転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 (S,K)
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主要人物プロフィール ※随時更新

●白波 遊海(しらなみ ゆうみ) 

性別 男

年齢 肉体年齢20才

称号 伝説の決闘者「赤帽子」・決闘王・決闘の観測者

見た目 少し背の高いコナミくん

所属 KC所属プロデュエリスト ヒーロー「鋼の騎士」 チーム5D's 元選手兼監督 KC特別顧問決闘者

 

 

OCG次元で死亡した青年、神様による転生後バトルシティに参加し準優勝する。その後プロデュエリストとして活躍しながらデュエルアカデミアの用務員として活躍した。

その後、二代目決闘王となったものの「ゼロ・リバース」により重傷を負う、その後は病身を押してはネオドミノシティのヒーロー「メタルナイト」として活躍する。

 

性格は基本温厚、しかしやると決めたらやりとげる心の強さも持っている。しかしその性格が仇となり常人以上に怪我をしやすい。

バトルシティ中に恋人である翠と出会う。

GX編にて翠と結婚、ZEXAL編にて神代凌牙・璃緒兄妹を養子として引き取る。

 

 

 

転生特典

前世のカード全ての持ち越し(神様によるアップデート有り)

全ての召喚を使える決闘盤

遊城十代レベルの精霊の力(鍛錬次第)とパートナー精霊

遊戯王世界の知識

決闘以外の原因の不老不死(要するに決闘以外で死なない、ただし怪我はする)

 

 

●ユウスケ

 

遊海に宿るもう一つの人格、本来は遊海の感じた「負」の心を溜め込むための存在だったがダーツにより魂を持つ。

遊海は生前から彼の存在を自覚し負の感情を押さえ込んでいたが、実際は遊海を守るために自分から表に出ないようにしていた。遊海の危機に対して遊海の代わりに対応するが、その手段が暴力的になるので遊海はそれを嫌っている。

ドーマ編ではオレイカルコスの力で暴走し城之内に勝負を挑んだ。

 

GX編では遊海と和解し文化祭の日だけ「仮面の決闘者」としてデュエルをしている。

ゼロ・リバース後はマイナスエネルギーに冒された遊海を助けるべくサポートに徹していた。

 

5D's編では「ゼロ・リバース」により重傷を負い、さらに冥界由来のマイナスエネルギーを大量に浴びてしまった遊海のサポートをしていた。回復後は気ままに過ごしているらしい。

イリアステル編終盤、強敵・ラプラスとの戦いの最中に遊海と融合…遊海の新たな進化を呼び覚ました。

 

 

…だが、遊海により平時は精神世界でのんびりしている。

 

「まったく…とことん甘いな、お前は…」

 

「いいじゃないか…たまに話し相手になってくれよ、ユウスケ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

遊海の精霊達

 

 

精霊 アポクリフォート・キラー

名前 彩華(アヤカ)

 

遊海のパートナー精霊、OCG次元にいる時より意識がありいつか意思疏通をしたいと想っていた。

転生直後は機械然とした態度だったがある出来事により擬似的な自我を獲得、後に遊海から名前をつけてもらった事により真なる自我を獲得した。普段はクリフォートのコアだけで遊海の傍に居てサポートしているが、巨大な本体(少なくとも全長数キロ規模)を実体化させることも可能。

性格は冷静だがたまにはじけることもある、また遊海と魂で繋がっているためある程度離れていても居場所がわかる。

 

 

使用可能能力

マスターの遊戯王世界知識の供給

マスターの記憶読み取り、念話

マスターの魂への干渉

インターネットへの干渉・検索

特定人物の情報を記録、探索

強いエネルギーを探知するレーダー(熱、電気、精霊

、魂対応)

半実体化(コアのみ)

決闘外での完全実体化(移動要塞として機能可能。少なくとも全長数キロ規模。出番はそれこそ超大型のモンスターと戦う時ぐらいであろう)

 

 

聖刻竜ートフェニドラゴン

名前 トフェニ

 

遊海の精霊、バトルシティにてデッキに「ラー」を入れていたためその力を受けて姿を現した。

聖刻竜達は半精神生命体のため性別は無し。

エジプト由来の魔術を使い遊海をサポートする。

 

 

 

ラーの翼神竜

名前 フレア

 

遊海の3体目の精霊、アテムの所持していた「ラー」の分霊に近い同一存在、バトルシティにて遊海や翠と出会った記憶を持っている。

GX編にてフランツがコピーカードを使用した事により現世に再び顕現、当初自身を呼び出したフランツに神罰を与えようとしたが「神縛りの塚」により拘束され無理矢理に決闘に使用される。

その後遊海により救い出され本来ならペガサスに返却される筈だったが…カードに宿った想いを感じた会長本人により遊海に託された。

 

普段は金色の小鳥の姿で遊海の傍にいるが、デュエルで使用されれば敵対する者を燃やし尽くす神の姿に戻る

 

性格はデュエル時は威厳ある神としての姿だが、普段は甘えん坊な性格だったりする

 

好きな食べ物 トリシューラプリン

 

 

 

メガロック・ドラゴン

名前 メガロック

 

遊海の4体目の精霊であり最初のパートナー、翠と再会を誓った時に渡したメガロック・ドラゴンの片割れ。

 

中学時代のイジメっ子によりカードを破かれてしまったため遊海(優介)の心の奥でひっそり眠っていたが…しかし遊海が悪魔化した反動で復活、傷ついた遊海を護るために魂を幽閉していた。

 

十代とのデュエル後、遊海を救うために自身の力を全て譲渡し消滅した…しかし不思議な導きによりカードが再生、再び遊海と過ごせるようになった。

 

 

 

 

閃珖竜スターダスト

 

遊海のシグナーとしての『守護龍』、シグナーの痣発現後、デュエルで使用した際に痣との繋がりを感じ取った。

 

人語を介する事はないが…主である遊海を信頼している、デュエル以外では空中戦や急ぎの移動の際に召喚する事が多い。

なお、他の「決闘竜」達にも意思があるが…「閃光竜」は彼らのまとめ役でもある。

 

 

 

 

幻魔皇ラビエル

降雷皇ハモン

神炎皇ウリア

 

遊海が預かったデュエルモンスターズ界の伝説のカード『三幻魔』の精霊達

 

この世界ではカード窃盗団『グールズ』による『三幻神』のコピーカード作成の際に偶発的に生まれたカード。原作同様デュエルアカデミアのある島に長らく封印されていたが、遊戯の娘・遊奈の起こした騒動で七精門が消し飛び封印場所がなくなってしまった。

その後、海馬社長により廃棄されかけるが遊海と三幻魔の精霊との対話、フレアのとりなしにより遊海に引き取られる事になった。

 

3体とも見た目に反して大人しい性格で遊海に望んだ事は「平穏と眠り」だった。その意を汲んだ遊海により普段は賢者の鍵のカード庫で静かに眠っている。

 

…もし、彼らが目覚めたならば…彼らは遊海の為に力を貸すだろう、彼らに平穏をもたらした恩に報いる為に…。

 

 

 

 

『CNo.1000夢幻虚神ヌメロニアス』

『CiNo.1000夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア』

 

ZEXAL編・幕間での戦いを経て遊海が手にしてしまった混沌のカード、現状では精霊は宿っていない。

 

復活を狙い遊海を狙ったドン・サウザンドの力が込められたカード達、ドン・サウザンド自体は遊海の自爆によって消滅したものの…膨大なカオスを宿したこのカードは遊海に融合し、現世へと残ってしまった。

あまりに膨大なカオスを宿している事から遊海が時間を掛けて浄化し続けている。

 

 

 

 

遊海の使える精霊の力

 

実行可能能力

   現実世界での精霊の実体化

   精霊との会話能力

   精霊界への移動

   精霊アーマー

   罰ゲーム

 

 

 

※精霊アーマーとは

精霊の力を借りて身体に纏い、遊海が自分でリアルファイトをすることのできる状態、纏う精霊によって能力が異なる。

なお遊海は「アーマードウォーリアー」と名乗るが決まりはない→ヒーロー活動時にメタルナイトと呼ばれるようになる。

 

 

 

《モードクリフォート》

クリフォートの力を纏った状態、数値2500相当の力がある。主に拳による近接戦闘で戦う、必殺技はキラーの力を拳に込めた『キラーパンチ』拡散するビームを放つ『カタストロフレーザー』

 

 

《モードクリフォート・キラーフォーム》

モードクリフォートの鎧に相棒である『彩華』の核石が融合した強化状態。

遊海の精霊の鎧は基本的に『護り』に特化しているが、この鎧は『攻撃』に特化している、具体的には彩華の操作により鎧がパワードスーツとなり、遊海自身が怪我を負っていても戦える…()()()()()()事ができてしまう。

 

 

《モード聖刻》

聖刻竜の力を纏った状態、数値2000相当の力がある。

主に魔法陣を使った近・中距離戦闘が得意、必殺技は相手の魔法・ビームを跳ね返す『反射の陣』相手を拘束・異界に追放する『抹殺の陣』

 

 

《モード太陽神》

ラーの翼神竜の力を纏った状態、最強フォームその①

数値3000相当の力がある。

炎を使った全距離戦闘が可能、必殺技は炎を放つ『ゴッドブレイズ』、自身に炎を纏い敵を蹴散らす『フェニックス・ダッシュ』

ただし神の力を使っているためスタミナをとても使う。

 

固有能力 ソーラードロー

太陽の光を束ねデッキから勝ち筋になるカードをドローする所謂『デステニードロー』、ZEXALの『シャイニングドロー』と違いカードは創造できない。

 

 

 

 

《モードネクロス》

アバンスに渡された「降魔鏡」のレプリカを媒体に影霊依の力を纏った状態、最強フォームその②

氷の力を使った全距離戦闘が可能、纏うモンスターによって力を切り替えられる。

(使用可能形態)

 

トリシューラ 存在するだけで全てを凍らせる龍の戦士

クラウソラス 敵を惑わすトリックスター

ヴァルキュルス 罠や魔法を駆使し敵を制御する魔導師

ユニコール 相手の異能を封じる封印術士

ブリューナク 

ディサイシブ 圧倒的火力で敵を殲滅する決戦兵器、瞬間火力はモード太陽神を凌ぐ

 

 

《モード岩窟王》

岩の竜・メガロックドラゴンの力を纏った状態、防御力特化の鎧。

近・中距離戦闘が得意、必殺技は大地を隆起させ攻防両方に使える富嶽鳴動の陣。

 

 

《コンプリートフォーム》

遊海の持つ精霊の力を結集させた究極フォーム。

頭部は太陽神の兜、胴体はクリフォートの鎧、右腕は聖刻、左腕は影霊衣、脚部は岩の鎧を纏っている。

体力消費は多いが遊海の持つ力を瞬時に発動する事ができ、あらゆる敵に対応可能。

必殺技は精霊の力を最大開放し放つ「クインテット・バースト」

また、デュエルにおいては太陽神の鎧と同じく「ソーラー・ドロー」が可能

 

 

 

 

NEXUS《ネクサス》

ラプラスとの戦いの中で全ての迷いを振り払い、自分が繋いできた絆を信じ、自身の闇を受け入れた事で魂がランクアップし手に入れた白波遊海だけの境地。

ZEXALがアストラル世界の伝説ならば…これは人の辿り着いた究極の姿である。 

 

 

・見た目

 

頭部 赤帽子が兜のように変化しウジャトの眼が金色の光を放つ

瞳は片目が金、片目が青色に変化、ARビジョン対応

 

身体 炎の不死鳥が描かれた赤のロングコートに変化、ズボンは同じく金色の龍が巻き付いた装飾の黒の騎士風鎧、背中には赤き竜の痣が集結する。

 

腕 両手に黒の鎧が装着、デュエルディスクは一体化

 

能力

 

・シャイニングドロー

魂のランクアップを果たした事で使用できるようになったアストラル世界の希望の力、ドローするカードを創造し望んだカードを引く事ができる

遊海は基本的に強力な原作効果カードやピンチを切り抜ける為の既存カードを創造する、なお変化したカードはデュエル終了後に元のカードに戻る。

 

 

・リ・コントラクト・ユニバース

手札・エクストラデッキのカードを「本来の姿」に書き換えたり、新たなカードに書き換える事ができる

 

 

 

・尋常なる決闘の地《コロセウム・デュエル・フィールド》

結界宝具 EX

 

自分と対戦者を不可侵の領域に取り込みデュエル(決闘)を行なう。この空間内では第三者(精霊・神を含む)によるデュエルへの干渉を無効化する。

 

また結界内部を破壊されるとダメージが入る

 

(この力は通常状態でも発動できる)

 

風景

 

・アルカトラズ天空決闘場

・デュエルアカデミア決闘場

・無人のライティングレーン

・WDC決勝会場

 

 

 

 

 

また、この姿では体力の消費が太陽神の鎧やコンプリートフォームの数倍になり体力次第では決闘が終わった瞬間に昏倒する(受けたダメージは変身しても回復しない)。

 

 

変身シークエンス

 

遊海の体を白い光と漆黒の闇が包む、2つの相反する力は飛び上がり螺旋を描きながら上昇…超新星爆発を起こす。

 

そして光と共に肉体が再構成され着地する

 

「俺は…俺自身でオーバーレイ!!」

 

「世界に満ちる優しき光と安寧の闇…我が身に宿り未来を紡げ!!ランクアップ!エクシーズチェンジ!!」

 

「絆の極地…!新たなる希望!《NEXUS》!!

 

 

 

NEXUSⅡ《ネクサス・セカンド》

 

アゴールとの戦いの中で死の淵を彷徨った遊海が家族の絆…『家族を守りたい』という願いで魂を燃やし手に入れた新たな姿、またの名をNEXUSブレイブ。

 

容姿

 

頭 燃えるような赤い髪が逆立っている(龍玉の超野菜人神) 右目が赤、左目が青のオッドアイ

 

体 鋼の鎧に炎の刺繍が刻まれた赤いコートを纏う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所持アイテム

 

千年玉(千年オーブ)

 

神様が遊海の不老不死を叶えるために渡したアイテム。

設定ではアクナムカノン王の7つの千年アイテムを造る遥か以前に作られた原初の千年アイテム(試作品)という事になっている。

 

当時起きた大戦争の死者数千人の心臓と魂を生け贄に作成された、ただし機能は7つのアイテムより劣化している物が多い、理由としては機能の詰め込み過ぎに在ると思われる、7つの千年アイテムはそれぞれに特化することによりその力を発揮している…という設定。

 

機能

・魂の保管、記憶の映写機

・自分の魂を切り取り無生命体に憑依させる(ただしすごく痛い)

・相手の行動の予測

・相手の思考誘導、簡易催眠

・限定的な未来予測(突発的に頭痛と共に見える)

・邪な心、敵意の警告

・心の部屋に入り対話できる

・異次元・精霊世界への干渉

・闇のゲーム、結界への介入

 

 

 

NEXUSコネクター

 

ZEXAL編の後、遊海が神様から与えられた万能デッキケース。

遊海とユウスケにしか扱えない特別性、遊海の思考を読み取り、カード庫内のデッキを的確に取り出す事ができる。

なお、これを渡したのはZEXAL編の戦いの際、トロンの策略で遊海のデッキが異次元にばら撒かれるという事態があったので…それを防ぐ意味合いもある。

 

また、遊海が願わずとも…稀に必要なカードが飛び出してくる時がある。

 

元ネタは『世界の破壊者』の変身アイテム兼武装の『ライドブッカー』……遊海も渡された時にツッコんだそうな。

 

 

 

 

赤き竜の痣「ドラゴン・ソウル」→「ドラゴン・フレイム」→「ドラゴン・アイ」

バトルシティ・レジェンド開催中に起きたパラドックスによる襲撃の際に発現した7番目のシグナーの痣、当初は「ドラゴン・フレイム」と呼ばれていた。

痣自体に凄まじいエネルギーが宿っており、マイナスエネルギーに汚染された遊海はこの痣の力で命を繋いでいた。

その正体は遥か未来からやってくる「闇」に対抗するべく赤き竜が遊海に力を与えたもの、最終決戦の際に遊海の覚悟、そして《NEXUS》の力と共鳴する事で異世界の究極神「アルティマヤ・ツィオルキン」を赤き竜「ケッツアルコアトル」へと書き換えた。

 

5D's編最終回で遊星達の持つ痣と共に回収されるものと思われたが…何故か遊海に残ってしまう。しかし、痣の形は炎の形に変わった為、赤き竜が世界を守り続ける覚悟を決めた餞別に残したと思われる。

 

ZEXAL編ではルドガーとの戦いの際に痣の一部が左目へと移動し、Dゲイザーの代わりを果たすようになる…遊海によって「ドラゴン・アイ」と名付けられた。

 

 

 

 

 

「紋章」の力

 

ZEXAL編において猛威を振るったトロンの扱う力と同じモノ…トロンの策略によって消滅しかけた遊海の魂を救う為に改心したトロンが自身の力を分け与えた事で得た力。

 

任意の場所へのワープや、精霊の力を用いない拘束などができる。

やろうと思えば洗脳や相手の力を奪う事もできるが…遊海はおそらく使わないだろう。

 

 

 

 

 

賢者の鍵

 

空間に図形を書くと亜空間にいける、中には生前のカードとDホイールが仕舞われている。

中は時間がゆっくり流れており時間を気にせずデッキ構築ができる、ただし長く居すぎると精神力が削られる。

 

降魔鏡のペンダント

 

DT世界に行った際にアバンスに貰った「影霊衣の降魔鏡」のレプリカ、翠とのペアになっている。

舞姫とシュリット、そしてアバンスの祈りが込められている。

 

遊海のカルトゥーシュ

 

元々は遊海がエジプトで購入したただの鉄の板だったが、長いあいだ強い精霊の力に接した事でマジックアイテムと化した。

その効果は「カルトゥーシュを持つ自身以外の人物の守護」カルトゥーシュを持っている人物が悪意に襲われたとき、カルトゥーシュに宿った遊海の残留思念体が現れ敵から持ち主の身を守る、ただし思念体なので物理干渉はできない…しかし「罰ゲーム」などは行える。

 

 

無限トリシューラプリン冷蔵庫

 

アヤカが遊海と共に味覚リンクして食べたネオドミノシティの人気店「ターミナル・エイト」のトリシューラプリンに感激し、中古の冷蔵庫を改造し作ったもの。

市販の材料をセットすれば1日に2個トリシューラプリンが製造される。

 

Dホイール「ホイールフォートレス」

 

遊海が転生した際の特典の一つ、普段は亜空間に仕舞われているが遊海の呼び掛けで何処にでも現れる。

劇中で何度か大破しているが亜空間にしまう事で自動修復される。

見た目は任意で変える事ができ、普段はオーソドックスなDホイール、メタルナイト時は某虎&兎のヒーローの赤いバイクに近いものになる、最高時速は不明…チートである。

 

 

赤水晶のペンデュラム

 

遊海がある誕生日に凌牙と璃緒から渡された誕生日プレゼント、とても大切にしている。

特に能力を持たない普通のネックレスだが…デザインが遊矢のペンデュラムに似ている。

「赤水晶」の意味は「魔除けのお守り」「絆を固める」などがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

使用デッキ

 

クリフォート

芝刈りライロ

ジャンクドッペル

メガロック・ドラゴン(60枚岩石族)

ラーの翼神竜

帝王

ギャラクシー

聖刻

パラディオン

聖騎士

(堕天使)

サイバー

真・真紅眼

ブラックマジシャン

影霊衣

青眼

超重武者

召喚獣

M・HERO

水晶機巧

etc…

 

 

 

 

 

 

 

●(春風)白波 翠

性別 女性

年齢 肉体年齢20才

称号 紫髪の決闘者→赤帽子の妻 

見た目 fateの間桐 桜

所属 デュエルアカデミアレッド寮調理人→主婦・Dホイーラー

 

 

OCG次元で死亡した少女、神様により転生し遊戯王世界に転生する。

転生した直後に不良に襲われ意図せず精霊が暴走、遊海の体を張ったデュエルで救われる。その後は大怪我をした遊海の足の替わりとしてバトルシティ本選に同行する。

実は遊海の転生前・優介の幼少期の知り合いであり離別する前に「メガロックドラゴン」を渡され再会の約束をしていた、それが死後に再会するのはなんという運命だろうか?

性格はおっとりした大和撫子、たまに黒い一面を覗かせることもある少しドジッ子。

バトルシティ中に遊海と恋人になる。

GX編にて遊海と結婚する。

 

 

転生特典

専用の決闘盤、生前のデッキ

精霊の友達

料理の才能

黄金律A

決闘以外での不老不死

 

 

 

・精霊正装《バトルドレス》

 

遊海の精霊アーマーと同じように翠が精霊の力を纏った状態、纏う力によってドレスの色が違う。

 

・モデル・シャドール

紫色のバトルドレス、シャドールモンスター達の力を使う事ができる。得意技は相手を拘束する「影依の影糸」、相手の攻撃を防ぐ「風の障壁」、炎を放つ「影依の爆炎」

 

・モデル・ネクロス

水色の水晶のようなバトルドレス、影霊衣モンスターの力を使う事ができる「降魔鏡のネックレス」を使う事で変身可能

 

使用可能モンスター

グングニール

ソピア

 

 

 

●赤き竜の痣 ドラゴン・レイ

 

バリアンの襲撃を受け、瀕死となってしまった遊海が最後の力を振り絞り翠へと託した『希望の光』

精霊の力において遊海に劣る翠の力を底上げし、身体能力を遊海に近い状態へと引き上げている。

 

痣の形は小さな炎を模している。

 

 

 

精霊 エルシャドール・ミドラーシュ

名前 ウィンダ

翠の精霊、初現界時にマスターを救おうとするが手違いで体に憑依、翠の中の闇に触れ暴走、マスターを襲っていた暴漢を半死半生にする。 

その後精霊界で反省していたがアヤカのアクセスにより再び現界、マスターに謝罪し友達になった。

修行により「霊獣使いウィンダ」「聖霊獣騎キムンファルコス」の姿になれるようになった。

 

使用デッキ 

シャドール

占術シャドール

純セフィラ

 

 

エルシャドール・ウェンディゴ

名前ウェン

翠の2体目の精霊、翠が邪神との闘いで力が上がったためウィンダが精霊界から連れて来た。

特殊な精霊で自分の意志で「霊獣使い ウェン」、「聖霊獣騎ペトルフィン」、「影霊獣騎ーセフィラウェンディ」に変化できる。

 

 

 

 

所持アイテム

千年指輪(千年ミニリング)

 

神様が翠の不老不死を叶えるために渡したアイテム。

半径2mの強力な防御結界を張れる。

 

 

降魔鏡のペンダント

遊海と同じ

 

Dホイール「ヴァイオレット・キュイラッシェ」

遊海がピアスンに依頼してDホイール仕様にカスタムしたバイク、モーメントを搭載し最高時速300キロを誇る、通称「暴れ馬」

モデルはFate/ZEROに登場する「モータードキュイラッシェ」、カラーリングはメタリックヴァイオレット

 

精霊と力を合わせる事でさらなる力を発揮する。

 

 

 

紫水晶のブレスレット

とある母の日に凌牙と璃緒に渡されたプレゼント、とても大切にしている。

特に能力はないが、銀色の本体に小さな紫水晶がアクセントになっている。

「紫水晶」の効果は「家庭円満」「調和」などがある。

 

 

 

 

 

☆デウス神&アマト神

 

遊海と翠を転生させた神様夫婦。

デウス神はカウンター罠『神の○○』シリーズの神そっくり、アマト神はブロンドヘアの美人で神界一のおしどり夫婦(自称)

 

夫婦揃ってそそっかしいところがあり、そのミスで遊海達は転生する事になった。

転生後の遊海達をいつも神界から見守り、時には手助けしてくれる。

 

 

 

 

 

☆フォウ

 

ハートランドに引越した遊海の家に現れたリス、またはネコのようなふわふわの動物、「フォウ」と鳴くので安直に名付けられたが…本人は気に入っているようだ。

遊海達や遊馬によく懐くが…一部の人間にはあまり懐かない。

遊海は不思議な事に彼の言葉が理解できる。

 

普段はメガロックと共に日向ぼっこをしたり、気ままに散歩したりしている…だが、時折いるはずのない場所に現れる為、遊海や翠がびっくりする事がある。

 

 

 

言わずもがなその正体は…(以下ネタバレ?の為、透明文字)

アーサー王伝説の怪猫・キャスパリーグ…そしてFate世界におけるビーストⅣ「比較」の獣、人類の殺戮者「プライミッツ・マーダー」と呼ばれるモノ…の並行世界存在。

基本的に害意はなく、ただ可愛いだけのペットになっている。

 

某花のお兄さん曰く「マスコットが金色の鳥だけではつまらないだろう?良ければ引き取ってもらいなさい」と彼の塔から追い出されたそうな。

 

《フォウフォウフォウー!マーリンシスベシフォーウ!!》

好きな物はベーコンとプリン

 

嫌いな物は負の感情が強い人と花の魔術師

 

 

なお、遊海と翠は無意識に正体を忘れてしまっている。

 

 

 

 

 

★花の魔術師 マーリン

 

遊海を陰ながら助けてきた「花のお兄さん」の正体にしてアーサー王伝説に名高い「キングメーカー」と呼ばれる魔術師。

 

ZEXAL編本編前に転生者である遊海と翠を見つけて興味を持ち、たびたび夢の中に入っては2人の記憶や知識をのぞき見ていた。

その結果、「ハッピーエンド」を掴む為に泥臭く戦い続ける遊海の「ファン」となって、影から彼らを見守り続けていた。

なお、フォウ君を遊海のもとに送ったのは厄介払いの意味と遊海にならばフォウ君を預けても大丈夫という確信があったからである。

 

 

その他の設定はFateシリーズに準ずる。

 



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第1部DM編 第1章 転生 童実野町
不幸な死からの転生


突然だが俺は死んだ、理由はバイトでやっていた引越屋で後輩と一緒に階段で運んでいた大型冷蔵庫に押し潰されたのち運悪く、階段を落ちた先の正面に鉄パイプが突きだしていて左胸に風穴が開いたからだ、俺が最後に見たのは自分の胸から飛び落ちた心臓だった、死から逃げる某映画みたいだと自分でも思わず笑いながら意識を失った。

 

あぁ、後輩に迷惑かけちまうな、俺の遺体を見てトラウマになってなければいいけど…。

 

 そして死んだ俺はテンプレの如く白い空間にいる、こうして冷静に自分語りをしているが内心は心臓がバクバクしている(しかし心臓はない、そもそも体も無い)

 俺がそんなことを考えていると目の前の空間に針金で作ったような四角い枠が現れてその中から所々黒く焦げて穴の空いた白い衣を纏ったお爺さんが現れた、容姿としては遊戯王の罠「神の」シリーズの神様に激似で少しビックリした。

 

 

「ワシはお主の世界の管理者いわゆる神様じゃ、今回は本当にすまなかった」

 神様は開口一番俺に謝罪してきた、ということは俺は本当は死ぬはずではなかったと?

「そういうことじゃ、本来であれば階段から落ちて全身骨折で済むはずじゃったんだが…」(いや、それも充分痛い)

神は視線を落とし

「その…妻が料理を作る時に失敗して大爆発を起こしてお主の『人生の記録簿』を吹き飛ばしてしまったのじゃ、ワシも巻き込まれてこのとおりじゃ」

と神様は自分の衣を摘まむ

「本当ならお主はあと70年ほど生きるはずじゃった、なのでその人生を終わらせてしまったお詫びにお主を記憶を持ったまま転生させたい、できるだけ特典も付けよう!」

 

 

神様はそう言い指を鳴らすと目の前に一枚の紙が現れる、そこには転生したい世界、希望する性別・容姿、希望する特典(5個まで)、最後に自分の名前と書かれていた。

 

「そうそう、いまのお主は体が無いから念じるだけで書けるようにしておいたぞ」

神様はそう注釈してくれた、本来であれば俺はここで怒り、悲しまなければならないのだろう、しかし俺は前世には未練はない、あるとすれば両親に会えなくなってしまったことだろう、最後に一度くらい親に感謝しご飯を一緒に食べたかった。しかしそれは叶わぬ願いだろう、だからこそ  俺は来世を強く生きたいと思い、紙に記入し始めた。

 

 

 

 

転生する世界:遊戯王世界(バトルシティからヴレインズの世界が一繋がりになった世界)

 

性別:男 容姿:少し背の高いコナミくん(フツメン)

 

特典①決闘以外での不老不死(容姿20代固定)

  ②前世で持っていた遊戯王のデッキ、カード全て(神のカード、邪神、決闘龍、No.、ペンデュラム、リンク含む、全てOCG効果)

  ③遊戯王世界の一般教養

  ④全ての召喚方法に対応したカモフラージュ機能付きデュエルディスク

  ⑤遊城十代レベルの精霊の力とパートナー精霊

 

 転生先の名前:白波 遊海 (シラナミ ユウミ)

 

 

 

「これでお願いします。」 

俺は希望を書き終え紙を神様の方へ渡す。

「ふむ…。特典全てを許可しよう、但し神のカードやNo.だけは一時的に使用制限を掛けさせてもらうぞ?

これから行く世界ではまだ力が強過ぎるからの。あと不老不死は申請が面ど…オホン、大変じゃから闘いの儀くらいまでは発動しないから注意するのじゃ」

神様はそう言うと空間に孔を開ける。

「この孔をくぐれば転生開始じゃ、さぁ逝くがよい!」

「神様、最後に質問いいですか?」

「なんじゃ?」

「何でそこまで遊戯王に詳しいんです?」

「何簡単な事よ、ワシも遊戯王のファンなんじゃ、シリーズは全て視ておるよ」

「な、なるほど…。謎が解けました…、それじゃあ行って来ます!短い間でしたがありがとうございました!」

「おう、困ったら相談はいつでも聞くからの~!」

 

そうして俺は孔を潜る、そして意識が遠いた。



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転生~童実野町~

…転生者のデータを遊戯王世界に代入…
氏名白波 遊海〈シラナミ ユウミ〉
肉体年齢17才
場所 童実野町…世界番号XX管理者、●●神の権限にて用意された一軒家
時間 遊戯王世界におけるバトルシティ開催1週間前
特典 決闘以外での不老不死…申請中
   所持カードの持ち越し…許可、但し一部カードに使用制限あり、順次解除
   遊戯王世界の一般教養…記憶に挿入完了…エラー発生、記憶領域の容量が限界です、対応を検討…
   決闘盤…遊戯王世界第5世代の決闘盤をモデルに作成…擬態機能により第1世代決闘盤に変化、融合・S・X・P対応可能、リンク…現在使用不可
   遊戯王世界における精霊力、一定量を付加
   実行可能能力
   精霊の現実世界での実体化 
   精霊との会話能力
   精霊界への移動〈現在使用不可〉
   ●●●●●●●●〈現在使用不可〉
   攻撃に対する防御(数値4000まで対応可能)
   パートナー…所持カードより検索…
   ●●●●●●-●・●●ーを設定
管理者によりアイテムを贈与
●●アイテム
Dホイール
異空間への鍵
以上付与を完了、転生処理を開始 完了
…良い人生を…


「マスター、起床する時間です」

…聞き慣れない機械音声で目が覚める、確か死んで神様に会って…、そうか無事に転生出来たのか…。

体を起こし声のした方を向く、そこには半透明の丸い宝石をはめた機械が浮いていた。

「君は?」

 

《答、転生特典によるパートナー精霊です、個体名は『アポクリフォート・キラー』です、本体が巨大なためコアだけの状態で半実体化しています》

 

「アポクリフォート・キラー」…俺が転生する前に愛用していたクリフォートデッキの主力カードであり一番のお気に入りカードだ、確かに図柄に描かれているキラーはとてつもなくデカイ、だからこそコアだけで現れたのだろう。

《なお、マスターの許可があれば本体ごと現実世界に実体化可能です》

…うん、よっぽどの事がない限りデュエル外での実体化はないな、うん。

 

「わかった、ありがとう。

それじゃあ今の状況はわかる?」

《答、管理者様より手紙を預かっています、机の上を確認してください》

 

「わかった、ありがとう。」

 

そう言われて初めて部屋の中を見回す、自分はベッドの上に寝ていたようだ、時計によると現在は日曜日の朝7時、そして朝日の照らす窓際の机に白い封筒とデュエルディスク、そして大きめと小さめの2つの白い箱があった。

 

俺はベッドから下り机へと向かう、…前世より少し背が縮んだだろうか?

《答、マスターの現在の身体年齢は17才、身長は168センチです》

 なるほど、神様が主人公達に合わせて調整してくれたのか、…身長伸びるかな…?

 

《答、予測では20才までに180センチに到達予定です》

 

なるほど、前世より少し高くなるのか…って

「キラーさん、さっきからナチュラルに俺の考え読んでない!?」

 

《答、肯定します、ワタシは転生特典のパートナー精霊でありこの世界の知識を記録しているものです、その際マスターの魂と擬似的に回路を結ぶ事により思考を読み取っています、なおこの機能はデュエル中は封印されます》

 

…どこの大賢者さんですか?深く考えないでおこう…。

 

       〈閑話休題〉

 

 気をとり直して机の封筒を開き神様からのメッセージに目を通す。

 

『この手紙を読んでいるという事は無事に転生できたのだろう、ひとまず転生おめでとう。

 まずは今の状況から記そう、現在君のいる場所は遊戯王世界の童実野町にあるワシの作った一軒家だ、窓から外を見れば見覚えのある建物が見えるだろう。』

 

 そこまで読み窓の外に目を向けると…ありました。

大きく見える「KC」の文字、海馬コーポレーションです、本当にありがとうございます、ついでにその周りに「バトルシティ開催!」と書かれた飛行船が飛んでいる。

 

『時間はバトルシティ開催の1週間前、すでに決闘者登録は済んでいる、ついでに登録レアは『真紅眼の黒竜』にしてある。

また準備金としてこの世界での1億円を口座に入れてあるから後程確認して欲しい、また参考として、『ブラック・マジシャン』が30万、『真紅眼』が20万で取引されている。

 特典だが不老不死はまだ発動していない、最低でも後1年ほど待っていて欲しい、その代わり君にアイテムを授ける、大きめの白い箱を開けて欲しい。』

 

俺は手紙のそばにあった白い箱を開ける、その中にはソフトボール位の大きさの金色の卵形の玉があった、その表面には翼とウジャト眼が刻まれている…、もしかして!?

 

 

『それは錐・眼・杖・鍵・秤・タウク・輪の造られる前に作成された原初の千年アイテム、『千年玉(オーブ)』能力は他の千年アイテムの能力の劣化した力を使える、例えば杖の洗脳は思考の誘導、眼のマインドスキャンは相手の行動の予測というように劣化している、そして今後オーブを目印に不老不死の手続きをするから無くさないように気をつけて欲しい、それとオーブは冥界の扉を開くのには必要ないからアテムには渡さないように。』

 

 

 

 

あの神様何やってんの!?

必要無くても闇バクラに確実に狙われるじゃないですかー(たぶん勝てると思うけど)

 

 

『それから前世のカード、それらに関してはもうひとつの白い箱を見てほしい。』

 

 

俺は千年玉を箱に戻しもうひとつの白い箱を開ける、そこには見覚えのあるネックレスが…

 

 

『それは『賢者の鍵』それを手に持ち空間に図形を書くと亜空間に繋がる、そこに全てのカードとワシからのもうひとつのプレゼントがある、それは手紙を読み終わったら確認して欲しい。

 それからカードの使用制限だが、今は以下のカードに適用している、ただ身体に危険が迫った場合に使用を許可する場合がある、その場合は『審査開始』と呟けばよい、許可が降りればそのカードが使用できる。

 

今制限のかかっているカードは神、3邪神、幻魔、超融合、宝玉獣、シグナー竜(決闘龍除く)、No.、リンクモンスター全てだ、それ以外は全て使用できる。

ただし、『青眼』など希少過ぎるカードを使うと注目を集めてしまうから注意してほしい。』

 

「No.使えないのか…、でもNo.を使わないエクシーズデッキもあるし大丈夫だろう。」

 

『最後にこの世界の知識と精霊についてだが、精霊の力は遊城 十代がLv100として今はLv30位だ、ただし使えば使うほど上がっていくから頑張って鍛えてほしい。

 それから精霊だが今はキラー1体だが…君のカードへの想い次第で姿を表してくれるはずだ、あとこの世界の知識はキラーが補足してくれるとの事だ、もし解らないことがあれば聞くといい。

それでは良い決闘者人生を。』

 

 

俺は手紙を仕舞いこれからについて考える。

とりあえずは主人公達に接触したい、というか遊戯さんに会いたい、出来れば友情教のメンバーに入りたい。

あと歴史を変えることになるかもしれないけど孔雀 舞をマリクと決闘させないでやりたい、というか闇マリクぶっ飛ばす!

 

そうと決まれば行動を起こすことにしよう。

俺は部屋から出る、階段を降りリビングへ…、誰もいない。

《答、マスターの今生において両親は存在しません、近所の住民には他の町から引っ越してきた1人暮らしという事になっています。》

 

なるほど、つまり人生初1人暮らしという事か…料理どうしよう…

《答、管理者様が記憶に料理の知識を挿入しているはずです》

 

「…やってみるか…」

初めて作ったのはオムレツだった、美味しく出来ましたマル



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デッキ構築と遭遇

私の作品を読んでいただきありがとうございます!
たぶん次の回からデュエルシーンが入ります、他の先輩達を参考にして読みやすいように出来たらと思います。
小説素人の私ですが少しづつ頑張りますのでよろしくお願いいたします! 


 食器を片付けた俺は一度部屋へと戻り、賢者の鍵を試してみる事にした。

「確か空間に図形を書くと使えるって手紙に書いてあったな…。」

 

試しに部屋の壁に向かってドアの形に鍵を振ってみる、すると黒い空間が現れた、そして俺はその空間を通り抜ける。

 

空間を通り抜けた先は10畳ほどの部屋だった、部屋には四角い座卓、黒い封筒、カードの入っているであろう黒いケースが積んであり、その上にはシールで「デッキ」「エクストラ」「光属性」とありある程度仕分けをしてくれているようだ、あと洋服タンスがありその中に今着ているのと同じ服がたくさんとGXで三沢の着けていた体に着るタイプのデッキケースが置かれていた。 

壁にはもうひとつドアがありその先にはシートのかかったバイクがあった。

 

シートを取るとそこにあったのは赤と黒で装飾されたバイク、いやDホイールだった。

 

「いや、俺はバイクの運転経験ないんだけど。」

 

《答、この世界の知識にDホイールの運転方法も入っています、またD ホイールには自動運転装置が内蔵されています。》

 

「あっ、そうですか」

準備がいいというかなんというか…。

 

         《閑話休題》

 

 とりあえず諸々の説明が書いてあるだろう黒い封筒を開けて内容を読む。 

 

「~この空間について~

この場所は賢者の鍵により行ける亜空間、この場所では時間の経過が遅く設定されています(ここで1時間過ごすと外では10分経過します)

入り口に外時間と空間時間を示す時計があるので確認してください。

 ~カードについて~

カードは前世で使っていたデッキ、エクストラデッキ、それ以外で分けてあります。

エクストラデッキのカードは召喚方法ごと、それ以外は各属性ごとに分けてあります。

 ~Dホイールについて~

この部屋の隣の車庫にDホイールがあります、機体名前は『ホイールフォートレス』です。乗り方は記憶に挿入してあるのですぐに乗りこなせるでしょう。

また車庫から出動させる時は『アクセラレーション』と言うことで召喚できます。

また機体が破損した際は空間に戻す事により回復させます。」

 

 

「色々ツッコミどころあるけどまぁいいや(思考放棄)

そういえばキラーさん、1つ質問いい?」

 

《答、なんでしょうか》

 

「Dホイールの説明に『記憶に挿入』って書いてあるけど、俺何も知らないよ?」

《答、申し訳ありません説明が足りませんでした。

マスターは転生する際、管理者様によってこの世界の知識を授けられましたがあまりにも量が膨大で最悪の場合前世の記憶が飛んでしまう可能性がありました。

なので転生後マスターが寝ている間にワタシとマスターの魂の間に擬似回路を作成し、知識をワタシが吸収・記録しています。運転の時にはマスターの記憶に操縦方法をインストールします。》

 

「わ、わかったありがとう」

神様結構おっちょこちょいなのかな…。

 

 

 その後改めてデッキの確認をした、いま使えるデッキは

・クリフォート

・帝

・ライトロード(60枚芝刈り型)

・堕天使

・機界騎士(リンク抜き)

・聖刻

の6デッキ

とりあえずクリフォート、ライトロードは最終手段、エジプト系とデュエルするときは聖刻、それ以外は普段使いとして戦おう。

 

 

 デッキ調整を終えた俺は亜空間から出る。今の時間は9時半、少し町を歩いてみるか。

リュックに千年玉、左腕に決闘盤を付け部屋を出る、そして玄関へそこで初めて姿見で自分の姿を確認する。

 

そこに映っていたのは赤いジャケット、赤い帽子を被った細身の男だった。

「…これが俺か。」

自分が「転生した」という実感を確認して外に出る。

家は青い屋根のよくある家だった。

「行ってきます!」

そして俺は童実野町の中心へ歩き出した。

 

 

         ~10分後~

 

 

「迷った!」

まぁ知らない町にいきなりくり出したらこうなるよね!

《答、ナビゲートします、次の角を左へ曲がってください。》

「わかった、迷惑かけてごめんキラーさん」

《答、大丈夫ですマスター、これもワタシの役目の1つですから。》

 そんな感じで話ながら角を曲がru

 

       「「痛いっ?!」」

 

曲がった瞬間誰かとぶつかった、お互いに尻餅をつく…。

 

曲がる時 左右確認 しっかりと。 遊海

 

「大丈夫で…」

俺はぶつかった相手に声をかけようとして言葉を失なった、目の前にいたのは首から金色に光る「千年パズル」を首にかけた特徴的な髪型をした少年「武藤 遊戯」その人だったからだ。

 

 

『大丈夫か相棒』、「(うん、大丈夫!)」

尻餅をついた遊戯の横に半透明の人が浮いている、彼が後に最強の決闘者と呼ばれる男「アテム」まさか転生初日にこの二人に出会えるとは思わなかった。

 

 

「すいません、ちょっとよそ見をしてて…大丈夫ですか?」

 

「あっ、大丈夫ですこちらこそすいません、まだこの町に慣れていなくて…失礼ですが武藤 遊戯さんではありませんか?I2社の開いた決闘者の王国で優勝した!」

 

「うん、僕は武藤 遊戯だよ!ところで君は?この辺りでは見ない人だけど…?」 

 

「俺は白波 遊海っていいます、最近この辺りに引っ越してきて家の周りを探検していたところだったんです!」

「そうなんだ!、よかったら僕がこの辺りを案内しようか?」

 

「えっ!?いいんですか?でも遊戯さん用事があるんじゃ?」

 

「あっ忘れてた!」

『オイオイ相棒!俺達はバトルシティの特訓をするために城之内君達と集まるところだったろ?』

 

「(そうだった…、うーん。そうだ!)」

 

「よかったら遊海君も一緒に来ないかい?これからバトルシティのためにみんなでデュエルの練習をするんだ!君も決闘盤を持っているから決闘者なんでしょ?どうかな?」

 

 それは俺にとっても願ってもない事だった、この世界に来てまだ一度もデュエルをしていなかったから肩慣らしには丁度いいかも!

 

《答、ワタシも参加する事を推奨します、マスターはソリッドビジョンデュエルに慣れていないため練習が必要と進言します。》

キラーさんもそう言ってるし遊戯さんのお言葉に甘える事にしよう。

 

「遊戯さんにそう言っていただけるのなら是非参加させてください!」

 

「じゃあ決まりだね!この先の時計台広場で待ち合わせなんだ!付いてきて!」

 

「はい!よろしくです!」

 こうして俺は遊戯さんについていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『白波 遊海か…、なんだろうアイツから千年アイテムに似た力を感じる、それにあの傍らに浮いていた機械…、あれは確実に精霊だ…相棒は気づいていなかったから何も言わなかったが…、アイツはただの一般人ではないんじゃ?』

 

 歴戦の決闘者である闇遊戯は遊海が一般人ではないだろうと確信を持った。この出会いがこれから先遊戯達の人生を変えていく事、その事をまだ誰も知らない。



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遊海の初デュエル VS城之内

千年玉(千年オーブ)〈ミレニアム・オーブ〉について

神様が遊海の不老不死を叶えるために渡したアイテム。
設定ではアクナムカノン王の7つの千年アイテムを造る遥か以前に作られた原初の千年アイテム。
当時起きた大戦争の死者数千人の心臓と魂を生け贄に作成された、ただし機能は7つのアイテムより劣化している物が多い、理由としては機能の詰め込み過ぎに在ると思われる、7つの千年アイテムはそれぞれに特化することによりその力を発揮している。

機能
・魂の保管、記憶の映写機
・自分の魂を切り取り無生命体に憑依させる(ただしすごく痛い)
・相手の行動の予測
・相手の思考誘導、簡易催眠
・限定的な未来予測(突発的に頭痛と共に見える)
・邪な心、敵意の警告
・心の部屋に入り対話できる
・●●●●●●〈現在使用不可〉
・闇のゲーム、結界への介入


【挿絵表示】


※下手ですがサンプルイラスト書いてみました!


 遊戯さんと歩く事約10分、到着したそこは決闘者にとって見覚えのある広場。映画『超融合』で遊戯・十代・遊星がデュエルしたり、Gx最終回において過去に転移した十代が遊戯とデュエルしたあの広場である。

 

「お~い、みんな~!」

 

「おい、遅いぜ遊戯!早くデュエルしようぜ!」

「落ち着けよ城之内!」

 

「まったくもう!城之内はいつも急ぎ過ぎなのよ!」

 

集合場所であろう時計の下にいたのはいつものメンバー、金髪の外面少し不良内面は妹想いの兄の城之内 克也

 

角刈りの強面、本田 ヒロト

そしてネタバレ予告でお馴染みの遊戯の未来の恋人、真崎 杏子

原作でお馴染みの3人だった。

 

「あれ御伽君とバクラ君は?」

 

「御伽は親父さんの店の手伝い、バクラは…いつも通り寝坊助じゃないか?まぁ練習場所は伝えてあるしそのうちくるだろ!」

 

「そうなんだ…、バクラ君大丈夫かな…?」

『(まぁ今日に関しては遅れてくれてよかった)』

「(どういう事?もう一人の僕?)」

 

「遊戯!ところであなたの後ろにいる帽子を被った人は誰…?あまり見ない人だけど?」

と杏子さんに聞かれた、気づく遅いよ皆…。

 

 

 

「あっごめん忘れてた!彼は白波 遊海君、最近童実野町に引っ越して来たんだって!」

 

「初めまして!白波 遊海っていいます、引っ越して来て町を迷っていたところを遊戯さんに助けてもらったんです!それで自分も決闘者で遊戯さんがデュエルの練習をするということで連れてきてもらったんです。」

 

「なるほど、私は真崎 杏子よ、ヨロシクね!」

 

「俺は本田 ヒロト!、デュエルは弱いが喧嘩は負けないぜ!」

 

「オレは城之内 克也、決闘者の王国で決勝トーナメントまで残った決闘者だ!腕っぷしも強いぜ!」

 

「も~、城之内はすぐ調子に乗る!」

 

「まぁまぁ、後ここにはいないけど少し前にボートゲーム『DDD』を作った御伽、それと不思議ちゃんのバクラって仲間がいるんだ、今日はバトルシティに向けて決闘盤でのデュエルに慣れようっていうことで集まったんだ!っということで遊戯!早速デュエルしようぜ!」

 

「ダメよ城之内!、遊戯は私に決闘盤の使い方を教えてくれることになってるの!あなたはそのあと!」

「ちえっ、ワカリマシタよ~だ」

 

「ごめんね城之内君…」

 

「う~ん、でもデュエルしたいしな…、そうだ遊海!」

「ハイッ!?」

 

「オレとデュエルしないか?」

「ちょっと城之内!」

 

「いいですよ!相手させてください!」

 

「えっ、遊海君大丈夫?城之内君結構強いよ」

 

「大丈夫です、童実野町での初デュエル、相手にとって不足なしっていうことで!」

 

「お前結構ノリいいじゃないか!それじゃああっちの公園でデュエルだ!」

ということで俺は城之内とデュエルすることになった、転生後の初デュエル…、燃えてきた!

 

 

 

 

「むっ、近くに2つの千年アイテムの反応だと…?

1つは王様だとしてもう1つはなんだ?行ってみるか…」

路地裏にいた彼、闇バクラは千年輪の導きで進む、まだ見ぬ千年アイテムを求めて…。

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ!準備はいいか?」

 

「はい!、よろしくお願いします城之内さん!」

 

「よしっ、いくぜ…!」

 

 

       「「デュエル!」」

 

遊海LP4000

城之内LP4000

 

「先攻はオレだっ!ドロー!」

 

「手札から『アックスレイダー』を召喚!」

斧を持った戦士が召喚される ATK1700

 

「カードを二枚伏せて…ターンエンド!」

城之内LP4000 モンスター1 伏せ2 手札3

 

 

「(あれで終わりか、このデッキじゃマズかったかな…)」

 

「おい遊海!早くしろよ~」

「すいません!俺のターンドロー!」

「(ヤベっ!?封殺ルートだ!?)」

「お~い、ビビってるのか~?」ニヤニヤ

 

プチッ「今やります!手札から魔法カード『汎神の帝王』発動!手札から魔法カード『帝王の開岩』を捨ててデッキから2ドロー!」

「さらに『汎神の帝王』の更なる効果!墓地からこのカードを除外し相手にデッキから三枚の『帝王』魔法・罠カードを見せ一枚を手札に加え残りをデッキに戻す!」

 

公開 

帝王の深怨✖3

「全部同じカードじゃねーか!」

 

 

「『帝王の深怨』を手札に加え、そのまま発動!手札の『風帝ライザー』を相手に見せて効果発動!デッキから任意の帝王魔法・罠カードを一枚手札に加える、手札に加えるのはフィールド魔法『真帝王領域』!そのまま発動!」

周囲にギリシャ調の黒い霧の立ち込めた神殿が現れる。

 

 

「さらに手札から永続魔法『進撃の帝王』を発動!」

「そして手札から『冥帝従騎エイドス』を召喚!」

黒い甲冑を着た騎士が現れる ATK800

 

「色々ブン回すから何が出てくるのかと思ったら攻撃力800?何がしたいんだ?」

 

「城之内君!、油断しないで!遊海君のターンはまだ終わってない!」

 

「そのとおりです!『エイドス』の特殊効果発動!このカードが召喚に成功した時俺はこのターン一度だけ追加でアドb…、生け贄召喚を行う事ができる!」

「追加で召喚だって!?」

 

「『エイドス』を生け贄に『風帝ライザー』を召喚!」

遊海の場のエイドスが破壊され、緑色の鎧と風を纏った戦士が現れる ATK2400

 

「攻撃力2400!?(オレの真紅眼と同じだと!、でも大丈夫だ…!伏せてあるのはミラーフォースと天使のサイコロ、ダメージは最少限に押さえられる!)」

 

「『ライザー』の効果発動!このカードが生け贄召喚に成功した時、場のカード一枚をデッキの一番上へ戻す!俺が選ぶのは右の伏せカード!」

 

「しまった!ミラーフォースが!?」

ライザーの起こした暴風が伏せカードを吹き飛ばす。

 

「バトル、『ライザー』で『アックスレイダ―』を攻撃!『風帝剛風』!」

「リバースカードオープン「天使のサイコロ」!ダイスを振って出目の分自分のモンスターの攻撃を✖100上げる!ダイスロール!」

城之内は天使から受け取ったサイコロを放り投げる、出目は…5!

 

「よしっ、これで『アックスレイダ―』の攻撃力は500アップして2200!

ダメージは200で済むぜ!」

天使の祝福がアックスレイダ―を強化するATK1700→2200

 

「まだだ!フィールド魔法『真帝王領域』の効果!自分の場の生け贄召喚に成功したモンスターが相手のモンスターに攻撃する時、その攻撃力を800アップする!」

「嘘だろ!?」

ATK2400→3200

 

「行け『ライザー』!」

ライザーの起こした竜巻がアックスレイダ―を吹き飛ばし、破壊する。

その余波が城之内に襲いかかる!

「ぐあっっ!」

 

3200vs2200→1000ダメージ

城之内 LP4000→3000

 

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

遊海LP 4000

モンスター1 魔法・罠4(伏せ2)手札1

 

ヤバイブン回しすぎた!?

 

 

「やるじゃねーか!遊海!オレも負けてられねぇ、オレのターンドロー!」

「(オレの手札はさっき戻された『ミラーフォース』、そして『ロケット戦士』と『地割れ』、そして『真紅眼』)…なら!」

「俺は手札から魔法カード「地割れ」を発動!『風帝ライザー』をはかi〈ビービーッ!〉うわっ!、なんだいきなり!?」

地割れを発動した瞬間、決闘盤から警告音が鳴る。

 

「永続魔法『進撃の帝王』の効果!

このカードが場に存在する時生け贄召喚されたモンスターは効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない!」 

 

「マジかっ!?」

城之内の発動した地割れは破壊できる対象がおらず不発に終わる。

 

「なら『ロケット戦士』を守備表示で召喚、カードを伏せてターンエンド!」

城之内LP3000

モンスター1 伏せ1(ミラフォ)手札1

 

 

「(ここは一度耐えるしかねぇ!)」

 

 

「俺のターン、ドロー!(このカードは…)」

「俺はリバースカードオープン魔法カード『帝王の烈旋』を発動!

このターン俺が生け贄召喚する時、相手のモンスターを生け贄に召喚ができる!」

 

「なにっ!?」

 

「見せてあげます『ライザー』の進化した姿を!

俺は「ライザー」と城之内さんの場の『ロケット戦士』を生け贄に、進化せよ!『烈風帝ライザー』!」

風帝ライザーとロケット戦士が竜巻に巻き込まれ消滅する、そして竜巻が治まるとそこに体が2回りほど大きくなりさらに重厚な鎧を纏った『帝王』、「烈風帝ライザー」が降臨した。

ATK 2800

 

「なっ!遊戯の『マジシャンオブブラックカオス』と同じ攻撃力だと!?」

「『ライザー』の効果発動!このカードが生け贄召喚に成功した時、場のカード一枚と自分または相手の墓地のカードを好きな順番でデッキの上へ戻す!俺は城之内さんの伏せカードと俺の墓地の『エイドス』をデッキの一番上へ!」

 

進化する前よりも強くなった爆風が城之内の伏せカードと墓地で眠っていたエイドスを持ち主のデッキの上へ吹き飛ばす。

 

「これでフィールドはがら空きです、バトル!

『ライザー』でダイレクトアタック!『風帝嵐撃』!」

ライザーから放たれた嵐の力が城之内に叩きつけられる。

「痛てててっ!?」

城之内LP 3000→200

 

「痛て~な!、でもまだライフは残ってる!

オレは諦めねぇ!」

「わかりました!、これでターンエンド!」

遊海 LP 4000 モンスター1 伏せ1

魔法罠2 手札1

 

 

「いくぜオレのターン!ドロー!」

「(遊海にはああ言ったが正直打つ手はねぇ、ダメ元でもやるしかねぇ!)」

「カード伏せてターンエン…」

「ちょっと待って!

リバースカードオープン!罠カード『連撃の帝王』!」

「何っ!?」

「このカードは相手のターンにのみ発動できる罠カード、効果により相手ターンに生け贄召喚をすることができる!」

「相手ターンに召喚だって!?」

 

「俺は場の『ライザー』を生け贄に…降臨せよ『怨邪帝ガイウス』!」

 

場のライザーが空間に現れた闇に吸い込まれる、ライザーを吸収した闇は肥大化し爆発する。

そのなかから邪悪なオーラを纏った「帝王」怨邪帝王ガイウスが現れた。ATK 2800

 

「!?ちょっと待て遊海!

そのモンスターレベル8のモンスターだろ!?なんで1体の生け贄で召喚してるんだ!?」

 

「『ガイウス』は召喚する時生け贄召喚に成功したモンスターを生け贄にする時、1体の生け贄で召喚できる!」

 

「そんなのアリかっ!?」

 

「『ガイウス』の効果発動!

相手の場のカード1枚を除外し1000のダメージを与える!!」 

 

ガイウスから闇の波動が放たれ伏せカードを飲みこむ、

直後闇が爆発し城之内のライフを削りきった…。

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

城之内LP 200→0

遊海 WIN !

 

 

 

 

 

「いや~、まいったぜ!

決闘者の王国で勝ち抜いて自信ついたところだったんだけどなぁ…。」

 

「いやいや、俺のデッキがたまたま上手く回っただけですよ~。引っ越す前の町で俺が一番弱かったんですから~」

 

「マジで!?」

 

「はい、いつもボロ負けで…(そりゃカードパワーも違うしなぁ)」

 

「くそっ、遊海もう一度デュエルだ!

今度は絶対勝ーつ!!」

 

「わかりました!受けてたちます!」

 

 

         ~1時間後~

 

 

「…10戦3勝7敗…完全に負け越しだ~!」

 

「いやでも今のデュエルは完全に俺の負けですよ、クライスで真紅眼に攻撃したらサイクロンでフィールド魔法割られて鎖付きブーメランで倒されましたし、あの後俺がリカバリーできなかったら完全に負けてましたよ。」

 

「でも負け越した事に変わりはねぇ…、でもバトルシティでは負けねぇからな!準決勝で勝負だ!」

 

「決勝じゃなくて?」

 

「決勝はオレが勝ち抜いて遊戯との決着をつけるんだよ!そのために絶対に勝つ!」

 

「わかりました、負けませんよ城之内さん!」

 

「二人とも~、お昼食べにいきましょ~!私お腹減っちゃった~!」

 

「お前ら俺達をほっといてデュエルしてんだもんな~」

「まぁ良いじゃないの本田!お陰で遊戯に決闘盤の使い方教えてもらえたし!」

 

「わりぃ、デュエルに熱中し過ぎちまった、よしハンバーガーでも食いにいこうぜ!」

 

「うん、そうしよう遊海君もどう?」

「ありがたいです!まだあんまりお店も知らないので、お願いします!」

 

「よ~し、それじゃあ出発!」

 

 

『(……。)』

「(どうしたのもう一人の僕?)」

 

『(いや、なんでもない少し考え事をしてただけだ。)』

「(ならいいけど…。)」

 

「オーイ遊戯!置いてくぞ~!」

 

「あっ、待ってよみんな~!」

 

 

 

 

『(白波 遊海…、あいつは城之内君とのデュエルで明らかに手を抜いていた、1回はデッキの事故で負けていたようだか2回は決定的に「隙」を作っていた…あいつは一体何者なんだ…?)』

闇遊戯は遊海に対して警戒を強める事にした、その心配は杞憂に終わるのだが、遊戯はその事をまだ知らない

 

 

「シラナミ ユウミねぇ…、アイツから千年アイテムに似た力を感じるんだが、身に付けてはいねぇようだな、まぁいいもう少し探ってみるか…。」




皆様に読んでいただけるのが嬉しくて連続投稿!
亀更新タグ外そうかな…。

※5月17日 加筆修正しました、すいません


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闇遊戯との邂逅

注意。少し痛みの描写があります、気分を害したらすみません


あぁさっきは危なかった、転生前とカードパワーが違うの忘れて「融合・儀式しか無いならアドバンス召喚軸の帝王でいいや」と気楽にやったらそれでも強すぎた…まぁもしいきなり遊戯とやっていたら3戦目位には対策されていただろうけど。

 

《答、その確率は60%ほどと予想します》

 

「いやいや遊戯には主人公補正の「引きたいカードを引ける」って能力があるからわからないんだよなぁ…」

 

《答、その能力を計算に入れていませんでした申し訳ありません。》

 

「大丈夫だよその能力が明らかになったの最終回近くだし、まぁ勝てるかはそれこそ「運」次第、神様のみぞ知る事だろう」

 

 

 

 

 今俺達は童実野駅近くのハンバーガー屋に来ている、目の前では遊戯と城之内がさっきのデュエルについて話しあっていたり、杏子にちょっかいを出そうとしたチンピラを本田が締めていたり、その本田を城之内と遊戯が押さえたり少しカオスな状態だ、まぁ今は落ち着いているが。

 

さてみんなが落ち着いたところで俺が密かにやってみたかったことを実行しよう。

「ねぇ、遊戯さん」

 

「なんだい遊海君?」

 

「遊戯さんが首から下げているその金色の物って何ですか?ネックレスにしては大きいような…?」

 

「あぁ、これは千年パズルっていう僕のじいちゃんが昔にエジプトで手に入れたものなんだ、今では僕一番の…いや、僕の生命と同じくらい大切な宝物なんだ!」

 

そう言って遊戯は大事そうにパズルを撫でる、やはり闇遊戯は表遊戯にとって無くてはならない存在になっているようだ。

 

 

「良かったら少し見させてもらえませんか?」

 

「う~ん…、いいよ!ただし丁寧に扱ってね」

 

そう言って遊戯は首からパズルを外しゆっくり俺の手に触れた…、瞬間!

《警告、警告!千年…テム…共鳴…!マスターの精…へ干渉確…、抵抗…不可、お気を…かにマスター!、…ター!!》

 

 頭が…割れる!いっイタイイタイイタイ!!、キラーらしくのない焦りの感情のこもった声が聞こえる、視界、火花、回転、吐き気、明滅。体を捻り、頭を打ち付ける

 

「オイ!?ユウ…ダイジョ…?!オイ!」

 

「ユウミク…シッカ…!」

遊戯や城之内の声が遠くから聞こえる、しかし言葉を理解する余裕がない、まるで体から魂を無理やり剥ぐような痛み、痛みに耐えきれず俺の意識はブレーカーが落ちたように深い深い闇に飲み込まれた…。

 

 

 

 

Side遊戯

 

それは突然の出来事だった、城之内君と話していたら遊海君が千年パズルを見せてほしいと言ってきた、彼が悪い人間ではない事を僕はわかっていたから彼に千年パズルを手渡した…その時だった。

 

「ぐっっ?!、グアッッァ#%$*#):?/)*>§ーー!?!」

 

千年パズルに手を触れた遊海君が頭を押さえて倒れてしまった!?

 

「おい!遊海!どうした大丈夫か!おいっ!」

 

「遊海君、しっかり!」

 

「ゴガッッ、グッッ§¦¥§$)(*+*ー!ー!ガッ……」 

頭を押さえて悶え苦しんでいた遊海君は突然糸の切れた人形のように動きを止める、気絶してしまったようだ。

 

「お客さん大丈夫かい!?救急車呼ぶか?」

店員さんが心配して駆け寄ってくる。

 

「いえ、救急車は大丈夫です!城之内君手伝って!遊海君を亀のゲーム屋へ!」 

 

「おう!、わかった!」

 

「遊戯、どいててくれ俺が運ぶぜ!遊戯は俺と城之内のカバンを頼む!」

 

「本田くん、ゴメンお願い!」

 

「杏子!お前は遊海のリュックを持ってきてくれ!」

 

「わかったわ!」

みんなで協力して遊海を介抱し亀のゲーム屋へ、気絶した遊海はとても汗をかき青白い顔をしていた…。

 

 

「リュックはこれね、ヨイショ!あれっ、何か重たいものが…!!コレって!?」

その後遊海のリュックに入っていたモノを見つけた杏子は遊戯にその事を伝えた。

 

Sideout

 

 

 

 

 

意識が覚醒する、俺は何をしていたんだっけ…転生…城之内…決闘…千年パズル…。

そうだ、遊戯に千年パズルを見せてもらおうとして…、激しい痛みで気絶したんだ…。

というか…ここはどこだ?

 

俺は周囲を見回す、石造りの部屋、木の古い扉、真上にはひっくり返った階段…、ここもしかして千年パズルの内部か?

回りには誰もいない、体を起こしドアを開ける…そこには…

 

 

『お前は…白波 遊海か?何故お前がここにいる?』

 

遊戯に宿るもうひとつの魂「闇遊戯」が朝会った時のような幽霊のような状態ではなく実体を持って存在していた。

「(とりあえず…知らない振りをして様子をみよう)」

 

「あなたは…遊戯さんですか?さっきとは雰囲気が違いますが…?」

『あぁ…俺は遊戯だ、ただし相棒の体に居候しているもう一人の方だがな。そしてもう一度聞く、何故お前がここにいる?』

 

「…わかりません、遊戯さんに千年パズルを見せてもらおうと触れたところまでは覚えているんですが…ところでここは何処なんですか?ここは普通の場所では無いですよね?」

 

「ここは俺の意識の一番の深いところ、心の部屋と呼ばれる空間だ、本来ここには俺の招いた者か千年アイテムの干渉でしか来れない場所だ。そしてお前は今、意識だけでここに存在している、体は相棒達が何とかしている筈だ、しかし…二人きりになれたのは好都合だ。お前に聞きたい…「お前は何者だ?」』

 

その瞬間俺の体にものすごい圧力がかかる、答えによってはただでは済まさないという感じがする…!! 

 

 

「俺はただの決闘者だ、それ以上はなにもない!」

 

『嘘をつくな、ただの決闘者が何故精霊を宿し、何より千年アイテムに似た力を持っている!」』

バレてたか…、こうなればある程度本当の事を話すしか…そのとき!

 

《マスター、白波 遊海の魂の現在地を探知、サルベージ実行します!》

 

聞き慣れた声がする、それとともに俺の体が薄くなっていく…。

『時間切れか…あの精霊、ここにまで干渉するとは…。』

「遊戯さん!約束します目が覚めたら全部お話しします、今回はすいませんでした!」

 

『ならばいい、現実世界でお前の事聞かせてもらうぜ…!』

 

その会話を最後に俺の目の前は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

「うっ…」 

 

「!、遊戯!遊海君が!」

 

「おい!遊海大丈夫か?」

 

「遊海君!」

 

意識が覚醒するとそこは見覚えのない部屋だった、壁の時計は5時を指している、目の前には心配そうに俺を覗きこむ遊戯、杏子、城之内の姿が。

 

「ここは…?」

 

「ここは遊戯の家『亀のゲーム屋』だ、遊海何があったか覚えてるか?」

 

「…確か遊戯さんに千年パズルを見せてもらおうとして…」

 

「そうだよ、それでパズルに触れた瞬間頭を押さえて気絶しちゃったんだ。」

 

「それでみんなで遊海君を抱えてここまで運んできたの、城之内と今いないけど本田に会ったらお礼言っといてね、二人が遊海君をここまで運んできてくれたんだから」

 

「申し訳ないです、自分でもまさかこうなるとは…、あっ城之内さんありがとうございました。」

 

「大丈夫だ、お前意外に軽かったしな!」

 

「すいません、そう言ってもらえるならありがたいです。」

 

「体は大丈夫?」

 

「まだ頭がフラフラしてますけど大丈夫です。」

 

「よかった~!」

 

気を失っている間にだいぶ迷惑をかけてしまったらしい、そして遊戯が意味ありげに俺の事を見ている。

 

 

「遊戯さん、ちょっと話いいですか?」

「うん、いいよ」

 

「あっ!時間遅くなっちゃうから私達帰るね!」ウインク

 

「…あぁそうだな!それじゃあ遊戯また明日な!」

 

「うん、また明日!」

 

気をきかせてくれたのか城之内と杏子は帰宅した、部屋に残っているのは俺と遊戯だけだ。

 

 

「じいちゃんはオモチャ組合の話し合いで居ないんだ、今ここにいるのは僕たちだけだよ。」

 

「そうですか…、なら大丈夫ですね。…『もう一人の遊戯さん』を出してもらってもいいですか?」

「!やっぱりそういう事だったんだ…もう一人の僕」

 

『済まない相棒、迷惑かけちまった』

遊戯に呼ばれ半実体で闇遊戯が現れる。

 

「じゃあ俺も、来てくれ『キラー』」

《お呼びですかマスター!無事でなによりです!》

俺の隣にキラーが現れる

 

「!それはクリボーと同じカードの精霊!?」

《えぇ!その通りです遊戯様、私はとあるカードの精霊です!とりあえず『キラー』とお呼びください》

そういうとキラーは頭?を下げた。

 

『それじゃあ聞かせてもらうぜ遊海、お前が何者なのか…』

「あぁ、とその前にこれを見てもらった方が早いかな」

そう言い俺は枕元にあったリュックから千年玉を取り出す。 

 

「その眼の模様…もしかして千年アイテム!?」

「そうです、名前は千年玉、ただしこれは厳密には千年アイテムではありません」   

 

『どういう事だ?』

 

「この千年玉は遊戯さんが持っている千年パズルより遥か昔に作られたいわば『試作品』なのです。」

 

「どういうこと?」 

 

「これは今は行方不明の親から聞いた話です…」

 

 

"はるか昔、ある代のエジプトのファラオが世界の平和を願い配下の魔術師に7つのアイテムを作らせます、それが今に伝わる千年アイテム。

しかしそれよりもさらに前、千年アイテムを作る方法を発明した大魔術師がいたそうです、その魔術師が初めて作ったのがこの千年玉、材料は卑金属、そしてその頃にあった戦争の死者数千人分の心臓と魂でした…。

魔術師は儀式によりこの玉を作り出しました、しかしその機能は魔術師が想定したものよりはるかに劣化した者でした。

 

魔術師は千年玉を封印し、作り方をある書物に書き記し世を去った、その本が受け継がれて千年アイテムが作られた¸。

 

 

「という話です。」

 

『…なるほどそんな話が残っていたのか。』

 

「はい、そして親がひょんな事から手にいれ、これを俺に託したんです。そしてこれのおかげで俺に不思議な力が宿り、キラーと出会えたんです。」

 

「そんなことが…」

 

《注、補足します、マスターが先程気絶したのは千年パズルと千年玉が過干渉を起こしたためと推測します、なお干渉を防ぐ処置を施したためこれからは発生しないでしょう》

 

「ありがとうキラー、もうあんな痛みはコリゴリだ…」

『千年アイテムについてはわかった、あとはお前のデュエルの強さについてだ、城之内君は実力がついて前より確実に強くなっている。それを全力で戦わずあしらえる程の強さ、どうやって身につけた?』

 

「えっあのデュエル全力出してなかったの!?」

 

「…すみません、確かに本気で戦ったが全力は出していませんでした、でも理由があるんです…体が持たないんだ。」 

 

「体が持たない??」

「そう、俺は千年玉のおかげで不思議な力を手にいれたけどまだ完全に馴染んだ訳じゃない、いまはまだ決闘に全力を込めると体力をごっそり奪われてしまって…だからあのデュエルでは加減しながら戦っていたんです」

 

『そうだったのか…』

 

「たださっきのデュエルでコツが掴めました、次からは全力で相手をします」

 

『そうか、すまなかったな手荒な真似をして』

 

「いや、大丈夫ですよ!でもひとつ約束します。俺はあなた達の敵にはなりません、もし何か『敵』と戦う事があれば協力します!」

「ありがとう遊海君、これからもよろしくね!」

 

 

 

そして俺は遊戯と別れ家へと戻る(ナビはキラーに任せて)

さっき遊戯に話した事は6割事実で4割は嘘だ、千年玉については全て本当、神様からのカンペだ、デュエルについては体力を奪われる事は本当、ただしデッキを回しすぎて疲れるからだ。

 

バトルシティまで残り1週間、運命を変えるためにデッキを強化しなくちゃ!

《頑張ってくださいマスター!》

 

 

 

 

 

 

 

「フン、8つ目の千年アイテムか…まぁ興味はないが…忘れないでおくか…。」



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バトルシティへの準備

 キラーのナビで家へたどり着いた俺は自室にて「賢者の鍵」を使い亜空間へ入る。現在時刻は夜の8時、俺は少しデッキを調整することにする。

「…マスター質問よろしいですか?」

キラーが珍しく質問をしてきた。

「どうしたのキラーさん?」

「マスターはどうして先程、遊戯様に本当の事を伝えなかったのですか?

遊戯様にこれから起きる事を伝えればマスターの望む未来を達成しやすくなるのでは?」

「その事か…俺は未来を変えるつもりだけど未来を曲げる事をしたくないんだ」

「それはどういうことですか…?」

「例えばさっき遊戯達にグールズの事や闇マリクについて知らせたとする、するとその話は確実に海馬に伝わる。そして先回りしてグールズを一網打尽にしたとする。」

「はい、そうすれば孔雀 舞とマリクは決闘せず、神のカードは遊戯様、または海馬様に直接渡る可能性が高くなります。」

「しかしそうすると未来が変わりすぎる、例えばグールズがいなくなったことで城之内への闇討ちや洗脳デスマッチが無くなる、しかしそれに対する『世界』からの反動が怖いんだ…」

「世界からの反動…?」

「例えばマリクがいないことでバトルシティの結果が変わる、正史では遊戯が決闘王に成るが、もしかしたら海馬が決闘王になる分岐があるかもしれない、そうなったらこの世界の歴史はねじ曲がり世界が変わってしまう、だから俺は最小限の改変で押さえておきたいんだ。」

「了解しましたマスター、先程からの疑問が解決しました。」

「なら良かった、それからキラーさん俺からも質問いい?」

「なんでしょうか?」

「なんか朝よりも感情表現が豊かになってない…?」 

そうなのだ、キラーさん、朝は機械音声然とした声だったのに自分が気絶から目覚めた後から声はそのままなんだけど、どうも感情が表に出てきている気がする…。

 

「お答えします、簡潔に言いますと自己進化しました」

自己進化!?

「はい、マスターが千年アイテムの干渉で気絶した際、マスターの魂が肉体と解離しているのを確認しました。なのでワタシとマスターの魂間の繋がりを強化しマスターの魂の所在を探知、サルベージして肉体に戻したのです。」

「気絶してた時そんな事になってたんだ…。」

だからあんなに痛かったのかな?某地獄先生だと魂を肉体から離すのは描写を見ても痛そうだったし。 

 

「その後マスターとの繋がりが強化された事により疑似回路が魂を繋ぐ道…廻廊と呼べる物になりました、それによりマスターの生前の記憶を閲覧できるようになりました。」

「…もしかして記憶の中の『あの小説』を読んだ…?」

「はいワタシにインストールしました。」

 

 

マジか…あの小説読んじゃったのか、あの小説とはある「転生ジャンル」の物語である(わかる人は2話を読めば判るかも by作者)

「その小説のワタシと似た存在をトレースし疑似的な自我を獲得しました。」

「うんつまり俺のせいということだね!」

「そういう事ですマスター!」

「まぁ機械的対応ばかりされるのも寂しかったし、話相手ができたと思えばいいか。」

「ありがとうございますマスター、それでその…ひとつお願いがあるのです」

「何だい?」

「ワタシに『名前』をつけて欲しいのです、今は例えるなら犬を『イヌ』と読んでいるようなものなのです、なのでワタシだけの『名前』を頂けませんでしょうか…。」

「名前か…、ちょっと待ってくれ考えてみる…」 

「はい、お願いします!」

名前か…転生前は彼女もいなかったしペットも名前つけるようない生き物飼ったことないし…。

クリフォート…コア…虹…虹彩…!

思いついた!

「キラー、俺の思いついた名前を聞いてくれるか?」

「はい!マスター!」

「『彩華《アヤカ》』という名前はどうだろう?

お前の虹色に輝く鮮やかなコアから思いついたんだけど…」 

「彩華…アヤカ…!!」

「ちょっとキラーさん…?」

 

「『アポクリフォート・キラー』機能管理人格エクストラプログラム《アヤカ》を作成、システム最適化のため再起動します…」

「ちょっ!ストップ!ストップ!」

「システム再起動…精霊界における『クリフォート』指揮権を『カーネル』に仮譲渡…システムをレプリカモードで起動する準備をしています...

C:¥sophia¥sefiroth.exe 実行中にエラーが発生しました

マスター、白波 遊海によるプログラムを実行しようとしています。

C:¥ayaka¥qliphoth.exe の実行を許可しますか? <Y/N>...[Y]

システムをエクストラモードで起動します…。

システム起動中に¥sophia¥sefiroth.exe、並びに ¥tierra¥qliphoth.exeの干渉・妨害を確認…データを破棄します…

システムをエクストラモード コード《アヤカ》で起動します。」

 

 

俺があたふたしている間にキラー…もといアヤカが再起動する。というかさらっと上位存在のソピアとティエラのデータを破棄したような…

「再起動成功しました…マスター、改めましてパートナー精霊・アヤカです、これからよろしくお願いします!」

「おう…よろしくなアヤカ!」

「ハイッ、マスターのお役に立てるようにわたし、頑張ります!」

こうしてキラー改めアヤカが誕生した。

 

 

「早速だけど最適化して新しくできるようになった事はある?」

「はい!、まずはこの世界のインターネットにアクセスし情報を検索できるようになりました。

次に特定の相手を登録し追跡するサーチ機能、エネルギーを感知するレーダー機能が追加されました、なおレーダー機能に感知されるエネルギーは電気・熱・精霊・魂です。最後に…マスター、千年玉を出して頂けますか?」

「?わかった」

俺はリュックにしまっていた千年玉を取りだし机に置く。

 

 

「解析プログラムを始動…千年玉の解析を開始…。

…解析完了、オペレーション《ミレニアムアイテムF》を起動します。」

するとアヤカのコアが輝きそれに呼応し千年玉も輝きだす、そして千年玉が光の粒子になりアヤカに吸収される!

「ちょっアヤカさん!?」

 

 

吸収が終わるとそこにはコアにウジャト眼を浮かべたアヤカの姿があった。

「オペレーション終了、これが『アヤカ・ミレニアムモード』です!

 

余計なデータ(上位存在)を廃棄し空いた容量に千年玉を吸収しました!もちろん出し入れも可能です。さらにこの状態でも千年アイテムの力を使用可能!さらにさらに、この状態ならば特定の相手に対して『念話』を使えますしかもこれは相手の身体ではなく『魂』に対して語りかけるので相手の意識がなくてもこちらの意思を伝える事ができます!」

とアヤカは説明してくれた…何だか某魔王スライムの気持ちがわかった気がする…。

というか上位存在を余計なデータって…スゴイナー(棒)

「褒めていただきありがとうございます!」

…何だろう…いわゆるダメ犬感がすごい…いや能力は優秀なんだけれども…まぁいいか!

 

 

         《閑話休題》

 

 

1時間程のデッキの調整・カード整理をした俺は次の作業…バトルシティのおさらいを始める、まずは決勝トーナメントに出場する者達についてだ。

「マスター予選についてはいいのですか?」

「ああ、予選は正式には48人が参加しているとなってるがグールズが参加しているせいで実際の人数はわからないだから今は割愛する!」

「わかりました、でもマスターの知識にある人物については登録しておきますね!」

「わかった、頼んだよアヤカ」

「はい!マスター!」

そういうとコアに様々な文字の羅列が表示される、俺の記憶を読み込んでいるようだ。

 

 さて気を取り直して参加者の確認だ。

一人目は武藤 遊戯

マリクの人形や奇術師パンドラを倒し決勝Tに進む、使用デッキはブラックマジシャン軸混合デッキ…、よく回せるよなあのデッキ。

二人目は城之内 克也

王国編で出てきた羽蛾や梶木、エスパー呂場を倒し決勝へ進む。使用デッキは戦士族軸ギャンブルデッキ、本来は真紅眼が入っているがバトルシティ前日にレアハンターに盗られたのち遊戯が取り戻しバトルシティ終了まで遊戯が預かっている。

三人目は海馬 瀬人

バトルシティの主催者、一応予選を突破し決勝へ進む。

使用デッキは青眼軸パワーデッキ、一時オベリスクに浮気した人。

四人目はマリク・イシュタール

グールズの首領、千年杖の所有者。決勝以前のデュエル描写が無いが決勝に進む。使用デッキはラー軸拷問デッキ

五人目はリシド

マリクの従者で当初はマリクを名乗り影武者を務める。

使用デッキはセルケト軸罠デッキ、決勝Tでは城之内と戦いラーのコピーカードを使い神の怒りを受け脱落する。

六人目はイシズ・イシュタール

千年タウクの所持者でマリクの姉、マリクの蛮行を止め、闇マリクを消滅させるためにバトルシティに参加する。使用デッキは千年タウクの力を使ったメタデッキ。

七人目は孔雀 舞

バトルシティへは表向きはレアカードを集めるため、本心は城之内へ自分の思いを伝えるために参加する恋する乙女。使用デッキはハーピィ+アマゾネスデッキ。

八人目は獏良 了(闇バクラ)

千年輪の所有者、最初は参加していなかったが表マリクとの密約を果たすため決闘盤を奪い参加する。使用者デッキは死霊デッキ。

とこんなところだろうか。

 

 

 

そして俺は歴史を変えるための作戦、そして優先順位を

考える。まず優先順位は…

①バトルシティ内で孔雀 舞と戦い勝利する。

②バトルシティ決闘Tへ進出する。

③バトルシティで暗躍するグールズ(雑魚)を倒す。

とりあえずこの3つだろう。

「記憶の読み込み完了!それでマスターどうしてこの順番なんですか?」

記憶の読み込みを終えたアヤカが質問してくる。

「うん、まず孔雀 舞と戦い勝利する、そうすれば舞は決勝トーナメントへ出場できずに終了となるまぁ杏子達みたいに観戦するために飛行船には乗り込むかもしれないけど、そこはまあいい。」

「次に決勝トーナメントに出場する、もし期間中に舞と出会えなかった場合、俺がトーナメントへ出ることで決闘の抽選を変える。」

「最後にグールズの殲滅、これは普通の決闘者達を守るため。これが俺のバトルシティ改変作戦だ!まぁ多少なり穴はあるがあとは臨機応変にやるさ!」

「なるほど…ん?マスター1つ質問いいですか?」

「どうした?」

「今マスターの記憶を確認して思ったんですがマスターが舞さんの枠に入ってマリクに勝利して…その先は?」

「先?」

「ですからマスターの力だと80%以上の確率で優勝してしまうんですけど…。」

「あ…」 

その可能性を忘れてた…、まぁ遊戯が何とかしてくれるでしょ(投げやり)

よし、今日はこれくらいにして休もう。

時間は8時20分、シャワーを浴びて寝よう。

 

 

俺は亜空間を後にする、アヤカは今日得た知識を整理するためにスリープモードになっている。 

それにしても…転生初日なのに1日が濃すぎるわ!

 

 

 

 

その後、亜空間に1枚の新たな封筒が届いた事に俺もアヤカも気づかなかった…。

 




アポクリフォート・キラーについて
遊海の転生前の一番のフェイバリットカード、転生前からキラーの意識があり、マスターと意思疏通ができないか考えていた。
転生直後は機械然とした対応だったが遊海と魂の繋がりを強くしたため疑似的な自我に芽生える、その後に遊海より「彩華《アヤカ》」という名前をつけてもらった事により真なる自我を獲得した。

モデルはやっぱり某魔物転生小説の大賢者、しかし彼女(?)ほど万能ではない。


使用可能能力
マスターの遊戯王世界知識の供給
マスターの記憶読み取り、念話
マスターの魂への干渉
インターネットへの干渉・検索
特定人物の情報を記録、探索
強いエネルギーを探知するレーダー(熱、電気、精霊
、魂対応)
半実体化(コアのみ)
完全実体化(移動要塞として機能可能。少なくとも全長数キロ規模。出番はそれこそ超大型のモンスターと戦う時ぐらいであろう)

ミレニアムモード
千年アイテム探知
千年玉の持つ能力全て
千年玉の収納、排出(排出すると通常に戻る)
出会った事のある人物への念話中継(魂)
※ただし特殊な封印状態にある人物へは不可
封鎖結界(対象と定めた者以外のあらゆる干渉を受けない結界、ただし千年アイテムの干渉は受ける可能性がある。)


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バトルシティ開催2日前

今回は切りがいいので少し短めです、すいません!  
その代わりに後書きにオマケがあります!


 今日は金曜日。転生して約1週間がたったそして …今俺は部屋で倒れていた…。

「だ…大丈夫ですかマスター…?」

「うん大丈夫ではない…な」

何故こんなに俺がボロボロなのか、それは月曜日に遡る。

 

 

 

         ~4日前~

 

 

「マスター!緊急事態です!起きてください!!」

「ぐぇっ!!?」

俺が寝ているとアヤカが腹に突進(ダイレクトアタック)してきた…、これが美少女ならいいのだが相手は機械である。

「あ、アヤカさんどうしたのこんなに朝早く…」

時間は朝7時半、駅などは学生や会社員で一杯の時間だろう。

「わたしがスリープモードを解除したら隣にこれが!」

そういってアヤカは機体の上に載せてあった封筒を渡してくれた。表には「白波 遊海様へ」と書いてある。

「もしかして神様からか…?」

俺は封筒を開き内容を確かめる。

 

「拝啓白波 遊海殿

 

 久しぶりだの!神様じゃ。転生して1日、どう過ごしたかの?お主なら上手く、その世界に馴染めるじゃろう。

 さて、お主に手紙を書いたのは他でもない1つ連絡を忘れてたからそれを伝えるためじゃ。

お主は転生して自分の体が変わっている事に気づいたじゃろう、それはワシが遊戯達に合わせて調整したからじゃ、それでバトルシティのデータを書き込む時、職業欄があった、今お主の肉体年齢は17才。

さすがに無職は、申し訳ないから童実野高校に編入しておいたから学校に行ってほしい。

今回の連絡は以上じゃそれではまた今度、さらばじゃ!

                 敬具 神様より」

 

 

 

 

「ねぇ…アヤカちょっと検索して欲しいんだけど…。」

「はい、なんでしょう…?」

「童実野高校の始業は?」

「検索中…わかりました8時15分です。」

「ここからの所要時間は?」

「徒歩で20分です」

「今の時間は…?」

「…7時50分です。」

「……。」

「……?」

 

「遅刻だっ~~~!!?」

 

 

 

 

 

 …そんなこんなで俺はまた高校に通う事になった、生前は勉強が苦手で高校を卒業してホッとしたんだけど、なんでまた通わなければならないんだろうか…。

そのあと?無事に高校には着いたよ?息も絶え絶えだったけど、それで編入したクラスが遊戯さんと同じクラスでお互いに驚いたり、たまたま登校していた海馬さんに曲がり角でぶつかって目をつけられそうになったり(服装はいつもの針金コートだった、特例だそうで…。)

勉強?公式とか英語全く解りません、アヤカがいなければヤバかった。

ただ収穫もあった、まずは世界史。古代の文明に俺の世界になかった文明「アビス文明」があった、さらにその王の名前が「ナッシュ」、確実にあのナッシュですありがとうございます。

さらに日本史の教科書の豆知識に戦国武将「喜楽 壮八」、完全にギラグです本当にry

あとようやくバクラに会えた、見た目は優男なんだけどアヤカ曰く「完全に千年輪に魂を囚われてますね、あれ闇人格が演技してるだけなんじゃ…?」とのことで。

 

 

そして怒涛の平日が終わりやっと帰宅、まさかこんな事になるとは思わなかった。

「マスターこの数日間勉強を頑張りましたもんね、まさかデッキ構築の亜空間を勉強に使う羽目になるとは…。」

そうなのだ、亜空間なら時の進みが遅いから勉強に使えると思い使ったが…あまり長く居すぎると精神力がゴリゴリ減らされると判明。寝ても完全に疲れは取れずボロボロのまま学校へ…、勉強ではもう使わない事にしよう。

 

「マスター、今日明日はしっかり休んでください。

明後日からが本番なんですから…。」

そう、今日はバトルシティ2日前、遊戯や城之内は準備に追われている。そして…ついに俺の計画が始動するのだ…しかし。

「わかったよアヤカ…、なにかあったら起こしてくれ…ガクッ」

今は疲れをとることを優先しよう…。ベットに投げ出された体は弛緩し意識は緩やかに沈んでゆく……。

 

「おやすみなさいマスター…良い夢を…」

アヤカの声を聞きおれ意識は安寧の闇に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 ここはどこだろうか…、俺は部屋で寝たはずだけど…?…体が自分の意思で動かせない…?

しかし足は地面を踏みしめ歩いている、どうゆうことだ?まるでVRのチュートリアルをしているような…。

辺りは夜…どこかの裏路地だろうか…。

「おい、そこのお前!」

誰かが話しかける、体が振り返ると黒いローブかなにかを着た男が決闘盤を構えている、そして体も何事かを言った後決闘盤を構える…頭がはっきりしない、相手の声が聞こえるのに体の声が聞こえない。 

そしてデュエルが始まる、体が緑色のモンスターを召喚し攻撃する、相手は罠カードで防いだ。視界もはっきりしない…薄いモヤがかかっている。

黒い相手は手札を交換しつつ守りを固める、体は攻めるが攻めきれない…すると。

「悪いな§##§!俺様の勝ちだ!

現れろ▲▲▲▲▲▲!!」

相手は手札を掲げ巨大な何者かを召喚する、だめだ耳も聞こえなくなってきた…。

「~~!!」

体が吹き飛ばされ倒れこむ、そして物陰から現れる黒い人影…体は痛めつけられ1枚のカードが奪われる。

「さらばだ$$#$!フハハハ!」

「返せっ…!!オレの『真紅眼』を…返せ!」ガスッ

「ぐっ…。…」

その時俺は見た…道端に転がるビンに、倒れ伏す城之内の姿を!!

「!!城之内さんっ!?」

 

 

「…スター!大丈夫ですか!マスター!?」

 

 

はっ!

アヤカの声で目が覚める、俺はベットの上にいた。

「よかった目が覚めましたねマスター、びっくりしたんですよ~いきなり魘され始めて大汗かいて…。」

体を見ると寝間着が濡れている、時間は朝の5時…、ほぼ半日寝ていただろうか。

「また何かの干渉を受けて魂が離脱してるんじゃないかと心配したんですよ?」

魂…離脱…憑依…まさか!

「アヤカ!城之内の居場所を検索!大至急!!」

「り了解です、検索…、発見。ん?こんな朝早くに海岸?

あれ…少し生命力が弱っているような…?」

「大変だ!!」

俺は上着を羽織り外に駆け出す!

「ちょっとマスター?!どうしたんですか!?待ってください~!」

アヤカも慌てて遊海を追いかける。

数分後城之内を探していた遊戯と合流、城之内は昨夜目の手術を控えた妹の病院にいくはずだったが訪れず、家にも帰らなかったらしい。

俺は夢で見たことを遊戯さんに伝え城之内を探す、暫くして本田と一緒にバイクで現れたボロボロの城之内から真紅眼がグールズによって奪われた事が判明したのだった。

その後本田と共に病院に着いた城之内は手術前の妹静香と対面、その後手術は行われ無事成功したらしい。

 

 

そしてバトルシティ当日を迎える…。

 

 




~これは少し遠くしかし近くに迫った未来の話~


 ようやくここにたどり着いた。城之内が倒れ、その魂の行方をアヤカと共に追跡しついに敵の本拠「アトランティス」にたどり着いた。
「マスター、この通路の先です多数の魂が囚われている場所は…」
アヤカがそう俺に伝えてくる…俺は歩みを早める。
暗い通路を抜けた先に広間が広がる、その壁には…無数の人達が石板に囚われていた。
昔のギリシャ風の服をきた男性、ドレスを着た女性、スーツを着た眼鏡の少年…、そのなかに探していた石板が…あった!

そこは広間の祭壇に近い壁に並んでいた…、表遊戯と城之内の封印された石板、俺は二人を見つけるために別行動をとっていた。
「今助けるぞ二人とも…!ツッ誰だ!?」
「よくここにたどり着きましたね、異界からの転生者…白波 遊海!」
「お前はダーツ!?」
俺の後ろには緑と黄色のオッドアイの男、秘密結社「ドーマ」の首魁ダーツが立っていた。
「転生者の強大な魂…オレイカルコスの神に相応しい…」
「ただではやるもんか!俺は二人を連れ戻す!」
お互いに決闘盤を構える…
        「「デュエル!」」
           ・
           ・
           ・
「行け、『オレイカルコス・シュロノス』!
『アポクリフォート・キラー』を粉砕せよ!」
「マズイ!アヤカ!キラーから離脱しろ…ぐっ、うわあああ!!」
遊海LP 2800→0
ダーツ WIN


「マスター!しっかりしてください!気をしっかり持って!?」
「無駄だよ精霊、彼の魂はオレイカルコスの結界に捕らわれた。彼はオレイカルコスの神の生け贄になるのだ!」
そしてゆっくりと結界が収縮する…俺もここまでか…。
「アヤカ…俺はこれから少し無茶をする、お前は俺がこれから渡すモノを持って離脱しろ…!」
「しかし…マスター!」
「いいから…頼む!」
「…わかりました、命令を実行します。」
「あぁ、いい子だ…、『千年玉』よ!俺に一時の力を!!」
そして力を込めて結界を殴りつける、そして結界の三重壁を砕きアヤカと共に脱出する。
「!?結界を砕くか!しかし逃がしはしない!」
結界が俺に迫る次に捕まったら終わりだろう…しかしその前に!!
「うおりゃっ!!」
俺は遊戯と城之内の封印されている石板に腕を突っ込む、腕は石板を砕かず通り抜ける!
「アヤカ!これを持って逃げろ!!!」
突っ込んだ腕を引き抜き、引き抜いた手に掴んだ赤と黄色の光の玉をアヤカに投げ渡す!そして…
「マスタァァァァー!!!?」
同時にアヤカに持たしていた「強制脱出装置」を発動させアヤカを離脱させる…これで役割は果たせたかなぁ…
「くそッ、貴様!!選ばれし魂を!?」
緑色の光が俺に迫る…。あとは頼んだぞ…遊戯!!
俺の意識はそこで途絶える。
あとに残されたのは遊海の肉体、そして図柄の消えた石板、新たに帽子を被った男が描かれた石板だった。




「ついに海中から出現した古代都市アトランティス!ドーマの野望を止めるために侵入した私たちが見たものは!
嘘!?なんで遊海がここに!?」
「次回『立ちはだかる強者 強襲の遊海!』デュエル・スタンバイ!」

バトルシティ編終了後執筆予定!


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第2章 バトルシティ編~予選~
開催!バトルシティ~遊海の進撃と出会い~


後半にてヒロイン(仮)登場!


 今日は日曜日、バトルシティが開催される日だ。

「マスター!すごい人出ですね~あっ、インセクター羽蛾とダイナソー竜崎さん発見~」

俺は今アヤカと一緒にバトルシティの初期スタート地点の広場へ向かっている…アヤカは浮かれているのか少々テンションが高めである、機械族とは…。

「ん?マスター今わたしに対して失礼な事考えてませんでした?」

「いや、気のせいだよアヤカさん」

「…ならいいですけど!」

「お~い!遊海く~ん!」『クリ~!』

「あっ!遊戯さんおはよう!」

「おはようございます遊戯様!クリボーも!」

人混みの中から遊戯さん、そして精霊のクリボーが現れる。会って数日は出てこなかったがこの前やっと姿を見る事ができた、姿を見せなかった理由はアヤカ曰く「わたしが怖かったらしく…。」とションボリしていた。たしかに力をセーブしているとはいえ攻撃力3000だもんな~と納得した。

…その後思考を読んだアヤカに再び突進(ダイレクトアタック)を喰らうのだった。…KC社の飛行船が近くに見えたな~…。

 

 

そんなこんなで遊戯さんの回りに羽蛾や竜崎、ターゲットの孔雀 舞などが集まり談笑していると…

『よく集まった!決闘者諸君!』

飛行船のモニターに海馬社長が写しだされる!

『それぞれの持つ魂のレアカード!そしてパズルカードを6枚!3日以内に集めた8人が決勝戦に出場出来る!力を競え決闘者達!!』

 『ここにバトルシティの開催を宣言する!!!』

     「「「ウオォォォッ!!!」」」

 

 

 ついに始まったかバトルシティ…すると

「見つけたぞ!」

声のした方を見ると城之内がカフェスペースにいた黒いローブを着た男…レアハンターを見つけたところだった。…どうでもいいけど違和感半端ない…。

そして遊戯が人格交代してレアハンターとデュエル開始、そして。

「くそっ!エクゾディアを守備表示!」

「今だ!リバース罠『連鎖破壊』!」

「デッキのエクゾディアが!?」

「いけ、!デーモン!磁石の戦士!」

「ぐわあああ!?」

遊戯 WIN!

 

 

そして城之内の真紅眼を取り返した遊戯達、偽エクゾディアも処分した…すると

『僕はマリク、コイツはグールズでも最弱…さぁ神のカードを賭けたデュエルを始めよう!』

レアハンターの体を支配したマリクは遊戯に対して宣戦布告し去っていった。

そして城之内は自分が「真紅眼」に相応しい決闘者になるまで預かって欲しいと遊戯に託す、そして二人は別れて相手を探し始めた。

よし、俺も相手を探しに「おい!赤帽子のオマエ!デュエルだ!」

…探しにいく手間が省けたみたいだ…。

「俺のことか?」 

振り向くといかにもな不良が決闘盤をかまえていた。

「ああそうだ!オマエのレア頂くぜ!」

「そう簡単にはあげないよ!」

決闘盤を構える

        「「デュエル!」」

不良LP 4000

遊海LP 4000

 

「オレの先攻だ!ドロー!」

「こいっ!『闇魔界の戦士 ダークソード』!」

黒く厳つい鎧を着た戦士が現れる ATK1800

「さらに装備魔法『竜殺しの剣』を装備!」

竜殺しの力を持った剣がダークソードに力を与えるATK1800→2600

「カードを伏せてターンエンドだ!

いきなりの高攻撃力だ!これなら負けねぇぜ!」

不良LP 4000

モンスター1 魔法1 伏せ1 手札3

 

 

 …またこれだけか、この世界攻撃力重視しすぎだろ…

「おい!早くしろよ赤帽子!サレンダーか?ハハハッ!」

少しお灸を据えるか…。

 

「俺のターン!ドロー!」

あっワンキルルートだ…

「やっちゃってくださいマスター♪」

「手札から『汎神の帝王』を発動!『真源の帝王』を捨て2ドロー!」

「さらに手札からフィールド魔法『真帝王領域』、永続魔法『進撃の帝王』を発動!」

フィールドがギリシャ調の暗い神殿に変わる。

「そして手札から『天帝従騎イデア』を召喚!」

光輝く鎧を纏った天使が現れるATK 800

「(チッ800じゃ『落とし穴』が使えねぇ』)」

「さらに『イデア』の特殊効果!デッキから攻守800/1000のモンスターを特殊召喚する、俺は『冥帝従騎エイドス』を特殊召喚!」

イデアの展開した魔法陣から黒い甲冑を着た騎士が現れるATK 800

「オイオイ!そんな攻撃力じゃダークソードは倒せねぇぞ?」

「本番はこれからだ!『エイドス』の特殊効果!このターン通常の召喚に追加して生け贄召喚が出来る!」

「なんだと!?」

「『イデア』と『エイドス』を生け贄に現れろ!闇を纏いし帝王『怨邪帝ガイウス』!」

2体のモンスターが闇に呑まれる…そして闇が肥大しその中から「ガイウス」が現れるATK 2800

「今だ!リバースカード「落としあn…」『ビービー!』なんだいきなり!」

「永続魔法『進撃の帝王』の効果により生け贄召喚に成功したモンスターは効果の対象にならず破壊されない!」

「そして『ガイウス』の効果!相手の場のカード1枚を除外し1000のダメージを与え、さらにそのモンスターが闇属性の場合、相手の手札、山札、墓地の同名モンスターを全て除外する!」

「何ー!?」

「さらに『ガイウス』の隠された効果発動!このカードが闇属性のモンスターを生け贄にして召喚した時、効果の対象を2枚にする!やれ『ガイウス』!」

ガイウスから放たれた闇の波動がダークソードと伏せカードを呑み込み…爆発を起こす、さらに爆風によりデッキのダークソードもデッキから排出される。 

「ぐわあああ!」

不良、LP 4000→2000

 

「これで終わりだ!『ガイウス』でダイレクトアタック!『邪帝滅殺拳』!」

ガイウスの闇の力を纏った拳が不良へ拳骨を食らわせる

「グエッ!参りましたぁ~」

不良LP 2000→0

遊海 WIN!

 

 

 

「人を見た目で判断するな!」

「すんませんでしたぁ~…」

不良はパズルカードとダークソードを渡して立ち去った。

アヤカによると5000円ほどするらしい…、以外だな…。

 

 

 

さて次の相手を「オイ兄ちゃんパズルカード寄越せや!」…またか…

「マスター、本日の占いを受信しました…今日の運勢は凶でラッキーカラーは紫、アンラッキーアイテムは赤色の帽子との事です。諦めてください…」

なにそのピンポイント占い…えぇい、やけくそだかかってこい!

        「「デュエル!!」」

 

          《割愛》

「バトル!『風帝ライザー』でとどめだ!」

「ぐわあああ!」

 

ヤンキー2LP 1500→0

遊海 WIN!

 

 

 

 

「お疲れ様ですマスター!不良・ヤンキー四人抜きお見事でした!」

あのあと金髪ヤンキーと不良に絡まれデュエル4連戦をする羽目になった…おかげでパズルカードの残りがあと1枚になった。

 

「今日はさすがにもいいかな…帰ろうかアヤカさん…」

「そうですね、今日は帰りましょうマスタ…ん?」

「どうしたの?」

「いえ、レーダーに精霊の力の反応が…」

「遊戯や海馬さんじゃないの?」

「はい…別の…!?」

「どうした!?」

「対象のエネルギー異常増大!精霊が実体化するレベルです!」

「なんだって!?そこに連れてってくれアヤカ!」

「わかりましたマスター!こっちです!」

 

俺はアヤカを追いかける。なぜか?この時代で精霊が実体化することは「神のカード」以外はまだない、バトルシティの後であればドーマ事件などがあり得るがバトルシティではまだ表立って活動していなかったはず、つまり強い力を持った「何者か」がいる。アヤカを通して見た限りでは今の遊戯達には敵わない可能性がある、もしそいつが遊戯と当たったら…マズイ!

俺は走る…そして5分ほど走った。

「この辺りですマスター!」

「よし、探すぞ!」すると

「わあぁぁ!!?」

大柄な男が吹っ飛んできた…!そっちか! 

俺はビルの間の路地に入る、すると…。

「アナタは誰?アナタも私をキズつけるの?」

そこにいたのは紫色のオーラを纏った少女だった…。

 

 

 

         ~10分前~

 

 

 

 わたしは春風 翠(はるかぜ みどり)

いわゆる転生者になってしまった普通の決闘者の女の子です。

死因はつまづいて転んだら真上から大きな看板が降ってきて押し潰されてしまったというものでした。

 

死んだわたしは気がつくと白い空間にいました、しばらく漂っていると突然目の前にとても綺麗なお姉さんが現れました、見た目は金髪の長い髪で優しい顔をしていました。ただ服が所々焦げていましたが…

「はじめまして、私は貴女のいた世界の神様の妻です。今回は本当にごめんなさい!」

女神様によると旦那さんに料理を作ろうとしたら失敗して大爆発、わたしの「人生の記録簿」というものが燃えてしまいわたしは死んでしまったそうだ。(本当は転んで顔を擦りむくだけで済んだらしい)

「それでもし貴女が良ければ別の世界に転生させたいの、もちろん特典も5個まで付けてあげるわ」

そして女神様に紙を渡されて書き込みはじめました。

 

名前 春風 翠

容姿 fateの間桐 桜

転生する世界 遊戯王世界

特典 決闘盤、前世のデッキ

   精霊の友達

   料理の才能

   黄金律(A)

 (空白)

 

女神様、これでお願いします。

「うんうん…、大丈夫よ!特典を全て許可するわ、あれ?一つ空白だけど?」

「今決められないので転生した後でもいいですか?」

「ウーン…わかったわ、調整しておいてあげる!

さぁいってらっしゃい!」

「ありがとう…ひゃ!」

お礼を言おうとしたら足元に穴があいて落ちる!

そして意識がなくなりました…。

 

 

 

「ふぅこれで全員ね、みんないい人生を送れるといいけど…。」

「お~い!ハニー、終わったかの?」

「あっ!アナタ♪、今最後の子を送り出したところよ。はい書類!」

「ふむふむ…ムッ!?イカン!」

「アナタどうしたの?」

「いま送り出した女の子『精霊の力』を願うのを忘れておる!」

「それがどうしたの?」

「もし呼び出された精霊が闇の精霊なら最悪体を乗っ取られるぞ!!」

「嘘っ!?」

「大丈夫じゃ、ワシが先ほど転生させた男のいる世界に転生させよう!彼なら何とかするはずじゃ!!」

「ああ、私は何て事を…。」

「大丈夫じゃ彼らを信じよう…。」

 

 

 

 

 

 

 目が覚めると私は街の中のベンチに居ました、腕には決闘盤、デッキケースにはわたしの使っていたシャドールと見慣れないパズルのピースを埋め込んであるカードがありました。

ここがどこか知るために周囲を見渡すと…。

「童実野ベーカリー」「バーバー童実野」「本日からバトルシティ!」「大きく『KC』と書いた飛行船」…

わたしはどうやら初代遊戯王の世界、しかもバトルシティの期間中に来てしまったみたいです、すると…

「オイ姉ちゃんデュエリストかい?俺らとヤろうぜ!」

見た目からヤンキーと分かる男性が話しかけてきました。

「すいません、今調子が悪いので相手ができません…ごめんなさい…」

「調子が悪いのか?それなら向こうにホテルがあるから連れてってやろうか?」

「いいえ大丈夫です。」

「いやいや、いこうぜ!ホントにすぐそこだから!」

「結構です!失礼します!」

わたしは不良から逃げるように歩きだす。

「オイ今だ!」

「こっちこいっ!」ガシッ

「!?」

 

わたしは男の仲間であろう茶髪の大柄な男に腕を掴まれ路地裏へ引き込まれる…!

「やめて…離して!」

「逃がすかよ!おい!」

「「へへへ!」」

新たに二人男が現れる…。

「さあ大人しくデュエルしな!それが嫌なら痛い目見てもらうぜ…!」

いやだ、イヤだイヤだヤメテ!

『なに女なのに遊戯王なんてやってるの?』

『女が決闘なんてするな!』

『デュエルよりもイイコトしないか…!』

ヤダヤダヤダヤダヤダ…誰かタスケテ…!!

ワタシの中から黒い感情がある溢れてくる…

『マスターをキズつける者に神罰を…!』

耳に届いた声を最後にわたしの意識は闇に沈んでいった…。

 

 

 

俺が目にしたのは紫色のオーラを纏った少女だった、しかもその顔がfateシリーズの闇堕ち系ヒロイン「間桐 桜」にそっくりだった。

その回りには壁にめり込んだ男や腕が変に曲がった男が倒れていた。

「アナタもワタシをキズつけるんですか…?ならお掃除しなきゃ駄目ですね…!」

「対象スキャン完了…マスターの意識がありません、周囲の状況を見るに主の危機に精霊が実体化、しかしその力を御刷ることが出来ず暴走しているものと思われます。」

マジか、止める方法は?

「決闘にて勝利し相手の意識を断てば止めることができます。」

わかった!やってみる!

「おい!デュエルしようぜ!」

「フフフ、いいでしょう!」カチャ

よし!かかった!

「マスター!わたし達を使って下さい!」

「?…わかった!」

 

       「「デュエル!!」

 

こうして俺が転生して初めての本気のデュエルが始まった!



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遊海 本気のデュエル~少女の闇をはらえ!~

       「「デュエル!」」

 

 

遊海LP 4000

少女LP 4000

 

「俺の先攻!ドロー!」

「手札から『クリフォート・ゲノム』を妥協召喚!このモンスターは星6だが生け贄なしで召喚できる!代わりに攻撃力が1800星4になる!」

オレンジ色のコアをもったコイルのような機械が現れるATK1800

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

遊海 LP 4000

モンスター1 伏せ2 手札3

 

「マスター、なぜ上級クリフォートを出さなかったんですか?いまのところ手札なら…」

「1度様子見だ、まず相手は相手の動きを見る…!」

 

 

 

「フフフ、ドロー!」

「手札から魔法カード『手札抹殺』を発動!手札を全て墓地に送りその分ドローする!ワタシは5枚ドロー!」

「くっ!俺は三枚だ!でもそれにチェーンして手札の『増殖するG』の効果発動!このターンお前が特殊召喚するたびに1枚ドローする!」

遊海 墓地送り

クリフォート・アーカイブ

クリフォート・シェル

少女 墓地送り

シャドール・ドラゴン4

シャドール・ヘッジホッグ3

シャドール・ビースト2

シャドール・ファルコン1

奈落の落とし穴

「シャドールだと!!?」

シャドールは遊戯王アークファイブ時代のパックで登場したカテゴリー、まさか彼女は…!

「墓地に送られた同族達の効果!

まずドラゴンにより左の伏せカードを破壊!そしてヘッジホッグにより『ファルコン』を手札に!ビーストにより1ドロー!ファルコンにより墓地のファルコンをセット!」

「くっ!『スキルドレイン』が…しかし『G』の効果で1ドロー!」

「そして手札より『影依融合』を発動!手札の『リザード』と『ヘッジホッグ』を融合!現れろ我が分身『エルシャドール・ミドラーシュ』!」

操り人形のようなトカゲとハリネズミが融合し竜に乗った少女『エルシャドール・ミドラーシュ』が現れる。

「『G』の効果で1ドロー!」

ATK 2200

「さらに墓地へ送られた『リザード』の効果によりデッキからシャドールカード『影依の原核』を墓地へ送る、そして『原核』の効果により『影依融合』を回収!」

「バトルよ!『ミドラーシュ』で攻撃!「ウィンドストーム」!」

「ミドラーシュ」の杖から放たれた闇色の風で「ゲノム」のコアがうち抜かれ破壊される。

「ぐっ!グァァァッ!?」

遊海LP 4000→3600

攻撃を受けた「ゲノム」は粉砕され破片が散弾銃のように遊海の体を余すところなく打ち抜き血が流れる

「ガハッ…痛ぇ…攻撃が実体化してやがる…!たった400のダメージなのに…!?」

「マスター…!速攻で決めましょう!まだマスターは闇のデュエルには耐えられません…!」

「そうしよう…できればだけど!」

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

少女LP 4000

モンスター2 伏せ2 手札5

 

「俺のターン…ドロー!」

「(今の手札は5枚これなら…。)アヤカたのむぞ!」

「はい!マスター!」

「リバースカードオープン!「召喚士のスキル」!効果により『クリフォート・アセンブラ』を手札に!」

「そして『ハーピィの羽箒』を発動!伏せカードを破壊する!」

「『エルシャドールフュージョン』と『奈落の落とし穴』が…」

「決闘盤リミッター解除!俺は手札の『ツール』と『アセンブラ』をペンデュラムスケールにセッティング!」

俺の前に光の柱が立ちその中に「ツール」「アセンブラ」が現れる。

「『ツール』の効果発動!ライフを800払いデッキから『アポクリフォート・キラー』を手札に加え…る…!?ゴボッ!」ベチャッ

「マスター!?」

マジか…ライフを払うだけでこれか…!

遊海LP 3600→2800

目が霞む…これは…早く勝負をきめな…いとマズイ…

「フゥ…、俺はスケール1の…『アセンブラ』とスケール9の『ツール』でペンデュラム召…喚!」

「手札…から『アーカイブa』『アーカイブb』、エクストラから『ゲノム』を特殊…召喚!」

場に弱体化した「クリフォート」モンスター達が現れる

ATK 1800

1800

1800

「そして手札の「機殻の生贄」を『アーカイブa』に装備…、これにより『アーカイブ』は2体分の生け贄になれる!」

「俺は『アーカイブ』2体を3体分の生け贄に…、降臨せよ「俺の相棒」!…『アポクリフォート・キラー』!」

クリフォート達がコアのみになり空に昇る、そこへ異空間から「アポクリフォート・キラー」が現れる。ATK 3000

「『キラー』の効果により場の特殊召喚されたモンスターの攻守は500下がる…さらに生け贄にされた『アーカイブ』2体の効果…により『ファルコン』を手札に、『ミドラーシュ』をエクストラデッキに戻す!」

「なんですって!?」

ゲノムATK 1300

「バトル…『ゲノム』でダイレクトアタック!…フラ」

「くぅぅ~!」

少女LP 4000→2700

「ハァハァ『キラー』でダイレクトアタック!『デストロイキャノン』!!」

「キャ~~!?」

少女LP 2700→0

遊海WIN!

 

「今だ…アヤカ!」

「はい!マスター!」

アヤカが倒れた少女を処置する

「スキャン…暴走精霊確認…精霊世界へ強制送還…、少女の体にエラー確認…精霊の力残量0…、マスター、とりあえず彼女をわたし達の家へ連れていきましょう。今の彼女には休息が必要です!」

「わかった…行こうアヤカ」

「…マスター、体は大丈夫ですか?

「ああ大丈夫だ…」ポタッ

 

 

俺は少女を背負い、おもての道にでる。ポタッ

すこしマワりの目せんがきになるが…しょうがない。ポタッ

しかしてんせいまえは、おんなの子をおんぶすることはなかったな。 ポタタッ

「あれ?遊海?」

「クリクリ~!」

「あ!本当だおーい!」

とおくからゆうぎ?と、あんず?がやってくる

おかしいな、からだが、おもい…

「おーい!ゆう…ぎ…?あれ?…まえが…くらい…n」ドサッ

「おーい遊戯様!遊戯様がいましたよ!マスター!…マスター?…マスター?!しっかりしてください!マスター!」

からだに、ちからが、はいらない…しこうが、おそくなっていく…

「!?遊戯!遊海が」

「大変だ!遊海君!一体何が!?」

ゆうぎたちがなにかいって…

そしておれ…は……。

 

 

 

 

 

『それを知ったのはいつだったでしょう…』

声がする、淋しげな女性の声が

『記憶にあるのは近所の小学生が誘ってくれた時のこと』

目の前が開け、どこかの公園が写し出される

「バトル!行け!『◆◆◆◆◆・ドラゴン』でダイレクトアタック!」

「負けた~!」

『ねぇ?なにやってるの?』

「ん?『遊戯王』だよ!」

「お前も興味あるの?」

『うん!』

「じゃあ教えてやるよ!お前の名前は?」

『わたし●▲●!』

「おれは▲●▲!まずはこれがモンスターカードって言って…。」

 

『わたしは近所で遊んでいた小学生に誘われて遊戯王を始めた、少ないお小遣いで少しづつカードを集めた。』

 

『バトルよ!『究極宝玉神レインボードラゴン』でダイレクトアタック!』

「やべっ!負けた!」

『勝った!』

「強くなったな~●▲●」

『ううん、▲●▲兄が教えてくれたからだよ!』

「そっか…、ねぇ話があるんだ…」

『どうしたの?』

「おれ、明後日引っ越すんだ…」

『嘘!?』

「本当…、だから二人で決闘するのもこれで最後!」

『そんな…、寂しいよ▲●▲兄…!』

「…よし!ならお前にこれをあげる!」

そう言って渡されたのは『◆◆◆◆◆・ドラゴン』だった。

『えっこれってあなたの一番のお気にいりの!?』

「うん、そうだよ!でも大丈夫そのうち返して貰うから!」

『?』

「おれ引っ越すの同じ東京の中なんだ、だからお互いに大きくなったらどこかのカードショップで会えるかも知れない…だからそれまで預かってくれるか?」

『うん!わかった!』

「じゃあ指切りだ!」

「『指切りげんまん~』」……

 

 

『それがわたしの遊戯王に出会い、初恋の人に逢えた最初の記憶…』 

そして場面が次々と流れる。

 

『わたしは中学に上がっても、高校生になっても「遊戯王」を続けました、彼との約束を守るために…』

『でも辛いこともありました…女だからって軽蔑されたり、からかわれたり…でもわたしは待ち続けました…でも』

 

 

『明日はパックの発売日♪楽しみだな~、あっ!』コテン

『痛~い!顔から転ん…』

「危ない!!」『えっ…』弾けたネジ 迫る巨大看板…

グシャ!

 

 

『それがわたしの最後の記憶…、あっけない最後でした。』

『そしてわたしはは死んでしまった、転生したけどもう「彼」との約束が守れない…、そんなの嫌だよ…!』

 

 

 

場面が変わるとそこは上から光がスポットライトのように当たる暗い空間だった、空間の中心には膝を抱えた幼女が泣いている。 

俺は彼女に近づく…今、俺が見たのは彼女の記憶の一部だろう…純心に遥か昔に別れた男の子を待ち続けたひとりの乙女の…。

 

『ぐすっ…』

「なあ…君、なんで泣いているんだ?」

『彼に本当に会えなくなっちゃったから…』

「いや!まだわからないよ!」

『えっ…!』

「君が死んで転生出来たのなら…その『彼』も来るかも知れないじゃないか」

『本当に…!』

「あぁ!100%とは、俺からは言えないけど…、0ではないはずだ!」

周りの空間が少しづつ明るくなる…少しは彼女の心を癒す事ができたのだろうか。

『ありがとう優しい人…、お名前は…?』

「俺は白波 遊海!」

『わたしは春風 翠!』

二人が名前をいうと少しづつ景色が薄くなる。

『ありがとう遊海さん…現実でまた会いましょう!』

「あぁ!また後でな翠!」

そうして俺の意識は浮上するのであった。

 

 

 

 

 

 目が覚めると知らない天井だった…、体を見ると見慣れない寝間着?を着せされていて口には空気の出ているマスク…腕には点滴…体は包帯だらけ…病院か…?

「あっ!遊海君!目が覚めた!」

「私先生呼んでくる!」

ベットの横には遊戯と杏子がいた、どうやらまた助けられたようだ。

「遊海君、一体何があったんだい?」

『お前ほどの決闘者があれほどダメージを受けるとは、よほどの事があったんだろう?』

遊戯と闇遊戯が話しかけてくる

「遊戯…バトル…シティは?神の…カードは?」

俺は遊戯に問いかける…上手く声が出ない…

「今はバトルシティ1日目の夜だよ、神のカードは…ホラ!」

そう言って遊戯は「オシリス」を見せてくる、よかった原作どうりに進んでいるようだ。

「それで君は何があったの?パズルカードは5枚あったし、レアカードもあった…なんでそんなケガを?」

遊戯曰く、神のカードを手に入れ一度亀のゲーム屋に戻ろうとしたら歩いてくる俺を発見、声をかけるとそのまま倒れてしまったそうだ。急いで近づくと歩いてきた道には点々と血が落ちていて、背中には少女を背負っているし本人は血塗れの大怪我だし…それで急いで救急車を呼んで病院へ連れてきてくれたようだ。

 俺は遊戯に何があったのか話す、ヤンキー4人抜き…突如発生した精霊の力…闇のゲーム…暴走した少女…少女?

「遊戯…俺の助けた女の…子は?」

「隣の病室で寝ているよ…まだ目が覚めないんだ、アヤカも向こうにいる。」

「遊戯すまない、その部屋へ連れて行って…アタタタタ!」

「遊海君寝てなきゃダメだよ!先生が全治3週間の重症で絶対安静だって!」

「でも…行かなきゃ…!彼女を助けられるのは俺だけ…ぐっ…」

「遊戯!お医者さん連れてきたわ…って何してるの!?」

「キミ!動いちゃダメだ!全身大怪我してるんだぞ!」

…バットタイミングでお医者さんが来てしまった。そして鎮静剤を打たれまた気を失った。

 




~遊海と翠デュエル中のKC社管制室にて~
「大変です!」
「どうした!」 
「バトルシティ会場にて高い召喚エネルギー反応を観測!」
「フウン、どうせ遊戯が神を召喚したのだろう!気にするな!」
「いえ!エネルギー量が神のカードの数倍あります!」
「なんだと!?」 
「監視カメラNo.20~30システムダウン!」
「エネルギー観測システムNo.1~20オーバーヒート!」
「付近にて電波障害発生!ソリッドビジョンが不安定です!」
「高エネルギーモンスター、画像だします!」

『空中に浮く黒い靄のかかった機械』

「対象をスキャン!未知の…キャ!」
管制室が停電する
「どうした!?」
「あまりのエネルギー量に全システムがダウンしました!」
「全力で復旧に当たれ!」
「「了解!」」
「なんなのだ、あのモンスターは!?」

海馬はまだ知らないそのモンスターが以前高校にてぶつかった少年のものであることを…。


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満身創痍の遊海 治療と決闘 そして…

 気がつくと俺はベットに寝ていた…医者に鎮静剤を打たれたあとまた寝てしまったようだ。

「お目覚めですか?マスター…」

俺の傍らにはアヤカが浮いていた。 

「マスターこのたびは本当にすいませんでした!」

アヤカは俺に謝罪してきた、なにかされただろうか?

「わたしはマスターのパートナーなのにマスターが無理をしている事に気付けなかった…、本当ならわたしがマスターの事を護らなければならないのに…、これじゃあ精霊失格です!」

そう言うとアヤカのコアから一筋の水が流れ落ちる…泣いているのだろうか。

「アヤカ…気にするな!もしお前があの少女の事を教えてくれなければ被害がもっと大きくなっていたかもしれない、それを俺の体一つで済んだんだ!成果はあったよ!」

「しかし…」

「だから気にするなって!そうだ、あの少女は?」

「あっマスターの助けた女の子ですね!まだ隣の病室で寝ています、処置をしないとしばらくは目覚めないでしょう…」

 

 

「結局暴走の原因はなんだったんだ?」

「はい、体をスキャンした結果と推測を合わせたものなのですが。まず本人の名前はともかくあの肉体はマスターの記憶にある「間桐 桜」のものでした、そして魂のスキャン、マスターとの比較によりやはり彼女は『転生者』でした。」

やっぱりか…シャドールを使っている時点でそうじゃないかと思ったけど…

「そして転生特典を一部読み込むことに成功しました。その中に『精霊のお友達』『前世のデッキ』という項目がありました、これが一つ目の原因です。彼女の精霊はおそらく『エルシャドール・ミドラーシュ』だと思われます、それが主の意志に呼応し主の体を乗っ取ったのでしょう。」

「でもなんで暴走したんだろう?」

「はい…実は彼女は精霊を『見る』力しかもっていませんでした、マスターは転生の際『精霊の力』を望まれています、これが違いです。」

「精霊の力とは前世で例えるといわゆる幽霊に干渉できる『霊能力』のようなものです、つまり彼女は見えても『干渉』できない状態だったのです。 しかしそれだけでは暴走は起きません。」

「もうひとつは『肉体』の影響です、彼女の体は『間桐 桜』そのもの、その特異性質『架空元素・虚数』まで再現されていました、本来は魂に宿るものですが管理者様が再現したのでしょう。」

「最後に彼女の心。彼女は前世にて辛い経験をしたのでしょう、その負の部分が肉体の『虚数』により増幅、そこに闇の精霊である『ミドラーシュ』が干渉したことにより暴走したと思われます。」

「…対処方法は?」

「簡単です、マスターの持つ『精霊の力』の一部を彼女に譲渡すればいいのです。」

 

「できるの…そんなこと?」

「はい!可能です、その代わりマスターの力のレベルが40から30に戻ってしまいますが。」

「わかった!すぐやろう!」

「了解しましたマスター…しかし動けますか?」

「これくらい…イタタタタ!?」

「しばらくは無理そうですね…」

全身に電流が流れたような痛みが走る、涙目である。

 

「おーい遊海起きてるか?」

とちょうどいい時に本田くんが現れる、チャンス!

「おはよう!本田くんちょうどよかった車イスを持ってきて欲しいんだけど…」

「?別にいいけど体は大丈夫なのか?」

「ああ、大丈夫だよほら!」

痛みを顔に出さず背伸びをする

「ちょっと待っててくれ、すぐ持ってくる!」

そして車イスで隣の病室へ

「これがお前が暴漢から助けた女の子か、けっこうキレイな子じゃないか」

本田くんにはそう伝わっているらしい。

俺は彼女の体に手を添える、そして

「少女に対する力の譲渡を開始します!」

俺の中の力がゴッソリ無くなっていく、そしてその力が彼女に流れ込む

「譲渡終了、あとは力が馴染めば目覚めるはずです。予定とすれば2日後位でしょうか…」

「ありがとうアヤカ…」

「おい遊海?大丈夫か?顔色悪いぜ」  

「ああ、ごめん部屋に戻ってく…ゴフッ」

「!?おい遊海!?」

意識が沈む…。

「おい!絶対安静の患者がいないぞ!?」

「探せ!?」

「…お前まさか…!?」

「すまん、嘘ついた…ゴメ…ン」

 

 

 

そして次に目が覚めると陽が沈んでいた、ベット横には居眠りをする杏子、そして体がボロボロの遊戯がいた、

あの感じは洗脳城之内とのデュエル後に訪ねてくれたのだろう。

「!遊海くん、大丈夫?」

「さっきよりはマシになった、ごめんな心配かけて…」

「大丈夫だよ、そうだ!隣の女の子も少し意識が戻って快方にむかってるって!」

「そうか…ならよかった、それより遊戯…お前もボロボロだな?火遊びして海にでも飛び込んだか?」

『なんでわかるんだ…』

「なんとなく直感だよ!」

『予知の間違いじゃないか?』

「ハハハさあね…、そろそろ帰ったらどうだ…もう面会時間も終わるぞ」

「そうだね、今日は帰るよ…杏子!起きて!」

「ん…、もうこんな時間!ごめんまたくるね!」

二人は慌ただしく帰っていった。

「アヤカ…いるか?」

「はい、マスター!」

「孔雀 舞さんの居場所を検索してくれ…!」

「…はい…マスターでも…」

「これくらいのケガで計画を諦めるわけには…行かない!」

 

そして俺は消灯後痛む体を引きずりある場所へ向かう、そこは…

 

 

 

 

 

 「城之内…あのバカ…」

アタシは今、遊戯と城之内の戦った埠頭にいる、アイツ変な洗脳に引っ掛かって遊戯と戦わされたらしい、アイツらしくない戦いかただったけど遊戯には勝った、でもその勝ちに納得せず遊戯と決勝で戦う約束をした。

アタシがここにいるのはアイツをひどい目にあわせたマリクという決闘者の痕跡を探すため…、でもなにも収穫はなかった、今日は宿に帰ろうかしら…。

 

 

「孔雀 舞さん…ですね」

声をかけられ振り返る、そこにいたのは…

「あんた…遊戯と一緒にいた…。」

「白波 遊海といいます、1日ぶりですね!」

青色の病院服に赤い防止を被った決闘者だった、でもたしか…?

「あんた、女の子助けて大怪我して入院中だったはずじゃ?」

「はい、抜け出して来ました。」

「なんで?」

「貴女とデュエルするために…!」

そう言って彼は決闘盤を構える

「貴女のパズルカード、いただきます…!」

「いい度胸じゃないか、相当無理をしてるみたいだしすぐに決着をつけてあげる!」

 

 

         「「決闘!!」」

舞LP 4000

遊海LP 4000

 

「アタシの先攻!ドロー!」

「『ハーピィレディ』を召喚!」

翼を持った女性型のモンスターが現れるATK 1300

「さらに装備魔法『サイバーボンテージ』を装備!」

ハーピィレディに鉄でできた鎧がつくATK 1800

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

舞LP 4000 手札2 モンスター1 伏せ2魔法1

 

 

「俺のターン…ドロー!」

「手札から『汎神の帝王』を発動…手札の『再臨の帝王』を捨てて2ドロー!さらに墓地の『汎神』を除外し効果発動…デッキから三枚の『帝王』魔法罠を選び相手に公開する、その中から相手の選んだ1枚を手札に加える…」 

選んだカード

深怨✖2

烈旋

「アタシは…『烈旋』を選ぶわ!」

「『烈旋』を手札に加える、さらに手札からフィールド魔法『真帝王領域』を発動!」

周囲がギリシャ調の神殿にかわる。

「永続魔法『進撃の帝王』を発動…さらに手札から速攻魔法『帝王の烈旋』を発動…このターン生け贄召喚をするときに相手のモンスター1体生け贄にできる…!」

「なるほどね(でもアタシの伏せカードは『銀幕のミラーウォール』と『落とし穴』…しばらくは持つはず…)」

「さらに『真帝王』の効果!手札攻守2800/1000のモンスター1体のカードの星を2下げる…『天帝アイテール』を選択…」

「場の『ハーピィレディ』を生け贄に降臨せよ…『天帝アイテール』!」

ハーピィレディが破壊され天界より聖なる光を纏った帝王「天帝アイテール」が現れるATK 2800

「無駄よ!リバースカード『ビビー!』何よ!?」

「『進撃の帝王』により生け贄召喚に成功したモンスターは対象にならず破壊されない…!」

「さらに『アイテール』の特殊効果…デッキ、手札から帝王魔法罠を2種類…墓地に送り…デッキから現れろ『冥帝エレボス』!」ゴフッ

墓地に送ったカード

開岩

帝王領域

アイテールの作った門より冥界を統べる帝王「冥帝エレボス」が現れるATK 2800

「2800超えが2体!?」 

「バトル…『アイテール』でダイレクトアタック『天帝の威光』!」

「リバースカードオープン罠カード『銀幕のミラーウォール』!攻撃モンスターの攻撃力を半分に…くっ!」

ATK 2800→1400

アイテールから放たれた光が直撃する。

舞LP 4000→2600

「『エレボス』でダイレクトアタック『冥帝崩壊波』…!ズキッ」

「『ミラーウォール』で半分に…くぅっ!」

ATK 2800→1400

「エレボス」の破壊波動が直撃する。

舞LP 2600→1200

「カードを二枚伏せて…ターンエンド…、「アイテール」の効果で召喚された『エレボス』は手札に戻る…ガハッ」

遊海LP 4000

モンスター 1 伏せ2 魔法2 手札3(1枚エレボス)

 

「アタシのターン!ドロー!」

「(よし、死者蘇生を引けた!これで墓地のハーピィを蘇生して…万華鏡で手札から…)」

「スタンバイフェイズにミラーウォールを破壊!」

「アタシは『死者蘇生』を発動!ハーピィレディを復活!さらに…」

「その時リバースカードオープン!罠カード『連撃の帝王』!その効果により相手ターンに生け贄召喚をする事ができる…!!」

「なんですって!?」

「そしてこのモンスターは生け贄召喚に成功したモンスターをを生け贄にすることで1体で召喚できる…!」

「場の『アイテール』を生け贄に…現れろ炎の帝王!『爆炎帝テスタロス』!」

「アイテール」が炎に包まれ、その炎の中から『テスタロス』が現れるATK 2800

「『テスタロス』の効果…!相手の手札を確認し1枚捨てる、モンスターカードの場合その星✖200のダメージを与える!」

「…アタシの手札には星6の『ハーピィレディ三姉妹』がいるわ…アタシの負けね…」

舞 1200→0

遊海 WIN!

 

 

「はい…アタシのパズルカードとレアカードよ」 

「ありがとう…ございま…す。ぐっ!」

カードを受け取った遊海は膝をつく、よく見れば体中包帯だらけで血が滲んでいる

「アンタ…よくそんな体で決闘を…」

「約束が…ありますから…、城之内さんと戦うという約束が…!」

そう言うと遊海は立ち上がりふらふらと歩き出す。

「どこに行くんだい?」

「病院に戻ります、ギリギリまで体を休ませないと…」

「…送ってくよ…後ろに乗りな!」

「ははっ…ありがとうございます…正直…げんか…いで…」

遊海は倒れこむ

「ちょっと遊海!?」

 

その後、舞によって無事に病院へ戻された遊海へは先生の雷とアヤカの突進が待っていたがそこは割愛する。

 

 

 

 

翌日朝9時、バトルシティ予選最終日…遊海はベットにて体を休めていた。あと数時間後バトルシティの決勝が始まるまで少しでも体を回復させるために…。

コンコンコン

「はい、…どうぞ!」

「しっ…失礼します!」

そこにいたのは「間桐 桜」によく似た少女…春風 翠だった。

「白波…遊海さんですよね…」

「ああ、そうだよ!元気になってよかったね『翠』ちゃん」

「えっ、なんで名前を?」

「夢の中で会ったじゃないか!」

「えっ!あれ本当にあったことなんですか!?」

「うんそうだよ翠ちゃん」

「…本当にすいませんでした…」

翠は頭を下げる。

「私のためにそんな怪我をさせてしまって…」

「いいんだよ、同郷のよしみじゃないか」

「へっ?」

「俺もなんだよ『転生者』!」

「え~~~!!!?」

「し~!病院ではお静かに!」

「す、すいません…。」

 

 

そして俺と翠が話しているうちにどうやら同じ原因で転生したということがわかった。

「階段から落ちて胸に鉄棒って痛くなかったですか?」

「いまに比べれば全然だよ、それよりも看板に潰されるのもだいぶ痛いと思うけど」

「いえ、私は一瞬でしたからこう「グシャ!」と」

「まあそれならよかった、でもまさか同じタイミングで死ぬなんてな~」

「はい、5月12日の11時22分だなんて思いもしませんでした…フフ『いい夫婦』なんちゃってテヘ」

「しかし神様も迷惑なことしてくれたよな…」

「まあいいじゃないですか!そのうっかりのおかげで転生してこうして出会えたのですから…」

 

       『『ハクション!!?』』

 

…どこかからくしゃみが聞こえたような?

「でも今回のことどうお詫びしていいか…」

しょんぼりとする翠、う~ん、そうだ!

「なら罪滅ぼしと思って少し手伝ってくれないか?」

「はい?」

「俺はこれから退院してバトルシティ決勝へ向かうつもりなんだ、でもまだ体が思いどうりに動かない…だから車イスをおす俺の『足』の替わりになって欲しいのだけど…どうかな?」

「私は構わないですけど遊海さん絶対安静ですよね…どうやって退院するんですか?」

「ん?真正面から」

「へっ?」

 

         ~1時間後~

 

 

「…本当に退院できちゃいました。」

「なっ!言ったとおりだろ?」

タネは簡単、アヤカ・ミレニアムモードに催眠術を先生や看護婦達にかけてもらっただけだ、それにより「おれは完治した」と認識させて正面から退院したのだ。

「さあ、行こう決戦の舞台へ!」

 



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第3章 バトルシティ編~バトルシップ~アルカトラズ~
集いし決闘者達~叶った約束~


ちょっとありきたりな展開ですが、暖かい目でご覧ください。m(_ _)m


 そして現在午後4時…俺はアヤカ、翠と一緒に海馬ランド建設予定地の中心のスタジアムにいる。ついでに俺は4番目の到着だ、時間まで1時間近くあるので観客席で休ませてもらっていた。

「遊海さん…体大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫!」

「(マスター、わかってるんですよ…痛いの隠してるの…)」

「(翠の前だ少しは我慢するさ…イタタタ)」

「遊海さん、確かここに来る決闘者は…」

「ああ、本来であれば海馬、遊戯、城之内、マリク、リシド、バクラ、舞、イシズの8人。しかし今は舞の枠に俺が入ってる」

「でもまさか昨日病院を抜け出して孔雀 舞さんを倒してくるなんて…」

「まあ、その代わり先生に大目玉くらったけどね…」

「…だから昨日の夜病院が騒がしかったんですね…」

そんな話をしていると「決勝に進出する決闘者は集まってください!」

時間が来たようだ。

「翠ちゃん、頼む…」

「はい行きましょう遊海さん!」

俺達はスタジアムの中心に向かう。

 

 

 

「ゆ、遊海!?」

「お前どうやってここに!?」

「あ、本田くん、城之内さん!普通に退院してきました!」

「「マジか!?」」

二人とも息合いすぎ…。

「遊海君…なんで車イスを使ってまで…、しかもその車イスを押してる子は…」

「春風 翠です、武藤さん先日は助けていただきありがとうございます!これは私が罪滅ぼしのために望んでやらせてもらってるんです、だから気にしないでください。」

「そうなんだ…遊海くんを頼んだよ翠さん、彼はけっこう無茶しすぎるから…」 

「ええ!よく知ってます!」

「おいおい、翠ちゃん…」

「「ははははっ!」」

 

「おい!白波 遊海!そんな状態でデュエルできるのか?」

「海馬さん…ええ大丈夫です!」

「ならいい、精々死なないようにしろ!」

 

 

そしてナム(マリク)、マリク(リシド)、闇バクラが揃った。

「バトルシティ決勝トーナメントはこのバトルシップで行う!決勝に参加する決闘者よ各自、乗り込むがいい!」

「えっ私たちいけないの!?」

「せっかく静香まで連れてきたのに!?」

「いいぜ!ギャラリーがいなきゃ面白くねぇ!乗ってけよお前達!」

「いいの!?モクバくん!」

「サンキュー!モクバ!太っ腹~!」

「へへっ!感謝しやがれ!」

そんなこんなで出発するバトルシップ…、ついに決勝トーナメントが幕を開ける!

 

「一時間後に組合せを行う!各自部屋にて待機しているがいい!」

 

こうして部屋にて翠と部屋でくつろいでいると…

コンコンコン

「は~い!どうぞ!」

「失礼します、白波さんですね?」

そこにいたのは千年タウクの所有者のイシズさんだった

「あれ?イシズさん…ですよね?エジプト考古庁の。貴女も決勝進出者だったんですね!」

「あら…わたしの事を知っているなんて驚きです…」

「どうしたんですか?」

「一つお願いがあってまいりました。」

「はい?」

「…手加減してあげてください…さすがに可哀想なので。」

「へっ?」

「それだけですあと…」

「後ろにいる少女を大切にしてあげてください。それでは…」

「あっ、はい…?」 

千年タウクで何か見えたんだろうか?

あと少女…翠を大切に?大切…カード…あっ!

「翠、ひとつ聞きたいんだけど…」

「はい?なんですか?」 

「夢の中で大切にしてるカードがあるって言ってたけど、どんなカード?」

「あっ!このカードです今ではシャドールでシェキナーガの素材になってもらったりしてます!」

そういって手渡してきたのは「メガロック・ドラゴン」だった。

「あ~俺も小さい頃使ってたな~、墓地に岩石族10体くらいためて攻撃力7000!って友達に自慢して…」

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

 

 

 

 

「優介兄!今日こそ勝つよ!」

 

「かかってこい春美!」

 

「レインボードラゴンでダイレクトアタック!」

 

「負けた~強くなったな春美!」

 

「やった~褒められた!」

 

 

 

 

「お前に俺のお気に入りの『メガロック・ドラゴン』を預ける!大きくなったらまた会おう!」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

「翠…?」

「はい?」

「前世の名前は?」

「えっと春に美しいって書いて『春美』ですけど…?」

「俺…『優介』って言うんだけど……?」

「えっ…。優介兄?」

「あの…春美なのか…?」

 

 

     「「えぇぇぇっ!!!?」」

 

 

神様なんでこんな事に!?

「優介兄ィ会いたかったよ~うぇ~ん!!」

まさか幼少期に別れた妹分に転生して再会するとは…、わからないもんだな~(現実逃避)

「おめでとうございます、マスター!…指輪でも用意してもらいます?」

「イヤ早いよ!?」

 

こうして翠をあやしながら時間は過ぎたのだった。




    ~遊海死亡前 神様の空間にて~

「ほう、幼い頃にカードを預けて再会の約束をする…か」
「そろそろ会わせてあげてもいいかもしれないの…。」



「フンフーン♪あとは時計をセットして…弱火に…『オーイ!ハニーちょっといいかの~?』」
「ハーイ!今行きまーす」←強火のまま

「この二人を再会させたいのじゃが…どうゆう場面がいいかの~?」
「うーん…カードの大会の決勝とか?」
「おっ!それいいの!」
「でしょ!それから…」

          ~10分後~
「なぁハニー…なんか焦げ臭いような…?」
「あっ!弱火にするの忘れてた!?」パタパタ
「キャ!」ドンガラガッシャーン
「小麦粉が!」
         粉塵爆発☆

「うわっ!」ボッ ボッ
「しまった!記録簿が!?」
 
こうして二人は転生することになったのでした…


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決勝トーナメント開始! 粉砕のマリク!

けっこう難産でした…、ラーを活躍させようと思うと…


 そしてついに決勝トーナメントが始まる、決闘者達はバトルシップ屋上の特設リングに集合していた。

「キャ!やっぱり風が凄いですね優…遊海兄!」

「ああ、これで決闘をするなんてスケールが違うな…」

「おーい遊海君!」

「あっ!遊戯さん!」

「少しは体休められた?」

「ええ、大丈夫です!最低でも立って決闘できる位には」

「ならよかった、お互いに頑張ろう!」

「はい!決勝で会いましょう!」

「おいおい!決勝で遊戯と戦うのはオレだぜ!遊海!

お前は準決勝で俺が倒す!」

「城之内さん…もちろんです!まけませんよ!アタタタ…」

「遊海兄!無理しないで!」

「ん?…遊海…にぃ?」ポカン

「あっ!?」

「いや…それが…」

俺は遊戯と城之内達に翠が近所に住んでいた幼なじみで成長して気づかなかったと説明した。

「へぇ、お互いいつ気づいたんだ?」

「今の待機している時だよ、俺が渡したのと同じカードを持っていたから…」

「そっか…だから翠ちゃん少し目が赤いのね…」

「約10年振りの再会か…泣かせるじゃねぇか!」

「アンタがそんな色男だとは思わなかったわよ…」

「まっ舞さん…!」

やはりとゆうべきか舞さんもバトルシップに乗り込んでいた。

「アタシに勝ったんだ遊戯か城之内以外に負けたら承知しないよ!」

「はい、もちろんです!」

 

 

 

  ~ここからはダイジェストにてお送りします~

 

 

遊戯VS闇バクラ

 

「さぁ遊戯!ラストターンだ!」

「俺はこんなにところで負けるわけにはいかない!」

「ドロー!!」

「降臨せよ!!『オシリスの天空竜』!!」

「ギャオオオッ!!」

「何!?ここで『神』を引くだと」

「いけ!『オシリス』!『超電導波!サンダフォース』!」

「遊戯ィ!『ここは』俺の負けにしておいてやる!」

 

遊戯 WIN!

 

 

 

城之内VSマリク(リシド)

 

「お前…マリクじゃないだろ?」

「いや!俺はマリクだ!今その証左を見せる!」

「現れろ!『ラーの翼神竜』!」

「……」

「(ボクのデッキの真なる神が怒りのオーラを…!)」

     ゴロゴロ…ガッシャーン!!

「「ぐあああっ!」」

「お兄ちゃん!!?」

 

「二人のライフポイントは残っている!先に立ち上がった者を勝者とする!」

 

「立って城之内!」「立て!城之内!」「お兄ちゃん!」「城之内君!」「城之内!アンタそんな弱い男なのかい!」

「城之内さん!俺との約束忘れないで!」

  

 

「あれ?オレは…?」

「勝者!城之内!」

「へっ?」

 

 

そして…、闇が解放される…!

 

 

「ハハハハハハッ!やっと出てこられたぜ!」

「遊戯ィ!これからが真の闇のデュエルの始まりだ!

この闇からは誰も逃れられない!フハハハハ!」

 

 

 

まぁ…させないけどね!

 

 

 

「第3試合、マリク対白波 遊海を30分後に行う!

各自用意しておくように!」

 

 

 

 

『遊海ちょっといいか?』

「遊戯さん…?」

控え室で準備をしていた俺のところに遊戯さんが訪ねてくる。

『遊海、あのマリク…闇マリクは危険な気配がする…千年ロッドを使い確実に「闇のゲーム」を仕掛けてくるだろう…』

「…わかってます、ダメージが現実になる決闘…一度体験してますから…」

『…もし無理だと感じたらすぐにサレンダーして欲しい、誰もお前を笑いはしない…』

「ええ、わかってます。でもひとつ言わせてください…」

『?ああ』

「別に倒してしまってもかまわないだろう?」

俺はその時だけ本来の一面を見せ、そう答えた。

『…ああ!それでこそだ!』

「遊海兄…そろそろ…」

「ああ、行こう!」

『頑張れよ!遊海!』

 

 

「遊海兄、さっきのセリフ…」

「ああ、一度言って見たかったんだ!」

「…無理しないでね…せっかく逢えたのにまたサヨナラは嫌だよ…」

「心配するな!大丈夫、マリクを倒して無事にかえってくるさ!」

「うん!」

 

 

デュエルリングではすでにマリクが待っていた、俺は車イスから立ち上がり所定の位置へ向かう…体中が痛いがやるしかない…!

「第3試合!マリク対白波 遊海…デュエル開始ィ!」

 

「さぁ、貴様の声を聞かしてくれぇ!断末魔の叫びをナァ!!」

       「「デュエル!!」」

闇マリクLP 4000 D40

遊海 LP 4000 D60

 

「俺様の先攻!ドロー!」

「俺は手札から『ボーガニアン』を召喚!」

ひとつ目の闇を持ったモンスターが現れるATK 1300

「さらに手札から『悪夢の鉄檻』を発動!これによりお互いのモンスターはお前のターンで2ターンの間攻撃できない!」

マリクと遊海を鉄の檻に閉じ込める

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

「さぁ『闇のゲーム』を始めようぜフハハハハ!」

周りに闇が広がっていく

マリクLP 4000

モンスター1 伏せ2 悪夢の鉄檻 手札2 D34

 

「俺のターン!ドロー!」

「(1ターン目は引けないか…)」

「俺は手札から『ライトロード・パラディン ジェイン』を召喚!」

白く輝く鎧を着た騎士が現れるATK 1800

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

「その瞬間リバースカードオープン『拷問車輪』!」

ジェインが大きなトゲのついた車輪に拘束される

「拷問車輪によりお前のモンスターを拘束した!そのモンスターは攻撃ができなくなる!」

「くっ、しかしジェインの効果!エンドフェイズにデッキ上からカードを二枚墓地へ送る。」

落ちたカード

ウォルフ

ライラ

 

「墓地に落ちた『ライトロード・ビースト ウォルフ』の効果!攻撃表示で特集召喚!」

白い毛並みをした半獣人が現れるATK 2100

 

「これで本当にターンエンドだ」

遊海LP 4000

モンスター2 伏せ2 手札3 D52

 

 

「俺様のターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに『ボーガニアン』の効果発動!相手に600のダメージを与える!矢を放て!!」

ボーガニアンが矢を放ち遊海の胸に直撃する

「ゴッ…ぐあぁぁ!?」

「遊海兄!!」

遊海LP 4000→3400

「さらに『拷問車輪』の効果!相手に500のダメージを与える!回れぇ!!」

車輪が回転しジェインをゆっくり切りつける、それと同じ傷が遊海につけられる

「ぐっ!?ガアアアッ!!!」

LP 3400→2900

『マリク!貴様ァ!』

「遊海はまだ病み上がりなんだ!」

「知ったことかァ!さらに手札から『万力魔神バイサー・デスを召喚!』」

人型の拘束器具が現れる DEF1200

『これによりお前の『ウォルフ』を拘束し3ターン後の俺のスタンバイに破壊する!さぁモンスターと共に痛みを受けなァ!!』

ウォルフを拘束したバイサー・デスの頭のネジが徐々に絞まり始める、それと共に遊海の頭にも激痛が走る

「ぐっ…が…あっ…!」

遊海は膝をつき倒れる、その顔は痛みに歪んでいた。

「遊海!サレンダーするんだ!」

「サレンダァー?許すわけないだろゥ、さぁデュエルを続けようぜぇ!!ターンエンド!」

マリクLP 4000

モンスター2 伏せ1 罠1 悪夢の鉄檻 手札2 D33

 

 

 

 

 

 …どうして俺はこんなに痛い思いをしてるのだろう、翠とデュエルして大怪我をしてそれでもデュエルして、今はさらにマリクの拷問モンスターの責め苦を受けている。頭は徐々に締め付けられる…胸には矢が刺さり、腹には切り傷…、本来は舞さんをそして城之内を助けるためにこの計画をたてた。しかしこの痛みは予想外だった。ここで意識を失えば楽になるだろう…しかしマリクは何かしら仕掛けてくる。ならば戦うしかない…!

 

 

ふらふらと立ち上がる遊海、顔は歪んでいるが闘志は消えていない

「遊海!」

「遊海兄!」

 

「俺のターン…ドロー!!!」

「(まだこない!)」

「俺は…『ジェイン』を生け贄に…『ライトロード・ドラゴン グラゴニス』を召喚…!」

ジェインが拘束から解放され光を放つ、光が治まると聖なる光を角に纏った竜が現れる。ATK 2000→2600

 

「攻撃力が上がった?」

「杏さん、『グラゴニス』は墓地のライトロードモンスターの種類×300、攻撃力が上がるんです。」

「そうなんだ…あれ?なんで知ってるの翠ちゃん?」

「あ!?か…カタログに載ってました!」

「そうなんだ…?」

 

「俺は『ウォルフ』を守備表示にし、これでターンエンド…グラゴニスの効果により三枚カードを墓地に送る…そして鉄檻は破壊される…。」

墓地に送られたカード

光の援軍

ライコウ

ライニャン

 

グラゴニスATK 2600→3200

 

遊海LP 2900

モンスター2 伏せ2 手札3 D 47

 

「攻撃力が『青眼』を上回った!?」

「でも…攻撃できないんじゃ…」

『ああ…意味がない…マリクが高い攻撃力のモンスターを出さないことを祈らなければ…』

「もう一人の僕…」

 

 

 

 

「それで終わりかァ?なら俺様のターン!ドロー!」

「!…フハハハハ白波 遊海!貴様に『神』を見せてやろう!」

「まさかッ!」

「とその前に『ボーガニアン』の効果と『バイサー・デス』の効果を喰らえ!!」

バイサー・デスの万力が絞まり、ボーガニアンの矢が遊海に襲いかかる。

「がッ…ゴボッ…」

遊海LP 2900→2300

「ふっ、叫び声をあげる余力も無いか…しかし次はいい声を聞かせてもらうぜ!」

「俺は手札から「死者蘇生」を発動!お前の墓地の『ジェイン』を特殊召喚!」

マリクの場に聖騎士が現れるATK 1800

「これで…『神』のための生け贄が揃った!」

「何ですって!?」

「アイツの手札には既に『神』がきていたのか!」

「くっ…」

「俺の場の『ジェイン』『バイサー・デス』『ボーガニアン』を生け贄に!!降臨せよ『ラーの翼神竜』!!」

3体の生け贄が破壊され…夜の雲の中から光輝く球体が現れる。

「…あれが『神』…!?」

「ただの玉じゃないか!」

「そう焦るなよギャラリー諸君!これはラーの『球体形』資格無き者には神を操ることはできない…しかし俺はその資格を持っている!」

「スゥ…$₠¢₡£₢₣₣₯₤¤₣₣¥₪₣…」

「マリクが意味不明の言葉を呟き始めたわ!」

「あれは…『古代神官文字』!」

「さあ!起動しろ!ラー『バトルモード』!」

マリクが宣言した瞬間…ラーが動き始める、球体の各部が展開し翼が開き…巨大な神鳥が現れる

ATK ?

 

「攻撃力不明!?」

「『ラー』の攻撃力は生け贄にしたモンスターの元々の攻撃力を足した数値になる…よって!」

ATK ?→3600

「『グラゴニス』を上回った!?」

「バトルだ!『ラー』で『グラゴニス』を攻撃『ゴッドブレイズキャノン』!!」

ラーの嘴にエネルギーが集まり…放たれる、それによりグラゴニスは燃え尽き…そして

「うわああぁぁぁ!!!」

神の炎が遊海に襲いかかる、その炎は空気をも灼熱で燃やし肉体…精神へすらダメージを与え姿が見えなくなる

 

 

「遊海兄!イヤァ~!!!」

「遊海君!!」

「遊海!」

「フハハハハ!神の炎は精神すら焼き払う!いい悲鳴だぜ遊海!ギャハハハハ!」

遊海LP 2300→1900

 

「俺はこれでターンエンドだ!さあ立ち上がれるか?ギャハハハハ!」

マリクLP 4000

モンスター1 伏せ1 手札1 D32

 

 

神の炎が治まるとそこには倒れ伏した遊海がいた

「ガッ……コヒュ…」

その体の下には血だまりがあった…先ほどの攻撃で傷口が開いたのだろう

「あっ…フラッ」トサッ

「静香ちゃん!?」

『海馬!決闘を中止しろ!』

「ダメだ…まだライフは残っている!…先ほどと同様、5分待ち白波が立てなければマリクの勝利とする!」

「そんな…」 

 

 

 

 

 

俺は本当に何をしているのだろう…、転生して…遊戯達と会って…気絶して…バトルシティに参加して…暴走した翠を止めて大怪我して…、無理矢理決勝に参加して…、舞さんの参加を阻止して…そして今は全身ボロ雑巾、喉も焼けて呼吸も苦しい…もう眠っても……いいかな…?

「あと2分!」

 

「遊海兄!約束したじゃない…『マリクを倒して帰って来る!』って!」

…ト

「わたし…遊海兄に伝えたい事があるのに…!」ホロホロ

……トクン

「遊海!!アンタ自分に惚れてる女残して逝っちまうつもりかい!?」

「舞さん…!」

「あと1分!」

…トクン

「女を泣かせてそのまま逃げるなんて!神様が許してもアタシが…許さない!」

ドクン!

「あと…!」

 

「…すごしは…休まぜてくれよォ!!」

「遊海兄!!」

「馬鹿な!神の炎を受けて立ち上がるだと!?」

「…コヒュ…このターンで…勝負を着ける!」

 

「俺のターン…ドロー!」

「(きた!でもここで勝つにはアイツを使うしか…ない!)」

「アヤカ…封鎖結界作動…対象…俺、マリク、翠、海馬、遊戯だ…!」

「…了解しましたマスター!『封鎖結界』作動します!」

 

遊海が何事かを呟いたあと決闘場に変化が起きる、フィールドを覆うように黒い幕が張られ遊戯、翠、海馬が取り込まれたのだ

「なによこれ!」

「中の様子がみえない!?」

外に残された者達はただ待つしかなかった。

 

「…これはなんのマネだ?」

『たぶん遊海は俺ら以外にこのターンを見せたくないんだ…』

「遊海兄…まさか…別の召喚法を!?」

 

 

 

「マリク…ひとつ…聞いていいか…」

「なんだァ?」

「『楽しい夢を…見られたか?』」

「ああ!メインディッシュはまだだが楽しいぜハハハ!」

「ならよかった…、なら悔いはなさそう…だな!!」

「何ぃ?」

「俺は…『ファイナルターン』を宣言する!!」

ファイナルターン宣言、それはこのターンで終わらせる…つまり勝利宣言である。

 

「やれるものならやってみろ!(まぁ俺の伏せカードはミラーフォースだ心配はない!)」

 

「俺は手札から魔法カード『隣の芝刈り』を…発動!効果により俺のデッキからお前のデッキの枚数と同じになるようにカードを墓地に送る…その枚数は18枚!」

墓地に送られたカード(敬称略)

ミネルバ 2

裁き 1

裁きの龍 1

戒めの龍1

ケルビム

黄昏ライコウ2

ライデン1

黄昏の双龍1

黄昏の交衣1

グラゴニス1

ルミナス1

黄昏ルミナス1

フェリス2

光の援軍1

妖精伝姫シラユキ1

 

「墓地に落ちた…『ミネルバ』二枚の効果!さらにデッキからカードを一枚墓地に送る、それにチェーンしてリバースカード『ライトロードの裁き』を発動…このカードをデッキトップへ…」

 

墓地に落ちたカード

裁き

黄昏の双龍

「墓地のライトロードモンスターの効果で墓地に落ちた『裁き』の効果発動!」

「なんだって!」

「墓地からトラップだと!?」

『その効果によりデッキから『裁きの龍』を手札に加える!』

「さらに同じく墓地の『黄昏の双龍』の効果発動!

墓地の『戒めの龍』を手札に加えデッキトップ4枚を除外する!…ゴフッ」

除外

グラゴニス

黄昏ルミナス

闇の進軍

グローアップバルブ

 

『遊海は何をしようと…?』

「はい…遊海兄は最強の『龍』達を呼び出そうとしてます…それこそ『青眼』と並ぶモンスターを…!」

「フン『ブルーアイズ』に並ぶ…か、ならば出してみるがいい!白波!」

 

 

「さらに手札から魔法カード『闇の進軍』を発動…墓地の星6『グラゴニス』を手札に加え、デッキトップから6枚カードを除外…コヒュ…する…」

除外されたカード

閃光のイリュージョン

ソーラーエクスチェンジ 2

ライコウ

エイリン

黄昏ジェイン

 

「俺は手札から『ライトロード・サモナー ルミナス』を…コヒュ…召喚!」

踊り子のような衣装を着た女性が現れるATK 1000

 

「『ルミナス』の効果!手札を1枚捨てて墓地の星4以下のライトロードを特殊召喚する、俺は『ライトロード・アーチャー フェリス』を捨てて『ライトロード・アサシン ライデン』を特殊召喚!」

両手剣を持った暗殺者が現れるATK 1700

「そして星3の『ルミナス』に、星4の『ライデン』を…『チューニング』!」

 

「なんだと!?」

空中に飛び出したルミナスを緑の4つの輪になったライデンが包み込む!

3+4=7

「集いし祈りが異界の勇者を呼び覚ます!悪を裁く光となれ!《シンクロ召喚》!光臨せよ!星7『ライトロード・アーク ミカエル』!」

2体のライトロードが合体し光が溢れる、その光の中から純白の龍に乗った天使、ミカエルが現れるATK 2600

 

 

「シンクロ召喚…だと!?」

「…融合は異なるモンスターを束ねるもの、儀式はモンスターを捧げるもの…」

『翠…?』

「そして異なる星を束ねるもの…それがシンクロ召喚…」

『翠…遊海…お前達は一体…?』

「…遊海兄と相談してから話します…今はデュエルに集中しましょう…」

 

「いきなり何をするかと思えば…大層な準備してたった2600で終わりか?まったく拍子抜けだぜ!」

 

「…まだだ!マリク!…貴様の罪を数えやがれ!俺の墓地にライトロードモンスターが4種類以上いるとき!このモンスターを特殊召喚できる!!現れろ裁きの光!『裁きの龍』!」

墓地に存在するライトロードの魂が天空にあがり空間に孔をあける、その中から純白の巨龍「裁きの龍(ジャッジメント・ドラグーン)」が現れるATK 3000

 

「『青眼』と同じ攻撃力だと!」

 

「しかし!攻撃力3000では『ラー』は倒せまい!」

「…それはどうかな!?」

「何?」

 

「『裁きの龍』の効果発動!自分のライフを1000払うことによりこのカード以外の場のカードすべてを破壊する!『カタストロフ・レイ』!」ゴボッ!ガハッ!

遊海のなけなしのライフ(生命力)を糧に裁きの龍から放たれた破壊の光がラーに迫る

遊海LP 1900→900

「しかし『ラー』は神!上位効果しか…」

「『裁きの龍』は上位モンスターだ!大人しく墓地に…沈みやがれぇぇ!」

そして裁きの龍以外すべてが破壊され、太陽神は墓地に沈む

 

「俺様の『ラー』が!?」

「そして墓地に送られた『ミカエル』の効果!墓地のライトロードモンスターを任意の数デッキに戻し…その数×300回復する!俺が回収するのは19体つまり5700回復する!『リターンリカバリー』!」

墓地に眠っていたライトロード達が異界へと戻り、呼び出した者に祝福を与える

遊海LP 900→6600

それに伴い遊海の体が輝き、傷がすべて治癒する

「馬鹿な!(しかしあいつはもう召喚をした!このターンでトドメはない!次のターンになれば…!)」

 

「さらに!自分の除外されているライトロードモンスターが4種類以上の時!このモンスターは特殊召喚できる!」 

「何!?」

「現れろ…罪を戒める安寧の闇!『戒めの龍(パニッシュメント・ドラグーン)』!!」

異次元にいたライトロード達の魂が空間に孔をあけ、その中から漆黒の巨龍『戒めの龍』が姿を現すATK 3000

 

「そして『神』の復活祭は起きないぜマリク!」

「なん…だと!」

「『戒めの龍』の効果!ライフを1000払い!自分・相手の墓地・除外されている「ライトロードモンスター」以外のカードを全てデッキに戻す!『戒めの波動』!」

 

遊海のライフを糧に「戒めの龍」が全てを浄化する波動を放つ…本来は争いのあった場所を再生させる力である

遊海LP 6600→5600

 

「馬鹿な!そんなことが!!?」

「懺悔の用意をしろ!マリク!!」

「バトル『戒めの龍』よマリクにダイレクトアタック!罪人を示せ『戒めの息吹(パニッシュメント・ブレス)』!」

戒めの龍から闇のブレスが放たれる

「ぐあああっ!!」

マリクLP 4000→1000

すると…

 

「うう…、ボクは一体…」

「あれは!?」

『マリクの主人格!?』

『くそがッ!離しやがれ!!?』

「あっ!マリクの後ろに!」 

闇マリクはマリクから分離し白い石でできた十字架に拘束されていた。

 

「闇マリク!この世から…消え去れ!『裁きの龍』よマリクにダイレクトアタック!!悪に裁きを…!『裁きの息吹(ジャッジメント・ブレス)』!」

『おいっ!主人格サマ!もう悪さはしねぇ!タ、タスケテくれぇ!!』

「…ボク達は罪を犯し過ぎた、ここで共に罰を受けよう…」

『イヤだアアアア!!!』

裁きの龍からすべての悪を焼き尽くす息吹が放たれる

「うわぁぁぁっ!!」『ギャァァァー!!?』

マリクLP 1000→0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

「あっ!黒い幕が…!」

デュエルフィールドを覆っていた結界が解けて視界が晴れる、そこには…

「今の決闘の勝敗を伝える!勝者…白波 遊海!!」

「やった~!!」

「遊海が…遊海が『神』に打ち勝ちやがった!」

「…やはり予言のとおりに…」

 

 

 

「あれ…、ボクは…?」

「『裁きの龍』は…罪を裁く龍、お前の罪はすべて闇マリクに起因するもの…だから闇マリクだけに裁きを与えたんだ…」

ボクの前にはボロボロの姿をした白波 遊海といまだフィールドに存在する「裁きの龍」が佇んでいた。

「ボクは…許されたのか…?」

「モンスターにはね…、グールズとして犯した罪はなんとかして償ってくれ」

「…ああ、わかった。…さあこれを受け取ってくれ…」

マリクは遊海に『ラー』のカードを手渡す、それを見届けて「裁きの龍」は異界へと飛び立った。

 

 

「遊海兄!」

「ああ、翠…ただい…ま……」

『!?遊海!』

倒れそうになった遊海を闇遊戯が支える

「遊戯さんごめん、体はなんとかなったけど精神…は…」

『ああ、今は休め…でもあとで話は聞かせてもらうからな…』

「ええ、わかり…ました…」

そうして俺の意識は沈んでいく…。

 

「名も無きファラオよ…これを」

『これは千年ロッド…』

「これを持つのはやはりあなたが相応しい…」

『マリク…』

 

 

 

「磯野」

「はい、海馬様!」

「今の決闘の記録を厳重に封印しろ…!」

「はっ!わかりました!」

「あとで話を聞かなければな…白波 遊海…!」

 




     ~ダイジェスト海馬対イシズ~


「次のターン瀬戸が『オベリスク』を召喚すれば…」
『千年ロッドが光を!!』
「この記憶は…」
「俺は…神を生け贄に捧げる!」
「予言が…未来が変わった!?」


海馬 WIN!

「未来に従う者に光はない!」




「準決勝は目的地に着き次第行う!各自休息をとるがいい!」


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幕間~カミングアウトと想い~

今回はアルカトラズにつくまでに起きた出来事です。
…やっぱり駄文だなぁ…


 目が覚める…白い天井…白いカーテン…エンジン音…バトルシップの医務室か?体を起こそうとして違和感を感じる…腕になにか乗っている…?

そこには椅子に座り俺の左腕を枕にして眠る翠の姿だった、彼女には毛布が掛けられている…誰かと一緒に看病してくれていたのだろうか…。

「マスター、おはようございます!ご気分はいかがですか?」

アヤカが声をかけてくる…俺はどうしてここにいるんだっけ…?

「マスター?覚えていないのですか?」

…マリクと決闘して…拷問モンスター…ラーを召喚されて…神の炎…翠の声…ダメだ…その先が思い出せない。

「マスターはマリクと対決してラーの攻撃で瀕死になりました、その後翠様と舞様の呼び掛けによって起き上がって『アーク ミカエル』『裁きの龍』『戒めの龍』によって闇マリクを打倒・勝利しました…覚えてないのですか?」

まったく…舞さんの『女を泣かせたまま逃げるな!』までは覚えてるんだけど…というか「アーク ミカエル」!?

「はい、マスターはシンクロ召喚を行いました」

マジか…どう説明したもんかな…

「翠様にお礼をいっておいてください強引に問い詰めようとする海馬様を一人で追い返したのですから…。」

そうだったのか…。

 

 

俺は空いている手で翠の頭を撫でる、紫がかった絹糸のような柔らかい髪だ…小さい頃もこうやって撫でてあげてたな…。

「ん…?優介兄…?」

まだ目がトロンとしているが翠が目を覚ます…起こしてしまったようだ。

「!!遊海兄!目が覚めたの!」

「おはよう翠…ごめんな…また心配かけて…」

「もう!遊海兄の馬鹿ぁ…うぇーん」

「ほらほら泣く…」

『翠、遊海の様子はどうだ…あ』

…タイミング悪く来るなぁ…

『…スマン出直す…』

「ごめん…」

「うぇ~ん…」

 

 

         《閑話休題》

 

 

『すまなかった…』

「いや大丈夫ですよ遊戯さん…」

翠が泣き止んだあと再び遊戯さんが訪れる。

 

決闘が終わりマリクから『ラー』を受け取った俺はフィールドを降りると同時に気絶、医務室に担ぎこまれた。

医者曰く体の傷は不思議なことに全て治っていたが精神的な疲れで倒れたのだろうとのことだ。

その後海馬対イシズは海馬の勝利に終わり、バトルシップは決勝の舞台…「アルカトラズ」に向かっているところだ、あと3時間程で到着するらしい。

『それで遊海…話してくれるんだよなお前達の事…』

「遊海兄…」

「ああ…、この時が来たか…」

 

 

 

「遊戯さん…あなたは『輪廻転生』を信じますか?」

『ああ、魂は死後も不滅で、死んでもまた新しい生き物に生まれかわるというやつだな…俺は信じるぜ、まあ俺は理から外れていると思うが…』

「『千年パズルに封印された古代エジプトのファラオの魂』…それがあなたですよね名も無きファラオ」

「!?どうしてそれを…?」

「それは…俺と翠が似たような存在だからです…!」

『それはどういう…?』

「俺と翠は…1度死んでいます」

「えっ…?」

「俺は階段から落ち、飛び出た鉄パイプに胸を貫かれて…」

「わたしは大きな看板に圧し潰されて…一度その生を終えているんです…。」

 

 

 

『…そんな馬鹿な…』

「でもおかしいよ!二人とも体もあるし、こうして存在してるじゃないか!」

『いや…相棒…「転生」だ!』

「えっ?」

「そのとおりです、遊戯さん」

「俺達は一度死にました、しかしそれは偶然ではなく事故でした。こちらの世界で俺達の人生が記されたもの、いわゆる『人生の記録簿/アカシックレコード』…それが神様の不注意で無くなってしまったのです。」

「…わたし達は通常であれば記憶を消されて輪廻の輪にもどされるはずでした。」

「でも俺達を不憫に思った神様がこの世界に転生させてくれたんです。」

「それじゃあ幼馴染みというのは…」

「はい、前世での…ということです」

「そして俺は前世での記憶を頼りにバトルシティに参加、イレギュラーとして決勝へ出場しました。」

「ねぇ遊海君…きみはさっきから『この世界』『こちらの世界』って言葉を使っているけど…それはどうゆうこと?」

「簡単です、俺達はこの今いる世界とは別の世界から転生してきたんです。」

「別の世界…」

「その世界でもデュエルモンスターズは存在します、しかし完全な娯楽として…」

「そしてこの世界の事が2次元の本やアニメとして楽しまれています、そんな世界から俺達はやって来たんです。」

 

 

 

 

『そんな事がありえるのか…?』

「はい、私達はこの世界の行く末もある程度知っています。」

「本来であれば決勝トーナメントには俺ではなく舞さんが参加していました、そしてマリクと闘い敗北、マリクは卑劣な方法で舞さんの精神を破壊しようとします。

その後城之内さんが舞さんを救おうとマリクと決闘し敗北、マリクを後一歩まで追い詰め…精神が燃え尽きてしまいました…俺はそれを見てこの結末を変えたいと思ってバトルシティに介入したんです。」

『…確かに結末は変わったな…。お前の白と黒の龍…そして『シンクロ召喚』によって…、しかしお前はそれでよかったのか?あんな大怪我をしてまで…』

「はい…悔いはありません!まあ痛いのはしばらく懲り懲りですけど!」

「遊海兄…一人で頑張り過ぎないで…」

「ああ、ごめん翠…

「あと遊海君…、聞かせて欲しいんだ…『シンクロ召喚』について…!」

「ええ…今話します、その前に…出てきたらどうですか…海馬さん!」

「フン、気づいていたか!」

カーテンの後ろから海馬が現れた

 

 

『海馬!?いつからそこに!?』

「…今きたところだ医者が白波が目覚めたと報告を上げてきたからな!さて…白波 遊海!」

「はい」

「聞かせてもらうぞ!あの未知の召喚法について!」

「…シンクロ召喚はこの先の未来に人類がたどり着く1つの境地です。」

「人類の境地だと?」

「はい…融合や儀式のように魔法カードを使わず『チューナー』と呼ばれるモンスターを使い召喚する方法、基本は素材にしたモンスターの星…レベルを足したレベルのモンスターを召喚できるんです。」

「たとえば俺が召喚した『ライトロード・アーク ミカエル』を見てください」

そういって俺はミカエルを遊戯に手渡す

『この白縁のモンスターがシンクロモンスター』

「召喚条件に『チューナーとチューナー以外の光属性モンスター一体以上』と書いてあるな」

「はい、ほかにも特定の属性やモンスターが必要なモンスター達がいます…今持っているのはそれだけです。あっそれから海馬さん」

「なんだ!」

「解析しようとしても無理ですよ、たぶんKC社のスーパーコンピューターが10台くらい必要ですから」

「…バレていたか」

 

 

 

『遊海』

「なんですか遊戯さん?」

『俺に…この先の出来事を教えることはできるか?』

「それは…できませんただ2つだけ…『仲間との絆を大切に』それと『死者と生者は交わらない』…それだけは伝えておきます。」

 

『…わかった…すまなかった遊海!…またあとで会おう』

そういって遊戯さんは去っていった。

 

「遊海兄…よかったの?私達が転生者だって話ちゃって」

「ああ、遊戯さんなら問題ないだろう…海馬さんは…少し心配だけど…」

「そうだ遊海兄、話したい事が…」

「ああ、なら静かなところに行こう」

そういって俺は「賢者の鍵」を使い空間を開く

「これは…?」

「中に入ってみて?」

「うん」

 

 

 

 

 

「ここは…?」

「ここは亜空間、俺以外は開く事のできない空間だ。時間が外よりも遅く流れていてここでデッキ構築をしたりしたんだ」

「精神と時の部屋?」

「…まあ似てるな…それでどうしたんだ?」

「あの…その…んんと…」

「?」

「スゥハァわ…私と…付き合ってください!」

「!!?」

そういって翠は顔を真っ赤にした…マジカ…

「(マスター、彼女にアレについて話さないと…)」

「(ああ…)」

「ああ…あの返事をお願いします!!」

「…翠、返事をする前に確認したい事がある」

「ひゃい!なんでしょうか!!」

「転生した時の『特典』は何をもらった?」

「ええっと…前世のデッキと専用の決闘盤、、精霊の友達、料理の才能…黄金律です、どうしてですか?」

「黄金律…?まあいいや、俺は遊城 十代レベルの精霊の力とパートナー精霊、全ての召喚を使える決闘盤、この世界の知識、前世で持っていたカード全て…そして『不老不死』」

「前世のカード全て…だからこんなにカードが…って『不老不死』!?」

「ああ、正確には『決闘以外での不老不死』だ、まだ発動はしてないが王の記憶編辺りで発動する手筈になっている。俺は死ぬ事がほぼ無くなる…翠はまた先にいなくなってしまう、俺はそれが嫌なんだ…」

「なら…私も不死になります!」

「!?どういうことだ…?」 

「わたしは特典を貰う権利を一つだけ残しているんです!それで願えば…!」

「ダメだ!!」

「どうしてですか!?わたしは遊海と一緒にいたいのに!」

「……、この世界は『バトルシティからヴレインズの世界が一繋ぎになった世界』…、つまりこれから三幻魔、ダークネスや自縛神、ZONE、ドン千に次元分裂が起きる世界だ!いくら不死になったって危険がでかすぎる!」

「じゃあなんで遊海は不死に!?」

「…結末を変えたいんだ」

「えっ?」

「今回の舞さんと城之内の件のような…細かい不幸を変えたいんだ、GXのエドのお父さんだったり、できればゼロ・リバースも防ぎたい…少しでも幸せに変えたいんだ…」

そういって遊海は肩を震わせる。

「アニメや原作を見ていて思っていたんだ、もしもあの人が生きていたら…もしあの出来事が起きなかったら…それを歴史を歪めない程度にしてみたかったんだ…!」

 

前世の遊海…優介は遊戯王のアニメに疑問を持っていた…、なぜこの人は死んだのか…なぜこれが起きたのか、確かに主人公達はそれを乗り越えて強くなった…でもそれが必要だったのか…と、だからこそ遊海は転生した時に意識の底でそれを願っていたのだ…。

 

「…それでも…わたしはあなたについていきます!」

「どうして!」

「わたしはあなたを待っていた時間のほうが…辛かったですよ…?」

そういって翠は涙を流す

「わたしは小さい頃の約束を信じて待ち続けました…同世代の女の子達に馬鹿にされたときも、大会で男の人に嫌がらせされた時も…でも怖かった!わたしはもうあなたに忘れられてもう違う人がいるんじゃないかって…!」

「翠…」

「でもまた会えた…あなたに会えただけでわたしは報われたんです!」 

そういって翠は遊海に抱きつく

「ちょ…」

「ダークネスやドン千がなんですか!それよりもあなたに会えなかった時間の方が辛かった!だからこれからは一緒にいさせてください!」

 

「…後悔しないか…?」

「はい!」

「ならいい…こちらこそよろしくな翠…!」

「はい!!」

そして翠は立ち上がり…叫んだ

「わたしを転生させた神様にお願いします!!わたしを遊海さんと同じように不老不死にしてください!」

「うわっなんだ!?」

その声と共に賢者の鍵が光だす、そして…

「あれ!?マスター?どこに行ったんですか?翠さん?あれ!?」

一人パニックになっているアヤカを残して二人は消失した。

 

 

 

 

 

眩しい光に包まれた二人が目を開けるとそこは…。

「あれっ?ここは…?」

「ここは転生の時の…?」

「そうじゃ、ひさしぶりじゃの二人とも!」

そこはどこまでも白い空間…二人が転生の時にきた空間だった、そしてそこには髭を蓄えた神様がいた。

「神様!?」

「そうじゃよ約2週間ぶりだの遊海、君の活躍はこの世界でいつも視ていたぞ…というか!もう少し体を大切にせんか馬鹿者!不死の特典を与える前に死んでしまったらどうするつもりじゃ!」ゴロピシャーン!

「アババババババー!?…キュウ」プスプス

「ちょっと遊海兄!?」

リアルに神の雷を受けた遊海なのであった

 

         《閑話休題》

 

「さて用件はわかっておる、翠嬢の最後の特典についてじゃの」

「はい!わたしも遊海さんと同じように不死にして欲しいんです!」

「その前に…お前達に謝罪したい…すまなかった」

「どうしたんですかいきなり?」

「お前達の人生の記録簿が燃えたとき、ワシは知り合いであるお前達をどう再会させようかと、妻と一緒に話しておった…そのせいで妻は火加減を間違えてあのようになってしまったのじゃ、本当に申し訳なかった!」

そういって神様は頭を下げた…なんかこちらが申し訳ない

「いいんです神様、姿は変わってしまいましたけど私たちは再会できました…それだけで充分です!」

「俺も同じです神様、死に方は痛かったけど翠や遊戯達に会えました!ありがとうございます!」

「すまんのぉ…年甲斐もなく泣けてきおった…」

 

 

 

 

 

「さて不老不死じゃが遊海君と同様王の記憶編まで発動はしないが…大丈夫かの?」

「はい!大丈夫です!」

「よろしいならばこれを渡そう」

神様が指を鳴らすと空中に小さな白い箱が現れる、翠が箱を受け取り開くと中には小さな金色のエジプト十字をあしらった指輪が入っていた…もしかして…

 

「名前は…そうじゃの『千年指輪《ミレニアム・ミニリング》』というところかの、遊海の持つ『千年玉』の兄弟品という設定じゃ、能力は強力な防御結界を作るちからじゃ、『神』はさすがに無理じゃが『スターダスト』のブレス位なら防げるぞ…気に入ってくれたかな翠嬢?」

「はい!ありがとうございます!それから遊海兄!」

「どうした?」

「これを私の指に着けて欲しいんですが…いいでしょうか…?」

「ああ、いいよ!」

遊海は千年指輪を手に取り、翠の指にはめる…左手の薬指に

「………!ボン」キュウ

「ちょ!翠!?」

顔から湯気を出し翠が倒れる…遊海さん頑張って

「翠の不老不死はそれを目印に行うからなくさないようにの!」

「はい、わかりました!」

「それでは戻るがよい!また善い活躍を見せてくれ!…それから遊海!」

「はい?」

「お腹に気をつけるように…!」

「ちょそれどういう…」

言葉の真意を聞く間もなく遊海達は光に包まれた。

 

 

「…あれ、ここは?」

『決闘者諸君!間もなく決戦の地へ到着する!各自準備をすませるように!以上!』

 

気がつくと遊海と翠は始めのようにベットに寝ていた…

 

「あれは…夢か…?おい翠、起きろ!」

「ん?あれ?神様は?夢?」

しかし目覚めた翠の指には金色の指輪が光っていた

 

 

「マースーター…!!?」

「ちょ!アヤカさん?恐いよ!?」

「パートナー置いてきぼりで!どこに行ってるんですかこのバカマスター!!!」

「ちょっ!待ってアヤカ…これは…アベシッ!?」

 

遊海はこのあとヒモ無し逆バンジーをしたそうな

 




次からバトルロワイヤルに入ります…どう遊海を負けさせようか…?


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アルカトラズ第一戦 ~バトルロワイヤル~

バトルロワイヤル難しい…結局簡単に…
それから作品を読んでくれる皆さま本当にありがとうございます!未熟な私ですが頑張ります!


 そして俺達は決戦の場所「アルカトラズ」に到着した…アルカトラズってなんだっけ?

「答、KC社が軍事産業を中心になっていた時の拠点です、なお海馬 瀬人が社長になった際中心部を残し破壊されています…」

「あの…アヤカさん…?拗ねてます?」

「答!拗ねてはいません!!」

そう言って消えてしまうアヤカ…

「完全に拗ねてますねアヤカちゃん…」

「うん…そのうち直るよ…たぶん」

島は瓦礫で埋め尽くされ、まるで戦争の後のようになっている、しばらく進むと唯一破壊されていない建物…「決闘塔」が現れた、中に入ると一人乗りのユニットが4台壁に取り付けられていた。

「準決勝に出場するかたはこのユニットに乗ってください!他のかたはこちらに!」

「遊海さんまたあとで!」

「ああ!」

 

 

そして磯野さんから説明が始まる。

「ゲームに使用するのは、各自プレイヤーが構築したデッキ。それぞれのデュエルディスクにセット。デュエルディスクに、コネクターを接続する事でスクリーンパネルに、各プレイヤーのカードが表示されます。4人のプレイヤーのターンは交代制。どのプレイヤーを攻撃対象にしても構いません。先に負けた2名のデュエリストがトーナメント準決勝第一戦の対戦相手となります!」

 

「(白波は一体何デッキをつかってくる?

もし奴のような決闘者が神を使いこなしたら…、奴に対抗するにはやはりもう1枚「神」がいる、狙うべきは…遊戯!)」

「(遊海…約束は覚えてるよな…俺はお前を倒す!)」

「(城之内さん、勝負です!)」

『(海馬…俺たちの因縁…ここで決着を!)』

 

 

「各プレイヤーは、1枚だけモンスターカードを選び提示してください!そのカードの攻撃力が高い順に先攻を取る事ができます!ただし、モンスターカードは再びデッキに戻す事は許されませんので注意してください!」

 

海馬「デスガーディウス」3300

遊戯「グレムリン」1300

城之内「ランドスターの剣士」500

遊海「フォトンクラッシャー」2000

 

「先攻は海馬様です!」

「フウン、所詮アンティで手にいれたカード痛くも痒くもない!先攻は貰うぞ!」

 

 

 

 

 

      「「「「デュエル!!」」」」

 

 

 

 

 

順番海馬→遊海→遊戯→城之内

 

「オレのターンドロー!」

「ブラッドヴォルスを召喚!」

斧をもった魔人が現れるATK 1900

「カードを伏せてターンエンド!」

海馬LP 4000

手札3 モンスター1 伏せ2

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

「相手フィールドにモンスターが存在し自分フィールドにモンスターがいない時「フォトンスラッシャー」は特殊召喚できる!」

体が光輝く戦士が現れるATK 2100

「さらに手札の「ギャラクシードラグーン」を召喚!」

細身で人型の竜が現れるATK 2000

「さらに攻撃力2000以上のモンスターを生け贄にこのカードは特殊召喚できる!(えっあれやらなきゃだめ!?)

遊海の手にはいつものバリアンの意匠の十字架があった…

「逆巻く銀河よ!希望の光となりわが僕に宿れ!」

十字架を投合する!

「光の化身…ここに降臨!現れろ!『銀河眼の光子竜』!」

空間に開いた孔から瞳に銀河を宿した灰色の竜が現れるATK 3000

「いきなり攻撃力3000だと!」

「『銀河眼』?ふん面白い!」

 

「俺はターンエンド!」

遊海LP 4000

モンスター1 手札3

 

『俺のターン!ドロー!』

「ビッグシールドガードナーを守備表示!」

大きな盾を構えた戦士が現れるDEF 2600

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

遊戯LP 4000

モンスター1 伏せ2 手札3

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「(しまった手札が!)」

「…カードを伏せてターンエンド!」

城之内LP 4000

伏せ1

 

 

「フウンポンコツ、手札事故か?俺のターンドロー!」

「いけ!ブラッドヴォルス!城之内に攻撃!」

魔人が城之内に斬りかかる!

『(城之内くん!今罠カードを!)』

遊戯は伏せていた「一族の掟」を発動させようとする…しかし城之内は首を振った

『(城之内くん!?)』

 

「ぐわ!?」

城之内LP 4000→2100

「あっけないなポンコツ!ターンエンドだ!」

海馬LP 4000

モンスター1 伏せ2 手札4

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

「手札から『フォトンサテライト』を召喚!」

小さな人工衛星が現れるATK 0

『攻撃力0のモンスターだと…遊海一体何を?』

「バトル…『銀河眼』で城之内さんにダイレクトアタック…『破滅のフォトン・ストリーム』!!」

銀河眼の口にエネルギーが収束しその体が青く輝き、強力なブレスが放たれる!

『(城之内くん!今度こそ…)』

「(遊戯…約束は果たすぜ…!)」

遊戯が罠カードを発動させようとした時…そんな声が聞こえた気がした。

「うわぁぁー!」

城之内LP 2100→0

 

 

「さらに『サテライト』で遊戯の『ビッグシールドガードナー』に攻撃!」

『何!』

衛星が盾の戦士に体当たりするが跳ね返され遊海に直撃する

「痛てっ!」

遊海LP 4000→1400

『(一体何がしたいんだ?)攻撃された『ガードナー』は攻撃表示になる!』

盾の戦士が立ち上がるATK 1000

「海馬さん!」

「なんだ白波!」

遊海が海馬に呼びかける

「その伏せカードを俺に使ってください!お願いします!」

「何?…いいだろうそんなに死にたければ受けるがいい!リバースカード『破壊輪』!お前のモンスターを破壊しお互いに攻撃力分のダメージを受けるが…さらに即効魔法「防御輪」!これで俺へのダメージは0になる!貴様だけ散るがいい!」

爆弾のついた輪が銀河眼を爆発させる、海馬は盾のついた輪で爆風を防ぐ

「ありがとう海馬さん…うわぁっっ~!」

遊海LP 1400→0

 

 

「そこまで!!今ので組み合わせが決まりました!第一戦は城之内 克也対白波 遊海!第二戦海馬 瀬人対武藤 遊戯です!」

 

 

 

「遊戯!運命のデュエルだ!覚悟はできているだろうな!」

「ああ!海馬!決着をつけよう!(城之内くん…決勝で待っていてくれ…遊海は強いが…君なら倒せる筈だ!)」

 

 

「遊海…約束どおりだな!お前を倒して遊戯と決勝だ!」

 

「ええ!城之内さん…負けませんよ!」

 

「ゴンドラ射出!」

 

 

「へっ!?どわぁっ?!」

「(締まらないな…)」

 

 

 

 

 

 

…なんとかなった…どうやったら城之内と戦えるか考えて急遽「ギャラクシー・フォトンデッキ」を構築して海馬さんの「破壊輪」まで使って…原作効果で良かった…。

このあと使うデッキはもう決めてある、あとは『あの』カードを入れるだけだ…使いこなせるかな?

 

そして俺は城之内さんとの闘いを迎える…




「バトルシティ準決勝。最初は城之内対遊海!
一体どんなデュエルになるのかしら…!
えっ!あのカードは!?」
「次回、城之内対遊海 約束のデュエル!!」
「デュエルスタンバイ!」


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城之内対遊海 ~約束のデュエル!~

 相手決めのデュエルを終えた俺は決闘塔の最上階にいた、正面には…城之内さん、約束どおりになるとは思わなかった。

「さぁ、遊海!お前を倒して…遊戯と戦うんだ…絶対に…勝つ!」

 

「ええ城之内さん!俺も本気でいきますよ!」

「えっ…今まで本気じゃ無かったのか!?」

「マリク戦でようやく本気です!」

「ならオレはそれを超えてやる!」

 

「両者準備はよろしいか!…いくぞ!」

磯野さんが号令をかける!

「デュエル開始ィ!!」

 

 

      「「デュエル!!」」

 

遊海LP 4000

城之内LP 4000

 

 

 

「俺の先攻…ドロー!」

「手札から『聖刻竜ードラゴンヌート』を召喚!」

水色の体をした人型の竜が現れる、その体にはウジャト眼が刻まれている ATK 1700

 

「はっ!あの竜は!」

「イシズさん!どうしてここに!?」

デュエルフィールドの観客席にイシズが現れる

「リシドが目を覚ましてマリクと話していたので席を外してきたのです…しかしまさか…あれは…」

『あのモンスターについて何かに知っているのか?』

遊戯が問いかける。

「あの竜は三幻神が封印されたあとその後の王達が崇めた神…その化身です!」

「何だって!?」

 

 

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

遊海LP 4000

ゲイブ 伏せ2 手札3

 

 

「いくぜ!オレのターン…ドロー!」

「オレは『ワイバーンの戦士』を召喚!」

緑色の剣をもった竜人が現れる ATK1500

「カードを二枚伏せて…ターンエンド!」

城之内LP 4000

ワイバーン 伏せ2 手札3

「(伏せは『スケープゴート』と『天使のサイコロ』…なんとかなるさ!)」

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺は手札から魔法カード『竜の霊廟』を発動!自分のデッキからドラゴン族モンスターを墓地に送る、さらにそのモンスターが通常モンスターの場合もう一体墓地に送る!俺は通常モンスター『真紅眼の黒竜』と『龍王の聖刻印』を墓地へ送る!」

 

「ちょ!遊海!それオレの『真紅眼』じゃないのかそれ!?」

城之内が待ったをかける

『いや!城之内君のは俺が持っている!』

遊戯はデッキから真紅眼を取り出す。

「てことは…」

「城之内さん!俺の登録レアは『真紅眼』なんですよ!…知りませんでした?」

「嘘だろ~!」

 

「続けます!俺はリバース罠『復活の聖刻印』を発動!効果によりデッキから『聖刻竜ーウシルドラゴン』を墓地へ!」

「そして『ヌート』を生け贄に『聖刻竜ーアセトドラゴン』を召喚!」

紫色の体をして背中にウジャト眼をもった竜が現れる 

ATK 1900

 

「バトル!『アセト』で『ワイバーンの戦士』を攻撃!」

「リバースカード『天使のサイコロ』!ダイスロール!」

出目は…3!

「『ワイバーンの戦士』の攻撃力を300アップ!」

天使の祝福がワイバーンを強化するATK 1500→1800

しかしそのままアセトドラゴンに破壊される

「うぐっ!」

城之内LP 4000→3900

「ならリバースカードオープン!『スケープゴート』!」

カラフルな羊が4体召喚される DEF 0✖4

 

「これでターンエンド!」

 

 

遊海LP 4000

アセト 伏せ1 復活印 手札2

 

 

 

「やるじゃねぇか!オレのターン!ドロー!」

「手札から『漆黒の豹戦士パンサーウォリアー』を召喚!」

剣をもった豹の戦士が現れる ATK 2000

 

「バトル!羊トークンを一体生け贄にして『パンサーウォリアー』で『アセトドラゴン』を攻撃!」

豹の剣が竜を切り裂く

「おっと!?」

遊海4000→3900

 

「これでターンエンドだ!よし一撃当てたぜ!」

城之内LP 3900

パンサー 羊✖3 手札3

 

 

「やりますね城之内さん!俺のターン!ドロー!」

「…いきますよ!手札の『聖刻竜ートフェニドラゴン』は自分の場にモンスターがおらず相手の場にモンスターがいるとき特殊召喚できる!」

白い体を持ち胸に白いウジャト眼をもった竜が現れるATK 2100

「『パンサーウォリアー』を越えた!」

「さらに自分の場の『聖刻』モンスターを生け贄にすることでこのモンスターを特殊召喚できる!『トフェニ』を生け贄に…来い『聖刻竜ーシユウドラゴン』!」

青い体を持ち胸にウジャト眼を持つ竜が現れるATK 2200

「さらに上がった!」

「おい!負けるんじゃねぇぞ、城之内!」

「遊海さ~ん!がんばって~!」

「城之内ったら…ちょっと調子にのると…!」

『城之内君…』

 

 

「さらに!生け贄になった「トフェニ」の効果!デッキから『エレキテルドラゴン』を攻守0で特殊召喚!」

尻尾がスパークしている竜が現れる DEF 0

 

 

「さらにリバースカード『銀龍の轟砲』を発動!効果により墓地の『真紅眼の黒竜』を特殊召喚!」

紅い目を持つ黒竜が現れる ATK 2400

 

「なんかヤバくないか…?」

『モンスターが3体…まさか!』

「遊海さん、まさか…!?」

 

「城之内さん…これが俺の本気だ!『トフェニ』『エレキテル』『真紅眼』の3体を生け贄に…降臨せよ太陽神!!『ラーの翼神竜』!!!」

 

3体のモンスターが破壊される…そして球体形のラーが降臨する

 

「スゥ$¢₠$¢₡₢₣₨₢₣₣₣₨₩₮₩~」

 

『古代神官文字!?』

「遊海も『神』に選ばれたっていうの!?」

 

「(違う意味ではね…)さぁ起動して!『バトルモード』!」

 

宣言と共にラーが起動し神鳥が現れる、その体はマリクに使われていた時よりも輝いていた

「ラーの攻撃力は生け贄にしたモンスターの元々の攻撃力の合計となる…つまり!」

ラーATK?→7100

 

「…嘘だろ?」

「バトル!『ラー』で『パンサーウォリアー』に攻撃!『ゴッドブレイズキャノン』!!」

神鳥がエネルギーを収束し放つ…それにより豹戦士は消し飛び…

「イワーーーク!?」

 

城之内LP 3900→0

遊海 WIN!

 

 

 

 

『遊海が神を使いこなしただと…』

「(スゴい…)」

「フウンあの『聖刻竜』達を使い生け贄を確保し、高い攻撃力で相手を倒す…見事な使い方だ」

「やった~遊海さんすごーい!!」

「ああ…言わんこっちゃない…」

「もしもこれが闇のデュエルだったらアイツ死んでたわね…遊海がマリクを倒してくれてよかった…」

「…お兄ちゃん大丈夫かな…?」

 

 

 

 

「あたたたた、チクショー結局負けた~!!」

「でもいい勝負でしたよ城之内さん!俺も神のカードが無ければどうなってたか」

「はぁ…世辞はいいよ負けは敗けだ…遊戯!」

『城之内君…』

「オレとお前の決着は別の場所で着けようぜ!」

『ああ!』

 

 

 

「遊海さん!」

「翠!勝ったよ!」

「はい!でもどうやって『古代神官文字』を読んだんですか?」

「ああ転生特典の知識の中に『神官文字』があったんだよ、それで読めたんだ!」

「私のおかげですねマスター♪」

「ああ!ありがとうアヤカ!」

「♪」

 

「そういえば『ラー』の輝きが闇マリクが使っていた時よりも強かったような…?」

「…これは俺の考えなんだけど、エジプト神話でラーは何回か人間を滅ぼそうとしている…でも直前で踏みとどまったり、撒いてしまった災いを自分で止めようとした『善神』なんだと思う。だからこの『ラー』もマリクに使役されて人を傷つけるのが嫌だったんだと思う…まあコピーを使った人間を除いてね…。」

「…なるほどです、つまり自分を『破壊兵器』ではなく『ただの力』として使ってくれて嬉しかったのかも知れないですね」

 

 

 

「遊戯!ついにお前との決着をつける時だ!」

「ああ海馬…決着をつけよう!」

 

 

       「「デュエル!!」」

 

        ~~~~~~~~

 

 

「俺の過去には、憎しみと怒りしか存在しない。貴様の下らん幻想などとは違うのだ!俺は未来にしか興味はない!過去など踏みつける為に存在する!」

 

『はっきり言ってやる海馬!憎しみ、怒り!そんなもの束にしたって…俺には勝てないぜ!』

 

『来い!超魔導剣士 ブラック・パラディン!』

 

『海馬…このカードで貴様の心を支配する闇を切り裂いてやる!手札よりマジックカード発動!拡散する波動!』

 

『憎しみの果てに勝利はない!「超・魔・導・烈・波・斬」!!』

 

 

 

遊戯WIN

 

 

 

「遊戯…オベリスクとこのカードを受けとれ」

『このカードは…』

「俺がラーの攻略に使おうと思ったカードだ、お前に託す」

『海馬…』

「遊戯気づいているか?ラーはその能力の半分も出してはいない…。白波がその能力を使うかは知らんが、いれるだけ入れておけ」

『…わかった、すまない海馬』

「この俺を負かしたのだ、奴ごときに負けることは許さん!」

 

 

 

「さぁ遊戯…どちらが決闘王になるか勝負だ!」

『ああ遊海!俺は負けない!』




この小説におけるラーの効果

《ラーの翼神竜》神 幻神獣族 攻守?
このカードは自分または相手の場のモンスターを3体生け贄にした場合にのみそのプレイヤーの場に通常召喚できる。
①このカードの攻撃力・守備力は生け贄にしたモンスターの元々の攻撃力・守備力それぞれの合計した数値になる。
②このカードは相手の効果の対象にならず相手の罠カードの効果、レベル7以下のモンスター効果また自身以外の神属性の効果を受け付けない。
③このカードが墓地から特殊召喚された場合または1ターンに1度以下の効果のどちらかを発動できる。
・ライフを1000払い相手のモンスターを1体破壊する。
・ライフを1になるように払いその分このモンスターの攻撃力をあげる。この効果は通常召喚されたこのカードは使う事はできない。またこの効果を発動後このカードは融合モンスターとして扱い、以下の効果を得る。
このカードに「融合解除」※が発動された場合このカードの攻撃力の数値分ライフを回復する。
④このカードが特殊召喚に成功したターンのエンドフェイズに発動する。このカードを墓地に送る。

効果外テキスト
このカードは古代神官文字を理解しなければ①②③④の効果を使用できない。
またこのカードのコントロール権は古代神官文字を唱えた者に移動する。
※融合解除は原作・アニメ版の「融合モンスターを分裂させる」テキストのもの

賛否あるかもしれませんがこの小説ではこれでおねがいします。


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バトルシティ決勝 遊戯対遊海! ~闇の暗躍~

今回は前半はシリアス、後半はギャグでお送りします。
GXからアイツも出るよ!



 ついにやって来ましたバトルシティ決勝戦!…どうやって負けようか…?

「マスター、下手に手を抜くと確実にバレますよ」

「わたしは正直遊海さんに負けて欲しくないんですけど…」

…そうなんだよな…まあなるようになるだろう!

 

『準備はいいか?…遊海!』

「はい、遊戯さん!」

『いくぞ!』

 

 

       「「デュエル!!」」

遊海LP 4000

遊戯LP 4000

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺は手札から魔法カード『竜の霊廟』を発動!

効果により『真紅眼の黒竜』と『竜王の聖刻印』を墓地に送る。」

「さらに手札から『聖刻竜ードラゴンゲイブ』を召喚!」

オレンジ色の肩にウジャト眼を刻んだ竜が現れる ATK 1800

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

 

遊海LP 4000

ゲイブ 伏せ2 手札2

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

「!、俺は手札の『磁石の戦士α、β、γ』を生け贄に『磁石の戦士マグネットバルキリオン』を特殊召喚!」

「(なっ!?いきなりかよ!?)」

遊戯の手札から飛び出した磁石の戦士が合体し「マグネットバルキリオン」が現れるATK 3500

 

『さらに「バルキリオン」を分解し『磁石の戦士』3体を墓地から特殊召喚!』

バルキリオンが分解し小さな磁石の戦士に別れる

α1400

β1700

γ1500

 

『そして3体を…』

「流石に最初からやらせない!リバース罠『抹殺の聖刻印』!『ゲイブ』を生け贄に『磁石の戦士β』を除外する!」

『何!?』

ゲイブが魔法陣を描きβを異次元に追放した、しかしゲイブ自身も破壊される。

「そして生け贄になった『ゲイブ』の効果によりデッキから『神龍の聖刻印』を特殊召喚!」

巨大な球体が現れるそれには赤いウジャト眼が刻まれている DEF 0

 

『なら…バトル!αで『聖刻印』を攻撃!γでダイレクトアタック!』

磁石の戦士の一撃により『聖刻印』が粉砕され、その後ダイレクトアタックを受ける

「どわっ!」

遊海LP 4000→2500

 

『そして磁石の戦士2体を生け贄に現れろ!最上級魔術師「ブラックマジシャン」!』

2体の戦士が生け贄にされ遊戯の相棒ブラックマジシャンが現れるATK 2500

 

「これでターンエンド!」

遊戯LP 4000

ブラマジ 手札1

 

 

「(さすが決闘王と呼ばれるようになる決闘者…強い!)」

 

「俺のターン!ドロー!」

 

「…なら手札から『聖刻竜ードラゴンヌート』を召喚!」

水色の人型の竜が現れるATK 1700

「さらに場の『ヌート』を除外し現れろ『レッドアイズダークネスメタルドラゴン』!…ガッ!」ドクン

ヌートが異次元に除外され黒い装甲に覆われた龍が現れるATK 2800

「(なんだ…今の痛みは…?)」

「(マスター?大丈夫ですか?)」

『遊海?どうした?』

「…いや…何でもない…続けるぞ!リバース罠『復活の聖刻印』を発動!効果により聖刻モンスター『聖刻竜ーウシルドラゴン』を墓地に送る!そして『ダークネスメタル』の効果!墓地の『ウシル』を特殊召喚…!」ドクン

ウジャト眼の刻まれた翠とオレンジの体色の竜が現れるが ATK 2600

 

『おい?遊海…?大丈夫か?』

「ああ、大丈…ガッ!?」

『遊海!』

「あれ…頭が…痛…」トサ

「!?翠ちゃん!どうしたの?翠ちゃん!」

 

 

 

 

突如二人の転生者が倒れる…

 

「(なんだこの痛みは…レダメを使ってから…レダメ…ダークネス?…まさか!)」

《白波 遊海…春風 翠…本来この場所に存在せぬ人間よ…》

遊海と翠の頭に低い声が響く

《我が名はダークネス…貴様達はこの世界には邪魔だ…故に…ここで排除させてもらう…虚無の闇に消え去るがいい!》

 

声と共に二人の体に変化が起きる…

「おい!翠ちゃんが足から黒くなってくぞ!!」

「遊海もだ!一体何が!?」

「マスターの魂の力が弱まっている?どうして!?」

 

 

「翠!しっかり掴まれ!絶対離すな!」

「はい!放しません!!」

二人の魂はブラックホールに引き寄せられつつあった、あれに吸い込まれたら終わりだろう…

 

《小癪な…ならばもっとだ…!》

引力が強くなる

「これはまずい…」

「私たちが何をしたんですか!」

《貴様達は未来を変える強い力をもっている…我には邪魔な力だ…さぁ消えろ!…》

引力がさらに強くなる!

「嘘だろっ…!」

「遊海さん…キャアァ!?」

二人が吸い込まれる…瞬間!

〈させません!闇の者よ!〉

遊海達を暖かい光が包む

《貴様…ラー!》

〈善い心を持つ二人を易々と見捨てることはできません!!〉

 

二人の後ろにはラーの翼神竜がいた、暖かい光を放ち二人を守っている。

〈消え去れ『ゴッドブレイズキャノン』!〉

《ぐぉぉ…おのれ…デュエルモンスターズの神がァ!覚えていろぉ…!》

ラーの放った攻撃によりブラックホールは消滅しダークネスも退いたようだ。

 

 

「ありがとう、ラー!」

「あなたが来なければ私たちは…」

〈いいのです、私はあなた方に救われた…そのお礼です〉

〈さぁ早く戻りなさい…すでにカードとダークネスの繋がりは切れました、早くしないとアテムが心配します〉

「ありがとうラー!…また会えるか?」

〈…はい、いつか会いましょう…さらばです!〉

こうして二人の意識は浮上した…

 

 

 

 

「遊海選手が気がつかないため…このデュエル…」

 

「ちょっと待った!!すまない心配かけた!」

『遊海!』

「マスター!」

「すまない遊戯…ちょっと野暮用だった、さぁ続けるぞ!」

『…ああ!』

 

 

「うん…」

「翠ちゃん大丈夫?急に倒れたと思ったら足から黒くなるんだもん心配したのよ!」

「杏子さん…すいません!もう大丈夫です!」

「そう…ならいいけど…」

 

 

 

 

「バトル!『ウシルドラゴン』で『ブラックマジシャンを攻撃!』」

ウシルドラゴンのブレスがブラマジを破壊する

『ブラックマジシャン!』

遊戯LP 4000→3900

「『レダメ』でダイレクトアタック!」

『うおぉっ!?』

遊戯LP 3900→1100

「これでターンエンド!」

遊海LP 2500

レダメ ウシル 復活印 手札1

 

 

 

 

『さすがだな遊海!ドロー!』

 

『強欲な壺を発動し2ドロー!』

「(…そういえばつかえるんだっけ…)」

『さらに手札から『天よりの宝札』を発動!お互いに手札から6枚になるようにドローする!俺は5枚ドロー!』

「(ぶっ壊れだなぁ)俺も5枚ドロー!」

『俺は手札からブラックホールを発動!お前のモンスターをすべて破壊する!』

「しまった!」

『さらに手札から死者蘇生を発動!蘇れ「ブラックマジシャン」!』

魔術師が墓地から蘇るATK 2500

「あっ!?」

『バトル!ブラックマジシャンでダイレクトアタック!『黒・魔・導』!!』

ブラマジの杖から光弾が放たれ…

「うわぁぁぁ!」

遊海LP 2500→0

遊戯WIN !

 

 

「そこまで!初代デュエルキングは武藤 遊戯!!」

 

 

 

「よっしゃ!遊戯の勝ちだ!」

「遊戯~!やった~!」

「さすがだぜ遊戯!」

「よかったねお兄ちゃん!」

「遊海さん…負けちゃった(でもこれでよかった…のかな…)」

「やっぱり遊戯は強いね…遊海も強かったけど…」

「フウン、遊戯貴様はやはり俺の…」

 

 

 

 

「遊戯さん完敗です!これを…」

遊海はラーを手渡す。

『遊海…いい決闘だった、しかし急に倒れた時はびっくりしたぜ…』

「うん、急に倒れたと思ったら足から黒くなっていって…海馬くんは信じていなかったけど…」

「はい、それに関してはまた後で…」

 

 

「名も無きファラオよついにこの時がきた…」

「マリク…」

「これを…見てくれ!」

服を脱ぎ背中に刻まれた模様を見せるマリク

その背中の模様と神のカードが共鳴し闇遊戯にひとつのビジョンを見せる。

『これは…あの博物館にある「石板」に俺の記憶が…?』

 

「勝利の余韻は味わい終わったか?バトルシティトーナメントは、これで終幕した!遊戯、デュエルキングの称号とプライドは、しばらく貴様に預けておく!」

 

 

 

 

「そして決闘者諸君に告げる!一時間後アルカトラズを…爆破する!」

 

 

「「「なんだって~!!」」」

しまったそれを忘れてた…あれ?確か…?

 

 

 

 

 

「バトルシップのエンジンが!」

 

「医療班のヘリに乗り込むんだ!」

「海馬はどこに!?」

 

『奴なら別の手段で脱出するはずだ!』

 

「…しまった!?定員オーバーだ!」

「嘘だろ!?誰か島に残らなきゃならないのか!?」

「私が残ろう…社長の不始末は…」

「俺が…残る!」

「遊海!?」

「なら私も!」

「翠ちゃん!?」

「じゃあねみんな!」

「離陸します!」

「「「遊海!翠/ちゃん!」」」

 

 

「島が…爆発します!」

 

ドーン!!!

 

 

 

「フハハハ!」

ブルーアイズジェットで飛び出す海馬

「海馬!お前のせいで遊海と翠が!」

 

「兄様…周りが暗い…!?」

「オーイみんな~!」

『遊海!?』

アポクリフォート・キラー顕現

「なんだと!?あのモンスターは!」

 

【遊戯様、海馬様。お先に失礼します!童実野町で会いましょう!】

ステルスモードで消えるキラー

「「「遊海って何者なんだ/なの…?」」」

 

 

 

 

 

 

 

「ああ…危なかった…海馬社長、無茶苦茶しすぎでしょ…」

「はい…危うくまた死ぬところでした…、遊戯さん達よく間に合いましたね…」

【まあ無事に脱出できましたからよかった、ということにしましょう!『終わりよければ全て良し』ということで!】

「良くないこともあるよまったく…」

 

海馬さんの爆破宣言と共にパニックになった遊戯達、バトルシップで逃げようとするがエンジンが機動せず急遽俺を治療(マリク戦後に治ったけど)するために海馬さんが呼んでいたヘリで脱出する事に…。

 

しかし何とヘリが定員オーバー…、誰かが降りないと危険な状態に!それで俺と翠がヘリを降りて実体化したアヤカ…アポクリフォート・キラーで脱出!

目を丸くしたみんなの顔は傑作でした!

ということで今海の上を飛んでいます、アヤカさん曰くあと2時間位で着くらしい…さすがである。

 

 

「でも…あのデュエル中の出来事は一体…?」

「ダークネス…確かGXのラスボス、世界が1枚のカードから産まれた時の裏側で生まれた存在…まさかカードを通して干渉されるとは…乃亜編が起きなかったから安心していたけど…もしかすると…」

「遊海さん?」

「いや…何でもない、そうだ翠、童実野町に戻ったらいく当てはあるのか?」

「ううん、目が覚めた時はベンチで寝ていたから…」

「なら家に来るか?部屋は余ってるはずだ。」

「はい…!ふつつかものですがよろしくおねがいします!」

「…まだそれは早いよ…?」

【(ファイトです!マスター!)】

「(何が!?)」

 

 

翌日 早朝

 

「行くぜ遊戯!俺たちのバトルシティは、まだ終わらない!」

 

        「「デュエル!」」

 

 

 

 

バトルシティ編 終




このあとは日常編を挟んでドーマ編へいく予定です!
…うまくできるかな…?


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翠の修行~精霊を友達に~

 バトルシティから2日がたった、まさかあの翌日から高校があるとは…だから遊戯達はあんな朝早くにデュエルしたのかな…。

俺達はみんなより一足早く家に戻る事が出来た…アヤカさんは流石である、今はエネルギーを使いすぎたということでスリープ中である、そろそろ終わるだろう。

 

 

翠はとりあえず家に同棲中である、俺とは違って何のリカバリーも無く転生したため一文無しだったからだ…女神様は某あかいあくま並みのうっかりなのだろうか…?

…まあプロポーズも受けちゃったし成人したら籍をいれようか…流石に交際約1日で結婚はダメでしょう。

「主よ…ターンがきましたぞ」

 

そうそう新しい仲間が増えました、精霊の『聖刻竜ートフェニドラゴン』のトフェニである。どうやら神のカードをデッキに入れた時のエネルギーで出てこれるようになったらしい、性格は侍というかなんというか…俺を主として立ててくれている。性別は…無いらしい、どうやら聖刻のモンスター達はいわゆる半精神体のエネルギーの塊で本体は各部にあるウジャト眼のようだ。

 

そして俺は今、翠と決闘盤なしのデュエルを行っている、翠を少しでもデュエルに慣れさせるために

 

 

「バトル!『聖刻神龍ーエネアード』でダイレクトアタック!」

「ああ、また負けました…」

翠LP 1200→0

 

遊海 WIN!

 

「はあ…何で勝てないんでしょう…なんか手札の回りも悪いですし…」

「う~ん、デッキも俺が改造したし…普通は勝てるはずなんだけどな…」

「主よ、ひとつよろしいか?」

「どうしたトフェニ?」

「彼女が勝てないのは彼女に宿る精霊がいないからではないだろうか?」

「えっどういうことですか?トフェニさん!」

「我々精霊はこの世界にて人に宿る・使われることで力を使う事ができます、それによりカードの回りを良くしたり主が危険に合うことを減らしています、貴女は力があるのに精霊が宿っていません、何かあったのですか?」

 

そういえばアヤカが翠の暴走を止めた時…  

 

 

「スキャン…暴走精霊確認…精霊世界へ強制送還…」

 

あれか?

 

「原因はそれでしょうな…アヤカ殿が暴走した精霊を無理矢理、精霊界に戻した事によって精霊とのパスが切れてしまったのでしょう。」

「私…どうしたらいいの~…」

「…とりあえずアヤカに聞いてみよう。」

 

 

 

 

「はい!戻せますよ!」

「返事軽っ!?」

スリープから目覚めたアヤカに翠について聞いたらパスを戻せるとの事だ、曰く

「以前マスターから譲渡した力が馴染むのに時間が必要で、あちらからの干渉を弾いていました。でも今は力が馴染んだようなのですぐに戻せます!」とのことで…

 

「ならすぐにおねがいします!」

「わかりました翠様、ただし1つだけ注意があります。

「はい?なんでしょうか」

「貴女の精霊は闇属性の精霊です、前回は貴女の『心の闇』に精霊が触れたことで暴走が起きました。今はちゃんと精霊の力があるので大丈夫だと思いますが…十分にご注意を…」

「はい!わかりました…アヤカさんおねがいします!」

「了解しました!」

 

「精霊世界接続…春風 翠にパスを接続…精霊にコンタクト…OK…精霊召喚…開始!」

アヤカの詠唱と共に光が溢れる…そして光が治まると…土下座した緑色の髪の女の子の人形がいた。

「マスター!本当にすいませんでした!!」

「えっとあなたは…?」

「あのアタシは『エルシャドール・ミドラーシュ』のウィンダです、この前は本当にすいませんでした!」

 

 

…どうやらウィンダによるとマスターの危機に現界しようとしたら体に引っ張られ憑依する形になり、しかも綺麗な闇(たぶん虚数の塊)に触れたら意識が飛んだということらしく…けっこうおっちょっこちょいだなこの子!(名推理)

 

 

 

「頭を上げてウィンダ…大丈夫よ暴走は遊海さんが止めてくれたし、貴女が来なかったら私も怪我をしていたかもしれないわ、だから大丈夫よ!」

「でもマスター…」

「はい!暗い顔禁止♪」

「フェ!?ましゅたーにゃにしゅるんへふはー!!(マスター何するんですかー!!)」

翠がウィンダの頬を持ってプニプニし始めた…人形なのに柔らかいのか…

「私は貴女のお陰で遊海さんと再会できたそれだけで嬉しいの!」

「でも…」

「じゃあひとつ私のお願い事聞いてくれる?」

「私のお友達になってくれないかしら?」

「へっ?」

ウィンダは目をパチクリさせる

「私まだ転生してきて友達が少ないの、だからね私のお友達になって!」

「…わかりましたマスター!よろしくです!」

「ふふっ、翠でいいわウィンダ!」

「はい!翠さん!」

よかった無事に友達になったようだ…。

 

「遊海さん!」

「ん?」

「早速デュエルです!今度こそ勝ちます!」

「わかった!テーブルデュエルでやろう!」

 

 

 

       「「デュエル!」」

遊海LP 4000

翠 LP 4000

 

「俺のターンドロー!」

「俺は手札から魔法カード『竜の霊廟』を発動!デッキから『竜王の聖刻印』『エレキテルドラゴン』を墓地へ送る」

「さらに『聖刻竜ードラゴンゲイブ』を召喚!」

ATK 1800

「カードを伏せてターンエンド!」

遊海LP 4000

ゲイブ 伏せ1 手札3

 

 

「私のターン!ドロー!」

「手札から『マンジュゴッド』を召喚!」

ATK 1400

「さらに効果により『聖占術の儀式』を手札に!そして発動!手札から『シャドールビースト』『シャドールドラゴン』を生け贄に…きて!『聖占術姫タロットレイ』!」ATK 2700

「そして墓地に送られた『ビースト』効果で1ドロー!『ドラゴン』効果伏せカードを破壊します!」

「チェーン!リバースカード『復活の聖刻印』!効果で『聖刻竜ーネフテドラゴン』を墓地へ!そして破壊された『復活』の効果でネフテを特殊召喚!」ATK 2000

 

「バトル!『タロットレイ』で『ネフテ』を攻撃!」

「やるな!」

遊海LP 3300

 

「これでターンエンド!そして『タロットレイ』の効果で墓地のビーストをセット!」

 

翠LP 4000

タロット マンジュ 裏ビースト 手札 3

 

 

「俺のターンドロー!」

「『ゲイブ』を生け贄に『シユウドラゴン』を特殊召喚!さらに生け…めんどくさい!リリースされた『ゲイブ』により『竜王印』を特殊召喚」

ATK 2200

 

DEF 0

 

「2体のモンスターでエクシーズ召喚『聖刻竜王ーアトゥムス』!」

ATK 2400

「その時『タロットレイ』の効果で『アトゥムス』を裏守備に!」

(DEF 2100)

「ちくしょう上手いな…なら手札から『召集の聖刻印』を発動して『トフェニ』を手札に加えてターンエンド!」

遊海LP 3300

裏アトゥムス 手札3(トフェニ1)

 

 

 

「私のターンドロー!」

「裏守備の『ビースト』を反転召喚!効果で2枚引いて1枚捨てる!私は『ファルコン』を墓地へ送り効果でセット!」

「そして手札から『影依融合』を発動!フィールドの『マンジュ』と手札の『リザード』を融合!きて!『エルシャドール・ネフィリム』!」ATK 2800

「さらに『リザード』効果で『原核』を墓地に送って『融合』を回収!『ネフィリム』効果で『ヘッジホッグ』を落として『ビースト』を手札に!」

「そして手札から『神の写し身との接触』を発動!フィールドの『ファルコン』と手札の『ビースト』で融合!きて!『エルシャドール・ミドラーシュ』!」ATK 2200

 

「バトル!ビーストで裏守備のアトゥムスを攻撃!さらにネフィリムとミドラーシュでダイレクトアタック!」

「完敗だよ翠!」

遊海LP 3300→0

翠 WIN!

 

「やったー!勝てた!」

「やったね翠さん!」

「(マスター…少し手を抜きました?)」

「(ああ、まあ翠に自信をつけてもらうためにね!)」

「(さすがマスターです!♪)」

 

 

「これで次に大きな戦いがあっても役に立てます!」

「!?…」

「遊海さん…どうかしました?」

「いや…何でもない(次の戦いがもしもアレだったら翠は確実に相性が悪い…どうするか…)」

「遊海さん!夕御飯にしましょう!今日は腕をふるいますよ~!」

「ああっ!楽しみだな…いっ!?」

 

 

 

 

 

 

ジジ『今助けるぞ遊戯、城之内!…!?誰だ!』

 

『よくここにたどり着きましたね、異界からの転生者…白波 遊海!』

 

『お前は…!?』

 

『転生者の強大な魂……の神に相応しい…』

 

『ただではやるもんか!俺は二人を連れ戻す!』

 

『これを持って離脱しろ!!アヤカ!!』

 

『マスタァァァァー!!?』

 

プツン

 

 

…今のビジョンは…

「遊海さん?大丈夫ですか…顔色悪いですよ?」

「ああ大丈夫!」

「?ならいいですけど…?」

「(備えだけはしておくか…)」

 



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第4章 ドーマ編~遊海最大のピンチ~
ドーマの胎動~狙われる転生者~


注意! ドーマ編において主人公は三銃士とはデュエルしません(作者技術低のため)
だいぶオリジナルの動きが増えます(予定)がよろしくお願いいたします。


た…け…て!

 

誰かが俺を呼んでいる。

 

助…て!

 

誰かが助けを求めている…?

 

助けて!!

 

 

 

俺が目を覚ますと中世の城のようなところだった、あれ?俺は部屋のベットで寝たよな…?

アヤカも翠も居らず、人の気配もない…。少し歩いて…

「ウワー!」

「助けて~!!」

誰かの声がする!行ってみよう!

 

城の中から出るとそれはあった、蛇の瞳のような黒い太陽…まさかここは!?

「あなたは!どうしてここに!?」

振り返ると彼女はいた…ブラックマジシャンガールが。

「お前は遊戯の?」

「はい!マスターのマジシャンガールです、白波さん」

彼女は答えたやはりここは…

「ここは精霊の世界…モンスターズ界であってるか?」

「はい…あっています。」

「なら…やる事はわかってる!」

「デュエルディスクセット!来いアヤカ!」

 

 

俺は気合いにて決闘盤を出現させアヤカ…アポクリフォート・キラーを召喚する。

【ふぁ~…あれ?マスター?ここどこですか?】

「そのモンスターは!?」

「アヤカ!空の黒いヤツに攻撃!『デストロイキャノン』!」

【了解です!主砲放ちます!!】

アヤカから放たれた光が黒い太陽に直撃する。

『₡₪₧₢β₧ββ₡₧₡₪!!?』

黒い太陽は形容できない声を上げる

「アヤカ!機殻の再星でアイツを隔離できるか!」

【一時的になら可能です!実行します!】

そういうと太陽に向かって紫色の光を照射し結界を作る。

『$¢/→→₡④β¢+₠₩γ!!』

 

 

「とりあえずこれでいいか?アイツを一時的に封じこめた、時間稼ぎにはなるはずだ!」

「はい!今のうちにみんなを避難させます」

そういうとマジシャンガールは飛び出していった。

 

【マスター…ここどこです?マスターの指示で出てきましたけど…?】

「?アヤカ何いってるんだ?ここはデュエルモンスターズ界…精霊界じゃないの?」

【私の世界ではないです…初めて来ました…】

「へっ?」

アヤカによると精霊界と一口に言ってもたくさんの世界があるらしい、ここがDM世界とするとアヤカやミドラーシュがいた世界はDT世界、世界同士は繋がっているが特殊な術式・力じゃないと行き来できないそうだ。

「(それじゃあGXのアレは…)」

 

 

「ありがとうございます!みんなを避難させる事ができました!」

「そうか…ならよかった!」

「あの…白波さんはどうしてここに?」

「ん?誰かに助けを求めたられて気付いたらここにいた、それだけだよ。」 

「…すいません…たぶん私のせいです…」

「いや大丈夫!とりあえず他の皆を助けてあげられたみたいだし…」

「はい!ありがとうございます!」

そして俺の体は光に包まれ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!朝ですよ!起きて!…**しますよ?」

「はい!起きます!!おはよう翠!!」

「はい!おはようございます!」

 

目が覚める…さっきのは…夢?

「マスター…さっきの場所は?」

アヤカが尋ねてくる

…夢じゃない…

 

着替えてリビングに下りる、テレビのニュースがやっている。

『このカリブ海、海底で発見された世界最古と思われる海底遺跡は、伝説のアトランティスに…』

やっぱり…始まるのか…

「遊海さん?最近何か変ですよ?」

「ああ…大丈夫!今日の朝食は?」

「はい!納豆と塩鮭焼きです!」

「ん!美味しそうだ!」

 

 

 

学校が終わり俺は商店街にいた、翠から頼まれていた買い物をするためだ。 

翠は高校の弓道部の見学に行っている…やはり体に引っ張られるところがあるのだろうか?

「マスター…!」

「どうしたアヤカ?」

「異常なエネルギー反応を感知!…注意してください…!」

空に虹色の光が一瞬煌めく…すると突然怪物達が現れた。

「あれはデュエルモンスターズのモンスター達!?」

 

カースオブドラゴン、闇魔界の覇王、カードを刈る死神…多数のモンスターが町の中に出現した!

「マスター!彼等は完全には実体化していません!しかし町の混乱が考えられます…一度家に!」

「…いや一度高校に戻ろう!翠が心配だ!」

「了解しました!」

そして俺達は高校に向かう…

 

 

 

「きゃ~!」

「お前達!早く避難しろ!」

「誰だ!ソリッドビジョンで悪戯するヤツは!」

 

高校にもモンスター達は現れている…翠は…?

「ウィンドストーム!!」

校舎裏で竜巻が起こる!

そっちか!

 

 

「マスターに近づくな!虫ども!」

「「「ジジジ…」」」

「ウィンダ…」

「大丈夫!翠さんピンチになったら結果を!」

「わかった!」

翠とウィンダはキラービーの群れに囲まれていた、弓道部の見学の最中突如としてモンスター達が出現。さらに翠に襲いかかってきた、翠は一人で逃げるが追い詰められた、そこにウィンダが実体化し応戦していた。

「(マズイ…数が多いアタシだけなら逃げれるけど翠さんが…)」

「「「ジジジ!」」」

蜂が襲いかかる!

「ウィンドストーム!」

ウィンダが風で防ぐが後からどんどんやって来る

「ウィンドストーム!…数が減らない!」

『どおりゃ!』

キラービーが吹っ飛ぶ、そして…

『翠!ウィンダ!無事か!?』

そこにいたのは鎧を纏った遊海の姿だった…

 

 

 

俺が竜巻の発生源に行くとそこにいたのは多数のキラービーだった、しかも他のモンスターは規則性なく動いていたのにこいつらは確実に「翠」を狙っていた。

…どうするか…アヤカを召喚すればすぐにケリがつくけど目立ち過ぎる、トフェニじゃこの数は無理だ…どうすれば…!

「マスター!精霊の力の能力『精霊アーマー』が解放されています!これで私の力を纏ってください!」

精霊アーマー…?聞き慣れない言葉だけどやるしかない、頼むぞアヤカ!

「了解しました!『精霊アーマー』起動…モード『クリフォート』!!」

俺の体に光が集まりクリフォートを模した鎧が装着される!

『精霊変身!アーマードウォーリアー!参上!』

「成功しました…何やってるんです?」

『いや、気分だよ気分!』

「そんなことやってないで…翠さんを早く助けてくださいっ!!」体当たり!

『どわっー!!!?』

アヤカに吹っ飛ばされる俺、目の前のキラービー、やるしかない!

力を込めた拳で蜂を殴りつける!

『どおりゃ!』

「ジジ!?」

よし上手くいった!殴られた蜂は壁に当たり気絶する!

『翠!ウィンダ!無事か!?』

「はい…!遊海さんなんですか…?」

『ああ!精霊の力でクリフォートの力を纏ってる!ウィンダ!一気に倒すぞ!』

「了解です!」

その後ウィンダが風で吹き飛ばし、俺が殴りつけ、ビームを撃ってなんとかキラービーを撃退した…。

 

 

 

 

その後家に帰りニュースを見ると海馬さんが会見をしていた…これから対応に追われるだろう…。

「遊海さん…さっき起こった事は何だったんですか?モンスターが急に実体化して…」

「翠…遊戯王DMのアニメは見た事はあるか?」

「いいえ…原作の漫画だけです…」

「やっぱりか…今起きているのはアニメオリジナルストーリーの『ドーマ編』の物語だ」

「ドーマ編?」

「遊戯王シリーズお馴染みの『世界を懸けたデュエル』の最初の物語だ…。」

 

「古代アトランティス王の率いる秘密結社『ドーマ』が世界を破壊するために活動を始め、それを遊戯達が止めるというストーリーだ…もうひとつのアニオリが発生しなかったから安心していたんだが…」

「『ドーマ』が動き出してしまったんですね…」

「ああ、しかも奴らは人の『魂』を生け贄に『オレイカルコスの神』とよばれる奴を復活させようとしてるんだ、たぶん翠が狙われたのもそのせいだろう…転生者は魂が強いとよく言うからな…」 

「そんな…それじゃあ私達…」

「マスター!強い精霊の力を感知…パターン三幻神です!?」

「!?しまった!」

アヤカの報告を聞いて外に飛び出す、そこにはオシリス、オベリスク、ラーの三体が実体化していた…

「やっぱりか…!初めてだけど…『アクセラレーション』!」

俺の声に応じてDホイール「ホイールフォート」が現れる

「遊海さん!」

「遊戯達のところに行く!翠!ウィンダ!、家を頼んだ!」

「はい!お気をつけて!!」

俺は「ホイールフォート」に跨がり遊戯達のところに急ぐのだった…。



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オレイカルコスの刺客~神のカードを奪還せよ~

 俺が遊戯達のところに向かう最中、三幻神が消えてその代わりビルから緑色の光が立ち上る。

「マズイ、オレイカルコスの結界が発動した!」

「急ぎましょう!」

 

 

 

 

『魔法カード「拡散する波動」発動!行け「ブラックマジシャンガール」!「ブラックバーニングバースト」!!』

 

「バカな!!」

グリモLP 0

遊戯 WIN!

 

 

『神のカードを返せ!』

 

「それは我々三人を倒してからだ!」

「いや、返してもらうぜ!グラサン男!」

「何!?」

 

突如三銃士の後ろから爆音と共にバイクが現れ、神のカードを1枚奪い遊戯達の前に着地する…

『遊海!』

「遊海お前バイク運転できたのか!?」

「ええ!遅くなってすいません皆!でもこれで勘弁してください!」

遊海の手にはラーのカードがあった

 

「貴様…『異界からの転生者』白波 遊海!」

「!何故その事を!?」

「ちょうどいい!貴様の魂、貰い受ける!アルマ!」

「はっ!」

グラサン…ラフェールの声と共にローブの青年が現れる。

「奴から神のカードを奪い、魂を封印しろ!」

「了解しました…、我が名はアルマ!ラフェール様の二人目の従者!貴様の魂貰い受ける!」

 

『遊海!そいつらは危険だ!』

「ああ、わかってる!でも受けるしか無さそうです!」

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

アルマLP 4000

遊海LP 4000

 

「私のターン!ドロー!」

「手札からモンスターをセット!カードを伏せ、ターンエンド!」

 

アルマLP 4000

セットモンスター1 伏せ1 手札4

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札からフィールド魔法『真帝王領域』を発動!」

周囲がギリシャ調の神殿に変わる

「さらに手札から永続魔法『進撃の帝王』を発動!さらに『冥帝従騎エイドス』を召喚!」

黒い甲冑騎士が現れるATK 800

「そして『エイドス』の効果!このターン一度だけ追加で生け贄召喚ができる!『エイドス』を生け贄に現れろ『風帝ライザー』!」

エイドスが破壊され風を操る王ライザーが現れるATK 2400

 

「『ライザー』効果で伏せカードをデッキトップに!」

「ぬっ!」

ライザーの起こした風が伏せカードを吹き飛ばす

「バトル!『ライザー』で伏せモンスターを攻撃!『風帝剛風斬』!」

ライザーの起こした風の刃がセットモンスターを破壊する、破壊したのはピラミッドを背負った亀だった

「(今のモンスターは!?)」

 

「破壊された『ピラミッドタートル』の効果!デッキから攻撃力2000以下のアンデットモンスターを特殊召喚する!現れろ『ヴァンパイアロード』!」

コウモリの羽のようなマントを纏った吸血鬼が現れるATK 2000

 

「カードを伏せてターンエンド!」

 

遊海LP 4000

ライザー 伏せ1 進撃 領域 手札1

 

「遊海があのデッキを使ってるなら問題なしだ!オレはあのデッキに負け越してるし!遊海頼んだぞ!」

『(しかしあのモンスター…不気味な感じがする…)』

「もう一人の僕…大丈夫だよ遊海くんを信じよう!」

『ああ…』

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!…!」

「フフフ…あなたに我が神の力を見せてあげよう!」

「漆黒の闇よ!我々を聖なる刻印で囲め!発動!『オレイカルコスの結界』!…フハハハ!力が湧いてくる!」

その瞬間帝王領域の神殿が破壊され、地面に緑色の魔法陣が刻まれる

「(なんだ…体に不快な力がまとわりつく…力が抜ける…?俺の知ってるオレイカルコスにはそんな効果は…)」

遊海はその場に膝をつく…立ち上がろうとするが苦戦している。

 

「おい…遊海の様子が変だぞ!どうしたんだ!?」

 

「フフフ…どうやら彼と『オレイカルコス』の力は相性が悪いらしい…しかし手加減するつもりはありません!『結界』の効果により自分の場のモンスターは攻撃力を500アップする!」

ヴァンパイアの額に紋章が刻まれダークモンスターになるATK 2000→2500

「『ライザー』の攻撃力を上回った!」

 

「まだ終わりではありません!『ヴァンパイアロード』よ真の力を解放せよ!『ロード』を除外し『ヴァンパイアジェネシス』を特殊召喚!」

アルマの宣言と共にロードに変化が起きる、ロードを闇が包みこみ爆発する。そして現れたのは先程の紳士の面影のない化け物…ヴァンパイアジェネシスの姿だった。

ATK 3000→3500

 

「攻撃力3500だって!」

「不味いわ!ライザーの攻撃力を上回ってる!」

『遊海!』

 

「さらに『ジェネシス』の効果!手札の星6『砂塵の悪霊』を墓地に送りその星より低い星のモンスター『ピラミッドタートル』を特殊召喚!」

ジェネシスの魔力により墓地からピラミッドタートルが特殊召喚される ATK 1200→1700

「バトル!『ジェネシス』で『ライザー』を攻撃!」

ジェネシスが無数のコウモリを召喚しライザーを拘束、殴りつけて破壊する。

「ぐおっっ!」

遊海LP 4000→2900

「さらに『ピラミッドタートル』でダイレクトアタック!」

亀が甲羅から石を飛ばし、直撃する

「うわぁ!!」

『遊海!』

遊海LP 2900→1200

 

「フハハハ!…バトルシティの準優勝者も我が神の前には敵ではない!私はこれでターンエンドだ!」

「待った!…そのエンドフェイズにリバース罠『トゥルース・リインフォース』を発動…!効果によりデッキから星2モンスター『天帝従騎イデア』を…特殊召喚する!ただしこのターンバトルフェイズを行えないが相手のターンだから関係ない!」

白い鎧の天使が現れるATK 800

 

「さらに『イデア』の効果によりデッキの『エイドス』を特殊召喚!」

イデアの魔法陣からエイドスが現れるATK 800

 

「ふっ…悪あがきを!ラフェール様!今、神のカードを回収します!」

アルマLP 4000

ジェネシス タートル 手札2

 

 

 

「マズイぞ…ライフも追い詰められて『ジェネシス』はパワーが上がってる…」

『遊海!このデュエルに負けると魂を封印される!絶対に負けるな!』

遊戯が叫ぶ

「はい…わかってます!」

遊海はなんとか立ち上がりデュエルディスクを構える

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

「来た!逆転のカード!」

「なんだと?」

「俺は『イデア』『エイドス』の2体を生け贄に…現れろ!闇の帝王『怨邪帝ガイウス』!!」

イデアとエイドスが闇に沈む、その闇の中からガイウスが現れるATK 2800

「そんな攻撃力じゃ『ジェネシス』は倒せないぞ!」

 

「『ガイウス』の効果!相手の場のカード1枚を除外し1000のダメージを与える!さらにそのカードが『闇属性』の場合同名カードをデッキ・手札・墓地からも除外する!さらに闇属性を生け贄にした事により効果の対象を2枚にできる!消え去れ『ジェネシス』『ピラミッドタートル』!」

ガイウスから放たれた闇の波動が吸血鬼達を呑み込み…爆発する、それによりデッキの『ジェネシス』も排出される

「うぉぉぉ!」

アルマLP 4000→3000

 

「バトル!『ガイウス』でダイレクトアタック!『邪帝滅殺撃』!!」

ガイウスの闇を込めた拳がアルマを殴りつける!

