ハリポタ転生もの (たか等)
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ぷろろ

 

 

それは私がまだ小学生で男子の劣情を弄ぶこと(ネカマ行為)を繰り返し無邪気に遊んでいたある日のこと。

わが家の近くをフクロウが飛んでおった。

珍しいなぁ、なんて呑気に考えていた私だが、きっと疲れていたのだろう。

憧れだけで習い始めた剣道もようやくペースを掴んで両手の豆もいい感じに痛かったことだし。

けど、思えば最近不思議なことが多かった気がする。

体力の限界に挑むべく死にそうなくらいヘロヘロになったマラソンでは、気付いたら自分の部屋のベットで寝ていたり。

防具をつけて暑くて仕方なかった時に一陣の風……どころか竜巻のような暴風が局所的に体育館に発生したり。

あと具体的には、試合で鍔迫り合ってるときになんだか得体の知れない波動が私の体から放たれて相手が吹っ飛んだこととかか。

まあ、きっと気にするほどのことでもないのだろう。

最後のは筋がいいぞと褒められてまんざらでもなかったわけだし。

 

 

 

ただいまぁ、といって玄関の扉を開ける。

多分お客さんだろうか? サイズ的に女性ものの靴――やたらととんがっている革製の黒い靴――がある。

加えて、居間のほうがなんだか騒がしい。両親ともになにやら興奮して話し合っているようだが……まあそれより今は眠い。

居間の扉を通りすぎて風呂場へと向かう。

途中で東洋だか魔女だかいう単語が聞こえてくる。

……多分きっとバレーとかの話だろう。母は昔バレーやってたらしいし。

汗くさくなったジャージやら道着やらを洗濯かごに突っ込んで二階のマイルームへ向かう。

もう眠くて倒れそうだ。階段を登ることすら今はツライ。

のそのそと歩いて部屋へ辿り着き、下着の替えを出して着替える。

汗で湿った下着は部屋の片隅へ放り投げ、そのままベットへ倒れこむ。

途中、シャワー浴びればよかった、なんてことが頭の片隅に浮かぶも睡魔に負けてそのまま眠りに落ちた。

 

 

 

……いったい、どれほど眠ったことだろうか。

辺りはすっかり暗くなっている。きっと夕ご飯だ。目が覚めたのだって腹が時間を覚えているからだ。

紗衣ー! という母親の呼び声が聞こえてくる。

はぁーい! と返事を返すも……なんだかやっぱり食事の前にシャワーを浴びたくなってきた。

ジャージを取り出し、着替えてから足早に居間へと走る。

仕方がないが食後にシャワーを浴びてとっとと寝ることにしよう、と考えながらドアを開ける。

 

 

「ハッピーバースデー!!」

「おめでとう紗衣!」

「おめでとうございます」

 

 

途端、祝福の言葉とともにクラッカーの破裂音が鳴り響く。

え? という言葉とともに先にシャワー浴びていい? の問いも消えた。

変わりに口からは、感謝の気持ちを当り障りなく伝える言葉が出てきた。

 

 

「えっと、ああはい、ありがとうございます」

 

 

なんだかよくわからないが、そうか、今日は誕生日か……私の。

ありがとう父さん。ありがとう母さん。ありがとう蔵内家のみんな。

今日は私の誕生日。

おめでとう私。ようやく11歳だよ。

そしておめでとう俺。もう41歳だよ。

もう40代前半。この時期って油が乗って美味しくなるらしいよ。

それと本厄間近……やばいね、けどこの場合はどうすればいいのやら。

いちおう近くの神社へ駆け込めばいいのか? 

……いやなんかそれじゃご利益ないっていうかとりあえず祓ってもらえばいいのかな?

……………………。

…………ていうかあれ? なんか両親の他にもうひとりいた気がする。

 

 

 

ふと、顔を上げてよく見てみると知らないおばさんがいた。

多分、彼女が変な靴を履いてきた例のお客さんなのだろう。

 

 

「もう一度、おめでとうございます。ミス・クラウチ。

 はじめましてですね、ミス。私の名前はミネルバ・マクゴナガル。

 ホグワーツ魔法学校の副校長を務めています」

「はあ……そうですか」

 

 

四角い眼鏡は厳格そうな彼女の見た目に似合っているし、エメラルド色のいわゆる“ローブ”と呼ばれているであろう服を着ている女性。

そしてなんだがホグワーツって聞き覚えがあるなぁ……すごく昔に、具体的には30年くらい前に。

 

 

「単刀直入に言うと……あなたは魔法使いです。

 もっとも、この場合は魔女ともいいますが」

 

 

報告があるよ前世の俺。

どうも、30歳まで童貞を守れば魔法使いになるっていうのはあながち間違いでもなさそう。

けど、魔法使いじゃなくて魔女になるってのは聞いてない。

 

 

「私たちと共にホグワーツ魔法魔術学校で学びませんか? 偉大なる未来の魔女を目指して」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある男子がスカートめくりという可愛らしい攻撃を繰り出したので、私は見事にそれをかわして、逆にその男子のズボンおよびパンツを引っさげて反応を楽しんだ。

しかし泣かれた。顔を真っ赤にして泣かれた。あらやだショタかわいい的な反応をしていた私だが、そのまま担任の女性教師に怒られた。

もちろん反論はした。

下していいのは下される覚悟をしたやつだけだ、と。

しかし、そういうことではない、と更に怒られた。なんだと! 教師なのにまったく理知的ではないじゃないか!

ともかく要約すると、いろいろとはっちゃけていた毎日であった。

無論埋め合わせもした。その男の子とは一緒にカブトムシを捕りにいったりもした。

発見したスズメバチにアルコールを飲ませて酔わせたり、間違えてゴキブリっぽいものを捕まえたり、定番のザリガニ釣りではニホンザリガニの希少さを嘆いたり。

とても楽しかった。

もう一度言おう。とても楽しかった。

前世でも同じように遊んだ記憶はもちろんあるのだが、同年代っぽい彼らとの何も考えないですむ交流は何度繰り返してもやっぱり楽しいのだ。

たとえ前世で30歳を越えておっさんになった俺であっても楽しいのだ。

 

 

俺は別段、聖職者とか神職を目指していたわけでもない。もちろん魔法使いを目指していたわけでもない。

けれども無事30歳まで貞操を守りぬいた俺であり、噂に聞くクラスチェンジが発生するかどうかにほんの少し期待した。

……もっとも結果としては、そんなことはなかった、とだけ言っておこう。

考えてみれば30歳といっても数え年で数えると31歳なわけである。厄年とかもこっちで計算するわけである。

けど、そうなると正直、30歳の基準がよくわからない。数え年で30歳のころ、つまり29歳元旦時点での俺はおそらく酔いつぶれていたことであろう。

 

ともあれ、前日は杖とかも買ったほうがいいのかな、などと要らぬ心配事で悩んだが、杖は翌日枕元に置いてあるらしい、とも記述されていたので安心した。

いや、その、別に信じていたわけじゃなくて、あくまで検証としての話である、あくまで。

 

 

そして誕生日を跨いだ翌日の朝。

噂で聞いたように、ある日突然魔法が……なんていうことはなかった。

いつからだろうな。

枕元にはプレゼントの代わりに携帯の充電器が置いてあるようになったのは。

会社行くか、などと俺は呟いた。

食パンかじってコーヒーを飲んで、テレビのニュースを右から左へ聞き流し、背広を着て寝癖をとかした。

そして靴ひもを結び、玄関のドアに手をかけ俺は思ったのだった。

 

今日もいつも通りの一日が始まる、と。

 

 

 

そうして俺は……。

……うん、こっからさきがよくわからない。

想像になるが、きっと光の中へ溶けていったんだと思う。

というか、その次に見た光景が今の母親の笑顔で蔵内家の一員になった瞬間だったし?

