ちょっとエッチで正しいハーレムの作り方 (上級読者)
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プロローグ

異世界ルーンの西の大陸の中心に聳える白帝城。100の諸侯を束ねる魔道王国エロスの都城であり、そこには絶世の美少年と噂される魔王子アベルがいた。

今年10歳になる王子は無事精通が始まり、自分のハーレムを持つことを許されたが、ハーレムはエロス王家にとって神聖なもので、代々の掟『性約』に従わねばならなった。

 

 

エロス王家『性約』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

Ⅰ、エロス家の後継者は精通・初潮が始まるとハーレム主となることが出来る。

Ⅱ、ハーレム主は10人までハーレム候補を選ぶことが出来る。

Ⅲ、ハーレム主とハーレム候補の関係は互いの合意の上に成り立つものとする。

Ⅳ、ハーレム候補の選定は精通・初潮が始まってから半年以内に終えるものとする。

Ⅴ、但し性交を誰かに一度でも行うとそこでハーレム候補の選定は強制終了となる。

Ⅵ、選定期間が過ぎた後にハーレムへ女子・男子を追加することは一生涯出来ない。

Ⅶ、ハーレム主はハーレムに入った者以外と性交してはならない。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

アベルは淫乱だが、しかし愚鈍ではなかった。今、この時が(以下会話文

 

 

ゲシュタルトよ。

 

はい。王子。

 

決められぬな。

 

駄目ですか。

 

うむ。余は女とは99パーセント容姿だと思う。

 

はい。存じ上げております。

 

このように国中の女子をカタログにしてあると確かにハーレム入りの選定をするには分かり易い。

 

6歳~10歳まで、殿下のストライクゾーン70万人でございまする。

 

うむ。だがな、ゲシュタルトよ。

 

はい。

 

駄目だこれは。写真は写真でしかない。

 

はい。写真は写真にございます(何言ってるのコイツ)

 

写真写りというものがあろう。ブスが美人に、美人がブスに。どうするのだ。

 

カタログにて100人ほどお決め頂いて、その後、直接……

 

ゲシュタルトよ。余を謀るのか?

 

は、はい?

 

ブスが美人に見えていた場合はそれでよかろう。しかし美人がブスに見えていた場合はどうするのだ。見逃してしまうではないかっ! 愚か者めがっ!!!!!

 

ひええぇえええ。ボシュ……。墨墨 骨 墨墨。

 

ふん…。暗黒公爵サキエルはおるか。

 

シュタッ! くくくっ。ここに……。

 

狩りに行くぞ。ふははははっ。

 

くくくっ。



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メルルの章 01 ★★☆ メルルの小屋

メルル、時間にゃ。ペシ、ペシ。

 

う、う~ん…。

 

起きるにゃ。ペシ、ペシ。

 

王子たま~。もっとキス…(////

 

寝ぼけるにゃ。もう教会に行く時間にゃ。ドス、ドス。

 

ゴホゴホ…。ん? あれ? なんだぁ。にゃん太かぁ。う~ん…。もう少し寝かせて…。

 

遅刻したらまたメルルがシスターに怒られるにゃ! ドス、ドス。

 

痛い…。もぅ…。にゃん太がメルルの代わりに行って来てよぅ。あたしは、あと少しだけ、夢の中の王子さまとキスしてるんだから(////

 

にゃん? 王子さま?

 

えへへっ。ゆうべ、にゃん太が読んでくれた絵本の王子さま…(////

 

にゃー? シンデレラ?

 

うん! でもそれはお姫様の名前。お姫様はメルルなの(////

 

にゃにゃ…。王子の名前ってなんだっけ…。にゃん太?

 

……違うと思う。

 

にゃ…。そっか…。にゃん太じゃにゃいのか…。しょぼ~ん…。

 

あっ。ごめん、にゃん太…。撫で撫で。にゃん太が嫌いって訳じゃないの。撫で撫で。

 

にゃ~ん…。

 

絵本に描かれた王子さまとにゃん太の姿が違うから、あたし、つい…。ごめん…。

 

にゃ…。にゃん太は猫だからメルルの王子になれないのにゃ…。仕方ないのにゃ…。

 

そ、そんなことない。絵本の王子さまには名前が無いの。読んだ女の子が好きな名前を入れていいんだと思う。女の子は誰もがお姫様になれて、みんな自分だけの王子さまがいるんだわ。だからメルルが望めば誰でもメルルの王子さまになれるよ。

 

そうにゃの?

 

うん…。

 

メルルは誰が王子になって欲しいにゃ?

 

メルルの王子さまは…にゃん太がいい…(////

 

にゃ…。メルルはにゃん太のこと好きにゃんか?

 

コクン…(////

 

にゃはははっ♪ やっぱりメルルもボクの魅力にメロメロにゃったか♪

 

ふぇっ?

 

ボクはチョーカッコいいから求愛されまくりなのにゃ♪ まぁ、来るもの拒まずにゃ。メルルよ、そちをにゃん太ハーレムの一員にしてやるにゃ、他のメス猫たちと仲良くするにゃんよ?

 

ムカッ。

 

んにゃ? どうしたにゃ? ハーレム39号よ。

 

ギュ~ッ!

 

ふにゃあああ!! 痛いにゃぁぁぁ!! メ、メルル、つねるの駄目にゃ、やめるにゃ!!

 

メルルの王子さまは、メルルが何をしても許してくれる優しい王子さまなんだもん!

 

い、いやにゃ~!! 痛いにゃ~!! 王子なんてもういやにゃん~~!! そ、そうにゃ、メルルの王子は、にゃん太じゃなくて、アベルにするにゃ!!

 

……ん? アベル? 誰それ?

 

ふにゃー。この国の王子にゃ。ルーンで1番の美少年にゃ…。しらにゃいのか?

 

知らない…。

 

この家はテレビもラジオも新聞もにゃいからにゃー。しょうがにゃいか。

 

アベルさま…。この国の王子さま…。

 

そうにゃ。まだ10才だから7才のメルルにピッタリにゃ。結婚相手も探してるにゃ。

 

……。

 

にゃ? どうしたにゃ?

 

なんでメルルが知らないこと、にゃん太は知ってるの?

 

にゃん太はこの村に来てメルルに拾われる前は、王都と呼ばれる街で暮らしていたにゃ。そこの娘達の間ではアベルの噂で持ちきりだったにゃ。

 

王都…。

 

にゃにゃ。この国、エロスの中心、王都ナロウにゃ。王子が暮らす真っ白い城があって、その周りは森や湖の公園になってるのにゃ。綺麗にゃんよ…。南に行けばお空の雲より高い塔がい~っぱい建っていて、人がた~くさん暮らしているのにゃ。

 

たくさん? この村より多いの? 100人くらい?

 

もっとにゃ。

 

110人?

 

もっとにゃ。

 

120人?

 

もっとにゃ。

 

130人?

 

にゃー! キリがないにゃ! メルル驚くにゃよ。王都の人口はにゃんと150万人なのにゃ!

 

ひゃくごじゅうまん? まん? まんってなに?

 

にゃ…。ええっ…と、とにかくたくさんにゃ! この村の中心にある世界樹の葉っぱより多いにゃ。

 

えー。にゃん太、うそばっかりー。

 

本当の話にゃ! 行けば分かるにゃ。

 

行けばって…。

 

にゃ?

 

あたしは行けないよ…。

 

どうしてにゃ?

 

だってこの村から出たら駄目だもん。シスターに怒られるもん…。

 

にゃはははっ。怒られるのが怖いのかにゃ。メルルは怖がりにゃ。弱虫なんだにゃ。

 

うううっ~。怖いんじゃないもん! シスターは…。シスターは今までみなしごだったあたしを拾ってくれて、育ててくれた人なんだもん。だから…。だから駄目なんだもん…。

 

にゃ~にゃ~。そうなにょか。王都はいいとこにゃのににゃー。綺麗な服が沢山あって、美味しい食べ物も沢山にゃ、みんな自由に自分のしたいことをして、支え合って、楽しんで暮らしてるのにゃ、友達も沢山出来るにゃ、こんなちいさな村とは…

 

にゃん太のイジワル!

 

にゃ?

 

そんなにそこがいいなら行っちゃえばいいんだ。

 

行くにゃ。

 

えっ…。

 

にゃん太はもう直ぐこの村を出て王都に戻るにゃ。

 

……。

 

にゃ、どうしたにゃ、メルル?

 

にゃん太がいなくなったら、またあたし一人…。

 

にゃぁぁ~っ! にゃぁぁ~っ! メルル泣くにゃ。メルルも一緒に連れてってあげるから。泣いちゃ駄目にゃん…。ペロペロ…。

 

だって…。だって…。シスターが…。

 

メルルの人生はシスターのものじゃないにゃ。ペロペロ…。

 

うん…。

 

ボクと一緒に王都へ行きたいんにゃろ? ペロペロ…。

 

うん!

 

にゃ。じゃ、一緒に行くにゃ。ペロペロ…。

 

……メルルの王子さまは、やっぱりにゃん太がいい。チュッ(////

 

にゃにゃ~ん。うれしいにゃ~ん。メルルのキス気持ちいいにゃん(////

 

えへへっ(////

 

にゃにゃん。ではメルル姫、もうベッドから出るにゃ。……目覚めの時間にゃ。チュッ(////

 

うん…。チュッ(////

 



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メルルの章 02 ★★☆ メルルの小屋

にゃん太…。歯ブラシ取って。

 

にゃ。ライオンこども歯ブラシにゃ!

 

歯磨き粉…。

 

にゃ。甘口、いちご味にゃ!

 

んー。ぶちゅ…。はむっ。シュコシュコ…。シュコシュコ…。

 

メルル、今日のヘアースタイルはどうするにゃ?

 

ん…。シュコシュコ…。シュコシュコ…。チラッ(////

 

にゃん?

 

こっぷゅ…。

 

にゃ。お水にゃ!

 

ごくごく、くちゅくちゅ、ぴゅ~っ。うー。ど、どうしようかな。……に、にゃん太はどんなのがいいの? チラッ(////

 

にゃん太? にゃん太はそうだにゃ。メルルはアクアブルーの長い髪が綺麗にゃから、ツインテールで、みっくみくにして欲しいにゃ。

 

みっくみく?

 

初音ミクちゃんみたいなのがいいにゃ!

 

ムカッ。メルルはメルルだもん! 初音ミクちゃんって人じゃないもん!

 

にゃー。ミクちゃんは人じゃないにゃ、電子の世界の歌姫で実在しないのにゃ。

 

人じゃない? 電子? 歌姫…? よくわかんない…。

 

にゃにゃ。説明するのはむつかしいにゃ。とにかくメルルはそのミクちゃんに生き写しにゃのにゃ。ちょっとやって欲しいにゃ。

 

えー。

 

ちょっとだけにゃん。ミクちゃんに会うのが、にゃん太の夢だったにゃ。

 

にゃん太はミクちゃんが好きで、メルルはミクちゃんの代わり…。

 

ちがうにゃ! にゃん太はメルルが好きにゃ! コスプレという遊びのつもりだったにゃ…。メルルを悲しませて、ごめんにゃん…。

 

チラッ。もうっ、しょうがないなぁ…。ツインテールってどうやるの?(////

 

いいのかにゃ!

 

う、うん(////

 

じゃ、にゃん太がくくってあげるにゃ! ぴよ~~ん。バシッ。

 

わわわっ。にゃん太が、頭の上に…。

 

髪をこうして束ねてリボンで括って、こっちも…。うんしょよいしょ。……できたにゃ!

 

す、すごく手際いいね、にゃん太…って、うわぁ…。メルルの髪が尻尾みたい…。くるくる。あはははっ、面白い。ミクちゃんって変な髪形なんだね。

 

変じゃないにゃ!! みっくみくにぁ!!! 綺麗にゃ!!! にゃあああああああ!!!! 最高にゃ!!! メルルは間違いなくルーン1番の美少女にゃ!!! 天使ちゃん光臨にゃ!!!

 

あ、ありがとう(////

 

そ、そうにゃ!!! 衣装も合わせて……。あぁ…。鼻血出てきたにゃ。

 

ね、ねこが鼻血って…。ちょっと落ち着いて…。

 

はぁはぁはぁ…。にゃはん…。グゥー…。にゃ? グゥー…。グゥー…。にゃ…。

 

ん?

 

グゥー…。にゃ…。にゃん太、興奮し過ぎて、おなかすいたにゃ…。朝ごはん欲しいにゃ(////

 

はいはい。じゃ、料理作るね。お味噌汁と、ご飯。あとメルルは玉子焼き。にゃん太はカツオ節ね。

 

にゃ! にゃー! わーい! ねこまんまにゃ!

 

あたしはメルル~ ハーメルンの少女なの♪

 

にゃにゃ♪ メルル♪

 

ハーメルンの少女はぁ~ 異世界に飛ばされて~イケメン王子に玉の輿~♪

 

にゃ~にゃん♪ 玉の輿~♪

 

それで満足? NO NO ハーメルンの少女はぁ~ ちょぴりビッチな乙女なの~♪

 

に、にゃ? ビ、ビッチ?

 

王子だけじゃ満足出来ない~♪ ニヒルな執事も~ ワイルドな将軍も~ クールな魔道師も~ ショタな天使も~♪ イケメンだったら~ あたしのキッスで~ 虜になって貰うわ~♪ チュッ♪

 

にゃー! にゃー! 駄目にゃー! 駄目にゃー!

 

ハーメルン♪ ハーメルン♪ ハーメルンの少女はぁ~ ちょぴり夢みがちな乙女なの~♪

 

にゃ…。やれやれにゃ…。

 

ハーメルン♪ ハーメルン♪ ハーメルンの少女はぁ~ ちょぴりサッキュバスちゃんなの~♪

 

困ったもんにゃ…。

 

くるるるる。ビシッ! ドンブリ。ビシッ! ごはん。ビシッ! お味噌汁。ビシッ! にゃん太のは、ごはんとお味噌汁をぐ~ちゃぐちゃで、かつお節をパ~ラパラ…。あたしのは、たまご焼き。はい出来た!

 

す、すごいにゃ~~~!! 歌を歌い終わったら、いつの間にか、ねこまんまと、たまご焼きご膳が完成してるにゃ!!

 

にゃん太~。ねこまんま、どうぞ、めしあがれ!

 

わーい。バクバク、むしゃむしゃ。おいしいにゃ!

 

えへへへっ。パクパク、もぐもぐ。おいしいね!

 

にゃはははっ。むしゃむしゃ。ごっくん! むしゃむしゃ。ごっくん! むしゃむしゃ。ごっくん! むしゃむしゃ。ごっくん!

 

にゃん太、お髭にごはん粒ついてるよ。ひょい。パクッ。もぐもぐ。

 

ありがとにゃ、メルルのほっぺにもごはん粒ついてるにゃ! ペロペロ。パクッ。もにゅもにゅ。

 

にゃん太、ちよっとたまご焼き、食べてみる?

 

にゃ!!

 

あ~~~ん。

 

にゃ~~~ん。パクッ。もぐもぐ。うにゃ!!! 甘いにゃ! 美味しいにゃ!

 

お砂糖入りなんだよ。

 

お返しにゃん! にゃん太のねこまんま食べるにゃ! にゃ~~~ん。

 

えっ! はうぅ…(////

 

爪は引っ込めてるにゃ。大丈夫にゃ。にゃ~~~ん。

 

う、うん。ぱくっ。もぐもぐ。えへへっ。美味しいよ(////

 

にゃー。にゃー。ぱくぱく。もぐもぐ。ごちそうさまにゃん!

 

おそまつさま。ぱくぱくぱく。もぐもぐもぐ。ごちそうさま!

 

にゃはははは。じゃもうメルルは教会に行くにゃ。後片付けは、にゃん太がやっとくにゃん!

 

あっ、もう8時か。急がなくっちゃ。ごめんね、にゃん太。

 

にゃー。

 

バタバタ。ぱじゃま脱ぎ脱ぎ、ブラウス着たし! ネクタイ締めたし! スカート穿いたし! ハンカチ持ったし! テッシュ持ったし!

 

にゃぁぁぁぁぁぁ!!! みっくみくにゃ!!!(////

 

ふ~~んだっ♪ メルルはメルルだもん♪(くるくる~~と7才の幼女が体を回転させ、ツインテールの髪と、ミニスカートが舞ってパンチラ。水色と白のストライプが入った、みっくみくなおパンツでしたぞっ!)

 

ふにゃ~!!!!!!!(////

 

おとなしくお留守番してるのよ? 教会のご奉仕が終わったらお手当てで晩ご飯に猫缶買って来てあげるからね!

 

にゃ!! にゃ!! わーい!! カルカン! カルカン! 猫まっしぐらにゃん! にゃん太はお魚味がいいにゃ!!

 

うん! じゃ、にゃん太、行ってきま~す。バタン。

 

行ってにゃっしゃ~い。メルル姫にゃま~。

 



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メルルの章 03 ★☆☆ メルルの村(世界樹の広場)

ルンルン、ルン。アハッ♪ 今日もいい天気だな。お日様がキラキラと輝いてるわ♪ エヘッ♪

 

待ちたまえ。

 

ふへぇ? キョロキョロ…? ん…? てくてく…。

 

キョロキョロとした君だ。ツインテールの。みっくみくの。

 

うにゃ? キョロキョロ…。

 

余は君の頭上、50mの位置にいる。

 

えっ…? あっ! 世界樹のテッペンに誰かいる…。

 

とぅ…。くるくる。スタッ…。

 

はわわわわ…。

 

おはよう。

 

お、おはようなのだ…。

 

そちはメルルだな?

 

うん。おねえさん誰?

 

おねえさんではない。余はアベルである。男である。美しきゆえ、女に間違われることもあるが、それは失礼なことである。以後、気を付けるように。で、メルルよ今日はお前にだな…。ん? どうした?

 

本当に男なの…?

 

うむっ。余は男であるぞ。

 

……。ジー。

 

な、なんだその目は。疑っておるのか?

 

疑ってないよ、サファイアさん。

 

……わかった。ズボン脱ぎ脱ぎ。おパンツ脱ぎ脱ぎ(////

 

きゃっ!! なにすんのよっ!!(////

 

証拠を見せるのだ。余も恥ずかしいが、話が先に進まぬからのう。ポロン…(////

 

わわっ…(////

 

ほら! どうじゃ! 余は男であろう(////

 

……お股に変なの付いてる(////

 

しっ、失敬な…。変なのではないぞっ。これはチンチンというものだ。男にのみついておる。知らんのか…?(////

 

うん、初めてみた…(////

 

そ、そうジッと見るな…(////

 

チンチンって、ちっちゃくて可愛いものなんだね(////

 

よっ、余はまだ10才だからのう。こっ、これからチンチンも大きくなるのだっ(////

 

ふ~~ん。

 

も、もう分かったであろう? 余は男で…(////

 

……。ぐわしっ!!

 

ぎ、ぎゃゃやややっ!!! いっ、いっ、いっ、痛いっ!!! な、な、な、なにをする!!! なぜ触るっ!!! い、いや、なぜ握り締めるのだっ!!! それも躊躇なく、思いっきり!!! 信じられんわ!!! 離すのだっ!!!

 

うん…。ハシッ…。

 

うううっ。酷いぞ…。余のチンチンが吃驚して縮んでしまったではないか…。

 

触ったらいけなかったの?

 

当たり前だっ!! メルルも触られたら嫌であろう? 同じことじゃ。

 

メルルはそんなの付いて無いけど。

 

無くてもだ。そちも誰かにお股を触られるのは嫌であろう?

 

うん…。嫌だ…。ごめんね、チンチンさん。

 

……余のチンチンに謝るのならともかく、余の顔を見ながらそう謝られると違和感があるのう。余はチンチンではない。チンチンというのは余の下半身の名だ。余の名はアベルだ。

 

アベルさんの下半身はチンチン。

 

あっ。いや、そうではなく…。むうっ…。余の説明が不十分であったな…。チンチンはこの部分だけだ。

 

これも?

 

下はタマタマだ。上がチンチンだ。そして余の名はアベルで、そちの名はメルルだ。よいか? 覚えたか? あぁ…メモするのか…。うん…。よい心掛けだが…。

 

たまたま…ちんちん…書き書きっと。

 

くくくっ。違います。メルルさま。上から、チンチン、タマタマの順にございます。逆でございます。

 

そ、そっか…。消し消し。ちんちん…たまたま…書き書き…って、アンタだれ?

 

くくくっ。わたくしでございますか? わたくしの名はサキエル。アベルさまの執事にございます。あぁ、ちょっと失礼。大切なお話がございますのでメルル姫は少しお眠り下さい。 ……パチッ☆

 

ほえ……。ぐうぅ……。ZZzzzz…。 ZZzzzz…。

 

……なんの用だ。サキエル。

 

くくくっ。王子、生き残った村人達が教会に結界を張り、立て篭もってしまいまして…。

 

……あのような連中の結界、お前なら簡単に崩せるであろう?

 

くくくっ。出来ますが、先ほど降伏したいとの申し出がありましたので…。一応、王子にご報告とご確認を…。

 

……計画に変更はありえぬ。降伏は無視せよ。結界を崩し、中にいる全員を殺せ。

 

くくくっ。殆どが非戦闘員でございます。女性もおりますが。

 

くどい…。殺し終えたら焼却魔法でこの村の全てを焼き尽くせ。地下室もあるやも知れん。探知魔法を使ってぬかりなくな…。

 

くくくっ。御意。

 

……行け。

 

くくくっ。催眠解除。……パチッ★ シュタッ!

 

ん? あっ、あれ? あたし…。

 

……メルルよ。立ったまま寝てはいかんぞ。あぁ、よだれが出ておるのう…。ハンカチで拭き拭き。

 

わわわっ…(////

 

よし…。綺麗になった。

 

あ、ありがと…(////

 

夜更かしは程ほどにせねばいかん。よい子は早寝早起きである。

 

メルルは夜更かしなんかしないもん!

 

嘘はいかんぞ。ゆうべは夜遅くまで遊んでおったではないか。

 

……。

 

どうした?

 

……どうしてそんなこと知ってるの?

 

ふふん。余はメルルのことなら何でも知っておるぞ。そちはルーン1番の美少女として余のハーレム候補の筆頭となっておるからのう。

 

ハーレム? ああっ! アベルって、アベル王子!?

 

やっと気付いたか。そうだ。余はこの国の王子、アベルである。メルルよ。今日ここに来たのは他でもない。そちに余のハーレムへ入る栄誉を与えようと思ってな。

 

オプーナさん。それは…

 

アベルだ。

 

アベルさん。それはお断りします。

 

なっ…。何故じゃ! 余は王子であるぞ? 美形で最強の男でもある。何が不満だというのじゃ。

 

えーっ。だっておチンチン…

 

待て…。その後に続く言葉が非常に気になるところであるが、後で伺おう…。教会からテレポートして来る奴がいる…。サキエルめ、しくじったのか…?

 

……パチッ★ ハァハァ…。

 

あっ!! シスター!!

 

メルルか…。ハァハァ…。まだ賊に連れ去られていないなんて僥倖だわ。ふふふっ。神のおぼし召しかしら。それともお前のグズなところが役に立ったのかしら。

 

ううっ…。

 

どこも傷付いてない?

 

は、はい。だっ、大丈夫です…。でもシスターは酷い怪我…。

 

まぁね…ちょっと油断したのよ…。ハァハァ…。クルッ…キッ! そこの女! あのサキエルとかいう賊の仲間か!

 

キョロキョロ…。んっ? 余か? 女とは余のことであるか!? 余は男であるぞ!! むぅ…。王都のAPCでオシャレに男らしい服で揃えたというに…。青のカーディガンに、クールネックのシャツに、ニューキュアのデニム…。メンズノンノで最高にダンディと書いてあったというに…。田舎者はこれだから嫌なのだ。

 

メルルは渡さないわ…。ハァハァ…。いでよ! トールハンマー! ……パチッ☆  -----★ コロン…。

 

ふんっ! 小賢しいわ。いでよ! 雷剣! ……パチッ☆  -+---- バリバリ…。

 

あはははっ。雷剣ですって? そんな駄剣で私の神具トールハンマーに勝てるとでも思ってるの?

 

むうっ…。確かにそのハンマー…本物の神具のようであるが…。

 

当たり前じゃないの。正真正銘の神具よ。剣、鎧、盾、どんな武器もこのトールハンマーは打ち砕くわ。お前は私の攻撃を受けることさえ叶わない。そしてこの間合い…。外すこともありえない!! ブルン~ ブルン~ ブルン~ ブルン~ 悪党、覚悟せよっ!!

 

緊急結界発動…。

 

あはははっ。簡易結界如き!! とりゃ~~~~っ!!! 神罰を受け滅せよ!!

 

☆ミ ☆ミ ☆ミ がき~~~~~ん!! ミ☆ ミ☆ ミ☆

 

なっ、なにっ!? はじかれただと!?

 

……トールハンマーはこの世のあらゆる武器防具を破壊し、最上位の肉体強化魔法をも粉砕することが出来る最強の武器ではある……が、バリア結界だけは壊せぬ…。ふん、お前はそんなことも知らなかったのか? 無敵の武器などこの世に存在せぬわ!

 

そ、そんな、だってコレは…。

 

神具は使い手の絶え間ぬ努力の果てにその致命的弱点を補ってはじめて意味のあるものへと昇華する。お前はトールハンマーを武器としてではなく、己の権威付けの為に手に入れたのであろう。そのような脆弱なものが実戦で通用するかよ。

 

い、いや…。来ないで…。ガタガタ…ブルブル…。

 

お前は余に神罰を下すと言ったな。ふざけおってからに。罰とは神ではなくエロスの頂点に立つ余、アベルが下々を裁き下すものである。

 

ア、アベル!? アベル王子さまにございますか?? そ、そんな…。し、しらなかったのです。た、助けて…。わたくしは…ただ…。ガタガタ…ブルブル…。

 

余が名乗る相手は次の内のどれかじゃ、我の妃となる者。我の臣下となる者。そして我に殺される者だ。そちを余の妻や臣下にする気はないぞ。

 

いやっ…いやっ…。殺さないで…。助けて…。お慈悲を…。ガタガタ…ブルブル…。

 

シスター!! ア、アベル、やっ、止めてよっ!!

 

睡眠魔法発動…。 ……パチッ☆

 

……パチッ★ くくくっ。王子すみません。こちらにひとり逃げて来ませんでしたか? んんっ? おやおや、これはこれは…。くくくっ。お綺麗な女性でありましたのに、このように、こんがりと、まっ黒こげとなられましたか…。くくくっ。そしてメルルさまは夢の中にございますか…。くくくっ。どのような夢をみておいでなのでしょうな…。

 

……サキエルよ。村の焼却は余が行う。お前はメルルとそこに転がっておるトールハンマーを回収して直ぐに城に戻れ。後は手筈通りだ。

 

くくくっ。王子、どうされたのです。まさか村人の埋葬でもする気になられたのでございますかな? くくくっ。

 

何を馬鹿なことを…。お前の失態の尻拭いをするのはもうウンザリなのだ。最初から余ひとりでやっておれば良かったわ。…何をしておる早く行け。

 

くくくっ。仰せのままに…。

 



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メルルの章 04 ☆☆☆ 白帝城(ハーレム候補控え室)

ううんっ…。んっ? ここ何処? はぅぅ…ふわふわのベッドだ…。オロオロ…。キョロキョロ…。広い部屋…。天井も高いし…絵が描いてある…。天使かな…? あっちにはシャンデリア…。初めてみた…キラキラして綺麗…。

 

くくくっ。あまり上を向いておられるとおクビが疲れてしまいますよ?

 

キャッ!!

 

くくくっ。やっとお目覚めになられましたか、メルル姫。10時間もお眠り続けられましたので、わたくし心配致しました。くくくっ。このまま永遠に目覚められぬのかと…。

 

ひ、ひめ…? って、アンタ…。サキエル…。

 

くくくっ。はい、先程は失礼致しました。わたくしサキエルにございます…。サララ砂漠の小さな国で公爵などしておりましたが、今はアベル王子のお世話役をさせて貰っております…。

 

おまえたち村を襲ってシスターを…。

 

くくくっ。メルル姫、貴女さまのように可憐な乙女がそのような怖いお顔をしてはいけません。心を穏やかにニッコリとお微笑みなされるように、いまお紅茶をお持ち致します。スイーツはなにがよろしいですかな。ドーナツはお好きですか?

 

シスターはどうなったの!

 

くくくっ。彼女はお亡くなりになられました。雷剣のイカズチを受けて真っ黒こげにございます。くくくっ。

 

酷い…酷いよぅ…。うぅ…っ…。

 

くくくっ。王子に剣を向けたのです。本来なら拷問の上、筆舌に尽くしがたい程に残虐な方法で殺されてしかるべきでございましょう。しかしアベル王子はお優しい方でございますので…。くくくっ。メルル姫が羨ましゅうございます。あのような偉大な魔法使い…。神の如き方の妃となられるのですから。

 

あたし村に帰る!

 

くくくっ。メルル姫の村はもうございません。メルル姫の家もございません。帰る場所など何処にもございませぬ。

 

メルルは家に帰るもん! にゃん太があたしの帰りを待ってるんだもん!

 

くくくっ。わたくしはにゃん太というお方を存じませんが、残念ながらお亡くなりになられている筈です。くくくっ。わたくしが村人全員を天国へお送り致しましたので間違いございません。

 

ううぅ…。なんてことを…。お前らは悪魔だ…。うぅ…っ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

くくくっ。お諦め下さい。メルルさまの思い人はもうこの世におられません。

 

生きてるもん…。

 

くくくっ。メルルさまの心の中に…で、ございますかな? くくくっ。メルルさまはロマンティストにございますなぁ…。

 

にゃん太は人じゃない…猫だもん! だから生きてるんだもん!

 

くくくっ。ほほう…。にゃん太殿は猫にございましたか…。わたくし猫は殺めておりませんので、それなら僅かながら希望がございます。

 

ヒクッ…ヒクッ…。

 

くくくっ。しかしアベル王子は村を消し去る際にメギドの火を使ったと仰っておられましたからなぁ…。

 

メギドの火…?

 

くくくっ。はい。究極攻撃魔法のひとつにございまして…。火が火を生み増殖し、10km半径が紅蓮の炎に包まれ、その燃え上がる炎は成層圏にまで達するといいます。くくくっ。にゃん太がこの魔法に耐えられたなら、猫を超えた猫、スーパーニャンコの誕生でございますぞ。

 

あんた達…絶対に許さない…。

 

くくくっ。メルルさまはひどい勘違いをされておられる…。我々はメルルさまに恨まれるようなことをした覚えはございません。寧ろ感謝して貰いたいくらいで…。

 

ふざけないで!

 

くくくっ。ではきちんと順を追ってご説明致しましょうか。先ずシスターなるあの女、善人ではございません。人攫いの総元締めにございます。方々から幼い子らを攫っては魔法で記憶を操作して育て、年頃になれば売春宿へ女郎として売り渡す大悪党。王子とわたくしは貴女さまをこの城にお出迎えするついでにゴミ掃除をしたまでのこと…。

 

うそっ!!

 

くくくっ。本当にございます…。催眠魔法発動…。 ……パチッ☆

 

あ、あれ…? からだが…。バタン…。

 

くくくっ。北の遊牧民族ハイラルの族長の娘でルーン一番の美少女だと噂される貴女さま、メルル姫さまに会うために我々はハイラルの地へ向かったのですが、既に連れ去られた後だったのでございますよ…。ハイラルという名に覚えはございませんか? 洗脳魔法発動…。 ……パチッ☆

 

ハイラル……。

 

くくくっ。はい…。ほぉ~ら、よ~く思い出してごらんなさい……。

 

そういえば…ハイラル……。どこか懐かしい響き…。

 

くくくっ。北の大草原にございます…。羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹、羊が4匹…。

 

羊さんが一杯なのだ…。

 

くくくっ。メルルさま、お父さまやお母さまの顔を思い出せますか?

 

お父さん、お母さん……。ううっ…。思い出したのだ…。あたしはメルル姫なのだ…。でも、でも…。

 

んっ…? どうされたのです。どうしてこの安らかな記憶を受け入れないのです。

 

あなた達はにゃん太を…。にゃん太を…。

 

くくくっ。そのような猫、本当にいたのでございますか? わたくしが村に入ったとき、ネズミの気配はいくつか感知しましたが、猫の気配など1匹もございませんでしたよ? もしや、にゃん太とは、村に監禁されて心細くなった貴女が作り出した幻覚なのではないですか?

 

ええっ…。に、にゃん太は、い、いるもん!! きょ、今日だって一緒に朝ごはん食べて、後片付けしてくれるって、そういってあたしを送り出してくれたもん…。にゃん太はあたしの王子さまだもん!!

 

くくくっ。猫がどうやってごはんの後片付けをするのですか?

 

ええっ…? そ、それは…。あっ、あれ…? にゃん太は…。にゃん太はミクちゃんが好きって言って、あたしの髪をツインテールにしてくれて、それで、それで、あたしに、いってらっしゃいって…。

 

くくくっ。メルル姫、お気を確かに…。

 

ふぇ?

 

猫は喋りません。

 

……。ガタガタ…ブルブル…。

 

くくくっ。猫はにゃーとしか鳴きません…。

 

にゃん太は、あたしのにゃん太は…。幻…? ガタガタ…ブルブル…。

 

くくくっ。ショックなのは分かります。不安になられる気持ちも分かります。しかしメルルさま、北の草原には貴女さまのご両親がおられます。お友達も沢山おられます…。幻想から現実へ…。メルルさま、今が目覚めのときでございます。勇気を出して現実をお受け入れ下さいませ…。

 

現実…?

 

くくくっ。あなた様はメルル姫。人攫いに記憶を消されて村に幽閉されていた。喋る猫などこの世にいない…それは寂しさが生み出した幻…。これが現実にございます。

 

あたしは…メルル姫…。

 

くくくっ。ハイラルの姫君にございます。

 

にゃん太はいない…。

 

くくくっ。幻にございます。

 

あたしはシスターに囚われていた…。

 

くくくっ。わたくし達がお救いしました。

 

そっか…。

 

くくくっ。少し落ち着かれましたかな?

 

う、うん…。助けてくれて、あ、ありがとうなの、です…。

 

くくくっ。礼なら王子に言って下さい。貴女様の救出作戦は大変危のうございますので配下の者に任せるべきだと、わたくし何度もそう進言したのでございますが、アベル王子は今直ぐ余自らが助けに行くのだと言い張りまして。

 

アベル王子…。

 

くくくっ。アベル王子はメルル姫と結婚をしてハーレムに入って貰いたいと本気で願っておられます。その王子の気持ちを受け入れるかどうかはメルルさまの自由にございますが、どちらにしても真摯に応えて頂きたく思います。

 

コクン…(////

 

くくくっ。王子はさきほど戻られて、只今政務室で内政をしております。もう直ぐこちらに参られるでしょう。それまで…そうでございますね…。この部屋の奥にお風呂がございますので、姫は湯浴みでもされて汗や汚れを落とし、疲れをお癒し下さいませ。後でドレスをお持ち致します。

 

う、うん…(////

 



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メルルの章 05 ☆☆☆ 白帝城(執務室)

……どうだ。メルルの洗脳は上手く行っておるか。

 

くくくっ。お任せ下さい王子。所詮は魔法抵抗ゼロの小娘でございますので、ただの田舎娘である自分をハイラルの姫君だと信じ込んでおります。

 

ハイラル? なんだそれは。

 

くくくっ。架空の世界にございます。メルルさまはおとぎの国のお姫様ということで。

 

……あまり強い洗脳は止めておけ。頭がパーになっては困るからな。

 

くくくっ。ご安心を。わたくしの洗脳魔法は完璧ゆえ…。

 

洗脳の進捗度はどうなのだ? 後どれくらいの時間が掛かる?

 

くくくっ。ほぼ終えております。ただ想定外の事態がございまして、王子へご報告に。

 

さっき完璧だといったばかりではないかっ!

 

くくくっ。いえそれが、メルルさまは人の言葉を喋る猫と一緒に暮らしていたなどという不可解な記憶を持っておられまして、もしや精神に異常があるのかと思い洗脳を中断した次第にございます。精神科医の診察を受けるまではその記憶、残すべきかと…。

 

むぅ…。

 

とはいえ、わたくしが先程メルルさまに掛けた洗脳は村を全否定するもの…。村の暮らしを肯定させる猫の記憶は厄介にございます。消さねば洗脳を定着させること叶いません。

 

猫のぅ…。

 

くくくっ。メルルさまはその猫に大変強い思い入れがあるようでございます。

 

……その記憶を消すと洗脳は完成するのか?

 

くくくっ。はい。

 

わかった。ではそれは後で余がやっておこう。サキエルよ、ご苦労であったな。礼を言うぞ。

 

くくくっ。王子がわたくしに労いの言葉を掛けて下さるとは。くくくっ。珍しいこともあるもので…。

 

ふははははっ。メルルがハーレム候補として余の城におるのだ。気分は最高じゃ。

 

くくくっ。メルルさまはみっくみくでございますからな。

 

うむっ。余の好みそのままの姿、まさに天使である。メルルが余のハーレムに入り、ベッタリと甘えてくるところを想像すると、はぁ…。余の心はキュッと締め付けられ、チンチンが驚くほどに大きくなるのだ。

 

くくくっ。精通が始まったばかりの性に飢えた男子の前に、あのような美少女が現れれば、確かにおチンチンは魔力を通したオリハルコンのように熱く硬くなりましょう。しかしエロスは問題山積にございますので、今はお仕事の方に精をお出し下さいませ。なんでしたらこの不肖サキエル、王子のオリハルコンをお鎮めしてさしあげますが…。

 

余はそういう冗談は好かん。

 

くくくっ。いえいえ冗談ではなく…。

 

ならば尚のことじゃ。最近そちが余を見る目は少し常軌を逸しておるぞ? 怖いわ。余は男であり男に興味はない。忘れるな、余はゲイではない。良いか? それに内政はちゃんとやっておる。公私混同はせぬ。今日の分の仕事はもう終わっておるのだ。

 

くくくっ。王子…。

 

本当だぞ?

 

くくくっ。ではお仕事の成果、拝見致しましょう。そちらが来年度の財政草案にございますか?

 

うむ。読んでみよ。バサッ。

 

はい。ペラペラっと……。くくくっ。諸侯の財政難を徳政令で一気に解決するのでございますか。くくくっ。しかしこれでは商人どもから不満の声が…。

 

そうなったら不平不満を抱く者を全員牢に入れ、資産を没収して国庫へ入れるまでのこと。

 

くくくっ。一石二鳥にございますな。素晴らしい…。感服致しました。貴方様はまさに稀代の名君にございましょう。

 

世辞はよい。仕事は片付いたのだ。もうよいであろう? 余はこれからメルルの味見をするぞ。

 

くくくっ。メルルさまはいま湯浴みの最中にございます。恩人である王子に良く思われようと肌を磨いておりましょう。しかし性交は…。

 

ふははははっ。安心せい。一緒に風呂に入るだけだ。

 



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メルルの章 06 ★★★ 白帝城(脱衣所・大浴場)

ここがお風呂場なのかな。お風呂のドラム缶どこにあるんだろ…。広いからわかんないよぉ…。

 

メルルさま…。

 

キャッ!!

 

お、驚かせてしまって、も、申し訳ございませんっ! わたくし今日からメルルさま付きを命じられましたアップリケ(♀:16才:陽気で誰からにも好かれる性格だが、ちょっとドジなところが玉に瑕だぞっ!)と申しますっ! 湯浴みの準備が出来ましたので、姫さまのお体を洗うお手伝いをさせていただきたく…。

 

はわわっ。い、いいよ。ひとりで出来るもん…って、アップリケさん泣いてる?

 

……わ、私はハーレムの姫君となられる方々に代々仕えてきた一族の娘です。今日の為に生まれて来たようなものです。姫様が私をお嫌なら別の者が姫様のお世話をすることになります……姫様を不快にして、も、もうふぃわげごじゃいまぜんでぢだぁ~~~。わ~~~ん。

 

はわわわっ!!! ち、ちがう。ちがうのっ! アップリケさんは綺麗だし、いい匂いがするし、不快だなんて、そんなこと全然ないのっ! 恥ずかしかっただけなの。あたしもアップリケさんと、い、いっしょに入りたいなぁって。

 

ありがとうごじゃいまずぅ……。あだぢといっじょにお風呂にお入り頂けるのでずね。嬉ぢいですぅ…。ではメルル姫さま、お腕を上にお伸ばし下さい。ブラウスと肌着をぬぎぬぎしましょう。はい、ばんざ~いです。ばんざ~い!!

 

ばんざい…(////

 

ぶらうす、ぬぎぬぎ、ぬぎぬぎ。おシャツも、ぬぎぬぎ、ぬぎぬぎ。

 

ううっ…(////

 

次はスカートをぬぎぬぎしますね。はい、スカート、ぬぎぬぎ、ぬぎぬぎ。

 

はうっ…(////

 

あらシマシマのカワイイおパンツ♪ それではそれもぬぎぬぎしましょう。

 

……(////

 

どうされたのですか? おみ足をそんなにキツク閉じてはおパンツをお下げ出来ないのです。大丈夫です…おみ足、お開き下さいませ…。

 

う、うん。おずおず…(////

 

では、おパンツをヌギヌギしますね。はい、おパンツ、スルスル~っと。

 

ひやああああっ…(////

 

メルル姫さま、右足を少しお上げください…次は左足…。はい脱げました♪ あぁっ…。姫さまのおパンツお綺麗にございます♪ クンカクンカ、うん♪ 健康児のよいお匂いでございます♪

 

はわわっ…。はわわわわわわわわわわ…。やめっ、やめっ、やめてよっ!! もっ、もうお風呂入ろうよぅっ!!(////

 

はい。では姫さま、この扉の向こうがお風呂場となっております♪ ガラガラ~~~っと。

 

………えっ? ええっ!? きゃああああああああぁぁぁああ!! 外から丸見えじゃない!!(////

 

露天風呂ですから♪

 

やだぁ~~っ!!(////

 

うふふふっ。メルルさま、そのようにお体をくねらせて、お胸やお股をお隠しになると、余計エッチにございますよ♪

 

だって…だって…。ううっ…。アップリケさんも裸なのに恥ずかしくないの…?(////

 

ここは外からは覗けないように魔法が掛けられておりますので、ご安心下さい。

 

すぐ向こうに沢山の人がいるんだけど…(////

 

あれはデルタ地方の中学校から来た修学旅行生ですね。隣の空中庭園を見学しているのでございましょう。大丈夫です。いくら近くても向こうからこちらは決して見えることがありませんので、お気になさらないで下さいませ。

 

全員こっちを見てるような気がする…(////

 

うふふっ。気のせいです。メルルさまのおからだは私しか見ておりませんので、そのようにお隠しになる必要は全くございません。さぁ、恥ずかしがらずに、お胸やお股から手をお退け下さい。

 

うん…。おずおず…(////

 

はぁ…。お綺麗にございます…メルルさま…(////

 

……あれ?

 

どうされたのですか?

 

なんか向こうですごく騒いでる…。

 

そうですね…。まるでこちらが見えているみたい…。あれっ? はれっ? あっ!! い、いけないっ!! 遮光・防音魔法、緊急展開!! ……パチッ☆

 

……アップリケさん。まさか…。

 

……す、すみません。魔法を掛け忘れておりました…。

 

うぅぅっ…。ヒクッ…ヒクッ…(////

 

はうぅ…。な、泣かないで…。オロオロ…オロオロ…。そ、そうだ、メルルさま、お外の景色を変えてみましょう。魔法発動…。特殊能力…遊星ニビル、皆既日食。 ……パチッ☆

 

あっ…。暗くなった…。はわわわわわっ…。すっ、すごい! お昼なのにお星さまが出てる…。

 

(よかった…お気分が…)こんなことも出来ますよ♪ メティオ…散!!  ☆ミ  ☆ミ  ☆ミ  ☆ミ ☆ ミ☆  ミ☆  ミ☆  ミ☆

 

わっ、わわわっ、お空に流れ星がいっぱい!!

 

うふふっ。そのようにお目をキラキラと輝かせて…メルルさまはお星さまが大好きなのですのね…。

 

うん!

 

それはようございました。…ではメルルさま。おからだをお洗いしますので、こちらにお座り下さいませ。

 

……。

 

どうなされました?

 

そのイスなんか変だよ。真ん中がくぼんでる。

 

あぁ、これはお風呂用の椅子なのでございます。おからだが洗い易くなるように作られているのですよ♪

 

へー。そっか。よいしょっと…。えへへっ。メルルこんな椅子初めてだよ。面白いけど、ちょっと座り難いかも…。お尻をモソモソ…。

 

ではメルルさま♪ おからだをお洗いしますね♪

 

よ、よろしくなのだ…。

 

スポンジでお腕をゴシゴシ、ゴシゴシ。あぁ…。メルルさま、お腕、綺麗ですわ…。

 

……(////

 

スポンジでお胸をゴシゴシ、ゴシゴシ。あぁ…。メルルさま、お胸、綺麗ですわ…。

 

……(////

 

スポンジでお腹をゴシゴシ、ゴシゴシ。あぁ…。メルルさま、お腹、綺麗ですわ…。

 

……(////

 

スポンジでお背中をゴシゴシ、ゴシゴシ。あぁ…。メルルさま、お背中、綺麗ですわ…。

 

……(////

 

スポンジでおみあしをゴシゴシ、ゴシゴシ。あぁ…。メルルさま、おみあし、綺麗ですわ…。

 

……(////

 

あぁっ…。メルルさま、本当にどこもお綺麗でございます…。背中を指でつっ~~っ~~っ(////

 

ひゃ~~~~んっ! やぁん! アップリケさん、くすぐったいよぅ!(////

 

す、すみません、あまりにメルルさまの肌がお綺麗で、つ、つい…(////

 

ううぅっ…(////

 

はぁ…。こんなに滑らかで(すべすべ)……吸い付くようにモチモチしたお肌(ぷにぷに)……。信じられない……。うっとり…(////

 

はううっ…。も、もうお湯に浸かろうよぅ…(////

 

いえ、まだまだ終わっておりませんよ、メルルさま。王子さまの前に出るからには、おからだの隅から隅までお綺麗にしないといけません。お股の方も丁寧に洗いませんと…。

 

えっ!? い、いいよ。そ、そこは自分でやるから(////

 

お任せ下さい、えいっ! ゴシゴシ、ゴシゴシ♪

 

キャ~~~ッ!! やんっ。アップリケさん、やめっ…うぁっ…。あ…っ…。んぁあ…。あんっ…。あん…。あぁ…ぁっ…っ…(////

 

うふふっ。この椅子はここを洗うのに便利なのでございます♪ ゴシゴシ、ゴシゴシ♪

 

あんっ…。もうやだ…。もう…。あぁっ…。うはぁっ…。あっ…。あっ…。あぁ……。やあぁ……。あぁ…。あっ。あっ。あっ。あっ。やん~~~っ(////

 

メルルさま…こちらの方も…。ゴシゴシ、ゴシゴシ♪

 

やだっ!! 駄目だよっ!! 汚いよっ!!(////

 

ですからお綺麗にするのでござます。ゴシゴシ、ゴシゴシ♪

 

うあっっ…。あ…。うあっっ…。やっ。はぅ…ぅ…ぅ……。やあっ…。ううっ……。はぁ…ぁっ…ぅ…ぅ…。ううっ……(////

 

ゴシゴシ、ゴシゴシ♪ ゴシゴシ、ゴシゴシ♪

 

うあぁっ…。あぁっ…。はぅ…あっ…。うぅ…ぅ…。あっ…。あぁん…。やぁぁぁん…。いやっ、あぁ…。やっ、やっ、やっ、やっ……。ふあぁん…(////

 

はい。お綺麗になりました♪

 

はううっ…(////

 

ではメルルさま、次に頭を洗いましょう。シャンプーをつけて…。ゴシゴシ、ゴシゴシ、メルルさま、お痒いところはございませんか?

 

ふるふる…。

 

ではお湯でお流しします…。ザッバ~~ン!

 

ううっ…。

 

うふふふっ。これで全身ピカピカでございます。お風呂でお綺麗になられたメルルさに王子さまはメロメロですよ♪

 

……(////

 

まぁ、メルルさま真っ赤になられて。王子さまのこと、お好きなのですね…。

 

すっ、好きとかそういうんじゃなくて…。王子さま…危険を冒して、あたしを人攫いの村から助けてくれたんだ…。だから、いいひとなんだなって、思うの…(////

 

あの方は困ってる方をお見捨てにはしない、とても心のお優しい方にございます。その上にお美しいですから王子さまはモテモテなのです。

 

うん、綺麗…。(お股に変なの付いてたけど…)女の子みたいだった(////

 

アベル王子さまは間違いなくルーンで一番の美少年にございます。女性でもあそこまで綺麗な人、私はメルルさま以外に見たことがございません。サラサラの髪は黄金色で、クリリとした瞳は愛らしく薄い琥珀色…。背もスラリとしてまだ10才だというのに超カッコいいのです。……あぁ、姫様、羨ましいです。王子のハーレムに入ってご寵愛を受けるなんて凄く名誉なことなのですよ?

 

優しくて美しい王子のハーレム…。名誉なこと…。でも、あたしはにゃん太のハーレムに入りたかった…。

 

えっ?

 

う、ううん…。なんでもない…。

 

……もしやメルルさまは王子のハーレムに入るかどうか悩んでおられるのですか?

 

うん…。あたし、王子と結婚して上手くやっていけるのかな…。

 

美男美女、お似合いのカップルですよ。

 

容姿なんて結婚には関係ないと思う…。メルルね、王子には感謝してるけど、でも怖いんだ…。だってシスターを…。ガタガタ…ブルブル…

 

メルルさま…。抱きっ! ギュッ!

 

アップリケさん…。ギュッ!

 

王子さまは悪党を退治されただけです。

 

……王子ってどういう人なんだろう。あたし王子のこと全然知らない。王子もあたしのこと知らない…。

 

これからゆっくりお互いを知り合えばよろしいのです。大丈夫、王子さまもメルルさまも、どちらもとても暖かな心をお持ちにございますので、お互いがお互いを幸せにしてくれる筈です…。

 

そっかな…。

 

そうですとも…。さぁ、メルルさま、おからだがお綺麗になられましたので、お湯に浸かりましょう。おからだが温まればお心も温まります。嫌なことも忘れます。王子さまとのことは後でゆっくり二人でお話しをなされて、それからのことでございます。嫌ならハーレム入りを断ればよいのです。強引に王子がメルルさまを自分のものにしようとするなら、アップリケは王子の頭上に流れ星を落としますので、ご安心下さい。

 

うん…。ありがとう。アップリケさん…。

 

私はどんなことがあろうとメルルさまのお味方です…。チュッ…(////

 

はうぅっ…(////

 

で、ではメルルさま、浴槽に…。湯加減も…あっ…。いけない…。

 

ふえっ?

 

お腕、お頭、お背中、お腹、おみ足、お股、ひとつお洗いするのを忘れたところが…。

 

ん? キョロキョロ…。もう洗うところなんてないよ? メルルぴかぴかだよ?

 

この奥にございます。ビシッ!!

 

えっ!? ええっ!!!!! い、いいよ、怖いよぅ…(////

 

駄目です! ここも綺麗にしないと。万一、王子さまの目に触れたらどうするんですか。メルルさま、ほら…これで奥の奥まで綺麗、綺麗、しますよ。

 

わぁ…凄く小さくて細長い歯ブラシだね……って、きゃあああああぁあああぁああ!!!! ちょっと嫌だ! 止めてよっ! あっ…!! やあっ…!! いやぁ!! やあっ…!!(////

 

危ないですから暴れないで下さいね。ほらここに垢がくっ付いて…。こちらにも…。ほじほじ。ほじほじ。ほじほじ。

 

やんっ!! あぁん! やぁん…ぁっ…。はぁぅ…。うぁっ…あっ! あぁっ、あっ…。やあぁぁぁぁぁだぁっ!! あぁっ…。ぁっ…ぁっ…ぁっ…(////

 

あまり奥をお掃除すると膜を傷つけてしまいますが、すぐ手前に大きな垢が…。メルルさま、動かないで下さいまし…。ほじほじ。ほじほじ。ううぅ…取れません…。ほじほじ。ほじほじ。ほじほじ。ポロリン…。あっ、取れました、取れましたよ、姫様!!

 

……(////

 

ふう~~っと、はい、お耳掃除が終わりました♪ これで完璧です。ではお湯に……って姫様? 姫様…? どうなさいました姫様? 姫様!? メルル姫さま!?

 



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メルルの章 07 ★☆☆ 白帝城(大浴場)

ガラガラガラ~~~っと、ふははははっ。メルルよ。一緒に風呂に入りに来たぞ! 見よ! このチンチンを! この前とは違うであろう!! これでもう余に不満は……って、誰もいないではないかっ! 誰かおらぬのかっ!

 

シュタッ! お庭番、蓮華(♀:16才:エロス家に代々仕える影の一族の末裔、アップリケの幼馴染だ。ルーン最強の天才くの一忍者だぞっ!)ここに。あっ…(////

 

あっ…(////

 

……………………(////

 

……………………(////

 

……な、なんじゃ蓮華。こ、こっちをジロジロ見るな…。しっ、しつれいであるぞっ(////

 

すみません。あまりに可愛いおチンチンでありましたので見とれてしまって…。

 

はぁぁ!? かっ、可愛いだと!? こ、これでも駄目と申すかっ!!(////

 

いえ駄目という訳では…。蓮華の心は癒されました。王子のおチンチンは例えるなら野に咲くエーデルワイスにございます。

 

ばっ、馬鹿にしおってからに…。み、みておれ…いつかお前が驚嘆の声をあげる程に大きくなってみせるわ! そう、北の樹海に聳えるメタセコイヤの巨木のようになっ!!(////

 

はぁ…。王子、馬鹿いってないでさっさと用件を言って下さいよ。そのエーデルワイスを愛でればよいのですか?

 

違うわ! メルルは何処だっ!!

 

お風呂でのぼせて医務室に連れて行かれました。

 

なっ!? だっ、大丈夫なのか?

 

現在、体を冷却する医療魔法で手当てを受けておられます。あと半時ほど横になっていれば回復するかと…。

 

そうか…。仕方のない奴だな。心配掛けおってからに…。

 

……。

 

なんだ?

 

いぇ…。そのようなお優しそうな王子のお顔を今まで見たことがなかったもので。少し妬けてしまいます…。

 

心にもないことを。

 

……私は以前から王子をお慕い申し上げておりました。是非とも私をハーレム候補に選んで頂きたく…

 

からかうな蓮華。先週結婚したばかりの新妻が言う台詞ではないぞ。

 

あはははっ♪

 

ふん。お前と佐助は幼い頃から家が決めた許婚の仲であったな。好き合ってもいた。夜の方はどんな感じなのだ。

 

いやー。あいつ毎晩毎晩、激しくて激しくてこちらの身が持ちませんよ…って何を言わせるんですか!(////

 

余はハーレム作りなどしておるが、性についてまるで経験がないのだ。聞かせてくれい。

 

い、や、で、す。……でも王子には本当に感謝しています。隠密で諸国を飛び回っていたアイツを本城に呼び戻して、しばらく私と一緒に居られるようにお心遣いをして頂けるなんて……。ありがとうございます。ペコリ。

 

勘違いするな。ハーレム候補の選定で城の人材が足りなくなっただけだ。ふん。メルルがおらんとは詰まらんぞっ。興が醒めてしまった。お前は風呂にでも入っておれ。余は部屋に戻る。

 

……王子、これを。

 

んっ? 花ではないか…。綺麗なものだな。

 

はい。今朝、お庭で咲いていたフォーチュンの花を一輪…。医務室に行かれるのならメルルさまにこれをお渡し下さい。私は王子のお言葉に甘えて湯浴みを致しますので。

 

……そうか。礼を言うぞ蓮華。

 

はい♪

 



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メルルの章 08 ★★★ 白帝城(医務室)

よかった…。36.4℃ お熱がやっと下がられたわ…。でも汗をこんなにかいてしまってはお体が冷えてお風邪を引いてしまう…。そうだ、姫さまを起こさないように、そっと、そっと、このタオルで汗をお拭き取り致しましょう。姫さま、おパジャマを脱ぎ脱ぎしますね。メルルさま……メルルさま……ばんざ~いです…。

 

むにゃむにゃ…。ばんじゃ~ひ……むにゃ…。

 

おパジャマ脱ぎ…脱ぎ…。

 

あぁぅぅ…。

 

おパンツも脱ぎ脱ぎしますね。メルルさま……メルルさま……お腰を浮かせてくださいな……。

 

う、う~ん……。うにゃあぁぁ……。むにゃむにゃ……。

 

おパンツ脱ぎ…脱ぎ…。

 

はぁぅぅ…。

 

あぁ、やはりどこも凄い汗だわ…。姫さま、失礼します。お胸を、拭き…拭き…。

 

んっ…。あう…。ああんっ…。あん…。あぅう……。はぁ…。あん……。あん……。

 

お腹を、拭き…拭き…。

 

ひゃん…。はうぁっ…。んっっ…。んっ……。んっっ…。んっ…っ…んっ…。

 

次はお背中です。うつ伏せになるように、ゆっくりお体を廻して……。メルルさま……メルルさま……コロ~コロ~コロ、リン♪

 

ふにやぁあああ~~~っ! う、うんっ…。むにゅむにゅ…。むにゃむにゃ…。

 

……は、はうぅ。目が覚めなかったみたいです。よかったです。あぁ、姫さまのお背中、珠のような汗で一杯です。よ~しっ。タオルでお背中を、拭き…拭き…。

 

う……うぅ…う~ん…。う~ん…。うぁ…。んぁ…。うぅ…う~ん…。

 

……すみませんメルルさま。姫さまがお倒れになるまで、私は姫さまの体調の変化に気付くことすら出来ませんでした…。私が不甲斐ないばかりに、こんな苦しい目に合わせてしまって……。ひっく…ひっく。……駄目だ……駄目だよアップリケ。泣くのは後。反省するのも後よ。今は姫さまの体調を回復させることだけを考えないと…。でも…グズッ…グズッ…。ううっ。次はお尻ですね……。あぁ、姫さまのお尻、プリンみたい…って、わ、わたしは、な、なにを考えているの。せ、誠意を込めて…お尻を、拭き…拭き…。

 

はうぅ…。うっうっ、あっ、はうぅうっ……。あっ、はうううっ……。あんっ、あんっ、あんっ、あんっ…。

 

真心も込めて、お尻を、拭き…拭き…拭き…拭き…拭き…拭き……。

 

うぅ…。んう…。ううっ…。うぅう…。うう…。うっ……。ん…ん…ん…ん…。うっ…んぁ…。ん、ん、ん…。

 

ふうっ。次はお股ね、メルルさま……メルルさま……お拭きし易いように、うつ伏せでお尻を突き出した状態にしますよ…。姫さまのお尻を、よいしょ。持ち上げて…。

 

うぅうん…。

 

姫さまの両足をカエルさんのように大きく広げて膝から曲げ曲げして、よいしょ。よいしょ。……うん、よし、お尻が浮いたまま安定したわ。

 

ん、んんっん…。

 

さてと…。あれっ? 姫さまのお股、汗をこんなに沢山かいておられる…。蒸れちゃったのかな…? 早く拭かないと…。お尻の後だからタオルを変えてと…。では姫さま、失礼します。お股を、拭き…拭き…。

 

ううっ…。うんっ、うん……。うっ……うっ…うっん…ううぅ…。うん…。うん…。

 

お股を、拭き…拭き…。あれっ…? 汗がまた…。拭き…拭き…。

 

あっ…ぁ…。あぅ…。うぁ…っ…。あん…。うむにぅ? んっ!? ここどこ…?

 

お目覚めになられましたか♪ 拭き…拭き…。拭き…拭き…。

 

アップリケさん…。おはよう…。ん…? えっ!? えええええっ!! きゃあああああぁあああぁああ!!!! ち、ちょっと、嫌だ! 嫌だ! 嫌だ!(////

 

すぐに汗を拭き終えますから♪ 拭き…拭き…。拭き…拭き…。

 

ああん!! 嫌っ!! 嫌っ!! はあっ…! あっ、あぁぁっ、っ…!(////

 

拭き…拭き…。拭き…拭き…。

 

あぁっ…。やぁぁんっ…。あ…っ! あっ! あっ! あっ! あっ!(////

 

はいっ♪ 姫さま、お汗の拭き拭き、終わりましてございます♪

 

……(////

 

あとはおみ足ですね。タオルをお取替えしますので少しお待ちに……って姫様? 姫様…? どうなさいました姫様? 姫様!?

 



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メルルの章 09 ☆☆☆ 白帝城(医務室)

……お、お前ら、い、いったい、な、なにをしておるのだっ!(////

 

あっ! 王子さま! メルルさまがっ! またもや突然に気を失われ……。も、もしかして、ご、ご病気なのでじょうがぁあ。わ~~~ん。

 

う、うむ、いや、落ち着け、アップリケよ。今のは病気とか体調とかそういう問題ではないと思うぞ(お前は天然かっ!)

 

ヒクッ。ヒクッ。じ、じょうなのでぢゅか……って、王子さまっ! 見ておられたのならさっさと出てきてメルルさまの看護を手伝ってくれても良いではないですか! 黙って影でコソコソとみているなんてアップリケは王子さまを見損ないましたよ!

 

出るに出られるかっ! 別のものは勢いよく出そうになったがなっ!

 

ええっ??

 

ハァハァ…。気が動転してつい親父ギャグでセクハラをしてしまったわ。いや余の方がセクハラを受けているような気もするが…。と、とにかく服を着せい。裸のままでは折角汗を拭き取っても風邪を引いてしまうぞ。

 

あっ! はい! そうですね。パジャマを、着せ着せ。お布団を、掛け掛け。ふうっ。出来た。……うん。おでこに手を当てた感じでは、メルルさま、今回はお熱が出てないようです。よかったのです…。

 

むにゃ……むにゃ……。お父様……。お母様……。

 

……アップリケよ。これを花瓶に活けてやってくれ。余は部屋に戻る。

 

…王子さま。

 

なんだ。

 

あの噂、本当にございましょうか…。

 

何のことだ。

 

メルルさまの洗脳についての噂です。王子さまとサキエルさまがメルルさまの住む村を襲い、村人全員を虐殺してメルルさまを拉致したこと。そしてその事実を隠す為にメルルさまに架空の国の姫と信じ込ませるようサキエルさまに洗脳をお命じになられたこと…です…。

 

……余は王族だ。この国の王となる男だ。臣下の分際で主である余を愚弄することまかりならん。たとえ気心の知れたお前であっても、余は主として、私情を捨て、罰せねばならぬこともある。アップリケよ。今いったことは忘れろ。余も聞かなかったことにする。お前を殺したくはないのだ。

 

わ、わたしはメルルさま付きを申し受けた者です! 誰が相手でも、それが例え、王子であっても、王であっても、私は自分の命惜しさに姫さまを裏切ることは出来ません!

 

ふはははっ。そうか。そこまでの覚悟があるなら正直に言おう。お前が聞いた噂は本当だ。余が村人を皆殺しにしてメルルへの洗脳を命じたのだ。……どうしたアップリケよ。何を驚いた顔をしておる。ふん。今回はお前のメルルへの忠義の心に免じて許してやろう、だが次は…

 

嘘です!! 王子がそのような非道をする筈がございません! 絶対にございません! 本当のことを仰って下さい! 何か理由が…

 

……パチッ☆

 

あっ……。な、なんなの…これは…。体が重くて…上手く動かないの…です。お、王子さま……。いったい何を……。

 

時間跳躍の負荷に体がまだ馴染んでないのであろう。直ぐに慣れる。

 

時間跳躍?? 王子が何をいってるのか私には……。

 

余は時を操れる。余から半径2mの範囲で-3分タイムリープさせた。お前が話を切り出す少し前の時間に戻ったのだ。そして今、リープ先の時間と我々の時間との間に生じた因果の齟齬の溝を、時の柔軟性と整合性が埋めようとしておる。簡単に言えば、異なる2つの時間軸の歯車が噛み合うまでの間、一時的にリープ先の時はフリーズを起こすのだ。これをタイムリープ能力から派生した余の時間静止能力『時の神の混乱』というのだが、それはともかく、鳳凰宮の目もここへは届くまい。静止時間は今回の場合5分といったところだ。手短に説明する。よいか。

 

はっ、はいっ。

 

村人を皆殺しにした話は本当だ。メルルへの洗脳では村人は人攫いとしたが、現実はおとぎの世界より醜悪なものでな…。アップリケよ。ホムンクルスというものを知っておろう?

 

錬金術から派生した技術で、無から造り出された人造人間がホムンクルスと学校で学びました。100年前にその技術は完成し、やがてホムンクルス達は主である人間に反乱を起こして世界大戦に…。多くの血が流れた結果、ホムンクルス達は皆殺しとなって、その製造技術も永遠に失われたと。

 

うむ。だが貴族や豪商の愛玩具として売り出そうとホムンクルスの復活を試みた一派が余の領内にいてな、プロトタイプが試作されるまでに開発は進んでおったのだ。……それがメルルなのだ。

 

メ、メルルさまがホムンクルス!? 信じられません…。

 

余もだ。忌むべき存在として語り継がれてきたホムンクルスがこれ程までに愛らしく、人間らしく、暖かだとはな…。撫で撫で…。しかし、このようにさらさらと、心に響く鮮やかなアクアブルーの髪の流れは、人が持つには叶わぬものなのであろうな…。

 

うぅん…アップリケさぁん…そこぉ…らぁめぇ……。むにゃ……むにゃ……。

 

姫さま…。

 

2年前、連中の内偵を続けていた佐助からメルル誕生の報告を受け、余は退屈しのぎにそれを見に行った。切っ掛けはちょっとした好奇心だったのだ。絶世の美少女とかいう人形をひとめ見て帰るつもりであった。……だが余はメルルに心を奪われてしまってな、連れて帰ろうかと思ったが、余はまだハーレムを持てぬ。だから余の分身をメルルのそばに置いたのだ。それがこいつだ。……パチッ☆

 

にゃん太にゃ! アップリケよろしくにゃん!

 

ね、ねこ…ですか?

 

そうだ。余の魔力と意識を一部切り離して生み出した魔法生命体にゃん太だ。余のテレパシーが途切れても勝手に動いて喋れる半自立思考型の眷属である。コイツを通して余は今日までメルルと擬似的にではあるが一緒に暮らしておったのだ。ふふっ。楽しかったぞ…。たまに喧嘩することもあったがな。いつの間にか仲直りをしておるのだ…。2人でどんなことも隠さず話し合った。メルルは余の初めての友達であり、初恋の相手なのだ。

 

とことこ…。にゃー。メルル会いたかったにゃん! チュッ(////

 

……この手に抱きしめることは出来ぬが、ハーレム候補選定の日が来てメルルを迎えに行くその日まで、我慢しようと思った…。 ……パチッ★

 

アップリケ、さよならにゃん! メルルを頼むにゃん! しゅうぅ~~っ…

 

……王子。

 

余は愚かだった。酷い勘違いをしておった。誰もが余に好意を持つ。ゆえにメルルも当然に余を好いてくれると、そう思い込んでおった。プロポーズをすれば必ずハーレム候補になってくれるものとな。だが結果はどうだ。余はアッサリと振られてしまったわ。ショックであった。まさかチンチンが不満であるとはな…。

 

おチンチン…ですか?(////

 

うむ…。人生で初の挫折である。しかしそれでも余がにゃん太であると告げたならメルルは余を受け入れてくれると信じておった。浅はかという他ない。そのようなこと、もう出来ぬようになってしまった…。

 

どうしてです?

 

メルルの洗脳に猫の記憶は邪魔なのだ。メルルは余のことを忘れなければならぬ。

 

洗脳など止めて、王子が猫であると打ち明ければ良いではないですか。

 

駄目じゃ。洗脳は完成させねばならん。ホムンクルスであるメルルに父はおらぬ。母もおらぬ。なにもないのだ。メルルは人ならざる者が人となる為に刷り込まれた偽りの記憶の他には何も持たぬ。……だから、だからせめて、その記憶だけは世界一幸福なものを与えてやりたいのだ。サキエルの洗脳魔法はルーン1番だ。メルルは永遠に醒めぬ幸福な夢を見続けるだろう。幸せな家族に囲まれて育った思い出を胸に抱き、この少女は人となるのだ。

 

で、では別の洗脳を…。王子を好きになり、幸せな記憶を持つように少しシナリオを変えてもう一度…。

 

……アップリケよ、洗脳は余を好きになって貰う為にやるのではないぞ。余の幸せの為ではなくメルルの幸せの為に行うのだ。

 

……。

 

メルルは余の親友である。人形ではない。コヤツには自分の意思で人生を選んで貰いたいのだ。……余はコヤツのことを誰よりも理解しておるつもりだ。こころが繊細で優しい奴なのだ。チンチンはともかく、ただの人殺しでしかない余を受け入れることはあるまい。とても辛いことであるが、それがメルルの意思であるなら余はそれでよいのだ。

 

王子さま…。すみません、王子さまに疑念を抱いた私は大馬鹿者です…。

 

ふんっ…。信じてくれたではないか。余の方こそお前を騙して悪かった。エロス家のハーレムである鳳凰宮は国権の中枢でもある。その目はこの国の全てを見通しておる。この城も結界が張られた執務室以外は全て筒抜けで迂闊に喋れんのだ。さっきもタイムリープをしなければ、お前の疑念の言葉は徹底的に解析されて真相は露見したであろう。そして鳳凰宮は人の子を産めぬホムンクルスをハーレム候補として絶対に認めぬ。……メルルに振られるならともかく、そのような下らぬ理由でメルルを余のハーレムに入れることが叶わぬのは嫌だからな…。

 

はい…。

 

そろそろタイムアウトに入る。また時が流れ始める。……アップリケよ、メルルがホムンクルスと知った今でも、先程と変わらぬ忠誠をコヤツに誓ってくれぬか? ……そして、もし、コヤツがハーレム候補を辞退しても、成人するまで見守ってやってくれぬか?

 

私はメルルさまが好きです。本当の妹のように思っています。どのようなことがあろうと私はメルルさまに生涯忠誠を誓う者です!

 

うむっ…。あとでメルルを余の執務室に。洗脳を完成させる。

 

……パチッ★

 

メルルさま……メルルさま……起きて下さいませ……。

 

むにぅ…アップリケさぁん……ここどこ……。

 

医務室のお布団の中でございます。先程まで王子さまがいらしてたんですよ。ほら見てくださいませ、王子さまからのお見舞いのお花です……可愛ですね、お名前はなんていうのかしら。

 

メルル知ってる! フォーチュンっていうんだよ。花言葉は……永遠の愛なの(////

 

ふふふっ。またそのように赤くなられて…。メルルさまはやはり王子さまのことがお好きなのですね…。

 

うん…。まだお話はしたこと無いけど、王子さまの心は伝わったよ…。

 

姫さま、まさかさっきのお話を…。

 

えへへっ。夢の中で聞いちゃった…。メルルにはお父さんやお母さんがいないのかも知れないけど、でもさびしくないよ。だって私にはアップリケさんや王子さまがいるんだもん。

 



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メルルの章 10 ★★☆ 白帝城(執務室)

ん…。メルルか…。部屋に入るときにはノックをせねばならぬぞ。

 

したよ?

 

ふむっ…そうか…。気付かなかった。

 

窓の外、何が見えるの?

 

……星。

 

……ふ~ん。

 

……………チラッ。

 

……………ジ~ッ。

 

なぜ余の顔を覗き込んでおるのだ。星は見ぬのか。そちは星を見るのが好きであったろうに。

 

だって、ここから見る星はぼやけててよく見えないんだもん…。

 

……この城は湖や森に囲まれておるが、その外は沢山の人が暮らしておるからな。その明かりが星の輝きを曇らせ歪めるのだ。

 

つまんない…。

 

何かを得るには何かを犠牲にせねばならぬ。不幸せな国ほど星は輝く。星が曇るだけ人は幸せといえるのだ。今、余の国民は星々を凌駕する程に輝いておる…。だから余はこのくすんだ星空が好きなのじゃ。

 

あたしの村は夜空がとても綺麗だった。でもあたし自身はどうだったんだろう…。

 

自分は見えぬものである。

 

星も人も両方が綺麗に輝くことって出来ないのかな?

 

……出来るぞ。自分たちが見ることのない他所の星や他人を曇らせればよいのだ。見掛けは綺麗になる。

 

それは嫌だな…。

 

余は神々しく輝く夜空などいらぬ。ただの化学反応による発光に過ぎぬ。他人を犠牲にしてギラギラと輝く輩もいらぬ。下卑た光である。余は余の心を揺さぶる美しき輝きを欲す。

 

美しき輝き?

 

そちの輝きしか見たいと思わん。

 

はうっ…(////

 

ん? どうした。顔が真っ赤だぞ。

 

……(////

 

何をモジモジとして…。あぁ、オシッコか? トイレなら…

 

違うよっ! そうじゃなくて、あのっ、え、えっと…。たっ、たすけてくれてありがとう…。お礼が遅れてごめんなさい…(////

 

構わぬぞ。囚われの姫を助けるのは王子たるものの当然の行いである。

 

王子…。ちょっとしゃがんでみて…(////

 

なんだ?

 

チュッ(////

 

………(////

 

えへへっ。お礼のキスだよ(////

 

……メルルは余が怖くはないのか? 余はそちの目の前でシスターを…。

 

チュッ(////

 

………(////

 

王子はあたしのことを誰よりも理解してるっていったけど、全然理解してないよ。

 

……起きておったのか。

 

うん…。王子は自分がにゃん太だって言わないつもりだったの?

 

そちを洗脳するのが辛くなるではないか。

 

あたしは洗脳なんて嫌だよ…。

 

駄目だ。にゃん太と医務室での記憶は消させて貰う。メルルよ、心配はいらぬ。遥か南の海にアルカディアという常春の島があるのだ。住民は温和な奴ばかりだ。小さな学校もある。そちはまだ海を見たことがないであろう? 素晴らしきところだ。きっと気に入る。アップリケとそこで…

 

王子はあたしが自分の意思で生きて欲しいっていったじゃん。

 

……。

 

あたしはにゃん太の記憶を失いたくない。王子やアップリケさんのあたしへの言葉を忘れたくない。

 

……余はお前に世界一幸せな記憶を与えたいのだ。

 

幸せな記憶、あるよ。あたしのお父さんやお母さんの記憶は偽りだって今は思う。夢は夢と自覚すると覚めてしまうのと同じ…。でも偽りだと思えるからあたしには掛け替えのない幸せな記憶になったんだよ?

 

偽りと自覚しては意味がないではないか。

 

あたしを思ってくれる王子の気持ちがあるよ…(////

 

…………(////

 

…………(////

 

そ、そちは余が嫌いではないのか?(////

 

そっ、そんなこと…ないよ…(////

 

ほ、ほんとうか?(////

 

うん…(////

 

しかしそちはチンチンが大きくない男は嫌なのであろう?

 

はうっ~~!! ううっ!! メルルパンチ!! ☆ミ ☆ミ ペチッ!! ミ☆ ミ☆

 

グハッ!! ドタン~~!! バタン~~!! コロコロ~~~~コロコロ~~~~コロコロ~~~~ズサササッ……。ううっ…何をするのじゃ…。

 

メルルそんなこと言ってないもんっ!!(////

 

そちは余のチンチンの大きさに不満の声をあげようとしておったではないか。

 

違うっ!! 大きさの問題じゃない!! いきなりレディーの前にチンチンを出す変態さんを好きなるかって言いたかったのよっ!!(////

 

そうであったのか。チンチンではなく、チンチンを出したことが嫌だったのか…。しかしそちはいきなり余のチンチンを握り締めたのだぞ? メルルの方が変態…。

 

はうっ~~!! ううっ!! メルルキック!! ☆ミ ☆ミ ペチッ!! ミ☆ ミ☆

 

ギャッ!! ドタン~~!! バタン~~!! コロコロ~~~~コロコロ~~~~コロコロ~~~~ズサササッ……。ううっ…何をするのじゃ…。

 

ついよ、つい握っちゃったの!! 初めて見るものって、つい触りたくなるでしょ?(////

 

そ、そうか…? よく分からぬが、ではそちは余のチンチンが嫌いではないのだな? 余のチンチンを好いてくれておるのだな?

 

もうチンチンから離れてっ! チンチンじゃなくて王子が好きなのっ! …って、はぅぅぅ…(////

 

う、うむ…余もメルルが好きであるぞ(////

 

……うっ…ううっ…(////

 

メ、メルルよ、なっ、泣くでない…。いじわるをしておるのではないのだ。そちは余のプロポーズを一度断っておる。余は不安なのじゃ…。そちの気持ちをハッキリ聞きたかったのだ。すまなかった。

 

……あのときは、にゃん太と王子が別人だと思ってたし、あたしはにゃん太のハーレムに入るつもりだったし…。

 

ふむ…。あいつか。ん…。にゃん太よ、いでよ! ……パチッ☆

 

にゃ?

 

にゃ、にゃん太!? 抱きっ!! ああぁ…。にゃん太…。

 

にゃはははっ(////

 

……メルルは余が好きなのか、にゃん太が好きなのか。どちらなのであろう…。余もにゃん太も心は同じなのだが、微妙に嫉妬するのう…。

 

王子こそ、あたしが好きかミクちゃんが好きかどっちなのよ…。

 

そ、それは…。あれだぞ…。ミクがメルルに似ていたから余は初音ミクを好きになったのであって…初音ミクが好きだからそちを好きになったのではないのだぞ?(////

 

……へ、へぇ…。そ、そうなんだ…(////

 

………………(////

 

………………(////

 

………………腹減ったにゃ。

 

そ、そうだのう。メ、メルルよ、夕食はまだであろう? お腹は減っておらぬか?(////

 

う、うん、お腹すいちゃった…(////

 

では今ここにディナーを。 ……パチッ☆  ☆ミ ☆ミ ポンッ!! ミ☆ ミ☆

 

はわわわっ…。すごい…。お料理が沢山…。わぁ…いい匂い…。美味しそう…。

 

にゃー。またこれかにゃん…。

 

あれっ? にゃん太、あんまり嬉しくなさそうだね…。大好きなお魚料理もいっぱいあるよ?

 

にゃー。王子もボクも本当はメルルの手料理が食べたいのにゃ。

 

えっ…。そうなんだ…(////

 

なっ、お、おまえ、余の心をペラペラと。パコン! ミ☆

 

にゃっ!? 痛いにゃ!! これは喋っては駄目だったのかにゃ? それにゃら伝えて欲しいみたいな気持ちで心に思うにゃ!! 紛らわしいにゃ!!

 

う、うるさい! なんじゃその口の利き方は! 失礼であるぞ!

