何回も転生した奴がありふれた世界に転生しました。 (オット)
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プロローグ

「・・・終わったなう。」

 

「あれ?もう?早くない?」

 

「そんなに早くないと思うぞ、精神的には地獄だった。」

 

さて、門が開いた時よりかは時間かかった気がするぞ、あれももう何年前になるか・・・。

 

「それと、新しい仕事入ってるよ。」

 

「マジかよ・・・勘弁してくれないかね、まだまだ疲れが取れないのだが。」

 

そう言いながら書類を受け取って見てみるとパッと見るだけで神殺しとか書いてあるからちょっと待てとなった。

 

「待ってくれ夜月、神殺し?相手の階級は?」

 

「中級、になりかけの下級神?」

 

「焦るわ、止めてくれよ、俺だけか?」

 

「他にも何人かいるよ、新人一人と神殺しをした事ない2人。」

 

「何故新人?」

 

「戦力の偏りを無くすため。」

 

「オゥ・・・。」

 

つまり俺がサポートしてやれと、めんどくせぇな。

 

「・・・転生前にそのメンバーとの話し合いは?」

 

「バッチリあります、たぶんそろそろ呼ばれるんじゃないかな?」

 

「ちょうど良いタイミングじゃったようじゃの、ほれ、ついて来い。」

 

トール爺ェ・・・毎回仕事を急に回してくるの止めてくれよ。

 

「ここじゃな、心置きなくくっちゃべっても構わんぞ。」

 

「・・・今度急に仕事回してきたら苦情送るからな、トール爺。」

 

「ホッホッホ、人手不足じゃ。」

 

「配下増やせよ。」

 

「無理じゃ。」

 

トール爺は扉を閉めて消えやがった。

 

「あのジジイ・・・。はぁ・・・。」

 

「あ、あの、大丈夫ですか?」

 

「あ?ああ、俺が最後か、さて、今回俺たち4人が集められた概要を知っているものはいるか?」

 

「いや、俺は神殺しをするとしか聞かされてない。」

 

「私もです。」

 

「私は同じ様な転生をすればいいとしか・・・。」

 

という事は新人はこいつか。

 

「今回の神殺しをする対象はそいつがいる世界でエヒトだとか言われている、あと、対象を殺す原因、理由は他の世界の神の眷属を殺したから、現地で裏切り者にされている七人の神の眷属、そいつらを殺したからだ、奴はそれを成そうと世界の管理をしていたそいつらを殺し、記憶を入れ替えて輪廻の輪に乗せた、わかりやすく言えば天使では無くなった、無許可で天使から引きずり下ろすのはダメなんでな、罰を受けてもらおうというわけだ。」

 

「それって、その神の眷属の人たちはもう天使だった頃の記憶が無い・・・という事ですか?」

 

「そういう事だな、記憶を持たず、俺たちが魂を運んだり世界を管理したりしていた頃の記憶が一切無くなる、天使では無いのだから魂の保証もされない、よしんば会話出来たとしてもこちら側の事情は知らないと見ていい、本当に厄介だよ、こういう手合いは。」

 

「つまり実質俺たちだけか、対象がいる世界で産まれるのか?」

 

「いや、今回は二つに分かれる事になった、相手は輪廻の輪をずっと見てるわけじゃ無いらしい、2人くらいなら現地で産ませられるらしい、後の人員は適当に召喚でもされるんじゃねえか?」

 

「という事は、その2人は俺たち2人になりそうだな、そっちは異論は無いな?」

 

「無いわね、久しぶりのコンビね、頑張りましょ。」

 

「あと、現地では魔道具などで強力なものはアーティファクトという名称らしい。せいぜい作れる様に頑張りな。」

 

「へぇ・・・。」

 

「そろそろ作戦会議は終わりだ、では転生しようか。」

 

「アンタ、案外こういうの好きなタイプね?転生歴はどの位なの?」

 

「さぁな、兆から先は覚えてねえわ。」

 

「俺たちは500くらいか、という事は先輩だな。」

 

「止めろ、気持ち悪い。」

 

「私は今回のを含めると2回ですね。」

 

「「うっそだろオイ。」」

 

「それで神殺しとか、無駄死にしてこいとか言われてない?私達のところに来る?」

 

「い、いえ、どちらかといえば新しいところに行って来いと言われてますね。」

 

それって実質リストラ宣言じゃないのか?

 

「・・・ま、まぁとりあえず、行こうか。」

 

「そうね。」

 

「お前らはそっちの扉な、俺たちはこっちの扉だ。」

 

「了解、良い人生を。」

 

「言ってろ。」

 

俺がそういうと新人と俺を残して2人は行ってしまった。

 

「さて、俺たちも行くか。」

 

「大丈夫、でしょうか。」

 

「安心しておけ、俺がいる、フォローくらいはしてやろう。」

 

「・・・分かりました。」

 

俺たちも扉を開けた。

 

さて、今回の転生も楽しければ良いなぁ。




最終回を迎えた翌日に新作を作るバカが居るらしい、私だよ!(迫真の顔)

本屋をうろついてたら目に付いた作品でweb版あるかなと検索したらヒット、読んでみてこれ前にも見た事あるな、コレにするかと決め、書いたものです、web版がメインです。


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俺は孤児でした。

俺は転生した。

 

名前は秋月風魔(あきつきふうま)だ、俺は捨て子らしい。

 

目が覚めたら教会の前で毛布に包まれてんの、ああ、捨てられたなと思ったね。

 

それでどうしようもなく泣き声あげてたらシスターさんが出てきて中に入れてくれた。

 

そんな事があって3年くらい経つと俺はいつの間にか秋月風魔という日本人として日本のど真ん中にある教会、というか孤児院で暮らす事になっていた。

 

やのつく人が金をせびりに来るとかそんな事もなく3年暮らして来たわけだが里親とかそういうのは居ないのだろうか。

 

俺は黒髪だけど目が赤いしどう考えても混血なわけで、他の小さい子供達もいる中でシスター含め数人だけで回している現状はいくら何でも辛いだろう。

 

「コラ!教会にも行かずにサボってるなんて許しませんよ!」

 

「シスターだ!逃げろ〜!」

 

そんな事を言ってる間にもガキどもが騒いでるし、注意しようにも三歳の体じゃ動き回るのが限度、一応筋肉を鍛える意味でも結構な時間を運動に使っている。

 

俺が賢いという事実を植え付けるために本を読んだりしゃべったりもしてるが正直そんなに面白くもない話を延々と読むなんて苦行以外の何物でもない。

 

「・・・公園行くか。」

 

ふと呟いたが案外良い案なのでは?

 

「シスター、公園に行ってきます。」

 

「あら?行ってらっしゃい。5時には帰って来なさいよ。」

 

「分かりました。」

 

さてどうするか。

 

何となくで公園まで来てみたものの、正直子供達と遊ぶなんて考えづらいしな、そんなことして現実逃避できる期間もとっくのとうに過ぎた。

 

そんな事を思っていると近くのベンチに座っている女の子を見つけた。

 

その女の子は夏なのに帽子を深く被っていて髪も顔もよく見えない。

 

良く見てみると天使の気配がしたので新人かと思い当たる。

 

「おい、その辛気臭いツラはお前の標準装備か?新人。」

 

「え?」

 

新人は顔を上げた。

 

新人の顔はかなり可愛い部類に入る顔で俺は思わず目を逸らした。

 

「あの・・・だれ・・・ですか?」

 

「・・・ぶっ・・・フフッ。」

 

「笑うのは・・・酷いです。」

 

「すまん、そうだったな、自己紹介がまだだった、俺は秋月風魔、お前は?」

 

「私は・・・きさ・・・結月桜(ゆづきさくら)です。」

 

前の名前が如月あたりか?

 

「さて新人、暫くは平和なこの世界で暮らす事になるわけだが、召喚されるときに俺たちだけとは限らない、身近な人が召喚されるリスクも考えておけよ。」

 

「・・・そうですか、それは別に平気です。」

 

「親が毒親?それともヤーさんにでも睨まれたか?」

 

「いえ、家族はいます、今は兄と姉が居ますけど・・・忙しそうですね。」

 

「親が死んだってところか、その2人は何してる?」

 

「2人とも声優を、でもそんなにお金がもらえる仕事でもないので・・・。」

 

「生活は苦しい?」

 

「・・・違うんです・・・苦しそうな2人を見たくない・・・でもどうしようもなくて・・・。」

 

桜はそういうと泣き出してしまった。

 

肩を叩きながらどうしようかと悩んでいると周りのガキ共が近づいて来ていた。

 

「・・・厄介そうだな、ちょっと場所を移動するぞ、歩けるか?」

 

「あ、はい・・・歩けます。」

 

そう言いながら手を引いて歩く。

 

そのまま孤児院に連れて帰るとシスターはびっくりしていた。

 

「風魔?その子は誰?」

 

「桜、泣いてたから連れて来た。」

 

「えぇ・・・。」

 

困惑しているシスターに桜を預けて部屋に戻る、女児が何人かいたが構わずに隅の方で考える。

 

兄姉の2人は声優、という事は仕事がある・・・でも家のローンやら土地やらを含めると休める場所が欲しいはず、孤児院で働かせる?人手不足だし良いかも、だがその場合のメリットとデメリット、体を壊したら本末転倒、ならどうするか。

 

そんな事ばかり考えながらじっとしているとシスターがやって来た。

 

「風魔、この子寝ちゃったわ、近くに居てあげて。」

 

「分かりました。」

 

「また敬語・・・もう、タメ口で良いのに。」

 

「そうですね、でも変える気は無いですよ、今はね。」

 

「・・・そう?」

 

「・・・いや、良いかもしれないな。」

 

「え?」

 

「シスター、 人を雇える金はありますか?それか人を学校に通える程度に養えるくらいのお金。」

 

「無いことも無いけど・・・どういう事?」

 

なら、交渉次第で・・・いや交渉なんてさせるか、絶対やってやる。

 

「・・・ねぇ、ちょっと?どういう事か説明して?お願いだから。」

 

「シスター、すみませんが、巻き込まれてくれますか?」

 

「許可取る気ないわよね?」

 

「無いですね。」

 

「取って、お願いだから。」

 

シスターは少し涙目であった。




シスターの年齢は現時点で30歳位のイメージ


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さて桜、君を助ける一手を指そう。

筆が乗る事って、あるよね。


数日後桜にその兄と姉を教会に連れて来てもらった。

 

教会にある相談室で俺とシスター、そして桜とその対面にその兄と姉がいる。

 

兄の名前は芸名結月純、姉は結月ゆかりだ、というか桜の名前からして本名?よくもまぁそれでやろうと思ったな。

 

「・・・貴方達が声優をしているのは知っています、今上がり坂で収入が増えている事も、ですが、その収入はいずれ減ります、どうあれ仕事としている以上時が経てば風化する。」

 

「そうですね、きっとそうでしょう、でも君に何ができるのですか?」

 

「ハハッ、だからこそ貴方達を呼んだんですよ、この孤児院で働いてみませんか?」

 

「・・・どういう事ですかね?シスターさん?」

 

「・・・私も昨日やっと少しだけ聞き出せました、言葉通りです。」

 

2人は困惑している。

 

「こちらが用意出来るメリットは二つあります。

 

まず声優の仕事は続けてもらって構わない事、仕事が急に入ったりしたらそちらを優先していただいても構いません。

 

2つめは桜を孤児院で預かっても良いという事。」

 

「「「え!?」」」

 

すでに許可は取ってある。

 

「要するに副業ですよ、子供、好きでしょう?貴方達の仕事はもっぱらラジオかアニメ、しかもアニメではそのほとんどを子供用のアニメに声を吹き込んでいる、それは桜がいるからでもあるのでしょうが、2人とも、子供が好きだからなのではありませんか?」

 

「それは・・・。」

 

「それにラジオでも公言していましたよね、二人共子供が好きだと、であれば孤児院はいい経験になるのではないですか?勿論桜にも世話はしてもらいますがその分の給金も出します、金というよりご褒美という扱いですがね、何事も言いようですよ。」

 

「君・・・意外と腹黒いね。」

 

「友達を助けるのに必死になってるだけですよ、迷惑をかけまくりながらね。」

 

「少しだけ、考えさせてください。」

 

「ああ、そうそう、もし貴方達が有名になったりした時は桜の進学するお金だけでなく、俺たち孤児院の何人かの進学金も負担して頂きたい、お金が稼げればという事が前提なのでもしもではありますけどね。」

 

「もし、出来なかった場合は?」

 

「その時は桜の分だけ、ですが、有名になって貰いたいですねぇ、なにせ、見たでしょう?ここに居る子供達の数を、この数を進学させるにはそれこそ大金が必要になりますし、その大金を稼ぎ、負担してもらえる機会があるのならば俺は全力で、首を絞めてでも引き止めます。それがこの孤児院に居る子供達を育ててくれているシスターへの恩返しでしょうから。」

 

「・・・姉さん、俺はいいと思ってるけど、どうする?」

 

桜の姉はちらっと桜を見るとため息をつきながら手を挙げた。

 

「降参ですかね、君多分才能あるよ。」

 

「お褒めいただき有難うございます。どうだ?桜、これが俺の実りょ・・・!?」

 

俺が桜の方を向くと桜は泣いていた。

 

「ごめ・・・なさ・・・うええぇぇぇ!」

 

「うぇっ!?なんで泣いて・・・ああもう!泣くなって!大丈夫だから、な?」

 

俺があやすともっと声を上げて泣き始めた。

 

「だああああああああ!!!?めんどくせええええええ!!!」

 

数分すると桜は泣き疲れて寝てしまった。

 

・・・俺の腕に抱きつきながら。

 

シスター達はクスクスと笑っている。

 

「助けてくれたら良かったのに。」

 

「いや・・・取り乱してるのが予想外過ぎて・・・ふは・・・。」

 

「私もね・・・フフッ。」

 

お前らぜってぇ許さねぇからなこの野郎。

 

「あらあら・・・。」

 

桜が目を覚ますまで5時間くらい掛かった、最後の方は俺の目が死んでたと思う。




桜ちゃんは物凄く大人しい子のはずでしたが先輩が当たり前の様に覆していくので処理能力が無くなりました。

というか主人公が教会の前に来たのは近くでちょうどいい場所がなかったからでもある。


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懐かれました。

「風魔さん、起きて下さい。」

 

「ん〜?」

 

「風魔さん?おーきーてー。」

 

「・・・桜か。」

 

明日から学校だという話をして寝たのは覚えているが、それから先の記憶が無い、寝たか。

 

桜の面倒をみる事になって早数年、早くも小学生になってしまった。

 

「それにしても、桜も同じ学校になるとは思わなかったぞ、結構家と離れてるだろ?」

 

「私にとってはこの孤児院も2つ目の家みたいなものですから。」

 

「・・・そうか。」

 

桜は孤児院ではかなり人気がある、それはクッキーなどのお菓子を作れるのもあるが何よりお母さんのような雰囲気だから、だそうだ。

 

因みに俺は普段はダメダメの親父だけどいざという時は頼りになる人らしい、解せぬ。

 

「ランドセルは持ってますか?ハンカチやティッシュは?名札はちゃんと付けていますか?」

 

シスターが一人ずつ確認していっている、俺たちの番も近そうだ。

 

俺たちの居る孤児院は人数が多いのもあって入学や卒業も一斉に始まる、確か俺が知っている中で最大で二十人が一斉に入学していった事もあったはずだ。

 

よくもまぁ金があるものだと思ってはいたがなんとなく夜月達が操作してるんだろうなぁとも思ってしまう。

 

「風魔くん、桜ちゃん、君達は賢いんだからみんなの事、よろしくね。」

 

「任せて下さい!」

 

「ま、出来る限り頑張ってきますよ、努力はします。」

 

そう言うとシスターは苦笑いしながら立って手を叩いた。

 

「ほら!行った行った!初日から遅刻なんてしたら許さないわよ!」

 

「マジかよ!」

 

「シスターに怒られるのは嫌だ!」

 

またキャーキャー騒ぎ始めたな。

 

「さてと、学校行くか。」

 

「うん!」

 

学校に着くとクラス分けと自己紹介が始まった。

 

俺と桜は同じクラスになったが自己紹介は少し面倒くさかった。

 

何しろ子供というのは残酷だ、自分と違うというだけで無邪気に傷を付けようとする。

 

それは時として取り返しのつかない傷を残す。

 

いつか忘れてしまったが喉が焼けて声帯を切り外した経験がある俺としては注意したいがどうしようもない事として記憶に残っている。

 

「私の名前は結月桜です!よろしくお願いします。」

 

「俺の名前は秋月風魔、別になんて呼んでくれてもいい。」

 

「僕の名前は・・・南雲ハジメ・・・よろしく。」

 

南雲ハジメという子供は既に眠たそうな顔でうつらうつらとしていた、何やってんだ?

 

「・・・大丈夫か?」

 

「大丈夫・・・眠たくない・・・眠たくない。」

 

・・・寝そうだなぁ。

 

「すぐに帰れるから我慢しな、最悪気付かれない程度に寝てたら少しは楽だぞ。」

 

「そうする・・・。」

 

「寝るのはえぇよ。」

 

ハジメはすやすやと俺と桜の間で寝始めた。

 

「図太いのか気にしてないだけか・・・。」

 

「どっちでもいいんじゃない?可愛いし。」

 

「それを本人に聞こえる形で言ってやるなよ、嫌がるぞ。」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ。」

 

結局のところ俺たちは三人とも仲良くぐっすりと寝てしまい先生に起こされる羽目になった。




ハジメのイメージが魔王のイメージで固まってたのでweb版の最初の方を読んでから書いてみた。

無意識に毒を吐いている眠たげな表情をした魔王という構図になってしまったりしてました。


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南雲ハジメとゲームの話

結構きつく怒られたところで解放された、居眠りくらいあるだろう、許してはくれんのか?

 

「はぁ・・・朝からキツイな。」

 

「そうだね、でも別にこういうのなんだって分かったからいいかな?」

 

「・・・ごめん、僕のせいだよね。」

 

ハジメが俯きながらそう言うと俺と桜は顔を合わせて笑った。

 

ハジメは何故笑ったと少し睨んでくる。

 

「いや、そんなに睨むなよ、友達なんだから、遠慮なんかするなって。」

 

「・・・友達?」

 

「そうそう、私たちに遠慮なんて要らないよ!友達なんだから!」

 

「巻き込んで巻き込まれて一緒にバカやる、それが友達だろう?」

 

「・・・うん!」

 

気弱な子供だが強い奴になりそうだ、こういう奴は嫌いじゃない。

 

「さて、早速だが俺たちの家にくるか?ガキばっかりで騒がしいと思うけどな。」

 

「それなら・・・僕の家に来てよ、ゲームとか本とか貸せるよ。」

 

「・・・へぇ、ちょっとシスターに行ってから待ち合わせと行こう、学校の前で待ち合わせだな。」

 

「道は結構簡単だったよね、なら大丈夫かな?」

 

「門限は5時だから4時半くらいまでならいいだろ。」

 

「分かった。」

 

今の時間は丁度昼だ、飯食ってから急いでくれば1時には来れるか。

 

「集合時間は1時!それまでに全部終わらせるぞ!」

 

「おー。」

 

「頑張ろー!」

 

急いで帰って飯を待つ、12時には子供達と騒がしい昼飯が始まり食い終わると約束の時間まであと20分しかなかった、学校にはギリギリ足りない位か。

 

「やべえ!桜!カバンは持ったな!?」

 

「も、持ってるよ!」

 

「急ぐぞ!間に合え!」

 

走って向かい、学校の前に着いた頃には胃の中の物を吐きそうなくらい疲れていた。

 

「やば・・・吐きそう。」

 

「は、吐かないでよ?」

 

「大丈夫?僕の家はすぐだからお茶くらいなら出せるけど。」

 

「た、頼む、疲れた。」

 

春だからといって全力疾走したらダメだな、体力が・・・。

 

ハジメの家は紙の匂いが仄かに香っていた。

 

「両親が漫画家と会社の社長なんだ、多分今母さんが漫画描いてるんだと思うよ。」

 

「へぇ、珍しいな。」

 

「そうかな?僕はそうでもない気がするけど。」

 

そんな異色のコンビは充分珍しいよ。

 

そう言いながらハジメの部屋に行く途中ですごい熱気を出している部屋があった、少し覗いてみると結構いる男女の人達が笑みを浮かべながら紙に色々と書いている。

 

あれ漫画か、すごい熱気だ、俺って未だにサブカルチャーの仕事ってあんまりやったこと無いからな、やって見るのも一興か。

 

「やっぱり、母さんたち元気そうだね。」

 

「・・・そうだな?」

 

あれは元気というかハッスルしてると言うか。

 

「まぁ元気には違いないと思うよ?」

 

初めて見たはずの桜の方が落ち着いている、見慣れてるのだろうか。

 

「そうだな。」

 

その部屋を通り過ぎてハジメの部屋に案内された、そこには小型のテレビと大量の本棚と本があった。

 

「おお、これはまた大量な。」

 

テレビの横にゲームの据え置き機や携帯ゲーム機まで別々に入れられているので暇にはならなさそうだ。

 

「今日は三人だから・・・これかな?」

 

ハジメが持って来たのはキャラクター達が大乱闘するゲームだった。

 

「ほう?大乱闘とな?」

 

「親といっぱいやってるからそう簡単に負けないよ。」

 

「言ったな?すぐに勝てるようになってやろう。」

 

「頑張ってねー、私だって負けないように頑張るから。」

 

そう言って三人でゲームをしてみると最初の方はハジメが圧倒していたものの途中からピンクの吸い込む悪魔やらネズミのモンスターを使い始めた桜が二人まとめて場外に叩き出すようになったので俺とハジメは戦ってる場合じゃねぇと急遽タッグを組み何戦か戦い、フレンドリーファイアしないようになるまでに黒星を重ねた。

 

それでもどちらかが復活出来なくなるまで削られ、もう一人も復活出来ないレッドゾーンまで削られてやっと倒せるという腕の巧さにハジメと二人で天才かこいつと桜を見ていた。

 

桜はドヤ顔でこちらを見てくるのでそれで察した、こいつこれやり込んでる。

 

俺にだけあとで前世と今世でやり込んでましたとしれっと言ってきたので渋い顔をしてしまった。

 

それからハジメの家でゲームをする時は打倒桜を掲げて色んなゲームをした、ロボットをカスタマイズして戦うゲームだったり、屋内戦で打ち合うゲームだったりと色々とやっていたがそのほとんどでやり込まなければあまり勝てないようになったのは全員がかなりガチな方のこだわりがあったからだろう。

 

ハジメは自分の家のゲームだからと、俺は生きた年齢が違うんだよと、桜は負けたくないからとかなり本音でやり合った、その結果俺たちは三人とも連携なら阿吽の呼吸で出来るようになってしまった。

 

「クッソ!フラグ取られた!」

 

「金庫室に敵二人いる!」

 

「フラグ取り返した!地雷セット!帰るので援護!」

 

「タレット来た!撃ち落とせる?」

 

「ごめん無理!強化壁壊された!相手ショットガン持ってる!」

 

「任せろ!フハハハハハバカめ!あ、ちょっと待っだあ死んだ!」

 

「カバー入れるよ!フラグ投げ返して!」

 

「うおお!神風特攻!」

 

「3人やりやがった、どんだけ固まってるんだ相手。」

 

その勝負ではギリギリ勝ちを拾った。

 

その声を聞いていたハジメの両親にゲームのテスターをやる条件で孤児院に4つほど据え置き機を置いてもらうことになったのは僥倖だろう、俺だけ練習時間がなくなる所だったからな。

 

それから後は孤児院でもゲームが流行り、俺が調整してゲーム依存にならないようになった、オンラインも出来るので子供達やたまに来る孤児院を離れた大人の人達が俺たちの連携や白熱した戦いを見て集まるようになり、何回かに分けて戦う事でトーナメント戦をしたりとかなり充実した。

 

なお、俺はそれでも中堅を行くか行かないかだ、天才ではないのでな、大人の人達がゲーム機にパソコン繋いで実況動画にしたりするのは面白かったが。

 

ボイスチャットとかもかなり楽しかった。

 

後で大人の人達と相談して動作サイトに結月ゆかりさん達ボイスロイド?の声を入れた実況動画として入れることになった。

 

連携が上手いと話題になったのでハジメのお父さん達から俺たちを放っておくとは何事か!と協力要請が来たので晴れて実況チームに。

 

その時点で小学校などほとんど過ぎていた。中学校になる頃にはその動画サイトだけで年収が20万稼げる程度の人気になっていたので俺達にそれぞれ声を当てはめた生放送をする事に。

 

その時口悪いけど楽しそうとか色々と言われた。

 

桜とかもう途中から心底楽しそうだったからな。

 

ただ俺の名称がラスボスとかリーダーだったのはびっくりした。

 

ハジメは下っ端、ただし能力は誰よりも高い。

 

桜はボイスロイドの中で唯一女性キャラだったので天使とかオカンと言われるように。

 

その頃にはもう俺達はゲーマーになっていた。

 

3人一組なので大体どのゲームをするのにも丁度良く、二人で協力するゲームにも3人とも誰と組んでもそれなりに上手いので問題は無かった。

 

住所やら名前やらを公開された事もあったが動画内で注意をし、ファンなら程々の付き合いをしたり、逆に取り込んだりとうまくやった、煽りはいつでもいるので気にしない、住所に押しかけてきて性的な事をしようと桜に近づいた奴には少し物理的にお話しさせてもらった。

 

というかまさかゲームの動きがあんなにスルスルできるようになるとは思わなかった。

 

ただ桜は少し男性恐怖症の症状が出てきたので動画内で警告する事に、この時俺だけ生声が許された。

 

結果最高の視聴回数とトラウマ発生が続出する結果となった。

 

掲示板などではトラウマ発生をもじってトラウマ発声動画と名付けられる結果に。

 

後で自分の声を聞いて少し背筋が凍ったのは秘密だ。周りには申し訳なかったと思う、ハジメとか涙目だったしな。

 

中学に上がる頃になると何人か俺たちを知っている奴も出てきた。

 

俺達は基本の三人と何人かの野良やリスナーで動画を作っているのでその確率が上がるだけでも結構大歓喜の奴が多かった。

 

動画作りにも慣れてきてプログラムに手を出したり俺たちのことをハジメの母さんが読み切り漫画にしたりと色々変化がで始めた頃でもある。

 

勉強は一応何とかなったが中学はそうもいかないだろうと勉強会をすると桜とハジメがどうせなら動画にしてしまおうと言ったせいで俺の教え方が上手いと噂になったりした、お前らいつ動画上げやがった。

 

中学一年生でゲームが上手いのならプロを目指せるんじゃないかという声もあったがそれは辞退した、プロになったら趣味じゃなくなる、俺たちの仕事はむしろ漫画とかプログラムの領域だからと言っている、その中でせめて俺だけでもという声があったが無視する。

 

そして中学一年生でポツポツと大衆にも人気になっていたタイミングだった。

 

俺たちの家にイベントに出てみないかという手紙が届いた。




タグのゲームネタについてはこの辺りが原因になりますかね、出しておかないと警告が怖いので。

ソロでやるゲームはあんまりやってません、単発実況では幾つかあります。

これ高校で異世界行って一年過ぎたらどうなる事やら。


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イベント

本日2度目の投稿、ご注意を


俺達はイベントに参加する事になった、俺たちのプロフィールを見て運営側も強制的に参加させる気はないと言っていたが三人とも笑顔で承諾した。

 

こういうイベントは初めてだが全員の生声実況と思えば良いんじゃないかという意見で無理やり押し通った。

 

「まさか初の全員生声が動画じゃなくイベントとは・・・。」

 

「勉強会動画も結局のところボイスロイドだったしねーまぁでも大丈夫だと思うよ?・・・風魔くん以外は。」

 

「僕もそう思うよ、トラウマ発声動画と名付けられる結果になった時の声じゃないから良いけどそれでも顔を青くする人いるんじゃないの?」

 

「だろうな、俺も少し、いやかなりそこを心配してる。」

 

「声変わりとかもあるから生声実況って難しいよね。」

 

「その点、俺達は一応始まってはいるから別に気にするほどのものでもない気がするがな。」

 

そもそも声変わりする時期に動画出してる物好き自体が少ないだろう、それも実況を。

 

「そろそろ出番でーす!」

 

スタッフに声を掛けられて俺達は三人とも立って舞台に移動する。

 

「では!最近ゲーム実況動画を上げ、人気上昇中の三人、名前はありませんが本名がリークされているのと本人達からの許可もあり、本名を呼ばせていただきます!トラウマ発声動画の主人!秋月風魔さん!そしてその動画を上げるきっかけとなった結月ゆかりボイス担当の結月桜さん!そして、全ての能力がズバ高いのに下っ端!南雲ハジメさん!どうぞ〜!」

 

司会の紹介と観客の歓声とともに入場する。

 

そしてマイクをオンにして喋る。

 

「あーどうもありがとうございます、秋月風魔です、今回はトラウマを再発させている方は居るのかと少し怖かったのですが見た限りではいなさそうなので安心しました。」

 

俺の言葉に観客がみんな笑い出す。

 

「さっきまでゲンナリしてたくせに、南雲ハジメと言います、勉強動画とかで教えられてる男の方です。」

 

「あはは、私は結月桜です、というか結月ゆかりと三人兄妹です。みんな天使とか言ってるけど別にそんなことはないと思います。」

 

桜の自己紹介で会場がしんと静かになった。

 

「え?あの、皆さん?何で静かになって・・・ちょっと!風魔くん!何笑ってるの!?ハジメくんも笑わないで!」

 

桜は恥ずかしそうに顔を赤くする。

 

「いや、お前やっぱり自覚なかったんだな、ククッ、お前美少女だし、声も兄姉譲りの綺麗な声だしな、そりゃ黙るって、俺達は慣れてるから良いけどな。」

 

「びしょ・・・え?ええ!?」

 

そこから始まった会話はイベントの中でも特筆される程度には痴話喧嘩だったらしい。

 

「ところで、確かなんかやれとか言われてなかったか?」

 

桜は顔を赤くしてそっぽを向いていた。

 

「もう風魔くんの事は聞きません!」

 

「ゴメンて、後でクレープ買ってやるから。」

 

「マジで!?」

 

「お前が食いつくんかい、仕方ないけどもよ。」

 

「そうでした!確か件の動画の中にあった物理的にお話しさせてもらった、とは実際に殴った、という事で良いのでしょうか?」

 

司会の人が気を取り直したようにそう言うと全員の視線が俺に集まった気がする。

 

「やったな、割と遠慮無く、桜が泣いてたし、相手も包丁持ってたし。」

 

「え!?」

 

司会がびっくりした声を出す。

 

「いやー、電話で助けてとか言われたから走って向かったら桜が家の窓を割られて中に入られててな、急いで中に入ったら服に手を掛けてる変態がいるじゃないか、全力で蹴ったら面白いようにキッチンまで飛んで行きまして、んで包丁持ってこっちに突進してきたわけですよ。」

 

「風魔くんの蹴りサッカーとかでガタイの良い人数秒くらい呼吸してなかったよね、そんな蹴りを叩き込まれたらそんな事になるよ、その時分からなかったけど。」

 

桜の解説のようなもので余計にどん引きしているように感じるのは気のせいか?

 

「・・・まぁそれで桜を抱きかかえて庭に跳んだら丁度警察のサイレンが聞こえて来まして、仕方ないから変態の手を蹴り上げて包丁を手放させて変態を踏み台にして包丁を掴んで地面に倒れこんだ変態の顔の真横くらいに突き刺した。」

 

「その時俺はお前をいつでも殺せるぞ、桜に手を出したらこうなるって事を覚えて死んで行けとか言ってたよね。」

 

「・・・ちょっと桜さん?ちょくちょく解説を入れるのはやめていただきたいのですが?」

 

「・・・本当のくせに。」

 

いやそうだけども。

 

すでに会場全体がドン引きしている。

 

「あの時は俺がどうにかしていた、柄にも無く熱くなってたしな。」

 

「僕は後から知ったんですけど孤児院のシスターとかに聞けば凄い怒ってたそうですよ。」

 

「あの時ばかりはヒーローってこういう人の事を言うんだなって思いました、小説にでも出てくるような、ただそれなら口説いたりしそうですけどね。」

 

「小説は小説、現実は現実、そう言うことだな。」

 

「少なくとも風魔くんは人間離れしてるよね?動けるオタクとかの領域から脱してるよね?」

 

「それはしらねぇな、俺が大事だと思ったもんを守る、それの何処が悪い。」

 

「・・・悪くは無いけどさ・・・。」

 

その後も色々とトークしていたが総評としては二人は付き合ってるように見えるし付き合ってないようにも見える、ハジメ氏は見てて面白いでしょう?と密かにコメントしている。

 

ただ俺がその総評を知ることになるのはかなり先になる。




桜とは結構喧嘩する仲、ただし仲直りも早い、ハジメはその所為で巻き込まれるハジメは喧嘩の仲裁と時々出る殴り合いなどの格闘を見ている為、地味に人の動きを見切るのが得意になったりする。


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宿題とゲーム

時計がカチカチと秒針を進めていく、今の季節は夏、じりじりと肌を焼く太陽と色んなところから聞こえる蝉などの鳴き声が響きわたる。

 

俺達はその大きな空間故に涼しく、静かな教会内にて勉学をしていた。

 

いや、うち一人は涼しそうに携帯ゲーム機でゲームをしているので勉学ではない、ただの宿題だ。

 

「・・・音を垂れ流しにするなよ・・・風魔。」

 

「・・・すまんな。」

 

「なんで私達宿題なんてしてるんだろう。」

 

「言わないでくれ、桜。」

 

ハジメはゲーム実況動画のおかげで口調が悪くなり始めた、人前では前までと変わらないので凄いと思う。

 

「お、宝玉出た。」

 

「「・・・何の?」」

 

「新モンスターの。」

 

二人共睨んでいると形容出来る顔でこちらを見る。

 

「あと二週間で学校だぞ?そろそろ終わらせとかないとまずいだろう?」

 

「そう言う風魔は何時やったのさ。」

 

「子供達の昼休みとか、勉強を教えてる合間とかに少しずつ。」

 

「あの紙はこれか・・・!」

 

動画を出しているとはいえ孤児院のみんながみんな動画を見られる訳じゃないので俺が勉強を手伝うことになっているのだ、だが、やはり苦手教科などはかなり解くのに時間がかかる、その分空いている時間は丁度良い時間だったのだ。

 

その時間には桜もいたがかなり暇そうにしていた。

 

桜の嘆きは分かるぞ、俺も人がやってたの見て知ったからな。

 

「ほれほれ、3時までに終わらせればデザート作ってやるから頑張れ。」

 

「俺はマカロン。」

 

「私はパフェでお願いします。」

 

「またお前ら面倒なのを選んできやがって。」

 

「「だって両方作れるじゃん。」」

 

「・・・わかったよ!作ればいいんだろ!?クッソ、冷蔵庫に材料あったかな?」

 

無かった。

 

ーーーーーーーーー

「あー、美味しい・・・。」

 

「やっぱり慣れてるこの味だな。」

 

「美味そうに食べてくれたのは良いが、ちゃんと出来たんだろうな?」

 

「バッチリ。」

 

「お菓子があると分かればこんな物直ぐに終わらせられる。」

 

「キメ顔でんなこと言ってんじゃねえよ。」

 

しかも一人男子だろオイ。

 

「さてと、宿題も終わったな?・・・やろうか。」

 

「合点承知!」

 

「俺の太刀捌きを見るが良い。」

 

俺は援護専門だけどな。

 

その後はドラゴンを倒しに行って宝玉が出るまで周回した。

 

途中からハメのように連続で攻撃を叩き込んでいった。

 

「楽しいな、この三人でやると相手が不憫になるが。」

 

行動パターン分かったらどうしようもないからな、こう言うのって。

 

「やっと装備が一式揃った、疲れたよー。」

 

「そういえば動画であったよな、一人で出る動画少ないですけどやらないんですかって。」

 

「あーあったあった、やらないというよりも出来ませんって言ったよね。」

 

「俺達の個々人の強さを見てみよ!って言ってパーティープレイ無しのゲームやったらボロボロに負けてたよね、特に風魔。」

 

「やめろ、その言い方は俺に効く。」

 

「俺たちの動画も結構出してるよなぁ、なんだかんだ言って。」

 

夏休みとかほぼ1日に一回は出してるからな、どこか行かないんですか?って質問は何故か見ないが。

 

「逆に協力プレイ前提のゲームだと相手が可哀想になるレベルでボッコボコにしてるんだけどね。」

 

「ハッハッハ、何となくこうしたら良さそうっていう謎の直感が働く。」

 

「「分かる。」」

 

そして夕方になり、各々が家に帰ると俺たちの生放送が始まる。

 

今ではイベントにすら出てきたので生声とボイスロイドが半々位の数で出している。

 

「よし、んじゃ始めようか、さて?今日は二ヶ月前に発売され、今尚人気の残っているゲーム、チームとの協力が不可欠、仲間と協力し、迫り来る敵達に対処しろ、敵は様々!テロリスト、未確認生命体、自然の中にいる動物達、サバイバルを続けながらどれだけの猛威から逃れられるのか、そして生き抜いたその先で何を見るのか、それは君の選択次第だ・・・さぁ、始めましょう!サバイバルエレメンタル!」

 

「「おー!」」

 

あくまで陽気に、元気に声を出す、好きにやっているのだから自然と口角が上がる。

 

そして暫く日数が過ぎると大体こうなる。

 

「フハハハハハハ!みよ!この大軍勢を!全て我らの力ぞ!」

 

「無駄に揃えて壮観にしてんじゃねえよ、これサバイバルゲームだよな?テイムシステムはあるけどこんなのどうやった?」

 

「最初の数匹を軸に子供とかを産ませて作りました、正直なところ負荷がヤバイです。」

 

「だろうな。」

 

「さっきこれをレイド級のモンスターに突っ込ませたら一割も減らずに生き残りやがった。」

 

「多段ヒットと攻撃力だろうな、母船は?」

 

「射程距離の関係で攻撃出来ないので無視してますわ、爆撃食らってもバフとメイトリカバーでいつの間にか治ってる。」

 

「レイドボスの攻撃を受けてかすり傷1つつかない軍勢とか、もうお前がレイドボスで良いんじゃね?」

 

マジでハジメが魔王と化してて怖い。

 

「いやいや、お前の要塞もおかしいだろ?瘴気以外でダメージ食らうことあんのか?」

 

「瘴気でも殆ど削れないな、いやー我ながら無駄に硬くしたなぁと感じるぜぇ。」

 

「一回試すか、全軍突撃〜!」

 

「これで壊れたら素材集め手伝えよ。」

 

「分かってるって。」

 

「あ、ごめん、迎撃機能切っとくの忘れてた。」

 

「え?」

 

攻撃される事にモンスター達へレーザービームが降り注ぎ、あっという間に死体の山を築き上げていった。

 

モンスター達の数は目減りし、要塞には三割くらいの損害を与えている。

 

「・・・これはどっちが強いのかは判断しかねるな。」

 

「いやいやいや、こっちの数半分以上削られてるんだが?どんな設計してんだお前。」

 

「これ内側からの攻撃にクソ弱いんだよ、だから外なら良いけどドッペルゲンガー辺りを紛れ込ませて心臓部を制圧すれば一瞬で瓦解するんだよな。」

 

「そうなのか、桜はどした?」

 

「桜なら確かゆるふわ系の動物集めて牧場的なの作ってたはず。」

 

視点を移動させていくと気持ち悪い事が起きていた。

 

「うわ、数がやべえ、これだけ数いたら歩く場所ねえんじゃねえの?」

 

羊や猫などの動物達が所狭しと並んでいる牧場になっていた。

 

「桜のキャラが動いてないな、寝落ちか?」

 

「・・・そうっぽいな、今日は解散にするか、そろそろ寝よう。」

 

「そうだな、俺たちもなんか明日から学校だしな。」

 

「これを仕事と言って良いのなら仕事をしていて遅れましたとか言い訳がつくものを・・・。」

 

「はは、ドンマイ。」

 

ハジメはログアウトしたようでキャラが消えてしまった。

 

俺もログアウトして寝ることにした。




超やり込んでるように見えてそこまでやり込んでなかったりする。

hoiとかで3国同盟組んで資源を有効活用してたりするのと似たようなことしてるだけなので。


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ゲームはやっぱり楽しいがお前はNG

「フハハハハハハ!見たかこの野郎!さっきはリスキルしてきやがって!」

 

「あ、そこ地雷あったぞ。」

 

警告が遅れた。

 

すでにハジメのキャラは地雷で吹き飛んでおり、俺の警告と同時に爆発した為出鼻が挫かれた。

 

「ノー!」

 

「カバーはいけ・・・ないな、敵の本隊がそっちに向かった、裏取りするか。」

 

「クッソ、あいつ次見たら即殺してやらぁ・・・!」

 

「あんまり視界を狭めるなよ。」

 

近くの高台に登ってスナイパーライフルで敵の頭を撃ち抜いていく。

 

「毎回思うけどヘッショ上手いよな、エイムアシストとかなかっただろ、このゲーム。」

 

正直なところ近接のほうが強い。

 

「そうだな、わざと外して仲間に殺させたりはしてるが頭に当たらないと一人じゃそこまで敵を倒せないからな、最初の方の動画とか見てみろよ、メイン武器がハンドガンだぞ。」

 

「それでも3発に1発くらいは頭に入ってた気がするがな。」

 

「ハイ回復、弾薬は・・・諦めて。」

 

「分かった、フラグ構えて突っ込むわ。」

 

「お、神風か?良いぞー、敵をやれー。」

 

俺の視界が真っ白になってしまったな、スタンか、だったら構えといて・・・死んで・・・爆破した、キル2つか、かなり美味いな。

 

「屋上制圧された、ヘリはまだリスポーンしないか、地上で戦車倒すか。」

 

「俺今チャーリーに篭ってるから来れるなら来てくれ、ミニガン持ちがいる。」

 

「課金武器め・・・。」

 

「買えるけど値段が高いんだよなぁ。あれ確か数十万クレジットくらい要るだろ?」

 

だから課金武器とか言われてる訳だが。

 

「ゾンビゲーの如く向かってきやがって、鹵獲してやろうかあの野郎。」

 

「多分その頃には弾薬なくなってんぞ、止めとけ。」

 

「畜生。」

 

ハジメの思考が追い剥ぎに近くなってきているところを見るにイライラしてるな?そんなにミニガン持ちがうざいのか?

 

「今からそっちに向かう、ロック出来るならしてくれ。」

 

「タレット置いてるから多分ギリギリいけると思いたい。」

 

向かうとわざと敵の注意を引いているように見える動きをしていた。

 

「・・・後ろに気をつけろ、音が聞こえない、多分裏取りとかいる。」

 

「マジで?あ、ナイフキルされた。」

 

「ミニガン確保、弾薬量やばい、10000くらい余裕あるぞ。」

 

「制圧は?」

 

「やってる、フラグ投げ込んでキル取れるの楽しいわこれ。」

 

「出たら弾薬の雨に貫かれるからな、仕方ねえよ。」

 

「ヘリがリスポーンした、屋上制圧してくる。」

 

「了解、頑張れよ。」

 

「その回復に回る私が物凄く忙しいんだけどね!」

 

「ずっと無言で回ってんもんな、その忙しさには同情するよ。」

 

「敵が強いぃ〜!」

 

「「分かる。」」

 

その試合は接戦だった。

 

拠点の位置がグルグル回っていきデスしてないのが桜一人だけだった。

 

「もう疲れた、ちょっと休憩してくる。」

 

「お疲れさん、流石にここから先は生放送止めるか、という事で終わりまーす。」

 

「お疲れー。」

 

コメントが一斉に来る、内容は大体桜ちゃんお疲れといった内容ばかりだ。

 

「フフフ俺の闇の力を見てみるが良い。」

 

「後で精神的に苦しくなるぞ、止めとけ。」

 

生放送中などは何時ものハジメなのだがプライベートになると途端に厨二的な発言が多くなる、いや、前々からそれを匂わせる言動はあったから別に良いんだがそこまで付き合いはしない。

 

動画でハイテンションになって無駄に仰々しくなったりするのは様式美だ。

 

「そろそろいろんなゲームが増えてきたなぁ。」

 

「ダウンロードとか良さそうなものだがそこまで容量に余裕がある訳でもないからな。」

 

「小学校からやってるからな、そういえば高校は何処にするんだ?」

 

「取り敢えずお前らの学力に合わせる、就職先が既に決まってるから何処だろうと変わらん。」

 

「やっぱりうちで働くのか?」

 

「あったり前よ、お前らと居るのが楽しいしな、桜も前にそう言ってただろ?」

 

「そうなんだけどな・・・。」

 

ハジメとしては少し恥ずかしくもあるのだろう、なんとも言えない微妙な感情だ。

 

「というかお前異世界召喚されたらって話したよな。」

 

「・・・いつしたっけ?」

 

「この前の休み、桜が用事でいなかった時。」

 

「ああ、やったやった。」

 

「お前チートで楽しみたいとか言ってたけど俺は行くなら面白い方につきたいな。」

 

「例えば?」

 

「主人公を裏切ってライバルになり主人公に殺されてから実は主人公達を守ってたと発覚するとか面白そうじゃね?」

 

「ああ、なるほど、お前黒幕になりたいタイプか。」

 

「まぁな、人の考えることなんざ大体パターン化出来るし、そこまで苦労がある訳でもないだろう。」

 

チートがあればの話だが。

 

「というか個人的に身勝手な正義を強要してくる輩は生理的に無理レベルで嫌いだからな。」

 

「なんで?」

 

「こうこうこういう理由でこうするから見逃してって言ってもそれは悪だ!お前は外道だ!って突っかかってきそう、理想と現実の区別も付かない愚か者には何もしないのが最適解よ。」

 

「・・・もしかして、会ったことあるのか?無駄に実感篭ってるぞ。」

 

「・・・中学に上がる時に近くの公園で子供達がサッカーして遊んでた奴の一人がボール蹴飛ばして車に轢かれそうになっててな、無事だったから良かったもののそれを怒ってた年長に怒るのは悪い事だと横から入り込んだ奴が居たんだよ、しかも俺らと多分同年代。怒ってたやつ途中から嫌気さして帰っていってたわ、それから何かとそいつを見るようになった。正直ああいうのは嫌いだ。」

 

「うわぁ。」

 

「世間ではああいうのがモテるとか最近の奴らの思考が分からない。」

 

桜が帰ってくるまで俺の正義感振りかざした害悪の愚痴は終わらなかった。




はい、天之川光輝君です、既に好感度が最低レベルにまで下がってます。

思い込みの激しいという事を知らないのできっともっと下がるでしょう。


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中学二年生で起こった事、そして独白

一年経ち、夏の日にプールの授業を受けていた。

 

「あー、気持ち良いぜえ・・・。」

 

「さっさと前行ってくれ!」

 

泳ぐのを止めたらすぐに怒鳴られるのは何故だろうか。

 

25メートル泳ぎきりプールサイドに上がる、息を整えながら元の場所へ戻ろうとしていると一人の男子が女子達に近づいていくところだった。

 

「目が見えない、少し嫌な予感がする。」

 

「風魔?」

 

背後にいたハジメに怪訝な目で見られる。

 

「すまねえな、少し暴力的なモンを見せるかも。」

 

少しずつ気付かれないように背後に回ると息が異常に荒いのが分かった、視線の先には桜がいた。

 

「・・・不味い。」

 

走り出すとその男子は俺に気付いたようで桜に飛びかかる。

 

桜はとっさの事で反応出来ていない、びっくりして固まっている。

 

その男子の手が桜の着ている水着を掴み、一気に引き裂いた。

 

クソッ、間に合わなかった、無理矢理で良いから引き剥がすか。

 

桜は水着がビリビリに破れたのを認識して叫び声を上げる。

 

何年も前のことだがトラウマはそう簡単に忘れられないらしく、水着を引き裂いた男子生徒に対し恐怖の眼差しを向けている。

 

男子生徒はその目に嗜虐心をそそられたようで水着越しでもはっきりと分かるくらいにテントを張っていた。

 

「おいテメェ!近付くな!他の奴等もだ!」

 

「チッ。」

 

ちょうど俺と向き合う形になったので背後に回ったハジメが俺と目線を合わせてくる。

 

(近くになんでも良いから棒は落ちてないか?)

 

(一応干す為の物干し竿なら。)

 

(了解、合図といっしょにそれを桜より上に投げろ。)

 

「は、はは桜さんはこれで俺の物だ、俺の決定だ、拒否権はないよ、だって桜さんもそう思ってるはずだから、ね?そうでしょ?」

 

「以前から気になっては居たが、事前に止められなかった俺の責任か、すまない、桜。」

 

「桜さんを呼び捨てにするな!桜さんを呼び捨てにして良いのは俺だけだ!」

 

「ひっ・・・あ、あ、いや・・・。」

 

男子生徒は桜の腕を掴んでいて放さない、桜も水着が破れているのと男子生徒が向けてくる視線に怯えて抵抗も弱々しい。

 

「たすけて・・・たすけて、風魔あああああ!!」

 

「任せろ。」

 

合図を出して走り出すとハジメが物干し竿を投げ槍のような投げ方で男子生徒に向けて投げる。

 

顔スレスレに通った物干し竿に驚いた男子生徒は物干し竿を投げたハジメを見る。

 

物干し竿は俺が掴み、桜に当たらない場所、肩や顔めがけて突きを繰り出した。

 

痛みで桜を離した男子生徒は倒れこむ。

 

「・・・大丈夫か?」

 

「あ・・・。」

 

身体の震えが治まってない、トラウマが深くなった、か。

 

「・・・すまん、誰か桜にタオルを被せて相談室か職員室に連れて行ってくれ、女子に頼む、男子だとトラウマを再発させかねん。」

 

俺がそう言うと桜と仲の良かった数人が桜といっしょにプールから出て行った。

 

「桜さん!お前!良くも桜さんを誑かしたな!」

 

男子生徒は錯乱しているようだ。

 

「・・・憐れだな。」

 

「ふざけるな!お前さえ居なければ!今頃桜さんは俺の事を!」

 

「ふざけるな・・・だと?」

 

泣いて詫びたりするならある程度は減刑位なら申し込んでも良かったが・・・これは駄目だな。

 

「そう言いたいのはこちらの方だ・・・!!」

 

押さえ込んでいた感情が噴き出してしまう。

 

怒りや、後悔、そして何よりも、目の前のこいつを殺したいという殺意が抑えきれなくなってくる。

 

「貴様が桜に何をした?犯罪から守ったか?人殺しすら厭わん輩共から狙われ、攫われかけたことすら幾度もある、その度に助けに入れたと?ふざけるなよ、桜は確かに底無しのお人好しだろうよ、だがそれを護るのは俺の仕事だ、俺の役目だ。貴様程度に成せるものならば俺がこんな事にはなっていない!」

 

俺の感情に色を付けたかのごとく俺の目は赤い、それは恐怖を煽るには充分だった。

 

俺の言葉を聞いた周りは俺の身体に着いた生傷や切り傷を初めて見たとばかりに驚いていた。

 

殺意が膨れ上がる、威圧すら生温い、ショック死すらしそうな程の重圧が発生した。

 

男子生徒は怯えて壁に背が当たるまで後ずさった。

 

俺は物干し竿を両手で持ち、突く体勢になった。

 

「今すぐ貴様を此処で殺してやろうか、愚か者。」

 

「ヒィ!」

 

その俺を止める奴が居た、ハジメだ。

 

「駄目だ、人殺しになんかなっちゃ駄目だ。」

 

俺はハジメを見てハジメも怒り狂っていることが分かると少し落ち着いた。

 

「・・・すまん。」

 

「どういたしまして。」

 

桜は人殺しを蔑んだりはしないだろうが良い顔はしないだろう、逆に私のせいでと抱え込む奴であることを俺たちは良く知っている。

 

近くの壁に近付いて思いっきり殴る。

 

壁にヒビが入り、拳大の石がいくつか零れ落ち、俺の手には石が刺さって血だらけになっていた。

 

「・・・俺はお前を許さない、ハジメに感謝するんだな。」

 

男子生徒は既に気絶しているようだった。

 

それにイラつき、また舌打ちしてしまう。

 

そしてプールのは隅にある蛇口で手を洗っていると桜を連れてった女子の一人が俺を見つけて近付いてきた。

 

「ゴメン、風魔くん、桜ちゃんが呼んでる、熱にうなされたみたいに風魔くん、風魔くんって、辛いかもしれないけど、保健室に行ってあげて。」

 

「制服は?」

 

「何とか着せた。」

 

「分かった、先生には悪いが休むと言っておいてくれ、もしかしたら一ヶ月くらい休む可能性があるとも。」

 

「・・・分かった。」

 

女子生徒の顔は暗いものだった、何も出来なかった自分を責めるように。

 

「そう暗い顔をするな、桜の事をこれからもよろしく頼む、厄介ごとは俺がやる。」

 

「・・・ゴメンなさい・・・ありがとう。」

 

そう言って女子生徒はどこかへ行ってしまった。

 

・・・保健室に行くか。

 

保健室に着くとハジメも保健室の前に立っていた。

 

「僕は見張りだよ、先生も大事だと思って職員室で色々とやってるから二人っきり、これで良い?」

 

「充分だ。」

 

保健室に入ると1つしかないベットの上に桜が布団を被って震えていた。

 

その様子は痛々しくて見ていられない、だが俺はそれにあえて向き合う事にしている。

 

「桜。」

 

ただ一言、名前を呼んだだけ、それだけで桜は静かに泣き始めた。

 

「ゴメンなさい・・・私、もう、だいじょうぶだって、もう抵抗出来るって、そう思ってたのに、思ってただけだった。あの目を見るだけで・・・身体が竦んで、何も考えられなくなって、ふうま、ふうま、ゴメンなさい、ゴメンなさい。」

 

桜は途中から女子生徒が言っていたような熱に浮かされた様子で、俺の事をひたすら呼んでいた。

 

「俺は無事だ、だから、泣き止め、な?」

 

「ふうま、ふうまぁ・・・!」

 

桜は俺の身体にのしかかって泣いている、俺は抵抗せずに好きなだけ泣かせてやる。

 

「好きなだけ泣け、此処には俺以外誰も居ないから。」

 

桜は2時間近く泣いていた。

 

最後には泣き疲れて俺の身体にのしかかったまま寝てしまったので起こさないようにベットに寝かせた。

 

涙でぐしょぐしょになった制服は上半身だけ脱いで乾かしてもらう事にした。

 

放課後に何人か訪ねに来たが起きることの無かった桜は結局次の日まで目を覚ますことはなかった。

 

俺はその間ずっといた、いつ起きるか分からないからずっと起きる必要があったりしたが些細な問題だろう。

 

「ふうま・・・。」

 

たまに出る寝言も可愛いものだ。

 

今まで俺を愛した女性達は何かしら秘密を持っていた、天使の間でも、過去の転生した時の記憶を話すのは個人の裁量に任せられている、最初の家に押しかけられた時も怯え方が尋常じゃなかった、きっと、前の人生でそれ関連でトラウマになる事があったのだろう。

 

手を握ってやると少し力を入れて握り返してくる。

 

「全く、最初は先輩後輩の関係だったはずなのに、何でこんなに守らなくちゃと思っちゃうかねぇ。」

 

「えへへ、ふうまぁ。」

 

不覚にも可愛いと思ってしまうのはきっと惚れた弱みというやつなのだろう。




割とガチ惚れしてる主人公、どうしても記憶が風化してしまう為こうなるのも仕方ない。

あと桜は実は転生した死因がどちらも襲われてそういう事されて放置で凍死とか廃人エンドしかけてるのでトラウマはかなり根深いです、下手したら男というだけで拒否反応が出るレベルで、それでも主人公やその他大勢と交流が持てているのは展開でカウンセリング的な作用があるのと違うからだというのが大きい理由です。

というか主人公は踏み込んでくるのを待つ派なので自分のトラウマに踏み込んでくる事がなく信頼しているからというのが一番大きいですかね。桜が無事な理由は。


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事件のその後

俺が徹夜で桜の面倒見ているとハジメがあの男子生徒はどうなったかを伝えて来た。

 

男子生徒はあの後警察に捕まり、少年院に入れられる事になったらしい、桜には俺という付き合いとカウンセリング兼護衛というものもいるという事で警察がゴリ押したらしい。

 

警察には世話になったからなぁ、桜関連で、そういう事をする奴は絶える事はなかった、その度にカウンセリングを受けるように打診してきたがカウンセリングを担当する人が男だろうが女だろうが俺が居ないと話すらせず、それで俺が居るとカウンセリングの必要が無いくらいに健常になるらしいのだ。

 

正直信じられないがその時の映像を見せられて納得した。

 

なので役所側も俺たちの事に関しては俺自身が一種の精神安定剤のようなものと断定してしまった。

 

だが今回の件は桜がかなりの時間を過ごす『学校の生徒同士』で起きてしまったとして学校に通わなくなる可能性があるため、俺にも正式に協力要請を出すそうだ。一応大事を取ってゆかりさん達は仕事を休み、桜の面倒を見てもらう事になった、俺はその間に俺が面倒を見てもいいように色々な用事を済ませてくる、その時にハジメから聞いた事が上記の事だ。

 

男子生徒の親も謝罪をしたいが精神が不味いので今の所はお断りするという旨の手紙を送ってもらった、定期的に桜が泣きそうになるのでその度に声を掛けるためにハジメのお父さんから携帯を預けられたのはいつの話だっただろうか、シスターはお金が無くてごめんとだけ、それには気にするなとは言ってあるがシスターは多分まだ気にしているのだろう、事件が起きる度に泣きそうになっているのをよく見るからだ。

 

「まず、親へ責めるような言葉や物品は送るな、言うな、それをすれば被害者である桜が悲しむと伝えろ、なにせ子供だ、なまじ賢い分自分で勝手に行動するだろう。」

 

「可能性があるじゃないんだな?」

 

「大事にされていればされているだけそういう、大義名分があると勘違いして暴走する輩は多くなる、桜は学校のアイドルで男子生徒はアイドルを穢そうとした害悪認定が広がる前に最小限の被害に減らす必要がある、できる限りこの情報は漏らすな、対外的な説明は後だ、まずは仲間内、学校内でいじめが発生させない土壌を確実に、できるだけ早く構築しろ、拳の振り下ろす場所を失えばそれは不満として絶対に残る、だが、まずは目的を一時的にでも良い、すり替えろ、その時間で一気にカタをつける。」

 

「その為には私たちの協力がいるって事ね。」

 

俺の言葉に反応した桜を保健室に連れて行った女子生徒達が声を上げる。

 

「そうだ、男子生徒が捕まった事は既にすぎた事、既にそれは変えられない、だから男子生徒には悪いが桜が確実に安心してもらえる土壌をつくる生贄になってもらう、お前達は放課後に桜の家に見舞いに行ってやってくれ、保護者が居るが、怪しまれはしないだろう。そして、話した結果桜は男子生徒を悪く言わないでやってくれと言った、という嘘を話してくれ。まだ他のクラスまではうちのクラスで警察が来るほどの事件が起きた、としか認識されていない、それの後処理と事情聴取で俺たちは今日半分以下にまで登校人数を減らしている、だから犯人はあの男子生徒では無いか?という疑問も生まれるだろう、だがあの男子生徒だった、という確信をもたせちゃ駄目だ、そこまで行けば、仲の良かった他クラスの奴らが暴走して男子生徒の親が弾劾される、それは絶対に止める。」

 

「もう名前は言ってあげないんだね。」

 

「あいつはあの時点で俺の記憶からは消えてくれると助かるんでな。」

 

俺の説明を聞いたハジメと女子生徒達は黙ってしまった。

 

「既に犯罪者になった以上あいつは敵だ、だがあいつの親は犯罪者の親なだけで罪を犯したわけじゃない、ならまだ助けられる筈だ。」

 

「それでも納得しない子は絶対に出るよ、寧ろその子を止めるのが僕たちの役目だ・・・やってくれるね?」

 

女子生徒達は全員冷や汗が出ているようだ、それではお願いではなく脅迫だとでも思っているのだろうか。

 

俺とハジメは二人とも怒り狂っていたのは分かっているだろうに、軽い気持ちで居られると迷惑なんだ。

 

「俺は桜を守るためなら何でもする、犯罪ギリギリだろうが何だろうが、それが桜を守るためなら、俺は神だって殺してみせる。」

 

俺の言葉に全員が黙る、ハジメも俺の覚悟ははじめて聞いた筈だから驚いた筈だ。

 

「汚れ役は全て俺がやる、あいつが何も気負わずに、何も気にせずに笑顔で居られるのなら、いくら俺が汚れようと構わない。」

 

「・・・ソレは桜が嫌がると思うよ、風魔。」

 

「・・・それでも、俺の覚悟は揺るがない、それが、はじめて俺を家族だと言ってくれたあいつへの恩返しだと思うから。」

 

俺の言葉にハジメは納得したらしく深いため息をすると電話をしはじめた、女子生徒達は置いてけぼりだろう。

 

「それはそうと、もう一度だけ聞くよ?やってくれるな?」

 

今度はお願いの体をなしていない、完全な命令だ。

 

「・・・はい!」

 

女子生徒達は諦めの表情をしていた。

 

女子生徒達が居なくなってからハジメに注意されてしまった。

 

「風魔、何で無意識に威圧してるの?」

 

「・・・。」

 

女子生徒の皆さん、すみませんでした。




まだ少しだけ続きます。


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数日が経ち

数日が経ち、俺たちが何とか頑張った事でいじめになる様な芽はほとんど無くすことには成功した、学校外に悪い噂が流れるような事はあっても逆に俺たちが自分達でそのほとんどを解決したとして新聞に載る程度に。

 

ただ、案の定というかほぼ確定してしまったのが桜は学校に行く事に拒否感を示してしまう結果となった。

 

授業を受けるのは問題は無い、がプールの時間になるともうダメだ、吐きそうなくらい顔色が悪くなってしまう。

 

一応俺とくっ付いていれば大丈夫ではあるのだが俺が四六時中くっ付いているわけにもいくまい。

 

学校側も特例としてプールサイドに居るだけで出席扱いにしてくれた。

 

放課後とかに俺と一緒にプールを泳がせてもらったりして少しずつ、ゆっくりとトラウマを克服させていこうと思う。

 

桜は表面上は前と同じに見える、が心に負った傷はかなり深いところまで食い込んでいる。

 

桜を天使にした神はきっとそれが見ていられなかったのではないだろうか。

 

転生しても襲われる、心が壊れる手前まで酷くされたのだろう、天使としての技能で夜月に連絡を取り、桜本人にも許可を得て経歴を調べてみると完全に予想通り、しかも割と洒落にならないレベルで酷かったので目の前で震えている桜を抱き締めて安心してもらった。

 

ただ、毎回思ってしまうのだが桜のような女の子を俺が慰めるといつの間にか恋仲になっている事が多い、何故だと思う。

 

それとあれから桜がくっついてくる頻度が増えた気がする、くっつくのは今更なので別に何ともないがどういう事なのだろう。

 

それはともかく、男子生徒の家は半年もすると噂すら聞こえなくなってしまった。

 

桜を苦しめるわけにもいかないのである意味良かったかな?

 

「・・・さて、ハジメ、ハジメも協力しているゲームがある、とメールで教えられたんだが、俺たちの役目か?」

 

「・・・そうだね、少しドタバタして動画も挙げてなかった。」

 

「私も久しぶりにやって見たいかな?」

 

「・・・なら、俺たちの久しぶりの仕事はそれにしようか、アルファテスター、立候補しよう。」

 

「「乗った!」」

 

まぁ、ある程度処理は出来た、後はいつも通りに、桜の気分展開も兼ねてゲームをするだけだ。

 

「ちょ!?バグがやべえ!ブッハッハッハッ!ゲッダンしたと思ったら急に止まるのずるいわ!」

 

「すごい!私のキャラめちゃくちゃ伸びてる!」

 

「何故俺のだけ普通なんだ・・・。」

 

事件が起きてから二週間ほど、やっと日常が戻って来た気がした。




やっと日常が戻りましたね、桜は甘えん坊、良いよね。

実はくっつく頻度が増えたのは桜が恋を自覚したためである事はハジメと桜以外知らない。

ハジメが不憫?ハーレム作るから別に良いだろ。


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高校入学

「やったー!合格!イェーイ。」

 

「僕もだね、必死に勉強した甲斐があったよ、本当に。」

 

「俺も結構上位に入ってんな、まぁこんなもんか。」

 

俺たちは高校に上がる事ができた、桜のトラウマもある程度自分で緩和出来ると自覚出来る位には落ち着いた時の高校進学だ、中堅くらいの高校だったがどうにかなった。

 

俺は元々桜達に合わせるつもりだったので問題など欠片もなかった。

 

ただ、卒業式で全員が俺に向かって敬礼していたのは何故だろう。未だに謎だ。

 

そんな話をしていると混雑していた筈なのに急に道が開け始めた。

 

「何だこのモーゼ。」

 

「それ私も思った。」

 

「あはは・・・。」

 

ハジメは苦笑いだが同じ意見のようだ。

 

開けた場所の中心にはいつぞやの正義振りかざしてるアホがいた、その後ろに二人女の子がいるがこの際無視する。

 

「あ、俺合格してる!やったな、香織達も受かってるぞ!」

 

「勝手に見ないでよ、ああ、感動が無くなっていく。」

 

「まぁまぁ。」

 

香織と呼ばれた女子がハジメをチラチラと見ている様だった、どこかで会ったか?

 

嬉しそうな、と言うより運命の人を見つけられて幸せ、見たいな顔してんな。

 

「そろそろ帰るか、シスター達に連絡するにしてもこの混雑だ、ゆっくり出来ねぇ。」

 

「風魔って何でそんなにゆっくりしたがるのさ。」

 

「縁側でゆっくりとお茶を飲んでから嵌った。」

 

「おじいちゃん化が進むぅ。」

 

そんな他愛の無い会話をしていると件の阿呆が近づいて来ていた。

 

「君達も合格したのかい?」

 

「・・・チッ。」

 

死んでしまえば良いと思うのは俺の身勝手だろうか。

 

桜が宥めようと手を翳してくる。

 

「それはめでたいね、この後食事でもどうだい?」

 

「・・・すまないが断らせてもらう、親への連絡を優先したい。」

 

「連絡が済んでからで良いんだ、今はこの喜びを共有しようじゃないか。」

 

アカン、イライラする、殴りたくなるのを必死に抑える。

 

「それに、他の人達の意見も聞かずに断るなんて、ダメじゃないか。」

 

阿呆は桜にも笑顔を向ける。

 

桜は少しビクッと驚いた後に俺の背後に隠れた。

 

ハジメは苦笑いしていたが少しずつ笑う頻度が下がっていっている。

 

「・・・俺たちにも予定がある、だから断る。」

 

「そうなのかい?じゃあ、同じクラスにでもなったら仲良くしよう。」

 

願い下げだ、イライラするクラスメイトとか最悪以外の何物でもないわ。

 

「・・・一応忠告しておく、理想を目指すのは良いが、現実をもう少し見ておいたほうが良い。」

 

俺の忠告に阿呆は怪訝な目をして俺を見た。

 

「?・・・何のことかわからないけど、分かったよ。」

 

「・・・チッ、あんたらも気い付けな、いつか破滅する船に情で何時までも居ておくのは悪手だぞ。」

 

俺は後ろにいた女子二人に向かってそう言って正門へと向かう。

 

「・・・やっぱり優しいよね?風魔って。」

 

「というか、ヘタレてるだけなんじゃ?」

 

「おいハジメ、それは宣戦布告ととっても良いんだな?」

 

ハジメはヤバイという顔をしながら全力ダッシュで逃げ始める。

 

俺はそれを追いかけ、桜はゆっくりと追いかける。

 

日常だが楽しい時間が戻って来た。

 

阿呆の事を思い出したらあいつとこれから同じ学校になるのかという思考に嫌な気分になった。

 

本当に消えれば良いと思う。




割と本気で消えれば良いと思ってる主人公、だが主人公よ、過去作のお前は好き勝手やってるんだぞ。

どう頑張っても正義とは言えないが。


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最高のゲーム

俺たちは入学式に来ている、クラスが発表され、俺と桜は同じクラスになった。

 

後で担任の先生に呼ばれて言われたのが中学校の事もあるので特例で女子の方の体育に出席してくれ、医師の診断を見る限りお前が居ないとまともに喋らないだとか。

 

俺は他の女子は大丈夫なのかと聞いたがそこはすこーし事情を説明すればいけんだろ、多分、との事だった。

 

因みにオカマの先生だ、意外と元の口調も気に入っているらしい、男子生徒に対して特に効果があるからだとか。

 

「じゃ、よろしくねー。」

 

「あ、はい、すみません、迷惑かけて。」

 

「良いのよ、起こった事はもうしょうがないわ。」

 

こういう先生が居るのなら桜のトラウマも薄まってくれるかな。

 

話を戻してハジメは別のクラスだった。

 

俺たちと別でぐったりしていた、が最近はハジメの親父さん達の仕事を手伝ったりしているらしいので寝不足なのだろう。

 

俺たちが来るとチラッと視線を向けて机に突っ伏していた。

 

俺もたまに手伝うがハジメの様にテンポ良くとはいかないので多少慣れてるプログラムでしか手伝えない、だが桜は新刊を貰うという話を聞いてから暇な日とかにハジメのお母さんのアシスタントをしているらしい、ハジメのお母さん曰くハジメレベルで優秀だそうだ。

 

俺自身がハジメの仕事を知らないのでどのくらいかは分からないが一冊分が安定して作れるそうなので二人が揃うとペースが上がるのだろう。

 

ハジメのお母さんの少女漫画は面白いらしいので桜に頼み込んで見せてもらいたいのだがそう言うと桜は顔を赤くしながらダメと言い張るのだ。

 

あんまりにも押しが強いので結局流されているが・・・ただの少女漫画の筈なのに何でそんなに恥ずかしがるんだ?

 

まぁいいか、それと阿呆の背後にいた2人の女子の内1人、白崎香織という女子生徒は見ている限りハジメに恋をしているみたいだ。

 

桜がいつの間にか俺に紹介してきた。

 

そしてハジメのパートナーとしてゲームの実況に参加してみるか?と言うとキョトンとした顔をしていた。

 

何の話なのと混乱している白崎に俺たちはこういうものでなど俺たちの実況動画を挙げている動画サイトのアカウントを見せる。

 

見覚えのある名前に何度も俺たちを見ていたが、結局欲に負けてして見たいと言ってきたのでハジメに話を通すためにハジメのいる教室へ移動するといつもの如く机で突っ伏して寝ていた。

 

「ハジメ、次のゲームって4人でやるゲームだっただろう?ゲストを連れてきた。」

 

「・・・げすとぉ?誰?」

 

「白崎香織って女の子、実名を出すわけにはいかないから偽名を考える必要があるけどな。」

 

「許可は?」

 

「フッ、バッチリだ。」

 

「さてと、白崎さん、だったよね、僕らがやるのはある意味仕事だ、面白くないとすぐに色々書かれるけどそんなこと気にせずにまずは自分が慣れる事を優先して、いいね?」

 

「ハイ!」

 

ハジメに真剣な表情でそう言われた白崎は少し顔を赤くしながらよく通る声で返事をした。

 

「さてと、そうなれば偽名がいるんだけど、白崎さんはハンドルネームとかはある?」

 

「全部本名だし、ゲームとかもそんなにやってないから・・・ないね。」

 

「パソコンはハジメの家で4つ確保してあるから大丈夫だとして・・・偽名・・・偽名・・・リリィでどうだ?」

 

「ユリ?良いんじゃないかな。」

 

「僕もそれで賛成かな、というか、僕と風魔が名前を考えると安直なのしか出ないし、それで良いと思う。」

 

ということで白崎の偽名はリリィに決まった。

 

「ということで、ボイスはずん子で良いな、雰囲気的にアレじゃないと違和感が出るしな。」

 

「生声の中に機械音声があると違和感が凄いと思うんだけど。」

 

「次のシリーズは全部ボイスロイドだ、一応α版だしな、会社には許可取ってるし、大丈夫だろ。」

 

「はー。」

 

白崎は既に話についていけていない、だが俺たちが帰りについてくるか?と聞くと即答で承諾した。

 

そしてハジメの家に上がって軽く試験的にゲームをする、既に生放送で流しているので常連さんも来始める頃だろう。

 

「・・・さて、今日はハジメの親の会社のプログラムを基盤にしたゲームが俺たちだけにα版テスターとして仕事が回ってきました、これは会社側には既に許可をもらっているので法律に引っかかるとかはありません、さて、今日はですね、そのゲームが4人のパーティープレイ用のゲームということで、晴れて俺たちが受かった高校から助っ人を呼んでまいりました、ですがリークがあった俺たちとは違って実名を出すのはダメということで偽名で許せ!良し!自己紹介どぞー!」

 

「あ、あの・・・ぼ、ボイスロイド?では東北ずん子の声でゲームをさせて貰います、し・・・リリィです。」

 

「まぁー彼女はゲーム自体あまり触った事がないということで、件のα版の実況動画を出すに至り、ゲームの操作に慣れてもらうことを目的とした生放送になっています、もしかしたら準レギュラーになってもらうこともあるかもしれません、勿論多人数ゲームでもリスナーさん達にも参加して貰いますし、レギュラーじゃなく野良でたまたま会う事もあるのでその辺りはご容赦を、さて、それでは・・・ゲームを始めていきましょう。」

 

「「おー!」」

 

「お、おー・・・。」

 

そしてオープニングムービーが終わり、タイトル画面が表示される。

 

「・・・初公開のムービーですが、これはアクション要素を取り入れた狩りゲーム、という事なのでしょうか?見出しにはかなり気になる事が書かれているのですが、α版なのでその辺りのストーリーは今の所無いのかな?さて、ベータテストではかなり様変わりするかもしれないという事で、この動画での経験が役に立たなくなるかもしれないですが、経験を積んでいきましょうかリリィさん。」

 

「私は一番最初は初心者用の剣士にしておきますね。」

 

「では俺は支援する職になりたいのでソーサラー?いや、プリーストかな?」

 

「じゃあ俺はタンクだから・・・モンクか、拳で殴るとか痛そうだな。」

 

「私は回復だから・・・ドルイド?」

 

結構職が分かれていてびっくりした。

 

「ハジメ君ってそんな口調に変わるんですねー。」

 

「ん?あーいや、ゲームやってるとつい口が悪くなるんだよね、まぁ、悪くなった原因はチーターとかfps、tpsとかなんだけどね。」

 

白崎は苦笑いしている。

 

「おっと、コメント欄が物凄く繁盛しているぅ!プライベートの詮索は御法度だぜ、要らんことしたらトラウマ発声動画がバージョンアップするかもしれないぜ。」

 

俺の言葉にリスナー達はみんな叫び声を上げていた。

 

「お、やっとロードが終わった、俺たちは同じ場所でリスポーンしてるんだな、周りは・・・絶景じゃねーの。」

 

自分のキャラの手が映し出され太陽の光が眩しくて太陽に手を翳す。

 

目が慣れ始めるのと同時に森に囲まれた豊かな自然の姿が映し出される。

 

「コレは・・・見事ですね。」

 

「PVでもないのにこの質感はかなり容量食ってんじゃないのか?」

 

「実は四割か五割かは質感を持たせるためだけに使われてるんだよ、だからオンラインゲームじゃなくてオフラインゲーム、モンスターとか環境とか新マップをダウンロードして遊ぶタイプのゲームになってるんだよ。」

 

「今トカゲが居たぞ、環境生物とかは何種類かは採取できるようになってるみたいだな。」

 

「ご名答、街を作るもよし、オンラインで人数を増やして全員で街のような物を作るもよし、何でもありの世界だ、好きな様に、好きなだけ、好きな時間で出来る新シリーズのゲームになってる。」

 

「へぇ・・・このゲームのタイトルは?」

 

「・・・Another Different World.通称《ADW》まるで異世界に転生したかのような喜びを感じてもらう為に作った、でも、コレはすぐに終わるエンドコンテンツじゃない、モンスター達が実際に動き、しゃべり、叫ぶ、異世界に迷い込んだ哀れな冒険者を喰らい尽くそうとモンスターは狙う、今までとは格段に違う体感をして欲しい、ただ、コレはα版で、惜しむらくは雑魚しか登場しない事か。」

 

「成る程、見出しの『君はどんな人生を紡ぎ、そして何を目指すのか』はそういう意味か。」

 

「β版はかなり容量が多いよ、ちゃんと別に代替手段を持っておいたほうがいいよ、コレは俺が人生を賭けて創り上げようとしている異世界だ。」

 

「・・・お前が将来の夢とかで悩んでいたのは知っていたが、こんな事をするとは。」

 

「気に入ったかい?」

 

「気に入っただと?当たり前だ!最高だハジメ!こんな最高の世界を作ると?そんな面白い事に俺を関わらせないとは何事だ!?お前が嫌だと言っても俺は協力するぞ、最高のコンテンツにしてみせよう、それがどんなゲームになるのか、俺はそれを見てみたい。」

 

「フフッじゃあ、まずは足がかり、俺の作った世界の一番最初の一歩を、俺らの作るゲームを楽しんでくれ。」

 

それからずっとゲームをして動画を出し、β版になり、そして発売が決定された。

 

発売がされた事を知るのはもっと後の事だ。

 

だがその途中で謎の失踪を遂げる時も彼等は笑っていた。




次回から原作が始まります。

主人公達がいる事以外はほとんど原作と変わりません、香織が原作よりフレンドリーになってるだけです。


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異世界転移

高校二年生になった、俺と桜、ハジメは同じクラスになった。

 

ただ白崎はともかく阿呆とその取り巻きまで同じクラスになったのは解せない。

 

高校に入ってからだったか、いつかハジメと阿呆どもは異世界に行きそうだという話をしていた。

 

その時は確かに行きそうな奴だなと思いながら言っていた、実際に行く事が確定しているのは俺と桜の方なわけだが。

 

「ヤバい、遅刻しそうになった。」

 

「朝ギリギリだな、あとちょっと遅ければアウトだったぞ。」

 

「言うなよ、《ADW》のデータのバックアップと追加データの整理してたんだから。」

 

「完全に今人気のあるゲームの1つくらいには名前が出るよな、モンスターとか面倒臭いだけだろうに。」

 

「だからこそ人生を賭ける価値もあるでしょう?」

 

ハジメの疲れているが熱意が半端ないその意思に自然と笑みが浮かぶ。

 

「まぁ、最後まで付き合ってやるさ。」

 

今はβ版が終わり正式に発売されるまで秒読み段階、実際の猟師や国々の歴史、モンスターなハンターなどのモンスターを参考にしてβ版には小さな街や城塞、商人、大型のモンスターや人間などのゲームを盛り上げる為の要素を大量に取り入れた。

 

それに伴い、モンスターや危険な土地に薬などを取りに行く職業、通称冒険者も追加され、ほとんどのプレイヤーは冒険者の資格を取ることになる。

 

冒険者としての仕事だけでなく、薬屋、本屋などの職業もあり、異世界から来たものとして地球の法則もある程度採用されている。

 

なので専門家でも全ての要素を遊ぶ事は不可能と言わしめたゲームとなってしまった。

 

だがそれでこそ異世界だという声が多発、外国でもこのゲームが一番熱いなどのお題目で注目されている。

 

正式版では専用サーバーを立ててプレイヤー同士で交流を持つ事も可能で一番大型の街は活気あふれる事になるだろうとハジメは予想している。

 

まぁ、本人は疲れて眠っている訳だが。

 

俺たちが実況者兼開発者だというのは実はあんまり知られていない、学生には実名などどうでも良いのだろう、ファンでさえ、目の前の本人とは違う、画面の向こうの人だという印象が強いようだ。

 

なのでこのクラスには俺たちの実況動画はよく見ていても本人と一緒に居るなどの事は知られていない。

 

これを幸いと呼ぶべきか気付かれなくて寂しいと言うべきか。

 

そんな事を考えていると昼休みになった。

 

その頃になるとハジメも起きて最近よく飲んでいる栄養を一気に補給出来るドリンク?ゼリー?のような物を飲み干し机に腕を組んで寝ようとした。

 

「おいコラ待てや、せめて腹に食いもんを貯めろアホ、此処は仕事場じゃねえ。」

 

「これで今日は大丈夫。」

 

「私達が嫌だから、食べなさい。」

 

俺と桜がそう言うとハジメは怠そうに身体を起こした。

 

「全く・・・体壊してたら意味ねぇからな?何回も言ってると思うが。」

 

「ハジメ君、また寝ようとしてたの?」

 

「白崎か、そうだよ、せめて昼休みくらい起きとけ。」

 

教室からかなり濃い量の視線と威圧が出される。

 

クラスメイトのほとんどはハジメに、一部は俺に殺気を向けている。

 

クラスメイトの檜山とかはハジメに凄い威圧をかけている。

 

ハジメは既に慣れたのか平然としている、小学校くらいからいじめとかよりも凄惨な現場を見てきた俺たちはただの殺気くらいじゃまず動じないようになった。

 

男子生徒の時は色々と面倒だったがそれ以外ではもっぱら大人が大人気無く殺そうとしてくるからな、それの対処してればそうなるわ。

 

相手の腕が折れるとか血が噴き出るとかは当たり前、それより桜の安全をが俺たちの目標だった。

 

というか躊躇してたら殺される状況でどうやって手加減しろと?馬鹿じゃないのか?

 

そしてハジメの分の弁当を出した桜を見てハジメは呆れる。

 

「良くもまぁこんなにたくさん。」

 

「食べないのが悪い。」

 

ハジメの弁当だけ栄養バランスが考えられているもので手早く食べられるものだった。

 

俺も弁当は自作だ、シスターが弁当を作るには体力が落ちて来ているからでもあるがそうでなくても孤児院の当番のついでとかだったりするからな、そこまで苦労は無い。

 

シスターももう歳だしそろそろ安心させてやりたいと思っている。

 

本人はそれよりさっさと飯作れとか言う性格だからそこまで心配してないかもしれないが。

 

親を知らない孤児院の少数はシスターを親として好いている、だからこそシスターが元気なように俺も久々に料理を作り始めた。

 

桜の料理が上手くなったのはその副産物だ。

 

そしてハジメを入れて4人でワイワイと食べていると阿呆どもがやってきた。

 

「香織、最近付き合いが悪いと思っていたらこんな事をしていたのか。」

 

「光輝君?知らなかったの?」

 

俺の機嫌が急降下していくのが分かる、教室の空気が一瞬で冷たくなり始めた。

 

阿呆の横に居るのは八重樫雫だ、阿呆が迷惑を掛けると後でごめんと謝ってくる、だから別に嫌いではない、むしろ好感が持てる部類の人間だ・・・阿呆のせいで嫌いになりつつあるが。

 

もう1人いるのは入学式には見かけなかった坂上龍太郎、こいつはバカ、まだ矯正できる可能性はあるので見捨てはしない、それ以外はどうでも良い。

 

阿呆は死ね。

 

桜は阿呆が来た瞬間にさり気なく俺の背後に移動した。

 

最近はあまり来ないのでそこまでこのような事はなかったが桜的にも少し受け付けないらしい。

 

「多分良い人なんだろうけど・・・ちょっと気持ち悪いかな。」

 

だそうだ、笑うしかない。

 

「君、香織が世話をしているのにそれに甘えてばかりじゃ香織に迷惑がかかるとは思ってないのかい?それに、風磨君に勉強まで見てもらっているらしいじゃないか、風磨君にも迷惑だ。」

 

「ハッハッハ、完璧超人は言うことが違う、人を全て善と考えるそのお花畑には感服するよ。」

 

「口を挟まないでもらえるかい?コレは君は関係無い。」

 

「いいや?大いにあるとも、ハジメと親友なのは俺だ、幼馴染なのは俺だ、大事な奴を貶されて黙っているのが友達なら糞食らえだ。」

 

「俺がいつハジメ君を貶したって?」

 

「それがわからんのも無理はないがな、せめて此方の状況を分かった上で言葉を発しろよ、何も考えずにただ否定するだけじゃそれはただの暴力と何も変わらない。」

 

「俺は暴力なんて振っていない!」

 

「独善はいつまで経っても受け入れられない、勧善懲悪なものなんてまず無いんだがな、俺からすればお前は悪でお前らからすれば俺が悪、それでいいだろう?分かったのならさっさと消えろよ。」

 

「何だと!?」

 

阿呆は激昂して俺の胸ぐらを掴んだ。

 

「ちょっと光輝!」

 

八重樫が叫ぶが阿呆は止まらない。

 

阿呆からすれば俺は悪なのだ、その力を振るうことに何の躊躇があろう。

 

胸ぐらを掴んだ手を握り力を込めると阿呆は手が潰されると思ったのか手を離す。

 

「この程度で手を離すお前が信じられるものか、お前は善だと言ったな?では悪とは何だ?今のお前は怒りに身を任せて人を殴ろうとした、それは暴漢と何が違うんだ?」

 

「ふざけるな!俺はお前を許さない、絶対にだ。」

 

「・・・ハッ、そうかい。」

 

ふざけるなと言いたいのは此方だというのに。

 

そう思っていると足元が光っているのが見えた。

 

ああ、召喚か、少しばかり遅いんじゃないかと思ったがそんな事は関係なく俺たちは転移した。




最初期の光輝は普通に気持ち悪いと思うのは作者だけなのでしょうか。

それとも作品で語られない中で行いが正しいからなのでしょうか。

ですが作者は完璧超人はそれはそれでいいと思ってますが何処かしらできないところがある方が好感が持てると思います。

じゃないと遠い世界の住人じゃないかと思ってしまうので。


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トータス

俺たちはある大きな空間に転移していた。

 

教会に似ている、いつも朝に祈る事を強要されるからな、どんな建物かは嫌でも覚える。

 

「・・・隠れられそうな場所は・・・無いか。」

 

「ふ、風魔。」

 

桜が不安そうに俺を見る、近くにハジメと白崎もいるようだ。

 

「全く、あいつらは一体何処にいるのかね。」

 

「あいつら?何のこと?」

 

「天界であっただろう?あの2人だ、近い内に探しに行かなきゃな。」

 

「そ、そうだね。」

 

小声で喋っていると不意に老人が出てきた。

 

・・・服は上等だが狂信者か、使えない・・・。

 

「ようこそ、トータスへ、勇者様、そしてご同胞の皆様、歓迎致しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者、以後、よろしくお願いしますぞ。」

 

イシュタルはそう言った後笑った。

 

こいつには注意しておいた方がよさそうだ。

 

ーーーーーーーー

そう思いながら話を聞いていると神の意志がどうだの、貴方達は救世主だの何だのと、良くある三文芝居の様な謳い文句が出てくることになっていた。

 

途中で帰れないと聞いてギャーギャー言い始めたクラスメイトとそれを理想論で諌める阿呆とそれを信じようとするクラスメイトを見ていて気分が悪くなってきた。

 

コレだ、この阿呆は何故かカリスマだけは感じさせるからクラスメイトやその他の人間はすぐに従ってしまう、それが引き起こす思考停止と希望に縋るだけの愚か者になるのが一番なってはいけない事だというのに。

 

それに、さっきもイシュタルが言っていたが数倍から数十倍の力の差、コレは要するにその程度しか力を出せないという事でもある、成長率などの目に見えない力も数十倍だとしてもこの世界の人間が30年修行しなければいけない事が一年かそこらで出来てしまう、確かにすごい事だろう、だがそれだけだ、思考停止してしまえばその力を使えるだろうがそれを柔軟に対応させる事ができなくなる可能性が高い。

 

それが出来なくなれば阿呆という希望に縋り、自分は何もしない、出来ないなら出来ないなりに足掻いて見せれば良いだけだ。

 

火力が足りないのなら上げればいい、速さが足りないのなら速くなれば良い、それだけではダメなのだ、結果しか期待していないのなら脳筋だけで事足りる。

 

死にそうな状況でも何かできることはないかを必死に考え導き出し、抗う、それが人間というものだろう?