 

 

ともあれ俺こと私は今は11歳で、ホグワーツで7年間勉強する予定である。

けどまあ正直いって、ホグワーツってのは年代によってはとても危険な場所である。

しかし、マクゴナガル先生に魔女ですよーと言われ、魔女なんだーと憧れてしまった私にとってとても魅惑的な場所でもあった。

そのため、断るという選択肢は後になってから思いついたというわけである。

もっとも、イニシャルでいうところのH・Pさんがいない時期であれば難易度が下って我が世の春を謳歌できるともいえる。

そんな一抹の不安を感じながら、動く写真で蠢いている『日刊予言者新聞』のバックナンバーを調べると、あぁと悲しみが私の口から零れた。

 

 

 

英雄が生まれたのはどうやら11年前らしい。

 

 

 

よりにもよって同年代。

賢者の石から死の秘宝までより取り見取り。飽きのこないホグワーツ生活になりそうである。

特に後半、嫌だ。

 

記憶に残っているH・Pさんの活躍劇は賢者の石から不死鳥の騎士団あたりが限界である。

その後の、半純血のプリンスと死の秘宝に関しては一度読んだだけだ。それも発売日に『今日は読むか』的に一気読み。

記憶的にいえば短期記憶に分類される。即ち、ほぼ覚えていない。

ネビルがナギニを切り裂いたとか、ニワトコの杖は死の秘宝だったかな? など断片は残っているが、私が生き残るために重要となる物語の展開がおぼろげ過ぎる。

けどまあ、主要人物に関しては名前を聞いたら思い出すかもしれない。それだって小手先の対応しかできなさそうだけど。

死亡フラグ多いよぉ、助けてローリングさん。

あー、でもアンブリッジさんとかそこらへんは覚えてるかもしれない。たぶん関わらないのが一番だということも真実薬がやべえとかそんな感じで。紅茶は飲まない、これでおっけー。

あとは……ああ、そうか閉心術とか危ないのか。……危ないのか? 我ながら頼りない記憶野だけど? まあ、注意しなければ。

 

 

物語的にはまあこんなものだが、今後の方針的にはどうすればいいのだろうか。

具体的には、全てが終わった後の私の生活とか。

闇の帝王自体はおそらく私が卒業するころに滅んでしまうであろう。なんの影響も与えず、植物のように生きて貝のように静かにしていれば。

そしてホグワーツ卒業後の進路は……魔法省が多かった気がする。

けど魔法省にしても戦後処理ではないが、そこらへんのゴタゴタもそれなりに長く続くだろうきっと。闇の帝王の残党とかもいそうだし少しめんどくさい。

それらのゴタゴタが終われば魔法省は定職、安定、堅実とよさそうだが、だとしても第二第三の闇の魔法使いが現れてもおかしくない。

そういうわけで、平和ボケして意外とよさげだが闇払いも却下。というかそこまでの才能があるかどうかが怪しい……人員補充とかはありそうだけど。

お役所仕事というわけで魔法省ってのはいい職場だと思うが、現状、卒業後すぐに入るのはキツイかもしれない。残業とかも多そうだし。

 

……というわけで私が目指すべきはホグワーツ勤め、もしくは日本に存在するであろう魔法省(日本支部?)とかが妥当である。被害少なそうだし。

ホグワーツに関しては、職場としても研究の場としても事欠かなそうっていうのと、そもそも毎日がおもしろそうだからである。ほんとH・PさんとかT・Rさんとかいなければ。

まあ、候補に挙がった魔法省の日本支部だって、現地で採用しているのやら日本に派遣されるのやらわからないから、実質ホグワーツ一択であろう。

ホグワーツといえば教師とか森の管理人の手伝いとかフィルチさんの手伝いとか? 

個人的には教師かハグリットのお手伝いかなぁ。魔法生物っておもしろそうだし。

 

 

まあ、今後の方針としてはふわふわしてるけどこんなところか。

一通りは理解した。忘れないようにメモ……するほどでもないか。

とりあえず、頭使ったから甘いものが食べたい。

というわけで予め買っておいたカエルチョコの蓋を開ける。

カエルが跳び出すも焦らず捕まえる。カードは……マッドアイさん。狂った眼の人。……あれはマジックアイテムだったのだろうか。見た目はともかくすごく便利だと思う。

そして逃げ出そうとしているカエルチョコを貪りながら思う。何も触感までカエルっぽくしなくてもいいのではないだろうか?

ぐちゃぐちゃ、と何か肉のようなものを噛みながらもどこか甘い不思議な感覚を味わいながら、魔法界では本物らしさが重要なのかもしれない、と考えた。

かぼちゃジュースの、風味と甘さは十分だがもう少しさわやかさが欲しいそれを飲みながら、持ち込んだ最近の『日刊予言者新聞』をめくる。

どうやらギルデロイさんの本の売れ行きが好調らしい。いや、買わんけど。

そして片隅にはリーター女史の現魔法省大臣ミリセント・バグノールド批判が載っている。どこの世界も政治の話では褒められることなどないようだ。

まあ、リーターさんって金曜日っていうかパパラッチっていうか……仕方ないよね、コガネムシ相手じゃ。

 

 

しかしコガネムシねえ。

お金に困ったら突き付ければ……だめか。たぶんアズカバン出てきたらこっちが身を滅ぼされる。やめとこう。

それにしても虫って『動物もどき』なのか?

区分がわからない。確か免許制だっけ? で、H・Pさんの父親がたは無登録、と。

ブラックさんもそこらへん利用してアズカバン出てくるんだよなぁ。

………………。

…………閃いた。

天啓かもしれない。

物語の展開的に一番安全な対策は違法な『動物もどき』だ。

吸魂鬼にも睨まれないし、危なくなれば森にでも逃げればいいんだ。もしくは鳥形になれたらホグワーツの屋根の上でじっとしていればいい。

よし、そうと決まれば話は早い。魔法の勉強は頑張ろうとか思ってたけど、魔法史だか魔法薬学だか知らないがそこらへんは中空飛行でも低空飛行でもなんでもいいから平均点くらい。そして変身術では全力を尽くす、そんな感じで。

最終目標はT・Rさんとかが直接ホグワーツを攻めてくるときまでに。たぶん六年とちょっと。

大丈夫だ。あのピーター君でもできたんだ。凡人っぽい私でもゆっくり時間をかければきっとできるはずだ。

頑張れ頑張れ私。負けるな負けるな! H・PさんとかT・Rさんそんな醜い血で血を洗う争い勝手にやっててください。

……でもジェイムズとシリウスでさえ三年だっけか。

……やばいなぁ在学中にいけるかなぁ。

無残で悲しい最期とか、主人公のために役立つとかそんなことはどうでもいいから食っていけるだけの強さと強かさが今切実に欲しい。

でも『動物もどき』で手こずって成績悪くなったらどうしよう。というか『動物もどき』できるかなぁ……。

ぴ、ピーター君には負けたくない気もするけど。

まあ、『動物もどき』になれたら話は簡単だ。最悪リータ―さんを脅してでも弟子入りすればいいのさ! 権力の狗? わんわん! なにそれおいしいの?

