もう何話かユクモ村でやろうと思ったのですが、ありきたりな話ばかりになってしまったので…。

それでは本編どうぞ。



 

 

 

「えっ?拠点を移動する?」

 

「うん。ユクモ村にも結構な間滞在したしね。

それに、パーティメンバーの1人…迷子君が会ってない最後のメンバーがベルナ村に腰を落ち着けるらしいんだよ。

この間、久しぶりに会いたいって連絡が来てさ。会いに行こうかと思ったんだけど…どうかな?」

 

 

お昼下がりの午後。

受けれるクエストも採取ツアーなどのパッとしないものばかりだったのでマイハウスでゆったりしているとレイリスが訪ねて来た。

なんでも拠点の移動を考えているだとか。そして次に向かうとしたらベルナ村らしい。『英雄』パーティの副リーダーさんがいるみたいです。

 

 

「うん。いいんじゃない?俺もこの村では結構な数のモンスターと相手したしな。他の拠点に向かうにも心残りは……まぁ温泉は惜しいけれど、新しいモンスターに出会えるなら安いもんか。」

 

「それじゃあ迷子君も拠点移動するってことでOK?」

 

「あいよ。……で、飛行船が来るのっていつ頃なんだ?」

 

 

もちろん拠点移動には賛成。それなら荷造りなんかの準備は済ませておきたいところ。

こうゆうことは早め早めに終わらせるのが大事なんです。夏休みの課題を貯めてしまったときのような悪夢はもううんざりだ。いや、計画的に終わらせれた試しなんてないけどさ…。

 

 

「え〜っとね。たしか4時間後かな! 急いで準備しないとだね!」

 

 

レイリスは満面の笑みでそんな言葉を言い放った。

 

 

「………は?」

 

「ほらほら迷子君!ボサッとしてるヒマなんてないよ! クルルナも来てるし一緒に手伝うからさ!」

 

 

レイリスがそう言うと、玄関の陰からクルルナがひょこっと顔を出した。

 

 

「そうですよトマトさん!今回の飛行船を逃したら次に同じ船が来るのは2週間後なんですから!

私達も荷造りは手伝うので間に合わせることはできます!さあさあ、パパッとやってしまいましょう!」

 

「いや…荷造りなら俺1人でも間に合う…

「一緒に頑張りましょうね!」

 

「いや…その…2人に貸しを作ると俺が困る…

「頑張りましょうね。」

「あっ、はい。」

 

 

クルルナの圧に負けて手伝ってもらうことになってしまいました。

これは後でナニか頼まれてしまうかもしれないな…。正直嫌な予感しかしない。

 

 

「ほらほら迷子君!急がないと!」

 

「そうですよ!収納のコツは『入れるものをある程度整った形にしてから力任せに押し込むこと』です!

月刊『狩りに生きる』の収納特集増刊号にもそう書いてありましたから!」

 

 

そう言いながら2人は俺の部屋にあるものをどんどんアイテムボックスに押し込んでいく。

え?それ入るの?なんて大きさの物もガンガンボックスに吸い込まれていってます。やっぱりアタリハンテイ力学が働いてるよなぁ…。

ちょっとまって。今なんかミシッて音しなかった?俺の私物は無事ですか?

 

 

「ちょ、ちょっと2人ともそんなに急がなくても…。 てか、平然と下着なんかを手に取られるのは少し恥ずかしいんですが…。」

 

「…?? 今更なに言ってるのさ。

あ、クルルナ〜。そこに脱ぎ捨てられてるやつ寄越して〜。もう、迷子君ったら…だらしないなぁ…。」

 

 

そんな事を言いながら2人は俺の下着なんかもどんどんボックスに詰めていく。俺の尊厳なんてあったもんじゃない。

 

 

「ほら、迷子君も見てないで手伝ってよ!」

 

「ほいほい…。なんか俺の立場弱くないですかねぇ…?」

 

 

レイリスに声をかけられ、俺は渋々荷造りを始めた。

なんかいくつかの下着が見当たらなかったのは気にしないことにしよう。深く考えると恐ろしいことになりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「それじゃあ行ってくるよ!コノハとササユさんも元気でね!」

 

「ありがとうございます。しばらくのお別れですが、2人とも頑張ってくださいね。」

 

「うぅっ…。ふ、2人とお別れなんて……。私、悲しいです…。

でも、この悲しみを乗り越えてこそ敏腕受付嬢への道は開けるというもの!

お2人がいない間も頑張っちゃいますからね!期待しててください!」

 

「それは楽しみですわね。私達もベルナ村からいい報告ができるように頑張りますわ。」

 

 

飛行船に乗り込む直前、ユクモ村に滞在していた2人と受付嬢さん達のお別れを見ていた。

コノハさんは感情豊かだなぁ…。ササユさんはクールで仕事の出来るお姉さんって感じです。俺はアイシャ推しだけれども、コノハさんもなかなか素敵じゃないですか……あいたぁ!?

 

クルルナに脛を蹴られた。その本人は眩しい笑顔でこちらを見ていました。

あっ、ヤバいやつだ。闇を感じる眩しい笑顔とか初めて見た。

 

 

「皆さま、そろそろ出発の時間ですニャ。」

 

 

そんな事をしていると、あっという間に出発の時間に。

俺たちはコノハさんとササユさんに挨拶を済ませて、飛行船に乗り込んだ。

 

 

「2人とも〜!頑張ってくるからね〜!」

 

 

ラディスが飛行船から身を乗り出して2人に手を振る。

この2人はユクモ村で受付嬢さんたちに良くしてもらったみたい。すごい仲の良さだった。

 

 

「ベルナ村でもササユさん達に噂が届くくらい活躍しないといけませんわね…。燃えてきましたわ…!」

 

 

おぉ…やる気になってますな。

これはベルナ村でもいい感じにクエストをこなしていけそうです。

 

 

そんな事を考えながら、今回の空の旅は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラディスちゃんとセレスさんが乗って行った飛行船が見えなくなるまで、私は空を見ていました。

 

 

「お2人、行ってしまいましたね。

コノハもお2人に負けないように頑張らないとですね。」

 

「もちろんです!これからもじゃんじゃん仕事をこなしてユクモ村の受付嬢として恥ずかしくない存在になれるように頑張りますから!」

 

「あらあら、それは頼もしいですね。

それでは、そんな貴女に新しい仕事が届きました。

この資料をまとめておいてくださいね?」

 

 

そう言うとササユさんはどこから取り出したのか、沢山の紙束を私に手渡してきました。

 

 

「うわ…、すごい量ですね…。いや、これも敏腕受付嬢になるための道…!頑張ります!」

 

「いい心持ちです。頑張ってくださいね。」

 

 

ササユさんは最後にそう言葉を落として、歩いて行ってしまいました。

 

 

「うわぁ…難しそうな話も沢山あるなぁ…。

何々……? 『目撃された物体と【銀翼の凶星】の伝承との類似点について』…?

……さっぱりわからないですね。

サ、ササユさ〜ん!教えてもらいたいところがあるんです〜!」

 

 

私はササユさんを追いかけて走り出しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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空をゆっくりと進む船の上で、俺たちはのんびりしていた。

俺は今回で空の旅は3回目。まぁ慣れたもんで空からの景色を余裕をもって楽しむことが出来ている。

 

飛行船に出ている屋台のようなお店で軽い食事をとったり、ラディスと腕相撲をしたりもした。 戦績は2勝3敗でした。

だ、大丈夫。俺はまだ本気出してないだけだから。

 

ちなみに、俺が飛行船に乗るたびに見かけている腕相撲が強い船員さんをまた見かけたので、今回はラディスと2人で挑んだ。

はい、負けました。 いや、強すぎない?

10戦10敗って……。

 

と、まぁこんな感じで飛行船での時間は過ぎていった。 なかなかに楽しいので時間が過ぎるのは速かった気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや、副リーダーさんがいるって聞いたけど…。どんな人なんだ?」

 

 

空の旅の途中、気になったのでレイリスに尋ねてみた。

 

 

「えっ?副リーダー?

 

う〜ん…あの人はねぇ…。 ちょっと迷子君に似てるかもしれないかな。」

 

 

えっ?俺に似てる?

その人大丈夫?自分で言うのもアレだけど、なんか残念な人だったりしない?

 

 

「あの人はねぇ…とにかく強いかな。

私なんかよりもずっと強い。 それこそ迷子君に近い強さだと思ってるよ。 まぁ色々と抜けてるところがあるから副リーダーなんだけど…。」

 

 

待て待て。 俺は自分がレイリスより強いなんて思っていませんぞ?

そして…そんなレイリスが自分より絶対に強いと言ってるだと?

なんなんだソイツ。『モンスターハンター』ってその人のことなんじゃないか?

 

 

「あっほら、ベルナ村が見えてきたよ。その人にももうすぐ会えるね!」

 

 

なんか不安になってきたなぁ…。

今までの4人は美人ばっかりだったから最後の1人はゴリッゴリのモンスターなハンターだったりして…。

 

直前になって初めて不安を覚えながらも、飛行船は無事にベルナ村に到着した。

 

 

さて、ベルナ村ではどんなハンター生活が待っているのかね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「村長さん!お久しぶりです!」

 

「おお!『英雄』の皆ではないか!久しいな!」

 

 

ベルナ村に到着したので、まずは村長さんにご挨拶。

なかなか精悍な顔つきのダンディなおじ様って感じの村長さんです。

 

 

「今回は彼女に会いに来たと聞いていたが…。

彼女は確かオトモ広場の方に行っているらしいぞ?向かうといい。」

 

「わかりました!ありがとうございます!」

 

 

村長さんから、探し人がオトモ広場にいるとの情報をいただけました。親切な人だ。

そういうわけで、俺たちはオトモ広場へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと迷子君!ムーファを構って道草してないでよ!」

 

「いや、だって…。コイツがモフモフなのがいかん。 へへっ、フワフワだぁ…。」

 

 

オトモ広場へと向かう途中、俺はムーファの罠にかかっていた。

いや、気持ち良すぎでしょこれ…。全然獣臭く無かったし。

 

 

「もう!それじゃあ私達だけで彼女連れてくるからね!ここで待っててよ!?」

 

「あ〜い…。よろしくぅ〜…。」

 

 

そう言ってレイリス達は副リーダーさんを探しに行った。

俺はムーファをわしゃわしゃし続ける。

ポカポカとした暖かさを感じられる綿毛はマジで気持ちいい。 ムーファもわしゃわしゃされるのは気持ちいいらしく、どんどん俺にわしゃわしゃを求めてくる。

しまいには他のムーファも集まって来てムーファ天国になっていた。

 

 

「ユクモ村の温泉も良かったけど、ムーファ天国もいいなぁ…。来て良かった…。」

 

 

 

 

 

そんなふうにしていると、レイリス達が戻って来たみたい。

 

 

「……レイリス。彼が私に紹介したいと言っていたハンターか?」

 

「う、うん…。そうなんだけど…。 あんな姿初めて見たよ…。」

 

 

おっと、ムーファに囲まれて有頂天になってたみたい。挨拶はしっかりしないとだな。

 

 

 

俺は改めて、レイリスが連れてきた副リーダーさんを見る。

 

 

 

 

 

…………デカイな。いや、何がとは言わないけれどさ。クルルナに殺されるから…。

 

いやいや…身長もデカくない!? 女性なのに175はありそうだ。明らかに俺よりは大きい。

 

 

「あ、はじめまして。 最近、レイリス達とパーティを組ませてもらってる……」

 

 

そこまで言ったところで、副リーダーさんが恐ろしいほどの速さで俺の方に近づいてきた。

そして、俺の肩をガッシリと掴む。

 

 

……え?どうされたのですか?

 

顔がちょっと近すぎるような…。

あ、美人さんですね。銀髪が素敵です。

 

 

 

 

 

そして、副リーダーさんは真っ赤な顔になって叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、私と! つ、付き合ってもらえないだろうか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「は?」」」

 

 

 

 

 

 

 

俺、レイリス、クルルナの素っ頓狂な声がシンクロした。

 

 

 

あぁ…、なんだかベルナ村も波乱万丈な展開になりそう……。

 

なんだかそんな気がします。

 

 

 

 




収納上手の書って『狩りに生きる』の別冊という設定なんですよね。最近はゲーム内で『狩りに生きる』を読めなくなってしまい、少しだけ寂しいです。

やっと副リーダーを登場させてあげることができました。
これでキャラは全員揃ったつもりです。これからの展開をお楽しみに。

それではまた次回で会いましょう。


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第38話 風と草原の彩る村


書き上げるのにえらく時間がかかりました。
もう2日3日早く更新する予定でしたが…。

それでは本編どうぞ。



 

 

 

 

 

 

「あれっ? ヘタレじゃんか。 3人はどうしたの? まるで戦争でも起きそうな雰囲気だったけど…。」

 

「あぁ、話し合いしてくるってさ…。 嫌な予感しかしねぇ…。ちょっと怖くて逃げてきたよ…。」

 

 

ベルナ村に到着した矢先に、銀髪の美人さんにいきなり告白されましたとさ。

そして、そこにいたレイリスとクルルナがもうとんでもない表情になった。魔王みたいでした。

それで3人はレイリスのマイハウスで話し合いをするという事に。 村中のムーファがどこか怯えた様子なのは気にしないようにしよう…。待っててねと言われたけれど、俺は逃げ出しました。

 

「ヘタレはヘタレだなぁ…。

なあなあ!それじゃあ…なんだっけ…。

チ…チーズファンデ! チーズファンデ食いに行こうぜ! ベルナ村のチーズは美味しいって評判なんだからな!」

 

「チーズでファンデーションをしてどうする…。 フォンデュだ、フォンデュ。

確かに俺もチーズフォンデュは食って見たかったかも。 そんじゃあ行くかぁ…。 」

 

「おっしゃあ! じゃあセレスも呼んでくるよ!ヘタレはここで待ってろよ!」

 

 

そう元気に叫びながら、ラディスは走っていった。 悩みが無いってのは気楽でいいねぇ…。

 

 

「はぁ…、これからどうなるもんかな…。」

 

 

風が吹き抜ける高原で俺は1人、青空を眺めながら溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おぉ〜っ!すっげ〜!めっちゃ伸びる!なんだこりゃ!」

 

「私もいただくのは初めてですわね…。 でもこれは美味しそう…。」

 

 

目の前に置かれた小鍋の中で、乳白色のチーズがふつふつと音を立てている。

気泡が生まれては弾けて芳しい香りを辺りに漂わせ、食欲を促進させる。

 

とろりと蕩けたチーズの皿の周りには、女帝エビや七味ソーセージなどの具材がズラリ。

 

 

「そんじゃあ、いただきますか。」

 

 

早速、七味ソーセージをフォークに刺してチーズの海に潜らせる。

 

充分に浸し終えた後、チーズの海からソーセージを引き上げる。

ソーセージをくるくる回す事で細く糸を引いているチーズを切り、熱々の湯気が出ているうちに口の中に運び込む。

 

 

「…あっ!ふぁっふ! ふぁっふい!」

 

「お、おおぅ…。そんなに熱いのか…。 とりあえずヘタレの犠牲のおかげで、アタシは痛い目見ないで済みそうだ…。」

 

 

口に運び入れたチーズフォンデュは、それはそれは熱かった。

すぐさま口の中で転がし、冷ますことに専念する。

 

なんとか口の中が落ち着いたのでゆっくり味わうことにした。

ソーセージをゆっくりと噛み切る。 すると、表面を炙られたソーセージの中から旨味たっぷりの肉汁が溢れ出し、それがとろとろのチーズと絡み、口の中で絶妙なハーモニーを奏でた。

 

 

「うっまぁぁぁあ! えっ! うまっ! お前ら早く食べた方いい! ほら、熱々の内に!」

 

 

2人にそう言葉をかける。 ラディスはすぐさまチーズにくぐらせた女帝エビを口の中へ放り込んだ。 「ふふぁ!?ふぁぇあ!?」とか言って涙目になってるけどまぁラディスなら大丈夫だろう。

セレスも…なんかむせてるけど美味しそうに食べてますね。良かった良かった。

 

 

そんなこんなで鍋の中はあっという間に空っぽに。 1番美味しかったのはシモフリトマトかな?ともかくお粗末様でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば…、ホロロホルル狩猟の依頼が届いているらしいですわね。 どうします?そこそこ緊急性のある依頼らしいので私達だけで出発しますか?」

 

 

食後にゆっくりしていると、セレスが急にそんなことを言い出した。

ほーほー、フクロウさんですか。まぁ古代林の下見も兼ねてちょうどいいんじゃないかな?

あと、今のレイリス達はちょっと怖かったから一旦村から離れたいかな〜…なんて。

 

 

「いいんじゃないか? そんじゃクエスト受けに行きますか…っと。……クエスト受付ってどこ?」

 

「………あそこに見える大きな看板の場所か、遠くに見える『龍歴院』という場所で受注できますわ。 教えたら流石に迷子になることはありませんわよね…?」

 

 

ソ、ソンナワケナイジャナイデスカー。

俺は方向音痴ではない。ないったらない。

 

 

 

……1人だとちょっと怖かったので、セレスとラディスには装備なんかの準備ができるまで待っててもらいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あら!貴方達は確か…、ルファールさんのパーティの人達ですね! もしかしてクエストを受けにきてくれたんですか!?」

 

 

2人の案内で無事にクエスト受付場に到着しました。 今回は大きな看板が設置されている場所、ゲームだとベルナ村の村クエを受注できる場所だ。

そして着いた途端に受付嬢さんが俺たちに食い気味に話しかけてきた。

 

 

「え、えぇ。 確かホロロホルル狩猟でしたわよね? ルファールさん達が忙しそうなので、ここにいる3人で出発しようかと。」

 

「あら!それはありがたいわ! 無事にクエストを達成できたらホロロホルルがどんなものだったか詳しく教えてくれないかしら?

私、ベルナ村の観光大使も務めているものだからホロロホルルのぬいぐるみなんか可愛いと思ってたのよね。

そう思った矢先に夜鳥の出現情報が!これはチャンス! ということでよろしくね!」

 

 

受付嬢さんがものすごい速さでまくし立てる。

確かにそんな設定がありましたね…。

観光大使の方はなかなか実を結ばないイメージがあったけどさ……特産品のチョイスが微妙だと思います。ゼンマイティーってどうよ?

 

 

「それじゃあ受注人数は3人で……あ、あれ?

え、えっと…本当に…3人でいいの?」

 

 

んん?どうしたんだろう? ここには3人しかいないからそれでいいはず…

 

 

そこまで考えた瞬間、俺の肩へと誰かが手を置いた。

 

 

背中にゾクリと悪寒が走る。

咄嗟に背後を振り向くと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………迷子君?私、『待っててね』って言ったよね……?」

 

 

アカン、死んだ。

 

 

そこには全く笑ってない笑顔を浮かべたレイリスとクルルナがいました。 そして、先程の銀髪美人さん…ルファールさんだっけ?がちょっと申し訳なさそうな顔をして立っていた。

 

 

「アッ、イヤー、チョットサンポデモシテコヨウカナーナンテ…。」

 

「どうしたんです、カタコトになってますが…。 私達は怒ってはいませんよ?えぇ、ぜ〜んぜん怒ってません。」

 

 

クルルナの瞳から一切のハイライトが消えている…ッ!

不味い、どう切り抜ける…ッ!?

 

 

「なんか3人が怖くて逃げてきたとか言ってたぞ! ヘタレはヘタレだなぁ、アッハッハ!」

 

 

そんな中でラディスが爆弾を放り込みやがった。

なんてことだ。俺に救いはないのか。

 

そんな言葉を聞いて、レイリスはニッコリと笑った。 手を置かれた肩がミシミシと悲鳴をあげる。

あれ?レイリスの髪って燃えるような赤色だよね? 今はなんか血の色に見えるんだけど…。

 

 

「あはは。 そんなこと思ってたんだぁ〜。

いや、私達は話し合いをしてただけなんだけどなぁ。

それで…そのクエストにルファールも一緒に連れて行ってくれないかな?」

 

「アッ、ハイ、ワカリマシタ。」

 

 

逆らえる訳がない。俺は言われるがままに返事をして、レイリスの案に賛成した。

 

 

「それじゃあ、私達は村に残ってますから…。

トマトさん達も頑張ってきてくださいね。 」

 

 

そう言って、どこか悪巧みをしているような顔のクルルナとレイリスは村へ戻っていった。

 

 

「あっ……、なんかすまない…。 いや、私もまさか2人と君がそんな関係だとは思ってなくてな…。

ともかくさっきのことは忘れてくれ…。」

 

「あっ…いえ、なんかこっちこそスミマセン…。」

 

 

謝り合う2人。なんだかルファールさんにも迷惑かけてしまったなぁ…。

 

 

「ヘタレもルファール姉も大丈夫か〜?

準備できたらクエスト行かないか〜?」

 

 

ラディスに急かされ、ハッと我に帰る。

 

 

「あ〜…。とりあえず忘れることにしませんか? その方がいろいろ吹っ切れるだろうし…。」

 

「あ、ああ!そうだな! それじゃあホロロホルルの狩猟を頑張ろうじゃないか!」

 

 

うんうん、なんとかいい感じにできた。

今回はルファールさんとの初めてのクエストなんだ。 どんなものか楽しみです。

 

 

 

 

 

そんじゃあホロロホルルの狩猟、いってみy……

 

 

 

 

 

「あ゛っ……。 待って!私、全然準備してなかった! すぐ装備整えてくるから待っててくれ!」

 

 

お、おぉう…。 なんだか出鼻を挫かれた感じ…。

まぁゆっくりいきましょう。 急いだっていいことはあんまりないしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あれから十数分後、俺達は古代林へと向かう小型飛行船に乗っていた。

古代林ってベルナ村の近くにあると思ってたんだけど、飛行船で1時間ほどかかるらしい。初めて知った。

 

 

今回のみんなの装備は…

 

俺がまぁ、いつものブレイヴミラバル棍に会心特化装備。

ラディスがいつものギルドハンマーでケミキ装備。

セレスはストライカーでミツネ片手剣。

 

ルファールさんは……何だあれ?

 

 

「あの…ルファールさんの装備って何ですか?

見たことなくて…。」

 

「ん?あぁ、これは『闘王弓グラディエンテ』という弓さ。ちょっとマイナーだけれど、重射矢という種類の矢を撃ち出せるんだ。これがなかなかに強くてな。 最近ハマっているのさ。」

 

 

おぉう、マジっすか。重射弓ですか。

もうこの辺りから玄人の臭いがプンプンするぞ…。

 

 

「さて、と…。 それじゃあ私は一眠りさせてもらうとするよ。 セレス、古代林に着いたら起こしてくれよ?よろしく頼む。」

 

 

そう言うと、ルファールさんはあっという間に眠り始めた。

寝つきいいっすね…。 飛行船ですぐに眠れるとかすごい気がする。

………いびきが凄いんですけど。

 

 

「………ルファールさんっていつもこんな感じ?」

 

「………まぁそうですわね。 これだから25になってもいい人が見つからないのですわ…。」

 

 

………確かにこれだとねぇ。ルファールさんは足をガバッと広げ、無様としか言いようのない姿で寝ている。いくら美人でもこんなオッさんみたいな眠り方をされちゃあ幻滅されてしまいそうだ。

……ん?

 

 

「え?25って行き遅れの部類に入るの?」

 

「何を当たり前のことを言っているのです?

18〜20歳が適齢ですわよ?」

 

 

………マジかよ。 え?じゃあレイリス達も案外必死だったりしたのかな?

元の世界なら25〜30歳位でも全然大丈夫なイメージはあったけど…こっちの世界はそのあたりの感覚全然違うのね…?

 

 

「あれ?セレスって18だよな? もういい人見つけちゃったりして………ちょっ、拳を下ろせ!スミマセンでした!」

 

 

なるほど、セレスも苦労してそうだな…。

いい人見つかるといいね。

 

 

「まさか…ラディスはそんな色恋話は無いよな…?」

 

「ん?なんだ?彼氏とかそういうやつか?

まだアタシには早いかな〜。」

 

「そ、そうですわよね。 まだラディスは16ですものね!」

 

「あ、でも、故郷に仲の良かった男はいるぞ?

今でもたまーに手紙来たりするし、一緒にメシ食べたりもしてたな!アイツ、もしかしたらアタシのこと好きだったのかもな!」

 

 

ラディスさんったら案外マセてやがった。

そして、その言葉を聞いてセレスが固まった。

 

 

「い、いや…。 最悪お父様に頼めばいいお相手を見つけてくれるはず…。 そう、私はルファールさんみたいにはなりませんわ…!」

 

 

コイツ…貴族の権力を使う気かよ…。

まぁ俺が口出しする話じゃあないんだけどさ。

 

 

ルファールさんのよく響くいびきをBGMにして、飛行船での時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ルファール姉!着いたよ! ほら!シャキッとする!」

 

「むげぁぁぁ゛………。眠いぃぃ゛……。」

 

 

まるで中年オヤジの様な振る舞いをするルファールさんをなんとか叩き起こす。

 

飛行船から降りると、そこには何処か中生代を思わせるような原始の森と大草原が広がっていた。

 

 

「おぉ…。ジュラ○ック・パークみてぇ…。」

 

 

思わずそう口にしてしまうほどに、古代林は雄大な景色を見せてくれた。

山間に設置されたベースキャンプからは高い山を一望でき、遥か眼下には草木が豆粒程の大きさで見える。

おっ、あのどデカイ望遠鏡もあるじゃないか。

 

 

「ふふ、どうだい? 古代林のここからの景色は中々のものだろう?」

 

 

いつの間にかシャキッとしているルファールさんにそう声をかけられた。

うん、確かにこれは凄いです。ずっと見てられそう。

 

 

「さて、景色の余韻に浸るのもいいが今回はホロロホルルの狩猟という目的があるんだ。

あんまり悠長なことはしていられない。そろそろ出発しないか?」

 

 

ルファールさんにそう言われ、俺は改めて自分の中のスイッチを入れなおした。

うん、こういうのを楽しむのはクエストが終わってから。 だからちゃっちゃと終わらせちゃおう。

 

 

「うん、いい顔になったな。 それじゃあ3人とも、準備はいいかい? ホロロホルルの狩猟、スタートだ。」

 

 

ルファールさんがそう言葉を落とし、俺の古代林で初のクエストが始まった。

 

 

 

 

 

 

そんじゃあホロロホルルの狩猟、いってみよー。

 

 

 

 





ほい、というわけでベルナ村編スタートです。
ベルナ村編はユクモ村編ほどは長くないかなぁ…?

そして、そろそろ物語をある方向に進めていかないとなぁ…なんて思ったりしてます。


感想など気軽にどうぞ。 お待ちしてます。



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第39話 不眠のあなたに催眠療法

UA10000を突破しました。 書き始めた頃はこんなになるとは思ってなかったので嬉しいです。
読者の皆様に感謝を。

それでは本編どうぞ。




 

 

「ルファール姉はベルナ村で何してたんだ?

相変わらずとんでもないクエストやってたりしたのか?」

 

 

ホロロホルルを探して古代林を進む中、ラディスがルファールさんにそんなことを尋ねた。

そういえばレイリスがルファールさんのことを強いって言ってたな…。ちょっとその話は俺も興味あるぞ。

 

 

「ん? まぁなかなか手応えのあるクエストはやってたかな。 最近ので記憶に新しいのは……燼滅刃を防具無しで討伐したヤツか?」

 

「え、えぇ…? 防具無しってどうゆうことさ…?」

 

「いや、ある時ふと思いついてな。『攻撃に当たらなければどうということはないんじゃないか?』って思い浮かんだんだ。で、やってみた。

 

やってみて感じたことは…スキルが無いってしんどいんだなぁ……。くらいかな? あれは好んでやりたいと思わない。」

 

 

…………ちょっとまってね。

……あれ?この人、関わっても大丈夫だよね?

 

 

「な、なぁセレス…。 ルファールさんってなんか……こう……大丈夫な人なんだよね? 俺ちょっと不安になってきたんだけど…。」

 

 

セレスにそう聞いてみる。

 

 

「…………。」

 

 

セレスさんったら黙りやがった。 いや…顔が引きつって声にならないだけだ…!

まてまて、このお姉さんと一緒にクエストに来てしまったけど大丈夫だろうか。

 

 

「そういえば、君は怒り喰らうイビルジョーを単騎で撃破したとか聞いてるぞ!凄いじゃないか! 是非、今度一緒にクエストにでも行かないか?」

 

 

………捕まった。

ヤバイ。 この人多分、戦闘狂だ……!

 

『アイルーでも眺めに行かないか?』とか言って狩場に出たら、『あっ、テオにゃんと間違えてたよ。ハッハッハ!』とか言われそうで怖い。 古龍種とアイルーを一緒にするな。

 

 

「あ…。は、はい…。 まぁ機会があれば…。」

 

 

そんな機会なんぞ一生訪れてほしくないところです。

難しいクエストは嫌いじゃないけどたまにでいいんだ。 そんな毎回高難度クエストだとこっちの身がもちません。

 

 

「おっ、話をしているうちに目的地に着きそうだ。 みんな、準備はしておいてくれよ?」

 

 

そんなことを考えていたら、いつのまにかエリア4に到着するようです。

よし、一旦切り替えよう。 今はホロロホルルの狩猟に集中だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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小鳥のさえずりが聞こえてくる、木々が生い茂り木漏れ日が差し込む場所。

俺達は古代林のエリア4にたどり着いた。

 

 

「さてさて…。おっ、いるな…。」

 

 

ルファールさんがそんなことを呟いて一点を見つめる。

俺もつられてそちらを見る。

 

 

 

 

いた……。 夜鳥ホロロホルル。

 

鮮やかな青色の羽毛にアクセントとしての金色の体毛。

何処と無く道化師を連想させる特徴的な羽冠を持ったその鳥竜種は、古代林の森の中をトコトコと歩いていた。

 

うん、フクロウさんって感じ。 結構かわいい気がしますね。

 

 

「さて、それじゃあいこうか…!」

 

 

ルファールさんが獰猛な笑みを顔に浮かべた。

俺達3人はその様子をみて少し顔を引きつらせた。 やっぱり戦闘狂って感じだよなぁ…。

 

まぁ気にしてもしょうがないか。

 

 

さあ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルファールさんがホロロホルルの背後から納刀キャンセル攻撃の剛溜めをぶち当てて、戦闘は始まった。

 

俺は手始めに橙エキスを近くにいたマッカォから拝借。ホロロホルルの橙エキスはどうにも取りづらいんです。

 

こちらに気づいたホロロホルルは咆哮を放つ。

すでに翼から白エキスを取って白橙のダブルアップで金剛体効果が発動している俺は、咆哮など気にせずに頭から赤エキスをゲット。 よし、トリプルアップ完了。

 

頭はハンマーのラディスに譲るので、俺は背後に回り込んで尾羽めがけて攻撃をする。

すると、あっという間に小爆発が起こった。

流石ミラバル棍、爆破属性55は伊達じゃないな。

 

ホロロホルルが怯んだ隙にセレスは連撃、ラディスはホームランワンセットを頭に叩き込んだ。

 

ルファールさんは剛溜め攻撃の準備をして……えっ? 大丈夫ですか?

 

さっきの剛溜め攻撃を見た限り、ルファールさんの弓は曲射タイプが爆裂型。

パーティプレイでは、爆裂型は味方を吹っ飛ばしてしまうのだけど…。

 

そんな心配を他所に、ルファールさんは遠慮なく剛溜めをぶっ放した。

 

撃ち出された矢は山なりの軌道を描いて、見事に俺たちの隙間を狙って着弾。 誰も吹っ飛ばされるようなことはなかった。

 

………すごいっすね。うん、レイリスに強いって言わせるのもわかる気がする。

 

 

そんなことをしてるうちに、ホロロホルルはトサカを逆立たせて怒り状態に。

怒り移行の咆哮をイナす………かと思ったけれど、ルファールさんが頭を射抜いて怯ませた。

そういえば重射弓って言ってたな。 怯みは美味しいです。

 

ホロロホルルが怯んでいる間にも、俺は尾羽を殴り続ける。 既に部位破壊は完了している。 流石ミラバル棍だ。

 

 

そして、ホロロホルルが怯みから復帰………

したと思ったら再び怯んだ。

 

 

……………えーっと。

 

……………まさかとは思うけど、まさかねぇ?

 

 

「あ〜…ラディス! 横から頭に攻撃を加え続けてくれ! 残りの2人はそのまま後ろで攻撃して!」

 

 

ルファールさんが俺達にそう指示を飛ばす。

その間にも剛射、剛連射をホロロホルルの頭に当て続けてるみたい。

 

………おいおい、マジかよ。

 

 

とりあえず言われた通りに尾羽のあたりをセレスと2人で攻撃する。

 

そして、ホロロホルルは怯みから復帰…………

したと思ったら再び怯んだ…。

 

あ、あぁ…そういうことですか。

これはなんか…いろいろとアレだなぁ…。

 

 

「よし!いい感じだ! 」

 

 

ルファールさんがどこか興奮気味に叫ぶ。

俺達3人はそんな様子をドン引きして見ていた…。

 

 

 

そして、1分も経たないうちにホロロホルルは捕獲されてしまいましたとさ。 南無。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜!いい狩りだった! にしても…君!なかなかやるじゃないか!

片手剣と一緒に殴れる操虫棍使いなんてなかなか見ないぞ! うまくメンバーのことを気遣っている証拠だな!」

 

「あ…ありがとうございます、ハハ…。」

 

 

ホロロホルルの狩猟を無事……いや、なんか悲惨だったかもしれないけれど終えることができました。

今は村へと戻る飛行船。 みんなで元気ドリンコを飲んでます。

飛行船ダイヤの関係で時刻はもう夜。空を見ると、宝石を散りばめたような星が輝いていた。

 

 

「ルファールさん…。 さっきの戦法はどうやって見つけたのです?なんか…あんまりにあんまりな気がするのですが…。 ホロロホルルが少し可哀想に見えてきましたわ…。」

 

「いや、なんか思いついた。 こうすれば簡単に倒せるんじゃないか?とふと思いついてさ。

うまくいって良かったよ。」

 

「思いついたって…。 ルファール姉はいつもぶっ飛んでるなぁ…。」

 

 

いや…、思いついたとしてもそれをあの完成度で実行できるのがすごい。

だってあれだよ? 怯みループだよ?モンハンのタイムアタック動画出してる人と同じような動きなんだもん。

ちょっと強すぎる気がする。

 

 

「よし。この戦い方はクルルナにも教えてやりたいな。 彼女は連射弓しか使ってないみたいだからこの機会に他の弓の強さを教え込んでやることにしよう。」

 

 

あぁ…、そういえば村ではレイリスとクルルナが待ってるんだったな。

怖いなぁ…。 だって魔王みたいな雰囲気出してたよ? 今の彼女たちはどんな行動をするな予想も出来ない…。 正直帰りたくないです。

 

 

「でも、セレスとラディスの2人も少し強くなったんじゃないか?

別れる前はまだまだヒヨッコって感じだったけどなんとな〜く強者のオーラが出てきてる感じがするよ。」

 

「おっ、マジで!? やったぁ!ルファール姉にそう言われるならアタシたちも少しずつ前に進んでるんだな!」

 

 

うん、俺が言えたことじゃないかもしれないけれど、確かにこの2人は少しずつ強くなっている気がする。俺が一緒でないクエストでは、回復無しでクリアしたときもあったみたいだしね。

 

 

「うんうん、いい感じじゃないか。 ベルナ村は飛行船の往来が盛んだから各地の狩場にも1日あれば迎える。 クエストの流通も盛んだからレベルアップするにはいい場所だと思うよ。

まぁ私の推しの拠点さ。 しばらくゆっくりしていってくれれば嬉しいかな。」

 

 

ふむふむ、なるほど。 ベルナ村は飛行船が沢山あるのか。これならいろんなところでのクエストを経験できそうだ。 孤島とか火山とか行ってみたい。

 

 

「まぁいきなりのクエストだったけど、無事に終わって良かったよ。 今日は3人ともゆっくり休んでくれ。」

 

 

お気遣いありがとうございます。

あぁ…でもあの2人がどうなってることやら…。

今日はちょっと疲れたから、アレなことは勘弁してもらいたいところです…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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というわけでベルナ村に到着しました。

飛行船の発着場には村に残っている2人は来ていなかった。 う〜ん…姿が見えないのが逆に怖い。

 

 

「レイリスとクルルナはもうマイハウスに戻ったのか…?それじゃあ私たちも帰ることにしようか。

それじゃあ3人とも、今日はお疲れ様!また明日から頑張ろう!」

 

 

ルファールさんがそう締めくくって、今日は解散となった。 こうしてみると副リーダーってのはなんとなくわかる気がする。 …まぁちょっとおかしなところはあるんですが。

 

 

「そんじゃあ帰るかぁ…。 今日は何もなさそうだな…。良かった良かった。」

 

 

そう呟きながら、俺はマイハウスへの帰路を辿った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜っと…。 いや、誰がいるわけでもないんだけどな…。 まぁ…プーギーならいる…

「あらっ!トマトさん!お帰りなさい!」

「………ッ!?」

 

 

………マイハウスに帰ったらクルルナがいました。

 

え?なんで? 俺、戸締りしたよね?

 

 

「………あれ?なんでクルルナがいるの? 鍵閉めてた筈じゃ…。」

 

「あら? 私がきた時に開けて……コホン。開いてましたが?」

 

 

なんか恐ろしい言葉が聞こえたような気がするが気にしない。

 

 

「あっ、そうですか。

 

………で、クルルナは何をしに俺のマイハウスに?」

 

 

嫌な予感がするが、一応聞いてみる。

まだだ…まだ決めつけるのは早い。 まだ救いはあるかもしれない。

天使さん…俺に救いの手を差し伸べてくれよ…?

 

 

 

 

 

 

 

「何をしにって……それはもちろんナニをしにですよ…♡」

 

 

俺の頭が、即座にクルルナのことをラスボス認定しました。

 

 

「ほら、トマトさんも疲れたでしょう? 私直伝の特製マッサージをしてあげますよ…?ささ、早くベッドへ…。」

 

 

クルルナがじりじりと俺に近づいてくる。

一見、その周りには優しげなオーラが漂っているように見えるが俺にはわかる。

 

今のクルルナは捕食者の目をしている…!

これは実際に襲われた俺だからわかることだ。

獲物を怯えさせ、全てを喰らおうとする、まるでイビルジョーのような目。

 

今の俺はイビルジョーの前で怯えている草食モンスターだ。 このままでは喰われる…ッ!

 

 

「そぉい!」

 

「なッ…!? 閃光玉!?」

 

 

三十六計逃げるに如かず。偉い人はそう言いました。

ここは逃げるが勝ちだ…!

 

 

「……ッ!けむり玉まで…!」

 

 

とある薄い本で学んだ、逃走術…!

アカムの兄貴にこれほどの感謝の念を送る日が来るとは思ってなかった…!

 

 

「レイリスッ! そっちに行きましたッ!」

 

「オッケー!任せて! 迷子君は逃さないよ!」

 

 

すると、何処からともなくレイリスが現れた。

その手にはロープらしきものが。 そして此方を見据える目は、クルルナと同じく捕食者の目つきをしていた。 くそッ、こっちもイビル嬢と化したか!

 

俺の逃げ道を塞ぐ形だ…! 万事休すか…!?

 

 

「迷子君!ここはおとなしく捕まって…」

「たまるかよぉっ!」

「…!? そんなッ!?」

 

 

レイリスが俺を捕まえようと投げつけたロープ。

俺はその攻撃?を見事にジャスト回避。

 

まったく…ブシドースタイルは最高だぜ!

 

 

「アーッハッハッハ!残念だったなお2人さん! 俺はこのまま飛行船でトンズラさせてもらう…」

 

「はい残念。 ブシドースタイルは連続攻撃が弱点だな。」

 

「えっ…。ルファールさ……うっ。」

 

 

2人を背後に置き去りにして、全力で逃げ出そうとしたら何故かルファールさんの声が聞こえた。

そして、鳩尾に重い衝撃が。

 

俺の目の前が暗くなっていく…。

 

 

「さて…。今夜は楽しめそうかな?」

 

 

……アカン、このままでは死ぬ。…動け、俺の体ッ。

 

 

そんな俺の思いに体は応えてくれず、ルファールさんの呟きを最後に俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…………ッ!?」

 

「あっ。起きた? 」

 

 

意識を取り戻すと、そこは俺のマイハウスでした。

 

目の前にはインナー姿の女性が三人。

……全員飢えたような目をしてますね。アイテムボックスにこんがり肉が入ってるからそれでも食べたらどうだろうか?

 

 

「ーーーッ! ーーーッ!」

 

 

そして、大変なことに気づいた。

口に何か粘着テープの様なものが貼られて喋ることができない。

手足もベッドに括り付けられて身動きが取れない。

 

………ヤバくね?

 

 

「フフッ、トマトさんったら必至になっちゃって…可愛いですね。」

 

「大丈夫!天井のシミでも数えてればあっという間だからさ! あと、今回からルファールも加わるからヨロシクね!」

 

「と、いうわけだ。 聞くところによれば随分と楽しそうじゃないか? これからよろしくな?

苛められるのが好きだと聞いているよ。」

 

 

………待て待て、俺はそんな趣味はないぞ?

 

 

「と、いうわけで今回はトマトさんのために色々と用意したんですよ!タマミツネの滑液からケルビの角までバリエーションは盛りだくさんです!」

 

「ーーーッ!? ーーーッ!?」

 

 

マズイ…。このままでは男の尊厳とかそういったものが粉々に砕け散る…!