「ぐっ!」

アルマLP 3000→200

 

「これで…ターンエンド!」

 

遊海LP 1200

ガイウス 進撃 手札1

 

 

「往生際の悪い奴め…ドロー!」

「…モンスターを伏せてターンエンド!」

「(私がセットしたのはピラミッドタートル、次のターンピラミッドタートルが戦闘破壊されたら『ダブルコストン』で…)」

 

アルマLP 200

(裏タートル) 手札2

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「このモンスターは自分の場の生け贄召喚したモンスターを生け贄にする時、1体で召喚できる!来い『爆炎帝テスタロス』!」

ガイウスが炎に包まれ生まれ変わる、爆炎の中より『テスタロス』が現れるATK 2800

「『テスタロス』の効果!相手の手札を確認して捨てる!そして相手はその星✖200のダメージを受ける!俺が選ぶのは星8『闇よりいでし絶望』!」

「そんなバカなぁ!!?」

 

アルマLP 200→0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

「ラフェール様申し訳ありません…せめて我が魂を…うわぁぁぁ!!!」

 

デュエルの勝敗がつくと結界が収束しアルマを囲む…光が治まると倒れ伏すアルマの肉体とオレイカルコスの結界が落ちていた。

 

 

「くっ!一筋縄ではいかないか…良いだろう白波 遊海!神のカード、貴様に免じ暫し預けるぞ!それからコイツらは返してやる!」

ラフェールはそう言うと手に持っていたオレイカルコスのカードから竜崎、羽蛾の魂を解放する。

「名も無きファラオ!白波 遊海!貴様らの魂、必ずいただくぞ!」

『待て!』

「ダメだ逃げられた…!」

 

 

 

…なんとか勝てたけど…なんだこの倦怠感は…意識…が…

「ピット…イン…」

遊海が呟くとバイクが消失する。

「うお!バイクが消えた!?遊海!今のどうやって…遊海?」

「……」ドサ

『遊海!』

「遊海どうしたの!大変…気を失ってる!」

「早く…!」

 

 

 

 

 

 

ここはどこだ…俺は何をしていたんだっけ…?

俺の周囲は暗く闇が一面に広がっている…。

『おい!優介!カード寄越せよ!』

『おい!金よこせ!』

『お前にはこんないいシャーペンいらないだろ?』

『おい…お前なんだその顔!生意気…!?』

これは前世の…

『ごふっ…ごめん…もうしねぇ…やめるから…』

『ゆ…許して…ギャー!』

 

 

 

 

 

『優介!お友だちに何て事を!』

『私はお前をそんな風に育てた覚えは…』

やめてくれ

『この前のお礼参りだ!先輩!頼みます!』

やめて

『ギャハハハ!』

やめろ!!!

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁ!!?」

「!?遊海さん!?」

「やめろ!!やめてくれ!俺に悪意を向けないでくれ!…頼むから…やめてくれ!」

「遊海さん落ち着いて!」

「ああ…あああ…」

 

翠は何が起こったのかわからなかった。前日の夜、遊海が気を失った状態で遊戯さん達に連れられて帰ってきた。その顔は青白く、精気がなかった。

翠は遊戯達から事情を聞く。ドーマ、オレイカルコスの結界、勝利、気絶…そして翠は遊海の看病を続けた。そして翌朝、朝御飯の用意をしていると遊海の部屋から尋常ではない声が聞こえた、翠が急いで向かうとそこにいたのは取り乱した遊海の姿だった。

 

普段の冷静な彼からは想像もできないほど取り乱した遊海は、ベットの端に寄り何かから逃げるかのように後退りし続けていた…まるでトラウマの甦った子供のように…

 

「遊海さんっ…!」

翠は遊海を抱きしめる…取り乱した彼を宥めるように…

「遊海さん…大丈夫です…ここには誰もあなたを害する人はいません…落ち着いてください…!」

「ハッハッ…ハァハァ…スゥ……」

翠の抱擁により遊海は落ち着きを取り戻し、再び意識を失なう…しかしその顔は安らいでいた…。

 

「…アヤカさんいますか…?」

「はい…翠様…」

「私と別れてから遊海…優介さんに一体何が…?」

「…私も詳しくは知りません、しかし…」

「何?」

「マスターは学校…中学でいわゆるイジメを受けていたようです…」

「イジメ…」

「はい…、そのトラウマが『オレイカルコスの結界』の闇の力で刺激されたようです…」

『遊海さん…』

 

 

 

 

 

俺が目を覚ますとベットにもたれかかって翠が寝ていた…時間は昼の1時、心配かけちゃったかな…。

俺は翠の頭に手を置き優しく撫でる…なんだかデジャブだな…。

「ん?…遊海さん!」

「ごめん翠…また心配かけちゃったな…」

「遊海さん…何があったのか覚えてますか?」

「えっと…三幻神が出てきて…1枚取り返して…デュエルして…?そこまでだな…」

「そう…ですか(さっきの事は覚えて無いんだ…)」

「?」

「いえ何でも!…お腹空きましたよね?なにか食べます?」

「ああ!なにか頼むよ!」

「はい!」

そう言って翠は台所に向かった。

 

 

 

「アヤカ…『結界』の解析はできたか?」

「はい、マスター…あの結界には敗者の魂を封じる効果また、人の心の闇を増幅する効果があることがわかりました。マスターが昨夜倒れられたのは、後者の闇の心を増幅する効果でマスターの心が刺激されたためと想われます。」

「そうか…ありがとうアヤカ…」

「いえ…どういたしましてマスター!」

 

ついに動き出したドーマ…これから世界を救うための長い闘いが始まる…




この小説でのオレイカルコスの結界の効果
オレイカルコスの結界 フィールド魔法


このカードが発動した時の効果処理として自分フィールドのエクストラデッキから召喚されたモンスターを破壊する。
またそのモンスターが「伝説の竜」カードの効果で召喚されていた場合、融合素材モンスターを特殊召喚する。
①自分フィールドのモンスターの攻撃力は500アップする。
②自分はモンスターを召喚する場合魔法・罠ゾーンにモンスターを召喚できる。
③このカードがフィールドに存在するとき、コントローラーはエクストラデッキからモンスターを召喚できない。
④相手は自分のモンスターゾーンにモンスターが存在し、魔法罠ゾーンにモンスターが存在するとき、魔法罠ゾーンのモンスターを攻撃対象にできない。
⑤このカードは効果により破壊されず、フィールドから手札・デッキに戻らず墓地へ送られない。

効果外テキスト
このカードを発動したデュエルで敗北した者は魂を「オレイカルコスの結界」に封印される。


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目覚めし伝説の竜!~いざアメリカへ~

 夕方に遊戯達が様子を見に来てくれた、話によると遊戯達は海底遺跡を発見したホプキンス教授(双六さんの友達、青眼を譲ってくれた人)と知り合いで、彼によると太古の世界の滅亡と今の現象に重なるところがあるらしい。教授はその後杏子が拾っていた緑色に光るネックレスをもってアメリカに戻ったとのことだ。

 

 

「そういえば遊海…奴らが言ってた『異界からの転生者』ってどういう事だ?」

「あっ…!」

城之内さん…何で覚えてるんですか…。

「遊海くん…」

「いいんだ遊戯さん、完全に隠し通すのは無理だと思ってたから…。」

「えっ…どういう事?」

その後俺は皆に俺と翠は転生者で1度死んでいること、死後にもう一度人生を与えられてこの世界に来たことを話した…この世界が創作だと言うことは隠して…。

 

 

「それで転生者は魂が強いから、狙われたんだろうと思う…」

「…そんな小説とか映画みたいな事、本当にあるのかよ…」

「俺は信じるぜ!しかし痛くなかったか?死ぬとき…」

「ちょっと本田!」

「いや…そんなに、俺は全身骨折して胸を貫かれて心臓が外に飛び出して…」

「私は看板に『グシャ』ッと潰されただけですし…」

「「「いや充分痛い!/わよ!」」」

「そうか?俺はこの前の『ラー』の炎の方が辛かったけど…」

『遊海…それと比べたら終わりだ…』

「(あははは…)」

闇遊戯が顔を押さえて呆れている…

 

 

 

「そういえば『ラー』のカードは?」

「俺が持ってる…遊戯どうする?」

「う~ん…本当は僕が持っていた方がいいんだろうけど遊海君、もしよければ預かってくれるかい?」

「ちょっ!遊戯!お前「決闘王」なんだぞ!それが準優勝の遊海に神を託すのは…!」

「何言ってるの城之内君?遊海君は僕よりも、下手したら『もう一人の僕』よりも強いよ?」

「へっ?」

「だってバトルシティ決勝の時本気だったけど『全力』ではなかったもん」

「…バレてたか…」 

「マジで!?」

「俺はあのデッキで出せる本気でやった、でもあのデッキは全力のデッキでは無かったんだ…ゴメンネ!」

「…嘘だろ…」

 

 

 

その後ラーは俺が預かる事になった、とりあえずはデッキケースに入れて置こう、少なくとも俺が倒されなければ奪われない筈だ。

そして遊戯にはあるカードを貸した…そのカードは…

「これ…『ラーの翼神竜』!コピーカード!?でも効果が違う…」

そう、通称「ヲーのよく死ぬ竜」と言われるOCG仕様のラーである。これを遊戯にはダミーとして持っていてもらう(他にもあることは内緒!)

これで少しでも相手の目を誤魔化せればいいけど…。

 

 

 

 

 

 

夜、再び俺は眠りにつこうとしている、正直眠れないのだが…寝よう……。

 

 

 

た……て

 

誰かが呼んでいる

 

助…て

 

誰かが助けを求めている?

 

助けて!!

 

 

 

 

俺が目を覚ますと中世の城のある世界…DM世界にいた、空には俺の記憶にあるより小さい黒い太陽があった…。

「そうか、俺が『ラー』を持っているから完全ではないのか…」

「白波さん!?また来てしまったんですか!?」

その声は…振り返るとやはりブラマジガールがいた。

「また呼ばれたから来たんだが…まあいい、また邪魔してやる!『精霊変身!』」

掛け声と共に俺を光が包む

『アーマードウォーリアー・クリフォートフォーム!!』

「へっ!?」

『必殺!再星結界!』

俺の突きだした両手から紫色のビームが放たれ黒い太陽を包み込む!

『遊海!?』

「遊海君!?どうしてここに?」

声のした方を向くと遊戯と闇遊戯が空から降りてきたところだった。

『ん?この子に呼ばれたから来てたんだ、マジシャンガール!本当に呼びたかったのは遊戯達だろ、早く案内してやりな!』

「はい!」

その後俺の後ろから竜の叫びが響く、どうやら成功したようだ。そして俺は光に包まれ…

 

 

 

「マスター!!緊急事態です起きてください…突進!!」

 

「ゴベシッ!?」

 

アヤカの突進で起こされる、イタイです…

「異常事態です!空にオーロラが!」

俺が外を見ると夜空にオーロラがひかり、モンスター達が飛び回っている

すると空に水晶で出来たような山が現れ降下してくる、そして途中で水晶が砕け黒い太陽が現れ、竜巻を地面に向けて放つ。

その時地表で光が弾け緑色の竜が現れる。

「遊戯…使いこなせたようだな…ティマイオスを!」

竜の炎が竜巻を貫き黒い太陽を爆散させて空は元に戻った。

俺はそれを見届けて再び寝るのだった。

 

 

翌日俺達は遊戯の部屋でニュースを見ていた、世界中で多発する異常気象、出現するモンスター…

「昨日のは夢じゃ無かったのね…」

杏子がそう言う、やはり遊戯達はあそこにいたのか…、

そして遊戯の手にある名も無き竜のカード…みんなはそれを囲んでどうしたらドーマを倒せるのか話し合っていた。

 

 

「なんじゃ?ずいぶん賑やかじゃな!」双六さんが現れた。

「遊戯、アメリカから小包が届いておるよ」

「誰からだろう?」

「御伽じゃないか?」

「アイツもアメリカにいるんだっけ…」

「!?」

「どうしたの!遊戯?」

「『インダストリアル・イリュージョン社』…ペガサスからだ!」

「「「なんだって~!!」」」

 

 

 

ペガサスから届いた箱にはビデオと「イリュージョンの鍵」というカードが入っていた、城之内達はトラウマなのか顔をヒクヒクさせていたが、遊戯は「ペガサスにはもう闇の力はない」と言ってビデオを見始めた。

内容を要約すると「今回の異変について話したい事がある、私は会社から離れられない、しかも誰かに見張られている。迎えの飛行機を用意したので同封したカードを持ってアメリカまで急いで来てほしい」との事だった。

 

遊戯は最初、一人で行くつもりだったが城之内達もついて行くというもちろん俺も行く、ドーマを倒すために!

 

「ヒョヒョヒョ!レアカード…」

「ワイらも行くで!」

 

 

 

「私も行きます!」 

準備をしに家へ戻った俺は翠にも事情を説明した、すると上の一言である。

「いや…翠今回は連れては行けない…」

「どうして!」

「今回は1つの組織ではなく、下手したら国一つを相手にするような戦いなんだ危なすぎる!それに…」

「それに、なんですか!?」

「翠とドーマは相性が悪い、いや…良すぎる…」

「どういう事です?」

「『オレイカルコスの結界』は相手の心の闇に反応して負けた相手を封印するカード、翠の体の元になっている『間桐 桜』は虚数という闇に近い力を持っている。

もしその力が『オレイカルコス』と反応したら…何が起きるかわからない…」

「だから翠には家に残って、俺の帰る場所を守っていて欲しい…分かってくれるか…?」

「…分かってます、私とオレイカルコスの相性が悪いことは…でも夢で見るんです、遊海さんが誰かに負けて封印されてしまう夢を!」

「翠…」

「もちろん分かってます、ただの夢だって…でも…」

「翠!大丈夫!俺がそんなに弱いと思うか?確かに転生前は仲間内で一番弱かったけど、今はバトルシティ準優勝者だぞ!俺が負けるわけ無いじゃないか!」

そう言って翠の頭を撫でる

「大丈夫!俺は無事に帰ってくる!だから翠も家を、『俺の帰ってくる』場所を守ってくれ!」

「はい…!約束ですよ遊海さん!」

 

 

翠を説得した俺は部屋に戻る、すると…

「(ぐっ!…この頭の痛みは…!)」

 

 

 

 

ジジ『マスタァァァー!!!』

 

『貴様!選ばれし魂をよくも!!』 

 

『後は頼んだぞ…!そしてすまない翠…やくそくは…』

 

 

 

『貴様には責任をとってもらう!オレイカルコスの神よ!この者を…!』

 

 

 

『遊海…どうして!?』

 

 

プツン

 

 

「(これは千年玉の『予知』…?なら俺は…)」

 

 

 

アヤカ視点

「マスター?どうしました?顔色が…」

マスターの顔色が気になって私は話しかける

「アヤカ…スマンちょっと今からデッキを作る、その間少し離れていてくれ。」

「はい…?わかりました…?」

そう言ってマスターは亜空間に入って行きました…どうしたんでしょう?

 

 

しばらくしてマスターがデッキと封筒を持って出てきました、でも顔から脂汗をかいていて…?

「マスターこのデッキは?それにその汗…」

「アヤカ…もし、もしこの旅の間に俺に何かあったら…

具体的には『もし俺が遊戯達の敵になったら』それを城之内さんに渡してくれ…!」

「マスター何を言ってるんです?寝ぼけているんですか?」

「いや…寝ぼけてはいない、まぁ保険だ保険!たぶん使う事は無いだろうけどな…『もしも』の為だよ!」

「はぁ…マスター、怖い事言わないでくださいよ!まぁわかりました、しまっておきますね!」

「ああ、頼んだぞアヤカ!」

私はマスターから受け取ったデッキをコアに仕舞う、そしてマスターはアメリカ行きの準備をし始めたのだった。

 

 

 

 

 

遊海視点

 

そして翌日、俺達はそれぞれ荷物を持って空港にいた。神様がパスポートまで作ってくれていてよかった…

「じゃあじいちゃん、行ってきます!」

「気を付けて行くんだよ…アーサーから情報があったらすぐに伝えるからの!」

「うん!」

「よし!いくぜ!」

 

その後俺達はI2社のチャーター機に乗ってアメリカへと向かう、そういえば乗り込む時に茶色の大きいカバンがあったけど…誰のだ?

 

 

 

「よし!成功だ!」

「行くで!アメリカ!レアカード!」

 

 

 

~約10時間後~

 

 

俺達はアメリカに到着した、生前は北海道しか行ったこと無かったから初海外である。次はリムジンでの移動だそうだ、そういえばあのカバン…結局誰のでも無かったらしい…どうして紛れたかな?

 

 

 

「う~ん…」

「アメリカ…レアカード…欲しい」

 

 




~ドーマの神殿にて~


「ダーツ様申し訳ありません…神のカードを1枚奪い損ないました…」
「やはり『異界からの転生者』ですか…幸い、神を目覚めさせるのはこの2枚で事足ります。しかし速やかに最後の神のカード、及び『異界の転生者』の魂を捧げなければ神の復活はありません…三銃士達よ『選ばれし決闘者』の魂そして強い決闘者達の魂を集めなさい!」

「「「はっ!」」」


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揃う勇者~遊海の本気~

今回リンク召喚を使います、見にくいかも知れませんがよろしくお願いいたします。


 遊戯達と共にI2社へ向かう最中、遊戯の持つ「ティマイオスの眼」が光だした、そうか海馬が「クリティウスの牙」を目覚めさせたのか…、というかこの車どこに向かってるんだ?だんだん荒野にむかってるような…?

「……」キキーッ

突如リムジンが停まる、目の前には寂れたガソリンスタンドがあった。

「ん?ガス欠か?」

運転手は無言のまま車を降りガソリンスタンドに消えていく…

…罠か?

アニメではどうだったっけ…?その頃習い事で少し見れなかったんだよな…ネットで見たはずなんだけど…。

 

 

俺達は運転手を待てず周囲を探し始めた、ガソリンスタンドの中…トイレ…建物の裏、周囲の荒野も探したが人影もなかった。

「でもこのガソリンスタンド…何年も使われていないような…」

「静かに!…何か聞こえる…」

城之内が言うと微かだがバイクの音が聞こえてくる…

「マスター!30人程の集団が近づいてきます!」

「なんですと?」

しばらくすると姿が見えはじめる、全身黒ずくめのバイクの集団が!

「何だお前ら!俺らは金はないぞ!」

本田君が叫ぶが奴らは俺らを囲み始めた…マズイな…

「遊戯…車に走れ!」

「でも!」

「大丈夫!俺には『力』がある…『精霊変身!』」

俺は光を纏い、姿を変える!

『アーマードウォーリアー・クリフォートフォーム!』

「遊海!?何だよその姿?!」

『話は後!俺が引き付ける…その隙に!』

俺はそう言うとバイカーの前にでる!

『必殺!カタストロフレーザー!』

白いレーザーの筋がバイカーの持つ武器、タイヤに命中する!

「遊海!後ろ!!」

振り返ると鉄パイプを振り上げるバイカーの姿が!しかし!

「ぐわっ!」

その手にカード手裏剣が突き刺さる!

「キラーナックル!」

怯んだ相手を殴り飛ばす、周囲を見ると赤いバイクに乗った人物が黒づくめをカード手裏剣で倒す姿が!

「遊戯…城之内!今のうちに逃げるんだ!」

「おっ…おう!…このカードはまさか…!?」

その中バイクがガソリンスタンドに突っ込む!

『マズイ!!車に乗り込め!俺が運転する!』

 

俺は本田と運転を変わり急発進させる…そして

 

ボカーン!!!

 

後方でガソリンスタンドが爆発した…間一髪だった…。

車のガソリンはまだ充分残っていたから暫くは大丈夫だろう、俺は杏子に地図を読んでもらい車を走らせるのだった。

「というか遊海、車運転できるの?」

「ああ、前世は引越屋だったからな!」

「舞…アイツも戦ってるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく走り続けると大きな街と背の高いビルが見えてきた…東京タワーと同じくらいあるんじゃないか…?

「ここがインダストリアル・イリュージョン社の本部?」

「すげぇ~!」

「でも…人気がないな…注意していこう…!」

俺達は会社内に入る。

「(…これは殺気…?どこから…)」

ガシャーン!

「んな!シャッターが!」

「閉じ込められた!?」

「やはり罠か!」

ババババ!キキィー!

突然会社の中からバイクが現れるそれはさっきの赤いバイクだった。

「舞さん!」

「舞!!」

バイクで現れたのは孔雀 舞さんだった…なんで?

彼女がなんでいるんだ…!?

「ペガサスは既に始末した!次はあんたたちの番だ!」

「何でだよ舞!ちゃんと説明してくれよ!」

…俺は歴史を変えられなかったのか…?

「舞さん、どうして!」

『ドーマに何かされたのか…?』

「ウルサイ!あんた達がここを出るにはアタシに勝つしかないんだ!さあ城之内…デュエルだ!」

「くっ!」

 

       「「デュエル!」」

 

 

 

 

 

 

「ヘルモスよ!力を貸してくれ!」

 

『城之内君が選ばれし決闘者!』

 

 

「時の魔術師を融合!タイムマジックハンマー!」

 

 

 

「アタシは負けない…負けたく…?あれ…アタシ…はなんで負けたく無かったんだっけ…?」

 

「(舞さんの様子が変だ…まさか…)」

 

 

 

「オレイカルコスよ!その力を…開放せよ!」

 

バリーン!!

 

「名も無きファラオよ!次に会う時…貴様の魂をいただく!」

『待て!…くっ!』

 

 

「舞は!舞はどうしたんだ!?」

「消えちまった…」

「そんな…チクショー!!」

 

 

 

 

 

城之内と舞さんのデュエルは三銃士・ヴァロンの介入により中断された…そして御伽によって開放された扉から海馬さんが入ってくる。

『海馬!』

「遊戯…」

「遊戯!」

「御伽や城之内まで!」

「どうなってるんだ…?」

 

海馬は決闘者の王国で三銃士・アメルダとデュエルした後、I2社の状態が気になりブルーアイズジェット機で飛んできたらしい。

そして俺達はペガサスのプライベートルームへ、そこでペガサスのホログラムから、人の歴史を裏から操る『ドーマ』について、そして遊戯への新しいカードがあることを聞き、部屋にあった「強欲な壷」から無名・イラストのないカードを入手。海馬曰く『何も書いてないならゴミだ!』と言っていたが後々重要になることを俺は知っている。

 

 

 

その後俺達は御伽達とホプキンス教授の家へ向かうが、すでに教授は連れ去られ、レベッカだけが残されていた…そして深夜…

 

「(必ずホプキンス教授を!)」

「遊戯…」 

「遊海君?寝てたはずじゃ…」

「…まだ日の出まで時間はある…俺とデュエルしてくれ…!」

「!!わかった…あっちへ…」

 

 

 

『遊海なんのつもりだ…俺達は教授を救うために!』

「遊戯…冷静になれ!!」

『!?』

「…俺とデュエルすればわかるはずだ!」

『(遊海が意味の無いことはしないはず…その意図は…)』

『わかった!』

 

《審査開始…使用許可…OK!》

「アヤカ…封鎖結界作動!」

「了解しました!展開します!」

黒い幕が俺達を包む

 

      「「デュエル!!」」

遊戯 LP4000

遊海 LP4000

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『来い!『翻弄するエルフの剣士』!』

長い耳の剣士が守備表示で現れる DEF 1200

『カードを伏せてターンエンド!』

闇遊戯LP 4000

エルフ 伏せ1 手札4

□□■□□

□□■□□

 □ □

□□□□□

□□□□□

 

 

 

 

『遊海が何をしたいのわからないが…伏せは「ミラーフォース」しかも『エルフの剣士』は1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない…とりあえずは凌げるはず…』

 

 

 

 

 

「俺のターン!!ドロー!!」

遊海のドローと共に周囲の砂が舞い上がる!

『なんていう殺気だ!…さっきの舞以上だ…』

「(遊海君…一体何を?)」

「デュエルディスク・リミッター解除!マスタールール4適用!」

その瞬間遊海の決闘盤の外装が弾け飛び、近未来的なデュエルディスクが現れる、そして地面にはモンスター・魔法、罠ゾーンが刻まれさらに二つの枠がお互いのモンスターゾーンの間に現れる。

『これは…何が!?』

「俺は手札から『神樹のパラディオン』を召喚!」

耳の長い緑色の女性が現れるATK 800

『攻撃力800?一体何を…』

「現れろ!光のサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はパラディオンモンスター1体!」

「『神樹』でリンク召喚!現れろ『マギアス・パラディオン』!」

赤い鎧を着た魔法使いが現れるATK 100↓

『リンク召喚!?』

「問答無用!リンクモンスターのリンク先にこのカードは特殊召喚できる!『マギアス』のリンク先に『星辰のパラディオン』を特殊召喚!」

鎧を纏った竜が現れるDEF 2000

「『マギアス』の効果!デッキより『魔境のパラディオン』を手札に加える!さらに『星辰』の効果により墓地の『神樹』を手札に」

「アローヘッド確認!召喚条件はパラディオンを含む効果モンスター2体!」

「『星辰』と『マギアス』でリンク召喚!現れろ!『レグレクス・パラディオン』!」

炎を纏った獅子が現れるATK 1000↑↓

 

「そして手札の『神樹』を『レグレクス』のリンク先に特殊召喚!」

ふたたび緑髪の女性が現れるDEF 1800

「『レグレクス』の効果によりデッキから魔法カード『リユナイト・パラディオン』を手札に加える!」

「…アローヘッド確認!召喚条件はリンクモンスターを含む効果モンスター2体以上!!」

「リンク2の『レグレクス』と『神樹』でリンク召喚!現れろ!戦いを乗り越えし絆の勇者!リンク3『アークロード・パラディオン』!!」

ケンタウロスのような姿をした騎士が現れるATK 2000↑↙↘

 

『絆の勇者…』

「さらに『アークロード』のリンク先に『百獣のパラディオン』と『天穹のパラディオン』を特殊召喚!!!」

剣を持った騎士と鎧を纏った獅子が現れるDEF 1000 DEF 1600

□□■□□

□□■□□

 ■ □ 

■□■□□

□□□□□

 

「そして…『アークロード』の攻撃力はリンク先のモンスターの元々の攻撃力分アップする!『天穹』は1600、『百獣』は1200…つまり!」

ATK 2000→4800

『「攻撃力4800!?」』

「さらに手札から『サイクロン』を発動!伏せカードを破壊する!」

『ミラーフォースが!?』

「バトルだ『アークロード』で『翻弄のエルフの剣士』を攻撃!」

『しかし『エルフ』は守備表示!しかも1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない!』

「『百獣』の効果!相手に貫通ダメージを与える!さらに『天穹』の効果!戦闘ダメージを2倍にする!」

『なんだと!?』

4800vs1200=3600✖2=7200

アークロードの剣が迫る

『(これが…遊海の…本気!!)』

「(もう一人の僕!)」

『うわあぁあぁっ!!』

遊戯LP 4000→0

 

遊海 WIN!

 

 

黒い幕が解除される…そこにいたのは無傷の遊海と吹き飛ばされた表遊戯だった…

 

 

 

『相棒…なんで庇った!』

「だって君が傷つくのを見ていたくなかったんだもん…」

『相棒…』

「遊戯…俺が何を伝えたいのか…わかったか?」

『…敗北への恐怖…』

「そうだ…今のデッキは俺の本気デッキの一つ、それでお前に敗北の恐怖を伝えたかったんだ。しかしもう一つある…わかるか?」

「仲間との絆…?」

『何?』

「さっきの『パラディオン』達は自分の力を一つに纏めて戦っていた…それは僕達にも言えることだと思う…」

「そうだ!遊戯…お前たちにはそれぞれの強みがある、それを合わせれば勝てない敵はいない!それを伝えたかったんだ。」

『遊海…』

「さて…あと一時間位で夜明けかな…『ディアン・ケト』よ彼らを癒せ!」

遊海が懐から取り出した魔法カードにより体力が回復する。

「遊戯…3つだけ伝えておく…一つ、相手は自分からは『オレイカルコス』を使わない。二つ心の闇に負けるな…自分を…相棒を信じろ!!三つ、力に頼るな、…それ…だけ…くっ!」

遊海のデュエルディスクから煙が上がるそして遊海自身も倒れる。

「遊海くん!?」

「スマン…頭とデュエルディスクのオーバーヒートだ…ホプキンス教授を頼んだぞ…」

「遊海!」

 

 

 

遊戯は意識を失った遊海をキャンピングカーに預け、決闘の場所デッドバレーへと向かった。




~羽蛾&竜崎視点の遊戯対遊海~

「おい竜崎!」

「なんや羽蛾!見つかるやんけ」

「遊戯とあの遊海とか言う奴がデュエルするみたいだ!」

「そう言えば奴はバトルシティの準優勝者…どんなデュエルを…」

~結界展開~

「何も見えないじゃないか!!」

「なんやあれ…オレイカルコスでは無さそうやけど…?」

~5分後~

「ヒョ!?遊戯が負けた!?」

「そんなアホな…アイツなに者や…」

その後二人は遊戯を自転車で追いかけたとさ…


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囚われし遊戯~変えられない歴史~

少し話の流れを変えてみました


 俺は目覚めるとソファーに寝かされていた、周囲には杏子にレベッカそして…寝かされているホプキンス教授の姿があった。

「遊海!目が覚めたのね!」

「杏子さん…俺は…?」

「私たちもビックリしたわよ!レベッカから遊戯がドーマのメンバーと決闘しに行ったって聞いて外に出たら気絶してるあなたを見つけて、ホプキンス教授が歩いてきて…」

「…?ホプキンス教授が帰ってきた!?」

「ええ、ドーマの三銃士のラフェールって言う奴から『名も無きファラオを誘き出せたからもう必要ない』って言われたみたいで…、それで遊海…なんで気絶してたの?」

「遊戯と本気のデュエルをしてた…、まあ…負けたけど、遊戯の迷いを晴らしたかったんだ…それでちょっと難しいデッキを使って、まあ知恵熱かな?」

「…知恵熱で気絶ってどんなデッキよ…」

 

 

 

しばらくすると車に乗った御伽達、そして遊戯が帰ってきた…しかし

 

「遊戯!みんな無事だったのね!」

「ダーリン!よかった勝ったのね!」

しかし遊戯の表情は暗く…

「杏子、レベッカ…そうじゃねぇんだ…!」

「えっ?」

「遊戯は…負けたんだ」

『レベッカすまない…俺は相棒に…守られたんだ…!』

 

 

 

 

 

『オレイカルコスの結界…これを使えば…!しかし…』

 

「ダメだもう一人の僕!遊海君が言ってたじゃないか!『力に頼るな』って!」

 

『…ああ、そうだな相棒!今結界は発動していない!つまり魂はかかってないということだ!』

 

『ラフェール!!俺はこれでターンエンドだ!…俺に止めをさせ!しかし…次は負けない!』

 

「フッ潔い事だ!私のターン!ドロー!(心の闇の誘惑に勝ったか…やはり一筋縄ではいかんか…)」

 

「来い!『ガーディアン・エアトス』!遊戯にダイレクトアタック!『フォビデンゴスペル』!」

 

 

『うわぁ~!』

 

遊戯LP 0

 

ラフェールWIN !

 

「…見事だ…名も無きファラオよ、次はこそは魂を…なんだ!?」

 

《$₧₪₧₢₮₤₮₧₣₭₪₮₡₤₮~!》

遊戯のオレイカルコスの結界が勝手に発動し遊戯を拘束する

 

『ラフェール!?騙したのか!?…貴様!』

 

「ダーツ様…何故!!?」

 

『うわぁぁー!』

「もう一人の僕!」ドン

『!?相棒!』

 

「信じてるよ…もう一人の僕!」

 

『あっ…相棒!』

 

 

 

 

「…いささか不本意な結果だが…オレイカルコスの欠片と神のカードは渡して貰うぞ…」

 

パタパタパタパタ!

 

「お前達!受けとれ!」

 

「「遊戯!」」

 

「…城之内!近いうちにお前の魂も、いただきにくる!それまで首を洗って待っていろ!」

 

「テメェ待ちやがれ!」

 

 

 

 

 

「そんな…そんな事って!」

「すまないレベッカ…俺は…!」

「ダーリンを…ダーリンを返し…!?」

 

「……!!!」ギリギリギリ

 

闇遊戯を問い詰めようとしたレベッカはその動きを止めた…いや止めるしかなかった。

…自分の後ろから凄まじい怒りを感じたからだ…! 

『遊海!?』

怒りの発生源は遊海だった、すさまじい怒りの波動で周囲にいた野ネズミ達も逃げ出している

 

「ドーマ…そこまでするか…闇を乗り越えた遊戯にそんな仕打ちを…許さない…赦さねぇ……!!」

遊海の口調は静かだった…しかし拳からは血が滲み、その怒気に圧され誰も言葉を出せなかった。

人は自分よりもあらわにされた感情を見ると逆に冷静になるという…遊戯やレベッカにはそれが起きていた…

 

 

 

 

 

 

「ドーマの目的は人類史の清算!?そんな事できるわけ…」

「でもそんな事…簡単にできるわけないわ!」

「でもあの化け物が復活したら…」

 

遊戯達はドーマの目的について話している、そして俺はレベッカに包帯を巻いて貰っていた

「ごめんね遊海さん…わたし冷静じゃなかったわ…」

「いいんだレベッカちゃん、俺が勝手に怒っただけだから…」

「わたしダーリンがいなくなったって聞いて、すぐにもう一人の遊戯が悪いって思ったの…でも違った、彼は勝負には負けたけど、自分の闇に勝つことができた…悪いのはドーマだけよ…!」

「!?イタイタイ!もう少し優しく!」

「あっ!ごめんなさい!」

 

 

「ねぇ…やっぱり警察かどこかに伝えた方が…」

「でも証拠が…」

「まだ諦めては駄目だよ!」

「「ホプキンス教授!」」

目の覚めた教授によりドーマは伝説の大陸・アトランティスが関係しているのではないかということがわかった、そして残りの資料がフロリダの博物館にあることが判明。そこに向かうことになったが…

「ここからフロリダはとても遠いよ!?」

「「『何!?』」」

そこで海馬を頼る事に…しかし

『俺の預けた『デュエルキング』の称号を、どこの馬の骨とも知らぬ相手に奪われたのか!負け犬には用はない!見損なったぞ遊戯!!』

と電話を切られ…とりあえず電車で空港を目指す事に…

そう言えば羽蛾&竜崎は…?まさか…

 

 

 

 

 

 

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

 

 

 

 

 

 

『遊海…ちょっといいか?』

「遊戯…」

 

電車に乗ってしばらくして遊戯が話しかけてきた、その顔は相変わらず暗いが…アニメほどではない…

『遊海…すまない、俺は…相棒を守りきれなかった』

「遊戯…あれはしょうがなかった、俺もまさかあんな事をしてまで魂を捕りにくるとは予想できなかった…俺のミスだ…!」

『遊海…俺はお前の言葉、そして相棒の言葉が無ければ「オレイカルコスの結界」を使うところだった…、俺の心が弱い証拠だ…相棒こそが真の決闘者だったんだ…、俺は命より大切なものを…』

「まだ失ってはない!…まだ助け出せる!そのためにフロリダへ向かっているんだろ…俺たちは!」

『遊海…』

 

 

「遊戯!大変よ!」

『どうした!杏子!』

「オレ達以外誰も乗客がいなくなっちまった!どこにも停車してねぇのに!!」

『「なんだって!?」』

「これもドーマの仕業!?」

「とにかく先頭車両に!」

『ああ、列車を止めよう!』

 

 

「なっ!連結が!?」

「遊戯!杏子!遊海!?」

「本田!城之内!」

城之内達の列車はスピードを落とし遠ざかっていく…

 

「遊戯!とにかく列車を!」

『ああ!』

 

「ダメだ…車内無線の反応がない…」

『天井を伝っていくしかないか…』

 

 

 

「ヒョヒョヒョ!」

『お前はインセクター羽蛾!』

「姿が見えないと思ったらこんなところに!」

「ヒョヒョヒョ名も無きファラオ!お前を倒す!」

「何?」

「俺に勝ったら教えてやるよ…もう一人の遊戯の居場所!」

『羽蛾…貴様ァ!!』

「発動!『オレイカルコスの結界』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『魔法カード!「狂戦士の魂」発動!』

「ヒョ?」

 

遊戯は羽蛾の精神攻撃に怒り…「狂戦士の魂」を発動させた…そして…

『ドロー!モンスター…』

「遊戯!!そこまでだ!羽蛾のライフは既に尽きている!!」

『放せ!!!』

7回目の効果で待ったをかける…ドローしたのは「ブラックマジシャンガール」だった…

『羽蛾!!…チクショー!!』

ガガガ!

「しまった!列車が!!」

「キャー!」

「『うわ~!』」

 

 

 

 

……ここはどこだ…俺は…何をして…

『おい優介!金寄越せよ!』

 

『おい!このオタク!』

 

『なんでお前みたいに弱い奴が遊戯王やってるんだ?』

 

『カードなんていらないだろ?貰ってやるよ!』

 

『やめて!返してくれよ!』

 

『ふん…こんな紙切れ…こうだ!』

 

びりびり!

『あっ…』

 

『ギャハハハハ!』

 

『あ…アアア!!!』

 

やめてくれ…この記憶だけは…思い出したく…ない!

 

 

 

 

「…スター…マスタ……マスター!しっかりしてください!」

「主殿!!」

「ガッ…ハァハァ…ここは…?」

俺が目覚めると川岸だった、周囲に人影はない…

「アヤカ…トフェニ…何があった…?」

「マスター達が乗った列車が脱線したんです…それでマスターだけ遠くに飛ばされて…川に落ちたんです…」

「それで私が主殿を救出、蘇生を行いました」

「そうか…すまないトフェニ…アヤカ…ゴハッ」

「マスター!今動いてはダメです!川に落ちる時酷く体を打ち付けています、骨が折れているかも…」

「…『ディアン・ケト』よ…傷を癒せ…」

「マスター…ダメです…それでは傷は…」

「アヤカ…遊戯達の場所は…?」

「…ここからしばらく行った荒野にいるようです」

「トフェニ…頼む…連れてってくれ…」

「主殿…しかし…!」

「俺を…遊戯達のところに!」

「御意…しっかり掴まっていてください!」

俺はトフェニの背中を借りて遊戯達のところに向かう…

 

 

 

 

「グオォオォ!」

 

『ティマイオス!俺にもう一度力を貸してくれ!』

『来い『竜騎士ブラックマジシャンガール』!『ブラックドラゴンバースト』!』

 

「ゴゥアアアア!?」

                  

 

            

『クリス…アイアンハートあなた達の遺志を決して忘れない…俺が必ず!!』

 

「お~い…遊戯!」

「遊海!」

『遊海!お前いままで何処に…その傷は!?』

遊海が遠くから歩いてくる、しかしその体はボロボロだった。

「スマン…一人だけ遠くに投げ出されてな…少しは吹っ切れたか?」

『ああ、すまなかった…もう大丈夫だ!』

「そうか…なら…よかっ…た…」

『遊海!?』

「主殿!やはり無理は!」

白い竜が現れる

「キャー!?ドラゴン!?」

『お前は…遊海の精霊か?』

「然り、トフェニと申します…お見知りおきを遊戯殿」

『そうか…すまないがそのまま遊海を運べるか?』

「御意!」

「トフェニ…すまない…」

「主殿いいのです、たまには私を頼って頂きたい…!」

「マスター…だからあれほど無理をしないでと…」

『アヤカ…すまない俺のせいで…』

「いいんです遊戯様、マスターは止めても止まりませんから…」

「……遊海も精霊に好かれてるのね…」 

杏子は少し呆れるのであった。

 

 

 

そして遊戯達は線路を伝い町を目指す、そして城之内達と合流するために。



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ダーツの影~遊海の追跡~

まもなくドーマ編もクライマックス!描写が難しいですが頑張ります!


 俺達は石の荒野を出発し、線路までたどり着いた。

トフェニは遊戯や杏子を気にしながら俺を運んでくれている。

俺はやはり肋骨が折れていたらしく、アヤカに治療をしてもらっている…少し空が曇ってきたな…雨が降らないといいが…。

 

しばらく移動していると突然、ティマイオスの眼が光だした。それと共に上空にティマイオス・クリティウス・ヘルモスの三体が実体化し一機のジェット機を支えながら降下し…不時着した!

『なんだ!?』

「行ってみましょう!」

「トフェニ!」

「御意!」

 

 

 

 

「遊戯!杏子!…遊海と竜!?」

「城之内!本田!大丈夫よ!この竜は遊海の精霊だから!」

「そうなのか…遊海っていったい…」

「それよりもあれ!海馬んとこのジェット機だよな?」

「乗客は大丈夫かしら?」

「マスター!誰か降りてきます!」

「海馬!」

「遊戯…」

ジェット機から降りてきたのは海馬だった、その腕には赤毛の青年…アメルダを抱き抱えていた…

 

『海馬…何があったんだ?』

「なに…ドーマがデュエルを仕掛けてきたから返り討ちにしたまでだ!…しかしなぜ貴様らがここにいる?」

『…三体の竜が俺達を呼び寄せたんだ、海馬!やはり俺達は共に闘う運命のようだな!』

「俺は運命など信じんが…貴様らも少しは役に立つかも知れんな…」

 

「海馬様!モクバ様!ご無事ですか!!」

「磯野!」

KC社のヘリから磯野さんが飛び降りてくる…あの人、身体能力高いな…

「海馬様…悪い知らせです…!」

「今はいい!とにかく移動しながら話を聞く!…貴様達も乗るがいい!」

『すまない海馬!』

「ありがてぇ!」

 

 

 

 

 

そして俺達は海馬さんのヘリに乗り込んだ。そして磯野さんの話によると海馬コーポレーションが乗っ取られたらしい、しかしモクバによるとKC社の株の半分以上は海馬兄弟が保有していて、自分達の許可なく買収などできるはずが無いという。しかし

「考えられるとすれば…世界市場を操作した…」

海馬はそう予測した、それはたぶん合っている…

「ちょっと待って!ドーマはそこまで力があるっていうこと!?」

「俺も少し…ドーマを甘く見ていたようだ…」

「瀬人様…」

「俺はもう社長ではない…」

 「瀬人様!私達は海馬コーポレーションが復活するまで付いていきます!」

磯野さん、そしてフグタさん?だったかな?が海馬に伝えている…海馬さん意外にカリスマ高いんだよな…

「気持ちは受け取っておく」

 

 

 

その後遊戯は、最後の資料を手に入れるために博物館に向かおうと海馬に伝える…しかし

「もうフロリダもドーマの手に落ちているだろう…しかし、手は打ってある!」

するとすぐに連絡が入った、海馬の部下が画像を入手したらしい!

『海馬!既に博物館に…!』

「当たり前だろ!兄様は十手、二十手先を読んで行動してるんだから!」

画像が送られてくる…

「瀬人様…御武運を…うわァー!?」

『海馬…!』

「…しかしこれで情報が手に入った…部下達の犠牲…無駄にはしない!!」

 

 

 

その後別行動しているレベッカに連絡をとり、合流することを伝える、そして風化した文字を解析するために既にドーマの手に落ちている、KC 社のアメリカ支部に向かうのであった。

そして時を同じくして世界中でオレイカルコスソルジャーが大量発生し人々を襲い始めた…

 

 

 

 

そしてKC社のある町にて、レベッカ達と合流した俺達、そこで御伽から舞さんそして三銃士・ヴァロンと遭遇した事が城之内に伝えられる、ヴァロンは城之内に宣戦布告したようだ…。

そして俺達は三手に分かれて行動を開始した、杏子・本田は警察へ、レベッカ達は後方支援、そして遊戯・海馬・俺で海馬コーポレーションに向かう事になった。

 

 

 

海馬コーポレーションへ向かった俺達は避難に使う地下通路を通り会社内に入る、すると何かが突進し壁を突き破った!

「なっ!『エンゼル・イヤーズ』!?」

「コイツ…ソリッドビジョンじゃないのか!?」

そして扉をこじ開けると…モンスターハウスだった…海馬コーポレーションはいつからダンジョンになった!?

『海馬!遊海!俺達もデュエルモンスター達を召喚するぞ!』

「…オカルトだが試すしかないか!」

「俺はリアルファイトでいくぜ!遊戯達は先に進め!」

《白波 遊海…私の力を使いなさい!》

「ラー!すまない、力をお借りします!『精霊変身』!!」

黄金の光が俺を包む!

『アーマードウォーリアー・モード太陽神!!』

ラーをイメージした鎧を纏う遊海がそこにいた!

「白波!なんだその姿は!!」

『説明は後で!中央突破で行きましょう!』

「『おう!』」

 

 

 

 

『いけ!『翻弄するエルフの剣士』!!』

「『ブラット・ヴォルス』!道を開け!」

『ゴッドブレイズ!!今だ!進め!』

敵を蹴散らしながら前に進んでいく

 

「認証コードが書き換えられている!?」

『海馬!急いでくれ!逃げ場が無くなる!』

『俺が時間を稼ぐ!フェニックスダッシュ!』

炎を纏いモンスター達に突撃し蹴散らす!

 

【お待たせ!助けに来たわ!】

インターホンからレベッカの声がする、ハッキングに成功したようだ。

 

【海馬社長!今度私を雇いなさい!もう少しましなプログラムを組んであげる!】

「考えておこう!…進むぞ遊戯!白波!」

『ああ!(まずい…この状態はエネルギーを使うな…)「精霊転身!モード聖刻」!』

俺は太陽神モードを解除し聖刻の力を纏い前に進む。

そしてコンピュータルームにたどり着いた!

「解析開始!」

【解読しよう…「漆黒の大蛇が太陽を呑み込む時、一万年の時を越えて新たな楽園がよみがえる」…だ。楽園はたぶんアトランティスを指しているはずだ!】

「!?…この紋章は…パラディウス社のマーク!」

『パラディウス?』

海馬によると世界のあらゆる市場、その数%を有すると云われる大企業…そしてその社長の名前は「ダーツ」!

『(コイツは…一万年前の戦いの時の…まさか同一人物!?)』

その時、突然コンピュータが爆発する!

【遊戯!社長!遊海!大丈夫!?通信が…!】

 

 

 

 

そして目の前には黒い竜に乗った男がいた…

「ようやくここまでたどり着いたか!名も無きファラオ!海馬瀬人!そして…転生者、白波遊海!」

「貴様が黒幕か!」

「いかにも!我が名はダーツ!まもなく世界はドーマの理想に導かれ生まれ変わる!」

「何が理想の世界だ!虐殺紛いの事をして、その思想には正義はないわ!」

『貴様!目的はなんだ!』

「お前達が知る必要はない!お前達もじきに滅びの道を歩むのだから!」

『ダーツ!今ここで決着をつけてやる!…相棒の…みんなの魂を返せ!来い「ティマイオス」!』

「いけ!『クリティウス』!」

『俺もいくぜ!』

「伝説の竜よ!久しぶりだな…ティマイオス!目の傷は疼くか?」

ティマイオスとクリティウス、そして俺が攻撃を仕掛けるが…すり抜ける!

『幻影だと!?』

《もはや動き出した運命を変えることはできん!お前達は自分の無力さを思い知るのだ!…そして転生者よ貴様の持つ『真なる神』は頂くぞ!》

『しまった!ラーのカードが無い!?』

『なんだって!?待て!ダーツ!』

ゴゴゴ…!

 

「ビルが…」

「遊戯!白波!こっちだ!屋上から脱出する!」

屋上にはブルーアイズジェットが!

「遊戯!後ろに飛べ!しかし二人乗りだ」

『遊海!』

「心配するな!トフェニ!頼む!」

「御意!」

ビルから脱出するがジェットはモンスターによりすぐ墜落する!

「くっ!」

「遊戯!海馬さん!あなた達はパラディウス社へ!」

『遊海!お前は!?』

「俺は『神のカード』を取り返します!後で会いましょう」

『遊海!一人では危険だ!』

「大丈夫です!…後は頼みます!…トフェニ!」

「御意!黒い竜を追います!」

『遊海!!』

 

 

 

 

俺は黒い竜の影を追ってトフェニと共に移動している、しかし突如黒い竜は消えてしまう。

「くそ!見失った…!あれも幻影だったか…」

「主殿…どうする?一度引き返しますか?」

「…いや、アヤカ!」

「はい!マスター!」

「レーダーで魂と精霊の力が集まっているところを探してくれ!」

「はい!…検索中…ありました!アメリカ沖の島に多数の魂が集まっています!」

「そこに案内してくれ!トフェニ頼む!」

「御意!」

そして俺達は南の島…恐らく暗黒神殿へと向かう



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遊海散る~仲間へ託す希望!~

注意 この回はアニメオリカが出ます、効果が不確かですのでよろしくお願いいたします。


 俺はアヤカに導かれついに小さな島にあるドーマのアジト「暗黒神殿」にたどり着いた、周囲は静かだが不気味な気配がする。

「トフェニありがとう!精霊世界に戻ってくれ…」

「御意…主殿、御武運を…!」

「ああ、ありがとう!…いくぞアヤカ…!」

「はい!マスター…!」

 

 

 

邪悪な力が流れている通路を進む、人の気配はないが…息苦しい…

「マスターこの先です、この先に三幻神の力、そしてたくさんの人々の魂の力を感じます…!」

「わかった…アヤカ、そうだ…これを持っていてくれ…」

「このカードは…?」

「お守りだ…」

「?はい…」

アヤカにあるカードを渡し…俺は歩みを早める。

 

 

薄暗い通路を抜けた先に広間が広がる、その壁や床には…無数の人達が石板に囚われていた。

昔のローマ風の服をきた男性、チャイナ服を着た女性、スーツを着た眼鏡の少年…、そして中央には三頭のヘビの石像がありその中にそれぞれ三幻神が納められていた。

 

そして広間の祭壇に近い壁にそれはあった…、表遊戯と城之内の封印された石板…、城之内は恐らく舞さんとデュエルし封印されたのだろう…今のうちに二人を…

「二人共…今助ける…!誰だ!?」

「さすがですね…異界からの転生者『白波 遊海』!」

「貴様…ダーツ!!」

俺の目の前には古代の服を着たドーマの首魁…ダーツがいた。

 

「まさか生け贄がそちらからやって来てくれるとは…東洋では『飛んで火に入る夏の虫』と、言うのでしたか…さぁ、お前の魂をオレイカルコスの神に捧げよう!転生者の強い魂は我が神にとって最高の供物となる!」

ダーツは決闘盤を構える。

「…マスター…危険です…!」

「大丈夫だアヤカ…俺は勝つ!」

 

 

 

 

      「「デュエル!!」」

ダーツLP 4000

遊海LP 4000

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

ダーツから凄まじい殺気が放たれる…怖い…しかし弱気では駄目だ!

「漆黒の闇より生まれしカードよ!我に天命の力を!『オレイカルコスの結界』発動!」

発動と共に周囲の篝火が消え、ダーツの足下から緑の結界が広がる。

「そして現れろ『オレイカルコス・ギガース』!」

岩のような巨人が現れる。ATK 400→900

「さらにライフを500払い『オレイカルコス・キュトラー』を特殊召喚!」

ダーツLP 4000→3500

ウニのようなトゲをもったモンスターが現れるATK 500→1000

 

「私はこれでターンエンド!」

ダーツ LP3500

前衛ギガス 後衛キュトラー 結界 手札3

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「(アイツらの効果はなんだ…?アニメをもう一度見直すんだった…!)」

「デュエルディスク、リミッター解除!マスタールール3適用!俺はライトペンデュラムスケールに『クリフォート・ツール』をセッティング!」

遊海の右側に光の柱が立ち、ツールが現れる。スケール9

「さらに自分のライフを800払い『ツール』の効果!デッキから『アポクリフォート・キラー』を手札に!」

遊海LP 4000→3200

 

「そして手札からレフトペンデュラムスケールに『クリフォート・アセンブラ』をセッティング!」

遊海の左側に光の柱が立ち、アセンブラが現れるスケール1

「我が魂を守りし大いなる力よ!この身に宿り闇を祓え!ペンデュラム召喚!手札より『クリフォート・シェル』『クリフォート・アクセス』『クリフォート・アセンブラ』!」

 

ツールとアセンブラの開けた穴から巨大な機械が現れる。

ATK 1800

1800

2400

「それが異界の力…『ペンデュラム』ですか…!」

「さらにクリフォートモンスター3体を生け贄に!現れろ我が相棒!『アポクリフォート・キラー』!!」

三体のクリフォートが空に登り合体し、アポクリフォートキラーが現れる。 ATK 3000

【マスター!お任せを!】

「『キラー』の効果により特殊召喚されたモンスターの攻守は500下がる!『機殻の戦場』!」

キラーからの威圧によりキュトラーが弱る

ATK 1000→500

 

「さらに相手は場、手札からモンスターを1体墓地へ送らなければならない!」

「私は手札の『タイムイーター』を墓地へ!」

 

「バトル!『キラー』で『ギガース』を攻撃!『カタストロフ・レイ』!」

キラーから放たれた光がギガースを破壊する…しかし

ダーツLP 3500

「何!?ダメージが!?」

「『オレイカルコス・キュトラー』はあらゆるダメージを吸収する!」

キュトラー《2100吸収》

「さらに『ギガース』は元々の攻撃力を500上げて復活する!」

ギガースが復活するATK 900→1400→900

「くっ…ターンエンド!『アセンブラ』効果により生け贄にしたクリフォートの分ドローする、3ドロー!」

遊海LP 3200

キラー Lアセンブラ Rツール 手札 3

 

 

 

 

「私のターン!『ギガース』によりドローは出来ないが、このカードを発動する!

発動せよ第2の結界『オレイカルコス・デウテロス』!」

「何!?」

オレイカルコスの結界に二重の輪がかかる

「そして『オレイカルコス・ギガース』を召喚!」

ダーツの場にもう1体巨人が現れる ATK 400→900

 

「そして『デウテロス』の効果により自分の場のモンスターの数✖500回復する!」

ダーツLP 3500→5000

 

「バトル!『ギガースA』で『キラー』を攻撃!」

【不敬者!】

ギガースはキラーを攻撃するが、返り討ちになる。

3000vs900=2100

「そしてダメージは『キュトラー』が吸収する」

キュトラー吸収《計4200》

「さらにもう1体の『ギガースB』で『キラー』を攻撃!」

【しつこい!】

ギガースはまたキラーに破壊される。

「ダメージ吸収!」

キュトラー吸収《6300》

 

「そしてギガースは復活する!」

A ATK1300

B ATK900

 

「私はこれでターンエンド!」

 

ダーツLP 5000

前衛 ギガスA ギガースB 後衛キュトラー 手札0

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「現れろ!ペンデュラム召喚!エクストラデッキより『シェル』『アクセス』『アセンブラ』!」

再びクリフォートが展開する。

ATK 1800

1800

2400

「並び立て『アポクリフォート・キラー』!!」

ATK 3000

 

「ほう…」

キュトラーATK 500

ギガースa ATK 900

ギガースb ATK 400

 

「キラー2体の効果発動!」

「私は『ギガース』2体を墓地へ」

「バトル!『キラーb』で『キュトラー』を攻撃!『カタストロフ・レイ』!」

キラーの破壊光線がキュトラーを直撃する

「『キュトラー』が破壊される時その戦闘ダメージも吸収する!」

キュトラー吸収《計8800》

「フフフ、ハハハハハ!」

「何がおかしい!これでお前の場はがら空きだ!」

「それはどうかな?」

「何?」

「『キュトラー』よ!その真の姿を表せ!」

 

ダーツの声と共にキュトラーが砕け散る、そして破片から邪悪な煙が吹き出す。煙が集まるとその中から緑色の土偶のようなモンスターが現れる

「このモンスターは…」

「これこそは『キュトラー』の進化体!『オレイカルコス・シュノロス』!その攻撃力は吸収したダメージの数値で決まる…よって!!」

ATK 8800→7700

【攻撃力7700!そんな!?】

「攻撃力7700…」

アヤカが悲痛な声をあげる…今の手札では…対処ができない…

「さらに現れろ『シュノロス』の最強の剣と盾!右腕『オレイカルコス・デクシア』!左腕『オレイカルコス・アリステロス』!」

シュノロスから分離した右腕と左腕が前衛に出る

ATK 500

ATK 500

「俺は…これでターンエンド…『アセンブラ』効果で3ドロー…」

遊海LP 3200

キラー キラー 手札6

 

 

「私のターンドロー!…白波 遊海…言い残す事はあるか?」

「…俺が負けたとしても…遊戯や海馬が必ずお前を闇ごと打ち倒す…覚悟しておけ…!」

「ふっ…何を言うのだ彼らよりも心の闇が深き者よ」

「…何…?」

「気づいていない…いや…忘れているのか?なら封印する前にそれを思い出させてやろう、その方が供物に丁度いい…ハァ!」

 

 

ダーツが遊海に向かって手を翳す、すると遊海の頭に激痛が走る…まるで体が思い出すことを拒否するように…

「やめろ…ヤメテクレ…この記憶だけは…アアア!」

【マスター!?ダーツ!!マスターに何を!!】

「フフフ、思い出させてあげただけだよ…心の闇を!」

遊海の体から闇が溢れ包み込む、そして封じられし記憶が溢れ出す。

 

 

 

 

 

 

…あれは春美と別れて何年後だろうか…俺は引っ越し先の中学に進学した…その三年は地獄だった。

何がキッカケだったのだろう…いじめられていた女子を助けてからだろうか…いじめのターゲットは俺に移った、そこからは辛かった、カツアゲ、物隠し、リンチ…大体やられたか…その頃俺は一つの存在を自分に作り出した、後々知ったが「イマジナリーフレンド」と言うらしい。

その存在に俺の負の感情を全て託した…哀しみ、怒り、辛さ…あらゆる感情を彼に託した…まるで深く掘った穴に捨てるように、そうでもしないと耐えられなかった。そんな日々が続いた中、ついにその時は訪れた。

キッカケは遊戯王だった、学校にお守りに1枚だけカードを持ってきていた…『メガロック・ドラゴン』…春美に預けたカードの片割れだった、少しずつ記憶は薄れていたがそれだけが記憶に残っていた。

ある日カツアゲされた時、たまたま生徒手帳が落ち、中を見られカードを見られた…そして

 

びりびり

 

…その瞬間黒い感情が沸きだし意識がなくなった、いや…意識はあった、しかし現実味がなかった…気づけば周囲は血の海になっていた。

その後いじめが公になり、俺は正当防衛ということで注意で済んだ…しかし罪悪感からその記憶そして「彼」を忘れ去った…。

 

 

 

その後高校で良い仲間と出会い、完全に忘れたが…心の底にまだ「彼」がいたようだ…出てこようとする…絶対に出さない……出してたまるか…!!

 

遊海は自身から溢れる闇を徐々に抑え始めた、しかしそこに無情なる攻撃が迫る…

 

 

 

「そろそろ良さそうですね…『シュノロス』!『キラーb』を攻撃!」

シュロノスから放たれた光輪がキラーを粉砕する、その後ブーメランのように戻って来た光輪により遊海は吹き飛ばされ、結界に強く叩きつけられる

「…ガッ…フッ!!」

遊海LP 3200→0

 

ダーツWIN !

 

 

 

 

 

 

…気づけば俺はデュエルに敗北していた…ダーツめ…ワザワザ、トラウマを抉りやがって…。

 

結界の緑の光がゆっくり収縮する…俺はここまでか…。

「マスター!しっかりしてください!マスター!?」

「無駄だ精霊…彼は既に結界に取り込まれた…我が神への供物になるのだ!」

 

 

「(アヤカ…聞こえるか…?)」

「(マスター!?はい!)」

「(今から無茶をする…お前は俺がこれから渡すモノを持って逃げろ…)」

「(しかし…マスター!)」

「(頼む…お前にしか…頼めない…!)」

「(…わかりました…命令を実行します…)」

「(よし…いい子だ…)」

 

 

 

「さぁ我が神よ供物を…!」

「千年玉よ!!俺に一時の力を!!どりゃぁぁ!!」

突如目を覚ました遊海の渾身の一撃により結界の壁が砕け散る

「何!?貴様…逃がさぬ!!」

結界が俺に迫る…次に捕まったら終わりだ…しかしその前に!!

「うおりゃっ!!」

俺は遊戯と城之内の封印されている石板に腕を突っ込む、腕は石板を砕かず通り抜け…

「アヤカ!これを持って逃げろ!!!」

突っ込んだ腕を引き抜き、引き抜いた手に掴んだ二つの光る玉をアヤカに投げ渡す!そして…

「『強制脱出装置』!起動!!」

「そんな!…マスタァァァァー!!!?」

同時にアヤカに持たしていたカード、「強制脱出装置」を発動させアヤカを離脱させる…これで俺の役割は果たせた…かな…

 

 

「くそッ、貴様!!選ばれし魂を!?」

「へっ…人間の心の光を舐めるな…」

 

緑色の光が俺に迫る…使命は果たした…悔いは無い。

あとは頼んだぞ…遊戯!!…そして翠…すまない…やはり約束は…

 

 

遊海の意識はそこで途絶える。

あとに残されたのは遊海の肉体、そして図柄の消えた石板、そして新たに帽子を被った男が描かれた石板だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

闇遊戯は三銃士最後の一人・ラフェールに勝利し彼から提供された情報によりドーマの本拠地に向かっていた。

その中アメリカ海軍の協力により近くまで送ってもらっている。

『ダーツ…貴様を許さない…絶対この手で…』

「…ぎ様…」

『?なんだ…声が?』

「ゆうぎ…さま…」

『部屋の前で誰かが呼んでいる?』

遊戯は部屋の扉をあける…そこには 

「遊戯…様…」

『お前はアヤカ!どうしてここに!』

ドアの前にいた…落ちていたのは遊海の精霊…アヤカの姿だった、しかしその機体はボロボロでコアが明滅している…

「遊戯…様、マスターから…託された…モノです…お渡ししま…す。」

するとアヤカから光の玉が飛び出し一つは隣の部屋、もう1つは遊戯に吸収された…すると

「もう一人の僕!!」

『相棒!?なぜここに!?』

それはドーマに囚われているはずの表遊戯の魂だった、そして

「遊戯!城之内が目覚め…アヤカちゃん!?どうしたの!」

杏子が城之内が目覚めた事を伝えた…それと同時に遊戯の抱くアヤカが目に映り駆け寄る

『相棒…一体何が…』

「僕もわからないんだ…気付いたらアヤカさんと一緒にいて…」

『アヤカ!何があった!…遊海は…マスターはどうした!』

「おい!何の騒ぎだ!…これは…」

騒ぎを聞いて海馬も現れる。

 

「マスターは…単身で…ドーマの本拠地に…乗り込みました、そこでダーツに遭遇…デュエルを行いました…」

『なんだって!?』

「マスターはダーツに敗北…結界に取り込まれる寸前、最後の力で結界を破壊、私はお二人の魂を預かりマスターに逃がされました。」

『…遊海は…』

「恐らくは…」

「そんな…あの遊海くんが…負けた?」

『遊海…一人で…』

「…白波…一人で先走りおって」

「マスターの最後の思考は…『あとは頼んだぞ!遊戯!!』で…す。」

そう言うとアヤカのコアが明滅を停止する…システムダウンしたようだ…

「…遊戯、今二人の魂って…」

「…ただいま杏子…心配かけてゴメン!」

「遊戯!いつもの遊戯なのね!よかった…!」

表遊戯と杏子は久しぶりの再会を喜んだ、しかしそれと引き換えに遊海はダーツに囚われてしまった、闇遊戯はダーツへの怒りを確かなものにする。

 

 

 

『遊海は自分の魂を懸けて相棒と城之内君を助けてくれた…今度は俺達の番だ!』

 




これにて『遊海』は一旦退場になります、しばらくは遊戯視点、アヤカ視点、城之内視点でお送りします。


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立ちはだかる強者 強襲の●●~遊海の遺志~

side闇遊戯

 

遊海の命懸けの行動により相棒、そして城之内君の魂を取り戻す事ができた。二人を運んでくれたアヤカはいまだ沈黙している、外を見ると竜巻による強風が吹き荒れている、アヤカはここを抜けたためにダメージを受けたのだろう。

今、俺達は空母を離れドーマの本拠地に向かっている。その周辺は侵入者を拒むように竜巻があったが今はおさまっている、まるで俺達を誘いこむように…。

 

 

しばらくして俺達は神殿の前に到着した。

「よし!遊戯!遊海や舞を助けてサクッと世界も救おうぜ!」

「ふん凡骨、せいぜい足手まといになるなよ!」

「うっせ~な、お前こそ足引っ張るなよ!?」

俺の横では海馬と復活した城之内君がいつも通りの掛け合いをしていた。

「遊戯!遊海と舞さんの事頼んだわよ!」

『ああ、必ず救い出す!!』

「もう一人の僕!行こう!」

『ああ!』

今の俺には相棒がついてる…いける筈だ!…と

「みんな…待ってたよ…」

神殿の入口、そこにはボロボロ遊海の姿があった

 

 

 

 

『遊海…お前どうして!』

「オレ達を救い出して、封印されたはずじゃ!?」

「余程悪運が強いらしいな、白波…」

「いや~危なかった!封印される!と思ったら魂が体から離れなくて…で結局精霊の力を根こそぎ盗られて追い出されたんだ!」

「お前心配かけんなよ…立てるか?」

「ああ、城之内すまん手を貸してくれ…」

 

「城之内様!!下がって!!」

 

「うわっ!?」

「がふっ!」

突如ヘリから飛び出したアヤカが遊海を弾き飛ばす!

 

『アヤカ!一体何を!』

「あいつはお前のマスターだろ!?どうしたんだ?」

「…彼はマスターではありません!…一体何者です!」

「どうしたんだアヤカ?(オレ)はお前のマスターじゃないか?」

「マスターは決して本人の前で城之内様を呼び捨てにはしません!それに彼から「オレイカルコス」の力を感じます!!」

『貴様…何者だ?』

 

「ハハハハハ!流石にバレるか!やはりアイツは人が良すぎるらしいな!!」

遊海?から闇のオーラが溢れ出す、それは普段の遊海からは考えられない事だった。

 

「我の名前は『ユウスケ』!白波 遊海の心に幽閉されし闇!ドーマの名の元に貴様らの魂を頂こう!」

遊海…いやユウスケはそう名乗りをあげたのだった。

 

遊戯side out

 

 

 

 

 

 

アヤカside

 

私はマスターの「強制脱出装置」によって神殿の外に排出された、その後遊戯様の魂を目印に海上を移動、何度も風に煽られ、雷を避けながら遊戯様達のいる空母にたどり着いた。

その後なんとか表遊戯様と城之内様の魂を渡した後システムがダウンした。

 

再起動するとそこは暗黒神殿だった、遊戯様は私も一緒に連れてきてくれたらしい、機体はボロボロだがマスターからエネルギーを貰えば回復できるだろう…と

『遊海…お前どうして!』

外から遊戯様の声が聞こえてきた…マスターがいる?

そんな馬鹿な事が…いた。

しかしそれはマスターでありマスターではない存在だった。魂の色が違う、口調が違う、他にもあるが何よりも「オレイカルコス」の力を感じる!アレはマスターじゃない!!

その時私の頭脳にマスターの言葉がよぎった。

 

「『もし俺が遊戯達の敵になったら』それを城之内さんに渡してくれ…!」

 

今、城之内様がアレに手を伸ばしている…マズイ!!

 

「城之内様!!下がって!!」

私はショートする機体を無視してマスターのようなモノに突進する、やはりマスターじゃない!

 

遊戯様や城之内様が何か言っているが関係ない、私は問いかける「お前は誰だ!」と遊戯様もようやく違和感に

気付いたようだ、そして…

 

「我の名前は『ユウスケ』!白波 遊海の心に幽閉されし闇!ドーマの名の元に貴様らの魂を頂こう!」

マスター…いやユウスケはそう名乗りをあげた、マスター…もしかして…

 

アヤカside out

 

 

 

 

 

 

 

 

『ユウスケだと?貴様!遊海をどうした!』 

遊戯は遊海…ユウスケに問う、その瞳は怒りに燃えている。

「ああ、アイツの魂は既にオレイカルコスの神の生け贄となった!」

「何!?」

「我はダーツにより掘り起こされた遊海の心の闇!さぁ俺の相手をしろ!」

『遊海にお前のような闇があるわけない!』

「…お前達は疑問に思わなかったのか?」

『なんだと…?』

「遊海はこの世界に来て何度も怪我をしているが…弱音を吐いたりした事はあるか?」

『…ほぼ無い…しかしそれは遊海が強いから…』

 

 

「違う!アイツの心はガラスくらいの強さしかない!

アイツの弱音や怒り、悲しみ…それを引き受けたのは全て我だ!ヤツの溜め込んだ『負』の感情が我を作り出したのだ!」

そう言うとユウスケの体から闇が溢れる…しかし

「ガボッ!!」

突然血を吐き出すユウスケ

「くっ!遊海め…ダーツに派手にやられやがって…!

さぁどうするこの体はとうに限界を越えて動いている!さっさと我を倒さないと体がぶっ壊れるぜ!!」

『ユウスケ!貴様…俺が…』

「…待ってくれ遊戯!…オレが相手をする、お前はダーツを頼む!」

『城之内君!何故!?』

「遊海が…俺に託したからだ…」

城之内はそう言うと1枚の手紙を見せる、そこには…

 

 

「城之内さんへ

 

城之内さんがこの手紙を見ている、という事は俺はおそらくドーマに一人で潜入し遊戯さんと城之内さんをドーマの封印から助け出し、俺は何らかの手段で遊戯さん達に敵対している筈です。それが洗脳か他の手段かわかりませんが。」

 

『なっ!?』

その手紙には今の状況がそのまま書かれていた。

 

「この手紙はアメリカに行く前に書いています、俺は千年玉の限定予知で未来を見ました。この流れはたぶん変えられません、なのでアヤカにこの手紙とデッキを1つ託します。

城之内さん、『ヘルモス』を遊戯さんに託しアヤカに渡してあるデッキで戦ってください。

敵対している俺が何のデッキを使うか分かりませんがそのデッキなら大丈夫…の筈です、デッキが決闘者の魂とわかっているうえでのお願いです。

あとは頼みます。

             白波 遊海より」

 

 

 

 

 

『遊海…お前はどこまで…』

「遊戯…オレは遊海から想いを…魂を託された…だからオレもお前にこれを託す!」

城之内が遊戯に渡したのは「ヘルモスの爪」だった。

『城之内君…』

「遊海…ユウスケはオレに任せろ!アイツは俺が助け出す!」

『…わかった!遊海を頼む!』

「ああ!ユウスケ!オレとデュエルだ!」

「やっと覚悟を決めたか…良いだろう受けてたつ!」

 

「行ってくれみんな!」

「凡骨!アイツは任せたぞ!」

『城之内君…頼む!』

「城之内!ユウスケを倒したらすぐに来なさいよ!」

遊戯達は城之内とアヤカを残して先に進む、ダーツを倒すために…

 

「さて邪魔者は居なくなったか…アイツが何を託したか知らないがお前を倒す!」

「遊海の想いは無駄にしねぇ!勝負だ!」

 

 

 

       「「デュエル!!」」

 

 

 

ユウスケLP 4000

城之内 LP 4000

 

 

 

「我のターン!ドロー!」

「早速か…闇の力よ我に天命の力を与えよ!『オレイカルコスの結界』!発動!」

ユウスケの足元から緑の結界が広がる

「我は魔法カード『トレード・イン』を発動!手札の星8『堕天使スペルビア』を墓地へ送り2ドロー!」

「堕天使デッキ…よりによって…」

「さらに手札の『堕天使イシュタム』の効果!手札の『堕天使マスティマ』と共に墓地へ送りさらに2ドロー!」

「さらに手札から『闇の誘惑』を発動!2ドローしその後手札の闇属性モンスターを除外する!俺は『堕天使テスカトリポカ』を除外!」

「なんていうドロー加速だ…」

 

「そして手札から魔法カード『堕天使の戒檀』を発動!墓地の『スペルビア』を守備表示で特殊召喚!」

大きな翼を持つ堕天使が現れる DEF 2400

「さらに『スペルビア』効果で墓地の『イシュタム』を特殊召喚!」

3対6枚の黒い翼を持つ女性が現れるATK 2500→3000

「いきなり攻撃力3000だと!?」

「先攻は攻撃ができない、カードを伏せてターンエンド!」

ユウスケLP 4000

スペ イシュ 伏せ1 オレイカルコス 手札3

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「(遊海…お前の魂…使わせてもらうぜ!)」

「オレは手札から『紅玉の宝札』を発動!手札の『真紅眼の黒竜』を墓地に送り2ドロー!さらにデッキから星7『真紅眼の黒炎竜』を墓地へ送る!」

「そして手札から『レッドアイズ・インサイト』を発動!デッキの『真紅眼の飛竜』を墓地へ送り『真紅眼融合』を手札に加える!」

 

「そして『真紅眼融合』を発動!デッキの『真紅眼の黒竜』と『真紅眼の凶星竜ーメテオドラゴン』を融合!宙に燃える凶星よ!黒き竜に力を与え…全てを燃やす竜となれ!『流星竜ーメテオ・ブラック・ドラゴン』!!」

全身に炎を纏った竜が現れるATK 3500

「何!?攻撃力が3500!?」

 

 

「『流星竜』の効果!デッキから『真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン』を墓地に送り攻撃力の半分1250ダメージを与える!!『レッドアイズ・メテオ』!!」

「ぬぉぉ!」

ユウスケLP 4000→2750

「さらに手札の『黒鋼竜』を『流星竜』に装備し攻撃力を600アップする!」

ATK 3500→4100

 

「バトル!『流星竜』で『イシュタム』を攻撃!『ダークメテオ・ダイブ』!」

「ふっ甘いぞ!リバース罠!『背徳の堕天使』!手札の『堕天使ゼラート』を墓地に送り『流星竜』を破壊する!」

「なんだって!?」

流星竜がゼラートの幻影に切り裂かれる

「くっ!『黒鋼竜』の効果によりデッキから『真紅眼融合』を手札に加える!カードを三枚伏せてターンエンド…」

「エンドフェイズに『堕天使イシュタム』の効果!1000ライフを払い墓地の『堕天使の戒檀』を発動!『堕天使ゼラート』を特殊召喚!その後『戒檀』をデッキに戻す!」

「なんだと!?」

ユウスケLP 2750→1750

赤い翼の堕天使が現れるDEF 2300

「ターンエンド!!」

城之内LP 4000

モンスター0 伏せ3 手札2(1枚融合)

 

 

 

 

 

 

「我のターン!ドロー!」

「我は手札から『堕天使の追放』を発動!『堕天使イシュタム』を手札に加える!さらに『イシュタム』効果で『アムゥドゥシアス』と墓地に送り2ドロー!」

「そして場の『イシュタム』の効果!1000ライフを払い墓地の『追放』を発動!『戒檀』を手札に加えて発動!墓地の『堕天使アムゥドゥシアス』を特殊召喚!」

ユウスケLP 1750→750

馬のような堕天使が現れる DEF 2800

 

「そして『スペルビア』と『アムゥドゥシアス』をリリースし…現れろ!傲慢なる天使の長!『堕天使ルシフェル』!!」

4対八枚の翼を持つ堕天使の長が現れる ATK 3000→3500

 

「『ルシフェル』の効果!場の『堕天使』の分だけデッキからカードを墓地に送りその枚数✖500ライフを回復する!落ちたのは『戒檀』二枚と『終焉の炎』の三枚よって1000ライフを回復する!」

ユウスケLP 750→1750

 

「ゼラートを攻撃表示に変更!バトル!行け!『ゼラート』!」

ゼラートが城之内に斬りかかる!

「リバース罠!『聖なるバリアーミラーフォース』!これで返り討ちだ!ぶっ飛べ!!」

ミラーフォースがゼラートそしてユウスケの場を凪ぎ払う!!

「なんだと!?」

「よしっ!」

「やりました!!」

「おのれ…カードを伏せてターンエンド!」

ユウスケLP 1750

伏せ1 オレイカルコス 手札1

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「(このカードは…遊海…今開放するぜ!)」

「オレは『真紅眼融合』を発動!手札の「デーモンの召喚」とデッキの『真紅眼の黒竜』を融合!竜と悪魔の絆が邪悪な闇を焼き払う!来い!『悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン』!」

かつての遊戯と城之内の絆が進化して降臨するATK 3200

「くっ!攻撃力3200…(しかし我の伏せカードは『ミラーフォース』さっきのように返り討ちだ!)」

「『真紅眼融合』により『悪魔竜』は『真紅眼の黒竜』として扱う!よってこのカードを発動できる!

魔法カード『黒炎弾』!効果により『悪魔竜』の攻撃力分…3200のダメージを喰らえ!闇を燃やせ!『デビルメテオフレア』!!」

「そんな…バカなぁ!」

《城之内さん!助かった!》

「えっ!?」

黒炎弾がユウスケに当たる直前、遊海の声が聞こえた気がした…

ユウスケLP 750→0

 

城之内 WIN!

 

 

 

 

 

結界が収束しユウスケが呑み込まれる

「オノレェ!!遊海…余計なことを…ぐぁぁぁ!」

ユウスケの魂はオレイカルコスの結界に封印された、そして…城之内の持つ「悪魔竜」が光を放つ…そして小さな光の玉が遊海の肉体に入り込み、遊海が息を吹き返す。

 

「…城之内さん…ありがとうございます…予測どうりの動きでした…」

「お前…『遊海』なのか…?」

「はい…本体ではありませんが…遊海です…」

「マスター!」

アヤカが遊海にすり寄る…本物のようだ…

「お前…ダーツに封印されたはずじゃ…」

「はい…本体は封印されています、しかし俺はカードに宿った「遊海」の欠片のようなものです…心当たりありませんか?」

「…もしかしてバクラの『パラサイトマインド』か?」

 

パラサイトマインド…バクラの持つ「千年輪」の能力で人の心を物や人に宿らせる事ができる能力である。

遊戯達はそれによってバクラと対戦した事がある。

 

「はい、半分は合ってます。これは俺の持っている「千年玉」の能力で、いうなれば『偽パラサイトマインド』みたいな感じです。これは完全に無機物じゃないと魂を宿せなくて…しかも…」

「しかも?」

「超痛いんです…」

「あっ……」

アヤカは思い出す、確かマスターはデッキと手紙を託す時、脂汗をかいていた…あれは痛みを我慢していたからだったのかと。

 

 

「俺は未来を見た後、城之内さんの使えるデッキを作り、心をカードに込めてアヤカに託しました…まさか俺の闇を出して来るとは思いませんでしたが…」

「そうだったのか…」

「マスター!何か作戦があるなら私に話してくださいよ!私がどれだけ心配して…」

「ごめんなアヤカ…でもよく言うだろ『敵を欺くかなはまず味方から』って…ゴブッ!」

「遊海!?」

「まったく…ダーツめ俺の体を痛めつけてくれちゃって…城之内さん…行きましょう…」

「どこに?」

「決戦の場へ…!」

「いけるか?」

「ええ…行かなきゃ…遊戯さん達を見守らないと…!」

 

 

 

遊海は城之内の肩を借りて進む、ダーツと遊戯の戦場へ…

 

 

 



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ダーツ撃破~遊海の覚悟~

 遊海と城之内は遊戯達の元へと向かう、そして神殿の最奥にて遊戯&海馬対ダーツが行われていた。

「遊戯!海馬!」

『城之内君!ユウスケを倒せたのか!』

「ふん凡骨にしてはやるじゃないか!」

「彼は破れましたか…しかし足止めはできたようですね…」

遊戯達の場にはカオスソルジャーと究極竜

ダーツの場にはキュトラー、第2の結界が存在している。

「ダーツ…よくも俺の体を遊戯達にけしかけてくれたな…!」

『遊海!?お前魂が!?』

「遊戯さん心配かけてすまない…俺は本体じゃない、カードに込めていた遊海の欠片だ…こういう事態も考えてバックアップを取っといたんだ」

「ふっ用意周到ですねあなたも…しかしもう遅い…続けるぞ!」 

 

「私のターンドロー!」

「儀式魔法「オレイカルコスミラー」を発動!タイムイーターを捨てて「ミラーナイト・コーリング」を特殊召喚!コーリングの効果で「ミラーナイト」を4体特殊召喚!」

ダーツはその後ミラーナイトによる攻撃でカオスソルジャーや究極竜を打ち倒していく…、ミラーナイトは戦闘する相手と同じ攻撃力になる効果、コーリングが場にいる限り破壊されない効果を持っていた。

その後海馬は同じ攻撃力では破壊されないカイザーグライダーを召喚し、態勢を立て直そうとする。遊戯は恐らくミラーフォースを引いて伏せ、ビックシールドガードナーで守りを固めた…次の攻撃で返り討ちにするつもりだろう。そして…その瞬間、海馬は破壊輪を発動させミラーナイトコーリングを破壊した…それが仇となった。

「ミラーナイトの鎧が砕ける…?」そして彼らは姿を現した…。

「…嘘だろ…!」

「しまった…本体と…何故お前がそこにいる…!…翠!」

ミラーナイトの仮面の下はペガサス、舞…そして遊海と翠だった…。

 

「フフフ、驚きましたか遊戯、そして遊海の欠片よ!…彼女は強かった…私の部下を何人も倒してくれましてね、最終的には私が出向かざるを得なかった…、まぁ最終的には魂をいただきましたがね!」

「貴様ダーツ…!よくも!」

遊海は怒りをあらわにする。

 

「フッ…先に魂の欠片には退場していただきましょうか!」

ダーツの背後に眼が現れる。遊海が吹き飛ばされ、石板に叩きつけられる

「ガッ!!…ゴボッ…遊戯…俺達を…壊…せ…」

遊海はそれだけ言い残すと気絶する、そして体から白い小さな玉が出るとミラーナイトの遊海に吸収されてしまった。

「遊海!?しっかりしろ!おい!」

「遊海!」

『遊海!…ダーツ貴様!』

「フフフ、彼は少々厄介ですからね先に退場していただきました…心配しなくても大丈夫ですよ…名も無きファラオ!全員我が神の生け贄になるのですから!」

 

 

その後遊戯は仲間の姿をしたミラーナイトを攻撃できず、海馬は破壊しようとするがミラーナイト同士の連携に阻まれ攻撃が防がれる…その中

『遊戯…さん…』

『!?遊海!』

ミラーナイトの遊海がしゃべり始めた…。

 

 

 

 

 

 

 

…ここはどこだ…俺はダーツに負けて?…体が動かない…いや体というか狭い入れ物に詰め込まれているような…?

前を見る…俺の前にはカオスソルジャーと青眼の究極竜

その奥に遊戯と海馬の姿が見える。

まさか「ミラーナイト」か?まさか俺がモンスターになっているとは…。

 

首を動かせないから目だけで左右を確認する、俺以外に三体のミラーナイトがいるようだ。左側には背の高い2体、右には俺より少し低いのミラーナイトがいる。

「行け!ミラーナイト!」

体が勝手に動き出す、俺の剣が遊戯の体を切り裂く…すまない遊戯…!

 

次のターン海馬によってミラーナイトコーリングが破壊される、すると視界を覆っていた仮面が砕け…ミラーナイトが俺達であることが遊戯達にバレる…すると…

「しまった…本体と…何故お前がそこにいる…翠!」

俺の体、恐らく「悪魔竜」に込めた俺の欠片が声を上げる。

ん?…翠?

俺は改めて右のミラーナイトを見る、そこには鎧を纏った翠がいた…翠は日本に置いてきたはず…まさか!?

『(遊海さん…ごめんなさい…!)』

『(翠!?)』

翠から念話が届き、その目から涙が零れる

『(遊海さん達がアメリカに行った後すぐにドーマの襲撃があったの…10人のドーマのメンバーと5体の怖い戦士は倒したのにダーツまで乗り込んできて…)』

翠は伝えてくる…一緒に連れていくべきだったか…

『(翠…よくやった…俺もごめんな、無事に帰るって約束したのに…)』

『(いいえ…いいんです…それより私達はこれからどうなるんですか…?この体苦しくて…あっ!)』

「いけ!トワイライトゾーンドラゴン!ミラーナイト 春風 翠を攻撃!」

『(キャ!)』

『(すまない、海馬さん!)』

何とか体を動かし盾で翠を庇う…容赦ないな…

『(遊海さん…!)』

『(翠…すまない、いいな?)』

『(はい…遊海さんを信じます!)』

 

俺は魂の力をフルに使って声を出す

『遊戯…さん…!』

『遊海!』

よかった…届いた!

 

『遊戯さん…気にしないで俺達を壊してくれ…!

あなたには…使命がある…それにこの体は辛いんだ…頼む…俺と翠は覚悟はできてる!…遊戯…!た…のむ』

ダメだ声が…

「遊戯…奴等の想いを汲んでやれ…あいつらは既に覚悟はできている!」

海馬さん…すまない…

その後乱入したラフェールに対して三銃士の真実…すべてがダーツの仕組んだ事だと判明、ラフェールは再び闇に呑まれ封印される、そして海馬さんがクリティウスを引き当て遊戯さんの場のミラーフォースと融合、ミラーフォースドラゴンを召喚…俺達を破壊する。

 

 

『遊戯さん…あとは頼みます!』

『海馬さん、ありがとう…!』

『海馬ボーイ…!サンクス!』

『遊戯、城之内!後は頼んだわよ…!』

そして俺の意識は再び闇に呑まれる…遊戯さん…希望を捨てないで…。

 

 

 

 

 

 

 

 次に俺が目覚めると俺は透明な玉に閉じ込められていた、破ろうと力を入れるが…力が入らない…。

正面を見ると黒い瞳のようなモノがあった、あれに力を吸いとられているようだ…周囲を見渡す、周りには三銃士や羽蛾、ペガサス、舞さんの姿があった。

俺以外は全員意識がないようだ…何か、できることはないのか…?俺達は徐々に瞳に吸い込まれている、あれに呑み込まれたら…?

「遊海さん!」

声のした方向を見ると透明な玉の中に翠がいた、どうやら近くにこれたようだ

「翠!大丈夫か?」

「はい…少し体に力が入りにくいですけど…」

「そうか…」

「私達はどうなるんですか…?」

「このままなら…あの目玉に吸収されて終わりだろうな…」

「そんな…」

「大丈夫だ…遊戯がなんとかしてくれるはずだ!信じて待つしかない」

「はい…!でも…せめて遊海さんの近くにいられたらいいのに…」

「翠…」

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくすると激しい地鳴りと共に空間に亀裂が入る、遊戯が伝説の騎士の力を開放したようだ

「遊海さん…あれは…!?」

「遊戯の…遊戯達の絆の力だ!」

すると海馬と俺が空間から吸い出される!

「遊海さん!!」

「翠!待ってろすぐに…!」

 

《選ばれし決闘者よ!転生せし決闘者よ!再び我らと共に!》

 

 

 

 

「ガハッ…ゼェゼェ…ここは?」

「遊海君!気がついた!?」

目の前には遊戯がいた

「遊戯…さん、ここは?」

『ティマイオス達がお前と海馬を助け出したんだ!』

「マスター!大丈夫ですか!?」

『遊海さん!』

アヤカも実体化する…翠の声が…?

「翠様の魂は私が預かっています、感謝は伝説の騎士達に!」

すると半透明の姿で翠が現れる。

『遊海さん!よかった…!』

「翠…よかった…無事で!」

 

その後周囲で気絶していた城之内や本田さん、海馬達も目覚めだし再開を喜んでいる。

「おい遊海!大丈夫か!?」

「ああ、問題ないです…少し体が痛いですけど、すいません城之内さん!ユウスケが迷惑を!」

「へっ!?お前アイツの事自覚してたのか!?」

「はい…アイツも俺の一部ですから…」と

「瀬人様!大変です!!」

 

 

俺達が外に出ると、海面が渦巻き…海底から都市…伝説の都・アトランティスが浮上したところだった…。

「まだダーツの言っていた神が生きているんだ!そいつを倒さないと!」

「…遊戯さん!いきましょう!」

「遊海君!どこに!?」

「さっきの白い穴です…あそこからアトランティスに乗り込めるはず!」

「わかった!行こう!」

「遊戯!オレもいくぜ!」

「アイツへの借りは必ず返す!ダーツへのとどめは…俺がさす!」

 

 

 

 

「遊戯さん!これを!」

「これは神のカード!」

「力は奪われてるけど何かの役に立つはずです!」

 

 

「城之内君!海馬君!これを」

「ヘルモス!」

「クリティウス!」

「これがあれば100人力だ!!」

と、突然空間にダーツの顔が浮かび上がる

 

『フフフ、ハハハさぁ来るがいい!選ばれし決闘者達!』

「ダーツ!」

「行くぜ!みんな!」

「言われるまでもない!」

「いざ…アトランティスへ!!」

 

俺達は白い穴へ歩みを進める…ダーツと1万年に及ぶデュエルモンスターの因縁を断ち切るために!



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野望の終焉~リヴァイアサンvsデュエルモンスターズ~

ドーマ編クライマックス!怪獣大決戦!


《BGM 神々の戦い 推奨》


 白い穴を通り抜けるとそこは石作りの町だった、空が近い…無事にアトランティスに到着できたようだ。

「ここのどこかにダーツが!」

「遊戯!あれを見ろ!」

海馬に示された方向を見ると…空に向かって緑色の光の柱が伸びていた。

「ダーツはあそこにいる…!行きましょう!」

『ダーツ!』

俺達は急いで柱の根元に向かう!

 

 

 

 

辿り着いたのは庭園の中にある島だった、そこにダーツはいた…玉座に座り水晶化した状態で…。

遊戯が水晶に触れると全身に罅が入り、粉々になり風に飛ばされる…ダーツの肉体は既に滅んでいた…。

 

 

 

 

《フフフ、遅かったな!選ばれし決闘者共よ》

空間にダーツの声が響く…奴は既に肉体を捨て去りオレイカルコスの神と一体化していた、神を復活させるために自身の肉体と魂を生け贄に捧げたのだ。約1万年を生きた魂は神の最後の生け贄になったのだ。

 

光の柱が細かく裂け海に落ちる、そして渦潮が起こり…それは現れた。黒色の大蛇、いや…巨龍、オレイカルコスの神…リヴァイアサンが1万年の時を越えて復活した、そしてその額にはダーツの成れの果ての人型が融合している。

…デカイ、No.9に比べれば小さいのだろうが…アトランティスに巻き付いてなお余りある巨体、自縛神を彷彿とさせる。

『選ばれし決闘者共よ!もはや誰も神を止めることはできない!』

「黙れダーツ!それが貴様の成れの果てだというならば、その醜悪な姿に俺直々に引導を渡してやる!」

海馬が吼える

『フハハ…できるかな!!』

《ギャオオオオッ!!!!》

なんて凄まじい咆哮だ!?

 

 

 

 

 

「遊戯!海馬!遊海!最初から飛ばさないと殺られるぜ!」

『行くぜみんな!』

遊戯達はそれぞれのモンスターを召喚する!

『来い!「ブラックマジシャン」!「デーモンの召喚」!「クリボー」!』

 

「来い!『炎の剣士』!『サイコショッカー』!『真紅眼の黒竜』!!」

 

「出でよ!『青眼の究極竜』!『ガジェット・ソルジャー』!『ブラッド・ヴォルス』!!」

 

「来てくれ!『アポクリフォート・キラー』三体!!」

 

「『「そして現れろ!名も無き竜達よ!!」』」

クリティウス、ヘルモス、ティマイオスが現れる。

『真の力を開放せよ!「レジェンドオブハート」!!』

三体の竜が光を放ち伝説の騎士となる!

 

『いけ!モンスター達!』

遊戯の号令と共にモンスター達が飛び出す、近距離攻撃のモンスター達が邪神に飛びかかり、魔法攻撃やブレスを放つモンスター達がエネルギーを溜める…

『いけ!超電導・黒魔導!!』

「サイバーエナジーショック!ダークメガフレア!!」

「アルティメット・バースト!!全弾発射!」

「キラー達!放て!カタストロフ・イレイザー!!」

四人の主力モンスター達の一斉攻撃が命中する!

邪神は後退する!

『俺はクリボーの増殖と機雷化をティマイオスに吸収!!』

《受けよ!我が剣!「ジャスティスソード」!!》

機雷化の能力により邪神の体中で爆発が起きて、邪神が見えなくなる…

 

「やったぜ!!」

『これで皆は…!』

「いや…まだです!」

「…何!!?」

 

 

 

煙が晴れるとほぼ無傷の状態のリヴァイアサンが佇んでいる…

「冗談だろ…!今の攻撃を受けてほぼ無傷かよ!?」

《グオオオオオ!》

邪神が咆哮しエネルギーを溜め始める…!アレはマズイ!!

「ちょっと待てよ!あんな攻撃喰らったら…!?」

「キラー達よ我らを守れ!」

ブレスの射線にキラー三体が並ぶ…そしてブレスが放たれた!

『ティマイオスよ「ビックシールドガードナー」の力を得よ!特殊効果発動!』

《ハァッ!!》

ティマイオスの剣から虹色のシールドが張られる、しかしキラーを含めた三騎士以外のモンスターが全て破壊される!!

『俺達のモンスターが一撃で全滅だと!?』

「くそっ!このままじゃ勝ち目がない!」

その時、空にオーロラが現れる!

 

 

 

 

『みんな!今こそマスターに力を貸す時です!』

オーロラの中からブラマジガールを始めとした無数のモンスター達が現れ邪神に攻撃を加え始める!

 

「グズグズするな!遊戯!白波!凡骨!今の内に態勢を立て直すぞ!」

『わかった!!』

「凡骨って言うな!行くぜ『ギアフリード』!『ロケット戦士』!!『ギルフォート・ザ・ライトニング』!」

 

「出でよ!『XYZードラゴンキャノン』!『ブレイドナイト』!『カイザーシーホース』!」

 

『「カオスソルジャー」!「マグネットバルキリオン」!「バスターブレイダー」』

 

「…手加減は無しだ!《封印強制解除》!現れろ!

『氷結界の龍 トリシューラ』!『閃光龍スターダスト』!『超銀河眼の光子龍』!『覇王龍ズァーク』!『コズミック・ブレイザー・ドラゴン』!!!」

遊海はヤケクソで強力な龍達を召喚する…ラスボスが混ざっているが気にしてはいけない…

 

 

『頼む!モンスター達!』

遊戯達の召喚したモンスター達が再び邪神に向かう…しかし…

 

《ギャオオオオ!!》

邪神は全身からエネルギー弾を打ち出しモンスター達を破壊し、俺達にも襲い掛かる!

「ヤバイ!『精霊変身・モード聖刻』!『閃光龍』よ!我を守れ!『波動障壁』!そして『反射の陣』!」

『遊海!無茶だ!やめろ!!』

《マスター!ぐああああ!?》

『グオおおっ!ガッーー!!?』

そして三騎士も破壊され、遊海も弾き飛ばされ石の壁に直撃する!

『遊海!!』

「伝説の騎士達が!」

「ガッ…本物の化け物め…ガフッ」

遊海は変身が解除され倒れこむ

『マスター!危ない!』

そして邪神から触手が伸び、遊戯、城之内、海馬、遊海を拘束し自身の肉体に叩きつける

「『「「くっ…うぐ…!」」』」

 

『伝説のデュエリスト共!この神の力が尽きる事はない!何故なら、この神の力の源、それこそ捕らえられた者たちの心の闇、そのものだからだ!聴こえるだろう彼らの嘆きが!!囚われし者達の心の闇があるかぎり神はいくらでも復活する!』

くっ…!引き込まれる!!

「うわぁあぁ!?」ズブズブ

「ぐっ…おのれぇ…!」ズブズブ

「しまった…遊戯!諦めるな…!皆の心の光を信…!!」ズブッ

『海馬!みんな!!』

 

『フフフ…。名も無きファラオ、瀬人、城之内、転生者!お前たちもこのまま神の虜となるがいい!』

『くそっ…ダーツ…!!』ズブズブ

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここまでか…どんどん引き込まれる、体も動かない…

 

~オイオイこれくらいで諦めるのか?それでもあの3年間を耐えた男か?~ 

 

聞き覚えのある声だ…誰だっけ…?

 

~オイオイ!お前の「負」を背負ってやった我を忘れるなよ!?~

 

…ユウスケ?

 

~ご名答!さぁ遊海…どうする?このまま試合終了dead endってか?お前…なんか大事なモノ忘れてないか?~

 

忘れ物?大事…

 

『遊海さん!』

 

翠…

 

『私の声が聞こえてますか!いいえ!聞こえてるはずです!絶対に戻って来てください!約束を…守って!!』

 

そうだ…約束したんだ!絶対に戻るって!!

 

~そうだ、その意気だ!さぁ迎えが来たぞ!!~

その時、空間に金色の光が溢れる…これは遊戯の…なら!

 

「遊戯!俺の…俺達の力を全部使え!」

~さすがだよ遊海…またな!~

 

『感じる…感じるぜ、みんなの気持ちを!

みんなが呼び覚ましてくれた、新しい息吹を!

3000年の時を越え、ファラオの名の下に命ずる!

 

今こそ蘇れ!出でよ!!三幻神!』

 

 

 

 

その瞬間、邪神の内より光の爆発が起き、遊戯、城之内、海馬、遊海が光の玉になり排出される。

そして天空から三幻神が降臨する、アニメと違うのはオベリスクが「真祖」状態になっている事だろう。

 

 

『馬鹿な…!神のカードが、復活しただと!?おのれ…!』

邪神は三幻神との戦いは不利だと思ったのか、天空に逃れようとする!

『待てダーツ!!』

そして三幻神と魂だけとなったの闇遊戯がダーツを追いかける…!

 

しばらくすると空に紫、赤、黄、青の光が明滅する、そして…

 

ズォォォン!!!

 

凄まじい爆発音と共に空が…雲が割れる、そして…

 

《キュオオオオ…!》

 

全身から魂や精霊を撒き散らしながら邪神が落下し海に消えていく…三幻神、遊戯の勝ちだ!

そして光の玉が一つ俺に吸収される…

~ヒヒヒ、また厄介になるぜ遊海!せいぜい我を表に出さないようにするんだな!~

 

 

ゴゴゴゴ…!

 

そしてアトランティス全体が震え始める…もしかしてオレイカルコスの力が無くなったから…落ちる?

「ッ…マズイここは崩壊するぞ!!」

「何!?どうすればいいんだよ!?」

「海馬さん!城之内さん!さっきの白い穴へ!あそこから戻れるはずです!」

「遊戯!急げ!脱出だ!」

「うん!」

俺達はもと来た道を走り広場にあった白い穴へ飛び込むギリギリか…

 

「マスター!ご無事…すごい怪我してる!?何やってるんですかマスター!?」

「ん?オレイカルコスの神の攻撃を防ごうとした!」

「馬鹿なんですか!?」

暗黒神殿ではアヤカや皆が待ってくれていた、ラフェールも目覚めている。

「ねえ遊海…遊戯は?」

「へっ?俺達の後ろに…いない!?」

俺の後ろから来たはずの遊戯がいない…どこにいった?

突然、アトランティスから黒い光の柱が伸びる…遊戯まさか…!?

 

しばらくして光の柱が消え去りアトランティスが降下し始める、そして神殿から遊戯が現れる。無事に地球の闇を飲み干す事ができたようだ。

「帰ろう…みんな!」

「ああ!」

 

 

こうして1万年に及ぶ因縁が果たされ、伝説の竜達も現世から消滅する。

残ったのは遊戯達の強い絆であった…。

              ドーマ編 完




~アメリカ本土にて~


「ねえみんな…一つ思ったんだけど…」

「どうしたんだ杏子?」

「私達…どうやって日本に帰るの…?」

「そりゃ…」

「「「あっ…!?」」」

「俺達、ペガサスに連れて来てもらったから金が無い!」

「どうすんだよ!?」

「心配無いですよ!はい!チケットです!」

「えっ!?遊海!どうやって!?」

「バトルシティの賞金を少し持って来てたんです!これで帰れますね!」

「遊海!ナイスだ!」

「ありがとう!遊海君!」

「いえいえ!さぁ行きましょう!」




KCグランプリ回避!!


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第4.5章 語られなかった物語
夢幻のデュエル~未来からの侵略者!~


 ドーマとの戦いから1週間が過ぎ、俺達は無事に日本に帰る事が出来た。

遊戯はすぐに美術館に向かったが、なんとエジプト展が終了していて石板はすでにエジプトに戻った後だった、

なので遊戯はしばらく休んでからエジプトに向かうそうだ。

 

 

 

 

 今日は童実野町で大規模なデュエルモンスターズのイベントが開かれている、何でもペガサスさんが子供達にデュエルモンスターズをもっと楽しんで貰いたいとKC社と合同でデュエル大会、そして初心者体験会を開いているらしい、ただあくまでも子供の為の大会なので俺や城之内などの強い決闘者は参加を遠慮してほしいと連絡がきていた。

なので今日は翠と一緒に会場の見学に来ている、周辺では子供達がテーブルや決闘盤でデュエルを楽しんでいた。

「遊海さん!次アレ食べましょう!」

「わかった!ちょっと待っててくれ!」

会場には沢山の出店が出ていた、射的やモンスター形抜き、マシュマロンのマシュマロ屋にくじ引き、モンスターのお面屋などなどこの世界らしいお店がたくさんある。

「翠!お待たせ!『クリボーのベビーカステラ』!」

「遊海さんありがとうございます!」

「確かそろそろデュエル大会の決勝だったな、行ってみようか!」

「はい!」

 

 

 

 

 

「いけ!『スピリットドラゴン!』スピリットバースト!!」

 

「うわぁ~!」

 

短パン少年LP 0

 

ニット帽の少年 WIN!

 

 

 

 

「なるほどな…通常ドラゴンモンスターで固めてスピリットドラゴンで勝つデッキか…」

「なかなか面白い勝ち方でしたね!」

「そうだな!よしっ俺もネタでああいうデッキ作って見るかな?」

「遊海さんが作るとある意味ガチデッキになるような…」

 

「お~い!遊海君!翠さん!」

「おっ!遊戯さん!双六さん!どうしたんですか?」

「ペガサスから招待されて来たんだ!何でも大会に優勝した子供とエキジビションデュエルをしてほしいって!」

「それで二人で来たんじゃよ!」

「それなら今決勝が終わったところですよ!」

「わかった!ありがとう遊海君!さてペガサスも来るらしいから頑張らないと…!」

「…神は使うなよ…?」

『流石に使わないぜ…なぁ相棒!』

「そうだよね!じゃあまた後で!」

「ああ!デュエル楽しみにしてます!」

 

 

 

 

 

そしてペガサス会長が現れスピーチを始めた…すると

「ほぉ~この前の事件でも思ったが今のソリッドビジョンは進んどるの~!」

双六さんに言われ空を見ると…白い竜が飛んでくる?

…アレは…!

「遊海さん…アレは…スターダストドラゴン!?」

「マズイ!アヤカ…!」

《キュオオオ!!》

ズガーン!!

突如現れたスターダストドラゴンが町を襲い始める!

「あれはソリッドビジョンじゃない!」

「「逃げろー!!!」」

町の人達はパニックになる!

『やめろ!スターダストドラゴン!!「キラーパンチ」!!なっ!?』

《ギシャー!!》

突如横から現れたサイバーエンドドラゴンに吹き飛ばされビルに叩きつけられる!

「ガッ!!」

「じいちゃーん!?」

「遊戯!?」

「オーマイゴッド!大変…オゥ!ノォォォ!!?」

ズズン

 

 

 

 

 

「ガフッ…翠…どこだ…?」

俺は埋もれた瓦礫から脱出し翠を探す、周囲は煙が立ち込め瓦礫が散乱している…あれは…

「翠のバリア…?」

煙の中に光のドームが見える…翠はあそこか…

「翠…?」

ドームの中にいたのは先の決勝で戦っていた少年達だった、その手には千年指輪が握られている…

「君達…その指輪のお姉ちゃんは?」

「ヒック…ヒック…あっち…!」

少年の指を指した先には瓦礫の山が…

「お姉ちゃん…僕達をガレキから庇って…」

瓦礫の山の足元に靴とベビーカステラの袋が落ちている…

「翠!!!!」

 

俺は瓦礫の山を掻き分ける…すると…

「…遊海…さん…」

翠がいた…その下半身は瓦礫に潰されている…

「翠!!?今助ける!!」

瓦礫を持ち上げようとする、しかし

「遊…海さん…ご…めん…」

「喋るな!!今助けるから!」

「ゆ…みさ…んだ…いすき……」

「翠?おい!翠!!」

「…」

翠はそのあと言葉を発する事はなかった…そんな…!そんな!!

「くっ…あああっ…翠…うわぁああぁっ!!!」

 

 

 

 

 

 

『フハハハハ!これで大いなる実験は遂行された!

これで世界の歴史は変わるのだ!!フハハハハ!』

ビルの上に人が立っている…顔を白と黒の仮面で隠した近未来的な服装の男…パラドックス…!

「おい…キサマぁ!!」

『むっ…生き残りがいたか?さぁ後世に伝えるがいい!この惨状を!ハハハハ!』

「遊海君!」

遊戯がやって来る…その手には黒いバンダナを握り締めている…双六さんも…か…!!すると

《キュオオオオン!!》

赤い龍が遊戯を連れ去る…遊戯…そちらは頼んだぞ…

 

 

俺はデュエルディスクを構える…

『ん?貴様…?この時代の人間がこの私にデュエルを挑むのか?良いだろう!お前もその女と同じところに送ってやろう!』

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

パラドックスLP 4000

遊海LP 4000

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『俺は手札からフィールド魔法、罪深き世界「sin world」を発動!効果によりドローしない代わりにsin モンスターを手札に加える事が出来る!』

周囲が赤い宇宙のような空間に変わる。

『そしてエクストラデッキの「サイバーエンドドラゴン」を除外し「sin サイバーエンドドラゴン」を特殊召喚!』

パラドックスと同じ仮面を着けたサイバーエンドが現れるATK 4000

「…」

『私はこれでターンエンド!』

パラドックスLP 4000

Sサイバーエンド sin w 手札4

『どうした?余りの攻撃力に声も出ないか?』

 

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー」

「デュエルディスク・リミッター解除…マスタールール3適用…」

『ん?…何を言っている?』

「魔法カード『コズミックサイクロン』発動、1000ライフを払い『sin world』を除外する、よって『sin サイバーエンド』は破壊される…」

宇宙空間が砕け散り、サイバーエンドも消滅する。

遊海LP 4000→3000

『バカな!何故このデッキの弱点を!?』

 

 

「手札の『青眼の白龍』を公開し『青眼の亜白龍』を特殊召喚…」

シャープになった近未来的な龍が召喚されるATK 3000

『バカな!?「青眼」は俺が奪ったはず…!?』

「手札から『青眼』を捨てて魔法カード『トレードイン』効果で2ドロー…」

「手札から『青き眼の乙女』を召喚…」

銀髪で青い瞳の女性が現れる ATK 0

「さらに装備魔法『ワンダーワンド』を『乙女』に装備し、『乙女』効果…デッキから『青眼の白龍』を特殊召喚」

乙女の祈りにより伝説の龍が現れるATK 3000

 

『馬鹿な!!二枚目だと!?』

「『ワンド』効果で乙女をリリースし2ドロー、手札から『ワン・フォー・ワン』を発動、手札の『乙女』を捨ててデッキから『青きの賢士』を特殊召喚…」

鎧を着た青い瞳の男が現れる ATK 0

「…レベル8『青眼の亜白龍』にレベル1『賢士』を…チューニング…シンクロ召喚…」

『何!?シンクロ召喚だと!?』

「白き伝説の龍よ…その身を昇華し更なるステージへ…『青眼の精霊龍』」

半透明の体をした新しき伝説の龍が現れるATK 2500

 

 

 

「手札から『銀龍の轟咆』を発動、墓地の『青眼』を特殊召喚…」

再び伝説の龍が現れるATK 3000

『馬鹿な…貴様は何なのだ!赤帽子!…赤帽子?まさか…伝説の「決闘の観測」…』 

 

 

「バトル、『精霊龍』でダイレクトアタック『転生のレジェンドバースト』」

『ぐおおぁ!!』

パラドックスLP 4000→1500

「『青眼』と『亜白龍』でダイレクト…『滅びのツインバーストストリーム』」

『ぐああ!!!』

パラドックスLP 1500→0

 

遊海WIN !

 

 

 

遊海が勝った後パラドックスは消滅する、多分…前の時間軸で遊戯達がパラドックスを倒したのだろう…しかし…

「翠…ごめん…お前を守れなかった…俺は…おれはぁ!」

遊海は翠の亡骸を抱いて慟哭する、夕陽の光が強まり二人を照らす…そして光が遊海を包み…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!大丈夫ですか!?しっかりしてください!」

 

…目が覚める…俺は何をしていたんだっけ…?

「翠…俺は…何を?」

「よかった~!目が覚めた!!覚えて無いんですか?」

「カードのイベントに来て…遊戯と話して…?…なんか額と後頭部が痛い…?」

「子供が飛ばした『ブルーアイズジェット』のラジコンが遊海さんのおでこに直撃して後頭部を地面にぶつけて気絶してたんですよ!…はっ!まさか記憶障害が!?」

「…いや大丈夫だよ翠…」

 

「お兄ちゃんごめんなさい!」

手にラジコンを持った少年が謝ってくる

「いや大丈夫だよ、これからは気を付けてね?」

「はい!…お兄ちゃん泣いてるよ…?大丈夫?」

「ん?」

目に手を当てる、涙が流れていた…なんでだ?

『遊海!大丈夫か!?』

「遊戯さん?どうしたんですか?」

『お前が気絶したって聞いて駆けつけたんだ…大丈夫か?』

「ああ、心配かけてすいません…それより遊戯さんもボロボロですけど大丈夫ですか?エキジビションデュエルが大激戦だったとか?」

『…あぁ、そんなところだ…』

「遊海さん、今日は帰りましょう?」

「そうだな…遊戯さん!エジプトに行く時は連絡してくださいね?」

『あぁ!わかった、今日はしっかり頭を冷やせよ…』

「ありがとうございます。行こう、翠!」

「はい!」

二人は手を繋いで家路につく

 

 

 

 

今日起きたデュエルは、歴史の修正によってなかった事になり記憶には残らない…しかし遊海の涙はしばらく止まることが無かった…

 

 



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邪神の目覚め~海馬からの依頼~

 俺は今、海馬コーポレーションに来ている、海馬さんに呼び出されたのだ…珍しい事もあるものだ…。

受付を通り社長室に着くと海馬さんとモクバの二人がいた…

「よく来たな白波…今日は貴様に用があって呼び出させてもらった…座るがいい」

「あっ…失礼します…」

俺は社長室の応接椅子に腰かける、なかなか高価そうだな…でも椅子の手すりが「青眼」なのはこれいかに?

「海馬さん…それで俺に用事とは?」

「…簡単な事だ…俺とデュエルしろ、話はそれからだ…!」

そういうと海馬は指を鳴らす、すると社長室の横のカーテンが開きデュエルスペースが現れる。

「いきなりですか…」

「断ることは許さん、依頼を話す前に貴様の実力を確認したい…!」

「…わかりました、受けてたちます!」

俺達はデュエルスペースにて準備する

「白波…本気でこい…手加減は許さん!!」

「わかりました…後悔しても知りませんよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

遊海LP 4000

海馬LP 4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「デュエルディスク・リミッター解除!マスタールール3適用!」

俺のデュエルディスクの外装が近未来的なものに変化する

「デュエルディスクが!?なんだアレ!?」

「騒ぐなモクバ!…黙って見ていろ…真の決闘王の実力を…」

「(バレてる…)」

 

「手札から魔法カード『召喚士のスキル』を発動!デッキから『クリフォート・ツール』を手札に!」

「そしてライトペンデュラムスケールに『ツール』、レフトペンデュラムスケールに『クリフォート・アセンブラ』を魔法カード扱いでセッティング!」

俺の横に光の柱が現れ、その中にツールとアセンブラが浮かぶ

「なんだアレ!?モンスターなのに魔法カード??」

 

 

「『ツール』の効果!800ライフを払い、デッキからクリフォートカード『クリフォート・アーカイブ』を手札に加える!」

遊海LP 4000→3200

 

「今、スケールにある数字は1と9、これにより俺は手札から星2~8のモンスターを同時に召喚出来る!」

「なんだと?」

「我が魂を守りし大いなる力よ!この身に宿り闇を祓え!ペンデュラム召喚!手札から『クリフォート・ゲノム』!『クリフォート・アーカイブ』!」

緑とオレンジ色のコアを持った機械が現れる

ATK 2400→1800

ATK 2400→1800

「攻撃力が下がった?」

 

 

「クリフォートモンスターは特殊召喚されると星4攻撃力1800になる!更に2体を生け贄に現れろ!『クリフォート・ディスク』!」

2体のクリフォートが破壊され、青いコアを持った機械が現れるATK 2800

「ふん、やるではないか!」

「ありがとうございます!更に『ディスク』の効果!

デッキから『ゲノム』『アーカイブ』を特殊召喚!」

再びゲノムとアーカイブが表れるATK 1800 ATK 1800

「カードを二枚伏せてターンエンド!この時特殊召喚された2体は破壊され、『アセンブラ』の効果で生け贄に捧げたクリフォートモンスターの数、二枚ドロー!」

遊海LP 3200

ディスク Pツール・アセンブラ 伏せ2 手札2

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「やるではないか白波…しかしまだまだだ!」

「手札から『ロードオブドラゴン』を召喚!」

竜の骨を被った魔法使いが現れる DEF 1100

「更に魔法カード『ドラゴンを呼ぶ笛』を発動!

手札から現れろ!我が最強の下僕『青眼の白龍』2体!!」

海馬の場に伝説の白龍が並び立つ ATK 3000

「さすがにそれは通せません!リバース罠『激流葬』フィールドのモンスターをすべて破壊します!」

「小癪な…しかし甘いぞ白波!手札から『死者蘇生』を発動!甦れ『青眼』!!」

再び伝説の龍が現れるATK 3000

「バトルだ!行け『青眼』!白波にダイレクトアタック!『滅びの爆裂疾風弾』!!」

「ぐあああ!(なんて威力だ!?)」

遊海LP 3200→200

「フウン俺の攻撃に耐えるか…しかし次で終わりだ!カードを伏せてターンエンド!」

海馬LP 4000

青眼 伏せ1 手札0

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「海馬さん行きますよ!これが俺の本気です!」

「かかってこい白波!」

「俺はペンデュラム召喚をします!」

「でも白波の手札は三枚しかも召喚したら攻撃力は1800になるクリフォート達、兄様の『青眼』には敵わないぜい!」

「我が魂を守りし大いなる力よ!再びこの身に宿り闇を祓え!ペンデュラム召喚!!融合デッキより!『ゲノム』2体!『アーカイブ』2体!『ディスク』の計5体を特殊召喚!!」

遊海の場に5体のクリフォートが並び立つ ATK 1800✖5

「何?そいつらはさっき墓地へ送られた筈だ!」

「クリフォート達ペンデュラムモンスターは破壊された時や生け贄にされた時、表側表示で融合デッキに送られます!そしてペンデュラム召喚は手札・融合デッキからモンスターを特殊召喚できます!」

「なんだって!?」

「そして手札からフィールド魔法『機殻の要塞』を発動!」

紫色の幕が広がる

「行きますよ!場の『ディスク』と『ゲノム』を生け贄に『クリフォート・シェル』を召喚!」

巻き貝のような機械が現れるATK 2800

「しかしそのモンスターでは『青眼』には敵わない!」

「生け贄にされた『ゲノム』の効果で伏せカードを破壊します!」

「むっ!『攻撃の無力化』を…やるではないか!」

「俺は『要塞』の効果によりクリフォートモンスターを二回召喚することが出来る!」

「何!?」

「『アーカイブ』2体と『ゲノム』を生け贄に降臨せよ!俺を守護せし機殻の王!『アポクリフォート・キラー』!!」

【久々に暴れますよ!】

クリフォートのコアが空間を開きキラーが現れるATK 3000

「『青眼』と同じ攻撃力!?兄さま!」

「ぬっ!?」

「生け贄にした『アーカイブ』の効果により『青眼』を手札に戻す!」

「しまった!?」

「バトル!『シェル』でダイレクトアタック!」

「ぬぉぉぉ!」

海馬LP 4000→1200

 

「『キラー』でダイレクトアタック!『デストロイキャノン』!」

【主砲、発射します!】

アヤカから放たれたレーザーが海馬に迫る!

「見事だ!」

海馬LP 1200→0

 

遊海WIN !

 

 

 

 

「兄様が…負けた…?」

 

「…それが貴様の全力か?」

「はい…!このデッキが俺の魂…全力のデッキです、どうでしたか?」

「合格だ!依頼を話してやろう!」

 

 

 

「お前に二つ依頼がある、しかし一つは後回しだ。

そしてもう一つの依頼は俺ではなく奴から話してもらおう!」

 

すると社長室の扉が開き一人の人物が現れる、赤いスーツに銀髪の片目を隠した男…

「ペ…ペガサス会長…!?」

「そうデース!お久し振りデース白波ボーイ!ドーマとの決戦以来デース」

「…あれは会ったとカウントして良いのでしょうか…?」

…I2社の会長・ペガサスさんだった…どうしてここに?

「ふん…『どうしてここにペガサスがいるのか?』という顔をしているな?今話す」

 

 

 

「実は我が社からあるカードが盗まれたのデース!それをユーに取り戻して欲しいのデース!」

「あるカード?」

「かつて私の創造した最凶カード…三邪神と呼ばれるカードデース…」 

「三邪神!?」

 

 

 

ペガサスさんによるとエジプトで三幻神を見つけ、カードにした時、ペガサスさんはあまりの力に恐れを抱いたらしい。

そこでもし三幻神が暴走した時の「抑止力」として対になる神…三邪神のカードを作ったそうだ。

しかしそのカードも強すぎた…だからペガサスさんはそのカードを決闘者の王国の地下に隠したらしい、しかしそれが盗まれたとの事だ。

 

「三邪神のカードは私の義理の息子達…『ペガサス・ミニオン』達に守らせていたのですが…その息子の一人がカードを盗み出してしまったのデース…」

「その人の素性は?」

「『千 王人(チェン ワンジン)』という青年デース、ミニオンの中でもカードデザイン力の高い男なのですが…誰かから三邪神の事を聞いて盗み出してしまったのデース…」

「しかもそれを止めようとしたミニオンの仲間達を邪神で倒してエスケープ!ミニオン達は未だ目を覚ましまセーン…ベリー悲しい事デース…」

「…闇のゲームによるダメージですね…」

「メイビーそうだと思いマース…彼は邪神に囚われてしまいました、その力はミニオンのリーダーである月行を倒してしまう程デース」

「そこでペガサスから俺にチェンの捕縛を頼まれたというわけだ、そして奴はこの町に潜伏している!」

「どうしてわかったのですか?」

「それはまず私の予測のおかげデース、邪神達は神に対する『抑止力』として作ったカード、それなら今の三幻神の持ち主である遊戯ボーイに接触しようとすると思ったのデース…神を倒すために…」

「その予測によって町中の監視カメラを調査すると一昨日、この町に来た事がわかった!モクバ!」

「はい!兄様!」

モクバの持つモニターにスーツを着た黒髪で金色の眼鏡をした一人の男が写る、彼がチェンか…

 

 

「でも俺に頼まなくても他に強い決闘者がいるんじゃないですか?」

「…一度居場所を突き止めてI2社・KC社合同の捕縛チームを向かわせたのだが…」

「チェンに返り討ちにあって意識不明なんだ…」

「なるほど…遊戯さんは?」

「遊戯ボーイは名も無きファラオとの最後の時間を過ごしていマース…それを邪魔したくないのデース」

「無論、遊戯にも注意はしてある…だからこそお前に頼むのだ!」

「…海馬さん…意外に優しいんですね!」

「ふん!俺もそこまで無粋ではないわ!そしてどうする?依頼を受けるか、受けないか!」

「もちろんやらさせてもらいます!」

「白波ボーイ!サンクス!!チェンを頼みマース!」

「では行ってこい!奴は童実野高校の近くに潜伏していると連絡があった!失敗は許さんぞ!」

「了解です!」

そして俺は三邪神奪還に動き出した…。

 

 

 

 

 

 

「ペガサス…どうだ白波は?」

「ベリーストロング…!彼程強い決闘者は遊戯ボーイ位なものでショウ…それに彼の使ったペンデュラム召喚…とても興味がありマース!」

「無駄だペガサス、あの召喚方法は我が社のコンピューターでも解析できなかった…再現は不可能だ…」

「オゥ…とても残念デース…」

「しかし奴の才能は惜しい…今回の結果によっては…誘ってみる価値はあるか…」




《これはちょっと先の話…》



「翠…後悔しないか?」

「はい…私は遊海さんに付いていくって決めましたから…」

「行こう…彼らの未来を守るために!」





「いけ!『アポクリフォート・キラー』!!」
【わかりました!マスター!】

「『ミドラーシュ』!『ウェンディゴ』!お願い!!」

()()()()()()()

『止めろ!遊海!翠!』

「遊戯!前に進め…!俺達が道を開く!」

《ゾークインフェルノ!!》

『遊海!!!』

「…お前達の物語は光で完結しなきゃだめ…だろ…?」

「そんな遊海!翠ちゃん!!」



「ごめん…みんな…」



第5章 王の記憶編  近日執筆予定…



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邪神の脅威~浸食~

「マスター」

「どうしたアヤカ?」

「三邪神について知っているんですか?」

俺は今、童実野高校周辺を探索している、その中アヤカが俺に訊ねてくる。

「ああ、三邪神は本来この世界には存在しないカード…表に出なかったカードなんだ…」

 

 

三邪神…ペガサスの創造した三幻神の対になるカード、遊戯王Rという漫画で登場したカード達だ。

Rの世界は『ペガサスがバクラに襲われ死亡した』世界、ペガサスの死後~原作記憶編前の出来事、死亡したペガサスに代わり「ペガサス・ミニオン」というペガサスが引き取った孤児達のリーダー、天馬 月行がI2社を立て直そうとしていた。

 

 

そんな中、月行の弟・夜行がオカルトにハマり暴走、「ペガサスが創造したカードからペガサスの魂を精錬し肉体の器を使って蘇らせる」という計画…R・A(リバース・アバター)計画を発動、封印されていた邪神のデータからカードを作り、海馬コーポレーションのソリッドビジョン、そして杏子の肉体を使いペガサスを復活させようとする。

それを遊戯や海馬が止めようとする物語である。

 

「わかりました…それで…表に出なかったとは?」

「…俺の記憶ではそもそも三邪神のカードは『無い』はずなんだ、ペガサスさんは三邪神をカード化しないでデータを残し、隠したデータから夜行が再現してようやくカードになったモノのはず…何でカードがある…?」

 

「…予測なのですが、マスターがいるからでは?」

「へっ?」

「マスターがいることで歴史の流れが微妙に変わり、カードが生まれたのではないのでしょうか?日本の諺で『風が吹けば桶屋が儲かる』と言いますし…」

「バタフライ効果か…あり得なくはないか、俺も結構頑張ったし…」

「…マスター程頑張って死にかけることが多い人はそんなにいないと思いますが…」

「何か言った?」

「いえ!!」

「…ならいいけど」 

 

 

 

 

「マスター…!」

「ああ…近いな…!」

夕方近く、探索を続けていた俺達はとある廃墟から精霊の…いや…邪悪な力を感じた…あそこか?

「アヤカ、詳しくサーチしてみてくれ…」

「了解しました!サーチ中…わかりました、中から邪悪な力を3つ、人が一人います!」

「わかった…突入するぞ」

「はい!」

 

 

 

 

俺は廃墟に突入する、薄暗い建物を警戒しながら進んで行く…。

「アヤカ、あとどれくらいだ?」

「距離50…次の部屋です…!」

「よし…突入するぞ!…1、2、3!チェン!ペガサス会長の命で…!?」

突入した部屋は異様な空間になっていた、部屋の中心に金色眼鏡のチェンらしき人物がいる、その周りにはここをアジトにしていたであろう不良達が気絶している、そしてチェンの横には一人の女性が倒れている…あれは!?

「アナタ、どなたですか?少なくとも武藤 遊戯ではありませんね?この少女の知り合いカナ?」

「貴様!杏子に何をした!」

チェンの隣で倒れていたのは杏子だった、気を失なっているのか動く気配が無い

「やはり知り合いでしたか…彼女を囮に遊戯を誘い出すはずだったのに変なのが来たなぁ…?まぁイイカ!アナタも遊戯の知り合いみたいだし人質と生け贄に充分でしょ!」

「…貴様、何が目的だ!!」

「カンタンな事!人の魂と武藤 遊戯を打倒しその魂を生け贄に邪神をこの世界に顕現させ、すべて壊す!それがワタシの!邪神達の願い!!」

「マスター、ダメです彼の精神は完全に邪神に浸食されています…!」

「ああ…そうみたいだな!」

「オマエも生け贄になれ!」

「簡単にはやられるかよ!!」

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

チェンLP 4000

遊海LP 4000

 

 

 

「ワタシのターン!ドロー!」

「ワタシはカードを二枚セット!モンスターをセットでターンエンド!」

 

チェンLP 4000

伏モンスター 伏せ2 手札3

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から魔法カード『竜の霊廟』発動!『龍王の聖刻印』『神龍の聖刻印』を墓地へ送る!」

「さらに手札から『聖刻龍ードラゴンゲイヴ』を召喚!」

オレンジ色の人型の龍が現れるATK 1800

「バトル!『ゲイヴ』で伏せモンスターを攻撃!」

「その時!手札の『ジュラゲド』を特殊召喚!ライフを1000回復スル!」

大きいかぎ爪を持った悪魔が現れるDEF 1300

チェンLP 4000→5000

「そのまま伏せモンスターを攻撃!」

ゲイヴが伏せモンスターを倒すと人面のトマトが現れた

「『キラートマト』の効果発動!『召喚僧サモン・プリースト』を特殊召喚!」

紫の服を着た僧侶が現れる DEF 1600

「モンスターを破壊したことにより『ゲイヴ』の効果!墓地の『龍王印』を特殊召喚!」

銀のラインの入った球が現れる DEF 0

「カードを伏せてターンエンド!」

遊海LP 4000

ゲイヴ 龍王 伏せ1 手札3

 

「エンドフェイズにリバース罠カード!『量子猫』を闇属性・悪魔族を宣言して発動!このカードはその属性、種族で特殊召喚スル!」

檻に入った猫が現れる ATK 2200

 

 

 

 

「ワタシのターン!ドロー!」 

「『サモンプリースト』の効果!手札の魔法カード『黙する死者』を捨ててデッキから『暗黒の竜王』を特殊召喚!」

緑色のドラゴンが現れる ATK 1500

 

「ワタシは『猫』『ジュラゲド』『竜王』をリリース!降臨せよ龍の邪神!『邪神イレイザー』を召喚!」

生け贄にされたモンスターが闇に沈む…その闇の中から黒い龍のような邪神…イレイザーが現れるATK ?→5000

「いきなりかよ!?」

「バトル!『イレイザー』でゲイヴを攻撃!『ダイジェスティブ・ブレス』!」

イレイザーの口からブレスが放たれゲイヴが消し飛ぶ

「ぐああっ!?」

遊海LP 4000→800

ATK 5000→4000

「ワタシはターンエンド!」

チェンLP 4000

イレイザー サモプリ 伏せ1 手札3

 

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー…!」

「マスター!大丈夫ですか!?」

「…大丈夫…ではないな…何でいつもこうなるかね…?」

デュエルダメージが実体化し遊海の体を傷つける…既に満身創痍である

 

「場の『龍王印』をデュアル!手札から魔法カード『超再生能力』発動!『竜王印』を生け贄にデッキから『トフェニドラゴン』を守備表示で特殊召喚!」

鎧を着た白い龍が現れるDEF 1400

『主殿!ご無事…ではないですね!?』

「すまないトフェニ…頼む!」

『承った!』

「『トフェニ』を生け贄に『ネフテドラゴン』を特殊召喚!『トフェニ』効果で『神龍印』を墓地から特殊召喚!」

ATK 2000

DEF 0

イレイザーATK 4000→5000

 

「『ネフテ』を生け贄に『シユウ』ドラゴンを特殊召喚!『ネフテ』効果でデッキの『神龍印』を特殊召喚!」

ATK 2200

DEF 0

イレイザーATK 5000→6000

 

「邪神の力が上がる!!素晴らシイ!!」

「これで終わりだ!デュエルディスク・リミッター解除!マスタールール3適用!俺は『神龍印』2体でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!降臨せよ第二の太陽!『聖刻神龍ーエネアード』!!」

エクシーズ召喚の銀河から赤い太陽のような龍が現れる

ATK 3000

イレイザーATK 5000

 

「『エネアード』の効果!オーバーレイユニットを一つ取り除き効果発動!場の『シユウ』と手札の『アセト』を生け贄に『イレイザー』と『サモンプリースト』を破壊する!『ソーラーフレア』!!」

「(これでチェンの場を一掃、イレイザー効果をかわして星6でアトゥムスに繋げれば…!)」

エネアードの炎が邪神を焼き尽くす…しかし!

「闇よ溢レロ!『イレイザー』の効果ですべてを破壊スル!」

 

 

 

灰となったイレイザーから闇が広がりエネアードや伏せカードを呑み込む…そして

「なっ…!?足が沈む!」

「マスター!?」

徐々に遊海とチェン、杏子が闇に沈み始める…

「杏子!無事!…遊海くん!?」

「うわあ!なんだこりゃ!?」

遊戯と城之内が現れる、杏子を探しに来たのだろう

「二人とも来るな!!飲み込まれるぞ!!」

ゆっくり…しかし確実に遊海は沈んでいく

「ヒャハハハハ!邪神よ!全てを呑み込メ!!」

「(せめて杏子だけでも…!)アヤカ!トフェニ!杏子を助けろ!!」

「でもマスターが!!」

「いいから!早く!俺はしばらく持つ!だから…早く!」

「…トフェニさん!お願いします!」

「御意!」

トフェニとアヤカは杏子のところまで飛び、杏子を回収すると遊戯達に投げ渡す!

「遊戯様!杏子様を!」

「うわっと!?大丈夫!受け取った!」

「アヤカ殿!主殿が!」

「マスター!!!」

遊海は手を残して沈みきっている…そして

「マズイ!壁が!?」

「離れるんだ!」

イレイザーの闇が壁をも浸食し始める

「トフェニさん!急いで!!」

「言われずとも!ぬお~!!抜けた!」

「急いで脱出です!」

アヤカ達は間一髪離脱する、そして部屋は完全に闇に呑まれた。

 

 

Duel Draw…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううん…?私は…?」

「杏子!目が覚めた?!」

「遊戯…?ここは?」

「童実野病院だよ…覚えてないの?杏子、誘拐されてたんだよ!」

「…そうだ私…学校帰りに…遊戯が助けてくれたの?」

「ううん…遊海くんが助けてくれたんだ…」

「遊海が?」

「遊海くんが別件で探してた人が杏子を誘拐したんだ、それで遊海くんがデュエルで助け出そうとして…」

「遊海は…?」

「…意識不明の…重体だって…」

「…えっ!?」

 

 

 

 

遊海は完全に闇に沈む前にトフェニによって助け出された、しかし意識が回復することなく病院に運ばれ緊急治療室に入っている…

「遊海さん…そんな…どうして!」

「翠ちゃん!!」

「杏子さん…!」

「遊海は?」

「…あそこです…」

翠は窓越しの遊海を見る、体中に管をつけられ人工呼吸機に繋がれている。

「翠ちゃん…ごめんなさい!私が拐われたりするから…!」

「大丈夫です杏子さん!きっと…すぐに目が覚めますから…」

 

 

 

「遊戯!」

「海馬君!?どうしてここに!?」

「白波が病院に運ばれたと聞いて来たのだ!奴はどうした!」

「…意識不明だって…」

「…アイツは…デュエルに負けたのか!」

「いや…違うんだ…敵のモンスターの能力でダメージが実体化して、遊海を呑み込んだんだ…」

「くそっ!…白波なら邪神に対抗できると踏んだんだが…!」

「邪神?どういう事?確かに僕が狙われてるって連絡はあったけど…」

「遊戯ボーイ…それは私から説明しマース」

「ペガサス!?」

そしてペガサスから三邪神がチェンという男に盗まれた事、遊海に三邪神の奪還を依頼したことを遊戯に伝えた

 

 

「遊海ボーイの魂はネイビー、邪神に囚われてしまったのでショウ…まさかエフェクトを発動しただけでそんな事になるとは…私はなんて恐ろしいカードを…!」

『ペガサス!遊海を助ける方法はあるのか!?』

「オウ…名も無きファラオ!…恐らくチェンをデュエルで倒せば可能性はあるはずデース…」

『なら…!』

「遊戯!」

『杏子!』

「遊海が目を覚ましたわ!」

『なんだって!?』

 

 

 

 

 

 

 

俺は…どうしたんだっけ…?遊戯がいる…

「遊…戯?ここは…?」

話がしづらい…人工呼吸器か?

『童実野病院だ!何があったか覚えてるか?』

『確か…杏子を助けるために…邪神使いの決闘者とデュエルして…杏子は…?』

『杏子は無事だ!アヤカとトフェニが助けてくれたからな!』

「そうか…アイツ…邪神使いは…?」

『わからない…あのあとすぐに部屋が闇に飲まれて…』

「まさか…イレイザーの…力が現実を浸食するとは…」

 

「白波!」

海馬さんが部屋に入ってく

「海馬さん…すいません…失敗しました…まさか…こんな事になるとは…」

「今はいい!さっさと体を治せ!…遊戯!こうなればお前に頼るしかあるまい!邪神の奪還を…」

「遊戯!大変!」

『どうした!杏子!』

「翠ちゃんが見当たらないの!トイレにもいないし…!」

『…まさか!?』

「アヤカ…!…アヤカ?まさか…!?」

『遊海どうした!』

「アヤカがいない…まさか翠…邪神使いを倒しに…!?行かな…きゃ!アタタタタ…!」

『遊海!動くな!俺が探しに行く!』

「すまん遊戯…翠…頼…む…!…」

遊海は再び意識を失う…、その頃翠は…

 

 

 

「アヤカさんこっちなのね、遊海さんをあんな目に遭わせたひとは…!」

「はい…微かに邪神の力を感じます…しかし翠さん…やはり遊戯様に知らせた方が…」

「いいえ!私はいつも遊海さんに守られてばかりだった…だから今回は私が遊海さんを助ける番!…待ってて遊海さん!今助け出すから…!」

 

翠は進む…自分の想い人を救うために…




遊海はエネアード効果でサモプリ、イレイザーを破壊→イレイザーで全破壊→リリース効果で龍王印、エレキテル召喚→アトゥムスをX召喚、効果でレダメ特殊→レダメ効果でエネアード蘇生、アトゥムスをランクアップしてガイアドラグーン召喚→計5700でフィニッシュ、というルートを狙っていました。



~次回予告~

「邪神の力に傷付いてしまった遊海の仇をとるため、翠ちゃんはチェンにデュエルを挑んだ!そういえば翠ちゃんってどんなデッキを使うの?邪神に勝てるのかしら?」

「次回! 翠対邪神! 決意のデュエル! デュエルスタンバイ!」


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翠対邪神~決意のデュエル~

 翠はアヤカの案内で童実野埠頭近くの廃ビルに来ていた…

「翠さん気をつけて下さい…既に気づかれているかもしれません…!」

「わかってます…既に殺気を感じてますから…!」

翠とアヤカは慎重にビルを進む、そして屋上に彼はいた…

 

「ヒヒヒッ!お嬢さん!こんなところになんの用だい?夜にこんな所にいると悪ーい人に食べられちゃうヨ?

ヒャハハハハ!!」

金色の眼鏡をかけた男・チェン、その体は闇のオーラに覆われ既に邪神の狂気に侵されていた。

「心配しなくても大丈夫ですよ…私はあなたを倒しに来たんですから!」

翠は決闘盤を構える

「決闘者かぁ!なら邪神の生け贄にしてあげるヨ!さっきの赤帽子見たいにネェ!!」

「許さない!遊海さんは私が助け出す!」

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

チェンLP 4000

翠 LP 4000

 

 

「ワタシの先攻!ドロー!」

「手札から『サモンプリースト』を召喚!」

紫の服を着た僧侶が現れる DEF 1600

「さらに手札の『終焉の炎』を捨てて『サモンプリースト』効果!『ダブルコストン』をデッキから召喚!」

黒いスライムのようなモンスターが現れる ATK 1700

 

「カードを二枚伏セテ、ターンエンド!ヒヒヒッ!」

チェンLP 4000

サモプリ コストン 伏せ2 手札2

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「私は手札から魔法カード『セフィラの神意』を発動!効果で『智天の神星龍』を手札に加えます!」

 

セフィラデッキ…遊海がドーマとの戦いが終わった後、翠に託したデッキである

 

「さらに手札からフィールド魔法『セフィラの神託』を発動!効果処理としてデッキから『宝竜星ーセフィラフウシ』を手札に加えます!」

翠の後ろに巨大な樹と門が合体したような物が現れる。

 

「そしてペンデュラムスケールに『オルシャドールーセフィラルーツ』『剣聖の影霊依ーセフィラセイバー』をセッティング!これで私はレベル2~6のセフィラモンスターを同時に召喚可能になります!」 

翠の両脇に光の柱が立ち虹色のコアの人型と胸から鏡を下げて剣を持った戦士が現れる。

 

「神樹の加護よ!今こそ私に力を貸して!ペンデュラム召喚!『宝竜星ーセフィラフウシ』!『覚星輝士ーセフィラビュート』!」

水色のコアを額にはめた竜と蠅を象った鎧を着た戦士が現れる

ATK 1900

ATK 1500

 

「『セフィラフウシ』の効果!『セフィラビュート』をチューナーにします!」

「バトル!『セフィラビュート』で『サモプリ』を攻撃!」

ビュートの細剣が僧侶を破壊する。

「そしてレベル3『セフィラフウシ』にレベル4『セフィラビュート』をチューニング!聖なる守護の光、今交わりて永久の命となる!シンクロ召喚!降誕せよ『エンシェントフェアリー』…!」

 

「翠様ダメです!使用制限がかかっています!決闘龍を!」

 

「ふえっ!?わ…わかりました…」

「太古の森よりフィールドを制圧する精霊よ、かりそめの姿にその身をやつし降臨せよ!シンクロ召喚!!『妖精竜 エンシェント』!!」。

妖艶なる妖精竜が現れるDEF 3000

「『妖精竜』の効果!自分のフィールドにフィールド魔法がある場合、相手の攻撃表示モンスターを破壊します!『コストン』を破壊!『森葬の霊場』!!」

妖精竜の吐息がダブルコストンを溶かす

「カードを伏せてターンエンド!」

翠LP 4000

妖精竜 Pルーツ、セイバー 神託 伏せ1 手札1 ex ビュート

 

 

 

 

 

 

「フヒヒ!ワタシのターン!ドロー!」

「リバースカード!『リビングデットの呼び声』!墓地の『サモンプリースト』を特殊召喚!」

紫の僧侶が現れるATK 800

「『サモンプリースト』の効果を発動!手札の『黙する死者』を捨てテ『ウィップテイル・ガーゴイル』を特殊召喚!」

鳥のような尻尾の長い悪魔が現れる ATK 1650

 

「さらにリバース罠『メタルリフレクトスライム』を発動シテ、フィールドに特殊召喚!」

トゲトゲしたメタルスライムが現れる DEF 3000

 

「フヒヒ!!『サモンプリースト』、『スライム』、『ウィップテイル』の3体をリリース!現れたマエ!龍の邪神!『邪神イレイザー』!!」

黒き龍の邪神が現れるATK ?→6000

 

 

「攻撃力6000…!」

怖い…!

遊海さんはいつもこんな怖いモンスター達と戦っていたんだ…でも負けられない!!

「リバース罠!『錬成する振動』を発動!Pスケールの『セフィラセイバー』を破壊して1ドロー!」

イレイザーATK 6000→5000

 

「バトル!『イレイザー』よ!『妖精竜』に攻撃!『ダイジェスティブ・ブレス』!!」

邪神の息吹が妖精竜を焼き尽くす

「きゃあぁぁぁ!(ダメージはないのになんて衝撃なの!?)」

イレイザーATK 5000→4000

 

「コレでターンエンド!!邪神よもう少しで新たな生け贄を!!」

 

チェンLP 4000

イレイザー 手札1

 

 

 

 

 

 

「わ…私のターン…ドロー!」

「(これなら…!)」

 

「手札から魔法カード『テラ・フォーミング』を発動!『セフィラの神託』を手札に加えてそのまま発動!効果処理で『影霊獣使いーセフィラウェンディ』を手札に!」

翠の後ろの門が破壊され同じ物が現れる。

 

「さらに手札から『神星龍』をスケールにセッティングし『錬成する振動』で破壊して1ドロー!そして新たに『竜星因子ーセフィラツバーン』をセッティング!これによりレベル2~6のモンスターを同時に召喚可能!」

翠の隣に竜を象った鎧を着た青年が現れる

 

 

「神樹の加護よ!再び私に力を貸して!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから『セフィラセイバー』『セフィラビュート』!手札から『セフィラウェンディ』!」

剣を持った戦士、蠅の鎧の戦士、イルカに乗った少女が現れる

ATK 1500

ATK 1900

DEF 1000

 

「そして3体のセフィラモンスターをリリース!来て聖選士の力の結晶!『智天の神星龍(セフィラ・トーラ・グラマトン)』!!」

 

3人のセフィラの後ろに7人の仲間達が現れ光を放つ、そしてセフィラの最強の力…神星龍が降臨する ATK 3450

 

「私は『神星龍』の効果を発動!私はこのターン、もう一度ペンデュラム召喚を行える!」

 

「神樹の加護よ!三度私に力を貸して!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから『セフィラビュート』『セフィラセイバー』!」

再び蠅の戦士と剣士が現れる

ATK 1900

ATK 1500

「そしてレベル4の『セフィラセイバー』と『セフィラビュート』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ!エクシーズ召喚!漆黒の闇より現れし反逆の牙

!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!」

黒い体色をした反逆の竜が現れるATK 2500

イレイザーATK 7000

 

 

「ムダだぁ!『イレイザー』の攻撃力は7000!おまえに倒せる邪神ではないわぁ!!」

「いいえ!倒します!『ダークリベリオン』の効果!自分のオーバーレイユニットを2つ使って効果発動!『イレイザー』の攻撃力を半分にしてその分自分の攻撃力をアップします!『トリーズン・ディスチャージ』!!」

邪神が紫電に拘束され、力を吸収される

イレイザーATK 7000→3500

リベリオンATK 2500→6000

「そんな…我が神よ!!」

 

「バトル!『ダークリベリオン』で『イレイザー』に攻撃!『反逆のライトニング・ディスオベイ』!!」

紫電を纏った一撃がイレイザーを貫く!

「ぬああ!!」

チェンLP 4000→1500

「しかしこれでオワリだぁ!!イレイザーよ!全てを呑み込め!」

イレイザーの貫かれた傷口から闇が溢れ周囲を浸食し全てを呑み込んでいく…

「何これ!?」

「翠さん!早く脱出を!マスターはさっき、この闇に呑み込まれたんです!まだ間に合います!!」

『翠!これは…!!』

「翠ちゃん!?」

遊戯と杏子がやってくる

「二人とも来ないで!呑み込まれちゃう!!」

『しかし!』

「ここで彼を逃がしたらまた同じ事をします!…私が食い止め…キャア!!」

闇の浸食が早まり翠がどんどん呑み込まれていく…

「翠ちゃん!!」

そして…

「ヒハハハ!新しい生け贄ゲットォ!!次は貴様だ武藤 遊戯!ヒハハハァ!」

後に残ったのは闇だけだった…

 

 

 

 

 

 

…暗い…上も下もわからない…私は…

 

 

 

『なぁ翠…』

 

『どうしたんですか遊海さん?』

 

これは…ちょっと前の記憶…

 

『もし俺が死んだらどうする?』

 

『なっ!?遊海さん!何いってるんですか!!』

 

『あっごめん!「もしも」の話だよ!これから不死になってもデュエルでやられる事もあると思うんだ…、もし俺がやられたらどうする?』

 

『遊海さんは倒させません!私が守ります!だから冗談でもそんな事言わないで下さい!』

 

『…わかった…ごめんな翠!これからもよろしくな!』

 

『はい!♪』

 

 

 

 

そうだ…私は遊海さんに守られる存在じゃない…!

 

私が遊海さんの背中を…守るんだ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴様…俺が相手!…なんだ!?』

遊戯がチェンと決闘しようとした時、翠を呑みこんだ闇が爆発を起こす…そして闇の中から虹色の光に包まれた神星龍、そして翠が現れる!

『翠!!』

「翠ちゃん!!」

「二人とも心配かけてしまってごめんなさい!もう大丈夫です!」

「バカな!!なぜ闇に呑まれていナイ!?それに何故モンスターが残ってイル?!」

 

「私は『イレイザー』の効果が発動した時、墓地の『神意』の効果を発動していました!それによって『神星龍』を破壊から守ったんです!」

「墓地から魔法カードダトっ!!?」

 

「これで終わりです!『神星龍』でダイレクトアタック!闇を祓え!『創星のビックバン・バースト』!!」

神星龍の尾の10個のコアが輝き、口にエネルギーが収束し放たれる!それは周囲の闇を祓いチェンを飲み込んだ…

「ノオオオオ!!?」

 

チェンLP 1500→0

 

翠 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「翠ちゃん!」

『翠!』

「…遊戯さん…杏子さん…私やりま…したよ…」

翠が気力が尽きたのか倒れかかる

「…よくやった翠…!」

「えっ!?」

『遊海!!』

 

翠を支えたのは、ここにいないはずの遊海だった

「遊海さん…どうして…?」

「彼女が戦ってるんだ…俺もしっかりしなくてどうする?」

「遊海さん!!」

翠は遊海に抱き付くが…

「!?アイタタタタ!!翠ちょっとタンマ!!」

「遊海!お前、何病院抜け出してんだこのバカ!」

『城之内君!?』

「病院が大騒ぎだぞ!『重体の患者が抜け出した!』って!」

「ふぇっ!?遊海さん!?」

「…(白目)」チーン

「うえ~ん!遊海さんしっかりしてください~!」

『…相棒、俺はどうすればいい…?』

「とりあえず…遊海君を病院に連れて帰るべきだと思う…」

 

 

その後三邪神は無事に回収された、目覚めたチェンは何も覚えていなかった。ただ「誰かに」指示を受けて行動していたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコン

「はい…どうぞ!」

「入るぞ、白波!」

「海馬さん…」

「体の具合はどうだ?」

「あと二日で退院だそうです、ご迷惑かけてすいません…」

屋上で気絶した俺は病院に担ぎこまれた、それから二日間眠り続けていたらしい。

今は事件から5日経っている。

 

「フウン、邪神奪還、ご苦労だった、ペガサスも感謝していたぞ?」

「今回、俺は何もしていません、邪神を倒したのは翠ですし…」

「それでも依頼を受けたのはお前だ、感謝は受け取っておけ」

「はい…そういえば、三邪神はどうなりましたか?」

「ペガサスが処分した…カードを大事にする奴にしては珍しい事だ…処分する際に黒い闇が出たらしいが問題無かったそうだ」

「そうですか…ありがとうございます」

「そうだ、白波、この前言ったもうひとつの依頼だが…」

「ああ、後回しにしてた奴ですね…なんですか?」

「貴様…講師になるつもりはないか?」

 

「はい?講師…先生?」

「そうだ!俺は決闘者を養成する学校…デュエルアカデミアプロジェクトを進めている!そこの実技の講師に貴様を指名したい…どうだ?」

デュエルアカデミア…ついにきたか…

「勿論、春風もついて行けるよう手配するが…」

「海馬さん…本当にそれだけですか?」

「何?」

「俺を教師にして…何かを守らせたいんじゃないですか?」 

「…何故気づいた」

「教えるだけなら、俺よりも教え方の上手い人はたくさんいます…海馬さんが欲しいのは『強い』決闘者では?」

「さすがだな…そうだ!講師は表、裏で…あるカードの守護を頼みたい…!これを見るがいい!」

海馬のアタッシュケースから3枚のカードを取り出す。

『神炎皇ウリア』『幻魔皇ラビエル』『降雷皇ハモン』…三幻魔と呼ばれるカードだった。

 

 

「このカードは?」

「先日マリクから預かったカードだ、グールズで神のコピーカードを作ろうとした時に偶然できたらしい。しかしその秘めた力は三幻神に匹敵する…このカードを世に出すわけにはいかん…だからこのカードを封印する事にした!」

「それで俺を門番にしたいと」 

「そういう事だ!しかしまだ時間はある!よく考えておけ…さらばだ!」

「わかりました…考えておきます。」 

 

 

海馬さんは帰っていった、外に磯野さんが控えていたから仕事の合間に来たんだろう…講師か…俺には厳しいか…?

 

 

そして俺は無事に退院し、ついにエジプトに向かう事になる…




これにて邪神編終了です、次回から王の記憶編に入ります!


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第5章 王の記憶編
王の記憶へ~遊海の誤算~


王の記憶編開始!


 退院して数日後、俺は翠と共に空港に来ている…もちろん遊戯達と一緒にエジプトへ行くためだ。

「遊海さん!楽しみですねエジプト!私、海外に行くの初めてなんですよ!」

「この前アメリカ行かなかったっけ?」

「あれは魂だけなのでノーカンです!」

「ユウミ兄ひどいです!」ジー

「…ごめん冗談だから!だからそんなに睨まないでウェンちゃん…!」

翠は先日の邪神との戦いで精霊の力のレベルが上がったらしく新しい精霊を宿していた。

 

カード名「エルシャドール・ウェンディゴ」のウェンである、彼女は特殊な精霊で自分の意思で「霊獣」「シャドール」「セフィラ」の精霊に転身できるらしい…、ついでにウィンダは「ガスタ」にはなれず「霊獣」の自分になれるように練習中らしい。

 

「はいはい!ウェンちゃん!遊海さんを睨まないの!翠さんの大切な人なんだから!」

「は~い…」

…そういえばウィンダから見ればウェンって自分の子孫に当たるんだよな…(霊獣使いはガスタが元になって誕生している)長老も驚いただろうな…大昔に死んだ姉貴分が生き返ったんだから…。

 

 

 

         《閑話休題》

 

 

 

「遊海君!体は大丈夫?」

「はい!遊戯さん!ご心配おかけしました!」

「たくっ…お前何回死にかけるんだよ!翠を泣かせるんじゃねぇ!」

「城之内さん…すいません…以後気をつけます…」

「翠ちゃんも大丈夫?」

「杏子さん!はい!私は元気いっぱいです!」

【~発、エジプト行きの飛行機の搭乗手続きを…】

「みんな!行こう!」

「「「「おう!/ええ!」」」」

こうして俺達は闇遊戯の記憶を探しにエジプトへ向かうのだった…。

 

 

 

「フッフッフ!王様…始めようぜ闇のゲームを!」

 

 

       《約14時間後…》

 

 

「くあ~っ!やっとついたぜ!エジプトって遠いなぁ!」

「ここがエジプト…爺ちゃんが千年パズルを見つけた場所…」

「そういえば遊戯?どこに向かうのかわかってるのか?」

「あっ!それなら…」

「お待ちしていました!遊戯…いえ、名も無きファラオよ。石版のある場所までは、私たちがご案内いたします」

エジプトに着いた俺達を待っていたのは墓守の一族のイシズさんとマリクの二人だった。

 

「イシズさん!お久しぶりです!」

「ええ、遊戯!連絡ありがとう、ここから先は私達が記憶の石板まで案内しましょう!」

「遊海さん、お久しぶりです…バトルシティの時は…」

「マリク…大丈夫!傷はデュエル中に治ったし!」

「でも…」

「今日はその分エジプトを案内してくれよ!」

「…はい!わかりました!」

 

 

その後俺達はマリク達の案内でスフィンクスやギザの三大ピラミッド、アビドス三世の神殿などを見学した。

「遊海さん?」

「どうした翠?」

「私達の世界にアビドス三世なんてファラオいましたっけ?」

「…さぁ?いたかな…?でもアトランティスが実在してたんだし、多少の違いはあるんじゃないか?」

「そうですね!あっ!遊海さん!アレ!」

「アレは…カルトゥーシュの店か…」

「私あれが欲しいです!」

「なら二人でやってもらうか!」

「はい!」

「(カルトゥーシュ…ファラオが名前を刻んだお守り…もう一人の遊戯に丁度いいかも!)」

 

その後俺と翠はカルトゥーシュに名前を入れてもらった

俺は銀色で2本の葦(Y)、ウズラ(U)、フクロウ(M)

翠は金色でフクロウ(M)、手(D)、口(R)、とアンク(エジプト十字)

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ふふっ!似合ってますよ!マスター!」

「うん!翠さんも似合ってる!」

「ありがとうウィンダ!」

「アヤカもありがとう!」

 

 

 

 

 

そして翌日、俺達は記憶の石板のある遺跡へと到着した。

『この中に俺の記憶の扉を開く扉が…!』

「わたくし達はここで…名も無きファラオ、ここからはあなたが自分で道を切り開くのです」

「ああ…いってくるぜ!」

そして俺達は遺跡への階段を降る…

 

 

「…これが記憶の石板…」

石室の壁にそれは納められていた。向かい合う遊戯似の人物と海馬似の青年、その上に龍と魔術師の闘う様子が刻まれ…その上に三幻神、そして千年パズルが描かれている…

 

『記憶の石板…俺の記憶への扉…今こそ!』

「遊戯!ちょっと待って…これを…!」

杏子が遊戯の首に何かをかける…

『杏子…これは?』

「カルトゥーシュ…古代エジプトの王様とかの名前が彫られてたんだって」

『…でも何も彫られてないが…』

「もし、記憶が戻って本当の名前を思い出したら、そこに刻んで欲しいの…今度はどんなことがあっても忘れないように!その石版は、全部ファラオの名前が削り取られてるじゃない?

私はせめて、あなたの本当の名前が知りたい!」

『そうだな…ありがとう杏子!大切にするぜ!』

「うん!」

「遊戯さん!俺達とお揃いですね!」

「私達もお店で彫って貰ったんですよ!」

俺と翠もカルトゥーシュを見せる。

「あ~っ!お前達ずるいぞ!!」

「城之内…いいじゃねぇか!あとで俺達も作ろうぜ!」

「金がねぇんだよ!チクショ~!」

後で城之内が羨ましがっているが…放っておこう…

 

 

 

 

『じゃあいくぜ…石板よ!三幻神を鍵に俺の記憶を示せ!!』

闇遊戯が石板に三幻神のカードをかざす…すると石板が強い光を放つ!

「うわっ!眩しっ!!」

「なんだいきなり!!」

「翠!」

「遊海さん!」

 

光が収まると石板の前に佇む遊戯がいた…。

「遊戯…?」

杏子が問いかける…

「消えた…」

「えっ?」

「もう一人のボクが、パズルの中にも、ボクの心の中にもいない…もう一人のボク…!」と…

 

「おいっ遊海!しっかりしろ!」

「翠ちゃん!どうしたんだよ!?」

「城之内君!本田君!どうしたの?」

遊戯が後ろを見ると気絶した遊海と翠、そしてそれを介抱する本田と城之内の姿があった。

「遊海君!翠!どうしたの!?」

「わからねぇ!光が収まって回りを見たらこいつらが気絶してたんだ!」

「アヤカ!遊海君に何があったの!」

「(遊戯様…わかりません!石板の光を浴びた途端に二人とも倒れられて…しかもお二人の千年アイテムも消えています!!)」

 

そう言われ遊戯が確認するとアヤカに吸収されていた「千年玉」、そして翠の指にあった「千年指輪」が消えていた…

「遊海君!しっかり!!」

「無駄だ、ファラオの魂を宿す者よ…彼らの魂は王の記憶に囚われた…」

「君は…シャーディ!!」

シャーディ…イシズとは別の墓守の一族と名乗った謎の青年…千年秤と千年錠の所有者である。

 

 

 

 

 

「シャーディ!どういう事!?もう一人の僕と遊海君達はどうしたの!」

「ファラオを宿す者よ…もはやお前の中にファラオの魂は無い。ファラオは、記憶の世界へと旅立った。そして原初の千年アイテムを持ちし二人もそれに巻き込まれたのだ」

「記憶の…世界?」

「記憶の世界は、三千年前、ファラオが体験した記憶によって作られた世界。名も無きファラオはその世界を追体験している…」

「そこではもう、私達の記憶は無くなっちゃうの?」

杏子が問いかける。

「いや、記憶の世界の住人となっても現在の記憶はあるはず。そしてファラオは、自分の運命をもう一度体験することになる。

その時、ファラオの魂が千年パズルに封印された謎が明らかになる…」

「シャーディ…お前は一体何者なんだ…?」

「私はファラオの墓を守るもの…しかし私の体は既に滅んでいる…バクラによって」

「ちょ…ちょっと待てよ!つまり俺らは…」

「幽霊と話してるのか!?」

「闇のバクラに殺されたって…どういう事?」

 

 

そしてシャーディは語りだした…長年、自分が持ち主のいない千年アイテムを管理していた事。ある日獏良の父である考古学者が千年輪に触れて死んだ事、そして獏良が千年輪の邪念に適合しシャーディを殺した事を。

「そして私は魂の状態で世界を巡り千年アイテムをペガサスなどに託し王の復活に備えていたのだ…」

「そんな…事が…」

 

「バクラに宿りし魂、それは邪悪なものの魂…今、名も無きファラオに危機が迫りつつある。千年アイテムが私に告げた、名も無きファラオは全ての真実を知るため、闇のバクラと共に記憶の世界に旅立ったのだ」

「闇のバクラ君と!?」

「そこで、二人の究極の闇のゲームが開始される、そして原初の千年アイテムの所持者の二人もそれに巻き込まれたのだ…」

「シャーディ!僕達もそこに行けないの?!僕は待っている事しかできないの?」

「方法はある…」

「えっ?」

「千年パズルの中にある、ファラオの心の迷宮。そこで真実の扉を見つけることだ…その奥にこそ、ファラオの記憶の世界がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……俺はどうしたんだ…?石板が光を放って…それから…?

体を起こす…さっきの石室じゃ無い…土レンガで作られた家?

体には毛布が掛けられていた…隣には翠が寝ている…

「おい!翠、起きろ!」

「ん?…遊海さん…?」

よかった翠も無事だ…

「あれ…ここ…何処ですか?」

「わからない…俺も気づいたらここに…」

「おやまぁ!気が付いたかいお二人さん!よかったよ!」

部屋の入り口から褐色肌のご婦人が現れる…あの衣装はまるで…

「ワタシがナイルで洗濯していたらいきなり上から落ちてくるんだもの!ビックリしちゃったわ!」

「助けていただいてありがとうございます…ここは…?」

「変な事聞くねぇ?ここはファラオの治める王都の西の村だよ!あんた達神官だろ?ここの魔物を退治しに来た?」

ファラオ…神官…魔物…?…まさか…

「遊海さん…もしかして…!」

「ああ…確実に記憶の世界だな…」

どうやら俺達は記憶の世界に紛れこんでしまったようだ…。

 

 

 

「奥さん…すいません、どうして俺達が神官だと…?」

「そりゃあんた!その格好にウジャトの眼のあしらわれた祭器!ファラオの魔物鎮圧隊じゃ無いのかい?」

 

そう言われ改めて自分の姿を確認する、頭に巻いた布地、麻で作られたであろう服と金色の装飾品、枕元の千年玉…。

翠は黒髪に白いフードのついた服を着て指に千年指輪をつけている…よく見ると肌も褐色になっている…

 

「え、ええ!そうです!すいませんお世話になっちゃって!」

「あら、大丈夫よあなた達が魔物を倒してくれて助かったわ!今なにか食べ物持ってくるわね!」

「ありがとうございます…でも大丈夫です!」

「そうかい?なら隣にいるからなにかあったら声をかけておくれ!」

そう言うとご婦人は出ていった…

 

 

 

 

 

「遊海さん…これは一体?」

「どうやら●●●の記憶の世界に来たらしい…」

「遊海さん…最初なんて言いました?」

「えっ?だから●●●…言えない!?」

ファラオの名前が言えない…いや思い出せない!!

 

「遊海さん?」

「…どうやら俺達は記憶の世界の住人になってしまったらしい…」

「どうゆうことですか?」

「…たぶん闇遊戯が記憶の世界にくる時に俺達もなんらかの手段で巻き込まれたらしい…それで遊戯達と違いNPCに憑依してしまったんだ…」

「根拠を聞いてもいいですか…?」

「まずはさっきの奥さんが俺達を認識している事、遊戯達は基本的にNPCには認識されなかった…しかし俺達は認識されている。そしてファラオ…●●●の名前を言えない…いや、忘れている事…それが根拠だ…それに…」

「それに?」

「アヤカやウィンダ達が居ない…気配も無い、それが一番だ…」

「…私達帰れるのでしょうか?」

「大丈夫だよきっと…とりあえず王宮に…」

 

「大変だ~!魔物が出たぞ!逃げるんだ!!」

 

「遊海さん!」

「行って見よう!」

そして俺達は外に飛び出した…。

 

 

 

 



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迫る闇の影~ユウミとミドリ~

俺と翠が外に出ると女性の仮面を被った蛇のような黒い魔物が暴れていた。

「遊海さんあれは!?」

「女邪神ヌヴィアか…!?」

「神官様!助けてくれ!」

「落ち着いてくれ!何があった!」

「収容施設から逃げ出した女囚が突然苦しみ出してアイツが出てきたんだ!女囚本人も巻き込んで大暴れしてるんだよ!」

「わかった!ありがとう!すぐに逃げるんだ!」

「はい~!」

 

 

 

 

「遊海さん、どうするんですか!?」

「…気合だ!来い!決闘盤…!!」

シーン

「…アレ?」

[₪₪₪₡₪₡₪₪$!!]

「ゴフッ!?」

ヌヴィアの尾が振るわれ遊海が吹き飛ぶ

 

遊海 魂90/100

翠 魂100/100

 

 

 

「イタタタ…おかしいな…気合で出るはずなのに…」

「遊海さん!?何か減ってますよ!?」

「…やられ過ぎるのはマズイな…」

[₡₡₡₪₡₪₡₡₡₪!!] 

「危ない!千年指輪よ!私達を守護せよ!」

翠の宣言と共にバリアが張られヌヴィアの攻撃を防ぐ!

翠95/100

「すまん!翠!」

「大丈夫です!でも早めに何とかしてください!!」

「なら…千年玉の元に来い!神官文字の白竜よ!!」

遊海の言葉に応じて千年玉が輝きを放つ、すると空よりウジャト眼を刻んだ龍・トフェニドラゴンが現れる

「行け!白竜よ!」

「(了解した!主殿!)」

「えっ!?」

白竜の精霊が魔法陣でヌヴィアを包み、爆発させる!

[₪₡$₡₪₪₪₪!!??…]

ヌヴィアは爆発に耐えられず黒焦げで倒れる

「千年玉よ!魔物を吸収せよ!」

千年玉が光を放つとヌヴィアが吸収される…どうやら勝ったようだ…。

遊海80/100

 

 

「何とか勝てましたね…」

「ああ…白竜の…いや『トフェニ』のお陰だ…」

「(主殿…いつもと雰囲気が違いますが…)」

「ああ、なぁ…お前は『遊海』の『トフェニ』だよな?」

「(ユーミ?誰ですかそれは、私はあなた様、シュウ様の精霊では無いですか!…おや、テフ嬢も一緒でしたか、魔物には気をつけくださいね…では!)」

「ちょっと!?」

トフェニはそう言うと消えてしまった

「遊海さん…」

「たぶんNPCの枠に入れられたせいで能力が制限されてるのかも…」

「そんな…」

 

 

 

 

「なぁテフ…」

「シュウさん?私は…あれ…名前…なんだっけ…?」

「…まさか…記憶が上書きされてる…?」

遊海と翠は突然自分の名前がわからなくなった。

 

 

「そんな!…そうだ!カルトゥーシュ!」

翠は胸元から金色のカルトゥーシュを取り出す

「ミドリ!私の名前はミドリです!」

「俺はユウミだ!」

二人はそれぞれのカルトゥーシュを見て名前をかろうじて思い出す。

「これは…ヤバイな…たぶん俺達はこの世界の『バグ』なんだ。だから世界が記憶を上書きしてバグをなくそうとしてる…このままだと記憶がNPCに飲まれかねないぞ…!」

「なら早く王宮…遊戯さんの所に…」

「大変だ!王宮を襲った盗賊と相討ちになって六神官のマハード様がやられたそうだ!」

「なんだって!?」

マハード様…あの優秀な精霊魔導師様が…ってなんだ…この記憶は…マズイ…浸食される…!

「ユウミさん!しっかり…!」

「行こうテ…ミドリ!記憶が浸食される前に!」

「はい!」

遊海達は村人から馬を借りて王宮を目指した…。

 

 

 

 

 

 

王都に着いて目にしたのはオシリスと精霊獣ディアバウンドの闘い…いや逃走戦だった、ディアバウンドはこちらに向かってくる!

「シュ…ユウミさん!あれは!?」

「バクラのディアバウンドだ!食い止めるぞ!!来い!神官文字の白竜!」

「黒き龍よ!」

遊海はトフェニ、翠はレッドアイズを出してディアバウンドを食い止める!

「なんだキサマらは!どきやがれ!!」

「我らファラオに仕える神官なり!」

「逆賊よ!ここは通しません!」

バクラの進路に遊海と翠が立ちふさがる!

「ならぶち殺すまでだ!いけ!精霊獣!!」

[オオオオ!]

ディアバウンドがトフェニに向かう!

「トフェニ!反射の陣!」

「(御意!)」

トフェニの魔法陣がディアバウンドを跳ね返す

「黒き龍!『黒き炎弾』」

「キャオオオ!」

レッドアイズの息吹がディアバウンドに直撃する!

[ガアアアア!?]

「チイッ!」

 

遊海 魂70/100

翠 魂90/100

バクラ80/100

 

 

『追い付いたぞバクラ!』

[ギャオオオ!]

二人の足止めによりファラオとオシリスがバクラに追い付く!

「チッ!ファラオめ…」

「ファラオよ今のうちに逆賊を!」

「私達もいつまでも押さえられません!!」

『シュウ!テフ!(いや…あのカルトゥーシュは!?)』

「ユウギ!早く!…グアっ!」

「ユウミさん!キャ!?」

ディアバウンドがトフェニの魔法陣を破り二人の魔物を吹き飛ばす!

 

遊海 65/100

翠 80/100

バクラ75/100

ファラオ60/100

 

 

『遊海!翠!!』

「ユウギ!早く盗賊王を」

『…わかった!すまない!』

 

王はバクラを追いかける、しかしディアバウンドは闇に紛れ無関係の民達を襲い始めた、そしてファラオはセトと共にディアバウンドを迎撃するが遂にオシリスが倒され、魂が尽きかけてしまう…

 

ファラオ10/100

 

『こ…ここまでか…?』

「もう一人の僕!しっかりして!」

『相棒!みんな!!』

「ユウギ!」

「ユウギさん!」

『遊海!翠!』

「えっ!遊海!?なんだよその格好!?」

「ジョーノ…ジョウノウチさん!説明は後で!!」

「ユウギさん!諦めないで!」

『そうだ!俺にはまだ力が残されていた…掛け替えのない仲間という力が!

バクラ!殺戮という名の狂気の闇、神の降臨によって打ち砕く! 出でよ、「ラーの翼神竜」!!』

 

遊戯50/100

ファラオ60/100

 

遊戯の力を借りたファラオは最後の神、ラーを召喚する!

 

「太陽の神だと…馬鹿な!オシリスを葬った時に遊戯のバーも尽きたはず…新たな神を呼ぶ余力など…あるはずが…。

チイッ!…あいつらが現れたからか。器の力で遊戯のパワーが回復したってのか!!?」

そして…

『燃ゆる我が魂の業火、この神の一撃に込める。ラーの攻撃!いけ、ゴッドフェニックス!!』

ラーが炎を纏いディアバウンドに突っ込む!

「迎え撃てディアバウンド!サンダーフォース!」

ディアバウンドがオシリスのコピー技を放つ、しかし

「ゆけ、デュオス!オーラフォース!

我が魂を全て開放し打ち出したオーラフォースでサンダーフォースの軌道を変える!」

[ゼアアア!!]

「何!?」

「今です!ファラオ!!」

『太陽神よ放て!』

「ぐああぁぁあ!」

神の炎がディアバウンドとバクラを焼き尽くす!

 

バクラ 魂0/100

 

「ふ…ふざけんじゃねぇ…このオレ様が、こんなところで…くたばるわけが…ねぇだろうがーっ!!!?」

 

 

      《時の巻き戻し…発動!》

 

 

 

『オシリス!?何が起きた!?』

バクラを倒したと思った瞬間、時が巻き戻る…そして…

「じゃあな王様!こいつは頂いてくぜ!」

『バクラ…貴様…うぁぁぁ!!』

「ファラオーっ!!」

「シュウ様!」

「テフ!ユウギ達と合流しろ…!頼んだぞ!!」

「そんな!?シュウ様!ファラオー!!?」

ファラオ、そして遊海は谷に消えた…。

 

 

 

 

 

そして時の巻き戻しでファラオと離れてしまった遊戯達は…

「まだこの世界があるって事はもう一人の僕は絶対生きてる!…探そう!」

「遊戯…そうだね!行こう!」

「…あなた達は…ユウギ様ですか…?」

「翠ちゃん!!」

出発しようとした遊戯達に翠が話しかける

「ミドリって誰ですか?…私はテフです、シュウ様の命であなた達と合流するようにと…」

しかし翠は違う名前を名乗る

「(翠どうしたの!!)」

「(翠さんしっかりして!?)」

杏子の懐から小さなウィンダとウェンが飛び出す

「ウィンダ…ウェン…?」パキーン

「翠ちゃん?」

「!?…杏子さん!遊戯さん!」

「翠ちゃん!正気に戻った!」

「翠さん!何があったの!?というかその格好は!?」

「…説明すると長くなりますが…」

 

そして翠は闇遊戯が記憶の世界に来る時に遊海と巻き込まれた事、記憶の世界でシュウとテフという役割を押し付けられた事、そしてその役割にのみ込まれかけていた事を遊戯達に説明した。

「遊海さん曰く私達はこの世界の『バグ』なんだそうです…だからこの世界の修正力が私達を封じようとしたんじゃないかって…」

「そんな事が…」

「…翠さん、遊海君は?彼はどこに」

「遊海さんは…ファラオ…闇遊戯さんを追って谷底に…」

「そんな…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『う…うぅ…ここは…?』

「!…ファラオ!お目覚めになりましたか!」

闇遊戯が目覚めると暗い洞窟だった…

『お前は遊海か…?』

「ファラオ!寝ぼけているのですか?私はマハード様直属魔物討伐部隊のシュウではありませんか!」

『いや!お前は『遊海』だ!』

「何を言っているんですかファラオ!私は…くっ!?頭が…」

突然頭を押さえ始める遊海…そして…

『遊海!?』

「…久しぶりだなもう一人の遊戯…我を覚えているか?」

突如、遊海の口調が変わる。

『お前は…「ユウスケ」か?』

「ああ…そうだ、ドーマの事件以来だな…!」

『お前が出てきたという事は…』

「そうだ、コイツは『遊海』だ…外見は違うけどな…

表が役割にのまれちまったから我が出てきたんだ!」

『役割…?どういう事だ?』

 

 

そしてユウスケは語り出す、この世界がファラオの記憶をモチーフにしたRPGの世界であり、遊海と翠がNPCに憑依して巻き込まれた事。二人が役割にのみ込まれ自我がシュウとテフになる事を…

 

「遊海と翠は本来この世界にいない『異物』だ、それを世界が無理矢理NPCに憑依させた事で遊海は記憶と自我をシュウに塗り替えられてるんだ…」

『二人を元に戻す方法はあるのか?』

「…可能性は二つある、一つはこの世界をクリアすること。もう一つは遊海を遊戯達に会わせて正気に戻った翠か精霊のアヤカに名前を呼ばせれば良い、そうすれば呪縛が解けて元の遊海に戻る筈だ!」

『…わかったありがとう、ユウスケ…』

「ふっ、精々頑張りなファラオ!…最後だ…もう少しで新しい道しるべが来る筈だ。呪われた村…クル・エルナ村へ迎え…物語は…進む…!」

『ユウスケ!』

 

「…あれ、私は一体?ファラオよ…私は?」

『シュウ…いや何でも無い…!誰だ!』

ファラオは後ろに気配を感じて振り返る、そこにいたのは黄金のマスクを被った巨漢だった。

《我が名はハサン…ファラオ、大邪神ゾークは蘇ろうとしている…ゾークを倒せるのはそなたしかいない》

『大邪神…ゾーク?』

《先王アクナムカノンが…そなたを見守っている》

『お前は父上を知っているのか、ハサン!』

《…》

ハサンは消えてしまう…すると

「遊戯!」

「もう一人の僕!!」

「王子!」

「遊海さん!」

『相棒!杏子!翠!みんな!!』

ついに現代組と再会するファラオ、そして…

 

 

「おお!テフ!無事に彼らと合流できたんだな!」

「遊海さん…完全に役割に…」

「アヤカ!?」

遊戯の懐からアヤカが飛び出す!

「何をやってるんですか!このバカマスター!!」

「ごはっ!!?」

体当たりで遊海を吹っ飛ばす!

「ちょっとアヤカさん!?」

「あなたはシュウじゃありません!!私のマスター!『白波 遊海』です!!」

「…!」パキーン

「遊海さん…?」

「翠…?俺は…?」

「遊海さん!よかった!!」

そして束の間の再会を果たした遊戯達は喜びあう、しかしファラオは遊戯達に現世に戻るように伝え、クル・エルナ村へ向かってしまう。

「翠…遊戯達を頼む!俺はファラオと一緒に行く!」

「…わかりました!私達は『名前』を探します!」

「名前?」

「遊戯さん、この世界ではもう一人の遊戯さんの『名前』が鍵になります…それを探しましょう!」

「…わかった!」

「遊戯さん、翠!頼んだよ!」

そして彼らは二手に別れて行動し始める。

 

 

…邪神復活まであと少し…

 

 

 



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大邪神の復活

 ファラオと共にクル・エルナ村へ向かった遊海はついに目的の場所に到着した…しかし…

「なんだこりゃ!?死霊しかいないじゃないか!?」

そう、村の中は無数の死霊達に占拠されていたのだ…

『これは…一体』

「ファラオよここは私達が食い止めます!お早く!

行け!双頭のジャッカル戦士!!」

「なら俺も!来てくれ!神官文字の白竜!」

「(御意!)」

『二人共!頼んだぞ!』

「「はっ!」」

ファラオはマナと一緒にクル・エルナ村の奥へと進む、俺とシャダさん、そして兵士達は死霊をどんどん倒していく!

「やるな!シュウ!さすがはマハードの直属部隊長だ!」

「褒めて頂き光栄ですシャダ様!しかしそろそろきつくなってきました!!」

「確かにそうだが弱音は厳禁だ!我らがファラオをお守りするのだ!」 

確かにさっきから死霊を倒し続けているが一向に減らない!バクラの千年輪の邪念に引き寄せられてるのか!?

 

シャダ 魂70/100

遊海 魂80/100

 

「ならやるしかない!現れろ神官文字の青竜!」

シユウドラゴンが現れる

「2体の精霊よ千年玉の元で星を重ねよ!」

トフェニとシユウが千年玉に飛び込む!

「(2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!)いでよ!神官文字の龍王よ!」

「魔物融合か!!」

聖刻龍王ーアトゥムスが現れる

「龍王よ!全てを浄化せよ!」

アトゥムスが広範囲魔法陣を展開し死霊を一ヵ所に集める

「龍王抹殺陣!!」

魔法陣が輝き中の死霊が消滅する!

「流石だシュウ!」

 

遊海 魂65/100

 

 

 

「シャダ!無事か!!」

そして王宮の神官団、セト、カリム、アイシス、シモン、アクナディンが現れる

「シャダ!ファラオはどこじゃ?」

「村の奥!冥界の石板に!」

「わかった!急いで向かうぞ!」

そして神官と俺達も奥に向かう…

 

 

 

 

 

 

そしてファラオに追い付くとそこではバクラのディアバウンドと精霊となったマハードとマナが激戦を繰り広げていた、マハードが魔力弾を放つがディアバウンドもバクラも歯牙にもかけていない。

「ファラオ!」

『シモン!神官達!』

「これはこれは…神官団ご一行様…ヘヘヘヘヘヘ…!」

「貴様!何がおかしい!」

「フフフフ、わざわざ千年アイテムをぶら下げてオレ様の元に来るとは…こっちから出向く手間が省けたってもんだぜ!かかってこいや神官ども!!ディアバウンド、奴らをまとめて蹴散らせ!」

「なめるな!盗賊王!!」

 

そして神官団はそれぞれの精霊・魔物を展開しバクラに攻撃を仕掛ける!

セトとシャダはデュオスと双頭のジャッカル戦士で斬りかかる

アイシスはホーリーエルフを召喚し、ファラオと神官の魂を回復させる。

アクナディンやシモンも他の神官達をサポートし、さらにマハード・マナの魔術師師弟が魔力弾を打ち出す。

 

「龍王よ更なる進化を遂げよ!(ランク6のアトゥムスでオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップエクシーズチェンジ!)現れろ!迅雷の竜騎士!」

アトゥムスがランクアップしガイアドラグーンが現れる

「放て!螺旋竜突槍!!」

ガイアドラグーンが貫通攻撃を放つ…しかし

 

「雑魚が何匹増えようが死霊の盾に守られたディアバウンドに攻撃は通用しねえんだよ!」

ディアバウンドの周囲にはクル・エルナに巣食う死霊達が渦巻き、盾となっていた…

 

「くっ…攻めきれない!!」

「来ないなら俺からいくぜ!ディアバウンド!毒牙連撃波!」

ディアバウンドの放つ攻撃が魔物を破壊していく…

「ならば…セト!魔物融合だ!」

「わかった!やれカリム!」

「千年秤よ!2体の魔物を束ねよ!魔物融合!デュオスドラゴン!」

しかし、それでも届かない…バクラはサンダーフォースと魔導波の合体技を放ちデュオスを退ける!

「…遊戯!いいな?」

『…やれ!遊海!!』

「来い!デュエルディスク!」

「なんだと!?」

 

 

遊海の腕に決闘盤が現れる、アヤカに呪縛を解かれた事により召喚できるようになったのだ

「シュウ!?そのディアディアンクは!?」

「みんな!魔物を下げて!俺よりも後ろに!」

「キサマ!何をするつもりだ!」

「こうするのさ!現れろ!安寧の闇よ!『戒めの龍』!」

 

黒き神々しい龍が現れる!

「なっ!?あの龍…なんて威圧感だ!?」

「悲しき死霊よ…我が魂によりて黄泉路を開く!浄化せよ!『戒めの波動』!」

 

遊海 魂50/100

 

黒き龍から波動が広がり天井に空間が開く…そして…

《息子よ…私が因縁を全て冥界につれて行こう…》

『父上!』

アクナムカノン王の幻影が現れ、死霊達を冥界に導く…

「アクナムカノン…だと!?馬鹿な、何が起こってやがる!?ディアバウンド!」

死霊達は次々と冥界へと向かっていく…

「てめえら、こいつらへの恨みを忘れたのか!八つ裂きにするんじゃねえのかよ!おい!」

死霊の力を失ったディアバウンドの覇気が小さくなっていく…

『今だ!マハード!』

《この日を待ちわびたぞ、バクラ!魔導波ぁ!!》

『千年の闇に眠れ…バクラ!!』

「うわぁぁあああああああっ!!!」

遊海の黒き龍、そしてマハードの連係によりついにバクラを撃破した。

 

 

 

 

「ぐあ…っ…遊戯、てめえ…待ってろ、今貴様らの息の根を止め、 全ての千年アイテムを奪い、闇の力を手に入れてみせる!あぁ…がっはぁ…くそぉ…」

満身創痍のバクラはなおもファラオに向かおうとする、しかしディアバウンドを失い、魂も尽きたバクラは長くないだろう…

『無駄だぜ、バクラ…残りの千年アイテムが俺達の手にある限り、ゾークの封印が解き放たれることは無い…諦めろ、バクラ!』

ファラオがバクラを諭す、すると

 

「ぐおああっ!…こ、ここはどこだ、オレはいったい何を…な、何だ?うあああ!」

バクラの様子が変わり徐々に体が崩れ砂になっていく…

何かがおかしい…あのバクラはまさか!?

 

《ご苦労だったな。お前はもう用済みだ》

『この声は!?』

「うあああっ!?どうなってんだ!た、助けて!たす…」

盗賊王バクラは消え去った…しかし

《フハハハハハ・・・必要なくなった駒は消えるのがルールなんだよ、遊戯ぃ》

なおも空間にバクラの声が響く…!

『駒…だと?』

ファラオが呟く…すると

『これは…体が動かない!?』

「なんだ…これ!!」

《お師匠様!体が…動きません!?》

《何が起きている!?》

神官達は混乱する…ただ一人を除いて…

「フフフ…!時は来た!」

「アクナディン殿!?何を!」

 

突如アクナディンから闇のオーラが放たれる…

「はははは!ぬははは!時の支配者、大邪神ゾーク様のお力により時は止められた!今この時、行動が許されているのはこの私だけなのだよ!」

そう言うとアクナディンは神官達から千年アイテムを回収する。

「しまった!アクナディンは既に邪念に堕ちていたのか!」

そしてアクナディンは冥界の石板に千年アイテムを嵌める…そして

「これで…最後だ!ぬうぅええい!」

アクナディンは自分の千年眼を抉り出す。

 

『(なぜだ、なぜバクラを倒したのにオレの勝ちじゃない?なぜ時が止まる…!いったいいつまで続くんだこの闇のゲームは…ゲーム?…まさか!?)』

そして闇遊戯の意識は暗転し…

 

 

 

 

 

 

 

 

『ん…ここは?』

「よぉ!遊戯!やっとゲームマスターとして目覚めたか!」

目覚めた遊戯の前にはバクラがいた…二人の間にはエジプトを模したゲーム盤が広がっている。

そしてバクラより語られる究極の闇のゲームの正体、それはファラオの記憶を再現した闇のRPGだった。

勝利条件は

・遊戯 ファラオの真名の解放

大邪神ゾーク・ネクロファデスの打倒

・バクラ ファラオ・神官団の打倒

 

そして遊戯が負ければ、記憶の世界にいる表遊戯達、現代組の魂も消滅する…

敗北条件はそれぞれにある、魂が無くなる事、そして現在バクラ側はMAXなのに対して遊戯側消耗している、そしてバクラは3つの「マスターアイテム」を持っていた。

時を巻き戻す「逆刻の砂時計」

時を停止する「定刻の砂時計」

そして大邪神の復活を示す「降邪の砂時計」…この砂時計が落ちきった時…ゾークは復活する

 

しかしそれをただ見ている遊戯ではない。ゲーム世界でのピンチをマスターアイテム、王の守護者・ハサンで回避する、そして…

『さらにマスターアイテム、「転生者の助力」を発動!頼んだぞ!遊海!翠!』

 

 

 

 

 

 

 

 

突如闇の大神官となったアクナディン、そして突然現れたハサンにより時が動きだし危機は免れた、しかしそこでアクナディンから自身がアクナムカノンの弟であること、セトが息子でありファラオの資格があると告げられる。

セトはその言葉により揺れ動き、その隙を突かれアクナディンに連れ去られてしまう。

さらに盗賊王バクラや死霊達が復活しファラオ達に襲いかかる!

「さあディアバウンド!パワーアップしたお前の力で神官どもをぶち殺せ!」

「させるか!!降臨せよ!『裁きの龍』!」

「何!?」

「盗賊王よ無に帰れ!俺の魂をもって邪悪を滅する!『カタストロフ・レイ』!!」

 

 

遊海 魂20/100

 

 

神すら滅する裁きの光がバクラを消し飛ばす!

「おのれぇ…ぐぎゃあああああ!?」

「…ファラオ…セトとキサラを頼みます…ここは俺が食い止める!」

『遊海…頼んだぞ!』

その後ファラオはセトと対面する、しかし既にセトは闇の大神官の邪念に犯されていた。

激突するマハードと白き龍。やはり白き龍は強くマハードを倒してしまう…しかし

《セト様…あなたの心は、闇に囚われてはなりません!》

キサラの光によりアクナディンの邪念は消滅しセトは解放された、そしてセトは白き龍の前で慟哭する。

「キサラ…オレは…!」

しかし…そこに空より1滴の雨が降る…そして

「…セト…様?」

「キサラ!」

 

既に魂を抜かれたキサラが目を覚ましたのだ、そしてその身が雨に打たれるたびに傷が治っていく…

「間に合った…!」

『遊海!お前…何を!?』

「…罠カード『恵みの雨』…ギリギリで間に合った…」

遊海は死霊達と戦いつつ広範囲に回復効果のある恵みの雨でキサラを救ったのだ、そこに…

「遊戯!白波!ここはなんだ!」

『海馬!?なんでここに!?』

なんとここにいない筈の海馬が現れたのだ、海馬は現実世界でバクラに千年眼を渡され、エジプトに導かれたのだと言う。

「遊戯、現実世界でのお前達は気絶していたが、一つ妙な事が起きていたぞ?」

『何?』

「寝かされていた白波と春風の顔色が死人のように白かった、大丈夫なのか?」

「なんだって!?」

もしかして…翠に何かが…!?

 

 

 

 

 

 

その頃、現代組と翠は王墓に到着していた。

本来であればバボサの力を借りなければたどり着けないが半分NPCになっている翠がミドラーシュ、ウェンディゴと共に王墓を発見したのだ。

そして遊戯達は様々な罠を抜けてついに最奥にあるファラオの名前のある部屋に到着した…しかし

「遊戯ィ!残念だが貴様はここまでだ!」

「君はバクラ君!?」

「さあ死霊共!雑魚どもを抹殺しな!」

バクラの声と共に死霊達が現れ遊戯の後ろの城之内達に攻撃を仕掛けはじめる

 

「させません!千年指輪よ我らを守れ!ウェン!ウィンダ!御願い!」

「了解です!」

「翠!ナイス!」

「翠ちゃん!」

翠がバリアを張り、城之内達を守る。そしてウィンダ達で攻撃を仕掛けるが数が多く、キリが無い…

 

翠 魂40/100

 

「杏子!城之内君!翠さん!」

「遊戯さん!こちらはなんとかします!早く本田さんをバクラから解放してください!!」

「…わかった!」

「さあ遊戯!決着を着けようぜ!!」

バクラは腕にデュエルディスクを出現させる

「僕は負けない!絶対に名前を見つけてみせる!」

 

      「「デュエル!!」」

 

 

 

 

「チッ!遊海め余計な事を…!やはり完全にNPCにしちまえばよかったぜ…!」

『バクラ!闇の大神官は倒れ、バクラも消え去った!あとは名前を見つければ俺の勝ちだ!』

遊戯はバクラを追い詰める…しかし

「ああ、確かにオレはピンチだ…でも一足遅かったみたいだぜ!見ろ!砂時計の砂は落ちきった!!ゾークの復活だ!」

『なんだって!?』

 

 

 

 

 

空が暗雲に包まれる…そして…

【我はすべてを無に帰すため長き眠りより目覚めた!

もはや何者も我を止める事は出来ぬ!

生きとし生けるものはみな、地獄の業火に焼かれるがよい!】

黒い巨体で腰に竜を巻いた邪神…ゾークが復活した!




登場人物 魂残量/100

ファラオ60
セト40
アイシス60
カリム50
シャダ70
シモン80
遊海40
キサラ10
※上記のメンバーは恵みの雨で回復中
翠40


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神々の戦い~それぞれの死闘~

アクナディンの手によって大邪神ゾーク・ネクロファデスは復活した。

黒い体

2本の角、鋭いかぎ爪

体に巻き付いた龍

まさにそれは悪魔を連想させる…

「あれが…ゾーク…!?」

「なんと禍々しい…!」

【矮小な人間共よ!我が炎で燃え尽きるがいい!『ゾークインフェルノ』!!】

神官達にゾークが掌より極大の炎を放つ!

「マズイ!?」

『させるか!うぐぉぉおぁ!』

「ハサン殿!!」

間一髪ハサンが割り込み攻撃を防ぐ、しかしハサンははじき飛ばされてしまう。

『ここは、我に任せて皆は早く行け!今のうちに、王宮に戻り、街を守るのだ…さぁ、急げ!』

「ハサン殿…頼みます!!」

シモン達は王宮に向かう…しかし

【逃がすか!『ゾークインフェルノ』!】

再び炎が迫る!

「罠カード!『ドレイン・シールド』!!」

突如現れた青色の膜が炎を吸収する

「なんと!?一体誰が!?」

「シモン様!早く王宮へ!ファラオは既に向かっています!早く!!」

「シュウ!!」

 

遊海 魂150/100

 

「なんとかハサン様と食い止めます!早く!」

「わかった!シュウよ!テフを悲しませるでないぞ!」

「…わかっています!」

そしてシモン達4神官は王宮へと戻り始める

 

 

【シラナミ ユウミか!貴様…よくも我の邪魔をしたな!】

「邪魔?なんの事だ?」

【とぼけるな!現世で我が写し身を破壊しおって!!】

「写し身…?まさか三邪神の事か?」

【そのとおりだ!!あの三体は現世での我が身!もう少しで力が集まったところを!!】

…やはりそうか、三邪神はペガサスが作り出したオリジナルカードにしては闇が強すぎた、やはり千年眼を通してゾークの邪念が関わっていたのか…

「知るかそんな事!ともかく、しばらく俺に付き合ってもらうぜ!ゾーク!!」

【ふん!矮小な人間が燃え尽きよ!】

ゾークは炎を放つ

「『裁きの龍』!裁きの息吹!!」

空中で炎とブレスがぶつかり、爆発する!

【ぬうっ!?】

「今だ!『裁きの龍』!我が魂を糧に邪神を滅せよ!『カタストロフ・レイ』!」

裁きの龍の光の波動がゾークに迫る

 

遊海 魂140

 

【小癪な!『ダークフェノメノン』!】

ゾークのビームが波動を貫き裁きの龍を破壊する

「ぐおっ!?」

 

遊海 魂120

 

「ならこいつだ!来い!『聖刻神龍ーエネアード』!」

赤い体をした巨龍が現れる。

「放て!『ソーラーフレア』!!」

エネアードが咆哮すると空から太陽の如く強い光線がゾークに向けて放たれる!

【オォォオ!!舐めるな!】

ゾークはその光線を受け止めて振り払い、周囲が煙に包まれる…

【ゾークインフェルノ!!】

煙の中からゾークが炎を打ち出しエネアードが倒され、爆風により遊海が吹き飛ばされる

「しまっ…!」

【死ね!ゾークインフェルノ!】

『させん!!』

炎の前にハサンが立ち塞がる

「ハサンさん!」

『行け!ファラオをお守りするのだ…早く!ぬうっおぉお!!』

ハサンは炎をその身体に受けてついに消滅してしまう

【王の守護者め!余計な事を!『ダーク』…】

「魔法カード!『光の護封剣』!!」

【何!?】

遊海の発動したカードによりゾークの動きが封じられる

【オノレェ!!こんな結界などすぐに壊してくれる…!】

「少しでも時間が稼げれば充分だ!罠カード『強制脱出装置』!対象・俺自身!…人間大砲発射!!」

遊海は強制脱出装置にて王宮方面に撃ち出される!

【逃げるのか!?】

「あんたを倒すのは俺じゃない!あばよっ!」

遊海はそのまま王宮方面に飛んでいった…。

 

遊海 魂80

ゾーク ∞

 

 

 

 

 

 

そして王都前ではファラオ・神官団を中心に兵士達がゾークの迎撃準備をしていた。

「セト様!投石器部隊、弓矢部隊、配置完了です!」

「わかった!弩弓部隊も配置を急げ!」

「ハッ!!」

『セト!守備はどうだ!?』

「はっ!順調に進んでおります!」

「伝令!伝令!ゾークが移動を始めました!王宮に向かっています!!」

「ついに来るかっ!」

『遊海…シュウとハサンはどうした!』

「……~!」

『なんだ?』

「…い…れ~!」

「ん?どこからか声が?」

「シモン…上…どい…くれ~!」

「ん?上?」

「どいてくれ~!!」

「のわ~っ!!?」

 

ズドン!!!!

 

『なんだ!ゾークの攻撃か!?』

「ファラオ!!空から人が!」

『なんだと!?』

 

 

「アイタタタタ…!何とか到着…」

「バカ…者…!早く降りぬか!?」

「ハッ!?シモン様すいません!!」

『遊海!?』

空から落ちてきたのは遊海だった…

「ファラオ…ただいま戻りました…」

『遊海よく戻った…どうして空から…?』

「ん?『強制脱出装置』で飛んできた!」

『無茶をするなよ…』

「シュウ…お前性格が変わったか…?」 

 

        《閑話休題》

 

『そうか…ハサンが…』

「はい、しかし彼のおかげで時間が稼げました…」

『わかった…この先はどうする?』

「とにかく時間を稼ぐのです、遊戯がここに来るまでに…」

『どうやってだ?今俺達に千年アイテムは無いんだぞ…』

「それなら…」

【マスター!お待たせしました!】

突如王都の上空にアポクリフォート・キラーが現れる

「なんだアレは!?」

『アヤカ!?』

【千年アイテム、回収完了です!投下します!】

そう言うとアヤカが一つの麻袋を投下する、その中には千年アイテムが全て入っていた。

『これは!?』

「俺が時間を稼いでる間にアヤカに回収をお願いしてたんです!」

『これなら!』

 

 

 

 

「ゾーク…来ます!!」

「投石部隊!放て!!」

投石器から放たれた巨大な石がゾークに直撃する

【おのれ虫けらどもが!】

ゾークは炎で投石器を焼き尽くし兵士達が吹き飛ばされる

「「うわ~!!」」

【ファラオよ滅びるがいい!!】

ゾークの言葉と共に空から落雷が落ちる!

「ファラオ!!」

咄嗟にシャダがその身を盾にするが

『反射の陣!!』

【何!?グオッ!!?】

落雷がゾークに向かい跳ね返る

『遊戯!無事か!?』

『遊海!』

遊海が精霊アーマーを纏い雷を跳ね返したのだ

 

遊海 魂75

 

「シュウ!なんだその姿は…いや、お前は誰だ!」

セトが遊海に問いかける、シュウは確かに優秀な男だったが魔術で空を飛んだり、精霊の力を身に纏うような術は使えなかったはずだと…

 

『セト様、俺はシュウではありません。しかしファラオの味方です!』

「信じるぞ…!!」 

【おのれ!貴様…邪魔をするな!!】

ゾークがその巨大な腕を振り上げる

『来い!「A No.39希望皇ホープ」!「ムーンバリア」!!』

《ホープ!!》

遊海達の前に白い巨人が現れ、攻撃を防ぐ

「なんと!?」

【おのれ異界の力を!】

『ホープを素材にランクアップエクシーズチェンジ!「SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング」!!「ホープ剣ライトニング・スラッシュ」!』

【ぐおおっ!?】

ホープの斬撃がゾークの胸を切り裂く!

 

遊海60

 

「攻撃が効いてるぞ!」

「やっちまえ!光の戦士!」

兵士達が完成をあげる

『遊海!また無茶を…魂を使いすぎだ!俺も神で…』

『…大丈夫…遊戯少しでも体力を回復させろ…神を使うタイミングを誤るな…!ホープ!戻れ!』

遊海はホープをカードに戻し精霊アーマーを解除する

「シュウ!何を?」

「奴に一撃、強烈な一撃を加えます…、あとは頼みます!」

『遊海!』

 

 

 

 

【ぬぐぉぉ!!おのれ転生者…!?】

「『パワーボンド』!『サイバードラゴン』三体融合!『サイバーエンドドラゴン』!『リミッター解除』!」

ゾークの目の前に自身の3倍近い体長を持つ機械龍が現れる。

「放て!!『ファイナル・エターナル・エヴォリューション・バースト』!!」

サイバーエンドから最高威力の光線が放たれる

【ぬぐぉぉおぉぉお!!!?】

「「うわぁぁ!」」

兵士達が余波で飛ばされ、光線がゾークを飲み込む…

光が晴れるとゾークが砂になり崩れ去った…そしてサイバーエンドドラゴンも崩れ去る。

 

「「神官が邪神を倒したぞ!ファラオ万歳!!」」

「「「ばんざーい!!」」」

「グッ!」ドクン

『遊海!?大丈夫か!?』

遊海は胸を押さえて倒れる

 

遊海 魂5

 

「今のは…無茶をし過ぎたかな…?」

『遊海、お前何をした?』

「デュエルモンスターズで攻撃力16000相当の攻撃をした…ただし『パワーボンド』で俺は4000のダメージを受ける…しばらくは動けない…」

『しかしゾークは倒せた!お前のおかげだ!』

「…遊戯」

『なんだ?』

ここからが本番だ(・・・・・・・)…!後は任せる…」

『なんだって?』

《何を喜んでいる?…ゴミ共よ…》

「「えっ…!?」」

崩れたゾークの砂が動き始める…砂は空に舞い上がり徐々に形を作る…そして

【我は不死にして不滅だ!!】

「ゾークが復活しただと!?」

「化け物め…」

『くっ!』

ファラオ達は戦慄する…あの巨大な龍の攻撃でも倒せないのかと…

「遊戯…セト…神と白き竜を…」

『…わかった!』

 

 

『今神の力によりて、邪神を倒す!出でよ!三幻神!「オベリスクの巨神兵」!「オシリスの天空竜」!「ラーの翼神竜」!』

石板の神殿から赤・青・黄の光が飛び出しゾークの後ろに着弾する。

そして大地からオベリスクが、水平線の果てからオシリスが、そして闇に覆われた天からラーが降臨する。

『三幻神…召喚!!』

 

 

「シャダ!千年錠を借りるぞ!」

「シモン様!?何を!」

「この千年錠の最初の持ち主は…ワシじゃ!

この老いぼれにまた力を貸してくれ…!王宮の魔神よ!

石版に封印されし聖五体を解き放ち、守護の力を与えよ!

出でよ、我がいにしえの精霊、エクゾディア!」

シモンの言霊と共に地面に赤い五芒星が描かれ、地中より5枚の石板が現れる。

やがて地面が割れ鎖に縛られた巨神…エクゾディアが現れる。

 

かつて…押し寄せる敵国の軍勢を退けるため、アクナムカノン王と共に戦いし精霊…その力は一夜にして千の軍勢を殲滅したという。その大きすぎる力ゆえにシモンは二度と使わぬと誓い、街の守りとして封じていた…しかし!

「今その枷を解く!行くのだエクゾディア!ファラオと共に!!」

エクゾディアは鎖を粉砕しゾークに向かう

「キサラ…力を借りるぞ!!いでよ白き龍!!」

セトによりブルーアイズが召喚される。

『行け!三幻神!!』

「エクゾディア!」

「白き龍!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これで勝負はわからなくなったな、バクラ!』

「ちっ、三幻神にエクゾディア、白き龍を召喚しやがったか…!遊戯、どうやらこれがラストターンのようだな…もうこんなテーブルでの駆け引きは必要ねえ!文字通り、世界の命運がこの一戦で決まる!もはやこの体は必要ねえ。オレは本来あるべき姿に戻るぜ!!」

『貴様…やはりゾーク!!』

 

バクラに宿りし闇の人格…その正体はゾークだった、ゾークは現世にて千年アイテムを揃え完全な復活を果たすために暗躍していたのだ。

「フハハハ!遊戯よぉ!行くぞ我らが…戦場へ!」

『望むところだ!』

バクラそして闇遊戯は魂をゲーム盤へ移動する、遊戯はファラオに、バクラはゾークへ憑依する。

 

 

 

【来るがいい!非力な神!そして精霊共よ!闇の力に勝てると思うな!!】

ファラオ 魂90

シモン  魂90

セト  魂90

遊海   魂10

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウインドストーム!!」

「ドルフィンアタック!」

その頃、遊戯対バクラのデュエルも終盤をむかえていた…

 

翠 魂20

 

「はぁ…はぁ…!」

「翠ちゃん大丈夫!?」

「だい…じょうぶです…」

「遊戯!頼む!バクラを倒してくれ!」

 

遊戯対バクラのデュエルはライフ的には遊戯が優勢だった、しかしバクラはライフではなくデッキを削って遊戯を倒そうとした、そのかいがあり遊戯のデッキは残り1枚となっていた。

そして翠達もバクラの呼び出した死霊に追い詰められ翠の魂も残り少なくなっていた。

 

 

「これでターンエンドだ。さて、フィールド上のモンスターは14体。てめえのデッキは残り1枚。これじゃもうどうすることも出来ねぇなぁ!フフフ、遊戯!てめえ弱ぇなぁ。王様がいねえと何も出来ねぇのか?」

 

「バクラくん、ボクのデッキには君のアンデットロックデッキをやぶるカードが1枚だけ眠っていたんだ!僕のターン!ドロー!」

「僕は場の『マシュマロン』と、『サイレント・マジシャン』を生贄に捧げ…『破壊竜ガンドラ』を召喚!」

遊戯の場に全身に赤い玉のついた竜が現れる

 

「『破壊竜ガンドラ』の特殊魔法攻撃!デストロイ・ギガレイズ!」

ガンドラの宝玉から赤い光線が無数に放たれる、それによりフィールドを漂っていたバクラの場の浮遊モンスターや杏子達を襲っていた死霊立ち塞がる破壊される。

 

「なんだと!?」

「『サイレントソードマンLv7』で攻撃!沈黙の剣!」

「こ…こんな器ごときに俺様が負けるだと…!

しかし足止めはできたぜ…」

 

「遊戯!やったわね!!」

「うん!早く名前を!」

 

 

 

そしてファラオの名前を確認する遊戯達…しかし

「なぁ…これって…」

「古代神官文字…」

「読めない…」

そこに刻まれていたのは神官文字…現代人の決闘者である遊戯達には読めなかったのだ

「どうすればいいの…そうだ!翠ちゃんなら!」

「…ダメです…わかりません…」

「どうして!?翠ちゃんは今エジプトの人になってるんだから読めるんじゃないの!?」

「…すいません、正確には読めるんですけど伝えられないんです。」

「翠さん、それはどういう…」

 

「…たぶんNPCはファラオの名前を口にしたり書いたり出来ない制約があるんです、私と遊海さんは侵食の呪縛は解けました、けどその制約がまだ働いているんだと…」

「そんな!何か方法はないのか!」

「一つあります…賭けですけど…」

「杏子さんの渡したカルトゥーシュです…あれに名前を刻めば…」

「でも、どうやって…」

「今の遊戯さんみたいにです!」

「えっ!?」

「この世界は記憶の世界…いわば夢の中とも言えます…つまり」

「そうか!僕達がこの文字を覚えて、もう一人の僕のカルトゥーシュにイメージで刻めば!!」

「あいつなら名前が読める!」

 

そして遊戯達は必死にその図形を覚える…そして…

 

「皆さん!イメージした下さい!もう一人の遊戯さんの所に行くと!」

すると

「うおぉっ!体が浮いた!」

「私…飛んでる」

「これなら!!」

「皆さん行きま…!!」

 

・・・翠・・・

 

 

「翠ちゃん?」

「ウィンダ!!王宮まで全速力!!」

「了解!!?」

翠はミドラーシュに掴まると遊戯達の数倍の速さで飛び出して行く!!

「翠ちゃん!!」

「まさか遊海に何かあったんじゃ!?」

「急ごう!!」

 

 

 

 

 

遊戯達よりも早く王都に着いた翠、そこで目にしたのは力を失い石化した三幻神と倒れ伏すファラオと神官達の姿だった…。

 

 



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決着

 やはりアイツは化け物か…まさかあの攻撃全てを耐えきるとは…

 

 

 

        時は少し前に遡る…

 

 

 

 

正史とは違いエクゾディア、白き龍、三幻神が同時に召喚されゾークに対して向かって行った。

エクゾディアとオベリスクが殴りかかり。

オシリスが体を締め上げ。

ラーとブルーアイズが息吹と太陽を束ねた光線を放つ。

そしてゾークが怯んだ所に

オベリスクのゴッドハンド・クラッシャー

 

エクゾディアの魔神火焔砲

 

オシリスのサンダーフォース

 

ブルーアイズのバーストストリーム

 

トドメにラーのゴッド・フェニックスまで叩きこんだ…

しかし…

 

【わっはっはっは!我は無敵!お前達の神如きに我を倒すことなど不可能なのだ!!】

 

 

ゾークは再び復活する、一旦は晴れた空を日蝕にて闇に閉ざしたゾークはその闇によって力を増す。  

 

ゾークはエクゾディアを切り裂き、三幻神を闇を持って力を奪い、ブルーアイズさえも撃墜した。

幸い神官達は遊海により事前に回復していたため命を失う事はなかったがそれでも多大なるダメージを受けて気絶している。

 

ファラオ 20

シモン 10

セト 10

遊海 20

 

そしてブルーアイズがやられ激昂した海馬が決闘盤を気合にて召喚し乱入、自身のブルーアイズを召喚する!

 

【何?知っているぞ…お前は海馬瀬人、お前も我に歯向かおうというのか】

「黙れぇ!オレは貴様が何者だろうと、この世界がどうなろうと知ったことではない…だが認めん。オレは決して認めんぞ。ゲームと称して人の命を弄ぶ輩を、ブルーアイズの敗北を!」

 

 

 

「三千年の時を経て、究極進化せよ。我が最強のしもべ、『青眼の究極竜』!」

海馬は融合を発動し自身、セト、キサラのブルーアイズを融合しアルティメットドラゴンを召喚した!

 

「食らえぇえ!化け物! 次元を超えてオレの未来のロードを切り開く光を!ブルーアイズ!『アルティメットバースト』!」

【ぐおおっ!?】

ゾークはアルティメットバーストによって大きく押し倒される

【おのれぇ・・・我に盾突くことがどういうことか、その身に思い知らせてやるぞ!

アルティメットドラゴンと共に滅せよ!ゾーク・インフェルノ!】

「迎え撃て!『アルティメットドラゴン』!『アルティメットバースト』!!」

ゾークの炎とアルティメットバーストはぶつかり合う、そして

 

 

 

『海馬!この一撃に…オレの全てのバーを…俺の命を掛ける!カリム、千年秤を!!』

「はっ!」

カリムはファラオに千年秤を託す

『海馬ぁ!』

「遊戯ぃ!」

『「うおおぉぉお!!」』

ファラオは千年秤によって究極竜と自身を融合させる

『「究極竜騎士」!!いくぞ!ゾーク!!『ギャラクシークラッシャー』!!!』

【こしゃくな・・・はぁっ!】

ゾークと竜騎士の攻撃がぶつかり大爆発を起こす、そしてゾークと竜騎士は光に呑まれ…

 

 

 

 

 

 

 

『う…やったのか?…っ、なん…だと!』

ファラオは倒れていた体を起こす…自身とライバルの力を合わせた最高の一撃、これで倒せなかったのはダーツだけであった…しかし…

【ハハハ!!】

ゾークはそこに存在していた、守護神、三幻神、白き龍、究極竜、究極竜騎士…その力を以てしても打倒は叶わなかったのだ…

 

 

【ははは!世界は最初…闇に満ちていた。そしてそこに光が湧き出してきた!

闇と光、所詮常に闇は光より先にある…それがこの世界の真理!

しかし愚かな人間どもは、すぐに闇を恐れだし、希望という名の光を振りかざす…

その光が、あまりにちっぽけで無力だとも知らずに。

その光が名も無きファラオ…お前だ!

お前のような微塵の如き魂では、我を倒すことなど不可能なのだ!】

 

『ゾーク!たとえこの身が滅びようと…俺の魂の光は誰かに受け継がれ、決して消えることは無い。貴様を倒すまでは!』

 

【ならば望み通り、消え去るがいい!】

ゾークは炎を飛ばす

『…くっ!!』

 

 

「『キラー』!『デストロイキャノン』!!」

「『ウェンディゴ』!『ウィンド・ガード』!」

【何!?】

ゾークの攻撃は光線とバリアによって防がれる

『遊海!翠!』

「…遊戯すまない…少し遅くなった!」

「少し休んでいて下さい!!」

【おのれ!NPC擬きが我に立ち向かうと言うのか?ははは!】

「ああ、確かにこの体はNPCだ!しかしそれがなんだ!」

「魂は私達の物です!それならば、あなたに立ち向かえる!!」

『遊海!翠!ダメだ!』

「遊戯…前に進め!…俺達が道を切り開く!」

「もう少しで皆も到着します…だからそれまでは…私達が!」

【来るがいい!異界の者よ!!】

 

ゾーク ∞

遊海 30

翠  30

 

「いけ!『アポクリフォート・キラー』!」 

【了解です!マスター!】

「お願い!ウィンダ!ウェン!」

『了解!』

 

 

まずキラーがその巨大な機体を生かしゾークに迫る!

【メテオ・クラッシャー!!】

【ぐおおっ!!舐めるなっ!!】

ゾークはキラーの突進を受け止める!

【今です!ウィンダさん!ウェンさん!】

《ウィンドストーム!!》

《ドルフィン・アタック!》

【があっ!!目が!】

アヤカがゾークを押さえている間にウィンダとウェンが目に攻撃を仕掛けた!

「今だ!『キラー』!」

【はい!『デストロイキャノン』!!】

【ぐおおっ!】

ゾークの胸にアヤカのレーザーが直撃する

 

「ウィンダ!いくよ!手札から『影依融合』を発動!『エルシャドール・ミドラーシュ』と光の『影依の原核』を融合!神の探訪者よ!影の源と交わりて、影の巨人を呼び出さん!融合召喚!!レベル8!『エルシャドール・ネフィリム』!!」

《la~!》

 

ミドラーシュと原核が融合しシャドールの最高戦力たる巨人が現れる

「お願い!『ネフィリム』!『影依の操糸撃』!」

《Iaー!!!》

ネフィリムの糸がゾークを切り裂く!

【ぐっ!!こしゃくな!ダークフェノメノン!!】

「ウェン!」

《うん!ウィンド・ガード!!》

ネフィリムに迫る攻撃をウェンディゴの防壁が防御する

「(…やはりきついか…!でも、もう少し…!)」

 

 

遊海 15

翠  15

 

 

 

【ならば全てをお前たちごと、吹き飛ばすまでだ!!】

ゾークの腕にすさまじい力が集まる…

『遊海!翠!逃げるんだ!』

「遊戯さん…後は頼みます…!」

「私達が出来るのはここまでです…!」

『二人とも!何を!?』

 

「翠…後悔しないか?」

「はい…私は遊海さんに付いていくって決めてましたから…」

「いこう…彼らの未来を守るために!」

「はい!手札から『神の写し身との接触』を発動!『エルシャドール・ネフィリム』と『アポクリフォート・キラー』を融合!影の巨人よ!機殻の王と交わりて王の防壁とならん!!融合召喚!『エルシャドール・シェキナーガ』!!」

 

ゾークを囲むように顕現したのはキラーの玉座に座する巨人、シェキナーガだった

【何をしようと関係ない!!全て吹き飛ぶがいい!『カタストロフ』!!】

閃光と共に地面が砕けゾーク最大の衝撃波が周囲に広がるが…

 

 

【何?】

 

 

その力はシェキナーガによりほとんどの力を減衰された…そして…シェキナーガは機能を停止する。

『ゾークのあの攻撃をほぼ無効化した…!遊海!お前…』

「…ごふっ!!」

 

「コフッ…!」

 

遊海達の口から血が吐き出される 

 

『遊海!翠!』

 

遊海 0

翠  0

 

 

遊海と翠は徐々に体が崩れ…風に流されていく…

 

「…遊戯…後は…!」

「…頼みます…!」

 

カラン

 

そこに残ったのは二つのカルトゥーシュと千年アイテムだけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ははは!脆いものだな人間は!しかしその身を賭して我が攻撃を防いだ事は褒めてやろう!はははは!】

 

『ゾーク!!貴様ァ!!』

【さぁファラオよ!貴様も滅びるがいい!ゾーク…】

『魔導波ぁ!!』

【ごはっ!!今度はなんだ!!】

 

「もう一人の僕!」

『ファラオよ!』

「遊戯!」

『相棒!!皆!』

遊海達の時間稼ぎが成功し遊戯達がついにファラオの元にたどり着いたのだ

「遊戯!カルトゥーシュを!」

『え!?』

「カルトゥーシュに文字を刻んで君に名前を伝える!」

『わかった!』

ファラオは遊戯達にカルトゥーシュを渡す!

 

 

【させんぞ!人間共!】

【マスターの遺志は無駄にしません!!】

【何!?】

機能を停止していたシェキナーガが起動し、ゾークの動きを封じる。

 

【ならば!ゾークインフェルノ!!】

【しまった!?】

ゾークの龍から炎が吐き出される

「防壁輪!」

【なんだと!?】

海馬が間一髪攻撃を防ぐ

【お前は…ええい!邪魔をするな!『カタストロフ』!!】

【マスター…すいま…せん…!】

「ぐあああ!」

「「「「うわぁぁぁ!?」」」」

 

ゾークの一撃でシェキナーガは倒され、遊戯達も吹き飛ばされる。

【はっはぁ…これで!…ん?】

土煙の中からファラオが現れる、首にはカルトゥーシュがかかっている…

『…来たぜ!みんな!』

【何!?】

 

『今、ファラオの名の封印は解かれた!我が名は…アテム!』

 

「アテム…」

「それが君の本当の名前…!!」

遊戯と杏子が声を上げる

 

 

 

 

三千年に渡る封印からついにその名前の封印が解かれた!

《息子よ…正義は神の名の下にある…》

『父上!!』

《ファラオをもまた神…ファラオの名の下に、三幻神を束ねん…》

アテムに対しアクナムカノンの思念が闇を倒すための策を授ける

 

『ゾーク!友の結束が今…神を呼び覚ます!!』

「うわっ!?」

遊戯のデッキから赤、青、黄の光が飛び出し、三幻神に宿り復活を遂げる

 

「三幻神が…!」

「蘇りやがった!!」

三幻神は再びゾークと対峙する

【ははは!何度やっても同じこと…三幻神など我が敵では無いわ!!】

 

 

『そして今!ファラオの名の下に…神を束ねる!』

 

 

 

【何!?】

 

 

 

三幻神が光を放ち闇を照らす、その光は太陽の光のように優しく、暖かく…希望に満ちた光だった…。

そして大地からも祝福するように光の玉が昇っていく…

「なんだか…いい気持ちだぜ…」

 

「優しい光…」

 

「うん…」

 

「あったけぇ…」

 

 

 

そしてその光が一ヶ所に集まり形を成していく…

【うわぁああっっが!!なんだ!?】

 

『光の創造神…ホルアクティ!!』

【ハッ…!ホルアクティ…!】

そこに現れたのは金色の翼を持ち金色の鎧を纏った「母性」を象徴する女神だった…

 

『闇よ…消え失せろ!!』

 

 

ジェセル(光創世)

 

 

ホルアクティの言葉と共に神々しい光が放たれる…その光は全ての死霊を浄化し…ゾークの体に罅をいれる…

 

【おのれぇっ!!ガッ!!?】

ゾークはアテムだけでも道連れにしようと手を伸ばすが、それより先に腕に罅が入る

 

【ぐわぁあああっ!】

そしてゾークは光に呑まれ砕け、爆発する…それが古代エジプトを荒らした邪神・ゾーク・ネクロファデスの最期となった…

 

 

 

 

 

 

 

 

ーアテム…三千年前、あなた一人の力ではゾークを倒すことは出来ませんでしたー

 

ーそこであなたは、自らと共にゾークを封印する道を選びました。

しかし、再びゾークが蘇った今回、あなたには、あなたを守る友が、あなたを支える仲間がいた…それが唯一ゾークを葬り去る力だったのです…一人の力では不可能なことも、みんなの力が合わされば可能になるのですー

 

そう言うとホルアクティは再び光となって消えていった…

 

 

『ホルアクティ…』

「ゾークを倒したんだね!」

「遊戯なら必ず倒せるって信じてたぜ!!」

「傷は大丈夫なの?遊…あっ」

「もう遊戯じゃないんだったな…」

遊戯や城之内達が話しかける

 

 

 

『アテム…何か不思議な気分だ。

オレは相棒と、遊戯という名前を共有してきた。でも今は違う…アテム。それが、オレの名前…杏子、ありがとな。このカルトゥーシュのおかげだ』

「うん!…そういえば翠ちゃんは…?」

「遊海君もいないけど…?」

『「!…」』

遊戯と海馬は顔を背ける

 

「えっ!…どうしたんだよ?アテム?海馬?」

「オレ達が着く直前に巨大なモンスターが出てきたけど…あれ遊海の…だよな…」

『…これを…』

アテムは持っていたカルトゥーシュと千年アイテムを遊戯達に見せる…

「アテム…これって遊海と翠ちゃんの…!」

「なあ…アテム…嘘だろ…?」

「おい!海馬!なんとか言えよ!」

 

「…立派な散り方だった…!」

 

「「「「えっ?」」」」

 

『遊海と翠は…俺の為に時間を稼ごうと…全身全霊でゾークに向かっていった…それで…!』

 

「そんな!?嘘でしょ!ウソって言ってよ!」

「もう一人の僕…!」

「…遊海!出てこいよ!隠れてねぇでよ!出てこいよ!!」

城之内の叫びがエジプトに木霊する…その時

 

『なんだ!?』

 

アテムの持つ千年玉と千年指輪が光を放つ…そして空中に浮かび上がると光が強まり…

「うわっ!?」

「何!?」

『これは…!?』

 

 

 

 

光が収まると地面に見覚えのある二人が倒れていた、赤帽子の青年と紫髪の少女…遊海と翠だった…その姿は本来の姿に戻っている。

 

『遊海!翠!』

「翠ちゃん!!」

遊戯達は二人に駆け寄る、気絶しているが息はある…無事のようだ…。

「なんだよお前ら!心配かけやがって!」

「翠ちゃん…よかった…!」

「ふっ!流石もう一人の決闘王だ…遊海」

『遊海…翠…よかった…!…ん?』

徐々に遊戯やアテム達の体が薄くなっていく…どうやら記憶の世界はここまでのようだ…

 

 

 

 

『セト!』

「ハッ!ファラオよ私はここに!」

『闇は滅んだ。だが、その代償は大きい。

そして、失われていった掛け替えのない命。

その一つ一つの光を、命ある者の胸にともし続け、未来を築いていくしかない …セト、お前に頼みがある…

俺の王位を継承し、新たなるファラオとなってくれ…』

「今…なんと…?」

 

『お前が新たなファラオとなるんだ!』

 

「突然何をおっしゃるのです!我々はいったい何のために命懸けで…」

 

『オレはもう、この世界にはいられない…ここから先、俺の記憶は無い。俺はこの世界に存在しないんだ…もう時間が無い。俺は行かなくてはならないんだ…』

 

「ファラオ…そのお体は…!?」

 

『セト…お前は闇の大神官の誘惑にも、最後まで魂の光を失わず、見事闇に打ち勝った…』

『ファラオの証である、この千年錘をお前に託す!これからはお前がファラオとなり、この国をキサラや神官達と再建してくれ!!』

「ファラオ…」

 

『頼むぞ!セト!!』

 

 

そして遊戯達は世界から消滅する、そして意識は現実世界へと戻っていった…

 

 

「さようならー!王子!さようならー!!」

 




エジプト被害状況
防壁 小破
王宮・町 被害なし
ファラオ 退去

6神官
死亡 
アクナディン
マハード

生存 
シモン
カリム
シャダ
アイシス
セト
マナ
キサラ


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ケジメの決闘~決着の儀~ 友情は永遠に・・・

初代編最終話!





追記
6月12日 決闘内容を変更しました。


「どうしてお前達はそんなに無茶をするのかの…」

 

あれ…俺は死んだと思ったんだけど…声が聞こえる…

 

「ワシがこの空間に引き込まなければ普通に死んで、また輪廻の輪に行ってしまうところじゃったぞ…」

 

 

 

意識が覚醒する…体が動かない…ここは…?

「久しぶりじゃの遊海!」

「神…様…?」

俺の前に立っていたのは髭を蓄えた神様だった。

「あ~よいよい、無理に動くな!また体がない状態なんじゃから」

よく感じると手足のない転生前の魂だけの状態になっていた。

「俺は…」

「まったく…アテムを守るために自分達の魂を犠牲にするとは…ワシがお前達を観測してなかったら、危うく魂が消滅して無になるところだったんじゃ!!」

「神様…すいませんでした…あの…翠は…?」

「お主の隣に居るよ、同じく魂だけじゃがな…」

隣を見ると紫色の魂が浮かんでいた…

「翠…!」 

 

「ん…?あれ…私…?」

「どうやら気がついたようじゃの!」

「あれ…神様?…あれ!?体が無い!?

私また死んじゃったんですか!?」

「落ち着け!お前達が闇のゲームで魂を磨り減らし過ぎて、体を構築できないだけじゃ!!」

「よかった…」

「翠…おはよう!…なんとか生きてたな!」

「遊海さん!!よかったです!!」

 

 

 

しばらくすると魂の力が回復したのか、普段の姿をとれるようになる

「…やっぱり体がある方が落ち着くな…」

「魂だけだとやっぱりフワフワしてて…」

「まぁ、暫くはその状態にはならんじゃろ!」

「?どうしてですか?」

「やっとお主達の不老不死の申請が通ったからじゃよ!」

「本当ですか!?」

「そうじゃ!だから消滅直前のお前達の魂を回収できたのじゃ!それではお前達の不老不死について説明するぞ!」

 

 

 

 

神様によると不老不死肉体の特長は以下通り

 

①決闘以外の要因では死なない

 

②怪我はするが常人の数倍の早さで回復する

 

③病気・精神異常・洗脳を受けない

※決闘・カードによる術を除く(例 斎王の洗脳は決闘に敗北すると判定でかかる)

 

④決闘で死亡して、その後復活した場合、この能力も復活する

 

との事だ。

 

 

「これなら暫くは大丈夫じゃろう!」

「…ありがとうございます!神様!」

「うむ!それでは遊戯王世界を堪能して来るがいい!

…さらばじゃ!」

そして俺達は光に包まれ…

 

 

 

 

 

 

 

「…ここは…?」

「ん…」

『遊海!翠!』

「よかった!二人共、気がついた?」

目が覚めると最初の石室に戻っていた、どうやら俺達が最後に目覚めたらしい。

 

『遊海…すまなかった、俺が不甲斐ないばかりにお前達は…』

「いいんだアテム、とりあえず俺達は無事だからな!」

「そうですよ!気にしないでください!」

 

「あれ…?、なんで遊海がもう一人の遊戯の本当の名前知ってるんだ?」

「お前は王墓にいなかったよな…?」

「翠ちゃんはともかく…なんで?」

『あっ…!?』

「(まずい!口が滑った!?)」

「(遊海さん、まだ皆にあの事伝えて無いですよ…!)」

 

「「「…」」」ジー

 

「…ごめん、最初から名前を知ってたんだ!」

 

「「「なんだと!?/なんですって!?」」」

 

…見事にハモったな…

 

 

 

その後、城之内達に俺達の転生前の世界の知識で、最初からアテムの事を知っていたという事を伝えた…。

 

 

「本当なら遊戯達と一緒に記憶の世界に行って、場面で伝えようと思ってたんだけど…」

「まさか…NPCとして参加するはめになるとは、思ってなかったんです…」

 

「ならここに来る前に、遊戯にだけ伝えればよかったんじゃ…」

城之内が遊海に伝える

『いや、それじゃあダメだったんだ!』

「アテム?どうして?」

『ホルアクティは言っていた「あなたには、あなたを守る友が、あなたを支える仲間がいた…それが唯一ゾークを葬り去る力だったのです」と、仮に俺が遊海から名前を事前に聞いていたら結末は史実の焼き直しになっていたかもしれない、遊海はそこまで考えて俺の名前を伏せていたんだ…』 

 

「遊海、そこまで考えて…」

「すまない、皆…」

「ごめんなさい!」

遊海と翠は皆に見事な土下座を披露する

 

「ちょっと二人共!?そこまでしなくてもいいわよ!!」

「頭を上げてくれ!」

 

 

 

そんなこんなで遊戯達は石室を後にする、もちろん獏良も回収済みである。

そしてイシズの案内で俺達は旧クル・エルナ村…冥界の石板へと向かう…アテムの魂を冥界に返す…戦いの儀を行うために…。

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコン!

 

「はい?…アテム!どうした?デッキ作りは良いのか?」

『お前に用があってな…』

冥界の石板に向かう船の上、部屋で翠と談笑していると遊戯が訪ねてきた、戦いの儀の相手は既に表遊戯と決まっているが…

『遊海…頼みがある…!』

 

「…目をみればわかる、『俺と決闘しろ!』…だろ?」

 

『よくわかったな』

 

「理由を聞いていいか?」

 

『遊海、俺とお前の戦績を覚えてるか?』

 

「一勝一敗、バトルシティでは遊戯が勝ち、アメリカでは俺が勝った…」

 

『そうだ…しかしバトルシティではおまえは全力の加減を、アメリカでは三幻神を奪われた俺に焦りがあった…、俺達の決着はまだついていない!』

 

「…だからお互いに心身共に安定している『今』…決着をつけたいという事か…」

 

『そういう事だ…!』

遊戯はその身から凄まじい闘気を覗かせる…

「準備はできてるんだな…二人共!」

 

「『ああ!!』」

「なら付いてきてくれ!」

遊海はそのまま部屋に入っていく…

『遊海、どこへ行く…?』

「誰にも邪魔されないところに…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら!遊戯さん?どうしたんですか?」

「翠…部屋に誰も来ないように見張っててくれ…」

「…わかりました!」

 

遊海は翠に言伝すると『賢者の鍵』を使い空間を開く。

『遊海…これは!?』

「ついてこい…!」

「ああ…!」

 

 

 

二人が門をくぐるとそこはいつもの部屋ではなく、ただ広い空間になっていた…

『遊海…ここは?』

「ここは亜空間、誰にも邪魔を受けない場所だ!…さぁアテム!遊戯!俺達の『決着の儀』を始めよう!!」

『ああ!!勝負だ!遊海!!』

 

 

      『「デュエル!!」』

 

遊海 LP4000

遊戯 LP4000

 

 

 

 

「俺の先攻!ドロー!」

「デュエルディスク、リミッター解除!マスタールール3適用!」

決闘盤が近未来的な物に変わる

『くるか…!!』

 

「俺は手札から『クリフォート・シェル』を妥協召喚!『クリフォート』モンスターは自身のレベルを4、攻撃力を1800にする事で生け贄無しに召喚できる!」

紫色の巻き貝型の機械が現れる ATK 1800

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊海 LP 4000

シェル 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

「(もう一人の僕!頑張って!)」

『ああ、いくぜ相棒!俺は手札から「融合」を発動!手札の『バフォメット』と『幻獣王ガゼル』を融合し!「有翼幻獣キマイラ」を召喚!』

翼を持った双頭の獣が現れる ATK 2100

 

『バトルだ!「キマイラ」で「シェル」を攻撃!「幻獣衝撃粉砕」!!』

キマイラがシェルに突撃する!

「リバース罠オープン!『スキルドレイン』!ライフを1000払い、フィールドのモンスター効果を無効にする!」

『遊海、一体何を!?』

 

遊海LP 3000

 

「遊戯!フィールドを見るがいい!」

 

シェル ATK1800→2800 

 

『「シェル」の攻撃力が上がった!?』

「そうだ!『シェル』の攻撃力が下がっていたのは『モンスター効果』によるもの!よって効果が無効になりその枷は破れた!迎え撃て!!」

 

突撃したキマイラはシェルに破壊される

『ぐっ!?』

遊戯 LP4000→3300

 

『しかし!墓地の「キマイラ」の効果を発動!墓地の「ガゼル」を特殊召喚!』

爪の鋭い獅子型のモンスターが現れる DEF 1200

『カードを伏せて、ターンエンド!』

 

遊戯LP 3300

ガゼル 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー」

「いくぜ…遊戯!これが俺の全力だ!」

『来い!遊海!!』

 

「手札から『クリフォート・ツール』と『クリフォート・アセンブラ』をペンデュラムスケールにセッティング!」

遊海の横に光の柱が現れその中に、黄色いコアの付いた機械と石板のような機械が現れる

 

『なんだそのカードは!?』

「(モンスターなのに魔法カード!?)」

「このモンスター達はペンデュラムモンスターという、モンスターと魔法、両方の性質を持ったカードだ!」

『そんなカードがあるとは…!』

 

「ペンデュラムスケールの『ツール』の効果!自身のライフを800払いデッキから『クリフォート・ゲノム』を手札に加える!」

 

遊海 LP 3000→2200

 

「ペンデュラムモンスターには魔法カード扱いの時、『スケール』という数字を適用する!『ツール』は9!『アセンブラ』は1だ!」

『何が起きる…!』

「これにより俺は手札からレベル2~8のモンスターを同時に召喚できる!」

『なんだと!?』

「さぁいくぜ!『ツール』と『アセンブラ』でペンデュラムスケールをセッティング!我が魂を守りし大いなる力よ!この身に宿り闇を祓え!ペンデュラム召喚!手札より『クリフォート・ゲノム』!『クリフォート・アセンブラ』!」

ツールとアセンブラの開いた穴から2体の機械が現れる

ATK 2400

ATK 2400

 

『攻撃力2000越えが3体!?』

「遊戯…確かにこれで何も無ければ俺の勝ちだ!しかし…俺は全力でお前に挑む!俺は『アセンブラ』『ゲノム』『シェル』の3体を生け贄に捧げ…現れろ!我が相棒たる機殻の王!『アポクリフォート・キラー』!!」

 

『なんだと!?』

 

3体のクリフォート達が空に昇り…合体する、そして遊海を守護せし精霊、キラーが現れる

【遊戯様!今日は手加減しませんよ!】ATK 3000

 

『…これが遊海の全力…!』

 

「そして生け贄にした『ゲノム』効果を発動!俺のフィールドの『スキルドレイン』を破壊する!」

『何?』

「それにより『キラー』効果が開放される!『キラー』の効果!相手は手札・フィールドからモンスターを一体、墓地に送る!」

『それが狙いか!…なら俺は手札から「オベリスク」を墓地に送るぜ!』

 

「バトル!『キラー』で『ガゼル』を攻撃!『デストロイ・キャノン』!」

【主砲…発射します!】

キラーの砲撃がガゼルに迫る

『リバース罠『攻撃の無力化』!俺に対するダメージを0にしてモンスターの破壊を防ぐ!』

遊戯とガゼルは虹色の渦巻きに守られる

 

「防がれたか…俺はターンエンド!そしてターン終了時にペンデュラムスケールの『アセンブラ』の効果を発動!俺はこのターン生け贄にしたクリフォートモンスターの数ドローする!3枚ドロー!」

 

遊海 LP 2200

キラー P ツール・アセンブラ 伏せ1 手札3

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『手札から「強欲な壷」を発動!2ドロー!』

「(嫌な予感がする…!)」

 

『手札から魔法カード『死者蘇生』を発動!墓地から蘇れ!「オベリスクの巨神兵」!!』

大地を砕き墓地からオベリスクが現れるATK 4000→3500

 

 

『何!?「オベリスク」の攻撃力が下がった!?』

「『キラー』の効果!特殊召喚されたモンスターの攻守は500下がる!『機殻の戦場』!」

『ならば手札から魔法カード「古のルール」を発動!現れろ!我が最強のしもべ!『ブラック・マジシャン』!!』

《ファラオよ!我が魂!三千年を越えて再び貴方と共に!》 ATK 2500→2000

 

「ヤバっ!?」

 

『バトルだ!「オベリスク」で「キラー」を攻撃!「ゴッドハンドクラッシャー」!』

 

オベリスクの拳がキラーを貫く!