なるほど、『動物もどき』こそがすべての鍵。もちろん無登録で、だけどね。

ようし頑張って練習するぞ。特に変身術。感覚はやってからだけど、今から楽しみだ。

 

 

 

 

……とりあえずまあ、頭の上でくっちゃべってる帽子さん。だからとっとと寮を決めてくれないかな。

 

 

「レイブンクロー!!」

 

 

よし、一番地味なとこ来た。

 

 

 

 




TSタグを入れるか悩むとこ。
葛藤っていうか、うーんなんだろう。女の子するかなぁこの子。

TSタグ、一応追記

誤字修正
秘法→秘宝
T・Mさん→T・Rさん
T・M……いったい何者なんだ……

半純潔→半純血
半純潔 深く考えてはいけない


そして、指摘された通りに怪しかった数え年の表現の辺りを修正。
……やっぱ普段使わない数え年はピンとこないなー。
もういっこの指摘の方は少しばかり考え中ってことでお願いします。


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いち

いえーぃ主人公鬱ってるぅ!


 

 

親愛なるピーターおじさん、お元気ですか。私はきっと元気です。

覚えていますか? 私たちが初めて出会ったあの日のことを。

私が学業に追われ続けるいつもの一日を終えて、ぶらぶらと散歩という日課を行なっていた時の話です。

一匹のネズミが私の目の前にいましたね。そのネズミはとても肥え太っていて、喧嘩でもしたのか、指が一本ありませんでした。

不思議な話ですが、そのネズミは私のほうをじっと見つめていました……きっとエサが欲しかったのでしょうね。

ちょうど私のポケットには家から送ってもらったキャンディチーズがあったわけですし、それをおいしそうに口にしているあなたを見て私も嬉しくなりました。

ほんと不思議ですよね。毎日、肌身離さずチーズを持ち歩いている女の子なんて私くらいでしょうし。

いえ、チーズを持って散歩していればネズミが釣れるかな? ……なんてそんなことを思ってたわけじゃありませんよ? はい。

周りの目も気にせずチーズにパクついていたあなたは、まるで久しぶりのご馳走に出会えたというように尻尾を振って喜んでいましたね。

もっとも、そんなあなたを見て、私もついつい絆されてしまったのでしょう。

おかげで毎日餌づ――おっと、あなたに餌をあげることが習慣になってしまいましたね。

……しかし奇妙なのは、どうしてあなたは最初、女子トイレの前にいたのでしょうか? 私にはそれが不思議でなりません。

もっともネズミが女子トイレにいてもおかしくはありませんけれど……やはり餌をあげる場所は少し変えるとしましょう。

 

 

ああ、それと一応ここで断っておきますけれど、私はネズミさんに餌をあげているだけであってなんら下心はありません。

毎日出会うネズミさんに心の中で『ピーターおじさん』という名前をつけている不思議ちゃんっていうだけの話です。はい。

 

たとえば。

『動物もどき』でネズミに変身したらその生態はどうなるんだろうな? ……性的対象も変わってしまう? とか。 

『動物もどき』では自身の骨格を変化させている? ……だとしたら尻尾切ったら仙骨もなくなっちゃうのかな? とか。

 

……そういうことを検証したいわけではありませんよ、はい。まったく体のいいモルモ――ごほごほ。

いえいえ、キャンディーに何も混ぜてませんよ? ほんとですよ? まあ……私が魔法薬学好きなのは事実ですけど。

 

 

 

 

 

 

この届くはずのない手紙――というか私の愚痴を書いている日記ですけど――を書いているとき、あなたはいったい何をしているのでしょうか?

私にはだいたい予想がつきます。今頃きっとあなたは元気にロナルド君のすね、もとい指でもかじって無聊をなぐさめているんでしょうね。

しかし、たとえ意図せぬ失せ物であったとしても間違ってはいけません。それは彼の指です。あなたのではありません。

きっとそのうち『指なんてちっちゃいことを悩んでいたなぁ』と実感できる日が来るでしょうから大丈夫です。もうバッサリといきますから、はい。

 

ネズミの『ピーターおじさん』。

そのうちきっといいことあると思うので、毎日臭いメシを食ってでも頑張って生きてくださいね。

ちゃんと餌づ――いえ、毎日チーズあげますから頑張ってください。そしてその……強く生きて下さいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ご挨拶はここまでとして私の現状を記すとしましょう。

早いもので、あの毎日がホリデイな帽子さんの晴れ舞台からもう三か月もの時が経ちました。メリーさんです。クリスマスです。

防衛術の先生なのにトロールさんをスル―したクィレル先生の迫真の演技も、獅子さん対蛇さんの試合で金の玉をごっくんした男の子も見物としては悪くはありませんでした。

私自身、クィディッチに欠片も興味がないわけなのですけれど、盛り上がってるなぁーという雰囲気でお腹一杯です。

もちろん我がレイブンクロー寮生にもいろいろと頑張ってほしいものなのですけれど、その……今年はきっと三位とかになるのでしょう。

我らレイヴンさんや某黄色い熊さんは地味なので仕方がありません……というか緑ぃ蛇さんも真っ青のあのご都合主義ゆえ仕方がないのです。

ダンブーの茶目っ気ともいいますか、蛇嫌いなのか蛇さんを煽りすぎですよね。といっても、あの上げて落とす手法は素晴らしいものだとは思いますけど。

 

あ、そうそう。クィディッチといえばかわいいと評判のシーカーさんも見ました! っていうか同じ寮生でお隣さんですけど。

そう、チャンかわいーさんです。黒髪かわいい系でした。そのうち美しくて冷たい系に進化するのでしょうか?

そこらへんは私にはわからないのですが、眼鏡っ子に人気なのも頷けます。前世の私でしたら惚れてしまうところです。

……そしてちなみに私は単に冷たい系です。誰も近寄って来ません、はは。

彼女とは出身地が近くって文化圏も似たようなものなので仲良くしたいなー、とか以前は思っていたのですが結局、声もかけられません。

前世で中国語なんてかすりもしませんでしたし話せるわけありません。

 

……いえ、問題はそこではありませんね。

というのも私にはそんな寄り道をする暇もなく、主に勉学が厳しすぎてわりとヤヴァい感じなのです。

そもそも私、今までの41年間を振り返っても英語圏に属したことなどありません。

そういうわけで、つまるところホグワーツは最初からハードモードだった、というわけです。

だいあーごーんでマグマグに買い物をまかせっきりで浮かれていた過去の私を殴りつけたいです。

リーディングはなんとかなるのですが、リスニングやライティングがひどいものです。

というかなぜ英語もできていないのにラテン系の言語を使用するであろう授業についていけると思っていたのでしょうか?

バカじゃないの私。できるわけないじゃん! 教科書読めても実技がほぼ詰んでるよ!!

ヒューヒョイ! じゃないよ! ばーかばーか! あああぁぁぁぁぁああああぁぁ!!!