 

なんとか耐え抜くしかないか……!?

 

いや、俺ならできる!怒り喰らうイビルジョーだって倒せたんだ!

イビル嬢3人にも遅れはとらない筈だ!

 

 

 

「それでは……滑液から始めますね? フフフ…リラックスして私達に身体を委ねてもらうだけでいいんですよ?」

 

 

 

 

こうして1人の青年と、3人のイビル嬢との壮絶な戦いは始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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それから数日経った日の昼下がり。

 

 

「ねぇレイリス。 ここ何日かヘタレのこと見てないんだけど、どうかしたのかな?」

 

「えっ!? あ、あぁ! なんか体調崩しちゃったみたいなんだよね! 今はゆっくり休んでもらわなきゃ! 顔とかも瘦せこけちゃって大変…セ、セレスったらなんでそんな目で見てくるのさ…。」

 

「もう何も言いませんわ…。」

 

 

パーティメンバーに問い詰められて、慌てている女性の姿がありましたとさ。

 

 

 

 




ほい、ホロロホルルとイビル嬢でした。

最近、毎日忙しいのでなかなか更新頻度を上げることが難しいです。
更新を毎日心待ちにする…というよりは、おっ更新されてるじゃん。程度の期待でいてくれるのがちょうどいいかもしれません(´・ω・`)

感想など気軽にどうぞ。 お待ちしてます。




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第閑話 青年と少女

「あら、こんなところにいたのね。」

 

 

ふと少女から声をかけられた。

うん、月を眺めるのは好きだからさ。特にここは高い場所にあるんだから絶景だ。

 

 

「あぁ、あの3人からは逃げ出して来たよ。

まぁ…3人といっていいのか微妙だけどさ…。ありゃ3匹って言った方が正しくないか…?」

 

 

そう言葉を返すと少女はクスリと笑った。

 

 

「フフッ、まぁそう言わないであげて? あの子達も貴方みたいな人を見つけられて楽しいのよ。

『こんなに楽しい毎日は初めて!』って言ってたわ。」

 

 

少女は愉しげに言葉を落とす。 うん、まぁオレがいるおかげでみんなが楽しいのなら万々歳かな?

 

 

「………君も大変だな。 いつも我慢してるように見えるよ。」

 

 

少女にそう言葉をかける。

オレがみんなと一緒になってからそれなりの時間が経ったけど、この少女は周りのみんなとは違い、いつも何かを我慢したように一歩退いているような…そんな気がする。

 

 

「………だって、それが私の役割だもの。 1番上に立つ者としてのね。

『アナタ』がもっと頑張ってくれれば私も楽しくいられるんだけどね?」

 

 

そういって少女に睨まれる。

 

す、すいません…。いや…だって、オレって立場弱いじゃんか。 頑張ろうにも頑張れないって。

それにこればっかりは俺がどうしようと解決しないでしょ。

 

 

「あの天使さんも、もうちょっと気前が良ければいいんだけどなぁ…。」

 

「ワガママ言わないの。 あれは理外の存在よ。

下手したら何をしでかすかわからない。

最悪、この世界だってきゅっとしてドカーンよ?」

 

 

おぉ…怖いですね。 どこの吸血鬼だ。

 

 

「まぁ…貴方に何か言っても始まる話でもないかしら? 気長に待つことにするわ…。

それに、貴方にだって出来ることはあるはずよ? 毎日ハンターとしての腕を磨けば、いずれ来る日のためにはなると思う。

 

その時には、一緒に楽しみましょうね?

最高の舞踏会を開こうと思ってるんだから…。」

 

 

そう言って、少女は消えていった。

 

ハハ…最高の舞踏会ね…。武闘会の間違いなんじゃないだろうか。

まぁ、ハンターとしての腕を発揮できるんならウェルカムです。

 

ただ…こればっかりはどうもなぁ…。

あの少女が我慢しているのは見てるこっちも少し辛い。けれど、オレにはどうにもできないんだよなぁ…。

オレがどうこうしようと何も変わらないのがちょっと悔しい。

 

 

 

 

『モンスターハンター』か…。

 

早い所、その高みにいってもらいたいところだけど…。

てか、オレだって頑張らないと。 まだまだ力は磨けるんだから。

舞踏会に招待された時のために頑張っとかないとね。

 

「くあぁぁ…。 流石に眠い…。 オレも寝るかぁ…。

 

……あの3人はもう突撃してこないよな?」

 

 

3人に少しだけ怯えながらも、オレは自分の寝床へと向かった。

 

 

 

「おおっ。すごいな。 なんていうんだっけ…。月食だっけか?」

 

 

 

空には、欠けたままの月が光り輝いていた。

 

 

 

 



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第40話 ベルナスとシナトマのパスタ


前回書き忘れてましたが、ルファールさんの防具の外装はディノXシリーズです。

それでは本編どうぞ。



 

 

 

 

「ほいほいっと… まぁこんなもんかな。 食べてみてよ。」

 

 

テーブルに座っているレイリスにパスタを盛り付けた皿を差し出す。 パスタの上にはシナトマトやベルナス、挽肉がたっぷりと入った真っ赤なソース。 『ベルナスとシナトマのパスタ』と呼ばれる料理だ。

 

 

「おおぉ…。 見た目は美味しそうだね…。それではいただきます…。」

 

 

フォークを手に取り、パスタにソースを絡ませつつ器用にクルクルと巻き上げるレイリス。

そして、一口大に巻き上げたそれをパクリと頬張った。

 

 

「あっ、おいひい! おいひいよ!」

 

 

パスタを口に含んだまま、満面の笑みで美味しいといってくれました。良かった。

 

 

「何これ? な〜んか普通と違う風味がするんだよね〜。すごくおいしい!」

 

「あぁ、多分モガモガーリックをちょびっと入れてるヤツかな? ニンニクって少し入れると結構変わるんだよ。 ……ちょっと匂うかもしれないけど。」

 

「匂いなんて全然問題ないかな? それにしても迷子君は料理も出来ちゃうんだね! 」

 

 

まぁ料理って楽しいからね。 特に男なんて無駄にこだわるから案外ハマってしまうもんだ。俺も一時期ハマってたんです。乙女座男子の料理力を舐めるな。

 

 

「まぁハマってた時期があったしな…。さて、向こうはどうなって……」

 

 

俺がそう言葉にした途端。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボフンッ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

向こうのマイハウスから黒煙が噴き上がった。

 

 

「あちゃあ……。 またやらかしたかな……?」

 

 

レイリスが頭を抱えて呟く。 本当に黒煙が上がるなんてことがあるんですね。初めて見た。

 

 

「とりあえずこれを食べ終わってから見に行くことにするよ…。 なんで料理を作る過程で爆発が起こるかなぁ…。」

 

 

料理を作る過程で爆発ねぇ…。 ちょっと想像ができない。不謹慎だけど少しだけ楽しみな俺がいます。

レイリスが気持ち早めにパスタを頬張っているのを見ながらそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「う〜わ…。 なんじゃこりゃあ…。」

 

 

場所は変わってルファールさんのマイハウス。

その中には、とても女性の住んでいる部屋とは思えないゴミ置場の様な景色が広がっていた。

 

 

「んもう…。 ルファールはまだ片付けてないのかな…。 うげっ…この服とか半年前も同じ場所にあった気がする。」

 

 

ええ…マジっすか。ルファールさんったら残念な女性じゃないか。 いい男性が見つからないとか言ってたのも納得だ。

 

 

「多分あっちがキッチンだよな。 まだ煙出てんぞ…。」

 

「うわぁ…。 私もう進みたくないよ…。 私はここら辺片付けるから、迷子君はキッチンの方見てきてくれない?」

 

 

おぉっと…レイリスから偵察を押し付けられてしまった。……まぁ怖いもの見たさもあるからそこまで嫌ではない。

クルルナもいるはずだから行ってみることにしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………。」

 

「………………。」

 

「あ、あの〜……お2人さん? 黙ったままじゃ何が起こったのかわかりませんぞ?」

 

 

ルファールさんのマイハウスの中にあるキッチンへと進んだ俺。そこでは、頭を爆発させて銀たわしのようにしたルファールさんと、頭にパスタをぶちまけられたクルルナがいました。

控えめに言って地獄絵図だ。 何がどうしてこうなった。

 

 

「ルファールさん…? 濃赤色のキノコはニトロダケだから、料理には使えないと言いましたよね? なのに、なんでパスタを温めたら大爆発するんでしょうか?

それに……この草はクイーンパセリじゃなくて火薬草ですよね? わざとやってるんですか?」

 

「い、いや…色が濃いキノコの方が美味しいかなぁ…と。 あ、あと…クイーンパセリと火薬草は違いがよくわからなかった。」

 

 

クルルナがニッコリ笑顔でルファールさんに尋ねる。 クルルナさんったらマジ怖い。 パスタの間から覗かせる目が尋常じゃない威圧感を放っている。

 

 

「ほ、ほら!最初は誰だってうまくできるもんではないだろう!? だからクルルナもそんなに怒らないで…。 あっ。ごめんなさい…。 やめてっ!双剣に手を伸ばさないでっ!」

 

 

ルファールさんの言い訳を聞いたクルルナが双剣に手をかけた。 まてまて、ギルドナイト案件は流石にまずいでしょうが。

いや、この2人ならギルドナイトが来ても撃退したり……ないよな。

 

 

「ま、まぁ一旦落ち着かないか? ほら、ルファールさんもしっかりクルルナの言うこと聞いてください。」

 

「おぉ…。やっぱりドM君は優しいな! ハンターならそれくらいの器の広さがないとな!」

 

 

 

…………ちょっと待て。 ドM君ってなんだ。

 

 

 

「え? だってなんだかんだ君はそんな感じじゃないか。 オトモ君達に聞いたけれど、怒り喰らうイビルジョー相手に笑いながら立ち向かうなんてマゾ以外の何者でもない気がするけど…。」

 

「クルルナ。 最高に厳しい指導をよろしく。」

 

「はい。わかりました。 みっちり教え込みますね。」

 

「えぇっ!? ドM君も裏切るのか!?」

 

 

すまないルファールさん。 天使の救いの手はないみたいです。

 

 

てかドMってさぁ…。 何?俺のあだ名はロクな奴がつけられないの? もっとイケメン君とか呼んでくれていいんですよ?

 

 

涙目のルファールさんを置いて、俺はそんなことを考えながらその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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村のそこいら中にいるムーファを撫でながらぼんやりと時間を潰す。今日はどうやら届いているクエストも無いらしく、完全なオフの日。

だからさっきみたいな料理をする余裕があったわけだけど、こうしてみると案外とやることが少ない。 ドンドルマの街みたいに魚釣りが出来る場所があったなら普通に入り浸るんだけどなぁ…。

 

なにか面白そうな物はないかと村中を歩き回ることにした。手当たり次第にムーファを撫で回していたら、俺の後をついて来るムーファの数がちょっととんでもないことに。 これはちょいと多すぎるかな…?

 

 

そんな感じで歩いていた時のことだった。

 

 

 

 

「ハッハッハ! こいつは随分と面白いもんを見れた! お前さんが最近噂のハンターか?」

 

 

 

ふと、大きな声をかけられた。

 

んん? この口調はどことなくゲームで見た覚えが…。

声をかけられた方向をみると……あぁ、やっぱりこの人でしたか。

 

 

 

「うんむ!噂に聞いた通りのいい面構えだ!

 

はじめまして! 俺は世界を回るキャラバン隊『我らの団』の団長をしているもんだ!よろしくな!」

 

 

そこにはウエスタンな外見をした、渋い感じのイケおじさまがいました。肩にあの白い鳥も止まっていた。

はじめまして…。とはちょっと違う気もするけど、こっちの世界では初対面だから当たり前か。 MH4の頃はお世話になりました。

 

 

「あっ。はじめまして。 我らの団は知ってますよ。 それで……俺になにか?」

 

 

急に声をかけてきたのだからなにかあるに違いない。 興味が湧いたので尋ねてみた。

 

 

 

「あぁ、ちょいと待ってくれ。 どれどれ…?」

 

 

団長さんはそう言うと俺の周りを歩き、俺の装備やら何やらをじっくりと見始めた。

 

団長?なにやってんだよ?団長!

いや…悪ふざけはやめるにしてもちょっと行動が意味不明です。 俺の体になにかおかしな所でもあっただろうか? 男性に体をジロジロと見られるのは変な誤解を生むのでやめてほしいんですが…。

 

 

「あぁ、すまない。 一つだけ聞いてもいいか?

 

ハンターさんは何の武器が好きだい? もしかして操虫棍だったりするか?」

 

 

俺の観察?を終えた団長さんは俺に質問を投げかけた。

いや、正解なんですが…。 この人はエスパーか何かですか?

 

 

「え…あ、あぁ。 たしかにお気に入りは操虫棍ですね。 それが何か?」

 

 

団長さんの観察が終わるのを待っていたムーファ達は、観察が終わった途端に俺に突撃してくる。

ムーファ達に揉みくちゃにされながらも、俺は団長さんの質問に答えた。

 

 

「はっは!やっぱりな! お前さん、どことなくウチのキャラバン隊専属のハンターに似てるんだ!アイツも操虫棍が好きだったからな。 」

 

 

むむ? 我らの団専属ってことは…、MH4シリーズの主人公ですよね?

 

 

「知ってるか? 以前、大陸中で狂竜ウイルスが猛威を振るった際に大活躍をした、我らの団が誇るハンターさ!

最近では狂竜化したモンスターはめっきり減ったが、これもアイツのお陰と言っても過言ではないな!

今この村にいるらしい『英雄』パーティにだって負けてはいないと思うぞ!」

 

 

ふんふんなるほど。 やっぱり主人公さんのことでしたか。 会えるものなら会ってみたいね。

 

 

「なるほど。その人に会えたりしますかね?是非、朝まで操虫棍について語り明かしたり…。」

 

「あぁ、すまない。 アイツは今、旅に出てるんだ。 たまには連絡でもよこせばいいものだがここ何か月かは音沙汰なしだな。

まぁアイツに限ってくたばることなんて想像できないからどこかでふらりとしていることだろうな!」

 

 

あら、それは残念…。 操虫棍の魅力について語り明かしたい所だったけど…。 まぁいずれそういう機会も訪れるだろう。

 

その後も、団長さんとキャラバン隊のメンバーについての話をしたりした。 あとイサナ船も見ました。 イサナ船は好きでした。 乗れる機会があったら乗りたいもんだ。

 

 

 

とまぁ、そんな感じで過ごしていたら結構な時間が経っていた。 団長さんも用事が入っているとの事でお別れ。 うん、いい人に出会えました。

 

 

さて…ルファールさんの料理がどうなったか見に行ってみますか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ど、どうだ…? 結構自信作なんだが…。」

 

 

場所はルファールさんのマイハウス。家の中にあるテーブルにはクルルナが座り、その前には美味しそうなパスタが盛り付けられていた。そして、そんな様子を見ている俺とレイリス。

……パスタの見た目は美味しそうだけど、味は一体どうなのか?

 

 

「そ、それではいただきますね…。」

 

クルルナがパスタをフォークに巻きつける。 その様子をドキドキしながら見る3人。なんだこれ…料理番組みたい。

 

クルルナが嫌な顔をしつつも、パスタを口の中へと運んだ。 3人は固唾を飲んで見守る。

 

 

「こ、これは……。」

 

 

一体どうなんだ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しい!美味しいですよ!ルファールさん!」

 

「本当に!? 本当の本当か!? やった!やったよレイリス! 私成長した!」

 

 

………パスタが作れただけなのに物凄い喜びようだ。 料理に関してはよっぽど残念だったんだろうな…。

 

 

「うん、良かった良かった。 じゃあ、私と迷子君も少しもらおうか?」

 

「これは食べた方がいいですよ! あのルファールさんが作ったというだけで価値があります!」

 

 

それじゃあ、少しもらうことにしようか。見た感じキノコのパスタって感じかな? 美味しそうです。

 

 

「早く食べないと冷めちゃってもったいないですよ!

ほら!はやく2人と……も………。」

 

「ク、クルルナ? どうしたの?様子が変だけど…。」

 

 

俺達にパスタを勧めたクルルナが急に沈黙した。その顔からは汗が滝の様に噴き出している。

 

……う〜ん、なんか嫌な予感がする。

 

 

「ぁ………。カハッ………。」

 

「ちょっ!? クルルナ!?どうしたの!?」

 

 

……クルルナが急に苦しみだした。異変に気付いたレイリスがすぐさまパスタを一口だけ口にして、すぐに吐き出した。

 

 

「ちょっ……。これってマヒダケじゃんか!ルファールは何入れてんのさ!?」

 

「えぇっ!? それって食べれるんじゃないの!? 硬化薬と同じ効果っていってたじゃないか!」

 

「それはキノコ大好き発動させた時の話でしょうが!! そのままで食べたら毒テングダケより危ないキノコなんだよ!?」

 

 

ちょ、ちょっと2人とも…。 クルルナが悶えてるんですけど…。 体を痙攣させ、口からは泡を吹いている…。 ちょいマズくないですか?

 

 

「迷子君! すぐにいにしえの秘薬と解毒薬をありったけ持ってきて!

コラァ!ルファールはハンマー持って何しようとしてんのさ!?」

 

「い、いや…。 麻痺状態の解除には吹っ飛ばすのが1番かと…。」

 

「んなわけないでしょうが! 迷子君はやく! このままじゃクルルナがルファールに殺される!」

 

「ぁ……カッ……。」

 

 

それは大変だ。 俺はすぐさま、自分のマイハウスへと踵を返した。 ルファールさんのアイテム使うべきじゃね?とか思ったけれどとりあえず口に出すのはやめておいた。 立場弱いんです。

 

 

 

 

 

……なんかドタバタしてはいるけれど、今日は楽しい一日になりそうです。

たまにはこんな日があってもいいかな?

 

アイテムを取りにマイハウスへと向かいながら、そんなことを考えた俺でした。

 

 

 






日常回?でした。

前回に意味ありげな閑話を入れたので、そろそろ本編も完結に向けて進めていかないとなぁ…なんて思ってます。

感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。



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第41話 跳梁し意思を用いず悪成さば



更新が遅くなってしまいました。すみません……。

それでは本編どうぞ。




 

 

 

「なるほど、ゴマさんですか。」

 

「ゴ、ゴマさん…? えっと…とりあえず、今回来ているクエストは古代林でのゴア・マガラ狩猟となってますね。」

 

 

龍歴院のクエスト受付にてそんな会話を交わす俺と受付嬢さん。 この間、ホロロホルルのクエストを出してくれた人とは別の人です。確か『ヴィオラ』って名前があったハズ…。

公式でスタイル抜群と言われるだけあってなかなかの美人さんでした。 ただ、そんなことを考えてたらレイリスの方から威圧感を感じたのですぐに正気に戻った。 レイリスさんったらマジ怖い。

 

傍では背中に大きな本を背負ったアイルーがトコトコと歩いている。

………お前も大変そうだな。

 

 

「ねえレイリス。ゴア・マガラってどんなヤツだっけ……?」

 

「えーっとね…。 黒くて色々撒き散らしてるバケモノかな。」

 

「あぁ!アレか! なんかブワッとなって角が生えるヤツね!」

 

 

こらこら。アンタ達はゴマさんになんて事を言うんですか。

黒光りするアレを思い浮かべるとか言われてるけれど、俺はゴマさんのことは好きです。

前脚に弱点特効が通るのが素晴らしい。そのおかげでポンポン転んでくれるので、とっても戦いやすいです。 狂竜ウイルスで会心率上げてくれるし。

 

…………こう見ると、俺もどうかと思うなぁ。

 

 

「えーっと…今回はこの3人にネコだったよな。」

 

「そうだね。 クルルナとセレスは簡単な採集クエストに行ってるし、ルファールは龍識船に常駐してる知り合いのハンターさん達に会いに行ったから。」

 

 

あら、ルファールさんは単独行動なのか。 やっぱり知り合いも多いんだな。

ルファールさんの知り合いとかどんな人なんだろう……。 一味違うハンターなのは間違いなさそうだ。

それこそアカム武器とかのキワモノを使うハンターだったりして…いや、それはないだろ。

 

 

「んじゃあオトモ呼んでくるからちょいと待っててくれ。今回はどいつにしようかな…。」

 

 

最近はネコ達もクエストに連れて行ってやれてなかったな…。 今回は思う存分暴れさせてやることにします。

 

 

それじゃあ、ゴア・マガラの狩猟。

いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ニャっはー! 久々の出番だニャ! さて、ゴ○ブリ野郎はどこニャ!?」

 

「落ち着けって。 多分エリア6とかにいるだろ。」

 

 

というわけでやってきました古代林。 なんというか予想通りと言うか、オトモはヒャッハーテンションです。 最近出番なかったもんなぁ…。

 

 

「その通りだニャ。 前回オトモが登場したのは4/28に投稿された話だから実に1ヶ月以上ご無沙汰してたのニャ。 全くひどい話だニャ。」

 

 

おいコラ、メタな話をするな。レイリスとラディスがよくわからない顔をしてるじゃないですか。

ほら…作者だって忙しいんだからさ。 そこは大目に見てあげなさい。

 

 

「ほら、迷子君もへんなこと口走ってないで早く行くよ? 」

 

「あ…うん。なんかすいません…。」

 

 

なんだか理不尽だと感じながらも、とりあえず出発することにした。

う〜ん…。やっぱり立場が弱いなぁ…。 腑に落ちん。

 

 

今回は俺がギルド操虫棍。レイリスがブレイヴ大剣。ラディスが…ブシドーハンマーですか。

あ、ネコはビーストオトモのマダイ君です。

 

まぁ今回もチャチャっと終わってしまうだろうけど…頑張りますか。

 

そんなことを思いながら、俺達はエリア6へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、エリア6に到着したけど…。

 

 

「うん、いたね。 それじゃあ私が斬り込むよ、2人とも準備はいい?」

 

 

いました。黒蝕竜ゴア・マガラ。

赤黒い鉤爪が付いた翼脚を折りたたみ、不気味な姿で平原を闊歩している。

………うん、実際に見ると怖いですね。 これはバケモノとか言われてもしょうがない気がする。

 

レイリスの問いに俺達は頷いて答える。それをみたレイリスはニコリと笑い、ゴア・マガラへと駆け出した。

さて、大丈夫だとは思うけど気を引き締めてかかろう。

 

 

さあ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイリスが出会いざまにW抜刀の効果が乗った攻撃をゴアの頭にぶち込んだ。

俺達に気づいたゴアは咆哮を放つ。俺はそれをフレーム回避…………しようとしたけれど失敗しました。

……ま、まぁこういうこともあるよね。

 

咆哮を放ち終えたゴアはそのまま硬直している俺に突進をぶちかました。俺はもちろん避けることなんて出来ずに被弾。クソが。

 

「ちょっ…こっち来んなぁ!?ぶげっ…。」

 

 

あらら…ラディスも巻き込まれたみたいですね。 でもアナタは龍気活性が発動してからが本番だからむしろ都合がいいのでは?

 

さてさて、ちょいとつまづいたけれどここから立て直そう。

手始めに前脚から白エキスを頂戴する。 そして、すぐさま頭から赤エキスもいただき………たかったけれど、ゴアさんったら思ったより振り向くのが速かった。

そのせいで虫は翼から橙エキスをゲット。 ……ま、まぁトリプルアップしようとしてたところだから別に構わないさ。

 

次こそは頭から赤エキスだ。頼むよエルドラーン。

そんなことを考えながら頭へと虫を飛ばす。

 

 

そして、ゴアさんは華麗に車庫入れバック。虫は虚しく中空を通り過ぎた。

 

 

…………お、落ち着け。 大丈夫。これはちょいと物欲センサー的な何かが働いてるだけ。まだキレるには早い。

 

 

そんなことを考えるとゴアは再び咆哮の構え。

おっしゃ、次こそはフレーム回避を………はい、失敗しました。

 

そして、ゴアはさっきと同じように俺に突進。もちろん被弾しました。キレそう。

 

 

「だ、旦那さん…。顔が怖いニャ…。こういう時こそ落ち着くニャよ?」

 

 

わ、わかってるって…。平常心。じっくりチャンスを待つんだ…。

 

 

「よしっ!スタンゲット!」

 

 

すると、俺がぶっ飛ばされている間にもキッチリ頭に抜刀攻撃を決めていたレイリスがゴアからスタンを奪い取った。

 

 

「レイリスさん素敵!結婚して!」

 

 

思わず声に出てしまった。 すると、レイリスの切り上げが暴発。

頭付近でラッシュをかけていたラディスが空高くカッ飛んだ。

 

 

「ちょっ…なんでさぁ〜っ!?」

 

「ゴ、ゴメン!」

 

 

まぁ、人生そういうこともあるさ。ラディス、強く生きろ。

 

さてさて…今まではよくもやってくれたな? こっからはこっちの番だ。

 

ダウンから復帰したゴアに駆け寄り、前脚に2連切り上げ。

そこで小爆発が発生し、ゴアは再びダウン。

頭はラディスとレイリスに譲り、俺は前脚付近で邪魔にならないようにラッシュをかける。

 

会心が発生した時特有の手応えを感じながら斬りつけまくり、ゴアの体で再び小爆発が起きた。うん、いい感じ。

 

そしてゴアはダウンから復帰。さて…3人に1匹で殴りまくってるからそろそろくるか?

 

なんて思ってたら、案の定ゴアは狂竜化。

背中に格納していた翼脚を地面に叩きつけ、翼膜を大きく広げた。

頭部からは角の形をした感覚器官を展開させ、大量の鱗粉を撒き散らすと同時に天に向かって大きな咆哮をあげた。

もう禍々しいなんてもんじゃない。今まで見たモンスターの中では圧倒的な恐ろしさだ。

 

 

 

けど…こういう状況は大好きなんです。

 

 

 

相手はパワーアップして本気で倒しにかかってくる。だけど、その戦いがたまらなく楽しい。

 

 

 

そんじゃあ…本気の戦いを始めま

「「うるさいッッ!!」」

 

 

……レイリスとラディスが咆哮を終えた直後のゴアの頭目掛けて渾身の溜め攻撃をぶち込んだ。

 

ゴアはたまらず怯んで仰け反る。

 

 

「隙ありニャ!」

 

 

そこへマダイが追い打ちをかける。

両手の爪から火花を散らしながら、ゴアの頭を一閃。

ゴアの狂竜化は10秒かそこらで解除された。

 

…………ゴアさんの扱いあんまりじゃない?

 

 

「よし!いい感じ!ささ、もう一押しだよ!」

 

 

ま、まぁ、狩りがスムーズに進んでいることは確かなんだ。 集中しなきゃ。

 

通常状態に戻ったゴアの頭めがけて、レイリスとラディスは再び攻撃をぶちこむ。

だけど、ゴアはその場でバックジャンプして対空状態へ。 あっ…これは嫌な予感。

 

 

その予感の通り、ゴアは風圧で怯んでいる2人目掛けてブレスをぶちかました。

 

そしてゴアは羽ばたいたままでこちらを向く。

 

 

……来るか? いいよ、こっちも迎え撃ってやるさ。

 

こちらに突撃しようと、一瞬だけ高く浮かび上がるゴア。

 

それを見越していた俺は、溜まっていた狩技ゲージを解放する。

 

実は回復はしていない。だから序盤のダメージがけっこう体に溜まっている。

それでも、さっきのリズムを崩したくはなかったから回復はしなかった。

 

こんな状況で滑空攻撃を食らったらなかなかのピンチですな…。まぁいいや、なんとかなるさ。直感を信じよう。

 

ゴアは猛スピードで俺に滑空突進をしてくる。

恐ろしげな顔をこちらに向け、翼を大きく広げた突進。

 

俺は棍の先端に猟虫を留めさせる。そして、渾身の力で操虫棍を振り抜いた。

 

 

 

猛スピードで飛んでいった猟虫は空中でゴアとぶつかり合い……

 

 

 

 

 

 

空中にいるゴアを叩き落とした。

 

おぉ…良かった。無事成功しました。

 

 

 

「スッゲー!やるじゃんヘタレ!」

 

 

ふっふっふ。まぁこんなもんですよ。

 

 

「おう、褒めろ褒めろ。 ほれ、あんまり喋ってないで早くラッシュかけないと。

多分あと一押しってところだろうから頑張ろうぜ。」

 

 

俺は撃墜されたゴアに駆け寄り、ラッシュをかける。

うん、この調子なら問題なさそうだ。

 

 

それじゃあ……今回も勝たせてもらうよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ふぅ………お疲れさん。 なかなか順調だったな。」

 

「うん!ヘタレの撃墜はカッコよかったぞ!な?レイリス?」

 

「えっ…? あ、あぁ、うん。」

 

 

その後、特にピンチに陥ることもなくゴア・マガラを討伐しました。

それで剥ぎ取りを終えた訳だけど……レイリスの表情が浮かない。

 

 

「迷子君、ちょっとこっち来てくれる?」

 

 

なんてことを思ってたら本人に呼ばれました。

んん?一体どうしたんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

少し離れた場所に来た途端、レイリスは浮かない顔のまま口を開いた。

 

 

「さっき、狩技でゴア・マガラを撃墜した時だけど……。危なすぎるよ。」

 

 

………そういうことですか。

う〜ん。確かに楽観的すぎたかもしれないかな…。普通に考えたら滑空攻撃なんて避けるのも簡単なんだから、あの時の俺は回復なりをするべきだったと思う。

 

 

「あ……。確かによくよく考えたら危なかったな…。 」

 

「なんで迷子君はああいう場面であんな行動が出来るのさ…?」

 

 

あぁ…レイリスさんったら怒ってるみたい…。

ちょっと怖い顔をしてるよ…。

 

 

「今回の動きはちょっといただけないね…。 だからちょっとお仕置きすることにするよ。」

 

 

ん?お仕置きですとな?

 

そう考えた瞬間、レイリスが大剣で切り上げをぶっ放す。 そして俺の体は空高くにぶち上げられた。

 

 

「ぶげっ…。お、お仕置きってそういうことですか……。」

 

「うん。ネコちゃん達にそう言われてるからね。次におんなじようなことがあったらまた吹っ飛ばすことにするよ!」

 

 

あらやだ、レイリスさんったらなんて眩しい笑顔なんでしょう。

 

……まぁ俺に非があったことは間違いないかな。

変に心配させちゃったなら反省しないとだ。

 

 

「よし!それじゃあ帰ることにしようか!お腹も空いたから早くベルナ村で美味しいものが食べたいよ…。」

 

「うし、そんじゃあ早いとこ帰ろうぜ。他のみんなも戻ってきてるだろうしさ。」

 

「うん!」

 

 

そんな会話を交わして、俺達は帰る準備を始めた。

暴走癖かぁ…。 治るもんじゃないかもしれないけれど、こうして心配をかけてしまうのなら少しずつ治していけたらいいな…。

 

そんなことを考える俺でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クルルナとルファールにもお仕置きしてもらわないとね……。」

 

 

 

帰りの飛行船で、レイリスさんがそんなことを呟いた。

 

………マジすか。

 

 

 

 

 





ゴアさんでした。
扱いが酷いかな…?なんて思いましたが、ゲームでも案外こんな感じだったので…。

リアルが忙しく、更新が滞ってしまい申し訳ありません。気長にお待ちいただければありがたいです。


感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。


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第42話 彗星のカケラはどこに?


更新が遅くてすみません……。
なかなか時間が取れない……。






 

 

 

 

「さて…と。 あっ、ありましたね。」

 

「う〜ん。この素材って一体なんなのでしょう。クルルナさんはご存知でして?」

 

「いや…私もそこまでよく知ってるわけではありませんね。 防具合成の際に使用するということくらいです。」

 

 

目的の素材を採取しながら軽く言葉を交わす私とセレス。

今回、私達は高高度に存在する狩猟フィールド『遺群嶺』に来ています。クエスト内容は『灼けた甲殻』の納品。大型モンスターの出現も確認されてない様なので簡単な依頼ですね。

 

 

「それにしても…不思議な素材ですわね…。

小さいとはいえ、地面にクレーターができるなんて…。ここだって相当な高度のはずですが、これはどんな高さから落ちて来たのやら…。」

 

「今回の依頼はその謎を解明するための第一歩らしいですよ? 龍歴院の研究機関がこの素材の研究を進めているらしいですし…。」

 

「仮にモンスターが落とした物だとしたらその本体は一体どんなヤツなのか…。 この更に上空を飛行するなんてリオレウスですら不可能ですわ。」

 

「ふふっ、想像は広がりますね。 仮にモンスターだったとしたら私達に狩猟の依頼が来る可能性もありますよ。それはそれで楽しみじゃありませんか?」

 

「それはまぁ…。 いや、でもとんでもないモンスターだったら勘弁願いたいのですが…。」

 

 

灼けた甲殻を探しつつお喋りをする私達。目当てのアイテムをかき集めるために、遺群嶺を駆け回ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ。大龍神カズラも集めておかないといけませんわね…。 これがまた地味なところで足りなくて…。」

 

「えぇ、わかります。 なんでこんな植物を武具の加工に使うんでしょうね…。ツタの葉とかでも事足りそうな感じはあるんですが…。」

 

 

ちょっとした愚痴をこぼしながら、足りない素材の収集もする私達。 灼けた甲殻は結構な数が集まったのでもうベースキャンプに戻ってもいいくらいですが…。

 

 

「どうします? ここまで来たならいっそのこと頂上まで行ってしまいませんか?」

 

 

今私達がいるのはエリア7。 エリア9まではほんの少しでついてしまう距離です。

 

 

「そうですわね…。 それじゃあてっぺんまで行くことにしますわ。 灼けた甲殻もあるでしょうし…。」

 

「わかりました。それじゃあ早い所向かっちゃいましょう。」

 

 

私達はエリア9へ向かうことにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「しかし此処は本当に高い場所にありますわね…。

こんな所にモンスターなんて来るのかしら…。」

 

「今の所、此処を寝床にするモンスターはいないはず……いや、渾沌に呻くゴア・マガラがいましたね。

ともかくほとんどいないことには変わりありません。まぁ今の所は、ですが…。 いずれ新種の古龍などが見つかったらありえるかもしれませんね。」

 

 

エリア9へと辿り着いた私達はそんな会話を交わします。

太陽と月が同時に見える程の高度にあるこのエリア。風は吹き荒び、雲海ですら遥か眼下に広がる光景。地面や壁面には亀裂が走り、よくわからない赤い閃光が迸っています。

確か今の所、此処に出現するモンスターは確認されてない筈。

たとえ此処に棲息するとしても、この過酷な環境さえ平気な生き物…それこそ古龍などでしょう。

 

 

「あっ。灼けた甲殻がありますね。 さっさと集めて帰ることにしましょうか。

……この高度でもクレーターを作るなんて、この素材は一体なんなのでしょうね?」

 

 

エリアの端に刺さり、クレーターを作っている灼けた甲殻を集めながらそんな言葉が溢れます。

 

 

「…………。」

 

「……? セレス? どうしました?」

 

 

ふと、セレスが地面や壁面に迸っている閃光を凝視していることに気づきました。

 

 

「いや…この赤い閃光があるじゃないですか。

これって…あの、ラディスのよくわからないスキルで発現する光に似てませんこと?」

 

「そういえば……似てますね。」

 

 

言われて初めて気づきました。

ラディスが装備している装飾品によって発現するあの赤い閃光。

此処の壁や地面に迸っている光はその光にそっくりです。

 

 

「クルルナさんもあのスキルについて詳しいことはわかってないのでして?」

 

「ええ、そうですね。 体力の減少によって発動するということと、ラディスの力が湧いてくるという感想から『底力』の様な効果だとは思うんですが…。」

 

 

以前、ラディスが白い防具を纏った少女のハンターから譲り受けたという謎の装飾品。

本来なら自分の力に見合わない…身の丈に合ってない防具を身につけて誤解を招く事を避けるために、ハンター同士での装備品の譲渡は禁止されています。

ですが、あの銀色に輝く装飾品らしきものはギルドから装飾品だとの認定を受けずにラディスの手に渡りました。

 

そして、その装飾品で発動するスキルもまた謎に包まれた存在です。

各地の工房にあたってみても、『そんな効果のスキルはわからない』との答えしか返ってきませんでした。

 

 

「ラディスに装飾品をくれたハンターさんに会うことができれば謎も解けるんですが…、私達のツテを使ってもそんな人は見つからないですし…。」

 

「謎ですわね……。 もしかして変態なら知っていたりして……?」

 

 

いやぁ……いくら物知りなトマトさんでもそれはないでしょう。

 

 

「まぁ考えたって始まりませんよ。

とりあえず今日の所は帰ることにしましょう?灼けた甲殻も集まったことですしね。」

 

「ええ、そうですわね。

 

それじゃあ………」

 

 

 

 

 

セレスはそう言うと、切り立った断崖の方を見つめました。

 

 

 

 

 

「クルルナさん!先にどうぞ!

私は崖伝いにゆっくり降りていきますわ!」

 

「いやいや……できた先輩というのは後輩に先を譲るものですよ?

ほら?早く飛び降りなさい?」

 

 

 

 

 

エリア8へ移動する手っ取り早い方法はあの断崖から飛び降りる事。

ですが……いくら私でも雲海が眼下に広がるほどの高さから飛び降りることは流石に怖……可憐な女性として如何なものかと思うわけです。

 

おや?ポーチにいいものが入ってるではありませんか!

 

 

 

 

「あっ!私ったらモドリ玉を持ってきてるじゃありませんか!私は先に帰ってますね!

それじゃあまた後で………」

 

「危なぁぁぁぁああい! クルルナさんの後ろにブナハブラがいますわぁぁぁあ!」

 

「ふぐっ……。」

 

 

 

 

…………モドリ玉を使った瞬間、セレスが片手剣で私に斬りかかり、私を怯ませました。

 

お陰でモドリ玉は緑色の煙を出しただけで消え失せ、私はその場にとりのこされる始末。

 

 

…………私を怒らせましたね?

 

 

 

「………ふふ。…………ふふふふ。 可笑しいですねえセレスったら? ブナハブラなんて何処にもいないようですが?」

 

「い、いえ!絶対にいました!

ただ、リオレウスもかくやというスピードで飛び去っていっただけですわ!」

 

 

取っ組み合いながらそんな会話を交わす私達。

私達はジリジリと、断崖絶壁の方へと近づいていきます。

 

 

「ね、ねえ?セレス?

たった今、いい方法を思いつきました。

 

2人一緒に飛び降りるというのはどうでしょう? 随分と平和的な解決ではありませんか?」

 

「そ、それはいい考えですわね…!

だったらほら!早い所一緒に飛び降りましょうよ!

 

ちょっ…ちょっと!なんでそんなに押し出そうとするのです!?」

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで私達は断崖絶壁の上に並び立ちました。

 

 

 

 

「そ、それでは3、2、1、で飛び降りますよ?」

 

「わ、わかりましたわ…!」

 

 

 

今、私達は腕を組んだ運命共同体です。

この状態でどちらかを出し抜こうなんてのは到底無理な話でしょう。

 

 

 

 

「そ、それじゃあ始めますよ…?

 

………3」

 

 

 

 

セレスがゴクリと唾を飲み込みます。

 

 

 

 

 

「………2」

 

 

 

 

緊張で手に汗が滲みます。

 

 

 

 

「…………隙ありッ!」

 

「………なぁッ!?」

 

 

 

 

 

ふふふ。油断しましたね?

トマトさんをベッドの上から逃さないように、日々磨いてきた対人戦闘の技術が生かされました…!

 

 

私の腕はぬるりとセレスの腕から解き放たれ、私の体は自由に。

 

セレスはバランスを崩し、不安定な体勢です。

 

 

 

 

「それでは……おさらばです。」

 

 

 

 

私は体勢を崩しているセレスに向かって軽く蹴りを入れます。

 

すると、その蹴りの軽さからは想像出来ないほどにセレスは吹っ飛び、断崖絶壁から放り出されました。

 

 

「なっ……何で!?」

 

「ふふ……『ネコの蹴脚術』というものですよ?