【私…ほとんど出落ちじゃないですか!?】

「ぐっ!」

遊海LP 2200→1700

 

『遊海!これで終わりだ!「ブラック・マジシャン」でダイレクトアタック!』

 

《黒・魔・導!!》

ブラック・マジシャンの魔法が遊海に直撃し爆発が起きる

 

『なんだと!?』

しかし煙の中から遊海が現れた、そのライフに変化は無い。

 

「俺はリバース罠『機殻の凍結』を発動していた!それによりこのカードをモンスターとして特殊召喚し攻撃を防がせてもらった!」

 

『罠モンスター…やるな遊海…俺はターンエンドだ!そして特殊召喚された神は墓地に戻る!』

遊戯LP 3300

ブラックマジシャン ガゼル 手札0

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「いくぜ!俺は再びペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!エクストラデッキより現れろ!『ゲノム』『シェル』『アセンブラ』!さらに手札から『アーカイブ』!」

ATK 1800

1800

2400

1800

 

 

『何!?その3体は墓地にいったはず!』

 

「ペンデュラムモンスターは基本、墓地に送られず融合デッキに表側で加える!さらにペンデュラム召喚によりそのモンスター達は再び特殊召喚できる!そして手札から装備魔法『機殻の生贄』を『アーカイブ』に装備!そして『生贄』の効果により2体分となった『アーカイブ』を生贄に…現れろ!『クリフォート・アクセス』!」

赤色のコアの機械が現れるATK 2800

 

「そして生け贄にした『アーカイブ』の効果で『ガゼル』を手札に戻す!さらに『アクセス』の効果により自分と相手の墓地にいるモンスターの数の差…今は俺が一体、遊戯は三体!よって俺はライフを600回復し、遊戯に600ダメージを与える!」

『なんだと!?ぐあっ!!』

 

遊海LP 1700→2300

遊戯LP 3300→2700

 

「さらに墓地に送られた『生贄』の効果で二体目の『キラー』を手札に加え、さらにツール効果で800ライフを払いフィールド魔法『機殻の要塞』を手札に加え…そのまま発動!」

 

紫色の光線がフィールドを包む

遊海LP 2300→1500

 

 

「そして『要塞』の効果により俺は一度だけクリフォートモンスターを追加で召喚できる!」

『まさか!』

「再び現れろ!『アポクリフォート・キラー』!!」

【私!復活!】ATK 3000

 

 

「バトル!『アクセス』で『ブラックマジシャン』を攻撃!」

アクセスから放たれたビームが魔術師を貫く

《ファラオよ!申し訳ありません…!》

『マハード!!』

遊戯LP 2700→1900

 

「『キラー』でトドメだ!『デストロイキャノン』!」

 

『…ああ、俺の敗けだ…!』

 

遊戯LP 0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

『遊海…俺の完敗だ!』

「満足したか?」

『…ああ、これで俺は戦いの儀を迎えられる…なぁ遊海、一つ聞いていいか?』

「なんだ?」

『お前は以前、俺達に転生者である事を話してくれた…転生する前から俺達の事を知ってる事も…だから知りたい、お前はこれからどうするんだ?』

遊戯は遊海に問いかける、未来を知っている上でどういう行動をするのかと。

 

「…遊戯、そういえば二人にはまだ話していない事があったな…」

『話していない事?』

「俺と翠の『特典』についてだ…」

『「特典」?』

 

 

 

 

「俺と翠は神様の手違いで死んでしまった、だから神様はお詫びにこの世界への転生と5つの特典をくれたんだ。」

 

「俺は前世のカードの持ち越し、俺専用の決闘盤、この世界の知識、精霊の力とパートナー精霊…」

「翠は前世のデッキ、料理の才能、決闘盤、黄金律…」

 

『二人共4つしか無いじゃないか?』

 

「…最後の一つは二人共、同じものなんだ…!」

そういうと遊海はその手に『伝説の剣』を実体化させる…そして

 

「…ガボッ!!」ザシュ

 

『遊海!!!』

遊海は躊躇なくその剣を自身の胸に突き立てた!

胸からは血が溢れ、周囲に広がっていく…

『遊海!お前なにを!!』 

 

「来る…な!!」

 

『!?』

 

「見て…いてくれ…これが最後の…特典だ…ゴフッ!」

 

遊海は剣を引き抜く、すると胸から白い煙が上がり傷が塞がっていく…

 

『これは…!?』

 

「これが…最後の特典…『決闘以外での不老不死』だ…!」

 

『不老不死…!?』

 

「俺と翠は…命をかけた決闘に負けない限り死ななくなった…俺達はこの力を使い、俺の知る未来をより良く変えていく…そのつもりだ…!」

 

『遊海…それがどれだけ辛い道か、わかっているのか?』

 

「ああ…これから先、たくさんの出会いと悲しい別れがあるだろう…しかし翠と一緒なら…乗り越えられるはずだ…!」

 

『遊海…』

 

「アテム…行こう、次はお前の…お前達のケジメをつける番だ!」

 

『ああ…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日…戦いの儀を迎えた、遊戯が千年アイテムを石板に冥界の石板に嵌める…すると壁に掲げられたウジャト眼が輝き遊戯を照らす…。

すると遊戯の影が二つに別れ…アテムが実体化する、そして遊戯対アテムの決闘…戦いの儀が始まった…!

 

 

 

 

 

 

 

 

遊戯とアテムのデュエルは今までのデュエル以上の決戦となった。

アテムは絶対的タクティクス、そして『自身のイメージしたカードを引ける』という能力を使い遊戯を攻める。

 

遊戯は長い間一緒にいたアテムの動きを読みつつモンスターで攻め、魔法で守る。

 

二人のデュエルは白熱した、そして…その時を迎える…。

 

 

『俺は「死者蘇生」を発動!墓地から蘇れ!天空の神!「オシリス」!』

アテムのフィールドにオシリスが降臨した!

『(俺の勝ちだ…相棒…!)』

 

「(わかっていたよ、もう一人の僕…君が僕なら神を呼んだ…)」

「僕は今…黄金柩の封印を解く!」

 

フィールドにあった黄金の箱のフタが開く、この場での『封印の黄金柩』の効果…それは「自身のデッキ・手札のカード1枚を封印し、お互いにその効果を使えなくする」というものだった。

 

封印されていたのは『死者蘇生』…それによりオシリスは風化し消滅する…それは遊戯からアテムに向けたメッセージ…「死者は現世に留まっていけない」という引導だった。

 

「…『サイレントマジシャン』で!プレイヤーへのダイレクトアタック!!『サイレント・バーニング』…!!」

 

『……!』

 

アテムLP 0

 

遊戯 WIN!

 

それは遊戯がアテムを越えた瞬間だった…

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…うう!」

勝者でしょある遊戯は静かに涙をこぼす…

『俺の負けだ、相棒…!

立て!勝者が膝まずいてどうするんだ…?

俺がお前なら涙は見せないぜ…』

アテムは優しく遊戯に語りかける…

 

 

「僕は弱虫だから…僕にとって君はずっと目標だったから…!

君みたいに強くなりたくて…ずっと!」

 

『お前は弱虫なんかじゃない…!

ずっと誰にも負けない強さを持っていたじゃないか…!

「優しさ」という強さを…!!

俺はお前から教わったんだぜ…?』

 

…そして戦いの儀により魂の真実を見極めたウジャト眼が輝きだす…

「ファラオの魂よ…ウジャト眼にファラオの名を…!」

イシズがアテムに伝える

 

『我が名は…アテム!』

アテムが自身の名前を告げる…するとウジャト眼が強く輝き扉が…冥界への門が開く、そしてアテムは光に向かい歩きだす…仲間達はそれを見送る…

遊戯や杏子達がアテムに伝える

「忘れない!あなたの事を!!」

杏子が

 

「遊戯!ファラオだろうがアテムだろうがお前は『遊戯』だ!

千年経とうが俺達は仲間だ!」

城之内が

 

「決して忘れないよ!!君の事を!!」

遊戯が

 

それぞれの想いをアテムに伝える…

 

「アテム…いや遊戯!また会おう!!」

遊海は知っている、それは叶わない事だと…

『…!!』グッ!

 

アテムは右手でサムズアップしながら光へ向かう、光の中にはファラオに仕えた6神官、そして父王・アクナムカノンの姿があった。

 

そして冥界の扉が閉まる…あの世とこの世を分かつように…

「遊戯!」

「もう一人の…僕…!」

遊戯達が別れに涙する…すると

 

ゴゴゴゴ!!

 

突然、地響きが鳴り遺跡が崩れ始める…そして冥界の石板が崩れ落ちる、まるで使命を終えたと言わんばかりに…

「千年アイテムが!!」

「遊戯!来い!あぶねぇぞ!」

「ここは危険じゃ!!」

「お前達!避難だ!!」

 

遊戯達は崩壊する遺跡から慌てて避難する…その崩壊の中に俺は見た…体の透けたシャーディの姿を…

 

《異界の者よ…彼らを頼む…》

「えっ?」

「遊海さん!!早く!!」

「ああ!」

最後に何か聞こえたような…?

 

 

 

そして遺跡は完全に崩れ落ちてしまった、これで冥界への扉は二度と開く事はないだろう…。

 

「逝っちまったな…あいつ…」

「ああ…」

本田と城之内が呟く…終わったか…三千年に渡る長い旅が…

 

 

こうして遊戯とファラオの光の中に完結する物語は幕引きを迎えた…これからは遊戯とその仲間達の紡ぐ新しい物語が始まる…。

 

           第1章 遊戯王DM編 完

 

 




これにてDM編終了となります、次はオリジナルストーリーを挟みGX編へと話が進みます。

皆様に作品を御覧頂き、お気に入りが100件を突破しました、ありがとうございます!!
不器用な作者ですが、これからものんびり頑張らせていただきます!

これからもよろしくお願いいたします!


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1.5部 GXまでの断章
エジプトでのやり残し~次元領域での決闘~


GXまでの断章1,5部を開始します!
まずはDARKSIDE OF DIMENSIONSを再構築した物語です。
…正直あの作品は完成されているのであまり手をつけたくなかったのですが…S.Kなりのアレンジを温かい目で見て頂ければ幸いです。


注意!
この話では映画効果・OCG効果を折衷したカードが登場します。


 戦いの儀を終えた俺達は遺跡近くの町に滞在していた、海馬さんは既に日本に向かっている。

なんでもゾーク復活未遂の余波で世界的災害があったらしくその対応のためだそうだ。

遊戯達はホテルでアテムとの思い出を語り合っている。

 

 

「なぁ…遊戯覚えてるか?アイツの初ゲーム!」

「うん!牛尾くんとのゲームだったね!」

「そうだ!それで牛尾の奴…」

 

牛尾か…懐かしい名前が出てきたな…高校で見かけたけどしょぼくれてたな…あれが未来でセキュリティやるとはな…

 

「ねぇみんな!明日には私達日本に戻るけど、やり残しは無い?」

杏子がみんなに声をかける

「僕は無いよ!

もう一人の僕も見送れた!だから大丈夫!」

「オレは…あっ!

カルトゥーシュ作ってねぇ!…でも金が…!!

本田!奢ってくれ~!」

「おい!城之内!俺にタカるなよ!?」

「まったくもう、あの二人は…遊海と翠ちゃんは?」

「俺は…」

 

《彼らを頼む…!》

 

…シャーディのあの言葉…もしかして…

「遊海さん?どうしたんですか?」

「…遊戯、すまない俺は少しエジプトに残る…」

「えっ?どうして?」

「ちょっとやり残した事がある…翠、お前はどうする?先に戻ってもいいぞ?」

「私は遊海さんに付いていきます!」

「わかった!ありがとう翠!」

 

「…お~い、誰か苦いコーヒー持ってきてくれ…」

「大丈夫か…?本田…」

「あはははは…」

「(いいな~二人共ラブラブで!私も遊戯と…)」

「杏子?どうかした?」

「なんでもない!」

「?」

 

 

 

 

 

 

 

翌日、遊戯達と別れた俺と翠は町外れにいた…。

 

「遊海さん、やり残した事って?」

「今から確かめる…!

千年玉よ!千年アイテムの場所を示せ!!」

 

俺が唱えるとオーブから三本の光が伸びる…

 

一つは冥界の石板のあった遺跡へ

 

一つは翠の指輪に

 

…そして一つは遺跡近くの別の場所に…

 

「遊海さん…これは…!?」

「やっぱりか…行こう、翠」

俺は光の行き先に向かった…

 

 

 

 

 

 

光の行きついたのは1件の小屋だった、一見人気も無く生活感もないが…感じる、たくさんの意識が集まっているのを…

「ここか…翠、アヤカ、何か感じるか?」

「私は特には…でも少し冥界の石板のあった遺跡と同じ雰囲気が…」

「マスター、レーダーに数値異常があります…目では見えませんが…何かがあります…!」

翠とアヤカがそれぞれの思った事を伝えてくる。

 

「アヤカ、正解だ…ここにはある場所への入り口がある、これからそこにアクセスするぞ…!」

「遊海さん…もしかして…!」

「…干渉開始!!」

 

俺は精霊の力を千年玉に集中し放出、空間に孔をあける

「いくぞ!」

そして俺は孔の中へと入っていった。

「遊海さん!置いていかないでくださ~い!」

「マスター!翠さん!…まったくもう…!」

 

 

 

 

 

 

孔をくぐり抜けるとそこは空間に浮く不思議な場所…浮島だった、そこにはストーンヘンジのような巨石があり、地面には千年錐のような模様が刻まれている。

そしてそこには数人の人の姿があった…。

 

「お前達は何者だ!…プラナではないな…?」

黒人の青年が話しかけてくる。

「ああ、俺達はただの決闘者だ…無理矢理だがこの空間に干渉させてもらった…ディーヴァという奴はいるか?」

 

「…ディーヴァはボクだ…お前は何者だ?」

黒人…マニだったかな?の後ろから不動 遊星に似た髪型の青年・ディーヴァ(藍神)が現れる…その手には映画と同じく箱…量子キューブが浮かんでいる。

 

「俺は白波 遊海だ、シャーディからお前達の事を託されて会いに来た!」

 

「シャーディ」…その言葉を聞いた途端、ディーヴァの目に暗い光が宿る

 

「シャーディ様は5年前に死んだ!何故お前があの人の事を知っている!!

…まさかアイツの仲間か?許さない…許さないぞ!!」

「おい!ちょっと待て!?話を…!」

 

「うるさい!!次元領域展開!!」

ディーヴァの声と共に周囲を赤い光が走る!

「兄さん!!どうしたの!?やめて!」

背の低い女の子…セラがディーヴァを止めようとするが…

 

「セラ!下がっていろ!アイツはシャーディ様の仇の仲間だ!アイツを倒してバクラの居場所を突き止める!」

 

効果はない…映画の藍神ってあんなだったっけ!?

「遊海さん!」

「翠…下がっていてくれ!決闘で正気に戻す!」

 

俺は決闘盤を構える…

 

 

 

 

 

 

 

 

       「「デュエル!!」」

 

遊海LP 8000

ディーヴァLP 8000

 

 

 

 

●特殊ルール 次元領域デュエル

・リリース無しであらゆるモンスターを通常召喚可能

但し攻守は0でプレイヤーの任意で0~ステータス通りの数字を選択出来る。

 

・モンスター同士の戦闘ダメージは0

モンスターが相手によって破壊された時にコントローラーは表示形式分の数値のダメージを受ける。

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「(ライフ8000になってる!?)俺は『サイバードラゴン』を次元召喚!はぁっ!」

機械竜が現れる ATK 0→2100

 

「ふん!瞬時にこの世界のルールを理解したか!」

 

「俺はカードを伏せてターンエンド!」

 

遊海LP 8000

サイバードラゴン 伏せ1 手札4

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボクのターン!ドロー!」

「手札から『方界胤ヴィジャム』を次元召喚!」

一つ目の胴体と翼を持った悪魔が現れる ATK 0

「カードを4枚伏せてターンエンド!」

 

ディーヴァLP 8000

ヴィジャム 伏せ4 手札1

 

 

 

 

 

「エンドフェイズにリバース罠『サイバーネットワーク』を発動!デッキの『サイバードラゴン・ドライ』を除外する!俺のターン!ドロー!」

 

「スタンバイフェイズに『ネットワーク』の効果を発動!『サイバードラゴン・フィーア』を除外する!」

「そして手札から『サイバードラゴン・コア』を次元召喚!」

赤いコアを持つ機械竜が現れる ATK 400

 

 

 

 

 

「『コア』の効果によりデッキから『サイバーロードフュージョン』を手札に!(あれ?こんなカード入れたっけ?)」

「そして手札から『サイバーレヴシステム』を発動!手札の『サイバードラゴン』を特殊召喚!」

2体目の機械竜が現れるATK 2100

 

 

「俺は星5の『サイバードラゴン』2体でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!現れろ!進化せし機械龍!『サイバードラゴン・ノヴァ』!」

エクシーズ召喚の銀河から赤いラインの翼を持った機械龍が現れる ATK 2100

 

 

「なんだ!?その召喚法は!?」

マニが驚きの声を上げる

「…おもしろい事をするな、お前は…?」

ディーヴァは冷静?にこちらを観察している…なんだ?

何か違和感を感じる…?

 

 

 

「…俺はさらに『ノヴァ』を一体でオーバーレイネットワークを再構築…ランクアップエクシーズチェンジ!機械龍よ!更なる進化を遂げ無限の力を得よ!ランク6!『サイバードラゴン・インフィニティ』!」

ノヴァが黒い装甲を纏い進化を遂げ、インフィニティが現れる ATK 2100→2700

 

「そして『インフィニティ』の効果発動!『ヴィジャム』をこのカードのオーバーレイユニットに変換する!『サイバーソウルローバー』!」

ヴィジャムが光の玉に変換されインフィニティの回りを周回する

ORU3→4

ATK 2700→2900

 

 

「なんだと!?」

「バトルだ!『インフィニティ』でダイレクトアタック!『インフィニティ・エヴォリューション・バースト』!」

インフィニティがエネルギーを溜め始める

 

 

「リバース罠!『方界降世』を発動!デッキから2体目の『ヴィジャム』を…」

「その瞬間!『インフィニティ』の効果を発動!オーバーレイユニットを一つ取り除きその効果を無効にする!」

インフィニティの目から電撃が放たれ罠カードを破壊する

「なんだと!?」

ORU 4→3 ヴィジャム

ATK 2900→2700

「攻撃を続行しろ!インフィニティ!」

「ならばリバース罠『方界輪廻』を『インフィニティ』を対象に発動!お前は手札・デッキ・墓地から同名モンスターを召喚しなければならないがそのモンスターは融合デッキから出てきたモンスターだから召喚されない!さらに『インフィニティ』に方界カウンターを乗せ攻撃力を0にし効果も無効化する!」

「しまった!?」

 

 

インフィニティは錆び付きその動きを停止する

ATK 0

 

 

「さらに手札から『ヴィジャム』を特殊召喚!」

2体目のヴィジャムが現れる ATK 0

 

 

「俺はカードを伏せてターンエンド!」

遊海LP 8000

インフィニティ(アンディメンション) コア ネットワーク 伏せ1 除外2 手札2

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボクのターン!ドロー!」

 

「フィールドの『ヴィジャム』を生け贄に『方界獣ダーク・ガネックス』を特殊召喚!この方法で召喚した『ガネックス』は攻撃力1000となる!」

ヴィジャムがゾウのような鎧を纏いダークガネックスが現れる ATK 1000

 

 

「さらに永続魔法『方法業』を発動!『ダークガネックス』を対象にしデッキから三枚目の『ヴィジャム』を墓地へ送り、攻撃力を800上げる!」

ヴィジャムの幻影がガネックスに力を与える

ATK 1000→1800

 

 

「バトル!『ガネックス』で『インフィニティ』を攻撃!」

ガネックスによりインフィニティが破壊される、しかし次元領域デュエルのためダメージは発生しない。

 

「(よし!コアは残った…これなら…)」

「そして『ガネックス』の効果発動!このカードをデッキに戻してデッキから『ブレード・ガルーディア』を手札に加え墓地から『ヴィジャム』を2体特殊召喚!」

ヴィジャムが2体現れる ATK 0

 

 

 

「さらに手札の『ガルーディア』の効果をバトルフェイズ中に発動!『ヴィジャム』を2体墓地に送り特殊召喚!このカードの攻撃力は2000になる!」

 

「なんだって!?(映画効果と混ざってる!?)」

ヴィジャム2体が合体し赤い鳥のようなモンスターが現れる ATK 2000

 

「バトル!『ガルーディア』で『コア』を攻撃!」

ガルーディアにコアが破壊される

「攻撃前に『ネットワーク』効果を発動!『サイバードラゴン』を除外!

ぐっ!?痛てぇ!!ダメージ実体化かよ!!」

「遊海さん!?大丈夫ですか!?」

 

 

遊海LP 8000→7600

 

 

 

「さらに『ガルーディア』の効果を発動!このカードをデッキに戻して『バスターガンダイル』を手札に加え墓地の『ヴィジャム』を3体特殊召喚!そして『ガンダイル』の効果で特殊召喚!」

ヴィジャム3体が合体し東洋の遺跡を思わせるモンスター、バスターガンダイルが現れる ATK 3000

 

 

「バトルだ『ガンダイル』でダイレクトアタック!」

バスターガンダイルから雷撃が放たれ遊海に直撃し吹き飛ばされる

「ぐああぁぁあ!!」

「遊海さん!!」

 

遊海LP 7600→4600

 

 

 

「『バスターガンダイル』は三回攻撃が出来る!!喰らえ!シャーディ様の仇!!」

バスターガンダイルがエネルギーを溜め始める

 

 

「賭けだ!リバースカード発動!『サイバーロードフュージョン』!除外されている『サイバードラゴン』『フィーア』『ドライ』をデッキに戻し融合召喚を行う!現れろ!鉄壁の機械龍!『サイバー・エタニティ・ドラゴン』!」

3体の機械龍が合体し鉄壁の防御を誇る機械龍が現れる DEF 4000

 

 

「くっ!?攻撃中止だ!そしてリバースカード!永続罠『方界曼荼羅』を発動!このターン破壊したモンスターを可能な限り特殊召喚する!そしてそのモンスターがいる限りお前のモンスター効果は全て封じられる!次のターンで終わりだ!」

体の錆びたコアとインフィニティが現れる ATK 0

 

「ターンエンド!」

ディーヴァ LP 8000

バスターガンダイル 業 曼荼羅 手札0

 

 

 

「(なんだよコレ…チートじゃないか…!

サイバードラゴンか、あのカードを引かないと…!)」

 

 

 

 

「どうした!サレンダーか?」

 

 

 

「サレンダーなんてしない!アテム!力を貸してくれ!俺のターン!ドロー!!」

 

来た!!

 

「俺は手札から『サイバードラゴン・ヘルツ』を召喚!」

青い機械竜が現れる ATK 100

「たった攻撃力100じゃないか!それではオレの『バスターガンダイル』は倒せない!」

「今倒す!手札から『オーバーロードフュージョン』を発動!フィールド・墓地の機械族モンスターを全て除外し…現れろ!『キメラテックオーバードラゴン』!」

フィールドの機械龍が合体し機械龍のヒュドラが現れる

ATK 5600

 

「攻撃力5600だと!?」

 

「バトルだ!行け!『バスターガンダイル』を攻撃!『エヴォリューションレザルトバースト』!!」

 

ヒュドラから放たれた光線がバスターガンダイルを粉々に破壊し、その余波でディーヴァが吹き飛ばされる

『ぐっ!ぐあああ!!』

 

ディーヴァLP 8000→5000

 

「はぁ…はぁ…!少しは頭が冷えたか?」

俺はディーヴァに話しかける

「うるさい!!シャーディ様の仇の仲間め!」

「ディーヴァ!一つ誤解を解こう!シャーディを殺したのは獏良 了じゃない!!」

「なんだと…?」

「確かに肉体は獏良だった!でもシャーディを殺したのは獏良の肉体に宿った千年輪の邪念!ゾークだったんだ!!」

「なんだと!?」

ディーヴァは驚きで動きを止める…どうやらゾークを知っているようだ

 

 

「大邪神ゾーク…シャーディ様が言っていた…名も無きファラオが道ずれに封印した邪神…それがシャーディ様を…!」

マニがそう呟く…もう一押し!

「そしてゾークは名も無きファラオ…アテムが倒した!ゾークはこの世界には存在しない!!」

 

「そんな馬鹿な…ならボクはなんのために…!」

ディーヴァは膝から崩れ落ちる…既に戦意は無い

 

「仇がいないなら俺は誰を憎めば…!」

 

「…誰も憎む事はない…!」

 

「えっ?」

 

「『憎しみからは何も生まれない』俺が友達から教えてもらった言葉だ、憎めば憎むほど心は死んでいく…シャーディがそれを望むと思うか?」

 

「シャーディ様…ボクは…」

「兄さん…」

 

 

 

 

 

《つまらんなぁ!ディーヴァよ!もっとオレを楽しませろよ…!!》

 

 

 

 

 

「なんだ!?」

突如空間に声が響く…これは!?

「マスター!ディーヴァから精霊の反応が!!」

「なんだって!?」

 

《ディーヴァよ…仇なら目の前にいるじゃないか…さぁ奴を叩き潰せ!!もっとお前の道化振りを見せるがいい!!》

その声と共にディーヴァから闇が溢れだし形を成す、それはまるで悪魔のようで…あの影はまさか!?

 

 

「ヤメロ!ボクに入って来るな!やめろぉぉ!!」

ディーヴァに闇が侵食していく、それと共にプラナの領域に暗雲が立ち込め巨石が崩壊していく…!

 

 

「兄さん!どうしたの!兄さん!?」

「ディーヴァ!!」

 

 

「おい二人共!そいつから離れて逃げろ!巻き込まれるぞ!」

 

「でも!!」

「しょうがない!トフェニ!頼む!」

「御意!」

トフェニが飛び出しマニとセラを捕まえこちらに戻って来る

「翠!トフェニ!そのまま脱出だ!孔に飛び込め!!」

 

 

 

 

俺達は来た道を戻り待避する、そして領域は闇に呑まれ崩れ落ちた。

 

 

Duel Interruption

 

 




謝罪
これから更新速度が低下します
理由 ぐだぐだイベントのため

よろしくお願いいたします。m(_ _)m


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暗黒次元領域デュエル~悲劇を倒せ!~

すいません…作者の技術力ではこれが限界です…。


「どわっ!?…ギリギリセーフか…皆無事か?」

突如、闇に呑まれたディーヴァから逃げるため空間の孔に飛び込んだ遊海達はなんとか元いた小屋の前に辿り着く。

 

 

「遊海さん!私は大丈夫です!」

「遊海殿!こちらも大丈夫です!」

翠とトフェニ、マニとセラも無事のようだ。

 

 

「兄さん…なんで…?」

セラが呟く…

「おい!二人共!最近ディーヴァは変な所に行かなかったか!!」

「…最近行ったのはとある王墓の発掘現場だ…俺達は普段発掘の手伝いで食い扶持を稼いでいるんだ…」

マニがそう答える

「その王墓であいつは何か拾わなかったか?」

「…何か壁画の破片を拾っていたような気がする…それが何か関係あるのか…?」

「それだ…!ディーヴァはその遺跡で魔物に侵食されていたんだ…!」

マジか…なんでそうなる…!

 

「遊海さん…もしかして『トラゴエディア』ですか?」

「翠、知ってるのか?」

「はい、○ikiでカードについて調べていた時に…」

 

 

 

 

トラゴエディア…漫画GXにおいて登場した魔物。

約3000年前のエジプトである男から取り出された悲劇の名前を冠する悪魔、当時の神官に石板に封印され…さらに石板を粉々にされて当時建設中の王墓に封印されていたはず…。

 

可能性があるとすれば、石板の破片が偶然、遺跡内に落ちて三千年放置されていたものをディーヴァが拾い、あいつの復讐心を糧に仮復活したっていうところか…。

 

 

 

 

「兄さん…確かにここ暫く感情が不安定だったけど…、そんな事が…どうすれば…!」

「遊海さん…!」

「とにかくあいつをデュエルで負かして魔物を切り離すしか無いだろうな…」

「でも…!?

遊海さん!空が!!」

「嘘だろ?」

 

 

 

 

 

 

翠の声で空を見上げると、それまで晴れていた空が暗くなり巨大なキューブが出現する…そして…

『オイオイ…オレを置いて行くなよ…寂しいじゃないか…!』 

 

 

空間の亀裂からソイツは現れた…緑色の体に身体中にキューブを組み込まれた魔物…ディーヴァ変異体…。

映画と違うのはその胸に石板のカケラ…トラゴエディアの顔が浮かんでいる事だろうか…

 

「兄さん…!?そんな…なんて姿に…!!」

『やぁ!セラ…どうだこの純粋にして醜い姿は!!』

「ディーヴァ!正気に戻れ!俺達の目指していたのはそこではない!!」

マニが説得を試みるが…

『ウルサイ!邪魔者は消え去るがいい!』

「ディーヴァ…!おま…!」

 

ディーヴァによりマニが消滅する、たぶん暗黒次元に送られてしまったのだろう…

 

「マニ!?兄さんやめて!」

『セラ!お前も消え去るがいい!ハアッ!』

ディーヴァの手から闇が放たれる…しかし

 

「トフェニ!反射の陣!」

「御意!」

間一髪トフェニが闇を防ぐ

『貴様…邪魔をするな!!』

「ディーヴァ…いやトラゴエディア!お前の目的はなんだ!」

『ん?単なる暇潰しだ…オレはトラゴエディア本体ではない…最初はこいつを洗脳して本体の封印を解こうとしたがまだ掘り出せないからな!こいつの闇の心を刺激して暇潰しをしていたのだ!』

 

 

「なら無理矢理でもお前を引き離してやる!」

『やれるならやって見るがいい!』

 

 

 

 

 

       『「デュエル!!」』

 

 

 

 

ディーヴァLP 8000

遊海 LP 8000

 

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『手札の「方界防陣」「方界合神」「方界胤ヴィジャム」を公開し、このモンスターを次元特殊召喚する!

闇よ!光を喰らい世を眩ませ!現れよ「暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ」!!』

 

大量の小さなキューブが現れる、そしてキューブが形を成していき紫色のモンスターが現れる ATK 3000

 

『カードを二枚伏せてターンエンドだ!そして「クリムゾン・ノヴァ」の効果によりお互いに3000ダメージを受ける!!』

クリムゾンノヴァから紫色の光線が放たれ、それが遊海とディーヴァに直撃する。

 

『ハハハハ!』

「ぐあああ!!?」

ディーヴァLP 8000→5000

遊海LP 8000→5000

 

 

 

ディーヴァLP 5000

クリムゾンノヴァ 伏せ2 手札3

 

 

「(痛ぇ…!しかも腕が…!)」

遊海が腕を見ると徐々に指先から紫色の粒子に侵食されて行く…

 

「(これが暗黒次元領域デュエル…これは不死でも無事じゃ済まない…!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「…カードを二枚伏せて…ターンエンド…」

 

「遊海さん!?どうしたんですか!?…まさか!?」

「(ああ!完全に手札事故だ…!『魔導陣』はあるけど…使い時は今じゃない!次のドローに…賭ける!)」

 

遊海LP 4000

伏せ2 手札4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!貴様に絶望を見せてやろう!トラップ発動!「方界合神」!手札・フィールド3体の「クリムゾンノヴァ」を融合!』

 

嘘…だろ?

 

 

 

『邪悪なる意識よ集え!世界を光なき絶望へと導くために、今こそ漆黒の闇から降臨せよ!「暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ」!!』

 

3体のクリムゾンノヴァが合体し多数の眼を持つ邪神が現れる ATK 4500

 

『バトルだ!「トリニティ」でダイレクトアタック…といきたいが邪神の攻撃には生け贄が必要だ…それは…貴様のライフだ!!』

 

トリニティから無数の光線が放たれ身体を撃ち抜く

「がっ…ぐぁああぁあ!!」

「遊海さん!」

 

遊海LP 5000→2500

 

 

『いけ!「トリニティ!」シラナミを攻撃しろ!』

邪神から再び光線が放たれる

「遊海さん!!」

 

「リバース罠…『永遠の魂』…効果で魔法カード『黒・魔・導』を手札に…加える…そして手札から『マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン』を特殊召喚…!」

 

魔法陣から魔法使いの影が現れる ATK 2100

 

 

『壁モンスターを出そうが無駄だぁ!「トリニティ」!粉砕しろ!!』

「さらにリバース罠『攻撃の無敵化』を発動…!このターン、俺は戦闘ダメージを受けない…!」

 

トリニティから放たれた光線が魔法使いの影を粉砕する

「何!?ぐあああ!」

 

遊海LP 2500→400

 

「何故…ダメージが…?」

 

『馬鹿か貴様?次元領域デュエルのモンスター破壊のダメージは「効果」ダメージ扱いだ!

そして「トリニティ」がモンスターを破壊した事にによりお前のライフを生け贄にもう一度攻撃できる!やれ!!』

トリニティの光線が遊海に直撃し吹き飛ばされ岩壁に叩きつけられる

「がっ!!…ゴブッ…ぐっ…あ…」

遊海 LP 400→200

 

 

「遊海さん!!そんな…しっかりしてください!!」

「兄さん!やめて!!いつものやさしい兄さんに戻って…!?」

 

『さぁ…闇に飲まれるがいい!シラナミ ユウミ!!』

 

ディーヴァ LP 5000

トリニティ 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

 

 

…これは…マズイ…な…、身体から大事なものが抜け落ちていく…息も…苦しい…肋骨が逝ったか…でも…ライフはまだ…ある…!!

 

 

 

遊海はなんとか立ち上がる、その体は余すところなくボロボロになり暗黒粒子に蝕まれていく…

 

 

 

「俺の…ターン…ド…ロー…」

遊海はドローしようとするが指は空を切り、その体は…

 

「(あ…ダメだ…力が入らない…目の前が暗くなっていく…)」

 

 

 

「遊海さん!!!」 

 

 

 

「(…不死性を得て…すぐに…これかぁ…ごめんな…ミ…ドリ…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー遊海ー

 

 

誰かが俺を呼んでいる…

 

 

ー少し体を借りるぞー

 

 

…ああ、こんな体でよかったら使ってくれ…

 

 

ーすまない、あとは頼んだぞ…オレの3人目の好敵手…ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユ…ミ…!」

 

誰かが俺の名前を呼んでいる…

 

「オイ!遊海!しっかりしろ!」

「遊海君!しっかりして!」

「遊海さん!!」

 

 

 

 

なんとか目を開く、そこには俺を心配そうに覗き込む翠と遊戯達の姿があった…

 

「翠…遊戯?なんで…?」

 

「遊海さん…!よかったです…ヒック!」

「翠…ごめんな…泣かないでくれよ…」

「遊海さ~ん…!!」

 

「遊海君…何があったの?僕達は町にいたらクリボーに呼ばれてこの場所に来たんだけど…」

《クリクリー!》

遊戯の隣にはクリボーが浮かんでいる

 

「翠…デュエルはどうなった…?」

「遊海さん…何言ってるんですかぁ…!遊海さんがライフ200から逆転勝利したんじゃないですかぁ…!」

翠が半泣きになりながら俺の勝利を告げた…、あれ…どうやって勝ったんだっけ…?

 

「遊戯…お前は見てたか…?」

「ううん…僕達は丁度決着がついてからここに着いたから…でもフィールドに『ブラック・マジシャン』と『古代エジプトの神官』みたいなモンスターがいたけど…というか遊海君も『ブラック・マジシャン』を持ってたんだ…知らなかった!」

 

「ああ…、使うとアテムと被るからな…」

 

 

 

 

…一体俺はどうやってディーヴァに勝ったんだ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翠side

 

 

 

遊海さんは今、劇場版で登場した悪役…藍神とデュエルをしている、藍神はいきなり「クリムゾン・ノヴァ」を召喚して自分と遊海さんのライフを大きく削った。

そしてダメージを受けた遊海さんから紫色の粒子が身体を浸食し始める…映画と同じように…、大丈夫!遊海さんならあれぐらいすぐに倒しちゃうから!…でも…

 

 

「…カードを二枚伏せて…ターンエンド…!」

 

「遊海さん…!?どうしたんですか!?…まさか…!」

遊海さんはカードを伏せただけでターンを終えてしまった…まさか手札事故!?

 

 

そして藍神は「クリムゾンノヴァ」を3体束ねた「究極竜」と同じ攻撃力を持つモンスター…『クリムゾン・ノヴァ・インフィニティ』を召喚した。

このままじゃ遊海さんは…!!

 

しかし遊海さんはリバース罠「永遠の魂」を発動して壁モンスターを出す…遊海さん【ブラック・マジシャン】を使ってたんだ…。

 

でも藍神はトリニティの強力な効果を使い遊海さんのライフを200まで追い詰めてしまった、そして遊海さんは最後の攻撃で岩壁に叩きつけられてしまっている…しかも叩きつけられた壁が砕ける程の力で…そんな…このままじゃ…!?

 

 

 

「遊海さん!!そんな…しっかりしてください!!」

私は思わず声をあげる…そして遊海さんは微かに反応を返してくれた…遊海さん…負けないで…!!

 

 

遊海さんはなんとか立ち上がる、でもその体はボロボロで目の焦点は合っていない…そして体からは紫色の粒子が大量に吐きだされている…。

 

「お…ターン…ロー…」

 

遊海さんはカードを引こうとしたけど、その指は空を切り体が崩れ落ちる…!

 

 

「遊海さん!!!」

 

 

ガッ!

『…!!』

 

 

「遊海さん!」

倒れる直前、遊海さんは体制を立て直す…その目は強く輝き、藍神を見据えている…!

 

『…!』

 

遊海さんがカードを引き…そのカードを召喚する、そのカードは映画でトドメとなった「守護神官マハード」だった。

マハードさんは遊海さんに対して臣下の礼をとっている

 

ATK 2500

 

『なんだと!?そのモンスターは!?』

藍神が驚いているが遊海さんの展開は終わらない。

 

『…!』

 

黒の魔導陣が発動してカードが1枚手札に加わる…そして「永遠の魂」の石板から「ブラック・マジシャン」が現れる。

 

ATK 2500

 

そして「黒の魔導陣」の効果で藍神の伏せカードが除外される。

『バカな!?』

 

『…!!』

 

マハードさんが飛び上がる…そして空中に星座の刻まれた魔法陣が広がり杖から全ての邪悪を滅する魔法が放たれ、トリニティのコアを撃ち抜き大爆発を起こした!

 

ディーヴァ LP 5000→500

 

 

 

 

『バカな!?オレの邪神が!?まさか貴様、冥界の…!?』

 

 

 

《黒・魔・導!!》

 

 

『ぐっ!?うわああぁぁあ!?』

 

 

 

 

藍神が何かを言う前に「ブラックマジシャン」の黒魔導が炸裂し藍神が吹き飛ばされ…デュエルが終了する、藍神の体は元の人間体に戻り、胸元の石板も砕け散り砂となった…空にあったキューブも崩壊していく…。

 

ディーヴァ LP 500→0

 

 

 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん!!」

私と一緒にいたセラちゃんが藍神のところに走っていく…消えてしまったマニさんも無事に戻って来ている…。

 

 

「遊海君!翠さん!大丈夫!?」

「遊戯さん?皆さんなんでここに!?」

遊戯さん達が黒い車の中から現れる…イシズさんとマリクさんも一緒だった。

 

「何か胸騒ぎがして戻って来たんだ!そしたら大きな匣みたいなのが浮いてるし、町が紫色の粒子になって消え始めるし…一体何があったの?」

「それは遊海さんから聞いたほうが…そうだ!遊海さんは!?」

 

慌てて遊海さんの方を見ると遊海さんはその場で私達…遊戯さんの事を優しい眼差しで見ていた…そして…

 

『…フッ」

「あっ!?」

「遊海さん!?」

「遊海!」

 

遊海さんは優しく微笑むとそのまま崩れ落ちた、まるで糸の切れた人形のように…

 

 

翠side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という感じだったんですけど…覚えてないんですか…?」

 

「…まったく覚えて無い…むしろ完全に気絶したと思ったんだけど…?」

 

「まあいいじゃねぇか!お前一人で世界を救っちまったんだろ?とにかく体を休めろよ!」

 

城之内さんが話しかけてくる、とにかく俺は勝ったんだ…よかった…

 

「シラナミさん…ありがとうございました、そしてすいませんでした!」

 

セラちゃんが俺に対して謝ってくる

「別に大丈夫だよ、怪我もじきに治るし!それよりもこれでお前達…プラナも目指す場所に行けるんじゃないか?」

 

「…いいえ…プラナの力は失われました…」

「なんだって?」

 

「プラナには一つの言い伝えがあります…『失われし、千年の七つのアイテムが集いし時、ファラオは冥界に旅立つ…邪悪なる魂さえも光となり、新たなる次元の扉が開く…やがて、秩序正しき光の新世界が、高次の魂たちによって、もたらされるであろう…』というものです…。」

「これって…!」

「アテムとゾークの事か!?」

杏子と本田が声をあげる。

 

 

つまりアテムがゾークを倒し千年アイテムと共に冥界に旅立った後に、選ばれた人間が楽園にたどり着ける…という意味だったと思うけど…

「この言い伝えには続きがあります『ただしファラオが冥界より舞い戻った時…次元の扉は永遠に閉ざされるだろう…』というものです…」

 

 

 

ファラオ…アテム…?まさか…な?

 

 

「もう一人の僕…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺達はエジプトを後にする、ディーヴァ達の発掘していた王墓はイシズさんに頼んで厳重に封印したもらった…これでトラゴエディアは復活しないだろう…。

 

「遊海さん?」

「どうした?」

「いえ…あのデュエルの時…最後に戦っていたのは本当にアテムさんだったのかなと思って…」

「…さぁな…それこそ『冥界の王』のみぞ知る…って感じだな…!」

 

翠にそう答えて俺は空を見上げる…空は蒼く透き通っていた…。

 

 

 




漫画GXフラグ回避!トラゴエディアは粉々のまま封印されました!

これからはGXまでの準備を挟みます!


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閑話~遊海の1日~

今回は遊海の1日を描いてみたいと思います。 


午前6時

 

ピピピッ…ピピピッ…

 

「う…ん…朝か…」

 

遊海達はエジプトでの事件後、無事に日本にたどり着き平和な日々を送っていた…今回はそんな遊海の1日を見てみよう。

 

 

 

 

 

 

「おはよう!翠!」

「おはようございます!」

二人の朝は挨拶から始まる

「ご飯はもう少し待っててくださいね!」

「ああ!じゃあいつものやってるから!」

「はい!」

 

遊海は服を着替え外に出ると太い木の棒で素振りを始める、デュエルマッスルを鍛えるためだ。

「はあっ!…やあ!…たぁ!」

そしてしばらくすると

 

「アヤカ!頼む!」

「了解です!上手く避けてくださいよ!」

「ああ!」

木の棒を木刀に持ち替えアヤカから放たれる弱ビームを時に避け、時に弾く!

木刀は遊海の力によってコーティングしているため傷はつかない。

 

「はあっ!よっ…チェスト!!」

「マスターやりますね…それならこれはどうです!!」

バチバチバチッ!

「ちょ!?アヤカそれは…!?アバババ!?」

アヤカが打ち出した雷球が高速で飛び出し遊海に直撃する…アヤカは最近少しスパルタである…。

 

「アヤカ…今のは…無しだ…ろ…?」

「…マスターすいません、少し加減します…」

そんなこんなで朝は修行中している事が多い、相手役は主にアヤカだがたまにウィンダだったりもする。

 

 

 

 

7時 朝食

 

朝の稽古を終えた遊海は翠と二人で朝食を摂る、今日は豆腐の味噌汁と納豆、アジの干物とご飯である。

「「いただきます!」」

 

「翠いつも通りおいしいよ!」

「ありがとうございます!やっぱり『料理人』の特典をもらってよかったです!」

 

翠の特典…料理人、自分の1度食べた料理を美味しく再現でき、さらに料理を失敗しないという特典である。

 

「「ごちそうさまでした!」」

 

「じゃあ洗い物やっておくよ!」

「じゃあ私は洗濯やりますね!」

 

ご飯のあとは二人で分担して家事をやっている、そして洗い物と洗濯をして学校の準備をする。

 

 

 

7時45分 登校

 

「翠、いくよ~!」

「は~い!」

二人の家から高校までは約20分、二人は一緒に登校する。

 

「遊海君!翠さん!おはよう!」

「遊戯!おはよう!」

「おはようございます!」

「翠ちゃん!おはよう!」

 

 

そしていつも途中で遊戯達と合流して学校へと向かう

「あれ城之内さんは?」

「ど~せいつも通り寝坊でしょう!今頃商店街の八百屋さんに水かけられてるわ!」

「あははは…」

 

そんなこんなで学校に到着する、そしてチャイムギリギリに城之内と本田が飛び出してくるのがいつものお約束である。

 

「こら~!!城之内!いい加減にせんか!!」

 

やっぱり…

 

 

 

 

 

 

 

12時 お昼

 

 

「…プシュ~!」

「遊海さん…大丈夫ですか…?」

「あんまり…」

「あははは…」

 

遊海にとって学校の授業は地獄である、特に英語と数学。

翠は生前から秀才だったらしく、以前の復習という感じで済んでいる。

 

「さぁ、お弁当を食べましょう!」

「ありがとう…」

 

 

 

 

15時 下校

 

「やっと終わった…」

「毎日お疲れ様です、マスター…」

 

 

学校の終わった遊海は一人で下校する、翠は弓道部に参加しそれなりにいい成績を修めている。

そしてしばらく町を歩いていると…

 

 

「オイ!お前!白波 遊海だな?」

「なんです?」

町を歩いているとたまにこうして話しかけられる…この感じは…

 

「お前みたいな奴がバトルシティ準優勝なんて信じられるか!俺が蹴散らしてやる!」

そう言って不良風の男性が決闘盤を構える…またか…

「まったくしょうがないな…」

 

どうも貧弱そうな見た目の俺が、バトルシティ準優勝者と信じられずこうして挑んでくるのがたまにいる…正直迷惑なんだけど…やるしかないか…

 

 

       「「デュエル!!」」

 

不良 LP 4000  D 40

遊海 LP 4000 D 60

 

 

 

「俺のターンドロー!」

「いくぜぇ!手札の『磁石の戦士α、β、γ』の3体を生け贄に『磁石の戦士マグネットバルキリオン』を特殊召喚!」

巨大な磁石の戦士が現れる ATK 3500

 

「そしてカードを伏せてターンエンドだ!どうだお前の負けた決闘王のデッキだ!これでお前をぶちのめす!」

不良 LP 4000

マグネットバルキリオン 伏せ1 手札1 D34

 

 

不良の使っているのはI2社の出した『構築デッキ・決闘王』だろう…ブラックマジシャンやマジシャンガールを除いた遊戯のデッキを構築した40枚デッキだ…次いでに城之内編となぜか『赤帽子編』として何故か聖刻モドキのデッキも売っていた…まあ値段が一つ5万円位するんだけど…

 

 

 

「オイまだかよ?サレンダーか?」

 

プチッ!

「俺のターン!ドロー!」

 

「手札から『隣の芝刈り』を発動!俺とお前のデッキの差分カードを墓地に送る!差は20枚!」

落ちたカード(敬称略)

 

 

隣の芝刈り1

バルブ1

ソーラーエクスチェンジ2

戒めの龍

グラゴニス2

ビーストヴォルフ1

黄昏ライコウ2

ミネルバ1

サモナールミナス1

黄昏ジェイン1

黄昏ルミナス2

神域1

裁き1

黄昏双龍2

光の援軍

 

 

 

「なんだ?自分からデッキを削りやがって?」

「墓地にいった『ヴォルフ』効果で特殊召喚!さらに『ミネルバ』効果でデッキトップを墓地へ!」

 

白い毛並みの獣人が現れる ATK 2100

 

墓地送り

フェリス

 

「墓地へ送られた『フェリス』効果、墓地から特殊召喚!」

 

白い鎧の弓兵が現れる DEF 2000

 

「そして『フェリス』を生け贄に効果発動!『マグネットバルキリオン』を破壊し自分のデッキトップから三枚墓地に送る!」

 

フェリスの弓矢でマグネットバルキリオンが爆発四散する…エグイ…

 

墓地送り

オルクス

黄昏ライコウ

黄昏双龍

 

「墓地に送られた魔法カード『黄昏の双龍』の効果発動!墓地の『戒めの龍』を手札に加えデッキトップ4枚を除外する!」

「墓地から魔法だと!?」

 

除外

ライコウ

ヴォルフ

ルミナス

ジェイン

 

「自分の墓地にライトロードモンスターが4種類以上いる時、このモンスターを特殊召喚できる!現れろ愚者を裁く光の化身『裁きの龍』!」

空間の穴から純白の龍が現れる ATK 3000

 

「攻撃力3000だと!?(でもリバースは『魔法の筒』これなら…)」

 

「『裁きの龍』の効果!1000ライフを払いフィールドの自分以外のカードを破壊する!『カタストロフ・レイ』!」

裁きの龍の波動がフィールドを更地にする

「嘘だろ!?」

 

遊海LP 3000

 

「そして除外されているライトロードモンスターが4種類以上の時このモンスターを特殊召喚できる!現れろ愚者を戒める闇の化身『戒めの龍』!」

漆黒の龍がフィールドに降臨する ATK 3000

 

「あっ…ウソッしょ…!?」

「バトル!2体の龍でダイレクトアタック!『神滅のカオス・バースト』!」

2体の龍のブレスが混ざり合い、黒と白の光線が不良に直撃する!

 

「ぎいやぁぁぁあ!?」

 

不良LP 4000→1000→0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

「そのデッキと戦うの30回目なんだけど…どうせなら自力でデッキ組むか『ブラックマジシャン』を当ててから挑戦してくれ…聞こえてないか…」

 

不良はズボンを濡らして気絶している…まあいいか…

 

 

 

 

 

17時 夕食準備

 

決闘を終えた遊海は家に戻ると翠が帰ってくるまでにお米を研いだり、風呂の用意をする。

「ただいま~!」

「お帰り翠…どうしたその荷物…」

翠の両手にはたくさんの荷物があった…

「いえそれがスーパーでくじ引きを引いたら…」

「…いつもの事か…」

「はい…」

 

翠の特典…黄金律

どれだけ自分にお金がついてくるかというfateのスキルである、翠は外にいくたびにくじ引きが当たったり、レストランの1000人記念のお客になるなどが多発するのである…。

神様…なにか勘違いしてませんか…?

「今、夕御飯作りますね!」

「ああ、頼むよ!」

 

 

 

 

18時 夕食

 

今日はしょうが焼きである

 

 

 

 

19時 風呂

 

「遊海さん!先にいただきますね!」

「ああ!ゆっくりな…」

 

…以前翠と暮らし始めた時、遊海が翠のいる風呂に間違って入ってしまうラッキースケベがあってから「お風呂前は必ず声をかける」というルールができた…。

 

なお、見られた翠はまんざらでもなさそうだったが、アヤカが怒り、遊海が逆バンジーするはめになった事を追記しておく。

 

 

 

 

 

20時 勉強

「遊海さん、そこの公式違いますよ!」

「マジで?」

 

高校の宿題等の勉強、テスト前になると遊海は死にそうになりながら勉強している…

 

「…死にかけるより辛いかも…」

「何を言ってるんですかマスター…」

 

 

 

 

 

21時くらい デッキ調整 模擬戦

 

「バトル!『エルシャドール・ネフィリム』で攻撃!」

 

「リバース罠『連撃の帝王』発動!さらにチェーンして『帝王の烈旋』発動!ネフィリムとライザーを生け贄に『怨邪帝ガイウス』を召喚!」

「あっ!?」

 

こんな感じで翠とテーブルデュエルをしたりデッキ調整などをしている。

 

 

23~0時 就寝

 

「おやすみ翠!」

「お休みなさい!」

今の所二人は別々の寝室で寝ていたりする、籍を入れたら二人で寝ようとゆう事らしい…でも翠は少し寂しかったりもするのであった…。

 

 

こうして二人の平和な日々は続いていくのであった…。

 

 



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遊海対十代~邂逅~

「よろしくお願いします!」

『お前…僕の十代に勝ったら承知しないよ…!!』

今…俺の前にはGXの主人公、遊城 十代(ショタ)がいる…どうしてこうなった!?

 

 

 

 

 

 

         ~数日前~

 

 

 

 

 

「マスクドデュエリスト…ですか…?」

「そうだ!貴様にその役をやってもらう!」

 

今、俺はKC社の社長室で海馬さんと話をしている、そしていきなりマスクドデュエリストをやってほしいと言われたところだ…

 

「なんで急にそんな…」

「実は海馬ランドで小学生限定のデュエルモンスターズのイベントを開くのだが…そこの司会兼デュエル指導をするデュエリストが怪我をしてしまってな…」

「それで俺に代役をやってほしいと…。」

 

「そういう事だ!今、この町でこの仕事を任せられるのはお前だけだ!」

「遊戯や城之内さんは?あの二人なら顔出しでもそういうのできるんじゃないですか?」

 

「アイツらは有名になりすぎた、文字どおりアイツらが司会などやろうものなら海馬ランドの運営に支障が出る可能性がある!だからこそ顔のわからない『マスクマン』として子供達にデュエルを見せてほしいのだ!」

 

…なるほどね、まぁ俺も子供は好きだし…別にいいか!

 

「わかりました!その話を受けましょう!」

「流石だ遊海、では日曜に海馬ランドに来い!台本はこちらで用意する!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで海馬ランドで俺はマスクマンとして子供達にデュエルを教えていたのだが…

 

 

「それじゃあ最後にマスクマンと参加している子の代表とのエキシビションデュエルを行います!」

女性のアナウンサーさんがエキシビションデュエルの相手を指命する、すると

「やった!ボクだ!」

『よかったね十代!』

「うん!」

現れたのは遊城 十代(9才)だった、マジ…?

後ろにユベルが見えるんですけど!?

 

 

 

 

 

「よろしくお願いします!」

『お前…僕の十代に勝ったら承知しないよ…!!』

「さぁ!楽しいデュエルにしよう!」

…やるしかないか…

 

 

「「デュエル!」」

 

 

十代LP 4000

遊海LP 4000

・テーブルデュエル

 

 

 

 

 

 

「ボクのターン!ドロー!」

「手札から『融合』を発動!手札の『黒き森のウィッチ』と『クリッター』を融合して『クリッチー』を召喚!」

ATK 2100

 

「(なるほど…小さい頃から【融合】デッキを使ってたのか…)」

 

「そして『クリッター』の効果でデッキから『ユベル』を手札に加えます!カードを二枚伏せてターンエンド!」

『よくやった十代!僕はいつでも行けるよ!』

「うん!ありがとうユベル!」

十代 LP 4000

クリッチー 伏せ2 手札1

 

 

 

「おっと十代君!いきなり融合召喚を成功しました!

さぁマスクマンはどうするのか!!」

 

 

 

アナウンサーさんが実況をしている、どうするかな…。

海馬さんからは『子供にも手加減しなくていい!バトルシティ準優勝の力を見せろ!』とは言われてるけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『聖刻龍ードラゴンゲイブ』を召喚!」

ATK 1800

 

「リバースカード発動!『落とし穴』!『ドラゴンゲイブ』を破壊!」

 

「むっ!?ならば手札から魔法カード『竜の霊廟』を発動!デッキから通常モンスターの『龍王の聖刻印』と『エレキテルドラゴン』を墓地に送る!」

 

「おっとモンスターを破壊されたマスクマン!魔法カードで挽回できるのか!?」

 

 

「手札から魔法カード『銀龍の号咆』を発動!墓地の『エレキテルドラゴン』を特殊召喚!」

ATK 2500

 

「攻撃力2500!?」

 

「マスクマン!魔法カードのコンボで上級モンスターを召喚しました!」

 

「バトル!『エレキテル』で『クリッチー』を攻撃!」

「ああ…やられちゃった…」

『お前…よくも十代を…!』

 

十代 LP 4000→3600

 

「マスクマン!十代君の融合モンスターを倒しました!見事な切り返しです!」

 

「(ユベルがめちゃくちゃ怒ってる!?元祖ヤンデレ怖い!?)」

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド!さぁ!君のターンだ!」

 

遊海LP 4000

エレキテル 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボクのターン!ドロー!」

「手札から『強欲な壷』を発動!カードを二枚ドロー!」

 

「そして手札から『融合回収』を発動!墓地の『融合』と『黒き森のウィッチ』を手札に戻します!」

 

「そして伏せカード『ハンマーシュート』を発動!『エレキテル』を破壊します!」

「おっと!?」

 

「十代君スゴい!マスクマンの強力なモンスターを倒しました!」

 

「そして手札から『オシロ・ヒーロー』を召喚!」

ATK 1250

 

「バトル!『オシロ・ヒーロー』でダイレクトアタック!」

「やるな!十代君!」

 

遊海LP 4000→2750

 

「ターンエンドです!」

十代LP 3600

オシロ 手札3

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

「手札から『聖刻龍ートフェニドラゴン』を特殊召喚!このカードは相手のフィールドにモンスターがいる時、特殊召喚できる!」

ATK 2100

 

「マスクマン!手札から上級モンスターを召喚しました!」

 

『(主殿…彼は!)』

「(トフェニ…知らない振りをしてくれ!)」

『(御意…!)』

 

 

「バトル!『トフェニ』で『オシロヒーロー』を攻撃!」

「またやられちゃった…」

『キサマ…!!』

 

十代LP 3600→2750

 

「ターンエンド!」

  

遊海LP 2750

トフェニ 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボクのターン!ドロー!」

「モンスターとカードを伏せてターンエンド!」

 

十代 LP 2750

伏せモンスター 伏せ1 手札1

 

 

 

「おっと十代君!カードを伏せただけでターンエンドだ…さぁどうなるのか!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

「手札から『聖刻龍ーアセトドラゴン』を妥協召喚!

このモンスターは攻撃力を1000にする事で生け贄なしで召喚できる!」

ATK 1000

「そして『アセトドラゴン』を除外して、このモンスターを特殊召喚!来い『レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン』!」

ATK 2800

 

「攻撃力…2800!?」

 

 

 

「…なあ、あんなカード赤帽子編に入ってなかったよな…?」

 

「しかもあのデッキの使い方…もしかして…!」

会場がザワツキ始める…

 

 

「勘のいい子供達はわかっちゃったかな?それでは『マスクマン』に正体を明かしてもらいましょう…お願いします!」

 

 

「(マジか…このタイミングで!?、しょうがない!)」

 

俺は被っていたマスクを外し、すぐに赤帽子を被る

 

 

 

「ねぇ…あの帽子…もしかして!?」

 

 

「マスクマンの正体はバトルシティ準優勝者の白波 遊海さんでした~!」

 

「「「スゲェ~!本物だ!?」」」

 

 

「ボク…伝説のデュエリストと戦ってたんだ!!」

「さぁ続けるぞ…十代君!」

「はい!」

 

「『レッドアイズ』の効果を発動!手札・墓地からドラゴン族モンスターを特殊召喚できる!手札から『聖刻龍ーウシルドラゴン』を特殊召喚!」

 

ATK 2600

 

「スゲェ…攻撃力2000越えが3体…!」

 

 

「バトル!『トフェニ』で伏せモンスターを攻撃!」

 

「破壊されたのは『黒き森のウィッチ』!デッキから『ルイーズ』を手札に加えます!」

 

「そして『レッドアイズ』でダイレクトアタック!」

 

「トラップカード『ヒーロー見参!』を発動!来て!ボクのフェイバリットカード!『ユベル』!!」

『僕の出番だね!さぁこんなやつ返り討ちだ!』

 

ATK 0

 

 

 

「おっと十代君?攻撃力0のモンスターを攻撃表示で召喚したぞ~?」

 

「あいつ何がしたいんだ?」

「せめて守備表示で出さないと…」

 

『あいつら十代をバカにして…!』

 

「バトル!『レッドアイズ』で『ユベル』を攻撃!」

 

「『ユベル』の効果を発動!戦闘で破壊されず、このカードが攻撃された時相手の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「リバース罠『抹殺の聖刻印』!『トフェニ』を生け贄にして『ユベル』をゲームから除外する!」

「そんな!?」

『十代!』

 

 

十代LP 2750→0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

「デュエル終了~!勝者は白波さんで~す!!」

 

 

 

「十代君、君も強かったよ!またいつか戦おう!」

 

「うん…!」

 

 

 

 

「でもあれが他のカードならまだ粘れたよな~」

 

「あれがミラーフォースなら…」

 

『キサマ…よくも十代に恥をかかせたな!!…喰らえ!』

「ユベル!ダメ!!」

 

ユベルから魔力弾が遊海に放たれる…!

 

「ゴッ…くっ…!

それじゃあみんな!またどこかで会おうね!じゃあ!」

 

遊海は痛みを噛み殺し…舞台を去る…

 

『アイツ…効いてないのか…?』

 

 

「十代君…カードを…君の精霊を大切にするんだよ…!

「えっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハ!今のデュエルはどうだったかな?ちびっこ諸君!」

 

「海馬さんだ!」

「本物だ!」

 

 

「今、エキシビションデュエルに参加した者には海馬コーポレーションのカードイラストコンテストの採用権が与えられる!さぁ好きなだけイラストを書くがいい!」

 

 

「スゲェ!」

「いいな~!」

 

 

「さぁお前達も最強の決闘者を目指して頑張るがいい!フハハハハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海!見事なデュエルだったぞ!しかしあのこどもに手こずり過ぎだ!」

    

イベントを終えた海馬が遊海の控え室を訪れ、イスに座った遊海に話しかける。

 

「……」

 

遊海は海馬の言葉に反応せず下を向いている。

 

「おい…どうした?」

 

海馬が遊海の肩に触れると

 

「ゴボッ」バタン

 

「遊海!?どうした!磯野!!救急車だ!」

 

「ハイ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…

 

 

…意識が覚醒する…白い天井…息苦しい呼吸…機械音…

病院か…?

 

「俺…は…」

「遊海さん…!よかった!」

俺の横には翠がいた…頭がボーッとする…

 

「翠…何が…あった…?」

 

「遊海さん…一週間ずっと意識が戻らなかったんですよ…!何やってるんですか!!」

翠が泣きながら訴えてくる

 

「遊城…十代…」

「えっ?」

「彼と…ユベルに会った…」

「それじゃあ…ユベルのせいで…!」

「ああ、ユベルの攻撃で内臓が全て壊された…なんとかステージは…やりきったけど…部屋に行った後は覚えてない…」

攻撃力0であの力ってなんなんだよ…。

 

「遊海さん…不死とはいえ無茶はしないでくださいよ~!」

「ごめんな…翠…」

 

まさかあんなところで十代と出会うとは…、彼とユベルはどうなるんだろうか…?

 

 

そして後日、海馬社長に聞くとユベルは既に宇宙に打ち上げられてしまったらしい…破滅の光待った無しである。

 

 

 

 

 



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遊海の就職~ジェネレーション・ネクスト~

十代との出会いから半年が経った、その後は特に大きな騒動も無く俺達は平穏な日々を過ごしていた…。

 

 

 

プルルル…プルルル…

「ん?電話か…はい!白波です」

『遊海か?俺だ!すぐに海馬コーポレーションまで来い!以上だ!』ガチャ

…海馬さん…かな?とりあえず行ってみよう…。

 

 

 

 

 

「よく来たな…お前に確認したい事がある…」

KC社に着くと海馬さんから開口一番に質問をされた。

「なんです?」

「以前に話したデュエルアカデミアの事だ、講師になるという件の答えは出たか?」

「その事ですか…」

「そうだ、俺としては早くあの非科学的なカードを封印したいのだ…!」

「非科学的?何かあったんですか?」

「…これを見るがいい…我が社のエネルギー遮断実験室で撮影されたものだ…!」

そう言うとプロジェクターが起動し壁に映像が映し出される。

 

 

 

 

 

 

 

『では、これより「幻魔皇ラビエル」の召喚実験を開始します。』

画像には髭の生えた決闘盤をつけた男性と、向いあう決闘マシーンの姿があった、カメラの手前には何枚かのデュエルモンスターズのカードが置いてある。

 

『非常時に備え私のライフは8000、マシーンのライフは1000に設定し何かあれば「自爆スイッチ」にて決闘を終了させます。』

 

『…いきます、フィールドの「ガーゴイル・パワード」3体を生け贄に…「幻魔皇ラビエル」を召喚!』

研究員の場のガーゴイルが破壊されて巨大な悪魔…ラビエルが現れる…すると…

 

『何だ!?カードの絵柄が薄くなっていくぞ!?』

手前を見ると固定されていたカードのイラストが薄くなっていく…

『これは…すごい力だ!力が溢れてくる!!』

ラビエルを召喚した研究員に変化が起きる、髭が薄くなり肌に艶が甦りどんどん若返っていく…!

 

「スゴい力だ!!これならオレは世界の頂点に…!」

 

『まずい!?決闘マシーン!罠カードを発動しろ!』

《トラップカード、『自爆スイッチ』をハツドウ!お互いのライフを0にシマス!》

罠カードが発動しフィールドが爆煙に包まれ、そこで映像は終了した…。

 

 

 

 

「これは…」

「解析した結果、三幻魔が召喚されると周囲にあるデュエルモンスターズに宿る力を吸収し、所有者に凄まじい力を与える事がわかった…それこそ人体を不死身にしかねないほどのな…」

海馬さんは思い詰めた表情で結果を語る。

 

「俺としては不死身など非科学的なものだと思っていたが…科学的に証明されてしまってはな…」

「(俺と翠が不老不死なのは暫く黙っておこう…)」

 

「幸いにも封印システムは外部の協力者により完成している…アカデミアも間もなく完成する…そうすればこのカードを封印できるのだ!」

「海馬さん…封印システムとは?」

「画像しか無いが…これだ」

社長のパソコン画面に箱に入った7枚の板が映っている。

 

「『七精門』というシステムだ、この7枚の鍵を封印場所に納めなければ開かないというアナログなものだがな…」

「封印なら海馬コーポレーションのセキュリティの粋を集めれば…」

「以前、神のカードが盗まれた時にはコンピューターをハッキングされたそうだ…」

「なるほど、あえてアナログにする事で守りを強化したと…」

「しかし俺はもうひとつ、ロックをかける事にした…これだ!」

 

海馬さんが引き出しから一つのリストバンドを出す、それにはブルーアイズが刻まれている…。

 

「これが『ブルーアイズ・ロック・システム』…通称『ビルス』だ!これを七精門の鍵をはめる台を覆うように展開し、このリストバンドを持つ者が立ち会わなければ開かないようになっている!無論、これは協力者には伝えていないがな!」

「なるほど…」

 

 

「それでどうなのだ遊海?」

「デュエルアカデミアへ行くのは大丈夫です…」

「そうか!ならば…」

「ただし…俺を『用務員』として雇ってください!」

「用務員だと?何故だ?」

 

「俺が教職についていれば鍵を狙う者がいた場合、すぐにわかってしまう…だから俺は偽名を使い用務員としてカードを守るんです!これなら容易にはバレる事はないでしょう…!」

「フン、貴様の考えにも一理あるな…いいだろう!白波 遊海!お前を用務員としてデュエルアカデミアに雇う!無論、春風もだ!」

「ありがとうございます、海馬社長…!」

「アカデミアの開校は来年9月だ…頼むぞ!」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけでデュエルアカデミアに行く事になった!」

「どういう事ですか!?」

 

家へ戻った俺は翠に経緯を伝える…。

「ついにGxのストーリーが始まるんですね…」

「ああ、ある意味では全シリーズ中最も魔境のストーリーが始まるんだ…」

 

 

遊戯王Gx…DMの数年後から始まり学園ストーリー、主人公・遊城 十代がカードの精霊や仲間達と協力しながら数々の難題を解決していくストーリーだ…。

 

「たしかアニメ放送は1年で終わる予定だったんですよね…」

「ああ、しかしあまりの人気に放送が伸びて、ストーリーも混沌としたものになったんだよな…とりあえずあった事を整理してみよう…」

 

アニメ前

・特待生の失踪

・十代とユベルの別れ(済み)

・プロフェッサーコブラとリックの死別

・DDによるエドの父親の殺害

・破滅の光の影響

 

アニメ本編

一年目

セブンスターズ襲来・3幻魔

 

二年目

エドの入学

光の結社

 

三年目

デスデュエル

異世界編

覇王

ユベル

ダークネス

 

 

 

「三年目だけ…やけに濃いな…」

「本当に濃いですね…」

「とりあえず…破滅の光は俺達にはどうにもできない…ユベルは既に宇宙へ…、となると後はリックとエドのお父さんか…」

「たしかエドさんのお父さんはI2社のデザイナーでしたよね?」

「ああ、とにかくペガサスさんを頼ってみよう…リックは地道に探すしかないか…まだ時間はあるはずだ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れデュエルアカデミアの開校一月前になった。

俺は4月に高校を卒業し準備を進めている。

ついでに遊戯はゲーム開発のために武者修行に、本田は実家の工場を継ぎつつ夜間大学に通うそうだ、杏子はダンサーになるためにアメリカへ留学に、城之内は…プロデュエリストの道へ、何でもペガサスさんがスポンサーになってくれるらしい…。

 

GXへの布石は…半分失敗した…。

リックは既に死亡していた、そしてエドの父親は何とか命を救う事はできたが…意識が戻らなかった…。

 

あのあと、ペガサス会長に確認しフェニックス氏の居場所を突き止めてすぐに向かったが、すでに襲撃された後だった。

 

すぐに精霊の力で傷を癒したが意識は戻らなかった…原作通りBloo-Dに魂を吸収されてしまったのだろう…。

犯人はわかっているけど告発ができない…歯痒いな…。

 

 

後はアカデミアで何とかするしかないか…。

 

 

 

 

 

「それじゃあ翠、行ってくるよ!」

「はい!遊海さん気をつけて!」

 

今日、俺はアカデミアに出発する、翠は卒業後アカデミアの食堂への就職が決まっている。

 

「まぁ日曜日にはトフェニに乗って戻って来るから!」

「はい!」

「じゃあ…いってきます!」

 

 

そしてストーリーは進んで行くのであった。

 

 




次回からGX編に入りたいと思います。


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第2部 GX 編 1章 一年目 幻魔争奪戦 アカデミア
GX編始動 運命の出会い~闇のデュエル(仮)


GX編始動!資料が集まらなくて執筆スピードが遅いですが頑張ります!


「やべぇ!遅刻だぁぁ!!」

一人の少年が町中をひたすらに走っている…

 

 

「遅れる遅れる遅れる!?こんな大事な日に限って電車が遅れるなんて!いや、エキサイティング!これは俺に与えられた試練なんだ!待ってろよ・・・デュエルアカデミア!」

少年はひたすらに走り角を曲がる…と

「うわっ!?」

「おっと!」

少年は道のりの途中、人とぶつかり倒れこむ、背中からは決闘盤とデッキがこぼれ落ちる。

「すいません!!やべっ!デッキが!?」

《クリクリ~!》

「君、デュエルをするのかい?」

ぶつかられた青年が話しかける。

「あぁ!これからデュエルアカデミアを受験するんだ!」

 

「…そうか、ラッキーカードだ、コイツが君のところへ行きたがっている!」

そう言って青年は1枚のカードを手渡した…

「えっ?あ、ありがとう…」

「頑張れよ!」

 

「はい!ありがとうございます!」

「…!」グッ

青年はサムズアップをしながら去っていった…

 

「いけねぇっ!?遅刻だ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~い!遊戯!」

 

「遊海!久しぶりだね!」

 

「ああ、3年振りくらいか…」

 

「翠さんは?」

 

「アカデミアで調理をやってるよ、ん?何かいい事あったか?」

 

「…ああ、将来有望なデュエリストの卵に会ったんだ!」

 

「それで『ハネクリボー』を託したか?」

 

「!?何でそれを…?」

 

「…彼が新しいHEROになる男だからさ!」

 

「そうか…彼が…!」

 

「ああ、新しい伝説の始まりだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がアカデミアに就職して6年の月日が経った、最初は生徒数の少なかったアカデミアだがデュエルモンスターズが社会に浸透するにつれて生徒数も増加、今では本校を含め5校を展開する巨大な学舎になった。

 

俺は翠と共にアカデミアに住み込み、それぞれ仕事をしている。

そして今年、ついに遊城 十代がアカデミアに入学するようだ…、長かった…。

とりあえずアカデミアの6年間を纏めてみよう。 

 

一年目

学校施設の把握、三幻魔封印

 

二年目

平和な日々、翠合流

 

三、四年目

平和な日々

カイザー・吹雪入学

 

五年目

特待生行方不明事件

 

 

こんな感じである…結局行方不明は防げなかった…、まさか俺がいない時に起こるとは…。

アカデミアの学風も対しては変わっていない、ただレッド寮は少し綺麗なアパート風になって食事もある程度普通のレベルになっている…理由は後々…

 

俺は6年間、アカデミアでの仕事をこなしながら各地の大会に参加していた、たまには思いっきりデュエルしたいし…、だんだん観客も増えていき、デュエル専用スタジアムも増えている…これが大決闘時代か…

 

ついでに俺のランキングは5位である、頑張れば1位になれるけど程ほどにしている

「(マスター、誰に説明してるんですか?)」

「ん?いや、今までの事を整理してたんだよ!」

「…?」

俺は今アカデミアに向かうヘリに乗っている、勿論十代達も一緒だ。

 

 

 

 

そして夜…

 

 

「こんばんは~!寮長の大徳寺だにゃ~!授業では錬金術を担当してるにゃ!よろしくにゃ~!」

 

「副寮長の岸波 白野だ!普段は用務員をやってる!よろしくな!」

 

「調理の岸波 翠です!今日は歓迎会だからいっぱい食べてくださいね!」

 

「「「うぉ~すげぇ~!」」」

 

レッド寮が綺麗な理由、それは俺と翠が大徳寺先生の補佐で寮を管理しているからだ、ついでに今日のメニューはごはん、ハンバーグ、ポテトサラダという洋食メニューである…腹が減ってはデュエルはできぬ、ごはんがおいしいお陰かレッド寮の生徒達もアニメよりは雰囲気は明るい。

ついでに俺は岸波 白野という名前でアカデミアに勤めている、服装は作業服に灰色の帽子を被った姿だ…不思議とバレないんだよな…。

 

 

「岸波さん!」

「ん?君は…丸藤君だったかな?どうした?」

水色の髪に丸めがねをかけた少年、丸藤 翔が話しかけてきた。

「岸波さんと調理の翠さんって苗字が一緒ですけど…もしかして…」

「ああ、俺と翠は夫婦だよ!結婚して4年目かな?」

「スゴい…羨ましいな…あんな美人な人と…」

「君にもそのうち見つかるよ!」

「はい!頑張ります!」

 

そう俺と翠は形だけだが結婚した、子供は作れないが…それでも幸せである。

 

「翠さん!スゲェおいしいです!」

「ありがとう!十代君!まだあるからね!」

「にゃはは~、よく食べる子だにゃ~!」

 

 

 

 

 

 

 

カチャカチャ…

「遊海さん…ついに始まりますね…」

「ああ、でも暫くはクロノス先生イベント以外は平和だと思うから大丈夫だよ…貴方はどう思うアムナエル(・・・・・)?」

「彼から強い力を感じるよ…彼が君の言っていた…」

「ああ、理事長の暴走を諌められるデュエリストだよ…」

 

俺は大徳寺…もといアムナエルに自分の正体を明かしている、彼の体は既に限界が近づいている…彼は自分が力尽きる前に影丸の暴走を止めたいと思っていた、だから俺達はアムナエルの体を延命しつつ、彼から影丸の動きを探っていたのだ。

ついでにアカデミアで俺達の正体を知っているのは鮫島校長とアムナエルだけである。

 

「マスター、十代様がアカデミアに向かいました!」

「万丈目とのデュエルだな…そのうち戻ってくるから大丈夫だ。」

「遊海君…彼は強いかい?」

「はい、彼は遊戯を継ぐ者ですから…!」

 

 

そして時は進んで行く…翔の女子風呂覗き(冤罪)、月一テストの万丈目対十代…、クロノス先生が暴走気味だけど…まぁ大丈夫だろう。

 

 

 

そんなある日…

 

「遊海君、ちょっといいかにゃ?」

『にゃ~お』

「どうしたんですか大徳寺先生?」

 

ある日の夜、大徳寺先生が訪ねてきた。

「いや…さっき十代君達が怖い話大会をしてたから勢いで『特待生寮』の話をしちゃったんだけど…まずかったかにゃ…?」

「あ…、忘れてた…大徳寺先生ありがとうございます!ちょっと行ってきます!」

「ちょっと遊海君!?」

 

あのイベントを忘れてた…昔はなんとも思わず見ていたけど…今の俺には…許せない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(俺はここまでなのか…?)」

 

十代は徐々に恐怖に飲まれていった、原因は闇のデュエリスト・タイタンとのデュエルである。

タイタンは実力者である明日香を倒し、人質にして十代に闇のデュエルを挑んできた。

タイタンのデッキはデーモンデッキ…高いパワーが売りのデッキだ、十代はデュエルを続けるがダメージを受ける度に自身の体が消えて行くにつれ恐怖に飲まれていく…

 

 

「さぁ小僧…もがき苦しみながら闇に沈むがいい!」

「アニキ!頑張って!」

「十代~!!」

翔とコアラ似の青年、隼人が十代を励ますが…

「(やべぇ…体が…!明日香…すまない!)」

 

カツーン…カツーン…

 

十代が気を失う刹那、本来誰も来ないはずの廃寮に足音が響く…

 

《クリクリ~!》

「ハネクリボー?」

突然ハネクリボーが現れ、喜び?始める…

 

「何者だ!この闇のゲームの場に来るとは…よほどの命知らずらしいな!」

タイタンが声をあげる、そしてその人物は現れた。

 

『我、闇の番人を継ぎし者…』

 

その人物は全身を黒いローブに包み、腕に金色の玉を持っていた。

 

「闇の番人だと?」

タイタンは疑問に思もった…依頼人はこんな事を言っていたか?と

 

『闇のゲームを騙る者に罰を与えん…!!』

 

「っ!?嘘…だろ?」

その時十代は見た、ローブの人物の後ろに…赤い龍の姿を…!

 

ボンッ

「うわっ!?投影機が!?」

 

タイタンの持っていた偽アイテムが煙をあげる、それと共に十代の体も戻っていく…

 

「体が…戻ったぜ!」

 

『闇のデュエリストを騙る者よ…汝の策は露見した…これより真なる闇のゲームを始める…!』

その言葉と共に十代とタイタンが闇に飲まれる…

「アニキ!?」

 

 

 

「ここは…?」

『これより始めるは真の闇のゲーム…さぁ我が立ち会おう…存分に死合うがいい!』

「バカな…闇のゲームだと…!?」

「へっ!面白くなってきたぜ!」

 

そして…

 

 

「いけ!『エッジマン』!『スカルデーモン』を攻撃!『パワーエッジアタック』!」

「ぐあああっ!?」

 

タイタンLP 0

 

十代 WIN!

 

 

 

 

 

「ガッチャ!」

「そんな…この私が…ハッ!?」

 

『雌雄は決した…闇のゲームを騙りし者よ…「罰ゲーム」を受けるがいい!』

「ちょっと待ってくれ!?私は依頼を受けただけで…!」

 

『問答無用!闇のゲームを騙った時点で重罪なり!

罰ゲーム!「奈落の闇(ダーク・フォール)」!』

 

「うっ!うわあああぁぁぁ…!?」

タイタンは足下に開いた穴に落ちていった…、それと共に周囲の闇も晴れていく…

 

「アニキ!無事だったんッスね!!」

翔が十代に駆け寄る

「ああ!モンスター達のおかげだ…!」

十代はそう言ってハネクリボーの方を見る

《クリクリ~!》

 

『遊城 十代…見事なデュエルだった…!』

ローブの人物が話しかける

「ああ、あんたは…」

『…今は我が正体を明かす事叶わず…さらばだ!』

そう言うと金色の玉から光が溢れ出す

「うわっ!?」

「眩しいッス!?」

「なんだな~!?」

 

『励めよ十代!「決闘王」を継ぐ可能性を持つ者よ!』

 

光が収まるとローブの人物は消えていた

 

「いったい奴は何者なんだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ…暑かった…」

「お疲れさまです遊海さん!」

 

さっきの闇の番人の正体は俺だ、アニメでタイタンが千年パズルを出した時に思ってたんだ「お前がソレを使うな!」ってね。

 

だからローブを着て十代の決闘に干渉したんだ…ノリで闇の番人を名乗って、オシリスも使っちゃったけど…アテムなら許してくれる…よな?

最後に罰ゲーム宣告したら…発動しちゃったよ…奈落の闇…まぁ影丸さんがなんとかするでしょう!

 

 

さて、これで暫くは俺の干渉は必要ないかな…後は生徒達に任せようか!

 



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セブンスターズ来襲~遊海対クロノス先生~

十代達の入学から約半年が過ぎた、その間に十代&翔のタッグデュエルがあったり、野生化したブルー生・大山が帰ってきたり、万丈目がアカデミアから出てってアームド・ドラゴンを手土産にノース校から帰ってきたりしたがおおむね平和な学園生活を送っていた…しかし。

 

 

 

「遊海君、影丸理事長が動くよ『セブンスターズ』を招集してるにゃ…」

 

「わかりました…ありがとうございます、大徳寺先生…体はどうですか?」

 

「君達の治療のおかげでまだ持ちそうにゃ…でもそんなに長くはないにゃ…」

 

「そうですか…なら、時が来たら…」

 

「わかってるにゃ!まだ先だけど…にゃ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピリリリ…ピリリリ…

「携帯が…はい!岸波です!」

 

『遊海さんか?』

 

「鮫島校長?どうしました?」

 

『幻魔を狙う者達が現れました…校長室へお願いします…!』

 

「わかりました、今行きます!」

 

 

 

 

 

 

 

校長室に着くといたのは鮫島校長一人だった。

「失礼します」

「遊海さん…先程『七精皇(セブンスターズ)』と名乗る者達より予告がありました…三幻魔を頂く…と」

そう言って校長は1枚の手紙を見せる

 

「三幻魔を封印して約6年…ついにですか…鍵の守護者は?」

「はい…彼らとあなたに任せたいと思うのですが…」

校長は名簿を出す、生徒から十代・明日香・万丈目・カイザー・三沢、大人は大徳寺・俺か…

 

「なるほど…生徒達には?」

「これからです、たぶんそろそろ…」

 

 

コンコンコン

 

「失礼しますノ~ネ!生徒達を連れてきたノーネ!」

 

特徴的な金髪の先生…クロノス先生が校長室に入って来る、その後ろから丸藤 亮・十代・明日香・万丈目・三沢・大徳寺が入ってくる、どうやら校長室の前で合流したようだ

 

「あれ?白野さん?どうしたんだ?白野さんも何か悪い事したのか?」

十代が話しかけてくる

「なわけ無いでしょうが!岸波さんはこの学校ができた時からいる古参の職員なんだにゃ!」ゴツン!

「痛てっ!?なにもゲンコツしなくても…!」

大徳寺先生が十代にゲンコツを喰らわせる…是非もないネ!

 

「オホン!…君達を呼んだのは他でもない…君達にあるカードを守って貰いたいからだ!」

「「「あるカード?」」」

 

そして鮫島校長から三幻魔の詳細が語られる…

 

「犯罪集団・グールズの造った危険なカード…」

「そんなカードが学園に…」

「ワタシも初めて知ったノ~ネ…」

「うぇ!?クロノス先生も知らなかったのか?」

 

「それは当たり前だ、この事を知っていたのは私に理事長、オーナーと岸波さんだけだからね、では三幻魔を守る鍵…『七精門の鍵』の防衛メンバーを伝える!」

 

 

~メンバー発表中~

 

 

「ちょっと待つノーネ!!?」

「どうしましたクロノス先生?」

「まだ生徒達はわかります~が!何故!実技最高責任者のワタ~シが防衛メンバーに入ってないノーネ!?」

「鮫島校長!自分も同感です!何故クロノス先生が入っていないのですか!しかもよりにもよって最後の一人が用務員だなんて!!」

クロノス先生と万丈目が声を上げる

 

「う~む…納得してくれないか…」

「納得しかねますノーネ!!」

「…なら実力で決めるしかないか…白野さん…いいですか?」

「ええ!受けてたちましょう!」

 

 

「…白野さんデュエルできるのか…?」

十代が心配するが…

「大丈夫だよ十代、俺はまあまあ強いから!」

「絶対に勝つノ~ネ!!」

 

 

「…岸波さんのデュエル…俺は見た事ないな…」

「あら、そうなの?」

「ああ、いつも学校を掃除しているか…いない事もあるからな…そういえば学園祭の時も…」

明日香と亮が言葉を交わす…

 

 

 

 

 

 

 

「では両者準備はいいかな?」

「「はい!/なノーネ!」」

舞台をデュエルリングに変え遊海とクロノスが対峙する。

 

「では…デュエル開始!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     「「デュエル(エ~ル!)!!」」

 

クロノスLP 4000

遊海 LP 4000

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワタ~シの先攻…ドロー!」

「手札から『天使の施し』を発動!三枚ドローして二枚捨てるノーネ!」

 

捨てたカード

エメスザインフィニティ

トロイホース

 

「そして『早すぎた埋葬』を発動!800ライフを払~い墓地の『トロイホース』を特殊召喚するノーネ!」

墓地から大きな木馬が呼び出されクロノス先生を蹴り上げる ATK 1600

「アウチッ!?」

 

クロノスLP 4000→3200

 

「イタイノーネ…」

「大丈夫ですか…?」

 

「ノープログレム!続けるノーネ!『トロイホース』を2体分の生け贄に…来るノーネ!『古代の機械巨人』!」

 

トロイホースが破壊され土煙の中から巨人が現れる

ATK 3000

 

「いきなり出た!クロノス先生のエースカード!」

「やっぱりクロノス先生の実力は高いか…」

十代とカイザーがコメントする

 

「(いきなりきた…!やっぱりカッコいい!)」

顔は平静だが内心、遊海はとても喜んでいる

 

「用務員ごときには負けられないノーネ!カードを二枚伏せてターンエンドなノーネ!!」

 

クロノスLP 3200

ギアゴーレム 伏せ2 手札2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『マンジュ・ゴッド』を召喚!効果で儀式魔法『影霊衣の万華鏡』を手札に加える!」

身体中からたくさんの手の生えた大仏のようなモンスターが現れる ATK 1400

 

「儀式デスート!?」

「岸波さん儀式使いなのか!!」

クロノス先生が驚き、十代は目を輝かせる

 

「そして手札から儀式魔法『影霊衣の降魔鏡』を発動!手札の『影霊衣の術士 シュリット』を生け贄に…降霊せよ!解き放たれし第2の龍の魂!『グングニールの影霊衣』!」

 

フィールドに長く紅い髪の少女が現れ、鏡のはめ込まれた杖を持ち祈りを捧げる、すると半透明の細身の龍が現れ少女と一体化する。

そして翼のある青い龍を象った鎧を纏った魔導士が現れた ATK 2500

 

「ちょっと待つノーネ!今生け贄にしたモンスターはレベル3のモンスターなノーネ!レベル7は召喚できないはずなノーネ!?」

 

 

「『シュリット』は影霊衣儀式モンスターの生け贄にする時、必要なレベルを全て賄える!そして生け贄になった『シュリット』の効果でデッキの戦士族の儀式モンスター『トリシューラの影霊衣』を手札に加える!」

 

「ぐぬぬっ…でもそのモンスターの攻撃力は2500!『ギアゴーレム』には敵わないノーネ!!」

「『グングニール』の効果を発動!手札の『影霊衣の大魔導士』を捨てて『ギアゴーレム』を破壊する!」

「なんでスート!?」

 

グングニールの影霊衣が杖を掲げる、すると機械巨人の足下に魔法陣が現れ機械巨人が氷結し、砕け散る。

 

「『古代の機械巨人』が!?」

「あんなにあっさりと…!」

万丈目と三沢は驚きを隠せないようだ

 

「バトル!『グングニール』でクロノス先生にダイレクトアタック!『氷結の魔槍』!」

グングニールが杖を掲げると巨大な氷の槍が現れる、グングニールは飛び上がり杖で槍をクロノス先生に弾き飛ばす

 

「オゥ!?フレッ~ド!?」

クロノスLP 3200→700

 

 

「た、タダデハマケナイノーネ、リバーストラップ『ダメージコンデンサー』発動ナノーネ…!ブルブル」

クロノスは寒さに耐えつつ罠カードを発動する

 

「手札の『魔法の歯車』を捨ててデッキから2体目の『トロイホース』を特殊召喚するノーネ!」

 

フィールドに再び木馬が現れるATK 1600

 

「俺はこれでターンエンドです!」

遊海 LP 4000

マンジュ グングニール衣 手札3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だろ…クロノス教諭が1ターンで追い詰められるなんて!?」

「いったい岸波さんって何者なの?」

「(あのプレイング…素人では無い、まるで幾つもの死線をくぐり抜けたような…)」

 

「セニョール岸波…凄まじい強さナノーネ…でも生徒達のために…負ける訳にはいかないノーネ!!」

 

 

 

 

「…クロノス先生、何があなたをそこまで突き動かすんですか?」

 

「なんですと…?」

 

「これから来る敵は確実に厄介な敵のはずです、それこそ以前現れたという闇のデュエリストのように闇のゲームを仕掛けてくるかも知れません…あなたは生徒達を守れますか…?」

 

「ワターシは『闇のゲーム』なんてオカルトは信じないノーネ!…デュエルとーは、希望と光に満ち溢れたものであーり、苦痛と闇を与えるものではないノーネ!!」

 

「ならあなたは立ち向かえますか…?闇のゲームに」

 

「生徒のためならワターシはどんなものにでも立ち向かうノーネ!例え闇のデュエルに敗れたとしても!闇は光を凌駕できない!そう信じて決して心は折らないノーネ!」

 

 

「クロノス先生…あんたって人は…!」

「さすがですクロノス教諭!」

「さすがアカデミアの実技最高責任者ですね…!」

十代や校長達がクロノス先生を見直したようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ただしネコは除くノーネ…」

 

 

 

 

「「「ズコッ!」」」

 

「…わかりました、あなたの心の強さ…見せてもらいました!さあデュエルを続けましょう!」

 

 

 

 

 

 

「言われなくてーも!ワタシのターン…ドロー!」

「!…『強欲な壷』を発動!2ドロー!」

 

「…まさかシニョール亮以外でこのモンスターを召喚する事になるとーは…ワターシは『トロイホース』を生け贄に再び『古代の機械巨人』を召喚するノーネ!」

再び機械の巨人が現れる ATK 3000

 

「そしーて、手札から魔法カード『古代の機械融合』を発動するノーネ!!」

 

「「「『古代の機械融合』!?」」」

 

「フィールドの『ギアゴーレム』とデッキの『ギアゴーレム』『古代の機械兵士』の3体を融合!くるノーネ!我が奥の手!『古代の機械超巨人』!」

ギアゴーレムを中心に古代の機械のパーツが寄り集まり

阿修羅のような巨人が現れる ATK 3300

 

「このモンスターは…!」

 

「バトルナノーネ!『超巨人』で『グングニール』を攻撃!『メガトンパウンド』!」

超巨人の拳でグングニールが殴り倒される

「うおおぉっ!」

 

遊海LP 4000→3200

 

「さらーに!『機械巨人』を2体素材にした『超巨人』は二回攻撃できるノーネ!『マンジュゴッド』を攻撃ナノーネ!」

超巨人のゲンコツがマンジュを叩き潰す

「ぐああぁ!?」

 

遊海LP 3200→1300

 

「すげぇ!クロノス先生が巻き返した!」

「まさか、あの劣勢からここまで戻すとは…」

「岸波さんピンチだにゃ~!」

 

 

「ワターシはこれでターンエンド!シニョール岸波!先に言っておきますーが、『超巨人』には相手によってフィールドを離れた時、融合デッキから更なるモンスターを特殊召喚する効果がありマース!」

 

「ご忠告ありがとうございます…クロノス先生…!」

クロノスLP 700

超巨人 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

 

「(ふふふのふ!伏せカードは『重力解除』!もし攻撃力が上回っても守備表示にしてしまえばいいノーネ!)」

 

「(キーカードはある…問題はあの伏せカードだ…確かクロノス先生はあまり攻撃反応型の罠は入れていなかった…ならアレは…賭けだ!)」

 

「手札から儀式魔法『影霊衣の万華鏡』を発動!融合デッキのレベル12『F・G・D』を生け贄に手札から儀式モンスターをレベルの合計が12になるように儀式召喚する!」

 

「融合デッキから!?」

「生け贄デスート!?」

 

 

「降霊せよ!第三の龍の魂!レベル9『トリシューラの影霊衣』!霧の谷を守りし怪鳥の魂!レベル3『クラウソラスの影霊衣』!」

 

冷気に包まれ龍の鎧を纏った戦士と怪鳥の鎧を纏った戦士が現れるが…

 

「(あの鎧のモンスターなんかヤバそうナノーネ!?早めに…)リバーストラップオープン!『重力解除』!フィールド全体のモンスターの表示形式を変更するノーネ!」

 

機械超巨人 DEF 3300

 

トリシューラATK 2900

クラウソラスATK 1200

 

「なんですと!?」

「儀式召喚した時に守備表示で召喚しました!勝利を焦りましたね!クロノス先生!」

 

「ぐぬぬ…でもそのモンスター達は『超巨人』には勝てないノーネ!」

「それはどうかな?」

「なぬ?」

 

「『トリシューラ』の効果発動!クロノス先生のフィールド・手札・墓地の三枚のカードを除外します!対象はフィールドの『超巨人』墓地の『機械巨人』そして手札です!『絶対氷結』!」

「しまったノーネ!?でも『超巨人』の効果で融合デッキの『古代の機械究極巨人』を召喚条件を無視して特殊召喚するノーネ!まさかワタ~シにこのモンスターを出させると~は!!」

フィールドの超巨人が氷結し崩れ落ちる、しかしその残骸が再び組み上がり更なる巨体が現れる ATK 4400

 

除外カード

超巨人

機械巨人

融合

 

「『トリシューラ』の攻撃力は2900!攻撃力が足りないノーネ!」

「ならば『クラウソラス』の効果を発動!融合デッキから召喚されたモンスターの攻撃力を0にして効果を無効化する!『迷いの風』!」

クラウソラスから放たれた風が究極巨人を無力化する

ATK 0

「なんですと!!?」

「バトル!『トリシューラ』で『究極巨人』を攻撃!放て!『アイス・トライデント・シェイバー』!!」

トリシューラが三ツ又の氷槍を投げつけて究極巨人を氷結させ、崩壊した…

 

「ペペロンチーノ!!?」

 

クロノスLP 0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「勝負アリ…ですね」

「クロノス先生が…負けた…?」

「クロノス教諭がたった2ターンで…しかも攻撃力4400の大型モンスターまでも…!」

 

 

 

 

「ワタ~シの負けナノーネ…七精門の鍵…あなたに預けるノーネ…!」

「ありがとうございますクロノス先生…あなたの分まで生徒達を守ってみせます…!」

「シニョール岸波…任せたノーネ!」

 

 

 

 

「あの…ちょっといいかにゃ?」

「どうしました?大徳寺先生?」

大徳寺先生が校長に話かける

 

「ぼくは…七精門の守護者を辞退させてもらうにゃ!」

「なんと!?どうしてです?」

「今の二人のデュエルを見ていたら…ぼくよりもクロノス先生の方が向いていると思った…それだけですにゃ!」

「…わかりました…大徳寺先生の代わりにクロノス先生を七精門の鍵の守護者に任命します!」

「へっ!?」

 

 

そうして七精門の鍵の守護者は決定した…そしてその夜、十代が一人目の刺客、仮面の男・ダークネスと接触、決闘を行い大ダメージを負いながらダークネスを打倒した。

 

そしてその正体は行方不明になっていた明日香の兄・吹雪だった…。




追記 デュエル内容を少し変更しました!


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遊海vsカーミュラ

「十代!無事か!?」

「白野先生…お静かに!十代君は眠っています!」

「鮎川先生…すいません…!」

 

十代の事を聞いて俺と翠はすぐに保健室に向かった、部屋では深く眠る十代と吹雪、看病する明日香と翔の姿があった。

 

「翔…無事だったか…」

「岸波先生…翠さん…アニキが…!」

「…大丈夫よ翔君…十代君は強い子だからすぐに目を覚ますわ!」

「ああ、大丈夫だ!心配するな…」

 

《クリクリ~…》

ハネクリボーが心配そうに十代に寄り添っている…

「ハネクリボー…久しぶりだな…大丈夫だ…今、治す…『ディアンケト』よ…十代を癒せ…!」

 

遊海の手から癒しの力が放たれ十代の傷を癒していく、十代の寝顔は安らかになっていった…

「岸波先生…いったい何を…?」

「なに、ただのおまじないだよ…もう大丈夫だ!」

 

 

 

「岸波さん…」

「明日香さん大丈夫かい?」

「はい…まさか兄が敵として現れるなんて…」

 

吹雪は人工呼吸器を着けたまま深く眠っている…長い間闇に侵食されていたからか魂もボロボロのようだ…

 

「大丈夫だ…君のお兄さんはこんな事でやられる男じゃない…すぐに目覚めるさ!」

「はい…ありがとうございます…」

去り際に吹雪にも精霊の力で治療を行う…これで大丈夫だろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数日が過ぎた…十代は無事に目が覚めた、しかしダメージが大きくしばらくは安静だそうだ…。

そんな中アカデミアの中である噂が流れ始める「深夜、湖の畔で美少女を見た!」「話かけると霧になって消えた」「話かけると牙を出した恐ろしい顔になった」等々吸血鬼が現れたと言う話だった、鮫島校長はそれをセブンスターズの一人と判断し調査を命じた。

 

そして吸血鬼から招待状があったという知らせを受けて十代・明日香以外のメンバーが湖に向かった。

 

 

「なんだか不気味な雰囲気だな…」

「空気がジメっとしてるノーネ…」

「敵はどこにいる…?」

「白野さん…」

「大丈夫だ翠…!来たみたいだぞ…!」

 

霧に包まれた湖の水上を赤い絨毯が転がってくる…そして霧の奥から緑髪の女性…カーミュラが現れる。

 

『私の名はカーミュラ!セブンスターズが一人!幻魔を復活させ我が吸血鬼の一族を再興してみせる!さぁ誰から来るのかしら?私としてはそこの青い服を着たお兄さんが好みなんだけど…?』

カーミュラはあからさまにカイザーを指名する

 

「いいだろう…受けて…」

「カイザー亮、俺に行かせてくれないか?」

「岸波さん…?」

前に出ようとしたカイザーを遊海が遮る

 

「クロノス先生と『生徒達を守る』と約束したからな…いいだろう?」

「シニョール岸波…」

「…わかりました、頼みます…!」

 

 

「というわけだ…俺が相手をしようカーミュラ嬢、退屈はさせませんよ?」

『チェンジ!と言いたいところだけど…いいでしょう!あなたも好みだわ…精々退屈指せないで頂戴!』

 

「白野さん…無茶はしないでくださいね?」

「翠、大丈夫だよ…無事に戻るから…」

「はい…!約束ですよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

       「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

 

カーミュラLP 4000  D 40

遊海 LP 4000 D 60

 

 

 

 

 

『私の先攻!ドロー!』

『「不死のワーウルフ」を召喚!』

人狼が現れる ATK 1200

 

『カードを二枚伏せてターンエンド!』

カーミュラLP 4000

ワーウルフ 伏せ2 手札3 D 34

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『ライトロード・アサシン ライデン』を召喚!」

大小二つの剣を持った暗殺者が現れる ATK 1700

 

 

「あのモンスターは!?」

「知っているのか?三沢?」

万丈目が三沢に問いかける

 

「数年前…KC社のネットワークにハッカーが侵入して極秘情報が漏れた事があった…その中にある決闘の映像があった…」

「ある映像?なんなノーネ?」

「オレも見た事がある…伝説の決闘者・武藤 遊戯が『決闘王』になった大会、バトルシティ…そのある一戦の一部始終です」

「あ~る一戦…?」

クロノスが質問しカイザーがそれに答える

 

 

「バトルシティ決勝トーナメント一回戦…第三試合、『三幻魔』を作った犯罪集団『グールズ』の首領・マリク、そして突如現れた一人の決闘者のデュエルだ…」

「その中で決闘者が使っていたテーマが『ライトロード』…そして彼は『神』を操るマリク、決闘王のライバル・城之内 克也を下しバトルシティで準優勝した…」

三沢はそこで言葉を切る…

 

「現在のプロランキング5位、精霊に愛された男といわれる伝説の決闘者…それが…」

 

「白波 遊海…私の旦那様です!」

 

「翠さん!?えっちょっと待て…翠さんの旦那さんということは…!?」

場外の全員がデュエルフィールドを見る

 

「これ使ったらさすがにバレるか…よいしょっと!」

遊海はそれまで着ていた作業服を脱ぎ捨てる、その下には赤い帽子、赤いチョッキを着た青年がいた

 

「レッド寮の副寮長とは仮の姿…海馬社長から依頼され三幻魔を守護する者…それが俺だ!」

 

「マンマミーア…」

「そりゃクロノス先生が負けるわけだ…」

「俺達とは格がちがう…」

それぞれが納得する…

 

『チィッ!伝説の決闘者だがなにかはしらないけど闇のゲームで倒せば済む話よ!』

 

「さぁデュエルを続けよう!『ライデン』の効果!デッキから二枚カードを墓地に送る!その中でライトロードがいたら相手のエンドフェイズまで攻撃力を200アップする!」

 

墓地送り

ライラ

援軍

 

ATK 1700→1900

 

「バトル!『ライデン』で『ワーウルフ』を攻撃!」

『くっ!』

 

カーミュラLP 4000→3300

 

『「ワーウルフ」の効果!破壊された時、デッキから同名モンスターの攻撃力を500上げて特殊召喚!』

再び人狼が現れる ATK 1700

 

「なるほど…だから『不死』か…カードを伏せてターンエンド!『ライデン』効果でデッキから二枚墓地へ!」

 

墓地送り

ライトロードの裁き

黄昏更衣

 

「墓地へ送られた『裁き』の効果!デッキから『裁きの龍』を手札に加える!」

『墓地からトラップですって!?』

 

遊海LP 4000

ライデン 伏せ1 手札5 D49

 

 

 

 

「あれがプロのデュエル…」

「いや…まだ白波さんは本気じゃない…まだ奥の手があるはずだ…」

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

「手札から『ヴァンパイアバッツ』を召喚!さらにこのモンスターがいる限りアンデットモンスターは攻撃力が200アップする!」

巨大なコウモリが現れ、闇の波動で強化するATK 800→1000

1700→1900

 

 

「『ワーウルフ』の攻撃力が『ライデン』と並んだ!?」

 

『バトルよ!『ワーウルフ』で『ライデン』と相討ち!そして再びデッキから『ワーウルフ』を特殊召喚!』

暗殺者と人狼が相討ちになり別の人狼が現れる

ATK 1200→1900

 

『いきなさい『ワーウルフ』!ハウリングスラッシュ!』

 

人狼が遊海を爪で切り裂く…その傷から血が滲む…

 

「ぐあっ!…相変わらず痛てぇな…ぐっ…」

 

遊海LP 4000→2100

 

「遊海さん!!」

 

「大丈夫だ翠…!」

 

『「ヴァンパイアバッツ」でダイレクトアタック!』

 

「リバースカード!『閃光のイリュージョン』!墓地の『ライデン』を特殊召喚!」  

魔法陣からライデンが現れる ATK 1700

 

『攻撃中止よ!ターンエンド!』

 

カーミュラLP 3300

ヴァンパイアバッツ ワーウルフC 伏せ2 手札3 D 31

 

 

 

 

 

「セニョール白波!大丈夫ナノーネ!?」

クロノス先生が慌てて声をかける

「大丈夫です…!それなりに慣れてますから…!」

「(少しマズイな…引けるか?いや…引くんだ!)」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「いくぜ!魔法カード『隣の芝刈り』を発動!自分のデッキが相手よりも多い時にも発動できる!デッキの差は17枚!」

 

墓地送り

 

ガロス

黄昏ライコウ

ミネルバ

ライコウ

ジェニス

ライデン

戒めの龍

黄昏ライラ

黄昏ジェイン

黄昏ルミナス

黄昏双龍2

神域

援軍

ソーラーエクス

闇の進軍

芝刈り

 

…嘘だろ?

 

「『ミネルバ』の効果!さらに一枚墓地へ!」

 

墓地送り

裁きの龍

 

「『ライデン』効果!二枚墓地へ!」

墓地送り

オルクス

援軍

 

 

「墓地にライトロードモンスターが4種類以上いるときこのモンスターを特殊召喚できる!現れろ闇を祓う光の化身!『裁きの龍』!」

遊海の場に白い巨大な龍が現れる ATK 3000

 

「ビューティフルなノーネ…」

「あれがあのデッキの切り札…」

クロノスとカイザーが白き龍に見惚れる…

 

「遊海さん…?」

翠は何か違和感を感じた…切り札たる裁きの龍を召喚したのに遊海の表情が晴れない事に…

 

 

 

 

 

 

「オイ!?なんだよあの白い龍!?すげぇカッコイイ!」

「十代~、暴れると体に響くんだな~!?」

「お兄さん!」

「クロノス先生!状況は!?」

保健室から前田に背負われた十代や翔たちが到着する…

 

「えっ!?あの人は『赤帽子』!?もしかして!?」

「レッド寮の副寮長…岸波さんが…伝説の決闘者!?」

「そうナノーネ!それで今切り札を召喚したところナノーネ!」

クロノス先生が十代達に説明する

「なぁ…でも白波さん…様子が変じゃないか?」

「どうした十代?」

「なんか…覚悟を決めたような…?」

 

 

 

 

 

 

「(しまった…『フェリス』が落ちなかった…先に伏せカードを処理したかったが…やるしかない!)」

「『裁きの龍』の効果!ライフを1000払い!フィールド全てを破壊する!『カタストロフ・レイ』!」

白き龍の波動がフィールドを照らし全てを破壊する!

 

LP 2100→1100

 

『フフフ…!』

 

 

「眩しいノーネ!?」

「なんて効果だ!?でもこれでカーミュラのフィールドはがら空き…なんだと?」

三沢が光の治まったフィールドを見て声をあげる…

…フィールドにはヴァンパイアバッツとワーウルフが守備表示で変わらず存在していたからだ…

 

「なんでだ?なんでモンスターが!」

 

『フフフ…、破壊された伏せカード『不死族の棺』の効果…手札の「ヴァンパイアロード」を墓地に送ってワーウルフを特殊召喚したの!さらに『ヴァンパイアバッツ』はデッキから同名モンスターを墓地に送ることで破壊されないのよ!残念だったわね!ホホホホ!』

 

「そんな…遊海さん!」

「白波さん!負けないでくれ!」

十代達が遊海を応援する…

 

「手札から『ライトロードパラディン ジェイン』を召喚!」

鎧を着た聖戦士が現れる ATK 1800

 

「バトル!『裁きの龍』で『バッツ』を攻撃!『裁きの息吹』!」

裁きの龍の息吹でコウモリが消し飛ぶ

『うぅぅぅ~っ!光は吸血鬼の大敵なのよ…遠慮してくださる?』

カミューラ3300→1300

 

「『ジェイン』で『ワーウルフ』を攻撃!」

聖戦士が人狼を討伐する

 

「ターンエンド…『裁きの龍』の効果で4枚、『ジェイン』の効果で二枚、デッキから墓地へ送る…」

墓地送り

バルブ

フェリス

ジャスティスW

ケルビム

 

ライニャン

神域

 

 

 

遊海LP 1100

裁きの龍 ジェイン 手札3 D25

 

 

 

 

 

「嘘だろ…あの猛攻を凌いだ…だと…」

「白波さん!まだチャンスはある!諦めるな!」

「そうだよ!攻撃力3000のモンスターがいるなら!!」

 

 

『はぁ…さっきから好き勝手にやってくれちゃって…落とし前つけてもらうわよ!!!』

カミューラは恐ろしい表情になり遊海を威嚇する

 

「ヒィ~!?怖い~!!」

「こら翔!くっつくな!?」

 

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『アハハハ!いいカードを引いたわ!『強欲な壷』を発動!カードを二枚引くわ!フフフ!』

「さらにフィールド魔法『不死の王国ーヘルヴィニア』を発動!」

 

カミューラの後ろに中世ヨーロッパ風の古城が現れる。

 

「なっ!?そのカードは!?」

「クロノス先生どうしたんだ!?」

「あのカードは禁断のカードナノーネ!?その効果は…!」

 

『手札からアンデットモンスター『バッツ』を捨てて効果発動!このターン、私の通常召喚を封じる代わりに相手フィールドのモンスターを全て破壊する!目障りな光よ!消え去るがいい!』

古城から放たれた赤い雷撃で戦士と白き龍が破壊される

「うわっ!?」

 

「そして手札から『生者の書ー禁断の呪術』を発動!墓地の『ヴァンパイア・ロード』を特殊召喚しあなたの墓地の『裁きの龍』を除外するわ!」

墓地から吸血鬼の紳士が現れる ATK 2000

 

「あ…」

「遊海さん!!?」

 

「…十代…生徒達よ!光を信じろ!闇に屈するなよ!!」

「白波さん!!」

 

『ヴァンパイア・ロードでダイレクトアタック!『暗黒の使徒』!!』

ヴァンパイアロードのマントから多数のコウモリが現れ遊海に群がる

「ぐあああぁぁぁ…!」

遊海LP 0

 

カミューラ win!

 

 

 

 

 

「十代…光のデュエルを…コウモリ…気を…」バタッ

「白波さん!!」

「遊海さん!!」

 

『さぁ…オシオキの時間よ…人形になりなさい!!』

 

気絶した遊海の体を闇が包み消し去る…そしてカミューラの手に赤い帽子を被った人形が現れる

 

「寮長さんが…」

「人形になっちゃったッス…!」

 

『フフフ!私とのデュエルに負けたら私の人形になってもらうわ!』

 

「貴様!!」

「シニョール白波を返すノーネ!」

万丈目とクロノス先生が声をあげる

 

『フフフ!どうしようかな…この子なかなか可愛い顔をしてるから好み…ギャ!?』

 

突如カミューラが人形を残して吹き飛ぶ、カミューラの手を離れた人形は地面に落ちる事なくカミューラを吹き飛ばした本人…翠の手に収まる…。

 

「今何が起きたノーネ…!?」

「翠…さん?」

 

「遊海さん…だから無茶はしないでって…言ったじゃないですか…」

翠は泣きながら声無き人形に話しかける…

 

『貴様ァ!私の顔を殴るなんていい度胸じゃないの…!!』

復活したカミューラが凄まじい怒気と共に近づくが…

《翠に手は出させません!》

『なっ!?精霊ですって!?』

 

翠の前にウィンダが現れ杖を構える…

 

「あれは…カードの精霊!?」

「ボクにも姿が見えるッス!?」

「おいおい…嘘だろ?」

《兄貴~自分で実体化できる精霊はけっこう上位の精霊よ~!》

十代や万丈目、おじゃまイエローまでが驚きを露にする

 

「あなた…遊海さんを元に戻しなさい…!!」

『嫌よ!元に戻したかったらデュエルで私に勝つことね!』

「なら…今ここで…!」

〈ダメだ…翠…今は引くんだ…!〉

「遊海さん!?」

 

『…興が削がれたわ…また明日ね!私に挑みたいなら私の城にいらっしゃい!フフフ、アハハハ!』

 

カミューラは笑い声と共にコウモリに姿を変えて消えてしまう…あとには鍵の守護者と湖上の城だけが残っていた…。

 



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カミューラを打倒せよ!

レッド寮・食堂にて…

 

 

 

 

「遊海さん…グスッ…!」

「翠さん…泣かないでくれ…白波さんも翠さんの涙は見たくないはずだ…」

「そうッスよ…」

《クリクリ~…》

 

翌日、カミューラに倒され人形になってしまった遊海を連れて鍵の守護者達はレッド寮にて会議をおこなっていた…

「まさか闇のゲームが本当に実在するとは…」

 

「セニョール白波はその身を以て闇のゲームから生徒を守ったノーネ…なら今度はワターシ達が彼を助け出す番ナノーネ!」

 

「でも…あのカミューラって女…中々強いわよ…」

 

「なら…次はオレが行こう!」

 

「お兄さん…」

 

「カイザー…」

 

カミューラと誰が戦うか?という話でカイザーが立候補する

 

「プロデュエリストで敵わないなら…オレが…!」

 

「亮…」

 

「でもその前に翠さんに聞きたい…いったいいつから、この学校で三幻魔の守り人を?」

 

「それは…」

 

〈それは俺から答えよう…!〉

 

「「「えっ!?」」」

突如遊海人形が動きだし声を出す

 

「遊海さん!?」

〈翠…ごめんな…レジストに時間がかかった!さっきはよく堪えてくれた…〉

遊海は机に伏せていた翠の頭を撫でる

「遊海さんのバカ~!!何回私に心配かければ済むんですか~!!」

〈あっ!ちょっと待って今、体が布だから!水が染み込む~!?〉

 

「嘘だろ…」

他のメンバーは二人の様子を黙って見ているしかなかった

 

 

         《閑話休題》

 

 

 

〈ハァハァ…というわけで説明だ!〉

とりあえず翠を落ち着かせた遊海はみんなに説明を始める…

 

「はい!白波先生!」

〈なんだ?十代君?〉

説明前に十代が手をあげる

「先生…どうやって動いてるんだ?それに声も…」

〈そこからか…〉

「「(十代…よく聞いた!)」」

 

〈今、俺は直接声を出しているわけじゃない、みんなの頭にテレパシーという形で話しかけてる!それから体は俺の持つ「精霊の力」で人形化の呪いを一部レジストしてなんとか動かしているんだ!〉

 

「なるほど…わかったような、わからないような…」

 

〈まあ、その他は追々…それじゃあ俺と翠についての説明を始めるぞ!〉

 

 

 

 

 

〈俺と翠はアカデミアのオーナー・海馬社長から指令を受けて三幻魔とその防衛システムを守っていたんだ!〉

 

「たしか三幻魔はとても強い力を持っているとか…」

 

〈天上院さん、よく聞いてくれた!たぶん皆は三幻魔の力を聞いてはいないよな?〉

 

「ああ、とにかくヤバイカードだから守ってくれ!としか…」

 

〈…わかった!皆手をつないで俺に触れてくれ!俺の知ってる映像を伝える!〉

 

そして全員が手を繋ぎ遊海に触れる…

 

〈アヤカ!頼むよ!〉

 

《了解しましたマスター!》

 

そして全員の頭に7年前の実験の映像が浮かぶ、巨大な悪魔…薄くなるカードのイラスト…暴走する人物…

 

「これは…!」

 

「いったい何が…!?」

万丈目と三沢が驚いている

 

〈三幻魔の力…それはデュエルモンスターの精霊の力をひたすらに吸収し、その力で所有者を不老不死に出来る力なんだ…!〉

 

「所有者を不老不死にする…そんなのありえるのか?」

 

「そもそも精霊なんているノーネ?」

 

カイザーとクロノス先生が疑問を抱く

 

〈不死はともかく精霊はいる!アヤカ!〉

 

《はい、精霊フィールド展開します!》

 

すると…

 

 

《クリクリ~!》

 

「ハネクリボー!?」

 

「僕にも見えるんだな~!」

 

《は~い!おじゃましてま~す!》

 

「おじゃまイエロー!?」

 

「マルガリータ!?本当にいたノーネ!?」

 

《遊海…人形になってる…プニプニ…!》

 

〈いや…遊ばないでねウェンちゃん…これでも体の維持大変なんだから…!!〉

 

《こらウェン!いたずらしないの!!》

 

《は~い…》

 

「ありがとうウィンダ…」

 

 

 

 

〈こんな感じで精霊は存在する!そして三幻魔は精霊から無限にエネルギーを吸収し、それを所有者に供給…不死化を可能にするんだと思います〉

 

「そんな事が…」

 

〈そして問題は精霊にも力の上限がある事だ…〉

 

「力の…上限?」

 

〈三幻魔が精霊から吸収し続ければその精霊は力を失い完全に幻魔に吸収され…それが度を過ぎれば…精…霊…だけで…なく…人間も…滅…〉

 

「遊海先生?どうしたんだ!?」

 

遊海の言葉にノイズが混じり始める…

 

〈すま…ん力を保つの…が限界…後で…!〉パタン

 

「遊海さん!!」

それから遊海は動く事はなかった…力を使いきってしまったのだろう…

 

 

 

ガラガラ

「ん?みんなどうしたのにゃ?こんなに集まって…」

大徳寺先生が食堂に入ってくる

 

「おっ?遊海君の人形にゃ?よくできてるにゃ~!」

 

「大徳寺先生!それ!白波先生本人!!」

 

「ふぇ!?ごめんにゃ遊海…!」

 

『にゃ~お!!』

 

「あっ!ファラオ!ダメにゃ!」

 

大徳寺先生が翠に人形を手渡そうとすると、それをファラオがかっさらってしまった

 

「遊海さん!?」

 

「みんな!ファラオを捕まえるんだ!?」

 

『にゃ~お!?』

 

 

 

 

格闘する事約一時間…なんとか人形を取り返す事ができた…

 

 

 

 

「遊海君…ごめんなのにゃ…」

 

『にゃ~お…』

 

「大丈夫ですよ…たぶん…」

 

〈(死ぬかと思った…)〉

 

「…時間も時間だ…1度解散して休憩にしよう…また夜の9時ここに集合だ…いいな?」

 

「「「はい!」」」

 

カイザーの締めで会議は終了した。

 

「(遊海さん…私が助け出します…!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~夜~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈十代…〉

 

「遊海さん!大丈夫か!?」

 

〈ああ…さっきファラオに破かれかけた時はビックリしたよ…痛覚が無くてよかった…、あれ?翠は?〉

 

「さっきまで洗い物を…」

 

「アニキ!大変ッス!!」

食堂に翔が駆け込んでくる

 

「どうしたんだ、翔?」

 

「今、翠さんが湖の方に!!」

 

〈なんだって!?まさか…また一人で!十代!翠を追ってくれ!翔君は他のメンバーに連絡を!!〉

 

「わかったッス!」

 

「飛ばすぜ!」

 

〈十代!頼む!(早まるな…翠!)〉

 

 

 

 

 

 

 

~湖・カミューラ城~

 

 

『誰かしら?私のお城に勝手に入ってくる泥棒猫は?』

 

「カミューラ…私とデュエルしなさい!あなたに勝って遊海さんを元に戻してみせる!」

レッド寮を抜け出した翠は一人でカミューラ城に潜入、カミューラとエンカウントしていた…。

 

『嫌よ…だってあなた…鍵を持って無いじゃない…』

「それでも決闘してもらいます!代償は私の血です!」

『へぇ…いいわね…ちょうどお腹が減ってたの…メインの前の前菜として頂きましょうか!』 

 

 

 

 

      「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

カミューラLP 4000

翠LP 4000

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「ヴァンパイア・レディ」を召喚!』

 

妖艶な吸血鬼が現れる ATK 1550

 

『カードを二枚伏せてターンエンド!』

 

カミューラLP 4000

 

レディ 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

「(遊海さん…私に力を貸してください!)」

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「手札から魔法カード『テラフォーミング』を発動!フィールド魔法『セフィラの神託』を手札に加えます!」

「そして『神託』を発動!効果処理でデッキから『セフィラフウシ』を手札に!」

翠の後ろに巨大な門が現れる

 

「さらに手札から『セフィラの神意』を発動!デッキから『智天の神星龍』を手札に加えます!」

 

『やけにサーチばっかりするデッキね…(コイツのデッキはコウモリではあまり見れなかった…何をするのかしら…?)』

 

 

「そして手札から『神星龍』と『セフィラシウゴ』をペンデュラムスケールにセッティング!そして手札から速効魔法『揺れる眼差し』を発動!スケールのカードを二枚破壊し!あなたに500ダメージを与え、デッキからペンデュラムモンスターを手札に加える!『セフィラツバーン』を手札に!」

翠の横に光の柱が現れる、そこから雷撃がカミューラを直撃する

 

『ああああ!!』

カミューラLP 4000→3500

 

『よくもやったわね!小娘が!!』

 

「手札から『セフィラウェンディ』と『セフィラセイバー』をペンデュラムスケールにセッティング!」

光の柱の中にイルカに乗った少女と武装した魔導士が現れる

 

『いったい何を…?』

 

「スケール7の『ウェンディ』とスケール1の『セイバー』でペンデュラムスケールをセッティング!神樹の加護よ!今こそ私に力を貸して!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから『秘竜星ーセフィラシウゴ』!手札から『竜星因士ーセフィラツバーン』!『宝竜星ーセフィラフウシ』!」

時空に開いた穴から鼻輪を着けた黒い竜、白い竜の鎧を着た戦士、東洋的な顔の竜が現れる

 

DEF 2600

DEF 2100

ATK 1500

 

『モンスターの大量展開!?させないわ!リバース罠『激流葬』!モンスターを全て破壊する!』

「そんな!?」

 

カミューラのトラップから大量の水が溢れだしフィールドのモンスターを押し流す!

 

「…ターンエンドです…」

翠LP 4000

神託 Pスケールウェンディ セイバー 手札0

 

《翠!大丈夫!?》

「ウィンダ…大丈夫…まだなんとかなるはず…!」

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『あなたに私の真の力を見せてあげる!手札から『生者の書ー禁断の呪術』を発動!墓地のレディを特殊召喚して、あなたの墓地の…『揺れる眼差し』を除外!(墓地にモンスターがいない…?どこに行ったの?)』

吸血鬼の女性が復活する ATK 1550

 

『そして「レディ」を生け贄に…『ヴァンパイア・ロード』を召喚!』

吸血鬼の紳士が現れる ATK 2000

 

『そして「ロード」を除外し…来なさい「ヴァンパイア・ジェネシス」!』

 

吸血鬼の紳士の体が肥大し醜悪な化け物に変化する

ATK 3000

「ああ…!」

 

『バトル!「ジェネシス」でダイレクトアタック!「ヘルビシャスブラッド」!』

 

吸血鬼から血の色の魔力が放たれ翠を吹き飛ばす

「きゃああああ!?」

 

翠LP 4000→1000

 

『私はこれでターンエンドよ!』

 

カミューラLP 4000

ジェネシス 伏せ1 手札1

 

 

 

 

「ああ…くぅ…っ!」

《翠さん…!!》

ウィンダが翠に駆け寄る

「ウィンダ…大丈夫…私が遊海さんを助けるの…、だから私は…負けない!」

翠はなんとか立ち上がる

 

「私のターン…ドロー!」

「ペンデュラム召喚!手札から『オルシャドールーセフィラルーツ』!エクストラデッキから『セフィラシウゴ』『セフィラツバーン』!」

『なんですって!?』

時空の穴から虹色のコアの石像、竜の鎧の戦士、黒い竜が現れる

DEF 1950

DEF 2100

DEF 2600

 

『そのモンスター達は破壊したはず!?』

 

「私のセフィラモンスター達は破壊された時、融合デッキに表側で加わるんです!そしてペンデュラム召喚でそのモンスター達は再びフィールドに舞い戻る!召喚に成功した『セフィラシウゴ』の効果で罠カード『セフィラの星戦』を手札に加えます!そしてフィールドの三体を生け贄に…来てください!聖選士の絆の結晶!『智天の神星龍』!」

《オオオオッ!》

翠の場にセフィラの最大戦力の龍が現れる、そして翠の怒りを代弁するかの如く咆哮を上げる ATK 3450

 

『攻撃力3450…!?』

 

「そして『神星龍』の効果で再びペンデュラム召喚!来て!『セフィラツバーン』!『セフィラルーツ』!『セフィラシウゴ』!『セフィラフウシ』!」

再びフィールドにモンスターが集結する

DEF 2100

DEF 1950

DEF 2600

ATK 1500

 

「『セフィラフウシ』の効果!『セフィラシウゴ』をチューナーにしてチューニング!シンクロ召喚!」

 

3+6=9

 

「星に選ばれし龍達よ!今こそその力を開放せよ!レベル9『幻竜星ーチョウホウ』!」

翠のフィールドに神々しい鳥の頭を持った龍が現れる

ATK 2900

 

『なんなのよ!?そのモンスターは!?』

 

「さらにレベル4の『セフィラツバーン』と『セフィラルーツ』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!愚鈍なる力に抗う反逆の牙…ランク4『ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!」

エクシーズの名前を冠する黒竜が現れる ATK 2500

 

『いったいなんなのよ!?』

 

「『ダークリベリオン』の効果!ORUをふたつ取り除き『ジェネシス』の攻撃力を半分にしてその分攻撃力を上げる!『トリーズンディスチャージ』!」

吸血鬼を紫電が拘束し力を奪う

 

ジェネシスATK 3000→1500

ダークリベリオンATK 2500→4000

 

「さらに手札から罠カード!『セフィラの星戦』を発動!このカードは自分のペンデュラムゾーンにセフィラカードが二枚ある時、手札から発動できる!『セフィラセイバー』と『ジェネシス』を破壊!」

 

『手札からトラップ!?キャア!?』

 

セフィラセイバーがジェネシスに特攻しジェネシスを打ち倒す

 

「これで終わりです!!『神星龍』!『ダークリベリオン』『チョウホウ』でダイレクトアタック!『創星のビックバン・バースト』!『反逆のライトニングディスオベイ』!『竜星の煌めき』!!!」

 

三体のモンスターの攻撃がカミューラに迫り…!

 

 

 

 

 

ピカッ!ドカーン!!

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!カミューラの城が!?」

〈急いでくれ!十代!!〉

 

 

「すごい爆発なんだな~!?」

「ボク達も急ぐッス!!」

「セニョリータ翠!無事でいて欲しいの~ネ!!」

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…遊海さん…私…やりましたよ…」

 

〈翠!〉

「翠さん!!」

爆煙の残る城に十代と遊海が到着する

 

〈翠…これは…!?〉

翠のフィールドには神星龍とチョウホウ、ダークリベリオン…大型モンスター三体が並んでいる…

「すげぇ…これみんな翠さんのモンスターなのか…!」

十代は目を輝かせる

 

「遊海さん…私…やりましたよ…カミューラを倒しました…!」

 

 

 

 

 

『誰を…倒した?ですって…!!』

 

〈何!?〉

 

「何で…!?」

 

煙が晴れるとそこには無傷のカミューラが立っていた…

 

カミューラLP 6800

 

「何で…!?明らかにオーバーキルしたのに!?」

 

『攻撃を受ける直前…私はリバースカード『妖かしの紅月』を発動していたわ…手札の「闇より出でし絶望」を墓地に送りライフを回復、バトルフェイズを終了したのよ!アハハ!ちょっとヒヤッとしたけど私には届かなかったようね!アハハハハ!!』

カミューラは醜悪な表情で翠を嘲笑う

 

「…私はターンエンド…」

翠LP 1000

神星龍 リベリオン チョウホウ 神託 Pスケールウェンディ 手札0

 

 

 

「アニキ~!」

「十代!無事か!?」

「翠さんは!?」

少し遅れて翔、カイザー、明日香など他の守護者達が到着する

 

「翔…みんな…」

「セニョール十代!デュエルは!?セニョリータ翠は無事ナノーネ!?」

〈盤面は翠が有利です…でも、もしカミューラがあのカードを引いたら…!〉

「セニョール白波?」

 

 

 

 

 

『私のターン…ドロー!アハハ!』

 

カードを引いたカミューラが笑い出す

 

「おい!何がおかしい!お前の場はがら空き!手札も1枚!そこから何ができると言うんだ!!」

万丈目がカミューラに指摘する

《兄貴~それってフラグって言うやつじゃ…》

 

『私はこのターンであなたに勝利するは…でも、その前に…!』

カミューラは十代を見る

〈十代!後ろだ!?〉

 

「何!?」

 

『もう遅いわ!!』

 

〈ぐあっ!?〉

 

「遊海先生!!」

 

影に潜んでいたカミューラの分身が遊海人形を奪い取りオリジナルのカミューラの隣に降り立つ

「遊海さん!?」

 

〈ぐっ…離せ!?〉

 

『へぇ…人形になっても体を動かせるなんて…初めてだわ…』

 

「遊海さんを返して!?」

 

『ならこれから起こることを無抵抗で受け入れなさい!そしたら返してあげるわ!』

 

「くっ…!」

 

〈貴様…!!〉

 

「カミューラ!卑怯だぞ!」

十代が非難の声を上げる

 

『卑怯で結構!私は一族を再興するためにどうしても幻魔が必要なのよ!魔法カード発動!「幻魔の扉」!』

カミューラの後ろに石造りの禍々しい扉が現れる

「なんだあのカードは!?」

「見た事ないカードナノーネ!?」

〈しまった!?〉

 

『うふふ、効果発動!あなたの場のモンスターを全て破壊するわ!』

扉が開き闇が溢れ出す

 

「墓地から『神意』の効果を…!」

 

『あら?愛しの旦那様がどうなってもいいのかしら?』

カミューラの分身が遊海人形の体を引きちぎろうとする

〈ぐああっ!?〉 

 

「遊海さん!!?」

 

〈翠…使え!俺にかまうなァ!!〉

 

「でも…!?」

 

『そうそう、人形を壊したら私を倒しても復活しないから』

 

「!?」

 

「カミューラ!!貴様ァ!」

冷静沈着なカイザーが怒りをあらわにする

 

そして闇が翠の場を蹂躙する

《オオオオ…》

 

「『神星龍』…」

 

『そしてあなたがこのデュエル中に使ったモンスターをデッキ・墓地・融合デッキから召喚条件を無視して、私の場に特殊召喚する!さぁ…私の下僕になりなさい!「神星龍」!!』

 

扉から透明な腕が伸び、融合デッキの神星龍をフィールドに引きずり出す ATK 3450

 

「カミューラ!インチキ効果もいい加減にしろ!そのカード!何もデメリットないのかよ!」

万丈目が叫ぶ

 

『もちろんあるわよ?このカードを使ったデュエルで負けたら私の魂は幻魔の物になる…そして召喚したカードの維持にも私の魂の力を使う…でもこれなら問題ないわ…!』

 

〈あっ…力が…吸わ…れ……ミ…ド……〉

「遊海さん!?」

人形から力が吸いとられ神星龍に供給される

〈……〉

 

「白波先生!!」

 

『さぁいきましょうか…』

 

「翠さん!!」

 

『バトル!さぁ!自分の切り札に焼かれて倒れるがいい!「神星龍」でダイレクトアタック!』

神星龍がブレスを放ち自分の主を焼き尽くす

 

「遊海…さん…ごめん…なさい…」

 

翠LP 0

 

カミューラ win!

 

 

 

 

 

 

 

《グオオオオ……!》

 

「『神星龍』が…泣いてる…」

 

「なんて悲しい声…」

 

デュエルが終了し神星龍は悲しい鳴き声をあげながら消滅する…

翠は膝から崩れ落ちる…

「あ…」

 

そしてカミューラが人形を持って翠のそばに降り立つ

 

『さぁ子猫ちゃん…約束を果たして貰いましょうか…!』

 

「カミューラ!翠さんに何を!!」

 

 

 

 

 

『こうするのよ…ハグッ!!』ガブリ

 

「あっ…嫌…!」

 

 

「セニョリータ明日香!!見ちゃダメナノーネ!!!」

 

「クロノス先生!?」

カミューラは翠の首筋に噛み付き血を吸い上げる…クロノス先生はそれを明日香に見せまいと上着で顔を隠す

 

『ンクッ…ンクッ…!』

 

「あ…嫌…ゆう…み…さ…」 

体を拘束された翠の瞳から生気が消えていき…肌が色を失なっていく…

 

「やめろォ!!」

十代がカミューラに飛びかかる

 

『おっと!』

カミューラの分身が十代を受け止める

「貴様!離せ!」

『うふふ…』

 

『ンクッ…ンクッ…ジュル…』

 

 

「……ゆ……み……」ガクッ

 

 

『はぁ…ごちそうさま…なかなか美味しかったわ…!』

 

「…」

 

『さぁ…仕上げよ!あなたも人形になりなさい!』

翠の体を闇が包み消え去る…そしてカミューラの手に紫髪の人形が現れる…

 

『さて…子猫の人形は要らないから赤帽子の子の人形だけ…ッ!!』

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん!!』

 

『ジョージ!!』

 

『うわあああ!?』

 

『ジョージ!?ジョージ!!?アアア!!』

 

 

 

 

 

 

『う…今のは…いいわやっぱり興味無いわ、こんな人形!』

カミューラは遊海の人形を投げ捨てる

 

『それじゃあみなさん、ごきげんよう!』

 

「待て!?」

 

カミューラは霧になって消え去った、後にあったのは寄り添う2体の人形だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白波先生…翠さん…どうして…!」

 

守護者達は校長室でカミューラへの対策を練っていた…

 

「まさか守護者の二人がやられてしまうとは…翠さんも相当手練れの決闘者…、そんな彼らが負けるとは…」

鮫島校長がうなだれる…

 

「いや!翠さんは勝てたんだ!でもカミューラが白波先生を人質にして…クソッ!」

十代が怒りをあらわにする

 

「優秀な決闘者に対する人質作戦…卑怯だが…最適の手段だ…俺でもあの状況になったら負けていただろう…」

カイザーが弟である翔を見ながら呟いた…

 

「お兄さん…もしそんな状況になってもボクのために負けないでほしいッス!」

「何をいうんだ翔!お前は…オレのただ一人の弟じゃないか!」

「お兄さん…!」

 

「…みんな…、何か彼女を倒す情報はないか?」

鮫島校長が問いかける

 

「白波先生!何か方法はないのかよ…!!」

〈……〉

万丈目が遊海人形を揺する

「やめろ!万丈目!ハネクリボーが言ってる、あの扉に力を吸いとられて意識すらも無くなってるって…」

「クソッ!」

万丈目は人形を元に戻す

 

「遊海先生…いつも俺が困ってる時にアドバイスをくれた…何か…何かないのか…!」

 

 

 

 

《十代…光のデュエルを…コウモリ…気を…》

 

 

 

 

 

「コウ…モリ…?コウモリ!?まさか?」

十代は部屋を見回す

 

「十代?どうしたノーネ?」

 

「アニキ?」

 

「…!そこだぁ!!」

『ギキィ!?』

十代がデッキからカードを引き抜き、カード手裏剣を投げる…すると、天井からコウモリが落ちてくる

 

「きゃあ!?コウモリ!?」

 

「コウモリ…そうかコウモリは吸血鬼の眷族!あいつこれでオレ達のデッキを覗いていたのか!」

 

「セコイ奴だ…!許せん!」

万丈目と三沢が怒る…

 

「カミューラ…あんたは俺が倒す!」

 

 

 

 

~夜~

 

 

 

「カミューラ!俺とデュエルだ!」

十代がカミューラにデュエルを申し込む

 

『…いいわ…あなたも人形にしてあげる!』

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

~ダイジェスト~

「来い!『E・HEROテンペスター』!!」

『「幻魔の扉」を発動!さぁ…あなたの仲間を…!』 

 

キラン!

 

「墓守りのペンダントが…!」

 

『しまった!?幻魔の扉が!?』

 

 

 

「現れろ!『E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン』!究極の輝きを放て!『シャイニング・シュート』!!」

 

『でもまだライフは残ってるわ!』

 

「『シャイニングフレアウィングマン』は破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える…!」

 

『うあああああ!!?』

 

カミューラLP 0

 

十代 win!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガッチャ!楽しい…!?」

 

 

デュエルに敗北したカミューラの後ろに幻魔の扉が現れ…カミューラの魂を吸収して消え去る…そして肉体は金色のチョーカーを残して消え去った…

 

「終わったの…かしら…?」

 

 

「あ!?先生達の人形が!?」

 

翔の持っていた遊海と翠の人形が浮かび上がり元の姿に戻る

 

「白波先生!翠さん!!」

十代が駆け寄る

「…大丈夫よ、意識は無いけど息はしてる…」

「よかった…」

 

ゴゴゴ…

 

「マズイ!城が崩れるぞ!」

「脱出だ!」

 

 

 

主を失なった城は崩れ去り…島を覆っていた闇も消えていく…

 

 

「長い戦いだったわね…」

明日香が呟く…

 

「ああ、でもまだ刺客は来るはずだ…まだ始まったばっかりだからな…でもとりあえず…一休みしようぜ…」

十代は朝日を浴びながらそう言うのであった…。



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アカデミア買収!?~万丈目グループの野望~

「うっ…こ…こは…?」

「目が覚めたかにゃ?遊海くん?」

「大徳寺…先生?」

「そうにゃ!何があったか覚えてるにゃ?」

 

何をしてたんだっけ…カミューラとデュエルして…人形にされて…翠が…翠!?

 

「大徳寺先生!翠…翠は無事ですか!?アタタタ…」

「遊海くん落ち着くにゃ!翠さんは隣で眠ってるにゃ!」

 

そういわれ隣を見ると、首に包帯を巻いた翠が寝息をたてていた…よかった…

 

「大徳寺先生…カミューラは?」

 

「カミューラは十代君が倒したにゃ!今日は君達が元に戻って4日目にゃ…二人とも酷く衰弱してたからにゃ…それに翠さんは…」

 

「翠に…何かあったんですか!?」

 

「…君を助けようとカミューラにデュエルを挑んで…カミューラが幻魔の扉を発動させて君を人質にした…ここまでは覚えてるにゃ?」

 

「はい…その後、俺は完全に意識を無くしてますから…」

 

「翠さんはその後デュエルに敗北したにゃ…それで…吸血鬼であるカミューラに血を吸われたんだにゃ…」

 

「血を…!?」

 

「彼女がカミューラとデュエルする条件がそれだったそうにゃ…そのあとすぐに人形にされて、いまだに意識は戻らないにゃ…」

 

「そんな…!」

 

「とりあえず簡単な錬金術検査をしたけど幸い、吸血鬼の因子は見つからなかったにゃ、とりあえずは安心してほしいにゃ!」

 

「そう…ですか…、ありがとう大徳寺先生…」

 

「いいんだよ、いつも治療してもらってるお礼にゃ…そうだ!お腹がすいたでしょう!今、トメさんにお粥作ってもらうからちょっと待っててにゃ!」

 

そう言って大徳寺先生は走っていった…。

 

 

「翠にまた心配かけちゃったな…でも吸血鬼か…アヤカ!」

 

 

「アヤカ?…いないのか?」

 

 

「あれっ…?ウィンダ?ウェン?トフェニ…?」

 

 

「嘘だろ?誰もいないのか?」

 

 

 

 

 

 

「白波先生!大丈夫…うわ!?」

「アニキ?どうしたんすか?」

 

 

 

しばらくして十代と翔が見舞いにきたが…何か様子がおかしい…?

 

「十代!カミューラを倒してくれたそうだな!ありがとう、助かったよ!」

 

「お…おう…遊海先生…大丈夫か…?」

 

「なんとかな…それよりか俺と翠の精霊達を知らないか?さっきから誰も反応がないんだよ…」

 

「白波先生…視えてないのか…?」

 

「えっ?」

 

「先生の周りでみんなが喋ってて凄い事になってるんだけど…」

 

「なんだって?」

 

 

十代vision

 

 

《マスター!?私はここにいますよ!?見えて無いんですか!?》

 

《主殿!》

 

《遊海さん?どうしたの!?》

 

《完全に無視?》

 

 

十代vision OFF

 

 

「嘘だろ…」

精霊が見えなくなってる…!?

 

「えっ?えっと…先生、アヤカっていう精霊が実体化の許可をくれ…って…」

 

「わかった…アヤカ!実体化を許可する!出てきてくれ!」

 

 

「あれ?」

 

「…エネルギーが足りない?」

 

「まさか…!」

遊海は傷む体を起こしカードケースから「ディアンケト」を取り出す、そして翠に近づいて…

 

「『ディアンケト』よ!傷を癒せ!」

 

シーン…

 

「白波先生?どうしたんすか?」

 

「まだだ!精霊アーマー起動!」

 

シーン…

 

「白波先生?」

 

「精霊の力が…使えない…」

 

「「えっ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

その後、十代を介してアヤカに聞いたところ、俺の力のレベルが80あったのが1まで下がってしまったらしい…ついでに十代は40、翔は5だそうな…。

 

原因おそらく、カミューラの使った「幻魔の扉」、ほぼ魂だけの状態で近づいたから幻魔に力を根こそぎ吸われてしまったんだろう…。

 

「先生…アヤカが何か方法はないか?って」

 

「う~ん…アヤカ!ミレニアムモードを解除!アイテムを出してくれ!」

すると虚空から金色の卵が現れ…遊海の頭に直撃する

 

「がっ!?キュウ…」

 

「先生!?大丈夫か!?」

 

「あれ…この玉…どこかで…ウジャトの眼?」

翔が玉を拾い上げる

 

「翔!それはタイタンと戦った時の!?」

 

「闇の番人!?先生!?」

 

「イタタ…ああ、あの時の闇の番人は俺だよ、タイタンが許せなくてな…」

 

「じゃあ…この玉は…失われた千年アイテム!?」

 

「でもこんなのなかったぜ…だいたいアイテムの数は7つだし…」

 

「あ…ボタンがある…ポチっ」

 

「翔!?玉を離せ!」

 

「えっ!?どわ!?」

 

《₡₡₡₡$$$₮$₮₮₮₢↓!!》

翔が千年玉のボタンを押すと女邪神ヌヴィアが飛び出していった…廊下の先で悲鳴が上がる…

 

「十代…たぶん何か精霊が飛び出していったと思うから止めてくれ…」

 

「わかった!?」

 

「遊海先生ごめんなさい!行ってきます!」

 

十代と翔は部屋を飛び出していった…頼んだぞ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…千年玉でもダメか…やはり三幻魔を倒さないと…アヤカ!見えないけど俺と翠を頼んだぞ!」

 

《(はい!わかりました!)》

 

 

 

 

  

Prrr…Prrr…

 

「電話か…はい!岸波です!」

 

『遊海か?オレだ!息災か?』

 

「海馬社長!?半年振りですね、どうしました?」

電話の相手は海馬社長だった、しばらく振りの電話である。

 

『お前に仕事の依頼だ!』

 

「なんですか?」

 

『「アカデミア」の用務員として万丈目グループの兄弟とデュエルしてもらうぞ!

 

「ファッ!?」

 

 

 

 

話を聞くと世界を手中に収めようとする万丈目グループが、デュエルアカデミアを買収したいらしい…カードゲーム界を手にいれる足がかりとかなんとか…。

 

それで買収の条件としてアカデミアに在籍する弟の隼と用務員の俺にデュエルで勝つことを提示したそうだ…ハンデつきで…。

 

「それでハンデとは?」

 

『弟には攻撃力500以下のモンスターのみ、お前はフルモンスターで攻撃力1500以下のモンスター限定だそうだ!負けるんじゃないぞ!試合は3日後だ!』プッ

 

 

 

 

 

「攻撃力1500以下のフルモンスター?…あれでいいか…その前に体…治るかな…治るか、不死身だし…」

 

その後、俺は体を休めつつデッキ調整を続けた…結局試合の日まで翠が目覚める事はなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして決闘当日…万丈目は兄・長作と対戦し攻撃力0のモンスター達とおじゃま3兄弟・カオスネクロマンサーで勝利をおさめた、次は俺と次男・正司の番である。

 

 

 

「君がアカデミアの用務員かい?」

黒い高級そうなスーツを着た青年が話かけてくる

「はい、岸波と言います!よろしくお願いします!」

 

「ふん!海馬オーナーが君を指名するからデュエルするが…みすぼらしい格好だな…」

 

「すいません…先日怪我をしまして…」

今の俺の格好は、普段の作業着に全身包帯だらけである…精霊の力が抜けたせいか怪我の治りが遅い…

 

「怪我をしていようが関係ない!ハンデはわかってるな?」

 

「はい、『フルモンスターで攻撃力1500以下のモンスターのみ』ですよね?」

 

「そうだ!兄は負けたが俺が勝てばイーブンだ!倒させてもらう!」

 

 

「先生…大丈夫か?体は治りきってないんだろ?」

十代が話かけてくる

 

「ああ、大丈夫だ!怪我をしてるなら、してるなりの決闘方法がある、それを見せよう!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レディース&ジェントルマン!これよりアカデミア買収を賭けた第2試合!万丈目 正司対アカデミア用務員!しら…岸波 白野のデュエルを始めるノーネ!』

 

「「わあああああ…!」」

 

クロノス先生が司会をしている…そういえばテレビ中継してるんだっけ…

 

「白野さん!頑張ってくれ~!」

「金持ちの高慢ちきに負けるな~!」

「白野先生!頑張って~!」

 

 

 

『両者用意はいいノーネ?』

 

「ああ!」

「はい!」

 

『それでーはデュエル!開始なノーネ!』

 

 

 

カーン!

 

 

 

 

 

      「「デュエル!」」

 

 

 

 

 

 

正司 LP 4000

遊海 LP 4000

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺のレアドラゴンデッキを見せてやる!手札から『融合』を発動!手札の『ロードオブドラゴン』と『神竜ラグナロク』を融合!現れろ!『竜魔人キングドラグーン』!」

半人半竜の魔人が現れる ATK 2400

 

「『キングドラグーン』の効果発動!手札から『タイガードラゴン』を召喚!」

虎柄の竜が現れるATK 2400

 

「さらに『アレキサンドライトドラゴン』を召喚!」

全身が神秘的な輝く宝石の竜が現れる ATK 2000

 

「これでターンエンドだ!この輝くドラゴン達に勝てるかな?ハハハハ!」

 

正司LP 4000

キングドラグーン タイガー アレキサンド 手札2

 

 

 

 

『万丈目 正司!いきなり高い攻撃力のモンスター達を展開したノーネ!攻撃力1500以下というハンデの中どうやって勝つノーネ!?』

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「あっ…(ワンキルだこれ…)」

 

《(やっちゃってください!マスター♪声は届かないでしょうが応援してますから!)》

 

「手札の『超重武者ビックワラーG』は墓地に魔法・罠が無いときに特殊召喚できる!」

唐笠を被ったわらじのようなロボットが現れる ATK 800

 

「ふん、攻撃力800?俺のドラゴン達に勝てるわけないじゃないか!ハッハッハッ!」

 

「そして『ビックワラーG』は生け贄にする時、2体分になれる!俺は『ビックワラーG 』を生け贄に…現れろ!動かざること山の如し!不動の姿、今見せん!!『超重武者ビッグベンーK』!」

刺叉のような武器を持った鎧を着たロボットが現れる DEF 3500

 

「守備力3500!?(あれじゃあ攻撃できねぇ!)」

 

「バトル!」

 

「何!?守備表示では攻撃できないのではないのか!?」

 

「『ビッグベンーK』は守備表示で攻撃できる!その時守備力を攻撃力として扱う!」

 

「なんだと!?」

 

「『ビッグベンーK』で『キングドラグーン』を攻撃!『不動の地割れ』!」

ビッグベンKが足踏みし地割れがキングドラグーンに迫る

 

「さらに手札から『超重武者装留バスター・ガントレット』の効果発動!このカードを手札から墓地に送り『ビッグベンK』の守備力を倍にする!」

 

「守備力が倍?…ということは…!?」

 

DEF 3500→7000

 

『実質、攻撃力7000…ナノーネ…つまーり…?』

 

「いけ!『不動の山岳』!」

地割れに続きビッグベンKが拳を地面に突き刺す、そしてキングドラグーンの下から山が突き上げ、正司は落ちてきたキングドラグーンの下敷きになった。

「ぐええぇぇ~!?」

 

正司LP 4000→0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

『デュエルエ~ンド!勝者は岸波 白野!ナノーネ!』

 

 

「「わあああああ!!」」

 

 

 

「白野さんすげぇ!」

 

「あの布陣をカード三枚で突破した!?」

 

「いつも失礼な態度ですいませんでした!」

 

生徒達が歓声を上げる!

 

 

 

 

 

「ちょっと待った!!」

 

正司が待ったをかける

「ハンデは攻撃力1500以下のモンスターと言ったはずだ!ズルではないのか!?」

 

「超重武者のダメージはあくまで守備力で計算をおこないます!ズルではありません!」

 

「ぐっ!おのれ…俺は認めんぞ!」

 

 

 

 

 

「見苦しいぞ!万丈目 正司!決闘の結末…確かに見させてもらった!」

 

 

 

 

 

 

「この声は…まさか!」

 

「久しいな!白野!いや…遊海!その姿はどうしたのだ?」

 

「海馬社長!?」

 

俺の後ろから現れたのはKC社の社長、そしてアカデミアのオーナーの海馬社長だった…というか名前!?

 

「海馬社長だ!?」

 

「オーナーがなぜここに!?」

 

「ユウミ…?」

 

「まさか…伝説の決闘者…『赤帽子』の白波 遊海!?」

 

ほら…こうなった…

 

俺は作業着を脱ぎ捨てて、いつもの姿になる

 

 

 

 

「嘘だろ…?アカデミアに伝説の決闘者がいたなんて!」

 

 

 

 

 

「あ~あ…大混乱ッスねアニキ…」

 

「スゲェ…海馬社長…本物だ…!!」

 

「聞いてないし…」

 

 

 

 

 

 

 

「こやつは俺の認めた3人目の決闘者!ルール違反をする筈が無いだろう愚か者!」

 

「そんな…馬鹿な…」

 

 

 

「海馬社長…どうして…」

 

「ふん、貴様が手負いだと聞いてな…発破をかけにきたが、杞憂だったようだな!」

「万丈目グループよ!買収の話は白紙撤回させてもらう!上がこれではアカデミアを任せる事はできん!話は以上だ!島から立ち去るがいい!フハハハハ!」

 

そう高笑いしながら海馬さんは立ち去った…。

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして俺は保健室に戻る事ができた…たくさんの生徒達に揉みくちゃにされて大変だったが…まあしょうがないだろう…。

 

「翠…ただいま…」

 

「…」

 

翠は今だ目覚めない…どうすれば…ん?

 

ベット脇のテーブルにフルーツの盛り合わせと花が置いてある…いつもはドローパンなのに…誰からだろう?

 

 

 

 

『白波 翠へ

早く目を覚ませ、遊海が寂しがっていたぞ。

快復を祈る。         海馬』

 

 

『翠さんへ

海馬君からセブンスターズについて聞きました、僕は手を出せないけど遊海君がいるなら大丈夫!

早く元気になって遊海君を安心させてあげて!

              武藤 遊戯』

 

 

 

「遊戯…海馬さん…ありがとう…」

 

 

この日、遊海は久しぶりに涙を流した…。



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翠を救え!~心の部屋での決闘~

買収デュエルから三日が経った…翠はまだ目覚めない…。

鮎川先生曰く体は健康そのもの、病気も無いらしい…。

 

 

 

 

「遊海先生!翠さんは大丈夫か?」

 

「ああ、十代…いつもすまないな…」

 

「いいんだよ先生!俺は早く翠さんに元気になってもらって美味しいご飯を食べたいだけだからさ!」

 

「まったく…トメさんと明日香に言い付けるぞ?」

 

「先生!?それはカンベンしてくれ~!?」

 

「冗談だよ!…翠…みんなお前が起きるの待ってるんだぞ?どうしたんだよ…!」

 

「先生…」

遊海はそう言いながら翠の頭を撫でる…

 

 

 

ー遊海…さん…ー

 

 

 

「えっ?」

遊海の頭に翠の声が響く

 

 

 

ーたすけ…て…!ー

 

「翠!?」

 

 

 

「先生?どうしたんだ?」

 

「翠が助けを求めてる…!」

 

「俺には何も聞こえな…ハネクリボー?」

《クリクリクリ…!!》

 

「先生!ハネクリボーが包帯を取れって!」

 

「包帯…まさか!?翠、ごめんよ…!」

 

遊海が翠の包帯を慎重に外す…すると

 

「これは…!?」

包帯の下…首筋にはカミューラに吸血されたであろう跡が残っていた…そして、その傷は不気味に脈動している…。

 

 

「先生…これは!?」

 

「カミューラ…吸血鬼…闇のデュエル…まさか!?」

 

「先生…?」

 

「十代…すまないが俺の身体を頼む…!」

 

「先生何をするんだ!」

 

「千年玉よ!俺を翠の心の部屋に導け!!」

遊海が言葉を紡ぐと千年玉が輝く…そして…

 

「…」バタン

 

「遊海先生!?誰か来てくれ!!先生が!遊海先生が!」

 

「どうしたノーネ!?セニョール白波!?」

 

「クロノス先生!遊海先生が…!」

 

「早くベットに寝かせるノーネ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

~翠の精神世界~

 

 

 

「ぐっ…ここは…なんとか入れたか…」

遊海が目覚めるとそこは洋館のような建物の中だった。

 

「ここが翠の…いや…違う…!」

 

 

 

 

「あああああ~っ!!」

 

 

 

「翠の悲鳴が…!そっちか!!」

 

 

 

 

 

 

『さあ…早く消えてしまいなさい!そうすれば私は復活できるのよ!』

 

「嫌だ…私は…負けない…!くっ…あああ…!」

 

「翠!!!」

 

『貴様…どうやってここに!?』

 

「あ…遊海…さん…やっと…届いた…!」

 

「やっぱりお前か!カミューラァ!!」

 

 

 

 

遊海が一つの部屋にたどり着く、そこには壁に拘束された翠と消滅した筈のカミューラがいた。

 

『ふふふ、気づかれちゃった…もう少しでこの小娘を消して私が復活できたのに…』

 

「お前…やっぱり吸血した時に!!」

 

『そうよ!私の魂の一部を小娘に植え付けておいたの!仮に本体が消えても復活できるようにね!』

 

 

「許さないぞカミューラ!!翠を解放しろ!」

 

『嫌よ!やれるもんならやってみなさい!』

 

「デュエルだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

      『「デュエル!!」』

 

 

 

 

遊海LP 4000

カミューラLP 4000

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『召喚僧サモンプリースト』を召喚!」

紫色の法衣を着た僧侶が現れる DEF 1600

 

「『サモンプリースト』の効果!手札の魔法カードを墓地に送り!デッキから『E・HERO シャドーミスト』を召喚!」

黒いアーマーの女性ヒーローが現れる DEF 1500

 

『HEROですって!?』

 

「『シャドーミスト』の効果!デッキから『マスクチェンジ』を手札に加える!カードを二枚伏せてターンエンド!」

遊海LP 4000

サモプリ シャドー 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『本体はヒーローに負けたけど私は負けないわ!フィールド魔法『不死の王国ーヘルヴィニア』を発動!』

 

「なら!それにチェーンして速効魔法『マスクチェンジ』を発動!『シャドーミスト』を変身召喚!現れろ『M・HEROダークロウ』!」

獣のような仮面を被った闇のヒーローが現れる ATK 2400

 

 

そして周囲が古城の庭に変わる

 

 

「ああああ…!?」

フィールドが変わると突然、翠が苦しみだす

 

「翠!どうした!?」

 

『オホホホ!「ヘルヴィニア」は私の心そのもののカード!それを人の心の中で発動したら影響はあるわよねぇ?』

 

「貴様…!俺は『シャドーミスト』の効果でデッキから『ブレイズマン』を手札に加える!」

 

 

『私は「ヘルヴィニア」の効果を発動!手札の「ヴァンパイアレディ」を墓地に送ってフィールドのモンスターを全て破壊するわ!』

 

古城から雷撃が放たれ、フィールドが煙に包まれる

 

『これであなたのフィールドはがら空き!手札の「生者の書」で…なんですって!?』

 

煙が晴れた遊海のフィールドには青い鎧のヒーロー・「M・HERO ヴェイパー」が存在していた ATK 2400

 

「俺は『ヘルヴィニア』の効果にチェーンして速効魔法『フォームチェンジ』を発動していた!それにより『ダークロウ』を融合デッキに戻し、新たなヒーローを召喚した!そして「ヴェイパー」はカード効果では破壊されない!そしてお前の墓地を見るがいい!」

 

『なっ!?「ヴァンパイアレディ」がいない!?』

 

「『ダークロウ』の効果により、このカードがフィールドにいるとき相手の墓地にいるカードは全て除外される」

 

『おのれぇ…カードを伏せターンエンド!』

 

カミューラLP 4000

伏せ1 ヘルヴィニア 手札3

 

 

 

 

「遊海…さん…」

 

「翠…今助けるからな!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『増援』を発動!『エアーマン』を手札に加え、そのまま召喚!」

 

背中にプロペラのついたヒーローが現れる ATK 1800

 

「『エアーマン』の効果!自分以外のヒーローの数だけ相手の魔法・罠を破壊する!消え去れ!『ヘルヴィニア』!!」

 

エアーマンのプロペラが高速回転しフィールド魔法を破壊する

 

『チイッ!!』

 

「バトル!いけ『ヴェイパー』!カミューラにダイレクトアタック!」

 

『リバースカード『妖かしの紅月』!手札の「ヴァンパイアロード」を墓地に送り、ライフを回復しバトルフェイズを終了する!』

 

カミューラLP 4000→6000

 

「しぶとい…!俺はターンエンド!」

 

遊海 LP 4000

ヴェイパー エアーマン 手札4

 

 

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『手札から「生者の書」を発動!墓地のロードを特殊召喚して『シャドーミスト』を除外する!』

吸血鬼の紳士が現れる ATK 2000

 

『さらに『ロード』を除外して現れなさい!『ヴァンパイアジェネシス』!』

吸血鬼の始祖が現れる ATK 3000

 

「来たか!!」

 

『さらに永続魔法『ジェネシス・クライシス』を発動!デッキから『不死のワーウルフ』を手札に加える!そしてそのまま召喚!』

人狼が現れる ATK 1200

 

『バトルよ!「ジェネシス」で「ヴェイパー」を攻撃!

「ヘルビシャスブラッド」!!』

 

吸血鬼から血の色の魔力が放たれ、ヴェイパーを破壊する

 

「ぐああ!!」

 

「あああ…!!」

 

遊海LP 4000→3400

 

 

「翠…!?」

翠の足先が消えていく…

 

『言い忘れてたわ!あなたがダメージを受けたら彼女の精神もその分消える…、そしてライフが0になったらあなたも彼女も消えてもらうわ!この世界は8割、私が掌握したわ!もう少しで復活できるのよ!アハハハハ!!』

 

「カミューラアアア!!」

 

『私はこれでターンエンドよ!アハハ!』

カミューラLP 6000

ジェネシス ワーウルフ 魔クライシス 手札1

 

 

 

 

 

 

 

~現実世界~

 

 

 

「ぐっ…カミューラめ…!!」

 

「遊海先生!大丈夫か?おい!」

 

「十代君!いったいどうしたにゃ!?」

 

「大徳寺先生!遊海先生が!」

 

「これは…!遊海君は誰かと戦ってるにゃ!」

 

「ううう…」

 

「セニョリータ翠!しっかりするノーネ!!」

 

「いったい何が起きてるんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

~精神世界~

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『クレイマン』を守備表示で召喚!」

粘土の鎧のヒーローが現れる DEF 2000

 

「そして手札から『マスクチェンジ』を発動!フィールドの『エアーマン』を変身召喚!『M・HERO カミカゼ』!」

白いマントを羽織った緑色のヒーローが現れる ATK 2700

 

「バトル!『カミカゼ』で『ワーウルフ』を攻撃!」

ヒーローがワーウルフを殴り倒す

 

『くうぅぅ!?でも『ワーウルフ』はデッキから復活する!』

カミューラLP 6000→4500

 

ワーウルフが再び現れる ATK 1200→1700

 

「『カミカゼ』の効果!相手を破壊した時1ドロー!」

 

「カードを伏せてターンエンド!」

 

遊海LP 3400

カミカゼ クレイマン 伏せ1 手札3

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッツ…私のターン!ドロー!』

 

『「強欲な壷」を発動2ドロー!…アハハハハ!』

 

『発動なさい!「幻魔の扉」!生け贄は彼女よ!耐えられるかしら?』

 

「翠ごめん!耐えてくれ!リバース罠「神の警告」!『幻魔の扉』を無効にして破壊し、俺はライフを2000払う!ぐっ!!」

天界から雷が扉を撃ち抜く

 

『なんですって!?』

 

遊海LP 3400→1400

 

「うっ…遊海さんだって頑張ってるんだ…私だって…!」

翠の胸下まで身体が消えていく…

 

 

『なら『ヴァンパイアバッツ』を召喚!アンデットの力を200アップ!』

 

巨大なコウモリが現れる DEF 0

ジェネシス3000→3200

ワーウルフ1700→1900

 

 

 

『バトル!『ジェネシス』で『カミカゼ』を攻撃!『ヘルビシャスブラッド』!』

 

「『カミカゼ』は戦闘では…破壊されない…ガッ!?」

 

遊海LP 1400→900

 

「あ…くうっ…遊海…さん…!」

翠の身体が顔と手の一部を残して消えていく…

 

『私はこれでターンエンド!もう少し…もう少しで!!』

カミューラLP 4500

ジェネシスワーウルフ バッツ 手札1

 

 

 

 

 

~現実世界~

 

 

「ゴッ…ゴボッ!ガッ…!!」

 

「遊海先生!!」

 

「ドクター!早く輸血をするノーネ!?」

 

「はっ…ぐっ…」

 

「鮎川先生!翠ちゃんの様子が!」

 

「…大変!?心拍が弱まってる!!」

 

「遊海先生!帰って来てくれよ!あんたはこんなところで終わる人じゃないだろ!?」

 

「遊海君!」

 

「セニョール白波!」

 

「先生!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~精神世界~

 

 

「俺の…ターン…ドロー!!」

 

「来た…!」

 

『なんですって!?』

 

《制限解除…!》

 

「手札から『ミラクル・フュージョン』を発動!フィールドの『カミカゼ』と墓地の『ヴェイパー』を除外し融合!混沌の名を持つ戦士よ!悪を祓え!『C・HERO カオス』!」

混沌のヒーローが現れる ATK 3000

 

『どんなモンスターを出そうと無駄よ!』

 

「さらに『E・HERO プリズマー』を召喚!そして『クレイマン』と2体でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ『A No.39希望皇ホープ』!」

未来の英雄の切り札たる光の戦士が現れる ATK 2500

 

 

「さらに『ホープ』1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!現れよ、ACNo.39!混沌を光に変える使者!希望皇ホープレイ』!」

混沌の力を得た希望の戦士が現れる ATK 2500

 

『なによ!?その力は!?』

 

「『ホープレイ』の効果を発動!自分のライフが1000以下の時、オーバーレイユニット3つ全て使い!『ジェネシス』の攻撃力を3000下げ、『ホープ』の攻撃力を1500あげる!『オーバーレイチャージ』!」

ホープの剣から光があふれ、敵対する者の力を下げ、自身の力に変える

 

ジェネシス3200→200

ホープレイ2500→4000

 

『「ジェネシス」!?』

 

「バトル!『ホープレイ』で『ジェネシス』を攻撃!『ホープ剣・カオス・スラッシュ』!」

 

ホープの巨大な剣が吸血鬼の始祖を真っ二つに切り裂いた!

 

『キャアアア!』

 

カミューラLP 4500→700

 

「そして『クライシス』の効果で『ワーウルフ』と『バッツ』も消滅!」

狼とコウモリが爆発する

 

「『カオス』でダイレクトアタック!悪を滅せよ!『カオスエクストリーム』!!」

《ゼアッ!ハァ~ッ!!》

カオスが高く飛び上がりカミューラを飛び蹴りで貫いた!

 

『おのれ!餓鬼共が~!ギャアアアア!!』

 

カミューラLP 0

 

遊海 win!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~現実世界~

 

 

『ギャアアアア!!』

 

「うわぁ!?」

 

「なんなノーネ!?」

突如、翠の身体から黒い影が飛び出す

 

『オノレ…ニンゲンガァ…』

 

「これは…カミューラ!?」

 

『小僧…貴様だけでも道連れだ…シネェ!!』

 

《させません!『抹殺の聖刻印』!怨霊よ滅せよ!》

遊海の側にトフェニが現れ、カミューラの邪念を滅する。

 

『グアアア…!?』

 

「お前は…?」

 

《拙者はトフェニ、主殿の精霊なり。久しぶりです、十代殿》

 

「あった事…あったっけ…?」

 

《大昔に1度、遊海殿を頼みましたぞ!》

そう言ってトフェニは消えてしまった

 

「二人共、バイタルが戻りました!もう大丈夫です!」

 

「よかった…ノーネ…」

 

『フゥ~一安心だにゃ…』

 

 

 

 

 

 

 

~精神世界~

 

 

 

 

「翠…大丈夫か?」

 

「はい…なんとか…」

 

カミューラを倒すと徐々に世界の風景が変わっていく…それは童実野町にある二人の家だった。

 

 

「ここが翠の心の部屋か…」

 

「ええ!やっぱりここが一番落ち着きますから…」

 

「今度久しぶりに帰ろうか…」

 

「はい!」

 

「さあ目覚めよう、みんなが翠の事を待ってるからな!」

 

 

そして二人は光に包まれ…。

 

 

 

 

 

~現実世界~

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…ゴホッゴホッ…」

 

「遊海先生!大丈夫か!?」

 

「ああ、十代…心配かけてすまなかった、もう大丈夫だ!…とクラクラするな…」

 

「アタリマエだにゃ!!どれだけ吐血すれば気がすむにゃ!」

 

「大徳寺先生…すいません…ちょっと闇のデュエルをしてまして…」

 

「キャ~~!?」

 

「ゲラッチョ!?」

 

「翠!?どうした!?」

 

「す…すいません、目が覚めたらクロノス先生が目の前にいてビックリしちゃって…!」

 

「ショボーン…なノーネ…」

 

 

 

こうして二人は無事に目覚める事ができた…しかし翠も精霊の力が枯渇し精霊達が見えなくなっていたのだった。



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遊海と翠の休息

「休暇…ですか?」

 

「そうです、遊海君と翠さん、あなた達に一週間の休暇を取ってもらいます!」

 

カミューラとの決闘から3日、なんとか調子の戻った俺達は校長室に着くなり休暇を言い渡された…解せぬ。

 

 

「鮫島校長…休暇をいただけるのはありがたいですが…返上してもいいでしょうか?」

 

「私達、ただでさえ2週間近く仕事ができなくてやらなきゃいけない事が…」

 

「返上は許せません!」

 

「どうしてですか!?」

 

「君達が寝込んでる間に職員・教員にあるアンケートを取ったんです。」

 

「「アンケート?」」

 

「『アカデミアで働き過ぎなのは誰か?』というアンケートです…その結果がこれです」

 

鮫島校長が1枚の紙を取り出した。

 

 

 

「アカデミア働き過ぎランキング」

 

5位鮎川先生

 

4位クロノス先生

 

3位トメさん

 

1位タイ岸波さん

 

1位タイ翠さん

 

 

 

 

 

 

「えぇ~!?」

 

「私達そんなに働いてないですよ?」

 

「…それじゃあ質問をしますから答えてください…まず…翠さん」

 

「はい?」

 

「1日にやっている仕事を教えてください。」

 

「はい…レッド寮の朝夕のご飯と希望者へのお弁当作り、破れた寮生の制服の補修、寮の掃除に畑作業、あと時間のある時に生徒へのカウンセリング、あと…」

 

「けっこうです、わかりました…遊海さんは?」

 

「俺は…アカデミア本校舎の掃除に故障の修理、七精門の見回りにもけ夫くんの世話、あと不審者の捕縛に行方不明者の捜索…あと植え込みの刈り込みに…花壇の整備…」

 

「うん、働きすぎです!」

 

「「えっ」」

 

「それに二人共、有休も録にとってませんね…絶対に休んでください!」

 

「でもセブンスターズが…」

 

「外部から人を呼んで代役を頼みます!それにそんなボロボロな体の人間に防衛を任せられません!」

 

「バレてましたか…」

 

「私を誰だと思っているんですか?6年間君達の動きを見てきました、調子が悪いならすぐにわかるんですよ!」

 

「はい、わかりました…」

 

「…強い口調で言いましたが、それはあなた達を心配するがゆえです…頼みますよ…」

 

 

 

 

 

 

「やっぱり鮫島先生には敵わないな…」

 

「まさか私達の健康状態まで把握してるなんて…」

 

俺達は今、レッド寮の自室で横になっている…今回の戦いで力を失いすぎた…アヤカ達、精霊も見えなくなってるし…あと…まだ頭がクラクラする…。

 

「とにかく今日は休みましょう…明日はどうしますか?」

 

「なら火山の保養所に行ってみるか?なんだかんだ行った事無かったし…」

 

「そう…ですね…そう…しま…」

 

「…寝ちゃったか…俺も……寝よう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

《アヤカさん…どうします?…マスター達…私達がいないと…》

 

《そうですね…でも私達は幻魔に手出しはできません、それはマスター達の意に反する事ですから…》

 

《私も主殿達と話せないと調子が出ず…》

 

『『『う~ん…』』』

 

《…ウィンダお姉ちゃん…》

 

《どうしたの、ウェン?》

 

《…マスター達を精霊世界に連れて行けばいいんじゃない?あの世界なら自然に力が戻る…かも?》

 

《…ダメ元でやってみるか…そもそも連れて行けるかもわからないし…》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、俺と翠は火山の保養所…温泉に来ていた、温泉なんて久しぶりだな…

 

「じゃあ遊海さん!また後で!」

 

「ああ、ゆっくりしよう!」

 

 

カポーン

 

「温泉というか池だなこれ…」

 

さすが海馬さん…スケールがデカイ…

 

「というか底が深すぎる…浮き輪は必須だな…でも気持ちいい…眠く…なっ…て……」

 

 

 

 

 

 

 

「フゥ…気持ちいい…こんな広い温泉、初めてです…」

 

本当は遊海さんと混浴できればいいんだけど…

 

「あれ…?…あんなに…寝たのに…眠い…な、血が…足りてない…のか……」

 

 

 

 

 

 

 

『バトル!「ヴァンパイア・ロード」でダイレクトアタック!』

 

「ぐあぁぁああ!!」

 

やめろ…

 

『さぁ…オシオキの時間よ…人形になりなさい!』

 

〈…〉

 

『ウフフ、私の勝ちね!約束は果してもらうわ?』

 

「あ…嫌だ…遊…海…さ…」

 

やめろ…!

 

「さあ貴女も人形に…!」

 

やめろ!!

 

 

 

 

 

 

「やめろ!!!…ハッ!?」

 

夢か…なんて悪夢を見るんだ…せっかくの温泉…あれ?

ここどこ?

 

 

 

遊海がうたた寝から目覚めると、草原だった…服も着ている…。

 

【マスター!目が覚めましたか!】

 

「うぇ!?アヤカ…?アヤカが見える…!どうして!?」

 

遊海の頭上には実体化したキラーの姿があった。

 

【マスター、おひさしぶりです!ずっと喋れなくて寂しかったんですよ…?】

 

「アヤカ…ごめんな…ここは?」

 

【ここは私達の精霊世界『DT世界』と呼ばれるところです。】

 

「ここが…キラーやウィンダ達の故郷…」

 

【はい…急に連れて来てすいません…あの温泉が一番精霊世界に通じやすい道だったので…】

 

「でもどうして俺を連れて来たんだ?」

 

【はい…マスターの精霊の力を少しでも回復できれば…この世界には力が溢れています…ここで養生すれば力も戻るかも…と思って…】

 

「そうだったのか…ありがとな、それでここは?」

 

【はい、ミストバレー湿原の近くです、あそこに崩れた祭壇が見えますね?あれがSopiaが眠っていた祭壇です!】

 

「あれが…そういえばアヤカ、ひとつ聞きたいんだけど…」

 

【なんですか?】

 

「俺の知ってるDT世界だと『クリフォート』と『シャドール』って敵対してたと思うんだけど…ウィンダとかと一緒で大丈夫なのか?」

 

【あれはあくまで人間が作った設定ですから…この世界ではそこまで関係ないんですよ、まあ平行世界と思ってもらえれば…】 

 

「そういうものか…」

 

《キラーさ~ん!お疲れ様で~す!》

 

【ソンプレスちゃん!久しぶり!】

空を飛んで現れたのはSopiaから創造の力を受け継いだ戦士・セイクリッド・ソンプレスだった。

 

《あっ!あなたが噂のマスターさんですね!》

 

「白波 遊海です!よろしく!ソンプレスさん!」

 

《はい!皆さん待ってますよ?行きましょう!》

 

「みんな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よく来てくださった!村長のカムイじゃ!』

〈ピィ~!〉

 

ソンプレスに連れられやって来たのは霊獣使いの村だった、そして霊獣使いの長老ことカムイとカンナホークと面会している。

 

『いつもウェンやウィンダ姉さんから活躍は聞いてますよ!さぁ今日はゆっくりしていってください!』

 

「あ…ありがとうございます…」

 

 

 

《ソンプレス!キラー!先にそっちが着いたか!》

 

《ケルキオン!貴方また遅刻して…》

 

《あ、私が悪いんです…転移場所間違えちゃって…》

歩いて来たのは破壊の力を受け継いだ戦士・ヴェルズケルキオンと霊獣使いのウィンダだった…そして

 

「遊海さん!!」

 

「翠!?お前も来てたのか!」

 

「はい…お風呂でうたた寝して気づいたら…」

 

「俺もだよ…まあしょうがないよ、アヤカ達には伝える手段が無かったし…」

 

【すいません…】

 

 

 

『カムイ!久しいな!元気だったか?』

 

『アバンスさん!久しぶりです!エミリアさんはお元気ですか?』

 

『ああ!元気にしているよ!』

そしてやって来たのは影霊衣の大魔導士ことアバンスだった…いったい何歳なんだ?

 

『そなたがキラーとウィンダのマスターか?アバンスだ!話は彼らから聞いている、付いてきなさい』

 

「「はい?」」

 

 

 

 

 

 

 

遊海と翠がアバンスに付いて行った先には巨大な穴があった。

「『煉獄の封印穴』…かつて暴れ回った氷結界の三龍の眠りし場所だ…ここはこの世界では一番の魔力がある場所だ…ここなら力も回復しやすいだろう…」

 

「ありがとうございます、アバンスさん…」

 

『うむ、しばらくしたら迎えにくる…それまでゆっくりしているがいい…』

そう言ってアバンスさんは村に戻って行った…

 

「ちょうど切り株もあるし…休もうか…」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…空気が澄みきってる…今は力が無くて感じられないけど魔力もスゴいんだろうな…」

 

「はい!私もなんだか元気になった気がします!」

 

「しかし…6年振りの闇のデュエルはキツかったな…痛みには慣れたつもりだったけど…セブンスターズが本当に殺る気じゃ無くてよかった…」

 

「まぁ、私達も今まで3回くらい死にかけてますけど…封印も…今回で二回目ですね…」

 

「ああ、ドーマの時か…あの時も凄まじいやられ方したしな…」

 

「私もです…占術シャドールでダーツと戦ったらミラーナイトに囲まれちゃって…」

 

「俺はクリフォートでいったけど…なんでスキドレ来なかったかな…トラウマを抉られつつシュロノスでオーバーキルだったし…」

 

「それで私達がミラーナイトになって…あれもある意味トラウマですね」

 

「ああ…」

 

「今回は人形ですみましたけど…異世界ではどうなるんですかね…」 

 

「…」

 

「遊海さん?」 

 

「zzz…」

 

「まったくもう…遊海さんが寝ちゃったら…話相手いないじゃないですか…私も寝~よう!おやすみなさい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体が動かない…声も出せない…目だけがはっきりと見えている…

 

 

『約束は守ってもらうわよ子猫ちゃん…!』

 

ガブリ

 

「あ…嫌…!」

 

〈翠!〉

 

『ンクッ…ンクッ…』

 

「嫌…!遊…海…さ…」 

 

〈やめろ…!〉

 

『美味しかったわ…!さぁ、貴女も人形になりなさい!』

 

〈やめろ…!!〉

 

『この人形は要らないわ!ポイッ!』

 

〈遊海…さん…!〉

 

やめてくれ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…ああ…!」

 

「遊海さん!しっかりしてください!遊海さん!!」

 

「はっ!?…はぁ…はぁ…夢…か…」

 

「遊海さん…大丈夫ですか?すごい魘されてましたけど…」

 

「ああ…ごめん…この前の事を夢に見てたんだ…」

 

「あっ…」

 

「この前は無様だったよな…俺、神を倒したライトロードで戦って事故って…負けて人形にされて…目の前で翠が戦ってるのに人質で足を引っ張って…」

 

「遊海さん…」

 

「目の前で惚れた女が苦しんでるのに…俺はなにもできなかった…!俺は…馬鹿だ!」

遊海は涙を流しながら懺悔する。

 

「あの時…カミューラとの戦いの時…俺は迷ってたんだ…『もし、ここで俺が勝ったら未来が変わりすぎるんじゃないか』って…その迷いがカードを遠ざけたんだ…!」

 

「遊海さんっ!!」

 

パンッ!!

 

「あっ…!」

翠が遊海の頬を張る…翠も涙を流していた

 

「遊海さん!何を難しく考えてるんですか!私の惚れた遊海さんは絶対にそんな事を言いません!」

 

「翠…」

 

「私があなたを好きになったのは…あなたが楽しそうにデュエルしていたから…!勝っても負けても…楽しそうに笑っていたあなたを…私は好きになったんです!」

 

それは最初の出逢い、公園で友人と楽しそうにデュエルしていた優介の姿…それが春美の心に響いたのだ…

 

 

「遊海さんは一人でなんでも背負いすぎなんです!

…私も頼ってくださいよ…!私も決闘者なんです!私も遊海さんを…守りたいんです!」

 

「翠…ごめんな…俺がだらしないから…俺も変わらなくちゃな!…翠!」

 

「なんですか…?」

 

「デュエルをしよう!二人で久しぶりに!」

 

「はい!」

 

 

「氷結界の3龍よ!このデュエルを見届けたまえ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

       「「デュエル!!」」

 

 

 

 

翠 LP 4000

遊海 LP 4000

 

 

 

 

 

 

「私の先攻!ドロー!」

「手札から『おろかな埋蔵』を発動!『シャドールビースト』を墓地に送り、効果で1ドロー!」

 

「そして手札から『エルシャドールフュージョン』を発動!手札の『リザード』と『裏風の精霊』を融合!傀儡の蜥蜴よ!風の力を得て守りを固めよ!『エルシャドール・ウェンディゴ』!」

イルカの人形に乗った少女が現れる DEF 2800

 

《私、登場!って翠?なんで遊海兄とデュエルしてるの!?》

 

「ごめんね、ちょっと付き合って!『リザード』効果で『ファルコン』を墓地に送って、裏守備で特殊召喚!」

 

「カードを一枚伏せてターンエンド!」

翠 LP 4000

ウェンディゴ 裏ファルコン 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『花札衛ー桜に幕』の効果発動!このカードを相手に公開しカードを一枚引く!引いたのは『柳に小野道風』!『桜に幕』を特殊召喚!」

カーテンの描かれた花札が現れるATK 2000

 

「花札衛!?」

 

「そして星10以下の『花札衛』がいるので『柳』を特殊召喚!」

ハリケーンの描かれた花札が現れる ATK 100

 

「さらに『芒』『桐』を特殊召喚!」

マンイーターの花札とナチュルコスモスビートの描かれた花札が現れる ATK 100ATK 100

 

「そして『柳』を特殊リリースして『小野道風』を特殊召喚!」

着物を着た人を描いた花札が現れる ATK 2000

 

「その瞬間!リバースカード『超融合』を発動!手札を捨てて『ファルコン』と「道風」で融合!傀儡の鳥よ!闇の力を得て神の探訪者を呼び出さん!『エルシャドール・ミドラーシュ』!」

竜に乗った緑髪の少女が現れる ATK 2200

《あれ?遊海さん!?なんでデュエル!?》

 

 

 

「しまった…タイミングが上手い…」

 

「そして再び『ファルコン』をセット!」

 

「…バトル!『桜に幕』で『ファルコン』を攻撃!」

ファルコンが破壊される。

 

 

「メイン2『札再生』を発動!墓地の『道風』を手札に加える、そして『芒』の効果で『道風』と『桜に幕』を手札から見せてリロード!…ターンエンド!」

遊海LP 4000

桜 芒 桐 手札2

 

 

 

 

 

 

 

「くそ~!まさかいきなり『超融合』か…エンジョイできるかな…?」

 

「どうなりますかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

 

「バトル!『ミドラーシュ』で『桐』を攻撃!『ウインドストーム』!!」

《よいしょ~!》

ウィンダの起こした風が迫る!

 

「『桐』の効果!カードをドローして攻撃を無効にしてバトルフェイズを終了する!」

透明なバリアが攻撃を防ぐ

 

「メイン2!『影依融合』を発動!手札の『タロットレイ』と『ミドラーシュ』を融合!神の探訪者よ!光の力を得て影の巨人を呼び出さん!『エルシャドール・ネフィリム』!」

 

影の巨人が現れる ATK 2800

 

 

「来たか!シャドール唯一の禁止経験者!」

 

「…ええ…長かったです…、墓地の『ミドラーシュ』効果で『影依融合』を回収!『ネフィリム』効果で『ビースト』を墓地に送って1ドロー!ターンエンド!」

翠 LP 4000

ネフィリム ウェンディゴ 手札2

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「いくぜ!『超こいこい』!デッキから3枚めくり花札衛をレベル2で召喚条件を無視して召喚できる!ただし花札衛以外なら裏向きで除外し一枚につき1000ダメージを受ける!いくぜ!」

 

「一枚目!『松』!」

 

「二枚目!『桐』!」

 

「三枚目!『札再生』!よって、俺は1000ダメージを受けて『松』『桐』を特殊召喚!…ぐえっ!?」

二枚の花札が召喚されるATK100 ATK100

その後遊海の上から花札が落ちて遊海を押し潰す

遊海LP 4000→3000

 

「…こんなエフェクトだったっけ…?」

 

「…微妙にトラウマが…」

 

 

 

 

「そして『桐』をリリースして『牡丹に蝶』を特殊召喚!」

蝶の描かれた花札が現れる ATK 1000

 

「そして『牡丹に蝶』の効果!ドロー!『花合わせ』なので効果なし!そのまま墓地へ!」

 

「いくぞ!レベル2扱いの『松』『桜に幕』『桐』『芒』にレベル2チューナー『牡丹に蝶』をチューニング!その神々しきは聖なる光…今、天と地と水と土と金となりて照らせ。シンクロ召喚!『花札衛-五光-』!」

 

花札の最高の役を冠する戦士が現れる ATK 5000

 

「バトル!『五光』で『ネフィリム』を攻撃!『五光覇道斬』!『五光』がバトルする時『ネフィリム』の効果は無効になる!」

 

「『ウェンディゴ』の効果!『ネフィリム』は特殊召喚されたモンスターとの戦闘では破壊されない!『ウィンドガード』!」 

 

「でも切れ味は受ける!」

 

五光がネフィリムに斬りかかるが風の壁に弾かれる、しかし衝撃が翠に伝わる

「きゃ!」

 

翠LP 4000→1800

 

「俺はこれでターンエンド!」

遊海LP 4000

五光 手札2

 

 

 

「どうだ!翠!」

 

「さすが遊海さんです!でも今日は私の勝ちです!」

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「手札から『影依融合』を発動!相手フィールドにエクストラデッキから出てきたモンスターがいるのでデッキから融合できます!私はデッキの『シャドール・ドラゴン』と『禁忌の壺』を融合!現れろ拘束されし影の巨人!『エルシャドール・シェキナーガ』!」

 

体を拘束された影の巨人が現れる ATK 2600

 

「さらに手札から『聖占術の儀式』を発動!『シェキナーガ』を生け贄に『聖占術姫タロットレイ』を儀式召喚!」

 

フードを纏った占い師が現れる ATK 2700

 

「しまった!?」

 

 

「『タロットレイ』の効果!『五光』を裏守備に変更して…バトル!『タロットレイ』で裏守備の『五光』を攻撃!」

タロットレイが五光を打ち砕く…表示形式変更が弱いのが五光の弱点である

 

「ヤバイ!?『五光』の効果が!?」

 

「『ネフィリム』でダイレクトアタック!『影糸の操糸撃』!」

 

「ぐっ!」

 

遊海LP 3000→200

 

「ターンエンド!そして『タロットレイ』効果で『禁忌の壺』を裏守備で特殊召喚!」

翠LP 1800

タロット ネフィリム ウェンディゴ 裏禁忌 手札0

 

 

 

 

 

 

「圧倒的に不利だけど…いくぜ!ドロー!」

 

「手札から『桜に幕』の効果!ドロー!…罠カード『イカサマご法度』なので二枚を墓地へ!」 

「手札から『松』を召喚!効果で1ドロー!」

ATK 100

 

「…ドローカードは『花合わせ』…墓地へ行く…ターンエンド!」

 

遊海LP 200

松 手札1

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「バトル!『ネフィリム』で『松』を攻撃!」

 

「うわ~!!」

 

遊海LP 0

 

翠 win!

 

 

 

 

 

 

 

 

「キュ~…」

 

「遊海さん!?大丈夫ですか!?」

翠は吹き飛ばされた遊海に駆け寄る

 

「あ~あ…負けちゃった…、強くなったな翠!」

 

「ありがとうございます!でもなんで花札衛を使ったんですか?クリフォートとか帝王を使えば勝てたのに…」

 

「久々にenjoyデュエルがしたかったんだけど…まぁ『五光』が出せたからいいか!あはははは!!」

 

「うふふふ!」

二人はお互いに笑いあう、これが本当の二人である。

 

《キュォォォ…!》

その様子を半透明の龍達が見ている…その瞳は心なしか笑っている気がした…

 

 

『お~い!二人共!』

 

「アバンスさん!」

 

『食事の用意ができたそうだ!村に戻ろう!』

 

「「はい!」」

 

『ん?二人共、良い顔をしているの!何か良い事があったかの?』

 

「はい!ちょっとだけ心が軽くなりました!」

 

「そうか!なら良かった!さぁみんなが待っとるよ!」

 

「行きましょう遊海さん!」

 

「ああ!」 

二人は村に戻っていった

 

『二人とも憑き物が落ちたみたいだの…ん?』

 

《キュォォォ!》

 

『3龍が彼らを見ていてくれたのか…お主たちも変わったのぉ…』

 

《キュォ!!》

 

『はっはっは!怒るなよ「トリシューラ」!ではまた来るぞ!』

 

《キュォォ~!》

 

 

 

 

 

 

 

 

その後遊海達は村で一晩を過ごし、翌朝帰途につく

 

 

「カムイさん!ありがとうございました!」

 

『ホッホッホ!また来なさい!いつでも待っとるよ!』

 

「はい!ありがとうございます!」

 

『二人共…これを持って行きなさい!』

アバンスは2つの鏡のネックレスを渡す

 

「これは…『降魔鏡』!?」

 

『そうだ!まぁオリジナル程の力は無いがエミリア…舞姫とシュリットに頼んで祈りを込めてある、きっと何かの役に立つだろう!』

 

「ありがとうございます!アバンスさん!大切にします!」

 

 

 

 

 

【マスター!翠さん!大丈夫ですか?】

 

「ああ!」「はい!」

 

【では人間界に戻ります!転移開始!】

 

アヤカの声と共に二人は光に包まれ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生!遊海先生!?大丈夫ですか!?」

 

「ぐっ…万丈目くん?どうして?」

 

「おい!みんな!遊海先生がいたぞ!」

 

「遊海先生!大丈夫か!?」

 

「見つかって良かったッス!」

 

「なんだな~!」

 

十代や翔達が走ってくる…

 

 

「みんな…どうしてここに?」

 

「校長から遊海先生と翠さんが行方不明だって聞いて探してたんだ!」

 

「俺達が…行方不明!?」

 

「そうッスよ!二週間もどこにいたんすか!?その間にセブンスターズも6人倒したんですよ!?」

 

「…二週間…二週間!!?」

 

「ああ!アマゾネスに盗掘団にファラオにタイタン!それぞれ撃退したんだ!」

 

「来週は学園祭なんだな~!」

《クリクリ~!》

 

「嘘…だろ…おい…アヤカ…?」

 

『……テヘペロ!』

 

「テヘペロ♪…で済むかぁ~っ!!!」

 

『ごめんなさい!マスター!!!』

遊海は逃げたアヤカを追っていってしまった…

 

「あれ?遊海先生…精霊が…」

 

「また見えるようになった…見たいッスね?」

 

 

 

 

こうして遊海も翠も精霊の力を取り戻す事ができた…しかしその後、大量の始末書を書く羽目になったのは言うまでもない…?

 



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学園祭~十代の恐怖~

俺と翠が精霊世界にいって一週間、今日はアカデミアの学園祭の日だ。

毎年恒例になっているお祭りで各寮や同好会で出し物をするよくある文化祭である…滅茶苦茶規模がでかいけど…。

 

俺達がいない間にセブンスターズもあらかた撃退したらしい、アマゾネスのタニヤは十代が、学園に潜入していた精霊「黒蠍盗掘団」は万丈目が、「最強のゲーム王」と呼ばれたアビドス3世も十代が、最後に罰ゲームから復活し闇のデュエリストになったタイタンを明日香が倒したそうだ…。

 

そして記憶を失なっていた明日香の兄、吹雪が記憶を取り戻し大徳寺先生が姿を消した…、十代達には伝えていないが部屋に手紙があった。

 

 

 

 

 

 

 

『遊海君、翠さんへ

 

どうやらこのホムンクルスの肉体の限界が近いらしい…、時が来た…十代への最終試験をするために私は姿を隠す。

 

本当は十代達と一緒に影丸理事長を救いたかった、しかし私にも理事長への恩がある…だからこそ私は最後の壁として彼らに立ち向かおう!

 

試験の結果はどうあれ私が生きて戻ることはない…ファラオと生徒達をヨロシク頼む。

               アムナエル

 

P,S 十代以外には闇のゲームを仕掛けるつもりはない…君は別だけどね、遊海君?』

 

 

 

 

 

 

 

…大徳寺先生、俺に挑むつもりか…確かに俺は最後の防衛システムを管理してるけど…まぁくるなら…容赦はしない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は今、学園祭の会場を巡回している…たまに暴れる生徒がいるからそれを防ぐためだ…決して食べ歩きをするためではないからな!

 

《そう言っていつも買い食いしてるのはどなたでしたっけ?マスター?》

 

「うぐ…」

 

精霊の力は最低限、精霊が見えるまで回復した、しかし精霊アーマーやカードの使用はまだ厳しいな…ん?

 

《どうしました?》

 

「…アヤカ…俺の間違いじゃなければ…ブラマジガールがいるような気がするんだけど…?」

 

《…はい…間違いじゃありません…いますね…》

 

俺の目の前を実体化したブラマジガールが通り過ぎて行った…追いかけよう!

 

 

 

 

 

 

 

「お~い!マジシャンガール?」

 

『ん?あっ!遊海さん!お久しぶりです!』 

 

「もしかして遊戯の?」

 

『はい!ドーマの時はありがとうございました!

今ではみんな平和に暮らしています!』

やっぱりか…あの時と同一人物のようだ。

 

「どうしてアカデミアに?」

 

『はい!マスターから十代君の事を聞いて姿を見に来たんです!将来有望だからって!』

 

「なるほどな…遊戯は元気か?」

 

『はい!新しいゲームの開発を頑張ってますよ!』

 

「なら良かった…十代に会いたいならレッド寮に行くといい、今日は仮装デュエルをやっているから違和感はないはずだ!」

 

『わかりました!行ってみます!遊海さんは?』

 

「俺は…ちょっと準備があってな…寮に翠がいるから声をかけてくれ!」

 

『ありがとうございます!』

 

 

そう言ってマジシャンガールはレッド寮に向かった。

 

 

「さて…俺達も準備しますか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リバースカード!『立ちはだかる強敵』!『フレイムウィングマン』を対象に効果発動!相手の攻撃表示モンスターは必ず選択したモンスターを攻撃しなければならない!」

 

『きゃ~!』

 

BMG LP 0

 

十代 win!

 

 

 

 

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!ブラマジガール!」

 

『あ~あ!負けちゃった…お師匠さん怒るかな~…』

 

「勝者!遊城 十代!」

 

 

「「「ブ~!」」」

 

 

「…勝ってブーイングを受けるのは、なんだかな~…」

 

『みんな~十代君を責めないであげて~!私も楽しかったから!』

 

「「「は~い!」」」

 

「たははは…」

 

『十代君!また会いましょう!』

 

そう言ってマジシャンガールは姿を消した。

 

 

 

 

「さて…次の相手は…?」

 

 

ドカーン!!

 

 

レッド寮近くの森から爆発が起きる

 

「うわっ!?なんだ!?」

 

「アニキ!行ってみよう!」

 

「ああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十代達が爆発のあった場所に行くと一人のブルー生徒が倒れていた。

 

 

 

「おい!?大丈夫か!」

 

「イタタ…ああ…大丈夫だ…」

 

「何があったんだ?」

 

「…仮面のデュエリストに負けたんだよ!チクショー!」

 

「仮面のデュエリストだって!?また彼が現れたのかい!?」

 

「吹雪さん知ってるのか!?」

 

「ああ、アカデミア七不思議の一つ、『マスクドデュエリスト』、学園祭に現れる仮面の決闘者だ…3年前、亮も挑んだが返り討ちにあったんだ…!」

 

「カイザーが負けた!?嘘だろ!?」

 

「いや…事実だ!」

 

「お兄さん!」

 

「奴は強い…オレは奴の「力」のデッキに完敗だった…」

 

「力…?」

 

 

 

 

 

『久しいな!カイザー亮?元気だったか?』

突如森に声が響く

 

「っ!?誰だ!」

十代が警戒を強める

 

『我が名は「マスクマン」!トオッ!』

木の上からオベリスクを模した仮面を被った男が現れる

 

「お前が仮面のデュエリストか!」

 

『然り!我、決闘者に試練を課す者…若き決闘者よ試練を受けるか!否か!』

 

「受けるぜ!その試練!」

 

『ならば選べ!ただ力を求め続ける「力」のデッキか!頭脳を競う「知」のデッキか?それとも強大な敵に立ち向かう「勇気」のデッキか!そして…未知なる力を使う「未知」のデッキ!…さぁ!選ぶがいい!』

 

 

「『未知』…なんかワクワクするぜ、決めた!『未知』のデッキに挑むぜ!」

 

『いいだろう!さぁ…デュエルだ!』

 

「十代君!気をつけろ!彼の『未知』のデッキに挑んだ者は誰もいない!」

 

「へへっ…!尚更ワクワクしてきたぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       「『デュエル!!』」

 

十代LP 4000

マスクLP 4000

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『融合』を発動!手札の『バーストレディ』と『クレイマン』を融合!『E・HERO ランパートガンナー』を融合召喚!」

重武装の蒸気を操る戦士が現れる DEF 2500

 

「さらに『ダークカタパルター』を守備表示で召喚!」

背中にカブト虫のような角を生やした機械が現れるDEF 1500

 

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

十代LP 4000

ランパート カタパルター 伏せ2 手札0

 

 

 

 

 

 

「十代が守りを固めたぞ…!」

 

「アイツが守りを固めるなんて珍しい…ああ!動きにくい!」

虎の格好をした三沢とXYZの格好をした万丈目が呟く

 

「十代は決闘者の本能で感じたんだ…アイツの強さを…!」

 

「お兄さん…」

 

 

 

 

 

 

 

『我のターン!ドロー!…フハハハハ!』

 

「何だ!?」

 

『我は今引いたカード「RUMー七皇の剣」をメインフェイズまで公開し効果を発動!』

 

「ランクアップマジック…?なんだそれは!?」

万丈目が怪訝な声をあげる

 

『その効果によりエクストラデッキより「A No.107銀河眼の時空竜」を特殊召喚し、その上に「A CNo.107超銀河眼の時空龍」をエクシーズ召喚扱いで特殊召喚する!逆巻く銀河を貫いて、時の生ずる前より蘇れ!永遠を超える竜の星! 顕現せよ…「A CNo.107! 超銀河眼の時空龍」!』

 

マスクマンのフィールドに銀河が生まれ…爆発する、その中から金色の四角錐が現れ展開する。

そして金色に輝く三つ首の龍が現れる ATK 4500

 

「な…なんだこのモンスターは!?」

三沢が驚きを露にする

 

「攻撃力4500!…伝説の『究極竜』並ッス!?」

翔が腰を抜かして倒れる

 

「デケェ…なんなんだこのドラゴン…!」

十代が目を輝かせる

 

『さらに手札の「銀河眼の光子竜」を墓地に送り「銀河戦士」を特殊召喚!』

白い鎧のロボットが現れる ATK 2000

 

『さらに「銀河戦士」が特殊召喚に成功した事によりデッキから「銀河の魔導士」を手札に加える、そしてフィールド「ギャラクシー」モンスターがいる事で手札の「フォトン・バニッシャー」を特殊召喚!』

光線銃を持った戦士が現れる ATK 2000

 

『さらに「超時空龍」の効果を発動!「戦士」「バニッシャー」を生け贄にすることで…このターン「超時空龍」は三回までモンスターに攻撃できる!』

ロボットとスナイパーが時空龍に吸収される

 

「三回攻撃だって!?」

 

『さらに「超時空龍」の効果!このカードのORUを一つ取り除き、このカード以外のフィールドのカード効果を無効にする!「タイムタイラント」!』

《グオオオオ!》

 

時空龍が咆哮すると世界が虹色の光に包まれる、そしてランパートガンナーとカタパルターが灰色になる

 

「ランパートガンナー!?」

 

 

『そして手札からレベル8「銀河騎士」を妥協召喚!このカードはフィールドに「ギャラクシー」モンスターがいる時に生け贄なしで召喚できる!』

近未来の鎧を着た戦士が現れる ATK 2800

 

 

 

「展開が終わらない…!」

「これが奴の本気か…!」

「アニキ…!!」

 

 

 

『そして…「銀河騎士」の効果を発動!このカードの攻撃力を1000下げる事により…墓地から「銀河眼の光子竜」を守備表示で特殊召喚する!闇に輝く銀河よ…希望の光になりて我が僕に宿れ!光の化身…ここに降臨!現れろ!「銀河眼の光子竜」!』

 

騎士が剣が変化した十字槍を空に投げつける、その槍は銀河に吸い込まれ爆発を起こす。

そして瞳に銀河を宿した竜が現れた DEF 2500

 

「あ…ああ…!」

 

 

『そして我は…ぐっ…!?なんだ!?』

突然マスクマンは頭を抑えはじめる

 

「マスクマンの様子がおかしいッス!」

 

「どうしたんだ?」

翔と万丈目がマスクマンの変化に気づく

 

 

 

 

 

 

 

「(ばか!ユウスケ!やりすぎだ!十代にトラウマを植え付けるつもりか!?)」 

 

『(だってあの手札は展開してブン回すしかないでしょうが!)』

 

「(だからってNo.を2体出そうとするな!!)」

 

『(大丈夫だよ!闇のデュエルではないし!)』

 

「(あの遊馬とアストラルがトラウマになってるんだぞ!とにかく主導権は返してもらう!!)」

 

『(嫌だ!今日だけは…学園祭の日だけは我が主導権を握る約束ではないか!!)』

 

 

 

…上記の会話からわかる通り、マスクマンの正体は遊海、正確にはユウスケである。

 

アカデミアに入った遊海は自分の負の心と向き合う事を決意、精神世界でのユウスケとの決闘により二人は和解、遊海は普段は表に出せないユウスケのために学園祭の日だけ仮面(オベリスクフォース風 自作)を被り、その日だけユウスケに主導権を渡してデュエルをさせていた…それがマスクマンの正体である

 

『(え~い!お前は下がってろ!)』

 

「(あっ!?ユウスケ!お前覚えてろよ!?十代がトラウマになったら貴様のせ…うわ~!?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁ…はぁ…、待たせたな…!我は「銀河眼」と「騎士」でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!現れろ!銀河究極龍、A No.62! 宇宙にさまよう光と闇…その狭間に眠りし哀しきドラゴンたちよ!その力を集わせ、真実の扉を開け!「銀河眼の光子竜皇」!』

マスクマンのフィールドに銀河が生まれ…爆発する、その中から皇帝の名前を冠する銀河眼が現れる ATK 4000

 

「エクシーズ…召喚…?未知の力…!!」

 

『バトル!「超銀河眼」で「ランパートガンナー」「ダークカタパルター」を攻撃!「アルティメットタキオンスパイラル」!ニレンダァ!!』

時空龍から金色のブレスが放たれ十代のフィールドを一掃する

 

「ぐっああああ…リバースカード!『ヒーローシグナル』!…あれっ!?発動しない!」

 

十代はリバース罠を発動しようとするが反応しない…

 

『「タイムタイラント」の効果により…お前はカード効果の発動ができない!』

 

「なん…だって…!?」

 

『トドメだ!いけ!「光子竜皇」!「エタニティフォトンストリーム」!!』

竜皇のブレスが十代に迫り…!

 

「うわあああああ!!?」

 

十代LP 4000→0

 

マスクマン win!

 

 

 

 

 

「アニキ!!?」

「十代!」

「1ターンキル…だと…?あの十代を?」

 

翔と万丈目が倒れた十代に駆け寄る、三沢は愕然としていた

 

 

「アニキ!しっかりするッス!」

「気をしっかり持て!」

「あ…翔…万丈目…」

「さん!だ!大丈夫か!」

「ああ…負けちまった…強すぎるぜアイツ…」

 

 

 

 

『はっはっは!我の勝ち…ぐっ!?』

 

「バカ野郎が!!」

 

『おい!?今出てくるな!?』

 

「お前しばらく謹慎だからな!!」

 

『ぐああああ!?!』

 

そしてマスクマンは光と共に消え去る…最後は誰かと会話しているようだった…。

 

 

 

 

「いったいなんだったんだ奴は…?」

三沢が呟く

 

「…これは噂なんだけど…マスクマンは未来人で未来のカードのテストプレイをしてるって噂があるんだが…眉唾でもないかもな…」

吹雪が補則する

 

 

「十代!無事か!?」

 

「遊海先生…」

 

「爆発が見えたから駆けつけたんだ…大丈夫か…?」

 

「遊海先生…マスクマン…強過ぎるぜ…怖い…手が震えてるんだ…今までいろんな決闘者と戦ったけど…アイツは格が違う…怖ぇぇよ…!」

 

 

それは十代が人の前で見せる初めての弱気だった…手は震え…目には涙が浮かんでいる…

 

「アニキ…!」

 

「十代…俺の部屋にこい…話がある…」

 

「遊海先生…?」

十代は遊海の顔を見る…その顔は何かを後悔しているようで…

 

「立てるか?」

 

「ああ…」

十代は立ち上がる…しかしその膝は震えている…

 

「…大丈夫ではないな…翔!すまないが十代を支えてやってくれ…」

 

「ハイッス!」

 

「他のみんなは学園祭を続けてくれ!」

 

「「「はい…」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十代…麦茶だ」

 

「ありがとう先生…っつ」カタカタ

十代は麦茶を飲もうとするが手が震えてしまっている…重症だな、ユウスケめ…やりすぎだ

 

 

 

「十代…お前はデュエルに恐怖を抱くのは初めてか?」

 

「いや…カミューラと戦ったあとに少し…闇のデュエルが怖くなった…翔達が人質になったり…先生が人形になったり…でもその時はある精霊に迷いを晴らしてもらったんだ…でも今回の決闘は…!」

 

「十代…何を恐れる?」

 

「負ける事が…怖い…!」

 

「…十代、少し昔話をしよう…俺の友達の友達の話だ…」

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

あるところに一人の決闘者がいた、彼は大きな大会で優勝し自分の大切なカードを取り戻した…それはとても強い力を秘めていた…。

 

そしてそのカードを狙い悪者が彼を狙った…カードは奪われ彼はカードを取り戻すために命をかけて戦った。

 

しかし戦いの中、敵の策略で彼の命の次に大切なモノ…彼の相棒を失なってしまった…

 

彼は激しく後悔した、自分の心の弱さを知り決闘ができなくなった…その時の彼は見ていられなかった…。

 

しかしそんな中でも敵は彼を狙う…悪者は彼の魂をも奪おうとしたんだ、彼は刺客を退けたがその時の彼には大会優勝した時の面影はなかった…。

 

そして彼は失意の中である荒野にたどり着く…そこで彼は相棒の思念と再会した、しかし相棒は彼を責めて決闘を挑んだ…結果は彼の勝利だった…相棒は彼のダメなところを指摘して迷いを晴らして消えていった…。

 

その後彼は誇りを取り戻し仲間たちと共に悪者を倒し、カードと相棒を取り戻した…。

 

 

 

 

「という話だ…」

 

「その…話は…!」

 

 

「さて…十代、俺が何を伝えたいかわかるか?」

 

「心の強さ…それが大事ってことですか?」

 

「いや…それもそうだが…そうじゃない、次は俺自身の話をしよう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はある時、闇のデュエルをするはめになった…相手は千年アイテムを持った男と「神」 

対して俺は全身包帯だらけの満身創痍…いや死に体だった。

俺は敵と対峙したが相手は決闘のダメージで拷問をしてきた…矢で胸を射ぬかれ、爪で引き裂かれ…最後には神の炎で焼かれた…一瞬死にかけたよ…

いや…一瞬俺は死んだんだ…体は血塗れ、喉や気管も焼けて皮膚の感覚もなく…精神すらボロボロだった。

 

俺は恐かった…いや逃げたかった…その瞬間心臓が止まったのがわかったよ…

 

 

その時、思ったんだ「ああ…俺が負けてもアイツがなんとかするだろう…だからこのまま倒れよう」…ってね…でも翠が声をかけてきたんだ…

 

 

 

 

「翠さんが…」

 

「ああ、そもそも怪我も彼女を助けるために負ってね…彼女に罪滅ぼしで一緒に来てもらってたんだ…」

 

「…それで翠さんは何て…?」

 

「『約束を守って!』」

 

「えっ?」

 

「『生きて戻る』それが約束だった、俺はその一言で死の淵から無理矢理戻ってきた…あとは知ってるだろう?」

 

 

 

十代達はカミューラとの激戦の後、三沢が記録していたバトルシティの映像を見た、そこには遊海が血ヘドを吐きながら、体を血濡れにしながらひたすらに戦う姿が映っていた…そして遊海は神の炎に焼かれ倒れた、しかし彼は立ち上がり、黒い幕の中で神を打倒したのだった。

 

 

 

 

「十代…恐怖とは誰の心にもある、俺も何回も逃げたいと思った…しかし逃げてはダメなんだ…!」

 

「先生…」 

 

「十代…お前は一人じゃない…万丈目に明日香、翔に隼人…お前にはたくさんの仲間がいるんだ…それを頼らないでどうする?」

 

「俺は…一人じゃない…」

 

「十代、お前は今、『恐怖』を『自分の弱さ』を知った…それは恥ずかしい事じゃない、俺も人形にされた時は怖かった…でもそれが人間なんだ…巨大なモノ、未知なるモノに恐怖する…それが人間であり決闘者なんだ!」

 

「恐怖を抱くのは当たり前…」

 

「そうだ、俺も銀河眼と対峙したら正直怖いしな…」

 

「銀河眼…?遊海先生…何で知ってるんだ?俺の戦ったモンスターの事…?」

十代は疑問を抱いた…誰も遊海に相手の事を伝えていないのにと

 

 

「あ…いや…それは…!?(しまった失言だ!)」

 

「もしかしてマスクマンの正体は…先生…なのか?」

 

「ギクッ」

 

「…先生~?」

十代がジト目でこっちを見ているどうしよう…?

 

 

 

 

 

「「「どわぁっ!?」」」

その瞬間、部屋の扉が壊れ万丈目、三沢、翔が倒れてくる

 

「…だからやめておけと、いっただろう…」

その後ろからカイザーと明日香も現れた

 

「カイザー…翔、みんな…」

 

「お前達…いつから聴いていた?」

 

「最初からです、遊海先生…決闘王のエピソードから…」

 

「十代!お前らしくないぞ!なんだその弱気は!」

 

「そうッスよ!アニキらしくないッス!」

 

「翔…万丈目…」

 

「お前は明るさとデュエルだけが取り柄だろ!そのお前がデュエルを怖がってどうするんだ!」

 

「アニキ!強くなってマスクマンにリベンジしようよ!アニキなら勝てる!」

 

「お前らしくもないな十代、オレに初めて挑んできた時の気概はどうした?」

 

「みんな…」

 

やっぱり十代はいい仲間を持ったな…

 

「みんな…ごめん!ちょっと弱気になってた!マスクマン…次は絶対に勝つ!」

 

「その意気っす!アニキ!」 

 

「十代~!翔~!助けてなんだな~!」

 

「しまった!?お店の事忘れてたッス!」

 

「行こう!翔!」

 

「ハイッス!」

 

そうして十代達は慌ただしく出ていった…。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…なんとかなったか…、それでお前は行かないのか?カイザー亮?」

 

「ええ…ちょっと先生にお聞きしたい事があって…」

他の生徒がいなくなったなか、カイザーだけが残っていた。

 

「なんだ、聞きたいことは?」

 

「七不思議のマスクマン…正体はあなたですね…遊海先生?」

 

「どうしてそう思う?」

 

「マスクマンの召喚した『銀河眼』…あれはあなたがバトルシティ決勝・バトルロワイヤルで使ったモノのはずです、ならば持ち主は貴方しかいない、それにデュエルスタイルがあなたと似ていた…それが根拠です。」

 

「さすがの慧眼だなカイザー…確かにあれは『我』だ、この6年…見抜かれた事はなかったんだが…」

 

「遊海先生…いったいあなたは何者なんです…?

あの力は常人ではありえない…」

 

「いづれわかるよ、カイザー…」

 

「お兄さ~ん!」

 

「ほら、翔が呼んでるぞ?」

 

「失礼します…遊海先生…」

カイザーも部屋を後にした…。

 

 

 

 

 

 

 

「ユウスケ…お前なぁ…!!」

 

『悪かったよ!あんなことはもうしねぇよ!』

 

「来年は出さないからな?」

 

『( ;´・ω・`)』

 

「そんな顔をしてもダメだ!」

 

『遊海…一ついいか?』

 

「なんだ?」

 

『No.に「A」って付いてたけどあれはなんなんだ?前はあんなの付いてなかったぞ?』

 

「あれか…あれは『アナザー』のAだ、アヤカ曰くこの世界のNo.と俺の持つNo.が混ざらないように神様が付けたそうだ…まぁ効果が変わらないから俺も気にしなかったけど…って話をそらすな!」

 

『(o´・ω・`o)』

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして学園祭は終了した、そして最後のセブンスターズの影が迫る…。



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VSアムナエル~錬金術士の最期~

文化祭から1週間がたった、大徳寺先生はいまだに姿を表さない。

十代達も心配し何度か捜索をしているようだ、まぁ一番大変なのはクロノス先生か…何で実技の先生が錬金術を教えてるんだ…?というか錬金術の授業って必要なのか…?

 

「遊海さん!ちょっと定期船まで行ってきます!」

翠が声をかけてくる

 

「どうした?何か用事か?」

 

「はい!今電話があって、注文した新しい調理器具が届くそうなんです!取りに行ってきます!」

 

「そうか、気を付けて行けよ!」

 

「は~い!」

 

《大丈夫だよ遊海さん!翠には私とウェンが付いてるから!》

 

《ブイ!》

 

「ああ!頼んだぞ二人共!」

 

 

 

さて…俺もアカデミアの掃除に行かないと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ…疲れた…やっぱり校舎は広いな…でも皆がそれぞれに掃除してるからそんなに汚れないな…さて夕食を食べに戻ろうか…

 

 

 

レッド寮に行くと食堂の前に人だかりができていた…どうしたんだ…?

 

「お~い!お前達!どうしたんだ~?」

 

「あっ!遊海先生!」

学生の一人が話かけてきた

 

「どうした?夕食の時間だろう?」

 

「それが…翠さんがいないんですよ…食堂も誰もいませんし…」

 

「なんだと…?」

おかしいな…この時間なら御飯を用意して食べてる時間なのに…? 

 

「わかった…今トメさんに連絡をとるからしばらく待っててくれ!」

 

「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

 

その後、トメさんに料理を作ってもらい生徒達は食べさせた…でも翠は戻らない…どうしたんだ…?

 

「遊海先生…ちょっといいかしら?」

話かけられ振り返る、そこにはブルー女子寮の鮎川先生がいた

 

「鮎川先生?珍しいですね、貴女がこっちまで来るなんて…」

 

「ええ、翠さんの落とし物を届けにきたの…このカード、翠さんのでしょう?」

そういって渡されたのは「影依融合」だった…

 

「鮎川先生、これはどこに…?」

 

「生徒によると港にいく道に落ちていたそうよ…翠さんによろしくね!」

そういって鮎川先生は戻って行った…、なんで「影依融合」が…まさか…!

 

 

 

 

 

 

俺は港に続く道を訪れた…周囲は暗く何も見えない…ん?

 

空中に蚊取り線香のような模様が…近づくと消え、近づくと消えを繰り返す…

 

「アヤカ!周囲を照らしてくれ…!」

 

《了解ですマスター!》

アヤカの光で周囲が照らされる…すると…

 

《誰か助けて~!》

《動けないよ~!!》

 

「この声は…アヤカ!行くぞ!」

 

《はい!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウィンダ!ウェン!何があった!」

 

声の主は霊獣状態のウィンダとウェンだった、二人とも魔法陣に囲まれ金色の鎖で拘束されている。

 

《遊海さん!翠が!翠が!》

 

「ウィンダ!落ち着け!今助けるから…『ハーピィの羽箒』!ぐっ!!」

精霊の力を無理矢理行使し二人の拘束を吹き飛ばす

 

「二人とも!何があった!?翠は!?」

 

《わからないの!荷物を取りに行った帰りに翠が連れ去られて…》

 

《犯人を追いかけたらこの罠に捕まっちゃって…ずっとここにいたの…!》

 

「犯人は?」

 

《顔はわからない…でも黒いローブで顔を隠していたわ!》

 

黒いローブ…まさか!?

 

「アムナエル…アイツ!!ウェン!奴はどっちに行った!」

 

《あっち!》

ウェンは森の奧…廃寮をさしていた

 

「許さんぞ!アムナエル!」

俺は廃寮へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃寮に突入した俺は再び現れたマークを追いかけて進む…そして…

 

 

『よく来たね…遊海くん、久しぶりだ…』

白髪で顔に血管を浮き出させた赤目の男…アムナエルが現れた。

 

「大徳寺…いやアムナエル!どういうつもりだ!翠をどうした!!」

 

『翠さんならここにいる…!』

そう行ってアムナエルは手に持った金色の本・エメルドタブレットを叩く

 

「どういうつもりだ!俺以外には闇のデュエルは仕掛けないんじゃなかったのか!」

 

『君を誘き出すために必要だったからそうした…もちろん他の生徒にはしていないよ…鍵は頂いたけどね!』

 

「なんだと!」

アムナエルはその手に鍵を掲げる、そこには十代の分以外全ての鍵があった…嘘だろ…カイザーやクロノス先生にも勝ったのか!?

 

『彼らには気絶してもらったが…君には十代への人質になってもらう…それに「ビルス」の鍵もね?』

 

「いいだろう!久々に本気でやってやる!容赦はしないぞ!アムナエル!」

 

『我が錬金術の極致!お見せしよう!』

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

アムナエルLP 4000

遊海LP 4000

 

 

 

 

 

『私のターンドロー!』

 

『モンスターをセット、カードを三枚セット、ターンエンド!』

 

アムナエルLP 4000

伏せモンスター1 伏せ3 手札2

 

 

 

 

 

「(全て伏せカード…なんなんだ…?)」

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

「手札から『超再生能力』を発動!さらに『聖刻龍ートフェニドラゴン』を特殊召喚!」

白いウジャト眼を刻んだ龍が現れる ATK 2100

 

《主殿!ご用ですか!》

「トフェニ、毎回すまないが頼む!」

《御意!》

 

「『トフェニ』を生け贄に『シユウドラゴン』を特殊召喚!さらにデッキから『エレキテルドラゴン』を攻守0で特殊召喚!」

青いウジャト眼を刻んだ龍と尻尾がスパークする竜が現れる ATK 2200 DEF 0

 

「さらに『エレキテル』を生け贄に『アセトドラゴン』を召喚!」

紫色のウジャト眼を刻んだ龍が現れる ATK 1900

 

「さらに『アセト』を除外し『レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン』を特殊召喚!」

黒い鋼を纏った竜が現れる ATK 2800

 

 

 

「(…何もしてこない…怪しさ全開だが…やるしかない!)」

 

『……』

 

 

 

 

「『レダメ』効果で墓地の『エレキテルドラゴン』を特殊召喚!」

ATK 2500

 

 

『その瞬間!ダブルリバースカード発動!「停戦協定」二枚!私のフィールドの裏守備モンスター「闇の仮面」を守備表示にして効果発動、相手に効果モンスターの数×500ダメージを与える…フィールドには3体、よって3000ダメージだ!!』

 

「なんだって!!ぐっ…ぐあああ!!?」

 

遊海LP 4000→1000

遊海に電撃が流れ体が崩れ落ちる…

 

『そして最後のリバースカードオープン「破壊輪」…君の「エレキテルドラゴン」を破壊しお互いに攻撃力分のダメージを受ける!』

 

「な…に…!?」

 

エレキテルドラゴンの首に爆弾が巻き付き爆発を起こした

 

『ぬうう!!』

 

「ぐあああ!!…が…あっ…」

遊海は爆風で吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる

 

アムナエルLP 4000→1500

 

遊海LP 0

 

 

アムナエル WIN !

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がっ…アムナ…エル…な…ぜ…?」

 

遊海は途切れそうな意識でアムナエルに問いかける…。

 

 

『…軽蔑するがいい遊海、私はデュエリストではない…錬金術士だ…真のデュエリストではない…私の正攻法では100%君には勝てなかっただろう…』

 

「だから…バーンデッキ…を…ゴホッ!」

 

今の遊戯王世界では基本的に極端なバーンデッキやデッキキルは嫌われている傾向にある、だからこそプロのデュエリスト達はいわゆるビートダウンデッキを基本的に使っている…

 

『私は影丸様の恩に答えるために早く答えを出さなければならない…三幻魔を復活させ賢者の石を作るのか…若き決闘者に我が力を託し彼を諌めてもらうのか…そのためには君が邪魔だった…恨むなら恨むがいい…』

 

 

「嘘が…下手だな…あなたは…」

 

『何?』

 

「既に…託すつもり…なんでしょ…?体はギリギリだ…」

 

『ふっ…君には敵わないにゃ…一つ安心してほしいにゃ、翠さんはレッド寮に置いてきたにゃ…』

 

「そう…ですか…なら…よかっ……」

 

そして遊海は気を失い姿が消える…

 

 

『すまない…遊海くん…っ!ゴホッ!ガッ!!』

 

アムナエルは激しく咳き込む、押さえた手には血が付いている。

 

 

『ハァ…ハァ…早く来るんだ十代…私は…もう…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先…生!遊…先…生!

 

誰かが呼んでいる…

 

「遊海先生!しっかりしてくれ!」

 

「十…代…?」

俺が目を覚ますと十代がいた…俺は…

 

「十代…アムナエル…大徳寺先生は…?」

 

「俺が倒した…大徳寺先生の体は…砂みたいになっちまった…」

 

十代が視線を向けるとそこには灰色の山があった…そうか…解放されたのか…

 

「十代…ありがとう…アイツを救ってくれて…」

 

『にゃ~ん!』

倒れている俺にファラオがすり寄ってくる

 

「こら!ファラオ!遊海先生怪我してるんだから!ダメだって!」

 

「大丈夫だ十代…これくら…イッ!?」

遊海は体を起こそうとするが激痛が走る

 

「先生!無理しないでくれ!俺が翠さんに怒られちまう!?」

 

「たはははは…おかしいな…これくらい日常茶飯事なのにな…トフェニ…いるか?」

 

《主殿…ここに!先程はお役に立てず…》

 

「うわぁ!?なんか出た!?」

 

「龍の精霊なんだな~!」

 

あっ…翔と隼人もいたのか…まぁいいか…

 

「トフェニ…レッド寮まで頼む…」

 

《御意!…主殿、いつもボロボロなのは、気のせいですかな?》

 

「気のせいじゃないな…俺、痛いの苦手なのに…十代…先に戻るぞ…」

 

「ああ、俺達もしばらくしたら戻ります!」

俺はトフェニに抱えられ空を飛ぶ…夜風が傷に滲みる、おかしいな…不死身だから傷の治りも早かったのに…

 

《マスター…魂の力が弱っています…無理をしないでください…》 

アヤカが語りかけてくる

 

「原因は…?」 

 

《マスター、たぶん魂の一部が幻魔に囚われているためだと思います…》

 

「魂…幻魔?…どういう事?」

 

《本来、精霊の力が枯渇するという事はありえません、それは精霊の力がその人の「魂」に宿るからです。しかしマスターと翠さんが人形になった時に魂を幻魔に取られかけています…そのせいで不死身や傷の治癒が上手く働かないのではないでしょうか?》

 

「…なるほど、つまり俺と翠の力が幻魔に供給されてる可能性があると…ん?それって…不味くない?」と

 

《主殿!緊急回避します!捕まってください!》

 

「なっ!?うわぁ!!」

言うが早いかトフェニがバレルロールをする

 

 

「トフェニ!何が!?」

 

《アカデミアの島から光の柱が立ち上がり、島が鳴動しています!!》

 

島を見ると七精門の封印が解けていく…!

 

「しまった…!俺のせいか!?トフェニ!封印場所へ急げ…うわぁ!?」

 

俺達のギリギリをヘリコプターが通過していく

 

「マズイ…頼む!」

 

《御意!》

 

そして俺はトフェニと共に封印場所へと向かうのだった。

 

 

 



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VS 影丸~暴走~

俺が封印場所に着くと、すり傷だらけになった十代が倒れていた。

 

「十代!どうした!大丈夫か!?」

 

「ぐっ…遊海…先生、七精門の鍵が…勝手に…!」

十代によると廃寮を調査していると、突然島が動きだし、首にかけていた鍵に引っ張られここに着いたという

 

「アニキ~!大丈夫ッスか~!」

 

「十代~!」

翔と隼人が追い付き

 

 

「この揺れは何事ナノーネ!?」

 

「!?何故七精門が空いている!?」

 

「何事だ!?」

 

封印場所に鮫島先生やクロノス先生、他の守護者達も集まってくる

 

「遊海さん!」

 

「翠…無事だったか…!」

翠が俺に駆け寄ってくる

 

「ひどい傷…ごめんなさい!私のせいで!」

 

「大丈夫だよ翠…お前が無事でよかった…」

 

「封印が解けるぞ!」 

カイザーの声と共に台座が競り上がる…その上には…

 

「あれが三幻魔…」

三枚のカードが納められていた…と

 

【それをお前達に渡すわけにはいかないな…!】

 

ヘリコプターから巨大な水槽の付いたロボットが現れた

 

 

 

 

「その声は…影丸理事長!?」

 

【そうだ、久しぶりだな鮫島校長!】

水槽の中には白髪の痩せ細った老人が浮かんでいる…彼が…影丸理事長…!

 

「何故あなたがここに!そして何故封印が解けたのですか!」 

 

【フフフ…元々そういう風に作ったからだ!】

 

「なんですって!?」

 

 

 

 

そして影丸は語る、ある研究者から「幻魔」という特別なカードがある事をきいた事、それには不思議な力があり、人に活力を与え、不老不死になれる事。

そして現在の持ち主である海馬社長が封印できる場所を探しているという事を…

 

そして影丸は海馬社長と接触、自分の保有する島に封印したらどうかと話を持ちかけ間接的にカードを手にいれた。

しかし三幻魔を使うには決闘者の闘志が大量に必要な事が分かり…そのためにアカデミアを作った事、そしてセブンスターズすらも自身の駒である事を白状した…。

 

 

「影丸理事長…あなたはなんという事を!」

 

【フフフ、あとは精霊を操る力を持った人間から力を取り込むだけよ…白波 遊海!】

 

「何?」

 

【貴様にデュエルを申し込む!貴様に拒否権は無い!拒むならこの島ごと海の藻屑にしてくれる!】

影丸の言葉と共に七精門の石柱が帯電しすさまじい力を溜め込み始める…

 

 

 

 

「影丸…何故俺なんだ?精霊の力なら十代もいるだろう?」

 

【フフフ、知っているぞ白波 遊海、神を操り、ドーマさえも倒した転生者よ…貴様の力を吸収すれば完全に幻魔を操れるからだ!!】

 

「そういうことか…ぐっ!?」ズキッ

 

「遊海さん!!」

 

傷が痛む…!耐えられるか…?

