ベルとアイズの成長物語 (タシャラ)
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始まりの時

サブタイトル は適当です

皆さんこれからよろしくお願いしやす!
誤字脱字は報告してくれるとありがたいっす


のんびりやっていきます!

作者はアイズたん推しです。


 

 

ひらひらと青空を楽しそうに舞う蝶々が、ふと目を離した隙に何処かへ行ってしまいそうな気がするのは、気のせいだろうか。

どこまでも果てしなく続く青空と、限りのない草原。雄大な自然の中にひとり、5歳くらいの少年が寝転んでいた。雪のような白い髪に深紅(ルベライト)の瞳、兎のような格好をしている。蝶々と戯れていたようだが、優しく吹くそよ風を受け、どうもうとうとしているようだった。

「…べ…ル……ベル!」

その時、誰かの名前を呼ぶ声が聞こえた。少年が「はっ」と、目を覚まし、声が聞こえた方を見ると金髪金眼の女性が走ってくるとこだった。

「お母さん!」

「こら!ベル。探したのよ、ここにいたのね」

「うん!ちょうちょと遊んでたの!」

「あらら、背中に土がついてわるよ」

 

少年………ベルの母親はベルの背中に付いた土を、払った。

 

(お母さんの声が聞こえた時は怒られるかと思ったけど、怒られなくてよかった〜。)

 

ベルは度々、こっそり家を抜け出してはここに足を運んでいたのだ。そのたびに、母親や姉に怒られるのであった。ベルはその理由がわからなかったが、そんなベルにアリア達は気が気ではなかった。実は、この草原、【蒼穹の丘】でモンスターが幾度か目撃されていて、実際に被害者も出ている。まだ戦えないベルにとっては、自殺行為そのものだが、当人は欠片も気にしてない───わからないだけだが。そんなベルに、アリア達は頭を悩ませていた。

 

 

「ほらベル。お父さんが帰ってきたのよ!おうちに帰りましょう」

 

「! お父さん帰ってきてるの!?」

「ええ、アイズも待っているわ」

( やった!おとうさんが帰ってきた!)

────ベルがこんなにも喜んでいるのには理由があった。普通父親といえば、普段一緒に暮らして、休日には子供と遊ぶ姿を思い浮かべるであろう。

しかし……………ベルの父親は冒険者だ。いつもはオラリオでダンジョンに潜っているからあまり帰ってこない。普段、父親がおらず寂しいはずなのだが、ベルはそんな素振りを見せないため、母親は心配していた。

 

「さぁ、少し急ぐから 魔法(エアリアル)を使うよ。しっかり捕まってなさい」

 

「 はーい」

 

そう言い、ベルの母親───アリアは、ベルを落ちないようにだっこした。ベルは振り落とされないように、アリアにぎゅっと捕まる。

 

「じゃあ行くよ。目覚めよ(テンペスト)

 

アリアがベルを抱いてない方の手の人差し指を口に当て、その言葉を紡いだ瞬間、ベル達の周りを柔らかな風が包んだ。

これがアリアの魔法、エアリアル。この風に包まれると、心が穏やかになる。ベルはアリアの魔法が好きだった。

 

いつか僕も、お母さんみたいな魔法が使えるようになりたいと思っていた。そして、お母さん達を護るんだと………。

けど、お母さん達ひどいんだよ!『ふふっ、ベルは戦わなくていいんだよ。その気持ちだけで、充分嬉しいわ』って言うんだよ。僕のこと心配してくれていることはわかっている。でも、少し悔しかった。………だから、僕は大きくなったらお母さんやお父さんみたいに強くなって、お母さん達に褒めてもらうんだ!楽しみだな〜

 

 

ふわぁぁぁ、と、欠伸をしてベルはアリアの腕の中でうとうとし始めた。さっきもうとうとしていたから、まだ眠たいのだろう。それもそうだ、今はちょうどお昼時。まだ5歳のベルにとっては眠たくなる時間だ。

アリアはそんなベルを見ながら微笑み、そっと抱きしめた。

 

 

「願わくば、この時間がいつまでもいつまでも、続きますように………」

そう呟かれた声は、誰にも届かず果てしない蒼穹に吸い込まれていった。

 

 

 

 

「ベル…ベル!ついたよ」

「う〜ん」

 

 

ベルはアリアの腕の中で身動ぎをしながら目を覚ました。「ふぁ〜」と小さな口を大きく開けて欠伸をして、小さな手で目をこすった。

 

「おはようおかあさん」

 

「ふふっ、おはようベル」

 

アリアは優しく微笑み、まだまだ寝ぼけまなこの我が子をそっと抱きしめ、したに下ろした。

 

ベルたちの前にはこじんまりとした、まるでエルフの里にあるような家があった。透明感のある薄い緑の屋根に濃い緑の蔦を這わせた、大きさはそこまでないが、ここがベル達の家だった。

ベル達の家は村から少しだけ外れた場所にあるため、電気も水道も通っていない。だから、少し不便ではあるが、ベル達はこの家が大好きだった。

 

 

 

「ベル、遅い」

 

そこで、怒声と言うまでもないが、些か不満げのこもった声が響いた。

声のした方を見ると、アリアと同じ金髪金眼の幼女が、小さいほっぺたをパンパンに膨らませながら仁王立ちで家の前に立っていた。──────どうやら、ベル達が遅いからずっと家の前で待っていたようだ。

 

 

「おねぇちゃん!」

 

「ただいまアイズ」

 

「んっ、おかえり」

 

ベルがアイズに駆け寄り、アリアがアイズの頭を撫でた。アイズはくすぐったそうに片目をつぶっていたが、膨らんでいたほっぺたも小さくなり、心なしかほくほくしていた。

 

「ベル、お母さんを困らせちゃダメ。蒼穹の丘には一人で行かないで」

 

「うん……わかった。ひとりで行かない」

 

しかし、それとこれとは別のようで、アイズはベルにしっかりとお説教していた。ベルも、いつになく真剣な表情のアイズに何かを感じ取ったのか、不貞腐れながらも頷いていた。

 

「アイズはもうすっかりお姉さんね」

 

「うん!」

 

アイズはアリアに褒められてご満悦の様子。しかし、今度はベルがほっぺをふくらませた。

 

「ぼくだって、色々できるもん……」

 

ふくれっ面でつぶやくベルに、アリア達はくすくすと笑う。アイズももう怒ってはいないようだ。今は自分より少し下にあるベルの頭をもふもふしている。触り心地の良さそうなベルの髪の毛は、アイズにもアリアにも、さらには村の人までにも人気である。まぁ、村の人達がベルの頭をもふもふしていると、アイズはベルを取られたと思いムスッとするので、村の人達はなかなか撫でられないのだが。

 

 

「そろそろ行こう。お父さん待ってる」

 

「うん!」

 

アイズはベルの手をぎゅっと握り、ベルはアリアの手をぎゅっとつかみ、家へと入っていく。

 

 

「ただいま!」

 

「お父さん、お母さん達連れてきた」

 

「ただいま、へヴェル」

 

「おかえり、アリア、ベル。

ありがとうアイズ」

 

扉を開けるとそこはリビングになっていて、木で作られた丸い椅子に座っていたのは、ベルと同じ白髪赤眼の男性だった。お察しの通りベルたちの父親だ。

ベルはへヴェルに飛びつき、アイズも抱きつく。

 

「お父さんおかえり!」

 

「うん、ただいま!元気にしてたか?」

 

「うん!」

 

へヴェルは、ベルをひょいっと抱き上げ自分の膝に載せ頭をぐりぐり撫でる。すると、アイズが、いいなぁ〜という風にジーッと見ているので、アイズもひょいと抱き上げ膝の上に乗せる。

 

風よ(エアリアル)

 

そこに、アリアが魔法を使い、二人の間を風がくるくる回る。その風がくすぐったかったのか、二人は首をすくめながらからからと笑う。しばらくそんなふうにして家族みんなで楽しんでいた。

 

 

「さぁ、村の人達にへヴェルが帰ってきたって、挨拶しに行きましょう」

 

「「はーい」」

 

「えー」

 

アリアが手を叩いてみんなに言うと、へヴェルから不満げのこもった声が聞こえた。

 

「お父さん行きたくないの〜?」

 

「ああ、まあちょっとな」

 

「どうして〜?」

 

「ベル、アイズ、お父さんはね、村長さんが苦手なのよ」

 

さっきまで笑顔だった顔が若干ひきつり気味になる。そんなへヴェルを見て、ベルとアイズが首を可愛く傾げ、不思議そうにへヴェルを見上げる。それを見てアリアがへヴェルの秘密をばらした。

そうなのだ、実を言うとへヴェルはここの村長が、少し苦手なのだ。村長は冒険者を毛嫌いしており、生粋の冒険者であるへヴェルとは折り合いが悪いのだ。まぁ毛嫌いしてるのは、自分もかつて冒険者で家族を死なせてしまったことがあるからなのだが。

 

「ぼくも、そんちょうさんが好きじゃない〜」

 

「私も〜」

 

「だよな〜」

 

「こら、3人とも、駄々こねてないで、さっさと準備なさい」

 

「「「は〜い」」」

 

だらーんとなっていた3人だったがアリアの鶴の一声で、渋々重い腰をあげた。それでも動作が遅いのでどうしたものかと思っていたアリアだったが、そこでふといいことを思いついた。

 

「これから準備して、一番に私のとこに来た人には、膝枕をしましょう」

 

「「「!!!」」」

 

アリアが思いついた作戦とは、ご褒美をあげることだった。実に単純な話だが、皆アリアのことが大好きなので、一番は俺のものだと言わんばかりの動きを見せる。

 

「ふふっ、ちょろい」

 

綺麗な唇から零れたその一言は、聞かなかったことにしよう。




どうでしたか?