 

 

 

 

 

…………失礼しました。

まあ、ともかく基礎もできていない私の英語力で各授業の基礎を習いました。

きっと習ったようなものです。ええ、ひどいものです。付け焼刃に他なりません。

そしてそのため毎日が語学勉強と復習の日々です。クリスマスぐらいは家に帰ろうかとも思いましたがそんな暇はありませんでした。

というか今までずっと、授業に出て図書館に籠ってそれから帰って眠るだけの毎日でした。

将来のことを考えるとこんなところでウカウカしていられないと焦ってもいたのでしょう。

鬼気迫る様子で、書きにくい羽根ペンにイライラしながら羊皮紙をガリガリやってる私に話しかけてくるような奇特な人はいませんでした。

 

『将来の幸せのために今は捨てる』

 

……いえ、そんなカッコいい言葉はいりませんね。

悲しいですが、これはいわば『ぼっち』というものなのでしょう。寮生の間にすでに壁ができています。

そうです。何をとち狂ったか私はレイブンクロー所属なのです。基本的に勉強できないやつはありえない、そんな雰囲気です。

そもそも寮に入る際のなぞなぞすら難しいのです。答えがわかっても単語がわかりません。私の変換機能にはきっとバグがあるのでしょう。

そして、わからなかった場合は気まず過ぎてヤヴァいです。寮へ入る人、もしく出て行く人を待つしかありません。

気分はオートロックのマンションに忍びこむストーカーさんです。不審者です。眼を合わせられません。コミュニケーション能力の不足で普段から喋らないというのに。

もっとも、だからこそこんな、誰にも出さない手紙に愚痴を連ねているわけでもあります。ネズミに声をかけて餌をあげたりもするわけです。

正直、私もそんな様子を見たら引きます。声をかけようとは思いません。ヤンデレスメルが漂ってきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………。

あーもうやだ……死にたくないけど死にたい……必要の部屋、探しそっかな。

 

……はあ。

……ピーターおじさん、私どうすればいいのかな。

森小屋の一年目は厄介事だらけで近づきたくなかったけど、そろそろ私限界かもしれない。

 

……ピーター……私もう疲れたよ。

ノリスちゃんは近づいたら逃げちゃうし、ファングをもふもふしてこの嫌な現実から逃れたいよ。

森小屋でドラゴンさんと鉢合わせするのも悪くないかもなぁ……つぶらな瞳と見つめ合いたい。

 

……それかもういっそフラッフィーでもふもふして癒されてこよっかな、近いし。

確かあの子って歌でも歌っとけば大丈夫だった気がするし。

……まあその、 突入 (ゴール)しちゃってもいっかな……。

……………………。

………………。

…………はっ!

なに死亡フラグ立てちゃってんの私! 無理でしょ!

スネイポォも怪我してたじゃん! 我が輩さんも怪我してたじゃん!! そんなん私死んじゃう死んじゃう!!

 

 

 

 

 

 

はは。

……正直言って、自分はすべてを甘く見ていたようです。

そもそも私は先輩たるあなたを、本で読んだ際の第一印象から意識的にも無意識的にも下と捉えていました。

慢心です。

うぬぼれです。

阿呆でした。

 

『変身術の教師になるのも悪くないねー。というか校長になるための出世街道?

 ふふふ、もしかしたらもしかしたら私も将来校長の座を狙える? ふふふふふ……』

 

ええ、私はクズでした。

そもそも『動物もどき』以前に変身術がわけわかめでございます。

 

『バカいっちゃあいけないよ。

 動物もとい生命の神秘たる存在が指先一つで簡単に無機物に変わってたまるもんか。なにがなるようになる、だ。あーやだやだ』

 

あーやだやだ。

『そんなわけないじゃない』が口癖になり始めた今日この頃。

そして日本語だから、だれもが何言ってんだコイツ的な目線で見られる、やだやだ。

ありえない現実に直面して笑うしかなくなってる私不気味、やだやだ。

 

たぶん固定観念なのでしょうけれども恐ろしいものです。

ケセラセラが信じられません。そして私の頭は固いのです。

あれです。

魔法薬学とか薬草学とか、もしくは一歩引いて護身術としての魔法とか呪文はわかります。

魔法薬学は派手になった化学実験ですし、薬草学も似たように派手になった薬草の知識です。

麻痺光線ぶっぱするような呪文も、ファンタジーだなーと区切りをつけることができます。

しかし、変身術、そして妖精の呪文もとい呪文学はダメです。意味がわかりません。

イマジネーションが大事らしいですけれども、たぶん私はきっと根っからの左脳思考なのでしょう。

それかダーウィンさんの進化論を考えながら『動物もどき』を考えるなんて魔法界では邪道としかいえないのでしょう。

 

なるようになる。

人間が動物になる。

もしくは虫になる。

 

……ありえない。

ええ、ありえません!

『動物もどき』はまだ脊椎動物レベルなので骨格をどうにかしてるんだな、って思います。骨をずらしたり太くしたり、体毛を増やしたり減らしたり、です。

しかし、虫にもなってしまうのです。

足が増えます。

ムカデは考えたら一歩も歩けなくなります。

骨が外骨格と化します。

カメさんの肋骨レベルじゃありません。皮膚が硬くなるとかそういう話じゃありません。

「『昆虫もどき』!? はぁ!?」ってレベルですよ。

 

そう、変態なのです。コガネ虫は変態なのですよ。

変態です! 大変です! あの眼鏡女絶対変態です!! メタモルフォーゼしやがった!!

 

 

……って考えてみたら『ポリジュース薬』なんて代物があったくらいですねー。

変身術があるというのにそのような薬が存在するのです。

つまるところ、変身術とはやはり極めて難易度が高いといえるでしょう。出世コースなのも頷けます。

 

 

 

 

 

 

 

 

親愛なるピーターおじさん。

たとえネズミっぽくとも才能は確かなあなたと比べたら私はなんでしょうか?

一時期は『動物もどき』で空を飛ぶ夢を見ました。

しかし現実は私を無様に地に縫いつけたのです……もっとも自縄自縛的な感じもするのですが。

あなたがロナルド君の飼いネズミのスキャ……えっと? トレバー? ……ん? これカエル?

……ともかくあなたさまが小汚いネズミに身を落としているとはいえ、その才能を私は尊敬しております。

なにせあなたがネズミであるのならば私はいわば蚊とんぼでしょう。羽虫でしょう。

それか、空を飛ぼうと足掻いているのですからむしろ蚤かもしれません。

 

いわゆる、ムーニー、ワームテール、パットフッド、プロングスのどれだかは忘れましたが、彼らは私なぞと比べますと誰もが偉大な魔法使い様であることをここに認めます。

私にとって、彼らは全員主人公の眼鏡君に匹敵する偉大な魔法使いです。……というか主要な登場人物みんなすごいです。

 

それに比べたら私はモブキャラです。

そう、MOBです。

群集にまぎれた一人の魔女っ子です。

どうせモブです。役はありません。

脇役どころか物語におけるキーパーソンたるピーターおじさんとはまったく立場も扱いも異なります。

ヒエラルキーでいえば、ド最底辺の私と主要キャラの一つ下程度に位置付けられているあなた様を比較しようなんておこがましいどころの話ではなかったのです。

 

 

 

 

認めます。

私はきっとネズミ以下なのだと。

だからこうして、たかがネズミ相手に出しもしない手紙を書いて自分を慰めているのです。

哀しいです。自分で自分が哀しいです。

今は少し酔って陶酔感に助けられていますけれど、明日の朝これを見たらもう破りすてて暖炉に放り投げてふて寝するレベルでしょう。

 

ピーターおじさん。

私もうダメかもわからんのです。

だからどうか助けて下さい。お願いします。

 

 

 

 

 

 




書いてて気が重くなってきた。
……次回は他者視点かなー。



段落とか少し修正


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いち~ 表舞台(+α)

なんか長くなった。


表舞台

 

 

・W家の末弟の場合

 

「おっかしいなぁ……」

 

スキャバーズがこの頃、よくいなくなる。

朝、目が覚めるといつも通り枕の横で丸くなってるけど、この時間――夕食以降――はどっかに出かけてるみたいだ。

……というか最近、寝る前にスキャバーズの姿は見てないかもしれない。

 

とりあえず、駄目もとで隣りで横になっているハリーに聞いてみた。

 

「ねえハリー、スキャバーズ見なかった?」

 

「え、見てないけど?」

 