 

あぁっ…。喧嘩しちゃ駄目だよ。いいよ。メルルが料理作る。だから喧嘩しないで…。

 

グゥー…。グゥー…。にゃん太はお腹がすいて動けないにゃん…。メルル、早く夕ごはん欲しいにゃん…。

 

うふふっ…。はいはい。お台所は…。

 

にゃ、ほら王子、リカちゃんキッチンと食材を魔法でちゃっちゃと出すにゃんよ!

 

……。 ……パチッ☆  ☆ミ ☆ミ ポンッ!! ミ☆ ミ☆

 

わ、わっ、凄い…。

 

こんなの全然凄くないにゃん! メルルの料理の方がずっと凄いにゃん!

 

えーっ。そ、そうかな…? よくわからないけど、お料理始めるね♪

 

にゃー!! メルルクッキングにゃ!!

 

王子は猫なの~♪ にゃん太なの~♪

 

にゃん太にゃん!

 

そして王子はパンジー♪ お庭で可憐に咲く、赤いパンジーの花♪

 

パンジーにゃん! チンパンジーじゃないにゃんよ?

 

朝になれば王子はエーデルワイス♪ 元気に野で咲く、白いエーデルワイスの花♪

 

……にゃ、にゃっ!?

 

メタセコイヤの夢みる、みるる♪ 王子の夢はメタセコイヤ♪

 

……夢は大きくにゃ(////

 

でも、でも♪ あたしはフルタ製菓のセコイヤチョコレートの方が好きなの♪

 

駄菓子屋に30ゴールドで売ってるにゃん。

 

フルタ♪ フルタ♪ お尻~フルフル~フルタ♪

 

可愛いにゃん!! メルルのお尻フリフリ最高にゃん!!

 

セコイヤ~♪ チョコ♪ チョコ♪ チョコレート~♪

 

にゃーん!! もはや、王子でもなく、にゃん太でもなく、お菓子のお歌にゃん!!

 

くるるるる。ビシッ! ドンブリ。ビシッ! ごはん。ビシッ! お味噌汁。ビシッ! ごはんとお味噌汁をぐ~ちゃぐちゃ、明治製菓のチョコべビーをパ~ラパラ…。アポロも入れて、はい出来た!!

 

す、すごいにゃ~~~!! 歌を歌い終わったら、いつの間にか、チョコまんまが完成してるにゃ!!

 

にゃん太~。チョコまんま、めしあがれ!

 

にゃ~ん!! わーい!!

 

食べさせてあげるね。お口、あ~ん。

 

にゃ~ん。はむっ。もぐもぐ…。にゃ!!! おいしいにゃ!!!

 

えへへへっ。王子も…。お口、あ~ん。

 

う、うむ。メルルの料理、実際に食べるのは初めてじゃな…。ぱくっ。もぐもぐ…。

 

……どう?

 

……。

 

ん? 王子、泣いてるの? 不味かった?

 

いや…。美味しいのだ…。

 

えへへへっ。ごはんは誰かと一緒に食べると凄く美味しくなるんだよ。あっ、そういえば、あたしもにゃん太と初めて一緒にごはんを食べたとき泣いちゃったな…。ずっと昔のことで忘れてたよ…。ね、ねぇ、王子、これからも一緒に食べない? 毎日ごはん美味しいと思うんだ。ごはんが美味しいと毎日がすっごく楽しいんだよ?(////

 

……。

 

王子は泣き虫だな…。お口、あ~ん。

 

んっ…。ぱくっ。もぐもぐ…。美味しいぞ。メルル。

 

えへへへっ…。じゃ、あたしも食べようっと…。ん?

 

スプーンを余に…。

 

ほえっ? ……はい。

 

メルル。お口を開けるのじゃ。

 

あっ! うん♪ ぱくっ。もぐもぐ…。

 

今度はメルルね、王子。お口、あ~ん。

 

うむっ…。ぱくっ。もぐもぐ…。

 

今度は余じゃぞ。お口を開けるのじゃ。

 

うん…。ぱくっ。もぐもぐ…。

 

今度はメルルね、王子。お口、あ~ん。

 

んむっ…。ぱくっ。もぐもぐ…。

 

今度は余じゃぞ。お口を開けるのじゃ。

 

うん。ぱくっ。もぐもぐ…。ねぇ、王子…?

 

…んっ?

 

おいしいね!

 

うむっ…。美味しいのう…。うん…。美味しい……。メルルよ、すまん…。

 

どうしたの?

 

余はもう我慢出来んわっ!! 抱きっ!!

 

キャ~~ッ!!(////

 

メルル…。ギュッ…(////

 

うううっ…。どうしてだろう、にゃん太と抱き合ってもこんなにドキドキしなかったのに…。ギュッ…(////

 

………………(////

 

………………(////

 

……メルルよ。

 

……ん?

 

よっ、余の妃となり、余のハーレムに入れ(////

 

はううっ…(////

 

余はそちが好きじゃ(////

 

にゃ、にゃん太、どうしよう…。メルルはにゃん太のハーレムに入るつもりだったんだけど…。

 

にゃー。メルルの心のままに、だにゃ。

 

あたしの心のままに……。うううっ…。王子…(////

 

う、うむっ…。い、いやメルルよ返事は今でなくてもよいのだ。後でゆっくり…

 

チュッ(////

 

……(////

 



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メルルの章 11 ☆☆☆ メルルステータスリポート

まずはメルルさまのご攻略おめでとうございます王子! 鳳凰宮の事務次官、ケルト(♀:5才:王立アカデミーに2才で入学して3才で首席卒業後、2年で鳳凰宮の事務方トップにまでのぼりつめたIQ 999の神童だぞっ!)にございます。早速ですが今回王子がご攻略なされたメルルさま、ハーレム候補となられるに値する人物か否か、鳳凰宮による査定書、ステータスリポートを今から王子の頭に念写させて頂きます。この隠匿情報が傍受されること決してないようクラス5の暗号コードのテレパスで送りますので解除キーの展開をお願いします。それでは現時点のメルルさまのステータスを表示します。

 

 

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メルル(7才)おとぎの国のお姫さま

 

容姿:★★★★★:ルックスの値(高い程よい)

教養:★☆☆☆☆:教養の値(程々がよい)

気位:★☆☆☆☆:気位の値(程々がよい)

性格:★★★★☆:扱い易さの値(程々がよい)

洗脳:★★★★☆:洗脳深度の値(低い程よい)

求愛:★★★☆☆:王子への愛(高い程よい)

寵愛:★★★☆☆:王子からの愛(高い程よい)

淫乱:★★☆☆☆:変態度数(程々がよい)

身能:★★☆☆☆:身体能力(高い程よい)

健康:★★★★☆:健康状態(高い程よい)

総合:★★★★★:ハーレム適正(高い程よい)

 

特能:みっくみく、お料理、お歌

弱点:耳掃除

お側役:アップリケ

 

評価:

メルルさま凄くお可愛いですね。あと数年もすれば間違いなく絶世の美女となられるでしょう。性格面も申し分ありません、素直でお優しく節度のあるお元気さで、とても扱い易い女の子です。洗脳値がやや高いのが気掛かりですが、鳳凰宮評議会が下したハーレム適正の総合評価は最高の五つ星です。評議会はメルルさまのハーレム入りに7人全員が賛成。反対者は1人もいませんでした。賛成多数、よってメルルさまは王子のハーレム候補さまとして鳳凰宮で大切にお預かりさせて頂きます。

 

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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

どうやらハーレム候補さまとして認められたようですね! でもまだまだこれからですよ王子、ハーレムは9人の枠が残って御座います。残り日数は5ヶ月半、それまでに頑張って他のハーレム候補さまをお探し下さい。最高のハーレムを目指してガンバレ王子さまなのです!

 



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メルルの章 12 ☆☆☆ 国道一号線

わわわっ…。凄いひと、数え切れないよぅ…。王都には世界樹の葉と同じくらいの人がいるってにゃん太のお話は本当だったんだね…。みんなあたしを見てる…。

 

ご結婚おめでとうござますー!!

 

喜んでる…。

 

きゃー!! メルルさまー!!

 

微笑んでる…。

 

メルル応えてあげるにゃ。笑顔で手を振ってあげるにゃ。

 

う、うん…。フルフル。フルフル。

 

きゃ~~~!!! メルルさま可愛い~~~!!!

 

ううっ…(////

 

メルル、顔をあげるにゃ。塔にもいっぱい人がいるにゃ。あの人たちにも手を振ってあげるにゃ。

 

う、うん…。フルフル。フルフル。

 

わ~~~い!!! メルルさまがお手を~~~!!!

 

ううっ…(////

 

メルル気合を入れるにゃんよ! 白帝城から40kmこの道を南に真っ直ぐ歩いて鳳凰宮に入るのがエロスのハーレム候補の慣わしにゃん! まだまだ先は長いにゃん!

 

40km…。ううっ…。そんなに歩けるかな…。

 

大丈夫にゃん! 10kmごとに休憩があるにゃん! 最初の休憩所は高島屋にゃん。レストランでお子様ランチが食べられるにゃんよ!

 

お子様ランチ?

 

ハンバーグやエビフライやウインナーソーセージやスパゲッティーが盛られてるお子様の為の至高の料理にゃん。

 

ほえー。

 

驚くなメルル、そこに、そこに、にゃんよ?

 

う、うん…。

 

なんと、ケチャップライスが山盛りで、その頂には旗が立ってるにゃん!!

 

は、はた!? す、すごい!!

 

そうにゃ、すごいのにゃ! だから頑張るにゃんよ!

 

うん!! フルフル。フルフル。

 

メルルさま~~~~~!!!!!!!

 

にゃはははっ。メルルの人気は凄いにゃん。

 

あっ…。お空から何か降ってきたよ…。わぁ…なんだろ…。雪…?

 

今は初夏にゃん。紙ふぶきにゃん。塔からばら撒かれてるのにゃ。

 

なんで?

 

メルルを祝福してくれてるのにゃ。この国道一号線は王都を縦に貫く大動脈にゃん。南の鳳凰宮に近くなる程に高層塔が増えていくにゃ。ゴール付近では息をするのも苦しくなるほどにいっぱい紙ふぶきが降るから注意するにゃんよ。

 

大紙警報だね…。フルフル。フルフル。

 

でも夜空に舞う紙ふぶきはキラキラと街の灯りが反射して綺麗にゃん。銀紙にゃん。ボクもテレビでしかみたことないけどにゃ。サライの曲が流れて、鳳凰宮を守護する近衛魔法騎士団が全員黄色いシャツを着てハーレム候補を出迎えてくれるにゃん。すっごく感動的にゃんよ。視聴率100パーセントにゃん。

 

……。

 

……にゃ? にゃにゃ、どうしたにゃん?

 

あたし鳳凰宮に入ってちゃんとやっていけるのかな…。

 

大丈夫にゃん!

 

でもグズでドン臭いよ?

 

にゃー。メルル、自分のことをそんなに悪く言ったら駄目にゃんよ。

 

でも…。

 

メルルはシッカリ者にゃん、でもメルルが駄目だと思うところがあるなら頑張って直せばいいにゃん。それだけのことにゃん。駄目だと思い込んでしまったらそこで終わりにゃん。

 

……直せなかったら?

 

直そうと頑張ることが大切にゃんよ? ほんのちょっとの成長。その経験が、メルルが本当に成し遂げたいことが出来たときに力となるにゃん。

 

本当に成し遂げたいこと?

 

そうにゃん。メルルにしか出来ないことって沢山あるにゃん。小さなことから大きなことまでいろいろにゃん。それをどれだけ実現出来るかどうかが重要にゃんよ。

 

例えば?

 

にゃ? にゃにゃ…。そうだにゃ、例えば、今、にゃん。

 

えっ?

 

ここにいる人達は今日のことを忘れないにゃ。メルルに笑顔で応えて貰った人は一生の思い出になるにゃん。忘れる人がいたとしてもメルルはメルルを見ている人達をいっときでも幸せに出来るのにゃん。それって凄いことにゃん。

 

……。

 

……安心するにゃんよ。鳳凰宮に入ればアップリケさんがメルルの側にズッといてくれるにゃん。それにボクもいるにゃん。メルルにいま足りないところはボクらが助けるにゃん。メルルはひとりじゃないにゃん。

 

うん。ありがと…。にゃん太…。

 

王子も半年後にはハーレムの選定を終えて、それからはズッと一緒にゃん。

 

……(////

 

だから、いまはメルル。みんなの祝福に応えてあげるにゃん。

 

うん…。フルフル。フルフル。

 

きゃ~~~!! メルルさま~~王子とお幸せに~~~!!!!

 

フルフル。フルフル(////

 

にゃははははっ。

 

みんなの笑顔が眩しいよ…。

 

そうだにゃ。強制されての祝福じゃないからにゃ…。みんなメルルへ心からの祝福の気持ちがあるから輝いてるのにゃん。

 

フルフル。フルフル。

 

メルル、これがこの街の星々にゃんよ。どれも美しく煌いているのにゃ。でもいまはメルルが一番に輝いているにゃ…。綺麗にゃんよ!

 

フルフル。フルフル。

 

 

メルルの章 完

 



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キリノの章 01 ☆☆☆ 白帝城(謁見の間)

鳳凰宮性約監査官グラドと申します。王子、わざわざお時間を取って頂き申し訳ございません。実はちょっとした問題が生じまして……いえメルルさまのことではございません、貴方さまの父ケインについてのことなのです。王子も知っての通りケインはエロス家の神聖な掟である性約を犯し、ハーレム以外の女と姦通するという大罪を犯しました。よって、奴めは王位を剥奪されて煉獄の塔に幽閉されておる訳ですが、その相手の女が厄介なものを。……おい、キリノを中へ入れい。

 

いやあぁあああ……。ごめんなさい。ごめんなさい。ご、ご主人様、お許し下さい。何かお気に障ったのなら謝ります。わ、わたし、なんでもします。で、ですから、怖いこともうしないで…。ガタガタ…ブルブル…。

 

あぁ、違います王子、この者はまだ13才でケインの姦通相手ではございません。そうではなくケインの娘と思われるのです。奴は城を抜けて市井に混じり庶民の娘と関係を持ちました。勿論、女は捕らえ、拷問を加え、たっぷりと苦痛を与えてから殺しましたが、今になってその女の遠縁に当たる者に、この娘が預けられておることが分かりましてな。で、性約監査部としては……えっ? どうしてキリノが裸なのかと? 王子…このような犬畜生にも劣る者に服などいらぬでしょう。……はぁっ? アザだらけ? えぇ、それはもうこのように毎日徹底的に痛めつけておりますゆえ。ドガッ!

 

ギャッ! ゴホゴホ…。うぅぅ……。ゴホゴホ…。

 

この顔立ちで金髪となればキリノはケインの娘で間違いはございますまい……しかし口を割りませぬ。父の名、母の名を知らぬと申します。残念ながら確固たる証拠が無い以上、性約監査部としては7日間の拘留期限が過ぎた今、法に則ってキリノを釈放する他ありません。…ですので今日窺った次第なのです。この者を殺す許可を頂きたい。国王代理であられる王子には国民の生死与奪の権限がございます。このような者を生かしては後々の世の禍根となりましょう。なにとぞ御決裁のほどを…。

 

ううぅ……。痛いよぉ…。ヒクッ。ヒクッ。お腹、痛い…。ヒクッ。ヒクッ。

 

五月蝿いぞっ、キリノ! 泣き止まぬかっ! 王子の御前で無礼であろうがっ! バキッ! ドガッ! ガシッ! ボキッ!

 

きやああっ! 痛いっ! ごめんなさい! あっ! やあっ! 痛いっ! 痛いぃぃっ! す、すみません! もう泣きませんからっ! きゃっ! あっ! いやっ! あっ! もう、い、いやあああぁあああ…………。うあぁああっつつ……。ジョロジョロジョロ……ショロショロショロ……。

 

小水を漏らしたか。全く汚らしい小娘だ。なんと恥知らずな……。あぁっ、靴が汚れてしまったではないかっ! 床もっ! 粗相をしたら、どうするのだ。キリノよ。

 

ふああぁい……。ぺチャぺチャ…。も、もうじわげございまふぇんですた……。ぺチャぺチャ…。わたくぢの…ぺチャ…こにょ…ぺチャ…したで…ぺチャ…ぜんふ…ぺチャ…ふきろりまずぅ……。ぺチャぺチャ…。

 

ははははっ。安心しろ、じきに王子から決裁が下る。拷問は終わりだ。お前は死ぬのだ。もう苦しまずに済むぞ。よかったな。ははははっ。自分の小水が最後の食事とは。ははははっ。

 

うううっううわあああぁああん。ぺチャぺチャ…。うっぅううわあああぁあん。ヒクッ。ヒクッ。わあぁぁあん。ぺチャぺチャ…。ううわああん……。

 

どうされた王子? 何をそのように怒っておられるのです。……違いますぞ。勘違いなさってはいけませぬ。例えケインの娘であったとしても、このような下賎なる者……。庶民の中から生まれた子など王子の姉上ではございません。ゴミに湧いた蛆のようなものです。王子の姉、兄、妹、弟と言えるのはハーレムで生まれたお子様のみでございます。鳳凰宮の評議員、つまり貴方様の母上さま方から私は全権委任を……。くっ…。そうですか、そうでございますか、王子、やはり貴方はまだ10才の子供だ。この世の仕組みや成り立ちがまだ分からぬのでしょうな。良いでしょう。言って分からぬ子にはお仕置きが必要です。自分の未熟さ非力さを知っておくのも良い勉強となりましょうぞ。手加減はしますが、怪我をされても恨まないで下さい。ふふっ…。参りますぞっ! 王子っ!

 

死ね…。

 

なっ! わ、わたしの魔法結界が粉々にっ!? 馬鹿な……単結晶魔法の障壁だぞっ…砕ける訳がないのだ…このようなこと魔法力学的に起きる筈が…。王子…貴方は一体……。ギャアァア!!! ボシュ……。墨墨 骨 墨墨。

 



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キリノの章 02 ☆☆☆ 白帝城(執務室)

蓮華か…。

 

はい…。キリノさまについてのご報告を。

 

話せ。

 

はっ、それが…。キリノさまが受けた拷問は凄惨なもので、全ての爪が剥がされ、歯も殆どが抜かれておりました。

 

……。

 

頭蓋骨、下顎骨、鎖骨、胸骨、骨盤、肩甲骨、胸椎、腰椎のそれぞれに無数のヒビがみられます…。

 

……。

 

両腕の…上腕骨、橈骨、尺骨、中手骨、指骨が骨折…。両足も骨折していて、特に右足が…。大腿骨、膝蓋骨、腓骨、脛骨で複雑骨折、粉砕骨折…。大きく腫れ上がり…壊死が始まっております。今すぐにも右足を…根元から切除する必要があるそうです…。

 

……。

 

内臓も…。自白剤を短期間に大量投与された影響で腎臓と膵臓に回復不能のダメージ…。ステージG5、排泄機能などの障害が発生して現在透析治療を行っております…。

 

……。

 

更に精神にも深刻なダメージ…。拷問のストレスと身体疾患等の環境要因、薬物使用による脳の機能障害でスキゾフレニア発症…。恐らく正気は戻らぬであろうと…。

 

……。

 

王子…申し訳ございません。鳳凰宮の動き、把握出来ていませんでした。メルルさまの件が無事に済んだ直後のことで、我らお庭番衆、皆、気が緩んでおりました。申し訳ございません…。

 

命は…助かるのか?

 

医師によれば五分五分とのことです…。

 

……奴は7日間の拘留期限が過ぎたからと余にキリノを殺す決裁を迫ったが、先週の木曜にキリノは捕らえられたのか?

 

はい。その日から今日まで一睡もさせず両親の名を問う拷問を延々と…。

 

……。

 

キリノさまは生まれて直ぐ母方の遠縁の親戚に当たる高坂一家というセクト地方ゼブンを縄張りとするヤクザに引き取られ、その高坂家のひとり娘として今まで大切に育てられてきました。高坂組長を実の親だと思い込んでいたキリノさまに性約監査部がどう拷問を加えようが自白を引き出せる筈もなく、高坂一家のヤクザ達もキリノさまを守ろうと激しく抵抗をして監査部に皆殺しにされました。キリノさまが本当に王子の姉上さまかどうか真相は今となってはもう分かりません…。

 

木曜の何時のことだ。

 

キリノさまの家の包囲を終えたのが正午過ぎ、突入は午後1時と聞きますが…。

 

分かった。もうよい下がれ。

 

王子…まさか……。いけません! 王子のタイムリープは1時間の跳躍が最大限界なのです。7日前に戻るということは、24×7回、最低でも168回連続で能力を発動し続けるということです。いくら王子でもそんな無茶をすれば死んでしまいます! あぁ、やめて下さい王子! やだっ! 行っちゃダメッ!!

 

……パチッ☆

 



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キリノの章 03 ☆☆☆ 白帝城(執務室)

……パチッ★

 

んっ? 王子? どうされたのです? 急に黙り込んじゃって……。チョコドーナツ不味かったですか? 街では一番人気なんですけど、ちょっとビターな感じのチョコレート味、王子には早かったかな~。うーん。私の食べ掛けですけどエンゼルドーナツと交換しましょうか? こちらの中にはあま~いホイップクリームがた~っぷりと入っていてですね…

 

蓮華か…。今日は何曜日だ…。

 

へっ? 水曜ですよ。いったいどうされたんです? あっ、今朝のメルルさまの鳳凰宮入り式典で疲れましたか? 王子興奮されっぱなしでしたもんね。いやー女である私でも興奮しましたよ、メルルさま、すっごくお綺麗でしたもん……。青いツインテールが風にたなびいてサラサラと舞って、それがアクセントになって純白のドレスを引き立てて……。ハァ……。今思い出しても溜め息が出ます…。祝福に詰め掛けた300万の国民も惚けた様子でメルルさまマジ天使って……。王子? 本当に大丈夫ですか? 凄く疲れた顔をしてますよ? お昼寝しますか?

 

195回……。キリノが捕縛される前日の午後3時…。ここまで戻れば……良かろう……。

 

王子…?

 

魔道王国エロス、国王代理アベルの名において、お庭番衆筆頭蓮華に勅命を下す。鳳凰宮性約監査部に所属する者を一人残らず斬り捨てよ。連中が保管する書簡や資料も全て燃やし尽くせ。エロス家への背信者どもを皆殺しにしろ。この世から消し去れ。

 

ハッ!

 

…監査官のグラドという男に気を付けよ。彼奴の結界はお前の突撃でも貫けぬであろう。正面からは決して戦うな。戦う前に勝て。

 

ハッ! シュタッ!

 

……あぁ、頭が割れるように痛い…。少し横になるか……。いや…まだ…駄目だ……。まだ余には…。

 

くくくっ。勅命が出るとは一体何の騒ぎでしょうか。おや? おやおや? 魔王子アベルともあろうお人が、なんと無様な。魔力が尽き掛けておりますぞ。腹でも壊しましたか? お二人だけで食べるドーナツは美味しゅうございましょうが、嫉妬という名の毒が入っておったやも知れませんな。

 

お前か…。直ぐに蓮華の後を追ってくれ。メルル付きの式典衛兵として鳳凰宮の深遠に出張っておる佐助は蓮華を助けに行くことが出来ぬ。お前が代わりに彼女を助けてやって欲しい。

 

くくくっ。私は王子を護衛する使命を受けておりますゆえ。このような状態の王子を置いて蓮華のフォローになど…。

 

余はここでお前が戦うさまをこの100インチのブラビアで大人しく見ていよう。行って来い。蓮華が危機一髪の所をお前が華麗に助ける様子はちゃんとHD録画しておいてやるから。暗黒公爵サキエルの暗黒バトルを久々にみせてくれ。

 

くくくっ。そこまで言われるのなら…。人間相手に私が戦っても勝負にはならぬでしょうが、一方的虐殺であっても王子がご覧になってお楽しみ頂けるように、舞いましょう暗黒の舞踏を! サキエルの舞を! くくくっ。では、わたくしステージに参ります。王子、とくとご覧あれ! シュタッ!

 

……すまぬサキエル、TVはTVカメラで撮影しないと画面には映らないのだ。蓮華の邪魔にならんようにな……。さて…キリノ…いや、姉上のおられるセクト地方ゼブンとやらへ行かねば…。今日中に着けば良いが…。おい誰か…! 誰かおらぬか! 馬を持て! 余は遠出に出るぞっ!

 



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キリノの章 04 ☆☆☆ セクト地方ゼブン(高坂邸・裏山)

あっ! また向こうの山で光った! ゴォオオオオン…………。

 

キリノ! 窓から離れろ! 撃たれたらどうする! おいキリノ! こらっ言うことを聞けっ!

 

だってお父さん! 悔しくないの? ウチの裏山で爆弾をあんなに……。あれ絶対、原田組の奴らの嫌がらせだよ……。クッソ~~ッ。やるんならウチに直接撃ち込んでみなさいよっ! この臆病者っ!!

 

挑発するなキリノ。連中は威嚇しているだけだ。夜の闇に紛れてコソコソと爆弾を爆発させるのが精一杯なのだ。花火大会だと思えばいい。とはいえライフルで狙撃されんとも限らん。もうこっちに来なさい。直ぐに終わる。

 

だって……ほらまた! あっちにも! ゴォオオオオン……。 ゴォオオオオン……。あ~~~~っ腹立つ…。調子乗ってるんじゃないわよっ! 私ちょっと行ってアイツら捕まえてくる!

 

ばっ、馬鹿な真似はよせ!

 

大丈夫。ほらっ、防弾チョッキ着てるし(ゼブン学園中等部のブレザー学生服の上着をチラリと捲くれば下着の代わりにケブラー繊維の防弾チョッキ、下のスカートは校則違反の超ミニでビッチ…かと思いきやチラリチラリと見えるおパンツは意外にも清純派の純白でしたぞっ!)、サブマシンガン持ったし、手榴弾だって、こっちが出て来ると思わないからちょっと威嚇射撃すれば絶対にビビって降参するって、浮き足立った相手の足を刈れば簡単に転ぶってこと。じゃあ、行って来るから♪

 

あっ! こら! キリノっ! ……あぁ、行ってしまいおったわ。まったく鉄砲玉のような奴だ……。おい、キョウスケ、連れ戻して来い。

 

ええっ!! おお俺っスか!? こ、こういう時はオヤッサンが身を挺してお嬢を止めて下さいよ……さっきっから情けないったらないね、頭から布団を被って。

 

てめぇだって被ってるだろうがっ! ツベコベ言ってねーで連れ戻して来い! あぁ…お前の布団は俺が預かっておいてやるからな…。

 

ハァ~~~~~ッ。やってらんね~。ていうか、お嬢、どこまで行ったんだ? お嬢~。キリノ~。って、庭に居ねぇし。本当に外出たの? 馬鹿なの死ぬの? ゴォオオオオン……。クソッ。行くしかねえか……。

 

ドゴゴォンンン! キャッ! ゴォンンンン! キャッ! ガタガタ…ブルブル…。

 

お嬢……大丈夫か…って、大丈夫そうだな。しかし、こんな所まで来てたのかよ…。無理しやがって、本当は人一倍怖がりの癖に…。

 

はぁ? なに分かったようなこと言っちゃってんの。ガタガタ…ブルブル…。これからハンティングを始めるところだったのに。ガタガタ…ブルブル…。余裕よ余裕。ちょっと靴紐が緩んだから、しゃがんで直してたの。ガタガタ…ブルブル…。

 

震えて強がっても全然説得力ねーよ。つーか俺はお嬢がオシメしてる頃から知ってんだ。意地張ってもお見通しだ。さぁ、帰るぞ……って、どうした固まって……。さっきの爆発で腰でも抜けたか? あぁ……死体か…。

 

く、くろこげ、バ、バラバラ……。ガタガタ…ブルブル…。

 

コンガリと焼けてるな……んっ? 死体の腰にぶら下げてるこの刀、魔剣か…。

 

魔剣? 何それ? ガタガタ…ブルブル…。

 

一般には出回らない魔法使い専用の武器でな、刃のオリハルコンに魔力を共振させると高熱が発生して鋼でもバターのように切り裂くことが出来るって優れものなんだが…。もしかして……。クンカクンカ。やっぱりそうだ。コイツの体から火薬の匂いが全くしない。爆弾じゃなく魔法で爆殺されてる。

 

つ、つまり魔法使い同士が殺し合ってるってこと? ガタガタ…ブルブル…。魔法使いってこの国を魔力で支配してる貴族連中よね? ガタガタ…ブルブル…。学校では王様や貴族は人ではなく神様みたいな存在だって教わったけど、わたしたちと同じように死ぬんだ…。ガタガタ…ブルブル…。でもなんでこんな田舎に…。ガタガタ…ブルブル…。

 

さぁ、なんでこんなところで戦ってるのかまるで見当もつかないけど、こんな連中の戦いに巻き込まれたら終わりだ。逃げるぞ。その銃は置いていけ。魔法使いに銃は効果ない。全力で走って逃げるんだ。

 

……う、うん……キョウスケ…ごめん。わたしのせいで…。

 

……らしくもない…もしもの時は俺がお嬢を逃がすくらいの時間は稼ぐから、俺に構わずオヤッサンの元まで逃げろよ。いいな。

 

そ、そんな……わたし、キョウスケのこと置いて逃げるなんて出来ないよ! だってわたし、昔からアンタのこと、す、好きだったんだからねっ(////   ……って、誰もいないし! こらっ! キョウスケ、わたしを置いて全力で逃げるんじゃないのっ! 待ちなさ~~い! キョウスケ、待て~~~っ!

 



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キリノの章 05 ☆☆☆ セクト地方ゼブン(裏山)

ハァハァ…。もう走れない…。爆発も収まったし、ちょっと休もうよ~。

 

もう少しで家に戻れる、頑張れ……。あぁ…不味い…人が倒れている…。

 

大変じゃん!

 

行くと思った…。おい、キリノ、危ないって…。

 

だって! あぁ…。酷い怪我…。

 

水…。水を……。

 

お水ないよぅ…。キョウスケ、持ってない?

 

そいつの腰に水筒がぶら下がってる。だが、この傷じゃもう助からない。貴族同士の戦いってのは、お互いの名誉を掛けて、死も覚悟の上でやり合うんだ。俺ら庶民が出る幕じゃない。先を急ぐぞ…って、お嬢……。

 

お水です。飲めますか?

 

ゴホッ…。ゴホッ…。

 

駄目だ…この人、お水を飲んでくれない…。こうなったら……ごくごく……。ぶちゅ~~~っ。

 

コクコク……。ゴホッ…。コクコク……。

 

やれやれ、ヤクザの親分の娘がこんなに甘いんじゃ、高坂組の先が思いやられるね。

 

う、煩いっ! ごくごく……。ぶちゅ~~~っ。

 

コクコク……。ゴホッ…。ゴホッ…。

 

……おいオッサン、何か言い残すことはあるか?

 

これ……を…鳳…に…届……けて……。クララ…すまない…父さんは……もう帰れそう……にない……。

 

んっ? メモリーカード? これを何処の誰に届けるんだ? クソッ! お嬢、こいつに水を掛けろ……お嬢? おいっ! キリノ! しっかりしろ、泣いてる場合じゃない。顔に水を掛けてやれ。意識が途切れそうだ。

 

もうお水ないよ…。涙 ヒクッ…ヒクッ…。

 

……あ、あなたの名はキリノなのか……そうか…あなたが……。なら、これはもう…いらんっ…。

 

熱っ! な、なんだよ……あぁっ…メモリーカードが溶けちまった…。

 

……キリノ様…すみません……。

 

えっ!? あっ…。く、口移しなんて、そ、そんなの気にすることないよ。わたし全然気にしてないし(////

 

……我々が間違っていました……法ばかり…気を取られ……人を見ていなかった。キリノ様…この崖の下に……貴女様の…… グハッ! ……ガクッ。

 

うぅぅ…。死んじゃったよぅ…。涙 ヒクッ…ヒクッ…。崖の下っていってたけど…もしかして仲間の人がいるのかな…。

 

さぁな…。

 

キョウスケ、怒ってる?

 

あぁ、俺のいうことを聞かないで危ないことばかり…。他人の命の前に、先ず自分の命を大切にしないと、命がいくつあっても足りない。本当は怖がりの癖に、他人のことになると何でいつもそんな無茶ばかりするんだ。お嬢が死んだり、酷い目に合ったら、俺はオヤッサンにどう……

 

キョウスケ、ほら、あそこに誰か倒れてる! 子供だよっ! 死んでる…のかな…。

 

お前はっ! 俺の話を全然聞かないよなっ! ハァハァ……。いや、少し動いた…。生きてるようだ。子供か…。仕方ないな…。俺、ちょっと降りてみるよ…。

 

わ、わたしも、降りる…。よいしょ。よいしょ。うんしょ。うんしょ。……ふうっ。……どう? 大丈夫そう? キョウスケ? どうしたの? そんなに顔を赤くして……。

 

キリノ……コイツ……人間だよな?

 

えっ? 何を言ってるの……。 !? わっ! ちょっ! な、なにこの子……。凄く綺麗……。こんな人いるんだ……。お人形さんみたい……。私と同じ金色の髪……。アッ。

 

う…うんっ……。な、なんだお前達! んっ!? さ、触るな…無礼者め…余を誰と心得るかっ!

 

わっ! わっ! 喋った! 声も綺麗…。妙に上から目線だけど…。アンタ誰?

 

ふははははっ。聞いて驚け! 余はな……。余は……。誰であろう……。

 



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キリノの章 06 ★☆☆ 高坂邸(居間・廊下・脱衣所)

あの爆発は原田組の挑発ではなく魔法使いどもの仕業……。キョウスケ、それはつまり、どういうことなのだ。

 

さぁ、俺にも何がなにやら。

 

むぅ…。キリノと、お前が拾ったという子供はどうした。

 

あの子が汚れているから一緒に風呂に入ってくるって、お嬢、はしゃいでましたよ。妹が出来たみたいだって喜んでました。

 

わたし分かったよ! アンタ、自分のことを余っていうじゃない。普通の子ならそんなこと言わないし、それにこんなに綺麗な顔をしてるし、多分どこかの貴族のご令嬢なのよ。それなら魔法使いが戦ってたのも説明が付くじゃん。アンタを守っていた貴族と、奪おうとした貴族が戦ったのよ。それで街道から逃げている内にあの山へ入ったんじゃないかな。

 

なるほど、そうか、余は貴族とやらの娘であるのか…。

 

絶対にそうだって! 魔法とかも出来ちゃったりするんでしょ? ちょっとやってみせて♪

 

魔法のう…。どうであろうか…。ふむっ。やってみよう……。ゴッド・ブレス・ファイアー・エクス……

 

待てぇ~い! ヤメヤメッ! 家の中なんだからそういう危なそうな奴じゃなくって! お手軽で生産的な魔法にしなさいよっ。欲しいものを叶えるのが魔法ってもんでしょ。黄金を出すとか、豪華な食事を出すとか、空を飛ぶとかさ。

 

欲しいものを叶えるのが魔法か…。うむ。何気に名言じゃの。余が欲しいものはなんであろう。記憶……いや違う…。余が欲しいものは…。

 

ど、どうしたのアンタ、私の目なんか見つめちゃって。汗汗…。ちょっ、恥ずかしいから止めて…(////

 

この娘、キリノを余の永遠の性奴に、余だけを求める盛りの付いた雌犬となれ!

 

……はぅ(////

 

ならぬか。どうやら余は魔法を使えぬようだ。

 

……あぁ、えっと、うん……。今のちょっと吃驚したよ。取りあえずアンタが魔法使いでなくて良かったよ。ていうか、あれがアンタの望みなの?(////

 

うむ。何故かは分からぬが、余はそちに引かれるのだ。そのエメラルドグリーンの瞳をみているとむしょうにお前が欲しくて堪らなくなる。キリノは余が嫌いか?

 

嫌いじゃない! 嫌いじゃないけど…あんた女の子じゃん……困るよ…。性奴とか雌犬とか怖いよ…。そ、それにわたしには好きな人が…わたしと一緒にいた奴、キョウスケって言うんだけど、あいつのこと昔からずっと好きなの…。だからゴメン……アンタの思いに応えられない…(////

 

そうかキリノには余より好きな者がおるのか……それでは仕方ないのぅ。女同士で性奴の雌犬となって好き合うのも、そちには怖くて出来ぬようであるし、残念だがこの余の思い、諦めるしかあるまい。キリノが怖がるようなこと、余はしたくないからな。

 

わたしもアンタのこと妙に引かれるんだ…でもそれは恋心とは……。あっ、ここがお風呂場なの。そうだ、あなたの着替えが必要よね。先、お風呂入ってて! 私のお古のパジャマ持ってくるから。下着はサイズが合わないかも知れないけど、この前に買った新しいのがあるから。超特急で直ぐ戻って来るからね! バタバタバタバタ……。

 

……ハァ…振られてしまったか。ガラガラ~。んっ…。風呂にしてはちと狭いかの。籠があるが、ここに服を脱ぐのであろうか。ぬぎぬぎ…ぬぎぬぎ…。 !? うむむっ。こ、これはチンチンではないかっ! 娘である筈の余の股になぜチンチンがついておるのだっ? チンチンとは女にもはえるものであったろうか。ググってみよう、いや発想の転換をしてみよう。余は女ではなく男なのではないだろか…。ほぅ。よく見れば、タマタマもあるではないか。プニプニ。ふむっ。懐かしい感触じゃ…。そうか余は男であったのかっ! おおっ、余のチンチンがっ! ふははははっ。男であることを思い出したことに祝福をしてくれておるわ! ふははははっ。

 

……バタバタバタバタ!! ガラガラ~。お待たせ! ごめんね! もう入ってる? 着替え持って……(////   バタン。

 



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キリノの章 07 ★★★ 高坂邸(居間・脱衣所・風呂場)

キリノはまだ風呂に入っているのか?

 

女同士で風呂に入るなんて今までなかったから、ゆっくりと入っているんだろう。

 

むぅ…。キリノを預かって13年…男手一つでアイツを育てたが、やはり女には女でなければわからんこともあるか…。俺のような半端者のヤクザに育てられてキリノは幸せだったんだろうか…。

 

オヤッサン、アンタはよくやったよ。頑張ったよ。あんなに愛情を注がれて大切に育てられたキリノはいい娘に育った。アイツの澄んだ心、目をみれば分かるさ…アイツは今日まで幸せだったんだろうなって、そう思うよ…。ふふっ。俺の自慢の妹だ。

 

妹だと? アイツはお前のことを…。そうか……。駄目なんだな?

 

悲しそうな顔すんなオヤッサン。今日ハッキリと分かった。キリノに極道は無理だ。ヤクザの世界でしか生きられない俺じゃアイツを幸せには出来ない。アイツは、妹は、俺らとは別の道を……陽の光が当たる道を歩んで行ける。俺達には出来なかった生き方が妹には出来る。それって全てはオヤッサンが愛情を注いでアイツを育てた結果なんだぜ? その愛を無にしてはいけない…。

 

ぬかったわっ! 余の痴態を見られてしまうとはっ! キリノが倒れてしまったではないかっ! ううっ…PTSDになってはイカンぞっ……。どうすれば…。余に魔法でも使えれば良いのだが…。むむっ。手に光が……。これは魔力!? 余はキリノのいうように魔法使いであったかっ! し、しかし余に出来るであろうか。出来そうな気がする。出来る。簡単なことよ。キリノの記憶から余の痴態をデリート! 余の性別を男から女へ転換! ……パチッ☆

 

う、うん……。あ、あれっ? ……わたし、どうしたんだろ……。

 

バスマットに足を取られて、コロコロ転がって、壁に頭を打って、失神しておったのだ。少し横になっておれ。

 

大丈夫だよ。早く一緒にお風呂入ろう? 制服ぬぎぬぎ。ミニスカぬぎぬぎ。

 

うむっ。白か。いや、すまぬ。余は向こうを向いておろうぞ。

 

わたしの方を向いてて欲しい…。わたしの体って魅力ないかな…(////

 

そ、そんなことはないが……。

 

見てて…。防弾チョッキぬぎぬぎ。ソックスぬぎぬぎ。ブラジャーぬぎぬぎ。おパンツぬぎぬぎ。…どう? 綺麗かな……やっぱ駄目かな…(////

 

い、いや、綺麗であるぞっ! キリノよ! 美しい体をしておるぞっ! ……じゃが余はそちの裸をみておると妙な気分になってしまうのだ。ふざけるのはもう…。

 

……さっき…白って……アレって、わたしのパンツのことだよね……。興味…あるの? 欲しいなら…はいっ(////

 

キリノの脱ぎたてのおパンツ……。暖かじゃのう……。クンカクンカ……ほう…先ほどまで外を走っておったからか、ちと……って、な、なんじゃ…。明らかにキリノの様子がオカシイではないかっ! 魔法が失敗したとでもいうのか? いや、キリノからは記憶が消えておるし、余の性別もこのように女となっておる。成功しておる筈なのだ。もしや倒れたとき、頭の打ち所が悪かったのであろうか…。

 

ふふっ、わたしのパンツ、匂いまで嗅いでくれるんだ。嬉しい…。でも、もうパンツはお仕舞いにして、一緒にお風呂に入ろっ♪ ガラガラ~。

 

う、うむっ……。しかし二人で入るにはちと風呂が狭いのう。キリノよ先に入るがよい。余は体を洗っておろう。

 

わたしが洗ってあげる…(////

 

そ、そうか……。それは有難いが、何故、後ろから抱きつくのだ。こうもピッタリとお互いの体がくっ付き合っていては、余の体を洗えぬのではないか?

 

わたしで洗ってあげる…(////

 

か、変わった洗い方をするのだなっ…。

 

そんなことないよ…普通だよ……ボディシャンプーを…こうして…いっぱい……いっぱい……つけて……じゃぁ…始めるね……ゴシゴシ…… ふぁんっぅ…うぅ… ゴシゴシ…… うっぅ…んっ… ゴシゴシ…… んっ… ゴシゴシ…… んっ… ゴシゴシ…… んっ… ゴシゴシ…… あぅぅ… ゴシゴシ… やぁっ…あっ…… ゴシゴシ…… うぅぅんっ……(////

 

あぁ…そうか……。分かりたくもなかったが、分かってしまった……。キリノが正気を失ったのは、やはり余の魔法が原因じゃ…。この娘、キリノを余の永遠の性奴に、余だけを求める盛りの付いた雌犬となれ! と、願った魔法が、余に魔力が戻った今、有効になってしまったのであろう…。

 

ハァハァ… 背中の次は… ハァハァ… 前…洗うね… ゴシゴシ…… ひやぁ…っ… ゴシゴシ…… あふぁ…… ゴシゴシ…… あっ… ゴシゴシ…… あっ… ゴシゴシ… あっ… ゴシゴシ… あっ…(////

 

むうっ…。このまま続けて欲しくはあるが…キリノの心が余にない今、それは止めておいた方がよいであろうな……。キリノよ、魔法を解除するぞ。 ……パチッ★

 

……あれっ……わたし……んっ? ええっ!? はわわわわわっ!! な、なに!? な、なんなの? わ、わたし…なんで、なんでアンタと裸で抱き合って……。 !? え? あっ……アンタ、こっ、こっ、こっ、これ……男……? きゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!(////

 



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キリノの章 08 ★★★ 高坂邸(居間・風呂場)

キョウスケ、いま風呂場からキリノの声が聞こえなかったか?

 

二人で遊んでいるんでしょう。

 

がはははっ。キリノもまだまだ子供だな。

 

子供って親が知らない内に、いつの間にか大人になっているって言いますけどね…。

 

……という訳なのだっ! 悪気は無かったのだ。性奴な雌犬の魔法を解除しようとしたら、全ての魔法が解除されてしまってな…。キリノを吃驚させてしまって申し訳なかった…。

 

ア、アンタねぇ……。信じらんない!

 

謝っても許してくれんか。

 

当ったり前じゃないのっ! アンタ責任取んなさいよねっ!

 

うむっ。今から魔法を使ってそちの記憶を…

 

勝手に人の頭の中を弄んないでよ! 怖いの嫌なのっ。それに記憶を消したからって、わたしが、あ、あんなことをした事実が消える訳じゃないし、都合が悪くなったら記憶を消すって、卑怯よ!

 

余はどうしたらキリノに許して貰えるのであろう…。

 

そ、そうね……。わたしに恥ずかしい思いをさせたんだから、今度はアンタが恥ずかしい思いをしなさい。

 

余もそちに恥ずかしい痴態を見られたのだが…。

 

あれは自業自得でしょ! むしろこっちが被害者なのっ! ああんっ! もうっ! アンタ責任取って、わたしと同じように、せ、せ、せ、性奴になりなさいっ!(////

 

むっ…。

 

そ、それでお相子になるから、許してあげるわよ…(////

 

仕方ないのぅ。わかった。余はキリノの性奴となろう。何をすればよいのか、そちが命じてくれい。

 

偉そうな性奴ね…。まぁ、いいわ。じゃ、一緒にお風呂入るわよ。裸のままだと風邪引いちゃうわ。よいしょ、ポチャン…。お風呂ちょっと狭いけど、わたしが抱っこしてあげるから、来なさい。

 

うむっ……。ポチャン…。

 

足曲げて、うん、そぅ…。お尻落として、からだゆっくり後ろへ倒して……。力入れないで…アンタを全部受け止めるから、わたしにからだ預けるように倒れて来て……。ふふっ…遠慮しないのっ…大丈夫だから……。うんっ…。抱きっ! はぁぁっ……。やっとお風呂入れたね……。あぁ…いい気持ち……。ん…。アンタ軽い…。駄目だよ…。ちゃんとご飯食べないと…。

 

……キリノよ。余を抱きかかえて風呂に入ってくれるのは嬉しいが、そちは恥ずかしいのではないか? 嫌なのではないか? 強がって無理をしておるのなら…

 

そんなことないよ…。わたし、弟とこんな風にお風呂に入るのって夢だったから嬉しいよ…。さっきもアンタと散々恥ずかしいことをしたけど、嫌じゃなかった。肌を触れ合って心が満たされたんだ。出会ったばかりで血なんか繋がってないけど…わたしには弟とじゃれ合ったようで、家族が増えたようで、嬉しかったんだ…。

 

余はそちにとって弟であるのか…。嬉しいような、残念なような…。

 

そ、それが…。わ、わたし…ブラコンなのかな…。弟のアンタが好きみたいなの…。変態なのかな…。この気持ちは恋心じゃなかった筈なのに……。わたしをこんな変態にしたのはアンタなんだからね。もうっ……。性奴さん、わたしにキスしなさい(////

 

うむっ。チュッ(////

 

んっ(////

 



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キリノの章 09 ★★★ 高坂邸(居間・風呂場)

しかしお前がキリノと一緒にならないとなると…キリノは悲しむだろうな……。

 

あれほどの器量があれば学校にボーイフレンドの一人や二人いるだろう。俺のことなんて直ぐに忘れますよ。

 

キリノにボーイフレンドだぁ? そんな訳あるか。キリノをな、そこいらのビッチと一緒にするんじゃねーぞ、テメェだってさっきキリノは良い娘に育ったっていってたじゃねーか。殺すぞ、コラ。

 

あの年頃の娘なら学校での恋愛は普通だよ。まだ中学生なんだから裸で抱き合うって訳でもなし、淡い恋心をいだき合うなんて微笑ましいじゃないか…。オヤッサンの考えが下品なんだっての。

 

いいお湯ね……。ん? どうしたの無口になっちゃって、長湯でのぼせちゃった? もう上がろっか…。

 

余は、もう少し、こうしていたい。キリノに抱かれて湯に入っておると、心が休まってな……ついウトウトと……眠くなってしまうのだ……とても安心するのだ……。

 

アンタもそうなんだ……。わたしも……アンタとこうしてると凄く落ち着くんだ…。ねぇ、わたしにキスしなさい。

 

チュッ(////

 

うへへ…(////

 

……キリノはキスだけでよいのか。

 

うん。キスだけでいい…(////

 

余は性奴なのだ。キリノが望むことはなんでもするぞ…。

 

怖いの嫌だし…。キスだけで…わたし……。ねぇ、もう一度キスしなさい。

 

チュッ(////

 

ふへへ…(////

 

キリノとキスをすると余の心は温まる……。チュッ(////

 

んっ…あんっ……。め、命令してないのに性奴がご主人さまに、キ、キスしたら、駄目なんだからねっ(////

 

すまぬ。我慢出来なかったのだ。しかし分からぬ…。何故こうも強く余はそちに引かれるのだ…。

 

えへへ……それは……わたしが引き寄せられる分、アンタも引き寄せられて……アンタが引き寄せられる分、わたしも引き寄せられる……二人が引き寄せ合ってるから引力が半端ないんだよ(////

 

キリノよ。そちはキョウスケとやらが好きではなかったのか?

 

うん、キョウスケ好き(////

 

……余は?

 

うん、アンタも好き(////

 

そ、そうか……。キリノには余だけを見ていて欲しいのだが…。

 

どっちも好きって、駄目かな?

 

うむっ…。一人が何人も愛するというのは、良くないと思うぞ。ふしだらであるぞっ。

 

そっかな。この国の王子さまってハーレムを持ってるけど、王子さまがふしだらなんて誰も言わないよ。

 

ではそのハーレムの女達はどうなのだ。自分だけを愛してくれないというのは悲しいことではないのか。

 

今朝、鳳凰宮入りの式典があったじゃん。わたしの学校からも全校生徒でお祝いに行ったんだけど、ハーレムのお姫さま、メルル様って言うんだけど、すっごく可愛くてさ、すっごく嬉しそうだった。ハーレムに入って王子さまと一緒になるって悲しいどころか、この国の女の子が一度は抱く夢なんだよ。平民でも貴族でも女性なら誰にでも平等にチャンスがあるの…。その夢がふしだらとか悲しいとか思いたくないな…。

 

ふんっ。姫は綺麗であっても、その王子とやらは、さぞスケベな顔をしておるのであろうな。

 

王子さまは王位継承の戴冠式があるまで顔を見せないから、よく分からないけど、ルーン一番の美少年だって噂だよ。メルル様があんなに幸せそうだったんだから、やっぱり王子さまって超カッコイイんじゃないかな。

 

……キリノはそのスケベ王子も好いておるのか。余だけを見るというのはキリノには出来ぬのであろうな…。だが他の者にキリノの心が奪われるとき、余には言い知れぬ不安と焦りと悲しみが心の底より浮かびあがる…。この苦しみ…余は耐えられぬやもしれん…。

 

苦しいの?(////

 

うむ…。

 

ど、どうしてもアンタだけを見て欲しいっていうのなら、そうしても、いいけど…(////

 

本当かっ!

 

う、うん…。た、ただし、条件があるわよっ!(////

 

ど、どうすればよいのだっ!

 

えっと、えっと…。どうしよっか……。あっ、うんっ。嫉妬深い嫉妬深い性奴さん、わたしがアナタの虜となるように、もっともっと沢山キスしなさい(////

 

チュッ チュッ チュッ チュッ チュッ(////

 

にょへへへへ…(////

 



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キリノの章 10 ★★★ 高坂邸(居間・風呂場・脱衣所)

おいキョウスケ、いくらなんでもキリノ、遅くねーか? もう10時だ。あれから2時間は経っとるぞ。

 

そういえばさっきのお嬢の声、叫び声のようにも…。

 

……キリノと一緒に風呂へ入ってる女、身元が分からねーんだよな?

 

あぁ…。まだ10才くらいの子供なんで害はないと思ったが…。まさかアイツ…。

 

んっ…っ…。ハァハァ……。わたし、あれから何回アンタにキスされたんだろ…(////

 

数など、かぞえてはおらぬ…。チュッ(////

 

ふぁぅ…っ…。ハァハァ…。いま何時かな…(////

 

余はそちのことしか頭に浮かばず、馬鹿になっておるから、分からぬ…。チュッ(////

 

あぁ…んっ…っ…。わたしも馬鹿になってる…(////

 

キリノといつまでもこうしていたい…(////

 

ふぁ…ん…。ハァハァ…。うん…。わたしも…アンタとこうしていたいけど…。ハァハァ…。も、もう終わろうよ…。ハァハァ…。体がもたないし…。頭がパンクしちゃう…(////

 

チュッ(////

 

んぅ…。ちょ、ちょっと…。ハァハァ…。もう止めなさいっ…(////

 

チュッ(////

 

あんっ…。ハァハァ…。もう…。こらっ…。ハァハァ…。性奴がご主人さまの命令を聞かないでどうするのよっ…(////

 

余はキリノを虜にするように主から命令を受けたのだ。チュッ(////

 

やんっ! わかったよ…。だからもうお風呂出よう? こんなに遅くなったら、お父さん達があやしむよ。

 

余にそのような口の利き方をするようでは、余の虜とはいえんぞ。チュッ(////

 

あんっ……。すみませんご主人様…(////

 

そちは余のなんじゃ? チュッ(////

 

はうっ……。わたしは貴方様の虜です…(////

 

余だけを見てくれるか?(////

 

はい…。これからは永遠に貴方様だけを見ています…(////

 

そうか…。では余もそちの永遠の虜となろう。これは互いがお互いの虜となる誓いの口付けだ。受け取れ。ブチュ…………………………ッ(////

 

んんんぅ!? うぅぅっ! ううううぅぁぁ! ……ううんっ……うんんっ……ううっ……ぅ……んっ……んぅ……ぅ……んっ……ぅぁ……ぁ……ぅぅ……(////

 

プハッ…(////

 

あふぅ…(////

 

……………………(////

 

……………………(////

 

で、では風呂から上がるか…。ザバッ…。よっと。うむっ。キリノよ手を貸そうぞ。

 

う、うん…ありがと……。よいしょ…あっ…あれ? ああっ……わたし…さっきので吃驚して……腰が…抜けちゃったみたい……。立ち上がれない…(////

 

では、余がキリノを抱っこしてやろう。そちはハーレムの姫さまに憧れておったからの。丁度よい。今ここでお姫様抱っこを余がキリノ姫さまにしてしんぜよう。

 

え~っ、わたしの体重どうみてもアンタより重いじゃん。持ち上がらないと思う…。

 

大丈夫だ。ではいきますぞ…。余の腕を湯の中のキリノ姫さまの背と太腿に絡ませて…

 

キャッ…(////

 

キリノ姫さま。余の首に姫さまの両の腕を絡めて、しっかりと抱きついてくだされ。

 

う、うん、抱きっ(////

 

よいしょと、ザッバ~ン!!

 

ふわっ…。ア、アンタ、こんなに腕が細いのに、わたしを軽々…。す、すごい力なんだね…。

 

うむっ。では脱衣所へ向かいますぞ。てくてくてく。ガラガラ~。うむっ。到着でございます。ではキリノ姫さま、降ろしますぞ……。どうだ、立てるか?

 

だ、駄目みたい。頭もボーっとするし、ちょっとだけここに座って、休んでる…。運んでくれて、ありがと…(////

 

うむっ。そうだ、動けぬのであれば、余がそちの体を拭いてやるとしよう。バスタオルは…これか……

 

だ、だめよ! い、いやぁ!

 

……んっ? キリノは余の虜となったが、余はキリノの虜でもある。主であるそちが本気で嫌と申すことは絶対にやらぬが……キリノは余にからだを拭かれるのが嫌なのか?

 

ご、ごめん…。さっきの誓いのキスで…腰が抜けて、わたしのからだが…痺れた感じになっちゃってて、力がまるで入らないの…。自分のからだが自分のじゃないみたいで…。どうにかなっちゃいそうで…。だから、いまアンタにからだ擦られるの怖いの…。わたし怖いの駄目なんだもん…。ぐすっ…。ぐすっ…。う、うっ…。

 

そ、そうか。怖いか。なら、止めておこう。余はキリノを怖がらせたくはない。そちのからだの変化に思い至らず、すまなかった。もう泣くでないぞ。なにもせぬ。安心しろ。頭、撫で撫で。

 

……ごめん。ヒクッ…ヒクッ…。

 

うむっ。気にするな。ではこのバスタオルで体を拭くがよい。そちのパジャマは……。これか。ふむっ。薄い黄色の生地にウサギとニンジンが一杯おるのう…。下着はこれじゃな。白か。いや、すまぬ。余のパジャマはこれじゃな。キリノのお古ということだが…青の生地に…タコ…なのかのう…よく分からぬ。下着は白か。女物だが余がまた魔法で女になれば良いのだから問題あるまい。うむっ。ではキリノよ。余はこれから魔法で……。うん? どうしたのだ? バスタオルを余に突き返して…。もう拭き終わったか? なら余もコレを使って…

 

違うの…。まだなの……。ガタガタ…ブルブル…。上手く拭けないから、やっぱりアンタにお願いしようかなって。ガタガタ…ブルブル…。あはははっ。バスタオルで拭かれることくらいで怖がるなんて、わたし変だよね。ガタガタ…ブルブル…。ちょっとお水を拭き取る為にからだに触れられるだけなのに。ガタガタ…ブルブル…。お風呂でアンタ抱きかかえてたのに何いってるんだろ。ガタガタ…ブルブル…。さっきはどうかしてた。もう大丈夫だよ。ガタガタ…ブルブル…。わたしのからだ…。貴方様に拭いて貰いたいです…。ガタガタ…ブルブル…。

 

震えておるではないか…。寒いという訳でもなさそうだし。怖いのなら無理をすることはないのだ。

 

だって、アンタに嫌われたくないんだもん…。

 

ブチュ…………………………ッ(////

 

はううっ…んうっ……ぅ…っ……ぅぅ…ぅ……んっ…ぁ……ぅぅ……(////

 

キリノを嫌う訳がなかろう。余はそちの永遠の虜であるぞ。そのような不安は、互いがお互いの虜となる誓いの口付けがまだ完全に出来ておらぬ証拠だ。キリノの心に誓いが刻まれるまで、余は何度でも誓おうぞ。

 

……じ、じゃ…もう一回…お願い…(////

 

キリノは余の永遠の虜であり、余はキリノの永遠の虜である……。余はそなたが好きだ。愛しておる…。ブチュ……………………………………ッ(////

 

わ、わたしもっ、んあっ…っ……ん………んぁっ…………ん……あぁ…ぁっ………(////

 

……どうだキリノ。不安はなくなったか?

 

うん…。キスをしていると、からだは痺れるけど…。何も怖くなくなる…。アンタのことしか考えられなくなる…(////

 

余もキスをするとキリノのことしか考えられなくなる…。おおっ、そうじゃ、キスをしながら余がキリノのからだを拭けば良いのじゃ!

 

えっと…。頭がボーっとしてよく分からないけど…。わたし…アンタとキスさえ出来れば、あとはもうどうでもいいの…。キスしてたら他にどんなことをされたって怖くないよ…(////

 

よしっ、では、やってみるぞっ。ブチュ……ッとして、キリノの背中を、拭き…拭き…。

 

んうっ…っああぁ…あん……。ちょっと待っ…うっ…ぅ……っ…あうっ(////

 

ブチュ……ッとして、腕を、拭き…拭き…。

 

怖くはないけど、こんなのっ…余計にからだが…痺れて…んっ…ぅ……ぁ…ぅ……はうぁっ(////

 

ブチュ…………ッとして、お腹を、拭き…拭き…。

 

らめっ…ょ…ぅ……っ……ぁ…あぁ…ぁ……んあっ(////

 

ブチュ………ッとして、お股を、拭き…拭き…。あれ? ブチュ………ッとして、拭き…拭き…。んっ? 拭き…拭き…拭き…拭き…

 

やっ…やっ…やっ…やっ…やぁああぁんっ! あっ…あっ…あっ…あっ…ああぁぁんっっ! ……………………………(////

 

バタバタバタバタ!! ガラガラ~。キリノ!!! キリノ! 大丈夫か! えっ…………。

 

バタバタバタバタ!! お嬢!!! お嬢! あっ…………。

 

はれぇ…? おとうひゃん…。きひょうふけ…。どうひたのん? あぁ…ごしゅじんさま……。わたしのからだ……たおるで…おふきいただき…ありがとうございましゅた……。わたし…どうやら……ごしゅじんさまにおまたをふかれてる途中で気を…きを…き、き、き、きゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!(////

 



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キリノの章 11 ★★☆ 高坂邸(廊下・キリノの部屋)

もう深夜1時…。長いお説教だったね…。

 

キリノは余への気持ちを父へ訴え、風呂でのことも懸命に庇ってくれた。恥ずかしかったであろうに…。すまなかった。

 

そんなの全然気にしないで。それより、うちのお父さん心配性だから、わたしに何かあると少し理性を失っちゃうところがあって、アンタにあんな失礼なこと言ったり…。変なことしたり…。本当にゴメン…。

 

余が席に座ったら、いきなりふところからトカレフを取り出して至近距離からの6連射、さらには刀で余のクビを撥ねようと、まさに鬼のようであったわ…。

 

ほ、ほら、アンタ魔法使いだから多少無茶しても大丈夫だと分かっててやったんだと思う。舐められないように、ちょっと威嚇したかっただけ……なんじゃないかな。汗汗…。

 

余が魔法使いであることを告げたのはもっと後だったように記憶するが…。しかし、そのようなことは些細なこと。大切なのは、キリノの父は最後には余とキリノの仲を認めてくれた、ということだ…。

 

うん…(////

 

娘の気持ちを親が汲み取り尊重すると言っても、どこの誰とも分からぬ、記憶すら持っておらぬ余を、大切な娘の相手として認めるのはキリノのことを信じきっておらねば出来ぬことだ…。

 

……お父さん、始めはアンタのこと汚く罵ってはいたけど、最後は結構気に入ってたんだと思う。アンタって髪の色もそうだけど、どことなく雰囲気がわたしに似ているんだ。わたしがアンタを弟のように感じたのと同じように、お父さんも…。

 

雰囲気が似ておるか…。確かにそうかも知れぬ…。だが目の色はお互いに違うぞ、そちはこのように綺麗なエメラルドグリーンをして、余はその瞳をみているとむしょうにキリノが欲しくて堪らなくなってしまう…。チュッ(////

 

やんっ、だ、駄目だよこんなところで…。わたしの部屋もう直ぐだから…それまで、ね? 我慢して(////

 

う、うむ。すまなかった。

 

ふふっ…。でも雰囲気が似ているってだけで、アンタの方がわたしよりズッと綺麗だよ…。もうっ。弟の癖に、お姉ちゃんより可愛いってちょっと生意気だぞっ。チュッ(////

 

へ、部屋まで我慢するのではなかったのか。余は本当に我慢出来なくなるぞ。チュッ(////

 

うへへ…。もう着きました…。ここがわたしの部屋なの…入って(////

 

う、うむっ(////

 

ちょっと散らかってて恥ずかしいけど(////

 

ほおっ……。女の子らしい可愛い部屋であるのう。クンカクンカ…。うむっ。キリノの匂いがする…(////

 

どんな匂いなんだろ…まさかパンツの匂いじゃないでしょうねって、そんなの恥ずかしくて聞けない…(////

 

ふははははっ。可愛いぬいぐるみやクッションが沢山転がっておって心が和むわ…。勉強机、本棚、ベッド…。そしてTVか…。大きなTVであるな…。100インチのブラビアか…。どこかで…。いや、余の気のせいであろう…。プチっとな。

 

こんな時間に番組なんてやってないよ…。あれ? なんかやってるね…。

 

……続報が入って来ました。反乱部隊はほぼ制圧され、先日夕刻からの鳳凰宮での戦闘は収束に向かっているとのことです。繰り返します。反乱部隊はほぼ制圧され、先日夕刻からの鳳凰宮での戦闘は収束に向かっているとのことです。今回の反乱事件に関する詳細はまだ不明ですが、国軍が包囲しているのは鳳凰宮南区域、性約監査本部である第63塔です。昨夜9時に王家直属の特殊部隊が突入した際には塔周辺の魔力係数は瞬間最大で34億6500万MP/s、積算で523兆2100億MPが計測されています。これは我が国の年間消費電力の実に20倍にも及ぶカロリーが消費されたことに相当し、魔力観測衛星ヒマワリからは9時以降から鳳凰宮南区域にて時空の歪みの発生が複数回観測されています。これらのことから塔内部において、相当激しい魔力戦闘があったことが窺えます。ただそれも次第に収まり、本日深夜1時、反乱部隊はほぼ制圧されたという情報が……えっ!? Vが来てる!? 現地からのライブ映像が入りました。それでは現場の若林レポーター……。若林レポーター……? あれっ? 若林さん…?

 

若林は死にました。くくくっ。わたくし暗黒公爵サキエルと申します。若林の死を見取った者です。彼は凶弾に倒れ、後は頼むと私にこの血まみれのマイクを託したのです。くくくっ。皆様、血塗られた惨劇のステージにようこそ。残念ながら、もう最終幕でございますが、王子に歯向かう不貞の輩の末路がどうなるのか、存分にお見せしましょう。くくくっ、もし小さなお子さまがこのような深い夜に起きていたのなら、その可愛い目をお閉じ下さいませ。可愛い耳をお塞ぎ下さいませ。よろしいですか? くくくっ。では王子、長らくお待たせ致しました。暗黒の舞踏、サキエルの舞をとくと御覧あれ…  プツッ。

 

詰まらん…。ん? どうしたのだキリノ。震えておるのか?

 

ニュースを観てたアンタの顔、ちょっと怖かったかも…。ガタガタ…ブルブル…。

 

顔に出ていたか…。キリノを怖がらせてしまって、すまぬ…。チュッ(////

 

んっ…。えへへ…(////

 

震えは止まったようだな。すまなかった。頭、撫で撫で。

 

うへへ…(////

 

TVなぞ見なければよかった…。キリノよ…。実は…。余は…。んっ? 目を閉じて余の方へ顔を向けておるが、もっとキスをして欲しいのか?(////

 

うん!(////

 

うむっ。チュッ(////

 

にょへへ…。お返しだぞ。チュッ(////

 

むむっ。チュッ(////

 

にょほほ…。ねぇ…こんな時間だし、もう寝よっか…(////

 

う、うむ…。だがベッドはひとつ…(////

 

ふたつ必要なの?(////

 

ひとつでよい…(////

 



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キリノの章 12 ★★★ 高坂邸(キリノの部屋)

電気消すね。

 

う、うむっ…。

 

パチッ…。消灯。てくてく。ベッドへお尻をポスッ。お尻ズリズリでベッドの真ん中に移動…。ふうっ……。んっ? 部屋の明かりを消したのに…。外から月光が差し込んでるのか…。今夜は満月なのかしらね……。ふふっ。アンタ、そんなところに立っていないで、こちらへどうぞ。

 

う、うむ。お邪魔するぞ。ポスッ(////

 

端にいないで、もっとこっちにいらっしゃい。夜冷えるから、ほら、布団に入って。

 

…布団、良い匂いだのぅ。ガバッ。

 

昨日干したからね……って、頭から布団に潜ってどうすんのよ。顔、見せなさい。

 

余は布団の中でよい…。モゾモゾ。キリノのお腹はここの辺りか。抱きっ。

 

キャッ! ちょ、ちょっと。何してるのよっ。布団バサッ。わっ、お腹に抱きつかれて耳を当てられてる…(////

 

しばらくこう居させてくれい。キリノの温もりを感じ、音を聞きたいのだ…。いま少しそちの存在を余に感じさせてくれ…。キリノの心音はトクトクと早く連打され、お腹がゴロゴロといっておる。なんであろう。とても落ち着く。

 

そ、そう(////

 

んっ? 心音がまた少し早くなった。苦しくないか? 少し深呼吸をしてみよ。

 

う、うん…。スーハー…。スーハー…(////

 

もう少し深く。

 

スーーーハー……。スーーーハー……。って、何やらせんのよっ!(////

 

むっ、鼓動が少し緩やかになったぞ。

 

もうっ…。わたしのからだで遊んでるんじゃないのっ…(////

 

楽しいのぅ。

 

しょうがないなぁ……。そういえば昔、キョウスケとよくこうして抱き合って寝てたよ…。アンタの着てる、これ、キョウスケが子供のころ着てた寝巻きなんだ…。懐かしい…。

 

……そちがキョウスケのことを思い出すと、余は嫉妬してしまうではないか…。これはもう脱ぐことにしよう。モゾモゾ。脱ぎ脱ぎ。

 

アンタ、本当に嫉妬深いわね…。

 

脱げたぞ。

 

……な、なんで寝巻きを脱いだら全裸なのよっ! アンタ下着を穿いてなかったの!?(////

 

うむっ。寝巻きだけ借りた。下着はない。新しいのがなかったのだ。

 

そ、そう。アンタだけ裸って、ちょっと可哀想だから…わ、わたしも…一緒に…なってあげるわよ。モゾモゾ。脱ぎ脱ぎ(////

 

チュッ(////

 

あんっ、もうっ、ショーツ脱いでるときに…意地悪なんだから(////

 

キリノの裸はやはり綺麗だな…。月夜に映える。

 

あ、ありがと…(////

 

またキリノの存在を余に感じさせてくれい。

 

…さ、さっき、わたしの音を聞かせたんだから、こ、今度はアンタのを聞かせないよっ(////

 

わかった…。よいぞ…。余もキリノに余の存在を感じ取って欲しい…。

 

うっ、アンタみたいな綺麗な子が無防備な全裸でベッドに寝そべってるって、ちょ、ちょっと緊張するわね…。ん? そ、そんな無邪気な目をして、わ、わたしの顔を見詰めないのっ。目を瞑ってなさいっ。さ、さぁて…。ど、どこに抱きついてやろうかしら。……ていうかアンタ、腹立つほど肌綺麗ね…。スベスベしてる…。ほっぺがあって…お口があって…顎があって…喉があって…これが鎖骨ね……胸で…そして、やわらかい…お腹……おへそ……ここに抱きっ(////

 

どうだ?

 

アンタのお腹ゴロゴロいってるよっ…。心音も聞こえる。ふふっ。深呼吸が必要なのはわたしだけじゃないみたい。

 

お互い裸で抱き合っておると温もりがこうも伝わるものなのか……。

 

温かいね……。それに、この音……。どうしてだろう。とても落ち着く…。

 

…そちは余が弟のようだから好きだと言ったな。

 

…うん。わたし極度のブラコン(////

 

もし…。余とそちが本当の姉弟であったら…。

 

本当の姉弟? アンタと血が繋がってたらってこと?

 

うむ。仮にだが…。もうそうなら、そちは余と今のような関係になったであろうか?

 

うーん…。そうだね。歯止めが掛かると思う。恋心の芽が生まれたとしても、お互いが愛を誓い合ってキスをするところまでは育たないんじゃないかな。その芽はひっそりと摘み取ったり、摘まれたり、心の奥底の日の当たらない所に植え直したり、家族の木の陰でしおれたり…。そして時間が過ぎていく内に、そんな芽があったことすら次第に忘れていくんだと思う…。

 

そうか…。

 

変なの…。ねぇ、キスして(////

 

チュッ(////

 

あんっ…そ、そうじゃなくて…。あ、あの…誓いの…キス…。アンタが変なこと聞くから不安になってきちゃったのっ(////

 

互いがお互いの虜となる…。誓いのキスか…。それはもう余とそちには……。キリノよ、落ち着いて聞いて欲しい。余は記憶が戻った。直ぐにも帰らねばならん……。

 

い、いきなり、な、なに言ってるのよ。わたしを怖がらせようとしても…

 

キリノが怖がるようなこと余は絶対にしたくはない…。だが真実を告げなければ……。キリノ、そちと余は実の姉弟なのだ。

 

……アンタが…わたしの弟? ガタガタ…ブルブル…。

 

……はい。姉上さま…。

 



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キリノの章 13 ☆☆☆ 高坂邸(キリノの部屋)

姉弟なんて、そんなのある訳ない…。だってアンタとわたしは山で偶然出会っただけだし、お母さんはわたしが生まれた直ぐ後に死んだって…

 

貴女のお母様は私の父と恋に落ち、そして貴女が生まれ、この家に預けられた…。私と姉上は腹違いの姉弟なのです。

 

そ、そんなのお父さんは、ひとことも…

 

姉上。この事実が明るみになると、貴女を快く思わず危害を加えようとする輩が無数に現れるでしょう。ですから私は姉上の出生の秘密を知る者をこの世に一人も残しはしません。必ず全員殺してみせます。私はその為にここへ姉上のもとへ参ったのです。

 

殺すって…まさか、裏山で死んだ人たちって…。

 

あの山から姉上の家を監視していた連中は私が皆殺しにしました。他の者に任せると姉上のいるこの地の存在を知られ、その者も殺さねばなりませんので。

 

うぅ…。ぐすっ…。わたしがアンタの姉だっていう証拠でもあるのかな…。うぅ…。ヒクッ…ヒクッ…。アンタと雰囲気は似てると思うけど、そんなの偶然だよ。髪の色だって、たまたま同じってだけなんだよ…。

 

貴女が私の姉上である可能性は高くありましたが、しかし確たる証拠はありませんでした。

 

だったら!

 

疑わしいというだけで貴女に災いが降り掛かるのです。それに証拠がないのは少し前までの話…。失礼ながら、さきほど姉上のからだを調べさせて貰いました。私に通ずる血統を持つ者かどうか、姉上のからだの波紋を捉えてハーモニクステストをしてみたのです。貴女から捉えた全ての波紋が私の波紋と共振しました。貴女は間違いなく私の姉上さまです。

 

からだを調べたってどういうこと? 波紋って何? アンタ何を言ってるのよ…

 

魔力の源は血統であり、血の源である心臓の鼓動が魔法を生み出し固有の波紋を生じさせます。姉上はまだ魔力に覚醒されておられませんが、既に鼓動と共に小さな波紋が生まれておりました。

 

わたしの心音を聞いたのって…そういうことするのが目的だったの? ぐすっ…。ぐすっ…。う、うっ…。ううっ…。

 

……はい。

 

そっか…。わたし…馬鹿だからさ…アンタがわたしのこと好きだからやってるんだと思ってた…。ううっ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

すみません…。姉上。

 

アンタがわたしから距離を置くのって、血の繋がる実の姉弟で愛し合うのが気持ち悪いと思ったからなの?

 

いえ。

 

じゃ…。なんで急に帰るなんていうの…。なんでそんな他人行儀な言葉遣いになるの…。なんで誓いのキスをしてくれないのっ…。

 

貴女と距離を置くことお許し下さい。もしここで私情に流され貴女を連れ帰ったとしても、私と貴女の出会いという因果がある限り、いずれ貴女が私の姉上である事実は白日の下に晒されることになりましょう。姉上の命を狙う者達は思慮深く、狡猾で、偶然などという曖昧な言葉は一切通りません。どういう理由で結ばれたのか、そこから真相は直ぐ暴かれてしまうでしょう。私は貴女に危害を加える者を殺し続ける。しかし母上達にまでは手が出せない。もし姉上に何かあったら今度は止められないかも知れない…。そうなったら姉上は…。私は…。

 

…アンタ、泣いてるの?

 

…もう時間がありません。私の魔力は急速に回復していてこれ以上は抑えることが難しく、魔力が大きく漏れると、この場所を感知されます。姉上にふたつ魔法を掛けさせて下さい…。

 

わたしのことが嫌いになったんじゃないんだね…。

 

はい…。

 

じゃ、いいよ…。

 

では、今から姉上の魔力の波紋を消します。姉上から魔力の覚醒を奪うことになりますが、これでもう貴女の血統を私の血統と照合することは誰にも出来なくなります。 ……パチッ★

 

からだが…。胸がドキドキして痛いよ…。

 

先程の深呼吸をしてみて下さい…。

 

スーーーハー……。コホッ…。スーーーハー……。コホッ。コホッ。

 

……次に、記憶を…

 

い、いやよっ! 頭を弄られるのは、絶対にいやっ! わたし怖いのいやなのっ! アンタ、わたしに怖いことはしないって言ったじゃんっ!

 

……分かりました。しかし今聞いた話は早くお忘れ下さい。他言しては絶対にいけません。今まで通り、姉上がこの家のひとり娘として幸せにお暮らし出来ますように…。私のこともお忘れ下さい…。恋心の芽は、いつか姉上や私の心の中から消えることでしょう…。

 

待って! こんな別れ方嫌だよ。最後に姉上じゃなくてわたしの名前で呼んでよ、そんな他人行儀な口調も止めてよ、わたしにキスしてよ、さっきまでのアンタにもう一度合わせてよっ!

 

…キリノ、すまない。余の力が足りぬばかりに…。チュッ(////

 

う、ううっ…(////

 

……パチッ☆

 

消えた…。消えちゃったよ…。あいつ、名前も言わないで裸で帰っちゃって…。馬鹿じゃないかな…。うん。馬鹿だよっ。わたしのこと何も分かってない。忘れられる訳ないじゃん。もう芽じゃないよ、アンタへの恋心は。アンタへの思いは……。もうっ! 馬鹿っ! ぐすっ…。ぐすっ…。う、うっ…。ううっ…。

 



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キリノの章 14 ★☆☆ ゼブン中等学校・武道館

オハヨー! キリノ。

 

おはよう。アヤセ。

 

よかった…。今日はちょっと元気そうで。ここ数日、キリノ塞ぎ込んでたから…。

 

う、うん。心配掛けてゴメン。いつまでもクヨクヨしてらんないし。そろそろ、ね。

 

何があったかはまだ教えてくれないの? 心配だなぁ…。まさかキリノに限って男に振られたって訳じゃないだろうし。

 

……(////

 

振られたんだ…(////

 

ちょ、ちょっと親しくなったイトコみたいなガキが帰っちゃっただけだよ(////

 

そっか…。そうよね。キリノって真面目だからボーイフレンドが出来たからって直ぐにキスとかする訳ないし、友達が帰ったってまたいつか会えるよ、そんなに落ち込まなくても…

 

……(////

 

キ、キスしてたんだ…(////

 

キスっていっても殆ど挨拶みたいなのを、ちょっと、そのっ、軽くやっただけだから…(////

 

そ、そうなんだ。ゴメン。キリノの心の傷をえぐるようなこと言っちゃって…。うん。裸で抱き合ったって訳じゃないんだから。気持ちを切り替えて行こうよ。大丈夫、キリノなら…

 

……(////

 

だ、だ、抱き合ったんだ…。ガタガタ…ブルブル…。ご、ごめんなさい…。ガタガタ…ブルブル…。も、もうこれ以上言うの止めるね。ガタガタ…ブルブル…(////

 

ここで終わんないでよっ! もう無いわよっ! お風呂に一緒に入って、キスし合って、からだを拭かれて、失神して、ベッドで裸になって、抱き合ったってところで終わりなのっ! それ以上のことなんて、一、切、な、い、のっ!(////

 

…………そ、そうなんだ(////

 

…………うん(////

 

ガラガラ~。スタスタ。ガラガラ~ピシャ。スタスタスタスタ。皆さん! お早うございますっ!