 

「だから嫌なんだ、必要以上の英雄なんて要らない。」

 

「風魔・・・。」

 

だからこそ、ゲームの様に考えているクラスメイトを見ると嫌になる。

 

「桜、いつかここから離れるぞ、こいつらの馬鹿に付き合ってられない。」

 

桜は依然として不安そうだ、ハジメも時々俺を見ては不安そうにしている。

 

俺はそれを完全に無視して静かについて行った。魔法が発動され、ロープウェイになっている台座が山を降りていく。

 

「雲海か・・・初めて見るな。」

 

「景色に見とれている時じゃないと思うんだけどね。」

 

「そういうなハジメ、コレは《ADW》に使えるぞ?」

 

「!!!」

 

《ADW》に使えると分かった瞬間にめに焼き付ける様に景色を見はじめるハジメを檜山などのいつもいじめをしている連中は気持ち悪そうな目で見ていた。

 

「そろそろだ、気を引き締めておけよ。」

 

白崎は八重樫と話している。声をかけることは出来ない、白崎の方を見るとクラスメイトが明らかにこちらを意識した動きで壁を作ってきたからだ。

 

だからコレは独白だ、何の問題もない。

 

「風魔?」

 

だから、俺の気の所為で済んでほしい、何か、何か嫌な予感がする、それも、取り返しのつかない事が起こる、そんな予感が。

 

「ふ、風魔?痛いから力緩めて?」

 

「!?・・・すまん。」

 

・・・後で白崎とハジメ、桜の4人で話し合うか・・・かなり嫌な予感がする。

 

ロープウェイは麓にあるハイリヒ王国に着いた。

 

その後は晩餐や一人一つの部屋を与えられたりした、ベッドに横たわると寝ようと目を瞑るが嫌な予感が消えなくてあまり眠れなかった。

 

翌日にステータスプレートが配られた。

 

あまり眠れなかったのもあり、集中力が落ちていたが少し興奮している桜達に無理矢理覚醒させられた。

 

「どんなのかな?」

 

「知るか、ハジメは意外とものづくりに特化してそうだな、生産職じゃないか?」

 

「じゃあ私はどうだろう?」

 

「分からんなぁ、想像も出来ないわ。」

 

「そういう風魔は安直に魔術師かもね?」

 

「魔法使いじゃなくてか?」

 

「魔術師、だよ。」

 

たまに桜は俺の本質を見てるんじゃないかと思う。

 

だが桜は戦闘なんかはあんまり出来なさそうな職だろう、根拠は夜月の戦力の偏りを無くすって一言だ。

 

支援に特化するものかも知れない。

 

そうこう言っているうちに全員にステータスプレートが配り終わり、クラスメイトは顔をしかめて血を垂らす。

 

そうして浮かび上がったのがこのステータスだ。

 

ーーーーーーーー

秋月風魔 17歳 男 レベル:1

天職 魔術師

筋力 20

体力 600

耐性 860

敏捷 200

魔力 10000

魔耐 5000

技能 魔術作製[+複合魔術] [魔術書き換え] 魔法操作 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇]高速魔力回復[+回復量上昇]想像構成[+複数同時構成]同時思考[同時思考数増加]言語理解

 

ーーーーーーーーー

「・・・何だこれ。」

 

自分のステータスにドン引きした。

 

色々と突っ込みたい所が各所にあるが今は止めておこう。

 

「・・・桜は?」

 

桜は無言でステータスプレートを見せてきた。

 

ーーーーーーーー

結月桜 17歳 女 レベル 1

天職 支援者

筋力 10

体力 10

耐性 400

敏捷 200

魔力 300

魔耐 2000

技能 魔力支援 魔術支援 防御支援 攻撃支援

ーーーーーーーー

「「・・・。」」

 

俺ら二人とも特化型すぎねえ?

 

ただ俺よりはまだまともそうだ。

 

だってこのプラスとかが無いからな。

 

ハジメは堂々の一律10だったので俺らの武器製作に手を貸してもらう事になった。

 

「お前らの特化型ステータスが羨ましいよ。」

 

「俺だってドン引きだよ、でもハジメがなんだかんだ言って一番化けそう。」

 

「何でだよ、この中じゃ雑魚の中の雑魚だぞ。」

 

「錬成師って事はあの錬金術士みたいにできるんじゃね?」

 

「・・・その手があったか!」

 

一見ふざけてる様に見えるが割と真剣に考えてたりする、このままじゃハジメハブられたりするかも知れないからな。

 

一応後で俺の部屋に来てくれとは言った。

 

だが檜山達がハジメのステータスプレートを受け取って一律10ということを知ると笑い始めた。

 

騎士団長によると鍛治師の10人に一人は錬成師であるらしい。

 

それで檜山達がゲラゲラ笑っているのが少し気に食わなかった。

 

「ほう?では君達は武器が要らないと見える、それで良いのだな?モンク四人とは、喧嘩が好きな君達には正に天職だな?」

 

俺の言葉に檜山は俺を睨んでいる。

 

「何だ?皮肉すらも理解出来んか?いよいよ擁護しきれないぞ?」

 

「テメェ・・・。」

 

檜山は俺を見てはニヤリと笑う。

 

「そういうテメェはどうなんだよ?ハジメと同じならゆるさねぇからな?泣いて謝っても許してやらねぇぞ?」

 

「ああ、そうかい、どうぞ?よく見てみるといい。」

 

俺はステータスプレートを檜山に向かって投げる。

 

「ああ!勿論目を皿にしてみてやるぜ、今に見てろよ。」

 

檜山はそう言ったきり黙ってしまった。

 

うん、そうなると思ってたよ、俺でもそうなるわ、俺は魔王かなんかかよ。

 

周りの奴等が不思議に思ったのかステータスプレートを覗き見て自分のステータスプレートと見比べている。

 

「さて、分かってもらえたかね?」

 

「ああ、よく分かったぜ、お前が今の俺より弱いってことがな!」

 

「残念、それはハズレだ。」

 

俺にステータスプレートを返そうと見せかけて回し蹴りを放つ檜山は顔を俺から背けている。

 

大方筋力が俺より高いから勝てると思ったのだろう。

 

蹴りを上へと弾き飛ばし代わりに回し蹴りを檜山の顔の真横で止めた。

 

檜山は何が起こったか分からないといった顔をしている。

 

「分かっているのか?お前の負けだ、分かったらさっさとハジメと俺のステータスプレートを返せ。」

 

というかそもそも動きが丸見えだったし、こっち見てないし、回し蹴りも力が半分も乗って無いし、本当にこいつ喧嘩したことあんのか?

 

檜山は顔を赤くしながらステータスプレートをたたき返してもらった。

 

「これで一つ勉強になったな、今のお前は俺には勝てんよ。」

 

檜山はすでに俺を睨むだけだ。

 

桜と白崎がさりげなく喋っている。内容はスカッとしたとかかっこいいとかだった、状況とかけ離れたこと言いやがってこいつら。

 

「さてハジメ、少し付き合え、その錬成って奴で試してみたいことがある。」

 

そう言って桜と白崎を連れて四人で別の所へ移動した。

 

「ハジメ、その錬成で俺たちの武器を作るって事は話し合ったよな?」

 

「え、何それ。」

 

「ということでだ、まずはガワを作るぞ。まず型を取ろう、何を作る?」

 

「武器の形・・・剣とか?」

 

「それじゃ面白くない、刀とかはどうだ?」

 

「刀?ただの刀になると思うけど・・・。」

 

「コレはお前の錬成の練習でもあるんだ、気楽にやってこうぜ。」

 

その結果俺の魔術だったり刀の造形で一番形がいいのを魔術でコーティングして紅黒龍もどきを作ったりして俺の武器は完成した。

 

その後も訓練では無能扱いされているハジメが型を作り、それで一番気に入ったものを俺が魔術でコーティングしていくという流れ作業が出来つつあった。

 

その結果木を削り、鉱石に魔力を貯められるロッドを桜に渡し、護身用の短剣を作って白崎に渡したりしていた、その後も護身用とか戦闘に便利になる可能性があるという事で腕輪とかチョーカーをクラスメイトに渡して行った、勇者(笑)には何も渡していない、受け取りそうになかった為八重樫に預けるか否かを任せてある。

 

実はこの装備品は装備者が命の危険に陥ると俺に位置を知らせるという魔術を仕掛けてある。

 

後は装備者が絶望などを感じた時には俺を強制的に転移させる魔術も入れてあるので実はアーティファクトに似ているものだ。

 

そして俺とハジメだけが夜に二人で俺の魔術によってとか作れないかなという馬鹿みたいな思惑によってアニメやゲームの機械や兵器を作ろうとして寝不足になったりと割と楽しい日々を過ごしていた。

 

ただ騎士団長が俺たちを見てなんとも言えない顔になっているのは申し訳なく思う。

 

そしてそのゲームとかの機械の中で作ることに成功したのは魔術支援用のユニットだけだった、それ以上も作れそうではあったが素材が脆かったり耐久力が余り無かったりした。

 

畜生。

 

「こいつの命名はポッドで良いよな。」

 

「うん、それで良いと思う、ゲームの名称もそうだし。」

 

『当機の名前をポッドに設定、管理者は秋月風魔、南雲ハジメの両名である、間違いは無いか?』

 

「ああ、そうだよろしく頼む、ポッド。」

 

『スキャン開始、データの保存を完了、当機と同じアーティファクトを製作するのならナンバーを決めておいたほうが良いと具申する。』

 

「ああ、そういえばそこを考えてなかったな、1号機だし001で良いだろう。」

 

『了承、当機のナンバーは001である。』

 

ポッドを作るのに一週間もかかった、ハジメもかなり錬成が早くなったが土魔法のような威力は出ない事は想定内なのでポッドが支援するのはハジメの方になる。

 

『南雲ハジメ、ステータスプレートをスキャンしてもよろしいか?』

 

「あ、はい、どうぞ。」

 

ハジメのステータスプレートをスキャンしてポッドが出した結論はかなりハジメの心にぐさっとくるものだった。

 

『ハジメは戦闘が出来るほどの能力が著しく欠けている。ポッドを増やし、支援の数を増やすか、ハジメ本人が当機に指示を出し、戦闘を指揮する等の対処が必要。』

 

「グハッ・・・。」

 

ハジメは倒れてしまった。

 

笑いそうになるのを抑えながら俺はハジメの決断を待った。

 

ハジメが立ち直り、俺と相談して決めるのは両方という事だった、つまりポッドを増やして戦闘を指揮するという事だ、その為の装置も作らなければいけないので余計に面倒な事になったが楽しそうなのでやってみる事にした。

 

ポッドを訓練に出すと全員が驚いたのは面白かった。

 

ポッドは魔力リンクをハジメと俺の両方に繋いでいるので俺達の両方から100キロ位離れてなければポッド同士で通信が可能だ、だが俺は錬成が使えないのでポッドを作れるのはハジメだけだ。

 

初号機は俺の魔術だが、初号機さえいれば後の機体は自由に作れるのでもう俺が出来る事は無くなっているのだ。

 

だから・・・大丈夫、その筈だ。




筆が乗ったので5,000文字ほどの多さになった、作者にしては珍しい。


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迷宮に行きました。

一週間後、俺たちは真面目に訓練をしていた、俺とハジメ、桜の3人は連携の訓練をしていたが。

 

動き自体はハジメが遠くから戦況を読み、俺たちに随行しているポッドを通じて相手の指示や動きを教えるというオペレーターのようなものになっている。

 

因みに、初号機は単騎で戦闘能力やらオペレーターの仕事を完全に奪う結果となったので一時的に機能を停止して貰っている、ポッドはハジメが死にそうになると自動で起動し、ハジメの近くで護衛を開始する。

 

その後は回復してもらう為に周りの薬草などを集めたりと、AIの癖して無駄に高性能となった。

 

その訓練の結果俺たちの実況動画と同じような動きが出来るようになったのは不幸中の幸いか。

 

なんだかんだ言って役割も一緒だしな、俺が突撃と遊撃を兼ねて敵を撹乱、桜はそれの支援とその指示をハジメが出す、まんまだ。

 

件の騎士団長さんからは連携で教えられる事は何も無いとのお墨付きを貰っている。

 

ただ弱ってもない初見の筈の魔物を一方的に攻撃出来るその対応力は目を見張ったぞ、とも。

 

唯の魔物相手に何を言ってんだか、俺たちは血には慣れてるもんだから3人で何言ってんだこの人と言う目で見てしまったのは申し訳ないと思っている。

 

あと俺の魔術は騎士団長自身が勝つのを放棄する代物らしい、遠距離だろうが近距離だろうがノーモーションで攻撃してくるのを防げるわけがないだそうだ、やったぜ。

 

そして訓練が終わり、俺たちがこの世界に来てから二週間前後、騎士団長が俺たちを迷宮に連れて行くと言い出した。

 

その為に明日は朝から準備をすると、その迷宮の名前はオルクス大迷宮、俗に言うダンジョンだ。

 

要するに、温い弱った相手を一方的に殺す訓練から実践訓練に移行するという事だ。

 

弱っている敵を倒して調子に乗っているクラスメイト達はまだゲーム感覚が抜けていない、戦争をするという事は人を殺すという事、城とその周辺だけだがエヒト神の影響力がかなり大きい事が分かったので俺たちが人殺しを躊躇するといっても神の使徒なのに何故躊躇するのか、相手は魔人だぞ、まさか神の使徒を騙った偽物か!?となる可能性が高い。

 

そこで敵にも慈悲をかける心優しい人間とはならないのが一番厄介なところだ。

 

兵士とかなら、いや、最悪兵士ですら魔人族を人と思っていないだろう、ただでさえ力は彼方が上なのだ、人型の魔物という認識である可能性が高い。

 

だからこそ・・・阿呆が魔人族を切れなければ、かなりまずい事態になる、単純に考えて、魔物も人間も変わらないと思うのだがな。

 

・・・今これを考えても意味は無いか、明日は仕事と実験だ、せいぜい楽しくなければやっていられない。

 

ーーーーーーーー

「と言うわけでホルアドに着くまでの間あのボードを試してみようと思うんだけど良いかな?」

 

「また変なのを作ったの!?」

 

「変なの言うな、れっきとした乗り物だ。」

 

空中に浮かんでいるスケボーというのが一番表現が近いか、そんな板に俺が作れる範囲の制御機構を入れて空中に浮く事ができる、バランス感覚とか魔力制御とか色々いるけど乗れれば割と楽しい。

 

馬車の景色も良いものだが空からの景色も良いものだからせっかくだし見て見たい。

 

ハジメと桜は恐怖など欠片も感じずにボードに乗る、最初は浮くだけだったが操作に慣れてくるといろんな所に向かって飛び始めた。

 

「ヤバイ、普通に楽しいわ、白崎も乗ってみるか?」

 

「わ、私はいいよ、落ちたら危なそうだし。」

 

「えー、結構楽しいんだけどな、じゃあ清水ーこれ乗って見て、慣れてないやつの意見も聞きたいから。」

 

「俺かよ!?」

 

「そうだよ。」

 

その後はクラスメイト全員に配り終わった、白崎もしれっと乗っていた辺り楽しそうだと感じたのだろう。

 

高い所が苦手な奴が乗れなかったのでコントローラー的な奴で操れるようにした、それでアスレチックもどきを作ったり曲芸をしているとすぐにホルアドに着いた。

 

阿呆は俺への反発心が邪魔をしたのか全く触らなかった。

 

その頃には全員が疲れていたので少し休憩を挟む事になった。

 

その時クラスメイトにこれくれと言われたが残念、時間制限があると答えて残りは10分も無いから返せと言うと渋々返してきた。

 

半信半疑の奴がいたので少し放置すると暫くして板が落ちたので諦めたようだった。

 

「ごめんだけどこれ使いきりなのよな・・・。」

 

「クッソー!次のレースゼッテェ負けねぇからな!?」

 

「フッ、経験者に勝てるわけがなかろう!」

 

「言ったな!?この恨み、忘れぬぅ!」

 

そんなバカな事をクラスメイトとしていた。

 

「あ、そうそうハジメ、今日の夜、少し話すぞ。」

 

「夜?何で?」

 

「前の王都の外の訓練と違って今回はクラスメイトとの団体戦だ、まさかクラスメイト全員にポッドを配って指揮しようとか考えてないよな?」

 

「そんな事は無いよ、そもそもみんながみんな僕の指示を聞いてくれるとは思わないしね。」

 

ハジメはチラッと檜山や阿呆を見る。

 

「ああ、だからこそ話し合いだ、訓練とはいえ迷宮、何があるかわからないからな、どれだけ練っても足りんと考えていいさ。」

 

そして夜、といっても俺は最近夜更かししていたので起きれたが桜がウトウトし始めたくらいの時にハジメの部屋に移動した。

 

「すまんな、集合場所を考えてなかった・・・んだが。」

 

ノックしていたとはいえ中に白崎がいるのは完全に予想外だった。

 

「・・・丁度いいか、あと白崎、もう一枚何かを羽織っておいた方がいい、それじゃ誤解されるぞ?面倒な奴ほどな。」

 

俺の言葉に白崎はハッとしたように自分の体を見てハジメを見ていた。

 

ハジメは思いっきり目を逸らしていたがハジメが持ってきた衣服を差し出されると顔を赤くしながら部屋の奥で羽織った。

 

そして桜も少し遅れてやって来たので四人で話し合う事にする。

 

「さてハジメ、お前のステータスの低さはかなり致命的だ、それを今の所はポッドを使って何とかしているが今回はそれが期待できそうにない。」

 

「檜山くんたちがいるからだね?」

 

「そうだ、あいつらは日本にいた時の価値観をそのままここに持ってきている、なまじ力を手に入れたからかお前を陥れようと躍起になっている節がある、だから俺たちの連携なんて言っちゃいるが要するに迷宮の中で誰がハジメの護衛をするかを話し合うつもりだった、白崎には事後報告だが護衛してもらおうとも考えたが本人がここにいる、どうするかは白崎本人が決めてくれ。」

 

「私は支援特化だから自然と後ろに下がるからハジメ君の近くに居るよ、でも私も戦闘能力はともかく、近付かれたら自分の事で手一杯だから私は護衛は出来ないかな。」

 

「俺は今現在最高戦闘能力者だからな、前へ出るしかない、だから状況にもよるが護衛の継続は難しいんだ。」

 

「だから後衛で何かあっても治癒出来る私に護衛の役が回ってきたってことね。」

 

「そゆこと、護衛するかは白崎本人の意思だ、それ自体は自由にして貰っていい。」

 

「私は護衛、するよ、ただ何が起こるかわからないっていうのは本当だからあんまり期待しないで貰いたい・・・かな?」

 

白崎は恥ずかしそうだ、まぁどうでもいい。

 

「さて、もう一つ本題がある、訓練だから団体行動する、迷宮の形が分からない以上狭い空間で戦う事も視野に入れなきゃならない、その時情報伝達の正確さはどうしても必要だ。」

 

「それを僕にやれって?」

 

「ああ、後衛組、回復役、前衛が揃ってるならできるだろう、だからハジメには出来うる限り全体を見て貰いたいんだ。」

 

「分かった、出来るかはわからないけど、やって見るよ。」

 

「頼む、混乱したらフレンドリーファイアが多くなるからな。」

 

そうおどけようとすると俺以外の全員が顔を青くした。

 

「冗談だ。」

 

ホッとした空気が流れて解散しようかという雰囲気になる。

 

そして各々部屋に帰って行きそのまま寝てしまった。

 

明日からは迷宮攻略、久し振りにやって行きますか。




主人公の無双状態になるのが容易に予想出来るのはステータスゆえか用心深い性格ゆえか。


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オルクス大迷宮

「ラットマン点在8!左3正面5!ラットマン増援6!右に追加!」

 

「モンスターパーティとは運がねえな!」

 

「腕を動かしなさい馬鹿!」

 

左にいる三体を居合で真一文字に切ると八重樫に怒鳴られた。

 

「支援するよー!」

 

桜の手から手投げ弾のような物が投げられる、それは傷口に集まって回復させる粉塵だった。

 

「ナイス!」

 

「火力支援!」

 

桜のスキルは全てアクティブスキルのようでスキル名を言わなければ発動出来ないようだ、桜の貫通力のある攻撃で脳天を撃ち抜かれラットマンは二体崩れ落ちる。

 

残りを俺と八重樫が協力して倒す。

 

「増援、魔力支援!」

 

「弾き飛べ。」

 

榴弾でも爆発した様な衝撃と共にラットマンの増援部隊の姿が搔き消える、魔石のある部分だけを残し全体的に肉を抉るように殺していった。

 

「ふぅ・・・ただの雑魚だな。」

 

「あんたが強過ぎるのよ。」

 

と言ってもな、敵が弱いとしか感じない、それにクラスメイトの一部の俺を見る目はほとんど化け物のようだった。

 

まぁ戦闘の度に血塗れになってたらそら怖いか?

 

「お疲れ様、やっぱり動きながらオペレーターは辛いよ。」

 

「だろうな、お前の場合戦闘職じゃねえし、それは仕方ねぇよ、それにポッドを使って単独でも生き残れる程度には戦闘出来るだろ?」

 

そう言いながら倒しているとある部屋で休憩を取ることになった。

 

「結構進んだな。」

 

「うん、ロックマウントだっけ?左上の出っ張りとその下に二体居るよ。」

 

「二十層なら一応問題は無いか?」

 

ロックマウントを掃討しながら雑談している俺とハジメを見て阿呆は驚いていた。

 

ハジメも息は切れているものの余力はまだまだある、戦闘職より精神的な耐久力は高いようだ。

 

だが檜山辺りはどうせ後ろでのんびりしてただけだろとか言っている、オペレーターは下手をすれば戦闘職よりする事が多いからそれを知らなければそうだろう。

 

「ん?みんな!真横に三体ポーン!気を付けて!」

 

「警告おせぇんだよ!死んじまえ役立たず!」

 

ハジメへの当たりが強いのは知っていたが、ここまであからさまだったか?まぁ良い、今は魔物が先だ。

 

「俺に任せて!天翔閃!」

 

阿呆がこんな場所で大技を使いやがった。

 

基本的に俺と八重樫と桜の3人で戦っていたからようやく出番が来たとはっちゃけてるようだ。

 

騎士団長に怒られてるがどうでも良い、やっぱりこいつは気に入らない。

 

「少し外を警戒してくる。ハジメ、ポッドの位置情報は自分の周りに固定しておけよ。」

 

そう言って部屋から出て周りを探索する。

 

鉱石やら魔物やらが居て普通に大量のアイテムが拾えた。

 

『ポッド002より報告、先ほどの部屋にトラップがあり、かなり地下の方に転移した、救援を求める。』

 

『同じくポッド002より報告、大型モンスター、通称ベヒモスと戦闘中、このままでは離脱出来ない為、時間稼ぎをする、出来るだけ早くこちらに来てくれ。』

 

「・・・あ?」

 

魔石の山を見てホクホク顔だったのが一瞬で消えた。

 

トラップ?しかも転移式?かなり手の込んだトラップだ、運が無い。

 

何はともあれ早く向かうか、嫌な予感はこれだろう、全力でいくしかない。

 

「ポッド003より通達、10分時間を稼げ、救援に行く、死ぬんじゃないぞ。」

 

近くにあった魔石を喰って半魔物化する。

 

髪は淀んだ黒に染まり、身体の節々に傷と太い血管が見えるようになった。

 

「くっ・・・時間はそんなにねぇな、行くか。」

 

40階層までの地図は頭に叩き込んでいる。

 

其処までにあると良いがベヒモス・・・60階層の魔物がいるからあまり期待は出来ない・・・か。

 

「待ってろ、今行く!」

 

道中の魔物は消し炭にする、死んだ事すら知らずに死んでいく魔物達に目もくれず階段を駆け降りる。

 

そしてやはりマッピングの出来ていた範囲には全員が居なかった、これからは探索魔術も併用しなくてはならない。

 

「あと4分!いけるか!?」

 

60階層までは何とか間に合ったが60階層の主であろう白竜が襲いかかってきたときは本気で切れた。

 

「邪魔だ、消えろ・・・!!」

 

ハジメにもらったパイルバンカーを魔術でコーティングし白竜を地面に縫い付ける。

 

押し付けられた釘が打ち出される衝撃と共に白竜と俺は下の階層へ落ちていった。

 

下にある階層を確認すると大きな橋のようなものがある縦穴のようなエリアだった。

 

階段とその近くにはスケルトンの軍勢が何十体と揃っており、もう片方にはベヒモスと阿呆と八重樫含む取り巻き達が戦っていた。

 

「天之河君!ベヒモスの足を狙って!少しでも傷が付けば痛みで動きが鈍る!白崎さん!桜!火力支援と回復を切らさないで!八重樫さん!ツノを切れば突進の威力を削げる!メルド団長!障壁を貼るのは無意味だ!こっちに近づけないようにターゲットを天之河君に移す事を意識して!時間稼いで!すぐに火力がバカ高い風魔が来る!」

 

橋の真横に巨大な白竜が落ちているのに誰も気付いていない。

 

ハジメは戦闘能力の高いメンバーにポッドを分け与えて即席の連携を組んでいる。

 

俺は白竜から飛び上がって背後にいるスケルトン達の魔石を魔術で狙って砕いていった。

 

「待たせたな。」

 

ベヒモスの周りに巨大な鎖が巻きつき動きを阻害する、それに気付いた勇者パーティはばっと後ろを振り返り俺を見て驚いていた。

 

俺は10分間の超強行軍のせいで身体から血を大量に出していたのだ、ポッドによって位置を知らされてなければ白竜を倒した時点で力尽きていただろう。

 

俺は吐血する、魔石を喰って強化された代償だ、それでも白崎に治療してもらう傍ら指示を飛ばす。

 

「騎士団長と騎士達、そして天之河、お前らは後ろのスケルトン達と戦闘をしているクラスメイト達と階段まで下がれ、他のメンバーもだ、ベヒモスは俺が抑える。」

 

「無茶だよ!その傷じゃ戦えないよ!」

 

白崎が叫ぶ、治療しているからこそ俺の傷の深さが分かるのだろう、俺だって既に寝て休みたい。

 

「だからと言ってクラスメイトを、数少ない同郷を死なせるわけにはいかんだろう。」

 

「でも!」

 

「桜、後ろから援護を頼む、ハジメ、今の内に練成で奴の足を橋に沈ませろ、時間稼ぎにはなる、クラスメイトの準備が整い次第階段に向かって走れ、団長、階段前で全員に魔法で一斉掃射を命令してくれ、それで足を止めたのなら僥倖、止めなければ俺が残ってベヒモスを奈落へ突き落とす。」

 

指示を飛ばすと阿呆だけ動かなかった。

 

「オイ、さっさと動けよ、それすら出来ないのが勇者というものなのか?」

 

「お前は・・・クラスメイトなんか死んでも構わないと思ってると思ってた。」

 

「ああ、死んでも構わないとも、ただ、俺自身はそうでも桜やハジメが嫌がるんでな、やらないだけだ。」

 

俺の答えに阿呆は俺を睨む。

 

「やっぱり俺はお前の事が嫌いだ。」

 

「覚えておくと良い、理想じゃ飯は食えねぇんだよ。」

 

阿呆はクラスメイトのいる方向に走っていった。

 

「治療、終わったよ。」

 

「すまねぇな、白崎もクラスメイトの方に行ってくれ、桜と一緒に援護を頼む。」

 

「生きて帰ってきて、そうじゃないと許さないよ。」

 

「・・・これは・・・バレるよなぁ、仕方無い、生き汚い孤児院生の意地を見せるとしようか。」

 

それに・・・桜がいる、あいつが幸せになって死ぬまで俺が死ぬ訳にはいかんよなぁ。

 

ベヒモスの前まで行く、ハジメは魔力回復役をがぶ飲みして練成を行っている。

 

「ハジメ、こんな死地に招いてすまねぇな。」

 

「仕方無いよ、それに、風魔が居れば絶対に生き残れるっていう確信はあるからね。」

 

「そろそろ鎖の効果が切れる、援護、頼むぞ。」

 

「即席パーティでも指揮出来た僕の美技に良いな。」

 

「今思ってもあれは競技じゃねえよな。」

 

「分かる。」

 

俺とハジメは鎖が切れ、地面から顔を出し、俺たちを睨んで咆哮を上げたベヒモスの目の前に、2人だけで立ち向かうことになった。




多分RPGとかならめっちゃ強い味方と共に初のボス戦(耐久)前のイベントシーンって所かと、正気の沙汰じゃねえな。

原作初期の無能と言われていた彼は何処へ・・・。


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嫌な予感

「ガアアアアアアアア!!」

 

ベヒモスは方向を上げてこちらを睨んでいる。

 

俺とハジメは2人同時に走り出し、楕円を描いて交差した。

 

今は一時的にハジメにバフを山盛りでかけている為、速度だけなら俺と同じくらいはある。

 

ベヒモスの頭が赤く染まる、照準は俺だ、ハジメには目もくれていない。

 

「足元注意だ。」

 

ベヒモスが突進をしてくる瞬間にベヒモスの足元に到着したハジメが練成でベヒモスの上半身が埋まるくらいの大きな穴を作った。

 

ベヒモスは踏ん張ることが出来ずに地面に頭から激突する。

 

そこに上から俺の魔術が雨のように射出され幾つものガラスのような槍がベヒモスの背中に刺さった。

 

阿呆の天翔閃はかすり傷程度だったのを踏まえるとかなりの威力があることがわかる。

 

『ポッド002、003より報告、勇者パーティとクラスメイトが準備を完了した、撤退を推奨。』

 

「ハジメ!走れ!」

 

バフが切れると同時にハジメは走り始めた。

 

ハジメは急に勢いが落ちたが元の感覚に戻ったからか足取りはしっかりとしている。

 

だが一斉掃射された魔法の群れでハジメの姿が見えなくなると猛烈な嫌な予感が俺を襲った。

 

俺はベヒモスを叩き落とす為に上空に飛んでいる、もし誰かが意図的にハジメに魔法を当てても分からない。

 

俺がその結論に至った瞬間にハジメはベヒモスの目の前まで転がっていた。

 

「ハジメえええええええええ!」

 

一気に地面に向かって急降下した後にハジメの前に転移する。

 

ベヒモスの赤く染まった頭が俺とハジメを狙っているのがわかる、時間がゆっくりと感じられる中で俺は過去最高速度で防御魔術を構築する。

 

込めた魔力は約七千ほど、思わずその名称を呟く。

 

「『イージスの盾』」

 

神話において神とは力である、であればこの世界で神を殺そうとしている天使は神と同等かそれ以上の力が無ければならない。

 

ならば出来るのではないかと考えた防御魔術を構えた瞬間にとてつもない衝撃が俺の身体を襲った、衝撃に脳が揺らされる感覚がする、それと同時に地面が崩れる感覚。

 

そして一瞬浮いた後に始まる落下。

 

だがベヒモスの一番威力の高い一撃を貰った俺はその勢いのままかなり離れていたはずの壁に激突する。

 

一瞬の気絶と覚醒、全身が痛い、痛くないところなどない、だがまだ間に合う筈だ、時間はほとんど過ぎていない。

 

力が入らないのを魔術で補助する。

 

体が動かないのを無理やり動かす。

 

ハジメを視認した。

 

ハジメは落ちながら俺を探していた、目の前から一瞬で消えた俺を。

 

「ポッド!ハジメを保護しろ!」

 

『ポッド001、了解。』

 

ポッドがハジメの近くに転移する。

 

俺も崩れて来ている橋の残骸を飛びハジメの場所へと急ぐ。

 

ハジメと目があいハジメはポッドにロープのような物を出させて俺に手を伸ばした。

 

俺はロープに後少しで手が届くというタイミングで俺の真横に白銀のナニカが見えた。

 

そして身体が焼ける感覚、思わず叫ぶ。

 

俺を焼いた状態は俺がここに来る時に殺した筈の白竜だった。

 

白竜はどうしても俺を殺したいのか突撃してくる。

 

それを上に飛び上がって避け、白竜の背中に着地した。

 

白竜は俺を落とそうと壁に激突しようとするが俺はその前に白竜の首を居合斬りで切り落とす。

 

竜の体は落ちていく、それを見てハジメのことを思い出した。

 

壁にしがみついて下を見る。

 

其処には、ハジメの姿は暗闇のどこかへ消えて行っていた。

 

暗闇に包まれた俺はどうやって上に帰ったのかは覚えていない、いつの間にか周りには泣きそうなクラスメイト達と悲しそうに目を伏せる桜や気絶した白崎、そして俺を見て怯える阿呆が居た。

 

二十層に帰って来るとクラスメイトの何人かが安心した様にホッと息をつく。

 

地上に着くと同時にクラスメイト達は喜び、泣いていた。

 

俺は何もする気が起きず、ただ周りを見ていただけだった。

 

宿に帰り、桜に泣きながら抱きしめられる事でやっとハジメがいなくなったということを自覚した。




この後は桜が居たこともあって何とか持ち直しました。

ただその代償は大きく、主人公は笑う事が極端に無くなり、魔術の開発に全力を尽くす様になります、ただし桜が悲しむので生活リズムや倫理観を損なわない程度に。


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ハジメの為に

本日2話目、お気を付けを〜。


俺達は城に戻って来ていた、メルド騎士団長が迷宮攻略は無理だと判断した為だ。

 

「・・・八重樫、白崎は?」

 

八重樫は黙って首を横に振る。

 

「・・・そうか。」

 

「桜ちゃんは?」

 

「・・・阿呆共と訓練の毎日だ、せめて支援だけでももっと上手くなりたいんだとよ。」

 

「そう・・・あまり無理はしない様に言っておいてね。」

 

八重樫は優しいのだろう、そして素直だ、それでも、今の俺にはイラつかせる原因にしかならない。

 

「・・・ああ、言っておこう。」

 

そう言って部屋から出る。

 

ハジメがいなくなった、迷宮の底で生きているかも分からない。

 

もし生きているのならば性格は今までとはかなり違っているだろう。

 

最悪壊れている可能性だってある、その時、迷宮を生き延びたハジメを殺せるのは多分俺だけだ。

 

願わくば・・・堕ちていない事を祈るしかない。

 

「あ・・・。」

 

「・・・。」

 

阿呆と脳筋と会った。

 

「・・・すまない。」

 

「・・・。」

 

最近は俺が居るだけで空気が凍っていく様に全員が黙って行く、ハジメは生きていると思い込まなければまともに生きようとも思えないとは、俺もなかなか依存していたらしい。

 

考えるだけならば出来る、だが喋るとなると、思ってもいない事をしゃべりそうで少し怖くなる。

 

訓練場に顔を出す。

 

扉を開いた瞬間にクラスメイト達は俺を見て顔を逸らす。

 

「あ、風魔!」

 

その中でも変わらないのは桜だけだ。

 

「桜、城を離れるぞ。」

 

「・・・え?」

 

「ハジメが生きていれば地上に上がるよりも地下に潜り、転移の罠とかを改造して一気に登る可能性が高い、その時の為に八重樫には迷宮攻略を続けてもらう、俺たちはハジメが帰って来るのを確認した後地球に帰還出来るように手段を探す事だ。」

 

「魔王を倒せば返してくれるんじゃないの?」

 

「違うだろう、神のみぞ知る、イシュタルは明言していない、いざとなれば魔王を倒したその足で地球に帰る必要が出てくる。」

 

イシュタルは返してくれるかもしれないと言っただけで絶対に返すとは言っていない、それに俺たちの仕事は神殺し、世界が敵に回る事はどうしようもない、クラスメイト達を鏖殺し、神を殺し、地球に帰ったとしてもそこでまた同じように暮らせるかという問題もある。

 

「そう・・・なら私は風魔の近くにいるよ。」

 

桜はハジメは死んだと思っている様だ、無理も無い、俺も半分諦めている。

 

それでも死体を確認していない、ポッドが保護している、死んでいるにしろ生きているにしろポッドがどうにかしてくれる。それだけの機能は積んだ。

 

「なら・・・愛子先生についていくか。見知った人がいる方が桜もいいだろ?」

 

「うん、そうだね。」

 

その後は白崎が目覚めたり、白崎にぶん殴られたりと散々だった。

 

殴られた原因は俺だ。

 

ハジメが死んでいたら俺も殺してくれとかそんな感じの事を思わず口走って白崎に顔がボコボコになるまで殴られ続けた。

 

挙げ句の果てに治療した後に私は諦めないとかだから諦めないでとかいろいろ言われながら考えた結果、一応色々と吹っ切れて元の調子に戻った・・・のか?

 

ただ帝国からの使者ってどういう事ですかね。

 

ずっと工房にこもっていたら愛子先生達に置いていかれてるし桜も苦笑いしてるし。

 

集中してて声が掛けられなかったとか、やっちまったとしか思えないんですけど。

 

「しかも既に阿呆と戦闘中ってどういう事ですかね。」

 

「ワケガワカラナイヨ。」

 

「白い淫獣は死ね。」

 

急いで広場に向かうと阿呆は面白い様に翻弄されていた。

 

ただ柱とかを傷つけているのを見ると崩れたりしないだろうなと見当違いの事を思ってしまう。

 

結果は阿呆の勝ちだった、ギリギリで対戦相手を殴りうやむやにしたというのが正しいが。

 

そして戦っていたのはガハルト殿下?らしい。

 

「おい、そこのフード被った不審者。」

 

「おい誰が不審者だ。」

 

「自覚あんじゃねえか。」

 

「・・・で?何ですかね。」

 

「お前、俺と戦え。」

 

周りの反応はまたかよという表情だったのでいつもの事なのだろう。

 

「俺が勝ったら・・・そうだな、その女をくれ。」

 

ガハルドは桜を指してそう言う。

 

「お前が勝てば俺の特権を使ってすぐに金の冒険者にしてやろう。」

 

「・・・八重樫とかどうですかね、代わりの女の子。」

 

「ちょっと!?あんた何言ってんのよ!?」

 

「其処の女だ、異論は認めん。」

 

受けるしかないようだ。

 

「殺しちゃダメみたいだから手加減はしますよ、一応ね。」

 

桜を見るとキョトンとしている、それはどういう表情何ですかね、事情が理解出来てないのか嫌じゃないのか、後者だったら事故で死んでもらうかな。

 

「じゃあ・・・開始!」

 

か、くらいの時に突撃して来たんだけどこの人。

 

大剣を受け流して蹴りを入れる、蹴りを掴まれ捻られる。

 

掴まれた足を軸にしてガハルドに蹴りを叩き込むが大剣を盾にして受け止めた。

 

大剣を振り回している割には洗練されていると思う。

 

「武器は使わんのか!?」

 

「だから言ってるでしょう、手加減するって、俺の攻撃手段即死するようなのしかないんですよねぇ。」

 

腰に差してある刀を見て叫ぶガハルドに拳を当てる。

 

ガハルドは笑いながら大剣で薙ぎ払った。

 

「厄介ですねぇ、その大剣。」

 

「お前、もしかして魔法使いか?」

 

ガハルドの言葉に帝国の使者達が驚く、既に何十回と撃ち合っているために近接の職だと思われていたようだ。

 

「まぁ、そうですね、正直なところ近接の方が得意です。」

 

その言葉に帝国の使者達はホッとしたようだった。

 

近接戦闘職と近接戦闘で互角に戦える遠距離職なんぞ地獄みたいなもんだからな。

 

「ただ少しくらいこっちの手札も見せますか。」

 

「お、いいぞ!こい!」

 

ガハルドの周りに一瞬で50位の数の魔法陣が展開されて槍が大量に打ち出されるとガハルドは顔を引きつらせながら大剣で処理していく。

 

魔法陣が消える頃にはガハルドは疲れて崩れ落ちた。

 

時間にして10秒程、一斉掃射はやっぱり強いな。

 

「ていうかよく耐えましたね、正直アレで死にそうだなとか思ってました。」

 

「皇帝・・・舐めんな。ガフッ。」

 

ガハルドは気絶した。

 

「あ、国王様、愛子先生達がどこに行ったとかわかります?」

 

「今の時期ならば湖畔の町ウルに向かっていると思われるが、到底間に合わぬぞ?」

 

「それだけわかれば十分です。済みませんでした。」

 

そう言って桜を横抱き、所謂お姫様抱っこして窓から一気に走り始めた。

 

「あいつら置いて行きやがって。」

 

「置いていく状況にしたのは風魔だよ?」

 

「・・・後で謝るか・・・。」

 

途中で愛子先生達を見つけて合流した。




白崎さんパゥワーで持ち直しました、やったねハジメ、弄るぞ。

今の時系列だとミレディ辺りですかね、ハジメ達がいるのって。


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再会

本日3度目、何故こんなに筆が乗るのか。


「・・・暇だ。」

 

愛子先生達を見つけて合流したのはいいが、先生達は馬車だ、俺のように何時でも何処でも車並みに速度を出せる訳じゃない、その遅さは寄り道しながらでも先生達に追い付けた俺にはかなり忸怩たるものがあった。

 

「仕方ないでしょ、そう言うものだよ。」

 

桜は何故こんなにも気楽で行けるのだろうか。

 

かなり時間は経ったが湖畔の町ウルには着いた、農地改革と言っているが正直に言えば現代の知識を少し分け与えるだけで良い、後は愛子先生のスキルでどうにでもなる。

 

愛子先生は俺を見て少し不安そうにしていたが何も言うことは出来なかったようだ、生徒想いの良い人なのだろう、この人は全面的に信頼出来る人だ。

 

俺はハジメを谷底に落としたのはハジメを狙った誰かだと思っている、常日頃から恨んでいた奴はもちろん、トータスに来てからも白崎に色々と世話を焼かれていたハジメに少し嫌がらせ気分でやった可能性だってある。

 

俺としては檜山が一番怪しいと睨んでいる、ハジメが落ちてからの様子がおかしかったからな、愛子先生の周りには疑わしい生徒はいない、だからこそ俺は先生についていくことに決めた訳だが。

 

そして最近では清水が失踪したり豊穣の女神だとか言われて恥ずかしがったりと先生は忙しい。

 

傍にいる俺は愛子先生の秘書だと思われているようで護衛の騎士団から目の敵にされている。

 

生徒も先生も気を許しているからだとは思うが、なんでですかね。

 

桜は景色を楽しんだり買い物をしたり依頼に生徒達と一緒に行ったりしている、孤児院の世話とかペットの世話とか雑草抜きとか荷物整理だとかの部類だ。

 

俺は何時ぞやの皇帝がギルドに色々言ったらしく冒険者ギルドに行くと支部長が急に出てきて金の冒険者にされた、俺も完全に忘れていた事だからか自分の事なのにめちゃくちゃ驚いた。

 

「俺が金ランク・・・まぁ、面倒が少なくなって良いのかねぇ。」

 

「有名人になる下地は出来たね。」

 

「言うなよ。」

 

有名人とか嫌過ぎる、ファンへの対処とか面倒極まりない。

 

怠惰最高。

 

清水の捜索の傍俺たちの個人的な用事も終わらせた、この町の図書館、というか本が大量に置いてある場所に少しずつ入り込み、知識を詰め込んだ。

 

俺はめぼしいものがなさそうだと判断し、そこから先は行っていないが桜は料理本だとか珍しい素材の資料本などを見る為に何回か行っているようだ。

 

満喫してんなぁ。

 

それとサラッと残りの2人の天使らしき人物も見つけた、冒険者ランクは両方黒、近々また昇格するかもしれない18と16の男女だ。

 

名前はアッシュとミナ、両方同じ貧民街の孤児で二人共家族のようなものらしい。

 

男であるアッシュは弓と剣の両方を使う斥候、ミナは近距離だが魔法と双剣を駆使して戦うらしい。

 

天使っていうのはある程度一人でも戦えるようになるものだがこの二人はペアで動くことが多いみたいだ。

 

というかギルドに個人情報ばら撒かれすぎじゃねえかな、バレバレじゃねえかよ。

 

今この二人はウィルという新人の冒険者の教官をしているらしく今は近くの森に篭っているらしい。

 

「・・・暇だし会いにいこうかな。」

 

先生達より遅れて俺達は先生達の泊まっている宿に到着した、先生達は既に食事をしているらしく騒がしい。

 

「〜私は騙されませんよ!''南雲君!''先生の話を聞きなさい!」

 

その時不意に聞こえた先生の声に俺は驚いて思考が停止した。

 

桜も驚いた表情で泊まり二人で顔を合わせる、そして走り出し先生達のいる場所へ急いだ。

 

そこに居たのは白髪で片目に眼帯をしているハジメと見知らぬ兎の獣人と金髪の女の子だった。

 

「・・・風魔・・・か?」

 

「やっぱりハジメか!?」

 

先生が固まるレベルで俺は舞い上がっていたらしい。

 

「ハジメ!なんだその腕!え、それガシャガシャ動いたりするのか?」

 

「あ、ああ、一応動くぞ。」

 

クッソ羨ましい!しかも黒と赤が入り乱れてカッケェ!

 

「え、武器とか作ってるよな!見せてくれ!」

 

「お、おう。」

 

ハジメはそう言って懐から銃?を取り出す。

 

『!?』

 

「やっべえ!お前銃まで作れるようになったのかよ!?銃弾とかめちゃくちゃ難しかっただろ!」

 

「ああ、めちゃくちゃ難しかったぞ、俺も死にかけてなきゃ出来なかった。」

 

死にかけたという言葉に俺のテンションは一気に低くなってしまった。

 

「・・・あの時助けられなくて済まなかった。」

 

「いや、アレはお前のせいじゃねえよ、アレは誰かの流れ弾だろうしな、復讐するつもりもない、というかクラスメイトはどうでもいい。」

 

「やっぱり彼女達が?」

 

「ああ、金髪の方がユエだ、俺の恋人だ。」

 

ユエと呼ばれた少女の方を見る、少女は俺をじっと見つめていた。

 

「ユエさん・・・で良いのか?ハジメを助けてくれてありがとう、俺の親友を、助けてくれてありがとう。」

 

「ん・・・別に謝罪は要らない、ハジメの為に働いてくれればいい。」

 

ユエのその言い方に思わず笑いが止まらなくなった。

 

桜も苦笑いしていた、俺が泣いていたからだろう。

 

その言い方は余りにもハジメに似ていたからだ、良くも悪くも、それが彼女が本気でハジメに惚れている事も分かってしまった。

 

だからこそ笑うしかなかった、生きていてくれて本当に良かった。

 

俺が笑っている姿がそんなにも意外だったのだろうかクラスメイト達は未だに固まっている、がハジメは少し誇らしげだった。

 

「な?だから言っただろ?風魔は良い奴だって。」

 

「うん、ハジメを助けてくれたのがこの人で良かった。」

 

そうして一瞬で作られる桃色空間はもう一人のハジメの同行者である兎の人が強制的に止めた。

 

「えっと・・・風魔さんでしたっけ?ユエさんと一緒に聞いていました、これからは私達もいるので頑張りましょう!」

 

「・・・くはは、そういうことか、女たらしめ。」

 

「それは風魔も文句言えないよ、絶対。」

 

「それは俺も同意する、お前・・・まぁ良いか、どうでも良いし。」

 

解せぬ。

 

「あ、ハジメはなんでこの町に?」

 

「俺は依頼を受けてこっちに来ただけだ。」

 

「そうなのか?どんな依頼だ?」

 

ハジメの口から出てきた言葉は俺たちを驚かせるには充分なものだった。

 

その依頼とは・・・新人冒険者ウィルの救出だった。




ハジメいじりはまた後で、地味に気にしているのでニヤニヤしながら待っていましょう。

主人公はハジメの変貌を既に受け入れている模様、そもそもそんな程度で止めるくらいなら親友じゃねえよという気概を見せましたね。

ただ動揺はしてたので誤魔化すために武器の方に目を向けました。

そしてハジメはこの結果を最初から分かっていたようです。流石親友。


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ハジメ弄り

「ウィルの救出?」

 

「どうもどっかの貴族だったみたいだな、生きているなら連れて帰って来い、死んでいるなら遺品と思しき物を持って見せろとさ、一応教官が2人いるらしい、3人で山に行ったらしいんだが消息が掴めなくなった。それの捜索も兼ねている。」

 

「・・・多分それは黒ランクのアッシュとミナっていう冒険者だ、さっきギルドで確認してきた。」

 

「さっき驚いていたのはそれか・・・。」

 

「因みに、戦果としては金ランクとほぼ同等だと判断した、幼少期から近くのヤクザを襲撃、制圧した後制御下に置き、ヤクザ、自衛団、騎士団と共に魔族を撃退、その際にミナに魔法の才能がある事が発覚、それの才能を伸ばす為に旅を続け、何回かドラゴンとかも倒している。」

 

「それでも黒かよ。」

 

「出自の面が強いな、貧民街育ちの孤児だから。」

 

仕方ないことだと諦めるには惜しい、戦闘センスは上々、連携も視野に入れたほうが良さそうだ。

 

「因みに、ミナの方は猫耳の獣人だぞ。」

 

「は!?」

 

まぁ、そうなるよなぁ。

 

この世界では魔力が少ない代わりに身体能力が強いのが獣人だ、それが魔法を使って来るなんてこの世界の常識じゃ化け物扱いされていてもおかしくない。

 

まぁ、天使の魂を入れているのだからそれなりの器になるのは仕方がないことだろう。

 

アッシュもかなり優秀な様だ、下手をすれば勇者レベルの活躍をしている。

 

それでも出自で認められない、酷いことだ。

 

「ウィルの生存は期待してて良いかもな。」

 

「・・・そうか。」

 

「フン、汚らしい獣風情が生きている事が既に世界の汚点だと言うのに。」

 

名前はなんだったか忘れたが騎士団の1人がハジメの横にいる兎の獣人を見てそう言った。

 

「「今すぐその口を閉ざせ、騎士。」」

 

俺とハジメから周囲に威圧を放つ。

 

愛子先生やクラスメイトも顔を青ざめさせている事からそれなりの効果はあった様だ。

 

「今すぐその価値観を直せとも言わん、いずれ変わる事も期待せんよ、それでも、俺の親友の連れを悪く言うのは止してくれないか?」

 

「それに・・・思わず殺っちまいそうになる。」

 

俺とハジメは息が合っていると思う。

 

「まぁまぁ、2人とも落ち着いて、ね?」

 

「落ち着いてるよ、ただ、これ以上諍いの種を落としてくれるなと言うだけだ。」

 

「右に同じ。」

 

「それでもダーメ!喧嘩はダメだからね。」

 

「・・・チッ。」

 

俺達は2人とも不満そうな顔をしていたらしい。

 

「それに二人共話したい事いっぱいあるでしょ?なら私達もウィルって人の捜索に手を貸すよ?」

 

「・・・それ良いな。」

 

「・・・やるか。」

 

「ステータスも上がってるだろ?そっちは?」

 

「ん・・・私は問題無い、シアは?」

 

「私も問題ないですね、むしろハジメさんの昔の話とか聞かせて下さい!」

 

兎の獣人・・・シアはニヤニヤしながらそう言うとユエも少し笑いながら俺を見た。

 

「フフフ、良いだろう、ならまずはこのハジメの黒歴史ノートをだな。」

 

「待て・・・待て!?なんでお前がそれを持ってる!?」

 

「いやぁ、中学の時俺の部屋に隠してたじゃん?俺がそれを見つけるじゃん?んで転移直前くらいの時に渡そうとするじゃん?転移しても手元にあるじゃん?後はわかるな?」

 

「破り捨てろ!今すぐ焼けぇ!?」

 

「フハハハハ!他にもあるぞ、お前の厨二病装備のお陰でそう言う話題には困らんなぁ!」

 

「クッソ!テメェ表出ろ!喧嘩なら買ってやるぞボケェ!」

 

「フハハハハハハ!かかってこい厨二病患者!ハリーハリーハリー!」

 

その後近くの草原で殴り合った。

 

「なんで迷宮攻略してねぇのにこんなに強いんだよ!?」

 

「フハハハハ!魔術チート舐めんなぁぶねぇ!?」

 

「チッ、外れた!」

 

ハジメはビットとかポッドとかを全力で活用して俺の動きを読んでいた。

 

「ポッド001に命令!動くな!」

 

『ポッド001より製造主、その命令には従えません、ロックが掛かっています。』

 

「ハジメテメェずるいぞ!」

 

「対策するのは当たり前だボケェ!」

 

戦闘は朝まで続き、桜が呆れた顔でご飯を持ってきてくれた。

 

「こんなハジメ初めて見た。」

 

「ハジメさんかなり本気ですよね、人なんて一瞬で肉片になる威力ですよアレ、本当に風魔さんって人間ですか?」

 

「・・・分からないかな、私に心配かけるし、そんなの気にしてないし何かあったら自分を真っ先に犠牲にする癖に私には他を頼れとか言ったり・・・。」

 

3人寄れば姦しいとはいうがこれはもはや全員が惚気ているだけなのでは?

 

「はぁ・・・はぁ・・・お前・・・近接戦俺より強いじゃねえかよ。なんだそれ。」

 

「それ全部往なしてくる奴の言う事かよ・・・はぁ・・・一撃すら入れられねぇし。」

 

「それ食らったら俺死ぬ・・・冗談抜きで俺死ぬから・・・。」

 

俺とハジメは疲労困憊になって草原に倒れていた。

 

「やっぱり倒れてた、馬鹿みたいに殴り合ってたね。」

 

「桜〜水くれ・・・喋りすぎて口がカサカサしてる。」

 

「自分で取ってくれば?」

 

「・・・ちょっと不機嫌になってません?」

 

「・・・なってない。」

 

「やっぱり不機嫌になってますよねぇ!?」

 

「〜!知らない!」

 

「え?ちょっと!?さくらさぁん!?助けてくださいませんかね!?あのー?桜さん?」

 

桜は街へ帰って行ったようだった。

 

「オゥマイゴッド・・・。」

 

「ハジメ、立てる?」

 

「すまんユエ、立てそうにない。」

 

「なら私達がお世話してあげますよ!」

 

「ん・・・シアにしては良いことを言う、残念ウサギから変わる時?」

 

「私いつも良いこと言ってますよ!?ユエさん!訂正して下さい!」

 

ハジメ達はそう言いながら街に帰って行った。

 

「・・・俺は?」

 

1時間くらい経った後に桜に水の塊をぶっかけられた。




桜が不機嫌なのは置いてけぼりにしたのと本当に戦いを始めて心配したからです、ツンデレの様な事をしてます。

ただし気付かれたくないので少しぶっきらぼうになってます。

因みにちゃんと体があったまるまで看病しました。


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北の山脈

「・・・寒い。」

 

「風邪引かないでね。」

 

「ならせめて服くらい着替えさせて下さいませんかね。」

 

俺達はハジメの運転する車に乗っている、俺は車の運転席の上なので風が直接当たるために急速に体が冷えて行く。

 

「ていうか、この魔法陣どうなってるんだ?」

 

「足場に出来る魔術使ってるんだよ、迷宮の時俺が空中で動き回ってただろう?」

 

「ああ,アレか。」

 

ステータスプレートなんざ欠片も見てないな、後で見てみるか。

 

「それで?ポッドでも使うのか?捜索。」

 

「ポッド達を動員してスキャンしていく、人間がいれば何かしらの痕跡くらいあるだろ、それを辿る。」

 

「まぁそれが一番手っ取り早いよな。」

 

ハジメは俺の後ろを見て溜息を付く。

 

俺たちの捜索になし崩し的に参加する事になったクラスメイトと先生だ。

 

クラスメイト達はユエとシアを取り囲んでガールズトークに花を咲かせている。

 

その反面男子は全員黙っている、何かを話す様な話題も無いからだろう。

 

「そういえばハジメ、朝までのじゃれあいで思ったんだけどその目、やっぱり義眼か?」

 

「ああ,ポッド達無人機の視界を操作出来る、他にも魔力を色で分けられるとか技能を使えばその結果を判別出来たりとかな、後は視界が俺の後ろ位まで広げられる。」

 

「それ絶対俺なら酔うな。」

 

「安心しろ、ARスキャン見たいな感じだ。」

 

「あ,なら俺もなんとかなりそうだな。」

 

ハジメと他愛のない話をしていると山脈に到着した、ドローンやポッドを辺りに散開させて捜索していく。

 

クラスメイトは俺たちに驚いている様だが遠い目をしているメンバーは少ない。

 

というか俺はもう日本よりとんでもないものが出てくることは慣れているので受け入れている。

 

始めてバイクとか車をパッと出された時はなんで作れるんだとかいろいろ考えたが。

 

「コレは・・・戦闘の後っぽいのを見つけた、痕跡からしてドラゴンと人間の2人か?」

 

「人間は離脱できていそうか?」

 

「1人だけ滝の近くまで足跡が続いてる、多分依頼対象だ、2人は足跡どころか痕跡すらない、ドラゴンが周囲を探索してる様な跡があるから多分隠れてる。」

 

「流石だな、経験者の動きだろう。」

 

「まずは依頼対象の保護を優先する、冒険者2人は後だ。」

 

ハジメの言葉に全員が頷く。

 

周りにドラゴンがいない事は確認しているので滝の近くに一気に移動する。

 

その途中で先生達が疲れ果てたり休憩を入れたりするなどがあったが何事も無く滝に着いた。

 

「血の匂いとかは無し、戦闘が起きているような様子もない、これなら大丈夫か?」

 

「じゃあ道を開くぞ、それ。」

 

ガラスのような魔法陣が水をカーテンのように押しのけるとクラスメイト達はおお!と感心するような声を上げた。

 

ユエが出番を取られたとでも言いたそうな顔で俺を見るが俺はそれに対して苦笑いするしかない。

 

「ほれ、無理やりにでも連れて来い、御坊ちゃまでも冒険者だ、手荒くしても問題はあるまいよ。」

 

「おう、待っててくれ。」

 

「お前らもだ、団体を装った方が安心してくれる。」

 

俺が先生とクラスメイト達を押し込むと魔法陣を消した。

 

そして残ったのは俺と桜だけになった。

 

周りにドラゴンがいない事だけ確認して声を掛ける。

 

「・・・居るんだろう?出てこい、2人共。」

 

「・・・危ねえ危ねえ、死ぬかと思ったぜ、ありがとよ先輩。」

 

「貴方ね、気楽過ぎない?」

 

近くの岩場から出て来たのは猫の獣人と人間の男だった。

 

「久しぶりに4人揃ったんだ、進抄はどうだ?」

 

「とりあえず大迷宮は前の7人が命を賭けて作ったものである事、俺達はその内の四つくらいをなんとか踏破した事、このくらいかね、今はオルクス大迷宮を攻略しようと思って来てるんだが、その前に新人教育って所か。」

 

「何処をクリアした?」

 

「私達がクリアしたのはライセン大迷宮、グリューエン大火山、メルジーネ海底遺跡、氷雪洞窟の四つよ、そこまでは黒ランクでも行けたんだけどそろそろ金じゃないと貴族とかならず者達が面倒でね、オルクス大迷宮に行けば金になれるかなって思ったわけよ。」

 

「なるほど?」

 

ミナは桜と同レベルの美人だし、アッシュもそれなりに顔は良い、嫉妬とかやばそうだ。

 

「だとすれば今回は俺達と一緒に来てくれないか?俺もそろそろオルクスをクリアしたいと思っていたんだ。」

 

「一度行った場所での助言は控えさせて貰うわ、ミレディ・ライセンにもそう言われちゃったしね。」

 

「は?」

 

「え?」

 

俺と桜が固まる、ミレディ・ライセンは死んでいる筈では?

 

「それも現地で見てくると良いわ、正直、今のあんたを見てるとそこまで必要じゃない気はするんだけどね。」

 

「・・・取り敢えず疑問は後にしよう、ステータスはどのくらいだ?」

 

「俺は平均7,000くらいかな、ミレディの奴が俺たちに魔改造施しやがった。」

 

本当に何があったんだよ、そのミレディライセンとの間で。

 

「私は魔法の才能と魔力、後は身体強化位ね、双剣使いとか言われてるけどただ拳に風を纏わせてるだけよ。」

 

モンクと剣士っていうのはバランスは良いのか?回復役さえいれば。

 

「・・・因みに私の筋力は5桁行ってるわ。」

 

「・・・ドンマイだな。」

 

「私はゴリラなんて目指したく無かったのに・・・。」

 

かなり哀愁の漂ったその姿に何とも言えなくなった。

 

「・・・それはともかく、そこの〜えっと、新人ちゃん!新人ちゃんの能力は何なんだ?」

 

「完全支援型、攻撃どころか防御一辺倒、辛うじて格闘術が使えるだけだ。」

 

「支援?じゃあ火力支援とかはあるの?」

 

「一応あるぞ、魔力消費えぐいらしいが。」

 

「俺たちの中でも火力支援って言ったらミサイルとか爆撃とかだもんなぁ、そりゃそうだよなぁ。」

 

「大軍専用の固定砲台として使ってる。」

 

「もう!みんな酷いよ!私だって多分色々できるんだから!」

 

「魔力支援は本当に助かるときは多いんだがなぁ。」

 

「取り敢えずチートじみてる事だけは分かったわ。」

 

天使4人で駄弁っているとハジメ達が帰って来た、ウィルはミナ達を見て顔を笑顔に変えた。

 

「アッシュさん!ミナさん!生きてたんですね!」

 

「ああ、何とかな、死ぬかと思ったぜ。」

 

「右に同じ。」

 

そして3人が感動の再会をした所で俺とハジメが同時に叫んだ。

 

「ドラゴンが来てる!全員散開!」

 

「ユエ!シア!ついでに風魔と桜!やれるな!?」

 

「私達も援護するわ、動きを止めるくらいなら任せなさい!」

 

クラスメイトと先生、そしてウィルを滝壺の奥の洞窟に蹴り飛ばし7人でドラゴンと対峙する事になった。

 

そのドラゴンは真っ黒の巨大な体をしていた、体の所々に切り傷があり、肩の所に剣がかなり深く刺さっている、アッシュの剣だろう。

 

ミナは拳に風を纏わせ、構える。

 

アッシュは背負っていた弓を構えて矢筒の蓋を開ける、残りの本数が少ないのだろう、渋い顔をした。

 

俺も刀を抜いて切っ先をドラゴンに向ける。

 

桜は魔力支援と防御支援、そして魔術支援を使い魔力の共有化、防御力の強化、そして炎耐性を全員に付与した。

 

ハジメはドンナーを構えているし、シアは背負っていた大きなハンマーを両手で握っている。

 

叫び始めた瞬間から準備を始めていたので全員の戦闘準備が終わった瞬間にドラゴンは突っ込んできた。

 

戦闘開始だ。




過剰戦力で迎撃するプレイヤー達の図。


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戦闘開始。

真っ先に動き出したのは黒竜だった、滝壺に消えて行ったウィルを見ると口に大量の魔力を貯めていった。

 

「ハジメ!」

 

「おう!」

 

ハジメは棺のような盾を左腕に繋ぎ地面に杭を突き刺した。

 

俺は棺の前に魔法陣で盾を召喚し一気に五つの防御陣を構築した。

 

滝壺に向かって放たれたレーザーの様なブレスは俺が構築し、かなりの耐久力がある筈の盾を一瞬で三つ砕きハジメは思いっきり踏ん張っている。

 

じりじりと後退していくハジメを土を固定し負担を軽くさせる。

 

「その口を閉じなさい!」

 

「隙だらけだ!」

 

アッシュは魔力を込めた矢を放ち、それに追走しながらミナが黒竜の真下まで移動する。

 

「ハジメさんの邪魔をするなですぅ!」

 

ミナとシアのなんかでかいハンマーで上下から頭を叩かれた黒竜は自分のブレスで爆発を起こした。

 

「ユエさんや、合わせてくれ。」

 

「任せて。」

 

ブレスが中断された事でハジメは力を抜いている、この中で黒竜に一番ダメージを与えられるのが俺とユエの2人である以上足止めの為の準備をする様だ。

 

黒竜を中心に何百もの魔法陣が現れる、ユエも自分で魔法陣を描き、黒い球体状の物を作っていた。

 

「墜ちろ。」

 

「禍天。」

 

2人同時に放った魔法と魔術は黒竜を遠慮無く突き刺していく。

 

ユエの黒い球体はギリギリで避けられたらしい、微かに動き、炎を撒き散らす。

 

シアは上へ飛び上がりハンマーを振り下ろす、それはユエの魔法が当たっていればかなりの威力となったのだろう、だが少しだけ中心からずれている事によって竜はシアを認識してしまった。

 

「グルアアアアァァァァァァ!!」

 

無理やり体を動かした為にブチブチと筋肉が切れる音がした、だがその頑張りは無駄ではなかったようだ、シアは驚いて空中で体勢を崩し力の十分に乗らない体勢でハンマーを叩きつけてしまった。

 

それでもかなりの威力ではあったがそれで死ぬくらいなら最強などと言われていない、黒竜は尻尾を振るいシアを殴ろうとする。

 

「おい、気を付けろ、残念ウサギ。」

 

「ハ、ハジメさぁん!」

 

その尻尾を蹴って弾き飛ばし、シアを救い出したのはハジメだった。

 

黒竜は幾つものヒビや血を撒き散らしているのに標的をウィル以外に変える素振りがない。

 

「チッ、ユエ、先生達を守っててくれ。」

 

「ハジメ!あれの装甲を貫けそうなのはあるか!?」

 

ハジメは何かを考えているようで動きながらも言葉を発しない。

 

そんな事をしている間に黒竜は空高く舞い上がりブレスをウィルを中心にして放とうとしていた。

 

「・・・チッ。」

 

ハジメは眼帯を取り、その目で黒竜を見た。

 

「・・・風魔!あれの翼は貫けるか?」

 

「3秒あれば。」

 

「よし、アレを落とすぞ!」

 

『了解!』

 

俺は動きを止めて魔法陣を想像する。

 

「支援かけるよ!魔術支援!」

 

シアとアッシュは桜の魔術支援で出来た魔法陣の足場を登り黒竜に向かっていった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・。」

 

桜は魔術の連続使用で既にグロッキーになり始めている、急いで済ませないと倒れてしまいそうだ。

 

「出来た!」

 

「全員離れろぉ!」

 

俺の手に作成されたのは弓、魔力で精製し、ドラゴンですら貫けるように矢も特別製のものだ。

 

シアとミナは下から衝撃波でバランスを崩す事を目的としていたがアッシュはいつの間にか黒竜の背中に乗っていた。

 

アッシュは剣を抜いて抜いた場所だけが赤くなっているのを確認した。

 

「ありがとよ!」

 

そう叫び照準をその血で赤く染まった場所に向かって放つ。

 

矢の速度はかなり早い、だが体に近い場所に剣が刺さっていた為黒竜は当然回避行動を取る。

 

その時矢が分裂した、やがて針に近い大きさになって黒竜に当たるとそれは膨張し、超重量の石の塊となって黒竜の翼の片方を無理やり重くさせた。

 

黒竜は突然重くなった翼を見て驚いたのだろうか、何もせずに落ちて来る。

 

「ハジメ!」

 

「分かってる!」

 

ハジメは何処からともなく巨大な杭を打ち出すパイルバンカーを空から落ちて来る黒竜に向ける。

 

「固定しろ!」

 

「バインド!」

 

空中で張り付けのように鎖が巻きつき静止する、そして完全に静止するかしないかの一瞬でハジメは何処かに狙いを定めてパイルバンカーをを撃った。

 

そしてその杭は白い軌跡を残して黒竜に飛んでいく。

 

そしてパイルバンカーの杭が刺さった場所は・・・黒竜のお尻の穴だった。

 

「よし、成功した。」

 

『アーーーー!!なのじゃアアアァァァァァァ!!!?』

 

ハジメの満足そうな顔と急に響き渡った女性の声にそこに居た俺たちは全員時間が止まったように静かになったのだ。

 

俺も一瞬何が起きたか分からなくて魔術の制御を手放してしまい、鎖から解放された黒竜がパイルバンカーの杭を下にして、つまりお尻から墜落し、地面に激突した後もう一度同じような叫び声が響いた事で俺たちは声の主が黒竜である事を理解した。




追撃楽しいです。そして結局ケツバンカーはしてもらう事に、そうじゃないと常時氷結洞窟バージョンのティオを書かなければならなくなり、作者の妄想の産物と化してしまうため原作と同じようにしてもらいます。

ただティオの欲望が結局ハジメに向かうのか主人公に向かうのかで未だに悩んでいたりします。


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戦闘後

『あー抜いてたもぉ!妾のお尻のコレ抜いてたもぉ!』

 

「割と余裕だなお前。」

 

黒竜はポロポロと涙を流しながらも懇願してくる、今の所衝撃から立ち直っているのは俺だけみたいなので話をしてみる。

 

『妾がこんなものをぶつけられるのは別に良い!むしろ心地良い、じゃがこのままでは妾が死んでしまう!』

 

こいつ・・・Mか?

 

「・・・おうそうだな。」

 

『何でもするのじゃ!謝罪だろうが何だろうがするのじゃ〜!だからお尻のコレ抜いてたもぉ!』

 

「・・・その前に、何で竜人族だと思われるお前があんなに完璧に操られていたんだ?」

 

俺が返答を渋っているとハジメがそう言った。

 

「どういう事だ?」

 

「こいつは標的をウィルから変える様子が無かった、あくまで標的を殺すまでの障害物に対処していただけのように思える。だから一度この目で見てみた、そしたらこの竜じゃない魔力があるのが分かったんだ。」

 

それが操られていると言った根拠か。

 

「なら・・・とりあえず、それの情報と引き換えのギブアンドテイクって事で。」

 

『分かったのじゃ、教えるのじゃ、じゃからコレ、抜いてたもぉ。』

 

ハジメは少し悩んでいたが俺を見てため息を吐く。

 

「・・・風魔、抜いてやれ。」

 

「・・・自分でした事の責任は取れよ、ハジメ。」

 

言外に自分でやれと言った俺にハジメは物凄く悩んでいたがユエが耳に口を寄せて何かを言うと悩みながらもティオに近づいて行った。

 

これで安心かとホッと息を吐く。

 

ハジメには敵なら殺すという価値観が芽生えていたのは知っていたが、グレーゾーンまで殺すようになったら俺とハジメが殺しあう結果になるからだ。

 

やはり、奈落の底で閉じ込められていたというユエの存在はハジメの中で大きなものだったのだろう。

 

常々感謝する。

 

「これで良かったのかな?」

 

黒竜に魔力ギリギリまで尋問を始めているハジメを横目に桜が話しかけて来る。

 

「良かった・・・とは言い辛いな、ハジメが変わってしまったのは俺たちがなぁなぁで済ませてきていたからだ、その責任の一端は俺達にもある。」

 

「・・・ごめん。」

 

「別に良い、俺たちがハジメと一緒にいて出来うる限り元の感覚も覚えさせれればいい。」

 

一応尋問の結果も聞いているがどうしても情報は制限される、先ほどからこそこそと言葉を交わしているアッシュとミナはある意味正しいと言える。

 

「そちらはどうだ?」

 

「ん?ああ、竜人族ってのが生きてたのはビックリだがそういう事もあるだろうって納得する事にした。」

 

「まぁそれに尽きるよなぁ。」

 

結局のところこの世界の住人としてのこの2人にはそう判断するしかないのだ。

 

まぁ、天使としての2人は面倒な事になったとうんざりしていそうではあるが。

 

『早く・・・抜いてたもぉ。』

 

「・・・ハ・ジ・メ?」

 

「分かってるよ!」

 

途中から何となくで杭を操作していたのだろう、少し冷や汗をかきながら杭を一気に引き抜いた。

 

「ンホォおおおおおおお!!!?」

 

女の子が出しちゃいけない声を出しながら人間の女性の姿になっていく。

 

服も作られている為全裸でビクビクと震えるというふうな事にならなかったのは幸いだった。

 

だがかなりの美人が赤い顔でお尻と顔を押さえているというのは刺激が強かったようで男子生徒達は少し前かがみになった。

 

勇者の仲間としてかなり高くなった五感でそれを察知した女子生徒達はそれをゴキブリでも見るような目になっていた。

 

そして最後には俺とハジメに視線が移動していった。

 

ハジメは既に黒竜、名前はティオだったか、から聞いた情報を元に山の向こうまでドローン達を飛ばしている。

 

俺は視線が股間に向かっている事を自覚しながら少しため息を吐いた。

 

心なしか桜がホッとしていたような気がしていたのは気のせいだろうか。

 

俺は被っていたフードをティオに被せると気絶しているティオを背負った。

 

男子生徒の熱視線に晒されるが性欲の塊に任せるとどうなるか分からん。

 

「は!?妾は何を?」

 

「気が付いたか?そんなに時間は経ってないぞ。」

 

「お主、妾を縛った者か?」

 

「オイ。」

 

その言い方を止めろ、誤解を招く。

 

「むぅ・・・もう少し強くしてくれても良かったんじゃよ?」

 

さっきクラスメイトを性欲の塊と言ったが訂正しよう、人目を気にせずにさらけ出してくるこっちの方が性欲の塊だ、誰か魔性菩薩呼んでこい。

 

「黙れよ変態、それよりさっきから俺のシャツに染み込んでくるこの液体をどうにかしろ、気持ち悪い。」

 

「なにおぅ!美少女の愛液じゃぞ!?もっと喜ばんか!枯れておるのかお主は!」

 

「自分でそんなこと言う奴はそういう対象になるか馬鹿者が、あとお前、そんなに元気があるなら自分で歩けるんじゃねえだろうな。」

 

「あ、それは無理なのじゃ、妾の体力がお主らに休む事もなく責められ続けたせいで無くなっておるのは分かっておろう?」

 

「お前わざとその言い回しにしてるな?ぶん殴るぞ。」

 

「バッチコイ!」

 

もうやだこいつ。

 

桜は既に顔真っ赤だ、何か出来る精神状態ではない。

 

アッシュとミナは面白そうにこちらを見ているばかりで止める気は無さそうだった、クラスメイトの何人かも似たり寄ったりだ。

 

先生はハジメを見つめるばかりで俺の状態に気付いていない。

 

「おお、これはまた大量な・・・。」

 

ハジメが大軍を見つけたようだ。

 

「数は?」

 

「軽く万単位だな、ていうかこれは十万台いくんじゃねえ?」

 

まった多い数を、チートでも使って無理やりスポーンさせたみたいな数だな。

 

「ていうか、やっぱり敵は清水、かねぇ。」

 

「だろうな、お前の話からしてかなり前から居ないんだろ?殆ど寝ずに作業してたらこの位の数になるだろう、魔物の主を効率よく支配してるとして五つか六つくらいの山から魔物居なくなるんじゃねえの?」

 

クラスメイトは驚きの視線を俺に向ける。

 

「そもそも、先生について行っている間に味方の分析は済ませた、その中でもマークしていたのが清水だっただけで確信は無かった、清水の居場所はとっくのとうに見つけていたし、それを最初は報告しようとしていたが、ちょうど良い機会だ、清水には死んでもらうか。」

 

先生は俺を見て信じられないと言いたげだ。クラスメイトも死んでもらうという言葉に顔を青ざめさせている。

 

「風魔くん、先生はそんな事を許しませんよ!」

 

「先生、これは戦争だ、人を殺し、殺される、そんな戦争だ、三百年続いている魔族との戦争だ、地球でしていた百年戦争より根は深い、俺は先生達をジャンヌダルクにはさせたくない。」

 

「ですが!その代わりにあなた達をジャンヌダルクにするなんて私は嫌です!」

 

「なら、一体誰が犠牲になるって言うんだよ?俺は簡単に死ぬつもりは無いぞ、死ぬなら死ぬで最大限の努力はする、先生達を元の世界に返すための努力も、何もかも、それでも、それでも足りなかった場合に先生達が前に出る。」

 

「守られるのが子供の役目です!生徒を導くのが先生の役目です!だから!私の言葉に従いなさい!」

 

「大人でも、尊敬出来る人としちゃいけない人がいるのは知っている、先生、貴女は尊敬出来る人だ、だから、俺を失望させないでくれ。」

 

俺は親が居ない、孤児院での事も、生活も、警察とのことだって俺はなんとかしてきた、それは全てを請け負ってくれる親が居なかったからだ、頼れる大人と言うものを、記憶としては知っている、だからこそ先生には優しくいい含めるように何度でも話す、だが、それでも今世では俺は親無しだ、俺は大人と言う立場を振りかざしてくる奴には最大限の鉄槌を下している。

 

先生は俺の目を見てヒッと恐怖で声が裏返った。

 

「風魔?」

 

「・・・チッ、大人気ない、か、すまない先生、出過ぎた真似をした。」

 

桜が止めなければ俺は先生を先生としてではなく他人として接するようになっていただろう、それは完全に子供の癇癪のようなもので、だからこそ、桜は注意したのだろう。

 

「い、いえ、こちらこそ、ごめんなさい。」

 

先生はそれから暫く俺の目を合わせることはなくなった。

 

「ハジメ、殲滅戦は出来るな?」

 

「一応出来る、が、風魔、こんな奴らを助けるつもりか?俺はクラスメイトを信用していない、信じられるのはお前と桜、そして白崎だけだ。」

 

「それでも、先生がいる、俺の仕事は先生を守る事でね、少し付き合ってくれないか?」

 

「・・・はぁ・・・ウィルも離れそうに無さそうだな、分かった、代わりに何が出来る?」

 

「・・・ふむ、そうだな、日本に帰った後の諸々を手伝うってのは?」

 

「まだもう一声。」

 

「白崎との面談。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

ハジメは腕を組んで悩み始めた。

 

数分経ち、最後には頭を抱えていたが決めたようだ。

 

「・・・分かった、協力しよう。」

 

「よし、アッシュとミナもだ。」

 

「「は?」」

 

「よし、そんじゃ帰るぞ。」

 

「「はあああああああ!!?」」

 

そう言って歩き始めると桜が近寄って来た。

 

「ねえねえ風魔。」

 

「ん?なんだ?」

 

「・・・私の愛液なら・・・そういう対象として見れる?」

 

かなり小声だったので近くに居た俺しか分からないだろう、そんな声でそう聞いてきた。

 

心臓が跳ね上がった。

 

「・・・何言ってんだ、アホ、俺はお前とずっと一緒だ、それだけ分かっときゃ俺はいい。」

 

明言はしない。言ったらどうなるかわからない、主に俺が。

 

「フフッ、そうだね。」

 

少し嬉しそうな顔をしながら桜は離れていった。

 

コレは・・・思いっきりばれた気がする。

 

「フフフフフ、お主の弱点が分かったのじゃ、お主、あの桜という娘を好いておるな?」

 

・・・そうだった、こいつが居た。

 

「忘れろ。」

 

「無理じゃ、こんな面白・・・楽し・・・いじれそうな話題を忘れるわけなかろう!」

 

ウキウキしながらそういうティオを地面に叩きつけてやろうかと本気で思った。

 

そして少し迷った後ティオの頭を掴んで握り潰そうと力を込める。

 

「言い直せてねぇんだよ、お前の頭をここで握り潰してやろうか・・・!」

 

「あ!良いのじゃ!この痛み・・・あっ濡れて・・・ああ!もっとぉ!」

 

「・・・誰か助けてくれ。」

 

本気でそう呟きながら周りを見渡すが桜やハジメ達、アッシュとミナのコンビも一斉に目を逸らした。

 

唯一ユエは目が合ったが竜人族に幻想でもあったのか、遠い目をして現実逃避をしていた。




筆が暴走した結果こうなった、ハジメはなすりつける相手が出来たとホッとしていたりする。

ただし反応が良いのはハジメの方という、容赦がないので。

先生は主人公と目を合わせる事が少しトラウマになりました。

清水はベヒモスと殴り会える化け物(主人公)が居るので数を揃える為に強行軍をしています、なので数だけならばかなりの数です、主人公でも1人ならかなり厳しい数です。

数の暴力!それは英雄ですら苦戦する最強の力!でもその英雄がもう1人いる事を彼は知らない。

というかむしろそっちの方がおっかない可能性だってあるのです。


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蹂躙前

本日二度目の投稿、やっぱり筆が乗ると違うね。


ティオとウィルを連れてウルへ戻った。

 

敵が来るまでの間に避難を優先させる為の話し合いはハジメ達に任せた、俺はウルの街を周り、魔法陣を描いて回る。

 

桜とアッシュは避難する人達の避難を手伝っている、ミナは獣人のため色々と邪推される為かなり拗ねていた。

 

ティオは既に何処かへ消えている、きっと人間になれる為避難の手伝いをしているをしているのだろうとは思う。

 

今は避難の為に炎なんて欠片も付いていない、月明かりに照らされた街をぼおっとしながら見ていた。

 

何もいない、ついさっきまで喧騒に満ち溢れているのは今いる場所だったというのに、外壁にはまだ喧騒が漂っているがそれも戦闘が始まれば無くなるだろう。

 

「さて、お前、魔人族だな?」

 

「・・・ばれてしまいましたか、気配は察知出来ないほど薄めた気がするのですが?」

 

「あんたが何でここにいるのかは聞かんよ、ただ死んでもらうのみ。」

 

「それは厄介だ!」

 

影のようにゆらゆらと揺れている魔人族の姿は不鮮明だ、その力も、その目的も、いや、目的は何となくわかる、それは・・・清水を傀儡として魔人族に組み込む事。

 

「撃ちぬけ。」

 

槍が大量に影に向かって飛んでいく。

 

「本当に厄介なお方だ!」

 

影を貫いたと思ったら後ろに気配を感じた。

 

直感に従って刀を振り抜くと其処には鱗のようなものが飛んで来ていた。

 

「・・・。」

 

気配がしない、逃げられたか?

 

「このお礼は何処かでお返しします。」

 

「!?」

 

全く気配がしなかった、いや姿が見えないだけか?