 

「転生者…?」

 

「どういうことナノーネ?」

 

「…あとで話します…今は…彼と決着を着ける!」

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生…!」

 

「十代…よく見ておけ…もし俺が負けたら、お前が影丸を止めるんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「【デュエル!】」

 

 

 

 

 

遊海LP 4000 D60

影丸LP 4000 D40

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から永続魔法『ライトロードの神域』を発動!モンスターを伏せてターンエンド!」

遊海LP 4000

伏せモンスター1 神域 手札4 D 54

 

 

「遊海先生はライトロードで戦うんだ…!」

 

「でもカミューラの時は負けてるノーネ!」

 

「遊海さん…」

 

 

 

 

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【私は罠カードを三枚伏せる!】

 

「伏せるカードを宣言した…?」

「いったい何のために?」

 

 

【こうするためだ!私は三枚の罠カードを生け贄に…現れろ『神炎皇ウリア』!】

 

三枚の罠カードが破壊され、地面から火柱が上がる…そして巨大な赤い龍のような幻魔が現れる

ATK 0→3000

 

 

「あれが幻魔…!」

「なんて禍々しいんだ…!」

 

【『ウリア』の攻撃力は墓地の罠カード×1000となる!バトルだ!裏守備モンスターを攻撃!『ハイパーブレイズ』!】

「アニメ効果かよ…ぐあっ!!」

 

ウリアの炎が裏守備の白い犬を吹き飛ばす

 

「セットモンスターは『ライトロード・ハンター ライコウ』!リバース効果でウリアを破壊する!」

白い犬がウリアに特攻し破壊する

 

【ぐぬ!?】

 

「そしてコストとしてデッキから三枚カードを墓地に送る、そしてライトロードモンスターの効果でデッキから墓地にカードが送られる時、神域にシャインカウンターを置く!」

 

小さな神殿に光が灯る カウンター0→1

 

墓地送り

 

ヴォルフ

ライラ

黄昏ルミナス

 

「そして墓地に送られた『ヴォルフ』の効果で自身を特殊召喚!」

白い獣人が現れる ATK 2100

 

 

「幻魔の一体を倒したッス!!」

「さすがだぜ遊海先生!」

 

【ふん!甘いわ!『ウリア』手札の罠カードを墓地に送り復活する!『炸裂火薬』を墓地に送り蘇れ!『ウリア』!】

地面から火柱が再び上がりウリアが復活する

ATK 0→4000

 

 

 

 

【ターンエンドだ!】

影丸LP 4000

ウリア 手札1 D 34

 

 

 

 

 

「『ウリア』が蘇った!?」

「しかも攻撃力4000…マズイぞ…」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー…っつ!?」ズキッ

「(頭が…くらくらする…意識を保て!!)」

 

「手札から『ソーラーエクスチェンジ』を発動!手札の『オルクス』を捨ててカードを二枚引いて二枚デッキから墓地へ!」

 

墓地送り

ライデン

進軍

 

「よし!『隣の芝刈り』を発動!相手より自分のデッキが多い時、俺のデッキから同じ枚数になるように墓地に送る!差は12枚!」

 

墓地送り

裁きの龍

戒めの龍

ミネルバ

シャイア

黄昏ジェイン

ジャスティスワールド

芝刈り

闇の進軍

光の援軍

トワイライトグロス

閃光のイリュージョン2

 

 

「そして『ミネルバ』の効果でさらに一枚を墓地へ!」

 

墓地

神域

 

カウンター1→2

 

「そして『ヴォルフ』を生け贄に『ライトロード・ドラゴン グラゴニス』を召喚!」

鎧を纏った白い竜が現れる ATK 2000→4400

 

「スゲェ!ウリアの攻撃力を超えた!」

「『グラゴニス』は墓地のライトロードモンスターの種類だけ攻撃を上げられるんです!」

 

 

「バトル!『ウリア』を攻撃!」

白い竜の突進が赤い幻魔を打ち砕く

 

【ぬおおお!?】

影丸LP 4000→3600

 

 

「ターンエンド!グラゴニス効果で3枚墓地へ…」

墓地送り

ライトロードの裁き

フェリス

双龍

カウンター2→3

「墓地へ行った『裁き』と『双龍』の効果…デッキから『裁きの龍』を手札に加え、墓地から『戒めの龍』を手札に加えデッキを4枚除外する…!」

除外

ジェイン

黄昏ルミナス

ガロス

芝刈り

 

「さらに『ライトロード・アーチャー フェリス』を特殊召喚!」

緑色の髪の弓兵が現れる DEF 2000

 

 

「ターンエンド!」

遊海LP 4000

グラゴニス フェリス 神域(3) 手札5 D24

 

 

 

 

 

 

「よしっ!」

「遊海先生スゲェ!」 

「これなら勝てるッス!」

「いや…安心するのは早い…!まだ幻魔は2体いる…!」

「亮…」

 

 

 

 

 

 

【おのれ…1度ならず2度までも…!ドロー!】

【『強欲な壺』を発動!2枚ドロー!】

【フフフ!ハハハ!魔法カードを伏せ『天よりの宝札』を発動!私の手札は1枚!よって4枚ドロー!】

 

「なんだよ!?そのドローは!俺は引けない!」

 

【フフフ、さらにフィールド魔法『失楽園』を発動!このカードはフィールドに幻魔がいる時2ドローできる!】

周囲が枯れ果てた荒野に変わる

 

「何なんだこの場所は…!」

「こわいッス…!」

「不気味ナノーネ!」

「うわ!?クロノス先生抱きつくな?!」

 

【そして手札の『強欲な瓶』を墓地へ送り『ウリア』を三度復活させる!】

ウリアが三度目の復活を果たす 攻撃力0→5000

 

「嘘だろ!攻撃力5000だと!」

「『究極竜騎士』並みッス!?」

 

 

【そして新たに魔法を二枚伏せて三枚を生け贄に捧げ!現れろ『降雷皇ハモン』!】

三枚の魔法カードが破壊され地面から氷山が現れる、そして氷山が砕け黄色の悪魔が現れる ATK 4000

 

 

 

「2体目の幻魔…!!」

 

 

 

【フフフ…フハハハハ!力が…力がたぎるぞ…!!!】

その声と共に水槽が割れ、筋骨隆々の偉丈夫が現れる

 

「あの人が影丸理事長!?」

 

「そんな馬鹿な!影丸理事長は齢100才を越えているはずだ!」

 

 

 

 

『ふははははは!これが三幻魔の力よ!見るがいい!この若々しい肉体を!どりゃあ!』

 

影丸は自分の乗っていた機械から決闘盤を取り外すと、機械を放り投げる

 

 

「なんて馬鹿力だ…!」

 

《兄貴~助けて~!》

「オジャマイエロー!?どうした!?」

万丈目がイエローを見ると、どんどんイエローが痩せ細っていく…

 

「あっ…!パトロイドが錆びていく!!」

 

「私のサイバーチュチュのイラストが…!」

 

「ワタシのギアゴーレムがスクラップに!?」

 

 

《翠さ…ん…》

《たす…け…て…!》

 

「ウェン!ウィンダ!」

 

ウェンとウィンダもシャドール状態に戻り、体が崩れていく…

 

 

 

《マス…ター…!》

機械のところどころが錆びていく…

 

「アヤカ!影丸!貴様ぁ!」

 

 

『ふははははは!俺は精霊の力を吸い上げて不死身になるのだ!最後は貴様だ!白波 遊海!さらに手札から「ハンマーシュート」を発動!フィールドのもっとも攻撃力の高いモンスター…「グラゴニス」を破壊する!』

 

グラゴニスが巨大なハンマーに潰される

 

 

『バトル!「ウリア」で「フェリス」を攻撃!「ハイパーブレイズ」!』

 

「『神域』の効果!カウンターを2個取り除き破壊されない!」

カウンター3→1

 

『ならば「ハモン」で「フェリス」を攻撃!「失楽の霹靂」!』

ハモンから放たれた雷撃がフェリスを破壊する

 

『そして「ハモン」がモンスターを破壊した時、相手に1000のダメージを与える!地獄の贖罪を受けるがいい!』

空が黒く染まり、雷が遊海に直撃する

 

「がああぁぁあぁ!!?」

 

遊海LP 4000→3000

 

雷の直撃を受けた遊海は倒れ伏す、ライフに余裕はあるがアムナエルとの連戦のために体力は限界だった…

 

「遊海さん!しっかりしてください!遊海さん!!」

翠が悲痛な声をあげる

 

『ふははははは!最強の決闘者も我が三幻魔の前には無力だったな!いいことを教えてやろう!俺の手札には既に「幻魔皇ラビエル」がいる!そして次のターンのドローで俺は「ラビエル」を召喚するためのカードを引く!これで俺の勝ちだ!ターンエンド!』

影丸LP 3600

ウリア ハモン 失楽園 手札1 D27

 

 

  

 

 

 

 

「がっ…あっ…クソッ…!」

遊海はなんとか立ち上がる…しかし服は焼け焦げ、肌も一部黒く焦げている…

 

 

《マス…ター無理をしな…いで…くだ…さい》

既にコア以外全てが錆び付いてしまったアヤカが声をかける、アヤカはわかっているのだ…己がマスターは気合で立っているという事を…

 

「俺が…やらなきゃ…俺が…我が…オレが!!」

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!!」

 

「遊海先生!ダメだ!それ以上は!」

 

「遊海先生!」

 

 

 

 

 

「オレのターン…ドロー!!」

気合で遊海はカードを引く

 

「オレは手札から『ソーラー・エクスチェンジ』を発動!『ライニャン』を捨てて二枚ドローし二枚墓地へ!」

墓地送り

ヴォルフ

裁きの龍

 

 

「『ヴォルフ』を特殊召喚!」

白い獣人が現れる ATK 2100

 

「そして『ライトロード・サモナー ルミナス』を召喚!」

踊り子のような衣装の女性が現れる ATK 1000

 

「そして『ルミナス』の効果!手札の『ジェニス』を捨て墓地の『ライデン』を特殊召喚!」

刀を持った暗殺者が現れる ATK 1700

 

「『ライデン』の効果!デッキから二枚を墓地へ!その中にライトロードがあれば攻撃力200アップ!」

 

墓地送り

フェリス

黄昏ライラ

 

ATK 1700→1900

 

「『フェリス』を特殊召喚!」

再び弓兵が現れる DEF 2000

 

 

『何体雑魚モンスターを増やそうが無駄だぁ!!』

 

「オレはレベル4の『フェリス』と『ヴォルフ』でオーバーレイ!」

 

『何?』

 

「遊海さん…!」

 

2体のモンスターが光の筋になり銀河へ飛び込む

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!現れろ!ランク4『ライトロード・セイント ミネルバ』!」

白い翼を生やした天使が舞い降りる ATK 2000

 

「あの召喚は…!?」

 

「マスクマンの!?」

十代が声をあげる、彼の召喚した銀河眼もあの召喚の仕方ではなかったか?と

 

 

 

「さらにレベル3『ルミナス』にレベル4『ライデン』をチューニング!」

ライデンがその身を緑色の輪に変える

 

3+4=7

 

「集いし光が悪しき闇を祓う力となる!シンクロ召喚!レベル7『ライトロード・アーク ミカエル』!」

白い龍に乗った金色の鎧の天使が現れる ATK 2600

 

『何をしようと無駄だ!三幻魔は越えられぬ!』

 

「『ミカエル』の効果!オレのライフを1000払い!『失楽園』を除外する!『光の巡礼』!」

 

遊海LP 3000→2000

 

ミカエルから光が放たれ、周囲が元の景色に戻る

 

『なっ!?幻魔の園が…!』

 

 

「そして『ミネルバ』の効果!ORUを一つ使い、デッキから三枚墓地へ送る、その中のライトロードカードの数ドローできる!」

墓地送り

ケルビム

ライコウ

エクスチェンジ

 

 

「そして…墓地のライトロードモンスターが4種類以上の時、このモンスターを特殊召喚する!現れろ!邪念を裁く光の化身!『裁きの龍』!」

天空から純白の龍が現れる ATK 3000

 

「出た!ライトロードの切り札ッス!」

 

「やっぱりかっこいいぜ!」

 

 

 

「さらに!『裁きの龍』の特殊効果!オレのライフを1000払い…フィールドの全てを破壊する!『カタストロフ・レイ』!!ゴボッ…!」

遊海LP 2000→1000

 

白き龍から破壊の光が放たれ、幻魔を墓地へ沈める

 

 

『馬鹿な!?幻魔達が!?』

 

「破壊された『ミカエル』の効果!墓地のライトロードモンスターを任意の枚数デッキに戻しライフを×300回復する!戻すのは19枚!『リターンリカバリー』!!」

 

ミカエルの幻影が墓地に眠るライトロードを異界へと連れ戻す、その時のエネルギーが遊海のライフを回復させる

遊海1000→6700

 

 

「そして手札から『闇の進軍』を発動!墓地の『グラゴニス』を手札に戻しデッキを6枚除外する!」

 

除外カード

ルミナス

グラゴニス

ジェニス

黄昏ライコウ

黄昏ジェイン

罠裁き

 

「そして除外されたライトロードモンスターが4種類以上の時、このモンスターは特殊召喚できる!現れろ妄執を戒める闇の化身!『戒めの龍』!」

天空から「裁きの龍」に鏡写しの黒い龍が現れる ATK 3000

 

『あっ…な…なんという威圧感だ…!』

 

「『戒めの龍』の効果!ライフを1000払い、自分・相手の墓地または除外されているライトロードモンスター以外のカードを全てデッキに戻す!『戒めの波動』!」

遊海LP 6700→5700

 

黒き龍の波動が眠るカード達をデッキに戻す…

 

 

『馬鹿な幻魔が浄化されていく…!?ああ…体が…体が…!!?』

 

 

 

 

 

 

幻魔をデッキに戻された影丸に変化がおきる…体が筋骨隆々の姿から元の老人に戻っていく…

 

「!?カードのイラストが戻っていくわ…!」

 

「パトロイドが元に戻っていく…よかった…!」

 

《アタシ!ふっか~つ!!》

 

「オジャマイエロー!!よかったな!」

 

《翠さん…》

 

《落ち着きました…》

 

「よかった~!」

精霊達の力が戻っていく…

 

 

《マスター!私も復活です!》

 

「バトル!『戒めの龍』で影丸にダイレクトアタック!『戒めの息吹』!!」

《マスター!?》

 

黒い龍のブレスが影丸老人を吹き飛ばす

【ぐわ~!!?】

 

影丸LP 3600→600

 

【アイタタタ…腰が…!さ…サレンダーじゃ!!?】

 

吹き飛ばされた影丸は腰を痛めたらしくサレンダーを宣言する…しかし

 

 

「バトル…『裁きの龍』でダイレクトアタック…!」

 

《マスター!?彼に戦意はありません!!やめてください!!》

遊海は構わず攻撃を宣言しようとする

 

「遊海先生の様子がおかしいぞ!?」

十代が遊海の異常に気づく

 

「遊海さんダメです!影丸さんが死んじゃいます!!」

 

「遊海先生!やめなさい!!」

 

「セニョール白波!ストップナノーネ!?」

翠やクロノス先生が静止するが

 

 

「オレは勝たなきゃ…勝たなきゃ…!!」

 

《マスター!?》

 

「『裁きの息吹』!!!」

 

無情にも白き龍の口にエネルギーが集中していく…!

 

《だめです!マスター!!》

 

「遊海さん!ダメぇぇぇ!!!」

 

「翠さん!やめろ!危ない!!」

翠が遊海に向かって走る

 

「はなてぇぇぇっ!!」

白き龍のブレスが放たれる…それは真っ直ぐ影丸に向かい…

 

 

【うわあああ……あれ?】

 

「えっ…!?」

 

直前で消滅する…

 

 

 

 

 

 

「ガッ…ハッ…ガボッ……!」

 

《え…》

 

〈……!〉

 

 

全員が遊海の方を見る…そこには光る人型によって腹部に一撃を喰らい倒れる遊海の姿があった…

 

 

〈君は…そこに堕ちてはいけない…!〉

 

「…すま…ない…ね……」

人型は遊海に言葉をかける…彼を救い上げるように…

 

 

 

 

「おい!お前は何者だ!」

十代が問いかける

 

〈…君とはいづれ再会する…その時に正体を明かそう…さらばだ!〉

 

「おい!」

人型は光の玉になり空へと飛んでいってしまった…。

 

影丸 サレンダー

 

遊海 win…

 

 

 

 

デュエル終了後、影丸理事長は病院に搬送された…なお三幻魔を求めた理由は若者を見ていたら自分も青春を取り戻したかったという理由だった。

また戒めの龍のブレスが効いたのか性格が少し丸くなった事を追記する。

 

 

 

三幻魔は再び封印された、ハモンとウリアは浄化されたがラビエルはまだなので監視は続けるとの事だ…そして…

 

 

 

 

 

 

 

保健室

 

「ぐっ…イタタタタ…ここは…」

 

「遊海さん!大丈夫ですか!?」

 

「ミ…ドリ…?」

 

「よかった…よかったです~!!」 

翠は泣きながら遊海に抱きつく…

 

 

 

「翠…デュエルはどうなった…?俺は負けたのか…?」

 

「いいえ…影丸理事長がサレンダーしたんです…まさかまた覚えてないんですか?」

 

「サレンダー…?どうして…」

 

「遊海さんがミカエルと裁きの龍と戒めの龍でフィールドを焼け野原にしたあと、戒めの龍の攻撃で影丸理事長がぎっくり腰になったんです…その前に戒めの龍の効果で幻魔が浄化されて精霊から吸いとっていた力が抜けて老人に戻っていたんです…」

 

「…何も覚えてない…ハモンに攻撃を受けて…俺は起き上がった…のか…?」

 

「…遊海さん…様子が変でした…サレンダーを宣言してるのに攻撃しようとして…あの人がいなければ大変な事に…」

 

「あの人…?誰だ…?」

 

「はい…光に包まれた…精霊でした…、十代くんにいづれ再会するって言ってましたけど…」

 

「ネオス…か…?」

 

 

E・HERO ネオス、十代が幼少期に海馬コーポレーションの企画で作り、宇宙に放たれたカード…彼なのだろうか…

 

 

 

「遊海先生!大丈夫か!!」

 

「お見舞いに来たノーネ!」

クロノス先生と十代がやって来た

 

「十代…度々すまないな…お前は大丈夫か?」

 

「ああ!俺は元気だぜ!」

 

「そうか…ならよかった…」

 

 

 

 

「セニョール白波…聞きたい事があるノーネ…」

 

「なんですかクロノス先生?」

 

「影丸理事長が言っていた『転生者』とはどういう事ナノーネ?」

 

「ああ…じいちゃんがなんか言ってたな…なんなんだ?」

 

…また説明会か…

 

「クロノス先生…俺が治ってから皆に説明します…その時に七精門の守護者だった人達を集めてもらえますか?」

 

「…わかったノーネ!」

 

「え~!今聞きたいぜ…!」

 

「十代くん…少し待ってね…」

 

 

 

 

そして俺はまた説明会を開くのだった。

 




予告(仮)



《逃げろ!逃げるんだ!》

《早く走れ!「悪魔」が来るぞ!》




【ギュアアアア!!!】

「くっ!やるしかないか!手伝えジム!」

「オーケー、オブライエン!背中は預けるぜ!」


「はあっ!」 

カキン ガキン

『…!オオオオ!!』

「貴方は誰なんです!何故こんな事を!」

『全てを…破壊する…!!邪魔者は…消す!!』

【翠さん!後ろ!】

「くっ!てゃあ!」

カラン

「そんな…!?なんで…!!」




GX編第●章3年目~異世界編~   公開未定…


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説明と卒業~1年目エピローグ~

今回は三日程で退院?できた、ついでに目覚めた時点で決闘から二日が経っていた。

精霊の力も元に戻り万全な状態になっている、そしてこれから守護者の慰労会兼俺達二人の説明会である…さてどこからどこまで話そうか…。

 

 

 

 

『にゃ~お…』

 

「ん?ファラオ…どうした?」

部屋にいた俺のところにファラオがすり寄って来た…大徳寺先生がいなくなって寂しいのかな…?

 

「ほれ…ファラオどうした?」

喉元に手を添えてファラオをくすぐる…

 

『ゴロゴロ…ニャ~ン!』ポン!

 

「へっ!?」

ファラオの口から光る玉が飛び出した!

 

《…久しぶりだにゃ遊海君!》

 

「大徳寺先生!?」

光る玉は人型を成す、それは大徳寺先生だった

 

《いや~参ったにゃ…大人しく成仏しようとしたらファラオに飲み込まれちゃって…》

 

「地縛霊ならぬ猫縛霊ですか、先生…」

 

《あははは…はぁ…》

大徳寺先生は肩を落とす

 

「ドンマイです…これからどうするんですか?成仏したいならさせますけど…?」

 

《いや…まだいいにゃ、しばらくは十代を見守ることにするにゃ!》

 

「そうですか…なにかあったら言ってくださいね?」

 

《ありがとう遊海君…それから…》

 

「なんですか?」

 

《…卑怯な手を使って…ごめんなのにゃ…うわ!?》

 

『にゃ~お!』ゴクン

大徳寺先生の魂は再び飲み込まれた…

 

「…気にしないでください、大徳寺先生…これからは頼みますよ!」

 

『ニャ~オ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな~用意はいいか!!」

「「「オーケー!!」」」

 

「…じゃあ…校長、お願いします!」

 

「うむ…では、三幻魔防衛の慰労会を始めます…乾杯!」

 

 

「「「「カンパ~イ!!(ナノーネ!)」」」」

 

レッド寮の食堂に皆が集まり慰労会が始まった、もちろん全員お茶かジュースである。

メンバーは校長、クロノス先生、俺、翠、、十代、万丈目、明日香、吹雪、カイザー、三沢、翔、隼人の12人とファラオ、そして精霊達である。

 

 

 

 

「は~い!みんな、たくさん食べてね!」

 

「ありがとうございます翠さん!」

 

「このパスタおいしいノ~ネ!」

 

 

 

 

「バクバクバク…!」

 

「アニキ…もうちょっと落ち着いて…」

 

「ふぁふぇ、ふぉひひぃふはふぉふ!」

 

「何言ってるかわからないんだな~…」

 

 

「カイザー、食べてるか?」

 

「ええ、さすが翠さん…旨いです!」

 

「ならよかった!」

 

 

 

 

「遊海君…君は話すつもりなのか…あの事を…」

鮫島校長が話かけてくる

 

「ええ、彼らならば簡単には言いふらさないでしょう…」

 

「しかし相当驚くと思うぞ…君達が一度死んでいるなんて聞いたら…」

 

「まぁ、大丈夫ですよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生…そろそろ聞いていいかあの事!」

料理を食べ終えた十代が話かけてくる

 

「十代…なんの事?」

明日香が反応する

 

「影丸理事長が言っていた『転生者』についてナノーネ…!」

クロノス先生が補足する

 

「ああ…あの爺さん、そんな事を遊海先生に言ってたな…そういえばどういう意味だ?」

万丈目が三沢に聞く 

 

「転生とは…死んだ人が記憶を持ったまま新しい肉体を得る事だったと思うが…まさか…」

三沢は言葉に出して気づいたようだ

 

「…」

カイザーは黙っている…

 

 

 

 

「ああ、三沢君正解だ…俺と翠は…一度死を経験している…!」

 

「「「「はぁっ!?」」」」

 

 

 

 

 

そして俺は皆に説明する、普通に生きていたら神様による事故で死んだ事。

神様によってこの世界に転生して、同じ境遇で死んだ翠と再会した事。

そして…決闘王である遊戯の仲間である事を…

 

 

 

 

 

「そんな事…ありえるのかよ…」

万丈目が信じられないという目で見てくる

 

「そうなノーネ!死んだ後の生なんて…普通はありえないノ~ネ!!」

 

「しかし…それで説明は通る」

 

「お兄さん?」

 

「遊海先生の異常な強さ…その源を…」

 

「ああ、異世界におけるデュエルモンスター…それが遊海先生の強さだ…」

三沢が分析した事を伝える

 

 

 

「…死ぬ時…辛くなかったですか…?」

明日香が尋ねてくる…

 

「ああ…痛みは一瞬だった、でも親を残して死ぬのは…辛かったよ…」

父さん…母さん…どうしてるかな…

 

 

「でも…翠と再会できただけ…よかったかな…」

 

「遊海先生…」

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生…ちょっといいか?」

宴会が終わった後十代が話かけてくる

 

「どうした?」

 

「先生…このカードなんだけど…」

十代が渡してきたのは「賢者の石ーサバティエルー」だった、効果テキストは書かれていない…

 

「大徳寺先生が俺に託したんだ…本当はこれで三幻魔を倒せ…って事だと思ったんだけど…」

 

「俺が倒しちゃったから、使いどころを失ったと…」

 

「ああ…そうなんだ…」

 

サバティエル…アニメで力を発揮したチートカード、ハネクリボーの破壊がトリガーとなり手札に加わり3回の奇跡を起こした後、真の力を発動…エリクシーラーの攻撃力を14500まで上げてフィニッシャーとなった「究極の錬金術師が使いこなせるカード」…

 

 

「十代…このカードはお前が持っているんだ、きっと役に立つ時が来る…ただし」

 

「ただし?」

 

「このカードは一度効果を使いきれば消えてしまう…そういうカードだ、使いどころは気をつけろよ?」

 

「ああ!ありがとう先生!おやすみ!」

 

十代は部屋に戻っていった…

 

 

 

 

 

 

…さてこれで1年目は一段落だな…セブンスターズを撃退し、三幻魔も封印した…次は破滅の光か…

 

《マスター…大丈夫ですか?》

アヤカが話かけてくる

 

「ああ、力も戻って安定した…これなら次も頑張れる…」

 

《いえ…体ではなく精神的にです、あの決闘の時のマスターは異常でした…》

 

「…大丈夫だよアヤカ…、俺はそこまで軟なメンタルじゃないからな…」

 

《マスター…》

 

 

ピリリリ…ピリリ…

「電話か…誰だろうこんな時間に…はい!」

 

『ミスター白波!久しぶりデース!』

 

「ペガサス会長!?どうしたんですか!?」

電話はペガサス会長からだった、何故番号知ってるし!?

 

『ミスター海馬から番号を聞いてコールシマシタ!』

 

「ご用件は…?」

 

『アカデミアに「ハヤト マエダ」というスチューデントがいますね?』

 

「はい…彼がどうかしましたか?」

 

『彼の書くイラストは素晴らしくワンダフルデース!彼を我が社のイラストレーターとして迎えたいのデース!』

 

「本当ですか!?それは本人も願ってもない事だと思います!」

隼人は他人と競う事が苦手で留年していた、最近は十代と触れ合う中で意欲を取り戻していた。

 

『プロフェッサー鮫島宛に彼のイラストのカードを送りまシタ!彼に渡してくサーイ!グットナイト!』

プッ

 

「そうか…そんな時期か…」

 

 

 

 

 

その後、クロノス先生と隼人の夢を賭けた決闘が行われた、結果隼人は負けたがその心意気を認められI2社へ向かっていった。

そして卒業デュエル、卒業生代表のカイザーと在校生代表の十代のデュエル、二人の魂を燃やす激しい決闘…途中十代が飯を食べるという珍事もあったが決闘は続き、最終的には攻撃力20900のシャイニングフレアウィングマン対36900のサイバーエンドの戦い、そして「決戦融合」の効果で引き分けとなる、という結末になった。

 

二人の結末を見届けた生徒達はスタンディングオベーションで拍手を送ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…卒業か…。」

 

「どうした、カイザー?こんな夜に」

 

「!?遊海先生…!」

 

卒業デュエルの日の夜、デュエルリングにカイザーを見かけた俺は彼に話かけた。

 

「珍しいな、お前が夜に灯台ではなくココにいるなんて…」

 

「少し昼間の余韻に浸っていたんです、あの十代とのデュエルの…」

 

「そうか…、進路はプロだったな?」

 

「はい、スポンサーも決まり9月からのプロリーグに参加する予定です、しかし少し不安もあります…」

 

「不安?」

 

「オレはアカデミアで『皇帝』と呼ばれた男です…その実力がプロで通じるのか…楽しみであり不安を感じるんです…!」

 

「なら…俺と決闘するか?プロランキング5位である白波 遊海と…!」

 

「…ええ…受けて立ちます!貴方という壁を…オレは越えてみせる!」

 

 

「越えられるなら越えてみろ!俺を!」

 

 

 

 

 

        「「デュエル!!」」

 

 

 

カイザー亮LP 4000

遊海LP 4000

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「『サイバー・フェニックス』を召喚!」

機械の不死鳥が現れる DEF1600

 

「さらに『融合』を発動!手札の『サイバー・ドラゴン』三体を融合!現われろ!『サイバー・エンド・ドラゴン』!」

三つ首の機械龍が現れる ATK4000

 

 

 

 

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

カイザーLP4000

サイバーエンド フェニックス 伏せ1 手札0

 

 

 

 

 

「伏せカードは『リミッター解除』…攻撃力ならば超えられる事はない…仮に倒されても『フェニックス』のドローカードでリカバリーは可能だ…!」

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!俺は手札の『守護神官マハード』の効果を発動!このカードを特殊召喚!」

 

「なんだと!?」

 

エジプトの神官が杖を構え現れる ATK2500

 

「さらに手札から魔法カード『黒の魔導陣』を発動!効果処理としてデッキを三枚めくり『ブラック・マジシャン』のカード名が記されたカードを相手に見せて手札に加えられる…対象無し…めくったカードは好きな順番でデッキ上に戻す!(ティマイオスなんて使えるか!?)」

 

 

 

 

「そして手札を一枚捨て『幻想の見習い魔道師』を特殊召喚!効果で『ブラックマジシャン』を手札に!」

褐色肌の魔法使いが現れる DEF1700

 

「そして手札より魔法カード『黒のヴェール』を発動!ライフを1000払い墓地から復活せよ!最上級魔術師!『ブラック・マジシャン』!!」

 

フィールドに魔法陣が刻まれその中から紫の衣を纏った魔法使いが現れる ATK2500

 

「っ!?決闘王が愛用する最強の魔術師…!再び目にできるとは…しかし攻撃力では『サイバー・エンド』には及ばない!」

 

 

「焦るなよ亮!『黒の魔導陣』のさらなる効果!『ブラック・マジシャン』が場に出た時、相手のカードを一枚除外する!『サイバー・エンド』を除外!」

 

「なんだと!?」

魔法陣がサイバーエンドを包み異次元へ消し去る

 

 

「バトル!『マハード』で『フェニックス』を攻撃!」

 

《魔導波!!》

神官の一撃が不死鳥を破壊する

 

「くっ!?『フェニックス』の効果により1ドロー!」

 

「『ブラックマジシャン』でダイレクトアタック!『黒魔導!』」

《ハアッ!》

魔法使いの魔力弾がカイザーに直撃する

 

「ぐおおっ!?」

カイザーLP4000→1500

 

「カードを伏せてターンエンド!」

遊海LP4000

ブラックマジシャン マハード 見習い 伏せ1 魔導陣 手札1

 

 

 

 

 

 

 

「これが伝説の決闘者、白波 遊海の実力…!」

 

「どうしたカイザー亮?その程度か?」

 

 

 

「まだだ!俺のターン!ドロー!」

「『強欲な壺』を発動2ドロー!」

「そして『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動!ライフを半分払い融合素材を手札・フィールド・墓地から除外し融合できる!」

カイザー1500→750

 

「『パワーボンド』を発動!墓地の『サイバードラゴン』3体を除外し!再び現われろ!『サイバー・エンド・ドラゴン』!」

再び機械龍が現れる、しかしその体は倍近く大きくなっている ATK4000→8000

 

「バトルだ!『サイバーエンド』で『ブラックマジシャン』を攻撃!『エターナル・エボリューション・バースト』!!さらにリバースカード!速攻魔法『リミッター解除』を発動!機械族の攻撃力を倍にする!」

サイバーエンドの攻撃力がさらに上がりブラックマジシャンをめがけて発射される

 

ATK8000→16000

 

「リバースカード発動!『マジシャンズ・ナビゲート』!効果により手札から『ブラックマジシャン』をその後デッキから『マジシャンオブブラックイリュージョン』を特殊召喚!」

 

虚空の穴から黒き魔法使いとその影が現れる。

ATK2500

 

DEF2500

 

「そして『魔導陣』の効果が起動!『サイバーエンド』を除外する!」

 

「しまった!!」

 

サイバーエンドは再び魔法陣により除外される

 

「…『サイバージラフ』を召喚!このモンスターを生け贄にする事で、エンドフェイズまで効果ダメージを0にする、ターンエンド…!」

カイザーは歯を食い縛りながら機械の麒麟を召喚・リリースしターンを終えた。

カイザーLP750

 

 

 

 

 

「まさか…ここまで躱されるとは…!」

 

「カイザー亮!見事な攻撃だった!しかしまだ足りない!俺のターン!ドロー!」

「お前の力に免じてこのデッキの最強を見せよう!手札から『円融魔術』を発動!俺のフィールドの5体の魔法使い族を除外し、融合を行う!5体の魔術師よ!その魂の音色を重ねよ!融合召喚!『クインテット・マジシャン』!」

 

遊海のフィールドに魔術師の極地たる存在が降臨する ATK4500

 

「攻撃力…4500の魔術師…!?」

 

「バトル!『クインテットマジシャン』でダイレクトアタック!『五重奏魔術(クインテット・マジック)』!」

魔術師の魔法陣が輝き魔力弾が放たれカイザーに直撃した…

 

カイザーLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

「カイザー…立てるか?」

俺は倒れている亮に話しかける…その顔は晴れ晴れとしていた

 

「これが…プロ…なんと遠い世界なんだ…!」

 

「カイザー…悲観する事は無い、今のはランキング1位レベルのデッキだ、今のお前のコンボは凄まじいモノだった…しかしそれでも越えられないモノもある、それを見極めて精進するがいい」

 

「ありがとうございました、遊海先生…オレの道が少し見えた気がする…!」

 

「ならよかった、しっかり休めよ!」

 

そうして俺はその場を離れるのだっだった。

 

 

 

そうしてカイザーは卒業していった…、ヘルカイザーはどうなるのだろうか…。

 

そしてアカデミアの夏休み前、最後の日…

 

 

 

 

 

Prrr…Prrr…

 

「電話だ…はい…」

 

『遊海!貴様何をやっている!!』

 

「うえっ!?海馬社長?どうしたんですか!?」

 

『どうしたもこうしたもない!貴様プロリーグはどうした!ここ暫く対戦記録がないではないか!!』

 

「それは…三幻魔の防衛で忙しくて…」

 

『言い訳はいい!このままではランキングが下がる!次の大会に出場しろ!これはスポンサー命令だ!いいな?』ガチャ

 

 

 

「…久々に出るかぁ…」

 

俺は海馬コーポレーションがスポンサーとなりプロを続けている、確かにここ一年はプロに顔出してなかったな…。

…正直アカデミアを離れたくはないが…海馬社長の指令だからな…

 

 

 

 

「と言う訳でプロリーグに出る事になった!」

 

「海馬さんも無茶を言いますね…いつからなんですか?」

 

「それが…9月からなんだ…」

 

「えっ…!」

 

「よりによって新学期からなんだよ…」

 

エドや斎王が来る時に居られないとは…トフェニがいるから何かあったら戻れるけど…心配だな…

 

「翠、俺がいない時は斎王に会わないように気をつけてくれ!」

 

「わかりました…少なくとも一人で会わないようにします!」

 

「ああ…気をつけてくれ…」

 

そうしてアカデミアの一年は過ぎ去った、そして光との戦いである二年目に突入する…。



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2章 二年目 破滅星光結社 ジェネックス
新学期スタート〜波乱〜


夏休みを終えアカデミアの新学期が始まった、今日は入学式で新入生がどんどんやってくる、そんな中1台のクルーザーが港にやって来た。

 

「ここがデュエルアカデミアか…やはりビッグな学校だな…」

銀髪の少年が呟く…彼は新入生でありプロデュエリスト…エド・フェニックスである。

 

「久しぶりだな、エド!」

そこに灰色の作業服を着た青年が話しかける。

 

「あなたは…?」

 

「おっと!悪い悪い…これなら分かるか?」

青年は被っていた帽子を赤帽子に変える…遊海である。

 

「ミスター遊海!お久しぶりです!まさか貴方が此処に勤めているとは…」

 

「ああ、ここが俺の職場だ!俺も驚いたよ…まさかお前がアカデミアに入学するなんて…」

 

「ええ…少し確かめたい事がありまして…」

 

「そうか…ここはいい学校だ、改めて色々な事を学んでいくがいい!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカデミアは新学期を迎えた、そして鮫島校長は長期出張へ…確かジェネックス開催の決闘者集めだっけ…?

その間はクロノス先生が臨時校長になった、そして教頭としてフランス出身のナポレオン先生がやって来た、初期のクロノス先生を少し悪くした感じだが…俺とO☆HA☆NA☆SHIしたからレッド寮はそのまま存続するだろう、まぁレッドの子達はまだ自分の道を見つけられない子達が多いだけだから完全な落ちこぼれと言うわけじゃないからな…何かレッド寮にしようなら…フフフ…。

レッド寮の大徳寺先生亡きあとの寮長はとりあえず俺になった、しばらくは翠に代行してもらいながらやっていくつもりだ。

そして俺は今…

 

 

 

【さぁ!やって参りました!デュエルモンスターズプロリーグ!今回の対戦者は…!】

 

 

 

この通りプロリーグに出場している…さて久しぶりだけど…慣れないなこの観客の数は…

 

 

【赤コーナー!伝説の決闘者が一年振りに帰って来た!バトルシティ準優勝!プロランキング5位!精霊に愛された決闘者!『赤帽子』の白波 遊海ーィ!!】

 

「「「ウワァァ!!!」」」

 

俺は歓声を浴びながらデュエルリングに登る…相変わらず、すごい人だ…

 

 

 

【対するは青コーナー!趣味は水上バイク!好きな海の生き物はシロクマ!プロランキング10位!海月 慎二!】

 

「やぁみんな!今日オレは…伝説に勝つ!」

 

「「「キャーシンジ様素敵ー!」」」

 

 

黄色い歓声を浴びながらやって来たのは縮れた黒髪の二枚目顔の青年だった…知らない顔だな…

 

「オイ!伝説の決闘者だかなんだか知らないが…この勝負はオレがもらうぜ…ブランクデュエリストさんよ…!」

海月は観客に聞こえない声で話かけてきた…性格悪いな…

 

「倒せるなら倒してみなワカメ君、俺は…少しレアだぜ?」

 

「ワカメッ…!!!」

顔が茹でだこのように赤くなる

 

【それでは…デュエルスタート!!】

 

 

 

 

       「「デュエル!!」」

 

 

シンジLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「フィールド魔法『海』を発動!」

デュエルリングの足元が海になった

 

「そして『グリズリー・マザー』を召喚!」

青毛の熊が現れる ATK1400→1600

 

「カードを二枚伏せてターンエンド!」 

シンジLP4000

グリズリー 伏せ2 手札3

 

 

 

【シンジ選手!リクルートモンスターを出して準備満タンです…さぁ遊海選手はどうするのか!?】

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「フィールド魔法『真帝王領域』を発動!フィールド魔法が張り替えられた事で『グリズリー』の攻撃力も下がる!」

海が消え去り、ギリシャ調の神殿に変わる

グリズリーATK1600→1400

 

「しまった…!」

 

「そして手札から『帝王の烈旋』を発動!その効果により『グリズリー』を生け贄に…現われろ!『風帝ライザー』!」

緑色の鎧を着た風の帝王が現れる ATK2400

 

「『ライザー』の効果!左の伏せカードをデッキトップに戻す!」

ライザーの起こした風が伏せカードを舞い上げ、デッキに戻す

 

「ヤベッ!?(『竜巻海流壁』が戻された!手札に『海』はねえよ…!?)」

 

「バトル!『ライザー』でダイレクトアタック!」

ライザーの起こした風がシンジに直撃する

 

「うぼぁ!?」

シンジLP4000→1600

 

 

 

「カードを二枚伏せ、ターンエンド!」

遊海LP4000

ライザー 帝王領域 伏せ2 手札 1

 

 

 

 

【遊海選手!流石伝説の決闘者!1ターンでシンジ選手を追い詰めました!】

 

 

 

 

 

「くそ…負けてたまるかよ!ドロー!」

 

「…『リロード』を発動!手札3枚をデッキに戻し、同じ枚数をドロー!…来たぜ!貴様を倒すカードが!」

 

「ほう?」

 

「手札から『スペースマンボウ』を召喚!」

巨大なマンボウが現れる ATK1700

 

「そしてさらに!『大波小波』を発動!スペースマンボウを破壊し…いでよ!『海竜ーダイダロス』!」

津波がマンボウを破壊し細身の海竜が現れる ATK2600

 

「さらに『リビングデッドの呼び声』を発動!墓地の『グリズリー』を特殊召喚!」

墓地から熊が現れる ATK1400

 

 

 

【おーっとシンジ選手!水属性のモンスターを展開して来た!これは遊海選手ピンチか!?】

 

 

「バトル!『ダイダロス』で『ライザー』を攻撃!『リヴァイアストリーム』!!」

海竜の起こした水流がライザーに迫る

 

「リバースカードオープン!『連撃の帝王』!このカードは相手のメイン・バトルフェイズに発動できる!相手ターンに生け贄召喚を行う!」

 

「相手ターンに生け贄召喚だと!?」

 

 

「そして俺はこのモンスターを召喚する時、生け贄召喚したモンスター1体で最上級モンスターを召喚できる!進化せよ!『烈風帝ライザー』!」

ライザーを中心に巨大な竜巻が起こり水流を蹴散らす、そして竜巻の中から体が一回り大きくなったライザーが現れる ATK2800

 

 

「攻撃力2800!?攻撃中止だ!」

 

「ライザーの効果!このカードが生け贄召喚に成功した時、場のカード一枚と自分または相手の墓地のカードを好きな順番でデッキの上へ戻す!さらに風属性モンスターを生け贄にした事によりもう一枚フィールドのカードを手札に戻す!俺はシンジの『ダイダロス』と墓地の『マンボウ』をデッキトップに、『グリズリー』を手札に戻す!」

 

ライザーの起こした竜巻がシンジの場を一掃する

 

 

「ぐっ…ターンエンドだ…!」

シンジLP1600

手札1

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!…バトル!『ライザー』でダイレクトアタック!『風帝烈風斬』!」

ライザーの風の刃がシンジを切り裂いた

「うわあああ!!」

 

シンジLP 0

遊海 WIN!

 

 

 

 

【決まった〜!勝者…白波 遊海選手!華麗な復活を遂げた〜!!!】

 

 

「「「ウワァァ〜!!」」」

 

 

「喧嘩を売るなら…相手を選んだほうがいいよ?君はまだ俺には追いつけない…!」

 

「くそ〜っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

『お疲れ様です、遊海選手!』

 

「ありがとう、Mrスマイル…」

彼はMrスマイル、黄色いスーツに蝶ネクタイを付けた海馬コーポレーションから派遣されている付き人である。

 

『次の試合は一週間後、ドクターコレクター氏とのデュエルですよ!』

 

「わかった…ありがとう!」

 

『いえいえ!私は貴方の1番のファンですから!そういえばこれからアカデミアのカイザー亮のデュエルですよ?ご覧になりますか?』

 

「…少し彼に会ってくる、そのまま一度アカデミアに戻るから今日は帰っていいよ。」

 

『そうですか!ではこれで失礼します!』

 

「ええ、またよろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

「はい?」

 

「カイザー!どうだ調子…!?」

 

「遊海さん!先程の試合見事でした!…どうしました?」

 

俺がカイザーの控室を訪ねるとそこには黒い服…ヘルカイザーの服を着たカイザーがいた…

 

「カイザー…どうした、その格好は…!?」

 

「ああ!これですか…今日俺は悪役…ヒールとして彼…エドに挑もうと思いまして…」

 

カイザー曰く、先日の俺とのデュエルで自身の中の「勝ちたい」という強い思いに気づいたそうだ、しかしその思いに委ねてはサイバー流のリスペクトデュエルをする事はできない…ならばどうするか…?

 

結果としてリスペクトデュエルをする自分「カイザー亮」と、ひたすらに勝利を望むもう一人の自分、「ヘルカイザー」を使い分けデュエルする事にしたそうで…。

 

うん…自分でも何を言ってるかわからない、つまりカイザーは「勝利に飢えた自分」をコントロールした…のか…?

 

「ええ、まだ完全ではないですが…それで今日は悪役としての俺を出して見ようと思ったんです!」

 

「なるほどな…まぁ…無理はするなよ…?」

 

「ええ!気合を入れて勝ちを掴みます!」

 

 

 

 

 

 

コンコンコン

「どうぞ!」

 

「やぁエド!どうだ?」

 

「ミスター遊海!ええ絶好調です!」

 

「そうか…そういえばアカデミアで十代とデュエルしたんだって?」

 

「ええ、即興のデッキでしたが…敗北しました…しかし彼のHEROの実力を見たくて…」

 

「…俺が何を教えたか覚えてるか…?」

 

「はい…『人を見下さず、相手を立てて全力の決闘をする』…ですよね…」

 

「そうだ!二度とそんな事するなよ…?」

 

「すいません…」

 

 

「遊海さん、エドを怒らないでください…私がそうするように頼んだのです…彼を見定めるために…」

 

「斎王…もうやらせるなよ…?エドを曲げて育ててしまったらエドのお父さんに申し訳ない!」

 

「はい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

エドの方は本来に比べ性格が丸くなっている、意識不明とはいえ父親が生きている事と俺が幼少期の彼に決闘のイロハを伝えたおかげもあるだろう。

 

斎王はやはり「破滅の光」に憑かれている、何度かスキを見て祓おうとしたが…俺では無理だ、やはり「優しき闇」に選ばれた十代じゃないと…

 

 

 

 

ピリピリピリ…ピリピリピリ…

 

「電話か…はい!」

 

『遊海さん!翠です!早くアカデミアに戻ってください!』

 

「何かあったのか?」

 

『アカデミアでカード狩りが起きてるようなんです!翔くんや他の生徒達も被害に…!』

 

「なんだって…?わかったすぐに戻る!」プッ

 

 

 

「トフェニ!頼む!」

 

《御意!》

 

 

 

俺は急いでアカデミアに戻る…この時期にカード狩りなんてあったっけ…?

 

 

 



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闇のデュエリスト〜強襲〜

トフェニと一緒にアカデミアに帰還した俺は真っ先にレッド寮へ向かった。

 

「ただいま翠!カード狩りってどういう事だ?」

 

「遊海先生〜!僕の『ジャンボドリルが』…!」

食堂に行くと泣いている翔と宥めている翠がいた、ついでに翔はイエローに昇格しているがレッド寮で寝泊まりしている。

 

「遊海さん…それが…」

翠によると教育実習生の龍牙という人物がノルマである生徒50人抜きをやりながら相手のカードを強奪しているという…さらに…

 

「おかしいんッス!『融合』を使おうとしたらデュエルディスクが反応しなくて…それで負けたんッス!!」

「それで私に報告に来てくれたの、クロノス先生やナポレオン教頭じゃダメだからって…」

 

「そういう事か…ん?十代は…?」

 

「それが遊海さんと入れ違いで龍牙のところに…」

 

「マジか!アイツも融合使いだろうが!行ってくる!」

 

「ボクも行くっす!」

そして二人でアカデミアに向かったが…

 

 

 

 

 

 

 

 

「リバース罠『エッジハンマー』!『エッジマン』を生け贄にして『サイバーダイナソー』を破壊し2500ダメージを与える!」

 

『何!?』

龍牙LP3250→750

 

「さらに罠カード『リビングデッドの呼び声』!『エッジマン』を特殊召喚!バトル!『エッジマン』でダイレクトアタック!『パワーエッジアタック』!」

 

『うわああぁ!!』ボンッ!

 

龍牙LP0

 

十代 WIN!

 

 

 

 

 

「やったドン!兄貴の勝ちだドン!」

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

 

 

 

 

「おい!十代だいじょ…終わったみたいだな…」

 

「アニキ!勝ったんすね!!」

 

「ああ!翔…お前のカードだ!」

 

「アニキ…ありがとうッス!」

 

 

 

俺が到着した時には既に決着がついていた…流石主人公…エッジマンのゴリ押しコンボで勝ったのか…。

 

 

 

 

 

 

「なんの騒ぎでアール!?遊海さん…!」

 

「ナポレオン教頭、不正な手段で採用ノルマを稼いでいる実習生を十代が倒したところです、聴取をお願いします…これが証拠です。」

 

そう言って俺は壊れた指輪型の機械をナポレオン教頭に託す。

「そうでしたか…さぁ!くるでアール!」

 

『チッ…もう少しだったのに…!!』

 

 

 

龍牙はナポレオンに連れられて行った、確実にアカデミアから追放されるだろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜夜〜

 

「十代君お疲れ様!たくさん食べてね!」

 

「翠さんありがとう!ハグハグ…」

 

「ノドを詰まらすなよ十代…」

 

「翠さんのご飯は美味しいドン!!」

 

 

夜は小さな宴会になっていた…まったく十代はいつもすごい食べ方だな…

 

 

 

「そういえば…聞きました遊海さん?」

 

「何が?」

 

「プロリーグの亮さん対エドくんの試合、引き分けだったそうですよ!最後は「決戦融合」で引き分けだったとか…」

 

「へぇ…お互いにスゴイな…」

 

「それに決闘終了後にお互いに握手して仲良くなったみたいですよ!」

 

「なるほどね…あの二人なら息も合うだろう…よかった…」

 

 

「…アイツ、カイザーと引き分けたのか…やっぱり強えんだな…アイツ…」

 

「十代…」

 

 

ドカーン!!!

 

 

 

 

 

なんだ!?

 

「外で何か爆発したザウルス!」

 

「遊海さん!」

 

「翠!お前はここにいろ!」

 

 

 

俺は外に向かう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…」

 

 

 

 

「翔…!どうしたんだ!」

外に出ると傷だらけいや…体中に火傷を負った翔がたおれていた。

 

 

「遊海先生…痛いよ…!」

 

「『ディアンケト』よ傷を癒せ!…何があった…!」

俺は翔の傷を癒やしながら事情を聞く…

 

 

「お兄さんと電話して…食堂に行こうとしたら黒いローブの人にデュエルを挑まれて…負けたらデュエルディスクがビビビッて…」

翔のディスクを見ると何かを繋がれたコードが残っていた…これは…!

 

「犯人は?」

 

「森の中に…!」

 

「わかった…十代!剣山!翔を保険室に!あとクロノス先生に連絡!侵入者だ!」

 

「わかった!先生は!」

 

「犯人を追う!!お前達はついてくるな!」

俺は走り出す…絶対に犯人を探し出す!!

 

 

 

 

 

 

「アヤカ!レーダー起動!怪しい人物を探し出せ!」

 

《了解…サーチ…、ヒット!この先の広場にいます!!》

 

「わかった!乗り込むぞ!!」

 

そして俺は暗い森を走り続け広場に到着する、すると…

 

 

 

 

ピシュン…!!

 

 

 

 

「ぐっ…これは…!」

 

『デュエルアンカーだ…逃さねぇぜ白波 遊海!』

広場に到着した俺は黒いコードに拘束される…デュエルアンカー、どちらかが負けるまで外れない決闘拘束具…

 

 

「お前は誰だ!翔を襲ったのも貴様か!!」

 

『ククク…そうだよ…!貴様をおびき出すためになぁ!!』

そう言ってその人物は現れた…痩せた頬、サングラス、黒い決闘盤、そしてアメリカ国旗を描いたバンダナ…原作王国編に登場した決闘者…バンデット・キースだった。

 

 

 

 

 

 

 

「お前は!キース・ハワード!何故ここに!!」

 

『へへへ…オレを知ってるとは嬉しいね!プロデュエリスト!』

 

「何が目的だ!」

 

『貴様を餌にあの憎たらしい遊戯と城之内を呼び出してもらうのさ…!そのためにオレは悪魔に魂を売ったんだ!』

キースの体から闇の気配があふれ出す…

 

「…やるしかないか!」

 

『さぁ!デュエルだ!』

 

 

 

 

 

 

 

       「『デュエル!!』」

 

 

 

キースLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドローだ!』

『カードを二枚伏せて、『メカ・ハンター』を召喚!』

緑色の機械兵が現れる ATK1850

 

『ターンエンド!』

キースLP4000

ハンター 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺は手札から『レッドスプリンター』を召喚!」

炎を纏ったから巻角の悪魔が現れる ATK1700

 

「『スプリンター』の効果!自分以外のモンスターがいない時!手札から『レッド・リゾネーター』を特殊召喚!」

音叉を持った炎の悪魔が現れる DEF200

 

「さらに『リゾネーター』が特殊召喚に成功した時!『メカハンター』を対象に効果発動!その攻撃力分ライフを回復する!」

遊海LP4000→5850

 

『そんな雑魚を出して何になる!』

 

「これから見せてやる!俺はレベル4の『スプリンター』にレベル2の『レッドリゾネーター』をチューニング!シンクロ召喚!『レッド・ワイバーン』!」

炎を纏った飛竜が現れる ATK2400

 

『シンクロ召喚だと!?なんだそれは!?』

 

「バトルだ!『ワイバーン』で『メカハンター』を攻撃!『ファイヤーブレス』!」

飛竜の炎弾が機械兵を焼き尽くす

『ぐおおぉ!』

キースLP4000→3450

 

『フハハハ!闇属性・機械族のモンスターが破壊された時!このモンスターを特殊召喚できる!出やがれ!「デスペラード・リボルバー・ドラゴン」!』

全身がリボルバー銃のようになった機械龍が現れた、その体は闇のオーラに包まれている ATK 2800

 

「なんだと!?そのモンスターは…!」

 

『そしてリバース罠「銃砲撃」!さらに「デスペラード」の効果!コイントスを3回する!』

ソリッドビジョンで三枚の金貨が現れる

 

『表』

『表』

『表』

 

『3回とも表だ!効果で『ワイバーン』を破壊する!さらに「銃砲撃」の効果!お前に500ダメージを与える!』

 

「ただではやられるか!『ワイバーン』の効果!自分より攻撃力の高いモンスターを破壊する!『レッドデストラクション』!」

 

リボルバー銃がレッドワイバーンに当たると同時に火球が放たれ機械龍を破壊する、しかし爆炎の中から2発の銃弾が放たれ一つはは手札の『バイスドラゴン』を、一つは遊海に直撃する。

 

「ガッ…ぐぅ…!」

遊海LP5850→5350

 

「(痛てぇ…!!闇のゲームか…!)」

 

『チッ!「デスペラード」の効果でカードをドロー!さらにデッキから「リボルバードラゴン」を手札に加える!さらにリバースカード!「時の機械ータイムマシーンー」を発動!蘇りやがれ「デスペラード」!』

機械龍が再び現れる ATK2800

 

「ハア…ハア…カードを二枚伏せてターンエンド…!」

遊海LP5350

伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『手札から「融合」を発動!手札の「ブローバックドラゴン」と「リボルバードラゴン」を融合!出やがれ!「ガトリング・ドラゴン」!』

全身にガトリングを装備した機械龍が現れた ATK2600

 

 

『バトルだ!いけ!「デスペラード」!「ハイパーガン・キャノン」!』

リボルバー銃の連撃が遊海を撃ち抜く

 

「ぐああぁぁあ!!」

遊海LP5350→2550

 

 

『これで終わりだ!「ガトリングドラゴン」!やれ!「ガトリングショット」!』

ガトリングの連射が掃射され周囲が煙に包まれる

 

 

『ハハハ…これで…!』

 

 

 

 

「それは…どうかな?」

 

『何…!?』

 

煙が晴れるとボロボロの遊海と守備表示のレッドワイバーン・レッドリゾネーターがいた

 

DEF2000

 

DEF200

 

「リバースカード…『リジェクト・リボーン』…、直接攻撃を無効にし…シンクロモンスターとチューナーを効果無効で特殊召喚した…」

 

『なら…そのモンスターを壊せばいい!「ガトリングドラゴン」の効果!コイントス3回!』

 

『裏』

『裏』

『表』

 

「チッ!運のいい奴め…『ワイバーン』を破壊し『銃砲撃』で500ダメージを喰らいな!!」

ガトリングが回転しワイバーンと遊海に弾が直撃する

 

「があああ!!」

遊海LP2550→2050

 

『ターンエンド!命拾いしたな…!』

キースLP3450

デスペラード ガトリング 銃砲撃 手札2

 

 

 

 

 

 

 

「お前…どうしてそんな強さを…!」

ペガサスに負けたキースはどん底まで落ちきり、平気でイカサマを使う決闘者になっていたはず…しかし今はイカサマをしていない…何故だ…?

 

 

 

 

 

『フフフ…オレはイカサマを使わずとも強くなったのさ!悪魔のおかげでな!!』

キースの後ろに闇が集まりヤギの頭骨のようなモノが現れる

 

「貴様…まさか…!!」

 

【そうだ…久しいな白波 遊海…!】

悪魔がキースの口を借りて喋りだす…キースの意識は無いようだ

 

「貴様…ダークネスか…!」

 

【そうだ!やっと貴様を倒し得る決闘者を使えるまで力を回復したからな…!この場で貴様を葬る!あの時の雪辱はらさせてもらうぞ…!】

 

「くっ…やられてたまるかよ…!」

 

『さぁ…ラストターンだ!カードを引け!』

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

 

カンコーン!

 

「いくぜ!逆転の用意はととのった!」

 

【なんだと!?】

 

「リバース罠『シンクロコール』を発動!墓地から『ワイバーン』を効果を無効にし特殊召喚し自分フィールドのモンスターとシンクロ召喚を行なう!蘇れ『レッドワイバーン』!」

炎の飛竜が三度現れる ATK2400

 

「レベル6の『ワイバーン』にレベル2の『レッドリゾネーター』をチューニング!漆黒の闇を裂き天地を焼き尽くす孤高の絶対なる王者よ!!万物を睥睨しその猛威を振るえ!!シンクロ召喚!!『炎魔竜 レッド・デーモン』!」

決闘竜の覇王たる悪魔竜が現れる ATK3000

 

 

 

『ぐっ…攻撃力3000…しかしバトルフェイズに入れば「デスペラード」の効果で…!』

 

 

「まだだ!手札から『チェーン・リゾネーター』を召喚!」

チェーンを背負った悪魔が現れる ATK100

 

『攻撃力100だと…?』

 

「『チェーン』の効果!場にシンクロモンスターがいる時にデッキから『ダークリゾネーター』を特殊召喚!」

チェーンリゾネーターから鎖が伸びデッキからさらなる悪魔を呼び出した ATK1300

 

「いくぞ!俺はレベル8の『レッドデーモン』にレベル3『ダークリゾネーター』とレベル1『チェーンリゾネーター』をダブルチューニング!!」

リゾネーター達が炎の輪となりレッドデーモンを包む

 

『なんだと…なんだそれは!!』

 

「孤高の絶対破壊神よ!!神域より舞い降り終焉をもたらせ!!『炎魔竜王 レッド・デーモン・カラミティ』!」

災厄の名を冠する竜王が炎と共に轟臨する ATK4000

 

【『攻撃力4000のドラゴンだと!!?』】

 

「『カラミティ』の効果発動!このターンお前はフィールド上で発動する効果を発動できない!」

 

『何!?』

 

「バトル!『カラミティ』で『デスペラード』を攻撃!『真紅の絶対破壊(クリムゾン・アブソリュート・ブレイク)』!!」

カラミティの腕に溜まったエネルギーがデスペラードに叩きつけられる

【『グアアアァァ!!』】

 

キースLP3450→2250

 

『しかしまだ『ガトリングドラゴン』が残っている!!次のターンで!!』

 

「次のターンは無い!」

 

【ナニッ!?】

 

「『カラミティ』は破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!!ダークネスを滅せよ『地獄の災厄炎弾(ヘル・カラミティ・メテオ)』!!」

大量の隕石がキースに降りそそいだ…

 

【『ソンナ…馬鹿なぁぁぁ!?』】

 

キースLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

「ハア…ハア…流石、元アメリカチャンピオン…危なかった…」

 

キースから闇の気配が抜けていく…

 

「遊海先生〜!大丈夫か〜!」

 

「遊海さん!ボロボロに…いったい何が…!」

十代と翠が駆け寄ってくる

 

「ああ、ちょっとな…」

 

 

 

『このまま…終われる…か…!喰ら…え!!』

倒れ伏したキースが黒い銃身を遊海に向ける

 

《マスター!危な…!》

 

「えっ…」

 

 

 

パァーン

 

 

 

 

『悪魔よ…契約ははたしたぜ…ぐっ…!』

 

 

 

 

 

「遊海さん…?」

 

「ぐっ…あ……?」

背中が…胸が…熱い…撃たれた…のか…?

「ミ…リ…?」バタッ

 

「遊海さん!!」

 

「遊海先生!!?」

 

気が遠くなっていく…俺…痛いの…嫌いだって…言ってるのに…

 

 

「遊海さん!しっかりして…!血が…!?」

 

「…ド…リ…丈…夫…おれ…じみ…だか…ゴフッ…!」

 

「遊海先生!?」

 

「十代君!早く担架と医療班…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジジ…

 

「やめるんだ●●!!闇の力に飲まれてはいけない!」

 

「●●!まだ間に合う!儀式を中止しろ!今ならまだ…!」

 

「先生…吹雪、俺は絆を失うのが…人に忘れられるのが怖いんだ…」

 

「それは皆同じだ!だから人は絆を深めて…!」

 

「失う事が怖いなら…忘れられるなら…俺の方から忘れてやる!!」

 

「●●!やめるんだ!!」

 

「…さよなら、先生…吹雪…亮…!」

 

 

「「うわあああ〜!!?」」

 

 

 

《マスター!!今…!》

 

「ぐっ…●●…すまない…俺は…!」

 

 

 

《「うわああ…!?」》

 

 

 

 

 

ジジ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆう…さん…!

 

誰か…呼んでる…

 

遊海先生!!

 

誰だ…?

 

「遊海さん!!」

 

…翠…

 

 

 

「ぐっ…あ…ミドリ…?」

 

「遊海さん!!」

ここは…病室か…何回お世話になるんだ…俺は…

 

「ゴメンな…いつも心配かけて…!」

 

「もう…遊海さんのバ…カ…」

 

「翠!?うぐっ…!?」

翠は気絶してしまう…

 

「翠さん!…よかった寝ちゃったんだ…一晩中看病してたから…」

翠を支えたのは十代だった、彼も目の下に隈ができている…

 

「十代…何が…あった…?」  

 

「ああ…それが…」

 

十代によると翔を保険室に運んだあと、翠と一緒に俺を探したらしい。

そして爆発があった場所に行くとボロボロの俺と倒れる不審者を発見、俺が翠達の所に行こうとしたら破裂音の後に俺が倒れたらしい。

そして駆けつけた剣山やクロノス先生と俺をアカデミアの手術室に運んだとの事だ。

 

 

「十代…不審者…キースは…」

 

「あの人は本土に運ばれたよ…体がボロボロなんだって…」

 

「そうか…ならよかった…」

 

「…なぁ先生…一つ聞いていいか…?」

 

「どうした?十代?」

 

「先生っていったい…何なんだ…?」

 

「前に説明しただろう…レッド寮の寮長であり、プロ決闘者であり異世界からの転生者、それが俺だ…」

 

「先生…まだ何か隠してないか?」

 

「根拠は?」

 

「…傷の治りが早すぎる…俺はお医者さんじゃないけど…先生の治り方は異常じゃないか…?」

 

「…やはりお前の直感はすごいよ…十代…」

 

「えっ…!」

 

「包丁を取ってくれ…」

 

「ああ…何をするんだ…?」

 

「…ツッ!!」

遊海は指を切り裂いた

「先生!何して…!」

 

「見てろ…十代…!」

 

「えっ…なっ!?」

十代の目の前で傷が塞がり癒えていく…

 

「これは…」

 

「不死身…それが俺と翠への祝福であり呪い…これで最後だ十代…皆には内緒だぞ?」

 

「あ…ああ…」コクコク

十代は縦に首を振るしか無かった…

 

 

 

 

 

 

「アヤカ…いるか…?」

 

《はい…マスター、今回はすいませんでした…彼の動きに早く気づければ…》

 

「いや…大丈夫だ…痛いけど治るから…、それより…」

 

《はい…》 

 

「特待生寮の事件の時…()()()()()()()()()()()()()()

 

《はい…確かプロリーグの懇親会に行っていたような…?》

 

「そうか…ならいいや…少し休む…」

 

《はい、マスター…お大事に…》

 

 

 

 

 

 

昏倒する中で見たビジョン…あれは…いつだ…?

 



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十代の異変〜光の影〜

【さぁ!やって参りましたプロリーグ!今日の対戦は…】

 

キースの襲撃から一週間、俺は再びプロリーグの試合に出ている…キズは治ったけど血を流し過ぎたのかたまに目眩がする…

 

【赤コーナー!伝説の決闘者!『赤帽子』の白波 遊海!!】

 

「「「ウワァァ!」」」

 

【青コーナー!IQ200の天才!しかしその実、終身刑のカード犯罪者!ランキング2位!ドクターコレクター!!】

 

「うおおおお!!」

拘束具を力づくで引きちぎり、スキンヘッドの大男が現れる

 

 

 

「久しぶりですねミスターコレクター?」

 

「ああ!白波!今回の勝ちはワシが貰うぞ!」

 

「負けませんよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

【それでは…デュエルスタート!!】

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コレクターLP4000

遊海LP4000

 

「ワシのターン!ドロー!」

「手札から『次元の裂け目』を発動!これによりお互いの墓地にいくモンスターは全て除外される!」

コレクターの背後に紫の切れ目が現れる

 

「そして『天使の施し』を発動!3枚引いて二枚捨てる…手札の『コスモクイーン』と『白魔導師ピケル』を除外!」

「さらに手札から『魔法石の採掘』を発動!手札の『マジシャンズ・ヴァルキュリア』2体を除外し『天使の施し』を手札に戻してそのまま発動!引いた『黒魔導師クラン』と『ブリザード・プリンセス』を除外!」

「そして魔法カード『次元融合』を発動!2000ライフを払いお互いに除外されているモンスターを可能な限り召喚する!来い!『クラン』!『ピケル』!『コスモクイーン』!そして2体の『マジシャンズ・ヴァルキリア』!!」

コレクターLP4000→2000

巨大な魔法使いの女王、白と黒の魔導師の少女、そしてBMGを意識した姿の2体の魔法使いが現れる

 

コスモ ATK2900

 

クラン ATK1200

 

ピケル ATK1200

 

MGV ATK 1600 1600

 

 

…疑似ペンデュラム召喚かよ…

 

 

「さらに手札から魔法カード『マジックブラスト』!フィールドにいる魔法使い族×200ダメージ…つまり1000ダメージを相手に与える!」

魔力弾が遊海に直撃する

「ぐおっ!?イタタ…」 

 

遊海LP4000→3000

 

「カードを伏せてターンエンドだ!」

コレクターLP2000

クラン ヴァルキュリア ヴァルキュリア コスモ ピケル 伏せ1 裂け目 手札2

 

 

 

 

 

 

【コレクター選手「ヴァルキリア」によるロックを初ターンで完成させた〜!遊海選手大ピーンチ!?】

 

「どうだ白波!これがワシの作った魔法使いロックデッキだ!これは超えられまい!」

 

「さぁ、どうでしょうか!!」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『汎神の帝王』を発動!手札の『真源の帝王』を捨てて2ドロー!」

 

「さらに墓地の『汎神』を除外し効果発動!」

 

「なんと!墓地から魔法とは…!?」

 

「デッキから『帝王』魔法・罠カードを3枚選び、相手の選んだ一枚を手札に加える!残りはデッキに戻す!」

 

選択

進撃

開岩

烈旋

 

「『烈旋』はいつも痛い目を見るから…『開岩』だ!」

 

「『開岩』を手札に加え、そのまま発動!さらに『帝王の深怨』を発動!手札の『邪帝ガイウス』を公開し、デッキから『進撃の帝王』を手札に加え、そのまま発動!」

 

【遊海選手!次々と魔法カードを発動していく!!さぁロックは破れるのか!】

 

「そして手札から『冥帝従騎エイドス』を召喚!このモンスターが召喚に成功した時、追加でアドバンス召喚ができる!」

ATK 800

 

「『エイドス』を生け贄にして現われろ!『邪帝ガイウス』!『エイドス』は『裂け目』の効果で除外される!」

黒い鎧の帝王が現れる ATK2400

 

「さらに『ガイウス』効果!闇属性の『コスモクイーン』を除外し1000ダメージを与える!さらに『開岩』の効果でデッキの攻守2800/1000のモンスターを手札に加える!」

 

「リバースカード!『拷問車輪』…(ビビーッ!!)何だ!?エラー音!?」

 

「『進撃の帝王』の効果!このカードがある限り生け贄召喚したモンスターは効果の対象にならず破壊されない!」

ガイウスの闇がコスモクイーンを飲み込み爆発する

「うおおぉぉ!!?」

 

コレクターLP  2000→1000

 

「カードを伏せてターンエンド!」

遊海LP3000

ガイウス 伏せ1 進撃 開岩 手札3

 

 

 

 

 

【遊海選手、ロックは解除できませんでしたが最大の攻撃力の「コスモクイーン」を除去した〜!さぁ勝負はわからなくなりました!】

 

 

「うぬぬ…ワシの守護女神を…よくも…!」

《落ち着いてマスター…大丈夫よ…》

 

「悪い事したかな…(というか精霊憑いてるし…本人は気付いてないかな…?)」

 

 

 

 

 

「いくぞ!ワシのターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに『クラン』と『ピケル』の効果を発動!お前に300ダメージを与え、ワシは1600回復する!」

《てぇや!》

「アイタッ!?」

クランが魔法を放とうとしたが杖がすっぽ抜け俺に直撃する…ドジッ子かい!

 

 

遊海LP3000→2700

 

コレクターLP1000→2600

 

 

 

「そして手札から装備魔法『D・D・R』を発動!手札の『死者転生』を捨てて除外されている『コスモクイーン』を特殊召喚!」

再び宇宙を統べる女王が現れる ATK2900

 

 

「バトル!『コスモクイーン』で『ガイウス』を攻撃!『コスモマジック』!」

女王が力を溜め始める…

 

「その時リバース罠『連撃の帝王』を発動!効果により『ガイウス』を生け贄に…進化せよ『怨邪帝ガイウス』!」

ガイウスが闇に包まれ進化を遂げた ATK2800

 

「なんと!?」

 

「『ガイウス』の効果!『コスモクイーン』と…」

 

「……!!!」ゴゴゴ…!

 

「(無言の圧力が怖い…!)『ヴァルキリア』2体を除外し1000ダメージを与える!さらに『開岩』の効果でモンスターを手札に!」

 

ガイウスが2体のモンスターをデコピンでフィールドから追い出す…意外に紳士である

 

コレクターLP2600→1600

 

「バトル続行!『クイーン』で『ガイウス』を攻撃!」

女王の魔法がガイウスを吹き飛ばす 

「ぐうっ!?」

遊海LP2700→2600

 

「『ピケル』と『クラン』でダイレクトアタック!」

《てやっ!!》

《てい!あっ…!》

 

「アイタタタタタ!?ガッ…!?」

 

ピケルの魔法でぬいぐるみに押しつぶされ、顔にクランの杖が直撃する…やっぱりドジッ子だろクラン…

《しゅん…》

 

遊海LP2600→200

 

何か落ち込んでるし…ドンマイ…

 

「これでターンエンド!」

コレクターLP1600

コスモ ピケル クラン 伏車輪 手札1

 

【遊海選手追い詰められた…!巻き返せるか!!】

 

「ちょっとピンチだな…いけるか…?」

 

「フハハ!勝ちはもらったぞ白波!」

《マスター、油断しないで!》

 

 

 

「いくぜ…ドロー!…!来た!」

「手札からフィールド魔法『真帝王領域』を発動!」

フィールドがギリシャ調の神殿に変わる

 

「そしてコレクターの場に『家臣トークン』を召喚し『雷帝家臣ミスラ』を特殊召喚!」

コレクターの場に小さい人形が現れる DEF1000

 

そして両手に雷を纏った女性が現れる DEF1000

 

「そして『領域』の効果!手札の『冥帝エレボス』のレベルを2つ下げ…『ミスラ』を生け贄に現われろ冥界の帝王!『エレボス』!」

巨大な冥界を統べる帝王が現れる ATK2800

 

「『エレボス』の効果!デッキから帝王魔法・罠を墓地に送り、『コスモクイーン』をデッキに戻す!さらに『開岩』でモンスターを手札に加える!」

 

墓地送り

再臨

領域

 

エレボスがマントを翻した風でコスモクイーンが吹き飛ぶ…アンタ…いつもとエフェクト違わないかい…?

《キノセイダ…》

喋った!?

 

「オホン…バトル!『エレボス』で『クラン』を攻撃!『冥帝崩壊波』!さらに生け贄召喚したモンスターがモンスターと戦闘する時『領域』の効果で攻撃力800アップ!」

ATK2800→3600

《…!》チョン

《イタイ〜!マスター助けて〜!》

エレボスが指でクランを小突いた…ノーコメントで…

 

「ぐっ…今回も負けか…」

 

コレクターLP0

 

遊海 WIN!

 

 

【勝者遊海選手!!見事な逆転勝利です!】

 

「「ワアアア!!」」

 

 

 

 

 

「負けたよ白波…しかし次は勝つ!」

《その意気です!マスター!》

 

「ああ、またデュエルしましょう!ミスターコレクター!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『お疲れ様です遊海さん!見事な逆転でした!』

 

「ありがとう…Mr.スマイル…」

 

『次の試合はまた一週間後、相手はまだ決まっていません…遊海さん?顔色が優れませんが…大丈夫ですか…?』

 

「ええ…少し貧血気味でね…もうアカデミアに帰るよ…またよろしくお願いします…!」

 

『そうですか…しっかり休んでくださいね!では!』

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は会場の廊下を歩く…怪我は早く治るんだけど…血はどうにも…

「「アイタッ!?」」

 

角を曲がったところで誰かとぶつかった…前方不注意だな…

「すいません!大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫だ!こっちこそ…遊海!!」

 

「城之内さん!?」

ぶつかった相手はなんと城之内さんだった…まさかこんなところで会うなんて!

 

「久しぶりじゃねぇか!翠は元気か?」

 

「ええ!アカデミアで調理をやってます!舞さんは?」

 

「それが…これでな…!」

城之内さんはお腹を撫でる仕草をする

 

「おめでとうございます!性別は…?」

 

「あはは、まだわからねぇんだ…しかし楽しみだ!」

 

「そうですか…そういえばどうしてここに?」

 

「これからデュエルなんだよ!食い扶持稼がなきゃな!」

 

城之内 克也、プロランキング7位『反骨の賭博師』

ギャンブル性の高いカードを使うから付いた名前だ

 

「それなら、そろそろ時間じゃ…」

 

「ヤベッ…!またな遊海!」

 

城之内さんはドタバタと走っていった…変わらないなあの人も…、さぁ帰ろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ…船旅もたまにはいいな…」

《そうですねマスター!たまには二人きりも良いものでした》

俺達は翌日アカデミアに着いた、トフェニの背中を借りても良かったが貧血で落ちそうだったから船で帰ってきたのだ

 

「ミスター遊海、お待ちしていました…!」

船を降りるとエドが沈痛な顔で待っていた…どうしたんだ…?

 

「やぁ、おはようエド、どうしたんだ?わざわざ俺を出迎えるなんて…?」

 

「遊海さん…すいません!ボクは…十代にとんでもない事を…!!」

 

「何があった…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコン

 

「はい…」

 

「十代!…大丈夫か…?」

 

「遊海先生…カードが…カードの絵柄が見えないんだ…!」

十代の手元にはハネクリボーのカードがあった、十代の横には精霊のハネクリボーもいるが十代には見えていないようだ…

 

「エドから話は聞いた…彼とのデュエルで負けたそうだな?」

 

「はい…エドのヒーローと俺のヒーロー、どちらが強いか比べようと決闘したんです…それで…」

 

「負けたらカードの絵柄が見えなくなった…と」

 

「そうなんだ!どうしてなんだよ…!」

 

「…十代、頭を借りるぞ?」

 

「はい…」

俺は十代の頭を触る

「アヤカ…どうだ…?」

 

《スキャン…、十代さんの精神に何か邪悪なエネルギーが侵入しています…ここからは排除できません…内側から対処しないと…》

 

「そうか…」

 

「先生…?どうなんだ…」

 

「十代、アイツに…エドに何を聞いた?」

 

「エドの父ちゃんが…襲われて目覚めない…犯人を探すためにプロになって探してるって…」

 

「そうか…十代、お前の中に邪悪な力が入り込んでる、俺にはどうする事もできない…お前が自分でそれを追い出すんだ…!」

 

「でも…どうやって…」

 

「そうだな…船旅でもしてみたらどうだ?」

 

「えっ…?」

 

「大きな海に出れば何かを教えてくれるかもしれないぞ?もちろん!みんなに伝えてからな!」

 

「先生…ありがとう…」

 

「十代…大丈夫だ!ハネクリボーはいつもお前と一緒にいる!一度自分を見つめ直すんだ…」

 

《クリク〜…》

 

「ハネクリボー…十代を頼むぞ?」

 

《クリクリクー!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バタン

 

「…斎王…許さんぞ…!!」ズン

遊海は凄まじい殺気を放つ…周囲の鳥が逃げていく…

 

「うわぁ!?なんだドン!?」

隣の部屋から剣山が飛び出してくる…驚かし過ぎたか…

 

「剣山?どうした?」

 

「寮長さん!なんかヤバイザウルス!すごい怪物が近くに!!」

 

「大丈夫だよ…なんでもないから…」

 

「そうザウルス…?気のせいかドン…」

 

 

 

 

そしてしばらくして十代は旅に出た、もちろん休学届けも出して皆にも伝えてだ…これで十代は彼らと出会うはず…後は…斎王をどれだけ封じられるか…、それ次第だ…

 

 

 



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伝説の再演〜熱き決闘者達〜

【さぁ…やって参りましたプロリーグ!!今日の一戦は伝説の決闘の再演です!】

 

【赤コーナー!伝説の決闘者!復帰し快進撃を続けるデュエリスト!ランキング5位!白波 遊海!】

 

「「「うおおぉぉ!!!」」」

 

 

 

 

 

【そして青コーナー…バトルシティベスト4!デュエリストランキング7位!『反骨の賭博師』…城之内 克也!】

 

「「わああああ!!」」

 

「いよっしゃ!やったるぜ!!」

 

「「頑張れ凡骨〜!!」」

 

「だれが凡骨だ!!」

 

 

まさか城之内さんが次の相手とは…

 

 

 

 

 

「遊海…こうして戦うのは久しぶりだな…!」

 

「ええ…今回も勝たせてもらいます!」

 

「それはこっちのセリフだ!お前に勝つぜ…遊海!」

 

 

【それではデュエル開始前にある方からビデオメッセージがあります!ご覧ください!】

 

巨大スクリーンに映像が流れる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フハハハハ!元気にしているか!凡骨!遊海!』

 

「「海馬!?/海馬社長!?」」

 

映像は海馬社長からだったのか…

 

『貴様らが久しぶりに対決すると聞いてこのメッセージを出させてもらった!!』

 

『初代バトルシティから約8年の時が流れた!今デュエルモンスターズは世界に広まり欠かせないモノになりつつある!その礎を刻んだのが遊戯とオレ…そして貴様達だ!』

 

『デュエルモンスターズの礎を築いた者同士のデュエル…観客いや!全世界が注目するデュエルだ!お互いに無様な戦いをするな!お前達の健闘を祈る!さらばだ!フハハハハ!』

 

海馬社長の高笑いと共に映像は終了した…

 

 

 

 

 

【以上!KC社・社長、そしてプロリーグ創設者の海馬 瀬人氏のメッセージでした!】

 

 

 

「海馬のヤロー相変わらずだな…」

 

「しょうがない…あれが海馬社長だ…」

 

 

 

【さぁ…改めてデュエルスタートです!】

 

 

 

       「「デュエル!!」」

 

 

 

 

 

 

遊海LP4000

城之内LP4000

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『トレード・イン』を発動!手札の『神龍の聖刻印』を墓地に送り2ドロー!」

 

「へっ…聖刻デッキか!懐かしいな!」

 

「ええ!やはり城之内さんとやるならこのデッキでしょう!」

 

「かかってきやがれ!」

 

「いきます!手札から『聖刻龍ードラゴンゲイブ』を召喚!」

オレンジ色の龍が現れる ATK1800

「そして手札を3枚伏せてターンエンド!」

遊海LP4000

ゲイブ 伏せ3 手札2

 

 

 

【遊海選手!伝説の聖刻デッキを使ってきた!これは面白いデュエルになりそうだ!!】

 

 

 

 

 

「いくぜ!オレのターン!ドロー!」

「手札から永続魔法『デンジャラスマシン TYPEー6』を発動!さらに『ロケット戦士』を召喚!」

緑色の小さな機械戦士が現れる ATK1500

 

「バトルだ!『ロケット戦士』で『ドラゴンゲイブ』を攻撃!そして『ロケット戦士』の効果!このカードは自分ターンの戦闘では破壊されず、ダメージも0になる!いけ!『インビジブル・アタック』!」

 

ロケット戦士が変形しロケットモードで突撃する、しかしドラゴンゲイブはそれを受け止める…

 

「さらに!速攻魔法『天使のサイコロ』!ダイスロール!」

 

出目は…5!

 

「これで攻撃力が500アップ!ゲイブを倒したぜ!」

 

「させません!リバース罠『抹殺の聖刻印』!『ゲイブ』を生け贄に『ロケット戦士』を除外する!」

 

「しまった!?」

ゲイブが光の粒子になりロケット戦士を異次元に送りつける

 

「さらに『ゲイブ』の効果でデッキの『神龍印』を特殊召喚!」

 

フィールドに巨大な丸い石が現れる DEF 0

 

「チッ!凌がれたか…カードを二枚伏せてターンエンド!」

 

「エンドフェイズにリバース罠『復活の聖刻印』!効果で『ウシルドラゴン』をデッキから墓地へ!」

城之内LP4000

伏せ2 デンジャラスマシン 手札1

 

 

 

 

【城之内選手攻めきれませんでした!しかし遊海選手の場は守備力0のモンスターのみ!チャンスはあるぞ〜!】

 

 

 

 

 

「チクショ〜、先制ダメージといきたかったが…」

 

「甘いですよ城之内さん!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『竜の霊廟』を発動!デッキから『真紅眼の黒竜』と『龍王の聖刻印』を墓地に送る!」

 

「そして手札から魔法カード『銀龍の轟咆』を発動!墓地の『真紅眼』を特殊召喚!」

 

青眼と対を成す赤目の黒竜が現れる ATK2400

 

「何!?」

 

「さらに手札から『神龍印』を生け贄に『シユウドラゴン』を召喚!」

白い体の龍が現れる ATK2200

 

「さらにリバースカード『貪欲な瓶』を発動!墓地の『トレード・イン』『ゲイブ』『抹殺』『轟咆』『神龍印』を戻して1ドロー!」

 

「バトル!『レッドアイズ』でダイレクトアタック!『黒炎弾』!」

 

「リバースカード!『スケープゴート』!羊トークンを4体守備表示で召喚!」

小さな羊が4匹現れる DEF0 ×4

 

「なら『レッドアイズ』と『シユウ』でトークンを攻撃!」

黒い炎と魔法でトークンが2体破壊される

 

「ターンエンド!」

遊海LP4000

レッドアイズ シユウ 復活印 手札1

 

 

 

 

 

 

【城之内選手、遊海選手の猛攻を防いだ!】

 

「やりますね城之内さん!」

 

「当たり前だ!いつまでも凡骨なんて言わせないぜ!」

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに『デンジャラスマシン』の効果発動!ダイスロール!」

 

出目は…3!

 

「効果で1ドロー!さらに『強欲な壺』!2ドロー!」

 

【城之内選手!凄まじいドロー加速だ!】

 

 

「遊海!オレのとっておき!見せてやるぜ!魔法カード『エネミーコントローラー』!羊トークンを生け贄に効果発動!お前の『レッドアイズ』を借りるぜ!←→AB!実行!」

 

コントローラーからコードが伸びレッドアイズに接続される、そしてコントロールが城之内に移る

 

「なんだって!?」

 

「そして手札から『漆黒の豹戦士 パンサーウォーリアー』を召喚!」

黒い獣戦士が現れる ATK2000

 

「そして…頼むぜ!魔法カード!『ヘルモスの爪』!発動!!」

 

城之内がカードを掲げると赤い短い角が鼻先から生えた龍が現れる

 

 

 

 

「そのカードは…失われたカードの筈…!どうして!?」

 

ティマイオス・クリティウス・ヘルモス…精霊界を守護する伝説の龍、ドーマとの戦いの後、役目を果たして消滅したが…

 

「へへっ!オレのスポンサーはだーれだ?」 

 

「I2社…ペガサス会長…まさか!?」

 

「そうさ!ペガサスに頼んで新しく復活させて貰ったんだ!…まぁ、あの時みたいな万能性はないけど、充分だ!ついでに海馬と遊戯も持ってるぜ!」

 

「なん…だと…!?」

ペガサスさん…なんちゅう事を…!

 

「さぁいくぜ!『ヘルモス』よ!その力を黒き竜と一つにし、最強の剣となれ!融合召喚!『真紅眼の黒竜剣』!!」

ヘルモスとレッドアイズが一つになり最強の剣が現れるATK 2400

 

 

【なんと!?レッドアイズが剣に変化したぞ〜!?】

 

「いくぜ!『黒竜剣』を『パンサーウォーリアー』に装備!効果により攻撃力が1000アップ!さらにお互いのフィールド・墓地のドラゴン族の数×500アップする!よって2500アップだ!」

 

ATK2000→3000→5500

 

「攻撃力5500…!!」

 

「バトル!『パンサーウォーリアー』で『シユウドラゴン』を攻撃!『黒豹黒竜斬』!!」

 

城之内の場の羊トークンが消滅しパンサーウォーリアーがシユウドラゴンを消し飛ばした!

 

「うおあああ…!!?」

 

遊海LP4000→700

 

「へへっ!どうだ!オレはターンエンドだ!」

 

城之内LP4000

パンサー(黒竜剣) デンジャラス 手札0 

 

 

 

【城之内選手!遊海選手を追い詰めた〜!フィールドには攻撃力5500のモンスター!遊海選手、絶体絶命〜!!】

 

 

 

 

 

 

「どうだ!!」

 

「流石の運命力…すごいです城之内さん!」

 

「へっ!今回はもらったぜ!遊海!!」

 

「でも…俺は諦めない!!」

 

 

 

 

 

「俺のターン!…ドロー!」

「いきます!魔法カード!『星呼びの天儀台』!手札の星6『トフェニドラゴン』をデッキの一番下に戻し2枚ドロー!…城之内さん、最強の武器にも必ず弱点はあります…最強の剣…、その弱点はこれだ!魔法カード『龍の鏡』!」

 

「なんだ…それ…?」

 

「このカードの効果により、墓地のドラゴン族を除外し!融合召喚を行なう!俺は墓地の『神龍印』『セテク』『シユウ』『レッドアイズ』『龍王印』を除外し融合!現われろ!『F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)』!!」

 

鏡に次々とドラゴン達が飛び込む、そして鏡の中から5本の首を持つ巨龍が現れる ATK5000

 

 

「『FGD』だと!?」

 

「そして墓地にドラゴン族がいなくなった事で『パンサーウォーリアー』の攻撃力も下がる!」

 

「しまった!?」

 

ATK5500→3500

 

「バトル!『FGD』で『パンサーウォーリアー』を攻撃!『サウザンド・パニッシャー』!」

巨龍の吐息が豹戦士を吹き飛ばす

 

「うわああああ!」

城之内LP4000→2500

 

「そして『復活印』の効果!除外されている『龍王印』を墓地に戻す!ターンエンド!」

遊海LP700

FGD 復活印 手札1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【遊海選手!デュエルモンスターズ界最強の攻撃力を持つFGDを召喚し、モンスターを破壊しました!】

 

 

「まさか、そのドラゴンを使って来るなんてな…!」

 

「勝負はこれからです!」

 

 

 

 

 

 

「いくぜ…オレのターン!ドロー!…!?(このカードは…!)」

「スタンバイフェイズに『デンジャラスマシン』の効果!ダイスロール!」

 

出目は…5!

 

「よっしゃ!『FGD』撃破だ!」

スロットマシンから火の玉が射出され巨大龍が爆散する

 

「くっ…!効果耐性は無いんだよな…!」

 

「そして手札はモンスターじゃねぇ…しかしオレはこのカードを発動する!魔法カード!『友情ーYUーJYOー』!」

 

「そのカードは…!」

 

「遊海!オレはお前に握手を申し込む!…受けてくれるよな?」

 

「ええ!」

 

 

遊海と城之内は歩み寄り固く握手を交わす

 

「そして握手したプレイヤーのライフはお互いのライフを足して割った数値になる!」

 

遊海LP700→1600

城之内LP2500→1600

 

 

【おっと!城之内選手?遊海選手とのライフ差を無くしたぞ〜?いったいどうしたんだ〜?】

 

 

 

「城之内さん…それを使わない方が有利だったんじゃ…?」

 

「へっ!遊海!オレ達のデュエルはこれからだ!そのためにはイーブンじゃなくちゃな!」

 

「城之内さん…」

 

 

【これぞ漢気!男の友情です!】

 

 

 

 

「いいぞ〜!城之内頑張れ〜!!」

 

「白波選手!頑張って〜!!」

 

「二人とも負けるな〜!」

 

客席から歓声が上がる

 

 

 

「さぁ!デュエルを再開するぜ!オレはこのままターンエンド!」

 

城之内LP1600

デンジャラスマシン 手札0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いきます!ドロー!」

「『復活印』の効果で『神龍印』を墓地に戻して、魔法カード『招集の聖刻印』を発動!デッキから『ドラゴンゲイブ』を手札に加え…モンスターをセット!」

 

「ターンエンド!」

遊海LP1600

手札1

 

【遊海選手!守備を固めターンを譲る!それが彼なりのお返しか!】

 

「さぁ…城之内さんのターンです!」

 

「サンキューな遊海!でもそれが命取りだ!」

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!!ドロー!」

「『デンジャラスマシン』効果!」

 

出目は…6!

 

ボンッ!

 

「出目が6の時『デンジャラスマシン』は破壊される!そしていくぜ!『運命の宝札』!発動!サイコロの出目だけドローし、そのあとデッキから同じ枚数除外する!いくぜ…ダイスロール!!」

 

出目は…4!

 

「4枚ドロー!そして4枚除外…キター!!」

 

除外

悪魔サイコロ

サイコショッカー

切り込み

ギャンブル

 

「いくぜ!オレは手札から儀式魔法『レッドアイズ・トランスマイグレーション』を発動!」

 

「チェーンして『復活印』の効果!『神龍印』をデッキから墓地へ送る!」

 

「手札の『真紅眼の黒竜』と『ランドスターの戦士』を生け贄に現われろ!『ロード・オブ・ザ・レッド』!うおぉぉ!だぁっ!」

 

城之内が赤い炎に包まれ…転生する、炎の中から現れるのは炎を纏いし熱き戦士の姿だった ATK2400

 

【なんと〜!?城之内選手がソリッドビジョンを纏い!モンスター化した〜!!?】

 

「城之内さん!その姿は…!」

 

『へへっ、どうだ遊海!カッコいいだろ?』

 

「…はい!!」

 

『いくぜ!オレで裏守備モンスターを攻撃!「城之内ボルケーノパンチ」!』

 

城之内が裏守備のゲイブを殴りつけ、破壊する!

 

「どんなもんだい!ターンエンドだ!」

城之内LP1600

レッド 手札0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【城之内選手!凄まじいです!さぁ遊海選手はどうするのか!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『銀龍の轟咆』を発動!」

 

『その瞬間!「ロード・レッド」の効果発動!「復活印」を破壊する!』

 

「かかりましたね!」

 

『なんだと!』

 

「復活印が破壊された時!墓地の聖刻モンスター『神龍印』を特殊召喚!さらに『轟咆』の効果でもう一体召喚!」

フィールドに巨石が並ぶ DEF0 ×2

 

『しまった!?』

 

「そして『神龍印』よ!その真の姿を開放せよ!」

瞬間、スタジアムに強風が吹き荒れる

 

【な…何が起きているんでしょう!?スタジアムが風に…うわぁ〜!?】

 

「おい!カメラがショートしたぞ!?」

 

『遊海…まさか!?』

 

「俺は2体のモンスターでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!光臨せよ『聖刻神龍エネアード』!!」

《ウオォォ!!》

赤い太陽の龍がフィールドに降臨する ATK3000

 

【なっ…何が起きたのでしょう??フィールドに赤い巨龍が現れました!!】

 

『おい…遊海…!それ使ったら…!?』

 

「大丈夫です!カメラには写ってませんから!いきますよ!『エネアード』!力を貸してくれ!!」

 

《グオォォ!!》

 

「うおぉぉ…!ハアッ!!」

遊海は精霊の力を纏いエネアードと一体化する、そして赤い光を纏う戦士が現れた。

 

『これで条件は同じです!』

 

『来い!遊海!!』

 

『バトル!俺で『ロード・レッド』を攻撃!『ソーラーナックル』!!』

 

『受けて立つ!おおおっ!!』

 

フィールドに向かい飛び出した二人は真ん中で激突する!

 

『『うおぉぉ!!!』』

拳がぶつかり…そして…!

 

『ぜりゃぁっ!!』

 

「ぐああぁッ!」

 

城之内LP1600→1000

 

城之内が吹き飛ばされ、鎧も消滅する

 

『ハア…ハア…ターンエンド!!』

遊海LP1600

エネアード 手札1

 

ターン終了と共にエネアードと遊海も分離する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【スゴイ…スゴイ戦いです!まさに漢と漢!魂と魂のぶつかりあい!この決着は…どうなるのか〜!】

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…やっぱりすげぇよ…遊海!」

 

「ゼェ…ゼェ…城之内さん…こそ…!」

 

「さぁ…決着をつけるぜ!」

 

「はい!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「来い!『時の魔術師』!」

体が時計になっている魔術師…城之内と遊戯の友情のカードが現れる ATK500

 

「遊海、コイツの効果は知ってるよな?」

 

「ええ…!」

 

「いくぜ!『タイムルーレット』!スタート!」

 

時の魔術師の効果…アタリなら相手フィールドのモンスターを全破壊、ハズレなら自分のモンスターを破壊し総攻撃力の半分のダメージ…結果は…!

 

 

 

 

 

チッ…

 

 

チッ…

 

チッ…

カチッ…

ボンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城之内LP1000→750

 

「ダメだったか…遊海!」

 

「俺のターン!『エネアード』で…ダイレクトアタック!」

太陽の輝きが城之内を飲み込み…

 

 

城之内LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

【デュエルエンド…!長い決闘を制したのは…白波 遊海!!】

 

 

パチッ…

 

パチパチッ…

 

「「「「うわぁぁぁぁ!!!」」」」

 

 

「城之内〜!カッコ良かったぞ〜!」

 

「スゴイ決闘だったわ!!」

 

「また戦ってくれ〜!」

 

 

 

 

 

 

「城之内さん、いい勝負でした…!」

 

「ああ…また負けちまったな…」

 

「でも見てくださいよ…お客さん達を…!」

 

 

 

「「「城之内!城之内!」」」

 

 

 

「「「白波っ!白波っ!」」」

 

 

 

 

「へへっ…すげぇ盛り上がりだ…」 

 

「また、デュエルしましょう!」

 

「ああ!次はアカデミアに乗りこんでやろうか?」

 

「ええ、翠が美味しいご飯を作って待ってますよ!」

 

「そうか!そりゃ楽しみだ!」

 

 

【この決闘は歴史に刻まれる決闘になりました!!私はこの決闘を忘れる事はないでしょう!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お疲れ様でした遊海様!』

 

「ありがとうMr.スマイル…」

 

遊海は決闘が終わり控え室に戻ってきた、スタジアムの熱狂は凄まじいものだった…

 

「次回の決闘予定は?」

 

『明日です』

 

「…ワンモアプリーズ?」

 

『明日です、先程の生中継を見たり…観客達から話を聞いた、たくさんのプロからデュエル依頼が…』

 

「…嘘だろ?」

 

 

 

 

 

その後…遊海は一月近くプロの試合を続ける事になったのだった…。

 



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修学旅行〜働き過ぎにご用心〜

…ここは…どこだ…おれはをなにをしてたんだっけ…?

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!目が覚めましたか!!」

 

「みどり…?あれ?…おれは…?」

 

「覚えてないんですか?ここは病院です!心配したんですから〜!」

 

「???」

 

『遊海様…申し訳ありませんでした…』

寝ているベッドの横からMr.スマイルが顔を出した、とても落ち込んだ顔をしている

 

「スマイル…なにがあったんだ…?」

 

『覚えていないのですか…?』

 

「なにも…しいていうなら…頭がいたい…」

 

『本当に申し訳ありません!!』

 

「?」

 

 

 

スマイルによるとプロリーグの試合中に俺がブッ倒れたらしい、急いで病院に運んだら『重度の過労』という事で緊急入院になったらしく…

 

 

原因は決闘のしすぎ、俺の記憶にある日付から二週間も経っていた。

 

戦績は一ヶ月で40試合(ワカメ〜城之内戦含む)35勝4敗中断1…らしい、なんかダイナソーとかインセクトとかデッキ破壊とかと戦った気がするけど…詳しく思い出せない…

 

『申し訳ありません…わたしがスケジュールを管理しなければならなかったのに…』

 

「いいんだよスマイル…おれが『くるものはこばむな』っていったみたいだし…」

 

「デュエルで過労死寸前って…『レベルスティーラー』じゃないんですから…」

 

「ハハハ…それはしゃれにならない…イタタタ…」

 

『?』

 

「スマイル…つぎのしあいは?」

 

「はい…倒れた一戦で依頼は全てこなしました、あとは現在ランキング1位のDDと戦うだけです、つまりは…タイトル戦ですね」

 

「かいさいじきは?」

 

『DDの決闘ペースでいうと…一晩月後くらいでしょうか…ついでに彼はいま20試合全勝です…強敵ですよ…!』

 

「ありがとう、わかってるよ…こんかいは…おれもほんきでやる…」

 

『遊海様…』

 

「そのまえにからだをしっかりやすめるか…あなたもやすみをとってください!むすこさんたちもさびしがってるでしょうし…」

 

『ありがとうございます、遊海様!…では!』

 

スマイルはそのまま去っていった…いつも苦労をかけて申し訳無いな…とおもう遊海なのであった

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…大丈夫ですか…?」

 

「あたまがはっきりしない…しこーのうりょくがかんぜんにおちてる…いまならトムにもまけるな…」

 

「遊海さん…流石にそれは…」

 

 

 

コココン

 

「は〜い、どうぞ!」

 

「よっ!久しぶりじゃの翠ちゃん!」

 

「双六さん!お久しぶりです!お元気でしたか?」

個室の扉を開けて現れたのは双六さんだった…そうか、童実野病院か…

 

「ああ、少し腰が痛いがすこぶる元気じゃよ!」

 

「今日はどうしてここに?」

 

「いやぁ遊海君が入院したと聞いて見舞いに来たのと…彼らを案内して来たんじゃよ!」

 

「かれら…?」

 

 

「遊海先生!大丈夫か!?」

 

「お見舞いに来たドン!」

 

「大丈夫ですか…?」

 

 

「十代…剣山…翔…?どうしてここに…?」

双六さんの後ろから現れたのはアカデミアにいるはずの三人だった…なんでいるんだ?

 

 

「遊海先生!僕達修学旅行が童実野町だったんッスよ!」

 

「それで出発前にプロリーグの試合を見てたら遊海先生が倒れるのをみたんだ!」

 

「それで町に着くなりすぐに見舞いに来たんだドン!」

 

「そうだったのか…すまないな、みてまわりたいところもあるだろうに…そういえばあすかとまんじょうめたちはどうした?いっしょじゃないのか…?」

 

「遊海先生…明日香達…なんか変なんだ…」

 

「なにっ…?」

 

「みんな斎王に洗脳されちゃったんだドン…」

 

「なんだと…!」

 

 

 

 

 

十代達によると俺がアカデミアを離れている間に斎王がアカデミアに編入…万丈目を手始めにブルー生の半分以上を洗脳し「光の結社」を結成、アカデミアの掌握に向けて動き出したらしい…

 

「さいおう…よくも…せいとたちを…!!」ゴゴゴ

 

「うわぁ!?遊海先生落ち着いてくれ!?」

 

「ひっ…!(スゴイ殺気だドン…!?)」

 

「あいつもまちにいるなら…おれが…!!イタタ!?」

 

「遊海さん!?」

 

「ぐっ…あたまが…!」

 

「先生!落ち着いてくれ!アイツら特に何もしてこないんだ!光の結社は俺が止める!だから先生は休んでいてくれ!」

 

「十代…わかった、おまえに…まかせるぞ…!」

 

「ああ!任せてくれ!」

 

「たのむぞ…そういえばおまえたちホテルはどこだ?」

 

「それが「光の結社」に占領されちゃって…」

 

「とまるばしょなしか…みどり、うちにとめてあげてくれ」

 

「遊海さん、いいんですか?」

 

「ああ…あんないしてやってくれ…」

 

「先生ありがとうだドン!」

 

「ありがとうッス!」

 

「いいんだよ…さぁ、りょこうをたのしんできなさい」

 

「「「はい!」」」

そして十代達は俺達の家に向かった…

 

 

 

 

「遊海君…」

 

「双六さん…すいません、おかまいできず…」

 

「いいんじゃよ…遊海君無理をするでないぞ…」

 

「はい…ありがとうございます…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いるんだろう…『ネオス』…?」

 

《初めまして…いや久しぶりだな遊海…》

 

十代達がいなくなったあと、遊海は虚空に話しかける。

すると白い体のヒーロー・ネオスが現れる

 

「ああ…さんげんまとのたたかいのときはすまなかった…」

 

《いいんだ、君をあれ以上…狂気に落とすわけにはいかなかったからな…》

 

「すまない…十代をたのむ…」

 

《ああ、任せてくれ「優しき闇」に選ばれた彼を守ってみせる…!》

 

「たのんだ…ぞ…」

 

そこまで話して遊海は意識を失った、相当疲れがたまっていたのだろう…

 

 

 

《マスター…》

 

《アヤカ、君のマスターは強い男だ、すぐに良くなるさ…》

 

《ネオス…、そうですね!ありがとうございます!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…寝てた…のか…」

再び目を覚ますと既に日が傾いていた、少し頭もはっきりしている…

 

「目が覚めたか、遊海…」

 

「海馬…社長…!?」

目を覚ますと病室の壁にもたれかかる形で椅子に座る海馬社長がいた。

 

「どうしてここに…!?社長の執務は…!」

 

「たわけ!そんなモノとっくに終わらせたわ!それよりも我が友であり、所属プロである貴様を気にするのが人だろうが!」

 

「海馬社長…」

 

「すまなかったな…プロリーグにはデュエルの連戦に対するルールを整備するように釘を刺しておいた、今は体を休めるがいい…人々を楽しませるデュエルで過労死するではないぞ…!」

 

「はい…反省します…」

 

「ではオレは帰るぞ、タイトル戦を楽しみにしている…!」 

 

「はい…!」

 

「それから…凡骨との決闘、見事であった!…さらばだ!」

 

 

海馬さんはそう言って去っていった…すいませんでした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜夜〜

 

「…アヤカ、気付いてるか?」

 

《はい…殺気を感じます…!》

 

「屋上に行こう…!あそこなら被害は最小限だ…!」

 

《はい…!》

 

 

 

 

 

 

〜屋上〜

 

 

「おい…誰かは知らないけど…出てこいよ…?」

 

『フフフ…流石にバレますか…流石は伝説の決闘者…!』

暗闇から姿を現したのは黒い服を着たロン毛の男だった…

 

『ワタシは闇丸、主の命に従い貴様を連れに来た…一緒に来てもらおうか…!』

 

「嫌だと言ったら?」

 

『力づくで連れていく…!』

デュエルディスクを構える

 

「問答無用か…体も辛いし…本気でいくぞ…」

 

 

 

 

 

 

 

       『「デュエル!!」』

 

 

 

 

 

闇丸LP4000

遊海LP4000

 

 

 

『ワタシのターン…ドロー』

『モンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド』

闇丸 LP4000

伏せモンスター 伏せ2 手札 3

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『天帝従騎イデア』を召喚!」

白い鎧の戦士が現れる ATK800

 

「『イデア』の効果で『冥帝従騎エイドス』を特殊召喚!」 

黒い鎧の魔導師が現れる ATK800

 

「特殊召喚された『エイドス』の効果で俺は追加で生け贄召喚できる!2体のモンスターを生け贄に…現れろ!『天帝アイテール』!」

神々しい天界を治める帝王が現れる ATK2800

 

「さらに『アイテール』の効果!デッキから2枚の帝王魔法・罠を墓地に送り、デッキから『冥帝エレボス』を特殊召喚!」

天帝の開いた門から冥界の帝王が現れる ATK2800

 

墓地送り

烈旋

深怨

 

「バトル!『エレボス』で裏守備モンスターを攻撃!『冥帝崩壊波』!」

エレボスの闇の力がモンスターを吹き飛ばす…すると

 

「ガッ…ゴホッゴホッ…なんだ…呼吸が…」

《マスター!?》

遊海LP4000→3500

 

『破壊されたのは「ジャイアントウィルス」…破壊された時に500ダメージを与え、同名モンスターを2体デッキから特殊召喚する…』

 

 

黒い巨大なウィルスが2体現れる ATK1000 ×2

 

 

「多少のダメージはしょうがない…『アイテール』!」

アイテールがウィルスを破壊する

 

『ぐっ…!』

闇丸LP4000→2200

 

「ぐっ…ゴホッ…!」

破砕されたウィルスの破片が遊海を冒す

 

遊海LP3500→3000

 

「カードを伏せてターンエンド!エンドフェイズに『エレボス』は手札に戻る!」

 

遊海LP3000

アイテール 伏せ1 手札3

 

 

 

 

 

 

《マスター…!大丈夫ですか?》

 

「このぐらいなら問題は…ゴホッ…ゲホッ!!ハア…ハア…!」

 

 

 

 

 

 

『ワタシのターン、ドロー』

『モンスターを伏せ、「ジャイアントウィルス」を守備表示に変更、ターンエンド』

DEF 100

闇丸LP2200

伏せモンスター ウィルス 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

「(なんだ…何を狙ってる…?)」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「リバースカード!『真源の帝王』!墓地の『烈旋』、『深怨』を戻して1ドロー!」

「そして手札の『雷帝家臣ミスラ』の効果!お前のフィールドにトークンを召喚し、このカードを特殊召喚!」

電気を纏った女性が現れる ATK800

 

闇丸のフィールドに人形が現れる DEF1000

 

「さらに『ミスラ』を生け贄に『邪帝ガイウス』を召喚!」

黒い鎧の悪魔が現れる ATK2400

 

「『ガイウス』の効果!『ウィルス』を除外し1000ダメージを与える!」

闇がウィルスを包み爆発を起こした

 

『ぐっ…!!』

闇丸LP2200→1200

 

「さらに『ミスラ』の効果で追加の生け贄召喚!再び現れろ!『エレボス』!」

再び冥界の王が現れる ATK2800

 

「『エレボス』の効果!デッキの帝王魔法・罠を墓地に送り左の伏せカードをデッキの一番上に戻す!」

墓地送り

領域

開岩

 

『伏せカード発動『終焉の炎』、2体のトークンを召喚!』

炎の小さな悪魔が現れるDEF0 ×2

 

「躱されたか…バトル!『アイテール』で伏せモンスターをこうげ…」

 

『カウンター罠「陰陽鏡」、相手の攻撃宣言時に発動…ライフを1000払いお互いのフィールドのモンスターを全て破壊し、その数×500ダメージを相手に与える…終わりだ…』

 

「何!?」

 

闇丸LP1200→200

中華風の鏡がフィールドのモンスターを全て破壊し、光の光線が遊海に直撃する

 

「ぐっ…うああぁぁ!?」

 

遊海LP0

 

闇丸 WIN!

 

 

 

 

「ぐっ…貴様…何が目的だ…!」

フラフラになりながら遊海が立ち上がる

 

『美寿知様がお前を求めている、だから連れていく…それだけだ…フンッ!』

 

「ぐぉッ…がっ……」ドサ

 

《マスター!!》

腹部を殴られ遊海は気絶する…

 

「任務完了…帰還する…」

 

遊海を担いだ男は姿を闇に溶かし消えてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…さん!

 

 

 

誰だ…?

 

 

 

遊海……!

 

 

 

遊海さん!!

 

 

 

 

 

「っ…あ…ぐっ…」

 

「ミスター遊海!!」

 

「遊海君!」

 

「双六さん?エド…?」

 

「よかった…」

 

 

 

 

目を覚ますとそこは海馬ランドの青眼像の前だった…

 

「エド…何があった…?」

 

「ミスター遊海!貴方は人質になっていたんです!」

 

「人質…?…ぐっ…!」

 

話によると斎王の妹・美寿知が十代とエドを試すための人質になっていたらしい、他にも翔や剣山、俺を襲った闇丸も人質になっていたそうだ…

 

「また十代に助けられたか…イテテ…」

 

「遊海さん、あなた程の決闘者がどうして…」

 

「いや…バーン対策をしてなくてな…」

 

《マスター…せめて私を使ってれば…》

 

「うわっ!?何だコレ!?」

 

「エド…?アヤカが…精霊が見えるのか…?」

 

「なんと…!?」

どうやらエドも精霊の力に目覚めたようだ…

 

 

 

 

 

 

そして俺達は無事にアカデミアに帰る事ができた…ついでに翠に心配をかけたせいで恐ろしい目にあったが…そこは伏せよう…

 

 

 

 

 

ピリリリ…ピリリリ…

 

「はい!白波です!」

 

『遊海さん、鮫島です』

 

「鮫島校長!お久しぶりです、どうしました?」

 

『プロデュエリストのあなたにお願いがあります…アカデミア主催の大会…「ジェネックス」にでてもらえませんか?』

 

「へっ?」

 

 

 

 

 

そして光との決戦が始まる…

 



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ジェネックス開催〜光の進軍〜

修学旅行から一ヶ月後、出張から帰ってきた鮫島校長から大型デュエル大会『ジェネックス』の開催が宣言された。

アカデミアへ世界中からプロ・アマを問わず決闘者を集め、生徒達の意欲を高めるための大会だ。

優勝賞品は…トメさんのキスと…鮫島校長の叶えられる範囲での願いを叶えてくれる権利だ。

 

 

 

 

 

そして今日は開催初日俺も参加している、まず光の結社の動きを止めようと港に来るプロ決闘者・オージーンの所に行こうとしたが…

 

「遊海先生、ボクとデュエルしてくださいよ…!」

 

『ワタシともお願いします…!』

 

《俺とも…!》

 

[オレも…!]

 

【私ともお願いしますよ…先生も光に染まりましょう…!】

 

 

「…小癪な…斎王め、時間稼ぎを…!」

レッド寮を出た途端、白い制服を着た生徒達…光の結社に囲まれてしまった…。

 

『ジェネックス』のルール…「出場選手は1日に一度はデュエルをしなくてはならない」『最初に挑まれたデュエルは断われない』

 

「『《[【さぁ…デュエルを…!】]》』」

 

「…いいんだろう、纏めてかかって来い!五人一度に相手してやる!」

 

《なめやがって!先生も光に…斎王様に染まるがいい!》

 

 

 

 

 

 

 

「《【[『「デュエル!」』]】》」

 

 

 

 

 

 

先攻ホワイト生A〜E 共有LP8000

・墓地共有・フィールド共有(1人5枠)

 

 

 

後攻 遊海 LP8000

 

 

 

 

順番 ホワイトÀ〜E →遊海

遊海ターンから攻撃可能

 

 

        〜ターン割愛〜

 

 

ホワイトE ターン終了LP 4000

 

 

「A」 双頭の雷龍ATK2800 光の護封壁

 

『B』 カイザードラゴン2300 強者の苦痛

 

《C》 ギルフォート・ザ・ライトニング3600(ムラサメブレード)

 

[D] 天界王シナト 3300 伏せ(アヌビスの呪い)

 

【E】 光神機ー轟龍2800 伏せ(ミラフォ)

 

 

 

 

 

 

【先生…見てくださいよ!斎王様のおかげで私たち…こんなに強くなったんですよ!】

 

[いくら伝説の決闘者といえど…]

 

《この盤面を崩すのは不可能!》

 

「『護封壁』で4000以下のモンスターは攻撃できず…」

 

『「強者の苦痛」でレベル×100攻撃力は下がる!』

 

[例え「決闘王」でもこの布陣は破れまい!!]

 

 

 

 

 

《マスター…!》

アヤカが心配そうに声をかける…

 

 

 

 

 

 

「たったそれだけか…?」

 

 

 

 

「《何…!?》」

 

「人に与えられた強さ…それは無意味だ!デッキとは決闘者の魂!それを斎王に言われるまま使うなんて…お前達はそこまで愚かなのか!!」

 

【私達は愚かではありません!私達は斎王様に選ばれたデュエリスト!…私達が…斎王様が正しいのです!】

 

「よくわかった…お前達に巣食う偽りの光…真の希望で浄化する!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「マスタールール4適用…《制限解除》…フィールドをホワイト【E】に固定…設定開始!」

 

遊海の言葉と共に地面にマス目が刻まれていく

 

E

□□■□□

□□□■□

 □ □

□□□□□

□□□□□

遊海

 

【何よ…何が起きてるのよ!】

 

 

「手札から『魔境のパラディオン』を召喚!」

大きな杖を持った魔法使いが現れる ATK400→100

 

『攻撃力100のモンスター?ワタシ達の上級モンスター達に敵うわけないじゃない!』

 

「現れろ!光のサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はパラディオンモンスター1体!」

 

「『魔境』でリンク召喚!現れろ『マギアス・パラディオン』!」

 

赤い鎧の魔法使いが現れるATK 100↓

 

 

「何だ…そのモンスター…!?」

 

『しかも「強者の苦痛」の効果を受けて無い…!』

 

 

「このモンスターは『リンクモンスター』…レベルを持たないモンスターだ!」

 

【なんですって…!?】

 

 

「そして『マギアス』のリンク先に『神樹のパラディオン』を守備表示で特殊召喚!」

耳の長い緑髪の女性が現れる DEF1800

 

「『マギアス』の効果!デッキより『百獣のパラディオン』を手札に加える!」

 

「アローヘッド確認!召喚条件はパラディオンを含む効果モンスター2体!」

 

「『神樹』と『マギアス』でリンク召喚!現れろ!『レグレクス・パラディオン』!」

 

炎を纏った獅子が現れるATK 1000↑↓

 

「そして手札の『星辰のパラディオン』を『レグレクス』のリンク先に特殊召喚!」

 

鎧を纏ったドラゴンが現れるDEF 2000

 

「『レグレクス』の効果によりデッキから魔法カード『リユナイト・パラディオン』を手札に加える!さらに『星辰』の効果で墓地の『魔境』を手札に戻す!」

 

「…アローヘッド確認!召喚条件はリンクモンスターを含む効果モンスター2体以上!!」

 

「リンク2の『レグレクス』と『星辰』でリンク召喚!現れろ!戦いを乗り越えし絆の勇者!リンク3『アークロード・パラディオン』!!」

 

ケンタウロスのような姿をした騎士が現れるATK 2000↙↑↘

 

《はっ…あれだけ展開して攻撃力2000?とんだコケ脅しだ!ハハハハハ!》

 

「それはどうかな」

 

[何?]

 

「『アークロード』のリンク先に『百獣』と『天穹のパラディオン』を特殊召喚!」

金色の鎧のライオンと青いラインの鎧を着た戦士が現れる DEF1600 DEF1600

 

【E】

□□■□□

□□□■□

 □ ■

□□■□■

□□□□□

遊海

 

「『アークロード』の攻撃力はリンク先のモンスターの攻撃力の合計分アップする!よって…」

 

ATK2000→7600

 

「攻撃力7600…だとぉ!!?」

 

『「護封壁」ラインを超えている…!』

 

【たしかに凄まじい攻撃力だけど…次のターンなら!!】

 

 

「次のターン?あるわけ無いだろ?」

 

【なんですって…?】

 

「フィールド魔法『リユナイト・パラディオン』を発動!」

フィールドに聖なる光に溢れた剣が突き刺さる

ATK7600→8100

 

「『リユナイト』の効果により『アークロード』は全てのモンスターに攻撃できる!さらに『天穹』の効果により戦闘ダメージを倍にする!」

 

『そんな…!?』

 

[っ!?リバース罠『アヌビスの呪い』!フィールドの効果モンスターを全て守備表示に変更し守備力を0にする!これで攻撃は…!]

 

「甘い!『百獣』の効果で『アークロード』は貫通能力を得る!さらに…リンクモンスターは守備表示にならない!」

 

「守備表示にならないモンスター…!?」

 

《そんなモンスターが…いるのか!?》

 

[しまった…!?]

 

『何やってるのよ!?』

 

 

「バトル!『アークロード』で全てのモンスターに攻撃!『ボンド・オブ・パラディオンソード』!」

 

 

アークロードの剣に力が集中し聖なる光を纏う…そして全てを切り裂く斬撃が放たれた!

 

【リバースカード!「聖なるバリアーミラーフォース」!!これで返り討ちよ!!斎王様!私達に力を!!】

 

「…墓地の『神樹』の効果…破壊される『パラディオン』モンスターの代わりに、このモンスターを除外する…」

 

【えっ…】

 

そして斬撃が全てを飲み込んだ…

 

 

ホワイトA〜E LP4000→−77,000

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【うっ…うぅ…】

 

『ぐっ…あ…』

 

 

「…ちょっとやりすぎたかな…?」

遊海の前には吹き飛んだ生徒達が倒れこんでいる…ついでに周りは更地だ…

 

《マスター、どうやら彼らの中の邪な光は祓えたようです!》

 

「そうか…ありがとうアヤカ!…おい!大丈夫か?」

 

 

【うっ…あれ?私…何を…?何?この白い服…!?】

 

「あれ?ボクはどうしてここに…?」

 

《…ん?俺は…?》

 

 

洗脳されていた全員が無事に目覚めた…しかし洗脳中の事は何も覚えていないようだ。

 

「遊海さ〜ん!大丈夫ですか〜!」

 

「ん?翠、大丈夫だ!」

寮の方から翠が走ってきた

 

「スゴイ光が見えたので来てみたんです…いったい何をしたんですか…?」

 

「パラディオンで1ターン5キルした!」

 

「…納得しました…」

 

 

チュドーン!!

 

「っつ!?何だ!?」

港で爆発が起きた…!?

 

「遊海さん!」

 

「行こう!翠!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十代!何があった!!」

遊海と翠は港に十代を見つけ、声をかける

 

「遊海先生…斎王の奴スゲェんだ…プロ相手に『0ターンキル』したんだよ…!!」

 

「0ターンキル…!?」

 

一緒にいた翔によるとオージーン王子が「時の女神の悪戯」を使い「サテライトキャノン」で1ターンキルをしようとしたが斎王の魔法コンボで返り討ちにあったらしい…チートにはチートを…よく言ったものだ…。

 

 

《マスター、ダメです…彼も既に飲まれています…》

 

「そうか…間に合わなかったか…!」

 

 

『これはこれは遊海プロ…あなたには何人か相手をしてもらった筈ですが…?』

 

斎王がぬけぬけと話かけてくる

 

「ああ…彼らか、五人で来たからワンキルして洗脳は解いたよ…もう少しまともな相手を連れてきてくれ…!」

 

『なっ…!?』

 

「五人をワンキル…?嘘だろ…!?」

十代が後ろで驚く

 

『(バカな…奴らは三騎士に及ばぬがそれなりの手練…それを…!?)』

 

「なんならお前が相手をしてくれるか?斎王

琢磨…!」ズズズ

 

『っつ!?』

遊海は凄まじい殺気を放ち斎王を威嚇する…その後ろには黒いナニカの姿が見えた気がした

 

『…いや…、今は遠慮しましょう、天上院、万丈目、三沢、我が寮へ戻るぞ…!』

「「「はっ!」」」

 

斎王は洗脳された3人を連れて寮へ戻っていった…。

 

 

 

 

 

「斎王に少しは痛手を与えられたのか…?」

 

《マスターがワンキルをした話を聞いた時、斎王から僅かに焦りの感情を感じました…少しはダメージを与えられたかと…》

 

「そうだといいんだが…」

俺はアヤカと作戦を練る…少しでも奴らの力を削ぐにはどうすればいいか…

 

 

ピリリリ…ピリリリ…

「携帯が…はい!白波…」

 

『ミスター白波!大変なのデース!!』

 

「ペガサス会長!?どうしたんですか!?」

電話の相手はペガサス会長だった、声色からして相当焦っているようだ…

 

『ミスター白波…アイムソーリー…我が社で保管していた「ラー」のコピーカードが盗まれたのデース!』

 

「マジ…ですか…!?」

 

『イエス…我が社のイラストレーターのフランツという男が神を盗み出したのデース…!』

 

「犯人はどこに!」

 

『渡航記録からそちら…アカデミアに向かった可能性がありマース!ミスター白波!彼を止めてくだサーイ!!』

 

「わかりました!」

 

『サンキューデース!ワタシも彼と一緒にアカデミアに向かいマース!』プッ…

 

 

彼…?そうか…隼人が帰ってくるのか…本来なら十代に任せたいが…俺が止める!!




メダル
遊海 6
翠  1


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神を取り戻せ!〜悲しみの太陽神〜

ペガサス会長から連絡を受けた翌日、メールでコピーカードについての情報が送られてきた。

曰く、会長が三幻神を創造し封印する前に研究用として作ったカードらしい、つまりアテムのラーが「No.1」だとすれば「No.2」、神のオリジナルとほぼ変わらない、いや…アテムのラーが失われた今においてはオリジナルそのものと言っても過言では無いカードである。

 

しかしやはりコピーカード、使おうとした者には容赦なく神罰が下った。

後に会長がエジプトに三幻神に封印したあと、このカードはI2社の金庫にて厳重に封印されていたが…それをメインデザイナーであるフランツが盗みだしたらしい、理由は今のところ不明、ただフランツは「力こそ全て、デュエリストは強いカードを求めている!」という思想を持っていたらしい、それを会長に戒められた直後に事件が起きたとの事だ…。

 

 

 

 

 

そして俺はアヤカやトフェニと一緒にフランツを探しながらノルマのデュエルをしたいのだが…

 

 

「お〜い、そこのレッドの君!デュエルしないか?」

 

「あっ…遊海先生…!すいません…今日はデュエルしたので…」

 

「そうか…じゃあブルーの…」

 

「おい!イエローのお前!デュエルだ!」

 

「あ…ああ!受けてたつ!」

 

「…」

 

 

という具合なんだよな…

 

《マスター…ドンマイです…そのうちに見つかりますよ…》

 

《しかし…少し難しいかもしれませんな…》

 

「トフェニ?どうしてだ…?」

 

《他の精霊によると昨日の1ターン5キルが噂で広まっているらしく…》

 

「うん…納得した…」

 

《ドンマイです、マスター…》

 

「でもそのうちに相手も見つか…」

 

ズガーン!!!

 

「っ!?なんだ!?」

突如爆発が起きた、その方向を見ると巨大な火柱が立っている…そして…

 

 

【ギュアアアー!!】

黄金に光る身体を持つ神…ラーが降臨していた…

 

 

「ラーの翼神竜!!?しまった!?」

 

《主殿!》

 

「トフェニ!頼む!!」

 

《御意!》

俺はトフェニと共に急いで現場に向かった…

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああ!!」

 

ラーイエロー生 LP0

 

フランツ WIN!

 

 

 

 

 

『フフフ!どうだ!これが『神』の…私の力だ!ハハハ!!』

 

 

「そこまでだ!!」

遊海がトフェニから飛び降り銀髪で丸メガネの男の前に飛び降りる

 

『おやおや…「精霊に愛された決闘者」のミスター白波ではないですか…何をしに来たんですか?』

 

「お前はフランツだな?ペガサス会長からの指令でお前を止めにきた!今ならまだ間に合う…神を渡して投降しろ!」

 

『フフフ、会長からですか…嫌だと言ったら?』

 

 

「力づくでお前から『ラー』を回収する!」

 

『フフフ…いいでしょう…!神となった私の力をとくと味わうがいい!』

フランツはデュエルディスクを構える

 

「神はお前のモノじゃない!我が友の為に…絶対に取り返す!」

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP4000 D60

フランツLP4000 D40

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『ソーラー・エクスチェンジ』を発動!手札の『ヴォルフ』を墓地に送り2ドローし2枚墓地に送る!」

 

墓地送り

罠裁き

グラゴニス

 

『ふっ…伝説の『ライトロード』ですか…』

 

「そして手札から『光の援軍』を発動!デッキから3枚墓地に送り、『ライデン』を手札に加える!」

 

墓地送り

黄昏双龍

黄昏イレイザー

黄昏ライラ

 

「そして『ライトロード・アサシン ライデン』を通常召喚!」

褐色肌の暗殺者が現れる ATK1700

 

「『ライデン』の効果!デッキから2枚墓地に送り『ライトロード』モンスターがいたら相手ターンの終了まで攻撃力を200アップ!」

 

墓地送り

芝刈り

ミネルバ

 

ATK1700→1900

 

「『ミネルバ』の効果でさらに一枚墓地へ!」

 

墓地送り

フェリス

 

「墓地に落ちた『ライトロード・アーチャー フェリス』の効果!自身を特殊召喚!」

 

獣耳の弓兵が現れる DEF2000

 

「カードを一枚伏せてエンドフェイズ!『ライデン』の効果で2枚墓地へ!」

 

墓地送り

裁きの龍

閃光

 

「ターンエンド!」

遊海LP4000

ライデン フェリス 伏せ1 D41

 

 

 

 

「ミスター白波!!無事ですか!?」

 

「「「遊海先生!!」」」

 

「ペガサス会長!十代!翔!隼人!剣山!」

遊海に少し遅れて皆が到着する

 

『フフフ…ペガサス会長…見ているがいい!!私が神を従える姿を!!』

 

「やめるのデース!!神は選ばれたデュエリストのみが使えるカード!ユーでは神の怒りを…!」

ペガサスがフランツを諭すが…

 

『私は神の怒りを買う事は無い!!見るがいい!私の力を!!』

フランツは聞く耳を持たない…すでに力に飲み込まれているようだ…

 

「フランツ…ユーは…」

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロォー!!』

凄まじい風圧が起きる…!

「来るか…!」

 

『手札から「ラーの使徒」を召喚!』

金色の鎧を着た戦士が現れる ATK1100

 

「ラーの使徒…!」

 

『「ラーの使徒」の効果!デッキ・手札から同名モンスター2体を特殊召喚!』

2体の戦士が現れる ATK1100 ATK1100

 

「モンスターが3体…まさか…!?」

十代は既に気づいたようだ…神が降臨する!

 

 

『手札から「トラップブースター」を発動!手札の「ヌビアガード」を捨て、手札から罠カード「血の代償」を発動!そして…3体の生け贄と我がライフを捧げ…眠りし神の魂よ!今その姿を蘇らせよ!神に立ち向かう愚かさを知らしめるのだ…いでよ!!「ラーの翼神竜」!!!』

フランツLP4000→3500

 

 

 

 

アカデミアの周囲が暗雲に包まれ雷鳴が轟く…そして雲の中から球体形のラーが現れる

 

「あれが…『神』…なんすか…?」

翔は疑問に思った…たしかに凄まじい力を感じるが…あれでは攻撃できないのではないか?と

 

「いや、翔…違う…これからだ…!」

 

「アニキ…?」

 

 

そして…本来「古代神官文字」を唱えなければ起動しないラーがその姿をバトルモードに変化させる…何故か…?

 

ATK 3300

 

《ギュアアアー!!》

【我が眠りを妨げし者は…使命を果たし眠りについた私を起こすのは…誰だ…!】

 

「(ラーが…怒っている…!)」

この時点で十代より上の力を持つ遊海はその怒りを感じとった…ラーは怒り狂い…以前会った時の穏やかさは無い…

 

「これが…『神』…!!」

 

「ラーの翼神竜…!」

 

「こ…怖いザウルス…!!」

十代や剣山達はその圧力に恐怖を感じた、以前に出会った「銀河眼」ですら比べ物にならない覇気…これが「神」なのだと…!

 

 

「ミスター白波!!気をつけるのデース!神罰が!」

 

「わかってます…!」

 

【我が写し身を使う者よ!滅びるがいい!!】

ラーの嘴にエネルギーが集中する…それはフランツへと向けられ…!

 

 

 

 

 

 

 

『フフフ!「ラー」よ!!怒るがいい! 叫び狂うがいい! そして……この私を憎むがいい!!だが見るのだ、この私がお前の主なのだ!手札からフィールド魔法「神縛りの塚」!発動!』

フランツの言葉と共に地面から鎖が飛び出しラーの身体を拘束していく…

 

《ギュ…!?ギュアアアア!?》

【人間…何をする!!離…せ!離せぇ!!】

 

「ラー!!フランツ…貴様ぁ!!」

遊海はラーの苦しみを感じ、声を荒らげる!

 

「フランツ…!ユーはまさか神を操るカードを作り出したというのですか!?」

ペガサスは驚きを隠せない、神のカードを従わせる…それは並み大抵の事ではないからだ。

 

『見るがいい…ペガサス会長…白波 遊海! 最強最悪と言われた神を従える、この私を!…私こそが…神だぁ!!』

 

フランツは神を従わせるカードを作り出した…しかしそれは…

 

【ぐああぁぁあ!離せぇぇ!!】

神に苦しみを与え、縛るモノだった…

 

『我が下僕となりし「ラー」の効果!我がライフ1000を糧とし『フェリス」を破壊する!「ゴッドフェニックス」!』

フランツLP3500→2500

 

フランツの言葉と共にラーが炎の不死鳥と化す

 

《ギュアアアア!》

【やめろ!我が身体よ!止まれ!止まるのだ!!はっ…お前は…!ぐっ…あああああ!!?】

そして神の炎がフェリスを焼き尽くす…そして…

 

「ぐあああああ!?」

 

「遊海先生!!」

炎が遊海の精神にダメージを与える、マリク戦とは違い感覚共有はないが…常人では耐えられないダメージである事は変わりない…。

 

「ぐっ…ラー…!」

 

『さらに「ラー」で「ライデン」を攻撃!「ゴッドブレイズキャノン」!』

ラーの背中の輪からエネルギーがチャージされる…

 

《ギュアア…!!》

【やめろ…ユウミ…!避けろ…!!】

 

『放て!』

神の一撃が暗殺者を消し飛ばす…

 

「ぐぅっ…がああぁぁ!!」

 

遊海LP4000→2600

 

神の炎が遊海を包み…その身を焦がす。

 

『さらに『神縛りの塚』の効果を発動!レベル10以上のモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時!さらに1000ダメージを与える!』

 

「なんだって!?遊海先生!!!」

雷雲からの雷撃が遊海に直撃する

 

「がっ!!?あ…ぐっ……」バタッ

雷撃を受けた遊海は倒れ伏す…神の炎、そして雷を受けた体は相当なダメージを受けている

 

遊海LP2600→1600

 

 

『フフフ…これでターンエンドだ!やはり伝説の決闘者と言えど神の前には無力なものだな!フハハハハ!』

 

フランツLP2500

ラー 手札 1  D32

 

 

 

 

「ミスター遊海!!立ってください!神を…ラーを救ってください!」

 

「遊海先生!しっかりしてくれ…先生〜!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ああ…やっぱり神の攻撃は効くな…体が動かない…ラー…すまな…い…)」

 

 

 

ピチョン…

 

気絶しかけた遊海の首筋に水滴が当たる…

 

「(水…雨か…?)」

 

 

【ユウミ…すみません…二度ならず三度まであなたに迷惑をかけてしまった…!】

 

「(ラー…泣いて…いるのか…?)」

遊海に当たった水滴…それはラーの流した涙だった、主の友人であり二度も自身を救ってくれた恩人に再び攻撃してしまったという悲しみの涙だった…

 

【ユウミ…私を破壊しなさい…その手段はあるはずです…】

 

「(ラー…!)」

 

【私が…生まれなければ…!】

 

 

 

 

「…ラー、お前は間違ってる…!」

遊海はフラフラ立ち上がる…身体はボロボロだが、その眼には強い力が輝いている…!

 

『バカな…立ち上がっただと…!』

 

「遊海先生まさか…ラーの声が…!」

 

 

 

「お前がいなければアイツは冥界に帰れなかった、お前がいなければオレイカルコスの神は倒せなかった!…お前は…皆の目標なんだ!必要とされているんだ!!」

 

【ユウミ…】

 

「ラー…今…助け出す!」

 

『意味のわからない事をごちゃごちゃと…さぁ起きたのならターンを進めるがいい!』

 

 

 

 

 

「俺のタァーン!!ドロー!」

「自分の墓地にライトロードモンスターが4種類以上いる時、このモンスターは特殊召喚できる!神を救え!『裁きの龍』!」

神々しき白龍が降臨する ATK3000

 

『くっ、手札から高攻撃力のモンスターをいきなり召喚か!しかし神には敵わない!』

 

「『裁きの龍』の効果!ライフを1000払い、自分以外全てを破壊する!誇りを取り戻せ『太陽神』!『カタストロフ・レイ』!!ぐっ…!!」

遊海LP1600→600

 

『しまった「神縛りの塚」が!?うわっ!』

龍の波動で鎖を破壊されたラーは空へと飛び上がる

 

《キュオオオ!!》

【ユウミ!ありがとう!】

 

 

「そして『ラー』よ!あるべき場所に戻って来い!」

 

『あるべき場所…だと?』

 

 

 

「スゥ…エム イル シュア ネウ アンフ セフチュ…」

 

「遊海先生が変な言葉を唱え始めたっす!」

 

「オゥ…あれはヒエラティック・テキスト…『古代神官文字』デース!」

 

「神官文字?」

十代がペガサスに問いかける

 

「そうデース!石版に描かれたラーの効果はワタシには解読できませんでした…なのでラーのテキストは古代のエジプト文字で書かれているのデース!」

 

「それでなんで遊海先生はそれを唱えているどん?」

 

「見ていればわかりマース!」

 

 

 

 

 

「…フェスィ セトゥ ネブ ケティ!!我が元へ舞い降りよ!『ラーの翼神竜』!!」

 

空中を旋回していたラーが遊海のフィールドに舞い降りる ATK3300

 

 

『なんだと…何故!何故ラーがソイツに従う!!何故だァ!?』

フランツは困惑し叫ぶ、自身がカードを介さなければ従わなかった神が自分から傅いている…それはあるはずの無い事だからだ。

 

 

「フランツ!お前は…「ラー」の効果を知らなかった様だな?」

 

『なにィ?』

 

「『ラー』は本来使用できる条件がある…1つは『千年アイテム』を所持している事、そして『古代神官文字』を唱える事が出来た者がコントロールを得る事ができる!そして俺はその条件を満たしている!」

遊海はその手に千年玉を掲げる

 

『そんな事が…!』

 

「そして最後に…『ラー』は我が友…名もなきファラオの下僕、そして『ラー』自身が我が友だからだ!!」

 

《キュルルル〜!!》

【ユウミ…ありがとう!】

ラーは嬉しそうに身体を遊海に擦り寄せる

 

「『ラー』が…喜んでる…」

 

「オゥ…流石はミスター白波、神を手懐けるとは…」

 

「あれが…精霊に愛された男…すごいザウルス…!」

 

 

「バトルだ!『ラー』でフランツへダイレクトアタック!『ゴッドブレイズキャノン』!!」

 

【私によくも狼藉を働きましたね…!我が炎にて罪を悔い改めるがいい!】

 

ラーにエネルギーがチャージされ放たれる、その炎はフランツを飲み込み…

 

『うああああ!!?』

 

 

フランツLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

「やったな…『ラー』…ぐっ…!」

遊海は膝をつく…神の攻撃の痛みは凄まじいものだった…

 

「遊海先生!!大丈夫か!?」

十代達が駆け寄ってくる

 

「ああ…ちょっとダメージが…イタタ…!」

 

「先生スゴいッス!神のカードに勝つなんて!」

 

「先生スゴいドン!」

 

「いや…ラーが助けてくれたからだよ…」

 

《キュアア…!》

【ユウミ…私は…】

いまだにフィールドに残るラーが声をかける

 

「いいんだラー、お前が無事でよかった!」

 

【ユウミ…】

 

 

 

 

 

 

「ミスターフランツ…強すぎる力には大きすぎる悲劇を生む…そして一生、その後悔を抱いて生きていかなければならないのデース…」

 

ペガサスは髪に隠された左眼をフランツに見せる…その左眼はかつてシャーディに「千年眼」を与えられ、その後バクラに奪われ義眼となっていた…全てはかつて力を求めた代償でもある…

 

『会長…その目は…!』

 

「ワタシは大切な部下に…同じ道を歩ませたくないのデース!」

 

『会長…私は…なんて愚かな事を…!』

フランツはペガサスの想いを知り涙を流す…

 

「ユーの新しいカードに期待してマース!」

 

『はい…!はい!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミスター白波…サンキューデース、あなたのお陰で無事にラーを取り返す事ができました!」

 

「会長…神のカードです!」

遊海はペガサスにカードを手渡す

 

「はい、確かに…おや…?」

遊海からカードを受け取ったペガサスは動きを止める…

 

「会長…?どうしました?」

 

「『ラー』のカードから…怒りが消えていマース…これは…ミスター白波…!」

 

「はい?」

 

「『ラー』を召喚してみてくだサーイ!」

 

「?はい…『ラーの翼神竜』…召喚!」

 

「先生!?それはマズイんじゃ…!!」

 

《キュア〜!》

デュエル外で召喚されたからかバトルモードで現れたラーは遊海に擦り寄る

 

「へっ!?」

 

「ラーが…デレてるッス…」

 

「ミスター白波…『ラー』は貴方が持っていてくだサーイ!」

 

 

「「「『えっ!?』」」」

 

「ペガサス会長…それは…!」

 

「『ラー』自身が貴方と共にいる事を望んでいる…ワタシにはそう見えるのデース!」

 

「ラー…いいのか…?」

 

【ユウミ…私は貴方と共に歩みたい…確かに我が主はアテムですが…彼も許してくれるでしょう…!】

そう言うとラーは輝きその姿を小さく変化させる…それこそ小鳥のようなサイズに…

 

《我が身命をユウミ…貴方に託します!》

 

「ラー…よろしくな!」

 

「ミスター白波!神の事を頼みマース!」

 

「はい!」

 

 

 

そしてペガサス会長は帰って行った、隼人も十代にカードを渡せたようだ…そして…

 

 

 

 

「新しく仲間になった『ラーの翼神竜』こと『フレア』だ!みんな!よろしくな!」

 

《フレアです!この度、ユウミと行動を共にすることになりました!改めてよろしく!》

 

《「《えっ!?》」》

 

「遊海さん…えっ?…なんで『ラー』がここにいるんですか!?」

 

「いや〜『ラー』に認められたというか、なんというか…」

寮に戻った俺は翠達にラーが新しく仲間になった事を伝えたのだが…すごく驚いている。

 

《新しい仲間…神様…?》

 

《遊海さん…なんというか…スゴい…》

 

《よろしくウィンダさん!ウェンさん!》

 

《アッハイ…!》

 

こうして新しい仲間が増えたのであった…

 




遊海メダル 8
翠 2


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皇帝対赤帽子〜成長の証〜

フランツとラーの事件から2日が過ぎた、なんとか体力も回復しデュエルノルマも達成、所持メダルは俺が10個

翠が4個となっている。

 

「しかし何人参加してるんだ…この大会…」

 

「そうですね…全校生徒が400人くらいで…プロやアマの決闘者を入れると…500人位ですかね…」

 

「多いな…決着までどれくらいかかる事やら…」

 

《マスター!そろそろノルマデュエルに行った方が…》

 

「そうだな…俺も普段の業務をしながらだから早めにデュエルしておこうか…行ってくるよ翠!」

 

「はい!気をつけて!」

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は相手を探しながら校舎に向かう、生徒達は最近、相手をしてくれないんだよなぁ…

 

《マスター…それはしょうがないと思います…》

 

《1人で五人を1ターンキルなんて…アテムでもした事ありませんよ…ユウミ…》

 

「アハハハ…ハア…やりすぎたなぁ…」

俺の肩には小さくなったラー…フレアが乗っている、姿はいつもの翼竜の姿ではなく金色の隼のような姿になっている。その分、神威も抑えられ普通の精霊と変わらなくなっている。

 

《ユウミ…校舎の前に強い力を持った者がいますよ…!》

 

《セリフを…取られちゃいました…流石はラー…気配感知もスゴいです…》

曲がりなりにも神様なのでフレアの感知能力はすごい事になっている…でも強いデュエリスト…?誰だろう…?

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩みを進め校舎に着くと1人の男が立っていた、アカデミアのブルーのコート制服を着た青髪の男…プロランキング15位…『超新星』『皇帝』『ヘルカイザー』と呼ばれるプロデュエリスト…その名は…

 

「久しぶりだな…カイザー亮!」

 

「遊海さん!お久しぶりです!…体は大丈夫ですか?過労で倒れたと聞きましたが…?」

 

「ありがとう、大丈夫だ!まさか一月で40戦もするはめになるとは…」

 

「でもそれで35勝5敗と言うのも凄まじいと思いますよ…?」

 

「いや、お前こそデビューして30戦25勝4敗1分っていう記録もスゴいよ!あのエドと引き分けたんだろう?」

 

「ええ…まるで十代とのデュエルの焼き直しのような激しい試合でした…彼とは良き友人になりました!」

 

「そうか、よかった!…そういえば今日はどうしたんだ?もしかして…?」

 

「はい!『ジェネックス』に参加しに来ました!たまには思いっきりデュエルもしたかったですし…」

 

「そうか…もうデュエルしたのか?」

 

「いえ…後輩達はプロのオレを避けてて…唯一、吹雪が『ヘルカイザー』のオレの事を見て色々勘違いをして挑んできたぐらいですね…ダークネスの力を借りてまで…」

 

「ああ…十代が言ってたな…見事に『キメラティック・オーバー』で返り討ちにしたんだって?」

 

「ええ、あえてマスター鮫島から預かった『裏サイバー』ではなくオレのデッキで戦いました、なんとか誤解も解けましたし…まったく吹雪は変わらないな…」

 

「ハハハ…アイツはそういう奴だよ!…それじゃあまだ決闘し足りないってところか?」

 

「はい…遊海さん…」

 

「それじゃあ久しぶりに相手になろうか?」

 

「いいんですか?」

 

「ああ!成長したお前を見せてくれ!」

 

「はい!胸をお借りします!」

 

 

 

 

 

       「「デュエル!!」」

 

 

 

 

 

遊海LP 4000 D40

亮LP 4000 D40

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から儀式魔法『影霊衣の降魔鏡』を発動!手札の『シュリット』を生け贄に…降霊せよ!神界の第一位の王の魂…『ヴァルキュルスの影霊衣』!」

フィールドに悪魔の力を宿した壮年の魔道士が現れる

ATK2900

 

「影霊衣…クロノス先生を倒したデッキか…!」

 

「そのとおり!生け贄にした『シュリット』の効果!『クラウソラスの影霊衣』を手札に加える!さらに『ヴァルキュルス』の効果!手札の『影霊衣の巫女エリアル』と『儀式魔人リリーサー』を生け贄にして2ドロー!」

 

「さらに生け贄にした『エリアル』の効果!デッキから二体目の『シュリット』を手札に加える!」

 

「くっ…!動きに無駄が無い…!」

カイザーは遊海の手さばきを見て再認識する…伝説の決闘者の強さを…。

 

「さらに手札から魔法カード『儀式の準備』を発動!デッキから儀式モンスター『グングニールの影霊衣』を手札に加え、墓地の『降魔鏡』を手札に加える!カードを伏せて…ターンエンド!」

 

遊海LP4000

ヴァルキュルス 伏せ1 手札5 D29

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ…来い!カイザー亮!」

 

 

 

 

 

 

 

「いきます!オレのターン!ドロー!」

「手札から永続魔法『未来融合ーフューチャーフュージョン』を発動!デッキから『サイバードラゴン』を3体墓地に送り…2ターン後のスタンバイフェイズに『サイバー・エンド・ドラゴン』を融合召喚する!さらに速攻魔法『時の飛躍』を発動!全てのターンカウントを3つ進める!」

フィールドに巨大な懐中時計が現われ、ターンカウントが進む…

 

「そして現われろ!『サイバーエンドドラゴン』!」

カイザーの切り札たる三っ首の機械龍が現れる ATK4000

 

「いきなり来たか!『サイバーエンド』!」

 

「いきます…バトル!『サイバーエンド』で『ヴァルキュルス』を攻撃!『エターナル・エヴォリューション・バースト』!」

 

「手札の『グングニールの影霊衣』の効果を発動!このカードを墓地に送る事で『ヴァルキュルス』は破壊されない!ぐおっ!!」

氷の柱が光線を反射し遊海に直撃する

 

遊海LP4000→2900

 

「手札から儀式モンスターの効果とは…!?」

 

「危ない危ない流石のサイバー流だ!」

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

カイザーLP4000

サイバーエンド 未来融合 伏せ2 手札1 D29

 

 

 

 

 

 

「…流石遊海さん…しかしダメージは与えたぞ…!」

 

「ふぅ…いい線はいってたよカイザー!でもあと一手足りなかったな!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から儀式魔法『降魔鏡』を発動!手札の『シュリット』と『クラウソラス』、そして墓地の『リリーサー』を除外し儀式召喚!現われろ!世界を氷結させし第3の龍の魂!『トリシューラの影霊衣』!」

龍の鎧を纏った戦士が現れる ATK2700

 

「来たか…!」

 

「『シュリット』の効果でデッキの『ブリューナクの影霊衣』を手札に加え…『トリシューラ』の効果を発動!フィールドの『サイバーエンド』、墓地の『サイバードラゴン』、そして手札の『サイバー・ヴァリー』を除外!『絶対氷結』!」

 

カイザーのフィールドが凍りつきサイバーエンドが砕け散る

 

除外されたカード

サイバーエンド

サイバードラゴン

サイバーヴァリー

 

「っ!『サイバーエンド』!!」

 

「バトル!『トリシューラ』でダイレクトアタック!『氷結三叉槍撃(アイス・トライデント・シェイバー)』!!」

トリシューラの剣が槍状に変化しカイザーに迫る

 

「リバースカード『ご隠居の猛毒薬』!ライフを1200回復する!ぐっ!!」

 

カイザーLP4000→5200→2500

 

「耐えたか…でもこれで終わりだ!『ヴァルキュルス』でダイレクトアタック!『氷結混沌魔術(コールド・カオス・マジック)』!」

 

ヴァルキュルスの周りに魔法陣が展開し、絶対零度の光線が放たれる

 

「リバーストラップ『パワーウォール』!デッキから26枚のカードを墓地に送りダメージを2600減らす!ぐっ!!」

 

カイザーがデッキからカードを墓地に送る事で黄色いバリアが展開し氷結光線を減衰させる

 

カイザーLP2500→2200

 

 

デッキ29→3

 

墓地送り

サイバーバリア

サイバーレーザ

サイバーフェニックス2

サイバーヴァリー

ヘビーウェポン2

フリントロック

ウロボロス

ジラフ

プロト

ボマードラゴン

オーバーロードフュージョン

バトルフュージョン

フュージョンサポート

死者蘇生

天使の施し

リミッター解除

フォトンジェネレーター

パワーボンド2

融合

リビングデッド

決戦融合

アタックリフレクターユニット

 

 

 

「耐えたか…亮!一つ言っておく!『リリーサー』を生け贄にした『トリシューラ』がいる限りお前は特殊召喚ができない!さぁ…俺を倒してみろ!…ターンエンド!」

遊海LP2900

ヴァルキュルス トリシューラ 手札3

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…オレのデッキには貴方を倒すために新しいカードを加えました…それを引けなければオレの負けです…!」

 

「そうか…来い!丸藤 亮!自分のデッキを信じ…俺を倒してみろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…オレのターン…ドロー!!!」

 

「『強欲な壺』を発動!これでオレのデッキは0…しかし!準備は整った!!」

 

「何?」

 

「まず手札から『死者への供物』を発動!『トリシューラ』を破壊!」

トリシューラが地面に引き込まれ破壊される

 

「そして…墓地に存在する光属性・機械族モンスターを全て除外し…このモンスターを特殊召喚する!いでよ!『サイバー・エルタニン』!!」

 

「『エルタニン』だと!?」

 

カイザーのフィールドに6台のピットを浮かばせた巨大な龍の顔が現れる ATK?

 

 

「エルタニンの攻守は召喚した時に除外したモンスターの数×500になる!よって…!」

 

ATK 4000

 

「さらにこのカードが特殊召喚に成功した時!このカード以外の表側モンスターを全て墓地に送る!『星座の包囲網(コンステレイション・シージュ)』!」

ピットがヴァルキュルスに突撃し破壊する

 

「バトル!『エルタニン』でダイレクトアタック!『龍座の昇天(ドラコニス・アセンション)』!」

 

極太のレーザービームが遊海を飲み込んだ…

 

遊海LP0

 

カイザー亮 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝てた…オレが…遊海さんに…!」

 

「ぐっ…ハァ…ハァ…成長したな…カイザー…!」

攻撃を受け倒れていた遊海が起き上がりカイザーに称賛の声をかける

 

「最後の気迫…見事だった!裏のサイバー流に頼る事無く、自身と『サイバードラゴン』達で俺に勝ったんだ!それでこそ正統継承者だ!」

 

「遊海さん…ありがとうございます!これからも精進し…()()の貴方を越えてみせます!!」

 

「ありゃ…バレてたか…まぁこんな人の前じゃ無理だわな…」

遊海が周囲に目を向けると40人近い生徒達がデュエルを観戦していた。

 

 

「スゲェ…これがプロ同士のデュエル…!」

 

「カイザーが伝説の決闘者に勝った…!最高だぜカイザー!」

 

「今度はプロの試合で戦ってくれ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

「カイザー、オレのメダルを持っていけ!」

 

「ありがとうございます、遊海さん!」

 

「ああ…!そういえば翔とは決闘したのか?」

 

「いえ…まだですが…?」

 

「アイツも成長した…それを見てやってくれ!アイツも待ってるはずだ!」

 

「はい!わかりました!ありがとうございます!」

 

「これからも頑張れよ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

《マスターお疲れ様でした…デュエル負けてしまいましたね…》

アヤカが残念そうに声をかけてくる

 

「まぁ大丈夫だよ、たまにはこういう事もあるさ!正直言うと少し悔しいけどね…生徒達の成長は嬉しいものさ!」

 

《ユウミ、落ち込まないでください!わたしを撫でて癒やされてくださいな?》

 

《あっ!ズルいですよフレアさん!私もお願いします〜!》

 

「はいはい!二人共部屋に着いたら可愛がってあげるから…」

 

《やった〜!》

 

 

 

 

ピルリピルリ…ピルリピルリ…

「ん?この着信音は…もしもしMr.スマイル?どうしたんだ?」

 

『遊海様!DDとのタイトル戦が1週間後に決まりました!よろしくお願いします!』

 

「そうですか!わかりました、ではまたスタジアムで!」

 

『よろしくお願いします!では!』プッ…

 

 

「ついにタイトル戦か…さて鬼が出るか蛇が出るか…」

 

遊海は空を見ながら呟いた、空は血で染めたように紅く染まっていた…。




メダル数

遊海リタイア

翠 5


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究極のD

〜とある病院〜

 

 

 

 

ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…

「…」

 

とある病院のベッドに8年程目覚めない男性の患者がいる…、彼は強盗に襲われ一命は取り留めたが意識が戻らなかった。

身体は医学的には健康、脳波にも異常は無い…しかし彼は目覚める事は無かった、そんな彼の元に1人の青年が見舞いに訪れる…。

 

「ミスターフェニックス、お久しぶりです…と言っても直接会った事はまだありませんが…」

 

青年は眠ったままの彼に話かける、意識の無い相手に話かける…それは医学的にも効果があるらしいが…彼には効果がないだろう…。

 

《マスター…やはりフェニックス氏の魂は戻っていません…やはり奴を倒さないと…》

 

「やっぱりか…DD…彼を倒さなければフェニックスさんは…」

 

《ユウミ…彼の肉体は限界です、早く魂を戻さなければ本当に…》

 

「わかってるよフレア…明日の決闘で彼を倒して囚われた魂を開放する…フェニックスさん…貴方の息子が…エドが…貴方が帰って来るのを待っています…もう少し踏ん張ってください…!」

 

そういうと青年は病室を後にする…2人…いや、3人を救うために…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜アカデミア〜

 

 

 

 

 

「まったく…校長はまた出張なノーネ?ジェネックスも佳境を迎えて、いつ優勝者が出てもおかしくないデスーノ!」

 

「しょうがないでアール、ペガサス会長から緊急に呼び出されたらしいであるからして…!」

 

アカデミアの廊下を二人の教師が歩いている、1人はアカデミアの実技顧問のクロノス教諭、もう1人は背の低い男性、ナポレオン教頭だった。

 

 

 

二人は最初は仲が悪かったが遊海のセッティングしたデュエルで語り合い一応の和解をしていた…。

 

「それならしょうがないノーネ…校長がいない間ワタシ達がアカデミアを支えるノーネ!」

 

「そうでアール!頑張らないとまた首が危ないのでアール!…ん?」

 

「どうしたノーネ、教頭?」

 

「いや…誰も居ないはずの校長室から話し声が…」

 

「侵入者なノーネ!?確認するノーネ!」

 

クロノス先生が校長室の扉を開けると…

 

 

「兄貴!楽しみだドン!」

 

「そうだな!剣山!」

 

「遊海先生…大丈夫かな…?」

 

校長室のモニターでTVを見る十代と剣山、翔の姿があった…

 

 

 

「コラ!お前達!何してるでアール!!」

 

「うわ!?クロノス先生!ナポレオン教頭!?」

 

「セニョール十代!何故校長室でTVを見てるノーネ?」

 

「クロノス先生!これからプロリーグのタイトル戦なんッス!」

 

「タイトル戦…マサーカ!?」

 

「そうだぜ!伝説の決闘者・遊海先生と『キング・オブ・キング』DDの一騎打ちなんだ!」

 

「兄貴!始まるザウルス!」

 

そして画面に会場が写し出された…。

 

 

 

 

 

 

 

〜同時刻・レッド寮食堂〜

 

「遊海さん…」

 

翠はレッド寮食堂の小型TVでタイトル戦が始まるのを待っている、十代達は大画面で観たいからと校長室に向かった。

 

《翠…大丈夫?遊海が心配?》

ウェンが翠に話かける、翠はソワソワと落ち着かない様子だった。

 

「ううん大丈夫だよウェン、遊海さんならきっと無事に帰ってくる!大丈夫よ…!」

 

《そうだよ翠!遊海さんなら大丈夫!はい!コーヒーでも飲んで落ち着いて!》

ウィンダがコーヒーカップを翠に差し出す。

 

「うん!ありがとうウィンダ!…いただきます!…っ!?」

 

ピキッ…パリーン!

 

《あっ!?コーヒーカップが!?》

 

《翠!大丈夫!?》

 

翠の手に持っていたカップにヒビが入り、割れてしまった…コーヒーは翠のエプロンを染めていく…

 

「大丈夫…やけどはしてないわ、…遊海さん…大丈夫…ですよね?」

 

翠は画面に映る遊海に問いかけるのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜エドのクルーザー〜

 

 

 

「DDと遊海さんのデュエルか…いったいどんな結末になるんだろうか…」

 

エドは自家クルーザーにてタイトル戦を観戦しようとしていた…しかし、その胸中は複雑である。

 

「DDはボクの親代わりでありプロとしての目標である人だ…しかし遊海さんは…父さんの命を救ってくれた…そして短い間だけど決闘者としてのイロハを教えてくれた…ボクはどちらを応援すればいいんだ…?」

 

そしてエドは画面に視線を向けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【レディースアンドジェントルメーン!さぁやって参りました!プロリーグタイトル戦!本日の試合は熱くなる事間違い無しだ!】

 

 

「「「わぁぁぁ!!」」」

 

【まずは挑戦者…プロランキング5位!精霊に愛された決闘者…『赤帽子』…白波 遊海〜!!】

 

 

「「「わぁぁぁ!」」」

 

【そしてプロランキング1位『キング・オブ・キング』!ディフェンディングチャンピオン!デステニーオブデュエリスト…DD〜!】

 

「「「うぉぉ〜!!」」」

 

 

 

 

「久しぶりですねDD…いや、カイル!」

遊海は顎髭を生やした角メガネの男…DDに話しかける

 

『ああ、そうだなシラナミィ…君には何回か苦渋を味わったが…今日が最後だ…決着をつけようか…!』

 

《マスター!ご注意を!彼は既に「光」の意思に飲まれています!》

 

「…わかったありがとう、アヤカ…DD!今日、俺がこの決闘に勝ったら…お前の罪を告白しろ!そして彼に謝るんだ!まだ引き返せる!」

 

『いいだろう…だが…お前が俺に勝てたらの話だがなぁ!!』

 

 

 

【さぁ!スタジアムの熱狂も最高潮!それでは参ります…タイトル戦…デュエル開始ィ!!】

 

 

 

 

 

 

 

       『「デュエル!!」』

 

 

 

 

DD LP4000

遊海 LP4000

 

 

 

 

 

 

『俺のタァ〜ン!ドロー!』

『「天帝使ーエニグマ」を守備表示で召喚…』

異形の左腕を持った仮面の戦士が現れる DEF1200

 

『カードを2枚伏せてターンエンドォ!』

 

DD LP4000

エニグマ 伏せ2 手札3

 

 

 

【DD選手!最初は堅実に盤面を固めた!遊海選手はどう動くのか!】

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『聖刻龍ートフェニドラゴン』を特殊召喚!このモンスターは相手フィールドにのみモンスターがいる時、特殊召喚できる!」

白いウジャト眼を刻んだ龍が現れる ATK2100

 

《主殿…気をつけてください…!》

 

「わかってる…!さらに手札から『聖刻龍ードラゴンゲイブ』を通常召喚!」

オレンジ色のウジャト眼を刻んだ人型の龍が現れる ATK1800

 

「バトル!『ドラゴンゲイブ』で『エニグマ』を攻撃!」

ゲイブの拳が異形の戦士を破壊する

 

『「エニグマ」の効果ァ…攻守0の「エニグマトークン」を2体特殊召喚するゥ!』

白いフードを被った戦士が2体現れる DEF0 ×2

 

「『ゲイブ』の効果でデッキから『神龍の聖刻印』を特殊召喚!」

 

巨大な太陽石が現れる DEF0

 

「さらに『トフェニ』でトークンを攻撃!」

 

『リバースカード「攻撃の無力化」発動!バトルフェイズを終了するゥ…!』

 

青い渦巻きが攻撃を吸収する

 

「チッ…防がれたか…!カードを伏せてターンエンド…!」

 

『伏せカードに対して「砂塵の大竜巻」を発動!伏せカードは破壊だぁ…!そして手札のカードを一枚セットする…!』

 

「くっ…!(マズイ!『反射の聖刻印』が…!)」

 

遊海LP4000

トフェニ ゲイブ 神龍印 手札3

 

 

 

 

 

【おっと!遊海選手攻めきれない!このプレイング!これがDDの実力だぁ!】

 

 

 

 

 

 

『俺のターン…ドロー!ふっふっふっ…ハハハハハ!』

 

【どうした事だ?DD選手が笑い出したぞ!?】

 

『そうか…出てきたいのか…!そうだよなぁ!今まで俺はお前を公の場では使えなかったからなぁ!!』

 

「…来るのか…!」

 

『オイ!シラナミィ…お前は悪魔を見た事があるか?』

 

「ああ…何度もあるよ…!神ですらな!」

 

『そうだなぁ…貴様にこの質問は愚問だったな!伝説の決闘者…!なら記憶に刻むがいい!新たな悪魔を!!』

 

DDの身体から白いオーラが放たれる…あれが「破滅の光」…!

 

『俺は「デビルズサンクチュアリ」を発動!「メタルデビルトークン」を特殊召喚!』

鉄でできた人形が現れる ATK0

 

『そして俺は2体の「エニグマトークン」と「メタルデビルトークン」を生け贄にこのカードを特殊召喚する!現れるがいい!「究極のD」よ!!』

 

その瞬間、白いオーラが形を成していく…その形は悪魔のようで…

 

「マズイ!?お客さん達!逃げるんだ!!!」

 

《ウオォォォ!!》

 

究極のDの出現と共に会場が炎に包まれる…!

 

 

 

 

 

 

【うわああ!?火事だぁ!?観客の皆さん!逃げてください!!早く!急いで!!】

 

 

「何なんだ!?ヤバイ!逃げろぉ!!」

 

「助けてくれ〜!!」

 

「逃げろ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

〜アカデミア〜

 

 

 

 

『しばらくお待ちください…』

 

「おい!?良いところなのに!TVが壊れたぁ!?」

 

「アニキ!違うよ!スタジアムで何かあったんだ!!」

 

「セニョール白波…!大丈夫なノーネ…!?」

 

「焦る事ないのでアール!白波先生は強いでアール!きっとただの電波障害でアルよ!」

 

 

 

 

 

〜レッド寮〜

 

 

「遊海さん!まさか…『Bloo-D』が!?」

 

翠は画面が切り替わる直前にそれを見た…DDから溢れ出す白いオーラを…

 

「ゆ…遊海さんの所に行かないと!!ウィンダ!」

 

《わかったわ!行きましょう!》

ウィンダは「エルシャドール・ミドラーシュ」に変化し飛ぶ準備をする…

 

「遊海さん今行きます!…キャ!?」

食堂から駆け出した翠は誰かにぶつかった…

 

「ごめんなさい!ちょっと急いでて…あなたは!?」

 

 

『白波 翠さん…貴女に用がありましてね…私とデュエルして貰いましょうか…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜スタジアム〜

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ!現れるがいい!究極のD!「D-HERO Bloo-D」!!』

 

生け贄が血の色をした沼に沈み…ソイツは現れた…血のような朱色をした龍を纏ったモンスター…Bloo-D…!

ATK1900

《ウオォォォ!!》

 

「来たか…!究極のD…!」

 

『「Bloo-D」の効果発動!貴様の場の「トフェニドラゴン」を装備しその半分の攻撃力を得る!「クラプティ・ブラッド」!』

Bloo-Dから血の色の引力が発生しトフェニを吸収する

 

《主殿…!御武運を…!ぐあぁぁ!!》

 

「トフェニー!!」

 

ATK1900→2950

 

『更にぃ手札から魔法カード「Dーフォース」を発動!このカードをデッキトップに表側で置く…それによりドローフェイズにドロー出来なくなるが…これにより「Bloo-D」の真の力が開放される…!』

Bloo-Dの纏う白のオーラが強くなっていく…

 

『「D-フォース」が自分のデッキの一番上に表側表示で存在するかぎり、相手フィールド上に表側表示で存在する効果モンスターは全て効果が無効化される…!さらに、自分フィールド上のカードを対象とする相手の魔法・罠カードの発動と効果を無効にし破壊する…!』

 

「くっ…!」

 

『さらにリバースカード「Dーブースト」を発動!「Dーフォース」の下にあるカードを2枚ドローする…!』

 

『さらに魔法カード「ドレイン・タイム」を発動!俺はメインフェイズ1を選択し効果を発動!お互いに次のそのフェイズをスキップする…!』

 

「何!?」

 

『バトルだぁ…!「Blood-D」で「ドラゴンゲイブ」を攻撃!「ブラッディ・フィアーズ」!!』

 

Blood-Dの翼から血の雨が降り注ぎゲイブを破壊し遊海にも降り注ぐ

 

「ぐあぁぁぁあ!!」

 

遊海LP4000→2850

 

『カードを伏せてターンエンドだァ…!』

 

DD LP4000

Blood-D Dーフォース 伏せ1 手札 0

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…あ…このダメージは…!」

 

『ふっふっふっ…さぁ貴様も早く楽になれ…たくさんの仲間がお前を待ってるぞ…!』 

 

DDがそう言うとBloo-Dの翼にたくさんの顔が浮き出す…その顔に生気は無く、救いを求める声を上げている…。

 

 

「貴様…いったい何人殺したんだ…!!」

 

『さぁね…10人を超えたあたりから数えるのをやめたよ…』

 

「外道が…!ぐっ…!」

 

《マスター!大丈夫ですか!?》

 

「ああ…でもマズいな…フィールドには『神龍印』だけ…しかもメイン1もスキップ…守りを固めないと…!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「メイン1をスキップしバトルフェイズ!そしてメイン2!手札から魔法カード『星呼びの天儀台』を発動!手札のレベル6『龍王印』をデッキの下に戻し2ドロー!」

 

「手札から魔法カード『招集の聖刻印』を発動!デッキから『シユウドラゴン』を手札に加える!さらに『神龍印』を生け贄に『ネフテドラゴン』を特殊召喚!」

紫のウジャト眼を刻んだ夜の龍が現れる DEF1600

 

「さらに『ネフテ』を生け贄に『シユウ』を特殊召喚!」

青色のウジャト眼の龍が現れる DEF1000

 

「さらに墓地の『ネフテ』の効果!墓地の『神龍印』を特殊召喚!」

再び太陽石が現れる DEF0

 

「そして手札から『ギャラクシーサーペント』を召喚!」

光輝く小さな竜が現れる ATK1000

 

『散々モンスターを召喚して何をするつもりだぁ?苦しみが長引くだけだぞぉ〜?』

 

「俺は最後まで諦めない!俺はレベル8の『神龍印』にレベル2『ギャラクシーサーペント』をチューニング!」

 

『何?なんだそれは…?』

 

8+2=10

 

「天よ!運命よ!事象の理よ!巡る天輪を乗せ此処に結実する!…光と共に降臨せよ!!シンクロ召喚!!『天穹覇龍ドラゴアセンション』!」

細長い身体を持つ白き決闘竜が降臨する DEF3000

 

『くっ…守備力3000だと…?』

 

「これならしばらくはもつはず…さらに手札から『超再生能力』を発動!そしてエンドフェイズ!効果により2ドロー!」

 

遊海LP 2850

シユウ ドラゴアセンション 手札2

 

 

 

 

 

『くっ…小癪なまねを…俺のターン!』

『メインフェイズをスキップしバトル!「Bloo-D」で「シユウ」を攻撃!』

血の雨がシユウを撃ち抜き、破壊する

 

「ぐっ…すまない『シユウ』…!」

 

『ターンエンドだ!』

DD LP4000

Bloo-D Dフォース 伏せ1 手札0

 

 

 

 

 

「熱い…!スプリンクラーはどうした…!普通作動するだろ…!」

二人の周りは炎に包まれている…スプリンクラーも作動せず火炎地獄のようになっている…

 

『ふっふっふっ…デュエルの前に少し仕掛けをさせてもらった…さぁ…焼け死ぬのが早いか決闘で負けるのが早いか…どちらだろうなぁ…?』

 

 

 

 

「くそっ…!俺のターン!ドロー!」

「手札から『トレードイン』を発動!手札の『神龍印』を墓地に送り2ドロー!…(このカードなら…!!)」

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!っ…ゴホッゴホッ!ヒュー…ヒュー…」

 

遊海LP2850

ドラゴアセンション 伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

 

「苦しい…回復が…追いつかない…!」

 

 

『ふっふっふっ…俺のターン!』

『ターンエンドだ…』

「今だ!リバースカード『強欲な贈り物』!相手は2枚ドローする!これで『Bloo-D』の効果は無くなる!」

 

『しまった…!』

DD LP4000

Bloo-D 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

『貴様…よくも…!』

 

「次のターンで…決める…!ゴホッ…」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「リバースカード『貪欲な瓶』発動!墓地の『シユウ』『ネフテ』『招集印』『反射印』『トレードイン』をデッキに戻し1ドロー!」

 

「手札から『死者蘇生』を発動!墓地の『神龍印』を特殊召喚!さらに魔法カード『銀龍の轟咆』を発動!墓地にいるもう一体の『神龍印』を特殊召喚!」

2つの太陽石が並ぶ DEF0 ×2

 

「2体の『神龍印』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイユニットを構築…エクシーズ召喚!現われろ!赤き太陽の龍!『聖刻神龍エネアード』!!」

赤き神龍が現れる ATK3000

 

『ほう…攻撃力3000か…しかし…時間切れだ…!』

 

「DD…何を…」《マスター!!》「えっ?」

 

 

 

ビキビキ…ガチャン!ガガガガッ…!

 

 

「なっ…!?しまった!アヤカ!フレア!…〜!」

熱に耐え切れなくなった照明が落下し…

 

『うわああ!!?』

 

ズズン…

 

 

 

 

『ふっふっふっ…残念だったなぁ、あと少し早ければ貴様の勝ちだったのにな!あっははははは!!』

 

落ちた照明器具の前には赤い帽子が転がり…やがて炎に焼かれ…燃え尽きた…

 

 

 

 

 

Duel Interruption

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜エドのクルーザー〜

 

プルルル…プルルル…

 

「出てくれ…DD…!」

エドは中継が切れてから3回程電話をかけている…しかし反応がなかったが…

 

 

『もしもし…エドか?』

 

「DD!大丈夫なのか!中継が切れて心配していたんだ!」

 

『ああ大丈夫だよ…今終わったところだ、エド…久しぶりに会わないか?俺の船をアカデミアの近くまで廻す、そこで落ち会おう…じゃあな…』プッ…

 

 

「おいDD!?…切れたか…そうだ、遊海さんに連絡を…」

 

プルルル…

 

『おかけになった電話は電源が切れているか…』

 

「遊海さん…どうしたんだ…?いつもすぐに出る人なのに…?」

 

エドは一抹の不安を感じながらもDDからの連絡を待った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜夜・DDの船〜

 

 

 

 

 

 

「DD来たぞ!どこにいる!」

エドはDDの船にやって来た、しかし明かりは無く人の気配も無い…

 

『待っていたよエド…よく来たじゃないか…!』

暗闇からDDが現れる

 

「DD…タイトル戦はどうなったんだ?あの後の事を何も知らないんだが…遊海さんはどうしたんだ?

 

『ああ白波か、彼は…死んだよ…』

 

「遊海さんが…死んだ…?どうして!!いったい何が!!」

 

「会場で炎に巻かれ…上から落ちてきた照明に押し潰されたんだ…即死だろう、これを受け取るがいい…彼の形見だ…」

 

DDが投げ渡したのは「聖刻龍ートフェニドラゴン」だった…そして…

 

 

《エド…殿…!その男は危険です…!逃げてください…!》

 

「カードの精霊が…!DD!お前何を…遊海さんに何をした!!」

 

『ふっふっふっ…このカードを召喚しただけさ…「究極のD」をね!!』

 

「究極のD…まさかあなたが父さんを!!」

 

『ああ!そうだよ!俺が奴を襲い、このカードを奪ったのさ!…さぁエド…最後の約束を果たそう…君と俺のタイトル戦を!!』

 

 

 

 

 

そしてエドとDDのデュエルが始まった、エドは先攻で「ドグマガイ」を召喚しDDのライフを半分にした、しかし返しのターンでDDは究極のD「Blood-D」を召喚し「ドグマガイ」を吸収、一転エドを追い詰める。

 

エドはDーHERO達の効果でBloo-Dを封じようとするがDーフォースとのコンボで阻まれついに残りライフ200まで追い詰められる。

 

しかし父の残した「究極のD」に対するカウンター・ダークエンジェルによりDーフォースとのコンボを封殺、ディバインガイにより勝負を決めた。

 

そしてBloo-Dに宿っていた「破滅の光」の抜け殻が爆発を起こし船は炎上する…エドは何とか「Bloo-D」と数枚のカードを回収し船を脱出した…。

 

 

 

 

「父さん…遊海さん…仇は討ったよ…!そして斎王…ボクは君を救ってみせる…!」

 

エドは炎上する船を前に決意を新たにする、父から聞いた話…斎王が「破滅の光」に侵されているという話…、彼を救うために決意を固めた。

 

《主殿…拙者はどうすれば…っ!?この気配は!》

 

【キュアアアア!!】

 

「なんだアレは…!炎の鳥…!?」

 

天空から突如、炎を纏ったモンスターが現れる…

 

【ギュアア!!!】

 

その鳥は急加速し炎上する船に突撃する…そして

 

ボカーン!! ゴボゴボ…

 

船は爆発し沈没する…そして…

 

 

 

 

【キュアア!】

 

海中から炎の鳥が浮上し…その正体が現れる…

 

「嘘だろ…あのモンスターは…!」

 

《ラーの翼神竜!フレア様!》

 

「エド!トフェニ!心配かけたな!よっと!」

 

ラー…フレアの背中から人影がクルーザーに跳び下りる…その人物は…

 

 

 

 

 

《主殿!!》

 

「遊海さん!」

 

 

現れた人影はDDが死んだと言っていた遊海だった。

 

「よっ!2人共何とかなったみたいだな?」

 

「遊海さん…まさか幽霊ですか…?」

 

《なわけありますか!ユウミはこの通り生きています!》

ラーが姿を変えユウミの肩に止まる

 

「いや〜危なかった…フレアとアヤカがいなければ本当に幽霊になる所だったよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡り…

 

 

 

 

 

 

 

「しまった!?アヤカ!フレア!」

 

《精霊アーマー強制展開!モード太陽神!》 

 

『うわああ!!?』

 

ズズン…

 

 

 

 

 

『ぐっ…あ…危機一髪だな…しかし身動きが…アチチッ!!?』

 

《ユウミ!今瓦礫を退かします!ハァァ!!》

 

【キュアア!!】

 

ガッシャーン

 

『ぐっ…ありがとうフレア…くっ…コヒュ…ヒュー』

 

《マスター!早く脱出を!》

 

『ああ…行こう…アチッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…という訳さ…2人がいなければやばかったよ…」

 

「遊海さん…貴方はいったい何者なんですか…?精霊の力を使い、神を従え…火事から生還するなんて…」

 

「ん?ただの決闘者だよ!大丈夫、遊戯も似たような事をやってたからな…!」

 

『ゴホッ…ゴホッ…ぐっ…』

 

「おっと、コイツを忘れてた!ヨイショ!」

 

「なっ!?DD!?」

 

遊海は背中に背負っていたモノを降ろす…それは身体に酷い火傷を負ったDDだった。

 

「コイツも『光の意思』の被害者だからな…一応助け出した…まぁもうデュエルはできないだろうし…それに罪は償わせないとな!…っと」フラッ

 

「遊海さん!!」

 

そこまで話して遊海は座り込む…よく見ると身体はボロボロで本人も酷い火傷を負っていた…。

 

 

「エド…すまんアカデミアに…もどっ…て…」

 

 

「遊海さん!しっかりしてください!遊海さん!?マズい!急がないと!」

 

 

 

 

 

その後エドはアカデミアに帰還、遊海は緊急入院する事になった…



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洗脳〜望まぬ決闘〜

ーよくこんな大怪我で生きてるわね、遊海先生…ー

 

ーああ…全身を90%以上火傷して気管まで焼けてるのにな…オレはスゴいとしか言えないよ…ー

 

ーそれだけじゃない、遊海さんは父さんとDDも救ってくれた…自分の身体をこんなにもボロボロにしてまで…、本当にヒーローみたいだ…ー

 

ーヒーロー使いにそれを言われたら本当にヒーローみたいだな…そういえば見つかったのか?ー

 

ーいいえ…十代達も手分けして探してるんだけど…ー

 

ー彼女はいったい何処へ行ったんだ…?ー


ここはどこだ…目が…見えない…耳は聞こえる…誰か…いる…?

 

 

「だ…れか…ぞごに…いるか…?」

声がガラガラだ…体中が…痛い…!!

 

 

「っ!?遊海先生!聞こえますか!遊海先生!」

 

「鮎川先生を呼んでくる!十代達も!」

 

「遊海さん!大丈夫ですか!ボクが判りますか?」

 

 

「エド…?万丈目に…明日香…?ここは…?」

 

「ここはアカデミアの緊急治療室です!遊海先生は酷い火傷をして運びこまれたんです!」

 

「そうだったのか…目が見えないんだが…包帯か…?」

 

「ええ、処置したお医者さんが驚いてましたよ…『なんで体の9割火傷してるのに生きてるんだ!?』って…」

 

「ははは…まぁ俺は『不死身』だからな!ハハハッ…ゴフッ!」

 

「遊海先生!?無理して喋らないでくれ!?」

 

 

 

 

 

 

 

エドによるとDDを助け出したあとすぐに倒れてしまった俺をアカデミアまで連れ戻してくれたそうだ、その後医師からの説明で重度の全身火傷で通常なら全治1年レベルの重体との説明があった。

 

DDはすぐにヘリで本土に搬送されたらしい、命に別状は無いが決闘者を続けるのは無理だそうだ。そして回復次第、フェニックス氏への強盗・殺人未遂、多数の地下決闘者への殺人についての聴取が始まるらしい。

 

 

 

 

 

 

「遊海さん、先程父さんの入院している病院から連絡があって父が無事に目覚めたそうです!肉体は衰えてますがリハビリ次第で元の生活に戻れるとの事です!」

 

「そうか!良かったなエド!…まだ会いには行かないのか?」

 

「はい…まずはボクの友…斎王を救ってからと思って…」

 

「そうか…「破滅の光」に洗脳されているんだよな、しかし奴はどれほど強くなっているかわからないぞ…もしかしたらお前でも…」

 

「はい…覚悟はできてます、もしボクが倒れてもまだアイツが…十代がいます…!でもボクはアイツに頼らずに自分1人で挑むつもりです…『Bloo-D』と共に…!」

 

「ならいい…エド、無理はするなよ?」

 

「はい…!」

 

「そうだ、エド…一つ聞いていいか?」

 

「どうしたんですか?」

 

「さっきから…翠の声が聞こえないんだが…近くにいるか…?」

 

「っ…それが行方がわからないんです、十代達が捜索しているんですが…」

 

 

「なんだと…?」

 

 

 

 

「お〜い遊海先生大丈…ミイラ男!?」

 

「アニキ…遊海先生ッスよ!」

 

「遊海先生、大丈夫ザウルス…?」

 

十代達が駆け込んでくる、万丈目が呼んできたようだ。

 

 

 

 

「十代…翠がいないって…どういう事だ…?」

 

「先生…それが…一昨日からいろんな事があって…」

 

 

 

 

十代によるとタイトル戦が終了し食事を摂ろうと寮に戻ると翠の姿が無い、しばらく待ったが帰ってこないから

トメさんに食事を作ってもらったそうだ。

 

そして夜にはオージーン王子の秘書・リンドがやってきて王子と世界を救ってほしいと頼まれたらしい。

 

そして昨日、翠も俺も戻らない中オージーンとのデュエルで洗脳は解除できた、そして斎王の企み…レーザー衛星『ソーラ』による破壊計画を知ったそうだ。

 

その後、俺が大怪我をした事、翠が本当に行方不明なのを知り今まで学園中を探してくれていたそうだ…。

 

 

 

「十代…どこまで調べた…?」

 

「アカデミア中は全部…ホワイト寮以外は…」

 

「斎王…!翠を人質にでもしたつもりか!…ぐうっ!!」

 

遊海はベッドから立ち上がろうとする

 

 

「遊海さん!無茶です!やめてください!」

 

「先生!?落ち着いてくれ!!そんな体で行ったら!先生が死んじまう!」

 

「翠は俺が助けなきゃ…ならないんだ!!アヤカ!!デュエルディスクを…!」

 

《マスター!ダメです…いくらマスターでも今動いたら…!》

アヤカが実体化し遊海を諌める…いくら不死身でも回復しなければダメだと…

 

「うわああ!?なんだドン!?どこからでてきたザウルス!?」

剣山が軽くパニックを起こしている…

 

「剣山!落ち着くッス!あれは遊海先生の精霊のアヤカさんッス!」

 

「ああ!遊海先生のパートナーなんだ!」

 

「そうかドン…びっくりしたザウルス…」

 

 

 

 

 

「なら…あった!現われろ『ANo.49 秘鳥フォーチュンチュン』!!」

《チュン!》

「49」と書かれた棒を持った青い小鳥が現れる

 

「あっ…可愛い…!」

明日香が反応する…意外に可愛いものが好きなようだ。

 

「頼むぞ…」

 

《チュンチュン!》

フォーチュンチュンが棒を振ると金色の光が遊海の身体を癒やしていく…

 

 

「スゴい…モンスターが実体化してる…!」

 

「これが遊海先生の力なんだドン…!」

 

エドと剣山が遊海の力を見て驚く

 

 

 

 

 

「遊海先生…どうしてそこまでして…翠さんは僕達が助け出すッス!だから…」

翔が遊海に声をかける、無理をしないでほしいと…

 

「翔、ダメなんだ…俺は今、最悪の事態を考えて動いてる…!」

 

「最悪の…事態…?」

 

「仮に翠が人質になっていた場合…それはお前達に任せられる…だけどもし、翠が洗脳されて立ち塞がった場合…お前達では敵わない…!下手をすればクロノス先生やカイザーでも無理だ…!」

 

「ええッ!?翠さん…そんなに強いんですか!?」

 

「嘘だろ…!あの優しい翠さんがそんな…!」

 

翔と万丈目が驚く、2人は調理をしてる翠しか見た事ないからな…

 

 

「翠はプロではないけど…ランキングで言えば5本の指に入る実力者だ…斎王に洗脳されていたら…到底敵う相手じゃない…俺以外にはな…!」

 

そう言うと遊海は顔の包帯を毟り取る…その下には痛ましいヤケドの痕が広がっているが、フォーチュンチュンの癒やしの力で少しづつ回復していく…。

 

「先生…しかし…」

 

「万丈目…頼みがある…!」

 

「なんだ?」

 

「他の生徒達を扇動して『光の結社』の残党の生徒たちを開放してくれ…!」

 

「えっ!?」

万丈目は目を点にする

 

「光の結社の生徒達がジェネックスで優勝したら何を願うかわからない…だからまだ参加資格のあるお前に頼みたいんだ!…できるか『万丈目サンダー』?」

遊海は万丈目を見る…その瞳には万丈目への信頼が感じられた…。

 

「…わかった!伝説の決闘者に頼まれたんなら…やるしかない!何故ならオレは!」

 

「「「一!十!百!千!」」」

 

「万丈目ブラックサンダー!!だからだ!」

万丈目に合わせて十代達が合いの手を入れていた…やっぱり仲がいいな…

 

 

 

「よし!やってやる!うぉぉー!!」

 

「待って!私も手伝うわ!…私にも責任の一端はあるもの!」

万丈目と明日香は光の結社の開放に向かった…あの2人に任せれば大丈夫だろう…あれ…何か忘れてるような…?…まぁ置いておこう…。

 

 

 

 

 

 

 

「よし…身体は回復してきた…ありがとう『フォーチュンチュン』!」

《チュチュン!》

フォーチュンチュンは一声鳴くとカードに戻っていった

 

「先生…行くのか?」

十代が聞いてくる

 

「ああ…だがあくまでお前とエド付いていくだけだ、斎王とはお前達が決着を…エド…?」

気が付くとエドの姿が消えている

 

「あれ…今、そこに居たのに…まさか!?」

 

「先走ったか!トフェニ!!俺と十代をホワイト寮に連れて行ってくれ!」

 

《御意!》

 

「遊海先生!僕も!」

 

「オレも行くドン!」

翔と剣山も行こうとするが…

 

「2人はオージーン王子の所に行ってくれ!『ソーラ』の起動装置は彼が持っていた筈だ!それを守るんだ!」

 

「わかったッス!」

 

「了解だドン!」

2人は急いで王子の元に向かう

 

 

 

「十代!行くぞ!しっかり掴まれ!」

 

「おう!!」

 

《行きますぞ!!》

 

トフェニに掴まった二人は窓から飛び出した…。

 

 

 

 

 

 

 

《到着です!主殿!》

空を飛ぶこと約1分、俺達はホワイト寮の前に着地する…しかし…。

 

「先生、ダメだ!鍵がかかってる!上から見た時に窓が割れてた!エドはあそこから入ったんだ!」

 

ブルー寮もといホワイト寮の扉は固く閉ざされ、人の気配も無い…

 

「十代!どいていろ…!精霊変身!モードクリフォート!」

光が遊海を包みその身体に鎧を纏う

 

「先生!?なんだよそれ!超カッコイイぜ!ヒーローみたいだ!!」

十代は変身した遊海を見て目を輝かせる

 

『ありがとよ!行くぜ!「キラーナックル」!!』

遊海が力いっぱい扉を殴りつける…

 

 

 

ズゴァンッッ!

 

 

 

それにより扉は粉々に砕け散った…弁償はちゃんとします…

 

 

「わぉ…スゲェ…!」

 

『行くぞ!十代!』

そして2人は寮に足を踏み入れたが…

 

 

『っ!?伏せろ!十代!』

 

「へっ!?うわっ!!」

 

 

ギュオン!

 

 

2人の身体のあった場所を影の刃が通過し、外にあった木が断ち切られ真っ二つになる

 

「うえっ!?何なんだ!?」

 

『…十代、俺から離れるなよ…!』

 

「えっ…あっ…!?」

十代の視線の先には…

 

 

〈侵入者を確認…排除します…〉

白いローブに身を包んだ翠が虚ろな瞳でこちらを睨んでいた…

 

 

 

 

 

 

「翠さん!やめてくれ!俺と遊海先生がわからないのかよ!!」

 

〈ワタシは斎王様に忠誠を誓いし者…それ以外は敵…!〉

翠は抑揚の無い声で言葉を紡ぐ

 

「そんな…!遊海先っ…!?」

 

『……!!!』ギリギリギリッ!!

十代は遊海に声をかけようとしたがそれはできなかった、何故ならば遊海が凄まじい怒気を放っていたからだ…

 

『斎王…許さん…』

その言葉は恐ろしい程普通の声色だったが、凄まじい怒りが込められている…

 

『十代…オレが相手をする…合図をしたら…走れ…!地下を目指すんだ…!』

 

「はい…!」

 

 

〈侵入者を撃退します…〉

翠の手に魔力が集まる…

 

『今だ!走れ!「再星結界」!』

紫色の結界が遊海と翠を包み込む!

 

「はい!!」

十代が走り出す!

 

〈影の刃!!〉

ギュオ! カキンッ!!

 

〈ッ…〉

翠の放った影の刃は遊海の展開した結界により防がれる

 

『十代!2人を頼んだぞ!!』

 

「ああ!遊海先生も翠さんを助け出してくれ!!」

 

『ああ…当たり前だ…!!!』

そして遊海は翠と対峙する…

 

 

 

 

 

 

 

〈侵入者1人の確保を失敗…もう1人をデュエルにて排除します…全ては斎王様のために…〉

翠はデュエルディスクを構える

 

『翠…今、助け出す!そのためなら…俺は…本気だ!頼むぞ…相棒!』

その瞬間、普段は黒目であり遊海の瞳が赤い光を放った

 

《はい!マスター!必ず翠さんを…救います!》

 

 

 

 

 

       『〈デュエル!!〉』

 

 

 

 

 

 

翠(洗脳)LP4000

遊海LP4000

 

・マスタールール3

 

 

 

 

 

 

〈ワタシのターン、ドロー〉

〈手札から「影依融合」を発動、手札の「シャドール・ビースト」、「シャドール・ファルコン」を融合…「エルシャドール・ミドラーシュ」を融合召喚〉

緑色の髪の竜に乗った少女の人形が現れる ATK2200

 

『ウィンダ!』

 

《ユウミさん…!ミドリを…助けて…!お願い…!》

ウィンダは途切れ途切れながらも遊海に助けを求める…洗脳されてしまったマスターを救ってほしいと…。

 

『ああ!翠は俺が助けだす!』

 

《お願い…!》

 

『(しかし謎なのは…どうして翠が洗脳に掛かったかだ…俺達の洗脳耐性は高い筈だが…)』

 

〈融合素材となった『ビースト』の効果、1ドロー、『ファルコン』の効果、自身を裏守備で特殊召喚、さらに手札からフィールド魔法『光の結界』を発動〉

フィールドを白い光が包み込む…

 

『「光の結界」だと?』

光の結界…たしかアルカナフォース専用のフィールド魔法だったはずだが…なんで翠が…?そもそも意味が…

 

《あ…ああ…!ダメ…力が…!》

 

《マス…ター実体化を…維持でき…ません…ゴメン…ナサ…イ…!》

結界が発動した途端、2体の精霊に変化が起きる。フィールドに出ていたウィンダは意思を失いただの人形に、アヤカは実体化を保てず姿を消してしまう…そして変化は遊海にも…

 

「なっ…精霊アーマーが…解除された…!?ぐっ…!?」

 

遊海の纏っていたアーマーが解除され、さらに精霊の力で維持していた身体への回復・強化が解除される、それにより押さえ込んでいた凄まじい痛みが遊海に襲いかかる。

 

「ぐっ…がああぁぁ!?…何…が…!?」

 

〈「光の結界」の効果により、精霊の力は発動できない…さらにフィールドの「アルカナフォース」モンスター以外のモンスター効果も無効になる、カードを一枚伏せてターンエンド〉

 

翠LP4000

ミドラ 裏ファルコン 伏せ1 光結界 手札2

 

 

 

 

 

「ぐうっ…翠…正気に戻ってくれ…!俺はお前とはこんな形で決闘したく無い…!」

遊海は痛みを堪えながら翠の説得を試みるが…

 

〈ワタシは正気です…ワタシの忠誠は斎王様の為に…〉

 

「翠…!くそっ!!」

 

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

「手札から…『ツール』と『アセンブラ』をペンデュラムスケールにセッティング…!」

遊海の両脇に光の柱が現れる。

 

「『ツール』の効果!ライフを800払い『ゲノム』を手札に加える!そしてペンデュラム召喚!我が魂を守りし大いなる力よ!想い人を救う力を与えよ!ペンデュラム召喚!手札から『ゲノム』『アーカイブ』『ディスク』!」

 

遊海LP4000→3200

三体のクリフォートモンスターが降臨する

ATK 2400

  2400

   2800

 

「バトル!『ディスク』で『ミドラーシュ』を攻撃!」

ディスクの体当たりでミドラーシュが吹き飛ぶ

 

〈…!〉

翠LP4000→3400

 

〈破壊された「ミドラーシュ」の効果で墓地の「影依融合」を手札に加える〉

 

「『アーカイブ』で裏守備モンスターを攻撃!」

操り人形の鳥が粉々になる

〈リバースした「ファルコン」の効果、墓地の「ビースト」をセット〉

 

「『ゲノム』で『ビースト』を攻撃!」

 

〈「ビースト」のリバース効果、2枚引いて一枚墓地へ〉

 

墓地送り

ドラゴン

 

〈「ドラゴン」の効果、「ツール」を破壊する〉

獅子のような人形竜の幻影がスケールのツールを破壊する。

 

「く…!?しまった!?…メイン2!3体のクリフォートモンスターを生け贄に現われろマイフェイバリット!『アポクリフォート・キラー』!」

遊海の相棒たる機殻の王が降臨するが…

 

〈リバースカード「奈落の落とし穴」「キラー」を除外する〉

 

「何っ!?」

召喚されたキラーはそのまま異次元へ送還される…通常ならあり得ないが光の結界により耐性が無効になっていた。

 

「すまない『キラー』…!しかし、リリースされた『ゲノム』の効果で…砕け散れ!『光の結界』!」

 

光の結界が破壊される、それと共に光のオーラが霧散していく…

 

「(そうか!カードを起点に洗脳をかけたのか!…それなら俺達にも効いた訳だ!しかし起点は破壊した!これで…!)」

 

〈…よくも斎王様のカードを…!〉

翠に変化は見られない、それどころかその視線は氷のように冷たくなっていく…

 

「洗脳の起点はこのカードじゃないのか…!俺はターンエンド!『アセンブラ』の効果で3枚ドロー!」

遊海LP3200 スケールアセンブラ  手札4

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…精霊の力が戻ってきた…!これなら何とか…!」

 

〈対象の排除を開始します…〉

 

 

 

 

 

 

 

〈ワタシのターン、ドロー〉

〈「サイクロン」を発動、「アセンブラ」を破壊…〉

竜巻が起こり遊海の場ががら空きになる

 

「くっ…!」

 

〈手札から「影依融合」を発動、手札の「ハウンド」と「アイス・ハンド」を融合、「エルシャドール・アノマリリス」を融合召喚!〉

その身に氷結界の力を宿し、インフェルノイドに寄生された影の巨人…アノマリリスが現れた ATK2700

 

〈そして手札から装備魔法…光の力「白のヴェール」を装備…〉

 

アノマリリスの身体が白に染まり、翠も白いオーラを纏う…

 

「洗脳の起点はそれか!!」

 

〈バトル…「アノマリリス」でダイレクトアタック「氷結の白き煉獄」〉

アノマリリスから凄まじい冷気が溢れる…そして…

 

「なっ…!?身体が凍っ……!(寒い…!動けない…!)」

 

〈やりなさい…〉

あまりの冷気に遊海の身体が凍りついた…そしてアノマリリスは氷塊となった遊海を蹴り上げ壁に叩き付ける

 

「ガッ…ゴボッ!?ぐあっ…!!」

 

遊海LP3200→500

 

 

〈ワタシはターンエンド〉

翠LP3400

アノマリリス(白のヴェール)手札1

 

 

 

 

 

 

 

 

「…翠…こうしてると最初に会った時を思い出すな…」

 

〈…?〉

翠は言っている意味がわからないと首を傾げる

 

「転生してすぐに不良に襲われて…ウィンダが暴走して…俺がデュエルでお前を止めて…、あの時もお前の攻撃で俺はボロボロで…そういえばあれが初めての闇のゲームだったなぁ…」

 

〈…〉

 

「もうあれから8年近く経つんだよな…、あの時は俺達が付き合って結婚するなんて思わなかったよな…!」

 

〈…〉

 

「翠…改めて伝えよう…」

 

〈…?〉

 

「『翠…お前と出会えて良かった!俺と結婚してくれて…ありがとう…!!』」

 

〈…!!〉ツー

翠の眼から一筋の涙が零れ落ちる…

 

「俺は…命をかけてお前を救い出す!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!」

デッキトップが輝く…それは氷を融かすような暖かい光だった

 

「ドロー!!!」

 

《ユウミ…貴方の想い、確かに受け取りました!我が力を使いなさい!!》

 

「手札から魔法カード『召喚士のスキル』を発動!デッキの『ツール』を手札に加える!」

 

「ペンデュラムスケールに『ツール』と『アーカイブ』をセッティング!我が魂を守りし力よ!悪しき光を祓う力を!ペンデュラム召喚!『ディスク』『ゲノム』『アセンブラ』!!」

再び3体の機械が現れる

ATK1800

  1800

  2400

 

「そして…俺は3体のモンスターを生け贄に捧げる…!」

 

〈再び「キラー」を出すつもりですか?それではトドメは…〉

 

「降臨せよ…!我が友たる太陽神!『ラーの翼神竜』!!」

 

〈何!?〉

3体の機械が生け贄となりデュエルモンスターズにおける原初の神…ラーが降臨する ATK?

 

「スゥ…∈∋∉∏∑√∌∣∝∝∏√∞∋∑…展開せよ!バトルモード!『ラー』の攻撃力は生け贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力の合計となる!」

 

【悪しき光よ…我が友の妻を冒し、友を傷つけ、悲しませるとは言語道断!我が炎にて…果てるがいい!】

激しい怒りと共にラーが神鳥の姿に展開する

 

ATK7600

 

〈攻撃力7600…!〉

 

「バトル!『ラー』で『アノマリリス』を攻撃!神聖なる焔で偽りの光を浄化せよ…『ゴッドブレイズキャノン』!!」

 

【消え去れ!破壊の意思よ!!】

ラーの一撃でアノマリリスは消え去り、白きオーラは完全に消滅した…

 

「遊海…さん…!」

 

翠LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ…私は…?確か斎王にデュエルで負けて…?何?この白いローブ?」

気絶していた翠は目を覚ました、既に洗脳の影響も無く普段の状態に戻っている…

 

「ここは…ブルー寮?何だかボロボロ…?」

 

「目が覚めたか?…翠」

 

「遊海…さん?どこに…っ!?遊海さん!!!」 

 

翠が身体を起こす、最初遊海がどこにいるかわからなかったが…それはすぐに目に入った…下半身と上半身が別れ壁に持たれかかる遊海の姿を…

 

「遊海さん!?そんな…どうして…!いったい何が…!?」

 

「いや〜…デュエルでドジってな…容赦ない奴が相手で体を壊されちまった…幸い傷口が凍ってて痛みは感じないんだが…これは生徒達には…見せられないな…ゴブッ…!」

 

「あ…あぁぁ…!は…早くお医者さんに見せないと!!?」

 

「翠…大丈夫だ…俺達は不死身だ…身体をくっつけとけば治るさ…ぐうっ!?」

 

「遊海さん!動いちゃダメ!!」

 

「翠…それよりも俺を人目の無い所に運んでくれ…人が来たら色々不味…ぐっ…ダメだ…安心したら意識…が…」

 

「遊海さん!しっかりして〜!!?」

 

斎王は十代が破滅の光を倒した事で元の優しい性格に戻った。

 

レーザー衛星のソーラはネオスと精神が恐竜化し幽体離脱したスペースザウルス・剣山により破壊された…その後行方不明だった斎王の妹・美寿知も海馬コーポレーションに保護され無事だった。斎王は美寿知と共に本土に戻り病院で療養するそうだ…。

 

そして遊海は…

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…あ…あと10歩!!」

 

「遊海さん!もう少し!」

 

《マスター!ファイト!!》

 

遊海はあのあと2週間近く眠り続けた…、その間に身体は治り現在リハビリ中である…

 

 

「っぐ!ハァ…ハァ…しばらくは…痛いのは懲り懲りだよ…翠…」

 

「私もです遊海さん…」

 

《マスター…無理はしないでくださいよ〜!》

 

そして時は過ぎてゆく…




更新遅れてすいません…なかなかネタが思いつきませんでした…。


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学園祭〜紐解かれし記憶〜

投稿空いてすいません!

それでは第2章エピローグをどうぞ!


ー出ていくがいい●●●●、コイツの身体は我が手中、貴様に入る余地など無いわ…ー

 

ーワレ、破滅を導くモノ…この身体を用い全てを破壊する…出ていくのは貴様だ■■■■■…ー

 

ーならば…決めるしかないな…!この肉体を得るのが貴様なのか…我なのか…!ー

 

ー望むところ…この肉体はワレが貰うぞ…!っ!?ー

 

【我が友に巣食う邪悪な者よ!消え去れ!「ゴッドブレイズキャノン」!!】

 

ー貴様ァ!一度ならず2度までも…!!ー

 

ー神の写し身…!おのれぇ…!!ー

 

ボンッ…ジュワァ…

 

【…ひとまず撃退できましたか…ユウミの魂に何かが混ざっているからと見にきたら…ありがとうユウスケ、もう1人のマスター…】

 

『すまねぇなラー…我じゃあアイツらは手に余る、だからお前を呼んだんだ…遊海には内緒で頼むぜ、今アイツは弱りきってる…余計な負担はかけたくねぇ…』

 

【えぇ、わかってますよ…フフっ!】

 

『?何が可笑しい?』

 

【いえ…意外と優しいんですね!】

 

『当たり前だ、アイツに何かあったら我も被害を受けるからな…この前は…痛かった…』

 

【彼も無鉄砲ですからね…しかしそれがユウミの長所でもあります、私も見守っていきますよ】

 

『ありがとよラー、そろそろ戻ったらどうだ?我は出られないが…そろそろ学園祭だろう?楽しんできたらどうだ?』

 

【ああ!そうでした!人間のお祭りには初めて参加するから楽しみだったんですよ!そろそろ戻りますね!…それからユウスケ、一ついいですか?】

 

『何だ?』

 

【私にはユウミから貰った『フレア』という名前があります…できればその名で呼んでほしいのですが…】

 

『…神を愛称で呼ぶなんて畏れ多いよ、ラー…』

 

【そうですか…では!また会いましょう!】

 

 

 

 

 

 

『遊海…無理はするなよな…我も辛い…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《起きてくださいマスター!朝ですよ!》

 

《ユウミ!今日はお祭りなのでしょう!遊びにいきましょう!》

 

「う…ん…、おはよう2人とも…そうか、そんな日か…」

 

 

光の結社との戦いから数カ月が過ぎた…その後特に大きなイベントも無く平和な時間が流れていた…そして今日は学園祭の日だ…。

 

俺は()を手に持ち立ち上がる…洗脳された翠とのデュエルで泣き別れた体はくっついたが完全には治癒していない…今はリハビリをしつつ元の状態に戻そうとしているところだ…最低でも新学期までに治さないと…

 

 

《遊海さん!おはよう!翠が朝ご飯できたって!》

 

「ありがとうウィンダ、今行くよ!…ヨイショ!」

 

 

 

 

「…階段かぁ…なんで俺達の部屋2階にしたんだろう…」

 

《マスター、毎日の事ですけど…気をつけてくださいね…》

 

「大丈夫だよアヤカ…ヨイショ…一段ずつ降りていけば…問題は……あっ!?」足もつれ

 

《あ…》

 

ドンガラガッシャドシーン!

 

《いわんこっちゃないですねマスター…大丈夫ですか?》

 

「フレアがたくさん回ってる〜…」

 

《ユウミ!しっかりしなさい!私は1体だけですから!大丈夫ですか!?》

 

「何事ッス?スゴい音が…遊海先生!?大丈夫ッスか!?」

あまりの音に部屋から翔が飛び出してきた、その姿はブラックマジシャンのコスプレだった…一応イエロー生の筈なんだけど…

 

「ああ…翔、驚かせてごめんな…階段から落ちちまった…イタタタ…」

 

「先生!?まだ無理しないでほしいっす!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翠…おはよう〜…」

 

「ん?おはようございます遊海さ…!どうしたんですか!?」

 

食堂に現れた遊海は既にボロボロになっていた、片手で杖を突き、片手は翔に支えられている…

 

「ごめん、また階段から落っこちた…やっぱりしばらく一階に部屋を移すかな…アタタタ…」

 

「遊海先生無茶しないでほしいっす…まだあの怪我から治りきってないんスから…」

 

「ああ…すまないな翔、全く翠を助けたは良いけどシャンデリアの下敷きになるなんて…痛いの苦手なんだけどなぁ…」

 

十代や他の生徒達には翠を助ける時のデュエルであまりの激戦にブルー寮のシャンデリアが落下、その下敷きになって足を骨折したという事になっている…流石に闇のデュエルで遊/海になったなんて知られたら生徒達の精神衛生上マズイからな…あの時傷口が凍って出血量が少なくなってて良かった…。

 

「遊海さん…せめて手すりに掴まるとか一段ずつ降りるとか…」

 

「やったんだけどなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…今日はどうするんですか?」

食事が終わった後翠が訊ねてくる

 

「今日はリハビリも兼ねてアカデミアを散歩してみるよ…フレアも楽しみにしてるみたいだし…」

 

《私はいつも祀られる側でしたから参加するのは初めてなんですよ〜!》

フレアが小鳥の姿で遊海の肩に実体化しながら話しだす、やはり楽しみなようだ…

 

「という訳だから一回りゆっくり歩いてくるよ…大丈夫、今のアカデミアには危険は無いはずだから…」

 

「…無理しないでくださいね…?」

 

「ああ…大丈夫だよ!行ってきます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《うわ〜スゴい活気ですね〜》

 

俺達はアカデミア校舎の同好会ブースに来ている、アカデミアにも普通の高校のように音楽同好会やダンス部、家庭科部などもありそれぞれ生徒達が運営している。

 

《ユウミ!あの丸に細い棒が突き刺さった絵はなんですか?》

 

「ん?あれは…家庭科部のお団子屋さんだな、みたらしにアンコ、あと…モウヤンのカレー味…?」

 

《ユウミ!あの緑色の飲み物は?》

 

「あれは茶道部の野点…抹茶っていう飲み物だよ、日本の文化の一つなんだ!」

 

《…じゃあ…あの黒いウサギの服を着たりフリフリの服を着た女生徒達のお店は?》

 

「メイド喫茶…誰だ許可出したの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セニョール遊海!身体は大丈夫なノーネ?」

 

「貴方が全身をヤケドして足を折ったと聞いた時は心配したでアール」

 

「クロノス先生…ナポレオン教頭…その節はご迷惑お掛けしました…ブルー寮は大丈夫ですか…?」

 

 

会場を見て回っているとナポレオン教頭とクロノス先生に遭遇した、やはり二人は気が合うのかな…?

 

 

「ブルー寮の内装はなんとかなったノーネ!でも外装は夏休みに生徒達に反省のためにやって貰うノーネ!!」

 

「しかし遊海先生…翠女史と、どんなデュエルをしたでアール?あんなにボロボロの内装は初めて見たでアール…」

 

「アハハハ…すいませんでした、全部終わったら請求をお願いします…」

 

「大丈夫なノーネ!校長が予算を下ろしてくれるそうなノーネ!だから遊海先生は自分の身体を治すのに専念してほしいノーネ!」

 

「ありがとうございます…!、あとで校長にお礼に行かないと…」

 

「大丈夫でアール!遊海先生がこれまでたくさんの貢献をしてくれているのを皆知ってるでアール!」

 

「たまにはワタシたちを頼ってほしいノーネ!」

 

「ありがとうございます、クロノス先生、ナポレオン教頭…!」

 

「そういえば遊海先生…その肩に乗っている小鳥は何なノーネ?この島では見ない鳥なノーネ?」

 

「本当でアール…しかも金色に光ってるでアール?」

 

「げっ…!?フレア!?」

 

【キュア?】

《えっ?実体化しちゃダメでした…?》

 

「…ハァ……」

 

《マスター…ドンマイです…》

 

 

その後先生達には知り合い(ペガサス会長)から預かっている珍しい鳥だと説明してその場を凌いだ…二人が簡単に信じてくれてよかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカデミアを一回りした遊海達はアカデミア端の野原で休息をとっていた、海風が柔らかく頬を撫でとても気持ちがいい場所だ…

 

《あ〜楽しかった!ありがとうユウミ!》

 

「楽しんでもらえたのなら何よりだよフレア…今度は翠やウィンダ達も連れて世界のお祭りを見にいってみよううか?世界にはいろんなお祭りがあるからな!」

 

《それは楽しみですねマスター!ちなみどんなお祭りがあるんですか?》

 

「そうだな…町の中で牛に追いかけられる祭とか…坂を転げ落ちながらチーズをゲットするお祭り、豊穣を願ってトマトを投げ合うお祭りもあったかな…」

 

《…なんだか危なそうなお祭りも混ざってますね…何かメガネのおじさんが「アカーン!」とか言いながらひどい目に合う風景が…》

 

《でも面白そうですね!いつか連れてってくださいねユウミ!》

 

「ああ…いつか皆で行こう…!楽しみに待っててくれ!」

 

《はい!…ん…?》

 

「どうしたフレア?」

 

《いえ…向こうに人影が…?》

 

「こんな日に…?誰だ?…いってみるか…」

遊海達は人影の方に向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

十代はみんなの目を盗んで崖に来ていた…ここは彼の昼寝スポットである…

 

「…ふぅ…一休み…」

 

『ニャーオ…』

 

「おっ!ファラオ、お前も一緒に昼寝するか?」

 

『ゴロゴロ…ニャーン!』ポン!

ファラオから光の玉が飛び出す

 

『十代君学園祭はいいのかにゃ?』

 

「あっ、大徳寺先生…大丈夫だよ、翔も剣山も上手くやってくれてるし…みんなは万丈目に挑むのに忙しそうだったし…」

 

『だからってサボっちゃだめだにゃ!というか世界を救った英雄が役割をサボっちゃダメだにゃ!』

 

「大丈夫…少しだけ…」

 

『…そんな事言ってると「鬼」がくるよ…?』

 

「鬼?アカデミアにはそんなの…」

 

「…サボってる奴はだ〜れだ?」

 

「どわぁ!?遊海先生!?」

横になっていた十代の正面に見覚えのある赤帽子が現れる…遊海だった。

 

 

 

 

 

 

「大徳寺先生、久しぶりですね?元気でしたか?」

 

『やぁ遊海君!この前は災難だったにゃ…と言うかよく生きてるにゃ…あんな大怪我だったのに…』

 

『ニャーン…』

 

「えっ?先生…足の骨折だったんじゃ…」

 

『十代君…遊海君は命を賭けて翠さんを救おうとしたんだにゃ…そのせいで遊海君は…』

 

「もしかしてスゲェ重症だったのか?…たしかに2週間面会謝絶だったけど…」

 

「まぁ…そうだな…身体が真っ二つになったからな…」

そう言って遊海は服を捲りあげる…その下には身体を横に一周する傷がついていた…

 

「先生…その傷は…!?」

 

「まったく…『破滅の光』もいい仕事をしたよ…翠の記憶を封印して洗脳、そして闇のデュエル・リアルダメージ付き…洗脳された翠の一撃で身体が泣き別れてな…不死身の身体じゃなかったら即死だったよ、大徳寺先生…どうして知ってるんですか…」

 

『翠さんが精霊達と一緒に君をレッド寮に運んできた時に見ちゃったんだにゃ…あの時の翠さんは必死だったにゃ…』

 

「遊海先生…よく生きてるな…」

 

「まぁ…少し後遺症があるけどね…そのうちに治るさ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「で…どうしたんだ十代?コスプレはしないのか?」

 

「ああ…何人かとデュエルしたんだけど…手応えが無くて…」

 

「ネオスから聞いたぞ?スゴいデュエルだったそうだな…」

 

「うん、斎王の運命力…ターンスキップの『ザワールド』…そして『ライトルーラー』、それに宇宙の衛星…色んな事があって疲れちまった…」

 

「フッ…お前らしくもないな十代、いつもの明るいデュエルを楽しむお前はどうした?」

 

「いや…楽しいんだけど…物足りないんだ…この1年…エドや剣山…光の結社の決闘者達、そして斎王…色んな奴らとデュエルできた…たしかにワクワクはしたんだけど…いつも何かを背負って戦ってたから…」

 

「なるほどな…たしかに負けたらヤバイデュエルばっかりだったからな…俺も似たような時期があったな…」

 

「先生も?…あっ…」

 

「『神』のカードを賭けた決闘に俺の魂や人の命、世界を賭けた決闘をしてきた…たまに負けて封印されたり死にかけたりしたけど…今となってはいい思い出だよ…」

そう言うと遊海は目を閉じる、その脳裏にはマリクやダーツ…そしてゾークとの闘いの様子が蘇っていた…。

 

「先生…」

 

「俺も命がけのデュエルで楽しむ事を忘れて戦ってしまう事もあった…十代、デュエルモンスターズはな人を傷つけるためにあるんじゃない…相手と心を通わせ、相手を楽しませ…自分が楽しむ為に作られたんだ。もちろんセブンスターズの時みたいに何かを背負って戦わなきゃならない事もある…それでも俺は…楽しむ事を忘れずにデュエルをしていきたいんだ…」

 

「先生…ありがとう、少し気が楽になったよ…」

十代から感じていた緊張の気配が抜けていく…少しは肩の荷が降りたようだ…

 

「先生…頼みがあるんだ!」

 

「どうした?」

 

「俺とデュエルしてください!」

 

「おっ?」

 

「いつも思ってたんだ!せっかく伝説の決闘者が近くにいるのになんでデュエルをしなかったんだって!遊海先生…今の俺の実力を見てください!」

 

「…いいだろう…ただしテーブルデュエルで頼む、まだ調子が戻ってないんだ…たしか切り株があったからそこでやろう!」

 

「やったぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「十代…準備はいいか?」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

       「「デュエル!!」」

 

 

 

 

十代LP4000

遊海LP4000

 

・テーブルデュエル

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『融合』を発動!手札の『バーストレディ』と『フェザーマン』を融合!現われろ!マイフェイバリットカード『E・HERO フレイム・ウィングマン』!」

 

ATK2100

 

「いきなり来たか…!」

 

「カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

十代LP4000

フレイムウィング 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「相手の場にのみモンスターが存在する時『聖刻龍ートフェニドラゴン』は特殊召喚できる!」

 

ATK2100

 

「そのデッキは伝説の…!」

 

「ああ…俺がバトルシティで準優勝した時のデッキだ!さぁ…伝説に挑んでこい!」

 

「望むところだ!」

 

「俺は『トフェニ』を生け贄に『シユウドラゴン』を特殊召喚!上級聖刻モンスターは聖刻モンスターを生け贄にする事で特殊召喚できる!さらに生け贄にされた『トフェニ』の効果!デッキから通常モンスター『エレキテルドラゴン』を守備表示で特殊召喚!この時攻守は0になる!」

 

ATK2200

 

DEF0

 

 

「攻守0にして通常モンスターを召喚…?なんの意味が…」

 

「十代、未来の力を見せてやろう!俺はレベル6『シユウ』と『エレキテル』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!ランク6『聖刻龍王アトゥムス』!」

2枚のモンスターが重ねられ、黒縁のモンスターカードが召喚される

 

ATK2400

 

「黒いモンスターカード…!?レベルの星が黒い…!?遊海先生これは…!」

 

「エクシーズモンスター…魔法カードを使わず同じレベルのモンスター2体を重ねて融合デッキ…エクストラデッキから召喚する方法だ!そしてこのモンスターは『レベル』の代わりに『ランク』という数字を持っている!よってレベルを参照する効果を受けない!」

 

「スゲェ!そんなモンスターがいるのか…!ワクワクしてきたぜ!」

 

「そしてその効果も強力だ!『アトゥムス』の効果!オーバーレイユニットを1つ取り除き効果発動!デッキからドラゴン族モンスターを攻守0にして特殊召喚できる!現われろ!『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』!」

 

DEF 0

 

 

「『レッドアイズ』…『ダークネス』…っつ!?」

突然十代が頭を押さえる

 

「十代?どうした…!」

 

「いや…大丈夫です!ちょっと頭が…」

 

「…止めとくか?」

 

「大丈夫です!続けてください!」

 

 

「わかった…いくぞ!『レダメ』の効果!手札の『聖刻龍ーウシルドラゴン』を特殊召喚!」

 

ATK 2600

 

「そして手札から『ドラゴンゲイブ』を通常召喚!」

 

ATK1800

 

「スゲェ…モンスターが並んでいく…!」

 

「バトル!『ウシル』で『フレイム・ウィングマン』を攻撃!」

 

「やられた!すまん『フレイムウィングマン』!」

 

十代LP4000→3500

 

 

「『ゲイブ』でダイレクトアタック!」

 

「リバースカード『ヒーロー見参!』!遊海先生!選んでくれ!」 

十代が手札を掲げる

「ならば…右のカードだ!」

 

「大当たりだぜ先生!来い…『ネオス』!」

十代の新たな切り札が召喚される

 

ATK2500

 

《十代、遊海とのデュエルか?》

 

「ああ!伝説に挑むぜ!『ネオス』!」 

 

《わかった!》

 

「攻撃中断!…カードを伏せてターンエンド!」

 

遊海LP4000

アトゥムス レダメ ゲイブ ウシル 伏せ1 手札1

 

 

 

「スゲェ…これが本当のプロの力か…!!」

 

 

「さぁ来い十代!お前の力を見せてみろ!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「行くぜ!手札からフィールド魔法『ネオスペース』を発動!これで『ネオス』の攻撃力は500アップする!」

 

ATK2500→3000

 

「さらに手札から『N・エアハミングバード』を召喚!」

 

ATK800

 

「『エアハミングバード』の効果!遊海先生の手札枚数一枚につきライフを500回復する!『ハニーサック』!」

 

十代LP3500→4000

 

「ぬっ!ライフを戻されたか!」

 

「勝負はこれからだぜ、先生!俺は『ネオス』と『エアハミングバード』をデッキに戻しコンタクト融合!『エアー・ネオス』を召喚!」

 

ATK2500→3000

 

「きたか、ネオスの新たな姿…!」

 

「バトル!『エアーネオス』で『レッドアイズを攻撃!『スカイリップウィング』!」

 

「リバースカードオープン!『抹殺の聖刻印』!『ゲイブ』を生け贄に『エアーネオス』を除外する!」

 

「しまった!」

 

「生け贄にした『ゲイブ』の効果でデッキから『神龍の聖刻印』を特殊召喚!」

 

DEF 0

 

「流石に強すぎるぜ先生…!ターンエンド!」

 

十代LP4000

ネオスペース 手札0

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『アトゥムス』の効果!ORUを1つ取り除きデッキから2体目の『神龍印』を特殊召喚!」

 

DEF0

 

「行くぜ!俺は2体のレベル8『神龍印』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現われろランク8『聖刻神龍エネアード』!」 

 

ATK3000

 

「攻撃力3000…!これが聖刻デッキの切り札…!」 

 

「ああそうだ!バトル!『エネアード』と『ウシル』でダイレクトアタック!」

 

「負けたぁ〜!!」

 

十代LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり強すぎるぜ先生…これがプロの世界か…!」

 

「ああ!そうだ十代!お前が目指す世界にはこれよりも強いデッキを使う決闘者達がいる!飽きるのはまだ早いぜ!」

 

「これが世界かぁ…なんかスゲェぜ!ワクワクしてきた!」

 

「フッ、少しはデュエルの楽しさを思い出したか…精進しろよ?十代?…勉強を含めてな!」

 

「先生〜、そりゃないぜ〜…」

 

「「プッ…アハハハハ!」」

 

 

 

 

 

「でも『ネオス』が除外されちまうとはな〜自分のお気に入りのカードが除外されると…なんか悲しいぜ…」

 

「すまなかったな十代、聖刻の戦い方は相手を妨害しつつ自分の盤面を安定させるデッキなんだ…もう少し別のデッキがよかったか?」

 

「いいや!先生のおかげで世界のレベルが知れた、だから大丈夫だぜ!次に戦う時は勝ってみせる!」

 

「その意気だ十代!お前ならいつか俺を超えられるはずだ、カードを…精霊達を大切にするお前ならな…」

遊海はそう言いながら肩に止まっていたフレアを撫でる…いつのまにか実体化していたようだ

 

《キュルル…ユウミ!十代!見事なデュエルでした!十代も選ばれた決闘者ですね!私が認定します!》

 

「おっ!十代よかったな、神からのお墨付きだぞ?」

 

「ありがとうラー、いやフレア!…というか先生やっぱりすげー…神を仲間にするなんて…」

 

「ああ…もう仲間というか家族だなぁ…、アヤカに翠…トフェニにフレア、そしてウィンダとウェン…転生してこんな家族を作れるなんて思わなかったよ…」

 

《マスター…》

 

「家族かぁ…父さんと母さん、どうしてるかな…あれ…あとだれかいたような…?」

 

「十代…?どうした?」

 

「俺の家族…家族…友達…カード…精霊…!?うぐっ!?」

十代が頭を押さえる…

 

「十代!どうした!?」

 

「頭が…イタイ…!!っぐううぅぅう!?」

 

 

 

 

 

 

 

ジジッ

 

「よろしくお願いします!」

 

《十代…君なら勝てる!》

 

「さぁ!楽しいデュエルにしよう!」

 

 

 

 

 

「バトル!『レッドアイズ』で『ユ●●』に攻撃!」

 

「『ユベ●』の効果!戦闘で破壊されず、このカードが攻撃された時相手の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

「リバース罠『抹殺の聖刻印』!『トフェニ』を生け贄にして『●●ル』をゲームから除外する!」

 

「そんな!?」

 

《十代…!》

 

 

 

【デュエル終了〜!勝者はマスクマンこと白波 遊海さんで〜す!!】

 

 

 

 

《キサマ…よくも十代に恥を…!喰らえ!》

 

「ダメ!『ユベル』!!!」

 

 

 

 

 

「十代君…カードを…君の精霊を大切にするんだよ…!」

 

 

 

 

ジジッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十代!!大丈夫か!オイ!!」

遊海は倒れてしまった十代を助け起こす…その顔には脂汗が滲んでいて…

 

「っぐ…あ…」

十代がゆっくり目を覚ます…その瞳からは涙を流していて…

 

「十代!?しっかりしろ!どうした!」

 

「ユベ…ル…」

 

「っ!?十代…まさか…!?」

遊海は青褪める、十代はユベルの記憶…そして幼少期の記憶を封印されていた…それが…

 

「遊海先生、俺は…あなたと会ったことがある…海馬ランドでのマスクのデュエリストとして…それに俺が小さい時の精霊…『ユベル』の事も…!」

 

「…思い出しちゃったか…十代…」

遊海は諦めたかのように呟く

 

「遊海先生…それじゃあ…最初から…!」

十代は身体を起こし遊海を見る…

 

「ああ、改めて…久しぶりだな十代、立派に成長したな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「十代…どこまで思い出した?」

 

「…俺が先生とデュエルした事、それから俺に『ユベル』っていう精霊がいた事…なんで…なんで忘れてたんだ…!!あんなに大切にしてたのに!」

十代は悔しそうに涙を流す…自分の家族…それを忘れていた事を思い出したからだ…

 

「それは…その記憶が封印されていたからだ…」

 

「えっ…!」

 

「十代…俺が知ってる限りの事を教えよう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユベルは…お前のお父さんがお前に買い与えたカードだ…そのカードは必然か偶然か精霊を宿していた…。

 

 

その日からお前は変わったらしい、何も無い所に話しかけたり…ユベルとの話しをするようになったり…、そして一番変わったのはお前のデュエルだ。

 

お前がデュエルで負けるとその相手が大怪我をしたり、意識を失う事が起き始めた…最初は同級生、次はガキ大将…そして俺だ…。

 

ユベルの危険性を認識したご両親とお前はユベルを引き離す事にした…KC社の企画した宇宙へのカード打ち上げ計画でユベルを宇宙に送り「宇宙の正しい力」をとりこませようとしたんだ…。

 

結果的に計画は失敗した、ユベルのロケットは宇宙にでてすぐに墜落…地球のどこかに落下したらしい…、その後お前の夢にユベルが出てくるようになった、そしてお前の事を心配したご両親がお前の記憶と精霊の力を科学の力で封印したんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…そんな事って…!」

《十代…》

ネオスが十代に寄り添う…自分の主を心配しているようだ…

 

「先生…ユベルは…ユベルはどこに!」

 

「…わからない、追跡装置もロケットも分解されて地球全土に散らばった…しかし曲がりなりにも精霊だ…力を取り戻したお前の前に…彼女は必ず現れるだろう…ただし!」

 

「ただし…?」

 

「気をつけろ十代、ユベルがお前の前に現れるのは…好意ではなく復讐のためかもしれない…それだけは心の片隅に覚えておいてくれ…わかったな?」

 

「ああ…わかったよ遊海先生!でも俺は…どんな状態でもユベルを受け入れてみせる!」

 

「…頼んだぞ…十代…!」

 

 

 

 

「コラ〜!十代!どこだ〜!!」

 

「アニキ〜!コスプレデュエル手伝って欲しいっす〜!」

 

「アニキ〜どこだドン!」

 

「遊海さ〜ん!」

 

 

 

「ん?みんなが探してるな…行こうか十代!」

 

「ああ、先生…今日はありがとう!俺頑張るよ!」

 

「おうっ!お前の歩む道を楽しみにしてるよ…十代!」

 

 

 

 

 

こうして波乱の二年目は終わりを迎える…そして混沌たる三年目が始まる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《十代…君に会いにいくよ…ボクの愛を君に届けよう…》

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から第三章に入る予定です…が少々お時間をいただきます…詳しくは活動報告にて…。

いつもご愛読いただきありがとうございます!


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3章 三年目前半〜混沌偏愛領域 精霊次元〜
破滅の序章〜混沌たる三年目〜


…これは少し先の未来…







…なんで?…どうして…こうなったんだろう…

焼け焦げた荒野で倒れた彼女はぼんやりと考える、どこで何を間違えたのだろうと…

「翠さん!なんで…なんで俺なんかのために…!」

赤い制服を着た少年・遊城 十代が倒れた女性…翠に泣きながら問いかける…彼女は凶剣から十代を庇い瀕死となっていた…

「十代君…貴方は生きなければならないの…私は…大丈夫…彼は…止まったから…」








…私の身体は炎の剣によって左肩から斬り裂かれ、心臓も真っ二つに別れてしまっている…本来なら即死なんだろうけど不死性のおかげなのか…それとも傷口が炭化しているからか…なんとか生きてる、でも…少しづつ金色の粒子が身体から漏れ出していく…残された時間はそう長くないでしょう…

「翠さん!!」

ダメだ…気が遠くなっていく…せめて…最後…に…

「…ウィンダ…アヤカちゃん…お願いがあるの…」

《翠…何をすればいいの…?》
ウィンダは涙を堪えた目で問いかける…

「私を…あの人…の…近く…ゴフッ…」

《…わかりました翠…移動します…》

翠が空中に浮かび上がり移動する…動いた先には黒い鎧を着たような怪物がいた…怪物は倒れ胸に大穴が空いている、そして身体から金色の粒子が立ち昇っている…。

「ごめんなさい…『私が貴方を守る』って言ったのに…こんな事に…」

翠は意識を失っている怪物の顔に触れ涙を流す…彼の背負っていたものに気づく事ができなかった…それを悔いながら…

「ごめんなさい…遊海…さん…」






アカデミア新学期・早朝

 

 

 

 

 

 

 

『ぜぇああぁあ!!』

 

《ハアッ!甘いですぞ主殿!》

 

アカデミアの森の中で青年と白い龍が戦っている…青年は機械的な鎧を纏い、手に木刀を持っている、対して龍は無手…模擬戦のようだ。

 

『なら…これならどうだ!はああぁぁあ…オラァ!!』

青年が気合を込めてパンチを放つ

 

《「反射の聖刻印」!ぬぅぅぅ!!!》

龍は魔法陣を展開しパンチを防ぐ…しかし

 

『突き抜けろ!「キラーナックル」!!』

ピシッ…

 

《なんと!?》

 

『どぉおりゃ!!!』 

ピシッ…パリーン…

 

《…見事です主殿…!》

 

魔法陣を破壊した拳は龍の眼前にて止まる…模擬戦は青年の勝利のようだ…

 

「ハァ…ハァ…ありがとうトフェニ…一応復活かな…?」

 

《はい!これであれば並の人間には負けないでしょう!マスター完全復活です!》

 

「ありがとうアヤカ…なんとか間に合ったか…ぐっ…」

 

《マスター!?》

模擬戦を終えた青年…遊海はその場に倒れ込む、その息は激しく切れていた…

 

「でも…体力が…戻ってないな…、チクショウ…」

 

《ユウミ!大丈夫ですか?》

遊海の顔の近くに金色の小鳥…フレアが現れ遊海を心配する

 

「ありがとうフレア…大丈夫…少し…休め…ば…」

 

『『マスター!?/ユウミ!?』』

 

ダメだ…気が遠くなっていく…無理しすぎたか…

 

 

 

《ビィ〜?》

 

「ルビー!何処にいるんだ〜?」

 

《ビィー!!》

 

「いた!どうしたんだルビー?こんな…あなたは!!大丈夫ですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ジジ…

 

 

 

 

 

身体が熱い…

 

身体が冷たい…

 

身体が動かせない…

 

しかし動いている…

 

心が燃える…

 

心が凍る…

 

憎い…

 

哀しい…

 

怒りが湧く…

 

苦しい…!

 

 

 

 

 

身体が剣を手に持ち何かを引き裂く…命は消え去る…

 

身体が腕を振るう…青い炎が全てを焼き尽くす…建物も草木も命でさえも…

 

身体がデュエルをする…

 

 

「ぐぁあああ!?」

 

「きゃあああ!?」

 

「強すぎる…!」

 

 

デュエルする…

 

「あなたを…俺が止めてみせる!」

 

「力を貸してくれ!■■■■!」

 

 

 

【があぁぁぁ!??】

 

負ける…?

 

憎い…哀しい…苦しい……許さない…!!

 

剣を手に持ち相手に斬りかかる…オれは全てを…!

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は大事なモノを…切り裂いた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああああ!!やめろぉぉおお!!!」

 

「遊海さん!?どうしたんですか!?」

 

遊海はベッドから飛び起きる…体は汗でぐしょ濡れになり涙を流していた…

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ゆ、夢…か…?」

 

「遊海さん…大丈夫?すごく魘されてましたけど…」

 

「ああ…大丈夫だよ…何か怖い夢をみてたみたいだ…あれ?…ここは…」

 

「アカデミアの保健室です!アヤカちゃんから事情は聞きました!…無理しないでくださいよ〜!本当に心配したんですから〜!!」

 

翠は涙目で話しかけてくる…辛い…とても辛い…

 

《マスター…しばらくは無理をしない方がよろしいかと、傷は治癒しましたが体力が戻っていません…無理をすれば今回のように…》

 

アヤカも進言してくる…不死とはいっても万能ではないんだな…

 

「わかった…極力無理はしないようにするよ…」

 

「遊海さん…本当にお願いしますね…?」

 

「ああ、ごめんな翠…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば俺は森で倒れたはずだけど…トフェニが連れてきてくれたのか?」

 

「いいえ…森の中にいた生徒がみつけて知らせてくれたんですよ!」

 

「森の生徒…大山…?」

 

一瞬、ドロー修行で野生化した生徒が思い浮かぶ遊海…彼はジェネックスに出場後再び姿を消していた…

 

「いえ…ターザン君じゃなくて…入っていいわよ〜!」

 

「はい!失礼します!!」

 

翠が声をかけるとベッドカーテンが開いて一人の青年が現れる… 

 

《ルビィ〜!》

肩に半透明の精霊「ルビー・カーバンクル」をのせた青髪の青年…ヨハン・アンデルセンがそこにいた…。

 

 

 

 

 

 

 

「は、初めまして!ヨハンといいます!」

ヨハンは少し緊張した様子で挨拶してくる…

 

「君がヨハンか!俺は白波 遊海、レッド寮の寮長でプロデュエリストだ!…って知ってたかな?」

 

「はい!テレビでいつも活躍を見ていたんです!まさかアカデミアでお会いできるなんて…光栄です!」

《ルビィ〜!》

「あ!ダメだよルビー!!」

ルビーが遊海の胸に飛び乗る

 

「俺も君の事を知っているよ、ペガサス会長が選んだ5人の決闘者の一人で精霊を宿す『宝玉獣』デッキの使い手だってね…ヨシヨシ…」

《ビイ〜…》

遊海がルビーの頭を撫でると気持ち良さそうに鳴き声をあげる。

 

「流石『精霊に愛された決闘者』…ルビーが一瞬で懐くなんて…」 

 

「フフッ…かわいいわねルビーちゃん!」

 

「はい!僕の大切な家族ですから!」

 

《ビィ!》

ルビーはヨハンの肩に戻り胸(?)をはる

 

 

「たしか新学期からの留学生だったかな?君以外は朝一番の船で来るはずだけど…?」

 

 

 

巨大デュエル大会・ジェネックスは光の結社の台頭や学生達の活躍がほとんど無かった事により失敗に終わった…それを憂いた鮫島校長は次の策に打って出た、それが留学生計画である…。

 

アカデミアにはイースト・ウェスト・サウス・ノース・アークティックと言う分校がある、そのうちノース校を除いた4校のデュエルチャンピオンを本校に呼び生徒達の向上心を上げようという計画である(尚、ノース校代表がいないのはチャンピオンが万丈目だからである)

 

イースト校からは財閥の長男であるアモン・ガラム

 

ウェスト校からは幼少期に傭兵の経験のあるオースチン・オブライエン、そして特別講師であるプロフェッサー・コブラ

 

サウス校からは隻眼のカウボーイのような男、ジム・クロコダイル・クック

 

そしてアークティック校からはヨハン・アンデルセン

 

計4人がやってくる予定だ。

 

 

 

 

「いやぁ〜…アカデミアに早く来たかったのでペガサス会長に事情を話して連れてきてもらったんです!」

 

「なるほど…ペガサス会長なら手伝ってくれるだろうな…」

 

「それで港のヘリポートから歩いて校舎に行こうとしたら道に迷ってしまって…ルビーに道案内を頼んだら貴方が倒れていて…」

 

「そうだったのか…俺は運がよかったな…ありがとうヨハン君」

 

《感謝しますヨハン!ユウミを助けてくれてありがとう!》

 

「いやいいんだよ!オレは貴方に会えただけで感激なんですから!そういえば先生の精霊達は何人いるんだ?」

 

「俺の精霊は三人だよ、機械族の彩華、聖刻龍のトフェニ、あと金色の小鳥がフレアだ!」

 

「私は緑色の髪のウィンダとイルカ使いのウェンっていう精霊がいるの!」

 

《よろしくね!》

 

《ネコさんかわいい〜!よしよし〜!》

 

《ルビィー!?…ビ〜…》

 

翠の声と共にウィンダとウェンが現れる…ウェンはさっそくルビーと戯れている、ついでに二人ともシャドール状態だったからか警戒されていたがウェンの指先テクによりすっかり懐いている…

 

 

 

 

「アハハ!ルビーがスライムみたいにリラックスしてる!よかったなルビー!」

 

《リュビィ〜…》

 

「よかったなルビー…ヨハン、まだアカデミアには精霊が見える奴がいるから会ってみるといい、万丈目と…」

 

「遊城 十代ですね!オレは彼に会いたくて早めに来たんです!」

 

「そうだったのか、なら早く行ったほうがいいぞ?そろそろ始業式だ!」

時計の針が9時を指そうとしている…

 

「いけねぇっ!?先生すいません!また後で来ます!行くぞルビー!!」

 

《ルビ〜…ビィー!!》

 

ルビーはやれやれといった感じでヨハンついていった…また迷子にならないといいけど…

 

 

 

 

「フフフ…十代君に似た感じの子ですね!二人とも気が合いそうです!」

 

「ああ、そうだな翠…」

 

「遊海さん…?」

 

ヨハンを見送った遊海は少し暗い顔をする…その顔はどこか不安そうで…。

 

 

「翠…俺は万全には程遠い…十代達を頼んだぞ…」

 

「はい!まかせてください!」

 

「ありがとう翠…」  

 

 

ピリリリ…ピリリリ…

 

 

「電話か…はい白波です…えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それではこれより「デス・クロージャーデュエル」エキシビションマッチ第二戦、ウェスト校代表オースチン・オブライエン対白波 遊海先生の決闘を始める!』

 

 

「「「うわぁぁ!」」」

 

「(どうして…こうなった?)」

 

遊海の右腕には黒い腕時計型の機械…デスベルトがつけられている、そして正面には黒人の決闘者…オブライエンの姿があった…こうなったのは1時間程前の事である…。

 

 

 

 

 

「新しい決闘方式のエキシビションマッチ…?」

 

『ええ…プロフェッサー・コブラからの依頼との事です、私としても些かこのような決闘は不本意なのですが…海馬社長の許可も得ているそうです…』

 

先程の電話は鮫島校長からだった…コブラの提唱する決闘方式…情報公開デュエル…デス・クロージャーデュエルのお手本デュエルをして欲しいとの事だった。

 

 

デス・デュエル…腕に着けたデス・ベルトにより決闘者の力を測りそれにより生徒のランキングを決めるというシステムである…しかしそれは表向きの理由…。

 

真の目的は決闘者のエネルギー「デュエルエナジー」を収集し…ユベルを復活させるシステムである、俺達のスタンスとして改変は最小限で抑えてきたが…これはマズいかもしれない…。

 

「鮫島校長…拒否権は…?」

 

『ありませんね…海馬社長もデスデュエルを評価しているみたいですし…』

 

「そんなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで俺はベルトを着けオブライエンと対峙している…

 

「(何なんだよこのベルト…物理耐性だけじゃなく熱耐性に精霊の力の耐性まであるだと…?これじゃあ本当に腕を切り落としでもしないと取れないんじゃ…?)」

 

 

「遊海プロ、顔色が悪いが大丈夫か?」

オブライエンが話しかけてくる…まだ表情は固く、強い殺気を出している…。

 

「ああ、最近調子が悪くてね…少し手加減してくれるとありがたいんだけど…」

 

「フッ…プロらしくもないな、どんな時でも全力で相手を倒す、それが決闘者だろ?」

オブライエンはそう言いながらガンディスクを構える。

 

「まぁ…そうだよな…!」

俺も続いて決闘盤を構える。

 

 

 

[オイ遊海…大丈夫なのか?]

 

「(ユウスケ?お前から話しかけてくるなんて珍しいじゃないか?)」

普段遊海の心の奥底にいるユウスケが話しかける

 

[ああ、なんだかヤバイ状況みたいだから顔を出したが…いけるか?]