面白くかけてるといいんですけど…………

アリアさん、黒いですねぇ〜
今後はいろんなキャラが出てくるはず………


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アリアの膝は誰のものだ選手権

さぁ、アリアの膝は誰のものだ選手権ですっ!

なんか、色々性格とかが変わってると思いますが、お気になさらず( ̄▽ ̄;)

では、どうぞ!


さぁやってまいりました!アリアの膝は誰のものだ選手権〜〜〜〜〜〜〜!

 

「「「いえ〜い!」」」

 

司会は(わたくし)アリアが努めさせていただきま〜す!

 

「おかーさんがんばって〜!」

 

「お母さん、頑張れ!」

 

「アリアー、ほどほどにね〜」

 

皆応援ありがと〜ね!

 

では、ルールを説明致しマース。

まず、持っていくものを自分のバックに入れて、リビングの自分の椅子に置いてください!その後に、洗面所へ行き、顔を洗い歯を磨き、髪を整えて、一番に私のとこに来た人が勝ちです!尚、私に合格をもらえなかった人は、もう一度やり直しで〜す!ご注意ください。

 

始める前に、皆さんに意気込みを聞いていきたいと思いまーす!じゃあまずベルから!

 

「みんなにかって、おかあさんのひざを、げっとする〜〜〜〜!」

 

もう既に、やる気満々ですね!ベル選手、頑張ってください!

続きましては、アイズ!意気込みをどうぞ!

 

「お母さんの膝は、私のもの」

 

おお、普段おとなしいアイズも、強い闘気がみなぎっています!アイズ選手も頑張ってください!

さぁ最後にやってきましたのは、我が夫へヴェルですね!

 

「うん、絶対に負けないよ」

 

おお、飄々とした笑顔ですが、目が笑ってない!意外に燃えていますね〜。

 

 

 

ではでは、位置について〜ヨーイスタート~~~~!!

 

 

 

 

まず始めに飛び出したのは、アイズ選手だ!一挙一挙の無駄のない動き、私への愛が伝わってきますねぇ。

遅れて飛び出したのはへヴェル選手です!綺麗な姿勢ですが、娘に遅れをとるなんて現役冒険者としてどうなんでしょう?

最後にスタートしたのは、本選手権最年少ベル選手です!遅れたタイムをどう取り戻して行くかが今回の鍵ですね。

さぁさぁ、皆さん私のために頑張ってください!

 

へヴェル「ちょっとアリア、うるさい!そういうアリアこそ準備終わってるのか」

 

アリア「あらら、喋ってていいのかしら?アイズに負けるわよ。あと、準備はもう出来てるわ」

 

アイズ「お父さんうるさい」

 

へヴェル「なんで、私なの!」

 

ベル「もお、みんなうるさい!」

 

へヴェ、アリ、アイ「「「ごめんなさい」」」

 

ベルに怒られてしまいましたσ(´ω`*)でも、起こってるベルも可愛いですね!なんだか、ベルの髪をもふもふしたくなってきました。

 

さて、一番に自分の椅子に荷物を置きに来たのは〜?

へヴェル選手です!現役冒険者の威厳を息子と娘に見せつけようと必死ですね。さぁ続きましてはベル選手が荷物を置きに来ました。ちいさな足で頑張って走っています!といっても、そんなに距離ないんですけどね。続いてアイズ選手の入場です!遅れてしまったが、微塵も負ける気は無いという雰囲気を纏いながら荷物を置き、洗面所へ走っていきます。

 

場所を移してこちらは洗面所です。3人とも顔を洗い終わり、自分の櫛で髪を梳いていきます。実はこの櫛、エルフの里にある大樹で作られているんです!その大樹には精霊がいると云われており、その枝で作られた製品は、希少かつ高価なんです!どこで手に入れたかは秘密です(*^^*)

 

場所を戻しまして、リビングにやってきました。さぁ、一番に私のとこに来るのはいったい誰でしょうか!

おっ、ベルが一番に来ました!腕を一生懸命振って私のとこに駆けてきます。あぁ、やっぱり可愛い…………おっと失礼。私はなんにも言っていませんよ?

 

「おか〜さ〜んっ!」

 

ベルが満面の笑みで飛びきんできました!続いてアイズ選手、へヴェル選手と私の元にたどりつきました!

 

「やった〜〜!ぼくがいちばんだ!」

 

ベル選手が両手を振り上げジャンプしながら喜んでいます!…………可愛い

 

「ベルに、負けた……………」

 

おっと、アイズ選手、物凄い勢いで地面にしづんでいきます!5歳の弟に負けたのが悔しかったんでしょうね〜

 

「うそ、だろ……………」

 

oh......こちらの方がやばかったです。へヴェル選手は白いを通り越して、さらさらと灰になっていきます!?気を確かにっっ!

 

こほん、気を取り直して、結果発表です。1位はベル選手‼︎

 

「いえーい!」

 

2位は、アイズ選手!

 

「いえーい………」

 

………そして最後は、へヴェル選手ですっ!

 

「…………………」

 

なにか反応してよ、もう…。

 

そしてこ褒美ですが、1位と2位のベルとアイズに膝枕をしてあげマース!

 

「えっ、私もいいの?」

 

「ええ、頑張ったからね」

 

「ちょっと待って、私にはないの!?」

 

あ…………そうですね、どうしましょうか。アイズにあげたんだから、へヴェルにだけあげないっていうのは少し不公平かしら?。

そうね、へヴェルには、私自ら髪を梳いて差し上げます!

 

「やった!」

 

「じー」

 

「じーっ」

 

「な、なんだ?アイズ、ベル」

 

「お父さん、大人気なーい」

 

「なーい」

 

「私に冷たくないか!?お前達」

 

大人気なーい

 

「アリアも!?」

 

まぁまぁ落ち着いて、ほら、こっちに来てください。

 

「なにか、腑に落ちないが……」

 

へヴェルは背が高いから椅子に座って、じゃないと届かないわ。

 

「ああ、そうだったな。すまない」

 

いいわよ、別に羨ましいとか思ってないから。ただ、ほんの少しもうちょっと身長があればな〜っとか、思ってないわ。

 

「絶対思っているだろ」

 

それはそうと、へヴェルの髪はふさふさで気持ちいわね。ベルの髪もふわふわ、アイズの髪はさらさら。ベルとアイズは私達に似たのね。

 

「それはそうだろう。親子なのだからな」

 

それもそうね。

 

「っと、はいおしまい。綺麗になったわよ」

 

「ああ、ありがとう」

 

「さて、村長さんのお家に行きましょうか」

 

「「「は〜い」」」

 

 

 

おしまい

 




いかがでしたか?

まさかのベルくん(5歳)が優勝しましたね〜

しかし、ちびっこ達が走っていると思うと、なんだかなごみますの〜

次は、村長さんのおうちに向かいます!
果たして村長さんの過去は明らかになるのか!?
(ならないと思います)


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村長さんはツンデレですか?

約1年近く投稿してませんでした。/(^o^)\さーせん!
中々手が進まず、ダラダラここまで伸ばしてしまいやした………。
はい、今回の話は村長のツンデレが発覚する回です。
意外と可愛いとこであるんだよ村長は。


蒼穹の丘を越え、家から5K歩いたとこにヤエタヒス村はある。ベル達の家が村から離れたところにあるのは、言わずもがな村長が冒険者嫌いだからだ。

 

さて、そんな村長がいるヤエタヒス村は世界の中心地オラリオから300K離れていて、大きくはなくこじんまりとしている。当然人口も少なく、100人程度しかいない。村の特徴はこれと言ってなく、村の中央広場に大きな(ひのき)があるだけだ。村全体が家族というような雰囲気で、あまり余所者には歓迎的ではない。

最初は、アリアとへヴェルにも風当たりは強かったが、村に通ううちに仲良くなれた。今ではもう、家族みたいなものだ。モンスターが出た時なんかは元冒険者のアリアに討伐を依頼したりして、その報酬は野菜とか果物、手編みの洋服だったり、田舎ならではの物々交換だ。皆はアリア達と仲が良いが、村長だけはまだギスギスしている。

村長のハルクッド・ヤエタヒス───本名はハルクッド・スローフラット───も悪い人ではない。村の人達からも慕われている。ただ少し、冒険者が嫌いなだけなのだ。

 

冒険者を見ていると昔を思い出すようで、嫌なのだ。──────最愛の家族を殺してしまった、最悪の思い出を………。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

