不死隊の少女 (NiguraSu)
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1章
刻まれしダークリング


どうもニグラスです。
今作が処女作なので、うまくできてるか心配ですが、読者のフロム脳が活性化できれば幸いです。

ちなみにダクソで好きな敵は、エリンギ親分です。
唸れ!黄金の右フック!


これは、まだ5人の薪の王が生まれる前の話。

 

そして、この物語は深淵の監視者こと、ファランの不死隊の活動記のようなものである。

 

 

~不死街のとある広場~

 

「出たぞ!人の膿だ!」

 

広場で、すぐ近くの男性が声を荒げる。 

それもそのはずだ

なぜなら、隣の父の首元に黒い淀みのようなものが突き出ているからだ。

 

「あなた!」

 

後ろの母は、父の様子を知りつつも近寄り、無謀にも助けようとするが…

 

「ガ‥ガガガァァ!」

 

人間には発声出来ないような声で、父…だったものが叫ぶ。

そこに父は無く、黒く肥大化した『何か』がいた。

思わず私は後退り、腰を抜かしてしまう。

 

バシュ

 

何かボールみたいのが手元に飛んできた。

あぁ…なんだ、ただの『母だった』ものか。

正確には首だが、どうでもいい。

どうせここで死ぬ。

今では珍しいが、私は不死者ではない。

だからここで終わる。

 

グシャァ

 

黒い刺状の『何か』が、私の胸部を貫く。

そのまま宙吊りだ。

痛い。

とてつもなく痛い。

名状しがたいほど痛い。

全身が寒い。

力が抜けていく。

あぁ、死ぬんだな。

 

けど

 

最後に見たのは、素肌の左胸に浮かぶ、赤黒い円状の刻印。

この世で、それをダークリングと呼ぶ。

 

~数日後~

 

ガシャン

 

その後私は閉じ込められた。

不死者だからだ。

ここで、いや、この世界で不死とはあるいに恐怖の対象だ。

だから閉じ込める。死なないのだから。

 

閉じ込められてからの私も酷い有り様だった。

泣き叫び、絶望し、そして無気力になる。

確かに私は人間だったはずだ。

決して不死者ではない。

つまりそういう事なのだろう。

あの日、あの瞬間、私は不死者になったのだ。

 

「あは…はは……はははは………」

もう、心が折れそうだ。

いっそのこと狂った方が楽なんじゃ……。

 

「おーい、どうしたー?とうとう心が折れて、亡者にでもなったかー?」

 

自分の檻の反対側の檻にいる男が話しかけてきた。

 

「となると、ここでは最速の亡者化だなぁ!あ、最初から半分ぐらい亡者化してるのはノーカウントな。」

 

…五月蝿いぐらい陽気な声だ。

自分はこんなに沈んでいるのに、むしろ腹が立ってきた。

 

「…まだ、目が生きてるな。昨日から、お前さんの喚き声で寝るに寝れなかったしなぁ。次は狂って永遠と、笑い続けるんじゃないかと、ヒヤヒヤしてたところだ。」

 

「…五月蝿い。貴方に何がわかるというのよ。」

 

「分からんし、知ろうとも思わないが、街の奴らが滑稽なのは分かるな。」

 

「?」

 

「だってそうだろ?自分たちが不死者であるはずなのに、それを隠して、不死者だと分かった他者を蹴落とし、自分は大丈夫だと安心させる。滑稽じゃないか。」

 

「……」

 

実際そうだ。

不死街の住人の7割は不死者だ。

しかし、ほとんどはそれを隠して生きている。

見つかれば。私のような結末を辿るからだ。

 

「まあ、それも今日までだがなぁ。」

 

「…それはそうと、貴方はなんなのよ。」

 

「俺か?俺は……見ての通り、ただの不死者だよ。不幸にも捕まったな。」

 

「そんなはずない。それなら貴方は…。」

 

「俺は、あいつらみたいになってるってか?」

 

私と彼の視線の先にはいくつもの牢屋があり、この中には牢に頭を打ち続けたり、何かを呟き続けたり、部屋の隅で縮こまっている、人の形をした死体が動いていた。

 

「あんな奴らと一緒にしてもらっては困るな。考えることを止めた亡者とはな。」

 

「なら、なんで貴方はまともでいられるの?」

 

「え?俺がまともに見えるか?」

 

「え?それは……。」

 

ドゴォ

 

突如、地鳴りのような衝撃に襲われた。

この建物にも被害があったらしく、パラパラと砂ぼこりが落ちてきた。

 

その次に聞こえてきたのは大勢の悲鳴だった。

 

「…やって来たか。」 

 

目の前の彼が何かを呟いたが、よく聞き取れなかった。

 

 




ご視聴ありがとうございました。

まだ不死隊は出てきてはいませんが、すぐに出ますよ。

人の膿「ゴギャァァーー」
灰「何かやべぇ。勝てねぇよ……(攻撃しつつ)」
人の膿「(連続噛みつき)」
灰「YOU DIED」

ロスリック高壁では一度はあるはず

3/24
表現で分かりにくいと思い注釈
最初の「5人の薪の王が生まれる前」というのは
ダークソウル3が始まる前の、生前の薪の王、今作だと深淵の監視者が存在していた&薪の王になった時代を示します。


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出会う監視者たち

何気に前回で人の膿になった主人公の父親。
ガスコイン神父と同じ臭いを感じる。

そう共感してしまった読者は1/1D6のSANチェックです。
あと、『小さなオルゴール』と『真っ赤なブローチ』を贈呈します。


大きな衝撃から少し経ち、人の悲鳴も少しずつ減ってきた。

目の前の彼も、衝撃のときを境に口数が少なくなった。

 

そして…

 

ギイィ

 

この建物の扉が開けられた。

普段は看守か、物好きしか来ないのだが…

 

コツ…コツ…コツ…

 

靴の音が近づくにつれて、その姿が見えてきた。

 

その人物は、恐らくは騎士と表現できる。

しかし、その鎧には甲冑が無く、あえて言うならば、騎士と狩人を無理矢理合わせたようなものだ。

革のブーツとグローブだが、特別左の腕だけは鉄の小手だ。

胴体部分の大半を占める真っ赤なマント。

そして、特徴的すぎるその兜。

まるで、とんがり帽子のような形状をしており、顔は目以外をスカーフで覆われている。

 

そして、あまりにも大きな剣。

人間が振るうには大きすぎる特大の剣。

あんな剣を受ければ、ひとたまりもないだろう。

 

私はこの人物、いや、この特徴をした集団を知っている。

 

「ファランの不死隊……」

 

深淵の兆候さえあれば、一国すら滅ぼす集団。

私には、人の膿が深淵に関係している程度しか分からないが、その不死隊がここに現れたということは、そういう事なのだろう。

 

開けられた扉の方を見ると炎がちらついてるのが分かる。

どうやら街が燃えているようだ。

特に思い入れはないが、やったのは恐らくファランの不死隊だろう。

 

コツ…コツ…コツ…

 

こっちの牢屋に近づいてきた。 

 

「ずいぶん遅かったじゃないか。それとも、トイレでも詰まってたか?」

 

…目の前の人物が、挑発している場面を目撃してしまった。

そっと目を背けたい。

しかも、不死者は排泄しないのに、何を言ってるのだろうか。

反応したのか、ファランの不死隊の隊員が彼に向かい

 

「なんですか、もう亡者化してしまいましたか。惜しい……かは微妙ですが、残念です。」

 

「あ?おい”フィーア”、亡者は無いだろ。」

 

どうやら目の前の二人は知り合いらしい。

仲は悪そうだが。

そして、目の前のファランの不死隊の隊員は、フィーアという名前らしい。

声の高さからして、女性だろう。

 

すると、また別の、それも男性の声が何処からともなく聞こえた。

 

「亡者か。ならば始末せねばならないな。」

 

「ん?隊長も来てるのか?というか、何処だ?」

 

「ここだ。」

 

その瞬間、私の目の前の壁が壊れた。

正確には、軽口不死者の背にしていた壁だ。

そして、そこから剣が生えた。

見事に軽口不死者を背中から貫いている。

また、フィーアという女性の剣と同じらしく、巨大な剣なためか、鎖骨から胸部の下の方まで深々と刺さっている。

 

「グフッ、おい、洒落になってねーぞ。」

 

「五月蝿い。お前が連絡を送らないのが悪い。」

 

「……剣草、送ってなかったけ?」

 

「お前の心に聞いてみろ。そうすれば、よく分かるはずだ」

 

「………分かった分かった。俺が悪かった。だからその剣を抜いてくれ、そして傷を塞いでく………ださい。」

 

あ、フィーアに睨まれて、言い方を正した。

 

グシャァ

 

軽口不死者から特大剣が引き抜かれ、盛大に血が溢れる。

目の前のフィーアがため息をつきながらも、腰の麻袋から布…、いや恐らくタリスマンを出した。

そして、片膝をつき祈るような形をとる。

すると、彼女を中心に淡い光が溢れる。

軽口不死者の大きな傷口が塞がる。

 

「…ん、ありがと。」

 

「そう思うなら、行動で示してください。で、使えそうなのは何人ですか?貴方が剣草を送らなかったせいで、まだ城塞で試験の準備も終わってませんのに。」

 