それでは良い空の旅を♪」

 

 

 

セレスの目に涙が浮かび始めるのが見えました。

 

 

 

「いやああああああぁぁぁぁぁぁ……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……なかなかやりますね。 セレスも日々ハンターとしての腕が上がっているということでしょうか?………私もうかうかしていられないですね。

 

 

さて……それじゃあ私はゆっくりと崖伝いに降りて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に。

 

 

 

私の耳が『シュ〜…』という導火線の様な音を捉えました。

 

 

 

「………ッ!?」

 

 

 

嫌な予感がして背後を振り向くと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………そこには爆発寸前の小タル爆弾が。

 

 

 

 

 

「…………ッッッ! あの小娘ッ!!」

 

 

 

 

 

私は爆発に巻き込まれ、宙空へ吹っ飛ばされました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2人の女性ハンターが醜い争いを同士討ちという形で終えた後のエリア9。

 

不意に、空に赫い彗星が光り始めた。

 

 

 

 

 

彗星はぐんぐんとその大きさを増し、

 

凄まじい速さで地面に降り立った。

 

 

 

 

 

 

土煙が上がる中から現れたのは銀色の甲殻で全身を覆われた四足歩行の龍。

 

翼からは赫い閃光が迸っていた。

 

 

 

龍は一度だけ咆哮を上げると、凄まじい速度で再び空へと飛び立った……。

 

 

 

 

 

 






リオレウスもかくやという速度で飛ぶブナハブラを想像したら笑いました。


感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。


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第43話 無心にて森羅万象を断つ

 

 

「お〜い、いつまで寝てるんだ〜。 もういい時間だぞ〜」

 

 

マイハウスの外からそんな声が聞こえてくる。

あぁ…この声はルファールさんだな。

ルファールさん、すみません…。 俺はもう少しだけ寝ないとやってられないです。ちょっと疲れてるんだ。

 

心の中に少しの罪悪感を募らせながらも、俺は再びベッドの中に潜ろうとした。

 

 

「………いるんだろ〜? 居留守を使うなら玄関ぶち破るからな〜?」

 

「だぁっ!ちくしょうっ!おはようございます!いい朝ですねぇ!」

 

 

だが、玄関ぶち破る宣言を聞いたまま寝ていられる俺ではなかった。すぐさま玄関へと向かい、外で佇んでいたルファールさんに挨拶をする。

 

 

「おぉ、どうしたそんなに慌てて?……ってなんか顔色悪くないか?」

 

「あぁ…いや、昨日の夜にイビル嬢に襲われただけですからご心配なく」

 

「は? えっ…私そんなこと知らないぞ!? まさかあの2人、抜け駆けして…!?」

 

「あ、いや…昨日は黒い髪のイビル嬢さんでした。レイリスは来てないです」

 

「……クルルナか。 彼女ももう少し節度を持ってくれればいいのになぁ…」

 

 

……つくづくそう思います。12話でレイリスがクルルナのことをお淑やかで優しいなんて言ってるけど、あれは絶対嘘だ。あんだけガツガツ来る人がお淑やかだなんて俺は認めないぞ。

 

 

「で、こんな時間に何の用ですか? 今言った通り疲れてるのでクエストは勘弁して…」

「おっ!いい勘してるな! 獰猛化ディノバルドのクエストがあったから一緒にどうかと思ったんだがどうだい?」

 

 

……ほれ見たことか。ディノバルドは面白い相手だから是非とも戦いところだけど、今の俺はそれ以上に疲れてるんです。 申し訳ないけど今回は休ませてもらおう。

 

 

「あ〜…すいません。 ちょいと昨日襲われて疲れてるので…。 今回は他の人と…」

「あっ!迷子君じゃん!おはよ! 今からルファールとディノバルドのクエストに行こうかと思ってるんだけど…どうかな!?」

 

 

おぉっとおぅ…レイリスが現れましたぞ?それも随分とニコニコしている。

う〜ん、嫌な予感…。

 

 

「あ、あはは…。ごめんレイリス。 俺ちょっと疲れてるんだ…。 今回は休み…」

「う〜んそうかぁ…。 まぁ私達に秘密でクルルナと乳繰りあってたら疲れるのも当たり前だよね! 」

 

「あ…いや、昨日のはクルルナが勝手に…」

「でも迷子君なら元気ドリンコ飲めば大丈夫だと思うんだけど?」

 

「うっ…、でも流石にしんどいと思う…」

「大丈夫だよね?」

 

「あっ…いや」

「大丈夫でしょ」

 

「………はい。大丈夫です」

「よし!決まった!それじゃあ今回は3人でディノバルドだね!」

 

 

…はい、というわけで今回は獰猛化ディノバルドみたいです。レイリスの笑顔が怖くて、断るなんてとてもじゃないができる空気じゃなかった。

なんで俺ばっかり虐げられるんだ…。クルルナずるくない?

まぁ…出発することになっちゃったんだからしょうがないか。マイナス思考に走りそうだから考えるのはやめにしよう。

 

 

「それじゃあ準備ができたら教えてね! その辺で待ってるからさ!」

「ほいほい、早めに行くようにするよ」

 

 

既にクエストに行く準備が出来ていたレイリス達は飛行船乗り場の方へと歩いて行った。

 

 

「さて…ちょいと疲れてるけど、ビシッと頑張りますか」

 

 

そう呟きながら、俺は氷結晶冷蔵庫の戸を開けて元気ドリンコを取り出した。

 

 

「これを飲んでファイト一発!って感じかな?」

 

 

適度に冷えた元気ドリンコを一息に飲み干す。

よし、スッキリ。元気も出てきた気がする。

 

 

それじゃあ獰猛化ディノバルドの狩猟、いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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やってきました古代林。

 

飛行船ダイヤの関係もあって時刻は昼下がりといったところ。これは狩猟が終わる頃には夕方になるかな?

 

今回のみんなの装備は…

俺が鎧裂太刀でブレイヴスタイル。

ルファールさんが…あれは岩穿太刀かな?スタイルは俺と同じでブレイヴって言ってた。

レイリスはいつも通りブレイヴ大剣。

 

……みんなブレイヴスタイルかぁ。でもディノバルドにはブレイヴ太刀って俺の中では決まっちゃってるんだなこれが。

ルファールさんもわかる人らしい。いいね。

 

あ、オトモはボマーのマグロ君です。ブーメランでのサポート頑張ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあなあドM君。アカム武器ってどう思う?」

 

 

ディノバルドを探している途中、ルファールさんからそんな質問をされた。

だからドM君はやめてほしいんですが…。

で、アカム武器ですと?

 

 

「アカム武器、ですか? いや…武器種によりますけどそこそこ使える感じなんじゃないですかね? ヘビィとか大剣、笛は使うこともありましたし…。 あと俺はチャージアックスが上手く使えないですけどアカムチャアクも強いっては聞きました。

急にどうしたんですか?」

 

「いや…この間会った狩友とちょいとな…。

ソイツ、アカム武器ばっかり使うやつなんだが…アカム太刀がこの下克上より強いとか言ってくるからさ、ちょっとムキになってしまってな…。 ドM君はどう思う?」

 

 

いや…流石にアカム太刀で下克上を超えることはキツイだろう。

 

ルファールさんの担いでいる太刀、『渦紋鬼懐刀【下克上】』はダブルクロスに登場する太刀の中でも屈指の強武器だと思う。

スキル自由度はカマキリ太刀やドヒキサキには負けるけど、神お守りがあるのならその火力はトップになる可能性も十分にある。

アカム太刀も弱いとは言わないけど、ここら辺の武器に比べるとどうも目劣りする感じが否めない。

 

 

「流石に下克上の方が強いですって…。 アカム武器を使うなんて相当な物好きですね。 是非一度会ってみたいです」

 

「あ、うん…なかなか変なヤツだけどな…」

 

 

アカム武器はやっぱりロマンがあるでしょ。そんな武器を使ってる人がこっちの世界にもいるとは少し嬉しい。アカムスラアクの滅龍ビンはちょっと救いようがないかもしれないけどさ…。

 

 

「私も最近あの2人と会ってないな〜。 すごく強いハンターさんなんだよ! しかも防具がアカムトルムとウカムルバスの男女でお似合いだしさ!」

 

 

おっ、そんな人たちがいるのか。 これはいずれ顔を合わせておきたいですね。

 

 

「旦那さん、お喋りもいいけどそろそろ切り替えるのニャ。あそこにディノバルドがいるのニャ」

 

 

おっと、もうこんなところまで進んできてたか。それじゃあいっちょ頑張りますか。

 

 

「じゃあいつも通り私が先陣を切るから…よろしくね。」

 

 

レイリスがそう呟き、俺達は頷き返す。

次の瞬間、レイリスは弾丸のように駆け出した。

 

ディノバルドがこちらに気づくが、その前にレイリスが抜刀攻撃…じゃなくてなんだあれ?

抜刀ガードをしたと思ったらすぐさま横殴りに繋げて納刀継続溜め3をディノバルドの頭にぶち当てた。 レイリスさんあんな技使えたのね…。

 

頭に溜め3を喰らったディノはすぐさま怒り状態へ。 それに呼応するように俺とルファールさんの左腕が赤く光り始めた。

下克上に挑戦者積めるとかルファールさんどんだけ神おまなんだ…。

 

怒り状態に入ったディノはレイリスに向かって尻尾を振り下ろす。それを軽く回避したレイリスは頭へ抜刀攻撃を加える。 俺達も横から攻撃してチクチクとブレイヴゲージを溜める。

 

その後もレイリスを狙い続けてくれたお陰で、俺達はあっという間にブレイヴ状態へ。

さて、それじゃあカウンタータイムといきますか。

 

ディノは獰猛化個体特有のディレイがかかった尻尾振り下ろしを俺に向かって放つ。

それをカウンター。 俺のすぐ傍にいたルファールさんも一緒にカウンターをかます。

ディノは2回目の振り下ろしに繋げてくる。ディレイがかかった攻撃なのでギリ2回目のカウンターが間に合うのでそれもカウンター。

 

 

あぁ…こりゃ楽しいわ…!

 

 

ディノは口元から炎を迸らせ、咽喉部を紅く染め上げた。そして俺とルファールさんのいる場所へ噛みつき攻撃。 それもしっかりカウンター。

 

バックステップをしたディノはそのままブレスをかます。それもしっかりカウンターで防ぎ、すぐさま前転してディノとの距離を詰める。

 

ディノは再び俺とルファールさんに向かって噛みつき攻撃。それをカウンター。

 

カウンターを喰らったディノは口元の粉塵が爆発。大ダウンをして転がった。

すぐさまディノの頭付近に近づき、気刃斬りのコンボを叩き込む。 少しだけディレイをきかせたコンボは最後の剛・気刃斬りまでが綺麗にディノの頭に吸い込まれた。

 

 

「2人ともナイス! てぇぇえい!」

 

 

そしてディノが復帰する直前にレイリスが駆け込み、頭に抜刀溜め3をぶち込んだ。

『居合術【力】』のスキルが乗ったその一撃はディノバルドからスタンを奪い取る。

 

 

「やるじゃないかレイリス!流石私達のリーダーだ!」

 

「あったり前だよ! ほら、ラッシュかけて!」

 

 

スタンを起こされてもがいているディノの頭部にラッシュをかける俺達。

そしてディノがやっとの事でスタンから復帰。

 

だけど復帰した途端、ディノバルドが苦しげに身を悶えさせ始める。

 

 

「麻痺とったのニャ!」

 

 

マグロ君よくやった!麻痺蓄積値管理できるとか素敵!

ラッシュをかける時間が伸びたので、気刃斬りのコンボを容赦なく叩き込む。

 

一通りのコンボを決め終えると、とうとうディノは拘束のコンボから抜け出した。

途中で怒り状態が解けていたみたいだけど、再び怒り状態へ。

 

そして、ディノは寝床へと向かって脚を引きずり始めた。

……まぁこの3人が弱点に向かってあんだけのラッシュを加えてたらあっという間に瀕死にもなるか。

 

 

「ふぅ…いやぁうまくいったね! それじゃあ…私、捕獲用のアイテム持ってきてるから捕獲することにするけどいいかな?」

 

「うん、その方が手っ取り早いかもな。ルファールさんもそれでいいですか?」

 

「あぁ、それでいこう。 そろそろブレイヴ状態も切れそうだしな…」

 

 

よし、それじゃあ今回はほぼクリア確定ってとこだな。ちょいと疲れてたから不安だったけど、やっぱりこのパーティはかなり強い。無事に終わって良かったです。

 

 

「じゃあ私が罠設置するから2人は麻酔玉よろしく! もし麻酔玉無かったら私の使っていいから!」

 

 

一狩り終える頃だってのにレイリスは元気だなぁ…。 ちょっとその元気が羨ましい。

そんなことを思い浮かべながら、俺達はディノが逃げた先へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「むにゃ……えへへぇ…キングターキーだぁ……」

 

 

俺の肩を枕代わりにして寝言を零すレイリスを見る。

………綺麗だな。 こんな人に好意を持ってもらえてるのはホントラッキーだ。 いや、なんで俺なんかに構ってくれるんだろうね?

 

ルファールさんはちょっと離れたところで大きないびきを出して寝ている。 残念美人オーラが半端無い。

 

あの後、無事にディノバルドの捕獲を終えてクエストは成功。

今は夕焼け色に染まった空の上で、飛行船に乗ってベルナ村に向かっている最中です。

 

 

「あっ……迷子君だぁ……いただきまぁす…」

 

 

おいこら、夢の中でまでいただくんじゃない。そんなんだと俺の体が持たないぞ。

全く…これだからイビル嬢は…。

 

 

「お〜お〜。お2人さんはラブラブだニャ。

ほら、旦那さんも早いところ喰われておけニャ」

 

「うっさいわ。どうした急に冷やかしに来て…」

 

 

そんなことをしていたら、マグロ君がこちらにやってきた。

全く、ウチのネコ達はどうしてこう従順じゃないのかね?

 

 

「いや…ちょっとお話があってニャ〜」

 

「なんだよお話って…。どうせ大したことじゃないんだろ?」

 

「いや、今回は結構重要だニャ。 話す機会がやっときたから今話したいのニャ」

 

 

……なんだかいつになくネコが真剣な顔をしてるな。 いや、でもこう見せかけてしょうもない話題だったりするからなぁ…。

 

 

「ほいほい…。 どれ、話ってなんだよ? 相談でもなんでもいいから話してみ?」

 

「それじゃあアイルートークの時間の始まりだニャ」

 

 

マグロはそう呟きながら、近くの椅子に腰を落とす。

そして、口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旦那さん。 この世界はどうですかニャ?

生まれ変わって楽しめてますかニャ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






他作品との関連を匂わせて誘導するスタイル。

どんどん忙しくなって、更新頻度を上げることが難しくなってきてます…。のんびり待っていただければ幸いです。


感想など気軽にどうぞ。 お待ちしてます。


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第44話 ボクらと旦那さん



オトモ視点…というほどオトモにスポットが当たってない気もします。

更新遅くなってしまい、すみませんでした。
1回書き上げたのが吹っ飛んだ時は頭を抱えました。


 

 

 

 

 

 

 

夕焼けの空の中、心地よい風が静かに吹き抜ける飛行船の甲板の上。俺とマグロは真剣な表情をして向かい合っていた。レイリスとルファールさんはすやすやと眠っている。起きているのは俺とマグロだけだ。

 

 

 

「………何でお前がそのこと知ってんだ?」

 

 

 

帰りの飛行船の上で、マグロが俺に出した問いかけ。それは、俺がこの世界の人間じゃないことを知ってないと到底出てこないような質問で…。俺はすぐに言葉を返すことができなかった。

 

 

「………やっぱりあの天使さんの言う通りなんだニャ」

「えっ? お前、あの天使さんのこと知ってるの? 前に夢で初めて会ったとか言ってたんじゃ…?」

 

 

そうマグロに返すと、マグロは落ち着いた様子で俺の側に座った。

 

 

「旦那さん。 少し、ボクらの昔話を聞いてほしいニャ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『もし…もしもだよ? 俺がみんなと一緒に居られなくなったら、みんなは流れのオトモになっちゃうだろ?

そうなったときに困らないようにさ、みんながニャンターとしてもやっていけるようにしっかり育て上げるのが雇い主としての役割だと思ってるんだ。』

 

 

旦那さんはお気に入りの操虫棍の手入れをしながら、そうボク達によくいっていたニャ。

龍歴院所属ハンターとして、G級最前線を往く旦那さん。 そんな人がボク達にかけてくれた言葉は重みがあって…それでいて優しさに溢れたものでしたニャ。

 

 

『これからちょいと重要な依頼があってね。 なんかとある虚城の調査らしいけどさ…。 まぁパパッと終わらせてくるよ。といっても結構長丁場の調査なんだけどな…。お土産にココット村のトロサシミウオでも持ち帰るから楽しみにしてろよ?』

 

 

自分だけでなく周りにも活気が溢れる様な明るい笑顔でそう話す旦那さん。

いつものように操虫棍を携えて、調査へと出発していったのニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旦那さんが消息不明になったとの報せを聞いたのは、それから1ヶ月後の話ですニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あ、ありがとうございました! 正直ニャンターってどうなのかなぁ…?なんて思ってたんですけど、皆さんすごい技術ですね!見てて惚れ惚れしました!」

「ありがとうニャ。 ニャンターも捨てたもんじゃないのニャ。 もしハンターさんがオトモを雇ったら、今回の経験を活かしてニャ〜」

 

 

少し躓いてしまっているハンターさんのお手伝いということで、ショウグンギザミ狩猟のお手伝いを終えたボクとイクラ。

ハンターさんは無事にクリアすることができて、嬉しそうでしたニャ。

 

 

「それじゃ、ボクらとはそろそろおさらばニャ。 ハンターさんもがんばってニャ〜」

 

 

イクラがそうハンターさんに答え、ボクらはその場を後にしようとしましたニャ。

だけど……。

 

 

「あっ!すいません! ネコさん達の雇い主さんに会うことって出来ますか!? 私、今回ネコさん達と一緒にクエストやって、オトモ雇用してみようかな…なんて思ったんです。 アドバイスをいただけたら嬉しいなと思ったんですが…」

 

 

その言葉を聞いたイクラの表情が一瞬曇ったのを、ボクは見逃さなかったニャ。

 

 

「だ、旦那さんは今ちょっと忙しくて…! しばらく手が離せないのニャ! ごめんニャ!」

「あっ…い、いえ!出しゃばってすみませんでした! 今回はありがとうございました!」

 

 

少し変な空気になってしまったけれど、笑顔を返してくれたハンターさん。

ボクらも少しぎこちない笑顔でハンターさんの背中を見つめていたニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……イクラ。 旦那さんはもう帰ってこないと思うニャ。 イクラも薄々わかってるニャ?」

「そんなことはとっくにわかってるのニャ。

ただ……認めたくない気持ちがあるだけニャよ」

 

 

旦那さんが消息不明になった報せを聞いてから更に1ヶ月。

ボク達はニャンターのお仕事や、他のハンターさんのお手伝いなんかをしていたニャ。

 

さっきみたいに誰かの助けになれるのならオトモ冥利に尽きるけど…その近くに旦那さんがいないから、ボク達の顔はどこか沈んでいたのニャ。

 

 

「ほら、うじうじした顔してたらいいことだって逃げていってしまうニャ。 ボクだって悲しいし納得いかないところもある…。 なんなら旦那さんの捜索をしたい気持ちだってあるニャ。 だけどどうにも出来ないのニャ…」

「そうだニャ…」

 

 

沈んだ顔になってしまったイクラにそう声をかけるボク。 ボクだって悲しいしやりきれない気持ちはあるけれど、どうにもならないことだってある。 旦那さんはボク達に立派なニャンターとして頑張ってほしいと思ってるはずニャ。

 

 

「どうニャ? 久々に美味しいものでも食べて気分を上げないかニャ?ほれ、あそこにいい感じのサシミウオが売ってるニャ。 帰りに少し摘んで行かないかニャ?」

「ニャ〜…そうするニャ〜。 マグロ、ありがとうニャ」

 

 

というわけでボクらは帰り道にサシミウオを買って帰ることにしましたニャ。

お店の親父さんがオマケにモスジャーキーをつけてくれたニャ。 得したニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「んニャ…。 サシミウオも美味しかったけど、モスジャーキーもなかなかいけるニャ。 あの親父さん、粋な計らいをしてくれたニャ」

 

 

ベルナ村の人が集まるところから少し離れた場所にある高台。

村を一望できるその場所で、ボクとイクラはモスジャーキーをモシャモシャしてたのニャ。

 

 

「………マグロ、旦那さんは今どうしてると思うニャ?」

「………きっと呑気に操虫棍をぶん回してるに違いないニャ。ボク達の気も知らずに気楽なもんだニャ」

「ニャハ…旦那さんらしいニャ」

 

 

人気のない場所でそんな会話を交わすボクら。ただぼんやりとこんなことを話しているだけでも案外心は落ち着くもんだニャ。

旦那さんはきっともう帰ってこないけれど、それも受け入れなきゃならない。

ハンター稼業というのはそれだけ危険なものなんだからと旦那さんがいつも言っていたニャ。

 

 

「さて……そろそろ帰るかニャ? オトモ広場でみんなも待ってるニャ」

「そうだニャ。 みんなにもサシミウオとかは買ってあるから早く届けないとだニャ」

 

 

美味しいものも食べたし、気分はスッキリ。

早い所オトモ広場に戻って明日に備えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思ったときだったニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、優秀なオトモさん達。少しだけお時間頂戴してもいいかな?」

「うニャ?」

 

 

帰路に就こうとしたボクらの目の前に、急に人が現れたのニャ。

おかしいニャ…? さっきまで人の気配なんてなかったはずなのに…。

目の前に現れた人はハンターみたいだけど…武器を持っていなかったニャ。

 

 

「残念だけど明日にしてほしいニャ。 今日も一仕事終えて疲れてるところなのニャ。 ボクらはオトモ広場にいるからまた明日来てニャ〜」

「えっ…ちょっ…! 待て待て! 少しくらい話を聞いてくれよ!」

 

 

だけど、ボクとイクラはその人をスルーすることにしたのニャ。

 

 

「おたくはハンターやってるのかニャ? アークS装備はなかなか強い装備ニャ。 だけど…アナタの装備には装飾品が一切ついてないニャ。 旦那さんは『古龍の装備してるのに穴空きの人はちょいと問題がある場合が多いから注意だよ?』ってよく言ってたニャ」

「あ、あのヤロウ…。 い、いや…これは教育がしっかり行き届いていると褒めるところだな…これ位で怒ったら天使失格だ…。こらえろ私」

 

 

天使…? 何のことなのかサッパリだニャ。

 

 

「あ〜…。まず装備のことはおいといてくれ。それっぽいのを作ったばっかりだからさ」

「……まぁ小話くらいなら構わないニャ。手短によろしくニャ」

「うん、ありがとう。 それじゃあまずは……。

結論からズバッと斬り込んじゃおうか」

 

 

さて…どうにも怪しい人だけど、どんな話をするのか…? ボクはそこまで期待せずに聞き耳を立てたニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が話したいのはキミ達の旦那さんについてだ。

まず…初めに嬉しいニュースを言っておくよ。

キミ達の旦那さんは生きている。 今も元気に操虫棍を振り回してるよ」

 

 

アークS装備の謎の人は、そんな言葉を放ったニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「………え? あの天使さん、お前らにもう会ってたの?」

「うニャ。 そうだニャ。 出会った次の日にもボクらと話をするために、オトモ広場にいきなりパッと現れたニャ。どうやったのか聞いたら『ヤードラット星の人たちに教えてもらった』とか言ってたニャ。

よくわからない人だったニャ〜」

 

 

急にネタをぶち込んでくるな。しかも地味に分かりにくいネタだなおい…。俺以外誰もわからないじゃねーか。

 

 

「じゃあ…俺の事も…。俺が1回死んでるってことも、どうやってこの世界に来たのかとかも、その時天使さんに聞いたのか?」

「まぁそういうことになるニャ。 初めてココット村で会った時は、旦那さんが所謂生まれ変わりだってことは知っていたニャ」

 

 

なるほどねぇ…そういうことですか…。

 

 

 

「……なぁ、今の話聞いてて思ったんだけどさ」

「何ニャ?」

 

 

さっきまでの話を聞いて、思ったことがある。少しだけ口には出しにくいけど…それでもこれは聞いておかないといけない。 そう思った。

 

 

 

 

 

「今の話に出て来た旦那さんって……。俺のことじゃないよな?」

「………そうだニャ」

 

「………つまり、俺はお前らの本当の旦那さんではないってことか」

「……………そうなるニャ」

 

 

 

マグロはどこか気まずい様な顔をして答えた。 あぁ…やっぱそうか。コイツらを雇ったゲームの話。 それなのに、こっちの世界に来たばっかりの俺がいきなりコイツらの旦那さんなんて都合のいい話があるわけない。

実は心のどこかで、コイツらの本当の雇い主は別にいるんじゃないかなんては思っていた。

 

 

「…なぁマグロ。なら、何で俺のことを旦那さんって呼んでるんだ?」

「…それは、天使さんからあることを話されたからニャ」

 

 

あること…?一体何なんだ……。

 

 

「今の旦那さんは、ボクらの本当の旦那さんの恩人らしいのニャ。 本当の旦那さんがあそこまでの凄腕ハンターになったのは、今の旦那さんのおかげだといってたニャ。」

 

 

………俺のおかげ?

俺、そんな人に何か手助けをした覚えは無い………いや、待て。

 

 

「マグロ、お前らの本当の旦那さんについて質問がある」

「うニャ。なんでも答えるニャ」

 

 

今までの話を聞いた限り、その本当の旦那さんとやらに心当たりがあるとすれば…。

 

 

「装備はどんなものを身につけてた?

もしかしてシルバーソルZメインに武器はセルレギオスの操虫棍じゃないか?」

「う、うニャ? なんでわかるのニャ?」

 

 

……ビンゴ。

 

 

「あ〜…、マグロ。 俺さ、お前らの本当の旦那さんのこと知ってるわ」

「本当かニャ!?」

 

「うん、本当。 んで…考えてみれば確かに俺はその人の恩人であるし、その人は俺の恩人でもあるかな」

「うニャ…? 何言ってるのニャ?」

 

「まぁ少し難しい話だからそれは置いとこう。 で、他に天使さんとはどんな話をしたんだ?」

「え〜と…。 まず、今の旦那さんについてのことだったニャ。 『キミ達の力である人物を手助けしてやってほしいんだ。 旦那さんと似てる人だからそんなに拒否感もないはずだよ』みたいなことを言われたニャ」

 

 

なるほど…。つまり俺がコイツらと出会えたのは天使さんの手引きってことかな?

 

 

「まぁそうなるニャ。 実際、今の旦那さんは元の旦那さんに性格も似てるから全然馴染めたニャ」

 

 

馴染めたなら良かった。 本当の雇い主じゃないのは少しだけショックだけど、コイツらとはなんだかんだ楽しくやれたからそんなのは気にするほどでもない。

 

 

「それと…これが一番大事なことなんだけど…。 旦那さんが頑張ってれば、元の旦那さんといつか巡り会えるらしいニャ」

 

 

 

 

……なるほどねぇ。

俺が頑張ればコイツらの旦那さんに会わせてやれると…。

 

 

 

 

「なぁマグロ。 お前らはやっぱり元の旦那さんに会いたいか?」

「………」

 

 

マグロは少し逡巡するような顔をした。

 

 

「………会いたいニャ。 もし、あの天使さんの言ってることが嘘だとしても…。 もしかしたら今の旦那さんに失礼かもしれないけど…。 ボク達はあの旦那さんに育て上げられて、立派なオトモになったニャ。もしもう一度、元の旦那さんに会えるなら会いたいのニャ…!」

 

 

 

マグロは堰を切ったように喋った。

……やっぱり自分をここまで育ててくれた人だもんな。謂わば育ての親だ、会いたいのは当然だろう。

 

………よしきた。

 

 

 

「オーケー。 んじゃあ俺に任しとけ。 絶対に旦那さんに会わせてやるからさ。 期待しとけよ?」

「……いいのかニャ?」

 

「あぁ、俺もお前らには随分と世話になってたからな。 そのお礼だと思ってくれ。ただ、俺1人だと厳しい場面もあるかもしれない。その時は協力してくれよ?」

「もちろんニャ。一流のオトモにかかればクエスト成功間違い無しニャ。 大船に乗ったつもりで大丈夫ニャ」

 

 

よし、相変わらず頼もしいな。

………俺が頑張れば旦那さんに会わせてあげれる…か。頑張れば『モンスターハンター』にだって近づける。 コイツらを元の旦那さんに会わせてやることだってできる。願ったり叶ったりじゃないか。

どんな困難だってばっちこいだ。逆境とかそういうのは大好きな性分なんです。

 

 

「……旦那さん。 ボクもちょいと疲れたニャ。 少し寝ることにするニャ〜…」

「おう、ゆっくり休んどけ」

 

 

マグロが目を眠たげにして俺にそう言ってきた。確かに緊張した感じで話してたからなぁ…。 俺も少し眠いや…。

 

 

「俺も少し寝るか…。くぁぁ……」

 

 

空は一面夕焼け空。 寝るには明るいかもしれないけれど、少しくらいならいいだろう。

新しく固めた決意を胸に隠しながら、俺は浅い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛行船の甲板の上。

全員が寝ているハンターのパーティの内、1人が起き上がった。

 

 

 

 

「……………生まれ変わりに別の世界、か。

迷子君、喋ってくれないと思ってたけどそういうことだったんだね………」

 

 

 

 

少し寂しげな声でそう呟いた女性。

燃えるような赤い色をした髪が、甲板の上を吹き抜ける風でなびいていた。

 

 

 

 

 

 

 





少しずつ最終話に向けて進めていってます。
終わるのはいつ頃かなぁ…。 更新頻度をなんとかして上げたいところです。
でも次はアカム武器の方を更新しそう…。気長に待っていただければ幸いです。

感想など気軽にどうぞ。 お待ちしてます。


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第45話 姫と王

 

 

 

時刻は明け方。

飛行船の上だと、朝日が昇り始めるのがはっきりと見える。

私は誰もいない飛行船の甲板の上で、何というわけでもなく朝日を見つめていた。

今回のクエストのフィールドは森丘。 ベルナ村からは飛行船で半日程かかるので、夜遅くにベルナ村を発って朝にはココット村に到着というスケジュール。

 

この時間に起きてしまったのは何故だかよくわからない。もしかしたら、この間に寝たフリをして聞いてしまったことについて考えてるのかもしれない。実際あれからよくボンヤリしてるとか言われちゃってる。

 

 

「あら、またボンヤリしてるんですね。 『英雄』と呼ばれる人がするような顔じゃないような気もしますけど?」

「うひゃっ!?クルルナ!? お、起きてたんだね?」

 

 

いきなり首筋にフッと息を吹きかけられ、思わず変な声が出てしまった。

い、いつの間にいたんだろう…? 最近のクルルナには私も迷子君も惑わされてばっかりな気がする…。 いつからこんな魔女みたいな感じになってしまったんだろうね…?

 

 

「レイリスがそんな顔をするってことは…トマトさんに関係することですね?

「あ…バレちゃった? タハハ…クルルナはなんでもお見通しだね…」

「そりゃそうですよ。 今は5人…トマトさんを加えて6人ですけど、最初はレイリスと私だけだったじゃないですか。どれだけの付き合いだとおもってるんです?」

「それもそっか…」

 

 

付き合いの長いクルルナには、私の考えてることなんてお見通しらしかった。

私が顔に出やすいだけかもしれないけれど、こんな風に通じ合える仲間がいるのは嬉しい。

 

 

「まぁ迷子君の考え事かな…。いや、大したことじゃないんだけどね?」

「あら、そうなのですか? 最近浮かない顔が多いから、私結構心配してるんですからね?ともかく、今回は結構な強敵ですから…。 リーダーもしっかりしてなきゃですよ?」

「オーケー、わかったよ。 スイッチ入ったからもう大丈夫。心配させちゃってゴメンね?」

 

 

そうクルルナに返すと、クルルナはクスリと笑った。

さて…クルルナの言う通り、今回はなかなかの強敵だ。頑張らなきゃね。

 

森丘に向かう飛行船の上でそんなことを考えた私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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岩壁と木々に囲まれた、秘密の場所のような雰囲気が漂う空間。

釣り場が設けられた水辺の側にはテントが張られており、この場所への入り口も人がやっと通れるような幅の横穴が一つだけ。

拠点としての機能を十全に果たしている森丘のベースキャンプに、俺達は来ていた。

 

 

「うっし、森丘も久しぶりだな。 さて、今回も頑張りますか!」

「おっ、迷子君ったら元気だねぇ。やっぱり強敵相手だと武者震いが止まらなかったりしちゃうのかな?」

「う〜ん…まぁそれもあるけど…」

 

 

そう言って、俺は背中に背負った操虫棍を見る。 見た目はいたってシンプル。骨から切り出したような武骨なデザインではあるけれど、一番操虫棍って感じがするデザインだから俺は好きな方です。

 

 

「久々にエリアル操虫棍でいくからさ、少し楽しみなんだ。 麻痺武器も久しぶりだしね」

「おや、自信満々だね。 まぁドM君ならあっさりと仕事をこなしてくれるかな?」

「だからドM君は止めろって言ってるじゃないですか…。まぁ今回は俺が乗って麻痺させまくった方が有利に進みそうな相手ですからね」

 

 

今回、俺が担いでいる操虫棍は『ハイアーザントップ』

スタイルはエリアル。 まぁ乗って麻痺させることに特化した感じかな。

レイリスとルファールさんはそれぞれいつも通りのブレイヴ大剣とブレイヴ太刀だけど、クルルナは今回の相手の対策でギルド狩猟笛できている。

状態異常無効を吹けて部位破壊に向いた爆破属性を持った臨界ブラキ笛だから、安定感がグッと増すので心強いです。

なかなかの()()()だから、ネコはお休み。ハンター4人で来ている。

 

 

「さて…じゃあ今回はなかなかハードなクエストになるかもしれないけど…このメンバーなら大丈夫。 まずは片方を集中攻撃して早い所倒しちゃうことにします。こんな大雑把な作戦だけどよろしくね?」

 

 

レイリスがみんなにそう言葉をかける。それに応えるようにレイリス以外の3人は笑った。 それをみたレイリスも笑う。

 

 

「よし!じゃあクエスト開始だね!」

 

 

レイリスの掛け声と共に、俺達は駆け出した。

まぁこのパーティなら大丈夫。きっとなんとかなるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それじゃ…黒炎王と紫毒姫の同時狩猟、いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あっ…みんな静かに…。いたよ…!」

 

 

比較的見晴らしが良く、エリア中央付近に平たい広めの段差があるエリア4。

飛竜の巣であるエリア5を目指してみんなを先導していたレイリスが立ち止まり、静止の合図を出した。

 

止まれの指示が出たってことは何かを見つけたってこと。 チラリと向こうを覗いてみると、そこには今回の狩猟対象の内の1匹が草原を闊歩していた。

 

 

「………紫毒姫か。 まぁ予定通りかな? それじゃみんないい?」

「あっ。私、狩猟笛で旋律かけておきます」

 

 

クルルナが『砕光陽顕鈴ホンブラク』でパーティのみんなに旋律効果をかける。 臨界ブラキの笛から奏でられているとは思えない繊細な音色を耳に入れると、不思議と身体に力が湧いてきた気がする。

……結構な大きさの音が出てるけど紫毒姫が気づかないのは気にしないでおこう。

 

 

「はい!全状態異常無効に精霊王の加護、ついでにトマトさんの麻痺武器のために状態異常攻撃強化です!それじゃあいきましょう!」

 

 

よし、これで下準備も完璧だ。

俺を含めたパーティのみんなはそれぞれの得物に手を伸ばしながら、目の前にいる紫毒姫に向かって駆け出した。

 

 

 

…………さぁ、狩猟開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫毒姫が走り寄る俺達に気づく。だけど、レイリスとルファールさんが凄い速さで出会い頭の攻撃を頭に叩き込んだ。

紫毒姫は咆哮。 俺はその隙に頭から赤エキスを奪い取る。

今回、俺はサポート用のスキルを組んでクエストに臨んでいる。 耳栓に状態異常攻撃強化、乗り名人に罠師、ついでに切れ味レベル+2。だから咆哮はなんのそのだ。

 

赤エキスを奪った俺はすぐさま紫毒姫へ向かってエリアルスタイル特有の超遠距離ジャンプ。 白エキスを取れてないとはいえ、そのジャンプ力は相当のもの。先頭2人の後方にいた俺はジャンプ攻撃を加えながら一気に紫毒姫の背後へと移動した。

 

すぐさま脚から白エキスを奪い取り、猟虫にストックさせておく。

紫毒姫はその場で尻尾回転。その合間を狙ってエア回避。そして、紫毒姫の脚を思いっきり踏みつけた。

 

おぉ…これがエア回避なのね。 思ったより高く跳び上がったからちょっと怖いくらいだ…。

多分これなら走り高跳びで世界狙えるな。……まぁアタリハンテイ力学の賜物だろうけどさ。

 

紫毒姫の頭上へ跳び上がった俺は体を捻らせ回転しながらジャンプ攻撃。攻撃は全て紫毒姫の背中に吸い込まれ、紫毒姫はダウンした。

 

 

「乗る! 準備しといて!」

 

 

みんなにそう声をかけ、すぐさま紫毒姫の背中に跳び移る。

空中に待機させておいた猟虫が手元に戻り、赤白ダブルアップ状態に入ると共に紫毒姫が俺を振り落とそうと暴れ出す。

…だけど残念。こっちは乗り名人が発動してるので失敗することはまず無い。 サクサクと剥ぎ取りナイフで紫毒姫の背中を攻撃し、簡単にダウンを奪うことができた。

 

ダウンした紫毒姫へみんながラッシュをかける。俺とクルルナは翼狙い、レイリスとルファールさんは頭を集中攻撃している。

 

 

「よっし…。麻痺蓄積いい感じ…!」

 

 

麻痺操虫棍を担いでいるので麻痺のタイミングに気をつけないといけない。

理想はダウンから復帰して怒り状態へ移行しきる前のタイミング。 そこでうまく麻痺蓄積を発生させることができれば完璧だ。

 

 

「翼破壊できました!」

「「ナイス!」」

 

 

クルルナが爆破属性の笛を担いでいるので、翼の破壊もスムーズに完了。これで閃光玉が効く。 うんうん、いい感じに進んでるね。

 

さて……紫毒姫がダウンから復帰しそうだな…。

 

 

「………ここっ!」

 

 

俺はタイミングを見極めて、手数重視のラッシュをかける。

 

1発目、麻痺蓄積は外れる。

 

2発目、…………また外れる。

 

おいおい、頼むぞ?

 

 

3発目……………、

 

 

 

 

 

無事麻痺蓄積が発生。 紫毒姫は苦しげに悶え始めた。

あぁ…よかった。

 

 

クルルナは狙いを翼から頭部へと変更し、俺以外の3人が紫毒姫の頭部に密集している。

互いの攻撃の邪魔には一切なってなさそうなのは流石です。

さて…そろそろ麻痺が解けるけど……。

 

 

「怒り入った! 閃光玉投げる!」

「よろしくッ!」

 

 

麻痺から復帰した紫毒姫は怒り状態へ移行。

咆哮をあげた。

レイリスとルファールさんはイナシたみたい。クルルナは……臨戦で凌いだようだ。

……みんなすごいな。

 

怒り咆哮をあげた紫毒姫は後方へバックジャンプ。 俺はそれに合わせて閃光玉を投げ込んだ。

一瞬だけ世界が白く染まり、それに続いて紫毒姫が視界を奪われ地面に墜落する。

 

すぐさまみんなが駆け寄り、ラッシュをかける。

俺は背中付近でジャンプ攻撃を繰り返す。ただ、この後のために乗る事は控えておく。

 

閃光から復帰した紫毒姫。だけどすぐさま横倒しに倒れた。

えっ?何事?とか思ったけれど、どうやらスタンを取ったみたい。 いや、上手い人が集まればこうなるのはなんとなく予想できるけどなんかなぁ…。

 

スタンから復帰した紫毒姫は翼で風圧を起こしながら、大きく後方へ飛び上がった。

 

 

「あっ…マズッ…」

「うげっ…やっちゃったぁ…」

 

 

俺とレイリスがその風圧をモロに喰らい、身体の自由を奪われる。

その隙を見逃さず、紫毒姫は俺達に向かって滑空。 着地と同時に尻尾を使い、2人まとめて横薙ぎにぶっ飛ばした。

 

 

「ぐへぇ……痛……くないな」

「おぉ〜毒にもなってない。クルルナの笛のおかげだね!」

 

 

ぶっ飛ばされた俺達だったけど、拍子抜けするほどダメージは少なかった。

劇毒が無効化されてる上に精霊王の加護でダメージを抑えられたみたい。 笛が1人いると本当に快適だって改めて感じた。

 

 

「おいおい、2人共…。ちょっとのんびりしすぎじゃないか? 今回は結構しんどいクエストなんだからもうちょい気を引き締めて臨んでくれよ?

ほら、もう1匹お出ましだ」

 

 

ルファールさんが俺達にそう言葉をかける。

そう言われて空を見ると、そこには……いた。

 

今戦っていた紫毒姫は雌の個体。そして、そいつのピンチに駆けつけた雄の個体がそこにいた。

リオレウスの中でも特に強力であり、二つ名を与えられた個体。翼には黄金の紋章。公式サイトなんかではダークネスロードとかいう厨二臭さブッチギリの異名で紹介されていたが、その強さは本物。

 

二つ名の番の雄である『黒炎王』が俺達の目の前に現れた。

 

 

「よっしゃ、そんじゃあ手筈通りいく!」

「うん!ヨロシク!」

 

 

俺はレイリスにそう声をかけ、紫毒姫へと跳んだ。

それなりにあったはずの距離を一瞬で詰め、紫毒姫へとジャンプ攻撃を仕掛ける。

さっきまで乗り蓄積値を貯めておいたので、紫毒姫は1発でダウン。俺は即乗り状態へ。

 

 

「出来るだけ時間を稼いで!」

「はいよ!うおっ…こら、暴れんな…」

 

 

紫毒姫の背中に乗った俺はゆっくりと時間をかけて、だけど確実に成功させるように乗り攻撃を進める。

向こうから黒炎王の咆哮が聞こえ、ふとそちらの方を見る。

 

そこでは、俺以外の3人が黒炎王に向かってこやし玉を投げまくっていた。………女性3人がウ○コを投げまくる図を想像したらあまりにあんまりだったのでそこで思考をシャットアウトする。

 

だけど効果は抜群だったみたい。こやしの弾幕に参ったのか、黒炎王はすぐさまエリア移動を始めた。

 

 

「オッケィ、完璧! 迷子君!あとは乗り成功させちゃって!」

「任せとけぃ。 ほいほい……ほいっと!」

 

 

乗り成功ギリギリで攻撃を止めていたので、すぐさま紫毒姫はダウン。そこへ3人が再びラッシュを仕掛ける。

溜め斬りが、気刃斬りが、演奏攻撃が紫毒姫の頭部へどんどん吸い込まれていく。

 

紫毒姫は転倒から復帰。 そして…脚を引きずり出した。 まじっすか、早すぎない?