 

「(ああ、大丈夫だ…なんとかするさ!)」

 

[ならいい…無理はするな、それだけだ…]

ユウスケはそのまま戻っていった。

 

 

「遊海先生ファイトだぜ〜!」

 

「セニョール白波!プロの意地をみせるノーネ!」

 

『それでは…デュエル開始!』

 

 

 

       「「デュエル!!」」

 

 

 

 

オブライエンLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

「オレのターン…ドロー!」

 

『オブライエン…白波 遊海は要注意人物だ…奴の実力を測れ…負けても構わん…!』

 

「(了解だボス…!)」

 

 

「手札から『ヴォルカニック・エッジ』を召喚!」

眼の無いトカゲのようなモンスターが現れる ATK1800

 

「『エッジ』の効果を発動!相手ライフに500ダメージを与える!」

 

エッジから火球が放たれ遊海に直撃する

 

「アチッ!?」

 

遊海LP4000→3500

 

「さらに手札から魔法カード「ファイヤーソウル」を発動!お前はカードを一枚ドローする!そしてデッキの『ヘルフレイムエンペラー』を除外しその攻撃力の半分1350ダメージを与える!」

遊海の足元から火柱が上がり身体を燃やす

 

「ッ!?ぐああぁぁああ!!」

 

「遊海先生!!」

 

遊海LP3500→2150

 

「相手を確実に倒す炎のバーンデッキ…なんて恐ろしいデッキなんだ…!」

 

「遊海先生このままじゃ負けちゃうッス!」

万丈目と翔が遊海を心配する

 

「大丈夫だ!遊海先生はこれぐらいなら負けないぜ!」

十代は遊海を信じデュエルを見守る

 

「カードを伏せてターンエンドだ、プロとはこんなものか?伝説の決闘者と言われる貴様がその程度では他の伝説の決闘者の実力も知れたものだな!」

 

オブライエンLP4000

 

エッジ 伏せ1 手札3

 

 

 

 

 

「オブライエン…取り消せ…」

 

「何…?」

 

「俺の事はいくら馬鹿にしてもいい…しかし遊戯や仲間達を馬鹿にされて黙っていられるほど…我は甘くないぞ…!!」ズオッ

 

「ッ!?」

その瞬間オブライエンは確信した…自分は龍の逆鱗に触れてしまったのだと…

 

 

 

 

 

 

 

「我のターン!ドロー!」

 

「ッ!リバース罠『ドロー・ボム』!相手がドローした時、1000ダメージを与える!!」

 

爆発が遊海を飲み込む

 

遊海LP2150→1150

 

「くだらん…!」

爆炎のビジョンを遊海は腕の一振りで振り払う

 

「次はこちらから行くぞ…覚悟はいいか…?」

 

「(なんて殺気だ!?オレは自分から地雷を踏んでしまったのか!?)」

 

 

「我は手札から『真紅眼融合』を発動!デッキから『真紅眼の黒竜』と『メテオドラゴン』を融合!可能性の竜よ!流星の竜と交わりて全てを燃やす凶星とならん!融合召喚!『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』!」

赤き焔を纏った流星竜が現れる ATK3500

 

「なっ!?『レッドアイズ』だって!?」

 

「兄さんの切り札の進化した姿…!」

天上院兄妹が驚く…真紅眼の新たな進化形…それは凄まじい力を放っていた…

 

「『流星竜』の効果!手札の『真紅眼の黒竜』を墓地に送り攻撃力の半分、1200ダメージを与える!『メテオ・フレア』!」

黒い竜の幻影がオブライエンに炎を放つ

 

「ぬぅぅおお!!」

 

オブライエンLP4000→2800

 

「ぐっ…しかし攻撃を受けてもライフは残る!オレの手札には貴様のライフを削りきるカードがある!それでオレの勝ちだ!」

 

「…何を勘違いしている?」

 

「何?」

 

「次のターンなどあるか!手札から魔法カード『黒炎弾』を発動!」

 

「『黒炎弾』?確かあのカードは…?」

 

「そうッス!あのカードは『真紅眼』の攻撃力分のダメージを与えるカードッス!でも…」

 

「遊海先生の場には融合体の『流星竜』しかいないわ…?」

 

「なんのつもりだ遊海プロ、発動条件を満たしていないカードを発動するなど…」

 

「…『真紅眼融合』で召喚した融合モンスターは『真紅眼の黒竜』として扱う!」

 

「「「なんだって!?」」」

 

「受けろ!我が怒り!『黒炎弾』!」

 

流星竜から黒い炎の塊が放たれ、オブライエンに直撃した。

 

オブライエンLP2800→0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

『デュエル終了!勝者遊海先生!』

 

 

 

「嘘だろ…?」

 

「ウェスト校代表を後攻ワンキル…だと!?」

 

「あれが…遊海先生の本気…!」

 

「スゲェ…」

 

 

 

 

「うぐっ…!」

 

「…少し大人げなかったか…」

倒れ伏したオブライエンの前に遊海が立つ…

 

「オブライエン…任務を重要視するのはいいが…もう少し肩の力を抜いたらどうだ?そんなんでデュエルしても楽しくないだろう?」

 

「デュエルに…楽しさだと…?」

 

「…デュエルは互いの力を見せつける戦争じゃない…互いの力を認め合い、心を繋ぐ闘いだ…そうは思わないか?」

 

「オレには…理解できない…!デュエルに楽しさなど…!」

 

「まだわからないか…まぁそのうちにわかるだろう…しっかり休めよ…じゃあな!」

 

遊海はそのままリングを後にする…オブライエンはしばらく自分の決闘とは何なのか自問自答を繰り返していた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…ハァ…ハァ…すまないユウスケ…辛いところを任せちまって…」

 

[別にいい、痛み自体は早く治るからな…それよりお前…そんなに脆かったか?]

 

「わからない…体力が戻ってないからか…?」

 

遊海はアカデミアの廊下に凭れかかり倒れていた…

 

「ぐっ…こんな姿を生徒達に見せるわけにはいかない…とにかく部屋まで…!」

 

[遊海…(おかしい…今の決闘は闇の決闘でもエナジーを吸われたわけでも無いはずだ、しかし遊海の異常な消耗…何が原因だ…?)]

 

「くそっ…俺の身体よ…いったいどうしたんだ…?」

遊海は体に違和感を感じたまま寮へと歩き出す…デスベルトの下に黒い茨が巻き付いている事に気づかないまま…。

 

 

 

 

 

 

 

 

《フフフ…さぁ仕掛けはした…あとは頼んだよコブラ、

ボクの復活のためのデュエルエナジーを集めるんだ!》

 

「ハッ…仰せのままに…」

 

 

 

 

 

《白波 遊海…君には邪魔をさせない…せいぜい足掻くがいいさ…ボクの掌の上でね、ククク…アハハハハ!》

 

破滅に染まりし精霊は暗闇の中で笑う…全ては十代への歪んだ愛のために…。




お久しぶりですS.Kです!またのんびりと更新を再開します!
遊海はどのような試練を乗り越えるのか…どんな悲劇に出会うのか…しばらくお待ちください!


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蛇の刺客〜襲いくる悪夢〜

「急ぐザウルス!早くアニキを保健室に!!」

 

「アニキしっかりして〜!!」

 

「十代!気をしっかり持つんだ!!」

剣山と翔、ヨハンは十代を連れて保健室へと急ぐ…十代はオブライエンとの死闘の末、デスベルトによりエナジーを抜かれ気絶してしまっていた…。

 

 

「鮎川先生!大変ッス!アニキが十代の…!」

 

「カウンターショック急いで!早く服を…!!」

 

「はい!!」

 

「なっ!?何事ッス!?」

 

保健室へと駆け込んだ翔と剣山が見たのは戦場だった、鮎川先生や看護師達が走り回り処置をしている…その脇には翠に付き添われた新入生・早乙女 レイの姿があった…。

 

 

「翠さん!レイちゃん!どうしたザウルス!?」

 

「剣山さん…翔さん!遊海先生が…遊海先生が!!」

 

「カウンターショック!!」

 

バチバチッ…ドン!

 

「…なんとか戻ったわ…いったい…何があったの…?」

 

鮎川先生の視線の先には気絶し、右腕全体に黒い茨の模様が巻き付き、死に体の遊海の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜アカデミア・朝〜

 

 

オブライエンとのデュエルの翌日、遊海はなんとか回復していた…。

 

「ふぁ〜…よく寝た…なんとか体調は戻ったかな…」

 

《マスター、でも無理は禁物です…デスベルトも着けているんですから…》

 

「ああ…そうなんだよな…」

 

遊海の腕には黒く輝くデスベルトがあった…生徒達は白なのに何故か黒である…

 

 

 

「これ…絶対に何かの仕掛けがあるよな…黒いし…」

 

《慎重に行動していきましょうマスター…》

 

「ああ…、痛っ!?」

 

《どうしたんですか?マスター?》

 

「いや…デスベルトの下に痛みが…くそッ…ズレない…!なんでこんなピッチリと…」

 

《マスター!あまり無茶は…!》

 

「こうなれば…精霊変身!モードクリフォ…!痛っう!?」

精霊アーマーを纏おうとするが痛みが強くなっていく…。

 

《マスター!?腕に変な模様が!!》

 

デスベルトの下から黒い茨の模様が伸びてくる…

 

「なんだコレ!?呪印か何かかよ!?」

そう言っている間にも茨は伸び肘の辺りまで伸びてくる…

 

 

 

《マスター!?》

 

「くそっ!『魔法除去』!『ハーピィの羽箒』!『幽鬼うさぎ』…ぐああぁぁああっ!!?」

 

遊海は手当たり次第に除去関係のカードを発動させるが痛みは増していく…その痛みは肉体では無く魂を直接刺すような痛みだった…

 

[遊海!ヤメロォォ!!!カードを…『精霊の力』を使うな!!]

 

「ユウスケ!?ッ…わかった!精霊力…強制封印!!」

 

遊海は精霊の力の供給を全てストップする…それによりアヤカの姿が見えなくなる…しかしアヤカは自力で実体化する。

 

《マスター…大丈夫ですか…?》

 

「ゼェ…ゼェ…なんとか…な、痛みは治まった…」

精霊の力の封印と共に痛みは治まっていく…茨も肘上で動きを止めている…。

 

 

 

「限定解除…精霊を視る力…」

遊海は閉じていた力を瞳に流す…痛みは無い…

 

 

「限定解除…干渉能力…っぐ!?…ダメか…」

両腕に力を流す…しかし痛みを感じすぐにやめる、そして僅かだが茨が伸びる…

 

《マスター…いったい何が…?》

 

「…どうやらこのデスベルトは文字通り呪いのアイテムだったらしい…しかも俺を殺しうる…な…」

 

《なっ…!?どういう事ですか!!》

 

 

 

「この黒いベルトには呪いの『種』が仕込んであったんだ…」

 

《呪いの種…?》

 

「ああ…そして種は俺の力を吸い上げ芽を出した…精霊の力を吸い上げてな…。そして呪いは俺の魂に根を張り俺が力を使う程成長する…そして成長すればする程、魂を絞め上げる、そして成長しきれば…俺は致命的なダメージを受ける…」

遊海は茨を見つめながら呟いた…。

 

「俺は決闘以外では死なない身体だ…しかし不死身なのはあくまで『身体』…魂までは及ばない…魂を砕かれたら…俺は死ぬだろうな…」

 

《そんな…マスター!な、何か方法は…!そうだ!フレアさんに頼めば!》

 

《アヤカ…それは不可能です…》

遊海の肩にフレアが実体化する…話は聞いていたようだ…

 

《フレアさん!なんでですか!?》

 

《呪い単体であれば私がどうにかできます…問題はその黒い腕輪です…。》

 

《デスベルトが…》

 

《その腕輪には物理的な破壊への耐性、精霊の力に対する耐性、炎熱・氷結に対する耐性があります…それが呪いの元を守り解呪できないようになっているのです。仮に…オリジナルの三幻神が揃えば腕輪を破壊して解呪できるでしょうが…その前にユウミの魂が保たないでしょう…》

 

《そんな…!?》

フレアは淡々と事実を話す…、その瞳には僅かに涙が溜まっていた…

 

 

「これはユベルからの警告だろう…『邪魔をしたら殺す』っていうな…まったく、厄介なモノを取り込んだもんだ…」

 

 

ユベルは宇宙に打ち上げられた時に破滅の光の影響を受けてしまっていた…それにより愛に一途だったユベルはさらに歪められ病的なヤンデレへと変わってしまった…その由来を思えば皮肉な事だろう…。

 

「アヤカ…フレア、この事は翠には内緒にしておいてくれ…これは俺だけの問題だ、これ以上心配はかけたくない…。」

 

 

《わかりました…でも本当に無茶だけはしないでくださいね…?》

 

「ああ…無茶はしないさ、さて…そろそろ朝ご飯かな…行こうか…」

 

《はいユウミ…》

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます遊海先生!」

 

「おはようレイちゃん!今日も元気そうだな!」

 

「はい!ぼくは十代様と一緒にいられるだけで幸せなんです!」

 

「たはは…参ったな…」

 

「よかったな十代!彼女候補か?」

 

食堂に行くと十代やヨハンと一緒に新入生の早乙女 レイちゃんが食事を摂っていた。

 

早乙女 レイ…彼女がアカデミアに来たのは約三年前に遡る…。

十代達が入学してしばらくした頃、小学生なのに年齢・性別を偽りアカデミアに転入してきた彼女はカイザー亮に告白するためにやってきた、その後何やかんやがあり十代とデュエル、勝負に負けた彼女は十代に惚れ自分が小学生である事を告白し島を去った。

 

その後成長した彼女はジェネックスに出場、数々の先輩やプロを下し万丈目に続き大会で準優勝、その戦績を見た鮫島校長により特例で中学生ながらアカデミアに飛び級入学を果たしたのだった…、尚明日香とは十代を巡り火花を散らしているが…それは十代の預かり知らぬところである…。

 

 

 

「レイちゃん、授業は慣れたかい?高校レベルだから少し難しいかもしれないけど…」

 

「ぜんぜん大丈夫です!明日香先輩やクロノス先生が優しく教えてくれるので大丈夫です!」

 

「そうか!ならよかった!」

ついでにレイは超秀才である…レベッカを思い出すな…今はどうしてるだろうか…?

 

 

「おはようございます遊海さん!…あれっ?」

厨房から翠が歩いてくるが俺を見るなり首を傾げる

 

「おはよう翠!…どうした?」

 

「いえ…遊海さん、痩せました…?少しやつれたような…?」

 

「!?…気のせいだよ!朝少し夢見が悪くてな…そのせいだろう!」

遊海は明るく返す…内心翠に謝りながら…

 

「そう…ですか?ならいいですけど…さぁ朝ご飯食べちゃってくださいね!今日は塩鮭とキュウリの浅漬けですよ!」

 

「ああ、ありがとう翠!」

 

 

 

 

 

 

 

〜アカデミア・夕方〜

 

 

「ふぅ〜…仕事も一段落したしそろそろ戻ろうか…」

 

《お疲れ様ですマスター、体は大丈夫ですか?》

 

「ああ、精霊の力を使わなければ大丈夫だ…痛みもなかったしな…」

そう言いながら腕を捲りあげる…そこには朝と同じ位置に茨があった…

 

「とりあえず最初の異世界は十代達に任せるしかないか…とにかくデスベルトは最初の異世界が終われば消えるはずだし…」

 

《そう…ですね…マスター、いきましょう、翠さんがご飯を作って待っていますよ?》

 

「ああ…そうしよう!今日はなんだろうな!」

 

 

 

 

 

『…プロデュエリスト、白波 遊海…何か隠し事をしているな…少し探るか…』

 

逆立った赤髪の青年が遊海を見ていた…その瞳は怪しく光っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜アカデミア・夜〜

 

 

 

「ぐっうう…!!」

疲れにより早く眠りについた遊海は魘されていた…。

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ…神の炎で燃え尽きなァ!「ゴッド・ブレイズ・キャノン」!!』

 

「ぐああぁぁあ!!」

 

 

 

 

『「シュロノス」よ「アポクリフォート・キラー」を攻撃!白波 遊海よ!その魂を我が神に捧げよ!』

 

「ガッ…アッ…!!」

 

 

 

 

【邪魔をするなら全てを消し去るまで!喰らえ!「カタストロフ」!!】

 

「お願い!『シェキナーガ』!遊戯さんを…ファラオを守って!!」

 

 

 

…身体が消えていく…魂の力が失われ砂へと還っていく、遊戯を…ファラオを守る事は出来た…悔いは無い…でも…翠ともう少し長く…過ごしたかったなぁ…

 

 

 

カランッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ!!…ハァ…ハァ…夢か、嘘でも夢見が悪いなんて言うんじゃなかったな…」

 

遊海は汗をかきながら目を覚ます…今まで戦った強敵達…既にこの世にいないはずの彼らの夢を見ていた…。

 

「喉が乾いた…確か冷蔵庫にサイダーがあったな…」

 

遊海は立ち上がり冷蔵庫へ向かうが…違和感に気づく…

 

「翠がいない…?」

時計は夜の10時を指している…普段ならもう寝ているはずだが…?

 

「アヤカ…翠は?」

 

 

「アヤカ…トフェニ…フレア…?」

 

 

「ユウスケ…?」

 

 

「なんで…みんな反応がないんだ…?」

 

遊海は不安を感じながら部屋の外に出る…

 

メラメラ…

 

「なっ!?なんだよコレ!!」

遊海が外に出ると…アカデミアが炎に包まれていた…校舎も…森も…全てが燃えている…

 

「いったい何が!!」

 

【Grrooo!!】

 

「っ!?何だ!」

困惑する遊海の耳に獣のような唸り声が響く…その先には

 

「何だよ…アレ…」

 

そこには悪魔がいた…黒い髪…黒い体色、2対の黒い翼…瞳の無い不気味な白い眼…鋭い爪…その悪魔がアカデミアを燃やし尽くそうと炎を放っている。

 

「や…ヤメロォォ!!」

 

遊海は咄嗟に鎧を纏い悪魔の前に飛び出す

 

『貴様…!なんでこんな事を…!!』

 

【GuOOOO!!】

遊海は悪魔に声をかけるが悪魔は咆哮で返す…意思疎通はできないようだ…

 

『意思疎通は無理か…っ!?貴様…手に何を持っている…!?』

 

【Guu…Gaaaa!!】

悪魔は手に持っていたモノを遊海の目の前に転がす…それは…

 

『嘘だろ…?翠!しっかりしろ!翠!!』

遊海は投げられたモノに駆け寄る…それは全身がボロボロになった翠の姿だった…既に意識は無く、全身にヤケドを負っている…

 

『翠!しっかりしろ!起きてくれ翠!翠!いったい誰が!誰がこんな事を!!!』

 

【ナニヲイッテイル?】

 

『なっ!?』

悪魔はいつの間にか遊海の後ろに回り込んでいた…

 

【ソレヲヤッタノハ…キサマダロウ…?】

 

【なっ!?…えっ…?】

遊海は気づくと悪魔と瓜二つの姿に変化していた…

 

【オレハキサマダ…キサマハオレダ…!】

 

【ウソだ…ウソだああああ!!!?】

 

【ウケイレロ…ソレガオマエだ『■■』ノスガタダ…!】

 

【嘘だ…ウソだ…!ウソダァァァ!!!】

遊海は爪で悪魔を切り裂く…しかし…

 

「遊海さん…どうし…て…?」バタッ

 

【ミドリ?ナンデ…ナンデダ!?】

 

 

遊海が切り裂いたのは抱いていたはずの翠だった…

 

【ソンナ…ソンナ!!!ウッ……GAAAAaaaa!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アヤカちゃん直伝!鉄・拳・聖・裁!!」

 

 

 

 

 

 

「ゴボっ!?…ぐ…なん…だ…?」

 

「遊海さん!気がつきましたか!?大丈夫ですか!?」

 

「ぐっ…あ…みどり…?」

 

「もう…部屋に戻ってきたら遊海さんがすごい苦しみ方してたのでパンチで起こさせてもらいました!…大丈夫ですか?」

 

「みどり…翠!!」

 

「えっあ…ちょ遊海さん!?どうしたんですか!?」

 

意識が完全に覚醒した遊海は翠を抱き寄せる…翠の身体は暖かかった…先程の出来事は夢だったのだと認識できた…。

 

「翠…ごめん、しばらくこのままでいてくれ…頼む…!」

 

「遊海さん…はい…わかりました!…よっぽど怖い夢だったんですね…大丈夫…夢は夢の中だけで終わりです…大丈夫…大丈夫…」

 

翠は遊海の背中に手を回し優しく擦る…そんな中で翠は考える、神や邪神をも恐れず戦った遊海を怯えさせた悪夢…いったいどんな夢だったのだろうと…。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…落ち着きましたか?」

 

「ああ…大丈夫だ、ごめんな…みっともないところを見せて…」

 

「良いんですよ遊海さん!私達夫婦じゃないですか!夫婦はお互いに助け合って生きていくものですよ!…それに私も安心したんです!」

 

「安心…?」

 

「ええ!、遊海さんも喜怒哀楽のある『人』なんだなって…ほらみんなの前だといつも冷静じゃないですか?」

 

「そうかな…冷静なつもりはないんだけど…少し気をつけるよ、ありがとう翠…」

 

「いえいえ!さぁ改めて寝直しま…」

 

パリーンッ…ドタバタ…

 

「っ!!なんだ!?」

 

再び寝直そうとした二人の耳にガラスの割れる音が聞こえてきた…そして…

 

「ちょ…何するのさ!?離してよ!?キャアアアアア!!!?」

 

「今の声は!」

 

「レイちゃん!?」

 

二人は慌てて部屋を飛び出す、すると…

 

「誰か助けて〜!!!」

黒い人影に連れ去られるレイの姿が…!

 

「レイ!!待て!誘拐犯!!!」 

遊海は駆け出す…しかし犯人は物凄いスピードで逃げていく…まるで訓練された人間のように…

 

「翠!クロノス先生と校長に連絡!!俺は追いかける!!」

 

「わかりました!!気をつけて!」

 

遊海は犯人を追いかけ森へと駆けて行った…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…追いつけない!!なんて速さだよ!?」

 

遊海は犯人を追いかけ森を進む…犯人は凄まじい速さで遠ざかっていく…

 

「くっ…しょうがない!精霊変身!モード太陽神!!ッ!!グアアアアアアアア!!」

 

遊海は無理を承知で変身する、それと共に右腕が…魂が悲鳴をあげる…!

 

《マスター!!なんて事を!?今の身体では!》

アヤカが実体化し遊海に声をかける

 

『アヤカ!!今まで何処にいたんだ!!なんで襲撃に気付かなかった!!』

遊海は怒鳴りつけるようにアヤカに問いかける

 

《申し訳ありませんマスター!!システムのアップデートをしていました!》

 

『くそ…追いかけるぞ!!アアアアアアッ!!』

 

遊海は痛みをかき消すように叫びをあげ滑空する…そしてすぐに犯人に追いついた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いたのは十代達が墓守の世界に転移した場所だった…犯人は黒いローブで脇にレイを抱え佇んでいた…。

 

「ゼェッ…ハァ…追いついたぞ誘拐犯…レイを…レイを開放しろ…!!」

 

「遊海先生!助けて〜!なんかコイツ怖いよ〜!!」

 

『久しいな白波 遊海…いやシュウよ!!』

 

「『シュウ』だと…?その名前は…」

 

シュウ…その名前はかつて遊海が王の記憶の世界にて乗り移った神官の名前だった…何故コイツがその名前を知っている…?

 

『キサマが我と同じように転生しているとは好都合…三千年前の恨み…晴らさせて貰おう!!』 

 

男は黒いローブを取り払う…その下には戦闘服を着た黒い犬…ジャッカルの顔があった…。

 

「キャアア!?化物〜!?」

 

『我が名はアヌビス!!三千年前の所業…忘れたとはいわせんぞ!!』

 

「アヌビス…だと!?」

 

 

 

アヌビス…映画「光のピラミッド」で登場した悪役だ、俺の記憶では闇の大神官・アクナディンが保険として数千年先で転生するセトのために生きながらミイラにした男…映画では復活したアヌビスが海馬を使い冥界の王になろうとして闇遊戯に倒されたはず…俺となんの関わりが…?

 

「俺はシュウじゃない!白波 遊海だ!俺が何をしたと言うんだ!」

 

『忘れたとはいわせんぞ!アクナディンが封印された後、生き残った貴様はミイラとなっていた我を見つけ破壊したではないか!そのせいで我は完全に死に!転生したのだ!』

 

「じゃあ…なんでここにいる!」

 

『我は生まれ変わり傭兵として生きていた!そしてある時死にかけた!その時に思い出しのだ!三千年前の記憶を!怒りを!!貴様を手始めにテフ!ファラオ!セトに我は復讐するのだああああ!!』

アヌビスから闇のオーラが溢れ出す…やはりコブラの…!

 

「あっ…遊海先…助け…!!」

 

「レイ!」

レイは闇に当てられたのか気絶する…俺の預かり知らない因縁だけど…やるしかない!

 

 

 

「デュエルだアヌビス!お前との宿命…ここで精算する!」

 

『やれるならやってみるがいい!貴様を闇に沈めてやる!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP 4000

アヌビスLP 4000

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロ…ぐぅぅぅ!?この痛みは…!」

 

右腕に痛みを感じ袖を捲りあげる…そこには茨がその数を増やし右腕の7割を覆っていた…

 

「っぐぅぅぅ…早めに勝負を…決めないと…ドロー!」

 

「手札から魔法カード『召喚士のスキル』2枚を発動!デッキから『クリフォート・ツール』『クリフォート・アセンブラ』を手札に加える!さらにペンデュラムスケールに2枚をセッティング!」

決闘盤の外装が弾け飛び遊海の隣に光の柱が現れる。

 

『なんだその力は!?』

 

「『ツール』の効果により800ライフを払いデッキから『クリフォート・アーカイブ』を手札に!」

 

遊海LP4000→3200

 

「我が魂を守りし大いなる力よ!闇を祓う力を!ペンデュラム召喚!『クリフォート・ゲノム』!」

オレンジ色のコアの機械が現れる ATK1800

 

「そして『ゲノム』を生贄に『アーカイブ』を召喚!」

緑色のコアの機械が現れる ATK2400

 

「カードを2枚伏せてエンドフェイズ!『アセンブラ』効果で1ドロー!ターンエンド!」

 

遊海LP 4000

アーカイブ P ツール アセンブラ 伏せ2 手札2

 

 

 

 

 

 

『貴様…訳のわからん力を…しかし我は貴様を倒す!』

 

 

 

 

 

『我のターン!ドロー!フハハハ!我の勝ちは決まったぞシュウよ!』

 

「何っ!?」  

 

『手札から「トラップブースター」を発動!手札の『守護者スフィンクス』を捨てて効果発動!手札から永続罠「光のピラミッド」を発動!!』

 

アヌビスの背後に白いピラミッドが現れる

 

『さらに手札からそれぞれ500ライフを払う事で「スフィンクス・テーレイア」、「アンドロ・スフィンクス」を特殊召喚!』

女性の顔のスフィンクスと獅子の顔の獣人が現れる

ATK3000

 

ATK2500

 

アヌビスLP4000→3000

 

「マズい!?リバースカード『一回休み』!特殊召喚されたモンスターを守備表示にし効果を無効にする!」

 

2体のスフィンクスが守備表示になる

 

DEF2500

 

DEF3000

 

『甘いぞシュウ!さらに手札から魔法カード『大嵐』!魔法・罠カードを全て破壊する!』

 

「なっ!?リバースカード『機殻の凍結』を発動!このカードを守備力1000のモンスターとして特殊召喚!そしてこのターン、自分のクリフォート魔法・罠カードは破壊されない!」

氷結したクリフォートのコア部分が現れる DEF1000

そして嵐が一回休みと光のピラミッドを破壊する。

 

『そして「光のピラミッド」が破壊された事により効果発動!「テーレイア」と「アンドロスフィンクス」を破壊し除外する!』

 

2体のスフィンクスが砕け散る…

 

『そして我がライフを500払い…現われよ神に使えし獣の長!「スフィンクス・アンドロジェネス」!!』

砕け散ったスフィンクスの欠片が合体し前面にアンドロスフィンクス、後ろにテーレイアの顔の付いたモンスター…アンドロジェネスが現れる ATK3500

アヌビスLP3000→2500

 

「攻撃力3500…!」

 

『まだだぁ!我がライフをさらに500払い効果発動!このカードの攻撃力をエンドフェイズまで3000アップする!!』

 

「えっ…?」

 

ATK3500→6500

 

アヌビスLP2500→2000

 

『闇に沈めぇ!シュウー!!!』

 

アンドロジェネスの拳がアーカイブを打ち砕き…遊海を吹き飛ばした…

 

「ぐぅぅあああ!!!?」

 

遊海LP0

 

アヌビスWIN!

 

 

 

 

 

 

バキバキバキバキ…ドシャーン…

 

「ゴッ…ガッ…ゴブッ…」

アンドロジェネスに吹き飛ばされた遊海は木を何本かへし折りようやく止まる…その身体は骨が折れ、ひしゃげた姿になっていた…

 

『フフフ…いい眺めだなぁシュウ…我が三千年の恨み…憎しみ…思い知ったか…!!』

 

「ゴブッ…ガッ…ぐあぁぁ!?」

アヌビスは遊海の体を持ち上げ、首を絞め上げる…

 

『さぁ…冥府の闇に沈むがいい!!』

《マスター!!貴様…マスターを離しなさい!!!》

アヤカがアヌビスに体当たりを仕掛けるが闇のオーラに防がれダメージを与えられない…

 

「ぐっ…あぁ…!!」

 

『さぁ…ファラオの元に逝くがいい!…!?なんだ…力が…!』

 

遊海とアヌビスの着けていたデスベルトからデュエルエナジーが吸い出される…

 

『ぐっ…コブラめ…余計な事を…!フンッ!!』

 

「ゴブッ…ガ…ア…」

アヌビスは遊海を投げ捨てる…遊海は木に叩きつけられて崩れ落ちる…

 

『興が削がれた…その身体で生きられるなら無様に生き延びるがいい…次はテフだ…フ…ふははははは!!』

 

アヌビスは闇に紛れ姿を消した…

 

 

 

 

 

「う…ん、十代…はっ!?ぼくは!?」 

気絶していたレイが目を覚ます…周囲は荒れ果て、砂ボコリが舞っている…

 

「うわ…ナニコレ…どうやったらこんな事に…そうだ!遊海先生は!?」

 

レイは砂ボコリの中、遊海を探す…そして一陣の風が吹く…

 

「うわ…風が…わぶっ!?なんだ…コレ?赤い…帽子…?」

風に飛ばされた帽子がレイに直撃する…そして…

 

「コレ…先生の…?…!?嘘…先生…遊海先生!!」

レイは離れたところに転がる遊海を見つける…しかしその姿は…

 

「遊海先生!遊海先生しっかりして!!死んじゃってないよね!?先生!先生!!先生!!!」

 

「レ……イ…」

 

「先生!?」

遊海はかろうじて薄目をあけ、意識を取り戻す…

 

「ぶ…じ…か…?」

 

「うん!ぼくは大丈夫!それよりも先生が…!!?」

 

「みど…り……ごめ…ゴブッ…気を…つけ…ろ…狙わ…れ…」

 

「遊海先生!喋っちゃダメ!!」 

 

遊海はうわ言のように言葉を呟く…

 

「十…代……」

 

「遊海先生!遊海先生!?先生!!!」

 

 

その後レイと遊海は駆けつけた翠、クロノス先生により回収された…そして冒頭に戻る…。

 

 

 

 

 

 

 

「極度の過労状態に両腕の開放骨折…肋骨の全骨折に両足の粉砕骨折…肺に肝臓、脾臓の損傷…生きているのが不思議なくらいよ…前回のヤケドの件といい…彼、本当に人間なの…?」

 

鮎川先生は驚きを通り越して呆れたように呟く…遊海の状態はそこまでにヒドイものなのだ…。

 

「遊海先生…ごめんなさい、ぼくが拐われたりするから…!」

レイは意識の無い遊海に謝罪する…自分が拐われなければこんな大怪我をしなかったのにと…

 

「レイちゃん…気にしないで、遊海さんはそういう人なの…人を助けるために自分が痛みを背負う…そういう人なの…。大丈夫!遊海さんは不死身よ!明日になれば目は覚めるわ!さぁ…今日はお休みなさい…念のために保険室で寝る事になるけど…私もいるから…」

 

翠は泣いているレイを慰めながらベッドに導く…

 

「うん…でも寝られないよ…」

 

「大丈夫、私がおまじないをしてあげるわ…お休みなさい…『催眠術』発動…」

 

「あ……」

翠は催眠術を発動させレイを眠らせる…レイはそのまま寝息をたてはじめた…

 

「翔君…十代君はどう?」

 

「とりあえず大丈夫ッス…とても疲れているだけらしいッスから…」

遊海の隣のベッドで十代は静かに寝息をたてる…十代ならご飯を食べれば回復するだろう…。

 

「翠さんもカードの力、使えるんっすね…」

 

「ええ…あまり強いカードは使えないんだけど…すこしは…ね、翔君…あなたは寮に帰りなさい、外でクロノス先生が待ってるわ…また朝に会いにきてあげて…」

 

「…わかったッス…翠さんも無理はしないで欲しいッス…」

 

「ええ、ありがとう翔君…お休みなさい…」

 

「お休みなさい…」

翔はそのまま保険室を後にする…翠の気持ちを思いながら…。

 

 

 

 

「遊海さん…なんで…なんで全部一人で背負っちゃうんですか?私だって遊海さんの助けになりたいんですよ?」

 

「」

 

「目を開けてくださいよ…遊海さん…!」

 

翠は静かに涙を零す…意識無く眠り続ける遊海を心配しながら…翠は意識を手放した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オイ!コブラ!!我の邪魔をしやがって…貴様、覚悟はいいんだろうな…?』

 

『フッ…邪魔をした覚えはない…私の目的はあの方の復活…それだけだ…』

 

『ハン!しゃらくせえんだよキサマ!!』

 

《やめないかアヌビス…!!》

 

『ぐおあっ!?』ぐしゃ

 

《キミもボクのためにエナジーを集めればいいんだ…!》

 

『ケッ…わかったよ!最低限の事はしてやるさ…じゃあな…』

 

 

 

《フフフ、十代…楽しみだよ…さぁ…ボクの愛を受け取ってくれ…!》



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三千年の宿命〜死と再生〜

…意識が目覚める…俺は…何を…、目が開かない…体を動かせない…!?痛い…!!痛い痛い痛い!!!

魂を刻むような…身体中を岩で潰されたような痛みが襲いかかる、見えないはずの視界が明滅する…今までで1番の激痛が俺を蹂躙する…!!

 

「がっ…あ…ぐっ…!!」

助けを求めようと声を出そうとするが声らしい声は出ず口に広がるのは鉄の味ばかり…っぐあああ!!痛いいたいイタイィィ!!?頭の先からつま先まで痛まない場所が無い!がぁぁぁ!!!

 

そして俺の意識はブラックアウトした…。

 

 

 

 

 

 

…意識が目覚める…俺は…何を…、目が開かない…体を動かせない…!?痛い…!!痛い痛い痛い!!!

魂を刻むような…身体中を岩で潰されたような痛みが襲いかかる、見えないはずの視界が明滅する…今までで1番の激痛が俺を蹂躙する…!!

 

「い…あ…が…!!」

助けを求めようと声を出そうとするが声らしい声は出ず口に広がるのは鉄の味ばかり…っぐあああ!!痛いいたいイタイィィ!!?頭の先からつま先まで痛まない場所が無い!がぁぁぁ!!!

 

そして俺の意識はブラックアウトした…。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

意識が目覚める…俺は…何を…?目が開かない…体を動かせない…!?痛い…!!痛い!!!

魂を刻むような…身体中を岩で潰されたような痛みが襲いかかる、薄目をあけた視界が明滅する…今までで1番の苦痛が俺を蹂躙する…!!

 

「イ…タ…イ…!!!」

かろうじて声が出た…俺は何回これを繰り返したんだろう…

 

「遊海先生!?大丈夫ですか!!しっかりしてください!!」

誰か女性の声が聞こえてきた…助けてくれ…!!

 

「助け…から…痛たい…!!!」

 

「身体…身体が痛いんですね!?」

女性は手を握る…俺は軽く握り返し意思を伝える

 

「わかりました!鮎川先生!翠さん!遊海先生が…!!」

 

そして意識は再び闇に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…う…ぐ…ここは…?」

意識が覚醒する…さっきまでの痛みはほぼ無く、ちゃんとした思考ができている…ここは…水の中…?

 

 

「遊海先生、目が覚めましたか?ここは緊急治療室です…強力な麻酔薬と影丸理事長の治療液を使い痛みを抑えています…何があったか覚えていますか…?」

 

マイクから女性の声がする…薄目を開けるとガラスの向こうに鮎川先生、翠、レイの姿があった…

 

「翠…心配かけて…ゴメンな…ハハッ…、何回目かなこのセリフ…」

 

「遊海さん!何が…何があったんですか!誰がこんな事を!!」

 

「アヌビス…三千年前の怨霊…気をつけろ翠、狙われてる…!!」

 

「アヌビス…?『光のピラミッド』のアヌビスですか!?」

 

「そうだ…気をつけろ…奴は三千年前の復讐をしようとしてる…!遊戯と海馬に連絡を…うぐぅ…!!?」

 

「大変!バイタルが…!?」

 

「翠…ニゲろ…ぐぅぅあああ!!!」

再び強い痛みが襲いかかる…そして俺は意識を手放した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ブザマナモノダナ■■…!】

 

俺の目の前には悪夢で見た悪魔が佇んでいた…

 

【ジブンノカラダヲナゲウチ、ヒトヲスクウ…ヒーローニデモナッタツモリカ?】

悪魔は俺を嘲笑う…

 

「そうだ!ヒーローとは言わない…でも救える範囲の人を助けて前に進む!!それが俺の…白波 遊海の生き方だ!!」

 

【ウソヲツクナ…ソンナカラダデ、ナニヲスクウツモリダ…?】

 

【なっ…うわああ!!?】 

遊海の姿は再び悪魔の姿になっていた…

 

【キサマハ「スクウモノ」デハナイ…「ハカイスルモノ」ダ、ソノミニクイカラダデ、ダレヲスクオウトイウンダ?】

 

【俺は…オレは…人を…未来を良くするために…!!】

 

【受け入れろ…それが貴様の辿る運命…だ!】

 

【ナッ…!?】

目の前に現れた悪魔が腕で遊海を貫く…そしてその身体を一体化させていく…

 

【貴様は俺だ…俺は貴様だ…己の運命を…受け入れるがいい!】

 

【や、やめろ…ヤメロォォ!!?】

遊海の中に力が…負の力が流れ込む…ドロリとした悪意が遊海を侵食する…

 

【さぁ至れ…破王…全てを破壊する魔人よ…!!】

 

【ガアアアア!?!?!?】

 

そして遊海の意識は再び途切れる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリリリリ…!!バリーン…バシャ〜…

 

 

 

「ガッ…ぐああぁぁああ!?な…何だ…!?」

意識を失っていた遊海は激しい警報音と痛みで目を覚ます…そこには…

 

『よぉ…迎えに来てやったぜシュウ…!!』

 

「アヌ…ビス…!?」

自身の首を掴み醜悪な笑みを浮かべる怨霊…アヌビスの姿があった

 

『しぶとく生きてたみたいだなぁ…だが餌にはちょうどいい、一緒に来て貰うぜ…!』

 

「ガッ…アアアアアア!!……」

 

 

 

 

 

 

「遊海先生無事っ…!?何だよお前!遊海先生を離せ!!」

 

警報を聞きつけた十代が治療室に駆けつけると狗の顔した巨漢が遊海を担ぎ立ち去ろうとしているところだった。

 

『貴様は…遊城 十代か…、悪いが貴様に用は無い、貴様に手を出すと雇い主が怒るからな…!』

 

「こっちはそんな訳にはいかないんだよ!遊海先生を離せ!うぉおぉぉ!!」

十代はアヌビスに飛びかかるが…

 

『笑止…!フン!』

 

「うわああ!?」

アヌビスの腕の一振りで十代は吹き飛ばされる…

 

『白波 翠…テフに伝えろ、シュウを助けたくば遺跡まで来いとな…さらばだ…』

 

アヌビスは姿を消した…後に残ったのは十代だけだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さんが拐われた…!?」

 

「ああ…黒い犬みたいな仮面…?顔をした男だった…」

十代は翠に状況を説明する

 

「それで翠さんに遺跡に来いって…たぶん俺達が墓守の世界に行った場所だと思う…」

 

「ありがとう十代君…すぐに向かうわ!」

 

「ダメだよ翠さん!プロの遊海先生でもあんなにボロボロなんだよ!翠さんも…!!」

 

レイが翠を制止する…遊海のボロボロの姿を見た後では無理もないだろ…。

 

「…それでも行かなきゃならないの…私は遊海さんの妻だもの…!私が遊海さんを助けるの!」

 

「翠さん!俺も連れて行ってくれ!何か助けになってみせる!」

 

「ありがとう十代君…行きましょう!!」

 

「おう!!…くそ、こんな時に剣山が元気だったら…!」 

 

「アニキ…気をつけて…!!」

 

「十代様…!」

 

「大丈夫だ翔!レイ!遊海先生を助け出してみせる!」

そして翠と十代は遺跡へと向かった…。

 

 

 

「お手並み拝見といこうか…」

 

その後ろから赤髪の青年が尾行しているとはしらずに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フフフ…来たかテフ!三千年振りだな!貴様とシュウに受けた恨み…晴らさせてもらう!!』

 

「私は翠です!テフではありません!それより遊海さんは…遊海さんは何処ですか!!」

 

『シュウか?あいつならここだ…!』

 

「…」

 

「遊海さん!!」

遊海は遺跡を囲む岩に縛りつけられていた…その顔に生気は無く、吐血したのか足元には血が落ちている…。

 

『ほら…起きろよシュウ!大事な大事なテフがお前を助けに来た…ぞっ!!』

 

「ゴッ…ガボっ!?…グァ…みど…り…来る…な…!!」

 

アヌビスは遊海を殴りつけ無理やり覚醒させる…。

 

「遊海さん!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガボッ…!ぐ…あ…」

 

腹部の強烈な痛みと共に意識が叩き起こされる…ここは墓守の…

 

「遊海さん!!」

 

「先生!!」

 

体は動かず…岩に縛りつけられている、目の前にはアヌビスと翠、十代がいた…。

 

「みど…り!来る…な…!!」

 

『フフフ…感動の再会ってところだろうが…すぐにお別れだ!…シュウ…そこで見ているがいい!愛しい愛しいテフが死ぬところをな…!!』

 

「ヤメロ…みどりに…手を出すな…!」

 

『うるせぇんだよシュウ!黙ってやが…れ!!』ボキッ

 

「ぐっ…アアアアアア!?」

足の骨を折られた…!痛みが!!痛い!!

 

「遊海さん!やめなさいアヌビス!!私が相手よ!!」

 

『フフフ…涙ぐましいなぁテフ…お前達は転生しても変わらないなぁ…二人で支えあって魔物を討伐する最強の討伐部隊長…しかしそれも今日までだ!さぁ…闇のデュエルを…!』

 

…ダメだ…このままじゃ翠が…!!

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ…約束を果たしてもらいましょうか!ハグっ!』  

 

「あ…嫌…!」

 

 

『さぁ…人形に…!!』

 

 

 

 

 

 

 

もう…あんな思いはしたくない!!できる事は…この瀕死の体でできる事は…!!

 

瀕死……イチかバチか…神様…頼む…!!

 

 

 

 

「ブッ!!」ベチャ

 

『ん?シュウ…何のつもりだ…?』

遊海はデュエルを始めようとするアヌビスに血を吹きかける

 

「オイ…一回勝っただけで勝ったつもりになるなよ化物…!」

 

『何だと…?そんなボロボロで何ができる…?既にデッキすら持てる状態じゃないだろう?』

 

「デッキが持てなくてもやれる事はあるさ…!…思い出したぞ三千年前の貴様の事を…!」

 

『何…?』

 

「貴様はアクナディンの従者だった!そしてお前は神官セトが復活した時のために生きたままミイラにされた!お前の魔物を見たから知っているぞ!『死にたくない!』『助けてくれ〜!』って命乞いしながらスカラベに喰われてたよなぁ!!」

 

『貴様…!!減らず口を…!!喰らえ!!』

 

「ゴブッ…!!」

 

「遊海さん!ダメ!アヌビスを刺激したら…!」

翠は遊海を止める…普段の遊海からは考えられない暴言…遊海は…何故そんな事を…?

 

「ハァ…ハァ…そしてオレは戦争の後、隠された貴様の棺を見つけ出して砕いた!ファラオに…王宮に被害を出さないように…!セト様に伝えたらなんと言ったと思う?『流石だシュウ!貴様がアクナディンの最後の策を防いだ!アテム王もよろこ…』」

 

『黙れ…黙れダマレダマレェェェ!!!』ガスッ…グシャ…

 

「ガッ…ガバッ…!!!」

 

「先生!!」

 

『貴様…余程死にたいらしいな…!!ならばお望み通り…死ぬがいい!!「デス・メテオ」!!!』

 

激昂したアヌビスはダメージを与える魔法を発動させる…それは紅い隕石となり遊海に直撃した。

 

「…ああ…予想通りだ…」

 

ズガーン…ボゥ……

 

「遊海さん!!!」

 

「先生…嘘だろ!嘘って言ってくれよ!」

 

直撃した隕石は遊海を包み燃え上がる…しばらくあった人影も既に消失している。

 

『フハハハ…死んだ…死んだぞ!!我が仇敵よ!先に冥府に落ちるがいい!!』

アヌビスは笑う…指令などどうでもいい!復讐こそ我が宿命なのだと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはどうかな?」

 

 

 

 

 

 

『なんだと!?』

遊海を焼き尽くした炎から遊海の声が響く…そして…

 

「お前なら挑発すれば激昂して、俺を殺そうとすると思った…残念だが…俺は不死身だ!」

赤い服を纏った遊海が炎の中から現れる…満身創痍だった肉体はほぼ完璧な状態に戻っている…、その姿は不死鳥のようだった…。

 

 

『なんだと〜!!?』

 

「遊海さん!!」

 

「先生!!」

 

「これは一つの賭けだった…貴様を挑発し俺の身体を消滅させる…そして俺の特典で超速再生する…上手くいって良かったよ…。」

 

『オノレェ!!』

 

「さぁアヌビス!決着をつけよう!!貴様を倒すために俺は…禁忌を犯す!!アヤカ!」

 

《はい!マスター!!信じていました!》

 

実体化したアヤカがデュエルディスクとデッキケースを投げ渡す

 

「ありがとう…さぁ、リベンジマッチだ!」

 

『小癪な!再び冥府に送り返してやる!!』

 

 

 

 

 

 

 

       『「デュエル!!」』

 

 

 

 

 

遊海LP4000

アヌビスLP4000

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

「手札から『青き眼の乙女』を召喚!」

民族衣装を着た青い瞳の少女が現れる ATK0

 

「カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

遊海LP4000

乙女 伏せ1  手札4

 

 

 

『何が禁忌だ!攻撃力0の弱小モンスターを出してエンドとは!もう一度死ぬがいい!』

 

「遊海先生!大丈夫なのかよ!!」

 

「心配するな十代…こいつらは…強いぞ!」

 

 

 

 

『我のターン!ドロー!』

 

『手札から「強欲な壺」を発動!2ドロー!…フハハハ!さぁ…焼き直しだ!』

 

「来るか…!」

 

『手札から『トラップブースター』を発動!手札の「スカラベの大群」を捨てて効果発動!手札から「光のピラミッド」を発動!』

アヌビスの背後に輝くピラミッドが現れる

 

「その瞬間!手札から『増殖するG』を発動!このターン、相手が特殊召喚するたびに一枚ドローする!」

 

『そんなの関係ねぇんだよ!!ライフを500づつ払い「スフィンクス・テーレイア」、「アンドロ・スフィンクス」を特殊召喚!』

女顔のスフィンクスと獣人のスフィンクスが現れる

ATK2500

 

ATK3000

 

アヌビスLP4000→3000

 

「2ドロー!」

 

『そして「サイクロン」を発動!「光のピラミッド」を破壊!効果により『テーレイア』と「アンドロ」を破壊し除外する!』

 

「自分のモンスターを破壊…?いったい何を!?」

 

「来るわ!」

 

『我がライフを500払い…現われろ!「スフィンクス・アンドロジェネス」!!』

二つの顔を持つスフィンクスが現れる ATK3500

 

アヌビスLP3000→2500

 

「1ドロー!」

 

「攻撃力3500…!遊海先生!!」

 

『さらにライフを500払い効果を発動!自身の攻撃力を3000アップする!』

 

ATK6500

 

アヌビスLP2500→2000

 

「なっ…攻撃力6500!?遊海先生はこれでやられたのか…!!」

 

「大丈夫よ十代君…見ていて…」

 

「翠さん…?」

 

『「アンドロジェネス」!弱小モンスターを叩き潰せ!!』

 

《ガオォォ!!》

 

アンドロジェネスの拳が乙女を捉え叩き潰そうとする…!

 

「先生!!」

 

 

 

 

《La〜…》

 

 

 

 

 

ピカーン…!!

 

『何!?』

 

その時、乙女の身体が輝き強い光を放つ…そして…!

 

「三千年の時を超え…降臨せよ!我が友の魂!『青眼の白龍』!!」

 

《ギャオオオン!!》

 

乙女の光が形を成し伝説の白き龍が現れる ATK3000

 

『なっ…「白き龍」だと〜!?』

 

「『ブルーアイズ』だって!?あのカードは海馬社長と精霊のカイバーマンしか持ってないはず!?」

 

アヌビスも十代も驚きの声を上げる…デュエルモンスターズにおける最強のドラゴン…それが降臨したのだから…。

 

「翠さん!?なんで…なんで『ブルーアイズ』が!?」 

 

「忘れてない?十代君…私達は転生者、遊海さんは元々持っていたの…『私達の世界のブルーアイズ』を!」

 

「持ってたの〜!?」

 

「ええ、でも遊海さんは世界の混乱を生まないようにあのデッキを封印してたの…それが今…開放されたの!」

 

『しかし何故だ…何故女から『白き龍』が…!?』

 

「『乙女』の効果…自身が攻撃された時に表示形式を変更して攻撃を無効にする、そしてデッキ・手札・墓地から『青眼』を特殊召喚する!」

 

DEF0

 

『くっ…オノレェ…!手札から「治療の神ディアンケト」を発動…ライフを1000回復する…』

 

アヌビスLP2000→3000

 

『ターンエンドだ!そして「アンドロジェネス」の攻撃力は元に戻る…が!伝説の龍でも神獣の長には敵うまい!!』

 

アヌビスLP3000

アンドロジェネス 手札1

 

 

 

 

「アヌビス!貴様の三千年の妄嫉…今ここで打ち砕く!」

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

 

「手札から装備魔法『ワンダーワンド』を『乙女』に装備する!効果により攻撃力が500アップする!さらに『乙女』のさらなる効果発動!デッキからいでよ!2体目の『青眼』!!」

 

『何!?2体目だと!?』

 

《ギャオオオン!!》 ATK3000

 

「さらに『ワンド』の効果!『乙女』とこのカードを生贄に2ドロー!」

 

「そして手札から『ドラゴン・目覚めの旋律』を発動!手札の『太古の白石』を捨ててデッキから3体目の『青眼』と『ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン』を手札に加える!」

 

『3体目だと!?』

 

「遊海先生!もしかして…!?」

 

「十代!見せてやろう!俺達の世界の新たな『究極竜』を!手札から『融合』を発動!場の2体と手札の『青眼』を究極融合!!」

 

3体のブルーアイズが光輝き合体する!

 

「最強の白き龍達よ!その身を昇華し覚醒せよ!!融合召喚!『真青眼の究極竜』!!」

 

真の力を開放した最強の究極竜が現れる ATK4500

 

《ギュオオオン!!》

 

「すげぇ…かっこいい…!!」

十代はデュエル中だという事を忘れて真究極竜に釘付けになる…憧れのモンスターの進化した姿…それを見て十代はワクワクが止まらなかった…。

 

《グルルル…!!》

アンドロジェネスは余りの迫力にあとずさる…

 

『し、しかし攻撃を受けてもライフは残る!!それに手札には『死者蘇生』がある!次のターンで…』

 

 

 

 

「次のターンがあると思うか?」

 

『何!?』

 

「俺は儀式魔法『カオス・フォーム』を発動!」

 

「儀式魔法!?まさか!」

 

「手札の星8『白き霊龍』を墓地に送り…儀式召喚!白き龍よ…混沌の力を宿し!さらなる進化を遂げよ!『ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン』!!」

 

闇の力を得た混沌のブルーアイズが現れる ATK4000

 

『なっ…あ…!?』

 

「闇の力を持った儀式モンスターのブルーアイズ…すっげぇ〜!!」

 

「バトルだ!『カオス・MAX』で『アンドロジェネス』を攻撃!『混沌のマキシマム・バースト』!!」

カオスMAXの全身から放たれたビームがスフィンクスを貫き破壊する

 

『ぬぐおおぉぉ!?』

 

アヌビスLP3000→2500

 

「真究極竜よ!怨念を打ち砕け!!『ハイパー・アルティメット・バースト』!!」

 

三条の光線が混ざり合い螺旋を描きながらアヌビスに直撃した…

 

『ぬぐああぁぁぁっ!!?』

 

アヌビスLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…やったぞ、翠…十代…!」

 

「遊海さん!良かった…良かったです〜!!」

 

「遊海先生!アンタ…すげぇ…すげぇよ!!最高だ!!」

翠と十代が遊海に飛びつく…

 

「ああ…ありがとう!お前達がいたから頑張れ…うぐっ!?力が…抜け…る?なんで…?」

 

「遊海さん!!どうしたんですか!?」

 

突如遊海が倒れ込む…その腕には黒いデスベルトと茨が巻き付いていた…

 

「おい…嘘だろ?俺の身体は一度消滅してるのに…なんでまだあるんだよ…!!」

デスベルトからはオレンジ色のエナジーが放出され続けている…それは膨大な量で…

 

「チクショウ…全部アイツの手のひらの上ってか…うぐっ…あああ…!」

遊海は痛みに顔を歪める…その吸収のしかたはドーマの時よりも荒っぽいものだった…

 

「遊海さん!しっかりしてください!遊海さん!!」

 

「遊海先生!翠さん!…何かマズいぜ!?」

 

「なに…?!…おいおい…冗談だろ?」

 

倒れ伏したアヌビスの肉体から黒い闇が溢れ出しジャッカルの顔を作り出す…

 

【コノ恨み…はらさでおくかぁ…!!】

 

「オイオイ…大人しく成仏してくれよ…?俺はもうオケラだぜ…ぐぅぅぅ…!」

 

「往生際が悪いぞアヌビス!!デュエルに負けたんだから大人しくしてろよ!?」

 

【キエ去るのなら…お前達もミチヅレダ!!】

闇が膨れあがる…

 

「翠…十代…お前達だけでも逃げろ…!お前達だけでも!!」

 

「遊海先生!?何を言ってるんだよ!!俺はレイと翔と約束したんだ!先生を連れて帰るって!!」

 

「遊海さん、私が…あなたを置いていけると思います…?」

 

「バカヤロー…これじゃあ俺が身体張った意味が…ないじゃないか…」

 

【キエ去れ!シュウ!テフ〜!!】

大口を開けたアヌビスが俺達に迫る…せめて…あと1手があれば…!

…俺はなんとか身体を起こし2人を抱き寄せ、庇う…気休めかも知れないが…少しでも…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポーン…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、不思議な事が起こった…

 

 

 

 

 

 

 

 

《魔導波!!》

 

【グオオァァァ!?ナンダァァ…!?】

 

『……』

 

【オ…オマエは…!!?】

 

『……!!』

 

《彷徨いし怨霊よ…浄化せよ!!いくぞ!》

 

《はい!お師匠様!!》

 

『『黒爆裂破魔導!!』』

 

【グアアアアアアアア…!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛みが…闇が来ない…なんでだ?

 

俺は閉じていた目を開ける…そこは普段通りの遺跡に戻っていた…変わったところは…空気が澄んでいるという事だけだった…。

 

「あれ…アヌビスは…?私達…助かったの?」

 

「そうみたいだ…一体何が…?」

 

「とにかく…2人が無事で…よか…った…」

遊海はそのまま倒れ伏す…限界量までデュエルエナジーを吸い取られ意識を保つのは限界だった…。

 

「遊海さん!しっかりしてください!遊海さん!!」

 

「翠さん!早く先生を保険室に…!」  

 

 

 

 

 

 

 

「フン、精霊の力を使うプロデュエリストか…面白い…利用するだけさせてもらうとするか…」

 

 

 

 

 

 

 

「ユベル様…アヌビスが破れました…しかしそのおかげで膨大なエナジーが集まりました…もう少し…、もう少しです!!」

 

《フフフ…楽しみだよ!憎たらしい白波も十分仕事をしてくれた、仕込みも終わった!ああ十代…!早く会いたいよ…!》

 



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異世界漂流学園 アカデミア 

身体が重い…ひどい倦怠感だ…意識がはっきりしない…夢なのか…?

 

《マスター!起きてください!緊急事態です!》

 

アヤカの声がする…

 

《主殿!!》

 

トフェニ…?

 

《ユウミ!起きてください!じゃないとレイが…!!》

 

フレア…?

 

「遊海先生…怖いよ…!助けて…!!」

 

レイ…?

 

《マスター!!!》

 

 

 

 

 

 

「みんな…どうしたんだ…?」

意識が覚醒する…そこには… 

 

「デュエル〜」

 

「デュエル〜!」

 

「デュエル〜!!」

 

「おいおい…アカデミアはいつからゾンビゲームの舞台になったんだ…?」

 

俺とレイを囲むたくさんの生気の無い先生や生徒達…そしてそれを防ぐ精霊達の姿があった…。

 

 

 

 

 

「先生…良かった…目が覚めた…!」

 

《マスター!おはようございます!緊急事態なので助けてください!?》

 

「アヤカ!レイ!どういう状況だ!?」

 

《マスター!とにかくレイさんの傷の治療を!!》

レイの腕を見ると化膿しかけた巨大な傷があった…本人も苦しいのか呼吸が浅い…

 

「わかった!『ディアンケト』よ傷を癒せ!…っぐ…!痛みが…!」

レイを癒やしながら右胸を見る…茨が胸のあたりまで浸食していた…

 

「…状況がわからないが…ここから離れるぞ…精霊変身!モード太陽神!!」

痛みに耐えながら金色の鎧を纏う…茨の浸食する音が聞こえるが、やるしかない!

 

『すまない!邪悪を燃やせ!「ゴッド・ブレイズ」!!』

 

「ヒィ〜!」

 

「火だ〜!?」

 

『掴まれ!レイ!』

 

「はい!」

 

『フェニックス・ダッシュ!!』

火に驚いて動揺した生徒達の間を潜りぬける、とにかく外に…!!

 

 

 

 

なんとか廊下に脱出するが…

「遊海先生〜デュエル〜!」

 

「オレとデュエルしろ〜」

 

『翔…万丈目…お前達もか…!!』

 

「「デュエル〜!」」

くそ…前後を挟まれたか…!…やるしかない…!

 

 

 

 

「「『デュエル!!/〜!』」」

 

翔(デュエルゾンビ)

万丈目(デュエルゾンビ)LP8000

 

遊海LP8000

 

翔→遊海→万丈目→遊海 2回目の遊海ターンから攻撃可能

 

 

 

 

「ボクのターンドロー…」

 

「『ドリルロイド』を召喚〜」

顔と手足にドリルをつけたロイドが現れる ATK1600

 

「カードを一枚伏せてターンエンド〜」

 

翔LP8000

 

ドリル 伏せ1 手札4

 

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』 

 

『自分フィールドにモンスターがいない時!「フォトンスラッシャー」は特殊召喚できる!』

 

光輝く戦士が現れる ATK2100

 

『カードを伏せてターンエンド!』

 

遊海LP8000

 

スラッシャー 伏せ1 手札4

 

 

 

 

 

 

「オレのターンドロ〜…」

 

「永続魔法『前線基地』を発動〜、そして『闇魔界の戦士ダークソード』を召喚〜」

黒い鎧の戦士が現れる ATK1800

 

「『前線基地』の効果で手札の『漆黒の闘龍』を特殊召喚〜」

黒い小型の龍が現れるATK900

 

「『闘龍』の効果で『ダークソード』にユニオン〜攻撃力400アップ〜」

戦士が龍に騎乗し攻撃力が上がる ATK2200

 

「ターンエンド〜」

 

万丈目LP8000

 

ダークソード(闘龍装備) 前線基地 手札3

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

 

『手札の「光子竜」を公開し手札の「銀河剣聖」の効果発動!このカードをレベル8で特殊召喚!』

剣聖の名を持つ戦士が現れる ATK0

 

『さらに手札の光属性モンスターを捨てて『銀河戦士』を特殊召喚!効果によりデッキの「光子竜」を手札に加える!』

 

小さな機械の戦士が現れる ATK2000

 

『そして「銀河騎士」を妥協召喚!効果により墓地の「銀河眼の光子竜」を守備で特殊召喚し、自身の攻撃力を1000下げる!現われろ!光の化身よ!!』

 

近未来的な鎧を着た騎士と銀河の瞳を持つ竜が現れる

 

ATK1800

 

 

DEF2500

 

 

『そして「騎士」と「剣聖」でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!宇宙を貫く雄叫びよ!遥かなる時をさかのぼり、銀河の源よりよみがえれ! 顕現せよ、そして勝利へと導け!「ANo.107 銀河眼の時空竜」!!』

 

黒い四角錐が展開し時空を司る竜が現れる ATK3000

 

『さらにリバースカード「RUMークイック・カオス」を発動!!俺は「時空竜」1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!逆巻く銀河を貫いて、時の生ずる前より蘇れ!永遠を超える竜の星! 顕現せよ…「A CNo.107! 超銀河眼の時空龍」!!』

 

時空を支配する三つ首の金色の龍が現れる ATK4500

 

 

 

『さらに「超時空龍」の効果を発動!「戦士」「スラッシャー」を生け贄にすることで…このターン「超時空龍」は三回までモンスターに攻撃できる!』

 

ロボットと剣士が時空龍に吸収される

 

「三回攻撃〜?」

 

『さらに「超時空龍」の効果!このカードのORUを一つ取り除き、このカード以外のフィールドのカード効果を無効にする!「タイムタイラント」!』

 

《グオオオオ!》

 

時空龍が咆哮すると世界が虹色の光に包まれる、そしてドリルロイドと闘龍、前線基地が灰色になる

 

ダークソードATK2200→1800

 

 

『そして自分フィールドにフォトンモンスターがいる時!「フォトンバニッシャー」は特殊召喚できる!』

レーザー銃を持つ戦士が現れる ATK2000

 

 

 

『そしてフィールドの「光子竜」と「バニッシャー」を生贄に…「銀河眼の光子竜」を特殊召喚!』

 

再び青き銀河眼が現れる ATK3000

 

 

『バトル!「超時空龍」で「ドリルロイド」、「ダークソード」に攻撃!「アルティメット・タキオン・スパイラル」!ニレンダァ!!』

金色の龍の息吹がモンスターを殲滅する

 

翔&万丈目LP8000→5100→2400

 

『「光子竜」でダイレクトアタック!「破滅のフォトン・ストリーム」!!』

 

「「やられた〜…」」

 

翔&万丈目LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

『ゼェ…ゼェ…起き抜けにこれは…辛い…うぐっ!?がぁぁぁ!?またかよ!?』

 

デュエルが終わるとデュエルエナジーが吸い取られる…それにより精霊変身も解除される…

 

『ゼェ…ゼェッ…くそっ…力も回復しきってないのに…!!』

 

「先生…!ヤバイよ…!!」

 

 

「デュエル〜」

 

「デュエル〜!」

 

「デュエルしましょうよ〜…」

 

 

「くそっ…囲まれてる…!」

デュエルをしている間に他のゾンビ化生に囲まれた…!本調子じゃないのに…!

 

「「「デュエル〜」」」

 

 

「保ってくれ…俺の魂よ!実体化せよ!!『ラーの翼神竜』!!」

 

《キュアアアアー!!》

【ユウミ!!】

俺の言葉と共にフレアがもとの姿に展開する…コレで…!

 

「フレア!脱出だ!頼む!!」

 

【わかりました!「ゴッドブレイズキャノン」!!】

 

ズガーン!!

 

フレアがアカデミアの壁を破壊し活路を開く

 

「レイ!ラーの背中に乗るんだ!」

 

「えっ!…あっハイ!!」

 

「フレア!頼む!!」

 

【しっかり掴まっていなさい!!】

 

フレアは生徒達を置き去りにして空に飛び上がる…そして外は見渡す限り、一面の砂漠だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アヤカ…俺が気絶してる間に何があった…!」

飛翔するフレアの背中でアヤカに事情を聞く…

 

 

《はい…まず現在マスターがアヌビスと戦ってから日付的に1週間、この世界にきて3日程経っています…。》

 

「1週間…俺はそんなに気絶してたのか…」

 

《しょうがありません、アヌビスとの決闘後マスターは全体量の9割のエナジーを吸い取られていました…、マスターは容量が大きいため回復に時間がかかるのです、現在は6割まで回復しています…。》

 

《話を戻します…マスターが倒れた4日後、十代達がコブラの隠れ家…旧SAL研究所に向かいました。ここからはハネクリボーやルビーから聞いた話ですが…十代達は研究所に仕掛けられた罠や刺客を潜り抜けコブラと十代がデュエルを行いました、結果は十代の勝利に終わりましたがエナジーによりユベルが復活…その余波によりアカデミアが次元転移しました…。》

 

「そうだったのか…レイ、そういえば怪我はなんで負ったんだ…?」

 

「うん…アカデミアがこの世界にきてからマルっち…加納 マルタンっていうイエローの子と一緒に行動してたら変な影みたいな人?に引っ掻かれて…」

 

《それで十代達は薬を取りに行くために砂漠の潜水艦へ…その直後に仮称デュエルゾンビ化した生徒達が現れたんです》

 

「先生が気絶してる間にアヤカさんや他の精霊達が保険室にいたぼくと先生を守ってくれてたんだ…最初は少し驚いたけど…やっぱり先生はスゴイや!」

 

【当然です!ユウミは私とファラオの認めた勇士なのですから!】

 

「はは…ありがとうフレア…っぐぅ!?」

 

「先生!?大丈夫!?どうしたんですか!?」

 

「エナジーが…抜かれ…!ぐぅぅぅ…!?」 

デュエルエナジーが抜かれる感覚と共に魂が軋む…、茨の浸食が…

 

《マスター!お気…確か…に!》

 

「遊海先…!?顔…茨…!?」

 

2人の言葉が聞き取れない…意識が…

 

「《先生!!/マスター!!》」

 

身体を包む浮遊感…バランスを崩してフレアから落ちたらしい…死にはしないだろうけど…痛いかなぁ…

 

 

 

 

 

 

「おい!何か落ちて来るぞ!?」

 

「あれは…遊海先生!?サファイア・ペガサス!頼む!!」

 

《わかった!!》

 

「遊海先生!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…ぐっ…俺は…?」

目を覚ますとそこはアカデミアの体育館だった、40人程の生徒達が集まり身を寄せ合っている…。

 

「遊海先生!目が覚めたか!」

 

「十代…俺は…?」

 

「驚いたぜ…潜水艦から帰ってくる時に空から先生が降って来たんだ!」

 

「それをサファイアペガサスで受け止めたら、さらに『ラーの翼神竜』がレイを背中に乗せて現れるし…アカデミアに戻ったらゾンビだらけだし…散々だったよ…。」

 

「ヨハン…すまなかったな、俺の精霊達は…?」

 

「みんなそれぞれ他の生徒達を手伝ってくれてるぜ!…フレアだけ外で俺達を守ってくれてるけど…」

 

「そうか…なら俺も何かしなきゃ…ぐぅぅぅ!?」

遊海が体を起こそうとすると体中に激痛が走る…

 

「遊海プロ…あなたは今、動かないほうがいい…」

 

「オブライエン…無事だったか…」

 

「ああ…遊海プロ、先日はすまなかった!俺の謝罪を受け入れてほしい…十代と過ごす中で貴方の言っていた事が理解できた…デュエルは楽しいものなんだと…!」

 

「納得してくれたのなら良かった!これからよろしくな!」

 

「ああ…しかし遊海プロ、今の貴方のコンディションは最悪だ…これで自分の顔を見てくれ…」

 

「?」

オブライエンは手鏡を渡してくる…

 

「…これは…」

 

そこ映った俺の顔には右から顔の半分を覆うように黒い茨の模様が巻き付いていた…それは僅かに脈動し痛みを放っている…。

 

「オレはオカルトについて詳しくないが…ソレは確実に害のあるモノのはずだ、いったい…いつから隠していた…!」

 

「…コブラに巻かれたデスベルトを着けてからだ…、気にしなくていい…既に効果はわかってる、このままなら俺は…死ぬだろう…」

 

「「「「なんだって!?」」」」

 

 

 

〜遊海説明〜

 

 

 

 

「先生の力を使えば使う程進行する呪い…そんな…なんで俺達に相談してくれなかったんだよ!!」

十代が感情の篭った声で遊海を責める…

 

「十代…お前達に相談しても何も変わらなかった、アヤカやフレアと相談した結果だ…覚悟は決めてある…」

 

「でも…」

 

「俺は曲がりなりにも教師だ…生徒であるお前達を護る義務がある…その結果でこの身が果てようと悔いは無い…!」

 

「先生…!でも…でも!!」

 

「…なーんてな!」 

 

「「へっ?」」

遊海は突然明るい声を上げる

 

「冗談だよ!冗〜談!十代、前に言っただろう?俺は『不死身』だって!」

 

「えっ…あ!!」

十代は思い出した…アヌビスとの戦いで炎に包まれ、その中から復活した遊海の姿を…

 

「仮に俺が呪いで死んでもすぐに復活するさ!確かに痛いが耐えられない程じゃない!大丈夫だ!」

 

「遊海先生…不死身とは…どういう事でア〜ル…?」

 

「いけね!?説明するの忘れてた!」

 

 

 

 

 

〜遊海説明その2〜

 

 

 

 

 

「名も無きファラオに託された祝福であり呪い…そんな事が…」

久々に登場した三沢(ツバインシュタイン博士の実験事故に巻き込まれた)が遊海と翠の力を聞いて思考の海に入る

 

「『不老不死』…イッツワンダホー…人類の永遠の夢を体現した者がいたとは…」

ジムが素直に驚嘆の声をあげる…

 

「ああ…、ただし『デュエル』では死ぬけどな…今まで何回死にかけたか…」

 

「デュエルで死ぬって…それこそどんな状況なんですか…?」

明日香が疑問の声をあげる…

 

「う〜ん…デュエル中に精霊に殴り飛ばされたり…暗黒次元に送られそうになったり…」

 

「「「どういう状況なんです!??」」」

 

 

 

 

 

「とまあそんな感じだから心配はいらない、とにかく今は生き延びて元の世界に帰る方法を考えよう!」

 

「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

「十代…翠は…?」

 

「翠さんは巻き込まれてないはずだ…翠さんのご飯が恋しいな〜…」

 

「トメさんが作ってくれてるから大丈夫だ!トメさんのご飯も美味しいからな〜…と、ちょっとトイレに行ってくるよ…」

 

「ああ!一応ゾンビ生はいないと思うけど気をつけてな先生!」

 

 

 

 

 

「う〜む…こちらの時間軸と元の世界の時間軸を計算して…ああ〜ダメだ…考えが纏まらない…少し散歩するか…」

帰還方法を考えていた三沢は考えが煮詰まり廊下へと出てきた…

 

「う…うう…!が…あ…!」

 

「なんだこの声は…まさかデュエルゾンビ…!?」

廊下に唸り声が響く…三沢は近くにあったモップを手に声の元へと向かう…。

 

「が…あ…!!う…ぐ…!?」

 

「声が近い…場合によってはブルーベレー隊を…」

 

「ぐぅぅぅ…!!」

 

「!?遊海先生…!どうしたんですか!?」

声の主は遊海だった…体を丸め油汗をかいて歯を食い縛っていた…

 

「ぐぅぅぅ…三沢…気にするな…痛みに耐えているだけ…だ…!!」

 

「っ!?先生!失礼します…これは…!?」

三沢は遊海の上着を脱がせる…その体は8割が茨の呪いに浸食されていた…

 

「先生が…生徒達の前で、弱音を見せるわけには…いかないんだよ…!」

 

「先生!早く体育館に戻ってください!その体じゃ…いくら復活するといっても…!!」

 

「復活は…しない…この呪いは魂に刻まれてるんだ…魂が消えたら…流石に消滅する…があああ!!?」

 

「なっ…!?先生…なんで嘘を…!」

 

「これ以上アイツらを追い込みたくなかっただけだ…プロである俺がいなくなったら…生徒達は本当に希望を失ってしまう…!せめてみんなを元の世界に返すまでは…死ぬわけにはいかないんだよ…!!!」

 

「遊海先生…あなたって人は…!」

 

「痛みの波が収まってきた…体育館に戻るよ…そうだ三沢…」

 

「なんです?」

 

「お前の敬愛するツバインシュタイン博士なら…どう連絡を取ろうとする…?」

 

「博士…博士なら…!!そうか!!この式をあそこに当てはめて…!先生ありがとうございます!!」

三沢は何かに気づいたのか走りさっていった…。

 

「ははは…頼んだぞ三沢…お前が…鍵…だ…」

 

襲い来る痛みに遊海は意識を手放す…その後、偶然通りかかったクロノス先生に回収され無事に体育館に戻った…。



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次元を絆ぐ虹の橋〜最後の手助け〜

久々の1日に2話投稿!!


「みんな!急げ!テニスコートへの道を開くんだ!」

 

騒がしい…何かあったんだろうか…?というか俺は何をしてたんだっけ…?

 

「…何があった…?」

 

「セニョール遊海!目が覚めたノーネ!!」

俺が目を覚ますとクロノス先生が看病をしてくれていた…。

 

「クロノス先生…何が…?」

 

「元の世界と通信が繋がったノーネ!!それで帰れる可能性ができたノーネ!!」

 

「本当ですか…!」

 

クロノス先生によると三沢が元の世界のツバインシュタイン博士との通信に成功したらしい、それによりヨハンの求める最強カード「レインボードラゴン」をこちらの世界に転送、そこから世界移動できる可能性が出てきたそうだ…。

 

「それでレインボードラゴンを受け渡すエネルギーを発生させるためにデュエルをするノーネ!そのためにゾンビのうろつくテニスコートに突入するノーネ!!」

 

「なるほど…なら俺もいかない…と…!ぐっ…!」

 

「遊海先生ダメだ!あなたの…!?」

 

「三沢…何も言うな…いまは人手が必要な筈だ…!」

遊海は凄まじい殺気を放ち三沢を黙殺する…その瞳には覚悟が宿っていた…。

 

「わかりました…いきましょう遊海先生…!」

 

「ああ…いくぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「総員ヨハンを守れ!!ヨハンを必ずテニスコートに到達させるんだ!!」

 

「「「うおぉぉぉ!!!」」」

 

オブライエンを中心としたブルーベレー達がデュエルゾンビを引き付け道を開いていく…それは死地に向かう特攻…飲み込まれた生徒達は新たなデュエルゾンビに変貌する…

 

 

 

 

「くっ…数が多すぎる…!このままじゃ…!!」

 

「ワタシが残るノーネ!!ヨハン!三沢!オブライエン!前に進むノーネ!!」

 

「クロノス先生!?」

 

「我輩も残るでアール!!」 

 

「教頭は先に行くノーネ!!グレた息子に愛の鞭を振るうノーネ!!」

 

「クロノス先生…!!すまないでアール!!」

 

「生徒達…!特別授業を始め…!」

 

 

 

ヒュオ〜…

 

 

 

 

 

「な、何ナノね!?寒いノーネ!?」

 

デュエルゾンビを引き付けようとしたクロノスの元に冷たい空気が流れてくる…本来砂漠の夜は-20℃になる事もあるらしい…しかしこの世界では太陽が3つありそんな事はありえない…。

 

 

『すまない生徒達…少しの間…眠っていてくれ…』

 

 

ピキピキピキ…

 

「デュエ…」カチーン

 

「デュエルしよ…」ピキーン

 

「デュ…」カチコチ

 

「なっ…壁やゾンビ生達が凍っていくノーネ!?いったい何が…!」

 

『クロノス先生…ご無事でしたか…』

 

「セニョール遊海!?その姿は…!」

廊下の奥から現れたのは青白い龍の鎧を纏った遊海だった…その胸には小さな鏡が嵌っている、そして顔は黒い茨に完全に覆われていた…。

 

『アーマードウォーリアー・モードネクロス・トリシューラ…校内にいるゾンビ生達は全て眠ってもらいました…これで時間稼ぎにはなるでしょう…』

 

遊海は最後の力を使い新たな精霊変身を遂げた…その力でゾンビ達を凍らせ動きを止めたのだ…。

 

「遊海先生…アナータは…」

 

「クロノス先生…生徒達を頼みます…オレはアイツを押さえますから…」

 

「アイ〜ツ?」

 

コツ…コツ…

 

「気づかれていましたか…流石伝説の決闘者…瀕死であっても勘は鈍っていませんか…」

 

氷の回廊から現れたのは最後の留学生、アモンだった…その腕は異形の腕に変化している…

 

「セニョールアモン…!?その腕は…!」

 

「僕は異世界の王となる…そのために…お前を倒す…!」

 

『クロノス先生…行って下さい…早く…早く!!』

 

「わかったノーネ!!遊海先生!絶対に勝つノーネ!!」

 

『はい…!!』

 

 

 

 

 

「邪魔者は消えた…さぁ始めようか!」

 

『アモン…完璧を求める王の器を持つ者よ…しばらく付き合ってもらうぞ…!!』

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

 

アモンLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

 

「手札から永続魔法『召喚雲』魔法カード『宝札雲』を発動!さらに『召喚雲』の効果で『雲魔物ー羊雲』を手札から特殊召喚!」

小さな雲の塊が現れる DEF0

 

「さらに『羊雲』を通常召喚…!」

DEF0

 

「カードを一枚伏せてエンドフェイズ、『宝札雲』の効果で1ドロー!ターンエンド!」

 

アモンLP0

羊雲 羊雲 伏せ1 手札3

 

 

 

 

 

 

『堅実な手だな、隙なくこちらを見据え…動きを読もうとしている…』

 

「お前はアカデミアでの要注意人物の一人だからな…警戒もするさ…ユベルからの呪いはどうだ?」

 

『ああ…しっかり効いているさ…しかしまだ時間はある!』

 

 

 

 

 

 

 

『俺のターン…ドロー!』

 

『手札から「マンジュ・ゴッド」を召喚!効果により儀式モンスター「ヴァルキュルスの影霊依」を手札に加える』

 

たくさんの手を持った仏像のモンスターが現れる ATK1400

 

『そして手札から儀式魔法「影霊依の降魔鏡」を発動!手札の「儀式魔人リリーサー」と「影霊依の戦士 エグザ」を生贄に儀式召喚!降霊せよ!神界の第一位の王の魂!星8「ヴァルキュルスの影霊依」!!』

壮年の悪魔の力を纏った魔導師が現れる ATK2900

 

『生贄に捧げた「エグザ」の効果、デッキからドラゴン族儀式モンスター「ディサイシブの影霊依」を手札に加える』

 

『バトル!「ヴァルキュルス」で「羊雲」を攻撃!「氷結混沌魔術」!』

ヴァルキュルスの魔法が小さな雲を氷結させ砕け散る

 

「破壊された『羊雲』の効果!『雲魔物トークン』2体を特殊召か(ビーッ!ビーッ!)エラー音だと?!」

 

『儀式召喚に使った「リリーサー」の効果によりお前は特殊召喚ができない!』

 

「何っ!?」

 

『メイン2「ヴァルキュルス」の効果!「マンジュ」を生贄に捧げ1ドロー!…ターンエンド!』

 

遊海LP4000

ヴァルキュルス(リリーサー効果適用) 手札4

 

 

 

 

 

「くっ…特殊召喚を封じられたか…!しかし僕は負けるわけにはいかない!!」

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「手札から『エア・サーキュレーター』を召喚!」

顔が扇風機になっているモンスターが現れる DEF600

 

「効果により手札の『羊雲』と『ストームドラゴン』をデッキに戻し2ドロー!」

 

「…カードを伏せてターンエンド…!(手札にはエグゾディアの『左足』と『右腕』がある…守りを固め特殊勝利を…!)」

 

アモンLP4000

サーキュレーター 羊雲 伏せ2 手札2

 

 

 

 

 

 

『アモン…何故、王にこだわる…?』

 

「…全ての人が平等に苦しみの無い世界を作るためだ!元の世界では無理だ…!しかしこの異世界なら…!!」

 

『何故諦める?』

 

「何…?」

 

『それは元の世界でもできるかも知れない事だ…すぐには無理だろう、しかし時間をかけて少しづつ人を変えていけば実現できる筈だ…』

 

「…僕はガラム財閥の影だ…元の世界に戻ればシドの部下に戻る事になる…だから僕は…」

 

『なら…飛び出せばいい…!』

 

「な…に…?」

 

『「ガラム財閥のアモン」ではなく「ただのアモン」として旅立てばいい…その理想をシドに…義両親に伝え自分の道を…日向の道を歩けばいい!』

 

「馬鹿な…そんな事…できるわけ…!!」

 

『1人では無理だろう…でもお前には、お前を愛してくれる人がいるはずだ!!』

 

「愛して…くれる人…エコー…俺は…」

 

『お前を縛る心の枷…砕いてやろう…』

 

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

 

『魔法カード「儀式の準備」を発動!デッキから『クラウソラスの影霊依』を手札に加える、そして墓地の「降魔鏡」を手札に加える!』

 

『「ヴァルキュルス」の効果!手札の「大魔導師」を生贄に1ドロー!生贄にした「大魔導師」の効果でデッキの「ユニコールの影霊依」を手札に加える!』

 

「くっ…リバース罠『ブレイク・ザ・シール』を発動!フィールドのもう一枚の『シール』を破壊しデッキから『封印されし左腕』を手札に加える!」

 

『儀式魔法「影霊依の万華鏡」を発動!エクストラデッキのレベル12『シューティング・クェーサー・ドラゴン』を墓地に送り手札からレベルの合計と同じレベルの儀式モンスター2体を儀式召喚する!!』

 

「なんだと…!?」

 

『現われろレベル3!霞の谷を守りし怪鳥の魂!「クラウソラスの影霊依」!レベル9!開放されし第3の龍の魂!「トリシューラの影霊依」!!』

迷いの風を吹かせる怪鳥と世界を氷結させた龍の魂を着た青年達が現れる DEF2300 ATK2700

 

『「トリシューラ」の効果!フィールドの「サーキュレーター」墓地の「羊雲」そして手札を一枚づつ除外する!「絶対氷結」!!』

 

「なっ…!『右腕』が…!?」

 

除外されたカード

 

羊雲

サーキュレーター

封印されし右腕

 

『さらに「降魔鏡」を発動!墓地の「大魔導師」と「リリーサー」を除外し儀式召喚!現われろ!開放されし第2の龍の魂!「グングニールの影霊依」!!』

赤い髪の龍の鎧を纏った女性が現れるATK 2500

 

『「グングニール」の効果発動!手札の「ユニコールの影霊依」を墓地に送り「羊雲」を破壊する!』

 

羊雲が氷結し砕け散る

 

「これは…俺の…」

 

『バトル!「グングニール」でダイレクトアタック!「氷結の魔槍」!!』

 

グングニールが杖を掲げると巨大な氷の槍が現れる、グングニールは飛び上がり杖で槍を打ち出した

 

「ぐうっ!?」

アモンLP4000→1500

 

『「トリシューラ」でダイレクトアタック!さらに手札から「ディサイシブの影霊依」の効果を発動!手札から捨てる事により攻撃力を1000アップする!』

巨大な砲門がトリシューラの背後に現れ力を与える

ATK2700→3700

 

「攻撃力3700…」

 

『アモン!受け取れ!希望の力を!|希望の創造三叉槍撃《ホープ・オブ・クリエーション・トライデント・シェイバー》!!』

 

トリシューラが剣を三叉槍に変化させ投げ放つ…その背後には希望を束ねたような神々しい龍の姿があった。

 

 

「…世界は…こんなにも…」

 

アモンLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…ぐ…僕は…」

 

「…気がついたかアモン…?」

 

「遊海プロ…僕は…?」

 

「起きてすぐにデュエルゾンビになられても困るからな…氷で拘束させてもらった…悪く思うな…」

 

アモンが目覚めると床に寝かせられ首以外が氷漬けになっていた…不思議と冷たさは感じなかった、近くには遊海が座りこんでいる…

 

「…俺の意見…納得してくれたか?」

 

「…はい…元の世界に帰ったら父と…エコーに相談してみようと思います…」

 

「そうか…歩いてみろ…自分の道を…」

 

ピシッ…

 

「?…今の音は…?」

アモンの耳に何かの罅割れる音が響く…自身の体を包む氷には変化は無い…

 

「…タイムリミットか…」

ピシ…ピシ…パリッ…

 

「遊海プロ…!?その体は…!!」

アモンが遊海に目を向けるとその体にヒビが入っていく…

 

「じゃあなアモン…みんなに…翠によろしく頼む…」

パリーン…

 

「遊海プロ…!そんな…そんな!!」

遊海の体は砕け散る…跡には決闘盤だけが残っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い…何も存在しない世界…いや…知覚する事ができない…。

 

俺の魂はユベルの呪いにより砕け散った…なんで思考できているのだろう…?不思議と身体もあるような気がする…。

 

 

『遊海、目を覚ませ…お前の魂はそんなに弱い魂だったか?』

聞き慣れた/懐かしい声が聞こえてくる…この声は…

 

 

 

 

遊海は目を開ける…そこに広がっていたのは古い石造りの神殿だった…そして…

 

『久しぶりだな遊海…元気だったか?』

玉座に座る者の姿が目に入る…逆立った髪…王を示す千年錐…それは…

 

「あ…アテム…?」

 

『ああ…俺だ!』

 

決闘王…アテムの姿だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アテムがいるという事は…ここは夢か…?それとも冥界か?」

 

『ここは高次の世界…死した魂が集う場所の1つだ、いつもこの世界から相棒やお前達の事を見ていたんだ…まぁ…何回か干渉もしたがな…』

 

「干渉…まさか!ディーヴァとアヌビスの時のあれは…!」

 

『ああ…あれに干渉したのは俺だ、一度はお前の身体を借りて…二度目は直接アヌビスを倒しに行った、』

 

《まったく…お前はよく無理をするものだ…程々にしてくれるとありがたいのだが…》

 

「マハードさん…」

アテムの隣に現れたのは魔導師のマハードさんだった、その首には千年輪がかかっている

 

「でも…俺は魂を砕かれて…」

 

『魂が砕かれたのが異次元で幸いだった…あの世界は生と死の境界があやふやだったんだ、だから霧散する直前のお前の魂をマハードが回収して復活させる事ができたんだ…』

 

「なら…俺は…!」

 

『ああ、まだ生きている…元の世界に戻れば肉体も再構成されるはずだ!』

 

「ありがとう!アテム!マハード!…でも…帰り方が…」

 

「それなら心配は無い…来るぞ?」

 

「えっ?」

その瞬間神殿の地面から虹色の光が溢れ出す!

 

「うわ…!?この光は…!」

 

『世界を繋ぐ龍の光だ…ほら、迎えも来たぞ?』

 

『『『マスター!/主殿!/ユウミ!!』』』

 

「アヤカ!トフェニ!フレア!?どうして…!?」

 

虹色の光の中からアヤカ達精霊が飛び出してくる…どうしてここに…!?

 

《マスター!お忘れじゃないですか?私とマスターは魂で繋がっています!それを手繰り寄せて迎えに来たんです!…というか何勝手に消滅してるんですか!?ラインが消えた時私パニックになったんですからね!!》

 

《主殿、心配しておりました…アカデミアの面々も元の世界に帰還していますぞ!》

 

「アヤカ…トフェニ…」

 

 

 

 

《アテム王…》

 

『ラー…いや遊海の精霊フレアよ…友を頼む…無茶ばっかりする友をな!』

 

《はい!わかりました!》

 

 

 

「アテム…」

 

『遊海…俺が手助けできるのはこれが最後だろう…お前達の世界を…相棒を頼んだぞ!!』

 

「ああ!俺は俺なりのハッピーエンドを目指してみせる!だから見ていてくれアテム!」

 

『ああ!頼んだぞ我が友よ!』

アテムは拳をつき出す

 

「ああ!頼まれた!」

遊海も拳を合わせつき返す

 

「じゃあなアテム!マハード!またいつか…決闘しよう!!」

 

『さらばだ!!白波 遊海!世界を変える者よ!』

遊海は虹色の光に飛び込む、そして意識は光に溶けていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ファラオよ…あの者…遊海の抱えていたモノを伝えなくてよかったのですか…?》

 

『ああ…あれは遊海に課された最後の試練だ…俺がドーマとの戦いを乗り越えたように…奴も試練を乗り越えなければ…』 

 

《…辛い試練になるでしょう…》

 

『ああ、しかし見守ろう…その姿を、遊海…頑張ってくれ…!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!遊海さん!!目を覚ましてください!!!遊海さん!」

 

 

 

「…ここは…」

 

「あっ…遊海さん…!!」

 

「ムギュ!?く、苦しい…!!み、翠…!?」

見慣れた景色で目を覚ます…ここはアカデミアの保険室…?

 

「遊海さん!何処に行ってたんですか!?アモン君から遊海さんが死んだって聞いて私…私…うぇ〜ん!!!」

 

「ごめんな翠…少し冥界に行ってアテムに会ってきた…」

 

「それ9割方死んでるじゃないですか〜!!?本当に何やってるんですか!このアンポンタン〜!!!」

 

「翠!ごめん!ごめんってば〜!!」

 

「え〜ん!!!」

 

泣きじゃくる翠を宥めながら遊海は帰ってきた事を実感できた、窓からは青い空が見えている…。

 

そして…感じとる…次の戦いを…



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第3.5章 3年目前半 閉鎖破壊神域 超融合
次元突破クリフォトキラー〜第一の世界〜


アカデミアがこちらに帰還して3日、俺が目覚めて1日が経った、転移したメンバーはヨハン1人を残し全員が帰還した…アモンは一足早くイースト校に戻っていった。エコーと共に「皆が笑って暮らせる世界になるように協力してほしい、ダメなら財閥から抜ける」と義父に頼みに行くらしい…どうなるかは2人次第だろう…。

 

 

ゾンビ化した生徒達はこちらに戻って来てすぐに正気を取り戻した、デュエルゾンビはデュエルエナジーが欠乏した時に起こる症状らしくエナジーに溢れるアカデミアの土地に帰ってきた事で治ったのだろう。

 

ただいい事ばかりでは無かった、1つは封印された三幻魔が盗まれ、さらにその融合体である「アーミタイル」が誕生した…デュエルを見ていた明日香によると攻撃力10000を誇るモンスターで「レインボードラゴン」がいなければヤバかったとの事だった。

 

そしてもう1つの問題は…

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコン…

 

「入るぞ十代…」

 

俺は十代の部屋に入る、そこにはベッドに腰掛けて頭を抱える十代の姿があった…。

 

「俺の…俺のせいで…」

 

「十代!しっかりしろ!!」

 

「うわっ!?…遊海…先生…」

 

「…十代…お前のせいじゃない!…あれは…」

 

「俺の…俺のせいなんだ!俺がユベルを説得できなかったから…!!俺がユベルを宇宙に送ったから…!!」

 

「しっかりしろ!遊城 十代!!」

 

「…!?」ビクッ

 

「起きてしまった事を悩んでもしょうがない!!これからの事を考えるんだ!!」

 

「これ…から…?」

 

《クリクリ〜!!》

 

「ハネクリボー…?」

十代の周りをハネクリボーが飛び回る…

 

「十代…もし…これから異次元に行けるなら…どうする?」

 

「!!…行けるのか!?」

十代は遊海に掴みかかる

 

「ああ、間もなく王家の遺跡に特異点…ポータルゲートが現れる…そこから異世界に行けるはずだ!」

 

「行く!絶対に行く!!!ヨハンを助けられるなら…俺は…なんでもする…!!」

十代の眼に光が戻る…しかしその光には狂気が入っていた…

 

「…いいだろう、10分で用意しろ!そしたら遺跡に向かう!」

 

「わかった!!…待ってろよヨハン!!今助けに行く!!」ドンガラガッシャーン…バタバタ…

 

 

 

 

 

 

「翠…いいな?」

 

「はい…用意も覚悟もできています!!」

 

「俺達の使命は『覇王十代を目覚めさせつつ被害を最小限に押さえる事』…矛盾した目的だが…やるしかない…!」

 

「はい…!」

 

俺と翠は覚悟を決める…覇王十代が目覚めるには犠牲がいる…しかしその犠牲を最小限に抑える…矛盾している…でも悲しい結末を最小限にできれば…!

 

「先生!翠さん!待たせたな!!」

十代がリュックを背負って現れる

 

「なら行こう…特異点へ…!」

 

 

 

 

「うむ…?あれはシニョール十代と遊海先生に翠嬢?こんな夜更けに何処に…?」

 

 

 

 

 

 

 

未だアヌビス戦の傷跡が残る遺跡…そこには時空の歪みが発生していた…まるで俺達を招くように…

 

「これが次元の歪み…ヨハン今行く…」

 

「ちょっと待て十代…今はダメだ…!」

次元の穴に向かおうとする十代にストップをかける

 

「この次元の穴はとても不安定なの…だからここに強いエネルギーを当てて指向性を決めるの…!」

 

「強いエネルギー…?そんなのどうやって…」

 

「それは…」

 

「「「「「十代!!」」」」」

十代を追いかけて翔・剣山・万丈目・明日香・吹雪・三沢・ジム・オブライエンがやって来た…。

 

「遊海先生…なんでここに…!」

 

「翠さんまで…」

万丈目と明日香が声をかけてくる

 

「落ち込んでる十代が見てられなくてな…一緒に異次元に行こうとついて来たんだ!」

 

「うぇ!?2人も行くつもりなんすか〜!?」

 

「遊海先生…あなたはまだ病み上がりのはずだ…それでも行くと言うんですか!?」

吹雪と翔が信じられないというかんじで言ってくる。

 

「俺は元よりそのつもりだ!」

 

「ユベルの話、鮫島校長から聞いたよ…お前とユベルとの間の因縁まではアイドンノウ…バッド、もう引き返せない程深く関わってしまっている。」

 

ジムとオブライエンも行くつもりだ…

 

 

 

「十代を放ってはおけないわ!」

 

「アニキとは他人じゃないドン!肉食わば骨までだザウルス!!」

 

「この万丈目サンダーも行ってやる!勘違いするな?ヨハンのためだからな!!」

 

剣山や万丈目達も覚悟を決めたようだ…

 

「「本気なの〜!?」」

 

「みんな!冷静になれ!考え直せ!?」

三沢や吹雪、翔はみんなを止めようとするが…たぶん無駄だろう…ここまでの運命は変えられない…

 

「全員に確認する!!ここから先はどんな世界に繋がっているかわからない!それでも行くか!?」

 

「「「「「応っ!!/はい!!」」」」」

 

「ならば各自モンスターを召喚しろ!ここはデュエルエナジーが満ち精霊世界に似た環境になっている!…モンスターを召喚してゲートを広げるんだ!!」

 

 

「わかった!来い!『ネオス』!」

宇宙を救うヒーローが

 

「『XYZ-ドラゴン・カタパルト・キャノン』!!」

合体ロボ戦車が

 

「『サイバーエンジェルー弁天』!」

麗しい機械天使が

 

「『超伝導恐獣』!」

恐ろしい恐竜が

 

「カモン!『古生代化石騎士 スカルキング』!」

古生代の化石の王が

 

「出番だ!『ヴォルカニック・デビル』!」

炎の悪魔が

 

「お願い!『エルシャドール・ミドラーシュ』!!」

《了解!》

影の人形が…それぞれのエネルギーをゲートへと打ち込む…!!

 

「ヨハン!今からお前を助けに行く!待っててくれー!!」

十代が叫ぶ…しかし…

 

「ノーッ…エネルギーが足りてない…!!」

ジムがみんなに伝える

 

「くそっ…!」

 

 

 

 

「『スーパービークロイド ステルス・ユニオン」

』!!」

はたらく車が合体したロボが…

 

「『ウォーター・ドラゴン』!」

水の龍が…

 

「『真紅眼の黒竜』!」

伝説の黒き竜がエネルギーを放つ!

 

 

「翔!三沢!吹雪さん!!」

 

「もうヤケクソッす!ヨハン!今助けに行くっす〜!」

 

「妹だけ危険な場所へ送れるか〜!!」

 

そして…

 

「ダメ押しだ!!見せてやる!俺の相棒の真の姿を!!顕現せよ…!『アポクリフォート・キラー』!!」

 

【了解です!マスター!久々に頑張りますよ〜!】

巨大なる機殻の王が降臨する!

 

「「「「「デカっ!!?」」」」」

 

「放て!『デストロイ・キャノン』!!」 

 

【了解です!主砲…発射!!】

 

最大のエネルギービームがポータルゲートに直撃し…強力な光が周囲を包みこんだ…!!

 

「「「「「うわ〜!!?」」」」」 

 

「「しまった!?」」

 

「なんなノーネ!?マンマミーア〜!!?」

 

 

光が収まるとそこに『人』は残っていなかった…

 

【…えっ…私…置いてきぼりですか!?嘘でしょ!?マスター!?翠さん!?十代さん〜!?!?】

 

上空にて右往左往するアヤカを除けば…

 

 

 

 

 

 

 

 

【フフフ…ハジマル…ハジマルゾ…「破王」ガ…メザメル!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…うう…転移は成功したのか…?」

俺が目を覚ますと洞窟の中だった…どうやら転移は成功したらしい…ただし近くに誰もいないんだが…

 

「アヤカ!レーダーサーチ!」

 

シーン…

 

「アヤカ…?どこに行った?」

 

《主殿…申し訳ないが…》

 

「トフェニ?」

 

《アヤカ殿は転移に失敗して…置いてきぼりに…》

 

「…マジで?」

 

《マジで…》

 

「嘘だろ〜…」

 

 

 

「フレア…いるか…?」

 

《ユウミ!私はいますよ!…アヤカは…残念でしたけど…》

 

「くそっ…調子に乗って最大サイズで顕現させるんじゃなかった…」

 

《無いものねだりはいけませんよユウミ…とにかくみんなと合流しましょう!》

 

「わかった…行こう!」

そして俺達は合流するために歩き出した…

 

 

 

 

 

 

 

 

〜しばらく後…〜

 

 

 

 

 

 

…どうしてこうなった…?

 

 

「《デュエル!!》」

 

 

 

 

 

風の精霊ガルーダLP4000

遊海4000

 

 

《私のターン!ドロー!》

 

《魔法カード「サモンストーム」を発動!ライフを800払い手札の「暴風小僧」を特殊召喚!》

風を纏った少年が現れる ATK1500

 

ガルーダLP4000→3200

 

《さらに手札から魔法カード「古のルール」を発動!手札から「クジャック」を特殊召喚!》

巨大なクジャクが現れる ATK1700

 

《2体のモンスターを生贄に現われろ!「ダーク・シムルグ」!!》

黒化した神鳥が現れる ATK2700

 

《さらに魔法カード「レベル・タックス」を発動!お互いにレベル5以上のモンスターを召喚・特殊召喚する時にその攻撃力分のダメージを受ける!これでターンエンドだ!反逆者め!すぐに処分してやる!!》

 

ガルーダLP3200

ダムルグ タックス 手札0

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん…無理しないで逃げて…!殺されちゃうよ…!!」

俺の後ろにいるハッピーラヴァーが話しかけてくる

 

「大丈夫!安心してくれ…俺は強いから!」

 

《ユウミ!やってやりましょう!》

 

「ああ!行くぜ!」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から永続魔法『黒き旋風』を発動!そして手札から『BFー朧影のゴウフウ』を特殊召喚!」

鎖の巻き付いた鳥が現れる ATK0

 

「さらにフィールドにBFがいる時、手札の『黒槍のブラスト』『疾風のゲイル』は特殊召喚できる!さらに『ブラスト』召喚時にデッキから「そよ風のブリース」を手札に加え、自身の効果で特殊召喚!」 

黒い槍を持つ鳥人、黄色い嘴の鳥、オレンジ色の鳥が現れる ATK1300 1700 1100

 

「そして『ゴウフウ』を生贄に『暁のシロッコ』を召喚!さらに『旋風』の効果で『残夜のクリス』を手札に加える!」

南風の名前を冠する鳥人が現れる ATK2000  

 

《その時!「レベル・タックス」の効果発動!2000ダメージを喰らうがいい!!》

魔法カードから雷が放たれ、遊海に直撃する

 

「ぐうぅぅぅ!!」

遊海LP4000→2000

 

「お兄ちゃん!!」

 

「ははっ、大丈夫…もう終わるから…!」

 

《なんだと?攻撃力2000のモンスターで何ができる!》

 

「手札から『残夜のクリス』を特殊召喚!」

お面を着けた鳥人が現れる ATK1900

 

「そして『シロッコ』の効果を自身を対象に発動!このターン、このモンスターしか攻撃できない!」

 

《なんだ!それだ「そしてその攻撃力は自分フィールドのBFモンスターの攻撃力を合計した数値になる!」はっ?》

ATK2000→8000

 

《攻撃力8000…だと?》

 

「バトル!『ダークシムルグ』を攻撃!『ダークウィングスラッシュ』!!」

黒き鳥人が闇に染まった神鳥を切り裂いた…

 

《そんな…馬鹿なぁぁぁ!?》

 

ガルーダLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

「喧嘩を売る相手を間違えたな…人間だからって見くびるんじゃない!」

 

《お…お前のような人間がいるか…バケモノ…め…》

それだけ言い残してガルーダは消滅した…やはり命懸けか…

 

 

 

 

「今の爆発は何ザウルス!?」

 

「こっちの方から…!、遊海先生!?」

 

「おう!明日香!剣山!元気そうだな!」

デュエルが終わった直後に明日香と剣山が現れる

 

「先生…今のは…?」

 

「ああ…すまない、弱い者イジメをしていた精霊…ガルーダを後攻1キルしたところだ…やはり命懸けだったけど…まぁ大丈夫だ!」

 

「先生は図太いというか…戦い慣れしすぎてるというか…」

 

「明日香先輩、遊海先生を常人レベルで測るのはやめた方がいいドン…バカバカしくなるザウルス…」

 

「おいッ!?」

 

 

 

 

 

十代達は元セブンスターズのタニヤと協力し低レベルモンスター達による叛逆を成功させた…これからはみんなが仲良く暮らせる世界になればいいが…。

 

そして俺達は次元を繋ぐ門の前にいた、三沢は研究者の血が騒いだのか、それとも別の理由か…タニヤと共にこの世界に残るらしい、他の遭難者の話を聞いてこの世界の謎を解きたいらしい…そして…。

 

「ヨハン…待ってろよ!いますよ行くぜ!!」

十代は次元の扉を押し開く…

 

「遊海プロ…今度は逸れるなよ?」

 

「逸れないでくださいね!」

 

「…俺は子供かっ!」

 

 

 

 

 

 

扉の先は…廃虚の町だった…。



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迫りくる暗黒界の影〜怒りと哀しみ〜

扉を抜けた先は西洋風の町だった…しかし人の気配は無くゴーストタウンとなっていた、所々に破壊の跡がある事から何者かに襲撃されたのだろう…。

 

「これは…ひどい…」

 

「この町にいったい何があったザウルス…?」

 

「…慎重に進もう…まずは情報収集だ…!」

 

明日香や剣山が町の様子を見て不安を感じとる…オブライエンは動揺をみせず情報を集めようとする。

 

「あ…扉が無くなっちゃったッス!?」

 

「…後戻りはできんという事か…」 

扉を通り抜けた直後、跡形も無く扉は消失した…後戻りはできない、前進あるのみである…

 

 

《ねぇ〜万丈目の兄貴見てみて〜彗星よ〜!》

 

「何〜?…本当だ、しかし…動きが遅いか…?」

空には青白い彗星が尾を引いて流れていた…

 

 

「!?…あの彗星は…!」

 

(いつの日か…掛替えの無い朋友を救わねばならぬ時…オリハルコンの眼が奇跡を起こすだろう…あの星を見よ…あの星が教えてくれる。彗星の灯火が消える時…それは運命の星がお前に向かって落ちて来る時だ。その時こそ奇跡を起こし、お前が朋友を救うのだ。それが…世界を破滅から救う事になる…)

 

 

 

「(オールドマン…ミーの運命の星が落ちてきた…!これは…!)」

 

「ジム?どうした?顔色が悪いぞ?」

 

「オゥ遊海先生、ノープログレム!少し立ちくらみがしただけです!」

 

「そうか…無理はするなよ?今は体力を温存する時だ…」

 

「サンキュー!スカーヒーロー!身体は大事にするよ!」

 

「…誰が傷だらけの英雄かッ!!」

 

「「「「(珍しく的を得たあだ名だな…)」」」」

 

「とにかくヨハンはこの世界にいるはずだ!行こう!!」

十代を先頭に俺達は調査を開始した…。

 

 

 

 

 

 

 

「…食事の準備をしていたようね…スープが鍋に残っているわ…」

 

 

 

「こっちは壁がブレイクされて中が荒らされている…まるで何かに攻め込まれたみたいだ…」

 

 

「こちらには戦士と息子と思われる写真があった…、戦える者達がいたのだろう…」

 

 

「でも…人っ子1人…猫の子1匹もいないッス…」

 

「この町にいったい何が…」

 

 

 

十代達は慎重に情報を集めたが有力な手がかりは見つからなかった…謎は深まるばかりである…。

 

「ヨハン…いったい何処にいるんだ…!せめて…人がいれば…!」

 

 

ガタン

 

 

「誰かいるのか!?」

 

『…!!』スタタタッ…

 

廃虚の中から1人の少年が写真立てを抱えて走りさっていった…

 

「あっ…!待ってくれ!ヨハンをヨハンを知らないか〜!?」

十代は少年を追って行ってしまった…。

 

「!?待つんだ十代!単独行動は危険だ!!」

 

「アニキ〜!待つんだドン〜!」

 

仲間達も十代を追いかけた…

 

 

 

 

 

 

 

〜一方その頃…〜

 

 

 

 

 

 

 

「…惨いものだな…」

 

「ええ…きっと普通の生活を送っている時に襲われたんでしょう…」

 

「知識として知っていても…実際に見ると…辛いな…」

 

遊海と翠は別行動をとっていた…十代達が調べている場所の反対側の調査をするためだ、しかし2人の心は傷付いていた…それは当然の事である。

 

二人は現代の日本からこの世界に転生してきた、転生して10年近くの時が過ぎたが二人はあくまでも転生前は「普通の人間」である。

 

日本は長い間戦争を起こす事はなかった…よってこの町のような廃虚を見る機会は無かったと言っていいだろう…ましてや人の手による破壊など…教科書やニュースの中での出来事だった。

それが目の前に広がっている…数々の修羅場をくぐり抜けた二人とはいえ…辛いものは辛いのである…。

 

 

「確か生き残った人達は何処かの砦に避難したんだっけ…」

 

「確かそうだったと思います、そろそろ十代君達がスカーに出会う頃だったかと…」

 

「そうだな…なら俺達は…」

 

《お〜い…誰か助けてくれ〜…》

 

「!?誰かの声が…!」

 

「行ってみよう!」

二人は声のした方に向かう…!

 

 

 

 

 

 

 

《誰か〜…この瓦礫を退けてくれ〜!》

声を頼りに進むと瓦礫の山があり、その中から声が出ていた…

 

「おい!大丈夫か!!」

遊海が声をかける

 

《誰かいるのか〜…!頼む〜、動けないんだ〜…!》

 

「わかった!今どかしてやる!待ってろ!翠!」

 

「はい!ウィンダ!お願い!」

《まっかせて〜!ウィンドストーム!》

翠がウィンダを呼び瓦礫を吹き飛ばす…

 

《おお〜瓦礫が無くなっだ〜ありがとよ〜!》

瓦礫の中から一体のモンスターが現れる…それは…

 

「なっ…!?」

 

「お前は…!」

その姿を見た二人は戦闘態勢をとる…!

 

《ち…ちょっと待っでくれ〜!?オデは何もしないだよ〜!?》

暗黒界のモンスター…「暗黒界の番兵 レンジ」だった…

 

 

 

 

 

「…で、どうしてお前は瓦礫に埋まってたんだ…」

 

《話すと少し長くなるんだども…大丈夫か…?》

 

「ええ大丈夫ですよレンジさん!私達も情報が欲しいので…」

遊海達は敵意の無い事を確認しレンジから話を聞いていた…少し訛りがあるが大丈夫だろう…。

 

《わがった!じゃあ聞いてくれ〜…実は…》

 

レンジによると暗黒界のモンスター達はこことは別の次元でライトロード達との小競り合いはあるものの平和に暮らしていたらしい、ブロンが民を纏め、ゴルドやシルバが兵を鍛え…ライトロード達と少しの事で小競り合いを起こし…そんな毎日を送っていたそうだ…しかしその日々は突然に変わったらしい…。

 

突然暗黒界のモンスターが時空の裂け目に巻き込まれ、この世界に漂着したのだ…そして暗黒界は変わり始めた…ブロンが狂気に呑まれ「狂王」となり、他のモンスター達も次第に変貌していった…。

レンジは王から離れた場所に居たからか狂気の影響を受けず、暗黒界の仲間から逃げ出したらしい。そしてこの町の優しい老夫婦に匿われていたが町を暗黒界のモンスター達が強襲、老夫婦は逃したものの建物の崩壊に巻き込まれて埋まっていたそうだ…。

 

 

 

 

《本当はみんな優しいんだぁ…ズールは子供達のヒーローだったし…ブロン様も無茶振りもするがみんなの事を考えてた…いい王様だったんだよ〜…なのに…どうしてみんな変わっちまっただよ〜!!》

レンジは涙を流しながら頭を抱える…

 

「そんな事が…辛かったな…」

 

「レンジさん、この町の人達は?」

 

《決闘者はオデらの砦に連れて行かれただ…それ以外の人達はみんな……。生き残った人達は近くの隠し砦に逃げたらしいだ…》

 

「そうか…、そうだ!青い髪の少年を見なかったか?たぶんペガサスやリスみたいな精霊を連れていたと思うんだけど…?」

 

《オデは見てないな〜…》

 

「そうか…、これからどうするんだ?」

 

《う〜ん…オデは暗黒界の裏切り者だぁ…何処かに身を隠すだよ…》

 

「それなら…俺達と一緒に来ないか?」

 

《へぇ!?》

 

「俺達はたぶんそこに向かう事になる、その時の案内を頼みたいんだ!対価は…お前の身の安全、俺達はそこそこ強いからな!お前の事を守ってやるよ!」

 

《いいのが?オデは一応暗黒界のモンスターだど?》

 

「困った時はお互い様ってね!どうだ?」

 

《…わがった!あんた達に協力するだよ!そういえば名前は何ていうだ?》

 

「俺は遊海だ!」

 

「私は翠です!」

 

《ユウミとミドリかぁ!よろすくなぁ!》

レンジは大きな手を差し出してくる。

 

「よろしく!レンジ!」

遊海も手を差し出し…

 

《ああ…!》

 

 

 

 

『放て!!』

 

《危ねえ…!!うわぁぁ!!?》

 

突如たくさんの投げ槍や矢が降りそそぐ…レンジはそれを身を挺して遊海と翠を守りきった…

 

「「レンジ!!」」

 

《二人共…無事かぁ…?うぐぅ…!!》

 

「くっ…何者だ!姿を現せ!!」

 

『見つけたぞ!裏切り者のレンジ!ブロン様に逆らった罪!死をもって償うがいい!』

 

廃虚の周りから現れたのは「暗黒界の狩人 ブラウ」と「ゴブリン突撃部隊」だった…。

 

 

 

 

 

 

《ブ…ブラウどん…!》

 

『ふん!情報があったのさ、「廃虚で間の抜けた助けを求める声を聞いた」っとな!一発でお前の事だとわかったぜレンジ!』

 

《ブラウどん、オデ達友達だったでねぇか…どうしてだ…どうしてなんだぁ!》

 

『お前がブロン様に逆らったからだろうが!反逆には死を…!死んで償え!ゴブリン共!槍を放て!!』

 

「「アイツを倒せばエリートだ!死ねぇ!!」」

 

ゴブリン達が槍を投げる…レンジの守備力は2100、突撃部隊の攻撃力は2300…レンジの守りを突破できる数値だ…。

 

《ユウミ!ミドリ!逃げてくれえ…!あんな槍の雨を喰らったら…!!》

レンジは瀕死の体で2人を守ろうと立ちはだかる…

 

『ふん!お人好しめ!その人間共々死ねぇ!!』

槍が降りそそぐ…

 

 

 

『反射の陣!』

 

〈風の防壁!〉

 

 

『…何…!?』

 

 

降りそそいだ槍はバリアと風の障壁に弾かれた…それを成したのは聖刻の鎧を纏った遊海と紫色の戦闘正装(バトルドレス)を着た翠だった…!

 

『さっきから大人しく聞いていれば…!お前、友達を傷つけて楽しいのか!!』

 

〈レンジさんは変わってしまったあなた達に耐えられなかったんです!!その悲しさがわからないんですか!!〉

 

遊海も翠も怒りをあらわにする…純粋に仲間を想っていたレンジの思いを踏みにじったブラウに対して…!

 

 

『むっ、ただの人間かと思ったら決闘者だったか!なら丁度いい!貴様達も我らの糧になるがいい!』

ブラウは決闘盤を構える…!

 

「お前のような奴に負けてたまるか!レンジの痛み…少しでも思い知れ!!」

 

 

 

 

 

 

 

      「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

ブラウLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『いでよ「ゴブリン突撃部隊」!!』

武器を持ったゴブリン達が現れる ATK2300

 

『さらに魔法カード「強者の苦痛」を発動!お前のモンスターの攻撃力はレベル✕100ポイント下がる!』

 

『そしてカードを2枚伏せてターンエンドだ!』

 

ブラウLP4000

突撃部隊 苦痛 伏せ2 手札2

 

 

 

 

 

『さぁ人間、足掻いてみせるがいい!』

 

「見せてやるよ…星を繋ぐ絆の力を!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」  

「手札から『星因士ウヌク』を召喚!効果によりデッキから『星因士ベガ』を墓地に送る!」

蛇座を守護する戦士が現れる ATK1800→1400

 

「さらに手札から速効魔法『天掻ける星因士』を発動!『ウヌク』をデッキに戻しデッキから『星因士アルタイル』を特殊召喚!さらに『アルタイル』の効果により墓地の『ベガ』を特殊召喚!」

ワシ座と琴座を守護する戦士が現れる ATK1700→1300 ATK1200→800

 

「そして『ベガ』の効果により手札の『星因士デネブ』を特殊召喚!効果によりデッキから『覚星輝士ーセフィラビュート』を手札に加える!」

白鳥座を守護する戦士が現れる ATK1500→1100

 

『そんな低レベルのモンスターを並べて何になる!…まぁ高いレベルのモンスターを出しても弱体化するがなぁ…!』

 

 

「低レベルだからって馬鹿にすると…痛い目みるぜ!いくぞ!俺は『デネブ』『ベガ』『アルタイル』の3体でオーバーレイ!」

3人の戦士が頷きあい銀河に飛び込む!

 

『なんだと!?』

 

「3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!宙に輝く星達よ!絆を繋ぎ力を示せ!ランク4!『星輝士 デルタテロス』!」

夏の空に浮かぶ大三角を象徴する戦士が降臨する ATK2500

 

『攻撃力2500…!しかも「強者の苦痛」の影響を受けてないだと!?』

 

「エクシーズモンスターである『デルタテロス』は『レベルを持たないモンスター』だ!よって『強者の苦痛』の影響を受けない!」 

 

『なんだと!?』

 

 

 

「『デルタテロス』のモンスター効果を発動!ORUを一つ使い『突撃部隊』を破壊する!」

 

『なんだと!?』

 

デルタテロスから光の斬撃が放たれゴブリン達を一刀両断する

 

「バトルだ!『デルタテロス』でダイレクトアタック!『スターデルタ・スラッシュ』!」

デルタテロスがブラウに斬りかかる

 

『ぐっ…リバース罠「重力解除」!!そのモンスターを守護表示に変更する!』

 

デルタテロスの身体が浮き上がり守備表示になる DEF2100

 

「防がれたか…!カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

遊海LP4000

 

デルタテロス 伏せ3 手札2

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ…おのれぇ!オレのターン!ドロー!』

『ふはは!いいカードを引いた!「ブラックホール」を発動!消え去れ!』

星の騎士が重力の渦に飲み込まれ消滅する、しかしブラックホールの中から一筋の光が飛び出す…!

 

「『デルタテロス』のさらなる効果!このカードがフィールドから墓地に送られた時、デッキの『星因士アルタイルa』を特殊召喚!さらに墓地から『デネブ』を特殊召喚!効果によりデッキから『竜星因士ーセフィラツバーン』を手札に加える!」

再びワシ座の戦士と白鳥座の戦士が現れる ATK1700→1300 DEF1000

 

『くっ!小癪な…手札から「ジャイアント・オーク」を召喚!』

青白い肌の棍棒を持った巨漢が現れる ATK2200

 

『バトル!「ジャイアント・オーク」で…!』

 

「リバース罠『デモンズ・チェーン』!『オーク』の効果を無効にして攻撃をできなくする!」

紫色の鎖がオークを絞め上げる

 

『くそっ…うっとおしい!ターンエンドだ!』

 

ブラウLP4000

オーク(デモチェ) 苦痛 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『死者蘇生』を発動!墓地の『アルタイルb』を特殊召喚!さらに効果により墓地の『ベガ』を特殊召喚!」

ATK1700→1300 ATK1200→800

 

「『ベガ』の効果により手札の『ツバーン』を特殊召喚!」

白き竜の鎧を着た戦士が現れる DEF2100

 

「そして『デネブ』『ベガ』『アルタイルa』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!『デルタテロスb』!」

再び大三角の戦士が現れる ATK2500

 

「『アルタイルb』の効果を発動!ORUを使い『オーク』を撃破!」

オークが両断される

 

『ぐっ!?』

 

「そしてリバース罠『リビングデッドの呼び声』を発動!墓地の『デルタテロスa』を特殊召喚!」

星の騎士が並び立つ ATK2500

 

「さらに俺は『デルタテロスa』でオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップエクシーズチェンジ!」

デルタテロスが銀河に飛び込む!

 

「星を繋ぐ戦士達よ!その身を昇華し龍へと至れ!ランク5『星輝士セイクリッド・ダイヤ』!!」

星達の繋いだ絆が古き龍の面影をもつ輝士を呼び出した ATK2700

 

「バトルだ!『デルタテロス』でダイレクトアタック!『スターデルタ・スラッシュ』!」

デルタテロスがブラウに斬りかかる

 

『リバースカード「魔法の筒」!これでダメージを反射だ!』

 

「カウンター罠!『神星なる因子』を発動!俺の場の『アルタイル』を墓地におくり『魔法の筒』を無効にし破壊する!その後俺は1ドロー!」

 

『な…に…?』

ブラウLP4000→1500

 

 

「これでトドメだ!『セイクリッド・ダイヤ』でダイレクトアタック!『邪滅のダイヤモンド・スパイラル』!!」

星の輝きを束ねた光線がブラウを飲み込んだ

 

『ぐわぁ〜!!』

 

ブラウLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

『ガッ…やっちまったな貴様ら…お前達は仲間に目を付けられた…!逃げ切れると思うなよ…!』

 

「元から逃げるつもりは無い!ブロンを倒し、教え子をヨハンを救う…それだけだ!」

 

『ふッ…やれるならやってみるがいい…!!』

それだけを言い残してブラウは金色の粒子となり消滅した…。

 

 

 

 

《ユ…ユウミは強いだなぁ…これならブロン様も…ガフッ…》

 

「レンジ!大丈夫か!今治療を…」

 

《無理だなぁ…オデの事はオデが一番わかっとる…でも最後におめえ達みたいないい人間に会えて…よかった…だ…》

レンジも粒子となり消滅する…その顔は笑っていた…

 

「すまない…レンジ…せめてアヤカを連れてきていれば…!」

 

ヒュン!

 

〈遊海さん!危ない!!〉

 

カキンッ!

 

遊海に迫った弓矢を翠が叩き落とす、弓矢を射ったのは残っていたゴブリン達と新たに増えた頭の大きい暗黒界のモンスター、「暗黒界の刺客 カーキ」だった。

 

《まったく…ブラウはコンナ人間ドモに負けるトハ…貴様ラ…俺達ニ反逆シテ生キテ帰レルと思ウナ…!》

 

「「「うおぉぉ!!」」」

ゴブリン達が遊海達に襲いかかる…!

 

「遊海さん!!」

『…下がってろ翠…オレ1人でやる…!』

青白い龍の鎧を纏った遊海が前に出る…

 

《生意気ナ!ヤッチマエ!!》

 

「「「うおォォ!!」」」

ゴブリン達が遊海に殺到する…!

 

 

 

 

 

 

『絶対零度』

 

 

 

 

その瞬間、ゴブリン達やカーキは痛みを感じる事無く、世界から姿を消した…それは遊海の慈悲だったのかもしれない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生〜!無事か〜!!」

 

「十代…みんなは無事か?」

皆と合流しようと氷の町を歩いていると十代が駆け寄ってきた。

 

「ああ!今暗黒界のスカーとデュエルして生き残った男の子とフリードと出会ったところだったんだ!そしたら急に町が凍りだして…」 

 

「すまない、こっちも暗黒界のモンスター達と交戦してな、数が多かったから皆氷漬けにしたところだったんだ…驚かせて悪かったな…」

 

「やっぱ先生はつえーな…大丈夫だよ!これから生き残りの人達のいる砦に行くんだ!先生達も行こうぜ!」

 

「ああ、わかった…行こう十代!」

 

 

そして十代達は「放浪の勇者フリード」に案内され隠し砦へと向かった…。

 

凍りついた町には一輪の氷の花が咲いていた…。



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加速する狂気〜刻まれし悪〜

俺達はフリードに案内され山の中腹にある隠し砦に到着した、中には女子供や老人が大半で戦士と呼べる者はフリードを含め10人程しかいなかった…そして全員が今、涙を流していた…。

 

「フ…フリード…隊長…、申し訳ありま…せん…!」

 

『ラーズ!!しっかりしろ!気をしっかり保つんだ!!』

 

「父さん!しっかりしてよ!父さん!!」

 

「お父さん!」

 

隠し砦では1人の男の命が消えようとしていた…戦士ラーズ、十代の助けた少年・カイルの父である。

 

ラーズは暗黒界達に囚われていたが隙を見て脱走、しかし追い詰められ苦肉の策として効果モンスターを全て破壊する罠カード「ジャスティ・ブレイク」を発動…追っ手は倒したものの自身も効果モンスターだったため致命傷を負い、なんとか砦に辿り着いたのである…。

 

「遊海先生!!なんとかならないのかよっ!!」

十代が俺に問いかける…俺の持つ精霊の力でどうにかならないのかと…

 

「無理だ…ただダメージを受けただけなら回復魔法で治せる…しかしラーズは本来『ジャスティ・ブレイク』が発動した時点で破壊されているんだ…それを気合で乗り越えてここまで辿り着いた…これ以上は彼を苦しませるだけだ…!」

遊海は悔しそうに呟いた…愛する者との死別…、それを知っている故の悔しさだった…。

 

「隊長…仲間は…町外れにある収容所にいます…せめて彼等だけでも…!」

 

『わかっている…!彼等はわたしが助けてみせる!』

フリードはラーズの手を握り決意を伝える…

 

「…ラーズさん…俺は遊海と言います、俺達はヨハンという青髪の少年を探しています…、収容所でそれらしい少年を見かけませんでしたか…?」

遊海がラーズに話しかける…フリードの目線が痛いが…これも情報を集めるためだ…。

 

「…1人だけあの町の住人じゃない…そこの赤い服の子くらいの少年がいた…」

 

「ヨハン!!」

 

「十代!!落ち着け!!…ありがとうございますラーズさん…!」

 

「ハハハ…最後に…役に立ててよかった…」

遊海は興奮する十代を宥めラーズに礼を伝える…

 

「お父さん!死んじゃやだよ!!」

カイルが縋りつく…

 

「カイル…姉さんを…町のみんなを守れるような…強い戦士に…なるんだ…!」

 

「父さん!なる…!絶対になってみせる!!」

 

「ああ…安心した…、フリード隊長…我が子達を……」

ラーズはフリードにカイルの事を託し金色の粒子となり消滅した…その跡には彼の決闘盤だけが残っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!起きてください!」

 

「!どうした翠!」

 

「十代君が…!」

 

「…やっぱり単独行動か!!」

 

ラーズを見送り、仮眠をとっていた俺は翠に起こされる…十代はやはり単独行動したか、ヨハンに対する罪悪感の現れなのか…今の十代は死に急ぎ過ぎている…!

 

「翠!俺は先行して十代を追う!翠はみんなと一緒に来てくれ!暗黒界から皆を守るんだ!」

 

「わかりました!気をつけて…!」

 

「ああ!…トフェニ!」

 

《御意!》

俺はトフェニの背中を借り、高い高度から十代を追いかけた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨハン…今助けるからな…!」

 

十代は単身ヨハンを助けるために収容所に辿り着いていた、しかし収容所には人の気配は無く十代は用心しながらヨハンを探索していた…そして。

 

「ヨハン…ヨハン!!」

そしてついに牢屋の端にて鎖に繋がれた少年を見つけた…しかし…。

 

《ヨハン…?》

 

「…別人かっ…!!」

牢にいた少年は別人だった、他の戦士達は別の場所に移され、戦士では無かった少年だけが置いてきぼりになっていたそうだ、そして十代は少年を助け脱出しようとするが…。

 

 

 

 

 

『そこまでだ!侵入者め!』

 

「お前は…!」

 

『我が名は暗黒界の騎士ズール!罠にかかったのがこんな小僧とは…見当ハズレだったな!』

 

収容所を出た十代を待ち構えていたのはズール率いる暗黒界の部隊だった、少年を囮に仲間の決闘者をおびきだそうとしたようだ。

 

『とりあえずその餓鬼は用済みだ…ハァッ!』

ズールが剣を抜き放ち、囚われていた少年を狙う!

 

『やらせるか!!カタストロフ・レーザー!!』

 

『何っ!?』

ズールの剣は上空から撃たれた光線に弾かれる…それを撃ったのは…

 

『十代!何を単独行動してるんだ!この大馬鹿者!!』

ゴチーン!!

 

「ふぎゃ!?ゆ、遊海先生!?」

飛び降りつつ十代に拳骨を喰らわせた遊海である…。

 

『貴様…何者だ!』

ズールが突然現れた遊海を警戒する…

 

「通りがかりの決闘者だ!別に覚えなくていいぞ?」

 

「遊海先生!どうしてここに!?」

十代が遊海に問いかける

 

「十代!お前が抜け出したせいで万丈目達が怒ってたぞ!…後でオシオキだからな…!!」

 

「ヒェッ!?この状況で勘弁してくれ〜!」

 

『おのれ…ふざけおって…!貴様!デュエルだ!この私をコケにした事…後悔させてやる!』

ズールはデュエルディスクを構える

 

「望むところだ!お前達のために死んだラーズの…無辜の人達の仇…とらせてもらう!」

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

ズールLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『出ろ!「ジェネティック・ワーウルフ」!』

科学により改造された人狼が現れる ATK2000

 

『ターンエンド!』

 

ズールLP4000

ワーウルフ 手札5

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺は手札から魔法カード『Eーエマージェンシーコール』を発動!効果により『E・HEROアナザー・ネオス』を手札に加える!」

 

「HEROだって!?先生が!?」

 

「十代!見ていろ!これが新たなHERO達だ!手札から『アナザー・ネオス』を召喚!」

異世界の可能性たるネオスが現れる ATK1900

 

「『ネオス』!?」

 

「そして手札から速効魔法『マスクチェンジ』を発動!自分フィールドの『アナザーネオス』を生贄に融合デッキから同じ属性の融合モンスターを特殊召喚する!」

 

『なんだと!?』

 

「いくぞ!光のヒーローよ!新たなる仮面を被り敵を蹴散らせ!変身召喚!『M・HERO光牙』!」

小さなヒーローが光を纏い進化を遂げる、そして両手に牙のような武器を付けたヒーローが現れる ATK2500

 

「変身召喚…!『M・HERO』…!すげぇ…!」

十代は命懸けのデュエルだという事を忘れて釘付けになる…その顔には以前のような笑顔があった

 

「そして『光牙』の効果を発動!相手のモンスター1体につき攻撃力を500アップする!」

ATK2500→3000

 

『くっ…!』

 

「さらに『光牙』のさらなる効果!墓地の『アナザーネオス』を除外し『ワーウルフ』の攻撃力を1900ダウンさせる!」

 

『なんだと!?』

 

ATK2000→100

 

「バトル!『光牙』で『ワーウルフ』を攻撃!『レイザーファング』!」

両手の牙でワーウルフを袈裟がけに切り裂いた!

 

『ぐぬぅ!!?』

 

ズールLP4000→1100

 

光牙3000→2500

「すげぇ!流石先生だ!!」

 

「ターンエンドだ!」

 

遊海LP4000

光牙 手札4

 

 

 

 

 

 

『チィ!強いな貴様…!我が軍に欲しいぐらいだ!』

 

「お前達のような仲間を大切にしない奴らとはゴメンだね!!」

 

『そうか…なら死ぬがいい!』

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「パワー・マーダー」を召喚!』

黒い悪魔とトカゲを合わせたようなモンスターが現れる ATK1800

 

『さらにフィールド魔法「パワー・ゾーン」を発動!お互いのモンスターが戦闘で破壊された時、プレイヤーはその攻撃力分のダメージを受ける!』

黒い波動がフィールドに広がる…

 

『さらに装備魔法「闇・エネルギー」を「マーダー」に装備!効果により攻守を300アップする!』

闇の力がパワーマーダーを強化するATK1800→2100

 

『バトルだ!「パワーマーダー」で『光牙』を攻撃!』

 

「攻撃力の低いモンスターで攻撃!?」

 

「『光牙』の攻撃力は効果により3000だ!血迷ったか!」

 

『「マーダー」の効果を発動!このカードが元々の攻撃力より高い相手モンスターと戦闘をする時!このカードの攻撃力を1000アップする!』

 

「なんだと!?」

 

ATK2100→3100

 

『やれ!「パワーマーダー」!』

パワーマーダーが光牙を打ち砕いた

 

「くっ!?」

遊海LP4000→3900

 

『さらに「パワーゾーン」の効果を受けるがいい!!』

黒い波動が遊海にダメージを与える

 

「ぐああああああ!!!」

遊海LP3900→900

 

「遊海先生!!」

 

『バトルフェイズを終了!さらに私は手札から永続魔法「パワー・スピリッツ」をライフを1000払い発動!私の場に存在する攻撃表示モンスターは、そのモンスターの攻撃力より1000ポイント以上高い攻撃力を持つモンスターにしか戦闘で破壊されない!カードを伏せて…これでターンエンドだ!』

 

ズールLP100

パワーマーダー「闇エネルギー」 フィールド魔法パワーゾーン パワースピリッツ 伏せ1 手札1

 

 

「がっ…ハァ…ハァ…!大物喰らいのモンスターってわけか…!」

 

『そうだ!我がライフは100だがこれで充分!貴様は攻撃力3200以上のモンスターを出せなければ死ぬのだ!フハハハハ!!』

 

「先生が死ぬ…?そんな!そんな!?」

十代はパニックになる…自分が単独行動をしたばっかりに遊海先生が死ぬ…自分の無責任さに気づいたのだ…

 

「十代…心配するなよ、俺は…負けん!自分をヒーロー達を信じろ!!」

 

「ヒーロー達を…信じる…」

 

「そうだ!最後の瞬間まで諦めない…それが決闘者だ!」

 

 

 

 

 

 

 

「いくぜ!俺のターン…ドロー!!」

「十代!刮目しろ!地球の息吹を…見せてやる!」

 

「地球の…息吹…」

 

「俺は手札から『ヒーローアライブ』を発動!自分フィールドにモンスターがいない時、ライフを半分払いデッキからHEROモンスター、『シャドー・ミスト』を特殊召喚!」

黒い鎧の女性ヒーローが現れる ATK1000

 

遊海LP900→450

 

 

「『シャドーミスト』の効果!特殊召喚に成功した事によりデッキから2枚目の『マスクチェンジ』を手札に加える!」

 

「そして手札から『融合』を発動!手札から森の化身『フォレストマン』、海の化身『オーシャン』を融合!」

身体が木になっているヒーローと海を司るヒーローが渦に飛び込む!

 

「大いなる大地よ!母なる海よ!今こそ交わりて生命溢れる星となれ!!融合召喚!『E・HEROジ・アース』!!」

地球を体現する大いなるヒーローが現れる ATK2500

 

 

「『ジ・アース』…すごい力を感じる…!」

 

「さらに手札から『マスクチェンジ』を発動!『シャドーミスト』で変身召喚!悪を刈り取る猛き鬼…『M・HERO闇鬼』!」

黒い鎧の角を生やしたヒーローが現れる ATK2800

 

『ハッ…!大仰な事を言っておいて…その程度か?笑わせる!ハハハハハ!!』

 

「まだだ!『ジ・アース』の効果を発動!『闇鬼』を生贄に捧げその攻撃力分攻撃力をアップする!『地球灼熱(ジ・アース マグマ)』!」

闇鬼の力を受け取ったジ・アースの青い宝玉が赤く染まり二振りのマグマの剣を装備する…その姿は地球そのものの怒りを表しているようだった ATK2500→5300

 

『攻撃力…5300…だと…?』

 

「バトル!『ジ・アース』で『パワーマーダー』を攻撃!虐げられたみんなの怒りを思い知れ!『地球灼熱斬(アース・マグナ・スラッシュ)』!!」

大地の怒りがマーダー諸共ズールを呑み込んだ…

 

ズールLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十代〜!遊海先生ー!無事か〜!?」

デュエル終了直後、少し遅れて万丈目達が追いついてくる

 

「ああ!大丈夫だ!そっちは大丈夫だったか?」

 

「はい!途中で暗黒界のモンスター達に襲われたんですけど翠さんが蹴散らしちゃいました!」

 

「翠さんカッコよかったッス!綺麗なドレスを着て紫の糸で縛りあげて遠くにビューンって!!」

 

「えへへ!頑張っちゃいました!」

 

「ありがとう翠!みんなが無事でよかった!」

 

 

 

 

「遊海先生…すみませんでした!!」

十代は遊海に頭を下げる

 

「十代、お前は人を惹き付ける力を持っている…お前が動いたらみんなが動く、今回は俺と翠がいたからよかったけど…一歩間違えばみんな危険な目にあっていたはずだ…それを理解するんだ!」

 

「はい…すみませんでした!!」

 

「十代…謝る相手が違うだろう?」

 

「「「「……」」」」

遊海は後ろにいる万丈目達を指し示す…

 

 

 

 

「あっ…!?みんな!ゴメン…こんな危険な目に…みんなを…」

 

「本当にだ!まったく…こんな世界にオレ達を連れて来やがって…」

万丈目が十代に怒る…

 

「万丈目…」

 

「…と、言うとでも思ったか?」

 

「えっ…?」

 

「オレがこの世界に来たのはヨハンを助けるためだ!そのためにある程度の覚悟をしてきた!オレが怒ってたのはお前が1人で突っ走るからだ!オレ達は仲間だ!そのオレ達を放っておいて1人で突っ走るな十代!」

 

「そうザウルス!兄貴は1人じゃ無いドン!」

 

「私達がついてるわ!」

 

「十代、君1人で責任を感じる必要はないんだ!」

 

「この事件の責任は全員にある…もし俺がマルタンを早く見つけられれば結末は変わったかもしれない…!」

 

「十代、人は誰でもミスを犯す…しかしそれを補い合うのがフレンドだとミーは思うんだが…どう思う?」

 

「万丈目…剣山…明日香…吹雪さん…オブライエン…ジム…俺…俺は…!」

十代は膝をつき涙を流す…こんなに大切な仲間達を危険に晒していたのかと後悔し、そしてみんながいてよかったと涙したのだ…

 

「十代!その涙はヨハンに会った時のためにとっておけ!まだ先は長いぞ!」

遊海が十代の肩を叩く

 

「先生…俺、俺は…絶対にヨハンを助けだす!全員で無事に元の世界に帰ってみせる!!」

 

「その意気だ十代!さぁ、少し休もう…そしたら収容所の調査だ!何か手がかりが見つかるかもしれない!」

 

「ああ!燃えてきたぜ!」

 

 

 

 

その後俺達を心配して来てくれたフリードにジョン(ヨハン似の少年)を託し俺達は収容所を調査する、それにより足として「音速ダック」と暗黒界の本拠地の地図を手に入れた俺達はその場所に向かう事になった…!

 

「よし…行くぜみんな!」

 

「「「「「レッツ・ゴー!!」」」」」

 

 

 

「遊海さん…よかったんですか?みんなを元気づけちゃって…」

 

「ああ…やっぱり気が変わった、覇王の覚醒はもっと平和的にできるかもしれない…とりあえずはブロンを倒してから考えよう!」

 

「そうですね!わかりました!…そういえば…」

 

「ん?」

 

「ズールから飛び出したはずの『邪神経典』の玉はどこに行ったんでしょうか…?」

 

「…?そういえば見えなかったな…まぁ近くの誰かに宿った…のかな…?」

 

「うーん…?」

 

 

…その時、誰も気づいていなかった…遊海の右腕に「怒」「憎」「悲」「苦」の文字が刻まれている事に…そして…

 

「アニキ…やっぱりあんなの…デュエルじゃないッスよ…!」疑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ジョウケンハソロッタ…モウ少し…モウ少しだ!】



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消滅〜王の目覚め〜

〈クエ〜ッ!!〉〈クエ〜ッ!!〉〈クエクエ〜ッ〉

 

 

「うわぁ〜っ!?これ早すぎないか!!?」

 

「『音速ダック』は音速で歩けるアヒルだからしょうがないですぅ〜!!」

 

「というかなんで『歩ける』なんだ〜!?思いっきり走ってるじゃないか〜っ!?」

 

「言葉のあやじゃないですかね〜!?」

 

〈クエ〜ッ!!〉

 

 

俺達は今、ソニックダックに乗って一路暗黒界の砦を目指している…一時バラバラになりかけた十代達の心も改めて結束しヨハン救出に向けての士気が高まっている…!

 

 

 

[ゆ、遊海…なんか気持ち悪い…!]

 

「(ユウスケ?どうしたんだ?ダック酔いか?というか…魂だけなのに酔うのか…?)」

 

[わ…わからねぇ…我の魂をかき回されるような感じが…ウェ…]

 

「(オイオイ…吐くなよ…?というか大丈夫か?)」

 

[わからねぇが…嫌な予感がする…気をつけ…ウェ〜…]

ダックに揺られるさなかユウスケが不調を訴える…原因は2人にもわからなかった…

 

 

 

「遊海さん!顔色悪いですけど大丈夫ですか〜!」

俺と並走する翠が声をかけてくる…おかしいな、体調は悪くないんだけど…?

 

「遊海先生〜少し休憩しましょう〜!翔君がダックから落ちかけてます〜!」

 

「助けて〜!?落ちる…あ…!」

 

「「「あ…」」」

 

ドンガラッシャン《クエッ!?》ガシャーン!!

 

明日香の後ろ辺りを走っていた翔がダックから振り落とされる、それにより後続にいた万丈目、剣山、吹雪が巻き込まれ総崩れとなった…。

 

「みんな大丈夫か!?」

遊海達はダックを止め万丈目達に声をかける…

 

「アイタタ…こら!翔!しっかり掴まっておけ!!」

 

「ゴメンッス〜…アイタタ…」

 

「丸藤先輩!何やってるザウルス!アニキ達においていかれたドン!」

 

「あっ!しまった…まぁジムとオブライエンがいれば大丈夫か…」

落馬(鳥)したメンバーは無事だったものの十代達は先に行ってしまったようだ…やっぱりダメだったか…?

 

 

「…ダック達も逃げられちゃったし…歩いていくか…」

 

「それしかないですね…アヤカちゃんがいれば纏めて運べるんですけど…」

 

「いないアヤカに頼ってもしょうがない…行こう、まぁアヤカならそのうち座標を見つけだして追い掛けてくるさ…」

 

十代を追い掛けて歩きだそうとするが…

 

 

 

 

 

 

『お困りかい?』

 

〈俺達がブロン様のところに7人連れてってやろうか…?〉

遊海達の前に現れたのは「暗黒界の武神 ゴルド」と「暗黒界の軍神 シルバ」だった…。

 

「生徒達…下がれ!」

遊海はデュエルディスクを展開しつつ生徒達の前に出る…

 

〈ほう…貴様がズールを倒した戦士か…、いい面構えだ…今からでも…〉

 

「お前達とつるむつもりは無い!」

 

『連れないねぇ…まぁブロンからのお達しでな…生きたまま連れてかなきゃならないのよ…!大人しく…眠っときなァ!!』

言うが早いかゴルドの斧が遊海に迫る…!

 

『ぜえぇいっ!!』

すんでのところで遊海はアーマーを纏い攻撃を防ぐ

 

『チッ!戦闘もイケるのかよコイツ…!?』

 

〈でも後ろはどうかな!〉

シルバが万丈目達に駆け出す!

 

『行かせるか!カタストロフレーザー!!』

 

〈ガッ!?貴様ァ!!〉

レーザーがシルバに直撃しふっ飛ばす…

 

「遊海さん加勢を!バトルドレス、セット…!」

 

『翠!生徒達とコレを持って逃げろ!!十代を追うんだ!』

そういうと遊海は一つのデッキを翠に投げ渡す

 

「うわっ!?とと…!これは…聖刻デッキ!?しかもフレアまで…!?」

 

 

《ユウミ!?なぜです!私達も加勢を…!》

 

《主殿!無茶だ!その二人は相当な手練…!主1人では!》

 

『フレア!トフェニ!生徒達を…頼む!!』

 

「遊海さん!!」

 

「「遊海先生!!」」

 

『早く行け!何度も言わせるなァ!!行くんだ!!』

 

『そこを退け貴様!』

 

『退いてたまるか!うおぉぉお!!』

遊海は果敢に暗黒界の2人を足止めする…

 

 

 

「いくわよみんな…!早く!」

 

「でも翠さん!遊海先生が!?」

 

「あの人は大丈夫!きっと私達に追いつくわ!だから今は十代君を追いかけるの!!」

 

「っく…!遊海先生、ごめんザウルス!!」

 

「先生…どうかご無事で…!!」

 

「遊海先生!絶対に戻ってきてくれッス!」

 

翠達は砦に向かって駆け出して行った…遊海の無事を祈りながら…

 

 

 

 

 

『キラーナックル!!』

 

〈くうっ!一撃が重い!本当に人間かコイツ!?〉

 

『ああ人間だ!ただしそれなりに強いけどなぁ!ぜりゃあ!!』

遊海はシルバとゴルドの攻撃を捌きつつ反撃を加えていく…!

 

『おのれ…!、!!ドラァッ!!』ズガーン

ゴルドの斧が岩盤を砕き砂埃が舞う…

 

『くっ…!目潰しか…!!どこから…』

 

【後ろが留守だぞ人間…】

 

『なっ!?ガッ!!…なん…だと…?あら…て…』

遊海は砂埃に紛れ近づいた新手に気付く事ができず岩に叩きつけられる

 

『〈今だ!やっちまえ!!〉』

ゴルドとシルバがここぞとばかりに殴りかかる…遊海の意識が無くなるのにそう時間はかからなかった…。

 

『助かったぜケルト!コイツ意外と強くてな、手に余ってたのよ!』

 

【武神と軍神と言われる2人が…情けないな…】

 

〈チッ!まぁこれでおしまいだ、さっさと砦に連れていくぞ!ブロンの奴が待ってる…たくっ…しかし本当なのかね…?コイツが邪神経典を全て吸収したってのは…?〉

 

【ああ、本来なら1人に一つを宿らせ心の闇を糧に「超融合」を完成させるという話だったが…この人間…どんな闇を抱えているのやら…】

 

『まぁ小難しい話はいいからさっさといくぞ!』  

 

 

こうして遊海は暗黒界に連行されたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた…ここにヨハンが…!ヨハン…すぐに!」

 

「ストップだ十代!遊海プロやダイノボーイ達がいない!少し待つんだ!」

 

「あっ!?」

十代・ジム・オブライエンは暗黒界の砦に到着した…しかし遊海達はダックの事故により付いてきていなかった…。

 

「しまった…先生と単独行動はしないって約束したのに…!」

 

「一度みんなが合流するまで待とう…その方が勝率は高くなるはずだ!」

 

「…ヨハン…!…そうだな…待つよ…!」

 

「十代…(遊海プロがブレーキをかけてくれたおかげで十代が冷静に戻っている…これなら大丈夫だろう…)」

 

オブライエンは安心していた…遊海の説得により十代が冷静さを取り戻していた事に…しかし…それは甘かったとしか言えなかった…その冷静さはイレギュラーにより崩れてしまうからだ…

 

「ビー クワイエット!静かに…砦に誰かくる!」

砦を見ていたジムが砦に来訪する者を確認し警戒する…

 

「あれは…軍神シルバと武神ゴルドに鬼神ケルト…?誰かを担いでいる…?」

 

「っ!?アンビリバボー!あれは…馬鹿な…!」

 

「そんな!?遊海先生!!」

 

十代達の視線の先には意識を失いぐったりとした遊海が砦に連行される姿があった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは…何処だ…?俺はゴルド達と戦って…それから…?

 

《目が覚めたかねぇ?愚かな人間よ》

 

「…!…!?(声が出ない…!なんでだ!)」

遊海が目覚めると石柱に「闇の呪縛」の鎖で雁字搦めに拘束され、さらに鎖の上から「スキルドレイン」を張られていた…そして目の前には狂王ブロンがいた…

 

「…!!…!(俺をどうするつもりだ!!)」

 

《フフフ、声を出せないのは魔術で声を出せなくしたからさぁ!余計な事を喋られても困るからだ!なんせ貴様は「超融合」を作り出す生贄になるんだからなァ…!!》

 

「…!?(なんだと!?)」

 

《フヒヒヒ!貴様の心には闇が大量にある!それを生贄に「超融合」を完成させるのだぁ!!》

 

『ブロン様…侵入者です!あの十代という小僧です!』

 

《そうかぁ!来たか〜!さぁ儀式を始めるぞ…えひゃひゃひゃ!!》

 

「…!…!?(待て!ブロン!!…くそっ、だめだ…力が抜かれる…!)」

ブロンは笑いながら去っていった…

 

 

 

 

 

(俺を生贄だと…?冗談じゃない!こんな鎖…!!精霊アーマー!!)

遊海は鎧を着ようとするが…反応はない…スキルドレインによって力が無効になっているようだ…

 

(くそっ…打つ手無しか…生徒達は守れたが…これじゃあな…おい、ユウスケ…なんとかならないか?)

 

[]

 

(ユウスケも反応無しか…まぁ…死ぬわけじゃないのはわかってる、翠もいる…なんとかするだろう…)

ゴゴゴ…!!

 

(っ!?なんだ!床が…!)

床がせり上がる…そしてしばらくすると外へと浮き上がる

 

「遊海先生!!無事か!?」

 

「…!…!(十代!)」

俺は砦の闘技場に見せしめのように縛られていた…くそっ…声が出れば…!

 

十代はブロンと向き合いデュエルを始めていた…十代の後ろにはオブライエンの姿がある、2人して助けに来てくれたのだろう…。

 

《さぁ!奴を開放したければ我を倒してみせよ!ターンエンドだ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十代Side

 

「遊海先生が捕まった!は、早く助けに行かないと!!」

 

「落ち着くんだ十代!遊海先生は今捕まったばっかりだ!すぐに何かをされる訳じゃないはずだ!」

 

「でも!先生が!先生が!!」

 

遊海の連行されるところを見た十代は取り乱しオブライエンの静止も無視し砦に突っ込もうとしていた…。

 

「十代!マイフレンド!落ち着くんだ!冷静になれ!!遊海プロの言葉を思い出せ!単独行動をしたらだめだ!!」

 

(がうがう!)

 

「オブライエン…ジム…!でも遊海先生は俺の大事な人なんだ!俺の憧れの決闘者なんだ!そんな人がピンチなのに落ち着いてられるかよ!!」

 

十代にとって遊海は既に先生では無く年の離れた兄のように感じていた、幼少期から自分の事を見守り…アカデミアでもいつも気をかけてくれた…ヨハンと同じくらい大切な人間になっていた…

 

 

「…ジム、ミッション変更だ…俺と十代で砦に急襲をかける…お前はここで他のメンバーを待ってあとから来てくれ…!」

 

「オブライエン…いいのか?」

 

「ああ、俺も遊海プロには借りがある…それを返すのは…今だ…!」

 

「…オーケー相棒!幸運を祈る!」

 

「オブライエン、ごめん!お前の力を貸してくれ…!」

 

「ああ!いくぞ十代!ヨハン並びに遊海プロ救出作戦開始だ!」

そして十代とオブライエンは砦へと潜入した…

 

 

 

 

 

 

 

 

《よく来たな小僧共!我が名はブロン!暗黒界の王だ!》

 

「貴様がブロン…!貴様…ヨハンを遊海先生を…フリードの仲間達をどこにやった!!」

 

砦に潜入した十代達は闘技場にて暗黒界のボス・ブロンと相対していた…この潜入は予測されていたようだ…

 

《フフヒヒ…戦士達はとっくに死んだよ!奴らの血はこの闘技場に吸い込まれ地面を染めているのさ!ギャハハハ!!》

 

「まさか…ヨハンも…!?」

 

《さぁな?調べたければ調べるがいい!ただし我を倒してからだがなぁ!!》

ブロンはデュエルディスクを構える

 

「貴様…俺はヨハンを助けるためなら…なんだってやってやる!」

 

「十代!用心しろ!何が起きるかわからない!!」

 

 

 

 

 

     「《デュエル!!》」

 

 

 

 

 

ブロンLP4000

十代LP4000

 

 

 

 

 

 

《我のターン!ドロー!》

 

《「暗黒界の狩人 ブラウ」を召喚!》

茶色腕を持った弓兵が現れる ATK1400

 

《さらに永続魔法「邪神経典」を発動!ターンエンドだ!》

 

ブロンLP4000

ブラウ 邪神経典 手札4

 

 

 

 

《そして…見るがいい!》

ブロンの言葉と共に闘技場の床の一部がせり上がる…そこにはボロボロになり、鎖で拘束された遊海の姿があった…

 

「遊海先生!無事か!?」

思わず十代は声をかける…見た目で無事でないのはわかっていたが、そうせずにはいられなかった…。

 

「…!…!!」

しかし遊海の声は聞こえなかった…喉を潰されたのか、それとも他の原因か遊海は声を発する事ができなかったのだ…。

 

「貴様…!遊海先生に何をした!!」

 

《何…毒を飲ませただけよ!ついでに解毒剤はここだぁ…!》

 

そういうとブロンは「ご隠居の猛毒薬」をみせる…

 

《さぁ奴が死ぬのが早いか…貴様が勝つのが早いか…勝負といこうか!アヒャヒャ!!》

 

「貴様ァ!!!」

十代は怒る…その怒りは本気の遊海に匹敵する程だった…!

 

「遊海プロ!今助け…!くそっ…無理か…!!」

「「へっへっへっ…!」」

秘密裏に動こうとしたオブライエンはゴブリン達に囲まれてしまう…遊海を助け出す手段はデュエルしかなかった…。

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「来い!『スパークマン』!」

光を纏うHEROが現れる ATK1600

 

「バトルだ!『スパークマン』で『ブラウ』を攻撃!スパークフラッシュ!」

 

《ぐうっ!》

ブロンLP4000→3800

 

 

《「邪神経典」の効果発動!自分がダメージを受けた時!デッキから「邪神教義ー怒」を墓地に送る!》

 

「…!?…!!!」

ブロンのデッキからカードが墓地に送られた直後遊海が苦しみ始める、口を大きく開き叫んでいるが声は出ていない…

 

「先生…!まっていてください!今助けだす!!ターンエンド!!」

 

十代LP4000

スパークマン 手札5

 

 

 

 

 

 

《我のターン!ドロー!》

 

《来い!「暗黒界の騎士ズール」!》

剣を持った暗黒界の騎士が現れる ATK1800

 

《バトルだぁ!「ズール」!「スパークマン」を切り裂けぇっ!》

騎士の一撃でスパークマンは両断される

 

「くうっ!すまないスパークマン!」

十代LP4000→3800

 

《カードを2枚伏せてターンエンドだぁ!》 

 

ブロンLP3800

ズール 邪神経典 伏せ2 手札2

 

 

 

 

《さぁ…お前のターンだぁ!早くしないと貴様の先生が死んじまうぞ?フハハハハ!》

 

「!…!!…!!?…」

遊海は声を出そうと口を開くが…それは叶わない…、少しづつ顔色が悪くなっていく

 

「遊海先生!くそっ…早くコイツを…!」

 

「(遊海プロの様子がおかしい…?何を伝えようとしている…?)」

オブライエンは遊海の読唇を試みる…

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

《十代!気をつけるんだ!君は今、敵の策に嵌っている!慎重に行動するんだ!》

ドローカードはネオスだった、ネオスは十代の隣に現れ注意を促す…

 

「わかった…ありがとう『ネオス』…!(手札に『ズール』を超えられるカードは無い…今は耐えるんだ!)」

 

「『フェザーマン』を守備表示で召喚!」

翼を持った緑色のヒーローが現れる DEF 1000

 

「これでターン…」 

 

《その瞬間、リバースカード発動!「ダークネス・ハーフ」を「ズール」に装備!攻撃力を半分にしお前の場に攻守1000の「ダーク・トークン」を2体特殊召喚する!》

ズールの力が奪われるATK1800→900

 

そして十代の場に黒い人形が現れる ATK1000

 

「俺の場にモンスターだと…?ターンエンドだ…!」

 

十代LP3800

フェザーマン Dトークン Dトークン 手札5

 

 

 

 

「(…わ…な…だ…や…め…ろ…お…れ…し…ぬ…『罠だ、やめろ、俺、死ぬ』…!!)十代!ブロンにこれ以上ダメージを与えるな!!罠だー!!」

 

「なんだって!?」

 

遊海の言葉を読んだオブライエンが十代に叫ぶ…しかし遅すぎた…

 

 

 

 

 

《アヒャヒャヒャ!!今さら気づいても遅いわァ!我のターン!ドロー!》

 

《リバース罠「暗黒舞踏会」!このターン、フィールド上のモンスターは全て攻撃表示になり、我のモンスターは全てのモンスターと戦闘をしなくてはならない!さらにこのターン、我のモンスターは戦闘では破壊されない!》

 

「何っ!?」

フェザーマンが強制的に攻撃表示になる ATK1000

 

《バトルだぁ!「ズール」!全てのモンスターに攻撃しろ!!》

ズールは十代の場のモンスターから返り討ちにあう…しかし黒いオーラにより破壊はされなかった…

 

ブロンLP3800→3700→3600→3500

 

《フハハハハ!そして「邪神経典」の効果を発動!デッキから「邪神教義ー憎」「邪神教義ー悲」「邪神教義ー苦」を墓地に送る!…そしてコイツの最後の声を聞かせてやろう!》パチンッ

 

ブロンが指を鳴らす、それを合図に遊海の声が聞こえるようになるが…

「あああああああああ!!や、やめろ!やめてくれえええええええ!!!ぐああああああああああ!!!?」

 

「遊海先生!!どうしたんだ!?しっかりしてくれ!!」

遊海は狂ったように叫び続ける…それはまるでこの世全ての痛みを受けているようだった…

 

 

「遊海さん!!…ああ…そんな…!!」

 

「「「遊海先生!!」」」

そしてタイミング悪く翠達も闘技場に到着する…

 

「遊海先生!どうしたんだよ!!遊海先生!!」

 

《ギャハハハ!成功…成功だ!これ程の心の闇があれば「超融合」が手に入る!!》

 

「なんだと!?」

 

《種明かしをしてやろう小僧!ソイツには最初から毒など飲ませてはいない…!単に声を出せない魔術をかけていただけだったんだよぉ!そしてコイツは魂に邪神教義の生贄の玉を刻んでいたのさ…ズールが持っていたなァ…!》

 

「な…に…?」

 

《本来であれば5人の生贄の必要な生贄をコイツは1人で賄ったのさぁ!コイツはその代わり、魂を引き裂く痛みに襲われているがなぁ!!そして我へのダメージは経典を描く血文字の代償!綴られるのはコイツ自身だぁ!!お前がコイツを救おうとすればするほど、コイツの首を絞めていたのさぁ!ギャハハハハハハハ!アハハハはハハハ!!》

 

「そ、そんな…お、おれのせいで…せ、先生が…!」

十代は膝をつく…救おうとした憧れの人を逆に苦しめていた…その絶望は測りしれない…

 

《さぁ…お別れの時間だ!生贄となれ!!》

 

「がっあ…あああああああああああ!!うああああああああああああああああああああ!!!!」

 

遊海の腕から「怒」「苦」「悲」「憎」の玉が飛び出す…そして遊海は()()粒子となり完全消滅した…邪神経典のページが黒く染まりそれぞれのページに「怒」「苦」「悲」「憎」の文字が刻まれていく…

 

 

 

「あ…遊海…さ…ん…そんな…そんなぁ…!」

 

「あっ!み、翠さんしっかりしてください!翠さん!!」

翠は体の力が抜け座り込む…遊海が消えた事で心が折れてしまったようだ…

 

「遊海先生…嘘だろ?アンタ…不死身だって言ったじゃないかよ…!」

 

 

 

 

 

 

『十代、自分の精霊を大切にするんだよ…!』

 

『十代…お前は今、『恐怖』を…『自分の弱さ』を知った、それは恥ずかしい事じゃない…俺も人形にされた時は怖かった…でもそれが人間なんだ…巨大なモノ、未知なるモノに恐怖する…それが人間であり決闘者なんだ…!』

 

 

『俺も命がけのデュエルで楽しむ事を忘れて戦ってしまう事もあった…十代、デュエルモンスターズはな…人を傷つけるためにあるんじゃない、相手と心を通わせ…相手を楽しませ…自分が楽しむ為に作られたんだ。もちろんセブンスターズの時みたいに何かを背負って戦わなきゃならない事もある…それでも俺は…楽しむ事を忘れずにデュエルをしていきたいんだ…』

 

 

『デュエルは互いの力を見せつける戦争じゃない…互いの力を認め合い、心を繋ぐ闘いだ…そうは思わないか?』

 

 

 

十代の脳裏に遊海の言葉が現れては走馬灯のように消えていく…自分の憧れが消えた…それは十代にとてつもないダメージを与えた…!

 

 

 

 

《さぁ!デュエルを続けるぞぉ!我は「邪神経典」の効果を発動!このカードと墓地の「邪神教義ー怒」「憎」「悲」「苦」を除外し…いでよ!「超融合」!》

 

シーン…

 

《何ぃ?何故だ、何故カードが現れない!!チッ…あれだけの闇でも足りないかぁ…?》

 

「貴様…キサマまさかたった1枚のカードのために遊海先生や戦士達を…!」

 

《ああ!そうだよぉ…まぁ失敗したがなぁ…抜け殻のようなお前を始末するならコイツで充分だ!「邪神経典」の効果により我はレベル8までの「暗黒界の混沌王カラレス」の融合素材モンスターをデッキから特殊召喚できる!いでよ「暗黒界の魔神レイン」!》

胸に黒い宝玉をはめた魔神が現れる ATK2500

 

《我はこれでターンエンドだ!》

 

ブロンLP3500

ズール(ダークネス・ハーフ)レイン 手札3

 

 

 

 

 

 

「…ユルサネェ…」

 

《ん〜?何か言ったか小僧?》

 

「絶対に許さねぇぇぇぇ!!!」

怒りに燃えた十代の瞳が金色に変わる…

 

 

 

 

 

「オレのターン!!ドロー!!!」

「『強欲な壺』で2ドロー!(この…カードは…)」

 

 

 

 

 

「十代!これやるよ!お前のフェイバリットが写ってるぞ!」

 

「先生ありがとう!お〜!すげぇ!しかもつえー!!大事にするぜ!」

 

「ああ!喜んでくれたならよかった!強くなれよ!十代…!」

 

 

 

 

 

 

「あ、あああああああ!!手札から「融合」を発動!!手札の「バーストレディ」とフィールドの「フェザーマン」を融合!来い!『フレイム・ウィングマン』!!」

十代のフェイバリットカード、赤い竜の腕を持つ戦士が現れる ATK2100

 

 

「そして発動せよ!魔法カード『スカイスクレイパーシュート』!!」

 

《何…なんだそれは…?》

 

「このカードは自分フィールドの「E・HERO」融合モンスター1体を対象として発動できる…そのモンスターより攻撃力が高い相手フィールドの表側表示モンスターを…全て破壊する!!俺のフィールドにいるのは攻撃力2100の『フレイム・ウィングマン』!消え去れ!『レイン』!!」

 

《何!?》

フレイムウィングマンの腕から炎が放たれる…その炎はレインを焼き尽くした…

 

 

「そして!!この効果で破壊され墓地へ送られたモンスターの内、元々の攻撃力が一番高いモンスターのその数値分のダメージを相手に与える!」

 

《なんだと!?ごうわぁ!!》

レインを破壊したフレイムウィングマンが竜口をブロンに向けて炎を放つ!

 

ブロンLP3500→1500

 

「バトルだ!!『フレイムウィングマン』で『ズール』を攻撃!『フレイムシュート』!!」

フレイムウィングマンの火球がズールを燃やし尽くす

 

ブロンLP1500→300

 

「そして…『フレイムウィングマン』は破壊したモンスターの…元々の攻撃力分のダメージを与える!!消え去れ!!!」

 

《でぇぇぇ~~ひゃああああ~~!!?》

 

ブロンLP0

 

十代 WIN…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブロン!フリードの仲間達を…!ヨハンをどこにやった!言え!!言うんだ!!!」

十代は倒れ伏したブロンを掴み上げヨハン達の居場所を聞き出そうとする…しかし…

 

《ギャハハハ…いい表情だぁ…怒りと悲しみ、憎しみと苦しみが混ざり凄まじい負の感情の渦を作り出している…!》

 

「黙れぇっ!!ヨハンは…ヨハンは何処にいる!!」

 

《フハハ…最初に言っただろう…戦士の血が大地を染めたと…ヨハンとかいう奴も…死んだよ!!》

 

「う…嘘だ…嘘だ!!!」

 

《フハハハハアハハハ…ギャハハハハハハハハハ…!!》

そしてブロンは消滅した…十代の心にトドメを刺す一言と…笑い声を残して…

 

 

 

 

「嘘だろ…ブロン様が負けただと!?」

 

「あんな餓鬼に…ありえねぇ…!」

 

《おい…アイツ殺っちまおうぜ!》

 

『それが良さそうだ!者共!かかれ!!』

ギャラリーにいた暗黒界軍のモンスター達が無防備な十代を狙い襲いかかる!

 

 

 

 

『うおぉぉぉ!…アチッ!?なんだ!?』

十代に襲いかかろうとしたゴルドが熱さを感じ動きを止める…そこには…

 

「フレアさん…私のお願い…一度だけ聞いてくれます?」

 

《ええ…いいですよ翠…!》

 

十代の前に1人の女性と金色に輝く鳥がいた…女性はうつむいていて顔は見えない…

 

「私の魂を糧に…敵を焼き尽くせ!『ラーの翼神竜』!!」

 

【ギュアアアアア!!!】

《…ユウミの…我が主の仇共…!消え去れ!!!》

翠の祈りに応え…神話が降臨する…!

 

『バカな…神…だと…?』

 

「《ゴッドフェニックス》!!」

翠が顔を上げ裁きの言葉を紡ぐ…それにより暗黒界軍は壊滅した…そして翠は…泣いていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…遊海先生…俺は…俺は…」

 

「十代…悪いのはお前じゃない!遊海先生はオレ達を守って捕まったんだ…オレ達も…同罪だ…!!」 

 

「…万丈目サンダーの言う通りだドン…俺達がもっと強ければ先生は…!」

 

「翠さん…気をしっかり持ってください…!」

 

「私が…私があの時残っていれば…遊海さんは…遊海さんはぁ…!!」

 

「…俺は悲しい…あの人は…いい先生だった…!」

 

 

残されたメンバーは悲しみに沈んでいた…いつも皆を導き守ってくれた偉大なる決闘者の消滅…それは何よりも辛かった…

 

「ジム…俺は…俺にできる事は無かったのか…?遊海プロを助ける方法があったんじゃ無いのか…!」

 

「オブライエン…ミーからは何も言えない…とにかく前に進もう…遊海先生もそれを望んでいるはずだ…。」

 

 

「アニキは勝手すぎる……アニキはみんなを元気にしてくれる……不可能を可能にする事が出来る……太陽の様な存在だと思ってたんだ…!」

 

「翔…?」

落ち込む十代に翔が話しかける…その瞳には疑いが宿っていた…

 

 

 

「でも、それは大きな勘違いだった…!アニキは自分さえよければそれでいいんだ。目的の為なら、誰がどうなろうと一切お構いなしなんだ!!カタキなんか討っても、遊海先生は戻らない!!アニキは、自分が満足する為だけにデュエルをしてるんだ!」

「翔……」

 

「気安く呼ぶなスットコドッコイ!アニキなんか!アニキなんか!!十代のバカヤロー!!」

 

「おい!翔!何処に行くんだ!」

 

「翔!単独行動は危険だ!待て!!」

翔は万丈目やオブライエンの静止を振り切り何処かへと走り去ってしまった…。

 

 

「…とにかく…町の砦まで戻ろう…あそこなら拠点になる…そこでこれからの事を考えよう…」

 

オブライエンはみんなを導く…せめてこのメンバーだけは無事に帰す…その思いを胸に…

 

「十代…いくぞ…立て!」

 

「ああ…すまない…」

十代はフラフラと立ち上がり歩き出した…その手には未完成の超融合が握られていた…。

 

 

 

『遊城十代…悪を倒す為なら悪にでもなる…、この弱肉強食の世界を力により支配しなければならない…その手に在るのは超融合のカード…。抗う精霊達を斃し、その生命の息吹を…心の闇を注ぎ込み、そのカードを完成させるんのだ…我が名は覇王…この世界を支配する者なり…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処かの荒野

 

 

 

『…ミドリ…オレは…もウ…戻レない…』

 



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対話〜悪魔の浸食〜

Side翔

 

「邪神教義ー疑」の呪玉による影響を受けた翔は十代達から離れ1人荒野に来ていた…邪神教義には感情を増幅させる力があり、それにより心の闇を増幅していたのだ…。

 

「アニキの馬鹿…!考え無しにデュエルしたせいで遊海先生は…遊海先生は…!!」

 

 

翔は怒っていた…ジムから遊海が拉致され暗黒界の砦に連れていかれた事…十代とオブライエンが救出に向かった事を聞いた翔達はすぐさま砦に向かった、警備兵を翠や精霊達が吹き飛ばし、闘技場に辿り着いた翔が見たのは苦しみの絶叫をあげる遊海の姿だった…。

 

どんな大怪我をしても軽く流していた遊海が苦しみに堪えきれず叫んでいる…それだけでも事態の異常さを伺い知れた、その直後遊海は消滅した…その身に受けていた「邪神教義」の呪玉に心の闇が増幅され、その体は「超融合」なるカードの生贄になってしまった…その原因は十代にある…翔はそう思い込んでいるのだ…。

 

「なんで僕はあんな奴をアニキなんて呼んだんだ…!」

 

翔は十代の事を忘れようとする…しかし浮かぶのは十代や仲間達と過ごした日々ばかりだった…。

 

「なんで…なんで!なんで忘れられないんだ!!…そうか…コレのせいか…!こんな物着けてるから!!」

 

翔は腕に着けていたデュエルディスクを外す…アカデミアでの思い出の象徴…デュエル、これさえなければ十代の事も忘れられるんじゃないか?疑念に支配された翔には正しい判断能力は残っていなかった…。

 

「こんな…こんなモノーー!!」

翔はデュエルディスクを投げ捨てようとする…しかし

 

 

「あれーは!?セニョール翔!何をしてるノーネ!!デュエルディスクは初代機以外は投げちゃダメなノーネ!!?」

 

「へっ!?クロノス先生!?」

翔にストップをかけたのはここにはいないはずのクロノス先生だった…。

 

「先生!…どうしてこんなところに!?」

 

「アナータ達の世界移動?に巻き込まれたノーネ!まったくひどい目にあったノーネ!みんなは、セニョール十代達は何処なノーネ?」

 

「知らない…あんなわからず屋の事なんか知るもんか〜!!」

翔は十代の名前を聞いて先程の疑念を思い出し、激情のままデュエルディスクを投げ捨てた…すると…

 

《グオオォォ!!》

デュエルディスクの落ちたあたりから獰猛な鳴き声が轟く…

 

「「へっ…?」」

 

《ゴオァァァ!!》バサッ!

 

「「ギャアアア!『タイラント・ドラゴン』!?」」

岩場からオレンジ色の竜が飛び立つ、攻撃力2900を誇る最強の竜の1体が、怒りの籠もった目で翔達を見下ろしている…

 

「もしかして…デュエルディスクが…」

 

「当たったノーネ…?」

 

《ガアアア!!》

タイラントドラゴンはこちらに向かい突進してくる!

 

「「ごめんなさ〜い!!/なノーネ!!」」

翔とクロノスは大急ぎで逃げ出した…タイラントドラゴンはそれを追い滑空してくる

 

「ク、クロノス先生!『古代の機械巨人』でなんとかしてくださ〜い!!」

 

「無理なノーネ!ワターシ、ディスクを置いてきてしまったノーネ!!」

 

「ウソーン!!?」

 

《ゴアアアア!!》

 

「「誰か助けて〜!!」」

2人は大急ぎで逃げる、しかし現実は無情であるである…

 

 

 

 

「うわっ!?行き止まりッス!?」

 

「しまったノーネ!」

2人は崖下に追い詰められてしまう…

 

《グルルル…!!》

タイラントドラゴンは唸り声を上げ口を大きく開く…!

 

「セニョール翔!逃げるノーネ!…先生が…時間を稼ぐノーネ…!!」

クロノスは前に出る…その足は震えている…

 

「先生ダメっす…!!元々といえば僕のせいッス!逃げて〜!!」

 

「セニョール翔、教師…大人は未来ある子供達をを守る義務があるノーネ…!ワタシはその義務を果たすノーネ!」

 

「あっ…!」

翔はその瞬間ある風景を幻視した…クロノス先生の背中に重なるように…赤い帽子の決闘者の姿を…

 

「(そうか…遊海先生はあの時、既に覚悟を決めていたんだ…死ぬ時も…叫んでいたけど…弱音は言っていなかった!先生…僕は…!)」

その瞬間、翔はクロノスの隣に並び立つ…

 

「セニョール翔!?どうして逃げないノーネ!!」

 

「クロノス先生…僕はもう逃げない!!2人で生き延びるんです!!」

 

「セニョール翔…そうなノーネ!諦めるにはまだ早かったノーネ!!絶対に…生きてみせるノーネ!!」

 

《ガアァァァ!》

タイラントドラゴンが口を開き襲いかかる…!

 

「(遊海先生…力を貸してくれッス!)」

翔は覚悟を決める…

 

 

 

『避ケろ!少年!ハアっ!!』

 

「へっ?」

 

《グギャアァァァ!!…》

崖上から現れた人影が剣を抜いてタイラントドラゴンを両断する…そのままタイラントドラゴンは消滅した…。

 

「いったい…何が起きたノーネ…?タイラントドラゴンが真っ二つに…」

 

「あ…あなたは…?」

 

翔が自負達を助けてくれた人影…ボロボロのローブを着た人物に話しかける…

 

『我が名は…名乗れる名前が無い、ファントム…とデも呼ぶガいイ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セニョール遊海が…死んだ…?それは確かなノーネ!?」

 

「はい…僕達の目の前で…遊海先生…!」

翔とクロノスはファントムの拠点である洞窟で火にあたっていた…

 

「そうなノーネ…でも先生らしい最後だったノーネ、生徒を守って倒れる…教師の鑑なノーネ、でも満点では無いノーネ!」

 

「クロノス先生…」

 

「生徒を助けて…自分が生きてこそ満点なノーネ!!どうしてそれを実行できなかったノーネ!おーいおいおい…」

クロノス先生は涙を流す…

 

『…木の実ヲ採ってキた、食べてオけ…コの世界では体力ガ命ダ…』

 

食料調達に行っていたファントムが戻ってきた、黒い異形の左腕に器用に木の実を乗せている…

 

「ありがとうッス、ファントムさん…あの…一つ聞いていいッスか…?」

 

『ナンだ?少年?』

 

「ファントムさんは…『人間』ですか…?それとも『精霊』なんすか?」

 

翔は改めてファントムの姿を見る…体や顔はローブで隠れている、右腕は人間だが左腕は悪魔のような黒い色で鋭い爪が生えている…足元は黒い悪魔のような足になっている…

 

『…オレは元は「人間」ダ…でモ事故がアッてな…「精霊」に近い姿にナっテいる…ソの内に完全にモンスターにナルだろう…』

 

「そんな…いったいなんでそんな事に…!」

 

『自分デもわからナい…しいテ言うなら、人助けの結果かナ…悲しマないでクレ…覚悟は決メていたんダ…覚悟…はな…』

 

ファントムは遠くを見る…顔は見えないがたぶん悲しい表情をしているのだろう…

 

『オレはヤスむ…何かアッたら教えテくれ…』

そういうとファントムは洞窟の奥に消えていった…

 

 

「セニョール?ファントム…なんだかどこかであった事がある気がするノーネ…?気のせいなノネ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『翔…どうしたんだ?そんな暗い顔をして…』

 

「お前らしくないぜ翔!」

 

「アニキ…遊海先生…」

 

これは…ジェネックスの時の夢…?

 

「お兄さんに負けちゃったんス…お兄さんに成長した

ところを見せたかったのに…それに…」

 

「それに?」

 

『ヘルカイザーのデュエルをやめて欲しかったんス…あんな怖いお兄さん…見ていられないッス!』

 

『翔…そうか、リスペクトデュエルをするカイザーが好きだから…相手を叩き潰すカイザーの姿を見ていられなかったのか…』

 

「うん…演技だって事はわかってるんス…でもあんな悪いお兄さん…見ていられないんッス!アニキならどうするッス…?自分の大切な人が悪い人になっちゃったら…それを元に戻せないなら…」

 

「う〜ん…俺ならずっとその人を見てるな…どうにもならないかもしれない…でもその人はどんなに変わっても大切な人なんだろ?ならどんなに嫌がられても…見守り続ける!それが…その人を大切に想ってる証だからな!」

 

「俺なら…何度でも挑んでいくな…その人の心に俺の想いが届くまで…何度でも!それが俺のやり方だ!」

 

「アニキ…先生…ありがとうッス!参考にするッス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ…!?夢か…十代…遊海先生…僕は…」

 

『グッ…アアアアアア…!?』

 

「?何の音ッス…?外から…?」

夢から目覚めた翔は音に耳を澄ませる…それは人の声…苦しんでいる人の声だった…

 

「この声…まさか!!」

 

『(そノ内に完全にモンスターになるだロう…)』

 

「ファントムさん!!」

翔は声を追い外に向かう

 

「ムギュ!?どうしたノーネ!?」 

 

 

 

 

 

 

 

『ガッ…ぐぅぅぅ…ガアアア!!?』

 

「ファントムさん!?これは…!?」

 

『少年!!オレに…俺にチカヅクナ…!!!』

外に出た翔が見たのは闇のオーラに包まれ苦しむファントムの姿だった

 

「ファントムさん!しっかりしてください!ファントムさん!」

翔はファントムに近付こうとする…

 

『ガッ…ク…来るナ…来ルな!翔!!』

 

「えっ…ファントムさん…僕の名前…なんで…!」

翔はファントムに名前を伝えていなかった…ただ少年と呼ばれていたからだ…

 

「何事だ!翔!?っ…これは…!」

 

「亮!待って…なんだアレは!?」

 

「お兄さん!?エド!?なんでここに!?」

荒野から現れたのはカイザーとエドだった、闇の気配を感じて駆けつけたのだろう…

 

「話はあとだ!アレは…あの人に何があった!!」

 

「お兄さん!あの人を…ファントムを知ってるんスカ!?」  

 

「何を言っている翔!お前は…自分の()()の事を忘れたのか!!」

 

「恩…師…?そんな…まさか…!?」

 

『ガ…あ…アアアアアアアアアアア!!!』

 

闇のオーラが膨れあがりローブが吹き飛ぶ…そして「ファントム」の正体があらわになる…

 

「そんな…あなたは…なんで…!!」

 

【『逃ゲろ…オレから…離レロー!!!アアアアアア!!!』】

 

翔の足元に赤い帽子が舞い落ちる、ファントム…その正体は死んだはずの…白波 遊海の姿だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

【見らレテしまっタか…このスガタを…】

闇のオーラが収まるとそこには異形の悪魔がいた…

黒く白いメッシュのはいった髪、黒く染まり胴体に模様のはいった肌、黒い2対の羽、鋭い爪、そしてかろうじて理性を残した瞳…それが今の遊海の姿だった…。

 

「先生!遊海先生!生きてたんすね!!よかった…良かったッス〜!!!」パリーン

翔は遊海に抱きつく…2度と会えないと思った人に会えた…それは翔の心を癒やすには充分過ぎた…

 

【翔…イマのオレに余り近づくナ…イツ暴走するかわかラなイ…】

 

「遊海先生…いったいあなたに何があったんだ?事情はクロノス先生(気絶)に聞いた…なんでそんな姿に…」

 

【この姿ハ…呪いでアり…オレの心の闇の姿ダ…正直…理性ヲ保つノで精一杯ダ…】

そして遊海は語り始める…あの時、何があったのかを…。

 

 

翔Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊海Side

 

十代とブロンのデュエルはアニメ通りに進んでいった…違うとすればブロンが十代の攻撃を誘って動いている事だろう…奴の墓地には「邪神教義ー怒」が落ちている…。

本来ならその時点で俺は怒りに呑まれ消えるはずだが…理性は残っている、ただし体…正確には魂が凄まじい激痛を放っている、正直泣いて叫びたいが…声がでないから意味がない…それにしても…痛いんだよ!!この野郎!!

ダメ元でオブライエンに読唇メッセージを送る…気付くかな…?

 

「十代!これ以上ダメージを与えるな!罠だー!!」

 

…なんとか伝わったか…でも、おそかった…っぐああああああああ!!?痛いいたいイタイ!!!魂が裂ける!!!体も痛みを叫び続ける…!何なんだよ!この痛みは!!?視界が明滅する…喉が裂ける!体を無理やり作り変えるような痛みが魂を蹂躙する!!!

 

【トキはキタ…心の闇よ…この者を蹂躙し…目覚めサセヨ!!】

 

突如頭に声が響く…それと共に痛みが倍になる…まるで本当に体を作り変えるように!…魂からドロリとした闇が溢れ出す…やめろ…やめてくれ…!!俺が…俺で無くなる!!?や、やめろ!!!!

 

「さぁお別れだ!生贄になるがいい!」

ブロンの声と共に意識が遠のく…そして意識は闇に包まれた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ…ぐぅ…コこは…?』

俺が目覚めるとそこはどこかの荒れ地だった…なんだ?体に違和感が…頭がはっきりしない…水が飲みたい、俺は違和感を感じる体で水場を目指した…。

 

 

 

『…この…姿ハ…』

しばらく歩いて見つけた水場で俺は自分の姿を確認した、その姿は…異形の悪魔のようだった…。

 

【フハハ…モウ少しで貴様は王となる…破壊の王にな!】

 

『ッ!?誰だ!何処にいル!』

頭に声が響く…その声は邪神経典の生贄になる前に聞こえた声だった…。

 

【貴様の魂の中だよおマヌケさん!まったく気づかない

とはな!ああ、ユウスケとかいう奴は既に浸食済みだ、あとは貴様を乗っ取って完全に主導権を奪えばはれて新たな王の誕生さぁ!アハハハ!】

 

『させルと思うカ?貴様なンテ追い出シテ…!!グッ!?アアアアアアアアアアア!?』

 

【大人しくしてなよ白波 遊海!オレの覚醒まではまだ時間がかかる…それまでせいぜい最後の時間を楽しみな!アハハハハ!!】

それだけ言い残して声は消えていった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

【オレは…もうスコシで俺じゃナクナる…ソウなれば…ドウなるかワカらない…】

 

「そんな…そんな…!翠さんはどうなるんすか!!」

 

【…オレは恐らくモトにはモドレない…翠には…俺の事は伝えないでクレ…悲しまセルだケだ…】

 

「そんな…そんなのって…!」

 

【ソレよりモ十代だ…あいつハ闇に沈んダ…】

 

「えっ…?」

 

「なんだって?」

遊海からの爆弾発言により翔達は硬直する…

 

【…コレは十代ヘノ試練ダ…ソレを乗り越えラレるかは…十代次第だ…ハヤク行ってヤレ…】

 

「先生は…先生はどうするんですか!?」

カイザーが遊海に問いかける

 

【可能な限リコノ『悪魔』ヲ押えル…モシ暴走したラ…カイザー…介錯を…頼厶…!俺ハデュエルいガイでは死ねないカラな…】

 

「わかりました先生…でも諦めないでください…!きっと…きっと方法があります!」

 

【ありがとう…丸藤 亮…翠と十代を…たの厶…!】

 

「はい…!」 

 

 

そして翔、カイザー、エド、クロノス先生の4人は十代達の元に向かった…。

 

 

【…行っタカ…サテ、邪魔モノはいなくなった…出てこいよ…「ユベル」!!】

 

 

《フフフ…醜い姿だねぇ白波 遊海?どうだい?ボクの呪いの味は?》

 

【アア…最悪だヨ!今かラデモお前に返品したイよ!悲しき竜!!】

遊海の前に黒幕たるユベルがその姿を現した…。



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破壊の悪魔と悲しき竜〜捻れる運命〜

《それにしても…醜い姿になったものだねぇ…「地獄詩人ヘルボリマー」の方がマシなんじゃないかい?》

 

【お前ニ言わレたくないネ、ユベル…!】

異形と化した遊海はユベルと睨みあっていた…、ユベルはヨハンの姿では無く本人の姿で現れている。

 

《フフフ、それにしてもここまで上手くいくなんてね…ボクは自分の事が怖いよ…!》

 

【何ダト…?】

 

《君はずっとボクの手のひらの上で踊っていたに過ぎないのさ!アハハハ!》

 

《キミのはめていた黒いデス・ベルトには二種類の呪いをかけていたのさ!一つは魂を砕く「茨の呪い」…そして負の心を増幅させ怪物を目覚めさせる「悪魔の呪い」をね!》

 

【悪魔の呪い…だト…?】

 

《そうさ!君の「善」の魂を闇で浸食し「悪」へと塗り変える静かなる呪い…!君ともう一つの魂に気付かれないように、静かにゆっくりと蝕むのさ!そして君は邪神教義を吸収した事でついに変化したのさ!人を救う「英雄」から人を破滅させる「悪魔」にね!!》

 

【キサマ…!目的はナンだ!オレへの復讐か!?】

 

《何を言うんだい?十代への愛のために決まっているじゃないか…!》

 

【ナ…ニ…?】

遊海はあまりのぶっ飛んだ「愛」発言に呆然となる…

 

《キミを暴走させて彼の大切な者を全て壊すのさ…!そして十代はボクの愛を知るのさ!痛みと苦しみという名前の「愛」を!!》

 

【知っていタけど…狂いすギだ…!シカしユベル!ソレは叶わナい!】 

 

《なんだって?》

 

【俺ハ、俺が白波 遊海であル限り…この「悪魔」ヲ抑えテみセる!!貴様の思イどオりにはならん…!!】

 

《強情だねぇ…もう理性を保つのも辛いだろうに…今楽にしてあげるよ…!》

ユベルはデュエルディスクを構える…

 

【貴様トデュエルする理由ハない!】

 

《ふーん…もしボクに勝てたら元に戻してあげようと思ったのに…残念だな〜!》

 

【…くっ…!世迷い事を…端から約束を守るつもりはナイんだろう?】

 

《何を言うんだい!デュエルとは古来から神聖なモノ…ボクだって約束は守るさ!なら証拠としてデュエルの間だけ顔を戻してあげるよ!》

ユベルが遊海に向けて手を翻す…すると遊海の顔が人間のものに戻る…

 

「…本当のようだな…!ならばお前を倒して…俺は翠の元に…戻る!!」

 

 

 

 

 

     「《デュエル!!》」

 

 

 

 

ユベルLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

 

《ボクのターン!ドロー!》

《「サクリファイス・ロータス」を守備表示デュエル召喚!》

蓮の花の妖精が現れる DEF0

 

《カードを2枚伏せてターンエンド!》

 

ユベルLP4000

ロータス 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「自分フィールドにモンスターがいない時『フォトン・スラッシャー』は特殊召喚できる!」

光輝く剣士が現れる ATK2100

 

「さらに自分フィールドに『フォトン』モンスターがいる時、『フォトンバニッシャー』は特殊召喚できる!」

レーザー銃の銃士が現れる ATK2000

 

「2体のモンスターでオーバーレイ!」

剣士と銃士が銀河に飛び込む!

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!来い!『輝光帝ギャラクシオン』!!」

二刀流のレーザーブレードの戦士が現れる ATK2000

 

《フーン…それがエクシーズ召喚…面白いね…!》

 

「笑ってられるのも今のうちだ!!『ギャラクシオン』の効果を発動!ORUを一つ取り除き、手札から『竜』を特殊召喚する!!」

遊海の手に赤い槍が現れる

 

取り除いたORU

フォトンスラッシャー

 

「(希望の竜…俺に力を貸してくれ…!!)逆巻く銀河よ!希望の光となりわが僕に宿れ!」

槍を投合する!

 

「光の化身…ここに降臨!現れろ!『銀河眼の光子竜』!」

瞳に銀河を宿す竜がその姿を現す ATK3000

 

《攻撃力3000…いいね…!すごいじゃないか!》

 

「バトルだ!『ギャラクシオン』で『ロータス』を攻撃!さらにエクシーズ素材となっている『バニッシャー』の効果!『ギャラクシオン』が破壊したモンスターは除外される!」

 

《なんだって!?》

転生する花の精は役目を果たす事無く異次元へと消え去る

 

「『光子竜』でダイレクトアタック!『破滅のフォトン・ストリーム』!!」

破滅の光がユベルに迫る

 

《リバースカード「ドレインシールド」!!攻撃力分ライフを回復する!》

 

破滅の光はユベルの力に変わる 

ユベルLP4000→7000

 

「チッ!しまった…!みすみすライフを…!」

 

《フフフ、ごちそうさま!》

 

「カードを伏せてターンエンド!」

 

《その時リバースカード「終焉の焔」!攻守0の「黒炎トークン」を2体特殊召喚!》

小さな黒い炎が現れる DEF 0 0

 

遊海LP4000

ギャラクシオン 光子竜 伏せ1 手札3

 

 

 

 

「生贄素材を…!」

 

《フフフ…見せてあげるよ、ボクの力をね!》

 

 

 

 

 

 

 

《ボクのターン!ドロー!》

《「黒炎トークン」2体を生贄に現われろ!ボク自身…『ユベル』!》

ユベル自身がフィールドに現れる ATK0

 

「来たか…!」

 

《フフフ、まだ終わりじゃないよ!手札から魔法カード「サンダー・クラッシュ」を発動!ボクを破壊してキミに300ダメージを与える!!》

ユベルの体が砕け散る、そこから雷撃が放たれ遊海に直撃する

 

 

「がああ!?…ま…マズイ!」

遊海LP4000→3700

 

《「ユベル」の効果を発動!ボクは十代への愛で進化する!デッキから『ユベルーDas Abscheulibh Ritter』を特殊召喚!》

ユベルの粒子が集まり「忌まわしき騎士」の名前を持つ第二形態が現れる ATK0

 

『アハハハハ!どうだいこの姿は…!』

ユベルが双頭の竜の間からその姿を生やす…その瞳は狂気に塗れていた…。

 

「くっ…!いきなりかよ…!」

 

《バトルだ!「ボク」で「銀河眼」を攻撃!効果によりボクは戦闘ダメージを受けず相手は攻撃されたモンスターの攻撃力分のダメージを受ける!「ナイトメア・ペイン」!》

 

「アニメ効果!?(マズイ…『銀河眼』の効果を使ったら…!)っぐおおぉぉお!!」

ユベルの炎を受けた光子竜がユベルに襲いかかる、しかしダメージは反射され遊海に襲いかかった…

 

遊海LP3700→700

 

《ボクはカードを伏せてターンエンド!》

 

ユベルLP7000

ユベルVr2 伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

「ガッ…効くな…『銀河眼』のブレスは…」

 

《どうだい白波…君はボクに触れる事はできない…!どうする事もできないのさ!》

 

「くっ…俺は…オレは…!負けルわケには…いかナいンダー!!!」

遊海を闇のオーラが包みこむ…オーラが収まると遊海は異形の姿に戻っていた…!

 

《フフフ…いいぞ!さぁ…心の闇を曝け出せ!それがボクの最大のエネルギーとなるのさ!!》

 

 

 

 

 

【オレのターン!!闇よ集え…我にチカラを…!デビルドロー!】

遊海の腕に暗黒の力が集う…そしてカードをドローする…

 

【「RUMー七皇の剣」!発動!!時間ヲ統べル黄金の龍ヨ…我が手に勝利を齎スたメに顕現セヨ…!「A CNo.107! 超銀河眼の時空龍」!』

時空を統べる三頭龍が降臨する ATK4500

 

《攻撃力4500のドラゴンだと…!?》

 

【「超時空龍」のモンスター効果!ORUヲ一つ取り除キ発動!「タイム・タイラント」!!】

《ガアァァァ!!》

 

超時空龍が遊海の怒りを代弁するかのように咆哮をあげる、すると時空龍以外のモンスターやカードが灰色になる…

 

《何っ!?いったい何が…!》

 

【「超時空龍」は時間ヲ司る龍皇…コノターン、フィールドのカード効果は全テ無効にナリ…キサマはフィールドでカードの効果を発動でキなイ!!】

 

《なんだって!?》

 

【バトル!「超時空龍」!「ユベル(第二形態)」を攻撃!「アルティメット・タキオン・スパイラル」!!】

三条の光線が螺旋を描きユベルに直撃する…効果を封じられたユベルは呆気無く光に飲み込まれた。

 

《あ"あ"あ"あ"あ"!!?》

 

ユベルLP7000→2500

 

《ぐっ…まだだ!!いでよ我が真の姿!「ユベルーDas Extremer Traurig Drachen」!!》

悲哀の龍の名前を冠するユベルの最終形態が現れる…しかしその姿も灰色に染まっている… ATK0

 

《なっ…ボクの姿が灰色に…何故!?》

 

【イッタだろウ!この空間を支配シテいるのは…「超時空龍」だ!「ギャラクシオン」!「ユベル」を…切り裂ケぇぇェェ!!!】

ギャラクシオンは「誰にも傷つけられない龍」を…斬り裂いた

 

《ぎゃあああぁ!!?》

 

ユベルLP2500→500

 

【ターンエンド…ダ…!】

遊海LP700

超時空龍 ギャラクシオン 伏せ1 手札3

 

 

 

 

 

《クッ…アハハ…アハハハハハ!!》

傷付いたユベルは突如笑い始める…

 

【ナニが可笑しイ!ツギにオレがイチゲキをキメレバ…オレの勝ちダ!!】

 

《アハハハ…いやぁ、あまりにも滑稽でね…今の君の姿が!自分の意思で悪魔になっちゃったら手間ないね!アハハハ…!!》

 

【ナ…ニ…?】

遊海は自身の顔を確認する…ユベルに一時的に解呪されていた顔は悪魔の顔に戻っていた…。

 

【コレ…ハ…】

 

《アハハハ!何が楽しいデュエルを心がけるだ!君の本性は他の決闘者達と一緒さ!ただ勝利を貪欲に求める化物なんだよ!》

 

【チガウ…オレはデュエルを…タノシムため…に…】

 

《いいや、違わないね!君はボクと同じさ!ボクは十代に愛を届けるためなら何でもする!君は勝つためなら何でもする…同じだろう?》

 

【チガウ…!!】

 

《なら証拠をみせておくれよ!ボクのターン!ドロー!》

 

《「グレイブ・スクワーマー」を召喚!》

黄色いゾンビのような悪魔が現れる ATK 0

 

《ボクはこれでターンエンド!》

ユベルLP500

スクワーマー 伏せ3 手札1

 

 

 

 

 

【オレノターン!ドロー!】

【「ネオタキオン」!ユベルにトドメをさせ!「スクワーマー」を攻撃!「アルティメット・タキオン・スパイラル」!!コレデオワリダァぁ!!】

ブレスがチャージされる…!

 

《ああ…終わりだとも、君がね?》

 

【ナ…】

 

《リバースカード「ヘイト・バスター」!悪魔族が攻撃を受けた時に発動!「超時空龍」と「スクワーマー」を破壊し相手に4500のダメージを与える!!》

黄色い悪魔が龍へと特攻し…大爆発を起こした…

 

【ガッ…アアアアアアアアアアア!!?】

 

遊海LP0

 

ユベル WIN!

 

 

 

 

 

 

 

【ガッ…ゴ…ハッ…】

遊海は爆発により岩壁に叩きつけられていた…体からは金色の粒子が漏れている…

 

《フフフ…どうだい?痛いかい?白波…!》

 

【イタイサ…シカシ、オマエのオモウトオリにはナラン…オレが消滅すれば…アイツラに迷惑ハ…】

 

《消滅?…させるわけないじゃない…か!!》

 

【ナッ…!?グッアアアアアアアアアアア!!!?】

ユベルの腕が遊海の胸に突き刺さる…

 

《君が白波 遊海である限り悪魔にならないなら…()()()() ()()()()()()()()()()()さぁ楽になりなよ!特別にボクの力も分けてあげるからさぁ!!》 

胸を貫いたユベルの腕は遊海の魂を浸食する…そしてその魂を書き換え…遊海の意識が失くなっていく…

 

【ガッ…ヤメロ…ヤメテクレ…!オレの…記憶が…消エテ…!】

 

《フフフ、さよなら白波 遊海、救済者は今…悪逆の魔王へと墜ちるのさ!アハハ…アハハハハハ!ああ!十代ボクの十代!!君の顔が楽しみだよ!君に仲間がいなくなった時…君はどんな顔をしているのかな?アハハ…アハハハハハ!!》

 

 

 

 

【ガ…ア…アアアアアア!!?】

 

思い出が…消えていく… 

 

 

 

 

 

大切な思い出が 

 

  

 

 

 

ア  との出会いが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊 との友情が

 

 

 

 

 

 

 

精霊達の名前が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛する人の姿が…

 

 

 

 

 

 

 

消えていく…

 

 

 

 

 

 

 

ああ…

 

 

 

 

    

 

思い出なんて…あったっけ?

 

 

 

そして全てが黒く/白く塗りつぶされ…俺の意識は…消失した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《さぁ目覚めなよ!白波 遊海の心の闇を吸収した破壊の悪魔!君の力で十代の取り巻きを…!》

 

 

【GA……】

 

《ん?》

 

【Gaaaaaaaaー!!】

目覚めた遊海…否、悪魔は闇のオーラを発生させる…そこから数多のモンスター達が飛び出してくる…!

 

《なっ…!?なんだよこのモンスター達は…!》

ユベルは知らない…召喚されたモンスター達は世界を破滅させかけたモンスターであると…

 

【GoAaaaaaaa!!】

 

《まさか…コイツ理性が…!?》

ユベルの誤算…それは悪魔に理性がなかった事であろう…悪魔はあらぬ方向を見ると、そちらに向かっていく…。

 

【ハ…カ…イ…!ハカイィィィ!!!】

その様子はまさに狂戦士…ユベルにそれを制御する事は無理だった…。

 

 

《おい!悪魔!何処に!?》

 

【十代…コロ…ス!!】

 

《なっ…!?チッ、失敗か!消え去…なっ!?》  

【ギシャアアア!!】

悪魔の召喚したモンスターが蒼い炎を放ちユベルの周囲を燃やし尽くす!

 

【Gaaaaaaa!!】

そして悪魔は遠くに見える岩の城へ向かっていった…。

 



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覇王を呑む破壊の闇〜壊れし者〜

「うう…遊海…さん…なんで…」

 

「…翠さん…」

 

十代によるブロン撃破から1週間が経った…、残されたメンバー達は最初に訪れたフリード達の砦を拠点としてヨハン、並びに行方不明の翔の捜索を行っていた…。

 

翠は遊海の消滅により体調を崩し寝込んでいる…本来、特典により病気にはならないはずだが…精神のバランスを崩した翠には意味を成していなかった…。

 

 

「明日香先輩…翠さんはどうザウルス?」

 

「剣山君…ダメね、気力が弱まってる…ウィンダちゃんも励ましてはいるんだけど…」

 

「そうかドン…こっちも手がかりは無いザウルス…ヨハンも丸藤先輩も…アニキも…」

 

「そう…十代…、あなたはどこにいってしまったの…?」

 

ブロンを撃破した2日後、十代は突如として姿を消した…、最後に目撃されたのは戦士の墓場の遊海の墓の前で力無く項垂れる姿だった…。

 

「大丈夫ザウルス!ジムとオブライエンが探してくれてるザウルス!きっとひょっこり帰ってくるドン!」

 

「そうよね!大丈夫よ!まったく、十代はいつもこうなんだから…」

 

剣山と明日香は頷きあう、十代はいつもこうなんだからと…。

 

 

《失礼する…食料を採ってきた、食事にしよう》

翠の部屋に入ってきたのはトフェニだった…主無きいまでも精霊達を纏めて食料調達などをしている。

 

「ありがとうトフェニさん…あなたも辛いはずなのに…」

 

《拙者は大丈夫だ…主は生徒達を守りきった、ならば今の使命は主の守った生徒達と翠殿を護るのが我が務め…悲しんでいる暇…など…!》

 

そう言いながらもトフェニは拳を握りしめる、遊海の…主の危機の前に何もできなかった…だからこそ彼らだけは守りきる…その想いが彼を動かしていた…。

 

「トフェニさん…」

 

《湿っぽくなってしまいましたな…今日は川で「ジェノサイドキングサーモン」が採れました、今のうちに体力をつけておきましょう!》

 

「えっ!?攻撃力2400の大物ザウルス!?どうやって!?」

 

《フフフ、内緒です…コツがあるのです!》

 

「な、なるほど…流石トフェニさんザウルス…」

 

 

 

 

 

 

 

「美味いなコレ!?誰が作ったんだ!?」

 

「トフェニさんが作ったの…まさかここまで美味しいなんて…」

 

《エジプト風キングサーモンのムニエルだ、拙者はエジプト由来の精霊…最低限の料理はできる!》

 

「…精霊とは…」

 

「吹雪先輩、あまり深く考えない方がいいドン…」

 

 

 

 

 

 

 

食事を摂ったアカデミア組…万丈目、明日香、吹雪、剣山とトフェニ達は今まで得た情報を整理していた…。

 

「では状況を整理だ…明日香、今までの動きをおさらいしよう…」

議長の吹雪が明日香に話を振る

 

「ええ…まず私達が精霊世界に来て約2週間が経ったわ、その間に私達はバードマンの支配していた世界の反乱を成功させてこの世界…暗黒界のモンスター達が支配していた世界に来たわ。」

 

「そしてアニキが暗黒界の斥候スカーを倒してカイルを助けたんだドン!」

 

「そう、そして遊海先生が狩人ブラウを倒して私達はフリード達が潜んでいた砦に向かったわ、そこでラーズさんからヨハン君に似た少年を見かけたという情報を得たわ…」

 

「そしたら十代の奴が先走りやがって…遊海先生が居なけりゃどうなってたか…収容所で暗黒界の騎士ズールを遊海先生が倒したんだよな」

 

 

「ええ、そして暗黒界の砦の位置を掴んだ私達はフリードの仲間、そしてヨハンを助けるために暗黒界の砦に向かった…」 

 

「そして…道中で武神ゴルド、武神シルバに襲われた僕達を守って遊海先生は捕まってしまった…先行していた十代君は砦に連れ込まれた遊海先生を助けるためにオブライエン君と救出に向かったが…」

吹雪は言葉をきる…

 

「…遊海先生はカードを生み出す生贄として…死んでしまった…ブロンは倒したけど…ヨハンの死を告げられた十代君は、見ていられなかった…かけがえのない親友と尊敬する決闘者、その二人を同時に失ったのだから…無理もないだろう…。」

 

「…そして翠さんがフレアさん…信じられないけど『ラーの翼神竜』と共に暗黒界軍を文字通り殲滅…その後翔君が行方不明になって…私達はこの砦に戻ってきた、そして5日前十代が姿を消してしまった…こんなところかしら…」

 

「ありがとう明日香、そして今の僕達の状況だが…とりあえずこの世界からの帰還の目処がたっていない、とにかく行方不明の翔君、そしてブロンが死んだと言っているヨハンの捜索を最優先に、そして生き延びる事を優先して行動していこう…十代君については別行動をしているジム君とオブライエン君、そして精霊のウェンちゃんに任せよう…異論はあるかな?」

 

「異論は無い…とにかく帰る方法を見つける事と行方不明になってる翔とヨハンを探し出すんだ、十代の馬鹿は…」

 

「アニキは馬鹿じゃないザウルス!きっと傷ついて気分転換に行ってるだけザウルス!絶対に帰ってくるドン!」

 

「剣山君落ち着いて!万丈目君も言い過ぎよ!」

 

「すまなかった…」

 

 

 

 

 

 

「さて、僕達が今置かれている状況だけど…万丈目君、周囲の状況は?」

議長の吹雪が万丈目に周囲の状況を尋ねる。

 

「ああ、おジャマ達と共に町に降りたんだが、少しづつ人が戻ってきているみたいだ、ブロンと暗黒界軍が殲滅されて安心したからだろう…少しづつお店も開いてきた、お金があれば食料の入手もしやすくなるはずだ」

 

「なるほど…他には?」

 

「妙な話を2つ聞いた…『覇王』と『悪魔』についてだ…」

 

「覇王?悪魔?何の事ザウルス?」

 

「ああ…まず覇王についてだ、ここ数日に突然現れた勢力で北にある『覇王城』を拠点に凄まじい勢いで領土を広げているらしい…、そして決闘者狩りをして…逃れた者はいないとの話だ…。」

 

「暗黒界の脅威が無くなってすぐにか…十代君が巻き込まれてなければいいが…それで悪魔とは?」 

 

「…これは本当に噂話だ、東の荒野が青い炎で覆われて燃え尽きた…突然たくさんの異形のモンスターが現れて町が消えた…それを率いる黒い翼の悪魔を見た…そんな話だ、幸いこの近くでの目撃情報は無いが注意はした方がいいだろうな…」

 

「…青い炎を率いる悪魔…聞いただけでも恐ろしいザウルス…恐竜に火は大敵だドン」

 

「十代…大丈夫…よね…?」

 

「…状況は僕達にとって不利な事ばかりだ…遊海先生がいなくなり、翠さんも動けない…そんな中だけど僕達はやれる事をやろう!絶対にヨハン君と十代、翔君を見つけだして…《万丈目の兄貴〜!!大変よ〜!!?》どうした!?」 

 

会議をしている部屋におジャマイエローが飛び込んでくる

 

「どうしたイエロー?今は作戦会議中だ、くだらん事だったら!」

 

《ヤバイのよ!空に気持ち悪いモンスターが!》

 

「そんなのここは精霊界だ、デビルドーザーもいるんだら何がいても…」

 

《違うの!気持ち悪いうえに超デカイのよ!?》

 

「「「「なんだって!?」」」」

 

 

 

 

 

 

イエローから話を聞いた万丈目達は外に飛び出した…そこには…

 

「なんだよ…アレ…!」

 

「機械仕掛けの赤い鳥…?」

 

「デカすぎるザウルス!?」

 

そこにいた…否飛んでいたのは機械でできた赤い鳥のようなモンスターだった…ただしその大きさはジェット機の数倍以上の大きさがある、だいぶ高い場所を飛んでいるはずなのに相当な大きさがあり、翼はところどころが色々な色の光を放っている…。

 

「…いったい…何が起きようとしているんだ…?」

 

万丈目達はその様子を見ているしかなかった…。

 

 

 

《そんな…あのモンスターは…!怖い…怖いよ…!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「覇王…いや十代!出てこい!ミーと…俺とデュエルしろぉぉぉ!!」

ジムは覇王城の門前にて叫んでいた、覇王…十代を救うデュエルをするために…。

 

ジムとオブライエン、そしてウェンは十代を探して各地を巡っていた…、その中覇王の話を「絶対防御将軍」ことバーガンディから聞き3人は旧覇王城へと訪れ、そこにいたコザッキーから覇王の所業を聞き怒りを抱く、そして町に戻ると既に覇王軍に破壊されバーガンディも消滅してしまった…。

 

怒りに燃えたジムは覇王城に突っ込む…そこにいたのは覇王の部下たる5人のモンスター達と覇王…変わり果てた十代の姿だった、一度は退散したジム達であったがジムは魂の友達である十代を正気に戻すため、覇王にデュエルを挑んだ!

 

『全員邪魔はするな…いいだろう受けて立つ』

 

感情の籠もっていない声で覇王は決闘を受け入れた…そこに元の十代の面影はなかった…

 

「十代…!君を闇の中から救いだしてみせる!!」

 

「ジム…!頼んだぞ…!」

 

《ジムさん!頑張って…!》

オブライエンとウェンは見守るしかなかった…

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…十代の闇はここまで…!」

 

ジム LP50

モンスター無し フィールド魔法 聖地の守護結界 手札0

 

 

覇王LP50

 

EーHEROダークガイア 攻撃力4400 手札0

 

 

十代とジムのデュエルは熾烈を究めた…ジムは十代を元に戻すために全力を尽くした…しかし十代は究極の融合カード「超融合」を発動ジムの切札「地球巨人ガイア・プレート」と「ヘルゲイナー」を融合し攻撃力4400を誇るダークガイアを召喚した…ジムにそれを防ぐ手立ては…無い…

 

 

『バトルだ…「ダークガイア」でダイレ…[乱入ペナルティ2000ポイント!!]…なんだと?』

トドメを刺そうとしたまさにその時…その場に似合わない機械音声が響き渡る…そしてソレは現れた…!

 

 

【GAaaaaaa!!!】

ジムと覇王の中間地点に現れたのは悪魔だった、その後ろには紫色の箱を被ったモンスターが召喚されている…。

 

悪魔LP4000→2000(乱入ペナルティ)

クリムゾンノヴァ 伏せ1 手札4

 

「な、なんだコイツは…!」

覇王のダークガイアに腰を抜かしていたオブライエンはさらに後ずさった…覇王から感じるのが圧倒的殺意だとすれば悪魔から感じるのは…「死」そのものだった…。

 

 

《あ…わ…》

(キュイ〜…!)

ウェンとペトルフィンは身を寄せあう…端末世界でも感じた事のない圧倒的恐怖…それはティエラとの戦い以来の事だった…

 

『貴様…何者だ?オレのデュエルに水を差すとは…覚悟はできているんだろうな…!!』

覇王は怒りの赤いオーラを纏う…その覇気は先程の倍以上になっていた…

 

【ハオう…コ…ロス…!Gaaaaa!!】

悪魔も威圧を以て覇王を睨み返す

 

「な、何なんだあのモンスターは…!?しかもアレは…あの闇は…!」

ジムはオリハルコンの瞳をもって乱入した悪魔を視る…その体は闇に覆われ伺い知る事はできない…

 

 

 

 

 

【Goaaaa!!】

[ドロー、リバースカード『方界合神』発動、フィールドの『暗黒方界神クリムゾンノヴァ』と手札の同名モンスター2体を融合、『暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ』を融合召喚!]

 

悪魔のフィールドが闇に包まれる…闇が集まりそして邪悪なる意思の化身たる神が現れる ATK4500

 

『攻撃力4500…「ダークガイア」を超えた…だと?』

 

「闇の化身…!こんなモンスターが…!」

覇王もジムも驚きを隠せない…

 

【Garrr!!】

[バトルフェイズ、『クリムゾンノヴァトリニティ』で『ダークガイア』を攻撃、モンスター効果発動、攻撃時相手のライフを半分にする]

 

『「なんだと!?」』

クリムゾンノヴァトリニティから紫色の光線が四方八方に放たれる

 

「うわああああ!?」

 

『ぐおぉぉぉぉ!?』

 

ジムLP50→25

 

覇王LP50→25

 

 

【シ…ネ…!】

クリムゾンノヴァトリニティの一撃が大地の悪魔の体を粉砕した…

 

『がああああ!!』

 

「十代!!!」

 

覇王LP 0

 

 

《なっ…覇王様が…》

 

《負けた…だと?》

覇王は吹き飛ばされ覇王城の城門に叩きつけられ意識を失った…

 

「馬鹿な…覇王を一撃で…ハッ!?」

ジムが気付くと邪神がこちらを向いている…

 

[「クリムゾンノヴァトリニティ」の効果、モンスターを破壊した時、もう一度攻撃できる]

 

「なっ…!?」

 

【Gaa…!】

 

[クリムゾンノヴァトリニティでダイレクトアタック、モンスター効果発動]

再び紫の光線がジムを撃ち抜く…

 

「ああああああああ!!」

 

ジムLP25→12

 

「がっ…あ…クレイジー…すぎる…アンタはいったい…?」

ジムは改めて瞳で悪魔の心を覗きこんだ…

 

 

 

 

 

 

「ここは…なんだ…?」

ジムが見たのは一面の闇の世界だった…十代の精神世界のように鏡も無く一面の闇が広がっている

 

「こんな世界見た事も…あれは…?」

ジムは闇の世界に一粒の光を見つける…手に取るとそれは…

 

「写真…!?この人は!」

そこに写っていたのは顔の見えない紫色の髪の女性だった…しかしジムにはすぐに思い当たった…悪魔の正体を…

 

「嘘だろ…なんでユーまで…!」

 

 

 

 

 

 

 

「ジム!逃げろ!逃げるんだー!!」

 

「ハッ…!」

ジムが意識を戻すと眼前に闇が迫っていた…

 

ジムLP0

 

悪魔 WIN…

 

 

 

 

「ぐっ…あ…カレ…ン」

 

(が…う…)

 

ジムはデュエルに敗北した…彼を庇うように前に出たカレンも消滅している…

 

「ジム…そんな…!」

 

《ジムさん!!》

ウェンがジムに駆け寄る…

 

「ウェン…オブライエン…十代を連れて…逃げろ!…あいつには…あの人には…勝てない…!彼は…ユ」

ジムは言葉を最後まで伝える事なくオリハルコンの瞳とデュエルディスクを残し消滅した…

 

「ジム!ジーム!!」

 

《ジムさん!…そんな…!》

 

 

 

 

【Gaaaaaooo!!】

悪魔は勝利を宣言するように咆哮をあげる…すると

 

《見事です新たな王よ…》

 

《今の戦い素晴らしいものでした…!》

 

《然り…》

 

《我らも…》

 

《あなたの部下にして頂きたい…!》

 

覇王に仕えていたモンスター、「ガーディアンバオウ」「スカルビショップ」「カオスソーサラー」「熟練の黒魔術師」「熟練の白魔導士」が悪魔に臣下の礼をとっている…覇王を降した悪魔に取り入ろうとしているのだろう…

 

【…】

悪魔は腕をあげる

 

『『『?』』』

 

【ジャマ…ダ…】

 

【ギシャアアア!!】

 

『『『ギャアアアアア!!?』』』

臣下の礼をとったモンスター達は上空からの蒼い炎に焼き尽くされた…その跡には骨すら残っていなかった…

 

《あ…ああ…!オブさん!逃げよ!早く十代さんを!!!》

 

「!…ああ!逃げるんだ!!!」

硬直していたオブライエンはウェンにより正気を取り戻した…本来なら1人で逃げてしまうところだが、あまりの恐怖に一周回って冷静になっていた…

 

「十代!しっかりしろ!十代!!」

 

「……」

十代は消滅こそしていないが気絶していた…オブライエンは素早く十代を回収しウェンの元に戻る

 

「ウェン!頼む!!」

 

《了解!全速力で逃げる〜!!!》

《キュイ〜!!!》

ウェンとオブライエン、十代を乗せたペトルフィンは全速力でその場から離れ隠し砦へと向かった…覇王城は蒼炎に包まれていた…。

 

 

 

 

 

「あれは…!」

 

「一歩遅かったか!」

 

「覇王の城が燃えてる…蒼い炎なんて…!」

 

「ん?アレーは…セニョール十代!セニョールオブライエンなノーね!!ピンクのイルカと何処かに向かってるノーネ!」

 

「あの方向は…フリードの隠し砦の方だ!」

 

「とにかくみんなと合流する!『サイバーエンド』!頼む!」

 

「『エクスプレスロイド』!お願い!早く皆にあの事を伝えないと!!」

 

「急ぐノーネ!」

 

 

破滅へのカウントダウンは…始まった…



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星の大戦〜悪魔の進撃〜

「ん?アレは…!アニキだ!アニキがオブライエンと一緒に帰ってきたザウルス!!」

 

「なんだって!?」

砦の見張りをしていた剣山は遠くからやってくるピンク色のイルカ、そして十代を視界に収めた…

 

「その後ろから…サイバーエンドとエクスプレスロイド…!?丸藤先輩とカイザー亮ザウルス!?なんであの人までいるドン!?」

 

しばらくしてオブライエン達が、その後カイザー達が砦に飛び込んできた…。

 

 

 

 

 

「ハアっ…ハアっ…み、水を…水をくれ…!」

 

砦に戻ってきたオブライエンは酷く取り乱していた…普段であれば冷静であるはずの彼が怯えている…それだけでも異常だった…。

 

「はい!お水よ!…オブライエン君…いったい何があったの…?」 

 

「あ、ありがとう…!」

 

明日香がオブライエンに水を渡す…今この場にいるのは万丈目、剣山、明日香、吹雪、翔、オブライエン、カイザー、エド、クロノス先生…そしてウェンとトフェニ…寝込んでいる翠と十代、消滅した遊海とジムを除けば全員が砦に集まっていた…。

 

「ハアっ…ハアっ…スゥ…、取り乱してすまない…しかしアレはあの恐怖は…!」

 

「オブライエン!ジムは…ジムはどうしたザウルス!一緒じゃないどん!?」

剣山がオブライエンに問いかける…

 

「追って事情は話すが…ジムは死んだ…恐ろしい悪魔によって…!」 

 

「そんな…!」

 

「オブライエン、話を聞かせてくれ…何があった…!」

 

「ああ…それが…」

 

 

そしてオブライエンは語り始める、覇王の噂を聞いた事…十代を追って旧覇王城にて覇王の所業を知った事、そして対面した覇王の正体が心の闇に呑まれた十代だった事…そしてジムが十代とデュエルし追い詰められ最終的に「超融合」でジムが倒されそうになった事…そして乱入した悪魔の事を…。

 

 

 

 

 

「悪魔だと…?それは精霊か?」

万丈目が尋ねる

 

「いいや、あんなモンスターは見た事がなかった…白いメッシュの入った黒髪…感情を映さない赤い眼、黒い肌…堕天使のような2対の黒い羽…鋭い爪…そしてその身に纏う圧倒的死の気配…幾度も死線を潜り抜けた俺が恐怖を感じる程の…うぐっ!」

 

そこまで話してオブライエンは口元を抑える…恐怖を思い出し吐き気が襲ってきたようだ…

 

「(遊海先生…!そんな…間に合わなかったか…!!)」

カイザーは一人拳を握りしめる…

 

《それですごい怖いモンスターを使ってきたの…確か「暗黒方界神」って言ってたような…》

ウェンが言葉を引き継いで補足する…

 

「方界…なんなんだそのモンスターは…?」

 

「聞いた事ないわね…」

吹雪も明日香も首を捻る…

 

「…『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』…!」

 

《そう!それ!そんな名前だった…翠!?身体は大丈夫なの!?》

 

寝込んでいた翠が壁を伝ってヨロヨロと歩いてきた…目の下には隈ができている

 

「みんなの声が聞こえたから起きてきたの…『クリムゾンノヴァ』は以前遊海さんが倒したモンスターよ…復讐心に駆られたある青年が魔物に呑み込まれた時に召喚したモンスター…確か戦いの後に封印されているはずよ…。」

 

「封印された邪神か…なんて恐ろしい話なんだ…!」

 

「ジムと十代は乱入した悪魔に敗北した…ジムとカレンは消滅し十代は目覚めない…恐らく覇王だけが消滅したんだろう…そして悪魔は覇王城を燃やし尽くした…蒼い炎によって、まるで聖書に出てくる煉獄のようだった…!」

 

「煉獄…罪を燃やす炎の世界…ありえるのか、そんな事…!」

吹雪が呟く…

 

「ありえるのだミスター吹雪…俺は見たんだ…!」

 

《みんな、私…心当たりがあるの…蒼い炎を使うモンスターに…!》

 

「本当!ウィンダちゃん?…!?その姿は…」

明日香が声をした方を見るとウィンダがいた…しかしその姿はいつもの人の姿では無くシャドールの人形の姿をとっていた…。

 

《ごめん明日香さん…この姿でないと身体が震えちゃって…》

そう言いながらもウィンダの人形の足は震えていた…

 

「ウィンダ…大丈夫?」

 

《うん…翠…大丈夫…》

そしてウィンダは語り始める…蒼焔を操るモンスターの正体を…

 

《蒼焔を操るモンスター…それは私達の世界、「DT世界」に住む精霊達の恐怖の象徴…世界を破滅させる者…その名前は…煉獄の死徒『インフェルノイド』…!》

 

「インフェル…ノイド…地獄の使徒…それにDT世界…?」

 

「ウィンダ、その事…もう少し詳しく聞かせてくれるかい?」

 

《ええ…少し長い話になりますが…聞いてください…!》 

 

 

 

 

 

 

私達の世界…DT世界には2体の神様がいました、1柱は創造の力を持つ「Sopia」、そして1柱は破壊の力を持つ「tierra」…その2柱が大昔に私達の世界を作りあげました、そのうちに2柱は大喧嘩をして「Sopia」が勝利を収め破壊と創造を司る神になりました、一方の「tierra」は神星樹という巨大な木に封印されました…。

 

そして長い長い時間を経て「Sopia」は復活しました、その時の世界は宇宙からの侵略生物や眠っていた魔神、そして全てを喰らい尽くす悪魔…そしてモンスターに感染する悪しきウィルスと原住民…私達の闘いで混沌としていました…。

それを憂いた「Sopia」が目覚め世界を「リセット」しようとしたんです…。

 

「リセット…?どういう事ッス?」

 

文字通りの事です、破壊の力で精霊を…生命を分解、消滅させ創造の力で自分の意に沿った新しい生命を作ろうとしたんです…私もそれで一度死んでしまいました…。

 

「ウィンダちゃん…それじゃあ…」

 

《はい…私も翠や遊海さんと似たような存在なんです、でもそれはいったん置いておきますね…》

 

原住民達は必死に神に抗いました…そしてついに神から創造の力と破滅の力を奪いとって「Sopia」を打倒したんです…そして世界に平和が訪れました、神は斃れ人の時代がやってきた…そう思っていたんです…。

 

 

 

「思っていた…?まだ終わっていなかったのか?」

万丈目が尋ねる

 

《ええ…ここから本当の恐怖が始まったんです…》

 

 

「Sopia」の打倒から数十年の時が経ちました、事の始まりは1つの異変でした…数十年前の戦争…大戦と呼びますね?それで倒れた英雄が闇の力を纏って復活し人々を襲い始めたんです…そこから新たな戦いが始まりました…。

 

創造の使者ソンプレスと破壊の使者ケルキオンは再び世界を救うために活動を始めました、ソンプレスは地脈の力を具象化させた竜達を誕生させました、ケルキオンはかつての友を救うために戦いを挑み…敗北し吸収されてしまいました…。

 

破壊の力を取り込んだ闇の英雄はその身を核として私達「シャドール」を作り出したんです、先の大戦で死した者達…その魂の一部はある者に囚われ神星樹へ侵攻するための兵器として使われたんです…。

 

「…文字通り『死者に鞭打つ』ような所業だな…それでその死者の魂を捕えていた『ある者』というのは?」

カイザーが苦々しく呟き、黒幕の正体を問う

 

《封印されていた破壊の神…「tierra」…全ての原因は神のせいだったんです》

 

「なっ…!その神様は封印されてたんじゃないんスか!?」

 

《かの神は封印されながら、ひたすらに待っていたんです…復活の時を…》

 

 

封印されていた「tierra」は「sopia」の敗北を期に再び地上の支配を目論んで暗躍を始めました…死した者のエネルギーを蓄え力を増し、手下を呼び出し自らを復活させる駒としたんです、その駒が「インフェルノイド」…蒼焔を操るモンスターの正体です…。

 

 

 

 

 

 

 

「そんなスケールの戦いが起きている世界があるなんて…」

 

「ボク達のいる世界は平和でよかったッス…」

 

「それで…その戦いの結末はどうなったんだドン?」

剣山がウィンダに尋ねる

 

《はい…結局、戦いの末に「tierra」は復活を遂げました…でも世界に選ばれた勇士…聖選士達の活躍で神は打ち倒され世界には平和が戻りました…そのおかげで私もウェンも…ここにいないアヤカさんもマスター達と共に歩めるんです…。》

ウィンダは話をそう締め括った…。

 

 

 

 

 

 

「とにかく倒すべき相手の情報は分かったが…亮、1つ聞いていいかい?」

 

「なんだ?」

吹雪がカイザーに問い掛ける

 

「なんでお前とエド君とクロノス先生までこの世界に…?」

 

「そういえばそうザウルス…」

 

「確か、あの場にはオレ達しかいなかったはずだが…」

 

「…巻き込まれた…」ボソッ

 

「「「えっ?」」」

 

「お前達の転移を離れた場所で見守っていたら、巻き込まれたんだ…!エドもクロノス先生も…」

カイザーは顔を背けつつ答えた…

 

「…すまなかった」

 

「ごめんなさいザウルス…」

思わず謝る二人なのであった…

 

 

「それよりもッス!!僕達、悪魔の正体…知ってるんス…!」

 

「翔君!?本当なの!?」

翠が聞き返す

 

「…本当だ、俺達は『暴走』する前の彼に会った…」

カイザーが答える…その瞳には悲しみの光があった…

 

「悪魔の正体…それはユ《兄貴〜!大変だ〜!!》むっ?」

カイザーの言葉を遮りイエローが飛び込んでくる

 

「今度はなんだイエロー!またあのデカブツが飛んできたか!?」

 

《ヤバイよ兄貴!!町が変な奴らに襲われてるんだよ〜!!》

 

「「「「なんだって!?」」」」 

 

 

 

「あれは…蒼い炎…!?」

 

「しまった…!悪魔がここにまで!!」

 

砦から見える町は蒼い炎と異形のモンスター達に攻め込まれていた…町の各場所から剣戟の音や爆発御が響いている…!

 

「大変だ!確かフリードやカイル達も戻ってきていたはずだぞ…!?」

町へ行った万丈目が皆に伝える

 

「そんな…!早く助けに行かないと!」

 

「待つんだ!あのモンスター達は危険た!オレ達が敵う相手じゃない…!」

オブライエンが静止するが…

 

「それでも…顔を知ってる人達を見捨てられないドン!!」

 

「行くぞみんな!明日香とクロノス先生と翠さんは残っていて下さい!避難してくる人の治療を!」

 

「わかったわ兄さん!」

 

「ぐぬぬ…せめてデッキがアレーば…!」

 

「私は行くわ!1人でも多くの人を救うのよ!!(これでいいですよね…遊海さん…!)」 

 

「わかりました…!行こう!!」

 

「「「「応ッ!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハァッ!!』

 

【…!!】

 

【…!】

 

フリードの一撃でゲイラ・ガイル、ダーク・ガネックスが斬り捨てられる

 

『ハァ…ハァ…!何なんだコイツらは!こんな不気味なモンスター共見た事ないぞ!しかも…!』

 

【!!】

 

【キィ!】

 

【…!】

 

『キリが無い!!ハァッ!!ヤァッ!』

 

【!?】

 

【キィ!?】

 

【…!?】

 

襲いかかってきたヴァルカン・ドラグニー、ヴィジャム、デューザが切り裂かれる…しかし…

 

『なんだ…!?身体が…ウゴカ…ない…!!』

 

突如フリードの身体が石のように動かなくなっていく…

 

【キィキィ!!】

 

『しまった…!コイツの能力か…!?』

フリードは自身の身体に取り憑くヴィジャムに気付いた、ヴィジャムは戦闘で破壊されず攻撃モンスターの効果、攻撃をできなくなる効果をもっている…。

 

《フリード隊長!ああ…そんな…!?》

 

「フリード隊長!しっかりして…!」

 

『ジーナ!カイル!逃げるんだ!!早く!!』

 

「でも隊長が!!」

 

『カイル!君を死なせてしまったら私はラーズに顔向けできない…!!だから早…』

 

【ギリリリリ…!!】

インディオラ・デス・ボルトが現れエネルギーを溜め始める…

 

『マズイ…!逃げろぉぉ!!』

 

「隊長ぉぉ!!」

 

 

 

 

 

「『サイバー・エンド・ドラゴン』!エターナル・エヴォリューション・バースト!!」

 

《ギシュアア!!》

ビームが放たれる直前、機械竜の息吹がインディオラ・デス・ボルトを飲み込んだ…

 

「大丈夫ですかフリードさん!『サイクロン』!!」

 

【キィ〜!?】

 

『あなたは翠殿!どうしてここに!?』

 

フリードを助けたのはカイザーと翠だった、翠はヴィジャムを破壊しフリードを開放する

 

「皆さんを助けに来たんです!早く砦に逃げてください!ジーナちゃんもカイル君も…早く!!」

 

《翠お姉さん…ありがとう!!》

 

「ありがとうございます!」

 

『すまなかった…私は君達を囮にしたのに…!!』

 

「大丈夫です!あなたの判断は正しいものだった!だから皆生き延びる事ができたんです!」

 

『翠殿…すまない…!』

 

「時間は稼ぎます…早く!」

 

『わかった!』

フリードはジーナとカイルを連れて砦へと向かった。

 

 

 

 

「翠さん!次は!」

 

「亮君!片っ端からモンスターを撃ち落として!でも卵型の『ヴィジャム』は戦闘破壊できないから気をつけて!」

 

「わかりました!一掃します!いでよ!『サイバー・エルタニン』!一掃せよ!『星座の包囲網』!!」

巨大な竜の顔が召喚されピットで無数のモンスターを撃ち落とした…

 

「流石サイバー流…!殲滅力はすごいわね!」

 

「ありがとうございます!さぁ次に…」

 

 

ズドーン!!

 

「「うわぁぁ!!?」」

近くで爆発が起き叫び声が響く…

 

「今の声は…!」

 

「吹雪君と万丈目君の声!?亮君いきましょう!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

「吹雪!無事…しまった!来てしまったか…!」

 

「ああ…!そんな…!!」

 

 

「ぐ…あ…!」

 

「亮…!逃…げ…」

 

翠とカイザーがたどり着く…そこでは吹雪と万丈目が消滅し…そして…

 

「くっ…来るな…来るなザウルス…!!」

 

【Grrrrr…!】

 

瓦礫に挟まれた剣山が黒き悪魔に追い詰められる姿があった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『XYZードラゴン・キャノン』!行けー!!」

 

『「真紅眼」!ダークメガフレア!!』

《グオォォッ!》

戦車の砲撃と黒き竜の炎弾が方界モンスターを蹴散らしていく…

 

 

〈ありがとうございます!〉

 

『早く行きなさい!お嬢さん!砦に行くんだ!』

 

〈はい!〉

 

 

 

 

 

『はぁ…はぁ…もうこの辺りに人はいないだろう…万丈目君!次の場所へ!』

 

「わかりました!いきま…うわぁ!?」

 

ズガーン!

 

移動しようとした二人の目の前で蒼炎が爆発する…そして炎が黒く染まり…奴が現れた…

 

 

【Gooaaaaaa!!】

 

『黒い悪魔…!』

 

「コイツが…!なんて恐ろしいオーラなんだ…!」

 

二人の前に現れたのは炎をかき消すほどの闇のオーラを持つ…まさに「悪魔」の姿だった…

 

【Grrr…Gaaaaa!!】

悪魔が咆哮をあげる…その声は全ての知性体に恐怖を刻むものだった…

 

「こんな化物…ありかよ…!」

 

『三十六計と行きたいが…ダメそうだね…!』

 

【…!】

 

【…!!】

 

 

二人の周りは既に方界モンスター…そして蒼い炎を纏うインフェルノイドに包囲されていた…!

 

【デュ…エル…!】

 

[デュエルモード起動…デッキセットok…]

 

 

『おいおい…既に殺る気満々かい…?』

 

「それでも…生き残るためにはやるしかありません!吹雪さん!」

 

『そうだね…!十代君も遊海先生も命懸けで戦ったんだ!僕達だって…やれるはずだ!いくぞ万丈目君!』

 

「はい!吹雪さん!アカデミアのサンダーとプリンスの力を見せてやりましよう!!」

 

《万丈目の兄貴〜!ダメよ〜!?アイツはヤバイわ〜!?》

 

「うるさいイエロー!男にはやらなきゃいけない時がある!!」

 

《兄貴…》

 

『いくぞ!黒き悪魔よ!!』

 

 

 

 

「『【デュエル!/Duel…!】』」

 

 

 

 

吹雪&万丈目LP8000

 

悪魔LP8000

 

 

 

順番

吹雪→悪魔→万丈目→悪魔

 

2回目の悪魔のターンから攻撃可能

 

 

 

 

 

 

 

『僕のターン!ドロー!』

『手札から「黒竜の雛」を召喚!』

卵から紅い目を覗かせる竜が現れる ATK800

 

『「雛」の効果!このカードを生贄に捧げ手札から…いでよ「真紅眼の黒竜」!!』

卵のカラが割れ、黒き伝説の竜が現れる ATK2400

 

『そして先制攻撃だ!魔法カード「黒炎弾」!レッドアイズの攻撃力分のダメージを喰らえぇぇっ!!』

炎弾が悪魔に直撃する

 

【Guuuu…!!】

 

悪魔LP8000→5600

 

『カードを伏せてターンエンド!…決まった!』

 

吹雪&万丈目 LP8000  

レッドアイズ 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

「流石です!吹雪さん!」

 

『ああ…しかしそんなに効いてないみたいだ…来るぞ!』

 

 

 

 

 

 

【Gaaaa…オオォォアッ!!】

[ドロー]

 

【Gaa…!】

[手札の『方界業』『方界胤ヴィジャム』『方界合神』を公開し手札の『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』を特殊召喚]

紫色のキューブを被ったモンスターが現れる ATK3000

 

 

『あれが暗黒方界神…!なんて禍々しい…!』

 

「どうやら言葉はほとんど喋れないみたいだが…プレイはできるみたいだ…!」

 

【Guu…!Gaaa!】

[永続魔法『方界業』を発動、デッキから2枚の『ヴィジャム』を墓地に送り『クリムゾンノヴァ』の攻撃力を1600アップ、さらに手札から『ヴィジャム』を守備表示召喚]

卵型の悪魔が現れる DEF0

 

炎のオーラが邪神を強化する ATK3000→4600

 

【…!】

[カードを伏せてエンドフェイズ、『クリムゾンノヴァ』効果発動、お互いに3000ダメージを受ける]

 

『「何!?ぐああああ!」』

クリムゾンノヴァが光線を乱射し周囲を吹き飛ばす

 

吹雪&万丈目LP8000→5000

 

悪魔LP5600→2600

 

 

悪魔LP2600

クリムゾンノヴァ ヴィジャム 伏せ1 業 手札2

 

 

 

 

 

 

「アイツ…見境無しかよ!?自分まで傷ついてまでダメージを」

 

『しかしライフでは僕達が優位!攻めるんだ万丈目君!』

 

「わかりました!!」

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

 

【Guooo…!】

[手札の『増殖するG』の効果発動、手札から捨て相手が特殊召喚するたびに1ドロー]

 

「関係あるか!魔法カード『前線基地』を発動!手札から『Yードラゴンヘッド』を特殊召喚!」

赤い翼竜型の機械が現れる ATK1500

 

[1ドロー]

 

「さらに『Xーヘッドキャノン』を召喚!」

キャノン砲を背負った機械兵が現れる ATK1800

 

「さらに『天使の施し』を発動!三枚引いて…2枚捨てる!」

 

捨てたカード

Zーメタルキャタピラー

おジャマブラック

 

《うわ〜ん!兄貴に捨てられた〜!》

 

「そんな事言ってる場合か!手札から『死者蘇生』を発動!甦れ!『Zーメタル・キャタピラー』!」

単眼のキャタピラーロボットが現れる ATK1500

 

[1ドロー]

 

「そしていくぞ…『X、Y、Z』の三体を除外し…『XYZードラゴン・キャノン』を特殊召喚!」

三体の機械が合体し重厚なる戦車が現れる ATK2800

 

[1ドロー]

 

「『XYZ』の効果!手札の『ドラゴンフライ』を捨てて砕け散れ『クリムゾンノヴァ』!」

戦車の砲撃が悪魔のフィールドを包みこむ…

 

 

「よし!邪神撃破だ!…なんだと?」

 

煙が晴れるとクリムゾンノヴァはそこに存在していた…

 

[『クリムゾンノヴァ』の効果、このカードは攻撃力3000以下のモンスター効果では破壊されない]

 

「くっ…しまった…!カードを伏せてターンエンド!」

 

万丈目&吹雪LP5000

XYZ 前線基地 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

『攻めきれなかったか…!』

 

「すみません!(でも大丈夫です!伏せは『グレイモヤ』…攻撃がきても返り討ちです!)」

 

『(わかった!ありがとう万丈目君!)』

 

 

 

 

 

【Gooaaaaaaa!!!】

悪魔を闇が包みこむ…

[ドロー、リバースカード『方界合神』、フィールド・手札の『クリムゾンノヴァ』3体を融合、『暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ』を融合召喚]

暗黒の闇がフィールドに集い…伝説の決闘者すら追い詰めた邪神が降臨する ATK4500

 

「なっ…!なんだよこのバケモノは…!」

 

『同名モンスターの3体融合…!これは…!!』

 

【Gaaaaaaaaoo!!】

[バトル、『トリニティ』で『XYZ』を攻撃、攻撃宣言時に効果発動…相手ライフを半分にする]

 

『何っ!?』

 

「チイッ!リバースカード『万能地雷グレイモヤ』!吹き飛べ!!」

トリニティの足元で地雷が爆発する…しかし爆炎の中から光線が放たれ二人に直撃する

 

「何っ!?ぐああああ!!」

 

吹雪&万丈目LP5000→2500

 

『何故破壊されていない…!うぐあああ!!』

戦車が光線により爆発四散する

 

吹雪&万丈目LP2500→800

 

[『クリムゾンノヴァトリニティ』の効果、このカードはカード効果の対象にならず、カード効果では破壊されない…さらに相手モンスターを破壊した事により2回目の攻撃を行います]

 

『な…んだっ…て?』

 

「吹雪先輩!サンダー!無事…あ…わわわ…!!?」

 

「け…剣山…逃げ…」

 

【GAaaaaaa!】

[『レッドアイズ』を攻撃、効果発動…相手ライフを半分にする]

 

再び光線が四方八方に発射される

 

『「ぐああァァァ!!」』

 

「うわぁぁ!?ガッ…!」

建物に直撃した光線は建物を破壊し、剣山を生き埋めにした…

 

吹雪&万丈目LP800→400

 

「剣…山…!!」

 

「う…ぐっ…動けないザウルス…!」

 

【キエ…サレ…!】

そして無情なる闇の光がレッドアイズ…そして倒れた吹雪と万丈目を飲み込んだ…

 

吹雪&万丈目LP0

 

悪魔 WIN…

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな…馬鹿な…ぐっ…」

 

『ガッ…悪魔…お前は…いったい…?』

吹雪と万丈目は最後の一撃で吹き飛ばされ…身体からは金色の粒子が漏れ出していた…

 

【Grrrr…】

悪魔は二人に興味を失ったのか倒れ伏した二人の間を通り抜け剣山の元に向かう…その刹那、吹雪は闇に覆われた悪魔の首元に光るモノを見た…それは…

 

『(あれは…銀色の…カルトゥーシュ…?何処かで…見たような…)』

 

 

 

 

 

 

 

 

『白野さん!それなんですか?珍しいネックレスですね…?』

 

「ああ、以前翠とエジプトに旅行に行ってね!その時に作ったんだ!俺は銀色、翠は金色でお互いの名前を刻んであるんだ!吹雪君も将来作ってみたらどうだ?」

 

『良さそうですね!…今度から落とし文句に使ってみるか…?』

 

「アハハ…それはやめといた方がいいんじゃないか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『嘘…だろ?そんな…何故…?ぐうっ!』

 

 

「吹雪!無事…しまった!来てしまったか…!」

 

「ああ…そんな!」

 

 

「亮…逃げ…ろ…あの人は…」

そこで吹雪の意識は闇に飲み込まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

翠Side

 

 

 

「剣山君!!生徒に近づくな化物ぉぉぉ!!!」

目の前で吹雪君と万丈目君の消滅を見てしまった私は剣山君を助けるために精霊正装を着て悪魔に向かって飛び出した!