「げ、そこまで響いてたのか……。ああ、分かってるから呪術の火を出すのは止めてくれ。代わりに試験の方は俺でやるからよ。」

 

隊長と呼ばれていた人物が、特大剣を地面に刺し、代わりに空いた右手から朱色の炎が見える。

魔法の類いのようだ。

軽口不死者は、呪術と言っていたが。

 

「言質はとった。試験役は頼むぞ、一応お前も上位陣の一角なのだからな。で、肝心の新人予定者は?」

 

「2人……いや、3人だ。ただ、1人は望み薄だ。」

 

なんの事か分からないが、思わず自分を指差してみる。

 

「2人のうち1人はお前だ。で、望み薄のやつだが、ここの地下にいる。隊長は付いてきてくれ、フィーアは、そこの奴を頼む。」

 

「了解した。」「分かった。」

 

隊長と、軽口不死者が奥の暗闇に消えて見えなくなっていく。

代わりに、フィーア…さんが近づいてきた。

 

「お見苦しいものをお見せしました。申し訳ありません。私はフィーア、”薄暮の国のフィーア”です。貴方は?」

 

薄暮の国…普段なら絶対に聞かない地名だが、一応知っている。確か、遠い東の国で正統騎士の鎧が、不死街で高値で売れた記憶がある。

 

「…私は”不死街のコロナ”。少し前に不死者になった。」

 

「それは…気の毒に。亡者にならないよう、気をつけて下さい。それから…」

 

ドゴォ……パチパチパチ

 

外から大きな爆発音が聞こえた。

それに加えて、炎の音が聞こえる程に大きく燃えている。

…火薬の樽にでも引火したのかな?

 

「あら?仕掛けた火薬樽がもう引火したのかしら?早くあの2人と、他2人を集めて脱出しないといけませんね。」

 

どうやら犯人は目の前の人のようだ。

……先行きが不安しかない。

 

 




不死街の火炎壺モブ&火薬樽と、下男亡者のコンボは凶悪だった。少なくとも、初見は死んだ。そして、攻略見るまで下の篝火には気づかなかった。

火炎壺モブ「一方的ですぞw」
灰「やめろぉ!(クロスボウに切り替えつつ)」
下男亡者「追撃の壺アタック!」
灰「反撃ぃ!…あ(右手のクロスボウを見て)」

グシャァ

灰「YOU DIED」


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地下の不死者

私は東の国ミラの未来が薄暮の国と思っています。
(主に黄昏の盾を見つつ。)

その辺を妄想したりすると、執筆が捗り、色々と加速しますね。

ミラだけに未来とか思った貴公は、SANチェック1/1D4です。

また、オリジナル展開が多めなので、苦手な人は注意して下さい。


燃えている外から目を反らして、私とフィーアさんは牢屋の地下への階段を進む。

かなり狭いためか、フィーアさんの特大剣が運びにくそうである。

しかし、それ思わせないような出来事が…

 

「隊長、面倒だから檻ぶっ壊そうぜ。」

 

「…やれ。」

 

「おらぁ!」

 

ドゴォ

 

地下であるからか、反響のお陰でよく聞こえる。

軽口亡…不死者は、本当は亡者ではないか心配である。

フィーアさんは……平然としていらっしゃる。

 

しばらく進むと、左に壊れた檻を見つける。

恐らくさっき壊したやつだろう。

壊した檻に人の姿はなく、前の会話から察するに、3人の内の1人を回収したのだろう。

 

「そういえばフィーアさん。私は何をするのですか?儀式の生け贄とか、試し切りの案山子でなければありがたいのですが。」

 

「…貴方って結構物騒ね。いいえ、ちがうわ。貴方たちにはファランの不死隊への入隊試験をしてもらうの。」

 

「?素人や亡者手前にもさせるのですか。」

 

「素人はともかく、亡者かどうかは選別しますけどね。…それぐらい、隊員が足りてないのよ。」

 

「そうなんですか。それで、ファランの不死隊の入隊試験の参加方法は、『捕まる』しかないのですか?」

 

「貴方、人が悪いって言われない?」

 

「いいえ?」

 

「そ、そう。えーと、入隊試験の参加方法は正式には2つ。推薦と志願よ。ファランの不死隊は不死者の旅団、今は800人ぐらいが活動してるわ。ほとんどは遠征だからか、各国へ善悪問わずに顔が広いの。そんなファランの不死隊に入りたい不死者が志願し、入らせたい者が居ると推薦され、私達がスカウトしに行くわ。」

 

「…正式には?」

 

「その辺は貴方たちに関係するわね。さっきの方法以外にあと2つ入隊試験の参加方法があるの。1つは、入隊したい人物が不死者でなかった場合、絶対に入隊できないの。だから、ファランの侍祭・従者として引き入れるの。ただ、こちらは私達ファランの不死隊の性質上、滅多にないわね。」

 

「で、最後は私と。」

 

「そうね、遠征や任務先で、使えそうな不死者がいた場合、そのまま連れ帰って入隊試験をさせるの。…本当は、しっかり適正があるか見分ける必要があるのだけど、今回は約1名のアホによって、それすら怪しいですし。」

 

フィーアさんは、はぁ、と深いため息をつく。

…苦労してそうだ。

 

「今回の試験は何人ほどいるんですか?」

 

「ここで3人だから、合計7人ね。」

 

「多いのですか?」

 

「普通ね。試験自体は、それなりの回数をするからこんなものね。」

 

「そうですか。…試験の内容はどんなものですか?」

 

「流石に教える訳にはいかないわ。まあ、楽ではないわよ?絶対に。」

 

フィーアさんの目が光った…ように見えた。

多分笑っているような気がする。

…覚悟だけは決めておこう。

 

更に奥に進むと、もう一つ下の階へと降りる階段がある。

階段の手前には淡く光る石”七色石”が落ちている。

道しるべとしてよくつかわれる”七色石”は、不死街でもそこそこ需要はあった。

 

「まだ下ですか。そろそろ上の火の手が…いや、大丈夫でしょう。」

 

「そうですねー、私たちも消し炭みたいにならないといいですねー。」

 

「うっ!やっぱり貴方、いい性格してますね。行きますよ。」

 

フィーアさんと階段を下りていく。

今までの1階と地下1階の構造と大きく変わり、霊廟のような作りになっており、足元にも薄く霧がかかっている。

 

「貴方、ここの出身なんですよね?ここについて何か知らないですか?」

 

「知らない。まずここに人が寄る事自体が稀。まあ、黒い噂は絶えなかったけど。」

 

「黒い噂?」

 

「邪教徒の集会所だったり、不死者を使った人体実験してるとか、亡者の怨念が地下に集まっているとか、全部根も葉もない噂だけ。」

 

けど、盗みに行った奴らが、誰一人として帰ってこなかったという事実はあるけど。

盗人たちの間では、禁忌の場所だったなぁ。

 

「…そう。注意していきましょう。」

 

フィーアさんの目つきが変わった。

雰囲気も変わり、今までの柔らかい雰囲気が嘘のようだ。

 

霊廟のような地下を進むと、見覚えのある人物を見つける。

隊長さんと軽口不死者だ。

また、隊長は人1人分の麻袋を担いでいる。

その前には牢屋があり、そこには小さなベッドがあり、誰かが寝ている。

ベッドの大きさからして、子供だろうか?

あの大きさだと…8,9歳ぐらいだろう。

…あれ?子供?

ここは不死者が収容される牢屋。

少なくとも私は子供の不死者を見たことはない。

一番若くても、私より2つ下の17歳ぐらいだ。

 

「隊長…、こんな事ってあるのですか?」

 

「私も初めて見た。なぜなのかは…こいつが知ってるだろう。こいつがミスるのは照れ隠しとか、何か隠す時だ。」

 

「よく知ってるじゃないですか隊長。あと、帰ったら殴らせてくれ。」

 

「戯れ言はいいから、説明してくれ。」

 

「ああ、と言っても断言できるのは部分的だ。…隊長、ロザリアの指って知ってるか?」

 

「ああ、知ってる。不死者を襲い、殺し、舌を奪い取る、部類的には邪教徒だったか。」

 

「私も遠征組から話を聞いたことがある。最近できた集団で、道中に何度か襲われたらしく、まだ被害はないですけど、練度がそれなりらしく、いずれ被害も出るでしょう。」

 

「…………。」

 

私も人間のとき聞いたことがある。しかも、総本山は……

 

「深みの聖堂の一派だったか?」

 

「ええ。確か…大主教クリムトの派閥だったはずです。」

 

大教主…深みの聖堂のトップの3人の内の1人。

とんでもない大物が出てきた。

 

「ああ、その深みの聖堂のロザリアの指なんだが、さっき言っていた通り舌を奪い取るのだが、その舌がこの子供の床下に隠されていた。しかも大量にな。」

 

「じゃあなんだ?この子供が信仰の対象、もしくはロザリア本人とでも言うのか?」

 

「いいや、違う。これは、実験体だ。もしくは、試験体か。」

 

「?ますます分からないな。」

 

…私の中で1つの噂を思い出した。

それは人間なら、1度は思い描く絵空事。

私は喘ぐように口にする。

 

「…生まれ変わり。」

 

全員の目がこちらを向く。

特に軽口不死者は、少し驚いている。

 