 

……あれっ? キリノ…。キリノ…。カズコ先生の様子なんかオカシイよ? 目が血走ってる。

 

……う、うん。どうしたんだろ…。

 

突然ですが、今日はHRと一時間目の授業を取りやめてTV鑑賞会を行いますっ! いまこの国で大変なことが起きようとしてます! もう授業なんてどうでもよろしいっ! 女子の皆さんっ! くれぐれも落ち着いて、騒がず、静かに観て下さいっ! では、プチっと!

 

…………という訳で、さきほど白帝城において無事に授与式が終わり、蓮華さまに剣聖の称号が与えられた訳ですが、サキエル卿、剣聖といえば…。

 

クククッ。そうでございますねぇ…。剣士の最高位。この称号が与えられるのは実に200年振りのことでございます。

 

それだけ先の反乱鎮圧の功績が認められたということですか。もともと蓮華さまはルーンで最強と呼び声高い天才くの一忍者でもありますが…。

 

クククッ。いえいえ。剣聖は功績で与えられる位ではなく、ましてや相対的な強さの偏差値で与えられる位でもございません。絶対基準、武において人を超えし者にのみ与えられる位なのです。

 

蓮華さまが人を超えた…。ルーン最強ならその時点で既に人を超えているのではないかと、わたしには思えるのですが…。

 

クククッ。それは人の最強であって、人を超える事とは意味合いが異なります。蓮華が剣聖の位についたのは、単結晶魔法障壁という結界を打ち破ったことに尽きます。

 

単結晶魔法障壁?

 

クククッ。魔道具…この域になりますと神具とも呼ばれますが、その超レア・アイテムによって発生する、魔法力学において完全無欠、どうやっても壊れない結界のことです。クククッ。嘘か本当か、伝説の書には、この神具を装備した勇者がルーンの魔王を滅ぼし、人の世が生まれたと記されております。

 

サキエル卿は蓮華さまがその結界を打ち破る瞬間を目撃されたとか…。

 

クククッ。反乱部隊となった性約監査部の中にどういう訳かこの神具を装備している者がおりましてな。蓮華は正面から戦うなとの王子からの警告を受けていたにも関わらず、性約監査本部の塔に突入した後は他の者には目もくれず、奴に真正面から突っ込みまして……。あれは人というより、興奮した猪でございますね。

 

で、見事に打ち破ったと。

 

クククッ。いえいえ。ぶざまに吹っ飛ばされておりました。しかしあの蓮華とかいう娘は頭が相当パーでございましてな。床に叩きつけられてもニヤニヤしておりましたわ。で、何度も突っ込んで、七撃目だったでしょうか、クククッ。あの娘、とうとう人の域を超え、結界をバラバラにしてしまったのです。

 

ほぉ…。それは観たかったですな。

 

クククッ。そういう意見が出ると思いまして、今日、ここでエロス国民の前で、剣聖となった蓮華が演武を行うことに……。

 

……ねぇ、キリノ?

 

……うん?

 

寝ちゃ駄目だよ…。

 

…あぁ…うん…。最近さぁ…。夜、眠れなくって…。ふぁ~…。ん? ちょ、ちょっと、アヤセ…。アヤセ…。

 

うん? どうしたのキリノ?

 

カズコ先生、物凄い勢いでTVに齧り付いて観てるけど、コレってどういう放送なの?

 

剣聖になった人がいて、これからその人の演武が始まるって…。

 

……剣聖? 演武? 先生ってそういうのに興味あったんだ…。ちょっと意外かな…。わたしにはよく分かんないよ…。先生があんな様子じゃ寝てても分かんないよね…。おやすみ…。

 

あぁ…ちょっとキリノ…キリノったら…。

 

……TVを御覧の皆様、この会場の熱気が伝わりますでしょうか。10万人収容の王立武道館が満員です! 剣聖位授与式の後にこちらで演武が行われることが急遽決まって、まだ4時間しか経っていないというのに、どこで聞きつけたか、この人、人、人、人……。

 

クククッ。酷い臭いでございますね。腐った人間の酸っぱい臭いがします。

 

ゴホンッ…。え、えーっ。もうそろそろ開始時刻なのですが……。あっ! 蓮華さまです!! 弓道衣を纏った蓮華さまが長弓を片手に颯爽と花道からご登場~~~っ!!! うわぁ、カッコイイですね!! 黒髪を後ろで結って凛々しいお姿です!! ……ですがサキエル卿、なぜ弓なのですか? 剣聖なのだから、剣の演武かと思っていた方も多いと思いますが。

 

クククッ。そうでございますね。本来は剣で、というのが一番よろしいのでしょうが、駄目な理由が二つございまして、まず剣聖となった蓮華の剣筋を公開するのは国防上よろしくないというのが理由の一つ。蓮華の剣技を見ることが出来るのは残念ながら、あの者に切って捨てられる者か、あの者の後進のどちらかのみとなりましょう。もうひとつは演武とは別に重要な理由があってのことでございます。それは何かは、まだ秘密ですが、この会場の熱気をみると、どうやらもう広く知れ渡ってしまっているようでございますねぇ…。

 

はい。そのもうひとつの理由について、この番組では蓮華さまの演武が始まる寸前、演武の説明と共に発表する段取りになっておりますので、もうしばらくお待ち下さい。さて、蓮華さま、いま武道館中央に設けられた特設舞台へ上がっていきます。

 

クククッ。なんとかと煙は高いところに行きたがるといいますが…。嬉しそうにまぁ…。

 

しかし…サキエル卿。

 

はい。ピーナツ食べますか?

 

いえ、蓮華さまが弓が得意だとはわたし初耳だったのですが…。

 

クククッ。わたくしも実際に見たことはございませんが、剣聖は武に通じ、武は弓道にも通じますので。

 

なるほど…。剣聖とは剣のみにあらず武の境地にあるという訳ですね。その剣聖となられた蓮華さまが、いま特設舞台へ上がられました。スポットライトを浴びてニコニコと微笑みを浮かべて、手を振りながら、弓を掲げながら、舞台中央へとゆっくり歩み寄って行かれ……っと、あぁっ!! ちょっとつまずかれました! いや、かなりつまずかれました。しかし剣聖、ここは瞬時にバランスを建て直し……。あぁ…駄目だ…。コケました。盛大なコケです。顔面を強打かっ!? 大丈夫でしょうか…。剣聖といえぞ、この大舞台でちょっと緊張しているのか……。おぉっ!! 笑顔です。満面の笑顔です。どうやら大丈夫なようです!! 流石は蓮華さま、剣聖さま、まるで動じていません!!!

 

クククッ。わたくしには鼻血を出しながらの照れ笑いに見えますが、それに手足がロボットのように右左で同時に出ておりますぞ…。クククッ。この演武、本当に大丈夫なのでしょうかねぇ…。

 



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キリノの章 15 ☆☆☆ 武道館・ゼブン中等学校

威風堂々、蓮華さまが長弓を持って武道館のステージ中央に仁王立ち! その頭上、武道館を覆うドームがゆっくりと開いていきます! ここより3km東、国立競技場グラウンドに20m間隔で横一列に並んだ10の的を、蓮華さまはこの場より魔法を使わず順に射抜いていかれるのです! 尚、魔法干渉を防止する為、会場内外での魔法使用は一切禁止です。遥か上空で魔力観測衛星ひまわりが監視をしております。魔法を感知するとアラームが鳴り、魔法使用者は罰せられますのでお気を付け下さい。

 

クククッ。今回わたくし不正者を断罪する任を受けております。もし観客の誰かが魔法を使おうとすれば魔法発動前にわたくしが処刑致しますのでアラームが鳴り響く事はないでしょう。代わりに愚者の悲鳴は鳴り響くでしょうが。

 

そ、そうでした。サキエル卿がここにおられるのはゲスト解説者としてではなく、演武の見届け人として不正者を断罪する為に来ておられます。くれぐれも魔法の使用はお控え下さい。

 

クククッ。もう少し前に警告するべきだったかもしれません。よいしょと。ドサッ。ドサッ。

 

……サキエル卿の後ろに現れた生ゴミ袋の中身も気になりますが、この会場の大観衆やTVをご覧の皆様が気になるのは、やはり蓮華さまの演武がなぜ弓なのか、そのもうひとつの理由についてでしょう。既に噂でご存知の方も多いと思いますが、なんとこの演武、王子のハーレム候補さまを決定する抽選会も兼ねているのです!! 10の的はそれぞれルーレットになっていてクルクルと数字が回転しています。蓮華さまの矢がそれぞれのルーレットに当てた数字を順に10個繋ぎ合わせて出来た市民番号の方がハーレム候補さまとなられるのです!!

 

クククッ。これまでハーレム候補の選考は身分・出自に関係なく平等に行われ、数々のシンデレラストーリーを生み出して参りました。特に感動的なものは、童話や絵本となって幼女に読まれ、漫画やアニメやコバルト文庫となって少女に読まれ、朝の連続TV小説やハーレクイーン小説となって熟女に読まれ、次第にハーレムはエロス国の女性の憧れの対象となっていったのでございます。しかしこの国の女子の数に比べ、王子の御身はひとつしかございません。実際には王子の目に触れることもなく、残念ながらチャンスが生まれなかった方々は沢山おられるのです。この機会不平等に王子は胸を痛まれましてな。で、今回、蓮華の剣聖の演武を兼ねて、全ての未婚の女性に機会どころか完全に平等なチャンスを与えようと、ルーレット選考方式を試験的に実施することにしたのでございます。

 

なるほど、確かにこのように、宝くじの抽選のように決めると平等ではありますが、しかしハーレム候補さまの選考基準が未婚女性の縛りしかないのは、つまりその…。

 

クククッ。えぇ、0才児の女の赤子であろうが、100才の老婆であろうが、射抜かれた数字が示す方が未婚女性であれば、誰であろうが王子のハーレム候補になるということでございます。もっとも、ハーレム候補は本人の同意なしに成立しませんので、0才児の赤子が意思表示を出来る筈もなく、残念ながら後で無効になるでしょうが。

 

完全に運任せでは王子ご自身の意思は全く反映されないことになります。王子はそれでよろしいのでしょうか?

 

クククッ。それは大丈夫でございます。王子は分け隔てなく女性を愛すると。すべての女性がいとおしいなどと、まるで何かを悟ったような達観したことを最近口走るようになりましてな、どんな方でも王子のご寵愛を受けることが出来ると思いますよ。

 

とても10才の少年の言葉とは思えません…。

 

クククッ。庶民に生まれていれば繁華街でホストでもやって大成していたかも知れませんねぇ…。

 

ゴホゴホッ…。え、えーっ。王子のハーレム候補さまとなるのは、この国の女子なら誰もが一度は抱く夢なのです!! 平民でも貴族でも女性なら誰にでも平等にチャンスがあるのです!! さて、メルルさまに続いて二人目のハーレム候補さまに選ばれる女性は誰なのか、全ては蓮華さまの矢の行方次第!! そろそろ射撃時間です。蓮華さまに注目しましょう!!

 

クククッ。なかなか動きませんな。

 

はい。動きません。全くピクリとも動きません。左手に弓を持ったまま微動だにしません。蓮華さま目を閉じております。凄い…集中力です…。魔法は出ていないのに…なんなんでしょうこの突き刺さるようなオーラといいますか、気迫といいますか…。さっきまで騒がしかった場内がシーンと静まり返ってしまいました…。

 

クククッ。外したら大恥ですから、あの娘もいつになく本気を出しておるのでしょう。しかし的が3km先で全く見えぬ上に魔法が使えぬとあっては、的の位置はGPSの方位座標で確認する他ない筈ですが、あの娘、足元のモニターを全く見ておりませぬ。勘でやる気なのでしょうかねぇ…。

 

勘ですか…。それで当たれば確かに人は超えています…。しかし、そもそも魔法なしで矢が3km先まで飛ぶのか、そこから疑問なのですが…。

 

クククッ。蓮華が手にしているのはコルト社製の最新式の軍用重長弓、超々距離狙撃用1500mmヘビースコーピオンです。魔法抜きでの有効射程距離は2800m。最大到達距離は4500m。重さは320kg。チタン合金フレームに新素材の微細ケプラー繊維で編み込まれた超反発・超張力の弦が張られています。追い風ですので、3000mなら余裕でしょう。

 

到達距離以前に魔法なしで320kgを軽々と持ち上げてることに驚かされるのですが…。

 

クククッ。あれは本来、魔法による補助があることを前提にして設計された長弓なのです。今回のように魔法なしでも使えなくありませんが、そのような場合は手に持って使うようには出来ておりません。あの者の腕力が異常なのでしょう。

 

まさに剣聖。超人です…。想像を絶する能力です。わたし、根拠はありませんが、蓮華さまが矢を確実に的に当てるに違いないと思えてきました…。

 

クククッ。いや、当てるでしょう。剣聖ならこれくらい魔法を使わず当てて当然でございます。しかし先程も申した通りあの者の頭は相当パーでございますから、おそらく……。クククッ。あぁ、やはり、やると思いました。

 

えっ? それは…。あっ! 蓮華さまが動きました!! 10本の矢をムンズと握って弦に引っ掛け、ギリギリと力強く極限まで引き絞り、セット!! 美しい…。ピンッと真っ直ぐに伸ばしていた背筋がやや弓形となり、弦を思い切り引いて、からだは全く微動だにしません。いやぁ…見事です。綺麗な射撃姿勢です。素晴らしい…って、いや、ちょっと待って下さい…。どうして10本全部の矢を一度にセットなんでしょう?

 

クククッ。馬鹿ですから一度に全ての矢を射る気なのでしょう。

 

な、なんとここで蓮華さま!! アドリブで難度を上げて来ました!! 大丈夫なんでしょうか…。あっ! あぁっ!! い、いま矢を射られました!! 10本全ての矢が一度に発射され、全てが中空へ吸い込まれて行きます…。カメラを3km先の競技場へ切り替えましょう。競技場の観客席には昼から行われるサッカーの試合を待っていた観客、2万人がいます。さて彼等は歴史的瞬間を目撃することになるのでしょうか、どうしょうか。矢は全ての的に当たるのでしょうかっ!!

 

クククッ。間違ってもサッカーファンは射殺さないで欲しいですねぇ…。これで全て的に当たれば、歴代の剣聖と比べて中の上といったところでしょうか…。

 

ストン! ストン! あぁ……。ストン! ストン! ストン! ストン! ストン! 凄い…。的に次々と…矢が当たって行きます。ストン! ストン! 最後の的も……。ストン! 見事に……。はぁ…。信じられません。狙ったように、いや勿論、狙ったのでしょうが…。どうやって見えぬ的をこんなに正確に…。凄いです!! 蓮華さま万歳!! 剣聖万歳!! エロス万歳!!

 

クククッ。いやいや、お待ちなさい。まだですよ。これはハーレム候補を決める演武でございますから、射抜かれた的のルーレットの番号が指し示す人物が未婚女性でなければもう一度やり直しでございます。クククッ。早く番号を確認して住民番号から、氏名、性別、未婚既婚の区分を検索して発表して下さいな。

 

そ、そうでした! す、すみません。蓮華さまがあまりに見事に的を射らたことに心を奪われ、もっとも重要なことを忘れていました…。さて、矢に射られたルーレットの番号は……。2、4、6、3、6、7、9、3、1、1です。ハーレム候補さまの住民番号は2463679311、検索出ました。高坂キリノ、女性、未婚、セクト地方ゼブン在住、13才です。ほぉ、これは年齢的に王子のお相手としてピッタリの女の子ですね。このような神懸り的な演武によって、神のご加護があったのかもしれません…。キリノさまおめでとうございます、TVを観てらっしゃいますでしょうか、貴女さまが王子のハーレム候補さまに決定しましたよ!! あっ、いまデータバンクからキリノさまの写真が転送されて来ましたので公開します。全国の皆様!! この方がハーレム候補さまになられましたキリノさまです。いやぁ、綺麗な金髪とエメラルドグリーンの瞳がとても印象的ですね。利発そうな可愛い女の子…

 

……キリノ起きて…。

 

……んんっ…。

 

……ねぇ、キリノ…。

 

……んっ…ふうあぁっ…もう終わったの? ちょっとだけ眠れたみたい…気分がスッキリしたよ……。ん? うぅっ……。アヤセ…。アヤセ…。みんなどうしてわたしの方を見てるんだろ…。

 



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キリノの章 16 ★☆☆ メイド学園(学生寮)

コンコン…。黒猫姫~。入るよ~。

 

……なに?

 

わぁ…。ダンボール箱が沢山…。荷物もそこいらに出しっぱなし…。酷いなぁ…。ちょっとベッドに寝転がってもいい? もう疲れちゃって。バフン。

 

家主の返事を待ってから行動なさい…。で、私になにか用なのかしら?

 

幼馴染に会いに来たってだけ。どうしてるかな~ってさ。

 

そう…。息災よ。朝の放送見たわ。貴女、剣聖になったんですってね。おめでとう。

 

ありがと。

 

でも…。いえ、やめておくわ。ごめんなさい。

 

気になるだろ。いいなよ。

 

……じゃ、言わせて貰うけど…。あの演武は最低だった。

 

ふ~ん…。どうしてそう思うの?

 

貴女があの番号を狙って射抜いたから。誰にでもハーレム候補になれるチャンスがあるというのが嘘で、全国の女性の期待を裏切る行為だったから。

 

3km先のルーレットの数字を10個同時に狙って射抜くことが出来ると思うの?

 

逆に聞くけど、3km先の的に当てるだけなら動作もなかった筈でしょ? どうしてあそこまで本気になる必要があったのかしら?

 

当てるのに動作もない的を外したら恥ずかしいじゃないか。

 

……射撃前に転んだの、アレわざとでしょ? ルーレットの数字すら狙える真の実力を隠す為に敢えて不完全な演武に見せ掛けたんだわ…。一度に10本の矢を同時発射したのだって演武の難度を急に上げることであれが限界の技だと思い込ませたかったんじゃない?

 

確かにあの番号を狙ったけど、転んだのはわざとじゃないし、10本同時に矢を射ったのだって、そうしないとあの番号は射抜けない気がしたからだよ。なんとなくだけど。

 

貴女、本当にあの数字を狙って矢を射ったの!? 凄いわね…人間技じゃないわ…。剣聖の位って伊達じゃないんだ…。

 

なんだ鎌を掛けてたのかよ…。

 

あの番号通りに射るよう王子に頼まれたのかしら。

 

王子ねぇ…。アイツにそこまでの根性があればいいんだけど。

 

違うの?

 

アイツ最近、塞ぎ込んでて…。何があったか聞いても、余はもう駄目じゃとか、余はなさけない男じゃとか、あの者の心を傷つけてしまったとか、グチグチいうばかりでさ…。仕舞いには、余はもうハーレム候補を選考する資格がない、この国の女を分け隔てなく愛そうとか馬鹿なこと言い出してルーレット選考なんて下らないことをする始末なの。私さ、腹が立ってアイツの頭の中を魔法で覗いてやったんだ。

 

主をアイツ呼ばわりの上、主の頭を覗く…。貴女って最低のお庭番ね…。でもあの魔王子の頭をよく覗けたものだわ。あの子、底知れない魔力を持っているから警戒していたのだけれど…。

 

今のアイツなら簡単に覗けるよ。でさ、覗いたらどうだったと思う?

 

この話、まだ続けるの? 悪趣味ね…。まぁ、いいわ…。どうせ女絡みでしょ。振ったとか、振られたとか。

 

だから、アイツにそこまでの根性があればいいんだけどね。アイツさぁ、好きな女の子が出来たんだよ…キリノって子なんだけど、でもそのキリノが母親に虐められて酷いことになるのが怖くて、その子の前から逃げ出したんだ。それってどう思う?

 

とんだヘタレね。

 

虐められるって言っても、殺されるって意味なんだけどね。

 

それは尋常じゃないけど、でも同じことよ。好きになった女の子を守れないなんて、とんだ腰抜けだわ。将来この国の王となる王子がそんなことでは安心して暮らせない。

 

うん。私もそう思って、だからあのルーレット選考のときにキリノって子の住民番号を狙ってやったの。グチグチ言って逃げてないでこの子を守ってみせろって思いながら射っちゃったのよ。……まさか本当に射抜けるとは思わなかった。自分でも吃驚してるんだ。私、剣聖になってから能力が上がったのかな…。

 

…王子、怒ったでしょ?

 

そりゃ、もう凄い怒りようで、偶然です! って言っても信じてくれないし…。

 

いったい何百万分の1の確率の偶然なのよ…。

 

だから王子の怒りが収まるまでここに泊めて貰おうかなって思ったの。家にいると王子がやって来て煩いのよ。キリノが来たら余はどうしたらよいのだとか、余を虐めてそんなに嬉しいかとか、余の頭を覗くとはなんと破廉恥なとか。まぁ、愚痴はいいんだけど。旦那は仕事でしばらく家に帰って来ないんだ。あんな美少年と夜中二人でいたら、いろいろ世間体ってのがあるでしょう? ムラムラして我慢出来なくなるかも知れないしさ。ここに泊めてよ…(////

 

……駄目よ。家に帰って王子を襲って男にしてやりなさい。

 

そんなこと言わないで…。いいじゃん…。一週間くらいでいいから。

 

一週間も泊まる気だったの? ハァ…。この部屋の有様を見て気付きなさい。私は退学になったのよ。それで退寮するところなの。先週の評価テストで不覚にも赤点を取ってしまってね…。ふふっ。貴女は剣聖。アップリケはメルル様のお側役。幼馴染二人は共に大成功しているというのに、私はプーよ…。どうしてこう上手く行かないのかしら…。

 

黒猫姫もアップリケと同じくお側役を目指してるんだろう? 退学になったくらいで諦めるなんてらしくもない。

 

このメイド学園を退学になったら、お側役にはなれないのよ。卒業した者でないとお側役になれない仕組みになってるの。法律で。

 

ふ~ん。

 

……これは言い訳じゃなく本当のところなんだけど、もうお側役に未練はないの。エロス王家の中枢に入り込む手段としてお側役が理想的だったから、それを目指していただけ。……でも刺し違える覚悟で復讐を誓った愚王のケインは失脚して煉獄の塔に幽閉されてしまったわ。アベル王子には何の恨みもないし、貴女を敵にもしたくない。

 

私も黒猫姫の敵になりたくないな。

 

……その黒猫姫って呼び名、もうやめてくれないかしら。7年前、確かに私の家はエロス直系の名家だったけど、それは昔の話よ。もう姫じゃない。家も領地もケインの姦計によって潰されたのだから…。

 

じゃあ、黒猫さん。これからどうするの? 行く当てはあるの?

 

猫耳でも付けてメイド喫茶で働くわ。この学校で学んだことを活かせるかも知れない。あと私、ラノベ作家になろうと思うの。

 

……えっ?

 

まだプロじゃないけど、小説を書いてネットで公開してるのよ。

 

どれ? 読んでみたい。そのPCで見れるんでしょ?

 

うん…。カチカチ…。えっと、このサイトに投稿してるの。これが私の作品(////

 

124点? この点数って高いの? 低いの? ……いや、ていうかアンタ怖い顔してどうしたの?

 

朝は125点だったのに。1点減ってるわ…。誰かお気に入りを外したわね…。この裏切り者には罰を与えないと…。ふふっ…どうしてくれようかしら、そうだ…漆黒の炎で…。

 

そろそろ読んでもいい? どれが一番面白いのかな?

 

あぁ…ごめんなさい。私としたことがちょっと取り乱してしまったわ。私が書いてる作品の中で一番のオススメはこれなの。読んでみて。 ………どう?(////

 

……まだ読み始めたばかりだから。

 

そ、そう…(////

 

………………ふ~ん。

 

チラッ(////

 

………………へ~ぇ。

 

ビクッ(////

 

………………ほ~ぉ。

 

チラッ、チラッ(////

 

なるほどね。これって…

 

まっ、待って!(////

 

へっ?

 

貴女もPC持ってるでしょ。なら自分のPCで投稿サイトのアカウントを取って、私の作品感想欄に感想を書き込みなさい。強制はしないけど評価点やお気に入りも入れるべきね。

 

……ここでアンタに直接感想を伝えるのは駄目なの?

 

感想と評価点とお気に入りを投稿サイトに入れてくれると私は凄く嬉しいの。朝起きてPCを点けてそういうのが入ってると、もっと頑張ろうかなって私は思えるの。

 

そっか…。わかった。じゃ、しょうがないね。家に帰るか。アンタの作品に感想を入れないといけないし。

 

ふふっ。ヘタレ王子によろしくね。

 

うん。私はヘタレ王子を理想の王となるように調教する。少しへタレの方が開発の余地があって面白いよ。ゆっくり時間を掛けてジワジワと王子を私好みの男へと作り変えてやる。でもハーレム選定の期間が終われば直ぐにも戴冠式だ。時間がない。王子以外の他のことには手が回らない状態なの…。だからアンタはハーレム候補のキリノさまの方をよろしく。あぁ、これ彼女のお側役への就任辞令。王子の印を拝借して特例でねじ込んだから。今日中に鳳凰宮へ入って。いやー。引越しの準備をしてくれてて丁度良かったよ。

 

……なんでわたしがそんなことを。

 

いいじゃん。アンタはいまプーなんだし。それに本気で小説家を目指すならハーレム候補のお側役を受けた方がいいんじゃないかな。小説のネタになるし、側仕えが書いたハーレム小説っていくつか出てるけど、どれもベストセラーだよ?

 

えっ…。

 

あれ? 知らないの? アンタがさっき見せた投稿サイトでも見掛けたけど…カタカタ。ほら、やっぱり。この1位のやつがそうだよ。私は本屋で買って読んだけど元々はここに投稿されてた小説だったんだね。

 

うっ…。

 

お側役どうする? やる? やめとく?

 

そ、そうね。仕方ない。幼馴染の貴女が困っているようだし、お側役、引き受けてあげてもいいわ。

 

そうか…。ありがとう。

 

でもメイド学園の落ちこぼれの私に、お側役としてはあまり期待しないでよね。ボディーガードとしてなら、お給料分くらいは働けると思うけど。

 

アンタが仕えるハーレム候補のキリノさま、別の時間軸では私がミスしたせいで、とても酷い目に合ったみたいなんだ。この時間軸ではもう絶対にそんな目に合わせたくない…。アンタが守ってくれたら安心だよ。でもね、やって貰いたいのはそういうことじゃないんだ。アンタのここを…。

 

い、いやっ…。胸の膨らみを…突付いたり撫でたり……しないで…。んっ…。貴女、一体わたしの胸に何を期待しているの…。ひゃん…。わたしの胸に何をさせようというの…(////

 

違う。オッパイじゃない。ていうかアンタ膨らんでないから。

 

なっ、なんて失礼なのっ(////

 

そうじゃなくて、その奥だよ。

 

胸の奥? 私の心とでもいいたいのかしら? それともまさか波紋のことをいってるの?

 

その両方をキリノさまに伝えてくれ。頼むよ。

 



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キリノの章 17 ★☆☆ セクト地方ゼブン街道(馬車)

……キリノ様はエロス王家が大切にお預かりします。電話や手紙は明日執り行なわれます鳳凰宮入りの式典の後まで禁止されておりますので万一緊急のことがありましたら、お側役である私、黒猫の方にまでお願いします。直ぐにキリノ様へお伝え申し上げますので…。式典の招待状は追ってお送り致します。キリノ様のお荷物に関しては式典の後、明後日以降にお送り下さい。…では、キリノ様、馬車へお乗り下さい。

 

はい…。とぼとぼ…

 

皆様、お見送りご苦労さまでした。失礼します。ペコリ。テクテク…。バタン。…では馬車を出して下さい。ガタガタ……ゴトゴト……ガタガタ……ゴトゴト……。ふぅ…。いま朝の9時だから王子のいる白帝城には午後2時ごろに到着かしら。途中でお昼休憩の為にカテロン地方の領主ブルボン伯のショートニング城に1時間ほど立ち寄ることになるわ。盛大に料理が振舞われると思うけど、あまり食べ過ぎないで……。

 

フルフル……フルフル……フルフル……フルフル……フルフル……フルフル……

 

……貴女、いつまで手を振ってるのかしら?

 

すみません…もう見えなくなりました……。ううっ…。もう止めます……。ヒクッ…ヒクッ…。

 

そう。ならこのハーレム候補パーフェクトガイドブックの封を破って読んでみて。ドサッ。700ページあるけど最初の方はエロス王家の歴史とか王族の家系図とか下らないことしか書いてないから読まなくていいわ。いま重要なのは250ページからの基礎的な礼儀作法と言葉遣いについて。正午までにちゃんと頭に入れておきなさい。

 

は、はい…。汗汗…。

 

これからいくつか簡単な質問をするわ。ガイドブックを読みながらでいいから簡潔に答えて。絶対に嘘は付かないでね。後々、面倒なことになるから。

 

はい。

 

貴女、本当にハーレム候補になることに同意するのね?

 

…はい。

 

何故?

 

わたし…昔からハーレムに憧れてて。

 

恋人はいないの?

 

…いたけど…わたしから逃げちゃいました…。

 

どうしてかしら?

 

…それは…いえません…。

 

キリノ…。私は貴女のお側役なの。これからは貴女を公務からプライベート全般までどんなことでも1日24時間、毎日サポートするわ。初対面で恥ずかしいのは理解できるけど、恥ずかしがらないで。隠し事をしないで。私に良く思われようなんて愚かしいことは考えないで。貴女がどうであれ、仮に高慢なビッチであったとしても、変わらず全力で補佐して守るのがお側役なの。いい?

 

すみません…。でも、アイツが絶対に他言してはいけないって…。

 

つまり相手の男性は貴女から離れる理由を貴女に告げたが、貴女はその理由を他言してはいけないと、その相手の男性に止められてる訳ね。

 

はい…。

 

相手の男は貴女より年上なの?

 

いえ、まだ10才くらいです…。

 

名前はいえない?

 

知らないです…。

 

彼とはいつ知り合って、いつ別れたの?

 

10日ほど前の夜に出会って、その夜に別れました。

 

彼とセックスした?

 

し、してません(////

 

キスもしてない訳?

 

キスは…しました…(////

 

何回くらいしたのかしら?

 

へっ?(////

 

キスは何回したのかしら?

 

言わなくちゃ駄目なんですか?(////

 

相手との親密度を知る上で重要なことだから…。言えないの?

 

数えてないから分かりません(////

 

じゃ、大体でいいわ。①数回 ②十数回 ③数十回 ④百回程度 ⑤それ以上。何番かしら。

 

多分、5番です…(////

 

どうしてそんなにしたの?

 

ふぇ?(////

 

どうして一晩で100回以上もキスをしたのかしら?

 

好き…だったからです…(////

 

どうして好きだとキスをするの?

 

好きな人とキスすると…心が満たされて気持ちいいから…(////

 

どんな感じに気持ちいいの?

 

か、からだが痺れたようになって…アイツの他に…なにも考えられなく…なります(////

 

また彼とキスしたい?

 

はい…(////

 

貴女、もしかしてまだ彼のことが好きなんじゃないの?

 

好きです…(////

 

そうなの…。これは厄介ね…。ハーレム候補である貴女の心の中にまだ過去の恋人への想いが残っているなんて、かなり深刻な問題よ。ハーレムに入ったら貴女にはアベル王子のことだけを想って、彼だけを愛し続けて貰わないと…。もし…王子との仲が上手く行かなかった場合、貴女の頭に少し魔法を掛けて彼との記憶を消して、貴女が王子だけを愛するように嘘の記憶を刷り込むことになるけど、いい?

 

えっ…。

 

離婚出来ないんだから仕方ないじゃない。王子と険悪なまま後宮の中でひとり寂しく一生を過ごすより人道的だと思うけど。

 

い、いやだ…。

 

大丈夫、痛みはないわ。貴女が寝ている間に記憶操作魔法を済ませられる。夢の延長みたいなものよ、子供のゴッコ遊びの大人版っていった方がいいかしら。色々なシチュエーションを試して、貴女がもっとも快適で興奮する蕩けるような甘い記憶を一生醒めないように刷り込んであげる。一流の魔法使いがやるから絶対に精神汚染の心配はないわ。全然怖くないから。

 

違う…。怖いとかじゃなくて…。そうじゃなくて……。

 

……そうじゃなくて、なんなの? 続けなさい。

 

……わたし…アイツの記憶を失いたくない。

 

ハァ…。そんなに彼のことが好きなら、どうしてハーレム候補になるのかしら?

 

だってアイツにはもう会えないんだもん…。会えないんだから…しょうがないじゃん…。

 

彼のこと探したの?

 

……。頭フルフル。

 

探してないのにどうしてもう会えないなんて言えるのかしら。

 

それは…。だって…。会えたとしてもアイツはわたしを…。

 

駄目ね。それじゃ上手く行く筈もない。自業自得だわ。逃げられるのも当然ね。

 

なっ…。

 

自分から何もしないで上手く行くようには、この世の中出来ていないの。相手がどうしたとか、どう思ったじゃない。貴女がどう思い、どう行動したか、その結果が今の貴女なんだわ。ハーレム候補にしても同じことよ。貴女はクジで選ばれて、今度は憧れだけでハーレムに入ろうとしている。それが必ずしも悪いとは言わない。でもね、ハーレムに入って王子とキスをして、貴女は果たしてその子とのキスと同じように心が満たされるのかしら…。ハッキリいうわ。このままハーレムに入れば貴女は直ぐに洗脳魔法に頼ることになるでしょう。偽りの中でしか生きられないほどに今の貴女は脆弱なの。本当の愛なんてこのままじゃ絶対に得られないわ、貴女は…

 

ぴろ~ぴろ~~♪ ぴっぴっ♪ ぴろっ~~♪ ぴ~っ♪ ぴろ~ぴろ~~♪ ぴっぴっ♪ ぴろっ~~♪ ぴ~っ♪ あっ、ご、ごめんなさい。携帯が…。

 

……。

 

ピッ。はい…キリノです。……ん? なんだアヤセか。あっゴメン。うん…。うん…。まだ馬車の中なの…。うん…。うん…。ん? そ、そんなことないよ…。うん。え? 本当っ! うん! えへへっ。まぁね。お昼? ご馳走みたい! あはははっ。うん、わかった! えっ? わたしをモデルに新作書いてくれたの!? うわぁ、読みたい! あはははっ。うん。あはははっ。あはははっ。うん。あはははっ。あはっ。あは……っ! ちょ、ちょと、ごめん! あ、後で掛け直すね…。プチッ。

 

……。

 

……すみません(////

 

……貴女、猫被ってない?

 

……ち、ちょっと(////

 



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キリノの章 18 ★★☆ 白帝城(通路・ハーレム候補控え室)

ここが白帝城……。可愛い城だね。お昼ご飯を食べたショートニング城はこの10倍はあったような…。それに城に入ってから人の気配が全然ない…。ちょっと寂しいところね…。わたし白帝城って、もっとド~ンと大きく聳えてて、人が沢山いるところかと思った。モジモジ(////

 

この国を実際に動かしているのは白帝城じゃなく鳳凰宮なの。本来この城が持つべき官庁機能は全て鳳凰宮に移っているわ。だから文官、武官、大臣、諸侯らはこの城に一人も居ないの。この城にいるといえば、王子、近衛のお庭番衆、料理人、メイド、執事……全員入れても50人くらいかしら。だから城の殆どの部屋が使われてなくて、これでも広いくらいなのよ。まぁ、今日は貴女を歓迎する夕食会が夜の9時から開かれることになるから、じきに諸侯たちが集まって来て賑やかになるでしょうけど…。

 

ふ~ん…。白帝城…わたしがイメージしてたのとは随分違ったけど、城の名前から連想した白ってのはイメージ通りだよ。このお城って外だけでなく中も真っ白…。壁も天井も床も全部白なんだね…。凄く綺麗…。モジモジ(////

 

魔法を掛けられたことが直ぐに分かるよう、オリハルコンの白い粉末が練り込まれた漆喰で厚く塗り固められているの。なにかあればオリハルコンが魔力と共振して赤く発光するわ。何百年か昔の対魔法用のハイテク技術ってところなんでしょうけど、今はそんなのを使わなくても高感度で高精度の魔法感知ソナーがあるし、オリハルコンを発光をさせないステルス魔法も開発されたから、もう城を白くする必要はどこにもないのだけれど、歴史遺産ってことでエロス建国当時のままの姿を残しているわ。

 

へぇ……。でもエロス建国当時っていうと戦国時代よりもまだ昔になるけど、その頃ってオリハルコンをつくる技術がまだ発見されてなかったんじゃ…。モジモジ(////

 

それは精製する技術がまだ発見されていないというだけで、自然界には魔法科学反応で出来上がったオリハルコンが微量ではあるけど…って、貴女、さっきから気になってたんだけど、何をモジモジしているの?

 

ト、トイレ…(////

 

もう少しで貴女の控え室に着くから我慢して。

 

ど、どこにあるの?(////

 

この通路を真っ直ぐ行って右に折れると階段があるから、それを昇って出たホールを真っ直ぐ行くと、最上階への直通エレベーターがあって、それに乗って最上階まで行くの。着いたら直ぐ…

 

黒猫さん…。足を止めないで説明しよう…。説明は歩きながらでも出来るじゃん…(////

 

えっ、えぇ…。じゃ、ちょっと急ぎましょうか。テクテク。テクテク。テクテク。テクテク。   …ねぇ、貴女どうするの?

 

……トイレに(////

 

そうじゃなくてハーレム候補のことよ。貴女の携帯が鳴って話が途中になってしまったんだけど。

 

……この部屋にはトイレないのかな?(////

 

その部屋は使われてないわ。鍵が掛かってる。さっきも言ったけど、この城には殆ど人がいないの。だから使われてない部屋が大半で…

 

トイレだけってのはないの?(////

 

トイレは基本的に部屋の中に備え付けられたものしかないわ。そんなことより…

 

そんなこと!? アンタこの非常事態を軽視し過ぎてるんじゃないのっ!?(////

 

……えっと、我慢の限界を100として、今どれくらいなのかしら?

 

99(////

 

ハァ…。根性で限界を120くらいに引き上げなさい。あと5分くらいだから。 (5:00)

 

う、うん。5分なら(////

 

時間といえば、いま午後の2時半ね…。貴女はこれから控え室に入ってまず湯浴みをして貰うことになるの。なんと露天風呂よ。この城に入ったハーレム候補は城の地下10000メルテから汲み上げられた温水で身を清めることが慣例に…。あれ? キリノ? どうしてしゃがみ込んでるの? 顔が真っ青よ。 (4:40)

 

ハァハァ…。大丈夫、収まったみたい。行くわよ…。

 

え、えぇ…。それで身を清めるのに大体1時間ほど掛かるから終わって夕刻の4時ごろになるわ。それから夜7時の王子との謁見まで、しばらくは特に何もないのだけど、そのときに謁見用と夕食会用の二つのドレスを一応試着してみて欲しいの。寸法は絶対に合ってる筈なんだけど、万が一ということもあるし。 (4:20)

 

そうだね…。あぁ…。やっと階段…。昇りかぁ…。

 

……ねぇ? (4:00)

 

……なに?

 

貴女もしかして我慢してるのってオシッコじゃなくてその、ウン…なの? (3:50)

 

今頃気付いたの!? そうよっ。ウンコよ、ウンチとも言うわ。何を上品振って伏字にしてるのよ。アンタだって毎日するでしょ? わたしは今しようとしている、それだけのことよ!

 

おっ、落ち着きなさい、そんなに興奮したら…。 (3:35)

 

ハァハァ…。ハァハァ…。

 

このホールの先にエレベーターがあるわ (3:30)

 

ハァハァ…。ハァハァ…。

 

エレベーター来ないわね (2:50)

 

ハァハァ…。ハァハァ…。

 

気を紛らわす為に、歌でも歌いましょうか? (2:40)

 

ハァハァ…。ハァハァ…。

 

クロクロネコネコ~♪ クロネコ~♪ クロクロ♪ シロネコ♪ ヤマネコ~♪ (2:20)

 

ふざけんなぁ!! この馬鹿猫!!

 

なっ、なんですって、このキス魔ビッチがっ! (2:10)

 

もう駄目だよ。ううっ…。うぁ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

貴女は諦めるのが早すぎる…。諦めたらそこで終わりなのよ。もっと強くおなりなさい…。自分を信じ、頑張り続ければ、不可能だと思い込んでいたことも、ほら…。 (1:50)

 

ウイ~ン…。チ~ン。あぁ…エレベーターが…。

 

それは降りよ。帰って来るのを待ちましょう。 (1:40)

 

ううぁん…。ううっ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

ウイ~ン…。チ~ン。昇りが来たわ。さぁ、乗るわよ。ゆっくり、歩いて。 (1:10)

 

ヒクッ…ヒクッ…。

 

城の最上階は全ての部屋が使われているけど、控え室が一番近いから。ドアを出て右の通路の最初の部屋なの。 (1:00)

 

ハァハァ…。ハァハァ…。あぁ…。

 

チ~ン。着いたわ。最上階よ。頑張って! あぁ、焦っては駄目。呼吸を一定に、吸って~吐いて~。吸って~吐いて~。はい。ゆっくり歩いて。 (0:40)

 

ハァハァ…。ハァハァ…。はぅ…。うぅ…。ハァハァ…。ハァハァ…。あぁ…。

 

ガチャ。さぁ、ここが貴女の控え室よ。綺麗でしょ。トイレはその奥の扉だから、存分にね。よく頑張ったわ。 (0:30)

 

うん…。うぅ…。ガチャガチャ。えぇっ! あっ、開かないんだけどっ!?

 

ガチャガチャ。あら…本当だわ。故障のようね…。扉が開かないわ (0:20)

 

もう駄目だよ…。もう絶対に無理だ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

そうだわ。鏡台の側に備え付けられてる、このちいさな木製のゴミ箱をオマル代わりにするってのはどうかしら。ちょっと口が小さいけど… (0:15)

 

えっ…。それは…。でも…。でも…。でも…。でも…。

 

部屋の床に敷かれた超高級ペルペル絨毯に漏らすよりマシでしょ? そこに漏らしたら城のメイド達に知られるけど、ゴミ箱なら私が近くの湖にコッソリ捨ててくるから。ほら、早く、その白いミニスカートを捲り、おパンツを下げて、お尻をゴミ箱の口に当ててお腹の中のモノを全て出してしまいなさい。楽になるわよ。オマルだと思えばいいの。間に合わなくなるわ。向こう向いててあげるから (0:07)

 

うううぅっ……あぁぁぁあ………いやぁ……いやぁ……いやぁ……いやぁ…。脱ぎ脱ぎ…。うぅっ……。あっ………いやぁ……いやぁ……いやぁ……いやぁ…あぁぁぁ……(////

 

………(////  (0:00)

 



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キリノの章 19 ★★★ 白帝城(大浴場)

ハァ…。わたし…人前であんなことを…。それもあんなに…。床に漏れなかったのは奇跡だけど…。あぁ…。もう死んでしまいたい…。

 

ガラガラ~。死ぬなんて言葉を気軽に使って欲しくないわね。

 

キャッ!!(////

 

貴女、あんなところを見られて、まだ恥ずかしがるの?

 

だって、はだか…(////

 

お風呂に入るんだから当たり前でしょ? 貴女も裸じゃないの。

 

そ、そうだけど(////

 

あらっ、まだ洗い終えてないのね…。まぁ、どちらにせよ私が洗い直すけど…。

 

い、いいよ。自分で洗うから(////

 

それは駄目よ。ハーレム候補を迎えるときには慣例に則った洗い方をしないと…。これは貴女のお側役である私の勤めなの。任せて。

 

……う、うん…(////

 

それじゃ…。あらっ…? あれっ…? キョロキョロ。

 

どうしたの…?

 

この辺りにバケツが置かれてなかったかしら?

 

洗面器の山の向こうにあったけど…。

 

あぁ…これね…。このバケツには全身洗浄液が入ってるの。貴女の頭からぶっ掛けるから目を閉じてて。

 

ええぇっ! ちょ、ちょっと!!

 

ドバドバドバ……。ドバドバドバ……。ドバドバドバドバドバドバドバドバドバ……。

 

わわわわっ。うわぁぁぁ…。なんか凄くネバネバしてるんだけど…。うへぇ…。ちょっと鼻や口に入った…。ペッ…。凄く苦い…。

 

海草を使った天然成分で体に害はないわ。……じゃ、いまから洗うけど、貴女はリラックスして体から力を抜いてて。ちょっとくすぐったいかも知れないけど我慢してね。

 

う、うん…。

 

あぁ、あと、洗うのと同時に貴女の身体の精密検査もするから…。

 

検査…?

 

もう…そんな心配そうな顔しないでちょうだい。私、ちゃんと医療免許を持ってるんだから。

 

そうなんだ…。凄いんだね…。アンタに比べてわたしは何も出来ず、小さな子供みたいにウンチまで漏らす始末よ…。

 

前半は反省して改善なさい。でも後半は気にしなくていいわ。漏らしたのは貴女のせいじゃない。貴女、悪質な下剤を食事に盛られたの。

 

えっ…?

 

お昼を食べたブルボン伯のショートニング城でね…。庶民からハーレム候補として選ばれた貴女に、ひょっとしたらブルボン伯が何か嫌がらせをするかもとは思ったけど、まさかこうも大胆なことをしでかすなんて…。

 

わたしが庶民の出だから下剤が入れられたっていうの? まさか…。ブルボン伯は温厚で親切そうなオジサンって感じの人だったし。単なる食あたりだったんじゃ…。

 

人を見掛けで判断しては駄目よ。アイツは最低のゲス野郎なの。魔法を使えない庶民を毛嫌いして生きる価値がないとすら思っている。下剤が入れられた証拠もあるわ。緊張状態になると排泄神経を刺激して排便を促す薬物が貴女のウンチから検出されたの。魔法で偽装されてたから医療機関の成分分析器では見逃したでしょうけど、私の特殊魔法能力『猫猫診療室』は触れた対象物の構成要素を全て暴き出す。どんなに魔法で偽装していても無駄ってことよ。ふっ。どうせ王子との謁見で貴女に脱糞の大恥をかかせ笑いものにして、今後のハーレム候補は庶民ではなく貴族の娘……という流れにしたかったのでしょうけど。貴女が怖がりで良かったわ。城に入っただけでクスリの効果が発動したんだから。

 

ち、ちょっと待って。つまりアンタは魔法使いで、わたしが下剤を飲まされたかどうか調べる為に、わ、わたしのウンチにさわったってこと!?(////

 

そうよ。貴女のウンチが入ったゴミ箱の中に手を突っ込んで、グチャグチャと掻き回してクスリの痕跡を探したの。大丈夫よ。素手でやったけど後で手はちゃんと消毒したから。

 

ア、ア、アンタ、ゴミ箱は湖に捨てるって言ったじゃん!(////

 

嘘よ。

 

嘘って、そんなアッサリ…。まさか控え室のトイレのドアが開かなかったのも魔法で…。

 

壊したわ。ウンチがトイレで流されると調べられなくなるし、トイレの便器から貴女のウンチを取り除くのも嫌だし、ゴミ箱にしてくれたら楽だなって…。

 

信じらんない! ていうか、トイレに手を突っ込むのは嫌で、ゴミ箱のウンチは平気ってなんなの? どちらも一緒じゃないのっ! だったらトイレでやらせなさいよっ! ちゃんと理由を言ってくれたら流さないわよ!!

 

貴女、私にスカトロ癖があるって勘違いしてない? そんな性癖ないから。貴女のウンチなら触ってもいいってだけよ。トイレの便器は誰が使ったか分からないじゃないの…。そんなところに手を突っ込むなんて絶対にご免だわ。私、貴女のウンチなら汚いと思わない。原因を突き止めて貴女の体調が回復するなら、なんの苦にも思わない…。いえ、むしろ、ウンチをいとおしいとさえ思ったわ。貴女のウンチ…暖かくて触ってて心地よかったの…(////

 

なっ、なっ、なっ、なにを馬鹿なこと…顔を赤らめて言ってるのよっ(////

 

うふふっ。で、その下剤がまだ貴女のお腹に残っていたら大変だから、一応、身体を洗うついでに調べてみようと思って…。魔法発動……特殊能力…猫猫診療室、発動コード詠唱…。クロクロネコネコ~♪ クロネコ~♪ クロクロ♪ シロネコ♪ ヤマネコ~♪

 

ア、アンタのからだ、何かピカピカ光ってるんだけど…。

 

この魔法…。フルに開放して使うとちょっと光るの…。

 

ちょっとって…からだ七色に光ってるよ…? 大丈夫なの?

 

ご心配なく…。もう直ぐ変身が終わるわ。 ……パチッ☆

 

変身?? ☆ミ ☆ミ ピカッ ミ☆ ミ☆ キャッ!? はうっ…。はわわわわわわわ……。ア、アンタの手! ネ、ネ、ネコの手に…。頭にもネコ耳…。ネコ足? そ、それは尻尾…。 ど、ど、どうしちゃったのよ、アンタ…。ガタガタ…ブルブル…。

 

ふっ。覚悟の現れかしら。

 

何をいってるのか、まったく理解出来ない…。

 

猫猫診療室の副作用なの。この魔法は利用目的に合わせて簡易診療から完全診療までいくつかの実行モードが選べるわ。フルで使えば魔法を含めてどんな微細なものでも逃さず完全把握が出来るのだけど、魔法に影響されて身体の形状まで変化してしまうのが難点ね。

 

魔法のことはよく分からないし怖いから嫌だけど…。でもこの尻尾はすごく可愛い…。癒される…。クネクネして…。ふわふわ…。ムニュ~。

 

キャッ!! な、なにをするのよ!(////

 

ごめん…。見てたらつい…さわってしまいたくなって…。

 

尻尾は敏感な魔法探知ソナーになってて神経が集中してるから絶対にさわらな…(////

 

ムニュ~。ムニュ~。

 

ニャニャッ!! だから止めなさいっ!(////

 

ご、ごめん…。

 

も、もう…しょうがないわね…。からだを洗っている間、大人しくしてて頂戴よ…? まったく…。ん? へぇ…。貴女のからだ、結構引き締まってるのね…。キリノの背中ぷにゅ。モキュッモキュッ。ゴシゴシ。

 

ひゃぁっ! 肉球が…肉球が…こそばゆいよ……ひゃははは…(////

 

スポーツでもやってるの? キリノの腕ぷにゅ。モキュッモキュッ。ゴシゴシ。

 

ひあぁん…。あっは…あはははは……。もう止めて…。くすぐったいから……。ハァハァ…。陸上やってる…。短距離…(////

 

…足、速いの? キリノの太ももぷにゅ。モキュッモキュッ。ゴシゴシ。

 

ひゃはははは…。うははははっ。ハァハァ…。あははははっ…。ハァハァ…。ハァハァ…。う、うん…。地区大会で優勝した…(////

 

そっか…。なるほどね…。キリノのお腹ぷにゅ。モキュッモキュッ。ゴシゴシ。

 

にゃはははっ……。な、なるほどって? ひゃはははは…。ちょっと、止めて。ハァハァ…。あはっ…。もう…。ホントに…。止めて…。ハァハァ…。ハァハァ…(////

 

……むかし…貴女の体つきに似た女の子がいてね、その子も凄く足が速かったから、なるほどなって。 !? あっ…。静かに…。動かないで…。ソナーに…感…アリね…。やはりまだ体内に下剤が残っているのかしら…。

 

あははははっ…。ハァハァ…。くすぐったいって…。わ、わたしのお腹をシッポで撫で回すの…ちょっと…。うはははははっ。止めて…もう…。ハァハァ…。ハァハァ…。んっ…? あれ…? ……どうしたの? 深刻な顔しちゃって…。

 

何かある…。でもそれが何かは分からない…。間接的に診るには限界がある…か…。やはり直接診るしかないわね…。もし下剤だったら後で大変だわ。クネクネ…。ピチャピチャ…。

 

ど、どうしてバケツの底に残った洗浄液をシッポに浸してるの? ねぇ…。直接ってどういうこと? まさか。違うよね? ねぇ。そんな訳ないよね? ねぇってば、違うっていってよっ!!

 

腸の中をみるから、床にうつ伏せに寝そべって足を屈めて、お尻を突き出してみて。

 

……(////

 

はやくなさい。何を恥ずかしがっているの? いやらしくないのっ! これは医療行為なのっ! 貴女のからだを詳しく診察しないと。

 

……だ、だって(////

 

医療をバカにしないで! いやらしく考える方がいやらしいんだわ。貴女のお腹の中に異物が入ってるから、それが何かを確認するだけなの。もし下剤の残りがまだ入ってたら貴女も嫌でしょ? 王子や諸侯の前でウンチ漏らしたいの? キリノ、早くうつ伏せに寝そべって足を屈めて、お尻を突き出して。

 

ううっ…。おずおず…。うう…。ヒクッ…ヒクッ…(////

 

手で広げなさい。

 

……えぇっ…(////

 

わたしの両の手は貴女の腰にガッチリと置いて、貴女の身体がブレないように固定する役目と、シッポの位置と腸の構造を知るレーダーの役目の二つを同時にこなさなくてはならないの。貴女の手は空いている。やって。

 

おずおず…。うぅ…。うぁ…。ヒクッ…ヒクッ…(////

 

さっきも言ったけど、シッポには神経が集中してるから、あの…その…えっと……。貴女、絶対に力んじゃ駄目よ?(////

 

……うん…(////

 

じゃ、行くわよ…。クネクネ……。お尻のシッポを根元から少しのところで直角に曲げて、お股の下から前へ……。クネクネ……。目標を狙って…。腸の構造トレース。シッポの侵入角度よろし。さぁ…入るわよ……。キリノ、力を抜いててね…。クネクネ……ズル……。ズルズルズル…(////

 

はうっ!! 駄目、駄目、駄目、駄目…。あうっ……あっ…うっ…無理…無理…無理…無理…こんなの無理だって……これ以上は絶対に無理…あああああっ……(////

 

まだ…入り口よ……。アンッ…。キリノ…。ち、ちからを入れないで…。駄目よ…。怖がらないで。力んじゃ駄目…。これは医療だから。気を楽にして…。ハァハァ…。これから…もっと腸の……奥の奥……隅々まで…検査…しないと駄目なんだから…。うぁあ…。ズルズルズル…。ふぁあっ…ズルズルズル…(////

 

これは医療…。これは医療…。これは医療…。って、こんな医療あるかっ! 絶対オカシイよっ! はうぁわ! やっ…やっ…やっ…やっ…やっ…っ…あぁっ…ぁぁ……(////

 



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キリノの章 20 ★☆☆ 白帝城(大浴場)

はい…。お仕舞い。よく頑張ったわ。猫猫診療室、解除…。 ……パチッ★

 

うううっ……。ヒクッ…ヒクッ…(////

 

下剤のマイクロカプセルは腸のひだの232箇所に吸着して残っていたけど、私の尻尾から直接アンチ魔法を掛けて全部削ぎ落として3回の浣腸で流し終えたから、もう大丈夫よ。……じゃ、からだの洗浄液をシャワーで洗い流すから、立ち上がって。

 

ヒクッ…ヒクッ…(////

 

キュッキュッ…。シャー……。ジャバジャバ…。

 

ううっ…。うう…。ヒクッ…ヒクッ…(////

 

シャー……。ジャバジャバ…。髪にかけるから目を閉じて。シャー……。ジャバジャバ…。シャー……。ジャバジャバ…。腕を上げて。シャー……。ジャバジャバ…。足を開いて…。シャー……。ジャバジャバ…。右足をあげて足の裏見せて。シャー……。ジャバジャバ…。左足。シャー……。ジャバジャバ…。洗い終わった。お疲れさま…。

 

ううっ…。アイツ絶対許さない…。うう…。ヒクッ…。殺してやる…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

ブルボン伯を? 残念ながら貴女の手では殺せないわ。

 

……そうね。わたしには何も出来ない…。

 

あぁ、そうじゃなくて…。貴女のウンチに下剤が入っていたことを蓮華にもう報告したからよ。かなり腹を立てて殺気まで出していたから、ブルボン伯はもう殺されたんじゃないかなって。

 

蓮華さんって…わたしをルーレットで射抜いた剣聖…。

 

そう。私の幼馴染でもあるわ。今日は貴女の城入りのおめでたい日だからショートニング城の人達を皆殺しにまではしないでしょうけど…。私も凄く怒られたのよ。なんで料理を食べるときに見過ごしたんだって。

 

何かを成すには…やっぱり力が必要なんだね…。

 

……もう5時ね。予定より随分遅れちゃったけど、まだ時間は大丈夫。嫌なことは湯に浸かって忘れましょう。テクテク…ポチャン…。さぁ、キリノ。

 

……うん…。トボトボ…ポチャン…。

 

……どう? 気持ちいいでしょ。

 

わたし……。力が欲しい。力があれば誰にも干渉されない。自分の好きなように生きられる。わたし、弟がいたんだ。一晩しか会わなかったけど弟を愛していたの。でも、わたしが姉だと分かると危ないからっていって弟はわたしの元から去ってしまった。そして私が持っていた波紋も消されてしまった…。わたしは愚かだった。深く考えることもなく力を捨ててしまったんだ…。そして弟にも会えなくなってしまった…。なんで弟を引きとめられなかったんだろう。なんで力を、魔法を捨ててしまったんだろう。力があれば。魔法さえあれば、わたしは…。わたしは…。

 

魔法…。魔法なんて使わなくても成し遂げることは出来る。魔法があっても成し遂げられないこともある。魔法なんて関係ない。意志の力の問題だわ。

 

意志…。でも実際には意志の力だけじゃ魔法には勝てないじゃん…。

 

……私は三人姉妹の一番下だった。私と真ん中の姉は魔法が使えたけど、年の離れた一番上の姉は使えなかった。貴族の血を引いているからといって確実に魔法が使えるようになるとは限らないの。でもね、私の家が卑劣な連中の奸計によって取り潰されたとき、復讐を姉妹で誓い合ったのだけど、それを成し遂げることが出来たのは魔法が使えない一番上の姉だけだった。復讐相手である最強の魔法使いを人道に反した計略を使っておとしいれたのよ。私にはあんなこと出来ない…。魔法が使えなくても覚悟さえあれば何でも成し遂げることが出来るものよ…。ただ…。奸計をいくら積み重ねても不毛なことでしかない。家が再興する訳でもないし、復讐の代償に姉は死んでしまったわ…。

 

うう…。ヒクッ…。わたし今度は魔法に甘えそうになってた…。こんなことじゃわたし…。ううっ……。ヒクッ…ヒクッ…。もう…もう泣かない…。こんなことじゃ弟を絶対に見つけられない…。弟と一緒に暮らせない…。魔法がなくても、私は…。必ず…。

 

……不毛では…なかったのかも知れない。姉は何も生み出さなかった訳ではないのだから…。

 

えっ?

 

貴女はもうひとつ勘違いをしているわ。波紋は心臓の鼓動がある限り生まれ続ける…。消えたとするなら貴女が死んで鼓動が止まったとき。でも貴女はいま生きている。波紋は消えていない。

 

でもアイツは消したって…。

 

確かに貴女の波紋は感じない。でもそれは上辺に過ぎない。貴女の胸では波紋が生まれ続けている筈よ。多分、貴女の弟さんは、貴女の鼓動から波紋が発生したと同時に対消滅させるような魔法を掛けているんだと思う。波紋は生まれた瞬間に消され続けているの。

 

それじゃ…。

 

貴女は魔法を持つことが出来るわ。どうする? 今の貴女なら魔法を持っても大丈夫だと私は思うのだけど…。

 

大丈夫かどうかわたしには分からない。魔法に溺れないという自信はない。でもアンタの話を聞いて分かったよ。魔法を持つ意味を。

 

猫猫診療室、発動コード詠唱…。クロクロネコネコ~♪ クロネコ~♪ クロクロ♪ シロネコ♪ ヤマネコ~♪ ……パチッ☆    ☆ミ ☆ミ ピカッ ミ☆ ミ☆    じぁ、対消滅魔法を解除するオペをするわ…。クネクネ……。サワサワ……。ふむふむ……。

 

む、むねにシッポが(////

 

波紋というのは、大きくなればなるほどに魔力が増える。一定以上になったら、魔力が実態となって発現する段階に到達する。それが覚醒…。キリノ…。貴女の波紋の大きさが魔法の覚醒段階に入ってるわ。貴女の弟さんが掛けた対消滅魔法を消したら、直ぐにも貴女は魔法使いとなってしまう…。確認するけど、そうなったらもう波紋は隠せず、今まで通りの生活は出来なくなるのよ? 貴女の弟さんの母親に命を狙われて殺されてしまうかもしれない。それでも貴女、魔法使いになるのね? 本当にそれでいいのね?

 

うん…。

 

じゃあ、おなりなさい。対消滅波紋に共振強制介入。増幅…。飽和…。臨界…。崩壊…。 ……パチッ★

 

!? ふぁあ…。わたしの身体、光ってる…。

 

ふふふっ。魔法使いの世界へようこそ。魔法使いになったらひとつだけ特別な力を持つことが出来るわ。願いなさい。普通では決して使えない特別な魔法、自分だけの特殊能力を…。自分の身を守る力を望むなら、そうね……防御重視なら魔法に対するバリアをイメージしなさい。通常兵器なんて特殊能力がなくたって、魔力が上がれば守りきることは出来るから。攻撃重視なら力よりもスピードをイメージしなさい。攻防共にバランスが取れていいと思うわ。後は…

 

わたしは…。アイツを見つけ出す魔法が欲しい。弟に会いたい…。

 

…それでいいの?

 

欲しいものを叶えるのが魔法ってもんでしょ。わたしが一番欲しいのは強さじゃないんだ。わたしが欲しいのはアイツなの。アイツに会いたいんだ。会ってからのことはそれから努力する。魔法がなくたって意志の力があればどんなことでも成すことが出来る。強くなれるっていったよね? だったらわたし強くなるよ。怖がりで臆病な自分を変えてみせる…。アイツと一緒にいられるように精一杯努力する。それは魔法に頼らない。

 

へぇ…。じゃ、願って。

 

うん…。☆ミ ☆ミ 弟を見つけ出す魔法を! 弟に会わせて! ミ☆ ミ☆

 

……どう?

 

ううっ……。あっ、あれ?

 

弟さんの姿、見える?

 

よく分からない。だって波紋がいっぱい見えて、どれがアイツの波紋だか…。

 

どのくらいの範囲でどれくらいの数の波紋が貴女に見えているの?

 

わかんない…。どこまでなんだろう…。いくつなんだろう…。夜空の星々の煌きのように遥か遠くまで、数え切れない程に見えるの。そして、こんなに波紋が多いというのに、どういう訳か全ての波紋をハッキリと感じ取れる…。

 

もしかしてルーン全ての波紋が見えているのかしら?

 

多分…。

 

そっか…。うーん…。ルーン全土で暮らす10万人の魔法使い、その全ての波紋を貴女が見通せるというのなら、貴女の能力の名は『白の女皇帝』だわ…。

 

白の女皇帝? カッコイイ名前だけど…。なんで?

 

魔道王国エロスの前身、エロス家の最盛期。強大な魔力でルーン世界の全ての国家を支配下に置いた魔道帝国エロス。第23代女皇帝ブリジット。通称、白の女皇帝。彼女は当時、ほんの僅かしか採取出来なかった天然のオリハルコンを世界中から集めて、この地に小さな白い城を築いたの。そしてその城の中では、いつも白のドレスを身に纏っていたというわ。貴女が身に付けた能力は、その皇帝が持っていた能力と同じなのよ。700年前かしら。それから今までこの能力が発現した人はひとりもいなかったのだけど…。

 

へぇ…。なんかよく分からないけど、皇帝が使ってたって凄いね。でもこの能力ってあんまり強くなさそうだし、ブリジットさんってかなり弱かったんだろうな…。教科書にもそんな人のこと書かれてなかったし。もしかしたら、わたしと同じで好きな人を探したかったのかな…。ちょっと親近感湧くかも…。 ん? あっ! ああ~っ! 見つけた。これアイツの波紋じゃん。って、ええっ!! なんでこんなに近いの!?

 

そりゃ、貴女の弟さん、この国の王子ですもの。今、この階の一番奥の執務室にいる筈よ。

 

へっ!?

 

王子との謁見で吃驚させたら面白いかなと思って、黙ってたの。ごめんね。

 

えええええええぇ!? 本当に、本当に、アイツ、王子なの?

 

うん…。ごめんなさい…。

 

信じらんない!! ルーレットもインチキね!! アイツ、わたしのこと、からかってたのね!! もぅ~~~っ!!!!! アイツの部屋行って、ぶん殴って来る!!

 

キリノ、これ! ポイ~。

 

~パシッ。 ん? デッキブラシ?

 

貴女の腕力じゃ、あのヘタレ王子は目覚めないわ。殴るんならそれでガツンとおやりなさい。大丈夫、魔法使いなんだから、それくらいじゃ死にはしないわ。思いっきりぶっ飛ばして来なさい。貴女の最大MPは120MP。王子の探索で100MP使ったわ。残り20MP。時間にして『白の女皇帝』は今日あと7秒しか使えない。でも上手く能力を使えば一発くらいは入る筈よ。

 

うん!! じゃ、これでボッコボコにしてくる。バタバタバタ…。

 

あぁ、裸で行っちゃ駄目よ! 部屋に謁見用の白いドレスがあるから、それ着てお行きなさい。ちょっとまだ時間には早いけど、これが貴女の王子への謁見の儀になるのだから…。

 

わかった~!! 行って来ます~~~~!!  バタバタバタ…。

 

あはははっ。あの子、怒ってるのか嬉しのかどっちなんだ。ほんと元気で可愛いよね…。

 

蓮華…。貴女いつからいたのよ。

 

一時間程前かな。ブルボン伯の首を王子へ届けに戻ってから、ここで猫猫診療室の医療なるものをずっとみてた。凄いねアレ…。今度わたしもやって貰おうかな。

 

な、なにいってるのよ、馬鹿、そ、そんなの絶対に嫌よっ(////

 

キリノには出来ても、わたしには出来ないのか…。残念…。

 

……ねぇ、貴女の言った通り、キリノに心と波紋を伝えたけど…。でも本当にこれで良かったのかしら?

 

うん。ご苦労さま。いや、大変なのはこれからか。

 

第23代女皇帝ブリジット…。白の女皇帝は、白帝城の玉座から世界の全ての魔法使いの波紋を捉えて監視することで世界を完全支配したと伝えられているわ。そして自分を脅かす強い魔力を持つ者達を感知すると、何の躊躇もなくその者達の波紋の源を狂わせ心臓を停止させていったとも…。ブリジットは狂気の暴君とも呼ばれているの。

 

へぇ…。そうなんだ。

 

勿論、まだキリノにはそんなことは出来ない。でも魔力が上がれば、いずれ出来るようになる。ブリジットのせいで当時、世界に200万人いた魔法使いが5万人にまで減ってしまった。大丈夫なのかしら、そんな強い能力を今の時代に蘇らせてしまって…。

 

もしキリノの力が王子に仇なすというのなら、その時、わたしがキリノを斬るまでのこと。そうでなければ何万人魔法使いを殺そうが、わたしには関係のない話だ。やりたければ好きにやればいいさ。でも大丈夫じゃないかな…。アイツ、世界支配なんて全く興味なさそうだし。

 

そうね…。あの子、王子以外はまるで眼中にないみたい…。ふふっ。王子には世界平和の為にも長生きして貰わないと駄目ね…。あの子が…キリノが母から受け継いだ強い意志は、人を恨んだり傷つけることじゃなく、人を愛することに向け続けて欲しい…。

 

……アンタとキリノの話を聞いてて思ったんだけど、もしかしてキリノの母親ってアンタの…。

 

そうよ。あのエメラルドグリーンの瞳、山猫姉さんにそっくりだわ…。

 



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キリノの章 21 ★☆☆ 白帝城(執務室)

くくくっ。王子? どうされたのです? 急に黙り込んでしまわれて……。チョコドーナツ不味かったですかな? 街では一番人気なのでございますけど、ちょっとビターな感じのチョコレート味、王子には早かったですかな~。くくくっ。わたくしの食べ掛けでございますがエンゼルドーナツと交換いたしましょうか? こちらの中にはあま~いホイップクリームがた~っぷりと入っておりましてですね…

 

サキエルよ。そちはまだあのときのことを根に持っておるのか? 余が…お前の食いかけのドーナツなど……。食えるかっ!! ミ~~~~~(エンゼル○ドーナツ)壁 グシャ。

 

くくくっ。王子……。わたくしの心をそのようにグチャグチャに…。あれはドーナツであってドーナツでないのでございます。王子への愛で…

 

ふざけるな!! ミ~~~~~(チョコ○ドーナツ)サキエル グシャ。

 

くくくっ。わたくし、ふざけてなど…。ほう。ビターでございますね。ムシャムシャ…。

 

はぁ…。サキエルよ。もう時間がないのだ。よいか。余がそちにこれほどまで切実に相談したことが過去にあったか?

 

くくくっ。メルルさまが城に来られた夜、性交とは一体どこまでが性交なのかを相談に来られたときも、確かそのように切実なお顔を…

 

ふざけるな!! ミ~~~~~(クラシック○ドーナツ)サキエル グシャ。

 

くくくっ。ですから、ふざけてなど…。ほう。懐かしき味でございますね。ムシャムシャ…。

 

はぁ…。サキエルよ。キリノに会ったら余はどうしたらよいのかと聞いておるのだ。んっ? どうしたのだ? 何を驚いた顔をしておる?

 

くくくっ。いえ…。

 

気になるではないか。よいぞ。何か言いたいことがあるなら先に申してみよ。

 

くくくっ。では…。王子にお聞きしたいのですが、魔力を完全に絶って相手の背後に忍び寄ることは可能なのでございましょうか。

 

なんの話をしておるのだ。蓮華か? 忍びの技のことか? ドーナツといい、お前はどこまであいつに対抗する気なのだ…。訓練すれば出来るようになるぞ。己の波紋が脈打つ寸前に0.01秒程度の波紋を心臓に打ち込み対消滅させる技だ。魔法が覚醒していなければ自分以外の者にも掛けられるがな。どちらにしても波紋が広がらぬのだから魔法は使えん。丸腰だ。実戦でやるのはオススメ出来ぬな。使うなら捨て身の覚悟が必要であるぞ。サキエル。

 

くくくっ。使用には訓練が絶対に必要なのでございますね?

 

いや、そうとも限らん。波紋系の特殊能力があれば簡単に出来るのではないかな。

 

くくくっ。そうでございますか。なるほど納得致しました。ちなみに1鼓動0.01秒程度の波紋の放出で良ければ、20MP程度でもかなりの時間、気配を消せますな…。

 

1秒1鼓動として、1分60鼓動、10分600鼓動だからの。10分で6秒分の放出でよい。20MPなら11~12分は気配を消せることになるが…。もうよいか? お前の話を真面目に聞いてやったのだ、今度は余の相談を真面目に聞くのだぞ?

 

くくくっ。キリノ様に会ったらどうしたらいいかでございますか…。キリノ様とは面識があったのでございますね。

 

始めに説明したではないかっ! やはりお前、真面目に余の話を聞いていなかったのだなっ! 蓮華がそれを知ってルーレットを射抜いたのだ。以前、余が田舎の山に入って狩りをしておるとキリノという村娘がおってな。夜も更けておりますので、是非、泊まってくだされというのであいつの家に泊まったことがあるのだ。

 

くくくっ。で、誘惑されたと。

 

うむっ。美し過ぎる余が悪いのだが、キリノは余に惚れてしまいよってな。風呂に入ってキスをしてくれ、ベッドに入ってキスをしてくれと、いや、まいったぞ。ふはははっ。だがのう。詳しい事情は話せぬのだが、余はキリノと別れることにしたのだ。それはキリノの身を案じてのことだったが、余はキリノが好きなのだ…。キリノがハーレム候補になったのは正直うれしかった。うれしかったが故に、キリノがこれからも安全で穏やかな暮しが出来るように余がまた身を引くべきか、キリノの身は非常に危険なことになるが余は心の赴くままにキリノと一緒になるか、悩んでおるのだ。胃に穴が開くほどにな。

 

くくくっ。王子、その話には一番重要なことが抜けております。王子がキリノ様のことをどれほど想っておられるのか、それが具体的に分からぬのでは答えようがございませぬ。好き、というだけではなんとも…。

 

ほう…。サキエルにしてはまともな意見であるな。やっと真面目に相談に乗る気になったか。しかし、好きという主観的なものをどう具体的に説明すればよいのかのう。

 

くくくっ。では、王子がキリノ様をどう想っておられるのか、わたくしがいくつか質問致しますので、それに正直にお答え下さいませ。

 

うむっ。

 

くくくっ。……では、お聞きしますが、王子はメルルさまとキリノさま、どちらがお好きなのでございましょうか?

 

ふざけるな!! ミ~~~~~(カスタード○ドーナツ)サキエル グシャ。

 

くくくっ。ですから、ふざけてなど…。ほう。クリィミーでございますね。ムシャムシャ…。

 

答えられるかっ! 両方好きだ。

 

くくくっ。では質問を変えましょう。王子はメルルさまとキリノさま、どちらが可愛いと思いますでしょうか?

 

どうして二人を比較して優劣を決めたがるのだ…。まぁ、幼いメルルの方が可愛いという人は多いだろうが、余はキリノも同じくらい可愛いと思うぞ。

 

くくくっ。では次。王子がハーレムで初めて過ごされる夜でございます。さてメルルさまとキリノさま、どちらの部屋に行かれて王子の童貞を捧げるのでございますかな?

 

サキエルよ。ここは飲み屋か? いや余は行ったことがないが…。まぁ、よいわ。……そうだのう。キリノかの。

 

くくくっ。もしこの場にキリノ様がおられれば、それはもう喜んだことでございましょう。ポロポロと涙をこぼして嬉し泣きするくらいに…。ちなみにどうしてキリノ様なのでございます?

 

経験豊富そうな気がするからの。

 

……。

 

どうしたのだサキエル。くくくっ。はどうした。顔が真っ青であるぞ…。

 

くくくっ。いえ…。キリノ様は経験豊富なのでございますか?

 

さぁ、分からぬが、キリノに手取り足取り色々と教えて貰って、次の日にメルルの部屋に行くのが定石であろう。逆だったらどうなのだ。メルルはどう考えても処女ではないか。余は童貞である。オロオロとしておったらメルルが不安がるし、格好が悪いからの。それにキリノは嫉妬深いところがあるから、余が先にメルルの方へ行けば後々の憂いとなろう。よってこの質問はキリノ1択なのだ。

 

……。

 

というか、どちらの部屋かという、そちの質問がそもそもオカシイのだぞ? 余は多分、両方一度に求めるであろう。これならメルルとの性交で何か不測の事態が起きてもベテランのキリノに直接アドバイスを求めることが出来るので安心である。

 

……。

 

それにキリノとの性交をメルルに見せれば、よい教本となろうし、メルルは顔を真っ赤にさせて、さぞ興奮して…

 

……王子。すみませぬ、ドーナツが切れたようですので買って参ります…。くくくっ。では。

 

すべてエンゼルドーナツでよいぞ。店に置いてあるエンゼルドーナツを全て買い占めよ。…ん? な、なんだこの異様な気配…。後ろに…

 

ボコッ!! わたしは処女よ!!! バコッ!! 経験なんてないわよっ!!! ガシッ!! 何が嫉妬深いよっ! アンタが嫉妬深いんでしょうがっ!! わたしがアンタを誘惑!? アンタが妙な魔法使ったからでしょうがっ!! 馬鹿!! ボコ!! 馬鹿!! グシャ!! 馬鹿!! バキ!! 馬鹿!! ボコ!! なんでこんな奴… ガシッ!! 好きに… グシャ!! 好きに… バキ!! ボコ!! ボコ!! ガシッ!! ガシッ!! ガシッ!! グシャ!! バキ!! ボコ!! ガシッ!! グシャ!! バキ!! ボコ!! グシャ!! グシャ!! グシャ!! グシャ!! グシャ!! ハァ…ハァ…。 ハァ…ハァ…。 カラララン~。デッキブラシ。 ハァ…ハァ…。 ハァ…ハァ…。 なんでこんな奴を好きに… ハァ…ハァ…。 ハァ…ハァ…。 好きになっちゃったんだろ…。ブチュ…ッ。んあっ…っ……ん………んぁっ…………ん……あぁ…ぁっ…(////

 



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キリノの章 22 ★★★ 白帝城(執務室・寝室)

ブチュ…………………………ッ(////

 

ぅ…っ……。う、う~ん…。!? っ……。

 

……気付いた? キスで目覚めるなんて、アンタ、王子さまってよりお姫さまって感じだね…。こんなに可愛い顔して、頬を赤くしちゃって……。

 

姉上っ!

 

はうっ! ブチュ…………………………ッ(////

 

んっ!? んっ……んぅ………ぅ…ぅぅ………ぅ…っ……ぅぅ…ぅ……ぅ…っ……(////

 

んうっ……ぅ…っ……ぅぅ…ぅ……んっ…ん…ん…っ…ぁ……ぅぅ…。ふぅ…。ゴメン…。我慢出来なかった…(////

 

姉上…魔力が…。そうか…覚醒されたか…。これではもう波紋を隠すことが出来ぬ…。いや、もう鳳凰宮に感知されたであろう…。

 

わたしの能力、白の女皇帝なんだって。カッコイイでしょ。

 

白の女皇帝? それはまた面白い能力を…。だが、しかし…この魔力値では…。最大で120MPくらいか…。出力も10MP/sしかない…。

 

そんなに心配そうな顔しないでよ。足りない分は根性でカバーするわ。

 

根性…。

 

うん! 根性で頑張る! アンタと一緒にいられるように誰にも負けないくらい必死で頑張る。誰にも邪魔をされないくらい絶対強くなる。だからアンタも強くなって…わたしから逃げないで…。アンタがいてくれたら、わたし頑張れるから…。

 

……何も頑張らずに諦めていたら…なにも出来ぬ…か。

 

そうだよ。二人で頑張ろう。

 

……余は姉上が好きなあまり、臆病になっていたようだ。ひとりで考え込むばかりでは何もよい案は浮かばない。行き着く先の絶望的な未来を悲観して逃げることばかり考えていた。でも姉上とふたりで考えれば、そのように悲観することなく、よい方に考えが次々に浮かんでくる。暖かな未来が見えてくる。それが余と姉上とが進む道であったのだな…。

 

誓いのキスをして…。

 

余と姉上は実の姉弟である。血が繋がっておる。もう契約などなくとも…余と姉上の繋がりは永遠であるぞ…。

 

駄目だよ、だって、わたしが欲しいのは姉弟の繋がりだけじゃないんだもの。ふふっ。強欲なお姉ちゃんでごめんなさいね、弟くん…。アベル…。ちゃんと声に出して誓って。今度は絶対だからね。何があってもアンタはわたしから逃げられない。逃げてもわたしはアンタをどこまでも追いかけて捕まえる。アンタはわたしの永遠の虜なの。いい? その代わり、わたしはアンタの永遠の虜でいてあげるわ。

 

キリノは余の永遠の虜であり、余はキリノの永遠の虜である……。余は姉上が好きだ。愛しておる…。ブチュ……………………………………ッ(////

 

わ、わたしもっ、愛してる。んっ…ん………んっ……ん……あぁ…ぁっ………(////

 

…………(////

 

…………(////

 

……奥に寝室がある……。姉上…ゆくぞ…。

 

えっ…。そ、そんなに手を強く引っ張らないでよっ…(////

 

テクテク……脱ぎ脱ぎ……テクテク……脱ぎ脱ぎ……。

 

ちょっと…歩きながら服を脱ぐって…アンタ…(////

 

時間が惜しい…。直ぐにでもやりたい。姉上も脱いで…。

 

う、うん…。テクテク……脱ぎ脱ぎ……テクテク……脱ぎ脱ぎ……(////

 

扉よ…余はアベルである。バタン!