 

 

「翠さん!ダメだ!あなたは…()()()()はその人と戦ってはダメだ!!」

後ろで亮君が何かを叫んでいる…でも気にしている暇は…無い

 

〈切り裂け!「影依の影糸」!〉

私は両手から影糸をだして悪魔に切りつける

 

【Gya!?】

 

〈今よ!ウィンダ!吹き飛ばして!!〉

 

《了解!ウィンド・スパイラル!!》

ウィンダの魔法が悪魔ごと周囲のモンスターを壁に叩きつける

 

〈剣山君!大丈夫!?〉

 

「翠さん…俺は大丈夫ザウルス…それより吹雪先輩とサンダーが…!!」

 

〈…2人は立派にデュエリストの誇りを果たしたわ…!剣山君あなたはすぐ…キャ!!〉

 

【ガアアァァァ!!】

悪魔がその手に蒼い焔の剣を持ち翠を斬りつける、翠は咄嗟に飛び退き、傷を最小限に抑えた…

 

〈うぐぅ…痛い…!でも今は…!切り裂け「影糸」!!〉

 

【ギャアアアアアア!!?】カラーン

翠の放った影糸の一撃は悪魔の身体を深く切り裂き、その身を貫いた…

 

〈どう?少しは効いたかし…えっ…?〉

様子を窺っていた翠は悪魔の足元…攻撃で落ちた銀色の板に釘付けになる…

 

〈えっ…そんな…なんで…?〉

 

 

 

 

 

《ふふっ!似合ってますよ!マスター!》

 

《うん!翠も似合ってる!》

 

「ありがとうウィンダ!」

 

「アヤカもありがとう!」

 

「思えば『メガロック・ドラゴン』以来かな?2人でお揃い?の物を持つなんて…」

 

「そうですね遊海さん!なんだか嬉しいです!」

 

「俺もだよ翠!さぁ、気合を入れて記憶の世界に突撃だ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…遊海…さん…?」

 



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蹂躙〜望まぬ悲劇〜

「しまった…!気付いてしまったか…!」

 

サイバーエンドで周囲のモンスターを蹴散らしていたカイザーは翠の異変に気が付く、悪魔の正体…それが白波 遊海…自分の夫である事に気づいてしまったようだ…

 

「クソッ…翠さん!その人は既に遊海さんでは…!」

 

 

【(オレは…もうスコシで俺じゃナクナる…ソウなれば…ドウなるかワカらない…)】

 

 

「離れてください!翠さん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…嘘…ですよね…?どうしてそんな恰好してるんですか?でも…無事だったんですね!よかった…!」

 

翠の変身が解け遊海…否、悪魔に向かってフラフラと歩いていく…

 

「帰りましょう…遊海さん…みんな…待って…」

 

【Gooaaaa!!!】ザンッ

 

「あ…ガフ…」

 

《翠!!》

 

「翠さん…!!ジャマだ!!退けぇぇぇっ!!!」

《ギシュアア!!》 

 

【【【…!!…!】】】

 

 

悪魔は容赦なく翠の身体を切り裂いた…カイザーは即座に翠の元に向かおうとするが多数のモンスター達に阻まれる…

 

「痛い…遊海さ…どうして…!」

 

【Guuaaaaa!!】

 

《やらせない!!ウィンド・ストー…》

 

【ギガガガ…!!】

 

《キャアアアア!!?あ…ミド…リ…逃げ…て…!》

 

翠を守ろうとしたウィンダにバスター・ガンダイルの雷撃が直撃し行動不能になる…

 

【Grrrr…!!】

 

「あっ…ぐ…カハッ…!!」

 

悪魔は翠の身体を持ち上げ、首を絞めつける…その力は強く、爪が食い込み首から血が流れ始める…

 

「遊海…正気…戻って…!!ぐっ…あ…!」

 

【Guuuu…!!】 

 

「あ…ああ…(ダメ…意識…が…)」

遊海と翠は特典により不死の肉体を持っている…しかし普通の人間同様怪我はする、このままなら翠が絞め落とされるか…首が亡き別れになるだろう…

 

「翠さん!『サイバーエンド』!エターナルエヴォリューションバース…」

 

【Goooo!!】

 

「なっ…!?」

悪魔は射線に翠を被せる、カイザーに手出しは…できない…

 

「あっ…かっ…(遊海さん…やだ…こんな再会の仕方…嫌だよ…!助け…て…)」

 

「やめるザウルス!!うおおお!!」

 

【Gyeiiii…!!】

 

「カッ…ゲホッ!ゲホッ!!剣…山…」

 

瓦礫から抜け出した剣山がタックルし悪魔を弾き飛ばす

 

「恐竜さんパワーを舐めるなドン!!いくら遊海先生でも翠さんに手をあげるなら容赦しないドン!!来い!『超伝導恐獣』!!」

《ガアアアッ!!》

 

電気を纏う恐竜が召喚される

 

「行け〜!!遊海先生にお仕置きだドン!」

《ゴアアァァァ!!》

 

恐獣が悪魔に向かい刃の如き顎で襲いかかる…!

 

【GAAAAAAA!!!】

 

【ギシャアアアアアア!!】

 

 

《ガアアァァ!?》

 

「うわあああああ!?」

 

「なっ…!?『サイバー・バリア』!俺達を守れ!!」

 

襲いかかった恐獣は蒼い焔の洪水に飲み込まれ破壊される…すんでのところでカイザーは翠達を防御する… 

 

【ギシャアアア!!】

 

「『インフェルノイド・ネヘモス』…!」

 

「デカすぎる…ザウルス!」

 

「くっ…!」

 

生き残った翠達を見下ろすモノ…それはインフェルノイドの最大戦力、星座の戦士すら返り討ちにする焔の悪魔ネヘモスの姿だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

【キシャアアアア!】

 

【スベテ…ノミコメ…破壊のホムラ…!!】

 

悪魔によりネヘモスに再び炎が集まっていく…

 

「マズイドン!次にあの炎が来たら…!」

 

「防ぎきれない…!」

 

「遊海さん!もうヤメ…コフッ…!」

 

「「翠さん!!」」

 

翠も瀕死の重症、彼らを守る壁も…既に無い…

 

「ここまでか…!」

 

「遊海さん…ごめん…なさい…」

翠は落ちていたカルトゥーシュを拾う…遊海との思い出の証…それを持って翠は生徒達の前に立つ…

 

「翠さん!何を!?」

 

〈亮君…私が攻撃を防ぐ…わ、だから…耐えて…!〉

翠はその身に青白い龍の鎧を纏う…しかしすぐに赤く染まっていく…

 

「翠さん!無茶だ!そんな身体では…!」

 

〈無茶でも…あなた達だけは…守って…みせる!!これ以上遊海さんに…手は…汚させない…!!〉

翠は氷の壁を展開する…

 

【ギシュアアアアアア!!!】 

 

全てを灰燼に帰す炎の洪水が4人に迫る…氷の壁は解け…炎が翠の体を焦がしていく…!

 

〈あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"…!!〉

 

「「翠さん!!」

 

「あなた達だけは…!あなた達だけはぁぁぁ!!」

 

「(遊海さん…!あなたの勇気…少しだけ…貸してください…!!)」

翠は銀色のカルトゥーシュを握りしめる、痛みに耐えるように…苦しみを我慢するように…!

 

「負けて…たまるかああああ!!!」

翠は全ての力を開放し洪水を防ぎ続ける…!

 

【ギシュアアアアアア!!】

 

「あっ…」

炎の洪水が勢いを増す…それは呆気無く4人を飲み込んだ…

 

 

 

 

「ごめんなさい…遊海…さん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰だ…

 

 

 

 

 

 

 

ー声が聞こえる…ずっと聞きたかった、あの人の声が…

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の愛する者を…翠を傷つける者は…何人たりとも…許さない…!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズオッ!!バシュン!!

 

 

【Gaa…?】

 

 

4人を飲み込んだ洪水が掻き消える…圧倒的な力で炎を吹き飛ばしたのだ…

 

 

 

 

 

 

 

『貴様が誰かは知らん…しかし…翠を傷つけるなら容赦はしない…!』

 

 

 

「えっ…?」

 

翠は自分の目を疑った…自分の前に立つ人影…それは…

 

 

『我が魂を標に次元を超えて顕現せよ!…「アポクリフォート・キラー」!!』

 

光が立ち昇り空間に穴を開ける…そして…

 

 

【次元航行成功…目標地点到達完了!アヤカ、フレア、顕現します!】

 

【キュアアアア!!】

 

次元の壁を超えてアポクリフォート・キラー、ラーの翼神竜が顕現する!

 

【なんか…身体が透けてますけど!?大丈夫ですかマスター!?】

 

『知らん…とにかく、敵を殲滅せよ!アヤカ!フレア!!』

 

白波 遊海の姿だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『殲滅対象ロック…「インフェルノイド」「方界」モンスターを選択!全て撃墜せよ!』

 

【了解です!全て撃墜します!拡散形デストロイ・ビーム!!】

 

キラーから放たれる拡散光線が敵のモンスターを殲滅していく… 

 

 

『フレア!「クリムゾンノヴァ」を押さえろ!!』

 

【キュアアアア!!】

《了解です!ゴッドフェニックス!!》

 

神の一撃がクリムゾンノヴァを殲滅する…

 

【ギシュアアアアアア!!】

 

【なっ!?ネヘモス!なんでお前が!でも特殊召喚モンスターが私に勝てると思わない事です!デストロイ・キャノン!!】

 

【ギシュ!?】

襲いかかったネヘモスをキラーの光線が打ち払う

 

 

 

 

『異形の悪魔!去るならば去れ!ここでは貴様に勝ち目はないぞ!』

 

 

 

 

【gulllaaaa…!!】バサッ

 

悪魔は戦況を不利とみると飛び去った…残っていたモンスター達も追従し…跡には燃え尽きた町が残っていた…。

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…遊海さん!!」

戦いが終わった後、翠は遊海に飛び付いた…が

 

『翠!ダメだ!俺は…』

 

「遊海さ…あぐっ!?いっつう…」

翠は遊海の身体を通り抜け倒れ込む…

 

『実体がないんだ…言うのが遅かったか…』

 

「遊海先生…あなたは…?」

 

『ああ、カイザー亮()()()()()()…というかここは何処だ?暗黒界のいる異世界か?』

 

「遊海さん…あなたはいったい…?」

 

『俺はカルトゥーシュに宿っていた残留思念だ、状況を教えてくれないか…?いったい何があった?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…みんなすまなかった…まさか本体がそんな事になっているとは…』

 

隠し砦にて翠から異世界での出来事、カイザーから悪魔化した自分の事を聞いた遊海は土下座していた…。

 

 

「遊海先生が悪いんじゃないッス!ユベルの呪いのせいで…!」

 

「そうザウルス!俺達は遊海先生にたくさん守ってもらったんだドン!…でもあの悪魔は怖かったザウルス…」

 

『本体も…ユウスケすら浸食する呪い…、それでも全て俺の油断のせいだ!なんでデスベルト着けたんだバカヤロー…』

 

「遊海さん…、あなたの記憶はどこまで…?」

傷を治療しながら翠が問い掛ける

 

『う〜ん、ジェネックス終盤までかな…DDに殺されそうになった位の記憶しか俺は持ってない…しかし俺があんな化物になってるとは…十代に謝らないとな、辛いモノを見せちまった…』

 

「セニョール遊海、十代ボーイはまだ目を覚まさないノーネ…」

 

『そうですか…なら後で起こしますよ』

 

「遊海先生…」

 

『明日香…すまない、俺のせいで吹雪は…』

 

「大丈夫です…万丈目君も兄さんも覚悟の上で戦ったはずですから…」

 

 

「遊海さん…」

 

『翠…ごめんな、普段の俺ならもっと上手くやったはずなのに…もしかしたら呪いのせいで考えが誘導されてたのかもしれないな…異世界に転移する時にアヤカを置いていったり、アヤカを召喚しなかったり…普段の俺なら考えられない…!』

 

「遊海さん…でもどうやってアヤカちゃんを呼び出したんですか?」

 

『ん?俺の思念を道標に元の世界のアヤカに呼びかけたのさ、そしたら丁度フレアもアヤカを迎えに行ってて同時に召喚できたんだ』

 

《マスター…申し訳ありません、もう少し早く座標が判れば…》

 

『アヤカ、しょうがないさ…まったく本体の俺の馬鹿…!!…ジジッ…』

みんなと話していた遊海の姿がブレ始める…

 

「遊海プロ!姿が!?」

 

『ああ…時間が無いな…まったく本体が強すぎて力を使い…過ぎちまった…翠、カルトゥーシュを十代の所に持っていってくれ…ねぼすけを叩き起こす…!』

 

「はい…!」

 

 

 

 

 

 

 

翠と遊海は十代の休む部屋を訪れる…

 

『翠…カルトゥーシュを十代の胸の辺りに置いて…くれ…』

 

「はい…、遊海さん…もう終わりなんですか…?」

 

『…ああ、十代を目覚めさせたらこの俺の力は尽きる…後はまかせた…翠、そしてすまなかった…悪魔化しているとはいえ俺はお前を傷つけて…』

 

「遊海さん大丈夫です!身体の傷は特典で治りますから…でも心は…痛いです…」

 

『翠…ちょっと下向いてくれるか?』

 

「?はい…?」

 

『…!』

 

「あっ…!」

姿の無い遊海は翠の額に口づけをする…感覚は無かったが翠は魂でそれを感じ取った…

 

『本体なら恥ずかしくてできないだろうからな…翠、あとは遠慮無く俺をぶっ飛ばせ!でも油断はするな?腐っても俺だ、どんなデッキを使うかわからん…!』

 

「はい…!」

 

『じゃあな…翠…』

そういうと遊海の思念はカルトゥーシュに吸い込まれていった…。

 

 

「遊海さんの馬鹿…!絶対にガツンとやりますからね…?」

翠は静かに涙を流した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(大いなる力には責任が伴う…キミは勝てないんだ!私にも!コブラにも…!)

 

 

(お前のデュエルは軽すぎる!貴様のように何も背負わず戦う者…楽しさだけで戦う者はその楽しさがきえた時、立ち直る術をもってはいない!)

 

 

(ぐああああ!!やめてくれぇぇぇ!!)

 

 

 

 

 

「遊海先生…みんな…俺は…もう…」

十代は心の闇の…絶望の底にいた、救うはずの憧れを救えず…親友も死んだ…十代の心は深く閉ざされていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おう十代!暗い顔してどうしたんだ?いつもの元気印はどうしたんだ!!』

 

明るい声が響き渡る…それは…

 

 

 

「遊海…先生…」

光を纏う遊海の姿だった…

 

 

『十代、お前にはこんな闇は似合わない!お前に似合うのはこういう…やつだ〜!!』

遊海は光を開放する…そして…

 

「ここは…宇宙…?」

 

暗く鏡に塞がれた空間は星の輝く優しい世界へと変化をとげた…

 

 

『十代!お前には無限大の可能性がある!たった一度や二度の失敗がどうした?人は失敗する生き物なんだ…完璧な奴なんていやしない!』

 

「完璧な人なんていない…」

 

『十代!さっさと目を覚ませ!みんながお前を待っている!』

 

《そうだ!マイフレンド十代!お前には闇の衣はもう必要ないんだ!》

 

「ジム…俺は…」

 

『さぁ行け十代!ヨハンは死んでない!まだ失った者も取り戻せる!試練を乗り越えて至るんだ!正しき闇の覇王に!!』

 

十代の身体が浮きあがる…

 

『じゃあな十代、「俺」を…頼む!!』

 

「先生…はい!!」

 

『…グッ!』グッドサイン

 

 

そして十代は闇から脱出した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生…約束を果たします…!翠さんにこれ以上あなたの堕ちた姿を見せないように…!!」



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機械竜の討伐〜本能の獣〜

久しぶりの投稿ですいません!FGOのイベントを駆け抜けてました!!


「…おれ…は…?」

 

眠っていた十代は目を覚ます、長い悪夢はようやく終わったのだ…。

 

「十代、目が覚めたか…」

 

「オブライエン…俺は何を…?」

十代が目覚めるとベッド脇にはオブライエンが座っていた…

 

「何があったか覚えているか?」

 

「何が…あったか?…ブロンとデュエルして…っつ!?」

頭痛と共に十代の記憶が蘇り始める…

 

 

 

 

「うわああああ!!」

 

《ヨハンとかいう奴は…死んだよ!》

 

ブロンとの決闘の末…遊海が消滅しヨハンも死んだと言われた事…

 

 

 

「アニキは身勝手過ぎるんだ!バカヤロー!!」

 

翔に失望され…見放された事…

 

 

 

『我が名は覇王…この世を支配する者…!』

 

心の闇に飲み込まれた事…

 

 

 

《うぎゃァァ!?》

 

『ガッ…なんで…こんな…』

 

 

『ついに完成した…これが「超融合」…!』 

 

数多の命を犠牲に…『超融合』を完成させた事…

 

 

 

 

 

「十代!マイフレンド戻って来い!!」

 

『心の闇が作りだした…最強にして最凶・最恐の力の象徴!究極の力を解き放て!『超融合』!!」

 

ジムとデュエルして…

 

 

 

 

【GAaaaaaa!!!】

 

黒い…悪魔…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…ああ!俺は…俺はなんて事を…!?」

 

 

「…」

 

「オブライエン…ジム…ジムは!?」

 

「…ここだ…」

オブライエンは砕け散った破片…オリハルコンの瞳の成れの果てを見せる…

 

「そんな…!ジム…俺の…俺のせいで…!!」

 

「勘違いするな十代…ジムはお前に倒されたんじゃない…」

 

「えっ…?」シャラン

十代は起き上がりオブライエンを見る、それと共に胸に置かれたカルトゥーシュが布団の上に落ちる

 

「これは…」

 

 

 

 

《十代、お前には闇の衣は必要ないんだ…》

 

 

『さぁ行け!十代!みんなが待っている!』

 

 

 

 

「遊海…先生…?」

 

「状況はとても悪い…特にお前にとってはな…」

 

「オブライエン…?いったい何が…」

 

「それが…」

オブライエンが語ろうとする…しかし

 

「オブライエン!大変ッス!お兄さんが…アニキ!目が覚めたんッスね…!!」

翔が部屋へと駆け込んでくる、そして十代が目覚めたのを見て目を潤ませる…

 

 

「翔!!ごめん…俺…!」

 

「アニキ…ボクこそごめんなさいッス!!あの時のボクはどうかしてたんす!!」

 

「話は後だ!翔、何があった!」

 

「そうだった!?お兄さんが悪魔を…遊海先生を倒しに行っちゃったんス!!!」

 

「なんだって!?」

 

「翔、オブライエン…?遊海先生を倒すって…どういう事なんだよ…!?」

十代は突然の言葉の意味がわからずにいる…

 

「十代、遊海プロは消滅していなかった…しかしその身は伝説の決闘者では無く、全てを壊す…悪魔になってしまったんだ…!!」

 

「えっ…何が…何があったんだよ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「亮…よかったのか?」

 

「ああ…背負うのはオレだけで充分だ…」

カイザーとエドはサイバー・エンド・ドラゴンの背中に乗り悪魔の元に向かっていた…

 

「まさかあの激戦の中、悪魔…遊海さんに発信機をつけるなんて…」

 

「たまたま持っていた物が役にたった…それだけだ…」

 

 

 

 

「(遊海先生…)」

 

 

【カイザー亮…オレは可能な限リコノ『悪魔』ヲ押えル、モシ…暴走シたら…介錯を…頼厶…!俺ハデュエルいガイでは死ねないカラな、そレに…翠ニ…この姿ヲ…見られタク…ナい…!】

 

「(先生、今…あなたを倒しにいきます…!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生がユベルの呪いに…!?」

 

「ええ…遊海さんは、ユベルの呪いでその姿を悪魔のような姿に変えられてしまった、翔君達が会った時はまだ意識があったらしいわ…でも今は…」

 

「…全てを破壊する悪魔へと変貌してしまった、しかも決闘者としての本能…力をそのままに…!」

 

「そんな…!!」

回復した十代は翠、そしてオブライエンから遊海に関する状況を聞いていた…。

 

「何か…何か方法は…、元に戻す方法はないのかよ!?例えば俺みたいにデュエルで倒せば…!」

 

《十代、それは無理なんです…》

 

「アヤカ!?どうして…!」

 

《私が悪魔と遭遇した時、あの悪魔からマスターの気配を感じませんでした…実を言うと私は最初アレをマスターと認識できなかったんです…、あの悪魔の魂はマスターの魂とは別物、救う以前に…倒してもマスターが戻ってくるかどうかも…》

 

「そんな…!」

アヤカは冷静に分析した事を告げる…その声色は悲しみを我慢しているようだった…。

 

 

「とにかく…亮君を追わないと!彼でも今の遊海さんには敵わないかもしれない…!」

 

《場所は捕捉してます!町はずれの旧収容所…そこに悪魔の反応があります!》

 

「ありがとうアヤカちゃん!行くわよ!お願いウィンダ!」

 

《了解!超特急でいくわ!》

 

「翠さん…俺も連れて行ってくれ!遊海先生がそんな事になってるのに…じっとしてられない!」

 

「僕も行くッス!お兄さんが心配なんッス!」

 

「…わかったわ、ウェン!2人をお願い!」

 

《わかった!》

 

「オレは砦に残る、逃げてきた人達を守らなければ…十代、遊海プロを頼む!」

 

「わかった!」

 

「亮君…無事でいて…!」

 

翠、十代、翔は砦を飛び出し遊海と亮の元へ向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか?」

 

「ああ、発信機はここで止まっている…この近くにいるのは間違いない…!」

 

エドと亮は発信機を辿り暗黒界軍の使っていた収容所に到着した…辺りにモンスターの姿は無く、不気味なほど静まりかえっている…。 

 

「どうする?手分けして…」

 

「いや、正面からいく…!」

そういうとカイザーは一歩前へ出る…

 

「黒き悪魔よ!我が名は丸藤 亮!!羅刹に墜ちる以前の貴方からの依頼を果たしにきた!尋常にデュエルを申し込む!!」

カイザーは大声で名乗りをあげた…その声は周囲に響き渡る…

 

「亮…話を聞く限り今の遊海さんには理性が無いんだろう?名乗りをあげたところで…」

 

「いや、理性は無くとも…本能がある、デュエリストとしての…闘いを求める本能が…!」

 

「そんな根性論のような事をお前がいう…【Grrr…!!】!?」

エドの声を遮るように唸り声が響く、そして…

 

【GOAAAaaaaa…!!】

心を脅かす咆哮と共に暴走せし遊海、否…破壊の悪魔が現れる、その身体には無数の傷が刻まれている…先日のアヤカとの戦闘で負ったのだろう。

 

「嘘だろ…?本当に出てきた…!?、でも信じられない…あれが遊海さんだなんて…!」

 

「オレも信じられないさ…意識のある遊海先生と会っていなければの話だが…」

 

カイザーは悪魔を見据え呟く、悪魔からは凄まじい殺気…破壊の意思が放たれている…

 

【du…デュ…エル…!】

[デュエルモード起動…]

 

悪魔のデュエルディスクが起動する…理性が無くとも決闘者の本能がそうさせるのだ…

 

「エド、下がっていろ…オレがあの人を止める…!」

カイザーもデュエルディスクを構える…

 

「亮、勝ってくれ…ボクにはわかるんだ、あの人は苦しんでいる…だから遊海さんを…」

 

「ああ…遊海先生はオレに新たな道を示してくれた…!あの人が悪鬼に堕ちたというなら…オレは地獄からでもあの人を救いだす!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「【デュエル!!/duel…】」

 

 

 

 

 

 

悪魔LP4000

亮LP4000

 

 

 

 

 

 

 

 

【Gaarrr…!】

[ドロー、ライトペンデュラムスケールにスケール5『アモルファージ・ルクス』、レフトペンデュラムスケールにスケール3『アモルファージ・オルガ』をセッティング]

 

悪魔の両隣に光の柱が現れその中に身体に結晶の刺さった狼と黒いサソリが現れる

 

「ペンデュラム…?聞いた事が無いカードだ…!」

 

「異世界のデュエルモンスターズ…!」

 

カイザーは警戒を強める、未知のカード…それが何を起こすのか…

 

[フィールド魔法『アモルファスP』を発動、それによりフィールドの『アモルファージ』モンスターの攻守は300アップする]

 

フィールドに不気味な顔の杖が突き刺さる…そして周囲に瘴気が満ちていく…

 

【Gaaaa!!】

[フィールドにスケール3、5のペンデュラムカードがある事により手札からレベル4のモンスターを特殊召喚できる]

 

「「なにっ!?」」

 

[全てを浸食せし破滅の力…現れよ…ペンデュラム召喚…レベル4『アモルファージ・ヒュペル』]

悪魔の頭上に黒い孔が開き1羽の鷲が現れる…

 

「鷲のモンスター…?」

エドはその姿を見て戸惑う…悪魔の見た目とは違うモンスターが出てきたからだ、しかし…まだ終わりではない…

 

 

【Goo…aaa!!】

 

悪魔は手に現れた結晶の杖を鷲に投げつける…それは鷲の胸に突き刺さり変化をもたらす…!

 

《ピュ…キュイィィィ!?》

 

「なんだ!?」

 

「鷲の身体が…!?」

鷲の身体が肥大化し不気味に蠢いていく、そして…

 

《ギュラアアア!!》

 

肥大化した肉は緑色の竜の形をとる、それこそが「アモルファージ・ヒュペル」の姿だった…

 

ATK1750→2050

 

「…なんと醜悪な…!!」

 

「遊海さんがこんなモンスターを使うなんて…!」

 

エドもカイザーもその醜悪さに顔を背けてしまう、遊海がこんなモンスターを使うとは考えていなかったのだろう…そして確信する、自分達の知る遊海と悪魔は別人なのだと…

 

【Giiaaaa!!】

[『ヒュペル』を生贄に手札から『アモルファージ・ノーテス』をアドバンス召喚、フィールド魔法の効果により1ドロー]

 

緑色のドラゴンが崩れ去り、1頭の熊が現れる…その身体にも杖が突き刺さり黄色のドラゴンに変化する…

 

ATK2250→2550

 

[そして永続魔法『アモルファージ・インフェクション』を発動、効果によりフィールドの『アモルファージ』カード1枚に付き攻守を100アップする]

ノーテスがオーラを纏い攻撃力があがる

 

ATK2550→2950

 

[カードを1枚伏せてターンエンド]

 

悪魔LP4000

ノーテス Pスケール ルクス、オルガ インフェクション 伏せ1  手札2

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生…!貴方がどんなに変わろうと、オレは貴方を倒し…開放してみせる!!」

 

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「オレは手札から『融合』を発《ビーッビーッ》なに!?発動できないだと…?」

 

[ペンデュラムスケールの『ルクス』の効果を発動、自分フィールドに『アモルファージ』モンスターがいる時、お互いに『アモルファージ』カード以外の魔法カードを発動できない]

 

「くっ…ならば手札から『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!このカードは相手フィールドにのみモンスターが存在する時特殊召喚できる!」

カイザー亮を象徴する機械竜が現れる ATK2100

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

亮LP4000

サイバードラゴン 伏せ2 手札3(内1枚融合)

 

 

 

「(伏せたのは『アタック・リフレクター・ユニット』と『サイバネティック・ヒドゥン・テクノロジー』…遊海先生の場には攻撃力2950の『ノーテス』がいる…今は耐えるんだ…!)」

 

 

 

 

 

 

【Gaaa…!】

[ドロー、スタンバイフェイズ、スケールの『オルガ』『ルクス』の効果を発動、さらにリバース罠『アモルファージ・ライシス』を発動…逆順処理開始、『ライシス』効果により相手フィールドのモンスターの攻守はフィールドの『アモルファージ』カード1枚につき100ポイントダウンする]

瘴気がサイバードラゴンに纏わりつき力を削いでいく

 

ATK2100→1600

「くっ…」

 

[そして『ルクス』のペンデュラム効果を発動、フィールドの『ノーテス』をリリースしスタンバイフェイズに破壊されるこのカードを破壊しない]

フィールドのノーテスが腐り果て、破壊される…

 

「うぐっ…ひどい匂いだ…!」

 

「遊海先生…いや悪魔、お前は…モンスターをなんだと思っている…!」

亮は怒りをあらわにする…普段の遊海であれば使用しないであろうデッキを平然と使う、モンスターを駒のように使い捨てる…それは普段の彼の姿からは考えられない姿だった

 

[永続魔法『インフェクション』の効果、『アモルファージ』モンスターがリリースされた事によりデッキから『アモルファージ・イリテュム』を手札に加える、さらに『アモルファスP』の効果を発動1ドロー…さらにスケールの『オルガ』の効果を発動…コストを払わず自壊する]

 

光の柱の中の狼が腐り落ちる…しかしそこに新たにハリネズミが現れる

 

[『ライシス』の効果、ペンデュラムゾーンのカードが破壊された時、デッキからスケール3『アモルファージ・プレスト』をペンデュラムゾーンに置く]

 

「しまった!また条件が揃って…!?」

 

「これがあの人の本能だと言うのか…!?上手すぎる…!」

2人は戦慄する…理性が無いはずの遊海のプレイング…、その余りの無駄の無さに…!

 

【Grrrr!】

 

[スケール3、5の『プレスト』『ルクス』でペンデュラムスケールをセッティング…ペンデュラム召喚、手札より『アモルファージ・キャヴム』『アモルファージ・プレスト』エクストラデッキから『アモルファージ・オルガ』『アモルファージ・ヒュペル』]

 

空間の孔が開きハリネズミ、巨大イカ、狼、鷲が現れ、それぞれが竜化する 

 

DEF1950→2750→3050

 

DEF2050 →2850→3150

 

ATK1650→2450→2750

 

ATK1750→2550→2850

 

「モンスター4体の同時召喚だと…!?」

 

「破壊されたら融合デッキにいく…それがペンデュラムモンスターの力か…!」

 

【GOoooaaa!!!】

[『ガストル』と『プレスト』をリリース、『アモルファージ・イリテュム』をアドバンス召喚、アモルファスP』の効果で1ドロー]

狼とハリネズミが砕け散る…そして紫色の鱗を持つ虚飾の竜が現れる

 

ATK2750→3550→3850

 

「…オレでは貴方の足元にも及ばないという事ですか…?」

 

「亮!ダメだ…諦めるな!!」

 

「エド…、諦めなどしない!!最後まで…足掻いてみせる!!」

 

【ハカ…イ…!】

[バトル、『イリテュム』で『サイバードラゴン』を攻撃]

イリテュムの口にエネルギーが溜まり始める…

 

「リバーストラップ発ど《ビーッビーッ》なっ…!?」

伏せカードを発動しようとしたが再びエラー音が鳴り響く

 

[ペンデュラムスケールの『プレスト』の効果、フィールドに『アモルファージ』モンスターがいる時、お互いに『アモルファージ』カード以外の罠カードを発動できない]

 

黒き瘴気の息吹が機械竜を飲み込んだ

 

イリテュムATK3850 VS サイドラATK2100→1300

 

亮LP4000→1450

 

「ぐっ…遊海先生…約束を果たせないオレを…許してください…!」

 

[『ヒュペル』でダイレクトアタック]

 

緑色の竜が尾で亮を弾き飛ばした…

 

亮LP0

 

悪魔 WIN!

 

 

 

 

 

 

「ガッ…あ…ぐっ…」

 

「亮!!!」

 

エドは弾き飛ばされたカイザーに駆け寄る…その身体からは金色の粒子が漏れ出していく…

 

「遊海先生…オレは…約束を…」

 

「亮!しっかりするんだ!」

 

 

「亮君!エド君!!…そんな…」

 

「お兄さん!!」

 

「カイザー!?」

 

決着より一足遅く翠達が駆けつける、そしてカイザーを見つけ駆け寄った…

 

「お兄さん…お兄さんなんで!!」

 

「翔…翠さん…すまない、オレはあの人との約束を果たせなかった…」

 

「遊海さんとの約束…?」

 

「オレはあの人から…『悪魔に呑まれた自分』を倒してほしいと依頼を受けていた…でもやはり、あの人は強すぎた…完敗だ…」 

 

「そんな…お兄さん…!」

 

「翔…生き延びろ…お前は…お前だけは…」

 

「カイザー…あんたはどうして…!」

 

「十代…オレはあの人に届かなかった、でもお前なら届くかもしれない…無限の…可能性を持つ…お前…な…ら」

 

そこまでだった…カイザー亮は十代に跡を託し…消えていった…。

 

 

 

「亮!!」

 

「亮君!」

 

「カイザー…!」

 

「お兄さん…兄さぁぁぁん!!!」

 

翔の悲しみの声が周囲に木霊した…。

 

 

 

 

 

 

「…遊海さん、いえ…悪魔、貴方は…私が倒します…!」

 

「翠さん…!?」

 

「なんて殺気だ…!これがあの翠さんの本気…!?」

 

カイザーの消滅を見届けた翠は静かにこちらを見ていた悪魔に宣戦布告する…その殺気は遊海に匹敵するレベルだった。

 

【…!】ニイッ

 

「悪魔が…笑ってる…!?」

翠の宣戦布告を聞いた悪魔はその顔を歪ませる…それは獲物を前にした狩人のようだった…

 

【コロシアム…マツ…コイ…!】

それだけを伝えると悪魔は空へと飛び立った…

 

「待ちなさい!悪魔…!!」

 

「…ダメッス…逃げられたッス…」

 

 

 

 

 

 

「コロシアム…闘技場…?こんな世界に…?」

エドは首を傾げる…こんな異世界に闘技場があるのかと?

 

「心当たりはあるわ…元暗黒界の本拠地、たぶんあそこよ…!」

 

「翠さん…本当に遊海先生と戦うのか…?」

十代は心配そうに翠に問い掛ける…

 

「ええ…あの人との決着は私が着けるわ…絶対に遊海さんを…止めてみせる…私の命を賭けてでも…!!」

翠は涙を流しながら決意を伝える…愛する人を倒す(殺す)決意を…

 

「翠さん…」

十代はその決意を拳を握りしめ聞いているしかなかった…自分の無力さを呪いながら…

 

「ついてこれる人だけついて来て…!暗黒界の砦に向かうわ!!」

 

「「「はい!」」」

 

そして翠、十代、翔、エドは暗黒界の砦へと向かう…遊海との決着を着けるために…

 



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破壊の悪魔対翠〜悲しき戦〜

《翠…着いたわ…》

 

「ありがとうウィンダ…」

 

《翠…ここで合っています、中に反応が…》

 

「ええ…わかってるわ」

 

精霊達と共に翠達は暗黒界の砦に到着した、砦はラーによる殲滅の影響で焼け焦げている…。

 

 

 

「翠さん、遊海先生に…勝てるのか…?」

十代は翠に尋ねる…自分達を導き窮地を救われてきた伝説のプロデュエリスト、そして翠の夫である彼を倒せるのか?と

 

「戦績で言えば私に分が悪いわ…だいたい20戦8勝12敗というところかしら…」

 

「えっ!?勝った事あるッスか!?あの遊海先生に!?

」 

翔は驚きの声をあげる、普段デュエルする姿をほとんど見ない翠が遊海に勝った事がある事に驚いたのだ

 

「ええ!普段はあまり見せないけど…私だって強いんだから…!」

 

「…翠さん…」 

十代は心配そうに翠を見る…

 

「大丈夫よ十代君!絶対に遊海さんを開放しましょう!そうしたら次はあなたの番よ?」

 

「えっ…?」

 

「あなたとユベルとの決着よ、それはあなたにしかできない事だから…」

 

「…はい…!」

 

「さぁ…行きましょう、悪魔のところに!」

 

「「「はい…!」」」

 

 

 

 

 

「と、その前に…お花を摘んでくるから…ちょっと待っててね」

 

「花…?この辺りに花なんて…アグッ!?」

エドが十代を小突く

「わかりました、少し待ってます…ごゆっくり…」

 

「ありがとうエド君…ちょっと待っててね」

 

そう言って翠は少し離れた岩陰に消えていった…

 

「翔?花を摘むって…この辺りに花なんて無いよな??」

 

「アニキはデリカシーが無いっスね〜…」

 

「???…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…嫌だよぉ…こんな形で貴方と戦うなんて…私…わたし…!」

 

岩陰に隠れ…翠は涙を流していた、生徒達の手前…そして生徒達を傷つけた悪魔を許せずに啖呵を切った…しかし…

 

「遊海さん…!遊海さん…!!」

翠は翔から返してもらったボロボロの赤い帽子を抱き泣き続ける…

 

《翠…マスターもいつもそうでした…》

 

「アヤカちゃん…?」

アヤカが泣いている翠に声をかける

 

《マスターは以前斎王に洗脳された貴女と戦いました…その時マスターは全力で戦って貴女を止めました…それこそ自分の身体を二の次にして…戦いが終わって貴女が目覚めるまでマスターはずっと泣き続けてたんです…。『翠に痛い思いをさせてしまった』…『助けるもっと良い方法があったんじゃないか?』…『嫌われてしまったんじゃないだろうか』って…身体も大怪我をしているのに…》

 

「遊海…さん…!そんな…!嫌うなんて…!」

 

《マスターは表面ではポジティブな考えをしてますが…内面では結構ネガティブなんです…昔の後遺症という事もありますが…それでもう一つの人格ができかけてしまう程に…》

 

「そんな…」

 

《翠…転生前のマスターは親友と呼べる人も数人しかおらず、遊戯王を心の糧にして生きていたんです…でも今は貴女がいる…!》

 

「え…?」

 

《私…2回だけマスターの心の部屋に入った事があるんです一度は転生直後に…その時は殺風景な部屋でした、でも翠と出会った後に再び入ったら…とても綺麗な部屋に変わっていたんです、そこには小さな貴女の写真が飾られていました!遊海さんは貴女に救われていたんです!》

 

「遊海さん…!」

 

《翠…あの悪魔はマスターを浸食して存在しています…マスターを救うために…力を貸してください!!》

アヤカは翠に頭を下げる…マスターを…遊海を助けるために…

 

「アヤカちゃん…ありがとう!私が絶対に救けてみせる!!」

翠は赤い帽子を被り涙を拭いた…その瞳には力が戻っている…

 

「みんな…お待たせ!…行きましょう!!」

 

「「「はいっ!!」」」

 

そして翠達は砦へと入っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Grrrr…】

 

悪魔は砦の中央…闘技場の中央に佇んでいた、その体からは黒いオーラが揺らめいている…

 

「悪魔…いえ遊海さん!貴方を倒します…!」

翠は悪魔を睨めつけ言葉少なにデュエルディスクを構える…倒すと決めたからには絶対に彼を止める…そのために翠は情けを捨てた…! 

 

【デュエ…ル…!】

[デュエルモード起動…]

 

悪魔もデュエルディスクを構える…

 

 

「翠さん…!!」

 

「翠さん!お願いッス!勝ってください!!」

 

「翠さん…!遊海さんを頼みます!」

 

十代達もその様子を見守る…

 

「大丈夫…!いくわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【デュエル!!/デュエル…】」

 

 

 

 

翠LP4000

悪魔LP4000

 

 

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「『おろかな埋葬』を発動!デッキから『シャドール・ビースト』を墓地に送り効果により1ドロー!(このカードは…!)」

 

「私は魔法カード『影依融合』を発動!手札の『シャドール・リザード』と『メガロック・ドラゴン』を融合!影のトカゲよ!想いつまりし岩石竜と交わりて…王の玉座を呼び出さん!融合召喚!レベル10『エルシャドール・シェキナーガ』!!」

身体を拘束された影の女王が現れる DEF3000

 

「守備力3000…!守りを固めたッス!」

 

「墓地へ送られた『リザード』の効果を発動!デッキから『シャドール・ファルコン』を墓地に送る!そして効果により『ファルコン』を裏守備で特殊召喚!…カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

翠LP4000

シェキナーガ 裏ファルコン 伏せ1 手札2

 

 

 

「翠さんはしっかりと守りを固めてる…!守備力3000ならそう簡単には倒されないはずだ…!」

 

「でも…遊海先生がなにを使ってくるかわからないッス…!」

 

 

 

 

 

 

【Gaaaaa!!】

[ドロー、手札の『クリムゾン・ノヴァ』2体、『方界胤ヴィジャム』を公開し『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』を特殊召喚]

無数のキューブが集まり紫色のキューブを被った邪神が現れる ATK3000

 

「『クリムゾン・ノヴァ』!?まずいわ…ライフ4000のこのルールじゃ…!」

 

【Gaaoooo!!!】

[バトル、『クリムゾンノヴァ』で裏守備モンスターを攻撃]

 

邪神のビームが鳥の人形を砕く…

 

「くうっ!?『シャドール・ファルコン』のリバース効果!墓地の『ビースト』を裏守備で特殊召喚!」

 

【GAaaaaa!!】

 

[『クリムゾンノヴァ』は相手モンスターを破壊した時もう一度だけ攻撃できる、裏守備モンスターを攻撃]

 

再び放たれたビームが獅子の人形をバラバラにする

 

「『ビースト』のリバース効果!デッキから2枚引いて1枚捨てる…ドロー!…手札の『シャドール・ヘッジホッグ』を墓地に送り…効果発動!デッキから『シャドール・ドラゴン』を手札に加える!」

 

【Guuu…】

[カードを1枚伏せてターンエンド…『クリムゾンノヴァ』の効果、お互いに3000ダメージを受ける]

 

クリムゾンノヴァがビームを乱射し闘技場全体を吹き飛ばす!

 

【GAAAA…】

 

「きゃああああああ!!」

 

「翠さん!!」

 

翠LP4000→1000

 

 

悪魔LP4000→1000

 

クリムゾンノヴァ 伏せ1 手札4

 

 

 

 

 

「あ…ぐ…痛…い…!」

翠は爆風で吹き飛ばされ壁に叩きつけられる、悪魔は微動だにせずその場に佇んでいる…

 

「翠さん大丈夫か!?」 

 

「十代君…ありがとう、大丈夫…よ!これぐらい…いつもの遊海さんが感じる痛みに比べれ…ば…!」

 

翠は気合で立ち上がる…既に足は震え体は傷だらけになっている…

 

《翠姉…!無理しちゃダメ…!》

ウェンが実体化し翠の身体を支える…

 

「ありがとうウェン…でも、今無理をしないで…いつ無理をするの…!!私は…遊海さんを助けるんだからぁぁぁ!!」

 

《翠!私達も付いてる!!みんなで助けだそう!》

ウィンダも翠の身体を支え励ます

 

「いくわよ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

 

【Guuaaaaa!!】

[リバース罠『方界合神』を発動、3体の『クリムゾンノヴァ』を融合…『暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ』を融合召喚]

 

「やっぱり来ちゃった…!!」

悪魔のフィールドに異形の邪神が現れる…邪神は凄まじい闇のオーラを纏っている ATK4500

 

「攻撃力4500…!ジムや万丈目達がやられたモンスターだ!」

 

「くっ…!(ダメだ…シャドールにはアレを超えられるカードが無い…!今は耐えなきゃ…!)」

 

「手札から魔法カード『神の写し身との接触』を発動!手札の『シャドール・ドラゴン』と『裏風の精霊』を融合!影の竜よ!優しき風と交わりて…全てを守る防壁とならん!融合召喚!お願い!『エルシャドール・ウェンディゴ』!」

《了解!頑張るよ〜!!》

翠を支えていたウェンがフィールドに飛び出し守りを固める DEF2800

 

「私はターンエンド…!」

 

翠LP1000

シェキナーガ ウェンディゴ 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

「翠さん!耐えられるのか…!」

 

「翠さん!!勝機はあるはずだ!頑張ってくれ!!」

 

 

 

 

【AAAAA!!】

[ドロー、バトル『トリニティ』で『ウェンディゴ』を攻撃、攻撃宣言時相手ライフを半分にする]

 

「その時!『ウェンディゴ』の効果を発動!このターンこのカードは特殊召喚された相手モンスターとの戦闘では破壊されない!《ウィンド・カード》!」

《防壁展開!耐えて!翠姉!!》

 

「耐えるわ…!遊海さんを助けるんだもの!!ああああああああ!!」 

ウェンは自身と翠を風の防壁で守る…破壊こそされなかったものの翠は光線がかすりダメージを受ける

 

翠LP1000→500

 

 

【Guuu…】

[ターンエンド]

 

悪魔LP1000

トリニティ 手札3

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…うぅっ…!?」

 

《翠!?》

トリニティの攻撃を耐えきった翠は地面に倒れ伏す…邪神により精神力を削られ身体はボロボロ…ライフこそ残っているものの既に限界を超えていた…

 

《翠!しっかりして翠!》

 

「翠さん!しっかりしてくれ!!」

 

「翠さん!翠さぁぁん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…身体が動かない、遊海さんを助けたいのに…指すらも動かせない…

 

今どんな盤面だったっけ…?意識がはっきりしない…眠い…ここで寝ちゃえば…気持ちいいかな…?

 

 

翠の意識は深く沈んでいく、それと共に体から金色の粒子が漏れ始める…

 

 

「翠さん!ダメだ!気をしっかり持ってくれ!!」

 

「翠さん起きて!起きてくれっス!!」

 

《翠姉!起きて!!翠姉!!》

 

 

 

 

…みんなが呼んでる…でもダメだ…意識…が…

 

 

 

 

 

 

 

『翠…いつまで寝てるんだ…?』

 

 

懐かしい声がする…

 

 

 

『少しだけ力を残しておいて本当によかった、翠…いつかの約束はどうしたんだ?「俺の背中を守るデュエリスト」になるんだろう?』 

 

 

意識の降下が止まる、まるで誰かに受け止められたように…

 

 

『この決闘が終わっても本体が戻るかどうかはわからない…でも、やれるだけやってくれ…ダメージに慣れてないお前には少し酷だけど…頼んだぞ…翠!!』

 

 

意識が浮き上がる…暖かい力に押し上げられていく…今のは…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ…私は約束を守らなきゃ…!遊海さんを助けるんだー!!」

翠は起き上がる…その胸には2つのカルトゥーシュが輝いていた…!

 

《翠!よかったぁ〜!!》

 

「翠さん!!」

 

 

「いくわよウェン!ウィンダ!遊海さんを止める!!」

 

《うん…!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロォー!!!」 

「(このカードは!?)」

 

翠は十代を見る…そのカードは十代に1番関係の深いカードだった…

 

「(十代君…ごめん、トラウマを抉る事になるかもしれない…でも使わせて…!!)」

 

「私は手札を1枚捨ててこの魔法カードを発動します!!」

翠は発動するカードを高く掲げる

 

「そんな…あのカードは…!?」

そのカードを見た十代は急いで自分のデッキを確認する…そのカードは現時点で世界に1枚しかないカード…その名は…

 

 

 

 

「正しき闇よ集え!悪に囚われし者を救うために発動せよ…『超融合』!!」

翠の背後に暗雲の渦巻きが現れる

 

「馬鹿な!?『超融合』だって!!」

 

「まさか…異世界の…!」

 

「私はフィールドの『シェキナーガ』と『トリニティ』を…融合!!」

クリムゾンノヴァトリニティが融合の渦に吸い込まれる…そして纏っていた闇が翠を覆い尽くす…!

 

 

「っあ…!?あ"あ"あ"あ"あああああ!?」

その瞬間、翠に今までにない痛みが襲いかかる…魂を引き裂く痛み…それは遊海が邪神経典の生贄にされた時に感じていた痛みだった

 

(やめろ!やめてくれぇぇぇ!!!)

 

「(遊海さん…こんな…痛みを…!!)」

闇に紛れ遊海の想いが翠に伝わる…凄まじい痛みが精神を蹂躙していく…

 

「(遊海さんが…耐えたのなら…私だって…!)融合召喚…!来て!私のパートナー!『エルシャドール・ミドラーシュ』!!」

《翠!!》

竜に乗った少女がフィールドに現れる ATK2200

 

 

「これで…フィールドはガラ空き!!これで…終わりよ!!バトル!『ウィンダ』!!お願い!遊海さんを…倒して!!!」

翠は痛みに耐えながらウィンダに支持を出す

 

《うあああああ!!『ウィンド・ストライク』!!》

濃縮された風の魔力弾が悪魔に直撃した!!

 

 

【ガッ…アアアアアアアアアア!!?】

 

 

悪魔LP0

 

翠 WIN!

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…やったよ…みんな…遊海さんを止められた…うっ…」

 

「「「翠さん!?」」」

 

決闘の直後、翠は再び倒れる…体は余すところ無くボロボロ、精神・魂すらも削った戦いだった…

 

「ウィンダ…遊海…さんは…?」

 

《最後の攻撃で飛ばされて倒れてるわ…金色の粒子も出てる、私達の戦いは終わったわ…》

 

「そう…ありがとうウィンダ…ごめんなさい遊海さん…!!」

 

翠は泣いていた、戦いが終わった安心感と…愛する人を手にかけてしまった悲しみ…本当に胸が裂けてしまいそうだった…。

 

「翠さん!大丈夫か!?」

 

「翠さん!よかったッス〜!!」

 

「十代君、翔君、エド君…私も少しは強かったでしょう…?」

翠は駆けつけたみんなに問い掛ける…

 

「翠さんスゴかった!!すごい強かった…でもなんで『超融合』が…!」

 

「あれは私達の世界のカード…あなたにとっては辛い象徴かもしれない、でもそれは使う人の心次第で変わるの…人を傷つけた邪悪な力なのか…人を助ける事のできる正しい力なのか…それは変わるのよ…」

 

「翠さん…はい…!!」

 

 

 

 

 

 

 

《ミドリ!無事ですか!!》

 

「十代!翔君!!」

 

「アニキ〜!」

 

「明日香!剣山!?みんなどうして!?」

決闘の終わった翠達の元に砦に残っていたはずの明日香・剣山・オブライエン、そしてフレアとトフェニが駆けつける…

 

「フレアさんから翠さん達が遊海先生と戦ってるって聞いて追いかけて来たんだドン!」

 

「砦はフリード達が守ってくれている…やはり遊海プロを放っておけなかったんだ…!」

 

 

 

《ミドリ…!ひどいダメージを…!》

フレアは傷ついた翠を見てすぐに治療を開始する…暖かい太陽の光が傷を癒やしていく

 

「ありがとうフレア…遊海さんに勝てたよ…でも…こんな解決の仕方しか無かったのかな…?」

 

《ミドリ…貴女の判断は正しいものだった、悪に呑まれてしまったユウミを救うには倒すしかなかった…》

 

「フレア…ありがとう…」

 

翠は涙を流しながらフレアに問いかけた…フレアはそれを是とした、それが最適の手段だったと…

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば…倒した遊海さんは…どこに…?」

 

「それなら…俺達の反対側に倒れて…」

明日香の疑問を聞いた十代は遊海の倒れていた場所に目を向ける…そこには()()()()()()

 

「何も無い…、もう消えちまったのか…遊海先生…!」

 

「…待って十代…どうして何も無いの…?」

 

「えっ?」

 

「この世界で消えてしまった人達はみんな()()()()()()()()()()()()()()()()()…?」

 

「あっ…!?」

十代は思い出す…ラーズが消えた時も、自身が倒してしまった決闘者達もみんな…デュエルディスクが残っていたと…!

 

「そんなま…【ガァ"ァ"ァ"ァ"!!!】」

 

 

 

 

 

全ての動きがスローモーションになる…上から金色の粒子を振りまきながら炎の剣を振り下ろす悪魔…その切っ先は十代を確実にとらえていて…

 

「(…死ぬのか…俺…?)」 

 

十代は死を覚悟した…周りの精霊達の防御も間に合わない…明日香が何かを叫んでいる…オブライエンがカード銃を構える…でも遅すぎた…

 

「(あっけない終わり方だな…俺…まだ罪ほろぼしもできてないのに…)」

十代は目を閉じ腕でガードの体勢をとる…あの剣を前にしては気休めだが…少しでも命を繋ぐために…そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュッ

 

 

 

 

 

暖かい液体が顔にかかる…痛みは不思議と無い…死ぬ直前だからだろうか…?

 

 

 

 

 

「言ったでしょう…貴方にこれ以上人を傷つけさせないって…切り裂け!!『影の刃』!!」

 

ザザシュッ…

 

【ガッ…!?】

 

翠の声…何かを切り裂く音…悪魔の叫び声…そして静寂…十代は目をあける…

 

 

 

「いったい…何が…なっ…!?」

 

十代の目に映った光景…それは身体を斬り裂かれた翠…そして、胸を切り裂かれ穴の空いた悪魔の姿だった…

 

「み、翠さん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「う、迂闊だったわ…遊海さんの…生命力の強さを…忘れて…コフッ」バタッ

 

「「「「「翠さん!!」」」」」

 

十代達は切り裂かれてしまった翠に駆け寄る…傷は深く助からない事は誰の目でも明らかだった…

 

「翠さん!なんで…なんで俺なんかのために…!!」

十代は涙を流しながら翠に問い掛ける

 

「十代君…言ったでしょう…『次はあなたの番』って…ユベルを倒…るの…あなた…だけ…」

 

「翠さん…でも…でも…!!」

 

「泣かないで…私は役目…果たした…遊海さんは止まった…」

 

「翠さん!大丈夫ですよね!?遊海先生も翠さんも不死だって聞きました!!だから治りますよね…!!」

明日香が翠の服を脱がして止血しようとする…  

 

「…傷の再生が始まらないわ…炎の剣で焼かれてしまったからか…それとも…」

翠は倒れている遊海に目を向ける…その腕には焼け焦げた「破邪の大剣 バオウ」が握られていた…破壊した相手モンスターの効果を無効にする剣…それは不死である翠を倒しうる武器だった…

 

「ダメみたい…気が遠くなってきた…」

身体から金色の粒子が漏れていく…その量は加速度的に量を増やしていく…

 

「翠さん!!フレアさん治療は…!!」

 

《無理です…ここまでの傷を治す手段を私は持っていません…!それこそ死者蘇生レベルの力じゃないと…!》

 

「そんな…こんな事なんでおきるザウルス!なんで愛し合っている先生達が死ななきゃならないドン!!!」

 

剣山は地面を殴りつける…普段から遊海と翠のおしどり夫婦を見てきたからこそ…悔しさを抑えられなかった…。

 

「ハッ…ハッ…ウィンダ…私を、遊海さんのところ…に…」

 

《うん…ヒグッ…わかった…》

ウィンダは風の魔法で翠の体を浮かせ静かに遊海の隣に降ろす…

 

「遊海さん…ごめんなさい…!こんな形でしか貴方を救え無かった…!」

翠は意識のない遊海に声をかける…

 

「また会えたなら…謝らせて…くださ…」

 

翠は遊海の手を握りながら…消滅した…。

 

「「「翠さん!!」」」

 

 

 

 

 

《翠…こんな事って…あっ…!》

翠の消滅後、精霊達にも変化が始まるアヤカ以外の精霊の身体が薄くなっていく…楔である翠が消えた事でこの次元に居られなくなったのだ…

 

《十代…私達はここまでです、あとの事は頼みます!アヤカ!十代達を…!》

 

《わかりました!マスターの分まで彼らを守ります!!》

 

《十代殿…気を落とすな、2人は…翠殿は己が使命を果たした…次はお主の番だ!》

 

「フレア…トフェニ…!」

 

《十代、一つ助言を…翠も…消滅した他の生徒達も死んではいません!!》

 

「えっ!?本当か!」

十代はフレアの言葉を聞き目を見開く…!

 

《詳しい事はわかりません…しかし精霊達と翠のラインは完全には切れていません!あなたがユベルとの決着をつければきっと…!頼みます…十代!!》

そこまでを伝え精霊達は退去する…最後の希望を残して…

 

「フレア…ありがとう!まだ終わりじゃない…!皆を助けられるんだ!!」

 

「十代…!行きましょう!」

 

「アニキ!オレも手伝うドン!!」

 

「行こうアニキ!!」

 

「十代…ボクも力を貸そう!」

 

フレアからの言葉を聞いた十代達は決意を新たにユベルを探す旅を始める…皆を救うために…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ダメージ量が規定値を突破…拘束封印を破棄…魂の浸食率100%…実行コード・ティエラ…起動します]



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tierra〜幼年期の終わり〜

第3章最終話!


[ダメージ量が規定値を突破…拘束封印を破棄…魂の浸食率100%…実行コード・ティエラ…起動します]

 

「えっ…?」

その場を離れようとした十代達は聞こえてきた機械音声の方を見る…そこには立ち上がった悪魔の姿があった、胸の傷は不気味に蠢き修復されていく…

 

「何故だ…あの傷は完全に致命傷だった筈だ…!」 

 

「嘘だろ…!」

 

オブライエンも十代も自分の目を疑う…確実に倒したはずの相手が立ち上がる、それは悪夢以外の何者でもない…

 

 

《!?この反応、まさか…そんな…ありえない…!!》

アヤカは感じた力を否定する…その力は既に消えたはずのモノだったからだ…

 

 

 

 

【ハッ…フハハハハハハ!!やっとだ…!やっと忌まわしい封印が解けた!!甘かったな宿主(遊海)!貴様は馬鹿だ!貴様は問題を先送りにしたに過ぎなかったのだ!フハハハハハハ!!】

 

悪魔は突如笑い出す、その口調はさっきまでと違い饒舌になっていた…その纏うオーラは比べものにならない程強くなっている…

 

「なっ、貴様は…誰だ…!!」

十代は悪魔に問い掛ける…

 

【ん〜?…ああ、初めて会うなぁ…この世界の「覇王」!いいだろう名乗り直しだ!】

 

【我が名は破王…世界を壊す者、そして新世界を支配する神!…破王ティエラだ!!】

悪魔…ティエラはそう名乗りをあげた…。

 

 

 

《『創星神tierra』…!お前は『智天の神星龍(セフィラ・トーラ・グラマトン)』との千日千夜に及ぶ戦いで斃れたはず…!何故…何故そこにいる…!それにお前はデュエルに敗北した!何故消えていない…!》

アヤカはティエラを警戒し問い掛ける…

 

【お〜?元我が下僕のクリフォートじゃないか…ああ、確かにデュエルに敗北して消えたよ…宿主(お前のマスター)がな!!】

 

「な…に…?」

 

《なんですって!?》

 

【コイツはしぶとくてな〜…魂の最後の力で我の理性を封印してやがったんだよ…「理性がなければ誰かが止めてくれるはず」…とでも思ったんだろうな〜まぁその考えは甘かったって事だ…あの小娘は自分の旦那にトドメを刺しただけだったんだよぉ!アハハハハハハ!!まぁ最後にはうざかったから小僧を狙う振りして斬り裂いてやったけどなぁ!】

ティエラは遊海と翠をあざ笑う…ただの無駄死にだと…

 

《貴様…マスターを…翠さんを…笑うなぁぁぁ!!》

アヤカは怒りと共に本来の姿を顕現させる

 

《受けなさい!!デストロイ・キャノン!!》

破壊の極光がティエラを呑み込む…

 

 

【ああ…そこにあったか、ありがとよ…破壊の力を預かってくれてて!!】

ティエラは極光を振り払いキラーに肉薄、コアに腕を突っ込む…

 

《ア…しまっ…マスタ…オヤク…タテズ…ごめんな…SA…I…》

 

【フン…!】

バキン

 

ティエラはキラーのコアを砕き紫色の小さな球体を取り出した…キラーは空中で分解し消滅した…そしてコアの砕けたアヤカが十代達の近くに落下する、コアは黒く染まり機能を停止している…。

 

「アヤカ!!」  

 

「そんな…!?遊海先生の相棒を一撃で…!」

 

エドも十代もそれを見ているしか無かった、自身の数百倍もある要塞を一撃で破壊した…それだけで力の差がわかってしまったからだ…

 

 

 

【これでいい…!これで再び我は神に成れる!!フハハハ!!】

ティエラは紫色の球体…破壊の力の結晶を掲げ笑い声をあげた…

 

「あ、あれがウィンダさんの世界の『神』…!」

 

「ア、アニキ…!」

 

「明日香!翔!アイツが何者か知ってるのか!?」

十代は2人に問い掛ける

 

「アイツはウィンダさんやウェンちゃん達の世界の破壊の神様だった奴よ!でも…もう倒されたはず…!」

明日香が簡潔に説明する

 

 

【ああ、その説明をして無かったなぁ…確かに我は神星樹の後押しを受けた「Sopia」の民に敗北した、千日千夜に及ぶ戦いで身体は砕け我は斃れた…それと同時に我が世界の輪廻転生を制御していた神星樹も燃え尽きた事で我が魂は世界から弾き出された…そして我は長い年月を彷徨った…それはつまらない日々だった…!】

 

そう話ながらティエラは破壊の結晶を弄ぶ…

 

【しかしある時、面白い力を感じた、そうだな…純粋な(狂気)と言うやつか、試しに見てみると人に恋をした精霊が邪魔者を手駒にするための呪いを組んでいた…それを見た我はその呪いに入り込み…この身体を得た!しかも風の巫女と同等の力を持った転生者!我は決めたよ…この身体を依代にして再び神になろうと!!…後は簡単な話だ、宿主の負の感情を吸収し、魂を弱らせ…最後にはこうして我が体になった!!しかも我が権能たる「破壊の力」を持った元下僕がこやつの精霊だったとはな!「創造の力」は無いが…これがあれば十分だ!!】

 

「お前…いったい何をするつもりだ!」

十代が問い掛ける

 

【決まっているだろう?この次元の全てを破壊し…再び神となるのだぁぁぁ!!】

 

全てを破壊する…その声と共に破壊の結晶が光を放つ…それに触れたモノは生物・非生物関係無く「無」へと還っていった…。

 

 

「うわあぁぁ!?」

 

「滅茶苦茶すぎるザウルス〜!?」

 

「ひえ〜!?」

 

「キャアア!!」

 

十代達は必死に光を避け続けた

 

 

 

 

【フン…やはり欠片は欠片…出力は足りないな、しかしこの力と我の力があれば充分だ…!さぁいざ全てを破壊しに…】

 

「待て!!」

 

【ん?どうした小僧?貴様から破壊してやろうか?】

 

「アニキ!?」

十代が立ち去ろうとするティエラの前に立ちはだかる…

 

「ティエラ…俺はお前を許さない!!皆を傷つけた事も…遊海先生と翠さんを利用して嘲笑った事も…ここで決着を着ける!!俺とデュエルだ!!」

 

【フ…身の程知らずが、我とデュエルだと?…面白い自分の心の闇すら制御できぬ若造が…!死をもって己の愚かさを噛みしめるがいい!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

 

 

 

 

破王ティエラLP4000

十代LP4000

 

 

 

 

 

 

 

【矮小なる人間よ…まずは小手調べだ!ドロー!】

【手札から永続魔法『煉獄の消華』を発動!効果により手札の『インフェルノイド・シャイターン』を捨てて効果発動!デッキから『煉獄』と名の付いた魔法・罠カードを1枚手札に加える!我が手札に加えるのはフィールド魔法『煉獄の氾爛』!そしてそのまま発動だ!】

 

闘技場を蒼い炎の洪水が包み込む…

 

「アッチ〜!?熱い!熱いザウルス〜!!」

 

「ここにいるのは不味い!離れるんだ!!」

 

蒼い炎は熱を伴って翔達に襲いかかった、翔達は闘技場から離れようとする

 

【逃がすか!…ハァ!!】

ティエラが腕を振るう、すると炎が意思を持ったように出口を塞いだ…

 

「閉じ込められたわ!?」

 

「逃げられないッス!!」

 

「明日香!みんな!!ティエラ…お前…!!」

 

【フフフ…さて貴様が負けるのが早いか、アイツらが燃え尽きるのが早いか…どちらだろうなぁ?】

 

「いや…3つ目の選択肢がある…!貴様を倒す!!」

 

【ほう…やれるならやってみるがいい!我のフィールドの効果モンスターのレベル合計が8以下の時、墓地の『シャイターン』、手札の『インフェルノイド・ベルゼブル』を除外し『インフェルノイド・ヴァエル』を特殊召喚!】

 

色欲を司る緑色の真空管を持った悪魔が現れる ATK2600

 

「攻撃力2600…、いきなりか…!」

 

【我はカードを1枚伏せてターンエンド!さぁ…乗り越えてみせろ!!】

 

ティエラLP4000

ヴァエル フィールド氾爛 消華 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十代…!ボク達の事は気にするな!自分達でなんとか防いでみせる!」

 

「アニキ!遊海先生と翠さんの仇をとってくれザウルス!!」

 

「アニキ!頑張って〜!僕も…頑張るッス!!『レスキュー・ロイド』!放水開始!!」

 

「十代…!頑張って…!!」

 

メンバー達も力を合わせ炎を防ぎ始める…

 

「皆…ごめん、耐えてくれ!!」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『テイクオーバー・5』を発動!デッキトップから5枚を墓地におくる!」

 

墓地送り

ネクロダークマン

ネオス・フォース

ネオス

ワイルドマン

エアハミングバード

 

「そして…手札から『融合』を…!?手が動かない…どうして…!」

融合を発動しようとした十代はその動きを止める…いや、止まってしまった…頭では発動したいのに身体が動かなくなっている…

 

 

 

「アニキの様子が変ザウルス!!」

 

「まさか…融合を使う事を怖がっているのか!?」

 

エドの予想は当たっていた…超融合を完成させるために覇王は数多のデュエリストを犠牲にした…その罪の意識が『融合』というカードを使わせる事を躊躇わせているのだ…

 

 

 

 

「くそ…みんなを助けなきゃならないのに…!!動け…動いてくれ!!」 

 

【ハハハ!これは傑作だ!これだから人間は脆いのだ!少し傷ついただけで動きが鈍る…こんな奴が『覇王』を名乗るとはな!アハハハ!!】

 

「覇王…俺は覇王なんかじゃ…!」

 

 

 

 

『あなたにとっては辛い象徴かもしれない、でもそれは使う人の心次第で変わるの…人を傷つけた邪悪な力なのか…人を助ける事のできる正しい力なのか…それは心で変わるのよ…』

 

十代は翠の言葉を思い返す…力を制御するのはその人の心次第だと言うことを…

 

 

 

 

「俺は…」

 

【ん?どうした…サレンダーか?人間…】

 

「オレはみんなを助けるんだ…!だから力を貸せ!!覇王!!』

十代から力が溢れ出す…圧倒的な力でありながら全てを包み込むような優しさを持った冷酷なる金眼の王…覇王、それを十代は再び呼び覚ました…!

 

「アニキが覇王の力を…!?」

 

「蘇らせたというのか…!」

 

 

 

 

『…いくぜ!オレは手札から「融合」を発動!「フェザーマン」「バブルマン」「スパークマン」を融合!来い!「E・HEROテンペスター」!』

翼を持つ嵐のヒーローが現れる ATK2800

 

『バトルだ!「テンペスター」で「ヴァエル」を攻撃!カオステンペスト!!』

嵐の戦士の一撃が悪魔の体を打ち砕いた…!

 

【ぬぅ…!それが「覇王」の力か…!!面白い!】

 

ティエラLP4000→3800

 

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!!」

 

 

十代LP4000

テンペスター 伏せ1 手札0

 

 

 

 

 

 

 

「(ありがとう覇王…力を貸してくれて…)」

 

『(オレは奴が気に入らないだけだ…馴れ合うつもりはないぞ十代)』

 

【フン…土壇場で闇を克服したか…しかしどこまで耐えられるかな?】

 

 

 

 

 

 

 

【我のターン、ドロー!】

【スタンバイフェイズに永続罠『遡光する煉獄』を発動、効果により除外されている『インフェルノイド・シャイターン』を墓地へ戻す!さらに『氾爛』の効果を発動!インフェルノイドトークンを一体特殊召喚!】

 

真空管が一つフィールドに現れる DEF 0

 

【そして『消華』の効果を発動!手札の『インフェルノイド・ネヘモス』を墓地に送りデッキから永続魔法『煉獄の虚夢』を手札に加え、そのまま発動!これによりフィールドに存在するレベル2以上の『インフェルノイド』モンスターはレベルが1になり相手に与えるダメージは半分になる!そして手札から魔法カード『名推理』を発動、効果は知っているだろう?さぁレベルを言え!】

 

『オレは…レベル4を選択する!』 

 

【フッ…ではいくぞ…!】

 

 

 

墓地に送られたカード

 

ルキフグス

リリス

ベルフェゴル 

アスタロス2

ヴァエル

アドラメレク2

アシュメダイ

 

煉獄の死徒

消華

狂宴

激流葬

 

 

 

 

【レベル1『インフェルノイド・デカトロン』を特殊召喚!】

真空管をたくさん付けたボロボロの悪魔が現れる DEF200

 

【そしてフィールドの『インフェルノイド・トークン』と墓地の『アスタロス』『アドラメレク』を除外し墓地から現われろ!破壊の翼『インフェルノイド・ネヘモス』!!】

赤い翼と虹色の真空管を持った『アポクリフォート・キラー』と対を成す悪魔が現れる ATK3000 レベル10→2

 

「攻撃力3000…!?」

 

「あのモンスターは…!?」

 

「町を襲ったモンスターだドン!!」

 

【『ネヘモス』の効果を発動!このカードが特殊召喚に成功した時、フィールドの自身以外のモンスターを全て破壊する!蒼焔の洪水!!】 

 

蒼い炎の波がフィールドを覆い尽くす

 

『しまった!?』  

 

【バトルだ!『ネヘモス!』小僧を焼き尽くせ!『ブルーファイヤ・オブ・リンボ』!】

 

蒼い焔が十代に襲いかかる!

 

『ぐああぁぁぁ!!』

 

十代LP4000→2500

 

【その程度か小僧?我を倒すのではないのか?ターンエンド!】

 

ティエラLP3800

ネヘモス 氾爛 消華 虚夢 遡光 手札0

 

 

『ガッ…ハァ…ハァ…なんだこのダメージは…?』

十代は炎に焼かれボロボロになっている…そのダメージは今までの闇のゲームとは比べ物にならないレベルだった…

 

【フハハハ…宿主は貴様の数十倍の力を持っている!それを全力で開放しているのさ!コイツは誰かを救うために力を使っていたが我は違う!破壊のためにこの力を活用してやろう!!】

その言葉と共にティエラからの圧力が増し、周囲の炎も勢いを増してゆく…

 

「アッチ〜!?炎が強くなったザウルス!!」

 

「みんな!1箇所に集まるんだ!!」

 

「『レスキューロイド』!頑張ってくれっス〜!!」

 

「『BlloーD』!ブラッディ・フィアーズ!!」

 

「十代!!急いで!」 

 

仲間達は勢いを増した炎に追い詰められていく…

 

『みんな!!くそッ!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『スタンバイフェイズに墓地の「テイクオーバー・5」の効果を発動!墓地のこのカードとデッキの同名カードを除外し1ドロー!』

 

【我もスタンバイフェイズに『遡光』の効果を発動!墓地の『デカトロン』を手札に戻す】

 

『「強欲な壺」を発動!2ドロー!』

 

【粘るなぁ小僧…足掻けば足掻くほど最期が辛いだけだぞ?】

 

『オレは最後まで諦めない!貴様を倒しみんなを助けるんだ!!「融合回収」を発動!墓地の「融合」と「フェザーマン」を手札に戻す!そして「融合」を発動!「フェザーマン」と「バーストレディ」を融合!来い!「フレイム・ウィングマン」!!』

赤き竜の腕を持つ戦士が現れる ATK2100

 

『そして手札からフィールド魔法「摩天楼ースカイスクレイパー」を発動!消え去れ!煉獄の炎!!』

 

周囲を包んでいた焔が消え去り近代的な街へと変化を遂げる

 

「はふぅ〜…助かったドン」

 

「ギリギリセーフ…だな…」

 

「十代!私達は無事よー!」

 

『よかった…!いくぞバトルだ!「フレイムウィングマン」で「ネヘモス」を攻撃!』

 

【攻撃力の低いモンスターで攻撃?血迷ったか?】

 

『ヒーローにはヒーローの戦う舞台がある!「スカイスクレイパー」の効果発動!自分の「HERO」モンスターが自身の攻撃力より高い攻撃力のモンスターを攻撃した時、攻撃力を1000アップする!!』

 

【なんだと?】

 

ATK2100→3100

 

『喰らえ!スカイスクレイパーシュート!!』

竜のヒーローの一撃がネヘモスを貫通し爆発を起こした!

 

ティエラLP3800→3700

 

『そして「フレイムウィングマン」は破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!3000のダメージを喰らえぇぇ!!』

 

【な、なんだと〜!…というとでも思ったか?】

 

『何!?』

その瞬間、フレイムウィングマンが蒼い焔に焼き尽くされ消え去った…

 

『「フレイムウィングマン」!?』

 

【『煉獄の消華』の効果を発動した、このカードを墓地に送り戦闘した『ネヘモス』と『フレイムウィングマン』を除外した!残念だったなぁ!せっかくチャンスを無駄にしたなぁ!アハハハ!!】

 

『くっ…ターンエンドだ!』

 

十代LP2500

 

伏せ1 手札0

 

 

 

 

 

「アニキ!ヤバイっす!」

 

「手札は0フィールドも伏せカードが1枚だけ…!絶対絶命だ…!」

 

「十代!諦めないで!!」

 

『ああ、明日香…!諦めるつもりはねぇよ!』

 

【フッ…いい眼だ、我を倒すという強い意思を感じる…しかし…まだ青い!!】

 

 

 

 

 

【我のターン!ドロー!】

【スタンバイフェイズに『遡光』の効果を発動、除外されている『ネヘモス』を墓地に戻す…そして…絶望を見せてやろう…!!】

 

『なんだと…!?』

 

【我は墓地の『ルキフグス』『アスタロス』『アシュメダイ』を除外し墓地から『インフェルノイド・リリス』を特殊召喚!】

細長い体躯を持つ紫…悪魔が現れる ATK2900 レベル9→2

 

【『リリス』の効果!『煉獄』と名の付いたカード以外の魔法・罠を全て破壊する!蒼焔の嵐!】

蒼い火災旋風がヒーローの街を伏せカードを吹き飛ばす…

 

『リバースカード発動!「クリボーを呼ぶ笛」!来てくれ!「ハネクリボー」!!』

《クリクリ〜!!》

十代の相棒たる精霊が現れる DEF200

 

 

【フン…そんな毛玉を呼んでどうするんだ小僧?】

 

『へっ、相棒を舐めるなよ!コイツは意外とやるぜ?』

《クリクリー!!》

 

【フッ…ならそいつも吹き飛ばしてやろう!我は墓地の『ベルフェゴル』『ヴァエル』『アドラメレク』を除外し墓地から『インフェルノイド・ネヘモス』を特殊召喚!】

再び赤き翼の悪魔が現れる ATK3000 レベル10→2

 

【『ネヘモス』の効果を発動!吹き飛べ毛玉!蒼焔の洪水!!そして墓地の魔法カード『煉獄の死徒』を除外し『リリス』を破壊から守る!】

蒼い焔の洪水が全てを飲み込んだ

 

《クリリリ〜!?》

 

『すまない…!ハネクリボー…!!』

 

【さぁ…我が真の姿を拝ませてやろう!我は『虚夢』の効果を発動!このカードとフィールドの『ネヘモス』『リリス』、手札の『デカトロン』を墓地に送り…融合!!】

ティエラの体が蒼い焔に包まれる…そして3体のインフェルノイドが焔に飛び込む

 

「いったい…何が起きようとしている!?」

 

「嫌な予感しかしないッス〜!!」

 

【「フハハハ!我が真の力を見るがいい!全てを燃やし尽くす破壊の神…『インフェルノイド・ティエラ』の姿を!!!」】

 

焔が晴れる…そこには巨大なる『破壊神』が顕現していた…その胸には遊海が力なく埋め込まれている ATK3400

 

『ぐっ…!これがティエラ…貴様の本性か!!』

 

【『然り、これこそが我が神体…その第1段階だ!我の効果を発動!お互いに融合デッキのモンスターを3体墓地に送る!我の融合デッキにカードはない!』】

 

『ぐっ…ならオレは「アクアネオス」「サンダージャイアント」「ランパートガンナー」を墓地に送る!!』

 

【『さぁ…消え去るがいい!バトル!我でダイレクトアタック!煉獄破砕!!』】

 

蒼炎を束ねた破壊の息吹が十代に直撃した…

 

『うあ"あ"あ"あ"あ"あっ!!!』

 

 

 

 

 

【『フッ…他愛も無い…なんだと?』】

 

「ハァ…ハァ、何を勝った気になってるんだ…ティエラ…!」

 

十代LP2500

 

十代は破壊の息吹の中で生きていた…しかし余波で服はボロボロになり体もふらついている…

 

【貴様…何故生きている!我が攻撃は直撃したはずだ!】

 

「俺の相棒を舐めるなって言っただろ…?『ハネクリボー』が破壊されたターン、俺は戦闘ダメージを受けないんだ…!」

 

【フッ…小癪な手を…!しかし貴様の命は風前の灯、しかも手札は1枚、フィールドにもカードは無い!…次のターンで我の勝ちだ!!ターンエンド!!】

 

ティエラLP3700

 

ティエラ 遡光 手札1

 

 

 

 

 

 

 

「あっ…く…身体中が痛てぇ…これが神の力か…!!」

 

「アニキ…!」

 

「十代…踏ん張れ!お前なら…お前なら奇跡を起こせるはずだ!」

 

「十代!みんなが付いてる!だから…負けないで!!」

 

「翔…オブライエン…明日香…!俺は…!」

十代は腕に力を込める…その時に自分が何かを持っている事に気づいた…

 

「ん?俺の手札は0のはずだ…このカードは…!!」

 

 

 

 

 

 

『十代…このカードはお前が持っているんだ、きっと役に立つ時が来る…ただし!』

 

「ただし?」

 

『このカードは一度効果を使いきれば消えてしまう…そういうカードだ、使いどころは気をつけろよ?』

 

 

 

 

「遊海先生…使い時は今だよな…!!力を貸してくれ!」

 

 

 

「俺のターン!!ドロー!!」カンコーン

「いくぞティエラ!人間の底力を…見せてやる!」

 

【人間の底力だと?やってみるがいい小僧!!】

 

「いくぜ!俺はライフを半分払い手札から魔法カード『賢者の石ーサバティエル』を発動!その第一の願いによりデッキの魔法カード『Oーオーバーソウル』を手札に加え、このカードをデッキに戻す!」

 

十代LP2500→1250

 

「そして『オーバーソウル』を発動!墓地から蘇れ『E・HEROネオス』!そしてデッキの『賢者の石』を手札に戻す!」

《ハァッ!!》

 

宇宙の波動を受けた白き戦士が現れる ATK2500

 

「そして再び『賢者の石』を発動!第二の願いによりデッキの『アサルト・アーマー』を手札に加える!」

 

十代LP1250→625

 

「そして『アサルト・アーマー』を『ネオス』に装備!効果により攻撃力を300アップ!そして『賢者の石』を手札に加える!」

ネオスがオレンジ色の闘気を纏う ATK2500→2800

 

「そして再び『賢者の石』を発動!第3の願い!墓地の『ネオスフォース』を手札に加え、このカードを墓地へ!」

 

十代LP625→313

 

「そして『ネオスフォース』を『ネオス』に装備!これにより攻撃力が800アップする!!そして『賢者の石』を手札に戻す!」

 

ATK2800→3600

 

【馬鹿な!?我の攻撃力を超えただとぉ!!?】

 

「そして…これで最後だ!『賢者の石ーサバティエル』の真の力を発動!『ネオス』の攻撃力を…倍にする!!」

 

【なに〜っ!!?】

 

賢者の石がその姿を変えネオスの拳に嵌まるガントレットになる ATK3600→7200

 

「バトルだ!『ティエラ』!人間の底力を…受けてみろぉぉぉ!奇跡を起こせ!!『究極拳ネオス=サバティエル』!!」

 

虹色の光を纏ったネオスがティエラの胸を貫通する…その腕には遊海の姿があった…

 

【バ…馬鹿な…我がこんな小僧にまた倒されるというのか…ありえない…ありえないぃぃぃ!!オノレ小僧!遊城 十代ー!!!!】

 

ズガーン!!!

 

大爆発と共に…降臨した異世界の破壊神・ティエラは跡形も無く消滅した…

 

 

ティエラLP0

 

 

十代 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生!遊海先生!しっかりしてくれ!!」

 

十代はティエラから助け出した遊海に呼びかけていた…力を使い果たした「賢者の石」は既に消滅している…

 

「…!…!」

 

「遊海先生!!気がついたか!!」

遊海はゆっくりと目を覚ます…しかし力をティエラに吸われ続けたために話す力さえ残っていなかった…

 

「……!」

 

「先生…なんて言ってるかわからないよ…!」

 

「…『十代、迷惑をかけてすまない』…」

 

「!?オブライエン!」

 

「読唇術だ…オレが通訳する…答えてやってくれ…!」

 

「ありがとうオブライエン…先生、迷惑なんて…いつも俺の方がかけてるじゃん…!」

 

「……!」

 

「『十代、翠は?精霊達は?』」

 

「っつ!ごめん…守りきれ無かった…!翠さんは…あっ…!」

遊海は弱々しい手で十代の頭を撫でる…

 

「……!」

 

「『全ては俺の責任だ…お前はヨハンをユベルから助け出せ…お前ならやれる』」

 

「先生…!」

 

「あ…り…が…と…な……」

遊海はそれだけを言い残し…消滅した…

 

「先生…先生!!うわあぁぁぁ!!!」

 

十代は子供のように泣き続けた…遊海のデュエルディスクを抱きながら…。

 

 

 

 

 

「十代…行こう、ヨハンを救い…ユベルとの決着をつけるんだ…!」

 

「ああ…悲しみは全部ここに置いていく…泣くのは全てが終わった後だ…!」

 

「アニキ…行くザウルス…オレが邪魔者は全部蹴散らすドン!」

 

「ユベルを倒せば兄さんや遊海先生も戻ってくるはず…行きましょう!」

 

「ああ…!いざユベルの元へ!!」

 

「「「「おうっ!!」」」」

 

《十代さん…コッチデす!ワタシが案ナイシマす!》

 

アヤカはティエラ落とした「破壊の力」を取り込ませる事で再起動した…ただ核石を再生している途中のため翔が抱えて運んでいる…

 

「ありがとうアヤカ!待ってろよ…ヨハン!!」

 

 

 

 

 

 

 




Side十代


俺は無事にヨハンを助ける事ができた、ユベルに憑依され「レインボードラゴン」の中に封じられていたヨハンの魂を救い出し、ユベルとの決戦へと挑んだ…。

お互いを傷つけ合うデュエルの末、俺とユベルは魂の超融合を果たし破滅の光との決着をつける…大人になるための旅に出ようとしていた…。



「アニキ…どこに行くンスか!?一緒に帰ろうよ!!」

「翔…ごめん、ちょっと旅に行ってくる…大人になるための旅に…!」

「アニキ…絶対に帰ってきてね!!待ってるからね!!」

「ああ…必ず帰る…だから…待っててくれ…!!」

「うん!!」 

《行こう十代…破滅の光との決戦へ…!》

「ああ…いくぞユベル!!」




そして俺達は宇宙へと飛び出した…









         第3章 封鎖破壊神域超融合・終




───────────────────────
★悪魔


ユベルの呪いにより遊海の魂に刷り込まれた邪悪なる力、デス・ベルトに付与されていた「茨の呪い」はこれを隠すための隠れ蓑だった。

本来であればユウスケに取り込まれるはずの負の感情を取り込み力を増し、さらに夢に干渉し遊海の魂を徐々に弱らせていた。


異世界編中盤、負の感情を増幅する「邪神教義」の怒・悲・苦・憎を密かに吸収しブロン戦にて力を開放、「邪神経典」の生贄になる瞬間に遊海を浸食しその姿を異形の姿に変えた(なお「邪神教義・疑」を吸収しなかったのは遊海が強い疑念の感情を持っていなかったためである)

 

その後遊海は精神の力で悪魔を押さえ完全なる浸食を抑え込んでいたがユベルの干渉にて魂の9.9割を浸食され悪魔と化してしまった…しかしその悪魔には何故か理性がほとんど無く決闘者の本能と破壊の意思のみで動いている…?


 

●破王ティエラ

 
破壊の悪魔の正体、DT世界にて「智天の神星龍」に倒された「創星神tiera」そのもの。

神星龍に倒されたのち、魂がDT世界から弾き出され長い年月次元の狭間を彷徨っていたがユベルの呪いの術式に入り込む事により遊海の身体を奪った、しかし遊海の最後の抵抗により理性を封印され破壊神の本能のまま破壊の限りを尽くした。

 

そして異世界編終盤、翠が悪魔を打倒した事により封印を施していた遊海の魂の残滓が消滅、破王ティエラを名乗った(遊海は誰かに自分諸共理性の無い悪魔を倒して貰い消滅するつもりでいた、しかしティエラにより遊海の魂だけが身代わりになってしまった)

 

覚醒したティエラは彩華が「ケルキオン」から預かっていた「破壊の力」の欠片を奪い取り次元を我が物にしようとした、そして十代とのデュエルにより神体「インフェルノイド・ティエラ」を開放、圧倒的力で十代を追い詰めたが土壇場に十代の発動した「賢者の石」の力を受けた「ネオス」により完全に消え去った。

 

悪魔の姿のイメージは白猫プロジェクトの暴走主人公・イシュクル



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断章 英雄深層領域 深淵
目覚めぬ者〜英雄の闇〜


アカデミア・校長室

 

「…以上で異世界に関する報告を終わるノーネ、鮫島校長…」

 

「…デュエルモンスターの精霊達が存在する異世界…遊海さん並びに十代君の暴走…全ての元凶たるユベルとの対峙…あなた達の居ない3週間にそんな事があったとな…」

 

翔達が異世界から帰還して1週間が経った、教師であるクロノスは報告書をまとめ鮫島校長に異世界での出来事を報告していた…。

 

 

 

「私は全員が無事に帰ってくる事を願っていましたが…大切な生徒達が戻っていない事が…残念でなりません…!」

 

「遊城 十代・三沢 大地…この両名のみ異世界から帰還してないノーネ、2人の…特にセニョール十代の活躍があったからこそ他の生徒達もワタシも無事に帰ってくる事ができたノーネ!ヨヨヨ…!」

 

「いえ…悲観的な事を言うのはやめましょう…十代君も三沢君も優秀な生徒です、必ず戻ってきます!…そう信じて待ちましょう…。」 

そう言いながら鮫島校長は2人の書類をまとめる…

 

「クロノス先生、このファイルを旧特待生寮で行方不明になった生徒達と同じ所へ…」

 

「わかりましたまシータ…失礼しますノーネ!」

 

クロノス先生はファイルを持って校長室を出ようとする…

 

「そうだ…クロノス先生?」

 

「なんでしょうか?」  

 

「彼は…遊海さんはまだ目覚めないのですか?」

 

「はいなノーネ、身体は疲労が残っているけど健康そのものだと鮎川先生が言っていたノーネ…」

 

「そうですか…呼び止めてしまってすまなかった…」

 

「大丈夫なノーネ、ワタシもセニョール遊海が心配なノーネ…では…!」

 

 

 

 

「遊海さん…生徒達も心配しています…早く元気な姿を見せてください…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アニキ…早く戻ってきて欲しいっす、約束したじゃないッスか…」

 

翔は丘の上で1人十代を待ち続けていた、遊海…否、破王ティエラを倒した十代達はアヤカの案内の元ユベルそしてヨハンの行方を追った、そしてついに十代達はヨハンとの再会を果たす…しかしヨハンはユベルに憑依され闇の力を得たA宝玉獣…そしてレインボー・ダーク・ドラゴンと共に襲いかかってきた、そして十代は自身のトラウマを振り切り「超融合」を発動、レインボーダークに封じられていたヨハンを開放する事に成功した。

 

 

そして十代とユベルの最終決戦…歪んだ愛を持ってしまったユベルと十代の激しい戦いの末、十代はユベルと魂の超融合を果たした。

そして十代は自身の使命…破滅の光との決着をつけるために旅立っていった…それから1週間が経った。

 

「オブライエンやヨハンも自分の学校に戻っちゃったし…ナポレオン教頭とマルタンもいなくなっちゃった…みんなはアニキが死んじゃったって思ってるんスよ…!」

 

翔は涙を流す…

 

「アニキ…今日は月に一度のエビフライの日ッスよ…!帰って来てよ…アニキィィ!!」

翔は無意識に空に向かって叫んでいた…

 

《何やってるの翔君?》

 

「あっ…ウィンダさん…」

翔の隣には実体化したウィンダの姿があった、食堂から飛び出した翔を追ってきたのだ。

 

《大丈夫よ!十代君は新しい自分を探しにいってるだけ…きっと帰ってくるわ!それよりも翠が心配してるから早く戻ろう?万丈目君も謝りたいって!》

 

「万丈目君が…わかったッス…あっ!…流れ星!!」

 

《あっ…本当だ!》

翔が夜空を見ると赤く光る流れ星があった…

 

「そうだ!お願い事しなきゃ!アニキが早く帰ってきますように、アニキが早く帰ってきますように…!!」

 

《翔君…、アレ?なんか近づいてきてるような…!?》

 

宙の彼方から現れた流れ星…流星は翔達に向かって落ちてくる…!

 

《あ、危ない!!》

 

「ギャン!?」

ウィンダは咄嗟に翔を抱えて飛び退く、流星は2人のいた所を掠め森に落下し爆発を起こした!

 

「ほ、星が落っこちて来たッス!?」

 

《行ってみましょう!》

ウィンダと翔は隕石の落下地点へ向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァハァハァ…うわ…すごいッス…」

 

《すごいクレーターね…》

 

2人が落下地点に着くと周囲は砂ボコリに覆われ、10メートル程のクレーターが出来ていた…。

 

《!!翔君…下がって、何かいるわ…!》

ウィンダは杖を顕現させながら翔に注意を促す

 

「ふぇっ!?宇宙人すか!?…あっ…!」

 

そして砂ボコリが晴れる…そこには…

 

「アニキ…!」

 

「翔、ウィンダ…今日はエビフライの日だっけ?ヘヘッ!」

自分探しの旅を終え一回り成長した十代の姿があった…。

 

「う…うわぁ〜ん!アニキ〜!!」

 

《おかえりなさい!十代君!》

 

「ただいま!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レッド寮・食堂

 

 

「翠さ〜ん!みんな〜!大変ッス〜!!」

 

「翔君!どうしたの?」

 

「翔…さっきはすまなかったな…」

十代の思い出話を続けていた翠、万丈目、明日香、吹雪、剣山の元に翔が息を切らして駆け込んで来た

 

「そ、それよりもアニキが!アニキが!!」

 

「「「えっ?」」」

 

 

「ただいま!待たせちまってごめん!」

 

「「「じゅ…十代が帰って来た〜!!」」」

 

「十代!貴様…オレを置いてどこに行ってたんだコノヤロー!!」

 

「万丈目ごめんって!」

 

「もう!心配したんだから!」

 

「そうザウルス!!アニキが帰ってきてくれて俺…オレ…うおぉぉ!!」

 

「おかえり十代君!少し大きくなったか?しかし…明日香に心配をかけるとは許せないかな〜!」

 

「うわぁ!?ごめん!みんなごめんって!!」

十代は皆に揉みくちゃにされる…

 

 

「おかえりなさい十代君!無事でよかったわ!」

 

「翠さん!!体は大丈夫ですか!?」

ひとしきりみんなに揉まれた十代の所へ翠がやってくる

 

「ええ!もう大丈夫よ!少しヒリヒリするけど問題ないわ!はい!エビフライよ!お腹すいたでしょう?いっぱい食べてね!」

 

「うわぁ…!ありがとう翠さん!いただきます!」

 

十代は嬉しそうにエビフライにがっついた…

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした!美味しかった〜!」

 

「ふふ、よかったわ…そういえば旅の間のご飯はどうしてたの?」

 

「それは…その…内緒で!!」

 

「アニキ…いったい何を食べてたんすか…?」

 

「アハハ…そういえば遊海先生は?翠さんがいるって事は帰ってきてるんだろ?」

 

「あっ…」

 

「「「…」」」

 

「えっ…みんなどうしたんだよ…?」

 

十代のから遊海の事を聞かれたみんなは下を向いてしまう…

 

「まさか…戻ってきてないのか…!?」

 

「アニキ…戻ってきてはいるんだドン…ただ…」

 

「ただ…?」

 

「剣山君、今はいいわ…十代君、今日はもう休みなさい…明日、一緒に会いに行きましょう」

 

「翠さん…わかった…」

 

そして少し暗い雰囲気を残したままその日は解散となった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝・アカデミア地下隔離病室

 

 

 

 

翌日クロノス先生や校長に帰還の報告をした十代は翠と共に病室を訪れていた…。

 

コンコンコン

 

「…入るわねアヤカちゃん!」

 

病室ではアヤカ・フレア・トフェニの3人が眠り続ける遊海を看病していた…。

 

《翠さん…十代君おかえりなさい!あなたなら無事に帰ってくると思ってました!》

 

「アヤカ…どういう事だよ、遊海先生が目覚めないって…!」

 

《原因はわかりません…身体は健康そのものなのに異世界から帰還して…一度も目を覚まさないんです…》

 

「そんな…」

 

 

 

遊海はユベルとの決着により皆と一緒のタイミングで異世界から帰還した…しかし意識が回復する事なく眠り続けていた…。

 

《私とマスターは魂が繋がっていてある程度状態がわかるんです…でも今回はマスターが悪魔化してしまった影響でその回路が切れてしまって…魂がマスターの中にある事はわかるのですが…》

 

《ユウミは先の戦いでとてつもないダメージを受けました…肉体的にも、精神的にも…それが原因だと思うのです…》

 

アヤカもフレアも遊海を救う事ができず気落ちしているようだった…。

 

「遊海さんとの決戦の事はみんなから聞いたわ…まさか破壊神に浸食されていたなんて…しかも私が遊海さんに…」

 

「翠さん!遊海先生は自分で言ってたんだ『全部自分の責任だ』って…先生も翠さんもティエラに利用されただけなんだ!だから…!」

 

「ありがとう十代君…フフ、見た目もだけど心も成長したみたいね!」

そう言いながら翠は遊海のベッドの隣に座る…

 

「遊海さん…十代君が帰ってきましたよ!あとは遊海さんの目が覚めれば全員無事なんです!目を開けてくださいよ!…遊海さん!!」

翠は遊海の手を握りながらポロポロと涙を流していた…。

 

「翠さん…」

《クリクリ〜!》

 

「ハネクリボー?どうした?」

《クリクリクー!!》

 

姿を現したハネクリボーは何かの気配を感じたようだ

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

「はい…どうぞ!誰かしら?」

病室の扉がノックされる…すると…

 

『入るぞ翠、久しぶりだな!』

 

「かッ…か…!?」

 

「海馬さん!どうしたんですか!?」

 

『フン、遊海がまた倒れたと聞いてな移動の合間に見舞いにきたのだ!』

 

病室に現れた人物…それは海馬だった。

 

『まったく…伝説の決闘者といわれるお前が…情けないな遊海…!』

海馬は意識の無い遊海に話しかける…

 

『貴様は何度人に心配をかければ気が済むのだ!遊戯もお前の事を心配しているのだぞ!…早く目を覚まさんか…馬鹿者…!』

海馬は厳しくも遊海を心配した言葉を投げかける

 

『時間か…邪魔をしたな翠、オレはまた童実野町に帰らねばならん…最新の医療班も待機している、早くコイツを目覚めさせろ!』

 

「海馬さん…ありがとうございます…!」

 

『礼などいい…遊海が目覚めればそれでな、それから…遊城 十代!』

 

「は…はいッ!?」

海馬の気迫に呑まれていた十代は返事を返す

 

『鮫島校長から異世界での話は聞いた、暴走したと聞いたが…その様子なら大丈夫だな!異世界における活躍、見事だった!そのまま修行を積みオレや遊戯のような決闘者になるがいい!…さらばだ!』

 

そのまま海馬は去っていった…。

 

「あ、ありがとうございます!!」

十代は深く礼をしてそれを見送った…。

 

 

 

 

 

 

「あ、あれが海馬 瀬人…初めて近くであったけど…オーラが半端ない…!!」

 

海馬が去った病室では十代が座りこんでいた…海馬の放つ強者のオーラに当てられたようだ…

 

「フフフ、海馬君は昔からあんな感じよ?学生の頃から頑張って軍需産業の会社だった海馬コーポレーションを今のカードゲームの会社に変化させたの、自分の夢…世界中の子供達を笑顔にするために!」

 

「すごい…流石海馬社長…スケールがデカイなぁ…ん?」

 

「十代君?どうしたの?」

 

「いや…遊海先生のデッキケースが光った気がして…」

 

「デッキが?」

翠はハンガーに掛けてある遊海のデッキケースを手に取る

 

「これが遊海先生のデッキケース…何個デッキが入るんだ…?」

 

「大体10個くらいかしら…遊海さんはどんな相手にも対応できるようにたくさんのデッキを持っているの…」

 

「三沢みたいだな先生…」

 

「十代君どの辺りだった?」

 

「えっと…左側の2つ目…かな…?」

 

「ここね…あらっ?」

 

「どうしたんですか?」

 

「小さな封筒が…中に何が…?」

デッキケースの中には小さな古ぼけた白い封筒が入っていた…翠は中身を取り出した。

 

 

 

「…ひでぇ…破かれたカードだ…遊海先生がこんな事を…?」

封筒に入っていたのはバラバラに破かれたカードだった

 

「このカード…まさか!」

翠はカードの破片をテーブルの上に並べ始める…そして自分のデッキから1枚のカードを取り出す

 

「…やっぱり…このカードは…あの時の…!」

 

「これ…『メガロック・ドラゴン』?翠さん…知ってるのか?」

 

「ええ…幼い頃の私と遊海さんが別れる時に渡してくれた『約束のカード』…昔に破かれたって言ってたけど…大事に持っててくれたんだ…」

 

「遊海先生と翠さんを繋いだカードかぁ…でもそんなカードを破くなんて…許せねぇ…!」

十代は拳を握りしめる…

 

「遊海さんの今の切り札はアヤカちゃんなんだけど、私が出会った時はこのカードが切り札だったの…懐かしいな〜…あれ?…カードが…!」

翠が自分のメガロック・ドラゴンを見ると弱々しい光を放っている…

 

「おかしいな…このカードには精霊は宿って無いはずなのに…?ハッ!?まさか遊海さんの中で何かあったんじゃ!?」

 

「翠さん!もしかしてそれ先生からのSOS…!?」

 

「かもしれないわ…!アヤカちゃん!『千年玉』は使える!?」

 

《はい!使えます!》

 

「私を遊海さんの心の中に連れて行って!」

 

「翠さん!俺も連れて行ってくれ!遊海先生がピンチなら助けになりたいんだ!」 

 

「…わかったわ、でも気をつけて人の心の中には何があるかわからないから…!」

 

「わかった!」

 

《翠殿、拙者もお供します!主を救う手助けが出来るかもしれない!》

 

「ありがとうトフェニさん!…アヤカちゃん!お願い!」

 

《了解です!…千年玉起動…マスターの精神世界への同調開始…アンサモンプログラム起動…精神ダイブ…実行!》

 

アヤカが強い光を放つ…そして翠と十代の意識は遊海の精神世界へと吸い込まれていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁ!?落ちる〜!?」

 

「十代君大丈夫!心の中心に吸い込まれてるだけだから!」

 

翠と十代はトンネルのような空間をひたすらに落ち続けていた…

 

「翠さん!これどこまで落ちていくんだ〜!?」

 

「わからないわ!でも…あの光まで行けば!」

翠達の足元には小さな光があった、あれが出口なのだろう…

 

「十代君!しっかりと意識を保って!遊海さんの意識に呑まれないように!」

 

「わかった!」

 

そして翠達は光の中に落ちていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光を通り抜けた3人はゆっくりと地面に降り立つ…そこは真っ暗な空間だった…

 

「着いた…でもおかしいわ…?心の部屋がこんなに暗いなんて…?」

 

「ここが遊海先生の心の中…でも何も見えない…」

 

「トフェニさん、周りを照らせる?」

 

《御意!太陽神の加護をここに!》

トフェニの魔法陣から光の玉が飛び出し周囲を照らしていく…

 

「これは…」

 

「酷すぎる…どうして…!」

 

照らされた空間は…破壊された心の部屋だった、そこにあったであろう家具は砕け内装もボロボロになっている…

 

「まるで嵐が直撃したような荒らされ方だ…それに、遊海先生がいない…」

 

「ええ…本来ならこの場所に遊海さんはいるはずなんだけど…」

 

心の部屋には人気が無く静まりかえっている…

 

「翠さん!奥にドアがある!」

 

「…行ってみましょう!」

2人は足元に気をつけながら部屋を進みドアを開いた…

 

「階段?」

 

「階段ね…たぶん心の深層…魂の近くまで続いているはずよ…」

 

ドアの先はひたすらに続く螺旋階段だった…下は見えず無限に続いているように見える…

 

「行ってみましょう…ここに遊海さんがいないって事は深い所にいるはずだから…!」

 

「わかった!行こう翠さん!」

 

そして3人は階段を降り始めた…

 

 

 

 

 

 

 

 

ひたすらに階段を降り続けて30分?程が経った…風景が変わる事無く続いていたが…一つの変化が訪れる…白い靄が目の前に現れたのだ。

 

「こんな場所に霧…?」

 

「十代君…一応手を繋ぎましょう、何があるかわからないわ…!」

 

「…わかった」

十代は少し躊躇しながら翠と手を繋ぎ霧の中に足を踏み入れた…その時!

 

「っつ!?なんだ…!?」

 

「何かが…流れ込んでくる…!」

 

《翠殿!十代殿!どうしたのだ!?》

 

2人の頭の中に何かが入り込む感覚が襲いかかる…そして2人の意識は暗転する…

 

 

 

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

『バトルだ!「暗黒騎士ガイア」で裏守備モンスターを攻撃!』

 

「リバース効果発動!『メタモルポット』!」

 

2人が気がつくとそこは公園のテーブルだった…そこでは小学生くらいの少年達がデュエルをしていた…

 

ーこれは…もしかして、遊海さんの記憶…?ー

翠は一目で気づいた、目の前でメタモルポットを使った少年…それが遊海…否、優介であると…

 

「おれのターン!墓地の岩石族10体を除外して…来い!攻撃力7000の『メガロック・ドラゴン』!!」

 

『なっ!?マジで!?』

 

「『暗黒騎士ガイア』を攻撃だ〜!」

 

『ああ…負けちゃった…』

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

 

 

ーえっ!?俺のセリフ!?遊海先生がどうして…?ー

 

 

「ねぇ!お兄ちゃん達何やってるの?」

デュエルをしていた2人に1人の少女が話かける

 

「ん?カードゲーム…遊戯王だよ!」

 

『お前も興味あるの?』

 

「うん!この石みたいなのかっこいい!」

 

「おっ!コイツの良さがわかるか!じゃあおれが教えてやるよ!」

 

「ありがとう!」

 

「君の名前は?」

 

「わたしは春美!」

 

「おれは優介!よろしくな!」 

 

 

そして再び暗転する…

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

「バトル!『究極宝玉神レインボー・ドラゴン』で『メガロックドラゴン』を攻撃!効果で攻撃力を4000ポイント上げて攻撃力7000の『メガロック』を倒すよ!」

 

「あっちゃ〜負けた〜!」

 

「勝った!」

 

「強くなったな~春美」

 

「ううん、優介兄が教えてくれたからだよ!」

 

「そっか…、ねぇ話があるんだ…」

 

「どうしたの?」

 

「おれ、明後日引っ越すんだ…」

 

「嘘!?」

 

「本当…、だから二人で決闘するのもこれで最後!」

 

「そんな…、寂しいよ優介兄…!」

 

「…よし!ならお前にこれをあげる!」

 

そう言って遊海はメガロック・ドラゴンのカードを渡す

 

「えっこれってお兄ちゃんのお気にいりの!?」

 

「うん、そうだよ!でも大丈夫そのうち返して貰うから!」

 

「?」

 

「おれ引っ越すの同じ東京の中なんだ、だからお互いに大きくなったらどこかのカードショップで会えるかも知れない…だからそれまで預かってくれるか?」

 

「うん!わかった!」

 

「じゃあ指切りだ!」

 

「『指切りげんまん~…』」

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《翠殿!十代殿!大丈夫か!?》

 

「はっ…!?今のは…」

 

「転生前の遊海さんの記憶…」

2人の意識が戻ると階段を一段降りたところで立ち止まっていた…白い靄は消えている。

 

「…あれが遊海先生と翠さんの出会いなのか?」

 

「ええ、公園で楽しそうに遊んでいたあの人を見て一目惚れだったの…私の初恋だったわ…」

 

「そうだったんだ…というか翠さん『レインボー・ドラゴン』使ってたような…!?」

 

「…私達のいた世界では『レインボードラゴン』や『ネオス』はありふれたカードだったの…たくさんの種類のカードがこの世界より安く手に入る…そんな世界だったの…!」

 

「そんな羨ましい世界があるんだ…!いいな〜!」

 

「でもデュエルディスクも無いし…ソリッドビジョンシステムも無かった、テーブルデュエルが一般的な世界だったの」

 

「それは…少しつまらないかな…」

 

「十代君、先を急ぎましょう…遊海さんの記憶が見えたっていう事は居場所に近づいてるって事だと思うから…」

 

「はい!行きましょう!」

 

再び3人は階段を降り始めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして階段を降り続けると再び霧が現れる…その色は黄色だった…。

 

 

「また霧が…」

 

「これも遊海さんの記憶みたいね…気をつけて行きましょう…!」

 

「はい…!」

そして2人は霧の中へと踏み込んだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

「やめてよ…!本を返して!」

 

「返すかよ!根暗女!こんな本ばっかり読みやがって!」

場面は中学らしいところへ移る、そこでは1人の少女が数人の男子にいじめられていた…そこに…

 

『やめろよお前ら!そんな事して楽しいのか!』

 

「ケッ…チクリ魔の優介か…ほら!返してやるよ!じゃあな!」

男子達は少女に本を返すと立ち去っていった…

 

「あ、ありがとう…どうして…?」  

 

『女の子をいじめる奴が許せなかった…それだけだよ』

 

「ありがとう…」

 

 

ー遊海さん…昔から優しかったんだ…ー

 

ー昔から人助けが好きな人だったんだな…ー

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

『…』

場面が変わると優介は廊下を歩いていた…そして階段に行き当たる…と

 

「…!」ドン

 

『うあっ!?』

 

ーあっ!?ー

 

ドンガラガシャーン

 

いじめっ子が優介にわざと当たり、階段へと突き落とした!優介は階段を転げ落ち呻き声を上げる…

 

『うぐぅ…!誰だよ…!俺を突き落としたのは…!』

 

「あっ、わりぃわりぃ!躓いちまった!」 

 

『次は気をつけてくれよ…!アイタタタ…』

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

場面が変わると体育の授業…プールの場面だった…

 

『はっ…はっ…!』バチャバチャ

優介はクロールで泳ぎ続けている…と

 

「ニヤッ…えい!!」

 

『ガッ…ゴバガッ!!?』

 

前を泳いでいたいじめっ子が優介の頭を蹴飛ばし水中へと沈める…そして優介を抑え込んだ!

 

『ガッ…ゴボボ…!!』

 

「コラッ!そこ!何やってる!!」

 

「すいません!足が彼の水泳帽に引っかかっちゃって!」

 

「何!?優介!大丈夫か!!」

 

『…』

優介は水を飲んでしまい気絶していた…

 

「いかん!」

 

その後救命処置を受けた優介は病院へと運ばれた…

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

「聞いたかよ…アイツ水泳の授業で溺れたんだってよ!」

 

「聞いた!体育の先生にキスされたんだろ?気持ちわりぃ…!」

 

「おい!アイツが来たぜ!」

 

 

『…おはよう!』

 

「近づくなよ〜先生にキスされた優介菌が移るから〜!」

 

『なっ…そもそもそれはお前が俺を蹴ったから…!』

 

「うっせえんだよ!近寄るな!バイ菌!」

 

『バイ菌だとこのやろう!』ガシッ

優介はいじめっ子の襟を掴む

 

「うわぁ〜!誰か助けてくれー!優介に殴られる〜!!」

 

「コラッ!何やってる!」

 

『先生!コイツが!』

 

「優介!暴力はダメだと言っただろう!」パチーンッ

 

『あっ…』

担任らしき先生は遊海を平手打ちする…

 

「ほら優介!謝りなさい!」  

 

『えっ…あっ…』

 

「謝れ!!」

 

『…ごめんなさい…』

 

「…!」ニヤニヤ

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ひでえ…遊海先生辛そうだった…」

 

「遊海さん…どうしてあなただけ辛い目に…」

 

《…今の記憶は拙者にも見えました…主をいじめていた者共…許せん…!!》

トフェニは拳を握りしめる…いつも明るく振る舞っていた遊海の闇…それを目の当たりにしたからだ…

 

「…先に進みましょう…」

 

再び3人は階段を降り始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段を進む3人の前に再び霧が現れる…その色は赤色だった…

 

 

「翠さん…嫌な予感しかしないんだけど…」

 

「それでも進むしかないわ…!行きましょう!」

 

3人は再び霧へと足を踏み入れた…

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

『…これは俺じゃない…これは俺じゃない…』

 

優介は自分の部屋らしきところで頭を抱えていた、顔には出さないが身体は傷だらけになっている…

 

『アイツらにも人の良いところはあるはずだ…だから…まだ…!』

優介は1枚のカードを持って自分の怒りを抑え込んでいるようだった…

 

『…あの子は元気かな…?また逢えるといいな…』

そのカードはメガロック・ドラゴンだった…

 

『力を貸してくれ…メガロック…!』

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

「おい優介!金寄越せよ!」

 

「おい!このオタク!」

 

「なんでお前みたいに弱い奴が遊戯王やってるんだ?」

 

「シャーペンなんていらないだろ?貰ってやるよ!」

 

『やめて!返してくれよ!』

 

この頃には優介に対するいじめは悪化しカツアゲまでされるようになっていた…そして

 

『やめてくれよ!俺は…!』

 

「うるせぇ!口ごたえするな!」バキッ

 

『ガッ!?』パサッ

優介は殴られ生徒手帳が床に落ちる

 

「生徒手帳か…どれどれ…あっ!コイツカード持ってきてやがる!」

 

「『メガロック・ドラゴン』…使いにくい雑魚カードじゃないか?」

 

「こんなカードいらねーな…!」

 

『や、ヤメ…!』

 

びりびり!ビリッ!

 

『あっ…』

 

「「ギャハハハハ!」」

 

 

『あ…アアア!!!』

 

(優介…怒りを開放しろ!我が殺る!!)

 

『グッ…あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!』

 

「なんだよコイツ!?いきな…うわぁ〜!!!」

 

その日優介は初めて本気で人を殴った…それは蹂躙とも言えるもので周囲は血に染まっていた…

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

「優介!なんであんな事をしたの…!」

 

『…』

 

「優介!なんとか言いなさい!」

 

『いじめられてた…我慢できなかった…!自分を抑えられなかった…!!』

 

「優介…でもそれは友達を殴る…傷つける理由にはならないわ!なんでお母さん達に相談しなかったの!」

 

『…先生にも信じて貰えなかった…だから…!』

 

「優介…」

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…こんな心の傷を抱えて…私…知らなかった…だからドーマの時…!」

 

『やめろ!!やめてくれ!俺に悪意を向けないでくれ!…頼むから…やめてくれ!』

 

 

「翠さん…俺は遊海先生の過去を見ても何も言えない…でも先生はこれを乗り越えて今の先生になったんだよな…」

 

「ええ…」

 

「やっぱり遊海先生はすげぇよ…!」

 

「…ありがとう十代君…さぁ…進みましょう…」 

 

遊海の闇を目の当たりにした翠達は再び階段を降りる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…また霧が…今度は…普通に白?」

 

「…たぶんそろそろ着くのね…行きましょう…!」

 

《御意》

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

場面は変わり高校生になった優介がいた…そして…

 

 

 

『バトル!「スターダスト・ドラゴン」でダイレクトアタック!』

 

『なんの!「リビングデッドの呼び声」!蘇れ『レッドデーモンズ・ドラゴン』!』

 

 

「…ねぇ…」

 

『ん?ああ優介か!どうしたんだ?』

 

「弱いんだけど俺も遊戯王やってるんだ…俺も仲間に入れてくれないか?」

 

『いいぜ!仲間が多い方が楽しいからな!よろしくな優介!!』

 

「うん…!!」

 

ー遊海さんよかった…ちゃんと仲間を見つけられたんだ…!ー

 

ーこれが先生の新しい出発だったんだ…ー

 

そして場面は目まぐるしく変わっていく…新たな仲間と共に青春を取り戻し楽しい学生生活を過ごす遊海の姿…そして…卒業した遊海は引越しのアルバイトを始める…。

 

 

「優介先輩!冷蔵庫お願いします!」

 

『OK!いくぞ!せーの!』

 

 

『しかし…なんでこの建物エレベーターがないんだ…?』

 

「そういう事もありますよ!ラスト一階行きましょう!」

 

『よっしゃ!いくぞ!…落とすなよ?』

 

「はい!…せーの…ヨイショ…よっしょ…よっしょ…あっ!?紐が!」

 

『なっ!?何して!うわあああああ!!?』

ドンガラガシャーン!ザクッ!グシャ…

 

 

 

『なんだよ…この映画みたいな…死に…かた…』

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生…ドンマイすぎる最期だったんだな…痛そう…」

 

「まぁ神様のせいだから…あっ出口が見えた!」

 

「本当だ!行こう!」

翠達は階段の出口へと辿り着いた…そして…

 

 

 

「うわ〜…すげぇデカイ扉が…」

 

「本当…こんなの初めて見たわ…」

 

辿り着いた先は広場だった…先の壁には人の10倍程の大きさの扉がある…

 

「あの先に遊海先生が!」

 

《待て!十代殿!何かいる!》

トフェニが前に出る…すると…

 

『…反応がひどいな…まったく…敵ではねぇよ…』

そこには黒いキャップと黒いジャケットを着た遊海の姿があった…。



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魂を守りし者〜忘れられし精霊〜

『反応がひどいな…まったく…敵ではねぇよ…』

 

遊海を目覚めさせるために遊海の深層意識へと潜った翠達の目の前に現れたのは黒い服を着た遊海の姿だった。

 

「お前…遊海先生じゃないな…!何者だ!」

 

十代は瞳を金と青のオッドアイに変化させる、真に覇王として覚醒しユベルと融合した十代は遊海には及ばないが相当な実力者になっていた…。

 

「十代君大丈夫…彼は敵じゃないわ、ですよねユウスケさん?」

 

『ああ…この姿で会うのは初めてだな翠…』

 

「ユウスケ…?何者だ?」

 

『十代は会うのは初めてか?まあいい、(オレ)の名はユウスケ…遊海の負の感情から生まれた人格だ…まあ厳密には違うんだがな…』

 

「どういう事だ?」

 

「遊海さんが秘密結社ドーマと戦った時に敵の首魁に魂を与えられてできた人格なの、私も彼の事を知ったのは遊海さんと結婚してから…でも悪い人ではないわ…」

 

『補足ありがとよ翠…しかし来るのが…遅かったな…』

 

「ユウスケさん!?」

ユウスケは床へと倒れ込む…その身体…魂はよくみると傷だらけだった…。

 

「いったい何があったんだ!どうして遊海先生は目覚めない!」

 

『話すと少し長いが…構わないか?』

 

「ええ…教えてユウスケさん、遊海さんの中で何があったのか…!」

 

『ああ…わかった、話してやるよ…』

ユウスケはポツポツと話しだした…。

 

 

 

 

 

 

『始まりはデス・ベルトをつけてからだ…急に黒い茨が魂の中に入ってきて我や遊海の魂を締めけやがった…しかも遊海が精霊の力を使うほど締め付けも強くなってな、ついには我諸共に砕け散った…まあ冥界で王様が治してくれたからよかったが…まあそこはいい問題はその先だ!』

 

「その先…?」

 

『2回目の異世界へ向かったあとから遊海からのエネルギー…「負」の感情の供給がほとんど無くなったんだ、それこそ誰かに横取りされたみたいに!それで暗黒界の…ズールだったか?アイツを倒した直後に我は黒いスライムみたいな奴に吸収されちまったんだ!意識はあるけど魂のエネルギーを根こそぎ奪われちまった…そしたらソイツ…ティエラだったか?遊海の魂まで浸食して異形の悪魔みたいなモンスターに遊海を変えちまいやがった…我も中で反抗したんだが…暖簾に腕押しだったよ…。』

 

「それで…その先は…?」

 

『あとは詳しくは知らん、遊海は悪魔に変わっちまったあと丸藤 亮?に自分の後始末を頼んだあと気味悪いヤンデレ?みたいな奴にやられちまって完全に悪魔になっちまった…その時に我の意識も完全に呑まれてあとは知らないんだよ!あぐっ…!?いつつ…』

 

「すまないユウスケ、俺の…ユベルのせいで…」

 

『ん…?いやがるな!?出てこいクソ悪魔!!』

 

 

 

《(十代…出なきゃダメ…?)》

 

「(ダメ、すぐ出てこい)」

 

《(わかったよ…)》

 

 

十代は魂に宿るユベルに語りかける…すると十代の後ろに改心しヤンデレからツンデレになったユベルが現れる…。

 

『あっ!?やっぱりいやがったな貴様!お前が破滅の光のエネルギーを入れたせいで我も遊海も酷い目にあったんだからな!?具体的には記憶が消えたり翠に攻撃したり!一発殴らせ…!アイタタタ…』

ユベルを殴ろうとしたユウスケはダメージのせいか痛みに顔を歪める…

 

「ユーベール〜?」

 

《…悪かったよ、十代に愛を伝えようと色々やってたんだ…》

 

『まぁ…貴様はもう十代の仲間…パートナーだ、味方にはもうとやかくは言わねぇさ…たぶん遊海も許しちまうだろうしな…』

 

「ユウスケさん…」

 

『それでた…悪魔から破壊神になった遊海は十代と賢者の石によって倒され…我達の魂は賢者の石に込められた願い…「遊海先生を助けたい!」っていう願いで破壊神の魂と分離して助かった…まぁ累積ダメージで消滅はしたんだけどな…そして我がこの世界で目覚めたら…またいきなり襲われた…!』

 

「襲われた!?もうティエラはいないんだろう!?」

 

『ああ…あいつは完全に消滅したはずだ…でも別口でないきなり「貴様は闇!罪ありき!」ってな感じで滅茶苦茶に攻撃されて…こんな身体だよ…』

 

「その襲ってきた相手の特徴は?何かありましたか?」

 

『それは…自分達の目で見た方が早いな…我はここまでだ、遊海はソイツに幽閉されてる…そのせいでアイツは目覚めないんだ、かく言う我もエネルギー切れでな…起きているのが辛い…奴は扉の向こうだ…頼んだ…ぞ……』

 

「ユウスケ!?おい!しっかりしろ!!」

 

「だめだわ…完全に気を失ってる、きっと私達が来るのをボロボロの身体で待っていたんだわ…」

 

「ユウスケ…すまない俺達が早く気づけば…」

 

「反省はあと!遊海さんを助ける事が先決よ…!行きましょう!」

 

《翠殿…気をつけろ、扉の向こうから凄まじい『怒り』の波動を感じる…!》

 

「わかったわ…行きましょう!」

 

「はい!」

 

翠はユウスケを寝かせると扉へと向かった…そして慎重に扉を開け潜入した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…教会…神殿?」

扉を抜けた先は石造りの神殿のような場所だった…トフェニに言われた怒りの感情は感じず静かな空気が流れている…。

 

「翠さん…!祭壇のところに…何か…?」

 

「えっ…遊海さん!!」

 

「えっ!?あれが!?」

神殿の最奥…そこには弱々しい赤い光の玉が浮かんでいた…それは遊海の魂だけの姿だった…。

 

 

「一度だけ私は遊海さんの魂を見た事があるの!間違いないわ!」

 

「あれが遊海先生の魂…大徳寺先生は黄色だったな、とにかくあれで遊海先生を助け出せば《危ない!!》どわぁ!?」

遊海の元に行こうとした十代へ岩が降りそそぐ…トフェニが咄嗟に飛び出して十代を庇った…

 

「トフェニさん!大丈夫!?」

 

《翠殿…拙者より周りを…来ます!!》

トフェニの言葉と共に神殿の床が盛り上がる…!

 

【誰だ…誰だ我が領域に入る者は…!!許さん…許さんぞ!!!オオォォオッ!!】

 

怒りの籠もった声と共に声の主が現れる…岩の身体を持ち、その目に怒りの色を宿す者…それは…

 

「嘘…!?『メガロック・ドラゴン』…!?」 

 

「デケェ…!」

 

赤いオーラを纏ったメガロック・ドラゴンだった…。

 

 

 

 

 

 

 

【貴様ら…我が領域に何用だ!】

 

メガロックは翠達に問いかける

 

「私は遊海さんを目覚めさせ【闇の者!この魂は渡さんぞ!!】きゃあ!?」

メガロックは突然怒りだし岩を投げつける

 

【貴様らから強い闇の力を感じる…!コヤツは渡さんぞ!!】 

 

「闇の力なんて…そんな!」←闇属性・シャドール使い

 

「…俺はしょうがないな…」←正しき闇の覇王

 

 

【立ち去れ…立ち去れぇぇぇ!!】

メガロックは滅茶苦茶に岩を投げつける…

 

《十代!ダメだ!この精霊は暴走している!話をできる状態じゃない!!》

 

「ネオス!」

飛んできた岩を殴りつけながらネオスが話しかける

 

《相手を落ち着かせるんだ!!》

 

「なら私がデュエルで!」

 

「翠さん!俺がやる!こんな状況にしたんだ!俺が責任を取る!翠さんはトフェニを!」

 

「十代君…お願い!!」

 

 

 

 

「メガロック!デュエルだ!俺達は遊海先生を助けたいだけなんだ!それを証明する!」

 

【デュエルだと…?良いだろう闇の者よ!我が力で貴様らを駆逐してくれる!!】

 

 

メガロックの横に石版の山が積み上がる…

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

 

 

 

 

メガロック・ドラゴンLP4000

十代LP4000

 

 

 

 

 

 

 

 

【我がターン!ドロー!】

【モンスターを伏せ、ターンエンド!】

 

 

メガロックLP4000

伏せモンスター1体 手札5

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『天使の施し』を発動!3枚引いて2枚捨てる!」

捨てたカード

ネクロダークマン

エッジマン

 

「墓地の『ネクロダークマン』の効果!このカードが墓地に存在する時、手札からレベル5以上の『HERO』モンスターを生贄なしで召喚できる!来い!『ネオス』!」

宇宙の波動を受けたヒーローが現れる ATK2500

 

「バトルだ!『ネオス』で裏守備モンスターを攻撃!ラス・オブ・ネオス!」

ネオスが手刀で裏守備のバックパックを背負った虫のようなモンスターを破壊する…

 

【『魔導雑貨商人』のリバース効果を発動!デッキから魔法・罠カードが出るまでデッキをめくり1枚を手札に加える!それ以外のカードは全て墓地に送る…ゆくぞ!】

 

めくったカード

 

ゴゴゴ・ゴーレム2

ゴゴゴ・ジャイアント

怒気土器2

ミッドピースゴーレム

マグネット・バルキリオン

磁石の戦士α

γ

β

ゴゴゴギガース

フォッシルダイナ・パキケファロ2

ギガストーンオメガ

ロックストーンウォーリアー2

メデューサワーム2

番兵ゴーレム

伝説の柔術家2

メタモルポット

カオスポッド

ロストガーディアン

ホプロムス2

災いの像

恵みの像

スモールピース

守護者スフィンクス

☆岩投げエリア

 

 

【『岩投げエリア』を手札に加える!】

 

「墓地を増やされた…!カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

十代LP4000

ネオス 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

「十代君!気をつけて!彼の切り札がくるわ!」

 

「ああ…!」

 

 

 

 

 

【我がターン!ドロー!】

【我は墓地の岩石族モンスター30体を除外し!我自身『メガロック・ドラゴン』を召喚!我が攻撃力は除外した岩石族モンスター1体につき700ポイントアップする…!!グオオォォォ!!】

メガロック自身がフィールドに現れ、その身体を巨大化させる ATK?→21000

 

「攻撃力21000!?なんだよそれ!?」

 

【さらにフィールド魔法『岩投げエリア』を発動!】

メガロックの後ろに投石機が現れる。

 

【バトルだぁぁ!!我で『ネオス』を攻撃!砕け散れ!鳴動富嶽!!!】

地面が隆起しネオスに迫る!

 

「やばい!リバースカードオープン『ヒーローバリア』!『E・HERO』モンスターがいる時に一度だけ攻撃を無効にする!うわああ!!?」

円盤状のバリアが展開し攻撃を防ぐ…しかしその余波により十代は吹き飛ばされてしまう。

 

【しぶとい奴め…!ターンエンドだ!】

 

メガロックLP4000

メガロック 岩投げエリア 手札6

 

 

 

「イタタタ…強烈すぎるぜ…なんつうパワーだ…!」

 

「十代君大丈夫!?」

 

「はい…!でもアレはどう倒したらいいんだ…!」

 

《十代…倒す必要はないさ…!》

 

「ユベル?」

メガロック・ドラゴンの対処に困った十代にユベルが話しかける

 

《カードを引くんだ!十代…ボクの力を見せてあげるよ》

 

「…わかった!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「リバースカードオープン!『リビングデッドの呼び声』!墓地の『エッジマン』を攻撃表示で召喚!」

金色の刃のヒーローが現れる ATK2600

 

 

【無駄だぁ…!そんなモンスターが我に敵うかぁ!!】

 

「まだだ!俺は『ネオス』と『エッジマン』を生贄に現われろ!『ユベル』!!」

《ああ!まかせてくれ…十代!》

十代と融合せし精霊が現れる ATK0

 

【攻撃力0?血迷ったか小僧!】

 

「迷ってないぜ!バトルだ!『ユベル』で『メガロックドラゴン』を攻撃だ!」

 

【馬鹿が!精霊諸共に吹き飛ぶがいい!鳴動富嶽!!】

隆起した地面がユベルに迫る

 

《吹き飛ぶのはお前だ!ボクの効果を発動!十代へのダメージは0になり、相手は攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを受ける!頭を冷やすがいい!ナイトメア・ペイン!!》

ユベルに迫っていたエネルギーが跳ね返りメガロックに直撃した!

 

【な、なんだと〜!!ぐああぁぁぁ!!?】

 

メガロックLP0

 

十代 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

《フン…十代を傷つけていいのはボクだけなのさ!頭を冷やしなよ!…というか弱いなお前…》

 

【ぐ…アアアア…】

メガロックは大ダメージを受けて動きを停止している

 

「サンキューユベル!今のうちに遊海先生を!」

十代はメガロックの横を走り抜け祭壇へと到達する

 

「遊海先生!助けに来たぜ…帰ろう、みんなも翠さんも待ってる!」

十代は遊海の魂に触れようとする…

 

【さ、触るな!小僧ぉぉぉ!!!】

 

「うわぁぁ!?まだ動けるのかよ〜!?」

メガロックが十代の足元を隆起させ、元の場所まで弾き飛ばす…

 

【邪悪な者に優介は…渡さん…我が…我が護らなければ…護る…護るのだぁぁぁ!……】ズズン

 

「へっ…?」

 

雄叫びをあげたメガロックはその動きを停止する…気を失ったようだった…

 

「まさか…このメガロックドラゴンは…?」

 

「翠さん?どうしたんだ?」

 

「十代君…少し待ちましょう…この子が目覚めるまで…」

 

「?…ああ…わかった、でも大丈夫なのか?起き上がったらまた襲って来るんじゃ…?」

 

「大丈夫…きっと敵ではないはずだから…」

 

そう言って翠は気絶したメガロックの頭を優しく撫でた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ぐ…ぬぅ…優介…無事…か…?】

しばらくしてメガロックは起き上がる…

 

「メガロック・ドラゴン!気がついた?」

 

【ぬっ!?邪悪なる者めまだ!!】

翠がメガロックに話しかける、メガロックは警戒し岩を操ろうとする…

 

「メガロックドラゴン!私よ『春美』よ!」

 

【ハルミ…春美だと?我がマスターの思い出の人だと?信じんぞ…証拠を見せろ!】

 

「証拠ならあるわ!召喚!『メガロック・ドラゴン』!」

翠はデュエルディスクでメガロックドラゴンを召喚する…その身体は少し小さめである

 

《ギュオ〜!!》

 

【むっ…!?まさしく主が託したカード…すまなかった…我を許してほしい…】

 

「翠さん…どういう事だ?」

事態を見守っていた十代が話しかける

 

「十代君、このメガロック・ドラゴンは遊海さんの破かれたカードの精霊なのよ…」

 

「えっ…えぇ〜!?」

 

【然り、我は心の深奥にて眠りし優介の精霊なり…】

 

「メガロック・ドラゴン…何があったのか教えてくれる?」

 

【わかった…語ろう…何があったのか…】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【我は優介の精霊なり、優介は我のカードを大切に扱ってくれた…1番の切り札だった…しかしあの日…我が依代たるカードは失われた…我は優介と離れたくなかった…だから優介の心の奥深くに入り込み…長き眠りへ入った…】

 

 

【我はもう目覚める事は無いと思っていた…しかし我は目覚めた…きっかけは凄まじい負のエネルギーだった…それが我に力を与え目覚める事ができた…そして最初に目にしたのが傷つき意識を失った優介の魂だった…!】

メガロックは悔しそうに爪を地面に突き刺す

 

【我が眠っている間に優介の魂はズタボロになっていた…我は優介を護らなければと思った…せめて魂が回復し意識が戻るまで…!しかし魂を闇を纏いし魂が奪おうとした、だからソイツを追い出しずっと優介を守っていたのだ!】

 

 

 

『やっぱりそういうわけか…勘違いも甚だしいぜメガロック…!』

 

【ぬっ!貴様!】

 

「ユウスケさん!?身体は大丈夫なの!?」

翠達が話しを聞いていると回復したユウスケが歩いてくる…

 

【ユウスケだと?優介が2人…?どういう事だ?】

 

『だから話をしただろう!お前が眠ってから20年近く経っていて優介は転生して遊海になって!我はコイツの負の人格だから闇があるのは当然だって!!』

 

【まさか…本当の事なのか春美?】

 

「そうよメガロック、私達は事故で転生したの…ちなみに今の私の名前は翠よ!それで遊海さんの奥さんなんだから!」

 

【そう…なのか…!ああ…我はなんという事を…!!】

 

『だから言っただろうが石頭!暴走してたのはわかってたけど話ぐらい聞いてくれ!!』

 

【面目ない…!】

 

 

 

 

 

 

「メガロック…遊海さんは大丈夫なの?」

 

【優…遊海は無事では無い…度重なるダメージで魂の力が弱りきっている…しかし回復させる方法はある…!】

 

「その方法は…?」

 

【…こうするのだ…!!!】

メガロックは自分の身体から凄まじいエネルギーを出しそれを遊海の魂へ吸収させる…

 

『メガロック!お前もしかして!!』

 

【察しがいいな闇の遊海…我が全エネルギーを遊海に与える…そうすれば魂を補強できる…】

 

《待ちなよ岩石竜!それはお前の消滅を意味しているんだよ?》

 

【承知している…しかしこれは我の罪滅ぼしだ…人の話を聞かず翠に攻撃をしてしまった…それに我が依代は既に無い…どの道消える運命だったのだ…遅かれ早かれそれが来るならば…我は真に遊海の力となり共に生き続けよう…!】

 

だんだんとメガロックの身体が薄くなっていく…

 

「メガロック!待って!遊海さんに一目でも!」

 

【必要は無い…遊海には新たな相棒がいる…我が使命…遊海の守護は任せよう、春美…優介…を…頼む…さらばだ……】

 

「「メガロック!!」」

 

 

遊海を1番近くで見守り続けた岩石竜はその身を粒子に変え消滅した…そして遊海の魂が強く輝き浮かび上がる…そして人型を取り戻した遊海がゆっくりと祭壇へと寝かせられる…

 

 

 

「遊海さん!!」

翠は祭壇へと駆け寄る

 

「う…ん…翠…?ここは…?」

 

「ゆ、遊海さん!よかった…よかったです〜!!」

翠は遊海へと抱きつき涙を流す…

 

「今、懐かしい夢を見てたんだ、小さい頃の夢…『メガロック・ドラゴン』と一緒に遊んでいる夢だった…小さい頃によく見ていたんだ…」

 

「遊海先生…」

 

「おお…十代にユベルか…2人が一緒にいるって事は決着は着いたんだな…頑張ったな十代…」

 

《…君は怒らないのかい遊海、君を利用したボクに対して…》

 

「ユベル…お前はもう仲間だろ?なら何も言わないさ…十代の力になってやってくれ…!」

 

《フン…つくづく優しいんだな…お前は…》

 

『遊海、目覚めたなら長居は無用だ!さっさと起きやがれ!というかエネルギー寄越せ!』

 

「ユウスケ!?…まさかここ精神世界か!?なら早く起きなきゃな!」

遊海は祭壇から飛び降りる

 

 

「魂の回廊再構築…接続確認…よしっ!アヤカ!聞こえるか?」

 

[マスター!無事だったんですね!!よかった!心配しました!]

神殿にアヤカの声が響く

 

「心配かけてごめんアヤカ!早速だけどサルベージを頼む!」

 

[了解です!翠さん・十代君の反応を確認…サルベージ開始!]

 

アヤカの声と共に2人とユベルの身体が浮かび上がる…

 

「あっちで会おう!先に戻っててくれ!」

 

「わかりました!」

 

「また後でな!遊海先生!」

そうして2人は姿を消した…

 

 

 

 

「さて…俺も戻るか!」

 

《あ…主殿…助けてください…!》

 

「トフェニ!?何やってるんだお前!?」

 

遊海の視線の先には瓦礫に埋まったままのトフェニの姿があった…

 

《…申し訳無い…》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん…?ここは…?」

翠が気がつくとそこは保険室だった…

 

「翠さん!よかった〜遊海先生のお見舞いにいったら十代様と翠さんが気絶しててびっくりしちゃったよ〜!」

翠のベッドの横にはレイが座っていた

 

「ごめんねレイちゃん、心配かけて…もう大丈夫だから!…そうだ遊海さん!」

 

「あっ!?翠さんどこ行くの〜!?」

翠は素足で保険室から駆け出した…そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!!」

 

 

「おはよう…翠!」

 

 

「はい…!おはようございます!」




〜遊海・翠再会後〜





「そうか…俺が眠っている間にそんな事が…」
遊海はバラバラの『メガロック・ドラゴン』を見て呟いた

「はい…遊海さんの中で眠っていたメガロックは遊海さんを助けるために消えてしまいました…」

「メガロック…俺は前世でお前が破かれた事が1番の後悔だったんだ…こんな不甲斐ないマスターなのに…お前は俺を守ってくれた…ありがとう…メガロック…!!」

遊海は一筋の涙を流す…それは頬を伝いメガロックのカードへと落ちた…すると…


ピカーッ!

「うわっ!?」

「何事ですか!?」

カードの残骸が空中へと浮かび上がりひかり輝く…そして…


ー白波 遊海…あなたの彼に対する想い…確かに受け取りました、私の力を持って…奇跡をここに!!ー


何処かで聞いたような女性の声が遊海の頭に響く…そして遊海の手には新生した『メガロック・ドラゴン』のカードがあった…。

「メガロックのカードが…再生した…!あっ…!」
遊海の胸から光の玉が飛び出しカードへと入り込む…


ー彼は力を使い果たして眠っています…しかし再び目覚めるはずです…あなたと精霊の行く末に幸があらん事を…ー

そして声は消えていった…


《マスター!?今のは何事ですか!?何か神様の反応がありましたけど!?》

「お、俺にもわからない…いったい…何が起きたんだ…?」

「遊海さん…もしかして…メガロックさんにまた会えるんですか…?」

「ああ…そうみたいだ!よかった…!よかったよ〜!!」

遊海は珍しく子供のように泣き出した…長い間会えなかった相棒に会える…それがわかった故の嬉し泣きだった…。


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再会〜約束〜

俺達が異世界から戻って2週間が経った…俺は十代のおかげで呪縛から開放され、メガロック・ドラゴンのおかげで目覚める事ができた、退院した俺は既に日常へと戻っていた。

 

 

「よし…この部屋の掃除も終わったな…次は隣の部屋か…」

 

「遊海さん!少し休憩にしませんか?コーヒー持ってきましたよ〜!」

 

「ああ!ありがとう翠…少し休むか…」

 

 

 

 

 

「しかし…レッド寮も寂しくなるな…寮生も所属してるのは十代と万丈目だけか…」

 

「万丈目君も準備が出来次第ブルー寮に戻るそうですよ?…あとは本当に十代君だけです…。」

 

「そっか…」

 

現在レッド寮にいる生徒は十代だけだ…他の生徒達は皆イエローやブルーへと昇格している、十代の活躍に触発された生徒達は努力を重ねこの寮から巣立っていった…十代も少なくともイエローには上がれるはずだがレッド寮に残留しつづけている…。

 

 

 

「皆が十代君の姿を見て頑張ったんですね…十代君が入る前は何人か落ち込んでる子達もいたけど…みんなそれぞれの道を見つけていきました…。」

 

「そうだな…十代には人を惹き付けるカリスマとみんなを元気に出来る力がある、そして精霊達とも心を通わせられる…すごい奴だよ十代は…」

そう言いながら遊海はコーヒーを啜る…ついでに甘めのミルク入りである。

 

「遊海さんこのあとはどうするんですか?」

 

「このあと?」

 

「はい!ダークネスの事件を解決して…十代君が卒業して…そのあとです、アカデミアに残りますか?それとも…?」

 

「そうだなぁ…とりあえずはモーメントの開発が始まるまでは少しゆっくりしたいかな…この約10年、働きっぱなしだったから…世界一周の旅行でもしてみようか…?」 

 

「それもいいですね〜…私達や精霊達と世界中を巡って…」

 

「まぁ、その前に目先の問題を片付けないとな…」

 

5D'sの物語が始まるきっかけは本編の約17年前に起きた動力機関「モーメント」の逆回転による暴走…『ゼロ・リバース』…、それはGxの何年後に起きたのかはっきりとは明言されていない…しかし牛尾の外見から考えて約30後半〜40位のはずだ…あれ?そんなに時間なくないか…?…いや…まだ余裕はあるはずだ…今度海馬社長に聞いてみよう…。

 

 

 

「遊海さん…顔色悪いですよ?」

 

「ん?大丈夫だよ翠…よし!休憩も出来たし、掃除を続けよう!」

 

 

ピリリ…ピリリ…

「電話…?もしもし白波です!」

 

『遊海さん、鮫島です!』

 

「校長!どうしました?」

 

『あなたにお客さんです!校長室までお願いします!』

 

「俺に…?わかりました!今行きます!」ピッ

 

「鮫島さんからですか?」

 

「ああ…俺にお客さんだって…誰だろう?ちょっと行って来るよ!」

 

「はい!気をつけて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

鮫島校長から電話を受けた俺は校長室を訪れた…。

 

 

コンコンコン

 

『はい!』

 

「白波です!」

 

『入ってください!』

 

「失礼します!」

 

ノックをしてドアを開く…そこには

 

 

 

「よぉ!遊海!久しぶりだな!」

 

「じ…城之内さん!!どうしてアカデミアに!?」

校長室のソファに座っていたのは城之内さんだった、会うのはプロの試合以来だろうか…

 

『遊海さん、実は城之内さんの案内をお願いしたいのです!』

 

「案内?」

 

「おう!実はペガサスからの頼みで新しいプロデュエリストをスカウトしに来たんだ!ペガサスが『これからの時代を担うニューフェイスが欲しいのデース!』とか言い始めてな、それでアカデミアの生徒を見に来たのさ!」

城之内は無駄に上手いモノマネを交えながら説明してくれた…

 

「…というのは建前だ、オレはお前に会いに来たんだよ遊海!」

 

「俺に…?」

 

「遊戯から聞いたぞ?お前また無茶したらしいじゃないか!それで杏子や本田も心配してたから顔を見に来たのさ!」

 

「城之内さん…ごめん!また心配かけて…」

 

「いいんだよ!オレ達は親友じゃないか!」

 

「…ああ!!」

 

『コホン…城之内さん、ペガサス会長からはちゃんと依頼を受けてるますから仕事はちゃんとしてくださいね?』

 

「ああ!わかってるさ…それじゃあ遊海!案内を頼むぜ!」

 

「了解!行きましょう!」

そして俺達は校長室を後にした…

 

 

『彼が現在のランキング1位…やはり遊海さんの人脈はすごいな…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は城之内さんとアカデミアを巡った…

 

 

 

 

 

「遊海先生!?その方はプロランキング1位の城之内さんでは!?」

 

「おう!万丈目!そうだよ!城之内さん、この子は万丈目 準、プロ志望の子なんだ!」

 

「へぇ〜、名前からすると万丈目グループの関係者か?おもしろそうだな…デュエルしないか?」

 

「こ、光栄です!よろしくお願いします!」

 

「それじゃあ行くぜ!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

〜〜

 

 

 

 

「バトル!『剣聖ーネイキッド・ギアフリート』でダイレクトアタック!」

 

「うわああ!」

 

城之内 WIN!

 

 

 

 

「なかなかいいデュエルだったぜ!万丈目!」

 

「こ、これが今の1位…!まったく動きが読めなかった…!勉強になります!」

 

「流石城之内さん…前よりも腕が上がったな…」

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生!もしかしてその人って…!」

 

「プロの城之内 克也さん…ザウルス!?」

 

「おっ、お前たちか!城之内さん、2人は丸藤 翔とティラノ剣山だ!」

 

「丸藤…?カイザー亮の弟か!?」

 

「お兄さんを知ってるんすカ!」

 

「ああ!今ランキングも上がって7位になってるからな!アイツの戦い方はオレも好きなんだ!リンゴカットデュエルだっけ?」

 

「リスペクトっス!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや?遊海先生その方は…?」

 

「ああ吹雪か!城之内さん、この子は天上院 吹雪、アカデミアのプリンスと呼ばれる男でレッドアイズ使いなんだ!」

 

「おぉ!?お前もレッドアイズを使うのか!やっぱりカッコいいよな!」

 

「はい!まさかプロの城之内さんに会えるとは…レッドアイズ使いとして光栄です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ〜…ここがオシリスレッドの寮か…何か他の寮と比べると質素だな…、というかなんでオシリスが1番下なんだよ海馬ァ!?」

 

「アハハ…そうだ、もう一人会わせたい子がいるんだ!」

 

「ん?誰だ?」

 

「少なくとも2回、世界を救った生徒さ!」

 

 

 

「十代!入るぞ!」

 

「遊海先生?どうしたんだ?」

 

「お前に会わせたい人がいるから連れて来たんだ…入ってくれ!」

 

「お前が遊城 十代か?」

 

「あ、あなたは…!決闘王のライバル…城之内 克也さん!?」

 

「ああ!活躍は遊海から聞いてるぜ!…オレのダチが世話かけちまったな…」

 

「い、いえいえ!?全部…俺のせいなんですから!」

 

「それでもだ…お前が遊海を助けてなけりゃ事態はもっと悪くなってたはずだ!ありがとよ!」

 

「はい…ありがとうございます…!」

 

「…なんだか不安そうな眼をしてるな…昔に見た眼だ…」

 

「えっ…?」

 

「オレの親友に似た目をしてた奴がいたんだよ…ある出来事の後に『自分はどうするべきなのか』ってずっと考えてた…そいつは結局自分で踏み出して前へと進んでいったけどな…!」

城之内はそう言いながら目元を拭う…

 

「それって…」

 

「おっと、少し湿っぽくなっちまった!邪魔したな十代!プロになりたかったらオレのところに来いよ!…海馬のトコには行くなよ?無茶振りされるからな?」

 

「はい…!ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海!ありがとな!おかげで何人か目星がついたぜ!」

 

「役にたったならよかった!これからどうするんです?」

 

「とりあえず…一つやり残しがあってな…」 

 

「やり残し?」

 

「オレとお前が会ったんだ…一つしかないだろ?」

城之内はデュエルディスクを展開する

 

 

「そういう事ですか…!」

 

「久々に本気のお前と戦いてぇ…!デュエルだ!」

 

「わかりました!いきますよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

 

 

 

城之内LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「手札から「融合」を発動!『真紅眼の黒竜』と『デーモンの召喚』を融合!出てこい!『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』!」

悪魔の力をえた黒き竜が現れる ATK3200

 

「えっ!?『デーモンの召喚』!?」

 

「へへっ!この前当てたんだ!オレはカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

城之内LP4000

ブラックデーモンズ 伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

 

「いきなり攻撃力3200、やりますね!」

 

「久しぶりに勝たせてもらうぜ遊海!」

 

「城之内さん!今回の俺は一味違いますよ!」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「フィールド魔法『岩投げエリア』を発動!自分のモンスターが破壊される時、デッキから岩石族モンスターを墓地に送る事で破壊を肩代わりできる!」

遊海の後ろに投石器が現れる

 

「そしてモンスターを伏せてターンエンド!」

 

遊海LP4000

伏せモンスター1 岩投げ 手札4

 

 

 

 

「なんだ遊海?お前が攻めて来ないなんて珍しいじゃねぇか?」

 

「これはそういうデッキなんです!」

 

 

 

 

 

「来ないならこっちから行くぜ!ドロー!」

「『アックス・レイダー』を召喚!」

斧を持った戦士が現れる ATK1800

 

「バトルだ!『ブラックデーモンズ』でセットモンスターを攻撃!メテオ・フレア!」

悪魔竜の火球がセットモンスターに直撃する…しかし

 

《ゴゴゴ…!》

青い体のゴーレムが現れ火球を耐えた! DEF1500

 

「何!?」

 

「セットモンスターは『ゴゴゴ・ゴーレム』!このモンスターは守備表示の時、1ターンに一度戦闘では破壊されない!」

 

「破壊耐性か!でも2発目は避けられないよな!行け!『アックス・レイダー』!」

 

アックスレイダーがゴーレムに斬りかかる!

 

「フィールド魔法『岩投げエリア』の効果発動!デッキの『ブロック・ドラゴン』を墓地に送りモンスターの破壊を防ぐ!」

 

「でもダメージは受けてもらうぜ!リバース罠『ストライク・ショット』!『アックス・レイダー』の攻撃力を700上げて貫通能力を与える!いっけぇ〜!」

 

ATK1800→2500

投石器からブロックドラゴンがアックスレイダーに射出される、しかしアックスレイダーは赤いオーラを纏った斧で打ち返し遊海に直撃した!

 

「うわっ!?」

遊海LP4000→3000

 

「よしっ!先制ダメージはもらったぜ!」

 

「やりますね!でも墓地に送られた『ブロックドラゴン』の効果を発動!このカードが墓地に送られた時デッキから合計レベルが8になるように岩石族モンスターを手札に加える!俺はレベル7『メガロックドラゴン』とレベル1『アロマ・ポット』を手札に加える!」

 

「リカバリーも万全か…ターンエンドだ!」

 

城之内LP4000

ブラックデーモンズ アックス 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「モンスターをセットしてターンエンド!」

 

遊海LP3000

ゴゴゴゴーレム 伏せモンスター1 岩投げ 手札5

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「厄介な壁は消えてもらうぜ!魔法カード『ヘルモスの爪』発動!手札の『時の魔術師』と融合!来い!『タイム・マジックハンマー』!自身の効果で『アックス・レイダー』に装備!」

白い羽と時計の付いたハンマーが現われ、アックス・レイダーに装備される ATK500

 

「やべっ…!」

 

「バトルだ!『アックスレイダー』で『ゴゴゴゴーレム』を攻撃!効果発動!サイコロを振る!数字は…3だ!『ゴーレム』を3ターン後先の未来まで飛ばすぜ!時間跳躍打撃(タイム・マジック・スタンプ)!」

 

アックスレイダーがハンマーを振り上げゴーレムを打ち上げる…打ち上げられたゴーレムは時間の渦へと飲み込まれてしまった…

 

「そして『ブラックデーモンズ』で裏守備モンスターを攻撃!メテオ・フレア!!」

悪魔竜の火球がバックパックを背負った虫を燃やし尽くす…

 

「『魔導雑貨商人』のリバース効果発動!デッキから魔法・罠カードが出るまでデッキをめくり、そのカードを手札に加える!それ以外のカードは全て墓地へ送る!」

 

めくったカード

 

コアキメイル・ウォール 2

メドゥーサ・ワーム

ゴゴゴジャイアント

ゴゴゴギガース 2

リバイバルゴーレム2

超電磁タートル

ブロックゴーレム 2

ブロックドラゴン

恵みの像

番兵ゴーレム

スモール・ピース・ゴーレム

ミッド・ピース・ゴーレム

磁石の戦士α

β

マグネットバルキリオン

伝説の柔術家

怒気土器

ロストガーディアン

☆封魔の矢

 

「『封魔の矢』を手札に加える!」

 

「墓地を増やされたか…ターンエンドだ!」

城之内LP4000

ブラックデーモンズ アックスレイダー(タイムマジックハンマー)伏せ1 手札0

 

 

 

「遊海どうした?防戦一方じゃないか?」

 

「お待たせしました!ようやく準備ができました!」

 

「なに…?」

 

「俺の新たな切り札を見てください!」

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺は墓地の岩石族モンスター22枚を除外し…我が魂に寄り添う岩石竜…『メガロック・ドラゴン』を特殊召喚!」

《グオォォォ!》

大地が砕け、巨大なる岩石竜が咆哮を上げながら現れる

ATK?

 

「攻撃力?だと…?」

 

「(まだ精霊としては出てこられないか…でも力を貸してくれ…メガロック!)『メガロック』の攻撃力は召喚時に除外した岩石族の数✕700になる…よって!」

ATK?→15400

 

「攻撃力15400だと!?(でも伏せカードは『攻撃の無力化』…耐えられる!)」

 

「バトルフェイズ!そして手札から速攻魔法『封魔の矢』を発動!このターンお互いに魔法・罠の効果を発動できない!」

 

「なんだって!?」

 

「いけ!『メガロック』!『ブラックデーモンズ』を攻撃!大地の怒り!」

メガロックが大地を踏みつける、すると大地が隆起し悪魔竜を打ち上げ、大爆発を起こした…

 

「イワァァーク!!?」

 

城之内LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「やるな〜遊海!まさか攻撃力1万超えか…やっぱりお前は強いぜ…!」

 

「ありがとう城之内さん!でも流石ランキング1位ですよ!」

 

「へへっ…嬉しいけどよ、遊海…俺は1位を預かってるだけだ…」

 

「?」

 

「オレや遊戯は今1番強い奴はお前だと思ってる、だからオレはお前がいるべきところを温めてるだけだ、だから…戻ってこいよ?」

そう言いながら城之内は手を差し出す

 

「はい…!()()()()()()()()()()()()()()()…必ず戻ります…!!」

 

「へっ…何か役立てる事があれば呼んでくれよ?」

 

「はい!よろしくお願いします!」

2人は固い握手を交わしたのだった…

 

 

 

 

 

 

「そうだ!よかったら夕飯食べていきませんか?翠の手料理なんですけど…?」

 

「おぉ!いいね!オレも酒持ってきたんだ!」

そう言いながらリュックから「邪神殺し」と達筆で描かれたお酒を取り出した

 

「あっ…酒はちょっと…」

 

「たまにはいいじゃねぇか!なっ!」

 

 

〜〜

 

 

 

 

 

 

「…キュ〜…」

 

 

《マスター…風邪引きますよ?》

 

《主殿、毛布を持ってきたぞ…》

 

「かりゃだが熱い〜…だからだいようぶ〜…」

 

「…まさかお猪口の一口でダウンするとはな…酒に弱すぎだろコイツ…」

 

「ごめんなさい城之内さん…遊海さん、お酒はまったくダメなんです…」

 

「最強の決闘者の意外な弱点発見だな…」

 

 

 

城之内を交え小さな宴会をしていた遊海だが、既にダウンしてしまっていた…不死身でも酒には勝てないのである…。

 

 

 

「しかし、遊海が闇に呑まれて暴走するなんてな…いつものコイツを見てると想像できないぜ…」

 

「私も信じられませんでした、でも…それだけ深い闇が取り憑いてましたから…」

 

翠は城之内に掻い摘んで異世界での出来事を伝えていた…遊海の暴走を含めて…。

 

「でも…こうしていつもの遊海に戻ったんならよかったぜ…しかしまぁカルトゥーシュに宿った想いでも翠を守ろうとするんだから…スゴイ奴だよ、遊海は…」

 

「はい…!いつもありがとうございます遊海さん…」

 

 

「ミドリ…ゴメ…ン…ナ…ZZZ…」

 

 

「遊海さん…もう大丈夫です…安心してくださいね…」

翠はズレた毛布を戻し、遊海の背中を擦る…少しでも遊海が安心して休めるように…

 

 

 

「そういえばさ…2人は子供は作らねぇのか…?」

少し赤ら顔になった城之内が翠に尋ねる…

 

「はい…気持ちは少しあります…でも私達の体質じゃ子供が可愛そうで…」 

遊海と翠は不老不死になっている…成長は20歳で止まり変わる事はほぼ無い、それは子供に受け継がれない…。

 

「そっか…悪いな…変な事訊いちまった…」

そう言いながら城之内は酒を呷る…

 

「いえ、大丈夫ですよ城之内さん…私は遊海さんと居られるだけで幸せですから…」

 

「翠…」

 

「私は…ずっと一緒にいますからね…ゆうみ…さ…スゥ…」

 

「2人共…寝ちまったか…翠も酒に弱いんじゃないか、それとも疲れてたのか…?」

 

《両方だよ、城之内さん》

ウィンダが実体化して声をかける

 

「ウィンダか…お前達も大変だったな…」

 

城之内は基本的に精霊は見えないがウィンダ達は昔から会っているので精霊の事は信じている

 

《遊海さんは破壊神に極限までエネルギーを吸い取られて本調子じゃないし…翠も大怪我して遊海さんが目覚めるまでずっと看病してて疲れてるし…2人共頑張りすぎなんだよ…》

そう言いながらウィンダは翠に毛布をかける

 

「そっか…未来を知ってるが故の責任…ってか?あんまり無理するなよ2人共…?」

 

「ZZZ…」

 

「スゥ…スゥ…」

 

「聞いちゃいねぇか、まったく…オレもそろそろ寝るかな…」

 

《それなら空いてる部屋に案内するよ!片付けは私とウェンでやるから!フレアさん!お願いしま〜す!》

 

《城之内、付いて来てください!案内します!》

 

「ああ…ありがと、しかし…コピーカードの『ラー』を従えるなんて…やっぱり規格外だよお前達は…いい夢見ろよ…?」

フレアの案内で城之内は部屋を後にする…そこには片付けをする精霊達の姿と手を重ねて眠る2人の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、世話になったな2人共!今度は皆で会おうぜ!」

 

「ええ!楽しみにしてます!…アイタタ…頭が…」

 

「あのまま机で寝ちゃいましたから…私も髪の毛が治らなくて…」

 

翌朝、城之内はアカデミアを後にする…遊海達は見送りにきたが遊海は二日酔い、翠は寝癖で髪が愉快な事になっている…

 

「2人共無理はするなよ…?じゃあな!」

そう言って城之内は船に乗り込みアカデミアを後にしたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《誰か…誰か私達を…助けて…!》



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第4章 3年目後半 浸食虚無世界 ダークネス
動き出す虚無〜忘却〜


《助けて…!誰か…助けて!》


「……ん?ここは…?」

おかしいな…俺は部屋で寝たはずなんだけど…?ここは…DM界…?

 

遊海が目覚めるとそこはドーマとの戦いのために訪れた精霊世界…デュエルモンスターズ界だった…

 

「なんで呼ばれた《白波さん!!よかった来てくれた!》ん?ブラマジガール?」

遊海の姿を見つけたブラマジガールが飛んで来る

 

《お久しぶりです…!すいません!助けてください!!》

 

「!?何があった!」

 

 

 

 

 

「これは…!」

遊海がブラマジガールの案内で現場に到着する、そこは別の次元に行くための扉であり…黒い闇に覆われていた…

 

《突然扉が閉じなくなって闇が溢れて来たんです!なんとか私が抑えていたんですけど勢いが増してきて!》

 

「わかった!なんとかする!頼む!アヤカ!フレア!」

 

《了解です!マスター!扉を閉じます!質量ミサイル発射!!》

アヤカが本来の姿で現れ扉を無理やり閉じる…

 

【次は私です!全てを遍く照らす太陽よ!闇を照らせ!!】

顕現したラーの翼神竜が太陽の力を宿した結界で精霊世界と扉を覆い、闇を浄化し闇の侵入を防いだ…。

 

 

 

 

《ありがとうございます…助かりました…》

 

「大丈夫だよマジシャンガール…被害は?」

 

《はい、精霊が数十人あの闇に呑まれて消えてしまいました…いったいあの闇は…?》

 

「…おそらくダークネス…世界の闇だ…ついに動き出したか…!マジシャンガール、精霊達に絶対にあの『闇』に触れるなと伝えてくれ!」

 

《わかりました!ありがとうございます!…それから呑まれた精霊以外に行方不明になってる精霊が…》

 

「?何の精霊だ?」

 

《天使族の…》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!朝ですよ!どうしたんですか!!起きてください!!」

 

「フガッ!?…おはよう翠、今のは…夢か…?なんか聞きそびれたような…?」

 

《マスター、夢ではありません!私達はDM界にいました!》

 

「そうか…やっぱりか…翠…!」

 

「どうしたんですか…?」

 

「戦闘準備だ…ダークネスが動き出した…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

異世界の事件から1ケ月が経過した…十代は城之内さんとの出会い後に部屋に閉じこもり出てこない…やはり考え事をしてるのだろうか…

 

 

「おはようございます!遊海先生!」

 

「おはよう明日香!今日も調子良さそうだな!」

 

「ありがとうございます!いってきます!」

 

俺は今、アカデミアの入口の周りを掃除している…ここにいると皆に会えるから楽しいんだよな…

 

「おはようッス遊海先生」

 

「おはようザウルス!」

 

『おはようございます岸波先生!』

 

「おはよう三人共!今日も元気だな!頑張れよ!」

 

「はい!ありがとうッス!」

 

翔と剣山はいつも元気があっていいな、あれで精霊が見えればいい決闘者になるんだが…、ん…?三人目の()()()()()()()()()って…誰だっけ…?…まぁいいか…さて掃除掃除…

 

 

 

《…微弱な精霊の力を感じたような…?誰でしょうか…?》

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…一段落ついたな…、一度寮に戻るかな…」

 

 

ピリリ…ピリリ…

 

「電話だ…もしもし?」

 

『遊海さん、鮫島です…会議室までお願いします…異常事態です…!』

 

「っつ!わかりました今行きます!」

 

 

 

 

 

 

 

「入ります!」

 

「遊海先生!どうしてここに?」

扉を入ると万丈目が声をかけてきた、他にも明日香や翔、剣山と緑髪の生徒もいる

 

『わたしが呼んだのだ、遊海先生はカードと精霊のプロだからな…遊海先生コレを見てもらいたい…!』

 

鮫島校長がアタッシュケースを開く…すると…!

 

「うわぁぁ!?なんだコレは…!」

ケースから闇が溢れ何が入っているのか見えない…!

 

「?遊海先生どうしたんすか?」

 

「これはデュエルディスクに反応しなかったカードなんですけど…何か見えますか?」

明日香と翔が声をかけてくる…

 

「このカードは…何か邪悪な力に汚染されている、一度寮に持ち帰ろう、所有者のリストはあるか?」

 

「あるザウルス!」

 

「わかった!ならできる限り浄化してみる、俺と精霊達に任せてくれ!」

 

『わかりました…遊海先生、お願いします!』

そしてアタッシュケースを持って俺は寮へと戻った…。

 

 

 

 

 

『浄化だって…?そんな事は出来ない…!あのカードを早く処分しなければ…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『岸波先生…ちょっとよろしいですか?』

 

「ん?お前は…どうしたんだ?」

 

ダークネスに汚染されたカードを持って寮への道を歩いていた俺は生徒に呼び止められる…

 

『そのカード達をどうするつもりですか?』

 

「どうするって…なんとかこのオーラを浄化しようとしているんだが…?」

 

『そのカードは危険な物だ…ボクに渡してください!!』

 

「これを渡す事はできない、と言うよりそもそも…()()()()()?」

遊海は威圧感を露わにする

 

『嫌だなぁ岸波先生…ボクですよ「藤原 優介」です…()()()()()()()()()

藤原を名乗った生徒は赤く目を輝かせた…

 

「…悪いが…俺に洗脳は通じない!貴様は誰だ!そもそも今のアカデミアで俺は本名である『白波 遊海』を名乗っている!岸波 白野は偽名なんだ!」

 

『…忘れたのですか…?あんなに親身になって()()()()と一緒にいたのに!!!』

 

「うわっ!」

《危ない!マスター!》

藤原(仮)は白い羽のような物を投げつけてくる、それを現れたアヤカが撃ち落とす!

 

『ちっ!邪魔をするなぁっ!!』

 

《しまっ…!?》

 

「眩しっ!?」

藤原(仮)は身体から眩しい光を放つ、それにより2人の目が潰される…!

 

《視覚情報が無くとも…!っつ!?マスター!後ろ!!》

 

『消えろ!裏切り者!!』

 

「くっ!精霊アーマー!!うぐぅ!?」

瞬時に後ろに回った藤原が羽根を投げつける、遊海はアーマーを展開するが肩に掠ってしまう…

 

『貴様は許さん…!マスターを見捨て…殺した貴様は…絶対に!!』

 

「見捨てる…?殺した…?いったい何の事だ!?俺はそんな事をした覚えは…ぐっ!?痛い…!頭が…割れる…!?」

遊海は突如頭痛に襲われ倒れ込む…精霊アーマーも解け痛みを耐えている

 

『マスターの無念を…思い知れ!!』

 

《マスター!!》

「ぐっ…あああ!」

白い羽根が遊海に迫る…そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズズン カキキンッ

 

 

 

『なんだと?』

遊海に羽根が当たる直前、遊海の周囲に土壁が展開され羽根の一撃を防いだ…

 

 

《情けないぞ遊海の新たなるパートナーよ…お前が遊海を守らずしてどうする…!》

 

低い声が響き声の主が現れる…それは前世から…アヤカより前に遊海と共に在りし者、長き眠りから覚めし精霊…それは…

 

《あなたは…メガロック・ドラゴン!!》

 

《神の奇跡に感謝しなければ…またこうして遊海と肩を並べられる事を!》

巨大なる岩石竜が長き眠りから目覚め…その姿を現した!

 

『新手か…!』

 

《遊海に手を出した愚か者よ…後悔するがいい!!鳴動富嶽!!》

大地が牙を剥き藤原へと襲いかかる!

 

『ちっ…貴様は許さない!覚えていろ!!』

隆起した地面が直撃する前に藤原は空へと逃れる…そして森へ消えて行った…。

 

 

 

 

 

《逃したか…》

 

《ありがとうございます!メガロックドラゴン!》

 

《メガロックでいい…!それよりもマスターは!》

 

「……」

 

遊海は気絶していた…頭の痛みに耐えられなかったのだろう…

 

《アヤカ…だったか?遊海を頼む、我が力では運べない…》

 

《わかりました!急いで寮へ…》

 

「アヤカ!どうしたんだ!何が…メガロック!?目が覚めたのか!」

レッド寮から十代が走ってくる

 

《おお、あの時の小僧か!精神世界では世話になったな!》

 

《十代さん!マスターが襲われたんです!犯人は森へ…早く!》

 

「ハネクリボーが言っていたのはこれか…!わかった!先生を頼む!!」

《クリクリ〜!》

 

十代は森へと走って行った…しかし誰も気づかなかった…アタッシュケースから黒いカードが飛び出して藤原を追っていった事に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…ここは…?暗いな…誰かいないのか…?」

 

「遊海さん!目が覚めたんですね!」

 

「翠…?どこにいるんだ?電気をつけてくれ…」

 

「そんな…遊海さん目が…!」

 

《落ち着いてください翠…マスター、先程の戦闘で強い光を浴びて一時的に失明しているようです…自力で治せますか?》

 

「ああ…ディアンケトよ、傷を癒せ…!」

瞳に癒やしの力を放つ…すると視界が元に戻っていく…

いた場所は自室でアヤカと翠、そして十代がいた…

 

 

 

「ふぅ…見えるようになった…」

 

「遊海さん…よかった…、何があったんですか?」

 

「ああ…闇に覆われたカードを寮に持って帰ろうとしたら緑色の髪の生徒?に襲われて…頭が痛くなって…どうしたんだっけ?」

 

《藤原と名乗る生徒に襲われたんですマスター、そしたらマスターは頭を抑えて気絶してしまって…それで危ない所を彼に助けてもらったんです!》

 

「彼?誰だ?」

 

《マスター、立てますか?外にいますから会って上げてください!》

 

「?」

 

 

 

 

 

 

《おお我がマスターよ、目が覚めたか!この姿で会うのは初めてだなぁ…》

 

「メガロック…メガロック!!」

外に出るとメガロックドラゴンが外で待機していた…姿を見た遊海はメガロックに抱きつく…

 

「ごめんなメガロック!俺はお前を守れなかった…!でもお前は俺をずっと守ってくれた…!ありがとう…ありがとう!!」

 

《良いのだ遊海、お前は我を大切に使ってくれた…それが嬉しかったのだ…だから我はお前と共にいたのだ…》

 

「ありがとう…!これからもよろしくな…!」

 

《うむ!我が力は遊海と共にある!》

遊海とメガロックは共に涙を流す…20年を越える時の果てに2人は再会を果たしたのだ…。

 

 

「遊海さんよかった…!」

 

「感動の再会だな…」

 

《…少し嫉妬しちゃいますね…2人を見ていると、今の相棒は私なのに…》

 

《アヤカ、空気を読みなさい…ユウミと彼は久しぶりの再会なのですから…》

 

感動の再会を果たす2人の後ろではアヤカが初めての嫉妬心を抱いていたのだった…

 

 

 

 

 

「メガロック…そういえば姿は変えられるか?その身体じゃあ部屋に入れないだろう?」

 

《問題は無い、我は遊海と共にある…姿は変えられぬが…》

そう言うとメガロックは身体を縮ませる…大型のリクガメくらいだろうか…

 

《これくらいなら大丈夫だろう…また頼むぞ我がマスターよ!》

 

「よろしくな!メガロック!」

 

 

 

 

 

「先生…ちょっといいか?」

 

「どうしたんだ十代?」

メガロックとの再会を終えた遊海に十代が話かける

 

「俺は遊海先生を襲った奴を追いかけたんだ…それで追い詰めたら黒いサングラスとトゲトゲしい服をきた怪しい男が急に現れてデュエルになったんだ…!」

 

「怪しい男…ミスターTか…それで?」

 

「デュエルに勝ったらサングラスの男は消えたんだけど…先生を襲った奴…藤原には逃げられちまった…アイツ先生にスゴイ怒ってたんだけど…心当たりはないか?一応別に調べてもらってるんだけど…」

 

「心当たりか…」

 

 

 

「遊海さん…あなたを襲った人は藤原 優介って名乗ったんですよね?」

 

「ああ…、でも俺の記憶に何も残ってないんだ、アカデミアにいた生徒は大概覚えているはずなんだけど…っつ!まだ頭が…」

 

「…変ですねぇ…私も思い出せないんですよ、まるで頭に霞がかかったみたいで…」

 

「もしかして…忘れてるだけで…知ってるのか?っつ!!」

 

「遊海さん…大丈夫ですか?まだ寝ていた方が…」

 

「いや…大丈うぐっ!?頭が…!」

 

「遊海さん!?」

遊海は再び頭を抑えて膝をついてしまう…

 

「(何なんだよいったい…!)」

そして遊海の脳裏にある映像が流れる…

 

 

 

 

ジジ…

 

 

 

 

 

 

「やめるんだ●●!!その力に飲まれてはいけない!」

 

 

 

「●●!まだ間に合う!儀式を中止しろ!今ならまだ…!」

 

 

何だ…?この記憶は?俺と…吹雪と…顔が見えない誰かがいる、場所は…ボロボロになる前の特待生寮…?

 

 

 

『岸波先生…吹雪、俺は絆を失うのが…人に忘れられるのが怖いんだ…』

 

 

 

「それは皆同じだ!だから人は絆を深めて…!」

 

 

 

「失う事が怖いなら…忘れられるなら…俺の方から忘れてやる!!」

 

顔の見えない青年はヤケになり叫んだ…

 

「●●!やめるんだ!!」

 

 

「…さよなら、先生…吹雪…亮…!」

 

 

顔の見えない青年は自分の腕を切り裂き魔法陣へと血を垂らす…すると巨大な黒い穴が開き俺達を飲み込もうとする…!

 

 

 

「「うわあああ〜!!?」」

 

 

 

 

 

《マスター!!今…!》

 

 

 

アヤカが俺を引き止め助けようとする…

 

 

 

 

「ぐっ…●●…すまない…俺は…お前を…!」

 

 

 

しかし、吸引力が強く…俺達は黒い穴へと引き込まれた…。

 

 

 

《「うわああ…!?」》

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

「ガッ…ハァ…ハァ…今のは…?」

 

「遊海先生!大丈夫か!?」

 

「十代…翠…あそこに行くぞ…絶対に何かが…あ…る…」

 

「遊海さん!!」

 

「遊海先生!」

 

 

 

そして遊海は再び意識を失った…

 



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真実を語る者〜闇の拷問者〜

〜何処かの暗黒世界〜



『白波 遊海が記憶を取り戻そうとしている』

『アイツは危険だ、早急に手を打とう』

『アイツの心の闇は以前の件で把握している…』

『アイツが記憶を取り戻す前に…排除する』

『『『わかった』』』





「っ…う…頭がガンガンする…」

 

「遊海先生、目が覚めたか…水を…」

 

「十代…ありがとう、ここは…」

 

遊海が目を覚ますとアカデミアの保険室だった…ベッド脇には十代が座っていた…。

 

 

 

「保険室だよ、先生が気を失った後に運んできたんだ」

 

「そうか、すまなかったな…」 

 

《本当にだ…我や翠にあまり心配をかけるでない!馬鹿者!》

 

十代の足下から小さくなったメガロックが顔をだす

 

「メガロック…ごめん…アヤカと翠は?」

 

《アヤカはフレアと黒いカードを調べている、春…翠は他の寮?の食事の手伝いだそうだ》

 

「ありがとう…心配かけてごめん…」

 

《まったくだ!マスターは前世からそうだ!人を救うために危ない事ばかりしおって…少しは自分の身体を気にせんか!》

 

「あだっ!?泣き所はやめてくれっ!?」

メガロックは遊海の脛に小石を投げる…意外と痛い…

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生…相談したい事があるんだ…」

 

「どうしたんだ十代?…もしかして『アカデミアを辞める』とかは言わないよな?」

 

「!?…どうして…」

 

「なんとなくだ…お前の顔を見たらそう書いてあった…今起きている事が関係してるな?」

 

「…なんだか嫌な予感がするんだ…俺はここに居てはいけない…みんなに迷惑がかかる…そんな予感が…」

 

「俺はお前を止めはしない、でも忘れるな…お前は1人じゃない、お前を想う仲間達がいるって事をな…」

 

「先生…」

 

「それはそれとしてキチンと仁義は通せよ?俺が許しても校長が許した訳じゃない、ちゃんと許可を取れ…わかったな?」

 

「ああ、わかったよ先生…ありがとう…」

 

そう言って十代は部屋を後にした…陽は傾き夕日が部屋を照らしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

《マスター、よろしいですか?》

アヤカが現れて声をかけてくる。

 

「どうした?カードについて何かわかったか?」

 

《はい…カードはダークネスに汚染されていました、またそのカードの大半は精霊界で行方不明になっている精霊の物でした…もしかすると他のカードもそうかもしれません…今は結界で封印しています。》

 

「そうか…ありがとうアヤカ、手間をかけてすまない」

 

《大丈夫ですよマスター、これが私の仕事ですから!》

 

「ありがとう、流石俺のパートナーだ!ヨシヨシ…」

 

《あっ…ありがとうございますマスター…!》

遊海はアヤカの機体を撫でる…アヤカは少し照れているようだ…

 

《それよりも!身体は大丈夫ですかマスター?ひどい頭痛だったようですが…》

 

「ああ…今は大丈夫だ、さっきから何なんだよ…まったく…」

 

遊海は自分の頭を触る…

 

「アヤカ…俺は何かを忘れてるんじゃないか…?何か、何かを……だぁ〜!!わからねぇ〜!!?なんだかモヤモヤする〜!!」

遊海は自分の頭を掻きむしる…何かを忘れている、しかしそれを思い出せない…歯痒い気持ちだった…。

 

《落ち着いてくださいマスター!!どうしたんですかいったい!?》

 

「わからないんだ…絶対に何かを、何かを見落としてる!!…そうだアヤカ!物語を振り返ろう!簡単でいい、俺がアカデミアに来てからの事を振り返ってくれ!」

 

《わ、わかりました!マスターの記憶を元にした年表を投影します!》

そう言ってアヤカは空間に遊海の年表を投影する…。

 

 

 

 

 

 

 

1年目 童実野高校卒業・アカデミア就職

 

2年目 翠 アカデミア就職

 

4年目 吹雪 亮 $#入学

 

5年目 §€¥£№ 特待生行方不明事件

 

6 年目 十代入学 幻魔事件

 

7年目 エド 剣山入学 光の結社

 

8年目 異世界事件 ダークネス

 

 

 

 

「…ん?4年目と5年目のノイズはなんだ?アヤカ?」

 

《…わかりません…マスターの記憶にも私の記憶にもノイズがかかっていて…もしかしてこれが原因でしょうか…?》

 

「う〜ん…そうだ!トフェニいるか!」

 

《主殿、お呼びですか?》

トフェニが実体化する

 

 

 

「ああ…俺がアカデミアに来て4・5年目に何があったか覚えてるか?」

 

《う〜む…4年目は吹雪殿やカイザー殿の入学年…5年目は特待生の行方不明と…そうだ!主とアヤカ殿が倒れていた時では?》

 

「倒れていた?そんな事あったっけ…?」

 

《私の記録にも載っていないのですが…》

 

《覚えていないのですか?夜遅くまで2人が帰らず翠殿とウィンダ達でアカデミアを捜索して…森の中で2人が倒れているのを見つけたのです!その後2人とも1週間程意識が戻らず…その間に行方不明事件が…》

 

「なんだそれ…まったく覚えてないぞ…?」

 

《マスター…私もです、記録がそこだけ空白に、いえ別の出来事が入っています…!》

 

「プロデュエリストの懇親会…!!確かに誰がいたか思い出せない…!いったい何が…何があったんだ…?」

 

《!?マスター!コードブラック…近くにダークネスの反応が!》

 

「何!?何処だ!」

 

《火山の麓です!》

 

「わかった!行くぞ!トフェニ頼む!」

 

《御意!》

遊海は保険室を飛び出した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「!あれは…軍用ヘリ!?」

空を飛び反応のあった場所に向かう遊海はヘリとすれ違う…

 

「確かアレには斎王と理事長が乗っていたは…《主殿!》なっ!?うわぁ!」

ヘリと遊海に火山弾が降り注ぐ…しかし…

 

《ハアッ!!》シュピ!シュピ!

実体化したネオスが火山弾を撃ち落とす!

 

「ネオス!」

 

《遊海!離れろ!ここは危険だ!》

 

「わかってるさ!十代はそっちか!」

 

《ああ!闇の使者と対峙して…危ない!》

 

「何っ!?うわぁぁ!!」

 

《マスター!》

 

《主殿ぉぉ!?》

ネオスと話していた遊海を黒い風が襲い、そのまま墜落する…遊海は暗い森へと落ちていった…。

 

 

 

 

 

「遊海先生!!ミスターT!貴様遊海先生に何をした!」

自称真実を語る者・ミスターTと対峙した十代は遊海を撃ち落としたTを睨みつける

 

『奴は我らの最優先抹殺対象だ…今頃奴に相応しい相手が奴を倒しているはずだ…』

 

「遊海先生を抹殺だと!?そんな事させてたまるか!お前を倒して遊海先生を助けに行く!」

 

『させると思うか?』

 

「押し通る!!」

 

周囲がマグマのフィールドに変わる

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイタタ…咄嗟に精霊アーマーを展開したけど衝撃までは消せなかったか…」

高所から落下した遊海はなんとか無事だった…

 

「痛っ…!左腕に力が入らない…肩が外れたか、確か木とかに打ち付ければハマるんだっけ…?…足も捻ってるか、とにかく怪我を癒やして十代のところへ…」

 

 

 

 

 

 

 

『行かせると思うかァ?白波 遊海ィ…!』

 

 

 

 

 

「!?、何者だっ!!」

怪我を治そうとした遊海にねっとりとした声がかけられる…

 

『オイオイ!オレの事を忘れるなんて酷いんじゃないか…?貴様が消したこのオレ様をよぉ…!!』

 

闇の中から人影が現れる…手に金色の杖を持ち、逆立った金髪の額にウジャト眼を浮かばせた男…それは…!

 

「闇…マリク…だと…!」

 

『そうだぁ!貴様に復讐するためにあの世から舞い戻ったぜぇ白波ィ…!また聞かせてくれよぉ…貴様の悲鳴を…!!』

 

「ぐっ…あっ…!?」

その瞬間、遊海の脳裏に痛みが甦る、矢を刺され…頭を絞められ…神の炎で焼かれる…遊海の原初のトラウマが…

 

『さぁデュエルだぁ!貴様をあの世に招待してやるぜ…!』

 

「…こんなところで…止まってられるか…!!デュエルだ!闇マリク…過去の亡霊!!」

 

 

 

 

 

 

 

    「『デュエル!/デュエルぅ!!』」

 

 

 

 

遊海LP4000 D60

マリクLP4000 D40

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「手札から魔法カード『隣の芝刈り』を発動!デッキ差は19枚!差分を墓地へ!」

 

墓地送り

裁きの龍 2

ケルビム

グラゴニス

ルミナス

エイリン

ミネルバ

シャイア

フェリス

オルクス

黄昏ジェイン

ガロス

ヴォルフ

闇の進軍2

光の援軍

芝刈り

イリュージョン

交衣

 

 

「『ライトロードビースト ヴォルフ』の効果発動!特殊召喚!さらに『ライトロードメイデン ミネルバ』の効果で1枚墓地へ!」

白い獣人が現れる ATK2100

 

 

墓地送り

フェリス

 

「さらに『ライトロードアーチャー フェリス』を特殊召喚!」 

獣人の弓兵が現れる DEF2000

 

 

「そして魔法カード『ソーラー・エクスチェンジ』を発動!手札の『ライデン』を墓地へ送り2枚ドローしデッキから2枚墓地へ!」

 

墓地送り

グラゴニス

黄昏イレイザー

 

「魔法カード『光の援軍』を発動!デッキから3枚墓地へ送りデッキから『ライデン』を手札に加える!」

 

墓地送り

ライラ

黄昏ルミナス

罠裁き

 

 

「そして『ライトロードサモナー ルミナス』を通常召喚!」

白い衣の召喚士が現れる ATK1000

 

「『ルミナス』の効果!手札の『ライデン』を墓地へ送り墓地から『ライトロードアサシン ライデン』を特殊召喚!」

短剣を持った暗殺者が現れる ATK1700

 

「『ライデン』の効果!デッキから2枚墓地へ送り『ライトロード』モンスターがいた時、攻撃力を200アップ!」

 

墓地送り

ミネルバ

罠裁き

 

ATK1700→1900

 

 

「罠カード『ライトロードの裁き』の効果発動!デッキから『裁きの龍』を手札に加える!さらに『ミネルバ』の効果!さらに1枚墓地へ!」

 

墓地送り

黄昏の双龍

 

 

「俺はレベル4『フェリス』とレベル4『ヴォルフ』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!」

2体の獣人が光の銀河へ飛び込み爆発を起こす!

 

「光の乙女よ!その身を昇華し天使へ至れ!ランク4『ライトロードセイント ミネルバ』!!」

 

白い翼を持った天使に進化した乙女が現れる ATK2000

 

「『ミネルバ』の効果発動!ORUをとり除きデッキから3枚墓地へ送りその中の『ライトロード』カードの数だけドローする!」

 

墓地送り

黄昏ルミナス

芝刈り

援軍

 

 

「そしてレベル3『ルミナス』にレベル4『ライデン』をチューニング!」

ライデンが光の輪に変わりルミナスを包み込む

 

 

「集いし祈りが異界の勇者を呼び覚ます!悪を裁く光となれ!《シンクロ召喚》!光臨せよ!星7『ライトロード・アーク ミカエル』!」

白い巨龍に乗った天使長が現れる ATK2600

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ…!」

遊海LP4000

ミカエル ミネルバ 伏せ1 手札4 D 18

 

 

 

 

 

 

『ふあ〜あ…長いターンだなぁ…そんなにオレが怖いかぁ?』

 

「恐れてなんてない!バトルシティの時みたいにぶっ飛ばしてやる…!」

 

『なら…なんでそんなに汗かいて足が震えてるんだぁ?オレが怖いんだろう?この場から早く離れたいんだろぅ?』

 

「なっ…そんな事…な…あぐっ!?」

闇マリクの言葉は事実だった、遊海の膝は震え、異常な程汗をかいている、そして冷静になった遊海に肩の痛みが襲いかかる…脱臼した事を忘れプレイしていたからだ…今の遊海は冷静さを欠いていた…。

 

 

 

 

 

 

『フフフ、さぁオレ様のターンだ!ドロー!』

『いいカードを引いたぜぇ…!さぁ闇のゲームを始めるぞ!』

 

周囲が黒い闇に覆われる…

 

『貴様にオレのペットをくれてやるよ…!貴様の「ミカエル」と「ミネルバ」を生贄に貴様の場に「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム」を特殊召喚する!』

 

「なっ!?しまった!うぁ…!?」

2体のモンスターが溶岩に呑み込まれソイツは現れる、身体が灼熱の溶岩でできた悪魔・ラヴァゴーレム、その胸には遊海がカゴに閉じ込められていた ATK3000

 

「あ…熱い…!!しかもリリースでは効果が使えねぇ…!」

 

『いい眺めだぜぇ白波ィ!オレはさらに「ホールディング・レッグス」を召喚!』

金色のウジャト眼の付いた足枷が現れる ATK800

 

『その効果により貴様のセットカードを手札に戻す!』

 

「くっ!」

 

『そして手札から「手札抹殺」を発動だぁ!オレは4枚捨てて4枚引くぜぇ…!』

 

「しまった…!『裁きの龍』と『戒めの龍』が…!オレは5枚ドロー…!」

 

「おぉ怖い怖い…あんな龍共はこりごりだからなぁ…!カードを2枚伏せてターンエンドだぁ…!」

 

マリクLP4000

レッグス 伏せ2 手札2 D30

 

 

 

 

 

 

『残念だったなぁ…切り札がオシャカになって…!これで貴様を苦しませてやれるぜぇ…!』

 

「くっ…!しかし盤面は俺が有利だ…!負けてたまるか…!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

『スタンバイフェイズに「ラヴァゴーレム」の効果を発動!1000ダメージを受けなぁ!!』

 

「なっ…!?」

魔神が檻の上から手を翳す…そこから溶岩が滴り落ち灼熱が肌を焦がす

 

「ぐあぁぁッ!?アチィ〜!!!」

 

『いい声だよ白波ィ…!さぁ貴様の苦しむ様をもっと見せてくれ…!』

 

遊海LP4000→3000

 

 

「でも貴様にもダメージを受けてもらうぞ!来い…!『ライトロードパラディン ジェイン』!」

白い鎧の聖戦士が現れる ATK1800

 

「バトルだ…!『ラヴァゴーレム』で『レッグス』を攻撃!ゴーレム・ファイヤー!」

魔神の口に炎が収束する…!

 

『残念だが無理だなぁ!リバース罠「モンスター・レリーフ」!「ホールディング・レッグス」を手札に戻し手札からレベル4「ホールディング・アームズ」を特殊召喚!』

足枷が消え去り金色の手枷が現れる DEF1200

 

『その効果により『ジェイン』を拘束し効果を無効にし攻撃も出来なくする!そしてこの効果を発動している時このカードは破壊されないのさぁ!』

ゴーレムの火球が手枷に直撃するがダメージは無く、ジェインは自由を奪われた…

 

「クソっ…!ターンエンドだ…!」

遊海LP3000

ラヴァゴーレム ジェイン 手札5

 

 

 

「カッ、ハアッ…ハアッ、熱い…!息が…!」

 

『いい表情だぁ白波ィ…もっと貴様の苦しむ顔を見せてくれえ…!』

 

「ッ…ちくしょう…!」

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!そしてリバースカードを発動!「拷問車輪」!「ラヴァゴーレム」を…白波を拘束しろ!』

 

「なっ!そのカードは…!」

拷問車輪が檻とゴーレムの間に固定される

 

『懐かしいだろぅ白波ィ!さぁ味わえよ!「拷問車輪」で500ダメージだぁ!!』

車輪が回転する…それはラヴァゴーレムを削り遊海に灼熱の飛沫が直撃する…!

 

「あ"あ"あ"あ"あ"っ"!!?」

 

遊海LP3000→2500

 

『ギャハハハハ!!いい声で鳴くじゃないか白波ィ!もっと…もっとだぁ!!「万力魔神バイサー・デス」を召喚!効果で『ジェイン』を拘束だぁ!さぁ締め付けの痛みを受けろぉ!!』

 

人型の拷問具が現れる、それはジェインをさらに拘束し頭を締め付け…そのダメージが遊海にも伝わる…ATK1200

 

「があああああああああ!!うぐああああああ!?」

 

遊海は痛みに耐えられず転げ回る…しかしそこは灼熱の檻の中…転げ回るたびに身体は灼熱に焼かれさらなるダメージを与える…

 

『フハハハハ…白波ィ、お前は楽には死なせん!血の一滴になるまで焼き尽くして最大の苦しみを与えてやろう…ターンエンドだぁ!』

 

闇マリクLP4000

バイサーデス アームズ 拷問車輪 手札2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…ガッ…いたい…くるしい…いやだ…いつも…おればっかり…やだ…」

 

 

『フフフ…とうとう精神が壊れたか…しかしまだ足りないぞ…叫びをあげろ!許しを請え!フハハハハ!』

 

遊海の精神は既にボロボロになっていた…全身を包む痛み…それは常人であれば既に発狂していただろう…

 

『さぁ…慈悲だ…闇に沈むがいい…』

 

闇マリクの腕から黒いカードが飛び出し遊海を包んでいく…精神が破綻しかけている遊海はなす術なく取り込まれていく…

 

「あっ…たす…け…て……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《キュアアアア!!》

 

バリーン!

 

 

 

 

 

 

闇の空間が音をたてて崩れ落ち、眩い光が周囲を照らす…!

 

『なにっ!?』

 

 

 

【ユウミ!しっかりしなさい!!闇に飲まれてはいけません!】

 

「ふれ…あ…」

 

眩い光の正体はラーの翼神竜だった、周囲の闇を砕きその神威で遊海を照らしている…

 

『馬鹿な…ラーだと?』

闇マリクは呟く…既に失われし神を目撃し動揺している

 

【闇の使者よ!我がマスターを幻影でだまし傷つけるとは言語道断!姿を現せ!!ゴッド・フェニックス!!】

 

フレアが炎を纏い不死鳥と化す、その神聖なる炎は闇を…偽りの姿、偽りの傷を燃やし尽くし真実を顕にする…

 

『くっ…おのれデュエルモンスターズの神め…!!』

闇マリクは偽りの姿…その正体はトゥルーマン…ミスターTであった…そして…

 

 

「あ…傷が…」

闇が消えると共に遊海の身体に刻まれていた傷が消えていく…残ったのは最初の脱臼と捻挫だけであった。

 

【ユウミ、あなたは敵の術中に嵌っていたのです!傷は全て精神へのダメージが現れたもの、身体は大丈夫です!】

 

「ありがとう…フレア…!おかげでコイツをぶっ飛ばせる…!!」

 

遊海は足の痛みを振り切り立ち上がる…その眼は怒りに燃えていた…

 

「覚悟はいいだろうなぁ?ミスターT!!」

遊海は凄まじい殺気を放つ…!

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

『「ラヴァゴーレム」の効果!ダメージを受けろ!』

 

「もう関係ない!」

遊海はラヴァゴーレムの熱さを気にする事無くプレイを続ける

 

遊海LP2500→1500

 

「手札から『ライトロードの神域』を発動!効果により手札の『ライコウ』と墓地の『グラゴニス』を入れ替える!そして『ラヴァゴーレム』を生贄に現われろ!『ライトロードドラゴン グラゴニス』!」

金色の鬣を持った白い竜が現れる ATK2000→7100

 

『攻撃力7100だとぉ!?』

 

「『グラゴニス』は墓地の『ライトロード』モンスターの種類につき300ポイント攻撃力をアップする!そして貫通ダメージ持ちだぁ!!」

 

『しまっ…!』

 

「いけぇ!『グラゴニス』!『アームズ』を攻撃!!セイントホーンアタック!!」

 

グラゴニスの聖なる角が邪悪な闇の使徒を貫いた…!

 

ミスターT LP0

 

 

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

『ぐっ…覚えていろ…』

ミスターTは黒いカードとなり別の次元に姿を消した…

 

 

 

 

「っ…ハッ…ハッ、やめてくれよ…そういうの…」バタン

 

遊海は仰向けに倒れる…身体の傷は治ったとはいえ精神へのダメージは限界を迎えていた…

 

《遊海!無事か!!》

 

「メガロック…」

地面が盛り上がりメガロックが顔を出す

 

《遅くなってすまない!闇の結界で我らが干渉できなかった、だから神であるフレア様に頼みに行っていたのだ…!》

 

《マスター!!大丈夫で…精神ダメージがすごい事になってるー!?》

 

《主殿…申し訳無い…!拙者がもう少し警戒していれば…!》

 

「トフェニ…アヤカ…大丈夫だ、…でも…少し休ませて…く……」

 

『『『マスター!?』』』

 

遊海の意識は深く深く沈んでいく…そして安寧の闇が意識を包み込んだ…戦いは…始まったばかりだ…。

 



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対十代〜忠義の天使〜

ゴギッ

 

 

 

「痛てぇっ!?イタタタ!?」

 

意識を失っていた遊海は強い肩の痛みで覚醒する…。

 

「ふぅ…遊海先生ごめんなさいね、肩を填めたから痛かったでしょう?もう大丈夫だから…」

 

「鮎川先生…という事は保健室か、すいません…」

 

「いいのよ、高い所から落ちたんですって?よく捻挫と脱臼だけで済んだわね…しばらくは安静にしてくださいね!」

そう言って鮎川先生はベッドを後にした…そして…

 

「遊海さん!大丈夫ですか!?」 

 

「翠…」

入れ替わりに翠がやってくる

 

「十代君から聞きましたよ!ミスターTに襲われたって!!大丈夫なんですか!?」

 

「心配かけて悪いな…身体は大丈夫だ、でも…少し心には効いたな…精神攻撃はやめてくれよ…」

そう言いながら遊海は胸を抑える

 

「いったい何が…」

 

「彼奴…闇マリクの姿で襲ってきやがった、デッキすらもそのまま…しかも幻覚でのダメージ…精神衰弱だぜ…フレアがいなければ闇に呑まれてた…」

 

「…本当に遊海さんを斃しにきてますね…でもなんで闇マリクに…」

 

「俺にとって一種のトラウマになってるからな…不死になる前の凄まじい痛み…未だに記憶の底に残ってたよ…」

その瞳には遊海らしくもない怯えの感情があった…

 

「遊海さん…大丈夫…大丈夫、貴方は強い人です…今までも乗り越えてきたんですから…」

 

「翠…ありがとう…」

翠は遊海に優しく抱きつき背中を撫でる…それだけでも遊海の心は癒やされていった…

 

 

 

 

 

「しかし…どうやってミスターTは俺のトラウマを見抜いたんだ?」

 

「えっ?たしかミスターTには心の闇を読む力がありませんでしたっけ?」

 

「いや…そうなんだけど…何か違和感を感じるんだ、まるで実際の闇マリクを見てきたみたいに…う〜ん…」

 

遊海は頭を捻る、闇マリクが存在したのは約10年前…ダークネスはバトルシティ決勝で干渉してきただけだったから闇マリクを知らない可能性もある。

しかし遊海の前に現れた偽マリクは限りなく本物に近い思考・態度・テクニックだった、ダークネスはどこから情報を得たのだろうか…。

 

「遊海さん!喉乾きましたよね!何か持ってきます!」

 

「ああ、ありがとう翠」

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼する!!鮎川先生はいるか!怪我人だ!」

保健室に誰かが駆け込んでくる…この声は…

 

「オブライエン君!吹雪君!?どうしたの!!」

カーテンの向こうで鮎川先生が驚いている…そうか、●○●○に襲われたのか、なんだ…? 俺は何を思った?確か…重要な情報を……!?

 

「っ…!?頭が…割れる…!!またかよっ!?」

 

激しい頭痛と共に意識が暗転する…

 

 

ジジッ

 

 

 

 

 

《岸波殿、マスターを頼みます…マスターは人との繋がりが必要なのです…!》

 

 

「わかった!心配するな●○●○、精霊がいる者同士気にかけるよ」

 

《マスターを頼みます…!》

 

ーこの…記憶は…?ー

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生!!大丈夫か!遊海先生!?」

 

「…十代…か…なんで…」

意識を取り戻すと十代が俺の身体を揺さぶっていた…

 

「オブライエンから吹雪さんが襲われたって聞いて駆けつけたんだ!そしたら遊海先生の呻き声が聞こえて…」

 

「そうか…すまない、というか吹雪が襲われた?何があった!」

 

『それはオレから説明します、遊海プロ』

十代の後ろからオブライエンが現れる

 

「オブライエン?確かウェスト校に帰ったはずじゃ?」

 

『オレの雇い主…ペガサス会長から新たな任務を受けて密かに戻ってきていました、実は…』

 

オブライエンによるとアカデミアで起きたカードの黒化現象が世界的に発生し調査の結果その中心がアカデミアである疑いが浮上、そしてそれに関係していると思われる男・藤原 優介を追っているうちに旧寮にて何者かの襲撃を受けていた吹雪を発見、助け出したそうだ…。

 

 

 

 

 

 

『十代、調査の結果「藤原 優介」という男はアカデミアに在席していた…しかし約4年前から行方がわからなくなっているそうだ…そして彼は独自に何かの実験をおこなっていたらしい』

 

「4年前…なぁ、遊海先生は何か覚えてないのか?先生はアカデミアの出来た時からいるんだろう!」

 

「…わからない」

 

「えっ…?」

 

「わからないんだ、()()()()()()()()()()()()()()()…!」

 

遊海は頭を抱える、名前を聞いても何一つ記憶が無い…しかし何かを知っているはずだと…

 

《十代さん、マスターと私は何者かに記憶の改ざんを受けた可能性があります…!》

 

「ミスアヤカ…それは本当なのか?」

実体化したアヤカにオブライエンは問いかける

 

《はい、私とマスターには特定期間の記憶と藤原 優介という人物に関する記憶がありません、翠もそうです…彼女も藤原という名前に心当たりがないそうなので…》

 

「アヤカ、その記憶を戻す事はできるのか?」

 

《私には不可能です、しかし…何か強い衝撃…肉体的・精神的に強いダメージをあたえればあるいは…》

 

「…方法はある」

 

「「なんだって!」」

遊海は記憶を戻す方法を思いついたようだ…

 

「賭けだがこれしかないだろう…場所を移そう、オブライエン…吹雪を見つけた場所に案内してくれ…!」

 

「わかった、貴方がそう言うのであれば…」

 

そして遊海達は保健室を後にした…

 

 

 

 

「遊海さん!飲み物を…いない!?何処行ったんですか〜!?」

 

「翠さん…!」

 

「吹雪君!?どうしたの!?」

 

「遊海先生達は廃寮に…!ボクもそこ連れていってください…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカデミア・廃寮

 

「っ…頭がガンガンする…!」

俺は十代達と共に廃寮を訪れた…そこに近づくに連れ頭痛は痛みを増していた…そして遂に吹雪のいた場所へと到着する…。

 

『遊海プロ、到着だ…ここで吹雪は何者かに襲われていた…』

 

「遊海先生…いったいどうするんだ?強い衝撃を与えるなんて…」

 

「簡単な話だ十代…オレとデュエルしてくれ…!全力で!!」

遊海は身体をふらつかせながらデュエルディスクを構える…

 

「デュエルで記憶を呼び覚まそうっていうのか?でもそんな状態で…」

 

「十代…ただのデュエルじゃだめだ…闇のゲームレベルの衝撃でなければな…!」

 

『遊海プロ!それは危険だ!闇のデュエルは命を…!』

 

「先生!流石に俺も反対だ!普通のデュエルで…!」

 

「…ならばその状況にするしかないか…」

その瞬間、遊海の身体から闇が溢れ出す…!

 

《マスター!?何を!》

 

「目覚めよ…破壊の残滓…我、全てを破戒する者なり…!!!」

遊海を黒い闇が覆い尽くす…!

 

《マスタ…ソレ…ダメ…!!!》

アヤカは実体化を維持できずに消えてしまう…

 

『何が…何が起きている!!』

 

「遊海先生!!」

《十代…気を引き締めろ!来るぞ!》

 

「ユベル!来るって…何が!」

 

 

 

 

遊海を覆う闇が爆ぜる…そして…

 

【オオォォォオ…GAaaaaaaa!!!!】

闇の中、遊海の身体は変質していた、黒い2対の翼…紋様の入った黒い身体…そして全ての生物を畏怖させる咆哮…それは…

 

『まさか…嘘だろ…!』

 

「破壊の悪魔…!なんで…!」

 

【こうでもしなきゃ本気で来ないだろ、十代…!!】 

遊海は自らの意思で身体を悪魔へと変えたのだ…!

 

 

 

 

 

 

 

【ゴボッ…!流石に拒絶反応があるか…しかし頭ははっきりした…!】

遊海は血を吐き出す…その意識は完全には呑まれてはいなかった…

 

「遊海先生…その姿は…!」

 

【オレが悪魔へと墜ちた姿…ティエラは消滅したが…力の残滓で無理やり変質した、お前が我を倒さなければまた暴走する…!!】

 

「なっ…!?」

 

【さぁかかってこい!世界を救う覇王!貴様を倒し我は再び神に…!!違う!記憶を…!!】

 

「遊海先生…デュエルだ!!すぐにあなたを開放してやる!!」

十代はデュエルディスクを構える

 

【フハハハハ!さぁ来るがいい!我を打ち倒せ!覇王よ!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

 

 

 

 

 

十代LP4000

デビルLP4000

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『ダンディ・ライオン』を守備表示で召喚!」

タンポポの身体を持ったライオンが現れる DEF300

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!!」

十代LP4000

ライオン 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

【オオォォォ…!!】

 

「遊海先生…!!」

 

【我は…全てを破壊する者…貴様をハカイする!!!】

 

 

 

 

 

 

【我のターン!ドロー!】

【手札から『トレード・イン』を発動!レベル8『堕天使スペルビア』を墓地に送り2ドロー!】

 

【さらに手札の『堕天使イシュタム』の効果発動!手札の『堕天使マスティマ』と共に墓地へ送り2ドロー!】

 

【そして魔法カード『堕天使の追放』を発動!デッキの『堕天使の戒壇』を手札に加え…そのまま発動!墓地の『堕天使スペルビア』を守備表示で特殊召喚!さらに効果により『堕天使イシュタム』を特殊召喚!】

丸い身体を持った悪魔と自殺を司る天使が現れる DEF2400  ATK2500

 

【ソシテ手札から『堕天使ユコバック』を守備表示で召喚!効果により『背徳の堕天使』を墓地へ送ル!】

地獄の釜の番人が現れる DEF1000

 

【バトルだ!『イシュタム』で『ダンディ・ライオン』ヲ攻撃!!】

黒い羽の嵐がライオンを破壊する

 

「その時!『ダンディライオン』の効果により『綿毛トークン』2体を特殊召喚!」

小さな綿毛が現れる DEF0×2

 

【カードを2枚伏セテターンエンド!】

 

デビルLP4000

スペルビア イシュタム ユコバック 伏せ2  手札2

 

 

 

 

 

「ハアッハアッ、十代!遊海先生!!…そんな…!?」

 

「嘘だろ…!なんでっ…!」

 

「なっ…なんで悪魔がここにいるドン!?」

 

「まさか遊海先生が…また…!」

 

「十代君…遊海先生…!なんで…!」

 

「遊海さん!!な、何をやってるんですか!!」

 

翠・吹雪・翔・剣山・明日香・万丈目がやってくる、吹雪から場所を聞き出したのだろう…吹雪は車椅子に乗っている…

 

 

 

「翠さん…」

 

【来ルナ翠…!これは我の問題ダ!我はコのデュエルで世界をハカ…記憶を取り戻ス!!】

遊海の意識は徐々に蝕まれていく…

 

「遊海さん…せっかく元に戻れたのに…!なんで!!」

 

「翠さん!先生は必ず元に戻す!だから見ていてくれ!!」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「綿毛トークン2体を生贄に『ネオス』を召喚!」

宇宙の波動を受けた戦士が現れる ATK2500

 

【来タか、優しき闇の戦士ヨ…!今度こソ打ち倒ス!!】

 

「魔法カード『Hーヒート・ハート』を発動!『ネオス』の攻撃力を500アップし貫通能力を得る!」

ネオスが炎のオーラを纏う ATK2500→3000

 

「バトル!『ネオス』で『スペルビア』を攻撃!ラス・オブ・ネオス!!」

白き戦士の手刀がスペルビアに迫る!

 

【甘イぞ覇王!!『イシュタム』の効果ヲ発動!我がライフ1000をコストに墓地ノ『背徳の堕天使』の力を得る!その効果により『ユコバック』をリリースし『ネオス』ヲ破壊する!その後『背徳の堕天使』をデッキに戻す!】

 

「なっ!?相手ターンに墓地からトラップだって!?」

 

デビルLP4000→3000

ユコバックがネオスに突貫し破壊する

 

「ネオス!!くっ…ターンエンド!」

【速攻魔法『終焉の炎』発動!『黒炎トークン』を2体特殊召喚!】

小さな火の玉が現れる ATK0 ×2

 

十代LP4000

モンスター0 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

 

【ゴッ…ゴボッ…!まだダ…マダ呑まれるワけにハいかない…!!】

遊海は血を吐きながらデュエルを続ける…自身が変質する違和感と光と闇の拒絶反応と戦いながら…

 

「遊海先生…!もうやめてくれよ!どうしてそこまでして!!」

 

【十代!こノ記憶は今起きてイル事態に関する重要な情報ダ…!我はこれヲ思い出さナケレばナラナイ!!】

 

 

 

 

 

 

 

【オオォォ!ドロー!】

【魔法カード『闇の誘惑』を発動!2ドロー!闇属性『堕天使アムドゥシアス』を除外!さらに手札の『堕天使イシュタム』効果!『堕天使ゼラート』と共に捨て2ドロー!】

 

『凄まじい手札交換だ…!』

 

「遊海さん…!」

 

【そして黒炎トークン2体をリリースし現わレロ!!傲慢たる堕天使ノ長!『堕天使ルシフェル』!!】

八枚の黒翼を持つ神への反逆者が現われる ATK3000

 

「攻撃力3000…!あのデッキの切り札か…!」

 

【『イシュタム』の効果を発動!ライフ1000を糧に墓地の『堕天使の戒壇』の効果ヲ得る!墓地の『堕天使ゼラート』を守備表示デ特殊召喚!そして『戒壇』をデッキに戻ス!】

デビルLP3000→2000

 

赤い翼を持つ堕天使が現れる DEF2800

 

「自分のライフを削っての大量召喚…!不味いぞ…!」

 

「アニキ!負けないでくれザウルス!!」

 

【そして『ルシフェル』の効果を発動!!自分の場の『堕天使』モンスターの数までデッキトップから墓地へ送り…堕天使カードの数につきライフを500回復する!堕天使の祝福!】

 

 

墓地送り

闇の誘惑

マスティマ

魅惑

イシュタム

 

デビルLP2000→3500

 

「ライフが回復したわ!」

 

「マズいっす!」

 

【マダダ!!リバース罠『神属の堕天使』ヲ発動!手札の『堕天使テスカトリポカ』を墓地へ送リ、フィールドの『ルシフェル』を対象に効果を発動!効果を無効にしライフを3000回復スル!!】

 

遊海は目の前に現れた金色の盃の液体を飲み干す…

 

デビルLP3500→6500

 

「ライフが…超回復してしまった…!」

 

 

【ハアッ…ハアッ…『スペルビア』を攻撃表示に変更…バトル!『ルシフェル』でダイレクトアタック!堕天一閃!】

ルシフェルが十代に斬りかかる…

 

「リバース罠『ヒーロー見参!』発動!手札からランダムにモンスターを特殊召喚する!」

 

【右だ!】

 

「大当たりだ!『N・ブラック・パンサー』を特殊召喚!」

マントを着た黒豹が現れる DEF500

 

【しかし攻撃を続行する!切り裂け!『ルシフェル』!】

 

「ダブルリバース罠『攻撃の無力化』!バトルフェイズを終了する!」

 

【凌いだか…ターンエンドだ!】

デビルLP6500

スペルビア ルシフェル イシュタム ゼラート 手札1

 

 

 

 

 

「あ…危ねぇ…油断したら一発でやられるぜ…!」

 

【オオォォォ…その程度か十代!俺の見込み違いだったのか!】

遊海の纏うオーラが力を増す…

 

【我ヲ超えられぬなラバ…ここで屍を晒すがイイ!!!】

 

「くっ…(この殺気…遊海先生は本気だ!俺を本気で殺そうとしてる、殺らなきゃ…殺られる…!!)」

十代は瞳をオッドアイに変化させる

 

【その眼ダ…力を使エ!覇王!!】

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

「『強欲な壺』を発動!2ドロー!!」カンコーン☆

 

「いくぜ遊海先生…これがオレのゼンリョクだ!!」

 

【コイッ!!覇王!!】

 

「魔法カード『Oーオーバー・ソウル』を発動!甦れ!『ネオス』!」

再び白い戦士が現れる ATK2500

 

「そして『N・グローモス』を召喚!」

光輝くヒトガタが現れる ATK300

 

「さらに魔法カード『スペーシア・ギフト』を発動!フィールドの『ネオ・スペーシアン』一種類につき1枚ドローできる!2ドロー!」

 

「いくぜ!オレは『ネオス』『ブラックパンサー』『グローモス』でトリプルコンタクト融合!」

3体のモンスターが銀河へと飛び込む!

 

「来い!『E・HEROカオス・ネオス』!」

光と闇の力を宿したネオスが現れる ATK3000

 

【トリプルコンタクト融合…!】

 

「『カオス・ネオス』の効果!相手フィールドのモンスターを全て破壊する!カオス・ビックバン!!」

 

【何!?ぬぅおおお!?】

フィールドの堕天使達が混沌の爆発で消滅する…

 

「バトル!『カオス・ネオス』でダイレクトアタック!ライトアンドダークスパイラル!!」

混沌の螺旋光線が遊海に直撃する

 

【ガアアアア!!…マダだ…まだ我は倒せんぞ十代!!】

 

デビルLP6500→3000

 

「ああわかってるさ先生…!」

 

【なに…?】

 

「速効魔法『コンタクト・アウト』!『カオス・ネオス』をデッキに戻し『ネオス』『ブラックパンサー』『グローモス』をデッキから特殊召喚!!」

カオスネオスが分かれ3体のモンスターがフィールドに現れる ATK2500 ATK1000 ATK300

 

【しまっ…!】

 

「『ブラックパンサー』でダイレクトアタック!ダーク・クロー!!」

 

黒豹が鋭い爪で切り裂く

 

【ガッ…!?】

デビルLP3500→2500

 

「『ネオス』でダイレクトアタック!フィスト・オブ・ネオス!!」

ネオスがフィールドから飛び出し、遊海に正拳突きを叩きつけた…!!

 

【ぬぅおおお…ガアアアア!!?】

 

 

 

デビルLP0

 

 

十代 WIN!

 

 

 

 

 

 

ズガーンッッ!!!

 

 

 

【「ゴッ…ガッ…ガハ…あ"あ"あ"あ"あ"…!!」】

壁に叩きつけられた遊海から邪悪な力が抜けていく…しかし…

 

「なんだこれ…!闇が2つ…!?」

 

遊海から抜け出した闇の力は間もなく霧散した…

 

 

 

「遊海さん!!」

デュエル終了後翠は遊海に駆け寄る…その身体は悪魔化の副作用とダメージでボロボロだった…

 

「みどり…」 

 

「何をやってるんですか!遊海さんの馬鹿!!」バシッ

 

「うわぁ…」

 

「痛そうッス…」

翠は遊海に駆け寄り平手打ちを遊海に繰り出した…

 

「なんでこんな事してるんですか!!元に戻れなかったらどうするつもりだったんですか!?馬鹿!!遊海さんのバカぁ…!」

翠は涙ながらに遊海を叱りつける…

 

「ごめん翠、これしか…なかったんだ…でも…」

 

「でもじゃありません!!いつもいつも心配ばかりかけて!傷つく貴方を見ているのが…どれだけ悲しいのかわかってるんですか!!」

翠は感情のままに捲し立てる…遊海を愛するがこそである…

 

「ごめん…ごめんな翠、でも思い出した、全部…何が起きたのか…!!」

 

「えっ…!?」

 

「本当なのか遊海先生!!」

 

「ああ…4年前の事…藤原の事…全て思い出した!!」

 

「…ボクもだ…!優介の事を思い出した…!」

 

「兄さん!本当なの!?」

 

「ああ…遊海先生と十代の魂のぶつかり合い…それで記憶が呼び覚まされたんだ…!」

吹雪も記憶が呼び覚まされたようだ…。

 

「話そう…何があったのか…!」

そして遊海は語りだす…4年前に何があったのか…

 

 

 

 

 

 

 

藤原 優介…彼は吹雪やカイザーと同時に入学してきた生徒だった、その才は「カイザー」「プリンス」を凌ぎ「孤高の天才」と呼ばれるほどだった…。

 

その頃俺は偽名でアカデミアに勤めていたが…彼を注意して見ていた…彼は4年後に黒幕となる存在…できればそれを救いたいと…

 

 

 

 

 

「4年後…黒幕?何の事だ…?まるで何が起きるか知っているような…」

十代が遊海に尋ねる

 

「ああ…俺はこの世界で何が起きるのか、全て知っていた…3幻魔の復活も…光の結社も…異世界の出来事も!」

 

「「「な、なんだって〜!?」」」

生徒達は驚きをあらわにする…

 

 

「じゃあオレがアカデミアから抜け出してノース校に行った事も…」

 

「俺がネオスと出会う事も…」

 

「全部知っていたと言うんですか!?」

 

「ああ、全部知っていた…他にも吹雪がダークネスに呑まれていた事も…エドのお父さんを助けたのも俺だ、この時までは全ての出来事を覚えていたんだ…」

 

「この時までは…?」

 

「ああ、続きを話そう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らが入学してしばらくたった頃、彼の精霊から藤原の事を頼まれた…「彼は天涯孤独で親がいない、だから精霊が見える貴方に気にしてほしい」と…俺はそれを了承した、彼の心を救う手助けになればと藤原と接触したんだ…。

 

俺と藤原はすぐに仲良くなった、吹雪や亮と一緒に無駄話をしたりデッキ構築に付き合ったり…最初は暗かった藤原も段々と心を開いてくれた…そう思っていたんだ…。

 

 

「私も思い出しました…!遊海さんは藤原君に気をかけて…たまに寮にご飯を食べに来て…」

 

「ああ、特に吹雪と一緒にいる事が多かった…でもあの日…俺は藤原を救う事ができなかった…!!それどころか…!」

 

「遊海先生…」

 

 

 

 

 

 

 

吹雪達が進級してしばらく経った頃だった、夜遅くに吹雪から連絡があったんだ「藤原が部屋に戻らない」って…俺は吹雪と寮中を探し回りここに辿り着いた…そして…

 

 

 

「やめるんだ藤原!!その力に飲まれてはいけない!」

 

 

「藤原!まだ間に合う!儀式を中止しろ!今ならまだ…!」

 

藤原は俺が気づかないうちにダークネスの力に魅入られていた…俺達が辿り着いた時にはその儀式は完成間近だった。

 

 

 

『岸波先生…吹雪、俺は絆を失うのが…人に忘れられるのが怖いんだ…ボクはそれを克服する方法を探していたんだ…』

仮面を被った藤原は寂しそうに呟いた

 

 

「それは皆同じだ!だから人は絆を深めその人を忘れないように…!」

 

 

『失う事が怖いなら…忘れられるなら…ボクの方から忘れてやる!!ボクは究極の力を手に入れるんだ!』

 

 

「藤原!やめるんだ!その力はそんな物じゃない!お前の魂を喰らい尽くす闇そのものなんだぞ!!」

 

 

『…さよなら、先生…吹雪…亮…!』

 

 

藤原は自分の腕を切り裂き魔法陣へと血を垂らす…すると巨大な黒い穴が開き俺達を飲み込もうとする…!

 

「「うわあああ〜!!?」」

 

 

《マスター!!掴まって!!》

 

「アヤカ!クソっ俺は藤原を救う事が…できなかった…!ちくしょお…!!」 

俺はアヤカに掴まる事で踏み止まった…でも…

 

《!?吸い込まれる…!!マスター!!》

 

「クソっ…!グッ…うわああああ!!?」

俺も黒い孔へと吸い込まれた…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ボクはその後暗黒の世界で藤原からダークネスの仮面を受け取った…そしてその後の大徳寺先生とのテストデュエルの時に異次元へ迷い込んだボクはその力で生き延びる事ができたんだ…そういえばその前…しばらく遊海先生を見かけなかったような…」

 

 

「ああ…俺はあの時にダークネスの世界へと完全に飲み込まれたんだ…そして…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…ここは、ダークネスの世界か…まずい…早く脱出しないと!アヤカ!頼む!」

 

《了解ですマスター!次元航行準備かい【させると思うか?】ぎゃ!?マス…ター!逃げ…!》

 

「アヤカ!!」

暗黒の世界で俺はダークネスに襲われた…アヤカは倒され…俺も抗ったが…闇の世界では敵わなかった…

 

 

 

 

「ぐっ…ああ…!!」

 

【他愛ないな転生者…ここではデュエルモンスターズの神の邪魔も入らん…貴様を消せば我が目的も容易くなる…消えろ…!!】

 

「待ってくれ暗黒の化神よ…」

 

【なんだ…?】

 

「ボクは藤原 優介…ダークネスの力を望む者だ」

 

 

【汝が我が力を望む者か?】

 

『ああ…ボクを全ての人の記憶から消してくれ…そうすればボクはあなたの手駒となろう…!』

 

【このダークネスならば容易い事だ…そして貴様は我が憎き者をこの世界へと連れてきた…それだけでも評価に値する…】

 

「ガッ…クッ…!ダーク…ネス…!キサマ…!」

 

俺は虚無の世界へと呑まれつつあった…

 

 

【白波 遊海…貴様は我にとって邪魔でしかない異物だ…我が深淵の世界に沈むがいい…!】 

 

「待ってくれ…その人は元の世界に戻してくれないか?」

 

【何故だ?】

 

「その人はボクの恩師なんだ…結果的に巻き込んでしまったけど…その人はボクに親身になってくれた、だからボクに免じて今は手を下さないでほしい…」

 

 

【わかった…我が新たなる同胞に免じ白波 遊海を表の世界に返してやろう、ただし…記憶は消させてもらうぞ…】

 

「ああ…それでいい…」 

 

「藤原…だめだ…戻れ…!」

 

「本当にサヨナラだ先生…今までありがとうございました…」

 

「ふじ…わら…!!」

 

【消えろ我が仇敵の記憶…?ほう?…凄まじい心の闇だ…これは後々役に立つかもしれんな…我が力を少し入れておこう…】

 

「く…そ……」

そしてダークネスに記憶を弄られた俺とアヤカは力を根こそぎ吸い取られて放逐された…そしてしばらくの間目覚めなかったんだ…。

 

 

 

 

 

 

「そして俺は一部の記憶を失ったまま過ごしてきた…!?おい!?今出てくるな!?」

 

「遊海先生!?どうしたんッス!?」

遊海は頭を抑える…そして…

 

『…ようやく謎が解けたぞ遊海…我達の中にダークネスの欠片があったのはそういう事か…!』

 

 

 

「遊海先生の口調が変わったザウルス!?」

 

「まさかまだティエラが…!」

万丈目はデュエルディスクを構える…!

 

「みんな違うんだ!この人は…!」

十代がみんなを静止する…

 

「知っているの十代?」

明日香が尋ねる

 

『貴様らには初めて会うな…我が名はユウスケだ!…藤原とは別人だからな?我はコイツの闇の人格だ!』

口調の変わった遊海…ユウスケが名乗りをあげる

 

「遊海先生二重人格だったんッスか!?」

 

「まるで遊戯さんみたいだ…」

 

『遊戯というよりはマリクだな…まぁ置いといて、お前達は遊海が豹変した事があるのは覚えてるか?』

ユウスケがみんなに問いかける

 

 

「豹変…あっ!三幻魔の時!あの時の遊海先生はなんだか変だったわ!サレンダーした理事長に攻撃を…」

 

「あとは…アヌビスに襲われた時ね…遊海さんらしくない暴言を使っていたわ…」

明日香と翠が遊海の変化を思い出す…

 

『そうだ、あの時の遊海は負の衝動で動いていた…我はコイツの中でその理由を探していた…そして魂の最深部でダークネスの力の欠片を見つけたのだ!』

 

「それが遊海先生の豹変の原因だったんすね…」

 

『ああ…一度は燃やし尽くしたんだがまだ残っていたみたいだったがな…今のデュエルの衝撃で完全に消えたよ』

 

「よかったです…」

 

「でも問題を全て解決したわけじゃない…ダークネスはその力を増している…それが今の事態なんだ…!」

遊海はそう呟く

 

「「「(戻った!?)」」」

 

「でもその藤原って人はどうしてそこまで闇を求めたんだザ《嘘だっ!!!》!?」

部屋に怒号が響く…

 

《マスターが自分から闇を求めるなんてありえない!!》

藤原が怒りをあらわにしながら現れる…

 

「藤原さん…でも今、ダークネスに取りこまれたって…!」

 

「じゃあアイツは誰なんだ!?」

万丈目と明日香が驚きの声をあげる…

 

「…待たせてすまなかったな、お前の事も思い出したよ…」

遊海は前に歩み出る…

 

「遊海さん…!」

 

「正体を現せ…誠実なる天使…『オネスト』!」

 

《岸波 白野…いや白波 遊海!!貴様は…貴様だけは許さない!マスターを見捨てた貴様だけはぁ!!》

 

藤原は白い翼を背中から現し浮かび上がる…そしてその正体…古代ローマ風の服を着た天使、デュエルモンスターズの精霊・オネストが現れる…

 

 

 

 

 

《貴様の話は信じない!マスターを見殺しにした報いを受けろ!!》

 

「藤原君の正体は精霊だったんすか!?」

翔が驚く

 

「オネスト…本当の話だ!確かに俺は藤原を救えなかった!でも見殺しにしたわけじゃない!!」

 

《問答無用!!》

オネストは羽根を飛ばしてくる!

 

「アーマー展開!モードクリフォート!!」

遊海は精霊アーマーを纏い羽根を弾く

 

《くっ!ならば…!》

羽根手裏剣が吹雪の元へ迫る!

 

『やらせるか!!』バン!バン!

オブライエンがカードガンで羽根を弾く

 

「早く離れるんだ!!俺が食い止める!!」

 

「「「「わかりました!!」」」」

弾幕の間を縫って十代達は旧寮を脱出する…

 

 

 

 

 

 

 

 

《ゼァッ!》

 

「くっ!止まれ!オネスト!!」

遊海とオネストの戦いは寮を倒壊させる程の戦いになっていた…

 

《白波!お前だけは!!》

オネストが羽根を飛ばす!

 

「ぐっ!?」

遊海はそれを弾いたが…

 

《許さない!!》

 

「しまった!?ぐあああああああ!!」

攻撃の隙に発射されたサイコビームが遊海へと直撃し吹き飛ばされる!!

 

「ガッ…あ…流石に無理がありすぎた…!」

遊海の変身が解ける…身体は十代とのデュエルダメージが残り身体の限界を越えていた…。

 

「遊海さん!!」

 

《マスターに死をもって償え!》

オネストは遊海にトドメをさそうとする…

 

「やばい!『ネオ』…《誰だ…!》ス…!?」

戦場と化した廃寮の前に低い声が響く…!

 

《我がマスターを害する者は誰だぁぁぁ!!》

大地を砕き岩の巨竜が現れる!

 

「メガ…ロック…!」 

 

「ぎゃ〜!!『メガロック・ドラゴン』!?」

 

「でかいザウルス!?」

 

「メガロックさん!!」

 

遊海を救う竜がその姿を現す…!

 

《我がマスターとの繋がりが切れたから来てみれば…!許さんぞ!オネスト!!》

 

《この前の岩石竜…!?》

 

【ユウミ!!無事ですか!!】

さらに天空からフレアが…

 

《主殿!》

トフェニが…

 

【マスター…!後でお説教ですからね…!】

復活したアヤカが遊海を守るように顕現する…!

 

 

「うわわわ…!遊海先生の精霊勢揃いだ!?」

 

「遊海先生の危機に集まったのか!?」

 

「……(失神)」

 

「アヤカちゃん!皆!!」

その光景は圧巻だった…巨大な機械要塞・太陽神・エジプトの守護龍・岩石竜…それが1人の人間を守るために現れているのだから…

 

《くっ…!太陽神を味方に…!》

オネストは歯噛みする…自身より格上の精霊が4体、勝ち目は…無い

 

【落ち着きなさい天使の精霊よ…われらは貴方をどうこうしようと言う訳ではありません、誤解を解きたいのです…!】  

フレアは諭すようにオネストに声をかける…

 

《誤解…誤解だと!?白波はボクのマスターを…優介を見殺しに……》

 

【違うでしょう?】

 

《なに?》

 

【貴方は主を見捨てた事に怒っているのではない…置いていかれた事が信じられないのでしょう?】

 

《なっ…何で…何でそれを…!》

神の眼をもってフレアはオネストを見透かす…

 

【貴方は置いていかれたのではありません…大切にされていたからこそ守られたのです…十代、()()()()()()()()

 

「あっ…ああ…」

十代は歩み出しポケットから1つの小さな缶を取り出す…その中には…

 

《ボクのカード…これを何処で…!》

 

「廃寮の藤原の部屋…机の中に大切にしまってあったんだ!」

 

【私には人の心というモノは完全にはわかりません…しかし貴方は大切にされていた…だからこそ貴方を闇の世界に巻き込みたく無かったのでしょう…それが貴方の主の意思だったのです…】

 

《そんな…マスター!ボクは貴方のためなら…どこにでも…!》

オネストは膝から崩れ落ちる…藤原の真意を知り涙を流す…

 

「オネスト…藤原は言っていた『オネストは僕に1番大切なカードなんです!いつも見守ってくれてるような…安心できるカードなんです』ってな…」

身体を引きずりながら遊海がオネストに歩みよる…

 

《白波…》

 

「アイツを助ける方法は必ずある…だから俺と十代を信じてくれないか?」

 

「ああ!絶対にお前のマスターを助け出してやるよ!」

十代と遊海はオネストに歩みより手を差し出す…

 

《ああ…信じよう、マスターを頼む…!!》

オネストも手を差し出し握手を交わす…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『∋∌∏∑∩∥∩√∪⊂∨∌∏∩〜!』

 

 

 

 

 

【なっ!?身体が!?】

 

《う、動けない!》

 

《なんだこれは!!》

 

「どうしたんだ!みんな!!」

突如精霊達の動きが止まる…その足元には緑色に輝く結界がある…

 

「まさかこれは…!!、っ!?オネスト!十代!!」

 

《なっ!?》

 

「遊海先生何を…なっ!?」

 

「ぐあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ!!!」

遊海は十代とオネストを突き飛ばす、十代が振り返ると黒いエネルギー球が直撃しダメージを受ける遊海の姿があった…

 

 

 

『フム失敗か…余計な事をしたな白波 遊海…』

虚空からミスターTが現れる…黒いエネルギーを撃ったのはミスターTだった…

 

「遊海先生!!」

 

「急に人が出てきたザウルス!?」

 

「何なんすかあの人!?遊海先生を一撃で…!」

翔も剣山も驚きを隠せないでいる…

 

「みんな下がって!アイツは人外…ダークネスの使い・ミスターTよ!」

翠は生徒達を庇うように前に出る…

 

『紹介ありがとう白波 翠、お前達をここから返す訳にはいかない…お前達は真理に近づきすぎた…!』パチン

 

ミスターTが指を鳴らすと周囲が火炎に包まれる…

 

「ミスターT…貴様…!俺が相手…だ!」

 

「遊海先生!無茶だ!その身体じゃ!!」

遊海はなんとか起き上がる…しかしその姿は見ていられるものではなくなっていた…

 

『白波 遊海貴様の相手は別にいる…!』

 

「なんだと…!」

ミスターTの声と共に炎の壁が2つに別れ人影が現れる…それは…

 

 

『フフフ…久しぶりですね白波 遊海…私の事を覚えていますか?』

 

 

「そんな…なんで…!」

翠は後ずさる…目の前の人物に最大限の警戒態勢をとる… 

 

 

「チッ…忘れられる訳がないだろう…お前の顔を…!」

遊海も傷ついた身体で人影を睨みつける…自身を完全に打ち負かした最強レベルの決闘者…世界を破壊しようとした1万年を生きた男…その名は…

 

 

 

「さっさと成仏してくれよ…ダーツ!!」

黄色と緑のオッドアイのアトランティスの王であり、秘密結社ドーマの首魁…ダーツの姿がそこにあった…。



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古き闇の王〜闇との激戦〜

十代とのデュエルで封じられていた記憶を取り戻した遊海、しかしそこにかつて倒されたはずのダーツが姿を現した…!

 

 

 

 

 

 

 

 

『フフフ…まさかこうしてまた相見えるとは…運命とは面白いものですね…』

 

「俺はもう会いたくなかったけどな…!ぐぅ…!!」

 

「遊海先生!!無茶は…!」

遊海は膝をつく…その意識は既にいつ途切れてもおかしくなかった、しかし遊海は唇を噛み締め意識を繋ぎ止める…

 

「十代、下がれ…()()()()()

 

「なっ…!?」

遊海は凄まじい殺気を放つ…それは先程のデュエルとは比べ物にならないレベルだった…

 

 

 

「ヒッ…この殺気は…!?」

 

「ビリビリ来る…!何なんだよこれ!?」

 

「み、翠さん…あいつは何なんですか…!」

翠に守られている生徒達は翠に敵の正体を問い掛ける…

 

「あいつはダーツ、一万年前のアトランティスの王だった男…私と遊海さんが敗北し…遊戯さんと海馬くんを2対1で圧倒した敵よ…!」

 

「遊海先生達を…倒したぁ!?」

 

「しかも1万歳ってどういう事ですか!?」

 

「説明している暇はないわ…下がって!」

翠は生徒達を炎壁ギリギリまで下がらせる…その反応だけで敵がどれほどの者なのか察する事ができた…

 

『おやおや、そこまで警戒しなくてもいいではないですか…どちらにしても皆さんが消え去る事に変わりはないのですから…!』ズズズ…

 

「ぐっ…あ…!!」

 

「うぉっ!!?」

ダーツから遊海よりも強い殺気が放たれる…心臓を鷲掴みにされるような圧迫感…それは恐怖でしかない…。

 

 

【ユウミ!逃げなさい!!今の貴方の身体では敵う相手ではありません!!】

拘束されたままのフレアが遊海に撤退を促す

 

「逃げられる訳がないじゃないかフレア…生徒達がいるんだ…守らなければ…ゴボッ…!」

 

「遊海先生!!貴様…オレが相手だ!!」

十代はオッドアイになって遊海の前に立ちはだかりダーツを睨みつける…しかしその膝は震えている…

 

『…私の相手は白波 遊海だけです、お前には用はありません…消えなさい…!』ゴロゴロ

ダーツの言葉と共に空が暗くなる

 

「十代!どけぇっ!!」ドン

 

「遊海先っ…!!」

異変を察知した遊海が再び十代を突き飛ばす!