「いや驚いた。俺が調べた情報の中では、上から数えた方が早いぐらいには、貴重な情報だったんだが。」

 

「裏取りの無い、噂程度の話。本当にあるとは思ってもなかった。」

 

「…まあ、確かに裏取りの方が大変だったのは認めるが、不死街の住人そこまで情報通だったか?まあいい、話を進めよう。」

 

…後で、根掘り葉掘り聞かれそうだが、その時は諦めよう。

 

「結局、その生まれ変わりは成功したが、失敗したらしい。その時の事を知ってる奴を脅し…話を聞いた。その時最も力のあった人物、強いソウルの持ち主が志願して、生まれ変わりの限界に挑戦したらしい。つまり最低限発育しきった体、5,6歳を目安に生まれ変わろうとしたらしい。」

 

「だが、この子供はもう少し年上ぽいが?」

 

「そうだ、失敗したからな。結果としては、少しずれ、8,9歳ほどになり、どういう事か本人は記憶を失い、強力だったソウルも消滅。果てには、人格もかなり変わったらしく、生まれ変わりというよりは、別人に転生したみたいだ、とのことだ。その後、どういう経緯でここに来たか、現在に至るまでは一切不明だ。」

 

中々に壮絶な内容だった。

というより、ほとんど絵空事みたいで、実感がない。

試しに、奥の牢屋の中を覗いてみる。

 

(んー、どう見ても子供が寝てるようにしか見えないし…あ。)

 

凝視した結果、目が会った。

起きてるなんて聞いてない。

その瞳は赤い。

それは、人ならざる者、そして人が理解してはいけない何か。

それの片鱗を見た…気がする。

恐らく、それを理解した者はまともではいられない。

そう確信できる。

 

 

 

 




…ファランの不死隊は、不死人の旅団
狼の血に誓い、深淵を監視し、その兆しがあれば一国ですら葬り去る
…そんな連中さ
          ~脱走者ホークウッドより~

調べて知ったのですが、旅団って1500~6000人だそうですよ。………確かに一国なら滅ぼせそうですね。
私なんて、たった3人程度でヒーヒー言ってたのに。

深淵の監視者「戦いは数なり!」

灰「そうだね。」
黄色指のヘイゼル「そうだね。」
薄暮の国のシーリス「そうですね。」
黒の手のゴットヒルト「せやな。」
ロンドールの白い影「そうですねー。」

深淵の監視者「誠に遺憾である。」

あそこは、白霊NPCが多かった(小並感)


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脱出①

そろそろ、とあるタグが詐欺にならずに済みそうです。
(読者が気付かないと意味はない。)

ちなみに、私が赤い目で一番最初に連想したのはウサギです


「おーい、大丈夫かー?」

 

「大丈夫。少しぼーっとしただけ。」

 

何か悪いものを見ていたような気がする。

 

「…そうか。で、隊長どうする?この子供は連れていくか?」

 

「その子供を起こして、こっちに連れてきてくれ、それで決める。」

 

「わかった。」

 

軽口不死者が、簡素な服の腰帯から、意図的に隠したであろう錆びた鍵を取り出した。

 

「よく手に入れましたね。」

 

「ああ、手に入れるのに苦労した。」

 

そう言いつつも、鍵を開け中に入る。

軽口不死者は、中の子供を抱えて出てくる。

 

「さて、起こすか。おーい、起きろー。」

 

「…zzz」

 

「ぐっすり寝てやがる。フィーア、後は頼んだ。」

 

フィーアさんが、特大剣を背負うように納め、子供を受け取る。

 

「え!?ちょ…。……あ、朝だよー…。」

 

…………。

ダメだ。堪えるんだ。今笑ったら殺される。

軽口不死者は…、完璧なポーカーフェイスだ。

隊長は、無理っぽいですね。

 

「フッ…あ。」

 

「隊長…、少々失礼。」

 

ドゴッ

 

子供を抱えながら、フィーアさんが放ったハイキックは、隊長の頭部に吸い込まれ、隊長の抱えていた不死者ごと吹き飛んだ。

私は心の中で合掌する。

 

「んで?どうすれば起きるんだ?」

 

「起きるまで待つ訳にもいかないですしね。」

 

「………パンパン」

 

隊長は無言で砂ぼこりを払い戻ってくる。

 

「名前でも呼べば起きるのではないか?」

 

「名前ねぇ。確か生まれ変わりの前の名前は”カルト”だったか?」

 

「…ツ!………」

 

軽口不死者が名前を口にした瞬間、頭痛が走る。

頭が燃えるように熱く、痛い。

脳裏に浮かべるのは、赤い瞳だ。

同時に、何かが語りかけているように感じる。

そう、『違う。』と。

直後、まるで誰かに体を操られたかのように口が動く。

 

「…結局起きねぇな。隊長、どうします?…ん?おいおまえ、大丈夫か?さっきから様子が変だぞ。」

 

「…クトア。それが我が名だ。」

 

全員が一気に臨戦体勢に変わる。

隊長は、即座に特大剣を軽口不死者に渡し、前に言っていた”呪術の火”を取り出した。

特大剣を受け取った軽口不死者は、慣れた手つきで独特な構えになる。

フィーアさんは、特大剣は背負ったままだが、左手にはタリスマンを持っている。

その後、隊長が私に問いかける。

 

「お前は誰だ?何者だ?」

 

「私は…、私は、コロナ。不死街のコロナ。」

 

しばらく間が空き、不死隊の各員でアイコンタクトのあと、軽口不死者が近づき、声をかけられる。

 

「おい、本当に大丈夫か?さっきから言動がおかしいが。」

 

「…はい、もう大丈夫です。さっきまでは頭痛がしましたが、大丈夫です。」

 

「…本当に大丈夫そうですね。良かったです。」

 

全員が構えを解く。

そして、隊長が口を開く。

 

「それにしても、直感で深淵の気配を感じたが、気のせい……では無さそうだな。少なくともそこの2人も、何かは感じ取ったようだしな。」

 

「そこんところどうだ?元遠征組のフィーアさん?」

 

「休暇中の現遠征組が何を言ってるのですか…。深淵で間違いないと思います。ただ、何でしょうか。性質は同じはずなのに、少し違うものに感じました。それに、クトアなんて聞いたことも無いですし。あら?」

 

フィーアさんの疑問符とともに、視線が集まる。

抱えている子供が目を覚ましたのだ。

フィーアさんは子供を下ろし立たせる。

 

「おいガキ。父ちゃん母ちゃんはどうした?ここで何してる?」

 

「…お姉ちゃん。」

 

「あ?」

 

子供は、軽口不死者の質問を無視して彼の隣を通り抜ける。

あれ?私の所に来てない?

そして、抱きついてきた。

その瞳は、無垢で青い。

はて、私に妹は居ない……はずなのだが。

 

「えっと、名前は?」

 

「…クトア。」

 

軽口不死者がじっとした目でこちらを見ている。

 

「お前ぇ……、詳しくは拠点で聞こうか。」

 

「いえ、違います。違うんです。」

 

「私の大好きなお姉ちゃん。」

 

「めっちゃ懐いてるじゃねぇか!」

 

(どういうことなのー!)

 

まるで意味がわからない。

けど、フィーアさんからフォローが飛んできた。

 

「けど、それだとおかしいですよ。こいつが言っている通りなら、彼女は生まれ変わりのはずなのですから。……どうします?隊長。」

 

「…連れていこう。子供の不死者というのもあるが、もしこの子が、さっきの深淵に関係しているなら、何らか手がかりになる可能性もある。」

 

「危険じゃねぇのか?」

 

「責任は持つ。俺が常に監視する。」

 

「…やめとけ、お前は隊長だろ?流石に常務があるから、お前が監視するのは無理だ。俺が代わるさ。」

 

「お前がか?しかし、お前は遠征が…。」

 

「最近の遠征も飽きてきたし、お前の言添えがあれば、そっちの任務にも付けるだろう。」

 

「そっちのが本音っぽいが…、まあ、なんだ。助かる。」

 

「気にすんな。せいぜい部下を使い潰してくださいよっと。」

 

フィーアさんも、満更でもなさそうな顔をしている。

なんとなく、この人たちの事が少し分かった気がする。

事は決まったらしく、フィーアさんが締める。

 

「では、拠点に帰還しましょう。私が先行します。」

 

ガラガラガラガラ

 

上から何か崩れる音がした。

結構大きい音だ。

私は1つ思い当たるものがある。

 

「フィーアさん。追加で火薬樽とか置いてませんよね?」

 

「ひどいですよコロナさん。そこまで沢山置いてませんよ。…たぶん。」

 

隊長と、軽口不死者も少し目を伏せてる。

 

「一応、上を確認しに行こう。まだ出入口が崩れたとは限らない。」

 

隊長の言い分もあるので、そのまま上に向かうことになった。

 

 




果たして深淵の監視者は、何回目の火継ぎで薪の王なったのか。
その辺はどうしても独自解釈と、妄想で補うしかないですねー。どうもダークソウルごとの年代も1000年単位とかあるそうですしね。
ただ、5人の薪の王との間は、そこまで大きい時間差は無いと……思っておきたい。

~カーサス地下墓~
灰「吊り橋だ。絶対落とされるな。ゆっくりゆっくり…」
骸骨兵「カタカタカタカタ」
灰「ん?後ろから音が。うわ滅茶苦茶来た!」
骸骨兵「カタカタカタカタ」
灰「多い!奥に逃げる!うぉ!?くっ、反撃!…あ、橋が」
ガッシャァン
灰「おーちーるー」

灰「YOU DIED」

ホレイスさん、何であんなところに居たのですね?