やっぱり知らないみたいだ。

眉間にしわを寄せ――ハーマイオニーいわく"軽い"――本を読んでいたハリ―は、まるでそんなことには気づかなかったという風に答えた。

……当然かもしれない。というか、僕だってついさっき気づいたし。

 

 

ベッドの下はもちろん、談話室の暖炉、ついでにネビルの置いていったトレバーのケージの中も探してみたけどスキャバーズは見当たらない。まったく、どこいったってんだあのデブネズミは――という僕の話を聞いたハリーは、パタン、と持っている本を閉じ、気楽そうに言った。

 

「スキャバーズもクリスマス休暇を楽しんでるんじゃない?」

 

そうかもしれない。

部屋から出ることなんてほとんどなかったスキャバーズだったけど、クリスマスには談話室でウロウロしてたのを見かけた。

それに、クリスマス休暇に入ってから人が少なくなったからか、暖炉脇でよく寝てた気がする。

 

「……うーん、そうかもな。談話室にはいないし……だとしたら城の中?」

 

「たぶんね。パーティーのときの残り物でも探して走り回ってるのかもね」

 

「あいつトロいし、ミセス・ノリスに捕まったりしてないかな?」

 

「……ロン。僕、これを読み終えなきゃいけないんだ」

 

ハーマイオニーから出されたクリスマスの課題をね、とハリーは呟いた。

ハリーが手にしている分厚い本は『近代魔法界における主要な発明およびその活用』という、ベッドに入って読めば間違いなく夢の世界に飛び立てそうな代物である。

最近の日課となった『ニコラス・フラメル』の名前を探すため『とりあえず』とハーマイオニーが渡してきた本でもある。

ハーマイオニーいわく『寝る前に軽く読める本』……だそうだ。

 

まだ半分以上もページが残っている本を見て、ハリーがとても嫌そうな顔をしつつも再び手元に目を向け、本を読み始めた。

思わずじとっと見つめてしまった僕を尻目に「そんなに心配しなくても大丈夫なんじゃない?」なんてハリーは言う。

そりゃ確かにスキャバーズのことだ。僕だって心配なんてしてないけど……その、やっぱ気になるじゃないか。人様に迷惑かけてないかな、とかさ。

そんな僕の葛藤を口に出してみたところ、ハリーは溜息を吐いて「そんなに心配なら探してみればいいじゃないか」と言った。そして「できることなら協力するよ」とも。

 

「そうかい? ……それじゃ、悪いけどハリー、明日スキャバーズを探しに行ってみるから君の『透明マント』を借りてもいい?」

 

「……かまわないよ。けど僕はこれ読んでるよ……まだまだ終わりそうにないもの」

 

「ありがとハリー。それと……がんばれ」

 

ちなみに僕の『続・歴史を動かした巨匠100選』と『新・歴史を動かした巨匠100選』はすでに読み終わった。

ハリーが例の『鏡』に夢中になっている間、とても暇だったからだ。

……結局、どっちも徒労に終わって放り投げたけどな。

 

 

 

 

そして翌日。

目覚めると、枕の横ではスキャバーズが幸せそうに寝息を立てて丸くなっていた。

やっぱり僕が寝てる間に帰ってくるらしい。

 

……今日こそどこ行っているのか突き止めてやる。

 

 

その日はクリスマスの課題として出されていた魔法薬学の『忘れ薬の生成における10段階の変容』という難解なレポート提出のため、資料を探していたらいつのまにか夕方になっていた。

談話室でウンウン唸ってたけど、正直一人でやるんじゃなかった……頭がおかしくなりそうだ。

 

そして、予定通りハリーに透明マントを借りるために寝室に戻ってきた。

……どうやらハリーは強敵()を前に撃沈したみたいだ。ページの三分の一程度を残してベッドでうつぶせになって寝ている。

 

起こそうか迷ったけど、丁寧にも僕のベッドの上に透明マントが畳んであったのでそれを拝借した。

僕が来た物音で目が覚めたのか、もそりと起き上がったスキャバーズもどうやらこれから出かけるようだ。とっとこ螺旋階段を下りて行った。

 

さっそく僕は透明マントをかぶっておいかけることにした。

 

 

談話室の暖炉脇でボーっとしてるスキャバーズだが、チラチラと入り口の方を見ている。

どうやら誰かが肖像画を開けてくれるのを待っているようである。僕もスキャバーズと同様に入り口付近で待ち伏せる。

しばらくして、数人の寮生が入ってきた瞬間スキャバーズはすばやく飛び出していった。

僕もそれを追いかけ、あわてて肖像画の穴を通って外へ出た。

 

 

それから、しばらくはすばっしこいスキャバーズの後を追いかけた。

幸い、フィルチもミセス・ノリスにも遭うことはなかった。

また、スキャバーズがどこへ向かっているのかもある程度つかめた。

 

「……西塔なんてはじめて来たな」

 

懸命に階段の手すりを駆け回るスキャバーズを尻目に、ポツリと呟いた。

 

 

……というか、これ登るのか。

見上げると吹き抜け天井になっており、そこまで伸びる長大な螺旋階段が目に映る。

 

「どこ行くんだよあいつ……」

 

 

 

 

 

 

 

「……どうりで、ふう……あいつ、最近痩せてきたわけだよ……」

 

息切れしながら、僕は透明マントをかかげ階段を登っていた。

 

どうでもいいことだが、最近、スキャバーズの体調が変だと思っていた。

しかし、それが単なるシェイプアップだったという事実に少しイライラしながらも足を動かす。

 

上を見ると、スキャバーズもどうやらそろそろ疲れたのか動きが鈍くなっている。

登るのに邪魔だしマントはもう要らないかもな、などと考えてボーっとしていたら唐突にスキャバーズが消えた。

 

「えっ? どこいった?」

 

 

 

とりあえず、スキャバーズが消えた辺りまで来てみた。

どうやらここは円形の踊り場になっているみたいで……っていうか、ならスキャバーズはどこへいったんだ?

僕が踊り場で戸惑っていると、突然横合いから声が聞こえてきた。

 

「二十億……それだけ……心拍数……」

 

なんだ? どっからだ?

キョロキョロと辺りを見回すと、壁にかけてある風景画に気がついた。

月夜の湖が描かれた寂しい絵だった。そして、その絵の額縁辺りから僅かに月明かりが漏れている。

どうやら隠し扉になっていて、そこから声が漏れてるみたいだ。

 

「ネズミさん……四歳……年少さん……ゾウさん……七十歳……年金生活……」

 

隙間からそっと中を覗いてみると、窓辺の段差に腰かけた、何やら本を読みながらブツブツと呟いている女の子がいた。

 

なんだこいつ?

 

僕がそんな疑問を浮かべている間にもその子は、隣にスキャバーズが座っていることに気がついたようであった。

パタン、と読んでいた本を閉じ目を瞑り、彼女は言った。

 

「早く短く……遅く長く……どちらかひとつ…………けど……私は亀になりたい……」

 

……なに言ってんだ?

再び僕はそんな疑問に襲われた。

 

 

 

 

その子は、スキャバーズと視線を合わせるためにしゃがんで「こんばんは、おじさん」などと言い、彼女はポケットから白い――飴のようなものを取り出した。

 

「今日は……新作……」

 

包み紙を二つ広げ、スキャバーズの前に置いた。

それともうひとつ、横に白い液体が入った小さな瓶も。

 

「牛乳……乳製品とって……ストレス社会……」

 

よくよく彼女を観察してみれば、僕があまり見たことのない顔立ちをしていることに気がついた。

月明かりに照らされキラキラと輝いている瞳の色は綺麗なブラウンで、後ろで一本に結んでいる髪は艶々とした黒色だった。

話でしか聞いたことはないけど、いわゆる東洋系というやつだろうか?

