ARM学園の異端児(仮題) (シェイファー)
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「・・・ふぅ、一旦休憩するか」
俺こと伊礼蒼汰は家にある倉庫の整理をしていた。
数日前、俺の祖父である伊礼十治郎が寿命でこの世を去った。
既に葬式は終わり、今は遺品を整理している真っ最中なのだが・・・。
「ったく、遺品を探すついでに倉庫の整理まで押し付けてくるんだから。親父の奴め」
腰を下ろしながら父親に毒づいてみる。
親父はこの家での絶対権力者で、俺が断ろうとすると「いいから、やれ」の一言でやらざるを得なくなるのだ。
本当ムカつく親父だぜ。
一息ついたので整理を再開する。
何か面白いものだったり高く売れそうなものでもあればモチベも上がるんだが。
なんて考えていると棚の上にいかにも高そうなものが入ってますよと言わんばかりの装飾が施された箱を見つけた。
「どれどれ、早速中身を拝見っと」
幸い鍵はかかっていなかったのでそのまま開けることができた。
中に入っていたのは古ぼけた白黒写真と指輪だった。
「写真と指輪って・・・いかにも遺品って感じだな」
手に持っていた写真を見てみる、そこには何人かが肩を組んで写っている所謂集合写真で、風景からしてどこかの外国だろう。
写っている人物を一人ひとり見てみる、やっぱり写ってるのも外人だ。
そのまま眺めていると1人の人物に目が留まった。
俺は真底驚いた、自分と瓜二つの人物が映っていたのだ。
「ま、マジかよ・・・ばあちゃんが俺のことを若いころのじいちゃんそっくりってよく言ってたけどこりゃマジでそっくりだわ」
じいちゃんより何十年も前に逝ったばあちゃんのことを思い出す。
とても優しかったばあちゃんだ、できることならもっと長く・・・。
っと、感傷に浸ってる場合じゃないな。
「そういえばじいさん、昔は別の世界で人間のためにマジンガーZに乗って戦ってたとか言ってたな」
子供の頃「儂は異世界でマジンガーZに乗って国のために戦っていたんじゃよ!」とよく話を聞いたものだ。
じいさんは大のマジンガーZ好きで、そんなじいさんを見てきた俺もマジンガーZ、ロボット好きになった。
「俺もそんな世界に行きたいなんて思った時期もあったなー、まあ若干ボケてるところもあったしどうせ俺に聞かせるための作り話なんだろうけど」
写真を箱に戻しつつ、今度は指輪を手にとる。
宝石の類はついていないシンプルなデザインではあるが、模様が刻まれており非常に惹かれるものがあった。
最初は結婚指輪か何かかと思ったが、棺の中に結婚指輪を入れたのを思い出す。
ファッション用に買ったのだろうと勝手に納得し、仕舞おうと思ったのだがなんとなくつけてみたいと思い指輪を自分の指につけてみる。
すると中指にぴったり合うではないか。
つく
「こりゃいいや、このままもらっちまうか」
指輪を眺めていると、心なしか指輪が光っているように見えた。
光の反射かと最初は思っていたが、徐々に光は強くなっていく。
俺は慌てて指輪を外そうとしたのだが、ぴったりはまっているのか全く外せそうにない。
「―――フェアエンデルング起動。装着者の基本情報読み込みを開始します」
そのまま指輪の光は大きくなっていきそれと同時に激しい頭痛が俺を襲い、俺は痛みに耐えられず意識は落ちて行ったのだった・・・。
☆☆☆
「・・・ん、ここは?」
目を開けると目の前には見知らぬ天井が映る、どうやら倉庫からどこか部屋へ移動されたようだ。
体を起こし部屋を見回す、なるほどここは病室だ。
親父かお袋が救急車を呼んでくれたのだろう、ひとまず安心した。
さて、とりあえず状況を聞きたいのでナースコールを押す、するとすぐに扉が開かれ部屋の中にファンタジー系の鎧を着こんだ人達が・・・って!?
鎧の人達はベッドを囲むように並び立つ、そんな様子に驚いて何もできない。
というかこれはどういうことだよ!?