 

「その時まで死ぬ事のなきよう。」

 

「死にはせんよ、お前を殺して帰るだけだ。」

 

「貴方のその目的も力も、全て無用にして見せましょう。」

 

今度こそ逃げた様だ。

 

清水は完全に傀儡になるのが決まっていたのだろうと思う。

 

だからこそ利用した、きっと女とか薬とかを飲ませれば操れると思ったのだろう、魔人族の思惑は何となく分かったが、俺の力も無用にする。まさかとは思うが・・・いや、それは今考える事ではないか。

 

「厄介なのはどっちだ、畜生め。」

 

今日の夜はそう簡単に寝たりは出来なさそうだ。

 

明け方になり、外壁の上で仮眠を取る。

 

ハジメは徹夜は当たり前だったし、奈落では二徹三徹何て当たり前だっただろうから寝てなくても体力は有り余るだろう、だが俺は違う、規則正しい生活をしていた時点でそれを戦闘モードに戻すには時間がかかる。

 

だからこそ、意識を切り替える為の仮眠だ。

 

微睡みの中で桜の声が聞こえる、何かを言っている様だ。

 

起こす様な人物は近くには存在しない、ならばこれは夢なのだろうと漠然と思った。

 

輪郭がぼやけていて何を言っているのかは分からない、だが、それが見えてしまったが最後、俺の中で何かが変わる気がする。

 

だから・・・まだその言葉を聞けない事に安堵と恐怖が俺を襲う。

 

聞かなくていいという安堵と聞いてしまったらという恐怖だ、きっと俺は既に気付いているのだろうその事実を俺は見て見ぬ振りをする、そうしなければ、俺がどうにかなってしまうと分かっているから。

 

「桜・・・今だけでいい、だから・・・黙ってくれ。」

 

ふと言葉に出た言葉はいつもなら出そうにない言葉、だが夢の中の桜は笑っていた顔を一瞬で変えた。

 

顔を変えた瞬間に輪郭が鮮明になっていき桜の顔が明確になった。

 

桜は嗤っていた。

 

「!!?」

 

外壁の上で飛び起きた。

 

体が汗で濡れている。シャツに染み込んで気持ち悪い。

 

「クソッ、何で今こんな夢を・・・。」

 

「風魔〜?大丈夫〜?」

 

外壁の下から桜が声をかけてくる。

 

「・・・ああ、大丈夫だ!」

 

いやでもさっきの桜の顔が頭に浮かぶ、少しだけ、安心した。

 

返事をする時に俺の目に映ったのはいつものほんわかとしたにへらっと笑う桜の顔だったからだ。

 

だから・・・俺の夢が正夢にならない様に俺は願うしかない。

 

『ポッド001から報告、魔物の大群の姿が見えた、全員戦闘準備を整えておいてくれ。』

 

ハジメからの通信だ、ポッドの声は意外と広く響く。その為に桜にも聞こえた様だ。

 

『えっとーポッド004から報告、了解しました、戦闘準備をする、何体倒せるかの競争しようぜ。』

 

アッシュは競争をしたいと思っている様だ。

 

「・・・はぁ、ポッド002より注意、突出してくれるなよ?ハジメ達の火力制圧で出来うる限り減らすからな?」

 

『ポッド004から報告、了解。』

 

一応外壁を桜を連れて走り出す。

 

ハジメ達の横にティオがいた、何で変態も戦場にいるんですかねほんと、しかもハジメに色々とされていた。

 

魔物の大軍が見えるまで俺はずっと草原を見ていたのだった。




分かりやすいものから分かりにくいものまで伏線をとりあえずばら撒いていくスタイル。


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戦争開始

「・・・おーおー、また地面を埋め尽くすくらいの魔物だねぇ。」

 

「あの様子だとそう簡単に黒幕には届かなさそうだな。」

 

「そうだなぁ、まぁまずはハジメの一斉掃射の仕事だな。」

 

ハジメには自分達のアーティファクトと桜の火力支援、そして俺がウルの街にばら撒いた魔術砲台で攻撃してもらう手筈になっている。

 

「それはそれとして、あのハジメって人、本当に日本人か?」

 

「おう、俺の親友でもあるぞ。」

 

「あの性格ならそうだろうな。」

 

「元々は人を殴ることもできない優しい子でしたわ。」

 

「どうしてああなった。」

 

「では真実を申し上げましょう、ただの一般人と同じステータスで大迷宮の中に騙されて1人だけで探索する事になりました、結果は?」

 

「OK、胸糞悪くなるから聞くのは却下だ。」

 

理解してくれた様で何よりです。

 

ハジメが先生の剣だとか盾だとか言ってる内にかなり近づいてきていた。

 

「ねぇ、あのワイバーンに乗ってる奴って、あんたらの言ってた清水じゃないの?日本人の顔よあれ?」

 

ミナがそう言ってきたので少し見てみるとドンピシャ、清水だった。

 

「まぁ指揮官は全体を見渡せるところにいないとダメだもんなぁ、其処だよなぁ。」

 

だがハジメがこれが愛子様の力であるとか何とか言ってから魔術砲台とドンナーでワイバーンの群れを全部撃ち落とした。

 

それに伴い清水も地面に激突した、清水のステータスなら生きているだろう。

 

「・・・撃ち落としたけど大丈夫なのか?」

 

「大丈夫大丈夫、この世界の人間よりかなり丈夫だから。」

 

「そう?ならいいのかしら?」

 

「さて、火力支援はそろそろ届くはずだ。」

 

魔力砲台は巨大なビームを出しです攻撃するマップ兵器、桜の火力支援は爆撃と掃射、ならば魔物の大群を薙ぎ払うのはすぐになる。

 

桜の爆撃が地面に激突する。

 

それだけで魔物のほとんどを巻き込み弱い部類は絶命した、これで3万ほど削れたか、奥の本隊と強い部類の魔物達は生き残っている。

 

「よし、全員突撃するぞ、殲滅だ。」

 

『了解!』

 

其処からは各自のフォローが効く範囲で散開、随時立ち位置を変えながらの乱戦となる。

 

俺は一番奥が担当、突撃し、敵の数を出来る限り減らすこと。

 

一気に跳び、魔物の軍勢のど真ん中に着地する。

 

「アハハ、いい目だ。」

 

血が昂る、こういう状況には本当に抑えられそうにない。

 

「かかって来いよ、なぁ!モンスター!」

 

魔法陣を描き、笑みを浮かべる、その瞬間爆発が起こった。

 

臓物が散らばり、血がバケツをひっくり返したように降りかかる。

 

「クハハ、アッハハハハハハ!!!コレだ、この感じだ!昂ぶってきたぜえ、アッハハハハハハ!!!」

 

目の前の敵を殺す為に魔術を構築する。

 

秋月風魔、総合魔物討伐数、現在約一万。




シリーズ恒例、主人公の狂戦士化。

血を被るとこうなります。

しかも大体1人なので無双ゲームのキャラクターみたいになります。

この世界ではハジメと桜、あとついでに白崎もこの癖には何となく気付いてます。


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戦争中

「ミナ!危ないぞ!」

 

「うるっさいわねぇ!分かってるから戦わせなさいよ!」

 

「ミナは突撃しすぎだ!包囲されたら一瞬で死ぬぞ!」

 

「あんたが援護してくれるでしょ?」

 

「俺だって限界くらいあるっての!」

 

アッシュとミナが口で喧嘩しながら敵を倒していく、遠くで爆発音がしている、ハジメとその仲間達が奥の本隊を攻撃し始めた様だ。

 

「アッシュ!狼がこっちに来てる!強そうな奴!」

 

「うっそだろおい!?」

 

四つ目の狼の群れと当たったアッシュとミナの両名は突撃隊から切り離される、総合魔物討伐数、アッシュとミナのコンビ、約二千。

 

ーーーーーーーー

「はぁ・・・はぁ・・・まだいるの・・・?」

 

「休むのじゃ、お主がそれではもう戦えないであろう?」

 

「ティオさん・・・。」

 

外壁の上でペタンと女の子座りをする桜は平原の中央で魔術を大量に打ち出している自分の想い人を見る。

 

戦っている様子を見る限りでは安定している様に見える、ただ転生した経験が少ない自分とは違って経験が多いからこそ危険だと言うことが分かるかもしれない、そう思えば、どうにかしなければと焦ってしまう。

 

「でも・・・風魔が。」

 

「あやつは全く疲弊しておらん!お主の休息が先じゃ!」

 

ティオも魔術師という言葉は理解している、であるが故に突撃していって魔物達を自分の主人が使う兵器と同じ速さで駆逐していく様を見て驚いている、あれが勇者なのかと思ったがただステータスが恵まれているだけらしい。

 

であれば戦闘経験はほとんど無いに等しいはず、それであの動きだと言うのならば天才と言っても過言では無いだろう。

 

しかもほとんど疲弊している様子がない、ご主人曰くバフかけて回復してるから無限機関みたいなもの、らしいがよく分からないが化け物だと言うことだけは分かった。

 

だがそれを理解しているはずの桜がここまで心配しているという事は危険だと言うことか?いや、それならばどうにかしてしまう程度の能力は持っている、それは自分との戦いで理解している。

 

ならば桜を休ませるべきだと考える。

 

「でも・・・。」

 

「あやつの役に立ちたいのならば休むのじゃ!休んでもう一度攻撃すればよい!それだけであやつは助かるのじゃ!」

 

ティオは戦闘が始まる前にその風魔自身から桜を頼むと言われているのだ、そう簡単に持ち場を離れられない。故に奥へ下げようとする。

 

だが桜はずっと風魔を見るばかり、やりきれなくなってきたティオは気絶でもさせようかと思い始める。

 

「おい変態、どけ。」

 

「ご主人様!?」

 

「主人じゃねぇよ、風魔の奴、対処ぶん投げやがったな?」

 

「・・・ハジメ?」

 

「眠っとけ、起きたら終わる。」

 

そう言ってハジメは眠りの効果を持つ粉を吸わせる。

 

「あ・・・。」

 

それだけで体力の限界だった桜は眠ってしまう。

 

「ご主人・・・。」

 

「おい、用事は終わっただろうが、さっさと遠くの敵を排除しろ、変態。」

 

「あとで怒られると思うのじゃが・・・あいわかった、やってみるのじゃ。」

 

そう言ってティオは桜を抱いて下まで降りる。桜をベッドに横たわらせて息が整っていることを確認すると外壁を登りブレスや魔法を撃ち始めた。

 

桜、火力支援での撃破約五万。

 

ティオ、戦線復帰。

 

ーーーーーーーー

「あとで殴ってやる。」

 

桜を眠らせたハジメは悪態をつきながら機銃を操作する。

 

設計図自体はある程度頭に叩き込んでいる、だからこそ奈落の底でも銃を作れた、ハジメの作った銃などの設計図は風魔との実験の副産物だったのだ、頭に叩き込んでいたから奈落の底でも助かった、作れたポッドがいたからユエとの邂逅もその後のサソリをかなり楽に倒せた、ポッドに気付いてから孤独にならずに済んだ。弱肉強食の世界で人間を失わずに済んだのは風魔達とのつながりを示すポッドとユエがいたからだと自覚しているハジメは一番厄介な事を残している風魔に悪態を吐く。

 

その一番厄介な事とは桜の依存だ。

 

桜は生きる理由まで風魔に依存している、それは過去から助けていた事もそうだが風魔自身が桜に惚れているからだろう、それを匂わせる事は前々から口にしていたがそれを明確に示した事はない。

 

桜は頼られれば頑張り、その頑張りを褒めてもらう為にまた頑張るという思考回路を辿っていることが多い。

 

だからこそ、風魔は自分が桜を求める事で桜がもっと依存すると思っている様だ。

 

だからその行為を隠す、ただひたすらに、桜を依存させない為に、馬鹿か?

 

桜は求められれば頑張るという思考だ、つまり、その好意を隠さずに俺に依存するなとでも言えば桜は頑張り、依存する程の心配はいずれ無くなる、それを理解しているのは側で見ていたハジメだけだった。

 

というか人の真横で夫婦顔負けの事実婚じみた生活送ってるくせにやってる事中学生かよとハジメは思う。

 

シアとユエはため息をついているハジメを珍しそうに見ているが魔法や銃をぶっ放すのは止めない。

 

「ハジメ、悩み事?」

 

「あ?あーまぁな、俺が悩む事自体がおかしい事柄ではあるんだが・・・まぁ。」

 

「だったら私達が協力してあげますよ?」

 

「・・・それが出来たらどれだけいいか。」

 

「あの2人の事?」

 

ユエのいうあの2人とは桜と風魔の2人の事だろう。

 

「・・・やっぱり分かるよなぁ、協力してくれるか?」

 

「ん、私もあの2人は好き。」

 

「私もですねぇ。」

 

「お前は俺の黒歴史を聞きたいだけだろうが。」

 

「バレちゃいました?」

 

ハジメチーム、総合魔物討伐数、現在四万。




アッシュとミナの討伐数低すぎたかな?そんな事もないか、十分多い方だな、ハジメご一行達がおかしいだけだ。

魔物の軍勢は既に八割か九割壊滅してるので本当に掃討戦ですね。


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清水

「アッハハハハ!!そらそら!」

 

昂りに身を任せて30分、魔物の数が目に見えて減ってきた、残りは数千匹といったところか。

 

「ああ〜、もう終わりか。楽しかったなぁ。」

 

乱れた息を整える。

 

魔物達はもうほとんど逃げ始めている様だった。

 

外壁から撃たれているために生き残るのはかなり少ないだろう。

 

「お前、あんな性格だったのか?」

 

「ん〜?アッシュか、そうだが?」

 

「怖すぎるわ、完全に狂ってるじゃねえかよ。」

 

あれだぞ、勘とか鍛えてたら体が勝手に動く様になって意識飛んでるだけだぞ。多分。

 

「はぁ・・・はぁ・・・あっしゅ・・・肩貸して。」

 

「はいはい、帰るぞ。」

 

引かれてはいるようだが怖がられてないようだ、助かった。

 

「・・・このローブは捨てるしかなさそうだな。」

 

血で真っ赤に染まったローブを見て呟く、案外高いものだったからすぐに買い替えたくはなかったな。

 

外壁から戻るとハジメがいない。

 

「お、帰って来たな?お主らも頑張ったのぅ。」

 

「ティオ、ハジメはどこに?」

 

「あのしみず?とかいう小僧を捕まえに車で出て行ったのじゃ、すぐに戻ると思うのじゃが。」

 

「ならいい、桜は?」

 

「まだ起きておらんよ、行ってみると良いのじゃ。」

 

その前に着替えるか。

 

着替えて桜の寝ているベッドに近づく、汗で濡れている、相当頑張ったのだろう、お疲れ様だ。

 

「ん・・・。」

 

桜が身じろぎする、寝苦しそうだ、汗でも拭いてやるか。

 

周りに布を垂らして桜の服を脱がしていく、タオルはあるので問題は無い、というか服を脱がしている時点で問題なのだろうが看病とかとっくのとうに慣れた、女性だろうがどうでもよくなる程度には。

 

汗を拭き終わり、着替えを着せようとしたが着替えの場所を知らなかったので服を全て洗って着せる。

 

下着とかも一緒だったけど多分問題無いと思う。こう言うのは俺には分からん。

 

服を着せようと桜の方を向くと桜はこちらを見て目を見開いていた。

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「・・・・・・何やってるの?」

 

「・・・桜の看病?」

 

「それでなんで私が全裸になってるの!?」

 

「汗だくだったからだろ?汗拭いたついでに服を乾かしてた。」

 

「そこまでしたら襲ってくるのが男の子じゃないの?」

 

「俺にそこまでの度胸があるとでも?」

 

「・・・。」

 

桜は納得してしまったような不服なような顔をしていた。

 

「とりあえず起きたのなら服を着て先生達のところに行くぞ、清水に色々と聞かなきゃならないしな。」

 

「あ、うん。」

 

着替えるのに男が近くにいるわけにもいかないだろう、カーテンを開けて外に出る。

 

桜はすぐに着替えて出てきた。

 

途中で清水を連れていたハジメが俺と桜を見て安心した様に息を吐いていたのが印象に残った。

 

そして先生達のいるところに清水を連れて行った。

 

清水は既にボロボロだ、何故こうなった。

 

そして先生が清水の説得をし始めた。

 

清水の反応は、まぁ予想通りというかなんというか。

 

先生が色々と言っているのに心に届かない様子だ、全て自分のせいではないだとかお前らのせいだとか色々言ってる。

 

清水にとってみれば日本は恐怖の方が強い場所なのだろう、俺やハジメのようにオタクであればいじめられる、ハジメは何も悪くないと分かっているからこその恐怖、そして人を下に見る事で優越感を得てきたであろう清水には日本は嫌だろう。

 

「全部、全部お前らのせいだ!厨二病を拗らせた野郎と、そこにいる気取った気味悪い魔法使いの所為だ!」

 

「厨二病・・・。」

 

「フハハハハハハ!!!」

 

ハジメが厨二病と言われて傷付いてる。

 

桜も少し笑うのを堪えているあたりツボに入ったのだろう。

 

アッシュとミナは苦笑いしている、2人にもそういう時期があったんだろうな、この反応は。

 

そして先生は清水に手を伸ばして説得する、まぁ、無理だろうが。

 

清水は既に堕ちている、ドン底に居ても希望さえあれば立ち直れる、罪の意識を持てる、だが堕ちたものは無理だ、全てを他人のせいにしてきた者はそれが出来なくなると同時に周りを巻き込んで自爆する、こう言う類は問答無用で殺すなりしたほうがいい。

 

先生は自分が生徒を正道に戻すと必死になっているようだ。

 

「動くなぁ!ぶっ刺すぞぉ!」

 

だからこうなる、遅過ぎたんだ、全部な。

 

ハジメも現実逃避から戻ってきたようだ。

 

「おい、秋月、そこの猫の獣人と兎の奴隷を連れて来い、厨二野郎の武器や兵器もだ、全部渡せ、そうした後お前が自殺すれば先生は助けてやるよ。」

 

「・・・ふむ。」

 

「なんだよ?」

 

「いやなに、それだけの力があるのならば勇者以上の活躍程度簡単に出来たと思ってな。」

 

「・・・なんだと?」

 

「実際、考え方を変えれば簡単なんだよ、お前は魔物を操れる、お前自身の強さはそこまで強い訳でもない、だがお前は時間はかかれど黒竜をテイムできた、なら、自分より強い魔物でもテイム出来るということだ。相手が送り込んできた魔物を逆に操り、こちらは情報を貰い尽くした後、偽の情報を相手に渡せば確実に相手は混乱する、それがばれてもお前は既に魔物達を操れている、相手がこちらに攻め込む瞬間に操った魔物を暴走でもさせれば戦況は大きく変わる、なんならドッペルゲンガーのような魔物をテイムして影武者を作ってもいい、そうすれば自分の死という最高の隠れ蓑を出すことが出来る。」

 

「・・・。」

 

俺の言葉を聞いている清水は驚いているようだ。

 

「やはり自分では考えつかなかったか?だがな、他の人間からすれば別の考えがある、それを参考にするくらいはしたらよかったんじゃないか?」

 

「なら俺は・・・俺のしたことは無駄だったって事かよ。」

 

「いや違う、敵が魔物を操ることができ、そしてお前が闇魔法という魔法の天才であることは既に証明されている、要は使い方と目的への道のりが違っただけだ。」

 

「だが俺はもう魔人族と約束を・・・。」

 

「それを守ると何故信じられる?」

 

「なに?」

 

「冷静に考えてみろよ、ここでお前が先生を殺し、魔人族に合流したとする、だがお前は魔人族の魔物を操ることのできるテイマーの一人として合流するのが精一杯だ、何故ならば魔物を操れるということは既に魔人族が出来ていることだからだ、テイムの才能があるだけの人間としか思われない、利用価値があるとすれば、お前を半殺しにして、人質にし、天之川光輝を一人で魔人族の罠が大量にある所に行かせて全軍で勇者を仕留める事、勇者は人間にとって希望と同義だ、勇者を殺す事ができれば相手は侵略し放題だろうな。」

 

「なら俺は・・・騙されるだけだってのか?この俺が!?」

 

「お前は冷静になれなかった、その手を離し、先生を解放してくれれば俺たちがどうにかしてお前に活躍の場を与えよう。」

 

清水は俺を見て迷っているようだ。

 

「清水、お前は異世界へ行く小説や漫画を読んでいたのだろう?ならこう考えろ、騙された主人公は復讐すると同時に仲間の為に身をすり減らして戦うと、完全に物語の主人公じゃないか、確かに裏方が多くなるだろう、策謀が入り乱れる大乱戦となるだろう、だがもし魔王を討伐し、元の世界に帰らない選択をしたとしてもお前は勇者達を導いた賢者、一度堕ちかけ、それでも仲間の為に立ち上がった英雄と噂されるようになるだろう、その世界を見て見たくはないか?」

 

「・・・。」

 

「だから先生を離してくれないか?」

 

「・・・分かった。」

 

清水は先生の首を絞めていた腕の力を抜く。

 

「危ない!」

 

ハジメの背後にいたシアがハジメを押し飛ばし、俺は叫び声に咄嗟に反応して身を縮めた。

 

シアと桜は清水から針を取り上げるために清水に飛びかかる。

 

シアは先生を回収し転がったが桜は間に合わなかったようだ。

 

気が付けば腹に大穴を開けた桜の姿があった。

 

「桜ああああああああああ!!!?」



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語り合い

ハジメは目を見開きながらもドンナーを取り出して攻撃が行われた場所へと銃撃を加える。

 

俺は叫びながらも桜に走り寄りその容態を確認していく。

 

腹に直径10センチほどの穴が空いている、抉り取られる様にはなっていないのが救いか。

 

「誰か回復薬持ってこい!」

 

仕方ない、敵への対処はハジメがしてくれている、桜の傷は手術をしないといけないレベルのものだ。

 

「背骨もやられてる、致命傷ではあるが・・・まだいける。」

 

何のために色んな世界で手術やら治療やらをしてきたと思ってんだ、こんな時に出来なくてどうする!

 

アッシュが大量の回復薬を抱えて俺の近くまで来た。

 

「これで足りるか?」

 

「やれる、できるだけ買い取るかしてくれたら嬉しい。」

 

魔術で手術道具を作り出して桜の腹を治していく、問題の箇所を一気にポーションで癒すのではなく血管や筋肉などを整えながら治していくのはまるで手術の逆再生を見ているようなもので、それに手慣れている様子に驚いている者もいれば顔を青ざめさせている者もいる。

 

「耐えてくれよ、桜。」

 

桜は時々身じろぎする様に動く、苦しいが麻酔を打つわけにもいかないので痛みが襲っているのだろう、アッシュとミナは口に布を喰ませて腕と足を押さえている。

 

どれくらいの時間が経っただろうか、桜の傷付いた腹はかなり修復したと言える時間になってしまった。

 

「クソッ。」

 

一番大事な作業で使えない、回復薬が切れた。

 

あとは傷を塞ぐだけだ、ギリギリで足りない。

 

「風魔、使え。」

 

ハジメから投げ渡されたのは少しだけ残った回復薬。

 

中身が何かは分からないがハジメが渡したのだ、粗悪品というわけではないだろう。

 

「助かった!」

 

そう言って回復薬を振りかけると肉が盛り上がる様に足りない場所を元に戻して行った。

 

「はぁ!?」

 

思わず叫んでしまう、それくらいにありえないものだった。

 

「俺はポーションって呼んでる。」

 

ハジメがドヤ顔でそう言ったからか足から力が抜けた。

 

尻餅をついて乾いた笑いをしながら安心した様に涙が出てきた。

 

「良かった・・・。」

 

噛みしめる様にそう言うと周りを見渡す。

 

清水の頭は吹き飛んでいた、多分ハジメがやったんだろう、俺も騙そうとはしたが助かりそうな奴でもなかった、桜が撃たれなければ清水の首をはねるつもりだったので文句は無い。

 

先生は俺たちを見て呆然としている、シアも、清水の持っていた毒針にモロに刺さったようだが多分さっきのポーションで回復したのだろう、ハジメに向かって笑いかけていた、ユエも同じだ。

 

アッシュとミナは疲れ果てて地面に寝転がっている、二人とも満足そうな顔だ。

 

「風魔、桜はもう大丈夫か?」

 

「あ、ああ、完全に元の状態に戻ったよ、あー、このままだと別の意味で危ないから着替える必要はありそうだがな。」

 

苦笑してそう言うとハジメは察したようでああ、と納得した。

 

桜の下腹部に血がべっとりと付いていたのでまぁそんな感じに若干見えるわけだ。

 

「にしても、ファインプレーだな、何でわかったんだ?」

 

シアにそうたずねるとハジメが未来視の魔眼を持ってると言った、なるほどと納得する。

 

立ち上がろうとしたが腰が抜けている。

 

ダメだなこりゃ。

 

「あーハジメ、肩貸してくれ、腰抜けた。」

 

「そうか?珍しい事もあるもんだな。」

 

「あ、あと先生、残りのことは頼みます、頑張って、シアさんかアッシュのどっちか桜をベッドまで運んでくれないか?」

 

「ん、シアじゃなくてもいける。」

 

ユエはそう言って桜を魔法で浮かせて付いてきた。

 

「ありがとう、ちょっと休憩するわ。」

 

そう言って宿屋に向かう。血だらけな俺たちを見て主人の人は驚いていたが仕方無いと部屋を指差した。

 

礼を言ってからベッドにおろしてもらう。

 

「本当にありがとな、ハジメ、あの薬ってどんな物なんだ?」

 

「伝説になってる類のやつなんだ、奈落の底でたまたま見つけたんだ。」

 

「それが生き残れた要因の一つか。」

 

「そう言うことだな。」

 

感謝してもし足りないな、ハジメには。

 

「なぁ、ハジメ。」

 

「ん?」

 

「ハジメの旅に俺も連れて行ってくれないか?」

 

「・・・本気か?」

 

「本気だ、この恩はいつか返したい、でもお前の強さなら大抵のことなら練成とかで潜り抜けられる、だから俺がいる意味はあまり無いかもしれない、俺と同じようなユエだっているしな。」

 

ハジメは俺をじっと見ている。

 

「だからと言っては何だが・・・多分俺は役に立たないと思う、言っても役に立ちそうなのは桜とかアッシュとミナとか、俺以外のメンバーだろう、だけど、お前と一緒に旅をして見たい。」

 

「本当の所は?」

 

「いろんなところを見て感じてみたいってのが一番かねぇ。」

 

ハジメは俺を見てため息をついた後俺の頭を殴った。

 

「いった!?ハジメお前何すんだよ!?」

 

「しけたツラしてんじゃねえよ。」

 

「・・・。」

 

「桜を守れなかったからか?それとも俺と旅をして見たかったから?違うだろう?俺たちは親友だ、言いたい事はわかるな?」

 

「・・・あー、すまん、これからも頼むぜ、相棒。」

 

自分のことながら予想以上に落ち込んでいたのをハジメに教えられてしまった。

 

情けない、とは思うが、俺も多少調子に乗っていたのだろう。

 

「あ、あのアッシュとミナは大迷宮を攻略してる奴等だぞ。」

 

「何?」

 

ハジメが顔を変える。

 

「確か4つかそのくらい攻略していたはず。」

 

「俺より多いじゃねえかよ、ステータスは?」

 

「平均7000、ミナは筋力だけ5桁だってよ。」

 

「ゴリラかよ。」

 

「それ本人に言ってやるなよ、結構気にしてるみたいだから。」

 

ハジメは遠い目をしていたがしばらくすると呟いた。

 

「いっそのことあいつらも連れて行くか?」

 

「何で?」

 

「いやだって、もしかしたら迷宮の助言とか貰えるかもしれないし。」

 

「あー、全然考えたことなかったな。」

 

俺は大まかな場所だけ聞いてただけだからそこまででいいやってなってたしなぁ。

 

「一応誘うだけ誘ってみるか。」

 

「そうだな。」

 

その後はライセン大迷宮がどんな場所だったとかオルクスの底はどんな場所だったかとか色々と話をした。

 

気付けば二人してまた兵器の実験をし始めたりしていてシアと目を覚ました桜が怒りながら部屋に突撃してきた事もあった。

 

先生達はどうなっているかは分からないがどうでもいいだろう。




主人公、アッシュ達がライセンから助言はあんまり言わないでと言われたこと欠片も覚えてません。

色々ありすぎて記憶から吹っ飛んでますねぇ。


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出発

「ほ、本当に出ていくんですか!?」

 

「先生、俺はハジメが生きていることが分かったんだ、あなたと一緒に居るのも楽しそうだが、親友と一緒にいたいんだ、先生がどう言おうと、俺たちは阿呆どものように人殺しだの何だのと騒ぐ奴らの近くにはいたくない、そんなのに大切な物を奪われるのなら例え親だろうが斬り伏せる。」

 

「それは、いけない生き方です。」

 

先生は怒っているようだ、それとかなり本気で心配してもいる。

 

「人殺し、人殺し、俺からすれば、世界が違うのにそういうものにこだわっているあんたらの方が理解できない、元の生活?ふざけるな、一度朱に交わればそれが何であれ白は染まる。虚構だと信じ、ゲームのように魔物を殺そうとしている奴らは、俺は絶対に信じない。」

 

娯楽は娯楽だ、そこに居る人間に失礼な真似は出来ない。

 

どんな場所でも誇りを持っている者たちがいる、そこで生きてきたという自負がある、魔物や動物は生存という結果を誇り戦いながら生きている、少なくとも、俺があってきた知性ある者たちはそうだった、人間でも、貧民街だろうが貴族だろうが、何がしかの誇りを持ち、それを守りながら暮らしている。

 

だがあいつらには覚悟が足りない、人を殺すというのならば覚悟がいる、それが無い、俺たちは戦争をしているんだ、人間達はゲームでレベル上げのように積まれる経験値じゃない。

 

「風魔くん・・・先生は諦めませんよ。」

 

「その前に自分の事をしたらどうです?貴女からすれば俺たちは問題児だ、問題児に絡んでいる暇があるなら大事な生徒を優先して下さい。」

 

「あなたも大事な生徒の一人です。」

 

「・・・そうですかね、俺的にはもう俺は社会人のつもりなんですがね〜。」

 

先生には悪いが俺は生徒じゃない、数ある一人ではなく、俺個人だという意思表示でもある。

 

「俺たちは多分この先殺し合う、それについていけないと思ったのなら大人しく見て見ぬ振りをするべきだ、貴女のような人は耐えられないと思う、まぁ、貴女の場合は生徒を守る為に人を殺してしまいそうですが。」

 

先生も納得したのだろう、少し愕然としているようだ。

 

「もし、そんな事になったら、逃げずに、殺した人達を背負った方がいい、それがどれほど重くとも、辛くとも、それが自分が殺した人に罪悪感を感じた時の処罰法です。」

 

「風魔くん、あなたも、人を殺した事が?」

 

「してますよ、日本でも、ここでも、いや、ここではしてないか?」

 

先生は知らなかったのだろうか、俺が人を殺していることを、桜と一緒になり始めた時、桜を助ける時に偶々通りかかった車に轢かせたことがある。

 

一番最初の事件だ。

 

武器を扱う力も、大人に頼る時間もなかったから、それなりに殺傷能力の高いトラップを仕掛けて足が傷付いた変態を道路に投げ込んだ瞬間に車に轢かせてしまった。

 

目の前で飛び散る肉塊にああ、またかと思うだけだった俺はきっと殺人鬼の才能があるのだろう。

 

今思えば、血が俺にかかって俺が暴走する時、それは快楽と共に訪れる、力を解放した、というより何かを殺せる、何かを壊せると無意識に感じているからなのだろう。

 

だから俺は先生に教えた、処罰法を、これは俺自身への戒めであり、楔であり、誇りだ。

 

敵以外には使わない。絶対に。

 

「君の覚悟は聞きました、でも桜さんは、それを望んでいないと思います。」

 

「人殺しを?それともあなたの元から離れる事を?」

 

「・・・人殺しを・・・です。」

 

「でしょうね、でも、俺はこのやり方を止めるつもりもない、それを止めるのは大切な者がなくなってからだ、俺が獣になった時だ、そしてその時が、俺が死ぬ時だ。」

 

なぜそう達観しているのか、そう言いたげな先生の顔は悔しさで一杯のようだ。

 

もう数え切れないほど生きてきた、それはもう天使とすら言えないだろう、夜月のただ一人の部下としての誇り、それだけが俺を獣ではなく、人間、知的生命体として生きさせている要因だ。愛だの絆だのは二の次だ、その誇りが無ければ、誰が永遠ともいえる時間を一緒に付き合うものか。

 

「では先生、さようなら、また会う時があれば、その時はまぁ、世間話でもしましょうか。」

 

「・・・ええ、その時は世間話だけではなく、私達の話もしましょう。」

 

そう言って俺を待っているハジメ達の元へと向かう。

 

そういえばアッシュとミナは結局ついてくる事になった。

 

ミナがどうせなら金のパーティの一員になった方が便利かもと言ったからだ。

 

その際助言は出来ないが攻略のコツのような物は教えてあげるという約束の元ついてくる事になった、桜は俺か他の誰かと戦わないと攻撃すら出来ないので俺たちについてくる事に、それに、クラスメイト達には信じられる人がいないという事もある。

 

一番の要因は天使である俺たちについて行った方が生き残れると思っているからだろう。

 

「もう良いのか?」

 

「・・・問題は無いさ、どうせまた会うだろうしな。」

 

「・・・俺としては会いたくないくらいなんだがな。」

 

「どうせ教会あたりがお前の事危険分子だと言って勇者達を差し向けて来るだろうさ、その時にはもう阿呆どもがなぜそんな事を〜許さないぞ〜だの何だのと言ってくるぞ、早いか遅いかの違いだ。」

 

「やっぱりそうだよなぁ、会いたくねぇ。」

 

「ちょっと前の男二人〜水出して水〜。」

 

「ミナ?俺たちは同乗させてもらってるだけだからな?そこを理解してくれよ?」

 

「何よアッシュ、こんなの頼めばどうにかなるって。」

 

うわ、水出したくねぇ。

 

ハジメもそう思ったようで無視を決め込む。

 

「なら水をかぶるといい。」

 

「ユエ、それは車がびしょびしょになるからやめてくれ。」

 

ユエが浮かべた水球を見てハジメがそう言うとユエは舌打ちをした。

 

「言わんこっちゃない。」

 

「で?水で良いんだな?」

 

「ありがと、あー喉乾いてたのよ、あんたらなら信じられるし安心ね〜。」

 

「おいおい。」

 

「本当にすまない。」

 

アッシュが下だということはよく分かった。

 

「あの・・・。」

 

「ん?なになに?私に何か用?」

 

「み、耳を触らせて貰っても良いですか?」

 

「え?耳?」

 

ミナの頭から出ている耳は毛並みが良くて触り心地が良さそうだ、桜はずっと触りたかったらしい。

 

「なら後で触らせてあげるわ、今はほら、大所帯だし、寝転がったりは出来ないでしょ?」

 

「そう・・・ですね。」

 

「桜って可愛いものも綺麗なものも好きだからな、この前熊のぬいぐるみあげたらウキウキして抱き付いてたし。」

 

「抱き付いてたのか、大きいやつか?」

 

「おう、子供達との合作の自作、50センチの抱き枕兼人形みたいな奴。俺の横で笑顔でぐるぐる転がってた。因みに今はゆかりさんと従姉妹のあかりちゃんの2人がたまに桜から奪ってリビングで寝てたりする。」

 

「従姉妹いたのか。」

 

「いたぞ、あかりちゃん、将来の夢はゆかりさんとの共演だってよ、桜も声優なれんじゃないか?」

 

「や、止めて、恥ずかしいから・・・。」

 

桜は顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。

 

周りは暖かい視線なので余計に恥ずかしいだろう。

 

「それじゃまずはフューレンに行く事になってるから、ま、よろしく頼むわ。」

 

「おう、パーティ結成に伴ってなんか名前付けるか?」

 

「お?良いぞ、実況チームの名前として作っちまおうぜ。」

 

「なら拘らないと行けないね、何にしようか?」

 

俺と桜とハジメだけ物凄く真剣に考え始めた。

 

運転をシア達に代わってもらったことから俺たちの本気度が分かるだろう。

 

名前が決まるのかは・・・分からない。




ネーミングセンスが無いのである人尊敬します。

是非私にネーミングセンスを下さい。多分このシリーズが増えるので。


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フューレン

「で、ここがフューレンと、なかなかでかいな。」

 

「俺たちはギルドで報告した後シアと出掛けるからお前らも各自自由に頼む、終わったら宿に集合な、座標は送るから。」

 

ハジメはそう言ってグループ毎にポッドを配り始める。

 

「また変な事に巻き込まれそうだな、このメンバー。」

 

「・・・言うなよ。」

 

来る度にそう言う事になってたら意味ねぇぞ。

 

という事で俺たちは暇になってしまった。

 

「どこ行く?」

 

飯とかそう言うのがいらないのも考えものだな、何もすることがない。

 

「水族館とかあるらしいけどね。」

 

海の物とか見てもって感じだしなぁ。

 

「結局何もすることがなさそうなんだよなぁ。」

 

「そうだね。」

 

「桜はミナの耳触らせてもらう予定じゃなかったのか?」

 

「それは夜にだって、公共のど真ん中でやると結婚する人同士のものになっちゃうから・・・だって。」

 

うずうずしていた桜はしょんぼりという空気を隠さないでそう言った。

 

俺は桜の頭をポンポンと撫でて慰める。

 

「うーん、孤児院でもいく?」

 

「それしかないか、まぁ適当に雑用でも済ませよう。」

 

という事でギルドに言って孤児院の雑用やら家の雑草抜きやらをまとめて受ける、孤児院の子供達に手伝わせるつもりでもある。

 

「そういえば全くと言って良いくらいステータスプレート見てないな、久しぶりに見てみるか。」

 

「本当に見てなかったんだ、私は結構見てたりするよ、火力支援が増えてたのもそれのお陰だし。」

 

「はー、真面目だなぁ。」

 

「どこかの大群に嬉々として向かっていく変な人とは違うのです。」

 

「悪かったって。」

 

そんな事を言いながらステータスプレートを見てみる。

 

確か前のステータスがこんな感じだったはずだよなと少し前のステータスプレートを思い出してみる。

 

ーーーーーーーー

秋月風魔 17歳 男 レベル:1

天職 魔術師

筋力 20

体力 600

耐性 860

敏捷 200

魔力 10000

魔耐 5000

技能 魔術作製[+複合魔術] [魔術書き換え] 魔法操作 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇]高速魔力回復[+回復量上昇]想像構成[+複数同時構成]同時思考[同時思考数増加]言語理解

 

ーーーーーーーーー

 

うん、こんな感じだった。

 

そして手元のステータスプレートを見てみると

 

ーーーーーーーー

秋月風魔 17歳 男 レベル:34

天職 魔術師

筋力 60

体力 6000

耐性 9360

敏捷 900

魔力 1000000

魔耐 79400

技能 魔術作製[+複合魔術] [+魔術書き換え][+神代の魔術作製] 魔法操作[+同時操作数増加] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+消費魔力軽減]高速魔力回復[+回復量上昇][+魔力吸収]想像構成[+複数同時構成]同時思考[同時思考数増加]言語理解

 

ーーーーーーーーー

 

「・・・俺ってチートでも使ってんのかな。」

 

「今更でしょ?」

 

全く否定出来ない。

 

というか筋力のバランスがおかしくないかね、成長率やばすぎだろう?これで魔術無かったらクソゲーだっていうレベルだぞ。

 

「気にしても無駄か、どうせ使い切ることなんざそう無いだろうからな。」

 

「スキルが増えてることも理解してるよね?」

 

「これ以上増えるとかやめてほしいぜ。」

 

「贅沢な悩みだね。」

 

桜のは汎用性あるじゃないか、なぜそう不貞腐れてるのか。

 

「なんでそんなに不機嫌なんだよ。」

 

「だって私なんて殆ど増えてないもん。」

 

「どんなのなんだ?」

 

「・・・はい。」

 

桜の前のステータスはどんなだったか。

 

ーーーーーーーー

結月桜 17歳 女 レベル 1

天職 支援者

筋力 10

体力 10

耐性 400

敏捷 200

魔力 300

魔耐 2000

技能 魔力支援 魔術支援 防御支援 攻撃支援

ーーーーーーーー

 

確かこんな感じだったよな。

 

んで?今のステータスはどんな感じなんだ?

 

ーーーーーーーー

結月桜 17歳 女 レベル 1

天職 支援者

筋力 20

体力 200

耐性 560

敏捷 250

魔力 6500

魔耐 20000

技能 魔力支援[+魔力共有] 魔術支援[支援魔法] 防御支援[+障壁] 攻撃支援[+火力支援]

ーーーーーーーー

 

「一番最初の頃のハジメよりかはマシだな。」

 

というより5桁がある時点で他の誰よりもマシだろう。

 

俺もそう文句は言えないと思うからな。

 

「でも・・・。」

 

「俺がバグってるだけでそうおかしくないさ、気長にやっていこうぜ。」

 

「・・・うん。」

 

何かに焦っているような感じだな、早いうちにとは言わないが、どうにかしないとな。

 

そして孤児院の仕事をしていく俺と桜は昼くらいに全ての仕事が終わり、ガキ共と遊ぶ事になった。

 

「なぁなぁ!にいちゃん!にいちゃんってぼーけんしゃなんだろ!?なんか冒険とかしてきたのか?」

 

「ああ、してきたとも、ふむ、ならその話をしてやろうか?」

 

『おお〜!』

 

俺は男子共を集めてオルクスでの話をする、ほとんど会話なんて無かったがそれらしい仲間も作った、すべて架空ではあるが魔法があるこの世界では小さなゴーレムでも作れば劇場のようになる。

 

桜は女の子達と一緒におままごとやガールズトークに励んでいる、花の冠をもらっていたりして順調に打ち解けているようだ。

 

そして人が苦手な孤児達は少しずつ俺たちに慣れていった、病弱だったり亜人族だったりする子でも俺がミナをモデルにした仲間を作っていた為話に入ってきたりしている。

 

そして劇が終わり、みんなから拍手を送られているとずっと宙に浮いていたポッドから通信が入った。

 

『こちらポッド001から通達、保護した子供が攫われた、協力を頼む。』

 

俺と桜の雰囲気が一瞬で変わる。

 

『こちらポッド002、情報を開示せよ、出来る限り詳しくだ。』

 

『同じくポッド003、情報の開示を求める。』

 

『ポッド004、同じくなのじゃ。」

 

他のメンバーもすぐに応答する。

 

『俺とシアが保護した海人族の子供が攫われた、その際彼方さんが欲をかいたらしい、俺たちのメンバーの中の女性陣全員の引き渡しを求めてきた、さて、他に説明はいるか?』

 

「『要らん。』」

 

俺とアッシュが同時に答える。

 

そして周りを探してみると暴漢達が孤児院を囲んでいる事が分かった、明らさまに狙われているので分かりやすかった。

 

「・・・こちらでも確認した、チンピラ共がうじゃうじゃと、敵のアジトが分かり次第座標を送れ、そこに向かう。」

 

『了解、健闘を。』

 

『こっちもまたうじゃうじゃと虫のように、戦闘を開始する、遅れるなよ。』

 

「俺たちに喧嘩を売ったこと、後悔させてやろう。」

 

『応!』

 

『何か・・・妾達だけ空気なのじゃ・・・。』

 

ティオが何かを言っているが無視だ無視。

 

「桜は子供達を頼むわ、俺はチンピラ共に少し灸を据えてくる。」

 

「うん、分かった、気を付けてね。」

 

子供達を孤児院の中に押し込んで叫ぶ。

 

「かかって来い、標的はここにいるぞ!」

 

すると大量のチンピラ共が出てくる、来るタイミングが遅すぎる、避難させている途中に襲えば良かったものを。

 

「・・・秋月風魔、参る!」

 

孤児院の子供達には悪いが、血生臭いことになるな。

 

前にいた3人を斬り飛ばしながらそう思った。孤児院の前の道路に死体が飛んで行って叫び声が上がった、時期に自警団達も来るだろう。

 

「さて、狩りを始めよう。」

 

数十秒後、叫び声を上げる人間は居なくなっていた。




血生臭いのは主人公の方である。

捕縛すら思考に入れないという徹底ぶり、静かに切れてます。


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芸術は爆発?

「ここか?また地下か、潜るの面倒なんだがな。」

 

『そう言うな、何処もかしこもこんなもんだ、俺は既に中にいる、俺が戦闘を始めるのと同時に観客達を拘束してくれ。』

 

ハジメからの通信はどんどん戦闘音が大きくなっている。

 

アッシュもかなりの数を相手にしている様で受け答えできる程ではない、強いて言えばシアとティオの2人がかなり余裕がある程度だろう。

 

桜は孤児院で障壁を張っているのでここには居ない、さっき下の方を自警団達が走っているのが見えた、殺人事件が多発しているからだろう、遠くから爆発音も聞こえていることからアッシュとシア達が暴れているのだろう。

 

「いた!あんた!何でこんなところに居るのよ。」

 

「ミナ、女の子が攫われてたもんでな、アッシュ達と一緒に敵の対処頼むわ。」

 

「は?」

 

俺に向けて大量の矢が飛んでくる。

 

ミナはそれを咄嗟に避けて飛んで来た方向を見ていた、屋根の上に何人か見える。

 

「退路の確保を頼む、そこからは俺たちが何とかするから。」

 

「ちょっ、待ちなさい!待ちなさいよ!?」

 

ミナの声を無視して地面に降りる、扉の前にいる門番達は気絶している、ハジメが無力化したのだろう。

 

「後で覚えてなさい!」

 

上からそんな声と共に悲鳴が聞こえる。

 

「すまんが人助けの為だ、許せ。」

 

聞こえていないと思うが呟いてみる。

 

幾つかの扉を調べているとひときわ大きい扉の先でオークションが始まっていた。

 

商品が出されているのを尻目に姿を消して魔法陣を描いていく。

 

「ハジメ、用意は出来たぞ。」

 

『了解、ミュウを確認したら襲撃する、手伝え。』

 

「了解リーダー、頼むぜ。」

 

そして壁際で舞台を見る、すると水槽と共に海人族の少女がオークションに出されていた。

 

かなり幼い子だ、海からここまでかなり遠かっただろうに、よく耐えたものだ。

 

手にはハジメの眼帯と思われるものを持っていた為抵抗でもしたのだろうかと思っていると司会人が怒りの形相で叫び始めた、ああいう子に叫ぶのは駄目だろうに、動かないのに業を煮やしたのか棒で突こうとしていたのでそろそろ介入するかと思い舞台に向かう。

 

「全く、そんなところにいたのか、ハジメ。」

 

「全く、辛気臭いガキですね。人間様の手を煩わせているんじゃありませんよ、半端者の能無しごときが!」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すぞ?クソ野郎。」

 

天井に張り付いていたハジメが急降下と共に司会者を殴った、ショットシェルと共に繰り出された拳は司会者を一瞬で肉片に変えた。

 

「おいおいハジメ、血が飛び散るじゃねえかよ、ちゃんと飛ばす方向くらい絞ってくれ。」

 

飛んで来た血を障壁で防いだ俺が言うとハジメはジト目を俺に向けてくる。

 

「軽く防いでるお前が言うことじゃねえよな、取り敢えずミュウを出すぞ。」

 

「美少女、変態ときて今度は子供か、お前、主人公の才能あると思うぞ。」

 

「言うなよ、出来過ぎたライトノベルみたいな出来事ばっかりなのは良いことだが、その度に死にかけたらキリがない。」

 

「死ぬようなタマか?お前。」

 

水槽から乱暴だがミュウと呼ばれた少女を出してあげるハジメを尻目に黒服達が俺たちの周りを囲んだ。

 

「どっちが護衛?」

 

「場合による、取り敢えずはまぁ・・・見せしめだな。」

 

「賛成、んじゃ・・・やるか。」

 

俺達の空気が変わったのを見て色々と叫んでいたリーダー格は指示を飛ばす、フリートホーフがどうだのと言った内容でだ。

 

だがそれを言い終わるまで待ってるほど暇じゃない。

 

「「死ね。」」

 

俺とハジメは黒服達に一斉に牙を剥いた。

 

ハジメはドンナーを連射していく、ドンナーの弾は1人ではなく3人くらいを一気に貫いていく。

 

俺は刀を出して通りすがりに切っていく、面白い様に人が死んでいく様を見て観客達が立ち上がって逃げようとする。

 

が俺が敷いた魔法陣が起動して体が椅子に固定されている。

 

動けなくてパニックになっている観客達を横目に俺たちは容赦無く敵を切り刻んで行った。

 

そして終わりの合図がなった。

 

ハジメがドンナーで天井に穴を開けたのだ、アイコンタクトでついて来いというのでついていくとハジメはたーまやーという声と共に先程までいた建物が大爆発が起きた。

 

「ふぇええええ!!?」

 

「うっそだろおい!?」

 

「ハッハッハッハ!!芸術は爆発だ!」

 

ハジメが一気にハイテンションになっているのを見て少しだけ親友の所業に引く。

 

『おい!?あれ大丈夫なのか!?』

 

「あー、そこんところどうなんですかね、ハジメさん?」

 

「問題無い!」

 

「・・・だそうだ、どう考えても支部長とかヤバイことになってるだろこれ。」

 

『後でなんか持って行ってやろう・・・これは余りにも不憫すぎる。』

 

持って行ってやれ。

 

「支部長で思い出した、全員支部長の所に集合な!」

 

『哀れすぎる。』

 

桜にもポッドに伝言を頼んで放置した。

 

俺とアッシュと爆発に巻き込まれかけていたミナは合流し、支部長にあげる品の相談をし始めたのだった。




早く勇者達と合流したいでござる、というかグリューエン大火山のプロットが固まったので早く次に行きたいのだ。


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ホルアドに着きました。

ハジメが支部長室に無遠慮に入っていくのを見て天使組は胃がキリキリと痛む様な気がした。

 

「一応胃薬持って来たんだが・・・支部長に渡したら喜ばれるかねぇ?」

 

「どうだろうな、常備してそうなくらい迷惑掛けてると思うぞ。」

 

「というかあんたの親友でしょ?止めてきなさいよ。」

 

「無理だ、性格変わったから許容範囲がどのくらいか分からん。」

 

「あはは・・・案外変わってない気がするんだけどね。」

 

4人でこそこそと喋っているのが気になったのか秘書の人がこっそりと寄って来た。

 

「何を話されておられるのですか?」

 

「あ、これつまらない物ですが。」

 

「・・・ありがとうございます。」

 

秘書の人の目に涙がたまっていることに気付いた俺たちは全員遠い目をした。

 

「少なくとも風魔はそう思う権利は無いと思うよ?」

 

「桜、それは俺に効くからやめてくれ。」

 

そんな会話をしているうちにミュウちゃんは俺達とついてくる事になったらしい。

 

「パパ!」

 

何の話だ!?

 

天使組の総意である。

 

「いや待て!?もういい!お兄ちゃんでいいから!贅沢は言わないからパパは止めてくれ!」

 

「や!パパはミュウのパパなのー!」

 

「ああ、そういう・・・。」

 

話に置いていかれてたがどうにか現状を把握する。

 

桜は完全に目が垂れている、子供を見る目だ。心なしか微笑んでいる様に見える。

 

アッシュ達も2人で静かに笑いながら眺めている。

 

「風魔は!?風魔は何て呼ぶんだ!?パパに相応しいと思うのはむしろこいつだぞ!?」

 

「お兄ちゃんなの!」

 

「何故!?」

 

コント見てるみたいで面白いんだが。

 

というかハジメ、俺を巻き込もうとするんじゃねえ。

 

その後もハジメはパパ呼びをどうにかしようとしていたが出来なかった様だ。

 

最後は泣きそうな顔でこちらを見てきたが手を合わせて冥福を祈った。

 

その後ぶん殴られて喧嘩になったのは不可抗力だと思う。

 

というかその義手かなり痛いんだよ、止めろ。

 

ーーーーーーーー

 

「ヒャッハー!ですぅ!」

 

「おいシアさん!?そんなトロトロ走ってて大丈夫かぁ!?」

 

俺達の先ではシアとアッシュが競争している、競争というより両方とも好きな様に走っていると言った方が正しいが。

 

アッシュの後ろに乗っているミナが涙目で叫んでいるのが印象的だ。

 

ガチビビリなので大変喧しい。

 

ハジメは運転は俺に任せて後ろでユエとイチャイチャしている、というか無駄に日本の車を再現しやがって、ほぼ制限なんてないようなものだがウィンカーやミラーなども付いているあたり遊びまくっている。

 

「運転はどう?」

 

「それほど難しくはないな、制限が無いからかなり快適だ、多分桜も運転出来るくらいには操作できるんじゃないか?」

 

「それなら後で変わってみようかな。」

 

それがいい、後ろでイチャイチャしているハジメを尻目に俺達は喋っている、ミュウが不思議そうな顔で覗き込んだりしているが無視する。

 

「お兄ちゃんと桜お姉ちゃんは付き合ってるの?」

 

ミュウのその言葉に驚いて俺たちは固まった。

 

車が右へ左へとジグザグに進むことが無かったのは幸いだろう。多分そうなってたら事故ってた。

 

「つ、付き合っては無い・・・かな?」

 

「でもユエお姉ちゃんとパパと同じ感じがするの!」

 

止めて、運転が荒くならないうちに止めて!

 

俺の顔は真っ赤だろう、桜の顔は恥ずかしくて見れない。

 

「・・・はぅ。」

 

「ちょっ!?桜ぁ!?」

 

ハンドルから手を離せないので桜は恥ずかしさで気絶したままだ。

 

ミュウが桜のいる助手席に移動して桜と一緒に座って満足そうなのも見えない、その際に下着が見えそうになっている事にも見てないふりだ。

 

この時後ろでハジメ達がミュウはすごいなどと話していることは全く気付いてなかった。

 

ーーーーーーーー

ホルアドに着き、ハジメがフューレンで請け負った用事を終わらせるまでの間暇になったので街を歩いていると影が薄いことで有名な遠藤が俺の横を走っていくのが見えた。

 

俺は地球でもこっちでも空気の振動とかで感知しているので遠藤が見えている、少し気になったのでついていく事にした。

 

冒険者ギルドに向かっているようだったが、どういう事だ?

 

俺はついでに白崎との面談を設けてやろうと思っただけなんだが。

 

冒険者ギルドで新しく金の冒険者になった!と喜びを分かち合っているアッシュとミナは満足そうに互いを見る。

 

ミナの尻尾はピーンと立っておりご機嫌な様子だ。

 

「これで私達も金の冒険者よ!やったわ!」

 

「あんまりはしゃがない方がいいぞ、周りが見てるからな。」

 

桜も適当な席に座って微笑んでいる、桜に手を伸ばしている奴がいたので手を掴む。

 

「ちょっと、俺の連れに何か用ですかい?」

 

今の俺はローブを着ている為かなり怪しく見える、らしい、ハジメのおかげでどんな環境でも着用者を常温に保ち、勝手に修復され、血もすぐに落とせる高性能なアーティファクトに変化した、ハジメ様々だ。

 

「わ、悪かったよ。」

 

おっさんはバツが悪そうに手を引っ込めた。

 

「あ、風魔、かおりちゃんのところに行ったんじゃ無いの?」

 

「ああ、遠藤を見つけたんだ、かなり急いでるみたいだったからな、後をつけてきた。」

 

「そうなの?」

 

「ああ。」

 

そう言いながらハジメ達の真横で喜んでいたアッシュ達を見ると遠藤にまとわりつかれていた。

 

「すみません!俺の仲間を助けて下さい!お願いします!お願いします!」

 

「ちょっと、話が分からないわ、取り敢えず話を聞かせて頂戴?そうじゃないと助けるにしろそうでないにしろ判断出来ないわ。」

 

アッシュはなんとも言えない表情でミナを見ていた。

 

先程から何かを言おうとしてそれを先にミナに言われているのでそれ俺の台詞なんじゃという事だろう。

 

その様を見て驚いていたのはハジメだ。

 

「遠藤?」

 

そう呟いてしまうのも無理は無いだろう。

 

「ハジメか!?どこだー!ハジメ〜!」

 

「フッハハハハハハ!!おいハジメ!おまえ認識されてねえじゃねえかよぉ!?」

 

ハジメの頭に青筋が浮き出る。

 

遠藤は声を出した俺の方を向いて目を向いていた。

 

「秋月と結月さん!?何でここにいるんだ!?いや、ちょうど良い!お前等もすぐに来てくれ!みんなが危険なんだよ!」

 

「フフッまだ認識されてない、フハッ。」

 

「良い度胸だ風魔、表出るか?ああ!?」

 

「どうどう、落ち着け、良いな?ハジメ、遠藤が助けを求めている、言う言葉はわかるな?」

 

「・・・。」

 

「ほら早く言え、早く言えよ。」

 

「・・・だが断「はい、茶番はそれまでね。」そんなー。」

 

今のやり取りで白髪眼帯の義手を付けたハジメを遠藤は正しくハジメだと認識したようだ。

 

「さて遠藤、説明はしてくれるな?アッシュとミナも一緒に行こう、チーム組んでるんだしな。」

 

アッシュとミナと遠藤は同時に頷いた。




これがやりたかっただけである、魔人族戦は割とあっさりと終わるのではと考えております。


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出撃準備

ハジメが認識されてないのをひとしきり笑った後に話を聞こうとするとギルド長から呼ばれる結果となった、何でも遠藤が呼んだらしい、説明も兼ねて俺達も参加する事になった、がミュウちゃんがお菓子をポリポリと食べているので緊張感というものが欠片も無い。

 

というか遠藤とギルド長達しか焦っていない。

 

仕方ない、だって俺達はどちらかといえば他人だし、何処ぞのアホじゃないんだ、白崎以外はどうでも良い、俺だって助けろとか言われなくても助けようかなと思うのは白崎以外いない。

 

遠藤は俺が居るなら助けられると思っているようだが、どうでも良いというのが俺の意見だ、桜はどうなのかはわからない。

 

「な、仲間だろ!?何で・・・。」

 

「仲間?俺はお前達に対して、同郷の人間程度にしか思っていない。」

 

ハジメは白崎はどうなのだろうか、何だかんだ一年間一緒にゲームとかお泊りとかしてたんだし、それなりに情はあるだろう、それがどんなものであれ。

 

「なら風魔は!?お前はどうなんだよ!?」

 

「・・・おいおい、そんなわかりきったこと言うなよ、俺が気に入ってるのはハジメで親友もハジメだ、お仲間上等手を取り合って生きていきましょう?ふざけるなよ、ただ外面だけを取り繕った愚か者についていくくらいならば少年兵となり戦争に参加した方がマシだ、あんな稚拙な大きな子供を抱えておく必要など無い。」

 

俺の言葉に愕然としている遠藤は声を出せないくらいに驚いている。

 

「・・・彼女は・・・白崎は無事か?」

 

そんな時にハジメがそういった。

 

遠藤は少し黙っていたが焦って無事だという事を伝えた。

 

「そうか、白崎は無事か・・・風魔。」

 

「・・・決まりだな。」

 

「ああ、行くぞ。」

 

「言ってくれるのか!?」

 

「感謝しろよ?白崎に、生きてくれてありがとうってな。」

 

そういってハジメは笑った、ニヤリとした笑いではなく獰猛な笑いだ、ゲームで逆境で出すような笑いだ。

 

「風魔、私はどうすれば良い?」

 

「今回は速さが命だ、ミュウを守る為にティオと桜は地上に残ってくれ、帰って来れば勇者組の回復を頼む。アッシュ、ミナ、俺、ハジメ、シア、ユエの6人チームで出撃する。」

 

『了解!』

 

「勇者組の現在位置が分からない、ポッドは一応渡してあるが、整備出来ないだろう、座標は分からないぞ?」

 

「安心しろ、どうせ迷宮に入れば分かることだ、俺がこういう時のための装備品を各々に渡してある、勿論、阿呆にもな。現在位置は分からないが、一定周期で魔力の発信をしてくれる、俺の命令があればすぐに稼働するし、俺にだけ分かるが、ポッドを連れて座標を送れば問題はは無いはずだ。」

 

「なら、お前1人で行くのか?」

 

「いや、遠藤の言っていることが確かなら90階層くらいで待機する方が良いだろう、ハジメのパイルバンカーやミニガンでも階層はそう簡単には抜けない、練成があるから何とも言えんが、まぁ無理だと判断しよう。俺とミナとアッシュで道中の魔物を殲滅する、各々に渡した装備品の効果は20階層分くらいになれば届く、それまでは一気に進む。」

 

「俺達はそんなに強くないぞ?」

 

「安心しろ、お前等がウルで色々とやってた時にハジメと一緒に作ってる、試射とかを道中にしてもらおうとしてたんだがお前等の興味はバイクに全部持ってかれたからな。」

 

俺の言葉にウッと言葉を詰まらせる2人は目も合わせようとしない。

 

「アッシュ、お前には魔力で動く弓を渡す、魔力が矢だ、段数に上限はあっても、弾切れの心配はそうしなくても良い。ミナには拳に風をまとわりつかせるから籠手だ、魔力伝導率を上げるのと風じゃなく、爆発する遠距離用の風弾と衝撃波と反動を利用して高速移動出来るようにした近接風弾の二種類を放てるようにした。」

 

「万々歳じゃない!良いもの作るわね!」

 

ミナが喜んでいるようだが試射する時間を潰したのはアッシュだ、後で殴っとけ。

 

ハジメが宝物庫と呼んでいるものからその二つを作り出す。

 

その二つを持ち、少し嬉しそうな2人を見てハジメも微笑む。

 

「キリキリ働けよ?」

 

「分かってるって!」

 

「リーダーの指示だ、頑張ってみるさ。」

 

「よし!遠藤!全員の案内頼むぜ!」

 

「お、おう。」

 

遠藤はついていけてないようだが無視する。



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魔人族戦

二回目の投稿です、全話から見てください。


「よし、今が70階層、魔術起動、3分周期で魔力を放出する、此処からは時間勝負だ、ペース上げるか?」

 

「ああ、もう少しくらいなら上げても大丈夫だ、こんな雑魚ならもう少し的にするべきだったかな?」

 

「私も後は近接戦くらいかしら?遠距離の方が火力高いし、私には近接戦の方が強いと思う。」

 

俺達の会話を聞いて遠藤は完全に引いている、ステータス的にどう足掻いても1人じゃ無理な場所だからだ、俺達は感知した敵を壁の向こう側から撃ったり、槍で突いたりしながら倒していっているからだろう。

 

「OK、場所を感知した、行ってくる。」

 

俺は転移魔術を用いて勇者達のいる部屋に転移した。

 

「ーこれは・・・最初から私達の戦争だったのだ!」

 

メルド団長・・・だったか?なんか柄にもなく死のうとしてるようだな。

 

「ふむ、面白そうな話をしているな、それで?君たちの答えは何なんだ?」

 

『!?』

 

「風魔くん!?」

 

白崎だけが俺の名前を呼ぶ、姿も無く現れた俺の名前を呼ぶ白崎の言った名前で魔物達を統率していると思われる女が顔を歪めて言った。

 

「情報にあった化け物か・・・!」

 

「おいおい、化け物とは酷いな、れっきとした魔術師さ。」

 

ポッドに指示を出して座標を送った、きっとすぐに来るだろう。

 

俺は座標を送った後に魔力を垂れ流す。

 

阿呆が力を解放しようとしているのが見えたからだ。

 

「お前ぇー!よくもメルドさんをー!!」

 

「なっ!?クッ、勇者に加えて化け物まで!」

 

阿呆は一時的にステータスを増やしたようだ。

 

女は何とか防御したが肩から腹まで一気に切り裂かれた。

 

「何の三文芝居だい・・・こんな逆転の仕方なんて。」

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

阿呆は逃さないように確実に殺せる距離まで踏み込んで剣を大上段に掲げる。

 

「ごめん・・・先に行く、愛してるよ、ミハイル。」

 

「!」

 

・・・やはりダメか、やっぱりというしかないな。

 

白崎の方に歩いていく、注目は阿呆の方に向かっているから問題は無い。

 

そして魔人族の女はあれこれと喋った後に魔物達に剣士の女を狙えと号令を出した。

 

そして剣士の女、八重樫は白崎の近くまで吹き飛んできた。

 

「えへへ、1人は嫌だもんね。」

 

そこに・・・誰だっけ、誰でもいいや、女子が盾を並べる。

 

そして亀が八重樫と白崎に飛びかかっていった、全く。

 

「俺の存在を忘れてないかね?俺は遠藤じゃねえぞ?」

 

その言葉と共に魔力を固める、魔術を起動し盾を作る、物理的に遮断し衝撃が俺の体を襲う。

 

「風魔・・・くん?」

 

「ああ、そうそう白崎ハジメの変わりようは驚くぞ?」

 

「え?」

 

俺の盾の先で赤雷が通る。

 

「おい、少し遅いぞ。」

 

「お前が早すぎるんだよ。」

 

「ちょっとちょっとー、なに此処敵だらけじゃーん、どうすんのよこれー!」

 

「的が増えたから良いだろう。」

 

「でもこの数を守らないといけないなら一苦労ですよぉ〜!」

 

「ん、でも私達なら出来る。」

 

「マジかよ、本当に階層ごとブチ抜きやがった。」

 

杭で貫かれた亀の上に次々と着地するハジメ達は余裕そうな表情だ。

 

「おい遠藤、お前らはクラスメイトを一か所に集めてくれ、アッシュ、ミナ、ハジメ、行くぞ、ユエとシアはクラスメイトの護衛だ。」

 

「了解、いつものボス戦だな。」

 

「いつもでは無いだろう?どちらかといえばVRのボス戦だろ?」

 

「それならどれだけ良かったことか。」

 

「それはすまんかった。」

 

周りの数は結構いるようだ。

 

「よし、魔人族だとか何とか知らないけどよぉ〜、俺の依頼はそいつらを助けることなんでな、死んでもらう。」

 

「恐れるな、死ぬ時間が来ただけだ。」

 

「・・・!みんな!あいつらをやりなぁ!」

 

魔物達が俺たちに襲いかかる。

 

「遅いぞ、それに、見えてるぞ。」

 

ハジメはそう言って銃を一見何もない場所に向けて撃つ。

 

すると頭が無くなった魔物の死体が現れた。

 

その様子に驚いたのかゆらゆらと動く透明な影が幾つも見えた。

 

「なるほど、動けば見えるのか、雑魚すぎる、笑うしかないな。」

 

「はぁ!」

 

「援護しよう。」

 

ミナとアッシュが動いた影に向かって攻撃を加える。

 

「ふむ、動きを封じてやろう。」

 

止まっているブルタールに鎖を巻きつかせる、隙を見て突撃するつもりだったようだ。

 

「ただの雑魚ですぅ!」

 

「・・・邪魔しないで。」

 

シアとユエも順調に敵を排除しているようだ。

 

「化け物ばっかり!何なんだあんたらは!?」

 

「・・・ふむ・・・なぁ風魔、俺たちは何だろうな?」

 

「さぁな、化け物もそんなに悪くない、だろう?」

 

「まぁな。」

 

魔物達は既に強い数体を残すのみ、どんなに強くてもステータス平均千単位の奴らに囲まれては雑魚に過ぎない。

 

白い鳩はいつの間にか死んでいた、多分ハジメがやった。

 

魔人族の女は出口を見て今度こそ力を抜いた。

 

「最初から詰み、だったのかい、運が無い。」

 

其処には銃口を構えたビットが浮いていた。

 

「そういう事だ。」

 

「ちょっ!この煙石化すんじゃねえかよ!うわ、服固まった、面倒な。」

 

「何やってんだお前は・・・。」

 

服が固まったのを解除しながら女に近づいて行く。

 

「ああ、治った、で?あんたらの目的は迷宮の攻略かね?こんな雑魚だけ貰ってもなぁ。する事無いでしょ。」

 

「・・・あんたら、あの方と同じかい・・・だったらその化け物具合も頷ける。」

 

「まぁ目的は風魔が分かってたみたいだし、俺が聞く事は無いな、んじゃ、死ねよ、俺らに手を出した時点で敵だしな、話し合いから入っていれば見逃したかもしれないのに。」

 

ハジメは銃口を女の額に当てる。

 

「じゃあな。」

 

その時阿呆が叫んだ。

 

「待ってくれ!殺す必要は無い筈だ!話し合えば、きっと!」

 

「・・・いつか、私の恋人があんたを殺すよ。」

 

「・・・ハッ、待ってろよ、すぐにそっちに送ってやるよ。そいつもな。」

 

そう言ってハジメは女を撃った、血が溢れ、女は倒れる。

 

「念の為に燃やしとくわ。」

 

「おう、頼んだ。」

 

心臓に刀を差して切り刻んで燃やした。死体は欠片も残らない。

 

「何故、殺す必要があったんだ。それにお前も!何故死体を燃やす必要があったんだ!?答えろよ!人殺し!」

 

ああもう、五月蝿いな、いい加減にしろよ。




はい、見てて面白い道化の登場です。


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怒りの叫び

「なんでこんな事をしたんだ!?」

 

ああ、五月蝿いな。

 

「・・・ハジメ、これからクラスメイトを集めて護衛する、班ごとに分けて各々護衛する班を決めてくれ。」

 

「分かった、お前はどうする?」

 

「ちょっと面倒臭いどころの話じゃないがこいつの相手をせにゃならん。」

 

阿呆は俺の言葉に怒ったのか顔を赤くして怒鳴った。

 

「死体を燃やすなんて酷すぎる!何でそんな簡単に人を殺せるんだよ!?」

 

「ああ〜もう言葉を交わすだけで気が滅入ってくるわ、すげえよお前、勲章物じゃねえかな。」

 

「俺の話を聞け!この人殺し!」

 

うざい、しかも五月蝿い、面倒くさい、でもやらなくちゃ。

 

「いいか?まず、魔人族と思われる女を倒した、それは良いな?」

 

「だが殺す必要なんてなかった筈だ!話し合えばきっと分かり合える筈なのに!何で!」

 

ああ、もう笑いしか起きない、こんなもの、ただの自己満足に過ぎないだろうに。

 

「俺たちがやってるのは何なんだ?」

 

「そんなの・・・戦いだろ!人類を守る為の!」

 

「お前の中の人の定義は?」

 

「は?」

 

・・・まさかそんな事も考えずに戦ってたのか?愚かだな。

 

「ああ、うんもういいわ、質問を変えよう。」

 

えっと・・・何て言えばいいんだ?

 

「俺たちがやってるのは戦争だよ、人殺し何て当たり前だ、其処の騎士団長が一番分かってると思うがな、別に人殺しに慣れろと言ってるわけじゃない、恐れるなとも言わない、だが覚悟だけはしておくべきだ、これからも戦い続けると言うのならば。」

 

「な・・・そんな、人殺しなんて、駄目だ、絶対に。」

 

「何をそんなに意地張ってる、此処は日本じゃないのは分かりきってるだろう?文字通り世界が違うんだけど・・・まさか、それすらも理解していないとは言わせんぞ?」

 

「・・・。」

 

「ああ、それとこうも言っておこう、お前は人死にを見るのが嫌なだけだ、いつまでも自分は何でもできるヒーローだと思ってんじゃねえよ、阿呆。」

 

「そんな事はない!お前はやっぱり悪だ・・・俺は絶対にお前を許さない。」

 

「根は深いね・・・あと、俺が悪だって?ああ、そうだろうとも、それが俺の選択だ、俺の大事な奴らを俺が罪を被ることで守れると言うのなら、俺は世界を敵に回したとしても後悔はしない。」

 

阿呆は納得していない、それどころか俺を憐れみの目で見てきた。

 

「それがお前の意思、何だな、孤児だから、親が居ないから、そんな考えになるんだな。」

 

俺の中で何かが切れた気がする、刀の柄に手を置く。

 

「そんな悲しい生き方、しちゃ駄目だ、きっと、もっと良い生き方がある筈だ。悪人になんてなっちゃ駄目だ。」

 

「黙れよ、お前みたいな奴はいつもそうだな。」

 

「お前は・・・、お前を救ってくれた人も報われないだろうに。」

 

一度は耐えられた、だが、その言葉は駄目だ、容認しかねる。

 

俺は魔力を解放する、その反動で威圧感が一気に増した。

 

「訂正しろ、さっきの言葉を・・・!!」

 

「な、そうだろう!?」

 

「ふざけるなよ!天之川光輝!何が正義だ!何が悪だ!!そんなものがいつ俺たちを救ってくれた!?いつだって俺たちを助けてくれるのは同情という名の憐れみとただひたすらに神に祈る親代わり(シスター)だけだった!役員共は俺たちを見て薄汚い子供と蔑み、ただでさえ少ない金をやり繰りして俺たちを学校に行かせてくれているシスター以外は俺たちを見もしない!人とすら見ないものばかりの中でいつか自分を助けてくれる存在が現れるのを待てだと!?努力してれば誰かが助けてくれる!?親に捨てられ、親が死んで!そして蔑まれて、それでも毎日必死に生きている俺達に更に血反吐を吐いて努力しろだと!?ふざけるな!!そんなものに頼るくらいなら俺が全てを背負ってやる!神など知ったことか!人など知ったことか!!人の事を知りもしないくせに!知ったような口を聞くんじゃねぇ!!!」

 

肩で息をしていると周りの全員は俺を見ていた。

 

「だから・・・訂正しろ天之川光輝、いつも中途半端で止まっているお前が、ただ一度誰かを助けただけのお前が、俺たちを人として愛してくれているシスターや、孤児院の子供達の気持ちを全て無視してその言葉を吐いたのならば訂正しろ、しないと言うのなら・・・今すぐお前を此処で殺してやろう。」

 

クラスメイトのほとんどが顔を青ざめさせているなかで天之川は目を見開いて俺を見ていた。

 

「そんな覚悟があって、何で悪に手を染めるんだ・・・?」

 

「俺たちがやってるのは戦争だ、人を殺し、殺される戦争だ、人を殺す覚悟もないお前が何かを成せるほど、甘いものではない、もしこれからもその考えで戦うというのなら、いつかお前は破滅する、そんな理想を掲げる位ならば理想に溺れて死んでいけ、醜悪な正義の体現者がお前の成れの果てとなるだろう。」

 

俺は阿呆から目を離す、自分で言っておいて何だが、あの守護者の言い方は、割と的を得ているな、あの守護者の有り様は人間らしい。

 

「いつまでも子供だと思うなよ、それがどんな形であれ、ロクでもない死に方をする羽目になる。」

 

もう殺意も萎えた、天之川光輝(こいつ)にはもう何も期待はしない。

 

「・・・これから帰投する、体力の残っている者は負傷者を運べ、班毎に分かれて行動してくれ、全員もう充分休んだろう、さっさと地上に帰るぞ。」

 

「・・・風魔、あいつの言うことはあまり気にするなよ。」

 

「ハッ、あいつの言葉を気にするくらいなら、お前らを守る手段でも考えるさ、お前も大事な者は増えただろう?」

 

「お前が桜を守っている気持ちがよく分かったよ。」

 

天之川光輝は幼馴染たちに囲まれて俺たちの後を付いてきている、俺がそちらを見ると単純バカが俺を睨んでいる。

 

それを八重樫と白崎が注意するがそれでも不満は抑えられないようだ。

 

「はは、そうかい、それにただの子供の癇癪だろう?あいつの正義とやらは、自分が満足すれば後は放置だ、そんなもの、救いなどと呼ぶのも烏滸がましい。」

 

ああ、本当に、反吐が出る。




ただ賢くて、力の無い、強過ぎた子供の叫びに彼らは何を感じたのでしょうか。


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オルクス

「帰って来れた・・・。私達、帰って来れたよぉ・・・!」

 

谷口が絞り出したように声を出す、地上に出た第一声がそれだ。

 

「傷がある者たちは治療を受けてくれ、アッシュ、ミナ、重傷者と軽傷者で分けてくれるか?」

 

「了解、ああ、それと・・・。」

 

アッシュは何か言いにくそうにしている。

 

「何だ?」

 

「お前は・・・アレでいいのか?」

 

「んー?ああ、問題無いとも、平和な世界で俺の考えは異端どころじゃない、恐れるのも無理は無い。」

 

「お前はあっち側の人間なんだろう?居場所が無くなるぞ?」

 

気を遣っているのかそうでないのか、まぁ、きっと使っているのだろう。

 

「元々どちらの世界にも居場所なんて殆ど無いよ、俺を育ててくれている孤児院のシスターのいる孤児院と、ハジメ達の近くが俺の居場所なんだ、元々余裕なんていつも無いのが当たり前だ、毎日必死に生きている。」

 

「・・・いつかお前にも、居場所だと思える場所が増えると信じているよ。」

 

「ありがとさん、これが終わったら1日で大迷宮を攻略する、手加減なんてしてる暇なんてなかっただろう?タイムアタックだ、せいぜい気張れ。」

 

そして広場で重軽傷者を分けているとミュウと共に孤児院の子供達と桜、そして変態がやって来た。

 

「パパ!」

 

『!?』

 

ミュウはハジメに向かってダイブすると満面の笑みを浮かべていた。

 

「ほうほう、これまた手酷くやられたようじゃの、腕の良い術師がいるようじゃな。」

 

「はい、風魔特製ポーションで回復してて、香織ちゃん、手伝って、魔力は共有させるから。」

 

無言で頷くと魔力が少量だけ増える感覚と共に白崎が驚いていた。

 

「な、こんな・・・ダメ!多すぎるよ!」

 

「全く、手を貸せ、制御くらいはしてやる。」

 

「あ、ありがとう。」

 

白崎が魔術で治療を施していく間ずっと手をつなぐ羽目になってしまった。

 

「魔力が多いのは分かるが、大雑把に使ったら無駄だ、魔力制御はしておいて損は無いぞ。」

 

「風魔君、魔力どれくらいあるの・・・?」

 

「桁がおかしいとだけ言っておく、チートでも使ってるんじゃないかね。」

 

「そ、そうなんだ、それと、ハジメ君が変わったって教えてくれてありがとう、覚悟は出来たよ。」

 

「告白する勇気は?」

 

「・・・出来てるよ、ハジメ君達について行く覚悟も。」

 

「・・・そうか、まぁ許可が出たら歓迎しよう、休憩もかなりしただろう、やって来い。」

 

「うん、たまに相談に乗ってくれてありがとね!」

 

「はいはい、早く行けって。」

 

白崎は走ってハジメ達のところへ行った。

 

「アレで大丈夫なの?」

 

「・・・桜。」

 

「多分、死にかけて気分が高揚してるだけだよ?」

 

「・・・それでも、いうことは別に悪い事じゃない。」

 

「迷宮、行くの?」

 

「ああ、ついて来てくれるか?」

 

「うん、風魔のいる所だったら、何処へでも。」

 

なら、行くか。

 

「アッシュ達は既に待機してくれている、1日で終わらせる、捕まれ。」

 

桜は笑顔で頷いた。

 

「・・・うん!風魔!すぐにクリアして驚かせようね!」

 

オルクス大迷宮、クリア時間27時間半、被害、ヒュドラのブレスを防ぐ為に風魔のローブが燃え尽きたのみ。




ミレディは最後にしようかなと思います、そもそも帰るまでの時間的に既にハジメ達は出発している頃だと思うので。


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大噴火ぁ!

「あっづぅー。」

 

「ミナ、気持ちは分かるがこの砂漠を越えればグリューエンまですぐだから頑張ってくれ。」

 

俺達はオルクス大迷宮をクリアして、3日ほど休息を挟みその間に色々と便利道具を作っていた。

 

ハジメのように練成を持っているわけではないのでそんなにすぐには何かを作る事はできなかったが取り合えずフックショットのようなものは出来た。

 

トリガーを引くと刻んだ魔術が飛んでいき、着弾点の1メートル上に転移するというものだ、俺は自前で転移出来るので桜やアッシュ用だろう、一応3丁作った。

 

魔力さえ込めれば射程は問わないが遠距離になるほど消費する魔力がかなり増えていくので気をつけたほうがいいとは言った。

 

「ハジメ達は今はアンカジ公国?に居るんだろうなぁ、あの便利な車で。」

 

「それは言わないお約束だよ、風魔。」

 

四人共オルクスをクリアした時より疲弊している、あそこは利用できる環境が多かったのもあって戦いやすかった、疲れはそれほどない。

 

「・・・奇襲か、数は3、大きさからワーム。」

 

「こちらも捕捉した、飛び散れ。」

 

アッシュは弓を構えて拡散する魔力の矢を一度だけ放った、すぐに三つに分かれた矢は砂に向かって撃ち込まれ、避けようとしたワームが地面から顔を出した瞬間に顔に向かって方向を変えて頭を弾けさせた。

 

「・・・進むか。」

 

「そうだね。」

 

既に水を欲している体を酷使して砂漠を歩く。

 

・・・いつになったらアンカジにつくのだろうか。

 

ーーーーーーーー

暫く歩いているとかなりの爆音が聞こえて来た。

 

「あ?」

 

「噴火?・・・まさかグリューエン大火山か?あそこは噴火する程激しい場所じゃなかった筈・・・。」

 

「・・・噴火であってるみたいよ、結構飛んで来てるわ。」

 

桜はおれにしがみついている。

 

「なるほど、あの黒い煙の下がアンカジか、全員一気に行くぞ、捕まれ。」

 

『了解!』

 

足にブーストを掛ける。

 

「そら、フルスロットル!走り抜けるぞ!」

 

大量の砂埃を巻き上げながらアンカジまで走った。

 

ーーーーーーーー

アンカジは病人と思われる人達が大量に倒れていた。

 

「白崎!これはどういうことだ!?」

 

「風魔君!?丁度いい!手伝って!」

 

「え、ちょっと。」

 

「みんなも!ほらこれ持って!ここにいる人達の魔力を吸い取って!」

 

「え?香織ちゃん?」

 

「・・・まぁ、何となく察してたが。」

 

「もうダメ、動けないわ。」

 

ミナは魔力の操作が出来ないので戦力外、というか亜人に対する差別で別の問題が発生しかねないという理由で辞退した。

 

本人は家の中に入って満足そうだったが。

 

俺たちが何とか患者達の世話をしているとティオが思いっきり地面を抉りながら広場に墜落してきた。

 

というか、ミナがいた家もギリギリで壁が破壊されていた、そこから見えたミナの顔は気持ちよさそうに寝てやがった。

 

お前後で覚えてろよ。

 

ティオは白崎と何かを喋った後に俺を見た。

 

片手を挙げると竜化を解いて笑っていた。

 

というか今ローブないから砂とかでくそ暑いんだ、勘弁してくれ。

 

「お主にも伝えなければな・・・ご主人からの伝言じゃ、また会おう、そして今度こそ一緒に攻略を、だそうじゃ。」

 

「あのアホ・・・まぁいい、お前はさっさとその極光を解毒しろ、治り次第ミュウちゃんと白崎を連れてエリセンに行く。」

 

さっきの噴火でグリューエン大火山はもう攻略出来なさそうだと見当をつけどうせ潜水艦とかで脱出でもしてんだろと半ば諦めの思いが篭るのを堪えられなかった。

 

「あいつの万能さにはほとほと呆れ返るね、いつの間にか横に居てもおかしく無いだろう、これは。」

 

「妾の速度なら頑張れば1日でつける筈じゃ、頑張るのでご褒美をくれんかの?具体的には張り手かあの透明な槍でも刺してくれれば。」

 

「・・・黙れ変態、近寄るなよ、俺が許可するまでその要求をする事を禁止する。」

 

「あっはぁ!ご主人には及ばずともこの言葉は!興奮するのじゃ〜!もっとじゃ!もっとご褒美を!」

 

ティオに冷たい視線が集中した瞬間であった。

 

因みに、ミュウちゃんは割と俺と話したがっていたようだがほぼ全くと言っていいほど会話するタイミングがなかったのもあって少し拗ねていた。




グリューエン大火山ではほとんど主人公が奇襲やら何やらを完全に防ぐ気しかしなかったのでこう言う結果に、というか主人公の独壇場以外を攻略させないと無双以外の何物でもないのだ。

その点メルジーネって便利、だって魔力を霧散させるからね!主人公の天敵と言っても過言じゃないよ!


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いつも元気に!あなたのそばへダイブします!ミュウです!