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脱出②

私はダークソウルの国なら、やはりカタリナに行きたいですね。ジョッキを片手に『太陽あれ!』は、一度は乾杯でやってみたいです。


コツコツコツコツ

 

5人と担がれた1人、合計6人で縦に並び階段を上がる。

今は地下1階なのだが、既に熱気がすごい。

まるで焼き釜だ。

 

「やべぇ、熱い。最近の遠征先は寒いところばかりだったから、熱いのは久しぶりでたまったものじゃないな。」

 

「私のときの遠征先はデーモンの遺跡だったので、逆に熱かったですね。」

 

「というか、フィーア。相当な燃料を積んだな。俺もびっくりだ。」

 

「違いますよ!少し多かったかもしれませんが、少なくともこの建物周辺には置いてません。」

 

「…でも少し多かったんだな。」

 

「………」

 

あ、フィーアさん、少しいじけた。

心なしか、フィーアさんの不死隊のフード、主に頬の部分が膨らんでいるような気がする。

かわいい。

 

ギュゥ

 

服の裾が握られる。

例の子供クトア…彼女からしたら私は姉らしいが。

その妹君の様子は…

嫉妬していらっしゃった。

かわいい。

 

改めて見ると、不死街基準だと珍しい顔立ちだ。

かなり整ってるし、髪は一見黒いが、どちらかと言うと赤毛に近い。身長も子供らしく、私の腰ぐらいの高さだ。

目は碧眼で、私の事以外無頓着なのか、さっきみたいな事以外は表情が全然変わらず、まるで人形みたいだ。

 

先頭のフィーアさんが、なにか反応する。

 

「残念ですが、上には出れそうに無いです。」

 

地上部分の部屋が崩れたのか、地下の部屋の中間部分で大きく崩れ、先に進めない。

 

「…あの、本当に申し訳ありません。私のせいで……。」

 

「いや、謝る必要は無さそうだ。」

 

軽口不死者が崩れてできた壁の右端に手を突っ込んだ。

すると何かを引っ張っている。

出てきたのは、服の切れ端だった。

どうやら僅かに刺繍があり、何かの模様にも見える。

 

「ちっ、上にも積まれてるか。…この布なんだが、さっき説明した深みの聖堂の信徒のものだ。恐らくこの状況、仕組まれたものだ。」

 

「…ほう、情報が漏れてた?どちらにしろ、この状況を打破する必要があるな。このまま、消し炭になるのは困る。」

 

「あるとしたら、ガキの牢屋に隠し扉があるかぐらいか。おそらく、あるとは思うが……」

 

「ありますよ。」

 

私は、はっきり答えた。

軽口不死者の目が少し細くなった。

 

「そろそろ、お前の素性が本当に気になってきた。…で?根拠はなんだ?」

 

周りが燃えているからか、脱出が優先なのか、今は追及するつもりは無いらしい。

どうせ、聞かれるし、吐かされるだろうから隠しても無駄だろう。

 

「どこかは分からないけど、この建物の地下の最奥と不死街の入り口の関所が、繋がってるそうなの。ただ、関所から入って帰ってこれた者はいない。挑戦する元同業者は多かったけど。」

 

「へぇ?元同業者ってのは?」

 

「盗人。私はもう足を洗った。」

 

「ふぅん。成る程ねぇ。」

 

軽口不死者は顎に指当て、考える仕草をしたあと、答えた。

 

「情報の信憑性が上がったな。よし、行こうか。」

 

「そうだな。」「そうですね。」

 

そのまま何も返さずに、階段を降りていく。

 

「いいの?」

 

「何がだ?」

 

一番最後尾の隊長が答える。

 

「私は盗人。」

 

「元だろう?ファランの不死隊に、素性はあまり関係ない。何なら、更に大変な素性の奴もいる。」

 

「?」

 

「奴だよ。」

 

隊長の指を指したのは、軽口不死者だ。

…更に大変な素性?

 

「あいつは、『ロンドールのアドム』。本人曰く、騎士で処刑人の大罪人の裏切り者らしい。」

 

「処刑人で大罪人?矛盾してる。嘘?」

 

「全部本当らしい。どうやら、騎士と処刑人を兼業してたらしく、ある時、自身の主を裏切って、そのまま国に追わたそうだ。」

 

「よく、ファランの不死隊に採用しましたね。」

 

「はは…本当にそうだな。だが私は、あいつが本当にそんな事をしたのか疑問に感じる事がある。長い付き合いだが、本質は良い奴だ。人を煽るのはいただけないがな。」

 

フフッと隊長は、軽く笑う。

その笑いの裏には、絶対の信頼が感じ取れる。

 

「そういえば、隊長は?」

 

「ん?自己紹介してなかったか。『アストラのグレイス』だ。」

 

「アストラ?確かその国は…。」

 

「ああ、亡国、無くなった国だ。」

 

隊長さんは、それなりに長い時を過ごしているようだ。

 

「さて、お喋りは終わりだ。置いていかれないようにしないとな。」

 

私が、同意し地下の最奥に着く頃には、私の素性の事など小さく思えた。

 

 




アストラの人って、いい人が多い気がする。
人によっては、アストラに嫁&婿もいますし。

私は素性:盗人は作ったこと無いですねー。
いつも、騎士か魔術師か持たざるです。

処刑人の大剣「敵倒すとFP回復するよ!」
↓(持ち主が変わり、とても使い込まれると…)
ゲールの大剣「狼騎士並みアクロバティック!」


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脱出③

元がダークソウルですから、戦闘はあるに決まってますよ。
比重が、対人か、対エネミーかは別れますが。
その辺は誓約次第ですかな?




地下2階の最奥、クトアの入っていた牢屋に到着した。

ここまで火の手は来てはいないが、崩れるのも含めて時間の問題だろう。

 

「さて、隠し扉を探さねぇとな。」

 

軽口不死者が入り口付近から順に、壁を叩き始めた。

恐らく、空洞がある壁を探しているのだろう。

さて、私も眺めてそれっぽい所を目星をつけよう。

…あ、本人にも聞いてみるか。

 

「クトアちゃん。この部屋で、あそこ以外の出入り口は無い?」

 

「…クトア。」

 

ちゃん付けはダメらしい。

 

「じゃあ、私はコロナ。で、他に道はある?」

 

クトアは、スッと檻の方を指さす。

 

「これ?」

 

1番右端の檻の鉄の棒を握る。

 

フリフリ「違う。コロナお姉ちゃん。」

 

お姉ちゃんは抜いてくれないらしい。

続いて隣の、右から2番目の鉄の棒を握る。

 

コクン「そう。」

 

握っている棒を少し、回したり押したりして、弄ってみる。

 

ガシャン…ゴゴゴ

 

お?どうやら上の方に押し込めそうだ。

思いっきり上に押し込む。

すると、壁を叩いている軽口不死者の足元が動いていく。

 

「うおっ、下だったか。…落ちるとヤバそうだな。」

 

新しく空いた道は、梯子が架かっており、下の方には闇が広がっている。

独特の空洞音が聞こえる程には深い。

 

「少し失礼。」

 

フィーアさんが麻袋から七色石を取り出し、穴に投げる。

しばらくすると”ギャリン”と甲高い音が返ってくる。

 

「不死者でも、落ちるのはまずそうです。」

 

「では、大人しく梯子でいこうか。」

 

隊長は、麻袋からロープを取り出す。

少々細いような気はするが、強度は十分なようだ。

そのロープで、今まで担いでいた不死者を背負い、ロープで巻く。

 

「そういえば、その不死者は起きないの?」

 

さっきからずっと担がれ、フィーアさんの蹴りでも何も反応しない。不死者だから、死んでいるとは思わないが、亡者ではないのか?とは思ってしまう。

隊長が答えてくれた。

 

「私も迂闊だったのだが、こいつが檻を壊した時に、壊した檻がこの檻の中の不死者の頭部に当たったらしく、気絶してしまったのだ。」

 

「それはまた……不運な。」

 

「とりあえず起きるまでは担いでいるが……本当に大丈夫か少し心配ではある。」

 

確かに、フィーアさんの蹴りで吹き飛ばされても、起きていないのは、逆にすごい。

 

「おーい、遅いぞ、何やってるんだー?」

 

穴の下の方から軽口不死者の声が聞こえる。

 

「さて、行くぞ。私は最後尾だ。先に行ってくれ。」

 

私は頷き、梯子を降り始める。

その上からはクトアが降りる。

その上の、最後尾は隊長のグレイスさんが。

 

降りていくごとに徐々に暗くなってきた。

が、途中から明るくなる。

火の光だ。

下まで降りきると、先に降りていた2人が立っている。

彼ら周辺のだけの、壁の松明が燃えているという事は、彼らが松明に火を灯したのだろう。

その後クトア、グレイス隊長の順に降りてくる。

 

「薄暗いな…。松明はつけながら行こう。前はアドムとフィーアで頼む。」

 

「了解」「分かった」

 