 

 

「逃がしませんよっ!」

 

 

紫毒姫に追い討ちをかけるように、クルルナが閃光玉を紫毒姫の眼前へ投げ込んだ。

眩い光が世界を埋め尽くし、次の瞬間には紫毒姫が苦しげな声をあげていた。

 

 

「ナイス! 罠仕掛けるぞッ!」

 

 

俺はすぐさま紫毒姫の足元へと駆け出す。ポーチからはシビレ罠の準備。

視界を奪われた紫毒姫は威嚇をしているので今がチャンス。 罠師のスキルのおかげですごい速さでシビレ罠の設置が完了した。

いや、ホントどういう理論なんだろうね…スキル発動してないとここまで素早く設置はできない。謎だ。

 

シビレ罠にかかった紫毒姫は苦しげに呻き始める。 そこへすかさず麻酔玉を2発。

紫毒姫の体がグラリと揺れ、地面に崩れ落ちる。 そしてスヤスヤと寝息を立て始めた。

 

 

「うっし!一丁上がり!」

「うん、いい感じだったね! こんなにスムーズに進むとは思ってなかったよ!」

 

 

とりあえずこの時点でクエストは一区切り。

あと残るは黒炎王だけだ。 正直この調子でいけば楽勝な感じはするかな?

 

 

「やっぱりサポート要員がいると狩りはスムーズに進むな…。ドM君もクルルナもいい働きだったんじゃないか?」

「だからドMはやめ……いいや、もう諦めますよ…。

ほら、早いとこ黒炎王も終わらせちゃいましょう」

 

 

ルファールさんがからかい気味にそんなことを口走る。ちょっとやめてほしいところだけど気にしないでおこう。

 

 

「え〜っと…。黒炎王は隣のエリア3にいるみたいですね。 早く向かいましょうか」

「おっと、たしかに無駄話をしてる時じゃなかったな。私はちょっと武器を研いでから向かうから先に行っててくれても構わないぞ?」

「う〜ん、じゃあ先に3人で行ってようか。ルファールも急いで来てね!」

 

 

ルファールさんが少し準備をするというので、先に3人で黒炎王のところへ向かうことにした。 まぁ大丈夫でしょ。

 

ルファールさん以外の俺達3人はエリア3へ向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん…やっぱり臨戦をセットするべきだったかな…。まぁ大して変わらないか…」

 

 

パーティメンバーに先を任せて、1人で武器の手入れを行う銀髪の女性ハンター。

その手入れも終わったようで、得物の太刀を背中に背負ってパーティメンバーが向かって行ったエリアへと駆け出そうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

何か、

 

 

うまく言葉にできないような、なんとも言えない違和感を感じた。

 

 

自然と背中の太刀に手が伸びる。

警戒してエリアを見渡す女性ハンター。

だが、そこには既に捕獲されて無力化された紫毒姫がいるだけだった。

 

 

 

「……………気のせいか。早くみんなの所へ向かわないとな」

 

 

 

女性は踵を返して走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「よし、それじゃあさっきと同じ手筈でいくよ?」

「オッケ。そんじゃあいきなり乗っちゃうからよろしくな」

 

 

ルファールさんを置いて、一足先にエリア3に到着した俺達。

目の前の草原では黒炎王が悠然と闊歩していた。 軽く打ち合わせをするけど、手順なんめさっきとほぼ同じ。 むしろモンスターの合流を考えなくていいからこっちの方が楽かもしれない。

 

 

「じゃあ行こうか、迷子君よろしく…!」

「合点承知…!」

 

 

レイリスに返事をするとともに俺は飛び出した。

黒炎王がすぐにこちらに気付くけど、それより先に俺は黒炎王に向かって跳んでいた。

黒炎王が咆哮のモーションに入る前にジャンプ攻撃がヒット。そこで初めて黒炎王が咆哮のモーションに入る。

 

高級耳栓が付いている俺は咆哮を物ともせず、その場でエア回避。

黒炎王の脚を思いっきり踏みつけて跳躍すると共にジャンプ攻撃を繰り出した。

黒炎王はダウン。 俺はすぐさま背中に飛び乗り、乗り状態へ。 ルファールさんが来るまで粘れれば最高だけど…。

 

 

「待たせた!遠慮なく攻撃してくれ!」

「トマトさん!ルファールさんが来たので待たなくても大丈夫です!」

 

 

わぉ!ルファールさんったら足速いのね。

ともかく、それなら何も考える必要はない。

剥ぎ取りナイフで黒炎王の背中をザクザクと攻撃。黒炎王はあっという間にダウンした。

 

すかさず俺とクルルナが翼を、レイリスとルファールさんが頭を集中攻撃。

うん、いい感じだ。この調子なら成功間違いなしかな?

 

 

翼と頭部の部位破壊を終えたあたりで黒炎王はダウンから復帰。

そして、怒りの咆哮をあげた。 むぅ…麻痺が取れなかったな…。

 

怒り咆哮を放った黒炎王は続けてバックジャンプブレス。俺はそれに合わせてセルフジャンプを繰り出した。

 

空中ですれ違いざまに操虫棍を一閃。黒炎王は悲鳴を上げ、地面に墜落。 すぐさま苦しげに呻き声を上げ始めた。

おぉ…麻痺取れた…。俺かっこいいな。

 

麻痺中にもみんなでラッシュをかける。

俺はひたすら乗り狙いでジャンプ攻撃。 他の3人は弱点の頭部を攻撃し続けていた。

 

黒炎王が麻痺から復帰する。けどあと少しで乗れるはず。

俺はもう一度ジャンプ攻撃を狙った。

 

………そして突進で吹っ飛ばされた。

はい、欲張りすぎました。 あと少しで乗れそうだったんだ。これくらいのミスなら誰だってあるさ。

 

 

「…………!? 気をつけてッ!?」

「…?これくらい大丈夫だ!」

 

 

レイリスが何故か俺に注意する。そこまでのことかなぁ…?

黒炎王は再び突進を繰り出し、俺以外の3人の方向へ。 あぁもう…距離がだいぶ開いた…。

よし、一気に距離を詰めて乗ろう。

 

俺は操虫棍を地面に突き立て、超遠距離ジャンプをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう………ジャンプしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

跳ぶ寸前に、レイリスがこちらを見ていた。

 

 

 

何故か、必死な形相で。

 

 

 

その口は、「ダメ」と言っているようにも見えた。

 

 

 

あのルファールさんでさえ焦ったような表情をしていた。

 

 

 

俺の後方を見ているようだった。

 

 

 

 

 

後ろ………?

 

 

 

俺は体を無理矢理に捻って、後ろを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青い光がバチバチと音を発し、空に向かって伸びていた。

 

 

 

光?いや、違う。

光はバチバチなんて音を出さない。

これは………電気だ。

 

 

 

なんで電気が?

それはそこにいるモンスターが電気を使った攻撃をするからだろう。

 

 

 

なら、なんでコイツがここにいる…?

んなもん知るか。ただ、コイツが俺を狙っていることは誰がどう見ても明らかだった。

 

 

 

 

 

「…………青…電…?」

 

 

 

 

 

 

空中でそう呟いた俺に向かって、青い電気の刃が凄まじい勢いで振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 




紫毒姫で初めて状態異常無効笛を担いできてくださった人がいた時は感動しました。あんなにストレスフリーで狩猟できるものなのか…!


感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。


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第46話 黒炎、青電、狩人

 

 

視界は真っ暗闇。 体が感じているのは嫌になるほどの浮遊感。これは……あれだ。力尽きた時の感覚そっくりだ。

 

 

 

あれ…?どうしたんだっけ?

 

……あぁ、そうだ。 黒炎王に向かってジャンプして…そしたらぶった切られたんだったな…。

……何にぶった切られたか? いや、何ってそりゃあ…よくわからないうちに俺の背後にいた青電主にだよ。

 

……なんで二つ名が乱入してくるかねぇ…。いつぞやの金雷公のときもそうだったけど、俺はどうも二つ名の乱入に弱いらしい。

……にしたって、ライトニングブレード一撃でネコタクなのか…。防御力もしっかりしてるし、体力だって満タンだった。今回も攻撃力は超特殊レベルだったりするのかね?

 

 

 

 

(……………!……………ッ!)

 

 

 

 

………何か聞こえたような気もするけどきっと気のせいかな。

ハァ…。レイリスが気をつけてって叫んだのはこのことだったのね。 こりゃ後で怒られちゃうな。

 

 

 

 

(…………君!…………子君ッ!)

 

 

 

 

………さっきからうるさいな。 力尽きちゃったんだから少しくらい落ち着かせてほしい。

 

 

 

 

(…………迷子君ッ!)

 

 

 

 

だからうるさいって言って………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きろって言ってるでしょッッ!」

「…………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にレイリスの顔があった。

思わず動揺してしまう。頭が働かない。

 

次の瞬間、世界が真っ白に染まる。

は?なんだこれ? ますます理解が追い付かない。

 

 

「閃光使ったッ! 早くエリア4に行けッ!」

 

 

ルファールさんの怒鳴り声らしきものが耳に届くけど、それでも俺の頭は状況の判断ができなかった。一体どうなってる?

 

 

「いつまでグズグズしてるの!?……ッ、跳んでッ!」

 

 

レイリスがある一点を見つめ、焦った表情に。俺もそちらを見る。

 

 

 

 

 

 

 

青電主が身体中に電気を迸らせ、こちらに突っ込んできていた。

 

次の瞬間、やっと頭と身体がいまの状況に追いついた。

 

 

「………ッ、だりゃあ!」

 

 

痛む身体に鞭を打ち、俺はハリウッドダイブ。 青電主が凄まじい大放電と共に地面に着地する。

どう考えても当たっているけど、俺は全くの無傷。ハリウッドダイブの無敵時間は偉大だった。

 

 

「走ってッ!」

 

 

既に目の前を走っていたレイリスが叫ぶ。

身体が痛むけど今は我慢。 青電主は攻撃の後の確定威嚇をしている。

一応黒炎王にも目をやってみる。 すると、黒炎王は明後日の方向へブレスを放っていた。

あ、さっき視界が白く染まったのはそういうことね。 ルファールさんかクルルナだろう、閃光玉の使いどきがバッチリです。流石。

 

ここまでくればほぼ確実にエリア移動ができる。 最後にチラリと青電主のほうを見てみる。

 

 

 

 

………目が合った気がした。まるで仕留め損なった獲物を忌まわしげに見ているかのような目をしていた。

………そんな目で見られたら、ちょっと怒っちゃうなぁ。

 

 

 

 

「………おい、ビリビリトサカ野郎。てめー今のこと忘れんじゃねーぞ? すぐに戻ってきてボッコボコにしてやるから覚悟しとけよ?」

 

 

 

 

 

本当ならすぐさま戦いたいところだけど、そんなことをしたらみんなに迷惑がかかる。

少し悔しかったけれど、俺はエリア4に向かって全速力で走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「このバカッ! 私、気をつけてっていったよねぇ!? 何!?何なの!? 狩りのことになると周りが見えなくなってただ突っ込むロケット生肉なの!?」

「レ、レイリスさん……、ちょっと落ち着いて……。ほら、俺だって力尽きてないわけだし…」

「そういう問題じゃないでしょうが! 何!?力尽きなかったら何してもいいの!? 違うでしょ!?」

 

 

ひえぇ…。レイリスさんが今までで1番おっかない顔で俺を怒ってる…。

いや、確かにレイリスの注意を軽視してたのは悪かったけどさ…あれはしょうがなくない?後ろから必殺の一撃はズルいって…。

 

 

「………『あれはしょうがなかった』とか思ってない?」

「……!? い、いや〜?そんなことぜ〜んぜん考えてませんが?」

「………ホントでしょうね?」

 

 

俺がそう答えるとレイリスは渋い顔をした。

……何処ぞの天使さんみたいに心読める力とか持ってないですよね?

 

 

「ほ、ほら!レイリスもその辺にしておきましょう!トマトさんも反省してるみたいですし!」

「そ、そうだぞ? 早くしないと黒炎王と青電主が暴れてこの辺りが大変なことに…」

 

 

 

 

 

「イビル嬢と行き遅れは黙ってて!ともかく迷子君はいつまで経っても反省の色が見られないんだもん!」

 

 

 

 

 

…………空気が凍った。

レイリスさん、そのワードはまずくない…?あぁぁ…レイリスの後ろにいる2人の目からハイライトが消えていく…。

 

 

「ともかく、反省の色が見られないんだって! クルルナ、ちょっと狩猟笛貸して! 迷子君を1回ぶっ飛ばして頭冷やさせ………」

「……レイリス、貴女もちょっと頭を冷やしませんか? 付き合いの長いパーティメンバーを『イビル嬢』だなんて…。思わず笑っちゃいますね……」

 

「………えっ? 私そんなこと言った…?」

「あぁ、言っていたぞ? ついでに私のことも『行き遅れ』とかのたまってたな。 どれ、それじゃああっちの方で少しオハナシしようか。ドM君は少しここで待っててくれ」

「え゛っ……。ふ、2人とも目が怖いんだけど…。 あ、あふっ……ちょっ…ド突かないで……え、ちょっ、痛い痛い! ま、迷子君助けて!」

 

 

レイリスが涙目で俺に助けを求めるけど、あんなん無理です。 怖すぎて漏れそうになった。 あぁほら、さっき捕獲した紫毒姫もなんだかうなされてる様な顔をしてるもん、こんなん俺が出て行ったってどうにかできるわけがない。 レイリス、強く生きろ。

 

 

涙目のレイリスがルファールさんに担がれて戻ってきたのは数分後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ともかく……片方を早い所終わらせたいですね。黒炎王なら体力もそれなりに減らしているはず…。翼も破壊してますし、おそらく4人で仕掛ければそこまで長丁場にはならないでしょう。 先に黒炎王に狙いを絞る方向でいいですか?」

 

 

ちょっとぐずっているレイリスを含めた3人がクルルナの提案に頷く。まぁそれが妥当だろう。ゲームでも俺だったら先に黒炎王にかかる。4人いるなら閃光玉で撃墜させ放題だしね。

 

 

「あっ…。あともう一つ案があるんですが…。

そもそも青電主は今回の目的ではないので無視してしまうというのも1つの手なんですよね。 その点についてみんなはどうです?」

「あっ、それは私も思った。 わざわざ危ない橋を渡るのは嫌かな〜なんて思ってたんだよね。 だけど……」

「「絶対にない」」

 

 

ないです。 すみません、初めての青電主なんだからこの機会に一戦交えておきたいんです。 戦闘狂のルファールさんもノリノリだ。目が爛々としてる。

それに…あの青電主、俺に向かってガン飛ばしやがった。これは許しておけないでしょ。

 

 

「ハハハ…。 2人は相変わらずだね…。

……まぁこの4人なら正直大丈夫だとは思ってるよ? 黒炎王はこの調子であっという間に終わらせちゃいそうだし、青電主だってきっとへっちゃらだよ。

 

ただ…黒炎王で1回でも誰かが力尽きるようなことがあったら、その時点で青電主は諦めてもらう。 これはリーダーとして譲れないところだね」

 

 

レイリスが真剣な表情で言う。

1回も力尽きないようにか…。 まぁいけるだろう。何としてでもあのトサカ野郎にゃリベンジしなきゃいけない。そのためだったら頑張っちゃうもんね。

 

 

「あの青電主…大技とはいえ、迷子君の意識を一撃で奪ってた。今まで私が出会った中では1番強い個体だと思う。 さっきはクルルナの生命の粉塵がギリギリ間に合ったけど、あの技は絶対に受けちゃダメ。 もし戦うとしたら覚えておいて?」

 

 

レイリスがみんなに注意を呼び掛け、俺達は頷き返す。あの威力はこの身を以て知っている。二度と喰らいたくないです。

 

 

「うん、それじゃあ準備は整ったね。

兎にも角にもまずは黒炎王。 引き締めていこう!」

 

 

レイリスが掛け声と共に走り出す。俺達はその後に続く。体力も回復した、武器もしっかり研いだ。準備は万端だ。

 

 

よっしゃ、それじゃあリベンジといこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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エリア3に戻ると、そこには黒炎王が1匹しかいなかった。

ありゃ?青電主はエリア移動したのかね?

 

 

「あれ、こやし玉用意してたんだけどなぁ…。 まぁ好都合! それじゃ黒炎王の相手だね! 引き締めていこう!」

 

 

黒炎王がこちらに気づき、咆哮を放つ。

ちょっと乱入があったせいでお前との戦いに水を差されちゃったな。 今度は邪魔は入れさせない、真剣勝負といこーか。

 

 

出会い頭に頭から赤エキスを、そしてすぐに翼から白エキスを奪って赤白ダブルアップ状態へ。

 

黒炎王はその場から動かずに、遠くで演奏していたクルルナへ向かってブレス。その隙にエア回避、黒炎王の脚を思いっきり踏みつけて大ジャンプ。回転しながら空中攻撃を繰り出した。

 

さっき戦っていた時に乗り蓄積値を貯めていたのもあってか、黒炎王はすぐにダウン。乗り攻防が始まった。

 

高級耳栓に乗り名人が付いてる装備だから、まぁ乗り攻防はあっという間に終わる。数秒もすると黒炎王はダウンした。

 

俺以外の3人は倒れた黒炎王の頭部に集まってラッシュをかける。

長年パーティを組んでるだけあって3人の連携は完璧。互いに邪魔することなく攻撃を加えていた。

 

黒炎王はダウンから復帰。頭を攻撃していた3人に攻撃を加えようとする。

 

だけどそう自由にはさせないよ?

俺はすばやく黒炎王に二連突き。麻痺蓄積が発動して黒炎王は苦しげに悶え始めた。

よっしゃ、狙い通り。

 

麻痺中も頭に攻撃を加え続ける3人。

そして、クルルナの狩猟笛の打撃攻撃がとうとう黒炎王からスタンを奪い取った。

 

おーおー、これはすぐに終わっちゃうんじゃないか…?さっきのトサカ野郎が乱入してくる前にも結構殴ってたし、なんだかんだ残り体力は少ないと思う。

…まぁあと一押しだ。集中集中っと。

 

スタン中にも俺はひたすらエア回避からの空中攻撃を繰り返す。

そして黒炎王はスタンから復帰。怒り状態へ移行し、その場で咆哮を繰り出そうとした。

 

だけどそこへ俺の空中攻撃がヒット。

黒炎王は再びダウンした。

ごめんな。お前には悪いかもしれないけどここは全力でいかせてもらう。 まだ相手が控えているんだ。

 

黒炎王の背中に向かって剥ぎ取りナイフで絶え間なく攻撃する。咆哮をメインに振り落とそうとしてきたけど、こちらには高級耳栓が付いているので全く無意味。すぐに乗りダウンを奪った。

 

ダウンした黒炎王の頭には3人がずっと付いている。部位破壊もとっくに済んでおり、更に軟化した頭部へのラッシュが続く。

 

ここまで攻撃を加えているなら恐らく捕獲ラインは突破している。攻撃を続ける3人に構わず、俺は罠師スキルが乗ったシビレ罠の高速設置。ダウンから復帰しようとしていた黒炎王がシビレ罠を踏み抜き、すぐに苦しげな声を上げ始めた。すぐさま懐から麻酔玉を取り出す。

 

 

「ナイス!」

 

 

すると、レイリスの声と共に頭の方向から麻酔玉らしきものが。

あら?もう準備してたのかね? 流石レイリス、周りがよく見えてて素晴らしいと思います。

 

痺れている黒炎王に向かって俺が投げたものとレイリスが投げたもの、2つの捕獲用麻酔玉がヒット。

その途端、黒炎王の体から力が抜けて地面に倒れ伏す。 そして、さっきまで怒り狂っていたのが嘘のようにスヤスヤと寝息を立て始めた。

 

 

「なんだかあっという間だったな……」

「そうですね……レイリスはいつの間に麻酔玉用意してたんですか?」

 

「えっ?いやぁ、迷子君が罠仕掛けるの見えたから、そろそろ捕獲ラインかな〜ってさ」

「おぉ…流石リーダー。 私だとそんなに周りを見ることなんて出来ないなぁ」

 

 

クルルナとルファールさんの疑問にレイリスが答える。

 

……やっぱりレイリスはリーダーだよなぁ。

クルルナならまだしも、俺やルファールさんだったらひたすら攻撃を加えることに夢中になって、周りなんて全然見えないと思う。

 

ゲームだと罠を設置したらサインが出たり自動チャットがあったりしてわかりやすかったけど、こっちの世界だとそうはいかない。

上手く声を掛け合えばいいんだろうけど、さっきはそれを忘れていた。

 

だけどレイリスはしっかり周りを見てる。

うん、なんでレイリスがリーダーやってるのかがよくわかる。

 

 

ともかく、無事に黒炎王も捕獲完了だ。

これで残すは……

 

 

 

「うっし、あとは青電主だな!あんにゃろー、俺にガンつけやがったからな。ギッタンギッタンにしてやるぞ?」

「トマトさんったら…そんなに血の気多いとネコタクのお世話になっちゃいますよ?冷静に行きましょうよ〜」

 

 

ご、ごめんなさい…。でもちょっと頭にきてる所はあるんだ。早くリベンジしたいです。

 

 

「まぁ待てって。今、千里眼の薬を飲むからさ…。

…………おっ、これはエリア10かな?すぐ隣だな。

さて…レイリス、どうする? 私達はリーダーの指示に従うぞ?」

 

 

千里眼の薬を飲んだルファールさんによると、青電主は隣のエリア10にいるらしい。

そしてリーダーのレイリスに指示を仰ぐ。ルファールさんの方が年上だから少し違和感はあるけど、レイリスはそれを全く気にせずに言った。

 

 

「………今のみんななら大丈夫かな。あのとっても強い青電主だってきっと倒せる。

ギリギリの状況になったら流石に考えるけど、今回はまだ誰も力尽きてないからさ。

 

慎重に、だけど自信を持って。私達なら出来るよね!」

 

 

よっしゃ、なんだか燃えてきた。

やっぱりあれだよね。強い相手だと少し怖いけどそれ以上に武者震い的なものが起こる。

難しいことをするのは大好きだからさ。

 

 

そんじゃあ、青電主にリベンジ。

いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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森が開け、水場が存在し、木々が空からの光を遮って薄暗くなっている場所。

ルファールが千里眼の薬を飲んで教えてくれた森丘のエリア10に、私達は足を踏み入れた。

 

 

「………いた」

 

 

遠く離れた場所で、青白く発光している物が見えた。

 

 

次の瞬間、尋常じゃない威圧感と殺気を肌で感じ取った。

 

 

「………ッ!来るよッ!」

 

 

 

そしてその威圧感と殺気の主は、光を迸らせながらこちらに猛スピードで突っ込んで来る。

 

すぐさま左右へ散らばり緊急回避。

………相手に先手を取られるのは久々かな。

 

 

「おー、おっかねぇな…。随分と血の気が多いじゃんか」

 

 

こんな状況なのに迷子君はそんなことを呑気に喋ってる。

……集中したいから静かにして欲しいんだけどなぁ。

 

 

「少しずつエリア中央に動いて!」

 

 

素早くみんなに指示出し。

聞こえたかどうかはわからないけど、みんなが青電主の背後に回り込むように動いてくれたから指示は通ったのだろう。

 

そこから、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

青電主がルファールを狙って電気を纏った翼を叩きつける。ルファールはそれをしっかりイナす。

 

そこからバックステップにつなげた青電主は、トサカに眩い光を収束させる。

 

バチバチと音を立てながら、光は空に向かって高く伸び───

 

 

 

青電主が光の刃を振り下ろした。

 

 

 

私とルファールはなんとか回避。

だけど、すぐそばに振り下ろされた刃の威力は、肌がヒリヒリするほどに恐ろしいものだった。あのルファールですら苦い顔をしている。

 

 

「やれやれ…とんでもない威力だな…。それに…さっき私がイナした翼叩きつけも相当な威力だった。 まともに喰らえば致命傷必須だ。気をつけてくれ」

「オッケー、ありがとう」

 

 

霧散していく光の刃を挟んでそんな小言を交わす。

被弾は極力避けていかないと、か…。青電主相手になかなかハードな要求をしてくれるね…。

 

青電主は尻尾に電気を迸らせながら地面に突き刺す。

素早く駆け寄り、尻尾に抜刀攻撃を加える。

そこからすぐに納刀継続へ。

無理はしちゃいけない。強敵相手だと一瞬の無理がパーティ崩壊につながる。

 

 

「あぁ、無理はするな。 だけど…私は一撃入れさせてもらうよ」

 

 

隣で一緒に攻撃していたルファールがそう呟くと同時に、気のようなものを開放。

太刀を構え、相手の攻撃を待つ態勢に。

 

青電主の尻尾から放電が発生し───

次の瞬間、斬撃の花吹雪が強烈な威力を以って青電主を襲った。

青電主は堪らずに空中から墜落。地面でもがき始めた。

 

 

「フゥッ! カウンターはやっぱりいいな!」

「ナイス!」

 

 

強敵相手でもしっかりいい仕事をしてくれる。 流石ルファールだ。

 

私はすぐに頭に攻撃を加える。

ブレイヴ状態が切れていたけれど、このチャンスでブレイヴ状態には持っていけるだろう。

 

納刀継続溜め3から横殴り、更に納刀継続溜め3へとつなげる。

 

コンボを決め終えると同時に青電主はダウンから復帰。

すると、体に纏った電気をより一層迸らせながら怒りの咆哮をあげた。

 

 

怒り状態か…。さっきの状態から更に威力が上がる…。恐ろしい相手だね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

でもね…?青電主。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………実は私も怒ってるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私がそう呟くと同時に、私の体の周りに青いオーラが溢れる。

そして、周りの音が全て閉ざされたような感覚に襲われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきの攻撃…。本当に凄い威力だった。

私のパーティメンバーの1人が一撃で体力を持っていかれてしまうくらいにね」

 

 

私の視界が今までより一層鮮明に、それでいて狭くなる。

 

 

「でも…その攻撃されたメンバーってさ。私の好きな人なんだ。しっかり見守ってないとすぐに暴走しちゃう危なっかしい人なんだけどさ…」

 

 

太陽はほぼ沈みかけ、鬱蒼とした森の中はかなり暗くなっている。

けれどよく見える。全てが視界から入ってくる。

 

 

「ほら、見てみてよ。彼ったら、また楽しそうな顔をしちゃってる。…無理はしないでって言ってるのに、これじゃあまた暴走しちゃいそうだね」

 

 

目の前に広がる薄暗い森の景色から………

 

 

 

 

色が抜け落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

「………ああなったら彼を止めるのは一苦労なんだよね。だから、私も全力でいくから…。

よろしくね、青電主」

 

 

 

色を失った世界。

 

 

目の前には怒り狂う青電主。

 

 

私は大剣の柄に手を伸ばし、駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「………ッ!来るよッ!」

 

 

レイリスがそう叫ぶのと同時に、青電主がこちらに突っ込んで来るのが見えた。

おいおい…随分好戦的だな。どっかの戦闘民族かよ…。

 

とりあえずハリウッドダイブ。 超特殊許可レベルの一撃なんざもらいたくない。

 

青電主は凄まじい勢いで俺たちのいた場所を突き抜けていった。

 

 

「おー、おっかねぇな…。随分と血の気が多いじゃんか」

 

 

思わずそんな独り言がこぼれてしまう。

レイリスが微妙な顔をしてるけど気にしない。そういう性分なんです。

 

さて、どうでもいいことをしてる場合じゃない。 すぐに翼に猟虫を飛ばして白エキスを回収。そこから続けて尻尾に猟虫を飛ばし、赤エキスも回収した。そして、そこでレイリスの指示が飛ぶ。

 

 

「少しずつエリア中央に動いて!」

 

 

あいあいさー。エリア端は危ないもんな。 壁ハメなんて考えたくもない。

 

そんなことを考えてると、青電主が攻撃の態勢へ。

ルファールさんとレイリスのいるあたりに翼を叩きつけた。

 

2人はサクッと躱したみたい。あ…だけどライトニングブレードにつなげて来やがった…。

 

あの凶悪極まりない威力の攻撃が、2人に向かって放たれる。

あ、あぁ…大丈夫か…?

 

……おっ、大丈夫だったみたい。 2人とも苦い顔を浮かべてるけど、しっかり避けてるのは流石です。

 

なんか2人が軽く言葉を交わしたのが見えたけど全然聞こえないからどうでもいいや。

なんてことを考えてると、青電主は尻尾に電気を迸らせて地面に突き刺した。

 

……エア回避いけるか?いや、やめとこう。

無理して死んだりなんかしたら目も当てられない。

とりあえず脚に虫を飛ばして橙エキスを奪い、トリプルアップ状態にはなっておいた。

 

地面に刺さった尻尾から放電が発生し───

 

 

ルファールさんのカウンターが決まった。

 

 

あら、鏡花の構え溜まってたのね。

ともかくこれはありがたいです。カウンターを喰らった青電主は堪らずにダウン。

その隙に翼をチクチクと攻める。

 

正直火力を出すための装備ではないから、ダメージ貢献はそこまで出来ないだろう。

俺の仕事は乗りと麻痺。そこを意識しよう。

 

 

「よし……。集中………」

 

 

青電主がダウンから復帰する寸前に、1度だけ体の中から息をフッと吐き出す。

 

 

目の前には今までで1番といってもいいくらいの強敵。

 

もちろん恐ろしさだってある。さっきも一度やられてるわけだしね。

 

でも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなん燃えないわけないよな…!」

 

 

難しいことが大好きなんです。

マゾとか言いたきゃ、言ってもらっても構わない。そりゃあ自分から強い相手に挑んでるんだからドM君なんて呼ばれるのもしょうがないさ。

 

 

でも、強い相手だから楽しいんだ。

一撃でこちらの全てを持っていかれてしまうような相手。ソイツの攻撃を全て躱し、反撃し、最後には倒す。

 

 

こんなに楽しいもんはないだろう。

少なくとも俺は大好きだ。

 

 

ゲームでも超特殊許可なんかでスリルを味わうことが出来た。

けど、こちらの世界は段違い。

より鮮明に世界を感じれるようになり、その中でゲームの中と同じ強敵と戦える。

 

 

そりゃあ楽しいよ…楽しすぎるよな…!

 

 

怒り喰らうイビルジョーの時もそう。

ゲームの画面の中より何倍も、何十倍にも深く感じられる世界であのスリル、緊張感を味わえる。

その中で自分の力を試す。そりゃあ多少危険な真似もしちゃいたくなるさ。

 

 

あぁ…こんな状況なのに、多分俺笑っちゃってるわ。

レイリスが見たら呆れそうだな…。

 

 

 

「リベンジ………ってのはちょっと違うかな。

さっきのは水に流すよ。忘れるから気にしないでおいてくれ」

 

 

 

だんだんと周りの音が消えて行く。

うん、怒り喰らうイビルジョーとやった時と似てる感覚だ。

 

 

ただ……今回はそれ以上に集中してるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の世界から、色が抜け落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハハッ……こんな感覚初めてですよ…。

 

ただ、今の俺なら最高の動きが出来そうかな?

 

 

「今は、俺の全力の相手をしてくれるだけでいいさ。 いこーか、青電主」

 

 

怒りの咆哮を上げた青電主に向かって、俺は操虫棍を使って跳びかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「なぁクルルナ…。レイリスってあんな凄まじい動きしてたっけ…?」

 

 

狩りの最中、私の隣に近寄ってきたルファールさんからそんなことを尋ねられました。

 

あぁもう…私は相手取ることに集中するので精一杯なのに…。そうやって気軽に話しかけられる貴女も十分凄まじいですって…。

でも…確かに…。

 

 

「い、いえ…。あそこまでの動きは私も初めてですよ…。何なんですかあれ…? ドンドルマの時以上じゃありません?」

 

 

私達の目の前には、美しく綺麗で…それでいて荒々しく力強い立ち回りを披露するレイリスがいました。

 

 

「……やれやれ。みんなに無理するなと言っておいて自分はあんな立ち回りをするのか。

頼もしいのかどこか抜けてるのかわからないな…。

いきなり溜め始めた時は肝を冷やしたぞ…?まぁその後に青電主を叩き落としたのを見た時は目玉が飛び出るかと思ったが…」

 

 

ルファールさんが苦笑いをしながら言います。

確かに私もギョッとしました。普段のレイリスなら考えられないような動きをするんですから…。

 

でも……、青電主の攻撃は全く当たらないんです。まるでレイリスをすり抜けていくように。

そして、レイリスの攻撃は的確に弱点に吸い込まれていくんです。まるで計算されたかのように。

 

見ていて非常に危なっかしいのですが、あそこまで綺麗に攻撃を当ててるのを見ると綺麗、とさえ思ってしまいます。

 

 

それに……。

 

 

 

「トマトさんも…なんだかとんでもなくないですか? 滞空してる青電主に向かって跳んでいってばっかりで…、でも何回も撃墜してるんですから…」

 

 

そう、トマトさんも凄まじい動きをしているのです。

空を跳ぶ青電主の翼を跳躍のすれ違いざまに一閃。 何回も撃墜してます。

 

それに乗りや麻痺も何回もとって…。

あっ、3回目の乗りに入ったみたいです。

 

 

「いやぁ…レイリスもとんでもない人を見つけてきたもんだな…。私が知らないハンターで、あそこまでの腕を持っている人がいるとは思わなかった。

 

………なんか彼、笑ってないか?」

 

 

………確かに笑ってますね。随分と楽しそうです。

………私とアレやコレやをする時はあんな顔をしてましたっけか?な、なんだか複雑な気分です。

 

「まぁ、あまり長く話しててもアレかな。

ほら、乗りダウンだ。一気に攻めて終わらせよう」

「そうですね、あと一押しです!」

 

 

とりあえず2人での会話は一旦打ち止め。

ダウンした青電主に向かって私達は駆け出しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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青電主が滞空状態に入り、ブレスを放つ。

 

それを避け、青電主に向かって跳躍。

すれ違いざまに翼に向けて攻撃を加えた。

 

その攻撃で翼爪が砕け散る。そして、青電主はダウン。

 

 

……撃墜するのは何回目だろう。結構な回数をしたのだけは覚えてる。

 

 

ダウン中にもジャンプ攻撃を仕掛ける。

……乗り耐性が付いてきてるのか、なかなか乗り状態に移行できないな。

ここら辺でスタンとかとってくれれば嬉しいんだけど…。

 

なんて思った途端、ダウンから復帰寸前だった青電主が再び倒れる。

えっ?まじですか? 誰かは知らないけどナイスタイミング過ぎる。

 

ダウンしてくれた青電主に向かって再び乗り攻撃。これでスタンから復帰した直後に乗り状態に入れるだろう。

 

 

楽しい…。 本当に楽しいな…。

 

そんなことを考えながらただひたすらに攻撃。

 

 

そして予想していた通り、スタンから復帰した青電主はすぐに乗りダウン。

 

 

悪いけど…手は緩めない。

俺の全力にもう少し付き合ってくれよ?

 

 

そんなことを考えながら、青電主の背中に飛び乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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また彼が青電主を撃墜したらしい。

チャンスを作ってくれるのは嬉しいけど、危ないのは危険だからやめてって言ってるんだけどなぁ…。

 

なんだろう…。

すごく上手く進んでるんだけど、ここら辺でもう一押しが必要な気がする。じゃないと、この攻撃のリズムが途切れそう。

 

ダウンしている青電主にすばやく抜刀攻撃。そして横殴り。

直感のままに、そこからブレイヴ状態のサイドステップに繋げる。そしてさらに横殴り。

そこからすぐさま納刀。

 

そして大剣を抜刀。腰だめに構え、力を込める。

限界まで力を込め……、

 

 

青電主の頭に目掛けて、一気に振り抜いた。

 

 

『居合術【力】』の効果が乗った抜刀攻撃は、青電主からスタンを奪ったみたい。

 

 

なるほど…、このスタンが取れてなかったら私達の攻撃は途切れちゃってたかもしれないね。

 

 

スタンした青電主にラッシュをかける。

抜刀溜め斬りからすぐに納刀に繋げ、再び抜刀溜め斬り。

もう一度だけそのサイクルをしたところで、青電主はスタンから復帰。

 

だけど、そこで青電主はダウン。

迷子君が青電主の背中に飛び移ったのが見えた。

 

 

……本当に頼りになるなぁ。ちょっとかっこいいかも。

 

 

恐らく…あと少し。頑張ろう。

 

 

青電主の背中で攻撃する彼を見ながら、そんなことを考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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よし、乗りダウン。

特に何事もなく、ダウンを奪うことが出来ました。

 

そろそろ倒せると思うんだけどなぁ…。

最後まで集中を切らさずにいきましょ。

 

ダウンしている青電主に向かってラッシュ。

恐らくもう乗りは狙えないだろうから、地上攻撃メインの麻痺狙い。

 

ダウンから復帰した青電主は怒りの咆哮を上げた。おし、最後の正念場だ。正直ダウン中に倒せると思っていたけど、そうは上手くいかなかったらしい。でも、下手すりゃあと一撃で倒せるんじゃないかな?

 

 

青電主は俺を狙って帯電した翼を叩きつける。それを移動して回避。白エキス効果で軽々動けるのでここまでは難しくない。

 

そう、ここまでは。

 

 

「そのゼクスカリバーは勘弁してほしいな…!」

 

 

青電主は約束された勝利のトサカから、青い刃を伸ばす。

エリアルは避けにくいんだって…!

俺は真横にセルフジャンプ。

 

 

 

なんとか当たらないように……!

そう願って、跳んだ。

 

 

 

背中のすぐ後ろに、何かが振り下ろされたような感覚があった。

だけど、意識は消えてない。

おっしゃあ、避けたみたい。

 

すぐさま青電主の方を見る。

 

青電主は尻尾に電気を迸らせ、放電の予備動作に入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後ろで、レイリスが尻尾目掛けて駆け寄っているのが見えた。

 

レイリスと目があった。

 

レイリスは笑っていた。

 

まるで勝利を確信したかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、俺は跳んでいた。

 

狙いは尻尾。これで決める。

 

レイリスは腰だめに大剣を構え、力を溜めていた。

 

俺は体を捻って回転させ、青電主の尻尾を狙う。

 

 

限界まで力を込められた強溜め斬りが、回転の力を加えられたジャンプ回転斬りが青電主の尻尾に叩き込まれ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………青電主は怯まなかった。

 

 

 

 

 

 

「「えっ」」

 

 

 

 

 

その場の雰囲気にそぐわない素っ頓狂な声が思わず俺達から溢れ落ちた。

 

目の前で青電主の尻尾の電気がバチバチと音を上げる。

 

そして凄まじい威力の放電が尻尾から放たれ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………2人とも暴走しすぎだ。次は気をつけてくれよ?」

 

 

 

いつのまにか隣に近づいてきていたルファールさんの声と、ルファールさんが何か気を解放するような姿を目にして、俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「んあっ!?」

 

 

意識が覚醒し、頭が警鐘を鳴らす。

すぐさま大剣の柄に手を伸ばし、辺りを警戒。

 

 

………目の前には、肉焼きセットで肉を焼いているルファールがいた。その向こうには、倒れ伏して寝息を立てている青電主も。

 

 

「………おっ、起きたか。やれやれ…無理はするなと言っておいて、あんな危ない行動はやめてほしいな…。肝が冷えるよ…」

 

 

……え? 一体何がどうなったんだっけ?

全然頭の理解が追いつかない。

 

 

「上手に焼けました〜っと。ほら、とりあえず腹ごしらえだ。 食べた方がいいぞ?」

 

 

ルファールから美味しそうに焼けたこんがり肉を受け取る。

……でもまだ食べる気にはなれなかった。

私の意識が消えてから、一体どうなったんだろう?

 

 

「え、えっと…。あの後どうなったの?」

「あぁ、まず…レイリスと彼は力尽きた。

青電主の尻尾放電をまともに喰らってノックダウンさ。

だけど同時に、私の鏡花の構えも決まっていてな。青電主はダウン、そこにクルルナが素早く罠を設置して捕獲、というわけだ…。

……まぁ成功はしたけど、あんな暴走はちょっといただけないな」

 

 

………そっか、私と迷子君は力尽きたんだ。

よく見ると、少し離れた所で迷子君がノビていた。クルルナがこんがり肉で彼の顔を面白そうに突っついている…。や、やめたげようよ…。

 

 

「……まぁ暴走気味だったとはいえ、凄い動きをしてたな。私より凄腕なんじゃないか?」

「い、いやぁ…それは流石に…。暴走したら強いなんてなんか嫌だし…」

 

 

ルファールが笑いながらそんな言葉を落とす。私より年上で、時にはこうやって励ましてくれる。普段の立ち振る舞いからはあんまり想像しにくいけれど、私にとっては頼りになる副リーダーだ。

 

 

「ともかく、だ。 これでクエストは終了!