俺たちは今ティオの身体に乗ってエリセンに向かっている、ミュウちゃんにかなり話しかけられたが何かを言える程話のネタを持っているわけでもなし、ハジメのことで色々と話していた。

 

「とまぁ、ハジメはかなりいい奴なんだよ、今の姿からは想像出来なさそうだがな。」

 

「お兄ちゃんやっぱり嬉しそうなの!」

 

・・・子供にはすぐに分かるのかね。

 

桜達は静かに俺を見るだけだ。

 

「・・・いつか戻りてぇなぁ、あっちに。」

 

「お兄ちゃんとパパならきっと出来るの!」

 

「はぁ・・・なら、妹にくらい良いところ見せないとな。」

 

仮にも兄と呼んでくれているのだ、どうせならかっこいいところを見せてやりたいものだ。

 

暫く俺はボーッとして流れていく景色を見ていた、するとティオがエリセンに着いたというと共に全員が腰を上げた。

 

「パパなの!」

 

『え?』

 

「え、ちょっ!?ミュウちゃん?え、ちょおおおおおおおお!!!?」

 

俺の腕の中で俺と同じくボーッとしていたミュウが俺の手を握りながらノーバンジースカイダイブを決めたせいで俺はそれにつられて叫びながら降下をする羽目になった。

 

瞬く間に地面が近づいて来る。

 

顔が引きつっているのが分かる。

 

割と本気で空中に陣を描き衝撃を緩和し着地する為の態勢を整える。

 

地面がすぐに目の前に近づいて来る。

 

いつの間にかミュウと一緒に叫んでいた。

 

「うぅおおおおおおおお!!!」

 

「や〜!」

 

そして驚いているハジメにミュウを投げ渡すと同時に俺は地面に激突した。

 

「あぶ、危ねぇ、死にかけた・・・危なかった・・・。」

 

「やっぱりお兄ちゃんは凄いの!」

 

・・・これにはちょっと俺も異議を申し立てようか。

 

「ミュウ、正座。」

 

「・・・お兄ちゃんは凄いの。」

 

「ミュウ?正座してくれ。」

 

ハジメからも要請が降った。

 

「でも・・・パパにすぐに会いたかったの!」

 

「今はそれは後だ・・・ミュウ、これで最後だ・・・座れ。」

 

「ハイなの。」

 

ミュウの父と兄のガチギレ説教が始まった。

 

ーーーーーーーー

「びええええええええ!!ごめんなざああああい!」

 

俺とハジメがそろそろ終わりにするかというタイミングでいつの間にか降りて来ていた桜達が近隣の方々と話を合わせてくれていたらしい、アッシュとミナが金の冒険者カードを見せてミュウを護送してきた冒険者パーティという事で納得して貰えたようだ。

 

「・・・はぁ・・・やりすぎたな、ほら、これから先気をつけてれば良いから、泣き止めって、お菓子くらいなら買ってやる。」

 

「・・・ほんと?」

 

「ああ、まぁ、流石に金銭的に余裕が無いからハジメとも会議は繰り返すが。」

 

俺は桟橋の隅っこで少し落ち込んでいるハジメを見て苦笑いをする。

 

何とミュウちゃん、泣きながらハジメに思春期の娘を持ったお父さんがよく言われる台詞(臭いとか一緒に洗わないでとか)やら単純に嫌いだとか恥ずかしいとかをさりげなく言葉に混ぜてくるせいでハジメが怒りから悲しみへとベクトル変換して行ったのだ。

 

元より厨二病と言われるのがかなり精神的な攻撃となっている今のハジメに、愛娘からのその言葉はかなり堪えたと言うわけだ。

 

俺にもそういう言葉はあるのかという質問には無いと答える、俺は見た目は冴えないおっさんじみてきているがミュウにはそういう面は見せていないからだ、と言うか、さりげなく助けてもらっているのはこちら側なので何を言われても甘んじて受ける覚悟くらいはある。

 

「じゃあ、ママを助けて。」

 

「安心しろ、ミュウ、そんなものは確定事項だ。」

 

俺がミュウの後ろを指差すとミュウは振り返る。

 

「ミュウ!」

 

そこには白崎と桜、そしてミナが一人の海人族と思われる女性に肩を貸している。

 

「ママ!」

 

二人はひしっと抱き付いて感動の再会を果たした。

 

俺はまだ少し口からエクトプラズマを出しているハジメに近付いて脚で小突く。

 

「ほれ、お前は何か言うことは無いのか?」

 

「風魔君、娘から一緒に服洗わないでとか言われた気持ちがわかるか?」

 

「どうでも良いわ、それより、ミュウに何か言うことは?」

 

「お前には分からないだろうなぁ!だって子持ちじゃねえもんなぁ!」

 

めんどくせぇ!

 

「お前も子持ちじゃねえだろうが!」

 

「何だと!?」

 

「あ?やるかテメェ。」

 

「ふ・た・り・と・も?止めてくれる?」

 

俺たちはギギギと壊れた機械のように顔をそちらに向ける。

 

そこには笑いながらこちらを見つめる桜の姿があった。

 

「「・・・。」」

 

「あはは〜おかしいよね〜、だってさっきまで説教してた筈の二人が喧嘩だなんて、やっと家族と再会したミュウちゃんに喧嘩してるところを見られたいのかな?」

 

桜は顔は笑っているが目は笑っていないという恐怖しか湧かない笑みでこちらを見つめている。

 

「「スミマセンでしたあアアアァァァァァァ!!」」

 

俺たちが取った行動は二人合わせての土下座だった。

 

桜の後ろで白崎とユエがガクブルしながら抱き合ってる程の威圧感が放たれていたのだ、無理も無い。

 

「・・・ね?無粋なことはしちゃダメだよ?」

 

「「イエス、マム!」」

 

そういえば、桜は怒らせると本当に怖い女の子だったと顔を引きつらせながら思った。




実は一度だけ桜を激怒させたことがある経歴を持つ二人、トラウマとしてきっちり刻まれてます。


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エリセン

ミュウはかなりぐずりながらも俺たちがギルドに着くまで付いてきていた、道中俺達への敵意が素晴らしいくらいに飛んできたがハジメが威圧を飛ばしていたので多分問題は無いだろう。

 

ギルドマスターがどうのこうのとごねていたが金の冒険者のパーティ、そして構成員のほとんどが個人でも金のランクを持っていることを証明すると頭が痛そうだった。

 

金はどのくらいが良いと聞かれて全員が腹抱えて大爆笑したのは良い思い出だ。

 

ハジメはそんなこと考えても無かったという顔だったので俺たちは取り敢えずエリセンに滞在するのでその際の宿の金とか食事の代金を立て替えてもらう、という事で決まった。

 

ただその話し合いに参加していたレミアが自分の家を使ってくださいと言うので一番金の掛かりそうな宿の代金は消えた。

 

ギルドマスターは悩んでいたがすぐに諦めた様で許可を出してくれた。

 

ちょっとこの世界の食材がどんな物なのか気になるので桜と一緒に市場にでも行ってみるか。

 

アッシュ達は既にレミアの提案が通ると思っていたらしくレミアの家で悠々と休んでいたのを見つけたときは呆れた。

 

そして3日ほどが経ち、ハジメ達の昼の探索を見て二人が笑っているのを見てそういえばこいつら攻略してたなと思い出した。

 

今日は夜に探索するのでアッシュ達を呼んだのだがハジメ達はそういえばいたなこいつらとかいう顔で二人を見ていた。

 

「で?心構え的なやつはあるのか?」

 

「大いにあるわよ?取り敢えず、真実として受け止める事、後は・・・他のメンバーを信じる事かしら?」

 

「あのときは俺たち死にかけたけどな、何処かの誰かさんの誤射のせいで。」

 

「仕方ないじゃない、あんな状態で敵じゃないなんて分かる訳ないわ。」

 

すっげえ気になる。

 

「・・・まぁ、お前達はクリアしてるみたいだったし、別に何も言わんがな。」

 

「あ、これは多分迷宮とは関係無いと思うから言うけど厄介な奴いるわよ、多分あんた達でも勝てるか分からないくらいやばい奴。」

 

『・・・は?』

 

「近隣の人達が悪食って言ってる透明な奴なのよ、スライムみたいな・・・内臓見えてるぱっと見可愛い感じの奴、魔力をほぼ完全に無効化して来る上に水の中にいる魔物だから早いし、襲ってきた瞬間に二人で全力で逃げたからどうにかなったけど。」

 

クリオネという言葉も知っているはずだがそれを言ったら多分ユエかハジメに怪しまれると思ったのかかなりオブラートに包んでそういった。

 

「・・・でかいのが一匹か?」

 

「そうだけど・・・よく分かったわね。」

 

「何となくだ。」

 

「まぁ良いか、取り敢えずそのスライムもどきに気を付けて入れば良いんだな?」

 

「そうね、頑張ってね!疲れ果てた所に居てあげるから!」

 

「煽ってきたらぶっ飛ばすからな?」

 

「・・・やっぱ止めとこうかしら?」

 

予想通りの言葉をありがとう。

 

「そろそろ夕方だ、行くか。」

 

ハジメの言葉と共にアッシュ達以外が立ち上がる。

 

俺も、新しくなったローブといつもの刀を持って立った。

 

「にしても、月の明かりに導かれて、だったか?何で昼に探索したんだ、お前。」

 

「仕方ないだろ、場所が分からなかったのもあるが、もしかしたら入り口くらいは見つけられると思ってたんだよ。」

 

「そうか。」

 

「・・・そんな目で見るな、俺をそんな目で見るなぁ!」

 

ハジメに生暖かい視線を送っているといつの間にか全員の準備が整っていた様だ、ぞろぞろと出てきた。

 

「お、全員出てきたな、よし、行くか。」

 

メルジーネ海底神殿だったか?攻略開始だ。




悪食以外そんなに強い奴が居ないという悲劇、氷結洞窟に早く行きたいんじゃあ。話の進展的に何ヶ月もあとであろうが。


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メルジーネ海底神殿

ハジメ達と共に昼間にここだと思ったポイントに移動する。

 

「コレは・・・まずいな。」

 

「何がだ?」

 

悪食の反応が迷宮の中にある。

 

「アッシュ達のときは外に居たみたいだが、今回は中にいる、住処にでもしたのか、それとも元々中にいたものがたまたま外に出てきたのか、どちらにしろ、悪食が中にいる。」

 

「・・・出来れば会いたく無いな。」

 

「確実に会う様だが・・・さて、どうなるか。」

 

今更だがソナーの様な探知方法で見つけ出した地形を元に地図を作り出すとハジメは苦い顔をした。

 

「複雑に過ぎんだろ、というか悪食の居る場所が絶対に通らなきゃいけないって時点でクソゲーだろう。」

 

「そう言うな、一応その地下がかなり大きい空洞になっている。ここをパイルバンカーでぶち抜くことができれば多分いける。」

 

「・・・それ完全にランダムで攻略する事にならないか?」

 

「良くあるだろう?というか一人でも時間を掛ければ迷宮を攻略出来るメンバーが居るのに、更に分散させる気か?」

 

「いや、それでいこう、というかお前、自分が悪食と戦いたく無いからこの作戦を言ったな?」

 

「当たり前だろう、俺の天敵だぞ。」

 

魔力を無効化、というより魔法耐性が高いか魔力を直接霧散させる能力がある可能性が高い、俺の天敵だ、そしてそう言う奴ほど弱点が無かったり、かなり難しい所に有ったりする。

 

「取り敢えず、まずは悪食の部屋まで行くことが先決だな。」

 

「OK、女性陣が戻って来たら行くとしようか。」

 

ということで、女性陣を待っていると30分くらいかかった。

 

「おせぇ・・・。」

 

「まぁ、女子の入浴ってすげえ長いしな、こんなものだろう。」

 

「慣れてるな、やっぱり孤児院での生活は無駄じゃないってことか。」

 

「まぁな。」

 

俺がそう言うと同時に桜達が出てきた。

 

「お待たせ、待った?」

 

「二人だったしそんなに暇じゃないからセーフ。」

 

ハジメはすぐに潜水艦を進ませて入り口の前で月明かりにペンダントをかざした。

 

火山にあったペンダントを使ってるってなかなか環境が違うのに磨耗とかしないもんなのかね。

 

「月の明かりに導かれて、粋な演出。」

 

「だな、ミレディとは大違いだ。」

 

入り口が開いたのを見てハジメが感動している、これぞファンタジーとでも言いたげだ。

 

「さて、サクサク進むか。」

 

「だな。」

 

少し進むとメルジーネの紋章があったのでハジメに合図してペンダントをかざしてもらうと紋章が光った。

 

「よし、紋章が光ってくれて助かったぜ。」

 

「よく気付いたね、なんで?」

 

「魔力の膜を広げていったら洞窟が五芒星状になってるのが分かってな、試しに一つ掲げてもらったらドンピシャだ。」

 

ハジメ以外から良くわかったなという関心の視線が飛んでくる。

 

「まぁ、俺がいなくてもいずれ気付いたんだろうが、まぁ早いに越したことはないさ。」

 

そして五芒星の全てに光を当てると壁に穴が開いて道が出来た。

 

しばらく進んでいると急に船体が叩きつけられたような衝撃と共に跳ね上がった。

 

「ガッ!?」

 

その衝撃で天井に頭をぶつけてしまったので頭を押さえて耐えていた。

 

「・・・大丈夫?」

 

「・・・耐えれるけど・・・いてぇ・・・。」

 

念の為に白崎に回復魔法をかけて貰って痛みも引いてきたところで潜水艦から出る、其処には空気があった。

 

先に出てきたハジメ達はフジツボらしき魔物の射撃を防いでいる。

 

「うへぇ、固定されてるわけじゃないのか?」

 

穴は無数に開いており、その直線上を歩かなければ良さそうなのだが明らかに飛んでこない角度から飛んで来た水鉄砲に苦い顔をしてしまう。

 

「きゃあ!?」

 

「白崎、気を付けておけ、これから先、オルクスの最下層クラスがうじゃうじゃ出て来そうだぞ。」

 

「!・・・うん!」

 

ハジメ達と合流するとユエが一手に防いでくれるのでありがたい。

 

しばらく進むと大きな空間があった。

 

一見何もなさそうだが。

 

「チッ、こいつが悪食か!」

 

俺だけを的確に狙ってくる触手達を防ぎながらそう叫ぶ。

 

急いで俺が部屋へ入ると部屋の壁全てから槍のように触手が飛んで来た。

 

床も一部分だけ悪食の様で何本か飛んで来ている。

 

ハジメ達は本体と思われるクリオネと交戦を始めた、がほとんどの触手が俺を狙っている為にかなり少ない数ではある。

 

「があああああ!魔力が溶かされるってこんなことになんのか!」

 

早くも障壁に穴が開き始めてきた。

 

俺の魔力がチートじゃなければ今頃串刺しどころじゃねえんじゃねえのこれ。

 

そう思っていると視界が炎で染まった。

 

「あっつう!?おいハジメテメェ!」

 

「助けてやったんだから文句言うな!離脱する!集まれ!」

 

その合図で全員が俺たちのところへ走り出す。

 

一番能力が低い白崎と桜の脱出路を確保して全員が集まると同時にユエと一緒に障壁を作り出す。

 

ユエが五つ、俺がその外側に五つの十枚仕様だ。

 

ハジメが一番中心にかなりの速度で錬成を繰り返す、そして反応しなくなったのかパイルバンカーを取り出した。

 

それと同時に酸素ボンベを手渡される、桜と手を繋ぎ口に装着すると同時にパイルバンカーは発射された。

 

階層を貫いた一撃は確かに次の空間への道を開いていたがそれと同時に水が流れ出し、俺たちは全員バラバラに流される事となった。

 

激流で目も開けられないなか、握っている桜の手の感触だけが桜が無事だという安心をもたらした。



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幻影?それとも

どれほどの時間流されていただろうか、確実に酸素ボンベを装着してなければ死んでただろうという事はよく分かる。

 

というかこの海底神殿アッシュ達はどうやってクリアしたんだ、本人達は悪食が外にいたから攻略出来たとか言ってるが。

 

流れが穏やかになったタイミングで一気に浮上する。

 

「プハッ!桜!大丈夫か!?」

 

「だ、大丈夫、結構ギリギリだったけど。」

 

「陸地は・・・あそこか、少し泳ぐぞ。」

 

「うん。」

 

桜と一緒にゆっくり泳いでいく。

 

陸地は岩だらけだったが俺が階段を障壁で作って上に上がった。

 

「ふぅ、ビショビショだな、何処か着替えやすい場所は無いものか。」

 

「そうだね、どこにあるか分かる?」

 

「ちょっと先だけどくぼんでる所がある、上からだと丸見えだけど・・・まぁ其処は諦めてくれ。」

 

「風魔が先に着替えてていいよ?」

 

「そうは言ってもな、桜に索敵がまともに出来るかと言われると出来ないと言うしかないと思うんだが。」

 

「うっ・・・そ、それは私が先に着替えても同じだと思うし・・・多分大丈夫。」

 

「そうか?なら先に着替えさせてもらうか。」

 

そして近くの窪みで服を着替える、ローブは何回かバサバサしていると水っ気がほとんど抜けていて驚いた。

 

そして桜の番になったわけだが桜が妙にそわそわしている。

 

「?・・・桜、何か気になる事でもあるのか?」

 

「あ、ううん、こんな広いところで着替えて大丈夫なのかなって。」

 

「問題ないだろ、俺も、そっちを見ずに索敵するくらいの事はできる、安心してくれ。」

 

「むぅ、い、一緒に居てくれない?」

 

「は?」

 

桜は顔を赤くしてそう言っている。

 

「いやだがな、それは色々とまずいだろう?」

 

「私は風魔を信じてるから。」

 

「真顔で言うな真顔で。ったく分かったよ、一緒にいればいいんだろ、そっちは見ないからな。」

 

「それで良し。」

 

そう言って俺が着替えた窪みに移動して桜は着替え始めた。

 

目をつむって周りを探索していく・・・崖からなら俺達を見つけられるので崖の上を重点的に探していく。

 

後ろから聞こえる衣擦れの音とかは聞こえない、聞いてない。

 

そしてしばらくした後に急に話し声が聞こえて来た。

 

「「!?」」

 

俺はパンツを履こうとしていた桜を片手で抱き衣服類をひっつかんで岩陰に身を隠した。

 

身振り手振りで早く着替えろと指示を出す。

 

桜は急いで着替え始める。

 

俺は崖の上にいると思われる人物の会話を聞く。

 

さっきまで何の反応もなかったのに急に話し声と共に反応が現れた、それも魔力の身体として。

 

「ねぇ!ちょっと待ってよ!」

 

「おいおい!まだ大丈夫だって!お前もこっちに来てみろよ!」

 

「ちょっと!この先崖じゃない!危ないわよ!」

 

「崖から見る景色は絶景だって言ったのはお前だろう!早く来いって!何かあっても俺が何とかするから!」

 

声からして若い男女、それも幼馴染とかの間柄ってところか。

 

「信じるわよ〜!」

 

「早く来いって〜!」

 

笑いながら声の聞こえてくる場所が変わっていく、歩いているのだろう、土の擦れる音もしている。

 

「まだか桜!」

 

「ま、待って、まだスカートまでしか履けてない。」

 

「できるだけ早くしてくれ。」

 

その間にも声は大きくなっていく。

 

「おお!やっぱり絶景なんだな!お前がここを好きだって言った意味分かったぜ!」

 

「足滑らせないでよ?」

 

「分かってるって。」

 

崖の上、丁度俺たちのいる真上辺りにいるようだ。

 

二人はしばらく景色を楽しんでいたようだが何かを喋り始めていた。

 

「ねぇ、私、言わなくちゃいけないことがあるの。」

 

「ん〜?何だ?」

 

「私ね、貴方が好きです。」

 

「・・・。」

 

「ずっと好きだったの、子供の頃から、私達村の中でもかなり歳が近いし、私だって結婚を考える時期よ、貴方もそうでしょう?だから、結婚を前提に付き合って下さい。」

 

さっきから嫌な予感が止まらない、ただ大きいだけの迷宮でこんな幻影を見せられるわけがない、こういう時に見せられるということはこれは悲劇に近いもののはずだ。

 

「俺も・・・好きだよ。」

 

何故、はたから見たら感動する場面の筈なのに、何故こんなにも嫌な予感が止まらない、いや知っている、分かっている、こういう時ほど嫌というほど見せられるこれは!

 

「・・・ぁ・・・ぇ・・・?」

 

「アハハハハハハハ!!見ておられますか!神よ!異教徒の生娘を貴方の元へ!生娘の心臓を!生娘の体を!貴方への感謝とともに捧げます!」

 

「スレイ・・・何で・・・。」

 

「フン、異教徒に好かれることがどれだけ嫌悪するべき事なのか、やはり異教徒には分からんか、異教徒には死を!当たり前だろうが!」

 

桜は口を押さえて声を出さないようにしている。

 

「・・・息絶えたか、異教徒など、名前を持っている事すら許せん、虫として死んでいけ。」

 

男はそう言って女性の体を崖から落とした。

 

その女性の身体は俺たちの目の前に落ちて来た。

 

血だらけで至る所が折れている、虚ろな目は俺たちを見ているような気さえしていた。

 

「キャッ・・・。」

 

「叫ばないでくれ、ばれてしまう。」

 

桜の口を塞いで必死に声を押さえさせる。

 

暫くすると桜も落ち着いてきたのか視線で大丈夫だと言ってきたので手を離す。

 

「・・・もう大丈夫だから・・・大丈夫だから。」

 

「取り敢えず、俺のローブでも着ておけ、それだけ薄着だと、流石にすぐには暖まらないだろう。」

 

「・・・ごめん。」

 

「何、問題ないさ。」

 

桜は全身を包んでいるワンピースの上に布団のようにローブを羽織っている。

 

俺が着ると丁度いいが俺より頭一つ分くらい身長が低い桜が羽織ると歩きにくそうだった。

 

仕方ないので少しばれないように切ってあげた。

 

「歩きにくかったらおんぶでもするが、どうする?」

 

「大丈夫、もう平気だよ。」

 

「・・・そうか。」

 

崖を登ると男は居なかった。

 

探索しても何も現れないという事はやはり幻影だったのだろうか。

 

それにしては女性の死体も何もかもが本物に近かった。

 

匂いや感触まで再現するなんてどう考えてもあり得ない、俺もやろうと思えば出来なくはないが、かなり難しい。

 

「・・・視界に頼るしかなさそうだな。」

 

俯いている桜は何か考え事をしているようで俺の後ろをぼーっとついてきているだけのようだ、気を付けないとまずい事になりそうだ。




まだ続きます。幻影のストックはひとつじゃねえぜ!


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平和

「チッ、これで五つ目か・・・。」

 

崖から入り、ところどころで発生している狂信者の殺戮劇を見ているとまだ終わらないのかと思ってしまう。

 

桜は最初は大丈夫だったが3回目の時に吐いてしまった。

 

桜は明らかに無理している、これ以上は不味いだろう。

 

桜は既に俺の腕を掴んで離さなくなっている、というか地味に力が強い、俺と同レベルのはずなんだが。

 

「・・・街?」

 

漸く森を抜けた、その目の前には街があり、門番が立っている。

 

ぱっと見そんな不自然な点は無い、まぁ全て幻影なのだろうが。

 

「桜、掴まってろ。」

 

桜は俺の腕から背中に移動してしがみ付いた。

 

桜をおんぶして街へ向かう。

 

「ちょっとそこの旅人!止まれ!」

 

「ああ、門番さん、すみませんね、さっき盗賊に襲われたんだ。」

 

「盗賊?確かに最近盗賊の被害が多いが・・・。」

 

門番は普通の受け答えをしていた、まだ大丈夫そうだ。

 

「取り敢えず身分を証明できるものはなさそうだな、金銭の類は持っているか?」

 

「いや、全て投げ出してきた、商隊も全滅だ、完全にしてやられた。」

 

「・・・そうか。」

 

門番は俺たちを中に入れようとする。

 

俺と桜が横を通り抜けようとすると槍を突き出してきた。

 

「ああ、そうくると思ったよ、クソッタレ。」

 

「異教徒は生かしておけん!ここで死ね!」

 

魔力を纏わせた拳で門番をぶん殴ると門番は消え去った。

 

「・・・魔力が弱点か?天敵の次は無双って、アンバランス過ぎる。」

 

俺の視線の先には家から出てきた大量の市民達がこちらを殺意の籠った目で見ていた。

 

「し、支援・・・するよ。」

 

「あんまり無理するなよ、それで体調を崩されたら困るのは俺だからな。」

 

「・・・うん。」

 

魔力が弱点だというのなら吹き飛ばしてくれる。

 

「ぶっ飛びなぁ!」

 

魔力を纏わせた土塊を大量に飛ばす、小石でもコンクリートくらいなら貫通出来るくらいの威力なので一瞬で市民達は消えていく、血を残し、死体を残し、雪崩のように迫ってくる。

 

「支援・・・行くよ。」

 

天空から魔力の帯びた爆弾達が一斉に降り注ぐ、それは家ごと街を粉砕し、目の前の軍勢を一気に薙ぎ払った。

 

だが、一割も残っていない市民達が俺たちめがけて走ってくる光景はかなり気分の悪くなる光景だった。

 

「・・・すこし、これは使いたくなかったんだが・・・な。」

 

魔術を展開、地面から白い光が縄のように捻れたものが出来上がった。

 

「流石に別の管轄の世界だ、そう簡単に行使できるものでもないからな、あまり使いたくはない。」

 

桜への言い訳のように言葉を重ねる。

 

「神命解放、魔王バラン、薙ぎ払え!【メドゥーサパレス】」

 

杖の先からかなりの大きさのビームが地面を薙ぎ払うようにして市民達に純粋な魔力の奔流を浴びせた。

 

「・・・やっぱり、別の世界の術はきついな、魔力が一瞬でスッカラカンだ。」

 

「大丈夫?」

 

「はは、すこしきついかな、でもまぁ、市民達は居なくなってるはずだ。」

 

「ふふ、変わらないね、風魔は。」

 

・・・はぁ・・・。

 

「で?あんたは誰だ?」

 

「私は桜だよ?何でそんなこと言うの?」

 

「はっはっは、ふざけるなよ亡霊風情が、俺が長年一緒にいた奴を間違えるかよ、桜の声で喋るな、桜の体で近寄るな、それは貴様の物ではないだろう。」

 

桜を乗っ取った何かは俺の首に腕を回す。

 

「私にその力は無くても、この子の体であんたの首を絞めることくらいできるのよ?」

 

「ああ、そうだな、その体で迫られちゃ確かにそうだ、傷つける訳にもいかんし、力ずくも出来ない。」

 

「そう、なら私のいうことを「だがな。」」

 

「出来ないなら出来ないなりに、出来るように何かを極めれば良いだけだ。」

 

刀に手を掛ける。

 

「まさか、あんた自分ごと!」

 

「はっはっは、それこそまさかだ、武器は物理しか切れないと誰が決めた?切るというのなら怨みも喜びも、果ては切ったものの命さえ、その全てを背負い、選択する、その極致、無念無想、無限、そんなものすら切り裂く境地に俺は居る、食らってみるか?魂すら切り裂く極刀を!」

 

「そんなの出来るはずがないわ!」

 

そうかい、返事は聞いたぞ。

 

刀を鞘から抜き出し、衝撃波と共に剣圧が飛ぶ。

 

いつの間にか鞘に仕舞われていた刀から手を離してその技の名を言う。

 

「極刀【魔断】(まだち)、俺の最初にして最後の奥義さね。」

 

何かを切った感触はある、そしてそれを背負った重みも。

 

桜はぎゅっと俺に抱きついている。

 

「さっさと次行くぞ、ハジメ達が待ってるからな。」

 

「・・・うん。」

 

「歩けるか?」

 

「・・・何とか。」

 

「下ろすぞ。」

 

俺が跪くと桜はすんなり降りてしまった。

 

「顔真っ赤じゃねえかよ、本当に大丈夫か?」

 

「誰のせいだと思ってるのぉ〜。」

 

ポカポカと叩いてくる桜が変な姿勢だったからか吹き出してしまう。

 

それを見て桜は殴る力をどんどん高めていった。

 

「あ、待って、痛い、ちょっとストップ、あ!ごめんなさい、すみませあだ!?ちょっと桜さん?ちょっとだけ力を弛めて、今やばい音したって!ゴキって言った!アアアァァァァァァ!!?」

 

後で回復魔法で治して貰いました。




桜の心情的には私の為に奥義なんてものを使ってくれるなんてという気持ちとさっきの魔術に女の影を感じたから八つ当たりもすこし入っています。

主人公はそれを察しているので甘んじて受けているという、えむかよ。

ティオナ達の記憶が少しずつ消えて行っているのでそれを思い出させる物はよく使うようにしていたりする。


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悪食討伐

「さて、これでクリアなのかね?」

 

「さぁ?とりあえず言える事はもう続きは無いってことだね。」

 

「まぁ、いっか。」

 

そんな話をしていると近くにある鎧の胸に剣が刺さっている死体の前に魔法陣が現れた。

 

動いたりはしなさそうなのが救いか。

 

「・・・まぁなんにせよ、道は出来たみたいだし、行くか。」

 

「・・・うん。」

 

魔法陣を通るとユエ達はこちらに視線を向けた。

 

「お、きたか、遅かったな。」

 

「仕方ないだろ、街と戦場と小屋とって結構な数見せられてたんだから。」

 

「どういう事なの。」

 

「知るかんなもん。」

 

ハジメ達が魔法陣を指差して早く行けと急かす。

 

「・・・なるほど、そういう事か、途中で消えたかと思ったら、全く。」

 

「・・・結構きついね。」

 

さっとステータスプレートを見る。

 

ーーーーーーーー

秋月風魔 17歳 男 レベル:35

天職 魔術師

筋力 60

体力 6000

耐性 9360

敏捷 900

魔力 1200000

魔耐 80000

技能 魔術作製[+複合魔術] [+魔術書き換え][+時間魔術] 魔法操作[+同時操作数増加] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+消費魔力軽減]高速魔力回復[+回復量上昇][+魔力回復量超上昇][+全体回復総量上昇][+魔力吸収]想像構成[+複数同時構成]同時思考[同時思考数増加]言語理解

 

ーーーーーーーーー

 

俺のステータスが時間魔術とかいうものが増えている事を確認した。

 

代わりに神代の魔術が無くなっている、ストックは増えたりするのだろうか。

 

「再生魔法っていうのを貰ったよ。」

 

「再生・・・そういう事か、ならこれは・・・なるほど。」

 

というか魔力の増え方が尋常じゃないくらいに増えている、何だこれ。

 

魔力回復がすげえ増えてる、何これ。

 

チートじみたステータスになってるな。相変わらず。

 

遠い目をしていると部屋全体が揺れ始めた。

 

桜と俺だけ反応出来ずに水に飲み込まれる。

 

取り敢えず苦しそうな桜の口に酸素ボンベをくっ付ける。

 

水流が激しく、目が開けられない、距離的な関係でハジメ達とは離れている、仕方ない、合流は後だ。

 

酸素ボンベをつけていなくても1分くらいなら何とかなる、筈だった。

 

目の前を大量の触手が通った。

 

まずいな。

 

とっさに障壁を張ろうとするがその前に触手に腕を貫かれた。

 

貫かれたのは左腕、右手で酸素ボンベを装着するとそのままクリオネもどきに突っ込んで内部から爆破した。

 

酸素ボンベをつけて安心している桜を回収し、そのままクリオネもどきから泳いで逃げる。

 

だがクリオネもどきが目の前に移動しているのが見えたのでジリ貧になる。

 

そこに俺たちを囲むようにして魚雷が撃ち込まれた。

 

明らかに攻撃範囲に入っているので急いで退避する、俺だけなら何とかなるが桜が死ぬ。

 

潜水艦の上まで何とか泳ぎきる、すでに体力は底をついている、これだから水中戦は嫌いなんだ!ゲームの無限スタミナ持ってこい!

 

ハッチを開けて中に入り、潜水艦を操作する。

 

「クッ、武装が殆どねえ、キツイぞこれ!」

 

ハジメ達は海上に居るらしい、大きな津波が出来ているのが見える。

 

「ハジメ!クリオネもどきがそっち行ったぞ!津波の中だ!」

 

『グッ!助かった!』

 

「このクリオネは火に弱い!出来うる限り大量の火を浴びせろ!さっき爆破した所からは出てこなかった!」

 

『了解!耐えてくれ!』

 

ハジメのその声が聞こえたと同時に潜水艦の至る所から水が入り込んできた。

 

「風魔!やばいよ!」

 

「・・・あー、ハジメ、ごめん、潜水艦、壊れちゃった。」

 

即座に通信を切るが何やってんだクソオオオォォォォ!という叫び、というか嘆きが聞こえてきた。

 

「桜捕まれ!海上まで転移する!」

 

「了解!」

 

潜水艦を置いて海上に転移するとハジメが涙目で睨みつけてきた。

 

「俺の力作を!風魔!後でアップグレード版作るぞ!畜生・・・!やってやる!やればいいんだろう!」

 

「私達も居るわよ!」

 

ハジメ達の上にミナが降りてきた。

 

「・・・おい、アッシュはどうしたんだ?」

 

ハジメがミナにそう問いかけるとミナはニヤリと笑った。

 

「魔法を使ったあいつの戦い方って知らなかったわよね?なら見てみるといいわ、瞬間火力ならかなりやばいから。」

 

ミナがそういうと同時にエリセンのある方向から光が飛んできた。

 

それは津波に当たると爆発し、1キロほどもあった津波をかなり削り取った。

 

「・・・これはすげえな。」

 

「かなり遠くからじゃないとまともに打てないけど、撃てるならほぼ一撃必殺なのよ、あいつの魔法。」

 

「弓に補強と矢に本命の魔法をくっつけた?いや、それにしては・・・まさか空間魔法ってのを使ってる?後は矢が燃え尽きないように再生魔法を使ってる?同時に使ってるものが大き過ぎるな。」

 

「ちょっとちょっと!分析は後!あれ使えるの3発までなんだから、それまでにあいつ倒しちゃって!」

 

「触手の対処をしてくれるか?時間は・・・後2分でいい!」

 

『よぉ、ハー坊、ヤバそうじゃねえか、おっちゃんが手助けしてやるぜ。』

 

「誰だ。」

 

俺の呟きはハジメとシア以外の全員の言葉だっただろう。

 

だが幾つもの銀色の影が海中に現れて悪食に突っ込んでいるのを見ると味方のようだった。

 

取り敢えず悪食から飛んでくる触手を焼きまくってボロボロに風化させていく。

 

「大公開だ、全部吹き飛べ。」

 

炎を垂らし、水面に当たると同時に炎が広がっていく、そして出来た円形の炎の壁に黒い炎が広がっていく、その炎は黒い線を点と点同士に繋がれていき、魔法陣が出来た。

 

「燃えろ、海ごとな。」

 

そして魔法陣から炎が噴き出て辺りを侵食していく、海も悪食も、ついでに魚群も幾つか飲み込んで消えた。

 

『あー!俺の武器達が・・・。』

 

「・・・すまない、巻き込んだ。」

 

『・・・いいって事よ!』

 

声に泣きが入っていた。

 

そしてその一撃で悪食はかなりの体面積を減らした。

 

ハジメの準備が整ったようで叫び声を上げた。

 

触手の猛攻を全て弾き落としていたミナがティオの背中に飛び移る。

 

「おかえり、ミナ。」

 

「ただいま、一気にやっちゃいましょ!」

 

ハジメは即席の魚雷を撃ち込んで悪食にぶつけた、魚雷というよりも空中から落として悪食にぶつけているので爆撃だろうか。

 

魚雷を避けることもなく飲み込んだ悪食の中に黒い液体が大量に送られて行っている、ハジメの方を向くと漏斗みたいなものの中に黒い液体を送り込みまくっている。

 

「・・・ハジメ、それなんだ?」

 

「静電気でも摂氏3,000度くらいで燃えるタールだ。」

 

「うわぁ。」

 

悪食は逃げようとしているが俺たちは障壁とか魔法やらで抑え込む。

 

『後方注意だ。』

 

アッシュの声とともに背後から襲って来た触手が燃えた。

 

「危ないわね!もう少し遠くにしなさいよ!」

 

『無茶言うな、これでもかなりギリギリなんだ!』

 

悪食の体の全てにタールが染み込みハジメは今までで一番の笑顔を見せた、桜が割と本気で怯えている。

 

「燃えろ。」

 

そう言って火種を送り込んでいた漏斗の中に入れた。

 

火種が悪食の体内に送られた瞬間に悪食は吹き飛んだ。

 

「・・・うわぁ、うわぁ。」

 

桜は腰を抜かしているようで立てなくなっている。

 

「・・・私はあんなのはごめんだわ。」

 

『俺もだ、まさか肉眼で海が吹き飛ぶのが見られるとは思わなかったぞ。』

 

エリセンからでも確認出来たらしい、という事は激戦を繰り広げていたのも見えているわけで、アッシュの声が聞こえなくなるくらいに歓声が響き渡った。

 

ミナがポッドを操作して音声を切る。

 

「リーさん・・・だったか?すまねえな、死んでたら謝ろう。」

 

『ギリギリ生きてるぜ、お前さん達、割とすげえ奴が多いじゃねえか。』

 

「はっはっは、悪食みたいなやつの討伐は良くやってるからな、まぁあんたの援護が無ければ此方も危うかった、協力感謝する。」

 

『なに、いいって事よ、お前ら、いつかうちの子とカミさんでも紹介してやらぁ。じゃあな!』

 

こいつ風来坊気取りのダメ親父じゃねえかよ!

 

リーさんの言葉で力が抜けたのか座り込んでしまった。

 

桜も同じ感じなので二人で苦笑する。

 

『結婚してたのかよぉーーーーーーーー!!!?』

 

ハジメ達の叫びを聞きながら笑ってしまったのは仕方無いだろう。




アッシュにも強いところはあるよという回でした、リーさんとの接点が無かったので割と淡白な結果に、ダメ親父め。

早くアビスゲート卿との共闘が描きたいんじゃああああ。

エヒト殺さなきゃ。どこぞの人類悪の如く素材を頂くぞオラァ!


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エリセン退出

あれから結構な時間が過ぎた、具体的には4日ほど、ハジメはミュウに遠慮して、というかミュウが無言の行かないでオーラ全開の上目遣いをしているからだ、俺にもしているが俺は桜とかあかりちゃんとか、あとゆかりさんで慣れた、桜とあかりちゃんはまだ幼児だったからまだ分かる、だがゆかりさん、あんたは駄目だ。

 

あんたのその上目遣いを見て純さん苛ついてたからな?握りこぶしを振り下ろそうとするのを俺が必死に視線で宥めてたからな?

 

しかも内容が味見て、大人の威厳はどうしたよ?

 

そういう訳でミュウには言ってある、俺たちとは別れなければいけない事、そして出来るならミュウも連れて行くかもしれない事、ハジメならもしかしたら行けるかもしれない事、だがこれが俺たちと最後の時間になるかもしれない事。

 

ミュウは泣きながらも覚悟が決まった目で頷いた。

 

だが、桜との間にいつ子供が出来るのかと聞くのは止めてくれ、レミアさんにそう聞いてこいと言われた?・・・レミアさん、恨むぞ。

 

桜にも同じ質問をしたようで夕食の時にチラチラと顔を赤くしながら見られた、敏感に察知したユエたち女性陣が話を聞きレミアさんの処刑が始まったが俺たちは既に外で色々としていたので何時したのかは聞かなかった、唯一見ていたアッシュも口を開こうとしない、取り敢えずそれだけで充分だった。

 

そして5日後の昼。

 

「そら、遅いぞ。」

 

「うううぅぅぅうあああああああ!!!」

 

俺は港で素手での戦闘訓練をしていた。

 

相手はミナとアッシュ、双方素手だが全力で殴り蹴りを連携で繰り返している。

 

特にミナは元々格闘がメインなのでアッシュよりかは数段上だ。

 

ミナの拳を肘で弾き隙の出来たミナの後頭部に右の裏拳を叩き込む。

 

そのまま倒れこんだミナを放置し一歩下がって半身になってアッシュの方を向くとアッシュは蹴りを放って来ていた。

 

左手で蹴りを掴みアッシュが体を捻って俺の頭に蹴りをたたき込もうとしたが体を捻る前に上半身を逸らし不安定な姿勢にして重心をずらし逆に踏み込ませる。

 

アッシュは足で踏み潰そうとしてくるが左足で軸足を蹴り飛ばし転倒させた。

 

俺は蹴り飛ばした勢いそのままに低い姿勢で構えを取り二人が地面に倒れているのを確認して声を上げた。

 

「其処まで、今日の模擬戦はここまでとする。」

 

「むぅ・・・あんた、いざ戦うとなったらやり辛すぎるわ、連携とか言ってるけどこれじゃ一対一を何回も繰り返してるだけよ。」

 

「流石にお前達みたいなのと2対1とかこっちがやばいわ、それで?何か反省する点はあったか?そもそも連携を俺自身がさせる気ないから出来るまで連携の反省点以外で。」

 

「あんたの一撃が急に重くなったり軽くなったりするのはなんなの?たまに蹴りとかも不自然なくらい早かったり重かったりするけど。」

 

「アレは中国拳法の一つ、マジカル八極拳だ、ステータス任せのもんだけどな、主に制圧とか殺人目的で使われる。」

 

「じゃあ蹴りも?」

 

「そっちは基本的に空気を爆発させた衝撃波を勢いに乗せてる、縮地は敵を倒せる剣の間合いに一瞬で移動する方法、又は移動法だがこれは武器や素手ごしに衝撃を伝わらせる方法、鎧通しとか発勁と呼ばれる技術だな。」

 

「・・・やっぱりアンタ達の住んでる世界って頭おかしいんじゃないの?」

 

何も否定できないのが余計に傷付くなコレ。

 

「ちなみに、英雄クラスはコレを当たり前の様にしてくるからな、息をする様に懐に入って息をする様に奥義みたいなやつを普通の技として使ってくる、んでもって引き出しが多い奴とか生存能力が高いやつはもう手に負えない、こっちが必死に手数減らして来たのにステータスが超強化されて全部の技が即死範囲になるとかな、消えろよ。」

 

「・・・無駄に実感籠ってるわね・・・。」

 

当たり前だ、赤い弓兵とケルトの青タイツが襲ってきたときは本当に死ぬかと思った。

 

その後でケルトの影の女王も出ようとするしなぁ!

 

何でお前らそんなに息あってんの?喧嘩するほど仲がいいってか!?ふざけんな!最終的に三体一で一瞬で霊核ごと砕かれかけるしな!

 

話を戻すか。

 

「何はともあれ、せっかく経験者がここに居るんだ、出来うる限りの技術を盗み出しなさいな。」

 

「胸を借りる覚悟で行くわ。」

 

「次は負けない、せめて一矢報いてやる。」

 

二戦目が始まった。

 

夜まで模擬戦を続けていると暇を見つけて模擬戦を繰り返すという約束をした、なぜかというと子供達が俺達にも格闘を教えてくれとせがまれたからだ。

 

その際に俺達が本気の殺気を浴びせてこれが殺し合いだとか何とか言って気絶しなかった奴だけ教える事にした、驚く事に気絶しない奴は結構残った、ガキ大将は気絶していたがアッシュが指揮官になる為の心得とか色々と要点だけ教えていたので多分上に立つ者の自覚くらいはいずれ目覚めてくれるだろう。

 

その際にアッシュと魔法無し、時間は1分、使うのは自分の技術だけという模擬戦をしたら拙いが発勁を繰り返してきたのには驚いた。

 

ただ早過ぎたのできっと子供達には分からなかっただろう、ミュウもいつの間にか輪の中にいたのには驚いたが解説も交えて教えて行くと目をキラキラさせていた。

 

ただ、ハジメ、ミュウが俺達にキラキラした目を向けているからといって家から飛び出してドンナーやらガトリングやらをこっちに向けて打たないでほしい、模擬戦じゃなくなる。

 

ミュウの周りにいた男子はハジメの殺気にも耐えた様だが反撃できるほどの強さもなかったので俺たちに守られるだけだった、その際に俺が纏めて守ったので俺が守護を得意としている強い人ということで早くも黒歴史を作り出しているガキどもから覇王の名を頂いた。

 

その事がミュウから暴露されて俺は開いた口が塞がらずそんな俺を見て桜も含めた全員が笑うという出来事もあった。

 

その後ミュウが魔王役、そして覇王役の男子が肩を並べて悪食、化け物を協力して倒すと言う遊びが流行ることとなる、アッシュは覇王の側近役として出ていた、古臭い少年漫画の様な展開にガキどもが夢中になったらしい、因みに、ミュウの無駄な再現度によってハジメが空を見上げるという事態も起こった。

 

というかハジメになりきるときだけなの!とかの口調が消えるからマジで再現度が高い、ハジメならこういうだろうというところまで一文字も狂わず言ってくる、何この子怖い。

 

そして濃いというには濃すぎて単色になっている日々も終わりを迎える、そろそろ出発しないと色々とまずそうだとハジメが漏らした事により7日目で出発する事になった。

 

その際に起こったハジメとミュウの約束は割愛させて頂く、言ったらハジメの女性陣が殺気立つから怖いんだよ。

 

分かりやすく言えばミュウがハジメの唇を奪って大人なキスをしてから赤い顔で約束なのと言ったのだ、破壊力は抜群である、周りの血涙が地面を湿らせたのも仕方ないと言える程に。

 

ハジメが俺とアッシュが何かを吹き込んだのかと睨むと俺とアッシュはお前が原因だよ!と怒りの声を上げたのでしゅんとした顔になっていった。

 

ユエが割と歓迎ムードなのはハジメ的にどうなのか分からないが、背中から刺されてナイスボートにならない様に気を付けろよというとお前もな?と肩をかなりの力でミシミシ言わされながらそう言われた。

 

それは俺が一番気にしてる事だからガチで返さないで。

 

それはそれとして俺達はアンカジ王国、あの病人だらけの国だ、俺達はまともに見ていないので何とも言えないがオアシスにスライムが湧き出てそれの毒で病人が大量発生していたという事で、再生魔法を使えばきっと大丈夫だろうという白崎の意見によるものだった。

 

俺がその間にグリューエン大火山を攻略してみようかというとハジメ達は驚いた顔をした。

 

再生魔法を少し弄ったら大迷宮の正規ルートだけでも元に戻せるんじゃねと言ったらハジメ達は愕然としていた。

 

というかあの顔はそもそも弄るという事すら頭に浮かんで無かった顔だな。

 

迷宮攻略者にも修復のためについてきて欲しいというとあまりやる事のないアッシュとミナ、そして結局攻略出来ていないティオが手を上げた。

 

というかアッシュ達も好きな様に動いてもらって構わないというのに。

 

二人曰くトラブルメーカーのそばにいた方が面白そうだそうだ。

 

その言葉にハジメ達が胸を抑えていたが俺と桜は苦笑いするしか無かった。




主人公、街のガキどもから覇王と称えられる、全員が笑ったのは確かに覇王というイメージに合うからです。

ハジメは既に魔王として認知がされ始めている。

戦闘面で言えば主人公と同等の為に魔王と名付けられている事は言うまでもなく。

グリューエン大火山を攻略開始ですな、桜達は持つのか。というかそもそも魔力が持つのか。


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攻略

「前はそこまで見る機会は無かったが、今は商人達がいるおかげか結構賑わってんな。」

 

「まだ対症療法だから気を付けないといけないけどね。」

 

「香織ちゃんはオアシスに行くんだね?」

 

「私だって何かしたいし、大元から無くす事ができるならそうしたいからね。」

 

よくもまぁここまで、女性陣も多くなったなと呆れる、アッシュは既に車外に出て俺と一緒に車体の上だ、俺が作った特別製なので割と快適だったりする、丸見えというのはあるが。

 

ミュウがいなくなった分詰めてもいいのだがハジメがまた武装を追加したのでそれのスペースが取られてしまった。

 

ハジメにはいつかキャンピングカーを作れと言ってある、作るかどうかは知らないが。

 

「門の前に着いたら車はしまった方がいいだろう、俺達は街に入らずにそのままグリューエンまで行きたいんだが、そこまで余裕がある訳じゃないだろう?」

 

「一応バイクがあるけどどうする?」

 

「アッシュが駄目だ、危な過ぎる。」

 

バイクと聞いて腰を浮かせたアッシュを見て納得するハジメ。

 

アッシュが座ったのを確認してから予備の車を出すかどうかを考えているのだろう。

 

「あ、あと、一応知られたとはいえ情報が王都に届いてこの辺りまで浸透し始める頃だろうからお前、神敵扱いされたりするかもなぁ。」

 

「何で?」

 

「制御出来ない力は危ないと考える私利私欲と自己保身が混ざった者たちの仕業、としか言いようがない。」

 

「・・・アンカジもすぐに離れた方が良さそうか?」

 

「はっはっは、俺はアンカジの主人を見てないから何とも言えんが、良識のある人間なら逆に守ってくれるかもしれんな?」

 

「何でだよ?」

 

ハジメは前を向きながらそう聞いた、俺は答える気は無いので黙りだ。

 

「・・・まぁ、敵対しなければそれで良いさ。」

 

「ハハッ、いつもの事さね。」

 

「お前、いつも思ってたけど偶に口調変わるよな。」

 

「癖だ癖、気にすんな。」

 

そして門前に着くとハジメは車を戻し、バイクとその横に付ける・・・あの助手席みたいな奴を取り出した。

 

一応ゴーグルや外套なども中にあったので用意は完璧だ。

 

「ティオは念の為竜になって上から索敵してくれ、砂埃の中に入ったら俺が魔力を一定時間毎に発生させる、それでどのくらいの距離が離れてるかを見てくれ。」

 

「了解なのじゃ、竜人族の強さを見るがよい!」

 

「あ、そこまでは求めてないです。」

 

「あっふぅ!その淡白な反応もいい!」

 

「もう駄目だなこやつ。」

 

ということで俺たちはグリューエン大火山に行くことになった。

 

数日もかけなくても魔力を込めれば一気に加速する様だったので風圧を減らしながら進む、ティオも問題無くついてきている様で上には黒い影が見えていた。

 

火山を囲む砂埃の中に突入すると流石に音が大きいのかかなりの数のワームが俺たちを捕捉した。

 

邪魔だ。

 

魔方陣を展開させ、ガトリングの様に撃ちまくる、爆発で音を立てて俺たちの居る場所を分からなくさせているが数体は気づいた様だ。

 

『そろそろ抜けるのじゃ!』

 

ティオの声が聞こえて数秒立つと砂埃の中から綺麗な空気の漂うところに出た。

 

目の前には火山が見える。

 

俺達の前にはグリューエン大火山があった。

 

俺はガラスで保護されている助手席?を叩く、すると中で談笑していた桜とミナが顔を出した。

 

「火山いけた?」

 

「おう、目の前に見えるのがそれだ。」

 

「うわ〜懐かしいわね、噴火したばっかだからかもしれないけど、結構いろんな岩とか多いわね。」

 

「さて、入り口はどうなってるのかね。」

 

入り口から数十メートル近くまでは普通に道があったが、正規ルートのはずの場所が溶岩と岩で塞がれていたり、逆に正規ルートではない場所から他の道を経由して先の場所まで行けたりと、ある程度の障害物はあるが全体的にはそこまでの被害は無さそうだった。

 

ただ、要石が破壊されたことによる一時的な噴火だったからだろうというのが俺の意見だ、マグマを吐き出し終わり、迷宮にある修復機能などが働いた結果ということだろう。

 

この分だと要石を再生魔法をかけるだけで済みそうだ。

 

そして色々とマグマを纏っている魔物達を斬ったり殴ったりしている間に最後の部屋まで来てしまった。

 

「・・・これ噴火の影響でかなり道変わってるな、というか、だいぶ浅くなったのか?」

 

大迷宮というには部屋数が少なすぎる、数日かけて調べる様な数じゃない。

 

「それでも充分・・・多いけどね。」

 

「それにしても、南雲ハジメ君?あの子良くもまぁこんなの作れるわね、私も日本にいた事あるけどこんなの作れる気がしないわ。」

 

ミナが振っているのは牛乳瓶の様な瓶だ。

 

「こういうのは俺の方が向いてるな、まぁ、ものにするのに三年かそこらは必要だと思うが。」

 

「ハジメは瓶と蓋位しか作ってねえよ、底を見てみろ、冷却機能を再現出来る魔方陣を刻んである、そんで、蓋に魔石の粉を入れて固める、すると、魔石の中の魔力が無くなるまで瓶の中のものは冷やされるって訳だ、一応中身のドリンクは牛乳とか、水とかに蜂蜜とキノコを乾燥させて砕いた奴とか、色々と工夫してる。」

 

今回はエリセンの魚介類がどんなものか見てみたかったのもあるので魚の脂を少し入れてある。

 

「あんたも良くもまぁ、あたし達より何十倍も先輩なだけあるのかしらね。」

 

「流石にここまで長いと上下関係なんてあってない様なものだ、分かりやすいのが権力位しかないってのもあるんだろうが。」

 

因みに、戦闘能力の強さも権力のうちに入る。

 

「っと、この部屋っぽいな、マグマの壁が出来てる、さて、どのくらいの広さかね・・・ふっ!」

 

マグマの壁に手を当てる、魔方陣を敷き、体を守らせながら魔方陣を組み上げていく、再生魔法の本当の姿は時間を操る事、であれば要石が壊れる前に戻してしまえば俺たちも試練を突破出来るかもしれない。

 

因みに、初めてこれをやった時は手が溶けた痛みで魔方陣の制御を崩し、ゆっくりと全身を溶かしながら死にました、未だにトラウマです。

 

体の中にすげえ熱い液体が流れて来るのが分かるんだぜ?骨とかも剥き出し、というか骨しかねぇ。恐怖しか感じねえよそんなもん。頭蓋骨の中も一瞬だけ感じたからもうこんなのトラウマになるに決まってる。

 

だから全力で大丈夫な様にした。

 

話を戻そう。怖い。

 

要石を元に戻すとかなり広い部屋が目の前に現れた、要石を少し工夫させる事で、壊しても粉々にならないとさっきまでの様にならない様にしたし、予備のペンダント等も元に戻っていた。

 

「よし、これで後は・・・。」

 

マグマの中からマグマの蛇達が襲い掛かってきた。

 

それを数体消しとばし、桜の魔法で凍らされ、ティオの魔法でも消し飛ばされる。

 

「こいつらだけだ。」

 

「確か何十体か倒せば良いんだよね?」

 

「そうじゃ、襲い掛かってくると同時に撃退すれば良かろう。」

 

アッシュとミナは既に攻略しているので相手にされていない。と言うよりかは攻略者に攻撃しても意味がないと分かっているからなのだろう。

 

そして暫く襲い掛かってくると蛇達を撃破しているとガコンという音と共に小島にあった扉が開いた。

 

「・・・終わりか、呆気ねぇ・・・。」

 

「あんたらが可笑しいだけよ。」

 

「それもそうだな、後は魔法だけささっと貰ってしまおうか。」

 

そうして手に入れたのは空間魔法、ステータスプレートを確認してみる。

 

ーーーーーーーー

秋月風魔 17歳 男 レベル:42

天職 魔術師

筋力 70

体力 6400

耐性 10000

敏捷 1000

魔力 120000

魔耐 80000

技能 魔術作製[+複合魔術] [+魔術書き換え][+干渉魔術][+時間魔術][+空間操作][+境界弄り]魔法操作[+同時操作数増加] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+消費魔力軽減]高速魔力回復[+回復量上昇][+魔力回復量超上昇][+全体回復総量上昇][+魔力吸収]想像構成[+複数同時構成]同時思考[同時思考数増加]言語理解

 

ーーーーーーーーー

空間操作、そして境界弄り、ますます化け物じみていくな。

 

後は・・・干渉魔術?何だこれ。

 

訳がわからん、とりあえず考察は後にするか。

 

「とりあえず戻るか、流石にショートカットまで噴火とかそういう訳じゃないだろうしな。」

 

「あ、それは安心してもらって構わないわよ、石の船でゆっくりと外に出て行くだけだから。」

 

「流れがちゃんと外に行ってる事を祈るか・・・。」

 

一応ペンダントも持ってショートカットを使った、ちゃんと出れた。

 

そしてアンカジに戻るとハジメ達がすげえ歓迎されていた。

 

何が起こったのか分からない、とりあえず事情を聞くとしよう。




オルクスのクリア後なのに書いていなかった生成魔法のヘマが今やっときた感じです、一応これのせいで後の大迷宮いくつか潰れましたがきっと大丈夫、確か一つくらいしかなかったし、潰れるの、きっと大丈夫。


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予想外の人物

ハジメ達が胴上げされていたのはオアシスを直したのとハジメの力を危険視した教会の奴らに一泡吹かせた結果であるらしかった。

 

そのあとも俺達は今回アンカジにはほぼ全く関わっていないので俺達は祭りの参加を辞退しようとしたが商人達の中に俺達がオアシスを直した以外に住人達に魔法が拙いながらも使える様になっているというのを見つけてしまった者がいたらしく、更にそれが俺の担当した地区だったという事で俺も強制的に参加する事に。

 

そのせいで結局俺達も祭りに参加しなければいけなくなり、ありがたくご馳走させて貰った。

 

領主達との話し合いは基本的にハジメに任せてある、そう変な事にはならないだろう。

 

というか魔法が使える様になったって、どういう事なんだ?俺はただ飽和してる魔力を固めて打ち出せる様にしただけなんだが、生産されたばかりの魔力は汚染のようなものがなかったのでそれと別に一気に魔力を減らしたほうが良いと判断して根元から変えただけだし、それもイメージ次第で火や水に変えられるというだけなんだが。

 

それは魔法ではなく魔術の類で、それもかなり低い初歩や基本といわれるレベルのものだ、魔法ではない。

 

頭を捻りながらハジメ達にそう言うと白崎が拳を作って振りかぶるか否かを悩み始めた。

 

ハジメも乾いた笑みを浮かべているが俺はその時完全な治療をしていた事に気付いていなかった。

 

白崎が言いたいのは当たり前の様に治療するなという事だろうか。

 

治るならそれに越した事はないと思うんだが。

 

白崎には大人しく殴られた。

 

白崎も順調にハジメに汚染されている様で何よりだ。

 

そして2日が経ち、流石にこれ以上ここに留まる事もないという事ですぐに旅立つ事に、アンカジ中から感謝の言葉と共に送り出された、が凱旋パレードの様に大通りを占拠するのは色々と止めて欲しい、商人達すげえ顔してたから。

 

因みに領主の人にはある魔道具を預けてあるので自衛はできるだろう、一度に30ほどの大結界を展開出来る魔道具だ。

 

一つ破壊されたら破壊されて無くなった結界分の魔力が次の結界に上乗せされるので少しどころじゃなく硬くなっていく。

 

一枚目でもティオの本気のブレスを五回まで耐え、10枚壊すまでにティオが汗だくで気絶したという逸話があるのできっと大丈夫だ。

 

ただティオの着替えを担当した桜が苦笑いで部屋から出てきた時はやっぱりMが発動したんだなと諦めた。

 

因みにハジメのパイルバンカーなら3枚までなら同時に貫ける、そこから先は一枚ずつ破壊されていき、25枚目からはハジメの武装の破壊力がアホみたいに高い部類の武器でもそう簡単に壊れなくなっていた。

 

話を戻して、アンカジを出発した俺達なのだがアンカジに向かう途中の砂漠で商隊がワーム達に襲われているので救助に入る事になった。

 

「オラ!商隊のど真ん中にかっこいい感じで入れハジメ!」

 

「おうともよ!フハハハハハハ!!」

 

実は鬱憤が溜まっていたのだろうか、ハイテンションなハジメを見て商隊を襲っているワーム達に照準を合わせる、アッシュも弓を構えて照準を合わせている。

 

「数は3、地中に7、本来なら絶体絶命だが、あの商隊は運が良い、天使が舞い降りたな。」

 

「世界一おっかない悪魔の集団じゃないんですか!?」

 

「シア、それはどう言う意味だ?」

 

「あ、違うんですよハジメさん!これは別にそういう意味じゃなくてですね。」

 

「ファイア。」

 

誤魔化そうとするシアを尻目に俺とアッシュはワームに狙撃を開始した。

 

俺は普通のスナイパーライフル?を作成してもらっているので1発、残りの二匹をアッシュが貫いた。

 

俺は着弾した後対象を抉りながら貫通するか止まるかすると爆発する特製弾なので相手は余程頑丈でも無ければ死ぬ。

 

「・・・すぅ・・・はぁ・・・ファイア。」

 

近づいて来るワーム達の頭を撃ち抜くとそれに驚いたのか他のワーム達も色々と抵抗して行ったが頭を出せばアッシュに撃ち抜かれ、深く潜行しようとすれば頭を撃ち抜かれるか爆発で上に砂ごと巻き上げられるので逃げる事も許されずに死んでいった。

 

「殲滅完了、さて、護衛対象は無事だが、合流するかね?」

 

「ああ、見たところアンカジまで持ちそうになさそうだからな、護衛は居るが、食糧が無さそうだ。」

 

そして近づいて行くと商隊の人間達は驚いていたが中にいる人間の一声で警戒をしていた者もそれを解いた。

 

「すみ・・・ません、香織、ですか?」

 

「リリィ!?どうしたの!?そんなに汗だくで。」

 

「リリィ・・・なるほど王女さんか。」

 

白崎に服を渡すと馬車の人に断りを入れて中で着替えさせた。

 

ハジメは忘れていそうだが王女さんには俺個人で結構世話になった。

 

ハジメとの共同製作の設計図に使うインクや羊皮紙、その素材である鉄鉱石や魔力の込められた希少な素材などの手配は一手に引き受けてくれていたのだ。

 

ハジメが奈落に落ち、俺が魔道具を作り始めた時も素材などを融通してもらった。

 

なのでハジメはともかく俺は普通に覚えている。

 

そのあと王女さんがハジメに忘れられてて衝撃を受けたり、アッシュとミナを見て目を輝かせたりしていたがそれは置いておこう。

 

「で?王女さんが俺達に何の用だ?」

 

「そうです!それです!私はそれを言いに来たんです!」

 

早く言ってくれ、もったいぶってないで。

 

「愛子さんが、攫われました。」

 

王女さんのその言葉に砂漠であるにもかかわらず空気が冷えていくような寒さが周りに漂い始めた。

 

「ふむ、要件は先生の救出か?」

 

「・・・はい、私は皆さんにあの人が必要だと考えます、だから、愛子先生を助けて下さい。」

 

ハジメは目をつむって悩んでいるようだ、桜は・・・今は顔を向けたくない。

 

アッシュとミナは黙ってこっちに主導権を預けている。

 

ユエ達も同じようにハジメに委ねていることを考えると愛子先生の教え子である俺達と白崎が決めろという事だろう。

 

「・・・ハジメ、桜、君達はどうしたい?」

 

「私は助けたい、だって私、先生に何も返せてないもの。」

 

桜は間をおかずにそう言った。

 

「ハジメは?」

 

白崎は最初から助けたいようなのでもう決まった様なものだが一応ハジメにも聞いておく。

 

「・・・元はといえば俺が先生に話をしたせいだ、自分でやった事の責任は自分で取る、迷惑かけるな。」

 

ハジメは苦笑いでそう言った。

 

「仕方ないな、良かったな王女さん、助ける方向で話は決まったぞ?」

 

ハジメと俺は同じ様な笑みを浮かべていた。




改変したのは王女さんたちを襲ったのは賊ではなくワーム、それも普通のワームでした。

一応主人公達が入った事によって賊の襲撃とワームの襲撃が重なってしまったという体です。


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ノイント戦

投稿二度目、全話から見てくだせえ


「ハジメ、塔は登ったか?そこが牢屋のはずだ。」

 

『ああ、こっちも中に先生がいるのを確認した。トラップの類はよく分からない、もう少し調べてみる。』

 

「救出すると同時に先生を連れて姿をくらませる、スピードが命だ。気張れよ。」

 

王女さんに話を聞いてから1日程度しか経っていないが、車を止める事なく飛ばしまくったせいですぐに王都に着いた、ハジメは一人で神山に登り、俺はその中間で王都全体を見られる位置に残り、全員のオペレーターとして通信をする事になった。

 

指示が通りやすい様に王女さんにはポッドを着けてある、念話ができない俺たち用にポッドを着けて貰っているがいつか念話の出来るアーティファクトを作ってもらいたいな。

 

「王女さん、そこを右だ、左には兵士がいる。」

 

『ありがとうございます!』

 

「王城に登るには気づかれない様にするしかないが、やれるな?」

 

『はい!雫の部屋に行きます!最初からあの人の説得ができるとは思えないので!』

 

「・・・幼馴染だぞ?何か言う事はあるかね?」

 

『的を得た発言良くできました!』

 

どうやら、阿呆は王女さんからも残念な奴だと思われているらしい。

 

「クハハ、良いね、面白い、やってこい、桜、アッシュ、ミナ、準備は良いな?」

 

『『『大丈夫(だ/よ)!』』』

 

「上出来だ。」

 

俺がそう言うと同時に転移魔術だろうか、敵の大軍が王都の目の前に出現した。

 

「・・・戦闘開始、各々その力を見せてやれ、死にたい奴から死んでいける様にな!」

 

そんな事を言うと同時に銀色の光が俺に向かって降り注いだ。

 

地面は分解された様に砂になり、さらさらと風に吹かれて消えていった。

 

砂の大地に俺の姿は無く、世界から消え去ったと思う程の静寂が訪れた。

 

「こんなものですか。」

 

「そんな訳がないだろう?」

 

それを空に浮かびながら見ていた修道服の女は俺の言葉に一瞬で反応する。

 

その手にはさっきの山が砂になった魔法、いや、能力が付与されている大剣。

 

「おいおい、同じシスターでもこっちの方がおっかないもん持ってやがるな。」

 

それを手で掴みとり山に叩きつける。

 

「分解の能力であってたみたいだな、予想が当たって助かったぜ、なぁ、神の尖兵さんよ?」

 

「やはり、貴方はイレギュラー!ここで消えなさい!【闇夜の天使】!」

 

なんだその厨二病じみた名前は!!?

 

驚き過ぎて切り掛かってきた女性を蹴り飛ばすしか出来なかった。

 

「ちょっと待って!?何の話だ!?何だその名前!」

 

「貴方の天界での通称です、転生神夜月の唯一の天使、熾天使である貴方はその突出した戦闘能力からそう呼ばれています、出処は知りません。」

 

「でしょうねぇ!絶対嫌がらせだろうそれ!」

 

というか質問には答えてくれるんだな。

 

「貴方は我が主人の命により抹殺させて頂きます。」

 

「はっはっは、やれるものならやって見なさい・・・ただの人形風情が粋がるな、ただ戦闘が上手いだけではそんなものがつく事などありえんよ。」

 

天使は大剣を振りかぶって切り掛かってくる。

 

だが次の瞬間天使の体の中から大量の剣が飛び出してくる。

 

天使は死んだ。

 

「・・・まぁ初見殺し過ぎるよな、コレ、理解出来なくても別に構いやしねえよ、そう言うものだ。」

 

ただ魔術で魔力夢散の呪符を張った剣を大量に転移させただけだし、そんなに強い技でもないし、数千、数万居るならまだしも一人じゃな。

 

「さてと、桜達の援護でも行きますかね。」

 

ハジメも天使の一人と戦っている様だ、性能からして量産品、それも転生もさせてない素人だ、というか魂自体が無い人形だったし、エヒトってのは深刻な人材不足だな。




ノイントさんが名乗る暇すら与えない、というか単純なスペックが違い過ぎただけである。

長い時間失敗を繰り返して強くなった奴と最初期のスペックが段違いなだけの素人だったらこうなるよねという例である。


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防衛戦

「いやぁすまんね、敵の天使が攻撃を仕掛けてきたもんで、アッシュ、ミナ、桜、無事か?」

 

『問題は無い、が魔力が少々キツイな。』

 

『私は魔力は大丈夫だけど爆撃を耐える魔物が増えてきてそれの影に隠れて壁に近付かれてる!今はミナさんが交戦してるけど長く持ちそうに無いよ!』

 

アッシュは北、桜とミナは東だったな。

 

「アッシュ、最後にでかい一撃を撃ったら桜達のところへ急いで行け、ミナの魔力があるならもう少し耐えられるはずだ、王都の住民の避難が済み次第王宮に篭って主戦場を変える、その辺りにいる兵士にも指示を出しておけ。」

 

『了解、後敵の天使って事はやっぱりエヒトのか?』

 

「そう言うこった、ハジメのところにも1匹居やがったがハジメならどうにかするだろう、ティオが向かっているようだしな、後魔人族はユエとシアが抑え込むことになった、まぁ、本人達は復讐メインだから俺が攻撃を加えてはいるがな。」

 

『さっきからずっと落ちてるのってやっぱり魔人族だったんだ・・・。』

 

桜はそう呟くとアッシュがでかい一撃を加えた。

 

俺も外壁上に辿り着いたのでアッシュと交代する。

 

「あと頼んだぞ!」

 

「任せろ、簡単だ、敵を倒しまくればいい。」

 

アッシュが外壁を走っていくのを尻目に魔人族達に攻撃を加える。

 

俺が軽く魔力を集めると相手の魔人族達は青い顔をして回避し始めるが全て遅い。

 

「燃え尽きろ。」

 

地面から溶岩が一気に噴出し、50メートル程の溶岩の巨人が現れた。

 

マントルから直接引っ張って来たからその温度はかなり高い。

 

『〜〜〜〜〜!!!』

 

呻き声のような方向を上げる溶けた巨人と怖気付き逃走を図る魔物が一斉に行動を開始した。

 

動きが鈍いのに気付いた魔人族は水や氷の魔法を浴びせていく。

 

魔物達も最初は怖がっていたが魔人族が巨人を翻弄しているのを見たのか徐々に戻ってきた。

 

そして俺が魔人族の大きめの魔法に合わせて巨人の形を崩すと倒したと思ったのか歓声が上がる。

 

そして溶岩の中に含まれた鉱石を操作し流れて行く溶岩から熱された岩の槍が地面から生えさせると近くを通っていた魔物も数人の魔人族も纏めてその体を溶かしていく。

 

地上戦力は掃討完了、後は攻撃を恐れて仕掛けてこないだろう。

 

「貴様が術者か!覚悟!」

 

「大人しくやられるつもりは無いがな!」

 

槍を突き出して来た魔人族の槍を掴み、通り過ぎ様に斬り裂き槍を投げる姿勢になる。

 

「貫け!」

 

その槍に作り出した雲から雷が落ちてくるという演出をしながら雷を纏わせる。

 

その槍を投げるとハジメのレールガンの様な速さで直線上にあった魔人族が乗っている竜と共に貫かれた。

 

槍は熱と共に溶けて無くなるので後始末も完璧だ。

 

俺の周りには魔人族と戦っている兵士たちとこちらを見ている魔人族しか居ない、視線が集中しているのが分かる。

 

「諸君、そこまで私を見ていていいのかね?【メドゥーサ】。」

 

俺の着ている外套に魔術を付与する。

 

意識を向けた物はかなり強い石化の呪いを植え付けるものだ。

 

それによって一瞬で数百の魔人族が石となり地面に向かって落ちていった。

 

魔術を解除すると静かに息をする。

 

「・・・ふぅ。魔力消費もそれなりに高いな、やはり効果範囲を絞るべきか?」

 

魔物達も二の足を踏んでいるのでこの方面の防衛は大丈夫だろう。

 

アッシュ達もある程度退けたようで安定した戦いを見せている。

 

「・・・こちらの殲滅は完了した、桜、そっちの援護は行ったほうがいいか?」

 

『・・・あ、ううん!来なくていいよ!大丈夫だと思う!だよね?アッシュさん?』

 

『ああ、桜の魔力共有のお陰でかなり楽になったからな、正直に言うと避けてくる魔人族の対処の為に魔力共有を俺たち以外と繋いできて欲しいんだが、いけるのか?』

 

「すまないがさっきの巨人やら何やらで魔力をかなり削った、多分お前らと同程度しかないから俺には余り期待するなよ。」

 

『そうなの?じゃあ風魔は保険にしておいて・・・ユエさんかシアちゃんかな?』

 

「・・・いや、勇者たちをアテにしよう、あいつらの魔力なら普段使いにはもってこいだ、でかいのは撃てないが、魔人族に攻撃が当てられるならそれで十分だろう。」

 

『了解した、桜、魔力共有を維持しながら勇者達とも繋げてくれると助かる。』

 

「となれば合流だ、今シアとユエも戦闘を終了させた、王宮で落ち合うことになってる。」

 

それに、嫌な予感がする、阿呆関連ではなく、クラスメイトの誰かが死ぬ様な気がする。

 

ーーーーーーーー

王宮に向かうと扉も殆どが開けられており、俺達の部屋はすべて開けられてはないものの傷が付いていたりとドタバタしていた。

 

そして合流した桜は少し寒気がしていると言うと体を抱く様に蹲った。

 

「風魔様ですか!?広場にお急ぎ下さい!」

 

兵士が一人こちらに向かっていたからだ。

 

「何があった?」

 

「先ほど、魔人族によって大結界が破られました!勇者様方には一度集まっていただき迎撃して貰いたいと思います!」

 

「そうかご苦労だった、死ねよ、人形。」

 

そう言って俺は既に死んでいる人形を鎧ごと切り刻んだ。

 

「ふ、風魔。」

 

「チッ、近藤が死んでる、遅かったか。」

 

桜をお姫様抱っこにして一気にショートカットする、クラスメイト全員が集まっている所に一気に移動する。

 

「雫ちゃん!」

 

白崎の声と共に俺と桜は玉座の間から一気に飛び降りた。

 

その時に飛び散ったガラスと共に降りたために少し危なかったがまぁ大丈夫だった。

 

「・・・白崎、八重樫の近くに居るメイドは人形だ、吹き飛ばせ。」

 

「!!」

 

「桜は俺の仕事が終わればクラスメイトの治療を開始してくれ、それまでは白崎と王女さんに守られてな。」

 

「分かった。」

 

「ああもう!なんでお前みたいな化け物がこんな所にいるんだよ!お前なんか消えてしまえ!」

 

「・・・ハハッ、アッハハハハハハ!!良いねぇ!その狂気!かなり面白いよ!お前!やっぱり日本の時から思ってたけどお前は最高だ!」

 

俺の言葉にクラスメイト達はぎょっと驚いている様だ白崎は薄々察していたのか苦い顔だが。

 

「何がおかしい!」

 

「いやいや、見事なものだった、大人しい図書委員?俺も最初は騙されたよ、まぁ、印象操作の中であんたの家庭事情を理解するまでは、それからはまずどういう性格なのかを考えた、その結果、何回シミュレーションしてもまずまともな性格にはならない、出来たのは醜悪な犯罪者か、壊れ、阿呆と関わり、継ぎ接ぎだらけの人格になったものだったというわけさ。」

 

「光輝君を馬鹿にするな!」

 

死体をけしかけて来るがその死体が俺に攻撃を加える前に消し飛ばすと女の子がしてはいけない顔をして俺を睨んだ。

 

「狂っているのは心地良いだろう?俺にも分かるぞ、こんな世界だ、狂いたくもなるだろう?君の演技は本当に素晴らしいものだった、阿呆ですらも利用価値があったというわけなのだから。」

 

「何が目的?」

 

「目的?それは変なことを言うな、君の天之川光輝に向ける愛情がどうあれ本物である様に、俺もただひたすら日本に帰りたいだけさ、其処になんの曇りもなく、ただそう願うのみ。」

 

「帰りたければ帰ればいいじゃないか!お前がここにいる理由なんてもうないだろうが!」

 

「おいおい、勘違いをしないでくれるか?俺だけ帰っても意味が無いんだよ、それに帰る手段もエヒトを殺す算段も付いてないんだ、異世界転移なんて出来るわけがなかろう?」

 

「きゃあ!?」

 

俺たちが喋っていると白崎の胸から剣が突き出ていた。

 

「・・・白崎、まぁ、新しい身体くらいなら用意してやろう、その魂位ならば保護もしてやれる、安心して眠ると良い。」

 

白崎は俺に笑いかけた後全員に回復魔法をかけて死んでいった。

 

「檜山、退け。」

 

白崎を刺していた檜山を転移して蹴り飛ばし、白崎の身体に【魔断】(まだち)で転生の輪への干渉を一時的に無くならせる。

 

「魂よ、ここに残れ、汝の時間はまだあるだろう?」

 

白崎の身体の上にある魂に魔術をかけると正六面体のブロックになってゴトッという音と共に地面に落ちた。

 

それは淡く輝いており、神々しかった。

 

それを見て谷口と檜山はギラリという擬音が似合うくらいに俺を睨んでいる。

 

「おいおい、なぁ、それはどういう視線だ?」

 

「僕の邪魔をしないでくれる?化け物。」

 

「その言葉そっくりそのままお返ししよう、狂った少女。」

 

「・・・!聖天!」

 

桜が回復魔法を唱えると全員の傷が治っていく、それでも本職には遠く及ばずそう簡単には回復しない。

 

「落ち着け、無理に回復はしなくて良い、そういうのは俺らの仕事だ、王女さん、結界をちゃんと保てよ。」

 

「ああもう!いつもいつも肝心な所で邪魔が入る!なんでお前らみたいな化け物がこんな所にいるかなぁ!?」

 

谷口の叫びに俺は笑う事で返答した。

 

「だそうだぞ、ハジメ。」

 

「状況は理解した、俺の大切に手を出して無事に帰れると思うなよ・・・!」

 

時間稼ぎはした、後はショータイムだ。




ハジメが来るまでの時間稼ぎと主人公唯一のミス、香織が殺されるという結果に、本気で他の人間なんてどうでも良いとでもいう風に今まで世話になった人間を消し飛ばしてたりしている所にクラスメイト達は衝撃を受けています。

溶岩の巨人とか色々と魔術を考えてますけど最近は遊戯王カードとかデュエマのカードとかを見ながら魔術を考えて行っている今日この頃、アイデアがそんなに無くてつらいぜ。


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時間稼ぎ

どうも、年齢的にもほぼミナとタメのアッシュだ、俺達の説明は多分必要だと思う、あの自称元凡人の覇王は説明をしても訳がわからんだろうからな。

 

まず、大前提として俺達の仕えている神のいる場所、神界がある、これは神の一人一人に大小あれど与えられている。

 

これの大きさは部下、天使の力量や信仰されている世界の数が多いと空間の数も多くなる傾向がある。

 

転生神夜月はこの空間を一部あの覇王に分け与えている、それが覇王の強さの元であり、その規格外としか言いようのないスペックの元になっている。

 

覇王は空間の中に下級神の眷属や神話などに登場する生物達を生活させる代わりにその対価として必要とあれば覇王の魔力を対価として召喚に応じたり、その身体由来の牙や鱗などを分け与えている。

 

血の気の多い連中は終末論の一つであるラグナロクを擬似的に再現させた空間で嫌になるまで戦わせているらしい、鬼かあいつは。

 

あのバカみたいな魔力は完全に偶然らしいがレベルがそこまで上がっていないのにアホみたいに上がっているところを見ると覇王の空間の中にいる魔物達の魔力が渡されてるんじゃないかと俺は睨んでいる。

 

次に俺達の目的について、エヒトの抹殺、または矯正。

 

これに関しては抹殺しかないだろうという意見だ、そもそもの不文律として神は人間や知的生命体に干渉する事を禁じられている、あくまで管理者としてあれということだ、現人神であるエヒトでも一応警告はされていたはずなんだ。

 

そしてスパイとして7人の天使が派遣されてきた、それがこの世界で反逆者と呼ばれることになる人物達だ。

 

だがやはり転生した天使達の事は把握されていたらしくエヒトは天使達に攻撃を加えた、だが少なくとも俺とミナより転生している天使だった為なのか、最終的にエヒトの策略で味方の大半が敵になるまで拮抗出来ていたらしいのだから感服する。

 

そして反逆者達が死んだと同時にエヒトはその魂に付与されている天使としての神格を破壊し、ただの人間に落とした。

 

天使としての神格が無くなるということは記憶を引き継いでの転生が出来なくなる、本当の意味でただの人間に戻るという事だ、破壊された時点でまず最初に記憶がごっそりと消え去る、そして元の人格を残している為に精神が崩壊していくというかなりえげつない事になるので、天使の神格を破壊する事は不文律ではなくれっきとした法律の様なもので書き足されている。

 

そしてその天使達は7人とも別の神の眷属だったのだ、それも居なくなられては困るレベルの重要人物だった。

 

本来ならば天使の神格を破壊し得るような神ではなかったので全員が油断していたという事なのだろうか。

 

そして全滅が確認されたので新人しか出せる人材の居なかった神と俺とミナが仕えている神、そして決定打、決戦用の戦闘をメインに担当する天使である覇王が編成された。

 

ぶっちゃけ覇王だけで良いと思うのだが覇王曰く最低限俺達だけで世界と戦える戦力であるべきという理由で俺達と新人、桜ちゃんが必要らしいのだ。

 

覇王本人だけでも戦えるんじゃないかという俺達の質問は覇王本人によって否定された、俺がやると生命体がこの世界から消え去るレベルの災厄と化すぞ、それを防ぎたいからお前らが居るんだと。

 

どう考えても魔王です、本当にありがとうございました。

 

というか一通り悪の称号を持っているようで色々な世界で神話の人物となって来たらしい。

 

それを正面から挑んで当たり前の様に傷を付けてくる英雄ってやっぱ狂ってるわ。

 

とまぁ何で此処まで俺が現実逃避しているかというと

 

『クハハ、良いね、面白い、やってこい、桜、アッシュ、ミナ、準備は良いな?』

 

『『「大丈夫だ(よ)!」』』

 

『上出来だ、・・・戦闘開始、各々その力を見せてやれ、死にたい奴から死んでいける様にな!』

 

かなりの大群を前に俺一人だけだからだ。

 

俺たちの役目はきっと襲ってくるであろう敵軍の足止めと出来るなら排除、少ないなら少ないでよし、多いなら多いで頑張れという指示を出した覇王に親指を下にしてしまったのは悪くないと思うんだ、俺。

 

それでも一応天使組リーダーの命令には従わなくちゃいけない、あの覇王なら高笑いしながら殲滅しそうだと思うが仕方ない。

 

ハジメと覇王の共同製作品である俺のこの弓は矢が無く、弦を引くと同時に魔力が練り込まれてスナイパーライフルのスコープの様に魔術望遠鏡とかいうので照準を合わせられる。

 

メルジーネではコレと俺だけしか使えなかった魔法であの悪食を仕留めるのに協力した。

 

「すぅ・・・【スーパー・ノヴァ】」

 

いくつの魔法を使ったかは覚えていないが魔法の効果は覚えている、次の攻撃一回限りで大爆発と拡散して小爆発を繰り返す矢を放つ事ができる。

 

それに魔力が矢であるこの武器の特性上矢に直接付与出来る、更に攻撃力を減らす事で辺り一面を掘り返した土の様にする事も可能だ。

 

この他に再生魔法を使って相手の体の中から木を生やしたり根が毒素を吐き出す薬草を植え付けたり空間魔法を使ってゼロ距離で放つ事が出来たりと色々と工夫を凝らしている。

 

ミナの場合は物凄くやる事が単純なんだが俺はあくまで弓兵だからな。遠距離で出来る限り排除させて貰うさ。

 

「・・・チッ、魔人族か・・・貫通させるか。」

 

こういう時にハジメ達の持っている兵器は再現が楽な部類で助かる、今回はパイルバンカーを模している矢を放つ、重力の影響がほとんどないから助かる。

 

魔人族達は障壁を張るがそれが貫かれると知るとすぐに回避を選択していた。

 

「・・・あとはリーダーが来るまで時間稼ぎってところか。」

 

魔力に余裕が無くなってきた、早く来てくれ、リーダー。




アッシュ回です、ミナは次回ですね、書いたら案外書けるもの。


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英雄なんて

私は桜ちゃんと一緒に魔物達の軍勢を見ている。

 

「桜ちゃん、怖い?」

 

「・・・まぁ、確かに、怖いです。」

 

「貴女は本来なら戦いなんてしなくて良い筈なのよ、だって、貴女の能力は後方から支援するという事に特化しているから。」

 

「・・・それでも、風魔が戦うなら、出来るだけそばにいたいんです。」

 

ああ、昔の自分を思い出す、天使として初めて転生したときの事だ。

 

そういえばアッシュとはその時からの付き合いだったな。

 

その時は保護者として私を育ててくれたっけ。

 

「分かったわ、私も出来るだけ攻撃するから、危なくなったらすぐに下に降りる事、良いわね?」

 

「はい!」

 

桜ちゃんはそう言って笑った、顔が少し強張っている、矢張り、怖いのだろう。

 

私も、未だに人を殺す事は慣れない、殺した後はずっと恨み言を言われているような気さえする。

 

エリセンであの覇王にそう言ってみた。

 

すると覇王はこう言ったのだ。

 

「お前、実は殺す事自体はそんなに気にしてないだろ。」

 

と、当然私は怒って張り倒した。

 

あの時ほど起こる事はもうないだろうと思う。

 

そして私に殴られまくって赤く腫れまくった顔で覇王はこう言ったのだ。

 

「だいたいそう考えてる時点でお前が嫌っているのは殺しというものではなく、殺しをしている自分だ、自分が何も感じないのを許せない自分に罰を与えようとしているだけだ、それに、ほとんどの場合でお前は殺しをしないんだろう?なら、大丈夫だ。」

 

まるで私の事を全て見透かしているような発言に少しどころではなく恐怖を抱いたが、言っている事に間違いがない事は自分がよく分かっていた。

 

この世界で小さい頃から私を守ってくれていたアッシュも、要所要所で何が起こってもいつの間にか対処している覇王も、不器用に過ぎる。

 

男の天使共は不器用なのが多すぎると思うのだ、今まで一緒に仕事をしてきた天使達も似たり寄ったりの馬鹿共が多かった。

 

「さて!行くわよ!」

 

「支援します!頑張って!」

 

だけど、今のような時は頼もしいと感じる。

 

壁を降り、ガントレットから出される風弾で一気に飛翔する。

 

「一気に吹き飛びなさい!」

 

空間魔法で固定した空間を衝撃に任せて破壊する。

 

それだけでとんでもない数の敵がいなくなっていく。

 

「はぁ・・・はぁ・・・来なさい!私はここにいるわよ!」

 

すでに魔力は底をつきかけている、一度限りの大技だ、それに、そんな技を出しても敵は1割かそこらしか減っていないのだ、威嚇には到底足りない。

 

意識が朦朧としながらも構えて吠える。

 

叫び声をあげながら空を飛び地面を叩き、敵を打つ。

 

その度に敵が死んでいくが比例するように私の傷も増えていく。

 

「はぁ・・・まだ、まだ死ねないのよ、だから、代わりにあんた達が死になさい!」

 

私の叫びの返事は魔人族達の嘲るような声と魔物達の咆哮で掻き消された。

 

『・・・全く、世話の焼かせる娘だ。』

 

懐かしい声がする、何も出来ずに死んだわけじゃないし、これで良いのかな。

 

そう思うと同時に爆音が辺りに響き渡る。

 

その音に意識が次第にはっきりとして来る、いや、違う、体の傷が無くなり始めていく?