軽口不死者とフィーアさんが先行して、暗闇の一本道を進む。途中までは石造りの壁だったが、今は人の手で掘り進めた、坑道のような簡易な造りに変わった。

 

チャプチャプ

 

地面が僅かに水で満たされている。

 

「地下に水溜まりですか…。」

 

「地底湖でも在るのかねぇ。」

 

前の2人がぼやいてる。

しばらくすると、大きな空洞に出る。

ただ、中央に何かがある。

それは、石だ。

自然な石ではない。

不均等に面がある多面体で、綺麗な石だ。

軽口不死者とフィーアさんが、松明を持ち近づく。

 

「アドム…これは……」

 

「ああ、僅かだか闇の気配、深淵の気配を感じるぞ。」

 

直後異変が起こる。

松明の火が移ったわけでもないのに、石が燃え上がった。

火が石を全て覆うと、その石に亀裂が入る。

しかし火の勢いは止まらない。

むしろ、新たな変化が加わる。

火が浮く。比喩ではない。

火が石から分離し、水面の上を漂う。

昔、東国の盗人から聞いた”火の玉”と似たような状態だ。

こんな火の塊は、ただの火ではない。

 

ボォゥ

 

私の右横を何かが掠めた。

目の前の火の塊から、小さな火の玉が放たれた。

そう、この火の塊は明確な”敵意”を持っている。

意思を持つ炎だ。

 

「火を操る奴は、さして珍しい程でもねぇが、炎自身が動くとか……フィーア、聞いたことあるか?」

 

「ないです。多様なデーモンも見てきましたが、深淵の気配がすること含めて、初めてです。」

 

「新種か……。隊長!新人たちを連れて先に脱出してくれ!あんたじゃ、分が悪い!」

 

軽口不死者の指の指す方向、動く炎の右の方向に上へ上がる階段が見える。

そして、隊長が分が悪い理由は、恐らく”呪術の火”だからだろう。

 

「分かった。近くの臨時拠点に剣草を送る。最短で4刻(1時間)で援軍が来るはずだ。耐えろ!」

 

「了解!」「了解!」

 

隊長は私とクトアの手を掴み、出口へ走る。

動く炎はそれを妨害するかのごとく、大きめの火球を放つ。

 

「やらせはしねぇよ。」

 

バァン

 

軽口不死者が、異常なスピードでこちらに移動したかと思うと、火球を特大剣で受けた。

しかし……

 

「ちっ!」

 

隊長が悪態づく。

どうやら、火の粉が不死者を縛っていたロープを焼いたようだ。結果、気絶している不死者は落ち、この場に取り残された。それに合わせ、軽口不死者が返す。

 

「こいつの面倒もこっちで持つ!だから、早めに援軍を頼むぞ!」

 

気絶している不死者は、あっちが守るそうだ。

逃げながら横目に、2人を見ると、流石はファランの不死隊か、動く炎を牽制し遅滞戦闘につとめてる。

素人目だからはっきりは言えないが、恐らく簡単に守りが破られる事はないだろう。

 

階段を駆け上がり、着いた先は不死街の入り口だった。

 




ダークソウルで非実体の敵っていましたっけ?
非実体でとっさに思い出したのは、人間性や霊体でした。

ダクソプレイヤーなら、今回の敵の倒しやすいギミックに直ぐに気付きそうで怖いです。

3/28訂正
1刻→4刻


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深淵の炎

狼ってかわいいですか?かっこいいですか?
私はかわいい派です。

かっこいいはずの彼らが、甘える瞬間が最高です。



グレイス隊長が私とクトアを引っ張り、階段を駆け上がる。

途中からは螺旋階段になっており、かなりの早さの隊長に半分振り回される形で上りきった。

階段が途切れると、そこには壁があった。

しかし、それは石の壁ではなく、木の壁だ。

 

「少し離れてろ。」

 

グレイス隊長の左手が一気に燃えたかと思うと、そのまま玉を投げるように振りかぶる。

すると、火だけが前方に飛んでいき、木の壁にあたる。

当然、木の壁は勢いよく燃え始めた。

そして、しばらくしない内に木の壁が焦げ、僅かな残り火を残して黒く燃え尽きた。

それを見計らって、グレイス隊長は燃え尽きた壁を蹴る。

 

ガシャァン

 

目の前の壁が、奥に倒れていく。

外側の燃えた壁周辺には、いくつかの本が落ちていた。

どうやら、先ほど倒した壁は、木製の本棚だったようだ。

その本棚があった部屋は噂通り、不死街の入り口の門の関所だった。

グレイス隊長は間髪入れず、不死街の外の方の扉を開ける。

私たちも隊長に続く。

 

パチパチ

 

関所から出ると、後ろから火の粉の爆ぜる音が聞こえ、足を止め後ろ振り返る。

不死街が燃えていた。

全体が燃えていた訳ではないが、少なくとも半分が燃えていた。

 

「あぁ…」

 

ただその光景を、なんとなく見続けていた。

 

「きれい?」

 

クトアが私を見て訪ねてくる。

きれい?この全てが燃えていく光景が?

あぁ、でも、悪くは無いのかもしれない。

 

「コロナお姉ちゃんが喜ぶなら、望むなら、私、頑張って燃やすヨ?」

 

喜ぶ?私が?

望む?私が?

でも、彼女の”赤い”瞳を見てると、それでも良いのかと…。

 

ピュゥー

 

後ろから、甲高い音が聞こえる。

ボーっとしながらも、後ろを見ると、少し離れた所でグレイス隊長が指笛を吹いていた。

隊長が数回指笛を吹くと、こっちへ歩いてくる。

 

「…ん?コロナ君、大丈夫か?少しボーっとしているようだが。」

 

「んっ、大丈夫です。少し熱気にやられてたのかも知れません。それで、隊長はさっき何をしていたのですか?」

 

「ああ、それは……」

 

ウォン!ウォン!

 

不死街の外、森の方から1匹の狼がこっちに向かってくる。

このタイミングで、1匹だけ出てきたということは、恐らく口笛で呼んだのだろう。

 

「まあ、こういう事だ。さて………こいつを南の拠点に、頼んだぞ!」

 

隊長は、鋭い葉っぱ、一般的に『剣草』と呼ばれるものを、狼に託した。その後、狼は駆けていき見えなくなっていった。

 

「…狼は、隊長の言葉が分かるのですか?」

 

「ああ、理解している。私も、ある程度は分かる。」

 

「そういう技術や、魔法ですか?」

 

「いや、ファランの老狼のソウルが成せる業だ。コロナ君も、入隊すれば嫌でも分かるさ。」

 

鼻で笑いながら、彼は近くの木に背を預ける。

ここで、仲間が来るのを待つようだ。

ん?服を引っ張られている感じがする。

下を見ると、クトアが私の服を引っ張っていた。

顔には嫉妬している表情が見てとれた。

その”青い”瞳は無垢にも、構ってほしいとうったえている。

かわいい。

とりあえず、頭を撫でてあげた。

 

「……」

 

ご機嫌になった。

とても笑顔である。

しばらく撫でてあげた。

 

少し時間が経ち、隊長が私に言ってきた。

 

「あと1刻(15分)もすれば、援軍が来る。君たちは、彼らと来る従者と一緒に臨時拠点に行くといい。」

 

私は頷く。

私自身、戦いができない訳ではないが、盗人だったときにナイフを使ったことがあるだけで、それも大分昔の話だ。

あんな異形や、意味のわからないものなんて、戦った事などない、素人だ。

そんな者が、たとえ不死者であっても、戦えるとは思えない。素直に、グレイス隊長の指示に従うべきだ。

続いて隊長が言う。

 

「あと…」

 

ドゴォォン

 

地響きが起こり、地面が揺れた。

その後、不死街の方で爆発と轟音が響く。

その爆発は、想像を絶する爆発だった。

見えるだけでも、炎の高さが家2つ分ぐらいある。

その炎の中腹に、見慣れた姿が2つと、見慣れない姿が1つあった。

 

フィーアさんと、軽口不死者、見慣れない姿は多分担がれていた不死者だ。

地上と、多くの炎があることもあり、彼らの姿がくしっかりと見える。

軽口不死者のアドムは、いつも通りの軽い表情の20代半ばのかなり色が薄い金髪の男性。

フィーアさんは、不死隊の兜とフードをしているため、分からない。

最後に、担がれていた不死者だが、黒髪の厳つい表情で、多分30代半ばだろう。一見の印象は、『歴戦の戦士』だ。なぜか、ボロボロのグレートソードを持っているし。

 

眺めている、場合では無かった。

こっち側に全員が落ちてくる。

 

「うおっと。」「くっ。」「ちっ。」

 

全員見事に受け身をとり、転がったりしながら着地する。

 

「フィーア!回復!」

 

「了解!」

 

「ここは……地上か?」

 

三人がそれぞれの反応をする。

軽口不死者は、指示をしながら、向こうを向き特殊な構えを解かない。

フィーアさんは、左手にあるタリスマンを握り、軽口不死者の傷を治した時のように淡い光に包まれる。

担がれていた不死者は、気楽にも周囲を見ている。少し驚いた表情をしている。よく見ると、彼の背中にはグレートソード程ではないが、大きな剣を背負っている。

 

そんな彼らの向こう側。

先ほど爆発が起きた場所には大きな穴が空いており、そこから這い上がってくる手、いや、手の形をした炎がある。

それは、まるで人間のように這い上がり、そして立った。

それは、文字通り人の形をした炎の化け物だった。




アドムさん、フィーアさん、担がれていた不死者の3人の戦闘は、本編と別の幕間を書く予定です。
サイドストーリーとも言う。

私はグレートソードの戦技、かっこいいと思います。

3/28
誤字訂正


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深淵に触れし者

UA1000越え、ありがとうございます!