「あら、アイズちゃん、ベルちゃん。久しぶりねぇ」

 

村に入るなり、お婆さんから声をかけられた。この人は、牛乳など乳製品を一族で作っている人だ。村で最初に声をかけてくれた人で、今でも仲がいい。

 

「こんにちは!」

 

「こんにちは!」

 

ベルとアイズは元気よく挨拶する。さっきまでは眠そうだったベルも仲のいいおばちゃんの声で目が覚めたみたいだ。

 

「あら、へヴェルさん帰ってきたのね!おかえりなさい」

 

「ただいまです、ミラルさん。久しぶりの帰省なので、これから村長さんに会いに行ってきます」

 

「あらあら、お邪魔しちゃったわね。いってらっしゃい」

 

「行ってきます!」

 

今から村長宅へ行くことを伝えると、牛乳3瓶──約3リットル──を残して帰って行った。

結構量があったので、今日の夜ご飯はシチューかなと、思うアリアであった。

 

それから程なくして、豪勢なとは言えないが、ほかの家より些か大きい門構えの村長宅が見えてきた。

 

「こんにちは、ヴァレンシュタインです。」

 

トントントンと3回戸をノックすると、中から「はーい」という声が家の中から聞こえてきた。

多分村長の奥さんの声だろう。

 

しばらくすると、門が開き、エプロン姿の奥さんが見えた。

 

「はい、お待たせしました。ヴァレンシュタインさん、お久しぶりです」

 

「ご無沙汰しております。今日は挨拶をと思いまして」

 

物腰柔らかい言葉遣いの、優しそうな女性である。目尻が少し下がっていて、なおかつ口元も常に微笑んでいる

から、老若男女に人気の奥さんだ。

 

「あらまあ、ご家族揃って。アリアさんも、ベル君も、アイズちゃんも久しぶりねぇ、こんにちは」

 

「こんにちは」

 

「こんにちは!」

 

「こんにちは!」

 

ベルとアイズは村長が嫌いだけど、その奥さんは好き。アリアに内緒でお菓子をくれるからという実に子供らしい理由でだ。

 

「それじゃぁ、どうぞお入りください」

 

お邪魔します。と一言行ってへヴェル達は奥さんについて行く。ついでに奥さんの名前は、リューズ・スローフラットとういう。

 

門をくぐったら、直ぐに玄関が見えてくる。へヴェル達は玄関横の応接間らしきところに通された。応接間には単調な木目のテーブルと、対面式のソファが置かれている。

へヴェル、アイズ、ベル、アリアの順番でソファに座る。リューズはお茶を取ってくると言い、キッチンへ行ってしまった。

 

しばらくすると、眉間に皺を寄せた中年の男性が入ってくる。元冒険者というだけあって、背は高く、体も程よく引き締まっている。

 

へヴェル達は立ち上がり、手を胸に当てお辞儀をする。

 

「お久しぶりです、ハルクッドさん」

 

「ふん。今日戻って来たそうだな」

 

「はい、遠征前の休暇で一時帰宅しました」

 

「遠征か…」

 

少々…いやかなり機嫌が悪そうに、ぶっきらぼうに答える。と、そこまで話したところでリューズがお茶を持って戻ってきた。

 

「まあまあ、立ち話もなんですから。座ってくださいな」

 

「すみません、ありがとうございます」

 

リューズはへヴェル達を座らせるとお茶を並べて、お菓子をアイズとベルにあげた。出されたお菓子は2人が大好きなもので、緊張していた顔が一気に明るくなった。

 

「おばちゃんありがとう!」

 

「ありがとう!」

 

「いえいえ〜、どうぞお食べ」

 

いただきます!と言って2人はお菓子を食べ始めた。そんな様子に機嫌が悪かったハルクッドも、少しは落ち着いたようだった。

 

「前の遠征で、ヘビーモスとリヴァイアサンを討伐したようだな。ヘラ・ファミリアと合同だったのか?」

 

「いえ、リヴァイアサンはうちだけで倒しました。ヘビーモス討伐の際に、ヘラ・ファミリアの殆どが重症だったので」

 

「そうか、死者は出てないんだな?」

 

「はい、両ファミリア共に死者0名です」

 

「そうか……」

 

1ヶ月前に行った遠征について死者は出て無いのを知ると、ハルクッドはほっとした顔をした。現役時代の知り合いがその遠征の一員に含まれていたからだ。

家族を無くした経験があるハルクッドは遠征中気が気ではなかったの。ついでと言ってはなんだが、これでもへヴェルのことも心配していた。いくら冒険者が嫌いとはいえ、知り合いが死ぬのは縁起が悪いと理由をつけて。それを知っているリューズは安心しているハルクッドを見てニヤニヤしていた。

 

「次の遠征はいつ行くんだ?」

 

「2週間後に両ファミリアの団員達が蒼穹の丘に来る予定です。遠征はそれからになります」

 

「1日休んでいくのか」

 

「はい、荷物などの再確認をしたのち、翌日の明朝出発するつもりです」

 

「分かった、村の皆に食事を届けるよう頼んでおこう」

 

「ありがとうございます、助かります」

 

「お前の為ではない。わしの知り合いのためだ、礼を言われる筋合いなどない」

 

「では、団長として、ということで」

 

「ふん、それならば仕方ない」

 

ツンデレ村長は遠征に協力してくれるようだった。次の遠征はオラリオ悲願の3大クエストのうち最も危険な『黒龍』討伐。生きて帰れる確率がほかの2つよりも格段に下がるのだ。村長もそれをわかっているから、遠征に協力している。

 

「次は『黒龍』だろう……?」

 

「……はい」

 

「……皆を悲しませるようなことは、絶対にするなよ」

 

「……はい!」

 

つまり、生きて帰ってこいという事だ。回りくどい言い方しかしないが、自分では到底かなわない怪物(モンスター)だとわかっているからこそ、いつもより柔らかい言い方で言ったのだろう。

 

「分かったなら今日はもう帰れ。家族を大事にするんだぞ」

 

「御気遣いありがとうございます、ではこれで失礼します」

 

「お邪魔しました!」

 

「おじゃましました!」

 

「お邪魔しました、村長さん、リューズさん、ありがとうございました」

 

「礼などいらん」

 

「またあなたはそんなこと言って……、アイズちゃん達、また来てねえ」

 

へヴェルは、家族を大事にするんだぞ、という言葉を重く受け止め挨拶をした。

アイズとベル、アリアがお礼を言うと、ハルクッドは顔をそむけ、リューズはそんなハルクッド()を嗜めつつも笑顔で送り出してくれた。

 

 

へヴェル達が外に出ると、辺りはもう日が暮れ始めていた。これでは家に着くまでに日が完全に落ちてしまうだろう。家に着くまでには必ず蒼穹の丘を横切らなければならないが、日が落ちてしまうと怪物(モンスター)

 

「まずいわね、もうすぐ暗くなるわ」

 

「そうだね」

 

「おとうさんどうする?」

 

「暗くなっちゃうよ?」

 

まずいと言いながらも、何故か顔がにやけているアリア。へヴェルもそこまで深刻な顔をしてないので、おおかた2人にはなにか考えがあるのだろう。アイズとベルが心配そうな顔でへヴェルとアリアの足にくっつく。そんなアイズたちを見てへヴェルは微笑んだ。

 

「大丈夫だよ、私がベルを」

 

「そして私がアイズを連れていくわ」

 

そう、へヴェル達は2人を抱き抱えて走るつもりなのだ。もちろん本気で走ったらまだ子供のふたりは風圧に負けてしまうだろうから、日没までに間に合うように調整しながらだが。

 

「よーし、では行くぞベル。お母さん達に負けないようにね」

 

「あら、私に勝てるとでも?」

 

「お父さんもお母さんも頑張って!」

 

「私も応援する!」

 

大人気なく張り合う両親を応援する息子と娘。とても微笑ましい光景だ。

 

「「「「せーのっ」」」」

 

先程の言葉が嘘のように仲良く走る4人の背中は、綺麗な夕焼けの中、帰路につくのであった。




なんか終わり方雑でしたね。語彙力無さすぎて笑うしかない

次回はほっこり少なめシリアス多めですね。
ちゃんと定期的に投稿できるように頑張りマッスル (`・ω・´ )


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ご褒美と真面目な話

アリアさんのご褒美タイムです〜(*´꒳`ノノ゙☆パチパチパチハ
想像したらにやけそうな文章になったかと思います〜

まあ、そのあとは少しシリアス多めになってきますがね

これからは火曜日の夜〜水曜日までには投稿したいと思います〜、頑張って書くんで応援よろしくお願いしゃす!(:D)| ̄|_


「さぁお待ちかねのご褒美ターイム!」

 

貰った牛乳で作ったシチューも食べ終えた夜7時頃。アリアによる、ご褒美タイムが始まった。

 

「「「いえーい!」」」

 

「ではまずベルから」

 

おいでおいでーとアリアが手招きすると、ベルが満面の笑みでトコトコ駆け寄ってきた。

 