 

「何時まで寝ている、起きろ、馬鹿娘が。」

 

「・・・おじいさま?」

 

「・・・アッシュだ、馬鹿。」

 

私も無意識に呟いたパートナーの呼び名を訂正される。

 

「さて、かなり傷は癒えたはずだが、まだ戦えるか?」

 

「・・・うん、大丈夫よ!魔力はそんなにないけど、私達はコンビだもんね!」

 

「全く、調子に乗ってくれるなよ、また前みたいに俺が色々と動き回る事はあまりさせないでくれ。」

 

「もうおじいちゃんじゃないでしょ?」

 

「それでもだ、行くぞ!」

 

横を走る剣を持ったパートナーの事がどうしようもなく頼りになる。

 

やっぱり、男って馬鹿だなぁ。

 

「覚悟しなさい!私達は負けないわよ!」




ミナは今回の天使組の中で一番乙女思考である。

主人公は覇王、アッシュはオカン、桜は一般人、ミナは乙女思考と、完全に男達が保護者枠である事は気にしちゃいけない。

ミナはアッシュと比べて遠距離攻撃が限られてるからね、大軍に呑まれて傷だらけになるのも仕方ないという。

覇王なら地形毎薙ぎ払ったり、召喚して配下に任せたりと色々な事をしますがアッシュだとスーパー・ノヴァで爆撃するしか出来ないし、空を飛んでいる敵には直接当てないといけないという悲しさ。

次は主人公達の視点に戻したいなぁ。


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質問

白崎が刺され、俺がその魂を保護していると隠れて様子を見ていたハジメが姿を現した。

 

ハジメはドンナーを構えて谷口を見ている。

 

「あ、ハジメ、白崎の魂は何とか具現化できた、固定は出来たから後は新しい体でも作ってやれば大丈夫だ。」

 

「・・・そうか。」

 

ハジメの殺意が少しくらい無くなったかな?まぁ、やりすぎるということは無いだろう。

 

「はぁじぃめぇ!きざまざえいなければ!!」

 

「・・・愚かしい、檜山、君は哀れだな。」

 

「言ってやるな、風魔、こいつは日本でも此処でも自分に負け続けた負け犬だ、愚かというよりただの阿呆だ。」

 

「ギザマザエイナゲレバ!」

 

檜山の言葉に俺とハジメは肩を竦ませる。

 

「で?このゾンビ達はどうする?やろうと思えば輪廻の輪から戻すこともできなくは無いぞ。」

 

「・・・やっぱお前なんか変な力持ってるな?後で話を聞かせてもらうからな。」

 

「・・・・・・ご自由にどうぞ。」

 

やっちまったよ。もう諦めるしかないか。

 

火球や体術などを駆使して檜山がハジメに攻撃を加えているが俺が障壁を張っているのと鬱陶しそうに腕を振るだけで壁まで吹き飛んで行っている檜山を見れば実力差はよく分かる、檜山は狂っている所為でそれが理解出来ていないが。

 

「獣に成り果てたか、愚かな者よな。」

 

慈悲をかけようかと少しの間悩んで俺もハジメの件で恨みがあったのを思い出して無しにしようと決める。

 

「とりあえず放置で。」

 

「賛成。」

 

阿呆も復帰して戦闘に参加しようとしたが桜と八重樫に力尽くで止められていた。

 

「ああ、そうそう、ジャリガキ共曰く、俺は覇王らしい。」

 

初めからもらった宝物庫から自作のハーブを使った煙草を取り出す、火をつけて煙を吸う。

 

精神を安定させる作用のある薬草を使っているし、麻薬のような効果は全くと言って良いほど排除しているので問題はない。

 

「覇王なら、自分の意見を貫かなきゃいけないよな?」

 

「・・・僕の邪魔をするんだね、化け物。」

 

「それで大事な奴等が傷つかなくて済むのなら。」

 

「だったら、あんた達のお仲間には手を出さないとここで誓うわ。だから私の邪魔をしないで。」

 

幾分か冷静になったようだ、谷口はそう言っている。

 

「そうか、確かにお前が手を出さないなら俺達が敵対する理由も無くなる、だが忘れてないか?」

 

「香織は一度殺された、それだけでお前らを殺すには充分だ。」

 

檜山は完全に無視だ、それが檜山を焚きつけて白崎を殺したのではなく、檜山の独断だとしても。

 

「・・・なんでお前らみたいな化け物がこんな時に・・・!」

 

「ハッ、後悔なんて・・・今更だろ?」

 

ハジメが嘲りを隠そうともしない、その敵意も、殺意も微塵も衰えない。

 

「・・・では谷口、一つだけ質問だ、答えたら逃がしてやろう。」

 

「・・・あ?」

 

ハジメが睨んでくる。

 

ハジメの肩を掴んで任せてくれと一方的に言う。

 

「質問?」

 

「お前の母親から逃げられる、と言ったら、お前は信じるか?」

 

谷口の目が最大限にと言ってもいいくらいに見開かれる。

 

「・・・嘘に決まってる、僕がどれだけ頑張っても無理だったんだ、それに、君がどれだけ強くても向こうじゃただの学生なんだよ?」

 

「俺がただの一般人?これはこれは、さて、どうかな。」

 

ハジメも谷口を見てマジかお前と言わんばかりに目を見開いている。

 

「知らないってのは幸せだね、ハジメ、言うなよ。」

 

「・・・お前が一般人とか絶対あり得ないからな、谷口、悪い事は言わない、訂正しろ、こいつは一般人じゃない。」

 

「言うなって言っただろ、全く。」

 

「じゃあ、向こうではなんなのさ。」

 

「ん〜?一応投資家の一人でもあるな、どっかの結構上の方の大学に金をやったり傭兵達を雇って戦地の子供を連れてアメリカやヨーロッパの教会に預けたり、国境なき医師団だっけか?それの新人教育用の金だったりを供養してるな。後は・・・。」

 

「もういい、言わなくていい、というかお前そんな事までしてたのかよ、何で主な活躍が戦場なんだよ、そりゃその価値観になるわな。」

 

「はっはっは、日本では割と有名な実況者だぞ、後は警察機関から色々と賞もらってたりするぜ。」

 

「リアルチートを極めてるのがこいつだぞ、一般人の方が立場的に利用しやすいから目立たないようにマスコミ脅す位普通にやってるけどな。」

 

「だって有名になったら余計に桜を守れなくなりそうだったしな、最近は警備部隊でも自分で作ろうかなと思ってたくらいだからな。」

 

「だからと言ってチンピラ共を締め上げてヤクザに護衛やらナイフ術やらを仕込ませようとしてんじゃねぇよ、しかも名義上は探偵事務所とかだっただろ。」

 

当たり前の様に交わされる有り得ないとしか言いようがない功績を話している俺達に谷口は完全に引いている。

 

というか八重樫や阿呆は何やってんだお前という目で見ている辺り染まらなさそうだ。

 

というか阿呆が目指している正しい人間という目標に一番近いのが俺という人物だったりするがそれには気づいていないようだ。

 

「後は元ストーカー共にお話しして怪しい所にカメラやら監視やらを任せたりしてる、それで桜を覗いたら個人情報が警察とマスコミと掲示板、後は本人や親族の仕事先から特定班長とか全部に拡散される様になってるぜ、SNSにも投稿されるから逃げ場を残すほど俺は優しくないね。」

 

『うわぁ。』

 

桜自身も引いている辺りここに居る全員が俺に引いている様だ。

 

いや、ハジメは共犯だろうから除外だな。

 

「いつ思ってもお前の所業ってどう考えてもヤクザかなんかだよな。」

 

「テロリストでもいいぞ?悪を持って悪を制す、大いに結構、それで大事なもの達が守れるのなら俺は世界を敵に回したって構わない。」

 

俺の言葉に桜が頬を抑えて照れている。

 

「さて、長ったらしく話をしたが返答はいかに?谷口さんや。」

 

俺の言葉で全員の視線が谷口の居た場所にに向かう。

 

谷口はいつの間にか消えていた。

 

「・・・・・・アレ?」

 

「オイィ!?何やってんだお前はああああ!?」

 

ハジメが叫ぶ。

 

やっちまった。




主人公の不覚、中村を逃がしてしまう、話している間にフリードが到着して転移で逃げて行きました。

感想で言われたので追記、中村恵里を谷口と言っているのは主人公が素で間違えてるだけです、間違いではないので書いておきます。


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やってしまった

「おい、どうすんだよ、中村逃げたぞ。」

 

「仕方ねぇだろ!?谷口の方見て無かったんだから!」

 

「やっぱり間違ってた!それエリリンのじゃなくて私の名前!」

 

「あいつ何処に行きやがった・・・?あ、百万位の魔物が出現してんじゃん、あのドグサレ女もいるぞ、あと・・・何だこの白いドラゴン、背中に乗ってる奴が神代魔法でも使ったのか?」

 

俺の言葉にハジメは驚いている様だ。

 

「何でそんなのがわかるんだよ。」

 

「俺が直接見て指示を出してるとでも思ったのか?何人かにマーキングを着けて視点を生成、そこから移動出来る窓の様な空間を作り出し、偽装しながら散策出来る、牢屋とかに入って動けない時とかに便利かと思ってな、作ってみた。」

 

「処で、ここに居るゾンビ達どうする?」

 

「あ?消し去れよ、お前作ってただろ、あの地球を守る軍隊の空軍無線連絡係兼ビークル要請兵士の武器。」

 

「あーアレか、じゃあ発射♪とか言って見るか?」

 

「王都消し飛ぶんじゃねえの?」

 

「ま、待ってくれ、王都が消し飛ぶのもそうだが、百万の魔物がいるんだろう!?俺にも何か手伝えることはないのか!?」

 

「「あるわけないだろ何言ってんのお前?」」

 

面白いくらいに動揺する勇者様はまだ何かができると思っている様だ。

 

「ねぇ、あるよね?魔力補給してきてって言われてるよね?」

 

そこに桜からの無慈悲な魔力回復薬扱いにオルクス攻略組の何人かが崩れ落ちた。

 

「ああ、そうだった、ほら、魔力寄越せ、一つも残さず使い切る。」

 

「もうしてるよ。」

 

桜は治療の傍魔力のラインを繋いでいたらしい、八重樫と阿呆以外は力が抜けているのはこのせいかと桜を睨む。

 

「あーもう面倒だし、傷は回復させるからゾンビ兵全員殺して回れよ、お前らが出来ることなんて一つもないんだからさ。」

 

「そんな事はないはずだ!」

 

「・・・ハジメ、アッシュ達が二人で百万を塞き止めてる、加勢に行きたいから壁壊してくれない?」

 

「どの方向だ?」

 

アッシュ達と魔物達のいる方向を指差すとハジメは俺が魔力効率と耐久力を徹底的にあげたせいで最大10本まで同時に撃てるようになってしまったヒュベリオンで王都の壁のある地点を焼き尽くした。

 

「ありがとう、あ、ユエとシアも来てるから桜は魔力リンク繋いでから頑張って外壁を登ってくれ。」

 

「うん、分かった。」

 

「ちょっと待ってくれ!今の攻撃は何なんだ!?城と王都の壁がマグマみたいになってるじゃないか!?」

 

目の前にドロドロに溶けた液体が下に流れていくのを見て全員が冷や汗をかいている。

 

「よっしゃ!谷口の答えを聞きに行かなきゃならないからな!行ってくる!」

 

「だからそれ私の名前だよ!」

 

背後から聞こえてくる叫びは絶対に無視する、あいつは谷口だ、少なくとも今この場では谷口だ。

 

白から飛び降り障壁を展開し、足場にして一気に大群に突っ込む、アッシュ達の位置は把握しているので近くに着地する。

 

アッシュ達の近くにいる魔物を全て魔術の槍で貫き、障壁を作って会話する空間を作った。

 

「さて、無事かね?」

 

「何とかな、大体どのくらいいるんだ?」

 

「百万。」

 

「ハハッ、途切れないわけだ、途中から魔力が存分に使えるようになったから助かったようなもんだな。」

 

「桜に感謝しろよ?ギリギリだけど間に合った。」

 

「後で礼を言っておこう。」

 

ミナは気絶しているようだ、何をしていたのだろうか。

 

「ミナは死にかけてるところを助けたんだけどな、魔力が元々少なかったのもあって障壁が出来た瞬間に寝ちまった。」

 

「おいおい・・・まぁいい、男の意地を見せるぞ、アッシュ。」

 

「これだけ近くだと剣しか振れないけどな。」

 

アッシュはひび割れた剣を手に持つとブンブンと振った。

 

「はっはっは、援護なら多分そろそろ来るだろうハジメに連絡しておいた。」

 

「障壁は大丈夫なんだろうな?」

 

「ハハッ、心配なら祈れ。」

 

「オイ!?」

 

アッシュが俺に詰め寄ろうと足を出した瞬間に障壁の外が赤に染まった。

 

爆発音も聞こえるので俺とハジメの共同製作、レールガン式爆撃スナイパーキャノンを使っているのだろう、いやー、爆発の威力も精度も設計図通りで何よりだ。

 

『第二射、装填10秒、ヒュベリオン展開、掃射始め。』

 

わざわざオープン回線で言っている辺りクラスメイトへの威嚇か?ただでさえ死にかけのクラスメイトに追撃とは・・・まぁいいや、あいつらだし。

 

空から白い筋が何十本と降り注いでくる。

 

その筋は一つで100メートルほどを焼き尽くした。

 

それが数十本と降り注いでいるのだ、魔物達は既に半分程が焼き尽くされている。

 

「障壁を解除する。谷口は既に居なくなっているようだ、魔物を逃さないためにも掃射を続けてくれ、怪我人をそっちに送る、治療は頼めるか?」

 

『だからそれ私のモゴモゴ・・・「出来るぞ、ユエがいるからな、シアとティオがそっちに向かった、先生は無事だった。」』

 

「そうか、戦力が増えるのはありがたい、一応再生魔法も使ってるみたいなんだが適性が両方ほとんど無いらしくてな、治りが遅い、白崎が生きてたら良かったんだが。」

 

『まぁ、本人はめちゃくちゃ元気そうだけどな。』

 

「あ、神山の神代魔法ってそういうタイプか。」

 

転移魔法陣を城の広場に繋ぐとアッシュはミナを抱えて礼をした。

 

「すぐに援護する。」

 

「頼むわ、流石にウルの時よりかはきつそうだ。」

 

アッシュ達を送ると同時に障壁を解除する。

 

上を見るとティオらしき黒竜が飛行できる魔物達の相手をしているのが見える。

 

「さて、シアさんは何処にいるのかね。」

 

「ぶっ飛ぶのですぅ!」

 

居たわ。

 

向こうで叫びながら魔物達を殴り飛ばしている。

 

ハジメは拡散弾を使い始めたようで辺り一面が火の海に変わっていく様を見て俺は思ってしまった。

 

ここはいつ爆撃される戦場になったのだろうと。

 

暫くして魔物達が居なくなるのを確認し、俺達は王都に帰った。

 

その際にティオが色々と危ない顔をして迫って来て思わず吹き飛ばしてしまったのは仕方ないと思う、ビクンビクンしているのを見なかったことにしてハジメ達と話し合った。

 

ミナはアッシュの腕に抱き付いて寝ているし、白崎は体は治っているが魂が無いという状況だ、どうしても戦力の低下が無視出来ない。

 

一応ワンマンアーミーを出来る輩が全員生き残っているのでまだマシではあるのだが。

 

仕方ないのでハジメが俺の魔力を抽出して作っている神水もどきを飲ませたらしい、体力は十分そうだった。

 

「ねぇ・・・後で話しあるから、時間作ってよ。」

 

「あっはい、ほんとすみません。」

 

谷口(真)がハイライトの無い目で俺を見てそう言ったので割と怖かった。

 

そして白崎が死んでしまったので代わりの体を作ることになったのだがその際にハジメから神山に神代魔法があるから取って来いと無理やり教会跡地に天使達全員が押し込まれた。

 

神代魔法を取れたのは良かったがステータスに何か変化があったわけでもないので大して変わらなかった。

 

桜は追加されているが魔力が桁違いだからなのか使うことは出来そうになかった。

 

そして、ハジメから夜に呼び出された。

 

「どうだ?白崎の身体は。」

 

「あの使徒の身体を使うことにした、一応色は変えようと思ってるんだが、問題はお前だ風魔。」

 

やっぱり忘れてなかったのね。

 

「まぁそうだろうな、神山の神代魔法が魂関係なら忘れてくれるはずもないか。」

 

「・・・なぁ、親友、お前は俺の敵なのか?それとも、味方なのか?」

 

ハジメからは弱々しいが確かに殺気が込められていた。




ビームで脅す展開が出せなかった理由その一、単純に威力が高過ぎて撃てなかった。

その二主人公の介入によって武器の数が数倍になっているので切り札どころではなくただの攻撃手段である事。

そしてハジメ曰く切り札は複数用意するらしいので通常攻撃で脅す意味が無く、ある意味原作より酷い事になるのが確定してしまった為です。

ぶっちゃけ神話大戦くらいでしか使えないようなものがゴロゴロ生み出しているのでどうしようもない。

そして次回からは話し合い回が続きそうです。地味に作者が好きな展開が続きそうです。


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ハジメとの話し合い

「・・・敵か味方か、か、さて、一応ハジメ達からすれば味方の立ち位置にいるんだが、場合によっちゃあ敵対するからな、なんとも言えねえよ、少なくとも、今は。」

 

「お前が変な力を持ってんのと関係あるのか?」

 

「ある、というか、俺の力はこの際置いておこう、ハジメ、何から聞きたい?全部答えてやろう、時間が許すまで。」

 

ハジメは俺の目をまっすぐ見ているが暫くすると溜息をついて空を見上げた。

 

「俺たちの友情は偽物だったのか?」

 

「違う、それは絶対に違うと約束しよう。」

 

「お前達は・・・生まれた時からその力を持っているのか?」

 

「桜以外の俺、アッシュ、ミナはそうだ、桜はそれができるほど経験を積んでいない。」

 

ハジメはその他にも幾つかポツポツと質問を繰り返す。

 

「・・・お前の答えに間違いがなければ、お前達は俗に言う神様転生をしているという事になるんだが、合ってるか?」

 

「ああ、その通りだとも、俺の価値観はこの世界とも向こうの世界とも違う世界で育まれてきたものだ。」

 

「マジかよ。」

 

ハジメは一番気になっている事を言っていないのだろう、俺達の関係についてだ。

 

「因みに、魔術も別の世界の産物だ、物理法則とか魔力の有る無しは結構別れるからその都度書き換えるがな。」

 

「つまりお前が俺よりとんでもないものを作ったり出来るのは・・・。」

 

「いろんな世界で色んなものを作ってその中からこの世界で使えるものを作り出してるからだな。」

 

「お前があっちで頭のおかしい功績を挙げられるのも・・・。」

 

「いやぁ、偽装できる類の魔術で姿を作れば同姓同名の同一人物として活躍出来るだろう?投資以外は大まかな特徴は俺と同じにした幻影、少なくとも外国関連は全てそうだ。」

 

「・・・そりゃチートだって言われるわけだ。」

 

そんでハジメは静かにこう言った。

 

「お前達の目的は?」

 

「エヒトを殺害、もしくは矯正する事。」

 

「・・・何?」

 

俺達のやろうとしている事は世界を文字どおり敵に回す発言だった。

 

「さて、何処から話そうか、そうなる経緯だ、そうだな、俺達が神の僕だという事はさっき言ったっけか?」

 

「ああ、さらっと言われたからスルーしそうになったが確かに言ってたな。」

 

「俺達みたいな僕は世界のバランスを保つ為に転生を繰り返す、その際前世までの記憶と経験をある程度引き継ぐ事ができる。」

 

「つまり二週目って事か?」

 

「いや、ファンタジー溢れる世界からSFのような世界に転生する事もありうるから一概にそうとは限らない。」

 

「なるほど、だから記憶と経験なのか。」

 

ハジメは妙に手慣れた俺のことを思い出しているのだろう。

 

「記憶は世界毎に保管され、魂に直接刻まれる、つまり、数さえあれば統計を取る事も出来るし、一つの状況からこういう結果を導き出す事が可能になる。」

 

「お前が人の事を本人より理解している節があるのはそれのせいか!?」

 

「そゆこと、でだ、俺たちの主、神達は感情やら欲望やらがあるがあくまでシステムの様なものだ、人間ではなく管理者という言い方が一番正しい、だから法律の様なものもあるし、そういう時のプロトコルは綿密に決まっている。」

 

「という事はエヒトはその法律に引っかかったのか?」

 

「ああ、この世界で反逆者と言われている人物達は俺達と同じ神の僕・・・言いにくいな、天使で統一する。」

 

「天使か・・・。」

 

「エヒトの監視も兼ねて7柱の神から天使を派遣した、自分の配下を作るまでの間に合わせの様なものだ、だがエヒトは現人神で人間から神になっている人物だった。」

 

「文字どおりなんでも出来るから調子に乗ったわけだな?」

 

「ああ、その権能を使って天使達の神格を剥奪し、ただの人間に落とした。神の法に思いっきり抵触する。」

 

「天使の神格を剥奪?派遣をクビにするとかそういうものじゃないのか?」

 

「全く違う、会社じゃなく国だ、新興国だからサポートとしてエリートを貸すね、と善意で貸し与えた先進国のエリートを国の意思を完全無視して問答無用でお前俺に従わないから殺す、みたいな感じだと思って貰っていい。」

 

「うわぁ、そりゃキレられるわな。」

 

「これで賢君なら良かったんだがな、それならサポートなんて必要有りませんでしたと言い訳出来る、そのエリートがおたくの意思だとかなんとか言ってんだけど?とか言ってつき返せるから、でもエヒトはただの楽しみたいだけのクズだった。」

 

「だから抹殺か、神を殺すのなら桜が経験無いって不味くないか?」

 

「俺って1兆位の数転生してるからフォロー出来るだろうからつって新人を渡されたんだよ、それもあいつ最初も二回目もレイプされて凍死と餓死とかいうめちゃくちゃ悲惨な事になってるから付き合いにくいのなんの、おかげで幼少期から派手に動かなくちゃいけなくなった。」

 

「その結果がアレなんだな。」

 

ハジメは地球での俺の功績を思い出しているのだろう。

 

「桜の主神は珍しいものを集めるコレクターらしくてな、異性同性問わず性的に魅了し易い魅力を放ってんだとよ。」

 

「俺も中学に上がった頃からおかしいと思ってたがそういう事かよ。」

 

そりゃ警告動画まで上げてんのに月1か月2で変態が襲ってくるもんな、学校の奴らが豹変した時はマジで焦った。

 

「アッシュとミナは同じ神を主神としている、向こうの神は基本的にコンビを組んで転生させているらしい、だから新人だったミナを教育していたアッシュを付けたんだろう。」

 

「お前は?お前の主神は何なんだ?」

 

「俺は転生神夜月を主神と仰いでいる、天使は俺しか居ないから階級的には熾天使になる、一応もう一人天使がいたんだが何度かコンビを組んだら主神の元に帰って行きやがった。」

 

「ドンマイと言えばいいのか?」

 

「まぁそれはいい。問題はエヒトが俺達を元の世界に返す気が無いということだ。」

 

「どういう事だ?」

 

「今回の召喚はエヒトが戦争を泥沼にする為に呼んだものだ、自分だけが楽しめる盤上の駒として、その世界で生きている生命体としてではなく、いくらでも替えのきく駒だ、ハジメ、お前は現時点でエヒトとまともに戦える程度の力を持っている、要するにエヒトは自分の言う通りにならない駒に癇癪を起こしているだけなんだよ。」

 

「・・・ただのクソガキじゃねえかよ。」

 

「ハハッ、まぁそういうな、でだ、話を戻して、反逆者達はその記憶のほとんどを無くしながらも協力してエヒトに一矢報いる為に大迷宮を作り上げた、まぁ、結果は知っての通り、負けてしまった訳だが。」

 

だから天使としての記憶も今ではおぼろげにしか覚えてないんじゃないかと付け加えるとハジメはどこか遠くを見る様な目になった。

 

「まぁ、敵にもなりうるって言ったのはそのエヒト絡みでな、俺達は天使としての任務を遂行しなくちゃならないから、お前らが帰る前にエヒトを倒しておきたいんだ、それは邪魔してくれるなよ。」

 

「分かってるよ、何か手伝って欲しい事があるなら武器くらいは作ってやる。」

 

「ツンデレかテメェは、まぁいいさ、俺も今まで隠してた事を言えて心なしか気が楽になった。」

 

「お前みたいなとんでもない数を転生してると王子様とかそんなのになってそうだが、大丈夫なのか?」

 

「・・・聞きたい?トラウマにするぞ。」

 

「・・・なるじゃないんだな。」

 

当たり前だ、夜な夜な気配がすると同時に全裸でベッドに潜り込まれていたりする恐怖がお前に分かるか?

 

そのあとは他愛ない話をして解散した。




とりあえず険悪な空気にはならなかった、次回は誰と話そうか。


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谷口との話し合い

俺はハジメが白崎の魂を天使の身体に定着させるまでの間にクラスメイト達のメンタルケアを任されてしまった。

 

そして一番最初に会う事になってしまったのは中村の親友である谷口だった。

 

谷口の部屋の前に立ってノックをする。

 

返事が無く、鍵もかかっているので出ているのかと思ったがそんな事はなく、ただ気力が無いだけのようだ。

 

「おい、谷口、開けろ。」

 

「・・・・・・。」

 

「こっちはメンタルケアなんてのを任されてんだ、せめて話せ。」

 

「・・・やだ。」

 

まぁそうだろうな。

 

「それでもだ、ゆっくりやるつもりだが、お前にそんな時間はかけられん、扉から離れろ、ぶっ壊す。」

 

魔術を構築し、扉だけを破壊すると部屋の中は真っ暗で谷口はネグリジェ姿で布団に包まっていた。

 

「なぁ、お前さ、気付いてただろ、中村の歪みに。」

 

谷口はびくりと震える、俺から離れようとベッドの上をずりずりと移動し始める。

 

「あー、認めたくないのはわかるがな、どうすんの?結局、お前は何がしたい?中村は歪んではいるが天之川光輝を愛している、お前は何をしたい?お前達は曲がりなりにも親友だったのだろう?」

 

「・・・分からない・・・分からないよ・・・そんなの。」

 

「答えは自分で見つけるべきだ、どれほどの時間をかけようとな、他人から与えられる救いは救いなんかじゃない、ただ助けただけだ、そんなもの、何の役に立つ。」

 

谷口は泣いているようで布団が物凄い形で固定されている、掴みにくいだろう、どう考えても。

 

「あんたはどうなの?桜ちゃんを守るっていうのはどうやって決めたの?」

 

「・・・人を殺した時だな。」

 

「・・・え?」

 

「ふむ、少し俺の過去を話そうか。」

 

谷口は俺の言葉に何かを考えながらも聞く体制に入った。

 

「俺は、まぁ普通の子供じゃない、生まれた時から孤児院育ちだ、教養も無く、親もいないし、周りにいるのは似たり寄ったりの子供達だけだった。」

 

思い出すのは昔の、俺の手が入らなかった時のボロボロの教会だ、聖堂くらいじゃなかったか、汚れが無かったのは。

 

「一応シスターは俺達を愛していた、子供として、だが当時新人だったシスターは俺たちをただの子供としか思う事が出来なかった、当たり前だ、そういうものは時間をかけて行かないと分からないものだったから。」

 

今ではシスターも40近い、それでも言い寄ってくる社長の息子さんとかがいる辺りすごいと思うが、まぁそれはいい。

 

「だから、俺はシスターに育ててもらった恩がある事は理解していても親だとは思っていなかった、桜に会うまでは。」

 

「いつ会ったの?」

 

「3歳の時に、公園で泣きそうな顔を必死に我慢して周りに気付かれないように小さくなってた所を無理矢理引きずり出した。」

 

「えっ・・・。」

 

「そこからだな、俺が桜を中心に色々とやるようになったのは、最初はただの気まぐれだった、桜の家族が売れっ子声優だという情報をもらって桜と一緒に来てもらって仕事でブレイクしたら孤児院に金を落としてくれって交渉したり、行きすぎたファンを諌めたり、色々やった、本当に色々やった。」

 

「・・・その時何歳だったの?」

 

「言っただろ?3歳からだって。」

 

「・・・。」

 

谷口の目が呆れるような目に変わった、解せぬ、いやまぁおかしいのは分かるが突っ込むのは後にしてくれ。

 

「とまぁ、そういうのもあって俺達は金を集めた、んで、小学校に上がった、ちょうどその時だったかな、ハジメと会ったのも。」

 

「そうなんだ。」

 

「ああ、そこからずっと一緒に遊んで来たよ、動画サイトでチャンネル作ってゲームの実況したりイベントに参加したりな。」

 

「そんな事してたんだ。」

 

「だけど、ネットの無邪気な悪意は容赦無く降りかかった、ある日桜から電話が掛かってきた、その内容はたった四文字、『助けて』だった。」

 

あの時のことは今でも思い出せる。

 

「桜の家が近かったのもあってすぐに現場には着いた、其処には泣きながら服がビリビリに破かれている桜と、それに興奮している犯罪者の姿があった。」

 

「・・・。」

 

「其処から先は桜の手を引いて庭まで逃げて犯罪者が持ってきた包丁を奪って腕と脚を切りつけた。今思えば、俺は怒りに身を任せて殺そうとしていただけだ、情けない。」

 

変態は傷だらけだった、痛みに泣き叫びながら俺を見ていた。

 

「そして、痛い、死んでしまう、助けてと言っている犯罪者を、道路まで蹴り飛ばした。その時だ、車が狙った様なタイミングで通って行ったのは、俺の身体は血と肉でいっぱいだった、俺は自分の手を見た時、まだ血が自分の手についているんじゃないかと思う時もある。」

 

「それは・・・桜ちゃんも見てたの?」

 

「ああ、俺の真後ろでな、血で真っ赤に染まった俺を見て怖がってたよ、思いっきり。」

 

「・・・。」

 

「そして俺は自分で警察を呼んで自分で後始末をした、保護者としてはシスターがいたが、シスターには頼りたくはなかった、新人だから、経験が無いから、なんて言っていたが、実際は、家族と認めたくなかっただけだった。」

 

どうしようもなく、俺はただの殺人犯だった、人を殺しても何も思わないなど、まともな人間では無いだろう。

 

「その事は俺が小学生ということもあってか大事にはならなかった、車の持ち主が車を買い替える時に犯罪者の家族が代わりに支払うだけで済んだ、俺には一切金銭的なものは無かった、学校に行くまでは。」

 

「みんな知ってたの?その事。」

 

「ああ、桜が襲われた事は学校で大々的に言われてたからな、数日も俺が近くに居なくて、ハジメが甲斐甲斐しく世話をしているのを見たら、悪意が広がるのはあっという間だ、しかも本当の事だから手に負えない、教師も動揺して本当の事が漏れてしまった。」

 

其処からはいじめの始まりだ。

 

「結果的に桜にされていたいじめなんかは全て俺に変わっていた、何もできない自分が桜の代わりになっているのが嬉しかった、それで守っていると、俺は本気で信じていたんだ、いつかみんなこんな事はやめてくれる、きっと優しい人が現れて全て丸く収まるってな、今思えば、俺はただ誰かに罰を与えて欲しかっただけなんだろう。悲劇の主人公気取りでいたかった、そういう事なのかもしれない。」

 

「それって・・・。」

 

「人は正しいと盲目的に信じている、天之川光輝と同じだ、お前の言う通りだよ、谷口。」

 

そして、桜にもう一度危険が迫ってしまった。

 

「谷口、子供の悪意って酷いものだよな、自分が犯罪者にならないから『犯罪者の仲間』も遠慮無くいじめるんだ。」

 

「まさか、住所を書き込まれたの?ネットに?」

 

「いいや違う、もっと酷いものさ、ほぼ全てのSNSに書き込まれた、複数人がわざわざ匿名でな、犯人も何もかも分かっているのに、大人は罰を与えられず、俺達には他の他人からの悪意が降り注ぐ、桜にも犯罪者が大量に押し寄せて来た。まともな奴なんて一人も居ない。」

 

だから、俺が守るしかなかった、子供で居られるなんて幻想は一瞬で砕かれた。

 

「俺自身は何とでもなる、幸い、人を殺したり傷つけたりする才能は存分にあった、問題は桜だ、何の力も持っていない子供に、ただ仲の良かっただけの子供に、悪意が降り注ぐ、そんなもの、許せるはずが無いだろう?」

 

だから、手段なんて選ばなかった。

 

「其処からはもう死に物狂いだ、傷が付く可能性は少しでも減らした、俺はただ桜に普通の人生を送って貰う事だけが目的だった。そして、ぶっ倒れた。」

 

医者からは過労と言われ、暫く何も出来なかった、その間に桜に危険が及ぶと考えたら、寝る事すらできなかったのを覚えている。

 

「そして、まぁ、桜本人がブチ切れた。」

 

「え?」

 

谷口は気の抜けた返事をした。

 

「・・・いやマジで、ブチ切れた、マジで怖かった。」

 

「顔凄い青いけど大丈夫?」

 

「ハハッ、オレ、無事だぜ、ハハッ。」

 

「壊れてるよ!ねぇ!本当に大丈夫!?」

 

数分後位にある程度マシになってきたので話を再開させる。

 

「えーと、確か桜がブチ切れた所だったよな、病室でブチ切れた桜に怒鳴られて静かになった後に論破されていった。」

 

「うわぁ。」

 

「で、怒った後は大泣きだ、病院中に響き渡ってたらしいから苦情が来ると思ったけどその前の説教を聞いてた老人方達が温かい視線を送ってきたのには耐えられなかった。」

 

「・・・。」

 

「その視線を今すぐやめろ、目潰しされたいかお前。」

 

谷口の哀れむような目に少しイラついた。

 

「まぁ、泣き疲れて寝ちまった桜をベッドにあげた、俺は少し疲れた程度だったからか点滴を付けたままソファで寛いでたんだ、桜はそのまま夜中まで寝てた。」

 

「まぁ、泣きつかれちゃったらそうだよね。」

 

「そんで寝た事に恥ずかしがったり俺と話したりしている内にまた泣き始めた、夢じゃないって確信したから何だろうが、まぁ心臓に悪いわな、そんなの。」

 

「そうだったの?」

 

「当たり前だ、こちとら当時中学生だぞ、心臓に悪いどころの話じゃねえよ。」

 

あの時は心臓が跳ね上がりまくってたからな、桜って結構無防備だったから。

 

「その時に抱きつかれて言われた言葉が、家族なんだから心配するのは当然っていう言葉だったわけだ。」

 

「家族・・・。」

 

「おかしいだろ?でも、俺はその言葉に無意識に泣いてた、俺にも家族が居たんだ、心配してくれる人がいたんだ、俺はただの怪物じゃなかった。」

 

今の俺の顔は真っ赤だろう、谷口も多分気付いてるくらいには。

 

「だから、俺は桜を守ると決めた、絶対に間違えないように、今度こそ完璧に。俺が好きだから、全力で。」

 

「・・・。」

 

「お前はどうなんだ?お前にとって中村は何なんだ?」

 

「親友、だと思う。」

 

「それが嘘であっても?」

 

「嘘じゃない。」

 

「それは何故?」

 

「分からない、けど、多分嘘じゃない。」

 

「なら、君は嘘ではない事を知っている、後は嘘ではないと言えるだけの証拠があるはずだ、君だけしか分からないような証拠が、それを本人に叩きつけて見せてやれ、俺はバッドエンドは認めない、君にとってのハッピーエンドを俺は望んでいる。」

 

「・・・分かった、やってみる。」

 

・・・もう、大丈夫そうだな。

 

「なら後は自分で考えろ、お前の中に既に答えはある、自分の成したい事を、全力でやりなさい。」

 

俺はそう言って谷口の頭に手を乗せる。

 

谷口は俺の手を嫌そうに弾き飛ばした。

 

「後ね、私地味に怒ってるんだ、さらっと流してるけど、私の名前を間違えてたことは忘れてないから。」

 

バレてる、普通にバレてる。

 

俺は全力で部屋から飛び出して逃走を開始した。

 

「待ちなさい!」

 

「いやほんとごめんって!あぶねぇ!」

 

「取り敢えず殴らせなさい!」

 

ごめん無理。




谷口は気付いていたようです。


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八重樫との話し合い

「うおおおおおお!!俺は逃げるぞおおおお!!」

 

「待ちなさい!せめて1発殴らせなさい!」

 

「断固として断る!俺は悪くねぇからな!」

 

谷口から逃げていると廊下の突き当たりに誘導されたらしく、谷口は微笑みながら近づいて来る。

 

「いい加減諦めなさい・・・はぁ・・・取り敢えず・・・逃げないで。」

 

「体力無いのに何で無茶したんだお前。」

 

「誰のせいよ!」

 

谷口は足がガクガクと震えているので額にデコピンをしてやると一瞬で力が抜けて倒れてしまった。

 

「あ、そうそう、谷口、どうしても気になるならあの筋肉バカを見るといい、見てると自分の考えてることがバーカらしくなってくるからな。」

 

「・・・。」

 

もう答える気力すらないのか廊下のど真ん中で動けずにいる谷口の横を通っていく。

 

「さて、近くに誰の部屋があるかな。・・・八重樫にするか。」

 

何となくで広場を見ていると八重樫が見えたので広場に降りる。

 

俺が近くに着地したのにも気付かずにずっと広場を見ているので声を掛けるか少し悩んだ。

 

「・・・よぉ、八重樫、何辛気臭い顔してるんだ?」

 

「きゃあ!?」

 

八重樫がすげえ驚いたな、びっくりした。

 

「やっぱり気付いてなかったか、んで?悩んでるのは何のことなんだ?聞くだけならやってやろう。」

 

顔を真っ赤にしていた八重樫は訝しげに俺を見ていた。

 

「・・・まさか気付いてないのか?まぁいい、一つだけ質問してもいいか?」

 

「・・・何?」

 

「お前は、人の為に行動してきただろう?お前の為に行動する奴はいなかったのか?」

 

俺の言葉は驚くほど八重樫を狼狽させた、八重樫は気付いていないだろうが、目が一瞬泳いでいた。

 

「何で貴方にそれを言わなければならないの?」

 

「いや別に、ハジメからメンタルケアでもして来いって言われててな、後で阿呆のところとかにも行く気だよ。」

 

「・・・私の為に、か、居ないわね、一人も、みんな私にいろんなものを押しつけてそれで大丈夫だって言ってるわ。」

 

なまじ優秀だからこそどうにかなっている、阿呆は一度痛い目を見たほうがいいんじゃないか?

 

「なるほどね、まぁお前は一番責任感が強いみたいだからな、無理も無い。」

 

「ねぇ、貴方は光輝のこと、どう思ってるの?」

 

八重樫はずっと気になっていると思う事を聞いてきた、俺の答えは決まっている。

 

「何度も言っているだろう?阿呆だと。」

 

「そうじゃないわよ、何故貴方は大多数を敵に回してまで光輝と敵対したの?個人の感情?いえ、貴方はそんな人じゃない、何か別の理由があるはずよ。」

 

「・・・よく見てんなぁ、お前、まぁ、個人の感情ってのはあるが、ああいう奴は俺が大嫌いな部類だ、現実を見ようともせずに理想だけを抱え、そして死んでいく、その過程で大多数の人を洗脳でもしたかのように巻き込んでいく、勇者としての戦いに身を投じると言ったあの時が良い例だ。」

 

八重樫は空を見上げて黙ってしまった。

 

「俺は出来うる限りクラスメイトの人数を減らしたくはない、出来るならば犠牲は10人程度にとどめておきたい。」

 

八重樫は俺の言葉を聞いて俺を見た、そして俺の目を見て驚いていた。

 

「気づいたか?俺の目が赤い事に、少し見れば気付くような分かりやすい色をしているのに、クラスメイトで気づいているのは何人だと思う?」

 

「ハジメ君たちだけ・・・?」

 

「ご名答、誰も俺自身を見ない、俺を噂で固め、悪だと無意識に思い込み、誰も俺自身を見ようとしない、当たり前だ、『みんなの勇者』天之川光輝が嫌いだと思っている奴だから。」

 

「貴方は、みんなの嫌われ者に自分からなったっていうの!?」

 

「最初は全く意識してなかったんだがな、目を見ても誰も俺の目について聞いて来なかった、最初は何故だと思ったが全員俺の目ではなく、悪だという目で俺を見ていたんだ、面白いものだろう?本当に悪いのはどちらか、考えればすぐに分かりそうなものなのに。」

 

「それも、桜ちゃんを守るため・・・?」

 

「勿論だとも、俺が悪になり、周囲の関心を集め、その間にノーマークの桜が味方を増やして守る、要するに囮って訳だ。」

 

八重樫は理解できないとでも言うように頭を抱えた。

 

「何で・・・そんなことが出来るの・・・?みんなに嫌われたら学校生活すら出来るか分からないのに。」

 

「八重樫、お前は何か勘違いしているようだな、俺はそもそもクラスメイトを味方だとは思っていないぞ?」

 

「なっ。」

 

八重樫の頭をポンポンと叩き、笑う。

 

「クラスメイトの中で一番信用しているのはお前と遠藤だけだ、遠藤は調べる事に関しては結構役立つからな。」

 

「待って!何で貴方は、私の事をそんなに評価してるのよ!?」

 

「だってお前、誰も放っておけないタチだろ?誰かが困っていれば手助けして、それを繰り返して今がある、何かに縋りたくなった時は俺かハジメを頼るといい、何回か助けてやるくらいには恩を感じてもいるしな。」

 

「・・・じゃあ・・・今だけでいいの、縋らせて。」

 

「分かったよ。」

 

木の陰で泣いて今までの苦労を吐き出す八重樫を見ながら後は明日に持ち越しかなと俺は思ってしまった。




アレ?これ八重樫さんヒロインレース登場確定しちゃったのでは?


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檜山

八重樫に泣きつかれてから1日が経った、泣いて寝てしまった八重樫を生き残っていたメイドに預けて俺も部屋に戻った、翌日から他の何人かが地下の牢屋に通っているのは知っていたので生きていた檜山について少し考えようと思う。

 

まず、白崎を殺して俺達に突っかかってきた檜山は俺達が谷口に意識を向けていたせいでボロボロながら生きていた、魔物達は王都にも入っていたが、阿呆が主導で戦っていたらしい。

 

その結果、檜山は状態はどうあれ生き残って牢屋に入れられた、ハジメが拘束具をわざわざ使って拘束した時点でハジメは関わる気は無さそうだ。

 

ハジメは見限った相手には割と物をやったり、態度で示す、しかも話題に出しても無関心になる、というか記憶から消えてる。

 

「全く、面倒だな、これ。」

 

俺が地下に降りると誰も居なくなっていた、鎖で雁字搦めになっている檜山以外は。

 

「檜山、面白い姿になっているな。」

 

「俺の方が香織に相応しいんだ、何であんな無能なんかに、俺を見ろよ、俺だけを見ろよ、香織ぃ・・・!」

 

「声すら聞こえないか、仕方無い。」

 

多分白崎の声なら反応するだろ。

 

ハジメと相談して作った某少年探偵の様なマイクで音声を調整する。

 

「檜山くん!」

 

「香織・・・!?」

 

あ、ヤバい、地味に楽しい。

 

「檜山くん、ごめんね、私、そんなに私の事を好いてくれてるなんて思ってなかったの。」

 

「ああ、良いんだ香織、俺を見てくれてるなら、それで。」

 

「でもごめんね、私は貴方の気持ちには答えられない。」

 

「な、何で、俺より、南雲が良いってことかよ!?何で!?俺の方が。」

 

「ううん、違うの、だって貴方。『もう私を殺してるじゃない。』」

 

「あ、え?」

 

「私は『貴方のせいで』死んだんだよ?私はみんなに笑って欲しかっただけなのに『貴方のせいで』それが出来なくなっちゃったの。」

 

「あ、ああ。」

 

「だから、貴方なんて受け容れられない、だって貴方は、私を殺した殺人犯なんだもの。」

 

「アアアアアアアア!!!」

 

檜山はただひたすらに叫ぶばかりだ、その様はどうやっても精神異常者にしかなっていない。

 

もう必要無さそうだな。

 

「俺が、俺が、殺した?俺の所為で?香織が?俺の香織が?何で?何で?」

 

「あらら、精神が壊れちゃったか、で?檜山さん?何か言うことはあるかね?」

 

「お前が、お前のせいだ、南雲ぉ!」

 

「・・・もはや人の形をしているだけになったか、まぁ、俺がトドメ刺しちゃったし、後始末くらいはしてやろうかな。」

 

「お前が!お前のせいで!」

 

「檜山、哀れな道化よ、堕ちたものよ、死んでくれ、俺たちの為に。」

 

その叫んでいるままの檜山の首をはねた。

 

「お前は既に人でない、狂ったまま死ねて良かったな。」

 

檜山だったものを放置して地下から出て行く、次は阿呆か、面倒だな。




ぶっちゃけ利用価値が無いのでそんなたいしたこともできなかったり、まぁ魔物に喰われるよりはマシだったんじゃないですかね。

生き残らせたは良いけど矯正できる道筋が分からなかったから処理された哀れな檜山さん、乙です。


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阿呆との話し合い?

二回目の投稿です、前話から見てね!


檜山を処理した後、血だらけで出てきた俺を見てクラスメイト達が怖がっていた、その視線に気付いて急いで血を洗い流したからもう大丈夫だ。

 

今はなんか名誉の戦死を遂げた戦士の石碑の前でぼうっとしている。

 

メルド団長の名前もある様だ、檜山は生き残っていたのでここには記されないだろう。

 

「君は・・・何でこんなところに君がいるんだ!」

 

「阿呆か。」

 

そこに来たのは天之川光輝、阿呆だ。

 

「死んだ人達を笑いに来たのか?お前は!」

 

「お前は何を言っているんだ?笑いに来た?馬鹿なのか。」

 

「なっ、俺は馬鹿じゃない!」

 

「人を戦場に送りつけておいて何を言う。」

 

阿呆の言っていることは理想論であり、実現など出来ない、そんな世界があるのなら、俺はとっくにそこに移り住んでいるだろう。

 

「俺は戦場に送りつけてなんていない!」

 

「ハッ、戦うといった時点で他にも意見を募ればよかったんだ、お前はそれをしなかった、ならば、多少の意見など君の前では無意味だという事だろう?」

 

「そんな事はない!」

 

「お前にそのつもりがなくても周りがそれを許さない、勇者に敵対する愚かな人間として処理される、ああ、素晴らしい、君は意図せずして日本での関係を持続させた訳だ、ハジメがいじめられるのを良しとし、檜山の様に、個人の感情で逸脱させる機構をそのままこっちに作ってしまった。」

 

「なっ、俺は南雲がいじめられているなんて知らなかった!対処なんて出来るはずがない!」

 

「ならば、この世界に来た段階でクラスメイトのほとんどと深く関わっていくべきだったな、まぁ、お前は人形だ、そんな事は思いつきもしなかったのだろうが。」

 

俺の言葉に阿呆は違うと言い続けるだけだ。

 

「君は、何で檜山君を殺したんだ、彼は生きていた、その結果がどうであれ、更生させる事だって出来たはずだ。」

 

「では君は、戦いで役立たずで、相手に利用される駒をみすみす持っておくと?ある程度の操作すら出来ない劇薬を?冗談じゃない、勇者ごっこしたいのならばよそへ行け、俺たちがやっているのは戦争だ。」

 

「人間を駒扱いなんて間違ってる!」

 

ああ、こいつやっぱりただの子供だな、指揮官としての心構えを良しとしない。軍隊なんかじゃ煙たがられる類の奴だ。

 

「では、俺は人殺しだな、正義の味方さんよ?」

 

「君は何でそんなに世界を斜めに見ているんだ!?桜さんの様に君を見てくれている人だっているじゃないか!?」

 

「桜を守るために俺は戦っている、お前の様に、知らない誰かの為に戦う事は俺には出来ない。」

 

「何で!?苦しんでいる人を助ける力があれば助ける為に使うのが正しい事のはずだろう!?」

 

「では問おう、君に、勇者として、まず、目の前に死にかけているクラスメイトと襲われそうな民間人達がいるとする、クラスメイトを助ければ、民間人達は襲われ、その生存者はかなり少なくなるだろう、だがクラスメイトを助けずに民間人を助けに行けば確実にクラスメイトは死ぬ。」

 

要するに、民間人を犠牲にして数少ない戦力を保持するか、身を削って不特定多数を選ぶかという事だ。

 

「そんなの決まってる、どっちも助けるだ!」

 

「・・・君の言っている事は理想論だ、まず実現出来ない。」

 

「それでも俺は両方助ける、それが正しい事だ。」

 

「・・・やはり、俺とお前は分かり合えそうにない。」

 

「俺はそうは思わないよ、いつか分かり合えると信じてる。」

 

道化として見るなら最高の部類なんだがなぁ。

 

「お前がなぜみんなに好かれるか分かるか?」

 

「え?何だ急に。」

 

「まぁ分からんだろう、それはおまえがみんなの理想だからだ。」

 

「みんなの理想?」

 

「ああ、みんなが望んでいる正しいクラスの人気者の姿で、この人なら全て大丈夫だ、この人になら全て任せても大丈夫だと思っているからだ。」

 

阿呆は何故俺がそんな話をしているか分かっていないようだ、無理もないがな。

 

「それが、俺がみんなから好かれている理由?」

 

「そうだ、そしてそれが谷ぐ・・・中村が裏切った理由だ。」

 

「なっ!?」

 

それもそうだろう?あいつは『天之川光輝』を馬鹿にするなと言った、つまりあいつはあいつ自身の理想を体現(笑)している天之川光輝が好きなだけで、自分の理想と違えばそれを天之川光輝とは認識しない、出来ないではなくしないだ。

 

「おまえが理想を崩せばたっ・・・中村はお前をお前をして認識しない、自分の理想を押し付けている我が身可愛さの死霊術師の理想にお前はなるんだ、その魂ごと。」

 

「そんな・・・わかりあう事はできないのか?」

 

「分かり合う?そんな段階は過ぎた、お前が壊した、お前がみんなの理想を体現していたからだ、あいつはお前の様に大事なものより知らない大多数の人を選べる程強く無い。」

 

ああいう輩はヤンデレでも特にやばいタイプだからな、大事なもの以外を全て傷つけるタイプだ、相手にする以上あいつがなんだかんだ言って一番危険だ、ああいうのは良く自分と一緒になろうとか言って心中しようとしてくるからな。いやこれマジよ、何回も殺されている俺をなめるな。

 

・・・嫌な自慢だな、しかもそういうのに限ってめちゃくちゃ美人だったり美少女だったりするんだぜ?そりゃねえよ。

 

「君は中村さんの事をそんなに理解しているのに、敵になろうとしているのは何で何だ?」

 

「ん?だってあいつ、俺も憎悪の対象で、桜を何回も殺そうとしていたからだが?桜を傷付ける奴は全部敵だ、それには国だろうが世界だろうが構うものか、全て殺し尽くしてやろう、相手が敵になる事を諦めるまで。」

 

「・・・もしかして君も中村さんと同類かい?」

 

「ハハッ、今更気付いたのか?細かく分類すると違うんだろうが、まぁ、ヤンデレの部類だと思うぞ、改める気は無いけどな。」

 

あいつは自分の理想を押し付けるタイプで俺は愛した女性が幸せならそれで良いタイプだと思いたいからな。

 

「んじゃ、言いたい事は全部言ったし、じゃあの。」

 

阿呆が手を伸ばして掴もうとするが捕まるはずないだろ、ただでさえ疲れるんだ、俺は逃げる。

 

阿呆を放って転移で逃げる、良し、次は誰の所に行くかな。

 

というか、同じ分類だとは言ったが・・・同類か・・・同類か・・・後でぶん殴ってやろうかな。




地味に傷付いてる主人公、仕方ないね、だって主人公の考え方的にヤンデレだもの、相手と付き合ったらめちゃくちゃ甘ったれた空間作ると思うけど。


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先生との話し合い

阿呆との話し合い・・・合い?をして疲れたので休憩も兼ねて街を散策しているとクラスメイト達が色んなところで手伝っている所を見つけた。

 

外壁は戻ってすぐに直したので大丈夫なはずだ、多分。

 

「あ、秋月君。どうしたんですか?」

 

「・・・愛子先生か、いやなに、勇者様(笑)と言いあって疲れただけだ。」

 

「そうですか?なら良かったです。あ、この家を直すことはできますか?」

 

「先生割と容赦無くこき使う気だな?全く。」

 

突っ込んでこないことに感謝してその代わりとして重要な家を一気に直していく、全ての作業が一気に終わる事などないのでクラスメイトの何人かにも協力させた、脳筋馬鹿もいたので木材と釘などの必需品を作り出して配布した。

 

俺という四次元ポケットが現れたので商業地区は7割程度元の姿に戻った、次は住宅地なのだが体力と相談し脳筋馬鹿以外が無理そうだったので明日に持ち越しすることにして王女さんに商業地区の修復と住民への食料配布のための炊き出し、負傷者の為の医療室などを建設する為の材料と土地を確保してもらった。

 

その際王女さんから泣きが入ったので手伝う事にして書類のほとんどを処理し、更に秘書さん達に頼んで区分分けにする様に指示を出した、王女さんにも全てを読むんじゃなく、要所要所を読み、結論ありきで考えてはどうかと提案させて貰った、王都にいる報告係が優秀だったから出来たことだが。

 

文字を読める事に驚かれたが俺はこっちでの発音と唇の動きが分かれば大丈夫だというと呆れられた。

 

というか漢字的な文字が少ないから習得するのはそんなに難しくないんだよねー、読める様になったら言語理解の範囲内みたいだからスラスラ読めるようになるし。

 

王女さんの許可を貰い、要らない布や服などを編んでもらっていた女性達と協力して簡易テントと薬屋を買収し、店を清潔感溢れる空間に改造、ある程度の種別に分けて番号と薬の大別分に分けて貰う、そして店の位置と近くの広場、そして付近の改造した薬屋のことを知って協力を求めてきた薬屋数軒で力を合わせて病院もどきを作り出した、王都で店を出しているだけあって効果は確かだし、プライドは高いがある程度柔軟な対応ができる人たちが多かったこともあって薬が大安売りされていた、こういう時代ではかなり珍しい。

 

そんな俺をずっと横で見ていた先生は少し考えているようだった。

 

「そこ、3番と5番を三つずつ、7番を4番広場に持って行ってくれ、そこ!一番を飲ませた後は8番を少しずつ飲ませてくれ、食料班!最低限必要なのはパンと少量の肉と野菜だ!最悪挟んで持って来い!」

 

「はい!」

 

流石に王都だけあって人も多い、軽傷者だけでも凄い数だ、引っ切り無しに人がやってくる、子供達も手伝って貰ってはいるものの、その子供達は既にグロッキーな子が多く、人が多い影響で女性達も疲れて来ている、男は現在では怪我人がほとんどでまともに動ける人は少ない、貴族も遠慮無く投入してはいるがそこまで期待はしていない、なんせ血を見るだけで叫びそうになる奴だっているからな。

 

「チッ、薬が足りなくなってる、先生!今すぐ王都の外に薬草が育つレベルで土を耕してくれ!できるだけ早く!このペースなら1時間で全部無くなる!」

 

「分かりました!」

 

「オラ脳筋馬鹿!先生連れて外壁登れ!お前の筋肉が役立つ時だぞ!門番の確認なんか待ってられるか!無理矢理でいい!今は怪我人を治療する事が優先だ!」

 

「お、おう。」

 

「1時間後に薬師達を外壁付近まで連れて来い!来ない気なら金を渡してでも連れて来い!怪我人から恨まれても知らねえぞと伝えろ!」

 

「分かったわ!」

 

「誰か勇者連れて来い!あいつの言葉なら民衆も従う!人が多過ぎてまともに回ってねぇ!まずは落ち着かせて列を並べさせろ!」

 

「了解!」

 

「遠藤!隠れようとしても無駄だぞ!何なら今ここでこの列に並ばせてやろうか!?お前は食料班と一緒に孤児院を回って食料配って来い!」

 

「チクショオオオオ!!!なんで分かるんだよぉ!?行けばいいんだろ行けば!」

 

俺の指示と阿鼻叫喚の渦に巻き込まれるクラスメイト達の嘆きと共に時間はあっという間に過ぎていく。

 

夜になり全員が寝始めて明日の分の薬の調合も終わったタイミングで愛子先生が労いの言葉を掛けてきた。

 

「お疲れ様です。」

 

「そっちこそ、結構疲れたでしょう、スキルの連続使用は。」

 

「秋月君ほどではないですよ。」

 

先生はタオルと少し砂糖と塩を入れた水をすっと渡してきた。

 

「助かります、桜達は上に居るんで、サポートが足りないんですよね。」

 

「・・・ひとつだけ、聞いていいですか?」

 

先生が口を開いた、さて、なんて言葉が出てくるか。

 

「秋月君は・・・ウルで私なら生徒の為に人を殺せる、そう言いましたよね、それはこれを予想できていた、という事ですか?」

 

「・・・それは違う、先生、貴女のその覚悟なら、自分は先生であるというその自負ならば、生徒の為に悪になる事は苦ではないと、そう考える可能性を示唆しただけです。」

 

「私は秋月君から言われた贖罪の方法を試して見ました、秋月君はずっとこの方法をしているのですよね?でしたら、辛いです、これは。」

 

「でしょうね、それは俺の誇りの一部でもある、まだ獣ではないと、そう確信出来る。」

 

「私は先生で居られるのでしょうか。」

 

「それは貴女の覚悟次第です、先生、もし先生が辛くなったら、その時は俺達生徒を頼って下さい、その時は少なくとも俺たちは先生の為に何かしらの行動をするでしょうから。」

 

先生は窓に近付いて空に浮かぶ月を見ている、その次に何を見ているのかは俺には分からない。

 

「先生、貴女が言いたい事は他にある、例えば・・・誰も自分に罰を与えてくれない、いけない事だと戒める人がいない・・・とか。」

 

「!?」

 

先生は驚いてこちらに振り向く。

 

「先生の言い方はまるで俺に糾弾してほしいように聞こえたもので、そう簡単に言うけど、どこにも糾弾する要素なんて無いでしょう?」

 

「でも、でも!私は人を殺してしまって・・・。」

 

「貴女は間接的であれ人を殺した要因の一つだ、それを受け止めている時点で俺は阿呆より貴女の方が上だと確信を持って言える、現実を受け止め、その上で自分に何が出来るかを考え、行動する、それがどんなものであれ、俺は貴女を尊敬する。」

 

「わ、たしは、誰かに縋っても、良いんでしょうか。」

 

「言っているでしょう?俺達の先生は今は貴女だ、先生がそばで見ている限りクラスメイト達に間違いが起きないと思う程度には俺は先生を信用している。あの騎士達だって先生に好きで従っている、あの騎士達は王都にいる人間達をまとめて商人達を集めに近くの街に出かけたそうです。」

 

「そんな・・・デビットさん達が?」

 

「彼等は帝国から連れてこられた奴隷達を買い取り、頭を下げてまで移動を開始した、それはずっと先生について来ていたから、彼等の心境に変化が起きたのでしょう、俺たちの影響もあるでしょうが、自分の思い描く事と現実は違い、自分ができる事は限りなく少ないとしっかりと理解し、その上で彼等は行動を起こした、他の人にできない事を自分達で選んだ、分不相応な場所に行き、死にかけるような阿呆とは違う。」

 

先生は、泣いていた。

 

「先生、縋っても良いですか?なんて言っちゃいるがむしろ、先生の生徒からすれば先生が助けを求めていれば助けたいと思うのは当然だと思いますが、先生にとって、俺達はそれ程までに信用が無いのでしょうか。」

 

「そんな・・・こと・・・無いじゃないですか、私は、私は。」

 

「貴女は、その重荷を他人に分けることを覚えたほうが良い、貴女の生徒はそれを望んでいる、後は貴女の決断次第ですよ。」

 

「ありがとう・・・ございます。」

 

「考えたい事もあるでしょうから俺はこれで退散します、もうすぐハジメも降りてくると思います、その時はあいつらも受け入れてくれるとありがたいですね。」

 

俺は返事を聞かずに部屋から出た。

 

王宮を歩いていると時期に俺の部屋に着いた。

 

「・・・まだハーブはあったか。」

 

その場で煙草を作って火をつける。

 

「こうしていると思い出すな、タバコはなかったが・・・。」

 

もう名前すら思い出せない褐色の少女、そしてピンク色の髪をした、怪物と言われた女神、そして主人であり恋人であり、妻でもある夜月、彼女達は、俺を選んだ、全員に戯れに問い掛けてみたことがある、何で俺を選んだのか。と。

 

褐色の少女は俺なら私の全てを預けられるから。

 

怪物と言われた女神は私を受け入れてくれたから。

 

夜月は私に名前を、世界をくれたから。

 

であれば、俺の他にもそういう奴はいるだろうと思う、俺の様に受け入れ、俺とは違う方法で救える奴がいるかもしれない。

 

「桜は、何で俺を選んだのだろう。」

 

タバコが切れた、もう一つのタバコに火をつけて吸う。

 

既に褐色の少女の記憶は抜け落ちて行っている、いつか彼女の事も思い出せなくなるのだろうか、どれだけ思い出そうとしても霧をつかむように余計にぼんやりと消えていく、それに絶望しながら、何も出来ない自分に怒りを覚えながら、もう会えないという事実が、俺の中を通り過ぎる。

 

怪物と言われた女神の記憶も既に抜け始めている、名前は忘れることは無いだろう、有名な神ではあるのだから、だがあの世界の彼女の記憶は俺の中にしか無い。

 

夜月は忘れることはないだろうと思いたいが、それでも・・・どうなるかわからない。

 

「嫌だ・・・俺はもう、忘れたくない・・・俺は、愛している君のことを・・・忘れたくなんてないんだ・・・嫌だ、もう、守れない君の事を思い出せなくなるのは・・・。」

 

俺の頬に涙が零れ落ちる。

 

「もう名前すら思い出せない、いつか俺は君の事を他人と思ってしまうかも知れない、なんの感情もわかなくなってしまうかもしれない、そんな事、嫌なんだ、誰か、助けて、助けてくれよ・・・。」

 

ヘッドに横になる、タバコなんてとっくに全て吸いきった、彼女たちと一緒になって作ったこのタバコが俺にとって最後の思い出だ。

 

何気無い生活が楽しかった、戦いなんてなく、ただの生活が恋しかった、豪華な食事も邸宅も要らない、小さくても、愛していた君達と一緒に暮らせるだけで俺は間違いなく幸せだった。

 

「誰か・・・助けてくれ。」

 

微睡んで虚ろになっていく、意識が落ちていく、俺の瞼が完全に閉じる前に誰かに抱きしめられた様な感触と一緒に声が聞こえてきた。

 

『もう大丈夫だよ、私が一緒に居るから。』

 

ああ、なら安心して眠れるだろうなぁ・・・桜、ありがとう。

 

俺の意識は暗闇に落ちた。




主人公が度々見せていた人の名前を覚えてなかったり重要な事が頭から抜け落ちていた原因、記憶の摩耗です。誰も愛していた人を忘れたくはないから、どれだけ英雄だと言われようがそれは変わらない。

主人公がヤンデレ気味なのもこの為、愛しているから忘れたくないから記憶に刻み付けることで忘れない様にしています、それが効果があるかは分かりませんが。

先生が人格者である為に起こってしまった出来事なので主人公の闇的なものを出してみました。

そして無自覚ながらも天之川光輝を嫌っている原因の一つですね、好きになってくれた子が居るのにそれを知らないと言い張るどころか助けたとかふざけるなよという。


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白崎帰還

「・・・あれ?俺は・・・。」

 

真っ暗になっている部屋の中でゆっくりと起き上がる、窓から入る光で薄っすらと部屋の中が見えるが誰もいない。

 

「昨日の・・・あれは、桜、だよな?クッソ、情けないところ見せちまった。」

 

昨日の俺はどう考えてもおかしかった、大の男が泣いて助けてくれとか、無いわー。

 

「・・・とりあえず風呂にでも入りに行くか。」

 

汗で気持ち悪い体を洗った後、誰も近くにいない事が分かった。

 

「・・・あん?」

 

少し探索魔術を使って近くを調べて見るとクラスメイト全員が集まっている。

 

「・・・行くか。」

 

壁を登り、全員の上から降りて来る。

 

「お、起きたのか?」

 

「まぁな、んで?そこの銀髪が白崎か?」

 

「ああ、何とかなった。で?感動の再会をしている所悪いが、話はどこまで進んでいる?」

 

「そうよ、先生があの日に私達に教えようとしていた事って何なのよ?」

 

さて、何処から話すか。

 

大まかに教えると阿呆は案の定突っかかって来た。

 

「そんな大事な事もっと早くに教えてくれよ!オルクスで再開した時に言う事もできただろう!?」

 

阿呆のそばに桜が近づいていった。

 

「ねぇ、天之川君。」

 

「な、何だい?桜さん。」

 

「貴方が全部正しいと思わないでくれる?貴方のせいで風魔がどれだけフォローに回ってるかも知らずにあたかも自分が正しいという風に大きな顔しないで、そんな貴方だから風魔は嫌っているの、それすら分からないなら初めから何もしないで。」

 

「おい風魔!桜がブチ切れてないか?」

 

「まだマシだろ、俺の時はもっとヤバかったし。」

 

「いや、あれと比べたらダメだろ、ていうか、勇者が可哀想だぞ、あれ。」

 

小声で話している俺たちの会話が気になったのか八重樫が近づいて来ていた。

 

「何の話をしているの?」

 

「ん?いやなに、やっぱり桜って切れたら怖いなって、まだあれマシな方だぞ、俺の時は酷かった。」

 

「アレで?」

 

「あれで。」

 

既に涙目になっている阿呆の事は放っておくとして八重樫に日本で俺がしていた事、主にフォロー関連を小さなものから教えていくと途中から八重樫の魂が抜けて行きそうだった。

 

「私達、貴方がどうにかしていたからなんとかなったものじゃない、警察関連とかほぼ違法レベルの事してるじゃない。」

 

「今更気付いたのか?学校で問題になる前に警察や被害者に連絡して金と詫びとって色々繰り返していたら予想以上にコネが広かったんでな、多分被害者連中にはあいつめちゃくちゃ嫌われてるぞ。一部分ではあるんだろうがな。」

 

「・・・。」

 

もう既に八重樫の精神はボロボロのようだ。

 

「桜、そろそろ良いだろう、後は俺の仕事だ。」

 

「・・・風魔にこれ以上負担を掛けたら絶対に許さないから。」

 

ブスッとした顔をしながらハジメ達の方に歩いていく桜の頭を撫でると目に見えるレベルで機嫌が良くなっていくのが分かる。

 

苦笑いしながら阿呆の前に立つ。

 

「阿呆、お前さ、俺達の力を使って何がしたいの?」

 

「そんなの決まってるだろ、世界を救う、その神を倒して。」

 

「神を倒しただけで世界が平和になるとでも?ふざけるなよ。」

 

「そんなのやってみなくちゃわからないじゃないか!」

 

・・・既に俺の心が折れそうなんですが。

 

「お前さ、人間を舐めすぎだ、感情を全て捨てて仲良くなりましょうで仲良くなれるほど安っぽい感情なんざないんだよ。」

 

「それこそ時間をかけていくしかないだろう!?」

 

「その時間が終わるまで付き合えと?全く、お花畑も程々にしてくれ。」

 

「そんな力があるんなら正しい事に使うのが当たり前だろう!?」

 

「お前な、子供の癇癪に大人が会社のコネ使ってどうにかしろって言ってんのと同じレベルの事言ってんじゃねえよ。」

 

「なんで分かってくれないんだ!?お前が洗脳してるからか!?」

 

こいつは何を言っているんだ!?

 

「どうしてそうなる、洗脳でもしていたら何も出来なくなるだろうが、知ってるか?洗脳ってのはまず年単位での刷り込みが居るんだ、いくら魔法でも中村レベルの天才でもなければそう簡単にハジメ達の出来ない、しかも中村の魔法は洗脳ではなくあれは人形にプログラムを埋め込んでいるだけのものだ、洗脳じゃない、まぁ、あの国王とかが洗脳の良い例だろう、だいぶ短縮されている様だがな。」

 

俺の口から出てきた洗脳についての考察に何人かがドン引きしているのが分かる。

 

「なんでそんな力を持っていながら正しい事に使えないんだ、なんで。」

 

「お前さ、その思い込みが俺は嫌なんだよ、現実を見ろ、その上で自分に何が出来るかを考えろ、何も出来ないなんて事はないはずだ、こうすれば良いんじゃないか、ここに行けば何か出来るんじゃないか、そう考えながら物事に当たれ、それが出来るのならば全力でそれに当たれ、そして責任は全て自分で背負う。それが出来るやつを俺は知っている。」

 

俺の言葉に先生に視線が一斉に向かう。

 

先生はわたわたと慌てて混乱している。

 

「だったら!世界を救える力だろう!?それは!なんで使わないんだ!」

 

・・・ちょっと切れて良いかね?話通じなさすぎてイライラしてきた。

 

こっちに来た辺りから幼児に接するような感じで接してきたがそろそろ限界なんだが。

 

「力があるから何かを成すんじゃない、何かを成したいから力を求め使うんだ。」

 

「ハジメ?」

 

俺の横でハジメがそういった。

 

「お前らさ、無能と言っていた俺が死にかけて死にかけて死にかけまくってようやく手に入れた力を、自分たちより強いからって押し付けようとしてるよな?」

 

「な、そんな事はない!」

 

「何処が違う?それを本気でそう思っているんなら、イかれてるよ、お前。」

 

「なんだと!?」

 

阿呆は聖剣に手をかける。

 

「オイ、まさか引き抜こうとしてるんじゃなかろうな。」

 

「なんだと!?今更怖気付いたか!」

 

あ、もうダメだ。

 

「戯けが!!!それでも勇者か貴様!!!」

 

イライラしてるのが分かる。

 

「貴様は勇者なのだろう!?人類の希望の象徴なのだろう!?そんな奴が個人の意思でその力を振るって良いと、貴様はそういう気か!?貴様の相手は誰だ!?この戦争で貴様が呼ばれ、戦うと言った相手は誰だ!?魔王だ!魔王を倒す為に貴様は呼ばれた!良いか!?お前のその聖剣は魔王とその配下を切るために渡されたのであって味方を傷付けるものではない!」

 

俺の迫力に何も言えなくなっている阿呆はぼけっとした顔で俺を見ている。

 

「貴様はいつもそうだ!何が正義だ!何が正しい事だ!お前のその妄言を繰り返していたから中村は壊れた、お前に力が無いからオルクスでクラスメイト達が死にかけた!良いか!?全て貴様の力不足だ!それすらも自覚せず、ただたまたま助けただけの俺達にお前の責務も背負わせると言うのなら、今すぐここで死んで行け!現実も見ない幼児ではないだろう!?現実を見もせずに理想だけを目指して戦うというのなら理想に溺れ、道半ばで朽ち果てろ!俺達がしているのは戦争だ、お前の様な幼い子供の面倒を見る余裕など無い。」

 

阿呆は何も言わない、クラスメイト達も俺の言葉が正しいと思っているから何も言えない。

 

「もういい、貴様には期待するだけ損だ、せいぜい派手に自爆して死んでいけ、もう手助けはせんよ、自分一人だけで戦え、それが力を持つものの生き方らしいからな、勝手に死んでいけ、他人を巻き込むな。お前だけで死んでいけ。」

 

もう完全に見限った、俺がまた見直すかどうかは、こいつの態度次第だな。

 

タバコの最後の一本に火をつける、心が落ち着いていく、火照った体が少しずつ冷えていく。

 

「ハジメ、今日は少し付き合ってくれ、王都の大結界のグレードアップをしたい。」

 

「・・・分かった、俺もまだやる事があるからな、今日1日くらいは仕事をするさ。」

 

「助かる。」

 

そしてハジメ達と協力して色々な作業を始めた。




主人公切れる、当たり前だよなぁ?別に苦労を台無しにしてる事を怒ってるわけじゃ無いんですよ、だってそういう事が当たり前だから、怒ってるのは自分の責任を放棄するなという一点のみでそれを他人に押し付けるなと言っているだけなんですよね、主人公、天之川光輝が理解出来たかは知りませんが。


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1日の休憩

「これか?」

 

「ああ、ウォルペン!」

 

俺が壊れた大結界を管理しているウォルペンを呼ぶとばっと音を出しながら近くに出てきた、転移は使ってない、割と近くにいただけだからな。

 

「何でしょうか魔術師殿!」

 

「助っ人だ、これから二人で修復する、直るかどうかの確認だけしてくれ。」

 

「了解致しますぞ!このウォルペン、その神の御業をしかとこの目に焼き付けてみせましょうぞ!」

 

「そうか、せいぜい頑張れ。」

 

少し引いているハジメを連れて大結界の前まで移動する。

 

「へぇ、そりゃ守れるわけだ。」

 

「反逆者の力量は高いだろう?」

 

「ああ、良し、術式はとりあえず見た、後はどう改造する?」

 

俺は静かに宣言する。

 

「出来るところまで。全力だ。」

 

俺はそう言って一時的に精神と時の部屋を作る、ドーム状になっているので中にいる限りは1日が10秒程度に感じるだろう。

 

「期限は2週間、それで仕上げるぞ。」

 

「了解。」

 

そこから俺達はほぼ不眠不休で弄り始めた。

 

その結果とんでもないものが出来てしまった、俺達は半分深夜テンションになっていたのでアホみたいな機能を付けまくったのだ。

 

まず結界、コレはこの位置から好きなようにいじくれるようになった、何時ぞやのシールドの如く層が少なくなれば少なくなるほど強度が高くなり、層が破壊されるごとに外に向かって石化と神経毒の針を射出する機能を付けてしまい、普段はアホみたいに層を重ねて誤爆しないようにしなければならない。

 

そして俺が治療の傍ら魔法陣を王都に敷いていたので大結界の範囲内にいる生物から少しずつ魔力を吸収、貯蓄し、層には極光レベルの魔力攻撃くらいじゃないと全て吸収されて終わる、吸収された魔法の魔力は大結界の攻撃用補助装置に蓄えられるので問題無い。

 

貯蓄出来る魔力総量は俺のステータスとリンクしているので俺の魔力の値がこの結界が耐えられる魔力攻撃の限界である、しかも普段は溜まるだけなので一ヶ月もあれば一万増えれば良いほうだろう、それでも隕石が降ってくるでもないとまず無くならないし、そもそも俺が半分くらいまで魔力を注いでいる、まず貫けん。

 

ハジメは俺が製作した魔法陣を迎撃用の兵器を配備する事になった。

 

まず一つ目、自動迎撃レールマシンガン、射出するのは弾丸と魔力弾の両方を撃てる。弾丸の口径は12.7×108mm弾、これアンチマテリアルライフルの口径じゃなかったっけ。

 

マシンガンで使うような口径か?いや、歩兵用に使われてる奴だからまだマシか。

 

弾数は数千万ほど作った宝物庫を各マシンガンに搭載しているらしい、アホか。

 

そして二つ目、魔力が溜まりすぎた場合、それを一気に消費する意味合いも兼ねて遠距離を薙ぎ払うか近距離を焼け野原にする為のショットガンのような拡散範囲を想定しているビーム兵装を製作していた、射程距離は驚きの100キロメートルから200キロメートル、理論上は一度の発射で約10キロメートルまで拡散させる事が可能らしく、射角が水平から下に下がる際に王都の外壁の外までシールドで銃身を伸ばすらしいのである程度拡散範囲も操作出来るようだ。

 

そしてこれが最後だ、自動迎撃用ゴーレム、アラクネ。蜘蛛のように6本の脚を持つゴーレムで武装は肩に乗せたミサイルと状況把握用のレーダー装置、手にはショットガンと連続で打ち出すことの出来るハンマー、槍やスナイパーライフルを持っている機体や一部ロマン武器を持っている奴もいるようだ。状況に応じて敵を撃破するか生存者を助けるかの判断が出来るらしい。

 

6本の足で壁にくっついたり逆にジャンプして乗り越えたり出来るようになっている。

 

後は自動迎撃レールマシンガンを小型化したものを掴んで使用もできるようになっているらしい、ハジメ曰く職人魂が疼いたらしいがやり過ぎだ、何故大結界を直すついでに王都をオーバーテクノロジーで巨大要塞化してんだ。

 

普段は結界以外を封印する事になっているので大丈夫だと思う、思いたい。

 

状況によっては封印解除して全力防衛なので問題無い。

 

疲れて冒険者ギルドで突っ伏して休んでいると桜と八重樫、あとユエが俺たちを労っていた。

 

「あらぁ、お姉様じゃなーい!奇遇ねぇ!」

 

いきなり近くに筋肉モリモリのオカマが来たのはビックリしたが。

 

「お姉様?八重樫か?」

 

「あら?また良い男ねぇ、まぁ今は良いわぁ、私を乙女にしてくれたユエお姉様よぉ、私の生きる道を示してくれたのよね〜。」

 

「おう、マジか、ユエさんや、なんか心当たりある?」

 

ユエはプルプルと震えながら首を横に振る。

 

「だそうだ、あんた名前は?」

 

「ブルックの街でユエお姉様に乙女にされてから頑張ったのよ、私の名前はマリアベル、不細工な男だった頃の名前は捨てたわ。」

 

周りは全員固まっている、俺に話しかけられて辛うじて返事を返している状況だ。

 

「そうか、マリアベル、いつか服を買いに行くかもしれん、その時はよろしく頼む。」

 

「その時は友達価格で売ってあげるわよ、モデルになってくれるのならもっとお安くしてあげるわ。」

 

「考えておこう。」

 

「んまっ!考えてくれるのね!私嬉しいわ!」

 

マリアベルは俺に抱きついてきて凄くやばい絵面になった。

 

「じゃあね。」

 

マリアベルは投げキッスをして去っていった、あいつを育てた奴はクリスタベルだったな、覚えておく価値はありそうだ。

 

「・・・ふ、風魔?」

 

「ん?なんだ?」

 

「なんで普通に喋れたの?」

 

「ああいうのは慣れた、今更衝撃を受けるほどじゃない。」

 

「・・・やっぱり貴方とんでもないわよ。」

 

八重樫からも呆れたような雰囲気が醸し出される。

 

「んで?王宮に帰るのか?」

 

「ええ、それと、大迷宮ってオルクスもそうなのよね?」

 

「そうだ、俺たちは既に幾つかの大迷宮を攻略している。」

 

「その力が貴方たちの力の源なのよね・・・南雲君、秋月君、桜さん、後で話があるわ。」

 

「別に俺は構わねえよ、ハジメは?」

 

「俺も興味ねえな、そもそも攻略出来た証すら貰えるかわからないしな。」

 

「そう、ありがとう。」

 

どうせ一緒に連れて行ってくれというものなのだろう、きっと、少なくとも勇者パーティーは確実に来る。

 

「あ、ハジメ、飛空船に王女さんも乗せて行ってやれないか?」

 

「あ?・・・ああ、なんで?」

 

「今回魔人族に王都が襲撃された、幸いほとんど人的被害無く撤退まで追い込むことは出来たが相手に転移出来る術者がいる事が分かった今いろんな国との繋がりを強くしておく必要がある、逃げた兵士たちをまとめる存在もそうだが旗印として、祖国のためとかいう大義名分の為の象徴が必要だ、王女さんは少し早めの政略結婚を人類側の最大勢力である帝国としなくちゃならない。王族である以上それからは逃げられん、他に相応しい人材も居ないしな。」

 

「なるほど、王女さんに確認を取ってくれ、乗せるくらいなら許可しよう。」

 

「政略結婚、愛の無い結婚か・・・。」

 

「そう落ち込むことも無い、王女さんも覚悟はしているだろう、夢見る乙女なんかじゃない、貴族、王族とは幼少期から現実を何よりも重視される。今更な問題だ。ヒーローとの結婚はおとぎ話の中だけだ。」

 

「・・・うん。」

 

桜は俯いていた。

 

「よし、話は終わりだ、八重樫も天之川とかと話す事があるだろう、王宮に帰るぞ。」

 

「あ、え?ええ。」

 

俺の姿を見てハジメとユエは何か悩んでいるようだったがすぐに忘れた。




速報、アベル股間消滅免れる。

とんでも兵器の使い所は分かるな?

そして主人公が期待しなくなったと分かる表現である名前呼び。また阿呆に戻れる日は来るのか。


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待ち合わせ

夜、俺達は外壁の外に出て飛空船を出していた。

 

「俺達は帝国に王女さんを送り届けた後樹海?に行くんだよな?」

 

「ああ、後、アッシュとミナは?」

 

「彼奴らならそろそろ宿から来るんじゃねえか?ミナはずっと寝てたみたいだし、昨日やっと目が覚めたと言っていたしな。」

 

「あの大群をたった二人で対処してたんだ、無理も無いだろう。」

 

ハジメはあの二人のことを存外認めているようだった。

 

「お前もしかして彼奴らのこと気に入ってるのか?」

 

「ああ、気に入ってるというか、あの二人がくっついたら面白そうだとか考えてる。」

 

「あー、なるほど。」

 

かなりゲスい理由だったが認めているのは認めているっぽいのでまぁいいか。

 

「あと、あの二人も天使なんだろ?俺の知らないところで暗躍されるより俺の前でやってもらった方が安心出来る、どうせお前なら通信用の何かを持たせてるんだろ?」

 

「当たり前だろう、連絡取れなかったらどうするんだよ。」

 

ハジメは苦笑いだ、俺のことを信頼しているのもあるがやっぱりよくは思えないのだろう。

 

「ま、お前達が帰るまでは協力くらいならしてあげられるからな、お前らが帰るまでは味方であると言っておこう。」

 

「それが聞けたならまぁ良しとするか、全員集まるまで待機だし、なんかすることも無いだろ。」

 

「俺が吸ってるタバコ吸うか?麻薬成分全部抜いてあるからベースの薬草が良く効くぞ。」

 

「・・・あるのか?」

 

「一応ハーブがあるから簡略版で良いのなら。」

 

「なら貰うかな、一度吸ってみたかった。」

 

そう言って俺はタバコを作ってハジメに渡す。

 

ハジメは火をつけてタバコを吸い始める。

 

「これ精神安定の効果があるのか?珍しいな。」

 

「面白いだろう?俺だけしか作れた事ない薬草でな、異世界でエリクサーみたいな薬品を作る材料の一つだ、それのおかげで精神安定の効果とスッキリ感を出す事に成功した。」

 

俺達はタバコを一緒に吸いながら話をしていた。

 

「来たわ・・・よ・・・。」

 

「シズシズ〜どうしたの?」

 

勇者パーティーは到着したようだ、王女さんと共にきたようで天之川の姿もある。

 

「どうした?さっさと乗るといい、俺達は桜達を待ってる。」

 

「アッハイ。」

 

勇者達は全員飛行船に乗って行った、天之川は物凄く敵意を見せているが無視する。

 

「おい!ミナ!早く動け!」

 

「いーやー!私身体だるいもん!動きたくない!」

 

「それはお前が寝てたからだ!動いて体調管理しろ!」

 

「そんなのおじいさまがやれば良いじゃん!」

 

「俺は今はジジイじゃねえ!アッシュだ、ぬおおお!」

 

アッシュとミナがイチャイチャしながらやって来た。

 

「何やってんだあいつら。」

 

「不安だったんだろ?放っておいてやれ。」

 

「あ、桜さん!良いところに来た!後ろから押してくれ!頼む!」

 

「あ、分かりました。」

 

「ちょっと桜ちゃん!?私を裏切るの!?」

 

「いや、そもそも協力すらしてないと思うんですけど。」

 

「そんな〜!」

 

コントか?あいつらはコントでもしてるのか?

 

「ちょっと二人とも手伝ってくれ!いやそんな微笑ましいとかいう表情出さなくて良いから!」

 

「勝手にやってろ。」

 

「風魔!手伝って!」

 

「よし分かった。」

 

「変わり身速ぇよ。」

 

そんなこんなで飛空船に全員乗る事に成功した。

 

「あ、風魔、タバコは程々にね。」

 

「・・・わかった。」

 

「でもカッコ良いから演出として吸うのは大丈夫だよ。」

 

「俺演出で吸った事ってあったっけ?」

 

「ほら、怒った後にタバコを吸って消えていくとか構図的に・・・。」

 

「・・・わかった、要するに悪の強者感すごいって事ね?」

 

「ざっつらいと!」

 

桜、もしかして遅い厨二病にかかってないかね?




勇者パーティーが見たのは魔王と覇王が笑みを浮かべて話しているといういかにも悪の組織の強者が計画を立てていると頭に浮かぶ程度の光景だったわけですな。

ハウリアにどういう反応をするのか、楽しみですな。


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3人で

暫くすると飛空船が浮き始めた、すぐにとは言わないが雲を抜けて上まで行く事ができるんじゃないだろうか、その前にハジメが力尽きそうな気もするが、移動を始めた飛空船は進路をまっすぐに帝国に向かっていた。

 

道のりだとかなり遠いのだろうが直線だとせいぜい四百キロメートル程のようだ、ビーム撃ったら終わるんじゃね?