 

キャッ!!

 

姉上、中へ…。

 

う、うん…。恐る恐る…。バタン! ふぁっ!! 扉が閉まっちゃった…。お部屋、真っ暗だよ…。

 

いま灯りを…。パチッ。ここが余の寝室じゃ。姉上すまぬ。狭いであろう。窓もない。この部屋は厚い防音壁と強力な魔法結界で囲まれていて、外からの干渉を全て排除しておる。完全な密室になっておるのだ。扉も余だけが開け閉め出来るようになっておる。

 

内からもアンタしか無理なの?(////

 

うむっ。姉上は扉を開けられない。

 

……そ、そうなんだ(////

 

先程いた執務室も防音と魔法結界はされておるが人の出入りが激しい。だからこの城ではこの狭い空間だけが、唯一の余だけの場所といえる…。姉上。他の者の目に触れぬ為には、ここでやるしかないのだ…。もっと姉上の心が落ち着くような、綺麗なところでやりたかったのだが…。

 

い、いいよ。ここで。ア、アンタがいれば…それでいい…(////

 

ベッドと冷蔵庫…。あと、その扉の向こうはシャワーとトイレだ。メイドもここには入れぬ。掃除も全て余がやっておるのだぞ。綺麗にしているつもりだが…。

 

ベッド大きいわね…。部屋の半分近くある…。

 

ベッドは普通のダブルだが、部屋が狭いから大きく見えるのであろう…。シーツは毎朝換えておる。綺麗なので……姉上、そこに寝そべって貰えぬか。

 

ア、アンタ……。わ、わたし…。初めてなんだからねっ! 乱暴にするんじゃないわよっ! や、やさしく…。そのぅ…。して下さぃ…(////

 

うむっ。余も初めてじゃ…。

 

お互い初めてなんだね…(////

 

上手く出来るであろうか…。

 

下手でいいじゃないの…。上手く出来るまで、その…。えっと…。なっ、なっ、何回でもお姉ちゃんが付き合ってあげるわよ…(////

 

う、うむ…。だが…。

 

どうしたの?

 

上手く出来たとしても…。1回では全然足りぬであろう…。姉上…。余と満足に出来るようになってからも、その…。何回も…。付き合って欲しいのだが…。

 

う、うん…。アンタの気の済むまでしていいから…(////

 

もし疲れて出来ぬようになっても、少し休んでまた続ける。数え切れぬほど…。よいか?

 

い、いいよ…(////

 

では姉上、下着を脱いで、ベッドに横になるのだ。

 

はい…。ブラジャー脱ぎ脱ぎ…。ショーツ脱ぎ脱ぎ…(////

 

んっ!? な、な、なぜ、おパンツまで脱いでおるのだっ!?

 

ふえっ!? よ、よ、よく分からないけど、こういう時、脱がないものなの?(////

 

すまぬ…。初めてのことで頭が混乱しておるようだ…。いや、確かに全て脱ぐべきだな。その方が自然だ。脱いで当たり前だ。余も脱ぐか…。脱ぎ脱ぎ…。

 

はうっ…(////

 

ん? どうした。今更、余のを見て恥ずかしがらなくとも…。

 

だ、だ、だ、だってアンタの…(////

 

ん? あぁ…。うむ…。ほう…。こういう状態になっていることすら全く気が付かぬとは、余は、やはり頭が混乱しておるようだ…。すまぬ。気が逸り過ぎであるな。少し落ち着こう。何か飲むとするか…。姉上は何を? 冷蔵庫には……コーラか、ウーロン茶か、カルピスしかないが…。

 

わ、わたしは別に構わないけど…(////

 

ん? 飲まぬのか? プシュ。ゴクゴク…。

 

そ、そうじゃなくて、アンタのが、そうなってても…。別に悪い気はしないっていうか、その、あの、いいかなって…。わたしでそうなってくれてるんだから。嬉しいなって…。ていうか、いま落ち着いても…直ぐにまた、そ、そうなるんだし…。な、ならないと…出来ないんだし…。いいじゃん(////

 

…………えっ!?(////

 

…………えっ!?(////

 

い、いや…。あの…。その…。余は姉上と波紋を共振させて…。姉上の波紋を拡大させようと…。120MPでは何かあったときに直ぐに尽きてしまう…。明日、姉上の鳳凰宮入りの式典で何があっても大丈夫なように、余は姉上の最大魔力値を出来る限り上げようと…(////

 

はうぅ~~…。バキッ!! 壁殴っちゃった。ううっ…。痛いよぅ…。もおおおおおおぅ……。紛らわしいのよっ! さきに言いなさいよっ!(////

 

う、うむ…。すまぬ…。姉上は余とアレをすると思ったのだな。気にすることはないぞ…。恥ずかしがらずともよい…。そう手足をバタバタさせて悶絶せずとも…。余が悪いのだ。あれでは誰もがアレだと勘違いしたであろう。うむ。ハッキリ言うべきであった…(////

 

どりゃ~~~っ!! マクラを抱えて投げっぱなしジャーマン!! ドゴ~~ン!! ハァハァ…。ハァハァ…。ははははっ。そ、そうなのっ。アレよ。アレ。プロレスゴッコをすると思ったの! ベッドがマットに見えちゃったんだ!(////

 

すまぬ…(////

 

素で返さないでよっ!(////

 

姉上…。

 

な、なによっ!

 

波紋を共振させる…。ベッドに静かに仰向けで横になって…。

 

う、うん…。もそもそ。

 

服を脱いで貰ったのは少しでも波紋のシンクロ率を上げる為なのだ。今から肌を合わせる。余を思いっきり抱きしめてくれ…。

 

うん。きて…。

 

うむっ。キリノのからだにどさっと覆い被さり。

 

アンタやっぱり軽い…。ちゃんと食事とりなさい…。

 

うむっ。暖かい…。

 

じゃ、思い切り抱くね…。ギュッ!

 

ギュッ! 姉上が今日使える魔力はもうない。使い切ってしまっている。もう余の波紋を感じ取れぬであろう。だから余の鼓動にのみ神経を集中させて欲しい。余の鼓動に自分の鼓動を合わせる感覚でいてくれ。細かいところは余が姉上の波紋を捉えて調整する。…うむ。…捉えた。同期。

 

あ、あのさっ、鼓動って…心音に合わせるの? ごめん。よく分かんないんだけど…。どうしたらいいのか、もう少し簡単に説明してちょうだい…。ん…? あれ…? 胸の奥が…。ムズムズして…。ドクドクって鼓動が大きく…。えっ…。アンタの心がわたしに、わたしの心がアンタに…。こ、これが共振なの? ねぇ、ち、ちょっと、こんなの駄目っ! 嫌っ! 混じり合って…。心が、からだが、あっ 嫌っ! 嫌っ! あ…っ……ん………んぁっ…………ん……あぁ…ぁっ…(////

 

姉上…。

 

ん………あっ…あっ……あぁ…ぁっ…(////

 

苦しいだろうが、拒絶しては共振が崩壊する。その苦しみを受け入れてくれ。

 

苦しいんじゃなくて! 苦しいけどっ! 違うのっ……。気持ち…いいの…。あっ…やん…あぁ…ぁっ…(////

 

そ、そうなのか(////

 

うん…(////

 

で、では、それを受け入れて、頑張ってくれ…(////

 

わかった。頑張る…。でも…。ハァハァ…。ハァハァ…。

 

ん?

 

なんでアンタは平気なの? 気持ちよくないの? ハァハァ…。ハァハァ…。

 

まだ姉上の波紋が小さいのだ。少しこそばゆくはあるが…。

 

ふふふっ。じ、じゃ、早くわたしの波紋を大きくしなきゃね…。あぁ…ぁっ…。ア、ア、アンタ、覚悟なさいよ…。弟の癖にお姉ちゃんをこんなに虐めるなんて…。ハァハァ…。ハァハァ…。ぜ、絶対に百倍にして返してあげるから…。ハァハァ…。ハァハァ…。

 

姉上…。ちょっと目が怖いぞ…。

 



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キリノの章 23 ★★★ 白帝城(寝室)

姉上…姉上…。ゆさゆさ。

 

う、う~ん…。ん!? ガバッ! キョロキョロ…。キョロキョロ…。フゥ…。バタッ…。良かった……夢か……。ハァ…。ごめん…。また気絶しちゃったんだ…。

 

悪い夢でも見たのか?

 

……悪くはなかったよ。今まで通り…朝ごはん食べて、学校へ行って、友達とお喋りして、授業受けて…。そんな普通の日常…。楽しいけど…。でも…。アンタがいないの…。

 

そうか…。

 

キスして…。

 

チュッ(////

 

ん…。……お姉ちゃんから黙って離れちゃ駄目だよ。気絶してたら…。そのっ…。抱き合ったままでさ…。起こしてくれたらいいじゃん…(////

 

うむ…。すまぬ。どうも空調がな…。換気は出来ておるようだが冷房が効いておらぬ。魔法で冷まそうかと思ったのだが、こうも狭い空間で魔法を使うと結界魔法と干渉し合って崩れてしまうやもしれぬのでな…。極小の冷却魔法を生成しておったのだ。 ……パチッ☆ あと100個は必要か…。時間が掛かりそうだ。 ……パチッ☆

 

このふわふわ浮かんでカワイイのが冷却魔法? 白くキラキラ光って綺麗だね…。あっ…。冷たい…。

 

溶けない雪のようなものじゃ。まだ10個なのじゃ。これだけでは、あまり冷えぬ。

 

室温っていま30℃超えてる感じだね。

 

うむ。湿度も高い…。熱中症になってはいかん。姉上もかなり汗をかいておる、余がこれを作ってる間にシャワーに掛かってくれい。余もコレが終われば掛かることにしよう。

 

汗…? ……ほんとだ。わたしのからだ、凄い汗…。

 

う、うむ…(////

 

アンタのからだも…。チュッ(////

 

姉上、いまは魔法の生成中なので、そ、そのようなことは…(////

 

チュッ(////

 

……(////

 

しょっぱい…(////

 

……(////

 

わたしの味もしょっぱいのかな…(////

 

…………(////

 

…………(////

 

チュッ(////

 

……どう?(////

 

う、うむ…よく分からぬ。チュッ(////

 

……どんな味なのかな♪(////

 

い、いや、本当に分からぬのだ。しょっぱい筈であろうに…。どうしたことであろう。チュッ(////

 

……ねぇ、もうこのまま続けようよ(////

 

…う、うむ(////

 

今度はアンタが下になって…(////

 

わかった。もぞもぞ。では姉上…(////

 

よ、よろしくお願いします…よいしょ…(////

 

うむっ(////

 

重かったら言ってね。無理しないでね(////

 

いや…心地よい重さじゃ。姉上を実感できる…。ギュッ(////

 

そ、そう…。ギュッ(////

 

…………(////

 

…………(////

 

で、では共振を…。

 

あっ。待って…。今、わたしの魔力どれくらいになってるの? ちょっとは増えたのかな。

 

姉上の今の最大魔力は240MP、魔力出力15MP/sであるぞ。

 

凄い、100も上がってる! ご褒美! ご褒美!

 

チュッ(////

 

うへへ…(////

 

……(////

 

アンタのはどれくらいなの?(////

 

う、うむ…。言わなければ駄目か…。

 

いくつなの?

 

余の最大魔力は6890兆2000億MP、魔力出力は5350億5000万MP/sである。

 

へぇ……。そうなんだ……。

 

出来れば姉上には鳳凰宮入りの明日の朝までに平均的な魔法使いの魔力である1000億MPは行って欲しいのだが…。

 

1000億MPかぁ…あとたった999億9999万9760だね……。でもアンタとはまだ6890兆1999億9999万9760もあるのか……。ちょっと大変だよね……。

 

うむっ! だが頑張ろうぞ! ん? どうした? 立ち上がって。トイレか? ん? 余の腕を取って、ふむ…。起こして…。抱えて…逆さに? で、どうするのだ?

 

どりゃ~~~っ!! パイルドライバー!! ドゴ~~ン!! ハァハァ…。ハァハァ…。強さがインフレし過ぎなのよっ!! このまま続けても絶対に無理よっ!!

 

ううっ…酷いぞ…。それに無理と言われても、こうするより他に…。姉上…諦めるのか?

 

まさか。やり方を変えるの。さっき失神から目覚めたとき、わたしの魔力、少し回復したみたいなのよね。

 

どれどれ…。むぅ…。確かに50MPほど魔力が溜まっておる…。これを使おうというのだな?

 

うん! 今はわたしの波紋の大きさや位置をアンタが予測して合わせることで共振してるけど、これをわたしとアンタがお互いに完全に同一の波紋を放ち合って共振させる方式に変えるのよ。共振精度は飛躍的に向上する筈だわ。

 

……確かに波紋系最強の能力である白の女皇帝を使えばそのようなこと完璧に出来るであろうし、余も波紋の精密放出は可能であろう……だがしかし50MPでは姉上の波紋の精密放出は数秒で尽きてしまう…。それに余が行っておる予測共振は相当な精度であるので、残念ながら共振結果はさほど変わらぬと思うぞ…。

 

わたし、ただ頑張れば、努力さえすれば、必ず報われると夢見てる訳じゃないのよ。状況を分析して何か手はないかと考え続けていた。正しい方向に向かって頑張って努力しないとね。で、閃いたの。まず確認したいんだけど、波紋は結界を貫通するよね?

 

うむ…。結界は魔法が生み出したエネルギーを通さないだけで、魔法の根源である波紋自体を防ぐことは出来ない。波紋とは魔法使いだけがその存在を感知出来る不可思議なものなのだ。エネルギーなどの物理現象とは全く次元が異なっておる。だから波紋には波紋で対抗するしかないのだが…。何故わかったのだ?

 

結界が張ってある筈の執務室からアンタの波紋が感じ取れた…。あとさ、ブリジットが白帝城を築かせた意味ってなんだと思う? なぜ白帝城なの? どうして貴重な天然のオリハルコンを漆喰に混ぜたの?

 

白帝城の意味? うむ…。皇帝になったブリジットが自らの権力を誇示する為に世界中からオリハルコンをかき集めたか、暗殺されぬように魔法と共振して赤く反応するオリハルコンの性質を利用して魔法警戒システムを構築したのか、色々と考えられるが…。ブリジットに関する文献は殆ど残っておらぬから実際のところはよく分からんのう…。

 

わたしさ、自分がブリジットならって考えてたら分かっちゃったの。魔法と共振するオリハルコンを大量に使って城を築いたのは魔法から身を守る為じゃないわ。自分の能力を限界以上に引き出す為の増幅器として、波紋をより敏感に感じ取るアンテナの役目を白帝城にさせたかったのよ。

 

ほぅ…。流石に同じ能力を持つだけあって中々に説得力がある…。うむ。そうかも知れん…。

 

今から、白の女皇帝の力を使ってみる。1MP/sの波紋を城に放ってその反射で帰って来た波紋をわたしが受け止める。どれだけ増幅したか見てて。 ……パチッ☆

 

むむっ…。200MP/sであるな…。確かに増幅されておる…。

 

ふふふっ。200倍ね。この増幅された波紋、わたしに返って来る前にアンタが共振させたらどうなるかしら…。増幅された波紋の共振効果がわたしに返って来るって思わない? それで一気に最大魔力値を引き上げるの。わたしのMPが無くなったら今度はアンタが予測共振を続けてわたしを失神させる。失神から目覚めたわたしは最大魔力が引き上げられた分、魔力回復量も多い筈よ。その増えた魔力をまた白の女皇帝の力で城に向けて精密放出を行い、以後ループって作業ルーチンを延々と行うの。

 

……い、いや……いやいや、そのようなゲームのチートの如きことが実際に上手く行く筈が…。なにより危ないではないか。共振効果が本来の値より大き過ぎる。そのようなものを受け入れたら姉上の体にどのような影響が出るか…。もし悪い結果になったら…。

 

駄目よ。結果を恐れず勇気を出して踏み出さないと得られないものはあるの。わたしにとって今が意志の力を示すときなんだわ…。もう臆病で怖がっていただけのわたしじゃない。変わるって決めたの。同じ過ちは二度と繰り返さない。大切なものは自分の手で掴み取ってやる…。

 

姉上…。

 

……大丈夫よ、きっと上手く行く。

 

わかった。姉上にそこまでの覚悟があるのならもう何も言うまい…。

 

じゃ、やるわ。まず10MP/sを放出するから。

 

うむっ。2000MP/sで揃えて共振させる。いつでもよいぞっ。

 

絶対、絶対、絶対、アンタに追いついて、わたしの波紋でアンタをメロメロに悶絶させてやるんだから…。あぁ、次回が楽しみ…。アンタどんな嬌声をあげるのかしらね…。どんなエッチな顔をするのかしら…。ふふふっ。失敗する気がしないっての…。じゃ、3、2、1、放出! ……パチッ☆

 

…………(////

 

なんでやんないのよっ!!

 

やれるかっ!! 一瞬、からだが固まったわっ! そのようなことの為にするのではないっ!

 

冗談だよ…。本気な訳ないじゃん。緊張しないように。それだけなのに…。酷いよ…。

 

そ、そうか、いや、すまぬ…。姉上。ではもう一度頼む…。

 

うん…。3、2、1、放出! ……パチッ☆

 



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キリノの章 24 ★★★ 白帝城(寝室)

どうしたの…? そんなに切なそうな顔をして…。

 

姉上…(////

 

う~ん…。その呼び名もいいけど、ちょっと距離感があるわね。お姉ちゃんって呼びなさい。

 

おねぇちゃん…(////

 

いい…。その火照った顔で、儚げな目で、こんな綺麗な子から訴え掛けられるとなんでも聞いてあげたくなっちゃう…。何かな? 弟くん…。頬をなでなで。

 

もう同期を解いて…。共振を止めてっ…(////

 

えぇ~。わたし、さっきから魔法は使ってないよ? もうアンタの波紋に合わせる必要がなくなっちゃったの…。アンタの波紋はわたしの波紋となって、わたしの波紋はアンタの波紋となって、自然に共振をし続けているの…。ふふふっ。心が繋がっちゃったね…。チュッ(////

 

あぁっ…。あっ…あっ…あん……あぁ…ぁっ…(////

 

アンタ、ほんと可愛いわね。こうしてみると、どこからどう見ても女の子よ。弟と妹が同時に出来たみたい…。チュッ(////

 

んっ…。あぅ…ぁっ…(////

 

チュッ(////

 

うぅっ…ぁ…ぁん…(////

 

チュッ(////

 

んんっ…んぁぁっ…。も、もう波紋をズラして…。このままでは…。余は…(////

 

波紋をズラして同期を解きたいならアンタがズラせばいいじゃん。チュッ。どうして自分からしないのかな? チュッ(////

 

それは…。それは…。あぁっ…ぁん…あっ…あぁ……(////

 

それは、なに? 本当は、わたしと繋がっていたいんでしょ? 気持ちよくって止められないんじゃないの? ならいいじゃない…。チュッ。このまま続けてアンタがどうなるか、お姉ちゃんが見ててあげるわ。チュッ(////

 

ううっ…っ……ううっ…っっ…うう…っ…(////

 

あぁっ…。ご、ごめん、泣かないで…。

 

ううぅ…。うぅ…っ…。ヒクッ…ヒクッ…(////

 

そ、そうね…。魔力は十分に上がったし、アンタの可愛い姿は見られたし。そ、そろそろ終わろうかしら。コンマ1秒わたしの波紋をズラすね。 ……パチッ☆

 

あああぁん…っ…っ…。ハァハァ…。ハァハァ…。ハァハァ…。ハァハァ…(////

 

ふうっ…。ハァ…ハァ…。この部屋に入ったのが6時で、今はもう11時半…。ハァ…ハァ…。5時間半もやってたのか…。7時の謁見式の時間過ぎちゃったね…。9時の夕食会も…。ハァ…ハァ…。黒猫さんわたしのこと探してるかな…。

 

ハァハァ…。ハァハァ…。ハァ…ハァ…。ハァ…ハァ…(////

 

ねぇ、落ち着いた? チュッ(////

 

ハァ…ハァ…。ハァ…ハァ…(////

 

凄い汗ね、シーツがベチャベチャ。あらあらこんなに泣いちゃって。涙と鼻水でアンタの綺麗な顔が…って、あぁ…それでも綺麗なのか…。なんかちょっとムカっとするわ…。でも、こんなに体から水分出ちゃったら…。アンタのど渇いてない?

 

ハァ…ハァ…。ハァ…ハァ…。頭をコクコク(////

 

じゃあ、冷蔵庫の中の…。コーラもウーロン茶も飲んじゃったか。カルピスとかいう飲み物しかないけど飲む?

 

うん…。ハァ…ハァ…。ハァ…ハァ…。

 

栓抜きはコレね。スポン…。トプトプ…。コップに入れて…。さぁ召し上がれ。

 

姉上…。ハァ…ハァ…。

 

ん?

 

それは原液である…。カルピスとは何かで割って飲むもの…。

 

カ、カルピスの飲み方くらい知ってるわよ。お、お姉ちゃんを田舎者だと思って馬鹿にしないでよねっ(////

 

い、いや、馬鹿にしているつもりはないが…。これは常識…。

 

ふ、ふ~ん…生意気ね…。み、みてらっしゃい…。ごくごく。ブチュ~~ッ(////

 

んんんっ…。コクコク…。コホ…。コクコク…。コホ…コホ…(////

 

すぐに飲んじゃ駄目…。お互いの唾液で割るの。割って飲むのがカルピスの正しい飲み方なんでしょ? ふふっ。アンタそんなことも知らないのかな? ごくごく。ブチュ~~ッ(////

 

んんっ…。コホ…。ん…っ…コク…ううっ…(////

 

んん…っ…ん…クチュ…っ…ん…っ…クチュ…ん…っ…クチュ…んんっ…コク…(////

 

んっ…コク…。んっ…コク…。コホ…コホ…(////

 

こぼしちゃ駄目でしょ。ほら綺麗なお顔に付いてる…。ペロ…ペロ…。ふふっ。甘い…。こんなところにも付いてる…。ペロ…ペロ…(////

 

……(////

 

どうしたの泣きそうな顔して…。キャッ! バタン!

 

姉上っ…!(////

 

な、なに!?(////

 

余はもう我慢出来ぬ…。最後までやるが…よいか? チュッ(////

 

わたしとするの…? だっ、駄目よ…(////

 

性交が怖いのか?

 

怖くはないし、して欲しいけど…。でも…。

 

でも?

 

性交しちゃったら、ハーレムの選定がそこで終わっちゃって、もうアンタは誰とも恋愛出来なくなるんでしょ?

 

構わぬ…。余のハーレムはメルルと姉上の二人でお仕舞いとする。チュッ(////

 

や、やっぱり駄目…。

 

なっ、なぜじゃ…?

 

なんでって……。う~ん…。えっと…。アンタとわたしが出会ってお互いが成長したからかな…。人との出会いがどれだけ大切かってことを身をもって実感したから…。だから駄目。アンタに与えられた半年の期間を大切にして欲しいの…。

 

……。

 

ていうか、ごめん、もう眠いんだ…。凄く眠いの…。明日の式の為に魔力を回復しときたいし…。

 

わかった…。

 

もうそんな顔しない。アンタがハーレムの選定を終えたら直ぐにお姉ちゃんの元にいらっしゃい。わたしも初めてだから手取り足取りって訳にはいかないけど、ハーレムで他の女の子の前で恥をかかないように、お姉ちゃんがアンタの練習相手になってあげるわ…。アンタがしたいことならどんなことでも何度でもお姉ちゃんにしていいから…。チュッ(////

 

……約束であるぞ。チュッ(////

 

でも…。心だけでなく、からだまで完全に重なったら、わたし達どうなるんだろう。

 

より深く繋がって離れなくなるであろう…。

 

うん…。でも心がそうなると尊く感じて、からだがそうなるとエッチに感じるね。どうしてなんだろう…どっちも同じなのに…。心とからだは違うのかな?

 

姉上…。

 

ん?

 

そのようなことを言っておると、本当に、もう、我慢出来なくなる…。

 

ん…。ゴメン…。

 

……早く寝て下され。全ては明日を越えてのことである…。

 

明日か…。

 

ハーレム候補のキリノが余の姉上であることは鳳凰宮に知られてしまったであろう。明日は姉上にとって辛い日になるやもしれん。式典準備の為に朝の5時起きでもあるしな。

 

ご、ごじ! そうね…。朝早いのは辛いわ。ふふっ。あと、まぁ、どうなるかは大体分かるよ。鳳凰宮ってここから南へ40kmの塔群でしょ? わたしへの殺気が混じった波紋が数え切れない程に黒々と煌いている…。そしてアンタとわたしを捉えようと、ひっきりなしにここへ鋭いナイフのような波紋を飛ばしている…。

 

……やはり余も行こう。何が起きるか分からん。

 

アンタはここにいて…。これはわたしとアンタのお母さま方との問題なの。

 

で、では衛兵に蓮華を選ぼう。あの者がいれば…。

 

それも遠慮する。わたしの力で解決しないと…。剣聖さんに甘えても、それは解決にはならない。問題を先送りにするだけだわ。

 

…そうか…わかった…。

 

ごめんね…。

 

いや、余が悪かった。余はまだ姉上のように強くない。余も強くならねば…。

 

うん。わたし達、ずっと一緒にいる為にはお互いがもっと強くならないと駄目だと思う。明日はわたしが頑張る。見てて…。

 

うむ…。

 

アンタが見てくれてたらきっと最後まで頑張れるよ。ふふっ。

 

……。

 

……。

 

……で、では、もう寝るとするか。灯りを消すぞ。プチッ。

 

手つないでいい?

 

うむっ…。

 

さっきは虐めてゴメンね…。

 

いや、もっと…。いやいや…(////

 

ねぇ…。ギュッ

 

んっ?

 

わたし達のお父さんってこの国の前の王様だった人だよね…。

 

うむ…。

 

王様はハーレム以外の女性と恋に落ちて煉獄の塔に囚われ、相手の女性は拷問で殺されてしまったって…。

 

……。

 

相手の女性って、わたしのお母さんだよね?

 

すまない。エロス家が行った姉上の母への仕打ち、謝って償えるものではないが、申し訳ない…。母上方の中で二人の仲に酷く嫉妬する者がいたのだ…。ハーレムの中に長くいるとそれだけ世界が閉じて狭くなっていく。父上の心が自分やハーレムから遠ざかることを恐れ、耐え切れなくなって、それで…。

 

違う…。そういうことを聞きたいんじゃないの。わたしのお父さんとお母さんとの話、知ってる?

 

……煉獄の塔に収監される前、父にどういうことか問いただした。大体のことはわかる。

 

聞かせて。

 

……明日は早い。姉上は魔力を完全に回復させねばならん。この話は長くなるから後日ゆっくりと時間を…

 

お願い。聞かせて。

 

……では、眠りながら聞いてくれ。

 

眠りながら聞ける話なの? お母さんがお父さんをどう陥れるか策謀を巡らせる、スリリングで目が冴えちゃうような話かと思ったんだけど…。

 

不器用な二人の恋物語である。最初の出会いが酷いもので悲劇でもあるが、そう悪い話でもないのだ。

 

ふふっ。アンタの波紋が乱れてる。嘘でしょ? そんな気休めの作り話じゃ、確かに途中で寝ちゃうかもね…。

 

そうだな……。頭をなでなで。 ……パチッ☆

 

えっ…? あっ…あれっ…? ほんとうに…ねむく…。ア、アンタ…。まさか…。わたしに…まほうを…。

 

洗脳魔法発動。 ……パチッ☆

 

わたしは…。

 

姉上…。姉上は何を聞きたかったのであろう。

 

おかあさんは…おとうさんを…にくんでいたの? あいしていたの? どっち…?

 

両方だ。始めは殺す気満々だったが次第にラブラブになっていった。

 

わたしは…ふくしゅうのために…。

 

違う。

 

じゃあ…。わたし…。わたしは…。

 

愛されて生まれてきた。

 

よ、よかった…。よかったよぅ…。うぅっ…。うっ…。

 

姉上が生まれたことを二人は祝福した。

 

あぁ…っ…。うぅっ…。ううっ…うっ…。ううぅっ…。

 

姉上は愛されておる。

 

ううっ…。うっ…。うぅ…。うぅぅ…。

 

チュッ(////

 

………。スゥ…。スゥ…。

 

……おやすみ。姉上…。

 



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キリノの章 25 ☆☆☆ キリノステータスリポート

 

 

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ケルトにございます。至急、王子へお知らせしたいことがございます。傍受回避の為、神聖なるステータスリポートのテレパスでお送りしますご無礼をお許し下さい。

 

キリノさまのハーレム候補についての採決が本日深夜0時、鳳凰宮評議会にて行われました。ハーレム入りに賛成が1、反対が6です。反対多数。よってキリノさまのハーレム候補取り消しが決定致しました。本日朝8時から予定されていたキリノさまの鳳凰宮入りの式典は中止となり、メディアなど各関係機関には既に連絡済みです。

 

評議会が否決した理由は大きく二つございます。

 

ひとつはキリノさまが王子の姉であると判明したことによるもの。医学的に近親者の婚姻は危険であり道義的にも許されないので、キリノさまからハーレム候補資格を剥奪して家に帰すべきとする常識的な否定意見です。反対意見の6の内の5です。

 

もうひとつは昨日発現したキリノさまの魔法能力によるもの。キリノさまには『白の女皇帝』という非常に危険な特殊能力が開花した可能性が高く、魔力値の低い今の内に処置すべきとの極端な否定意見です。コーデリア妃ひとりが強硬に主張されております。彼女は実質的に鳳凰宮のトップであり、今回の件についても主導的立場をとられております。

 

鳳凰宮評議会ではこのキリノさまのハーレム候補入りについての採決に続き、査問委員会開催の緊急動議がコーデリア妃によってなされ、賛成4、反対3の賛成多数で可決されてしまいました。キリノさま。キリノさまをルーレットで射抜いた剣聖さま。そして貴方さまの召喚が予定されているとのことです。王子には鳳凰宮精約監査部への討伐勅令について疑念が出ているのです。

 

キリノさまが査問委員会に出席拒否することを見越して、昨夜からキリノ討伐軍なるものが編成されつつあります。エロス王家近衛魔法騎士団100人全員が完全武装で鳳凰宮正門広場に集結。王都を防衛する国軍の第一師団1万も鳳凰宮周辺に布陣。諸侯の軍勢も近日中に合流の予定です。魔法科学技術省では白の女皇帝に対抗する波紋バリアの試作開発が突貫で行われ、既に遮蔽結界は完成したとの情報も入っております。

 

迅速かつ適切な行動を取られてこの危機的状況を打開されますことを心よりお祈り申し上げます。

王子にはケルトの夢を叶えて貰わねばなりません。このようなことで躓かれては困ります。

 

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キリノの章 26 ☆☆☆ ???

も、もうあきまへん! にげましょ!

 

 王蟲ドドド~~。 王蟲ドドド~。

 

に、にげる言うたかて、ど、ど、ど、どこに逃げるんや!

 

 王蟲ドドド~~。 王蟲ドドド~。

 

ああっ! 殿下や!

 

なっ! 巨神兵!? 殿下アカン! それ使うたらアカン!

 

お前、なに言うてんねん! いま使わんでいつ使ういうねん! つーか上官に意見すんなアホ。おい巨神兵、あのキモイ蟲、なぎ払ったれやっ!!

 

 王蟲ドドド~~。 王蟲ドドド~。

 

バシュ!! ……ピカッ!! ドガアアアアアアアアアン!! モクモク…キノコ雲。

 

すっ、素敵やん! 殿下、アンタはやったら出来る子や思とったでっ!!

 

クシャナ殿下さいこーや!

 

ええ乳しとんのぅ、ちょっと揉ましてんかー!

 

殿下バンジャ~イ!

 

スカ…。スカ…。

 

なにやってんねん! ちゃっちゃと次撃たんかい! まだ一杯蟲おるんやで? はよしい! それでもアンタ世界で一番きったないといわれとる一族の末裔かいな。もっとキバリやっ!

 

バシュ!! ……ピカッ!! ドガアン!! モクモク…キノコ雲。

 

 王蟲ドドド~~。 王蟲ドドド~。

 

次やっ! 次っ!!

 

スカ…。スカ…。

 

あぁ…。アカンわ…。早すぎたんや…。腐っとるでアレ…。

 

次っ!! 次はよ撃たんかいっ!

 

勘弁してえなぁ、無茶言うたらアカン…。見て分からんか? ワイのからだドロドロなんやで? なんかの病気なんや…。ちょっと休ましてえなぁ…。ちょっとでええんや…。

 

ええぃ!! 口動かす暇あったらビーム撃てやっ!

 

うわっ、ドロドロ、ボトボト、肉が落ちて来たわ…キモッ。逃げるで!

 

待てコラ! 持ち場を離れたらアカンって! うわっ…。

 

スカ…。スカ…。あぁ、もう弾でぇへんわ…。ワイの命も弾切れや…。口からまだ出るもんいうたら、涎とあんさんへの恨み辛みの言葉くらいでっしゃろか…。もうちょっと、ワイ、褒めて育てて貰いたかったですわ。あんさんそないに偉そうになんでもかんでもやれやれいいますけどな、そないに出来るもんやあらしまへんで。人いうんは…。ワイは人ちゃいまっけど…。やる気にさせやなあきまへん…。ワイ、この仕事もう限界ですわ…。生きることにほとほと疲れ果てましたわ…。バタン…。

 

 王蟲ドドド~~。 王蟲ドドド~。

 

うわわわわっ、あのダンゴ虫ら、なんや、めちゃ怒っとるんちゃう? 目、真っ赤やで、あぁ怖っ! あれ人殺しの目やわ…。ごめん、ワシも逃げるわ~。

 

ワイも~。

 

ウチも~。

 

ワシも~。

 

はぁ…。今更走って逃げてもアカンやろ。ワイはもうええわ。好きにさらせや。つーか逃げるんやったら始めから戦車で山に逃げとったらよかったんちゃうん?

 

いや塹壕掘って身を隠すんはどうや? あいつら狭いとこ入られへんやろ?

 

そっ、それやがなっ。そうやるべきやったなぁ…。でも、もうアカンわ。時間ないわ…。

 

アホな上官持つとたまらんな…。

 

あんま言うたんなよ…。あの巨乳ツンデレもええとこあるんよ? 人前では意地はっとるけどな、可愛いところもあるんよ…。ライター、シュボッ。タバコ、プカー。

 

ツンデレ? デレなんかあったか? おっ、お前まさか、殿下と…。

 

……ババさま、巨神兵死んでもうたわ…。

 

……それでええんよ。あんなんにな、頼って生きてもな、しゃーないねん。

 

あっ! 姫ねえちゃんが!

 

ほんまや! あいつまた空飛んどるで…。

 

高いとこ好きやな…。

 

今頃何しに来たんや…。

 

うわっ、王蟲の大群のちょっと手前に降りたわ…。

 

意味不明や。ちっちゃい王蟲もおるで。

 

あれちゃう? ムシキングみたいにバトルする気なんとちゃう?

 

あんなちっこいのでか?

 

実は強いとか、たぶん特殊能力があるんや。超音波とか、電撃とか、波乗りとか。

 

それポケモンやろ?

 

……どっちでもええやろ? バトルに強いんとちゃうかって言いたかったんや。細かいこと言うなアホ。

 

アホやて? なに言うてんねん。間違うたんはお前やろ? なぁ? ……ほんまムカつくわ。やるか? お前と俺でムシキングしたろか?

 

こんなときに喧嘩すんな…。つーか、ムシキングちゃうみたいやで、あのちっこい王蟲の目、見てみ。真っ青や…。あれは戦士の目やない。めっちゃビビッとる。いたいけな子供の目や。オシッコ漏らしとるで。

 

うわぁ…。ほんまや…。なんか青い液が下にベチョベチョやん…。

 

いや、もしかしたらあれはオシッコ漏らしとるんと違うて、トルメキア軍を潰そう思て、この暴走を引き起こしたペジテの連中にリンチされて出来た傷から漏れとる体液なんちゃうか? 王蟲の大群を誘導する為に空からあの子供の王蟲を吊るして連れまわしとったんを、姫が見つけて制圧、連中に王蟲の前へ降ろすよう言うて、降りたと。理由は王蟲の暴走の引き金となった王蟲の子供を群れに返す為や。それで暴走が止まるかどうかは分からへんけどな。人間の愚行を姫さまは自分が犠牲になることで贖罪するいう意味合いもあるんかも知れへん。なんでか言うたら子供を群れに返すだけなら自分まで降りる必要がないからや。どやこの推理。

 

うわっ…。すっ、凄いわ、お前…。たぶんそれ当たりや。よ、よう分かったな…。名探偵コナンも吃驚やで…。

 

でも相手は人とちゃうで? 蟲やで? そんなんで暴走が止まるか?

 

贖罪の為に降りたんやのうて、子供が怪我しとって心配やから一緒に降りただけちゃう?

 

暴走が止まるとして、姫さまは大丈夫なんか? あんなデカイの急には止まれんやろ。

 

お前ら議論は後や、もうアカン、カウントダウン入ってまうで! 10!

 

 

9! 姫                 王蟲ドドド~。

 

8! 姫              王蟲ドドド~。

 

7! 姫            王蟲ドドド~。

 

6! 姫          王蟲ドドド~。

 

5! 姫        王蟲ドドド~。

 

4! 姫      王蟲ドドド~。

 

3! 姫    王蟲ドドド~。

 

2! 姫  王蟲ドドド~。

 

1! 姫王蟲ドドド~。

 

 王蟲ドドド~~。 ~~~~姫

 

姫ねえちゃんがっ!!!!

 

きゃ~~~っ!!!!

 

おい携帯で撮ったるなや!!!!

 

姫さま~~~~!!!!

 

さてさて姫さまはどうなったのでしょうか。くくくっ。皆さま、おはようございます。わたくし暗黒公爵サキエルにございます。

 

えーっ。今日は鳳凰宮入りの式典が中止になったということで、特別番組として、ナウシカ→ラピュタ→となりの山田くんのジブリアニメ三作連続放送を予定していましたが、ここで番組を急遽中断して臨時ニュースをお伝えします。

 

くくくっ。ナウシカさまが王蟲に撥ね飛ばされたところで放送を打ち切るとは鬼畜の所業にございますね。あれでは救いが全くございません。

 

申し訳ありません。この国を揺るがす重大なニュースが入りまして、なんとハーレム候補の座を奪われた筈のキリノさまが…

 

くくくっ。少しお待ちなさい…。この国の将来を担うお子様方のトラウマになってはいけません。わたくしがこの後の展開を簡単にご説明致しましょう。1分で結構ですので、お時間、頂けますかな?

 

そうですか、わかりました。では手短にお願いします。

 

くくくっ。まず王蟲に跳ね飛ばされた少女ですが、死にます。

 

……ほぅ。

 

くくくっ。そのあと大勢の蟲達の触手によって、からだを触られまくられ、陵辱されます。

 

……エ、エロも入ってるんですか。

 

くくくっ。ババさまがそれをみて号泣。

 

……あれっ? あのババさま目が見えないっていってませんでしたっけ?

 

くくくっ。少女は死姦の屈辱に耐え切れず、黄泉の国から蘇り…。

 

……蘇ってもあの怪我では…。

 

くくくっ。ゾンビとなって立ち上がって王蟲の触手をグシャグシャと踏みつけます。

 

……なるほどゾンビと来ましたか。

 

くくくっ。触手は敏感な感覚器官。つまり弱点だったのでしょうな。蟲達は堪ったものではありません。おずおずと腐海に退散し、世界は救われたのです。

 

簡潔明瞭なご解説ありがとうございました。どうしてもあの続きが観たいという方はツタヤでレンタルDVDでも借りて下さい。そこまでして観たくはないが……という方もご安心下さい。来年も、再来年も、その次の年も、何度でもこの映画は夏にこのチャンネルで放送しますので。

 

くくくっ。では、そろそろ…。

 

はい。臨時ニュースです。本日9:28。王都全域に戒厳令が布かれ、そして9:31。今から5分ほど前、王都の縦の動脈、白帝城と鳳凰宮を結ぶ幅200m長さ40kmの国道1号線において激しい戦闘が発生しました。これはライブ映像です。爆煙で分かり難いですが、おびただしい数の閃光が発生しているのが分かると思います。これは国軍の90式重戦車の発砲によるものです。主砲から劣化ウラン弾が発射される際に発生する閃光です。

 

くくくっ。国道1号線は昨夜から鳳凰宮北5kmの地点で国軍第一師団に属する90式戦車50両が横一列に並んで封鎖しておりました。戦車の3km後ろにはMLRSと呼ばれる多弾頭地対地ミサイル車両が20台。そしてさらにその後ろ、鳳凰宮周辺には300門の火砲の陣地が出来上がっております。いま彼等が戦っている相手はハーレム候補のキリノさまにございます。

 

サキエル卿、何故このような事態となったのか説明して頂く前に、確認しておきたいのですが、キリノさまはまだハーレム候補さまなのですか?

 

くくくっ。そうでございますが、なにか。

 

キリノさまはハーレム候補の資格を失ったと鳳凰宮からFAXで連絡があったもので。

 

くくくっ。精約にはハーレム候補は王子が決めると明確に定められております。王子はキリノさまをハーレム候補として受け入れ、キリノさまは王子のハーレム候補となることに同意しました。この意志はどちらも覆っておりません。よってキリノさまはハーレム候補です。

 

しかしハーレム候補と認められるには鳳凰宮評議会の議決が必要です。それが否決されたと。

 

くくくっ。そのような決まりは精約のどこにも書かれておりません。慣習として続いていただけのことでございます。慣習も場合によっては慣習法として法の力を持つこともあるのでございましょうが、最高法規である精約を覆すことは出来ません。鳳凰宮評議会の議決はあくまでも参考意見。王子が受け入れなければ何の効果もございません。キリノさまをハーレム候補と認めぬ議決など絶対に受け入れぬ、王子は今朝、白帝城の玉座でそう仰りました。くくくっ。とはいえ鳳凰宮も王子の考えを受け入れるつもりは微塵もないようですがねぇ…。

 

なるほど…。で、王子と鳳凰宮との間で骨肉の争いが始まったと…。つまり国を二分する内乱が始まった訳ですか。

 

くくくっ。ご安心下さい。いま戦っておられるのはキリノさまお一人のみにございます。どのようなことがあっても王子が動くことはありません。この戦闘は内乱ではございません。キリノさまの鳳凰宮入りの式典が始まっただけのことにございます。いつもと少し趣向が異なっている様にも見えますが、王子のハーレム候補としてキリノさまが相応しいかどうか、それをこの式典を乗り越えることでキリノさまご自身が確信出来たならば、見ている我々も同じように確信出来るのかも知れません。見守りましょう。くくくっ。しかし、まぁ、あのようにドレスの裾を短く切られてヒラヒラと…。動き易くはあるのでしょうが、見えておりますな。くくくっ。おパンツもドレスと同じく純白にございますか…。今日は昼から雨となりましょう。それまでに決着が付けばよろしいのですが。

 



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キリノの章 27 ☆☆☆ 国道一号線(第一師団作戦本部テント)

標的がラインより800地点まで到達。ラインからの第6次一斉砲撃開始…。着弾。結果…直撃44。標的のダメージ認められず…。

 

クソッ…。90式の重砲が800mからの距離で全く通じないのかよ…。

 

赤木師団長。標的の移動速度上昇しました。4km/h。ライン到達まであと12分です。

 

第7次一斉砲撃は予定通り700m地点だ。タイミングを繰り上げろ。MLRS、1と2を総合連動から外し着弾ポイントを予定より400m先に変更。出来次第撃て。けん制に使う。時間がない。作業急げ。

 

了解です。あっ…。

 

なんだ。

 

魔法ソナーNo.120が強力な魔力を感知。ここにテレポートしてくる者がいます。波紋照合。……エロス王家近衛魔法騎士団、団長セナさまです。

 

……パチッ★ ふうっ…。(赤木セナ:♀:15才:エロス家に代々仕える名門赤木家の長女でメガネっ娘の天才魔法剣士なのだ。黒地に白のアクセントでコーディネートされた赤木家伝統の戦闘衣をいつも身に纏っているので黒騎士とも呼ばれているぞっ! しかしテレポートから出て来るときに捲りあがった黒のミニスカからチラリと見えるお下着は、アダルトな黒のおパンツではなくフリルがほんの少し入った淡いピンクの可愛げなおパンツなのでありますぞっ!)ん…? 何ここ…。テント? むさ苦しいところね。クーラーも効いてない…。鳳凰宮の中に師団司令室があるんだからそこで指揮すればいいのに…。

 

……。

 

お兄様。おはようございます。

 

……セナ、今は作戦中だぞ…。

 

作戦? ふっ…。わたくしそのことでここに参ったのですよ。適当でよろしいのです。そのように真面目にやらなくても、誰もお兄様の部隊には戦果など期待していないのですから。

 

随分とハッキリ言うんだな。

 

国軍の兵器は魔法使いを倒すようには作られていませんもの。

 

標的がラインより700地点まで到達。ラインからの第7次一斉砲撃開始…。着弾。結果…直撃46。標的のダメージ認められず…。

 

クソッ…。

 

魔法使いを倒すことは魔法使いにお任せ下さい。

 

うるせぇなぁ…。

 

勝とうだなんて思わないで…。

 

お前、もう帰れよっ。

 

……お、お兄様は人間相手にだけ戦争やってればいいのよ。

 

はぁ? アレも人じゃねーかよ…。

 

何を今更…。魔法使いは人間に比べたら神さまみたいな存在です。わたくし達を人間だとするなら、お兄様達のような能無しの旧人類は猿よ。類人猿。進化に取り残され消え去るゴミの種なのです。まぁ、一応資源ゴミですので、生き残させてあげてますが。

 

ぐぬぬぬっ!

 

標的がラインより600地点まで到達。ラインからの第8次一斉砲撃開始…。着弾。結果…直撃47。標的のダメージ認められず…。

 

クソッ!!

 

何を残念がってらっしゃるの? 当たり前の結果じゃないですか。ゴジラやガメラが戦車に撃たれて死ぬ? 使徒がミサイルで死ぬ? ワルプルギスの夜が爆弾で死んだ? 時間の無駄です。さっさと戦車とミサイル車両を1号道路からどけて下さい。わたくし達が出れないじゃないですか。皆、すごく怒ってますのよ? 邪魔だからぶっ潰そうかって子をなんとかなだめて、わたくしここに来たのですから。近衛魔法騎士団、団長として命令致します。即刻、道路から車両をどけなさい。

 

標的が…。キリノがラインに到達するまで待ってくれ…。

 

ライン? あぁ、あの戦車の列ですね…。ま、まぁ、わたくし、それくらいまでなら待ってあげてもいいのですけど、お兄様、やはり戦車は早くおどけになった方がよろしいのですわ…。キリノはまだ一度も攻撃をしていませんが、強力なバリアを張っています。あの子が接触するだけで戦車群はバリアに巻き込まれ全滅してしまいます。

 

全滅? 始めからそのつもりだが。

 

乗員を犬死にさせるおつもりですか?

 

俺らは猿なんだろ? だったら犬と大差ねぇーだろうがよ…。

 

標的がラインより500地点まで到達。ラインからの第9次一斉砲撃開始…。着弾。結果…直撃50。全弾直撃。標的のダメージ認められず…。

 

ありえん…。キリノは昨日魔力に覚醒したばかりだろ。魔力は多く見積もっても5000MPが限界の筈。出力もせいぜい100MP/sくらい。この距離で砲撃を跳ね返すバリアの出力はないし、あったとしても魔力はもう尽きてもいい頃だ…。どうなっている。ひまわりのデータはまだか?

 

す、すみません。どうもひまわりは故障中のようで、標的のデータがありえない数値を…。

 

……いいから。出せよ。

 

標的の最大魔力12兆3210億MP、最大魔力出力500億MP/s……です。

 

……。

 

うふふふっ。お兄様、そう吃驚する程のことでもありません。魔力を上げる方法は色々とございます。素質と覚悟があれば、一日だろうが一時間であろうが、どうとでも上がるものです。単身で鳳凰宮に乗り込もうだなんて、気が狂ったか、何か勝算があってのことか、キリノの意図がよく分かりませんでしたが、これでようやく見極めることが出来ました。急激な魔力向上による己の力への過信でしょう。礼を言いますわ。

 

標的がラインより400地点まで到達。ラインからの第10次一斉砲撃開始…。着弾。結果…直撃50。全弾直撃。標的のダメージ認められず…。同地点にMLRSのミサイル弾幕。着弾。爆煙により標的を確認出来ません…。

 

確認するまでもない。最大魔力出力500億MP/sもあるんだ…。この火力ではダメージどころか足止めにもならん…。椅子にドサッ。

 

……お兄様、今すぐ戦車を後退させて下さい。

 

……駄目だ。

 

この陣地にある火砲、全く使っていないではありませんか。戦車とキリノの距離がこれ以上近づいてはもう撃てなくなります。第一師団の虎の子、ヘリ部隊も飛んでおりません。何故ですか?

 

うるせぇなぁ…。まだ準備が出来てねーんだよ。

 

……お兄様の第一師団が負けるのは仕方ありません。負けても誰も責める者はいないと思います。しかし不手際があったのなら話は違って来ます。後でお兄様が処罰されてしまいます。勝たなくてよいのです。あとはわたくしがやりますから、犠牲者が出る前に戦車をお下げください。意味のない攻撃でも撃てる武器があるなら今すぐ全てお使い下さい。でなければお兄様が…。

 

ふっ。なんだ、お前。俺のこと心配してくれてんのか?

 

わ、わたくしは…そのぅ…(////

 

標的がラインより300地点まで到達。ラインからの第11次一斉砲撃開始…。着弾。結果…直撃50。全弾直撃。標的のダメージ認められず…。

 

……大丈夫だ。心配するな。

 

心配しますよっ! 赤木家はエロス家に1000年も前から仕えてきた武門の名家。エロス家に叱責されれば当主であろうが誰であろうが、腹を切って詫びねばなりません…。

 

泣くなよ。お前らしくもない。ツンデレか? そういうのはもうちょっと可愛い妹がするもんだ。

 

すみません…。ショボン…。

 

……戦車を下げないのは中に人が乗っていないからだ。ここでオペレーターが照準を合わせて発砲している。戦車の中…人の代わりに載せているのは、核でな…。

 

なっ!

 

標的がラインより200地点まで到達。ラインからの第12次一斉砲撃開始…。着弾。結果…直撃50。全弾直撃。標的のダメージ認められず…。これよりコスモスの制御を行います。裏コード発信。

 

MLRSも戦車と同じく無人でその半数の10台に核を10発ずつ。計100発搭載している。キリノの正面から叩き込む。ヘリが飛んでないのは核の爆風を食らうからだ。あれにも核弾頭ミサイルを積んでる。12機に4発ずつ。計48発、キリノのバリアの側面から叩き込む。

 

なっ、何を考えてらっしゃるのですかっ!! 王都のしかも鳳凰宮の直ぐそばで核爆発など…。ばっ、馬鹿なことはお止め下さい!!

 

鳳凰宮は強力な魔法バリアで守られている。核の直撃ではない。戦術核でもあるし大丈夫だろう。王都の住民は戒厳令が発令された瞬間、強制テレポートで全員が郊外のシェルターへ避難している。放射能の除去はこれもすまんが魔法でやってくれ。

 

そういうことを言ってるのではございません! このような作戦、鳳凰宮の議決も得ずに行ったら、成功しようと、失敗しようと、お兄様は責任を取らされるではありませんかっ!!

 

議決は貰ったから安心しろ。

 

そんなの貰える訳がないでしょ!!

 

ふん。ばれたか。詰まらん。

 

標的がラインより100地点まで到達。ラインをフルオート砲撃のバーサーカーモードに切り替えます。ラインの核安全トリガー、50基、全て解除しました。コスモスから裏コード認証の返信。コスモス1、コスモス2、コスモス3、攻撃姿勢に。位置微調整終了。トライアングルを形成します。

 

このような馬鹿なこと、いま直ぐにお止め下さい。キリノ如き、わたくしが必ず仕留めますから。

 

お前は魔法戦闘では天分の才を持っている。だからこそ、その年で近衛の団長にまでなった。ムカつくことに俺より位が上ときた。最大魔力は100兆を超える。もしかすればいつの日か蓮華を超えてルーン最強になるときが来るのかも知れん…。お前は赤木家の誇りだ。

 

だったら、わたくしに全て任せて…。

 

俺は白の女皇帝の能力を調べた。あれは魔法使いに対して無敵という外ない。お前も分かってるんだろ? あの攻撃は防ぐ方法がないってことを。

 

い、いえ、あれは魔法科学技術省が遮蔽結界を…。

 

そこで働いてるダチに聞いたよ。その話はキリノや王子にプレッシャーを掛けて譲歩を引き出す為のブラフでしかないってな。

 

……。

 

標的がラインに接触。戦車は崩れません。標的がバリアを解いたものと思われます。ライン、起爆します。

 

駄目っ!!

 

☆ミ ☆ミ ☆ミ ☆ ☆ピ☆カ☆ッ☆ ☆ ミ☆ ミ☆ ミ☆ ドドドドドゴッゴゴゴゴゴゴゴ~~~~~ン!!!!!

 

キリノは数日前までは普通の中学生だった。人を殺したことはまだない筈だ。戦車の中に人がいると思い込んでバリアを一瞬解くかもと少し期待はしていたが、本当に解くとは甘いな。飛び越えるか、テレポートすればよいものを鳳凰宮入りの式典の様式になぞらえてノコノコと歩いて来たりするから、敵に行動を読まれ罠にも掛かる。

 

ああぁっ…。

 

が、この程度で終わりとも思えん。

 

標的のダメージ不明。標的がいると思われるライン中央へMLRSの核ミサイルを超低空で水平発射……。着弾。

 

☆ミ ☆ミ ☆ミ ☆ ☆ピ☆カ☆ッ☆ ☆ ミ☆ ミ☆ ミ☆ ドドドドドゴッゴゴゴゴゴゴゴ~~~~~ン!!!!!

 

標的のダメージ不明。ビル屋上に待機していた攻撃ヘリ、アパッチ・ロングボウを離陸させます。

 

これではもうお兄様が…。馬鹿っ!! うううっ…うぅっ…。

 

ふふっ。怒るのはまだ早いぞ。お前、国軍の兵器は魔法使いを倒すようには出来てないと言ったな?

 

……。

 

実はひとつあるんだぜ? いや、みっつかな。ひまわりをキラー衛星から守護する3つの衛星コスモス1号、2号、3号。ひとつひとつはただの防御衛星でしかないが、3つが集まって同時にオリハルコンレーザーを発射するとエネルギーが反応し合って威力が3乗となる。その連動プログラムを鳳凰宮に内緒でコッソリと仕込んでおいたんだ。俺も魔法使いと戦いたくてな。上にバレたら死刑は確実だが。

 

馬鹿っ…ううっ…うぅ…。

 

標的がいると思われるライン中央へアパッチ・ロングボウから巡航ミサイル、サイドワインダーを超低空で水平発射……。着弾。

 

☆ミ ☆ミ ☆ミ ☆ ☆ピ☆カ☆ッ☆ ☆ ミ☆ ミ☆ ミ☆ ドドドドドゴッゴゴゴゴゴゴゴ~~~~~ン!!!!!

 

標的のダメージ不明。コスモス1、コスモス2、コスモス3、核燃料電池をオリハルコンに直結させ、振動を開始させます。発射可能まであと30秒。回路が焼きつく為、一発しか撃てません。

 

核をキリノの側面や正面からしか当てなかったのはこの切り札があったからだ。キリノがもし核の攻撃を凌ぎ生きていたなら、側面のバリアを強化して頭上のバリアを弱めている筈…。

 

……。

 

お前を死にには行かせない。俺がいまここでケリを付ける。キリノを道連れにする。俺は今回のことが終わったら王子の前で腹を切る。……赤木家のこと、後は頼むな。

 

お兄様、わたくしは…。お兄様のことを…。

 

……後にしてくれ。…いやもうお前は戻れ。俺も多分お前と同じ気持ちだが、俺らは兄妹だ。

 

お兄様…。ううっ…。

 

……行け。

 

……はい。 ……パチッ☆

 

よし。そろそろ仕上げといこうか。火砲に砲撃許可。キリノの頭上から核の雨を降らせよ。コスモスは?

 

撃てます。

 

ではコスモスのオリハルコンレーザーをゲルゾルバ照準で撃て。国道1号線を焼き尽くせ。照射。

 

了解! ゲルゾルバ!!

 

☆ミ ☆ミ ☆ミ ☆ ☆ピ☆カ☆ッ☆ ☆ ミ☆ ミ☆ ミ☆ ドドドドドゴッゴゴゴゴゴゴゴ~~~~~ン!!!!!

 

……パチッ★

 

んっ? あぁ、団長お帰り~。お兄ちゃんに告白は出来た? キスくらいは出来た?

 

……。ギロッ。

 

出来なかったみたいだね…。

 

うるさいですわ! ……パチッ☆

 

うぁぁ…っとと。おぉっ、怖っ! なっ、なにすんのよっ! もうちょっとで死ぬところだったじゃん。シャレにならないよ。全く…。アンタさぁ、上手く行かなかったからって、私に当たるんじゃないわよ。

 

クソッ! クソッ! クソッ! キリノ~ッ!

 

アンタのお兄ちゃん頑張ったみたいだけど核や衛星兵器も残念ながら無意味だったみたい。キリノの波紋は揺らいですらいない。アイツ全くダメージを食らってないよ。

 

無意味…。わたくしの為に…。ふふっ…。キリノ…殺してやりますわ。出ますっ! カナコ、皆に出撃の合図を!

 

白の女皇帝対策は?

 

各自で波紋を飛ばして撥ね返して下さい。

 

キリノの波紋攻撃を感知したときにはもう手遅れなんだろ? そんなのどうやって撥ね返すんだよ…。

 

気合です。

 

気合ねぇ…。

 



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キリノの章 28 ☆☆☆ 国道一号線(黒の砂丘)

あれだけ林立していた塔が一つも残っていません…。いえ、塔どころか、何も残っていません。これが王都の映像とはにわかには信じられません……。黒い世界が現れました…。まるで石炭のぼた山のような…。黒い砂丘が延々と…。何でしょうこの光景は。異世界のような…。地獄のような…。

 

くくくっ。核の炎に焼かれて塔が崩れ、瓦礫となり、小石となり、砂となり、最後には消し炭となって、このように広大な黒い砂の海が出来上がってしまいました。太陽が爆煙で隠れ、お昼前だというのに日暮れのような薄暗らさでございます。……おや、空から雪のように死の灰がチラチラと降って来ましたよ。くくくっ。なにやら、さきほどのアニメ映画の続きを観ているようでございます。くくくっ。あの核の猛攻を火の七分間とでも名付けましょうか。

 

いえ核攻撃は三十分以上連続しましたので、残念ながらそのネーミングには無理があるかと思いますが、それにしても、ここまでやる必要があったのでしょうか…。

 

くくくっ。結果から言えば、キリノさまはご健在であられますので、いま一歩足りなかったなと。

 

ご健在?

 

くくくっ。ほら、あそこに…。

 

な、な、な、なっ!? なんとーっ!? キリノさま、ガリガリ君を食べながらダルそうに歩いてらっしゃる!? ど、どこのコンビニでパク…いえ、お買い求めになられたのでしょうかっ!? い、いえ、そっ、そうではなく、どうして核攻撃を受けて平気でいらっしゃるのでしょうかっ!?

 

くくくっ。キリノさまは攻撃を受けておられません。如何に魔法使いであったとしても、あのような猛攻をまともに受けては無事では済みません。さっき足りないと言ったのは核の威力ではなく、この作戦の指揮を執った者の魔法使いへの認識と、それを踏まえての覚悟でございます。……しかし、まぁ、それも仕方のないこと。魔力を持たぬ者に魔法使いを本当の意味で理解することなど出来ませぬからな…。三次元に住むものが四次元の世界を理解するが如しです。理解したような気になっているだけにございます。

 

魔法使いの理解についてはともかく、キリノさまが攻撃を受けていないとはどういうことなのでしょうか? わたし確かにキリノさまが戦車の大爆発に巻き込まれるのをこの目で…。

 

くくくっ。国道1号線沿いの塔群の中には高島屋がございます。ご存知ですか?

 

はぁ…。それはもう有名ですから…。500年も前から店を開いている老舗百貨店の高島屋の本店で、エロス最大の売り場面積を誇る巨大な商業塔です。屋上は昼はお子様向けの遊園地ですが夜はビアホールになっています。実はわたし、昨夜ひとりで飲みに行って来たところなんです…。先日命を落とした若林はそのビアホールで出る、から揚げが大好物で…。まぁ、普通のから揚げなのですが…。あの反乱事件のあった前日もわたしと一緒に…。お前はメタボだからと食べるのを止めさせたのですが…。ハァ…。あれが最後なら、もっと気の済むまで、口が油まみれになって手がベタベタになるまで、食わせてやりたかった…。そう彼を偲んでしんみりと、枝豆をつまみに生ビールを飲んでいたら、わたしはっ…。わたしはぁ…。もうぅ…。

 

くくくっ。今日のことを思い出して下さいませ。

 

あっ、確か…道路に面したショーウィンドウに今年の秋物の服が飾られていて、それをキリノさまが少し足を止められて見ておられましたね…。

 

くくくっ。はい、それでございます。戦車に接触する寸前、自分とマネキンの位置をテレポートで入れ替えられたのでございます。マネキンのプラスチックボディーを魔法で熱してグニャグニャと柔らかくして、遠隔操作で動かし、あたかも自分の分身のように…。キリノさまは城を出るときに蓮華めとキャッキャと話をしておりました。あやつに変わり身の術を教えて貰ったのでございましょう。

 

ちょ、ちょっと待って下さい、サキエル卿。からだはマネキンで良いとして、白のドレスはどうされたのですか? マネキンのキリノさまはドレスを着ていましたよ。いま歩いておられるキリノさまも同じものを着ておられます。偶然キリノさまと同じようなドレスを着たマネキンが高島屋のショーウィンドウにディスプレーされていたというのですか?

 

くくくっ。マネキンが着ていたのは本物のドレスでございます。テレポートでキリノさまは自分の服をマネキンに…。

 

で、では、いまキリノさまが着ておられるのはなんなのですか?

 

くくくっ。キリノさまは何も着ていません。下着姿です。

 

……いえ、いえいえ、サキエル卿。よーくご覧下さい。あのようにキリノさまは白のドレスを…。あっ、あれっ? よ、よく見れば、何やらキラキラとドレスが光っていますね…。キリノさまのドレス、あのように派手…だったでしょうか…。

 

くくくっ。微小の冷却魔法を大量発生させてその白い光の集まりを服に見立てているだけでございます。くくくっ。涼しげでございますが、どこであのような魔法を覚えたのでしょうか…。くくくっ。

 

キリノさまが実際に着ておられるのは下着だけ…。

 

くくくっ。その通りにございます。

 

あのドレスは魔法…。

 

くくくっ。その通りにございます。

 

つまり魔法が切れれば…。

 

くくくっ。ご想像の通りにございます。

 

なるほど、よーくわかりました。この後の展開がとても楽しみ……ごほごほっ、いえ心配になって来ましたが、しかしそうなりますとキリノさまは戦車がトラップだとあらかじめ分かっておられたことになりますね。もしかして核攻撃があるとまで看破されておられたのですか?

 

くくくっ。魔法使いへの認識が足りないと言ったのはまさにその事です。魔力を持つということは人とは全く別の種に生まれ変わるのも同義です。そのような超人に対し、人間相手と同じように戦ってはいけません。強力な魔力を持つキリノさまには、ある程度の未来やその場の状況が直感で見通せてしまうのです。

 

魔力を持つと予知能力のようなものが生まれると?

 

くくくっ。その通りにございます。ですので魔力の度合いにも依りますが、魔法使いに対して罠を張るのであれば、罠であると見破られても有効性が残る罠であらねばならぬのでございます。キリノさまが戦車の中に人がいると思ってバリアを緩めるであろうなどと、そのような不確かで甘い考えの罠で、魔力を持たぬ者が持つ者を破る偉業を成すなど、到底出来ぬのでございます。

 

なるほど…。ちなみにどういう罠であれば有効であったのでしょう?

 

くくくっ。予知能力があるということを頭に入れて、それを逆手に取って相手の行動を制限するような罠。例えば、あらかじめキリノさまのご家族を拉致して戦車の中に拘束するのはどうでございましょう。魔道具で戦車に結界を張ってテレポートで救出が出来ぬようにすれば、キリノさまは危険を犯しても救出の為に戦車へ接触しようとするでしょうし、救出しなくとも家族が目の前で死ねば、キリノさまは冷静な判断能力や精神集中を失い、魔力が上手く引き出せなくなるでしょう。そのような状況に追い込めれば核など使わずとも通常兵器で楽に勝てるのではないでしょうか。

 

しかし、そ、それは…。失礼ながら、あまり褒められた作戦ではありませんね…。卑劣といいますか…。

 

くくくっ。絶望的な能力格差は自分の力で埋める他ありません。その力をどこから持ってくるか…。正々堂々、騎士道精神で戦うのは魔法使い同士だけで…。んっ?

 

どうされました?

 

くくくっ。あの砂丘の上。くくくっ。来ました、来ました。キリノさまを唯一脅かすことが出来るであろう対抗馬が…。

 

おおっと、騎士です!! 騎士団です!! 黒、赤、黒の旗。エロス王国近衛魔法騎士団が突如現れました!! キリノさまから200mくらいの距離でしょうか。いつの間にかキリノさまの周りをぐるりと取り囲んでおります。数は50といったところでしょうか。いや、もっといますでしょうか。皆、馬を止めて、ただじっとキリノさまを見詰めています…。あっ…。キリノさまが地面に膝をつき苦しげな表情を…。わわわっ…。ドレスがお腹の辺りで引き千切られたかのようにエッチに透けて、肌が露出しています。オヘソが見えています。これはいったい…。

 

くくくっ。魔法攻撃は既に始まっております。中距離魔法の定番、光の矢でございます。魔法エネルギーを鋭く尖らせて相手を射抜きますので、魔法バリアが多少強力であっても貫通してきます。とはいえまだキリノさまのバリアの方が数段上にございますので、貫通しても魔法エネルギーの殆どは無効化され、キリノさまが受けるダメージは軽微なものでしかありませんが…。精神集中が少しでも切れてしまうとバリアが崩れますので、一気に畳み込まれるやもしれませんね…。

 



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キリノの章 29 ☆☆☆ 国道一号線(黒の砂丘)

キリノの魔力が揺らいだ。波紋攻撃がまた来るぞっ! タイミングは各自で。気合で返せっ!

 

副長! 無理です! 波紋は完全に同期させないと打ち消せません。相手の波紋が来るタイミングが分からないのに防御なんて…。無理…。成功する確率なんて何万分の1…。

 

泣き言いうな。やんなくちゃ100%倒されちゃうっての。防御波紋を撃てば何万分の1の確率でも助かる。

 

☆ミ ☆ミ パンッ ミ☆ ミ☆ キャッ!! バタッ…。

 

報告! キリノからの波紋攻撃、第23波により狙撃班長のマナミさま討たれました! はわわわわわっ…。こ、こちらの攻撃の要が…。もっ、もう駄目です!! キリノのバリアは安定期に入り、こちらの攻撃は全て跳ね返されています! それに比べわたし達はキリノからの波紋攻撃で30秒に1人のペースで倒され続けて…。こ、こんなの戦いじゃありません。一方的虐殺です! 逃げましょう!!

 

逃げるったって何処に逃げるんだよ。勝たない限り帰る場所なんかない。とはいえ…どうするクシャナ殿下…じゃないや、セナ団長。巨神兵のような秘密兵器、ある?

 

……あのバリアをなんとかしないと駄目ね。わたくしが行きます。

 

駄目だ。バリアを壊してる最中に波紋で狙い撃たれる。

 

……では神具の封印を解きましょう。

 

ロンギヌスの槍か。まぁ、アレなら一撃だろうけど…。う~ん…。じゃあ、特攻させてみるか…。サオリ。出番だよ。

 

……。!? …へっ!? せっ、拙者でござるか!?

 

うん…。派手に決めてきてよ。

 

い、いや…。それは…。このような重大な作戦に拙者が…。

 

バジーナ家の血を引くアンタでしかあの槍は完全に能力を発揮しないだろ…。大丈夫。わたしの馬を貸してやる。こいつは初速からマッハ5で走る。ここからキリノまでは200mの距離。一瞬だから迎撃されることなんてないよ。バリアに槍を打ち込んだら馬ごと一緒にテレポートで離脱してくれ。戦域から出てくれていい。後はわたしと団長がやるから。

 

わ、わかりました。

 

頑張れサオリ。手柄を取って、没落した名門バジーナ家をアンタのその手で再興させるチャンスだ。悲願なんだろ?

 

はいっ!! 行きます! シュタッ!

 

……じゃ、団長。私も行ってくる。

 

……貴方、またあの力を使う気なの?

 

うん…。私の取り柄、あれしかないし…。

 

で、でも…。

 

ねぇ…団長(////

 

ん?

 

キス…してくんない…かな? だっ、駄目かな? そ、そのう…へっ、変な意味じゃないんだよ…。精神を集中するのにさ…。そういうのがあれば頑張れるかな…みたいな…(////

 

チュッ(////

 

えへへへっ…。ありがと…(////

 

無理しないでカナコ…。

 

……バリアは必ず壊すから後はよろしく。シュタッ! ……えへへ…団長とキスしちゃった…。うん…もうこれで思い残すこともないや…。そうだ、サオリは…っと……。キョロキョロ。あぁ、よかった…。まだ出陣してない。お~いっ! 言い忘れたけど、馬から振り落とされ…

 

サオリ・バジーナ出撃します!! バシュ!! どりゃあああああ!! どわわわわっ…。キャ~~ッ!! バタン。ううぅ…。痛い~。

 

うへぇ……。

 

副長殿~…。お助け下さ… ☆ミ ☆ミ パンッ ミ☆ ミ☆ キャンッ!! バタッ…。

 

うえぇ……。

 

報告! キリノからの波紋攻撃、第24波によりサオリさま討たれました!

 

……私がやるしかない…か…。特殊能力発動!! デビルカード! ……パチッ☆

 

ハァハァ…。何だったんだろあの子…。凄い槍を持ってたけど…。ハァハァ…。まぁ、いいか…。あと76騎…。

 

……パチッ★ ふ~ん…。へぇ…。ここがあの鉄壁のバリアの中か……。凄いね姫さま。あれだけの人数から魔法の連射を浴びても全く動じずにここまで綺麗にバリアを立て直すって…。

 

なっ!?

 

バリアの魔力出力をここまで上げて安定させられちゃったら、中・遠距離攻撃では姫さまにダメージを与えられないじゃん? このままじゃ完敗しちゃうから直接攻撃しに来ちゃいました♪

 

直接攻撃って…バリアを突き抜けて…テレポートしたっての…?

 

エロス近衛魔法騎士団、副長、来栖加奈子です。姫さま。バリアの中に勝手に入ってすみません。テヘッ♪

 

あっ、ありえない!! アンタどうやって…!! ……パチッ☆

 

ヒョイっと。あはははっ! 私のことカナカナって呼んで下さいな。 ……パチッ☆

 

☆ミ ☆ミ バキッ!! ミ☆ ミ☆ キャッ! ううっ…。なんで…。こんなのオカシイ…。バリアの中に入れる訳がないのに…。

 

気になる? さて、どうしてなのかな~。 ……パチッ☆

 

☆ミ ☆ミ バシッ!! ミ☆ ミ☆ キャッ! あううっ…。

 

えへへっ。姫さまエロイよ。エロイ。魔法の服が引き裂かれて、もう殆ど下着姿じゃん。勝気な顔が驚愕して苦悶に歪んでいくのって見ててゾクゾクする。絶望したらもっとエロイ顔になるのかな?

 

ううっ…あぁ……。えいっ!! ……パチッ☆

 

うわっっとと。残念~。上手い切り替えしだけど、ちゃんと狙わないと当たらないよ? 運動神経も魔法能力も一流だけど…魔法戦闘は素人だね。 ……パチッ☆

 

☆ミ ☆ミ ドガッ!! ミ☆ ミ☆ ううっ…。

 

ハァハァ…。姫さまに恨みはないんだけどさ…。私ら近衛の連中は領地持ちの貴族じゃないんだ。鳳凰宮の機嫌を損ねたら食いっぱぐれるの。お家がお取り潰しになっちゃう。本当はみんな王子側に付きたいのよ? 近衛だし。でもね…。力のない奴についても仕方ないじゃん。きゃはははっwwwww 出でよ!! モーニングスター ……パチッ☆  -----☆ コロン…。

 

ハァハァ…。ハァハァ…。

 

よいしょっと、重いなぁ…。姫さま…。これ600kgもあるんだ…。ブルン~ ブルン~ ブルン~ ブルン~ あはははっwwwww モーニングスター 食らっちゃえっ!! -----☆ バコン!!

 

キャッ! あぁあああっ……。~~~~~コロコロ~~~コロリン…。ドサッ…。ううっ…。ゴホゴホ…。今のは…ちょっと効いたかも…。

 

……バ、バカな…。

 

よっこらしょっと…。ん? もう打たないの?

 

バリアの内からの攻撃だぞっ!? 600kgのモーニングスターの直撃を心臓へモロに食らってなんで死なない!! なんでバリアが崩れない!!

 

魔法で直接からだを強化したのよ。

 

そ、そんな子供が使うような護身魔法であの攻撃を防いだってのか…? 私の渾身の一撃を…。必殺技を…。あ、有り得ない…。

 

アンタの攻撃、大振りだったじゃん? モーニングスターの軌道が読めて心臓を狙ってるのがバレバレだったから、インパクトの瞬間、左胸を一瞬、超強化することが出来たの。エアバックみたいに。…あっ、動かないで。次の波紋攻撃の準備が整ったんだ。……アンタの波紋、完全に捕らえてるから。

 

……。モーニングスター、手からポロリン…。カラカララン…。

 

戦意喪失? どうやら、わたしの勝ちみたいね。

 

ふふっ…。団長にバリアは必ず壊すとか大見得切って、この様か…。情けない…。

 

アンタ頑張ったと思うけど…。カナコって名だっけ…。

 

……もういい。やれよ…。

 

……ねぇ、カナコ。最後に聞いときたいんだ。どうやってバリアの中に入ったの? 理屈では絶対に入れない筈なのよ。実戦では想定外のことが起きるって分かってはいたけど、こんなことちょっと信じられないんだ…。わたしのバリアに欠陥があるのかな? 入り方、教えてくれない?

 

そういう特殊能力なのっ。どういう理屈で入れるかなんてしるかっ。

 

……テレポート系の能力を極めたの?

 

違うよ…。これさ。

 

ん? カード? 真っ黒ね…。

 

デビルカードってんだ。私の能力の象徴だよ。

 

……。

 

ドラえもんって漫画、読んだことあるだろ? デビルカードってのはそこに出て来る道具の名前なんだ。身長と引き換えにお金を貰うって道具。私さ、背低いじゃん…? 子供の頃、7才だったかな…。その漫画を読んでて、私なら身長より寿命の方がいいなって思ったんだ。そしたら、ちょうどそのときに魔力が覚醒してさ…。

 

寿命と引き換え…。

 

そうよ。叶えて欲しい状況を願うと、難度に合わせて1分あたりに必要な寿命がカードに表示されるの。換命レートね…。今回かなり高かったんだ。バリアの中に居続けることが出来る願い、1分間に必要な私の命は1年…。ここに来て3分過ぎたから3年も使っちゃった…。だからバリアに欠陥はないと思うよ…。あったらもっとレートが…

 

馬鹿…。アンタ馬鹿じゃん? そんなことをして勝っても…。

 

姫さまには分かんないだろうな…。さっきも言ったでしょ…。私ら近衛はこの腕一本でお家を背負ってるの。少しでも強くなれるなら強くならないと駄目なの。そうすれば地位があがって、俸禄が増えて、お家は安泰。家族を養える…。弱ければ…悲惨なものよ…。

 

……。

 

私もう50年分くらい寿命使っちゃったんだ…。でも近衛の副長になれた。家族はみんな喜んでくれた。70が寿命なら、私はあと数年の命だけど…。

 

……。

 

ふふふっ…。来栖家は…。私がいなくなってもやっていけるかな…。来栖家は…。うぅ…。うぅぁ…。ううぅ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

……先のことなんて分からないわ。70が寿命? 150が寿命かも知れないじゃないの。それならアンタ100才まで生きて大往生出来るわ。来栖家がそんなに心配なら泣いてないで、長生きして結婚でもして、アンタの想いを子供に託しなさい。これはわたしが預かります。

 

!? カードが…。いつの間に…。返せっ!

 

駄目。近衛は今後、王子の手足となって忠節に励んで貰わねばなりません。無駄に命を減らすこと許しません。

 

ふんっ。あれだけ殺しておいて…。

 

なっ! 殺してないわよっ! 人聞きの悪いこというなっ! みんな、ちょっと気を失ってるだけなのっ!

 

気を失う? 波紋攻撃で心停止させてたんじゃ?

 

違うっ! 全員、微弱ながらちゃんと鼓動してるから死んでないっ! 仮死状態なのっ!