まだ少し幼さが残っている顔立ちだったけれども、じっとスキャバーズを見つめるその目付きの鋭さに僕は彼女から研究者のような印象を受けた。

そうやって僕が彼女を観察している間にも、彼女は何がおもしろいのか食事に夢中なスキャバーズを観察し、なにやら呟く。

 

「……四年……四年のはず……?」

 

横からでもわかる切れ長の目つきを、更に鋭くしてスキャバーズを見ている。

 

「けど……おじさんは……?」

 

徐々に顔を太ったネズミに近づけながら、にらみつけながら呟く。

 

「……もう中学生?」

 

そんなはずは……などとぼやきながらもそっぽを向き、考え事をしているのか腕を組み首を傾けている。

 

 

 

しばらくして、二つの飴のようなものを食したスキャバーズは今度は牛乳の入った瓶に首をつっこんでいる。

小さな、ゴクゴクという牛乳を飲む音だけが響き、しばらく物思いに耽っていた彼女は、もしかして、などと口にしながら心なしか目を開いて言った。

 

「新人類……?」

 

驚愕の事実……という口ぶりであった。

しかし即座に、そんなわけないかというように首を振った。

 

「わからない……不可思議……」

 

そして「いっつぁみすてりー」などと囁く。

僕の頭には、どっちがだよ、などという言葉が浮かんだ。

 

 

 

そんなやり取りをかわしながらも、どうやらスキャバーズは食事を終えたようであった。

それに気づいた彼女は、手慣れた様子でスキャバーズを撫でている。スキャバーズにしてもチューチューいいながら撫でられるままだった。

 

……なんだよ、あいつ。僕が餌をやってもあんな鳴き声出したことなんてないじゃないか。

媚びてるみたいじゃないか。せっかく探してやったのにさ、何やってんだよあいつ……。

 

などと、不甲斐ない自身のペットに僕が憤ってる合間にも、どうやら彼女とスキャバーズのお別れの時間となったようである。

 

「ばいばいおじさん……私……もう少しここにいる」

 

チュ? などと疑問の声がスキャ……ってまさかあいつネズミと会話してるのか?

そんな風に驚愕している僕をよそにボソッと彼女は呟いた。

 

「……閉め出された」

 

「誰も通らない……クリスマスって人少ないよね」と。

 

……なぜだかよくわかないけど、僕はその姿を見て悲しくなった。

 

 

 

 

その後スキャバーズはとっとこ降りて行き、彼女も再び読書を再開した。

どうも声をかけづらかったし、ある程度疑問も解消したので僕は帰ることにした。

 

幸運にも帰り道も誰とも出会わず、無事寝室に戻ってベッドに仰向けにぼふっと倒れる。

 

なんていうかなぁ……うん。

 

「変なやつっているもんだな」

 

ふと左を見る。

枕元には幸せそうな顔をして寝ているスキャバーズがいた。

それを見て……少しむかついた。

 

「はん! お前は僕の出す餌だけじゃ不満だってか、え? それとも所詮お前も雄だってことかい、え?」

 

怒りをぶつけるために枕をスキャバーズに投げた。

それに対して、なにをする! というふうにチューチュー怒るスキャバーズを無視して、僕は眠りについたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……スキャバーズがまた、いなくなった。

たぶんあの場所だろうけど、いちおう隣人に尋ねてみることにした。

 

「ねえハリー? スキャバーズ見なかった?」

 

なんだか前も似たようなことを聞いた気がするけど。

 

「え、また? ……見てないけど?」

 

ついに本を読み終わり、今は魔法薬学の課題に取り組んでいるハリーはやはりそう答えた。

長い間机に向かっていたので肩がこったのか、腕を回したり伸ばしたりしている。

 

「それって話してた変な子?」

 

「うん。たぶんレイブンクローだったはず……だけど……いま思うとあんな子いたっけかな?」

 

「……もう三か月も経ったのに?」

 

まるで信じていないハリーだったが、僕だって疑わしいんだからそんな目で見ないでほしい。

 

「僕の目が節穴じゃないならね。

 ハリーは見たことある? 髪が黒くてすごく目付きが鋭い子」

 

「……ないかも」

 

「あと東洋系」なんて言ったらハリーは今まで会った人を思い出そうとしているのか、少しボーっとしている。

軽い運動をするついでに今度こそ文句でも言ってやろうかな、などと思って僕はハリーに提案した。

 

「スキャバーズを迎えに行くついでに見にいってみる?」

 

「え? ……うん、気分転換にはいいかもね」

 

何かをごまかすかのように頷き、ハリーは僕の提案に乗ってきた。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで夕食の後、僕たちは透明マントをかぶり再度あの場所へやってきた。

 

「支配されている……人は知らずに……」

 

……相変わらず、彼女は何やらぼやいていた。

 

「彼の 領地 (ランド)は……増えていく……」

 

スキャバーズのほうを見てみれば、牛乳以外にもお菓子が増えていた。

 

「彼の名前を言ってはいけない……彼を描いてもいけない……」

 

チョコの入ったちっちゃなパンのようで、スナック菓子なのか小袋の中にいくつも入っていた。

 

「彼こそは『名前を……言ってはいけない……あの……ネズミ』……!」

 

お菓子……なんだか運動したせいかお腹が空いてきたなぁ。

かといって、寮にある食べ物なんてクリスマスに貰った百味ビーンズの残りくらいしかない。フレッドたちはいつもどこから食べ物を調達してきているんだろう?

 

「世界は……ネズミに支配されている……!」

 

今度聞いてみようとは思うけど、あいつら僕に正直に教えてくれるとは思えない。

教えてくれたところでどうせ、何か凶悪なトラップに引っ掛かるのがオチだ。

ここ数カ月話で聞いてたホグワーツで暮らしてみたけど、ジョージたちには僕たちと違うものが見えている気がしてならない。

あんなに頻繁に夜出かけてフィルチに遭わないっていうのもなんか変だ――っていうか考え事をしている間にもスキャバーズの食事は終わったらしい。

今日は彼女もこのまま帰る予定なのか、立ち上がって額縁に手をかけようとしていた。

あわてて僕たちは後ろに下がり、それをやり過ごした。

 

手にスキャバーズを乗せながらテクテクと彼女は僕たちの前を通り過ぎる……僕たちよりも背が高かった。

すぐに別れるのかな、と思ったが彼女はスキャバーズに向かってまだ何か言っているようであった。

 

「私たちはレミング……荒野を……歩き続ける……そして……今はまだ……岸は見えない……」

 

階段の手すりにスキャバーズを乗せる。

そして彼女は少ししゃがんでスキャバーズに目線を合わせて囁いた。

 

「けど……気をつけて…………消されちゃうよ?」

 

そのまま彼女はハハッと小さく甲高い不気味な笑いを残し、階段を昇って去っていったのであった。

 

……なんだってんだ。

 

 

 

 

手すりを滑り降りていくスキャバーズと階段を昇っていく彼女を見て、僕はハリーに尋ねる。

 

「変な子だよな?」

 

「うん、そうだね」

 

「レイブンクローの寮生ってのは頭がいい代わりに頭おかしいのかな?」

 

実例が目の前にいたからか「そうかもね」などとハリーも僕に同意してくれた。

そういえば結局、文句を言うのを忘れてしまっていた。

 

…………。

 

「……ところでハリー?」

 

「なんだい?」

 

「マグルの世界はネズミに支配されちゃってるって話は本当なのかい?」

 

「……えっ」

 