 

暫くはタバコを作りながらゆっくりさせて貰おう。

 

自分の分のタバコを作り終え、ゆっくりと移動する船の上で静かに佇んでいると八重樫と天之川が近付いてきた。

 

「どうした?ハジメに怒鳴られでもしたか?」

 

「流石に助力を乞いに来てるのに怒らせるような真似はしないわよ、聞きたい事があるんだけど、良いかしら?」

 

「それは天之川もか?」

 

「・・・ああ。」

 

「そうか、何が聞きたい?」

 

八重樫はニッコリと笑いながら俺を見ている、天之川も少し気まずげだ。

 

「あなたの目的は何なの?それを聞いていなかったわ。」

 

「日本に帰る事。」

 

「それは聞いたわ、貴方の話だと帰る時に邪魔が入るかもしれないって言ってたじゃない?その時、どうするの?」

 

「勿論逃げる、逃げて逃げて逃げまくる。」

 

「倒さないのか?」

 

天之川は少し意外と言いたげにそう俺に聞いた。

 

「俺が倒すと思うのは・・・そうだな、桜達が傷付くと判断したら、だな、日本での下積みもあったとはいえ、俺はハジメと違って死にかけても居なければみんなの様に恐怖したこともない、要するに何処かが壊れているんだろう、それでも、そんな俺を家族と言った桜や、ずっと親友でいてくれたハジメ達の為なら、俺は命だって賭けられる。」

 

「そんな覚悟があって、それでもギリギリまで戦わないのか?」

 

「知っているか天之川、憎しみは消えることは無い、ただ忘れるだけだ、負の感情というものは消えはしない、一度でも憎しみを持てばそれを忘れることはできてもそれをなくすことは出来ない、それは自分を生かすための燃料であり、無意味なことを成すための原動力だからだ。」

 

「復讐は駄目なことだと俺は思っている、だってそれはいけない事だから。」

 

「ハハッ、お前らしいな、だが復讐をしなければ他の事を考えられないほどの憎悪であればどうする?、復讐の対象が、国をも恐れぬ大罪人ならどうする?何にせよ、ケースバイケース、場合によるんだよ、天之川。」

 

大罪人に復讐できれば美談となり、ただの一般人の復讐であれば醜聞になる、受取手の問題なんだ、それを止める権利などありはしない。

 

「そんなの、信じられるわけないだろ。」

 

「八重樫はどう思う?自分の大切な物が無慈悲に壊されていくのは、ただのお遊びで今までの全てが潰えていくのは、大切な、今まで育ててくれた人が、目の前から居なくなる絶望、そんなもの、ただの人間に耐えられるはずないだろう?」

 

「親離れ出来てないの?」

 

「いや違う、親など元から居ないさ、俺のいる孤児院のほとんどがそんな奴ばっかりだ、捨てられた子供、親が死んだ子供、目の前で殺され、塞ぎ込んだ子供、悪魔の子と言われ、迫害にあった子供、そんな奴らを世界中から集めて引き取っている、ただの自己満足だ、そうでもしなければ、親が居ない俺が他の子供に何もしてやれないと思ってしまう。」

 

目を瞑ると今でもあそこが思い浮かんでくる程度には、俺はあの孤児院が好きなんだから。

 

「私達に何かできる事はあったの?」

 

「お前らに?ハッ、どう頑張っても力不足だよ、学校ですら自分の思い通りに出来ない癖に、偽善者ぶるなよ、俺が天之川に助けただけと言ったのはそういう意味だ、世界中で迫害は起きる、必ず、それは集団の中で自分は強いと思えるだけの力が欲しいからだ、だから自分はみんなと同じだこいつはみんなと違う、たったそれだけの理由で迫害出来る。」

 

天之川は不満そうだ。

 

「そんな事があるはずない、か?だが実際に起きている、村を襲う盗賊や国の工作機関を振り切り、拉致被害者と言われない為の根回しもして、その上で新しい戸籍と住所を用意する、それまで出来てやっと救いだ、お前のはただ自分が苦しんでいるのを見たくないからといってその場しのぎをしているだけだ、救いを為すというのならば完璧に仕上げろ、躊躇をするな、助けると、救うと誓ったのならばそれだけに専念しろ、時には秩序さえ切り捨てる覚悟があって初めて人は救えるんだ。」

 

「それが、貴方が桜さんを助ける理由?」

 

「ああ、天之川との仲を悪くしているのも、学校での立場をわざと揺るがしたのも、俺に不良という烙印を押されてなお否定しなかったのも、全てが俺の思惑通りだ、俺はどうにでもなる、だが桜は違う、俺のように強くない、ならばその弱さを受け入れる場所が必要だった、強くなる為の土壌が必要だった、支える柱が必要だった、だから俺は自分で孤立する道を行く、それが、少なくとも桜が無事で居られる方法の一つだ、まぁ、他にも色々と細工はさせてもらっているがな。」

 

「お前はやっぱり、俺とは合わない。」

 

「当たり前だ、ポーズではなく、俺はお前を本気で嫌っている、その考えが気に入らない、お前の全てが気に入らない、全てが自分の思い通りに動くと考えているその幼稚な考えを見ていると反吐がでる。」

 

俺と天之川は睨み合う、と言っても俺はただ見つめているだけだが。

 

八重樫が止めようとすると艦橋の方が騒がしくなっている。

 

「話は終わりにしよう、ああそうだ、八重樫、お前は何かに頼った方がいい、出なければ壊れるぞ。これは忠告だ。限界も近い、気を付けろよ。」

 

俺はそう言って艦橋の方に歩いて行った。




ゆっくりしようと思った瞬間に天之川登場、ハウリアすぐに出せる、はず、うん、多分。


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ハウリア登場

艦橋に到着するとハジメは視線だけ此方に向けてきた。

 

「ハジメ、何があった?」

 

「あ、風魔、シアさんと同じ人たちが襲われてるみたいなんだよ。」

 

「兎人族が?どういう事だ?」

 

ハジメ達の前にあるモニターを見てみると確かに兎人族が襲われている、帝国兵の塊が二人だけしか居ない兎人族を嬲るように追い詰めている。

 

「・・・ほっとけ、そいつら多分すぐにでも解決するだろ、ハジメ、こいつらはハウリアだな?」

 

「・・・御名答。」

 

ハジメが答えたタイミングで帝国兵の首が飛んだ。

 

「フハハハハハハ!!首が飛んだぞ!めっちゃ綺麗に切れたな、切れ味が良いのか?」

 

何人かは口を押さえている、いずれあれを近くで見るというのに、呑気なものだな。

 

「ああ、だが、少し注意が足りないな。」

 

「魔法使いが居るみたいだな、まぁいいさ、他の奴は殺すだろう。」

 

ハジメは狙撃で近くの馬車にいる魔法使いを殺すと兎人族の面々が歓声を上げながら此方を見ていた。

 

「行ってやるのか?」

 

「ああ、あいつらが案内人だからな、それに、姫さんを降ろすのもあるし、物のついでだろう。」

 

「ついで・・・ついで・・・。」

 

王女さんが傷付いているようだが無視する、谷に停泊しハウリアと合流する。

 

「へぇ・・・腕上げたじゃねえの、で?風魔、ハウリアはどんな感じだ?」

 

「集団戦をしてほぼ無傷で生き残るのではなく勝っている、及第点だな。」

 

「だそうだ、良くやった!」

 

『恐縮であります!Sir!!』

 

やっぱりこの反応、軍事訓練でもやったのか?

 

「取り敢えずだ、お前らの名前を聞かせてもらっていいか?」

 

「失礼ですが貴方はボスの何で御座いますか!」

 

「親友だ、そして共に迷宮を攻略する仲間でもある。」

 

「つまり!階級的には対等という認識でよろしいでしょうか!」

 

「風魔なら構わねえぞ。」

 

ハジメはどうでも良さそうにそう言った、それで大丈夫なのか。

 

「了解であります!では私から・・・我が名は『必滅のバルドフェルド』!!」

 

・・・うん?

 

「次は私ね、『疾影のラナインフェリア』!!」

 

「では私が、『空裂のミナステリア』!!」

 

「俺は『幻武のヤオゼリアス』!!」

 

「僕は『這斬のヨルガンダル』!!」

 

「・・・フッ、『霧雨のリキッドブレイク』だ。」

 

全員が一瞬だけ時間が止まるのを自覚した、一番早く立ち直ったのは桜でこういう人達だと頭の中で認識出来たようだ。

 

その次に俺、笑いが込み上げてきて笑いそうになるのを抑えるので必死だ。

 

あとはハジメくらいだろうか、動けそうなのは。

 

「あ、ちなみにボスは『紅き閃光の輪舞曲(ロンド)』と『白き爪牙の狂飆(きょうひょう)』ならどちらが良いですか?」

 

あ、もうダメ、笑う。

 

「クフッ・・・フフッ、ハジメ・・・ごめん・・・無理、フハッ。」

 

俺が笑っている間に小っ恥ずかしい解説を無駄に饒舌にしていたので抑えるのも無理になった。

 

「フフハハハハハハハハハ!!おいハジメ、どっちにするんだ?ん?」

 

俺の返答は銃口を向けられることだった。

 

飛び出して来たのはゴム弾などではなく実弾で、それを認識した時には魔術での防御は無理だったのでブリッジの様に身体を折り曲げて避ける。

 

地面に手を付いて後ろに下がる。

 

「おいおい、危ないだろう?」

 

「お前には後で桜を部屋で待機させておいてやる。」

 

「え!?良いの!?」

 

「おいちょ馬鹿まて!?」

 

「風魔!今日は一緒に寝ようね!」

 

「ちょっと桜は少ししてで良いから喋らないで、ハジメ!いくら昔からの付き合いでもそういう事はダメだろ!?」

 

「ん〜?俺は何も言ってないぞ?もし何かが起こっても俺は何も言えねぇなぁ?」

 

ハジメのやつ真っ黒な笑みを浮かべてやがる、容赦しないという合図だアレ!

 

「・・・すみませんでした、なので桜は部屋に入れないでくれ、何をしでかすか分からん。」

 

「え〜。」

 

「はっはっは、この程度で俺の怒りが収まるかぁ!」

 

「お前のそれは八つ当たりだこの野郎!」

 

「ああ!?」

 

「ヤクザかテメェは!?」

 

「風魔。」

 

「何ですかね桜さん!?」

 

「私がいちゃ・・・ダメ?」

 

「・・・あー・・・えっとだな・・・見ちゃまずいものがあるというかだな。」

 

「あ!分かった!エロ本でしょ!」

 

「ちげぇよ!?あと女の子がそういうことを言っちゃいけません!」

 

「怪しい・・・ハジメ艦長!風魔の部屋の捜索の許可を!」

 

「許可する、存分にやれ。」

 

「やった!」

 

「やめろおおおおおおおおお!!!?」

 

桜はシュバっと凄い速度で走って行った、八重樫と谷口も付いていったところを見るととてもまずい、俺の社会的信用が無くなる。

 

「おいおい風魔クゥン、どこに行くんだぁ?」

 

「離せ!HA☆NA☆SE!俺を其の先に行かせろぉ!」

 

「よっしゃ!全員手伝え!こいつを縛り上げるぞ!」

 

『了解!』

 

男子勢全員が声を揃えてそういった。

 

「負けるかボケ!俺の秘密が暴かれんだよ!特に桜には見られたくねぇもんなんだよ!」

 

「ユエ!こいつの黒歴史探して来い!ティオと王女さんもだ!シアは気絶してるから後回しだ、早く行け!」

 

「らじゃ、ハジメ、頑張って。」

 

「ご主人様よ頑張るのじゃ。」

 

「風魔さんの黒歴史・・・ゴクリ、行ってきます。」

 

「俺の社会的な信用が地に落ち無いためにはここを突破して見せるぞ!かかって来い匹夫共ぉ!!」

 

俺とその他の男子全員が戦う事になった。

 

ーーーーーーーー

「えへへ、風魔の部屋だー!」

 

風魔の扉を開ける紫色の髪をした少女は満面の笑みを浮かべている。

 

扉を開けるとそこには一見するとただの質素な部屋にしか見えないが風魔の事だ、何かを隠している可能性が高い。

 

そう思いながら部屋を探していると別室の扉だろうか、一つの扉が壁に付いていた。

 

「ここの先は何じゃろな!」

 

「桜さん?ちょっと彼に悪いんじゃ・・・。」

 

「シズシズ、思春期の男子の部屋だよ?エロ本の一つや二つ・・・。」

 

桜が扉を開けると全裸の猫耳を付けた女性がいた。

 

「ふぇ?」

 

「え?」

 

その女性と桜達は目が合い、数瞬の間固まった。

 

「あれ?風魔の部屋って風魔以外誰も入れなくなってるんじゃないの?」

 

「いえ、私が許可を貰ってきました。」

 

「・・・本当に?」

 

「艦長に許可を貰ったので聞けばわかるかと。」

 

「・・・その必要はなさそうね。」

 

猫耳の女性、ミナは溜息をして部屋の奥へ消えていった。そしてコートを羽織るだけして近くのベッドに座っていた。

 

「あの、ミナさんは何をしていたのですか?」

 

「あ、私?私は治療されてたのよ、風魔にね。」

 

「風魔が、ですか?」

 

「そうよ、彼ったら王都での奮闘で勝ったのはいいがそれで倒れてたら意味が無いとか言っちゃって、それでアフターケアも兼ねて治療して貰ってるの、みんなには秘密だったから驚いちゃったのかしら?彼からしたら年下の女の子を部屋に連れ込んでるとしか思われないから。」

 

ミナの言い方は悪いが端から見たら大体あってるので始末に負えない。

 

「おお!ここが彼奴の部屋か!ぬ?」

 

「エッチな本、見つける・・・居た。」

 

「風魔さん、あの人は何をしてるんでしょうか。」

 

追加で3人も追加された。

 

ワイワイガヤガヤと7人で話をしていると谷口が徐ろに口を歪めて谷口の中にいるおっさんが目を覚ました。

 

「そういえば治療してるって言ってたけど、怪しい薬なんかを使って、身体を・・・とかは?」

 

「あはは、無い無い、そういう事をしてるのはアッシュとよ。」

 

「あ、やってな・・・い・・・?」

 

ミナ以外の時間が止まった。

 

「あはは、獣の血のおかげかしら、目が覚めたら発情期なんて目じゃないくらい昂ぶっちゃって、その時ずっとそばに居たアッシュをね?あの・・・食べちゃったというか、アッシュの不名誉な称号を消してあげたというか。」

 

顔を赤くしながら髪をクルクルと回しているミナは元が美少女だけあってかなり可愛いものだった。

 

「あれ?じゃあアッシュさんは?」

 

「飛空船に乗った瞬間に罪悪感が出てきたらしくて熱で療養中、風魔が見てるはずなんだけど・・・。」

 

「・・・言ってないかもしれませんね。」

 

「遅かったか!?」

 

そこに件の人物、秋月風魔が到着した。




ハウリアの一件で喧嘩する予定だったのにガールズトークが始まっていた件について、どうしょうもないね。


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説明させて下さい。

「遅かったか!?」

 

ハジメ達に幻覚を見せまくって撒いた後この部屋に直行した、ハジメの作った罠やら警備機構やらは全部潰した。

 

そして部屋の扉を開けると中ではベッドの上にミナと桜、周りには地べたに座っている女性陣。

 

遅かったか、とは言ったが数分も経ってないのにマジで終わってるとは思わなかった。

 

「・・・。」

 

『・・・。』

 

完全に空気が死んでいる、顔が引きつるのが分かる、やばい。

 

「・・・まずは話を聞いてくれ、誤解だ。」

 

『知ってるよ!』

 

何人かの叫びが同時に響いた。

 

「あはは、ね?やっぱりそうでしょ?」

 

ミナは笑っている、桜の方を見ているから桜と何か話をしていたのだろうか。

 

「風魔、ミナさん治すならそう言ってくれれば言ってくれれば良かったのに。」

 

「そんな事言われてもなぁ。どうせすぐに終わる類の治療だし、そう手間取らせるわけにはいかないかと思ってだな。」

 

「日本でもそんなこと言って傭兵雇ったり会社を立ち直したりしてたよね?」

 

それが必要な事だったし仕方ないね。

 

「・・・好きにしてくれ・・・全く・・・あとミナ!薬は飲んだか?」

 

「ええ!今日は思いっきり出来るわ!」

 

「あんまりやりすぎるなよ、現実の身体には影響はないとはいえ精神的に疲れてたらできるものも出来ないからな。」

 

「フフッ、分かってるわよ、その辺りの加減は出来るわ。」

 

「そうか、ならその言葉を信じよう、それでもし体調崩したらどうなるか・・・分かってるな?」

 

「分かってる分かってる、お母さんか何かなの?」

 

ミナは冗談交じりにそう言っているが割と心に刺さるんだぞ、それ。

 

「・・・孤児院のガキどもにはダメ親父って言われてるんだがな。」

 

「家事とかあんまりやろうとしないし子供達とほとんど一日中遊んでたりするしね、ゲーム実況の日はハジメ君の家だし、そんなに働いてたりするイメージ無いんじゃない?」

 

「それでいんだよそれで、血生臭い戦場だの何だのは既に実感してる奴は多いからな、あとはそれを忘れずに前を向ければそれで良いさ。」

 

「むぅ、悪口みたいなの言われてるのをずっと黙ってたりするの結構嫌なんだからね?」

 

「ガキどもの悪口なんぞ悪意以外ないだろ、何かしでかした時だけ本気で怒ればあとは本人達が頑張るさ。」

 

桜は頬を膨らませている、頭をポンポンと叩くと腕で押してきたりする。

 

「まぁ、誤解は解けたみたいだが、ミナ、さっさと服くらい着ようか、そろそろ男子連中が突っ込んで来る頃だ、俺は部屋を破壊されたくねぇ。」

 

ミナは今更ながらほぼ全裸の格好でいる事を思い出したらしく少し焦りながら治療部屋の中に入っていった。

 

「私達すごい空気ね。」

 

「言っちゃダメだよシズシズ、悲しくなるから。」

 

「これが放置プレイというものか・・・良いのじゃ・・・。」

 

「ハジメともこんな空気を作る、作ってみせる。」

 

「私・・・王女なのに・・・王女なのに・・・!」

 

・・・うん、ごめん、完全に頭から抜けてた、マジでごめん。




ダクソリマスタークソ楽しいんですけど、仮面巨人みたいなのに煽られたとかラージクラブ何故か10本くらい+15にしちゃったとか色々あるけどやっぱりこの一言に限る。

フロム最高です。

投稿するのすらさっきまで忘れてました。


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帝都

あの後全裸のミナなど居なかったとばかりに話していた俺達はいつの間にかハジメ達が合流していた亜人達の団体様と奴隷達を会わせ、用が終わったとばかりにお使いとして呼び出された脳筋馬鹿が入ってきたのをきっかけにお開きとなった。

 

アッシュが寝込んでいるが・・・まぁ問題無いだろう、後で説明すればいい。

 

ただ、亜人達が集まって作られたフェアベルゲンだったか?そこは寂れていた、というより本来の形が何となく分かる程度に壊されているので悲惨さが増している。

 

そしてこの樹海の霧だが・・・まぁ、一歩歩くごとに確認すれば迷うことは無さそうだ、迷うのではなく遠近などの感覚が狂っていくのに近い、航空機が雲の中で飛んでいたら今機体がどんな状況なのか分からないというものと同じだと思う。多分、空間魔法なんかが貼られてもおかしくは無さそうだが、まぁ調べるほどのことでも無いだろう。

 

ハジメがハウリアの一人が手遅れなのを確認しているのを尻目に笑いそうになりながらも何とか耐えているとハジメは程度で捕まっているのかそれとも潜伏しているのか分からないカムやその他の兎人族を探しに行くらしい、俺は別に構わないので同行する事に決めた。

 

というか、帝国でなら俺の意向は多分マッハで皇帝に伝わるので俺も利用してくれと言うとハジメは呆れたような目を向けてきた。

 

「よし、行くか。」

 

ハジメのその一言で帝国に入る事になった、俺は刀を常に身に付けているので帝国兵に止められたが俺の名前を出すとすぐに通してもらえた、帝国は実力者世界らしいので俺の言う事を聞けと脅せば王族や貴族でない限り意思を通せることが幸いだ。

 

ただ、桜に手を出そうとしていた身体検査の男は少し脅したが、谷口は見向きもされてなかったので笑うしかないだろう。

 

「で?ハジメ、そのカム達は多分、というかほぼ確実に捕まってると思うんだが、行く当てはあるか?」

 

「さぁな、取り敢えず駄目元で冒険者ギルドで情報集め、ビンゴなら今晩にでも。」

 

「要するにプランBって事だな?」

 

「そういう事だ、こういったほうがいいか?高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応しろ。」

 

「はっはっは、クソみたいなドクトリンやめーや。」

 

そもそもお前らの場合高度な柔軟性じゃなく暴力脅迫ドンパチ何でもありの力一辺倒じゃねえかよ。

 

という事で宿の名前だけ聞いたら俺達は別行動をさせてもらった。

 

俺達はアッシュ、ミナ、桜、俺の四人が固まっているので大体何かがあっても対応できる。

 

道中で色々と問題を起こしそうだった勇者(笑)はハジメに押し付けた、八重樫もいるので問題無いだろう。

 

「さて、夜まで自由行動だ、どうせハジメは何かしらの情報を集めてくる、なんか買い物でもしようか。」

 

「その辺りは心配してない、俺が心配してるのはこのままで俺がまともに動けるかどうかだ。」

 

「昔の孫と肉体関係を持ってしまった事か?それとも昔の孫に襲われた事?」

 

「両方だ馬鹿。」

 

ミナはそばで身体をくねらせている、桜も少し顔を赤くするのみで止める気は無いようだ。

 

「全く、責任はとれよ。」

 

「分かってる、それは覚悟してるから、ただ・・・、周りの視線がな。」

 

「知ってる、まぁ、桜とミナは絶対気付いてるよな。」

 

男子よりそういう視線に関しては敏感だからなぁ、女子って。

 

「さて、どうせ犯罪組織が波のように襲って来るだろうし、ある程度の買い物終わらせたら対処しようか。」

 

「好きにやってくれ、俺もそうする。」

 

アッシュは既に拳を握りしめているので戦闘になっても問題無いだろう。

 

「んじゃ、何買う?その前に飯でもいいぞ。」

 

「冷やかし!」

 

「服!」

 

「おいミナ!服より飯だろ?」

 

「何言ってんのよ!こんな可愛い美少女が色んな服着てあげるのよ!?がっつかなくてどうすんのよ!ヘタレ!」

 

「騙されねぇぞ!この前もそれ言ってクソ高え服奢らされたからな!」

 

こいつらそんな事してたのか。

 

「風魔、色んなお店回りたい!そのついでに処理したらどうかな?」

 

「・・・やっぱり気付いてたか。」

 

「だって、チラチラ目線で見てるよね?こういうのはさり気ない風を装って自然に目線を向けるのが普通の尾行のはずなのにね。」

 

「いや、それが出来るのは相当訓練されてる奴だけだぞ。」

 

「風魔が私の身体をどうしてもみなくちゃいけない時にさりげなく話を変えるみたいに?」

 

「いや、それは関係無いだろう。」

 

「・・・むぅ。」

 

最近桜さん積極的に過ぎるんじゃ無いですかね、心臓に悪いから出来ればやめてくれると助かる。

 

「あらあら、お熱いことで。」

 

「はっはっは、話を変えようとしても無駄だぞミナァ・・・。」

 

「しつこい男は嫌われるわよ。」

 

「誰のせいだと思う?お前だよ。」

 

俺らから見たらお前らもお熱いんだよなぁ。



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俺達は襲撃者を撃退し、その他の犯罪組織を潰していった、その傍らで買い物をしたり買い食いしたりしていた。

 

だが。夜になって宿に帰るとハジメ達が天之川に仮面、いやマスク?を預けているところだった。

 

「・・・何だこれ。」

 

「お、帰ったか、お前らもやるか?ヒーローごっこ。」

 

「やらん、お前はハウリアを助けるのだろう?道と転移陣は敷いてやる、さっさと行け、馬鹿者、俺達は帝都に残って情報収集を担当させてもらう、俺は皇帝のお気に入りらしいからな、どうせ結婚式とかにも呼ばれるだろ。」

 

俺はそう言ってテーブルに座る、その横に桜が座り、空気になりかけていたアッシュとミナは呆れたような眼差しをハジメに向けて俺達の対面に座った。

 

店員さんに軽く飲み物とつまみを頼んでハジメの得意そうな扇動を見物していると八重樫がピンク色の仮面を押し付けられそうになっていた。

 

八重樫が可愛いもの好きというのは知っていたがそれを何故隠そうとするのだろうか、天之川関連で結構話してたが分かりやすかったぞ。

 

というかハジメのやつどんどん扇動が得意になってるな、セールスマンとかになったら絶対有名になるだろ、あのやり口。

 

ユエが呆れた目でハジメを見ているので八つ当たりというのも理解しているようだった。

 

桜を見てみると桜はとても優しい目でこの光景を見ていた、孤児院を思い出しているのだろう、似たような雰囲気だからな、孤児院は。

 

「ハジメ、そろそろ時間のはずだ、この紙を持っていけ、小さいが数十人程度なら問題無いだろう。」

 

そう言って転移陣をハジメに手渡す。

 

「転移先は?」

 

「フェアベルゲンの広場に魔法陣を引かせてもらった、長老達には事後報告だがしているから問題は無い、そのついでにそのカム達と話して今後の予定を立てておけ、それを伝えてもらえれば協力しよう。」

 

「言ったな?」

 

「確認しなくても、無茶振りなんぞ当たり前だったろうに、奈落に落ちてから丸くなったか?」

 

「ハッ、馬鹿め、こき使ってヒィヒィ言わせてやるよ。」

 

俺とハジメはグーを合わせる。

 

ハジメの拳は硬い金属の様な感触がした。

 

「ならさっさと行ってこい、俺は待ってるぞ。」

 

「ああ、シア、ユエ、行くぞ。」

 

「はい!」

 

「行ってきます。」

 

そう言って3人は城へ向かっていった。

 

「それ、勇者パーティー、さっさとその仮面を付けて陽動しろ、行ってこいよほらハリーハリーハリー!」

 

「・・・分かったわよ!行けばいいんでしょ行けば!」

 

八重樫が顔を赤くして仮面を付ける。

 

そしてドカドカと足音を立てて出て行った。

 

「ちょっと待てよ!しず・・・ピンク!」

 

「ピンク言うなぁ!」

 

見てて面白いな、アレ。

 

「さて、俺達は城への招待を受けると同時に潜入する、皇帝以外にはバレるなよ。」

 

「そもそも私も行っていいのかしら?」

 

ミナは獣人なので行けないと思っている様だ。

 

「金の冒険者なんだから問題無いだろ、いざという時は冒険者カード出せばいい。」

 

「それもそうね。」

 

ミナも城に昇る事になり、暫くしてハジメ達が兎人族の救出が終わったという報告が飛んできた。最近はポッドたちはあまり出番が無いので少し悲しい気分になるが仕方無い。

 

其の代わりに武装を超強化できる自動モジュール化したのであとは宝物庫でも持たせたらアホみたいに攻撃力上がるんじゃないだろうか。

 

まぁそれは置いといて、どうやっても城に登るときにハジメ達も来ると思うので皇帝の人はドンマイと言っておくしかなさそうだ。




因みにハジメは最初主人公に悪役をやって貰うつもりでしたがノリノリで民間人に色々な被害を負わせそうなので止めたという経緯があります。


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帝国(笑)

「止まれ、何者だ。」

 

「金ランク冒険者、秋月風魔とそのパーティーのメンバーだ、通達は来ているはずだ、確認してくれ。」

 

翌日、朝早くにこちらに来たハジメ達は俺宛に招待状が届いたので便乗させて城に登ることになった。

 

ミナは耳を隠さずに歩いているので周りから凄い目で見られている。

 

アッシュも少し殺気立っているので気をつける必要がありそうだ。

 

「おいおい、ミナだけでも置いてきたらよかったんじゃないか?」

 

「私だけ仲間外れなんてイヤよ。」

 

「まぁこんなもんでな、それに、裏の機関を潰した事もあるし、実力は既に証明されてる。」

 

「帝国で奴隷じゃない獣人を見るのは初めてだよ。」

 

「今更。」

 

そして嫌悪感丸出しの兵士に連れられて入った応接間では既に皇帝が椅子に座っていた。

 

その対面には王女さんも座っていて疲れている様子だ。

 

「・・・よく来たな、そして、良くもやってくれたな、フード野郎。」

 

「おいおい、仲間を襲われて大人しくしてるほど俺は温厚じゃないぞ?」

 

皇帝は俺を睨んでいる、威圧感が足りないな。

 

「既に潜んでいる奴等は殺して良いのかね?」

 

「止めろ、ったく、下がれ。」

 

「そうそう、今度から潜ませる時は視線をこっちに向けない様にした上で気配を馴染ませたほうがいい、其処だけポッカリと気配が消えていれば誰でも気付く。」

 

「さらっとハードル上げてんじゃねえよ、悪魔かお前は。」

 

「俺は天使だろう?わざわざ指摘してあげているからな。」

 

天使組とハジメが顔を引きつらせている、無視だ無視。

 

「あと、威圧が足りんぞ?その程度で俺が怯むとでも?」

 

「思ってねぇよフード野郎、俺が試したいのは其処の勇者だけだ。其処の南雲とやらはお前と同じ類みたいだからな。」

 

「理解してくれた様で何より、じゃあ天之川はお眼鏡にかなったかね?」

 

「駄目駄目だな。それはそれとして雫、俺の妻になる決死は着いたか?」

 

「ならないに決まってるでしょう!?」

 

いつも思うんだが八重樫っていじられキャラだよな、あと言葉遣い乱れてんぞ。

 

俺とハジメに角砂糖が飛んできた、俺は角砂糖を掴んで自分の紅茶に入れ、ハジメはパクッと食べた。

 

「糖尿病になるぞ。」

 

「安心しろ、毒耐性がある。」

 

「そうか。」

 

「ところで、お前ら二人ともに聞くぞ、俺の雫はもう抱いたのか?」

 

「「・・・。」」

 

俺たち以外が思いっきり吹いた。

 

俺も紅茶を含んでいなかったら笑い転げている気がする。

 

「で?結局のところどうなんだ。」

 

「抱いてるわけないだろう?ついに頭がおかしくなったか?」

 

「ハジメ、そう言ってやるな、所詮皇帝だ、女好きだし、お前と同類だぞ、それに子供染みたこいつにはオカンは必要だろう?」

 

「それは私に喧嘩を売っているのね?良いわよ、買うわよ、表に出なさい、二人共。」

 

「口調変わってんぞ。」

 

その後は色々と質問されたが相手は確信しているようでニヤニヤ笑っていた。

 

「ああ、そうだ、其処の兎と猫はお前らのペットか?」

 

「・・・ほう?それは冗談だよな?」

 

ハジメもアッシュも真顔になる、俺も少し睨んでいる。

 

威圧はまだ出していない、返答次第だ。

 

「あ?冗談じゃねえよ、で?どうなんだ?」

 

そうか、なら遠慮する必要は無いな。

 

俺達から全力の威圧がかかる。部屋が軋み、窓が割れた。

 

まだ殺す気は無い、ゆえにこれは警告だ。

 

「こいつらは俺達の仲間だ、次に同じ事を言ってみろ、この国を潰すぞ、覚悟しておけ。」

 

「・・・。」

 

皇帝の顔は引きつっている、護衛は既に気絶して崩れ落ちている、ハジメはドンナーを皇帝に向けているしアッシュは皇帝の首に剣を突き付けている、反応すら出来ていない、当たり前だ、皇帝の強さがどれだけであれ俺達の動きに反応出来るほど人間辞めてないだろ。

 

「ちょっと待って下さい!皇帝にそんなことしては駄目です!」

 

「王女さん、これは俺たちの問題だ、帝国が俺達と敵対するというなら俺達は全力で潰しにかかる、その為の警告だ、何なら近くの山一つを今この場で消し去っても良い。」

 

その発言を聞いて皇帝は降参したようだ、山一つを消し飛ばす相手と戦う気には敵対したく無いということだろう。

 

手を挙げて身体を背もたれにもたれかかる。

 

「こう・・・さんだ・・・、今後、そんなことは・・・言わないと約束する。」

 

威圧を緩める、その瞬間に勇者達は気絶して崩れ落ちた、皇帝も何もする気力が無いようで手でさっさと出て行けと指示する。

 

「・・・今夜の婚約パーティーが楽しみだな、もし俺たちと敵対する時がきたら、その時がお前達の終わりだろうからな。」

 

「・・・俺はとんでもない奴に喧嘩売っちまったな。」

 

勇者も何とか生きているようだ、この程度ならすぐに起き上がるだろう。きっと大丈夫だ。

 

「王女さんには威圧を当てなかったが、まぁ、時間もある事だし、看病でもしてくれ、あと1時間程度はこの城の機能も停止してるだろうから頑張れよ、桜、念の為に八重樫と谷口に回復魔法をかけておこう。」

 

「うん、分かった。」

 

桜が八重樫と谷口に回復魔法、というか気付け薬代わりの魔法をかける、すぐに起き上がってくるだろうから問題は無い。

 

「俺たちは部屋で休ませてもらう、好きにすると良い。」

 

俺達はそう言って勇者達と王女さん達を放置して部屋に戻った。

 

よし、後で着替え中の王女さんの警備行ってこよう、どうせ誰か来るだろ、多分。




思いっきり威圧しました、というかハジメもなんだかんだ改造してるしアッシュもミレディに改造されてるからまず普通の人間程度じゃ死なないですな、そもそもこの3人に加え広範囲に攻撃を加えられる桜と近接から遠距離まで一瞬で移動できるミナがいるので戦争になったら多分半日も持たないと思います。


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バイアス

俺は部屋に戻ったあとハジメ達とトランプなどのカードゲームをしていた、が王女さんの部屋に皇太子と思われる人間が近付いていたので俺が出る事になった。

 

フードを被り、刀を宝物庫に入れ、色々と準備を整えた後部屋を出た、ミナと桜はもしそういう事なら切っても良いよと笑顔で言われた。

 

俺達は汗を掻いて返事をしたが、確実に桜達はキレたらやるな。

 

そして姫さんの着替えている部屋の前で変装する、取り敢えず姿は紅葉の時の物を、カイがした様に背を高くし、胸も大き過ぎず小さすぎずの手に収まる程度に、そして声帯も作り変えて・・・。

 

「あ、あー、うん、良し!これで良し!」

 

・・・いくか。

 

部屋に混ざり、さり気無く侍女達に混ざる、服装なんかは通りすがりに他の侍女達の物をコピーさせて貰った。

 

「まぁ!素敵ですわ、リリアーナ様!」

 

「本当に・・・まるで花の妖精のようです!」

 

「きっと、殿下もお喜びになりますわ!」

 

「きっとそうです!」

 

王女さんの服を着せている侍女達にさらっと混じっておべっかを使う。

 

王女さんは少し違和感を持っているようだがあまり気にしていないようだった。

 

割とばれそうになっている事に焦る、最近は演技が必要な世界はあまり無かったからな、仕方ないと言えばそうだが、精進しないと。

 

暫くすると部屋の外が騒がしくなる、俺は外の音声を聞いているので皇太子が来た事はわかった。

 

そしてノックすらせずにズカズカと入ってくるのは皇太子だ。

 

「ほぉ・・・今夜のドレスか・・・まぁまぁだな。」

 

「・・・バイアス様、いきなり淑女の部屋に押し入るというのは感心致しませんわ。」

 

無駄だぞ王女さん、あんたがどれだけ心を殺そうと、こういう手合いには無駄だ。

 

「あ?俺はお前の夫だぞ?何口答えしてんだ?」

 

お前が夫でも権力についてはあんたの次になりやすいんだけどな、自分が常に一番だと思ってんじゃねえよ、皇太子。

 

そして皇太子は王女さんの体を舐めるように見た後に全員出て行くように命令した。

 

「あとそこの白髪のお前、お前は残れ。」

 

ウッソだろおい、この体王女さんと同じ位にしてあるんだけど。

 

お前ロリコンだったのか・・・。

 

「わ、私、ですか?」

 

「あ?何回も言わせんなよ、具合が良ければ妾くらいにはしてやっても良いぞ。」

 

こいつちょっと今すぐぶん殴りたいな。

 

「分かり・・・ました。」

 

「何をする気なのですか!?」

 

「・・・お前からにしてやるか。」

 

皇太子は王女さんの胸を掴んだ、結構乱暴に掴んでいるので絶対めちゃくちゃ痛いぞ。

 

そして王女さんは痛みを訴えながら皇太子を睨む。

 

皇太子はその目が良いとか言っているのでMなのだろう、それを屈服させたいとか言ってたからSでもあるのだろう、その次に王女さんと致すのを見せても良いと言っている事から露出趣味でもある、そして致した後の様子にも興奮すると言っているので此奴属性が多い変態だという事がわかった。

 

というか。

 

「良い加減止めてはどうです?」

 

「・・・あ?ただの侍女が俺に口答えする事の意味分かって言ってんだろうな。」

 

「・・・そうですね、ただの侍女が皇太子に逆らう事は打ち首が確定します、果てには家族も、ですが、貴方は一つ間違いを信じているようです。

 

俺がいつあんたの侍女になったんだ?」

 

俺は変装を解いた、その際に服はフードに戻り、声も元の男の声に、真っ白な雪を思わせる髪はつやのある暗闇を連想する黒髪に、目は元々赤いので変わっていない。

 

「テメェ・・・誰だ!?」

 

「俺か?俺の名前は秋月風魔、王国で召喚された勇者達の一人で皇帝を倒した事もある、ただの魔術師さ。」

 

俺の自己紹介で記憶を取り戻した様で皇太子は笑みを浮かべる。

 

「なるほど、お前が皇帝の言ってた魔術師か・・・俺の下につかないか?そうなれば女や金なんて腐る程手に入るぞ?」

 

「・・・戯け、俺がそんな物に興味があると思うたか?バイアス皇太子、もし貴様がここで王女さんを犯した場合、貴様は王国に敵対したと判断し、帝国の土地を消し飛ばす。」

 

「・・・ただ少し人より優れてるだけで調子に乗るなよ、魔術師!」

 

バイアスは俺に向かって飛びかかってくる、地面から飛び勢いをつけて殴ろうとしている、動揺したからこその攻撃なのだろう、だが俺に対しては悪手だ。

 

「だから言っただろう、戯け、とな!」

 

飛びかかってくるバイアスは俺が後ろに倒れこんだせいで空を切り、勢いそのままに俺を踏もうと足を出す、その足を重力を変えて浮き上がりバイアスの顔面に思いっきり蹴りを加える。

 

バイアスはよろめきながら後ろに下がりその隙に俺は立ち上がる。

 

「おいおい、慌てんなよ、俺はただ軽く蹴りを加えただけだぞ?」

 

「テメェ、殺してやるよ。」

 

「ハッ、やってみろ、うつけ者。」

 

背後にいる姫さんにハンドサインでゆっくりと部屋の外に出て近衛兵を呼べと指示をする、王女さんは持ち前の聡明さで何とか理解した様で静かに壁のそばに移動した。

 

「オラァ!」

 

バイアスは今度は姿勢を低くして近づいて来た。

 

足払いを仕掛けられ、後ろに一歩下がる。

 

バイアスは俺の顔面にパンチをしてきたので左手で横に弾き、立ち位置を変える、横っ腹に手を当て、発勁で弾き飛ばす。

 

バイアスは転がりながら姿勢を立て直し、立ち上がった。

 

「ふむ、実力があるというのは本当だったか、だがまだ荒いな、お前の位置どりは剣を扱うものの間合いだ、格闘術は単純に才能か、なかなかのものだな。」

 

「余裕見せてんじゃねえよ!」

 

そう言ってまたもや軌道を変えて突っ込んできた。

 

俺をつかもうとする手を肘で弾き裏拳でバイアスの側頭部に発勁も加えて打つ。

 

バイアスはその衝撃で一瞬意識が飛んだ様だ、その隙にハジメから貰った毒を飲ませておいた、男としては完全に終わるとか言ってたが、どうなるんだ?

 

すぐにその効果は現れた。

 

バイアスはビクビクと震えた後苦しんだり汗をダラダラ流し始めたり吐血すらしていた。

 

そのタイミングで王女さん達が応援を連れて帰ってきたので色々とヤバい反応をしているバイアスとフードを被っているせいで顔が良く見えない俺という状況を見た王女さんはお腹を押さえて倒れこんだ。

 

「・・・た、多分すぐに起き上がるから、多分記憶も無いから、王女さんは頑張って頂いてだな。」

 

「ふざけないでくださいよおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

王女さんは完全に壊れた様だ、この部屋が防音仕様で助かったな。

 

因みに、ハジメはこれを予想していたらしく、ハウリアが潜入する際に飛ばしていたと思われる蜘蛛が俺の肩に降りてきてポンポンと俺を叩いていた、ムカついて蜘蛛を地面に叩きつけて思いっきり踏みつけてやったが傷すらつかずにそそくさと消えやがった。

 

「覚えてろよ、あの野郎。」




これ王女さんの扱いハジメと同レベルなんじゃと最近思い始めた。

天之川に早くNDKしてやりたいですな。


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パーティー

婚約パーティーにお呼ばれしたので

 

「よっしゃ!ミナ!アッシュ!桜!食い尽くすぞ!」

 

「毒は大丈夫なの?」

 

「フッ、安心しろ、お前らの着ているドレスは全てお前らの採寸を元に俺が作り上げた、毒なんて一瞬で消え去る仕様だ、喜べ。」

 

「その調子で太らない様にしたら良いのに。」

 

「それやっちゃうとミイラになりかけたからやりたくねぇ。」

 

「実践済みなんだね。」

 

当たり前だよなぁ?

 

そして起き上がり、更衣室での事を全て忘れている皇太子と王女さんが入って来た、他の貴族はミナを見て扇子で口を隠して笑っていたりするが無視する、そもそもこれに関しては俺が入る事柄ではない。

 

王女さんは真っ黒のドレスを着ている、そもそもあの服は破られかけていたのを俺がさりげなく回収していた、生地を合わせて桜とミナ用のドレスを作らせてもらったからだ、王女さんもそれは知っているので大丈夫だろう。

 

既に会場に居たハジメも女性陣にドレスを作っていたのでお互い様という事だろう。

 

桜は王女さんの妖精の様な雰囲気よりかは少しおとなしめにして紫の髪に合う様に近い配色にしている、桜の腰まで伸びている髪を合わせると清楚なお嬢様という風になる、ゆかりさんの様なミニスカートなどではなく、動きを阻害しない程度にドレスは長くなっており、要所要所で動きやすくした、悪く言えば地味、普通に言えば素材を活かした形になる。良く言えば?俺の主観だから最高だな。

 

ミナはアッシュとの相談で決まったのでかなりスレンダーな形になった。

 

頭回りは充分美少女なので服を取っ替え体のラインが出やすい様にした、すらっとしていて見る限りでは違和感は無い、が何にせよ獣人なので尻尾を出す必要があり、その分イロモノ感が増している、それは仕方ないので諦め、桜と同じく動きやすさを前面に押し出し、ダンスなどがしやすい様にドレスではなくズボンを着て貰った、本人はそっちの方が落ち着くらしい、ぱっと見男装の麗人なので女子からの人気は凄そうだ、日本なら、だが。

 

因みにアッシュに褒められたら顔を赤くして照れていた、桜も褒めたのだが反応が鈍くなった程度だった。

 

ミナはシアと違い獣人の冒険者カードなので耳や尻尾を隠す必要が無い、その分色々言われるがそれは耐えてくれと言ってある。

 

ダンスを始めているハジメを尻目に谷口を回収してミナとダンスの練習をさせる。

 

谷口を誘っていたロリコンと思われる変態には少しばかり威圧しておいた。

 

ハジメとユエは幸せそうに踊っており、息はピッタリだ、最後にキスをした。

 

周りの貴族達は全員拍手を送っている。

 

「桜も、踊ろうか?」

 

「もっとかける言葉は選んだほうがいいんじゃない?」

 

「そうか?まぁそうだな、じゃあ、レディ?私と踊って貰えますか?」

 

「ええ、喜んで。」

 

桜の手を取り壇上に上がる、楽士団はまたもやカップルが来たぞと気合いを入れる。

 

そして曲が始まる、桜のステップは拙いものだったがその分正直でリードがしやすかった。

 

「足は踏むなよ?」

 

「そうは言ったって、これ、難し・・・きゃっ!?」

 

桜が足をひねりかけるのをフォローしアクロバティックな動きをしながら元の動きに戻る。

 

「気を付けて、桜。」

 

「う、うん。」

 

曲も盛り上がってきた、締めといこう。

 

「きゃっ!早いよ!」

 

「安心して俺に任せて。」

 

ステップが早くなり、桜は付いてこれなくなる、合間合間にフォローしながらダンスを楽しめる様に緩急をつけていく。

 

そして最後は倒れこむ様に俺に近づいてきた桜を抱き上げお姫様抱っこをした上でハジメの様にキスをした。

 

「あ、え?あ・・・。」

 

「どうだ?楽しかったろう?」

 

キスされた事を認識した。桜は顔を押さえて恥ずかしがる。

 

近くでアッシュ達も踊っていたらしく俺たちの引き立て役になっていたらしい、周りからまたもや盛大な拍手が送られた。

 

壇上から降りると谷口や八重樫が蹲っている桜に興奮した様子で話しかけていた。

 

その様子を見ていると王女さんが近づいて来た。

 

「どうした?王女さん。」

 

「秋月風魔さん、私と踊ってくれませんか?」

 

王女さんはそう言って手を差し出してくる。

 

「この私で良ければ、喜んで。」

 

そう言って壇上にまた上がる。

 

「先ほどは助けていただきありがとうございました、おかげで私は助かりました。」

 

「別に感謝されるほどのことじゃない、ああいうのは何となくわかる様になってるだけだ、桜も狙われていたから許す気は無かったがな。」

 

「桜さんは愛されていますね。」

 

王女さんは少しだけ悲しそうだった。

 

「王女さん、あんたがもし、好きな人と結ばれるという事を望むのなら平民になって、その生活に耐えるしかない、少なくとも、王族である事を放棄すべきだ、好きな奴がいるなら尚更だ。」

 

「そう・・・ですね。」

 

「俺は桜の為なら世界を相手にしたって構わない、俺が悪になることで桜が幸せになるなら喜んでこの身を捧げよう、桜が幸せならば俺は浮気されたって許してあげよう、俺では幸せに出来ないという事なのだから。」

 

「それは貴方が一方的に傷付くだけなのではないでしょうか。」

 

王女さんは顔を歪めてそう言った

 

「王女さん、俺はどうしようもない悪党だ、人を殺しても何の感慨も湧かない、今までに人を殺しても後悔した事も反省した事もない、それが俺の選択だからだ、正気でなかったとしても、それが偶然であったとしても、俺はその選択をした、俺はその選択の結果を背負わなくちゃいけない。」

 

俺の言葉に王女さんは泣きそうになりながらも絞り出す様にしてこう言った。

 

「・・・誰も彼もがあなたの様に強い人ならば良かった。」

 

「そんな世界があるなら、そんなもの動物と何が違う?ただあるままを受け入れ、その結果で何ができるかを考える、動物と何も変わらん、そんな世界などとっくのとうに滅んでいるだろう。」

 

「私には貴方の痛みがそれほど理解できるわけではありません、ですが、傷が出来たのなら、甘える位はしても何も悪くないと私は思いますよ。」

 

「・・・そんなものする気など無いさ、俺はただ戦うだけしか能の無い人間だからな。」

 

甘えるなど、命の価値が低いこの世界でできるものか、出来てたまるものか。

 

「・・・風魔さん、私から一つだけ言いたい事があります。」

 

「何だ?戯れに聞いてやろう。」

 

王女さんはダンスが終わると裾を上げて頭を下げた。

 

「ありがとう。」

 

その笑みは今までで一番自然だった、王女ではなく、最後までリリアーナとして見てくれた礼、という事だろうか。

 

「こちらこそ、世話になった、そして王女さん・・・いや皇太子妃、貴女はやはり王国に帰るべきだ。」

 

「!?」

 

王女さんの顔が驚きで固まると同時に全ての照明が消えた。

 

「イッツショウタイム!」

 

俺はそう宣言した後王女さんを連れて壁まで下がった。

 

「んー!んー!!」

 

「王女さん、少しだけ黙って見ててくれや、さてハウリア、やってみせろ、お膳立てはしてやったぞ?」

 

暗闇の中をハウリア達が動き回るのを近くしながらそう呟いた。




多分主人公とハジメはラスボスムード全開で見てると思います。


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ハウリアの戦争

俺と王女さんが壁に寄ると同時に暗闇の中でハウリア達が動くのがわかった。

 

「さてハジメ、俺はパーティー会場が襲われるって情報しか貰って無いから何をするのかは分からんのだが、何するんだ?」

 

「此処には貴族の中でも上位にいるもの達がほとんどだ、勿論下級貴族も多い、その中で皇帝を倒せばどうなる?」

 

「・・・なるほどね、理解した。」

 

ハウリア達は確実に戦力を減らしていき、すぐにガハルド一人だけとなった。

 

「途中で炸裂したのはスタンか?」

 

「ああ、かなり便利だった。」

 

ミナとアッシュは何かが投げられたと同時に机を倒しその陰に隠れていたので無事だった、桜も音からグレネードが投げられたと判断してアッシュ達が倒した机の後ろに隠れている、FPSガチ勢め、土壇場でその能力を発揮しやがって。

 

俺とハジメは顔の前にトレイをかぶせる事で問題無かった。

 

「そろそろ皇帝負けるんじゃね?」

 

「負けるだろうな。」

 

ハジメの宣言とともに皇帝は地面に膝をついた。

 

隠し持っていた魔法陣や武具なども壊された挙句膝に突き刺されている、一つ一つに毒も塗られている様なのでかなり痛いんじゃないだろうか。

 

その後はハウリアに任せる事にする、既に勝った、俺達が注意するべきなのは天之川だ。

 

天之川にはっきりと視線を向ける。

 

天之川も気付いたようでギリギリと歯ぎしりをしながらこちらを睨みつける。

 

「やはりこの程度か、勇者も弱いな。」

 

ハウリア達が皇帝に色々とやっている間、皇太子が死んだり部下が死んだりしてたがまぁ関係無いな、ついでに血に染まった床は全て蒸発させておこう。

 

「なぁ、俺に、あるいは帝国に、何か恨みでもあったのか?南雲ハジメ、秋月風魔。」

 

「くはは、なぁ、俺は何にもしてないぜ?たださ・・・俺の連れを変な目で見てんじゃねえよ、なぁ、皇帝さんよ。」

 

俺の言葉に皇帝は驚いている様だった、返されると思ってなかったのだろうか。

 

「たったそれだけで、この国を潰す手伝いをしたと?ふざけるなよ。」

 

「はて、ふざけているのはどちらかな?いいかね?これは警告だ皇帝、ハウリアの要求をお前が呑む事を条件に俺も一枚噛ませてもらっててな、この言葉だけでも言わせてもらう。」

 

つかつかと皇帝の前まで歩いていく。

 

「はっ、なんだよ。」

 

「次に俺の連れに手を出したら、その時は一般人だろうが国だろうが関係無い、全て潰す、1匹残らず潰してやろう。」

 

「チッ、化け物が。」

 

「化け物を倒すのはいつだって英雄(人間)だ、せいぜい足掻いてみせろ、哀れな皇帝陛下さん。」

 

そう言って壁にもう一度近づいて行く。

 

その後は皇帝が解放され、光を灯せと言われたハジメが光の玉を取り出して光らせた。

 

「おーおー、これまた凄惨にやったなぁ。」

 

「!?」

 

「やっぱりこうなるんだね。」

 

「スカッとしたわ、死んで当然よ、特に帝国の奴らだし。」

 

勇者達は目を背けている、八重樫などが真っ直ぐとその光景を目に焼き付けている様だ。

 

「チッ、さっきは良くもやってくれたな、秋月風魔、お前、覚えて・・・!!!?」

 

俺は魔力を解放しながらゆっくりと言った。

 

「言ったはずだ、次に敵意を向けたら、潰す、とな。」

 

「・・・グッ・・・。」

 

威圧を解いて魔力を放った際に壊れた部屋を修復する、俺は部屋を出た。

 

「ちょっと!待ってって、きゃあ!」

 

「おい桜、危ないだろう、ドレスで走るな。」

 

「これで動きやすいの?なら私はドレスなんて着なくていいと思う。」

 

「足回り結構間とかあるイメージなんだけどな。」

 

俺と桜は和気藹々としながら飛行船へと歩き始めた。

 

翌日、昼辺りに勇者と白崎が協力、というかハジメが命令したのだろうが、エヒト神のお告げとして奴隷解放を謳ったおかげで揉めていた者達が一斉に奴隷を手放し、解放された、程度の外に出た奴隷達を樹海まで送る間に襲撃してきた奴隷商人などがいたがハジメ達や勇者、そして俺と桜の魔術砲撃でオーバーキルさせてもらった、皇帝がその惨状を見て頭を抱える事になっても問題など無いだろう。

 

帝都から約5キロ程度しか離れていないところで爆音と光の帯が通り過ぎ、帝都より余程大きな範囲がえぐり取られているのだから戦闘などする気にもならないだろう。

 

というか、俺たちは飛空船の中に空間を広げて作り、その中に奴隷だった者達を入れた為に地上に固まって奴隷達を襲おうとしていた連中が見えたから軽く砲撃しただけだったりする。

 

だから樹海の一部が消えたとかそういうのは無視する。しなきゃいけないと思う。

 

端っこだけだし、問題無い・・・無い・・・よね?




基本的に原作寄りなのに能力がバカみたいに上がってたりほとんどの場合で原作より酷い展開が一つあるのは何故だろう

ともかく、次からは全員で迷宮を攻略していく事になりますね。


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フェアベルゲンで

「ところでハジメ、樹海にはこの船が降りる場所なんてあるのか?」

 

「ん?あるだろ?」

 

「・・・少なくとも広い場所なんかは思い当たらないんだが。」

 

「フェアベルゲンっていう着地場所があるだろ?」

 

その言葉と共に船に衝撃が走る、上に突き上げる様な衝撃と共にハジメは笑い始めた。

 

「お前・・・まさかマジでそんなことをするとは思わなかったよ。」

 

スクリーンを見るとフェアベルゲンの戦士達が魔物と思って槍や剣を取り出しているところだった。

 

ですよね!

 

すぐにマイクをオンにしてフェアベルゲンの戦士達に声をかけた。

 

「ストップ!大丈夫!俺達は奴隷になった人たち助けてきたから!だから待ってくれ!後皇帝いるけど怪我させないでね!」

 

「フハハハハハハ!!!」

 

「おいテメェハジメ笑ってんじゃねえぞォ!!」

 

ハジメは椅子をバンバンと叩きまくっている。

 

「シズシズ、私秋月君があんなにテンパってるとこ初めて見たよ。」

 

「安心して鈴、私もだから、あのラスボスムーブは一体何だったのかしら。」

 

「二人共、風魔って滅茶苦茶ホラーとか苦手だから日本に帰ったら実況動画見てみるといいよ。」

 

「おい三人娘、さっさと手伝え!さっさと中の人達外に出すぞ!」

 

後桜、俺はホラーが苦手なんじゃない、抵抗出来ないのが怖いんだよ。貞○とか似た様な奴に呪い殺された経験あるからマジでトラウマなんだよ。

 

トラウマ多すぎって?うるせえ、生きてりゃこんなことなんざいくらでもあるんだよ!

 

ゾンビゲーとかはまだ自分で何とかできるからマシだ、自分がなるとマジで殺意沸くけど。

 

奴隷になっていた人達をフェアベルゲンに降ろすとすぐに歓声が聞こえてきた。

 

天之川や脳筋バカはその歓声を聞きつけて艦橋に上がってきた。

 

まぁ興味も無いのでその時の会話は割愛する。

 

後、迷宮への道はあと2日で開くらしく、出発するのは明後日らしい、その時まで復旧に協力していた。

 

合間合間でアッシュやミナとの戦闘訓練、あと市街地での戦闘訓練、多対一での捌き方などを実戦的に教えているとフェアベルゲンの戦士達も参加し始め、最終的にアッシュとミナのコンビとハウリアとハウリア新兵、フェアベルゲンの戦士達、そして俺の四つ巴になった。

 

回復は白崎がしてくれるので気力が持つ限り訓練を続けることができ、俺達天使組以外はすぐにへばっていたので最後は何時もの戦闘訓練になっていた。

 

その際、休憩しながら観戦していたハジメや女性陣達は相変わらずの俺の強さに舌を巻いていた。

 

「うわぁ、ハウリア相手に高笑いしながら背中切りつけてますよハジメさん。」

 

「一瞬で魔法陣を書いてる、私より早い。」

 

「あの魔術で攻撃されたらどれほどの快楽なのか・・・じゅるり。」

 

「聞こえてんぞ。」

 

試しに魔術を飛ばしてみるとハジメがティオの首を掴んで盾にした、うわぁ容赦ねえ。

 

「あっ・・・あっ、良いのじゃ、もっと・・・。」

 

「・・・。」

 

ハジメは地面に色々とやばい顔をしているティオを叩きつけた後で見なかった事にした様だ。

 

「ゆっくりに動いてるのに太刀筋が見えないのね、何故かしら。」

 

「確か緩急をつけてるって言ってたはず、空間歪めて距離感無くしてるんだって。」

 

「私結界とか貼る前に斬り殺されそうな気がする。」

 

「多分結界ごと吹き飛ばすんじゃないかな?」

 

「・・・私初めてあの二人の全力戦闘みたけど、あれ光輝より強い気がするわ。」

 

「ステータスで負けてる上に経験も違うからねー、仕方無いよ。」

 

桜の毒舌で遠くに居た天之川が倒れる。ざまぁ。

 

桜は嫌ってる相手にはかなりの頻度で毒吐くからな、仕方無い。というか意識もされてない脳筋バカが可哀想なレベルだ。

 

「「はぁ!!」」

 

アッシュとミナが同時に撃ち込んでくる。

 

二人の腕を絡め取り、投げ飛ばす。

 

二人はすぐに起き上がろうと体を捻るが顔を上げた瞬間に槍が自分の目の前に突きつけられているのを見て降参した。

 

「合格だ、次からは武器ありでやろうか、今回はここまで、あとは休みなさい。」

 

「「ありがとうございます。」」

 

二人はかなり悔しそうだ、さて、反省はあるかな?

 

「結構良いところまで行ったと思ったのに。」

 

「格闘は一番基本的な武術と思ってるからな、それなりに俺も使える、簡単に負けてられんよ。」

 

「途中から俺の動きが誘導されていた、あっという間に、上手いな。」

 

「盗んで見せろ、お前なら出来るさ。」

 

「そう言ってくれるとありがたい。」

 

そろそろ格闘じゃ勝てなくなってきたから武器に変えたっていうのは言ったほうが良いんだろうか。

 

そうして1日目が終わった。

 

2日目は迷宮に挑むのもあって休憩していた。

 

俺はハジメと共に木材生成ゴーレムを作り上げて一時的に資源を無限に増やした。

 

やっぱり2人もいると楽だわ。

 

そして道中勇者が色々入ったりして居たが士気は上がっている。

 

「ハジメ、俺は迷宮攻略の証なんざ持って来てない、ハジメので頼んだ。」

 

「何で持って来てないんだよお前。」

 

「だってかさばるだろ。」

 

「・・・。」

 

俺は最近になって宝物庫を貰ったのでそれまでジャラジャラと下げるのは嫌だったのだ。

 

桜は幾つか気に入った物を持って来ているみたいだ、ペンダントとか。

 

枯れ木の根元に着き、ハジメ達は証を入れ始める。

 

その次にユエが再生魔法を使うと木は瞬く間に緑で空を覆った。

 

木の中に空洞が出来、勇者達は少しワクワクしている様だった。

 

「なるほど。」

 

「何か分かったのか?」

 

中に入り、外への光が無くなっていくのを尻目に俺は一瞬だけ見えた陣を読む。

 

「転移魔法陣だ、気を付けろよ。」

 

そして魔法陣が光り、視界は白に染まった。




攻略開始。


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ロールプレイって面白いよね。

俺が目を覚ますと俺はスライムの様な魔物に変わっていた、手の形にどうにか変えてみると普通に変えられたので人型になるのは問題無さそうだ。

 

色は赤銅色、肌色などは自由に変えられる様だ。

 

試しに剣の形に変えて鉄と同じ様な色に変えてみると普通に鉄と同じ硬度になったので俺は2メートル越えの鎧を着た騎士のような姿に変えて探索する事にした。

 

一応背負っている剣はグレートソードなのでまぁ大丈夫だろう。

 

森を歩いていると目の前にオーガと思われる魔物が見えた。

 

試しに魔力を纏わせることが出来るか試してみるとかなり色が変わっているが纏わせることが出来た、元の体の様に青白い魔力ではなく黒や紫の中に白が混ざる様な魔力が体から滲み出る様に纏わりつく。

 

俺の状態って騎士みたいな鎧姿だし、これでボスを先に倒して待ってたらボスっぽくなれんじゃね?

 

・・・やってみるか。

 

魔力も出力がかなり少なくなっただけで総量は変わってないみたいだし、問題無いだろう。

 

放置して居たオーガが俺を殴ろうと近づいて来る。

 

俺は剣を担いで構えた。

 

俺の状態からして傷付いた英雄的なナニカのマネのほうが良いよな、良し、右腕使わないでおこう、というか変形させて無くしておこう。

 

オーガが雄叫びを上げて腕を振り上げると共に俺の作った剣が腕を斬りとばす。

 

剣を地面に刺して強引に自分の体を止め、大ぶりな薙ぎ払いでオーガの首を斬り飛ばした。

 

動きは少しぎこちないが、こんなもんだろう。

 

良し、ボス部屋はどこかな、ここ森だし木とか狼とかの自然に生息してる奴だろ。

 

声が出せないが勝利の雄叫びをあげる。

 

するとコォーという物凄い悲しき声しか出なかった。

 

雰囲気出るやん、ええやん。

 

そして歩き回って蜂の巣やら猿やらゴブリンやらを討伐して回っているとひときわ大きい巨木を見つけたのだ、結構大きな大きさのものだ、近づいて見ると攻撃されたのでトレントなのだろう。

 

遠くで爆音が響いているのでハジメ達も順調に攻略している様だ。

 

トレントは一つ一つの枝や葉で攻撃を加えてくるが魂から魔力を作り出している俺はステータスダウンして居ても大した問題ではなく、むしろ筋力に関しては少し強化するだけにとどめていられる分かなりマシな部類である。

 

敏捷を上げて葉と枝を潜り抜け、枝を切り落としながら唐竹割りで2メートル弱の切り傷をトレントに与える。

 

周りの木の枝も俺への迎撃に持って来ているのだが俺はむしろその間を剣で切り開いたり足場にして速度を上げたりしているので絡め取られない。

 

そして何百とヒットアンドアウェイを繰り返し、ついにトレントが動かなくなった。

 

そして俺が付けたいくつもの傷が再生していき、第二形態かと構えると自分の幹に穴を開け、次の階層への道だと思われるものを作り上げてしまったのだ。

 

既に爆音も無くなっているのですぐにハジメ達も来るだろう、急いでこれを隠してボスのフリをしなければいけないのだ、まずいにもほどがある。

 

土を盛り上げて魔力でコーティングする。トレントが木を生やしまくった場所を炎で燃やして灰に変わらせ、辺りに灰を固めて風化させた様な剣や鎧などの戦った後を残す。

 

穴が空いている大樹はそのままだが、俺は穴を塞いだ場所の上でどっかりと座ってハジメ達を待った。

 

「〜〜〜〜!」

 

着た。

 

「これは・・・どういう事だ?」

 

ハジメ達がオーガやゴブリンやらを引き連れて灰の広場にやってきた、ゴブリンは凄え既視感があるので多分ティオだろう、顔を赤くしてハジメの近くにいるのはユエか?という事はオーガは・・・脳筋か。

 

「ハジメ君が燃やした場所の一部なんじゃない?」

 

「・・・いや、違う。」

 

桜とアッシュは一緒にいて豹みたいな魔物はミナか?まぁ良いさ。

 

灰を操ってワームを大量に出現させる。

 

ハジメ達はそれに対処していくがそれは小さいワームで大きなワームがハジメ達を下から飲み込もうと飛び出す、ハジメの警告で全員が脱出出来る程の遅さなのでハジメやユエ達は疑問を抱いたようだ。

 

そして大きなワームが灰の広場の奥、大樹の前で大きな方向をあげる、風と声帯じみたものを作れば可能だ。

 

そして飛びかかろうと体を縮めた瞬間に俺が剣でワームの首を斬りとばす。

 

そして良い感じに大樹の前に立ち塞がり大剣を地面に突き刺す。

 

地面から吸い取るように剣から魔力を纏わせる。

 

そして引き抜いて大剣を片手で持ち、静かにコォーと声を出しながら水平に構えればボスの登場だ。

 

さぁ、どう来る?

 

あとハジメ、お前絶対気づいてるだろ、桜も気づいてるだろ、地味に笑顔なのが分かってるんだよ、桜は微笑ましいものを見るような目で俺を見るな、恥ずかしくなってくるだろ、止めろ、俺をそんな目で見るな頼むから!




仲間の心配をよそにロールプレイ(命がけ)をする主人公、桜は灰の広場を見た瞬間に察し、ハジメは唐突に大きなワームの首が切り飛ばされた瞬間に魔眼石で見て察しました。

主人公が魔術を何故使えるかというとそもそも何回も転生してるから体が変わった程度で魔力操作に影響など無いのと魔力があるからというもの、魔力自体は魂を改造して生産してるので体が無くてもあんまり問題は無く、今回は体が魔物だから闇堕ちっぽくなってるだけです、だからこそロールプレイしようってなってたんですが。

次回はハジメ達サイドで書いてみようと思います。

言ってもアッシュ達メインになるかもしれませんがね、主人公のボスのロールプレイも少しやってみようと思ってますがそこまで行けるかどうか分かりませんな。


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私達が転移するとそこにはみんな集まっていた、いや、違う。

 

いつもと変わらない姿、でもどこかが違う。

 

アッシュさんは転移した瞬間にミナさんの体を剣で貫いているし、ハジメ君はユエちゃんと坂上君、そしてティオさんを銃で撃ち抜いた。

 

「チッ、避けんなよ、偽物。」

 

ハジメ君は風魔の姿をした何かの頭を撃ち抜こうとしたが横に移動した何かには当たらなかった。

 

「・・・おいおい、冗談もそこまでにしてくれ、俺は秋月風魔だぞ、ハジメ?」

 

「クハハ、お前は違う、絶対に、桜、こいつは違うな?」

 

ハジメ君は確信している様子だけど私に確認してくる。

 

「うん、風魔じゃない。」

 

「だとよ、消えろ、偽物。」

 

風魔の頭が弾け飛ぶ、倒れながら消えていく姿に私は嫌な予感がした。

 

「・・・お、おい南雲!何やってるんだよ!?アッシュさんも!」

 

「話を聞いていなかったのか?こいつらは偽物だ。」

 

「こいつはミナじゃない、桜ちゃん、俺かハジメの近くから離れないほうが良い、いざという時に護れない。」

 

「大丈夫、私だってどうにか自衛くらいはできると思う。」

 

勇者パーティーを置いて私達だけで会話する。

 

「行方不明者は何人だ?」

 

「ミナ、ティオ、坂上、ユエ、風魔の5人だな。」

 

「ならまずは風魔以外の4人を見つけよ、風魔は絶対に生き残ってるからひょっこり出てくる。」

 

「よし、なら少し進んで5人がどうなってるか話し合おう。」

 

「可能性としては魔物になってるか何処かに囚われてるかだよね。」

 

「取り敢えずどんな魔物が来ても対処は出来そうですぅ。」

 

方針は決まった、あとは情報を集めつつ臨機応変に変えていくだけ。

 

「桜ちゃん、無理はしないほうがいい、あいつがいない分負担は大きいぞ。」

 

「ありがとうございます、アッシュさん、アッシュさんも、気を付けて。」

 

「・・・シズシズ、私達空気だね。」

 

「仕方ないわよ、みんな私達より濃い時間を過ごしてるんだし。」

 

「・・・。」

 

私達の迷宮探索が始まった。

 

ーーーーーーーー

「吹き飛べ。」

 

どうしてこうなったのだろう。

 

私の目の前は炎に包まれている。

 

ハジメ君がユエちゃんの偽物にこんなに切れるとは思わなかった。

 

私は多分風魔じゃなかったら静かに爆撃するだけだと思うし、風魔なら避けた上で追撃加えそうだから大丈夫。

 

でも・・・これはちょっと違う。

 

昔の戦争映像でも見てるみたいだ。

 

「フハハハ!一方的ではないか!我が軍は!」

 

「アッシュさん黙って。」

 

「アッハイ。」

 

ハジメ君、そろそろ落ち着こうか?

 

ハジメ君を張り倒し、説教を加えているとハジメ君は涙目になりながら正座していた。

 

日本にいた頃なら多分号泣してるから強くなったとは思う。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい。ゴメンナサイ。」

 

「あの、桜さん?私達が止められなかったとはいえこれはちょっと・・・。」

 

「怒った桜ちゃんなんて初めて見たけど・・・怖いね。」

 

だから私に向けてくる驚愕と呆れが含まれた視線なんて知らない、私はそんなものは知らない。

 

「・・・見てなくて助かったぜ・・・ユエちゃんの半裸、というか後ろ警戒しといて良かった、マジで良かった。」

 

アッシュさんは目潰しされて炎を操る柱の男みたいになっている勇者を見てしみじみと呟いている。

 

「ハジメ君、行こう?ね?」

 

「うん、いく。」

 

「ハジメさんが幼児みたいに!?」

 

「レアだよレア!ユエさん!ティオさん!レアなハジメ君が見れるよ!」

 

香織ちゃんのその一言で焼けていない森から2匹のゴブリンが向かってきた。

 

「グキャ!?」

 

「ギャ!」

 

このゴブリンユエさんとティオさんだ!?

 

「おお!ユエさんとティオさんですか?ハジメさん!声出せるアーティファクト作ってくださいよ!ほら早く!」

 

ハジメ君はほぼ無意識にアーティファクトを製作し、ユエ達がそれを装着して話し始めると号泣しはじめた。

 

しくしくと涙を流すその姿は実に哀愁漂うもので、私に避難の視線が集まる。

 

「うっ・・・ごめんなさい、やり過ぎました。」

 

『うん・・・いい子いい子、桜はいい子。』

 

体がゴブリンだけど優しさが分かる触り方に少し安心する。

 

「・・・ミナと坂上と風魔か、あと残ってるのは。」

 

『途中で死闘を始めたオーガなら先程見つけたがのう。』

 

「・・・勇者パーティー、行ってやれ、そしてここに呼んでこい。俺はミナを探してくる。」

 

「気をつけて行ってください、アッシュさん、雫ちゃんと谷口さんも。」

 

アッシュさんは片手を上げて離れていった。

 

「風魔は何処にいるんだろう。」

 

思わず漏れた呟きは何処にも届く事なく消えた。

 

「あ!ハジメさん!飴ちゃん食べますか!?」

 

「食べる。」

 

『ハジメ・・・する?』

 

「する。」

 

「うわあ!ここで脱ぎ始めないでよ!あとユエ!ゴブリンだから!今のユエゴブリンだから!ハジメ君も脱ぎ始めない!桜ちゃん!助けて!」

 

『妾は放置かのう?でもこれはこれで・・・。』

 

本当に風魔は何処にいるんだろうなぁ、風魔が出てこないのってこれが原因なのかなぁ?

 

私が遠い目をして風魔を呼んでいると暫くして傷だらけのオーガを勇者パーティーが、大きな豹の魔物、ミナさんがアッシュさんを乗せて帰ってきた。

 

風魔の探索しなきゃ、だって、風魔もきっと私達を探してるはずだから。




現在主人公縛りプレイのボス戦をめちゃくちゃ楽しんでます、哀れ桜。

勇者達視点から見た風魔のボス感やばい演出はどうしようか。


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ボス戦(風魔)

「ところで秋月君何処行ったんだろうね。」

 

「さぁな、どうせ生きてんだろ、あいつに限ってヘマやらかすなんてまずない、あいつの強みは洞察力と考察力と身体能力だからな。一つくらい無くなったところで大した問題でもないだろう。」

 

俺達はハジメが森を燃やした場所から少し移動している、ハジメ曰く魔力の流れが歪な場所があるらしく多分底に覇王が居るらしい。

 

『あいつなら当たり前の様に私達の前にいそうなものだけどね。』

 

「言ってやるなミナ、あれでもきついものはあるだろう。」

 

森を切り開いていくと灰の広がる広場に剣や槍、そして一本だけ無事な大樹があった。

 

「これは・・・どういう事だ?」

 

思わず口から出たその言葉はこの場にいるほとんどの気持ちを代弁したものであろう事は全員の反応から見て間違い無いだろう。

 

桜ちゃんは気付いてるみたいだし、これは覇王さんが作り上げたものなのか?

 

「ハジメ君が燃やした場所の一部なんじゃない?」

 

白崎がからかい交じりにそう言うとハジメは周りを睨みながらこう言った。

 

「いや、違う。」

 

ハジメのその言葉と共に俺達の周りに1メートルほどのワームが現れて回り始めた。

 

「!?全員避けろ!下だ!」

 

ハジメの警告と共に全員がワームの包囲の上を飛び越える。

 

桜ちゃんをミナの背中に乗せて離脱したので大丈夫だろう。

 

俺達がいた場所はかなり長い灰色のワームが一息で食い潰した。

 

「キシャァァァァァァァァァァ!!!」

 

口しかないワームが吠える。

 

勇者達は手強い敵が来たと武器を構えようとするが、ワームが次の行動を起こす前にワームの首が飛んでいった。

 

斬ったのは、騎士か?

 

金属製の鎧に兜、肩の辺りからボロボロのマントがひらひらと伸びており、手にはグレートソード、かなり重厚な装備だ。

 

騎士は手に持っている大剣を地面に突き刺す。

 

この時点で騎士の右腕が無いことに気付いた。

 

騎士は此方をちらりと見ると地面から膨大な量の魔力が剣を通じて騎士の身体にまとわりついていくのが見える。

 

そして騎士は片手でグレートソードを持ちながら構えた。

 

「コォー・・・!」

 

騎士から殺意が飛んでくる、肌がピリピリする様なものではなく、一瞬で呑まれそうな程の濃い殺意だ。

 

「・・・おい、勇者パーティー、あいつを倒してみせろ、ユエ達も手は出すな。」

 

「なんで?」

 

「何でもだ、せっかく全員揃ったんだ、せいぜいあがいて見せろ。」

 

何となく察した、桜ちゃんの顔見て確信した、あれ覇王さんだ。

 

何やってんだあんたは!?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

お、最初は勇者パーティーか、オーガと八重樫が刀を構えて俺を見ている、天之川は中距離で遊撃するみたいだ。

 

俺は地面を滑る様な移動法で大剣を振る、その度にオーガが邪魔をして来るがオーガの強靭な肉体任せであればすぐに傷が増えて死んでしまう。

 

「はぁ!」

 

左腕しかないので右側から狙ったのだろうが遅い。

 

大剣を軸にして八重樫の腹に蹴りを入れる。

 

八重樫は吹き飛んで行き近くの木の近くに激突した。

 

「ガアアアアアア!!!」

 

空手の動きが見える、馬鹿正直に付き合うものか、戯け。

 

後ろに下がり、踏み込んでくるオーガの足に大剣をぶつける。

 

「かっ!?」

 

大剣を担ぎ上げクルクルと横に回しながら逆手に持ち、剣の腹で思いっきり殴り飛ばした。

 

するとオーガはほぼ一直線に近くの土まで飛んでいき土埃をあげながら気絶した。

 

「よし!間に合った!うおおおおお!!!!」

 

天之川は今まで詠唱していた様だったが準備ができた様だった。

 

「神威!」

 

天之川の持っている聖剣から光の奔流が迫ってくる。

 

身体が消滅しない程度に防御してみる。

 

身体が火で熱した石を押し付けられた様に痛い、だけど、これで俺も第二形態になれる。

 

光の奔流が通り過ぎた後には金属が半分以上溶け、人の形を殆どなしていない残骸があった。

 

「やったか!?」

 

馬鹿め!!それはフラグだ!

 

身体を作りながらまた演出で地面から先程より魔力を吸い取る。

 

「グ・・・ガアアアアアアアア!!!」

 

声帯も新しく作ったので会話できる様になった。

 

今の俺は完全に修復された鎧と両腕が元に戻り、闇の魔力で形成された盾を持っている、それに伴い全体的に禍々しい鎧になっている。

 

「神威を食らって生きてるなんて、化け物か・・・!」

 

「・・・構えろ、資格のない愚か者め。」

 

大剣を右手に持ち直し、盾を左手に持ち替える。

 

「俺が資格のないものだと!?」

 

「貴様、先程からの戦い方は何だ?仲良しごっこなら他所でやれ、その程度の信念で我を倒せると思うな!」

 

そう言って切り掛かると天之川は受けるだけで精一杯の様子だった。

 

「虚しいものだな!力の無いものの僻みは!恨みは!怨念は!!」

 

「よく喋るな!」

 

「先程まで意識など欠片もなかったのだ、許せ、だがお前程度の力ではこの先に行くことはできん!」

 

天之川は頑張っているが、既に体力が限界の様だ。

 

「うっあああああ!」

 

天之川は俺を力ずくで弾き飛ばし、魔力の充填を始めた。

 

「・・・フン、さっきの光か、良いだろう、俺の力を見るが良い!」

 

身体全てに魔力を纏わせる、そして残りの魔力が渦を巻く様に大剣に吸われていく。

 

「受けてみよ、我が最高の一太刀を!」

 

「神威ぃ!!」

 

「黒炎よ!」

 

天之川の気がすむまで付き合ってやったけど・・・うん、なんか予想以上に弱かった、取り敢えず苦戦しましたよ感は出させるために付き合ったけど、隙だらけだし、注意力散漫だし、馬鹿だなこいつ。

 

取り敢えず炎の壁を解除して倒したよって感じに見せかけて、土を蒸発させて・・・光の中で動いてるからねすげえ痛いけどまだマシだな。

 

そして天之川の神威が通り過ぎた後はほぼ無傷のままの俺がいた。

 

「・・・所詮この程度か、遊びにもならん。」

 

直接戦闘能力が無い谷口は俺を見て顔を青くしているし八重樫も動ける程軽い傷じゃない。

 

というか顎を蹴ったから脳震盪で立つこともできないと思う。

 

「よーし!ロールプレイ終了!で?ハジメ!桜!どうだった!?」

 

「・・・取り敢えず俺が言いたいことを言わせてもらうぞ。」

 

「おう!どんと来い!」

 

「さっさと合流しやがれアホが!」

 

「心配したんだから!何やってるの!?」

 

幼馴染2人に説教される日が来るとは思わなかったぜ。

 

「取り敢えず正座ね。」

 

「ハイ。」

 

桜の指示には絶対に聞かなくちゃな(震え)




そんなに盛り上がらなかったボス戦、主人公的にサンドバッグいたら良かっただけだしね、仕方ないね。


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泡沫の夢

「わかった?」

 

「ハイ、ワカリマシタ。」

 

最近桜の説教のキレが増している、マジで怖い、反論しないで頷いてても毒舌と皮肉と桜の静かな怒りでマジで怖い。

 

こっちに来てからキレッキレの毒舌屋になってしまっている。

 

中高生の死ねとか殺すぞみたいなものは一切無く、煽るような口調の筈なのに恐怖しか感じさせない辺り桜の本気度が伺える。

 

敬語にしたらマジで煽り文句がめちゃくちゃ増えそうだ。

 

「ならよし。」

 

精神的に疲れたな、本当、桜さん容赦ってものは無いんですか?

 

「それで?お前は何でこんな事したんだよ?」

 

ハジメが説教が終わったのを見計らって尋ねてきた。

 

「転移すると同時に俺がスライムみたいな姿になっていてだな、魔力はまぁ見た通りすげえ闇落ち感やばかったし、ちょっと魔が差したというか何というか。」

 

「それで?ここに居るはずのボスを1人で倒して俺達を待っていたと。」

 

「・・・ぶっちゃけゲームのボスとかがかっこよすぎて一回なって見たかった。」

 

「その気持ちはわからんでもないんだが。」

 

「取り敢えず!先に行くよ!土は消えてるみたいだしね。」

 

桜さんが手をパンパンと叩いて全員を立たせる。

 

説教中に白崎が天之川や八重樫を回復させてたので大丈夫だった、脳筋は回復させる間もなく立っていたが。

 

「了解、全員元の姿に戻ってると良いんだが。」

 

「まぁそう上手くはいかんだろうな、ま、なるようになるさ。」

 

正座をずっとしていたので桜とアッシュ達に引きずられながら木の中へと入っていく。

 

全員が入った所でまた真っ暗になり、視界が真っ白に染まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

俺が起きるとベッドに寝転んでいた。

 

知っている天井、教会の側にある孤児院の部屋、俺の家の中だ。

 

「此処は・・・そうか、俺達は帰ってこれたんだったな。」

 

一ヶ月ほど前、エヒトをどうにか抹殺し、クラスメイト達とともに日本に帰って来たのだ、今ではマスコミに押しかけられたりするのを実力行使で塞き止めている。

 

「風魔〜!ご飯出来たよー!」

 

桜の声だ、今の時間は7時半、少し寝すぎたか、まぁ良いさ。

 

今はゆっくりと休もう。

 

「分かった!今行く!」

 

部屋の扉を開けて階段を下りていく。

 

孤児院のガキ共と朝飯を食べ、昼までにハジメの家に行かなくては行けない。

 

「桜!そろそろ準備しようか。」

 

「了解!久しぶりの配信だね!」

 

「まぁな、マスコミと揉め始めてから結構経つし、そろそろ再開しても良いだろう。」

 

「ユエさん達は?」

 

「既に待ってる、時期を見て配信にも参加予定だとよ。」

 

あいつらだったら無駄にやり込んだりしそうだ、俺達と違って仕事がある訳でもないからな。

 

「なんかいつの間にかチャンネル乗っ取られたりしそう。」

 

「止めろ、マジでそうなりかねん。」

 

そして昼過ぎ、ハジメの家に集合する。

 

「おはよう、くぁ・・・。」

 

「お前まさか徹夜か?寝ててもいいんだぞ?本格的に配信するのは夕方からだろう?」

 

「いや、世界初のフルダイブVRゲームの開発しててな、プログラムがさっき完成した。」

 

「一ヶ月で?いや、まて、お前まさか時間加速のアーティファクト使ったのか!?」

 

「一時的にスパコンより処理能力上がったぜ、ふへへ。」

 

「今すぐ寝ろ戯け!」

 

ハジメをベッドに押し込もうとすると家の中からユエとシアが飛び出してきて2人でハジメをベッドに拘束した。

 

「風魔、動き止めてくれてありがとう。」

 

「ハジメさんいつもこうなんですよ!せっかく風魔さんが矢面に立ってくれてるのに!」

 

「いや、別に俺はそれでも良いんだが、今日の配信はどうしようか。」

 

「それには心配及ばんぞ!風魔くん!」

 

庭でミュウと遊んでいたのだろうか、社長が出てきた。

 

「どういう事です?」

 

「たった今時間が2倍速になるアーティファクトを遠隔起動して来た。」

 

「どうやったんですか!?吐いてください全部です!」

 

この親子はなんなんだ一体!

 

「ハジメが作った鍵穴に鍵をさして空間を作るってアーティファクトがあっただろ!?それの中に遠隔でアーティファクトを起動出来る司令室みたいな場所があるんだよ!そこで起動して来た!」

 

明らかにドヤ顔でいう内容じゃねえ!