 

倒れた連中の波紋が感知できないから死んだのかと思った…。

 

それはアンタの能力が未熟だからよ…。ていうかアンタ達、後でわたしが鍛え直すわ…。あまりに酷すぎる…。これがエロス家の近衛って…。最強の騎士団がこれって…。

 

なにさ。姫さまこそ甘甘じゃないの。歯向かった奴は全員皆殺しにしろっての。こんな甘いことしてたらいつか足元すくわれるっての。心停止にしとかなかったこと後で絶対、後悔するんだから。

 

残念ながら、まだ心停止させるまでの力が無いのっ。でも今度王子の決定に歯向かったら、全員殺すからね。覚えておきなさい。わ、わたしはやるときはやる女なんだから(////

 

ふんっ…。

 

なっ、なによ、その顔…。本当なんだからねっ…。もう腹立つわ…。ふんっ…。で、まぁ、それはそうと、アンタのこのデビルカードの契約だけど、バリアの中に居続ける時間、寿命が縮むんだよね? ということは今の契約を切るにはバリアを解くしかないか…。バリアを超えて帰ることは出来そうにないし…。

 

私なんかの為にバリア解くなよ…。団長は私より10倍は強い…。解いたら確実に姫さま殺されるっての。べつに私が死んだっていいだろ。近衛を強くしたいなら、もっと有能な奴を連れて来て育てればいい。さっきもいったけど私なんか先は短いし。デビルカードを使わないと並み以下だし。カード使えない私なんて…。

 

うっさいわね…。アンタのこと、ちょっと好きになったから助けてやるのよ(////

 

同情なんていらーよ…。哀れむな…馬鹿…。

 

違うよ…。アンタ、わたしのこと姫さまって呼んでくれてるじゃない? それって王子との間のことを認めてくれてるってことでしょ? わたしさ、この鳳凰宮入りで姫さまって言葉で祝福されたの、アンタが初めてだったから、ちょっと嬉しかったのよ…(////

 

……二人のことは二人で決めるべきだって思うし、王子が決めたんならアンタが姫さまだって思うって…だけだよ…。祝福とか、そういうんじゃなくて…私は、別に、姫さまのことなんて…(////

 

うん…。だから助けてあげる。カナコがわたしを姫と認める限り、わたしはアンタの主であり、アンタは私のシモベだから。

 

で、でも…。

 

いいのよ。気にしないで。蓮華さんから序々にからだに慣らしながら魔力を上げて行くように言われてたけど、そうも言ってられなくなったわ。ていうか、そろそろ慣れて来たから本気でやろうかなとも思ってたし。ちょうどいい頃合よ。心配そうな顔しないで。別にバリアがなくても…。波紋偽装解除! バリア解除! ……パチッ★ ……パチッ★

 

なっ、何を言ってるんだ? 本気? 波紋偽装?

 

わたし波紋系の能力だから自分の波紋を偽装出来るの。力が大き過ぎるとアンタ達、逃げちゃって実戦演習にならないからさ、一応、わたしの魔力を、最大魔力12兆3210億MP、最大魔力出力500億MP/sってことにしていたけど、本当は、最大魔力429京2312兆3210億MP、最大魔力出力230兆2500億MP/sなのよ。

 

……。

 

えへへへっ。気持ちよくて、王子とちょっと共振し過ぎちゃったんだ(////

 



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キリノの章 30 ★★★ 鳳凰宮(最上階)

姫さま…。やっぱり私…。

 

緊張しないでカナコ。どうしても怖かったら、お茶だけ飲んで帰るだけでもいいの。強制はしないから。ねっ?

 

……うん。

 

じゃ、わたしの部屋に入って…。

 

おじゃまします…(////

 

パタン…。ちょっとそこのソファーに座って待ってて。お茶入れてくるから。パタパタ。

 

あっ、私が…。

 

いいよ。お客様なんだから大人しく座ってて。

 

う、うん…。そわそわ…。キョロキョロ…。

 

お待たせ。紅茶と…。カチャ。チョコレートケーキ…。カチャ。どうぞ…。

 

ありがと…。カタカタ…。アレ…? カタカタ…。ごめん…。手が震えて…。

 

背中から抱きっ…。カナコ…共振ってそんなに怖いものじゃないよ。わたしがリードするわ。アンタの波紋にピッタリと隙間なく合う波紋を飛ばして、全てを満たし、ゆっくりと引き上げてあげるから…。

 

私、初めてなんだ…。上手く出来るかな…。ガタガタブルブル。

 

安心して。わたしに全てを委ねて…。全部やってあげる…。はい、ケーキ…。あ~ん…。

 

……(////

 

食べられない? じゃ…。わたしが…。パクッ。もぐもぐ…。

 

……あぅぅ…。

 

ふふっ…。クチュクチュ…。肩をトントン…。

 

ふぇ?

 

ブチュ~~ッ(////

 

んんんっ!? んんんん…。んっ……。クチュクチュ…。んっ……。コクン…(////

 

……どう?

 

甘いよぅ…。

 

可愛い…。チュッ(////

 

……(////

 

女同士でこういうことするの嫌?

 

頭フルフル。私…。おとこ嫌い…。

 

わたしのこと好き?

 

頭コクコク。強い女の人…好き…。

 

アンタ…黒騎士さんのことも好きだったでしょ?

 

う、うん…。でも団長はお兄ちゃんのことが…。

 

そうだね。他に好きな人がいたんだよね。わたしも弟のことが好きなの…。

 

ううぅっ…。ううっ…。

 

泣かないで…。アンタも好き。チュッ(////

 

うぅ…(////

 

わたしはカナコのこと好き。だからカナコもわたしのこと好きでいて欲しい。わたしと一緒にいて欲しい。永遠に…。

 

うん…。

 

じゃ契約ね…。

 

契約?

 

わたしはアンタの永遠の主であり、アンタは私の永遠のシモベ……。いい?

 

……私は姫様の永遠のシモベです。

 

キリノでいいわ。チュッ(////

 

あんっ…。キリノさま…。私、身も心も全てキリノさまに捧げます。キリノさまの永遠のシモベとなります…。

 

じゃ、わたしはカナコの永遠の主になるわ。ブチュ…………………………ッ(////

 

んっ!? んんんんっ!!! んっ……んぅ………ぅ…ぅぅ………ぅ…っ……ぅぅ…ぅ……ぅ…っ……(////

 

んうっ……ぅ…っ……ぅぅ…ぅ……んっ…ん…ん…ぅぅ…。ふぅ。契約完了っと(////

 

あうぅう……。あぁ……。ハァハァ…。ハァハァ…。

 

ふふっ。可愛い。じゃ、そろそろ共振…するわね。取り合えず今日は最初だから軽く…。そうね…。アンタがこれから近衛の新しい団長としてやって行けるくらいの魔力にまで引き上げるわ。

 

……。

 

どうしたの?

 

団長の代わりなんて私には無理だよ…。

 

自信を持ちなさい。黒騎士さんも推薦してたじゃない。次の近衛の団長はカナコ…。アンタしかいないって…。

 

で、でも私、基本能力なんて並み以下なんだよ? 特殊能力なしじゃ…。

 

……アンタのデビルカードの能力は悪魔と契約して力を得ていた訳じゃない。そんなものこの世にいないわ。本来よりも大幅な能力の引き上げを行うから、そのリバウンドとして寿命という対価が必要になっていただけのことなの。逆にいえば達成可能な素質があるから実現出来ていたともいえる…。アンタのあのテレポート能力は本物なの。人の理を超えていた。魔力を上げてテレポート能力を極める訓練を重ねれば、いつかカードに頼らなくても同等のことが出来る日が来ると思う。蓮華さんのように人を超えた領域に到達出来るかも知れないの…。

 

人を超える? カードが無ければ何も出来なかった私が?

 

そう。アンタは人を超えた存在になれる。今の能力が低いのはカードによって安易に力を手に入れていたからよ。努力することを止めて可能性の芽を摘んでしまっていただけ。

 

頑張ったら出来るのかな…。

 

素質と意志の力があればね。幸いにもアンタには素質がある。でも意志の力はとても弱い。団長になる為にとか、強さを極めるのが目的なら、多分上手く行かないかもね。直ぐに諦めが芽生え挫折が成長して、妥協という大きな毒花が咲き、心がポキッって折れる。そこそこは能力が上がるけど、そこで満足してしまうの。

 

……。

 

でもね、カナコ。人の域を超える程に魔力を上げれば寿命を延ばすことが出来る。魔力で生命力を活性化させて200年、300年と生きた偉大な魔法使いは実在するわ。歴史の教科書にも載ってる。もしアンタがそうなればデビルカードで寿命を50年使っていても余命なんて気にする必要がなくなるのよ。アンタの命への執着が人では越えられぬ壁を越えるカギになるかも知れない…。負い目を強さに変えるの。だから、わたしとの共振、頑張って。アンタ、わたしの永遠のシモベになるって誓ったんだから死んでは駄目…。許さないから…。

 

うん…。

 

じゃ、服を脱いで…。お互いが裸で抱き合うことで、波紋がより感じ取れるようになって、共振の効果が上がるわ。

 

白のワンピースのお洋服、脱ぎ脱ぎ(////

 

……へぇ。アンタまだブラ付けてないんだ。

 

……(////

 

どうしたの?

 

こ、これも脱ぐのかな…?(////

 

脱いで…。

 

うぅ…。おパンツ脱ぎ脱ぎ(////

 

カナコ、おパンツを服の中に隠さないで。ちょっと見せて…。

 

えぇっ…。嫌だよ…(////

 

さっきの契約…。

 

わ、わかった。おずおず。……。はぃ…(////

 

カナコのおパンツ、脱ぎたてで暖かい…。やわらかい木綿の白地になにかアニメキャラがプリントされてるわね。可愛いわ。うさぎさん…かな?

 

妖精…。魔法使いの女の子のしもべなの…(////

 

へぇ…。今度そのアニメ一緒に観ましょうか…。じゃ、おパンツはもう…。ん…? あっ…。ここ…。クンカクンカ…。あらあら…。ふふふっ。

 

……あああぁ(////

 

感想は言わないであげる。まだわたしが穿いてない新しいショーツがあるから、あとでそれを使いなさい…。これは後でわたしが洗っておくわ…(////

 

……ううぅっ(////

 

仰向けでソファーに横になって。

 

うん…。もそもそ……(////

 

じゃ、わたしも…。服を脱ぎ脱ぎ、ブラを脱ぎ脱ぎ、ショーツも脱ぎ脱ぎ(////

 

綺麗…。

 

ふふふっ。ありがと。アンタも綺麗…。抱き合うわね。よいしょっと…。抱きっ(////

 

キリノさま…。抱きっ(////

 

うわっ…。カナコのからだ凄く熱い…(////

 

キリノさまの肌、スベスベ…。からだ、すりすり(////

 

そ、そう。じ、じゃ、共振始めるわね…。ギュッ(////

 

お、お願いします。ギュッ(////

 

緊張しないで、心をわたしに預けて…(////

 

うん…(////

 

カナコの波紋捉えたわ…。特殊能力、白の女皇帝発動! わたしの波紋をカナコと共振出来るように来栖家固有波形パターンへ偽装…。カナコの波紋と同期開始。 ……パチッ☆

 

あっ なっ! 何これ! ちょっと! 嫌だっ! 嫌! ああっ……あぁ………あんっ…………んん……あぁ…ぁっ…(////

 

……カナコ…手を。

 

ああっ…ああっ……あぁ…ぁっ…キリノさまっ…ああっ……あっ……(////

 

……。

 

あっ…あ…ぁっ…力が抜けて……。キリノさま……私…もう…あっ…っ…これが共振…あっ……あぁ…ぁっ…あん……っ…(////

 

……うん。でも、これはまだ普通の共振なの。魔力を少し引き上げてくれる…。でもこれじゃ駄目…。最初だからそんなにキツイことするつもりはなかったけど、いまからアンタの魔力を大幅に引き上げる共振をやってみるね。白帝城を使ってわたしの魔力を引き上げた方法をヒントにして出来上がった技…。

 

ハァハァ…。ハァハァ…。キリノさま…(////

 

特殊能力、白の女皇帝派生能力、チート共振発動! わたしとカナコとの同期結果をシミュレート。増幅共振結果25.00倍で演算開始。結果算出。架空波紋形成…。増幅共振結果生成開始…。完了。シナプス変換…。完了。出来た…。データ復元…エラーチェック。OK。エラーなし。いくわよカナコ。いまからアンタの頭に特殊なデータテレパシーを打ち込むから。最初は違和感あって痛いかも知れないけど、慣れるまで我慢して。

 

う、うん…。

 

シナプス転送開始。 ……パチッ☆

 

きゃあああああ!!!!!! 痛いっ! 痛いよっ! ああぁあ…やめて…。頭が…。

 

カナコの手。ギュッ。

 

痛いっ! 痛い…。ズキズキして痛いよぅ…。頭がオカシク…。あああっ…。もう…。

 

カナコ……。チュッ(////

 

んっ…あぁ……。あぁああ…。ハァハァ…。ハァハァ…。

 

どう? チュッ(////

 

ハァハァ…。ふぇ…。あ、あれ…。頭の痛みが消えて…。転送、終わったの?

 

まだ続いてる…。でも、もうカナコの頭の中にわたしのシナプスの転送経路が出来たから大丈夫。これからは痛みはないわ…。そのかわり…。チュッ(////

 

あれ…。あああっ……あぁ………あんっ…………んん……あぁ…ぁっ…(////

 

共振の感覚が増幅されるけど…。チュッ(////

 

ああああああっ……。あっ…。あっ…。うあっ……。

 

ふふっ。アンタ凄くエッチな顔してる。ホッペをなでなで。……ちょっと休憩しましょうか。

 

ハァハァ…。ハァハァ…。ハァハァ…。ハァハァ…。

 

大丈夫? 落ち着いた?

 

う、うん…。ハァハァ…。ハァハァ…。

 

ここまでよく頑張ったわね、ご褒美を上げるわ。魔法粒子結合 ……パチッ☆

 

白い戦闘衣…。

 

近衛の団長になったら来栖家の戦闘衣じゃなくて、わたしが生み出したこの戦闘衣を身に付けなさい。

 

わ、わたしが、キリノさまの服を…。

 

わたしが死なない限り、アンタがわたしのシモベである限り、その衣は不滅なの。どんなことがあってもアンタを守る…。刀や槍や弓、それが例え神具であったとしても、カナコを絶対に傷つけさせやしないわ…。

 

暖かい…。あぁ…。キリノさまと同じ匂いがする…。

 

着てみて…。

 

い、いま? あの…。私のからだ汚れてるから…。シャワーを浴びて、それから…(////

 

大丈夫…。これは魔法の粒子を結合させて服に見せ掛けてるだけだから、汚れが付くなんてこと有り得ない。

 

で、でも…(////

 

……ていうか、カナコ汚れてる? 何が汚いの?

 

汗とか…涎とか…涙とか……ア、アレとか…(////

 

ふふっ。アンタのからだ、どこも汚くないよ。汗も。チュッ(////

 

あんっ……(////

 

涎も…。チュッ(////

 

んうぅっんううっ……(////

 

涙も…。チュッ(////

 

あぁ……(////

 

これも……。チュッ(////

 

ひぁっ…ぅ…ぅ…ぅ…いゃ…っ…だっ……(////

 

ふふっ。全部キスで拭きとっちゃったよ…(////

 

……(////

 

わたしが着せてあげるね。 ……パチッ☆

 

あぁ…。軽い…。なにも着てないみたい。

 

似合ってる…。アンタほんと可愛い…。

 

……(////

 

黒騎士さんはもう近衛にいない…。これからはアンタが白騎士となって近衛を率い、エロス家に、わたしに仕えるの。他はいらない。アンタは来栖家の為にもう十分過ぎる程に働いた。これからの来栖家はアンタなしでやっていけるようにならなくちゃダメ。アンタの力は来栖家の為なんて小さなことに使っちゃダメ。この国の全ての人の幸福の為に使うの。いい?

 

エロス家の騎士として…。エロスの国に私の全てを捧げる…。

 

そう。でも公務以外では、わたしだけを見てね。チュッ(////

 

うん…。チュッ(////

 

やっとアンタからキスしてくれた…。嬉しい。チュッ(////

 

えへへっ。チュッ(////

 

……じゃ、そろそろ再開しよっか。この服は魔法の粒子で出来てるから脱ぐときも魔法で解除するの。ちょっとやってみて。

 

戦闘衣解除。 ……パチッ★

 

ふふっ。

 

あっ…。服がブレスレットに。

 

アニメの魔法少女みたいでカッコイイでしょ。

 

うん!

 

着るときはなにか可愛い呪文をそのブレスレットに唱えてね。じゃ、裸になったことだし、共振を続けるわ。頑張って。カナコがその戦闘衣で戦い続けられるように…。増幅共振結果100.00倍…。 ……パチッ☆

 

ふあぁぁ…。あん…。うあっ…。あん…。ああん…(////

 

苦しい?

 

うん…。でも気持ちいい…。こんなに気持ちいいの生まれて初めて…(////

 

そう。チュッ(////

 

ひゃあっ……あぁ…ぁっ…(////

 

増幅共振結果500.00倍…。 ……パチッ☆

 

あああっ!! っ! あっ! あああっ!(////

 

わたしともっとこうしていたい?

 

はいぃ!

 

わたしのこと好き?

 

好きです!

 

じゃ、死んではダメ。絶対にダメ。もっと生きる為に、共振を受け入れなさい。増幅共振結果1000.00倍…。 ……パチッ☆

 

ひああああああ…。ああああ…。キリノさま…。待って…(////

 

どうしたの?

 

これ以上やったら…(////

 

ん? 限界なの? これ以上やったらどうなの?

 

オシッコ漏らしちゃうよ…(////

 

そんなことか…。漏らせばいいじゃん。

 

だって! ソファー! (////

 

ソファーのことなんて気にしないで。そんなの後で買い換えれば済むことよ。我慢しなくていい。共振効果が薄れるから早く漏らして、わたしとの共振に集中しなさい…。下らないことに気を逸らさないで…。増幅共振結果5000.00倍…。 ……パチッ☆

 

ふあああああっ…。ああああっ。ひ、ひやぁあああぁあ…………。うああっつ……。ジョロジョロジョロ……ショロショロショロ……。

 

あら、勢いよく一杯出たわね…。ふふっ。わたしのからだにまで掛かっちゃった…。こんなに我慢してたのか…。可愛そうに。もう全部出した? スッキリした? チュッ(////

 

ごめんなさい…。キリノさま…。ごめんなさい…。ううっ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

泣かないで。カナコのだから汚くない。まだ出るんじゃない? 全部出しちゃおうか…。お腹をなでなで…。ちょっと押し押し…。チュッ(////

 

ショロショロショロ……。あぁ…。もう…私、なにがなんだか…。ううっ…。

 

ふふっ。もうこれ以上、気持ちよくなるのは駄目?

 

駄目…。もう私…。駄目…。私、駄目になる…。駄目になっちゃう…。

 

いいよ…。駄目になっても。増幅共振結果限界値。10000.00倍に…。 ……パチッ☆

 

あぅああ!!!!!! うあああぅ!!! ううっ…。うぁっ…。あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あぁぅっ…。ガクッ…。

 

失神しちゃったか…。ゴメン…無理させちゃって…。実はアンタに残された時間、もう殆どなかったんだ…。今日にも鼓動が鳴り止むところだったの。でもこの魔力量ならもうしばらく…。

 

……すぅ…すぅ…。

 

頑張ったね、カナコ…。ふふっ。アンタ、今、黒騎士さんの魔力を超えたんだよ…。新しい近衛の団長…。可愛い白騎士さん…。わたしの永遠のしもべ…。もっともっと魔力を上げて不死にしてあげるんだから。チュッ(////

 

……鳳凰宮の制圧に成功したっていうから来てみれば…。貴女一体、何をしているのかしら?

 

うわっ!! ……って、なんだ黒猫さんか…。

 

王子かと思った?

 

王子はまだ鳳凰宮入りしてない。半年経たなきゃ来る訳ないし。別にやましいことしてる訳じゃ…。共振だよ…。この子の波紋にわたしの波紋を似せて共振させてたの。魔力を引き上げようって思って。 魔法粒子結合、ローブ生成、バスタオル生成、毛布生成。 ……パチッ☆ ……パチッ☆ ……パチッ☆

 

私はてっきり、貴女が鳳凰宮に入っていきなり不倫をしてるのかと思った。

 

ちっ、違うよ…。ローブ、バサッ(////

 

そう…。それならいいのだけれど。不倫最速記録のギネス申請は無しにしとくわ…。

 

次からわたしの部屋に入るときは、ちゃんとノックして返事があってから入ってよね…。いくら黒猫さんでもプライベートなことを覗かれたり口出しされるのは嫌だよ…。オシッコで濡れてない隣のソファーにカナコを移動させてバスタオルでカナコの足とお股を拭き拭き。毛布掛け掛け。チュッ(////

 

そうね。確かに失礼だった…。ごめんなさい。でも次からこういうことをするときには、扉に鍵を掛けておくことをオススメするわ。

 

……鳳凰宮って王に求められたとき妃が拒絶できないよう鍵が付けられてないの(////

 

ふーん…。それは難儀なことね。

 

扉に魔法を掛けると警報が鳴るし…。うーん…。あぁ、ゴメン、立ち話もなんだし、とにかく座って…って、ソファーにはカナコが寝てるか…。奥の部屋のベッドに腰掛けてて。いま手を洗って、お茶入れて来るから。パタパタ…。

 

テクテク。キョロキョロ。ふーん…。テクテク。へーっ…。ベッドにポスン。いい部屋ね。外の眺めもいいし…。

 

うん! 鳳凰宮最上階…。王都が一望出来て白帝城もよく見える一番見晴らしのいい部屋なの…。カチャッ。はい、どうぞ、エンゼルドーナツとカルピス。

 

ありがと、遠慮なく頂くわ。コクコク…。

 

……この最上階ってまだスペースに余裕があるんだ。わたしだけじゃ勿体ないからメルルさんに明日わたしの部屋の隣へ引っ越して貰うことにしたの。だって1階ってあんまり窓からの景色がよくないし。そもそもハーレム候補の住むフロアじゃないし。

 

……メルル様1階に住まわれてたの? それは酷いわね…。メイドや近衛の部屋より下の階って…。

 

でしょ? メルルさんは気にしてない様子だったけどね…。でも、わたしはそういうの嫌だから最上階でお隣同士になるの。ていうかさ、同じハーレム候補なんだし、仲良くしたいじゃん?

 

そうね…。あの子はまだ7才だから内心とても不安がってると思うわ。貴女が話掛けて友達になって…。いえ、どうせなら友達よりもっと親密にスキンシップなんかもして、あの子のお姉さんになってあげたらいいかも知れない。

 

うん…。あっ、黒猫さんはこの部屋の向かいの部屋ね。メルルさんの向かいはアップリケさんのお部屋。黒猫さんのことを話したら吃驚してた。

 

幼馴染なの。裏表のない素直な凄くいい子よ。コクコク…。

 

アップリケさん、黒猫さんと暮らせるってとっても嬉しそうだった…。4人で仲良く最上階を使いましょう。今後来る王子のハーレム候補の方は下の階ってことで。うん。これくらいの特権いいよね。早い者勝ちよ。

 

……でも鳳凰宮の最上階は全てコーデリアの部屋じゃなかった? 大丈夫なの? いくら鳳凰宮を制圧したからって部屋を強引に奪うと他のお姑さん達からの反発があるんじゃ…。

 

コーデリアはもう鳳凰宮のどこにも居ない。だからわたしが貰うの。家具なんかはもう全部換えたわ。実家からテレポートしたんだ。コーデリアのは向こうに送ったし。

 

向こうって?

 

避暑地のトラスに王家の離宮があるでしよ? あそこに移って貰ったの。コーデリア以外の評議員も全員あっちに移った。

 

……。

 

どうしたの?

 

私、貴女が近衛の副長を倒して魔力の偽装を解いたところまでしか知らないのよ。あの後、貴女が巨大な魔力を開放したせいで、中継衛星が落下してTVが映らなくなってしまったじゃない? だから私からしてみれば、まるで週刊少年ジャンプの…。あぁ、漫画の週刊誌なんだけど、その打ち切り展開のような端折り方をされた感じなんだけど…。

 

そ、そうかな…。

 

近衛をどうやって降伏させたの? 鳳凰宮をどうやって制圧したの? 評議員のお姑さん達をどうやって全員追い出したの? 黒騎士との戦いやコーデリアとの戦いを観れなかったから全然話が見えて来ないのだけれど…。というかコーデリアってラスボスよね? そんな重要なシーンを抜かして、どうして貴女のエロシーンをいきなり見せ付けられなきゃならないのかしら。

 

抜かしてない! 黒騎士さんともコーデリアとも、ちゃんと対峙したよ? 黒猫さんが観れなかったってだけじゃん…。ていうか、いきなりってエロって、それも黒猫さんがノックをしなかったからだし…。共振はエロじゃないもん…。さっき言ったじゃん…。

 

チョコレートケーキをモグモグして口移ししたり、おパンツをクンカクンカするのがエロじゃないんだ…。

 

さっ、最初からみてたんだ…(////

 

声を掛けたんだけど二人とも夢中で全然気付かないのだもの。呆れたわ。

 

そ、そう…。で、でも、あ、あれもエロじゃないの。ちょっとエッチに見えるかも知れないけど黒猫さんの医療と同じで重要なことなの…。

 

貴女、カナコさんの命への執着を増そうと思ったのよね…。共振を成功させる為に…。頭ではわかってるのだけど、でもどうしても嫉妬しちゃうの…。ごめんなさい…(////

 

嫉妬? もしかして黒猫さんってカナコと同じようなこと、わたしとしたい?(////

 

そ、そうね…。貴女達が楽しそうにしてるのを見てたら、我慢が…(////

 

わたし黒猫さんとも凄く共振したいんだ。黒猫さん可愛いし…(////

 

…………(////

 

…………(////

 

服は脱いだ方がいいの?(////

 

うん。わたしも脱ぐ。魔法粒子結合解除。ローブ、パージ。 ……パチッ★

 

……。黒のゴスロリお洋服を脱ぎ脱ぎ(////

 

へぇ…。大人っぽい下着だね…。おパンツもブラも薄紫。胸はガッカリだけど…。

 

もぅ…。ブラジャー脱ぎ脱ぎ(////

 

でも黒猫さんの胸ってお風呂でも思ったけど、ちっちゃいのに形が綺麗…。そういうのって凄くエッチだと思う…。チュッ(////

 

ちょ、ちょっと…。ど、どこにキスをするのよ!(////

 

ゴメン…(////

 

……。おパンツ脱ぎ脱ぎ(////

 

黒猫さん、いま脱いだおパンツを…。

 

ドキドキ……(////

 

……まぁ、それは、いいや…。じゃ、契約のキスから始めるね。

 

……。ムカッ。

 

わたしの目をみて…黒猫さん…。わたしは黒猫さんの永遠の主であり、黒猫さんは…。あっ、ゴメン、その前に、黒猫さんまだエンゼルドーナツ食べてないよね? ヒョイっと。モグモグ。

 

ドキドキ……(////

 

ゴクン。

 

……。ムカッ。

 

ふうぅ。落ち着いた。すごくお腹すいてたんだ。じゃ、改めて…。

 

ちょっと待ってキリノ。貴女わざと意地悪してるでしょ?

 

抱きっ! なんのことかな…? 何を期待してたのかな…? チュッ(////

 

なにって…それは…そのっ…(////

 

まさか、おパンツの匂いを嗅いで欲しかった? 口移しでドーナツを食べさせて欲しかった? へーっ。黒猫さんって意外にエッチなんだ。えへへっ…。チュッ(////

 

もぅ……(////

 

ふふっ。さっき覗いたお返し。クンカクンカも、お口でモグモグも後でね……。ギュッ。わたし、もう我慢出来ないから…。ブチュ…………………ッ(////

 

んん…んっ…。キリノ…誓いの言葉忘れてるっ…。んぁ…んんっ…。あんっ…。

 

チュッ…。チュッ…。黒猫さんのここやっぱり可愛い。チュッ…。チュッ…。プリンみたい…。やわらかくて…。チュッ…。甘いの…。チュッ…。チュッ…。チュッ…(////

 

キスしながら共振を始めちゃ駄目…。キリノ…。ギュッ。ち、ちょっと! ちょ…。やめ…。あん…。そんなところキスしちゃ…。いやぁっ…っ……っ…あぁんっ! あんっ! あっ! あっ! あん…っ……んっ…っ……んっ……。ハァハァ…。ハァハァ…。んぁ……あぁ…いゃ…ぁっ…ぁっ…ぁっ…あっ…っ…っ……(////

 



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キリノの章 31 ★★★ 鳳凰宮(最上階)

キリノ…。もういいでしょ…。ハァハァ…。休みましょう…。

 

ハァハァ…。うん。疲れた…。カナコに続いて黒猫さん。ハァハァ…。2人連続はキツイ…。

 

こんなに激しいなんて…。ハァハァ…。

 

何か飲み物。冷蔵庫にポカリスエットがあった筈…。 ……パチッ☆ ドゴン!!

 

冷蔵庫ごとテレポートって…。カチャ…。うん、ポカリあるわ。はいキリノ。

 

ありがと…。プシュ。ゴクゴク…。はぁ…。

 

私も1本貰うわね。プシュ。コクコク…。ふぅ…。

 

ゴクゴク…。黒猫さんこういうの始めてだったんだね。

 

ブフッ! ゴホッ…ゴホッ…。ゴホッ…ゴホッ…。

 

経験豊富そうだから後で性交がどういうものか聞こうと思ってたんだけど。男も女も両方未経験だったなんて。

 

ゴホッ…ゴホッ…。うるさい…(////

 

照れることないよ。わたしも王子とカナコしか抱き合った経験なかったし…。黒猫さんって夜ムラムラしたときはずっと一人で慰めてたの? どうやってた?

 

もう…。コクコク…。そんなことより貴女のことを話しなさい。

 

わ、わたしはムラムラしたらエロゲーで…(////

 

違う! 鳳凰宮制圧に至るまでに何があったかよ(////

 

そ、そうか…。えへへっ(////

 

貴女どうやって鳳凰宮から前王の妃達を追放したの? 脅迫したの?

 

ちっ、違うよ…。穏便にやったよ? 鳳凰宮の明け渡しは戦車砲を受けてる最中にわたしが評議会と交渉をして決めたことなの。

 

……どういうこと?

 

わたし鳳凰宮の式典を模してあの暑い中を歩いたけど、性約には式典についてなにも書かれてはいない。ただのお披露目パレードに過ぎないから模したところで法的には何の意味もない。でも鳳凰宮の伝統や慣習を重んじる人からすれば式の成功は婚姻の成立と同義なの。コーデリアはその典型的な人。実際、式典を全力で阻止しようと司令室で指揮を取ったわ。わたしはその隙に波紋テレパシーを使って他の議員の切り崩しをして、コーデリア抜きで臨時評議会を開かせ、評議会の解散と鳳凰宮の権限移譲に必要な議案をコッソリ可決させたって訳。

 

呆れたわ…。貴女、純白のドレスを着ていながらそんな腹黒いことしていたの? 私はただあなたが王子と一緒になりたい一心で鳳凰宮入りの式典を強行してるんだと思ってたのに…。

 

わたしは王子が認めてくれたらそれでいいの。式に拘ってた訳じゃない。ていうか暑いし。日焼けしちゃうし。観衆は誰もいないし。魔法の実践演習をしようにも戦車ばかりで肝心の近衛は出て来ないし。途中で面倒になってマネキンを使おうとしたんだけど、核攻撃で壊されちゃって、しょうがないからまた歩いて…。

 

えっ? マネキンを使ったのは貴女の巨大な魔力が核攻撃を察知したからでしょ?

 

そ、それも違うよ…。戦車をのり越えるのが面倒だから、そこから先はマネキンにやらせようとしただけなの。装甲が熱そうだったし。手を付いたら火傷しちゃうじゃん。トラップを予知したって話を後で聞いて吃驚しちゃった。未来のことなんて分かる訳ないじゃん…。

 

そうなの…。TVで解説の人がえらく自信ありげに貴女に予知能力があると断言するから信じ込んでしまっていたわ…。

 

解説…。サキエルさんか…。あのひと、いってることもやってることも全部デタラメだから真に受けない方がいいよ。TVでもウケたくて適当なことを喋っていただけだと思う。蓮華さんからサキエルさんとは関わらない方がいいよって真顔で注意されたけど、今ならその意味が分かるような気がする…。

 

つまり結果的に、たまたま上手く行ったってだけなの?

 

うん。

 

でも評議員を懐柔出来たのはたまたまじゃないわよね? 脅迫もなしに貴女に従うなんて、一体なにをしたのかしら…。まさか洗脳したの?

 

お金だよ。ひとり1000億ゴールドの和解金とトラスの離宮の譲渡で鳳凰宮から出て行くことに合意してくれたの。なんでもそこで評議員の全員が集まってハーレム作るんだってさ。逆ハーレムっていうの? なんで女性が主の場合、逆って付くのかよく分からないけど。あの人達、今、奴隷市場に行ってるの。可愛い男の子を買うんだとかなんとか…。7人で7000億ゴールドでしょ? 凄い逆ハーレムが出来上がるんじゃないかな。

 

7000億ゴールド!? 貴女、そんな莫大なお金が用意出来ると思ってるの? この国がいまどれだけの財政危機に直面してるか…。王都の復興費も…。

 

それは大丈夫。鳳凰宮の実権は全てわたしが掌握したから徹底的にこの国の財政改革をするわ。7000億ゴールドなんて無駄の削減と予算の組み替えで余裕だよ。埋蔵金もあるんじゃないかな。全部で40兆ゴールドくらい捻出出来ると思うからそれを今回の王都復興費に充てて、その余りを…。

 

なっ、なんてアバウトなの。そんなにお金がある訳ないじゃない。一体どこから40兆ゴールドなんて数字が出てきたのかしら。国家予算をドンブリ勘定してはいけないわ。鳳凰宮の実権を握ったんだからもっと現実的になって…。貴女が夢みたいなことを言ってたらこの国は…。

 

40兆ゴールドあるよ…。わたし、これでもちゃんとTV観てるんだからね。政治討論で小沢さんが…。

 

こっ、個人名を出さないで。そ、そうね…。あ、あるのかも知れない。40兆ゴールド。う、うん。何もしないで無いと言い切ることは出来ないわ。だ、だからこの話は、内政の話はもうやめましょう。

 

えーっ。残念だな…。わたし他にも凄い政策を考えてたのに…。たとえば金利ゼロの国債を発行して、それを中央銀行総裁の白川さんに強制的に全額買い取らせるの。そうすれば好きなだけお札が刷れるでしょ? 凄くない? もうこの国はお金の心配をすることがなくなるの。これは亀井さんの…。

 

ゴホッ、ゴホッ…。

 

ど、どうしたの?

 

いってないから。そんな無茶な政策、亀井さんいってないから。

 

そうだったかしら…。

 

ハァ…。貴女には早急に財政学とマクロ経済学の講義をケルトから受けて考えを正して貰わないと…。しかし7000億ゴールドは貴女が議員達に約束をしてしまった以上、もう撤回することは出来ない…。ハァ…。逆ハーレム…。なんて羨ましい…。いえ、破廉恥な…。

 

彼女達、前王が幽閉されてから、かなり男への欲求不満が溜まってたみたい。逆ハーレム構想をわたしに語るときの波紋テレパシーの勢いが半端なかったよ…。

 

貴女の提案は願ったり叶ったりってところだったのかも知れないわね。離婚出来ないから貴女にそのしがらみを解いて貰いたかったのかも。

 

うん…。結局あの人たちを鳳凰宮に捕らえていたのは前王ケインへの愛じゃなくて、誰が決めたのかも分からない規則や伝統でしかなかったんだよ。彼女達は束縛から開放しようとするわたしを歓迎してくれた。煉獄の塔で前王と一緒にってコースも提案したけど、それはいいわwwwって、みんな苦笑してた…。わたしは将来どうなるんだろう。王子への愛を無くしたらあんな感じになるんだろうけど。出来れば…永遠に…。ハァ…。幻想なのかな…。甘いのかな…。

 

それは貴女と王子の日々の暮らしの積み重ねの上に出来上がるものなの。未来のことなんて分かる訳ないんだから、先の心配なんてするより、今なにをするかよ。王子との日々を大切にしてね…。

 

うん…。

 

……でもコーデリアはどうなの? 他の人は自由を求めたでしょうけど、コーデリアは鳳凰宮を出て行くことに同意しなかったでしょ?

 

始めは嫌がってたけど、でも評議会の解散でコーデリアは議員を失職して全ての権限を失っていたし。わたしは全権委任状をコーデリア以外の全ての議員から貰っていたし。彼女の頼みの綱である近衛はわたしに降伏していたし。他の騎士団も彼女を見限ってわたしに服従すると言って来ていたし。……アイツ、しばらく喚き散らしてたけど、最後には泣き崩れて、出て行くことに同意するって…。

 

それで見逃したの? ちゃんと言っとくべきだったわ。コーデリアは…

 

わかってる。王子や蓮華さんから聞いた…。わたしのお母さんを性約監査部ってところと一緒になって拷問で責め殺したのはアイツだ。罵声を浴びせ殺してやりたかったけど、他の議員達が駄目だって…。鳳凰宮から出て行く条件の中に彼女を許すって条項が含まれていたの…。始めはわたし、そんなの拒否したけど、議員達からコーデリアの話を聞いてると…。

 

……。

 

あの人、北域の名門貴族の末娘で10年前は活発で明るく優しいお姫様だったそうなの。貴族だったことを鼻に掛けることもなく、誰にでも同じように微笑みながら接して…。当時、最年少の10才でハーレム候補になったときはそんな子だった。他の候補たちからも可愛がられた。でも彼女が抱いていた理想と現実のギャップは大きかったんだね。前王のカインは…。わたしの父は、酷い性格の最低男で、だから愛も理想も直ぐに冷めて、彼女は洗脳魔法にのめり込んでしまった。その道のプロである魔法使いからの洗脳だけでは足りなくなって、もっと危険で強力な洗脳魔法を自分で自分に何度も掛けるようになった。その結果、彼女の人格や精神は醜く不安定に歪んでしまった…。現実と妄想が区別出来なくなって、わたしの母を責め殺した時には発狂寸前だったそうなの。王が煉獄の塔に幽閉されてからは自殺未遂を繰り返していたんだって…。

 

そう…。

 

コーデリアを許すつもりはないけど、わたしがお母さんの恨みを晴らしたら、多分、弟のお母様方と血みどろの殺し合いになる…。お母さんには申し訳ないけど、わたしそんなの出来ない。だって弟と一緒にいられなくなるじゃん…。最後には弟とも殺し合いになるかも知れないじゃん…。嫌だよそんなの。だから、もういいの。お母さんも許してくれると思う。勝手な思い込みかも知れないけど…。

 

……貴女がそう思うなら、そうなんだと思うわ。自分のことよ。死んだお母さんに引きずられて生きては貴女の人生でなくなる。自分の思った通り、悔いのないように生きなさい。

 

うん…。

 

よくここまで成長したわ…。貴女、少し前まではあんなに臆病な女の子だったのに…。

 

えへへっ…。

 

魔力も今や王子を超えてルーン最大になった。

 

大きいだけだよ…。

 

謙遜しない。黒騎士も倒したんでしょ? 噂によれば圧勝だったそうじゃないの。黒騎士が貴女にひざまずいたって…。鬼のような戦いっぷりだったって…。あの子、蓮華と同じで本物の天才なの。貴女にどれだけの魔力があっても勝てる相手ではないと心配していたけど、彼女を倒したのなら貴女の力は本物よ。胸を張っていいわ。

 

あれは…。そのぅ…。

 

ん?

 

えっと…。テレポートで黒騎士のお兄さん拉致って盾にして戦ったんだよ…。黒騎士さん半泣きになってわたしに土下座したんだ。それが噂になってるんだと思う…。

 

……。

 

あっ! ごっ、誤解しないで! 黒騎士さんと戦う前、カナコから黒騎士さんがお兄さんにベタ惚れしてて、でもお兄さんは今回の失敗で腹を切ることになりそうだって聞かされて、わたし黒騎士さんに、お兄さん助けるよって言ったの。そしたらスンナリと降伏してくれたの…。

 

貴女は黒騎士と戦ったの? 戦ってないの?

 

うん、それが…。降伏の後ね。黒騎士さんから相談を受けたの。ほら…わたし弟とアレ…でしょ? お兄さんと一緒になるにはどうしたらいいかなって…。あの子、切実だったから、それだったら告白すればって言ったら、顔を真っ赤にして目をウルウルさせて、兄は頑固だから受け入れないっていうのよ。だから、じゃ、わたしがアンタのお兄さんを盾に戦うから、そのときにお兄さんへ泣きながら告白したら効果的じゃないかなって。お兄さんのプライドを引き裂いたところで妹のアンタが献身的な姿をみせたら簡単に落ちるよ、みたいな…。

 

……。

 

でもあのお兄さん凄く頑固で上手く行かなかったんだ…。だからさ、わたしがもう鳳凰宮の実権を握ってることを告げて、二人を赤木家から離籍させて貴族の称号も剥奪して軍からも追放して無一文で二人でやって行かせることにしたのよ…。平民に貶められる屈辱の中、二人で死ぬまで苦しみ続けろ! 自害したら赤木家を潰すぞっ! ぐはははっ! みたいな。これなら狭い部屋で二人、身を寄せ合って暮らすことになるじゃない? そうなったら。ねぇ。お兄さんも本心では妹さんのこと好きみたいだし。ふふふっ。てかさっそく今朝、黒騎士さんから電話があったんだよ、結ばれましたって。へへへっ。早いよね…。うふふっ。黒騎士さん凄く感謝してお礼がしたいっていうから、時給780ゴールドのパートタイムで蓮華さんの手伝いをさせることにしたんだ。蓮華さんお庭番衆が足りないって嘆いていたし、わたし蓮華さんに借りがあるし、黒騎士さんもお兄さんと長く離れるの嫌だから夕方定時に帰れるパートの方がいいって…。お兄さんも夕方定刻で終われる戦車工場の勤務を選んだっていうし、お熱いんだ。

 

ハァ…。それでカナコさんが次の近衛の団長に…?

 

そうなの。カナコの他にも近衛全員の波紋を共振して能力を引き上げて鍛えないとね…。白帝城を守るのがお庭番衆、鳳凰宮を守るのが近衛魔法騎士団。こっちは女性しか入れない鳳凰宮の警護だから全員女の子の騎士団なの。みんな幼くて可愛い子ばかりなんだ♪

 

貴女、極度のブラコンだと思ってたけど極度のシスコンでもあるのね…。

 

うん! 妹も大好き! 王子って女の子みたいじゃん? だからアイツとずっと抱き合ってたらなんか女の子と抱き合ってるみたいでさ…。それが可愛くて気持ちよくて。えへへっ。だから女の子もいいかなって。わたしブラコンだけでなくシスコンにもなっちゃったみたい。カナコやアンタの可愛い姿を見たら、わたし我慢出来なくなる…。チュッ(////

 

もう…。あんなにやったのに、この子は…。チュッ(////

 

えへへへ。カナコはまだ起きてないみたいだし。もっと共振しよっ?(////

 

王子が王子の理想のハーレムを築いていく側で、貴女は貴女の理想のハーレムを築いていくつもりなのかしら。

 

女の子限定のね。チュッ(////

 

女の子限定? 貴女のハーレムの中心には王子がいるじゃない。貴女、王子が一番好きなんでしょ? チュッ(////

 

そ、そんなの比べられないよ。みんな同じくらい好きだから…。

 

……キス忘れてるわよ。チュッ(////

 

……う、うん。チュッ(////

 

ふふふっ…。貴女、すぐ顔に出るんだから…。貴女は主。貴女のハーレムの女の子を悲しませては駄目…。もっと上手く嘘を付けるようにならないと…。チュッ(////

 

黒猫さんゴメンね。チュッ(////

 

ん…。チュッ(////

 

お詫びに…。チュッ…。チュッ…。

 

ひゃんっ! も、もうっ! 貴女、ど、どこにキスしてるのよっ(////

 

チュッ…。チュッ…。

 

や、やめなさいっ!(////

 

しもべが主に口答えしちゃ駄目だよ…。チュッ…。チュッ…。

 

だってっ! あん、もぅ…(////

 

ハーレムの女の子はご主人様の求めに何でも従わないと、ね? わたしは黒猫さんのここにキスしたいの…。チュッ…。チュッ…。

 

あぁ…いゃ…ぁ……あっ……あぁ…(////

 

嫌なの?

 

頭フルフル(////

 

ちゃんと答えなさい。チュッ…。チュッ…。

 

ふぁ……あぁ……あっ…。わっ、私はキリノ様のしもべ…。あぁ…あああっ。うぁ…。キ、キリノ様がしてくれること…。あぅぅ…。何でも嬉しい…。あぅっ…はぁっ…あっ…っ…(////

 

そう…。ふふっ、これからは今みたいに素直になりなさい。てっ…、うわああっ…(////

 

ハァハァ…。ハァハァ…。

 

あ、あれ。黒猫さんどうしたの。目が、目が怖いよ黒猫さん…。怒った? あははは…。ご、ごめんね、ちょっと調子に乗り過ぎちゃった…。汗汗…。

 

私はしもべだからご主人様にご奉仕する側なの。ハァハァ…。だから私も同じこと貴女にしてあげるわ。ハァハァ…。

 

わ、わたしはいいって、キャッ!(////

 

チュッ…。チュッ…。んっ? 貴女…。

 

うぅ…。うん…。だからもう黒猫さん、止めて…。わたし今日そこ汚い…(////

 

……綺麗にしてあげる…。チュッ…。チュッ…。チュッ…。

 

ちょ、ちょっと、嫌、嫌、嫌、嫌だぁ…。ご、ごめんなさい、黒猫さん…。謝るから…もう…もう、いやぁん…あっ…いやだぁ……あっ……うぁっ…ぁっ……ふぁんっ……(////

 

奥も…。ここを…。こうして…ふふっ…。チュッ…。チュッ…。チュッ…。

 

いやあぁっ……いやっ……いやぁぁっ……いぁっ…ぁっ…ぁっ…ぁっ…ぁっ…ぁっ……(////

 



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キリノの章 32 ★★☆ 鳳凰宮(最上階)

キリノ…。チュッ(////

 

ん…。あぁ…。黒猫さん…。ここは…。そうか、わたしの部屋…。

 

気が付いた? お水…。飲んで…。

 

ありがと…。ゴクゴク…。ふぅ…。

 

キリノ…。大丈夫? ごめんなさい…。私、興奮し過ぎて…(////

 

う、うん…。それより黒猫さんこそ大丈夫?

 

なにが?

 

だ、だって、その、わ、わたしの汚い…(////

 

大丈夫、前も言ったけど貴女のことならどんなことでも汚いと思えないの…。

 

気持ちの問題じゃなくて!

 

ふふっ。ごめん。実は魔法で綺麗にしてからキスしただけなの。心配しないで。チュッ(////

 

そ、そっか…(////

 

気持ちよかった? チュッ(////

 

うん…。凄く興奮した…(////

 

嬉しい…。でも貴女、とても疲れた顔をしているわよ。

 

カナコの後にアンタと2回もやったんだもん。凄く疲れた…。

 

貴女のハーレムには私やカナコさんの他に近衛の女の子が99人。あと164日経てば王子も鳳凰宮入りして貴女を求めに来るわ…。貴女のからだ持つのかしらね。

 

一晩寝れば大丈夫だよ。今日はあと1回くらいが限界…。

 

まっ、まだ出来るの…? 元気ね…(////

 

毎日倒れるまで共振しまくるわ…。カナコとはネットリ…ジックリ…重点的に共振して…。黒猫さんとは他の子にはまだ出来ない強力な共振を試しながらやって…。あとの子とは…そうね…。4~5人ずつこの部屋に呼んで同時にやってみようかな。共振をやり易い子とやり難い子がいるだろうから、それを早く見極めて難しい子とは丁寧に一杯してあげないと…。

 

共振って言葉がちょっと卑猥な感じに聞こえるわ…(////

 

そ、そんなことないよ…。あはははっ(////

 

で、明日は誰とするの?

 

明日? 明日は勿論メルルちゃんとだよ。とうとうあの天使ちゃんがわたしと…。にょへへへっ…。メルルちゃん魔法使いじゃないから共振できないけど、一緒にお風呂入って、キスして、からだの洗いっこして、キスして、マッサージしてあげて、キスして、パジャマ着せて、キスして、一緒にご飯食べて、キスして、屋上に行って、キスして、星空の下2人で歌をうたって、キスして、部屋に戻って、キスして、ベッドで裸で抱き合って、キスして、朝までグッスリ寝るの。

 

貴女、鼻血出てるわよ…。

 

はわわわっ。頭を上げて首をトントン。

 

……貴女、あんな小さな子までハーレムに引き込むつもりなの…? メルル様を妹のように接してあげてとは言ったけど、裸で抱き合ったり、キスをしたりするのは妹とのスキンシップの範疇を超えてるんじゃないかしら。貴女、メルル様は王子のハーレム候補でまだ7才だってこと忘れてない?

 

裸で抱き合うのもキスもスキンシップだよ…。わたしメルルちゃんのお姉ちゃんになるの。

 

……メルル様に貴女が変なことをしないよう明日はこの部屋へ監視しに来ます。

 

えーっ、嫌だ…。明日はメルルちゃんと2人っきりで…。

 

駄目!

 

ふふっ。無理しちゃって…。黒猫さん本当は明日はわたしやメルルちゃんのことなんて構ってられないんじゃない?

 

ど、どうして?

 

知ってるよ。黒猫さんがアップリケさんを大好きだってこと。小さい頃からズ~~~ッと好きだったんだって?

 

なっ、なっ、なっ、なにを言うのよっ!(////

 

黒猫さん直ぐ顔に出るんだから…。ハーレムの女の子はご主人さまを悲しませたら駄目なんだよ? もっと上手く嘘を付けるようにならないと…。チュッ(////

 

ど、ど、ど、どうして…。誰にも打ち明けたこともないのに、なんで…(////

 

えへへっ。蓮華さんから聞いたの。

 

蓮華? あの子、私の頭を覗いたのね! ゆっ、許せないっ!

 

蓮華さんは黒猫さんに特殊能力は使わないと思う。黒猫さんこんなに分かり易いんだもの、普通にバレちゃうって…。アップリケさんも気付いてると思うよ?

 

わわわわっ…。ガタガタ…ブルブル…(////

 

大丈夫。アップリケさん、黒猫さんのことを話すとき顔を赤らめてた。多分、アップリケさんも黒猫さんのこと好きなんだと思う。

 

そ、それ…本当?(////

 

うん。だから明日はわたしがメルルちゃんと仲良く一緒にいるから、アンタはアップリケさんを部屋に呼んで、仲良く、ね?

 

……(////

 

黒猫さん、わたしを信じて。キスも裸で抱き合うのもスキンシップなんだよ。

 

……そ、そうかしら?

 

そうよ。

 

……そ、そうね。そうよね。キスなんて外国では挨拶だというし、裸で抱き合うのも…。裸で抱き合う…。裸…。そう。裸族。外国には裸族というのが未開の地にはいるそうだから、これもただのハグ。挨拶といえるのかも知れないわね。スキンシップだわ。ごめんなさい。

 

よかった…。

 

私もう帰らないと。これから引越しの準備しなきゃ。電化製品はまだまだ使えるから今のをテレポートするだけで大丈夫だけど、家具が…。突然ベッドが今朝壊れてしまって…。しょうがないから買い替えることにするわ。大きくてフカフカのを高島屋の外商さんに注文してっと…。枕も二つ…。ダメ…。これじゃアレだと思われる…。大きくて長いのを…。あぁ、キリノ、ではまた明日ね…。

 

だっ、駄目だよ…。引越しなら後で手伝うから。帰るのちょっと待って。お願い。ベッドは天蓋付きで凄く可愛いのを白帝城から貰ってくるからさ…。

 

天蓋付き…。

 

う、うん。女の子の憧れだよ? つい横になりたくなるような、そんなベッド。大きいしフカフカ。白帝城の使われてない部屋の中にいくつかあるから、それ王子に電話して送って貰うから。

 

……それは有難いけど。貴女、私に何か頼み事でもあるの?

 

頼みっていうか、いっぱい汗をかいたじゃない? だからお風呂に一緒に入ろうかなって。カナコも起こしてさ。この階の奥の角部屋にガラス張りの大浴場があるんだ。3人で入りたいなって…。

 

ありがとうキリノ。嬉しい…。じゃ、お風呂、遠慮なく頂こうかしら。

 

う、うん…。で、でね…。

 

ん?

 

黒猫さんには。えへへっ。大浴場でカナコの健康診断を…。猫猫診療室でお尻の診断をやって欲しいなって…。わたし見てるから。

 

……。

 

へっ、へんな意味じゃないの。あの子、効果の代償に寿命を縮める魔法を使ってて…。その影響でからだに何か病気が発生していたら大変だから調べて欲しいの。

 

健康診断はともかく、貴女が見てる必要がどこに…。

 

カナコが不安になるでしょ! わたしが付いててあげるのっ!

 

そ、そう。それならいいけど。カナコさん大丈夫だと思うわよ? 寿命を縮めるのが成約の条件だとするなら、寿命=死ぬまでに打ち鳴らす鼓動数の筈だから。

 

わたしも多分そうだと思うけど…。

 

医学とは別の次元の話だわ。魔法学的に言わせて貰えば、ここまで魔力が上がったカナコさんには無意識下でも魔法効果が反映され続ける。鼓動が鼓動を生み出し続けるから、そうそう命が尽きることは…。

 

心配なの…。予想外のことって、起きるから。

 

……わかったわ。じゃ、これからテレポートで医務室から潤滑液と弛緩剤を取ってくる。少し待ってて。

 

あぁ、それはもう用意してある。カナコが怖がって暴れないように媚薬入りの潤滑液を特注しといたの。肌から直接浸透するタイプ。これなら弛緩剤は要らないでしょ? ていうか、わたしのとき使わなかったじゃん。

 

……媚薬?

 

うん。そこにわたしの共振も加えるから大丈夫だよ。力なんて抜けまくりで入りようがないもの。

 

ちょ、ちょっと待ちなさい、そんなの使ったら、わたしもシッポから媚薬を吸収して…。

 

そうだね。黒猫さんも大変なことになるね。貴女が医療ミスをしないようにわたしも全力でフォローする。

 

貴女、医療をなんだと…。

 

大丈夫だよ黒猫さん。もうそんな建前は必要ない。だってこの章のお話はここでおしまい。名前すら知らない他人が勝手に定めた表現規制や年齢規制なんて、これから先は気にしなくていいの。わたしは規範に心を奪われた人達の傲慢さや残虐さを見てきた。規範に縛られて心を見失った人達の悲惨な末路も見てきた。わたしはそうはならない。わたしの心はわたしのもの。どうするかはわたしが決める。わたしはわたしを束縛しようとする全てに抗う。

 

……貴女が何をいってるのかよく分からないのだけど。つまりどういうことなのかしら。この話がここで終わるのならもう格好をつけないで、貴女の本心を言ってごらんなさい。自分で自分をごまかしては駄目。

 

カナコにはわたしと同じ経験をして欲しい…。アンタ達が乱れる姿がみたい…。わたしもそこに加わりたい…(////

 

それが貴女の望みなのね?(////

 

うん…。カナコが心配なのは本当だけど、わたしちょっとエッチなの…(////

 

なら始めからそういえばいいの。私達は貴女のしもべ…。貴女は自分のしたいことをなんでも私達に命じて…。貴女の望みは私達しもべの望み。貴女の心が満足すれば私達しもべの心も満たされる。だから心を偽らないでありのままの貴女を見せて…。

 

ごめん…。黒猫さん。わたし…。

 

言葉の後は素直な気持ち、これで伝えて…。チュッ(////

 

あんっ…。黒猫さん。チュッ(////

 

キリノ好きよ…。チュッ(////

 

わたしも、わたしも、黒猫さんが好き。カナコも好き。2人とも好きなの…。大好きなの…。早くエッチしたい。もう我慢できないよう…。チュッ(////

 

じゃ、お風呂行きましょうか。

 

うん! カナコ起こしてくる。バタバタ…。

 

ハァ…。山猫姉さん…。私、あんなにエッチな娘とやっていく自信ないよ…。ああ…。もっと、もっと、私、エッチにならなくちゃ…(////

 



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キリノの章 33 ☆☆☆ キリノステータスリポート

キリノさまのご攻略おめでとうございます王子! ケルトにございます。現時点でのキリノさまのステータスをお送ります!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

キリノ(13才)エッチな女皇帝

 

容姿:★★★★☆:ルックスの値(高い程よい)

教養:★★★★☆:教養の値(程々がよい)

気位:★★☆☆☆:気位の値(程々がよい)

性格:★★☆☆☆:扱い易さの値(程々がよい)

洗脳:★☆☆☆☆:洗脳深度の値(低い程よい)

求愛:★★★★★:王子への愛(高い程よい)

寵愛:★★★★★:王子からの愛(高い程よい)

淫乱:★★★★★:変態度数(程々がよい)

身能:★★★★☆:身体能力(高い程よい)

健康:★★★★☆:健康状態(高い程よい)

総合:★★★★★:ハーレム適正(高い程よい)

 

特能:白の女皇帝(波紋系能力:無限大射程&同時発射数無限大数&命中率100パーセント&攻撃到達速度無限大速&感知不能&回避不能の必殺の攻撃魔法ジェノサイトを筆頭に強力な派生能力が多数)

弱点:お尻診断

お側役:黒猫

 

 

重要なお知らせ:

キリノ様の鳳凰宮制圧によって、長きに渡り封印されてきた鳳凰宮地下最下層・エロス王家専用魔法図書館が利用可能となりました。そこで早速ご依頼を受けていた件を調べてみたのですが、王子のご推察通り、エロス帝政時代において近親婚はごく一般的に行われておりました。どうやら血が濃くなることを抑える近親婚魔法なるものが存在していたようです。性交時に発動させることで近親婚のリスクが一般婚と同程度となる遺伝子組み換え魔法です。現在、魔法科学技術省がこの魔法の復活に全力を挙げております。王子の鳳凰宮入りの初夜までには必ず完成させますのでご安心下さい。

 

 

評価:

キリノさまの淫乱値を星5としましたが、キリノさまが好意を持つ男性の対象は王子のみで、他には女性にしか興味を持たれておりませんのでハーレム的には何の問題もございません。キリノさまの性格はやや頑固で少し扱い辛いところがございますが、求愛値が非常に高く王子にデレデレの状態ですので、現時点ではこちらも全く問題がないように思われます。求愛値が下がるとツンツンされますのでお気を付け下さい。ただ、実の姉弟の関係がベースにございますので、王子とキリノさまの仲がいくら険悪になられたとしても、求愛値と寵愛値が修復不可能な星なし状態になることはありません。最悪でも星3が下限と予想されますので安心してキリノさまにお甘え下さい。求愛値をわざと下げキリノさまをツンツンさせてそのギャップを楽しむのも刺激があって面白いかも知れません。

 

鳳凰宮評議会による候補者の承認決議は廃止となり、総合評価は今後、強制力のない参考意見として私が出すこととなりました。で、キリノさまについてですが、性格以外に関しては、教養・身体能力・健康状態ともに申し分なく、洗脳値も低く、キリノさまのステータスはハーレム候補として理想的です。王子への求愛値と王子の寵愛値も高く、近親婚魔法により近親婚のリスクもなくなる為、キリノさまのハーレム候補としての総合評価を星5とさせて頂きました。

 

 

追伸:

キリノさまによる鳳凰宮制圧で国権の全ては王子へと一元化されました。エロスは名実共に王子が掌握されたのです。これからは内ではなく外の世界へ目を向けようではありませんか。私の夢、いえルーンの民の夢でもあるエロスによる世界統治。キリノさまの白の女皇帝の能力を使えば今すぐにでも実現可能な筈です。

 

王子は私の世界征服案をこれまで拒絶され続けましたが、今度こそ受け入れて下さるとケルトは信じております。世界を支配する! エロス帝国の復活を望む! 玉座でそうご宣言下されば世界は救われるのです。エロスだけが平和ならそれで良しとする独善的で無責任な考えはもうお捨て下さい。

 

蓮華さま、サキエルさま、キリノさま。3人とも私の案に賛同して下さいました。王子が同意するなら協力をすると約束して下さいました。明日、最新の資料を持って登城します。外の世界がどれだけ悪意に満ちているか王子に直接ご説明致します。事態は王子が考えている以上に深刻で切迫しているのです。手遅れになる前に、なにとぞ、なにとぞ、ご英断を!

 

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まどかの章 01 ★★☆ 奴隷市場(スレーブドーム)

王子~。ほらっ、売店でアイス買って来ましたよ。

 

蓮華、ご苦労であったな。

 

いやー。人がいっぱいで大変でしたよ。あっ、お隣の席、失礼します。ポスン。ふぅ…。まだ始まってないようですね。

 

うむっ。競りの開始まであと5分といったところか。

 

ギリギリセーフでしたか。ゴソゴソ…。はい王子、どうぞ。

 

これが噂のアイスモナカであるか…。ビリビリ。ふむっ、大きなモナカが冷えておるのう。どれどれ。パクッ…。モグモグ。

 

じゃ、私も。ゴソゴソ…。ビリビリ。パクッ…。モグモグ。

 

ほう、モナカの中は餡子ではなくアイス…。うっ!? 脳を麻痺させる程に甘いバニラアイスクリームと塩辛く歯ごたえのあるモナカの皮が口の中で絡み合ってくるのう。なんじゃこれは…。モグモグ。や、やめられぬ…。モグモグ。

 

美味しいですか? モグモグ。

 

うむっ! モグモグ。

 

そうですか。それはよかったです。

 

余は満足じゃぞ! モグモグ。

 

あはははっ。王子とのデートは安くついていいわ。

 

むむっ。蓮華よ。

 

はい? モグモグ。

 

これはデートなどというお気軽なものではないぞ。モグモグ。

 

はぁ…。モグモグ。

 

余の名誉を守る為の重要ミッションと心得よ。モグモグ。王都の復興で忙しいであろうお前をわざわざ余の参謀として同行させるのだ。それなりの理由があると思え。モグモグ。

 

奴隷買いがどうして重要ミッションなのですか? モグモグ。チラッ。

 

モジモジ(////

 

王子、その理由とやらをお聞かせ願いたいのですが。

 

う、うむっ…(////

 

名誉回復と仰るからには、奴隷をハーレム候補にする訳でもないのでしょう?

 

そっ、そちだから告白するのであるぞ、余はな…。実はな…(////

 

はい。

 

駄目じゃ、あのような恥ずかしきこと余の口からは…(////

 

言えないのですか?

 

いや余も男である。ここは勇気を出して言わねばならぬ(////

 

はい。

 

しかし男であるからこそ言えぬこともあるのだ…(////

 

イラッ。

 

言えぬ、だが余は…。しかし余は…(////

 

あぁっ、もう面倒臭いなぁ! 魔法発動! 特殊能力、思考遊戯…。 ……パチッ☆

 

ああっ…。こ、こら、余の頭を覗くでないぞ…(////

 

んっ!?

 

……うぅっ(////

 

下らない…。こんなことの為に私を誘ったのですか?

 

こんなこととはなんじゃ…。余はこの前、共振の快楽攻めでキリノに散々虐め抜かれたのじゃ。余とキリノは互いに魔力を引き上げ合い力が互角となって、もうヤツに対抗するには性技のレベルアップをする他にない。力が同じであるなら技が夜の戦いの雌雄を決するのだ…。余はもうあのように無様で恥ずかしい姿、姉上に晒しとうない…。男の沽券に係わるのじゃ…(////

 

それで夜の練習相手に奴隷を買おうと思ったが、でも一人でここに来るのが心細かったので私にお供させたという訳ですね。

 

い、いや、本当はそちに練習を頼みたかったのだがな…(////

 

ええっ、私とですか?(////

 

そちなら余が練習中に理性が飛んでそのまま暴走して襲い掛かっても簡単に止めることが出来るであろう? 安心して身を委ねることが出来るのじゃ(////

 

あのっ、私、夫がおりますので(////

 

うむ…。だから人妻の技を余にだな…(////

 

はぁっ? 何を仰ってるんですか王子?(////

 

怒るな蓮華、本当にアレをやる訳ではないのだ。練習なのだ。不倫にはならん…と思うが、嫌か?(////

 

当たり前でしょ。ぜ~~~ったいに、い、や、で、すっ!(////

 

であろう? そちがそう断るであろうことは、余にはお見通しであった。だから、そのぅ…。余には、せっ、性奴がな…。必要なので…あるぞ…(////

 

そういうことなら私じゃなくてもよいではないですか。サキエル卿とでは駄目だったのですか?

 

サキエルとだと? 余はゲイではないわ。

 

そうではなく、ここに一緒に来るお相手としてですよ。

 

ふん。アヤツに何かをさせて上手くいったことがあったか?

 

う~ん…。ないですね……って、わわっ、アイスモナカが…。モグモグ。

 

というかアヤツは今日大事な用があるとかで休みを取っておるのだ。まったく使えぬ奴よ……って、あぁっ、モナカからバニラアイスが融けて垂れて…。ペロペロ。モグモグ。

 

そう言ってクビにはしないのだから。モグモグ。

 

腕は確かなのだ。モグモグ。やる気になったら出来る奴なのであるぞ…。モグモグ。

 

王子はこのアイスモナカのように甘いですね…。でも、まぁ、王子がそう望まれるならいいですよ。蓮華も今日一日、王子にお付き合いします。

 

蓮華はいつも余に優しく忠実であるのう。感謝するぞ。チュッ(////

 

あっ、もう…(////

 

わはははっ(////

 

10歳で性奴を持ちたがり、人妻に不倫を持ちかけ、そして躊躇なくホッペにキスをするなんて…。蓮華は王子の行く末が心配になります…(////

 

わはははっ(////

 

もう…。ほんとにエッチなんだから。キョロキョロ…。王子。ちょっと顔を近くに…。

 

ん? なんじゃ?

 

お口の周りにアイスが…。チュッ。ペロペロ…(////

 

……(////

 

練習のお相手が出来ず申し訳ございません。蓮華は夫を裏切れません。これでお許し下さい…(////

 

う、うむ…。あ、あのな蓮華よ…(////

 

は、はい…(////

 

そちの口元もアイスが付いておるぞ…(////

 

王子…(////

 

チュッ。ペロペロ…。蓮華は甘いのう。ペロペロ…。チュッ、チュッ(////

 

ううっ…(////

 



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まどかの章 02 ★★☆ 奴隷市場(スレーブドーム)

クチュ…ん…っ…。クチュ…んんっ…。王子…(////

 

ん…っ…。なんじゃ蓮華…。チュッ…(////

 

あんっ…。もうキスはお止め下さい…。あうっ…クチュ…ん…っ…(////

 

駄目じゃ…。チュッ。そちをまだ食し終えておらぬ…。蓮華の唾液は蜜のように甘く滑らかである…。チュッ(////

 

それは…。クチュ…ん…っ…。それは、さっきアイスモナカを食べたばかりだからですっ(////

 

いや、そちはアイスモナカより、ず~っと、ず~っと、甘いぞ…。チュッ。余は蓮華の全てを味わい尽くしたいのだ…。チュッ…(////

 

ああん。もうっ…。王子…。こんなキス、何処で覚えたんですか…。あんっ、ん…。んんっ…。もういい加減に…。ん…あっ…。王子…っ…。せっ、競りが始まってしましますよ…。あん…。んっ……ん…王子…。蓮華は…んっ…。蓮華は…(////

 

……ん? 競りとな? あっ! そっ、そうであった! ガバッ。いかんいかん。すっかり忘れておったわ。こんなことをしておる場合ではないわ。

 

…ムッ。

 

うわわっ、周りの席の者たちがこちらとは不自然に180度逆の方を向いておる。ううっ…。見ぬ振りをしてくれておるのだろうが、この小さな気配りが逆に恥ずかしいのう蓮華よ…。んっ? 蓮華…?

 

ムカッ。

 

ど、ど、どうしたのだ蓮華、なっ、なにをそんなに怒っておるのだ…。余のキスがそんなに嫌であったか? す、すまん。もうせぬから。ちょっと調子に乗ってしまっただけなのだ。

 

プンスカ。

 

ええっ!? 謝ったのに、な、なぜ、更に怒っておるのだ…。謝り方が悪かったかのう。すまなかった、許してくれい。このとおりである。

 

もういいです…。ションボリ。

 

うううっ…。蓮華よ。余はそちが悲しんでいる顔を見るのは、そちが怒っている顔を見るより辛いのである…。ションボリ。

 

ニッコリ…。

 

おおっ、すこしぎこちないが蓮華が笑ってくれた。余も笑おう。ニッコリ…。

 

ハァ…。で、王子、冗談はここまでにして…

 

んっ? 冗談であったのか?

 

当たり前です。人妻の私が10才のお子様のキスくらいで、怒ったり、悲しんだり、本気になる訳ないでしょう。全く…。

 

わはははっ、なんじゃ、そうか。心配して損したわ。しかしさすがは蓮華じゃ演技も上手いわ。コロッと騙されたわ。

 

……それで王子、真面目な話、今回の競り、お眼鏡に適う子は見付けたのですか? 奴隷は犬猫のペットじゃないんですから、奴隷といえぞ人なのですから、真面目にちゃんと選んで下さいよ? 適当にこれでいいや、とかは絶対に駄目ですからね。

 

うむっ…。わかっておるぞ。あぁ、ちょっとすまぬが、蓮華、そこのi-Padを…。

 

はい。ノ ポイッ ~~ i-Pad ガシャン! ミ☆

 

……。

 

……。

 

……蓮華よ?

 

はい。

 

やはり怒っておるのではないか?

 

いえ。手元が狂いました。

 

う、うむ…。そ、そうか…。ピコピコ。おおっ、i-Padは大丈夫なようだが…。そちは大丈夫なのかのう…。心配じゃのう…。

 

あははははっ。王子、これも冗談です。すみません、もう止めます…。大人気ない、笑えない、詰まらない冗談でしたね、ゴメンなさい。チュッ…(////

 

……(////

 

……で、王子、i-Padがどうしたのです。

 

あ、あぁ…。そうであったな…。えっと、これは競りに参加する為の端末になっておってな。今回の競りに掛かる奴隷の様々なデータが色々と入っておるのだ。先ほど作成したお気に入りフォルダーを…。ピコピコ。うむ…。蓮華よ、事前の案内を読んだ限りではこの6人が良いと思うのじゃが、どうであろう…(////

 

- - - - - - - - - - - - - - -

No.001 Rank S ♀ Age15 Tomoe Mami ☆

No.002 Rank A ♀ Age13 Miki Sayaka ☆

No.003 Rank A ♀ Age13 Sakura Kyoko ☆

No.024 Rank A ♂ Age15 Ayasaki Hayate

No.085 Rank B ♀ Age11 Minamoto Sizuka

No.162 Rank C ♀ Age10 Isono Wakame

- - - - - - - - - - - - - - -

 

どれどれ…。あっ、星付き…。奴隷の中に魔法使いがいるとは珍しいですね。それも3人も…。

 

ふふふっ。このようなチャンス滅多にないであろう?

 

えぇ、年に数回あるかどうかでしょう…。そうか、だから今日はこんなに客が多いのか…って、んっ? まさか王子はこのことをご存知だったのですか?

 

勿論じゃ、余はここ数日、ネットで奴隷情報を毎晩チェックしておったのだぞ。

 

ほんとスケベなことにはご熱心なんだから…。

 

なにか言ったか?

 

いえ。で、この6人の中で本命はどの子なのです?

 

ふふん。余が一番に狙っておるのは、勿論、最高Sランクの巴マミである。隣国マギカ王国の有力諸侯のひとつであった巴家のひとり娘だ。

 

先週、マギカ王家に謀反を起こして取り潰されたお家ですね。報告は聞いてはいましたが、まさかもうその姫が奴隷となってエロスの奴隷市場で売られているとは…。

 

奴隷は鮮度が命というからな。ここは産地直送、皆、とれとれピチピチなのである。

 

残り2人の魔法使いは巴家の家臣だった騎士達ですね。

 

うむ。美樹家と佐倉家、どちらも武門の名家じゃ。マミを競り落とせぬときはコヤツらのどちらかにしようと考えておる。

 

魔法使い狙いですか…。

 

駄目かな?

 

いえ、一般人より無難な選択かと思います。魔法使い同士だと気心が知れていますし、礼儀作法などを一から教えなくてよいので躾けが楽です。精神力も体力も強靭ですので奴隷の境遇となっても弱ること先ずありません。

 

うむっ。

 

……しかし王子、その下の綾崎というのは少年ではないのですか?

 

あぁ、それはだな…って、おおっ! 蓮華! 蓮華よ! やっと競りが始まるようであるぞ! ふはははっ。小気味よい曲に乗って、今日の競りに掛かる奴隷どもがゾロゾロと出て来おったわい。

 

顔見せですね。今日の競りに掛けられる奴隷は100人ほどですか。

 

……しかしなんじゃなぁ。全員服を着ておるのか。ガッカリじゃのう。こらっ! もう少し肌の露出がないと誰を余の性奴にするか決められぬぞっ! パンチラもないのかっ! サービスが足りぬぞっ!

 

……王子、みっともないです。少し落ち着いて下さい。今はただの顔見せです。競りに入れば個別に十分なお披露目が行われますから。

 

う、うむっ…。しかし全員をよく見ておきたいぞ…。競り落とした後でもっと良いと思える性奴が出て来たら困るのだ…(////

 

王子、そういう場合は奴隷をトレードすれば良いのです。

 

トレードとな? 買った奴隷は後で交換出来ると申すか。

 

はい。ランクの低い奴隷の持ち主がランクの高い奴隷の持ち主にトレードを持ち掛けても殆どが断られるでしょうが、高い奴隷で低い奴隷のトレードを持ち掛けることは競りの後でよくあることで、成立する確率も高いです。

 

なるほど…。

 

ですのでトレードを考えに入れるなら、出来る限り高いランクの奴隷を競り落とすのが無難です。今回で言えばあの3人の魔法使いということになりますが…。しかしあのように強く脈打つ波紋…。3人共、予想以上に強い力を持っております。特に真ん中の金髪の少女、巴マミ…。神具ソドムの鎖で拘束されてはいますが、あの研ぎ澄まされた魔力なら自力で縛を解くことも可能でしょう…。王子、彼女は避けた方が良いです。油断すると寝首を掻かれるやも知れません。

 

ふはははっ。面白いではないか。歯ごたえがあった方が屈服させがいがあるぞ。

 

……王子はマミに面識でもあるのですか?

 

んっ? いや、全くない。もしかすると、どこかの城の舞踏会で会っておるのやも知れぬが、記憶にはないのう。

 

う~ん…。面識のないマミにそこまでご執心される…。王子って年下好きかと思いましたが、意外に年上好きなのですね。

 

好き? いや余はマミのことを好きとは思えぬが。

 

えっ?

 

少し語弊があるかのぅ。余はマミのことを恋愛対象とは思えぬ。だからこそ良いのだ。

 

はぁ??

 

余はいまハーレム候補を選んでおる訳ではない。余の性交の練習相手を探しておるのだ。余の好みのタイプと完全に一致する者を奴隷にしたなら、余は練習では我慢が出来ずに性交に至ってしまうことであろう。それでは駄目なのである。性約違反でハーレム選考が終わってしまう事態は避けねばならんからな。

 

つまり恋愛対象としての好みに合致しないで情が移らず、性交の練習で寸止めが出来るほどに自制心が保てる相手で、尚且つ最高の女性をお探しなのですか。(ハァ…。ほんと面倒臭い人だわ…)

 

うむっ、ほれ蓮華よ、見てみよ、マミのふくよかな胸を…。素晴らしいであろう? そしてあの澄んだ目、愛らしいのう…。主に従順な証でもあるぞ。ふふっ、これは名門巴家の血筋のよさから来るものであろうな。頭も良さそうである。安心して割り切ったお付き合いが出来るというもの。さらに言えばあの者は金髪でキリノに似ておる。対キリノの夜の模擬戦をやるに最適ではないか。巴マミはまさに余の性奴に相応しい、いや余の性奴となるべくして生まれた女だと思わんか。ふはははっ。

 



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まどかの章 03 ★☆☆ 奴隷市場(スレーブドーム)

さて、そろそろ競りが始まる訳だが、蓮華よ。

 

はい、ランクの高い奴隷からの順番になりますので、この後すぐ王子の本命、巴マミの競りとなります。

 

うむ…。緊張するのう…。

 

i-Padに奴隷の金額を入力して10分間その値を超える者がいなければ落札です。値が上がるごとに時間は0に戻され続け、最高値が10分維持されない限り木槌が振り下ろされることはありません。

 

確定に10分も掛けるのか。長期戦になるやも知れんな。まぁ、競りのルールがどうであろうが、競りで何が起きようが、マミは余が絶対に競り落としてみせるが。

 

ララ~ラ~♪ ラ~ララ~♪ ランランララ~♪ ラララ~♪

 

あっ…。

 

えらく荘厳なメロディーが流れて来たのう。

 

巴家の家曲です。S級ともなると登場シーンの演出にも気合が入っているようで…。

 

ララ~♪ ラ~♪ ラ~♪ ララ~♪ ラララ~♪ ラララ~♪

 

☆ミ ☆ミ ☆ミ ポン! ミ☆ ミ☆ ミ☆

 

おおっ! マミが爆煙の中から!!! んっ?? なっ!? なんじゃあの衣装は!!!

 

巴家制式の女子戦闘衣です。戦闘衣というより古風な貴族衣装といった感じですが。

 

くうううっ!! 可愛い。可愛いぞ。実に可愛い戦闘衣であるぞ。ミニスカなのは当然として、頭にちょこんと乗っかっておるアレはベレー帽であるな? ふわふわの羽が付いてお洒落であるぞ。おおっ。胸はブラウスのみであるか。急所を敢えて全く防御しておらぬところがよいのう。巴、カブキよるわ!!

 

王子、マミのパーソナルデータがi-Padに送られてきました。

 

- - - - - - - - - - - - - - -

No.001 Rank S ♀ Age15 Tomoe Mami ☆

162cm 49kg B81 W54 H83 総合評価 S++

 

性格:S 知力:S 知識:S 精神:B 礼節:S

血統:S 健康:A 体力:A 魅力:S 淫乱:A

 

備考:魔法使い。マギカ王国旧巴家。

最大魔力量5兆2600億MP 最大魔力出力455億4000万MP/s

特殊能力:リボンの騎士(リボン変形具現化)

 

競り開始金額:700.00

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凄いのう。凄いと言う他ないではないか…。

 

はい。評価にSがずらり。ここまでの逸材が奴隷の競りに掛けられるのは数年に一度あるかどうかでしょう…。

 

凄い胸ばかりに気を取られておったが、いや実に凄い尻をしておる…。胸と尻が凄い肉付きじゃ。凄くムッチリとしておるのう。しかし体重がこんなに少ないとは、まさにこれは凄い奇跡なのである。

 

……。

 

ちなみに蓮華よ、そちのスリーサイズは…。ジロジロ…。あぁ…。いや、言わずともよいぞ。服の上からでも大体分かるからの。ジロジロ…。フッ…。あっ、いや、これはすまぬ、気にするな。そちも褒めてつかわすぞ。そこそこであるぞ。人妻にしては頑張っておる方であろう。ふはははっ。

 

……。

 

いやー。それにしてもマミは凄いのう。しかし戦闘衣姿も良いが、裸体もひとめでよいから拝みたいものであるぞ。パンチラでもよいのだが…。

 

……。

 

これマミよ! パンチラじゃ! おパンツを見せるのじゃ! お尻をみせい! お股をみせい!