久々の難関クエスト…更には乱入もあったけど、それら全てを退けたんだ。そんなシケた顔してないで素直に喜ばないとな!」

「あうっ、そ…そうだね…」

 

 

ルファールにバンバンと背中を叩かれる。

い、痛いんだけど…。

 

 

「さて、それじゃあまだノビたままの彼を叩き起こさないとな。 全く……あれじゃラディスにヘタレ呼ばわりされるのもしょうがないじゃないか…」

 

 

ルファールはそういうと、クルルナと迷子君の方へ歩いていった。

 

 

………そうだよね。力尽きちゃったけどクエストは成功したんだ。喜ばなきゃ損だよね。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……、疲れたぁ〜…。あっ、美味しい」

 

 

 

 

 

 

 

さっきルファールから渡されたこんがり肉にガブリと齧り付く。肉汁が溢れ出し、疲れきった体に活力を与えてくれている様な気がした。

 

 

 

 

もう時刻は夜。

木々の隙間から明るい月の光が差し込み、私達を労う様に照らしている。

 

 

 

 

 

「……メインターゲットを達成しました!」

 

 

 

 

 

空の月に向かって、そう叫んだ私だった。

 

 

 

 

 




3週間も空いてしまいました、すみません。

感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。



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第閑話 白いドレス

 

 

 

 

 

 

 

「いっ…いぢぢ…。か、体が…」

「んもう…、ちょっとビリビリしただけなのに大袈裟ね…」

 

 

彼女…彼女と言っていいのか怪しいけど、オレには美少女に見える。

そんな美少女がどこか不満気な顔をしながら言葉を落とす。

い、いや…ビリビリって…。

あんなどでかい光の柱をドバンッとやられたこっちは、ビリビリ程度で済まないんですよ…。

 

地面に倒れ伏し、未だに体の自由がきかない俺の側に彼女がふわりと飛んでくる。

 

お、お…?白いドレスのスカートが風で…?

 

なんて考えたら、空から雷鳴が聞こえたのですぐに考えることをやめた。一時の過ちで消し炭にされちゃたまったもんじゃない。

それに彼女の白いドレスは、この風が吹く中でも一切荒れていなかった。う〜ん、不思議パワーだなぁ…。

 

 

「今日も残念な結果だったわね〜。 まぁ私は楽しいし、貴方も少しずついい動きが出来るようになってるみたいだけど? ほら…翼を狙って怯ませて撃墜なんかは確実に上達が見られる動きだったわよ?」

「あ、ありがとう…。

………いや、でもあの人ならサクッと倒せるんだろう?」

「それ…本当なのかしらね? あの胡散臭い天使の言うことはどうにも信用ならないから…。 まぁ…私達が退屈しなくなったのは確かだし、それには感謝してるんだけども…」

 

 

彼女は訝しげな口調で話す。

う〜ん、あの天使さんなぁ…。

いや、確かに親切なんだけれども、どうにも抜けてるところがあってなぁ…。

 

なんか、面白い書物とかを持って来てくれたりしたから彼女達は退屈しなくなったみたい。

なんか…『ゲットだぜ!』とか、『そーなのかー』とか言ってるけどオレにはよくわからん。

 

 

「………あの人は今どんな感じなんだ?」

「えぇ、凄いわよ?貴方とは少し強さの段階が違う…、それくらいには狩人としての力がある感じはしたわ」

 

 

うわぁ…マジかぁ…。 こんだけ努力してんのに、まだ遠いかぁ…。

ちょっとヘコむわぁ…。

 

 

「ふふっ、気にしないの。 きっと貴方と会ったら、貴方の力を活かし…そして自分も力を十全に発揮する…。 彼の強さはそんな感じだもの。だからきっと大丈夫よ。貴方だって弱くはない。 ただ、彼の方が強いだけよ」

「あ、ありがとう…。今日はなんだか優しい気がする…」

 

 

そこまで言って彼女の顔を見ると、なんだか悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

あ、あれ?なんか嫌な予感…。

 

 

「でも……貴方が強くなった方が私も楽しいから、まだまだ続けましょ? ほら、そこに薬を置いておくからがんばってね〜」

「え、おい…ちょっ…」

 

 

そこまで言ったところで、彼女は消え失せた。そして…空からは雷鳴の音、黒く立ち込める雲の中には稲光が。

 

 

「あーちくしょう…!こうなったら逃げられないし…、やるしかないかぁ…」

 

 

彼女が置いていってくれた、いにしえの秘薬をゴクリと飲み込む。身体に活力が漲り、体力も全開。そして、すぐに武器を研ぐ。

 

 

「さぁ、いきますか…!」

 

 

暗雲が立ち込めていき、雷鳴が鳴り響く空に向かって、そう言葉を放ったオレだった。

 

 

 



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第47話 私とドMなハンター君


なんか一瞬ですがランキングになったみたいで…。感謝です。

あと、お気に入り150件、UA20000を突破しました。
こんなに目を通していただけるなんて思っていなかったので感無量です。
完結まで頑張りたいと思うのでよろしくお願いします。




 

 

 

 

 

 

「そぉい!」

 

 

彼が少し力の抜けてしまいそうな掛け声を出しながら、ラージャンの回転降下攻撃を避ける。

 

 

「飛鳥文化アタックありがとさんっ! ゆっくり休んでろぃ!」

 

 

3回連続の回転降下攻撃を避け切った彼はそんなことを言いながら、隙を見せたラージャンの後脚を斬りつける。

あ、あすか…ぶんか? 一体なんのことなのだろう…?彼は時々よくわからない言葉を使うからなぁ…。

 

彼が斬りつけた後脚で小さな爆発が起こり、ラージャンが転倒。

おっと…私もボンヤリしていられないな…。

すぐにダウンしているラージャンに駆け寄り、気刃斬りのラッシュ。ラージャンのダウンはそこまで長くないから剛気刃斬りまでは入れられなかった。残念。

 

ダウンから復帰したラージャンはその場でバンザイポーズ。 そして、私達にボディプレスをかましてきた。

それを…まぁどうということなくカウンター。

するとラージャンは再びダウン。どうした…やけに転ぶな。

 

カウンターの動きから前に滑るように進み、剛気刃斬りをラージャンの頭部に叩き込む。

もともと片方の角は破壊していたが、今の攻撃でもう片方の角も砕け散った。

 

ダウンから復帰したラージャンは私達に背を向け、足を引きずって逃げ始めた。

うん、今回も順調だったな。

 

 

「おー、足引きずるの早いですね。 流石ルファールさんって感じ?」

「うん、そう言ってくれるなら嬉しいかな。

でもまだクエストは終わってないぞ? 最後まで油断しないように……といっても罠置いて捕獲するだけなら失敗はしないか」

 

 

ラージャンが凄まじい跳躍で自分の寝床へと帰っていくのを見ながらそんな会話を交わす。

今回は原生林で激昂ラージャンの狩猟。私とドM君以外の4人が別の大連続狩猟に行っているので、今回は2人きりのクエストだ。

………彼と2人きりのシチュエーションなんて初めてじゃないか?

 

 

「2人でクエスト……。な、なんだかデートみたいじゃないか?」

「いや……デートって……。なんでデートでゴリラを狩らないといけないんですか。もっとこう…マシなのないんですか?」

 

 

………ぷぅ。ノリ悪いなぁ…。

私はハンティングしてるのが楽しいし、彼も似たような部類だと思ったんだが…。なかなか上手くいかないね。

 

 

「まぁでもルファールさんがそういうなら、気持ちだけはデートでもいいですよ? 最近はどうもクルルナに襲われてばっかりな気もするんで、こんな風にのんびりと一緒にいる時間を楽しんでもいいですよね」

「おや、そうかい?ま、まぁ君がそう言ってくれるなら……私はやぶさかではないが…」

「あ、別に嫌ならいいんですけど…」

「ごめんなさい!デート気分でいさせてください!」

 

 

……な、なんだか彼のペースに乗せられている気がする。なんか癪だなぁ…。

まぁいいか、それじゃあ少しデート気分を楽しませてもらうことにしよう。

 

 

「それじゃあ仲良くラージャン狩猟デートだな! 出発だ!」

「ムードの欠片もねぇ…」

 

 

そんなことを言いながら、ラージャンの寝床へと向かい始めた私達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…………今思ったんだけど、デートって何すればいいんだ?」

「俺もわかりませんよ…。というかラージャン捕獲終わっちゃったじゃないですか…」

 

 

あれから数分後、私達の前には捕獲されて鼻提灯を出すラージャンがいた。

……マ、マズイな。 デートをしよう!と思いついた私から提案しておいてやったことは何だ?

鼻歌を歌いながらラージャンを捕獲しただけじゃないか。 正直今までハンター一筋だったからそういったことには疎い。

疎いけれども、世間一般のデートは鼻歌を歌いながらラージャンを捕獲することじゃないことぐらいはわかる。

ど、どうすれば……!? 普段からクルルナとかに相談に乗ってもらっておくべきだったかっ…クソッ!

 

 

「どっ、どど、ドMくん…。クエスト終わってしまったぞ…!私は人生初のデートをこんな形で終わらせたくない…!どうすればいい…!?」

「えぇ…? そもそも原生林でやることなんて釣りくらいしかないじゃないですか…。2人で黙々と釣りでもしますか? ちょっと違うような気もしますけど…」

 

 

オッサンか!私も君より結構年上だけど、流石に釣りをしながら思いを馳せる様な年ではないぞ!?

 

 

「も、もっとマシなので頼む…」

「う〜ん………じゃあ、あれじゃないですか?

特に何をするでもなく、ベースキャンプに戻ってのんびりおしゃべりとか…。こういうの、案外楽しいもんですよ?」

 

 

お、お喋りか…。たしかに今までよりはマシだけど…。なんか…特別感が無いような気が…。

 

 

「ま、まぁ君のオススメなら…。じゃあそうするか…。モドリ玉は持ってきてるか…?」

「あっ…ないです。それじゃあのんびり歩いて戻りませんか?楽しくお喋りしながら行きましょうよ」

「う、うん…そうするか…」

 

 

というわけでドM君とのんびり歩いてベースキャンプに向かうことに。

ま、まぁラージャン捕獲デートよりはマシだろう…。ほら、幸せってこういう何気ないところにあるっていわれてるじゃん?

 

 

「そういえば、今回のクエスト。ルファールさん宛に緊急で依頼されたって言ってましたけど…。どういうことなんですか?」

「あぁ、まぁ緊急というか知り合いの尻拭いというか…。 私の友達ハンターの2人組がいるんだけどな?そいつらが珍しくクエスト失敗したんだとさ。で、どうせ別のハンターに頼むなら知り合いの私に…って話らしい」

 

 

彼がふとそんな質問を私に投げかけたので、とりあえず答えておく。

今回は他のハンター……あの2人組の後処理って感じかな?

 

 

「あの…いつだかアカム武器を使う奴がいると話をしただろう?ソイツを含めた2人組が失敗したんだとさ。

激昂ラージャン二頭の狩猟だったらしい。危険なクエストだけど、彼らなら失敗する様なクエストじゃないんだが……アカム武器の方が体調悪いこと隠して出発したらしくてな、途中でぶっ倒れたらしいぞ?」

「うええ…。無事でよかったですね…。体調管理もしっかりしないとだな…。ハンターって風邪とか引かないイメージありましたよ…」

「……君もハンターなのに何言ってるんだ。まぁ、彼らが無事で安心はしてるかな。

それよりもその後の……ぶふっ、いや…これは彼女に悪いから秘密かな」

 

 

ウルスが真っ赤な顔で泣きついてきたときは何事かと思ったが、話を聞いたら腹を抱えて笑ってしまった。

笑ったら本気で殴る蹴るの暴行を受けた。いや、それ程のことじゃないだろうに…。

 

 

「と、まぁ今回のクエストの経緯はこんなもんさ。いつかドM君も彼等と会ってみるといいぞ? 私が認める手練れさ。少なくともレイリス並みの技術はあるハンターだ」

「……レイリス並み!?めっちゃ強いじゃないですか! それはいつか会いたいですね」

 

 

ドM君とそんなお喋りをしながら原生林を歩く。

……たしかに悪くないな。何か特別なことをしてるわけでもない、ただのお喋りだ。だけど妙に楽しく感じられる。

 

せっかくの2人きりなんだから特別なことを…とか思っていたけれど、そもそも2人きりになれることが特別なのかもしれないな。

だから…こんな何の変哲も無いお喋りさえ、すこし幸せに感じるのかな?

 

 

そんなことを考え、つい顔に微笑みが浮かんでしまう私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、彼がこちらをジッと見ているのに気がつく。

 

 

「ん?どうしたんだ?」

「いや……ルファールさんって…デカイな…と」

「…こんのアホッ!」

「あだっ…」

 

 

………これも特別な時間なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おや、話してたらもうベースキャンプが目の前か。いやぁ…ただのお喋りってのも悪く無いもんだな!」

「ええ、そりゃまあ…。ハンターやってたらこんな機会少ないんじゃないんですか? 毎日強大なモンスターと戦ってると、体だけじゃなく心だって擦り減りますよ。 だから人とのんびり喋って過ごすってのはたまにはいいんじゃないですかね? 」

 

 

少しだけ説得力のある言葉を落とすドM君。

………心が擦り減る、ね。

ちょっと苦い思い出が蘇ってしまう。

 

 

「そう…だな。さて、ベースキャンプに到着だ。 小腹も空いたし、こんがり肉を焼くからちょいと待っててくれ」

「えっ、ルファールさん肉焼けるんですか?」

「失礼な……それくらいは大丈夫だ。というかむしろ得意な方だぞ? 最近は出回らないけど、『高級肉焼きセット』があれば『こんがり肉G』だって焼いてみせるさ。ま、期待して待っててくれ」

 

 

ベースキャンプに保管されている肉焼きセットを設置し、予め持ってきておいた生肉を火にかける。

頭に思い浮かべるのは、駆け出しの頃に通った訓練所で教えられた肉焼きの歌。

ドンドルマの訓練所での厳しい指導が不意に脳裏をよぎった。 ……教官、元気にしてるかなぁ。

 

 

「ふんふんふ〜ん、上手に焼けました〜♪」

「マジかっ。正直期待してませんでした。お見事です」

「ふふん。私だってハンターの基本の肉焼きくらいの料理はできるさ!ほい、もう1つ焼くから先に食べといてくれ」

 

 

こんがりと焼け目のついた骨つきの肉を彼に手渡し、すぐに2つ目の肉を焼き始める。

肉焼きの歌を口ずさみながら、2つ目のこんがり肉もすぐに焼きあがった。

 

 

「ほんじゃいただくとするか!味はどうだい?」

「いやぁ、美味いですよ。 なんか普通のより美味しさが閉じ込められているというかなんというか…。ちょっとルファールの肉焼きスキル舐めてましたね」

「はっはっは!満足してくれたのなら結構!美味しくいただいてくれ!」

 

 

ガツガツと肉を頬張る彼を見て、そんな言葉をかける私。

なんか…あれだな。いくらこんがり肉とはいえ、自分が作ったものを好意を抱いている人に喜んで食べてもらうのは嬉しいんだな。

 

レイリスやクルルナが楽しく料理をするのを見て、何が楽しいのか…なんて思ってたけど今ならわかる気がする。

こりゃ、本格的に料理を覚えた方がいいかな…?

 

 

肉を頬張る彼を見て、そんなことを考える私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「えっ? 仲間達の力になれてるか不安?」

「あ〜…まぁそうですね…。なんか…俺がいる意味があるのかな?とかはたまに思っちゃいます。みんな、ハンターとしての力がとんでもないですから…。俺がいてもいなくても変わらないんじゃないかな…と」

 

 

ギルドの迎えが来るまであと少しというところで、彼が少し自信の無さげな顔をして相談を持ちかけてきた。

なんだ…、彼がこんな相談なんて珍しいな。

 

 

「レイリスとかに言っても、気を遣われて本音で答えてくれなさそうなんでルファールさんに相談してみました。

……なんかずるいですね……すんません」

「あぁいや、気にしないでくれ。確かにレイリスなら気を使ってしまいそうだからな。

さて…ドM君が私達の力になれてるか、か…」

 

 

私は少し考えてみる。

彼のハンターとしての腕はかなりのもの、なんならレイリスだって上回っているかもしれない。

 

まぁ…この間みたいな暴走する癖はいただけないか…。

楽しいのはわかる、私だってクエストが楽しいことは多いんだから。

 

でも、彼の場合はどこか危うい。

何か……根本的なところで私達との価値観の違いがある気がする。

モンスターとの戦いを娯楽の様に感じているような…そんな価値観の違い。

危険だと感じても、それすら楽しんでいるような…そんな危うさがある。

 

私だって強い相手と戦うのは好きだ。だけど、一時の愉悦のために命をかけるようなバカではない。欠片程のものだけど、心の奥底には恐怖という感情がしっかりあるんだ。

勇気と蛮勇は違う。 今までいろんなハンターと出会ってきたけど、最後まで残るのは少し臆病な位のハンターだ。

 

モンスターを恐れない。

モンスターなんて怖くない。

そんなことをのたまうハンターから先に消えていくのがこの世界。

 

幸いに、私達のリーダーであるレイリスはそのことを重々承知していた。だから、危険な真似をすることはかなり少ない。

 

だけど……彼はどうだ?

まるでモンスターと戦う時に一切恐怖を感じていないみたい。

それに、最近はあのレイリスまでそれに感化されているような気もする。

正直いってあまり良くない傾向だ。

 

 

こう考えてみると、確かに彼は私達に迷惑というか…何かそんなものをなすりつけているのかもしれない。

 

 

「………今考えてみたんだが、君はなかなかリスキーな狩りをするんだな。そんなんじゃレイリスに嫌われちゃうよ?」

「タハハ……。すいません、どうもこればっかりはなかなか治らない悪い癖で…」

 

 

そのことについて尋ねてみるが、何処か軽い笑いで返されてしまった。

………これじゃ怒る気にもならないなぁ。

 

………まぁ、これも彼のいいところなのかもしれない。

 

 

「まぁでも、君は私達には必要とされるだけのハンターだとは思うぞ?副リーダーの私が確信を持って言うよ」

「えっ、本当ですか?」

「あぁ、本当さ」

 

 

 

 

………だって、

 

 

 

 

「君が現れてから、レイリスがよく笑ってるからな…。レイリスだけじゃない、クルルナも…セレスもラディスも、みんなが楽しそうだ。たったそれだけだけど、それはなかなか難しいことなんだぞ?」

「えぇ…なんか微妙ですね…。ショボいというか何というか…」

 

 

少し不満げな顔をするドM君。

だけど、私はそれを気にせずに言葉を続けた。

 

 

「ドM君は知らないだろうが…。レイリスは少し前までボロボロだったんだ。

『英雄』と呼ばれた私達が各地に散り散りになってからは、どうもみんな上手くいってなくてな…。あのクルルナでさえ、心が限界寸前だったそうさ」

「え……レイリスが?」

「あぁそうさ。セレスやラディスも他のハンターと問題を起こしてばかり。クエスト成功率だって随分と落ちてたらしい。そんな時に、副リーダーの私は何もやってやれなかったのさ」

「…………そんな時期もあったんですね」

 

 

彼が少し申し訳なさそうな顔になる。

あぁ…過ぎたことだから気にしなくてもいいのに…。まぁいいか、続けよう。

 

 

「だけど……君とレイリスが出会ってから少しずつ変わり始めたのさ。

各地から聞く報せも随分と明るい内容に変わっていった。嬉しかったよ。

そして…レイリス達がドM君をベルナ村に連れて来た時、レイリス達は本当にいい笑顔をしてた」

 

 

あの時は本当に嬉しかった。

無事に辛い時を乗り越えてくれたことを喜ばずにはいられなかった。

 

 

「狩りの力とかそういった問題じゃない。ただ、そこにいるだけでみんなの力になれてるんだ。誇りに思っていいさ」

「そう……ですか」

 

 

うん、そうさ。だから君とはもっと一緒にいたい。みんなそう思ってる筈。

だから…

 

 

「だから……出来れば私達…。特にレイリスに心配かけるような行動は控えてもらえると嬉しいかな…なんて思ってたりはするかな?」

「うぐっ…すみません。以後気をつけますよ…」

「ふふっ…まぁ、頑張ってくれ。

………おっと、ギルドのお迎えが来たみたいだな」

 

 

彼とのお喋りがちょうど一段落したところで、上から動力機関の音が聞こえて来た。

ベースキャンプの木々の間から覗ける空には飛行船が。

 

 

「今日はありがとうな。ラージャンの狩猟に付き合ってもらえた上に、楽しい時間を過ごせたよ」

「いや、そんなお礼言われるほどのことしてませんよ。そんじゃあ帰りますかっ…と」

 

 

彼が「よっこいしょーいち」とか言って重い腰を持ち上げる。なんか……ダサいな。初めて聞くけれど、ダサいということはなんとなくわかる。

まぁ彼らしいというか何というか…。見てて笑えてしまう。

 

 

 

 

………あっ、そうだ。

 

 

 

 

「ドM君、ドM君」

「はい?なんでしょ…」

 

 

声をかけられてこちらを振り向いた彼。

その頬に、私は顔を近づける。

 

 

 

そして、私の唇と彼の頬が触れ合った。

 

 

 

「…………は?えっ、え、あ、え…」

「今回のお礼だ。ありがたく思ってくれよ?

ほら、早く帰ろう!」

 

 

ペロリと舌を出して、凍りついたままの彼に声をかける。

ふふっ、いい反応してくれるね。いつかはこんなことをしてみたいと乙女ながらに決めていた。うん、満足満足。

 

 

固まったままの彼を後ろに、私は帰りの飛行船へと歩みを進めた。

今日もおつ狩り様でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おわぁ〜…。おわぁ〜〜っ……。キ、キスですよ……」

 

 

月の明るい夜。

俺はマイハウスで1人赤くなっていた。

 

いや…ルファールさんったら魔性の女すぎる。 いきなりキスとかなんなん!?

何!?イビル嬢ってみんなそうなの!?

 

最近は上手くいなしてるけど、襲われることは何回もあるんだ。

だけど、今日みたいな…こう、ロマンチックなのはなかなか無い。

ヘタレなんだ。あんなんされたら固まってしまいますよ。

 

 

「…………唇、柔らかかったなぁ」

 

 

思わずそんなことを口走ってしまう。

いや、だって……ねぇ?

俺だって男なんだ。そんなことを妄想しないでも無い。向こうの世界にいたときだってあることないこと妄想し……いや、やめておこう。

 

……やばいな?今の独り言、クルルナとかに聞かれてないよね?

聞かれてたら、クルルナに貪られる事間違いなしだ。本気を出したクルルナはヤバイ。

イビル嬢強いよ、イビル嬢。

 

 

 

 

 

「ほ〜ん、柔らかかったのか」

「うっぎゃぁぁぁぁああああああああ!?」

 

 

 

 

いきなり耳元で声がして、ひっくり返った。

ヤバイ!聞かれた!喰われる!逃げなきゃ!

 

枕元に用意しておいた、けむり玉なんかを詰め込んだ逃走用アイテムポーチに手を伸ばしてすぐに駆け出す。

 

 

駆け出そうとしたんだけど……

 

 

「あっはっは!待て待て!もう少しゆっくりしなよ!私さ!」

 

 

男とも女とも取れるそんな声が聞こえた。

ん?これって………

 

 

「やぁ久しぶり。元気してた?」

「なんだ…アンタですか…。死ぬかと思いましたよ…。まぁぼちぼちやってます」

 

 

 

そこにはいつぞやのアークS装備の天使さんが。相変わらずどこかへっぽこなオーラを感じる。

 

 

「おいコラ、誰がヘッポコだ。ぶち転がすぞ」

「すいませんでした、許してください」

 

 

相変わらず読心能力は健在らしい。見た目に似合わず、なかなか便利な能力を持ってやがるな。

 

 

「見た目に似合わずって…まぁいいか…」

「で、今日はどうしたんですか?俺もう寝たいんですけど…」

 

 

正直このまま寝ようと思っていたところだ。

なのにそんなタイミングで現れた。

最近の天使ってのは常識を知らないのかね?

 

 

「なんか…わたしのことなめてるな?よしわかった。 ひとまずここいら一帯を更地にして…」

「おいバカやめろ」

 

 

バカって言ってしまったけどしょうがない。

そんなことでこの辺りを更地にされたらたまったもんじゃ無い。

 

 

「おっと、私はそんなに暇じゃ無いんだ。全く…無駄話をしないでくれよ」

「いや…アンタのせいでしょ…」

 

 

なんか……この天使さんと話してると疲れるなぁ…。

まぁいいや、ここは要件を聞いてさっさとお引き取り願おう。

 

 

「うん、いい態度だ。

 

まぁ今回はアレだね。ちょっとアドバイスというか…」

 

 

うん?アドバイス?

こんなヘッポコさんから聞くものなんて何も無いと思うんだけど…。

 

 

 

「マジで地獄に落とされたいのか?まぁいいや。

それでアドバイスなんだけど……。

 

 

今、ポッケ村に行くと楽しいことがあるよ?」

 

 

 

楽しいこと?何だろう…。

あんまり乗り気にならないなぁ…。

 

 

「それって必ず行った方がいいんですか?」

「まぁ…行ってもらいたいところだね」

 

 

う〜ん…まぁみんなに相談して、いいと言ってくれたらポッケ村に行くことにしようかな。

 

 

「わかりましたよ…。まぁみんなに反対されたらポッケ村には向かいませんけどね?」

「オーケーオーケー。まぁ楽しみにしておいてくれ。

それじゃ、私はここら辺で失礼するよ」

 

 

そういうと、天使さんの周りに謎オーラが。

そして、天使さんの体は少しずつ薄くなり…最後には消え失せた。

演出凝ってんなぁ…。

 

 

さて、ちょっと騒がしかったけど寝るとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとアブナイことかもしれないけどね…」

 

 

 

 

天使さんのそんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 






『アカム武器なめんな。』もよろしくね()

ほい、というわけでルファールさん視点でした。
そして恒例の本名紹介。見てる方がいるかはわかりませんが…。

ルファールさんの名前は『ルファール=コムエット』といいます。
今回もしっかり由来はあります。かなり無理矢理な気もしますが…。


感想など気軽にどうぞ、お待ちしてます。



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第48話 災厄は空からいづる


ちょっとしばらく更新が遅くなりそうです…。
気長にお待ちいただければ幸いです。




 

 

 

 

 

 

「あっ…ちょっ、こら。 まてまて、どうしたんだ。落ち着きなさい、いい子だから、ね?」

 

 

ポッケ村に移動しない?と、レイリス達に提案したらすんなりと受け入れてくれました。

 

というわけで今朝は移動の準備。

レイリス達に聞いたら『狩りに生きる』なんかのハンター情報誌は各地のマイハウスに置いたままにしてるらしい。

アレ、なかなか面白いんだよね。読み始めたらあっという間に時間が過ぎて行く。

 

まぁそれはそれとして、移動の準備はほとんど整った。

整ったんだけど…。

 

 

「おわっ…ちょ、体当たりはやめて…。あーもう、逃げないの。 あーっ!本棚崩すな!」

 

 

いつもは素直なプーギーさんが今日は何故か荒れている。

あとはこの子を連れていければ終わりなんだけどな…。ってそっちはまずくないですか?

 

 

「待て待て!外に逃げるのはやめてくれ!」

 

 

プーギーさんが玄関に向かって駆け出した。

部屋の中でも捕まえるのは一苦労なのに、外に逃げられたらたまったもんじゃない。なんとしても阻止せねば。

 

なんて思ったら、急に玄関に人影が。

 

 

「お〜いヘタレ〜!自分から提案しといて遅刻は少しないんじゃないか……ってうわっ!

 

プ、プーギー…?

あっ…ぷにぷにだぁ…!えへへ…」

 

 

玄関に立っていたのはラディスでした。

プーギーさんは俺から逃げるようにラディスに飛びついた。そして此方を向いて、ぷりぷりと不機嫌な様子。ラディスに捕まるのは良くて俺に捕まるのはそんなに嫌か、そうなのか。

 

 

「おいヘタレ!プーギーがなんか不機嫌じゃんか!なんか酷いことしたんじゃないだろうな!?」

「い、いや…何もしてない…はずですぞ?」

 

 

なんて答えたら、プーギーさんは何故かブーブー怒り出した。そしてラディスの疑うような視線が俺に突き刺さる。

えぇ…?なんでだよ?

 

 

「いや、本当に何もしてないぞ? 移動のために連れて行こうとしたらやたら嫌がってさ」

「えぇ…?本当に?

プーギーちゃん、ヘタレの言ってることは本当かな?」

 

 

ラディスがそうプーギーに尋ねると、プーギーは少し申し訳なさそうな顔に。

随分と器用な表情をする子豚だなおい。

 

 

「う〜ん…そっかぁ…。

ねぇ、プーギーちゃん。今回はちょっとだけ我慢してくれないかな?アタシ達もポッケ村に行きたいと思ってるし、もう移動の準備はしちゃってるんだ。 特にクルルナは馴染みの受付嬢さんと久しぶりに会えるって喜んでるし…。

ね?今回は我慢してみんなと一緒に行かない?」

 

 

ラディスが優しげにプーギーを諭す。

流石にラディスには強く出れないのか、プーギーは諦めたようにうなだれた。

 

 

「ごめんね?ただ、向こうに行ったら雪でいっぱい遊ぼうね?約束するよ!」

 

 

少ししょんぼりしているプーギーに、ラディスは励ましの言葉をかける。

それで、少しはプーギーの元気も戻ったみたい。

流石はラディス、普段から元気いっぱいなだけある。

 

 

「おっし!それじゃあヘタレも早くしろ!出発はもうすぐだぞ!」

「あいあいさーっと…」

 

 

と…まぁこんなことがあったわけだけど、ポッケ村への移動の準備は概ね順調です。

 

 

「よっこいせっと…」

 

 

既にアイテムボックスは何個か運び終わって、残りは1つ。忘れ物はおそらくない…ハズ。まぁ忘れてても問題はないだろう。

 

最後のアイテムボックスをゆっくりと持ち上げる俺。

遠くから、飛行船の汽笛の音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「んぐっ…んむんむ、んまっ!」

 

 

船内の部屋でモグモグと串焼きを食べるラディス。確かモスポークとか言っていた。

うむ…見てたら俺も腹減ってきたな。買ってこようかな?

 

 

「ちょっと…聞いてますの? 」

「あっ、ハイ。すみません、聞いてませんでした」

「ぶっ飛ばしますわよ?」

「許してください」

 

 

なんて事を考えてたら、セレスから怒られました。 まぁちょっとぐらい許してほしい。

…で、何だっけか?

 

 

「えと…片手剣を使えるかどうか?」

「えぇ、そうです。 貴方は操虫棍がメインのようですが、片手剣は使えるんですの?」

 

 

片手剣ねぇ…。まぁ使えなくはないかな?

おそらく使用回数は100いったかどうかだけど、基礎的なことはわかる。

超特殊とかその辺りをやれ、とか言われたら厳しいとは思うけどまぁ普通のクエストならサクッといけるんじゃないだろうか。

 

 

「あんまり触ってはないけど…まぁ使えるぞ? イビルジョーとかラージャンくらいならいけるとは思う」

「………あまり触ってなくてそのレベルなのですのね」

 

 

セレスが少しムスッとした様子に。

……なんか悪いこと言ったかな?

 

 

「………片手剣を使うときのコツとかあります?」

 

 

あら、珍しい。呼ばれたから何事かと思ったけど、そういうことでしたか。

生憎だけど、片手剣はあんまり使わないんだよなぁ…。

 

 

「別にセレスくらいの実力がありゃ十分だと思うけどなぁ…」

「いいから答えなさい」

「はい、スミマセン」

 

 

セレスさんったらちょっと怖い。

………つっても、このパーティのみんなは普通に上手いからなぁ。

1番荒削りなラディスだって、そこいらのハンターよりは強い。

 

以前、ギルドの人に頼まれて操虫棍使いの新米ハンター少年と一緒にクエストに行った時はなかなかに悲惨だった。

赤エキスをとるのにめっちゃ時間かかってた。まぁ、期待の新人だそうで飲み込みは早かったとは思うけど…。

 

どうやら、この世界のハンター達はスキルとかそういった概念について随分と疎いらしい。

上位ハンターと言われる人達は、とりあえずそこそこ強いモンスターの一式装備。

たまに見るG級ハンターさん達は、一応武器種との相性が良くなるようにしてるけど、それでも殆どが一式装備だった。

もしかしたら外装装備なのかもしれないけど、一度気になって聞いてみたらそういうのはしてないみたいだった。

武器や防具は相手を倒したという勲章。そうして自らの力を示す、という人が多いみたい。

 

ウチのパーティみたいに混合防具を使う人なんてまずいないらしい。

まぁ、とやかくいうつもりはないんだけど…なんかなぁ…。

 

 

「片手剣というか…まぁモンスターと戦うときはさ、余裕を持ってやればいいと思うよ?

何かに追われるような気持ちだと上手くいくものもいかないさ」

「………なんか適当ですわね。そんなものなのです?」

「あぁ、そんなもんさ。

セレスやラディスを見てると、レイリス達よりは余裕が少ない気はする。必死すぎるというかなんというか…」

 

 

俺から言えるのはそんなもん。

クエスト中の動き…というか表情とかを見てると、この2人はまだまだ余裕がない。

レイリスやルファールさんみたいに余裕を持った方が力を出せるような気はする。

それに…。

 

 

「あっ、聞いておきたかったんだけどさ。

このパーティのみんなってハンター歴はどんくらいなの?」

「…ハンター歴? えっと…レイリスさんとクルルナさんが4年目で、ルファールさんが10年目。 私とラディスが2年ですわ。

それがどうかしまして?」

 

 

ルファールさんの貫禄がすごい。1人だけ桁違いでした。

…でも、まぁそんなもんか。あの人、俺より5つも年上だし。

 

 

「それなら大丈夫だろ。単純に経験の差だとは思うぞ?」

「う、う〜ん…そうなんですの?」

「そんなもんさ。技術は十分、あとはその力をどんな状況でも出せるか。たったそれっぽっちだけど、それが全てだとは思うかな?」

 

 

まぁそんなもんだと思う。

モンハンに限らず、あらゆる分野において『いつも通り』の力を出せるのは重要だ。

 

 

「んで、いつも通りをずっと続けてればいつのまにか強くなる。

俺だって…最初はドスジャギィとか水中のラギアクルスにヒイコラ言わされてたよ」

「……貴方でもそんな時期があったんですのね」

 

 

そんなの当たり前だ。最初から上手いわけがない。

 

デビュー作はtriだったけど、武具屋でチェーンシリーズを揃えて、武器をハンターカリンガに強化して意気揚々と臨んだドスジャギィ狩猟は2乙した。ヘェーイの掛け声と共に繰り出されたタックルは強かった。

 

それに、ラギアクルスを初見2乙45分針で倒したのは今でもはっきりと覚えている。モンハンやっててあんだけ達成感を覚えたのは、あれかジョジョブラキ倒した時くらいだろう。

 

 

「まぁそうしてだんだんと…」

「えっ!? ヘタレは水中でラギアクルスを狩ったときあるのか!?」

 

 

おぉう?ラディスがものすごく喰いついた。

こらこら、肉を食べながら喋るんじゃありません。汚いでしょうが。

 

 

「え?あ、あぁ…まぁ新人の頃な」

「へぇ〜!ウチのパーティで水中で狩りをしたときあるのはルファール姉くらいだから、なんか憧れるな!アタシ、モガ出身なんだよ!言ってなかったっけ?」

 

 

え?マジで? モガの村出身なんですか?

ってことは、あのアイシャさんと知り合いだったりする?

俺、一番好きな受付嬢さんはアイシャさんなんだけど。サインとか頂けるのなら貰いたいところだ。

 

 

「おぉ〜。だったらいつか案内してくれよ?

何だかんだ愛着のある場所なんだ」

「えっ…?あ、愛着あるのか?

……ま、まぁ歓迎するよ!いつかな!」

 

 

デビュー作はMH3なんです。だからモガの村にも愛着は湧く。いつか行きたいね。

 

 

「で、俺から言えるのはこんなもんだけど…。大丈夫だった?」

「…まぁいいアドバイスを貰えたような気はしますわ。感謝します」

「あいよ。

なぁ、腹減ったからなんか買ってこないか?ラディスのヤツ見てたら食いたくなった」

「いいですわね。わたくしも小腹が空いてきた所でしたわ。ラディスもまだいけます?」

「おしきたー!まだまだ食べたいぞ!」

 

 

よし、そんじゃ軽く食べるとしますか。

俺達は屋台がある場所へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ねぇ、何でいきなりポッケ村だと思う?」

「さぁ…私に聞かれても…。 ポッケ村は好きですけど、ユクモ村の方が魅力的だとは思いますし…。何ででしょうね?」

 

 

 

風の吹き抜ける飛行船の甲板。

私達は涼しげな風を浴びながら、3人でお喋りしていた。

まぁ…ポッケ村に近づいているわけだから、風は涼しげというより肌寒くなっていたけど…。

 

 

「温泉だ!雪見温泉だ!その中で酒だ!

いやぁ、楽しみだなぁ!」

「タハハ…。ルファールはしばらくベルナ村にいたからね…。温泉は久しぶりだよね?」

「何ヶ月ぶりかわからないな! みんなは途中でユクモ村に寄ったらしいから大丈夫だろうが…私は本当に温泉は久しぶりだ!いやぁ、待ちきれないよ!」

 

 

ルファールのテンションがかなり高いなぁ…。

まぁ…ユクモ村に滞在してたラディスとセレスは言わずもがな、私とクルルナもポッケ村とユクモ村はこの間訪れたばかりだから、温泉に入ったのはそう昔じゃない。

でも、ルファールはずっとベルナ村で1人だったんだよね…。最年長だとはいえ、すごいなぁ…。

 

 

「最近は、ユクモ村の温泉ドリンクをポッケ村でも飲めるらしいですよ?

雪見温泉の中でドリンクはなかなかオツですから、おススメです!」

「おっ、ポッケ村通のクルルナがそういうなら間違いないな! 酒じゃなくドリンクもか…。 こりゃますます楽しみだ」

 

 

雪見温泉……。少し恥ずかしい思い出が蘇る。

ま、まぁ今は迷子君とこんな関係になっちゃってるんだから特に気にしなくてもいいんだ。

彼の周りに3人もいるのは気にしないでおこう。

 

 

 

………最初は私だけだったんだけどなぁ。

 

 

 

「なぁレイリス。ポッケ村に行ったら何をするんだ?特に何も聞いてないんだけど…」

「え?あぁ、う〜んとね…。とりあえずしばらく其処を拠点にして、クエストをこなすことになるかな。

迷子君がなんかポッケ村に用事…?があるみたいだし、それが終わったらどうするかはまだ考えてないけど…」

「なるほど…。それじゃあ久々の雪山クエストが出来るかな?それにベルナ村からは向かい難かった狩場もあるだろうし…。うん、やっぱり楽しみが抑えきれないな!」

 

 

ルファールは相変わらずの様子。まぁいつも通りでいてくれた方が私としても助かる。

いつも通りでいれればこのパーティは大丈夫。つくづくそう思います。

 

 

「うぅ…ズビッ…。ち、ちょっと寒くなってきたぞ…。 ホットドリンク飲もうかな…?」

「ふふっ。体調を崩しちゃったら温泉だって楽しめませんよ? 早めに飲んでおいた方がいいのでは?」

「あ、ああ…。そうするよ…。 こんな寒いっけか…?」

 

 

しばらく寒冷地帯を訪れていなかったからなのか、ルファールが寒そうな様子。

クルルナに勧められてホットドリンクを飲みに行ったみたい。

 

そして残ったのは私とクルルナの2人。

何だかんだ言って、クルルナと2人きりになることが多い。やっぱり付き合いが長いからかな?

 

 

「ねぇ…レイリス」

「うん?どうしたの?」

 

 

なんてことを考えてたらクルルナから声をかけられた。

 

 

 

 

「私達…トマトさんの事をどれだけ知ってます?」

「………えっ?」

 

 

 

 

彼の事をどれだけ知っているか?

別に…言われなくても彼のことは良く知って…。

 

あれ?

 

 

 

 

「待って……?彼の事……全然知ってない?」

「気づきました?」

 

 

 

クルルナに言われて初めて違和感に気づいた。

以前、寝たフリをして聞いてしまった事なら知っている。ただ、このことはみんなに言うと問題がありそうだから私だけの秘密な筈。

 

 

それにしても、だ。

 

 

 

「私……彼の名前すら知らない…」

「ですよね? 私も今まで違和感を感じずに過ごしてたんですけど、昨日の夜に急におかしいと思って…。まるで誰かに魔法をかけられたみたいに自然と過ごしてました。

ずっと一緒にいる、好きな人の名前すら知らないのに…違和感を感じないなんておかしいと思いません?」

 

 

 

そうだ。そうだよ。

そんなこと、ありえない。

なのに、私達は今まで違和感を感じなかった。

 

 

 

「………何で?」

「………わかりません」

 

 

 

どうしてなのか考える。だけど…すぐに答えは見つからない。

名前を知らない───なのに違和感はない。

普通に考えたらありえない。

だけど、そのありえないことが何故起きているのか…私には分からなかった。

 

 

 

「今回ポッケ村に行くことになったのは、何かに一区切りがつくからなのかもしれませんね…。神様とかからの啓示…みたいな?」

「ふぇ? あ、う…うん…」

 

 

 

クルルナにしては、随分とぶっ飛んだことを言ってくれた。

……区切りか。まぁ確かにそんな時期なのかもしれない。

迷子君…彼と出会ってからどれくらい経っただろう?半年くらいかな?