と、考えているとさらに何人か入ってきたようだ、そのうちの一人がそのまま鎧の前へ。
「@*#*&、@*#*&*&@#&!?」
何か喋りかけてきたのだが俺には全く理解することができなかった。
全く聞いたことがない言葉で、日本語と英語が少ししかできない俺は「え、えっとぉ・・・」と返すしかできなかった。
「―――ヘブリウム共通言語を確認。ヘブリウム共通言語のインストールを開始します」
どこから声が聞こえたかと思うとまた激しい頭痛が俺を襲った。
頭を押さえ唸っている俺に対して鎧の人達はどこからか取り出した剣や槍を構えるがそんなのを気にしてられなかった。
頭痛は10秒ほどで収まった、1度経験したからなのか気絶することなく耐えることができた。
鎧を押しのけ、白衣を着た男が俺の元に駆け寄ってきた。
男が何かを言うと鎧の人達が一斉に武器を下ろす。
俺は「大丈夫、大丈夫です」と答えると「無理はしない方がいい、少しでも異変があったらすぐ言ってくれ」と返してきた。
って言葉が分かる!?
「言語習得機能。これは『フェアエンデルング』の基本機能の一つ、そしてそれを扱えるのはただ一人。失礼ですが貴方はジュージロー・イレイ様でお間違いないですか?」
最初に話しかけてきたスーツを着た男が問いかけてくる。
フェアエンデルングだのなんだのはわからないが、ジュージロー・イレイという言葉は分かる。
ジュージロー・イレイ・・・つまり俺の祖父である伊礼十治郎のことだろう。
なぜ様が付いているのかは謎だが。
「いえ、俺は伊礼十治郎の孫の伊礼蒼汰といいます」
「イレイ・ソータ・・・英雄ジュージローの孫・・・」
男達は集まって何かを話し始めたため、俺は完全に置いてきぼり状態になった。
しばらく待っても話が終わる気配がなかったため、俺が今置かれた状況を説明してほしいと伝えた。
「すまない、何せこちらとしてもイレギュラーな出来事だったのでね。おっと、自己紹介がまだだったね。私の名前はケン・オオゾノ。この国、コノエの大統領だ」
なんと相手は大統領だった、続けて医者のシンゴ・スズキも自己紹介をする。
そこからオオゾノさんは俺の置かれている状況などを教えてくれた。
ざっくり説明するとまず俺が今いる場所、というか世界は俺がいた世界とは違う。
異世界というやつに飛ばされたらしい。
なんで異世界がどうのってわかったかというと、なんと1500年ほど前にじいちゃんが俺と同じくこの世界に呼ばれ戦争に参加し英雄として今現在も語り継がれているらしい。
1500年前には既に写真があったらしく、写真付きで歴史の教科書に載っているのだとか。
だから俺の顔を見てじいちゃんと勘違いしたらしい、まあしょうがないね。
しかしじいちゃんの言っていたことは本当だったとは・・・、ごめんじいちゃん絶対嘘だと思ってた。
飛ばされた原因は今のところ不明、帰る方法は恐らくあるらしい。
まあじいちゃんが帰ってきてるしあるんだろう。
その辺は考えてもしょうがないので帰る方法が見つかるまで待つしかない。
で、この世界は5つの国からなっている。
一つ目は今現在俺がいる国、コノエ。
この国を中心にして東西南北に一つずつあるのだが、細かい話はまたいずれ。
文明レベルは異世界なので中世ヨーロッパ・・・なんてことはなく今の日本やアメリカなどと変わらないっぽい。
もちろんこちらの方が栄えている物もあるし劣ってるものもある。
「そういえばじいちゃんが昔マジンガーZに乗ってバケモノと戦ってたとか言ってたんですけど、それってどういうことですか?」
「マジンガーZ?・・・まさか【クロガネノシロ】のことか!?」
大統領達と一緒に入ってきたうちの一人が俺の出番だと言わんばかりに声を上げた。
さっきまでぼそぼそ独り言を話していたのでやばい人なのかと思ったのだが、この国の最高技術責任者らしく、名前はジョー・サダという。
なんで国に最高責任者がいるんだ?あれって会社とかにいるものだろ?