 

……。

 

ぬぬぬっ! 何故見せぬ? ああ、ひょっとして、おパンツが汚れておるのか? よいよい。気にするな、大きい方の汚れであろうが、小さい方の汚れであろうが、あの汚れであろうが、何を漏らしておっても、余はそちのことを嫌いにはならぬぞ。ふはははっ。

 

……。

 

見てみよ蓮華よ。マミが照れて赤くなっておるわ。余の声が聞こえたのかのう。ふはははっ。

 

……。

 

☆ミ ☆ミ ☆ミ ポン! ミ☆ ミ☆ ミ☆

 

おおっ! 一瞬で戦闘衣姿からスッポンポンになったぞ!!!!!

 

競りの主催者側がソドムの鎖の効果を引き上げてマミの武装を強制パージさせたのでしょう。いくらなんでも酷すぎます。神聖な神具をストリップの演出に使って奴隷虐待をするなど全くもって言語道断…。

 

よっしゃぁぁ!!!! ムッチムチのマミの裸体じゃ~~~~~っ!!!!

 

……。

 

ああっ! 駄目じゃ!! 腕で隠そうとするでないぞ!! そちの豊満な胸とお尻を余に見せるのじゃ!! こ、こら、しゃがむでない。立ち上がれマミよ。余も立ち上がるぞっ!! おチンチンがな。ふはははっ。

 

……。

 

無駄な努力は止めるのだマミ。その巨大な胸や尻はそんなことで隠し切れるものではないぞ。ふはははっ。見えておる。見えておるのだ。

 

……。

 

その張りのあるムッチムチのからだは、ふっかふかのポヨポヨで抱き心地は最高であろうなぁ…。きっとマミは余のよき抱き枕となるであろう。そしてよき掛け布団や敷布団にもなってくれるであろう。

 

……。

 

肌も綺麗であるぞ。真っ白である。ツルツルでスベスベしておるのであろう。肌のきめ細やかさ滑らかさは性奴にもっとも重要な資質であると余は声を大にして言いたい。ふはははっ。よしっ。マミを余の性奴にしたその初夜は、部屋の温度を氷点下にして2人で肌をスリスリして暖め合うことにしよう。マミの肌の感触と温度を存分に味わうのだ。ふはははっ。余の胸は高鳴るわ。

 

……ちょっと、いい加減に黙ってくれませんか王子。うるさいです。

 

わははははっ。蓮華よ、何を言っておる、大昔からエロスでは奴隷の競りは祭りなのである。ふはははっ。今日は無礼講じゃ、固いことを…

 

ギロッ。

 

はわわわ…。ガタガタ…ブルブル…。

 

王子…。

 

な、なんじゃ…? ガタガタ…ブルブル…。

 

相手は性奴と言えど人なのです。観賞物ではありません。布団や枕でもありません。みな人の心を持っております。女の子が傷つくこと言ってはいけません。

 

う、うむ…。そうであるな。ううっ…。よく見ればマミは悲しんでおるではないか…。半泣きなのかのう…。どうやら余は興奮して、言ってはならぬことを口走ってしまったようだ…。

 

反省してますか?

 

すまなかったのだ。余は後でマミに謝ろうと思う。ショボーン…。

 

フフッ。素直でヨロシイ。では王子、容姿以外の部分も、ちゃんと見てあげましょう?

 

うむっ。

 

i-Padをピコピコ。はい、これがマミのパーソナルデータです。素晴らしい成績じゃないですか。

 

ほう、確かに…。スリーサイズばかりに気を取られておったが、見事なステータスである。魔力も高いのう。エース級の魔法使いではないか…。しかし、このように有能な者を他国に売り飛ばすとは、マギカの王、クリームヒルト。余程の愚か者なのか、それとも何か理由があるのか…。訳が分からんのう…。

 

マギカ王国は3年ほど前から魔法騎士団の再編強化を進め、今やルーンで屈指の実力を誇ります。中でもクリームヒルト直属の近衛騎士団は10兆MPを超える魔力量が入団の最低条件とか…。マミの魔力は5兆MP。エロスではエース級でもマギカでは並みの魔法使いでしかありません。

 

5兆で並みなのか…。

 

はい。ですが魔法使いの実力を魔力量だけで測るのは愚か者のやること。魔力の量より質が重要ですし、巴マミの価値は魔力とは別の面から見出すべきでしょう。

 

うむっ…。

 

正直、わたしもあの子が欲しいです。

 

そちもマミを性奴にしたいのか?

 

いえ。

 

……他国の生まれのマミをお庭番に加えると申すか?

 

はい。

 

お庭番衆とは影の一族の中から選ぶのが慣わしであろう?

 

そうも言ってられません。

 

……そんなに手が足りぬのか?

 

王子のハーレム候補探しで半数がルーン各地に散っております。いまは黒騎士さんにお手伝いして貰ってなんとかやりくりしてますが、あと何人か必要です。先日のような事件がまた起きては取り返しが付きませんので。

 

そうか。では巴の他に美樹と佐倉も一緒に競り落とすことにしよう。巴は余の性奴とするので譲れぬが、美樹と佐倉はそちに預ける。好きに使うがよいぞ。

 

えっ?

 

ん? 巴でなければ駄目か?

 

いえ、美樹や佐倉も相当な魔法の使い手です。優秀なお庭番になってくれると思いますし、王子のお心遣いも嬉しいのですが…。

 

どうしたのじゃ? 何か気になることでもあるのか?

 

えっと、その…。失礼ながら王子。予算の方は大丈夫なのですか? 3人も競り落とすとなると相当な出費となってしまいますよ?

 

なんじゃ、そんなことを気にしておったのか。ふはははっ。

 

そんなことって王子。巴の開始値は700です。後の2人を入れたら一体いくらになることか。

 

案ずるな蓮華。今回の競り、余の予算は8000である。あまった金で高級マンションを借りて、マミとそこで甘い生活を営もうかと思っておったが、そちにはメルルやキリノの件で色々と世話を掛けたからな…。少し部屋のランクを落として浮いた金で残り2人、落札するのだ。

 

8000って、王子がそんなにお金を持ってる筈が…。

 

失礼であるぞ。余はエロスの王となる男である。8000万ゴールドくらい、ふん、お小遣いを3年貯めれば用意できる額なのである。

 

……。

 

セレブの力、驚いたか? ふはははっ。

 

そうですね…。驚きました。ネットで奴隷の情報収集をされていると仰っていたので、まさかそのような勘違いをしているとは。

 

はて? 勘違いとな?

 

桁が4つも違っております。

 

えっ…。

 

巴マミの競りの開始値は700万ではなく700億ゴールドです。

 

はわわわ…。ガタガタ…ブルブル…。

 

やれやれ。

 

で、では巴マミの抱き枕は…。余のお布団は…。

 

お諦め下さい。あぁ、ちなみにこのスレーブドームでの競りの開始値は最低のCランクでも1億ゴールドです。

 

うううっ…。ううっ……。つまり余は……性奴を持てぬのか? ヒクッ…ヒクッ…。

 

はい。無理です。お金がない以上、こんなところに居ても仕方ありません。出ましょう。

 

嫌じゃ…。ううっ…うっ…。

 

ハァ…。聞き分けのないことを言わないで下さい…。

 

性奴を持つのは余が7歳の頃からの夢…。うぅぁ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

王子にはハーレムがあります。性奴なんか要りません。

 

でも、でも…。練習をしとかねばキリノにまた苛められるのじゃ…。

 

もうっ、しょうがないなぁ…。わかりました。少しくらいなら私が王子の練習相手になってあげますから(////

 

ヒクッ…ヒクッ…。よいのか?

 

キスの練習くらいまでなら…(////

 

キス…。キスだけか?

 

……はい。私、人妻ですので(////

 

そちはキリノのことを知らんからそんな悠長なことを言っておるのだ。アヤツは共振で余を抵抗出来ぬようにして、あんなことやこんなことをしてくるのだぞ? しかも鳳凰宮で連日、近衛の連中と濃密な練習を繰り返しておると聞く。キスでどうやってアヤツに勝つのじゃ。ナイフで戦車に挑むようなものではないか。

 

ランボーなら…。

 

あれは映画であろう? ああっ、もう駄目じゃ。余は半年後、ハーレムでなすすべなく快楽地獄で悶え狂って死ぬのじゃ。余の墓標には淫獣ドラゴンに貪り食われた愚王との碑文が刻まれ、エロス末代までの笑いものとなるであろう…。ううっ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

わかりました。じゃあ…胸くらいは…。いいです…(////

 

ヒクッ…ヒクッ…。胸…?

 

キ、キスの他に、胸を触らせてあげますから…(////

 

ジロジロ…。そちの胸で練習になるのかのう。

 

失礼なっ!(////

 

……余は性奴が欲しいのじゃ。何でも余の言うことを聞いてくれる者がいいのじゃ。気兼ねなくエッチなことを出来る相手が欲しいのじゃ。うううっ…。マミが欲しいのじゃ! さやかが欲しいのじゃ! 杏子が欲しいのじゃ! わぁああん…。バタバタ。

 

もう…。駄々捏ねないで下さい…。

 

ううっ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

王子、帰りにチョコレートパフェ奢ってあげますから。

 

うっ…うっ…。パフェ? ヒクッ…ヒクッ…。

 

ええ、だから、ねっ、もうお城に帰りましょう。

 

うううっ…。ホットケーキがいい…。

 

はいはい♪

 



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まどかの章 04 ★★★ ヒルトンホテル(王族専用貴賓室)

ソファーにドサッ。ふうっ…。王都に戻ると落ち着くのう…。クタ~。

 

ふふっ。折角、奴隷市場まで行ったのに無駄骨となってしまいましたね♪

 

……なんじゃ。嬉しそうだのう。

 

そんなことないですよ♪

 

ふんっ…。まぁ、よいわ。性奴を買うことが出来なかったのは残念であったが、帰りに高島屋に寄ってメルルとキリノへのプレゼントを買うことが出来たからのう。それに…。ジーッ。

 

ん? なんですか王子?

 

蓮華、近こう…。

 

は、はい。ソファーにポスン。

 

今日はそちと久しぶりにデートが出来たから奴隷市場に行ったこと無駄ではなかったのだ…。そちが余の練習相手になると言ってくれたあの言葉、嬉しかったぞ。余には大きな収穫であった。…抱きっ(////

 

王子…(////

 

オヤツの時間まであと1時間ある。それまで早速練習をしてみることにしよう。蓮華よ、そちの胸、触ってよいのであったな?

 

は、はい…(////

 

では…。参るぞ。フン…フン…。

 

ちょっ、ちょっと待って下さい(////

 

待てぬ…。ブラウスの上から、そっとペタッ…(////

 

キャッ!(////

 

サワサワ。んっ? サワサワ。あれっ? 胸が…。サワサワ。サワサワ。無い。はわわわっ。オロオロ…オロオロ…。

 

王子…?(////

 

……ど、どう言葉を掛けてよいものか。小さいとは思っておったが全く無いとは想定外なのである。……い、いや気にするでないぞ。構わぬぞ。少し驚いただけなのである。余の動揺、気に障ったのなら謝る。すまぬ…。このようにペッタンコでも、そちの胸なら余はそれでよいのだ…。サワサワ。

 

い、いえ、あのっ…。そのっ…。

 

しかしオカシイのう。少し前までは確かにオッパイがあった筈であるのに…。へっこんでしまったのかのう…。結婚をして吸われてしまったのか? よしっ! これからは余が毎日モミモミをして、そちの胸を大切に育てようぞ!

 

今はさらしを捲いておりますので…。

 

あ、あぁ…。そ、そういうことか…(////

 

結婚してから胸が大きくなってしまって…。少しお待ち下さい。いま取ります…。首のネクタイをユルユル…。

 

待ていっ!!!

 

はいっ!?

 

そ、その紐のような黒ネクタイは可愛いからそのままにしておくのじゃ!!!(////

 

は、はい…(////

 

うむっ…、で、では蓮華よ、続けたまえ…(////

 

……白の薄手のブラウスのボタンを外し外し、スルスルと脱ぎ脱ぎ。さらしを解き解き…(////

 

……ううっ。意外に大きいではないかっ! こ、これも想定外じゃ!(////

 

そ、そうですか…。緩んだネクタイを締め締め…(////

 

うううっ、エッチなのじゃ。エッチなのじゃ。上半身が裸でネクタイのみ…。細長い黒のネクタイがまるで首輪のようであるぞ。下半身は黒のミニスカに膝上までの黒タイツ…。裸のスレンダーな上半身と服を着た下半身がアンバランスでありながら妙にバランスが取れておる…。うううっ、蓮華はエッチなのじゃ(////

 

恥ずかしいので…はしゃがないで下さい…(////

 

す、すまん…。しかしそちの胸、大きいのう。形もプクリと綺麗に整っておってエッチである。実に見事である(////

 

あ、ありがとうございます…(////

 

モ、モミモミしてよいか?(////

 

はい…。

 

モミ…。モミ…。むむっ。ポニョポニョして適度な弾力と柔らかさを兼ね備えておる。モミ…。力を少し加えると指が吸い込まれ。モミ…。力を脱すると押し戻そうとする。余の指がそちの胸と一体となるか、ならぬか、そのせめぎ合いであるな。ううっ…モチモチしておる…。温かく柔らかいのである…(////

 

……。

 

モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。

 

……。

 

ど、どうじゃ。蓮華。モミモミ。モミモミ(////

 

どうと言われても…。うーん…。

 

余の華麗な手捌きにもうメロメロであろう? モミモミ。切なくなってきたであろう? モミモミ(////

 

メロメロ…? 切なく…? うーん…。

 

我慢せずともよい。モミモミ。そちと余の仲であるぞ。隠し事は無しじゃぞ。アハ~ンとかウフ~ンとか、言ってよいのじゃ。恥ずかしがることはないぞ。モミモミ。この部屋は防音も完璧じゃ、大声を出しても大丈夫なのじゃ(////

 

言った方がよろしいのですか?

 

い、いや自然に声が出るであろう? 出てしまうであろう?

 

……出ませんよ。

 

……。

 

王子は昔から私のお尻や胸を触りまくっていたではないですか。ですから今更といいますか。なんというか。あはははっ…。

 

ションボリ…。

 

すみません…。

 

……触っておったのは何年も前の話であろう。今の余と違うのであるぞ。余はもう精通が始まった大人である。気持ちを切り替えて欲しいぞ。

 

失礼ながら蓮華には同じでございます。私は6才のとき王子のお側役に選ばれ、王子がまだ赤ん坊の頃からお世話をしております。簡単に切り替えることなど出来ません。王子の存在は私には大き過ぎるのです。

 

……。

 

ずっと君を弟のように思ってたから…。だから、ごめんね…。チュッ(////

 

……。

 

頭をなでなで。

 

……余が相手ではエッチな気分になれぬと申すか。

 

あはははっ。そうですね…。王子も私のこと、そういう風に思えないでしょ?

 

……違うぞ。余はずっと昔から、そちのこと、すっ、好きであったのだぞ?(////

 

そ、そうなの…ですか…(////

 

うむっ。そちの結婚を祝福はしたが、その晩は悲しくて泣いておったのじゃ。もう少し早くハーレム候補探しが出来たなら、そちを選んでおったろうにとな。例えそちに振られるにしても、そちへの余の思い…。伝えたかったぞ…。

 

王子、私は…。

 

分かっておる。そちは佐助にベタ惚れである。余とこのような練習をするのは内心すご~く嫌であろう? 佐助にも悪いとは思う。だが少しの間我慢してくれい。余の男としての尊厳が、いや余の命が、危ういのだ。

 

いったいキリノさまに何をされたのです?

 

そ、そんなこと、言えないのである…。モジモジ…(////

 

ハァ…。まぁ、いいですけどね。王子とこういうことをするの嫌という訳ではないですし、10才の王子に胸を揉まれることくらいでアイツも怒らないでしょうから、お気になさらないで下さい。

 

なんじゃ、もう倦怠期か?

 

ち、が、い、ま、す。……でも、どうします? 私の方から胸を触っていいと言っておいてなんですが、気分が乗ってない相手といくらモミモミの練習をしても自信を無くすだけだと思いますよ。もう止めますか?

 

いや、まだじゃ、そちの後ろから背中越しにモミモミするのじゃ。

 

後ろからですか。

 

そうじゃ、これなら余の顔は見えぬから、そちもムラムラする筈なのじゃ。

 

う~ん…。そんな単純な問題じゃないと思いますが…。いいですよ。王子の気の済むようにやられれば。じゃ、頑張ってモミモミマスターを目指しましょうか。あはははっ。

 

フッ…。蓮華よ。余を侮っていられるのも今の内だけなのじゃ。もう直ぐそちは余の虜となるのだ。略奪愛、失楽園なのじゃ。ふはははっ。

 



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まどかの章 05 ★★★ ヒルトンホテル(王族専用貴賓室)

で、では、これより後ろからモミモミを始める。蓮華、準備を…。

 

後ろを向けばよろしいのですね? クルッ。

 

き、綺麗な背中であるぞ(////

 

あ、ありがとうございます…(////

 

うなじもエッチで色気がある(////

 

……(////

 

だが違うのだ…。

 

王子…?

 

後ろからモミモミとはそうではない。蓮華よ、この部屋をよく見渡してみるのだ。

 

ん? キョロキョロ…。休憩やお食事に利用しているいつものお部屋ですけど…。ここがなにか?

 

わ、わからぬか…。あ、あの窓…。そちはどう思う…?(////

 

……継ぎ目のない見事な一枚板のガラス窓です。横12m×縦3m。多分、防弾と対魔法のハイテク処理が施されているエロス硝子工業の最新強化ガラスでしょう。そういえば来年度から鳳凰宮の正面玄関の透明アクリル板をこのタイプのガラス板に取替える予定だと聞きましたが、違いますか?

 

いや、知らぬ。というか、そのようなことはどうでもよい。余が聞きたいのは、あの窓を見てそちはどのような印象を受けるのか、ということじゃ。

 

壁一面が窓というのは開放感があって良いと思います。王都の塔群を一望出来て眺めも素晴らしいですし…。

 

う、うむ…。

 

んっ???

 

も、もう余の言いたいこと、わかったであろう?(////

 

いえ、全然わかりません…。

 

そ、そうか。わからぬか…。あのな…。つまりな…。モジモジ…。こ、これなのだ。 ……パチッ☆ 雑誌。パサッ。

 

漫画雑誌のようですが、これが何か?

 

読んでみよ(////

 

はい…。ペラ…。ペラ…。ペラ…。

 

……(////

 

ペラ…。ペラ…。ペラ…。うううっ…(////

 

ど、どうじゃ?(////

 

なっ、何を読ませるんですかっ! エッチ漫画じゃないですかっ!(////

 

い、いや普通の少女向け漫画雑誌であるぞ?

 

そんな筈が…。ペラペラ…。あっ、本当だ。でも…。ペラ…。ペラ…。中身はエッチ…。と、とにかく、こ、こんな雑誌、買っては駄目です!(////

 

買ったのではない。城の裏手の湖を散歩しておったら落ちておったのだ。

 

拾うのも駄目です! ペラペラ…。な、なんて汚らわしい。没収します!

 

うううっ…。ま、まぁ、よい。でな、蓮華よ…。その漫画の…。

 

ペラ…。ああっ、酷い。ペラ…。ええっ! 男同士!?

 

蓮華?

 

ペラ…。わわわっ。ペラ…。……。ペラ…。……。ペラ…。……(////

 

余の話を最後まで聞くのだ!

 

へっ?(////

 

366ページと367ページの見開きを見て欲しいのじゃ(////

 

はっ、はい。366ページ…。ペラペラ…。ペラ…。キャッ!!!(////

 

……(////

 

ま、ま、ま、ま、ま、ま、まさか王子!?(////

 

うむっ…。そのような感じにな、モジモジ…。余はそちを後ろからモミモミしたいのじゃ…(////

 

い、や、で、す!(////

 

そ、そちは先ほど、気の済むようにモミモミしてよいと、そう言ったではないかっ!

 

言いましたけど、で、でも…(////

 

ふっ…。蓮華よ、臆したか?

 

なっ!

 

人妻となっても、剣聖となっても、そちは初々しく可愛いのう。よいよい。無理にとは言わぬ。ふはははっ。蓮華にはちと早かったわ。

 

ムカッ。わ、わかりました。やりましょう。

 

本当かっ!!!

 

はい。でもこの漫画の通りになさりたいと仰るならスカートやショーツは邪魔ですね。少しお待ち下さい。脱ぎ脱ぎ。

 

まっ、待て! よい! 脱がなくてよいぞ! 胸をモミモミするだけなのだ。漫画と全く同じでは性交になってしまうのだ。

 

……王子は、いったい私にどうして欲しいのです。

 

う、うむ、では余が手本を見せよう。てくてく…。そちはそのままの姿でよいので、先ず、このように窓のそばに立つのじゃ。50cmくらい手前かの。で、お辞儀をするように窓へ向けて上半身を曲げてだな、両の手のひらを窓のガラスに押し付けてからだを支えるのじゃ。腕は伸ばしてもよいが、このように曲げると顔もガラスに押し当てることが出来るであろう? 顔、右手、左手の三点で支えれば更にからだのバランスが安定して、よりエッチな姿となるので、お勧めである。

 

そして後ろから…こんな感じにモミモミされる訳ですか。モミモミ。モミモミ。

 

そうそう…。後ろから覆い被さり、少しもたれ掛かるように、からだを相手の背やお尻に密着させ、そして腕を廻して胸に…。ん? い、いや余がモミモミされてどうする。そちが余にモミモミされるのである。

 

しょうがないなぁ…。とぼとぼ…。

 

蓮華よ。もう少し窓に近づくのだ。

 

外から見えちゃいますよ?(////

 

うむっ。向かいのビルの窓に人だかりが出来ておるぞ。そちの胸を下々の者達に見せ付けてやるのじゃ。眼福となろう。ふはははっ。……と言って楽しみたいところであるが、そちの美しき裸体、晒し物には出来ぬな。 ……パチッ☆

 

今のは…?

 

メビウスの輪である。1ミリ秒の超短時間逆行を無限ループで自動発生させ続けることで時の神の混乱を延々と引き伸ばし、外時間を閉じる余の新技じゃ。今、この世で動いておるのは余とそちだけじゃぞ。

 

あっ、あの、王子…。そんな危険な大技を使わなくても遮光魔法でよかったのですが…。大丈夫なのですか? ループが崩せなくなったら世界が永遠に閉じてしまいますよ?

 

ふふん。ずっとそちと一緒におれるのなら、時の牢獄に閉じ込められるのも悪くない…

 

……(////

 

……こともないか。

 

ぷんすか。

 

冗談じゃ。そちが可愛いから、つい見栄を張ったり意地悪なことを言ったりしたくなるのじゃ。以後気を付けよう。チュッ(////

 

……(////

 

すまぬが蓮華、足を開いてくれた方が身体の位置が下がってモミモミし易いのである…。うむ…。良いぞ。そんな感じじゃ。で、腰を曲げて両手を窓に付けるのだ。うむ…。もう少しからだを曲げて手を下の方に付けられぬか? うむっ。ネクタイの先が床に付くくらいに…。そ、そうじゃ。ううっ。綺麗じゃのう。ミニスカのお尻が突き出た感じがエッチであるぞ。

 

……。モジモジ…(////

 

大丈夫じゃ、おパンツは見えそうで見えておらん。

 

…もうっ(////

 

姿勢はこのままで大丈夫か? 苦しくはないか?

 

はい。

 

よし。では、そちのからだを後ろから…。いや、待て、余も上半身裸になった方がよいか…。

 

ええっ!?(////

 

そちの艶やかにしなった背をみておったら、服を着たまま触れるのは不自然なように思うてきたのじゃ。シャツを脱ぎ脱ぎ。

 

ちょ、ちょっと王子!!!(////

 

抱きっ!!! 胸に手をピトッ(////

 

キャッ!!!(////

 

うむっ。肌を重ねるというのは…よいものであるな。いや、そちであるからよいのか…。肌の感触、温度、匂い…。蓮華の肌は心地よい。

 

あ、ありがとうございます(////

 

ふふっ、それに胸に手を当てて、じっとしておるとな、そちの鼓動がトクトクと余に伝わり、心が落ち着くのだ…。

 

王子の鼓動も背中から私に伝わります…。とても懐かしい…です…。

 

そちとは血が繋がっておらぬから共振は出来ぬが、もう少しこのままで…。

 

はい…(////

 

…………。

 

…………(////

 

……もうこのままでよいくらいじゃな。

 

コクン…(////

 

……モミモミは止めておくか。

 

……よろしいのですか?

 

もし…。

 

えっ?

 

もし…そちが本当に余の虜となってしまったら…。

 

ふふっ。心配してくれているのですか?

 

……。

 

大丈夫です、王子。触れられる前はどうなることかと思いましたが、手の感触で王子だと分かりますので、蓮華は妙な気分になること、ございません…。

 

いや、余と分かったらドキドキするようになって欲しいのだが。

 

はい。では頑張ってモミモミをして私を王子の虜にして下さいまし。…略奪愛、なされるのでしょ?

 

くっ、馬鹿にしおって、強がりおって、後悔しても知らんからな。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。

 

……。

 

モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。

 

……。

 

蓮華、どうじゃ、余にモミモミされてどんな感じなのじゃ、ん? 先ほどの威勢はどうしたのじゃ、ふはははっ。黙り込んでしまいおって、可愛いのう。声を殺しておるのか? モミモミ。ほれ蓮華よ、下を向いてないで窓に映った己の顔を見てみるのじゃ…。モミモミ。

 

チラッ。

 

ふはははっ。剣聖でルーン最強のそちの顔がだらしなくエッチに……なっておらんのう…。素ではないか。

 

……。

 

というか余の顔がだらしなくエッチに映っておる…。オカシイのう…。漫画ではモミモミされる方がエッチな顔になるのであるが…。モミモミが足りぬのであろうか…。

 

……。

 

モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。

 

……。

 

モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。

 

……。

 

ハァハァ…。間が持たんわ。モミモミ。蓮華よ、話をしてよいぞ。モミモミ。

 

美容室では美容師さんが話を振るものですが。

 

余はいま全神経を集中してモミモミしておる。モミモミ。他のことにまで頭が回らぬ。モミモミ。

 

いっぱいいっぱいですか。

 

そちも…。モミモミ。直ぐに…。モミモミ。余のことで頭がいっぱいいっぱいに…。モミモミ。

 

やれやれ…。まぁ、いいです。私も王子にお話ししたいことがありますので。

 

ん? なんじゃ? モミモミ。モミモミ。

 

王子、今日行かれた奴隷市場、如何にございました?

 

あぁ、奴隷市場のう…。モミモミ。面白くはあったが、あの街、余は好きになれぬのう。モミモミ。

 

……どうしてです?

 

あの臭いが嫌なのじゃ。モミモミ。ドームの中は幾分かマシであったが街全体に染み付いた饐えた臭い。モミモミ。まるで動物園の中にいるかのようであった。いや、動物の臭いなら構わぬが、あれが人の発した臭いかと思うと気が滅入るのだ…。モミモミ。

 

ドームではSとAからCのいわゆる高級奴隷が競りに掛けられてますが、ドームの外では荘園の農奴などに使われるDからFの低級奴隷が捨て値で売られております。その者たちはまさに動物以下の扱いで酷いものです。……王子にはドームの外の様子も見て貰いたかったのですが。

 

D以下で余の年に合う性奴はおるのか? モミモミ。

 

年齢が低い者でDとなると容姿や性格に難のある者しかおりません。性奴にするには不向きかと。

 

うむ。ならもうよい。モミモミ。

 

……王子。

 

わかっておる。そのように悲しい顔をするでない。奴隷市場の劣悪な環境の把握とその改善であろう? あの臭いなのだ。行かずともどういう状況なのか大体の見当は付く。

 

……実際に見てみなければ分からぬこともございます。

 

そうかも知れぬが、余はもう疲れたのだ…。明日にでもケルトに奴隷市場の環境整備と奴隷法の改正を命じよう。あの者なら上手くやってくれるであろう。

 

ケルトは魔法の使えない旧人類の保護活動に熱心ですからそのご命令、喜ぶと思います。

 

ふふっ…。アヤツ、余が世界征服案を却下したらプーっとホッペを膨らませて拗ねおってな、それ以来一言も口を利いてくれぬ。モミモミ。これで少しは機嫌を直してくれればよいのだがな。モミモミ。……後でそちからも上手くフォローしておいてくれ。モミモミ。

 

御意。

 

……ところで蓮華よ。モミモミ。

 

はい。

 

そろそろ気持ちよくなってきたのではないか? モミモミ。モミモミ。

 

……全く。

 

……そうか。

 



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まどかの章 06 ★★★ ヒルトンホテル(王族専用貴賓室)

あのっ、もうそろそろ、王子…。

 

だっ、駄目じゃぞ! まだまだこれからなのだ! よっ、余にも男の意地というものがある! なんとしても…。モミモミ。モミモミ。なんとしても…。モミモミ。モミモミ。

 

ハァ…。やれやれ…。

 

ひとモミごとに…。モミ。握力や手の位置を微妙に変化させておるのだ…。モミ…。なのにどうしてなのじゃ。モミモミ。なぜ気持ちよくなってくれぬ? モミモミ。

 

こればかりは理屈ではなく、気持ちの問題ですので。

 

うううっ…。モミモミ。胸はこのように掴めておるのに、心を掴むことが出来ぬとは。モミモミ。

 

ふふっ、女心を掴むのは難しいものです。

 

ちょっとくらいは余を男として見て欲しいぞっ! モミモミ。

 

そんなことより、王子。

 

そんなこととはなんじゃ! そんなこととは! モミモミ。

 

先程のケルトの話ですが…。

 

あぁ、うむ。よくなだめておいてくれ。モミモミ。余が気にしておったと。寂しくて泣いておるから無視だけは止めてくれと。モミモミ。あいつにも高島屋でプレゼントのぬいぐるみを買ったからの。モミモミ。そのときに一緒に渡すのじゃ。間違うでないぞ。ピカチュウじゃぞ? メルルにはマルル。キリノにはニャース。ケルトにはピカチュウ、そちのはルカリオなのじゃ。モミモミ。

 

……。

 

そして余のぬいぐるみはベロリンガー。ふはははっ。舌が長いのじゃ。ナメナメなのじゃ。これはプレゼントではないからの。持って行くでないぞ。余の抱き枕となるのだ。モミモミ。

 

世界征服の提案、なぜ却下されたのです?

 

……。

 

エロスによって世界が統一されれば多くの虐げられた人々が救われます。エロスの奴隷市場や荘園は酷い有様ですが、それでも諸外国に比べれば楽園なのですよ?

 

そちはケルトの案に賛成であったな。モミモミ。

 

……王子が世界征服を望むなら私も賛成すると言ったまでのことです。王子が反対なら私も反対。国政を担うのは私ではなく王子なのです。ただ…。

 

ただ、なんじゃ? モミモミ。

 

理由を仰って頂きたく思います。私達お庭番衆は王子のご意向に沿って王子の手足となるものです。どのようなご命令でも実行はしますが、意思の込められていない手足に強い力は宿りませんので。

 

そち達に隠し事はなしか。

 

はい。

 

反対した理由は…。ふふっ、これも理屈ではなく気持ちの問題であろうな…。

 

……。

 

ひとつ、姉上の力を借りて世界征服などしたくない。やるなら余の力でやりたい。ふたつ、姉上のあの力は余への愛から生まれたもの。それを人殺しの道具にしたくない。みっつ、あの様なやり方で世界支配をすれば余も姉上も破滅をする。以上だ。

 

……破滅…ですか。

 

うむっ。

 

ケルトの言うように、キリノさまの能力を使えばリスクなく世界征服の目的は達成され、その後も容易に支配体勢の維持が出来ると思われますが。

 

……帝政時代のブリジット。姉上と同じ白の女皇帝を使って世界を支配し、結果的に多くの魔法使いを死に至らしめた暴君だが、そもそも、どうしてそのような事態となったか、そちは知っておるか?

 

帝位を脅かす他の魔法使いを取り除く為かと。

 

……余も始めはそう思っておった。だがこの前、鳳凰宮の地下図書館の封印が解かれたであろう? 気になって調べてみるとな…。

 

違ったのですか?

 

帝政時代も末期となると魔法使いは奢り高ぶり、一般人への狩や虐待が横行して、法で旧人類の保護を定めても誰も守らんようになったのだ。そんなとき宦官の中に正義感の強い奴が現れてな、世界中の魔法使いの行動を監視して完全支配するようブリジットに入れ知恵をしたらしいのじゃ。監視をすれば多くの人々が助かる、皇帝となった貴女にはその能力と責務があるとな。これが魔法使いを絶滅寸前にまで追い込んだ大虐殺の始まりなのだ。

 

王子はその宦官の提案とケルトの世界征服案とを重ねておられるのですか。

 

……。

 

ご安心下さい。当時の失政を文官どもによく検証させ改善をすれば今度こそ上手く行く筈です。むしろ過去の失敗例があったこと、幸運なのです。エロスは千年帝国となりましょう。

 

……そうだな。そうかも知れん。

 

では…。

 

……だがな、しかしな、どのようにしてあの虐殺が収まったのかを知ると、そのように割り切れぬのだ。

 

皇帝が急死して…終ったのでは?

 

……ブリジットには幼い弟がおって、そいつが姉の虐殺行為を見かねて謀殺したのじゃ。人の心を監視し続けた女皇帝は人を信じられなくなったようだが、弟だけは信頼し切っておったのであろう。毒を飲まされ、あっけなく死んでしまった…。

 

……。

 

……故に、魔法使いの世は今もこうして続いておる訳じゃが…。ふん…。魔法使いが死に絶えようが、人の世が終わろうが、余なら…姉上にそのようなこと絶対にせぬ…。

 

……。

 

せぬが…。だが、ここまで状況が似ておると…怖いのだ。

 

……王子。

 

……。

 

弟君はその後…。

 

姉の後を追い毒を飲んで死んだとあった。

 

……。

 

口移しで毒を飲ませたのやも知れぬ。

 

……。

 

もうよいか…?

 

……。

 

モミモミを続けるぞ…。

 

ギュッ。

 

……手を握られてはモミモミ出来ぬではないか。

 

抱き。ギュッ。

 

……分かった。モミモミはもうやめよう…。

 

……。

 

……蓮華、気持ちよかったか?

 

全くです…。

 

そうか…。上手く行かぬものだな…。

 

王子…。

 

性技を極めるのはまだまだ先のことになりそうじゃ…。蓮華よ、もう服を着てよいぞ。……今日は無理を言ってすまなかった。

 

……いえ…。

 

ふうっ…。そちを満足させられなかったのは残念だったが心地よい疲れだ。久しぶりにそちと肌を合わせておったからかの。うん…。余は眠うなってきた。蓮華よ。昼寝をするぞ。膝枕をしてくれい。

 

えっ!(////

 

ん? 以前はよくやってくれたではないか。駄目なのか?

 

い、いえ…。そのっ…(////

 

どうしたのだ? もしや先程のモミモミの無理な姿勢で足を痛めたのか?

 

だ、大丈夫です。なんでもありません…。で、ではベッドへ…(////

 

うむっ。てくてく。ベッドにバスン。

 

モジモジ…。とぼとぼ。上着を着て着て、ベッドにポスン(////

 

余が眠るまでの間でよい。眠り込んだら枕に替えてくれい。

 

は、はい。で、では王子、頭を私の膝にお乗せ下さい…。ゆっくり、そうです、スカートの上に…(////

 

んっ。では。ゴロンっと。

 

ううっ…(////

 

……ん? クンクン…。んんっ? クンクン…。

 

あぁっ…もぅ…(////

 

何の匂いであろう…?

 

さ、さぁ…?(////

 

何処から…。

 

……(////

 

ん? ミニスカをペラッ。

 

キャッ! 王子っ! 何するんですかっ!!(////

 

クンクン…。クンクン…。

 

……(////

 

ふむ…。甘いような、すっぱいような…。

 

す、すみません…。シ、シャワーを浴びていませんので汗の匂いが…(////

 

汗かのう…?

 

汗ですっ!(////

 

う、うむっ。気にするでないぞ。今日は暑かったからな。汗を掻くのは当然である。それに…クンクン…。この蓮華の匂い、余は嫌いではない。嗅ぐと心が休まるのだ…。

 

ううっ…(////

 

クンクン…。うん…。よい匂いである…。

 

……(////

 

余は疲れた…。少し眠る…。

 



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まどかの章 07 ★☆☆ ヒルトンホテル(王族専用貴賓室)

王子…。ゆさゆさ。王子…。ゆさゆさ。

 

う、う~ん。

 

お目覚め下さい。3時のおやつの時間ですよ?

 

蓮華か…。うううっ。眠いのじゃ…。もう少し…寝かせてくれい…。

 

王子の大好物のホットケーキなのに?

 

ん…。んっ! 布団、ガバッ!! ホットケーキとな!?

 

ふふふっ。ベッドまでお持ちしましょうか? それともちゃんと起きてテーブルで食べます?

 

蓮華よ。

 

はい。

 

ホットケーキとは、テーブルの上に置かれたものを、椅子に腰掛け、ミルクを飲みつつ、ナイフとフォークで食するのが礼儀なのである。

 

では早く起きて下さい。お食事の用意が出来ておりますので。冷めてしまってはこれもホットケーキの礼儀に反するのではないですか?

 

うむっ。では起きるか。ふぁ~~っ…。よく寝たわい。てくてく…。テーブルの席にポスン。んっ? 時間停止のメビウスの輪、解けておるのか?

 

はい。王子が眠ってしまわれたら自然に解けてしまいました。

 

そうか…。そちと2人だけの時間が解けたか。そちは人妻であるからな。いつまでも夫ではない余が独占するのは自然の摂理に反するということなのであろう。残念ではあるが仕方ない…。そちとモミモミの練習をするのも今後は控えることにするか…。ナプキンを首にシメシメ。

 

そうですね…。王子はモミモミマスターとなられましたので、もう蓮華がお教えすることは何もありませんし…。

 

モミモミマスター…。余がか? しかしそちは余のモミモミに全く…。

 

あはははっ…。実は蓮華も王子と同じく先程は一杯一杯だったりして…(////

 

なっ…。では辛かったであろう。余に我慢することなどないのじゃ。嫌だと言ってくれたら直ぐ止めたのだぞ? ナイフとフォークを持ち持ち。

 

辛くはありましたが…(////

 

んっ?

 

嫌では…なかったのです…(////

 

そ、そうか…。え、えっ~と、で、では準備万端整ったところで、そ、そろそろホットケーキを食すことにするかのっ、そちも席に着いて余と一緒に食べるのじゃ(////

 

はい…(//// では、私もご一緒させて頂きます。てくてく…。王子のテーブルの向かいの席にポスン。

 

んっ? そちはコーヒーだけでよいのか?

 

今日はアイスモナカを頂きましたので、これ以上のカロリー摂取は控えようかと。からだのキレが悪くなっては仕事に差し支えますし。

 

そうか。余はホットケーキである。銀のお椀をパカン。ほう…。流石はヒルトンの三ツ星レストラン、見事なホットケーキなのじゃ。ふっくらホカホカした小振りのパンケーキ二枚重ねの上に、溶け掛けのバターがポツンとひとつのっておる。例えるなら…。

 

ふふっ。例えるなら…なんです? コーヒー、コクコク…。

 

そう…。例えるなら、乙女の乳首であるのう。

 

ブフォッ! ゴホゴホ…ゴホゴホ…(////

 

ふはははっ! キリノから少し体重を増やすように言われておるからの。いっぱい食べるのじゃ! うむっ。半分溶けたバターの甘い香りが食欲をそそるぞ。例えるなら、新妻の乳首から母乳が滴り落ちるが如くというべきか。

 

ブフォッフォッ!! ゴホゴホ…ゴホゴホ…(////

 

さぁ、いよいよナイフを乳頭…。じゃない。入刀するぞ。…って、いかんいかん。その前に大切なことを忘れておった。このメイプルシロップを、だな…。大量にトロ~っと…。ふはははっ。ヌルヌルのグチョグチョであるぞ。例えるなら…。

 

王子っ!(////

 

んっ? なんじゃ?

 

もう少し静かに食べてくれません?(////

 

う、うむ…。少し、はしゃぎ過ぎであったかな。牛乳でも飲んで心を落ち着かせよう…。コクコク…。むむっ! こ、この新妻の人肌ほどに暖められたホットミルク、蜂蜜入りかっ!! 何の花の蜜であろう。蓮華の花の蜜であろうかのう。ふはははっ! コクコク…。コクコク…。ふはははっ! ホットケーキによく合いよるわい。ふはははっ!

 

……。

 

ホットケーキ、ムシャムシャ。ふはははっ! 溶け掛かったバターの先端をペロペロ。うむっ! 甘ったるい匂いなのに舐めると少し塩辛いのが実にいいのう! 余はここが一番に好きなのじゃ! ペロペロ。ペロペロ。ふはははっ! ホットミルク、コクコク…。ふはははっ! 濃厚で甘い蜜がミルクの中に入っておって癖になる味じゃ! 蓮華よ、もっと蜜はないのかのう。あればそちに入れて貰いたいのじゃが。ふはははっ! ムシャムシャ。コクコク…。ふはははっ! ムシャムシャ。コクコク…。ふはははっ!

 

机、バンッ!!!! ミ☆ ミ☆ ミ☆

 

ふへぇっ!?

 

ギロッ!

 

はわわわわっ…。れっ、蓮華、ど、どうしたのじゃ。そなた物凄く怒っておらぬか? ムシャムシャ。コクコク…。

 

ハァ…。王子、食べるの中止…。説教タイムです。

 

ふえぇぇ…。

 

……王子、最近ちょっとオカシイですよ? 精通なされる前の王子はあんなにもご聡明だったのに…。ちゃんと欲求不満の解消、出来てますか? 何かスポーツなどされてはどうです。

 

ス、スポーツのう…。う、うむっ。それなら心配致すな。身体を動かすこと日々心掛けておる。最近は朝の6時に起きて城の周りをグルリと散歩しておるのじゃ。

 

それってエッチな漫画がまた落ちてないか探し歩いてるだけなんじゃないですか?

 

そ、そうとも言うかの…(////

 

駄目ですよ。余計に心と体にモヤモヤが溜まってしまいます。テニスとか水泳とか、ちゃんとした運動をなさって下さい。

 

う、うむっ…。

 

あと…。ア、アレは…適度にされてます?(////

 

アレとは?

 

アレ…は、アレですよ。モジモジ…(////

 

んっ??

 

で、ですからっ! じっ、自慰です…。ちゃんと自分で処理されてますか?(////

 

ふん…。そのようなみっともない真似が出来るか。

 

し、してないのですか? まさか、一度も?

 

当たり前であろう。余を誰だと思っておるのだ。えっへん。

 

威張るところではないと思いますが、そうか…。してませんか…。だからなのかなぁ…。

 

普通、自慰などやるものなのか? 自分でやるなど自然の摂理に反しておると思うぞ。変態行為ではないのか?

 

う~ん…。どうでしょう。私は女ですから詳しくは分かりませんが、男の方はほぼ全員がやっているようですよ? 医学的にも適度にやった方が良いという話も聞きます。やり過ぎるのはそれはそれで問題かと思いますが…。

 

余は嫌じゃ。そのようなこと一人でしとうない。

 

ハァ…。困ったなぁ…って、あれっ? 一人でしてないってことは、王子、では精通はどのように?

 

夢でのう。

 

夢精ですか…。

 

んっ? 何か言いたそうな顔であるな。まさか、どの様な夢であったか聞きたいのか? エッチじゃのう蓮華は…(////

 

言わなくて結構です。でも王子の欲求不満がここまで溜まって大丈夫なのかな…。蓮華はちょっと心配になりますよ…。

 

で、では余がするのを、そのっ、ちょっとでよいから、そちに手伝って貰いたいのだ…。二人でならやってもよいのじゃ…(////

 

だっ、駄目ですよ。私、結婚してるのに…。モジモジ…(////

 

そうか…。

 

……(////

 

……なら、城のメイドにでも頼もうかのう。

 

えっ…。

 

ふはははっ。水連か桔梗に…。むむっ、桜の方がよいか。いやまだ少し幼過ぎるか。ふはははっ。悩むのう。

 

ショボーン…。

 

んっ? な、なぜ、そのように悲しい顔をするのだ? 蓮華よ、顔を上げるのじゃ…って、そち、ま、まさか泣いておるのか? はわわわわっ。じょ、冗談じゃぞ? メイド達にそのような淫らなことを無理強いさせる余ではない。そ、それに誰でも見境なく、そのっ、手伝って欲しいという訳でもないのだ。ま、まぁ、そちには、ちょっとやって貰いたいなぁ~とは思ったがな(////

 

王子はこんなにも欲求不満が溜まっていて…このような時にお慰めするのは王子付のお庭番である私の役目…でも私には夫が…。私に出来ないなら直ぐにも他の者にさせなければ…。そう頭では分かっているんです…。でも私…他の者には…。王子…私は…。

 

気にするでない。欲求不満が高まり過ぎれば、またアレな夢でも見るであろう。

 

すみません…役に立たなくて…。

 

い、いや。違うのだ。役に立っておるのだ(////

 

……?

 

えっと、実はな、アレな夢の中では、いつもそちが余を慰めてくれるのじゃ…。それで朝起きたら…解消されておる…。だから、そちは今のままでよいのじゃ…(////

 

……(////

 

……(////

 

ピピピピピ…。ピピピピピ…。ピピピピピ…。

 

ん? 何の音じゃ?

 

…えっ? あっ!

 

そちの携帯が鳴っておったのか?

 

いえ…。ゴソゴソ。これはポケベルです。お庭番衆全員に緊急召集令が掛かったようです。集合地点はマギカ国境。制式装備で来るようにと…。それ以外の情報は無しか…。

 

仕事であるか。しかし制式装備とは、ただ事ではないようじゃの。

 

そうですね…。今でこそお庭番衆は王子直属の諜報部隊ですが、そのルーツは世界最強といわれた皇帝親衛隊…。我々の制式装備は彼らが戦場で使っていた千の神具を組み合わせ身に纏う重装備なものです。今の時代では強力過ぎるので使う相手もなく封印されていたのですが…。もしかすると巴家を攻略していたマギカの軍団がエロスへ越境の動きを見せているのかも知れません。

 

うむっ。では直ぐに行くがよい。

 

駄目です。護衛も無しに王子一人を置いて行くなんて出来ません。一度、一緒にお城に戻りましょう。それから…。

 

余はテレポートが苦手じゃ。余と一緒では時間が掛かってしまう。一刻を争うような国の存亡の危機かも知れぬのに、王子たる余がそちの足を引っ張ってどうする。

 

しかし…。

 

それに余はまだホットケーキを食し終えておらぬ。蓮華よ。直ぐに召集令に応じ、マギカとの国境へ行くのじゃ。余ではなくエロスを守れ。これは命令である。

 



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まどかの章 08 ☆☆☆ ヒルトンホテル(王族専用貴賓室)

……とは言ったものの。一人でホットケーキを食べるというのは、こうも侘しいものであるとは…。あれ程に美味しかった筈であるのに…。ムシャムシャ…。ううっ。まるで粘土を食べているようじゃ。誰かおれば…。ハァ…。あのとき性奴を買えておれば…。そういえばマミはどうしておるであろう。もう誰かに買われてしまったのであろうか…。

 

コンコン。

 

んっ? 誰じゃ? まさか蓮華が心配になって戻って来たのではあるまいな…。てくてく…。ドアをガチャ。

 

くくくっ。お久しぶり…

 

バタン!!

 

くくくっ。王子、貴方の忠実なしもべ、サキエルにございますよ? くくくっ。お部屋に入れて下さいませ。コンコン。

 

ううっ…。嫌なものを見たのじゃ。気分が悪くなったから、昼寝の続きをするのじゃ。

 

コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。

 

うるさいのじゃ…。ガチャ。

 

くくくっ。流石は王子、いきなりの放置プレイとは。

 

そちは今日、重要な用があると休みを取っておったのではないのか?

 

くくくっ。お昼までに済みましてございますよ。

 

折角取った休みなのだ。用が済んだのなら残りの半日、何処かで羽を伸ばしておればよかろうに。

 

くくくっ。王子にお土産を買って参りましたので一刻も早くお届けしようと。

 

土産か…。それは嬉しいのう…。

 

くくくっ。反応が薄うございますぞ。

 

そちの土産はいつも特価105ゴールドの値札が貼られたプレステ1の糞ゲーと相場が決まっておるからな。

 

くくくっ。お気に召しませぬか? 厳選しているつもりなのですが。

 

厳選した結果がどうしていつもプレステ1のゲームになるのだ。いくら激安だからといって10年以上昔のゲームはなかろう。

 

くくくっ。安いからプレステ1のゲームを買っている訳ではございませんぞ。面白いから買っているだけにございます。プレステ1には神ゲーが数多くございますので…。

 

そちは面白いのかも知れぬが、余は面白くないのだ。例えばこの前のアローン・イン・ザ・ダーク2、アレはなんじゃ。ゲームオーバーになる度に岸壁から主人公の死体がゴミの如く夜の海へと投げ捨てられるのじゃぞ? ゲーム内容がシュール過ぎるわ。余の年を考えよ。

 

くくくっ。アローン・イン・ザ・ダーク2は世界中で大ヒットした人気ホラーゲームの続編にございますが…。はてさて、では一体どのようなゲームがよろしいのでございましょうか。くくくっ。王子の好きなゲーム、具体的にいくつか挙げてはくれませぬか。今後の参考と致しますので…。

 

余の好きなゲーム? うむっ…。そうじゃのう…。ロールプレイングゲームでは幻想水滸伝2かの。3Dポリゴンを使わず、丁寧に昔ながらのドット絵で描かれたキャラが可愛らしいのじゃ。戦闘もサクサクで、ファミコン時代の古きよきファイナルファンタジーを正統進化させたようなゲームであった。いや主人公は喋らぬからドラクエの進化系かのう。どちらにせよ制作者のこのゲームに掛ける並々ならぬ情熱、愛情が伝わって来るのだ。どのキャラも立っておったし。最高じゃ。

 

くくくっ。特にヒロインのナナミ様は可愛いですからな。

 

うむっ。主人公の少年の血の繋がらない姉であるな。まだ幼いというのにシッカリ者で弟想いの良い姉である。ゲームをしておると、弟を守ってあげたいというナナミの一生懸命な想いが伝わって、だからこちらも姉を守りたいという気持ちが起きてだな。ゲームに引き込まれるのである。

 

くくくっ。なるほど。他にはどのような…。

 

アドベンチャーゲームではガンパレードマーチかの。プレステ1の性能限界を超えたグラは今の時代でも通用する程に綺麗であるし、なにより人類が奇妙な生物に追い込まれ絶滅寸前という独特な雰囲気がゲームに漂っておるのが秀逸じゃ。そしてそんな絶望的設定であるのにゲームの中の世界は現在の我々の世界と殆ど同じでとても現実的で、でも所々に戦争を感じさせるところもあって、ゲームをしておると酷く不安な気持ちにさせられるのだ。ゲームのシステム面も素晴らしい。自由度、完成度、共に高いレベルにある。学校や街を歩き回り、キャラと会話を重ね好感度を上げることで男女誰とでもラブラブな関係になれるのだ。ギャルゲーやBLゲーとしても楽しむことが出来るぞ。どのキャラも個性があって魅力的だから楽しいのじゃ。

 

くくくっ。特にヒロインの舞様は可愛いですからな。

 

うむっ。芝村という謎集団に属しておる娘で、口調も独特で始めは何を言っておるのか分からんところがあるが、好感度が上がってラブラブになると凄くデレてくるのじゃ。それなのにとても恥ずかしがり屋で素直になりきれず、ツンツンしておるところも残っておるからの。いつまでも初々しく可愛い奴で、だからこの者、主人公が乗る複座式ロボの後席パイロットでもあるのだが、彼女と共に戦い、そして守りたいという気持ちが起きてだな、ゲームに引き込まれるのである。

 

くくくっ。なるほど、つまりヒロインが可愛いゲームを買ってくればよろしいのでございますね。しかしそれならアローン・イン・ザ・ダーク2にも主人公の幼い娘がおりましたが、あの子はお気に召さなかったのでございましょうか。

 

そういえば悪霊に憑かれた蝋人形のような娘がおったな…。気に入るかどうか以前の問題じゃ。怖いわ。あれならまだ襲って来る魔物の方が愛嬌があるのじゃ。

 

くくくっ。海外のゲームクリエーターとの感覚のギャップが問題なのでございましょうな。生まれ育った環境が違うのですから、当然といえば当然のことなのかも知れません。

 

そちと余の感覚のギャップもかなり問題があるがな。

 

くくくっ。王子。

 

なんじゃ?

 

くくくっ。エーべルージュというゲーム、ご存知ですかな?

 

エーべルージュ!? ど、どうしたのじゃ。暴投ばかりのお前がいきなり精密にコントロールされた内角低めのツーシームを投げ込んで来るとは…。う、うむ…。エーべルージュ、勿論、知っておるが…。

 

くくくっ。プレイされたことは、ございますかな?

 

あ、あぁ…。昔やったことがあるぞ。かなり古いゲームであるが、結構面白いのだ。懐かしいのう。先ずオープニングに流れる曲が心地よいのだ。声優も上手いし、絵もプレステ1のギャルゲーにありがちな前時代的アニメ絵でなく、シッカリと描けたアニメ絵なので古臭く感じないのじゃ。…ただなぁ、ゲーム内で出来ることが限られていて、ゲームの進行が基本単調なのと、魔法学校の初等部二年と高等部三年の計五年を過ごすという一度やったらお腹一杯になる程に長い期間プレイするのが、ちょっと残念なところであるな。イベントも全キャラ共通なものばかりなので攻略キャラを変えて再プレイする気になれんのじゃ。とはいえ、余がプレイしたのはもう随分と昔のこと。今ならやれるような気がするのじゃ。そう…。今なら世界の謎を解き明かして真のエンディングを迎えられるやも知れぬ…。

 

くくくっ。それはようございました。ではお土産を…。巾着袋ごそごそ…。

 

なんと今回のお土産はエーべルージュであったか! それならそうと始めに言ってくれればよいのに。ふはははっ。よしサキエルよ、一緒にこの難攻不落のゲームを攻略しようぞ!

 

くくくっ。では、コレを。

 

ありがとうサキエル…。礼を言うぞ。どれどれ…。ほう…。アローン・イン・ザ・ダーク…3DO版か…。もはやプレステのゲームですらないのだな…。

 

くくくっ。世界の松下電器産業、パナソニックが20年程前に販売したゲーム機、3DOのゲームソフトにございます。プレステにはアローン・イン・ザ・ダーク2はございますが、残念ながらアローン・イン・ザ・ダーク1はございませんので。

 



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まどかの章 09 ★☆☆ アローン・イン・ザ・ダーク

もうよい…。余は3DOなど持っておらん。そのゲームは出来ぬ。余はこれから昼寝をするぞ。布団を被って寝るのじゃ。この布団の中だけが余の王国であるわ。これぞ、まさに、アローン・イン・ザ・ダークである。ふふふっ。ゲームをせずともゲームが出来ておるわ。ふはははっ…。うううっ…。

 

くくくっ。元気をお出しくださいませ。一国の王となられる方がこのようなことで拗ねていてはいけませぬ。布団をゆさゆさ。

 

うううっ。余の王国を揺らすでないぞ。

 

くくくっ。仕方ありませんな。実はさっきのお土産は冗談にございますよ。3DO版アローン・イン・ザ・ダークは私のゲームコレクションとして買い求めたもの…。王子のお土産は別にございます。

 

……。

 

くくくっ…。

 

それで?

 

くくくっ。はい?

 

土産とは一体なんなのじゃ? エーべルージュなのか?

 

くくくっ。いえ、違いますが。いい加減、出て来てはくれませぬか? 布団をポコポコ。

 

……余の王国の国歌、いま決まったぞ。エーべルージュのテーマ曲じゃ。さっきからあの曲が頭の中で鳴り響いておるわ。そしてサキエルよ、そちを敵性国家と見なすことが全会一致で可決されたのじゃ。今後、余の王国への不当な干渉は実力を持ってこれを排除するから心しておけ。

 

くくくっ。お土産はエーべルージュではありませんが、きっと王子にお気に召して戴けると…。不肖サキエル、確信致しておりますが…。

 

どうせ糞ゲーであろう?

 

くくくっ。ゲームではございません。王子へのお土産はスレーブドームにて買った性奴にございます。

 

馬鹿なこと申すな…。いくら純真な余でもそんな嘘には騙されないのじゃ。ド田舎のサララ砂漠の領主に過ぎないお前に性奴など買える訳がなかろう。時給780ゴールドの執事の給金では言わずもがなだ。余でも買えなかったのだぞ? 嘘を付くならもう少しマシな嘘を付くのだな。

 

くくくっ。実はサララ砂漠で油田が見つかりまして。

 

油田!?

 

くくくっ。はい。エクソン・モービルにその採掘権を売り渡す為、今日、お休みを頂戴し、契約書にサインをした次第にございます。

 

そういえば蓮華がサララの開発がどうとか、電話でキリノがエロスの財政が油田関連の税収増で当面凌げそうだとか、言っておったな…。最近、性奴を買うことばかりに気を取られて全く気にも留めなかったが…。本当に本当なのか?

 

くくくっ。嘘か本当か、この者を王子の王国へ遣わしましょう。布団をペラッと捲って、ポイッ。

 

わわわっ! なっ、何か入って来たのじゃ。こ、こらっ、止めるのだっ。余のお布団の中に入って来るでないっ。侵略行為には断固とした態度で臨むのじゃ。って、うわっ、近寄るなっ! 余の体に触れるでないっ! 腕を放すのじゃ! ああっ、もうっ。こら足を掴むな! サキエル! 止めるのじゃ!!

 

くくくっ。わたくしお布団の外におりましてございます。いま入れたのは王子へのお土産。くくくっ。可愛い性奴にございますぞ。

 

せ、性奴だと?

 

くくくっ。はい。王子の性奴ですから、主である王子はその者に何をしてもよろしいのでございますよ。さぁ、どうぞ、お好きなように…。

 

お好きなようにって…お前、そのようなこと初対面の者にやるのは妄想の中だけの話なのだ。人見知りが激しくて、ナイーブで、シャイで、チェリーボーイな余に出来る訳が…。

 

くくくっ。存分に、ジックリ、タップリ、お楽しみ下さいませ。くくくっ。性交だけはせぬようお気を付け下さい。では、わたくし、お邪魔になってはいけませんので、これにて失礼致します。くくくっ。

 

まっ、待て、サキエル。もうアローン・イン・ザ・ダークごっこは終わりにするから。そちの好きなゲームを貶したことも謝るから。待つのだ、余を置いて行くな。お布団モゾモゾ、モゾモゾ…。出口はどこじゃ…って、んっ!? 息づかいが…。

 

あんたがオレのご主人様? 腕も足も細いね、可愛いな。まだ子供なのか?(////

 

わわわわっ…。喋ったのじゃ! 女の子の声なのじゃ! 声が大きいのじゃ!(////

 

えへへっ…。王子の首に両腕をからめて、頬で頬をスリスリ…。わっ…。ホッペがスベスベだ…。冷たくて気持ちいい…。スリスリ。スリスリ(////

 

はううっ…(////

 

足もヒンヤリして…スベスベしてる…。ふとももに足をからめて、スリスリ、スリスリ…(////

 

止めいっ!! も、もうっ、止めるのだっ!! 布団ガバッ!!(////

 

ん? ジロジロ…。へぇ…。あんた顔も凄く可愛いじゃん。気に入ったよ(////

 

そ、そなたは(////

 

オレは佐倉杏子…よろしくねっ。ホッペにチュッ(////

 

はわわわわっ…(////

 

抱きっ…。ギュッ…。うん…アンタになら…性奴…なってやってもいいかな…(////

 

うううっ…腰に抱きつかれたのじゃ…。腰をフリフリ…。うううっ…離れないのじゃ…(////

 



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まどかの章 10 ★★☆ ヒルトンホテル(王族専用貴賓室)

えへへっ。ご主人さま。さっそく始めようぜ。チャイナ服っぽい朱色のスーツを脱ぎ脱ぎ。ふうっ、よいしょ。バサッ。(ベッドにチョコンと座って八重歯可愛く微笑む杏子は唐突にサバサバとした感じに服を脱ぎ始め、あっという間に下着のみのお姿! その染みひとつない純白の木綿のおシャツとおパンツは、まさにシンプル・イズ・ベストなのでございますぞっ!)

 

わわわっ。そちは何をやっておるのだっ! いきなりそのようなことをしては駄目なのじゃ!(////

 

駄目って…あぁ、シャワー掛かった方がいいか? 朝に掛かったばっかであんまり汗もかいてないからさ、汚くないと思うんだけど…。シャツのそでを鼻に付けてクンクン…。シャツのおへその裾をペラリと捲ってクンクン…。うん、そんなに臭わないし…。どうする?

 

そういうことを言っておるのでは…なく…だな…。そちと余は…知り合って間もない…から…。だから…そのっ…。うん…。えっと…。杏子よ。そんなに臭わないとは、ちょっとは臭うということなのであろうか?

 

……そりゃ…まぁ…ちょっとは…(////

 

ど、どのくらい…なのかの…?(////

 

どのくらいって…。シャツの襟首を伸ばしてクンクン…。ちょっとは…ちょっとさ…(////

 

ちょっとでは分からぬのだ。ううっ…。気になるのじゃ…。どのようなものなのじゃ! 余にも少し嗅がせるのじゃ! 杏子にガバッと覆い被さり!(////

 

うわっ!(////

 

杏子のお腹へ顔を埋めるように圧しつけてシャツをクンクン…。う、うむっ…(////

 

オイ…コラ…やめろって…(////

 

杏子のシャツの裾をペラリと捲って、オヘソの辺りの肌を直にクンクン…。ふ、ふむっ…(////

 

……(////

 

微かに石鹸の匂いがするだけで、ちっとも汗臭くないのだ…。クンクン…クンクン…。

 

そ、そうか…よかった…って、も、もうオレの臭い嗅ぐのやめろよ…。気にならないならこのまま始めようぜ…。オレさ…もう我慢が…(////

 

いや、こうなったらトコトンやるのじゃ。杏子のシャツの裾をグイッと鎖骨の辺りまで一気に巻き上げ、腕の付け根、杏子の脇の間に顔を埋めて、直にクンクン…。

 

こらっ! もうっ!(////

 

杏子。

 

な、なんだよ(////

 

万歳するのじゃ。腕を上げて脇を広げるのじゃ。はい、ばんざ~いじゃ。

 

うううっ…。ばん…ざい…(////

 

うむっ…。クンクン…クンクン…。

 

ああっ…もうっ、オレ、シャワー浴びてくる。脇を閉じ閉じして、王子に背を向けるように、からだを捻ってコロリン(////

 

ちょっと待つのじゃ。……杏子、動いてはならん。お前の主である余は動いてよいと言っておらんぞ。待て、じゃ。

 

ええっ…(////

 

待て、じゃ。

 

わ、わかったよ…(////

 

先程と同じポーズになるのじゃ。仰向けに横になって、ばんざ~いじゃ。

 

うん…(////

 

……うむっ。クンクン…クンクン…。

 

……(////

 

うむっ、やっとそれらしい臭いがしてきたのだ。ふはははっ。杏子よ、主人である余に、このような汗臭い穢れた身体を差し出すとは実にけしからんのじゃ。

 

なんだよ…。そんなとこ嗅がれたらさ…。そりゃ臭う…かも知んないけどよ…。そういう言い方しなくてもいいだろ…。自分から嗅いでおいて失礼にも程があるよ…。

 

失礼だと? ふふん。なに寝言を言っておる。主が自らの所有物である性奴にわきまえる礼儀などあるものか。ふはははっ。ふはははっ。

 

クソッ…。こいつ急に…。頭に乗りやがって…。

 

ふはははっ。ご主人様にそのような下品な言葉を使ってはいかんぞ。ふはははっ。そうじゃ、丁度よい。そちが余に相応しき最上の性奴となるよう、今からジックリと時間を掛けて徹底的に躾けるのだ。あぁ…胸が高鳴るのぅ…。姉上とはお互いがお互いの主人であり性奴となる契約をしたが、そちとは常に余が主人でそちが性奴…。同じ性奴であるのに…なんであろう、このドロドロと黒く湧き上がるそちへの想いは…。本来、人が持つ愛情であろう姉上への純粋な想いとは全く別種の穢れた想い…。杏子よ、このようなものも愛情と呼んでよいのであろうか…?

 

知るか。

 

ふはははっ。可愛い奴じゃ。その反抗的な態度が益々余の心を黒く染めてしまうではないか。ふはははっ。杏子。主人である余にそのような生意気な口を利いてすみませんでしたと謝るのだ。

 

誰が謝るか。馬鹿。

 

……では仕方ないの。明日にでもスレーブドームへ行き、そちを他の奴隷とトレードするのだ。

 

えっ…。

 

仕方あるまい。サーカスの猛獣使いのように鞭を振るってそちに言うことを聞かせるなど余はやりたくないし、そちも嫌であろう。縁が無かったということじゃ。

 

うううっ…。

 

なっ、泣いても駄目なのじゃ。余の理想の性奴は従順…。

 

うわぁっ…。ううぁっ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

はわわわわっ。泣き止むのじゃ。オロオロ…オロオロ…。ううっ…。なっ、なんなのじゃ、余のやり方に不満があるならそちにとってトレードは願ったり叶ったりであろう?

 

ご主人さま…である…。ヒクッ…ヒクッ…。貴方さまに…。ヒクッ…。あのような…生意気な口を利いてすみませんでした。ヒクッ…ヒクッ…。

 

わ、わかったのじゃ、もう謝らなくていいのだ。口調も前のままでよい。トレードは無しじゃ。

 

ヒクッ…ヒクッ…。

 

ま、まぁ、そちも奴隷になったばかりだからな、当分の間は生意気な態度も口の利き方もある程度は目を瞑るのだ。しかしこれだけは覚えておくのじゃぞ。そちが余の性奴なら、そちの身体はそちの物ではない。余の物だ。よいか? 今度から余に会うときは身体の隅々まで洗い、日々抜かりなく管理し、手入れしておくのだぞ? 余の為にだ。

 

うん…。わかったよ。

 

では、服を脱ぐのじゃ。

 

えっ?

 

そちは余の所有物である。どのような姿が余にとって一番望ましいか、理想像を導き出す為、今のそちの身体を徹底的に調べるのだ。余の好みだからと無理なことを言っても仕方ないし、逆にハードルを低くしても仕方ないからの。ん? 何を恥ずかしがっておる。主に喜ばれるよう自分を高めるのは性奴の勤めであるぞ。さっさとシャツを脱ぐのだ。

 

う、うん…(////

 



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まどかの章 11 ★★☆ ヒルトンホテル(王族専用貴賓室)

ハァ…。なんともこれは…。杏子よ。そちの上半身を精査した結果を端的に申すぞ。先ず胸についてなのだが…。そちを初めて見たとき、外見からある程度は覚悟しておったが、まさかここまでガッカリなことになっておるとは思わなかったぞ。背中はこのように綺麗であるのに…残念なことじゃ…。

 

……オレの胸? 普通だと思うけど?

 

いや、いやいや…。これは流石に小さい部類に入ると思うぞ。小さいというより無いと言った方が良いくらいじゃ。膨らみといえるまでに育っておらん。うーん…。仕方ないのう、アレをやってみるか…。すくっと立ち上がって、テクテク…。杏子の背後にさり気なく廻って…。

 

ん?

 

しゃがみ込んで、背中越しにモミモミ。

 

うわわっ!(////

 

声を出すでない。胸が成長するようにマッサージをしておるだけじゃ。寄せて…上げて…モミモミ。モミモミ。

 

だってぇ…。ぅっっ…(////

 

巨乳好きという訳ではないが、全く胸が無いのは…。モミモミ。モミモミ。如何なものか…。モミモミ。モミモミ。

 

ふぁ…ぁっ…ぅ…ひぁっ…っ…ぁんっ…っ…(////

 

こりゃ駄目じゃ、まるで手ごたえがない…。そちは確か13歳であったな?

 

う、うん…。

 

余より3歳も年上である。しかしそちの身体は余よりも随分と小柄だ。胸だけでなく身体全体の発育がよくないのであろう。背はこのように弓なりに綺麗に張っておって、肌も乳白色の大理石のように艶があって、惚れ惚れするのだが…。指をツツツ~ッ。

 

キャ~ッ!(////

 

ハァ…。そもそもの体つきがこのように貧弱では、いくらモミモミマスターである余がモミモミしたとしても、大した効果は見込めぬかも知れぬな…。

 

オレ…子供の頃から、ちっちゃかったから…。

 

そちは日頃どのようなモノを食しておるのだ?

 

……ポッキー…エンゼルパイ…じゃがりこ…ポリンキー…。あとはケーキとか果物…。リンゴとか…。

 

オヤツばかりではないか…。美容と健康に悪いのだ。背も伸びぬぞ。もっとお野菜やお魚を食べるのだ。

 

だってお菓子好きなんだもん…。

 

……お腹の辺りをサワサワ。

 

キャッ!(////

 

うむっ。ここはほんの少しであるが出ておる…。そしてプニュプニュと軟らかい…。

 

馬鹿っ…(////

 

……きつい事を言うようだが、そちは身も心もまるで子供だ。胸を出さずに腹を出してどうする。幼児体型のままで喜ぶのは一部の変態のみであるぞ。余の性奴として相応しくないのじゃ。

 

うううっ…酷いよ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

泣くでない…。今は相応しくないからこれから変わろうという主旨の説教だからな? 見限っておるとか、愛想を尽かせておるとかではないからの。勘違いするでないぞ? それにいくら泣いても問題の本質は解決せぬ。泣いて誰か他の者に解決を委ねて逃げておっては、また別の似たような問題が起きて問題は山積するばかりなのじゃ。勿論、一人で出来ぬときは他人に相談すべきだが、結局は自分で解決するより他にない。これは余の姉上から教えられたのだぞ? 姉上は初めは怖がりでな、いつも怯えて何も出来ずに泣いてばかりであったという。しかし今はどうだ。まるで伝説の淫獣ドラゴンのように傍若無人に振る舞って手当たり次第に近衛の女どもを貪り食っておる…。うん…前の方がよかったかも知れん…。い、いや、そうではなく、人は変われるということを言いたいのだ。

 

人は変われる…。

 

妙な自己啓発セミナーのように、今のそちの人格を否定して前向きな人格になるよう促しておる訳ではない。難しく考えることはないのだ。単にお腹をへこませて胸が膨らむよう可能な限りの努力をせよと。それだけのことじゃ。その結果として、少し前向きな考えになるやもしれんがな、それはあくまで副産物に過ぎぬ。結果であって目的ではない。余の姉上も、前向きな生き方がしたくてああなったのではないぞ? 余と一緒にいる為にあらゆる困難を乗り越えた結果なのだ。

 

……あんたのお姉ちゃん頑張ったんだね。弟想いだったんだ。

 

世間にはまだ公表しておらんが、つい先日余のハーレム候補となったキリノが余の姉上なのじゃ。

 

それって近親相姦なんじゃ…?

 

うむっ。腹違いとはいえ実の姉上である。余と姉上が結ばれるなど本来は許されることではないが、姉上の力はあらゆる条理や権力を覆して、その意思にはもはや誰も逆らえぬ。姉上は余と一緒になりたいが為に絶対の力を持つに至ったのだ。そちはどうなのじゃ、余とそこまでして一緒になりたいと思うのか? 余の奴隷となることに納得出来るのか? そちと余は奴隷と主人の一方的な関係でしかないのだぞ? これが最終確認じゃ、もう引き返せぬ。本当にそれでよいのだな?

 

うん…それでいいよ…。ご主人様と奴隷の関係でいいからあんたと一緒にいたい…。だってオレ奴隷なんだし…。誰かの奴隷になるしか道がないなら…せめて好きになった人の奴隷になりたいんだ。

 

余を好きと申すか? 分からぬのう…。そちと余はさっき出会ったばかりではないか。恋愛フラグなどまだ立ちようもないと思うが…。何故、余が好きなのじゃ?

 

そ、それは…。えっと…そのう…。あ、あんた可愛いし…。声も綺麗だしさ…(////

 

確かに…見た目というのは重要なポイントであるな。その点、美少年である余は満点と言って良いであろう。一目惚れして好きになるのも分からなくはないが、しかし主に対して好きだから一緒になりたいというのは、余の性奴として致命的なマイナスポイントであるといわざる終えぬ。残念ながらそちは性奴失格じゃ。

 

…えっ?

 

余はエロスの王となる男である。この国のあらゆるものの頂点に君臨するが、しかし性約には従わねばならぬ。反しても処罰する者などもうおらぬが、自身を律し、性約を守ろうとする姿勢そのものがエロスの王たる者の証なのだ。性約にはハーレムの者以外との性交は禁止されておる。余が性奴に望むは、ハーレム候補と性交に至るまでの過程を練習する相手なのじゃ。そしてもうひとつ、こちらの方がより重要なことだが、余の命令に絶対服従して何でも素直に言うがままになってくれる相手を余は求めておるのだ。余はハーレム候補たちを愛しておる。だから酷いことや横暴な振る舞いはしたくない。しかし余は聖人ではない。表があれば裏もある。表を満たすのがハーレム候補、裏を満たすのが性奴。つまりそちなのだ。

 

あんたを好きになっちゃ駄目なのか? 酷いことや横暴な振る舞いをされたって、好きだったら耐えられるじゃないか。いや…好きでもないのにそんなの耐えられる訳ないよ…。

 

ハーレム候補には余への愛を求めて欲しい。そして性奴には余が持つ金や権力を求めて欲しい。毒をもって毒を征す。余の奴隷でいた方が、安定して良い暮らしが出来て自分にとって得であると、打算的に割り切って考えてくれる者が余の性奴として理想なのである。そんな大人の関係を余は望んでおる。性奴であるそちが余を好きになってしまっては困るのだ。余を愛すれば余からの愛を求めるであろう? 口に出さずとも態度に表さずとも想いは伝わるものじゃ。そして余は軟弱である。いつかそれに答えようとするであろう。最終的にはそちと性交をして、そうなれば性約に則り、余は自ら煉獄の塔に入って王位は返上、そちは処刑される…。最悪だ…。

 

大人の関係が打算的って偏見だと思うけど…。なるほどね。じゃもう猫被ってる必要もないか…。

 

んっ?

 

あんたが好きってのは嘘。悪く思わないでくれ、あんたに気に入られようとして付いたお世辞のようなもんだよ。嫌いじゃないけどさ、正直、好きって程でもない。でもオレ、どうしてもあんたの性奴になりたいんだ。

 

……理由は?

 

エロスの王となるあんたの権力だよ。いつかオレのささやかな願いを叶えて貰おうかなって…。マギカ王国を滅ぼして欲しいんだ。簡単だろ?

 

……本当に余を愛してはおらぬのだな?

 

あぁ…これからもあんたを愛するなんてことにはならない。

 

そちのことを奴隷としか思わぬぞ。自分の欲を満たす為の道具としてしか扱わぬ。それでも余の為に頑張るのか? 何をされても?

 

うん。頑張るよ。オレはあんたの道具になる…。

 

そうか…わかった。では余の性奴の証をそちに。手を…。

 

こう?

 

うむっ。 ……パチッ☆

 

なに…コレ…。ルビーの輪…? 赤く透き通ってて綺麗だね…。

 

エロス王家に代々伝わる性奴の首輪じゃ。実は非公開なのだがエロスには性約の他に裏性約というものがあってな…。エロスの王となるものには3人まで性奴を持つことが許されておる。その性奴の証となるのが赤色、青色、黄色の3つの首輪。…そちの綺麗な赤髪に合うように、杏子、お前には赤の首輪を。そちは余の赤の性奴となるのだ。

 

…これを首に付ければいいのか? カチャ…カチャ…。

 

待て杏子。

 

えっ?

 

よく考えて付けるのだ。それは契約となる。そちがその身を余に差し出す代わりに、余はそちの望みを叶える。余はいつかマギカを滅ぼそう。しかしその代償はそちの全てじゃ。ただただ余の望むままの所有物となり、人であることを捨てるのだ。本当によいのか?

 

コクン…。

 

では、そちを余の性奴としよう。その首輪は余がそちの首に付けてあげるのだ…。カチャカチャ…。ガチャ!

 

……なんだか犬になったみたい(////

 

もう何があっても、そちが余の性奴であること、余は覆さぬ。これは約束だ。

 

よかった…。

 

そちもこの首輪を決して外してはならぬ。たとえ余が死んでもだ。そちは永遠に余の性奴なのだから。

 

うん…約束する。

 

では一日も早く余に相応しい理想の性奴となるよう頑張るのだな。それが出来ればそちの望み叶えようぞ。ふはははっ。いっぺんにやろうとすると挫折するやも知れぬ、時間を掛けて簡単なことから順に確実にやるのじゃぞ? 先ずは外見…体型の管理や身だしなみ。次に内面…従順な態度。次に品性…言葉遣い。次に…。

 

で、でもさ、頑張りたくても…オレどう頑張ったらいいのかよく分かんないんだ。お腹をへこませるのはともかく、胸を意識的に大きくするなんて出来るのかな…?

 

心配致すな。その件については余も協力するのじゃ。そちの胸を余が毎日マッサージすればなんとかなるであろう。大きくな~れ、大きくな~れ、と言いながら余はそちの胸を精一杯にモミモミするから、そちは胸が膨らんでいくイメージを頭に思い浮かべながら、大きくなります、大きくなります、と答えるのじゃ。あとは食生活を改善して十分に栄養を摂取すれば一ヶ月もしない内にそちの胸はプクリとした綺麗なお椀形となるであろう。ふはははっ。楽しみじゃのう。早くそちの胸を食したいものじゃ。ふはははっ。

 

……食生活の改善は効果ありそうだけどよ、マッサージで胸が大きくなるって、それ根拠のある話なのか?