『名前を言ってはいけないあのネズミ』とはいったいなんなのだろう。

彼女の戯言に付き合うわけではないが、僕はそんな疑問を持ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

クリスマス休暇もついに残りは今日一日だけとなった。

そして、ちょうどその日にホグワーツ特急に乗ってハーマイオニーが寮に戻ってきた。

 

僕たちはハーマイオニーの課題が結局無駄であったことをまず愚痴った。

「でも一般教養は増えたでしょう?」などと返されたが、かといってハーマイオニーも『ニコラス・フラメル』の情報を得ることもできなかったようだ。

そして話は、ハリーのクリスマスプレゼントであった『透明マント』、ハリーが虜になった『みぞの鏡』などの話に移り、ついで程度に例の『レイブンクローの変人』の話をした。

 

「それってストーキングじゃない?」

 

僕たちの話を聞いたハーマイオニーの一言がそれだった。

 

……まことに遺憾である。

 

「それにレイブンクローで東洋系っていうなら一人か二人心当たりがあるけど……彼女かしら?」

 

「例の彼女って同学年?」と問われるも……正直わからない。

雰囲気的には年上だけれども、顔立ちから見ると僕らの年下にも見える。

そんなわけで口ごもっていた僕たちだけど、案外乗り気なのかハーマイオニーはこんな提案をしてきた。

 

「じゃあそのスキャバーズのガールフレンドを確認しに行きましょうか?」

 

「ガールフレンドって……。あれはそんなんじゃないさ、あれはたぶん……」

 

『話し相手』なんて単語を思い浮かべたけど流石にそれはなぁ、と思って黙っておいた。

そして、夕食の後、西塔のいつもの場所へ彼女の様子を見に行くこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

「こんなはずじゃ……ちくしょう……持ってかれた……!」

 

「大丈夫かしら? 彼女……?」

 

思わず小声で心配そうにハーマイオニーが呟く。

……僕からしたらある意味いつも通りなんだけどな。

左足を抑えて心なしか痛そうな表情をしている彼女を見て、ハーマイオニーが透明マントから抜け出して声をかけようとした。

 

しかし。

 

「……なんちゃって……でも……ぴんすって石頭……」

 

パッと両手を上げて、なんでもない風に振舞う。

ジェスチャーから察するに、図書館の番人マダム・ピンスに借りていた本を没収された、といったところであろうか。

 

「……時事ネタなんだ」といった後に「はい」といつものようにスキャバーズに餌をあげていた。

今日のお菓子は、棒状のクッキーのようなものにチョコレートが塗ってあるものであった。

 

カリカリとスキャバーズがお菓子を食べる音が響く中、彼女は突然キョロキョロしだした。

そしてしばらく考え、やがて意を決したのか「よし」と呟き両手を胸の前でパンと合わせ目を閉じた。

その次に合わせた手を伸ばし、両手を床に当てる。

 

しばらくして。

 

「やっぱ無理……シンリくんどこ……?」

 

……相変わらず彼女の行動はよくわからないな。

「言ったとおりだろ?」とハーマイオニーに確認しようとしたところ背中を引っ張られた。どうやら一旦ここから離れたいらしい。

 

 

 

 

僕たちが少し階段を下って、それからハーマイオニーは小声で話しはじめた。

 

「やっぱり。……彼女クラウチさんよ、図書館でよく見るわ」

 

「クラウチ? それって確か……」

 

パパの話で何度も出てきた気がする。

……けどなんだっけかな。思い出せそうで思い出せない、そんな感じの疑問である。

 

「確かに朝食とか夕食の席でもなぜだかほとんど見たことはないし……あなたたちが知らないのも無理ないかもね」

 

「それに」とハーマイオニーは少し言いづらそうに続けた。

 

「なんていうか、普段は影が薄いっていうか気配がないっていうか……図書館でも声をかけづらい子ではあるわ」

 

ため息をはきながら「眼中にないってああいうことを言うのかしら」とハーマイオニーが呟いた。

そして「まあ、だからこそあんなに喋ってるところを見るのは私も始めてなんだけどね」と続けた。

そんなハーマイオニーの解説に「へえ、そんなやついたんだなぁ」と僕とハリーは顔を見合わせて言った。

 

 

 

 

そんなこんなで僕たちは元いた場所に戻って、再び漏れ聞こえてくる声を聞くことにした。

 

……とりあえず様子見である。

 

「そういえば……暇だったから探してみた……別称はたくさん……」

 

彼女は今度はごそごそとローブのポケットの中を探してメモを取り出した。

そして、少しだけ発音に手こずりながらもは幾つかの単語をあげた。

 

「『第五実体』……『エリクシル』……『赤きティンクトゥラ』……。

 けど実体は…………魂の集合体…………『材料』はきっと……。……おかわいそうに……」

 

第五実体? 材料? いったい何の話だ? 

僕とハリーはそんな疑問を浮かべて顔を見合わせるも、お互いまったくのお手上げであった。

一方、ハーマイオニーは「……あ」と呟いた。どうやら先ほどの単語を聞いて何か思いついたようであった。

僕たちを置き去りにして彼女の話は「それにしても」と続く。

 

「賢者は永遠を望む……の? ……それよりも……なぜ……賢者は鏡に潜む……?」

 

そうしてしまいには彼女――クラウチさんも首をかしげた。

隣にいるハーマイオニーも先ほどから考え事をしていて、取り残された僕とハリーを含めて、チューというスキャバーズの声を聞くまでずっとそのままだった。

その鳴き声で我に返ったクラウチさんは、いつも通りスキャバーズを撫でたりお菓子を追加してあげたりなどして、しばらくして小部屋から出てきた。

 

……今日はとくに閉め出されたとかじゃなさそうである。

 

 

スキャバーズを手すりに乗せ、そのまま立ち去ろうとした彼女だったが、途中でコツコツという足音とともに階段を昇ってくる誰かが近付いてきた。

僕たちはあわてて、開きっぱなしになっていた風景画の隙間から小部屋へ駆け込み、昇ってきた誰かをやり過ごした。

その人は手すりを滑り降りていくスキャバーズを見て「キャっ!」と軽く悲鳴をあげ、クラウチさんを見ると、少し驚いたような表情で挨拶をした。

 

「えっと……こんばんわ?」

 

「……こんばんわ」

 

「……あなたは……えっと、クラウチさん?」

 

「……そういうあなたはシーカーさん」

 

昇ってきたのはレイブンクローのクィディッチチームで今年シーカーになったばかりのチョウ・チャンだった。

二年生ながらたいへん優秀な選手で、その小柄な体形を生かした小回りの良さや判断力に優れた飛行の名手としてそれなりに有名で、僕でも知ってるくらいだ。

 

……ま、ハリーには敵わないけどな。

 

「あ、そういえば自己紹介とかはまだだったね」と、お互いの名前を交換している。

チョウ・チャンは知っているからいいとして、彼女のほうはサエ・クラウチというらしい。

クラウチさんの方はたいへんぎこちない自己紹介だったけれど、それが終ってから二人の話はクリスマス休暇の過ごし方という話題に移っていた。

 

「私はチームの合宿もあったし、各教科の課題で手一杯だったわ」

 

「……そう」

 

「…………えっと、その、あなたはどうだった?」

 

「……それなり……」

 

「そ、そう? よかった!」

 

なんだか少し気まずい空気が漂うなかで「……ところで、なにやってたの?」とチョウが問いかけ「餌付け……?」などクラウチさんは答えていたりもした。

しばらくは拙い雑談が続き、チョウが「そろそろ談話室行かない?」と申し出て二人は肩を並べて階段を昇っていった。

 