ペースはともかく、長く続けれるよう、頑張っていきます。



炎に包まれる不死街。

その中央に佇む、炎の異形。

その光景は、私の今までの人生に無い、人ならざるモノのとはじめての開墾だった。

 

「アルフレッド!隊長に、あの大剣を渡してくれ!」

 

「OKだ。隊長っていうのは、あいつだな。おらぁ!」

 

アルフレッドと呼ばれた担がれていた不死者は、グレートソードを地面に刺し、背中に背負っていた大剣をぶん投げた。

…嘘でしょ?と少し思ってしまった。

少なくとも人間とほぼ同じ大きさの鉄塊である大剣を、見上げるぐらいの高さまで投げ、しかもコントロールも素晴らしく、グレイス隊長のほぼ目の前に飛んでくる。

 

パシッ

 

…そんな回転して飛んできた大剣を、苦もなく受け取らないで下さいよ隊長。

やっぱりファランの不死隊は化け物ばかりだ。

約1名はまだ、ファランの不死隊ですらないし。

 

「これはまた……懐かしいものを。」

 

グレイス隊長は、アドムやフィーアさんと違う構えをする。

腰溜めの状態で大剣を地面と水平になるように構え、見るからにそれは基本的に槍などに見られる『突撃』の構えだ。

よく見ると、その大剣の形状も軽口不死者たちが使うファランの不死隊の特大剣と違い、刀身が細く刺突に適した形状である。

 

隊長が前方に移動する間に、アドムがグレイス隊長に言った。

 

「隊長!奴の中央に青黒い炎が見えるか?あれが恐らく本体だ!それ以外は攻撃するだけ無駄だ!」

 

「分かった。」

 

隊長は突撃をする前に、何かをしている。

左手に呪術の火を取りだし、火を身体に叩き込むようなような動作をする。予想に反して、隊長の体は燃えず外見上は何も変わってはいない。

 

「”鉄の体”を使った。私が正面で囮になる。君…アルフレッドくんとアドムは側面から攻撃、フィーアは遊撃と援護を!」

 

「了解!」「ああ。」「はい!」

 

3人は指示された通りの位置に着く。

そのとき、私はアドムの呟きを聞き逃さなかった。

 

「…下で戦ったときみたく、水があると楽なんだが……無いもの言っても仕方ねぇな。」

 

……水か。

私の中で1つ思い当たるものがあり、不死街の関所の建物に向かう。

もちろん、クトアもついてくる。

 

私は関所の建物の中にはいると、所構わず木箱を探り始める。まず私が最初に探しているのは”火炎壺”だ。

かなり急いで探したが、4つだけ見つかった。

次に探したのは、外にあるはずの雨水溜めだ。

こちらも森側の建物裏にあり、直ぐに見付かった。

私はそこで火炎壺の封を解き、中の火薬を全て抜いた。

空になった素焼きの壺に、雨水溜めに入っている水を入れて再び封をする。

これで、水入りの壺が4つできた。

…あとは、私の腕次第だ。

 

入り口付近に戻ると、戦いは白熱していた。

グレイス隊長は、牽制と攻撃を使い分け正面から炎の化物を受け止めている。

軽口不死者のアドムとアルフレッドさんは、炎の化物の攻撃が隊長に行くのを見計い、交互に、または同時に攻撃を行っている。

フィーアさんは、隊長のカバーや回復、時には牽制役にもなっている。

しかし、決定打に欠けている。

問題点は、敵の本体である青黒い炎が小さく、攻撃が当てずらい事だろう。

それなりに攻撃回数をこなしているはずなのだろうが、いまいちダメージが少ないように見える。

このまま長期戦は不利だろうと、予想できる。

 

私は、アドムの呟きを信じて、前線の端に入る。

フィーアさんの行動範囲よりも後ろのため、ここからでは近接攻撃は不可能だが、弓や魔法、そして投擲物なら攻撃は可能だ。

 

(投げるときは少しは放物線を描いて飛んでいく。だから角度を上げ……これぐらいか?タイミングは、隊長を攻撃して硬直した一瞬!)

 

私は、隊長が攻撃された瞬間を見逃さず、そして硬直するであろう時間に合わせて、全力で壺を投げた。

いくら投擲だからといっても、タイミングを合わせた投擲。

上手く炎の化物の中心部、青黒い炎の部分に当たる。

その直後、炎の化物は怯み青黒い炎の部分は、大きくなった。そんな絶好のチャンスを見逃さず、攻撃を受けたグレイス隊長以外は、ここぞとばかりに攻撃を加える。

炎の化物も堪らなかったのだろうか、後退する。

流石に一回で倒せるとは思ってはいない。

しかし、決定打にはなった。

全員が一瞬だが、さっきの壺が有効打であることを理解し、それを含めた立ち回りに変わっている。

…みなさん、戦い慣れし過ぎではないですか?

当たり前といえば当たり前だけど。

 

そう言っても、やることは変わらない。

隊長たちが立ち回りに少しの変化を加えたお陰か、2回目3回目の投擲は1回目に比べてとても簡単になっていた。

そのため、2回目3回目共に青黒い炎に投擲は命中した。

…本当、この人たち恐い。

そして4回目も、彼らの洗練された動きや誘導によって、水入りの壺は命中し、炎の化物は怯み、青黒い炎は大きくなる。

この壺が最後なのを、知ってか知らずか全員が一斉に攻撃をする。

それが、炎の化物の止めとなった。

だが、炎の化物は最後の力を振り絞った攻撃なのか、自分を中心とした爆発を起こす。

 

ドカァン

 

流石に全員、避けることはできず、各方向に吹き飛ばされる。

アドムとアルフレッドさんは左右に、グレイス隊長とフィーアさんは、私の近くまで吹き飛ばされた。

 

止めをさした筈だが、全員は気を緩めなかった。

一番近いアドムが、炎の化物の状態を確かめる。

ここからではよく見えないが、しばらくした後にアドムから親指を立てたサインが送られる。

どうやら勝てたようだ。

 

隊長も流石に疲れたのか、腰を落とす。

フィーアさんも、似たような感じだ。

アルフレッドさんはアドムの所へ行き、遺骸を調べるようだ。

隊長から声がかかる。

 

「コロナ君、本当に助かった。君の機転がなければ、かなりの苦戦をしいられていただろう。ありがとう。」

 

隊長から感謝の言葉が送られる。

 

「隊長、少し無理しすぎです。いくら”鉄の体”でも、純粋な炎とは相性は良くないですって。いま、回復しますので。」

 

「ああ、すまない。それにしても、本当に何だったのか、あれは。」

 

隊長は、炎の化物の遺骸の方を向き、呟く。

自然と、フィーアさんの向きも炎の化物の遺骸を向く。

そして、私も遺骸の方を向こうとするが、それは中断された。

クトアが、私の服の裾を引っ張った後、とある方向を指差したのだ。

それは、フィーアさんの左後ろにある、余りにも小さ過ぎる”青黒い炎”だ。

ゆっくりだが、フィーアさんに近づいている。

ものの数秒で、青黒い炎はフィーアさんに接触するだろう。

 

だから私は、言葉は遅いと脳が判断する前に、体動いた。

私は倒れるように前に飛び、フィーアさんを押し退く。

もちろん、フィーアさんの回復は中断されるが、青黒い炎がフィーアさんに触れる事はなかった。

だが……

 

「うっ………くっ………あぁ!!」

 

私の脇腹の部分に、青黒い炎が接触した。

直後、目だけで青黒い炎を見て分かった。

恐らく私を『取り込んで』いる。

脇腹を中心に、青黒い炎が舐めるように、私の体を包み込む。

首元まで炎が来るまで一瞬だった。

痛いわけではない。

熱いわけでもない。

ただただ、怖い。

得体の知れない”何か”が周囲を覆う。

私の意識が、暗転する前の最後の光景。

それは、”赤い”瞳のクトアが何かを言っている光景だ。

何を言っているかは聞こえない。

だが、意識が暗転したあと、その口の動きを反芻する。

結果、彼女が言っていた言葉はこうであろう。

 

『いってらっしゃい、お姉ちゃん。私の欠片に、よろしくね?』

 

しかし残念だが、私はこの光景を、言ったであろう台詞を忘れるだろう。

だって、今から意識が闇に呑まれるのだから。

 

 




ソウルシリーズ、ブラッドボーン共に、お世話になる壺シリーズ。
実際に、雑魚、ボス、対人に、使い分けは必要ですが非常に有効なアイテム。
雷壺とか、何が入っているのですかね。

3/29
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深淵との契約

アルトリウスの契約のフレーバテキストで、“深淵の魔物“とありますが、どんな奴なんですかね?