 

 

 

 

ピシャーン!!

 

「ぎっ!!!!…ガッ……」

 

「遊海先生!!!」

空から雷が遊海へと直撃する…遊海は完全に沈黙した…

 

 

「遊海さん!!!しっかりしてください!遊海さん!!」

翠は思わず遊海へと駆け寄る…遊海の全身は焦げ、煙をあげている、心臓は動いているから生きてはいる…

 

【翠!そこにいるダーツは限りなく本物に近い偽物です!!おそらくトゥルーマンが変化しているもの…しかし力は本物と同等…逃げてください!!】

アヤカが分析結果を翠へと伝える…

 

『ほう、察しがいいな機殻の王よ…正解だ、確かにそのダーツは本人ではない』

 

ミスターTがアヤカの分析を肯定する、本物のダーツはアトランティスでの決戦後、アテムが地球の闇を吸収した事で洗脳が解除され成仏しているからだ…

 

『しかし限りなく本物だ、白波 遊海の記憶に残るダーツの記憶…そしてダークネスに記録された結果から性格・力・タクティクス…全てを再現している』

 

【クッ…不覚…!あの時、私が堪えられれば…!】

 

 

『フフフ、白波 遊海は戦闘不能…私に勝てる者はこの場にはいませんね…残念な事です…』

ダーツは歩みを進める…その先には生徒達の姿が…

 

『若芽を摘まなければならないのは残念ですが…全てはダークネスのため、心配ありません…地球全ての人間がダークネスと一つになるのですから…』

ダーツは優しい笑顔を浮かべたままに歩みを進める…しかしその身体からは殺気が漏れ出している…

 

「みんな!逃げるんだ!!そいつは勝てる相手じゃない!」

十代は明日香達を助けるために走り出そうとする…

 

『遊城 十代、お前の相手は私だ…逃しはしない』

十代の前にミスターTが立ち塞がる

 

「どけぇぇっ!!!」

十代はデュエルディスクを展開する

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、足が動かねぇ…!」

 

「ガルル…!!」

 

「明日香下がれ…僕が時間を稼ぐ!…ぐっ」

 

「兄さん無理よ!その怪我じゃ…!」

 

『くっ…カードガンでは牽制にもならない…!』

 

「あわわ…どうしよう…!!」

生徒達はダーツに追い詰められていた、ダーツの殺気で身体の自由が効かなくなっている…!

 

『フフフ…若人達よ、その身をダークネスへと委ねなさい…!』

ダーツがその眼を赤く輝かせながら迫る…!

 

 

「させ…ない…!せいとたちは…おれが…!」

 

辛うじて意識を取り戻した遊海は立ち上がろうとする…しかし雷によって麻痺した身体はピクリとも動かない…

 

「遊海さん…こうなったら私が…!」

翠は遊海を寝かせデュエルディスクを展開する

 

「みどり…ダメだ…ダーツは…つよすぎる…!」

 

「遊海さん、約束しましたよね…遊海さんの背中を守れるデュエリストになるって…!私は…勝ちます!!」

翠は生徒達に迫るダーツへと走り出した

 

「みどり…!!!」

遊海はそれを見送る事しかできなかった…

 

 

 

 

「ダーツ!!私が相手よ!!」

翠がダーツの前に立ち塞がる

 

『春風 翠…私に一度は敗北したデュエリスト…再び闇の世界へと導こう…!』

 

 

「翠さん…!」

 

「大丈夫よみんな…私が皆を守ってみせる…!」

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

 

翠LP4000

ダーツLP4000

 

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「マスタールール3・適用!フィールド魔法『セフィラの神託』を発動!効果処理としてデッキから『イェシャドールーセフィラナーガ』を手札に加える!」

翠の後ろに巨大な木が現れる 

 

「ペンデュラムスケールにスケール1の『セフィラナーガ』とスケール5の『智天の神星龍』をセッティング!これにより私はレベル2〜4のモンスターを同時に召喚可能になる!」

翠の両隣に柱が現れる

 

「神樹の加護よ!今こそ私に力を貸して!ペンデュラム召喚!手札から『オルシャドールーセフィラルーツ』!『剣聖の影霊衣ーセフィラセイバー』!」

時空に開いた孔から聖邪の力を持った戦士と古き傭兵の武器を持った魔術師が現れる ATK450 ATK1500

 

「そして『セフィラルーツ』の効果を発動!ペンデュラムスケールの『セフィラナーガ』を特殊召喚!」

破壊の力を宿した蛇使い座の戦士が現れる DEF100

 

 

「そしてレベル4の『ルーツ』と『セイバー』でオーバーレイ!」

2人の戦士が銀河に飛び込む!

 

 

「オーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!永き時を生きた悪魔よ…今こそ悪を裁く騎士となれ!ランク4『励輝士ヴェルズビュート』!」

輝く蝿の意匠の鎧を着た観測者が現れる ATK1900

 

「カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

翠LP4000

ナーガ ヴェルズビュート Pスケール 神星龍 神託 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

 

「翠さん…!頑張って!」

 

「大丈夫よ明日香ちゃん…あなた達は必ず守る…!」

翠は明日香の声を受けて自身を奮い立たさせる…!

 

『フッ、健気なものですね貴女も…しかし私に敵うとは思わない事です!!』

 

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

ダーツのドローにより凄まじい殺気と風が巻き起こる

 

「くっ…!これで本当に偽者なの…?!」

 

『ええ、私はダークネスに 再現された偽者…しかし偽物が本物を超える事もあるでしょう!虚無の闇より生まれしカードよ!我に天命の力を!「オレイカルコスの結界」発動!』

ダーツの足元から緑色の六芒星の結界が広がっていく…それは対戦する2人と他者を隔離していく…

 

「『オレイカルコスの結界』!?嘘でしょ…!?」

翠は動揺する…既に消えたはずのオレイカルコスの結界が発動されたからだ…

 

「何を驚いているのです、そもそも『オレイカルコス』は地球の心の闇…ひいては闇に通じるカード、ダークネスから生まれたものなのですから…!『オレイカルコスの結界』がある限り私は魔法・罠ゾーンにもモンスターを召喚でき…モンスターの攻撃力は500アップする!さらにこのカードは手札に戻る事が無く破壊されない!」

 

 

「インチキ効果もいい加減にするドン!!」

 

「何なんスカそのカードは!?」

 

翔と剣山が抗議の声をあげる…

 

『フフフ、なんとでも言うがいい…私は手札から儀式魔法『オレイカルコス・ミラー』を発動!手札の星6『タイムイーター』を生贄に星6『ミラーナイト・コーリング』を後衛に儀式召喚!』

ダーツのフィールドに水晶の柱が現れる ATK0→500

 

『「ミラーナイトコーリング」の効果を発動!フィールドに「ミラーナイト・トークン」を前衛に4体特殊召喚!』

鏡のように輝く4体の騎士が現れる ATK0→500 ×4

 

「いきなりモンスターが5体も…!」

 

「しかし攻撃力は低い…翠さんの場の『ヴェルズビュート』には敵わないはずだ!」

万丈目と吹雪がフィールドを観察し解説する…

 

『それはどうかな?「ミラーナイトトークン」は『ミラーナイト・コーリング』が場にある限り戦闘する相手モンスターと攻撃力が同じになる!さらに『ミラーナイトコーリング』が造りだす「鏡の盾」がある限り「ミラーナイト」は不滅だ!』

 

「「「なんだって!?」」」

 

 

『私はさらにライフを500払い「オレイカルコス・キュトラー」を後衛に特殊召喚!』

ダーツLP4000→3500

 

緑色のトゲトゲの悪魔が現れる ATK500→1000

 

『バトル!「ミラーナイト」で「ヴェルズビュート」を攻撃!』

攻撃力を上げたミラーナイトがヴェルズビュートに斬りかかる ATK500→1900

 

 

「その瞬間!『ヴェルズビュート』の効果を発動!さらにチェーンして罠カード『錬成する振動』を発動!『錬成』の効果によりPスケールの『神星龍』を破壊して1ドロー!さらに『ヴェルズビュート』の効果!ORUを一つ取り除き…フィールド上の自身以外のカードを全て破壊する!!」

 

「やったぜ翠さん!これで不滅のミラーナイトは無くなるぜ!!」

 

ヴェルズビュートが全てを破壊する波動を放つ…それにより全ての鏡の盾とミラーナイトコーリングが破壊される、しかし…

 

 

 

『愚かな人間共よ!本当の絶望を知るがいい!「オレイカルコス・キュトラー」のモンスター効果発動!』

 

ダーツの宣言と共にフィールドに残っていたキュトラーがスパークし弾け飛ぶ…そして…!

 

『「キュトラー」よ!その真の姿を開放せよ!デッキより「オレイカルコス・シュロノス」を特殊召喚!』 

 

「なにっ!?さらなるモンスターだと!」

万丈目が驚きの声をあげる…そしてフィールドでは砕けたキュトラーの破片が集まり…緑色の遮光器土偶のようなモンスター…オレイカルコス・シュロノスが現れる ATK0→500

 

『本来であれば「キュトラー」が無効にしたダメージをそのまま攻撃力にしてしまうのですが…流石は歴戦のデュエリスト、見抜きましたか…』

 

「遊海さんからあなたの情報は共有済みです…!簡単に倒せるとは思わないでください…!」

 

『そうですか…ならこれならばどうですかね!「シュロノス」の効果発動!最強の盾と矛「オレイカルコス・アリステロス」「オレイカルコス・デクシア」を特殊召喚!』

シュロノスの両腕が分離し召喚される DEF0 ATK0→500

 

 

「最強の盾と矛…?2体とも元々の攻守は0…どこが最強なんだ…?」

万丈目は疑問を口にする…

 

『フッ…最強の矛「デクシア」は戦闘する相手モンスターの攻撃力を必ず300上回る!そして最強の盾「アリステロス」の守備力は戦闘する相手モンスターの攻撃力を300上回り…本体である「シュロノス」と「デクシア」を攻撃対象に選択できなくなるのだ!』

 

「なっ…!?」

 

「なんて強力な効果なの…!?」

 

「しまった…!」

 

生徒達はその鬼畜効果に唖然とし、翠は詰めの甘さを悔やんだ…

 

 

 

 

『バトルを続ける!「デクシア」よ!「ヴェルズビュート」を粉砕せよ!』

ATK500→2200

 

攻撃力を上げたデクシアがヴェルズビュートを破壊する

 

「くぅ…!」

翠LP4000→3700

 

『「ミラーナイト」よ!春風 翠へダイレクトアタック!』

フィールドに残っていた4体の騎士が翠を斬りつける

 

「きゃあああ!!」

翠LP3700→3200→2700→2200→1700

 

『「シュロノス」でダイレクトアタック!フォトン・リング!』

シュロノスから放たれた光の輪が翠を結界へ叩きつける!

 

「あぐっ!?うぅ…コフッ…!」

 

翠LP1700→1200

 

 

「翠さん!!クソっ入れない!!」

 

「嘘だ…翠さんがこんな一方的に…!」

 

「翠さん!しっかりしてください!翠さん!!」

万丈目達は倒れた翠を助けようとするが結界により遮られ何もする事ができない…!

 

『フフフ…他愛ないものです…私はこれでターンエンド』

 

 

ダーツLP4000

前衛デクシア ミラーナイト×4 後衛アリステロス シュロノス オレイカルコスの結界 手札1

 

 

 

「あぐっ…強すぎる…でも諦めてたまるかぁ…!!」

翠は傷ついた体を起こし立ち上がる…

 

『フッ、まだ立ちますか…寝ていれば楽になったものを…』

 

「私は負ける訳にはいかないの…!生徒達のために…遊海さんのために!!」

 

 

 

 

 

「私のターン…ドロー!」

「魔法カード『金満な壺』を発動!エクストラデッキの『ナーガ』、墓地の『セイバー』と『ルーツ』をデッキに戻して…2枚ドローします!…これなら…!」

 

「手札から魔法カード『セフィラの神意』を発動!効果で『秘竜星ーセフィラシウゴ』を手札に加える!さらにフィールド魔法『セフィラの神託』を発動!」

 

 

『無駄だ!「オレイカルコスの結界」はどのような手段でも破壊されない!よって新たなフィールド魔法の発動はできない!…なに!?』

翠の後ろには先程と同じ大樹が浮かんでいる…

 

 

「私が最初のターンに宣言したルール『マスタールール3』…そのルールは自分と相手…一枚ずつのフィールド魔法が発動できる…!!ズルにはズルよ!効果処理によりデッキから2体目の『神星竜』を手札に加える!そしてスケール1の『竜星因士ーセフィラツバーン』とスケール5の『神星龍』でペンデュラムスケールをセッティング!」

再び光の柱があらわれる

 

「ペンデュラムスケールの『神星龍』の効果!デッキからスケール7の『星輝士ーセフィラビュート』をエクストラデッキに加え、このターンのエンドフェイズまで自身のスケールを7にする!これによりレベル1〜6のモンスターが同時に召喚可能!」

神星龍がセフィラビュートの力を取り込みスケールを変化させる

 

「神星樹よ!私に闇を退ける力を貸して!ペンデュラム召喚!手札から『セフィラシウゴ』『宝竜星ーセフィラフウシ』!エクストラデッキから『覚星輝士ーセフィラビュート』!」

白い羽根を持った黒い竜と蝿の鎧の悪魔が現れる DEF2600 ATK1500 ATK1900

 

「『セフィラシウゴ』の効果を発動!デッキから『セフィラの星戦』を手札に加える!…そしてフィールドの『セフィラ』モンスター3体をリリース!エクストラデッキから…来て!聖選士の絆を束ねし龍!『智天の神星龍』!!」

10個の核石が一つに合わさり…セフィラの最強の龍が降臨する! ATK3450

 

 

『攻撃力3450…中々ですが…『デクシア』には及びませんね…貴女は私に負ける運命なのです…大人しく負けを認めなさい…!』

ダーツは呆れたように首を竦める…

 

「私は最後まで諦めるつもりはありません…それに…私はこのターンであなたを倒します!!」

翠はダーツにファイナルターンを宣言する

 

『やれるなら…やってみるがいい!小娘!!』

 

 

 

 

「『神星龍』の効果により私はもう一度セフィラモンスターをペンデュラム召喚できる!力を貸して!『セフィラシウゴ』!『セフィラフウシ』!『セフィラビュート』!!」

再び星を救う戦士達が現れる DEF 0 ATK1500 ATK1900

 

「『セフィラフウシ』の効果!『セフィラシウゴ』をチューナーに!そして『セフィラビュート』の効果を発動!…最強の矛と盾…その弱点は本体です!!スケールの『セフィラツバーン』を破壊し…『シュロノス』を破壊します!!!」 

 

『なっ…!?しまった!!』

セフィラツバーンの力を受け取ったセフィラビュートがシュロノスを切り捨てる…シュロノスは爆発しアリステロスとデクシアも巻き込まれた…!

 

「『デクシア』も『アリステロス』も元は『シュロノス』の腕…本体が無くなれば存在できない!!」

 

『くっ…おのれぇ!!!!』

 

 

「やった〜!最強のモンスターを倒したッス〜!」

 

「すごい…すごいです翠さん!!」

 

 

「そしていくわよ!レベル3の『セフィラフウシ』にレベル6の『セフィラシウゴ』をチューニング!」

シウゴがその身を緑色の輪に変える

 

「星に選ばれし龍達よ!今こそ力を開放せよ!シンクロ召喚!レベル9『幻竜星ーチョウホウ』!!」

神々しき鳳凰竜が現れる ATK2900

 

 

「バトル!『チョウホウ』で「ミラーナイト」を攻撃!竜星の煌めき!!」

星の生命の輝きが鏡の騎士を浄化する

 

『ぐあぁぁあ!!』

ダーツLP4000→1600

 

「これでトドメです!『神星龍』で『ミラーナイト』を攻撃!創星のビックバン・バースト!!!」

 

『ぐおおぉぉ!?おのれ…おのれぇぇぇ!!!』

虹色の閃光がダーツを消し飛ばした…!

 

 

ダーツLP0

 

翠 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「『オネスト』の効果を発動!『ネオス』の攻撃力に『F・G・D』の攻撃力を加える!いけ!『ネオス』!!」

 

『馬鹿な攻撃力7500だと!?うおぉぉ!!?』

白い翼を生やしたネオスが五頭龍を打ち倒した…

 

 

 

ミスターT LP0

 

十代WIN!

 

 

 

 

 

 

『くっ…遊城 十代、我々は真実の断片に過ぎない…より大きな闇がこの世界を覆い尽くす…また会おう…』

 

「くっ!待て!!…だめか…」

十代はミスターTを倒したが逃げられてしまった…ミスターTが消えると共に炎の壁が消えていく…

 

「そうだみんなは…!?みんな!翠さん!無事か!?」

十代は皆の元に駆け寄る…

 

 

 

「ハアッ…ハアッ…十代君!こっちも大丈夫よ…!なんとか倒したわ…」

 

「翠さん!?すげぇ傷だらけ…大丈夫なのか!」

十代は翠に駆け寄る…翠の身体はミラーナイトに切り裂かれ傷だらけになっていた…

 

「大丈夫…少し休めば治るわ…それよりも遊海さんが…!」

ダーツをなんとか倒した翠は遊海の元へ…

 

 

 

 

 

『おのれ…人間が…よくも…!!』

 

 

 

 

「っ!?ダーツ!?」

傷だらけとなったダーツはフラフラと立ち上がる…その目は怒りで赤く染まっている…

 

『こうなれば…オレイカルコスの神を再び…!!』

ダーツの足元に魔法陣が刻まれ闇が溢れ始める…!

 

「まずいわ…みんな逃げて!!早く!!リヴァイアサンが来るわ!!逃げて!!」

 

「なんだかヤバそうだ!!」

 

「逃げるっす!!」

万丈目達は駆け出すが…

 

『もう遅い!!いでよオレイカルコスのか「させるかぁ…!!!」なっ!?』

ダーツの周りを炎が覆う…

 

「我が力を糧に…全てを吹き飛ばせ!!ゴッド・フェニックス!デストロイ・キャノン!聖刻抹殺陣!鳴動富嶽!!」

 

《【《【消し飛べ!!!】》】》

 

ズガガガ…ドドーン!!!!

 

開放された精霊達がダーツを断末魔をあげる間も無く消滅させた…

 

「あんな化物…また召喚させて…たまるか…よ」ズシャ

 

「遊海さん!!!」

力を全て開放した遊海はその場に倒れる…気力も体力も完全に使い果たし、遊海は指先も動かせなくなっていた…

 

 

 

「遊海さん!大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫ではないな…、身体が動かねぇや…よくやった翠…最後の美味しいところ持ってってごめんな…?」

 

「遊海さん…大丈夫です、ゆっくり休んでください…」

 

「すまない…後は……」

 

「遊海先生…気絶しちまった…、翠さん!とにかく2人共保険室に!」

 

「えぇ、そうするわ…みんなごめんね、危ないところに巻き込んでしまって…」

 

「翠さん大丈夫です!みんな無事ですから!」

 

「ありがとうだドン!すごいデュエルだったザウルス!!」

 

「翠さんの本気カッコよかったッス!!」

 

「あはは…みんな、ありが…あっ…」トサッ

 

「「「「翠さん!?」」」」

 

気力を使い果たした翠も気を失う…その後二人は生徒達によって保健室へと運ばれ1週間の絶対安静となった…。

 



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ドキドキッ!ペアデュエル〜ベストマッチ!〜

偽ダーツとの戦いから2週間が過ぎた、俺も翠も傷が完治しアカデミアには平和な時間が流れていた…。

 

十代は結局アカデミアに残る事になった、俺達を保健室に運んだ後に翔や明日香達に自分に迫っている運命…ダークネスとの戦いについて打ち明けたらしい、ダークネスについて聞いた仲間達はそれを受け入れ十代と共に戦うと言ってくれたそうだ。

 

オネストは藤原を助けるために十代と行動を共にするらしい、本人曰く現実世界に現界するエネルギーが無くなりかけていたそうだ…無理をしやがって…、オネストからは俺が目覚めた後に謝罪があった…。

 

そして今、俺と翠は…

 

 

 

 

 

 

 

『遊海さん…翠さん…これはどういう事ですか?』

 

「見ての通り『退職願い』です…十代達の卒業と共に俺達もアカデミアを一度去ろうと思います…」

 

 

俺と翠は十代の卒業と共にアカデミアを去る決心を固めた…これから起きる事態に対処するために…

 

『…遊海さん決心は変わりませんか?そもそもお二人は三幻魔封印の守人…今は私が鍵を預かってはいますが…』

 

「三幻魔についてはご心配なく、俺達が島を去る前に強力な結界を張ります…もし三幻魔に何かがあれば文字通り飛んでいきます!」

 

『そうですか…学校を辞めた後はどうするおつもりですか?』

 

「とりあえず今までサボり気味だったプロリーグへの参加と…少し息抜きをするつもりです、翠も俺と一緒に頑張ってくれましたから…」

 

『そうですか…わかりました退職願いを受理します、…残りの半年間よろしくお願いします…!』

 

「「はい!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカデミア・レッド寮

 

 

「よかったんですか?遊海さん、アカデミアを辞めちゃって?」

 

「ああ、ここにいたら絶対にゼロ・リバースに間に合わない…まぁ、あの場にいて何ができるわけじゃないけどな…」

 

ゼロ・リバース…永久機関モーメントの負の回転により起きた()()()大災害、それが起きる事は確定している…ルドガー・ゴドウィンによる最悪の実験により童実野町は半壊…サテライトとシティに分断される事になる…。

原因は地縛神による介入…また未来人イリアステルの介入が原因…それを防ぐ手立ては無い、仮にルドガーを止めたとしても改変されてしまうだろう、俺達の目標はゼロ・リバースによる被害の最小限化…方法はまだ思いついていないが…必ず見つけてみせる…!

 

 

 

コンコンコン

 

「あら?誰かしら…は〜い!」

 

 

「翠さん!こんにちわ!」

 

「ザウルス!」

 

「ん?レイと剣山じゃないか?どうしたんだ?」

部屋に剣山とレイが訪ねてきた…その手にはカメラがある

 

「ボク達、卒業写真制作委員会なんです!ご協力お願いしまーす!」

 

「そうか…そんな時期か、俺達を撮るのか?」

 

「はい!レッド寮をバックで撮るんだドン!」

 

「わかったわ!キレイに撮ってね?」

 

「は〜い!」

 

 

 

〜〜

 

 

 

「いくザウルス!…ハイ!チーズ!」

パシャ

 

 

「剣山!どうだ?」

 

「遊海先生…ちょっと見てほしいザウルス…」

 

「どうした〜?…あらら…これは…」

剣山の撮った写真にはレッド寮をバックにポーズをとる俺達と…アヤカやウィンダ…精霊達がバッチリ映り込んでいた…。

 

 

「こらっ!卒業写真にお前達が写ってたら皆ビックリするだろ!?」

 

《マスター!たまには私達も写真に写ってみたかったんです!》

 

《翠姉!わたしも写真写りたい!》

 

「まったく…すまない剣山、精霊達と俺達の写真を一枚だけ撮ってくれるか?」

 

「お安い御用ザウルス!」

 

 

 

 

「いきま〜す!ハイ!チーズ!」

パシャ

 

2枚目の写真、そこには遊海達を囲むように嬉しそうな顔の精霊達が写っていた…。

 

 

 

 

 

 

「遊海先生!翠さん!ありがとうございました!」

 

「大丈夫よレイちゃん!完成を楽しみにしてるわ!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「遊海先生…ちょっといいザウルス?」

 

「どうした?まだ何か撮るのか?」

 

「兄貴達の事で相談があるドン…」

 

「ん?」

 

 

剣山によるとここしばらくの出来事のせいで三年生…特に明日香や十代の元気がないらしい、そこで…

 

「そういう訳でオレ達委員会で思い出作りのペアデュエルパーティを開く事にしたんだドン!」

 

「なるほどな〜!それならいい思い出になるだろう!もしかして翠に料理の依頼か?」

 

「それもあるザウルス!それからもう一つ…耳を借りるドン…ゴニョゴニョ…」

剣山は遊海に耳打ちする…

 

「ふんふん…なるほどな…いいだろう協力するよ!」

 

「ありがとうザウルス!遊海先生!パーティは1週間後だドン!よろしくお願いしますザウルス!」

 

「ああ!楽しみにしてるよ!」

 

 

 

 

「遊海さん?剣山君と何を話していたんですか?」

 

「実はな…」

 

〜〜

 

「…なるほど…剣山君もよく気がつきますね…来週が楽しみです!」

 

「ああ!さっそく準備を進めよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間後・ペアデュエル大会当日

 

 

剣山の相談から1週間…ついに大会当日である、大会のルールはいわゆるタッグフォースルール、三年生と下級生が男女でペアを組み結果を競い合う大会だ、ペアは十代&明日香、剣山&レイ、あと特別参加の鮫島校長&トメさんなど色々なチームが組み上がった…ただし翔と万丈目はあぶれてしまったようだ、ドンマイである…。

 

大会は順調に進んでいく優勝候補はやはり十代・明日香ペアだろう…ただし十代は容赦なく相手チームを蹴散らすだけでまったく楽しそうではないんだけど…、明日香の伏せカードを使わず…モンスターを勝手にリリースし…いわゆる『1人でやってるよ〜』状態である。

 

 

そしてなんだかんだの決勝戦、三年生からは十代・明日香ペア、下級生からは剣山・レイペアの対戦となった…十代と明日香は息が合わずにデュエルが進みデュエル中盤、レイが永続罠『パートナー・チェンジ』を発動、剣山と十代が交代しデュエルが進む…ペアの変わった十代達は順調にデュエルを進め十代・レイペアが追い詰められた…しかしそこで十代と明日香が和解、圧倒的ピンチを乗り切りペアデュエル大会優勝を決めた…。

 

「さて…」

 

「出番ですね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レディース&ジェントルマン!ペアデュエル大会の優勝は十代&明日香先輩ペアで決まりザウルス〜!」

 

「やったな明日香!」

 

「えぇ!ありがとう十代!」

 

 

「と、ここで先輩達にはもう一試合、エキシビションデュエルをしてもらうザウルス!」

 

「「エキシビション!?」」

 

「剣山〜誰とやるんだ?大会の出場者とは全員やったぜ?」

 

「甘いザウルスアニキ!デュエル大会をやってるのにこの場にいない人に気づかないザウルス?」

 

「えっ…?」

 

「さぁ!先輩達の相手は…この人達だドン!!」

デュエル場の照明が落ち真っ暗になる…そして!

 

 

「エキシビションマッチ…その対戦相手は…」

 

「私達よ!」

照明が俺達を照らす…剣山の頼み事、それはエキシビションマッチとして大会の優勝ペア(恐らく十代)とのデュエルの依頼だったのだ…!

 

 

 

 

 

「遊海先生!?」 

 

「翠さん!どうして!?」

二人は普通に驚いている…

 

「オレが先生達に頼んでいたんだドン!学校の外ではできない伝説の決闘者とのペアデュエル!これはいい思い出になるはずだドン!」

 

「そういう事だ!さぁ久々に楽しいデュエルといこうぜ!二人共!」

 

「手加減はしないわよ!二人で力を合わせて挑んできなさい!」

翠と俺は打ち合わせ通りに宣戦布告する

 

「遊海先生と翠さんのタッグ…!これは強敵よ…!」

 

「ああ…伝説を乗り越えようぜ!明日香!」

お互いにデュエルディスクを構える

 

 

 

 

「それでは…ペアデュエル大会・エキシビションデュエル…開始だザウルス!!」

 

 

 

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

遊海&翠LP4000

十代&明日香LP4000

 

タッグフォースルール

 

・フィールド・墓地共有

 

・ターンプレイヤーしかカードを発動できない

 

順番

 

「明日香」→『遊海』→『十代』→「翠」

 

後攻ペアから攻撃可能

 

 

 

 

 

 

 

@明日香

「私のターン!ドロー!」

「『サイバー・プチエンジェル』を召喚!効果で儀式魔法『機械天使の儀式』を手札に加えるわ!」

機械のプチエンジェルが現れる ATK300

 

「そして儀式魔法『機械天使の儀式』を発動!フィールドの『プチエンジェル』と『ブレード・スケーター』を生贄にレベル6『サイバー・エンジェルー弁天ー』を儀式召喚!」 

扇のような武器を持った女性が現れる ATK 1800

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

明日香LP4000

弁天 伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

@遊海

『俺のターン!ドロー!』

『フィールド魔法「暴走魔法陣」を発動!効果処理としてデッキから「召喚師アレイスター」を手札に加える!』

フィールドに赤い魔法陣が刻まれる

 

『そして「召喚師アレイスター」を召喚!』

ローブを着てモノクルをかけた魔術師が現れる ATK1000

 

『「アレイスター」の効果!デッキから魔法カード「召喚魔術」を手札に加える!そして「召喚魔術」を発動!』

空中に青い魔法陣が刻まれる

 

『その効果によりフィールドの「アレイスター」と明日香の墓地の光属性「サイバー・プチエンジェル」を除外して融合!!』

 

「なっ!私の墓地のモンスターと融合ですって!?」

2体のモンスターが魔法陣に吸い込まれる

 

『ジムの「化石融合」と同じ効果…!』

 

『邪悪なる魔術師よ!その身に光の神を降ろせ!融合召喚!「召喚獣メルカバー」!』

銀色の魔獣の引く戦車に乗った戦士が現れる ATK2500

 

『バトル!「メルカバー」で「弁天」を攻撃!』

戦車が弁天を轢き潰そうとする…!

 

「罠カード『ドゥーブルパッセ』!遊海先生に『メルカバー』の攻撃力分のダメージを与え攻撃をダイレクトアタックにする!」

 

『甘い!「メルカバー」の効果!手札の罠カード「闇の呪縛」を墓地に送り「ドゥーブルパッセ」を無効にし除外する!』

 

「なっ!?」

メルカバーが槍を放ち罠カードを砕き、弁天を破壊した!

 

「くうぅぅぅ!」

明日香LP4000→3300

 

『カードを2枚伏せてターンエンド!』

 

遊海LP4000

メルカバー 暴走魔法陣 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「ごめん十代!ダメージを受けてしまったわ…」

 

『大丈夫さ!挽回してみせる!』

 

 

 

 

 

@十代

『俺のターン!ドロー!』

『行くぜ!先生!手札から融合を発動!「クレイマン」と「バーストレディ」を融合!「ランパートガンナー」を融合召喚!』

重装備の狙撃手が現れる DEF2500

 

『「ランパートガンナー」は守備表示の時2000の攻撃力を半分にしてダイレクトアタックできる!バトル!『ランパートガンナー』でダイレクトアタック!ランパート・ショット!』

ランパートガンナーの腕にエネルギーが溜まる…

 

『なるほど直接攻撃を狙ってきたか!しかしまだ詰めが甘い!即効魔法「法の聖典」を発動!その効果により「メルカバー」を生贄に光属性以外の「召喚獣」を融合デッキから融合召喚扱いで特殊召喚する!来い!雷を纏いし戦士!「召喚獣ライディーン」!』

メルカバーが聖典に吸い込まれ魔法陣から雷電を纏った剣を持った戦士が現れた DEF2400

 

『そして「ライディーン」の効果!『ランパートガンナー』を裏守備にする!』

 

『しまった!?』

ライディーンの剣から放たれた雷撃がランパートガンナーの自由を奪い裏守備にする

 

『くそ〜、そう簡単にはいかないか…カードを2枚伏せてターンエンド!』

 

十代LP3300

ランパートガンナー(裏) 伏せ3 手札1

 

 

 

 

 

『うん、まぁまぁかな!翠!頼むよ!』

 

 

「わかりました!頑張りますよ〜!」

 

 

 

 

 

@翠

「私のターン!ドロー!」

「『おろかな埋葬』を発動!デッキから『シャドール・ドラゴン』を墓地に送って効果発動!『ドラゴン』が効果で墓地に送られた時真ん中の伏せカードを破壊します!」

 

「あっ!『エンジェル・ブラスト』が!?」

 

「ふぅ…危ない危ない、そして手札から魔法カード『影依融合』を発動!手札の『シャドール・ビースト』と『禁忌の壺』を融合!影の獅子よ!大地の力を得て王の玉座を呼び出さん!融合召喚!『エルシャドール・シェキナーガ』!」

巨大なる人形達の王が玉座に座り現れる ATK2600

 

 

「そして効果で墓地に送られた『ビースト』の効果で1ドロー!」

 

『動きにまったく無駄が無い…!俺達の策が全て潰されていく…!』

 

「バトルよ!『シェキナーガ』で裏守備の『ランパートガンナー』を攻撃!影糸の粛清!」

シェキナーガの指先から飛び出した糸が戦士を貫いた!

 

『くっ!やっぱり先生達は強えぇ…俺なんだか…ワクワクしてきた!』

十代は笑顔を見せる…それは久しぶりの事だった…

 

「フフッ!らしくなってきたわね!カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

翠LP4000

シェキナーガ ライディーン 暴走魔法陣 伏せ3枚 手札1

 

 

 

 

 

『明日香すまん!何もできなかった!でも伏せは残したぜ!』

 

「わかったわ!なんとかする!」

 

 

 

 

『うんうん!二人共いい感じですね!先程の剣山君達とのデュエルで二人の蟠りが無くなってペアとして成立しています!』

 

「はぁ…いい感じね二人共!青春だわ〜…わたしももう少し若ければねぇ…」

 

『大丈夫ですよトメさん!あなたはいつでも綺麗ですから!』

デュエルそっちのけの鮫島校長とトメさんなのだった…

 

 

 

 

 

 

 

@明日香

「私のターン!ドロー!」

「『強欲な壺』を発動!2枚ドロー!」

 

「『サイバー・ジムナティクス』を召喚!」

体操選手のような服を着た女性が現れる DEF1800

 

「『ジムナティクス』の効果を発動!手札を捨てて『シェキナーガ』を破壊します!」

 

「『ライディーン』の効果を発動!『ジムナティクス』を裏守備に変更するわ!これで終わり?」

 

「まだです!リバースカード『リビングデッドの呼び声』を発動!墓地の『サイバー・プリマ』を特殊召喚!」

 

 

「その時!ダブルリバースオープン!即効魔法『神の写し身との接触!』永続罠『影依の原核』!まず『原核』をモンスターとして特殊召喚!」

騎士鎧の頭のようなモンスターが現れる ATK1450

 

「そして『接触』の効果発動!手札の『シャドール・ヘッジホッグ』と『原核』を融合!『原核』の効果で自身を水属性として融合素材にできる!影の人形よ!水の力を得て氷の女王を呼び覚ませ!『エルシャドール・アノマリリス』!」

氷龍の力を得た影の王が現れる ATK2700

 

 

「(攻撃力2700…プリマを蘇生して『ビックバン・シュート』を装備して相討ち…とにかく厄介な『ライディーン』を倒す!)『リビングデッド』の効果で墓地から『サイバー・プリマ』を特殊召喚…嘘!?墓地が…凍ってる…!?」

明日香が墓地を見るとディスクの墓地ゾーンが凍りついている…

 

「『アノマリリス』のモンスター効果よ!このカードがいる時、お互いに魔法・罠の効果で手札と墓地からモンスターを特殊召喚できないの!」

 

「すごい…としか言えないわ、先の先を読まれてる…!」

 

「フフフ、これが経験の差よ!遊海さんとお互いの弱点を補い攻めて守る…これがタッグデュエルの…夫婦の極意よ!」

 

「夫婦っ…!?」

 

 

『翠、言い過ぎだって…会場の女の子達みんな顔赤くしてるからね?』

 

「あ…あらヤダ…ごめんなさい遊海さん…!!」

 

翠は顔を真っ赤に染める…この時会場の男子の意見は一致した…『リア充爆発しろ!!』と

 

 

「わ、私はターンエンドです…」

明日香LP3300

裏ジムナティクス 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

 

 

 

@遊海

『俺のターン!ドロー!』

『翠!モンスターを借りるぞ!』

 

「はい!」

 

『手札から「融合」を発動!「召喚獣ライディーン」と「エルシャドール・シェキナーガ」を融合!魔術師の真理よ!今こそ顕現せよ!「召喚獣エリュシオン」!!』

ギリシャ神話での楽園の名前を冠する巨大な召喚獣が現れる ATK3200

 

「攻撃力3200…!」

 

『さらに墓地の「召喚魔術」の効果を発動!このカードをデッキに戻し除外されている「召喚師アレイスター」を手札に加える!そして「アレイスター」を召喚!効果によりデッキから「召喚魔術」を手札に加える!』

再び召喚師が現れる ATK1000

 

『そして「召喚魔術」を発動!フィールドの「アレイスター」と十代の墓地の「クレイマン」を除外し融合!真理を求める魔術師よ!大地の化身をその身に宿せ!「召喚獣メガラニカ」!!』

伝説の大陸の名を持つ巨人が現れる ATK3000

 

 

『…大人げねぇな先生…というか俺よく2回も勝てたな…』

十代はフィールドに並ぶ3体の大型モンスターを見て呟く

 

『まぁ、あの時は理性が少しトンでたからなぁ…まぁこんなもんだよ!バトル!モンスターで総攻撃!』

 

3体のモンスターが攻撃を放ち大爆発がフィールドを包みこんだ…

 

 

 

 

 

十代&明日香LP0

 

遊海&翠ペア WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「デュエル終了〜!!エキシビションデュエルの勝者は圧倒的実力で先輩達を捻じ伏せた遊海先生&翠さんペアザウルス!!」

 

「「「うわぁぁぁ〜!」」」

 

 

「遊海先生やっぱり強すぎるッス…」

 

「ああ…十代と天上院君のペア、いうなればアカデミア生最強ペアを無傷で倒しきった…やはりプロとはすごいな…」

翔と万丈目はしみじみと呟いたのだった…。

 

 

 

 

 

 

「アイタタタ…チクショー負けたぜ!やっぱり二人とも強すぎる〜…」

 

「まさか1ダメージもライフを傷つけられないなんて…私もまだまだね…」

 

 

「お疲れさん!いいデュエルだったよ、即興のペアにしては中々だった!」

 

「遊海先生…ペアデュエルでも強すぎるぜ、やっぱりいつも翠さんとペアを組んでるから…」

 

「いいえ?私と遊海さんのペアデュエルはこれが初めてよ?」

 

「「えっ…ええぇぇぇっ!?」」

十代も明日香も目を点にする

 

 

「あんなにすごい連携をしてたのに!?」

 

「そうよ?今までそんな機会もあまりなかったし…正直私もドキドキしてたの!」

 

「マジかよ…遊海先生達も即興ペアみたいなもんだったのか…」

 

「まぁな!まぁ俺は翠に合わせてデッキを作ったからな…少しズルかったか?」

 

「いいえ!大丈夫です遊海先生!…でもどうしたらそこまで強くなれるんですか?」

明日香は遊海へと問い掛ける

 

「う〜ん…タッグデュエルはやっぱりお互いに息を合わせる事と…お互いを知る事かな?パートナーの考えを読んで最善の一手を打つ…ピンチならそれをカバーする、互いに信頼しあって勝利を目指す…それが1番だよ」

 

「パートナーを信頼する…信頼…か…」

明日香は呟いた…タッグデュエルといういつもとは違う環境でのデュエル、その中で自分は十代を信頼できていたのかと…

 

「信頼かー…俺は明日香の事を信頼してたぜ!…まぁ作戦は全部先生に止められたけど、それでも俺はお前とペアを組めてよかったぜ!」

十代は無邪気に明日香へと笑いかける

 

「あっ…ありがとう十代…私もあなたとペアを組めてよかったわ!」

 

「?」

明日香は顔を背けながら答えた、その頬は朱に染まっていた…

 

 

 

「オホン!それではペアデュエル大会、これにてお開きザウルス!ありがとうございました〜!」

 

パチパチパチパチパチパチ!!

 

デュエル大会は拍手のうちにお開きとなった…

 

 

 

 

 

 

 

 

「剣山、あれでよかったのか?」

 

「はいザウルス!ありがとうだドン遊海先生!翠さん!」

 

大会終了後、俺は剣山と合流していた…

 

「明日香さんの顔は完全に女の子だったわ!…悔しいけどあの2人…お似合いだし…」

 

「レイちゃん!まだ貴女は若いから大丈夫よ!いい人が見つかるわ!」

 

「うぅ〜!翠さ〜ん!!」

 

「よしよし…頑張った頑張った…」

レイは翠に抱きつく…その目には少し悔し涙が浮かんでいた…

 

「しかしお前達が明日香の恋路を応援するとはな〜…」

 

「明日香先輩を後押しするためだドン!これで明日香先輩もアニキにアタックするはずだドン!」

 

 

アニメを知っている人は気づいていたと思うが、今回のペアデュエル大会は剣山プロデュースの「十代と明日香をくっつける作戦!」だったのだ。

 

剣山は明日香の元気の無さは十代への恋心のせいだと思い、それを応援するために今回の大会を開催したのだ。それでにプロであり夫婦でもある俺達に十代達と戦って貰い…明日香の心に自身の恋心を出してもらおうと思ったのだ…まぁ明日香の悩みは進路についてが主だったんだけど…言わぬが花である

 

「今日はお疲れ様!あとの事は本人達に任せるとしますか!」

 

「はい!手伝ってくれてありがとうザウルス!」

 

 

 

その後、レッド寮に残っていたトフェニが話をする十代と明日香を見かけたらしい…その先は本人のみぞ知る…。



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翔の巣立ち〜追いかけた背中〜

投稿空いてすいません!FGO周回してました!!

…素材が足りねぇ〜…


少し投稿ペースが落ちますがよろしくお願いします!


「ふあ〜…平和ですね〜…」

 

「ああ…平和過ぎて怖いくらいだよ…」

 

《マスター、今は敵性反応はありません…ゆっくり休んでください》

 

「ありがとうアヤカ…まるで嵐の前の静けさだな…」

 

ペアデュエルから1ヶ月と少しが経った…偽ダーツの襲撃後ダークネスの動きは無い…世界中でのカードの不具合は起きているらしいがアカデミアは平和そのものである…。

 

 

「こっちからダークネスに攻撃できればいいんだが…返り討ちに合いそうだからな…闇の世界のアイツは強すぎた…」

 

「遊海さん…」

俺は4年前にダークネスと戦った…それはデュエルでは無くリアルファイトだったが、俺は奴にまったくダメージを与えられなかった…そして俺は敗北し記憶を弄られた…今でも同じ結果になる事は目に見えている…ダークネスがこちらにでてこない限り勝ち目は無いだろう…

 

 

「…えいっ!」グリグリ

 

「…何やってるんだ翠?」

翠は二本指で俺の額をクリクリしていた…

 

「遊海さんの眉間にシワができてたので揉んでるんです!…すごい怖い顔してましたよ?」

 

「そうか…少し考え過ぎたかな…はぁ…」

 

「遊海さん、ダークネスが心配なのはわかりますけど…根を詰めすぎると疲れちゃいますよ?少しは肩の力を抜きましょう?」

 

「そうだな…はぁ、今日は少し休むか…」

 

《それがいいぞ遊海、頑張りすぎるのがお前の欠点だ!》

 

「メガロック…そうかな…?」

椅子の上で背中を仰け反らした遊海の目に逆さまのメガロックが目に入る…少し怒っているようだ

 

 

《遊海、アヤカから今までの事を聞いたぞ!…お主は死にかけ過ぎた馬鹿者!!》

 

「あいたぁっ!?」

遊海の頭に拳骨代わりの岩が落ち悶絶する…なお大きさ

はサッカーボール大である。

 

「な、何するんだよメガロックぅ…いくら不死でも痛いいもんは痛いんだぞ…」

 

《お主を心配しているからだ馬鹿者!まったく、神の炎で焼かれたり、石版に封印されたり、魂諸共消滅しかけたり、人形にされたり、モンスターに殴り飛ばされて挙げ句の果てに身体を真っ二つだと!?いくら不死の身体とは言っても無茶をしすぎだ!現にお前の魂はボロボロだったのだぞ!お前はもう少し自重しろ!!》

 

「ご、ごめんなさい…これからは気をつけます」

遊海はただ謝るしかなかった…

 

「クスクス…遊海さんとメガロックさん、本当の親子みたいね!」

 

《そうですね〜》

そんな様子を翠とアヤカは見守っていたのだった…。

 

 

 

 

 

 

その夜…

 

 

 

 

「ふぅ…久々の温泉は気持ちよかったな〜」

 

「そうですね〜今回はゆっくりできました!」

 

俺と翠は久々の温泉に浸かり春先の心地良い風を楽しみながら寮への道を歩いていた…今回は精霊界へ拉致される事も無く温泉を堪能する事ができた…。

 

「こんな平和な時間が続いてくれたら良いんですけど…」

 

「ああ、俺もそう思うよ翠…でもそれは無理だろうなぁ…」

ダークネスは確実にやってくる…遊海は知っているからこそ警戒を続けている…

 

「でもたまにはこうしてのんびりしたいな〜…」

 

 

ガサガサッ

 

 

「っ!?…翠!下がれ!」

 

「はい!」

突如茂みが揺れる…そして

 

 

『…強者の気配、奴かと思ったが…違ったか…』

茂みの中から道着を着て赤いバンダナを首に巻いた青年が現れる…その腕にはデュエルディスクがある

 

「君はアカデミアの生徒じゃないな?どうしてここにいる?」

遊海は冷静に問い掛ける

 

『サイバー流元師範・鮫島という奴がこの島にいるはずだ…』

 

「鮫島校長になんの用だ?」

 

「そいつを倒す、我が流派の誇りに賭けて…貴様達に用は無い!さらば…!!」

謎の決闘者は場を離れようとする

 

「させるか!デュエルアンカー!!」ビシュッ!

 

『なっ!?』

バンダナの腕にアンカーが巻き付く、以前キースに使われたのをとっておいたのだ

 

「アカデミアの人間に危害を加えようとするなら容赦はしない!お前をデュエルで拘束する!」

 

『チイッ!我がサイコ流の誇りに賭けて…貴様を倒しサイバー流を倒す!!』

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

 

 

遊海LP4000

猪爪LP4000

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「フィールド魔法『星遺物が刻む傷跡』を発動!これにより俺の『ジャックナイツ』モンスターの攻守は300アップする!」

周囲が荒廃した街に変わる

 

「『傷跡』の効果!手札の『紺碧の機界騎士』を捨てて1ドロー!そして『機界騎士アヴラム』を召喚!」

双剣を持った青年が現れる ATK2000→2300

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

遊海LP4000

アヴラム フィールド 傷跡 伏せ2 手札2

 

 

□□□□□

□□□□□

 

□□■□□

□■□■□

 

 

 

 

 

『いきなり攻撃力2300…しかしオレには関係ねぇ!貴様をブッ倒して鮫島の居場所を吐いてもらうぜよ!』

 

 

 

『オレのターン!ドローじゃ!』

 

「リバース罠オープン!『星遺物に眠る深層』!墓地の『紺碧の機界騎士』を特殊召喚!」

藍色の星を持った鎧の戦士が現れる ATK2400→2700

 

『ほう、我がサイコ流を前にトラップを発動するとはいい度胸じゃ!来い!「人造人間サイコ・リターナー」!』

ヒョロヒョロの人造人間が現れる ATK600

 

 

□□□□□

□□■□□

 

□□■■□

□■□■□

 

『バトルじゃあ!「サイコ・リターナー」は相手にダイレクトアタックできる!いけぇ!!』

 

猪爪の指示を受けたサイコリターナーは遊海に向かって突っ込む…しかしそのままアヴラムに両断された

 

『ぐわぁぁ!!何故じゃあ!?』

 

猪爪LP4000→2300

 

「悪いな!罠カード『深層』の効果だ、『機界騎士』モンスターが同じ縦列にいる時相手のモンスター効果は無効化される!」

 

『チィッ!そんな効果を…!カードを2枚伏せてターンエンドじゃ!』

 

猪爪LP2300

伏せ2 手札3

 

 

□□■■□

□□□□□

 

□□■■□

□■□■□

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『傷跡』の効果発動!手札の『燈影の機界騎士』を捨てて1ドロー!そして『紺碧』の効果を発動!自身を1つ右のモンスターゾーンへ移動!」

 

□□■■□

□□□□□

 

□□■□■

□■□■□

 

「そして同じ縦列にカードが2枚以上ある時、その列のモンスターゾーンに『蒼穹の機界騎士』は特殊召喚できる!」

青い星を持った鎧の戦士が現れる ATK2000→2300

 

 

「さらに永続魔法『星遺物へ至る鍵』を発動!…バトル!『蒼穹』でダイレクトアタック!」

 

『無駄じゃあ!リバースカード「魔法の筒」!これでダメージを反射…なに!?ぐわァァァ!!?』

猪爪はマジック・シリンダーを発動しようとしたが反応せず、そのまま蒼穹に斬り裂かれた(峰打ち)

 

猪爪LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな、『至る鍵』は同じ縦列の罠カードの効果を無効化するんだ…残念だったな」

 

『む…無念…』

そのまま猪爪は気を失った…

 

 

「少し大人げなかったかな…?ついつい本気でやっちゃったけど…」

 

「まぁ大丈夫だと思います…とにかく鮫島校長に連絡しましょう」

 

「そうだな…まったく人騒がせな…」

 

その後俺達は鮫島校長に連絡を取り、バンダナの青年を警備員に引き渡した…

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

 

 

 

「デュエル流派・サイコ流の継承者だったんですか…」

 

『えぇ、サイバー流の看板…そして私自身を狙ってこの島に侵入したようです、遊海さんお手柄でした!』

 

翌日、俺は校長からバンダナの青年…猪爪 誠について話を聞いていた。

彼はサイコ流という外道なデュエルを行なう流派の継承者で同時期に生まれたサイバー流を潰すためにアカデミアに潜入し、師範だった鮫島校長を狙ったようだ…。

 

『遊海さん、彼とどのようなデュエルをしたんですか?彼曰く「オレ達以上に外道なデュエルをする奴は初めて見た!」と言っていましたが…』

 

「あ〜…すいません、警戒しすぎて『モンスター・魔法・罠の効果全てを封殺する』デッキを使ってしまい…」

 

『…理解しました…とりあえず彼は本土に強制送還、その前に亮君とのデュエルをセッティングしました…無論看板は賭けずに…彼を落ち着かせるにはそれしかないでしょう』

 

「そうですね…それが1番です、まぁカイザーであれば上手く勝つでしょう」

 

『えぇ、これで2つの流派の決着が着くはずです…ありがとうございました』

 

「はい!それでは失礼します!」

そして遊海は校長室を後にするのであった

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばこれ、翔の成長イベントだったんだよな…俺が邪魔する形になっちゃったけど…大丈夫かな…」

 

遊海は廊下を歩きながら呟く…本来であればエドに負けたカイザーは勝利に飢え無茶なデュエルを繰り返し…それ故に心臓病にかかってしまう、そして異世界でユベルとのデュエルで最高の輝きを見せ「カイザー亮」は消滅した。

 

そして帰還し生き残ったものの心臓は悪化、猪爪とのデュエルで倒れてしまう、そのデュエルを翔が引き継ぎ兄を超えた進化を見せる…そんな話だったはずだ。

 

 

 

「だいぶ歴史を変えちまったもんだな…まぁ今更か、俺の目指したハッピーエンドに近づけてるんだろうか…はぁ…」

 

《マスター、そんな悲観しないでください!マスターのおかげで命を救われている人もたくさんいるんですから!》

 

「アヤカ…」

気持ちが沈んでいる遊海にアヤカが話しかける。

 

《確かにマスターは先の未来を知り未来を変えてきました!でもそのおかげで救われた人は確かにいます!!…マスターの歩んだ道…それは決して間違ってはいません!》

遊海は物語を知る者として少しづつ歴史を変えてきた、それは見る者が見たら歴史を捻じ曲げた犯罪かもしれない…しかしその道の中で救われた者も確かにいる…

 

《私はどんな事があろうとマスターに付いて行きます!もしマスターが道を踏み外しそうになったら容赦無く止めてみせます!!》

 

「…ありがとうアヤカ、少し元気が出てきたよ!」

遊海は笑顔を見せアヤカを撫でる

 

《マスター…!》

 

「俺はアテムと約束したんだ『俺なりのハッピーエンドを目指してみせる』って!…だから俺はやり遂げてみせる!」

 

《その意気ですマスター!頑張りましょう!私達も手伝います!》

 

「ありがとう!アヤカ!そうと決まればデッキ調整だ!ダークネスに負けないデッキを組んでみせる!」

 

《はい!》

遊海は気合いを入れ直し自身の目指すハッピーエンドを求めて進みだす、より世界を良くしていくために…

 

 

 

 

 

「あっ!いたッス…遊海先生!!」

 

「おっと!?翔?どうしたんだ?」

気合いを入れた遊海に翔が駆け寄ってくる、その目には覚悟が宿っている…。

 

「遊海先生…ボクとデュエルして欲しいっす!!」

 

「!?…いきなりどうした!?」

 

「先生…そんな鳩豆な顔しないで欲しいっす…先生にボクの実力を見てほしいんす!!」

 

翔曰く、プロを目指す上で兄である亮に恥じない決闘者になっているかどうかを俺に確かめてほしいとの事だが…

 

「翔、知ってると思うが俺はプロランキング4位だ…それを承知の上で挑むんだな?」

 

「はい!!」

翔は強く頷いた

 

「わかった、明日の昼12時にデュエルリングに来い…プロ…そして伝説の決闘者『赤帽子』としてお前の相手になろう!」

 

「あ…ありがとうございます!!」

 

そして翔と俺は準備のために別れる…因果はこうして回ってくるのか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日・アカデミア デュエルリング

 

 

 

 

 

「翔!準備はいいな?」

 

「はい!!」

 

「そうか、お前の全力で俺にかかって来い!」

 

俺と翔はデュエルリングにて対峙している…翔は普通のブルー制服では無く…兄をリスペクトしたコートを着ている…。

 

 

「翔〜!頑張れよ〜!!」

 

「丸藤先輩!ファイトだドン!!」

 

「翔!負けるなよ〜!!」

ギャラリーには十代・剣山・万丈目の3人、そして… 

 

「(姿は見えないが…いるな、見ててやれよ?アイツの覚悟を…!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

 

翔LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

 

「ボクのターン!ドロー!」

「手札から『融合』を発動!手札の『キューキューロイド』と『レスキューロイド』を融合!『レスキューキューロイド』を融合召喚!」

2台の救急車が融合し赤い消防車のビークロイドが現れる ATK2300

 

「さらに『デコイロイド』を守備表示で召喚!そして相手は『デコイロイド』しか攻撃対象にできない!!」

小さなリモコンカーが現れる DEF 500

 

「カードを一枚伏せてターンエンドっす!!」

 

翔LP4000

レスキューキューロイド デコイ 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

 

「なるほどな…『デコイ』と『レスキューキューロイド』のコンボか…!面白い!いくぞ翔!」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「相手フィールドにのみモンスターが存在する時!『聖刻龍ートフェニドラゴン』は特殊召喚できる!」

白いウジャト眼を刻んだ龍が現れる ATK2100

 

 

 

「っ…!遊海先生の伝説のデッキの1つ…!」

 

《まさかこのような形でお主と戦うとはな…手加減はせぬぞ!》

トフェニは翔へと宣戦布告する

 

「そして魔法カード『超再生能力』を発動!さらに魔法カード『招集の聖刻印』の効果でデッキから『聖刻龍ーウシルドラゴン』を手札に加える!そして『トフェニ』を生贄に『聖刻龍ーシユウドラゴン』を特殊召喚!」

青いウジャト眼を刻んだ龍が現れる ATK2200

 

 

「さらに!生贄になった『トフェニ』の効果!デッキから『神龍の聖刻印』を守備表示で特殊召喚!」

赤いウジャト眼を刻んだ太陽石が現れる DEF0

 

 

「そしてフィールドの『神龍印』と『シユウ』を生贄に『聖刻龍一ウシルドラゴン』を召喚!」

緑のウジャト眼を刻んだ天空の神(オシリス)と同じルーツを持つ龍が現れる ATK2600

 

 

「いきなり攻撃力2600っすか…!容赦ないっすね先生…!」

 

「まぁな、言っただろ『伝説の決闘者』として相手をするって!さぁ決闘王のように俺を乗り越えてみせろ!生贄になった『シユウ』の効果でデッキから2体目の『神龍印』を特殊召喚!」

2体目の太陽石が顕現する DEF0

 

「カードを一枚伏せてエンドフェイズ!『超再生能力』の効果で3ドロー…ターンエンド!」

 

遊海LP4000

ウシル 神龍印 伏せ1 手札4

 

 

 

 

 

「あんなに展開したのに手札がまだあんなにあるザウルス…!」

 

「ああ…まだ翔の場には『デコイロイド』と『レスキューキューロイド』の鉄壁があるが…それが突破されたら不味いな…」

 

「翔!粘れよ〜!遊海先生は強いからな〜!!」

 

 

「アニキ…!頑張るッス!!」

 

 

 

 

 

「ボクのターン!ドロー!」

「『ミキサーロイド』を召喚!」

融合の図柄の描かれたミキサー車が現れる ATK0

 

「『ミキサーロイド』の効果発動!デッキから風属性以外のビークロイド…『サブマリンロイド』を特殊召喚!」

潜水艦のビークロイドが現れる ATK800

 

「バトル!『サブマリンロイド』は相手プレイヤーに直接攻撃できる!ディープ・デス・インパクト!」

 

サブマリンロイドが潜水し遊海に体当たりを仕掛けた!

 

「うぉ!?そうきたか…!」

遊海LP4000→3200

 

「『サブマリンロイド』はバトル終了後に守備表示に変更できるッス!」

潜水艦がその姿を隠す DEF1800

 

「そして『レスキューキューロイド』で『神龍の聖刻印』を攻撃!キューキュー・インパクト!」

レスキュー車が太陽石に突撃する!

 

「タダではやらせない!リバース罠『抹殺の聖刻印』!『神龍印』を生贄に『デコイロイド』を除が「リバースカード発動!!」なにっ!?このタイミングで!」

 

「カウンター罠『レッド・ロイド・コール』!ビークロイドの融合モンスターがいる時、相手のモンスター・魔法・罠の効果を無効にし…さらに同名カードをデッキから除外する!!」

 

「なんだと!?」

展開された魔法陣は砕けデッキからも抹殺の聖刻印が除外される…

 

「ボクはこれでターンエンド!」

 

翔LP4000

レスキューキューロイド サブマリン デコイ 手札1

 

 

 

 

 

「すげぇ!翔の奴遊海先生に先制ダメージだ!」

 

「丸藤先輩すごいザウルス!」

ギャラリーは翔の先制ダメージに歓声を上げる

 

「やるなぁ翔!まさか『抹殺』が躱されるとは…」

 

「遊海先生!ボクだって成長してるッス!今まではアニキやお兄さんの背中を追いかけてきたけど…それを追い抜いて見せるっす!!」

 

「そうか…しかしまだ()()()()だ…これを超えて見せろ!」

 

「へっ…!?」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から魔法カード『星呼びの天儀台』を発動!手札のレベル6『エレキテルドラゴン』をデッキの下に戻して2ドロー!」

 

「そして魔法カード『竜の霊廟』を発動!デッキから『龍王の聖刻印』と『ギャラクシーサーペント』を墓地に送る!そして『聖刻龍ードラゴンゲイヴ』を召喚!」

オレンジ色のウジャト眼を刻んだ人型の龍が現れる ATK1800

 

「『ゲイヴ』を生贄に『聖刻龍ーネフテドラゴン』を特殊召喚!さらに『ゲイヴ』の効果で墓地の『龍王印』を特殊召喚!」

紫色のウジャト眼を刻んだ龍と紺色のウジャト眼の刻まれた月光石が現れる ATK2000  DEF0

 

「さらに『ネフテ』を生贄に2体目の『シユウ』を特殊召喚!さらに墓地の『神龍印』を特殊召喚!」

再び青い龍と太陽石が現れる ATK2200  DEF0

 

 

「あっと言う間にモンスターが4体も並んだっす!?」

 

「でも攻撃力が高いのは2600の『ウシル』だけ…しかも『デコイロイド』の壁があるぞ…どうやって…」

 

「遊海先生…まさか!?それは流石に大人げないぜ!?」

 

「アニキ!?どうしたザウルス?」

十代は遊海のしようとしている事に気づいたようだ

 

 

「翔!使うつもりは無かったが…いくぞ!!俺はレベル6の『ウシル』と『龍王印』でオーバーレイ!」

月光石と青い龍が銀河へと飛び込む!

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!聖なる文字を刻みし龍王よ…その姿を現せ!ランク6『聖刻龍王ーアトゥムス』!!」

神々しき光を纏う龍王が現れる ATK2400

 

 

「あ…わ…エクシーズ召喚!?異世界の召喚法っす〜!?」

翔は動揺する…自分相手にそこまではしないだろうと思っていたからだ…

 

「翔!お前は俺の思っていたよりも成長していた!…ここからは俺も本気だ!『アトゥムス』の効果を発動!ORUを1つ取り除き、デッキから『レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン』を攻守0で特殊召喚!」

黒き鋼を纏った竜が現れる DEF0

 

取り除いたORU

竜王印

 

「『レダメ』の効果!墓地の『神龍印』を特殊召喚!」

太陽石が並び立つ DEF0

 

 

「同じレベルのモンスターがまた2体揃ったザウルス!!」

 

「まさか…!」

 

 

「そのまさかだ!!レベル8の『神龍印』2体でオーバーレイ!」

2体の太陽石が銀河へと飛び込み風が吹き荒れる…

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!太古より眠りし神龍よ!遥かなる時を超え顕現せよ!!『聖刻神龍ーエネアード』!!」

太陽の如き炎を纏う神龍が降臨する ATK3000

 

 

「攻撃力3000…!でもボクには鉄壁があるッス!!」

 

「『エネアード』の効果を発動!ORUを1つ取り除き手札の『アセトドラゴン』を生贄に『レスキューキューロイド』を破壊する!ドラゴン・フレア!!」

太陽の光が束ねられレスキュー車を吹き飛ばした!

 

「しまった…!これじゃあコンボが…!?」

 

「少し詰めが甘かったな『アセト』の効果でデッキの『エレキテルドラゴン』を特殊召喚!…バトル!『ウシル』で『デコイロイド』を、『エネアード』で『サブマリンロイド』を攻撃!」

ウシルがリモコンカーを叩き壊し、エネアードがブレスで潜水艦を爆発させた…

 

「効果を使ったターン『アトゥムス』は攻撃できない…カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

遊海先生LP3200

ウシル アトゥムス エネアード レダメ エレキテル伏せ1 手札0

 

 

 

 

「さぁ…どうする翔?次のターンに俺が総攻撃をかけたら終わりだぞ?」

 

「つ…あ…先生はやっぱり強いや…!とても勝てる気がしないッス…!」

翔の目の前には巨大な5体の龍が立ち塞がる…

 

「諦めるか?」

 

「ボクは諦めないッス…!お兄さんに追いつくために…こんなところで止まってられないッス!!!」

 

 

 

 

 

「ボクのターン!…ドロー!!」

「『強欲な壺』を発動!2枚ドロー!…来た!!」カンコーン☆

 

「ほう…やってみろ!丸藤 翔!!」

 

「いくッス!速攻魔法『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動!ライフを半分払い、墓地から機械族融合モンスターの融合素材を除外して融合できる!!」

 

翔LP4000→2000

 

「サイバー流のサポートカード…!(でも墓地にはあいつの切り札である『ステルスユニオン』の素材はいないはず…)…まさか…!」

 

「ボクは手札から『ビークロイド・コネクションゾーを』発動!墓地の『デコイロイド』『キューキューロイド』『レスキューロイド』『サブマリンロイド』『ミキサーロイド』を除外し…『極戦機王ヴァルバロイド』を融合召喚!!」

5体のビークロイドが融合し…兄の切り札である『サイバーエンド』を超えるレベル12の融合モンスター…機械の皇帝が降臨する ATK4000

 

 

「おいおい…マジかよ!?」

 

「すげぇ!翔!攻撃力4000のモンスターだ!!」

 

「丸藤先輩!輝いてるドン!!」

 

 

「それがお前の全力か!翔!!」

 

「はいっ!!これがボクの新しい切り札ッス!バトル!『ヴァルバロイド』で『エネアード』を攻撃!そして『ヴァルバロイド』の効果!モンスターを破壊した時1000ダメージを相手に与えるッス!!」

機王が拳で神龍を貫き大爆発を起こした!

 

「ぬ…うおおぉぉぉっ!!?」

 

遊海LP3200→2200→1200

 

「そして!『ヴァルバロイド』はダイレクトアタックができない代わりに2回攻撃ができる!!『アトゥムス』を攻撃!!!」

巨大な拳が龍王に迫る…!

 

「これが決まったら遊海先生の負けザウルス!!」

 

 

「成長したな…翔!!」

 

 

 

 

ズガーンッ!!!

 

 

 

機王が龍王を破壊し爆発がフィールドを包み込む…

 

「ハァ…ハァ、勝てた…ボクが遊海先生に…!」

翔は確信する…手応えはあったと…

 

 

 

 

 

 

「それはどうかな?少し詰めが甘いぞ…翔!」

フィールドの煙が晴れる…そこには

 

 

 

遊海LP1200

 

「なっ…ライフが変わってないッス!?なんで…!」

 

「今のダメージはキツかった…速攻魔法『神秘の中華鍋』の効果だ、『ウシルドラゴン』を生贄にしてライフを回復…ダメージを打ち消した!」

 

「そんな…流石遊海先生ッス…ターンエンド!」

 

翔LP2000

ヴァルバロイド 手札1

 

 

 

 

「まさかあの攻撃を耐えるとは…これが伝説の決闘者か…!」

 

「でも遊海先生のフィールドには攻守が0のドラゴンが2体…『ヴァルバロイド』を倒す事は無理だドン…!」

 

「まだわからないぜ?剣山、万丈目!デュエルは最後までわからない!!」

 

「だから!万丈目『さん』だっ!!」

 

 

 

 

 

「さてさて…手札は0枚、逆転はできるかな…!俺のターン…ドロー!!!」

「…『レダメ』の効果を発動!墓地の『エネアード』を特殊召喚!!」

再び神龍が降臨する ATK3000

 

「先生!攻撃力3000じゃ『ヴァルバロイド』は超えられないッス!」

 

「ああ…わかってるさ!だからこうするんだ!!…φφχψψχφυφψχφψξυφψωχ〜…!」

遊海先生はカードを前に何事かを呟く…

 

 

「…嫌な予感…!」

 

「遊海先生…モンスター3体…あっ…」

 

 

 

「翔!お前の本気に答えてよう!来い!!!太陽神!『ラーの翼神竜』!!」

 

《キュアアアアア!!!》

3体のモンスターが生贄となり金色の翼竜が顕現する!

 

ATK?→8300

 

「かっ…『神』…!?遊海先生がボクのために…!?」

 

【誇りなさいショウ…貴方は私に見合う力を示した…だからこそユウミは私を召喚したのです…!】

 

「フレアさん…!」

 

「バトル!『ラー』で『ヴァルバロイド』を攻撃!ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」

全てを焼き尽くす神の炎が機王を灼き尽くした…

 

 

翔LP0

 

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜あ…負けちゃったッス…まさか神を出して来るなんて…」

 

「お前がそれだけ成長したって事さ!俺も危なかったよ!よっと!」

遊海は大の字で倒れていた翔を助け起こす

 

「お前はプロになれるよ翔、俺をここまで追い詰めたんだ…ランキング10位以下は敵にならないだろうさ!…そうだろ?カイザー!」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

『気づかれてましたか…』

観客席からカイザーが飛び降りてくる

 

「ああ、最初からいただろう?どうだった翔の奮闘は?」

 

『はい…翔、いつの間にオレを追い抜いた?いいデュエルだった…!』

カイザーは翔の頭を撫でながら翔を褒めた…

 

「お、お兄さん!?追い抜いたなんて…!ボクはまだ全然…!」

 

『オレが3年生の時、遊海先生に1ダメージも与えられなかった…でもお前は遊海先生を「神」を出すまでに追い詰めたんだ…あの時のオレを遠く追い抜かしている!…これはオレも気合いを入れなければな…!』

 

「お兄さん…お兄さ〜ん!!!」

 

『ほら泣くな翔…せっかく褒めたんだから…まったく…』

翔は嬉し泣きしかながら亮に抱きつく…目標としていた兄に褒められ感極まったのだろう…

 

「これが兄弟愛か…よかったな翔!」

 

「うぅっ…!アニキもあ"り"か"と"う"〜!」

 

「うわ〜!?翔!鼻水!鼻水〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

『遊海先生…ありがとうございました、翔の我儘を聞いて頂いて…』

 

「大丈夫だよこれくらい!そういえばこれから猪爪…サイコ流とのデュエルだろ?大丈夫か?」

 

『えぇ…翔が、あんなに頑張ってるんです…兄でありサイバー流の継承者であるオレが負けるわけにはいきませんよ…!!』

 

「そうか…頑張れよ!カイザー亮!」

 

『はい…!』

 

 

 

 

 

 

その後サイバー流対サイコ流のデュエルが行われカイザーは圧勝したらしい…流石である…。

 



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原初の地獄〜進みし道〜

「アニキ〜!遊海先生〜!おはようッス〜!」

 

「おはよう翔!遊海先生達ならいないぞ?」

 

「えっ!?珍しい…どうしたんすか?」

ある日曜日、翔は十代を訪ねてレッド寮の食堂を訪れた…しかしそこには十代しかいなかった。

 

 

「よくわからないけど、海馬社長に呼び出されたみたいなんだ」

 

「へぇ〜やっぱり遊海先生はすごいっすね〜やっぱり伝説のデュエリスト同士の繋がりがあるんすね…」

 

「そうだな〜…そろそろデュエルニュースの時間かな」ポチッ

そう言いながら十代は見ていたヒーロー番組からデュエルニュースへチャンネルを変える…。

 

デュエルニュースとは、最新のカード情報や大会の結果、決闘者に関するニュースを特集しているニュース番組である…スポンサーはもちろんKC社とI2社だ。

 

 

『…次のニュースです、先日引退を発表したプロデュエリストのエド・フェニックス氏が現役復帰を発表しました!引退の背景にはテレビジャパン・元プロデューサーのマイク容疑者のカード窃盗・八百長疑惑があり…』

 

 

 

「エドもよかったすね無事に復帰できて!」

 

「そうだな〜、万丈目も頑張ったもんな〜」

 

 

エド・フェニックスプロ引退事件…エドがスポンサーである千里眼グループと共同開発したカード…通称『最強のD』が紛失し、それの責任を取る形でエドがプロの引退を表明した事件だ。

しかし事件の背景には悪徳プロデューサー・マイクの暗躍がありそれをエドの付き人をしていた万丈目、そして十代と遊海の活躍により露見させエドを復帰させたのだ…なおマイクは久々に炸裂した遊海の『罰ゲーム』によりマインド・クラッシュされている…。

 

 

「でも万丈目とエドのデュエルも熱かったな!最後のイエローのパンチがかっこよかったぜ!」

 

「そうっすね〜!そういえば校長先生達、今大忙しみたいっすよ?世界中から万丈目君のスポンサーになりたい企業からの電話がずっと鳴ってるらしいっす!」

 

「へぇ〜…すごいな、流石万丈目だ!」

 

 

 

『次のニュースです…昨夜、童実野町の中華料理店で爆発があり、2人が重体…1人が軽傷です…被害に遭われたのは店員の女性とプロデュエリストの白波 遊海氏と妻の翠さんで…』

 

「「な、なんだって〜!?」」

ニュースを見た十代と翔はニュース画面を見て叫び声をあげる

 

 

『目撃者の証言によると白波夫妻の食事中に突如爆発が起きたとの事です…原因は不明で警察と消防、KC社が原因の究明を急いでいます…次の…』

 

 

「いったい何があったんだよ!遊海先生!!」

 

遊海と翠の重体情報はすぐにアカデミアを駆け巡った…遊海達が帰ってきたのは事件から1週間後…全身が包帯でグルグル巻きであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生!翠さん!大丈夫か!?」

 

遊海が帰ってきた事を知った十代は2人のいる保健室に駆け込んだ…。

 

 

「おぉ十代…心配掛けたな…とりあえずは大丈夫だよ」

 

「ごめんね十代君、1週間も留守にしちゃって…」

保健室には顔まで包帯グルグル巻きになった遊海と、同じく顔以外を包帯で巻かれた翠の姿があった、翠の顔にはたくさんのすり傷が付いている…。

 

「2人共何があったんだよ!?まさかダークネスの襲撃か…!?」

 

「いや…違うんだ…ダークネスは関係ない、というか完全に俺のせいだ…」

 

「遊海さん…あれはしょうがないですよ…まさかこんな事になるなんて…」

 

「いったい何が…?」

ダークネスの影響ではないと聞いた十代が怪訝な顔をする…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まさか料理のせいで死にかけるとは…」

 

 

 

「へっ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間前 童実野町

 

 

海馬社長から呼び出された俺は翠と一緒に童実野町へと戻ってきていた、とりあえず翠は家へ戻りウィンダ達と掃除を、俺はそのまま海馬コーポレーションへ向った…。

 

 

 

コンコンコン

 

「入れ!」

 

「失礼します!お久しぶりです海馬社長!」

 

「フゥン、ようやく調子が戻ったようだな遊海…元気で何よりだ!」 

 

「はい…翠から聞いています、色々気にかけてもらったみたいで…」

 

「お前は海馬コーポレーションの誇るプロだからな!気にするのは当たり前だ!」

社長室に入るなり相変わらずのオーラに圧倒される、雰囲気からするとかなり心配されていたようだ。

 

「…ありがとうございます、そういえば今回はどんな用で…?」

 

「フン、お前に会いたいという者がいてな…」

 

「俺に会いたい人…?」

 

『ボクです、遊海さん!』

社長室のソファから1人の青年が現れる、それは…

 

「エド!プロの復帰おめでとう!」

先日プロへの復帰を発表したエドだった、いつも通りのシルバーのスーツを着ている

 

『はい!ありがとうございます!全て遊海さんと万丈目、十代のおかげです!』

 

「なぁに!俺達はお前のサポートをしただけだよ!でもどうしたんだ?わざわざ海馬社長を通してアポを取って会いに来るなんて?」

 

『それは…』

 

「それはわたしがお願いしたのです…遊海プロ!」

 

「あなたは…ミスターフェニックス!?」

エドの後ろから現れたのは車イスの男性…エドの父親だった…

 

「身体は大丈夫なんですか?」

 

「はい!おかげ様で…まだ自由にはなりませんがリハビリ次第です!」

 

エドの父親は約9年前、破滅の光に取り憑かれ究極のD・HERO…『BlooーD』を創り出した、その後DDに襲われ瀕死の重傷を負ったところに俺が駆け付け精霊の力で治療を施した…しかしその魂は究極のDに囚われ意識が戻る事は無かったが…1年前のエドとDDの戦いにより魂が開放され7年振りに目を覚ましたのだ…ついでに遊戯王シリーズの中でも珍しく良い父親と描写されている人物である。

 

 

「貴方に改めてお礼が言いたくて息子に頼んでこの場をセッティングさせてもらいました…遊海プロ、わたし達を助けていただきありがとうございました!」

 

『ありがとうございました!!』

エドとフェニックス氏は二人して頭を下げる

 

「ふ、2人とも頭を上げてください!?俺はあくまで偶然あの場に居合わせただけなんですから!」

 

遊海は正直あの場に間に合うとは思っていなかった、しかしペガサス会長にフェニックス氏の事を尋ねた時にまだ間に合うと確信しその場に急行した…それが今に繋がっている。

 

 

『遊海さんがあの時パパの命を救ってくれなければボクはきっと究極のDを探す復讐者になっていました…!それこそ父のヒーロー達に込めた想いに気づかずに…しかし貴方はパパを救い、ボクを真っ当な決闘者にしてくれた…!』

 

「わたしもエドと同じ気持ちです…エドとDDのデュエルの後、わたしは天に召されると思っていました…でも気づけばわたしは五体満足で病院のベッドの上だった、主治医に聞いたら10年前に1人の青年がわたしを救い息子を導いてくれたと教えてくれた…!本来死んでいたであろうわたしを救い、息子との時間を与えてくれた…本当にありがとう!!」

 

エドもフェニックス氏は純粋な感謝を遊海に伝える…そして遊海は…

 

「俺も…2人を救う事ができて…よかった…俺の進んだ道は間違いでは無かった…!!!ありがとうございます!!!」 

感謝を受けた遊海は大粒の涙を流す…自分の進んだ道は間違いでは無かった、その証を見る事ができたからだ…そしてしばらくの間遊海は泣き続けた…。

 

 

 

 

 

「フェニックスさん、これからはどうするんですか?」

涙を拭った遊海は問い掛ける

 

「とにかく手を中心にリハビリを続けます!そして新たなカードを生み出してみせます!囚われていた間にインスピレーションが湧いてきて…それを早くカードにしたいと思っているんです!」

 

『ハハハ…パパは相変わらずカード一筋だなぁ…』

フェニックス氏は熱くカードへの想いを語る…これがI2社のトップデザイナーか…

 

『遊海さん!それではボク達は失礼します!この後ペガサス会長に会いに行かなければならないので…今日は本当にありがとうございました!!』

 

「遊海プロ!何かカードが必要になったら連絡をください!貴方の必要とするカードを創ってみせます!それでは!」

そうしてフェニックス親子は社長室をあとにした…その顔には笑顔が溢れていた…。

 

 

 

 

 

 

「…父親…か、あの男も…いや…ありえないな…」

海馬はポツリと自分の義父…剛三郎を思い出す、海馬コーポレーションの負の遺産そのもの…そして自身に敗れ死んだ哀れな男の事を…もしも彼に人並みの優しさがあればどうなっていたのか…それを考えようとして海馬はそれを止めた、自分にとって過去とは忘れるためにあるもの…それを思い出したからだ…。

 

「海馬社長?どうしました?」

 

「っ!…なんでもない、手間を取らせたな遊海」

遊海が海馬を心配して声をかける…思考していた海馬はそれを止め遊海へと向き直る

 

「そういえば…今学期でアカデミアを離れるそうだな!」

 

「ああ、少しサボり気味だったプロに本格的に戻ろうと思って…」

 

「そうか、今のランキング1位は凡骨だ…奴を叩き落とせ!必ずだ!」

 

「えぇ、俺も少し本気を出します…期待していてください」

 

「フゥン…気合いは充分だな…ならお前に朗報だ、これを見るがいい!」

海馬は机の引き出しを開け一枚のカードを取り出した…それは

 

「!?…『蒼眼の銀龍』…!シンクロモンスター!?」

 

「遊海…貴様のその顔が見たかった!初代バトルシティから9年、ついに再現に成功した!!これを9月から解禁とする!お前ならすぐに1位になれるはずだ!」

 

初代バトルシティから長き時を経て…海馬はついにシンクロモンスターの開発に成功した…そしてそれは…

 

「(そんな…こんなに早く作り出すなんて…!あの事を聞かなければ…!)海馬社長…少し聞きたい事が…」

 

「ん?どうした遊海?」

 

「今海馬コーポレーションで…」

 

 

コンコンコン

 

「むっ?入れ!」

遊海の質問を遮るように部屋がノックされる…そして

 

『海馬社長、新しいエネルギー機関についてですがもうで少しで新たな物質を…失礼、来客中でしたか…』

 

「なっ…!?」

 

「不動博士か…構わん話を続けろ、コイツは我が社の所属プロの遊海だ!部外者ではない」

 

部屋に入ってきたのは特徴的な髪型の男性…5D.s主人公・不動 遊星の父…不動博士だった…。

 

『これはこれは!伝説の決闘者の1人ではないですか!?不動といいます、よろしくお願いします!』

 

「あっ…白波 遊海です…どうも…」

 

「?…遊海、どうした?まるで死人にでも会ったような顔だが…」

 

「いえ!少し知人に…似ていたので驚いてしまって…すいません話を続けてください…」 

 

『えぇ、それでは…最新の実験で粒子と粒子を結ぶ新たな物質を発見しました…これは一定の刺激を与えると遊離している状態から周りの物質を繋げる性質があります…私は暫定的に「遊星粒子」と呼んでいます…これを利用すれば半永久的に動くエネルギー機関を作れるかと…』

 

「そうか…そのまま実験を続けろ、じきに制御装置とその鍵も完成する!」

 

『わかりました!実験を続けます!失礼しました!』

不動博士は海馬社長への報告を終えると部屋を後にした…

 

「不動博士は新クリーンエネルギーの開発リーダーでな…もう少しで理論が完成するはずだ!…そういえば聞きたい事とはなんだ?」

 

「いえ…なんでもないです、今日はこの辺で失礼します…」

 

「むっ、そうか…お前のプロでの活躍を楽しみにしているぞ遊海!」

そうして俺は社長室をあとにした

 

 

 

 

 

 

「時間が…無い…!まさか遊星粒子が発見されるなんて…!」

商店街を歩きながら遊海は追い詰められていた、シンクロ召喚の誕生…モーメントの開発者である不動博士との出会い…その日は近くへと迫っていた…

 

「彼は薬指に指輪を嵌めていた…つまり結婚はしている…つまり遊星があと1〜2年で生まれる可能性がある…まだ対策も見つけられてないのに…!」

 

《マスター、落ち着いてください!まだ時間はあります!そんなに動揺していてはダークネスに付け込まれてしまいます!》

 

「…そうだな…まだ『モーメント』という単語は出ていなかった、まだ実験段階だと言っていたな…落ち着け…落ち着け…」

アヤカの言葉を聞き遊海は平静を取り戻す…

 

「つまりゼロ・リバースまで最短で1年、最長で3年という事か…大丈夫だ時間はある、大丈夫だ…」

 

 

 

ピリピリピリ…ピリピリピリ…

 

「ふわっ!?…電話…もしもし白波です」

 

『遊海さ〜ん!翠でーす!今何処ですか〜?』

 

「ああ、翠…今商店街だよ?」

 

『今日の夕御飯は久しぶりに外食にしませんか?友達から美味しい中華料理のお店を教えて貰ったんですよ〜!』

 

「夕飯?…ああ、もう6時を過ぎてたのか…わかった!いつもの時計台のところで待ち合わせしよう!」

 

『わかりました!これから行きますね〜!』プッ…

 

「…珍しいな翠が自分から外食しようって言うなんて、とにかく行くか」

そうして遊海は時計台広場へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さ〜ん!お待たせしました〜!」

 

「大丈夫、俺も今着いたところだよ…それでお店って?」

 

「はい!私達がいない間に出来たお店らしいんです!行きましょう!」

 

 

 

〜〜

 

 

 

 

 

「着きました!ここです!」

翠の案内で着いたのは『大衆中華食堂・泰山』というお店だった、そこそこ人気のお店のようである…なんだろう…なんか記憶に引っかかる…気のせいかな?

 

「とりあえず入ってみようか!」

 

「はい!」

 

 

 

 

『『いらっしゃいませ〜!』』

お店の中は典型的な中華食堂という感じだ…

 

『2名様私のラ…じゃなくてお席へご案内〜!どうぞ

ー!』

ピンク色の髪をした女性が俺達を席へと案内する…何処かで見た事あるような…?

 

『注文が決まったら呼んでね!こぶ…お客様!』

 

 

 

 

「遊海さん、どうしますか?私は…ラーメン餃子セットにしようと思うんですけど…」

 

「う〜ん…じゃあ俺は麻婆豆腐定食かな…すいませ〜ん!」

 

『ハァイ!注文は決まったかしら?』

 

「えっとラーメン餃子セットと麻婆豆腐定食をお願いします!」

 

『え"っ…お客様…アレ食べるの…?』

ウェイターの女性が顔を歪ませる…

 

「?…ああ、中華料理だと好きな物の一つなんだ、お願いします!」

 

『わ、わかったわ…後悔しないでね?オーダー!ラーメンセットと麻婆定食一つよ!』

 

『!?…わかった、腕によりをかけよう!』

厨房から店主であろう男性の低い声が聞こえてきた…なんだろう寒気が…?

 

 

 

 

「翠、大切な話がある…」

 

「どうしたんですか遊海さん?改まって…?」

料理が来るまでの間に翠に今日あった事を伝える

 

「海馬社長が…『シンクロモンスター』を作り出した…」

 

「っ!?…ついにですか…!」

翠も驚きをあらわにする

 

「それだけじゃない……不動博士と会った…!」

 

「!?…まさかもう『モーメント』が…!?」

 

「いや…やっと『遊星粒子』を見つけたところらしい…でも長くて3年以内にアレが起きる可能性がある…!」

 

「大災害…ゼロ・リバース…!」

翠も顔を青くする…ついにその日が近づいてきたと…

 

「幸いまだ時間はある…対策を考えなければ…」

 

 

『は〜い!ラーメンセット!待たせたわね!』

ウェイターの女性が翠のラーメンを運んでくる

 

「あ、ありがとうございます…遊海さん今は目の前の事を最優先でやりましょう…もう少しで奴らが…」

 

『お待たせした、麻婆豆腐定食だ…食え…』

 

店主らしき男性がわざわざ麻婆豆腐定食を持ってきた…しかし…

 

「な…なんだ…これは…!?」

 

目の前にあった麻婆豆腐…否、ソレは原始の地獄のようだった…料理から陽炎が昇り湯気が視界を歪める、鼻につくのは100年以上煮込まれたような香辛料の香り…まるで地獄が一皿の上に再現されているようだ…思い出した…この人…言峰だ…麻婆神父だっーーーー!

 

『当店自慢の麻婆豆腐だ、注文されるのが久しぶりだったものでな…腕によりをかけた、さぁ…存分に喰らうがいい…!なお残した場合は10万円頂くからそのつもりで』

 

「なん…だと…?」

 

「あ、あわわわ…」

翠もその威容を目にして引いてしまっている…

 

 

「(アヤカ…助けて…!)」

 

《(…味覚リンク完了…打つ手はありません、共に逝きましょうマスター…貴方を一人にはしません…!)》

 

「(すでに諦めてらっしゃるーー!?)」

念話でアヤカに助けを求めた遊海だったがアヤカはなす術が無いようだ…。

 

《(ユウミ…その料理には一種の神性が宿っています…私達精霊には手出しができません…)》

 

「嘘だろ…?」

 

『どうしたお客様?早く食べなければ冷めてしまう、早く食べてくれ』

店主…言峰が愉悦に顔を歪ませながら言ってくる…食べるしか…無いのか…

 

 

遊海は意を決してレンゲで麻婆を掬う…それはレンゲの上でも沸騰したように泡が沸いている…。

 

「翠…ちょっと逝ってくる…」

 

「遊海さん!?目が死んでます!!ダメー!!」

 

 

 

ハグッ

 

 

 

 

 

【オッス!オラ外道麻婆!今後ともヨロシク!】

 

 

「ガッーーーー!!?!?!!!??」

 

《!??!!?!?!………》

 

 

口の中で原初の地獄が再現され…遊海、そして味覚リンクしていたアヤカの全てを蹂躙した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……遊海、こんなところで何をしている…?』

 

 

「…原初の地獄を食べてきた…」

 

 

『まだお前が来るのは早すぎる…早く戻れ!』

 

 

「ああ、俺は止まるわけにはいかない…止まるんじゃねぇぞ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!気をしっかり持ってください!遊海さん!!」

 

 

「ハッ…アテムの姿が見えた…」

 

《………》バリ…バリバリ…

 

遊海が気が付くと皿は空になり、翠に身体を揺すられていた…無意識のうちに完食したらしい、アヤカは半透明でスパークしながら墜落している…身体からは滝のように汗が流れ、味覚は完全に麻痺…身体は力が入らず弛緩している…。

 

 

「一口食べたと思ったら一気に料理を掻き込んですぐに気絶しちゃったんです…大丈夫ですか…?」

 

「大丈夫じゃないかも…微かに口の中に旨味が残ってるけど…ここしばらくで1番のダメージだ……」

 

 

『大丈夫?子豚?ごめんなさいね…店長、他の料理は美味しいんだけど麻婆豆腐だけは異常に辛くなっちゃうの…これはサービスのアイスよ、お口直しにどうぞ!』

 

「あ、ありがとうございます…いただきま……」ハムっ

遊海は店員の女性から出されたやけに紅いアイスを口に運ぶ…その刹那、記憶が蘇った…月の金星アイドルの事を…

 

ヒドイ マズイ カライ アマイ ニガイ スッパイ ドロい…テロい!!?!??

 

 

味覚が麻痺しているはずの遊海の身体を蹂躙する金星の味…そしてそれはスパークしながらも味覚リンクしていたアヤカにも…

 

 

《エマージェンシー…危険を確認…自爆します》

アポクリフォート・キラーに付けられた緊急自爆装置が誤作動を起こし…そして…

 

 

 

 

チュドーーン!!!!

 

大爆発をおこす…そしてどこからか「爆発オチなんてサイテー!?」という声が聞こえたという……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳でその料理屋は半壊…爆心地にいた俺達は大ダメージで入院…アヤカも精霊世界で修理・療養中だ…まさか料理一つでこんな事になるとは…」

 

「なんというか…ドンマイ…どんな料理だったんだよ…それ…」

 

「しばらく麻婆豆腐はコリゴリ…うグッ!?は、腹が…!!」

 

「まさか…料理でこんな事になるなんて…私も気をつけなくちゃ…」

 

 

 

その後しばらく遊海は腹痛に苦しんだという…




以上、唐突なネタ回でした!


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虚無の進撃・序〜童実野町進撃戦〜

『それでは!今年の卒業デュエル大会を開始する!諸君の健闘を祈る!』

 

「「「わあぁぁぁ!!」」」

 

 

 

アカデミアの卒業デュエル大会…それは普通の学校でいう卒業論文や課題研究のようなものだ。3年生達が他の生徒達とデュエルし累計100ポイント稼いだらクリアとなる、そして今回の主席生徒にはI2社から「武藤 遊戯」のデッキのレプリカ(アニメ1期で神楽坂が盗んだ物)が与えられるという大盤振る舞いである。

 

決闘王のデッキ…それは全てのデュエリストの憧れであり…最強を証明する証、生徒達は気合いに満ち溢れていた。

 

 

「キング・オブ・デュエリストのデッキ…それはこのオレにこそ相応しい!絶対にこのサンダーが手に入れてみせる!」

 

「ボクも負けないッスよ万丈目君!ブラマジガールのカードを手に入れるのはボクっス!!」 

 

早速火花を散らしているのは翔と万丈目の2人、1人は勝利の証を求めて…1人はアイドルカードを欲しいがために火花を散らしている…

 

 

「なら決着を着けるか!」

 

「やってやるッス!一期一会のラストデュエルでスタートするッス!」

卒業デュエルでポイントが入るのは1人1回…正真正銘アカデミアでのラストデュエルとなる…。

 

「焦らないで2人共!卒業デュエルは始まったばかりよ!…メインイベントは最後に取っておきましょう!」

白熱する2人を明日香が止める…卒業デュエルは始まったばかりである…

 

「むっ、それもそうだな…いいだろう!翔!絶対に決着を着けるからな!」

 

「望むところッス!」

 

「いいねぇ…青春してるねぇ2人共!さて僕も…」

 

「「「吹雪様〜!デュエルして〜!!」」」

 

「この子達の相手といきますか!」

2人の誓いを見届けた吹雪は後ろを振り向く、そこには吹雪のファンである女生徒達が待っていた、軽くノルマを越えられる人数の…

 

「兄さんも相変わらずね…さて私も…」

 

『『『明日香さん!デュエルお願いします!』』』

 

「…わぁお…すごい人数ね!いいわ…かかってきなさい!!」

兄の人気振りに呆れた明日香もその後ろにはたくさんの生徒達(男女共に)が待っていた…それを明日香は笑顔を持って迎えいれた…。

 

 

 

 

《キュアアアアー!!》

 

 

 

「「「「!?」」」」

甲高い鳴き声と強風に生徒達は空を見上げる…そこには凄まじい勢いで飛び立つラーの翼神竜の姿…そしてその背中には遊海の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

〜少し前〜

 

 

 

 

 

 

「…ついにこの時が来たか…」

 

《はい…マスター、童実野町方面でダークネスの気配があります…》

アカデミアの卒業デュエル開始日…そしてダークネスの侵攻が始まる日だ…既に広い範囲でその兆候が出ている…これから俺のする事は無駄骨に近い…しかしこれは俺のケジメだ…!

 

「…行くんですね、遊海さん…」

 

「ああ…翠、ウィンダ、ウェン…生徒達を頼む!」

 

《了解!私達も頑張るよ!》

 

《遊海兄…無茶はしないでね!》

俺を見送るのは翠と緑色のデュエルディスクを持ったウィンダとウェン…そして俺は童実野町へ向かおうとしていた。

 

 

「翠…これを持っていてくれ、お守りだ!」

 

「はい…遊海さん、どうか無事で…!」

俺は1枚のカードを翠へ渡す…せめてもの保険だ…

 

「…頼めるか、フレア」

 

《はい!ユウミ!…いきましょう…決戦へ!》

フレアが実体化し翼竜となる

 

《クリクリ〜!!》

 

「ん?…ハネクリボー?どうしたんだこんなところで…ヨシヨシ…」

 

《クリュリュ〜…》

フレアに乗ろうとした俺の元へハネクリボーがやって来る、ついでにハネクリボーとは5年程の付き合いがある…。

 

 

「お〜い!ハネクリボー!何処…遊海先生!翠さんも…こんなところで何を…?」

 

「アニキ〜!待ってくれドン!!…ラーの翼神竜!?」

 

「十代…剣山…お前か?ハネクリボー?」

 

《クリ〜!》

ハネクリボーを追って十代と剣山がやってくる…しょうがないか…

 

「先生、どこに行くんだ?わざわざフレアに乗って…」

 

「ん?海馬社長からの呼び出しでな!少し急いで行くんだ!ちょっと行ってくるよ!」

 

「本当にそうなのか?まさかまた危ない事をしに行くんじゃ…?」

 

「大丈夫だ!新しいカードについての相談らしいから!明日には帰ってくるさ!」

ジト目で見てくる十代に小さな嘘をつく…少し罪悪感があるが…しょうがない

 

「十代!卒業デュエル、サボるなよ!卒業できないからな!」

 

「ああ!卒業できる程度にはやるぜ!」

 

「そうか…じゃあ留守を頼んだぞ!翠!…フレア!」

 

【捕まっていなさい!ユウミ!】

《キュアアアー!!》 バサッ

 

 

甲高い鳴き声を上げながらフレアは翔び立った…

 

 

 

 

「(遊海さん…どうか無事に帰ってきてください…!)」

翠はその背中を見送った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ…少し遅かったか…!」

童実野町に着いた俺が見たのは人の気配の無い町の姿だった…時間は昼過ぎ、メインストリートにも人影は無くさながらゴーストタウンである…いや…人影はある…

 

 

「なんでお前がここにいる…斎王」

 

「私も今この町に来た…と言ったら信じてくれますか?」

俺の前に現れたのは紫色の服を来た斎王だった、その顔は洗脳時とは比べ物にならない程穏やかである…これが本来の斎王なのだろう

 

「信じられないな」

 

「何故に?」

 

「なんで後ろにMrTがいる?」

穏やかな顔の斎王の背後…そこにはMrTが立っていた…

 

『斎王 琢磨…お喋りはここまでだ、お前は自分のやるべき事をしろ…』

 

「ああ…わかった」

 

斎王はMrTと睨み合う俺の横を通り過ぎる…その刹那…

 

 

「(斎王、事情はわかってる…必ず十代がお前を止めに行く、アイツを信じろ)」

 

「(遊海さん…すいません…!!)」

念話で斎王と言葉を交わす…斎王の妹・美寿知はダークネスに人質に囚われている、彼は脅されてやっているのだ…。

 

 

 

 

 

「MrT…何のつもりだ?」

 

『簡単な話だ…君を消す、それだけだ…』

MrTはデュエルディスクを作り出す…

 

「簡単にやられるかよ!デュエルだ!」

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

遊海LP4000

ミスターTLP4000

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『マンジュ・ゴッド』を召喚!効果で『トリシューラの影霊衣』を手札に加える!」

たくさんの腕を持った仏像が現れる ATK1400

 

「手札から儀式魔法『影霊衣の降魔鏡』を発動!手札の星4『エリアル』とフィールドの星4『マンジュ』を生贄に…降霊せよ神界第3位の王の魂!『ヴァルキュルスの影霊衣』を儀式召喚!」

壮年の悪魔の力を纏った魔導師が現れる ATK2900

 

「さらに『エリアル』の効果でデッキから『影霊衣の戦士エグザ』を手札に加える!…ターンエンド!」

 

遊海LP4000

ヴァルキュルス 手札4

 

 

 

 

 

 

『ほう…攻撃力2900か、なかなかのモンスターだ…私のターン!ドロー!』

『手札から「融合」を発動…「沼地の魔神王」と「メテオ・ドラゴン」を融合し…「メテオ・ブラック・ドラゴン」を融合召喚!』

全身が隕石のように熱を持った巨竜が現れる ATK3500

 

「っ!?いきなりか…!」

 

『さらに「ダーク・アーキタイプ」を召喚!』

四脚のゴーレムのようなモンスターが現れる ATK1400

 

 

『バトルだ、「メテオ・ブラック」で「ヴァルキュルス」を攻撃!』

隕石竜の火球が魔導師を吹き飛ばす!

 

「ぐぅぅぅ…!!」

遊海LP4000→3400

 

『「アーキタイプ」でダイレクトアタック!』

鋭い爪が遊海を切り裂く!

 

「っ…があああ…!!」

 

遊海LP3400→2000

 

『私はカードを1枚伏せてターンエンド』

ミスターT LP4000

メテオブラック アーキタイプ 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

「相変わらず殺意が高いな…!でも負けるわけにはいかない…!」

 

『たいした事は無いな赤帽子…伝説の決闘者の1人よ!』

 

「…さて、それはどうかな…!!」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

『リバース罠「スキルドレイン」を発動!ライフを1000払い、モンスター効果を無効にする!』

 

ミスターT LP4000→3000

 

「モンスター効果を無効にされた…!でもやる事は変わらない!墓地の『降魔鏡』の効果を発動!墓地の『エリアル』と共に除外しデッキから『影霊衣の万華鏡』を手札に加える…そして発動!融合デッキの『F・G・D』を墓地に送り手札から合計レベル12になるように儀式召喚を行なう!」

 

『融合デッキのモンスターを生贄だと?』

 

「降霊せよ!『トリシューラ』!『クラウソラス』!」

全てを凍らせる龍戦士と迷いの風を操る戦士が現れる

ATK2700  DEF2300

 

「さらに手札から『降魔鏡』を発動!手札のレベル5『エグザ』を生贄に…降霊せよ!侵略者を滅する兵器の力!『カタストルの影霊衣』!」

侵略者を倒すために造られた白い機械の力を纏った竜戦士が現れる ATK2200

 

「さらに!生贄になった『エグザ』の効果!デッキから『ディサイシブの影霊衣』を手札に加える!…バトル!『トリシューラ』で『メテオブラック』を攻撃!」

 

『血迷ったか?攻撃力が足りないぞ?』

 

「足りるさ!!手札の『ディサイシブ』の効果を発動!このカードを手札から捨てて『トリシューラ』の攻撃力を1000アップする!これは『スキルドレイン』では無効にならない!!打ち砕け!氷結三叉槍撃!!」

ATK2900→3900

 

氷結の魔槍が隕石竜を凍結させ打ち砕いた!

 

『ぬぅ…!!』

ミスターT LP3000→2600

 

「そして『カタストル』で『アーキタイプ』を攻撃!ジャスティス・クロー!!」

竜戦士の鋭い爪がゴーレムを切り裂く!

 

ミスターTLP2600→1800

 

『ぬぅ…!破壊された「アーキタイプ」の効果を発動!破壊された時に受けたダメージ…1200以下の攻撃力を持つモンスターをデッキから特殊召喚する!こい!「異次元竜トワイライトゾーンドラゴン」!』

細身の青い竜が現れる DEF1500

 

「ターンエンドだ!」

 

遊海LP2000

カタストル クラウソラス トリシューラ 手札0

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『手札から魔法カード「未来融合ーフューチャー・フュージョン」を発動!デッキから「スピアドラゴン」「スピリットドラゴン」「デスヴォルフトガルフ」「ヘルドラゴン」「レアメタルドラゴン」を墓地に送り2ターン後のスタンバイフェイズに「F・G・D」を融合召喚する!…そして「トワイライトゾーンドラゴン」を生贄に「グラビクラッシュドラゴン」を召喚!』

両手に鎖の巻き付いた緑色の竜が現れる ATK2400

 

『バトル…「グラビクラッシュ」で「カタストル」を撃破!』

巨大な腕がカタストルを叩き潰す!

 

「ぐぁッ…!!」

 

遊海LP2000→1800

 

『私はこれでターンエンド…さぁ2ターンで私を倒さなければ終わりだぞ?』

ミスターTLP1800

グラビクラッシュ 未来融合(FGD)スキドレ 手札0

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

「バトル!『トリシューラ』で『グラビクラッシュ』を攻撃だ!」

氷の剣で竜が切り裂かれる! 

 

『…っ!』

 

ミスターTLP1800→1300

 

「カードを伏せてターンエンド!」

遊海LP1800

クラウソラス トリシューラ 伏せ1 手札0

 

 

 

 

 

『フム、私を倒せるカードは引けなかったようだな…手札は0…私がモンスターを引けば1ターンは耐えられる』

 

 

「さぁ?どうなるかね…?(モンスター引くなよ…!!)」

 

 

 

 

 

 

『私のターン…ドロー!…残念、モンスターではない…カードを伏せてターンエンド!』

 

「リバース罠『貪欲な瓶』を発動!墓地の『万華鏡』『カタストル』『ディサイシブ』『ヴァルキュルス』『マンジュ』をデッキに戻して1ドロー!」

 

ミスターTLP1800

未来融合 伏せ1 手札0

 

 

 

 

 

『(伏せカードは「万能地雷グレイモヤ」…モンスター1体ならば耐えられる…さてどうなる?)』

 

「(…あれはおそらくは攻撃反応型のカード…引けるか…?いや、引いてみせる…!)」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「…バトルだ!ミスターTに『トリシューラ』でダイレクトアタック!!氷結剣技!!」

トリシューラがミスターTに斬りかかる!

 

『リバース罠「万能地雷グレイモヤ」!「トリシューラ」は破壊だ!…これでダークネスの勝利だ!!』

トリシューラの着地点に地雷が現れる…

 

 

 

 

ズガーン!!

 

地雷が爆発しフィールドが煙に包まれる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『な、何故だ…!何故破壊されていない…!』

 

 

 

煙が晴れた時、そこには剣を振り抜いた龍剣士と斬り裂かれ身体が凍っていくミスターTの姿があった…

 

 

 

ミスターT LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

『…タネ明かしを願えないかね?白波 遊海…なぜ破壊され無かった?』

凍りゆく体でミスターTは遊海に問い掛ける

 

「…手札から『グングニールの影霊衣』の効果を発動した、その効果で効果破壊を防いだんだよ」

未だにフィールドに残ったトリシューラは水色のバリアに守られている…

 

『なるほどな…白波 遊海、貴様はやはり最優先で…』ピキッ…ガシャーン

 

言葉を言い切る前にミスターTの体は氷結し崩れ去った…。

 

 

 

 

 

 

 

「っ…ハァ…ハァ…いきなりハードすぎるぜ…」

遊海は膝をつく…その身体には浅い傷が無数に付いていた…

 

《マスター!大丈夫ですか!?》

アヤカが実体化し遊海を心配する

 

「ああ…これくらいならまだ回復速度の方が早いさ、問題は()()が休ませてくれるかだけどな…!」

 

遊海の視線の先…そこには…

 

 

 

 

 

『やはりお前は最優先抹殺対象だ…』 

 

『我らの力を持ってお前を倒す…』

 

『全てはダークネスのために…』

 

 

 

『『『『ダークネス…ダークネス…』』』』

 

 

確認できる範囲で1()0()0()()近いミスターT達…否、軍団が現れていた…それは闇に紛れドンドン数を増やしていく…

 

 

 

「マジかよ…1人の人間のためにここまでするかね…?」

遊海は立ち上がりデュエルディスクを構える…

 

「さぁ…かかって来いよ闇の使者共…!全員闇の世界に送り返してやるよ…!!」

 

 

『『『ダークネス…ダークネス…!』』』

全てのミスターTがデュエルディスクを構える

 

「…まぁ1人じゃ相手しきれないから、俺も援軍を呼ぶんだけどな!みんな!頼む!!」

 

遊海が3枚のカードを掲げる!

 

《主殿…これはいささか不利ではないか?》

 

「ああ、無茶も無茶だ…でも俺も全力でやるさ…今日限りの大盤振る舞いさ…!だから時間稼ぎを頼む!」

 

《御意…!》

トフェニは遊海を心配しながらも魔法陣の用意をする

 

 

《ユウミ…武運を!私もできる限りこの者達を駆逐します!》

 

「ああ、町への被害は最小限で頼む!」

フレアが顕現し炎を纏う

 

 

《遊海…無茶をするなとはこの場では言わん…簡単にやられるではないぞ…!》

 

「メガロック…大丈夫、俺も少しは強くなってる!精一杯抗うさ…!」

メガロックは敵を睨みつけ遊海を守るように前へ出る

 

 

「さぁ行くぜみんな!ダークネスとの決戦だ!!」

 

 

『『『応ッ!!!』』』

 

遊海の声と共に精霊達がミスターTに襲いかかる!

 

トフェニは魔法陣でミスターTを囲み消滅させ…

 

フレアは力を操りミスターTを灰にする…

 

メガロックは大地を開きミスターTを叩き落とす…

 

しかし当然打ち漏らしは出る…それを…

 

 

「さぁ…かかって来いよ闇の使徒!闇の力は充分か!!!」

 

遊海かデュエルでねじ伏せる…!!

 

 

『『『『「デュエル!!」』』』』

 

 

 

ここに遊海対ミスターTの全面戦争が始まった…。

 



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虚無の進撃・破〜折れぬ心〜

「バトル!攻撃力9800の『アークロードパラディオン』で『ダーク・ホルスドラゴン』『ダークネフティス』『ダークパーシアス』『暗黒界の魔神レイン』『F・G・D』を全体攻撃!!!」

 

『「ミラーフォース」を発動!』

 

「墓地の『神樹のパラディオン』を除外し破壊を無効にする!いけぇっー!!!」

 

ミスターT1〜5 LP0

 

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…まだまだぁ…!こんな人数で俺を仕留められると思うなよ貴様ら…!!」

 

戦い始めて何時間経ったのだろう…空は夜の帳が落ち、時間の感覚があやふやになる…ミスターTを倒した数は200を越えたあたりから数えるのを止めた…しかし敵の数は数えきれない。

今までパラディオンで切り裂き…聖刻で燃やし…ライトロードで消し飛ばし…影霊衣で凍結させ…ギャラクシーで消滅させ…俺らしくも無いバーンで吹き飛ばし…自分でミスターTを殴り飛ばしたりもしたが敵は減る事は無い…むしろその数を増やしていく…それは当然の事だ…。

 

ダークネスとは世界の闇そのもの…それは物理的でもあり精神的なものでもある、人の心に闇がある限りダークネスは不滅…つまり俺が削れているのは総量の小数点以下の力だろう、つまりは徒労に過ぎない…つまりこれは俺のわがままだ、いつ止めてもいい…最終的に俺が闇に呑まれる事は確定事項だ。

 

 

アニメ終盤、ダークネスは十代以外全ての人類を取り込んだ…それは闇を克服した遊戯やラフェール達も例外ではない、完全なる徒労…しかし俺はこの戦いを止める訳にはいかない…俺が白波 遊海であるために闇に抵抗し続ける…!

 

 

 

 

 

 

『フム…存外粘るな白波 遊海…なら我らも戦い方を変えよう…』

9人のミスターTが融合し3人のミスターTになる…

 

「かかって…来い…!!」

 

 

 

 

 

『『『「デュエル!!」』』』

 

 

 

ミスターT1 

ミスターT2 LP12000

ミスターT3 

遊海LP12000

 

フィールドそれぞれ

 

遊海→T1〜T3→遊海 (2回目の遊海ターンから攻撃可能)

 

 

 

 

@遊海

「俺のターン!ドロー!」

「手札から『超重武者ビッグワラーG』を特殊召喚!」

草鞋を合わせたような機械が現れる DEF1800

 

「そして『ビッグワラーG』を2体分の生贄として『超重武者ビッグベンーK』を召喚!自身の効果により守備表示になる!」

機械の僧兵が現れ、胡座で座り込む ATK1000→DEF3500

 

「そして手札から『超重武者装留マカルガエシ』を手札から『ビッグベンK』に装備!ターンエンド!」

 

遊海LP12000

ビッグベン(マカルガエシ) 手札3

 

 

 

 

 

『多数のデッキを操る白波 遊海…』

 

『我らに隙を見せないようにデッキを入れ替え戦ってきた…』

 

『しかし…我らは一味違うぞ…』

 

 

@T1

 

『私のターンドロー!』

『カードを3枚伏せてターンエンド』

 

T1 LP12000

伏せ3 手札3

 

 

 

@T2

『私のターン、ドロー!』

『「天使の施し」を発動3枚引いて2枚捨てる…』

捨てたカード

死者蘇生

未来融合

 

『カードを4枚伏せてターンエンド』

T2 LP12000

伏せ4 手札2

 

 

 

「(…なんだ?死者蘇生を捨てた…?そして伏せカード計7枚…まさか…!?)」

遊海は顔を青褪めさせる

 

 

 

 

『私のターン…ドロー!…気づいたようだが、もう遅い…!』

『「堕天使ナース・レフキュル」を召喚!』

全身に包帯を巻いた堕天使が現れる ATK1400

 

「『レフキュル』…!しまった…【シモッチバーン】…!」

 

『『その通り!リバース罠「シモッチによる副作用」を発動!』』

T1とT2が同時に罠カードを発動する…そして次の手は…!

 

『そして伏せ罠カード「ギフトカード」2枚を発動!』

 

『同じく伏せ罠カード「ギフトカード」2枚を発動!』

 

「しまっ…!?」

 

『本来であればお前のライフを回復させるが…「レフキュル」と「シモッチ」により24000のダメージを喰らうがいい!!!』

 

癒やしの力は悪意により反転し…雷撃、そして病となり遊海に襲いかかった!

 

「ぐあああぁぁぁぁぁ!!?」

 

遊海LP 0

 

ミスターT WIN!

 

 

 

 

 

ー翠…!ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翠Side

 

 

 

「バトル!『智天の神星龍』で『暗黒界の武神ゴルド』を攻撃!」

 

ミスターT LP0

 

翠 WIN!

 

 

 

《『ネフィリム』で『FGD』を攻撃!効果で『FGD』を破壊して『シェキナーガ』でダイレクトアタック!!》

 

ミスターT LP0

 

ウィンダ WIN!

 

 

 

《リバース罠「霊獣の連契」を発動!フィールドに「ガイアペライオ」と「聖霊獣騎ペトルフィン」がいるから伏せカードと『ダークホルスドラゴン』を破壊!『ガイアペライオ』でダイレクトアタック!》

 

ミスターT LP0

 

ウェン WIN!

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…ウェン!ウィンダ!無事!?」

 

《うん!なんとか…!》

 

《大丈夫だよ〜…でもキリがないよ〜!》

 

遊海さんがアカデミアを離れて半日が経った…そして夕方に十代君がアカデミアを離れて町へと向かった…その直後からミスターTが現れて生徒達を襲っていた、私は生徒達を守りながらミスターTを倒している…もう50人から数えるのは諦めた、救いなのはミスターTの数が少ない事…遊海さんが奴らを引き付けてくれているからだと思う…。

 

「今のうちにレッド寮へいきましょう…あそこには結界を張ってあるから安心よ…!うっ…」

 

「翠さん!無理しないでください!もう10連戦してるんですよ!?」

 

膝をついた翠に明日香が駆け寄る…今、翠が守っているのは明日香・モモエ・ジュンコ・レイそして翔と万丈目計6人である…。

 

現在地はイエロー寮…ここに来るまで翠達は100人以上のミスターTと戦っていた、当然無傷とはいかず翠やウィンダたちにも相当なダメージが蓄積している…。

 

 

「翠さん!オレ達にも戦わせてくれ!これはアカデミアの…世界の危機だ!オレ達だって戦える!」

 

「そうっす!ボク達はアカデミアの決闘者ッす!あんな奴らケチョンケチョンに…!」

 

「…今はダメよ、夜は特にダークネスの力が増すわ!貴方達では敵わない…!今はとにかく守りを固めるの…!それに貴方達の心が耐えられない…!」

 

「どういう事ですか!?」

翠の話を聞いたレイが問い掛ける

 

「ミスターTは相手の心の弱みや心の闇を見透かす力を持っているの…、それで心が折れてしまったら『虚無』の世界へ呑み込まれて…他の人達から忘れられてしまうのよ…私達も既に影響が出ているわ…これを見て…!」

翠は3年生の名簿を取り出す…それはところどころ歯抜けになっていた…。

 

「あれ?この歯抜けの部分は…何?誰かいたっけ…?」

 

「元々こうだったんじゃ…?」 

生徒達は首を傾げる…いない人を既に認識できないのだ…

 

「みんな…もし私達が倒れたら記憶に残っている人達を頼りなさい…!絶対に心を折らないで…!」

翠は立ち上がり前を睨む…

 

『『『ダークネス…ダークネス…』』』

 

「逃げなさい!みんな!レッド寮へ!!ウィンダ!ウェン!皆をお願い!」

 

「翠さん!逃げようよ!キリがないよ!!」

レイが翠の服の裾を掴む…

 

「レイちゃん…私は止まる訳にはいかないの、十代君も遊海さんも戦ってる…だから負けられないの…!!」

 

「翠さん…!」

 

「私は大丈夫!まだ奥の手もあるわ…行きなさい!!」

 

 

《みんな!こっちから!!》

 

《早く!!》

ウィンダ達の先導で生徒達は逃げていく…

 

「翠さん…どうかご無事で!」

明日香が翠へ声をかける

 

「ありがとう!明日香ちゃん!お姉さん元気100倍よ!!」

 

 

 

 

「さぁ…かかってきなさいミスターT!私の力を見せてあげる!!」

 

『ダークネス…ダークネス…!』

 

 

 

 

『『『「デュエル!」』』』

 

SideOUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊海Side

 

 

 

「ぐっ…あ…やられたなぁ、まさかそう来るかぁ…」

 

オーバーキル1万ダメージを喰らった俺は激しく吹き飛ばされ壁に叩きつけられた、肋骨2〜3本逝ったかな…腕にも力が入らない…

 

『白波 遊海、貴様はよく我らに抗った…しかしここまでだ…』

 

『貴様の精霊達はほぼ無力化した、諦めろ…』

 

ミスターTの言葉を聞いて視線を移す…トフェニは翼を折られ…フレアはたくさんの傷を刻み沈黙している、メガロックは…既に実体化を維持できず消滅している、アヤカは未だに抵抗を続けている…しかし敵モンスターの数が多く傷が増えていく…。

 

 

『さぁ…虚無に沈むがいい…!』

ミスターT達がその身を闇へと変化させ俺に迫る…身体はボロボロ、気力は底をついた…

 

 

『『『ダークネス…ダークネス!!』』』ズオッ…

 

 

闇が俺を捕らえる…身体が沈んでいく、身動きができない…思考があやふやになっていく…これで終わりか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とでも思ったか…ダークネス!!!」

 

バキン!!

 

 

 

 

 

『なんだと?』

 

 

俺を包んだ闇を強引に吹き飛ばす、身体がボロボロ?気力が無い?…それがなんだ?そんな事は…もう慣れた!!

 

「まだ…俺の心は…折れちゃいない!!俺の心を折りたかったらこの3倍…いや30倍持って来い!!」

痛みを耐えデュエルディスクを構える…それと同時にアヤカ以外の精霊達の実体化を解除させ休ませる、ここからは俺の戦いだ…!

 

 

『そうか…ならばこうしよう…!』

ミスターTがその姿を変える…その姿は…

 

『遊海プロ…あなたにはオレがトドメを刺そう!さぁ…ダークネスの世界へ…!』

 

「オブライエン!…既にやられていたか…!」

 

オブライエンに変化したミスターTを相手に構える…まだ負けられない!

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

オブライエン(偽)LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『手札から魔法カード「ファイヤーソウル」を発動!デッキから「ヴォルガニック・デビル」を除外し1500ダメージを与える!』

 

「なっ!?またかよ!!」

炎で象られたヴォルガニックデビルが遊海を飲み込む!

 

「ぐっ!?ぎゃあああああ!!!!」

 

遊海LP4000→2500

 

「ガッ…あ…ダメージ上げるんじゃねぇよ…チクショ…」

灼熱地獄から開放された遊海は倒れ込む…満身創痍の上に傷を焼き肺を燃やす灼熱、遊海は辛うじて耐えていた…

 

『まだだ!もう1枚「ファイヤーソウル」を発動!「ヘルフレイムエンペラー」を除外し1350ダメージを与える!』

 

「っ!?なっ…ぎぃ!!…ガッ…カハッ…」

地面から噴出した爆炎は遊海を打ち上げ容赦なく地面に叩きつける…

 

遊海LP2500→1150

 

『さらに「ヴォルガニックエッジ」を召喚!効果で500ダメージだ!』

顔の無いトカゲが召喚され火球が倒れた遊海に追い打ちをかける ATK1800

 

「!…カハッ…」

 

遊海LP1150→650

 

 

『ターンエンドだ…楽になれ白波 遊海…ダークネスの世界には苦しみも痛みも無い、さぁ…闇を受け入れろ…!』

 

オブライエン(偽)LP4000

エッジ 手札3

 

 

 

 

 

 

「(痛い…声が出ない…手足に力が入らない…左目が見えない…水が飲みたい……今はデュエル中だ…ターンを始めないと…)カ…カハッ!![読み上げシステム作動…ターンを開始します]」

遊海は地面にカードを伏せデュエルディスクの読み上げ機能を作動させる…既に体を起こす機能は身体に無く…気力だけでデュエルを続けようとする…

 

 

 

 

 

「そんな…遊海先生!!?な、何やってるんだよ!?」

 

「(この声は…十代…!)」

最悪のタイミングでの主人公の登場だった…

 

 

 

 

 

 

 

十代Side

俺は卒業デュエルの最中、オブライエンからの電話で童実野町の異変を知った、内容は「人が消え、多数のミスターTと誰かが戦闘している」という事だった…俺は急いで鮫島校長からボートを借り町へと向かった…。

 

 

 

 

そして約5時間後、俺は夜の町へと到着した…そして目にしたのは本体を現したアヤカと戦闘する多数のモンスターの姿だった…空を埋め尽くす黒いモンスターを一体で相手をするアヤカ、アイツがいるという事は遊海先生もこの場にいる…俺はそう思い町へと駆け出そうとした…しかし…

 

 

 

ズガーンッッ!!

 

「うわっ!!なんだ!?」

地震のような揺れが俺に襲いかかる…そして火柱が上がり…俺の精霊の眼はそれを、打ち上げられ落下する人の姿を見た…!

 

「そんな…違うよな!違うよな!!」

俺は一縷の望みを胸に火柱の上がった場所へ駆けつけた…

 

 

 

 

 

 

 

…駆けつけたその場所は地獄のようだった…アスファルトはめくれ、地割れが起き…灼熱の炎が肌を焦がす…そしてその地獄の中で人影…いや影そのものが倒れていた…その影の近くには赤いボロボロの帽子が…!

 

「そんな…遊海先生!!?何やってるんだよ!!」

俺は駆け出し焼け焦げた遊海先生の下へと向かった…!

 

 

 

 

 

「ヒュー…ヒュ…ヒュ…」

 

「遊海先生!しっかりしてくれ!先生!」

 

遊海先生の身体は焼け焦げ…顔すらも判らなくなっていた、苦しそうな息の音がする…腕にはデュエルディスクがあり、残りライフは650を指していた…

 

 

『やぁ十代…遅かったじゃないか、待っていたよ』

オブライエンが話しかけてくる…いや、奴らは…!!

 

「オブライエン…いや、ミスターT!貴様ら…遊海先生に何をしやがった!!」

俺は瞳をオッドアイに変えミスターTをにらみつける…!

 

『何って…白波 遊海を楽にしてあげようとしているのさ…彼はもう10時間以上我らと戦い続けている…1人でな…』

 

「なっ…!?」

俺は周囲を見渡す…そこには傷付き倒れたフレア、トフェニ、メガロックが半透明で気絶していた…

 

『精霊で我らを蹴散らし、打ち漏らしを決闘で仕留める…中々いい作戦だった、しかしそれも突破した…我らのうち400体近くやられたが些細な事だ、あとはソイツが消えれば邪魔者はきえる…』

 

「貴様ら…許さねぇ…!よくも遊海先生を!!!」

俺はデュエリストディスクを構える

 

「このデュエル、俺が……えっ?」ギュ…

 

立ち上がった俺のズボンの裾を弱い力が引っ張る…それは…遊海先生だった

 

「ヒュ…ヒュ…ヒュー…!」

意志の宿った右目で俺を見つめている…

 

「遊海先生!動いちゃだめだ!!」

十代はしゃがみ込み遊海を静止する…と

 

 

【相手…奴ら…違う…お前は…世界…救え…!】

 

頭に直接ノイズ混じりの遊海の思念が伝わる…そして…

 

 

【十代…ウソ…ごめん、世界を…救ってくれ…!『強制脱出装置』…発動…!】

 

「なっ…!?うわあぁぁ!!?遊海先生ぇぇぇぇ!!?」

 

遊海は握りしめていたカード…強制脱出装置を発動させ十代を海馬コーポレーションの方向へ飛ばす、十代はなす術無く夜の闇へと消えていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

遊海Side

 

【…戦いが終わったら…また…やろうな…十代…!】

 

辛うじて回復した身体を立ち上がらせる…受けたダメージはその身の回復速度を上回り、皮膚の感覚も消えた…しかし体内からの発狂しそうな激痛で意識を繋ぎ留める…

 

 

『往生際の悪い男だ…何故そこまでして戦い続ける?…と答える余裕も無いか…』

 

「ヒュ…ヒュ…ガピュ…!」

ミスターTの前に立つのは影のような黒さの人影…しかしその眼だけは爛々と輝いていた…。

 

 

 

 

[ドロー]

[手札からペンデュラムスケールにスケール2の『イグナイト・マスケット』スケール7の『イグナイト・ドラグノフ』をセッティング]

 

遊海の後ろに光の柱が立ち上がる…その中には鎧を着た2体の戦士がいる…

 

[ペンデュラム召喚!手札から『イグナイト・ウージー』『イグナイト・キャリバー』『イグナイト・イーグル』『イグナイト・マグナム』『超熱血球児』をペンデュラム召喚!]

時空に開いた穴から銃を持った4人の戦士とデフォルメされた野球戦士が現れる ATK1300 ATK2100 ATK1600 ATK0 ATK500→4500

 

 

『攻撃力4500だと!?』

 

[『超熱血球児』は自分フィールドの炎属性モンスターの数1体につき攻撃力を1000アップする、バトル…『超熱血球児』で『ヴォルガニック・エッジ』を攻撃!]

 

ヴォルガニックエッジが火球を撃ち出し…それを球児がピッチャーライナーで打ち返し大爆発を起こした!

 

『ぬぅぅぅ…!』

オブライエンLP4000→1300

 

 

[『イグナイト・キャリバー』でダイレクトアタック!]

 

イグナイトの特攻隊長が偽オブライエンを撃ち抜いた!

 

 

オブライエン(偽)LP0

 

 

遊海 WIN…

 

 

 

 

 

 

 

 

「カヒュ…ヒュ…ヒューー…ゴボッ…」

デュエルが終了し遊海は膝をつく…その姿はボロボロだった…

 

『ふむ…戦い方を変えよう…』

ミスターTは再び増殖し10人へと増える…

 

「ガ…あ…■■■■■■■■!!!」

遊海は気合いで立ち上がる…身体には痛みの感覚以外は存在しない、常人であれば既にショック死するレベルの痛みを遊海は耐え続けていた…

 

 

『そう無理する事は無い…物理的にお前を排除する…』

ミスターT達が掌を遊海に向ける…そして暗黒のエネルギーが遊海へと放たれた!

 

「■■■■■■■■■!!?」

もはや叫び声とも言えない声を上げながら遊海は吹き飛ばされる…右腕は消え去り、決闘盤に守られた左腕も、もはや肉片と化していた…再生が始まるがダメージが大きく…追いつかない。

 

「………」

 

『まだ諦めてはいないか…人間の限界はとうに超えている筈だが…』

 

「………!」

遊海の眼はミスターTを射抜くが如くに睨みつける…その心は未だに折れず残っていた…。

 

『人間とは理解し難いものだ…特に貴様だ白波 遊海、貴様は理解しているはずだ、こうして我らと戦っている事は無意味であり徒労でしか無い事を…!』   

 

「………!」

 

『『献身的自己犠牲…それは我らの世界には不要だ…!』』

バシュッ

 

「!?!!!!!」

再びエネルギー弾が直撃し吹き飛ばされ…両足が消え去る…

 

 

『『『貴様は本来この世界にはいない者…要するに異物だ…!』』』バシュッバシュバシュ!

 

「!?!?!!!!?!!!」

多数のエネルギー弾が直撃し下半身がグチャグチャになる…既に眼は潰れ瞳は光を映さない

 

『『『『人々がダークネスに取り込まれるのは水が高きから低きに流れるようなもの…つまりはこの世の真実…しかし貴様はその流れに反し真理を否定した』』』』

 

「……」

 

『貴様は我らの世界に不要なモノだ…消え去れ…』

 

ズドーン!!!

 

特大のエネルギー球が全身を飲み込み大爆発を起こす…爆心地には何も残っていなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『やっと消滅したか…手間取ったが最大の障害は排除した、後は斎王が遊城 十代を始末すれば…「ピキッ」…?なんだ?』

ミスターTの身体が凍結する…

 

 

「…さっきからうだうだうるせぇんだよ…闇がこの世の真理?知った事か!…俺は死なねぇ…!俺は貴様らを倒し続けるだけだぁ!!!凍れ!!絶対零度!!」

復活した遊海がネクロスの力でミスターT軍団を広範囲で氷結させる!

 

 

『貴様…何故死んでいない!貴様の身体は四散したはず…!』

再び現れたミスターTは動揺する…

 

「ミスターT!俺を殺したかったらデュエルで殺せ!俺は…不死身だ!!!」

 

特典により遊海の消滅した身体は再生する…ただし例外はデュエルの勝敗による死亡である、遊海は命の掛かったデュエルで負ければ消滅する…逆を言えばデュエルで負けても命がかかっていなければ死なない。

 

ミスターTのデュエルは相手の心を折り、ダークネスに取り込む事を目的としたデュエル…よって命はかかっていない、つまり負けても心が折れなければ問題は無いのだ…!

 

 

 

「さぁ…かかってこいよ…!第二ラウンドだ!!」

 

 

『…そうか、読めたぞ…貴様の強さのカラクリが…!』

 

「なんだ『ザシュッ』と…ガッ…!?奇襲はいただけねぇな!!!」

後ろから胸を貫かれた遊海は振り向きざまにミスターTを殴りつける…しかし…

 

『(遊海…すまねぇ…やられた…!!)』

 

「なっ…があああああ!?」

遊海に凄まじい痛みが襲いかかる…この戦いで受けた全ての痛みが遊海に戻ってくる…!

 

『やはりな…貴様の二重人格にダメージを押し付けていたか、貴様の中の魂の繋がりを断ち切った…これで貴様にダメージが通る…』 

 

「が…しまっ…た…!」

 

遊海は戦いに備えユウスケの魂と自分の魂を融合させ痛みの負荷を分割、受けるダメージを最小限に抑えていた…しかしミスターTの干渉でその融合が解けてしまっていた、その際ユウスケに肩代わりして貰っていたダメージは遊海へと返ってきてしまっていた…。

 

 

『(遊海!気をしっかりもて!!この痛みは幻痛だ!お前の身体は胸以外は無傷だ!!耐えろ!!)』

 

「(痛い…!痛い痛い痛い痛い!!!あああああ…!!!)」

 

『(チッ!ダメか…!しょうがねぇ!時間を稼げ!「閃光竜」「悪魔竜」「銀河眼」「時空龍」!!!)』

 

ユウスケは身体を操り4体の竜を召喚し、けしかける!!

 

 

『無駄な事を!!!』

ミスターTもダークモンスターを中心としたモンスターを出し応戦する…空中では怪獣決戦が繰り広げられていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アヤカSide

 

 

 

 

《損傷率70%…使用可能兵装5割…マスターのダメージ蓄積率300%…敵モンスター数1000超》

 

自身の周囲を飛び回るダークモンスターを相手にしながらアヤカは思考する…今までにこれ程のダメージを受けた事があっただろうかと…

 

城塞のような自身の機体は既にボロボロ、兵装も既に使いモノにならない物が多数…人間的に言うのであれば満身創痍というところだろう…。

 

《拡散レーザーでモンスター500体を撃破…新たに1000出現…損傷率75%…マスターのダメージ蓄積率400%…》

 

マスターは未だに戦い続けている、他の精霊達は重症を負いマスターが下がらせた…マスターの身体は限界を超えている、第二人格のユウスケとの魂の融合により痛みを分割しダメージを最小限に抑えているが…それももう限界に近い…

 

《主砲損傷…使用不可…マスターの肉体の消滅を確認…特典にて再構成、ミスターT100体を撃破…損傷率80%…エマージェンシー…エマージェンシー…撤退ラインを超えました…》

 

マスターは戦いの前に言っていた、「これは俺のケジメなんだ」と…マスターのやろうとしている事はなんとなく判る…()()()()のだ、4年前に救えなかった彼を…そのために…

 

《エマージェンシー…エマージェンシー…マスターとユウスケの融合が解除されました…ダメージのフィードバックが発生します…機体損傷率90%…反重力による浮遊を維持できません…マスターが新たに精霊を召喚…マスターのダメージ蓄積率1000%…》

 

ゆっくりと機体が降下する…周囲ではマスターの召喚した竜達がモンスターやミスターTを破壊していく…私はどうやらここまでのようだ…マスターは痛みのフィードバックで倒れ込んでいる…幸い閃光竜がマスターを守ってくれている…大丈夫だろう……回路がショートする、機械は痛みを感じない…ただ動かなくなるだけ、でも…親愛なるマスターに貰った心だけは…

 

《…高速で接近する生命反応、精霊反応をそれぞれ3づつ確認…コード・ゴールド…あとは…頼みます…!》

 

安全装置により機体はDT界へと強制転移される…マスター…どうか…ご無事…デ……

 

 

そしてアヤカは次元から姿を消した…

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

遊海Side

 

 

 

 

「ハッ…ハッ…痛えょ…クソッ…でもまだ倒れる訳にはいかない…!」

 

ついさっきアヤカが姿を消した、俺の精霊の中でも最強の体力を持っていたが…さすがに無理も無い…、よくやってくれた…

精霊達は全滅、体力は戻ったが気力は底をつきそうだ…

目の前には増え続けるミスターT軍団、そして空にはダークモンスターの軍団…ここまでか…

 

 

『白波 遊海…ここまでだ、あとは貴様を倒すのみ…さぁ…消えるがいい!』

 

無数のミスターTがデュエルディスクを構える…逃げ場は無い…

 

「来いよ…ミスターT…!」

俺もデュエルディスクを構える、俺が白波 遊海である限り…俺を慕ってくれるみんなのために…負けられない…!

 

 

 

 

 

《ギャオオオン!》《ガアァァァ!!》《グオォォォン!!》

 

 

『なにっ…!?』

 

「あれは…!伝説の竜!?」

轟いた咆哮…それはティマイオス・クリティウス・ヘルモスの鳴き声だった、精霊界最強の竜達はまたたく間に数多のダークモンスター達を殲滅した…。

 

 

「なんで…お前達が…」

 

 

 

 

「あたり前だろ!遊海!…俺達は親友じゃねぇか!」

 

「よくもオレの会社を壊してくれたな…貴様ら…!」

 

遊海を支えるように2人の人影が現れる…方やプロランキング1位…「最強の賭博師」、方やデュエルモンスターズを発展させた「最強のドラゴン使い」…そして…

 

「遊海…よく耐えてくれたね、大丈夫…ここからは僕達も手伝うよ!」

 

遊海の信頼する「決闘王」…

 

「遊戯…城之内さん…海馬社長…!?どうして…!」

世界最強の決闘者達がこの場へと再び結集した!

 

「ペガサス会長から『童実野町のピンチだ!』って聞いて急いで駆けつけたんだ!…まったくお前も無理するなぁ…ボロボロじゃねぇか!」

 

「フン、本社からの定時連絡が途切れてな…急いで戻ってきたら…!どういう事か説明して貰おうか!」

 

「僕はマジシャンガールから聞いたんだ!それで急いで戻ってきたんだよ!」

 

「みんな…!…敵はサングラスの男達『世界の闇』の使者ミスターT!アイツらが町のみんなを消したんだ!…あと会社を爆破したのも奴らです…」

遊海は簡潔に情報を伝える、長く付き合った彼らであればそれで事足りる…

 

 

「わかった!要するにグラサンの奴ら全員ぶっ飛ばせばいいんだな!やったるぜ!!」

城之内は指を鳴らし…

 

「…オレの夢の象徴をよくも…!!許さんぞ貴様ら!!!」

海馬は怒り…

 

「…世界の闇…もう一人のボクが封印したモノと同じもの…ボク達が倒す!」

遊戯は再び世界を救うために…全員がデュエルディスクを構える…

 

「遊戯…奴らを完全に倒す事は()()にはできない、時間を稼いでほしい…!」

 

「倒すのは…()…かい?」 

 

「ああ…!」

 

「わかった…これが終わったら一度会いに行こうかな?」

 

 

『伝説の決闘者め…貴様らもダークネスに飲まれるがいい!』

 

『『『ダークネス…ダークネス…!』』』

 

 

「みんな…いくよ!!」 

 

「「「いくぞぉぉぉっ!!!」」」

 

遊戯の掛け声と共に俺達はミスターTと衝突した…。

 



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虚無の進撃・急〜救う者・拒む者〜

活動報告にてアンケートをしています!ご協力お願いします!


それでは最新話を…どうぞ!


「『デュエル!』」

 

 

 

遊海LP4000

ミスターTLP4000

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

「手札から『真紅眼融合』を発動!デッキの『真紅眼の黒竜』と『メテオ・ドラゴン』を融合!全てを焼き尽くす凶星『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』を融合召喚!」

燃え盛る流星竜が現れる ATK3500

 

 

「『流星竜』の効果!手札の『真紅眼の黒炎竜』を墓地に送り攻撃の半分のダメージを与える!」

空から流星が降り注ぎ対戦しているミスターTと周囲のミスターTに直撃する!

 

ミスターTLP4000→2800

 

『そしてダメ押しの「黒炎弾」発動!燃え尽きろ!』

特大の火球がミスターTを焼き尽くした…

 

 

 

ミスターTLP0

 

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハ!覚醒せよ!『クリティウスの牙』!手札の『タイラント・ウィング』と融合せよ!『タイラント・バースト・ドラゴン』を融合召喚!」

光輝く翼を持った竜が現れる ATK2900

 

 

「そして!『タイラントバーストドラゴン』を『真青眼の究極竜』に装備!これにより3回攻撃が可能となる!」

真青眼が光輝く翼を得る ATK4500→4900

 

「バトルだぁ!『ブロン』『メテオ・ブラックドラゴン』を撃破しダイレクトアタック!タイラント・バースト!!」

圧倒的暴力が全てを吹き飛ばした!

 

ミスターT1&T2 LP0

 

海馬 WIN!

 

 

「フハハハハハ!粉砕!玉砕!!大喝采!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『バトルだ!「F・G・D」で「ブラック・マジシャン」を攻撃!』

 

「それを待っていた!リバース罠オープン!『ディメンション・ガーディアン』!これによって『ブラックマジシャン』は破壊されない!ダブルリバース『ディメンション・スフィンクス』!自分フィールドのモンスターが自身より高いモンスターに攻撃された時にその差分のダメージを相手に与える!さらにトリプルリバース!『マジシャンズ・プロテクション』!自分フィールドに魔法使い族モンスターがいる時、受けるダメージが半分になる!!」

五頭の邪竜のブレスがブラックマジシャンに直撃するが2重のバリアによって守られる!

 

遊戯LP3000→1750

 

ミスターTLP4000→1500

 

 

「そしてフォースリバース!『ディメンション・ミラージュ』!相手モンスターの戦闘でモンスターが破壊されなかった時、相手はもう一度攻撃しなければならない!」

 

『…無限ループだと…?』

 

「これこそ『ディメンション・トラップ・ピラミッド+δ』!!」

 

 

 

ミスターTLP0

 

遊戯 WIN!

 

 

 

 

 

 

「『ギルフォート・ザ・ライトニング』でダイレクトアタックだ!!」

 

 

ミスターTLP0

 

城之内 WIN!

 

 

 

 

伝説の決闘者達、そして伝説の竜の活躍によりミスターTは少しづつ数を減らしていった、疲労の溜まっていた遊海も死力を振り絞りミスターTを圧倒した…。

 

 

「フン!雑魚共が!オレとブルーアイズの敵ではないわ!!オレの町を破壊した報いをその身で償うがいい!!」

 

「しかし減らねぇなこいつら!?いったいどれだけいやがるんだ!!」

 

「俺もなんとか1000人くらいは倒したんですけど…こいつら…実体が無いんです!!」

 

「遊海!実体が無いってどういう事!?」

 

態勢を直しながら遊戯が訊ねてくる

 

 

「こいつらの大元、『ダークネス』は世界の闇そのもの…特に人の心の闇があるかぎり、こいつらは無尽蔵に湧いてきます!」

 

「それじゃあキリがないじゃねぇか!?なんで戦ってるんだよ遊海!?」

 

「フン、そもそもオレ達は詰んでいるという事か!遊海!倒す策はあるんだろうな!!」

 

「…策はあります、本体を引き摺り出して倒す事!それが策です!!」

 

「どうやるんだ!?どこかにアトランティスみたいな本拠地があるのか?」

 

「このままコイツらを倒し続けてください!…そうすれば俺達を無視出来なくなった本体がでてくるはずです!!」

 

「つまり、このまま戦い続ければいいんだね!!」

 

「そういう事!もう少し…頼みま…ゴブっ…!」

遊海は血を吐き、膝をつく…半日以上戦い続けた遊海は限界を迎えつつあった…。

 

「遊海!!危ねぇ!!!」

 

『『ダークネス…ダークネス…!!』』

隙を見せた遊海にミスターTが襲いかかる、彼らはやろうとすればデュエルをせずとも人を取り込む事ができる…!

 

《ゴッドブレイズキャノン!!!》

 

『『!?』』

ミスターTは神の炎で燃え尽きる…

 

 

《…ユウミが…我がマスター達が戦っているのに…倒れていられますかぁ…!!》

 

《然り…主を護るのが精霊の務め…これしきの傷で…!!》

 

《動きを止めてなるものか…!!!》

 

 

「フレア!トフェニ!メガロック…!」

気絶していた精霊達が再び動き出す…全ては遊海を助けるために…!

 

「フン、話には聞いていたがコピーカードの神を使いこなすとはな!さすがだ遊海!」

 

「へっ!そうこなくちゃな!」

 

「遊海!まだいける?」

 

「あたり…まえだぁぁぁっ!!!」

遊海は血を拭い立ち上がる…全ては彼を救うために…!

 

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

『『『『デュエル!!』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふむ…これが伝説と謳われる決闘者の力か…少々力を侮っていたか…』

 

少し離れた所から1人のミスターTが戦場を観察する。

 

敵は4人+精霊6体、味方は無尽

 

戦況はダークネスの有利だが決闘者達も巻き返してくる

 

世界の掌握率は99%、残っているのは彼らとアカデミアの生徒の一部のみ

 

『戦力を投入し一気にカタをつけるか…』 

ミスターTは暗黒空間に戻り戦力を召喚しようとする…

 

【待て、奴らを下げさせろ…オレが出る…】

 

『…そうか、わかった』

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?なんだ…奴らが消えていくぞ…?」

突如としてミスターT達が姿を消し始める…

 

「諦めたのか…?」

 

「いや、違う…来ます…!!」

 

【その通りですよ白波 遊海!…あなたはよくやった…ですからオレが相手をしましょう…!】 

遊海達の目の前の空間が開く、そして黒いコートを纏い仮面をつけた男が現れる…

 

「奴が今回の主犯か?」

 

「はい…そして俺の悪あがきの目的でもあります…!」

 

「遊海…?」

遊海は前へと歩み出る…

 

【伝説の決闘者の皆さま!はじめまして…オレの名はダーク「違うだろ…?」ムッ…】

 

「仮面を外せよ…正体はわかってるんだ!」

 

【…そうですか、久しぶりですね遊海先生】カチャ

コートの男が仮面を外す…その下からは緑髪の青年の顔が露わになる…

 

「…久しぶりだな、藤原…4年振りか」

 

【えぇ…驚きましたよ、アカデミアに伝説の決闘者がいたなんて…】

仮面の男の正体…それは行方不明になっていた藤原 優介だった…

 

「お前は…ペガサスから報告があったぞ、やはり主犯だったか!情けないぞ…!何故そんなモノに手を出した!!」

 

「海馬 瀬人、アカデミアのオーナーでありKC社の社長…あなたにはオレの気持ちなどわからないだろう…!」

 

「貴様っ…!…止めるな!遊海!!」 

藤原に詰め寄ろうとした海馬を遊海が手で遮り静止する

 

「俺に…まかせてください、俺はこのために無理をしたんですから…!」

遊海は藤原へと近づく…

 

「藤原…まだ間に合う、戻ってこい!」

 

【遊海先生…オレはこの力を手放すつもりは無い!あなたも虚無の世界へと堕ちるがいい…!】

 

「説得は無理か…なら、力づくで助け出す!お前を救ってみせる!!」

遊海はデュエルディスクを構える…

 

「遊海…君は彼を救うためにこんな無茶を…」

 

「俺は4年前に彼を救う事ができなかった…だから絶対に助け出す!!」

 

 

藤原のデッキは「クリアー・デッキ」…フィールドの種族の数で発動する効果が違う罠が鍵だった筈だ…確か…種族数が少ない程メリットがあった…あのデッキでいこう…!

 

 

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

 

 

遊海LP4000

藤原LP4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺は永続魔法『真竜の継承』を発動!さらにフィールド魔法『ドラゴニックD』を発動!これにより自分の真竜モンスターの攻守は300アップする!」

フィールドに魔法陣が刻まれる

 

「そしてカードを1枚伏せ…伏せカードをリリースし手札から『真竜導師マジェスティM』を生贄召喚!このカードはフィールドの永続魔法・罠を生贄に召喚できる!」

風を纏う金髪の女性が現れる ATK2300→2600

 

「伏せカードを生贄に召喚だって!?すげぇ!そんなモンスターがいるのか!」

 

「さらに永続魔法『継承』の効果を発動!このターン墓地に送られた真竜モンスター・魔法・罠カード1種類につき1ドローする!…そして俺は手札の『真竜戦士イグニスH』と『真竜凰マリアムネ』を破壊し『真竜皇アグマニズドV』を特殊召喚!」

顔が大砲のようになった竜が現れる ATK2900→3100

 

 

「破壊された『マリアムネ』の効果!デッキから『真竜騎将ドライアスⅢ世』を手札に加える!そして『継承』のさらなる効果を発動!このカードリリースし『ドライアスⅢ世』を生贄召喚!」

 

灰色の翼を持った騎士が現れる ATK2100→2400

 

「ターンエンドだ!」

 

遊海LP4000

ドライアス アグマニズド マジェスティ フィールド魔法ドラゴニック 手札0

 

 

 

 

「やっぱり遊海はすげぇな…1ターンで上級モンスターを3体並べやがった!」

 

「当たり前だ!奴こそは遊戯に並ぶもう一人の『決闘王』!これぐらいできなければ困る!」

 

「でも見て…藤原君は笑ってる…!何か策があるんだ…!」

 

【フフフ…】

藤原は余裕の笑みを崩していない…

 

「(…なんだ?何か致命的な間違いをしてる気がする…気のせいか?)」

遊海は微かな違和感を感じる…しかしその正体は解らなかった…

 

 

 

 

 

【オレのターン!ドロー!】

【個を無くし!全てをダークネスのもとに!フィールド魔法「クリアー・ワールド」を発動!】

魔法陣が消え去り藤原の後ろに巨大な水晶が浮かぶ…

 

「『()()()()()()()()()』…?なんだそれは…?」

遊海は首を傾げる…

 

【今にわかりますよ…!モンスターをセット!カードを2枚伏せターンエンド!】

 

藤原LP4000

セットモンスター 伏せ2 クリアーワールド 手札2

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺は魔法カード『テラフォーミング』を発ど[ビーッビーッ!]なに…?」

 

【「クリアーワールド」の効果だ!フィールドに風属性モンスターがいる時、そのプレイヤーは魔法カードを発動できない!】

 

「なんだと…?(種族じゃ…ない?)ならバトルだ!『アグマニズド』でセットモンスターを攻撃!」

アグマニズドから火球が放たれ水晶に閉じられた機械を破壊する!

 

【破壊された『クリアーキューブ』の効果!デッキから2体目を特殊召喚!】

デッキから水晶に閉じられた機械が現れる DEF0

 

「なら『マジェスティ』で『キューブ』を攻撃!」

マジェスティが杖を振る、すると竜巻がクリアーキューブに襲いかかる!

 

【リバースカード『攻撃の無力化』!バトルフェイズを終了する!】

青い渦巻きが竜巻を吸収する…

 

「躱されたか…ターンエンドだ!」

 

【その時!『クリアーワールド』のネガティブ・エフェクトを発動!フィールドに地属性のいるプレイヤーは自分のモンスターを1体破壊しなければならない!さらに炎属性のいるプレイヤーは1000ダメージを受ける!!】

 

「なにっ!?ガッ…!!」

「遊海!!」

藤原の背後に浮かんだ水晶からレーザーが放たれ遊海を貫いた…

 

遊海LP4000→3000

 

 

「藤原君!君は遊海の生徒の一人の筈だ!なぜ…なぜそんな事ができるんだ!!」

遊戯は藤原へと問い掛ける…

 

【キングオブデュエリスト・武藤 遊戯…貴方にはわからない!オレが経験した苦しみも…悲しみも…!】

 

「藤原 優介…資料によれば奴は幼少期に両親を事故で亡くしている、それが関係しているのか!」

 

「ええ…そうです海馬社長、アイツは『失いたくがない故に自分から手放す』事を…選んだ…!」

「遊海!大丈夫なのか!?」

 

「ガフッ…なんとか…!」

遊海は立ち上がり藤原を見据える…

 

 

 

「藤原…幼少期に両親との別れを経験したお前は天涯孤独になった…それ故に自分が忘れられる事に恐怖を覚えた…違うか?」

 

【ああ、正解だよ先生…さすがは転生者だ、オレはアカデミアに進学し吹雪と亮に出会った…楽しい日々だった…】

藤原は懐かしそうに空を見上げる…空は白み始め夜空と穏やかな太陽の光が同居している…

 

【しかし…それと同時に恐ろしかった!彼らとの関係が続くのはアカデミアでだけ!オレはまた忘れられてしまう!恐ろしかった!怖かったんだよ!!…だからこそオレは思ったんだ!『どうせ忘れられるならこちらから忘れてやる』と!!だからこそオレはダークネスにこの身を委ねた!!】

藤原は狂気に満ちた表情で話し続ける…

 

【そしてダークネスにこの身を委ねて気づいたんだ!「個性」があるから人は影響を受ける!ならばそんな物…無くなればいい!個を無くし…全てをダークネスに統合する!そうすれば争いも諍いも無い…苦しみや喜びをみんなで共有できる究極の世界が生まれるのさ!!】

 

 

「狂ってやがる…!そんな世界を皆が望むと思うのか!?人は確かに喧嘩したりぶつかったりする事もある!…でも、そこから分かり合う事もできるんじゃねぇか!!」

城之内は藤原へ意見をぶつける…城之内はかつて遊戯を虐げる者の1人だった、でも千年パズルの導き…そして遊戯との激しいデュエルを経て親友となった、苦しんだ事もあった…死にかけた事もあった、でもその経験が今の城之内 克也を作っている…!

 

 

「凡骨にしてはまともな事を言うではないか!藤原!過去とは乗り越えるためにある物…いつまで縛られているつもりだ!!貴様は前に踏み出せぬただの臆病者だ!」

 

「藤原君、僕には君の経験した苦しみを真の意味で理解する事はできない…でもこれだけ言える、君が友達と繋いだ友情は決して切れないものだ!君は1人じゃないんだ!」

友情…それはこの場にいる4人を、そして戦った決闘者を繋ぐ絆、それは目に見えなくても確実に存在し…人を繋ぐものなのだ…!

 

【黙れ…黙れ…ダマレダマレダマレぇぇぇ!!!!オレは理解など求めていない!貴様らもダークネスと一体となるのだぁぁ!!…白波 遊海!さっさとターンを進めるがいい!!】

藤原は癇癪を起こした子供のように叫ぶ…

 

「やっと感情をみせたな藤原…お前は必ず救ける…!俺は『ドライアス』を破壊する!そして自身の効果によりデッキから真竜モンスターを特殊召喚する!来い!『真竜皇バハルストスF』を特殊召喚!」

タコのような触手を持った大口の竜が現れる DEF3000

 

【『クリアーワールド』のさらなる効果!水属性がいる事でお前は手札を1枚捨てなければならない!】

 

「手札を捨ててターンエンド!」

 

遊海LP3000

バハルストス アグマニズド マジェスティ 手札0

 

 

 

 

 

 

【オレのターン!ドロー!!】

【オレは手札から『クリアー・ヴィシャス・ナイト』の効果を発動!フィールドの『クリアーキューブ』を生贄にレベル7のこのモンスターを生贄召喚する!】

黒い鎧を着て水晶に閉じられた騎士が現れる ATK2300

 

【そして手札から装備魔法『アトビリュートマスタリー』を炎属性を選択して『ヴィシャスナイト』に装備!バトル!『アグマニズド』を攻撃!】

水晶の騎士が巨竜に迫る…!

 

「攻撃力の低いモンスターで高い攻撃力の『アグマニズド』に攻撃だと!?なんのつもりだ!」

 

【『アトビリュートマスタリー』の効果!炎属性モンスターをダメージ計算を行わずに破壊する!】

 

「なにッ!?うあ…!」

水晶の騎士が赤い竜を切り裂く

 

 

「破壊された『アグマニズド』の効果を発動!このカードが効果で破壊された時!墓地から真竜モンスターを手札に加え…」

 

【リバース罠発動!永続罠『メモリー・スナッチャー』!相手は墓地を確認する事ができなくなり…墓地を対象にする効果を発動した時、そのカードを宣言する!そのカードが墓地になければカードの効果を無効にする!…さぁカードを宣言してくれよ先生?】

藤原は目を紅く輝かせながら問い掛ける

 

「俺は墓地の…墓地の…?思い…出せない??」

 

遊海は墓地に眠る真竜の名前を宣言しようとする…しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「遊海の様子が変だ…彼の墓地には数枚のカードしかないはず!」

 

【どうしたんですかぁ?早く宣言してくださいよ…遊海先生…!】

 

「お前…()()()()()()()…!」

 

【何…とは?オレは何もしていませんよぉ?単に()()()だけじゃないですか?】

 

「藤原…お前、俺の記憶を弄りやがったな…!」

 

ダークネスには人の記憶を消す能力がある、現に遊海はミスターTに倒されてしまった生徒達の記憶が朧げになっていた、そして藤原はダークネスの名代…その権能とも言える力を使って遊海の記憶を消したのだ…

 

 

「貴様…小癪な手を…!遊海!!墓地のカードを絶対に当てろ!!そんな小僧にいいようにされるな!!」

 

「遊海!君なら当てられる!!カードの声を聴くんだ!!」

 

「遊戯…海馬社長…!(俺のデッキには真竜皇が4種…真竜が6種…今俺が勝つには…!)」

遊海は墓地に手を当て目を瞑る…カードの声を聴き、勝利の道筋を導き出す…!

 

【そんな事をしても無駄だ!無意味だ!…忘れた記憶は戻らない!】 

 

「『それは違う!無意味なんかじゃない!例え記憶が無くても決闘者はデッキと繋がってる!カードと決闘者の絆…それが奇跡を起こすんだ!』」

 

「…(集中しろ…記憶じゃない…心で…魂で…!見つけ出せ!!)…!」ヒュウ〜

 

夜が明ける…それと共に一陣の風が遊海の肌を撫でる…

 

「見つけた…!手札に来い!『真竜凰マリアムネ』!!」カシュッ!

墓地からカードが排出される…それは宣言した『マリアムネ』だった!

 

 

【馬鹿な…記憶を失った状態からカードを当てただと!?】

 

「よっしゃあ!!流石だぜ遊海!ダークネスの力を振り切りやがった!」

 

「俺はさらに『マジェスティ』の効果を発動!生贄召喚したこのカードがフィールドに存在し相手がモンスター・魔法・罠カードいづれかの効果を使った時!デッキから『ドライアスⅢ世』を手札に加える!」

 

 

【チッ…オレはターンエンドだ!】

 

藤原LP4000

ヴィシャスナイト(マスタリー装備) クリアーワールド メモリースナッチャー 手札1

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待て!なんでお前は『クリアーワールド』の効果を受けないんだ!お前の場にもモンスターがいるだろ!?」

 

【クリアーモンスターは闇属性だが自身の効果により闇属性と扱わない…よって無属性となるのだ!】

 

「そんなのありかよ!?」

クリアーモンスターの効果を聞いた城之内は唖然とした、デュエルモンスターズには光・闇・炎・水・風・地の基本6属性…そして特別たる神の計7属性がある、それに当てはまらない「無」属性などありえないからだ…しかしそれこそが藤原の目指す「個性無き世界」を象徴したカードなのだ…!

 

「…藤原、よくも俺の記憶を弄ってくれたな…救ける前に…キツイおしおきの時間だ!!」

太陽をその背に背負い遊海は金色の鎧を纏う…!それこそは太陽神の祝福を得た精霊アーマー…それにより遊海は虚無の闇を振り払う!

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!全てを照らす優しき光よ!我に悪しき者を祓う力を!ソーラー…ドロー!」

太陽の光が遊海の右腕に集い輝く…そして光の軌跡を残しカードがドローされる!

 

「俺はフィールドの『マジェスティ』を生贄に『真竜騎将ドライアスⅢ世』を召喚!」

再び鎧の騎士が現れる ATK2100

 

「これによってフィールドの風属性モンスターはいなくなった!よってフィールド魔法『ドラゴニックD』を発動!消え去れ!個性を否定する世界よ!」

 

【なんだと!?】

藤原の背後の水晶が砕け散り地面に再び魔法陣が刻まれる

 

ドライアス ATK2100→2400

 

バハルストス DEF3000→3300

 

 

「さらに!『ドラゴニックD』の効果を発動!『ドライアス』を破壊しデッキから魔法カード『真竜凰の使徒』を手札に加える!そして破壊された『ドライアス』の効果を発動!デッキから『真竜皇リトスアジムD』を守備表示で特殊召喚!」

巨大な狼のような竜が現れる ATK2500→2800

 

「そして永続魔法『真竜凰の使徒』を発動!墓地の真竜カードをデッキに戻し1ドローする!」

 

【永続罠『メモリースナッチャー』の効果を発動!さぁ!カード名を宣言しろ!1枚でも外したら効果は無効だ!】 

藤原は目を赤く輝かせ遊海の記憶を消そうとする

 

「無駄だ!神の加護を得た俺に小細工は効かない!」

 

《消えなさい!悪しき闇よ!!》

フレアが黄金のオーラを放つ、それは遊海を護る盾となりダークネスの力を打ち消した!

 

【くっ…!これが三幻神の力か…!】

 

「俺が宣言するのは『真竜の継承』『ドライアスⅢ世』『イグニスH』!…1ドロー!」

墓地のカードがデッキへと戻り新たにカードがドローされる

 

「今引いた永続魔法『真竜の継承』を発動!効果によりこのターン墓地に送られた真竜カードの種類につき1ドローする!1ドロー!」

 

「これで最後だ!『死者蘇生』を発動!蘇れ!『アグマニズドV』!!」

 

赤き大砲の竜がフィールドに舞い戻る ATK2900→3100

 

 

「すげぇ…!神がかったドローだ!まるで…!」

 

「うん!もう一人のボクみたいだ…!」

 

「フン…流石だ遊海!」

その時遊戯には見えた…金色の鎧を着た遊海の傍らに彼を見守る「王」の姿を…!

 

「いくぞ!俺はレベル9の『アグマニズドV』『バハルストスF』『リトスアジムD』でオーバーレイ!!」

3体の竜皇が咆哮し銀河へと飛び込む!

 

「あれは…未知の召喚法!?」

 

「遊海め…まだ隠し玉があったか!」

 

 

「3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!黙示録に刻まれし獣よ!破壊の力を束ね君臨せよ!ランク9『真竜皇V.F.D』!!」

 

3体の竜皇が融合した最強の竜が現れる ATK3000→3300

 

【エクシーズ召喚…だと…!?】

 

「すげぇモンスターだ…!」

 

「エクシーズ召喚は同じレベルのモンスター2体以上で行える召喚法だ!…友との絆を合わせお前の闇を打ち砕く!『VFD』の効果を発動!ORUを1つ取り除きフィールドのモンスター全ての属性を光属性へ変更する!エレメンタル・ドミネーション!」

 

竜皇が咆哮をあげる…すると瘴気に包まれていた体が一転して光輝き神々しさを露わにする、変化はさらに続く…ヴィシャスナイトを包む水晶が砕け散りヴィシャスナイト本体が開放される…

 

VFD 闇→光

 

ヴィシャスナイト 闇→光

 

 

【なっ…クリアーモンスターに属性…個性が…!】

 

「バトルだ!『VFD』で『ヴィシャスナイト』を攻撃!アポカリプス・ブレス・レイ!」

 

竜皇から放たれた光の息吹が悪意の騎士を消し飛ばした!

 

【ぬおぉぉぉ!!?】

 

藤原LP4000→3000

 

「少しは効いたか?藤原!俺はこれでターンエンドだ!」

 

遊海LP3000

VFD 継承 使徒 ドラゴニックD 手札1

 

 

 

 

 

【っあ…何なんだよ…そのモンスターは…!】

 

「俺からの教育的指導って奴だ!少しは目が覚めたか!」

 

【オレは負けない…!理想の世界を作るために負けるわけにはいかないんだ!!】

 

 

 

 

 

 

【オレのタァァァン!ドロォー!!】

【オレは手札から魔法カード『クリアー・サクリファイス』を発動!墓地のクリアー・モンスター『クリアーキューブ』2体を除外し手札から『クリアー・バイス・ドラゴン』を生贄無しで特殊する!!!】

水晶に包まれた邪悪なる竜が現れる ATK0

 

 

【バトルだ!『クリアー・バイス』で『VFD』を攻撃!】

 

「攻撃力0のモンスターで攻撃…!?何が起きるんだ!?」

 

【『クリアーバイス』は自身が攻撃する時、攻撃力が攻撃するモンスターの倍になる!『VFD』の攻撃力は3300!俺は倍の6600!そして貴様のライフは3000!これで終りだぁ!!!クリーンマリシャス…】

 

「ORUを1つ取り除き『VFD』の効果を発動!フィールドのモンスターを全て炎属性にする!エレメンタル・ドミネーション!!」

 

VFDの体から僕が溢れ出し周囲を赤く染める…

 

【なっ…オレのターンにその効果だと!?】

 

クリアーバイス 無→炎

 

 

「そして効果には続きがある!このターン宣言された属性の相手モンスターは攻撃できない!」

 

【なんだと!?】

クリアーバイスは竜皇の威圧により攻撃が中断される…

 

【ターンエンドだ…!】

 

藤原LP3000

クリアー・バイス メモリースナッチャー 手札0

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「藤原…帰って来い!バトルだ!」

 

【嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ!!オレは戻りたくない!!/『白波 遊海!!貴様ァ…!』】

藤原の声と被るように低い声が重なって聞こえてくる…

 

「なんだ!?声が二重に聞こえるぞ…?」

 

「もしかして…藤原君本人とダークネスの力が離れかけてるんじゃ…!」

 

 

「ダークネス!!生徒は…返してもらう!藤原!オネストはこの4年間…お前を待っていたんだ!片時もお前の事を忘れず、自分の身を削ってお前を探し続けたんだ!!!」

 

【オネ…スト…オレ…は…】

 

「お前の元気な姿を見せてやれ…!『VFD』…で……あ…」バタッ

 

【なっ…?】

 

攻撃宣言をしようとした遊海はその動きを停止する…そして鎧が消え、糸の切れた人形のように地面へと倒れ伏した…。

 

「「「遊海!!?」」」

 

 

 

 

 

遊海 決闘続行不能

 

藤原WIN…

 

 

 

 

 

 

「な、何が起きた…!オイ!遊海!!」

城之内は倒れ伏した遊海へと走り寄る

 

「遊海!しっかりしろ!!遊海!!」

 

「………」

遊海は目を開けたままピクリとも動かない…その目に光は宿っていなかった…

 

 

【ア…アハハハ!!まさか土壇場で意識を失うとはね!!遊海先生!貴方でもボクは救えなかった!所詮人間なんてこんなものだ!アハハハ!!!】

藤原は再びダークネスへと飲まれた…遊海は最後の欠片まで力を使い果たしたのだ…

 

 

 

「城之内君!!遊海は!!」 

 

「遊戯…遊海が…息してねぇ…!!」

 

「なんだと!?…早く蘇生させるのだ!!」

 

「わかってる!死ぬな…死ぬな遊海!!」

城之内は懸命に遊海の心臓マッサージを行なう…しかしそれをただ見ている藤原ではない…

 

【ククク…目障りな遊海先生も消えた!これで世界はダークネスの物だ!トゥルーマン!伝説の決闘者共を始末しろ!】

 

『『ダークネス…ダークネス…』』

再び大量のミスターTを召喚し遊戯達を取り囲む…

 

 

「おのれぇ…!貴様ら…許さんぞ!!!俺の怒りを…ブルーアイズの怒りを受けるがいい!!」

 

「僕達は最後まで諦めない!!遊海のした事を無駄にはしない!!」

遊戯と海馬は遊海と城之内を守るように前へ出る

 

【さらばだ!伝説のデュエリスト!貴方達もダークネスと一体となるがいい!!】

 

 

「遊戯…やるぞ…!」

 

「うん…!」

2人はデュエルディスクを構える…

 

『『『ダークネス…ダークネス…』』』

 

《ゴッドフェニックス!!》ゴゥッ!!

 

【なに?】

 

フレアがミスターTと遊戯達を隔てるように炎の壁を作り出した…

 

 

 

 

 

 

 

俺はどうしたんだ…何をしてたんだっけ…?

 

…体が動かない…まるで自分の身体じゃないみたいだ…俺は…死んだのか…?

 

「遊海!しっかりしろ!!戻って来い!!」 

 

…誰かが俺を呼んでる…目は…開くか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…う…」

 

「遊海…!大丈夫!?しっかりして!!」

 

目が覚めると周囲は炎に包まれ俺を囲むように遊戯達が俺を見下ろしていた…

 

「あ…ぐっ…!」

声が出ない…体の自由が効かない…なんで…?

 

《ユウミ…無理をし過ぎです…!あなたは魂を削ってまでデュエルをしていたんですか…!!》

 

『…フレア…俺に何があった…身体が…動かない…!』

 

「遊海!?これ…テレパシーか!?」

声を出せない遊海は念話で遊戯達へ話しかける…

 

 

《ユウミ…あなたは全ての力使い果たしてしまった、度重なるダメージで体力も精神力も…魂も…あまりの負荷に耐え切れなくなった魂が弾けたのです…霧散する前に何とか回収しましたが…しばらくは身動きは取れないと思います…》

 

「…遊海は藤原君とのデュエルの最後に意識を失ったんだ、デュエルは藤原君の勝利…炎の壁の向こうはミスターTに囲まれてるんだ…」

 

『俺は…また救えなかったのか…伝説の決闘者が若者1人救えないなんて…ダメダメだな…』

 

「遊海、お前は自分を卑下し過ぎだ…お前は良くやった、自分を責めるな…」

 

『海馬社長…』

 

「遊海!お前のデュエル凄かったぜ!あと一歩いや、あと一言言えれば勝ちだったのになぁ…」

 

『城之内さん…ごめん…俺が不甲斐ないばっかりに…』

 

《ユウミ…まもなく壁が消えます…どうしますか?》

 

『フレア…撤退だ、お前は遊戯達を連れて精霊界へ逃げろ、あそこならミスターTも追いつけない筈だ…』

 

「ちょっと待て!遊海、お前はどうするつもりだ!…まさかここに残るとかは言わねえよな!?」

 

『俺はここに残る…最後まで藤原を説得する…!』

 

「馬鹿!それじゃあわざわざやられるために行くようなもんじゃねぇか!!お前も一緒に…」

 

『…無理だ、今の俺じゃあ次元移動に耐えられない、それにフレアが運べるのは3人までなんだ…大丈夫、助かる見込みはあります…俺は彼を信じていますから…』

 

「彼…誰だよ、それ?」 

 

『十代…彼ならやってくれるはずです、だから…安心して任せられる…』

 

 「遊海…お前…!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《キュアアアア!!!》

炎の壁が消えた瞬間、3人を乗せたフレアは大空へと飛び立ち次元の穴へと消えていった…その跡には倒れ伏した遊海だけが残っていた…。

  

 

【遊戯達を逃しましたか…あなたらしい判断だ、遊海先生…言い残す事はありますか?】 

 

『…1つだけ聞かせてくれ…』

 

【ほう…テレパスですか、器用ですね…なんですか?】

 

『どうしてオネストを置いていった…?アイツはお前の為なら何処にでも行くって言ってたぞ…』

 

【別に…理由なんて無い、いらないカードだった…だから置いていった…それだけの事だ】

 

『…そうか、でもオネストはお前を忘れなかった、それだけは覚えておいてくれ…』

 

 

【…さらばだ白波 遊海…虚無の底に沈むがいい…】 

藤原が遊海に手を翳す…すると闇が発生し遊海を飲み込んでいく…

 

『藤原…じゃあ…な…』

 

 

 

『藤原様…アカデミアで未だに抵抗を続ける者がいます』

 

【ああ、わかった…オレの目指す世界までもう少しだ…】

 

 

 

 

 

そして遊海は世界から完全に消え去った…。



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見えるけど見えないもの

十代Side 海上

 

 

「十代!まだなのか!」

 

「これで全速だ!」

 

「なんでアカデミアは海の真ん中にあるんだよ〜!!」

 

 

 

遊海先生に弾き飛ばされた俺は無人の海馬コーポレーションの近くへと着地した、その場所には療養しているはずの斎王の姿があった…斎王はミスターTの狙いがアカデミアと遊海先生達である事を教えてくれた…でもその直後、斎王は俺へとデュエルを挑んできた…。

 

爆弾の仕掛けられたKC社の屋上で俺と斎王は対峙した、斎王は美寿知を人質に取られ、助け出すために俺へと挑んできた…デュエルは結局俺がギリギリで勝つ事ができた、ダークネスに汚染されたカードをデッキに仕込まれて…さらにデッキ破壊で追い詰められたけどネオス達のお陰で斎王を開放する事ができた…そして直後に爆弾が起爆してビルが崩れ始めた…。

 

 

 

崩壊したビルから何とか逃げ出した俺はとにかく遊海先生を助けにいこうとした、遊海先生のいた辺りは炎に包まれ黒いモンスター達が飛び回っていた…でもアヤカの姿は既に消えていた、遊海先生は一人で戦い続けている…それを思うといてもたってもいられなかった…でもそんな俺に不思議な声が聞こえてきた…。

 

 

《精霊と人間を繋ぐ力を持つ者よ!彼の事は我らに任せよ!》

 

《我ら人と精霊を護る者!世界を黒く染める闇を祓う者!》

 

《お前は自分の成すべき事を成せ!それがあの者の意思だ!学び舎へと向かえ!!》 

 

 

その声の直後、遊海先生のいる辺りに3匹の竜が現れた…遠くからだから姿はよく見えない、でも声の主はあの3匹だとわかった…俺はバイクを拝借して港へと向かう、遊海先生の意思を…『世界を救え』という意思に答えるために…!

 

 

そしてオブライエンから知らせを受けたヨハンと合流してボートに乗ってアカデミアへと向かっている…みんな!無事でいてくれ…!

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

翠Side アカデミア

 

 

 

「バトルよ!『幻竜星チョウホウ』でダイレクトアタック!!」

 

 

ミスターT LP0

 

翠 WIN!

 

 

 

 

 

 

「っ…まだよ…!まだ負けられない!!十代君が戻ってくるまでは…!」

 

夜が明けたが翠はミスターTと戦い続けていた、逃した生徒達は先回りしたミスターTに倒され…残された翠は精霊達と共に校舎の玄関でミスターTを倒し続けていた…

 

 

『『ダークネス…ダークネス…!』』

 

 

《翠…キリがないよ…!》

 

《もうヘロヘロ…遊海兄も頑張ってるのに…!》

 

「だめー!挫けそうになるセリフは禁止ーー!!」

 

 

 

『お前一人で何ができる…』

 

『諦めてダークネスに身を委ねるがいい…』

 

ミスターTが翠へと迫る

 

「くっ…!私は十代君達が帰ってくる場所を守るの…だから負けない!!」

満身創痍の身体で翠も決闘盤を構える…

 

 

 

【…残念だがそれは無理な話だ白波 翠…】

 

 

「っ!?あなたは…藤原君…!」

ミスターTが決闘盤を下げ更に後ろに下がる…そして翠の目の前に黒いコートを着た青年…藤原が現れる

 

「なんであなたがここに…!吹雪君はどうしたの!?」

 

【フッ…手違いでね…ミスターTが倒してしまった、アイツはオレがダークネスに連れて行きたかったんだけど…しょうがない、翠さん…もう諦めてダークネスと1つになりましょう、ダークネスと1つなれば痛みも辛い事もありませんから…!】

 

「嫌よ…!私は戦うわ!ダークネスになんか負けない!」

 

【それは何のために?】

 

「帰ってくる場所を守るためよ!!」

 

【誰の?】

 

「それは……それは…?誰の…ため…?」

翠の気持ちが冷めていく…まるで胸に穴があいたような悲しみが翠へと襲いかかる…

 

《翠!何を言ってるの!?私達は遊海の帰ってくる場所を守るためにアカデミアに残ったんじゃない!!…まさか…!》

ウィンダがその可能性に気づく…遊海を忘却してしまった翠…そして目の前にいる黒幕…そこから導き出された答えを…

 

【察しがいいね精霊!そうさ…白波 遊海は既に倒した!あの人はオレの敵ではなかった!】

実際は遊海の戦闘不能による勝利だったのだが…翠の心を折るために嘘をついた…しかし…それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユルサナイ…」

 

翠からオーラが溢れだす…それは闇であり闇でないモノ…影のようなオーラだった

 

 

【っ!?…なんだこの殺気は…!何故この女からこんな殺気が…!】

藤原は知らなかった…彼の知る翠は穏やかで美味しい料理を作るお姉さんというイメージだった…しかしその実、翠のタクティクスは瞬間的に遊海を上回る…遊海が数多くのデッキを操る「最強」だとすれば、翠は少数のデッキを使いこなす「秀才」…そして藤原は翠の逆鱗へと触れた…

 

「私の大切な人を…大切な思い出を消したあなたを…!私は許さない!!!」

 

遊海の逆鱗は「大切な人を傷つけられたり馬鹿にされる事」…そして翠の逆鱗は「遊海を傷つけ、馬鹿にする事」…そして藤原はダークネスの力について1つ思い違いをしている、ダークネスの力は人の記憶を消す事はできても…抱いた感情までは消す事ができないのだ…!

 

【…!なんていう殺気だ…これが翠の本気、しかしこの世界をダークネスと1つにするために負けるわけにはいかない!!】

 

「許さない!許さないだからーー!!!」

2人は決闘盤を構える…1人は全てを闇に染めるために…1人は消された想い人を救うために…それぞれの負けられない戦いが始まる…!

 

 

 

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

 

藤原LP4000

翠LP4000

 

 

 

 

 

 

【オレのターン!ドロー!!】

【オレは『クリアー・ファントム』を召喚!】

 

1つ眼の骸骨のような水晶に閉じられた悪魔が現れる ATK1200

 

【そしてフィールド魔法『クリアー・ワールド』を発動!さらに永続魔法『クリアー・ウォール』を発動!これによりオレは1000以下の戦闘ダメージを受けない!】

藤原の後ろに巨大な水晶が現れる 

 

【ターンエンドだ!】

 

藤原LP4000

クリアーファントム フィールド魔法クリアーワールド クリアウォール 手札3

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「魔法カード『手札抹殺』を発動!私は手札を5枚捨てて5枚ドロー!」

 

【チイッ!!3枚捨てて3枚ドローだ!!】

 

墓地送り

@翠

 

シャドールドラゴン①

ヘッジホッグ②

ファルコン③

裏風の精霊

神の写し身との接触

 

@藤原

 

クリアー・キューブ

ヴィシャスナイト

クリアー・サクリファイス

 

 

 

「墓地に送られた『ファルコン』の効果!自身を裏守備で特殊召喚!『ヘッジホッグ』の効果!デッキから『シャドール・ビースト』を手札に加える!さらに『ドラゴン』の効果!『クリアー・ワールド』を破壊する!!」

 

墓地に送られた影のドラゴンの力で水晶が砕け散る!

 

【なんだと!?…『クリアー・ウォール』は『クリアー・ワールド』が無い時に破壊される…!!】

 

フィールドの崩壊と共に永続魔法も破壊される…気づけば周囲は朝にも関わらず再び闇へと包まれている、しかし翠にはそれを気にする余裕は無い…

 

 

「手札から魔法カード『影依融合』を発動!手札の『ファイヤーハンド』とフィールドの『ファルコン』を融合!…影の翼よ!炎の力を得て輝石を束ねる王となれ!融合召喚!『エルシャドール・エグリスタ』!!」

関節が様々な色の宝玉になっている巨大な人形が現れる、その背中からは炎のような赤い糸が伸びている ATK2450

 

 

「さらに手札から『シャドール・リザード』を召喚!」

 

白い鎧のような蜥蜴のような人形が現れる ATK1800

 

「そして手札から装備魔法『魂写しの同化』を『リザード』に装備!効果で『リザード』の属性を光属性に変更する!!」

リザードの背中に灰色の真空管が取り付き黄色に輝き始める

 

リザード 闇→光

 

 

「そして『同化』の効果を発動!手札の『ビースト』と光属性扱いの『リザード』で融合召喚を行える!!」

 

【何!?装備魔法の融合カードだと!?】

 

この時代には融合に関する装備魔法は墓地から融合モンスターを蘇生する『再融合』とレベル6以下の融合モンスターの攻撃力を上げる『フュージョン・ウェポン』しか無い…藤原からして見ればそれは破格の効果だった

 

 

 

「影を這う人形よ!光の力を得てシャドールの女王を呼び出さん!融合召喚!『エルシャドール・ネフィリム』!!」

巨大なる影の軍勢を率いる女王が降臨する ATK2800

 

 

「融合素材となった『ビースト』の効果!1ドロー!『リザード』の効果!デッキから『オルシャドール・セフィラルーツ』を墓地に送り、さらに自身の効果で特殊召喚!」

白い羽を生やした光と闇、相反する力を宿した勇者が現れる DEF1950

 

【1ターンで融合モンスター2体の連続召喚だと…!?なんていう展開力だ…!】

 

「バトルよ!『エグリスタ』で『ファントム』を攻撃!」

炎の巨人が水晶の悪魔を燃やし尽くす!

 

【ぐぅぅ…凄まじい力だ…!】

 

藤原LP4000→2750

 

【破壊された『ファントム』の効果を発動!『エグリスタ』を破壊し、お前のデッキから3枚を墓地に送る!】

 

爆炎から水晶の破片が飛び出しエグリスタと翠のデッキトップ3枚を破壊する

 

墓地送り

 

堕ち影の蠢き

アイスハンド

ファルコン

 

「破壊された『エグリスタ』の効果を発動!墓地から魔法カード『神の写し身への接触』を手札に加える!バトルを続けるわ!『ネフィリム』でダイレクトアタック!!」

 

影の女王が糸で藤原を切り裂いた…

 

【ぐっ…うああああああ!!?】

 

藤原LP0

 

翠 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呆気無く藤原と翠のデュエルは終わった…無理も無いがアニメオリカのチートカードでも9期性能のリアルチートに敵うはずもないだろう…。

 

 

 

【…何という力だ…ダークネスに身を委ねたオレ以上の

…】

 

藤原は最後の一撃で弾き飛ばされ倒れていた、その眼には翠への畏れが宿っている 

 

「………」

翠は倒れている藤原へと歩みを進める…その背中には未だに闇のオーラが揺らめいている…

 

【(殺られる…!!)】

 

藤原は思わず眼を瞑る、自分は翠を怒らせた…彼女の夫であり恩師とも言える遊海を闇へと突き落とした…だからその報いを受けるのだと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ごめんね藤原君…」

 

【えっ…?】

 

 

 

目を閉じていた藤原が最初に感じたのは痛みでも苦しみでも無く…自分を包み込む温かさだった。

恐る恐る目を開ける…自分は翠に抱き起こされ抱擁されていた…

 

 

「藤原君…あなたが苦しんでいる事に気づけなくてごめんね…!辛かったんだよね…!」

翠は涙を流しながら藤原へ謝る…そこには先程までの恐ろしい殺気は欠片も無かった…

 

「小さい頃にお父さんもお母さんもいなくなって…ずっと寂しかったんだよね…そして愛を受ける事が無くなってしまった…!」

 

藤原は幼少期を思い出す…両親を無くし孤児院へと預けられた自分は誰かから『愛』を受ける事はほぼ無かった…しかし愛はあった、寮母からは『親愛』を…学友達からは『友愛』を受ける事ができた…でも幼少期に自分が必要としていたのは両親からの『親子愛』だった…。

 

お父さんともっと遊びたかった…お母さんに抱きしめてほしかった…今となっては顔も思い出せない両親…藤原はこの時に理解した、自分は忘れられたくないんじゃない…人からの『愛』が欲しかったのだと…

 

 

 

「本当なら大人である私や遊海さんがあなたを守らなければならなかった…愛を教えてあげなくちゃならなかった…本当にごめんね…!!」

 

【翠…さん…っぐぅ!?あああああ!!】

抱きしめられた藤原の身体から闇が溢れ出す…そして藤原の身体が二重に歪んで見えるようになる…

 

「藤原君!大丈夫!?」

 

【オレは…何という事を…!/オノレェ!!転生者め!余計な事を!!!】

藤原とダークネスの力が分離する…そして半透明の邪悪な顔をした藤原と実体を持った藤原へと分離する…

 

「っ!ダークネス…!?」

 

【白波 翠…!もう少しでこの世界を闇に沈められたものを…!】

 

「…あなたには負けないわ…!遊海さんを助けるために…負けられ…な…い…」ドサッ

 

『翠さん!!』

藤原を離した翠はダークネスへと立ち向かおうとする…しかし遊海同様に身体を酷使していた翠にはその力は残っていなかった…起き上がろうとした勢いのまま翠は倒れ伏す…

 

「身体が…動かない…!動いて…動いてよぉ…!!」

翠は身体を起こそうとするが起きられない…

 

【丁度いい…藤原、その者を虚無へと落とせ…さすれば残る障害は遊城 十代とヨハン・アンデルセンのみ…そうすれば貴様と我の望む世界が完成するのだ…!】

闇藤原は邪悪な顔で藤原へと命令を下す…

 

 

『嫌だ…』

 

【なに…?】

 

『嫌だと言ったんだ!!オレはもうダークネスへは戻らない!!…オレはこの世界で生きる!!!』

翠によって立ち直った藤原はダークネスへと反旗を翻す、翠が教えてくれた愛を守るために…!

 

【…残念だ、汝とはわかりあったつもりでいたが…所詮は人間か…ハアッ!!】

 

『うわぁぁぁ!!』

 

「くぅ…!!」

闇藤原は手から波動を放ち2人を吹き飛ばす…

 

【ミスターT、この者達を始末しろ…】

 

 

『『ダークネス…ダークネス…』』

 

倒れた2人の周りに無数のダークネスが現れる

 

『…くそっ、ごめんなさい…遊海先生…!オレは…!』

 

【やれ…!】

 

『『『ダークネス…ダークネス!』』』

身動きのとれない二人にミスターTが襲いかかる…!

 

 

 

 

 

 

 

《ウィンド・ストーム!!》

 

《ウィンド・バリア!!》

 

【むっ…小賢しい精霊共め…!】

翠達を守るように現れたウィンダとウェンがミスターT達を吹き飛ばす!

 

《ダークネス!私達の事を忘れないでよね!!》

 

《翠姉達はわたし達が守る!!》

 

《キュイー!!》

 

 

「ウィンダ…ウェン…ごめんね…」

 

《いいの翠!あなたは頑張った!だから今度は私達の番!》

 

《十代君達が到着するまで耐えてみせるよ!!》

 

二人は杖を構える…藤原を闇から救い出した事を無駄にしないために…ミスターTへと戦いを挑む…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《くぅ…やっぱり限界があるよね…そりゃ…》

 

《うぅ…ごめん…!》

 

ウィンダ達は本来であれば戦闘向きの精霊ではない、そういう事は影の女王や宝玉の王の役割だ…しかし二人はミスターTの大軍から翠達を守り続けた…でもそれももう限界だった…

 

 

 

【よく戦うものだ…何故そうまでしてその者達を守ろうとする…?】

 

《翠姉がわたし達の大切な人だから…!大切なマスターだからだよ!!》

 

《翠は私達の事を本当の家族のように扱ってくれた!だから私は翠を守る!!》

 

【ふん…くだらん…ハッ!!】

 

『『きゃああぁぁ!!』』

再び放たれた衝撃波が精霊達を吹き飛ばす…凄まじい闇の波動はウィンダ達にとてつもないダメージを与えた…

 

 

「ウェン!…ウィンダ…!!」

 

《う…ぐ…ごめん翠…ここまでみたい…》

ダメージを受けたウィンダの身体が消え始める…

 

《でも大丈夫…間にあった…わ…》

 

《ごめん…翠姉…どうか無事で…!》シュン

ウィンダ達はその場から消えてしまった…

 

 

「ごめん…ウィンダ…ウェン…!」

 

『っつ…ちくしょう…!せめてデッキがあれば…!』

倒れた翠も藤原も起き上がる事ができない…藤原にいたっては闇藤原にデッキと力を奪われてしまっている…。

 

 

 

【ではさらばだ…愚かな人間共よ…我と一つになるがい「速攻魔法『超融合』発動!!」なに!?】

二人を取り込もうとした闇藤原の目の前に眩い七色の光が現れる…

 

「この…光は…!」

 

「いくぜ!ヨハン!!『レインボー・ドラゴン』と『ネオス』を超融合!『レインボー・ネオス』を召喚!!」

《ウオォォォォ!!》

 

宝玉を束ねる究極竜と宇宙の力を得たHEROが融合し純白の羽を持つ友情のHEROが現れる!

 

「行っけ〜!十代!ネオス!!」

 

「レインボー・ネオス!ミスターTと黒い藤原を攻撃!レインボー・フレア・ストリーム!!」

 

【なっ…!?そんな馬鹿なぁぁぁ!?】

レインボー・ネオスの攻撃で闇藤原は消え去り…周囲を埋め尽くしていたミスターTも全て消滅したのだった…。

 

 

 

翠Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十代Side

 

 

 

「ようやくついた!!…なんだアレ!?」

 

「あそこで誰かが戦っているんだ!!行こうヨハン!」

 

ボートをかっ飛ばして数時間…俺とヨハンはようやくアカデミアへと戻ってきた、そして俺達が目にしたのは日食で暗くなった中でぶつかる闇の波動と竜巻だった…原因の見当はつく…ウィンダや翠さんが誰かと戦っている…!俺とヨハンは急いで校舎へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは…!翠さんと…藤原か!?」

 

《マスター!!》

 

「ちょっと待て!?敵が多すぎる!!」

 

校舎へと向かった十代達が目にしたのは数十人のミスターTに囲まれ倒れた翠と藤原らしき青年、そして黒いオーラを纏った藤原とそれらと戦う傷だらけのウィンダとウェンの姿だった…

 

 

 

 

《十代!あの精霊達もマスター達も凄まじいダメージを受けている!!早く助けなければ!!》 

 

「わかってる…!でもどうやって助ければ…!」

 

幸いミスターT達は十代に気づいていない…しかし物量差がありすぎる…!

 

「そうだ十代!遊海先生みたいにカードの力を実体化させるんだ!それであいつらを吹き飛ばすんだ!!」

 

「カードの力…!でも俺にできるのか…!」

遊海はカードの力を使いこなし多数のモンスターを召喚したり魔法で人を回復させたりしていた…しかし十代にはその経験はほとんど無い…

 

 

「…やれるかやれないかじゃない…翠さん達を助けるんだ!!」

十代はデッキからカードを引く…そして…

 

「!、これなら!ヨハン!力を貸してくれ!!」

 

「わかった!受け取れ!十代!!」

ヨハンは自分のデッキから1枚のカードを十代に投げ渡す!

 

『『きゃあぁぁぁ!!』』

ウィンダとウェンが闇の波動で吹き飛ばされる…その瞬間、十代はウィンダと目が合った…

 

《(十代君…!お願い!!)》

 

そして二人はダメージに耐えられず消えてしまう…そして闇藤原が翠へと歩み寄る…!

 

「やらせるかぁぁぁ!!速攻魔法『超融合』発動!!『レインボー・ドラゴン』と『ネオス』を超融合!『レインボー・ネオス』を融合召喚!!」

十代の呼び声に応え友情のHEROが降臨する…後年十代は力を使いこなし未来からの使者と戦う…その力の片鱗が開放されたのだ…!

 

 

「ミスターT達を攻撃!レインボー・フレア・ストリーム!!」

虹の力を得たネオスの一撃が敵を全て消し飛ばした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《マスター!!ご無事ですか!?》

オネストが藤原のもとへと飛び出す

 

『オネスト…お前なのか…?』

 

《はい!!この4年の間貴方を探し続けていたのです…!またお会いできてよかった…!!》

オネストは倒れていた藤原を抱き起こす…主人と精霊の久々の再会だった…

 

『オネスト…オレを覚えていてくれて…ありがと…う……』

 

《マスター…どうかゆっくり休んでください…》

オネストと再会した藤原は涙を流しながら意識を手放した…。

 

 

 

 

 

 

「翠さん!大丈夫…ではないよな…」

 

「おかえりなさい…十代君、レインボー・ネオス…かっこよかったわ…」

翠は力無く十代へと声をかける…全身傷だらけで片目も視えていないようだった…。

 

「翠さん、さっきの黒い藤原は何者だったんだ?」

 

「あいつは藤原君に取り憑いていたダークネスの力が形を成したものよ…藤原君本人はもう大丈夫だから…っつ…!」

 

「翠さん!あまり喋らないほうがいい…傷が多すぎる…」

 

「大丈夫よ、ヨハン君…これだけ伝えたら休ませてもらうから…十代君…まだこの異変は解決していないわ、見えるでしょう…太陽を隠す日食が…」

 

「…本当だ…藤原を無力化したはずなのにまだ太陽が戻らない…!」

 

中天にあるはずの太陽は未だに黒い月に覆われている…

 

「ここから先は…貴方の乗り越えるべき試練…あとはお願い…ね…」 

 

「翠さん!!」 

十代に後を託し翠も意識を手放した…。

 

 

 

 

 

 

 

「十代が乗り越えるべき試練…?いったい何なんだ?」

 

「…わからない、でもまだ何かあるはずだ…世界を元に戻すために…!」

十代達は気絶した翠達を介抱しながら事態の打開について話し合う…

 

 

「俺達にはまだ倒さなければならない敵がいるのか…?」

 

「でも…それが何なのかさえ俺達には…【オオォォォ…】っ!?なんだ…!」

 

突如無人であるはずのアカデミアから恐ろしい唸り声が聞こえてくる…

 

「行ってくれ十代!翠さん達はオレが守る!」

 

「…わかった!!」

そして十代はアカデミアの校舎へと向かった…全てに決着をつけるために…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…頼んだぞ…十代!《ルビー!!!》ルビー?どうし…っ!?しまっ…!!?」

 

直後に闇に消えてしまったヨハン達に気付かずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…いったい声はどこから…!」

十代は謎の声を追い校舎中を走り回っていた

 

「ここは…コンピュータールーム…確か放送設備もあった筈だ…!」

十代は見えない敵に気をつけながらコンピュータールームへと入る…そこにはテレビ局のようにたくさんのモニターがあり、世界の都市を映していたが…十代が異変に気がつく…

 

「なんだよこれ…?人が消えている…!!」

 

ニューヨーク・ロンドン・パリ・東京・シドニー…世界の各都市が映るモニターの中…そこにはただの1人も人間は映っていなかった…

 

「どうしてこんな事が…!」

 

【…十代…遊城 十代……】

 

「何者だ!!」

突如として地の底から響くような声が十代の名を呼ぶ…

 

【汝と我…決着をつける時が来た…外に出るがいい…!】

 

「外だと…まさか!!」

十代は急いで外へと飛び出した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ…!ヨハン!翠さん!オネスト!!みんな何処へ行ったんだ!!」

十代が外に出るといる筈のヨハン達の姿は無く、静寂が支配していた…

 

『十代君!大変だにゃ!ヨハン君も翠さんも闇に飲み込まれてしまったんだにゃ!!』

 

「大徳寺先生!?」

ファラオに飲み込まれ難を逃れていた大徳寺が十代へと起きた出来事を伝える…そして…

 

 

 

【時は満ちた…決着をつける時だ…!】

 

日食と重なるように存在していた黒い球が降下し…その中から巨大なローブを着た悪魔が現れた…

 

【我が名はダークネス…世界の真実…もう1つの世界そのものたる神だ…】

 

「お前がダークネスの本体…黒幕か!!みんなを何処へやった!!」

十代は神を名乗るダークネスへと物怖じせずに問い詰める

 

『十代君!気をつけるにゃ!ダークネスが背負っている黒球…あの中にたくさんの人の思念を感じるにゃ!!』

 

「なんだって…まさか…!」

 

【然り…汝の探す者達は我が虚無の世界へと招待してある…】

 

「何が目的だ!!世界征服でもしようっていうのか!!」

 

 

【フッ…否…我に望みなど無い…我は世界の理に従い動く者…これは世界の法則だ…】

 

そしてダークネスは語る…世界が1枚のカードから生まれ、表と裏が生まれた…その裏側が自身そのものである事…そして消えた人々は心に闇を抱え…生きる事に疲れ自ら闇の世界へと堕ちた事…そして世界の異物…人間と精霊、2つの魂の融合した魂を持つ十代を排除するために顕現した事を…

 

 

 

「…ダークネス、俺はお前を許さない…!俺はお前みたいな奴を…身勝手な奴を倒すために闇の力を手に入れたんだ!!俺がいる限り…この世界は…みんなは渡さねぇ!!」

 

【ほう…今の話を聞いてなお真実を受け入れないか…ならば汝を滅殺する…この世界の始まり…デュエルモンスターズで…!】

ダークネスは背中に5枚の翼を展開する…

 

「それがお前のデュエルディスクって訳か…!でも俺は負けない!お前を打ち倒してみんなを救いだす!!」

 

『十代君!気をつけるのニャ!そいつは今までの相手とは違う…遊海君レベルのデュエリストニャ!!』

 

「わかってる!でも…絶対に倒してみせる!!」

 

【あのような転生者と同列に扱われるとはな…汝、我が裁きを受け世界の狭間を彷徨うがいい…!】

 

世界の命運を賭けたデュエルが始まった…

 

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十代Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー…ここは…何処だ…?俺は…?ー

 

ダークネスへと飲み込まれた遊海は暗い水の中のような場所で目を覚ました…周囲に人影は無く…傷ついているはずの身体からは痛みを感じなかった…。

 

 

ーそうか…遊戯達を逃して闇に飲み込まれたんだっけ…ー

 

遊海はそれまでの出来事を思い出す…ダークネスの侵攻を感じ童実野町でミスターTを相手に戦い続けた事…ピンチに遊戯達が駆けつけて一緒に戦ってくれた事…そして藤原と対峙し…勝利の一歩手前で限界を迎え倒れてしまった事を…

 

 

ー…今思えば無茶をしたな…ほぼ無限にでてくるミスターTを相手に戦いを挑むなんて…でも藤原を助けるためにはああやるしか無かった…後悔はない…ー

 

ダークネスに飲まれてなお遊海の心は闇へと墜ちてはいなかった…転生者である遊海は知っているからだ、今この時に十代がダークネスと戦っている事を…

 

 

ー…ダークネスに飲み込まれているからか…たくさんの人の不安が流れこんでくる…ー

 

ダークネスに飲まれている人の想いが脳裏に流れ込む…進路の不安…家族の不安…夢への不安…様々な想いが流れ込む…

 

 

ー俺にも確かに不安はある…俺がこのまま進み続けて大丈夫なのか…未来を変える事はできるのかどうか…でも俺は…前へと進み続ける…!ー

 

ダークネスの誤算は遊海の心の強さだろう…遊海は前世で人の光も闇も体験した…だから知っているのだ…人間の強さを…!

 

『みんな!!聞こえるか!!俺の声が聞こえるか!!!』

 

ー十代…ああ、聞こえてるよ…お前の力強い声が…!ー

 

 

暗黒の空間に小さな光が現れる…それは段々と数を増やし太陽のような輝きとなり暗黒の世界を照らしていく…十代の人々を鼓舞する声が闇に飲まれた人々の光を輝かせる…

そして幾筋もの光が世界から飛び出していく…!

 

 

 

 

 

 

【転生者…白波遊海よ…我の声が聞こえるか…】

 

「ダークネス…!」

人々が暗黒の世界から飛び出していく中…遊海の目の前に骸骨のような悪魔…ダークネスがその姿を現す…

 

「お前…十代と決闘してる筈だろ?なんでここにいる?」

遊海は警戒しながらダークネスへと問いかける

 

【我は虚無にして無限…自らの世界に分身を出す事は容易い事だ…この世界を俯瞰せし者よ…我に聞かせよ…】

 

「なんだ?」

 

【貴様は世界の行く末を知る者だ…ならば知っているだろう…この世界に待ち受ける破滅の未来を…!何故それを知りながら心を折らなかった…?】

 

「…知っているからこそだ…ダークネス」

 

【なに…?】

 

「確かに破滅の未来はある…でもそれに抗い…未来を救おうとした決闘者を俺は見た!…そして俺が…時代を担う決闘者が世界を救ってみせる!」

 

「『お前の出番はずっと先だ!ダークネス!!』」

 

【フッ…フハハハハハ!!…いいだろう…破滅を知りながらなお足掻く者…世界を救う勇者よ!やってみるがいい!貴様が折れた時こそが我が世界を掌握する時だ!せいぜい足掻くがいい!…我は世界の裏でその時を待っているぞ…!!】

 

ダークネスの言葉と共に世界が罅割れていく…そして俺の意識は光へと溶けていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海!しっかりして!遊海!!」

 

「っ…遊戯…?」

 

「フン…やっと目を覚ましたか、遅いぞ遊海…」

 

「まったく無茶しやがって…全部終わったみたいだぜ…人の光の勝ちだ!」

 

 

 

遊海が目を覚ますと見慣れた病院だった…部屋には遊戯・海馬・城之内の3人と小鳥状態のフレアがいた…窓から見える空は暖かい太陽の光が世界を照らしていた…。

 

 

《お疲れ様でしたユウミ…今はゆっくり休んでください…他の精霊達も皆無事です、安心してください!》

 

「ありがとうフレア…心配かけてごめん…」

 

《…その言葉はアヤカとミドリに言ってあげてください…2人とも貴方を心配しているはずですから…!》

 

「ああ…そうだな…」 

 

 

 

 

こうして長きに渡った闇との戦いは一先ずの終わりを迎えたのだった…。

 



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旅立ちの日に〜それは成長の物語〜

GX編最終話!


その日は『消えた1日』と呼ばれた…

 

夏休みシーズンの少し前…全世界の人間の体感していた1日が消えた、人によっては寝て起きたら2日経っていたという…。

 

『消えた1日』の直前を覚えている人間は少ないが一部の人によると「気づいたら真っ暗な空間にいた」「サングラスの男に襲われた」「暗い空間で自分達を励ます声を聞いた」との情報が寄せられている…国連は原因究明を進めているが…進展は無い…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうした十代、こんなところに呼び出して?」

 

「遊海先生…来てくれてありがとう!…お願いがあって来てもらったんだ…!」

 

 

 

世間での『消えた1日』から1週間…今日はアカデミアの卒業デュエルの期限日だ…ダークネスとの戦いが終わり俺は島へと帰ってくる事ができた…島に着いてすぐに翠に抱きつかれたり、藤原に土下座で謝られたりと色々な事があったが無事に事態を解決する事ができた。

 

負傷した精霊達も回復しアカデミアは平穏を取り戻しつつある…そんな中、十代に呼び出された俺はアカデミアの灯台へとやって来た、周囲は夕焼けで赤く染まっていた…。

 

 

「遊海先生…俺とデュエルしてくれないか?」

 

「デュエル?…別にいいけど…卒業デュエルは大丈夫なのか?」

 

「ああ、卒業ラインの100ポイントはもう集まった!万丈目や翔…剣山みんなとも戦って勝った、だから俺のアカデミア最後の相手に遊海先生…()()のアンタと戦いたい!!」

 

「心外だな十代…俺はいつだって全力で戦ってきた、現にお前はまともな状態の俺に勝てた事が無いじゃないか?」

 

「ああ、確かに俺が先生に勝ったのは全部先生の理性がトンでた時だった…でも先生は本気で俺と戦ってくれた事が無い…だって『アヤカ』を使ったデッキで戦ってくれた事が無いからだ!」

十代は某名探偵のように俺を指差した

 

「遊海先生…本当はアンタ1人で今までの事件、全部解決できたんだろう?…アンタにはその力があるはずだ!…でもそれをしなかった…俺達を成長させるために…!そうだろ?」

 

「…流石だな十代…そうだ、俺は今までの事件を終わらせられる力はあった…まぁ単なる予測の中でだかな、俺はお前達の歩む道を知っていた…だからこそお前達を見守ってきたんだ、まぁ…結構手出しはしたけどな…」

 

 

遊海はやろうと思えば全てを解決できた…三幻魔は自身が預かれば済む話だった…破滅の光はDDと斎王を決闘で殴り倒せば解決し…異世界編はユベル・ティエラの介入が無ければアヤカで全てを吹き飛ばし、十代の記憶を呼び覚ましユベルと再会させれば被害は最小限で済んだ…しかし遊海はそれをしなかった…知っていたからだ、十代や生徒達の歩む道すじを…自分の将来を決める戦いのロードを…。

 

「俺は知っていた…知っていたからこそお前達の歩む道を見ていたんだ、俺はそれを間違いだなんて思っちゃいない…これが俺なりのハッピーエンドの形だった、それだけだ」

 

「遊海先生…でもそのせいで自分の身体が…!」

 

「ああ、確かに痛かったし苦しかった…人形にされたり…銃で撃たれて身体を切断…挙げ句の果てには怪物になった…でも歴史を変えられたのなら軽すぎるぐらいの対価だったよ…さて長話はこれくらいにしよう、いけるな?アヤカ!」

 

《いつでもいけますよマスター!》

アヤカが遊海の隣に現れる

 

「さぁ…かかってこい!世界を救った覇王…遊城 十代!!伝説の決闘者『赤帽子』が相手だ!!」

 

「ッツ!?スゲぇ闘気だ!!」

口上と共に遊海から凄まじい圧力…戦いを望む闘気が溢れ出す…

 

《十代!あんな奴に負けるなよ!気合いで負けてどうする!》

 

「ユベル…ああ、わかってるさ!遊海先生…俺はあなたを超える…超えてみせる!!」

ユベルの激励を受けて十代は自分の力を開放する…!

 

 

「フッ…いい気迫だ!さぁ…来い!!」

 

 

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

 

 

 

十代LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「魔法カード『テイク・オーバー5』を発動!デッキから5枚を墓地へ!」

 

 

墓地送り

ダンディ・ライオン

ネクロ・ガードナー

クレイマン

Rーライトジャスティス

フレン・ドッグ

 

 

「墓地に送られた『ダンディ・ライオン』の効果!綿毛トークンを2体特殊召喚!」

2体の綿毛が現れる DEF0

 

「そして…『綿毛トークン』を生け贄に…来い!『ネオス』!!」

《ハァッ!!》

白き宇宙のHEROが現れる ATK2500

 

「フッ、いきなり全力だな!」

 

「当たり前だ!あなたには全力で挑まなきゃ勝てねぇ!俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

十代LP4000

ネオス 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「十代!見るがいい!俺の本気を!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「手札から魔法カード『召喚師のスキル』を発動!デッキから通常モンスター『クリフォート・ツール』を手札に加える!そして…マスタールール3…適用!!」

 

遊海のデュエルディスクの外装が弾け飛び、近未来的なデザインに変化する!

 

 

「スゲぇ!カッコいいぜ先生!」

 

「カッコいいのはこれからさ!手札からペンデュラムスケールにスケール9の『クリフォート・ツール』スケール1の『クリフォート・アセンブラ』をセッティング!!」

遊海の両隣に光の柱が立ち上がり2機の機械が現れる

 

「ペンデュラム…!?何なんだそれ…!」

 

「ペンデュラムモンスター…それはモンスターと魔法、2つの特徴を併せ持ったカードだ!今、『ツール』と『アセンブラ』は魔法カードとしてフィールドに存在している!」

 

「マジか!?何なんだよその力…!」

《ペンデュラム…振り子…モンスターと魔法、その2つを行き来するカードという事か…》

十代は驚き、ユベルは冷静に分析する…

 

「驚くのはまだ早いぜ!『ツール』のペンデュラム効果を発動!800ライフを払いデッキから『クリフォート・シェル』を手札に加える!」

 

遊海LP4000→3200

 

「さぁ…これがペンデュラムの真骨頂だ!我が魂を守る大いなる力よ!今こそその力を示せ!ペンデュラム召喚!レベル6『クリフォート・ゲノム』!レベル7『クリフォート・ディスク』!」

 

空間にゲートが開き巨大な機械達が現れる ATK2400→1800 ATK2800→1800

 

「なっ!上級モンスターの2体同時召喚!?」

 

「これがペンデュラム召喚!スケール1と9のカードがフィールドにある事で手札からレベル2〜8のモンスターを同時に特殊召喚できる!」

 

「そんなカードが…!これが先生の使う最強デッキ…!」

 

《ペンデュラム…振り子…モンスターと魔法の間を行き来するカードという事か、面白いじゃないか!》

十代は驚き、ユベルは冷静に分析する

 

「いくぞ!俺は2体のモンスターを生け贄に『クリフォート・シェル』を召喚!」

巨大な巻き貝の形をした機械が現れる ATK2800

 

「そして生け贄になった『ゲノム』の効果を発動!左の伏せカードを破壊する!」

 

「くっ!『ヒーロー見参!』が…!」

機械の幻影が現れ伏せカードを吹き飛ばす!

 

「バトルだ!『シェル』で『ネオス』を攻撃!」

巻き貝が回転しネオスに突進する!

 

「リバースカードオープン!『ヒーローバリア』!攻撃を無効にする!!」

回転するバリアがシェルを弾き返す…しかし

 

「まだだ!『シェル』は生け贄召喚された時、2回攻撃ができる!いけ!!」

 

「なっ!?マジかよ!!うわっ!?」

再び回転したシェルがネオスを破壊した

 

十代LP4000→3700

 

 

「俺はカードを2枚伏せてエンドフェイズ、そして『アセンブラ』の効果によりこのターン生け贄にしたクリフォートモンスターの数だけドローできる!2ドロー!…ターンエンド!」

 

遊海LP3200

シェル Pスケール ツール アセンブラ 伏せ2 手札2

 

 

 

「やっぱり強えな先生…!でも超えてみせる!!」

 

「やってみろ十代!お前が超えるべき壁はここにある!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「スタバイフェイズに墓地の『テイクオーバー5』の効果を発動!デッキと墓地の同名カードを除外して1ドロー!…これなら!!」

「俺は手札から『融合』を発動!手札の『フェザーマン』と『バーストレディ』を融合!来い!マイフェイバリット!『フレイムウィングマン』!!」

紅い竜の腕を持つHEROが現れる ATK2100

 

 

「まずいっ!(これは『摩天楼』からの大ダメージ√!?流石にヤバイ!)リバース罠『一回休み』を発動!自分フィールドに特殊召喚されたモンスターがいない時に発動できる!『フレイムウィングマン』を守備表示に変更し効果を無効にする!!」

 

フレイムウィングマンの足下に「一回休み」と書かれたマス目が現れ、膝をつく…落ち込んでいるようだ…

 

ATK2100→DEF1200

 

 

「ふぅ、危ない危ない…必殺パターンは防いだぞ…」

遊海は額の汗を拭う、サーチ効果でライフを減らしている遊海にとっては命取りであった…

 

 

 

 

 

 

「それはどうかな!」カンコーン☆

 

「なに?」

 

 

「先生!アンタから貰ったカードを使わせてもらうぜ!魔法カード『スカイスクレイパーシュート』を発動!」

 

「あっ!?ヤベッ!!」

 

「このカードの効果で『シェル』を破壊して攻撃力分のダメージを与える!行け『フレイムウィングマン』!スカイスクレイパーシュート!!」

《ハッ!!》

 

フレイムウィングマンが飛び上がりシェルに肉薄する、そして竜の腕から火球を放ちシェルを粉砕した!

 

「ぐっ!?うおぉぉ!?」

 

遊海LP3200→400

 

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

十代LP3700

フレイムウィングマン 手札0

 

 

 

 

「よしっ!勝ち目が見えてきたぜ!これなら『ツール』のサーチ効果も使えない!!」

 

「流石だな十代…この3年間で1番成長したのはお前だろう…そこらへんのプロじゃお前の相手にすらならないはずだ」

遊海は十代を褒める、それは心からの賞賛だった…

 

「遊海先生…」

 

「しかし…その程度で安心しちゃ駄目だな!デュエルは最後まで何が起きるかわからない!!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!…勝利の方程式はすべて揃った!いくぞ!十代!」カーン!

「俺はフィールド魔法『機殻の要塞』を発動!これで俺はクリフォートモンスターを2回まで通常召喚できる!」

フィールドが紫色の光に照らされる…

 

「さぁ…いくぞ!セッティング済みの『ツール』と『アセンブラ』でペンデュラムスケールをセッティング!我が魂を守りし大いなる力よ!再び力を示せ!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから舞い戻れ!『ディスク』『シェル』!!」

空間が開き再び巨大な機械達が現れる ATK1800 1800

 

 

「なっ!?そのモンスター達は墓地に行ったはずじゃ…!」

 

「ペンデュラムモンスターの最後の特性…それは破壊された時に墓地では無く融合デッキに表側で送られる!そしてペンデュラム召喚で再び呼び出す事ができる!!そして俺は2体のモンスターを生け贄に『クリフォート・アクセス』を召喚!」

赤いコアを持った機械が現れる ATK2800

 

「『アクセス』の効果発動!相手に自分と墓地のモンスターの数の差✕300ダメージを与え、自分はその数値分ライフを回復する!差は7枚!2100ダメージだ!」

 

「しまった!?うわぁ!!」

アクセスから打ち出された雷撃が十代のライフを削り…遊海を回復させる

 

十代LP3700→1600

遊海LP400→2500

 

「くっ…!ライフが逆転しちまった!」

 

「まだだ!俺はライフ800払い『ツール』の効果を発動!『アポクリフォート・キラー』を手札に加える!…さらに罠カード『機殻の凍結』を発動!このカードをモンスターとして特殊召喚!」

凍りついたクリフォートのコア部分が現れる ATK1800

 

遊海LP2500→1700

 

「そして『凍結』はアポクリフォートモンスターを召喚する時に3体分の生け贄にできる!」

 

「なっ!?トリプルコストモンスターだって!?」

 

「さぁ3体分の生け贄を糧に現われろ!我が相棒たる機殻の王!『アポクリフォート・キラー』!!」

《十代君!これが私の本体です!その目に焼き付けなさい!!》

空が割れ巨大なる要塞が降臨する…それこそが遊海が自分の身を預ける相棒…アヤカの真の姿だった ATK3000

 

 

「やっぱりデケェ…!これが遊海先生の切り札…!」

 

「そうだ!コイツこそが俺の切り札!我が相棒だ!『キラー』の効果を発動!相手は手札またはフィールドのモンスターを墓地へ送らなければならない!そしてお前は手札は無くモンスターはフィールドの『フレイムウィングマン』のみ!よって『フレイムウィングマン』を墓地へ送る!機殻王の選択!」

フレイムウィングマンは足下に展開されたゲートに飲み込まれて破壊される

 

「『フレイムウィングマン』!?」

 

「バトルだ!『キラー』で十代にダイレクトアタック!デストロイキャノン!!」

《主砲…発射!!》

キラーから放たれた極光が十代を飲み込んだ…

 

十代LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜あ…結局負けちまった…やっぱり強すぎるぜ遊海先生…良い所までいったと思ったんだけどな〜…」

キラーの攻撃を受けた十代は大の字で倒れていた…しかしその顔は晴れやかだった

 

「ああ、俺も少しヤバイと思ったよ!まぁ気にするな!今の俺は特級のチートだ、今のお前ならプロでもいい線いくと思うぞ?…立てるか?」

 

「ああ!よっ…と!」

十代は反動をつけて立ち上がる

 

「十代、お前進路はどうするんだ?前に城之内さんからプロに誘われてただろ?」

 

「進路は…まだ決めてねぇ、とりあえず世界を旅してみようと思ってる!…俺は遊海先生と同じように精霊と人間を繋ぐ力を持ってる…だから人と精霊の架け橋になれたらいいなって思うんだ!」

 

「そっか…俺は応援するよ十代!何かあったら俺を頼れ!すぐに駆けつけてやるよ!」

 

「ありがとう遊海先生!…俺、遊海先生と会えてよかった!!」

 

「それは俺のセリフだ十代…世界を救ってくれてありがとう!次はお前の道を進んでいけ!」

 

「ああ!」

遊海と十代は固い握手を交わした…それにより本当の意味で全てが終結したのだった…。

 

 

 

 

 

 

「ああ、十代は卒業できる…式は1週間後だ…早めに来ておいてくれ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間後・アカデミア

 

 

卒業デュエルから1週間…今日は遂にアカデミアの卒業式の日だ、最初はクロノス先生からの卒業デュエルの結果発表なのだが…

 

「発表したくないノーネ!!これを発表したら卒業になってしまうノ〜ネ!!卒業断固反た「チェスト!」アウチ!?…」

 

「鮫島校長、代わりにお願いします!俺はクロノス先生を保健室に…」

 

『ええ…わかりました…』

 

生徒達に悪影響だったので宝刀・首トンで気絶させ保健室へ…ついでに主席は同率で万丈目・明日香・翔の3人だった、しかし賞品であるレプリカデッキは1つ…でも…

 

「「「辞退します!」」」

 

3人はデッキを受け取らなかった、世界最強のデッキであろうと自分や対戦相手の想いが詰まった自分のデッキが1番だからと…

 

続いては送辞…担当は剣山なのだがガチガチに緊張している…なので

 

「剣山!」

 

「ヒィ!?ナ、何ザウルス遊海先モガ!?」

振り向いた剣山の口におにぎりをねじ込む…

 

 

「『ANo.63 おしゃもじソルジャー』の力を借りて作ったおにぎりだ…これを食べて落ち着け!十代達が心配せずに旅立てるようにしっかり送ってやれ!」

 

「モグモグ…ゴクン…あ、ありがとうザウルス遊海先生…なんだか元気が湧いてきたドン!!」

 

 

『続いて在校生からの送辞です、在校生代表ティラノ剣山君!』

 

「行ってくるザウルス!!」

 

「おう!行ってこい!」

 

そうして剣山は素晴らしいスピーチを卒業生へと送った…そして卒業生代表の明日香も素晴らしい答辞を行ない会場は拍手に包まれ卒業式は滞りなく進んだ…そして…

 

 

『最後に今年度を持ってアカデミアを離れられる白波 遊海さん、同じく翠さんへの花束の贈呈です!本来であれば終業式に行なう事ですが遊海さんはプロへ復帰する用意があるためこの場を借りて行ないます!どうぞ上がってきてください!』

 

「へっ!?聞いてないぞ!?」

 

「とにかく行きましょう遊海さん!」

 

 

 

校長からのサプライズに慌ててデュエルリングへと上がる…そこには花束を持ったレイと藤原がいた…

 

「藤原…」

 

「遊海先生…オレはアカデミアに残って一からやり直します!あなたに助けて貰った事を無駄にしないために!」

 

「そっか…一応留年扱いだから苦労するかもしれないが頑張ってくれ!辛い事があったら俺に相談しろよ?」

 

「はい!ありがとうございます!…お疲れ様でした!!」

 

「ああ!ありがとう!」

 

 

 

「翠さん…ヒック…短い間でしたけどありがとうございました!!」

 

「レイちゃん…泣かないで…可愛い顔が台無しよ…大丈夫!学園祭にはまた来るから!ね?」

 

「翠さ〜ん!!」

 

「よしよし…頑張ってね…大丈夫貴女なら立派な人になれるから…」

 

 

 

そうして無事に卒業式は終了したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカデミア・レッド寮

 

「ようやく全部終わりましたね…短いようで長い学園生活でした…」

 

「ああ…そうだな、でも無事に乗り切る事ができた…ありがとう翠」

 

「はい!ありがとうございます遊海さん!」

卒業式を終えた俺達は自室にて荷物を整理していた、荷造りもあらかた終わり後は運び出すだけである…

 

 

《マスター、翠さんお疲れ様でした…プロリーグの開幕までまだ1月近くあります…少し休まれてはいかがですか?》

 

「そうだな…俺もまだ完璧ではないからな、少しのんびりしたい…」

遊海は生徒達の前では平気そうにしていたが…実際は全身筋肉痛のような状態が1週間以上続いている…半日以上に及ぶ戦い…それは遊海の身体に凄まじいダメージを残していた…

 

 

「しばらくは痛いのはコリゴリだよ…いつつ…」

 

「言っても効かないと思いますけど、もう少し自分の身体を大切にしてください遊海さん…」 

 

「アハハ…善処するよ…」

 

 

ピリリリ…ピリリリ…

 

「ん?はい白波…ああわかった、今連れて行くよ」ピッ

 

 

「翠、ちょっと行ってくる」

 

「何処へ行くんですか?」

 

「真の卒業デュエルさ!」

 

 

 

 

 

 

デュエルアカデミア

 

 

「ありがとうデュエルアカデミア…さよならだ」

十代はアカデミアに礼をし島を離れようとする…皆は卒業パーティーをしているが十代は静かに島を出ようとしていた…

 

「ちょっと待った!」

 

「遊海先生…!どうして此処に?」

十代の背後に遊海が現れる

 

「パーティーに参加しないで島を離れるのは勝手だが…お前にお客さんだ!ちょっと来い」

 

「俺に…?わかった!」

《クリクリ〜!》

十代は遊海に付いて校舎へと入っていった…

 

 

 

 

 

レプリカルーム

 

 

《クリクリ〜!》 

 

「さぁ、入れ十代…お前の会いたい奴が来ている…」

 

「ここは…」

遊海に連れられた十代は決闘王のデッキのあるレプリカルームを訪れる…そして…

 

 

 

『待っていたよ遊海…そして遊城 十代君!』

 

「ああ、待たせたな遊戯…」

 

「あ、貴方は…!武藤 遊戯…さん…!?」

 

レプリカルームで待っていたのは決闘王を冠する決闘者…遊戯だった、憧れの人物に出会った十代の声は震えている

 

『十代君…早速だが始めようキミの「本当」の卒業デュエルを!』

 

「本当の…卒業デュエル…?」

 

『キミはこの三年間で、とても強くなった。そして幾つもの試練を乗り越え、頼もしい大人に成長した…けれど、その為に失ったものもある、そう…君自身は気付いていない…大切なものだ…、キミはそれを取り戻さなければならない…さあ、十代君…「ハネクリボー」のカードをレプリカデッキに翳すんだ』

 

「ハネクリボーのカードを…?」

十代はデッキからハネクリボーのカードを取り出す

 

「そうだ、デュエルモンスターズには人を繋ぐ力がある…十代、ハネクリボーがお前が無自覚に失くしてしまったモノ…それを取り戻させてくれる決闘者の所へお前を連れて行ってくれる!さぁ…行ってこい!」

 

「遊海先生…遊戯さん…ああ!」

十代はレプリカデッキにカードを翳す…そしてカードから光が溢れ十代はその場から消え去った…

 

 

 

「まったく…デュエルモンスターズは不思議なもんだよ、時間も空間すらも超えて決闘者を出会わせる…」

 

『ああ、きっと今頃出会っているはずだよ…彼と…』 

 

「ああ…そういえば十代と遊戯って前に面識あるよな?何故だか覚えてないんだが…」

 

『うん、彼じゃない十代君と…未来の決闘者と会った事があるよ!』

 

「やっぱりそうか…なんで俺覚えてないんだ…?」

 

 

 

 

 

 

???

 

 

 

「ここは…童実野町…?」

 

十代が気がつくと見覚えのある町へと立っていた…そこは修学旅行で訪れたデュエルの聖地・童実野町だった…

 

 

 

「お前は…遊城 十代!?何故ここにいる!?」

 

「えっ…あ…遊海先生!?なんで…!?」

 

「先生…?」

十代は何者かに声をかけられる…それは今さっき別れた遊海だった…しかし…

 

「…そういう事か、遊城 十代…ここはお前から見ての『もしも』の世界だ、俺はお前とはまだ出会っていない…ここはお前の時代から約10年前…そのもう一つの可能性の世界だ…!」

 

「もしもの世界…?」

《どういう事だい?》

 

「ユベルもいるのか…まぁこれを見た方が早いな…見てみろ」

そう言いながら遊海はスポーツ新聞を渡す…そこには…

 

 

【武藤 遊戯くん!バトルシティV2成し遂げた!】

 

 

「いぃっ!?」

見出しを見て十代は驚く、そこには若い遊戯や遊海と仲間達が写っていたからだ…

 

「たぶん未来の遊戯や俺に送り出されたんだろう?ならさっさと用事を済ました方がいいな!頼むよ…遊戯!」

 

「えっ!」

 

「久しぶり…いや初めましてかな?十代君!」

振り向いた十代の後ろ…そこには首から千年錘を下げた遊戯の姿があった…

 

 

「遊戯…さん…!」

 

「夢のお告げで聞いたんだ!僕に挑んでくる決闘者がいるから戦ってほしいって!キミの事だったんだ!」

 

「?…遊戯?なんで十代と面識があるんだ…?」

 

「この前色々あったんだよ!さぁ!デュエルをしよう!十代君!」

 

「はい…!よろしくお願いします!」

 

 

そして十代と遊戯のデュエルが始まる…ブラックマジシャンとネオスが激突する…互いにしのぎを削る、そして十代は思い出した…自分の失ったモノ、それはデュエルを楽しむ心…すなわちワクワクだった…。

 

世界を賭けた戦いの中で十代はデュエルを楽しむ事を忘れてしまっていた…それを遊海は思い出させようとしたのだ、そして最強の決闘者が目を覚ます!

 

『十代君!君ほどのデュエリストならその相手は「神」こそがふさわしい!いでよ「オシリスの天空竜」!!』

《ギャオオオン!!!》

遊戯…否、アテムはついに神を召喚する…そして十代は取り戻す事ができた!その心を!

 

「遊戯さん!遊海先生!俺は忘れない!2人が俺にくれた最高の時間を!俺は大人になっても忘れない!このワクワクを!行くぞ!ネオス!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…これは成長の物語…

 

…1人の少年が大人へと至る旅路…力を…絆を次の世代へと受け継ぐ物語…

 

…それこそがGX…Generations neXt

 

…希望への物語だ…

 

 

 

 

 

 

           第2部 遊戯王GX編 完




これにて「決闘の観測者」GX編完結となります!
連載開始から約半年…ここまで連載できたのもグダグダな拙作をお気に入り登録してくださっている250名を超える方々のおかげです!本当にありがとうございます!!



そしてこれからの連載予定ですが5D.s編に入る前にオリジナルストーリーを挟み、それから5D.sの物語へと移りたいと思います!これからもどうぞ「決闘の観測者」をよろしくお願いします!

また、アンケートも引き続き受け付けてますのでよろしくお願いします!













Next Episode?








『大災害「ゼロ・リバース」から17年の時が経ちました…旧童実野町を半壊させ、2つに分断したこの災害は…』




「遊海さん、そろそろマーサハウスに行きましょう、子供達が待ってますよ」

「ゴホッゴホッ…そうだな…行こう…」




動く物語…






「おい…デュエルしろよ…!」


「キングは1人!このオレだぁ!!」


「翔べ!ブラックバード!」


「私は黒薔薇の魔女…全てを破壊するわ…」


「龍可はオレが守る!」


「龍亜はわたしのヒーローだから…!」




赤き龍の痣に導かれ集う決闘者達…




「ヒャハハハーさぁ満足させてくれよ!!」


「レクス・ゴドウィン…貴様だけは許さん!!」


「貴方には死相が見えるわ…気をつけて…」


「ルドガー様に忠誠を…!」


「それがお前の心の闇か…」



蘇りし闇の決闘者達…


「よぉ!白波…冥界の底から蘇ったぜ…!」


「まさか…お前と戦う事になるとはな…!」


時を超え対峙する決闘者…



「俺は遊星達と世界を救う!!」





決闘の観測者 第3部 遊戯王5D's編 近日執筆予定!







『我が絶望を超えてみせろ!白波 遊海!!』


「決着を着けるぞ!『ゲイザー』!俺は…お前を超える!!」


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断章〜英雄決闘都市 バトルシティ・レジェンド〜
新たなる戦い〜謎の決闘者〜


新章開幕!
オリジナルストーリーとなりますが…よろしくお願いします!


「『デュエル!!』」

 

 

 

 

城之内LP4000

遊海LP4000 

 

 

 

 

 

 

 

「いくぜ遊海!オレのターン!ドロー!」

「魔法カード『デンジャラスマシーンTYPEー6』を発動!そして儀式魔法『黒竜降臨』を発動!手札のレベル4『ワイバーンの戦士』を生け贄に『黒竜の聖騎士』を儀式召喚!」

黒い竜に乗った騎士が現れる ATK1900

 

「『聖騎士』の効果を発動!自身を生け贄にデッキから『真紅眼の黒竜』を特殊召喚!」

竜騎士が剣を掲げその身を粒子に変える…そして新たに可能性の竜たる黒竜が現れる ATK2400

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

城之内LP4000

レッドアイズ デンジャラスマシーン 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

「先攻でレッドアイズ…やりますね!」

 

「当たり前だ!実力をつけてるのはお前だけじゃないぜ!」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札から魔法カード『竜の霊廟』を発動!デッキから『龍王の聖刻印』と『ギャラクシーサーペント』を墓地に送る!さらに魔法カード『超再生能力』を発動!そして『聖刻龍ートフェニドラゴン』を特殊召喚!このカードは相手フィールドにのみモンスターがいる時、特殊召喚できる!」

《出番ですな!》

白いウジャト眼を刻んだ竜が現れる ATK2100

 

 

「そして『トフェニ』をリリースし『聖刻龍ーシユウドラゴン』を特殊召喚!このモンスターは聖刻モンスターを生け贄に特殊召喚できる!さらに『トフェニ』の効果で墓地の『ギャラクシー・サーペント』を特殊召喚!」

青いウジャト眼を刻んだ竜と星のように輝く翼竜が現れる ATK2200  DEF0

 

 

「そして『シユウ』をリリースし『エレキテルドラゴン』を召喚!リリースされた『シユウ』の効果で墓地の『龍王印』を特殊召喚!」

尾がスパークしている竜と紫のウジャト眼を刻んだ月光石が現れる ATK2200  DEF0

 

 

「さらに俺はレベル6の『龍王印』にレベル2チューナーモンスター『ギャラクシーサーペント』を()()()()()()!」

 

ギャラクシーサーペントがその身を緑色の輪に変え、龍王印を包みこむ!

 

6+2=8

 

「白銀の翼を持つ竜よ!今こそ羽ばたけ!!シンクロ召喚!『()()()()()()()()()()()!』」

煌めく身体を持った白き龍がフィールドに舞い降りる ATK2500

 

 

「バトルだ!『エレキテル』で『真紅眼』を攻撃!」

 

レッドアイズがエレキテルの尾で打ち据えられ破壊される!

 

「ぐぅ!?いきなり飛ばしてくるなぁ!?」

 

城之内LP4000→3900

 

「さらに『スターダスト』でダイレクトアタック!響け!シューティングソニック!」

白銀のエネルギーがスターダストの口に収束し放たれる!

 

「させるか!リバースカード『攻撃の無力化』!バトルフェイズを終了する!」

青い渦巻きがスターダストの息吹を吸収する!

 

「防がれたか…!このままエンドフェイズ!『超再生能力』の効果で2ドロー!…ターンエンド!」

 

遊海LP4000

エレキテル スターダスト 手札3

 

 

 

 

「流石遊海だな!しっかり使いこなしてやがる!」

 

「まぁ俺的にはこれの方がやりやすいですからね!」

 

「それでもオレは負けねぇぜ!」

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに『デンジャラスマシーン』の効果が発動!ダイスロール!!」

 

 

出目は…5!

 

「よっしゃ!!『スターダスト』を破壊だ!」

デンジャラスマシーンからミサイルが発射される!

 

「その時!『スターダスト』の効果を発動!このカードをリリースし『デンジャラスマシーン』の破壊効果を無効にし破壊する!ヴィクテム・サンクチュアリ!!」

《ギュアアアン!!》

咆哮と共にスターダストがその身を粒子へ変える…するとミサイルが反転しデンジャラスマシーンが砕け散った!

 

「なっ!?そんな効果があるのか!?でもやれるだけやってやる!『切り込み隊長』を召喚!」

鎧を纏った歴戦の騎士が現れる ATK1200

 

「『切り込み隊長』の効果発動!手札から『共闘するランドスターの剣士』を特殊召喚!」

自身の持つ不思議な力を開放した妖精剣士が現れる ATK500

 

「いくぜ!レベル3の『切り込み隊長』にレベル3の『ランドスターの剣士』をチューニング!」

 

3+3=6

 

「来い!人馬一体の騎士!『大地の騎士ガイアナイト』!」

文字通り人馬一体となった騎士が現れる ATK2600

 

「バトルだ!『ガイアナイト』で『エレキテル』を攻撃!螺旋槍殺!」

騎士の馬上槍がドラゴンを穿ち破壊した!

 

「くっ!?」

遊海LP4000→3900

 

「よっし!これでターンエンドだ!」

 

「エンドフェイズに『スターダスト』がフィールドに帰ってくる!再び飛翔せよ!『スターダスト・ドラゴン』

!」

銀色の粒子と共に白銀の龍がフィールドへ帰還する ATK2500

 

城之内LP3900

ガイアナイト 手札0

 

 

 

「一矢報いたぜ!遊海!『ガイアナイト』の方が攻撃力は上だ!次のターンでそいつも倒す!」

 

「簡単にはやらせません!勝負はこれからだ!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地の『龍王印』『サーペント』『トフェニ』『シユウ』『エレキテル』をデッキに戻して2ドロー!…さらに手札から『星呼びの天儀台』を発動!手札の『龍王印』をデッキの下に戻して2ドロー!さらに魔法カード『招集の聖刻印』2枚を発動!デッキから聖刻モンスター『神龍の聖刻印』『シユウドラゴン』を手札に加える!」

 

 

「おいおい!どんだけ手札交換するんだよ!?」

 

「城之内さんに勝てる手札が揃うまで!手札から『トレードイン』を発動!手札の『神龍印』を捨て2ドロー!…来た!手札から魔法カード『銀龍の轟咆』を発動!墓地の『神龍印』を特殊召喚!」

赤いウジャト眼を刻んだ太陽石が現れる DEF0

 

「さらに『神龍印』をリリースする事で『シユウドラゴン』を特殊召喚!さらに『シユウ』をリリースして『エレキテルドラゴン』を召喚!『シユウ』の効果でデッキから『ギャラクシーサーペント』を特殊召喚!」

フィールドに一瞬青い龍が現れるがすぐに尾がスパークした竜と星の竜へと変化する ATK2500 DEF0

 

 

「また来るのか!?」

 

「いきます!レベル6の『エレキテルドラゴン』にレベル2『ギャラクシーサーペント』をチューニング!」

 

6+2=8

 

「荒ぶる王者がここに顕現する!現われろ!『レッドデーモンズ・ドラゴン』!!」

赤い悪魔の名を冠する竜が降臨する! ATK3000

 

「攻撃力3000だと!?」

 

「バトル!『レッドデーモンズ』で『ガイアナイト』を攻撃!アブソリュート・パワーフォース!!」 

悪魔の竜が大地の騎士を掌底で押し潰す!

 

「ぐぅぅぅ!?凄まじいパワーだ!!」

 

城之内LP3900→3500

 

 

「さらに『スターダスト』でダイレクトアタック!シューティングソニック!」

白銀のエネルギーが城之内に直撃する!