「おかーさんおねがい!」

 

「おいで〜ベル。どっちの膝がいい?」

 

「んーとね。ぼく、こっちの膝がいい!」

 

「よ〜しよし、ベルの髪は綺麗だね〜」

 

「えへへ〜」

 

 

まずはベルが、アリアの左膝にこてんと頭を乗せて、横になる。アリアはベルの頭を優しく撫でながら他愛のない話をする。

 

「よーし、ベルはそのまま待っててね。アイズ、おいで〜」

 

「やった!」

 

アリアに呼ばれると、すたっと立ち上がり、タッタッタッとアリアに駆け寄る。そしてそのままベルとは反対の膝に頭を起き、ごろーんと横になる。

 

「アイズの髪は私に似てとても綺麗ね〜、でも私よりふわふわで可愛いわね〜」

 

「うん!ベルの方がふわふわだけど、私のもふわふわだもん」

 

「うふふっ、ベルとお揃いでよかったわね」

 

「「うん!」」

 

よーしよーしとアリアが二人の髪を撫でて、色々な物語を聞いているうちにベルたちは、次第に小さな寝息をたてていった。アリアの声が、子守唄になったのだ。

余談だが、アイズ達がよしよしして貰っている間、へヴェルは椅子に座ってテーブルに頬ずえをつきながら、羨ましそうな目で見ていた。

 

「そろそろベットに運ばなきゃ。へヴェル、ベルをお願いね」

 

「りょーかい」

 

アリアがアイズを、へヴェルがベルを、それぞれお姫様抱っことおんぶでアイズたちを寝室へと運んでいく。アリアの膝から離された時は、「やだ〜」とぐずっていた2人だが抱っこされると再び眠りについた。

 

「ふふっ、二人とも可愛いわね」

 

「ああ、当たり前だろう?私の子供なんだから」

 

「違うわ、私に似て、可愛いのよ」

 

「いやいやいや、私に似てだろう?」

 

「違うわよ」

 

しょうもない些細な話しをしながら寝室へ向かう二人。その背中は幸せに溢れていた。

 

 

そして、アイズとベルを寝室のベットへ運んだあと。アリアとへヴェルの二人はリビングに戻り、椅子へ座っていた。

 

「さぁ、今から真剣な話をしましょうか」

 

「ああ、そうだな」

 

アリアは微笑を浮かべていたが、その目は笑っていなかった。対するへヴェルの顔も、真剣そのものだ。二人の纏う雰囲気が先程までのとはうってかわって、ピリピリとした空気になった。

 

「オラリオはどうだった?」

 

「正直言って駄目だな。今はまだ闇派閥(イビィルス)も表だった活動はしていない。が、裏で燻っているらしく、何かが起きれば間違いなく均衡は崩れるだろう。………正直この時期に【黒龍】の討伐はきびしい」

 

「そうよね………今ゼウス・ファミリア(私達)とヘラ・ファミリアがオラリオを出るわけにはいかないわね」

 

「ああ。この時期だからこそ、オラリオを活気づけるためにも、討伐に行かなきゃいけないことはわかっているんだが……………。どうしたものか」

 

今オラリオでは、破壊と混沌を求む闇派閥(イビィルス)が何かを企んでいる。その何かはまだわからないが。

そんな中で、ギルドから【黒龍】を討伐しろと、ゼウス、ヘラ・ファミリアにミッションが発令された。先の遠征でリヴァイアサン、ヘビーモスを倒し、平和を望まない闇派閥(イビィルス)は、不満をつのらせている。

そんな状態オラリオの状態を見てギルド側も焦っているのはわかるが、いくらなんでもと、思わないこともない。

 

実は、へヴェルとアリアはゼウス・ファミリアに所属している。アリアはアイズを産む時に現役を引退したが、まだLv6の恩恵(ファルナ)は残っている。だから、ギルドからアリアも討伐に参加しろと、勅令が下った。しかし、へヴェルは勿論のこと、ファミリアの連中もアリアを参加させるのに反対した。

いくらLv6と言っても、必ず生きて帰れるという保証はない。まだ幼い子供を遺しては死ねない、死んじゃいけないと………。それでも討伐にいけというギルドに対しゼウス・ファミリアが、『それでもというのなら我々はギルド側から抜ける。』と言い、ギルドは渋々アリアの不参加を認めた。

その代わりといい、ギルドは団長であるへヴェルへの討伐強制参加を言い渡した。最初はファミリアが、ふざけるなと言っていたが、当の本人になだめられてしまった。

 

「……………あなた。私ね、嫌な予感がするの」

 

「どんな?」

 

「私たちが、子供たちを遺して、何処か遠くに行ってしまうような………………………そんな気が、するの」

 

「そうか…………………私もだよ」

 

重い空気が部屋中に広がる。

アリアはとても怯えているような顔でぽつりぽつりと言葉を零す。普段は使わないような『あなた』と言っているのも、不安だという証拠だ。

こういう時のアリアの予感は必ずと言ってもいいほど、よく当たる。それも、悪い予感ばかり…………。

 

アリアの予感が的中するのには理由があった。それは、アリアが精霊だからだ。それも、英雄譚に出てくるような風の大精霊【アリア】。この事は、ほんの少しの限られた人しか知らない。知られてはいけないのだ。その理由は今は割愛しよう。

本来なら精霊がヒューマンとの間に子供を産むことはない。それはへヴェル達であっても同じなのだが、へヴェル達は子供を作ることが出来た。子供が出来たのには理由がある。それは、へヴェルの中にもアリアの、精霊の血が流れるからだ。

 

あれは、10年前のことだった。まだLv4だったへヴェルは単独でダンジョンに行っている時、強化種のLv5のモンスターとエンカウントし、瀕死状態に陥った。そこをたまたま通りかかったLv6のアリアが万能薬(エリクサー)をかけ傷は塞がったが血があまりにも流れすぎて、今にも死んでしまいそうだった。そこでアリアは自分の正体がばれる覚悟で血を与えた。

血の気が戻り、意識を戻したへヴェルは、助けてくれた相手がアリアと知るやいなや、必死になって土下座し、お礼を言った。その姿がおかしくておかしくて、アリアはケラケラと笑う。そんなこんなで、アリアの血が混じり、半精霊となったのだ。半精霊となったへヴェルはそこからメキメキと強くなり、今ではアリアを通り越してオラリオ最強のLv7になった。そうして、アリアに結婚を申し込み今に至る。

 

「そろそろ、アイズ達にも剣を、戦いというものを教えた方が、いいのかもな」

 

「でもっ、それはっ!」

 

「わかっている。アイズ達にはまだ早い、だろう」

 

「わかっているなら!」

 

「だが、こんな時代だ。いつこの村にも飛び火が来るかわからんのだぞ、私たちには守りきれない」

 

「っ……」

 

アリアも分かってはいるのだ、分かっては。幾ら自分達が強くても、この世界に絶対はない。つまり、守りきれる保証はないという事だ。けれど、アイズ達はまだ幼すぎる。精霊は生まれた時から明確な自我があるため、アリアはすぐに戦えた。しかし、アイズ達は人間(ヒューマン)なのだ…。精霊の血が混じってはいるが、ほかの人間と大佐はない。7歳というのは、あまりにも早すぎる。

 

「それに、恩恵も与えていた方がいいのかもしれない」

 

「そんなっ」

 

「今すぐにとは、言わないさ。私が討伐に行く前ぐらいにはと………」

 

「……………………………」

 

「私もこんな事はしたくない。私とアリアの子だ、遅かれ早かれ冒険者になれと、ギルドが言ってくるはず」

 

「わかっているわ、そのぐらい……………」

 

そう、Lv6とLv7の子だ。ギルドが何も言わないはずがない。冒険者になるのは勿論のこと、最悪の場合オラリオからの出入りも制限されることになる。今の自分がそうなのだが、アイズ達を同じような目にはしたくない。

 

「何はともあれ、明日からアイズ達に剣を教えよう」

 

「………………………わかったわ。私も教える」

 

「すまんな」

 

「あなたが謝ることじゃないわ…………」

 

しばらく、二人の間に沈黙が流れる。重く、どんよりした空気が部屋中を埋めていく。

 

「ねぇ、ベルはどうするの?」

 

「何がだ?」

 

「何がって……ベルはまだ剣を持てないでしょう」

 

「ああ、それは短剣を使ってなんとかしよう」

 

「短剣って、へヴェルの得意分野じゃないでしょうに」

 

ベルはまだ5歳。身長は平均より低く100Cにも届かず、へヴェルの使用している剣は100C以上なので、持つことすらできないだろうとアリアは言った。小人族(パルゥム)用の剣なら持てなくはないのかもしれないが、村の周辺には武器屋がない。だからといって、オラリオに行くのは時間がかかる。短剣なら持てるはずだが、二人の得意分野ではない。

 

「何はともあれ、まず私の剣技を見てもらうことから始めよう」

 

「ええ、そうね……」

 