マヌスのような異形か、人間性みたいなモヤモヤか。


暗い。

暗い。

上、下、右、左、どこを見渡しても底の見えない闇が広がる。

まるで、水の中のように、身動きが上手くとれない。

怖い。

恐い。

纏わりつく闇が、私を優しく撫でるのが怖い。

纏わりつく闇に、私が手を取り、屈するのではないかと恐ろしい。

 

火が見えた。

 

私は必死に火に向かう。

纏わりつく闇を払いたくて、暗い周囲から抜け出したくて。

無様にも、体をジタバタさせながら、少しずつ進む。

 

火にたどり着いた。

 

しかし、私がそこにたどり着いた時に気づいた。

それは、ただの火ではなかった。

暗い火、冷たい火。

表現しにくいが、私は、この目の前の火が、周囲の闇よりも恐ろしく感じたのだ。

“近づいてはいけない“

“逃げなければならない“

しかし、それの感情が、実行に移される事はなかった。

体が動かないのだ。

目の前の火を見て、恐ろしさを感じた瞬間から体が言うことをきかない。

 

火が大きくなった。

大体私の2倍より、少し小さいぐらいだろうか。

この大きさは、火と言うよりは炎だろう。

次に感じたのは視線。

何かに見られている。

それも、とても近くで。

体が動かせない中、周囲を見渡すも見えるのは闇だけ。

だが、それはすぐに見つかった。

それは目だ。

炎の中に一対の目があるのだ。

次第にそこから、人間の特徴のある部位が増えていく。

鼻、耳、口、頭、首、腕、手、体、腰、足。

そのシルエットは人のだが、ただの人の形の炎ではなかった。

その姿は、おそらく”クトア“だ。

 

まず、大きく違うところがある。

一つは、年齢だ。

目の前の彼女は、私よりも見た目10歳ほど年上だ。

年の離れた姉の方がしっくり来るぐらいだ。

二つは、雰囲気だ。

あの、子供であるクトアは、“少なくとも私の記憶”では、無口で無垢な少女のはずだ。

これだけの相違点がありながらも、彼女が『クトアであろう』と思う点があるのだ。

瞳、つまり目だ。

彼女の”赤い“瞳を見て、私は『彼女は間違いなくクトアだ』と確信しているのだ。

彼女の燃えるような赤い髪には見覚えはない。

彼女の白磁のような白い身体にも覚えはない。

彼女の赤いドレスなど、初めて見た。

だが、その赤い瞳だけは、なぜか知っている

 

「ようこそ、我の契約者よ。」

 

「…………?…………!?」

 

(声が出ない!)

 

私は、『貴方は何物?え、声が出ない!?』と言った。

それが、発せられる事はなかった。

 

「言葉に発せずともよい。思考するだけで、我と汝は通じる事ができる。『このようにな。』」

 

最後の“このようにな“だけ、脳内で響いた。

私も、頭のなかで、目の前の彼女に語りかけるように思考する。

 

『あなたは、クトアなのですか?』

 

『如何にも……だが、汝の知っているクトア本人ではない。あえて言うならば、入り込んだ者、早すぎた上位者という所だ。』

 

入り込んだ者…上位者……なんの事かは分からない。

 

『さて、次は我の質問だ。汝は、我を受け入れるか?』

 

『受け入れるというのは?』

 

『我ソウルを汝の物とするかだ。』

 

ソウル。それは、この世界において、最も重要なもの。

この世界の光、この世界の生命。

この人物は、それを私に渡そうとしているのだ。

 

『何故私に?受け入れると何かあるの?』

 

『理由は今言うべきではない。今は、受け入れるか受け入れないかだ。』

 

『………。』

 

正直、怪しいと思う所が多い。

だが、盗人のときに、あるいに愛用していた“直感“では、受け入れるべきと囁いている。

 

『決めかねているようだな……。我からは何もしないよ。捨てるも、殺すも、生かすも、壊すも、創るも、汝次第だ。自分の心に従うがいい。』

 

『………じゃあ、私は…………』

 




大分間隔が空いてしまいました。
ぼちぼち、続けていこうと思っています。



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新しい居場所

久しぶりの投稿になります。
ぼちぼち頑張っていきます。

みなさんはリマスター買いましたか?
私は、森の狩猟者ライフを送っています。


目が覚めると、3人の人たちに囲まれていた。

私を心配そうに見ているフィリアさん。

私の事を見て考え込んでいるグレイス隊長。

私の近くで担架のような物を組み立てている、知らない人物。

 

「ッ!!ケホッ!ケホッ!!」

 

「あ、コロナさん。大丈夫ですか?亡者になってませんか?内蔵が焦げてたり、脳がどろどろになってたりしませんか?」

 

「……それ、不死者でも再起不能の酷さですよね?」

 

「ふむ、起きたかコロナ君。いくら奇跡を施しても起きない上に、未知の異形の炎に焼かれたのだから、少々諦めかけてた所だったが……、いや、本当に良かった。」

 

隊長もフィーアさんも不死隊の兜をしているため、表情を読み取る事はできないが、心配はしていてくれたようだ。

 

「それで、二度聞きですまないが、本当に身体に変化はないかね?」

 

「?いえ特には。あえて挙げるなら、いつもより頭が覚醒しているような気がするぐらいです。」

 

昔食べた“緑花草”を食べた後の感覚に近い。

そういえば、結局先輩たちの食べてた奴は食べれなかったなぁ。確か名前がコカの葉だったけなぁ。

 

「………そうか。」

 

グレイス隊長は短い返事だけ残して、再び腕を組み考え込んでいる。

 

「…どうしたのですか?グレイス隊長もフィーアさんも考え込んで?」

 

「それは……」「それは、君とクトア君の対処について考えていたからだ。」

 

フィーアさんが何か言おうとしたが、それを遮る形でグレイス隊長が理由を教えてくれた。

 

「対処ですか。」

 

「そうだ。二人とも、僅かながらも深淵に関係ができてしまった。クトア君は、正体不明な上に元々が異常な存在だ。危険かはともかく未知数であるには変わりない。」

 

やはり、私の妹を自称するクトアちゃんも、隊長たちは警戒しているのか。

しかし、なぜだろう?

今の話を聞き、私は『クトアちゃんを守らねば』と、保護欲が沸々と湧き出る。

前は、こんな事無かった気がするが….。

 

「片やコロナ君。君は、少なくとも深淵に呑まれた。例え新種であろうと、私たち3人と他2人の意見も変わらなかった。基本、深淵に呑まれた者は発狂、または自我を失いほぼ亡者同然となる。しかし、君は深淵に呑まれながらも正気であり、私たちから見ても今の君は正気だ。」

 

…そうか、私はあのときに深淵に呑まれたのか。

言われて初めて実感を感じる、あの恐怖を。

自分を乗っ取られる。

自分が自分でなくなる感覚。

思い出すだけで震えてくる。

私はグレイス隊長に問いかける。

 

「グレイスさん。私は本当に正気なの?」

 

「私たちと会話が成立している。これだけでも十分に正気だと思うがね。」

 

グレイス隊長と話していると、さっき担架を組み立てていた茶髪の青年が訪ねてきた。

 

「グレイス様。コロナ様がこのご様子では、担架は必要ございませんか?」

 

「そうだね。“カムル“くんには悪いけど、片付けてもらえるかな?」

 

「畏まりました。少々お時間をいただきます。」

 

そうすると、カムルと呼ばれた青年は、すたすたと担架やその他の準備道具を片付け始めた。

 

「グレイスさん。彼は?」

 

「ん?ああ、カムルくんの事か。そうだね、彼は“ヴァナハイムのカムル“だ。ファランの不死隊の隊員ではあるのだが、戦闘員ではなく侍祭だ。」

 

ファランの侍祭。

確か前にフィーアさんが言ってた話で、ファランの不死隊に入ることができない人々の受け皿。

つまり彼は……

 

「そうそう、彼は人間だ。ダークリングの無い普通の人間だ。間違っても殺さないようにな。」

 

そんな失礼な!

私はまだ一般の感性を持っている不死者です!

心の中だけで抗議しておいた。

しかし…

私は人間のカムルくんを今一度見る。

浮かべる感情は、憧憬だ。

彼は、私達には無い『死』を持っている。

永遠に終わることのない、この生を終わらせてくれる『死』。

ふと、彼と目が合った。

彼も私の視線に気付いたのか、少し照れた様子だ。

しかしその後、彼から感じ取った感情は、私からすらば意外でしかないものだった。

そう、それは私と同じ“憧憬“の視線だった。




リマスターは久しぶりの“もっさり感“に殺されました。
ダークソウル3やブラッドボーンのスピードが早すぎたのですよ……。
…プリシラちゃんの契約も欲しかったなぁ。


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少女の誓い

久々の投稿・・・
だけど、まだ書く、ダクソがあるから。
隻狼は、ゆっくり進めてます。
弦一郎様は楽しかったです。


ガタンゴトン ガタンゴトン

 

私は今、馬車に揺られて運ばれる。

行き先は、ファランの不死隊の本拠地だ。

馬車の中には3人の人・・・不死人が居る。

一人は黒髪で歴戦の戦士の雰囲気を醸し出すアルフレッドと呼ばれる、30代後半の男性。

もう一人は、私のすぐそばで、私に寄りかかって寝息を立てている、自称私の妹の幼女クトア

最後に私。

 

スンスン・・

 

「・・・やはりな。」

 

「何がですか?」

 