 

半年も付き合ったんだ、多少グイグイ踏み込んでいったって構わないだろう。

グイグイいくのは得意じゃないけど、彼に対してなら何故か大丈夫な気がする。

 

 

「うん…そうだね。ポッケ村に着いて落ち着いたら、彼に直接聞いてみるよ。

名前…だけじゃなくてさ」

 

 

そう答えると、クルルナは微笑んだ。

長年見てきた、優しい微笑みだった。

 

 

「ふふっ、勢いが大事ですよ?

彼、グイグイ来られるとすぐに折れるんですから…。レイリスのお願いならきっと聞いてくれます」

 

 

そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとう。

よし、勇気も出てきた。これなら頑張れそうだ。

 

 

「ふぅ…なんかお腹すいた…。 なんか食べに行かない?」

「いいですね。甘いものでも売ってれば食べたいところです」

 

 

少しお腹が空いてきたので、クルルナにそう提案。

すんなり受け入れてくれたのでルファールを待つことにした。

 

 

 

「あっ、ルファール! なんか食べに行かない?」

「うん?いいぞ? 熱い食べ物でもあったら食べたいな。 どうも寒冷地は久々で…。まだ寒いや……ズビッ」

「ふふっ、風邪引かないでくださいね?」

 

 

軽く会話を交わす私達。

熱い食べ物…というより温まる食べ物か…。

アツアツハツとかいいかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて考えてた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………レイリス。アレは一体何だ?」

 

 

後ろにいたルファールからそう声をかけられた。

さっきまでの雰囲気とは一変、モンスターと戦っている時のような様子で。

 

ルファールが見つめているのは空のある一点。

 

私とクルルナもつられてそちらを見る。

 

 

 

 

 

 

はるか遠くからこちらに向かって迫ってくる、赤い彗星のような物が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おわっ…。どうした?そんなに慌てて…。もしかして寒いか?」

 

 

モスポークの串焼きを3人で食べていると、急にプーギーさんの様子がおかしくなり始めた。少し震えている感じ…寒いのかな?

 

 

「お?プーギーちゃん大丈夫か?ほら!抱っこしてあげるよ!これであったかいでしょ?」

 

 

ラディスが震えているプーギーを抱き上げる。

だけど、プーギーの震えは収まらなかった。

これは……怯えてる?

 

 

「あら……イマイチな様子ですわね…」

「う〜ん…お腹すいたのかな…?もう雪山を通ってる途中だし、ポッケ村まで我慢してくれれば…」

 

 

ラディスがそこまで言った時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ズン───と、飛行船が揺れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ!?何!?」

 

 

ラディスがそう叫び、抱えられているプーギーが激しく暴れる。

そして俺の方へ駆け寄り、ピーピーと何かを訴えるような表情。

 

途端に外が騒がしくなるのが聞こえた。

つかまれ!だの、また来るぞ!とか言った怒声が響く。

 

 

「ちょい待ってろ」

「あ…ちょっと!」

 

 

後ろからセレスの声がしたけれど無視。

念のためにアイテムポーチを手にとって、外に出た。

 

甲板に出ると、乗組員の人達が騒然としていた。

辺りで怒鳴り声が響き、慌ただしさが伝わってくる。

 

兎にも角にも状況を把握したい。

近くにいた乗組員のおっさんに声をかける。

 

 

「なにがあった?」

「あ…あんたは、あのハンターさん達の…。

待て!捕まれ!」

 

 

乗組員さんが空を見上げると同時に、近くにあった柱に俺を引き寄せた。

 

 

次の瞬間、飛行船の先端を何かが凄まじい速さで貫いた。

ちょっと危険な感じの揺れが飛行船を襲い、ガクン──と何かが抜けたような感覚が足を通して伝わってくる。

 

 

「くそッ!やられた! 衝撃に備えろッ!」

 

 

何処かからそんな声が聞こえてくると同時に、俺の身体は嫌な浮遊感に襲われた。

 

 

「おい…落ちるのか…!?」

「知るか!状況はどうなってる!?」

 

 

目の前にいる乗組員さんに聞くと、乗組員さんはそう叫ぶ。

すると、操縦席への入口らしき所から別の乗組員さんが顔を出した。

 

 

「墜落はしない!だが少々荒い着陸になる!

何かに捕まれぇ!」

 

 

船全体に届くような怒鳴り声が響き、辺りの人がそれぞれ柱などに駆け寄る。

 

嫌な浮遊感はどんどん大きくなっていき………、ついに足が浮いた。

 

 

「マジかよ……」

「ハンターさん!来るぞ!」

 

 

目の前の乗組員さんから言葉をかけられ、ハッと我に帰る。

眼下には大きな湖が広がっていた。

ここに降りる……のか?

 

 

 

そう思った次の瞬間、尋常じゃない衝撃が船を襲った。

 

 

「グッ……うぁ……」

 

 

なるほど、これがGを感じるってヤツですか。

人生で1回は経験したいと思ってたけど、まさかこんな所で経験できるとは思ってなかった。

こんなん二度とやってたまるか。吐きそうだ。

 

 

「うっ……うぅお?」

 

 

とか思ってたら、着水した飛行船の姿勢がおかしな事に。

あれ……?これってひっくり返るんじゃ…?

 

なんて思った次の瞬間、飛行船が何かにガタンと引っかかった感じがした。

そして飛行船は湖の上で横倒しに。

 

 

「と、止まった…?」

 

 

周りにいる人たちは、まだ緊張を解いていない。

一応飛行船は湖の上に不時着出来たみたいだけど…。

 

なんて思っていたら、上からピーピーとした鳴き声が聞こえた。

 

 

 

「うん?」

 

 

 

上を見ると、プーギーさんが悲鳴?をあげて落下してきていた。

いや…どういうことですか……。

 

 

「飛べない豚はただの豚ですよぉぉお!?」

 

 

捕まっていた柱をすぐに放し、落下中のプーギーにむかってダッシュ。

あ〜…これ間に合わなくね?

まぁいいや、どうにでもなっちまえ。

 

 

意を決してヘッドダイビング。

恐らく俺の身体はアタリハンテイ力学で守られる。だけどプーギーさんはなんとも言えない。あの高さから水面に打ち付けられるのは…。

 

ヘッドダイビングの効果はしっかり出たようで、空中でプーギーさんを見事にキャッチ。

 

そして下を見ると、水面からそれなりの高さがあった。

………痛いかな?痛いよなぁ。

でも……俺はアタリハンテイ力学があるからいいか。

 

俺は背中から水面に飛び込むように姿勢を取り、プーギーを包み込むような態勢に。

 

 

そしてそのまま、水面に吸い込まれた。

 

 

背中を思いっきり叩かれたような感覚がして口から空気が吹き出たけど、まぁこれくらいならセーフ。

 

幸いな事に、衝撃を和らげる程度の水深はあるけど脚が地面に着いた。

すぐに立ち上がり、プーギーが濡れないように万歳で持ち上げた。

 

 

「う、うおぉぉ……冷てえぇぇぇ……。

うわっ!水を撒き散らすな!」

 

 

俺の手の上で、濡れた身体を乾かそうとブルブルと震えるプーギーさん。

や、やめてくれ……冷たさが堪える……。

 

 

早足で陸地に上がり、プーギーを地面に下ろす。

そして、俺の足からも力が抜けて思わずへたり込んだ。

 

 

「そうだよ……。ここはゲームじゃないんだ……。 ははっ、見事に思い知らされたな…」

 

 

座ったまま、辺りを見渡してみる。

 

すると、此処は雪山のエリア1だということがわかった。

湖には、飛行船が湖面に突き出た岩と接触する感じで止まっていた。あそこを狙って操縦したのか…凄いな。

あっ、乗組員や乗客の皆さんが小舟で降りてきてる。

 

そして………ラディスは泳いできていた。

元気だねぇ。

 

 

「うっおおお……!!つ、つべたいよぉぉぉ……!!」

 

 

いや、無理してたみたい。泣きそうな顔になってる。

なんで泳いでくるのさ…。

 

 

「い、いや…そんなことより…。大丈夫か!?」

「あぁ……俺は大丈夫。プーギーも無事。他のみんなは?」

「セレスは小舟で来るみたいだけど……あっ、来た」

 

 

少し離れた湖の岸辺を見ると、セレスがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。

 

 

「だっ、大丈夫ですかしら!?」

「だっ、大丈夫ですわよ」

 

 

なんて返したら本気で睨まれた。

ごめんなさい、調子乗りました。

 

 

「まぁ……なんとか助かったな。ふはぁ…疲れたぁ……」

 

 

地面に倒れ込み、空を仰ぐ。

 

 

そこで、大事なことを忘れているのに気づいた。

 

 

 

「………レイリス達は?」

 

 

 

そう言葉を落とすと、セレス達もハッとした顔になる。

 

 

 

「そういえば……見てない……」

「いや……でも……まさか…!?」

 

 

 

俺はすぐさま乗組員さん達のいる方へ歩き出す。

そして、疲弊した様子の乗組員さん達に尋ねた。

 

 

「なぁ、他にハンターが乗ってた筈なんだけど……。何処にいるかわかる?」

 

 

そう尋ねると、乗組員さんの何人かが暗い表情に。

………なぁ、頼むからそういうのはやめてくれ。

変な事を想像してしまうじゃないか。

 

 

「頼む、何が起きたのか知りたい。

………言いづらいような事でも構わない。

俺のパーティメンバーは何処にいる?」

 

 

それでも乗組員さん達は喋ろうとせず、俯いたまま。

なぁ……頼むよ。言ってくれよ……!

 

 

 

「あ…あのモンスターに……」

 

 

 

ふと、乗組員さんの1人が喋り出した。

さっき俺の事を柱に引き寄せてくれた人みたいだ。

 

 

「あ、あの3人は…飛行船の前方に居て……。

あの謎のモンスターの攻撃で……落ちた」

「ありがとう。で、どの辺りを飛行してる時か覚えてるか?」

 

 

『落ちた』の単語を聞いた時、腹の底が冷えた。

けど…まだだ。まだ聞いておかないと…。

 

 

「た、確か……雪山山頂の上を通ってる時だった……」

「わかった。助かったよ」

 

 

そう答えた時だった。

 

 

「な…なんだありゃあ…!?」

 

 

乗組員さんの何人かが雪山の方を見ていた。

つられてそちらを見る。

 

 

 

まず目に入ったのは赫い彗星だった。

 

そして、その彗星が凄まじい速度で雪山の山頂に向かっていき、恐らくだけど雪山の山頂辺りに落ちただろう。

 

 

あぁ……そういうことね…。

あのへっぽこ天使、何が面白いことだよ…。

こんなクソッタレイベント望んじゃいねーよ…。

 

 

 

「な…なんですのあれ…」

「なぁセレス。これってギルドの支援は望めないよな?」

「え?あ、そうですわね…。でも…ポッケ村はすぐ近くなのでそこで準備して…」

「あ〜…セレス。 乗組員さん達頼んだ。

俺、ちょっと行ってくるわ」

 

 

 

とりあえずそう言い残して、駆け出す。

面倒なので返事をさせる暇も与えなかった。

 

 

 

「はっ……!? ちょっ………待ちなさい!?」

 

 

 

ごめん、こればっかりは待てない。

今のセレスの反応からして…こっちの世界では、アイツは多分まだ認識されてないモンスターだと思う。

 

ハンターにはアタリハンテイ力学があるから、落下ダメージは恐らく大丈夫。

だけど、準備が十分じゃ無い状態でモンスターに襲われるのは大変よろしく無い。

 

いくらあの3人とはいえ、万全じゃない状態でアイツとの初見は危ない。

それに……ギルドの支援が無いなら……最悪の事だって考えられる。

 

後ろからセレスとラディスの声が聞こえてくるけど、無視。

全力疾走でエリア3の洞窟へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜っと…。あの装備かな…」

 

 

エリア3の洞窟内部で1人そう呟く。

 

頭でイメージするのは採集クエスト用の装備。

ただ、今回は採集目的じゃなく発動するスキルが目当て。

俺の採集用装備のスキルは『キープラン』と『自動マーキング』のスキルが組み込まれてる。

 

早速その装備に着替えたところ、山頂であるエリア8にモンスターの反応が。

どうやら戦闘中の様だった。クソッタレが。

 

 

 

「アマエビ、ヒラメ、出番だ」

 

「「呼ばれて飛び出て参上ニャ!」」

 

 

そしてオトモを呼び出す。

ガードのヒラメと回復のアマエビ。

防御特化コンビだ。

 

 

「今回はアレだ。 もしレイリス達が倒れてたりしたらお前達が協力して、すぐに避難させてほしい。防御特化コンビならいけるだろ?」

「「任せておいてニャ!」」

 

 

おし、あとは無事でいてくれればいいんだけど……。

 

そんなことを考えながら俺は走った。

キープランのお陰でスタミナは一定値から減らない。

これならすぐに着きそうだ。

 

 

 

 

「間に合えよ……!」

 

 

 

3人には無事でいてほしい。

今の俺は、それしか考えられなかった。

 

 

 

 

 





恐らくですが……あと8話くらいでこの物語は完結すると思います。
年内にちょうどよく終われたらいいな…。


感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。



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第49話 凶星



3週間空いてしまいました。
文字数は多いので、大目に見ていただければ…。




 

 

 

「あぁ……落ちてるなぁ…」

 

 

身体中に冷たい風を浴びながら、私は空を落ちていた。

顔に雪が当たってとっても冷たいけど、それは大した問題じゃない。

 

本当に問題なのは…。

 

 

 

「………2人は大丈夫かな」

 

 

 

周りは雪ばかりで、人が落ちていくのなんて一切見えなかった。

そもそもなんで私がこんな状況になっているのかというと、飛行船が謎のモンスターの襲撃に遭ったから。

 

飛行船の船首の辺りにいた私達はその衝撃をモロに受け、空に投げ出された。

ただ…投げ出されただけならそこまで心配はいらない。

 

私達ハンターには『アタリハンテイ』とかいう力が働くらしく、基本的に高所からの落下では怪我をしたりすることはない。

今だって下に雪山らしきものが見えるけど、この高さよりは遺群嶺の頂上からのエリア移動の方が高低差がある。

だから…落下の衝撃のことはそこまで心配していない。

 

本当に心配なのは…遭難した場合。

いくらハンターといってもこの寒さをホットドリンク無しで過ごすなら、防具のスキルの補助がない限りいずれ体力が尽きる。

交通網やギルドの支援が充実してない頃は、そんなことで取り返しのつかない事になったハンターもたくさんいたらしい。

 

だから、あの2人が遭難しているなら早く見つけ出さないといけない。

クルルナはポッケ村周辺の地理には詳しいし、ルファールもさっきホットドリンクを飲んでいたみたいなのが幸いだ。

それに、どうやら私が落下していっている場所は、ギルドから狩場に認定されている雪山の山頂みたい。少なくとも私が遭難することはなさそうかな。

 

なんて考えてたら、地面が相当近くなっていた。

かなりの速さで落ちている私。す、少し緊張するな…。

 

ちょっと不安だったけれど、体に力を入れて踏ん張る準備。

そして…ドスンと着地に成功しました。

 

 

「ふ、ふぅ…。ちょっと怖かった……」

 

 

落下には慣れているけど、ちょっと特殊な状況だったから心が落ち着かなかった。

でもなんとか無事みたい。よかったです。

 

 

「ううっ…寒っ…。さて…これからどうするべきかな…。

 

………ん?」

 

 

自分のことはひとまず片付いたから、他の2人を探すなりなんなりしようと思ったところ、空に少し大きな影が見えた。

 

 

 

 

「………ぁぁぁぁぁぁああ」

 

 

 

 

……なんか悲鳴が聞こえるけど、それは聞き覚えのある悲鳴だった。良かった、無事だった…。

というか、どうやら2人ともいるみたい。

クルルナが凄い悲鳴をあげ、それを落ち付けようとするルファールが見えた。

 

 

「ぁぁぁぁぁあああああ!?!?……みぎゃっ」

「………っとぉ…着地成功……。

クルルナ、騒ぎすぎだぞ?耳がおかしくなるかと思ったよ」

「だ、だってぇ……。高いところが苦手なんですよぉ……」

 

 

無事に地面に辿り着いたクルルナが涙目でそう言う。どうやら腰が抜けて立てないみたい。まぁ…無事で良かった。

 

 

「おっ、レイリスもいるじゃないか。良かった良かった。

さて……どうする? 武器はみんな持ってるみたいだけどアイテムは一切無いから、すぐにベースキャンプに向かうのが得策だとは思うが…」

 

 

ルファールが少し緊張感を含んだ口調で私に話しかける。

うん、今はその案が最善だと思う。

ベースキャンプで待ってればギルドの手配も来るだろうし…。

 

 

「そうだね、そうしよう。それじゃあ3人でベースキャンプに向かうって事で!

クルルナ、立てる?」

「はい…。もう大丈夫…」

 

 

クルルナもなんとか立て直したみたい。

あの謎のモンスターとか気になることは多いけど、先ずは自分達の安全を確保しなきゃ…。

 

 

「じゃあ…なんでかわからないけど、エリア6への道が岩で塞がれてるから…。エリア7から戻る感じに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこまで言った途端、異変を感じ取った。

 

 

 

 

空から甲高い音が聞こえる。

………なんの音?

 

 

 

 

 

すぐに3人でそちらの方を見る。

 

 

 

 

 

 

そこには、ついさっき飛行船を攻撃した赤い彗星がこちらに迫ってくるのが見えた。

速い……。あんなに早く動くものは初めて見る…。

 

彗星は凄まじい速さで地面に激突───するかと思ったら、急激に減速。

そのままフワリと浮き上がり、彗星の正体と思われるモンスターが私達の前に現れた。

 

 

「何……?コイツ……。初めて見る……」

 

 

そのモンスターは、それなりに経験を積んできた私でも見たことがなかった。

隣にいるルファールの表情もいいものでは無いことから、長年ハンターをしている彼女でさえ初めて見るモンスターらしい。

 

 

全身が暗めの銀鱗で覆われており、地面に着いている脚は4本。

 

そして……背中からは翼……?のようなものが。

翼といっていいのか悩んだのは、それがとても羽ばたけるような形状をしていなかったから。ブレードの様な鋭角的な形状をしており、風を受け止めて飛べるようには見えなかった。

 

よく見ると、翼から赤黒いエネルギーらしきものが溢れ出ている。

あぁ…なるほど。

多分だけど、あれを噴射させて空を飛ぶんだろう。そして、それは凄まじい速さになるみたい。さっき飛行船を攻撃したように…。

 

 

 

そして…こればっかりは認めたく無いんだけれど…コイツはおそらく『竜』じゃあない。

4本の脚に翼らしきもの。

つまり……コイツは古龍だってこと。

 

 

 

「レイリス……。コイツは私達の事をすんなり逃してくれると思うか?」

 

 

ルファールが苦々しい顔で呟く。

此方を睨みつけているモンスターからは目を離さない。一瞬の隙が命取りだ。

 

 

「いやぁ…そうしてくれるとありがたいんだけどね……。どうやらそうしてはくれないみたいかな?」

 

 

そう会話を交わした途端、威嚇していた古龍が大きな咆哮をあげた。

 

……あぁもう。いきなり来るのはやめてほしいなぁ!

私達は思わず耳を手で塞ぐ。そうしないと鼓膜に深刻なダメージが及ぶし、恐怖で体が勝手に反応するんだ。

 

 

「………来るっ!散らばって!」

 

 

咆哮をあげた古龍は、私達に向かって突進をしてくる。

咆哮の影響から立ち直った私達はギリギリで散らばり、突進を回避。

 

 

それぞれ背中の武器に手を伸ばし、古龍を相手取る。私は大剣、ルファールは太刀、クルルナは弓。

相手をしないで逃げるのが1番なんだけど、それは相手をするモンスターのことをよく知っている場合。

遠距離にとんでもない攻撃を持っているモンスターだと、相手に背を向けるのが命取りになる場合だってあるんだ。

今回は背中を向けないで、撤退する事が最優先。

少しずつ戦う場所を動かして…そのまま素早く撤退できればいい。

 

 

「積極的に戦おうとはしないで!ダメージを受けない事を最優先で!」

 

 

私が声をかけると同時に、古龍が動き出す。

 

狙いはクルルナ。

古龍は背中の翼らしきものを変形させ、槍のように尖らせた。

そして…一瞬のうちに、信じられないほどにリーチを伸ばしてクルルナを突き刺そうとした。

 

 

「………ッ!? あ…っぶない!」

 

 

何とかジャスト回避したクルルナ。

だけど…古龍は2発目の攻撃に繋げてきた。

今のとは別の翼を、同じく槍のように伸ばしてクルルナを狙う。

 

 

「うっ……ギリギリ……!」

 

 

ジャスト回避をした方向が良かったらしく、2発目の攻撃は空を切った。

なるほど…とりあえず今の攻撃は、気をつけないといけない1つだ。

 

ともかく、クルルナばかり狙われるのは危険だ。

古龍は未だにクルルナを睨みつけている。気を逸らさないと…!

 

 

 

 

 

 

 

 

………私の中で、何かが切り替わる様な感覚があった。

周りから余計な音が消え、視界がクリアに。

 

雪山にいるのだから地面は白い。

だけど……視界の中の白い地面から、色が抜け落ちた。

 

 

「レイリス……無茶だけはするな」

「うん……わかってる…!」

 

 

ルファールが心配して声を掛けてくれた。

大丈夫。この間みたいな無茶はしないよ。

 

 

「ここをなんとかして、ポッケ村に行かないとね…。

彼に聞きたいことがいっぱいあるんだから…」

 

 

色を失った銀世界を前に、私は大剣の柄に手を伸ばして駆け出した。

 

 

 

クルルナを睨みつけている古龍の頭部を、側面から抜刀攻撃。

大剣を通して伝わってきた手応えから、頭部の肉質は柔らかいらしい。

見た目からして随分と硬そうな身体だったけど、弱点があるとわかったのは良かった。

 

 

 

なんて思った途端、古龍はびっくりする程の素早さで引っ掻き攻撃を私に繰り出した。

 

 

「速……ッ!?痛ったぁ……」

 

 

納刀継続に繋げることも出来ず、私は被弾。

そして…大して強そうな攻撃でもないのに、受けたダメージは結構なもの。顔をしかめずにはいられない。

 

吹っ飛ばされたから、古龍との距離は空いた。

そして古龍の方を見ると、引っ掻き攻撃から背中の翼を地面に突き刺す攻撃に繋げていた。

龍属性の様なエネルギーを噴射させ、その勢いをプラスしての攻撃…。喰らったら随分と痛そうだ。

 

 

「攻撃が強い!気をつけて!」

「わかった!」

 

 

ルファールがそう言いつつ、太刀で尻尾を斬りつける。

ただ、そこまでいい手応えではなかったみたいでルファールの表情は険しい。

 

古龍は背後にルファールがいると気づいたらしい。力を溜める様な動作。

……嫌な予感。

 

 

「……うぉお!?」

 

 

古龍は振り向きざまに翼をルファールめがけて振り下ろした。

ルファールは何とかイナしたみたい。

随分と攻撃が多彩なモンスターだ…。

思わず顔に苦い笑みが浮かぶ。

 

古龍はルファールを狙って、先程もみた翼で突く攻撃。

1度見ていたからなのか、ルファールは一撃目を難なく避ける。

 

その隙を狙って、クルルナが古龍の頭を狙い撃つ。

矢を番えて力を溜め、連射矢を射出。

見事に頭部にヒットした。

 

突き刺し攻撃は2発続けてくることがわかっているので、クルルナはそのまま剛射に繋げる。

 

 

 

ただ…認識が甘かったのかもしれない。

古龍は突き刺し攻撃を2発目に繋げる事はなく、翼を大きく振り上げた。

不味い…。嫌な予感がする…!

 

 

「クルルナ!気をつけ───」

 

 

私の中の勘が危険信号を発し、クルルナに声をかけようとした瞬間だった。

古龍は槍のように伸ばした翼で、辺りを横薙ぎに振り払いながら回転した。

 

ハンターとして染み付いたもののおかげか、私は反射的に納刀継続状態に。

ルファールも同じくイナシの構えに入るのが見えた。

 

そのおかげで、私とルファールは何とか薙ぎ払いをイナす。

 

 

 

 

 

ただ…クルルナはそうはいかなかった。

 

 

 

 

「───────ぁ」

 

 

 

 

振るわれた古龍の翼は…剛射を放って隙だらけのクルルナを捉え、体を打ち据え、あまりに呆気なく吹き飛ばした。

 

吹き飛んだクルルナは雪山の壁に打ち付けられる。そして、糸が切れた人形のように地面に転がり…立ち上がることはなかった。

 

 

 

「ルファールッ!引きつけてッ!」

「クソッ…!そっち任せたぞ!」

 

 

 

私はすぐにそう叫んだ。

かなりの負担だけど、古龍のことは一旦ルファールに任せる。あのままクルルナを放置しておくのはそれ以上に危険だ。

 

 

「クルルナ!返事してッ!」

 

 

クルルナの体を抱き上げ、軽く頬を叩いて意識があるか確認する。

だけど、意識は完全に無い様だった。全く反応してくれない。

 

 

マズイ…マズイ、マズイ!

一気に不利な状況になった…。

 

相手の攻撃力が高いことはわかっていた。クルルナだってガンナー防具だから防御力が低いのも重々承知していた。

けれど…まさか一撃でダウンなんて。

いつかの金雷公に匹敵する程の攻撃力じゃないか…。

 

 

ひとまず、モンスターの攻撃の余波が及ばないエリアの端へクルルナを運ばないと…。

ルファールの負担が増えるけど、彼女ならきっと大丈夫。今だって上手く立ち回っているみたい。

 

 

 

私はクルルナを運ぼうと肩を支えた。

その時だった。

 

 

 

馬鹿でかい咆哮がエリアに轟き、私は思わず耳を塞いだ。

あぁもう…それどころじゃ無いのに…!

 

モンスターが咆哮をあげる時はティガレックスみたいな奴じゃない限り、まず決まっている。

大抵は鉢合わせた時か…怒り状態に入った時。

つまり…あの古龍が怒り状態に入ったということ。

 

 

「ルファール!大丈────」

 

 

 

大丈夫、と言おうとしたところで…

 

チュドン、という音が聞こえ、目の前の壁に何かが飛んできた。

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

目の前に飛んできた物を見る。

いや…物じゃない。吹っ飛んできたのは…ルファールだった。

 

……何で? だって…さっきまでルファールは上手く立ち回っていたじゃないか。

 

 

 

 

「攻撃が変わった……。気をつけ……!

クソッ……!」

「きゃっ!?」

 

 

 

ルファールが、ドン、と私を突き飛ばし、クルルナを隠すように覆いかぶさった。

私はそこから突き飛ばされ───ルファールとクルルナが赤い爆発に呑まれた。

 

 

その光景を呆然と眺めていた私は、モンスターの方を見る。

 

古龍が怒っていた。銀色の甲殻の隙間から龍属性らしき赤いオーラが溢れ出し、さっきよりも力強く……そして何よりも恐ろしく見えた。

 

何かがさっきと違うような…。何…?どこが違うの…?

違和感の原因を探ろうとした瞬間───古龍とはっきり目が合った。

 

 

 

 

 

 

やばい。

 

 

 

 

 

「こっちだッ!」

 

 

 

 

 

 

このままだと、倒れた2人も巻き添えを喰らう。

すぐさま私は2人から離れるように駆け出した。

 

古龍は私に向かって駆けて来る。

そして、今気づいた。

 

さっきまで噴射口が後ろを向いていた翼が、今は噴射口が前を向き、大きな爪のようになっている。

ルファールが呟いた『攻撃が変わった』というのはこの事だろう。

元の状態でもあれだけ多彩な攻撃があったのに、また別の段階があるだなんて…。

ちょっとヤバいかもね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………まぁ、なるようになるか。

ポッケ村に行ったら迷子君に聞きたい事いっぱいあったけど…これじゃどうなるかわからないし。

 

 

 

怒れる古龍を目の前に一呼吸。

焦っていた心が、少し落ち着いた気がする。

 

ふと倒れた2人の方を見ると、ルファールがクルルナを肩に背負ってこの場から離れようとしていた。

 

ルファールと目が合う。

私は少しだけ笑って頷き返した。

 

ルファールは悲痛な…、それでいて悔しそうな顔をしたけれど、クルルナを背負って離れ始めてくれた。

大丈夫。なんとかするから。

 

 

 

背中の大剣の柄に手を伸ばし、もう一度深呼吸。

 

 

 

「全く……キミは何なのさ……。せっかくあと少しでポッケ村だってのに…全部台無しだよ…」

 

 

古龍が引っ掻き攻撃を繰り出す。

体が勝手に反応し、引っ掻きに向かっていくように回避行動をとる。

私の体はフワリと古龍の腕をすり抜けるように回避した。

 

古龍はそこから爪のような翼を地面に叩きつける。だけど、私は既に懐に潜っていたので頭に抜刀攻撃を叩き込む。

 

 

思考が、視界が、拾う音が、感じる全てがクリアになっていく。

 

 

古龍はもう一度引っ掻き攻撃。

だけど、私は動かないまま納刀継続へ。

なんでこんな行動をしたのかは自分でも説明できない。多分、金雷公の時と同じような勘だろう。

 

素早く繰り出された古龍の引っ掻きは、私の眼前スレスレ。寸でのところで届かず、そこから古龍は翼を叩きつけた。

だけど、それも私の背後の地面を押し潰しただけ。私には何のダメージもない。

 

納刀継続溜めをしていた私は、目の前にある古龍の頭部へ溜め斬りをぶちかます。

攻撃はうまく頭部に吸い込まれ、古龍はたまらず仰け反った。

 

 

そして…私の体を青白い光が包み込む。

 

 

 

「本気でいくからね?逃げるなら今のうちだよ?」

 

 

 

そんな言葉をかければ古龍が逃げてくれるんじゃ…?

なんて淡い期待を持ってかけた言葉は、怒り狂った様な咆哮で返事をされた。

 

…まぁそう都合のいい展開なんてないよね。

 

 

 

「はぁ…じゃあ戦いますか…。

覚悟してね…?見知らぬ古龍さん…」

 

 

ルファールの姿はだいぶ遠くにあった。

もう少し引きつけることが出来れば彼女達は安全だろう。

 

翼を大きく広げ威嚇する古龍に向かって、私は大剣を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「クソッタレ……!何で山頂までの道が岩で塞がれてんだよ!

カ○コンてめぇ絶対許さねえかんなぁぁあ!」

「旦那さん!虚しい悪態は止めるのニャ!カプ○ンというのが何かは知らニャいけど、今は只走るべきニャ!」

 

 

悪態を吐きながら全力で走る俺達。

なんとエリア6からエリア8への道が岩で塞がれているとかいう全く嬉しくないサプライズが待ってました。

控えめにいってキレた。あんなん誰も得しねぇだろ。

そんな場合じゃないのはわかってたけど、イライラしてたので岩を殴ったら思ったより硬くて泣きそうになった。

 

ともかくエリア7を経由するルートは障害がなかったので、そちらのルートを進むことに。キープランがあるのでスタミナは無尽蔵だ。

 

 

「エリア7…!あと少しで山頂………ってあれ……?」

 

 

エリア7に入ると、誰かが倒れているのが見えた。

近づいてみると、クルルナとルファールさんの2人だった。

 

クルルナは完全に意識を失っているみたい…。ルファールさんもかなり苦しげな様子だ。体にはバチバチと赤い電気の様なものが迸っていた。龍属性やられってことは、アイツの仕業だろう。

 

 

「だ、大丈夫ですか!?早く回復を…

「あ…あぁ…君か……。私はいいから、早くレイリスの所に…ぐっ…」

 

 

ルファールさんはそこまで言うと、ガクリと頭を落とした。

 

 

「え…!?ちょっ、ルファールさん!?」

「旦那さん!まず此処は回復オトモのボクに任せておくニャ!早い所、ヒラメといっしょにレイリスさんのとこに行くべきニャ!」

「え…あ、うん…。わかった…」

 

 

ヤバイ。

この世界に来てから、こんなに危機感の様なものを覚えたのは初めてだ。

あのルファールさんでもこんな状況になってるんだ。

レイリスは1人で大丈夫なのかよ…!?

 

ルファールさん達をアマエビに任せる。

俺はオトモを1匹だけ引き連れて、レイリスと彗星野郎のいるであろう山頂へと駆け出した。

 

 

 

 

「待ってろよ……!あと少しだから……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ふっ…ふっ…!」

 

 

 

あぁ……頭ん中がチリチリする。

多分だけど、今の私みたいなすごく集中できてる状態でいることは、もの凄く体力を使うのだろう。

前回も金雷公を倒したらその場にへたりこんでしまったしね。

 

今回は初めて戦う古龍…。

相手の動きなんて初めて見るものばっかりだし、それに対してうまく反応し、攻撃を当て続けているのなんて奇跡のようなものだ。

 

 

 

だけど…体力の限界が近い。

 

 

 

いかんせん、環境が良くない。

私の体を撫でる雪風が、体力を容赦なく奪っていくのをひしひしと感じていた。

このままだと、寒さは私の体を機能停止に追い込むだろう。

 

この体力が残っているうちに、古龍にはお引き取り願いたいところ。

だけど…古龍が撤退する様子なんて全く見受けられない。

 

 

 

「じゃあ…もう一撃かまそうか……!」

 

 

 

古龍も無傷というわけではない。

何回も攻撃を当て、頭部なんかは甲殻に浅い傷が刻まれていた。

恐らく部位破壊まであと少し…。

 

 

よし、あそこに一撃ぶちかまそう。

 

 

その後のことは……まぁ今は考えないでおく。

 

 

 

「………来なよ。その綺麗な鼻っ柱、へし折ってあげるからさ」

 

 

古龍にそう声をかけると、古龍は咆哮を上げた。それをしっかりイナす。

 

う〜ん…。 最近は彼の影響を受けてなのか、言葉遣いが荒い気がする。

まぁ、彼と似てるってのは悪い気はしないからいいか…。

 

 

古龍は翼を伸ばしての突き刺し攻撃。

私はそれをすり抜けるように回避。

 

そこから古龍は、先程クルルナを攻撃した時のように大きく翼で薙ぎ払う攻撃に繋げてきた。

勘に従って、少し斜めに移動したところで大剣の抜刀溜めの体勢にはいる。

 

 

………いや、勘に従ったけれども、これはいくらなんでも危険すぎやしないか?

 

 

なんて思った次の瞬間、古龍は翼を使って辺り一帯を薙ぎ払った。

 

……薙ぎ払ったけれども、その翼は私の頭上を通過し、私に攻撃が届くことはなかった。

 

そして、翼を薙ぎ払い終わった古龍の頭が力を溜めている私の目の前に現れる。

 

 

ここだ。

 

 

 

 

「だぁぁぁああああ!!!」

 

 

 

 

渾身の力で大剣を振り抜く。

抜刀スキルの効果が乗ったその一撃は、古龍の頭をしたたかに斬りつける。

 

斬りつける…が、古龍は怯まなかった。

そして、古龍はお返しにと力を溜め始め────

 

 

 

「……ヤバいッ!!」

 

 

 

背中の噴射機構も使い、低空飛行をしつつ、馬鹿げた速度での突進に繋げてきた。

 

私は、その攻撃をギリギリでイナす。

 

あぁ…ヤバい、目の前がチカチカだ…。倒れそう……。

 

 

 

………よし、ここで決めよう。

 

 

 

一瞬のうちに古龍は私との距離を広げた。

だけど、遠くの方ですぐさま方向変換。

再び此方に狙いを定める。

 

 

…………来なよ。

 

 

すぐに大剣を抜刀。

そして身体を大きく捻って力を溜め始める。

 

古龍は再び噴射機構を用いて、凄まじい速度で突進。

 

古龍が尋常じゃない勢いで迫り来る中、私も溜め斬りの力を込め終えた。

 

 

体力は限界。

恐らくこれが最後の一撃になる。

全身全霊の一撃にしよう。

 

 

 

 

 

 

「だっ………あ、ああぁぁぁああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ここだ、というタイミングで大剣を振り抜く。

最早相手のことは見えていなかった。

 

振り抜いた大剣から、会心の手応えが伝わってくる。

 

最早、目の前は見えていない。

感じ取れるのは風の冷たさと、古龍の悲鳴らしきもの。そして、何かが地面に落ちたような音だった。

 

 

 

 

 

「がっ…だっ、あ、ぁぁぁぁぁああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

まだだ、もう一押し。

 

 

目の前で何が起きているのかはわからない。

自分の勘に従って、強溜めを放ち終えた大剣を横薙ぎに全力で薙ぎ払う。

 

 

手応えは……あった。

 

 

ここまでやれたなら、結果がどうであろうと受け入れられるかな…。

 

 

 

「あっ……ふっ」

 

 

 

身体から力が抜け、雪原に倒れ伏す私。

 

チカチカとした目が少しずつ落ち着いてきて目の前の景色が見えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には……怒りに震え、全身から龍属性のエネルギーを溢れさせている古龍が佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

「はは……。負けたかぁ……。強いなぁ…。

 

迷子君、ごめんね……」

 

 

 

口からそんな言葉が零れ落ちる。

 

 

そんなことはつゆ知らず。

古龍はその翼から膨大な龍属性エネルギーを溢れさせ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………空へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………へ?」

 

 

 

 

あ、あれ……? これは……助かったのだろうか?

 

力の入らない身体に鞭を打ち、大剣を支えにして何とか立ち上がる。

 

空を見ても、古龍の姿は見当たらなかった。

 

これは……助かったかな……。

 

 

 

「ふ、ふっはぁ……。ちょっと動けないや……」

 

 

 

もう一度倒れこみ、体を落ち着かせるために深呼吸。

数回の呼吸を繰り返して、やっと体が落ち着いてきた。

耳鳴りが残っているけれど、これくらいはへっちゃらだ。

 

 

「さて……。みんなのとこに行かないと……」

 

 

動けるくらいに回復した体を起こし、エリア7へと向かおうとする。

 

 

 

「…………ん? ……えっ、迷子君!?」

 

 

 

すると、エリア7から迷子君が走ってくるのが見えた。

ちょっと雪のせいで見えにくいけど、アスリスタ装備の外装に操虫棍のハンターなんて迷子君くらいだから見間違いではないだろう。

 

えっ…と、心配になって来てくれたのかな?

 

 

 

「迷子く〜ん…! 私は大丈夫だよ〜…!」

 

 

 

あぁ、声も出ないや…。

これは彼におんぶでもしてもらおうかな…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて思っていたけれど、あることに気づいた。

 

彼の顔が必死だった。

 

耳鳴りが酷くて聞こえなかったけれど、なにかを叫んでいるようだった。

 

彼は空の方を指差していた。

 

 

 

 

…………空?