始めから剣を握ったところで何も出来ない。剣技を見せるとこからと、いうことだ。まずは、剣がどういうものなのか、どうやって持つのか、……剣がどれだけ危険であるか。これから色々なことを教えていかなければならない。教えることは苦手だ、と頭を抱え悩むへヴェルにアリアは少しだけ気が楽になった。

 

「「っっ」」

 

不意に窓から視線を感じる。殺意は全くもってなく、逆に懐かしい感じもする。

アリアとへヴェルが目を合わせ頷き合い、そっと窓を開ける。

 

「ファル!?」

 

窓を開けると、1羽の金色がかった白の梟が星の光で輝きながら入ってきた。アリアがその梟の名を呼ぶと、ファルと呼ばれた梟はアリアの肩に止まった。ファルは、神ゼウスの使い魔だ。つまり、アリア達宛に何らかの書面があるということだ。ファルは片足をあげ、吊るしてきた書面を渡す。それを、へヴェルが受け取り読み始める。

 

「ゼウスからか」

 

へヴェルの顔が読み進めるごとに曇っていく。

 

「なんて書いてあったの」

 

見かねたアリアがへヴェルに問う。

 

「【黒龍】討伐の遠征が、早まったと………」

 

「うそ……」

 

返ってきた返答にアリアの顔が一瞬にして凍りつく。

ゼウスからの書面にはこう書いてあった。

 

『へヴェル・ヴァレンシュタイン氏並びにアリア・ヴァレンシュタイン氏

 

急な知らせ、申し訳ない。ついさっき、偵察部隊からの報告で【黒龍】の動きが確認された。今のところ暴れる気配はないが、オラリオへゆっくり移動してるとのこと。それを受け、ギルドより討伐の予定を1週間後に早めろという勅令が出された。1週間後にそちらの村へ向かう。休暇中に申し訳ない。1週間後までに準備を済ませておいておくのだ。

本当に済まない。

ゼウス・ファミリア 主神 ゼウス』

 

「1週、間後………」

 

「っっ!こんな時に限って………」

 

討伐対象である【黒龍】が関わっている以上、ギルドからの勅令を跳ね返すわけにはいかない。そんなことはわかっているが、拳を握らずにはいられない。二人とも拳が白くなるほどに強く握る。ファルはテーブルに降り、アリアの手を優しく撫でる。ふわふわの羽で撫でられると、たちまちアリアの握る力は緩んだ。

 

「いつまでもこうしてはいられない。ゼウスへ返事を書かなければ……」

 

「そうね……」

 

へヴェルは 戸棚の引き出しから羊皮紙と羽根ペンを

取り出し、返事の書を書き始める。承諾の意と、アイズ達の恩恵(ファルナ)についてを………。その間、アリアはキッチンへ行き、ファルにあげる用のパンを探し出し、ちぎって食べさせていた。そして、ファルの毛をブラッシングし、もふもふをもっふもふににバージョンアップしていた。先程とはうって変わって、優しい笑顔である。

不意にガタッと扉が開く音がし、白い髪の毛が見えた。

 

「おかーさん、まだ起きてるの?」

 

眠い目を擦りながら、アリアの元へトテトテと歩み行ってくる。と、ベルはアリアの側にいる金色の塊を発見し、不思議そうにアリアを見る。

 

「ベル、起こしてしまったのね。」

 

首を傾げているベルの脇に手を入れ持ち上げて、ファルが見えるように抱っこする。

 

「この鳥さんはね、お母さんの大切なお友達なのよ。ふわふわで可愛いでしょう?」

 

「うん!ふわふわでかわいい!」

 

アリアに促され、恐る恐るベルはファルに手を触れる。と、お気に召したようで優しく触っている。

ファルはというと、ベルのされるがままになっていた。どうやら撫でられるのは、嫌いではないらしい。

 

「よし、できた」

 

「できたの?」

 

「ああ」

 

ペンを置き、へヴェルが立ち上がる。そして、ファルに餌をあげて、ゼウスへの手紙を括り付ける。

 

「ファル。お願いね」

 

アリアがファルをひとなでして、先程入ってきた窓を開ける。へヴェルがファルを腕にのせ窓のそばまで行き、外へと腕をふる。その力に乗ってファルは満天の星空へと、大きく美しい羽を羽ばたかせる。

 

「おかーさん、鳥さんどこ行ったの?」

 

「鳥さんはね、おうちに帰ったのよ」

 

「そっか〜」

 

「ええ、さぁベル。一緒に寝ましょうか」

 

「うん」

 

ふわぁと、欠伸をするベルに微笑みながら、へヴェルに軽く目配せをし、手を繋いで寝室へと歩いていく。

すると、

 

「おとうさんも」

 

といい、ベルの両隣に両親が並ぶ形になる。アリアとへヴェルは目を合わせ軽く笑った。

やっぱり子供には叶わないなぁと………

 




どうでしたか?
今回は結構真面目に書いたんですが……
変な部分があったらご報告お願いします((。´・ω・)。´_ _))ペコリ

これからどうなるんですかねえ……アイズが次回から訓練を始めると思います。ベル君はまだ剣を持てないですが、一応参加します。最初はへヴェルの紹介から始める予定っす。

じゃあ皆さんまた来週〜ヾ('ω'⊂ )))Σ≡サラバ!!


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へヴェルの強さ

どうも2週間ぶりです┏●

先週は定期考査があったため更新はお休みさせて頂きました(´•̥ω•̥`)<スイマセン!!

今回はなんか自分で書いてて変なところが多々あったので、読みにくいかと思います。
それでも呼んでくれたら嬉しいですです(* 'ᵕ' )


翌日、アイズとベルの剣術の稽古が始まった。

空は晴れ

へヴェルの遠征まではあと2週間………いや、1週間もない。残された時間は少ないが、最初なのでまずはへヴェルの鍛錬を見てもらう。

それから2日目にアイズには木で作った模擬剣を降ってもらう予定のようだ。

 

【蒼穹の丘】

そこはヤエタヒス村を遥かに上回る広大な草原地帯であり、遥か昔の古代にダンジョンから出てきた怪物(モンスター)の生き残りが居り、魔物ではない動物の住処であり、中央付近には未開拓の森まである、生態系豊かな場所だ。

 

そんな蒼穹の丘にある村からも家からも遠く離れた未開拓森林にへヴェル、アイズ、ベルは来ていた。ーーアリアはアイズ達に剣を教えることと、遠征が1週間早まったことを報告しに連日村長宅へ向かっていったーー

 

なぜ、こんな辺鄙なところまで3人が来ているかと言うと、それはへヴェルの強さを、冒険者の本当の強さをアイズとベルに知ってもらうため。

へヴェルのLvはオラリオ最強と言われるLv7。

そんなへヴェルが本気を出せるのはダンジョンの中のみである。村の近くで本気を出そうものなら、村の周辺が軽く吹き飛ぶだろう。

しかし近くに森しかないここなら、へヴェルもある程度力を出すことが出来るわけである。

 

へヴェルがオラリオ最強たる所以はそのスキルと魔法にある。

 

スキル

遠隔操作(オペレーター)

・自分と所属ファミリア団員の魔法を操ることが出

来る

・ 対象は自分の視覚範囲内にあること

・魔法の大きさにより使用時の消費精神力(マインド)は変化する。(魔法の大きさに比例)

・自身の魔法に限り、ファミリアの仲間の辺り発現(・・)にさせることができる(多大な精神力(マインド)が必要)

 

家族愛(ファミリアミイス)

回復薬(ポーション)や回復魔法を自身にかけられた時、その効果をファミリア内で共有する。なおかつ効力は劣らない。

・ファミリアの誰かの負傷時、傷の肩代わり

・魔力をファミリア内で共有

・味方の居場所を探知

 

魔法

原初の魔法(エレメント)

・属性 火 水 風 木 光 闇

・付与魔法 兼 攻撃魔法

・詠唱式『(いにしえ)の其の力来たれり…(属性名称)』

 

 

 

出鱈目なスキルとありえない魔法によりへヴェルはオラリオ最強となった。

Lv1の時からこのステータスが発現していた訳では無いが、強さの理由となったのは言うまでもないだろう。通常人間(ヒューマン)が覚えられる魔法は3つまで、それに加え1属性につき1つがいいところ。しかも、一生魔法が発現しない人も大勢いるだろう。それなのにへヴェルの覚えている魔法は1つとはいえ、6つの属性がついている。

 

後に出てくる千魔法(サウザンドエルフ)や、今いる冒険者の中で最強の魔道士九魔姫(ナインヘル)ことリヴェリア・リヨス・アールヴと比べると少しばかり劣るかもしれないが、へヴェルはエルフでなく人間(ヒューマン)なのだ。

つまりどいうことかと言うと、へヴェルは規格外という事だ。

 

 

「ねえねえお父さん!お父さんって魔法使えるんでしょう?」

 

「うん、使えるよ。まだ見せたこと無かったね」

 

ベルと手を繋いでいるアイズはその手をブンブン振り回しながら、いつになく高いテンションでへヴェルに聞く。アリアの魔法《エアリアル》は頻繁に見ているが、へヴェルは魔法の威力の調整が苦手なためまだアイズ達の前では使ったことがなかった。