「お前たちの深淵の香り・・・、俺が知ってるモノに近い。ひどく懐かしく、そして啓蒙の高まる香りだ。」

 

「啓蒙?」

 

「いずれ解る。その身に、その香りを宿している限りはな。・・・それまで正気でいられれば良いがな。」

 

「あなたは、いったい・・・」

 

アルフレッドは、鼻で笑うと、話題を打ち切るかのように、外の人たちに呼び掛ける。

 

「おい!アドム!前の話は無しで構わん。俺はこのまま不死隊の入隊試験を受けるぞ。」

 

すると、少し遠めから返事が返ってくる。

 

「旅人は、一ヶ所に留まらず、何処にも所属しないんじゃなかったのか?」

 

「気が変わった。ここに居れば、面白い事が起きそうだ。」

 

「・・・そうか。了解した。」

 

一連のやり取りの後、アルフレッドはこちらへ向き直る。

 

「という事で、これからも宜しく頼むぞ?コロナよ。これからは、同期の同僚だ。」

 

私は、苦虫を噛み潰したような、渋い顔になる。

そうか、もしファランの不死隊に入れたら、アルフレッドさんは、同僚になるのか・・・しかも同期の。

 

そう考えると恐ろしくなる。

これから行く場所は、彼、もしくはそれ以上の猛者が群雄割拠する場所に行くのだ。

いかに自分が場違いかを、再び思い出す。

 

視線を下に落とす。

クトアが寝ている。

この子も、場違いにはかわりない。

 

・・・ファランの不死隊の試験に落ちた場合の事を考える。

私の住む不死街は燃えた。あったとしても、それは他の地方の不死街だ。

地方の不死街でも、旅人や他人を受け入れるとは思えない。

また不死者認定されて、不死院に閉じ込められるのが落ちだ。

ここから近い国は、西の砂漠にあるカーサス。次に北にイルシール。最後に、少し遠くなるが、ロスリック。

いかに近いといっても、最低でも数ヶ月はかかる距離はある。行けたとしても、不死者を歓迎する場所など、そうそう無い。

そもそも、旅に出たとして、何の目的があろうか。

死なず、ただただ放浪する亡者と化すのだろうか。

考えれば考えるほど、ファランの不死隊が、不死者の居場所であること示しているかのようだ。

 

「んぁ・・・んぅ・・・」

 

どうやら、クトアが起きたようだ。

 

「おはよう、クトア。よく眠れた?」

 

「おはよう、コロナお姉ちゃん。・・・お姉ちゃん、どうして泣いてるの?」

 

「え?」

 

顔を手の甲で拭うと、涙が僅かに滲んでいるのがわかる。

 

「何か悲しい事があったの?」

 

悲しい事。

今この状況は、悲しい事なのだろうか?

今の状況を悲観しているのか?

 

「お姉ちゃんをいじめる奴は、私がやっつけるよ?誰?」

 

「・・・うん。大丈夫だよ。悲しくないよ。」

 

そう言って、クトアの頭を撫でる。

クトアは安心したように、私に微笑み、私に身体を預ける。

そう、悲しくはない。

虚勢ではない。

ファランの不死隊に拾われ、化け物に会っても生き延びた。

十分な幸福だ。

 

「そろそろ、ファランの不死隊の本拠地だ。出る準備をしとけよ!」

 

次の幸福を掴むため、私は可能な限り試験へ臨む。

少なくとも、私は心にそう誓った。

 




投稿主「まだまだです、墜ちませんよ、私のモチベーションは!」

なんやかんやで、まだまだ続きます


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幕間
幕間1~深淵の炎戦~


注:アドム視点です。




「やらせはしねぇよ。」

 

バァン

 

俺は、膝を縮めた後、全身を引き延ばし隊長の方へ突進する。火玉は、俺の突き出した特大剣に遮られ、消滅する。

しかし……

 

「ちっ!」

 

完全に消滅した訳でもないらしく、残り火が邪魔したらしい。敵の炎の塊も、次の攻撃準備に入っている。

隊長が下手に落ちたやつを助けると、また火玉に邪魔される可能性がある。

なら…

 

「こいつの面倒もこっちで持つ!だから、早めに援軍を頼むぞ!」

 

非戦闘員が一人なら問題はない。

無理に運ぶ必要はない。

とりあえず、落ちた不死者のこいつに関しては無視だ。

あの女の不死者は、襲撃直前に入ってきたから分からないが。

こいつは、予め居たから調べてはある。

問題はないだろう。

 

俺とフィーアが、敵の火の玉に向かうと、後ろから声が妙によく聞こえた。

 

「匂い立つなぁ。」

 

後ろから立ち上がるような、水の音が聞こえる。

流石に、敵の目の前では振り向けないが。

恐らく、さっきの落ちた不死者が起きたのだろう。

なら……

 

「これは、そうだ、あそこだ。たしか、ロンドールの時の匂いだ。深淵の香りだ。血の香りだも堪らないが、こっちもなかなか…。しかも、コクが深いときた。」

 

「おい”アルフレッド”!手を貸せ!お前もアレに消し炭にされるぞ!」

 

「おお!アドムじゃないか。君との仲だ、助力は惜しまないが、武器が無いことにはどうしよいもない。」

 

「そりゃ、そうだが……おっと!」

 

敵に向きながらとはいえ、会話中に火の玉を飛ばして攻撃してきた。

俺は避けながらも距離を詰めていく。

フィーアの奴も同じように詰めていく。

だが、途中で移動が中断される。

移動中に何が足に引っ掛かったらしい。

元々動きにくい水中だったが、何が水没してるらしい。

形状からして………剣か。

俺は、その水中に七色石を落としてから、後ろのアルフレッドに言い捨てる。

 

「アルフレッド!ここに剣が落ちてる。好きに使え!」

 

「ほう?」

 

俺が若干遅れたため、フィーアが先に敵の火の化物にたどり着く。

ファランの大剣で攻撃するが、すり抜けているように見える

炎の化物はこちら側に移動してくる。

すかさず俺は、ファランの大剣を炎の化物の中心を切るように攻撃する。

先ほどよりは、効いたのか炎の揺らめきが大きく揺らめいた。

しかし、決定打にならない。

少し右後ろから、声が聞こえた。

 

「うっしょっと。グレードソードか。しかもボロボロの鈍(なまくら)かよ、最高だな。で?こっちが、よく分からんが大剣だな。剣帯もあるし、予備で持っとくか。」

 

アルフレッドが剣を見つけたらしく、戦闘に参加する。

それを見たフィーアが少しこちらに近づき質問してくる。

 

「彼は大丈夫なのですか?戦闘はできそうですが、相手が異形ですよ?」

 

「大丈夫だろう。あいつは、各地を放浪する旅人で、何よりも戦闘を好んでいたらしい。旅先で、何度かは異形とも戦ったことがあるらしい。」

 

「それはまた、珍しい人物ですね。」

 

「ああ、それは俺も思った。」

 

ちょっとした情報交換をしていると、またもや炎の化物が攻撃してくる。

俺とフィーアは避ける。

 

「そういえば、私が攻撃するとき、あいつの中央に青黒い炎が見えたのですよ。もしかして…。」

 

「その予想で合ってると思うぞ。本体か弱点だろうな。」

 

「問題は、その青黒い炎が小さすぎる所でしょうか。」

 

その通りであり、俺が今悩んでいる点でもある。

さて、どうしたものか。

……ん?

 

「おらぁ!」

 

アルフレッドがグレードソードを使い、回転切りをする。

すると、一瞬だけ、青黒い炎が大きくなった。

その一瞬を、フィーアがすかさず攻撃する。

かなり大きく炎が揺らめいた。

これは有効打だ。

俺も攻撃に加わる。

 

その後、俺は観察を重視しながら炎の化物と戦闘を続ける。

しかし、なぜアルフレッドの攻撃の後に青黒い炎が大きくなった?

あの後から俺たちの攻撃でも、同じような現象が起きた。

武器は関係ないのだろう。

では何だ?

フィーアの下から上への攻撃が炸裂するが、一歩届かず空を切る。

しかし、何故か青黒い炎は大きくなった。

何故だ?

攻撃の方法か?

今のは下から上への攻撃だ。

さっきまでの戦闘を、頭の中から掘り起こす。

確かに、下からの攻撃が多い。

下には何がある?

……気づいた瞬間、少しアホらしくなった。

なぜ今まで、こんな簡単な事に分からなかった自分にだ。

 

俺は露骨に炎の化物に近づく。

炎の化物はこちらに気づき、近づいてくる。

俺はそのタイミングに合わせて、ファランの大剣で切り上げる。

そう、“まるで、地面の水を炎の化物にかけるかのように“。

水しぶきを受けた炎の化物は、予想通り大きく揺らめき、青黒い炎は大きくなった。

すかさず、アルフレッドがグレードソードで攻撃する。

2人は、露骨な俺の攻撃の仕方から察したのか、切り上げ攻撃の頻度が上がり、青黒い炎は常に大きいままのようなものだった。

 

このまま押しきそれそうだ。

そう思い始めたとき、炎の化物は爆発した。

 




彼らは火の無い灰ではないので、大変ですね。
だって……

エストなし
SLがある程度固定。
武器固定
防具固定
篝火なし

これだけでも結構キツイと思いますよ。


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