「悩み事があったらなんでも相談してね」

 

「……試験とか……大丈夫かな……」

 

「えっと、期末試験のこと?」

 

途中でそんなことを呟きながらも彼女たちは去って行った。

……ていうか、上にレイブンクローの談話室があるのか、初めて知ったな。

そして、なぜ隣のハリーはチョウ・チャンの後ろ姿に見とれているのだろうか。

 

「あいつ、今から試験結果なんか気にしてんのか?」

 

「……え? ああ、そうだっけ? そういえば試験なんてあるんだよね……試験ってなにするんだろ?」

 

そっぽを向いて何かをごまかすかのように、とても興味深そうに試験内容をハリーが聞いてきた。

兄貴たちから聞いた話を思い出しながら試験内容について僕が話そうとしていた途中で「思い出したわ!」と先ほどからずっと考えこんでいたハーマイオニーが声をあげた。

 

「何をだい? マクゴナガルが最初の授業で言ってた試験内容かい?」

 

「違うわよ。『ニコラス・フラメル』のことよ!」

 

「なんだって!」と僕とハリーが声をあげる。

 

「『ニコラス・フラメル』といえば『賢者の石』よ!」

 

「……どうして思いつかなかったのかしら、こんな簡単なこと!」とハーマイオニーは少し興奮して話を進める。

 

「そういえば彼って共同研究するほどダンブルドアと仲がいいのよね。

 どおりでホグワーツに『賢者の石』を預けるわけね。だって最も信頼がおけて最も安全だからよ!」

 

「『賢者の石』ってなんなの?」という僕とハリーの疑問を無視してハーマイオニーは更に話を展開させ、今度はクラウチさんに対する疑惑に焦点を合わせていた。

 

「それにしても……なぜ彼女は賢者の石なんて調べたのかしら? これっていわばトップシークレットよ?」

 

狭い小部屋の中、ハーマイオニーは部屋を行ったり来たりしながら呟く。

 

「私達だって、ハグリットがつい『ニコラス・フラメル』なんて漏らさなかったら手も足も出なかったでしょ?

 それに、そもそも『ハグリットが何かをホグワーツに持ち込んだ』ということすら彼女は知らないわけよね?」

 

「だとしたらどうやって……? まさか、フラッフィーが守っているというだけで?」などと呟いている。

どんどん話を勧める一方置いてけぼりになった僕とハリーだった。そのため少しイライラしながら、ハリーはハーマイオニーに尋ねた。

 

「ハーマイオニー、クラウチさんよりも僕たちにまず『賢者の石』について教えてくれないかい?」

 

「あ……ごめんなさい!」と今更僕たちに気付いたかのようにハーマイオニーは反応を返し、『賢者の石』に関する説明をしてくれた。

 

『賢者の石』は、いかなる金属をも黄金に変える力があり、飲めば不老不死になる『命の水』の源であるという。

 

そして、それを創造した『ニコラス・フラメル』も600歳以上の高齢であるという話に驚いた僕たちであったが、その後は当然のごとく『賢者の石』を知っていた例の彼女についての話に移った。ハリーが「クラウチさんに関する情報が他にもないかい?」と尋ねた。

 

僕はクラウチという名に聞き覚えがあるということを答え、ハーマイオニーは少し思案してから幾つかの噂について答えた。

 

「ちょっとクラウチっていう名前には聞き覚えがあるな。……あとでパパに聞いてみようかな」

 

「クラウチってことでなにやら噂になってたっていうのは聞いたわ……下世話な話だったけどね。

 ……あとはスネイプに避けられてる……っていう信じがたい噂もあった気がするわ」

 

「スネイプだって?」

 

ハリーが驚きの声をあげる。

そりゃそうだ。『賢者の石』が学校にあるこの時期にスネイプが避ける人なんて疑って下さいと言っているようなものだ。

 

その後は、ますます疑惑が増したクラウチさんのことや『賢者の石』をスネイプが狙っている理由なんかをお互いに推測しあったけど、情報が少ない以上うてる手もなく「彼女にも少し注意した方がいいかもね」とハーマイオニーがその場の結論を示して、僕たちは談話室へと戻った。

思っていたよりも時間が経っていたので、今日はもう寝室に戻って寝ることになった。

 

 

寝室に戻りベッドに入った僕は横で寝ているスキャバーズを見て、これからは籠に入れて飼ったほうがいいのかもしれない、と考えた。

なんていうか、怪しい人物に自分の飼っているペットを手なずけられるのはあまりいい気分じゃないからだ。

 

……もっとも、そんな僕の懸念など知らず、ベッドの枕元でグースカ寝てるスキャバーズを見て少しばかりイラっとしたのも事実であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+α部分

 

 

・蔵内父の場合

 

 

女の子は精神年齢が成長が早いと聞く。

 

「世知辛い世の中だね……いいよいいよ。それより浮いたお金でお母さんに花束でも買ってあげれば? もうすぐ結婚記念日でしょ?」

 

しかし、突然の出張で遊園地に行く約束を守れなかった父親に対して、これが十歳の女の子が言う台詞であろうか?

 

今手にしている手紙だってそうである。

拝啓から始まり季節の挨拶、そしてホグワーツの近況などが丁寧で読みやすい字で書いてある。

『そちらもお変わりありませんか』など言われるのも個人的には初めてである。

 

私は単にクリスマスプレゼントに欲しいものがあるかどうかを聞いただけなのだが……。

手紙では、プレゼントに関してではなく主に『旅費を考えて暖炉の設置を提案する』ということを力説された。

 煙突飛行粉 (フルー・パウダー)だかなんだかよくわからないが、家は借家なのだからどうすればいいのやら。

 

そして、長々とした手紙を読み終っても肝心のクリスマスプレゼントに対する返事が見直したが見当たらない。

どうしたものか……などと悩み始めた私だったが、端っこに追伸と書かれてあった。急いで書いたのか少しだけ雑な字で書かれているそれを読んでみる。

 

 

追伸 

 

 

「プレゼントは木刀がほしいです。鉛の芯が入っていれば尚よし」

 

……娘にいったい何があったというのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




みぞの鏡イベントの数日後という設定。


生物が生きている間の心拍数は決まっているらしい……ということで主人公は『ネズミに変身なんかしたらば寿命が縮んじゃうんじゃないかな?』という疑問を浮かべました。
何かしらの『動物もどき』になることをまだ諦めてはいなかったりする主人公です。
気になって、ひそかにピーターおじさんの脈拍を測ったりもしました。
ネズミの心拍数は1分間に約300回でおおよそ寿命は四年間……しかしピーターおじさんはネズミになってからもう十二年生きています。

……やっぱりよくわからないのでした。せいぜい、鼓動が早くなればその分世界の密度も濃くなるのかもなぁ……なんて考えていると思います。


ハリーたちからしたら意味不明。
あと、ピーターおじさんは都合よく目の前の飯に夢中ということで……ご都合主義ですはい。
ほかは単純にネズミつながりと賢者の石ということで。前者はネタ的に危険なんでなんか言われたら消します。


……書いてて、三人組の視点は難しくてめんどくさいという結論に至りました。


そして主人公さん。
みんなから、さん付けされる雰囲気の持ち主のクラウチさん。
主人公が適当にくっちゃべってる状態というのがいかにフィルターなくて楽……ってとこです。
現状、脳内思考がなければ独り言レベルにまで落とさなければならない……ネタくらいしか伝わらない気がした。難しいもんである。





誤字修正
シェイクアップ→シェイプアップ


修正
家はアパート→家は借家

どうやらパパ・クラウチもけっこう動揺していたようです。


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