 

医学的には知らぬが、実際に大きくなった例を余は知っておる。ちょっと待っておれ。携帯カチャ。ピピピピポピピピピ…。トゥルルルルルル…。トゥルルルルルル…。

 

ガチャ。

 

蓮華、ご苦労であるな。余である。うむっ。いや余の方に変わりない。サキエルも戻ったのでもう心配はいらぬ。そちの方は…。そうか、やはりマギカに不穏な動き有りか…ふむふむ…。しばらくこのまま国境に布陣を続けるのか…分かった。よろしく頼むのじゃ。まぁ、そちらがおれば向こうもちょっかいを出そうと思わんだろう。制式装備の方はどうじゃ。うん…そうじゃな。出来れば使わずに済ませたいものじゃ…。うん…あぁ、それでな蓮華よ。話は変わるが、そちの胸についてなのだが…。えっ、いや、ふざけてなどおらんのだ。聞きたいことが…。本当に真面目な話なのだ。うん…。そちは結婚して明らかに胸が大きくなったであろう? どのように佐助に毎晩モミモミされておるのか、揉まれ方を詳しく聞きたくてな、ん? あれ?

 

どうしたんだ?

 

オカシイのじゃ。突然、電話が切れたのじゃ。もしや向こうで何かトラブルでも起きたのであろうか。心配なのじゃ。リダイヤルするのじゃ。ピピピピポピピピピ…。トゥルルルルルル…。

 

ガチャ。ピー。この電話は現在お繋ぎ出来ません。通話先の携帯電話の設定により、こちらからの着信が拒否されています。ガチャ。ツー。ツー。ツー。

 

……深刻なトラブルに見舞われたようなのじゃ…。余の方が…だが…。うううっ…。

 

なに泣きそうな顔してんだよ。泣いてちゃ問題は解決しないって、あんたさっき…。

 

う、うむ。そうであったな。仕方ない…。あまり奴には電話をしたくなかったのだが…。蓮華が毎晩揉まれておる相手、蓮華の旦那である佐助にモミモミの秘訣を教わるとしよう。携帯カチャ。ピピポピポピピピピ…。トゥルルルルルル…。トゥルルルルルル…。

 

ガチャ。

 

あぁ、佐助よ。ご苦労であるな。余である。作戦中に申し訳ないが、そちの嫁を余にくれぬか? あっ、ちょっと言い間違えた。いや、そうじゃなくて、聞きたいことがあるのだ。ん? そう怒るな。冗談半分である。聞きたいことは真面目な話なのだ。うん…。実はそちが蓮華の胸をどう揉んでおるのか知りたくてな。もし行為中に録画したものがあるなら、それをメールで送って欲しいのじゃ。えっ? いやこれは冗談ではなく本気じゃ。なにっ!? 死ねだと? そ、そのような言葉使うでない。せめてホビロンと…。殺す? ガタガタ…ブルブル…。あっ…あれ? ガタガタ…ブルブル…。ははははっ、オ、オカシイのじゃ。また途中で電話が切れたのじゃ。ガタガタ…ブルブル…。

 



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まどかの章 12 ★★☆ ヒルトンホテル(王族専用貴賓室)

ガタガタ…ブルブル…。ま、まぁ…。い、いつまでも脅えておっても仕方ないのだ。本当に殺しに来たらサキエルのせいにするのだ。余が落とした携帯を使い、余の声色を真似てイタズラしたに違いないと言い張れば大丈夫であろう。うむ。それがいいのじゃ。問題解決じゃ。

 

オレの胸はどう解決するんだよ?

 

それは一時保留ということにしておくぞ。余は貧乳が嫌いという訳でもない。ほんの少しの膨らみで良いのだ。適当にモミモミしておれば、いつかなんとかなるであろう。

 

なるかな…。自分の胸をサワサワ…(////

 

あとはスポーツでもしてプニュプニュのお腹を引っ込めるのじゃぞ。好き嫌いせずに何でも食べて背を伸ばし、胸に限らずもう少し全体的に肉付きをよくしておけ。おデブさんになってはいかんから十分に気を付けるのじゃ。よいな。

 

うん。

 

では次に下半身の検査に移るのだ。杏子、足を伸ばして仰向けに横になるのじゃ。

 

……もぞもぞ、よいしょ…っと…(////

 

ほう…。足がすらりと長いのう。お肌もスベスベで綺麗なのじゃ。これは問題なしかの…。足の裏はと…。杏子の足首をムンズと握って、ヒョイっと持ち上げ。

 

うわっ!(////

 

うむっ。可愛い足の裏であるぞ。土踏まずも綺麗に出来ておる。理想的じゃ。爪も綺麗に手入れが出来ておるし、指と指との間の汚れも…溜まっておらんな。なんじゃ、意外に清潔好きではないか。

 

毎日…お風呂で洗ってるから…(////

 

うむ。ではお股の方を調べるかの。おパンツを脱ぐのじゃ。

 

うん…。上半身を少し起こしておパンツに手を掛け、腰を浮かしてお尻からスルスル…(////

 

……。

 

屈めた足におパンツを上手く通していって、最後にパッと足裏から抜いて、さり気なく畳んで枕の下へギュッと押し押し…(////

 

……杏子よ。

 

なっ、なんだよ?(////

 

足をそんなにきつく閉じておったら検査が出来ないのじゃ。

 

あっ、あぁ…ゴ、ゴメン…(////

 

起こした上半身はもう寝かせてよいぞ…。うむっ。そうじゃ、仰向けの体勢でよい…。足をもっと広げて…いやもっと…あともう少し…。

 

モソモソ…。こ、こう…?(////

 

よし、いいぞ。あと、両足の膝を曲げて足の裏をシーツに付け、ふんばって、余に対してお股が見易い角度となるように腰を浮かせてみよ。

 

う、うん…。モソモソ…(////

 

なぜ手で隠そうとする…。検査の邪魔だから胸の上で組んでおくのじゃ。

 

ギユッ…(////

 

ジロジロ…ジロジロ…。ふむふむ…。ジロジロ…ジロジロ…。ん…。

 

ガタガタ…ブルブル…。あぁ…ううっ…(////

 

そちが枕の下に隠したおパンツ、余に渡すのじゃ。

 

う、うん…(////

 

杏子のおパンツをクンカクンカ…。なるほど…。

 

……(////

 

一応、聞いておくが、そちは今なんらかの魔法を使っておるか?

 

使ってないけど…。

 

で、あるよな…。波紋が殆ど感じられぬ。魔法を形成してはおらん…。しかし…だとすればこれは…。

 

なぁ? オレのからだ、どこか変なのか? 気に入らないとこがあるのか?

 

なんと言ったらよいのか…。いやこう言う他ないの。杏子よ、そちのお股についておるのは凄く小さくはあるが、チンチンであるよな?

 

うん…(////

 

そしてその下はこれも凄く小さくはあるがタマタマである。

 

コクン…(////

 

チンチンやタマタマの大きさは余の半分くらいであろうか…。いやもっと小さいか…。実をいうと余もかなり小振りな方でな。メルルに可愛いと言われてからは正直コンプレックスを抱いておった程なのだが、その半分以下となると男として同情を禁じえないぞ。しかし仮にそちのチンチンが普通くらいの大きさであったなら、余はそちがおパンツを下ろしてポロリンとチンチンが顔を出したあの瞬間にショックでそちを滅しておったやも知れぬ。

 

な、なんでだよ?(////

 

何故…だと? いやいや。女だと思い込んで胸をモミモミしていた相手が男であったのだ。むしろ今、こうも平静でいられる自分に驚いておるわ。ちっこいチンチンには人の心を和ます力があるのかのう…。

 

あんたオレが男っての知らなかったのか? オレあんたが男色の気があるって聞いてたんだけど…。

 

誰に…と聞くまでもないな…。サキエルめ…男を女と偽って余に宛がうとは…。ヤバイ奴だと思っておったが、余をゲイにする為にとうとうこんな手の込んだことをするまでになったというのか…。このままでは余はいつか奴に…。ガタガタ…ブルブル…。

 

そっか…。オレを落札したサキエルって奴にオレもあんたも騙されたのか…。オカシイと思ったんだよな、あんた妙に胸に拘るからさ。でもオレちょっと嬉しいんだ…。

 

何故じゃ?

 

チンチン付いてるからオレは男なんだけどさ…心は完全に女なんだ…。オレは女だから相手は女より男の方がいいし、男が好きなゲイの相手をするのも嫌だ。心はノーマルなんだ。普通の女なんだよ。……だから女が好きな男がさ、オレの相手ってのは、それだけで嬉しいものなのさ…。あっ! で、でも、あんたのことが好きって訳じゃないからな? そ、そこんとこは勘違いすんなよ…?(////

 

そちはそうかも知れんが、余はなぁ…。気持ちはどうであれ、そちの体は男であろう? うーん…。超えるべきハードルの高さが半端ないのじゃ…。

 

幻惑の魔法発動…。第4の幻槍、インキュバスの魅了。 ……パチッ☆

 

はれっ? んっ? そち今なにをした? なんじゃ、さっきの魔法は?

 

魔法…? なんのことだい?

 

今さっき…。いや…。まぁ…よい…か…。

 

そうさ。あんたエロスの王子さまなんだから、どーんと構えてさ、小さなことなんて一々気にしなくていいんだよ。オレが男だってのも小さなことさ。

 

うむっ…。そういえばそうかのぅ…。ちっこいチンチンとタマタマがある以外は全て女なのだから、そちは男というよりも女といえるし。ちっこいチンチンとタマタマは気にしないことにするか…。

 

うん。オレのチンチンを気にしないでくれると凄く嬉しいよ。出来ればオレ、女としてあんたの性奴になりたいしさ…(////

 

しかし…ちっこいのう…。ジロジロ…。

 

ち、ちょっと待て、これは気にしないんだろ? 手で隠して足を閉じ閉じ(////

 

隠すでない。余はそちの身体検査を終えてはおらん。そのお股の中がどうなっておるのか、もっとよく調べて、余の理想たるそちの姿を導き出さねばならぬ。これは大切な検査なのだ。見せるのだ。

 

やだっ!(////

 

杏子。

 

なっ、なんだよっ(////

 

余との約束、忘れたのか? そちは余の所有物である…。仰向きで寝そべり、足を開き、手で隠すでない。

 

ゴ、ゴメン…なさい…。モソモソ…。は、はい…(////

 

ふむっ。では検査を再開するぞ。ん…。どれどれ…。ジロジロ…ジロジロ…。ここは…ふむ、まだこの程度なのか…。ジロジロ…ジロジロ…。ここも未発達じゃの。これもまだ…って、んっ? な、なんじゃ!? 何故こうなる? まさかそち興奮しておるのか? これは検査だと言うたであろうに…。

 

ううっ…。しょうがないだろ…勝手に…こうなっちまうんだからさ…(////

 

まぁ、よいか…。ジロジロ…。ほう…。そちのチンチン、興奮してもあまり大きさは変わらぬの。ちっこいままじゃ…。ジロジロ…。しかしここまで未熟となると…。ふむっ、そち、精通はまだであろう?

 

コクン…。やっぱり普通じゃないよな…オレの…。

 

気にするでないぞ。普通かどうかなど関係ない。余がどう思うか、それだけじゃ。調べたところ清潔に保たれておるし…。クンクン…。ふむっ。臭いもあまりせぬ。ちっこいからか、見た目の不快感もまるでないし…。

 

はぅ…(////

 

むしろ可愛い…。んっ!? よ、余はいったい何を言っておるのだ?

 

……(////

 

シ、シャワーを浴びて頭を冷やしてくるのじゃ。そちはそのままでおるように。よいな!(////

 

うん…。

 

スタスタ…スタスタ…。ドアをバタン!

 

……魔法、効き過ぎたかな。オレのチンチンを不快に思わない程度の軽い誘惑魔法だったんだけど…。でもこれもマギカを潰す為…。ゴメン。悪く思わないでくれ。その分、オレ、一生を掛けてあんたにご奉仕するからさ…。

 



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まどかの章 13 ☆☆☆ ヒルトンホテル(王族専用貴賓室)

よし、これでそちの検査は全て終了だ。お尻、パチン。

 

キャッ! もうっ!(////

 

服を着てよいぞ。

 

おパンツをモソモソ、シャツを着て着て、朱色のスーツをビシッ。

 

……その服だけでは困るであろう。別の服も用意しないとな…。換えの下着だって必要であろうし。あと日常生活に必要な細々したものも…。余のカードを渡しておこう。好きなものを買うが良いぞ。カードをポイッ。

 

パシッ。ありがと。へぇ…これが王室セレブご用達のカードなのか。…ん? 三井住友VISAカード…初音ミクバージョン…。

 

ついでにこれも渡しておく。寂しくなったら掛けてくるがよい。余といつでも話が出来るぞ。携帯をポイッ。

 

パシッ。うわっ、ズッシリ重いや。…ん? PHS…初音ミク特大ストラップ付き…。

 

住む場所も必要であるな…。このままそちを白帝城に連れ帰っても良いのだが…あそこは稀に諸侯どもが集まりよるでな…。裏性約の三人の性奴のことは世間には秘密であるので避けるのが無難か。鳳凰宮はハーレム候補専用であるし、空きであったトラスの離宮は母上様方がお移りになられたし、このホテルも部屋の中は良いが出入りするとき目立つのだ。やはり当初の計画通りにしばらくはマンションでも借りることにするか…。杏子よ。

 

…んっ? なに? 携帯を弄り弄り。

 

どこか住みたいところはあるか? エロスの国内に限るが。

 

そうだな…。ここより見晴らしのいいところに住んでみたい。スレーブドームの直ぐ横に大きな塔が見えたんだけど、そこってオレでも住めるのかな?

 

あぁ、スレーブタワーのことじゃな。200階までは奴隷商のインキュベータ社の本社施設だが、それ以上のフロアは奴隷買いを楽しむ貴族たちの別荘のようになっておるそうであるから…うむ、手に入るやも知れぬ。待っておれ、ネットで売りがないか調べよう。カタカタ…。

 

ごめんな。なんか高そうなとこ、ねだっちゃって…。

 

いや最近の貴族はどこも財政難じゃ。格安でも部屋を手放したいという奴が結構いると思うぞ。カタカタ…。王都ならそれでも買い手は沢山おろうが、場所が奴隷市場であるからな。ここなら…。カタカタ…。やはりな。最上階は無理じゃが、243階の角部屋で格安物件ありじゃ。即金なら4000万ゴールドでOKとはどれだけ金に困っておるのだ…。ここでよいか?

 

うん!

 

ではポチッとな。もう明日から入居が出来るようであるから、明日そちと王都の高島屋で存分に買い物をして、そこでお昼も食べて、その足でスレーブタワーへ行くとするのだ。ふはははっ。荷物がないから引越しが楽なのじゃ。…あぁ、でも余り大きな家具や家電を買うと部屋に入らぬやも知れぬのう。今から入り口の寸法を調べに行くか…。家具はともかく100インチのブラビア、あれがないと余は落ち着かぬ…って、いや待て…入らぬときはテレポートで入れればよいのか。ふはははっ。こういうとき魔法は便利なのじゃ。ふはははっ…。

 

……。

 

……どうしたのじゃ、杏子、急にそのような暗い顔をして…。何か不満でもあるのか? ブラビアではなくアクオスの方がよかったか?

 

違う…不満なんてない。その逆さ。オレ奴隷なのにこんな贅沢させて貰っていいのかなって…。

 

んっ? そちは余の性奴であるぞ。余の権力や財力にのみ引かれる者であらねばならぬ。こういうときは素直に喜んでくれた方が嬉しいのじゃが…。

 

ゴメン。こんな風に誰かに何かして貰うってこと、今まで無かったから…。

 

ふはははっ。直ぐに慣れるのじゃ。欲しい物があったら遠慮なく言うのじゃぞ? マンションを買っても余の貯金はまだまだ残っておるわ。ふはははっ。ご主人たま~! 杏子たんね、杏子たんね、プラダのバッグが欲しいの~むぎゅ!! といった感じに甘えて欲しいのじゃ。ふはははっ。

 

オレが欲しいのは…マギカの王、クリームヒルトの首…。

 

そちが余の理想通りの性奴になれたらな。

 

……ご主人たま~! 杏子たんね、杏子たんね、クリームヒルトの首が欲しいの~むぎゅ!!(////

 

……ハァ…。

 

駄目か?

 

当たり前じゃ。どこの世界に生首をねだる性奴がおるのだ。欲しい物をねだるのは性奴の勤めであるが、それは余を楽しませる為にやるものなのじゃ。そちが余の理想の性奴となったあかつきに支払われる契約の対価とは別の話じゃぞ?

 

そうか…わかった…。

 

本当に分かっておるのかの…?

 

……。

 

まぁ、よいわ。では杏子よ、先程の話に戻るが…。明日買い物をするとなると今日はもうやることがないのだ。今の時刻は夕方の5時…。夜の街に遊びに出たり夕食をするにはまだ早いし、かといって遠出して遊びに行くにはもう遅いし、まったく中途半端な時間帯なのじゃ。だから今からネットで王都の観光スポットを調べて、いくつか手近なところをリストアップしてみるからの、行きたいところがあったら言うがよいぞ? カタカタ…。

 

……オレ外に出たくない。部屋の中であんたと二人ゆっくりしていたいな。検査でちょっと疲れちゃったし。

 

そうか、では夕食までテレビでも見るとするか。

 

あのさ…(////

 

ん?

 

……オレ、この部屋に入ってから、ずっと気になってたことがあるんだ。あのテーブルの上に置かれてるの…ホットケーキだよな…? アレさぁ…食べていいか?(////

 

よいが…。

 

本当か! バタバタ…。椅子にポスン。ナイフとフォークを持って持って、ホットケーキを切って切って、お口に運んで、モグモグ…。モグモグ…。

 

そのホットケーキは余の食べかけなのじゃ。冷めていて美味しくないであろう? 新しいのを持って来させるのだ。

 

い、いいよ。ご主人さまは注文し直して暖かいのを食べなよ。モグモグ…。オレは奴隷なんだし。この冷えたのでいいよ。モグモグ…。十分美味しいって。モグモグ…。

 

何をいっておる。二人とも出来たてホカホカのホットケーキを食べればよい話なのじゃ。

 

じゃ、これはどうするのさ。モグモグ…。

 

捨てるのじゃ。

 

……あんたやっぱ王子なんだな。食うに困ったことなんて一度もないんだろ? いいか、食べ物を粗末に扱うな。今度そんなこと言ったら殺すぞ。

 

……。

 

モグモグ…。モグモグ…。

 

本来なら主人に対するその暴言には厳罰を与えるところであるが…。まぁ、よい。それより聞きたいことがある。そちは名門の佐倉家の出であろう? 食うに困らん恵まれた境遇は余とあまり変りあるまい。…もしや奴隷になってからあまり食べさせて貰えなかったのか? 奴隷法でそのような虐待は禁止されておる筈なのだが。…何かされたのなら言うのじゃ。余が責任を持ってスレーブドームの運営者を罰しようぞ。

 

いや…。等級の低い奴隷たちはどうか知らないけど、オレ達は値の張る商品だったから待遇は良かったよ。食べる物も必要十分に与えられてた。

 

では…。

 

飢えていたのは子供の頃の話さ。オレは佐倉家に養子で入ったんだ。元々は平民の出でね。マギカの王都で暮らしていたんだけど、そりゃ酷いものだったさ。マギカでは貴族じゃなきゃ人じゃないんだ…。魔法を使えない者はネズミやゴキブリのようなものなのさ。極端な例えじゃないぜ? 本当にそうなんだ。

 

余はエロスから出たことがないので、その辺りのことを最近まで知らなかったのだが、この前、ケルト…余の配下の者であるが、その者から聞いた話によると、ルーンの殆んどの国では、平民は貴族から不当な差別を受けておるらしいの…。

 

差別なんてそんな生易しいもんじゃねーよ。人がネズミを忌み嫌ったり駆除するときに抱く感情を差別心なんていうのか? 両者は別種で比べるまでもないもの…。隔絶だよ。

 

……。

 

オレはさ。オレの本当の家族はさ。マギカの王都の下水道で暮らしていたんだ。ネズミの肉はご馳走だった。貴族連中の残飯にありつければ盆と正月がいっぺんに来たようなお祭り騒ぎさ。弟や妹たちが残飯の周りをピョンピョン跳ねて踊るんだ。スゲェ可愛いかった。……でも大抵は貴族連中の泥のような排泄物の中から未消化なものを洗って食べてたんだ。もっと言いたくない物も口に入れたさ。そうしないと生きていけなかった。必死だったんだ。オレの身体がちっこいのもその時に栄養が足りてなかったからだと思う。でも辛いとは思わなかったよ。生きるってそういうものだと思っていたんだ。惨めかも知れないけどさ、犯罪をして人様に迷惑を掛けてるって訳じゃないじゃん…。でも…あいつらは…。

 

……。

 

あいつら青酸ガスを下水道に流し込みやがったんだ。…その後、大量の水も流し込んで、最後に消毒剤を散布して、それで終わりさ。オレの一家はオレ以外全員死んじまったよ…。後で分かったんだけどさ、人間狩りをされた訳じゃなかったんだ。反政府組織を潰す作戦でもない。ただの下水道掃除だったんだよ…。ほんと腹立つよな。……で、大量のネズミや人間の死骸は川へと流されて、そこで待ち構えていたのが奴隷商人さ。オレを含めてまだ生きてる奴は連中に捕まって、エロスの奴隷市場に売られたり…

 

ま、待て、奴隷とは戦争に負けた敗者が生き残る術として、もしくは本人が契約をしてお金と引き換えに身を売る、そのどちらかであろう。少なくとも余の国ではそうなっておる…。筈である…。

 

何いってるんだよ。あんたまさか奴隷市場に行ったことないのか?

 

行ったぞ。今日、スレーブドームに。

 

それは高級奴隷専門の競り市だろ。あそこは国の監視が行き届いてるかも知れねーけど。オレが言ってるのは低級奴隷のことだよ。ドームの外は見てねーのか? 露天商の檻の中で囚われてる奴に、どういった経緯で奴隷になったか事情を聞いたことあるのかよ?

 

いや、それは…ないが…。

 

聞けよ! あんたエロスの王となる男なんだろ? 何やってるんだよ。海賊や山賊に拉致されて来た奴で一杯だよ。ていうか、さっきの奴隷の定義を聞いて思ったんだけど、あんた奴隷についての実情をそもそも何も知らないだろ? 奴隷ってのはな、その殆どが生まれながらにして奴隷なんだ。奴隷が産んだ子供は奴隷所有者の持ち物。法でそう定められてる。この悪法の為に、今、社会がどれだけ歪んだ姿になっているか…。あのな、奴隷を家畜のように飼育して繁殖させる企業が世に溢れてるんだ。そこには人間の尊厳なんて欠片もない。これは外国の話じゃない。あんたのこの国でいま実際に起きていることだ。

 



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まどかの章 14 ☆☆☆ インキュベータ社(最高会議室)

やあ、我がインキュベータ社の同士諸君、久しぶり。変わりはない? 誰も欠けてない?

 

九兵衛社長、皆変わりありません! 役員50名! 幹部職員450名! 計500名! 全員ここに揃っております!

 

そうかい。それはなによりだ。では、早速会議を始めようか。営業部長。

 

ハッ! 今期も我らインキュベータ社は破竹の勢いであります! ホワイト課、ブラック課、イエロー課。主要3課すべて前年対比25%の売り上げ増を達成! グループ全体で4%の資産増加。このデフレ不況の中、奴隷業界でここまで躍進を遂げたのは我が社のみ! 大勝利であります!

 

ふーん。それは凄いじゃないか。パチパチ。臨時ボーナスを出してもいいね。次。生産部長。

 

ハッ! ホワイト、ブラック、共に安定。イエローの繁殖が特に順調で、来期は予定より7%の伸びが予想されます。

 

7%だって? やれやれ、どうせまた不良在庫を繁殖母体に組み替えたんだろ? 君達はいつもそうだ。何でも問題を先送りにしてミスを綺麗な言葉に置き換えてしまう。そしてずる賢くボクを騙そうとするんだ。……まぁ、いい。販促部長。

 

ハッ!

 

広告代理店各社にイエローのステルスマーケティングを依頼。臨時予算として30億出そう。フォローしてあげて。

 

ハッ!

 

次。育成部長。

 

ハッ! 王都の復興で素体の丈夫なブラックM型の需要が短期中期で高まっています。プラス25%の価格上昇。コールドスリープの在庫を全開放させます。

 

ん…。それだけで足りるかな? 生体技術課長。

 

ハ、ハッ!

 

育成中の若年奴隷、成長促進剤を使ってどうにか出荷を前倒ししてくれ。

 

し、しかし…そ、それでは法律に抵触…。

 

ブラックM型8~10歳に300ml/d投与。いいね。

 

300ml/d!? だ、駄目です。素体が死んでしまいます!

 

死? あぁ、歩止まりのことかい? 仕方ないよそれは。ロスが多くなるのは勿体ないけど、商機を逃すより遥かに得じゃないか。

 

得!? い、いえ、そういうことを言ってるのではなく…。

 

えっ? 何んだって? もう少し大きな声で言ってくれない?

 

これは…。

 

これは?

 

殺人…。

 

殺人? う~ん…。ボクには君が何を言ってるのかサッパリ分からないよ…。育成部長。

 

ハッ!

 

生体技術課長を更迭。一般事務職へ。後任の人選は君に任せる。

 

ハッ!

 

では仕切り直して、次はいよいよ我が社のエース。ホムンクルス課長。

 

……。

 

ん? どうしたの? いるんでしょ? 早く報告しなよ。

 

……ホ、ホムンクルス課。研究施設をアベル王子とサキエル卿に急襲されて壊滅。唯一の研究素体、プロトタイプホムンクルス、メルルも強奪されました。……推定損害額8000億ゴールド。

 

やれやれ。我が社の次代を担う課が…。困ったものだね。研究データも消失したの?

 

はい。研究内容が非合法な為、課全体をインキュベータグループから完全に切り離して独立させていましたので…。研究施設のデータセンターは地下500メルテにありましたが、アベル王子が放ったメギドの火によって蒸発…。研究者も皆殺しにされ…ホムンクルスプロジェクトの再建はもはや困難であり…。ざ、残念せざる終えないかと思われます…。

 

残念? 諦めるっていうのかい? ん…。メルルの奪還さえ出来れば、まだ大丈夫なんじゃない? パチン ミ☆ ほむら。

 

ここに。

 

君に頼みたいんだけど。…ちなみにメルルの居場所は掴めてる?

 

メルルは今、アベルのハーレム候補となって鳳凰宮の第1塔、通称プリンセスタワーの最上階にいるわ。

 

鳳凰宮か…。近衛魔法騎士団が守りを固めているから厄介だね。でも君なら…。

 

そうね。近衛はやり過ごせるかもしれない。でもメルルの奪還は無理。

 

なぜ?

 

アベルの能力は私と同じ時間操作系。時間を止めてプリンセスタワーに侵入すれば、他の者はともかく、彼には絶対に気付かれる。

 

いくらなんでも一日中鳳凰宮を気に掛けている訳がないよ。深夜ならアベルも寝ている筈さ。その隙にやればいいんじゃないかな。

 

アイツは自分の分身を猫の形にして1日24時間、メルルの直衛に当たらせている。半自立型で、アベルの意識が届かなくても分身は自分の判断で動くことが出来る。

 

自立思考する分身? まさか。どうやって?

 

さぁ? 原理はわからない。評議員だった人から聞いた話よ。嘘かも知れないわ。でも…。

 

……。

 

私はリスクの高い作戦はしたくない。貴方もそうじゃないの?

 

……うん。確かに。……未練は残るが仕方ないか。過去に拘るより未来だ。我々まで追求されずに済んだのだから、これでよし、とするのが最善の選択なのかも知れない。

 

賢明な判断ね。

 

ハァ…。しかしそうなると…。クルッ。ホムンクルス課長。

 

は、はい。

 

これは、まことに残念な結果といわざるを得ないんじゃないかな? …君、今ここで辞表でも書くかい?

 

……はい。

 

はい、だって? いやいや。冗談で言ったんだけど。

 

いえ…。しかし私は…。責任を…。職を賭す覚悟で私は…。

 

だぁ~かぁ~らぁ~。辞表で済まされる問題じゃないだろう? 我がインキュベータ社はエロス最大の巨大企業とはいえ、所詮、奴隷同士を交配させて新たな奴隷を生みだし、育て、出荷するって原始的な畜産業をやっているに過ぎないんだよ。そんな我が社がさ、ほんの少しの有機化合物からプラントで無限に奴隷を生み出すハイテクでバイオなメーカーへと大躍進する可能性が消え去ったんだ。

 

ガタガタ…ブルブル…。

 

さらに言えば、君は研究施設喪失で損害額8000億と言ってたけどさ、我が社の国対戦略部はホムンクルスの製造を合法化させようと今まで鳳凰宮の官僚や評議員どもに莫大な金をばら撒いてもいたんだ。実際の損失額は1兆ゴールドを軽く超えるんじゃないかな。……だからホムンクルス課長。島君。ケジメは付けないと。

 

……。

 

ほむら。彼をジャンプ台に。

 

……島課長、お立ち下さい。屋上までお連れします。

 

わかった…。椅子をガタン。い、いや、一人で歩ける。ガタガタ…ブルブル…。付き添わなくていい。私にもインキュベータの社員としての誇りがある。ガタガタ…ブルブル…。ひとりで責任は取れる。トボトボ…。扉、バタン…。

 

やれやれ。パチン ミ☆ 窓のブラインドを開けてくれ。

 

ウィ~~~ン。

 

……いい天気じゃないか。抜けるような青空。見ているだけで今にも吸い込まれそうだよね。…では諸君、島君の落下鑑賞会を始めよう。我が社の足を引っ張ったクズの末路を見届けよう。会議の続きはそれからだ。

 



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まどかの章 15 ☆☆☆ インキュベータ社(社長室)

あぁ~疲れた。しかし、あの程度の会議ひとつ終らせるのに5時間も掛かるってどうなんだろうね。ほむら、ボクの会社ってどうしてこんなに無能な奴が多いんだと思う? 待遇が悪いから有能な人材が集まらないのかな? もっと給料を上げた方がいい?

 

貴方の考える有能の定義がわたしにはよく分からない。

 

合理的に動いてくれるだけでいいんだけど。君のようにさ。

 

……。

 

葉巻、ぷか~。そう君の働きは実に素晴らしい。100のミッションをこなしてまだ1度もミスがないなんて文句の付けようがないよ。……おかしなものだね。我が社の第4ファームで君が生まれたとき、君のことなんて誰も気にも留めなかったのに。君の未来なんて貴族の愛玩具となるのが関の山だったろうに。9歳で魔力が発現して以来、君を取り巻く世界は一変した。奴隷でありながら最高の生活環境を与えられ、大切に大切に育てられた。当然だよね。魔法因子のない親から魔法使いが生まれる確率、いくらか知ってるかい? 500万分の1さ。

 

……。

 

君はこの机に飾られた薔薇と同じだよ、ほむら。丁寧に育てられた薔薇は綺麗な花を咲かせて周りの期待に答えてくれる。でも丁寧に育てられるのは君が薔薇であるから。ボクらのような雑草とは違うんだ。

 

貴方、勘違いしているようだけど、私は貴方の期待に応えようと働いている訳じゃない。自分の為に働いているだけ。…こんな下らない話を聞かせる為に私を呼んだのかしら? 用がないなら私は…。

 

いや待ってくれ、ほむら。実は君に頼み事があってこの部屋に来て貰ったんだ。プロジェクトリーダーになって貰いたい。非合法、高難度、魔法必須の仕事だ。君にしか任せられない。非常に危険で命を落とすかも知れないけど、その分報酬は弾ませて貰うよ? 副社長の椅子、我が社の株式の5%無償譲渡、10億ゴールドの臨時ボーナス…。

 

私は屋上からジャンプなんてしたくないし、私の望みは地位でも名誉でもお金でもない。言った筈よね。私の望みは…。

 

分かってるさ。まどか、だろ? だからその望み…。ファーム時代の君のルームメート。イエローW型奴隷、ID:39543999、鹿目まどかも報酬に加えるからさ。

 

……今までアレコレと理由を付けてはぐらかしていたのに。いったいどういうつもり?

 

いやー。それだけボクも切羽詰ってるってことさ。確かにまどかを失うのは痛いよ。君がまどかを得たら、我が社に留まる理由なんて何処にもない訳だからね。でも今ここで君に全力で頑張って貰わなければインキュベータ社に先はない。プロジェクトが軌道に乗るまででいいんだ。それで報酬を渡そう。君がまどかの所有者となるんだ。後は君の好きにすればいいさ。

 

…本当? 本当にまどかを貴方のファームから解放してくれるの?

 

疑っているのかい? 心外だな。ボクが契約で嘘を付かないのは、いつもボクの側にいた君が一番良く知っている筈じゃないか。

 

そうだけど…。

 

まどかを助けたいんじゃなかったの? だからこそ今まで大人しくボクの命令に従って来たんだろ?

 

……。

 

ん…。君がいらないなら他の者に愛玩奴隷として売ってしまってもいいんだけどな…。チラッ。

 

ま、待って!

 

ニヤッ。

 

……分かったわ。

 

じゃ、契約成立ってことでいいね。早速だけど……。引き出しをゴソゴソ。ホムンクルスプロジェクトが頓挫した今、我が社が生き残る道はコレしかないと思うんだ。はい、これが君の仕事だよ。資料バサッ。

 

ソウルジェムプロジェクト…? ペラペラ…ペラペラ…。これって、まさか…。

 

そうさ。旧人類じゃなくて新人類。魔法使いの奴隷を交配させて魔法使いを繁殖させるのさ。丁度都合のいいことにマギカ王国の旧巴家の魔法使いが今朝方スレーブドームで競られていてね。駄目もとで落札してみたんだけど、その子、繁殖母体として実に申し分ない資質を持っているんだ。ほんと惚れ惚れするよ。

 

マギカ王国、旧巴家の姫…。巴マミ。

 

なんだ知っていたのか。うん。マミだよ。巴家は1000年近く続く伝統のある家柄で家系図も確かだから交配のとき正確に血統を調べることが出来るんだ。フフッ…。ボクはいつか魔法使いの血脈の謎を解き明かしてルーン史上最強の魔法使いを生み出してみせるさ…。

 

マミの護衛の騎士も二人競りに掛けられた筈。…美樹さやか。あと…佐倉杏子。

 

彼女達は落札していない。魔力はどちらもあるようだけど、美樹さやかはストレスに弱くて直ぐ癇癪を起こすからね。キレたら何をするか分からないって奴隷としては致命的な瑕疵だよ。佐倉杏子の方は君と同じく突然変異体の魔法使いだ。魔法因子の血統データがないからどう交配をさせたらいいのか分からない。どちらも残念ながら繁殖母体には適さないね。

 

そう…。

 

君の仕事は巴マミを管理して魔法使いの繁殖事業を軌道に乗せること。魔法使い相手だから一般人には出来ない仕事だ。勿論、繁殖させるには母体だけじゃ無理。交配相手の魔法使いが必要なんだけど、マミの血統と相性抜群の魔法使いが競りに掛けられるのを悠長に待っている時間的余裕はボクらにない。手段を選ばずやってくれ。

 

手段を選ばずって…そもそもソウルジェムプロジェクト自体、合法なの?

 

さぁ…。魔法使いの繁殖なんて前例がないからね。まぁ、奴隷には違いないのだから違法ではないと思うけど。でもボクのような平民が社長の会社がそんなことをやっているなんて、貴族どもにバレたらさぞかし厄介なことになるだろうね。良くてインキュベータ社は倒産。悪くて社員皆殺しなんじゃないかな。だからマミはとある貴族のお屋敷へ送ったことにしてあるんだ。万一監査が入ったら、ボクらは仲買をしただけでマミはここにいないと口裏を合わせてくれよ?

 

本当は何処にいるの?

 

このスレーブタワーの地下最下層、第9ファーム。マミだけでなくプロジェクトに必要な人材、器材、全てそこに揃えた。社内で選り抜きのエリート達、血統解析のスーパーコンピュター、新生児保育器、遠心分離機、冷凍倉庫、CTスキャナ、培養室、手術室、分娩室…。巴の交配相手が最後のピースだ。君が用意することでこのプロジェクトは始動される。

 

待って。魔法使いのコマンドが何人か必要だわ。魔力量3兆MPオーバーで実戦経験のある人が3人…。出来れば5人…。

 

無理だ。魔法使いを雇うのは危険過ぎる。今回はホムンクルスプロジェクトのようにインキュベータグループから切り離していない。情報が外部に漏れでもしたら言い逃れが出来ないよ。

 

じゃ、魔法使いは私ひとりでマミを24時間監視の上にマミの相手探しもしろって言うの? ふざけないで。どうやってやるっていうの? 出来る訳ないじゃない。

 

だから高難度の仕事だって言ったろ? しょうがないなぁ…。じゃ、こうしよう。魔法使いは無理だが、まどかを第9ファームに移送しよう。報酬の先払いだ。まどかを君の管理下に置く。後は君の好きにすればいい。但し、第9ファームの外に連れ出すのは駄目だよ? それはプロジェクトが軌道に乗ってからの報酬だ。

 

えっ…。まどかと…一緒に暮らせるの…? モジモジ…(////

 

あぁ、今日中に第9ファームに届けるよ。大変な仕事だからね。楽しみがないとやってられないだろう? 愛しいまどかを君の奴隷にして何でも君の思うがままにすればいいさ。

 

ま、まどかは私の親友で…。そんな…変な関係じゃ…。奴隷なんて、そんな…(////

 

親友としての関係だけでいいの? ふーん…ちょっと意外だな…。まどかに遠慮しているのかい? まぁ、君が9歳の頃にまどかと引き離されて今年で4年だ。君たちはその間、何度か面会室でしか会ってないものね…。あぁ、そうだ、積もり積もった話もあるだろう。明日は休みにして、まどかと二人水入らずでゆっくり過ごしなよ。仕事はあさってからにしてさ。

 

い、いいの?

 

勿論さ。いくら時間的余裕がないからといって、君に休みなく働けと命令している訳じゃない。ボクは成果さえ出してくれたらそれでいいんだ。仕事のスケジュールも何もかもプロジェクトリーダーの君に任せるよ。…明日だけでなく、たまには休日を入れてジックリとまどかを可愛がってやりなよ?

 

……まどかと一緒にいられる…まどかと一緒…まどかと…(////

 

あぁ、そうだとも。これからはまどかと同じ部屋で暮らせるんだ。休日どころか毎晩一緒さ。でもその代わり魔法使いは君だけだ。何時如何なる時もマミの波紋を常に感じ取って、何か異常があるときは即座に時間を停止させてマミの元へ駆けつけるんだ。…どうだい? 大変だけど、頑張れるかい?

 

コクン…(////

 

わかった。じゃ、よろしく頼むよ。ほむら。

 

え、えぇ…。フラフラ…フラフラ…。扉、パタン…。

 

ニヤッ。

 



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まどかの章 16 ★☆☆ インキュベータ社(社長室)

お久しぶりぃ~九兵衛ちゃん。返事貰いに来たわよ~。キョロキョロ…。アレレッ?

 

やぁ、よく来たね、シャルロッテ。ん? どうしたんだい?

 

いつもこの部屋の隅に控えてる九兵衛ちゃんのお人形ちゃんは?

 

ほむらのことかい? 昨日から新しい部署に入って貰っていてね。残念ながら彼女はもうこの部屋にはいないんだ。寂しい限りだよ。

 

ふ~ん。九兵衛ちゃんの会社って規模は大きいけど、まともに仕事できるのあの子ぐらいだからねー。ん~。余程、重要なお仕事なのかしら?

 

……まぁ、ね。

 

うふふふっ。あの子、洗脳を受けてる様子もないのに、よく九兵衛ちゃんみたいな悪党の言葉を真に受けて、あんなにせっせと働けるものだわ。

 

ちょっと、シャルロッテ、悪党はないだろ、悪党は。…まぁ、あの子は箱入り娘だから何でもボクの意のままで、操り易いのは事実だけどね。まどかって言えば何でも言うことを聞くんだもの。洗脳なんてするまでもないのさ。

 

まどかちゃん…ねぇ…。

 

ん? …どうしたんだい?

 

うふふふっ。九兵衛ちゃんったら本当に悪党なんだら…。

 

何がなんだか訳が分からないよ。立ち話もなんだからそこのソファーに座って? いま秘書に紅茶でも持って来させるから。君、ケーキが大好物だったよね?

 

ケーキ大好きよん。でも九兵衛ちゃんが出してくれるケーキなんて食べる訳ないじゃない。だって中に何が入ってるか分かりゃしないもん。

 

いやはや本当にご機嫌斜めのご様子だね。いったいボクの何が気に入らないってのさ。まさか君の作戦が上手く行ってないことの八つ当たりかい?

 

失礼なこと言わないでくれる? わざわざマギカ中央軍のエリートの私が辺境まで出向いて騎士団を指揮してるんだからさぁ。明日中にも巴領全土の制圧を完了しちゃいますっての。

 

へぇ…。随分、早いね。

 

作戦の初期段階で巴マミを捕獲出来たのが大きかったわ。巴領を平定するのに巴家に従う貴族の切り崩しをしなければならないでしょ? うふふふっ。マミを奴隷市場に売ったお金で、その資金の上積みが出来たって訳。

 

主君の姫を売った金を受け取ったら、もう二度と巴家の肩を持つなんて出来ないだろうし。踏み絵の効果もあるって訳か。一石二鳥だね。

 

そうだねぇ。

 

戦況はもう変わらない?

 

掃討戦がかったるいんで、部下に任せて私はこんなところに来てるくらいなのよ? 変わりようがないわー。

 

そうかい。じゃ、親愛なる君の成功を祝してパーティーでも開きたいところだけど。でもボクの方は君達のお陰で散々でね。巴領が紛争になって既にもう50万人近くの難民がエロスに押し寄せている。その殆ど全てが魔法の使えない旧人類だって言うじゃないか。最悪だよ。

 

巴家はマギカ王家や他の諸侯と違って旧人類に寛容だったからねー。マギカに住む平民はこぞって巴領へ移住していたわ。今回の内戦は巴家がマギカから分離独立しようとしたことが引き金になって勃発したけど、それが無くても平民政策のねじれ解消の為に巴領への侵攻は時間の問題だったと思うなー。まぁ、なんにせよ内戦が終われば旧巴領は王家の天領となって平民政策は激変するわ。苛烈なものにね。難民は相当な数になるんじゃないかしら。50万人どころか最終的には200万人くらいエロスに流れるとマギカの統合本部は予想してたよ?

 

困るよ…。彼らがエロスに来たらどうなるか。君ならもう分かってるんだろ?

 

まぁ~、ねぇ。

 

今はエロスの難民キャンプで保護はされてるけど、時間が経てば保護は打ち切られる。エロスの財政は逼迫してるからね。マギカの難民は働いて自分で生活する他ない。しかし職なんてあるものか。ほぼ全員が奴隷に身を落とすことになるだろう。そうなればどうなる。奴隷の価格は大暴落さ。我が社の奴隷は優秀だけど、液晶TVの例にある通り、今は性能よりも価格競争力が求められる時代なんだ。そして消費者は養殖物より天然物をありがたがる傾向もある。つまり我が社の命運は今まさに潰えようとしているのさ。

 

九兵衛ちゃんの会社がどうなろうと私の知ったことじゃないけど、出すもの出してくれたら話は別だよぅ。決心ついたのかな?

 

あぁ、我が社の株式の49%と、血統データと繁殖技術の譲渡。マギカ領内での新ファームの建設。この3つで。あと今、ここで君に10億ゴールド相当の宝石っと。コトッ。

 

うわぁ…紅玉だぁ! 綺麗…。頬をスリスリ…。うんうん…これでいいよぅ。契約成立ね。えぇっと巴領の各地に散らばってる我が騎士団を再集結させて、エロスに越境攻撃を仕掛けて、国境近くに設けられた難民キャンプを潰せばいいのね。うん簡単だ。作戦は1時間も掛からないんじゃないかなぁ。

 

1人残らず消してくれよ?

 

マギカ中央軍の最精鋭、我がシャルロッテ騎士団の突撃を食らって生き残れる奴がいるものですか。神具のランスを突き出して音速の100倍で300騎全員が突っ込むんだぜぃ。後には何も残らないのですよ。エロスのヘナチョコ騎士団とは訳が違いますの。

 

それなら安心だね。でもエロスの魔法使いの中には厄介な奴も…。

 

あれれ…。ちょっと待てください…九兵衛ちゃん…。

 

ん? どうしたの?

 

この紅玉、よく出来てますけど…イミテーションですわね…?

 

へぇ、よく分かったね。それは偽物。こっちが本物さ。コトッ。

 

ムカッ。

 

そんなに怒らないでくれよ。君が宝石を偽物だと気付けないなら、それは君の中では永遠に10億ゴールドの価値を持っていた訳で。なら別に偽物でもいいじゃないか。ようは君がどう思うか、じゃないかな。本物を見分けられるなら、勿論、本物を渡すよ。ニコッ。

 

……なんなんですかその言い草。あぁ、駄目です。もう少し我慢しようと思っていましたが、九兵衛ちゃんの態度が気に入りません。

 

偽の宝石を渡されたことがそんなに不快だったのかい? ならお詫びにもう一個サービスしよう。コトッ。

 

九兵衛ちゃんは本当にクズですねぇ。もう宝石なんてどうだっていいですよ。偽物を掴まされたとしても所詮は石ころですから百歩譲ってその屁理屈でも矛を収めましょう。でも人は違いますわよ。人は石ころではありませんもの。

 

というと?

 

九兵衛ちゃんがさっき言った、まどかです。マギカの諜報機関をなめないで下さいね? 貴方とその周辺の人物については徹底的に調べ上げているのですよ? いいですか、我々は九兵衛ちゃんが悪党で嘘付きだと分かった上で取引をしてますの。貴方を信用して取引をしている訳じゃなくて、貴方の嘘を見破れるから取引をしているに過ぎないのですよ。

 

なんだ、まどかのこと知ってたのか。うん。そういえば確かにそうだね。まどかもその宝石と同じといえば同じ理屈だ。本物と分からないなら偽者でもいいじゃないってことだから。

 

10億ゴールドの宝石の替わりに100万ゴールドのイミテーションを渡せばその差し引きは儲けになります。だから貴方は作った。これは分かりますよ。でもイミテーションのまどかを作ることに何の意味があるのかしら。本物もイミテーションも同じA級奴隷ですもの。イミテーションの整形費用分だけ貴方に損ではありませんか。何故あんなことをしたんですの? 私には、ほむらちゃんに対する貴方の悪意にしか感じ取れませんでしたわ。

 

それはボクとほむらの間のことで、君には関係のないことじゃないか。

 

関係ありますよう。このことをほむらちゃんに告げれば、ほむらちゃんは貴方を問い詰め、殺そうとするでしょうからね。

 

ボクを脅して契約条件を吊り上げる気かい?

 

私としては偽物の紅玉を掴ませる九兵衛ちゃんより、可愛いほむらちゃんと仕事がしたいかも。貴方が死んでほむらちゃんがインキュベータ社を継いでくれた方がいいかなって、思い始めてるんだよぅ。

 

最初に言ったろ? あの子は箱入り娘なんだ。まだインキュベータ社を継ぐには…。

 

何いってるのかな? 貴方は最初にこうも言ったわ。その方が操り易いって…。

 

……君は。

 

早く質問に答えなさいな。何故まどかのイミテーションなんて作ったんですか? 納得行く答えなら、このまま貴方をパートナーとしますけど。嘘を付いたり、不条理な答えなら、ほむらちゃんにチクって貴方とはここまでかな。

 

しょうがないなぁ…。ほむらは知らないけどさ、実のところ本物のまどかはG級奴隷で廃棄物扱いなんだよ。元々はA級だったんだけど。魔力が覚醒したほむらをファームの群の中から引き離すときに、まどかが抵抗してね。そのとき頭を強く打ってさ、まともに言葉も喋れないくらいにオカシクなっちゃったんだよね。糞尿垂れ流し。顔もだらしなく弛緩しちゃって目の焦点は合ってない。昔の愛くるしい面影は何処にもないんだ。そんな欠陥奴隷をほむらが強く求めるだろうか。ただショックを受けるだけじゃないか。だからほむらにはイミテーションのまどかを会わせた。ほむらが望む通りの綺麗に成長した姿のまどかさ。数ヶ月に一度の面会を重ねる度に、ほむらはまどかへ恋焦がれて行ったさ。もう分かったかい? まどかを愛する気持ちがほむらの中に芽生えて増せば増す程、ボクはまどかを使って、ほむらをより制御することが出来るようになる。だからイミテーションなのさ。テレビのリモコン、プチッ。見て。本物のまどかとだったら絶対こうはならなかった筈だよ?

 

何ですのこれは。アダルト動画…?

 

ほむらとまどかの昨夜の様子さ。一心不乱にお互いを求め合ってる。見てよ、ほむらのあのとろけ切った顔。涙を流してる。感極まって獣のような声まで上げてる。……これでいいじゃないか。君はイミテーションが悪いって決め付けてるけどさ、イミテーションの紅玉の方が本物より光沢があって質感もあって、本物以上に製作費が掛かっていたのなら、イミテーションの紅玉の方が本物より価値があると思わない? 偽物の方が本物と言えることだってあるんだよ。

 

それが貴方の言い分なのですか。なるほど…。でもこんな隠し撮りをしている時点で貴方はとんでもないクズだから説得力が皆無ですよ。あと私、言いましたよね。人は石ころとは違うと。

 

……どう違うってのさ。

 

ご自分でお考えください。

 

考えるもなにも、人の偽者が本者を超えた証拠がここにあるじゃないか。ほむらにとってこれ以上のまどかは無いと思うけど。ほむらの乱れた姿をジロジロ…。

 

まどかはこの世に一人です。上も下もありません。……ありませんが、貴方の言うように画面の中のほむらちゃんと偽のまどか、本当に激しくお互いを求め合っているわ。理性のたがが外れてグチャグチャに絡み合っているのに凄く綺麗…。エッチってレベルを超えて神聖な儀式のようで感動すらしちゃう。うん…見入ってしまうけど、ちょっと不思議なんですよ。ほむらちゃんは分かりますが、何故、偽のまどかがここまでほむらちゃんを受け入れるの? 私にはこれが演技とは思えません。もし本当にこれが演技ではなく心から行っているのなら、まどかはこの世にただ一人だからと、偽のまどかの存在を一概に否定出来ない気もしますわ。

 

やっとボクの意見へ耳を傾ける気になったのかい? そうさ。イミテーションのまどかを否定なんて出来るものか。だって完璧なんだもの。全身整形や声帯手術だけじゃないよ。洗脳魔法の使い手に依頼して、ほむらが持つまどかの記憶の全てをイミテーションの頭の中に刷り込んで貰ったのさ。だからイミテーション自身が自分をまどかだと思い込んでるんだ。ほむらがまどかに恋焦がれている程、まどかに愛して貰いたいと願う程、記憶にもそれが反映されるからね。ほむらの願望そのままのまどかの心がイミテーションの中に生まれて、だからここまで激しく求め合うことになるのさ。……シャルロッテ、心と心がまったく隙間無く重なり合うってどんな感じなんだろうね。映像を見る限り、もうお互い相手なしじゃ生きられない程、気持ち良さそうにしてるじゃないか。イミテーション性奴。うん。これ我が社の新しいヒット商品になるかも知れない。

 

九兵衛ちゃんのクズっぷりは半端ないですわ。心まで捏造したんですの? ハァ…。商品化でも何でも企画するのは結構ですけど、そんな気持ち悪いもの売れる訳が…って、あぁ、もうこんな時間ですか。ではこれで最後の質問にしますね。本物のまどかはどうしているの?

 

さっき言ったじゃないか。本物のまどかはG級奴隷で廃棄物扱いだって。

 

……まどかは今いったい何処にいらっしゃるのですか?

 

このままでは利用価値がないから再処理センター行きさ。送ったのは…アレは2年前だったかな…いや3年前だったかな…。んー。通常業務の流れで特に重要なことでもなかったから出荷時期を上手く思い出せないよ。

 

……再処理センター? それ、なんですの?

 

言葉のままだよ。利用出来るパーツを再利用して、出来ないパーツは処分するんだ。全体としては利用価値がなくても臓器なんかは移植に使えるだろ? だから心臓とか腎臓を…。

 

あぁ、なんとなく分かりました。気分が悪くなって来たので、もう具体的に言わなくて結構ですよ。つまり、まどかさんはお亡くなりになられている訳ですね?

 

お亡くなり? いやいやパーツとしてまどかの体は生きていると言えるんじゃないかな。臓器移植されて他の人の身体の中で生き続けるってのはとても意義のあることで…。

 

携帯カチャ。ほむらさん。お辛い内容でしたが最後までお聞き頂けましたか? そうですか。いえいえ。マギカ王国は貴方をパートナーにお選びしますので。えぇ、我が主にも。はい。こちらこそ。

 

……ほむらと携帯が繋がっていたのかい? いつから?

 

どうだったかなぁ。んー。私がこの部屋に入る前だったかな。

 

やれやれだね。葉巻をシガーケースから取り出し、鋏で端をパチン ミ☆ ライター、シュボッ。

 

吸うのちょっと待ってくれる? 貴方に電話を代わって欲しいってことなので。はい、どうぞ。

 

携帯カチャ。あぁ、ほむらかい? さっきの話なんだけどさ…。

 

……貴方、今から殺しに行くけど、ひとつ聞いていい? 契約で嘘は付かないんじゃなかったの?

 

そうだよ。でもボクが普段嘘を付かないのは、本当に相手を騙したい、ここぞというときに効果的な嘘を付けるようにする為だからね。正直者って訳じゃないんだ。携帯ガチャ切りでポイッ。葉巻、ぷか~。

 



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まどかの章 17 ★☆☆ 奴隷市場(裏通り)

暑いのじゃー。ジメジメするのじゃー。臭いのじゃー。汚いのじゃー。人がいっぱいなのじゃー。窮屈なのじゃー。うるさいのじゃー。杏子は余を無視して冷たいのじゃー。

 

なんだよ。さっきから不満ばかり。

 

計画では余は今頃、キンキンに冷えた高島屋の中でそちと一緒に買い物を楽しんで、お昼にはレストランでお子様ランチを食べる予定であったのに…。

 

お前が奴隷市場の視察に行くって言ったんだろ、お前が。

 

昨夜あれだけそちに説教されたら、行くと言う他ないではないか。夜遅くまでクドクドと…。そもそも何故、余が余の奴隷に頭ごなしに説教されなければならんのだ? 人間関係として逆であろう? 気付いておるか、そちはいま余をお前呼ばわりしておるのであるぞ。昨夜はあんたであったのにな。最初の頃などはご主人様と呼ばれておった気がするぞ。段々と酷くなっておるのじゃ。明日にはオイコラと余を表す主語すら無くなりそうで怖いわ。

 

うぜぇ…。

 

そちは余の性奴である自覚が足りぬ。もっと余を立ててだな…。あっ、余のチンチンのことをいっておるのではないぞ。ふははははっ。

 

…あのさ。ご主人様と言って欲しかったらオレにそう言われるような立ち居振る舞いをしろよ。人にあれこれ言う前に自分の方が先ず変われっての。

 

また説教されてしまったのだ…。なんなのじゃ、その立ち居振る舞いとは。どうやったらよいのか分からぬわ。いったい余にどうせよと…。んっ! おおっ!? ふはははっ。向こうの金ピカな店で素晴らしい物が売っておるのだ。そちは少しここで待っておれ、ちょっと買いに行ってくるのじゃ。ふはははっ。バタバタ…。

 

やれやれ、どうしようもないな…。ポケットから観光ガイドブックを取り出してペラペラ…。えっと、ここが治安度Cの裏道具屋筋か…。違法薬物、医療器具…。ライフル、携帯ミサイル、各種魔道具…。金にプラチナ、ラブドール、コスプレ衣装…。改造ビーキャスカードにマジコン…。なんだよ、奴隷とは関係ない道具ばかりじゃねーか。ここは関係ないな…。ガイドブックをペラペラ…。えーと…この通りを北に通り抜けると…あぁ、いよいよ治安度D、低級奴隷を売買しているゴミの市…。魑魅魍魎の如き悪党が蠢く魔窟と化しているから観光客は決して近づくな、か…。十分気を引き締めないと…。

 

バタバタ…。ふはははっ。買って来たのじゃ。ふはははっ。

 

ハァ…。緊張感のない奴だな。…じゃ、行くぞ。

 

ちょっと待つのだ。これを受け取るのじゃ。紙袋をゴソゴソで箱を取り出して、ニコニコ。

 

なんだよ…これ。

 

あそこの宝飾店で買った杏子へのプレゼントなのだ。そうじゃ、余がそちに付けて進ぜよう。ちょっと目を閉じておるのだ。プレゼントの包装をビリビリ、箱をゴソゴソ。

 

……オレ達は遊びに来てるんじゃないぞ? それにオレが言った立ち居振る舞いってのはプレゼントで懐柔するとか、そういうことじゃなくてだな…。

 

杏子に似合うと思ったのじゃ…。ショボン…。

 

全くしょうがねーな。目を瞑り。これでいいか?(////

 

うむっ。箱をゴソゴソ。ジャラジャラ…。杏子の首にガチャン。

 

……なんだよ、コレ。ジャラジャラ…。

 

銀のチェーンなのじゃ。余の手からそちの赤の首輪へとチェーンのリードがいま繋がったのじゃ。

 

……。

 

杏子。余は反省した。冷静になって考えてみればそちの言った通りなのだ。余は主としての立ち居振る舞いが今まで出来ていなかった。余は間違っていたのじゃ。しかしもうこれで完璧なのだ。どこからどう見てもそちのご主人様なのじゃ。ふはははっ。チェーンをグイグイで杏子の首を斜め上に引っ張り引っ張り。ふはははっ。チェーンをグイグイ。グイグイ。

 

……。

 

ふはははっ。杏子、よつんばいの体勢になって儚げに目をウルウルとさせるのだ。ク~ンク~ンとかキャンキャンと吠えてくれたら最高じゃ。余は身震いする程にゾクゾクするぞ。ふはははっ。そうだ、服も脱いでくれい。皆の視線に晒されてそちが恥ずかしがっておる姿がみたいのじゃ。そして不安げに余を見詰めるのじゃ。ふはははっ。余はそちを守ってやるぞと目で語り、そちは余への信頼と安心の想いで心が満たされ、余の足にピッタリと寄り添うのだ。ふはははっ。いやいや、もうそこまで行くなら、あれもやって欲しいのう。ほれそこに電柱があるであろう? 片足を上げて…。

 

やらねーよ。やると思うか? チェーンをブチッ。

 

なっ!? そちと余の心を繋ぐ信頼のチェーンがっ!

 

腹にパンチ。ガスッ。

 

ゲフォ…。ゲホゲホ…。ううっ、こ、こやつ殴りよった、殴りよったぞ…。主である余を殴りおった…。通行人のみんな聞いてくれ。見おった? 見おったよな? あやつは余に暴力を振るったのじゃ。傷害事件である。警察を呼んで欲しいのじゃ。コークスクリューパンチであった。内臓が破裂しておるやもしれぬ。救急車も頼むのじゃ。…ううっ、な、なぜ、みんな無視して通り過ぎるのじゃ。

 

ウゼェ…。コイツ、マジ、ウゼェ…。

 

杏子はツンデレが過ぎるのだ…。服の裾をペラリと捲り殴られて赤くなった自分のお腹を撫で撫で。

 

なんだよソレ。オレはいつもこんなだ。愛想悪くて悪かったな。王子のお腹を心配そうに、チラリ。

 

……胸をモミモミしてやったときのそちは凄く可愛いかったぞ?

 

う、うるさい! そんなこと今思い出してる場合かっ(////

 

よいではないか。折角、そちと二人で見知らぬ街並みを歩くのだ。チェーンが駄目なら手ぐらいは繋いでくれぬか?

 

デートじゃないんだ。あと少しで低級奴隷達が売られているゴミの市…。気持ちを引き締めてないと酷い目にあうぞ。ちょっとは真面目になってくれ。

 

ほう。やっと到着するのか…。足が棒になってしまうところであったわ。杏子。余はあと何歩、歩けばよいのじゃ。

 

何歩って…。ガイドブックを取り出してペラペラ…。地図を見ると、うーん。あと200メートルくらいかな。

 

……なにっ?

 

なんだよ。後ほんの少しだろ、早く行くぞ。レッツゴーだ。

 

いや待て。そうではなく、なんなのじゃ、そのガイドブックは。そちはこの奴隷市場を熟知しておるのではないのか?

 

ハァ? なんでさ。オレはマギカの出だぜ? そりゃ、王家との戦いに敗れて奴隷になってからはこの街に連れて来られたけどさ、スレーブドームの中しか知らねぇーよ。

 

で、では昨夜のそちの話はなんだったのだ。そちは子供の頃、下水から追い出されて捕まって、奴隷市場へ奴隷として連れて行かれたのでは?

 

違うよ。オレの場合はここじゃなくて、マギカの施設に引き取られることになったんだ。検査でオレのからだに魔法因子が突然変異で現れたとかなんとか言われてさ。

 

奴隷商に捕まった連中がエロスに連れて行かれた話は?

 

後で聞いた話さ。オレ以外で生き残った他の子供達はエロスの奴隷市場って所に送られたらしいって。

 

らしい、だと? 奴隷市場の露天で売られている低級奴隷は山賊や海賊に無理やり拉致されて来た可哀想な人ばかりだと言うから、余はわざわざこうしてこんな所まで視察に来たのではないか。そちがスレーブドームの中しか知らぬのなら、何故分かるのだ。口からでまかせだったのか?

 

あれはスレーブドームで競りに掛けられてた子から聞いた話だよ。

 

その子は実際に見たのか?

 

いや…どうだったかな…誰かから聞いた話だったかも…。

 

ハァ…。そちの言っておることはどれも根拠のない曖昧な噂話ではないか。昨夜も言ったが、奴隷の待遇改善と法整備については既に有能な部下に指示を出しておるのだぞ? それでもだ。拉致された子が売られておるなどという余の知らぬ新事実の対処に緊急性があると思えばこそ、余はわざわざこうして出向いて…。ハァ…。もうよい。帰るのじゃ。クルッ。スタスタ…。そちは今日一日モミモミの刑じゃからな。覚悟するのじゃぞ?

 

待てよ…。待ってくれ! もし噂が本当ならどうすんだよ…。お前は王子だろ。奴隷達を救える力を持ってんだ。…オレはなんの理由もなく不当に虐げられてる人達を助けられるものなら助けたいんだ。

 

そちは自分の子供の頃の境遇を、その居もしない噂の中でしかおらぬ奴隷の子に重ねておるだけじゃ。物事を悪く考え過ぎなのだ。そちの悲惨な体験は平民を人と思わぬマギカだったから起きたのだ。余の国では平民も人である。そのような不法はまかり通らぬ。起きぬ。噂は間違いじゃ。

 

ふざけんな! 噂が本当か間違ってるか、実際に見てみなきゃ分からないだろ! 間違っていたら、もみもみでも何でも好きにしていいから…鎖だって我慢するから、だから…だから頼むよ…。

 

実際に見てみなければ分からぬ、か…。蓮華も似たようなことを言うておった、今のそちと同じく悲しげな顔を余に向けてな…。しかし、あいつはともかく、そちは余の性奴じゃ。もっと利己的で打算的な大人の思考を持って欲しいものだぞ。赤の他人の為に必死になった挙句、自分が犠牲になるようなことまで口走るなど…。そんなことでは困るのだ。そのように美しく澄んだ目でジッと見つめられると余は本当に困ってしまうのだ。…余はそちを好きになってはならぬのだからな。

 

ごめん…なさい…。ご主人さま…(////

 

……まぁ、よい。ここまで来たのだ。行ってみるか。

 



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まどかの章 18 ☆☆☆ 奴隷市場(ゴミの市)

こんな所に来るのではなかった。なんなのだ…この臭い。余は10年生きてこれ程の悪臭を嗅いだのは生まれて初めて…。ううっ…。うえぇええ…。

 

あぁ、スゲェ臭いだ…。こりゃ、服に染み付いたら一生取れないかも…。排泄物とか体臭とか腐った食べ物とか死体とか、なんかもう色んな臭いが混じって何がなんだか…。

 

うげぇえっえ…ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。

 

お、おい。大丈夫かよ。背中スリスリ…。

 

ありがと…なのだ…。そ、そちは…大丈夫なのか…。うげげげぇええ…ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。

 

背中スリスリ…。オレは子供の頃、下水道が住み家だったから、こういう臭いには慣れてるんだ。でもこれなら下水道の方が十倍マシだよ。背中スリスリ…。

 

うげぇぇぇええ…ゲロゲロ…。駄目じゃ~。頭がクラクラして…しばらく動けそうにないのじゃ…。杏子よ、余に構わず、ほれ…あの露天で売られておる女の子達へ事情を聞きに行ってくれ…。店主は接客中のようじゃ。今がチャンスじゃ。さりげなく近づき、コッソリと聞き取りを…うっ、うげぇ…ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。

 

背中スリスリ…。で、でも、ご主人さまが…。オロオロ…。オロオロ…。

 

余は大丈夫ではないが大丈夫じゃ。ここで少し壁に寄り添って座っておる。臭いに慣れたら余も行くから…。

 

う、うん。じゃ、直ぐに行って帰って来るから、じっとしててくれよ?

 

ここで杏子のお尻を眺めておるのじゃ…。

 

馬鹿っ!(//// パタパタ…。パタパタ…。

 

ううっ、行ったか。上手く行けばよいが…。しかし杏子の後姿、お尻のラインがまるで見えんのだ。胸と同じで出ていないのであろうか。お尻もモミモミして育てることにするか……って、あぁ、何をやっておるのだ杏子の奴、いきなり店主にバレておるではないか。さりげなく聞き取りをせよと…。うわぁ…。アッという間にヤクザに取り囲まれよったわ。ん? なにやらこちらをチラチラ見ておるのう…。余に戦えと申すか? 無理じゃ。臭いに当たりて余の脛は立ち申さん。というか相手は魔法使いではなかろう。自力でどうとでも出来るであろうに…。目で返事をするか。ジリキデガンバレっと。んんっ、なんじゃ? なぜ頬を赤らめておるのだ? 意味が分からんわ。

 

あいつ、ご主人様のアンタに助けて貰いたいんだよ。

 

いや…だから助けてと言われても…って、ん? 誰じゃ、そなたは…? いや、何処かで…。

 

私の名前は美樹さやか。少し前までは巴家の姫君マミ様の騎士だった。今は上条家の若様の奴隷。あんた杏子のご主人様なんでしょ? あいつ、私の一番の親友でさ、奴隷になって落ち込んでるかと思いきや、あんなに明るい顔をしてるんで驚いたよ。…杏子をよろしくね。(微笑みながら腰を屈めて相手を見下ろす魔法少女さやかちゃん。水着のような可愛い戦闘衣を着ておられますぞ! オヘソには勾玉のようなピアスがキラッ、そしてミニスカはパンチラどころか下から丸見え! 年下の男の子にオヘソやお股を見せ付けて面白がってるそのお姿はまさに小悪魔なビッチそのもの! 少女が穿くにはけしからんなおパンツは生地が殆どない青の紐パンで、さやかちゃんの可愛いお尻は丸出しなのでございますぞっ!)

 

う、うむっ。余はアベルじゃ。こちらこそなのじゃ…。ジロジロ…。そうか…そちは上条とかいう者の奴隷となったか…余も狙っておったのだがな…。ジロジロ…。し、しかし可愛い戦闘衣であるの…。さやかの後ろへさり気なく回り込んで、お尻をジロジロ…(////

 

あーっ。君、どこ見てるのさ。そういうの勘弁して欲しいっていうか。アベル君エッチ過ぎ。しゃがみ込んで、ニヤニヤ。

 

み、見せ付けておいてそれはないのだっ! ううっ…おパンツが見えなくなってしまったのだ…(////

 

言っておくけど魔法少女さやかちゃんにエッチなことが出来るのはご主人様だけだからね♪ えへへへっ♪

 

ふ、ふん…。お前のようにエッチで性悪な性奴を持った上条とやらはさぞや毎晩大変なことであろうな…って、はて。上条…。んー。どこかで聞いたような…。上条…。上条……。そ、そうじゃ、あ、あの有名な幻想殺しの…。

 

いやその上条じゃなくて。上条恭介様の奴隷なんだけど。

 

キョウスケ!?

 

知ってるの?

 

姉上の元カレの名ではないかっ! 苗字が違うから別人であろうが、その名を聞くと無性にイラっとするのじゃ。

 

……もういい。私のご主人様は上条恭介様。エロス北域の8諸侯のひとつ上条家の若君様さ。年は私と同じ13歳。沢山のお金を出して私をスレーブドームで買ってくれたんだ。

 

……北域の上条。あぁ…あいつか。うむっ、知っておるぞ。

 

有名だもんね。アイツ。

 

北域ではおそらく最強の騎士であろう。複雑な曲線突撃で敵の集団に予想外の角度から切り込んで大将首を狩りよるのだ。あの年で既に4つの戦役に参戦して、どれも立派な武勲を立てておる。

 

うんうん。恭介様のことをよくご存知で♪

 

うむっ。もっと知っておるぞ。その強さと裏腹に甘いマスクをしておって、泣かした女は数知れず…らしいの。バイオリンの腕前がプロ並みで、エロスの宮廷ではいつも奴の周りに女どもが群がり、それはもう凄い人気なのだ。上条恭介はプレイボーイとしても、かなり有名なのじゃ。

 

ムカッ。恭介様が女に声を掛けてる訳じゃない。勝手に言い寄られて困ってるんだよ。……それにもうバイオリンは…。恭介様…巴家へ義勇軍として参戦しくれたんだ…。でも大怪我を負って…腕がもう…。剣は持てるけど…細かい力加減が出来ないんだよ…。

 

すまぬ。失言であった…。そうか…もうあのバイオリンは聞けぬのか…それは寂しいのう…。

 

しょぼん…。

 

……恭介は巴家と何か繋がりでもあったのであろうか。他国の諸侯の紛争に義勇軍として参戦するなど普通ありえぬことなのだが。

 

うん…。上条家と巴家の領地は隣り合っててね、従う王家は別だったけど両家は昔から仲が良かったんだ。巴家に仕える私んちにも恭介様はよくいらっしゃって、子供の頃から私と一緒に遊んでくれた…。オママゴトとかお人形遊びとか、恭介様、いつも私に合わせてくれて…。あの頃は私馬鹿だったから身分とかそういうの分からなかったんだ。まぁ、私、今でも馬鹿ですけどね。あはははっ。……巴家が大変なことになったとき、駆け付けてくれたのは恭介様だけだった。お父様やお母様や家臣たちの反対を押し切って、単身私達のピンチに駆け付けて下さったんだ。さやか助けに来たよって…。本当に嬉しかった…。

 

そのままそちらが勝っておったら英雄譚となったであろうに。

 

そうだね…でも現実はそう上手くは行かないよ。戦いに負けて、恭介様は傷を負われて故郷に戻られて、私は囚われて奴隷になって、もう会うこともないと思っていたのに、恭介様は私をドームで買って下さった。嬉しかった…けどさ、私が恭介様のお役に立てたことなんて、ただの一度もありゃしない…。厚意を受けるばかりで恭介様に何の恩返しも出来ない自分が悔しくて情けなくて…。だからもうこれからは恭介様の為に一生奴隷となって尽くすんだって心に誓ったんだけど…。恭介様は…あの方は、さやかは僕の幼馴染じゃないかって、客人として上条家に迎えるって、そう言われるんだ…。私…もうどうしたらあの人の温情に報えられるのか…分からないよ…。

 

恭介に感謝しておるなら看病するがよいのじゃ。見たところそちは治癒系の魔法使いであろう? もしかすれば…。

 

勿論試した。恭介様の腕が治るなら私は死んでもいいってくらいに集中して…。神様にもお祈りして…。でも駄目だった。奇跡なんて起きなかった。当然よね。私より数段上の治癒系魔法使いでも匙を投げたって程の怪我なんだもの、私なんかでは全然魔力が足りないんだ。でも諦めたくなくて治癒魔法の詠唱を続けてたら、恭介様、自分の腕のことよりマミや杏子が心配だと言って、様子を見てくるようにって…。

 

なんじゃ、もしかして恭介とやらは結構いい奴なのではないか?

 

結構どころか凄くいい人だっ! なんで今頃になって気付くんだよ。私の話を聞いてた? 普通、単身で私達のピンチに駆け付けてくれた辺りで気付くと思うけど…。

 

う、うむっ…。

 

ハァ…。まぁ、だから、そういう訳で、私はマミ様や杏子が誰に買われたか、ここに探りに来ることが出来たのよ。そしたら…。ジロジロ…。

 

ん? なんじゃ?

 

アンタ達、すごく仲良く話をしてたじゃない? 吃驚しちゃった。人見知りで媚びるのが大嫌いな杏子が、ご主人さま~なんて…。あんな甘えた声で呼び掛ける相手っていったいどんな奴か知りたくなって、アンタに声掛けたって訳。杏子を洗脳してたら懲らしめてやろうかと思ったけど、どうやらそういう訳でもなさそうだね。ジロジロ…。

 

仲が良いように見えるかの。杏子には怒られてばかりなのであるが…。んっ。そういえば杏子はどうなったのだ。キョロキョロ…。あぁ、丁度、ヤクザどもを倒し終えたところか。ではそろそろ余も行くとするかな。スクッと立ち上がってお尻の埃をパンパン。しかし結構時間が掛かったのだな。瞬殺かと思ったが。

 

だ、か、ら、アンタに助けて貰いたかったんだよ。ピンチのときに颯爽と白馬の王子様が現れたらメロメロですもん。来ないかな、来ないかなと、ゆっくり戦ってたんだよ。あの子。

 

ただのヤクザなのだ。ピンチになりようがないのだ。

 

分かってないなー。相手が強かろうが弱かろうが…って、あっ、やばい。今度は魔法使いが出て来た。うわっ結構強そう。アンタ、あの子のご主人様なら今度こそ助けに行きなよ? 私も行くからさ。

 

いや余はここで見ておろう。そちも行くでない。どこまで杏子の魔力が上がるのか見極めたいのだ。

 

魔力って、あの子の魔力はそんなに高く…。んっ!? なっ、何この異様な魔力量…。底が見えない…。あれが杏子? なんで?

 

ふはははっ。どうしてであろうな。ふはははっ。残念ながら教えられぬ。

 

えー。ちょっとだけ教えてくれてもいいじゃん。ヒント! ヒントお願い~。さやかヒント欲しいな~。ムギュ。

 

ふはははっ。まぁヒントくらいは良いか。懐をごそごそ…。これじゃ。綺麗であろう? これは余の家に代々伝わるこの世に三つしかないという伝説の…。いやいやこれ以上は軽々しく言えぬの。ふははははっ。なにせ秘宝であるからな。ふはははははっ。ふははははっ。

 

なになに、それちょっと貸して。ヒョイ。

 

はわわわっ。勝手に取ってはいかんのだ。

 

へぇ…可愛いチョーカーだね。綺麗な青色…。透き通ってて、宝石みたいに中でキラキラ光が反射して…。おっ、こんなとこに継ぎ目が…。パカッ。あっ、開いた。

 

かっ、返すのだ。それはチョーカーのようなアクセサリーでなく…。

 

神具なんでしょ? 杏子の首にも赤いのが付けられている…。これが魔力アップの秘密って訳ですか。えへへっ。

 

はわわわわっ。本当にもうそれ返して…。これ以上はシャレやギャグで済まぬから、今返してくれたら怒らぬから、本気で止めて…。あぁ、駄目じゃ! 駄目だって!

 

ニヤッ。自分の首にカチャ。

 

ぎやややぁぁぁっ!!! なんてことをするのじゃぁぁああああ!! この世に三つしかないと言ったであろうがっ! 何が悲しくて他人の奴隷にその大切なひとつを奪われなければならんのだっ! そちとは契約すら出来ておらぬではないかっ! こ、これは犯罪であるぞ。通行人のみんな聞いてくれ。見おった? 見おったよな? あやつは余の大切な秘宝をパクったのじゃ。窃盗事件である。名探偵コナンを呼んで欲しいのじゃ。ううっ、犯人はお前だっ! ビシッ!

 

うざっ。ちょっと借りるだけだって。恭介様の腕を治したら直ぐに返すからさ。えへへっ。じゃあね。シュタッ。

 

あうううっ…。行ってしまったのだ…。何が直ぐに返すじゃ…。全然分かっておらん。あれは一度付けたら二度と取れぬのだぞ? ハァ…。もう何もかも手遅れじゃ…。ガクッ。何の見返りもなく永続的に余の魔力がさやかへと流れ込んでしまう…。いや…まぁ…余の魔力はほぼ無尽蔵であるから百歩譲ってそれはよいとしても、他の男にベタ惚れしておるビッチなどに三つしかない大切な奴隷枠の一つが…。ハァ…。もうやっておれん。青の首輪はクリィミーマミのヒロインの森沢優ちゃんみたいな穢れを知らぬ魔法少女に付けて貰うつもりだったのに…。あーもう余は駄目じゃ。余の人生設計が狂ったのじゃ。もう寝るのじゃ。ドサッ。あああっ。ゲロやウンコに塗れた地面が今の余には心地よいわ。寝返りも打つぞ。ゴロゴロ~。ゴロゴロ~。ふははははっ。なーんだ簡単なことだったのじゃ。ふはははははっ。心を閉ざせば臭いなど…気にならぬ。余の心には何も届かぬのだ。ふははははっ。もうゲロ吐く気がしないのじゃ。ふはははははっ。ふははははっ。ゴロゴロ~。ゴロゴロ~。

 

ふうっ…。案外楽勝だったな。強敵っぽかったのに…。トテトテ…。んっ? ご主人様なにやってるんだ。もうそんなアホなこと止めてくれよ。

 



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まどかの章 19 ★★★ 奴隷市場(ホテル猫々亭)

へぇ。さやかがそんなことを…。王子の腕をスポンジでゴシゴシ…。

 

ううっ…。余の奴隷枠が一つ減ったのじゃ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

ごめんな…。あいつ恭介のことになると周りが見えなくなるんだよ。恭介の腕を治したい一心からだったと思うんだ。王子の胸をスポンジでゴシゴシ…。

 

首輪の力はそのようなことをする為にあるのでは無い…。余の性奴達に万一のことがあってはならんから首輪を渡すのだ。ハーレム候補たちの身は国軍や近衛が総力を挙げて守るが、そちらには何もない。だから自らの身を自分で守れるよう最強の神具が与えられるのだ…。杏子の赤の首輪に手を伸ばし指でスリスリ…。それなのに…。

 

首輪に魔力を増す力があったなんて全然気付かなかったよ。最近、魔法が効き過ぎるからオカシイとは思ってたけど…。王子のお腹をスポンジでゴシゴシ…。ご主人様、足を伸ばしてくれ。

 

うむっ。椅子に座って曲げていた足を前に伸び伸び。

 

……ご主人様の足ってスラっと長くて綺麗だね(//// 王子の脛をスポンジでゴシゴシ…。

 

残る枠は唯一つ、黄色の首輪の性奴じゃが…。

 

しっ、失礼…します…(//// 王子の太股をスポンジでゴシゴシ…。少し迷って、お股もゴシゴシ…。

 

巴マミの消息が分からぬことにはどうしようもないのだ。

 

えっ!? ゴギュッ!!