っとまあそんなことはどうでもいい、クロガネノシロ・・・鉄の城。
つまりマジンガーZのことを表している。
そのことを伝えるとサダさんは「そうかそうか!」と興奮していたが、とりあえず俺の質問に答えてほしいと話すと「悪い、つい興奮してな」といい話してくれた。
まずこの世界にはARMと呼ばれるパワードスーツがある、俺の付けている指輪がそれだ。
はるか昔、それこそじいちゃんがいた1500年前よりもはるか過去に人類が開発した兵器がARMらしい。
全員が全員装着できるわけではなく、特殊な因子を持っていないといけない。
ARMにはそれぞれ固有の能力があり、例えばこの鎧の人達(大統領の護衛らしい)は【守護】と呼ばれるもので
他のARMに比べてはるかに装甲が硬くなってたり、バリアを張ったりすることができる。
そして今現在ARMには大きく3種類あり、一つは量産タイプ、そして専用タイプ、そして遺物タイプ。
違いとしては固有能力のみで、出力などは機体ごとの違いはあるもののほぼ同じだそうだ。
量産タイプは遺物タイプを解析し現代の技術で模倣したものだ。
ARMの生産技術だが、800年ほど前の大戦争で大半は失われ今となってはロストテクノロジーとなっているらしい。
なので固有能力としては大したものがない。
次に専用タイプだが、これは読んで字のごとくその人専用に作られたもので固有能力も量産タイプに比べると優れている。
ちなみに【守護】専用タイプで、【守護】と同じような能力で【硬化】という能力があるらしいがこれは【守護】の下位互換の能力でこれは量産タイプになる。
で、最後に遺物だがこれは現代の技術で模倣できない固有能力をもっているものを指す。
今俺が持っている『フェアエンデルング』も遺物タイプだそうだ。
さらに遺物タイプは装着できる人にも条件があるらしい。
「じゃあ俺の持ってる『フェアエンデルング』でしたっけ?これはどんな条件なんですかね」
「それはむしろ俺らが聞きたい。遺物タイプってのはAIみたいなのが搭載されてるらしいんだが、なんか声とか聞こえないのか?」
そういえば頭痛が起きる前にどこかから声が聞こえた気がする。
俺は指輪に向かってどうなんだと話す。
「――――装着条件、前装着者ジュージロー・イレイの遺伝子情報が必要となります。」
サダさんの言った通り声が聞こえたのだが、脳内に響くように声が聞こえたので驚いた。
「条件はどうなんだ?」とサダさんが聞いてくるので、「じいちゃんの遺伝子情報」が必要ですと伝えるとやっぱりなぁと唸っていた。
遺物タイプは血筋を条件にしていることが多いそうだ。
基本遺物タイプというのは家系ごとに引き継がれている者が多いそうだ。
「能力はどうだ?」
「――――固有能力、【変化】。残存映像データを確認、再生します」
と、脳内に響いたかと思うと指輪が光はじめ、立体映像が映し出された。
そこに映っているのはじいちゃんだった。
「この映像を見ているってことは『フェアエンデルング』が次の装着者を決めたということだろう。初めまして儂の子孫。儂の名前は伊礼重次郎。この『フェアエンデルング』の前装着者じゃ」
突然のことで俺をはじめ部屋にいる全員が驚きを隠せない。
しかしそんなことはお構いなく映像は再生される。
「さて、なぜこんな映像が再生されているかじゃが、それはこのARMの固有能力である【変化】が他の物に比べて特殊じゃからじゃ。ざっくり説明すると、こいつは装着者のイメージした形に変形、変質するんじゃ」
超ざっくりした説明だがイメージした形になるだって?
それって言ってしまえは「ぼくのかんがえたさいきょうARM」ができてしまう訳だ。
それを聞いてサダさんを始め、オオゾノさんも護衛の人達も明らかに動揺していた。
「じゃが問題があってな・・・。しっかりとイメージできていないと変形できんのじゃ。それに武装も詳細までイメージできていないとまともに動かん。いろいろ試していたのじゃが、まともに使えるのは異世界人の儂だけでなぁ・・・。儂はマジンガーZの知識がってイメージできたからまともに動かせたものの、ほかの奴らはそんな欠陥品を使うならそれこそ出回ってるものを使ったほうがはるかに強いって結果になっての」
ハッハッハと笑うじいさんだったが、なるほどなんとなく見えてきた。
この世界の人間じゃ一般的なARMのイメージが強すぎて「ぼくのかんがえたさいきょうARM」ができないんだ。
それに対して俺ならマジンガーZどころか他のロボットにさえ変形することができる・・・はず。
まさに俺のためにあるようなものだ、というか設定で俺にしか乗れないし。
なんというご都合主義、だがそれがいい。
そこからじいちゃんは過去にどのようなことがあったのかを話し映像は終わった。
最後に話した「儂の子孫はその世界には一切いないんでそこんところよろしくな!」とはなんだったのだろうか。
「・・・す、すごい!これは歴史的に貴重なデータだ!是非ラボにそのデータをくれないか!?」
映像が終わるとともにサダさんは大興奮、っていうかさっきから興奮しまくりだな。
ラボというのはサダさんが所属している研究室のことだ。
ちなみにこのラボは国家運営されており、サダさんはそこのトップだそうだ。
ラボ云々はとりあえず後にする。
「俺ってこの後どうなるんですかね?」
そう、一番の問題はそこなのだ。
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