 

 

 

 

振り向いて、空を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赫い彗星が、私を目掛けて落ちて来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイ………」

 

 

 

 

そこまで言ったところで、レイリスが攻撃に呑み込まれた。

 

空から降って来た赫い彗星が彼女を爆発の渦に巻き込み、そして塵のように吹き飛ばす。

 

 

 

「────────ぁ…」

 

 

 

レイリスが吹き飛ばされ、俺の目の前に転がる。

 

 

 

「ぁ………。おい…、おい!」

 

 

 

俺はすぐにレイリスに駆け寄り、彼女を抱える。

 

返事は無かった。意識を失っていた。

 

 

 

「…………クソッタレが」

 

 

目の前の彗星野郎を睨みつけ、背中の操虫棍に手を伸ばす。

 

いや……伸ばそうとした。

 

 

 

手はレイリスに止められていた。

意識を失ったはずの彼女に。

 

 

「………まいごく…ん、に…げ……」

 

 

 

そこまで言うと、次こそ本当にレイリスは意識を失った。

手が滑り落ち、頭をカクリと落とした。

 

 

 

 

 

 

…………ごめん、ここはちょっと退けないや。

 

 

 

 

 

「あ〜…、ヒラメ。 お前、レイリスを1人で運べるか?」

「う、うニャ? まぁ…大丈夫だけど……旦那さんはどうするのニャ?」

「俺か?まぁ………」

 

 

 

目の前の古龍────バルファルクを見据える。

 

 

 

「ちょっとコイツを懲らしめてからそっちに行くよ。

大丈夫、手負いのコイツに負けるようなハンターじゃないから」

 

 

オトモにそういって、俺はバルファルクへと歩みを進める。

 

 

「わ、わかったニャ。武運を祈ってるニャ」

 

 

ヒラメはそう言うと、レイリスを抱えていった。

足が少しだけ引き摺られているけれど、あの体格差なら致し方ないところだろう。

 

 

 

 

さて………。

 

 

 

 

 

「オイ、いたずらコメット。

お前…いったい何なんだ?俺の大事な仲間をあんな目に遭わせてさ…。どっかの天使の回し者か?」

 

 

通じることはないだろうけど、こちらを睨んでいるバルファルクにそんな言葉を投げかけながら歩みを進める。

 

 

頭に浮かべるのは、自分の持ちうる限り、最高の装備。

 

 

その装備に変更が完了した途端……左腕が燃え上がるようなオーラを纏った。

 

 

 

「お前も激おこだろうけどさ……。

俺もちょっとキレたわ」

 

 

 

背中に背負っている膨大な爆破属性を纏った操虫棍に手を伸ばし、構える。

 

 

 

「来いよ、クソ彗星野郎。

ボッコボコにしてやるからさ」

 

 

 

バルファルクが咆哮を上げ、俺は猟虫を飛ばす。

 

1vs1の戦いが静かに始まった。

 

 

 

 





最後の方に主人公が着替えた装備は…

真・黒滅龍棍【旦明】 バランス虫
S・ソルZヘルム
ギザミXRメイル
グリードXRアーム
ゴアXRフォールド
グリードXRグリーヴ
天の護石 匠5斬れ味4スロット3

発動スキルは
『切れ味レベル+2』『業物』『挑戦者+2』『弱点特効』『超会心』
です。
凄まじいですね。

感想など気軽にどうぞ。 お待ちしてます。


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第50話 恐れ見よ、赤き災厄の彗星を


この世界はゲーム準拠だから。





 

 

 

 

いつぞやの兄との会話を思い出した。

 

 

 

「お前ってさ、出来ないことはない訳?」

「あん?出来ない事……ねぇ…」

 

 

 

そう尋ねられた兄は、のほほんとした様子で考え込む。

 

 

「運が絡まなきゃあ、大体出来るわ。

あれ…?俺って凄くねぇ?あっはっは」

「うっぜぇなぁ…」

 

 

からからと笑いながら自慢げな様子の兄。

コイツはいつだってそうだ。何気ないようでもなんだってこなしやがる。勉強、スポーツ、挙げ句の果てには娯楽のゲームまで。

何一つ勝てた覚えがない。

 

コイツに追いつこう、なんて思い続けてかれこれ20年だ。

そんなことをしているうちに、俺の体は不幸の目を引いてしまったようだけれどさ。明日からは病院行きだこのヤロー。

 

 

「あぁ、よく考えたらソレを治すのは俺でも無理だわ。まぁ俺が出来ないんだ。運が悪かったと思って逝ってくれ」

「あほくさ」

 

 

入院の前日、家のリビングでそんな会話をしていた。逝ってくれってなんだ、難病に罹った弟にかける言葉がそれか。

 

 

「このまま治んなかったらさ…お前に何一つ勝てないまま終わりなんだな」

「ん〜、まぁ相手が悪かったと思え。あっはっは」

 

 

なーにが『あっはっは』じゃ。笑えねーよ。

うぅん…今までの人生を否定された気分だ…。

この鬱憤をどう晴らすべきか…。

 

 

「まぁでも……」

「ん?」

 

 

なんて考えてたら、兄が急に喋り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれじゃね?ゲームの話だからちょっとしょーもないけど…操虫棍の使い方だけはお前の方が一枚上手だったと思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前の方が上だ』と兄からはっきり言われたのは、後にも先にもこれが初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狩猟が始まり、真っ先に猟虫をバルファルクの頭に飛ばす。

猟虫はまっすぐ突き進んできたバルファルクの頭にヒット、赤エキスを奪い取る。

 

歩き移動で突進を避けつつ、猟虫を戻す。

赤エキスを回収するや否や、すぐに脚へと猟虫を飛ばして白エキスも回収。赤白ダブルアップ状態へ。

 

バルファルクは引っ掻き攻撃。

だけど、範囲外ギリギリにいる俺には当たらない。

そこからホーミングを利かせて翼脚で突き下ろす攻撃に繋げてくるが、白エキス効果の乗った操虫棍の移動速度は捉えられない。

 

翼脚が地面に刺さると同時に、頭部に向かって2連薙ぎ払い。

武器の会心率15%に猟虫の会心アップ15%が乗る。さらに弱点特効で50%アップ、オマケの挑戦者+2の効果で15%が加わり、会心率の合計は95%までに上がる。

 

頭にヒットした2連薙ぎ払いは、2発とも会心の手応え。

そして爆破属性55という手数武器とは思えないほどの属性値が、バルファルクの頭で小爆発を発生させた。

 

 

「………いくら初見とはいえ、あの3人を力尽きるまでにするなんてなかなかやるじゃん。

さてはお前、姉御バルファルクか?」

 

 

爆発が起こって怯んだバルファルクにそう声をかける。

バルファルクは再び引っ掻き攻撃、それをうまく位置取りして回避。

そこから繋げてくる翼脚突き刺しも位置取り回避。

 

突き刺し攻撃の後には薙ぎ払い→飛円斬りのコンボがギリギリ入る。

次に引っ掻きを置かれたら被弾はするけど、そこまで問題ではない。

攻撃を放って隙だらけの頭部にコンボを叩き込む。

 

なんてことをしてたらバルファルクはアホみたいな出の速さの引っ掻き攻撃。クソが。

そして…結構痛い。

あぁ…これは姉御バルファルクレベルですね。レイリス達が負けたのも納得だ。

 

というわけで、引っ掻きさえ迂闊に喰らっちゃいけなくなってしまいました。

バルファルクは苦手ってわけじゃないけど…これは骨が折れますな。

 

吹っ飛ばされた俺はバルファルクを見る。

翼の噴射口が前方の方を向き、大きな爪の様になっていた。

あぁ…うん。俺としてはこっちの方がやりやすいからありがたい。

 

バルファルクは自分の足元を爆撃、その隙に歩いて頭に近づく。ただ、あまり密着し過ぎない程度に。

そして前方爆撃、近づいていた俺の後方で龍気が爆ぜる。ただ、頭はガラ空き。攻撃チャンス。

下りてきた頭に2連斬り上げ、そして飛円斬りをぶちかます。

 

あら…会心が出てない。

よく見ると、バルファルクの体から溢れ出ていたはずの龍気は止まっていた。

ありゃ、怒り状態は解除されてたのね…。

まぁ動きが遅くなると考えたら逆に楽かもしれない。

 

 

 

 

「なぁ、今からブツブツと独り言を始めるからさ。

いや…大したことじゃないんだ。冴えない1人の野郎があることに気づいただけだから。

まぁ聞いててくれよ?」

 

 

 

バルファルクは再び引っ掻き攻撃。それをフレーム回避。

いや、その技出しすぎだろう。ずっと足元爆撃してろや。

 

そこから翼爪叩きつけ、足元にいるから当たらない。踏み込み斬りから飛円斬りのコンボを叩き込む。

 

 

 

 

「この世界に来てからさ…。俺は何回もレイリスに怒られた。

『なんであんな無理をするのか』ってさ。

何回怒られてもまた繰り返して…、金雷公や青電主にはネコタク送りにもされた…。

そもそも今みたいな真似だって良くないんだろう」

 

 

 

飛円斬りを受けたバルファルクは大きく仰け反って怯む。

すぐにコロリンで距離を詰め、2連斬り上げの追撃。

 

 

 

「なんでこんな真似しちゃうんだろうなって…自分でもしっかり考えてみたんだ」

 

 

 

バルファルクは足元爆撃。

こちらからの攻撃の手を一旦止め、細かく位置取り。爆撃の当たらない正面の位置に留まって初撃を回避する。

初撃を回避した俺は頭に接近。

足元爆撃から繋げられた前方爆撃が俺の後方で炸裂する。だけど既にガラ空き。

隙だらけの頭に2連斬り上げを叩き込む。

 

 

 

「んで……改めて気がついた」

 

 

 

バルファルクはバックステップと同時に俺のいる場所を爆撃。

ちょっと回避のしようが無いのでイナシ。

だけどそれなりに体力は削られる、流石は強化個体。

 

 

そして、距離の離れたバルファルクに向かって呟いた。

 

 

 

「当たり前なんだけど……やっぱりこの世界はゲームなんだな……ってさ」

 

 

 

バルファルクは翼爪で薙ぎ払う攻撃。

それをしっかりフレーム回避。

そして2連斬り上げに繋げる。

 

 

 

「だってさ…現実なら今のもあり得ないだろう…。体がすり抜けるんだぞ? 笑っちまうよ」

 

 

 

2連斬り上げから袈裟斬り、そして後方回転攻撃につなげ、バルファルクから少し距離を稼ぐ。

バルファルクは引っ掻き攻撃、だけど後方回転で稼いだ距離が活きる。

繰り出された猫パンチは眼前スレスレで空を切る。そして翼爪叩きつけ、それも後方の地面を叩くだけ。俺には当たらない。

 

 

 

「この世界はあくまでゲーム通りの戦闘システムなんだろう。

でも、完全にそうとは思えなかった。

 

レイリスやみんなは命を懸けてハンターをしていたから。

…だから、ゲーム感覚になるなんてのはできなかった」

 

 

 

攻撃を空振って隙だらけの頭部に踏み込み斬り。そして渾身の力で飛円斬りをぶちかます。

爆破属性の粉塵が舞い散り、爆ぜる。

バルファルクは大きく仰け反り、悲鳴をあげた。

 

 

 

「きっと、心のどっかでそういう意識が根付いていたんだと思う。

『この世界は現実なんだから、力尽きたら死ぬかもしれないぞ』ってさ」

 

 

 

怯みから立ち直ったバルファルクは龍気を胸にチャージする動作に。

すぐさま距離を詰める。

 

 

 

「でもさ……。それだと、俺って力を出し切れないっぽいんだ。

俺が唯一人に自慢できるようなこと。

あのクソ兄貴に上だと言わせてやったこと。

 

それは操虫棍の扱い。

………()()()の話だからさ」

 

 

 

龍気チャージ中のバルファルクの胸部に2連斬り上げ、袈裟斬り、薙ぎ払いのコンボ。

そこから更に2連斬り上げに繋げる。

そこでバルファルクの胸部に溜まっていた龍気が暴発。

バルファルクは大きく仰け反り転倒した。

 

 

 

「自慢じゃないけどさ、操虫棍を使わせれば全然死なないんだぜ?

正直言って、超特殊の金雷公や青電主が乱入してきたって倒す自身は大アリさ」

 

 

 

転倒したバルファルクの頭部にラッシュをかける。

始まりの2連斬り上げを叩き込んだ時点で再び爆発が起こる。

 

 

 

「でも失敗したり力尽きたりしてしまった。

多分、俺がこの世界のことを半端に考えていたからだと思う。

()()()なのか()()なのか…。

どちらとも決められない半端者だったからかな」

 

 

 

斬りつけ、また斬りつけ、ひたすらに斬りつける。

爆破属性55を誇る俺の相棒は再び爆発を起こし、ダメージを加速させてくれた。

 

 

 

「まぁ…そろそろはっきりさせておこうと思ってさ。

そしたらお前が来てくれたんだ。

………まぁ、ちょいと嫌な登場だったけどさ」

 

 

 

バルファルクがダウンから復帰。

そして身体中から龍気を溢れさせ、咆哮のモーション。

怒り状態に入るらしい。

 

 

 

「決めたよ。

 

この世界はゲーム準拠だ。

だから俺もゲームと同じ感覚で戦う。

自分の力を1番出せるようにして戦うよ。

 

レイリス達には迷惑かけちゃうかもしれないけど…それじゃないと俺の全力は出せないんだ。

 

それに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでお前を倒せばゲーム感覚でも問題ないって証明だろ?

姉御バルファルクソロか…いいじゃん。

力の証明にはもってこいだ」

 

 

 

バルファルクが怒りの咆哮をあげる。

フッと息を吐き、目を瞑ってそれをイナシ。

 

 

そして目を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には、あの懐かしい景色……画面が映っていた。

 

 

 

何百、何千回と見たあの光景。

 

 

 

上部には体力とスタミナのゲージ表示。

 

左上には時計のマーク。今回は正式なクエストではないからか『∞』との表示。

 

その隣には紫色に光る剣のアイコン。

 

その下には時間切れ寸前の警告が出ている、三色のエキス所持の表示。

 

右下にはアイテム選択欄。

 

 

 

 

元の世界で数え切れないほど見てきた、モンハンの画面だった。

 

 

 

恐らくは幻覚みたいなもんだろう。だけど、この上ないくらいに集中できる。

 

アイテム選択欄に意識を移す。所持アイテムは秘薬多目の回復アイテム諸々、そして怪力の種、閃光玉だった。

うん、準備万端。

 

 

 

「ほんじゃあいくぞ? 自分で言うのもなんだけど、かーなり強いはずだから覚悟しろよ?」

 

 

 

咆哮をイナシた俺の体は青い光に包まれ、左腕は燃え上がるように光る。

再び挑戦者発動。

 

エキス時間が切れたので、再びバルファルクの頭部に猟虫を飛ばして赤エキスを奪う。

 

バルファルクはこちらに駆け寄り、飛び上がる。

そのまま俺のいる場所をすれ違いざまに龍気で薙ぎ払う攻撃。

猟虫を戻して赤エキスを回収しつつ、その攻撃を移動して回避。そして地面に着地したバルファルクの脚に猟虫を飛ばして白エキスも回収。すぐさま猟虫を戻して赤白ダブルアップ状態に。

 

こちらを振り向いたバルファルクは爪の様に展開した翼脚で大きく薙ぎ払う攻撃。

それをブレイヴステップのフレーム回避。そこから2連薙ぎ払い、飛円切りに繋げる。

ブレイブ状態の猟虫突進が飛円切りと共に放たれ、バルファルクの胴体から橙エキスを奪う。

 

バルファルクは力を溜めたかと思うと、翼脚から龍気を噴射させて大空に飛び立った。

発生する風圧をイナシて納刀。猟虫を戻すと同時にトリプルアップ状態に突入。

エキス所持欄が光った。

 

 

 

すぐさま意識をアイテム選択欄に。

カーソルを怪力の種に合わせる。

 

そしてアイテムポーチに手を伸ばし、何を掴んだかは確認せずに口に放り込んだ。

口の中の物を齧った途端、体から力が湧いてくる感覚に浸る。

 

視界に映っているアイテム選択欄の怪力の種の個数が10から9に減った。

 

 

 

うん、この感じだ。

俺が1番やりやすいのは、この感覚だ。

 

 

 

すぐに操虫棍を抜刀して空を見る。

赫い彗星がこちらに狙いを定めて急降下してきていた。

 

そちらを向いて納刀継続の構え。

耳が壊れるかというほどの爆音と共に衝撃が襲ってくるけど、それをイナシ。

 

視界の体力ゲージが全体の1/3弱程減った。

元々引っ掻き攻撃なんかを喰らっていた分も含めて残り体力は半分弱といったところ。

 

すぐさま意識をアイテム選択欄に。

選択したのは秘薬。

先程と同じようにアイテムポーチに手を突っ込み、掴んだアイテムを口に放り込む。

次の瞬間、視界に映っている体力ゲージがマックスまで回復した。

 

すぐに威嚇をしているバルファルクへとダッシュ。ギリギリのところで抜刀攻撃を入れる。

 

翼脚の噴射口は後ろを向いている。

バルファルクは引っ掻き攻撃、そして地面への突き刺し。

引っ掻きをブレイヴステップでフレーム回避、突き刺しは歩き移動で範囲外へ。

 

そして突き刺しが空振ると同時に、隙だらけの頭部へと2連薙ぎ払い。

ミラバル棍の爆破属性が再び小爆発を引き起こす。それでもバルファルクは怯まない。

 

バルファルクは車庫入れステップ。そこから翼脚を槍のように大きく伸ばして攻撃。それをブレイヴステップで回避。

続けて放ってきた薙ぎ払い攻撃。少し斜めに移動して攻撃の当たらない位置へ移動する。

 

そのまま2連斬り上げ、そして飛円斬りでフィニッシュ。

会心が発生してビカビカと光り、爆破性の粉塵を撒き散らしつつ、攻撃がバルファルクの頭部へと吸い込まれる。

怒涛のラッシュを受けたバルファルクはとうとう怯み……怯……いや、怯めよ。

 

怯まなかったバルファルクは、グッと後ろに下がりつつ力を溜めた。

翼脚から噴射音が聞こえ、弾丸のようにバルファルクが飛び出し────

 

 

 

 

 

滑空突進をイナした。

 

 

 

 

 

イナしたので少しだけ体力を削られたけど、視界に映るゲージには結構な量が残っている。

多分、滑空突進の直撃を受けても生き残れるくらいには。

 

 

 

即断即決。撃ち墜とすことにした。

 

 

 

遠くの方で方向転換したバルファルクは再び此方へと駆け出す。

それよりも速く、俺は抜刀攻撃。

 

駆け出したバルファルクは再び滑空、音すら置き去りにしそうなスピードで此方へと突っ込んでくる。

 

 

………今だ、来い。

 

 

抜刀攻撃から飛円斬りに繋げる。

ブレイヴ状態に入っているので、飛円斬りと同時に猟虫が回転攻撃を放つ。

 

バルファルクからは目を離さない。

向こうの目をしっかり見据え、その頭部に渾身の一撃を叩き込んだ。

 

 

 

 

手応えは会心の一撃。

 

さらに、猟虫の回転攻撃のオマケ付き。

 

さらにさらに、爆破属性の粉塵が小爆発を引き起こした。ミラバル棍万歳。

 

 

結果────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バルファルクは地面に墜落。やったぜ。

 

 

 

「…………やっぱり俺にはこんな感じの戦い方があってるよ。

この世界の人達とは根本のところで違う……当然か、違う世界から来てるんだもんな。

 

 

ありがとう。

 

 

お前みたいな強いヤツが来てくれて、本当に良かった。

これで、心置きなくこの世界で生きていけそうだ」

 

 

 

撃墜されて地面でもがくバルファルクに呟きながら、攻撃を加え続ける。

2連突き、袈裟斬り、2連薙ぎ払い、2連斬り上げ。斬って斬って斬りまくる。

 

 

 

「俺の仲間を痛い目に遭わせたのは頭に来たけど……お前に会えて良かったから、これでおあいこにしておくよ。

 

 

だから………そろそろ終わりにしよう。

 

 

ありがとな、メインモンスター」

 

 

 

最後に渾身の力で飛円斬り。

それは猟虫の回転攻撃と共にバルファルクの頭に叩き込まれる。

 

 

会心の手応えが操虫棍を通じて伝わって来て…。

 

 

 

 

 

 

悲鳴を上げてバルファルクは倒れ、動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

途端。

 

視界のコックピット表示が消え失せ、体が疲労感に襲われた。

 

 

 

「ぶ、ぶっへぇ……。やっぱ集中すると疲れんなぁ……」

 

 

 

倒れるまではいかないものの、その場で深呼吸が必要なくらいには体に負担をかけていたらしい。

体が訴えるままに数回の深呼吸。それを終えると体は落ち着いた。

 

倒したバルファルクから、感謝と敬意の念を込めて剥ぎ取りをさせてもらう。

戦闘システムはゲーム通り。ただ、それ以外はゲーム通りとはいかない。

頂いた命だ。無下に扱うわけにはいかないさ。

 

 

 

「よいしょっと…剥ぎ取り終わり。

 

さて……と。レイリス達の所に戻るか」

 

 

 

バルファルクからの剥ぎ取りを終え、そんなことを呟く。

エリア7………いや、あのネコ達ならレイリス達をエリア2にまで運んでくれてるかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、彼女達なら今はエリア1さ。

お仲間さん達が合流したみたいで、倒れた3人をベースキャンプに運んでるよ。

で、今は2匹いるネコのうちの1匹が此処に向かっている。心配することはないさ」

「どわぁ!?」

 

 

 

 

いきなり後ろからそう声をかけられてめちゃくちゃビックリした。

いつからいたのか、後ろにはアークS装備の天使さんがいた。

 

 

珍しく、どこか申し訳なさそうな顔をして。

 

 

 

「あ〜…まず先に謝っておくよ。

そこの龍…。君が倒したバルファルクはもう少し後に出てくる予定だった。

君がポッケ村に行って、あの『白ドレス』と話をした後にね。

君の仲間達に危害を及ぼそうなんて思ってなかった。彼女達を危険な目に遭わせたのは謝るよ」

「ん、んん? あれ? 今回のってアンタにとっても予定外なの?」

「あぁそうさ。 君達がもっと万全な状態の時に、バルファルクは登場する予定だった。

 

………まぁ、赤髪の彼女と君が予想以上に強くて驚かされたけどね」

 

 

 

どや。まぁ俺にかかれば姉御バルファルクだってチョチョイのチョイですよ。

 

 

 

「あっ、ちょっと待ってくれ。

今、話に出た『白ドレス』って一体……?」

「あぁ。ポッケ村の巨剣の洞窟で待たせておいたんだけど…先に話をつけてきたよ。

ちょっと怒られてしまった。だから今回の対処が遅れてしまった」

 

 

 

まてまて、全く話が入ってこない。

何処にいたかじゃなくて、その人が何者かを教えて欲しいんだけど……。

 

 

 

「まぁ、これに関しては直接会った方が速い。

君や彼女達には急な事で申し訳ないんだけど、今から出発だ」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天使さんは唐突に指パッチン。

 

 

 

次の瞬間、俺の意識は闇の中へと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ぅ」

 

 

 

真っ暗な世界から意識を持ち上げる。

最初に感じたのは体の痛みだった。

 

 

 

「…………ぃっ、ぁ」

 

 

 

思わず呻き声を上げてしまう。

目を開けると、此処がベースキャンプのテントの中だということがわかった。

 

 

「…………起きたか?」

 

 

急に声をかけられ、そちらを向く。

そこにはルファールが力無く笑いながら、ベッドに腰掛けていた。

辺りを見回すと、クルルナはまだベッドで横になっていた。

 

 

「まだクルルナは寝てるよ。今、ラディスとセレスに薬を頼んだところさ」

「…………そっか」

 

 

テントの中には私とルファール。

まだ目を覚まさないクルルナ。

 

 

 

 

 

………………………彼は?

 

 

 

 

 

 

「あっ、レイリスも起きたんだね。薬草スープ持ってきたよ」

 

 

なんて考えていると、テントの入り口にはいつの間にかラディスが立っていた。

手に持った容器には暖かな湯気をあげる液体が。

 

 

「はい、飲んで! 薬草入りだからあんまり美味しくないかもしれないけど……」

「大丈夫。それくらい我慢するよ」

 

 

ラディスから手渡されたスープを少し口に含む。

多少は薬草の味がするけど悪くない。今の私の体には必要な味だ。

 

 

「ふぅ………」

 

 

ほっと一息。

体にじんわりと暖かさが伝わっていく。

うん、だいぶ体も落ち着いてきたみたい。

 

 

 

 

「ねえ、ラディス」

「うん?どうしたの?」

 

 

 

 

 

だから、聞いておかないといけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迷子君は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その質問を受けたラディスの顔に動揺の色が浮かんだ。

ルファールの体もピクリと反応した。

 

 

「え、えっと………」

「ラディス、誤魔化さないで」

 

 

答えあぐねるラディスに、私は問いを続ける。

 

 

「迷子君は今どこにいるの?ねぇ、教えてよ」

「う……」

 

 

あぁ、もう……早くしろ。別に難しい質問じゃないでしょうが。

 

 

「ねぇ、黙ったままじゃわからないって…!早くしてよ!」

「う、うぁ……」

 

 

黙り続けるラディスにウンザリして、思わず立ち上がる。

その衝撃で、小さな机に置いていたスープの容器が落ちた。

パシャリとスープが地面にブチまけられるが気にしない。

私はラディスに迫る。

 

 

「ラディス、どうしたの……って、レイリスさん!?」

 

 

入り口からセレスが顔を覗かせる。

あぁもう、五月蝿いなぁ。

いいから早く質問に答えてよ。

 

 

「ラディス!迷子君は何処!?いいから答えろッ!!」

「う、ぁ……。や、やめ……ぅぐ」

 

 

ラディスの胸倉をぐい、と掴み上げる。

ラディスの目に涙が溢れるが知ったこっちゃない。

ルファールはさっきから俯いて黙ったまま。

小刻みに震えているけど、何をしてるのさ……。

 

 

「レ、レイリスさん!やめてくださいっ!」

 

 

セレスが私を止めに入る。

五月蝿い……静かにして……!

もっと大事なことがあるんだ……!!

 

 

 

「迷子君は何処なんだよ!? 誰でもいいから教えてよ!?」

 

 

私に掴み上げられ、ラディスの足が地面から浮く。とうとうラディスは泣き出した。

泣く暇があるなら早く答えろよ…!

 

 

「レイリスさんッ!それ以上はやめて!」

「うるさいッ!ならセレスが教えてよッ!彼は何処!?」

 

 

いつまでも五月蝿いセレスにそう怒鳴り返す。

すると、悲痛な表情のままセレスは黙り込んだ。

だからさぁ…黙ってちゃわからないだろうって……!

 

ラディスをテントの柱にドン、と乱暴に押し付ける。

泣いているけど知ったこっちゃない。早く質問に答えないのが悪い。

 

 

「ぅ……ぁ……。も、もうやめ……」

「何処なんだよ!?彼は何処にいるんだよ!?誰でもいいから教えろッ!」

「レイリスッ!!」

 

 

ルファールの怒声がベースキャンプのテントに響く。

気がつくと、彼女の手が私の肩に置かれていた。

 

 

「ルファールッ!知ってるんでしょ!?

早く教え────」

 

 

 

私はそう叫びながら、ルファールの方を振り向き────

 

 

 

 

 

 

ルファールが泣いているのを見て、体が固まった。

ルファールが泣いているのを見るのなんて初めてだった。

 

 

 

 

「あぁいいさ! 教えてやるよ!

 

あの後、彼のオトモ君が雪山の山頂に様子を見に行った!

だけどオトモ君がそこで見たのは、倒されて動かなくなったあの古龍だけだった!

彼の姿は何処にもなかった!いなかった!消え失せていた!

オトモ君達が探してくれているけど、今も見つかってないんだよ!

 

これで満足か!?」

 

 

 

ルファールが泣きながら言う。

徐々に私の頭が話の内容を理解していく。

 

 

 

 

 

 

 

彼が消えた。

 

今も見つかってない。

 

 

 

 

 

 

つまり────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ………あぁ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

私はその場に崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 




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第51話 白光


依頼主:白いドレスの少女





 

「なぁ……いつになったらこの人は目覚めるんだ?ずっとうなされてるけど……」

「知らないわよ……。

『イビルジョーが〜』とか言ってるけど、このハンターはイビルジョーを相手取るのは得意なんじゃなかったの?」

 

 

 

目の前に横たわってうなされているアスリスタ装備のハンターさんを見ながら、そんな言葉を落とすオレと彼女。

落ち着いた表情を崩すことなんて滅多にない彼女も、この人の様子を見て少し困惑気味だ。

 

あの天使さんがこの人を担いできて数十分。

いずれ起きるから、とは言っていたもののそんな様子は一切見られない。

普通に寝ているならまだしも、うなされているのを放っておくのもなんかなぁ…。

というか、初めての対面なのになんか残念なイメージしか湧いてこない。凄いハンターなのかが嘘みたいだ。

 

 

 

「あぁもう……焦れったいわね……。

ちょっと離れてて。雷落とすわ」

「待って!お願いだからやめてあげて!一応、オレの恩人だから!」

 

 

 

イライラしている彼女を必死になだめるオレ。

なんでこんなことになったのだろうかと思いながら、オレは数分前のことを思い返していた。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「お届けに参りました〜っと…。

はい、コレが例のハンターさ。まぁ放っておけば目覚めるだろう。

ちょいと面白い夢を見させてるから観察して楽しんどいてくれ」

 

 

 

古びた城の内部。

かつては城の兵器倉庫として使われていたのであろう場所で、オレと白いドレスの彼女はなんとも言えない顔をしていた。

 

 

 

「お、おぉ〜…。この人がオレを強くしてくれたんですか?」

「あぁ、そうさ。君がそこまでのハンターになれたのもコレのおかげだよ」

「なんだかナヨナヨしてて、ひ弱な感じが漂ってるけど…本当なの?」

 

 

 

白いドレスをたなびかせながら彼女が言う。

ちょっと酷く言い草じゃないですか…?なんて思ったけど、本当にちょっと冴えないオーラが漂っている。

『もう一人で無理しないから!』とか『乱暴はやめてッ!』とかの寝言を言ってるけど、何なんだ…。

 

 

 

「ま、起きたらまた来るから。その時に改めて説明するよ。

私はちょいと忙しい………ってわけじゃあないけど、新発売の国民的RPGやらないといけないから失礼するかな」

「「おいコラ」」

 

 

オレ達の言葉も聞かず、天使さんはスッと消え失せた。うーん、このハンターさんもあの天使さんも凄い存在なんだろうけど、いまいち凄さを感じにくいなぁ。

 

 

 

「まぁ、あの天使の言う通り待つことにしましょうか。

これでも私は我慢強いほうだから、少し待つくらい余裕だわ」

「おっ、頼もしいね。じゃあオレがあの人を無理やり起こしそうになったら止めてくれよ?」

 

 

 

軽い笑いと共に言葉を交わし、オレと彼女はハンターさんが起きるのを待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

待つことにはしたんだけれども、彼女は我慢できない性格だった。

いや、余裕って言ってたじゃん。まだ10分くらいしか経ってないじゃん。

 

 

「あぁもう、ぶっ放すから離れてて!」

「ちょっ、ちょ!?」

 

 

ハンターさんに雷ドカンをしようとする彼女を必死になだめるけどダメでした。

彼女はオレを振り払い、体から眩い光を発した。

 

あぁ、うん。これはもうダメだ。

ハンターさん、強く生きてください。

 

 

 

次の瞬間、倉庫の中が爆音と閃光で満たされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どわぁぁぁぁぁぁぁああ!?あっばばばばばばば……」

 

 

 

なんかイビル嬢に貪られる悪夢を見ていたと思ったら、急に爆音が轟いた。

続いて襲ってくるのは強烈な痺れ。

これは…アレだ。雷属性の攻撃を受けた時の感覚に似ている。

 

なんとか体は動くようで、反射的に背中の操虫棍に手が伸びた。

背負ったままの操虫棍の柄を握りつつ、辺りを見渡すと────

 

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫ですか…?」

 

 

 

 

 

 

背中にセルレギオス武器らしき操虫棍を背負った、S・ソルZ装備の男性ハンターがいた。俺より結構若い感じ……セレスくらいの年齢だろうか?

傍らには少しうんざりした表情を浮かべた、白いドレスの少女が。その姿はどこか恐ろしさを感じるほどに、綺麗で儚げだった。

 

………ん?

天使さんが言ってた白ドレスってもしかして…。

 

 

 

「あぁ、やっと起きたか。

クッソ…あのおてんば人魚め…、ねっとうなんて技使いやがって…」

 

 

 

そんなこんなで状況を把握できないままでいると、いつの間にか悔しそうな表情をした天使さんが現れた。

なんの話だ?悪いけど別ゲーの話は勘弁ですよ?

 

 

「あの…どういう状況ですかね? そこのお2人は?」

「うん。まぁ私から紹介してもいいんだけれど、ここは是非とも自己紹介してもらいたいものだね。

ほら、恩人と感動の対面だ。自己紹介でもどうだい?」

 

 

 

天使さんがその場を取り仕切り、事を進めていく。

自己紹介を促されたハンターと少女は俺に向き合い、口を開いた。

 

 

 

「あ。そ、それじゃあ…初めまして。

えっと……なんて言えばいいかな?あ〜っと…。

な、名前からかな?」

「早くしなさいよ…。別にちょっと冴えない男に話するだけじゃない」

 

 

 

おっと、さりげないディスりが聞こえたぞ?

俺の扱いは何処でもこうなのか?

 

 

 

「はい、それじゃあ名前から!

オレの名前ですが────

 

 

 

『ユウ』といいます」

 

 

 

 

……………『ユウ』ねぇ。やっぱりそうなのか。

となると、このハンターさんは……。

 

 

 

 

「……うん、素敵な名前じゃないですか。

俺もその名前は好きですよ。大好きです。

……嫌いなわけがない。……そりゃそうか」

「えぇ、素敵な名前ですよ。オレもこの名前は誇れます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんてったって、貴方からもらった名前ですから!

ね?(ユウ)さん!」

「…………そうか。……そうなんだな。君がそうなのか」

 

 

 

誇らしげな顔をしているユウ君にもう一度尋ねる。

俺の中ではほぼ確定だったけど、一応確認を取らないといけない。

 

 

 

「……君が主人公か。 なんとなくそんな気はしてたんだけど…。

俺が操作していたキャラ……。

この世界で、俺の代わりに駆け回ってくれていたハンターが君なんだな?」

「そうです。

貴方のお陰でハンターとして大きくなれた、主人公です」

 

 

 

あぁ、うん。

俺はいっつもモンハンのプレイヤーネームは名前をカタカナにするんだ。

だから、『ユウ』。

そうやって、今目の前にいる主人公に名前をつけたんだったな。

 

 

 

「今でも思い出しますよ。パンツ一丁でダレン・モーランの背中に乗ったり、狂竜化ウイルス騒動で奔走したこと。

最近なんかは、各地で四天王と呼ばれるモンスターを倒しましたね」

 

 

 

その言葉を聞いて、4シリーズの主人公でもあることに驚いた。

随分と長いこと、俺の代わりに頑張ってくれたみたいだね。

MH4が発売したのは2013年の9/14。

少なくとも4年間は俺の代わりにこの世界を駆け回ってくれていた人が、目の前にいた。

 

 

 

「……俺の成り行きというか、ここまでの経緯は知ってる?」

「……ええ、知ってます。天使さんから聞いてますよ。

 

………一度、亡くなってしまっているという事も。

そして…こちらの世界でまた頑張っている事も」

 

 

 

俺のことはしっかり判っているらしい。

まぁ…余計な混乱がなくて楽だ。

それにしても…主人公ねぇ。

 

なんとなくそんな気はしてたんだ。

こっちの世界に来てから、俺のハンター経歴とかいうものが何処からも出てこなかった。

ゲーム通りの設定なら、最終的に主人公は英雄扱いされて何処でも有名人という感じになる。

 

だけど、レイリス達は俺の事なんてこれっぽっちも知っていなかった。

だけど、目の前にいるユウ君のことは多少なりとも知っているんだろう。

 

 

 

「アイツらは…ネコたちは元気ですか?

しばらく会えてないので…」

 

 

 

今度はユウ君…。

自分の名前を呼ぶのはなんか恥ずかしいから、主人公君とでも呼ぼうか。

主人公君が俺に尋ねた。

 

 

 

「あぁ、元気さ。

本当に頼もしいよ。 アイツらがいなかったら、俺はまだ此処に来れてないかもしれない」

「そう、ですか…。良かった…」

 

 

 

主人公君はホッとした様子。

アイツらには本当に助けられた。いいオトモ達だよ。

 

 

 

「ねぇ……私には時間をくれないわけ?」

「あっ、ごめんよ。じゃあ、次は彼女からということで…」

 

 

 

主人公君と2人で話していたら、白いドレスの少女がぶすっとした様子で口を開いた。

すみません、少し存在を忘れてました。

 

 

 

「なんか失礼なこと考えてるような…?まぁいいわ。

私は……まぁ、白いドレスの少女とでも覚えておいて?」

「いや、どういうことですか…」

 

 

 

意味がわからない。白いドレスの少女と言われても何が何だかサッパリだ。

と思っていたら、傍観していた天使さんが急に口を開いた。

 

 

 

「あぁ、言ってなかったね。

此処は『シュレイド城』と呼ばれる場所だよ。

君ならこれで合点がいくと思うんだけど…どうかな?」

 

 

 

あぁ…そういうことですか。

たしかによく見たら、此処はシュレイド城のベースキャンプだった。

シュレイド城で白いドレスの少女。昔のモンハンの、とあるイベントクエストを思い出すなぁ。

 

 

 

「よし、じゃあ自己紹介も済んだことだし、私から色々補足の説明もしておくよ。

まぁゆったりしてくれ」

 

 

 

今の状態を多少理解したものの、まだまだ判ってないことは多い。

俺は地べたに座り、天使さんの話を聞くことにした。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

「以前君にも言ったと思うんだけど…。

私は頑張っている者を見ると、ついつい応援したくなる。

君だって相当な努力家だったから、今この世界にいるんだろう?」

「まぁ…そうらしいですね」

 

 

 

天使さんの話を静かに聞く、俺と主人公君と白いドレスの少女さん。

俺以外の2人は粗方判っているみたいだけど、話に付き合ってくれているみたい。

待たせるのも悪いから、早めに理解しないとだ。

 

 

 

「それで、だ。

 

そこにいる白ドレス。

彼女…まぁ彼女というのが正しいのかどうかわからないけれど、彼女もこの世界で孤独に頑張っていてね。

一人でこの世界をじっと見守っていたんだ」

 

 

 

へぇ…。

まぁ、白ドレスさんが俺の思う通りの存在ならそれは何となくわかる。凄く重要な存在だもんね。

 

 

 

「見守るといっても、それをたった一人で何百何千年だ。

たまに彼女に届きうる存在の狩人が現れるけれども、それも彼女の仲間達と戦うことになる。

彼女は結局一人さ」

「まぁ…一人でいることにはなれたわ。

たまにあの子達が土産話をくれるから、それを聞くのが唯一の楽しみだった。

でも…やっぱり羨ましくないといえば嘘だったわね」

 

 

 

白ドレスさんが寂しげに言葉を落とす。

たしかに大変そうだもんな…。

ゲームの中でさえ、出てくるのは最終盤。

白ドレスさんの仲間…まぁ裏ボスとか呼ばれる人達の大トリなんだ。

人によっちゃ、会わないままモンハンを辞めてしまう人もいるんじゃないだろうか?

 

ましてやここはゲームより現実に近い、リアルなモンハンの世界。

こんな存在と会うことのできるハンターなんて全くと言っていいほどいないのだろう。

 

 

「で、一人で頑張る彼女に何かご褒美をあげたくてね。私が直々に姿を現したということさ」

「まぁ…正直胡散臭かったけれど、半信半疑で頼んだわ?

『ハンターとの勝負を楽しみたい』ってね」

「それで、私が動き出したというわけさ」

 

 

 

なるほど…。

で、俺がこの世界に呼び出されたと。

 

 

 

「そういうこと。 まぁ、いくら君でもいきなり彼女と手合わせは難しいだろう。

だから、まずはこの世界に馴染んでもらうことにした。

君だって、さっきの戦いで自分なりのスタイルをつかんだろう?」

 

 

 

確かに、いきなり戦う相手がシュレイドに棲む奴とか嬉しくないプレゼントだ。

今なら全然大丈夫だけど、いきなりだとマトモな戦いにならなかったかもしれない。

 

 

 

「そして君がこの世界に慣れるまでは、主人公君に白ドレスの相手をしてもらうことにしたよ。主人公君のオトモには悪いことをしたかもしれないけど…」

 

 

 

あぁ、なるほど。

つまり主人公君は、今まで白ドレスさんの相手をしてくれていたわけか。

またまた頑張らせてしまった。

本当に頭が上がらないです。

 

 

 

「なるほど…。まぁ大体理解はしました。

……となると、これからまた一狩りいくことになるんですよね?」

 

 

 

大体の状況を理解した俺は、天使さんにそう言葉を返す。

すると、天使さんはニヤリと笑った。

 

 

 

「話が早いようで何よりだ。 白ドレスは今も君達と踊りたいらしくてウズウズしてるよ?」

「ちょっ…余計なこと言わなくていいでしょう!?」

 

 

 

白ドレスさんが少し慌てたように言葉を返すけど、まぁ理解した。

つまりこれから、俺はこの白ドレスさんと勝負するわけだ。

 

 

 

白ドレスさんからの依頼────『ハンターとの勝負を楽しみたい』という依頼を達成するために。

 

 

 

 

 

「オーケー。わかりました。

じゃあ今すぐにでも始めましょうか!

俺とユウ…主人公君の2人の参加でいいですよね?」

「オ、オレもですか……。

彼女にはボッコボコにされてばっかりで、足引っ張るかもしれないんですけど…。

あと主人公君って何ですか」

「なんか自分の名前を呼ぶのは恥ずかしくて…」

「あっ、はい」

 

 

 

なぁに、大丈夫。

気にすることなんてない。

なんなら力尽きて大笑いしてしまうくらいの感覚でいい。

 

 

そう…ゲーム感覚で楽しめばいいさ。

 

 

 

「うん…じゃあ私は終わったあたりにまた来るから失礼するよ。

3人でめいっぱい舞踏会を楽しんでくれ」

 

 

 

天使さんは俺達を満足気に眺めると、姿を消した。

 

 

 

「それじゃあ……私も外で待っているわね。

準備が出来たら外に出てきて?」

 

 

 

白ドレスさんもそう言い残し、ベースキャンプを後にした。

 

残ったのは俺と主人公君の2人だけ。

同じ名前の2人だ。

 

 

 

「えっと…主人公君の装備はそれでいくのか?」

「あ、はい…。彼女との相性は全然良くないみたいですけど…」

 

 

 

確かに相性は良くない。別に変な意味じゃないですよ?

S・ソルZ一式にセルレギオス棍。物理火力は相当のものだけど、あの相手に物理火力で対抗するのはあまりよろしいとは言えない。

 

 

 

……まぁ、俺がカバーすればいいだけの話だ。

 

 

 

「おし、じゃあ装備変えるからちょっと待ってね。

う〜んと…アレ相手だと…。あの装備にするか」

 

 

 

思いついた装備を頭の中にイメージ。

 

武器はバルファルク武器の『赫醒棍レヴィアナ』にスピード会心虫。

お守りは『跳躍6 龍属性攻撃13 スロット3』

と、かなりの神お守り。使い所がピンポイントすぎて、こういうところでしか使えないけれども…。

 

 

発動スキルは

『龍属性攻撃強化+2』『見切り+2』『連撃の心得』『会心撃【属性】』『超会心』『飛燕』

の豪華6点セット。

 

 

 

「うわ……すごい装備ですね」

「すごいでしょ。兄貴からはお守り寄越せと何回も言われたよ」

 

 

 

………さてさて。

それじゃあ、いざ出発と行こうか。

俺と主人公君は顔を見合わせる。

何故だかわからないけど、お互いに笑っていた。 やっぱり性格とか似るのだろうか…?なんとなく顔つきも俺に似てる気がするし…。

 

 

 

「そんじゃあ一狩りいってみよ〜」

「いえ〜」

 

 

 

うんうん、ノリもいいじゃないか。

レイリス達はなかなかこういうのに乗ってきてくれなかったからね。

 

そんなしょうもない事を考えながら、俺と主人公君はベースキャンプから外へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベースキャンプから外に出る。

そこには懐かしい光景が。

 

廃れた城といった雰囲気の漂う場所。

広場には巨大な柱が数本。そして年季の入ったバリスタ、大砲などの迎撃兵器、

そして…撃龍槍のスイッチが。

 

MH4ベースのシュレイド城。

今回の戦いの舞台が、俺の目の前に広がっていた。

 

そして…ゲームでは見たことがなかった、夜空が広がっていた。

空には数多の星が散りばめられ、月は儚げに光っている。

 

すっご……。こんな光景がシュレイド城で見られるなんて知らなかった。

狩りの時はいつも禍々しい雰囲気だからなぁ…。

 

 

 

「どうですか?なかなかの景色でしょう?