 

「僕、おとーさんの魔法見てみたい!」

 

「分かった、じゃあ少し離れててね」

 

「「はーい!」」

 

〔古より其の力来たれり 全属性召喚〕

 

 

『エレメント』

 

詠唱が終わるとへヴェルの周りには6つの球体が浮かんでいた。

火、水、木、風、光、闇。

それぞれ今は球の形をしているが、実際は形を変えることが出来る。

例えば、伸ばしたり、細かく分散して雨のように降らせてみたり………。自由自在に操れるのはスキル遠隔操作(オペレーター)のおかげだ。

 

それを見たアイズ達はと言うと……。

 

 

「うわあ!お父さんすごい!たくさんあるー!」

 

「お母さんも凄いけど、お父さんももっと凄い!」

 

「いやあ、照れるなあ」

 

 

とてもとても大興奮だった。それは今までに無い程に。

ベルは鼻息を荒くさせ、アイズに至ってはぴょんぴょん飛び跳ねていた。アイズ達がへヴェルを褒めちぎるものから、だらしない顔をしながら頭をかいていた。それで、少し油断してしまったのだろう。

 

ふと、ベルがもっと見たい!というような感じで風の球に近づいてしまった。それに気づいたへヴェルは瞬時に魔法を解き、ベルの元へ駆けつけた。

怪我がないか確認をしてほっと、一息つく。

 

「ベル、魔法に近づいてはいけないとあれほど言ったよね」

 

「う、うん……でも、」

 

「でもじゃない。いいかい、ベル。お父さんの魔法はね、お母さんの魔法(エアリアル)と違って優しい風ではないんだ。いや、お母さんの魔法も本当は優しいものでは無い。お父さんの魔法は鎌鼬(かまいたち)と言って、真空の刃。つまり剣と一緒なんだ。触れたらそれだけで大怪我をしてしまう」

 

「…………………」

 

「魔法は人を傷つける。間違った使い方をすると人を殺めてしまうかもしれない。私達冒険者にはそんな力がある。……もちろん、人を傷つけない魔法もあるよ。けれど、全ての魔法には危険があると思いなさい。だからね、ベル。魔法には不用意に近づかないと約束して」

 

「うん、やくそくする。もう近づかない。お父さんごめんなさい」

 

へヴェルはベルの手を握り、いつもより強い口調でベルを叱る。

親が子を叱る時色々なやり方があるが、この場合一方的に怒鳴るのではなく、優しく諭す様な叱り方だ。ベルも、自分の為を思って叱ったのに気づいて、素直に謝り、約束した。

 

「アイズも約束してくれる?」

 

「うん、約束する」

 

アイズは両手を固く握り締めながらこくんと頷いた。

そんな2人の様子を見てへヴェルは苦笑する。

 

「よし、じゃあ今度は私の剣を見せよう」

 

「おとーさんの?」

 

「うん、そうだよ。今度こそ離れててね」

 

「うん、わかった」

 

不安そうな顔をして自分の顔を見るベルに、へヴェルはベルの頭を優しく撫で、頭を撫でられたベルは笑顔になった。

すると、アイズも撫でて欲しいのかむうっと頬をふくらませて、じとーっとへヴェル達を見つめていた。

それに気づいたへヴェルはふっと笑い、アイズに近づいてベルと同じように頭を撫でてやった。

 

「よし、じゃあいくよ」

 

アイズ達から離れたへヴェルは真剣な雰囲気を纏い直し、腰に下げられていた剣を引き抜く。刀身が真珠色の綺麗な剣だ。

素人目で見ても業物だとわかるそれを、とある一本の木に狙いを定めて静かに構える。

耳が痛くなるほどに辺りはしんとしている。

ふっ、と息が聞こえたかと思うと、既にへヴェルの剣は振り下ろされていた。

いつ動いたのかがわからない程にその動作は早かった。

 

「あ、」

 

やってしまった、と言う様な呟きをへヴェルが落とした次の瞬間。

 

森の一角が雪崩を起こした。

 

一本の木を切るつもりが、誤ってその周辺まで切ってしまったのだ。

へヴェルはこれでも手加減したつもりが、少しばかり力を入れすぎてしまったのである。

 

この一部始終を見ていた2人の子供たちは、唖然としていた。

それはもう、口をあんぐり開けて、目を大きく開きながら。

 

「どうだいベル、かっこいいだろう?」

 

「……………」

 

「ベ、ベル?どうしたんだ?」

 

へヴェルが二人の元に戻ってきて、ドヤ顔をしながらベルに問いかける。

しかし、ベルからの返事はない。

ダメだ。完全にフリーズしてしまっている。

 

「ベルっ、起きて」

 

「はっ」

 

アイズがかなり強めにベルの体を揺さぶり、声をかけると目を覚ました。

しかし、目をぱちくりさせていて、まだ状況が飲み込めてないようだ。

 

「大丈夫?ベル」

 

「お姉ちゃん……」

 

何度か呼びかけると、ようやくアイズの方を向いた。

しばらく放心状態になっていたが、段々とその瞳に涙を貯めていき、泣き出す寸前の顔になっていく。

 

「うぅぅー」

 

「ベル!?」

 

そしてとうとう泣き出してしまった。

へヴェルとアイズが慌ててベルに怪我をしたのか聞くが、ベルは首を横に振るばかり。

 

「お父さんが……」

 

「お父さんが?」

 

「怖かった……」

 

「えっ」

 

ようやく泣き止ませることに成功し、ベルが口を開いたかと思うとそんな言葉を言った。

怖い、と言われた本人はショックのあまり、白いを通り越して灰になりかけている。

 

「お父さん怖かったの?」

 

と、アイズが尋ねるとベルはこくんと頷きながら、アイズの手をぎゅっと握りしめる。

その返答にアイズは困惑していた。

というのも、ベルの言うほど怖くなかったからだ。確かに普段のイメージとはかけ離れているが、驚いただけでかっこいいと思ったからである。

 

「お父さん、私はかっこいいと思ったよ」

 

「アイズ……ありがとう」

 

灰になりかけている父に娘は声をかける。

その言葉で立ち直ったのか、少々驚きながらも優しく微笑む。

ベルはにこにこしている2人を再び泣きそうな顔をしながら見ている。

 

その様子に今日はもう続けられないとへヴェル思い、帰ることに決めた。

まだまだ見せたいものは色々あるが、少しとはいえ冒険者としての実力を見せれたので良しとする。

 

「今日はもう帰ろうか」

 

「もう帰るの?」

 

「ああ、また明日だね」

 

「うん、分かった」

 

帰り支度を済ませ、帰路につく。

 

その道中、ベルはアイズのそばを離れず、がっしりと手を繋いでいた。

 

 

 

ちなみに、家に着いて事情を話したへヴェルがアリアから怒られたのはご愛嬌。

 




もう少しへヴェルさん出鱈目の方が良かったですかねぇ……

来週は予定どうりに更新できるかと。
できなかったらすいません………

それではまた来週です〜。


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へヴェルさん凄い

申し訳ございません!!!めっちゃ遅れてしまいました!
いや、一週間以内は無理にしても二週に一度は投稿しようと思ったんですよ!でも無理でした……
3月は色々行事や初休み中のバイトが増えたこともあって、無理だったんです。許してください何でもしますから(何でもするとは言っていない)
3月内には投稿出来ましたが、少し内容が雑かも知れません。ご了承ください

では、本編のほうお楽しみください


へヴェルがベルを泣かせてアリアに怒られた翌日。

アリアを加えての本格的な鍛錬が始まろうとしていた。

 

まずはへヴェルの剣戟を見ることから始める。

場所は昨日と違い何かを切ったりする必要は無いので、家のすぐ側にある平地で行う。

今日は少し曇っているが、雨の心配はしなくてもいいだろう。

 

鍛錬用の木でできている片手剣――刃は潰してある――を構えているへヴェルを、アリア達が少し離れたところで見守る。

 

「ふっ」

 

短い息を吐いたかと思いきや、一瞬にして刀身がぶれた。

 

縦、横、斜め、上、下、様々な方向に払われる剣は、無茶苦茶なスピードで動かせれる。

一見、適当に動かしているだけのように見えるが実はちゃんとした法則があり、剣のスピードに目が慣れてくると、とても美しい剣舞となるのだ。

 

流石に子供の目では見えないと判断したのか、アリアがもっとゆっくり!と指示(ジェスチャー)を送る。

すると、剣の動きが比較的ゆっくりとしたものになり、子供の目でも追えるくらいにはなった。

 

 

あれだけの動きをしながらアリアの動きを見る余裕があるなんて、Lvの低い冒険者達からしたら卒倒物だろう。

いや、第一級冒険者でも難しいかもしれない。

 

 

剣の動きが見えるようになったアイズとベルの目に写ったものは、色々な方向から飛んでくる弧を描く剣線が重なり合う、とても綺麗な光景だった。

複雑な幾何学模様(きかがくもよう)みたいなそれは、魔法陣のようでもあった。

ベルは昨日の恐怖心は一切忘れさり、父親の剣舞に見とれていた。

アイズは言わずもがな、昨日は違う細やかさのある剣舞に見入っていた。

 