 

ぎゃあああああああっ! いっ、痛いのじゃああああっ! スポ、スポ、スポンジがっ! スポンジがっ! スポンジボムになっておるぞっ!

 

ご、ごめん。急にマミ様の名前が出たから吃驚して手に魔力が集まって…。大丈夫…?

 

ううっ…。血は出てないが、ちょっとヒリヒリするのだ。

 

ホッ…。

 

ここを洗うときは細心の注意と敬意を払って欲しいのじゃ…。撫で撫で…。

 

……ご主人様、マミ様を性奴にする気なのか?

 

不満か? まぁ、気持ちは分かるが…。そちはマミの騎士であったからな。主人が性奴として扱われる姿を見たくはないであろう。……どうしても嫌だというなら止めてもよいぞ? その分、そちに尽くして貰うことになるが。

 

オレのご主人様はもうアベル様だけだよ。だから不満…じゃないけどさ…。マミ様みたいな美人でお優しい方がご主人様の性奴になったら、オレなんて…構って…くれなくなるじゃん…?

 

杏子の手をグイっと。

 

キャッ!(////

 

なんじゃ…そち…余に構って欲しいのか? 杏子の目をジー。

 

……う、うん(////

 

よし、では今から杏子の身体を余が洗ってやろう。

 

そ、それはいいよ。オレは…自分でやるからさ…(////

 

そちは約束したではないか。拉致された奴隷の噂が嘘だったらモミモミでもなんでもしていいと。

 

言ったけどぉ…(////

 

あの後、奴隷達に話を聞いたが、そちが言っておったように拉致されて連れて来られた、などという者は一人も居なかったのじゃ。洗脳されている訳でもなかったし、脅迫されて嘘を言っておる様子でもなかった。何も答えず不機嫌に何処かへ行けと罵る輩もおったが、単にゲロとウンコまみれの余の身体が臭いから追い払っただけのように思うぞ。

 

ごめんな…。手間掛けさせちゃって…。うん…確かに…そういう問題があるって話は無かったよ…。衛生面は大問題だけど…。

 

うむっ。確かにあの街は酷過ぎである。ゴミの市なる名称からして酷い。なんとかするのだ。だがそれは別の話じゃ。そちが聞いた噂は実際には無かったのだぞ? 手で石鹸を泡立てながら杏子の背後へ。

 

スポンジ…。

 

いや、手で直接そちの身体を洗ってやろう。モミモミしておるうちに身体も綺麗になる。合理的であろう? 膝を付いて腰を落とし、杏子の脇の間から両手をスルリと滑らせて、胸にピトッ。

 

あっ…(////

 

モミモミ。モミモミ。

 

うわっ…ち、ちょっと待って…。あぁ…やぁ…ぁ…っ…(////

 

ふむっ。ちょっとは胸が出て来たか? モミモミ。モミモミ。

 

出ないよ…っ…っ…。だってオレ…男なんだし…うぁ…っ…っ…(////

 

いやいや。そちは女なのであろう? モミモミ。この前、そういっておったではないか。モミモミ。お股にはちっこいのが付いておるが、そちが自分を女だと思っておるなら、余もそちを女として扱うのじゃ。モミモミ。だからもう自分のことを男などと口にするでないぞ。モミモミ。モミモミ。

 

ご主人しゃ…まっ…ぁ…。あぁんっ…うぁ…ぁっ…ぁっ…(////

 

男とか女とか、そのようなことどうでもよい。余はな、杏子、そちを気に入っておるのだ。モミモミ。モミモミ。

 

ご、ごめんなじゃい…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

んっ? 何を謝っておるのだ? モミモミ。モミモミ。余に謝るようなことを何かしたのか? モミモミ。モミモミ。言ってみるのだ。

 

オレ…願いを叶えて貰おうと…ぁっ…。ご主人様に気に入られたくて…だから、ぁんっ…誘惑魔法をつかったんだ…。今のご主人様の気持ちは違うんだ…嘘なんだ…ぁっ…やあっ…ぁっ…。

 

ふ~ん…。モミモミ。余を謀っておった訳か。モミモミ。

 

ごめんな…しゃい…。ヒクッ…ヒクッ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

魔法を解くか? 杏子の胸から手をスルリと離し。離し。

 

嫌だっ! クルリとお尻で身体を半回転させて王子と向かい合い。…魔法が消えたら、ご主人様オレのこと嫌うもん。ううっ…。オレを嫌わないで…。ヒクッ…ヒクッ…。オレご主人様の性奴でいたい…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

もう何があってもそちが余の性奴であることは覆さぬと約束したであろう…。杏子の頭を撫で撫で…。

 

ごめんなさい…。ヒクッ…ヒクッ…。ヒクッ…ヒクッ…。

 

…謝ることはないのだ。余はエロスの王となる者だ。エロスの王族は洗脳に関する魔法は受けぬ。代々そうなのだ。国にとって一番あってはならんのは王が操られることである。王が死んでも王位継承順位一つ下の者を繰り上げればよいだけじゃが、洗脳されておるとそう簡単にはいかぬ。最悪、国が滅ぶ。故にエロスの王家は抗洗脳の特質を重視した血統で千年以上も掛け合わされて来たのだ。そちの魔法が如何に強くても余には何の影響も受けぬ。…もし洗脳魔法の影響を受けるなら、そちの魔法の前に余はサキエルに操られて国どころか世界が滅んでおるであろう。

 

ご主人様…。抱きっ。ギュッ(////

 

心配事はなくなったか? 杏子の頭を優しく撫で撫で…。不安はなくなったか?

 

うん…(////

 

ではもう話は終わりだ。そちは余のモミモミに気持ちを集中させよ。ほら、こんなに抱きつかれたらモミモミが出来ないのだ。余がモミモミし易いような体勢になるのじゃ。

 

ご、ごめんなさい…。仰向けに寝転がって、モゾモゾ…。あ、あのっ…では…お願いします…ご主人様…(////

 

うむっ。腰を落として杏子の胸に手をピトッ。ん? そち、やはり少し胸が膨らんで来ておるぞ。モミモミ。モミモミ。

 

ええっ!? あん…あぁっ…ぁ…っ…っ…やっ…(////

 

これからずっと、余とそちは二人で一緒にこのお胸を育てるのだ。よいな? モミモミ。モミモミ。

 

う、うん…。お胸育てて…くだひぁい…ぁ…ぅ…ぁ…(////

 

胸だけでよいのか? モミモミ。モミモミ。モミモミ。

 

はぃっ! 胸…ぇ…。胸だけで…いいれすぅ…ぁ…やぁ…ぁっ…うぁっ…(////

 

……そちのからだの全ては余が所有しておる。モミモミ。モミモミ。自分の持ち物であるそちを手入れするは所有者たる余の務めであるぞ…。遠慮するでない。モミモミ。モミモミ。他もして欲しいのであろう? モミモミ。モミモミ。モミモミ。モミモミ。

 

コクン…。ぜんぶ…ご主人しゃまのモノ…。ぜんぶ…れんびゅ…モミモミしてくらしゃい…お手入れしてくらしゃぁい…ゃぁ…ゃぁ…ゃぁっ…(////

 

ふはははっ。……この淫らで可愛い宝物への余の執着、如何ばかりか、そちのからだに今ジックリと教え込んでやるのだ。

 



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まどかの章 20 ★★★ 奴隷市場(ホテル猫々亭)

やり過ぎたのじゃ…。二時間もそちを揉み洗いし続けて余の握力はすっかり無くなってしもうたわ。もうこれくらいにしておくかの。余の手が持たんし…。杏子をチラッ。そちもこれ以上は…。んー。杏子のからだの肩の辺りをクンクン。自分の腕をクンクン。うむっ。二人共、臭いが取れておる。よしモミモミはこれで終わりだ。

 

クタ~(////

 

どうした杏子。そんなところで懐かしのタレパンダのように寝転がっておらず、これから余と一緒に風呂へ入るぞ。結構浴槽が広いのじゃ。よいしょ…っと、ザバン…。ふうっ…。丁度いい湯加減なのだ…。何をしておる。そちも早よう入れ。

 

う、うん…。よい…しょっ…。手を床のタイルに付き、お尻を起こし立ち上がろうとするも、途中で脱力してポスン。アレ…?

 

大丈夫か? 手を貸そう…。

 

い、いいよ。ご主人様はお風呂に入ってて、あぁっ、出なくていいから。オレ立てるから、よっと…。反動を付けて勢いよく立ち上がり、ちょっとヨロヨロ…。壁の鏡に手を付いてなんとか安定。ホッとして溜息を付くも、鏡に写った自分の真っ裸な身体をジー。

 

どうしたのだ? 不思議そうな顔をして。

 

いや、オレの胸が…ちょっと…。でも…そんなこと…。自分の胸をさわさわ…。

 

杏子?

 

えっ!? あぁっ…い、いや…な、なんでもない! 頬を染めて、お胸とお股を腕で隠しながら早足でトテトテ…。浴槽を跨いで、お風呂にトプンッ…(////

 

もう余に恥ずかしがることもあるまい。杏子の目をジー。

 

恥ずかしいもん…。お湯の中に頭までポチャンと漬けて、お湯の中でモジモジ…(////

 

杏子の両腕を握って、お胸やお股を隠している手を強引に退け退け。

 

バシャ! バシャ! や、やだっ…(////

 

杏子。

 

ご、ごめんなさい、ご主人さま…。

 

そちの腕はそちの為にあるのではない。余の為の物だ。余を喜ばせる為に使うがよい。

 

どうすればご主人さま…喜んでくれるの?

 

そちが嬉しいことは余も嬉しい。そちが喜ぶと余も喜ぶのだ。そちが今一番やりたいことをすればよい。自分のからだを余に隠し拒絶したいか?

 

フルフル…(////

 

本当はどうしたいのじゃ? やってみよ。

 

ううっ…。ご主人様…。両腕を王子の身体に廻して、抱きっ(////

 

考えることは同じであるな。余もそちを…。両腕を杏子の身体に廻して、抱きっ(////

 

ご主人さま…(////

 

……なんじゃ?

 

ご主人さま…(////

 

……だから、なんじゃ?

 

えへへへっ…(////

 

なんなのじゃ…(////

 

あのさっ…。

 

んっ…?

 

抱き合ってるだけなのに、オレ、いま凄く気持ちいいんだ…(////

 

ふむっ、余もだ…(////

 

えっ…。あっ。わっ…ぁっ…うぁ…ぁぁ…やぁぁ…あぁっ…ぁっ…ぁっ…ぁっ…ぁっっ…(////

 

どうした?

 

ふぇっ? いや、あのっ…えっと…。

 

んっ…?

 

オレさぁ…さっき…。

 

うむっ…。

 

気持ちよくて…フッと力が抜けちゃったんだ…そしたら急にムズムズしてお漏らししたくなって…。我慢したけど…出ちゃった…ごめん…。

 

ふむっ。

 

雰囲気ぶち壊しだね…ごめん…。

 

杏子。

 

え…。

 

次からはそのようなとき、何も言わずともよい。

 

うん…。

 

こうしておることが…そちには…お漏らしするほど気持ちよいのか…。

 

コクン…(////

 

そうか…。それなら…よかった…余も嬉しい…(////

 

ご主人さま…(////

 

杏子。

 

んっ…。

 

心も身体も暖まったことであるし、そろそろ出るか。

 

はい…。

 

杏子のからだをギュッと抱きしめていた腕を解き解き。

 

あぁっ…。しょぼん…。

 

そちも…。

 

うん…。王子のからだをギュッと抱きしめていた腕を名残り惜しそうに、ゆっくりと解き解き。

 

では、出るかの。ザパンッ。

 

ご主人様、拭くものを用意するよ。ちょっと待ってて…。湯船からサッと出て脱衣場へ、テトテト…。バスタオルを手にUターンで戻って来て、ひざまずき。

 

うむっ…。湯船からザバンと出てテクテク…。

 

歩いてるご主人様のからだを一生懸命に拭き拭き。

 

ご苦労…。

 

ご主人様、おみ足を…。

 

うむ。脱衣場で杏子が服を着せやすいように足を止めて、おパンツを持つ杏子の腕の動きに合わせ、右足上げ、左足上げ。

 

宿で注文した新しいおパンツをご主人様に着せ着せ。白のキュロットを着せ着せ。パステルカラーの花柄Tシャツを着せ着せ。

 

……夏向きで涼しそうな格好であるが、これは女向けの服装ではないのか? 鏡をジロジロ…。

 

そんなことないって、ご主人様、スゲェ可愛いよ!

 

質問の答えがオカシイが…城に戻るまではコレでよいか…。

 

パフン…。抱きっ! ご主人様…。

 

うわっ、や、やめるのだ…。そちはまだからだを拭いておらんではないか。ううっ…Tシャツがベトベトになってしまったのだ。

 

えへへへっ。ごめん…。ご主人様に使ったバスタオルを自分の顔にパフンと被せてクンクン。ボーっとした表情となり自分の胸にバスタオルを押し当てて、拭き拭き(////

 

杏子の様子をチラチラ。こ、このような宿がゴミの市の側にあって助かったのだ。直ぐに身体を洗わねば臭いが染み付いてしまうし、何より病気になってしまうからの。

 

ゴミの市があそこまで不衛生なのはさ、この宿を儲けさせる為だったりして。自分の頭にバスタオルを被せて、拭き拭き(////

 

ふふっ。ありうるの。

 

自分のおパンツを穿き穿き。ご主人様が着てたあの服は凄く汚れちゃってて、もう着れないからこの宿で処分して貰ったけど、それで良かった?

 

うむっ。杏子の着替えシーンをチラチラ。そちの服はどうするのじゃ? おパンツだけではないか。

 

オレのはそんなに汚れてないからクリーニングに出したんだ。直ぐに仕上がるらしいから、それまでオレ、このままで待ってる。恥ずかしいからベッドの中に入ってていいかい? (////

 

では余も一緒に…って、いやいや待て。あの臭いは服に染み付いたら二度と取れぬであろう。もうあの服は着てはならん、捨てるのだ。折角そちの身体を洗ったのに、また臭いが付いてしまうではないか。

 

捨てるなんて勿体ないよ…。あの服はオレのお気に入りだったし…。

 

余はそちの匂いが好きなのだ。別の臭いが混じるのは嫌じゃのう…。

 

えっ? ご主人様、オレの匂いが汗臭くて嫌だから、匂わないように清潔にしろって言ってたじゃん。

 

ふむっ。あの時は嫌だったのだ。でも今は何故か分からぬが、とても良い匂いに思えるのだ…。もう嗅げぬとは寂しいのだ。

 

へ、へぇ…。そ、そうなのか。えーっと、んーっと…。ご、ご主人様の希望なら仕方ないよな。うん。オレもう着ない、絶対に着ない(////

 

では、あの服の代わりに。この服をそちに送ろう。 ……パチッ☆

 

おパンツ一枚の杏子に朱色のスーツがビシッ! えっ!? これって、オレのスーツじゃん…。テレポート…じゃないよね。クンクン…。臭いがない…ということは違う服? まさか魔法で同じ服を!? ご主人様ってほんと凄いんだな…。

 

余の能力は姉上の波紋系のように、何にでも応用の利く魔法系統では無いが、このくらいはな…。

 

こんな本物の具現化魔法、ルーンで使えるの2~3人くらいしかいないと思うよ。

 

そちの身体から出る魔力の粒子をあの服の形に固定させただけじゃ。燃費を重視したからの。特に防御力に秀でるとか、特殊な能力がある訳でもない。その分、そちの魔力消費は微々たる物じゃ。……余からそちに流れ込んでおる魔力を固定化させれば凄い服を作れるのだが、それだと余の匂いがそちに移ってしまうからな。

 

いや十分だよ、これで…。スゲェ嬉しい。実はあの服さ、前のご主人様から戴いた大切な服だったんだ。勿論ご主人様が嫌ならオレは着ないけど、クリーニングから戻って来たらさ、桐箱に入れて大切に取っておこうと思うんだ。同じ服が今のご主人様からも戴けるなんて…。服の袖を頬でスリスリ。

 

前のご主人様というと、巴マミか…。

 

うん…。性奴にしたいんだろ?

 

そちが嫌でなければ…だ。そちはマミを性奴にすれば余に構って貰えなくなる気がして嫌なのであろう? ニヤニヤ。

 

二人共、構ってくれるんなら、それでいいさ。ていうかさ…。うーん。

 

なんじゃ?

 

オレはご主人様の物なんだろ? 所有物に意見なんて聞いてどうするのさ? ニコニコしながら王子の顔に自分の顔を近づけ、下から上に覗き込み。

 

さっき言ったであろう? そちが嬉しいことは余も嬉しい。そちが喜ぶと余も喜ぶとな。だからそちが悲しいなら余も悲しいのだ。……悲しい思いをするのは嫌なのじゃ。杏子のおでこにコツンと頭突き。ミ☆

 

痛てて…。

 

……。

 

たんこぶ出来ちゃってるじゃん…。

 

杏子。

 

ん? おでこ撫で撫で。

 

真面目な話、どうなのだ?

 

だ、か、ら、構ってくれるならそれでいいって…(////

 

前の主が堕ちる姿、本当にそちは耐えられるのか?

 

……オレのご主人様はアベル様だけだよ…もうそう心に決めてる。前にも言った筈だぜ? 信じてくれないのか?

 

……。

 

じゃ、オレの今の心を証明する為にマミ様をご主人様の下へ連れてくるよ。泣いて嫌がっても連れてくる。何を言われても耳を貸さない。ご主人様の為なら、オレ…なんでもするから。

 

よい心掛けだが、そちはマミがいま何処にいるのか分かっておるような口振りであるな。

 

インキュベータ社の本社…。奴隷ファームがある地下施設の何処かにマミ様は監禁されている筈だよ。

 

あの奴隷商か…。もしや、そちはマミを救出するのに有利だと思って、インキュベータ社があるスレーブタワーに住みたいと言ったのか?

 

うん。黙ってて、ごめん…。

 

もう少し余を信じてくれても良かったのではないかと思うが、今はもう余を信じてくれておると思うから、何も言わぬ。

 

うん…。ありがと…。

 

しかしどうやってマミの居場所を掴んだのじゃ。ドームの落札者情報は厳重に管理されておる筈だが。

 

オレをドームで落札した人…。ほら、えっと、何て言ったっけ、あぁ、そうそう。サキエルって人から聞いたんだよ。

 

サキエル!?

 

うん…。くくくっ。お仲間のマミ様のことがさぞ心配でございましょう…って言われたから、うんって答えたら、ではあの方が誰に買われどうなる運命かお教えしましょう…って。

 

な、な、なぜ、奴がそのようなこと知っておるのだ…。ううっ…。マズイのじゃ…。何か妙なことを勝手にやっておるのだ…。奴に休みなど取らせ時間を与えるでなかった。また碌でもないトラブルが始まるに違いない。いやもう既に始まっておることであろう。奴は余の前では道化を演じておるが、余のおらぬところでは何をやるか分からんのだ。非常にマズイのじゃ…。

 

何を心配してるのさ。ご主人様の側近中の側近だろ? オレの見たところ優しくて親切そうな人だったぞ? 結構イケメンだったしな。

 

アレが…イケメンだと? ま、まさかそち、既にサキエルと…。

 

馬鹿っ! そんなわけあるかっ! 腹にパンチ。ガスッ。

 



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まどかの章 21 ☆☆☆ インキュベータ社(特別来客室)

すみませんサキエル様。ほむらは只今、会議に出席しておりまして…。会議が終わるまで、しばらくこちらの部屋でお待ち下さいませ。

 

くくくっ。重役会議ですかな。九兵衛社長がお亡くなりになられた今、次期社長の座を巡って激しいやり取りがなされておるのでしょうな。ソファーにトスン。

 

さぁ、どうでしょうか。会議の内容は私には分かりかねますので…。前を失礼します。コトッ。カチャ。

 

くくくっ。ほう…。素晴らしい香りがするコーヒーにございますね。戴いてよろしいですかな?

 

冷めない内にどうぞお召し上がり下さいませ。

 

くくくっ。コクコク…。深く濃い山野が果てしなく…その中にひとつの清流あり、流れ辿り着くカフカの混沌…。そのディラックの湖畔に佇みニーチェの詩集を読みふける貴婦人の如く端麗な味が微かに…。モカですね?

 

はい。このコーヒーは…。

 

くくくっ。シーッ。お静かに…。

 

……。

 

くくくっ。コクコク…。はい…分かります…。ただのモカではありませんね。その角の取れたまろやかな苦味は、まるで億万年の歳月を経て円熟の丸みとなったムーン…。我々の頭上遥か遠くの彼方からささやかな引力となって、ムーンの苦味は舌の奥底で秋の小波のように人知れずあらわれてはサッと侘しく引いていくのです…。間違いありません、これはジャコウ猫のウンチから出た豆を引いてますね? それも軟便からでた豆を厳選している。違いますか?

 

…さ、さぁ。どうでございましょう。私はドトールでモカブレンドを買ったつもりだったのですが、もしかしたら道を間違えて東急ハンズに行ってしまいジャコウモカを買ったのかも知れません。汗汗…。

 

くくくっ。軟便の?

 

はい。軟便のジャコウモカをです…。

 

くくくっ。有り得ませんな。東急ハンズにもドトールにもそのような高価な品は売っておりません。ジャコウモカは銀より値が高く、軟便ともなれば金にも匹敵しましょう。

 

すみません、私、話を合わせる為に適当なことを…。

 

くくくっ。構いませんよ。わたくしも適当なことを喋っているだけにございますので。

 

……。

 

くくくっ。コクコク…。

 

そ、そうですよね…。ジャコウ猫のウ、ウンチからコーヒー豆を取り出すだなんてあり得ませんよね…。私は物を知りませんのでついサキエル様の冗談を真に受けてしまいました。お恥ずかしい限りです。

 

くくくっ。いえジャコウ猫の話だけは本当の事にございます。

 

……。

 

くくくっ。気になさることはございません。このようなこと普通に生活する分にはなんの必要もない知識でございます。稀にテレビの娯楽番組で面白おかしく取り上げられたりもしますが、所詮その程度のことにございますよ。

 

……サキエル様は博識でいらっしゃいます。

 

くくくっ。わたくし執事をやっておりますので、こういったことには長けております。主を喜ばせる為にはどうすれば良いのか、日々、そればかりにございますよ。コーヒーも最高の物をお出ししたい、その一心から段々と詳しくなり、今ではジャコウ猫を庭で飼う程に…。くくくっ。わたくしその糞から豆を取るのが毎日の日課となっております。

 

サキエル様の主となられた方はさぞ美味しいコーヒーを毎日飲まれるのでしょうね…。羨ましいですわ。

 

くくくっ。羨ましい? では試されますか?

 

えっ…。

 

くくくっ。いえ今朝採れたての何粒かが確かポケットの中に…。ゴソゴソ。それを口に含んで噛み砕いてみれば普通のモカとの違いが分かると思いますので…。どこでしたか…。ゴソゴソ。

 

い、いえ。私はコーヒー豆を生のまま口に含んだことなど一度もございません。きっとどこがどう違うのかは分からないでしょう。ですので、それはちょっとご遠慮させて頂きます。

 

くくくっ。私としたことが、すみません。その通りでございますね。ローストしてないと味も匂いも分かりようがございません。

 

えぇ、残念です。ホッ…。

 

くくくっ。それではローストしてからお渡ししましょう…。ゴソゴソ。おおっ、ありましたぞ。ではこのまま手の中で…。はいロースト。 ……パチッ☆

 

……。

 

くくくっ。ささっ、お手を出して下さい。はい、どうぞ。黒い粒をポロポロ。

 

……。

 

くくくっ。それを口に含んで…。

 

……口に含んで。

 

くくくっ。噛み砕いて下さい。

 

……噛み砕く…カリッ。

 

くくくっ。如何にございますか?

 

うぇっ…。味は少し市販のコーヒーより苦味が走ります。うぇぇえっ…。ケホケホ…。匂いは…かなり違います…野性味があるといいますか…。うぇうっ…。サキエル様よりお聞かせ戴いたお話の印象が残っているのか私にはやはりどこかウンチのような臭いに…い、いえ失礼しました…。えぇ…素晴らしい香りです。これがジャコウモカの香りなのですね。

 

くくくっ。ジャコウモカ? いえいえ違いますよ。名称は特にないのですが、この豆、強いて言えばサキエルモカにございますかな。

 

……。

 

くくくっ。どう致しました?

 

……軟便の?

 

くくくっ。はい。軟便のサキエルモカにございます。

 

うげぇえっえ…ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。

 

くくくっ。お口に合いませんでしたか?

 

ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。

 

くくくっ。色々と試した結果、ジャコウ猫よりもわたくしの腸で長く熟成させた方が、さらに円熟味が増すことが分かりまして…。

 

うげぇえぇぇえ…ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。

 

くくくっ。わたくしの知る限り、これがルーン最高のコーヒーにございますよ。

 

ケホケホ…。ケホケホ…。あ、あなたの主はこれを毎日…? ケホケホ…。ケホケホ…。

 

くくくっ。いくらなんでもそれは無理にございます。毎日、軟便という訳にもいきませんので。

 

……。

 

くくくっ。どうされました。お顔の色がさらに青く…。

 

す、すみません。また気分が…。し、失礼します。

 

くくくっ。お手洗いですかな?

 

うぇうっ…。

 

くくくっ。もしや貴女もお腹の中でコーヒー豆の熟成を?

 

違いま…すう…うっ、げぇえぇぇえ…ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。ゲロゲロ…。

 

くくくっ。冗談が過ぎたようです。すみません。サキエルモカなどございません。まさかここまで本気になさるとは思いませんでしたので、つい悪戯心が芽生え、やり過ぎてしまいました。お詫びします。背中を摩り摩り。

 

ケホケホ…。本当ですか? よ、よかった…。ケホケホ…。ケホケホ…。

 

くくくっ。えぇ、アレはそもそもコーヒー豆ではないのでございますよ。くくくっ。実は今朝方、3週間振りにお通じがございましてな。その出た宿便がまるでウサギの糞のようでございましたので記念に取って…って、聞いておられますか? もし? おやおや気絶されてしまわれましたか…。くくくっ。ただのコーヒー豆を数粒ポケットに忍ばせておくだけでこんなにも楽しく時間を潰せるのですから、人間ほどに面白い玩具はございませんね。

 



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まどかの章 22 ☆☆☆ インキュベータ社(特別来客室)

ドア、ガチャ。遅れてごめんなさい。貴方がサキエル卿ね。暁美ほむらです。ペコリ。

 

くくくっ。サキエルにございます。暁美…ほむら…。暁美九兵衛の愛娘というのは貴女ですね?

 

……養女です。九兵衛は実の父親ではないわ。

 

くくくっ。血の繋がりに拘っておられるのですか? 養女だろうが実子だろうが、貴女が九兵衛にとって愛娘だったことに変わりないでございましょうに。

 

私は人ですらなかった。九兵衛のお気に入りの人形だった…。それだけよ…。

 

くくくっ。なるほど、まぁ、過去に囚われていても仕方ありますまい。それより先程の会議は如何にございました? ほむら様はインキュベータ社を継がれたのでございますか?

 

……九兵衛の唯一の親族だからと後継を薦められて、不本意ながら引き受けたわ。社の膿を出し切るまで続けるつもり。

 

くくくっ。それは素晴らしい。……で、インキュベータ社の新社長がわたくしにお願いとは何でございましょう。反抗する役員を何人か殺せとか?

 

洗脳魔法を受けた女の子を元通りにして欲しいの。偽の記憶を消して奪われた記憶を戻して。貴方はルーン最高の洗脳系魔法使いなんでしょ? 謝礼は出来る限りするわ。だから…

 

くくくっ。まどか、ですかな? ん? おやおや。どうされましたそのような怖い顔をされて…。

 

貴方、どうして…。

 

くくくっ。警戒する必要はございません。実は九兵衛とは旧知の間柄で、過去に二度ばかりあの者から洗脳の依頼をお引き受けしたことがございましてな…。実は自分をまどかと思い込んでいる少女、製作者はわたくしなのでございますよ。くくくっ。自信作だったのですが、お気に召して戴けませんでしたか?

 

ふざけないで! 本物のまどかはこの世に一人しかいないわ。他人をまどかの代わりにしてそれがいったい何になるというの?

 

この世に一人? くくくっ。この世に一人もいないの間違いでは?

 

……あの子を元に戻しなさい。あの子はまどかではない。あの子にはあの子の人生があります。整形前のパーソナルデータは手に入れたわ。声帯の復元も含めて時間は掛かるだろうけど出来る限り元の姿に戻します。残るは記憶…。貴方ならあの子の記憶を蘇らせて元の人格に戻すことが出来るんでしょ?

 

くくくっ。戻してどうするのでございます。元に戻すとはつまり商品としての奴隷に戻すということ。過酷な人生が待っていることでしょうなぁ…。そのようなことをして誰が幸せになるのです?

 

元に戻しても売ったりはしないわ。

 

くくくっ。貴女が面倒を見るのですか? まどかのイミテーションと何の違いがあるのやら。

 

黙りなさい。

 

あの少女には残酷なこととなりましょう。まどかの身代わりとして愛されることを自覚する訳ですから。

 

黙れっ! あの子のことは私の責任だから面倒は見る。学校にも行かせて成人するまで見届ける。私に束縛させはしない。お前が考えているようなことにはならない。

 

くくくっ。まぁ、お好きにして下さいませ。貴女の奴隷なのですから、ストイックな愛し方に興味を持たれたのなら思うままにやられればよろしい。足長おじさんのお話にあるような甘酸っぱい関係となれるように、不肖このサキエル、助力は惜しみません。 ……パチッ★

 

……今のは?

 

くくくっ。あの子の記憶をリカバーする魔法でございます。まどかに関する全ての記憶はいま消去されました。バックアップ領域に残してあった元の記憶は次第にメイン領域へとシフトして行きます。2、3日で元に戻るでしょうが、それまでは少し不安定な精神状態となりますので、目を離さないようにお願い致しますよ?

 

……相手を見もしないでどうしてそんなことが出来るの?

 

くくくっ。わたくし天才にございますので。

 

魔法使いでなく波紋も出てないあの子をどうやって捕捉…。そう…。最初からずっと捕捉し続けていたのね…。貴方はあの子にまどかの記憶を刷り込むだけでなく、あの子が見聞きした情報を自分に送り続けるスパイウェアを頭に仕掛けていた…。そして今のリカバー魔法…。遠隔操作ウィルスまで組み込まれているって訳…?

 

くくくっ。手抜き仕事は相手を見てやるものですな。貴女が目の前にいるにも関わらず、ついいつものように…。くくくっ。

 

あの子の頭の中はお前に仕組まれた洗脳プログラムで一杯だったのね…。どうしてそんな酷いことを…。

 

くくくっ。九兵衛とは旧知の間柄といいましたが、実はわたくし達、共にある機関に属しておりまして。コンプライアンス上、詳しくは申し上げられませんが、崇高な目標に向かって邁進していたのでございます。九兵衛は途中で機関から脱退しましたが、いや九兵衛はこの世からも脱退しましたが、くくくっ。まだ個人的にその目標へ到達すべく活動を続けておることが分かりましてな。奴がどういう手札を持ちどんな手を練っているか、我々には知る必要があった…。あの子へ洗脳する機会はまさに千載一遇のチャンスだったのですよ。くくくっ。わたくし、インキュベータ社についてあらゆることを把握することが出来ました。貴女に経営指南しても良いくらいに…。

 

あの子はずっと貴方に操作されていたというの…?

 

くくくっ。ご安心下さい。わたくし紳士にございますので、操作はインキュベータ社を探るときだけにございます。あの子が貴女との情事に耽っている最中に操作したり視界を覗いたりはしておりませんので、昨夜のこと、わたくしノータッチにございますよ。

 

机、ガンッ!!! あの子に仕掛けた洗脳プログラムを全て解きなさい! 今直ぐに!

 

くくくっ。仕方ありませんな。 ……パチッ★ ……パチッ★ ……パチッ★ ……パチッ★ ……パチッ★ ……パチッ★ ……パチッ★ ……パチッ★ ……パチッ★ ……パチッ★ 

 

いったい何個仕掛けたのよ…。

 

くくくっ。あの子は頭が良いですからな。メモリが多く使えて、かなり凝った洗脳プログラムも走りますから、本来必要のないものまで入っていたりします。例えば、相手を興奮させるフェロモンを汗腺で大量分泌するように脳内から体内器官へシグナルを送るものですとか、性感帯から脳内に送られるシグナルを本人の望むままに倍率変更出来るものですとか、色々ありますが、どれも素晴らしい結果が出ました。くくくっ。貴女には言うまでもないですかな?

 

貴方みたいな人がアベル王子の側近だなんて…。

 

くくくっ。国のように大きな組織を動かすには綺麗事ばかりでは上手く行きません。適材適所の人員配置が必要なのですよ。わたくしのような者でないと務まらぬお仕事は沢山ございますし、かといってわたくしのような者ばかりでは組織が成り立ちません。ほむら様もこのような大企業のトップとなられたのならご存知の筈…でございますよね?

 

わたしは社の膿を出し切るだけよ。膿んだ部分は見付け次第すべて切り落とすわ。

 

くくくっ。奴隷商の御社は腐ってない部分を探す方が難しいと思われますが、まぁ、お手並み拝見と致しましょうか…。クリーンな奴隷商というものも見てみたいですからな…。くくくっ。さて、もう後はもうよろしいですかな? 折角ルーン最高の洗脳魔法使いが来たのです。洗脳を解くお仕事だけでなく仕掛けるお仕事は如何にございます…。格安にしておきますよ?

 

無料でもご遠慮させて貰うわ。…それより貴方、城に帰るなら王子へ伝言を頼みたいのだけど。

 

くくくっ。ハーレム候補にでもなるおつもりですか? 恋文ならあまり刺激的な内容はご遠慮願います。王子はまだ10歳なもので。

 

真面目な話よ。…貴方、インキュベータ社について全て把握してるなら、もう分かっているのよね? マギカの動き。

 

くくくっ。勿論にございます。なんでもシャルロッテの騎士団がエロスに越境攻撃を仕掛けて来るとか。目標は国境地帯の難民キャンプ…。

 

早ければ今日中にもあるかも知れない。でもテレビで難民キャンプの報道を見る限り警備は殆どされてないわ。騎士が数騎パラパラと国境沿いに散開しているだけ…。攻撃を計画しているシャルロッテの騎士団はとても強力な騎士団なの、あれでは守り切れない。国境の防衛線を一騎でも突破されたら大変なことになるわ。なんとしてもシャルロッテを止めないと。お願い、王子にもっと警備の人員を増やすように言って欲しいの。

 

くくくっ。おやおやこれは妙なことを仰る。貴女はシャルロッテを止められなかったのですか? インキュベータ社との契約でマギカはエロスを攻めるのでございますよ? 社長である貴女がどうして何も出来ないのですかな。くくくっ。社の膿を出すといいながら結局は口先だけで他人任せにございますか…。

 

襲撃をやめるよう何度も説得したわ。そんなことしなくても契約通りに報酬は払うからって。でも聞いてくれなかった…。一度合意に至った契約だから覆せないって…。マギカは九兵衛との契約の対価でインキュベータ社の大株主となったの。契約履行の為だけにシャルロッテは難民キャンプを攻撃するんじゃないわ。株主としてインキュベータ社の価値を維持したいが為に難民を皆殺しにする気なのよ。

 

くくくっ。膿みを出し切るどころか、膿みに社を乗っ取られる寸前にございますね。

 

……エロスは王子のハーレム候補選びと戴冠式を控えて大切な時。でも鳳凰宮でのクーデター騒ぎに王都の半壊、最近のエロス国内は乱れに乱れている。さらに隣国からの越境攻撃があれば国民は王子の統治能力に疑問の目を向けるのではないかしら。エロス王家の威信は失墜して周りの国からもさぞやなめられることになるでしょうね。

 

くくくっ。まぁ、確かに…。

 

国境をもっと固めるよう王子に進言して。あれでは難民も警備隊も全滅してしまう。

 

くくくっ。その様に瑣末なこと王子の耳に入れるまでもありません。十分に手は打ってございます。わたくしが得た情報は諜報部を通じて国防部に…。諜報部はお庭番衆と何かと張り合っておりましてな。今回、お庭番衆を出し抜いて隣国の不穏な動きを掴めることが出来たと、それは喜んで頂きまして…わたくしとの間に信頼の太いパイプが…。くくくっ。お庭番衆の権威はガタ落ちでございましてな。国境警備にお庭番衆16人全員が狩り出される始末。その中にはわたくしの宿敵ともいえる蓮華という女狐がおりまして、シャルロッテに討たれるなら真に結構な話でございます。王子は激昂してマギカ討伐の断を下されるでしょうし、マギカによる難民虐殺の蛮行が重なれば国民の戦意は高揚して王子のお考えに皆同調されることになりましょう…。内に問題があれば民の目を外に向けさせる。円満な国家運営の基本にございますよ。

 

国難を権力闘争や国民の心理操作に利用するなんて…。

 

くくくっ。国難? いえいえ。今回のことは我が国の行政部が莫大な予算と時間を掛けて行っている世界変革プロジェクトの一環にございますよ。

 

世界変革プロジェクト…。

 

くくくっ。簡単に言えばエロスによる世界支配の再現にございます。これにより世の中の仕組みがとてもシンプルになる。今ある多くの国は消えます。勿論マギカもです。エロスはマギカを分裂させる為に以前から巴領主にアプローチを掛けておりました。エロスの上条家が巴家とのパイプを持っていましたから、そのルートでかなりの額の賄賂を贈り、巴領での政策を平民に寛容なものへ舵を切らせたのです。金を渡すからマギカに背信せよとズバリ言うより、人道的な大義名分があった方が飲み込ませ易いですからな。で、その結果、我々の計画通りマギカ各地で暮らしていた平民が巴領へ大量に流れ込みました。ある程度に領民が集まり、巴家とマギカ王家との亀裂が決定的となって、マギカの中央軍が巴領内に侵攻して来たその時には…実際には先週末でしたが、領内世論を受けた形で巴家にマギカからの独立宣言をさせて、エロス軍が平民の人命・人権の救済名目で軍事介入をと…。まぁ、いわゆる正義の戦争に発展させて最終的にマギカの全てをエロスが飲み込む算段にございましたが…。

 

残念ながら失敗したって訳? その話が本当ならエロスは巴家を土壇場で見捨てたことになるわ。世界変革プロジェクトは第一歩にして石に蹴躓いて転んで車に跳ねられて大怪我になったとも言えるわね。巴領主は追い詰められて自害。姫は奴隷として売り飛ばされ、領民は難民となって今まさに虐殺されようとしている。計画にどこか致命的な欠陥があったといわざる終えないわ。立案した人は死んで責任を取るべきね。

 

くくくっ。責任は立案者ではなく、わたくしの口から言うのもなんですが、王子にございまして…。あの方は他国への侵攻や世界征服の進言を全て却下されたのですよ。まぁ、10歳の王子に国家のドロドロした謀略など見せたくないという我々の思いが裏目に出たのですな。正論尽くしの理詰めで説得すれば了承すると思い込んでいた我々の見通しの甘さも悔やまれます。くくくっ。とはいえ世界変革プロジェクトが頓挫した訳でもないのです。このような事態も想定の範囲内なのですよ。マギカの内紛に正攻法で介入するケルト主導のα計画から、わたくし主導のβ計画へ作戦フェーズが移行したに過ぎないのです…。くくくっ。インキュベータ社を呼び水に使ったカウンター攻撃にございますよ…。ほむら様、これは国難などではございません。エロスに更なる繁栄をもたらす天佑なのでございますよ。

 



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まどかの章 23 ★☆☆ インキュベータ社(特別来客室)

インキュベータ社を呼び水? 九兵衛は貴方に洗脳され操られてマギカと契約を結んだとでも? 九兵衛は抜け目のない狡猾な男だった。洗脳で操るなんてありえないわ。貴方のいうマギカに攻め込むα計画が失敗して今の状態となった流れを、なんとかβ計画と名付けて取り繕っているだけにしか思えない。デタラメな計画の失敗で情勢が悪化してエロスは国難の危機に陥ったことを先ず認めなさい。でないとこの国は滅ぶわ。

 

くくくっ。九兵衛を洗脳出来ればもっと楽にβ計画の遂行は可能だったでしょう。しかし狡猾とか抜け目ない以前に、彼にはそもそも魔法が効きませんのでね…。貴方は九兵衛のことをただの平民だと思っていたかも知れませんが、先程言いましたように奴はわたくしのライバルであり、特異な結界系魔法使いでございまして…。

 

結界?

 

いや、まぁ、それはまた後で追々説明しましょう。いま何が言いたいのかと言えば、洗脳など出来なくても人を動かすことは出来るということです。難民が大発生と先程、貴女は言われた。何人ですか?

 

今の時点で50万人はいるそうね。100万人を超えるとも予想されている。

 

くくくっ。貴女、実際に数えられたのですか?

 

貴方の家にテレビは無いのかしら。実際にニュースの映像として難民キャンプの映像が流れているわ。沢山の難民がね。

 

くくくっ。あれは嘘にございます。実際にはマギカの住民の大半はまだ国境を越えられずにいます。実際、エロス側に辿り付けたのは、そう…500人くらいでございましょうか。くくくっ。映像はデジタル加工されたものにございますよ。この国のメディアは公共放送のNHKと新聞を軸にした五つの民間放送からなりますが、どれも国の指示通りにしか報道致しません。痛烈な政府批判も時折やりますがアレもただのガス抜きにございます。基本的にこの国のシステムの内側にいる者達ですので。

 

……難民の大量流入で奴隷の価格が暴落すると九兵衛に思い込ませる為に嘘の情報を流した…とでも言いたいのかしら?

 

くくくっ。この嘘は都合が良いのです。九兵衛にマギカとの契約を結ばせることが出来ますし、実際に死んでいなくとも嘘の数だけマギカが大量虐殺したと主張できる…。くくくっ。わたくしにとっては、いま国境を警備している愚連隊の如き輩の評価を下げられるのが一番に都合がよろしい。いくら蓮華が頑張っても居もしない難民を救える訳がございませんからな。くくくっ。愉快、愉快にございます。くくくっ。くくくっ。

 

九兵衛は貴方にまんまと騙されたって訳…。人を騙したその報いかも知れない…。でもよかったわね。九兵衛は抜け目無い男だった。一時的に騙せても直ぐ嘘だと気付いた筈よ。もし生きてたらマギカとの契約を後で改定して貴方ご自慢のβ計画を頓挫させたことでしょう。私には無理でも奴なら出来た筈…。貴方の計画なんて所詮はその程度。たまたま九兵衛の死と重なったから上手く行っているだけ。どうせ直ぐにボロが出るわ。

 

くくくっ。そうでございますね。契約を結んだ直後に貴女が殺してくれて本当に助かりました。九兵衛は特異な結界系魔法使いだと先程申しましたが、どう特異かと言いますと、他人からの影響を一切受けないという奇天烈な能力の持ち主だったのでございます。何も通じない…。魔法も、痛みも、喜びも、悲しみも、死も…。そう九兵衛を殺すことは出来ません。くくくっ。貴女だから殺せたのですよ、貴女は九兵衛にとって他人ではなく愛しい家族。愛娘だったのですから…。くくくっ。まどかの件や九兵衛の能力についてマギカ側にリークしておいて本当に良かった。あらゆる布石は打っておくものですね。

 

何を馬鹿な…。あいつは私を人形としか…。

 

くくくっ。実に風変わりな男でした。貴女は九兵衛の発言や行動を好意的には受け取れなかったでしょう。いや寧ろ悪意として感じ取ったのでしょうが、九兵衛が貴女を愛していたのは事実です。例えば貴女に与えたミッションは数こそ多いですがどれも難度の低いものでした。父として娘を心配してのことでしょう。先程の役員会で貴女が社長になれたのも、自分の身に何かあったとき娘が滞りなく後を継げるよう、貴女を快く思わない者達を粛清し続けた結果にございます。決定的なこともございます。貴女が…。

 

もういい! 九兵衛は死んだ。私が殺した。今の話が仮に本当だとして今更そんなことを言ってどうだって言うの。揺さぶろうとしても無駄。貴方が洗脳系の魔法使いってことを忘れていたわ。このまま洗脳するつもりだった? お生憎さま。まどかの件がある限り私は決して九兵衛を許さない。というか貴方、喋り過ぎよ。ここまで事情を聞けば今からシャルロッテに連絡して襲撃を止められる。β計画もこれでお仕舞いだわ。

 

くくくっ。シャルロッテが九兵衛を切って貴女を選んだのは操り易いからにございますよ? 世間知らずな箱入り娘の戯言なぞに耳を傾けますかどうか…。とはいえ確かにお喋りが過ぎましたな。お気の毒ですが、貴女をこのままにして帰る訳にも行かなくなりました。くくくっ。まぁ、最初からそのつもりでしたが…。

 

私と戦うの?

 

くくくっ。貴女次第でございます。ラジコンのように操作される一生を送るのが嫌なら、戦って勝つ他ないですな。

 

自信満々って感じね…。でも洗脳系の魔法は時間と手間が掛かる。戦闘向きではないわ。一方、時空系の魔法は同じ時空系でしか回避不能。先手必勝、さよなら…。時空魔法発動、時の牢獄。 ……パチッ☆

 

くくくっ。対象者の時間を停止させるタイムループの魔法にございますかな?

 

魔法が効かない!? まさか…どうして!?

 

くくくっ。さて何故でしょうか。先程までのわたくしの話をちゃんと聞いていれば分かると思いますが…。くくくっ。ヒントを差し上げましょう。魔法が効かないのではなく、そもそも発動していないのですよ。貴女はわたくしに不利な魔法を一切発動出来ないのです。

 

洗脳プログラム…。貴方、私への洗脳を既に終えているとでも言うの? いつ…。隙なんて見せなかったのに。…貴方の洗脳魔法はまだ発動してない。こんなのあり得ない。 ……パチッ☆

 

くくくっ。無駄です。とっくに発動しております。始めに申しましたよ? 九兵衛とは旧知の間柄、過去に二度ばかりあの者から洗脳の依頼を引き受けたことがあると。くくくっ。九兵衛に依頼された洗脳はイミテーションのまどかにだけではございません。八歳の貴女様にも施しまして、その際に洗脳プログラムも少しばかり混ぜさせて貰ったのですよ。

 

……なぜ?

 

くくくっ。はい?

 

なぜ九兵衛は私の洗脳を頼んだの? 私にどんな洗脳をしたの? あいつは死んでも私の心を弄ぶの…。

 

くくくっ。いえいえ。誤解されてはいけません。先程、九兵衛が貴女を愛していたことを示す決定的な例だとして挙げたかったのは、まさにこのことで…。四年前、貴女がファームから引き離されたとき、まどかが九兵衛に抵抗して頭を打ったのだと貴女は思い込まれておられるのでしょうが、事実は異なります。貴女の魔力が突然変異の魔法因子によって覚醒したとき、まどかを吹き飛ばして頭に傷を負わせたのです。それで…。

 

違う! 私は九兵衛に突き飛ばされた血まみれのまどかを抱きかかえて…

 

くくくっ。ではあの時の記憶を戻しましょう。わたくしが頼まれた洗脳はですね、貴女が魔法でまどかを傷つけてしまった記憶を、九兵衛が突き飛ばした記憶にすり替えるというもので…。貴女には少々辛い記憶となるでしょうが、これが真相にございます。 ……パチッ☆

 

ううっ、あぁっ…。えっ…。えっ…!? い、いゃっ!! ち、ちがう……。こんなのちがう…。まどか…わたしがまどかを…? いやっあぁああっ…。

 

くくくっ。ちなみに貴女は時空系の魔法使いでございますが、これは過去に戻って事故を回避したいという思いから生まれたのです。とはいえ貴女の魔力では過去へのタイムリープは1分が限界。魔法が発現したときには既に数分経過しておりました。タイムリープを繰り返すごとに時間は戻るどころか先へ先へと流れるばかり…しかし貴女は何度も何度もタイムリープを繰り返した。このままでは心も体も壊れてしまう、そう九兵衛に泣き付かれましてな…。洗脳魔法も、イミテーションのまどかも、全ては貴女の精神を安定させる為の嘘だったのでございます。

 

ガタガタ…ブルブル…。ガタガタ…ブルブル…。ガタガタ…ブルブル…。

 

くくくっ。あと再処理センターの件も誤解されておられます。九兵衛はまどかの意識を回復させようとあちこちの病院に治療を依頼しましたが、何年経っても容態は改善されず、万策尽きて脳死判定を受け入れるに至ったのです。再処理センターなどという九兵衛のネーミングセンスの無さから酷い施設だと思い描かれたでしょうが、まどかの件に限らず、あそこで臓器移植の対象となるのは脳死判定を受けた奴隷のみでございますよ。

 

いやああっ……。いやぁ…もうやめて…。わたしは…。

 

くくくっ。愛する娘へ真相を告げられずにいた父をグロッグの17連射で穴だらけにして、どうでしたか? 気持ちよかったですかな? まどかを魔法で吹き飛ばしたときはどうです? 魔法が覚醒するのは爽快だったのではございませんか? でも今は後悔されておられる。くくくっ。残念ながら取り返しは付きませんよ。まどかも九兵衛も永遠に戻っては来ません。貴女が殺したのですから…。

 

ふふっ…ふふふっ…。そう…わたしがころしたの…。みんなころしちゃったの…。ふふっ…。涎を垂らし床にペタンと座り込み。ジョロジョロジョロ……ショロショロショロ……。

 

くくくっ。失禁されましたか。廃人一歩手前…いやもう一人前の廃人ですかな。くくくっ。お辛いでございましょう。直ぐ楽にして差し上げます。これからはもう貴女は自分で何も考えなくてよいのです。本物の人形になるのでございますよ。それも九兵衛ではなくわたくしの人形に…。くくくっ。インキュベータ社はわたくしがβ計画遂行の為に有効活用させて貰います。貴女を操ることでね…。洗脳魔法発動、絶対令隷。 ……パチッ☆

 

ふふふっ…。目がトロ~ン…。サキエルさま…(////

 

くくくっ。口から垂れている涎をぬぐって立ち上がりなさい。あと、これは遊びではございません。気を引き締めて下さいな。

 

はいサキエルさま…。口元ゴシゴシ…。スクッ。なんなりとご命令を…。

 

くくくっ。ではまず貴女の尿にまみれたお足とお股を拭いてショーツを取り換えることに致しましょうか。臭くてかないませんからな。スカート、タイツ、ショーツ、脱いで下さい。

 

はい…。かしこまりました。学生服のようなスーツのスカート脱ぎ脱ぎ。黒のタイツを脱ぎ脱ぎ。薄紫のシルクの高級ショーツをスルスル。

 

くくくっ。わたくしに女性への興味があればこの様な状況も楽しむことが出来るのでしょうが…。胸のハンカチを取り、テーブルの水差しから水を垂らして含ませ、ほむらの太腿にあて、ふきふき…。

 

うぁ…あぁっ…ぁっ…ぁっ…(////

 

くくくっ。やれやれでございますね…。片手でハンカチをギュッ…っと絞って、水差しからまたハンカチに水を垂らし、ほむらのお股をふきふき…。

 

やぁっ…ぁぅ…んっ…やぁ…(//// 腰を引いて身体をくの字に曲げ、足を閉じ、サキエルの肩を掴んで離れるように押し返し。

 

んっ? 洗脳の効きが甘かったですかな。それともこの者が心底エッチ好きなのか。まぁ、後者でしょうな…。くくくっ。ほむら、上手く拭けませんので、じっとしてて下さいな。

 

はい…。サキエルさま…。すみません。

 

ほむらのお股を事務的に、ふきふき…。

 

うあぁ…やぁ…うぁ…ぁっ…ぁっ…(////

 

くくくっ。これくらいでよいでしょう。ハンカチをポイッ。換えのスカートと下着はどうしましょうかね。周りをキョロキョロ…。あぁ、そうそう先程の玩具、わたくしをこの部屋に案内した受付のお嬢様がこの椅子の陰に…。くくくっ。余程ショックだったのでしょうか、まだ気絶されておられます。この者の服を借りることにしましょう。ほむら、上着も全部脱いで裸になり、ここで寝ている女性の服に着替えなさい。下着も全てですよ。

 

はい…。かしこまりました。上着を脱ぎ脱ぎ…。受付嬢を仰向けにして上半身を起こし、上着を脱がせ脱がせ、ブラを外し外し…。

 

くくくっ。しかしこの受付嬢といい、ほむらといい、どうしてわたくしのような者の言葉を鵜呑みにするのでしょうか…。裏付ける確かな証拠を自分で調べもせずに、簡単に他人の話を信じてしまう貴女達はいったいどこまで愚かなのでございましょう。

 

少しサキエルの方を向いて、首をコクンを横に傾け。何言ってるのかなという顔をみせて、受付嬢へ向きなおし、着替えの続きをモソモソ。

 

くくくっ。この指輪…綺麗でございましょう? クロノスの指輪、時空系魔法を不発にする神具にございます。くくくっ。アベル王子は気紛れに人を殺すことがございますので、わたくし日頃から身に付けているのですよ。貴女の魔法が発動しなかったのは洗脳プログラムではなく、単にこれのお陰でございます。くくくっ。九兵衛からの依頼はまどかイミテーションの製作のみ。貴女はそもそも洗脳などされてはいなかった。まどかの頭の怪我も九兵衛が突き飛ばしたからにございます。くくくっ。少しばかり魔法で嘘のイメージを見せたらコロッと信じ込まれましたが、貴女は九兵衛のような悪党と何年も一緒にいて、実はあの者が善人かも知れないなどと本気で思ったのでございますか? 自分を娘として愛していたと? 自分を庇う為に裏で手を尽くしていたと? まどかの治療を試みたと? くくくっ。そんなことある筈がございますまい。あの者はわたくしのライバル。何の魔法も使えぬただの平民ではありますが、わたくしも一目置く程の外道にございますぞ。

 

サキエルさま…。ご命令が複雑過ぎて私には分かりません。実行できません。

 

くくくっ。今言ったことは唯の独り言にございます。早く着替えを済ませて下さいな。貴女の綺麗な制服姿をわたくしに見せて下さい。くくくっ。貴女は人形としての本分をまっとうしていればそれで十分なのでございますよ。

 



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まどかの章 24 ★☆☆ 奴隷市場(ホテル猫々亭)

ううっ…。まだお腹が痛いのじゃ…。ベッドにグッタリと横になって、お腹をスリスリ…。

 

悪かったよ…。でもご主人様も酷いんだからな。オレが…そのっ…サキエルさんと…エッチなこと…してたなんて…(////

 

余はそこまで言っておらぬ…。シャツの裾をチラリ。ううっ…腫れておるのじゃ…。お腹をスリスリ…。

 

うわっ、ホントだ。救急車呼ぶか? 内臓に何か異常があったり、内出血してたら怖いからな。昨日貰った携帯で…。ポケットごそごそ。

 

いや…待つのじゃ…。余は注射は嫌じゃ。少し寝ていれば…治るであろう…。

 

そういうの映画なんかでは必ず後で酷い容体になって…。

 

ううっ…杏子は意地悪なのじゃ…。からだをコロリンと90度転がして杏子と反対向き。

 

いや心配してんだって。今度は本当に渾身の力で斜め下45度の角度からえぐるように入れたコークスクリューパンチだったからさ…。シールド魔法を突き抜ける音がしたし。

 

……余の身に異変が起きれば蓮華が飛んで来るのだ。側におらずともあの者は余を完璧に守ってくれておる。来ないということは大した怪我ではないということ…。少し横になっておれば大丈夫な筈じゃ…。

 

ふーん…。でも昨夜その人を電話で怒らせてなかったか?

 

……そうだの。

 

ごめんな…ご主人様…。王子の横にピトっと寄り添って寝て、背中越しに手を廻してTシャツの上から王子のお腹をスリスリ…。

 

杏子に撫でられると、少し痛みが引くのじゃ…。からだをコロリンと180度転がして杏子と向かい合い。

 

そうかい…。じゃあ、もっと撫でてやるよ。王子のTシャツをペロンと半分捲って、右手でオヘソの辺りをスリスリ…。

 

ううっ…。気持ちいいのじゃ…。

 

肘をついてる左腕で王子の頬を撫で撫で…。気付いてる? ご主人様…今すごく悲しそうな顔してるんだぜ?

 

……そちの顔も、少し悲しそうなのだ…。

 

ご主人様が今にも泣き出しそうな顔をしてるから、こっちもそういう顔になるんだよ。痛むのか? ごめんな…。下腹の辺りをスリスリ…。

 

ん…。痛くはないのじゃ。そちが撫でてくれると寧ろ心地よい。余が悲しい…いや、寂しい気持ちになるのは、こうしておると昔を思い出すからなのだ…。お腹が痛くなるとな、よくお母様が撫でてくれたのだ。

 

ふーん…。昔って…今はしてくれないのか? みぞおちの辺りをスリスリ…。

 

……。

 

ご主人様のお母様って鳳凰宮の評議員だったんだよな。今はトラスの離宮に移られたとか。たまには会いに行って甘えたらどうさ。横腹の辺りをスリスリ…。

 

……もう会えぬ。

 

えっ?

 

トラスに移られたのは義理の母上様達なのじゃ。父上のハーレムに入っていた女性は全員が余の母上様である。実の…余のお母様は…もうおらん。亡くなられてしもうた…。肺炎でな。余が五歳の頃じゃ。

 

そっか…。下腹の辺りをスリスリ…。あのさぁ…。

 

んっ?

 

ごめん…。

 

…謝ることはない。お母様にはもう実際に会うことは出来ぬが、思い出すことは出来る。お母様との別れは耐えられぬ程につらく悲しいものであったが…お母様には楽しい思い出も沢山戴いた。だから悲しみの後で心が温かくなる…。杏子。

 

なに…? ご主人様。オヘソの辺りをスリスリ…。

 

会えるときに会っておかねば…。助けられるときに助けねば…。他の何をも優先して大切にすべきであったと後悔するのは、本当につらいものじゃ。そちは今ならまだ間に合うかも知れぬ。

 

マミ様のことか…。

 

居場所が分かっておるなら、真偽不明の拉致奴隷など後回しにして、余の奴隷であることも後回しにして、直ぐにでも助けに行くべきである。そちにとって大切な人なのであろう?

 

オレにはご主人様のことが一番なんだ。何度も言ってるだろ…ご主人様はアベル様だけだって…。ご主人様の奴隷として今こうしていることが…オレには…凄く嬉しくて大切なことなんだ…。それにオレやマミ様は戦争に負けて奴隷になった。そうなることも覚悟の上で、だから仕方のない話さ。でも理由もなく奴隷になっている人がいるならそれは絶対に許されないことだとオレは思う。マミ様には申し訳ないけど、オレはあの噂が事実かどうか直ぐにも確かめたかった。もし不当に虐げられてる奴隷がいるなら助けたかった。……結局、噂は本当じゃなかったけどね。でもマミ様の救出より優先したことが間違いだとオレは思わない。マミ様だってそう言って下さると思うんだ。あの人は困ってる人がいたら必ず助ける、本当にお優しい方だから…。

 

……そちがマミの話をするとき、とても誇らしい顔をするの。主とか奴隷とか、そのような身分など関係なく、マミをひとりの人間として心から尊敬しておるのであろうな…。そちは余の奴隷として余に身も心も捧げ、縛られてはおるが、縛れぬこともあると余は承知しておるつもりだ。

 

ご主人様…。

 

マミを余の性奴にするのは変わらん。絶対に余のものにする。だがそちの尊敬するマミの人格を貶めるようなことは決してしないと、今ここに誓おう。

 

いいのか?

 

うむっ。その代わり、そちがマミの分まで余のドロドロとした裏の欲望を受け止めることになろう。ひとりで大変かも知れぬが、それでよいか?

 

うん! オレご主人様がしてくれることなら、なんでも耐えられるっていうか、なんでも喜べると思うぜ…(////

 

そちは優しいのだ…(////

 

えへへへっ…。でもオレの優しさは相手によるよ? マミ様の優しさとは別物さ。

 

あの者、確かに慈愛に満ちた優しげな顔をしておったの…。特にあの愛嬌のあるタレ目がたまら…ゴホゴホ…。特にあの深く清んだ瞳が、マミの純真な心を映しこんでおるかのようであった。

 

そうだよ。スゲェいい人なんだ。困ってる人にはお優しく、悪い奴にはどんな強い相手にも屈さずに立ち向かうんだぜ? ほんと最高に素晴らしい人なのに…。スレーブドームであんな酷い目に…。

 

可哀想にドームの舞台で真っ裸にされておったな…。実にムチム…ゴホゴホ…。実にけしからんのじゃ!

 

うん、でも裸にされたことよりも、裸にされてからが大変だったんだよ…。

 

なんじゃと!? 余は途中で退席したが、あの後でマミの身に何かあったのか?

 

どこかの貴族のアホボンが、胸をみせろだの、尻を見せろだの、お股を見せろだの、からだがムチムチだの、余のチンチンと一緒にスタンドアップだの、聞くに堪えない暴言を大声で執拗に何度も何度も吐きまくってさ。マミ様、恥ずかしくてしゃがみ込んで泣き出しちゃったんだ。どんなに辛いことがあっても周りに気丈に振舞って、心配させまいと微笑んで、悲しんでるところなんて今まで一度も見せなかったあのマミ様が涙をポロポロと流してるんだぜ? オレもう辛くて見てられなかったよ。会場が暗くて誰が言ってるのかは見えなかったけどさ。あのアホボンを見つけたら懲らしめてやるんだ。

 

……あ、あぁ、い、いや、うん、気持ちは分かるが、相手も反省しておるやも知れぬぞ? 本当にマミが可愛過ぎて、抑えられなかったのであろう。

 

そうかなぁ…。

 

う、うむっ。少なくともそのアホボンにはマミを馬鹿にする気も心を傷つけるつもりもなかったと思うぞ。勿論、言い訳にはならんがな…。相手が傷ついている時点で弁解のしようがないのじゃ。……しかし…そうか…。そこまで深く傷ついておったのか…。本当に可哀想なことをしてしまったのじゃ。しょぼん…。

 

ジト目でご主人様を、ジー。

 

な、なんじゃ?

 

……あいつの声さ、ちょっとご主人様に似てたんだよな。反響してたからハッキリとはしないんだけど。

 

へ、へぇ…。

 

疑いたくはないけどよ…まさか、違うよな?

 

……。

 

違うよな?

 

ううっ…顔が近いのじゃ…。

 

……。

 

悪かったのだ…。興奮して抑えられなかったのじゃ…。マミに会ったら先ずその謝罪をするのだ…。マミは許してくれるであろうか。しょぼん…。

 

……今回は素直に認めたってことでオレは許してやるけど。でもマミ様はどうかな~。チラッ。

 

やはり駄目かのう…。しょぼん…。

 

さぁてね、でも他の奴の野次だったらあんなに気にしなかったと思うぜ? ご主人様の姿、舞台から見えてたのかもな。気になる奴に野次られたから泣いちゃったのかも…。ご主人様ってマミ様のタイプだったりして。

 

本当か~っ! 杏子の肩を掴んでガクガク…ガクガク…。

 

わわわわっ、知らねーよ。本気にすんなって。

 

い、いやその可能性は十分にあるではないか。何故気付かなかったのじゃ…。マミが余のことを好きでは性奴として不適格…。

 

ならどうしてそんなに嬉しそうな顔してるのさ…。マミ様を性奴にしたいんじゃなかったのかよ?

 

不思議なのだが、マミが余を好いてくれておると思っただけで、余も凄く嬉しい気持ちになるのだ…。おかしいのう…マミは可愛くてムチムチではあるが余の好みとは遠く掛け離れておった筈なのに…。これはつまり相手の気持ちがあって余の気持ちも決まるということなのであろう。だから…

 

だから…。ご主人様のこと…好きになっちゃ…駄目…なんだよな…。

 

そうじゃ。やはり余を好いておる者を性奴とするのは避けねばならん。

 

ご主人様…オレ…。しょぼん…。

 

ふはははっ。とはいえ、まだマミが駄目と決まった訳ではない。余をちょっと好みかな~くらいで見ておるだけであるなら、良好な奴隷関係は十分に結べる筈…。気持ちを確かめる他あるまい。杏子。そちは今直ぐマミの救出に向かうがよい。本来ならインキュベータ社へ乗り込むには綿密な下調べが必要であろうが、その首輪を付けておれば準備など不要じゃ。そちに敵う者などおらん。正面突破も出来るであろうが、しかし何が起こるか分からんのが実戦じゃからな。一人で行くのは避けて…そうじゃ、さやかを誘って行くがよい。青の首輪の魔力で恭介の怪我は既に完治しておる筈じゃ。うむっ。まずは上条家へ行くのだ。

 

う、うん…。

 

余も一緒に行きたいが、余は先程みたゴミの市の悲惨な状況を直ぐレポートとして纏めたいのだ。余の権限で改善措置令を緊急執行させれば何人かは病気や飢えから救える筈じゃ。そちが余をここに連れて来たこと、全く無駄ではなかったと証明しよう。余もマミのように、そちに主としてだけ見られるのではなく、胸を張って誇らしく語られる奴になりたいからな。

 

そうさ、あんた王子だもん。沢山の人を救えるんだ。うん。王子は王子の仕事を果たしてくれ。マミ様を救うのはオレの役目だ。

 

杏子。

 

うん?

 

そちに。ミ鍵

 

鍵、パシッ。これは?

 

今朝方、速達で届いての。鍵を渡さねば折角買った部屋に入れぬであろう。

 

マンションの合鍵か…。嬉しいよ…ありがと(////

 

合鍵ではない。オリジナルの鍵だ。そちの家なのじゃから、そちが持つのが当然であろう? 名義もそちの名前になっておる。暗証番号は余と初めてあった昨日の日付にしておいたのだ。0710なのじゃ。で、合鍵は余が持つのだ。 ……パチッ☆ ミ合鍵 パシッ。

 

うううっ…。ご主人様…(////

 

んっ?

 

抱きっ!(////

 

ふはははっ。マンションがそんなに嬉しかったか。うむっ。段々と余の性奴に相応しき反応をするようになって来たのだ。可愛いのじゃ(////

 

そうじゃなくて…オレには…ご主人様の気持ちが…。

 

余がどうしたのじゃ?

 

あぁ…いや…。うん…。マンションありがとな…。

 

……杏子。余はレポートを書き終えたら高島屋で家具やドレスを揃えよう。地下で食料品も買い込もう。大きなケーキも買っておこう。今夜は余とそちとマミと…後ついでにさやかも入れて四人でパーティーじゃ。超特急で任務を済ませて家に帰って来い。ご馳走だからの。寄り道して買い食いなどするでないぞ?

 

……わかった。じゃ、ご主人様、行って来るよ。

 



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まどかの章 25 ★☆☆ 奴隷市場(ホテル猫々亭)

さて仕事をするかの。先ほど見たゴミの市なる低級奴隷取引所の惨状を詳細なレポートに…。なにか紙は…。ん…この部屋に備え付けの便箋でいいかの。えー。道にはウンコが産卵し…。いきなり間違えたのじゃ。ビリッ。えーっと。道にはウンコが散乱し、ゲロが溢れ、その中で僕はダンスを踊る。車のライトに照らされた彼女と二人で、羊男も一緒に…。いかんハルキっぽい感じになってしまった。ビリッ。落ち着くのじゃ。そうじゃ、仕事の前にちょっと休憩しようかのっ。うむっ。TVでも見るのだ。

 

プチッ…。NHK総合。……増え、現在50万人を超える難民がこの国境地帯のキャンプで暮らしています。今後もマギカからの難民流入は続くとみられ、電気・ガス・水道等のインフラ整備が急がれますが、臨時予算案は下院で可決されたものの上院では否決。行政部は議決を経ない特別会計で予算の確保を行う模様です。しかし王都の復興で特別会計の85パーセントは既に消化されており、残る予算で果して有効な難民対策が可能なのか疑問が残るところです。一方、下院で多数を占める労働党はこのような行政部の及び腰の姿勢に対して攻勢を強めています。難民の生活環境は劣悪であり、彼らの生存権を脅かす行為は作為不作為どちらも憲法違反であるとして、議決への拒否権発動を求め、これを受け入れない行政部に対し不信任案を提出する構えです。もし不信任案が下院に提出されれば圧倒的多数での可決成立が予想されますが、上院の貴族からの反発は必至で、また行政部の解散から再組閣までに必要な半月に渡る政治空白が……。

 

なんじゃこのニュース!? 余の国に50万人の難民じゃと!? そのようなこと余は全然知らぬぞ? なぜ知らせぬ? 国家の一大事であろうに。余の配下の者達は事の重大性を認識出来ておるのかのう…。難民の半分が女性として余のハーレム候補の選考が25万人分も一気に増えることになるのだぞ? う~ん、後で難民キャンプとやらに行ってみるか…。いや…しかしニュースでは難民の生活は劣悪だとか言っておったの…。上院を仕切っておるのは姉上で、余は予算に関して一切口出し出来ぬのであるが、この国の王子はケチで酷い奴だと思われておるのではないだろうか。貴方のせいで妹や弟が栄養失調で死んだのよと、気丈な娘から罵られて唾を吐きかけられるのは嫌じゃ…。相当へこむであろう。とはいえ姉上も何かお考えがあってのことであろうし。ハァ…。王子という仕事、気苦労が耐えん。他のチャンネルにするのだ…。

 

プチッ…。テレビ朝日。……わたし決めた! プリキュアになるよ! だってこのままじゃキララランドの妖精たちがみんな石にされちゃうんでしょ? だったら…わたしが…メルルが…。にゃん太、見てる? 天国からメルルに力を貸して! プリキュア、みっくみくパワー! チャラララ…。パヒュン! ララララッララン! パシンッ! ララッララッララ~! ☆ミ ☆ミ キュアメルル参上! ミ☆ ミ☆ パヒュ~ン!

 

……メルルが出ておる。どういうこと? というかこれは何話目なのだ? 初めての変身シーンのようであるから第一話だと思うが、既にお付きの妖精のにゃん太が死んでおるではないか。どういうこと? にゃん太は余の分身なのだ。殺すとは実にけしからんぞっ。うぅ~っ、後で2ちゃんねるにネチネチと批判を書き込むのだ。プリキュアはハートキャッチが最高で後はイマイチと言わざる終えぬとなっ! ……だが、しかし、キュアメルルはもの凄く可愛いのう。うん…。今シーズンのプリキュアは人気出るかも知れぬ。ミニスカから少しおパンツが見えておるし…。あぁっ、終わったか…。おおっ! ふはははっ。エンディングのみっくみくなダンスもお尻がフリフリで最高なのだ! 批判は保留にしておくぞ。ふはははっ。他のチャンネルは…。

 

プチッ…。TBS。……喝っだぁ~! 駄目です。全然なってませんね。この蓮華とかいう忍者ですが弓の使い方が全然なってません。右手首の捻りが内側からこう…分かりますか? こういう感じに引かないと矢が真っ直ぐ飛ばないんです。結果的に全部の矢が的に当たりましたよ。でもね、こんなのただの偶然。もしくは使ってる道具が良かった。ヘビースコーピオンですか。僕らの頃はあんな道具ありませんもの。森の中へ分け入って木を切って削って弓を作ってましたよ。というか最近の騎士連中は道具に頼り過ぎな気がしますね。やれ魔道具やら神具やら、そういうの使っていいんだったら僕らの時代の騎士は殆ど剣聖になってますよ。蓮華って人に文句いう訳じゃないですけど、ちょっとね、今回のことで剣聖の格が落ちたんじゃないかって心配するんです。僕らの時代と違って恵まれてるなと。

 

……ハリーは相変わらずじゃの。他は…ピッ。ほう…。日本テレビはナウシカを再放送中であるか…。好きなアニメ映画であるが、もう50回以上見たからいいのだ。ゲド戦記であればストーリーをスッカリ忘れておるので見たであろうにな…。ピッ。フジテレビはまたK・POP特集か…。嫌なら見るなと言われたから見ないのじゃ。BSボタン、ピッ。ピッ。ピッ。ピッ。どれも通販ばかりであるな…。CSボタン、ピッ。ピッ。ピッ。ピッ。時代劇、ドラマ、アニメと色々あるが昔の番組の再放送ばかりなのじゃ。うむっ。そろそろ仕事を再開するかな…っと。うん? CSボタンの横にHSというボタンがあるの。なんじゃこれは? 余のブラビアには付いておらんが…。新機能なのかの。ポチッとな。

 

注意。このチャンネルは成人向けコンテンツ専用となります。二十歳未満はご遠慮下さい。TVの横にある黒のボックス装置にご入金されますとセレクト画面が表示されます。

 

ドキドキ。ドキドキ。お、落ち着くのじゃ。噂には聞いていたが、これが大衆向けホテルにあるというエッチなテレビであるか…。黒の背景に白字のみ…。なんともそっけない画面なのじゃ。しかしこれが逆に妄想を描き立てるというもの…。ドキドキ。この注意書きによれば余はあと十年は遠慮しないと駄目とある。うむっ、了解なのだ。遠慮しながらコッソリと視聴することにするのだ。お金は…っと、よし小銭入れはパンパンであるぞ。ふはははっ、余の煩悩の如くズッシリと重いのじゃ。うむっ。十分であろう。黒のボックスは、これじゃな。……んっ? んんっ? コインの投入口がない? 札入れしかないのである…。しょうがないのう…。で、では…ごそごそ、千ゴールドをグイグイ。う、受け付けぬだと? グイグイ…。駄目じゃ、戻って来る…。壊れておるのか? ……投入口の下になにか小さく書いてあるの。どれどれ。

 

万札専用。

 

意味分からんわ! いや分かるが分かりたくないわ! なんじゃこのホテル。余の中で一気に評価が下がったぞ。このボッタクリの強欲支配人めがっ! 人の足元見おってからに! ハァハァ…。い、いや待て。ボッタクリと断じるのは早計ではないか? 万札をここで出す客がいるからこのようになっておるのだ。需要と供給のバランス。価格に見合う内容があるから商売が成り立っておるのだ。凄くエッチな動画が見れるのやも知れぬ。……うむっ。どうせ余は引かぬのだ。早く万札を入れて少しでも長く楽しむのが得策ではないだろうか。うむっ。余の心は決まった。一万ゴールド投入じゃ! にゅいい~ん。

 

ご入金ありがとう御座います。お好みのボタンをお選び下さい。1、ミサキ 2、マドカ 3、クリス 4、べディ 5、ルーシー 6、ジェニファ 7、ランラン 8、フーロン ※選択後の変更は出来ません。

 

選択後の変更が不可とは…どういうこと? まさか一万ゴールドでは全動画を見れず、一人だけということか? 八人全員見たければ八万ゴールド出せと? ううっ…PSPのアイマスを彷彿とさせるボッタクリ商法であるぞっ! ハァハァ…。手から妙な汗が出て来たのじゃ。選ぶにしても試し見が出来ぬから動画の内容が分かぬ。女の子の画像だけで選べというのか。地雷だったらどうするのじゃ…というか地雷を使って次々に金を巻き上げようとしておるのではないか? 駄目じゃ。選び切れぬ。

 

早くお好みのボタンを押して下さい。セレクト画面の表示は残り三十秒です。

 

なっ!? クソッ! ふざけおってからに…。誰にするのじゃ…。顔だけで選ぶなら、このピンクの髪で赤のリボンを付けておる2番の子なのだ。画像を見る限りではアイドル並みの可愛さじゃ。しかし画像は女を別人のように修正することが出来る…トラップの可能性大じゃが…ぶっちゃけ赤のリボンは余のドストライクなのじゃ! 2番をポチ…って、いや駄目じゃ! 駄目じゃ! この者、よく見ればどことなくお母様の面影があるではないか。ハァハァ…。2番は避けるのじゃ。ハァハァ…。お母様をドストライクと言った数秒前の余を殴りたい…。ハァハァ…。しかし画像を見ただけでここまで動揺するとは…動画の中でもお母様に似ておったら余のショックは如何ばかりか。ハァハァ…。というか本人が若気の至りで出ていたらどうするのだ。ハァハァ…。2番はやめるべきであるな。ハァハァ…。そう…2番を選らんでは余は人として終わりじゃ…。ハァハァ…。2番は…。ハァハァ…。ハァハァ…。お~っと手が汗で滑ったのじゃ~っ。2番をポチッとな。

 

選択コンテンツを準備中です。三分ほどお待ち下さい。

 

ふっ…待たせるではないか…。ウロウロ…。ウロウロ…。冷蔵庫ガチャ。コークでも飲むか。今はカルピスという気分ではないからの。プシュ。ゴクゴク…。チラッ。ゴクゴク…。チラッ。

 

マドカ:コンテンツ開始します。

 

よっしゃ! コーラ、ポイッ。バタバタ…。テレビを両手でガシッ。

 

マドカ:コンテンツ利用時間:残り二十四時間です。

 

長過ぎじゃ! 二十四時間もエロ動画を見続けられるかっ! しかもひとりの女の子の動画を延々にっ! お前はジャック・バウアーかっ! もし三十分動画を二十四時間ループさせよったらこのホテル猫々亭をメチャクチャに爆破してやるからのっ! いやもう何でもいいから始めろっ! マドカちゃんのエッチな映像を早く流すのじゃ! テレビをグラグラ。

 

コンコン…。

 

だっ、誰じゃ、余はこれから二十四時間耐久マドカちゃんエロ動画鑑賞会で忙しいというに…。バタバタ…。ドアをガチャ。

 

まどかです。お選び頂きまして、ありがとうございます。ペコリ。

 

なっ!?

 

すみません。驚かせてしまったようで。わたしセレクト画面で出る画像と随分違いますよね。よくお客様からクレームが出るんです。詐欺じゃないかって。でもガッカリさせた分はシッカリとご奉仕させて頂きますので、わたしで我慢して頂けませんでしょうか? ペコリ。

 

そっくりなのじゃ…(////

 

……お客様?

 

抱きっ…(////

 

ええっと、あのっ、そういうことは、お部屋の中で…(////

 



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