オレもよくあの柱の上に登って、月を眺めてたりしました」

 

 

 

あら素敵。

随分とロマンチックなことをしているじゃないか。

苦労させてしまった…なんて思っていたけれど、ここも案外、住めば都だったのかもしれないな。

 

 

 

「あら?もう準備はいいのかしら?」

 

 

 

なんてことを考えていると、広場の真ん中に白ドレスさんがいた。

気のせいか、体が淡い光を帯びている気がした。

 

 

 

「えぇ、準備万端です。

俺達はいつでもいいですよ?」

「そう…ありがとう」

 

 

 

白ドレスさんはボンヤリと星空を見上げた。

恐ろしいほどに儚げで美しい…。見ていて吸い込まれそうになってしまう。

まぁそんなことをしていたら、クルルナにお仕置きされそうだから我慢だ。

 

 

 

「まさか、私がこんなことを出来る日が来るなんて思ってもなかったわ…。

目の前には超一流のハンターが2人。

これなら、私の全力を出しても良さそうね…」

 

 

 

空を見上げていた白ドレスさんは言葉を落としながら楽しそうに笑った。

 

 

途端、空に暗雲が立ち込める。

 

雷鳴が響き渡り、あれだけ綺麗だった星空や月は、数秒もかからないうちに禍々しい雲で覆われた。

 

そして、空にはブラックホールのような謎の空間が。

 

 

 

「まずは貴方達に感謝を。

ここに集まってくれて、本当にありがとう。

 

これから始まるのは白い光が煌めく舞踏会…。

ここにいる3人、みんなが最高に楽しめるはずよ?」

 

 

 

うんうん、随分と楽しそうじゃないですか。

舞踏会……武闘会のような気もするけど、そこは突っ込まない。

主人公君は少し嫌な顔をしているけど、まぁ大丈夫だろう。気楽にいこう、気楽に。

 

 

 

「それじゃあ始めるわ…。

 

大丈夫。貴方達のような超一流のハンターでも、決して退屈なんてさせないはずよ?

 

 

白い光が綺羅星のように舞い散って……

 

 

退屈なんてさせないんだから……!」

 

 

 

白ドレスさんが楽しげに笑いながら言葉を落とす。

 

 

 

 

次の瞬間、白ドレスさんの体から眩い光が溢れ────

 

 

 

 

 

 

エリアが極光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

あまりの眩しさに思わず目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

瞼越しに溢れる光を浴びる俺。

 

最初に気づいたのは、ゆっくりとした羽ばたきの音だった。

 

落ち着いた目を開けると、そこには神々しさを感じさせる存在が羽ばたいていた。

 

 

 

「よし…足を引っ張っちゃうかもしれないけど、オレも出来る限り頑張りますよ!」

「うん、頼りにしてるよ。まぁ楽しくいこうか」

 

 

 

羽ばたいてゆっくりと降りてくるソイツを見ながら、軽く言葉を交わす。

 

 

目の前の龍はゆっくりと下降し……地面に降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

祖龍───ミラルーツ。

 

 

リアルで見ると、その神々しさはゲームとは比べものにならなかった。

すげぇな…。なんか…圧倒されそう…。

 

 

まぁ……こっちだって圧倒される気はさらさらない。

舞踏会?いいさ、跳び回ってやるとも。

 

 

フッと息を吐いて目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一度目を開けると、目の前にはゲームと同じコックピット表示が出ていた。

 

うんうん、いいじゃないか。

これで楽しい戦いが出来そうだ。

 

 

 

「それじゃ、頑張ろうか。

別に力尽きたって構わない、楽しくいこう」

「了解です。出来るだけ力尽きないようにしたいなぁ…」

 

 

 

俺達は操虫棍を抜刀。

今回は2人ともエリアルスタイル。

舞踏会なんだから、楽しく踊らないとね。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ行くぞ…?

 

俺なりのエリアルスタイル、見せてやんよ」

 

 

 

 

 

小さく言葉を落としつつ、俺は操虫棍でセルフジャンプ。

ミラルーツに向かって、飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、狩猟開始だ。

 

 

 

 




自分の文章力が無いばかりにややこしくなってしまったので、あとがきで説明をば。もしかしたら矛盾する点なんかも出てきているかもしれないです…。


・主人公
本名は『宮凪(みやなぎ) (ゆう)
この話を書いてるときに考えました。適当です。
主人公君の名前を『ユウ』にしたかったのです。
自分のことは『俺』と呼びます。

・主人公君
ちょっとややこしいですが、ゲームで操作できるキャラのこと。この話の主人公とは別人です。ゲームの中の主人公、所謂プレイヤーハンター。
バルファルクに関する調査の途中で、シュレイド城へ行くことに。
S・ソルZシリーズはMH4Gのストーリーの時点で揃えていたみたいです。
自分のことは『オレ』と呼びます。閑話に出てきていたのも彼です。

・白いドレスの少女
MHP2Gのイベントクエスト『白光』の依頼主を意識しました。
ちなみに、イベントクエストの内容はミラルーツの討伐です。
この人?も閑話に出てきてました。


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第52話 森丘の採集ツアー



始まりはこのクエストだった。




 

 

 

ミラルーツの脚を思いっきり踏みつけ、宙へとジャンプ。

そのまま、赤い電気が迸っている胸部へとジャンプ攻撃を叩き込んだ。

 

ジャンプ攻撃を喰らったミラルーツは大ダウン。

すぐさま頭にしがみつき、乗り攻防状態に入る。

 

 

 

「ちょっ…高ッ…。 おわわ…あば、暴れんなぁ!」

「ファ、ファイトです!」

 

 

 

こちらの世界で乗り攻防をした回数は少ない。

元から乗りを積極的に狙わないスタイルなのも相まって、乗り攻防をした相手は黒炎王や紫毒姫くらいだった。

 

そして今回の相手はミラルーツ。

乗りの難易度は屈指のもの。正直成功させる自信がないです。

でも、主人公君はさっき成功させてた。俺も成功させないとね。

 

 

「おわっ…。ちょっ、暴れな…うるさっ!?」

 

 

グネグネとうねって暴れ、最後には吼える。

怒濤の暴れラッシュを終え、ミラルーツはインターバルを挟んだ。

今がチャンス。

剥ぎ取りナイフでザクザクと頭部を攻撃する。

何度かの攻撃の後、部位破壊の音と共にミラルーツが悲鳴を上げて大きくのけぞった。

 

 

「頭に攻撃!」

「はい!」

 

 

ゆっくりと体を倒れ込ませるミラルーツを横目に、主人公君に指示出し。

数少ない頭を殴れるチャンス、無駄にはしたくない。

 

倒れ込んだルーツの頭部へ、俺達はラッシュをかける。

2人とも担いでいる武器は操虫棍。

動きは勝手にシンクロした。

 

2連斬り上げ、袈裟斬り、2連薙ぎ払いのループを2セット。そこでミラルーツがダウンから復帰する兆し。

締めに飛円斬りを2人で叩き込む。

 

手に伝わるのは会心の手応え。そして抜群のヒットストップ。

ついつい笑みが溢れた。

 

 

ダウンから復帰したミラルーツは急に大空へと飛び立った。

暗雲蠢く空の彼方へと飛んでいき、その姿は消え失せる。

 

この戦いではじめてのリサイタル。

ミラルーツの全体落雷は基本的に走ってれば避けれるけれども、主人公君は大丈夫だろうか?

 

 

 

「主人公君。リサイタ…全体落雷は対処できる?」

「えっと…走ってればいいんですよね?」

 

 

 

うし、わかってるみたいだ。それなら大丈夫。

すぐさま俺と主人公君は離れ、走り出した。

この攻撃は、パーティメンバー同士で近くにいるとかえって危ない。

ゲームでもそれぞれで適度な距離を置いて回避していた。

 

なんて考えてると、空からゴロゴロと雷鳴が轟き始める。

そして、至る所の地面が光り始めた。

 

光った地面には一寸置いて、雷の柱が落ちてくる。まぁ…自分の場所を狙って落ちてくるのは数秒に一回。

それもダッシュなり歩きなり、ともかく移動してれば当たることはほぼない。基本的には時間だけを喰う攻撃だ。

 

 

な〜んて思ってたら、移動した方向に雷を重ねられた。クソが。

しょうがないのでハリウッドダイブ。なんとか避けました。

 

 

………な〜んて思ったのも束の間、ハリウッドダイブした方向へと雷を重ねられてしまいました。

いや、意味がわからん。

そんなんできる?言っといてや、出来るんやったら…。

 

 

そして、雷は俺の体を撃ち抜いた。

 

 

 

「あっ……ばっ……がふぅ……」

 

 

 

ダメージは甚大。なんとかワンパンネコタクは回避できたみたいだけど、危ないところでした。

クソッタレが。今まで1回も俺に攻撃を当てられてないからってそこまでムキになることは無いだろう。全く…大人げないトカゲだなぁ…。

 

雷は止んだようなので、すぐに秘薬を飲んで体力を全快に。

 

そして、主人公君を呼んだ。

 

 

 

「へい、主人公君。ここに立っといて」

「んん?ここですか?」

「そそ」

 

 

 

 

主人公君を呼んだのは大砲が設置されてある場所のすぐ傍。

大剣を担いでいたならここで溜め待機をしていたんだけど、今回は操虫棍だからでかい一撃とはいかない。でもまぁ、チマチマでもいいから弱点を狙っていきたいのです。

 

 

 

「ここに立ってりゃ今に来るはず……。

ほら、来たよ」

「えっ…?何がっ………おわぁ!?」

 

 

 

はるか彼方のブラックホールのような場所から、ミラルーツが凄まじい速度で飛来した。

だけど、この位置なら着地の攻撃判定を拾わない。

そして、御誂え向きに頭部を下げてくれる。

 

 

 

「あ、よいしょ〜」

「えっ、あっ、ホァーッ!」

 

 

 

俺はミラルーツの頭部に向かってエリアル回避。続けて主人公君が少し慌て気味にエリアル回避。なんだその掛け声は。

ともかく、2人で頭部に空中攻撃を叩き込んだ。

 

 

う〜ん…あと少しだと思うんだけどなぁ…。

 

 

頭の部位破壊は2段階目。

胸部や翼の部位破壊だって終わっている。

しかも今回は2人での戦い。

いくら片方が無属性武器とはいえ、狙える時は頭とかの弱点を狙っているんだ。

ゲームの通りならそろそろ終わる頃合いなはずです。

 

なんて考えていると、ミラルーツは体を倒れさせて四つん這いの体勢に。

そしてズリズリを始めた。

 

大剣とかだったら上手い具合に溜め斬りをぶち込むチャンスだけど、残念ながら今は操虫棍。

相性が悪いわけではない、というかむしろいい方だろう。実際、高度なテクニックがなければミラルーツにエリアル操虫棍は1つの正解のような気がする。でも、ダメージを出すなら大剣だろうとゲーム脳の俺は思ってしまうんだ。

 

ただ…今回は楽しく戦うことが1つの目的。

楽しくってことなら、エリアル操虫棍だと俺は思うのですよ。

 

ズリズリ攻撃を終えたミラルーツは此方へと振り向いた。

そして、口から凄まじい電気を迸らせる。

 

あっ、ヤバい。エリアルだとちょっと避けにくい。

すぐに遠くへと遠距離セルフジャンプ。

 

一拍おいて、背後で赤雷の大爆発が起こった。

ふおぉ…背中がチリチリする。

 

特大ブレスをぶっ放したミラルーツは対空状態へと移行していた。

そして、口元に電気を迸らせながらこちらを向く。

 

 

 

ここだ。

頭の中で何かがカチリとハマった。

 

 

 

ミラルーツがこちらへとブレスを放つ。

それと同時に俺はセルフジャンプ。

 

足下スレスレを雷ブレスが通り過ぎて行き、見事にブレスを回避。

そして空中でのすれ違いざま、ミラルーツの頭部を一閃。

ミラルーツは悲鳴を上げて地面に墜落した。

 

 

 

「主人公君!」

「はいッ!」

 

 

 

主人公君に指示を出しつつ、ミラルーツの頭を踏みつけて位置調整を兼ねたジャンプ攻撃。

すぐに主人公君も追いつき、動きのシンクロしたラッシュをミラルーツの頭部へと叩き込む。

 

2連斬り上げ、袈裟斬り、薙ぎ払い。

 

フィニッシュには飛円斬り。

 

 

 

全く同じ動きをする俺達のフィニッシュがミラルーツの頭部へ叩き込まれた途端、ミラルーツは一際大きな悲鳴を上げた。

ん?こんな動きゲームにあったか?

 

 

 

一際大きな悲鳴を上げたミラルーツはそのまま地面に倒れ込み────

 

 

 

目の前が極光に包まれる。

 

 

 

 

「ちょっ…まぶしっ……何!?」

「あ〜…多分終わったんだと思います」

 

 

 

 

終わった…ということは、まぁそういうことなのだろう。

光で周りの景色が見えない中、主人公君の声を聞いてそう考えた。

 

 

瞼越しに感じる光がだんだん弱くなり、やっと目を開けれるような明るさに。

そうして初めて目を開けてみる。

 

 

 

 

 

 

 

「な、なかなかやるじゃないの…。

この私がほとんど攻撃を当てられないなんてね…」

 

 

 

そこには白ドレスさんが佇んでいた。

 

ただ、髪はボサボサ。

目は少しだけ潤んでおり、今落とした言葉も少し震えていた。

さっきまでの妖しげで美しい感じの雰囲気は欠片も無かった。

 

 

「ま、まぁ本気を出してないだけだから勘弁してあげるわ…!

次はこうはいかにゃ、な、いかないんだから…!」

 

 

あぁ、うん…。頑張ってください。

噛んだりしてるし、見ていて少し可哀想。

主人公君、アフターフォローは頼んだぞ。

 

 

「さて、終わったかい?お迎えに来ましたよ〜っと」

「うおっ、ビックリさせないでください…」

 

 

いきなり天使さんが背後に現れる。

いっつもこんな登場の仕方だ、そろそろ勘弁してほしい。

 

 

「さてさて…おっ、どうだった?彼等は強かったかい?」

「えぇ、それはもう……。

負けたのは悔しいけれども、楽しいったらなかったわ」

「はっはっは、それは良かった。

ま、たまには無理矢理に連れてくるからその時は呼んでおくれよ」

 

 

俺のことは無理矢理に連れてきますかそうですか。

俺に選択権なんて無かった。立場弱いなぁ…。

 

………となると、主人公君ともお別れなのかな?

 

 

「あぁいや、別にこの世界にいるならいつかは会えるさ。

雄大なこの世界だけど、人と人との繋がりはそれすら狭くさせるからね」

 

 

あら、それなら良かった。

もしかしたら会えなくなるのかな、なんて雰囲気が漂っていたからね。

俺の代わりにこの世界を駆け巡ってくれた人だ。これからも仲良くしていきたい。

 

 

「さて…君達はそこの白ドレスを倒したわけだ。彼女からの依頼は達成さ。

というわけで、あと少しで拠点に戻ることになる。

制限時間は1分。何か話しておきたいことはあるかい?」

 

 

うお、マジか。

おしゃべりとかはたくさんしたかったけれどものんびりとは出来ないらしい。

……でも、今更話したいことといってもなかなか出てこないもんですね。

俺と主人公君…ユウ君は顔を見合わせた。

 

 

「えと……まずありがとうございました。

オレがこんなハンターになれたのは遊さんのおかげです。最後には一緒に狩りもできて…これ以上のことなんてありません」

「えぇ、いや…そんな大袈裟な…」

 

 

ユウ君にそんなことを言われるとついつい恥ずかしくなってしまう。

ゲームの中のキャラにそう言われるようなものだ、恥ずかしくもなってしまうよね。

 

 

「俺の方こそ…。携帯食料とかたくさん食べさせたでしょ?あんな不味いものをたくさん食べさせてしまって申し訳ない…」

「ハハ…まぁ、それもまたいい思い出ですよ。

それを補っても余りある感謝でいっぱいです」

「そっか…それは良かった」

 

 

お別れ前だってのに、交わすのはそんな大したことのない会話。

まぁ…俺達らしくていいのかもしれないね。

 

 

「……オレはこれからもハンターとしての腕を磨いていくつもりです。

今回、遊さんと一緒に狩りをしたらその技量の差を改めて思い知らされました。

遊さんがオレを操作していた頃。あの頃だったら、オレもそれくらいの技量はあったんですが…今はこのザマです」

 

 

いやいや。

見ていたところ、レイリス並みの動きは出来ていたような気もするけど…。

そんなに悲観することはないと思うけどなぁ…。

 

 

「だから、オレはこれからも頑張って…いつか貴方に見劣りしないくらいのハンターになります。

その時になったら、また一緒にクエストでも同ですか?」

「………うん、いいと思う。

じゃあのんびりその時を待っておくよ。

俺だってこのまま立ち止まっているつもりはないけどね」

「ハハッ…遠いなぁ…。

でも頑張ります!追いついてみせますからね!」

 

 

 

うんうん、楽しみにしているよ。

 

 

さて…あとは…。

あっ、あのことについてを聞いておきたかった。

 

 

 

「そうだそうだ。1つ質問が…。

ユウ君のところに『新大陸こりゅ……

 

「はいそこまで。拠点に戻るよ〜」

「えっ」

 

 

天使さんがそういった途端、俺の身体が淡い光で包まれた。

え?え?どんな感じに戻るんですか?

こう、緑の煙がボワっとなって気がついたらベースキャンプとかじゃないんですか?

 

 

 

「ちょっ、ちょっと待って!あと5秒!

新大陸のことだけ聞かせ…

「あーあー、暴れるな。到着地点が変なところになってしまうよ?」

「ユウくぅん!もし新大陸について知ってたら教え…

「はい時間切れー。バイバーイ…って、これは…ちょっと着地点がズレそうだな…」

「五期団についてぇぇぇぇ……………」

 

 

 

 

俺の意識はそこで途切れた。

あぁ…それだけは聞いておきたかったなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ってしまったわね…最後まで騒がしいこと…。

あんなのに負けたなんて少し釈だわ…」

「まあまあ。機嫌なおしてくれよ?」

「別に不機嫌なんかじゃ…」

 

 

 

遊さんが飛ばされていったあとのシュレイド城で言葉を交わすオレと彼女。

最後に言っていた新大陸って何のことなんだろう…?

 

 

 

「ねえねえ、新大陸って聞いてなんか思い当たる?」

「ええ、ただ…貴方には関係ないかしら?」

「おろ、そうなのね」

 

 

 

となると…また遊さんが主人公になって物語を進めていくのかね?

あの人のことだから、全く苦労することなんてないんだろうなぁ…。

そこにオレはいないらしいけれど、頑張ってもらいたいです。

 

 

 

「貴方はこれからどうするの?」

「オレ?うーん…。 一旦バルバレに戻ろうかと思う。 キャラバンのみんなにしばらく顔を見せてないからね」

「その後は?」

「ハンターの腕を磨いて…君にリベンジかな?」

「ふふっ、楽しみにしてるわ?」

 

 

 

満天の星と月が煌めく夜空の下、シュレイド城で青年と少女は笑いあっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイリス?入りますよ?」

 

 

 

マイハウスの扉をノックする音と共に、クルルナの声が聞こえた。

 

 

 

「………空いてるよ」

「あら、じゃあ入りますね」

 

 

 

ベッドで横になっている私の前にクルルナが歩いてくる。

目の前に立ったクルルナは儚げな表情を浮かべて言葉を落とす。

 

 

 

「大丈夫ですか?最近は鬼気迫る勢いでクエストを受注していたみたいですけど…。

そのせいなのか、過労で倒れたらしいじゃないですか…」

「うるさいなぁ…。ちょっと疲れただけだよ。

自分だってそんな装備になっちゃってさ?人のこと言えないって…」

「ふふっ、それもそうですね」

 

 

 

白疾風シリーズの外装を装備したクルルナは可笑しげに笑った。

 

最近の私達はパーティではなくソロで活動することが多かった。

その中でも、私とクルルナ。そしてルファールは尋常じゃないペースでモンスターを相手取っていたらしい。

途中では、種の頂点なんじゃないかと思えるような二つ名個体と出会うこともあった。

ただ…私とクルルナ、ルファールはそれすら退けた。それぞれたった1人で。

そのせいなのか、私の装備の外装は黒炎王シリーズ。ルファールはとある古龍の外装となっていた。

 

ルファールの防具の外装はバルクXシリーズというらしい。

なんでも…私達が撤退を余儀なくされたあの古龍の防具だとか。

 

あの古龍はその後、『天彗龍バルファルク』であるとギルドから正式な発表があった。

そして各地でそれなりの頻度で目撃されるようになったらしい。

ルファールはそんな目撃情報が入るたびにたった1人で現場へと趣き、そして尽くを倒したみたい。

あれから1度だけルファールと会う機会があったけれど、その時のルファールはひどく疲れた顔をしていた。いつかの私みたいだと思った。

 

 

 

「ねぇ、レイリス。

あれから1ヶ月経ちますね」

「………うん、そうだね」

 

 

 

彼が消えてから1ヶ月が経っていた。

依然として、彼は私達の前には現れてくれない。

ラディスとセレスが捜索のために各地を奔走してくれているけれど、未発見のままで2週間を過ぎたあたりから期待はしていない。

 

 

「私…思うんです。

私達のパーティがあのまま…。

彼と出会わないまま各地で頑張っていたら、そこで立ち止まったままだったんじゃないかって」

「………」

 

 

クルルナがどこか遠くを見つめながら喋る。

クルルナは悲しげな顔だった。だけど、なにか吹っ切れたようなものも感じることができる顔だった。

 

 

「彼が私達と出会ったのは…私達が立ち止まらないようにしてくれるためだったんじゃないかな、と思うんです。

ほら。ちょっと前の私やレイリスなら黒炎王や白疾風を単騎で倒すなんて想像できました?」

「………想像できないや」

「ね?そうでしょう?」

 

 

クルルナは微笑んだ。

そして言葉を続ける。

 

 

「彼が私達の背中を押してくれたんだから…また立ち止まっていてはいけないでしょう?」

「………うん」

 

 

笑顔のままのクルルナの目から雫が溢れ始めた。

 

 

「だから…レイリスもまた歩き出さないと…!

ここで立ち止まっていちゃいけないですよ?」

 

 

涙を流しながら。

震える声のまま。

 

だけど、クルルナは笑顔でそう言ってくれた。

 

 

 

「………そうだよね。立ち止まってちゃいけないよね。

ふふっ…。こんな姿、彼に見られたら笑われちゃうね。『どっちがヘタレか分かったもんじゃないな』とか言いそうだよ…」

「ふふっ、あはは…!そうですね!

今の真似、すごい似てましたよ!あはは…グスッ」

 

 

クルルナは涙を流しながら声を上げて笑い始めた。私もつられて笑い出す。

 

 

「あははっ。ひぐっ…ははっ…あっはっは!

そうだね!迷子になって戻ってこないヤツなんて待ってられないよ!

私、また……グスッ……が、頑張るよ!」

「えぇ!大丈夫!私達……ふぐっ……私達ならまた前に進んでいけますよ!」

 

 

涙をボロボロと流しながら。

だけど…笑顔で。

私はクルルナと笑いに笑った。

 

 

そうだよね。

立ち止まっているなんて、私達らしくない。

 

 

決めました。

私達は立ち止まらず進みます。

 

 

 

クルルナと笑い合いながら、心の中でそんな決断をした私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ…あのクエストにいってくるよ」

「ハンターをデビューしたクエストですか?」

「そうそう。私のハンターライフの節目は、いつもあのクエストだから」

 

 

ハンターになって初めて出発したクエスト。

 

『英雄』と呼ばれるようになってから、初心に帰るために受注したクエスト。

 

 

 

 

 

そして………彼と初めて出会ったクエスト。

 

 

 

もしかしたらまたあそこで待ってくれているんじゃないだろうか?なんて淡い期待を持っていたけれど、そんな気持ちも切り捨てる。

立ち止まっていちゃいけないんだ。

私は……私達は……前に進みます。

 

 

 

「じゃあ……いってくることにするよ」

「ええ……また新しいスタートですね」

「………そうだね」

 

 

 

愛用の大剣『真名ネブタジェセル』を背負い、外装を黒炎王シリーズにしたブラックX一式を装備する。

 

 

 

 

「じゃあ……『森丘の採集ツアー』いってくるね!」

「ふふっ。頑張って!」

 

 

 

 

私はそう言葉を残し、クルルナは笑顔で返す。

 

 

 

さっきまで沈んでいたのが嘘のように気分が良い。

 

 

 

私は軽い足取りで、マイハウスを飛び出した。

 

 

 

 

 





次話でこの物語は最終話となります。
もう少しだけお付き合いいただければ幸せです。


感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。


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第終話 モンハン世界で狩猟ツアー


to be continued…?






 

 

「おっ、きたきた」

 

 

釣竿の浮きが僅かに沈み込み、手には竿を引っ張られる感覚。

すぐに竿を引っ張り返して、ルアーに喰いついた魚を引く。どうやらなかなかの大物らしく、すぐには釣り上げることはできなかった。

少しの攻防の後、魚の動きが弱くなった瞬間を狙って一気に引き揚げる。

 

 

「おおっ…トロサシミウオじゃん」

 

 

どうやらなかなかの大物が釣れたみたい。

正直、今更になって精算アイテムをとっても微妙なところはあるけれど嬉しいものは嬉しい。

 

 

「ふふふ…トロサシミウオ、ゲットだぜ」

 

 

ふと、とある誰かさんのモノマネをしてみた。

自分で言葉にしたのは初めてだけど、なかなかどうしてしっくりくるフレーズだ。

 

鬱蒼とした木々の隙間から木漏れ日が差し込む、森丘のエリア11。

そこにある釣りポイントで私は釣りをしていた。

 

新たなリスタートを…なんて思って受注した採集ツアーだったけれど、特別な事なんて特にない。

 

いつも通りキノコやハチミツをのんびりと集めて、各エリアの風景を楽しんだり…。

そして最後には此処で静かに釣りを。

いつの間にかそんなルーチンができていた。

 

 

「よいしょっ…と、サシミウオか…。

小腹空いたし、食べちゃおっか?」

 

 

再び釣り竿に当たりがかかってうまく釣り上げたところ、今度はサシミウオが釣れた。

そのまま食べても身は脂が乗って甘く、魚の中では王道を往く美味しさを誇る魚。

 

ハンターを始めたばかりの頃はサシミウオをそのままガブリといくのには嫌悪感があったけれど、今はそんなものは皆無だ。

むしろ、ガブリと行かなきゃスッキリしないときすらある。

 

小腹が空いていた私は釣れたて新鮮のサシミウオを見て、思わず生唾をゴクリと飲み込んだ。

 

 

「よし、食べよう!

 

いただき………」

 

 

ます、と言ってかぶりつこうとしたところで、背後から視線を感じた。

 

後ろを振り返ってみるといつから居たのか。

物欲しそうな目で私が持っているサシミウオを見るアイルーが3匹。

 

 

「あ………えっと………。

た、食べる……?」

「いいのかニャ!?」

 

 

いや…だって、ねぇ?

そんな目で見られたら私だって食べにくいよ…。

 

 

「ありがとうなのニャ!

ここ最近、お魚とはご無沙汰だったから感謝感激雨嵐ニャ!」

「あっ、うん。そうですか、良かったね」

 

 

いや、集落の近くに魚いるじゃん。

すごい良く釣れるよ?君達もしかして釣り下手か?

 

アイルーちゃん達が魚を手際よく捌いていくのを見ながらそんなことを思った私だった。

 

 

「あ〜…この大きいのもあげよっか?」

「ニャニャニャ!?!?ハンターさん太っ腹ニャ! 女神のようだニャァ…」

 

 

ちょっと勿体無いような気もしたけど、トロサシミウオもあげることにしました。

ネコちゃん達は狂喜乱舞。

お魚を捌くのそっちのけで踊り出した。

静かな方が気楽なんだけどなぁ…。

 

 

ネコちゃん達は帰り際に肉球の優待券をくれましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…そろそろ本格的にお腹すいたし…。

食べれるお魚釣らないとね……」

 

 

なんて呟きながら私は竿を水面に垂らした。

アイルー達が去ったので、わたしもそろそろ自分の分を釣り上げたい。そんなことを考える。

 

ものの数秒後、ウキが沈み込んで魚が食いついた。

手にはズシリと来る感覚。これは……なかなか大物らしい。

一瞬見えたヒレはトロサシミウオのようなヒレだ。これは負けられない…!

 

 

「よいしょぉ……ッ! ここdぶふぇっ」

 

 

………釣り上げようとした瞬間、私の身体は何かに吹き飛ばされた。

何が起こったか理解できず、あたりを見渡す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには鼻息をあげるクソ猪がいた。

 

……あぁ、うん。そうですか。

 

……まぁあれだから。私、お魚よりこんがり肉の方が好きなんだよね。

 

 

「…………生肉になりたいみたいだね。

大丈夫。 私、肉焼きには自信があるんだ。

だから安心して生肉になって?」

 

 

背負った大剣の柄に手を伸ばし、私はそんな言葉を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…ごちそうさまでした。………げふっ」

 

 

こんがり肉を食べながらエリア3を歩く私。

女性としては少々汚なかったかもしれないけど気にしない。

一人の時くらいは、多少の粗相は許してほしい。

 

 

「うわ…。雲一つない…」

 

 

晴れることの多い森丘だけれど、今日はまた一段と晴れていた。

雲なんて欠片も見当たらない青天井です。

 

彼方の崖下に見える川のほとりでは、アプトノスの群れが水を飲んでいる。

中には親子と思われるアプトノス達もいた。

 

…ここから見える景色はいつだって素敵だ。

生命を活き活きと感じられる。

この荒々しく眩しい世界を、身体いっぱいで感じられるから大好きだ。

 

 

「………やっぱりこのクエストに来てよかったな。いっつもこの景色には勇気付けられる…」

 

 

目の前に広がる、雄大な景色を見ながらそんな事を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、遠くに1匹の雌のケルビが居ることに気づいた。

……1匹とは珍しい、ほかのケルビはどうしたんだろう?

なんとなくそのケルビへと近づいてみた。

 

 

「……キミもひとりなの?

ふふっ、奇遇だね。私も今は一人なんだ」

 

 

どうということもなく、ひとり言を落とす。それでもケルビは此方を見つめるだけで、逃げたりはしなかった。

私はその場に座り込んで言葉を続ける。

 

 

「ちょっと前にさ、私の大切な人がいなくなっちゃったんだ。

酷いよね…私は『逃げて』って言ったのに、彼はたった一人で……。

それで、いなくなっちゃった」

 

「ホント自分勝手…。言うことは全然守ってくれないし…。

迷子の癖に一人になっちゃいけないことくらい簡単に理解できるもんだと思うのにさ。

 

……ごめんごめん、愚痴を聞いてもらっちゃった」

 

 

ケルビは相変わらず草を食みながらそこに居た。

 

 

「………キミも大事な相手に置いてかれちゃったの?」

 

 

ケルビにそう問いかけてみると、ケルビは返事をするように鳴き声を返してきた。

 

 

「ありゃ…そうなのか…。じゃあ、同じ仲間同士でお話でもしてみる?」

 

 

そう言うとケルビは再び鳴き声の返事。

うんうん、それじゃあ種族は違うけどガールズトークといってみようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて思ったけれど、私の背後からケルビの鳴き声が。

 

ふと振り返れば、そこには雄のケルビが1匹。

そのケルビは目の前の雌のケルビへと近づいてきた。

 

近付きあった2匹は仲良し気に鳴き声を交わし、そして去っていった。

 

 

 

「………なんだ、キミの大切な相手はしっかり傍にいてくれてたんだね。

……ちょっと嫉妬しちゃいそう」

 

 

 

私は不貞腐れたように地面へと倒れ込み、仰向けになって青空を見つめた。

空は憎たらしいほど晴れ渡っている。私の心はまだまだ曇り気味なのにね。

青空を目に入れたくなくなり、私は目を瞑った。

 

 

 

「………迷子君。私、もう十分待ったよね?

 

私だって、ずっと立ち止まってるわけにはいかないから…そろそろ前に進んでみようかと思ってるんだ」

 

 

 

いなくなってしまった大切な人へ向けての言葉を呟く。届くことなんてない言葉だとは判っている。でも、言いたいから言う。

 

 

 

「私もクルルナもルファールも…立ち直ったよ?

だからきっと…君がいなくても頑張れるようになってる…。

 

もう…君に向けていた想いは切り捨てたんだ…。とっても悲しかったけどさ…」

 

 

 

あぁマズい。

このまま思いの丈を吐いたら、涙が出てきそうだ。

……でも言いたいことはここで言っておく。

 

 

 

「だからさ、私達頑張るよ。

 

今よりもっともっと強くなって…『モンスターハンター』と呼ばれるようなすごいハンターになって…どこにいるかわからない君にも、私達の噂が届くくらいにすごいハンターになるから…。

 

だから……もしこの言葉が風なんかに乗って伝わったなら、私達のことを応援しててほしいな?」

 

 

 

 

 

 

 

────ああ、伝わってる。大丈夫、応援してるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の声が随分と鮮明に聞こえた。

もう…涙は抑えることができなかった。

 

 

 

 

「…………ッ!

 

聞こえてるならすぐに戻ってきて貰いたいもんだよ……!

そうやって、ま、また意地悪するんだから……!

ホッ、ホント自分勝手だよね……!

 

今すぐ出てくれば許してあげるよ!」

 

 

 

 

涙をボロボロと零しながらヤケクソに叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………じゃあ、これで許してくれるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞こえないはずの声があまりに鮮明に聞こえたので、すぐに目を開けて身体を起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、ごめんごめん。待たせちゃったな。

………まぁ、方向音痴だから許してもらえれば嬉しいや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、私の大切な人がいた。

 

 

アスリスタ外装の装備に身を包み、武器は操虫棍。

 

 

一見すると冴えない感じで弱そうだけれど、やるときはしっかりやってくれる人。

 

 

………彼が。

………迷子君が、いた。

 

 

 

「レ、レイリス?大丈夫?

なんか返事してくれたら嬉しいんだけど…」

 

 

 

あ、あぁ、頑張れ私。

ほら、なんか言わなきゃ。

頭は理解できてないけど、戻ってきてくれたんだ。ほら、頑張れ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………お」

「お?」

 

 

 

 

 

 

 

「おぞずぎるよぉぉ……ぅぁぁぁん」

「あ〜…ごめんな?」

 

 

 

あぁ…うん、ダメだ。止まらなかった。

私は迷子君の胸に顔をうずめ、わんわんと泣き出した。

 

 

 

「あー、あ〜…。ほら、ケルビのカップルも俺らのこと見てるぞ?早めに泣き止んだほうが…

「うるざぁい!あぅぁぅぅ……」

「ハハハ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ……グスッ」

「大丈夫?そろそろ泣き止んだ?」

「…………まだ」

「まじかぁ…」

 

 

 

レイリスが地面にへたり込んでしまい、立てなかったのでおぶっています。

今はエリア1。 ここまで来ればモンスターに襲われる心配もないだろう。

 

 

いやぁ、ここまで来るのに……というか、レイリスに会うまでが大変でした。

 

シュレイド城からマイハウスへと一気に飛ばしてくれるはずだったのに、俺が暴れたせいで着地点がずれたみたいです。

着地点はよくわからん森の奥。

天使さんに『あっち』とか『そっち』とか言われてやーっと森丘にたどり着くことができた。随分遅くなってしまったけれど、まぁいいのかな?なんて思ってます。

 

 

「…………ねぇ、迷子君。グスッ」

「まだ泣き止みませんか…。で、どうした?」

 

 

おぶっているレイリスから急に話しかけられた。そろそろ泣き止んで欲しいです。罪悪感がヤバい。

 

 

 

 

「…………名前教えてよ。そしたら泣き止むから」

「………はいよ」

 

 

 

 

 

…………そういや、レイリス達には言ってなかったなぁ。

 

(ユウ)、と言うべきなんだろうけど、その名前は既に先客がいる。

だから、彼とは別な名前で生きていきたいな…。

となると……よく呼ばれてたあだ名とかでいいか……。

よし、あれだ。

 

 

 

 

 

 

「…………ナギ。 ナギって呼んでくれたら嬉しいな」

「…………ナギ君か。ふふっ、やっぱりステキな名前だったね」

「そりゃ俺の名前だからステキに決まってるさ」

 

「…………ふふっ」

「…………ははっ」

 

 

「「あっはっはっはっは!!」」

 

 

 

 

バカ笑いする俺とレイリス。

まぁ、たまにはこんな風に羽目を外してもいいだろう。

 

この世界でやるべき依頼はシュレイドで達成してきた。

ここからは、自分のために頑張っていける。

 

そのスタートを切る時くらい、こんな風に大笑いしてもいいんじゃないかな?なんて思うのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「かんぱーい!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

まぁ………俺が再びこのパーティに戻ってから、特段変わったことはなかった気がする。

 

今まで通りに世界を駆け巡り、

今まで通りにクエストをこなした。

 

今まで通り、イビル嬢に襲われて貪られたりもした。

名前を教えたけれど、今まで通りに迷子だのヘタレだの変態だの呼ばれたりだってするさ。

 

 

……まぁ、今まで通りにこの世界を楽しめているってことだ。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、今回はうまくいったね!

獰猛化のリオレウス希少種とリオレイア希少種の2体同時狩猟なんて最初はどうなることかと思ったけど、この4人ならすんなりいけるもんだね〜」

「まぁ…トマトさんはちょっと危ない時がありましたけどね…。 リオレイア希少種の対空状態に飛びかかっていくなんて……サマーソルトが直撃した時は肝を冷やしましたよ…」

「まぁドM君らしいんじゃないか? ほら、自分を追い込んでいくスタイルでさ」

「ひどい言い草っすね……」

 

 

 

 

 

 

時には躓いたりもするだろう。

 

だけど、こんなにも頼れる仲間達と一緒なんだ。

この仲間達と一緒なら、多少の向かい風なんてへっちゃらだと思います。

 

 

 

 

 

 

「あっ!みんな来てたんだね!こっちも順調だったよ!アタシがアトラル・カの頭にハンマーをドカンとぶち込んできた!」

「あら、随分速いですわね……。

あれだけの高難度クエストなんですから、もう少し時間がかかってもいいでしょうに…。

流石としか言いようがありませんわ…」

「そっちも2人だけで随分と速いじゃん! こりゃ私達もうかうかしてたら追い抜かれちゃうな…」

 

 

 

 

 

 

 

それに、俺だって……俺達だって立ち止まっているわけじゃない。

 

少しずつ……少しずつだけど、前へと進んでいるんだ。

 

だから、俺はまだまだこの世界を楽しんでやりたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふッ。『英雄』パーティのみんな、揃って高難度クエストのクリアおめでとう。

こちらとしても物凄く助かったわ。強大なモンスターが一挙に現れて込み入っていたから、貴方達みたいな存在は本当に頼りになるわ…」

「あっ、マスター。いやぁ…そんなこと言われちゃうと、照れますね…テヘヘ。

………で、どうかしましたか?

マスター自らが話を持ってくるなんて珍しいじゃないですか」

「あら、レイリスちゃんはいい勘してるわね。

ええ、『英雄』と呼ばれる程の実力者である貴方達にちょっと持ちかけたい話があってね…?」

「ほむほむ、一体なんでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、まぁ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええとね?

貴方達、『新大陸古龍調査団』というものは聞いたことあるかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりだらだらと続けるのもなんだかなとは思うんだ。

 

 

だから、ちょっと冴えない野郎がモンハンの世界で頑張る………なんてお話は、ここらで一つの節目にしておこう。

 

 

別に、この物語が此処で終わるわけじゃない。

まだまだ続いてはいくのだろう。

ただ、長すぎるのは好きじゃない。

 

 

だから、ここいらで一区切りってことにしたいと思うのです。

 

 

もしまたどこかで、こんな野郎が頑張るお話を見かけた時はどうか応援してやってくれると嬉しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、最終話でした。

詳しくは活動報告の方に書いていこうかと思いますがそちらがだいぶ時間かかりそうなので、後書きでも感謝の言葉を。

見切り発車で始めたこんな作品でしたが、なんとか完結まで漕ぎ着けることができました。
とりあえずどんな形にも繋げられるような終わり方にさせましたが、彼らをまた動かすことは暫くはないのかな…?なんて思ってます。

物語の中の彼らも読者の皆様に読んでいただけてきっと喜んでいると思います。
彼らを代表して作者から重ね重ねの感謝の意を。

ありがとうございました。

また性懲りも無く、何かを書き始めた時はよろしくお願いします。






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