 

そんな二人の姿を見て、アリアはほっと胸を撫で下ろす。

実は昨日のへヴェルを見て、剣を持つことが出来なくなってしまったら、と思っていたのだ。

しかしそれは杞憂だったようだ。

へヴェルの剣舞を見て目を輝かせる子供達には、恐怖心はもう一切見えなかった。

 

しばらくしてそろそろ次へ進もうとアリアはへヴェルをじっと見つめる。

その視線の意図を理解した、へヴェルは縦横無尽に飛び交っていた剣を止め、ふうと一息ついた。

 

「なんで止めちゃうの〜?」

 

「もっと見たい!」

 

と、やめた途端に子供達から不満の野次が飛んでくる。

特にアイズなんかはベルと比べ物にならないくらいに怒っている。こんなに怒るなんて滅多にないことだ。

へヴェルもこんなに批判が来るなんて思いもしなかったらしく、参ったな…と、頭をかいている。

 

「大丈夫だよ、これからもっと凄いことをお父さんにやってもらうから」

 

アリアがそう言い聞かせるとアイズ達は大人しく引き下がったが、へヴェルは何をやらされるのかと気が気ではない。

ちょっと待ってね、と言い残し家の裏へ行ってきたアリアが持っていたものは、大量の枯葉だった。

それを見た瞬間に何をやらされるか悟ったへヴェルは、普段見せないようなとてつもなく嫌そうな顔をした。

 

「アリア……まさかとは思うけど、剣舞の後でアレをやるなんて言わないよね……?」

 

「そのまさかよ。体力はまだまだ有り余っているでしょう」

 

「本気……?」

 

「ええ。本気と書いて本気(マジ)と読むくらいね」

 

「はぁぁ」

 

アリアが黒い笑みを浮かべながらへヴェルに迫っていく。

どうやら、体力的な問題でへヴェル(第一級冒険者)でもきついことをやらせるようだ。

しかし、アリアの様子からは体力はまだまだ全然大丈夫そうな雰囲気である。証拠に彼は汗ひとつかいていない。

当然と言えば当然だろう、こんなことでへばっていたらダンジョンになど潜れるはずがない。

 

今から何をするかわからない2人はとりあえずへヴェルが嫌いなもの、とだけは判断した。

 

「じゃあ、アイズ、ベル。今からお父さんが凄いことするからしっかり見ててね!」

 

「すごいこと〜?」

 

「さっきの綺麗なやつよりも?」

 

「そうだよ〜」

 

「「やった〜!」」

 

先程の剣舞よりも凄いと言われ、2人の目は輝きを取り戻した。

それとは対称的にへヴェルの目は輝きを失っており、闇におおわれている………………ということは無く、やれやれといった表情を浮かべていた。へヴェルはかわいい我が子の為ならば何でもする男である。

 

「それじゃあいくよ〜」

 

アリアはそういうと、どこにあったのか踏み台の上に立ち、家の裏から持ってきた枯葉をへヴェルの上からばら撒き始めた。

ぎょっとする子供たちをよそに、枯葉は徐々にへヴェルの頭上へと迫る。

 

 

とうとう枯葉が頭に当たるかという寸前。

突然枯葉が真っ二つに分断され、別々の方向へと落ちていく。

さらに次から次へと降り掛かってくる枯葉も同様に、二つに分かれて地面へと落ちていく。

落ちてくる枯葉は止むことなく頭へ降り注ぐ。が、全ての葉が綺麗な綺麗に切断され、地面へと落ちていく。

 

ちなみに、へヴェルの使用している剣は先程の剣舞より変わっていない。

そう、あの刃が潰れた剣(・・・・・・)だ。

普通、枯葉はとても脆く、軽く握るだけでぐしゃっと崩れてしまう。

通常の刃が付いた剣でも、第一級冒険者には難しいかもしれない。

そんなものを切ったへヴェルは、少々、いやかなり、他の第一級冒険者と桁が違うと言えるだろう。

 

やがて、全ての枯葉を切り終わったへヴェルは、枯葉が舞う中、剣の汚れを落とすように払うと、ふぅと一息ついた。流石に疲れたらしい。

 

「私が言ったんだけど、本当に全部やるとは……。あの枯葉、500枚以上はあったわよ」

 

アリアが呆れながらも関心しながらため息をつく。いつの間にか台を降りている。

 

「お父さんかっこいい!!」

 

「おとーさんすごいすごい!」

 

子供達はさっきの不満も忘れ、大喜びしている様だった。それを見てアリアはひと安心する。

というのも、先日の件で子供たちが冒険者というものに、剣に対して恐怖心を抱いてしまっていたらと思っていたのだ。

無論、恐怖心が全くないというのもそれはそれで問題なのだが、へヴェルを嫌いになってしまったらという心配があった。しかしそれは杞憂だったようで、今の子供たちの目にはそんな恐怖心は見られなかった。

 

「よし、じゃあアイズ達の訓練を始めようか」

 

へヴェルが気持ちを切り替えるように、パンと手をたたいた。

アイズ達は少しびくっとし、驚いたようにへヴェルのほうを見て、そして二人仲良く首をかしげる。

 

「お父さん、訓練って何するの?」

 

アイズがそう問いかけると、へヴェルは困ったような顔をした。どうやら、二人に自分の技を見せることしか考えていなかったようで、助けを求めるようにアリアの顔を見る。

アリアは考えていなかったの?、というように呆れた顔をしたものの、一緒に考えてくれるみたいだ。

 

「まずは、剣に慣れることから始めたらどうかしら。私、アイズ達の剣を取ってくるわ」

 

「そうだね、はじめはそれがいいか。流石アリア」

 

「はいはい、お世辞はいいからちゃんとその次のこと考えといてね」

 

あはは…と空笑いをするへヴェルを軽くあしらい、アリアは家のなかに入っていく。家の中に剣なんてあっただろうか、と思っていると。

 

「お父さん、剣って重たい?」

 

「僕でも持てる?」

 

子供たちが不安そうにへヴェルとへヴェルの持っている剣を交互に見ていた。

へヴェルの持っている剣は大人の人間(ヒューマン)を基準にして作られた、量産型の剣だ。へヴェルが軽そうに持ってはいるが、まだ小さい子供にはとても重たそうに見えただろう。

 

「大丈夫だよ、お母さんが持ってくる剣は小人族(パルゥム)用に作られた剣だから。安心していいよ」

 

「お父さん、小人族(パルゥム)ってどんなのなの~?」

 

ベルの頭を撫でながら説明すると、さらに質問を重ねてくる。

家においてある英雄譚なんかでよくでてくるんだけどな……とへヴェルは思いつつも、身長の低い見た目は人間のような一族だと説明する。簡単な説明だが、意味は伝わっただろう。

 

「でも、ベルは少し身長が低いから短剣という武器で訓練しよう」

 

「私は大丈夫?」

 

「アイズは大丈夫だと思うよ。小人族(パルゥム)の剣で訓練しようか」

 

「わかった」

 

「え、僕もお姉ちゃんと同じのがいい‼」

 

ベルの身長は100Cもない。小人族(パルゥム)の剣でもベルにとっては持てなくはないとも、自由に振り回したりはできないだろう。自由に動かせない剣などただの重荷にしかならない。

それならば、へヴェルの分野外だがベルでも扱える短剣で練習したほうがいいだろう、と思ってのことだ。

アイズと同じ剣が使えないと知ったベルは、手をぶんぶん振り回す勢いで地団太を踏む。

普段は大人しいのに、アイズと違うことになったらこうして我儘を言う。この部分は将来治ってほしい。

いつもなら多少の我儘も聞いてあげるところだが、今回ばかりはそうはいかない。

アリアの予感を的中させないためにも、そして何より、遠くない将来、ベル達に襲い掛かる困難に打ち勝つためにも、今だけは厳しくすると心に決めたへヴェルであった。

 

 




いかがでしたでしょうか。文字量が多くなりそうだったのもあって短めにしました。本当は鍛錬まで行こうと思っていたんですけどね…………それは次回に持ち越しです。
というか書いてて思ったんですが、へヴェルさんチートすぎやしないですかい?
とあるラノベの主人公を少し参考にしたんですが、ダンまちのLv では無理があったようです。
まあ今更変更するのはめんどくさいのでもうこのままぶっちぎります。

それはそうとUAが7000突破しました!やはり数字で出ると嬉しいものですねぇ(o^―^o)
これからも頑張って行きたいと思います。応援してください!!
でも、今年は大学受験が控えているので、1か月に一度は絶対に投稿するという形で行きたいと思います。

ではまた次回お会いしましょう


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子供たちの特訓 その①

申し訳ございません。三ヶ月もたってしまいました……。
一か月に一回はしようと思ったのに……。
ごめんなさい。(o_ _)o))
ちょっと今進路のことで悩んでるので次はさらに遅くなるかもです。
それでも見てくれる方のために少しでも早く投稿するように頑張りますので、よろしくお願いします!