 

「・・・もしかしてユエ達の部屋もそんな感じで作ってます?」

 

「そうだが?」

 

おうマジかよ。

 

「アンタ大人でしょうが!?全部息子に任せてて良いんですか!?」

 

「俺にできない事を当たり前のようにやってのける!そこに痺れる憧れるぅ!」

 

「ネタ言ってる場合じゃねえ!」

 

この人の性格は分かりきってたと思ってたわ、ハジメと同じ、というかハジメがこの人に似てるんだな、小学校から付き合ってきてようやく理解したよ、畜生め。

 

「はぁ・・・家に上がらせてもらいますよ、全く、何やってんですか。」

 

「ふふ、楽しそうだね、風魔。」

 

ユエ達と一緒に笑っていた桜がそういう。

 

桜の表情は今幸せですという気持ちが溢れているようだった。

 

「それで、挙式は何時するんだね?」

 

ハジメの家に入り、リビングで社長と共に座ると社長はおもむろに俺に問いかけた。

 

「社長、それ前も言ってましたよね?その時に俺は就職するまでしないって言いましたよね!?」

 

「風魔くん、君は既に俺の会社の社員だ、つまり既に就職している!」

 

「それは実況チームとしてでしょう!?しかも社員じゃなくて広告塔!まだ社員じゃないです!」

 

「いずれ来るだろう!」

 

「いやそうですけれども!」

 

桜は既に戦力にならないようだ、ミュウも雰囲気から喧嘩している訳ではないのは理解していそうなので戦力にはならない、というかハジメの家の女性陣はほぼハジメのお母さんの手伝いをしているので騒いでても気付かないだろう。

 

「ハジメ、早く来てくれ・・・。」

 

「俺は目の前の現実に懇願するようにそうつぶやく事しかできないのであった。」

 

「ナレーションしないでください、社長。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

そして夜、配信も終わり、お気に入りが一気に元の数字まで戻るという奇跡が起き、不定期ながら動画も投稿していく、そこまで来てやっとトータスに行く前の状態に戻った気がした。

 

「配信お疲れ様、ほれ、サイダーでよかったか?」

 

「ああ、助かる。」

 

庭に座ったのはハジメだ、配信開始ギリギリまで寝ていたので叩き起こした。

 

「なぁ、ハジメ。」

 

「ん?なんだ?」

 

「この世界は、大迷宮の夢か?」

 

「・・・。」

 

おかしい事柄が多過ぎる、まず一つめ、俺と桜が結婚するという事実がある事、俺は告白をした覚えもなければ桜から告白された記憶も無い、いや、あるにはある、確かに俺が言いそうな事だ、でもそれにはかなりの違和感を持った、これは俺じゃないという漠然とした違和感が。

 

そして二つ目、マスコミが報道している事柄の中に死者がいない、既に死んだはずの清水や遠藤、檜山の名前が無い、そもそも死者なんて最初から居なかったとばかりに消えていた。

 

そして三つ目。

 

「お前は、誰だ?ハジメじゃないな。」

 

「ついにぼけたのか?風魔、俺はハジメだ、南雲ハジメ。」

 

「・・・そうか、いう気は無いと。」

 

手元に紅黒龍が現れる、あの時もこんな感じだったな、闇の書もだ。

 

「やっぱり、こういう事はクソッタレな罠だ。」

 

「罠だって?」

 

「ああ、確かにこれは俺の理想なんだろう、大迷宮が理想の世界を創り上げるんだろう。」

 

桜も偽物、全てが偽物、そうであるはずなのに、哀しくなる。

 

「だけど理想は理想だ、決して手の届かない漠然とした理想は、そう簡単には手に入らない。」

 

「・・・。」

 

「なぁハジメ(大迷宮)、理想は自分で作り上げ手に入れるものであって与えられるものではないだろう?苦しんで苦しんで、それでも諦めきれずに手を伸ばした結果が理想だ、全てが楽になる?それは違う、全てが先に苦労を支払ったが故の一時的な楽だ、全てが前払いなものなんだよ、そうだろう?」

 

ハジメの姿をした大迷宮は何も言わない、ただ俺を見つめるだけだ。

 

「ハジメは自分の事を化け物だと言った、だがあいつはまだ人間だ、俺のように、人間でいる事に耐えられなかった化け物は、死ぬしかない、俺は正義の味方にはなれない、ヒーローにもなれない、それはただ自分勝手に、傲岸不遜に笑う化け物が何かをグチャグチャにした結果だ、本来あるべき結果を捻じ曲げ、自分の思う通りに動かす、そんな力のある化け物が人間になるには何をすればいいと思う?」

 

「・・・分からないな。」

 

「誰かを笑顔にすれば良い、俺は天之川にお前はただの傲慢な愚か者だと言った、だが、一番愚かだったのは俺の方だ、正義も悪も関係無く、自分の思い通りに行かなかったら怒り、喚く、そんなモノ、幼子とどう違う?」

 

俺は全て分かっている、心理学を学んだ人生があった、戦艦を作る仕事を一生続けた、宇宙を破壊するほどの戦争で大艦隊を幾つも指揮した元帥になった事もあった、何も出来ず、ただ搾取される農民だった事もあった、奴隷だった事もあった、貴族に生まれ、国を豊かにした結果、親友だと思っていた者たちに裏切られた、復讐を誓う子供に命の大事さを教えた、他の神を殺した、ただ人殺しを殺して回った。悪だと決めつけ、鏖殺した事もあった。

 

「俺は転生する天使だ、記憶は磨耗していき、消えていく、会った時は絶対に忘れないと、そう誓った者でさえ、忘れかけている者もいる、確実に愛していたと言える人でさえ、消えていく、顔も何も思い出せなくなっていく、俺はそれが何よりも怖い。俺の中にある大事な存在が消えるのが怖い、たとえ世界の全てを手に入れたとしても、ただ1人の愛した存在が消えるだけで俺には何も見えなくなる。」

 

俺は何故こんなことを言っているのだろう、理想の話だったはずなのに、何故俺はこんなことを言っている?

 

「なぁ、教えてくれ大迷宮、俺の愛した女は、俺の愛した存在は、何故ここにいないんだ?(・・・・・・・・・)

 

ああ、そうか、全てそういうことか。

 

「忘れているわけではない、愛しさを感じる程の記憶もある、俺の記憶を読み取って再現するのだろう?ならば何故その存在を匂わせる物すらないんだ?」

 

「・・・それは、お前が一番分かっているはずだ。」

 

・・・やはり、そういう事か。

 

「君のその記憶は幻想などではなく、ちゃんと君の中にある、だけど、君の中の記憶じゃ、君の理想の中には入れない、その姿を作れないからだ。」

 

此処には居ないと、俺がそう確信しているから、割り切っていなくても、それがどんなに辛くとも、もう別れたのだから。

 

「・・・君のその涙は、確かに彼女達を愛していたという証拠だ。」

 

「愛していただと?ふざけるな!愛しているならば何故忘れる!?何故磨耗する!!なんで忘れなきゃならないんだ!?何故覚えていられないんだよ!?なんで!?何で・・・。」

 

目の前が真っ暗になりそうだ、希望なんてないとそう思ってしまいそうだった。

 

信じたくないと首を振る、俺は俺の理想をがむしゃらに叫ぶ。

 

冷静ではないのだろう、そう自覚している、それでも叫ばずには居られなくなる。

 

「君は自分の事を化け物だと、そう言ったね。」

 

「・・・ああ、そうだ、愛した者達を覚えていられないなど、化け物でしかありえない。」

 

「でも君は泣いている、たとえ人を斬ったとしても罪悪感の欠片も湧かない筈の君が泣いている、人は涙を流せる内は人間だよ、だから君は人間だ。」

 

瞼が降りてくる、暗闇の中で不思議と声だけが響き渡る。

 

『もう!いつもいつも無茶するんだから!そんな時は私が助けてあげるって!ずっとそうしてきたでしょ?』

 

俺が一番最初に愛した女性○ィ○ナが笑顔で俺にそう言う。

 

『親友!お前が苦しんでるなら俺達がそばにいてやるよ、なぁ、だからお前は笑えば良いんだ、そんでムカつく奴をぶっとばせば良いんだよ!』

 

共に戦場を駆けずり回った、既に名前が分からない親友がそう言う。

 

『貴女の精神が男である事は作られた時から分かっていました、貴女がそれを異端だと思っていた事も、死に物狂いで家族を守る貴女にだって、苦しまない権利はあるはずだ。』

 

生涯付き添ってくれた私の好きな家族がそう言った。

 

『私達がいないと日常すら送れないなら影からずっと見守ってあげる、長い間一緒に暮らして来たんだもの、貴方にだって苦しまずに生きるくらいの役得が無いと神様の私が嫌なの、だから苦しまないで。』

 

他の世界で愛した女神、メドゥーサがそう言った、そうか、今分かった、桜を愛していると感じていたのはメドゥーサを重ねていたからだ。

 

『それは違う、絶対に違う、貴方の気持ちに嘘をつかないで、だから私は貴方の妻であり続けたんだから。』

 

夜月、いや、ネリア。

 

嘘じゃないなら何でこんなに・・・いや、違う、そうじゃない。

 

そうだ、俺はみんなが言いたい事はとっくのとうに分かっていた。

 

苦しむのが当たり前ではなく、苦しまずに一緒に生きて、という事だ。

 

「そうだ、俺は最初から分かっていた。」

 

「そう、君は最初からこの試練をクリアしている、後は君の意思次第だった。」

 

「すまねぇな大迷宮、愚痴に付き合わせた。」

 

「あれは愚痴とかの域じゃないと思うんだけどね、まぁ、君がそれで良いなら問題無いよ、きっとね、最後に質問させて、君は一体何者だい?」

 

暗闇の中でそう聞かれる。俺は口角が上がっていくのが分かった。

 

「俺は俺だ、姿や声、性別が違おうが関係ねぇ、俺は、俺だ。」

 

俺がそう言った瞬間、遠くで何かが割れる音がした。




主人公吹っ切れる回、氷雪洞窟が楽しみですなぁ。

そして筆が乗ったにも関わらず難産になってしまった回でもある、良い感じになったので投稿しました、もっとハッチャケたいぜ。


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ほんの少しの勇気

夢から目が醒めた、そんなことを漠然と思いながら目を開ける。

 

「此処は・・・。」

 

「起きたか?」

 

「あー、ハジメか?くそ、頭痛い。」

 

「だろうな、お前ならそうだろう。」

 

痛い頭を押さえて壁に寄り掛かる。

 

「他には誰が起きてる?」

 

「ユエとシア、アッシュとミナ、後は変態、桜と八重樫はクリアしそうだが他は分からない。」

 

桜がまだ?いや、無理も無いか、桜の人生ならトラウマの宝庫だ。

 

無事に出て来てくれ、桜。

 

ーーーーーーーー

「はぁ・・・はぁ・・・ぇぐっ!」

 

私は山の中を走り回っている。

 

「おーい!■■■ちゃーん!でておいでー!」

 

「ひっ!」

 

遠くから■じ■んの声が聞こえる。

 

「あ、いや、いや。」

 

「あ、■く■ちゃん!こんな所にいたんだ!さぁおじ■■と一緒に帰ろう?また良い事してあげるから。」

 

いつの間にか■■■■は目の前で笑っていた。

 

一番最初の頃、天使になる前の、私の記憶。

 

「いや!いやぁ!助けて!風魔!」

 

あれ?風魔って、あれ?私の名前は何だっけ?あれ?私は、私は。

 

■はい■たい■なのかな?

 

「さぁ、おじさんと一緒に行こう?」

 

■■■■の■■■が■■しのお■■■斬り裂いた。

 

私は自分から出て来る血を見て絶望した。

 

「!!?」

 

気がつくとベッドでびっしょりになっていた。

 

「桜?大丈夫か?汗びっしょりだぞ?」

 

「あ・・・え?」

 

私の目の前には風魔がいた、私の好きな人、私の事を襲うそぶりを見せない初めての人。

 

「ふう・・・ま・・・。」

 

「また悪夢か?はぁ・・・ほら。」

 

風魔が私を抱き寄せる、私の好きな匂いがする、目の前が風魔で一杯になる。

 

涙がポロポロと出て来た。

 

「まだ、もう少しだけ、もう少しだけで良いから、このままで・・・。」

 

「・・・好きなだけ居てやる、お前が安心するまで一緒に居る、だから好きなだけ泣けば良い。」

 

その日は昼になるまで泣いていた。

 

「ご、ごめん、朝ごはん食べられなかったね。」

 

「まぁ腹が空いたのは否定しないが、お前が泣き止む方が先だ。」

 

風魔はいつもこんな事を言ってくる、天然でヘタレだけど、それが私の好きな風魔だから。

 

「ありがとう。」

 

その日は風魔とゲームをして遊んだ。

 

そして風魔と一緒の布団に入って子守唄を聞かされながら寝た。

 

ーーーーーーーー

 

「・・・。」

 

まただ、次は港、コンテナがいっぱいある場所で私の友達だった女の子が犯されている。

 

「いやぁ!やめて!出さないで!」

 

「うるせえ!お前は俺のもんなんだ!騒いでんじゃねえ!」

 

そう言って男は私の友達を殴る。

 

「あ・・・。」

 

友達はすぐに動かなくなった。

 

「あ?勝手に死んじまったよ。」

 

男は私を見る。

 

「次はお前だな、犯したい身体してんなぁ。」

 

「ひっ・・・いや、来ないで!」

 

そう言って後ずさると背中に何かが当たった。

 

後ろを振り返るとそこには何人もの男が下半身を露出させた状態で待っていた。

 

「あ・・・。」

 

私はもう逃げられない事を悟った。

 

男達はこぞって私の身体で獣欲を満たし始める、そして私の中に入れられる前に気絶した。

 

「・・・。」

 

「桜?どうした?」

 

「風魔・・・。」

 

「また悪夢か?」

 

「・・・うん。」

 

風魔は私を安心させようと手を伸ばしてくる。

 

「いやぁ!?」

 

「!!?」

 

私はその手を思いっきり叩いてしまった。

 

「あ・・・ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!そんなつもりじゃ無くて、ごめんなさい!」

 

「待て!落ち着け!深呼吸だ!」

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

ああ、まただ、また風魔に迷惑をかけちゃった。

 

私はそのまま謝り続けて暫くして眠ってしまった。

 

ーーーーーーーー

「此処は?」

 

今度の夢は風魔の孤児院の個室だった。

 

「あれ?お姉ちゃん誰?」

 

「え?」

 

振り返ると小さな黒髪の女の子が私を見ていた。

 

「お姉ちゃん此処までどうやって入ってきたの?院長先生に怒られちゃうよ?」

 

「あ、えと、私は・・・。」

 

「お姉ちゃん翼ついてる!」

 

「え?」

 

顔を背中に向けるとそこには純白の翼があった。

 

「天使様だ!すごい!綺麗!」

 

女の子は私の背中にある翼を触って大はしゃぎしている。

 

「あ、ひゃぁん!まっあっ!待って!」

 

触られるとかなりくすぐったい、女の子を捕まえようとするが常に翼をぎゅっと握られ思うように力が出ない。

 

「天使様!私天使様みたいになりたい!」

 

「ひゃう!どういうこと?」

 

女の子は私の背中に捕まり始め、くすぐったさもマシになった。

 

「だって天使様の翼があれば降りれなくなっちゃった猫とか困ってる人を助けられるもん!」

 

「困ってる人を・・・助ける?」

 

「うん!みんなが天使様みたいに翼を持ったらお空飛べて色んなところに行けるから苦しい気持ちなんてすぐ忘れられると思うもん!」

 

女の子は自分の思いを全て私にぶつけてきた。

 

「私は、そんな綺麗な人じゃないよ、私は身勝手で、いつも誰かに助けられてて、その人が来るまで何もしなかったもの。」

 

「天使様は綺麗な人だと思うけどなぁ。」

 

「私が・・・綺麗?」

 

「うん、だって天使様がそんなに傷付いてるのに天使様は助けてくれた人にありがとうって言えるもん、みんなそんな事絶対にすぐに言えないよ?」

 

「謝れるから・・・綺麗?」

 

私は女の子の言ってる事がわからなかった。

 

「天使様がその助けてくれた人を助けたらもっとお礼が言えるようになるよ?あ、でも院長先生が言うには助けることはじこまんぞくって言ってた!」

 

その院長先生はかなり擦れてる人なんじゃないのかな。

 

「ちなみに、貴女は?」

 

「ん〜?分かんない!私天使様みたいな綺麗な人じゃ無いもん。」

 

「え?」

 

「私、此処に来る前におじさんにお股から血を出されちゃったの。」

 

「!!?」

 

どくどくと心臓が動くのが分かる。

 

「だから私は汚いんだって、私の身体は汚いからもういらないって言われちゃった。だから天使様みたいな綺麗な人になりたい!」

 

「わ、たしは。」

 

「だから天使様!まずは自分を助けて、それからみんなを助けて!私応援してるから!」

 

女の子のその言葉で私を覚ました。

 

また私はベッドに寝ていた、今度は汗はあまりかいていなかった。

 

「桜!目を覚ましたか!」

 

「あ、風魔、ごめん、取り乱しちゃった。」

 

「いや、あれは俺が不用意に近づいたからだから、桜は気にしなくて良いよ。」

 

私はやっぱりこの人が好き、だから、少しだけ勇気を貸して。

 

「貴方は、誰ですか?」

 

「・・・やっぱり気づかれちゃったか、うん、俺の事は大迷宮で良い。」

 

「ハルツィナ大迷宮の人、何ですか?」

 

「人っていうと違うかな、君たち天使にだけ現れる、普通の人間には理想の夢を見せ、天使には同じく理想か絶望を見せる。」

 

「私は絶望だった。」

 

「そういう事。」

 

そして大迷宮に説明された、天使はこの夢で理想か絶望かに関わらず大迷宮を見つける事がクリアの条件だと、理想からは現実に戻り、絶望からは逃げない様に変わる。

 

「私は風魔が好きなんです、私を現実に返してくれませんか?」

 

「・・・同じ姿なのにはっきり言うね君。」

 

「私を待ってる人は、こんな変な事はしませんから、私を無理やり襲ったりもしません、傷付けようとした事もありません、私が良いというまでずっとそうしてるヘタレですから。」

 

「僕彼に同情するよ。」

 

私の瞼が閉じていく。

 

「君のほんの少しの勇気に敬意を、頑張りなさい。」

 

「はい!」

 

私は現実に戻った、私の好きな人がいる現実へ。




桜、吹っ切れる回、これで下準備は整った。


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夢から覚めて

パキッと割れる音がした、俺の目の前で琥珀の様な物が割れていく。

 

その中にいた桜は少しずつ目を開け、俺を見た。

 

「桜、無事「風魔!」うおっ!?」

 

桜は俺を見るとすぐに抱きついてきた。

 

「風魔だ!本物の風魔だー!」

 

「お、おう?言いたい事はわかるがテンションおかしくないか?」

 

桜は何も言わずににへらっと笑っている。

 

「まぁ、後は2人か、八重樫はさっき出てきたし、脳筋バカも出てきたしな。」

 

「という事は私って結構後ろの方?」

 

「まぁ、そうなるな、因みに一番早かったのはミナとアッシュらしいぞ。」

 

「流石天使・・・早い。」

 

問題は谷口だな、天之川?むしろこいつがクリア出来たら凄いと思うぞ。

 

谷口の琥珀を見ていると少しずつヒビが入っているのが分かった。

 

「・・・ふむ、谷口は大丈夫そうだな、天之川はお察しだな。」

 

そもそも正義と自分の欲望の違いがわからん奴にクリアできる様なもんでもないだろう、というか脳筋バカは何でクリア出来たんだこいつ。

 

「むふふ。」

 

・・・。

 

「あの・・・桜さん?ちょっとくっつき過ぎでは?」

 

「だって風魔成分を貯めたいから。」

 

「勝手に謎成分作るな、全く。」

 

「そういえばみんなは何処にいるの?」

 

「この先に少しだけ広い小部屋があった、攻略者が全員揃えば転移する仕組みになっていたから俺が残って他はそっちに行ってる。」

 

俺は理想を潰す悪役って訳だな。

 

暫く桜と話していると谷口の琥珀がバラバラに割れた。

 

「・・・。」

 

「谷口、決心は着いたか?」

 

「え?」

 

谷口は俺を見て驚いている。

 

「ん?中村の事を見てたんじゃないのか?」

 

「あ!うん!そうだよ!うん!決心着いたよ!うん!」

 

谷口は顔を赤くしてそう言った。

 

「そんなに慌てる事か?まぁ良いわ、この先に全員いるから合流してくれ、俺は天之川を起こさなきゃならん。」

 

「分かった!行ってくる!」

 

谷口は走り去っていった。

 

「変な事でも起きたのか?」

 

「風魔は分かってないなぁ、それでも何億年も生きた天使なの?」

 

「・・・え、そういう事?」

 

桜は頷く。

 

「マジかよ、相手誰だよ。」

 

「・・・やっぱり風魔って・・・。」

 

「何だその目は。」

 

「ううん、自分の乗り越える壁の高さを再確認してただけだから。」

 

「どういう事だよ。」

 

桜は笑顔で黙った。

 

気になるんだけど、まぁ良いか。

 

天之川が入っている琥珀を破壊する。

 

天之川はすぐに起き上がり、周りを確認しはじめる、俺を見つけると俯いていたが。

 

「天之川、自分すら信じられないなら今すぐ帰れ、それが一番お前の為だ、俺は先に行く、心の準備が出来たら先に来い。」

 

俺はそれだけ言い残してハジメ達のところへ行くと桜も後ろを付いてきた。

 

「そういえば桜はどんな夢だったんだ?」

 

「えーと、ずっと大迷宮とお話ししてた・・・かな?」

 

「・・・意思があるのは知ってるが、ずっと話してたのか?」

 

「うん、相談?に乗ってもらってた。」

 

何だそれ、え?なんか悩みでもあるのか?

 

「風魔は確か私の前までの人生は知ってるよね?それを克服する為の方法をちょっと教えてもらってた。」

 

予想以上に重いものが出てきた、俺にはどうする事もできない部類だ。

 

「・・・そうか、頑張ってくれ。」

 

「ふふ、うん、頑張るよ。」

 

「お、天之川はどうした?」

 

「ハジメ、天之川は思いの外思い詰めてるらしい、整理する時間をやった、どうせすぐに来る、いつもの思い込みでな。」

 

「なんか、お前天之川に優しくなったか?」

 

「俺が?冗談だろ?ただ期待しなくなっただけだ。」

 

「・・・まぁ、あんな事言われたらな。」

 

ハジメは天之川が孤児院育ちだから性格が悪いだの何だのと言っていた時の事を思い出しているようだ。

 

「俺の主張は言った、あいつがどう受け止めるかは知らんが、思いっきり一線を越えたらその時こそあいつの寿命だ。」

 

「だろうな、暫く待つか。」

 

「だな、ちょっと他の奴等と話して来るわ。」

 

俺はそう言って八重樫や脳筋バカ、後はアッシュ達などと話をした。

 

アッシュは理想の世界だったらしい、亜人差別もなく、人種差別もなく、全員が全員好印象を抱く世界、だが帝国の皇帝が笑顔でこっちに歩いてきた瞬間にブチ切れてボッコボコにしたら目が覚めたらしい。

 

ミナは少し顔を赤くしてアッシュを見ていたので察した。

 

脳筋バカは小声でユエに一目惚れした事を俺に告白してきた。

 

なのできっとユエが脳筋と恋人になった理想を見せられたのだろう、本人曰く黒髪のハジメが自分を見た瞬間に一瞬でこれは夢だと分かり、半狂乱になりながらも夢から覚めたらしい。

 

琥珀から出てきた瞬間にすげえ叫んでたのはそのせいか。

 

そして谷口だが脳筋を恋する乙女の顔で見ていた事からそういう事なのだろう、あれ?このパーティーちょっとそういうの多くね?

 

そして哀れ勇者、君は誰の夢にも友人かそれ以下の扱いらしい、誰の話にも欠片も出てこなかった。

 

カップルに囲まれるボッチ、なお女性陣は半分以上が嫌ってる文武両道の性格イケメン(側から見たら)顔面偏差値高めの超優良物件だぞ、良かったな。

 

まぁこいつ付き合い長ければ長いほど嫌われるタイプだし仕方ないね。

 

天之川が俺たちのところに来た時は幾分かマシになっているように見えた、まぁ、目が濁ってるから半分くらい堕ちてそうだが、気をつけるか。




今の所マジで勇者が可哀想で笑いそうになる、クラスメイトも心が離れかけてる現状、こいつを助ける奴は異世界の姫様と女神様しかいないぞ!頑張れ勇者!


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スライム

「此処は・・・。」

 

「全員本物、目的地もあそこか、問題無いな。」

 

俺とハジメは交互に情報を呟く。

 

「また樹海、魔物の気配はまだしないが、さて、どうなのかね。」

 

「知らねえよ、最悪森ごと焼き尽くす。」

 

「物騒だな、まぁ行こうか。」

 

暗い顔の天之川は放置、死のうが生きようが関係無い。

 

暫く歩いていると上空から何かが落ちて来た。

 

「雨?」

 

「これは、どういう事だ?」

 

「・・・障壁展開!戦闘用意!」

 

『了解!』

 

俺達が障壁を展開させると同時に周りのあらゆる場所から白いスライムが滲み出るようにして出現した。

 

「チッ、ハジメ!タールの用意!他は地面から出てくるスライムの対処!」

 

「了解!」

 

「障壁の数を増やせ!溶かされてるぞ!」

 

「やってる!」

 

俺とユエの障壁がかなりの速度で溶かされている、ユエのものはともかく俺のは魔法陣ありきのものだ、陣が溶かされたら意味は無い。

 

修復もかなりの速度でやってはいるがいかんせん数が多すぎる。

 

「チッ、ハジメ!用意は!?」

 

「出来た!燃やすぞ!全員注意しろよ!」

 

ハジメのその言葉と共に障壁の外が赤く染まり、スライム達は消え去った。

 

「・・・もろすぎる、数が多い分弱い?あり得ない、そんな魔物、大迷宮にいる意味が無い。」

 

「そうだな、ならこれは何の意味が・・・。」

 

「天井にスライム達を送る場所があったから潰しておいたが、再入荷は無さそうで安心したよ。」

 

「アッシュか、急に弓を取り出したからなんだと思えば、助かった。」

 

「俺が潰したのは一つだけだ、後はハジメがなんか投げてたな。」

 

「気にすんな、一つ減っただけでもかなり助かったしな。」

 

俺はほぼ素の能力だけでスライム達の合間を縫って狙撃出来るアッシュがマジですげえと感じるんだが、頼もしいな。

 

「ちょっと休憩だな、また来るにしても少し休憩したほうがいいだろう、特に勇者パーティー。」

 

「だな、ちょっと休憩。」

 

そう言って座ると同時に桜がもたれかかってきた。

 

「ん?桜、どうし・・・。」

 

体が熱い、これは、チッ媚薬か。

 

魔術で簡単なナイフを作り出し自分の腕に思いっきり刺しこむ。

 

痛みで思考がクリアになってきた。

 

「・・・チッ、周り全員そうかよ、厄介な。」

 

「ハジメは・・・無事そうだな。」

 

「お前躊躇無くぶっ刺したな、びびったぞ俺。」

 

「言うな、これでもかなり痛い。」

 

「かなりどころじゃ無いだろ。」

 

桜は何も言わずにずっと堪えている。

 

ただその目は潤んできており、少しずつ焦点も合わなくなってきている事から危険な状態だ。

 

「ハジメ、まずは勇者パーティーを取り押さえてくれ、俺はあくまで指示を出せるだけだ、相変わらず毒はある。動く事はできん。」

 

「俺としては周りの惨状から見て効果やばいのに当たり前の様に会話するお前が恐ろしいわ。」

 

そりゃなあ、毒で動けないとか当たり前ですし。

 

「あと魔術、というか多分魔力を扱う類のものはほぼ使えないな、さっきのは無意識に使ったから出来たが。」

 

魔力消費が半端ない、今のナイフ作成だけでも8割削られた。

 

周りの全員の分析を始める。

 

ユエやシア、白崎は媚薬に耐えている、ハジメのためというのが大きいのだろう。

 

「ティオさんや、出来れば誰かを取り押さえてくれるとありがたいんだが?」

 

「ふふふ、妾がこの程度の快楽に負けるなどあり得ぬ・・・あり得ぬぞ。」

 

「さっさと指示に従え、その程度のこともできんのか変態。」

 

「堕ちるうううう!!堕ちちゃうのおおおお!!!?」

 

もうやだ、ティオは手遅れ、もうこれで良いや。

 

ハジメも宝物庫から道具を取り出して勇者パーティーに投げつけたりしているがティオとは一言も喋っていない。

 

そしてアッシュとミナ、二人共動けはしないが背中を合わせている。ミナに至っては体を抱き締めて堪えている様だ。

 

「・・・風魔。」

 

そして桜、ついに焦点が合わなくなった、俺に身体を当てて擦り始めた、服を脱がないだけまだ理性はあるな。

 

あと地味に俺にもダメージ来るから出来ればやめて欲しい。

 

ただでさえ集中力がかなり無くなってるんだ、要らん思考はあまりしたくない。

 

そして勇者パーティー、八重樫は正座して精神統一をしている、天之川は八重樫を襲おうとしていたのかハジメの空間固定出来るボーラを投げ付けていた。

 

「・・・ふうま。」

 

谷口は脳筋を見て覚悟を決めた様な顔をしている、やめろ馬鹿、誰か一人でもヤッたら全員が崩壊するんだよ、周りを見ろ戯け。

 

脳筋も理性が吹き飛びかけている様で女性陣から目をそらし続けている、それも谷口が近づいているから意味の無いものとなりかけているが。

 

「ふうま・・・好き、ふうま。」

 

桜さん?あのちょっと聞き捨てならない事を言いませんでしたかねえ!?

 

いや無視だ、こういう奴ほど記憶に残るタイプなんだ、だめだ、どれほど魅力的だと思ってもダメだ、それに俺は無理矢理とか絶対に無理、俺が無理、だからいつも襲われるのかも知れないけどな!

 

桜が体重をかけてくる、俺は全身に力が入らずにそのままマウントポジションを取られる事になったがナイフが地面に引っかかり、俺の腕に風穴を開けた事でまだ勝機は保てた、マジで痛いけど、土の感触とかでめちゃくちゃ痛むけど。

 

「ふうま、ふうま。」

 

血を失いすぎた為か俺の息子は立っていない、よっしゃこれで勝ったな、とか思ってたら目の前が暗くなり始めた。

 

「やば、血を流しすぎた。」

 

桜は俺に全身を擦り始めている、俺は既に気絶寸前なのでありがたいと言えばありがたい。

 

ナイフで傷付いていない左腕で桜を抱き締めると桜は一瞬で力が抜けた、最初から入れてなかったんじゃ無いかと思うほどに。

 

桜は声を出さずにビクビクと震えている。

 

理性が戻ってきたのか?まぁ今はこれで良いか。

 

「あーハジメ、暫く気絶する、あとで神水もどきふりかけてくれると助かる。」

 

「は?ちょ、待てよ!?」

 

目の前が暗くなる、これは、きつい。




この話でR18を二つほど量産してだいぶ健全なものに差し替えた、地味にきつかった。


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告白とゴキブリ

「・・・。」

 

頭が回らない、俺って何やってたっけ?

 

・・・ダメだ、マジで回らん、起きるか。

 

目を開けるとそこには桜の顔がどアップで映っていた。

 

「あ、起きた?」

 

「・・・あー、まぁ、起きた、あれからどのくらい経ったんだ?」

 

「そんなに時間はかかってないよ、30分くらい?」

 

「とりあえず、起きても大丈夫か?さっきからずっと身体が動かないんだが。」

 

「あはは、ごめんね、もう少しだけ待って。」

 

なんでだよ、そういえばハジメ達はどうなのだろうか。

 

「おい、桜、そろそろ風魔を起こしてくれ。」

 

ハジメが近づいて来たようだ。

 

「・・・もう少しいっしょに居させてあげるとかは無いの?」

 

「無いな、外なら兎も角大迷宮だ、できるだけ時間は取らないほうがいい。」

 

「・・・むぅ。」

 

そう言って顔から手を話す桜は少し不満そうだ。

 

「ごめんて、元はと言えば俺が気絶した所為だし。」

 

「・・・ヘタレ。」

 

ちょっとそういうの傷付くから止めてくれる?

 

「風魔はなんで私を襲わなかったの?」

 

「それ直球で聞きます?普通。」

 

「だって、気になるし・・・風魔にだって毒回ってた筈だし・・・。」

 

「はぁ・・・大事だと思う奴に無理矢理とか、絶対に死ぬ自信がある、それに、お前自身を傷付ける事になると思った、それを思えば、自然と、だな。」

 

桜は少し照れながら話を聞いていたがすぐに俺に近づいて来た。

 

「・・・。」

 

「何だよ。」

 

「・・・私は風魔の事が好き、友達でも幼馴染でもない、異性として好き。」

 

「うぇい?」

 

ちょっと待って、いろいろと待って、えマジで?

 

「返事はあとでも良いよ、だから、あとで良いから、返事を聞かせて?ね?」

 

「・・・ハイ。」

 

桜はそのままハジメ達の方へと歩いて行った。

 

「・・・予想外すぎるだろ・・・あんなの。」

 

空を見ながらそう呟いてしまうのは仕方ない事だろう。

 

「・・・今行ったら顔を赤くするな、少し落ち着こう。」

 

懐から新しく作ったタバコを取り出す。

 

登っていく煙をみて落ち着いた。

 

「・・・行くか。」

 

俺もハジメ達の所へ歩いて行くとすぐに大樹へと向かう事になった。

 

アッシュとミナ、ユエが察したのかニヤニヤしながら近づいて来たが割とイラついたのでタバコを指に挟むと3人共さっと逃げ出したので大丈夫なはずだ。

 

桜を見ても微笑むだけで何も言わない、思わず遠い目になってしまう。

 

大樹に到着し洞が出来て転移陣が現れるところは今までと同じ、この先はどうなっているのか。

 

全員が転移し、周りを見渡すと光が漏れていた。

 

「今回は偽物も居なさそうだ、そのまま進めって事か。」

 

「道は一つ、かな?」

 

「だな、行くぞ。」

 

光の差し込んでいる場所へ進むと外見がフェアベルゲンに似た場所に出た。

 

通路のような枝と天を衝く様な大樹を幻視する一同を他所に俺は下を見た、大迷宮がただ歩かせるわけないというのは俺たちも良く知っている。

 

「・・・へぇ、これはなかなか、きついな。」

 

「何がだ?」

 

「全員注意しろ、この通路の下、あたり一面に生命反応、形からして・・・そうだな、ゴキブリと言ったところか。」

 

俺の言葉に俺を含めた天使組以外の全員が青褪める。

 

「火炎放射器用意しなきゃ!」

 

「どちらかと言うとナパームだろ?」

 

「およそ一千万ほどのゴキブリを一気に焼き尽くせるほどの高威力の物はあるのか?」

 

「・・・全員逃げるのに意見は?」

 

ハジメの提案に誰も何も言わない、賛成ということだろう。

 

「じゃあ行くか、谷口、結界は頼んだぞ、俺もやってみるが、どちらかといえばお前がやってくれた方が楽だ。」

 

「それって。」

 

「ゴキブリのぶつかっていく感触を文字どおり嫌になるまで味わえ。」

 

「ひっ!」

 

全員静かに歩き始める、暫くは何も無かったのだが広場の様な場所に着くと同時にゴキブリ達が一斉に飛び始めた。

 

「ゴキブリ達が急速接近、くるぞ、谷口、耐えて見せろ。」

 

「ヒィ!『聖絶』!」

 

一瞬で作られた結界の広さと硬さに感心する。

 

「ほぉ、良く作られてるな。」

 

「そんな事言わずに砲撃してくれ!」

 

「えー、慌ててるお前って珍しいから手を出したくない。」

 

「右に同じ。」

 

「ふざけてる暇があるなら無くしてやろうか!?」

 

ハジメ達はゴキブリの群れに絶え間無く砲撃を加えているが焼け石に水だろう。

 

一応俺達も砲撃は加えているが大した効果は無く、一瞬で谷口の結界にゴキブリたちがぶつかり、その身体を散らしていく。

 

「ハッハッハ、こりゃ無理だ。」

 

「笑ってる場合か!?」

 

「あ、桜、火炎放射器作ってやったぞ、コアは神水もどきだ。」

 

「あ!?テメェいつの間に!?」

 

「ヒャッハー!焼き尽くしてやるぜ!」

 

「そんなに効果は無いと思うが?」

 

「気分の問題だよ!」

 

「そんなもんか。」

 

そんな事をしているうちに魔法陣を空中に描き始めたゴキブリを見てハジメが対処しようとしたが間に合わずに魔法が発動してしまった。

 

「戯け、魔術師であるこの俺に、そんなものが効くものか。」

 

飛んできた魔法の効果を打ち消し、ゴキブリ達を睨む。

 

さて魔法の効果はなんだ?今までの試練からして精神的なものではありそうだが。

 

俺がそんな事を考えていると桜が此方に火炎放射器の銃口を向けてこう言い放った。

 

「死んでくれる?」

 

桜はそう言うと同時に火炎放射器のトリガーを引き、魔力で精製された火炎が俺めがけて走った。

 

俺は桜からの唐突な死んでという発言で既に心が折れかけていた。

 

なんとか地面を這う事で避け、火炎放射器の射程の外へ逃げる。

 

多分あの魔法陣は感情を反転させる効果があるのだろう。

 

でもさ、好きな人からめちゃくちゃ冷たい目で死んでくれる?って、既に俺やばいくらい泣きそうなんだけど。




何気に主人公は好きな人からのガチな拒絶というのは初めてである事をここに記しておこう、新しいトラウマの完成である。

というか、マジで拒絶されたらそれが好きな人じゃなくても心折れると思うの。


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よくもやってくれたな

「死ねよ。」

 

「消えて。」

 

「燃えてくれる?」

 

あっはっは、こちら風魔、親友とその嫁からマジの拒絶されてます、俺もうゴールしても良いよね?

 

「・・・。」

 

勇者パーティーも色々とやってるみたいだが無視だ。

 

「よくもやってくれたな・・・。」

 

俺の精神安定上お前らはいらないんだよ、いつもいつも教会に入り込みやがって、子供部屋に入ってきやがって、子供達が泣くんだよ、怖がるんだよ、死ねよ。

 

風魔の身体から魔力が迸る。

 

「リミッター解除、上限解放。」

 

風魔の周りに蒼白い魔力がふわふわと浮く様に周りを飛び始める。

 

「拘束解除、マルチタスク機能解放。」

 

魔力の塊はいくつもの塊に分かれ、鼠算式にその数を増やしていく。

 

フードを深く被り、静かにゴキブリ達を見据える。

 

「全力戦闘開始だ、簡単に削られて死ぬんじゃないぞ、クソッタレ。」

 

魔力の塊の一つ一つが唐突に魔法陣へと姿を変える、魔法陣はビットの様に動き回り、ゴキブリ達に絶え間無い射撃を加えていく。

 

ハジメ達の攻撃を受けるのではなく、別の場所に転移させ虫への攻撃とする。

 

「ハハッ・・・アッハハハハハハハ!!!」

 

気分がいい、やはり鬱憤を晴らすのは良いな。

 

暫く掃射を続けていると黒い煙を纏ったゴキブリが大量に湧き出してきた。

 

中には大きなものもいる様だ。

 

「ただ腐食させるだけでは俺には勝てんよ。」

 

大きなゴキブリの周りに何十もの魔法陣が追従し、透明な槍を撃ち出す、最初は魔力ごと無効化出来ていたがすぐにオブジェの様に動かなくなった。

 

黒い煙が晴れ、ゴキブリを見ると槍で貫かれてハリネズミの様になっていた。

 

「終わりか。」

 

この大きなゴキブリは攻略者と同じ数湧き出しているらしく後は12体いる様だ。

 

手っ取り早く桜を狙っていたでかいゴキブリを排除し、ユエとハジメは一体を速攻で撃破して残りの一体を嬲っていたのを見なかった事にした。

 

桜を担ぎ、火炎放射器を没収し、ミナとアッシュのいる場所へ急いだ。

 

ゴキブリだらけでよく分からないが探知魔術を起動させれば大まかな場所は分かる、ゴキブリの反応が多すぎて嫌になるけど。

 

「ぶっ飛びなさい!」

 

「燃えろ。」

 

「どうらああああああ!!!」

 

何故お前がそこにいる!?脳筋!

 

「ちょっと!アンタ桜ちゃんの感情反転したままこっちに持ってきたわけじゃないわよね!?」

 

「はっはっは!そのまさかだ!戦闘出来ないから安心しな!」

 

「!・・・死ね。」

 

「・・・同情するぞ、お前。」

 

「あとで土下座してやる!だから任せた!」

 

そう言って桜を投げ渡す。

 

その際に二人、いや、脳筋含め3人が戦っていたでかいの3匹に重傷を負わせる。

 

「さっきからずっと周りに飛んでるのアンタのだったの!?」

 

「全部リモート操作だ!疲れるぞ!」

 

「嘘でしょ、数千くらいあるんだけど。」

 

「ミナァ!動けえ!そろそろきつくなってきた!」

 

「ダッシャアァアアア!!!」

 

脳筋がゴキブリをかなりの数を弾き飛ばすがすぐに壁が回復した。

 

「やっぱりかあああああ!」

 

脳筋は無視で、次は勇者パーティーだな。

 

八重樫はクリア出来そうだがさて、ちょっと手を出さずに覗いてみるか。

 

「なあ!雫!やっぱりハジメと風魔って凄いよな!」

 

「え、ええ、そうね、あと光輝?ゴキブリが来てるから迎撃しましょ?」

 

「シズシズ・・・可哀想すぎるよ。」

 

大丈夫そうだな、一部やばい事になってるけど。

 

天之川の変貌振りに動揺して感情反転が無くなったってところか、ティオと白崎はハジメ達の方を見て突撃して行ったし、問題無いだろ、シアは最初からハンマー振り回してフザケンナですぅ!とか言ってたし。

 

『八重樫〜、救援いるか?ぶっちゃけ今の天之川と会いたく無いんだけど。』

 

「・・・分かったわよ!私一人でやれば良いんでしょ馬鹿ああああ!!」

 

「シズシズが壊れたぁ!」

 

八重樫は天之川を気絶させて一人で泣き始めた、谷口が居るし大丈夫だろう。

 

はー、天之川は見なかった事にしよう。

 

「フハハハハハハハ!!燃えろ!消えろ!死に去らせ!あっはははは!」

 

ハジメ達はなかなかに狂ってきた様で遂に厨二病が発現し始めたハジメを筆頭にゴキブリ退治を始めた。

 

俺も魔法陣を移動させまくって援護していたが桜の魔力が少しずつ加わってきたので操作権を桜に全て譲渡した。

 

流石に1分も持たなかったがある程度のオート化が出来たようでかなり早くコツをつかんだ様だ。

 

多分ビット兵器辺りを配ったら強くなるんじゃないか?あとでハジメと一緒に試してみるか、取り敢えずブルーティアーズを参考にして見るか。

 

ハジメは最後の1匹を殺した後でユエと桃色空間を作っていたので俺は桜をおんぶして先に進んだ、そこには魔法陣があったのできっとここで選別が始まるのだろう。

 

・・・全員が来るまで待つとしますか。




セシリアの事は覚えてないのにブルーティアーズの事は覚えてるという戦闘馬鹿である。

最近小説投稿してるiPadの調子が悪い、そろそろ買い替えを検討する時期か。


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メルツィナ大迷宮攻略

俺が魔法陣を全て消すと青白く発光していた視界が消え、かなりスッキリした。

 

「ふう、お疲れさん。」

 

「・・・ごめんなさい。」

 

桜は感情が反転したときのことも覚えている様でかなり落ち込んでいた。

 

「気にすんな、大迷宮の試練だ、気にしてもしょうがない。」

 

「風魔はすぐに克服?してたのに。」

 

桜にデコピンを食らわせる。

 

桜は少し痛そうにしながらも俺を見た。

 

「全部俺並みにしなくても良いんだよ、俺は万能型、お前らは特化型で充分だ。」

 

「でも私だって自衛武器くらい欲しいよ。」

 

「なら、ビット兵器辺りを作ってやろうか?ハジメと一緒にだけどな。」

 

「うっ、アレを何回もするのは・・・ちょっと嫌かな。」

 

「安心しろ、さっきみたいにいきなり数千も渡したりしねえよ。」

 

「・・・せめて十で。」

 

「了解、設計図を書いておく。」

 

ハジメ達は次の部屋に向かう様だ、ついていこう。

 

次の部屋は神代魔術を与える部屋の様で木の人形が何かを言っている、昇華魔法がどうとか、本質が分からねえけどステータスプレート見たらわかんだろ、多分。

 

ハルツィナから羅針盤を貰い、地球に帰れる目処がついた。

 

だが、ハジメ達はこれで帰るとしても俺と桜は残らなくてはならない、アッシュ達と共にエヒトを抹殺しなければならないからだ。

 

最悪は桜だけでも返してもらうか。

 

「何辛気臭い顔してるんだ?」

 

「いや、全員が喜んでる、だけど、大元の目的を忘れちゃいけない、特に俺達天使は。」

 

「・・・こんな時くらいまで仕事に追われちゃダメだろうが、要領がいいお前らしくないな。」

 

「・・・はぁ・・・答えは出さないとなぁ。」

 

「え?何、なんかあったのか?」

 

ハジメが一瞬でニヤニヤし始めた。

 

それを見ないように桜を見る。

 

「あ!風魔!ショートカット開いたよ!」

 

「・・・ああ、今行く。」

 

やっぱり、嘘はいけないよな、夜月。

 

俺は、桜の事が好きだ。

 

ーーーーーーーーーー

翌日、フェアベルゲンで朝を迎える前に目が覚めてしまった。

 

一応睡眠出来るハーブを焚いておいたんだが、あまり効果は無さそうだ。

 

1時間もあれば朝日が昇るくらいの時間なのでそんなに苦労はしないだろう。

 

「・・・少し、動くか。」

 

刀を持って庭に出ると八重樫が鍛錬を積んでいた、時折太刀筋が鈍くなるのは何故だろうか。

 

「八重樫。」

 

「きゃあ!?」

 

「・・・はぁ、少し休め、そんなに汗かいてたら鍛錬にもならん。」

 

「・・・あ、秋月君、ええ、お言葉に甘えさせてもらうわ。」

 

宝物庫から俺がいつも使っているタオルの予備を渡し、俺も刀を構える。

 

八重樫の使っている剣術ではなく、居合の類だが、俺の一番得意なこの構えが一番集中出来る。

 

目を閉じ、音で空間を把握する。

 

木の葉が落ちてくる。

 

射程距離内ギリギリ、1メートルほどしかないが、やれるか。

 

目を開ける、極度の集中によって時間が止まったとさえ思えるようなゆっくりとした動きで木の葉は落ちていく。

 

刀が鞘から飛び出してくる、俺はそれと同時に一気に踏み込み、木の葉を体の目の前で一回、すり抜けざまに一回、そして納刀の際に一回切り、刀は鞘の中に戻る、カチンという音と共に世界の動きが早くなり、普段の速度と同じになる。

 

地面に落ちた木の葉は綺麗に6枚に分かれていた。

 

「・・・すごい。」

 

「大した技でもないさ、同じような事は魔法を使えば出来る。」

 

「それでもよ、あなた、自分の能力だけでそれをしてるじゃない。」

 

「これは刀じゃなくても出来るんだがな、まぁ、いつもはハジメとかと訓練をしてる。」

 

「それは・・・地球で?」

 

「両方だ。」

 

長くても30秒もかからない、両方の読みと行動の選択肢が多すぎて集中力が持たないからだ、地球ではそうでもなかったがこっちに来てからはありえないほど時間が濃密になった。

 

「・・・なぁ、八重樫、お前はメルツィナでどんな夢を見たんだ?」

 

「いいいいいきなり何よ!?」

 

「何、少し気になっただけだ。」

 

八重樫の反応からして恥ずかしい類なのだろうが、まぁ聞くだけ聞いてみようか。

 

「・・・恥は掻き捨てともいうし・・・いえ・・・でも・・・。」

 

「決めたらすぐだぞ。」

 

「分かってるわよ!」

 

数分間悩み、俺に打ち明けた。

 

「私がお姫様になって、隣の国の王子様に助けられる夢よ。」

 

予想外過ぎて苦笑してしまった。

 

「お前らしいというか何というか、何ともメルヘンで・・・。」

 

「何よ、悪いの!?」

 

「悪くないさ、ただ、その隣の国の王子様とやらは心当たりがあるがな。」

 

「・・・そうよ、ハジメ君よ。」

 

「ハハッ、まぁ、あいつを狙うなら頑張れよ、あいつはフラグメーカーだからな、ずるずると飲み込まれて行きそうだ。」

 

「そんなんじゃないわよ!」

 

「少し寝る、あんまり寝れてないし、誰か来たら起こしてくれ、と言いたいが、お前も寝ておけ、こんなところで寝てたら俺やハジメならともかくお前は風邪を引きそうだ。」

 

「え、でも。」

 

俺は近くにある大木に向かって飛んで近づいて行く。

 

「この辺りで良いかな。」

 

人一人が寝られるくらい大きな枝に寝転がり、睡眠の姿勢を取った。

 

・・・暫くしてハジメから銃撃され、安眠妨害された俺と起きて悪戯(本人談)をしたハジメの砲撃戦が始まったのだが割愛しよう。




慣れない携帯で少しずつ文字数を増やしていった結果、1週間に1話って、畜生。


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告白

ハジメの悪戯という名の安眠妨害から数時間がたった、ハジメの拳と俺の拳が綺麗に相打ちになり、両方気絶した。

 

俺は目がさめると苦笑いをしている桜が視界に入った。

 

膝枕をされている様だ。

 

「あ、起きた?」

 

「・・・ああ、少しはしゃぎ過ぎたな。」

 

「ふふ、久しぶりだね、風魔があんなにはしゃいだの。」

 

「まぁな・・・。」

 

「それで・・・私への返事はいつくれるのかな?」

 

「・・・今日の夜でどうでしょうか。」

 

桜は満面の笑みで頷いた。

 

というか、俺が拒絶してないから答えは分かってるだろうに、あー本番になったらまともに話せんのかな、俺。

 

顔が赤くなっているのが自分でも分かる。

 

いつも思うが、俺は色事に弱いよなぁ。

 

ーーーーーーーーーー

シアと友達になりたいとか言っていたティオの同類と白崎がハジメに言い寄っていたりする現場に辿り着いた。

 

とりあえず無視して方向転換、桜はニヤニヤしながら近づいて行った。

 

・・・フェアベルゲン回るか。

 

途中からシアが未来予知で俺を見つけていたのだろう、シアが俺を探して熊の姫さんをなすりつけようとし、俺はそれから逃げ続ける事になった。

 

「見つけたですぅ!大人しくなすりつけられてください!」

 

「嫌に決まってんだろうが!?つか着いてくんな回り込んでくんな!」

 

こいつ無駄に精度が良いせいで転移しても数分後には追いついてくる。

 

「シアー!待って下さい!」

 

「ほら!風魔さん呼ばれてますよ!」

 

「呼ばれてんのはてめえだ!」

 

何で俺はハジメの嫁たちから好印象なんだよ畜生!ハジメのせいか?

 

・・・なんかそんな気がして来た、後で八つ当たりしてやる。

 

ーーーーーーーーーー

フェアベルゲンの長老が熊の姫さんを回収し、俺とシアは二人で机に突っ伏していた。

 

「しぶとい・・・ですぅ。」

 

「うるせぇ・・・俺に・・・変態を持ってくんじゃ・・・ねぇよ。」

 

「良い子じゃないですか、相手してやってくださいよ。」

 

「嫌だよ面倒くさい。」

 

「あー風魔さんは人でなしですぅ。」

 

「人でなしで結構。」

 

二人で話しているとハジメがやって来た。

 

「お疲れの様だな。」

 

「お前後で1発で良いから殴らせろ、山を削り取る魔術纏わせてやんよ。」

 

「それは俺が死ぬからやめてくれ。」

 

「やば、気分が悪い、ちょっと水貰ってくるわ。」

 

嘘である。

 

ハジメも多分気付いてるだろうが近くに勇者達やらユエ達がいる、もちろん桜もだ。

 

桜の後ろから近付き、肩を叩く、桜は悲鳴を上げかけたが口を塞いで大人しくさせる。

 

桜はキョトンとした顔をしてその次に安心した様に笑った。

 

「ちょっとついてきてくれ。」

 

「良いよ、何処に向かうの?」

 

「それは来てからの楽しみだな。」

 

そう言って手を差し出すと桜は躊躇無く手を取った。

 

「じゃあ少しばかり飛ぼうか。」

 

そう言って転移してある場所へ移動する。

 

そこはフェアベルゲンを一望出来る大木の上だった、シア達から逃げる時にちょうど良い木を探していたのだ。

 

「わぁ!すごい景色だね!」

 

「ああ・・・。」

 

「ふふ、もしかして緊張してる?」

 

「・・・してるよ、全く、いきなり告白された俺の気持ちも考えてくれよ。」

 

「むふふ、後悔なんてしてません!」

 

「だろうな、お前はそういう奴だから。」

 

桜は笑っている、俺の姿はそんなにおかしいのだろうか。

 

「それで、返事は?」

 

「・・・桜。」

 

「はい。」

 

「好きだ、結婚を前提に付き合って下さい。」

 

「うん、死ぬまで一緒に居ようね。」

 

「さりげなく重いなぁ。」

 

「あれ?私を守るんじゃなかったの?」

 

「守ってみせるさ、お前が泣かない様に、お前が笑える様に、な。」

 

「なら、早くエヒトを倒して結婚式を挙げよう!」

 

桜は笑っていた、幸せそうなのは良いんだが。

 

「結婚は俺が就職して生活できる様になってからだぞ。」

 

「えー!」

 

「結婚資金はどうするんだお前、稼がないとダメだろ。」

 

「お姉ちゃん達から二千万ほど貰ってます。」

 

「・・・え?」

 

「だから、結婚資金二千万、私の口座に振り込まれてます。」

 

「・・・ちなみに、二人でか?それとも二人共か?」

 

「・・・2人共。」

 

ゆかりさん、純さん、あなた達ちょっと溺愛が過ぎるのでは?

 

「だから!結婚しても良いんだよ!」

 

「・・・なら、せめて給料がもらえる様になってからで。せめて指輪位は買いたいしな。」

 

「フフッ、結局アーティファクトになりそうだね?」

 

「やめてくれ、本当にそうなりそうだ。」

 

やっぱり俺達は変わらなさそうだな、付き合いが変わるのは日本に帰ってからだろうか、まぁ、それも悪くない。

 

「まぁなんだ、よろしく頼む、俺の可愛い恋人さん。」

 

「此方こそ、私の好きな旦那さん。」

 

桜は不意を突く様に唇にキスをした。深いやつだ。

 

驚きで固まってしまった。

 

「ぷはっ・・・ふふふ、今はこれで我慢してあげる。」

 

「あ、な、え?」

 

「風魔、顔が赤いよ?」

 

「だ、誰のせいだよぉ!?」

 

やばい、頭が沸騰しそうだ、思わず顔を隠してしまう。

 

「・・・。」

 

「うああああぁぁぁぁぁぁ・・・。」

 

「もしかして、キスに慣れてないの?」

 

「慣れてるわけないだろ?」

 

「・・・なんか、ぞくぞくする。」

 

「止めてくれませんかね?」

 

恋人にそんな事言われたら恐怖しかねえよ。

 

「んー、まぁ我慢するって言っちゃったし、仕方ないかな、じゃあ、みんなの所に戻ろ?」

 

「・・・うん。」

 

いつもよりフードを深く被る。

 

「風魔が可愛い。」

 

「うるさい。」

 

ちょっと、今日は桜の顔を見れなさそうだ。

 

桜とのキスを思い出して頭を押さえる。

 

何とか転移に成功し、みんなのいた場所に着いた。

 

そこでは俺達がさっきまでいた大木の場所が映し出されていて、全員がスクリーンをじっと見ていた。

 

「・・・おい。」

 

『あ。』

 

「コレは・・・何だ?」

 

「風魔の告白するところ、バッチリ録画しちゃった♪」

 

ハジメのお茶目そうな声色を聞いて俺はもうなんか、何も感じなくなった。

 

「ハッハッハ、そうかそうか、全員今すぐ消えてもらおうか?」

 

魔術を展開、一斉掃射を始める。

 

魔術の掃射を少し止めると結界で全員守られていた。

 

「チッ。」

 

「ねぇ、ハジメさんや。」

 

「何ですかね桜さんや。」

 

「さっきの映像、録画してるって言ってたよね?」

 

「言ってたな。」

 

「ちょうだい。」

 

「自分用、保存用、予備、布教用、どれが良い?」

 

「全部、更に倍プッシュだ。」

 

「良いだろう!」

 

「止めろおおおおおお!!!?」

 

桜は笑顔で俺の告白シーンを録画したアーティファクトを8つ受け取る。マジで倍にしやがったハジメの野郎。

 

『ぷはっ・・・ふふふ、今はこれで我慢してあげる。』

 

『あ、な、え?』

 

『風魔、顔が赤いよ?』

 

『だ、誰のせいだよぉ!?』

 

桜が録画を流してそんな言葉を聞かせた。

 

あのアーティファクト音声付きかよ。

 

「ああ!?秋月君から魂が抜けてる!」

 

「魂魄魔法で戻せる、問題無い。」

 

「ユエ!早く!早くぅ!」

 

「ああ!風魔って可愛い!」

 

「・・・自分でやっといて何だが・・・風魔に同情するわ。」

 

あはは、夜月が見える、こっちに戻って来ちゃダメ?あはは、畜生!

 

「・・・ハハッ。」

 

「・・・風魔?」

 

「桜さんや、後でお話ししような?」

 

「可愛かったじゃん。」

 

「げんこつ喰らいたいか?」

 

「平和なお話ししましょう!」

 

それで良い。

 

「全員、今見た事を公言するなよ、公言したら・・・分かってるな?」

 

全員が頷くのを確認し、桜を担ぐ。

 

「うわあ!風魔!もしかして私に乱暴する気!?エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」

 

「するかぁ!」

 

空気が一瞬で緩んだ。

 

止めてくれないかね?桜さん。




深夜テンションで書ききった、後悔はしていない。

桜は嬉しくてハイテンションになってます。

だから風魔の精神が揺さぶられまくっているのです。

そして案外初心な主人公、お前何年生きてんの?


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装備変え

翌朝、俺達は飛空船フェルニルに乗っていた。

 

快適な空の旅をしながらあと3日、俺達は装備の充実に勤しんだ。

 

まずアッシュ、単純な弓の魔力効率上昇、そして効果を付け足し、毒矢やスナイプ用の狙撃矢、空間魔法を用いた超遠距離まで狙撃出来る弓と構えている間、アッシュ達が自前で持っているクロックアップ技術といつか忘れたがいつの間にか取っていたらしい概念魔術『穿ちの矢』を用いる事でかなりの火力アップに成功した。

剣も俺達が作った数打ちではなく専用装備、相手の攻撃の魔力と衝撃を吸収し、斬撃に纏わせることが出来る、これによって光波や近接での火力がぐんと上がった、試験の為に空間魔法で草原を作り、隕石を落としてみたがアッシュ自身には全く何の影響もなかったが、アッシュが俺に向けて軽く振った剣で俺の腕が消え去った、防御の上からでも腕が消え去ったのだ問題は無いだろう、すぐに白崎が回復魔法を唱えてくれなかったら死にかけていたと思うが個人的には良くできただろう。

 

次にミナ、元々格闘をメインにしていたが少しずつ短剣も視野に入れていた。

なのでハジメが自分の手を起点にした投げて使うナイフのような物を製作した、短剣の中には空洞になっている部分が2つあり、1つは糸や鎖を入れている、もう1つが相手の魔力を吸い取り、リーチを伸ばす為の魔力タンクだ、一度俺が魔力を一万ほど入れるとちょうど2メートルくらいの光の刃が出来た、使用者が触れても何も無いが、地面に円を描いてみるとマグマのように溶けていたので温度なども自由に変えられるようだ。本人はそれを近接格闘戦の中で一瞬で変えて来るので対処がきつい、しかも物理じゃないから俺のよく使うシールドが使えない、やりにくすぎる。

 

そして知らない間に氷結洞窟にも付いてくることになった勇者パーティーだ。

 

まず脳筋、空中を飛びまわれるようになった、空中を蹴るような動きで立体的な動きが出来るようになった、実戦では空手なんかクソの役にも立たんと教えてから格闘戦でミナと戦わせるようになった、女は殴らないとかほざいてたが無視した、今の所はミナにサンドバッグ扱いだ。

 

次に谷口、ハジメは結界の種類を増やしたり、オリジナルの結界を張れるような制御装置みたいなものを預けていた。俺からは近づかれた時にハジメがよく使っている宝物庫を真似したポーチに護符を大量に入れてくれてやった。

魔力供給、電撃、地雷、武器の召喚からの掃射など、安定度の高い物を中心に入れている。

一応トリッキーな使い方になるから気をつけろと言っているが、本人はまだあまり上手く使えていない、今の所は魔力供給くらいだろうか、上手く扱えているのは。

 

最後に勇者パーティーの良心、八重樫、ハジメは黒刀に機能を追加したらしいのだが俺はクロックアップ技術を教えた、まずはゆっくりと相手の動きを見て相手を観察し、隙があると思った所に攻撃しろと言っておいた、速度強化や単純に手数を増やしてやろうかと言ったが本人から却下された、何でも自分の戦い方を急に変えると逆に弱くなりそうだから、らしい。

ただクロックアップ技術を教える際に死にかける必要があるので本気の殺意を込めて寸止めしたら女の子座りでポロポロ泣き始めて焦った、その時に運悪く桜が来て説教された。マジですまんかった。

 

ハジメ達はほとんど変わっていない、シアのドリュッケンがまたアホみたいな改造を施されたくらいか。

 

ハジメの武器もそこそこ増えた、パイルバンカー、スナイパーライフル、ドンナー、ヒュベリオン、の他にガトリングなども入ってるようだったが一番ハジメが見せびらかしてきたのが5連式スラッグショットガン、通称『アルカンシェル』だろうか、射程は約300メートル、接触後1秒後にパイルバンカーの様に敵の体の内部に針を刺し、爆破する、表面が焼けるだけではなく、針の中には更に小さくした雷管が埋め込まれており、更に小規模ながら爆発するらしい、この中で魔法を使っているのは発射部分だけ、つまり銃身部分だけだそうで一度撃てばまず正面の敵はミンチになるらしい。

そしてヒュベリオンに続いてマップ兵器2段目、空爆支援ビークルゴーレム、通称『メテオラ』

これはハジメの指示で輸送機と爆撃機の役割を果たすゴーレムらしいがまだ建設途中らしい、それでも輸送機部分は出来ているらしく設計図を見せてもらうと割ととんでもないものだった。

 

輸送機の部分は空間魔法で拡張した空間に物を入れるのだが、その際重力魔法で無理矢理と言っていいほど重力を床の方向に向けて押し付ける、中にいる分には揺れが少しひどい位らしいのだが現実では音速を超えるドックファイトをしているというアホみたいな設計になっている、武装はゴーレムが敵対していると思われる相手や施設に自動的にビーコンを射出、ミサイルを発射するのだが人型(特に天使や魔人族)であれば避けられるのは当たり前と考えミサイル自体にソナーの様なものが付けられている、空中版の魚雷だ。

その他にも機体の周りに着いているごっつい銃口には120mmの弾が分間300発撃たれるというチート兵器、戦車砲じゃねえかよ、ロマンって大事だよなじゃねえ、殺戮兵器だこれは。

そして一番バカみたいな火力を発揮する爆撃、これがおかしかった、まず機体には2つの降下ハッチがある、輸送機としての荷物を降ろすハッチと爆撃用の下に向いてポッドを発射するハッチだ。

これの中にナパームとグレネードを混ぜた広域殲滅兵器作ってやがった。

手順はこうだ、まずハジメが爆撃要請をする、そこにメテオラが戦車砲を撃ちまくり、空中の敵を撃破、掃討後時間差で2つのポッドを落とす、ポッドは空中で分解し、数百に分かれて地面を目指す、地面に接触後ポッドは弾けとび、中からグレネードが大量に飛んでくる、グレネードが爆破し怯んだところに、これまた大量に分かれたナパーム弾が降り注ぐのだ、焼夷弾ではなくナパーム弾だ、生きていても酸素が無くなる。

それでも生きている奴にはメテオラから戦車砲と地面ごとミサイルで爆撃されて終わりだ、ハジメは自重を無くしたのか武装全てに宝物庫を使っているのでまず一度の戦闘で使い切らない、実質弾無限だ。

 

ビット関係は俺と共同で作っているのでそんなアホみたいな火力にはならなかった。

 

そしてつい先日俺の恋人になった桜、桜は頭にゆかりさんの様な髪留めをする様になった、厳密にはこれは髪留めではなく、宝物庫の中にあるビットを操作するための脳波装置なのだがそこは割愛、ビットにはブルーティアーズを参考に幾つか種類を増やしてみた、オーソドックスにビーム兵装、そしてブルーティアーズの6個のビットのうち2個がミサイルだった為、ミサイル、その他には相手の魔法を防ぐ防御ビット、勿論物理も防ぎます。半生物のゴーレムビット、これは解析用に作られたものだ。視界を共有したりもできるので桜が技能を使い爆撃支援などをしてもビットの視界の先でその効果が発揮されたりする、その為、空爆や、味方の回復、オペレーターなど思いっきり支援に特化した、ビームや防御兵装を含めれば山くらいの物質が落ちてきたりしても30分くらいなら耐えられる。

 

敵からすれば要塞に等しくなるだろう。しかも余裕があれば他の敵の援護を遠慮無くしてくるのだ、飛行物全てに気を配らなければならないというのはとても面倒くさい。

 

この様に桜が支援に特化させているのは敵がこちらの情報を全て共有出来たらまずいと考えたかららしい、俺とハジメは分析した側から力技や火力、千や万を超える手数などで押し潰せるかもしれないがアッシュやミナは違うから、だそうだ。

 

桜の負担が軽くなる様にリモート操作ではなく、幾つかの指揮官機を決めてあるので負担はかなり軽くなるだろう、スペック的にはステータス的には一番下位のビットで器用値以外一万オーバー、ハジメとある程度なら並走出来るようにしている。

 

流石にその状態は10秒も持たないが、やろうと思えばファ○ネルの様な動きすら可能だ。

 

今の所は最大で百ほど、半自動化に成功しているものを含めると一応千くらい操作している。

 

何でもパターンをある程度決めているようで勇者達と模擬戦をしたら火力不足で結界を破壊出来なかった谷口以外がボロボロになった。

 

谷口は自分の周りに結界を連続で作成し、トンネルの様にして防御兵装の群れを凌いだらしい、ビットの火力は今のところ打ち止めなので概念魔法付与が出来そうならば火力を重視したものを作ろうと思う。

 

因みに、ハジメ曰く弾薬やらはともかく装備に使う資材が少なくなってきたらしい、俺としてはよく持ったなって思った。

 

天之川もハジメに何かされてたが知らね、まぁ良いんじゃないのどうでも。

 

そんなことをしながら空の旅を続けているとついに氷結洞窟に到着した。




フハハハハ!ついに直ったぞ!よし、投稿を再開しよう。


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氷雪洞窟

「・・・寒くね?」

 

「雪原だからな。」

 

「ちょっと予想外だったわ、え、この服耐寒性上がったはずだよな?普通に寒いんだけど。」

 

フードを外して周りを見ると全員涼しい顔をしている、もしかして寒いと思ってるの俺だけ?

 

いや違うわ、なんか全員アクセサリー持ってるわ。

 

「おいハジメ、まさかとは思うが俺の分なしとかじゃないだろうな。」

 

「あるぞ、ほれ。」

 

ハジメから投げ渡されたのは・・・石?

 

「待って、まさか俺の扱い勇者パーティーと同列?」

 

「よく見ろ、クリスタルだ。」

 

「耐久性クソじゃねぇかよ。」

 

無いよりマシだと割り切るか。

 

んでもってあれだ、なんか壁とか入り口にある死体、こう言うのは大体動き出す。

 

「あー、全員死体はどうしたい?」

 

「ダジャレか?」

 

「・・・質問が悪かったな、多分動き出すであろう死体をどうする?」

 

因みに、火を使う魔法、魔術は使いにくくなっていた、だから炎を使うのはやめておいたほうが良い、俺はバグとも言える魔力量なので気にせず使えるが、それでもかなり割りを食うのでやりたくない。

 

「・・・動いたところに無力化じゃダメなのか?」

 

「やめといたほうが良いと思うぞ、やるなら大元をつぶすくらいしないと。」

 

アッシュとミナは何も言わずについてきている、ここは攻略したはずなのだがショートカットの位置を忘れたらしい、あと多分試験とかはほぼ免除されるだろうから戦闘とかには参加しないとも言っている、桜の近くで待機予定だ。

 

「・・・良し、勇者パーティー、ゾンビは任せた。」

 

ハジメは勇者パーティーに全て押し付けるつもりのようだ。

 

「ちょっと待ってくれ!それじゃ大元は南雲が倒すのか?」

 

「は?そんなわけないだろ、お前らが全部やるんだよ。」

 

「あはは、私既に心折れかけてるよシズシズ。」

 

「遠くから応援しておくから遠慮無く死体の山に埋もれると良い。」

 

「止めて。」

 

桜やユエ達は完全に勇者頼みになったらしくガールズトークしている。

 

きゃっきゃと楽しそうだな、今の内にステータスプレートでも見とくか。

ーーーーーーーー

秋月風魔 17歳 男 レベル:35

天職 魔術師

筋力 60

体力 6000

耐性 9360

敏捷 900

魔力 1200000

魔耐 80000

技能 魔術作製[+複合魔術] [+魔術書き換え][+時間魔術][+干渉魔術] 魔法操作[+同時操作数増加] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+消費魔力軽減]高速魔力回復[+回復量上昇][+魔力回復量超上昇][+全体回復総量上昇][+魔力吸収]想像構成[+複数同時構成]同時思考[同時思考数増加]言語理解

 

ーーーーーーーーー

前がこんなのだったな、いつ見てもチートに過ぎる。

 

んで?今の俺は何じゃろな。

 

ーーーーーーーー

秋月風魔 17歳 男 レベル:48(??)

天職 魔術師

筋力 86

体力 9000

耐性 1570

敏捷 990

魔力 3800000

魔耐 100000

技能 魔術作製[+複合魔術] [+魔術書き換え][+時間魔術][+干渉魔術][+神羅][+覚醒] 魔法操作[+同時操作数増加] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+消費魔力軽減]高速魔力回復[+回復量上昇][+魔力回復量超上昇][+全体回復総量上昇][+魔力吸収]想像構成[+複数同時構成]同時思考[同時思考数増加]言語理解

 

ーーーーーーーーー

物凄く見覚えのないものが増えてる、ステータスは取り敢えずチートだから無視で、何だ神羅と覚醒って、よく見たらレベルの横にはてな付いてんじゃん、何?覚醒したらカッコ内の数字になるとかそんなのか?でもそれだとはてなの意味が分からんな。

 

「・・・まぁ、なるようになるか。」

 

しばらく進むと案の定ゾンビ達が湧いてきた。

 

「マジで動いてんな。」

 

「良かったな勇者パーティー、リアルバイオだぞ。」

 

「俺達はゴリラとかウィルス適合者じゃねえっての!」

 

「それはどちらかというとハジメだろうな、魔物食って生きてるし。」

 

「という事は俺だけ映画版?」

 

「さぁな、取り敢えず谷口、結界作れよ、ゆっくり移動するからな。」

 

「分かった!危なくなったら助けてね!」

 

谷口が作り出した結界にゾンビ達が攻撃を加える。

 

「おお、何時ぞやのゴキブリみたいだな。」

 

『止めて!』

 

女性陣全員から怒鳴られる、桜も少し思い出したくないようだ。

 

ゾンビ達は身体を破壊されてもすぐに再生するようで数が減らない、一応燃やし尽くせば数は減るがほとんど意味が無い。

 

さて、なんかハジメが見つけたみたいだし、ゾンビ達は俺達が引き受けるかな。

 

「桜、ゾンビ達の足を中心に攻撃してくれ、行くぞ。」

 

「オッケー!」

 

ゾンビ達の他にも氷の動物やらが混じっていたのでそちらは俺が担当する。

 

別の集団とハジメ達も戦い始めた。

 

因みにアッシュ達はさりげなくハジメ達の中に混ざっていた、こっち手伝ってくれよ。



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戦闘!迷路!風呂ぉ!!

「10秒稼いでくれ!情報を集める!」

 

「了解!」

 

俺は魔物達に囲まれているので桜のビットと共に魔物を倒していく。

 

ゾンビはともかく氷の魔物達はかなり回復が早い、発生源は勇者パーティーが戦っている亀のようだ、ハジメの対処から特殊な魔石でも埋め込まれているのだろう。

 

「桜、脳筋と八重樫にビットを10個ずつ回せ、防御とビームだ。」

 

「分かった。」

 

八重樫に鳥が襲いかかるが防御ビットで防御されビームで溶けた。

 

脳筋の方にも五体も鳥が襲いかかったが八重樫につけたビットも含め15個ほどのビットに阻まれて溶けていった。

 

いつの間にか天井付近では鳥の魔物と大量のビットによるドッグファイトが繰り広げられていたので上には行かないほうが良いだろう。

 

というか桜の処理能力が高すぎて怖い、元々高いのは知ってたがそれでも多分俺より断然上だ。

 

近くにいるゾンビに電気を流して熱で溶かしていく。

 

色々と試していたが結局は高圧電流による感電が一番楽だった。

 

天之川がビットに守られながら特攻し、亀を消滅させることができたので終わりはすぐだった。

 

「ふむ、雑魚だな。」

 

「だな、オルクスに比べたら雑魚だ。」

 

「あそこは単純な強さが大事だからな。」

 

天之川は俺たちを見て微妙そうな顔をしていた。

 

「・・・ふむ、予想ではそろそろだが・・・さて。」

 

「あ?何の話だ?」

 

「いや何、子供が自分の事を分かってもらえなくて癇癪を起こすのもそろそろかとな。」

 

「子供?・・・ああ。」

 

ハジメも理解したようだ。

 

「流石に性格は変わらんだろう、細かい時間も分からんが、まぁ、きっかけがあればすぐにでも爆発する、気を付けな。」

 

「分かったよ。」

 

そのあとハジメが勇者パーティーを褒めたりして勇者パーティーからお前誰?みたいな視線を受けていたりしていたがまぁ概ね順調だった、亀が出てきた場所から先に進むと次は迷路に出てきた、魔物も点在している様だ。

 

天井は開いており、それを見た脳筋が飛ばされたり黒歴史が生産されたりしたが問題は無かった。

 

因みに、罰ゲーム扱いされている最中も俺は笑い転げて呼吸困難になっていた。

 

起きた脳筋にハジメと俺が黒歴史を暴露し脳筋は物凄い落ち込んでいた。

 

谷口がフォローしていたがどれ程保つかな。

 

「右から五体来るぞ。」

 

「分かった。」

 

「上空から鳥。八体。」

 

「撃破完了!」

 

「またか次左、二体。」

 

俺とハジメと桜が魔物が近づくと同時に掃討していっているので他のメンバーはただ歩くだけになっている。

 

「・・・あの風魔さん、何で分かるんですか?私のウサミミにすら倒された悲鳴とかしか分からないんですけど。」

 

「魔力の波を飛ばして帰って来る反応で索敵してる、洞窟のコウモリみたいなもんだ。」

 

それを聞くと全員から呆れた様な目を向けられた。

 

「あ、谷口、背後に一体。」

 

「ピィ!?」

 

壁の近くに居た谷口はすぐに飛び上がり、落ち込んでいた筈の脳筋の背後に隠れる。

 

頭が出てきた時点で八重樫が頭に刀を刺したので問題無かった。

 

「お、団体さんだ、50ってところか、あと足元に地雷があるみたいだから解除しておくぞ。」

 

地雷を起動させると脳筋を狙っていた氷柱が天井まで一瞬で伸びていった。

 

「なるほど、魔物を呼ぶビーコンみたいな役割なのか。」

 

反応が倍になったのを確認しながらそう呟くと壁から魔物達が出てきた。

 

「・・・アッシュ、私達の苦労って何だったんでしょうね。」

 

「言うな、あの時ほど辛かったことはないだろう。」

 

アッシュとミナは乾いた笑いというものをしていた、まぁハジメや俺がいなかったらまともに攻略できるまでかなり時間がかかるだろうしな。

 

飛空船の中でどのくらい時間がかかったのかと聞くと迷宮に行くまで2週間、迷宮についてからは一ヶ月だそうだ、そりゃ時間かかるわ。

 

12時間ほど経つと流石に飽きてくる。

 

「なぁ、攻略した2人、お前らも此処に来たんだよな?勘でいい、今どの辺りだ?」

 

「正規ルートが分からないから何とも言えないけどあと何時間か進んだらゴール地点じゃないかしら、もっと彷徨うことになるけど。」

 

「同意見だな、まぁ見てたら分かると思うが、まず食料自体かなり節約されるからかなり辛かったぞ。」

 

2人でハジメが羨ましいと漏らしているところをみるにかなり苦労した様だ。

 

ハジメは宝物庫に食糧を詰め込んでるからな、まさかレーションじみたものまであるとは思わなかったが。

 

「まだ歩くの?」

 

「仕方無え、気合い入れるしかなさそうだな。」

 

暫く歩くと大きな扉の前へ出た。

 

「あー!懐かしいわね!このにっくき扉!」

 

「だな、迷路が一番辛かったしな、ハハッ。」

 

「お前ら一体どんだけ苦労したんだよ。」

 

「真面目に死を覚悟したくらい。」

 

「真顔で言わないでくれ、怖いわ。」

 

アッシュ達は鬱憤を晴らす様に扉を蹴り始めた。

 

「何はともあれ休憩だ!」

 

ハジメはそう言って宝物庫から天幕を取り出した。

 

「あー!それか!よっしゃ、こたつにみかんに風呂ぉ!」

 

「俺と風魔の共同製作!寒さも暑さも全て排除!再生魔法に空間魔法を使って中は部屋に区切られプライベートは完璧に守られる!」

 

「更にリビングには外の環境に合わせて内装が変わる仕様に!砂漠ならクーラーやプールが作られ、此処の様に極寒ならこたつや風呂が作られる!」

 

「「さぁ休むぞ!」」

 

俺とハジメの言葉に喜んでいるのはアッシュ、桜、そして途中からグロッキーになっていたミナだけだった。

 

他のユエ達や勇者パーティーは完全にテンションが上がった俺達に反応出来ていない。

 

「あ、ハジメ、風呂入っていいか?」

 

「ちゃんと男湯に入れよ?」

 

「分かってるって。」

 

「私も〜!」

 

「桜は女風呂な。」

 

「私獣人だけど入っていいのかしら。」

 

「ちゃんと毛は消されるから安心して入るといい。」

 

「なら入ってくるわ。」

 

『待って!?』

 

無視して風呂に向かう。話はそれからだ!




まさにサブタイトルの通りです。

原作のハジメの作るものはほとんど主人公と共に作る過程で性能が上がっているので仕方ないね。

ハジメでは限界だった魔法などによる拡張が出来るからね、性能が上がるのも仕方ない。


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休憩だ。

「あー、生き返るわぁ。」

 

風呂に入ってゆっくりと体を休める。

 

流石にシャンプーなどはないがシャワーや石鹸はあるので体を洗うことも可能だ。

 

「ハジメ様々だな、あいつがチートじゃなきゃこんなのできてねえわ。」

 

風呂に溜まったお湯から出てくる湯気をぼうっと見つめる。

 

思い出すのはメルツィナでの事だ、自分の理想、そんな世界では俺の妻になった者達は誰も出てこなかった、いや、桜は出てきたのか、婚約者としてだが。

 

忘れた訳ではないだろう、だが既に記憶のほとんどは磨耗している、あの世界で最後に聞いたあの言葉が今までの転生で大事だった人達だ、妻、親友、相棒、そんなのは覚えているというのに、肝心の姿が思い出せない、今も、何人かの声は既に思い出せなくなっている。

 

怖い・・・忘れる事が怖い、俺の大事な人達のことを忘れてしまうのが、泣き叫んでしまいそうなくらい怖い。

 

それでも、前を向いて生きていかなくちゃいけない、だから忘れる、記憶にとどめる事ができないならせめて、一切合切忘れて生きるべきなんだろう。

 

でもまだ、許されるならば、もう少しだけ、忘れないで欲しい。

 

「・・・もうこんな時間か・・・のぼせそうだ、出るか。」

 

脱衣所で服を着てリビングへ向かう、やはり魔法とは便利なもので、汗で濡れた服も完全に新品同様に洗われている。

 

「お、きたか。みかん食うか?」

 

「食べる、今何してる?」

 

「勇者パーティーが扉の鍵を持ってくる途中だ。」

 

「宝珠か。」

 

「そゆこと。」

 

鍋は3つほどあり、しゃぶしゃぶやすき焼き、普通の鍋などが置かれている。

 

俺はすき焼きとしゃぶしゃぶの鍋の間に座り飯を食い始めた。

 

「なぁ風魔、勇者パーティーで見込みのある奴は誰だと思う?」

 

「・・・見込みのある・・・か、八重樫はクリアするだろうが、一番分からんのが脳筋だな、あいつは一番何をするか分からん、戦闘とかなら分かりやすいからまず負けはないんだが、どういう行動をするかって言われるとって感じだな、谷口は一番分かりやすい、あいつはギリギリ合格点には届くだろう。一番見込みの無いのは勇者だな、此処の試練がまだ分からんが、もし俺の予想通りならかなり厄介なことになるぞ。」

 

「・・・メルツィナと似たような事が起こるって事か?」

 

「多分やり口は違うんだろうが、精神的な強さを試す類なら、勇者はまず無理だ、あいつは何も知る気が無かったからな。」

 

「そうか。」

 

「御都合主義よろしくあいつがここをクリアしたら、まぁ鍛えるくらいはしてやってもいい。」

 

俺はそのあとは喋らずに肉と野菜を食べ始めた。

 

「・・・うどんはねぇのか?」

 

「無いな、作る時間は無かった。」

 

「そうか・・・。」

 

じゃあ雑炊だな。

 

ーーーーーーーー

暫くするとハジメ以外は寝始めた、勇者パーティーも帰って来てコタツに入るとすぐに寝てしまった。

 

マスターキーを持っているのは俺とハジメなのでハジメの嫁は全員部屋に送りアッシュとミナ、俺ハジメの4人で後片付けをしていた。

 

「桜は?」

 

「残飯処理、すぐに終わるだろうし、みんなが寝てる隙に俺と桜で最後の宝珠取ってくるつもりだ。」

 

「そうか、羅針盤は?」

 

「いる、持ってくから貸してくれ。」

 

「了解。」

 

寝てる奴らを全員部屋に押し込んだ所で桜と一緒に外に出る。

 

「・・・眠たいね。」

 

「ああ、すぐに帰って寝よう。」

 

1時間位で宝珠のある場所へ着いた。

 

桜はビットの操作数が100位まで減っていたので眠気が限界に近い、早くしないとな。

 

オーガは切っても切っても再生したので消滅させた、宝珠を取って桜とハイタッチする。

 

「援護ナイス、最後の脚を撃ち抜くのは上手かったぞ。」

 

「こちらこそ〜。」

 

「じゃあ、早く戻ろうか、すぐに寝よう。」

 

「うん、寝よう〜。」

 

途中で寝始めた桜を背負って1時間半ほどで帰る事ができた。

 

「リビングには誰も居ないか・・・まぁ寝てるよな。」

 

鍋が置かれていたコタツに書き置きがあった。

 

キッチンにあっためたココアもどきがあるから飲んでおけ。

 

多分ハジメだな、見慣れた字だ。

 

近くのソファに桜を寝かせる。

 

「くぁ・・・ねむ。」

 

物置から布団を取り出して桜に掛けてやるとソファが少し大きくなり、簡易ベッドになった。

 

「あいつここに住む予定でもあるのか?」

 

布団から顔を出した桜を見て頭を撫でる。

 

桜は少し顔を笑顔にかえ、ご満悦のようだ。

 

「変わらないな、お前は。」

 

向こうでも、こっちでも、図太いというか何というか、いつも楽しそうで、嬉しそうで。

 

「それに救われてる俺も、確かに居るんだ。」

 

だから、俺の前から居なくならないでくれ、頼むから、もう、俺に家族を失わせないでくれ。

 

横になる、ソファの感触と共に、俺の意識は沈んでいった。




英雄と呼ばれる者でも人間なのだから弱い部分があっても問題無い、完全無欠のヒーローでは無いのだから、弱くて何が悪い、俺は物語のヒーローじゃなく、人間だ。

だから・・・おれの大事なものに手を出す奴は・・・殺してやる。


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自分の闇

目が醒めると目の前に桜の顔があった。

 

「!?」

 

飛び上がりかけたが桜の腕が俺の首に回されているので身動きが出来ない。

 

「おう、起きたか?」

 

「ハジメか?桜起こしてくれ、俺は身動き出来ん。」

 

「まだ何人か起きてないから寝とけ、まだ6時間くらいしか経ってねえよ。」

 

めちゃくちゃ経ってんじゃねえかよ、俺は起きるぞ。

 

「充分だ、起こしてくれ。」

 

「・・・すまんがやったら無意識にビット回されて攻撃されたんだ、諦めろ。」

 

「試した後だったか。」

 

ええ、どうすんのコレ。

 

桜はハジメと話してる間も笑顔で寝ている。さぞ快眠しているのだろう。

 

「何でこんなことになったんだか・・・。」

 

「良いじゃねえか、恋人なんだろ?」

 

「それも含めてだよ、俺はそんなに魅力的なのかねぇ。」

 

「桜の視点から見たら危ないときにいつも助けてくれるからじゃねえの?」

 

それでも、好きになる程とは思えないんだがな、特に、日常茶飯事なら。

 

「女心は分からんな。」

 

「同じく。」

 

ハジメもそう思っているようだ。

 

「あー懐かしいな、昔も妻になった女性から浮気を勧められたわ。」

 

「嘘だろ?」

 

「マジよ、俺も相手もエルフでな、数千年生きてきてやっと結ばれて、さあ後は死ぬまで暮らす場所を見つけようって矢先に知り合いの伯爵令嬢が当主になってな、その時のいざこざで結婚してくれって話になったんだよ。」

 

「色々と突っ込みどころありすぎだろ。」

 

「その時に妻から浮気じゃないよ!重婚だよ!お嫁さんいっぱい出来るんだから躊躇しない!って言われた。」

 

「結婚したのか?」

 

「するわけないだろ、手を回して撤回させたわそんなん。あっちも俺と親しいから感情任せに言っただけだからな、撤回させること自体は楽だった。」

 

ハジメの顔は分からない、俺の視界は桜の顔でいっぱいだ。

 

「ただ妻はめちゃくちゃ不満そうだった。」

 

「何でだ。」

 

「それな。」

 

日本人男性には分からなさすぎる。

 

「ん・・・風魔?」

 

うちのお姫様は夢から覚めたようだ。

 

「起きたか?」

 

「・・・・・・。」

 

「取り敢えず手を離してくれ、嫌な予感がする。」

 

「〜〜〜〜〜〜!!!?」

 

「ボガッ!?」

 

桜は驚いて俺を思いっきり抱きしめた。

 

首が一気に下に引っ張られ、桜の胸に思いっきり押し付けられる。

 

苦しい、呼吸出来ない上に体制に無理がありすぎる、息が・・・。

 

「ななな何で風魔が!?」

 

「・・・!・・・!!」

 

「きっとこれは私の夢!そう!絶対そう!」

 

「・・・・・・!」

 

「でも顔近かった、カッコよか・・・違う!」

 

桜の体を叩く、気付いて、死ぬ、死ぬ!