我儘を言っていたベルを何とかなだめ、理由を説明して納得してもらった。まだ5歳のベルに説明をしても、半分ほど理解はできてないだろうがアイズが言った「わがまま言うベルは嫌い」という言葉が出た瞬間大人しくなった。

父親の面目が丸潰れのへヴェルは酷く落ち込んだそうな。仕方ない、ベルは生粋のお姉ちゃんっこなのだから。

 

「みんなお待たせ。剣持ってきたわよ」

 

ちょうどいいタイミングでアリアが戻ってきた、その手には普通の剣と短剣が握られている。

へヴェルと違い木製ではなく鉄で出来ているが、刃はちゃんと潰してある。

 

「はいどーぞ。こっちがアイズでこっちがベルね」

 

「「ありがとうお母さん」」

 

「しばらくはそれで剣の練習をするから大事にしてね」

 

ベルがこれから使う自分の剣を見て落ち込むかと思いきや、何も言わなかった。ただじーっと不思議そうに手元にある姉とは違う短剣を眺めているだけである。

短剣はいつも読み聞かせている英雄譚で沢山出てきたはずだから、思っていたのと違うわけでもないだろう。ただ、何かを噛み締めるように、短剣を握っている。

すると、へヴェルがベルの肩に手を置いた。

 

「その剣、大事にしてくれるかい?」

 

その問いかけにベルはこくんと頷いた。

 

「いいかいベル、武器は己の半身。今はまだ練習用のどこにでも売っている剣だよ。だけど、いつの日かベルが自分で剣を買ったときは、その時はちゃんと大事にしてあげてね」

 

へヴェルの話をベルはもとより、アイズも真剣に聞いていた。二人とも自分が初めてもらった剣を腕の中で抱きしめながら。

アリアも今は寝室に置いてある自分の愛剣を思いながら、剣を腰に履いていた頃を思い出し、微笑みながら子供たちを眺めていた。

 

「アイズもその剣、大事にしてあげてね」

 

「うん。お父さんみたいに大事にする」

 

「ん?私みたいに?」

 

アイズの返答が意外だったのか、へヴェルは呆気にとられた顔をしていた。

アイズがそう言った理由はというと、家にいるときのへヴェルを見ていたからである。

みんなが寝静まった夜更け、お手洗いに行きたくなったアイズは両親の寝室の明かりがついていることに気づいた。音を立てないように忍び足でドアの隙間から部屋の中を覗いてみると、ベットに腰かけたへヴェル()が見えた。へヴェルは愛剣を手に持ち何かをしていた。そのなにかはまだ幼いアイズにはわからなかったが、大事にしていることだけはわかった。

 

「アイズ、どうして私みたいにって言ったんだい?」

 

「内緒っ」

 

不思議そうに尋ねるへヴェルに、アイズはそう言って屈託なく笑った。

ちなみにアリアはアイズが寝室を覗いていたことを知っているが口には出さず、笑顔の我が子を見てにっこりするだけであった。

 

「それじゃあ始めようか。まずは剣の持ち方から」

 

へヴェルがお手本を見せ、アイズ達はそれを見て真似をする。時折アリアが間違えている部分を指摘し、徐々に正解へと導いてゆく。

剣の持ち方が終わると、構え方、剣の振り方、足の動かし方など、基本的なものから教えていく。

 

それらすべてが教え終わるころには太陽が沈みかけていた。

お昼ご飯を食べてから訓練を始めたので、休憩を入れていたとはいえ優に4時間は体を動かしていたことになる。一つ一つの動きを丁寧に教えたためこのように時間がかかってしまったが、時間をかけずに雑に教えるよりも、時間をかけて丁寧に教えた方が断然いいに決まっている。何しろ二人はまだ子供で初心者だ。基礎がしっかりとできていないとそれ以上のことができなくなる。逆に言えば基礎さえしっかりできていれば、あとは自分の努力次第である程度までは成長が望める。

たとえ自分たちがいなくなったとしてもいいように、アイズ達が生きていけるようにと、へヴェルとアリアは思っているのだ。

 

勿論、子供たちを置いて簡単に死ぬつもりはないが。

 

「二人とも、よく頑張ったね。今日はこれで終わりだよ」

 

へヴェルが二人をほめるように声をかけるが、返事はなく、ぜーはーぜーはーといった荒い呼吸が聞こえるのみだ。返事もできないほど疲れているらしい。

当然だろう。何しろ恩恵をもらっている冒険者から見ても逃げ出したいレベルのしごきだったのだから。まあそれは、両親の愛ゆえにだが。

 

「そうだ、二人とも頑張ったご褒美に好きなご飯を作ってあげるわよ!」

 

「……僕、ハンバーグが食べたい」

 

「……私も」

 

今にも息絶えそうな声で二人はつぶやく。もう一歩も動けないという風に地面に倒れこむ二人は汗と土埃で汚れていた。まだ幼い体でこうなるまで耐えきったのは、さすがは第一級冒険者の子供と言えるだろう。

 

「わかったわ、じゃあお母さん急いでお肉買ってくるね!」

 

頑張った子だもたちの為においしいご飯を作るため、いい食材を買ってくると意気込むアリア。一応食材の予備はあるものの新鮮な方がおいしいだろうと、今から買いに行く気満々だ。

動けない子供たちをへヴェルと一緒に家のソファへ運んだあと、夕暮れで草原が紅く染まる中アリアは財布と買い物籠を持ち閉店間際の村のお肉屋さんへと全力疾走して行った。なお、しっかりと靴は履いて行った模様。

 

一方へヴェルはというと、子供たちをお風呂に入れていた。流石に泥まみれのまま食事は衛生上よろしくないと思いー自分も汗を流したかったのでー、疲れている子供たちを励まし?今に至る。

交代で二人を洗った後最後に自分が洗い、三人で湯船につかっている。流石のヘヴェルも疲れて膝の上にアイズ、その上にベルを乗せてぐでーんとしている。

オラリオでは英雄だの最強の冒険者だの言われているヘヴェルだが、家に帰ればこんなものだ。まあ、ゼウス・ファミリアからするとアリアもヘヴェルも子供たちの前ではただの親ばかに見えているのだが。

 

「ねえお父さん」

 

「ん、なんだい?ベル」

 

「お父さんはどうしてそんなにつよいの?どうしてつよくなろうとおもったの?」

 

「私も聞きたい」

 

「うーん、そうだねー」

 

ふとベルがそんなことを聞いてきた。さっきまで二人とも眠そうだったのに、不思議と今は目がパッチリと開いてる。

ヘヴェルは悩みながらも子供たちがわかりやすいように言葉を選びながら話す。

 

「私には守らなければいけないものがあったからかな」

 

「守らないといけないもの?」

 

「うん、そうだよ。ベルは強くなりたい?」

 

「なりたい!!」

 

ベルは湯船から勢い良く立ち上がりヘヴェルに向き直って頷いた。

 

「なら、どうして強くなりたいの?」

 

「お母さんと、お父さんと、アイズお姉ちゃんと、村のみんなを悪い怪物から守りたいから!」

 

勢いよく宣言するベル。

にこにことほほ笑んでいる父を見て、自分の言ったこととヘヴェルの言ったことが同じだと気づいた。

 

「アイズも強くなりたい?」

 

「うん!私もお父さんみたいに強くなって皆を守れるようになりたい!」

 

アイズもベルと同じように湯船から立ち上がり宣言する。

そんな二人を見てほほ笑むヘヴェル。もう一度座らせ頭をよしよしと撫でてやった。

 

「ねえお父さん。お父さんは英雄なんでしょう?」

 

「そう言われてるけどね……」

 

アイズがふとそんなことを言ってきた。ヘヴェルはオラリオ内だけではなく、大陸中にその名が知れ渡っているほど有名だ。彼の戦いぶりを見た誰かが英雄と呼び始め、瞬く間にそれが浸透していった。

実際に彼に救われた人は何人もいる。その人自身だけではなくその人の家族や恋人だったりと、オラリオ内外で大勢の人を救ってきたヘヴェルにはぴったりの称号なのだが、本人は気に入ってはないようだ。

 

「じゃあ、僕たちみんなの英雄なんだね!」

 

「それは違うよ」

 

「どうして?」

 

そう、ヘヴェルはみんなの英雄ではないのだ。

まだ子供たちが生まれる前、それよりもっと前かもしれない。ヘヴェルには一生護ると誓った相手がいるのだ。

 

「私には護ると誓った人がいるからね」

 

「じゃあ私たちのことは守ってくれないの?」

 

「そういうわけではないよっ。アイズもベルも、みんな私が守る」

 

アイズが不安そうな声音で疑問を投げかける。ヘヴェルは慌てて否定し、優しくアイズの頭に手を置いた。

そのまま撫でるとアイズが嬉しそうににっこり笑う。それを見てベルが羨ましそうにヘヴェルをじーっと見ているので、まだまだ子供だなと思いつつも撫でてやった。

 




いかがでしたか?

そういえばダンまち15巻発売されましたね!皆さんもう読まれました?
私はまだなので楽しみです!

それではまた次の話でお会いしましょう!


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