 

「え?あああ!ごめん!ごめん風魔ぁ!」

 

「ぶはっ、ゲホッゲホッ、危ねえ、死ぬところだった。」

 

そんなことをしていた俺達の周りにはハジメとアッシュがいた。

 

「みんなには言わないほうがいいか?」

 

「当たり前だ・・・ああ・・・生きてるって素晴らしい。」

 

「ごめんなさい、私が悪かったです。」

 

桜はダブルベットくらいの大きさになってるソファに正座しながらそう言った。

 

「別に良いって、ほら、起きたなら飯の支度だ。」

 

「・・・うん。」

 

その後ユエ達や勇者パーティーがリビングに来る頃には朝食は既に作られていてあったかいものが並べられていた。

 

ただ、米が無いのでその分残念さが極まった。

 

ハジメ含む日本組は全員白米が食べたくなっていたがどうしようも無い。

 

「行くか、宝珠は取ってきたし、問題無い。」

 

「ご飯、あったかいご飯・・・。」

 

「丼いっぱいの米・・・。」

 

「言うなよ・・・、言うなよ・・・。」

 

「・・・おい、行くぞ。」

 

「風魔!お前は残念に思わないのかよ!?」

 

「無いものは無いんだから諦めろ戯け共!」

 

『ブー!』

 

こいつら・・・。

 

「次から俺が作った飯無しにすんぞ。」

 

『申し訳ございませんでした。』

 

「それで良い、さっさと行くぞ。」

 

「苦労かけるわね・・・本当に。」

 

「八重樫も我慢してるだろ?エヒトぶち殺したら日本で宴会でもしようや、俺に約束できるのはその位だ。」

 

外に出て扉に宝珠を埋め込む。

 

「あー寒いわ。」

 

扉が開いてその先の道が見え始める。

 

「風魔。」

 

「何だ?ユエ。」

 

「後でコメの作り方、教えて。」

 

「種がねえよ、諦めろ。」

 

「そんな・・・!」

 

「食べられないんですか!?風魔さんなのに!」

 

「おいそれはどういう意味だバグウサギ!」

 

全員が出てくるまで10分ほど、米の味を知らない奴らと駄弁っていた。

 

ーーーーーーーー

気を取り直してだ、行くぞ。

 

「鏡みたいだな。」

 

「予想通り、だな。」

 

暫く進むとふと声が聞こえた。

 

(また失うぞ?)

 

俺は刀を構えて一気に警戒の程度を上げた。

 

「おい、どうした?」

 

「秋月も聞こえたのか!?」

 

天之川がそう言って俺を見ていた。

 

「・・・チッ。」

 

懐からタバコを取り出す。

 

「お、おい!お前にも聞こえたんだろう?」

 

「黙れよ、鬱陶しい。」

 

失う?失わせるものか。

 

「ハジメ、迷宮からの干渉だ、全員が無効化出来ない類のものだ、気を付けろ。」

 

「何か言われたのか?」

 

「また失うぞ、だな。」

 

「失う?それはどういう・・・いや、良い。」

 

「助かる。」

 

「私達もなったわぁ、懐かしいわねぇ。」

 

「あるある。」

 

お前ら2人はふざけないと気が済まないのか?

 

・・・なんか馬鹿らしく思えてきたな。

 

(怪物の癖に)

 

刀を持つ手に力が込められる。

 

「風魔?」

 

「大丈夫だ、気にすることはねえよ、耳に痛いがな。」

 

そう言って桜の頭を撫でる。

 

「気を付けろよ、桜。」

 

「・・・うん。」

 

その後も何回か声が聞こえたが桜が手を握っていてくれたおかげであまり気にせずに済んだ。

 

片手がふさがっていたが魔術中心で対処していたから問題無い。

 

途中で天之川が発狂しかけたりユエに誘惑されたハジメが襲いかけたりと色々あったが無視だ。

 

(忘れそうなのに?)

 

・・・うるさい。

 

休憩場所に着いた、あの空間コテージを出して全員中に入るが声は相変わらず聞こえてくる。

 

(大事な人を守る?目の前で死なせて来たお前が?)

 

黙れよ。

 

(目の前で人を殺したのに?)

 

途中から、前世の声まで入るようになってきた。

 

(本当は殺したいんじゃないのか?)

 

ふざけるな

 

(私に家族なんて居ないよ?)

 

桜がそうだ。

 

(嘘、貴方は知っている。)

 

言うな。

 

(自分は家族を殺してしまう殺人鬼。)

 

「止めろ。」

 

(殺人鬼に、幸せになる事が許されるとでも?)

 

「止めろ!」

 

周りの全員が俺を見て驚いている。

 

(ほら、殺人鬼としての一面が顔を出した。)

 

思わず口を抑える。

 

「風魔!?」

 

胃の中のものが吐き出される。

 

(人間でいるのは楽しいか?)

 

おかしいな、みんなの声が聞こえない。

 

(人に縋り、その人を喰うお前は、化け物だ。)

 

誰かが肩を抑えている、誰だ?

 

(化け物め)

 

呼吸が荒い、誰か、助けてくれ・・・俺を・・・誰か!

 

(他者に救いを求めるか、愚か者)

 

誰か!居ないのか!?誰か!?

 

(だからお前は化け物なのだ、悍ましい殺人鬼め。)

 

止めろ、俺を堕とすな、俺は決めたんだ!みんなを守ると!

 

(守ると誓った奴は何処にいる?お前が守ると誓った者達をお前は忘れただろう!)

 

忘れてない!俺は覚えてる!ハジメや桜を!

 

(ではお前の妻になった者達はどうだ!?言ってみろ!)

 

俺は覚えて・・・憶えて・・・いる・・・筈だ。

 

(覚えていないだろう!?それがお前の気持ちの程度だ!お前は命を代償にしても守ると誓った者すら忘れる!)

 

違う、俺は・・・俺は!

 

(化け物め、愛した者すら忘れる化け物め!人間のふりをして楽になったか?)

 

止めろ・・・やめろおおおおおおおおおおおお!!!

 

(・・・どうしようもない化け物が誰かを幸せにできる筈がないだろう!)

 

「あ・・・ああああああ!!!!」

 

誰かが俺を押さえている、誰かの声が聞こえる。

 

(殺人鬼が、人を守れるとでも思っているのか?)

 

「あ・・・。」

 

俺の意識は暗闇に堕ちた。




闇落ちはしません(キッパリ)


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消えた拠り所

「止めろ。」

 

私の背後に立っていた風魔が唐突にそう言った。

 

「風魔?」

 

私が近付いて覗き込んでも目線が合っていない。

 

「止めろ!」

 

「風魔!?」

 

唐突に叫んでそう言った風魔ははっとしてリビングにいたみんなを見た。

 

そして、口を押さえて吐いた。

 

「風魔!?風魔!!」

 

「あ、あああああ!!!!」

 

風魔は叫ぶ、何故叫んでいるのかが分からない。

 

「あ・・・。」

 

風魔はひとしきり叫ぶと急に倒れ始めた。

 

私が支えようと腕を出すと風魔は私の腕をすり抜けて消えた。

 

「・・・え?」

 

全員が立ち上がって風魔が居なくなった場所を見ている。

 

「あ・・・え?風魔?」

 

「チッ、ユエ!早く眠らせろ!」

 

「ねぇ・・・風魔、何処?風魔?風魔ぁ!」

 

「でも・・・。」

 

「良いから早く!このままじゃまずい!」

 

「いや・・・いや・・・ふうま・・・どこ?どこ・・・。」

 

(ほら、また貴女のせいで死んだ。)

 

「いや、違う、ふうま!ふうまぁ!どこ!?どこにいるの!?ふうま!いやああああ!!!」

 

目の前が暗くなる、私は急に眠たくなり、地面に倒れた。

 

ーーーーーーーー

「・・・ハジメ。」

 

「・・・アッシュ、桜を背負え。」

 

何が起きた?何が原因だ?訳が分からない、アッシュ達の様子を見るにこれはアッシュ達に取っても初めての現象、くそっ、一定以上の人数で発生する心の支柱の誘拐?

 

なんにせよ情報がなさすぎる、風魔のあの様子は多分初めての事件の時のもの、あの時期からあいつは自分は化け物だと言い始めた。

 

「ハジメ?」

 

「ユエ、すまん、今だけでいい、考えさせてくれ。」

 

「・・・!・・・分かった。」

 

「すまん。」

 

何時からだ?天之川が発狂しかけた時より前からあいつはタバコを吸い始めた、まさか、最初からか?なら何故俺たちに言わなかった!?クソッ判断材料がなさ過ぎる、あいつなら1つの情報が100にも1000にもなるのに俺には何も分からねえ。

 

今分かることは、大迷宮に連れ去られたって事だけ。

 

「クッソがああああああ!!」

 

俺の叫びで空間が歪みかける。

 

「・・・行くぞ!こんなことをしたクソッタレをブチ殺す!」

 

「ハジメさん・・・。」

 

コテージをしまい、全員に叫ぶ。

 

「全員ここからは休憩無しだ、絶対に風魔を見つけてクリアする!道中の敵は全てブチ殺す!良いな!」

 

「ご主人様よ!落ち着くのじゃ!妾達はともかくこやつらがついていけぬであろう!?」

 

無意識にティオの眉間に銃口を突き付ける。

 

「親友に何かされてんのに・・・!・・・すまん。」

 

「焦りは禁物じゃ、何が起きたかは分からぬがここから先は気をつける事が一番であろう?この囁き声もそう影響のあるものではない、気を付ければ不意を打たれることも無いじゃろうしの。」

 

この変態になだめられる日が来るとは、それよりも、早くあいつを見つけないといけない。

 

あいつは記憶を元にした試練の場合、どういうものが来るかは何回かに分けて教えてもらっている。

 

まず1つは恋人や親しい人との戦闘、もちろん偽物だが、限りなく感情や仕草まで似ているらしい。

 

もう1つは自分との戦い、迷宮に入るまでか戦闘開始までかは知らないが自分と同等の敵との勝負。

 

最後の1つは、味方の誰かを犠牲にしなければ進めない生贄方式。

 

最後の1つは滅多に無いが記憶の中にいる故人を忘れる事でしか先に進む手段はないらしい。

 

そのどれもが凶悪なもの、本人は大別したものだと言っていたから細かいものまで合わせてもあいつの今までの人生はろくなものではないのだろう。

 

なら、俺が、俺たちが支えるべきだった、少なからずあいつを完璧な人間だと思い込んでいた、あいつの心に寄り添ってやるべきだった!

 

「ハジメさん・・・。」

 

「ハジメ・・・。」

 

ユエとシアが俺の名前を呼んだ、そんなに酷い顔をしているのか、俺は。

 

「出発する、必ず見つけてやる。」

 

怒りに身を任せている場合じゃない、あいつが教えてくれた事だ、優先順位を決めてそれを実行する!

 

まず1つは試練を突破する事。

 

その次に風魔を探す事。

 

次にクソッタレな風魔の顔面に拳を入れる事!

 

「行くぞ!!」




何気に初めてなハジメ視点、風魔は暫く休んで次からは桜視点が少しの間メインになります、話の展開的に風魔が出るの何話か先になります。


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暗い花より明るい花を

周りから色々な音が聞こえてくる。

 

風魔が居なくなった、私の目の前で、すり抜けて、迷宮の意思かは分からないけど、きっと試練の1つなんだと思う。

 

あの時はまだ理解出来てなくて錯乱した、きっとハジメが眠らせてくれたんだと思う。

 

目を開ける、アッシュさんの背中に私はいた、アッシュさんはミナさんと一緒に周りから飛んでくる攻撃を捌いている。

 

「アッシュ・・・さん。」

 

「・・・起きたか、自分の状況は?」

 

「・・・分かってるつもりです。」

 

「そうか。」

 

「・・・私はまだ、戦えます。」

 

なら、目標は1つだけ、この攻撃は全部無視して良い、あそこで俺たちに身体を向けているゴーレムだけを倒せ、あれが試練の標的だ。

 

「分かりました。」

 

ビットを大量に放ち、ゴーレムに攻撃を加える。

 

いくつものビームが飛んでゴーレムに当たるがあまり効果は無いようだ。

 

「レーザーじゃダメ・・・なら、貫く。」

 

物理的な攻撃を加えるために剣を装備しているビットがある、数はかなり少ないが風魔が作ってくれたものの中でも特に攻撃力が高いもの。

 

「私は・・・風魔を探さないと。」

 

それにビームビットをブースター代わりに取り付けて即席の銃弾が出来る。

 

「だから、そこを退きなさい、人形。」

 

ゴーレムは最初こそ避けていたが一度当たるとそこからは風穴を増やしていった。

 

もう外側しか残って居ないゴーレムは遂にその動きを止めた。

 

「お疲れ様!次もこの調子で行きましょ!」

 

「はい。」

 

「・・・もう、笑顔でいなきゃあの覇王様を安心させられないわよ。」

 

「・・・はい。」

 

「・・・行きましょうか、きっとハジメ君が見つけてくれるわ。」

 

「はい。」

 

ミナさんは少し悲しそうだったがそのままハジメのところへ向かった。

 

他のみんなもゴーレムを倒したようで既に何人か休んでいた。

 

「桜、起きたか。」

 

「うん。」

 

「必ず見つけるぞ。」

 

「うん。」

 

ハジメと私は感情をかなり排した会話をしていてシアちゃんが少し怖がっている。

 

笑いたいけど、そんなのが出来るような状態じゃないから、心の中で謝っておく。

 

「時期に全員揃う、それまで出口が現れないみたいだから休んどけよ。さっきの魔力からしてダーツを使ったな?」

 

「・・・。」

 

「疲れを取るくらいはしても良いはずだ。」

 

「分かった。」

 

「アッシュとミナは桜の護衛だ、次の場所によっては無理なんだろうが、念の為にやっててくれ。」

 

「「了解。」」

 

「あと来てないのは勇者と脳筋だな、まぁすぐに来るだろう。」

 

風魔に会いたい、寂しい、安心したい、怖い。

 

膝を抱えて自分の殻に閉じこもろうと丸くなる。

 

『おい、その辛気臭いツラはお前の標準装備か?新人。』

 

初めて風魔に声を掛けられたあの日から、私はずっと助けられて来た。

 

いつも大丈夫だって言ってなんとかしてくれて、私を守るって言ってくれて。

 

嬉しかった、今までそんな事一度も無かったから。

 

『ごめんなさい・・・マジで。』

 

だから倒れた時は本気で怒った、私だって役に立ちたいと言った、そしたらある程度話してくれるようになったけど、それでも大事な場所は全部風魔がやってて。

 

私って、そんなに力になれないのかなぁ?

 

そりゃ風魔と比べれば小さいけど、それでも、信じて欲しかった。

 

普通じゃないから手伝わせないとかの理由なら本気で怒る。

 

私はその普通じゃない所が好きだから。

 

今はそれだけじゃないけど、きっかけはその普通じゃないところに惚れたから。

 

だから、無事で居て、誰もいないところでひっそりと死ぬなんて止めて。

 

風魔が死ぬなら・・・私も。

 

「おい、桜。」

 

急に声をかけられてびっくりした。

 

「次に行くぞ。道が出来た。」

 

「・・・うん。」

 

待ってて、私が見つけるから、そして今度こそ、相談してくれるまで一緒に居るから。




ヤンデレとヤンデレがくっついたら砂糖まみれになるのは当たり前ではなかろうか。


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ニセモノ

・・・ここは・・・次の場所?

 

誰も居ない、私1人だけか。

 

「怖いな。」

 

氷で出来た通路を歩いて数分後、一本の氷柱がある大きな部屋に出た。

 

「・・・。」

 

鏡の様になっている氷柱に手を触れる。

 

私の顔は酷いものだった、髪はボサボサだし、目の下にクマが出来てるし。

 

「・・・風魔が居なくなったからかな。」

 

『違うわ、獣が居なくなったのよ。』

 

氷柱は静かにそういった。

 

『ねえ、貴女()?』

 

「やっぱり、試練の1つなんだね。」

 

『心の拠り所なんて言っているけれど、結局の所それはただ依存してるだけよ、貴女は私なんだから私には全部分かっちゃうわ。』

 

依存してるだけ、そんなの分かってる、風魔は出来うる限り私に依存させない様にしてたけど、私は全部分かってたから、意味無かった。

 

『それに、彼だって貴女に欲情してたじゃない、つまり、彼も結局は今までの男達と同じよ。』

 

王城のベランダで風魔がハジメと話してるのを聞いた、私は魂レベルで相手を欲情させる力があるらしい。

 

そんな事聞いたのは初めてだった、気付かないフリして受け止めるのが精一杯だった。

 

「私って、風魔の力になれないのかな。」

 

『違うわ、力になるなんていうものじゃないのよ、彼も必ず快楽に沈むわ、男なんて、全員が獣なんだから。』

 

「でも、風魔になら、それも良いかもね。」

 

『フフッ、自棄になってるの?男に身を任せるなんて、私らしくないわね。』

 

私の分身らしく、耳に痛い事ばかり知っている。

 

『知ってるわよ、貴女がメルツィナ大迷宮で媚薬スライムの毒に犯されて興奮してた時、勇者から熱っぽい目で見られてたわよね?その時、貴女は一瞬だけ絶望した、風魔ももしかしたら、なんて。安心したわよねぇ、でも、起きた時風魔が顔を赤くした時は諦念が浮かんだ、欲情したと分かってしまったから。』

 

「うん、そうだね、少し、怖くなった。」

 

『彼はきっと無意識よ、アレは、でも告白されて自分から勇気を出してキスした時、貴女は気付いてしまったわよね?私の身体なら彼を溺れさせる事ができるって。』

 

狼狽してた風魔を見て直感みたいなのが私の中に出て来た、風魔は身内からの攻撃にはめっぽう弱いって。

 

『そして、そんな事を考えた自分が心底嫌になった。』

 

「・・・うん、私は私が嫌い、みんなに優しいのも、一番嫌いな相手()がいるからそれと比べたらマシって言うだけ、明るいのも、そうじゃないと自分を傷付けて死にそうだと思ったから。」

 

『彼は自分の事を化け物とか殺人鬼なんて言うけれど、私の方が化け物、だって、無意識に相手を性の快楽で溺れさせる事を考える淫魔なんだもの、暴力で解決する彼より根本的な違いがあるわ。』

 

「うん、そうだね、私は、もう、風魔の近くにいるべきじゃないのかもしれない。」

 

『彼の為を思ってるならそうすべきよ、ああ!なんて可哀想な私!悲劇のヒロインとはこの事ね。』

 

「ううん、私は悲劇のヒロインなんかじゃないよ。」

 

『あら?何を言ってるのかしら、彼の為を思って離れるのではないの?』

 

「うん、風魔の為なら私はいない方が良いんだろうけど、私は風魔の事信じてるから。」

 

『答えてくれないかもしれないわよ?』

 

「ううん、風魔は答えてくれる、絶対に、話し合う時間なんて死ぬまで出来るんだから嫌な事があれば言えば良い。」

 

私の影は溜息をついた、私が歪ながらに覚悟を決めていたからだろうか。

 

『・・・じゃあ、私、頑張ってね、私はもうかなり弱体化してるはずだけど、それでも素の能力はあまり変わらないから。』

 

「あはは、私、自分でもヤンデレだって自覚はあるんだ、だって、風魔を誰にも取られたくない、もし他に彼女みたいな人が出来たら、私、その人を殺してしまいそうになるかもしれない!」

 

『彼なら、もしかしたら、受け入れてくれるかもしれないわね。』

 

「私が逃がさないから!大丈夫!」

 

決心はついた、依存してるのは分かってる、でも、日本に帰ったら、私だけで一度何かをしてみようと思う、風魔には知らせずに。

 

黒のビットと白のビットが一瞬にして入り乱れる。

 

数千にも及ぶビットの群れが互いを落とす為だけに飛翔する。

 

「これが私の支援で最強の技能!見せてあげる!」

 

『そんな技能無いでしょう!?』

 

「うん!今考えた!行くよ!風魔の魔法陣を見よう見まねで作っただけだけど、名前は・・・これで良い!」

 

白いビットが少しずつ黒いビットを落とし始めた。

 

「【桜花】、桜の花は一番綺麗なんだから!これで良い!」

 

黒いビットの動きが一瞬で何倍にも増えたかの様に動き出す。

 

『な!?早過ぎるわよ!』

 

「さあ!桜の様に美しく戦いましょう!」

 

黒いビットの周りを桜色の魔力が覆っている、よく見ると全てのビットが覆われていた。

 

全てのビットが音速を超えて全方位からその猛威を振るうのだ、それは、音速を超えられないニセモノには到底叶わない、数の暴力。

 

瞬く間に穴だらけになっていくニセモノに向かってお辞儀をした。

 

「私の弱点を教えてくれてありがとう、でも、私も風魔の側に居たいから、だから、弱虫の私とはもうお別れ。」

 

『・・・ふふっ、後輩ちゃん、頑張りなさい・・・貴女なら、きっと幸せになれるわ。』

 

やっぱり、最初から記憶はあったんだ、ミレディって人じゃなくても記憶はあるみたい・・・かな?

 

もう私のニセモノはいない、決心もついた、ハジメ達を探してちょっとお風呂でも入ろうかな、風魔と会う時に汚かったら私が嫌だ。

 

待っててね、風魔のトラウマ、私も一緒に背負うから、だから、私をちゃんと見て。




実はヤバイ系のヤンデレである、生々しい性的な問題はキャラ的にあるかなと考えた結果8割がた性にまつわる話になってしまった、でも前世2つ共レイプされて死んでるから無理も無い・・・のか?


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狩人と獣

・・・俺は・・・そうだ、吐いて気絶して・・・何が起きた?身体が動かせない。

 

『全く、俺ともあろうものが、とんだ異物になったな。』

 

誰だ?いや、違うな、俺か。

 

『ククッ、理解が早くて助かる、本来ならばお前は既にこの迷宮をいとも容易くクリア出来てしまう、だから、お前の試練の内容だけ変えさせてもらった。』

 

チッ、クリア判定は貰えるんだろうな?

 

『安心しろ、ちゃんとステータスに入っている。』

 

そうか、で?俺がクリアなら試練ってのは何なんだ?

 

『まぁ、教えても構わないか、自分に呑まれた者にもう一度チャンスを与えるのさ、お前の力を使ってな。』

 

・・・つまり、主な試練の相手は勇者パーティーか?

 

『ああ、お前は結果がどうあれそこで見ているだけでいい、相手は全部俺がやる。』

 

なるほど、俺の本性として、か?

 

『止めたいんなら止めていいぞ、現実のお前は動けないから一方的に殺せるけどな。』

 

いや、いい機会だ、俺の本性を見たあいつらがどんな道を選ぶのか、少し気になる。

 

『・・・それで自分を傷付けて、君はそれで良いのかい?』

 

良いさ、何たって俺は化け物だからな。

 

『恐れを知りながら、それでも狂乱に身を任せて戦うか、そんなもの、獣と何が違うのかね?』

 

ただ恐怖するだけならそうだろう、だが、狂うには私は生き過ぎたのさ、それこそ毎日戦う様な日々から逃げる位には、ね。

 

『所詮贋作である俺には分からないな、だが、覚えておこう。』

 

ーーーーーーーー

「此処は・・・。」

 

氷のドームの様な部屋ではなく、外が見えている、百合の様な花が咲き、草原の様になっている。

 

「ハハッ、よく来たな。」

 

「!?」

 

百合の様な花の中に1つだけ、桜がある。

 

その桜の下で、ボロボロになっている、黒い自分と、そして消えた筈の秋月風魔が笑いながらその刀を自分の足に突き刺した。

 

「あっがああああああ!!!?」

 

「お前!何やってるんだ!?」

 

「おいおい、所詮ニセモノだ、遠慮する必要も無いだろう?」

 

「お前・・・お前は・・・何が目的なんだ!?」

 

「決まってるだろう?闘いだよ。血が飛び散り、肉を割き、抉られ殺し殺される、殺戮の狂宴が私の望みだよ。ヒャハ、ヒャハハハハハハハ!!」

 

「狂ってる・・・。それなら、俺が正気に戻してみせる!」

 

「アッハハ!ニセモノよりかは楽しめそうだ!さぁ、お前はどんな声を出してくれる?なぁ、勇者様よぉ!」

 

「うおおおおおお!!」

 

ーーーーーーーー

何だこれ、何だこれ、いや、確かに本性よ?でもこんなサイコパスじみたもんじゃないだろ、しかも勇者(笑)だぞ?楽しめそうだって、しかもニセモノ生きてるし、殺せよ。

 

突っ込みどころがありすぎるわ、しかも俺の体桜かよぉ!?

 

すっげえゲーム映像見てる気分だよ。

 

『アッハハハハ!どうした!?力が入ってない様だが!?』

 

『ぐっ・・・。』

 

『正義の味方なんてものは存在しない、この世界に確たる正義など存在しない!何故ならそれは神の領域だからだ。』

 

『俺は、正しい事をするために此処にいる!お前なんかに負けるか!助けられる人を助けないお前なんかに!』

 

『ただ助けを求めるのならば死ねばよい、諦めるなど、命を手放したと同義、故に、諦めを拒絶した者のみ闘いを生き残ることが出来る。貴様はただ、自分の為だけに人を助けているだけだ。』

 

ニセモノさんや、そんな言葉じゃあいつには届きませんぜ。

 

『助けを求めている人たちを助けて何が悪い!絶望から救い出すことが悪とでも言う気か!?』

 

『違うぞ勇者よ、絶望から這い上がる者こそが尊いのだ、絶望から逃げず、立ち向かい、絶望の中で生きる者こそ人間の中でも尊いものになる、お前と違い、大多数の人間は絶望に直面した時、折れる、お前も同じ、折れる側の人間だ、ただ大多数の者達より絶望が少ないだけだ。』

 

『俺は・・・もう誰かを奪われたくない!だから力がいる!お前と同じだ!だから、お前を倒して力を証明してみせる。』

 

『出そうだが?ニセモノよ、こいつは奪われたくないらしいが、さて、それは正しい事なのか?教えてもらおうではないか。』

 

『・・・。』

 

天之川のニセモノは黙っている、そしてその様子を見て天之川は信じられない事を言い始めた。

 

『香織は最初から南雲が好きだった!だから後悔なんてしてない!』

 

『嘘だ・・・奪われたと感じてる。』

 

『何でそんな事言うんだよ!俺は・・・納得してる!』

 

『クハッ・・・。』

 

俺のニセモノは物凄い悪い顔をして2人?の口論を見ている。

 

内容はユエ達に慕われるハジメが羨ましい、本来なら彼女達は自分のモノだ、何で無能だったお前なんかが、秋月風魔は気に入らない、澄ましたような顔も、何か問題が起こった時にすぐに矢面に立つ、その役目は俺のものだ、桜もお前さえいなければ俺と一緒に居るはずだった。その他にも色々とまぁ口論で出てくる出てくる気持ち悪い自己弁護。

 

『そして何より・・・お前は人殺しを当たり前の様に肯定する2人が悪だと思っている。』

 

『黙れっていってるだろうが!!俺はそんな事思ってない!』

 

『・・・そして、香織が南雲の事が好きだと言ってから、雫が誰を見始めたかが分かった、それは、やっぱりあの2人だった。』

 

『黙れ、黙れよ!』

 

『おっと、もう少し聞こうぜ、なぁ、ヒーロー?』

 

煽ってんなーいいぞ、俺が許可する、やれ。

 

『雫まで奪われるのは嫌だ、香織を俺から奪っておいてお前らは雫まで奪っていくのか?』

 

『違う!』

 

『雫、お前は、俺に惚れてなければいけないんじゃないのか?』

 

『違う!』

 

ん?あ、ハジメ達向かってんじゃーん、教えといてやろう、ニセモノさんや、もっと煽る材料入荷よー。

 

少し目を離したら俺のニセモノと天之川は鍔迫り合いをしていた。

 

『おいおいどうした?俺を倒すんじゃなかったのか?』

 

『うるっさい!』

 

『ふむ、では現実を見せてあげよう。』

 

『何だと!?』

 

近くの空間が裂け、そこからハジメと八重樫が入って来た、八重樫はボロボロになっており、ハジメの背中で爆睡してる。

 

『あ?何だ此処、草原?』

 

天之川の意識が逸れた瞬間に俺のニセモノは天之川のニセモノ共々ハジメ達とは正反対に投げ飛ばした。

 

そして手を鳴らす。

 

『よく此処まで来たね、歓迎するよ、親友。』

 

『・・・テメェ、ニセモノか、本物は何処にやった?』

 

『フフ、教えると思うかい?でも、君の試練の切り抜け方はかなり珍しいね、そこで寝てる八重樫くんも、王道の少年漫画の様だ。』

 

『ああそうかい。で?』

 

『これから茶番が始まる、ゆっくりと見ているといい、題目は・・・そうだな、狩人と獣だ。』

 

『俺からすれば今のこの状況こそが茶番だな、さっさと死ねよ。』

 

ハジメのドンナーから撃ち出された弾丸は俺のニセモノの眼の前で止まった。

 

『まぁそう言わずに、その為に彼を向こうに投げたんだから。』

 

『何だと?』

 

『風魔!?・・・ちがう!誰!?』

 

いつの間に桜が来て・・・あ、結構前から反応あったっぽいなこれ。

 

『ウオオオオォォォォォォン!!』

 

『かつての聖人が醜い獣となり、その力を使って戦う、実に甘美な余興だろう?』

 

『なぁぐぅもぉ!』

 

『で狩人は俺と桜ってか!?ふっざけんなよ!後でその頭撃ち抜いてやる!』

 

天之川の見た目は狼の様に身体全体に長い毛が生えていた。爪には赤黒い魔力がまとわりついており、俺のニセモノが言った通り、獣、といった方がしっくりくる見た目だ。

 

『少し改造を施してある、心臓が破壊されようが頭が無くなろうが再生する、倒すには魔力をすべて使わせた上で拘束し、魂魄魔法を用いてニセモノを取り除くしかない、さて、殺してもいいが、君達ならともかく、それを幼馴染達が容認するかな?』

 

『きゃあ!危ない!』

 

『君の洗脳もすぐに解いてあげるから、安心して!』

 

『は?』

 

あ、桜が切れそう。

 

ドンナーで撃ち抜かれてもほとんど動きを止めていない、ビットで焼き尽くしたとしてもすぐに肉が盛り上がり、元に戻る。

 

『さぁ、狩人と獣との戦いだ!存分に狩り、楽しみたまえよ!』




ニセモノは風魔の頭の中のゲーム類から気に入ったのを選んで使ってます、要するに中二病状態、ただし本人も割と乗り気。


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狩り

「チッ、ダメージを完全に無視とか、マジで笑えねぇっての!」

 

「ハジメ!雫ちゃん渡して!私が守る!」

 

「止めとけ!あいつは相手が誰かも理解出来てない!風魔のニセモノが言った通りの獣だ!」

 

銃声とレーザーの発射される音、そして獣が咆哮する声だけが響き渡る。

 

「雫ちゃん!起きて!じゃないとハジメが攻撃できない!」

 

「ん〜、もうちょっと・・・。」

 

思いっきり轟音が鳴り響いているのに目覚まし時計にもなっていない様だ。

 

「起きなさい!」

 

「ひゃい!」

 

桜の声は良く通る、孤児院の子供達だけではなく、風魔も徹夜などをして遅くまで寝ていた時にその声で叩き起こされた。

 

八重樫も流石にこの声では眠ることはできなかった様だ、周りは既に大惨事であるが。

 

「え?何?何が起きてるの?」

 

「クソ勇者が獣になって襲って来てんだよ!」

 

「馬鹿が私達に逆恨みしてるの!それに風魔を馬鹿にした!絶対に殺してやる!」

 

「あとブチ切れてる桜が怖い!でも強いから頼もしい!」

 

「南雲くん?実は余裕あるでしょう?」

 

八重樫がそう思うのも無理は無いだろう、今も自分を背負って戦っていながら急ぎながらも話しているのだから。

 

「いやだって見てみろよ、桜の操ってるビットの数、下手したら俺が物量で押されるくらいの勢いがあるんだぞ、それでもあの馬鹿は死んで無いけど。」

 

「そういえば獣になったって言ってたわね。」

 

八重樫は貫かれながらも咆哮を上げて桜に飛びかかっている、桜は自分の身体にビットを装着して空中に浮かびながら全方位から畳み掛けていた。

 

「・・・桜ちゃんがなんか物凄く強くなってる気がするのだけど。」

 

「強くなるっていうか機動戦の1つの理想形が真横にいたからだと思うけどな、今更装甲固めても意味無いし、真正面から食らって耐えて反撃出来てる坂本がおかしいだけだ。」

 

ハジメ達がゆっくりと話していると近くの壁が開き、ユエ達やティオ達が出てきた。

 

「お、きたか。」

 

「・・・ハジメ、これはどういう事?」

 

『アハハ!俺は南雲に勝てる!この力があれば!死ね!死ねぇ!』

 

「・・・御察しの通り、あの獣は天之川だ、クソッタレの影響と自分の歪みのせいでああなっちまったっぽい。」

 

「・・・気持ち悪いですね。」

 

「分かる。」

 

「妾もちょっと、あれは無理なのじゃ。」

 

「じゃあ分解する?死ぬでしょ?」

 

「魔力がある限り身体を消し飛ばそうが頭が吹き飛ぼうが再生するらしい、止めとけ。」

 

ハジメは疲れた様な声でそう言ったため全員が珍しいものを見る様な目をしている。

 

「そういえば戦ってるのって誰なの?ビットがあるから桜ちゃんは居るよね?」

 

「全員聞いて驚け、桜一人だ。」

 

ハジメの言葉に全員が驚いて土煙が待っている場所を見る。

 

「死になさい!」

 

『ウオオオオォォォォォォン!!』

 

其処には殺意の塊と化した桜とビットからの攻撃を避ける事もせず桜に突撃し、全能感に酔いしれているであろう天之川の姿があった。

 

『・・・。』

 

「あれな、風魔を殺せるって言ったからああなったんだぜ、あの程度じゃ無理だ、というか俺も殺すつもりみたいだからな、後で締めとかないと。」

 

「・・・止めないの?」

 

「ドンナーで援護しようとするだろ?ビットの銃口が向くだろ?大量に撃ち込まれるだろ?あとは分かるな?」

 

全員が怯えて声すら出さない。桜の怖さは十分に伝わった様だ。

 

「風魔は何処にいるんだろうな、桜の説得頼みてぇ・・・。」

 

ハジメの言葉は桜以外の全員の意見だった。

 

ーーーーーーーー

無茶言わないで下さい、ハジメさん。

 

俺あんな状態の桜見たこと無いんだぞ?どんな声かければいいか分からん、というかニセモノさんや、さりげなく笑い転げんな、誰も気付いてないけどさ。

 

『いや・・・ふはっ・・・やば・・・お前の仲間最高・・・!』

 

所で俺の体は桜な訳だが、これって元の人間の体に戻るんだよな?

 

『戻るぞ・・・フフッ・・・ちゃんとタイミング見て元に戻すから・・・フハッ・・・待ってろよ・・・ククッ・・・。』

 

お前ぶん殴ってやろうか、いい加減笑うのをやめろ。

 

『所でどんなタイミングで登場が良い?仲間のピンチにボロボロのお前が登場ってのと俺が死ぬ直前に封印が解かれたみたいな感じで戻るの、それか無理矢理桜の封印を破って出てきましたみたいなのとかどうよ?』

 

え、全部やりたいんだけど。

 

『了解、全部できる様に祈っとけ、まぁ多分出来るだろうが。』

 

そっか、世話になる。

 

『俺はニセモノなんだから感謝なんぞいらん、どうせなら俺に依り代作ってくれ。』

 

ゴーレムかホムンクルス的なのかシステム的なのか、どれが良い?

 

『ん〜、ホムンクルスかシステムで、ゴーレムはなんかいやだ。』

 

分かる。じゃあ術式編んでるから時間が来たら言ってくれ。

 

『了解。』

 

ーーーーーーーー

「はぁ・・・はぁ・・・。やっと、動かなくなった・・・。」

 

『・・・。』

 

「魔力切れ?なら、やっと殺せる・・・。」

 

桜はビットを回そうとするが桜のビットは地面に落ちて動かなくなっている。

 

「・・・動かないや、なら。」

 

桜は風魔からもらった護身用の短剣を逆手に持って近づいていった。

 

「桜、止めろ。」

 

「ハジメ、止めないで。」

 

「いいや、俺は止める、あいつから言われてる、桜に人殺しをさせないでくれってな。」

 

「・・・私だって、怒るときは怒るんだよ?」

 

「知ってる、今もブチ切れてる。」

 

「なら、なんで、邪魔するの?」

 

「風魔は感情で人を殺したら絶対に後悔するって言っていたからな、桜にそんなのを味わわせたくないだろう。」

 

「・・・もう・・・いいよ、ハジメに任せる。」

 

桜はすぐに諦めた様だ。

 

「絶対後で風魔の事殴ってやる。」

 

桜の去り際に聞こえたその一言でハジメは風魔との約束を出した事を少しばかり後悔した。

 

そして、ずっと恨みの籠った目を向けている天之川を見る。

 

「お前、そろそろ子供やめたらどうだ?そんなんだから風魔に失望されんだよ。」

 

そう言って桜の下に居る風魔のニセモノの方を向く。

 

風魔のニセモノは手を叩いていた。

 

「実に見事な狩りだった、いたずらに弱らせ、抵抗できない様にしてから、とどめを刺すことなく、自分勝手に捨てる、見事な狩りだ、これが正しいと感じる人間の思考はやはり面白いものだ。」

 

「それを本気で言ってんのなら、お前、やっぱり風魔じゃねえよ、仮にそれが風魔の一側面として、あいつはそれでも人間を讃えるだろうさ、なんせ、自分を殺すのは人間だって公言してるからな、あの馬鹿は。」

 

「そうだとも、私という化け物を倒すのは人間だ、半分が魔物?半分が獣?そんな物は関係などありはせん、私を殺すのは、自分こそが人間だと信じる者が見せる、輝きのみ。」

 

「なら、お前自身が戦ってみたらどうだ?あいつのニセモノなら、お前はあいつの負の側面、絶望を叩きつける為にトラウマや恐怖の記憶を固めて作られたもののはずだ、あいつが目を逸らしたいと思うもの、あいつが悪であれと信じた者がお前のはずだ。」

 

「見事、君の推測は全て当たりだ、私の強みはオリジナルの弱み、私が強ければ強い程、彼は弱いだろう。」

 

「あいつが弱いなんてハナから知ってるんだよ、問題は、そのオリジナルが何処にいるかを聞いてんだ。」

 

ハジメ以外は風魔のニセモノの動きを封じようと散開している、何か動きでもすればすぐにでも攻撃出来る位置に立っている。

 

「ふむ?君達には彼が見えないのかね?ああ、そうだった、彼は私が変えたのだったな、では、紹介してみせようじゃないか。」

 

風魔のニセモノはもたれかかっていた桜に手を付き、魔力を流した。

 

すると桜は大きくなり、中から何時ぞやの琥珀の様な水晶が出て来た。

 

その水晶の中には、ボロボロになった風魔が居た、血塗れですぐにでも死にそうだ。

 

「私が死ねば彼は封印から解放される、だが、彼が封印されている間は私のステータスは彼の分と私の彼と話した際の強さがそのまま足される、少なくとも、君達が1日中攻撃した程度では私は殺せない。」

 

「知るかよ、それなら1週間でもお前をぶっ飛ばすだけだ。」

 

ハジメはそう言ってドンナーを構える。

 

「そうか、君達は絆というものを信じるのだったな、目にも見えないあやふやな物に君達は信を置く、私には到底理解出来ん、だが、彼もそうだった、故に私も武器を手に取るとしよう。」

 

そういう風魔のニセモノが手に出現させたのは紅い刀身をした刀だ。

 

「では第二幕を始めようか、私が狩人で君達が獣だ。」

 

「ハッ、ついにぼけたか?化け物、テメェが獣で俺達が狩人だ、さっきと何も変わらねえよ。」

 

「・・・そうか、であれば、化け物を討伐せんとする勇者よ、化け物の狩りを知るがいい。」

 

化け物の討伐戦が始まった。




完全にボスみたいな空気を出してるニセモノの脳内では本体と仲睦まじく笑いあっている模様。


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化け物は。

「はぁ!」

 

背後に回り込んだシアがドリュッケンをニセモノに当てる、ドリュッケンは爆発し、パイルバンカーの様な機構が発動するが、障壁に防がれた。

 

「ちょっと硬すぎですぅ!!」

 

ニセモノは振り向きざまにシアに向かって踏み込むが手首と切っ先にドンナーが撃ち込まれ弾かれた。

 

ニセモノが刀を構え直すと同時に周りに大量のビットが出現し全方位から掃射される、そのビームの雨も小さな障壁を幾つも作り出されることで防がれた。

 

此処まで風魔のニセモノは数歩しか動いていない、魔力量の違いが違い過ぎるのだ。

 

「・・・厄介。」

 

下から5匹の龍が地面を突き破って出て来たが風魔のニセモノの姿は既に無く、上から同時に奇襲しようと回り込んだティオの真上でその魔法陣をティオに向けていた。

 

「・・・!」

 

「さよならだ。」

 

全員の顔が引きつる。

 

「さぁせぇるぅかああああああ!!!」

 

「えっ。」

 

脳筋が谷口を思いっきり風魔のニセモノに向かって投げる。

 

谷口は涙目になりながらも結界を展開しながら風魔のニセモノの前に飛び出した。

 

風魔のニセモノの魔術は結界によって防がれ、ティオは離脱した。

 

「焦波!」

 

八重樫は谷口を助ける為にわざと近づいていった、何合いか打ち合ったか傷は八重樫のみ増えていく。

 

「八重樫、下がれ!」

 

その合図と共に八重樫は下がろうとするが風魔のニセモノはピッタリとくっついたかの様に離れない。

 

「チッ。」

 

少し間延びした銃声が幾つも上がる。

 

赤雷を纏ったドンナーの射撃だ。

 

風魔のニセモノは全てを最小限の動きで避けたがその間に八重樫は離脱に成功した。

 

「ぶっ飛べ、ヒュベリオン!」

 

ハジメの宝物庫から純白の光が2つ飛び出してくる。

 

風魔のニセモノは障壁を作り出し、斜めに反らすことでダメージを軽減させた。

 

「・・・この程度ならいけるな。」

 

「ならこれはどうだ?」

 

真後ろから聞こえて来た声に風魔のニセモノは振り向く。

 

ハジメはそれと同時にショットガン、アルカンシェルをぶっ放し、散弾が撒き散らされる。

 

「チッ。」

 

風魔は全ての弾丸を受け止めていた。

 

「少しヒヤリとさせられた、危なかったよ。」

 

「死ね。」

 

悪態をついてしまうほど何も出来ない。

 

ハジメに刀が向けられる寸前に消滅の刃が幾つも風魔のニセモノを襲う。

 

「ふむ、消滅か。」

 

その全てを一瞬で消し去った風魔のニセモノは白崎を見る。

 

「おい、こっち向けよ。」

 

ハジメはそう言った瞬間にアンチマテリアルマシンガンをぶっ放す。

 

「まだ理解しないのか?遠距離武器では俺は殺せん。」

 

「やっぱりお前はニセモノだ、周りへの目が養われてない。」

 

「ビット!」

 

銃弾が全て操作される、防ぐ為に展開された小さな障壁の横をすり抜け、風魔のニセモノの全身に大量の銃弾が叩き込まれた。

 

「どうだい?特製の水銀弾の味は。」

 

ーーーーーーーー

よし、術式は編めたな、後は外がどうなっているか。

 

『出番だ。』

 

お、ナイスタイミング、んじゃ用意しとくわ。

 

『了解。』

 

さて、やるか。

 

ーーーーーーーー

銃弾が叩き込まれた瞬間風魔のニセモノを中心に衝撃波が周りへと飛んだ。

 

全員弾き飛ばされ、骨を折ったりするものが何人か現れる。

 

ハジメは義手が半分から折れて使い物にならなくなり、桜は比較的傷は軽いがそれでも全身の至る所に切り傷がある。

 

ユエも傷は完治したが魔力は一瞬で底をついた。

 

その他のメンバーも似たり寄ったりな状況の中、風魔のニセモノはゆっくりと歩いてきている。

 

「やられたよ、俺が障壁で防いだのを見て編み出したものか。」

 

「防いだ挙句反撃までした奴の言う事じゃねえな。」

 

「そうだな、お前達が弱かった、ただそれだけだ。」

 

風魔のニセモノはそう言って刀を振り上げる。

 

「待って!」

 

振り下ろそうとした刀が止まった。

 

ハジメと風魔のニセモノの間に泣きそうになりながらも両手を広げた桜が立っていた。

 

「・・・そうか、私はオリジナルの模造品、君だけは切れないと踏んで出て来たか。」

 

「・・・。」

 

「どうした?足が震えているぞ?声も出せないか?君の勇気は素晴らしい、だからこそ、痛みなく殺してやろう。」

 

刀が迫る、ゆっくりと迫る刀が怖くなり桜は目を瞑る。

 

だが、思っていた様な鋭い痛みは来なかった。

 

驚いて目を開けるとそこには障壁があった。

 

「・・・え?」

 

全員の視線が水晶へ向かう。

 

水晶はヒビが入っていた。

 

そのヒビが少しずつ大きくなり、そして割れた。

 

中からは血だらけの風魔が倒れこむ様にして出て来た。

 

「おい、俺の女と親友に何してる・・・ニセモノ・・・!!」




大事なものの為に這い出てきた主人公、実際はただの八百長である。

でも此処からはガチ。


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いずれ堕ち

「おい、俺の女と親友に何してる・・・ニセモノ・・・!!」

 

「ふむ、オリジナル、どうやって抜け出した?」

 

「ハジメ達のおかげだ、どでかいのを大量に入れてくれたおかげで、封印の一部に綻びができた、後はそこから操作して、破壊すればいいだけだ。」

 

実際は出番が来たから封印溶けただけなんだがな。

 

「フッ、流石はオリジナル、天之川と同じ理想を掲げるモノだ。」

 

「言ってるだろう、俺はあんな阿呆じゃねえってな。」

 

「ククッ、まぁそれは良い、オリジナル、お前が出て来たところでもう遅いぞ、全員満身創痍だ、お前も体はボロボロ、立っているだけでも疲れるだろう。」

 

「だから死ねと?ふざけるなよ、ニセモノ。」

 

俺は痛む身体を無理矢理動かして刀を構える。

 

「・・・お前は今、とてつもない恐怖で満たされているはずだ、今すぐ逃げ出したいほどに、何故戦おうとする?」

 

「お前、前もその質問して来たな、封印されている間、お前にされた質問をずっと考えた。」

 

静かに言葉を出す。

 

「確かに俺は、戦いが怖い、死ぬのが怖い、痛いのが怖い、誰かが傷付くのが怖い、誰かが居なくなるのが怖い、ありとあらゆるものが怖い。」

 

「ならば、何故立てる?何故戦える?」

 

「それは・・・結局のところ、自分の為、自分のエゴを満たす為だ。」

 

「その結果、周りから排斥される事になっても?」

 

「ああ、お前のおかげで初心に帰る事ができた、俺は誰かを守る非力な人間ではなく、誰かを守る化け物になりたかったんだ。」

 

「まさか・・・化け物になる気か!?どうしようもない化け物に!?人間であるお前が!?」

 

ニセモノは本気で驚いている様だ、無理も無い、あちら側に流れる記憶からして知らない様だったからな。

 

獣になった天之川に近付く。

 

天之川は俺を憎悪の目で睨んでいた。

 

「ごめん、お前の力を奪わせてもらう。」

 

そう言って手を触れようとするとニセモノから怒りの声が聞こえて来た。

 

「止めろ人間、化け物にはなるな、化け物を倒すのは人間だ・・・!!」

 

「・・・クッ・・・アッハハハハハハハハ!!!」

 

天之川に触れ、その獣となる要因、悪の側面をすべて奪い取る。

 

目の前の奴が憎い、殺してやる、犯してやる、刺し殺してやる・・・そんな言葉ばかりが響いて来る。

 

「アハハハハハハハハ・・・ハハハ・・・ハハッ。」

 

気付けば身体は毛で覆われており、まさに化け物というに相応しい外見になった。

 

「そうか、お前は化け物になるか、ならば・・・死ね!一片すら残さん!消えていなくなれ!」

 

「ああ、最高だ、この力があれば、きっと、誰かは守れる。」

 

「消えろ!」

 

ニセモノから魔術が大量に飛んでくる、ハジメ達には爆発を除けば攻撃などほとんどしていないニセモノが全力で攻撃を始めた。

 

転生せよ(廻れ)

 

魔術を起動する、対人で使った事などこれが初めてだ。

 

堕ちた化け物よ(喪った人間よ)

 

魔術が俺に着弾し肉が弾け飛ぶ。それでも詠唱を止めない。

 

人間となり(化け物に成り果て)

 

死にかけるのは怖い、でも、愛した女を置いて逝く方がもっと怖い!

 

誰かを守る(敵を殺す)

 

「死ね!化け物!」

 

守り手となれ(死神となれ)

 

人間としての最終奥義、秘術、天性(ステイタス)付与。

 

爆発でもしたかの様に衝撃波が周りへ飛ぶ。

 

魔術を構成していた魔力も霧散し、新たな化け物(人間)がその産声を上げた。

 

「さぁ、第二ラウンドといこうじゃないか。我が名は・・・秋月風魔、いざ参る。」

 

その手には黒い刀身に赤い線が入った刀が握られていた。

 

「真打だ、俺を楽しませてくれ、いくぞ、紅黒龍(相棒)。」




ステイタス付与

ステータス付与ではなくステイタス付与である。

これは作者の二作目、何回も転生した奴がダンジョンに逝くのは間違っているだろうか?という作品での主人公のステイタスを加算させるものである、それに伴い元のステータスも強化され、最終的には同じ数値になる。

因みにだんまちにおいてレベルと言うのは1上がるだけでどんなに貧弱でも神話生物を片手で弾き飛ばすみたいな事ができる様になるということを念頭において聞いて欲しい、主人公のステイタスのレベルは24である。

24である(大事な事なので二回言いました。)

下手しなくても全てのステータスが風魔の魔力と同じくらいにまで上がるんですよ。

つまりインフレが起きる、チート化が進む、話の展開的に作者が大いに悩む、そして魂を吐き出すかもしれない諸刃の剣である。

でもロマンって大事やん?つまりそういう事だよ。


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そして愛され、人に成る

「何だそれは!?そんなもの、お前が創り出したものにはないはずだ!」

 

「当たり前だ、今作った、記憶の抽出と概念を混ぜ合わせ、魂の表面に出現させる、ニセモノにはまず出来ない、これは魂の記憶を持っているものしか使用する事はできないからな。」

 

「・・・もういい!貴様がどんなに強くなったところで化け物だという事は変わらん!」

 

ニセモノは激昂して走り出す。

 

「・・・真の魔術というものを見せてやろう。」

 

「ほざけ!」

 

魔導書を取り出す、そしてその起動術式を発動させ、呪文を唱えた。

 

交われ(リィンフォース)

 

『了解です!マスター!』

 

服装はバサバサとたなびくフード付きのコートから白を基調とした服装に変わる、背中には翼の様なものが広がっており、似た物を想像するとしたら魔法少女などでよく見る透明の板の様な翼だろうか。

 

『術式は既に理解しています、オペレートできる様なものはこの近辺には何1つ存在しません、頑張って下さい!』

 

「問題無い、コネクト。」

 

大量の魔術を飛びながら相殺していく。

 

全てのステータスがあのチート染みた魔力量と同じくらいの数値になっている今、時間を止める様なもので無い限り俺に対処できないものは無い。

 

これも相性があるから最強ではないが、少なくとも最強の切り札の1つだ、だからこそ、俺はそれを切った。

 

繋がれ(カイ)

 

『了解、マスター、ご武運を。』

 

俺と束さんが作ったISであるカイは何も言わずにハジメ達を守る為に飛び去った。

 

「はぁ!」

 

「少しばかり焦りが見えるぞ、落ち着いてはどうだ?」

 

「黙れ!」

 

ニセモノの刀を弾き飛ばす、ニセモノはすぐに新しい刀を作り出し飛んでくる。

 

嚙みつけ(モンスターフィリア)

 

ニセモノがその場から消える様に弾き飛ばされる、地面に激突したニセモノの上には俺の従魔の1匹であるイル・ワイヴァーンがニセモノを押さえつけていた。

 

「グッ、ガァアアアアアア!!?」

 

刀はイル・ワイヴァーンの鱗を1つたりとも切る事はできずに少しずつその爪を肉に食い込ませていく。

 

『主人のニセモノなど我が容赦する必要なし。』

 

「あんら〜、私達にも出番をよこしなさぁい、ワイヴァーン。」

 

地上にはオカマミノタウロスやお調子者のヘルハウンド、老練のコボルトなど、懐かしい顔が多くいた。

 

「主よ、遅き帰還、誠に嬉しゅうございます、主人の手を煩わせずとも、ニセモノなど我らで始末できるのですが、いかがいたしましょう。」

 

「いい、元々俺が買った喧嘩だ、俺がやる・・・あいつらの・・・ティオナ達の武器はあるか?」

 

ティオナ達の事も思い出した、今までの記憶を思い出す過程で苦いものも思い出すが、今は無視する、苦しむのは後だ。

 

「・・・ええ、ご武運を。」

 

「行ってくる。」

 

少しずつ歩いて近づいていく。

 

「ワイヴァーン、離せ。」

 

「・・・了解しました。」

 

ニセモノを離して飛び去っていくワイヴァーンは不満そうだ。

 

「・・・最後の質問だ、お前は、世界に正義があると思うか?」

 

「・・・そうだな、少しばかり俺の持論を聞いてくれ、俺はいろんな世界を回ってきた。その世界全てで言える事は確たる正義なんてものは無い。たとえ宇宙で戦争していた国家だろうが、大昔の古代の村、果てには戦地、時には化け物となり、色々な場所を回ってきたが、これは絶対に正義だと言えるものは何一つとしてなかった。

 

自分の友が悲しむのが嫌だと言って国を相手に戦いを挑んだ馬鹿がいた。

 

妻を殺されたと言って、殺した奴の家族を殺した男が居た。

 

自分が楽しみたいから、誰かを殺した殺人鬼がいた。

 

家族を守る為に、自分を偽った女が居た。

 

自分は孤児だから、誰にも愛されないと思い込み、真に愛する人を失った後で気付いた馬鹿がいた。

 

そして、家族を守りたいが為に、神を殺した魔王がいた。

 

全てが正義で、全てが悪だ。

 

周りに合わせる事が正義だと言うのならば、そうなのだろう、周りの意見が多ければ多いほど正義だと言うのならばそうなのだろう、でも大多数の人間ならともかく、正義に楯突き、たった1人を守る為に、その命を散らす事が悪だと言うのならば、本当の正義など何処にある?何処にも無いだろう?

 

俺は、そんな馬鹿達を見て来て、共に過ごして、気付いた、人が誰かの為に戦う姿は尊いものだと。

 

俺もそんな風に生きてみたいと。

 

そして俺にもそんな機会がやっと来た。

 

俺はこの命を懸けて、俺の大事な奴らを守る為に戦う。たとえそれが悪だとしても、いや悪だからこそ、正義に唾吐きかけてこう言ってやるんだーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー誰も守れない正義なんて糞食らえってな。」

 

「・・・クハハッ・・・なんだそれは、お前は、本当のろくでなしだ。」

 

「残念ながら、何処ぞのガキども曰く、俺は覇王らしい。」

 

「ククッ・・・覇王とは、なんともピッタリな名前だ。」

 

ニセモノは清々しい笑みを浮かべて刀を構える、既に全身に傷が出来ており、これが最後の一撃ということなのだろう。

 

「・・・ニセモノだから、真名ではないが、名乗らせていただく、秋月風魔。俺の名前は秋月風魔だ。」

 

「別にいい、どうせ便宜上だけのものだ、では俺も名乗らせていただこうか、覇王、秋月風魔。」

 

「「いざ、尋常に、勝負!」」

 

勝負は一瞬で片がついた、ニセモノは既に弱体化しており、俺は超なんて言葉では効かないほど強化されていた、どれほど元が強かったとしても負けるのはニセモノだった。

 

「迷宮の試練、合格だ、見事だった。」

 

「じゃあ、次は日本か、それともエヒトか、どちらにせよ近い内にまた会うだろう、それまでお別れだ。」

 

人間では心臓がある位置に手を突っ込み、ニセモノの体を一つの結晶体にした。

 

「またいつか。」

 

それを空間に放り込み、リィンフォースを分離させて俺を見ている従魔やカイを見る。

 

「・・・諸君、最近は仕事を渡していなくて済まなかったな、だが安心しろ、これからは大忙しだ、せいぜい働け。」

 

『ウオオオオオオ!!!』

 

「・・・マスター、貴女は、いえ貴方様は変わりないのですね。」

 

「変わるわけないだろう?前と同じ様に、気安く話しかけてくれて構わないぞ。」

 

「・・・いえ、俺はあくまでも従者ですので。」

 

「そうか。」

 

カイは男としての俺を見るのは初めてだったはずだ、少しくらいサービスしてやっても良いだろう。

 

体を作り変え、紅葉の体に作り変える。

 

「また・・・いっしょに居てくれる?」

 

「!!!」

 

「また、私の家族になってくれる?」

 

「・・・はい・・・はい・・・!!」

 

体を戻す、そして呆然としているハジメ達を見渡す。

 

「・・・さてと、もう分かったと思うが、俺は・・・そうだな、転生者というやつだ、まぁ今までの関係が変わることはないだろう、よろしく頼む。」

 

「風魔ー!」

 

「桜、ボロボロだけど、ただいま。」

 

「うん、生きてて良かった・・・良かったよぉ・・・。」

 

泣き始めた桜の頭を優しく撫でる。

 

「・・・驚いたな、あんなに魔物がいるなんて、しかも1匹1匹が下手したらあのヒュドラ並みの強さなんじゃないのか?」

 

「それよりももっと強いぞ、それにまだまだ一部だ。」

 

「お前にはいつも驚かされるな。」

 

「・・・私も驚いた。」

 

「妾より明らかに強いのじゃが、あのドラゴン、自信が無くなってしまいそうじゃのう。」

 

「はわわ、うさぎさんもいるのですぅ!つまりウサミミ仲間が出来るのでは!?」

 

「なぁ!お前力強いんだろ?後で喧嘩しようぜ!」

 

「あんらまぁ!漢らしい子が居るじゃないの!私の好みだわ!」

 

「待って!そっちの道には行かせないよ!?」

 

「うふふ、大丈夫よん♡貴女、頑張りなさい!恋愛相談なら何時でも受けるわよ。」

 

「も、モフモフ。」

 

「触るっすか?良いっすよ!意外とモフモフらしいんすよ!」

 

「お前が勇者か、我が主の持論を聞いてお主はどう思った?」

 

「・・・うるさい。」

 

「フッ、夢を捨てるにはまだまだ若いのだから、足掻けば良い、足掻いた結果の一つが、主なのだからな。」

 

周りを見るとみんな自由にやっている。

 

白崎はあの医者ゴブリンからエリクサーの作り方を書いた紙を貰っていたりしていた、いつの間にと思ったがまぁ良いだろう。

 

「あっ・・・。」

 

視界が歪み、倒れそうになる。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「あはは、反動が今来たみたいだ、暫くは動けそうにないな。」

 

「なら私が運ぶ、一緒に行こ?」

 

「・・・ああ、お望み通りに、お姫様。」

 

「もう!茶化さないでよ!」

 

全員が笑っていた。後は魔法を貰うだけだ。



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安心

あの後先に進み、桜とハジメに支えてもらいながら魔法を受け取った、概念魔法とやらを取得する時にハジメとユエが気絶し、俺のバランスが崩れ、俺の右手と右膝がもの凄い痛みを発したりしたが些細な問題だった。

 

問題は、気絶した2人を運び、ついでに治療されている間、俺の頭を膝に乗せてずっと慈愛の笑みで俺に微笑みかけている桜と、その状態を見て目を輝かせたアッシュとミナだ。

 

2人は取り敢えず死者がいない事に安堵した後、ボロボロの俺を見て驚いていたが、ハジメが気絶して俺が右手を押さえて転がっているのを見て笑い転げ、白崎と桜が少しずつ俺に回復魔法をかけながら色々としているのを見てからかってきたりとまともな事をしやがらねぇ。

 

でも桜はそのからかいに頬を赤くして照れているのだ、それが弄る2人を燃え上がらせるのだ、止めてくれと言ってはいるが俺も恥ずかしい、強く言えないから調子にのる。

 

「うりうり、可愛い彼女持ってんだから大事にしなさいよ?」

 

「ニヤニヤすんな桜も照れるなアッシュはサムズアップすんな何のサムズアップだ!?」

 

「絆が育まれたようで何より、仲良くしろよという意思表示だ。」

 

「・・・。」

 

「アレ?もしかして照れてる?顔赤いじゃん!ねぇねぇ、照れてるんでしょ?桜ちゃんを思い出して照れてるんでしょ?」

 

無言でミナの頭を掴む。

 

「あだだだだだだだだだ!!!?ちょっ、ミシミシ言ってる!ミシミシいってるからぁ!」

 

「フハハハハ、俺を弄るのは面白いか?」

 

「結構面白かったです、ああああ!力込めないで!桜ちゃん!アッシュ!助けて!」

 

「・・・。」

 

桜は未だに現実世界から帰っていない、そもそも聞こえていないようだ。

 

アッシュは俺に向かってサムズアップした。

 

「了解。」

 

「ギャアアアアアアア!!」

 

ーーーーーーーー

桜が止めなければあの時間は後30分ほど続いたのではないだろうか。

 

桜が止めてミナは救世主でも見るような目をしていた。

 

ハジメ達が寝ている部屋の方から叫び声が上がったのできっとハジメ達が起きたのだろう。

 

「ところで、ハジメ達はともかく俺達はあとミレディライセンに会わなきゃいけないんだよな?」

 

「そうね、私達もちょっと興味あるし、一緒に行こうかしら。」

 

「ならついてきてくれ、そっちの方がありがたい。」

 

「俺はそろそろ剣を使わないと腕が鈍りそうだ。」

 

そういえば、あいつら何やってんだろ、八重樫達が魔物達の面倒を見てたはずなんだが。

 

近くの扉を開けてみんなのいる部屋を覗いてみる。

 

「ぶべら!?」

 

「ああ!?」

 

「あんら!このくらい防がないと私達には敵わないわよぉ〜。」

 

「り、龍くん!」

 

「うおおおお!」

 

何やってんだあいつら。

 

取り敢えず見なかった事にして話を再開した。

 

「取り敢えず、俺のステータスプレートを見てくれ、絶対おかしな事になってるからな。」

 

「どういう事だ?」

 

「いや、見た方が早い。」

 

ーーーーーーーー

秋月風魔 17歳 男 レベル:48(??)

天職 魔術師

筋力 86

体力 9000

耐性 1570

敏捷 990

魔力 3800000

魔耐 100000

技能 魔術作製[+複合魔術] [+魔術書き換え][+時間魔術][+干渉魔術][+神羅][+覚醒] 魔法操作[+同時操作数増加] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+消費魔力軽減]高速魔力回復[+回復量上昇][+魔力回復量超上昇][+全体回復総量上昇][+魔力吸収]想像構成[+複数同時構成]同時思考[同時思考数増加]言語理解

 

ーーーーーーーーー

 

前に見たときはこうだった。

 

だけど今みんなに見せているステータスプレート早いこうだ。

 

ーーーーーーーー

秋月風魔 17歳 男 レベル:24

天職 魔術師 覇王

筋力 9648500

体力 900000

耐性 10060000

敏捷 89064000

魔力 750000000

魔耐 5690040

技能 魔術 言語理解 ステイタス付与 神羅 覚醒 覇王 干渉

 

ーーーーーーーーー

 

これを見た全員が声を揃えて呟いた。

 

『バグ?』

 

「そう思うだろ?多分壊れてねぇ。」

 

「風魔、風魔は何時からレイドボスになったの?」

 

「レイドボスよりおっかねぇよ。」

 

「能力値もそうなんだが、なんか技能欄がすっきりしたな。」

 

「うん、追加されてたものが全部無くなってる。」

 

というか覇王が追加されてて笑えない、しかもよく見たら天職にも追加されてる。

 

「あとね風魔、私途轍もなく嫌な予感がするものに気がついちゃったんだけど。」

 

「奇遇だな桜、俺もだ。」

 

「「レベルが下がってる。」」

 

レベルが24になってる、ステイタスを付与する時、向こうの身体能力を再現するのに体の改造が必要だったとはいえこういう計算にしたらこんな風になるのか、チート化が進む進む、いや、チートじゃねえな、バグキャラだ。

 

「これってつまり少なくともあんたは4倍までレベルが上がるって事?」

 

「そういう事になるな、このレベルに心当たりは?」

 

「かなり前の世界で世界最強レベルの奴と死ぬ何年か前まで戦ってた、ライバルだったよ。」

 

『・・・。』

 

「因みにその世界だとレベルが1でも上がれば迷宮の魔物みたいな強さになるぞ。」

 

「・・・という事はあの魔物達って。」

 

「その世界での魔物だな、俺の眷属だったから俺が死んでもあいつらは魔力さえあれば無限リスポーンの物量大作戦よ。」

 

「酷すぎる。」

 

一番弱いはずの医者ゴブリンが対物ライフルレベルでやっと傷つくレベルみたいだからな、戦闘に関しちゃ誰にも負ける気がしないとはこの事。

 

まぁ、種族特性的な意味で族長達はかなりキツイが。

 

なんたって今も最弱種に近いものなのに最強の座を欲しいままにしてるからな、技術、経験、基礎、努力その他諸々完璧以上に鍛錬してる。

 

ただ下級の太陽神と防戦ながら戦えてた時は割と本気で引いた、お前ら何で避けれるんだよ。擬似太陽を逆に溶かし尽くすとか神話かよ。

 

この話は置いておこう。

 

「まぁ、それはともかくとして、あいつらのステータスも似たようなもんだと思ってもらって構わない。問題は・・・コレだ。」

 

俺はいつの間にか紅黒龍を握っていた。

 

「・・・それは?」

 

「世界を滅ぼすと言われたほどの力を持った龍の全身を使って作った刀、紅黒龍、それの真打だ。」

 

「確かあんたの刀は紅い刀身だったわよね。」

 

「ああ、でもこれは艶消しの黒の中に一本だけ紅い線が走っているだけの刀だ、ただ、これは俺が自分で封印したものなんだ。」

 

「封印?何で?」

 

「単純に、武器としての性能が良過ぎるのさ、コレは。」

 

「どういう事?武器が良いのは良い事じゃない。」

 

「昔、これを軽く振るつもりで横に薙いだら遠くの人脈の山が切れた。」

 

全員がドン引きしている。

 

「それって、いつの時?今のこのレベルの時じゃないわよね。」

 

「このレベルの半分、12の時だ、その時に軽く振ったらそうなった、今の状態で振ればどうなるか分かったものじゃねえ、それに、威力を9割がた減衰させても俺が死ぬまで使えた代物だ、耐久性も保証する。」

 

「この武器が破壊されるような事はまず無いと言って良いわけね?それで?あんたがこれを出した理由は何?」

 

「エヒトと戦う時、制限を全て解除する、だから、気を付けてくれ。」

 

「死ぬときゃ死ぬのよ、今更遠距離から即死の刃が降ってくるくらい耐えられるわ、そうよね?」

 

ミナはそう言って笑った、桜とアッシュも無言ながら肯定してくれている。

 

「ありがとう。」

 

「良いわよ別に、あんたがなんか悩んでたらあの魔王様でも、私たちにでも良いから打ち明けなさい、話を聞くくらいの事なら誰だって出来るわ。」

 

善処しよう。




ある意味全盛期の体を取り戻した主人公、神殺しをする度に似たような事をしているのでその度に苦しむけど後悔はしていないのだ。

というか書いててミレディをどのくらい早く攻略してやろうかと思ってしまった。


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ハジメの力

天使達だけの集会は終わり、ハジメ達がいつの間にか概念魔法を作ろうとしていたので暫く見学させてもらった。

 

少しずつ俺が補助し、魔力の放射をし始めた辺りで全員が慌てながら出て来た。

 

「・・・。」

 

全員が来てから映し出されたのはハジメのオルクス最下層での出来事だった。

 

熊に食われ、絶望や孤独に苛まれ、今のようになってしまう過程だった。

 

全員が息を飲む、無理も無い、捕食者としての視点は人間にはまず向けられない、もし向けられるとしたらそれは弱者になった時か、人間より格が上の生物がいる世界だ、そしてそれは野生の動物であったり、ドラゴンだったり、同じ人間や異種族だったりする。

 

その様子を見た俺はいつの間にか手に力がこもっていた。

 

桜は泣きそうになっているし、他のハジメの嫁達も似たり寄ったり、だがアッシュやミナは真顔で見つめている。

 

これは誰にでも起こり得る事なのだ、経験の無い事は分からない、ハジメは英雄のような人間であるのだろう、普通の人間では生きようとする気力も湧かないのだから。

 

ひとりぼっちで死ぬのは嫌だ、それは誰でもそう思うだろう。

 

味方を殺し、敵を殺し、守るべき人間も、国も、果てには自分さえ殺し尽くしても満足しない殺人鬼は、その異常性を誰かに受け入れられてから、人を守る怪物へと変化した。

 

誰かを守れと言われた人間は、化け物と相対し、理性を無くした化け物になる事を決意した、自分の一番忌み嫌う化け物になる事をだ。

 

死ぬなんてふざけた事をぬかす奴は許さない、死ぬ事は逃げだ、最期までどんな形であれ戦う事を俺は強制する、それがどんなに辛い事であっても、それが贖罪となりうるのだから。

 

古い友人を思い出す、殺人鬼であった俺を止めようと化け物になり無謀な戦いを挑んできた友人を、そして、たった1人、敵と定めたもの以外いない戦場でその命を散らした親友を。

 

ハジメは地獄から這い上がった人間だ、序列の最下位から最強になった、真の強者だ、だからこそ、誰よりも脆い、極限状態で強者になった者は、少し離れただけでダイヤの様にすぐに割れやすくなる。

 

まるで火山だ、ダイヤを吐き出した火山から離れ、その輝きを増したダイヤは誰かの手によって容易に割れる。

 

「クソみたいな神がこの試練を与えたのなら、もう試練は良いだろう、もうあとは静かに暮らすべきだ。」

 

「・・・風魔。」

 

試練を与える神でも、ここまで厳しいのはヘラクレスなどの神代の英雄くらいのものだ、こんなもの、この時代には過ぎたものだ。

 

タバコを取り出しゆっくりと吸う。

 

「・・・。」

 

ハジメとユエは魔力切れで気絶し、アーティファクトはギリギリで完成した様だ。

 

ハジメ達に魔力を分け与えながら静かにそのアーティファクトを見る。

 

アンティーク調の鍵、ハジメ達の最後の言葉からどこでもドアの様なものなのだろう。

 

・・・よくもまぁこんな物を。

 

ハジメ達が起きてアーティファクトを使用し、カムと熊の姫さんの情事を映し出す珍事こそあったものの概ね問題は無く、普通に使える様だ。

 

俺の魔力では腐る程使えるが、そもそも俺はそんなに移動をしない為問題無い。

 

というか、俺1人ならともかく他が無理だ、魔力に耐えられねぇ。

 

「谷口、少しついて来い、1匹だけ魔物を貸してやる、存分に使え。」

 

「え?ちょっと、待ってよ!」

 

「脳筋、少し借りていく。」

 

「え?俺?まぁ良いけどよ。」

 

脳筋で分かるのかお前・・・成長したな。

 

「コボルト。」

 

「ハッ、何でございましょう。」

 

「こいつの配下を手に入れる手伝いをしろ、虫だろうが獣だろうが構わん、片っ端から従属させろ。」

 

「了解しました。」

 

「ねぇ。」

 

「・・・何だ?」

 

「何で私にこんなに協力してくれるの?普通私だけじゃなくてみんなの世話をするよね?でも、私だけいつも色んなものをもらってる。」

 

目敏いな、気付かなければ良かったものを

 

「うちのバカ共に似てるんだよ、お前。」

 

「うちって、孤児院の?」

 

「お前、本当はもっと性格違うだろ、自分を騙して、騙して、騙し続けた結果、元の性格が分からなくなった。お前、1人は嫌なんだろ?」

 

「えっ・・・。」

 

「うちのバカ共の殆どは戦争で親が死んだり、殺人鬼に殺されそうになった所を助けられた様な奴らばっかりなんだ、だからこそ、トラウマを持っている奴も多い、お前は、甘え方を知らない子供みたいな雰囲気が何回か出てた、それも、誰かと一緒にいるときに限って。」

 

谷口は目を見開いて驚いていた、信じられないといった様子なのだろう。

 

「だからこそお前は他人を見ることに関してはかなり敏感になった、1人でいるのは嫌だが、傷つけられるのはもっと嫌だっていう無意識のうちに敵か味方を判断する様になった、自分に危険が及ばない味方と自分を害するかもしれない敵へと。」

 

谷口は後ずさった。

 

「だから、これはただの親切じゃない、敵からの情けだ谷口。必ず生き残れ、生き残った上であのバカを助け出せ、救うのは俺の役目だ。」

 

谷口の顔を見る、恐怖が入り乱れている様だ、負の感情がないまぜになった顔で俺を見ている。

 

こういう奴は後々面倒なんだが、仕方ない。

 

「いざとなったらハジメを頼れよ小娘、老兵の経験で引っ張ってやるから、死ぬ気でついて来い。」

 

それから数日間俺達は訓練やら戦闘やらを繰り返した。

 

その結果天之川は剣技だけなら俺の同等程度にまで上がった、そういう所は素直に羨ましい。

 

谷口とはまだ話せていない、明らさまに避けるからだ。

 

桜も不安そうな顔をしているが、俺は余り気にしていない、孤児院のガキ共に似ているだけなのだ、そこまで手助けする気もなかったしな。

 

「そろそろ出発しようか。」

 

「だな。」

 

ハジメが迷宮攻略の証を掲げると氷の竜が出現し、背中に乗せた。

 

飛び立って数秒後、遠くに魔力反応を発見した。

 

「全員戦闘準備、奴さん達、集団で固まってる。」

 

そういうと同時に全員が得物を構える。

 

暫くすると魔人族が余裕たっぷりの笑みで俺達を見ていた。




駆け足だけど本当に書くことないんだ、すまない。


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魔王城

「・・・ふむ?君は誰かね?」

 

「フン、人の事すら覚えていないか、化け物が。」

 

最初っから煽られたんだけどどう反応すれば良いんだこれ。

 

「君、化け物という割に余裕そうじゃないか、原因はそこの・・・誰だっけ?まぁ何でも良い、人形の力があるからかね?」

 

ハジメは誰だっけこいつという目で見ているので多分ハジメはあった事はあるのだろう。

 

ユエ達はギラギラとした目で見ているのできっと因縁は深いと思われる。

 

「取り敢えず聞くけど、人形遊びに熱心な魔王様に言っておけ、ついに裏切ったか、とな。」

 

「何だと?」

 

エヒトの情報を漏らしたのはこの世界に隠れていた神だ、だが、人形を連れている時点で、というか人形の現界先か魔王城な時点でその神が魔王ではないかという仮説があった、そして、人形と戦っているならともかく、部下と人形を一緒にしていることから相手は敵だ、神は自分の権能の及ぶもの以外を使いたがらない、だからこそ、これは明確な裏切りと同じだ。

 

まぁ、雑談はここまでにしようか。

 

「それで?お前達の目的は何かね?」

 

「チッ・・・寛大な我が主は貴様らの厚顔無恥な行いにも目を瞑り、居城へと招いて下さっている。我らはー

 

マジで?馬鹿じゃねえの?フッハ、殺したろ!そいつ殺したろ!考えなしの馬鹿は殺したろ!ええぞ!

 

「・・・すまん、話を聞いていなかった?えっと?確か馬鹿が俺達を招待していると?自分の家に?」

 

「・・・貴様・・・そうだ、我が主は貴様らを魔王城で待っている。」

 

「なるほどなるほど、では君達は人質でも取っていそうだ、その余裕はそうなのだろう?人質は・・・そうだな、クラスメイト、愛子先生、王女さん、あと考えられるのは・・・レミアさんとミュウちゃん。」

 

最後の2人が出た瞬間に世界が凍った。

 

ハジメの殺意だ。

 

「ハジメ、落ち着きなさいな、番を取られて叫ぶ獣じゃないだろう?」

 

「あ?」

 

「そう喧嘩腰になるなって、幸い、こいつら全員迎えみたいだし、人質は死んだら終わり、そこで終了なんだから、生きているのは確実だ、相手の性格から考えてお前と俺を潰したいなら親しい者を苦しめて目の前で殺す、なら、少なくとも俺達が行くまで無事だろう?なぁそうだよな?さっきからずっと隅でガタガタ震えて怯えてる中村さんよ?」

 

「ヒッ。」

 

おっと、俺もかなり殺気立っていたみたいだ。

 

「あとさ、お前が何をしようと俺は別に構わんが、俺はお前の出方次第で全てを破壊するぞ?」

 

「・・・化け物め。」

 

「化け物で結構、俺は誰かさんを一緒守らなくちゃいけないみたいだからな、その為なら化け物にだってなってやろう。」

 

中村はそれ以上喋らなかった、ただ、桜を憎悪の目で睨んでいた。

 

刀に手を伸ばすと慌てて周りが止めてくる、敵じゃなくてお前らが止めるのか。

 

「ハジメ、君が決めてくれ、俺はそれに従おう、手段も、過程も全て操作してあげるから、さ。」

 

「・・・そうか、おい、招待を受けてやる。」

 

「フ、フン!最初からそうすれば良いのだ!ならば武器を渡してもらおう。」

 

「はー、馬鹿なんですかー?アホなんですかー?それとも獣より脳みそが無いのであらせますかー?獣でも自分の武器は渡しませんけどー?それ渡せって、はー!流石天下の魔人族様は言う事が違いますわー!じゃああなたの武器も預けてくれません?」

 

ちょっと反応面白そうだから煽ってみたかった。

 

「渡すわけ無いだろうが!自分の立場をわきまえろ!」

 

「えっ、俺たちの立場って客人とその護衛だよね?全員が客人で全員が護衛だよね?えっ、武器も持ってない護衛がどうやって責務を全うしろと?それに武器持ってるあなたが守る気無いなら俺達自分で自衛しなきゃいけませんよね?その為の道具が武器ですよね?えっ、分かってます?その辺りあなた理解してます?それに武器持ってるお迎え様が守る気無いんでしょ?武器突きつけてさっさと来いって言ってるのが今の状況なんですよ、あなたそんな状況で武器を手放せって、えっ、俺たち客人ですよね?あなた達が俺達を招待してるんでしょ?客人を脅迫するのがお迎えの役割なんですか?」

 

おお!めっちゃ怒ってる!やっぱり煽るのって楽しいわ。

 

「うわぁ、めちゃくちゃ楽しんでるのが分かるよ、桜ちゃん、あの人っていつもあんな感じなの?」

 

「暴言吐いてきた人とか迷惑な人にはあんな感じだよ、それで相手が怒ってきたらもっと言い方がいやらしくなるよ、煽るのは慣れてるって言ってたけど絶対楽しんでると思うよ。」

 

「うわ、諦めの言葉が予想以上におっかなかった。」

 

「貴様、言わしておけば!」

 

フリードが動く前に首を掴む、呼吸できる程度に圧迫せず、尚且つ力を込めたら一瞬で首が折れるような微妙な力加減だ。

 

「言わしておけば・・・何?俺は今イラついてるんだ、お前ら全員殺して魔王城に突っ込んで核爆弾落としてもいいんだぞ?」

 

『えっ。』

 

「安心しろよ、放射能は数秒で死に至るレベルのやつ使ってやるから。」

 

「何一つ安心できる要素が無いよ!それにとんでもない超極悪効果じゃん!」

 

安心しろ谷口、広がるタイプは地球くらいなら数秒で埋め尽くすぞ。

 

まぁそれは置いておいて、俺が首を掴んだ魔人族は俺の手を掴んで苦しんでいる。

 

「今ここで死ぬか?それとも後で死ぬか?」

 

「お止めなさい、イレギュラー。」

 

「お前、人形?いや、魂入りか。」

 

「ええ、私はアイン、と申します。そして今あなたがそんな事しても無駄です、こちらの状況は既にあちらに漏れています、あなたがフリードを殺せばあちらの人質の誰かが死ぬ事になるでしょう。」

 

「・・・チッ。」

 

中村とフリードは先程までの余裕が嘘のように消え、俺達を警戒しながら魔王城まで飛ぶことになった。

 

「すまん、ハジメ、交渉は失敗だ。」

 

「別に良い、お前もあんな博打を任せてすまないな。」

 

「ハハッ、こんなものだ、それに俺はまたバグったみたいだからな、神だろうが、そう簡単に負けはせん。」

 

そして暫く飛んでいると魔王城に到着した、俺の睨んだ通り、ミュウやレミアさんも連れ去られていてハジメ達と熱い抱擁をしていた。

 

「あんたが、魔王か。」

 

「そうだ、イレギュラーよ、私こそ、魔王である。」

 

とりあえずクラスメイト達を桜とアッシュに守らせておくミナは遊撃。

 

「そうかい、で?申し開きは?あんた、その見た目からしてユエの親族の吸血鬼だろう?それに、神代魔法も使える。」

 

「いかにも、私は変生魔法を使える、反逆者達の言ったことが真実だと分かり、私は神に敵対した。」

 

うっそだー!お前前情報にあったアルヴだろー?お前〜!ゲームじゃなくリアル騙して悪いがとかめっちゃ久しぶりなんだからなー!

 

だっていつも仕掛ける側だったからな!

 

「そして、今はユエと名乗っているんだったな、私の孫アレーティアよ。」

 

はーやっぱなりすましは言う事違いますわー!

 

そして色々とご高説を垂れているアルヴはユエに抱擁を加えようと立った瞬間にハジメから銃撃を食らった。

 

「親友である風魔や桜はともかくな、誰が俺の嫁を呼び捨てにして良いっつったあぁ!?」

 

「ふっは!ハジメナイスゥ!はっはっは!気分はどうかねアルヴさぁん?ねぇねぇ今どんな気持ち?三文字で答えて?ばれないと思った?ねぇばれないと思った?なりすましのおバカ!あー!もうこんなん日本に帰ったら呟くしかありませんわ。」

 

「風魔、キャラ崩れてるよ。」

 

「おっと、こりゃ失礼、で?実際どんな気分よ、格下だと思ってた相手に見破られてんぞ?魔王さんよ。」

 

魔王は笑いながら立ち上がり目の前にいる俺を見た、あ、今のうちに地雷仕掛けとこ。

 

「よくもやってくれたな、イレギュラー!もう少しで引き込めそうだったものを。」

 

「・・・ごめんなさい、全くそんな事はなかった。」

 

「何だと?」

 

ユエの言葉に訝しげに視線を向ける魔王はユエが指を刺した俺を見る。

 

「いやー魔王城に来たときからずっとしてたんだけどね、誰も彼も全員触れてくれないからさぁ、俺ちょっと寂しかったんよ。」

 

俺の背中には

 

魔王は恐らくエヒトの下僕のアルヴという負け犬でーす!恐らくユエの家族の誰かに変装してまーす!いろんなこと言ってくるけど本人死んでるから信じないでね