 

「ぐあああああ!!」

 

城之内LP3500→1000

 

「ハァ…ハァ、ターンエンド!」

遊海LP3900

スターダスト レッドデーモンズ 手札1

 

 

 

 

「やっぱり強えな遊海…!オレが逆立ちしたってお前に勝てる可能性は0に近え…」

 

「城之内さん…」

 

「それでも…!オレは最後まで諦めねぇ!!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

「まだツキはあるみたいだな…!魔法カード『スケープゴート』発動!羊トークンを4体特殊召喚!」

カラフルな羊達が現れる DEF0 ✕4

 

「これで1ターンは耐えられる!ターンエンドだ!」

 

城之内LP1000

羊トークン✕4 手札0

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

「バトル!『レッドデーモンズ』で『羊トークン』を攻撃!灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!」

灼熱の炎が羊トークンを焼き尽くす…

 

「ぐっ…!これで残り3体!」

 

「いや…0体だ!『レッドデーモンズ』の効果発動!このモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時!相手フィールドの守備モンスターを全て破壊する!デモン・メテオ!!」

 

「なんだと!?」

灼熱の炎が城之内のフィールド全体に広がり羊トークンを全て破壊する…

 

「これでトドメだ!『スターダスト』で攻撃!シューティングソニック!!!」

白銀のエネルギーが城之内を飲み込んだ…

 

城之内LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『決まった〜!!!初代バトルシティから10年!ついに…ついに白波 遊海がプロリーグ優勝だぁぁぁ!!』

 

「「「わぁぁぁぁ!!!」」」

 

 

「遊海…やっぱりはお前スゲぇ、お前がナンバー1だ!」

 

「はい…!ありがとうございます!城之内さん!」

 

 

…アカデミアでの一連の事件から1年が経った、プロリーグへと復帰した俺はシンクロ召喚が解禁されたプロリーグへ本気で挑み1位を勝ち取った、そしてシンクロが解禁されデュエルモンスターズはさらなる熱狂に湧いていた…。

 

『それではプロリーグ主催者KC社長海馬 瀬人氏からのトロフィーの授与です!!』

デュエルリングに海馬社長が上がり俺にトロフィーを手渡す…

 

「白波 遊海!見事な戦いだった!新たなる召喚が解禁されたプロリーグでの優勝!これは歴史へと刻まれるだろう!!これからも貴様の活躍を期待する!!」

 

「はい!ありがとうございます!」

ずっしりとした金属の重みが腕にかかる…長かった…かな…

 

そして社長が会場へと向き直る

 

「そして!この場でオレは発表する事がある!!」

 

 

「海馬社長が発表…?」ザワザワ

 

「なんだろう…?」

スタジアムがざわめきに包まれる…

 

 

「第一回のバトルシティから10年の時が経った!デュエルモンスターズは社会へと浸透し欠かせぬモノになりつつある!!…そこで…今一度『決闘王』の称号を賭けた戦い、すなわち…『バトルシティ・レジェンド』の開催をここに宣言する!!」

 

「バトルシティ…」

 

「レジェンド…?」

社長の宣言にスタジアムは騒然となっている…

 

「従来のバトルシティではプロの参加を制限してきた…しかし今回はその制限を撤廃する!!最強の称号…『決闘王』を手にしたい者は老若男女を問わん…再び決闘都市・童実野町へ集うがいい!!」

 

 

「「「わぁぁぁぁ!!!」」」

 

「海馬社長…マジか…」

特大の爆弾を投下しプロリーグは幕を閉じたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KC 社長室

 

 

「海馬社長、それでは『スターダストドラゴン』『レッドデーモンズドラゴン』『エンシェントフェアリードラゴン』『ブラックローズドラゴン』はお返しします」

 

「フゥン、テスターご苦労だった遊海…カードに異常は無いな?」

 

「はい、今の所は何も…」

 

「そうか、それならば安心して制御装置として使う事ができる…ペガサスは信用できんからな…」

 

「あはは…」

 

 

俺が先のデュエルで使った『スターダスト』『レッドデーモンズ』はオリジナル…すなわち後に遊星達が手にするカードそのものだった…まさか俺がこのカードを使う事になるとは…

 

 

 

事の始まりは半年前、海馬社長へペガサス会長がこのカードを持参して訪ねて来たのだ…ペガサス会長曰く。

 

『夢でレッドなドラゴンがこのカードのイメージをくれたのデース!』との事らしい。

 

そして海馬社長は新エネルギー機関「モーメント」の制御装置にこのカードを組み込む事を決定…したのだが、以前の三幻神・三邪神騒動の二の舞にならないようにカードを俺へと預け、問題の有無・シンクロの宣伝も兼ねてプロリーグでドラゴン達を使わせたのだ…。

 

「そういえば海馬社長、『バトルシティ・レジェンド』なんて…応募者がすごい人数になるんじゃ…?」

 

「うむ、だから各国で予選を行ない本戦のメンバーは400人程度に抑えるつもりだ…今までのようにはいかんぞ遊海?」

 

「わかってます、俺も本気でいきますから…!」

 

「フゥン!ならば良い、それからオレも本戦から参加するつもりだ…手加減は無用だ!本気で来い!遊海!」

 

「ファ!?…大会が荒れそうだ…」

 

 

コンコンコン…

 

 

「入れ!」

 

『失礼します…制御装置の鍵が用意できたとか…む…遊海さんもご一緒でしたか!プロリーグ優勝おめでとう!』

 

「不動博士!お久しぶりです!ありがとうございます!」

ノックと共に入ってきたのは蟹パパこと不動博士、研究者然としているが遊戯王屈指の良い父親である。

 

「来たか、これが制御装置の鍵となるシンクロモンスター達だ!」

社長はカードの入ったファイルを博士へと手渡す。

 

『この4枚が…確かに受け取りました!これから「モーメント」稼働実験へと移行します!』

 

「(…モーメント稼働実験…!そこまで…来ている…)」

遊海の心中は複雑だった、「ゼロ・リバース」…たくさんの人命が失われる大災害…それが起きなければ未来はいわゆる正史…ZーONEの未来へと至ってしまう、それを見過ごさなければならないのだ…。

 

 

「不動博士!お前の研究は人類にさらなる進化をもたらすモノになるはずだ!期待しているぞ!」

 

『はい!海馬社長!必ず実験を成功させてみせま「prrr…prrr…」むっ…失礼します』

 

「いいだろう…頼んだぞ不動博士!」

 

『すいません失礼します!…もしもし?どうした?』

不動博士は社長室を去る…その刹那…

 

『「遊星」が熱を…!?』ガチャ

 

 

「!!」ドクン

 

 

不動博士の言葉を聞いた遊海の心臓は跳ね上がる…「不動 遊星」は既に生まれていた…!時間は無い…!

 

 

「…遊海?顔色が悪いな?今日プロリーグで優勝した者の顔では無いぞ…これから祝勝会だろう?早く行くがいい!」

 

「あ…そうでした!?失礼します!!」

そうして俺は社長室を後にした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

童実野町 某ホテル

 

 

『それでは!遊海さんのプロリーグ優勝を祝して…カンパーイ!!』

 

 

「「「「カンパーイ!!」」」」カチーン!

 

Mrスマイルの音頭の下、俺の優勝を祝した祝勝会が始まる…会場にはプロデュエリストの他100名程の人が来てくれている…

 

 

「遊海ィ!やっぱりお前に抜かされちまったな!でもこれからが大変だからな?主に挑戦者と取材的な意味で!」

 

「城之内さん…」

少し顔を紅くした城之内が遊海に絡んでくる、舞台を降りれば親友同士…彼がいるのは当然の事だ

 

「おい城之内!あんまり遊海に絡むんじゃねぇよ!」

 

「いいじゃねぇか本田ぁ!今日はめでたい日なんだからさぁ!イテッ!?」

城之内を止めに来た本田に悪態をついていると城之内が耳を引っ張られる…

 

「こら克也!遊海に迷惑かけるんじゃないよ!!…まったく酔うといつもこうなんだから…ほら行くよ!!」

 

「ちょ!?舞?待ってくれ〜!!」

 

「…ドンマイです城之内さん…」

悪酔いした城之内は舞に引きづられていった…。

 

 

 

 

「遊海先生、優勝おめでとうございます、やはりあなたは強すぎる…本気を出させずにやられてしまいました…」

 

「悪いなカイザー、でもお前も強かったぞ?そういえば新しいプロリーグの件はどうなった?」

 

「はい!翔と一緒に準備を進めています!楽しみにしていてください!」

 

「ああ!待ってるよカイザー!」

 

 

 

 

「遊海さん!優勝おめでとうございます!良いデュエルでした!」

 

「ああエド!ありがとう!…親父さんはどうだ?」

 

「はい!すっかり良くなりました!今は新たなカードの製作に取り掛かってます!」

 

「そうか!それは楽しみだ!」

 

 

 

 

………

 

 

 

「ふぅ〜…一休み一休み…」

パーティーへ来てくれた人達への対応を粗方終えた俺はバルコニーで休んでいた…

 

《お疲れ様ですマスター…大丈夫ですか?》

現れたアヤカが声をかけてくる

 

「ああ、大丈夫だよアヤカ…少し人混みに酔っただけだから…」

 

《たくさんの人達が来てくれてますからね〜》

 

俺のプロリーグ優勝を祝したパーティーには100人程の人達が来てくれた、それはプロデュエリストだったり、本田君のような昔からの友達だったり様々である。

 

《…マスター、大丈夫ですか…?》

 

「?どうした?大丈夫だよ」

 

《いえ…先程海馬社長と話してから少し顔色が悪かったので…不動 遊星の誕生が関係していますね?》

 

「良く見てるな…」

 

《何年マスターの相棒をしてると思ってるんです?少しでも様子が変なら気づきますよ!…時間がないんですね?》

 

「ああ…大災害『ゼロ・リバース』…それは遊星が誕生して1年以内に起きてる…つまりもう少しでこの町の…たくさんの命が……!」

遊海はバルコニーから童実野町を見下ろす…そこにはたくさんの人々が生活している…。

 

「ゼロ・リバースが起きなければ…未来は破滅のルートを辿ってしまう…でも…俺は…!」

 

 

 

「…助けたいんですよね、遊海さん」

 

「…翠…」

拳を握りしめる遊海に翠が声をかける…その姿は綺麗なドレス衣装だった

 

「『ゼロ・リバースを起こさせず皆を守りたい』…それが遊海さんの本音なんですよね?…だったらやってみましょうよ!遊海さんにはそれが出来る力があるじゃないですか!」

 

「俺の…力…D・ホイール…」

 

転生特典の一つとして神様から貰ったD・ホイール…それには完成形のモーメントが搭載されている、それを海馬社長や不動博士に伝えれば…可能性はある…!

 

「翠…ありがとう、ちょっと行ってくる…!」

 

「はい!未来を変えましょう!遊海さん!」

俺は決意を固める…未来を守る…守ってみせる…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ翠、ちょっと行ってくる!先に帰っててくれ!」

 

「はい!気をつけて!安全運転ですよ!」

 

「ああ!『アクセラレーション』!」

 

パーティーを終えた俺は翠と別れKCへと向かう、海馬社長にはアポを取っているから大丈夫だろう…そして俺はDホイールを走らせた…

 

 

 

 

 

「やっぱり速度がケタ違いだなこれは…!」ギュイーン

 

前世ではバイクに乗った事のない俺だったが今は風となっている…と

 

『ピカピカ…』

 

「むっ…パッシング…?白バイか?スピード出しすぎたか…」

後ろにバイクが現れパッシングされる、バックミラーには大型のバイクが写っている…

遊海はスピードを落としそのバイクに先を譲る…白バイにしろ他のバイクにしろ譲れば何かしらの反応があるはずだからと…

 

 

 

『ピシッ!』

 

 

[デュエルモードスタンバイ!フィールド魔法『スピードワールド』発動!]

 

「なにっ!!?」ギュイイーン!!

バイクはすれ違いざまに赤い光線をDホイールに照射する、するとデュエルモードが強制的に発動され『スピードワールド』が発動される!

 

「まさか…未来人…『イリアステル』か!?ぐっ!?」

急激にスピードを上げたホイールを制御しながら遊海は叫ぶ

 

「(イリアステル…最後の未来人であるZ-ONEが創設した未来を救うために手札過去を改竄し未来を変えようとする組織だ…しかし目の前にいる人物を()()()()()()!アンチノミーでもアポリアでもパラドックスでもない…!アイツは誰だ!?)」

 

『我が名は「ゲイザー」…決闘シロ、白波 遊海!決闘によってお前を排除する!」

ボイスチェンジャーの声でゲイザーと名乗る男?はデュエルを仕掛けてくる…やるしかない!

 

「いいだろう!受けて立つぞ未来人!俺はこの町を守る!!」

 

『やれるならやってみろ()()()()()()!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ライディングデュエル・アクセラレーション!!』」

 

 

 

遊海LP4000

ゲイザーLP4000

 

 

ライディングデュエル

フィールド魔法『スピードワールド』常時発動

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」スピードカウンター1

「…(こんな時に手札事故…!)手札から魔法カード『トレードイン』を発動!『神龍印』を捨てて2ドロー![魔法カード使用ペナルティ2000ポイント!]なに!?ぐあぁぁ!!?」

魔法カードを使用した遊海をペナルティの雷撃が襲う!

 

遊海LP4000→2000 スピードカウンター1→0

 

「ガッ…ちょい待て闇のデュエルかよ…!ぐぅぅ…!!」ギュリリリ!

雷撃を受けてふらついた機体を慌てて立て直す…視界は痛みで明滅している…

 

《マスター!ご無事ですか!!》

 

「無事ではないな…!アヤカ!アイツの正体を探れ!ヒトかロボか!それだけでもいい!」

 

《わかりました!!》

 

実体化したアヤカへと指示を飛ばし体勢を立て直す

 

 

『精霊を友とする歴代最強レベルの決闘者…その程度か…』

 

「チイッ!いきなりライディングデュエルを仕掛けてきて何を言ってやがる…!俺は『聖刻龍一ドラゴンゲイブ』を召喚!」

Dホイールに並走するようにオレンジ色の龍が現れる ATK1800

 

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

遊海LP2000

ゲイブ 伏せ1 手札4 

 

 

 

 

「おい…なんだよアレ…!」

 

「バイクに乗りながらデュエルだって…!?」

 

「しまった…!見られた…!」

今俺は町の中を走っている、よって人目はある訳で…今は見られる訳にはいかない…!そうだ童実野港…!

 

「ゲイザー!付いてこい!!」

 

『フッ…いいだろう…』

ダメージを受けて減速したホイールを無理やり加速させゲイザーを誘導する…しかしデュエルは止まっていない…!!

 

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』スピードカウンター0→1

『「魔界発現世行きデスガイド」を召喚!』

黒いコスチュームのバスガイドが現れる ATK1000

 

「『デスガイド』だと…!?」

 

『「デスガイド」の効果発動!手札から「彼岸の悪鬼グラバースニッチ」を効果を無効にして特殊召喚!』

 

「『彼岸』…!?貴様…まさか…!」

犬頭の黒い悪魔が現れる ATK1000

 

 

『オレはレベル3の「デスガイド」と「グラバースニッチ」で()()()()()()!』

闇の銀河に2体のモンスターが飛び込む!

 

「ッ…!!」

 

『2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!地獄を彷徨う旅人よ…汝が罪を燃やせ!ランク3「彼岸の旅人 ダンテ」!』

赤いジャケットを着て頭に月桂冠を載せた男が現れる ATK1000

 

 

《マスター!ゲイザーは「人間」です!!ただし、詳しいデータが隠蔽されています!!》

 

「…ああ、わかってる…アイツは…『転生者』だ…!!」

この時代…いやイリアステルでも「エクシーズモンスター」を持っている筈がない…!

つまり俺と同じ「転生者」しかありえない!!

 

 

『「ダンテ」の効果を発動!ORUを一つ取り除きデッキ上から三枚のカードを墓地に送り攻撃力を1500アップする!』

素材

グラバースニッチ

 

墓地送り

スカラマリオン

ラビキャント

ファーファレル

 

ATK1000→2500

 

『墓地に送られた「彼岸の悪鬼 ファーファレル」の効果発動!「ドラゴンゲイブ」をエンドフェイズまで除外する!』

 

「しまっ…!」

角の生えた無貌の悪魔の幻影がドラゴンゲイブを連れ去る!

 

『…これで貴様の場はガラ空きだ…消え去るがいい!「ダンテ」でダイレクトアタック!地獄の贖罪!!』

地獄の炎を纏った剣が遊海を斬り裂いた!

 

「うわぁぁぁ!!?」

 

 

 

遊海LP0

 

ゲイザー WIN!

 

 

 

 

 

 

 

ギャギャギャ…ズガーン!!

 

「グッ…カフッ…!!また…かよ…!」

 

闇のデュエルの影響で制御を失ったDホイールは埠頭にあったコンテナへと激突する…遊海は機体に挟まれ身動きが取れない…

 

 

シュイイーン…

 

 

『…情けない姿だな白波 遊海、オレと対峙しているのに手を抜くからだ、「クリフォート」でくればいい勝負だったろうに…いやペナルティがあるか?…まぁいい』

Dホイールを停止させゲイザーは遊海の近くに歩みよる、ゲイザーは黒いコートと仮面を被っていた…

 

 

「貴様…は、何だ…何故俺を狙う…!」

 

『死にいく者に名乗るものではないが…教えてやろう、我が名は「観測者」ゲイザー…イリアステル滅四星の一人だ、白波 遊海…破滅の未来を回避するために貴様には死んでもらう…!』

 

「お前…俺と同じ『転生者』だろ…?何故イリアステルに…!」

 

『貴様が知る必要はない…一足先に絶望を体験し…果てるがいい…!』

 

「なに…?」

そう言うとゲイザーはその手から黒い光を遊海のDホイールへと当てる…すると急激にエンジン…モーメントの回転数が上がっていく…!

 

『モーメントは人の負の感情により逆回転を起こす、そうなれば…どうなるかな…?』

 

「!?まさか…!!アヤカ!トフェニ!ホイールを退けてくれ!!」

 

《はい!!》

 

《御意!!》

ゲイザーの真意に気づいた遊海は急いでDホイールを退けようとする…しかし…

 

 

『もう遅い、さらばだ赤帽子の決闘者よ…』

Dホイールに跨ったゲイザーはその場から走り去る…そして…

 

 

「ぐっ…!!チクショウ!こんな所で…死ぬ訳には!!」

 

《マスター!!!》

 

 

 

ギュイイン……ドオォォォン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の新聞、その1面にはこのような見出しがあった…

 

 

 

『童実野埠頭で謎の爆発!埠頭の一部が消失!?』

 

写真にはコンクリートが抉れクレーター状になった埠頭の無残な姿があった…。

 




オリジナルカード

フィールド魔法『スピードワールド』

このカードはライディングデュエルを行なう時必ず発動される、このカードはいかなる効果でもフィールドから離れずセットされない。
①このカードがフィールド上に表側表示で存在する時、お互いにフィールド魔法を発動できない。
②このカードがフィールド上に表側表示で存在する時、「Spー」とついた魔法カード以外の魔法カードを発動・セットしたプレイヤーは2000ダメージを受ける。
③1ターンに1度、スタンバイフェイズにこのカードに「スピードカウンター」を1つ乗せる(最大12個まで)
④自分が1000を超えるダメージを受けた時、1000ダメージにつきこのカードに載せられた「スピードカウンター」を1つ取り除く。


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神の試練〜新たなる力〜

ー体中が痛い、いつかのスフィンクスに殴られた時みたいなダメージだ…ここは何処だ…?ー

 

遊海の意識が目覚める、激痛の走る身体を自覚しながら目を開ける…視界は半分しかないが見覚えのある部屋…自室だった…

 

「〜!…〜…??」

…音が…自分の声が聴こえない…鼓膜が破けてるのか…?回復…を…!

 

枕元に常備している回復カードの入ったカードケースに手を伸ばそうとして…気づいた、右手が…無い…

 

ドシン!

 

「…!!…!」

 

扉が開いて翠が駆け込んで来る…涙目で何事かを喋っているが聞き取るが出来ない…

 

『翠…心配かけてごめん…耳が聞こえないんだ…』

 

「!?…!!」

念話で翠に意思を伝えると翠は魔法カードを俺の頭に使う…おそらく「ディアンケト」だろう、頭が温かい光に包まれ少しづつ音が聞こえるようになり、視界も回復する…。

 

 

 

 

 

 

 

「…ありがとう翠…俺…どうしたんだっけ…?」

 

「私の方が知りたいですよ!!夜遅くにアヤカちゃんとトフェニさんがボロボロになりながら更にボロボロのビショ濡れの遊海さんを抱えて帰ってきて…!いったい何があったんですか!!」

 

「昨日…の事…?」

 

 

 

 

「『ライディングデュエル・アクセラレーション!』」

 

 

 

『我が名はゲイザー…貴様には破滅の未来を回避するために死んでもらう…!』

 

 

 

 

 

 

「…思い出した…イリアステルの襲撃を受けて爆発に巻き込まれたんだ…!」

 

「えっ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

爆発直前

 

 

 

「ぐっ…チクショウ…こんな所で死ぬわけには…!!」

 

ゲイザーに謎の光…おそらく「モーメントを逆転させる何か」を浴びせられたDホイールは暴走し爆発寸前だった…そして

 

《遊海!何をしている!早く逃げるのだ!!鳴動富嶽!!》ズドン!!

 

「メガロック!!」

現れたメガロックがDホイールを弾き飛ばす!

 

《マスター!早く!!》

 

「っ!!うおぉぉぉ!!!」

痛む足を我慢し走る…そして…

 

 

ギュイイーン…ドガーン!!!

 

「ぐあぁぁぁぁ!!!?…ガッ!?ゴボゴボゴボ…!」ドガッ!!バシャーン!

爆風に吹き飛ばされ…何処かにぶつかって海に落ち気を失った…

 

 

 

 

 

 

 

「イリアステルの『ゲイザー』っていう奴に襲われて…ライディングデュエルに対応出来なくて負けたんだ…」

 

「イリアステルの介入…!?しかも『ゲイザー』何て人物イリアステルには…」

 

「翠、ゲイザーは俺達と同じ…『転生者』だ…!」

 

「そんな…!?根拠はあるんですか…?」

 

「彼奴は『彼岸』と『エクシーズモンスター』を使ってきた、滅びの未来であるイリアステルの世界には存在しないはずのカードだ…!それしか考えられな…イタタタ…!?」

身体を起こそうとした遊海は痛みに顔を歪ませる

 

「遊海さん…!無理はしないでください!!」

 

「っ…ごめん翠…身体中が…痛い…!俺の身体はどうなってる…?」

 

「一応処置はしたんですけど…右腕、右膝下の断裂…左足の骨折、あと全身に打撲がたくさんです…他にも折れてる所があるかも…」

 

「…そりゃ痛い訳だ…でもおかしい、普段ならすぐ再生が始まるのに……だめだ痛みで考えが纏まらない…少し…休むよ…」

 

「わかりました…家の周りはウィンダ達に見てもらってます、ゆっくり休んでください…」

 

「ああ、ありが…と…スゥ…」

そして俺の意識は闇へと沈んでいった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

翠Side

 

「遊海さん…どうして…!」

遊海さんは再び眠ってしまった…遊海さんがボロボロになって帰ってきて2日が経った、あの時の遊海さんの姿を思い出すと胸が締め付けられる…!

 

 

 

 

 

 

 

 

2日前…

 

 

 

 

「遊海さん遅いな〜…海馬さんとの話上手くいってるのかな…?」

 

遊海さんはゼロ・リバースを起こさせずに未来を救うために動き出した、第一段階として遊海さんはDホイールに搭載されている完成型モーメントの事を海馬さんに伝えに行った、遊海さんと別れて約3時間…時計の針は12時を指している…さっきからサイレンの音が鳴り響いている…何だか胸騒ぎがする…。

 

《翠…大丈夫だよ!遊海は強いから何かあっても帰ってくるから!》

 

「ウィンダ…そうだよね!きっと海馬さんに説明するのが長引いてるんだよね!…先に休もっか!」

私は不安を振り切って立ち上がる…

 

 

ガチャ!バタタン!!

 

《あ!噂をすればだよ!》

 

「遊海さん!お帰りな《翠殿!急いで治療を!!》どうしたの!!」

トフェニさんが切羽詰まった様子で駆け込んで来る、その身体はボロボロで何があったのかすぐに理解できてしまった…

 

 

《翠…申し訳アリません…!マスターを庇いキれませンデシた…!》

 

「……そんな…いったい何があったの!?」

玄関にいたのはボロボロになったアヤカちゃん、そして致命傷レベルの傷を負った遊海さんの姿だった…

 

《海馬社長の所へ向かウ途中に襲撃…をマスターを頼ミマ…す…!》

 

「アヤカちゃん!!…ウィンダ!ウェン!フレアちゃん!手伝って!!遊海さんを部屋に!!」

アヤカちゃんは最低限の事を伝えると消えてしまった…攻撃力3000を誇る彼女にそれ程のダメージを与える出来事…いったい何があったのか…その疑問を押しやり私は遊海さんの治療を始めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「イリアステル…未来人の介入…いったい目的は何なの…?」

 

今までの事を思い出しながら私はお粥を作る…次に目を覚ました時に遊海さんが食べてくれるように…。

 

「転生者…私達の他にもいたんだ、私達だけかと思ったんだけど…」

遊戯王世界への転生…今まで他の転生者からの接触は無かった、遊海さんが「帝王」や「聖刻」を使えばわかりそうなものだけど…いるんだったら一度会ってみたいな…。

 

 

 

\ピンポーン/

 

 

「ん?はーい!今行きまーす!」

玄関のチャイムが鳴る、宅配便何か頼んだっけ…

 

 

「はーい!どなたで…あ」

 

「翠か…遊海はいるか?」

 

玄関には少し怒った様子の海馬さんの姿があった…

 

 

 

翠Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスドスドス…!

 

「か、海馬さん!ちょっと待って…!!」

 

「離せ!遊海め…オレとの約束を放り出して寝込んでいるだと!?一言言わねば気がすまん!!」

 

 

…何だか…騒がしいな…まだ身体が痛い…!

 

ガチャ

 

「遊海!!貴様オレとの約束を…ッ!?…何があった!!」

怒鳴り声と共に海馬社長が部屋へ入ってくる、そして俺の惨状を見て絶句している…

 

「海馬社長…すいません…約束をすっぽかしてしまい…」

 

「そんな事はいい!!その怪我はどうした!誰にやられた!!」

 

「素性はわかりません…会いに行く途中で襲撃を受けて…見事にやられました…致命傷は何とか防いだんですが…この様です…」

 

「おのれぇ…!何処の馬の骨か知らんがオレの友に手を出すとは…許せん!!草の根分けてでも探して…!」

 

「社長…大丈夫です…!じきに体は治ります…それに自分で決着を着けますから…!」

怒りのオーラを纏う海馬社長を慌てて宥める…

 

「だが…!遊海…貴様腕を…!」

 

「海馬さん、俺は普通の人間ではありませんから…ディアンケトよ、傷を癒せ…!」

唯一無事だった左手でカードを発動させる、すると某ナメッ○人のように腕が再生する…中々に奇妙な感覚だ

 

「…流石とだけ言っておこう…だがしばらくは休め!バトルシティは一月後だ…それに間に合えばいい!」

海馬社長は目の前で起きた超常現象に動揺しながらも遊海に声をかける

 

「ありがとう…ございます…」

 

「さらばだ遊海、バトルシティで会おう」

そう言って海馬社長は部屋を後にした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アヤカ…いるか…?」

 

《はい…マスター、何とかご無事そうでなによりです…》

アヤカが遊海の側に現れる

 

「ああ、気分は最悪だけどな…アヤカ…俺の身体の再生が遅い…原因はわかるか…?」

 

《了解です、マスターの身体をスキャンします…スキャン開始………完了しました》

 

「何かわかったか…?」

 

《…マスターの体内でプラスのエネルギーとマイナスのエネルギーが反発しあい回復を阻害しています、プラスはマスターが元々持っていたエネルギー、マイナスはモーメントの爆発により発生したエネルギーです》

 

「プラスとマイナス…マイナスは有害なエネルギーなのか?」

 

《基本的には無害なエネルギーです、しかしマスターとの相性が最悪です…正と負のエネルギーが体内で衝突し回復を遅らせていると思われます…今回は爆発の規模が小さかったために影響は軽微に収まっています…》

 

「そうか…アヤカ、もしも爆発の規模が大きかったら…どうなる?」

 

《…マスターのプラスをマイナスが上回った場合…マスターの不老不死を貫通し肉体・魂共に大ダメージを負う可能性があります》

 

「…そうか…ありがとう…」

 

 

 

 

 

 

俺は奴に敗北した…ライディングデュエルだったからとか相手が「彼岸」を使ってきたからとかは関係ない、ドロー力・プレイング・ライディングテクニック…全てにおいて奴に負けた…力が欲しい…!奴を見返し…未来を救う力が…!!

 

遊海は再生したばかりの右手を握りしめる…ゲイザーの素性はわからない、正体も…いつ転生したのかもわからない、しかし…遊海には一つ確信していた事があった…「奴に負けてはならない」その一言だった。

 

 

「…力が欲しい…!奴を止められる力を…!!」

 

《マスター…!…異常なエネルギーを探知!》

 

「なにっ!?うわっ!!」

 

《マスター!!?》

遊海の首元…賢者の鍵が光を放つ、そして遊海の意識は途切れた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…う…ここは…?」

遊海は真っ白な空間で目覚める…そこは見覚えのある場所だった…。

 

「ここは神様の…?」

 

『そうじゃ!久しぶりじゃの遊海!』

 

「神様…どうして…!」

 

『何故って…お主が願ったのじゃろう?力が欲しいと…』

 

以前と変わらない髭を蓄えた神様の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『見事な旅路だったぞ遊海、歴史の本筋を変えず悲劇を救ってきた…見事じゃ』

 

「やれる事をやっただけです…救えなかった人達もいる…それに俺が…!」

 

『言わずともよい…大丈夫じゃ、お主が我を失った時に倒してしまった者達も事件の後にそれぞれの世界に戻っておる…気に病む事はない…』

 

「そうですか…ありがとうございます…!」

 

『それよりもこれからの事じゃ…酷いやられ方をしたのぉ…だから力が欲しいのだろう?』

 

「はい…彼奴には負けちゃならない…そんな気がするんです…!」

 

『そうか…ならば新たな力…カードを渡そう!』

 

「新たな…カード…!」

 

俺が死んでどれだけの時間が向こうで経ったのだろう…新たなカードも増えている筈だ、そのカードが手に入れば大幅な戦力強化になる…!

 

『ただし…タダではやれん!』

 

「…条件は?」

 

『なぁ〜に簡単な事じゃ…ワシとデュエルしなさい…それだけじゃ!』

そう言って神様はヴレインズのデュエルディスクを出現させる!

 

『ルールはマスタールール4!ライフは4000!手加減は無用じゃ!』

 

「わかりました!本気で行きます!!」

 

 

『しからば…改めて名乗ろう!我が名はデウス!神の名において汝に試練を与えよう!!』

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

遊海LP4000

デウスLP4000

 

 

 

マスタールール4

 

 

□□□□□

□□□□□

 □ □

□□□□□

□□□□□

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「ペンデュラムスケールに『クリフォート・ツール』をセッティング!更に効果発動!800ライフを払いデッキから『クリフォート・アセンブラ』を手札に加えてそのままセッティング!」

 

遊海LP4000→3200

 

「我が魂を守りし大いなる力よ!その力を示せ!ペンデュラム召喚!『クリフォート・ゲノム』!」

オレンジ色のコアの機械が異次元から現れる ATK1800

 

「更に手札から装備魔法『機殼の生贄』を『ゲノム』に装備!これにより『ゲノム』は2体分のリリースにできる!『ゲノム』を生贄に現われろ!『クリフォート・ディスク』!」

青色のコアを持つ虹色の機械が現われる ATK2800

 

 

「墓地に送られた『機殼の生贄』の効果を発動!デッキから『アポクリフォート・キラー』を手札に加える!そして『ディスク』の効果!デッキからクリフォートモンスター2体、『アーカイブ』と『シェル』を特殊召喚!」

緑と紫のコアを持つ機械が現れる ATK1800 ATK1800

 

 

「カードを1枚伏せてエンドフェイズ!『アセンブラ』の効果で1ドロー!そして『ディスク』の効果で特殊召喚された『アーカイブ』と『シェル』は破壊される…ターンエンド!」

 

遊海LP3200

ディスク Pツール アセンブラ 伏せ1 手札3

 

 

□□□□□

□□□□□

 □ □ 

□□■□□

P□□■P

ア   ツ

 

 

 

 

『フム…流石じゃの遊海、高い攻撃力の「シェル」を出したうえで手札には既に切り札がいる…万全の体勢という訳じゃ』

神様…デウスは髭を撫でながら遊海の場を分析する

 

「褒めていただきありがとうございます!神様がどんなデュエルをするかわからないから場は整えました…!」

 

『なるほどのぉ…それではワシも動くとするか!』

 

 

 

 

 

 

『ワシのターン!ドロー!』

『手札から魔法カード「竜の霊廟」を発動する!効果でデッキから通常モンスター「守護竜ユスティア」そして「守護竜プロミネシス」を墓地へ送る!』

 

「守護竜…?聞いた事の無いカードだ…!」

遊海は未知のカテゴリを聞き警戒する

 

『ホッホッホッ…さぁいくぞ!通常モンスターが墓地に送られた時「守護竜ガルミデス」は手札から特殊召喚できる!』

青いコアを持つ水晶の竜が現れる ATK1600

 

『そして「ガルミデス」1体でリンクマーカーをセッティング!召喚条件はレベル4以下のドラゴン族モンスター1体以上!リンク召喚!いでよ!「守護神ピスティ」!』

赤色のコアを持つ白翼の蛇竜が現れる ATK1000 →

 

『そして「デブリ・ドラゴン」を召喚!効果で墓地の攻撃力0の「守護竜ユスティア」を特殊召喚じゃ!』

スターダストドラゴンの子供のような竜と神秘的な青白い竜が現れる ATK1000  DEF2100

 

 

『そして「ピスティ」と「ユスティア」でリンクマーカーをセッティング!召喚条件はドラゴン族モンスター2体!星の槍よ!今こそその身を竜と化せ!リンク2「守護竜アガーペイン」!』

紫のコアを持つ蛇竜が現れる ATK1500 ↑↓

 

『そして通常モンスターである『ユスティア』が墓地に送られた事で墓地の「プロミネシス」の効果を発動!自身を特殊召喚する!』

黄色のコアの炎に包まれた竜が現れる DEF200

 

 

「ッ…展開が終わらねぇ…!」

 

『まだまだいくぞ!「デブリドラゴン」でリンクマーカーをセッティング!召喚条件はレベル4以下のドラゴン族1体!リンク召喚!「守護竜エルピィ」!』

黒い羽と黄色のコアを持つ蛇竜が現れる ATK1000 ←

 

□□□□□

□■□■□

 ■ □

□□■□□

P□□■P

 

 

「リンクモンスターが2体…でもリンクマーカーはバラバラ…何が起きる…!」

 

『さぁ遊海!このデッキの本領はこれからじゃ!ワシは手札から永続魔法『星遺物の守護竜』を発動!発動時の効果で墓地の「ガルミデス」を特殊召喚!』

再び水晶の竜が現れる ATK1600

 

 

『そして『守護竜』のもう一つの効果を発動!「エルピィ」を一つ右のモンスターゾーンへ移動する!』

 

□□□□■

■←□■■

 ■ □

□□■□□

P□□■P

 

 

「モンスターゾーンの移動!?まさか『機界騎士』と同じ…!?」

 

『そうじゃ、このテーマは所謂《星遺物シリーズ》の新たなテーマ…その力は強力じゃ!「アガーペイン」の効果を発動!2体以上のモンスターのリンク先となるモンスターゾーンにE()X()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!』

 

「なんだって!?」

 

 

「エクストラデッキからモンスターを特殊召喚する」…その一文の意味…それは『クェーサー』や『ズァーク』など召喚条件を指定されているモンスター以外なら()()()()特殊召喚できると言う事、つまり…こういう事もできる。

 

『集いし星の輝きが新たな希望を照らし出す!今こそ光来せよ!「セイヴァー・スター・ドラゴン」!!』

超官曰く「赤き竜の化身」と言われる救世の竜が現れる! ATK3300

 

 

「なんと…『セイヴァースター』がこんなにあっさりと…!?」

 

『「セイヴァースター」の効果を発動!「シェル」のモンスター効果を無効にし、そのカードに記された効果を使用できる!サブリメーション・ドレイン!』

 

セイヴァースターがシェルに息吹を放つ、直撃したシェルは力を失い墜落する…

 

『バトルじゃ!「セイヴァースター」で「シェル」を攻撃!シューティング・ブラスター・ソニック!』

突撃形態になったセイヴァースターがシェルを貫通する!

 

「ぐぅぅ…!!」

 

遊海LP3200 →2700

 

『そして「シェル」の効果を得た「セイヴァースター」は2回攻撃ができる!貫け!ブラスターソニック!!』

 

「(…伏せカードは『機殼の凍結』…どのみち『セイヴァースター』で全破壊されて守護竜の追撃で負けか…強すぎるぜ10期性能…)」

負けを認めた遊海はセイヴァースターの一撃を受け入れ、吹き飛ばされた…

 

 

遊海LP0

 

デウス WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お〜い…大丈夫か〜?』

 

「…何とか…完敗です…神様…」

遊海は起き上がる、不思議と体の痛みは無い…

 

「それが新たなカード…今回は負けてしまいましたが、次こそは…!」

 

『フム、よい気概じゃ!さぁ新たなカードを持っていくがいい!』パンパン

 

「へっ…?」

神様が手を叩くと大きめの袋が遊海の目の前に現れる

 

『その中に新たなカードが三枚づつ入っておる…存分に使うがいい!』

 

「えっ…あの…神様…??」

 

『むっ?どうした?鳩が豆鉄砲喰らったような顔をして?』

 

「こういうのって神様に勝たないと駄目なんじゃ…?」

 

『ホッホッホッ…何を言っている!お主は「ワシとデュエルをする」という条件を果たしただろう?ワシの暇つぶしに付き合ってくれてありがとうよ』

 

「…ひ、暇つぶし…暇つぶしで俺負けたのか……」ズーン

神様からの答えを聞いた遊海はリアルorz状態になっている…

 

『いやぁ〜神の仲間と近々デュエルする予定での〜その調整デュエルだったのじゃ!ありがとうよ遊海!』

 

「アッハイ……俺もまだまだだな…」

楽しそうに笑う神様を見て遊海は強くなる決意を固めたのだった…

 

 

 

 

 

 

 

「神様…ありがとうございました!」

 

『うむ!また困った事があったら来るがいい!』

遊海は袋を持って世界を後にしようとする…

 

「神様…一つ聞いてもいいでしょうか?」

 

『なんじゃ遊海?』

 

「…この世界に俺達以外の転生者はいますか…?」

 

『…()()()()、ワシが転生させたのはお主と翠だけじゃ…しかし自然に転生している者は…いるかもしれんのぉ…』

 

「そうですか…ありがとうございました!では!」

神様にお礼を言って遊海は世界から姿を消したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…なんとも…数奇な運命もあったものじゃ、遊海…自分を見失うでないぞ…』

 

デウスは寂しそうにつぶやいたのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…イタタタ…!」

 

《マスター!!大丈夫ですか!?》

 

「アヤカ…大丈夫、転生の神様に喚び出されただけだから…心配しなくて大丈夫だ…」

 

《ふぅ…ならよかったです…》

遊海は部屋へと戻ってきていた、時計は5分ほどでした進んでいる…ついでに身体はダメージを受けたままである。

 

 

「アヤカ…次は絶対に奴に勝つ…!!」

 

《ハイ!マスター!!!》

 

決意を新たに遊海はゲイザーの打倒を誓った…そして一月後…ついにバトルシティ・レジェンドが開催される…のだった…。



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開催!バトルシティ・レジェンド!

読者の皆様!お久しぶりです!投稿が遅れてしまいすいません!

それでは最新話をどうぞ!


パーン!パンパン!!

 

 

花火が鳴り響く童実野町…そこにはたくさんの人々…否、決闘者達が犇めいていた…。

 

 

 

 

 

「ついにこの日が来ましたね遊海さん…!」

 

「ああ…バトルシティ・レジェンド、新たな《決闘王》の称号を賭けた戦いか…!」

 

ボロボロの状態から回復した俺は翠と共に時計台広場へとやってきていた、そこには開催を今か今かと待っている決闘者達がいる…

 

「世界から集まった400人の決闘者達のバトルロイヤル…凄まじい戦いになりそうだ…!」

 

 

初代バトルシティは48人+αによる勝ち抜き戦だった、しかしあれから約10年…決闘者は爆発的に増加した、その結果バトルシティはアマチュア専用の大会となり新たなプロを生み出す登竜門のような大会になった…しかし今回は原点回帰し遊戯に続く『決闘王』の名を受け継ぐ決闘者を決める大会となった。

 

 

 

 

「おう!遊海!!」

 

「城之内さん!」

人混みを掻き分けて城之内が声をかけてくる

 

 

「やっぱりすげー人数だな!」

 

「まぁ2代目『決闘王』を決める戦いですから!」

 

「そうだな!…プロの1位は譲ったけど『決闘王』は譲らねぇぜ遊海!…決勝で待ってるぜ!」

 

「望むところです!」

 

「おう!…ところで遊戯見なかったか?さっきから探してんだけど…」

 

「俺も見てないですね…まぁ会場の何処かにはいますよ!」

 

「そうだな!じゃ!お互い頑張ろぜ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

「あっ!遊海先生!!久しぶり!」

《にゃ〜お!》 

 

「十代!お前も参加しにきたのか!」

人混みの長いから十代が現れる、背中のバックにはファラオもいる

 

「ああ!翔やカイザー、万丈目にヨハンもいたぜ!」

 

「そうか…アイツらに会えるのが楽しみだ!…十代、負けるなよ?決勝トーナメントで待ってるからな!」

 

「ああ!…今回はあなたを超えてみせるぜ!先生!!」

《首を洗って待ってなよ!遊海!新たな決闘王は十代さ!》

 

「ふっ、楽しみにしてるよ十代!」

 

 

その後も何人か顔見知りに会う事ができた遊海なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

そして…その時がきた、時計台広場の上空に巨大なモニター付きの飛行船が現れる…そして特設ステージ上に海馬社長が現れモニターにも姿が映し出される!

 

 

『よくぞ集まった!「決闘王」の名を求める決闘者共!!10年前…初代バトルシティにおいて武藤 遊戯が数々の決闘者を下し「決闘王」の称号を手に入れた!…しかしそれからデュエルモンスターズは変化を遂げた!カードは増え新たなる召喚法も生まれた!…今こそ新たなる「決闘王」を再び決める時が来たのだ!!』

 

 

「「「……!」」」

会場に集った決闘者達は海馬社長の演説を聞いて顔が引き締まっていく

 

 

『難しい事は言わん!…お前達の手にあるデッキで自らの力を示せ!!「決闘王」の称号は…此処にある!!!』

 

 

「「「オォォォオオ!!!」」」

会場から決闘者達の雄叫びが上がる!

 

『そして今回のルールだ!基本は今までと同じ!本戦は3日間!参加者の持つバトルカードを30枚以上集めた先着6人が決闘トーナメントへと進む事ができる!』

 

 

「…先着6人?前よりも少ないのか…?」

最初のバトルシティは8人が決勝トーナメントへと進んだ…何だかアンバランスだが…?

 

 

『そして今回は特別なルールを設ける…白波 遊海!ここに来い!!』

 

「…へっ?」

 

「遊海さん!行かないと!」

 

「あ、ああ…!よいしょ!!」シュダッ! ズダーン!

運悪く会場の端にいた遊海は人垣を飛び越えステージへと着地する…身体能力が人外になっているが気にしてはいけない…。

 

 

『…よく来た遊海、今回のバトルシティでは白波 遊海、そしてもう一人に「シード権」を与える!…そして遊海、これを受け取れ!』

そう言って磯野さんからバトルカードの束を渡される

 

『予選においてプロランク1位の貴様には所謂「ボーナスキャラ」をしてもらう!…バトルシティ本戦において遊海に勝利した者にバトルカードを5枚進呈する!!』

 

「…マジですか」

 

『そうだ』

海馬社長の宣言の瞬間、会場中の決闘者の目が俺へと向けられる…正直怖いです…。

 

『ただし、遊海に敗北した者はその時点で敗退だ!リスクを負って近道をするか、地道に集めるか…それは各々に任せる!せいぜい足掻くがいい決闘者共!』

 

 

 

 

『ここに…バトルシティ・レジェンドの開催を宣言する!!』

 

 

 

「「「わぁぁぁぁ!!!!」」」

 

 

 

そして…新たな「決闘王」を決める戦いの火蓋が切って落とされた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『チャンピオン!お前を倒してやるぜ!』

 

「かかって来い!」

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

チンピラ風の男LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『オレは手札の「レッドガジェット」と「グリーンガジェット」を墓地に送って「マシンナーズ・フォートレス」を特殊召喚!このカードは手札から合計レベルが8以上になるように機械族モンスターを捨てて、手札・墓地から特殊召喚できる!』

3本のキャタピラを持つ青いカラーリングのロボット戦車が現れる ATK2500

 

『そして永続魔法「機甲部隊の最前線」を発動!さらに「マシンナーズ・ピースキーパー」を召喚!』

 

三輪の赤い装甲のロボットが現れる ATK500

 

『「ピースキーパー」の効果を発動!ユニオンモンスターであるこのモンスターを「フォートレス」に装備する!これで「フォートレス」は破壊耐性を得る!』

ピースキーパーがフォートレスの背部にドッキングする

 

『オレはこれでターンエンドだ!』

 

チンピラLP4000

フォートレス(ピースキーパー装備) 最前線 手札1

 

 

 

 

 

『どうだ!攻撃力2500で破壊されないオレの最強コンボだ!』

 

「まぁまぁだな、次は俺の番だ!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札の『SRベイゴマックス』は自分フィールドにモンスターがいない時に特殊召喚できる!」

連なるベイゴマが現れる ATK1200

 

「『ベイゴマックス』が特殊召喚に成功した時!デッキから『SRタケトンボーグ』を手札に加える!さらに『タケトンボーグ』はフィールドに風属性モンスターがいる時、特殊召喚できる!」

機械でできた竹トンボが現れロボットに変形する ATK600

 

「『タケトンボーグ』の効果を発動!自身をリリースしデッキからチューナーモンスター『SR赤目のダイス』を特殊召喚!」

金色で赤い目の模様のついたサイコロが現れる ATK100

 

「『赤目のダイス』の効果発動!『ベイゴマックス』のレベルを4にする!」

赤目のダイスから赤い星が飛び出しベイゴマックスのレベルが上がる!

 

ベイゴマックス星3→4

 

 

「いくぞ!レベル4の『ベイゴマックス』にレベル1の『赤目のダイス』をチューニング!」

 

赤目のダイスの変化した緑色の輪がベイゴマックスを包み込む!

 

4+1=5

 

「現われろ!躍動する剣士の魂!『HSRチャンバライダー』!」

赤い刀に乗ったロボットが現れる ATK2000

 

 

『攻撃力2000〜?そんなんじゃオレの「フォートレス」は倒せねぇぜ!』

チンピラはドヤ顔で遊海を煽る

 

「ああ、()()()()()()()!装備魔法『ミストボディ』を『チャンバライダー』に装備!これにより装備モンスターは戦闘で破壊されなくなる!」

チャンバライダーが霧のバリアに包まれる

 

「そして手札から魔法カード『スピードリバース』を発動!墓地の『赤目のダイス』を特殊召喚!自身の効果で『チャンバライダー』のレベルを6にする!」

再び赤目のサイコロが現れる DEF100

 

 

「バトルだ!『チャンバライダー』で『フォートレス』を攻撃!『チャンバライダー』は攻撃する時攻撃力が200アップする!」

 

チャンバライダー2000→2200

 

『何してんだよチャンピオン!攻撃は「フォートレス」の方が上だ!撃ち落せ!』

 

突撃したチャンバライダーはフォートレスの大砲に撃ち落とされる、しかし霧のバリアで守られる

 

遊海LP4000→3700

 

「…そして自分がバトルフェイズにダメージを受けた時!手札の『SRーOMKガム』は特殊召喚できる!」

フィールドに小さなガム型のロボが現れる DEF800

 

『ハッ!バトルが終わってるのにそんなモンスターを召喚して何になるんだよチャンピオン!拍子抜けだぜ!』

チンピラは遊海をあざ笑う…

 

 

 

 

 

 

「それはどうかな?」

 

『なんだと?』

 

遊海は不敵に笑う

 

 

「『OMKガム』の効果発動!このカードが特殊召喚されたバトルフェイズ中にこのカードを含むフィールドの風属性モンスターでシンクロ召喚できる!」

 

『なっ…!バトルフェイズ中のシンクロ召喚だと!?』

チンピラは驚きをあらわにする…まだ『緊急同調』は発売されていない…

 

「いくぞ!俺はレベル6となっている『チャンバライダー』にレベル1の『OMKガム』をチューニング!」

 

6+1=7

 

「その雄々しくも美しい翼を翻し!光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!」

《グオォォォン!!》

緑色に輝く翼の「シンクロ」の名前を冠する龍が現れる ATK2500

 

 

『ドラゴンのシンクロモンスター…!超レアカードじゃねぇか!…でも攻撃力は互角!良くて相討ちだ!』

 

現在世に出回っているドラゴン族シンクロは僅か4体程…それぞれ100万単位で取引されている。

 

「まだだ!『OMKガム』の効果を発動!このカードがシンクロ素材になった時デッキの一番上のカードを墓地に送る!それが『SR』モンスターだった時、シンクロモンスターの攻撃力を1000アップする…来い!!」

 

遊海がデッキトップから落としたのは…『SR電々大公』!

 

「『クリアウィング』の攻撃力が1000アップする!」

《グオォォォン!!》

咆哮を轟かせクリアウィングの攻撃力が上がる!

 

クリアウィング2500→3500

 

「バトルだ!『クリアウィング』で『フォートレス』を攻撃!旋風のヘルダイブスマッシャー!!」

風を纏い音速を超えたクリアウィングがフォートレスに突撃する!

 

『チイッ!しかし「フォートレス」に装備されている「ピースキーパー」の効果を発動!戦闘破壊を肩代わりする!うおぉぉ!!』

攻撃の直前、ピースキーパーが射出されクリアウィングに衝突し爆発を起こした!

 

チンピラLP4000→3000

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

遊海LP3700

クリアウィング 赤目 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

『これがチャンピオンの力か…!強えじゃねぇか!でも新たな「決闘王」になるのはこのオレだぁ!』

 

「はぁ…なんでこういう人ばっかり来るかな…」

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『いいカードを引いたぜ!魔法カード「収縮」を発動!「クリアウィング」の元々の攻撃力を半分にする!』

クリアウィングの攻撃力が下がる

 

クリアウィング3500→2250

 

『これで倒せる!「フォートレス」で「クリアウィング」を攻撃だ!』

大砲がクリアウィングに狙いを定める!

 

「甘い!リバースカードオープン!『リサイコロ』!墓地の『OMKガム』を効果を無効にし特殊召喚する、さらにそのレベルはサイコロの出目と同じレベルになる!ダイスロール!」

再びガムのロボットが現れる DEF800

 

サイコロの出目は…4!

レベル1→4

 

 

『そんな雑魚を出して何になる!!』

 

「まだだ!墓地の『リサイコロ』を除外し効果発動!フィールドのモンスターで風属性シンクロモンスターをシンクロ召喚する!」

 

『なっ!?相手ターンにシンクロ召喚だと〜!?』

 

「俺はレベル7の『クリアウィング』にレベル1『赤目のダイス』をチューニング!」

 

7+1=8

 

「その神聖なる光蓄えし翼を煌めかせ…その輝きで敵を撃て!来い!『クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン』!!」

身体をクリスタルで包んだ神々しい龍が現れる ATK3000

 

『なっ!?ドラゴンが進化した…だと!?攻撃中止だ!』

光輝くクリスタルウィングを見たチンピラは攻撃を中断する

 

『ターンエンドだ…』

 

チンピラLP3000

フォートレス 最前線 手札1

 

 

 

 

『(ヤツの攻撃力は3000…1ターンは耐えられる、そしたら『最前線』で『マシンナーズスナイパー』を呼び出して…!)』

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「バトル!『クリスタルウィング』で『フォートレス』を攻撃!その時、『クリスタルウィング』の効果を発動!このモンスターがレベル5以上のモンスターと戦闘する時、攻撃力が相手の攻撃力分アップする!」

 

『な、なんだと!?』

 

翼のクリスタルが煌めきクリスタルウィングの攻撃力が上がる

 

クリスタルウィング3000→5500

 

『…攻撃力5500だと…』

 

「『クリスタルウィング』で攻撃!烈風のクリスタロスエッジ!!」

風と光を纏った一撃が機械戦車を吹き飛ばした…。

 

 

チンピラLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、バトルカードは回収ね、またいつか挑んできな!」

 

『チクショ〜!覚えてろ〜!!!』

捨てゼリフを残してチンピラは去っていった…。

 

 

 

 

「ふぅ〜…疲れた〜…」

 

「遊海さん!お疲れ様です!はいスポーツドリンク!」

 

「ありがとう翠…しかし…いつまでやればいいんだ…?」

デュエルを終え一息つく遊海、しかしその目の前には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チャンピオンデュエルしてくださ〜い!」

 

『お前を倒して名を上げてやるぜ!』

 

「ファンなんです〜!!」

 

 

約100名程の決闘者達に囲まれていた…ついでに今の決闘で50戦目である…

 

 

「なんかまた過労死しそう…」

 

《ファイトです!マスター!》

 

「頑張って遊海さん!」

 

「…はぁ…」

 

 

 

こうしてバトルシティ1日目は過ぎていく…なお、遊海はこの日負けなしであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6




バトルシティ予選通過者 1名 残り人数250人(150人脱落)


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バトルシティ2日目〜悲しき復讐者〜

筆が乗ったので2日連続投稿です!

そしてこの「決闘の観測者」いつの間にか100話を突破してました!ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!



注 
この話では原作キャラがズタボロになります…ファンの人がいたらごめんなさい!


「デュエリストへの襲撃事件…?」

 

「うむ、大会の事務局に通報が入ったのだ」

 

バトルシティ1日目の夜、俺は海馬社長に呼び出され社長室へと来ていた。

 

「『仮面を被った決闘者に襲われ怪我をした』または『デュエルディスクを破壊される』という事件が起きているらしい…けしからん事だ!」

海馬社長は静かに怒りをあらわにする

 

「(仮面の決闘者…まさか…な?)…海馬社長、どうして俺にその話を?いつものように制圧部隊をパトロールに回せば…」

 

遊海は一抹の不安を抱えながら海馬に進言する、KCには私設の部隊があり、危険人物などの捕縛を仕事としている(映画で藍神を捕まえた部隊の事である)

 

 

「そうなのだが…気になる証言があってな…」

 

「気になる証言…?」

 

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』らしい」

 

「なっ…!?(お前の仕業か…ゲイザー…!)」

 

モンスターの実体化…それは特別な力を持った決闘者か精霊にしかできない事だ、この時代には遊海を含めて数人しかいないだろう…。

 

「以前の三邪神騒動のように部隊を危険に晒すわけにはいかん…凡骨にも話はしてある、秘密裏に仮面の決闘者を捕縛してもらいたい…できるな?」

 

「わかった、ソイツは俺が捕まえる」

 

「すまないな遊海、頼んだぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

「アヤカ、フレア、何か変化はあったか?」

 

《いいえマスター、異常はありません…今のところはですが…》

 

《次元も安定しています、未来からの干渉は無さそうです》

夜の童実野町を歩きながら遊海は周囲を警戒する…今の町は平和そのものだ。

 

「モンスターの実体化…イリアステル…関係があるのか…?」

遊海は1人思考の海に入る、真っ先に浮かんだのは自分を強襲した謎の決闘者・ゲイザー、しかし理由が無い…遊海は下手人を割り出せないでいた…。

 

《ユウミ…根を詰め過ぎないでください、ただでさえデュエル三昧で疲労しているんですから…》

遊海の顔色を見たフレアが話しかけてくる、実際遊海はとても疲れていた…。

 

「…そうだな、今日はもう帰ろう…捜査は明日からだ…」

 

遊海は自宅へと足を向ける…戦いは始まったばかりである…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜2日目〜

 

 

 

 

「バトル!『メガロック・ドラゴン』で『究極変異体・インセクト女王』を攻撃!鳴動富嶽!」

 

「ヒョ〜!?女王様が〜!?」

 

羽蛾LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

「まったく…お前、少しは懲りろよ…」

 

「くそー!覚えてろ〜!!」

 

 

『ありがとう!チャンピオン!』

 

「ほい、お前のカードだ…もう盗られるんじゃないぞ!」

 

「はい!」

 

 

バトルシティ2日目、俺はアンティを仕掛けていた某虫メガネからカードを取り返していたところだ。

バトルシティ第2回大会以降はアンティデュエルは行われていない、そもそもあれは『神のカード』を集めるためのルールだからもうやる意味はないのだ。

 

 

「今のところは問題は特に無いな…少し休憩するか…っ!?」

 

一息いれようとした遊海は悪寒を感じる…それは何者かの強い感情だった。

 

「…なんだ今の…?」

 

《マスター?どうしました…?》

動きを止めた遊海を心配してアヤカが現れる

 

「いや…なんか変な感じが…」

 

 

 

ドオォォォン!!

「「うわぁぁぁ!!?」」

 

 

「なんだ!?」

突如後方で爆発が起きる!

 

「今のはただの爆発じゃないぞ!…アヤカ!!」

 

《急ぎましょう!》

遊海とアヤカは急いで爆発現場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっはあっ…この辺りだが…ひどいな…!」

爆発現場はパニックに陥っていた、人々が逃げ惑い血を流している人達もいる…そして見覚えのある人物を見つけた…。

 

 

「っ…うぅぅ…」

 

「翔!大丈夫か!翔!!」

 

「遊海…先生…!」

 

爆心地の中心…そこには傷だらけになった丸藤 翔が倒れていた、周囲にはカードが散らばっている…。

 

 

「いったい何が起きた!誰にやられた!!」

 

「あ、赤い髪の男ッス…攻撃が実体化して…それで…」

 

「っ…もう喋らなくていい…原因はわかった、仇はとる!」

 

「ごめんなさいッス……」

 

翔は意識を失った、遊海は翔を静かに寝かせると怒りの籠もった眼で正面を睨む…そこには赤いリーゼント風の髪形をして仮面を被った青年がいた、遊海は静かに問いかける。

 

 

「…翔を傷つけたのはお前か?」

 

『ああ、そうさ!あの「カイザー」の弟だっていうから期待したんだけど拍子抜けだよ!私の力の前では無力だ!』

 

男の後ろには巨大な白い悪魔のようなモンスターが実体化している…()()()()()なのにである。

 

「超能力決闘者…サイコデュエリストか…!」

 

サイコデュエリスト…遊戯王5D'sに登場した「カードの力を実体化できる」超能力者、作中では「アルカディアムーブメント」という団体が出てきていたが…目の前の人物は…

 

 

『私は黒炎の悪魔!プロチャンピオン・白波 遊海!虐げられし私の痛みを知るがいい!貴様を倒し私の強さを世界に知らしめてやる!』

 

「…悲しいな、復讐や報復は何も生み出さない…!貴様を捕縛する!」

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

黒炎の悪魔LP4000 D40

遊海LP4000 D60

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「サイコ・コマンダー」を召喚!』

UFOのような戦車に乗った指揮官が現れる ATK1400

 

『さらに魔法カード「緊急テレポート」2枚を発動!デッキからレベル3以下のサイキック族モンスターを特殊召喚する!来い、「メンタルプロテクター」!「クレボンス」!』

小さなロボットと紫色のピエロが現れる DEF2200 ATK1400

 

『さらに私は永続魔法「コモンメンタルワールド」を発動!そしてレベル3の「メンタルプロテクター」にレベル3の「サイココマンダー」をチューニング!』

 

3+3=6

 

『虐げられし我が復讐の炎よ!世界を燃やせ!シンクロ召喚!「サイコ・デビル」!』

青い体色の悪魔が現れる ATK2400

 

『そして「コモンメンタルワールド」の効果を発動!シンクロ召喚に成功した時、相手に500ダメージを与える!我が憎しみを受けろ!!』

魔法カードから雷撃が飛び出す、その威力は超能力で増幅され遊海に襲いかかる!

 

「ぐぅ…!!」

 

遊海LP4000→3500

 

 

『まだだ!私はレベル6の「サイコデビル」にレベル2の「クレボンス」をチューニング!』

 

6+2=8

 

『逆巻け!我が復讐の黒炎よ!シンクロ召喚!来い「メンタルスフィアデーモン」!』

緑色の翼と金色に輝く爪を持つ悪魔が現れる ATK2700

 

『「コモンメンタルワールド」の効果を発動!吹き飛べ!!』

メンタルスフィアデーモンが腕に雷撃を貯め、遊海に解き放つ!!

 

「ぐおぉぉぉ!!……ガフッ!」ズガーン!!! バリーン!

雷撃を受けた遊海は吹き飛ばされお店のショーウィンドーを突き破り吹き飛ばされる!

 

『フッ…フハハハハハハ!!チャンピオンって言ってもこの程度かよ!情ないもんだなぁ!!先攻は攻撃できないが、次のターンでアンタに引導を渡してやる!…ってそもそもデュエルを続けられないかぁ?アハハハ!!』

 

黒炎の悪魔は自分の力に酔っていた、自分の力を過信し油断していた…()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…気は済んだか、復讐者…!」

 

『なっ…!?嘘だろ!なんで立てるんだよ!!』

 

遊海は血塗れで立ち上がる…身体中にガラスが突き刺さりデュエルディスクを着けた左腕は垂れ下がっている、しかしその眼はディヴァインを睨みつけていた…。

 

 

「もう動かないならさっさとターンを寄越せ…!」

 

『グッ…このゾンビ野郎が…!カードを1枚伏せてターンエンド!』

 

 

黒炎の悪魔LP4000

メンタルスフィア コモンメンタルワールド 伏せ1 手札1 D33

 

 

 

 

『(伏せカードは「魔法の筒」!アイツが攻撃力3000のモンスターで攻撃してくれば私の勝ち…そもそもあの傷ならすぐに倒れるさ…!)』

 

黒炎の悪魔は遊海を甘くみていた…影から歴史を救い続けた英雄の力を…!

 

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー…!」

「魔法カード『隣の芝刈り』を発動…デッキからお前のデッキ枚数と同じ枚数になるように墓地に送る、差は21枚…!」

 

墓地送り

 

ライトロード・シーフライニャン

ルミナス

黄昏ルミナス

フェリス2

ジェニス

グラゴニス

ライラ

黄昏ライコウ

ライデン

ライコウ

シャイア

妖精伝姫シラユキ

ウォルフ☆

ミネルバ☆

エイリン

黄昏の双龍

交衣

光の援軍

ジャスティスワールド

ライトロードの神域

 

「墓地に送られた『ライトロードビースト ウォルフ』の効果、自身を特殊召喚!『ライトロードメイデン ミネルバ』の効果、デッキトップを墓地へ」

白い狼の獣人が現れる ATK2100

 

墓地送り

黄昏双龍

 

「魔法カード『光の援軍』を発動、デッキトップを三枚墓地に送りデッキから『ライトロードサモナー ルミナス』を手札に加える…ゴフッ」

 

墓地送り

ライトロードの裁き

ジェイン

戒めの龍

 

 

『自分のデッキを削って何をするつもりだ!』

 

「お前に勝つんだよ…!自分の墓地にライトロードモンスターが4種類以上いる時、手札の『裁きの龍』は特殊召喚できる…!現われろ!罪を裁く龍よ!」

時空に穴があき純白の巨龍が降臨する ATK3000

 

『攻撃力3000…!(予定通りだ…これで私の勝ちだ!)』

黒炎の悪魔は内心ほくそ笑む…しかしその顔はすぐに絶望に変わる

 

「『裁きの龍』の効果を発動…!俺のライフ1000を糧にフィールドの全てのカードを破壊する!カタストロフ レイ!!」

《グオォォォ!!》

巨龍が咆哮する…それと共に破壊の波動がフィールドを蹂躙した!

 

遊海LP3000→2000

 

『な、なんだと!?わ、私の切り札が!』

 

「まだ終わりじゃない!手札から『ライトロードサモナールミナス』を召喚!」

光の召喚士が現れる ATK1000

 

「『ルミナス』の効果…!手札の『ガロス』を捨てて墓地のチューナーモンスター『ライトロードアサシン ライデン』を特殊召喚!」

2本の刀を持った暗殺者が現れる ATK1700

 

「レベル3の『ルミナス』にレベル4の『ライデン』をチューニング…!」

 

3+4=7

 

「集いし祈りが異界の勇者を呼び覚ます!悪を裁く光となれ!シンクロ召喚!『ライトロードアーク ミカエル』!」

巨龍に騎乗した大天使が降臨する ATK2600

 

『なっ…あ、ああ…!』

悪魔は2体の龍に見下され後退る…そのモンスター達の瞳には怒りが宿っていた…

 

「バトル…『裁きの龍』と『ミカエル』でダイレクトアタック!ツインジャッジメント!」

2体の龍の息吹がディヴァインを飲み込んだ…

 

『ぐああぁぁぁ!!?』

 

 

黒炎の悪魔LP4000→1000→0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『が…ぐぅ…貴様も超能力を…!』

炎に飲まれヤケドを負った黒炎の悪魔…若きディヴァインはなんとか立ち上がる…その心は既に遊海への恐怖心に埋め尽くされていた。

 

「諦めろ…ディヴァイン…お前では俺には勝てない」ザッ

遊海は傷ついた身体で歩みを進める…

 

『ヒッ…来るな!来るなぁぁ!!「ファイヤーボール」!!』ボゥッ!

ディヴァインはファイヤーボールを遊海に放つ

 

「貴様の力はその程度か…!」バシッ! ザッ

遊海は火の玉を叩き落とし…そのまま歩みを進める

 

『う…うわぁぁ!!!』ボゥッ!ボゥッ!ボゥッ!

恐怖に飲まれたディヴァインはファイヤーボールを連発する…

 

「貴様の力には鉄の意思も鋼の強さも感じない…!!」

火の玉が遊海に直撃する、しかし遊海はそれに気を止めず歩みを進める…だが遊海の身体は焼け焦げボロボロになっていく…

 

『あ…あああ…!』

 

「世界に復讐しようというなら覚悟を持て…覚悟の無い力など…意味は無い!!」

 

『う、うあああ!サイコソード!!!』

剣を実体化させ遊海に斬りかかる…しかし

 

「弱いな…」

 

『なっ!?』

遊海は剣を指で挟み受け止める…剣は微動だにしない…

 

「本当の一撃は…こういう…ものだぁぁ!!」ズガン!

 

『ガッ…ガハァァァ!!?』

遊海の容赦ない一撃がディヴァインの腹に食い込み、体を吹き飛ばした…

 

「『大いなる力には大いなる責任が伴う』…覚えておけ…!」

遊海の怒りの一撃をもってディヴァインの暴動は幕を閉じたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翔!翔!!何処にいる!!」

遊海とディヴァインの決着から数分後、カイザー亮が現場に到着する…現場から逃げた人の中にカイザーのファンがおり翔の危険を知らせたのだ。

 

「カイザー…ここだ…!」

 

「遊海せ…遊海先生!!」

カイザーはようやく翔…そして遊海を見つける、しかし遊海は傍目から見て重傷を負っていた…。

 

「安心しろ翔は掠り傷だ…犯人は捕まえたよ…」

遊海の手の先には紫色の鎖で拘束された青年が倒れていた。

 

「遊海先生…翔を助けてくれてありがとうございます!とにかく早く病院へ!!」

 

「ああ…わかってる、その前に…少し寝かせて…く…れ…」バタッ

 

「!!遊海先生!しっかり…しっかりしてください!遊海先生!!!」

カイザーが呼びかけるが遊海はそのまま意識を失ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ…イタタタ…ここは……病院か…」

遊海は見慣れた部屋、童実野病院の病室で目を覚ました、身体は包帯でグルグル巻きになっている…。

 

「あっ…遊海先生!!大丈夫ッスか!?」

 

「翔…」

ベッド横では翔が遊海の看病をしていた…翔も包帯を巻かれている…

 

「今、翠さんをよんでくるッス!!」

そうしてドタバタと走っていった…これから先は少し割愛するが遊海が翠に怒られたのは言うまでもないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フッフッフッ…ヨハン・アンデルセン、丸藤 亮…貴様らのエースは私達が頂いていく…せいぜい有効活用させてもらうぞ』

 

「ま、待て…!『レインボードラゴン』を返せ…!」

 

『それは叶わない話だヨハン、このカード達は未来を救う実験に協力して貰う…大人しく寝てろ「催眠術」発動!』

 

「ぐ…あ…」

 

 

 

 

『パラドックス、オレが手伝うのはここまでだ…健闘を祈る』

 

『すまないなゲイザー…お前はこれからどうする?』

 

『この時代に残り…モーメントの逆回転を起こす、役者は揃った』

 

『そうか、ではさらばだ…全ては未来を救うために』

 

『未来を救うために…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5




バトルシティ予選通過者3名 残り人数 100名 


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バトルシティ3日目〜未来からの侵略者!2〜

事件から一夜明けバトルシティ3日目となった、重傷を負った遊海は病院のベッドで身体を休めていた…。

 

「今日で本戦も終わりか、決勝…間に合うかな…」

 

「遊海さん、何を言ってるんですか…治ってなくても回復して飛び出して行っちゃうくせに」

 

「…まぁ、そうなんだけどな…」

翠が呆れた顔で話しかけてくる、心なしか拗ねているようだ…。

 

「とにかく今日は安静にしててくださいね!海馬社長にも伝えてありますから!」

 

「アッハイ…もう一眠りするか…」

 

コンコンコン

 

 

「は〜い!どうぞ〜!」

 

『失礼する、警察のモンだが…白波 遊海氏は起きてるか?』

 

「あっ、起きてますよ!遊海さん警察の方が…」

 

「警察…?入って貰ってくれ」

警察…そうか、町の中で大暴れしたもんな…

 

『邪魔するぜ…童実野警察の牛尾だ、昨日の事件について話を聞きたいんだが…』

 

「あっ…!」

カーテンを開けて入ってきたのはスーツを着たガタイのいい男…未来にて遊星に3連敗するデュエルチェイサーズの一人、牛尾 哲その人だった…。

 

 

『ん?オレの顔に何かついてるか?』

 

「あ、いえ…お久しぶりです牛尾さん…」

 

『?アンタと会った事あったか?』

 

「…高校の後輩です…遊戯と同じ代の…」

 

『ああ…そういう事か、何処かで見た事があると思ったら…高校時代の事はナイショで頼む』

遊戯の名前を聞いた牛尾は顔を強張らせる…まだトラウマになっているようだ。

 

「ええ、わかりました…今日はどうしましたか?」

 

『ああ…昨日起きた器物損壊・傷害事件について聞きたいんだが…』

 

「わかりました、なんでも聞いてください!」

 

『協力感謝する、では事件の経緯について…』

 

そうして牛尾に事件のあらましを話す、海馬社長からの依頼…突然の爆発…サイコデュエリスト…その対応について…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『超能力者が起こした事件ねぇ、本人もそう言ってたが…オレはあんまり信じられねぇな…』

一通りの聞き取りを終え牛尾はポツリと呟いた

 

「まぁ普通はそういう反応になりますよね…俺も同じような力がなければ信じていなかったかもしれませんし」

 

『そういえば…目撃証言でアンタが火の玉に突っ込んで行ってボロボロになったって聞いたが…それほどでもなさそうだな…』

牛尾は俺の身体に目を向ける、一晩休んで傷は4割程治ってきていた…

 

「回復力には自信がありますから!…これで連続襲撃事件も解決ですかね?」

 

『ああ…その件なんだが…ディヴァインは一部犯行を否認してんだよ…』

 

「えっ…?」

 

『襲撃事件の被害者のうち何人かはカードを奪われてる、だが…そいつらはやってねぇって言ってるらしいんだ…まぁ嘘だと思うんだが…』

 

「そうですか…」

 

『まぁ、ここからは警察の領分だ…アンタは精一杯戦ってくれや、応援してるぜ白波 遊海!』

 

「はい!ありがとうございます!」

そう言って牛尾は部屋を後にした…

 

ドスン!

「『痛てっ!?』」

…と思ったら誰かとぶつかった音が…何事だ?

 

 

 

「遊海先生!大変だ!!」

部屋に駆け込んできたのは十代だった…相当慌ててるが…

 

「十代どうした、そんなに焦って…」

 

「カイザーとヨハンが…襲われた!」

それが新たな事件の引き金となった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイザー!ヨハン!無事か!!」

十代から話を聞いた俺は慌てて病院に運ばれた2人の元を訪れた。

 

「遊海先生…すみません、見事にやられました…」

病室には2台のベッドがありそれぞれ包帯を巻いたカイザーとヨハンがいた…。

 

「カイザー…いったい何があった、お前ほどの決闘者がここまでやられるなんて」

カイザーを治癒させながら遊海が問いかける

 

「ええ…実は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜前日・夜〜

 

「ん?お〜い亮!」

 

「むっ…ヨハンか、久しぶりだな」

バトルシティ事務局で決勝進出を確定させた帰り道、カイザーはヨハンに声をかけられる。

 

 

「亮も決勝進出確定か?」

 

「ああ、60枚ほど集めたから大丈夫だろう…お前はどうだ?」

 

「オレも進出確定さ!もしかしたらトーナメントで当たるかもな!」

 

「フッ…以前の決着をつける時がきたか…!勝ちは譲らないぞヨハン!」

 

「望むところだ!カイザー!」

 

カイザーとヨハンはアカデミアが異世界に飛ばされた時に一度デュエルをした…しかし機械が壊れてしまった事で引き分けになっていたのだった。

 

 

「そうだ!夕飯食べにいかないか?まだだろ?」

 

「すまないが今日は遠慮させてもらう…病院に行かなくてはならないんだ」

 

「病院!?どこか悪いのか!?」

 

「いや俺じゃない…翔と遊海先生が入院しているんだ…」

 

「遊海先生が入院!?いったい何が…!」

 

「さっきアナウンスがあった『デュエリストによる破壊事件』…2人が巻き込まれたんだ、翔は掠り傷で済んだんだが…遊海先生が重傷でな、さっき目覚めたと連絡があったんだ、お見舞いに行かなくては…」

 

「それならオレも付き合うぜ!遊海先生にはお世話になってるからな!」

《ルビ〜!》

ヨハンの肩に乗っているルビーも同意する

 

「それなら早めに行こう、面会時間が終わってしまう」

 

「ああ!」

そうして2人は連れ立って病院へと向かった…。

 

 

 

 

「しかし遊海先生がランキング1位…実質の『決闘王』か〜、あの人ならぴったりの称号だ!」

 

「ああ、あの人の強さは俺達とは次元が違う、本気を出していない状態での1位だからな…」

 

カイザーは遊海の本気を知っている、それに比べればプロリーグで活躍している遊海は力を出していないに等しいのだ。

「だが…デュエルは何が起きるかわからない、俺は遊海先生を超えてみせる!」

 

「ヘへッ!気合充分だなカイザー!オレも負けてられないぜ!」

2人は決勝トーナメントに想いをはせながら進んでいく…その時

 

『ヨハン・アンデルセンと丸藤 亮だな?』

 

『オレ達とデュエルをしてもらおうか…!』

 

 

「なんだお前達は!」

ヨハン達の前に2人のデュエリストが現れる、1人は半分が黒、半分が白の仮面を着けた男…もう1人は黒いバイザーのような仮面を着けた男だった。

 

 

《ヨハン…奴らから嫌な気配がする!逃げるんだ!》

 

「サファイアペガサス…わかった!亮!逃げるんだ!」

 

『逃がすわけないだろう…フィールド魔法「闇」発動!』

周囲が闇に覆われ隔離される!

 

「戦うしかなさそうだな…!」

カイザーは決闘盤を構える

 

「ああ、さっさと倒して遊海先生のお見舞いだ!」

 

『…やはり生きていたか、()は完全に殺してやる…!』

バイザーの男は殺意を滲ませる

 

「遊海先生と因縁がありそうだが…とにかく倒してからだ!いくぞ!」

 

 

「「デュエル!」」

『『デュエル!』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バトルだ、「sinパラドクスドラゴン」でダイレクトアタック!』

 

「ぐああぁぁぁ!!」

 

カイザー亮 LP0

 

パラドックス WIN!

 

 

 

 

 

 

『バトル、「魔王超龍べエルゼウス」でダイレクトアタック、べエルゼウス・ジェノサイダー!』

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

ヨハンLP0

 

ゲイザー WIN!

 

 

 

デュエルは中盤まではヨハン達有利で進んだ…しかし切り札である『サイバーエンドドラゴン』『レインボードラゴン』を謎の力で奪われ形勢は逆転…ヨハン達は敗北した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキッ…!

 

病室に何かが割れる音が響く、それは遊海が松葉杖の持ち手を握り潰した音だった…。

 

「許さないぞ…ゲイザー、俺の教え子に手を出しやがって…!!」

 

「ゆ、遊海先生…!?」

カイザーは冷や汗を流す…遊海から漏れ出す殺気が凄まじい圧を生んでいたからだ。

 

 

 

 

 

 

ビーッ!!ビーッ!!ビーッ!!

「「「なんだ!?」」」

突如、病院に警報音が鳴り響く!

 

 

 

『緊急事態発生!緊急事態発生!童実野町にて大規模な災害が発生しました!病院内にいる動ける患者・お見舞いの方は急いで避難してください!身動きの取れない患者さんは看護師・医師が向かうまで待機してください!避難訓練ではありません!繰り返します!…』

 

 

 

「まさか…!」

遊海は病室の窓から町を見る…そこには空を飛び町を破壊するサイバーエンドドラゴン、そしてレインボードラゴンの姿があった…。

 

「っ…!?町が!!」

十代もその光景を見て唖然としている…。

 

「フレアァァァ!!」

 

《キュアアアアア!!》

遊海は窓から飛び降りる…そして即座にラーを呼び出し町へと飛び出した!

 

「遊海先生!!」

 

「十代君!行って!!亮君とヨハン君は私が避難させるから!」

 

「っ…わかった!2人を頼みます!ネオス!!」

翠の後押しを受けて十代も窓から飛び出す、そしてネオスの身体能力で遊海の下へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フハハハハ!暴れろドラゴン共!この時代の人間達に「デュエルモンスターズ」への恐怖を刻み込むのだ!』

《ギシャアアア!》

《グオォォン!》

 

ビルの上から仮面の男…逆刹のパラドックスは2体の龍へと指示を出す、パラドックスの目的…それは『デュエルモンスターズの抹殺』…未来を救うためにデュエルモンスターズの存在を無くそうとしているのだ。

 

 

「うわぁぁん!お母さ〜ん!!」

崩れゆく町の中で母親とはぐれた男の子が泣いている…大人達は自分達が逃げるのに必死で気づいていない…。

 

《ギシャアア!》

 

ズガーン!!

 

サイバーエンドの光線でビルが崩れる…その瓦礫は男の子に降り注ぐ!

 

「うわぁぁ!!」

 

 

「危ねえ!!!」

 

 

ドスーン!!

 

「無事か!坊主!」

 

「う、うん…!」

 

「なら早く逃げろ!走るんだ!」

 

「は、はい…!」

 

 

「っ…なんでカイザー亮の『サイバーエンド』とヨハンの『レインボードラゴン』が暴れてやがるんだ…!」

男の子を助けたのは城之内だった、彼は異変を察知し、逃げ遅れた人達を助けていたのだ。

 

『…城之内 克也、デュエルモンスターズ黎明期から活躍する伝説の決闘者の1人…』

 

「へっ、オレの事は知ってるみたいだな!お前は何者だ!ダークネスの残党か!」

 

『ダークネス?知らんな…貴様を消せばこの時代の者達はデュエルモンスターズへの恐怖も増すだろう…未来への礎となるがいい!』

《グオォォン!!》

 

「ヤベッ!?」

レインボードラゴンがブレスを溜める…!

 

 

 

【や〜ら〜せ〜る〜かぁぁぁぁっ!!!】

 

 

 

《グオォン!?》

 

ドップラー効果とソニックブームを起こしながら鎧を着た人影がレインボードラゴンをふっとばす!

 

【ヨハンとカイザーのエースを返してもらうぞ…パラドックス!!】

 

『貴様…何者だ!』

 

【通りがかりの決闘者だ!貴様は許さない!!】

地面に着地しながら遊海はパラドックスを睨みつけた…!

 

 

 

 

 

 

「遊海!すまねぇ、助かった!」

 

【城之内さん!早く逃げてください!…ここは食い止めます!】

城之内は遊海へと駆け寄る、遊海はパラドックスを睨んだまま城之内に避難を促す

 

「わかった!死ぬなよ!遊海!」

 

【当たり前です!】

城之内は素早くその場から離れていった…。

 

 

『フン、邪魔が入ったか…ならば貴様からだ!行けっ!』

《ギシャアア!》

《グオォォォン!》

2体の龍が遊海へと飛びかかる!

 

【モード・ネクロス・トリシューラ!絶対零度!!】

《ギシャアア!?》

 

氷龍の力を纏いサイバーエンドを凍らせ動きを止める!

 

《グオォォォン!!》ギュアアッ…バシュウウウ!

 

【っ…ディサイシブ!!】

 

ドガァァン!!

 

巨大な砲門を担ぎレインボードラゴンの『オーバー・ザ・レインボー』を相殺する!…しかし

 

ズギャアアン!!

 

【なにっ!?ぐああぁぁぁ!!?】

爆炎の中から新たな光線が放たれ遊海に直撃…ビルに叩きつけられる…爆炎の向こうではサイバーエンドが氷を砕いていた…

 

【っう…!流石伝説級のモンスター達だ…!動けねぇっ…!】

ビルにめり込んだ遊海は巨大な砲門が引っかかり身動きが取れない…

 

『他愛もない…やれ!!』

《ギシャアアア!/グオォォォン!》

2体の龍が光線を放つ!

 

【あ、やば…】

 

 

「『ネオス』を召喚!遊海先生!!」

 

【反射の陣!!っおおおお!!!】

光線と遊海の間に十代が割り込み光線を防ぐ…その一瞬で遊海は聖刻アーマーを纏い光線の一部を反射し受け流す、

 

 

『遊城 十代…精霊を操る類まれなデュエリスト…!』

 

「へっ…名前が売れてて光栄だぜ…!」

 

【すまない十代…助かった!】

 

「ああ、先生…ヤツは何者だ?」

光線を防いだ十代は遊海に敵の正体を問う

 

【アイツはパラドックス…未来の人間だ…!】

 

「未来…!?」

 

『フッ…何処で私の事を知ったか知らんが…この時代での目的は達成した、お前達には消えてもらう…!』

そう言ってパラドックスは1枚のカードを掲げる…カードから光が溢れ…星の輝きを持った白い龍・スターダスト・ドラゴンが降臨する!

 

「な、なんだ!この白い龍は…!」

《十代!このドラゴンからとてつもない力を感じる!気をつけろ!!》

 

スターダストを見たユベルは十代に注意を促す…スターダストは最低でも1万年前から存在するモンスター、その力は神をも凌ぐ…!

 

【スターダストドラゴン…!】

 

『遊城 十代、そして鎧のデュエリスト…お前達には消えてもらう…シューティング・ソニック!!』

白銀のブレスが放たれる!

 

【まずい!!十代!全力で耐えろ!!…モード太陽神!!うおぉぉお!!】

 

「わかったぁ!!うおぉぉお!!!」

 

遊海も十代も自分の持てる限りの力で白銀のエネルギーを防ぐ…しかしその威力は凄まじく2人を纏めて吹き飛ばした…

 

【「ぐああぁぁぁ!!?」】

 

 

ズガーン!!!

 

 

 

「ガッ…十代…無事か…!」

 

「遊海先生!なんで…!!」

吹き飛ばされる刹那、遊海は十代の後ろに回り込み叩きつけられる衝撃を吸収した…しかしダメージは凄まじく変身は解け、元の入院着に戻ってしまう…。

 

『…終わりだ…!』

再びシューティングソニックはが放たれる…ネオスはボロボロ、遊海も防御不可…二人にブレスが迫り…!

 

 

 

 

 

 

 

 

《キュオオォォオオン!!!》

 

白銀のブレスは突如現れた赤い壁…否、アストラル体の龍…シグナーの守護龍たる『赤き竜』に防がれる、そしてその中から赤いバイク…Dホイールが飛び出してくる!

 

 

「『スターダスト・ドラゴン』…!?」

赤いバイクのドライバーがスターダストの名前を呼ぶ…

 

『くっ…不動 遊星…!?私を追って時間を超えてきたのか…!?』

パラドックスは驚いたようにつぶやく

 

「貴様ぁ…!」

 

『邪魔が入った…十代、鎧のデュエリスト…お前達の相手はここまでだ、この時代も私の大いなる実験で滅びるのだ…!』

 

「なんだと!?」

 

「待て…パラドックス…!」

 

『ハッハッハッハッ…!!』

パラドックスは高笑いしながら大型のDホイールに飛び乗る…そして時代を超えて消えていった…。

 

 

 

 

 

 

「くっ…逃したか…!」

遊星は悔しそうに拳を叩きつける、未来でエースであるスターダストドラゴンを奪われた遊星は赤き竜の力でパラドックスを追い、時を超えて来たのだ…。

 

 

「…不動…遊星、まさかこんな時に…会うとはな…ぐっ…!」

 

「遊海先生!!大丈夫か!傷が…!」

 

「なっ…遊海さん!なぜ貴方がここに!?」

遊星は傷だらけの遊海を見て驚きをあらわにする…。

 

「あ〜…、どうやら俺の事は知ってるみたいだな、遊星…俺はこの時代の人間だ、お前の知る『白波 遊海』ではない…そっちの俺は元気か?」

 

「…えぇ、元気です!貴方のおかげで地縛神の被害が最小限で済みました…!」

 

「そうか…とりあえず時間も無い、情報交換といこうか…」

 

そして遊星と十代が自己紹介をして情報を交換した…そしてパラドックスの目的地を割り出そうとする…。

 

「よしっ…とりあえず万丈目グループのデータベースでニュースを…」

 

「待て十代、それじゃあ遅い…アヤカ!歴史の検索開始だ!」

 

《了解です!マスター!》

ノートパソコンでニュースを調べようとする十代を制して遊海はデータを検索する…。

 

《…ヒットしました!展開します!》

検索が終了しデータが投影される…そこには

 

 

 

『ドラゴンが町を破壊!』

 

『童実野町の惨劇!!』

 

『ペガサス・J・クロフォード氏死亡!どうなるデュエルモンスターズ!』

 

 

「っ!…こんな事が本当に起きたら…!?」

遊星は記事を見て動揺する…ペガサスの死、それはデュエルモンスターズの終焉に他ならないからだ…。

 

「っ…不味い!崩壊が始まった…!」

 

遊海の言葉と共にビルが崩れ、黒い雪が降り始める…過去が変わる事で時代が崩壊しようとしている…!

 

「遊星!十代!急いで時を超えろ!時代が崩壊する前にアイツを止めるんだ!!」

 

「「わかりました!!」」

二人は急いでDホイールに跨がる…

 

 

「遊星!」

 

「なんですか!遊海さん!」

遊海はDホイールの遊星に話しかける

 

「おそらく歴史が変わったら俺はおそらく()()()()()()()()()()()()…だが頼む!未来を救ってくれ!!」

 

「遊海さん…!貴方は何処にいても変わらない…わかりました!必ず未来を救います!」

遊星と遊海は握手を交わす…その瞬間

 

「痛っ…!?(なんだ…右腕が…熱い…!!)」

遊海の右腕に焼けつくような痛みが襲いかかる…

 

「遊海さん…?」

 

「行け…遊星!十代を頼む!!」

 

「わかりました!行きます!!」

 

「先生!行ってくる!!」

 

そして二人は時を超えた…

 

 

 

「はあっ…はあっ…なんだ…今のは…?」

遊海は右腕を捲る…そこには赤い炎を象った薄い()があった…

 

「…ちょっと待て、なんだよ…コレ…?」

その直後遊海は意識を失った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生!起きてくれ!終わったぜ!」

 

 

「くっ…十…代?俺は…?」

俺は夕日の指す町中で目を覚ました…、なんでこんな所に居るんだ…?俺は入院してて…、目の前には少しボロボロの十代が心配そうに俺を覗き込んでいた…。

 

「おはよう十代…終わったって…何が…?」

 

「あっ…(やっぱり記憶は残ってないのか…)…本戦だよ本戦!バトルシティの本戦が終わったんだ!俺も決勝進出だぜ!」

 

「そうか…やったな十代!…すまないが肩貸してくれるか?身体中が痛え…なんで俺はこんな所にいるんだ…?夢遊病か…?」

 

遊海は十代の肩を借り病院へと戻る…その後再び翠に怒られたのは言うまでもない…。

 

 

 

そしてステージは進み…バトルシティ・レジェンド決勝が始まる…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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バトルシティ・レジェンド 決勝T〜最強VS最強〜

こんにちは!S.Kです!
活動報告にも書かせて頂きましたがpixivにて拙作「決闘の観測者」のコラボ小説を書いていただきました!前・中・後編からなる超大作です!是非ご覧ください!



時空大戦 札の章 十六夜月
(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9976606




それでは最新話をどうぞ!


『レディース&ジェントルマン!!大変長らくお待たせいたしました!…バトルシティ・レジェンド決勝トーナメントの開幕だぁ〜!!!!』

 

「「「わあぁぁぁ!!!」」」

 

俺の夢遊病騒動の2日後…ついにバトルシティ決勝トーナメントが開催される、会場はもちろん海馬ランドのスタジアムである…会場は満員御礼、選手達の登場を会場の観客達は今か今かと待っている…!

 

『それでは激闘の本戦を勝ち抜いた選手達の入場だ!一人目は〜…アンタいつの間に本戦に出たんだよ!?初代バトルシティの雪辱は晴らせるか?「最強のドラゴン使い」!海馬 瀬人〜!!!』

 

「フハハハハハハ!」

高笑いと共に海馬社長が入場する…本当いつの間にデュエルしたんだ…?

 

 

『続いて二人目!プロランキング3位!プロデュエリスト・イケメンランキング1位!サイバー流の正統後継者!「帝王」丸藤 亮〜!!!』

 

「俺の全力で…勝利を掴み取る!」

 

「「「カイザー様素敵〜!!」」」

 

「お兄さん〜!頑張って〜!!」

 

二人目はカイザー、会場中から黄色い歓声が聞こえてくる…流石である。

 

 

『続いて三人目!プロランキング2位!DD引退後のデュエル界を牽引した漢気デュエリスト!「最強の賭博師」!城之内 克也!!』

 

「よっしゃ〜!!見てろよお前らー!!」

 

「「「頑張れ凡骨〜!!!」」」

ズコッ

 

「もう凡骨とは言わせねぇぞ!!」

 

三人目は城之内さん、この掛け合いはもはやお約束である。

 

 

『四人目!I2社ペガサス会長を唸らせた宝玉獣使い!そのデッキのモンスターの数は僅か8体!モンスター達との絆で戦うデュエリスト!ヨハン・アンデルセン〜!!!』

 

「どうも〜!完成したオレのデッキの強さを見せてやるぜ!」

《ルビー!!》

 

四人目はヨハン、余裕を見せ観客達に手を振っている。

 

 

『五人目!決勝進出者最年少!しかしその実力は折り紙付き!プロランキング4位!「運命を操るデュエリスト」!エド・フェニックス!!』

 

「フッ…!」

 

「「「きゃ〜!エド君〜!」」」

 

五人目はエド、やはり人気は高いのか観客席にはたくさんのプラカードが出ている。

 

 

『六人目!信条は「楽しいデュエル」!世界を旅するHERO使い!遊城 十代!!!』

 

「へへっ!よろしくな!楽しみだぜ!」

《気を抜くんじゃないぞ十代…》

 

六人目は十代、観客からの反応は薄いが世界を何度も救った最強クラスの決闘者だ、…そろそろかな?

 

 

『そして七人目!あまりの強さでシードを与えられたデュエリストの登場だ…現プロリーグチャンピオン!数多のデッキを使いこなす「世界最強」の決闘者!…「赤帽子」…白波 遊海〜!!!』

 

「「「わぁぁぁ!!!」」」

 

「…すげぇなこりゃ…」

会場を割れんばかりの歓声が包み込む…正直むず痒い気持ちだ…

 

 

『そして、トリを飾る八人目…「決闘王」を決める闘いにこの人を欠かしちゃだめだよなぁ!?…全ての決闘者の頂点に立つ「キング・オブ・デュエリスト」!…初代「決闘王」…武藤 遊戯の…登場だ〜!!!』

 

 

「「「「!!!!!!!」」」」

 

 

その瞬間、会場から音が消えた…否、あまりの音で耳が意味を成さなくなった、そう感じるほどの歓声が最強の決闘者を迎えいれる!!

 

「…ついにこの時が来た…お前を超えるぞ…遊戯!!」

 

「へっ、流石最強の決闘者だ!」

 

「遊戯さん…やっぱりカッコいい〜!!」

 

 

「待たせたね、みんな…さぁ…新たな最強を決める戦いを始めよう!」

 

 

「「「オオォォ!!!」」」

会場の中心に遊戯が立ち、全員を鼓舞する…最強を決める戦いが今始まる…!

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、それでは決勝トーナメントの組み合わせの発表だ…組み合わせはこの「アルティメットビンゴマシーンα」で行われる!』

司会の声と共に『究極竜』を模したビンゴマシーンが現れる…。

 

『それじゃあいくぜ…抽選スタート!!!』

ビンゴマシーンから次々と玉が吐き出され…組み合わせがスクリーンに映し出される!

 

決勝トーナメント1回戦

 

第一試合

 

遊戯対遊海

 

第二試合

 

ヨハン対カイザー

 

第三試合

 

海馬対エド

 

第四試合

 

十代対城之内

 

 

『こ、これは最初からクライマックスだ!第一試合は決闘王対プロチャンピオンの一騎打ちだ〜!!!』

 

 

「…オーマイゴッド…」

《呼びました?》

 

「いや…神様違い…」 

言葉通り最初からクライマックスな展開になったな…。

 

 

「遊海」

 

「遊戯…」

遊戯が俺に話しかけてくる

 

「手加減はいらない…君の出せる本気で来てくれ!」

 

「…わかった、決めようぜ遊戯…最強を!!」

 

 

『おーっと!開始前から火花バチバチだ!この二人は初代バトルシティのファイナリストだ!因縁に決着が着くか〜?第一試合は30分後!準備を頼むぜチャンピオン!!』

 

 

 

 

 

 

 

「さて…どうするか」

俺は久々にカード収納庫である亜空間を訪れていた、遊戯の持ち味は相手の行動を予想した上でのコンボ…今までは遊戯に勝ってきたけど…どうしようか…?

 

「シンクロ…融合…儀式…エクシーズ・ペンデュラムは論外…う〜ん…」 

 

《遊海…難しく考える必要はないぞ、お前は自分自身のやりたいようにデュエルすればいいのだ!》

 

《そうですよマスター!全力で相手にぶつかる…それがデュエルの醍醐味です!》

 

「メガロック…アヤカ…そうだよな!俺は俺らしくだ!」

遊海は難しく考えるのを止めた、遊戯と全力で戦う…それを胸に決めて一つのデッキを手に取った。

 

 

 

 

『レディース&ジェントルマン!それじゃあ始めるぜ?第一試合…いや実質決勝戦のデュエルを!!』

 

「「「わあぁぁぁ!!!」」」

 

 

『赤コーナー!現「決闘王」…武藤 遊戯!!』

 

「「わあぁぁぁ!」」

 

『青コーナー!初代バトルシティファイナリスト!プロチャンピオン!「赤帽子」…白波 遊海!!』

 

「「わあぁぁ!!!」」

 

 

 

「遊戯…いくぜ…!」

 

「望むところだ!!」

 

 

『興奮は最高潮!決闘の用意は整った!最強対最強…勝つのはどっちだ!?…それでは…デュエルスタートォォォォ!!』

 

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

遊海LP4000

遊戯LP4000

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『おろかな埋葬』を発動!デッキから『ボルトヘッジホッグ』を墓地に送る!」

 

墓地送り

ボルトヘッジホッグ

 

…俺が手に取ったのは遊星の使う『ジャンク』デッキ、流石に「スターダスト」は使わないけど…全力でブン回す!

 

 

「さらに魔法カード『調律』を発動!デッキから『ジェット・シンクロン』を手札に加えデッキトップを墓地へ!」

 

墓地送り

グローアップバルブ

 

「そして『ジャンク・シンクロン』を召喚!」

オレンジ色の小さなロボットが現れる…ちなみに戦士族である。 ATK1300

 

「『ジャンクシンクロン』の効果を発動!墓地のレベル2以下のモンスター『ボルトヘッジホッグ』を特殊召喚!」

体中からネジを生やしたハリネズミが現れる…しかし獣族では無く機械族である。 DEF800

 

「さらに墓地からモンスターが特殊召喚に成功した時!手札から『ドッペルウォリアー』は特殊召喚できる!」

銃を持った黒い服の戦士が現れる ATK800

 

「いくぜ遊戯!俺はレベル3の『ジャンクシンクロン』にレベル2の『ドッペルウォリアー』をチューニング!」

 

3+2=5

 

「集いし絆が試練を超える力を紡ぎ出す!シンクロ召喚!『ジャンク・ウォリアー』!!」

青い身体の白いマフラーをたなびかせた戦士が現れる ATK2300

 

「さらにシンクロ素材となった『ドッペルウォリアー』の効果!『ドッペル・トークン』2体を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

小さな兵士が現れる ATK400 ✕2

 

「そして『ジャンクウォリアー』の効果を発動!このカードがシンクロ召喚に成功した時!このカードの攻撃力は自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする!パワー・オブ・フェローズ!」

フィールドにいる3体のモンスターがジャンクウォリアーを力を与える ATK2300→3900

 

 

「さらに!墓地の『グローアップバルブ』はデッキトップを墓地に送りデュエル中一度だけ特殊召喚できる!」

花の咲いた球根のモンスターが現れる DEF100

 

墓地送り

クイックシンクロン

 

「そしてレベル1の『ドッペルトークン』にレベル1『グローアップバルブ』をチューニング!」

 

1+1=2

 

「デュエルを新たな地平へと導け!シンクロ召喚!『フォーミュラ・シンクロン』!」

F1カー型のロボットが現れる DEF1200

 

「『フォーミュラシンクロン』の効果発動!シンクロ召喚成功時に1ドロー!…カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

遊海LP4000

ジャンクウォリアー ヘッジホッグ フォーミュラシンクロン ドッペルトークン 伏せ1 手札3

 

 

 

 

『プロチャンピオン白波 遊海!鮮やかな手際でモンスターを展開した!?決闘王大丈夫か〜!?』

 

 

「流石だね遊海…本気じゃないか…!」

 

「今回はマジで狙いにいくぜ…遊戯!」

 

「負けないよ!!」

 

 

 

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「手札から『アップル・マジシャン・ガール』を召喚!」

羽根の生えたリンゴが現れ光に包まれる、するとリンゴから手足が生え可愛い魔術師が現れる ATK1200

 

「さらに手札から魔法カード『ディメンションマジック』を発動!『アップルマジシャンガール』を生贄に…来い!我が最強の下僕!『ブラック・マジシャン』!」

《ハアッ!》

遊戯のフィールドに棺が現れる、そこにリンゴの魔術師が飛び込む…すると入れ替わりに遊戯、そしてアテムのもっとも信頼する黒魔術師が現れる…ついでに筋肉モリモリの映画仕様である ATK2500

 

「特殊召喚成功時!『フォーミュラシンクロン』の効果を発動!相手メインフェイズにシンクロ召喚を行う!」

 

「僕のターンにシンクロ召喚だって!?」

遊戯は驚きをあらわにする

 

「レベル1の『ドッペルトークン』とレベル2の『ボルトヘッジホッグ』にレベル2の『フォーミュラシンクロン』をチューニング!」

 

1+2+2=5

 

「集いし進化が新たな力を紡ぎだす!俺を導け!シンクロ召喚『アクセル・シンクロン』!」

赤いバイクを模したロボットが現れる DEF2100

 

「すごいね遊海…!でもまだだ!『ディメンションマジック』の効果により『ジャンクウォリアー』を破壊する!」

棺に魔力が集まっていく…!

 

「『アクセルシンクロン』の効果!このカードも相手ターンにシンクロ召喚を行なえる!!」

 

「なんだって!?」

 

「俺はレベル5の『ジャンクウォリアー』にレベル5『アクセルシンクロン』をチューニング!!」 

遊海を中心に風が渦巻く!

 

5+5=10

 

「集いし願いが最強の戦士を呼び覚ます!アク…シンクロ召喚!煌け!『スターダスト・ウォリアー』!!」

凄まじい突風と共に白銀の竜を模した戦士が現れる! ATK3000

 

「レベル10で攻撃力3000…!でも『ディメンションマジック』は破壊するモンスターを《選ぶ》効果!よって『スターダストウォリアー』を破壊する!」

棺から魔力弾が放たれ白銀の戦士は爆発する…

 

「これで君を守るモンスターはいない!『ブラックマジシャン』で……なんだって!?」

 

スターダストウォリアーの爆煙が晴れる…そこには威厳を感じる機械の戦士が佇んでいた!

 

「『スターダストウォリアー』の効果発動!このモンスターが破壊された時、エクストラデッキから『ウォリアー』と名のついたモンスターを特殊召喚する!俺は戦士を統べる君主『ロード・ウォリアー』を特殊召喚した!」 ATK3000

 

 

「攻撃力3000…僕はカードを2枚伏せてターンエンド!」

遊戯LP4000

ブラックマジシャン 伏せ2 手札1

 

『あ〜っと!遊戯!果敢に攻め立てるが遊海は全てを躱した!!』

 

 

「やっぱり君は強いね…!」

 

「ふっ…遊戯こそ!でも次のターンで決める!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「相手フィールドにレベル5以上のモンスターがいる時!手札の『ジャンク・ジャイアント』は特殊召喚できる!」

モノアイの機械の巨人が現れる ATK2000

 

「そして『シンクロン・キャリアー』を召喚!」

クレーン車を模したロボットが現れる ATK0

 

「『シンクロンキャリアー』の効果発動!俺は通常召喚に加えて手札の『ジェット・シンクロン』を通常召喚できる!」

ジェットエンジンのようなロボットが現れる ATK500

 

「さらに墓地の『ボルトヘッジホッグ』は自分フィールドにチューナーモンスターがいる時、特殊召喚できる!ただしフィールドから離れた時、除外される!」

再びネジのハリネズミが現れる ATK800

 

「いくぜ!!俺はレベル6の『ジャンクジャイアント』とレベル2の『ボルトヘッジホッグ』、レベル2の『シンクロンキャリアー』にレベル1『ジェットシンクロン』をチューニング!!」

 

6+2+2+1=11

 

「汝、星を喰らう者!今こそ、その姿を現せ!シンクロ召喚!『星態龍』!」

 

 

………

 

 

 

『ありゃ…?遊海のフィールドに何もモンスターが現れねぇぞ…?ソリッドヴィジョンの不具合か!?』

 

遊海のフィールドにはロードウォリアーだけが佇んでいる…

 

 

 

「遊海!何をふざけた事をしている!!モンスターは何処だ!!」

海馬が遊海に怒鳴りつける…

 

「…まさか(汗)、海馬社長〜!スタジアムの外をカメラで映してくださ〜い!」

 

「なんだと?…磯野!」

 

「了解しました!!」

海馬社長が指示を飛ばしスタジアムの外がスクリーンに映し出される…そこには

 

「なんだぁ…?外が赤いぞ…?」

そこには赤く染まった炎が映っていた

 

「…なんだと…!?カメラを切り替えろ!!」

カメラはスタジアム外からヘリの映像に切り替わる…

 

「「「な、なんだあれは!!?」」」

 

カメラに映し出されたモノ…それは赤い身体を持つ巨大すぎる龍の姿だった…。 ATK3200

 

『デカアァァァイ!!説明不要!…じゃなくて!デカすぎるだろ〜!!?』

 

「デカ過ぎ…!(ここまで大きいとは思わなかった…!次からは気をつけよう…)」

内心反省する遊海なのだった。

 

 

「気を取り直して…リバース罠『リビングデッドの呼び声』発動!墓地の『スターダストウォリアー』を特殊召喚!」

再び白銀の戦士が降臨する! ATK3000

 

「バトル!『スターダストウォリアー』で『ブラックマジシャン』を攻撃!シューティング・スター・フィスト!!」

風の力を纏った拳が魔導師に迫る!

 

「リバース罠『メタモル・クレイ・フォートレス』を発動!このカードをモンスターとして特殊召喚する!」

土が形を成して巨人が現れようとする

 

「『スターダストウォリアー』の効果を発動!このカードをリリースし相手の特殊召喚を無効にし破壊する!ヴィクテム・カウンター!!」

 

「なにっ!?」

スターダストウォリアーが粒子に変わり土塊はかぜに流された…

 

「バトル続行!『ロードウォリアー』で『ブラックマジシャン』を攻撃!ライトニングクロー!」

ロードウォリアーがブラックマジシャンに肉薄する!

 

「手札から『クリボー』の効果を発動!手札から捨てて戦闘ダメージを0にする!」

《クリクリ〜!!》

 

ブラックマジシャンが斬り裂かれ爆発する…しかし巨大化したクリボーが爆発を全て吸収した!

 

「くっ…!ならば『星態龍』でダイレクトアタック!スターイーター!!」

スタジアム外から星態龍のブレスが放たれ遊戯に直撃する!

 

「うわあぁぁ!!」

 

遊戯LP4000→800

 

「トラップ発動!『運命の発掘』!戦闘ダメージを受けた事で1ドロー!」

遊戯は罠を発動し手札を補充する

 

「凌がれたか…俺はこれでターンエンド!エンドフェイズに『スターダストウォリアー』が戻ってくる!」

 

白銀の戦士が三度現れる ATK3000

 

遊海LP4000

スターダストウォリアー ロードウォリアー 星態龍 手札1

 

 

 

 

『決闘王・遊戯!なんとか遊海の猛攻を凌いだ!しかしこれは逆転できるのか〜!?』

 

 

「攻撃力3000超えのモンスターが3体…でも僕は負けられない!もう1人のボクの名前に賭けて!!」

 

「かかってこい遊戯!…俺の憧れの決闘者!」

 

 

 

「僕のターン…ドロー!!」

「魔法カード『天からの宝札』を発動!5枚ドロー!」

 

「最強の手札補充カード!…5枚ドロー!」

遊戯と遊海はそれぞれ5枚のカードを引く…!

 

「魔法カード『デビルズサンクチュアリ』を発動!『メタルデビルトークン』を特殊召喚!」

 

「やらせない!『スターダストウォリアー』の効果発動!特殊召喚を無効にする!ヴィクテムカウンター!」

メタルデビルトークンは消滅する…しかし

 

「でもこれで特殊召喚ができる!『死者蘇生』を発動!蘇れ『ブラックマジシャン』!」

再び魔術師が現れる ATK2500

 

「そして僕はこのカードを発動する!覚醒せよ!『ティマイオスの眼』!!『ブラックマジシャン』と融合!」

遊戯のフィールドにデュエルモンスターズ界の伝説の竜が現れる、そしてブラックマジシャンと融合する!

 

「伝説の竜よ!黒き魔術師の力となれ!融合召喚!『呪符竜』!!」

呪文の刻まれたティマイオスに騎乗したブラックマジシャンが現れる ATK2900

 

「『呪符竜』の効果を発動!お互いの墓地の魔法カードを全て除外しその分攻撃力を100アップする!遊海の墓地からは2枚!僕の墓地からは5枚!700ポイントアップ!マジック・アブソーブ!」

墓地の魔法を吸収しその攻撃力が上がる! ATK2900→3600

 

「バトル!『呪符竜』で『ロードウォリアー』を攻撃!!マジック・デストーション!!」

ブラックマジシャンの魔術、そしてティマイオスのブレスが混ざり合った炎が遊海に迫る…!

 

「遊戯!!これで終わりだ!俺は手札から『ラッシュ・ウォリアー』の効果を発動!」

 

「手札からモンスター効果!?このタイミングで!」

 

「このカードを手札から墓地に送り…『ロードウォリアー』の攻撃力を…倍にする!!迎え撃て!!ライトニング・ラッシュ!!!」

ロードウォリアーが火球を斬り裂く…そして呪符竜に肉薄し、伝説の竜を斬り裂いた…。

 

 

遊戯LP0

 

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『き…決まった〜っ!!プロリーグチャンピオン遊海!10年の時を超えてバトルシティでの雪辱を晴らした〜!!!しかもライフはノーダメージ!何なんだよアンタ〜!!』

 

「「「うおぉぉぉ!!!」」」

 

スタジアムは歓声に包まれる、決闘者の頂点たる二人の戦い…それは遊海の勝利で完結したのだった。

 

 

「遊海…君はやっぱり強いね…完敗だよ」

 

「遊戯…お前とこの舞台で戦えてよかった!また今度やろうぜ!」

 

「ああ!この先も頑張って!」

 

遊戯と遊海はお互いを激励し握手を交わしたのだった…。

 

 

 

 

『いきなり盛り上がりすぎだが…第二試合は30分後だ!準備を頼むぜ!』

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様です!遊海さん!」

 

「ああ!ありがとう翠!疲れたぁ〜…まさかあんなに粘って来るなんて、やっぱり遊戯は強かった…」

舞台裏に下がった遊海は翠と共に一息ついていた、汗をダラダラかいていてその疲労の程が見てとれる…。

 

「でも大丈夫ですか?『アクセルシンクロ』を使っちゃって…」

 

「まぁ…大丈夫だよ、それ以上にインパクトとあるモンスターを出したし…せいぜい海馬社長に突っ込まれるくらいで…「オレがなんだって?」!?海馬社長!??」

遊海の後ろから海馬が声をかける…噂をすれば影という奴である。

 

「遊海!バトルシティが終わったら先程の『シンクロモンスターのチューナー』について話を聞かせてもらうぞ…準備をしておけ!」

 

「は、はい…!わかりました…!!(やっぱりアレはマズかったか〜…)」

後悔するも後の祭りの遊海なのであった…。

 

「それから…決闘王になるのはこのオレだ…!貴様を倒すぞ…白波 遊海!!」

 

「…受けて立ちます!海馬さん!!」

 

二人は火花を散らし…その場を後にした、戦いは続くのであった…。

 

 

 

 

2




バトルシティ〜ダイジェスト〜



ヨハン対カイザー



「バトルだ!攻撃力6000『レインボードラゴン』で『サイバーエンドドラゴン』を攻撃!オーバー・ザ・レインボー!」

「ぐおぉぉぉ!!」

カイザーLP3600→1600

「これでオレはターンエンドだ!伏せカードは無い!次のターンで決着だ!カイザー!!」


「ああ…決着だ!俺のターン!ドロォォ!!」 
「墓地の光属性・機械族を8体除外し…いでよ『サイバーエルタニン』!召喚に成功した時!フィールドのモンスターを全て墓地に送る!星座の包囲網!」

「しまった!?」

「『エルタニン』でダイレクトアタック!!」

ヨハンLP0

カイザーWIN!


「負けたよカイザー…だけど次は勝つ!」

「フッ、いつでもかかってこい!」







海馬対エド


「『DーEND』のエフェクト発動!『真青眼』を破壊する!」
竜の腕から放たれた炎が究極竜を焼き尽くす!

「これでどうです?Mr海馬!手札が1枚の貴方ではこの盤面は覆せない!」

「ふぅん!甘いぞエド・フェニックス!貴様が『究極竜』を破壊した事でオレは…究極のドラゴンを呼び出す事ができる!!」

「なんだって!?」

「無窮の時…その始原に秘められし白い力よ!鳴り交わす魂の響きに震う羽を広げ…蒼の深淵より出でよ!『ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン』!!」
背中に蒼き輪を背負った究極のブルーアイズが降臨する! 

「『ディープ・アイズ』が特殊召喚された時!貴様は墓地のドラゴンの怒りを受ける!リベンジ・ドラゴニック・フォース!!」
ディープアイズの後ろに5体の竜の幻影が現れ、蒼き炎がエドを飲み込んだ…


エドLP0

海馬WIN!


「フハハハハ!いいデュエルだったぞ、エド・フェニックス!さらに精進を重ねるがいい!」

「これが…遊海さんと同じ伝説の決闘者の力か…!」





十代対城之内

「バトルだ!『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』でダイレクトアタック!メテオ・フレア!!」

「リバースカードオープン!『クリボーを呼ぶ笛』!頼むぜ!相棒!」
《クリクリクリー!!》
黒き炎をハネクリボーが受け止める!

「へっ!よく止めたな十代!でもこれでお前のフィールドはがら空き!いけ!『ガイアナイト』!!」

「『ハネクリボー』が破壊されたターン、俺は戦闘ダメージを受けない!」

「ちっ!無駄打ちか!さぁ…どうする!十代!」

「アンタを超えるぜ城之内さん!ドロー!!」

「『バブルマン』を特殊召喚!2ドロー!さらに『強欲な壺』!2ドロー!いくぜ!『死者蘇生』発動!蘇れ!『フレイムウィングマン』!」

「へっ…そいつじゃオレには勝てないぜ?」

「まだだ!『融合』を発動!手札の『スパークマン』と『フレイムウィングマン』を融合!『シャイニング・フレア・ウィングマン』を融合召喚!墓地のHEROモンスターは5体!500ポイント攻撃力がアップ!」

「まだ足りねぇ!」

「これで最後だ!ヒーローの戦う舞台『摩天楼ースカイスクレイパー』を発動!バトル!『シャイニングフレアウィングマン』で『ブラックデーモンズ』を攻撃!さらに攻撃力が1000アップする!スカイスクレイパーシュート!!」

「ぐおぉぉぉ!!」


城之内LP0

十代WIN!



「あ〜あ、負けちまった…でも熱いデュエルをありがとよ!十代!」

「こちらこそ!久々にワクワクするデュエルだったぜ!ガッチャ!」




準決勝進出者

白波 遊海

カイザー亮

tEf@ pS

遊城 十代





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バトルシティ・レジェンド 準決勝〜怒髪、天を衝く〜

『レディース&ジェントルマン!それじゃあ昨日に引き続き決勝トーナメント、準決勝を始めるぜイェーイ!!』

 

「「「わあぁぁ!!!」」」

 

1回戦から一夜明け、準決勝が始まろうとしている…準決勝に進出したのは俺、海馬社長、十代、カイザーの4人である…トーナメントなら俺はカイザーと当たるはずだが…?

 

 

 

『それじゃもう一度ビンゴマシーンの出番だ!抽選スタート!!』

 

「フッ…!」ポチッ

 

再び究極竜のビンゴマシーンが現れ玉が吐き出される!

 

第一試合 十代対カイザー

 

第ニ試合 遊海対海馬

 

 

『お〜っと!?これまたビックカードだ!「帝王」カイザー亮と戦うのは流浪の決闘者遊城 十代!…しかし侮るなよ?なんと!カイザーと十代はデュエルアカデミアの先輩と後輩!卒業デュエルでは引き分けだったらしいぞ!その時の決着を着けられるか!?…そして第二試合!「決闘王」を破った遊海対そのスポンサーである海馬社長との戦いだ!しかし意外な事にこの二人の公式対戦記録は0!どんな試合になるか…楽しみだぜい!!』

 

 

 

「遊海!手加減は無用だ!全力で来い!」

 

「わかりました社長!…抽選結果いじりました?」

 

「フッ…なんの事だ?」

 

「(うん、確実に何かしたなこの人…)」

 

 

『それじゃあ第一試合は30分後!準備を頼むぜ!!』

 

 

 

 

 

 

〜〜

 

バトルシティ・ダイジェスト

 

 

 

 

「バトルだ!『サイバー・エンド・ドラゴン』で『ネオス』を攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト!!」

 

「ッ!墓地の『ネクロ・ガードナー』の効果発動!攻撃を無効にする!」

 

「まだだ!リバース罠『サイバネティック・オーバーフロー』を発動!墓地の『サイバードラゴン』を除外し『ネオス』を破壊する!」

 

「ネオス!!」

 

 

「十代!確かにお前は成長し大人となった!しかし…まだ俺には届かない!!」

 

「へっ…そうだなカイザー、オレの手札は0、場にモンスターはいない…でもオレにはこのデッキがある!このドローで全てが決まる!いくぜ…ドロー!!」

 

「来たぜ!手札から罠カード『NEX T』を発動!このカードは自分フィールドにカードが無い時に手札から発動できる!」

 

「手札から直接トラップだと!?」

 

「墓地から『ネオス』『フレアスカラベ』『アクアドルフィン』『ブラックパンサー』『グローモス』を特殊召喚!…そしてフィールドの5体と墓地の『エアハミングバード』『グランモール』をデッキに戻して究極コンタクト融合!来い!『ゴッド・ネオス』!!」

神の名前を持つネオスの究極体が現れる! ATK2500

 

「『ゴッドネオス』の効果!デッキの6体の『ネオスペーシアン』を除外し攻撃力を3000アップ!」ATK5500

 

「行け!『ゴッドネオス』!レジェンダリー・ストライク!!」

 

極大の光球がフィールドを包み込んだ…

 

 

 

カイザーLP0

 

 

十代 WIN!

 

 

 

 

 

「『神』のネオスか…俺で使ってよかったのか?まだ海馬社長か遊海先生がいるんだぞ?」

 

「へへっ!そん時はその時さ!オレが決闘王を受け継ぐぜ!!」

 

「その意気だ十代!お前の手で最強の称号を掴み取れ!」

 

「おうっ!!」

 

 

〜〜

 

 

 

『接戦の第一試合はダークホース・十代の勝利だ!さぁ…いよいよ第二試合!30分の休憩を挟んで遂にスタートだ!準備を頼むぜ!!』

 

 

 

 

 

 

十代達の熱戦が終わり俺は控え室で使うデッキを選んでいた…。

 

「う〜ん…何にしようか?パワー重視の『レッドデーモンズ』か?いや、万能性のある『聖刻』?一撃必殺の『メガロック』か…?う〜ん……」

 

《マスター、悩んでますね〜…》

 

《しょうがないですよ、普段勝ちにこだわらないユウミが珍しくやる気になってるんですから…》

 

《然り、あれほど気合の入った主はあまり見た事がないな》

 

《遊海は燃える時は燃える奴だからな…スイッチが入ったのだろう》

遊海がデッキを選ぶ最中、精霊達は自分達のマスターについて話し合っていた。

 

「遊海さん!大丈夫ですかー?気合入りすぎてませんか〜?」モミモミ

 

「ありがとう翠…よしっ決めた!このデッキにしよう!」

翠に肩を解してもらった遊海は一つのデッキを手に取る

 

「そろそろ時間だな!行ってくるよ!」

 

「あっ、私も出入り口まで一緒に行きます!」

 

「ああ!ありがとう!」

遊海は翠と連れ立って控え室を出る…そこには

 

「おっと!ナイスタイミングだな遊海先生!応援に来たぜ!」

 

「十代!?…お前なぁ、一応俺は対戦予定者なんだからな…?」

 

「ふふっ、いいじゃないか遊海、彼は君との再戦を楽しみにしているみたいだよ?」

 

「遊戯まで…」

部屋の前では遊戯と十代が待っていた、海馬との対戦を前に応援に来てくれたようだ。

 

 

「先生、海馬社長の『青眼』に勝てるのか?オレ…バトルシティでたまたま海馬社長のデュエルを見たんだけど、1人で40人抜きしてたぜ?」

 

「あぁ、海馬さんはパワー重視に見えて意外と戦略家なんだよな…まぁ、俺も負けるつもりはないさ!決勝で会おうぜ十代!」

 

「へっ、望むところだ!」

 

《はぁ…これだから男という奴は…、まぁ十代は別だけどね!》

遊海と十代は再戦の約束を交わす…ユベルは少し呆れているようだ。

 

「遊海さん!そろそろ行かないと!もう5分前ですよ?」

 

「あっ!?それじゃ遊戯!十代またあ」

 

 

 

ズガガーン!!!

 

「ぬおあぁァァァ!!?」

 

 

 

「「「「なんだ!?/なにごとです!?」」」」

突如廊下に爆発音、そして誰かの叫びが響き渡る!

 

「この方向は…海馬さんの控え室の方だ!!」

 

「海馬君!!」

 

異変を察知した遊海達4人は急いで控え室へと向かう…。

 

 

 

 

 

 

バタン!

 

「海馬君!…海馬君!!大丈夫!?」

 

「海馬社長!!…これは…!」

 

控え室へと駆け込んだ遊戯達が目にしたのは荒れ果てた控え室…倒れる黒服のSP達…そして傷つき壁に倒れかかる海馬の姿だった…。

 

「ぐっ…う…おの…れぇ…!!」

 

「海馬社長!大丈夫ですか!!いったい何が…!」

遊海は海馬へと駆け寄る…自慢のコートはボロボロとなりデュエルディスクも破損している…。

 

「遊海か…オレは認めんぞ…!このような…敗北など…!!ぐうっ…!」

 

「じっとしててください!今すぐ治療します!『ディアン・ケト』!!」

遊海は負傷した海馬を治療する…海馬の顔は穏やかとなり傷が治っていく…

 

 

 

「ハァッ…ハァッ…すまん遊海…手間を掛けた…」

 

「海馬君、いったい何があったの?君程の決闘者がこんな怪我を負うなんて…!」

 

「遊戯…オレも事情を把握しかねている、簡潔にいえばオレは正体不明の決闘者に敗北した…しかもリアルのダメージ付でな…おのれぇ…我がブルーアイズが敗北を喫するなど…!」

 

「襲撃者の特徴は…!」

 

「…黒いコートを着て、バイザーを着けた男だ…!」 

 

「………!!!」ポタッ

 

「遊海さん…!手が…!」

話を聞いた遊海は右手を握りしめる…掌に爪が食い込み血が床に落ちる…

 

「遊海先生…!大丈夫か…?何か知ってるのか?」

 

「ユルサン…!」

 

「えっ…」

 

「許さないぞ…ゲイザァァァ!!!!!」

 

遊海は怒りを込め叫ぶ…自身を瀕死へと追い詰めた犯人が友を狙った、それだけで遊海の堪忍袋は爆発寸前だった…。  

 

「お、落ち着いてくれ!遊海先生!いったいどうしたってんだよ!?先生らしくないぜ!?」

 

《十代…マスターは一度、襲撃犯…ゲイザーを名乗る男に敗北しているんです…》

アヤカが遊戯達にゲイザーとの因縁を説明する

 

 

「遊海が負けた…!?そんなまさか!」

 

「貴様…もしや一ヶ月前の怪我の犯人は…!」

 

「ゲイザー…狙うなら俺を狙えよ…!オレは逃げも隠れもしないぞ!!この卑怯者がぁぁぁ!!!」

 

「遊海さん!落ち着いてください!!怒りに振り回されたら…たぶん相手の思うツボです!冷静になってください!…深呼吸です!深呼吸!」

赤い怒りのオーラを纏い怒り狂う遊海を翠が抱きとめる…遊海はまさに暴走寸前だった…。

 

「…スゥ…ハァ…スゥ……すまない、取り乱した…海馬社長、大会はどうしますか?」

 

「…オレは棄権する、何処の馬の骨とも知らん奴に負けたのだ…仮に貴様に勝ち決闘王になったとしても…オレのプライドがそれを許さん…!!準決勝を繰り上げ…日程の都合上明日決勝を行う…すぐに伝えねば…」

 

「…わかりました、俺はいつでも戦いますよ海馬社長」

 

「すまんな遊海…必ず決着は着ける、ともかく連絡だ…」

海馬は携帯を取り出し電話をダイヤルする

 

 

 

 

「しかし…奴の目的はなんだ…?なぜ海馬社長を襲う必要があった…?」

冷静さを取り戻した遊海は敵…ゲイザーの目的を考える…しかし考えても答えが出る事はなかった

 

「…わからない…何故…何故なんだ…ッ!!ガッ…!?」ドクン!

 

「遊海さん?…遊海さん!どうしたんですか!?」

突然、遊海が右腕を抑えて倒れる…痛みが凄まじいのか油汗をかいている…!

 

「がっ…熱い…!右腕が…灼ける…!!ぐぅ…ああぁ…!?」

 

「先生大丈夫か!?とにかく水で冷やさないと!」 

 

「ぐっ…が、があぁぁぁ!!?」ブゥン!!

 

「なにっ!?」

 

「なんだこの膜は!?」

遊海を中心として赤い膜が部屋にいた5人を包み込む…そしてその膜の外側では奇妙な事が起きていた…

 

「っ!?SPの人達が…!!」

 

「消えていく…!?それどころか部屋が…!」

 

バリアに包まれず倒れたSP達は赤い粒子となり消えていく…そして破壊された部屋は時計の逆再生のように元に戻っていく…そして一通り動きが止まると赤いバリアは消え、呼吸の荒くなった遊海、そして4人だけが残っていた…。

 

 

 

「ハァ…ハァ…今…何が起きた…?アヤカ…!」 

 

《…解析中……時間の流れに対する干渉を確認…過去改変が起きた可能性が高いです!》

 

「か…過去改変だと!?奴らの仕業か…!!」

 

「ゆ、遊海さん!右腕が…!」

 

「っ…これは…!」

遊海の右腕…そこには太陽または炎をイメージしたような赤い痣があった、ただ…普通の痣と違うのはその痣が服を透過し紅く輝いている事だろう…。

 

「この痣は…まさか『シグナー』の痣…?なんで俺に…?」

 

シグナーの竜の痣…それは赤き竜に選ばれた者の証、五千年前…地縛神を封印した赤き竜がその身を6っに分けて封印されたもの、劇中に登場したのは頭・手・翼・足・尾・心臓の6種…しかし遊海の腕に現れた痣はそのどれとも違う形をしていた…。

 

 

 

 

コンコンコン!

『白波様!準決勝の準備が整いました!デュエルリングにお願いします!』

 

「なにっ!?先程準決勝は中止にすると言ったはずだぞ!!」

 

控え室に磯野が現れ声をかけてくる

 

『瀬人様!?何故こちらに!?早くお席の方に!試合が始まってしまいます!』

 

「なんだと…?遊海の相手はこのオレだ!オレがいないのに何故試合が始まる!!」

 

『…?瀬人様…何を言っているのですか?今回は参加を見送られたではありませんか…?』

 

「磯野!貴様ついにボケたか!!!決闘王を決める戦いにオレが出ないなどと言う事があるか!!!」

海馬はついに激昂し磯野に詰め寄る

 

「海馬社長!ちょっと待って!!…磯野さん、トーナメント表を見せてください!」

 

『?、わかりました…こちらです!』

遊海は海馬を抑えトーナメント表を見る…そこには

 

 

……

 

トーナメント1回戦

 

遊海対遊戯 勝 遊海

 

ヨハン対亮 勝 亮

 

ラプラス対エド 勝 ラプラス

 

十代対凡骨 勝 十代

 

 

準決勝

 

十代対亮 勝 十代

 

遊海対ラプラス 

 

 

……

 

 

「…なんだ…このデタラメなトーナメント表はぁ…!!」

 

「イリアステルの過去改変…!さっきのはその影響か…!」

 

「遊海…いったい何が起きたの!?過去改変ってまさか!」

 

「まさか…パラドックスの仲間の仕業か…!」

遊海達は動揺する…自分達の知る歴史と今の現状が乖離してしまっているからだ…。

 

 

「…みんな、すまない…行ってくる…!!」

 

「遊海さん…!」

遊海には1つの確信があった…準決勝の相手らしい「ラプラス」なる相手…その正体に…!

 

「海馬社長…さっきのSPの人達の安否確認をお願いします…準決勝を終わらせて…すぐに合流します…!!」

 

「…わかった、遊海…決して無茶はするな…しかし勝て…!」

 

「はい…!」

 

そして遊海はリングへと向かう…その瞳に怒りを宿しながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レディース&ジェントルマン!それでは準決勝、第二試合の始まりだ!まずは…1回戦で決闘王を降した優勝候補筆頭!プロチャンピオン…白波 遊海!』

 

「「「わあぁぁ!!!」」」

 

「…!」

遊海は歓声に応える事無く正面を睨みつけている…

 

 

 

『そして対戦相手は…今大会のダークホース!本戦をトップで通過しエド・フェニックスを降した黒きデュエリスト…ラプラス!!』

 

『…よくあの爆発から生き延びたな白波 遊海…貴様を抹殺する…!!大衆の目の前で屍を晒すがいい…!!』

遊海の目の前に立ち、殺気を放つ男・ラプラス…それは以前遊海を襲ったゲイザーであった…。

 

 

「1つ聞かせろ『ゲイザー』…海馬社長を襲ったのはお前か?」

 

『これは驚いた…過去を改変する前の記憶が残っているとは…どういうカラクリだ?』

 

「貴様には関係ない!!海馬社長の仇…取らせてもらうぞ!!!」

 

『フハハ…やれるならやってみろよ?殺れるもんならなぁ!!!』

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

ラプラス(ゲイザー)LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『オレのターン…ドロー!』

『貴様を葬るにちょうどいい手札だ…!オレは手札のレベル7「インフェルニティ・ジェネラル」を墓地に送り「ダーク・グレファー」を特殊召喚する!』

 

「『インフェルニティ』…!?」

 

邪悪な笑みを浮かべた闇の戦士が現れる ATK1700

 

 

『「ダークグレファー」の効果でデッキから「インフェルニティ・ビートル」を墓地に送る!さらに永続魔法「インフェルニティガン」を発動!そして効果により手札の「インフェルニティ・デーモン」を墓地に送る!さらに魔法カード「ワン・フォー・ワン」を発動!手札の「インフェルニティ・ネクロマンサー」を墓地に送りデッキからレベル1「インフェルニティ・ミラージュ」を特殊召喚!』

幻影の名前を持つ悪魔が現れる DEF 0

 

 

『「インフェルニティガン」の効果を発動!このカードを墓地に送り墓地から「デーモン」「ネクロマンサー」を特殊召喚!』

額に宝玉を填めた悪魔と紫の衣の屍術士が現れる ATK1800  DEF2000

 

『手札が0の時に特殊召喚された「デーモン」の効果を発動!デッキから「インフェルニティ・バリア」を手札に加えセット…そして「ネクロマンサー」の効果を発動…墓地の「ビートル」を特殊召喚!』

黒いカブトムシが現れる ATK1200

 

 

『さぁ…貴様を葬るモンスターの登場だ…!我はレベル4の「ダークグレファー」とレベル4の「デーモン」にレベル2の「ビートル」をチューニング!!』

 

4+4+2=10

 

『億万の蛆の王よ…万物を破壊する力を我が手に…!シンクロ召喚!「魔王超龍 べエルゼウス」!!』

フィールドに無数の蝿が現れ一ヶ所に集う…そして蝿の王の名前を持つ邪龍が現れる ATK4000

 

『オレはさらにフィールドの「ミラージュ」の効果を発動!手札が0の時、自身をリリースし墓地の「ビートル」「デーモン」を特殊召喚!』

再びカブトムシと悪魔が現れる ATK1800  ATK1200

 

 

『そして再び「デーモン」の効果を発動!「インフェルニティ・リベンジャー」を手札に加える!さらに「リベンジャー」を通常召喚!』

復讐者の名を持つ悪魔が現れる ATK 0

 

『我はレベル4の「デーモン」とレベル3の「ネクロマンサー」にレベル1の「リベンジャー」をチューニング!』

 

4+3+1=8

 

『千の眼を持つ邪龍よ!万物を睨み狂気へ導け!シンクロ召喚!「ワンハンドレット・アイ・ドラゴン」!!』

全身に邪悪なる瞳を持つ邪龍が現れる ATK3000

 

 

『「ワンハンドレット」の効果を発動!墓地の「ミラージュ」を除外し、その効果を得る!「ワンハンドレット」をリリースし効果発動!墓地の「デーモン」と「ネクロマンサー」を特殊召喚!』

三度悪魔と屍術士が現れる ATK1800  DEF2000

 

 

『「デーモン」の効果発動!デッキの「インフェルニティ・ブレイク」を手札に加えセット!さらに「ネクロマンサー」の効果により墓地の「リベンジャー」を特殊召喚!』

再び復讐者が現れる ATK0

 

『我は再び「デーモン」「ネクロマンサー」「リベンジャー」でチューニング!』

 

4+3+1=8

 

『現れろ!死を運ぶ厄災の龍!シンクロ召喚!「インフェルニティ・デス・ドラゴン」!!』

黒い身体と王冠のような角を持つ龍が現れる ATK3000

 

『ハハハ…オレはこれでターンエンドだ…!貴様ならわかるよな白波 遊海…この状況の意味が…!!』

 

ゲイザー LP4000

べエルゼウス デスドラゴン 伏せ2 手札0

 

 

 

 

『い、いったい何が起きたんだ!?僅か1分ほどの間に3000オーバーのモンスターが2体!なんだよ…何なんだよ〜!?』

司会も困惑するほどのプレイング…遊海を見下ろすは2体の邪龍…絶体絶命である。

 

 

「くっ…!(戦闘破壊されない『べエルゼウス』にバーンダメージの『デスドラゴン』…そして伏せはカウンターの『バリア』に破壊の『ブレイク』…ほとんど隙の無い盤面だ…!)」

 

『怖気づいたか白波 遊海…あぁ、サレンダーは許さんぞ?その瞬間()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…さぁ…どうする…!!』

 

「誰が怖気づいたって…?俺は貴様を許さない!怒ってるのは俺の方だ!!!覚悟しろ!ゲイザー!!!」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!!ドロー!!!」

「俺は手札から魔法カード『魔妖廻天』を発動!デッキから『魔妖』カードを手札に加える!」

 

『「まやかし」…?知らんカードだ、しかし通さん!カウンタートラップ「インフェルニティ・バリア」を発動!「インフェルニティ」モンスターが場に存在し手札が0の時、相手のモンスター・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する!』

《グギャアアア!!》

 

デスドラゴンが咆哮し廻天が砕け散る…

 

「『翼の魔妖ー波旬』を召喚!」

法螺貝を持った山伏が現れる ATK600

 

「『波旬』の効果を発動!召喚に成功した時デッキからチューナーモンスター『麗の魔妖ー妲姫』を特殊召喚!」

鏡を持った巫女服の女性が現れる DEF0

 

 

『フッ…シンクロでこの場を凌ぐつもりだろうが…リバースカード「インフェルニティ・ブレイク」を発動!墓地の「ジェネラル」を除外し「妲己」を破壊する!砕け散れ!!』

妲己に雷が落ちフィールドから消え去る…

 

『フハハ…ハハハハハ!なんだ、この程度か白波 遊海!貴様の場にはモンスターが一体!次のターンで貴様を葬る事ができる…!!これで未来は…!』

 

 

 

 

 

 

 

「それはどうかな?ゲイザー…俺のターンはまだ終わっていない!」

 

 

『なんだと…!』

 

 

「手札から『死者蘇生』を発動!蘇れ!『妲姫』!」

再び巫女が現れる ATK1000

 

『チッ…蘇生カードを…!しかしでてくるのはレベル3!そんなモンスターでオレを倒す事など…』

 

「ゲイザー…その油断が命取りだ!永続魔法『コモンメンタルワールド』を2枚発動!これにより俺がシンクロ召喚する度にお前に1000ダメージを与える!」

 

『小賢しいカードを…!しかし所詮1000ダメージ…痛くも痒くもないわぁ!!』 

 

「行くぞ!!俺はレベル1の『波旬』にレベル2の『妲姫』をチューニング!」

 

1+2=3

 

「シンクロ召喚!『轍の魔妖ー朧車』!『コモンメンタルワールド』の効果で1000ダメージ!」

 

『ぐっ…!しかしこれで…!』

牛車に般若面のついた嫉妬心の妖怪が現れる ATK800

 

ゲイザーLP4000→3000

 

「まだだぁ!自分がエクストラデッキからモンスターの特殊召喚に成功した時、墓地の『妲姫』は特殊召喚できる!俺はレベル3の『朧車』にレベル2の『妲姫』をチューニング!!」

 

『なっ…!?自己再生持ちのチューナーだと!?』

これにはゲイザーも驚きをあらわにする…ノーコストで条件が揃えば何度でも復活する妖怪達…まさに永遠に続く『百鬼夜行』!

 

3+2=5

 

「シンクロ召喚!『毒の魔妖ー土蜘蛛』!1000ダメージ!」

 

ゲイザーLP3000→2000

 

鎧武者のような身体を持つ大蜘蛛が現れる ATK2000

 

「そして『妲姫』を復活させレベル5の『土蜘蛛』とチューニング!!!」

 

『なんだと!!!?』

 

5+2=7

 

「シンクロ召喚!『翼の魔妖ー天狗』!!1000ダメージ!!」

 

『ガッ…!?』 

遊海の怒りが高まりダメージがゲイザーに影響し始める…!

 

ゲイザーLP2000→1000

 

赤い顔をした天狗が現れる ATK2600

 

 

「これで最後だぁ!!!『妲姫』とレベル7の『天狗』でチューニング!!!!」

 

7+2=9

 

「闇夜に紛れ蠢く者よ!今こそその力を振るえ!シンクロ召喚!!!『麗の魔妖ー妖狐』!!」

たくさんの尾を持つ最上位レベルの妖怪…妖狐が現れる ATK2900

 

「『コモンメンタルワールド』の効果…これで終わりだぁぁぁぁ!!!」

 

妖狐の両手に青い炎が灯る…それは熱量を増しゲイザーへと襲いかかった!

 

『こんな…こんな事がぁぁぁぁ!!?』

 

ゲイザーLP0

 

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

『き、決まった〜!!チャンピオン遊海!怒涛の4連続シンクロでラプラスを捻り潰した〜!!!』

 

「「「わあぁぁぁ!!!」」」

 

 

「アヤカ…封鎖結界を作動…!対象は俺とコイツだ…!」

 

《了解しました!結界作動します!》

遊海の指示と共にリングが黒いドームに包まれる…そして観客から遊海達を見る事ができなくなった。

 

 

『おっと!?どうした事だ!?ソリッドビジョンのトラブルか!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「答えろ…ゲイザー、貴様の目的はなんだ!何故俺を狙う…!!」

遊海は結界の中でゲイザーを押さえ込み尋問する…

 

『ガッ…ハハハハ、貴様の抹殺…それがオレの為すべき事だ!貴様というイレギュラーを殺し破滅の未来を回避する!そのためならオレは悪魔になろう!!ハアッ!!!』

 

「チイッ!?」

ゲイザーは全身からエネルギーを放出し遊海を払い除ける!

 

『貴様から閉鎖空間を作ってくれたのはありがたい…ここで死ねぇ!!!うおおぉぉぉ!!!』

 

「なんだと…!?」

 

《マスター!異常なエネルギーの高まりを感知!注意してください!!》

ゲイザーは凄まじい闇を纏う…そして闇が晴れる…

 

『ダークネスアーマー…べエルゼウス…!!!』

両腕が龍の顎に変化した邪悪なる鎧を纏ったゲイザーが飛びかかる!

 

「くっ!精霊アーマー!モードクリフォート!!」

遊海も鎧を纏い応戦する…しかし凄まじい闇の力が遊海に襲いかかる!

 

『消えろ!!!貴様の死で未来は救われる!!』

 

「こんなところで死ねるかあぁぁ!!モード岩窟王!富嶽鳴動の陣!!」

岩の鎧を纏った遊海が地面から岩を召喚しゲイザーを吹き飛ばす!

 

『おのれぇ!!喰い尽くせ!蝿王殲滅覇軍!!』

ゲイザーの体から放たれた無数の蝿が嵐となり遊海に迫る!

 

「燃やし尽くせ!太陽神の神炎!ゴッド・ブレイズ!!!」

 

『な、三幻神の力だとぉ!?ぐおああああああああ!!!』

神の炎を受けた蝿は焼失しゲイザーを飲み込んだ…

 

 

 

『ぐっ…ガハッ…!!』

 

「俺をここまで怒らせたのはお前が初めてだよゲイザー…貴様を捕縛する、ゆっくり話を聞かせてもらうぞ…!」

遊海はゲイザーへと歩み寄る

 

『ハハハ…まだ捕まる訳にはいかないなぁ…さらば白波 遊海…永遠に!!!』

ゲイザーは懐から1枚の罠カードを取り出す…その名は…『ヘイト・バスター』!

 

「なっ…!?自爆するつもりか!!アヤカ!結界を最大強化!絶対に被害をもらすな!!」

 

《了解!!》 

 

『フハハハ…もう遅い!!!』 

ゲイザーを中心に閃光が弾け…!

 

 

 

 

 

 

ズガン!!!!

 

 

 

『うおっ!なんだ!?ドームがいきなり大きくなったぞ!?遊海達は大丈夫なのか!?』

 

黒いドームがいきなり倍程のサイズに膨らみ…萎んでいく…そしてリングの中心に遊海が現れる…

 

『おっと!?遊海選手だけ出てきたぞ?ラプラスは何処に行ったんだ?』

 

「…彼奴はマジシャンだった、トリックで先に帰ったよ…」

 

『そうなのか?恥ずかしがりやなデュエリストだな〜!それじゃあこれで決勝の対戦が決定した!決勝戦は明日だ!楽しみにしててくれよ!じゃあな!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!大丈夫ですか!?」

通路へと下がってきた遊海に翠が走り寄る

 

 

「翠…ごめんまた心配かけて…」

 

「そうですよ!遊海さんはいつもいつも…!」

 

「ハハハ…まったく俺って奴は防御…力が…弱す…ガフッ…」

 

「遊海さん!!」

遊海は突如体勢を崩す、翠は慌ててそれを抱きとめる…

 

 

 

ベチャ

 

「えっ…!?」

翠の手に生温かい液体が触れる…そして

 

ボフンッ!

 

倒れた遊海を白い煙が包む…そして煙が消えると…

 

「あ…ああ…そんな…!しっかり…しっかりしてください!遊海さん!!」

遊海は全身に深い傷を負っていた…手には「No.64」が握られている…。

 

「彼奴め…自爆しやがって…!くそ……」

 

遊海の意識は深く深く沈んでいった…。

 

 

 

 

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バトルシティ・レジェンド 決勝戦

「…という訳で追い詰められたゲイザーは自爆した、生きているかどうかは…わからない、もし生きていてもしばらくは動けないでしょう…」

 

「ふぅん…『未来の破滅を阻止するための秘密結社』イリアステルか…貴様も厄介な奴らに目を付けられたものだな…」

 

「パラドックスもその組織の1人だったのか…」

 

気絶した俺は秘密裏に病院へと運ばれた…幸い数時間で目が覚め、今は回復魔法・モンスターをフルに使いながら回復・事情説明中である…ついでに今、病室にいるのは翠・遊戯・海馬・城之内・十代の計6人である。

 

 

「でもよぉ…あの『ラプラス』とか言う奴、1回戦から出てたんだぜ?そんなあぶねえ奴には見えなかったけどなぁ…?」

 

「貴様は…それだから凡骨と言われるのだ…それは奴が過去を改変してお前達の記憶に存在を刷り込んだのだ!そのような事実はない!」

 

「だぁ〜!!凡骨って言うな海馬ァ!!ならなんで遊戯や遊海は改変前の記憶があるんだよ!?おかしいだろ!」

城之内は改変の影響を受けて海馬対エドの試合を忘れてしまっていた…そしてその事を海馬に馬鹿にされている…

 

「城之内君…僕達は遊海の不思議なバリアに守られたんだ…遊海、その痣の事は何かわかる?」

 

「ああ…これは恐らく『赤き竜』と言われる神に選ばれた証…シグナーの痣って呼ばれているもの…だと思う」

遊海は右腕を捲り上げる…そこには定着した炎の痣があった…。

 

「この痣には強力な力の探知や外的異常現象からシグナーと近くの人を守る力があるんだ…俺が知っているのは6種類…でもこの痣はどの痣とも違う、俺は暫定的に『ドラゴン・フレイム』って呼んでる」

 

「たしか…遊星も竜の頭の模様の痣があったな…ドラゴン・ヘッドってか?」

以前に遊星と過去の遊戯と共闘した十代は痣を見つめる…

 

「ああ…話に聞いた通りなら遊星の痣はそれで合ってる、俺がもう少し早く覚醒してればその時の記憶も忘れなかったと思うんだけどなぁ…」

 

「遊海先生…」

十代は少し前の遊星との会話を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ遊星?お前達の時代にも遊海さんはいるんだろ?どんな感じだった?」

 

『遊海さんは…すごい人です、傷つきながらたくさんの人達を救ったんです…あの時も…』

遊星は輝く夕日を見つめる…その目には何が映っているのか、それは十代にはわからなかった。

 

「へぇ〜、先生も相変わらずだなぁ…アカデミアにいた時もいつもボロボロだったし…まぁ先生らしいっちゃらしいな!あの人は本当の"ヒーロー"だよ!」

 

『十代さん…えぇ、そうですね!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで遊海…決勝には間に合うな?」

 

「はい!全力で休んで回復します!」

 

「ならばいい…『決闘王』を賭けた決勝戦…楽しみにしているぞ!遊海!そして遊城 十代!!」

 

「「はい!」」

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…ゲイザーは…」

 

「恐らく…死んだはずだ、『ヘイト・バスター』はお互いを破壊するカード…あれで生きてたら…化物だよ」

 

俺はゲイザーの遺体を確認してはいない…しかしあの爆発で死なないのは文字通り『不死』になっている俺達ぐらいのものだろう…。

 

 

「そう…ですか」

翠は俯く…

 

「どうかしたのか?」

 

「いえ、彼を見た時…なんだか悲しい気持ちになったんです…」

 

「悲しい…?なんでだ?あんな狂気に侵されてたような奴に…」

 

「わかりません…たぶん気のせいですね!『モウヤンのカレー』食べますか?」

 

「ああ…ありがとう、翠!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レディース&ジェントルマン!!ついにこの日がやってきた!!…次代の「決闘王」を決める…決勝戦の始まりだぁぁぁぁ!!!』

 

 

「「「「わあぁぁぁぁ!!」」」」

 

一夜明け…ついに決勝戦の日が訪れた、スタジアムは満員御礼、知った顔もたくさん集まっている…!

 

 

『まずは1人目!プロランキング上位の城之内とカイザーを降し、決勝まで登り詰めた流浪の決闘者…遊城 十代!!』

 

「「「わあぁぁぁぁ!!!」」」

 

 

「アニキ〜!頑張って〜!」

 

「応援してるザウルスー!」

 

「十代!遊海先生を超えろー!お前ならやれるぞー!!」

 

十代の応援席には翔・剣山・万丈目・明日香・レイ・カイザーなどアカデミア出身の決闘者達が応援団を組んでいる!

 

 

 

『そして2人目!「決闘王」にもっとも近い男!文字通り「世界最強」のデュエリスト!…「赤帽子」白波 遊海!!』

 

「「「「わあぁぁぁぁ!!」」」」

 

 

 

「遊海さん!ファイトです!!」

 

「遊海!君なら大丈夫!」

 

「「やったれ〜!!遊海!」」

 

「遊海!頑張って!」

 

「遊海!そんな坊主に負けるんじゃないよ!!」

 

遊海の応援席…そこには翠や遊戯、双六さん・城之内・本田・杏子・獏良や舞など古くからの友や決闘者達がいる、他にも羽蛾や剣崎、斎王や影丸理事長…果てにはラフェール達三銃士にマリク(本物)ディーヴァまで見にきている…すごい顔ぶれだ。

 

 

「十代…本気で来い!今こそ最強を決めるぞ!!」

 

「先生にその言葉をそっくり返すぜ!俺の成長を見せてやる!!」

 

 

『さぁ…スタジアムのテンションは最高潮!!世界最強を決めるデュエルの始まりだ!!』

 

 

 

 

 

 

「「デュエル!!!」」

 

 

遊海LP4000

十代LP4000

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札の『レベル・スティーラー』を墓地に送り『クイック・シンクロン』は特殊召喚できる!」

ガンマンのような格好をしたロボットが現れる ATK700

 

 

「(俺はもう一度『ジャンク』デッキを使う…十代の先生として…負ける訳にはいかない!)さらに墓地の『スティーラー』は『クイックシンクロン』のレベルを一つ下げて墓地から特殊召喚できる!」

クイックシンクロンのレベルを喰らい一つ星のてんとう虫が現れる DEF0

 

クイック レベル5→4

 

「そして墓地からモンスターが特殊召喚に成功した時、『ドッペルウォリアー』は特殊召喚できる!」

黒い兵士が現れる ATK800

 

 

「そしてレベル2の『ドッペルウォリアー』とレベル4の『クイックシンクロン』をチューニング!」

 

2+4=6

 

「集いし力が鋼鉄の騎士を呼び覚ます!シンクロ召喚!『ジャンク・ガードナー』!」

緑色の堅き戦士が現れる DEF2600

 

「そのモンスターは…!」

 

「見覚えがあるか?そうだろうな!俺は魔法カード『調律』を発動!デッキの『ジェット・シンクロン』を手札に加えデッキトップを墓地へ!」

 

墓地送り

ダンディライオン

 

「ラッキー!綿毛トークン2体を特殊召喚!そして『ジェット・シンクロン』を召喚!」

2体の綿毛とエンジン型のロボットが現れる DEF0✕2  DEF0

 

「俺はレベル1の『レベルスティーラー』にレベル1の『ジェットシンクロン』をチューニング!」

 

1+1=2

 

「デュエルを新たな地平に導け!シンクロ召喚!『フォーミュラシンクロン』!シンクロ召喚成功時に1ドロー!」

レースカー型のロボットが現れる DEF1500

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」

遊海LP4000

ジャンクガードナー フォーミュラ 綿毛✕2  伏せ2 手札1

 

 

『遊海は「決闘王」を破ったジャンクデッキを使ってきた!さぁ対する十代はどうする!?』

 

 

「遊海先生…やっぱりすげぇな、でも俺だって成長してるんだぜ!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺は魔法カード『ネオス・フュージョン』を発動!手札の『グラン・モール』とデッキの『ネオス』を墓地に送り召喚条件を無視して融合モンスターを特殊召喚する!来い!『グラン・ネオス』!」

腕にドリルを装備した大地のネオスが現れる ATK2500

 

 

「『グラン・ネオス』の効果を発動!『ジャンクガードナー』をデッキに戻す!ネビュラス・ホール!」

 

「させるか!『フォーミュラシンクロン』の効果発動!相手ターンにシンクロ召喚を行う!レベル6の『ガードナー』にレベル2の『フォーミュラシンクロン』をチューニング!」

 

6+2=8

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に轟け!!シンクロ召喚!『閃光竜スターダスト』!」

フィールドに光が集う…そして天空から光輝く白き竜が現れる ATK2500

 

「…『閃光竜』、お前が俺の守護竜なのか?」

《キュオオン!!》

 

右腕に刻まれた痣が疼く…俺にとっての守護竜はこいつらしい

 

「『スターダスト・ドラゴン』!?いや、でも微妙に違う…まぁいいや!俺はフィールド魔法『ネオスペース』を発動!『グランネオス』の攻撃力が500アップ!さらにエンドフェイズにデッキに戻らない!」

周囲が虹色の宇宙空間に変化しネオスが力が強化される

 

グランネオスATK2500→3000

 

「よくはないな!墓地に送られた『ジャンクガードナー』の効果で『グランネオス』を守備表示に変更する!」

 

「しまった!」

 

グランネオスDEF2000

 

 

「くっ!…カードを2枚伏せてターンエンド!」

十代LP4000

グランネオス ネオスペース 伏せ2 手札1

 

 

 

『プロチャンピオン遊海!十代の攻勢をあっさり躱した!』

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『シンクロン・エクスプローラー』を召喚!効果により墓地の『クイック・シンクロン』を効果無効にして特殊召喚!」

赤い機体の丸っこいロボットが現れる、さらに身体の中心の穴からガンマンが飛び出してくる!

ATK0  DEF1400

 

「俺はレベル2の『エクスプローラー』とレベル1の『綿毛トークン』にレベル5の『クイックシンクロン』をチューニング!」

 

2+1+5=8

 

「集いし闘志が怒号の魔人を呼び覚ます!シンクロ召喚!粉砕せよ!『ジャンク・デストロイヤー』!」

破壊者の名を持つ四腕の戦士が現れる ATK2600

 

「『デストロイヤー』の効果を発動!このカードがシンクロ召喚に成功した時!召喚時に使用したチューナー以外のモンスターの数までフィールドのカードを破壊する!『ネオスペース』と『グランネオス』を破壊!タイダル・エナジー!」

破壊の波動が十代のフィールドを蹂躙する!

 

「ヤベッ!リバース罠『ヒーローバリア』!このターン攻撃を一度だけ無効にする!」

 

 

「バトル!『ジャンクデストロイヤー』でダイレクトアタック!デストロイ・ナックル!」

 

「『ヒーローバリア』で攻撃を無効にする!」

 

迫りくる破壊の拳がシールドに防がれる!

 

「『閃光竜』でダイレクトアタック!流星閃撃(シューティング・ブラスト)!」

聖なる光の奔流が十代に迫る!

 

「リバースカードオープン!『リビングデッドの呼び声』!墓地の『ネオス』を特殊召喚!」

十代のエースである白きヒーローが現れる ATK2500

 

「『ネオス』と『スターダスト』の攻撃力は互角!相討ちだ!行け!ラス・オブ・ネオス!」

《ハァッ!!》

 

ネオスが飛び上がり手刀を閃光竜に向ける、閃光竜とネオスは激突し大爆発が起きる!

 

「よしっ!なんとか凌いだぜ!サンキュー、ネオス!」

 

 

 

 

 

「それはどうかな?」

 

「なにっ!」

爆煙が晴れる…そこには翼で自身を守る閃光竜の姿があった。

 

 

波動音壁(ソニック・バリア)…1ターンに一度、『閃光竜』は自分のフィールドのカード1枚をいかなる破壊からも守る力を持っている!」

 

「すげぇ…流石先生だぜ…!」

 

「ありがとよ!俺はこれでターンエンド!」

遊海LP4000

閃光竜 デストロイヤー 綿毛 伏せ2 手札1

 

 

 

 

『強い!強すぎる!!十代は手も足も出ないぞ〜!?』

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『強欲な壺』を発動!2ドロー!…さらに『テイクオーバー・5』を発動!デッキトップ5枚を墓地へ!」

 

 

墓地送り

ネクロガードナー

バーストレディ

コンタクト

ブラックパンサー

ヒーローシグナル

 

 

「そして『ネオスペース・コネクター』を召喚!」

ネオスに似た2頭身の宇宙人が現れる ATK800

 

「『コネクター』の効果発動!召喚に成功した時!デッキから『グローモス』を守備表示で特殊召喚する!」

光のヒトガタが現れる DEF900

 

「さらに『コネクター』のもう一つの効果!自身をリリースして墓地の『ネオス』を特殊召喚!」

コネクターが粒子となり消え去る、そして再び白きヒーローが現れる DEF2000

 

「そして『ネオス』と『グローモス』でコンタクト融合!『グローネオス』を融合召喚!」

光輝く鎧を着たネオスが現れる ATK2500

 

「『グローネオス』の効果発動!『閃光竜』を破壊する!シグナルバスター!」

光を槍が放たれる!

 

「甘いぞ十代!『閃光竜』の効果は相手ターンでも発動できる!波動音壁!」

翼で光の槍が弾かれる!

 

「いや!これでいいんだ!装備魔法『アサルト・アーマー』を『グローネオス』に装備!攻撃力を300アップ!」

黄色のオーラがネオスに力をあたえる!

 

グローネオスATK2500→2800

 

 

「バトルだ!『グローネオス』で『ジャンク・デストロイヤー』を攻撃!ライトニングストライク!!」

光の剣をネオスが振り下ろし破壊者を両断する!

 

「ぐぅ…!」

遊海LP4000→3800

 

「さらに『アサルトアーマー』の効果を発動!このカードを墓地に送り!『グローネオス』はもう一度攻撃できる!頼むぜ!『閃光竜』を攻撃!」

ネオスが黄色のオーラを振り払い閃光竜に迫る!

 

「リバース罠『リビングデッドの呼び声』を発動!墓地の『フォーミュラシンクロン』を特殊召喚!」

再びレーシングカーが現れる ATK200

 

「っ!?なんで攻撃力の低いモンスターを!?」

 

「こうする為だ!速攻魔法『リミットオーバー・ドライブ』を発動!俺はシンクロモンスター『閃光竜』とシンクロチューナー『フォーミュラシンクロン』をデッキに戻す事でエクストラデッキからレベル10のシンクロモンスターを召喚条件を無視して特殊召喚できる!」

 

「なんだって!?」

遊海を中心に風が渦巻く!

 

「俺はレベル8の『閃光竜』にレベル2の『フォーミュラシンクロン』をエクストラチューニング!」

 

8+2=10

 

 

「集いし夢の結晶が新たな進化の扉を開く!エクストラ・アクセルシンクロ!現われろ!『シューティング・スター・ドラゴン』!」

進化を遂げたスターダストがフィールドに顕現する ATK3300

 

「攻撃力3300!?攻撃中止だ!…ターンエンド!」

十代のターンが終わりグローネオスは宇宙へと戻っていった。

 

十代LP4000

フィールド無し 手札0

 

 

『十代!遊海相手に先制ダメージを与えるも新たなドラゴンが立ち塞がった〜!これは万事窮すか!?』

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『シューティング・スター』の効果発動!デッキトップ5枚をめくり…その中のチューナーの数だけ攻撃ができる!!」

 

「なっ…最大5回の連続攻撃だって!?(墓地には『ネクロガードナー』がいる…先生が3枚引き当てたら…俺の負けだ…!)」

 

 

「いくぜ…1枚目!」

 

クイック・シンクロン!

 

「2枚目!」

 

調律!

 

「3枚目!」

 

ジャンクシンクロン!

 

「4枚目!」

 

ジャンクジャイアント!

 

 

「そして…ラスト…5枚目!!…ドロー!!!」

遊海が最後のカードをドローする…それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チューナーモンスター・グローアップ・バルブ!!

 

 

 

 

「…俺の負けか…でもすげぇワクワクするデュエルだったぜ…先生!」

 

「ああ、俺もだ!十代!!バトル!『シューティングスター』でダイレクトアタック!シューティングミラージュ!!」

シューティングスターが3体に分身し十代のライフを削りきった!

 

十代LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『き……決まったぁぁぁ!!2代目「決闘王」!その称号を手にしたのは…白波 遊海!!世界最強の座を勝ち取ったぁぁぁぁ!!!』

 

 

 

「「「わあぁぁぁぁ!!!!」」」

 

 

 

「十代…またいつでも挑んで来い、俺はいつでも待ってるからな!」

 

「ああ!次は先生を超えてやるぜ!」

 

十代と遊海はリングの中心で握手を交わす…長いようで短かった戦いはここに幕を閉じたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それではバトルシティ主催者のKC社長・海馬 瀬人氏からのトロフィーの授与だ!』

そして表彰式、リング中央に設けられたお立ち台には俺、十代、カイザーの3人が登っている、本来であればゲイザーとカイザー亮の3位決定戦があるがゲイザーが行方不明の為カイザーが3位となったのだ。

 

「丸藤 亮!見事な決闘だった!お前の作る新リーグには海馬コーポレーションも支援しよう!ありがたく思うがいい!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

「遊城 十代!お前も見事な決闘だったが…相手が悪かったな!しかしまだ成長の猶予はある!いつか奴を超えてみせろ!」

 

「おうっ!!次は絶対に先生に勝ってみせるぜ!!」

 

 

 

 

「そして…白波 遊海、不測の事態もあったがよく乗り越えた!…オレからお前にトロフィーを渡すのはよくないな…もっと相応しい奴がいる、来い!遊戯!」

海馬の声と共に遊戯が遊海の前に歩み出る

 

「遊海!本当におめでとう!これからも色々大変だと思うけど頑張ってね!」

 

「海馬さん…遊戯…!ああ!俺が背負った『決闘王』の称号…それに恥じない決闘者であり続けてみせる!」

そして遊海はトロフィーを受け取る…ここに2代目決闘王が誕生した…!

 

 

『これにてバトルシティ・レジェンドは閉幕だ!また来年!通常のバトルシティでお会いしよう!グッバイ!リスナー達!!』

 

 

 

「「「わあぁぁぁぁ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン!

 

 

 

 

 

 

「ッ!?痣が…!!」

突如シグナーの痣が赤く光る…それと共に誰かの感情が流れ込んでくる、苦しみ…怒り…愉悦…痛み…それがごちゃまぜになったような感情が…!

 

「ガッ…ぐぅ…!!」

 

「遊海!!どうしたの!?大丈夫!?」

腕を抑え膝をついた俺を心配して遊戯が駆け寄ってくる

 

《クリクリ!!?》

《十代…嫌な予感がする…、何かよくないモノが現れようとしてる!!》

 

「なんだって…!?」

精霊であるユベル達が十代に注意を促す…!

 

 

 

「この…痛みは…まさか…!!!アグッ…!!」

腕の痛みと共に一つのイメージが頭に流れる…銃を持ち自分の腕を誰かに渡す男…その腕と3枚のカードを持って逃げる男…そして…赤ん坊をカプセルに入れて射出する…不動博士一一!

 

 

 

「そんな…駄目だ…ダメだァァァ!!!」

 

「遊海!どうしたというのだ!何があった!!」

 

「海馬さん…絶対にスタジアムから誰も出さないで!…あと…翠に『ごめん』と…!!」

俺は海馬に伝言を託し外へと飛び出した!

 

「おい!遊海!?何処へ行く!!!」

 

「遊海さん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…!アヤカ!実体化してスタジアム周辺を守れ!!」

 

【マスター!…死ぬつもりですか…!!】

実体化したアヤカがスタジアムを囲むように顕現する、彼女も事態を把握したようだ

 

「死ぬつもりはない…!でもみんなだけは…守らなくちゃいけない!!!」

 

 

「おい…なんだよアレ…?ソリッドビジョンの暴走か!?」

 

「早く逃げようぜ!!」

 

 

「フレア!トフェニ!近くにいる人達をスタジアムに連れていって!多少手荒でもいい!早く!!!」

 

《御意!》

 

【ユウミ…あなたは…】

 

「…大丈夫だよフレア、俺は不死だ…これくらいじゃ死なないよ…!」

海馬ランド周辺にいる人達をドンドンスタジアムに入れて行く…

 

「メガロック…スタジアムを囲むように大地を隆起させて…!」

 

《遊海…それがお前の覚悟なのだな?》

 

「ああ…町を救うのは俺だけじゃ無理だ…でも手の届く範囲の人は救ってみせる!!精霊アーマー全力展開!コンプリートフォーム!!!」

クリフォートフォームの鎧を核として全ての力を籠める!

 

『翠…ごめん、でも絶対に生きて戻る…!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…最初に見えたのは一面の青空だった、次いで目の前を覆い尽くす破滅の白い光…そして衝撃

 

 

『ぜぇいあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

スタジアム正面に展開した最高硬度の障壁で全ての力・熱量を受け止める…あまりの力に足がずり下がる…でも…耐えなきゃ…耐えられなければ…みんな死んでしまう…!!!

 

 

「負けて…たまるかああああああ!!!!」

 

 

その直後、遊海は光に飲み込まれる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未曾有の災害『ゼロ・リバース』…その発生は突然の事だった…。



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第3部 5D's編 第1章 集いし仲間達
プロローグ〜16年後〜


こんばんはS.Kです!皆様お待ちかねの5D's編に突入します!



本編に先駆けてプロローグをどうぞ!


破滅の災害『ゼロ・リバース』…研究中であった永久機関『モーメント』の暴走により起きた事故、それは旧童実野町の半分を吹き飛ばす大災害となった。

 

被害を受けた面積の3分の一は海に変わった、そして残りは本土から隔離された大地『サテライト』となった、日本政府と海馬コーポレーションは全力を上げて町の復興を急いだ…結果5年ほどで童実野町はネオドミノシティとして表向き再建を果たした…しかしサテライトはほとんど再建が進まなかった。

 

 

「爆発で汚染されてるんじゃないか?」

 

「隔離されて治安が悪化してるんじゃないか?」

 

「ゴロツキ達がサテライトを埋め尽くしているらしい」

 

 

人々のいわれなき風評がサテライトへの支援を滞らせた、そして噂に惹かれ本当に悪人達がサテライトに入り込み治安が悪化した…まさに世紀末である。

 

 

しかし…そんなサテライトの住民にも希望はあった。

 

『希望の島』と呼ばれる場所である。

 

そこは旧海馬ランドのあった場所でシティとサテライトの中間点にある島である、その場所には不思議な噂が残っていた。

 

 

曰く、『ゼロ・リバースに耐え住民・数万人の命を救った』

 

『ゼロ・リバース直前にソリッドビジョンの暴走がありモンスターにスタジアムに投げ込まれたら命が助かった』

 

『三幻神・「ラーの翼神竜」を見た』

 

『ただ一人行方不明者がいるらしい…その人物がスタジアムを守ったのではないか?』etc…

 

今は廃墟と化しているがKC社がこの島を基点にサテライトとシティを繋ぐ橋の建設を予定していて後は治安維持局の認可待ちである…しかしその日はまだ来ない……

 

 

 

そしてもう1つサテライトの住民の希望があった…それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…何なんだよアイツは!!」

一人のガラの悪い男が廃墟の中を逃げていた…彼はこの辺りの場所を締めていた『エビルデーモンズ』のボスだった男だ…しかしそれは過去の話、彼のチームは一人の男により壊滅し彼自身も追われているのだ。

 

 

「ハァ…ハァ、『チームサティスファクション』が無くなって俺達の天下になったと思ったのに〜!!」  

 

『それは甘い考えだな、上には上がいる…お前達は好き勝手に暴れ過ぎた…!』

 

「ヒィ…!で、出た!!」

逃げる男の前に人影が現れる、機械の鎧を装着し顔を隠した男…

 

 

「や、やめてくれ!もう悪い事はしないから!!」

 

『その言葉…信じるぞ?まともに働けよ?』

 

鎧の男はチンピラに背を向ける

 

「へ…へへっ…死ねぇー!!」

チンピラは手近にあった鉄パイプを振り上げる!

 

『「キラーナックル」!』

 

「ガッ…ぐへぇぇぇ!?」

ノーモーションで放たれた鉄拳は正確に腹に直撃しチンピラを吹き飛ばした…。

 

『いつもワンパターンなんだよ…お前らは…』

呆れたように呟くと男は去って行った…。

 

 

 

彼の名前は人呼んで『鋼の騎士(メタルナイト)』…シティとサテライトを股にかけ人を救うデュエルヒーローである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

幼い時の記憶…人によっては3〜4歳頃からしか記憶に残らないらしいが…オレは違った、この記憶は1才頃のものだろうか…?

 

 

覚えているのは一面灰色の空…降りそそぐ雨音、それがオレの入っていたカプセルを濡らす…実際にマーサに見せてもらったが本当に小さいモノだった。

 

そしてしばらくすると赤い帽子を被ったボロボロの男が現れた…彼は赤ん坊のオレを見ると涙を流した、そして何事かをオレに喋りかける…そういう記憶だった…。

 

その後、オレはマーサに引き取られそこで生活した…クロウやジャックという仲間達と出会い苦労しながら楽しい時を過ごした…。

 

 

「お〜い遊星!新しいジャンクパーツを見つけてきたよ〜!」

 

「すまんなラリー…盗品では無いな?」

 

「当たり前だよ遊星!もう少しで新しいDホイールが完成するのにそんな事しないって!」

 

「ああ…ありがとう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして物語は動き出す、赤き竜と冥界の神、そして未来との戦い…間近にそれは迫っていた…。



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動き出す物語〜空白の時・激突〜

『キングは1人!この俺だぁ!!!』

 

『デュエルキング!ジャック アトラス!第134回デュエルキングの防衛に成功!彼を破れるDホイーラーなどいるのでしょうか!?』

 

ピッ…

 

 

「(やっぱりこうなったか…)」

テレビの電源を切る…「ゼロ・リバース」から17年が経った、結果的に俺はスタジアムにいた人達を救う事に成功した。

 

破滅の光を全て弾き、アヤカの防御力でなんとか皆を救う事ができた…精霊達も翠も大怪我をしないで済んだ、結果的にシティとサテライトに別れてしまったネオドミノシティだがKC社が支援をしているため劇中のサテライトより環境は良くなっているはずだ。

 

 

 

 

「遊海さん、ご飯にしませんか?」 

 

「ああ、いま行…ゴボっ…!」

 

「遊海さん…やっぱり無茶は…!」

 

「この痣がある以上…無茶をしない訳にはいかな…ゴホッゴホッ…!」

 

 

 

…17年でもっとも変わったのは俺自身だろう、ゼロ・リバースの膨大なエネルギーを受け止めた俺は爆風でサテライトの端まで弾き飛ばされた…手足は砕けアヤカが俺を見つけるまでの2日間、ある人物と2人きりだった…今はその話は割愛する。

 

 

アヤカ達に助けられた俺は奇跡的に無事だった自宅に戻り回復に専念した…しかし怪我の回復に1年以上の月日を必要とした…俺は汚染されてしまっていた…モーメントから漏れ出した冥界の「マイナスエネルギー」に…。

 

 

今の俺は痩せ細り、極度の病弱状態になっている…不死の力が働いていなければすぐに死んでいただろう…何回も回復魔法を試した、嫌がるフレアに頼み身体を消し炭にもしてもらった…結局回復しても現状は変わらなかった、そして最悪な事に「精霊の力」の行使も難しくなった、レベル100を超えていたのがいきなりレベル10ぐらいまで落ちたように感じた…3年程前までは満足に身動きすら取れなかった…()()の助けと痣が無ければ今も寝たきりだったかもしれない…。

 

 

そしてリハビリがてらに俺はある活動を始めた…そう「ヒーロー活動」である。

 

治安を維持するためにはもちろん警察こと「セキュリティ」がいる、しかし彼らも万能では無い…だから俺はリハビリを兼ねて人助けをしようと思ったのだ。

 

最初は以前のように動けず苦戦したが、今は勘を取り戻しある程度動けるようになった、巷では鋼の騎士と呼ばれているらしい…。

 

火事現場からの被害者救出、チンピラグループの無力化、事故現場からの人命救助…やれる事は全てやっている…。

 

そして今年、ゼロ・リバースから17年が経った…つまり物語が動き出すという事だ…コンディションは最悪だが…やれる事をやっていこうと思っている。

 

 

「遊海さん、今日はどうしますか?」

 

「そうだな…マーサハウスにでも行こうか、あの子の事も気になるし…」

 

「そうですね!またお菓子とか持っていってあげましょう!」

 

そして俺達は移動の準備を始めた…。

 

 

 

 

 

「ウィンダ!お願いね!」

 

《うん!しっかり掴まってて!》

《キュイ〜!》

 

俺達は「聖霊獣騎キムンファルコス」に乗り込み一路サテライトを目指す、俺達の家やKCがあった辺りは比較的被害が少なく済んだのだ…。

 

 

 

 

 

 

「マーサさ〜ん!こんにちはー!」

 

『おや!翠にハクノじゃないか!よく来たねぇ!』

しばらく空を飛びサテライトのマーサハウスに到着する、そして建物から黒人のふくよかな女性・マーサが現れる…ついでに俺は偽名の「岸波 白野」で通っている。

世間的に決闘王「白波 遊海」は行方不明なのだ…。

 

 

「お久しぶりですマーサ、彼の様子はどゴフっ!」

 

『あんたは無理するんじゃないよ!あの子は元気だよ!さぁ中に入って休みな!』

 

「す、すいません…お邪魔します…」

吐血した血を拭いながらマーサハウスへと入る…いつもの光景である。

 

 

「あっ!ハクノだ!」

 

「遊んで!遊んで!」

 

『コラ!お前達!ハクノは身体が弱いんだから無茶言うんじゃないの!』

中に入ると小さい子達が集まってくる

 

「大丈夫だよマーサ、これぐらいなら俺でもできますから…ほらお菓子を持ってきたよ!みんなで分けて食べてな!」

 

「「「わ〜い!」」」

 

「ありがとうハクノ兄ちゃん!」

翠のお手製クッキーを子供達に配る…やっぱり子供達を見てると癒やされるな〜。

 

 

 

 

 

 

「ハクノさん…お久しぶりです!」

 

「おぉ『トビー』、元気だったゴフッ…か?」

 

「…今のハクノさんよりは…」

 

「ハハハ…そりゃよかった!」

今、目の前にいる栗毛の少年はトビー…世界的モデル・ミスティ ローラの弟である、彼が何故ここにいるのか…それは1年前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1年前…

 

Sideトビー

 

 

「うわぁぁぁ!?!?!?」

 

何故僕はこんな目にあっているんだろう…僕は超能力を持った人間、いわゆるサイコデュエリストと言われるものらしい…でもその力を制御出来なくて学校や姉さんにも迷惑をかけてしまっていた。

…そんな中…僕はサイコデュエリストの保護・養成機関アルカディア・ムーブメント、そしてディヴァインさんと出逢った。

 

ディヴァインは僕に力の使い方を教えてくれた…「黒薔薇の魔女」っていう憧れの人を見つけた…僕は強くなりたかった、だからディヴァインの強化プログラムに参加した…「能力は命の危機に瀕した時に覚醒する」その言葉を信じて僕は訓練に臨んだ…。

 

 

「うぎゃああああ!!!!」

 

…頭が痛い、痛い!痛い!!身体が黒焦げになりそうな電流が僕を壊していく…意識を保つのも辛くなってきた…ごめん…姉さん…

 

 

「もっとパワーを上げろ!」

 

「ディヴァイン様…これ以上は危険かと…!」

 

「関係ない、トビーはその程度だったという事だ…弱い奴はいらん…パワーを上げろ!」

 

「は、はい…!」

 

僕の叫び声に紛れてディヴァインの声が聴こえてくる…電流のパワーが上がる…!

 

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!?!」

 

 

バシュー………

 

 

「なんだ!?停電だと!?」

 

「早く非常電源を…!」

 

…突然電流が止まる…僕は助かった…のか…?

 

 

 

『懲りないな…ディヴァイン、悪事はそこまでだ!』

 

「き、貴様は…!鋼の騎士!?」

 

『子供達は開放させてもらうぞ!』

 

「この事を知った奴は生かしておけん…死ねぇ!」

ボウッ!!

 

『…「貴様の力には鉄の意思も鋼の強さも感じない」…誰かに言われなかったか?』 カーン!

 

「!?…貴様…死んだはず…うわぁぁぁ!!!」

 

………

 

『もう大丈夫!ゆっくり休むんだ…』

僕の目の前にいたのはロボットのような人…僕は安心して瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ?記憶は戻ったか?」

 

「…」フルフル

俺の問いにトビーは首を横に振る、1年前…アルカディア・ムーブメントに突入した俺は拷問に近い訓練を受けていた子供達10人程を開放した、しかしトビーは訓練の影響で記憶を失っていた、俺は彼を守るためにマーサハウスへと彼を預けた…その後ミスティの事故が起きてしまったのは言うまでもない…。

 

 

 

「まぁ…記憶喪失は何かの拍子に回復する事もある…気長にいこう!」

 

「…ハクノさん、どうして見ず知らずの僕にここまでしてくれるんですか…?」

トビーが俺に尋ねてくる

 

「俺は…困っている人を放っておけないのさ!メタルナイトにも頼まれたしな!」

 

「鋼の騎士と知り合いなんですか?」

 

「ああ…俺の親友さ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあマーサ、また来るよ!」

 

「お邪魔しました!」

 

『いつでも来ていいよ!…まったく、遊星も顔を出してくれたっていいのにさ…』  

 

「彼ならきっと来ますよ!見かけたら声をかけておきます!」

 

『そうかい?頼んだよハクノ!』

 

 

 

 

 

 

「翠…それじゃあ行ってくる!」

 

「遊海さん…無理は禁物ですからね!」

 

「ああ!…精霊変身!アクセラレーション!!」

家に戻った俺は掛け声と共にクリフォートの鎧とDホイールを出現させる、この鎧を纏っている間だけ俺の病弱の呪いは発動しない、だからこそ人助けができるのだ…ただし4時間程しか持たないしクールタイムも必要だったりする。

 

…似たような設定の人がとある世界にいた気がするけど密に、密に…。

 

「行ってくる!」

 

「行ってらっしゃーい!」

俺は夜の風となる…これが今の俺の役目…鋼の騎士だ!

 

 

 

 

 

 

 

「アヤカ!周りの様子はどうだ?」

 

《特に問題はありません!何人かセキュリティに追われていますが対処は任せましょう!》

 

「了解!ありがとう!」

俺はシティの高速道路を走り抜ける、いつもなら珍走団や腕試しのDホイーラーがいるが今日はいないようだ…なんだろう…嫌な予感がする…!

 

 

『見つけたぞ!「鋼の騎士」!!俺とデュエルしろ!!』 

 

《高速度で接近するDホイールを確認!識別番号…「ホイール・オブ・フォーチュン」!!》

 

「っ!やっぱりか!!」

俺の後ろから1輪のバイク…モノホイールが近づいてくる…それを駆るのはやはり…!

 

「しつこいぞジャック・アトラス!俺はお前とデュエルする理由は無い!」

 

『俺にはある!貴様を倒すという目的がな!貴様を倒し俺は真のキングとなる!』

現・デュエルキングであり「チームサティスファクション」随一の問題児ジャック・アトラスが俺を追い掛けてきていた…。

 

 

ジャック個人とは知り合いだが…俺が鋼の騎士である事は知らない、だがなぜか追い掛けてくる…何故か?それはある記事のせいだった。

 

 

『鋼の騎士対キング!勝つのはどっち?』

 

某雑誌がこのような記事を出した…アンケートをとった結果何故か「鋼の騎士」に軍配が上がった…それ以来ジャックは俺を探し町をうろついているのだ。

 

 

『今日は貴様を倒すためにセキュリティからこれを提供して貰った!強制デュエルモード発動!!』

 

「なっ!?セキュリティのデュエルシステムだと!?そこまでするか!?」

 

 

「「ライディングデュエル・スタンバーイ!」」

 

 

強制的にデュエルモードが起動する…やるしかないか…!

 

「しょうがない!受けてやる!怪我するなよキング!!」

 

『貴様の正体を暴いてやる!覚悟しろ!』

 

 

『「ライディングデュエル!アクセラレーション!!」』

 

 

遊海LP4000 スピードカウンター(SP)0

ジャックLP4000 SP0

 

 

特殊ルール

ライディングデュエル

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP0→1

「『超重武者カゲボウーC』を召喚!」

虚無僧のようなロボットが現れる ATK500

 

「『カゲボウーC』の効果発動!自身をリリースし手札から『超重武者ビックベンーK』を特殊召喚!」

虚無僧が粒子となり巨大な僧兵がどっしりとフィールドに現れる DEF3500

 

「そして『超重武者装留マカルガエシ』を手札から『ビックベンーK』に装備!」

僧兵の手首に数珠が巻き付く

 

「俺はこれでターンエンド!」

遊海LP4000

ビックベンK(マカルガエシ装備) 手札3

 

 

 

『貴様…キングたる俺の前に守備モンスターを出すとは…舐めているのか!!』

 

「俺は手を抜いてはいない!これが俺の勝利への布石だ!」

 

「ならばその布石…容赦なくへし折ってやろう!!」

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』SP0→1

『手札の「バイス・ドラゴン」は自分フィールドにモンスターが存在しない時!攻守を半分にして特殊召喚できる!』

紫色のドラゴンが現れるATK2000→1000

 

『さらに「ダーク・リゾネーター」を召喚!』

音叉を持った悪魔が現れる ATK1300

 

『刮目して見よ!!俺はレベル5の「バイスドラゴン」にレベル3の『ダークリゾネーター』をチューニング!』

 

5+3=8

 

『王者の鼓動!今ここに列をなす!天地鳴動の力を見るがいい!!シンクロ召喚!我が魂!「レッドデーモンズ・ドラゴン」!!』

2本の角を持つ紅蓮の竜が現れる! ATK3000

 

「来たか『レッドデーモンズドラゴン』…!」

 

『バトルだ!「レッドデーモンズドラゴン」で「ビックベンK」を攻撃!アブソリュート・パワーフォース!!』

巨大な掌底とビックベンKのさすまたが激突する!しかし守備力で勝るビックベンKがレッドデーモンズを弾き返す!

 

ジャックLP4000→3500

 

『ぬぅぅ…!この程度のライフはくれてやる!「レッドデーモンズドラゴン」の効果発動!相手の守備モンスターを全て破壊する!デモン・メテオ!!』

灼熱の炎がビックベンKに襲いかかる!

 

「『ビックベンK』に装備された『マカルガエシ』の効果で1ターンに一度!効果破壊されない!」

 

『おのれ…小癪な!カードを2枚伏せターンエンド!』

 

ジャックLP3500

レッドデーモンズ 伏せ2 手札2

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP1→2

「俺は『超重武者ホラガーE』を召喚!」

法螺貝を持った足軽が現れる ATK300

 

「俺はレベル8の『ビックベンK』にレベル2の『ホラガE』をチューニング!」

 

8+2=10

 

「荒ぶる神よ!千の刃の咆哮と共に神速の戦場へと現われろ!シンクロ召喚!出陣!『超重荒神スサノーO』!!」

重厚な鎧を纏った大蛇殺しの神が現れる DEF3800

 

『また守備モンスターか!貴様…俺に勝つつもりがあるのか!!』

 

「ああ…あるさ!俺は手札の『超重武者装留ダブル・ホーン』を『スサノO』に装備!」

スサノOの両肩に巨大な角が装備される

 

「バトル!『スサノO』で『レッドデーモンズドラゴン』を攻撃!」

 

『なにっ!?守備表示でバトルだと!?』

 

「『スサノO』は守備表示のまま守備力を攻撃力として攻撃できる!クサナギソード・斬!」

スサノOの巨大な刃がレッドデーモンズを斬り裂く!

 

『ぬぅおおお!!』

 

ジャックLP3500→2700

 

「そして『ダブルホーン』を装備した『スサノO』は2回攻撃ができる!」

 

『やらせん!!リバース罠『リバイバル・ギフト』!墓地の「ダークリゾネーター」を特殊召喚し貴様の場に「ギフト・デモン・トークン」を2体特殊召喚!』

ジャックの場に再び音叉の悪魔が現れる…しかしすぐにスサノOに切り裂かれる。

 

そして遊海の場に黒い影の悪魔が現れる DEF1500 ✕2

 

 

「防がれたか…このままターンエンド!」

遊海LP4000

スサノO(ダブルホーン)ギフトデモン✕2 手札2

 

 

 

『チイッ…やるではないか…だがキングは負けん!!』

 

「…ジャック・アトラス、お前はそれでいいのか?」

 

『なんだと…?』

 

「友のカードを奪い、ゴドウィンのいいように使われ…孤高に敵を倒し続ける…お前は満ち足りていないんじゃないか?」

 

『っ…貴様、何処でその事を…!』

 

「どこでもいいだろう?サテライトを統一した『チームサティスファクション』のジャック・アトラス!」

 

『…絶対に正体を暴くぞ!鋼の騎士!俺の思い出に入ってくるな!!』

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』Sp1→2

『俺はリバースカード『リビングデッドの呼び声』を発動!蘇れ!「レッドデーモンズドラゴン」!』

再び紅蓮の竜が復活する ATK3000

 

『そして「Spーオーバー・ブースト」を発動!自分のスピードカウンターを4つ増やす!ただしエンドフェイズにカウンターは1になる!』SP2→6

 

ホイールオブフォーチュンが速度を上げ遊海の前に回り込む!

 

『さらに「Spーソニック・バスター」を発動!スピードカウンターが4つ以上ある時「レッドデーモンズドラゴン」の攻撃力の半分…1500ダメージを与える!受けろ!我が魂の炎を!!』

《グオォォォ!》

 

レッドデーモンズドラゴンが咆哮し火炎を吐き出し遊海に直撃する

 

「うおぉぉぉ!?」

 

遊海LP4000→2500 Sp2→1

 

『バトルだ!「レッドデーモンズドラゴン」で「ギフトデモントークン」を攻撃!灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!!そして守備表示のモンスターを全て破壊する!デモンメテオ!!』

灼熱のブレスが遊海のフィールドを蹂躙し爆発が起きる!

 

『これで貴様のフィールドはガラ空き!次のターンで決着を着けてやる!!』

 

 

「それはどうかな!デュエルは何が起きるかわからない!!」

爆煙から遊海が飛び出してくる!

 

『フン…減らず口を…!!俺はこれでターンエンドだ!』

ジャックLP2700 Sp6→1

レッドデーモンズ 手札1

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP1→2

「『超重武者ジシャーQ』を召喚!」

U字磁石のような角のモンスターが現れる ATK900

 

「『ジシャQ』の効果で手札の『超重武者タマーC』を特殊召喚!」

丸っこい槍を持ったロボットが現れる ATK100

 

「俺はレベル4の『ジシャQ』にレベル2の『タマC』をチューニング!!」

 

4+2=6

 

「雄叫びを上げろ!神々しき鬼よ!シンクロ召喚!『超重神鬼シュテンドウーG』!」

棍棒を持った赤き鬼のロボットが現れる DEF2500

 

『フン!守備力2500だと?攻撃力3000の「レッドデーモンズ」には及ばん!』

 

「『シュテンドウG』の効果を発動!自分の墓地に魔法・罠がない時!相手フィールドの魔法・罠を全て破壊する!…『リビングデッド』で蘇った『レッドデーモンズ』も破壊される!」

 

『な、なんだと!!』

棍棒の起こした暴風がジャックの魔法・罠を全て吹き飛ばしレッドデーモンズも道連れになる!

 

「バトル!『シュテンドウG』でダイレクトアタック!九頭竜鏖殺撃!!さらに手札から『バスターガントレット』を捨て攻撃力を倍にする!」

ATK2500→5000

 

振り上げた棍棒がジャックのすぐそばに直撃し爆発を起こした!

 

『おのれ…おのれぇぇ!!』  

 

ジャックLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

「DEFEAT…Dホイールを強制停止します…」バシュー!!

煙を上げながらF・O・Fが強制停止する…

 

 

「じゃあなキング!この事は内緒にしといてやるよ!」

 

『ぐっ…待て!鋼の騎士ィィィ!!!』

 

「猛るなよ!その内また会えるさ!じゃあな〜!」

俺はそのままDホイールを走らせその場から離脱した…。

 

 

 

 

 

 

「ふう…危なかった…」

 

《お疲れ様ですマスター…災難でしたね…》

 

「ああ…デュエルをすると活動限界が短くなるからな…今日は早めに戻ろう…」

 

そうして俺は自宅の方向に走り出した…。




今回のスピードスペル!

Spーオーバー・ブースト 通常

このターン自分のスピードカウンターを4つ増やす、エンドフェイズに自分のスピードカウンターは1つになる。


Spーソニック・バスター 通常

自分のスピードカウンターが4つ以上ある時に発動できる。
自分のフィールドのモンスター1体を対象に発動する。
そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える、ただしこの効果で相手ライフが0になる場合、このカードは発動できない。


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赤き竜の出現〜出会い〜

おはようございます!FGOの三章が始まったため更新速度が低下します、誠にすいません…

項羽…何なんだよあの姿…


最新話をどうぞ!

※11月28日 デュエル内容を一部修正しました。


コンコンコン

 

「入れ!」

 

「失礼します、海馬社長」

 

「よく来た遊海…相変わらず酷い顔だな」

 

「それは言わない約そゴホッゴホッ…!」

 

「…全快にはほど遠いな…あれ程の力を持っていたお前がこの様とは…」

 

ジャックとのデュエルの翌日、俺は海馬コーポレーションを訪れていた…久しぶりに海馬社長に呼び出されたのだ。

 

 

「それで…今日はどうしたんですか?プロリーグ復帰は無理ですよ?」

 

「ああ…お前の様子を見ればわかる、別の事だ…治安維持局のレクス・ゴドウィンが『鋼の騎士』を探しているらしい」

 

「しまった…バレたかな、この痣がある事…」

以前「黒薔薇の魔女」を止めた時にセキュリティの隊員に痣を見られたのかもしれない…しくじったかな…。

 

 

「それはわからん、しかし奴はお前を探している…人助けもいいが自分の身にも気を配れ…それだけだ」

 

「わかりました海馬社長…では戻ります」

 

「うむ…遊海」

 

「なんですか?」

 

「不死とはいえ無茶はするな…命を擦り減らす友を見るのは辛いのだ…」

 

「…わかりました、心配頂いてありがとうございます」

そうして俺は社長室をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

「………」

家へと戻った俺はソファで横になっている、病弱になってから体力も無くなり日中は寝ている事が多い…幸い蓄えはあるが…手持ち無沙汰である。

 

《ユウミ…大丈夫ですか?》

 

「フレア…ああ大丈夫、少しぼーっとしてただけだから」

ソファの肘掛けにフレアが現れる

 

《すいません…私もあの時に防御ができれば…》

 

「いいんだよフレア、俺は本来救えなかった人達を救ったんだ…これくらいの代償は受けなきゃダメだったんだよ…」

 

世界には「等価交換」という考え方がある、何かを手に入れるためには何か対価を出さなければならない。

 

空腹を満たすには何かを食べなきゃならない

 

食べ物を得るにはお金を出さなきゃならない

 

それと同じように人の命を救いたければ………

 

 

きっと本来、童実野町を拠点に行動していた遊戯や城之内さん達はゼロ・リバースで死んでしまうはずだったのだろう…そうならば映画でのジャックのセリフ『決闘王とデュエルするにはタイムスリップでもしなくてはダメだ』というセリフも納得できる。 

 

俺は世界の道理を捻じ曲げた…ならばその代償がこれくらいで済んだのなら安いものだろう。

 

 

「ごめんフレア…少し寝るよ、何かあったら起こしてゴホッゴホッ…!」

 

《わかりました、ゆっくり休んでくださいユウミ…》

 

フレアの言葉を聞いて瞳を閉じる…遠出して疲れていたからかすぐに意識は沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《キュオオオォォン!!》

 

【ゴオオォォォ!!】

 

…夢を見ている、空は暗雲に包まれ…大地からは黒い影の神が現れ世界を荒らしている。

対抗するは7匹の竜…そして選ばれたシグナー達、竜と神が激突する…赤き竜の力を借りた6匹の竜が魔神を追い詰めていく…そして赤き竜の力で魔神は大地に刻まれた地上絵となった、しかし封印の道連れに1匹の竜が飲み込まれ……

 

 

 

 

 

 

 

「う…うぅ…!」

 

「遊海さん?大丈夫ですか!遊海さん!」

 

「ぐっ…翠…?」

目を覚ますと翠が心配そうな顔で俺を覗き込んでいた、既に日は沈み夜になっている。

 

「よかった…魘されてましたよ?大丈夫ですか?」

 

「そうか…ゴホゴホッ…大丈夫だよ、なんともないから…」

 

「そうですか…ならよかったです!遊海さんたまに寝ながら吐血してるので心配になっちゃって…」

 

「ごめん…」

 

 

 

 

「翠、それじゃ行ってくる!」

 

「はい!気をつけて!」

夜になり俺は再びシティへと向かう…さっきの夢といい…胸騒ぎがする…!

 

 

 

 

「もう大丈夫!早く病院へ連れて行くんだ!」

 

「は、はい!ありがとう…ありがとう鋼の騎士!」

「ありがとう〜!」

今日もひったくり犯を捕まえたり火事の現場から子供を助け出したりしながら俺はシティの治安を守っていた…時間は間もなく深夜…活動限界が近いな…そろそろ戻ろう。

 

 

俺はDホイールを走らせる、あれは…デュエルスタジアムか…

 

デュエルスタジアム…フォーチュンカップの開かれたりするスタンダード・デュエルとライディング・デュエル、どちらにも対応したスタジアムだ…今の俺には縁はないな…

 

 

 

ドクン…!

 

「シグナーの痣が…!」

《マスター!超高密度のエネルギー反応を確認…来ます!!》

 

《キュオオオォォン!!》

 

「赤き竜…!そうか、今日は…!」

シグナーの痣が赤く輝く…そしてスタジアム上空に巨大な赤き竜が現れる…今日は月に一度ゴミ輸送のパイプラインの止まる日…俺はスタジアム方面へとDホイールを走らせた…。

 

 

 

 

 

『ネオドミノシティ・セキュリティだ!サテライト住民の不法侵入は認められない!治安維持局の命で貴様を拘束する!』

 

スタジアムに到着するとちょうど遊星がセキュリティに拘束される場面だった、これで遊星は収容所に送られてシグナーの伝説を知る…秘宝好きのおじいちゃんや呂場の真似をする所長と戦う事になる、始まったか…運命の

戦いが…!

 

 

『ん?』

 

「あ…」

スタジアムを調べていたセキュリティと目が合う…油断しすぎたか…

 

『こ、こちら223番!要捜索人物「メタルナイト」を発見!応援求む!!』

 

「…あばよっ!!」

俺は急いでスタジアムから離脱した…。

 

 

 

 

 

『待て!メタルナイト!!』

 

『治安維持局の命で貴様を捕縛する!』

 

「くっ…しつこい…!」

スタジアムを脱出した俺だったが思ったよりセキュリティの数が多くデュエルチェイサーズとバイクレースを繰り広げていた…。

 

 

『仕方ない!強制デュエルモード発動!』

 

 

「「ライディングデュエル・スタンバーイ!!」」

 

「またか…!しょうがない…!」

 

 

 

『「ライディングデュエル!アクセラレーション!!」』

 

 

 

 

 

セキュリティLP4000

遊海LP4000

 

特殊ルール

ライディングデュエル

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「ゲート・ブロッカー」を召喚!』 SP0→1

大きな目のついた壁が遊海の前に立ちはだかる DEF2000

 

「くっ…厄介なモンスターを…!」

 

『カードを2枚伏せターンエンド!』

セキュリティLP4000

ゲートブロッカー 伏せ2 手札3

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP0→0

「相手フィールドにモンスターが存在し自分フィールドにモンスターがいない時『聖刻龍ートフェニドラゴン』は特殊召喚できる!」

《参上!》

ウジャト眼の刻まれた白い龍が現れる ATK2100

 

「さらに『聖刻龍ードラゴンヌート』を召喚!」 

水色の人型の竜が現れる ATK1700

 

「そして『ヌート』をリリースし『聖刻龍ーシユウドラゴン』を特殊召喚!『シユウ』はフィールドの『聖刻』モンスターをリリースし特殊召喚できる!」

青いウジャト眼を刻んだ龍が現れる ATK2200

 

「バトル!『シユウ』で『ゲートブロッカー』を攻撃!」

シユウがゲートブロッカーに破壊の魔法陣を刻み粉砕する!

 

『リバーストラップ「ブロークン・ブロッカー」を発動!デッキから2体の「ゲートブロッカー」を特殊召喚!』

新たに2体の壁が現れる DEF2000 ✕2

 

「くっ…!」

《増えた…!》

 

「メイン2!カードを2枚伏せターンエンド!」

遊海LP4000

トフェニ シユウ 伏せ2 手札2

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』SP1→2

『チューナーモンスター「幻影王ハイド・ライト」を召喚!」

馬に乗った悪魔が現れる ATK1500

 

『私はレベル4の「ゲートブロッカー」にレベル3の「ハイドライト」をチューニング!』

 

4+3=7

 

「現われろ!罪人を罰する誇り高き悪魔の王よ!シンクロ召喚!『デーモン・カオス・キング』!!」

全身が炎のような悪魔王が現れる ATK2600

 

 

「『デーモンカオスキング』…!?まさか!(この人…風馬さんか!?)」

 

『バトル!「デーモンカオスキング」で「トフェニドラゴン」を攻撃!攻撃宣言時に相手フィールドのモンスターの攻守が反対になる!』

 

「させない!リバース罠『反射の聖刻印』!『トフェニ』をリリースし『デーモンカオスキング』の効果を無効にし破壊する!頼む!」

《御意!》

トフェニが特攻しデーモンカオスキングを破壊する!

 

『くっ…!これが鋼の騎士の強さか…!』

 

「そしてリリースされた『トフェニ』の効果でデッキから『ギャラクシーサーペント』を攻守0にして特殊召喚!」

小さな煌めく竜が現れる DEF0

 

『くっ…ターンエンドだ!』

セキュリティLP4000

ゲートブロッカー 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

『ジジ…213番!もう少しで応援が到着する!それまで引きつけろ!』

 

『213番了解!』

 

「…(早めに勝負を決めなきゃ不味い…!)」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP0→0

「俺はレベル6の『シユウ』にレベル2の『ギャラクシーサーペント』をチューニング!!」

 

6+2=8

 

「王者の咆哮!今天地を揺るがす!覇者の力をその身に刻め!シンクロ召喚!『レッドデーモンズ・ドラゴン・スカーライト』!」

《グオオォォ!!!》

咆哮を轟かせ右腕に傷を持つ紅蓮の竜が現れる ATK3000

 

『なっ…キングの「レッドデーモンズドラゴン」だと!?』

 

「『スカーライト』の効果発動!特殊召喚されたこのカードより攻撃力の低いモンスターを全て破壊し相手に500ダメージを与える!アブソリュート・パワーフレイム!!」

スカーライトが大地に腕を叩きつける、するとマグマが噴き出しゲートブロッカーが粉々になる!

 

『うおぉぉ!?』

セキュリティLP4000→3500

 

「さらに『聖刻龍ードラゴンゲイブ』を召喚!」

オレンジ色の人型の龍が現れる ATK1800

 

「バトル!『スカーライト』でダイレクトアタック!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!そして『ゲイブ』でダイレクトアタック!」

紅蓮の竜の掌底と龍の拳がセキュリティを吹き飛ばした!

 

『うわぁぁぁ!!』

 

 

 

セキュリティLP3500→500→0

 

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

『くっ…しかし役目は果たしたぞ!』

 

「むっ…!?」

俺はDホイールを止める…前方からもセキュリティ、後方からもセキュリティ…逃げ場が無い…!

 

『ヒッヒッヒッ…デュエルヒーロー「メタルナイト」!治安維持局・長官がお呼びです!大人しくしなさい!』

 

セキュリティを掻き分けて小さなピエロのような男性、イェーガーが現れる

 

「…悪いが断らせてもらう、俺はセキュリティに捕まる犯罪はしたつもりはない!」

 

『ならば力づくでも来てもらいますよ!お前達!』

セキュリティがスタンガン警棒を持って近寄ってくる…蹴散らすのは容易いけど…これ以上はゴメンだ!

 

 

「申し訳ないが逃げさせてもらう!はっ!!」ダンッ!

遊海は高速道から飛び降りる!

 

『なんですと…!?ここの高さがどれほどあると思って…なんとぉ!?』

 

「ありがとう『閃光竜』!」

《キュオン!》バサッ!

俺は飛び上がった閃光竜の背に乗りその場をあとにする…厄介な事になったな…。

 

 

『まさかサイコデュエリストだったとは…それにあのドラゴン…すぐに報告せねば…』

 

 

 

 

 

 

 

「油断しすぎたな…こりゃ指名手配かな…?」

 

《大丈夫だとは思いますが…っていうかなんでスタジアムに行っちゃったんですかマスター!?》

 

「う〜ん…赤き竜に呼ばれたから…かな…?」

シグナーの痣を持つ者は引かれ合うらしい…それが俺の身にも起きたんだろう…。

 

 

《とにかく早めに戻りましょうマスター…体力を使い過ぎです!》

 

「ああ…流石に今日は疲ゴボォ!!」

 

《マスター!?》

 

「つ…やべ…意識…が…!」

精霊アーマーが解けすぐに吐血する…ここしばらくで一番の量だ…

 

《キュオ…オン…》フッ

閃光竜の実体化が解け体が自由落下する…しかしそれに抗う力も残っていない…!

 

《マスター!気をしっかり持って!》

 

「ゴフッ…ごめんアヤカ…無理っぽい…!」

 

ヒュー……バシャーン!!

 

 

「ゴボゴボゴボ…!」

 

《マスター!私に掴まって!》

何処かの水場に落下する…この身体は…本当に不便だ……

 

《マスター!意識を保って!マスターの意識が無くなったら私も干渉できなくなります!頑張って…》

 

…アヤカの声が遠くに聞こえる…くそ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ今の音!?」

 

「プールに何か落ちたんだわ…えっ…人…!?」

 

「大変だ!早く引き上げなくちゃ!龍可!浮き輪持ってきて…!」

 

「わかった!!」

 

 



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英雄と少年〜一人のためのヒーロー〜

おはようございます!S.Kです!無事にFGO三章駆け抜けました、一言感想を…


虚淵さんなのに鬱展開じゃなかった!とてもいいストーリーでした!!



それでは最新話をどうぞ!


『…メタルナイトについての報告は以上です、少し誘い方が悪かったでしょうか?』

 

「ふむ…本来であればフォーチュン・カップの『ゲスト』として誘うだけだったのですが…」

治安維持局の最上階…長官室にてピエロ風の男・イェーガー、そして治安維持局長官である銀髪の紳士レクス・ゴドウィンが鋼の騎士に関する話をしていた…。

 

セキュリティが鋼の騎士を探していた目的…それは単純な人気故に、迫るフォーチュンカップのゲストデュエリストとしての参加を依頼するためだった…しかし平セキュリティも遊海も色々と勘違いし逃亡してしまったために事態は思わぬ方向に向かう事になる…。

 

 

「ジャックの『レッドデーモンズ』、そして不動遊星の持っていた『スターダスト・ドラゴン』に酷似したドラゴン…これは彼の正体を探らねばなりませんね…調査室長、頼みますよ」

 

『かしこまりました!おまかせください』

仰々しい礼をしてイェーガーは退室する

 

「…しかしこのドラゴン…何処かで見た記憶が…」

レクスは1枚の写真を手に取りながら考えに耽るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨が降っている…これは夢だ、この17年この夢を見なかった事はない…。

 

 

体はボロボロ…手足は複雑骨折し痛みも麻痺しているのか感じない、周囲はガラスが吹き飛び道路の舗装も全て剥がれてしまっている…。

 

俺はゼロ・リバースの爆発から遊戯達のいるスタジアムを庇い吹き飛ばされ…幾つもの建物を貫通し地面を転がりここに着地した…どれだけ意識を失っていたかもわからない、どこにいるかもわからない…周囲には命の気配も無く雨の音だけが響いている…。

 

 

ー……

 

 

…微かに何かの音が聞こえる…

 

 

ー!…

 

 

子供の泣き声…生存者がいる…!

俺は這いずりながらその音源へと向かった…。

 

 

 

「オギャー!オギャー!!」

 

「…まさか…」

俺の口から無意識に言葉が出る、小さなクレーターの真ん中…そこにはボロボロの脱出ポッドがあった、その中では一人の赤子が泣いていた…。

 

「不動…遊星…!」

俺は泣き続ける遊星を見て後悔した、必要であったとはいえ不動夫婦を含めたくさんの人を死なせ…その重しは遊星を悩ませ続けるという事に気づいてしまった…!

 

 

「ごめん…遊星…!!俺はお前にとんでもない十字架を背負わせてしまった…!すまない…!!」

 

遊海は涙を流す…起きてしまった事は戻らない、遊海は精霊達に見つかるまでの間…ずっと泣き続けた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…うぅ…ここは…?」

遊海は見慣れない部屋で目を覚ます、見た限りマンションの一室のようだ。

 

《マスター!目が覚めましたか!》

 

「アヤカ…?あれ…俺どうしたんだっけ?ここは…?」

 

《覚えてないのですか?セキュリティに追われて…》

 

「…思い出した、変身が解けて落ちたんだ…」

遊海は何があったかを思い出す、赤き竜の出現…セキュリティとのバイクレースとデュエル…逃走…そして落下、その後誰かに助けられたようだ…服も見慣れない物に変わっている。

 

 

《マスターはシティ・トップス地区のマンションのプールに落下しました、その後住人の子供に助けられ今に至ります…体調は大丈夫ですか…?》

 

「体調はいつも通り不調だよ…それより子供?親はいないのか?」

 

《はい、仕事で別の土地に住んでいると言っていました。》

 

「そうか…ん?『言っていました』…?それじゃあまるで…」

 

 

カチャ!

 

「あっアヤカさん!マスターさんの目が覚めたの!?…大丈夫ですか?お父さんの服が合ってよかった!」

部屋の扉が開いて1人の少女が入ってくる…緑色の髪を頭の上で2つに纏めたシグナーの1人…龍可だった。

 

 

「(シグナーは引かれ合う…か…)迷惑をかけてすまない…俺は岸波 白野、アヤカから聞いたよ…助けてくれてありがとう!」

 

「ううん!びっくりしたけど無事でよかった!私は龍可!あとお兄ちゃんの龍亞がいるの!今呼んできます!」

パタパタと走っていく龍可…しばらくするとドタバタと足音がする…そしてドアが開いてポニーテール風の髪型の少年が入ってきた。

 

『兄ちゃん大丈夫!?プールに人が浮いてたからびっくりしちゃったよ〜』

 

「ああ…心配をかけてすまないな…俺は白野、君が龍亞君かな?」

 

『うん!…白野がカードの妖精見えるって龍可が言ってたんだけど本当?俺見えないから…』

 

「本当だよ、それだけじゃないけどな!みんな!出てきてくれ!」

俺の声と共にアヤカ達が実体化する

 

『うわわわ!?カードのモンスターが出てきた!?白野って「サイコデュエリスト」なの!?』

 

《ユ…ハクノはサイコデュエリストより上…精霊と共にあるすごいデュエリストなんですよ!》

 

『鳥が喋った!?』

 

 

その後龍可を交えて情報交換をする…プールに落ちたのはトフェニに乗って空を飛んでいたら滑って落ちたという事にしておいた…その後、翠に連絡を取り無事を伝えた、怒ってたから何か買っていかなきゃ…

 

 

 

 

 

『ねぇねぇ!白野ってデュエリストなんだよね!オレとデュエルしてよ!オレ…キングや鋼の騎士みたいに強いデュエリストになりたいんだ!』

 

「ああ…だからグッズがこんなに…」

リビングにはレッドデーモンズのポスターやジャックのフィギュア…そして鋼の騎士(非公式)のフィギュアがあった…

 

『いつも龍可としかデュエルしないから飽きてきちゃって…ねぇ!いいだろ?』

 

「龍亜!無茶言わないの!白野さんも身体が弱いんだから!」

龍可が兄を注意する…本当にどちらが姉(兄)かわからなくなるな…

 

「いや、少しなら大丈夫だよ!やろうか!」

 

『やったー!ありがとう白野!』

俺達はプールサイドに出る…龍可と精霊達はベンチに座り観戦するようだ。

 

「えっと…メガロック!白野さんはどれくらい強いの?」

 

《むっ?とても強いぞ!なんたってバトルシティで『わー!!主は強いぞ!仲間内では負けなしだ!』》

危うくバトルシティについて言いそうになったメガロックの言葉をトフェニが遮る…流石である。

 

「へぇ〜…龍亜!頑張ってね〜!」 

 

『『『ふぅ〜…』』』

 

《?》

1人だけ状況のわからないメガロックなのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

龍亞LP4000

遊海LP4000

 

 

 

『オレのターン!ドロー!シャキーン!!』

『運がいいぞ!「D・モバホン」を召喚!ドーン!』

折りたたみ携帯が現れ人型のロボットに変形する ATK100

 

『「モバホン」の効果発動!サイコロを振って出た目の枚数だけデッキをめくって…ディフォーマーモンスターがいたら1体特殊召喚できる!ダイヤルオーン!!』

 

モバホンのダイヤルが点滅する…出目は…3!

 

『よし!3枚チェック!…「D・ラジオン」を特殊召喚!バーン!』

ラジオがロボットに変形する ATK1000

 

『攻撃表示の「ラジオン」がいる時ディフォーマーの攻撃力が800アップ!』

モバホン 100→900

ラジオン 1000→1800

 

『カードを2枚伏せてターンエンド!』

龍亜LP4000

モバホン ラジオン 伏せ2 手札2

 

 

 

『白野!どう?オレのディフォーマー!カッコいいだろ〜!』

 

「ああ!変形は男のロマンだからな!…でも少し油断しすぎかな?」

 

『へっ?』

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『汎神の帝王』を発動!手札の『再臨の帝王』と墓地に送り2ドロー!さらに墓地の『汎神』の効果を発動!このカードを除外しデッキの『真帝王領域』3枚を公開し1枚手札に加える!そしてそのままフィールド魔法を発動!」

周囲がギリシャ風の神殿に変わる

 

「そして永続魔法『進撃の帝王』を発動!さらに『天帝従騎イデア』を召喚!」

天界の騎士が現れる ATK800

 

「さらに『イデア』の効果でデッキから『冥帝従騎エイドス』を特殊召喚!」

冥界の騎士が現れる ATK800

 

『スゲ〜…デッキがぐるぐるしてる…でもオレのモンスターには勝てないよ!』

 

「龍亞、まだ終わりじゃないよ?俺は『エイドス』の効果で追加でアドバンス召喚ができる!俺は2体のモンスターをリリース!『天帝アイテール』をアドバンス召喚!」

聖なる光を放つ天帝が現れる ATK2800

 

『いきなり攻撃力2800〜!?』

 

「そしてリリースされた『イデア』の効果で除外されてる『汎神』を手札に戻して…『アイテール』の効果!デッキの『帝王』魔法・罠を2枚墓地に送って…デッキから『冥帝エレボス』を特殊召喚!」

光の門から冥界の王が現れる ATK2800

 

『うわわわわ…!2800が2体!?』

 

「バトル!『アイテール』で『ラジオン』を攻撃!天帝浄化波動!さらに『領域』の効果でモンスターとの戦闘時攻撃力が800アップ!」

 

アイテール2800→3400

 

『うわ〜!?ば「万能地雷グレイモヤ」発動!「アイテール」を破壊するー!』

龍亞は慌ててグレイモヤを発動する…しかし爆発をすり抜け聖なる光はラジオンを包み込み破壊した!

 

『あわわ…なんで〜!?』

龍亞LP4000→2400

 

 

「永続魔法『進撃の帝王』の効果だよ、アドバンス召喚されたモンスターは効果では破壊されない!『エレボス』で『モバホン』を攻撃!冥帝崩壊波!」

 

『つ…まだだ!トラップカード「ディフォーム」!「モバホン」を守備表示に変更!』

モバホンが携帯モードに変化する…エレボスはそれを手加減した拳で破壊した…。

 

「よく防いだな…ターンエンド!『アイテール』の効果で特殊召喚された『エレボス』は手札に戻る!」

遊海LP4000

アイテール 帝王領域 進撃 手札4

 

 

 

《マスター、大人げないです》

 

《手加減してるのはわかりますが…もう少し…》

 

「ぐはっ…!これしかなかったんだよ…」

アヤカとフレアの毒舌が遊海の心に突き刺さる!(遊海の精神に7900ダメージ!)

 

 

『イテテ…白野強すぎだよ〜!よーし!ここから反撃だ!!』

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『「D・ステープラン」を守備表示で召喚!このモンスターは守備表示の時戦闘で破壊されない!』

ホッチキスのロボットが現れる DEF1000

 

『…ターンエンド!』

龍亞LP2400

ステープラン 手札2

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「守備の破壊耐性で凌いだつもりかもしれないけど…俺は『帝王領域』の効果を発動!手札の『エレボス』のレベルを2下げる…これでリリース1体で召喚可能!『アイテール』をリリースして『エレボス』を召喚!」

再び冥帝が現れる ATK2800

 

「『エレボス』の効果!デッキの『真源の帝王』『帝王の開岩』を墓地に送り『ステープラン』をデッキに戻す!」

 

『なんだって!?』 

エレボスがマントをひらめかせステープランを吹き飛ばす!

 

「バトル!『エレボス』でダイレクトアタック!」

エレボスが指先で龍亞を小突いた!

 

『イテッ!?』

 

龍亞LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

『あ〜あ…負けちゃった…、白野強すぎだよ〜!』

 

「すまん、あまり手加減ができなくてな…」

そう言いつつも遊海の手札には「烈旋」や「深怨」があったりする…一応加減はしているのだ。

 

『白野!オレ…もっと強くなりたいんだ!龍可を守れるような男になりたい!…どうすればいい…?』

龍亞は遊海へと尋ねる…短い時間だが龍亞は遊海の持つ強さを子供なりに感じ取っていた…。

 

 

「そうだな…デッキ的にいえば全体のバランスをとってモンスターと魔法・罠のコンボを作る事!デュエルは例外を除いてモンスターや魔法だけじゃ勝てない、全部のカードを上手く使って勝利を引き寄せるんだ。」

 

『うん!』

 

「あと人間的には…外の世界を知る事だな、たくさんの人と会って自分を鍛えるんだ…人を見て良い所を学び悪い所を反省する…そうすれば少しづつ強くなれるはずだ!」

 

『少し難しいけど…わかった!オレ…絶対に強くなる!』

龍亞は目を輝かせながら答えた

 

 

「うん!その意気だ!…ならこれを龍亞にあげよう、『ラッキーカード』だ!」

遊海はカードケースから1枚のカードを取り出す…それは『D・スマホン』だった…先程2人がいない時に亜空間から取ってきたのだ。

 

『あっ!新しいディフォーマーだ!ありがとう白野!』

 

「いいんだよ!それから龍可!」

 

「ん…なに?白野さん!」

精霊達と話していた龍可がやってくる

 

「君にもラッキーカードだ、これを」

遊海は龍可にもカードを渡す、それは「クリボール」だった

 

 

「君のデッキにはたくさんの妖精…精霊達が宿ってる、もし彼らが許してくれたらこれをデッキに入れてくれ…まぁお守り代わりかな?」

 

「白野さんありがとう!大切にするね!」

龍可も嬉しそうにカードを受け取った。

 

「じゃあ俺もそろそろお暇しようかゴバァ!?」

 

「『わ〜!?白野ー!?』」

病弱のせいで締まらない遊海なのであった。

 

 

龍亞達はその後遊星と出会い運命に導かれるのだが…それは少しだけ先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜…翠ごめんよ!ケーキ買ってきたよ〜!」

 

龍亞達と別れた遊海は夕方に家へと到着した…しかし 

 

「…翠?」

家には人気が無く静まりかえっている…

 

「アヤカ!」

《生命反応無し…翠がいません!》

 

「まさか…!」

遊海は警戒しつつリビングへと入る…テーブルの上に書き置きがある…

 

 

 

【鋼の騎士こと岸波 白野様

 

岸波 翠嬢の身柄は治安維持局にてお預かりしております、治安維持局・屋上までお越しください。

 

         治安維持局長官

            レクス・ゴドウィン】

 

 

 

「レクス…ゴドウィン…よっぽど命知らずらしいな…!!!」グシャ…!

 

手紙を握りつぶし遊海は治安維持局へと向かった…。



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英雄の怒り〜憤怒〜

『そろそろでしょうか…』

 

「長官…よかったのですか?私の調べでは鋼の騎士…岸波 白野は相当の愛妻家、彼の逆鱗に触れてしまったのでは?」

 

『その時は拘束すればいい…そのために助っ人とセキュリティの子飼いも待機させています。』

 

 

治安維持局長官レクス・ゴドウィン、そして特別捜査室長イェーガーは治安維持局の屋上で人を待っていた…待ち人の名は鋼の騎士、本名・岸波 白野である。

 

治安維持局の捜査力は警視庁を上回りすぐに鋼の騎士の素性(偽)を暴きだした、レクスはすぐに行動を起こし彼の妻である翠を任意同行し白野を誘い出そうとしたのだ…。

 

 

「長官殿…私が奴の実力を見極めれば良いのですか?」

 

『えぇ「蘇る死神」死羅、あなたに鋼の騎士の実力を計るために協力してほしいのです』

レクスの後ろにいる毛皮の付いたフードを被った男が話しかける、彼の名前は死羅…「蘇る死神」の異名を持つ謎の決闘者である。

 

 

「しかし長官…奴は何処から来るのでしょう?玄関も裏口もセキュリティを配置しています、侵入者があればすぐにわかりますが…?」

 

『彼も事を荒立てたくはないでしょうならば…』ヒュー…

 

 

 

ドカン!!

 

 

 

『…空からでしょう…!』

屋上が大きく揺れ砂ボコリが舞う…待ち人は空から現れた。

 

 

 

 

 

 

「…貴様がレクス・ゴドウィンか…!」

 

『いかにも、私がレクスだ』

仮面の隙間から赤い目を覗かせ遊海は問いかける、その声は地の底から響くような声だった。

 

「俺の妻に手を出すとは…覚悟はできているんだろうなぁ…!!!」ゴゴゴ…

 

「ヒィッ…!?」

イェーガーは思わずレクスの後ろに隠れる…遊海の殺気は並大抵の人間が出せるものではなくなっていた。

 

 

「翠は何処だ…俺の妻を返せ…!」

 

『ならばこの者と決闘してもらいます、死羅…頼みますよ』

 

「えっ…あんな化物と!?話が違…!」

 

『報酬は倍にしましょう』

 

「…わかったよ…やればいいんだろ!?」

死羅はヤケクソ気味に前に出る…彼も決闘者の端くれ、遊海の強さは肌でわかっていた…。

 

 

 

 

「「デュエル!」」

 

 

 

遊海LP4000

死羅LP4000

 

 

 

 

 

 

「ドロー…!」

「手札から『真紅眼融合』を発動、デッキの『真紅眼の黒竜』と『メテオドラゴン』を融合…『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』を融合召喚!」

炎を纏った黒き竜が現れる ATK3500

 

 

「『流星竜』効果発動、手札の『真紅眼の凶雷皇エビル・デーモン』を墓地に送り1250ダメージ、さらに『黒炎弾』を発動、『真紅眼融合』で出したモンスターは『真紅眼の黒竜』として扱う…3500ダメージ!」

 

「なんとおぉぉ!?ぎゃあああ!!!」

 

死羅LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「ピッタリ30秒です…長官…」

 

『…ここまでとは…』

 

「……」ピクピク

 

遊海の怒りのデュエルによりデュエルは歴代最短で終わりを迎えた、対戦相手の死羅は白目を剝いて気絶している…。

 

 

「返せ…翠を返せぇぇ…!」ズシン!バリッ

足元のコンクリートを砕きながら遊海は足を進める…

 

「なっ…何をしているのです!であえ!であえー!!」

正気に戻ったイェーガーのかけ声で長官を守るようにセキュリティが現れる…。

 

 

「鋼の騎士を拘束なさい!手段は問いません!!」

 

「「「了解!」」」

 

「邪魔だ…どけぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐはぁ…!?」

 

『凄まじいな…!』 

 

「ぶ、部隊が全滅…そんな馬鹿な!?」

屋上は死屍累々と化していた、イェーガーの指し向けたセキュリティは全滅し、立っているのは2人と遊海だけだった。

 

 

「茶番はもういいだろう?翠は何処だ…!」

衰えぬ殺気を放ったまま遊海はゴドウィンへと歩み寄る

 

 

『彼女は無事です、治安維持局の特別室にご案内して保護しています、しかし…まだ引き渡す訳にはいきません』

ポーカーフェイスのままゴドウィンは遊海に告げる

 

「なんだとぉ…?」

遊海は殺気を増大させる…常人なら気絶するレベルだろう、現にイェーガーは腰を抜かしている…ゴドウィンは胸からカードキーを取り出す。

 

『このカードキーがなければ彼女の部屋には入れません、これを渡して欲しければ…』

 

「そんな事関係ねぇ…このビルを真っ二つにすれば済む話だ…!」ブォン! キィィィン!!

 

「『なっ…!?』」

遊海の腕にとてつもないエネルギーが集中する…遊海が纏っているのは『クリフォート』の鎧、星は砕けないが大地を穿ちビルを破壊するのは容易い事だ…なお完全に頭に血がのぼっていて周囲の被害を全く考えていない…

 

 

 

「や、やめなさい!!」

 

「もう遅い!大地を穿つは我が拳、ガイア・クラッ…ゴッ…ゴハァ!!!ガッ…!!」バチャ…ドチャ…! バシャン

 

「えっ…!?細っ!?」

 

『体が弱いという話…事実でしたか…』

 

 

鎧の口元から血が溢れ出す、力の加減を忘れ暴れた遊海の身体はとてつもないダメージを負っていた…いわゆるオーバーヒートである、変身が解け遊海は血溜まりの中に倒れ伏す…

 

『セキュリティ、彼を拘束しなさい…第一級の危険人物です』

 

「は、はい…!」

遊海によって気絶していたセキュリティが目覚め注意しながら遊海へと近づいてくる…遊海は意識こそあるものの身動きは取れそうにない

 

 

『あと少し彼の体力が残っていれば我々も危なかった…セキュリティの彼らにはボーナスですね…』

 

ゴドウィンはその特権を使い、鋼の騎士の解決した事件を検証した…その中で遊海に活動限界がある事を導き出し今回の作戦を立案した…彼の頭脳の勝利である。

 

 

「み…翠を…返…せ…!」

身体は動かないものの遊海はゴドウィンを睨みつける…

 

「それは貴方次第です岸波 白野、とにかく貴方を拘束しそれから交渉」

 

 

ズガァン!!

 

 

『なんだと!?』

突如ゴドウィンの後ろ…屋上へ入るための扉が吹き飛ぶ…そして…

 

「ハァ…ハァ…!ユ…白野さん…白野さん!!」

息を切らしながら翠が屋上へと駆け込んでくる…そして倒れた遊海へと駆け寄る

 

「翠…よかった…無事…で…コフッ…!!」

 

「白野さん…どうして…レクスさん!話が違います!『鋼の騎士である白野氏が狙われて危険だから私を保護する、白野氏には後で来てもらう』そういう話だったんじゃないんですか!?」

 

『馬鹿な…核を防ぐレベルのシェルターにいた筈…!?』

 

翠はゴドウィンの巧妙な嘘に騙され治安維持局へと拉致された…その後、地下シェルターに軟禁されていたが異変を感じ難なく突破…屋上へと駆けつけた…。

 

 

「よくも騙したわね…!ウィンダ!ウェン!」

 

《これだから偉そうな人は信用できないんだよ…!》

 

《白野兄を傷つけた報いを受けてもらうです!》

2人を守るようにセフィラ状態のウェンとキムンファルコスが現れる

 

『サイコデュエリスト…いや精霊使いですか…!』

流石のレクスも驚愕する、鋼の騎士の妻も強大な力を持っいたとは想像もつかないだろう。

 

「ウィンダ!ウェン!GO!!」

 

「セキュリティ!退避体制!撤退します!!長官を守りなさい!!」

セキュリティと精霊達が衝突する…その刹那

 

ギュイイイン!!

 

 

「双方止まれ!争いをやめろ!!」

 

 

《うわっとと…!?》

 

『…あれは…!』

上空に特殊な形のジェット機…ブルーアイズジェットが現れる、そして飛び降りてくるのは…

 

「海馬さん…!」

 

「レクス・ゴドウィン…これは何の騒ぎだ?オレの部下に手を出すとは…なんのつもりだ?」

ネオドミノシティでとてつもない権力を誇るKC社長の海馬だった。

 

 

 

 

 

 

 

「さて…レクス、オレの友を傷つけた事…どう説明する?」

 

『くっ…!』

ゴドウィンは後ずさる…ゴドウィンもシティでは絶大な権力を誇るが海馬には劣る…そもそも海馬がこの町の市長を兼ねており治安維持局は実質KCの子会社なのだ。

 

「海馬さん…なんでここに…?」

 

「フン、白野の危機だとコイツに聞いてな」

 

《ミドリ!!》

 

「フレア!あなただったの!」

ジェットから金色の小鳥…フレアが翠の肩にとまる

 

《すいません、ユウミの暴走を止められなくて…とにかくこの町の事なら彼に頼めばなんとかなるかと…》

 

実は怒り心頭で治安維持局に向かおうとする遊海を精霊達は止めようとした、しかしそれを振り払い遊海はここに現れたのだ、その後フレアは助けを求めた…それが海馬だったのである。

 

 

『海馬社長、私は彼をフォーチュンカップに誘おうと…』

 

「ほう…その割には手荒ではないか、既に調べはついている…私事にセキュリティを動員し住民の不法拘束・監禁・集団暴行未遂…これでは長官の首は挿げ替えか?」

 

『くっ…(不味い…シグナーを集めるにはまだ長官でなければ…!)』

 

「しかし、若い時に比べてオレは寛大だ…今回は不問に伏す、立ち去るがいい!」

 

『〜!!…失礼する!』

 

「ああ!?長官お待ちください〜!」

ゴドウィンはセキュリティを引き連れて撤退する…その顔は悔しさが滲み出ていた…。

 

 

 

 

 

 

「遊海!大丈夫か!!」

セキュリティを見送った海馬はすぐさま遊海に駆け寄る

 

「か…海馬さん…すいません…短絡的に行動してしまい…」

 

「遊海さん…」

翠に抱えられた遊海は海馬に謝罪する

 

「フン…貴様は基本的に冷静だが…翠が関わると暴走するからな、間もなくヘリも到着する…少し休め…」

 

「す…すいません…お言葉に甘え…ます…」

気が抜けたのか遊海はそのまま気を失った…

 

 

 

 

 

 

 

『…まさか鋼の騎士のバックに海馬 瀬人がいたとは…しかし謎だ、何故海馬があそこまで彼を庇うのか…まぁいいでしょう…まだ策はある』カチッ

 

【そんな事関係ねぇ…ビルを真っ二つにすれば済む話だ…!】

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ…!?『鋼の騎士』名義でフォーチュンカップに出場しなきゃならない!?」

 

「うむ…奴め小賢しい真似をしおって…!」

 

「海馬さんいったいどういう事ですか…!?」

 

「うむ…実はな…」

 

翠の拉致から2日後…療養中の遊海を海馬が訪ねてきた、そして上記の会話…あらましは以下の通りである。

 

 

 

 

Side海馬

 

 

 

 

 

「なに…?ユ…白野を訴えるだと?罪状はなんだ?」

 

『治安維持局に対するテロ行為未遂と恐喝です…これをお聞きください』

事件翌日、海馬に面会したゴドウィンはボイスレコーダーのスイッチをいれる

 

 

【そんな事関係ねぇ…ビルを真っ二つにすればいい話だ…!】

 

 

「これは…」

 

『白野氏が倒れる直前に言った言葉を録音したものです、彼は激昂し治安維持局のビルを破壊しようとしました…これは立派なテロ行為と見做されます…さらにこちらを…』

ゴドウィンはさらにネットニュースの記事を見せる

 

 

【治安維持局屋上で爆発!?】

 

【鋼の騎士がテロ集団を捕縛!お手柄!】

 

 

『意味は理解していますね?海馬社長?』

 

「レクス…貴様…!!」

治安維持局が真実を公表すれば遊海は社会的に追い詰められてしまう…一般人ならいいが遊海は行方不明の2代目「決闘王」、マスゴミがその情報を掴めばどうなるかは火を見るより明らかである。

 

 

『私からの条件はニつ、「鋼の騎士」のフォーチュンカップ出場、そして『閃光竜』というカードの使用…説得していただけますね?』

 

「わかった、しかし覚えていろレクス・ゴドウィン…貴様の仮面、いつか引き剥がしてくれる…!」

 

『フフ…何の事でしょう?』

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「という訳だ…遊海、行けるか?」

 

「はい…こうなってはしょうがありません、フォーチュンカップに出場します…!」

 

「すまんな遊海…しかし必ず奴を長官から引きずり落とす…!」

 

「いいんです海馬さん…元は俺の暴走の結果ですから…」

 

「気にするな、奴のやり口が貴様の虎の尾を踏み抜いた結果だ…では頼んだぞ!」

そう言って海馬は帰っていった…。

 

 

 

 

「はぁ…俺の幸運ランクはEか?運が悪すぎる…」

 

《マスター、もう少し後先考えて行動してください!!》

 

「遊海さん!そうですよ!私もそんなに軟じゃないというか今の遊海さんより力は強いんですから…!」

 

「…すいませんでした…」

 

こうして遊海も運命の歯車に組み込まれる…戦いはすぐそこまで迫っていた。



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フォーチュン・カップ!〜星屑の竜対閃光の竜〜

ドラゴンの呼び方について
アニメシグナー竜
「スターダスト」「レッドデーモンズ」等カタカナ表記

漫画決闘竜
「閃光竜」「炎魔竜」など二つ名表記

ただし「べエルぜ」「ドラゴネクロ」など漫画オリジナル龍はカタカナで表記する。

それでは最新話をどうぞ!


パーン!パーン!

 

 

「すごい人だ…バトルシティ・レジェンドを思い出すよ…」

 

「そうですね〜、遊海さん…体調は…?」

 

「まぁまぁだよ…まぁ、なるようになるさ…」

 

1週間後、デュエル・オブ・フォーチュン・カップが開催される日になった、ゼロ・リバース後バトルシティは廃止されこのような形になった…現在は絶対王者・ジャックに挑戦するための戦いとなっている。

 

 

 

『…!あれは…!?白野さん!白野さんじゃないか!!』

 

「むっ?…遊星!お前なんでこっちに…そうか、無理やり渡って来たか…」

俺は後ろから声をかけられる…それは左目の下にマーカーを刻まれた主人公・不動 遊星だった…。

 

遊星とは彼がマーサハウスにいる頃からの知り合いになっている、KCからの配給品を届けに行った時にデュエルの手ほどきもしたものだ…。

 

 

「遊星、似合ってるぞマーカー…お前の思いは果たせたんだな?」

 

『えぇ…ジャックから「スターダスト・ドラゴン」も返してもらいました!…ただ、まだ…』

 

「海馬社長から聞いてる…出るんだろ?決着を着けてこい!」

 

『流石だな貴方は…この2年の決着をつけてみせます…!それじゃあ!』

 

「ああ!行ってこい!」

遊星は選手入口へ向かっていった…。

 

 

 

「じゃあ翠、もしもの時は頼む」

 

「はい!遊海さん!…無茶はしないでくださいね?」

 

「ああ…行ってくる!」

俺も鎧を纏いスタジアムに向かう、何だか嫌な予感がするなぁ…

 

 

 

 

 

 

『レディース&ジェントルメーン!デュエルオブフォーチュンカップの開幕だ〜!!』

 

「「「いえぇぇぇ〜!!!」」」 

ピンクのスーツと特大サイズのリーゼントが特徴の司会者・MCの声が響き渡る、そして熱狂のスタジアムに1体のドラゴンが降臨する!

《グオオォォン!!》

 

「あれは…!キングのレッドデーモンズドラゴンだ!!」

 

 

特設ステージの上にソリッドビジョンのレッドデーモンズが着地する、それと同時にホイールオブフォーチュンを操るジャックが華麗に現れる。

 

「キングは1人!この俺だ!さぁ…この俺とデュエルするのは誰だ?キングである俺への挑戦権を賭けて競え!デュエリスト共!!」

 

ジャックの声と共に参加デュエリストが現れる!

 

 

『それじゃあ簡単な紹介といこうか!まずは今大会最年少!デュエルの天使!龍可!!』

「へへっ!よ〜し頑張るぞ〜!」

…実際は兄の龍亞の変装である。

 

 

『二人目はデュエルを通してカウンセリングをする「デュエルメンタリスト」!フランク!』

「どうも!」

中華風の服をきた男が現れる

 

 

『3人目は由緒正しき騎士の末裔!「鉄血の騎士」!ジル・ド・ランスボウ!!』

「我は剣に誓う!正々堂々戦い抜くと!!」

金色の鎧を着た壮年の騎士が現れる

 

 

『4人目は経歴不詳・実力不明のミステリアス少女!十六夜 アキ!!』

「……」

赤い髪の冷たい目をした少女が現れる

 

 

『5人目!デュエルの仕事士!「デュエルプロファイラー」来宮 虎堂!』

「よろしくお願いします」

軍服を着た男性が現れる。

 

 

『そして6人目!サテライト出身のDホイーラー!不動 遊星!』

 

 

「ん?あいつマーカーついてるぞ?」

 

「マーカーヤローは引っ込め!!」

 

遊星のマーカーが見えるなり観客達はブーイングを始めた…これが歴代最低民度の街か…

 

 

「MC、マイクを寄越せ」

 

『なっ…あっちょ!?』

色黒の男が司会からマイクを奪う

 

 

「観客達よ!失礼する!オレの名前はボマー!ここに立つデュエリストとして、諸君が一体何を見ているのか問いたい!この男は我々と同じ条件で選ばれた、紛れもない決闘者だ!デッキがあれば…マーカーがあろうとなかろうと皆同じだ!この場に立っている事になんら恥じる事はない!むしろ下らぬ色眼鏡で彼を見る諸君の言葉は…暴力に他ならない!…どう考える?」

 

会場は静まりかえる、そしてパラパラと拍手が起こり…それは会場を包み込む拍手となった。

 

 

『え〜オホン!ボマー選手!見事な演説をありがとう!!君の言葉は会場に受け入れられた!…そして八人目!さっきから気になっていた人もいるんじゃないか?そう彼こそはシティとサテライトを飛び回りギャングを倒し人々を救う優しき"ヒーロー"!交渉の末に出場に踏み切った!「鋼の騎士」!メタルナイト!!』

 

「「「わあぁぁぁ!!!」」」

人々の歓声が会場を包む…思ったより人気だなー(棒)

 

 

「MC…マイクを借りていいか?」

 

『あっ…どうぞ!!』

俺はMCからマイクを借りる…ゴドウィンにも思惑があるなら俺も使わせてもらう…!

 

 

「会場におられる皆様、我が名はメタルナイト!人を救うために活動している者です!17年前からこの町は変わった!シティとサテライト…住む場所が違う…ただそれだけで差別が起き、それで苦しんでいる子供達がいる!俺は彼らを救いたい!そのために俺は活動している!…皆様どうかサテライトに救いの手を!我らは同じ町に住む隣人であり仲間だ!!…ご清聴感謝する!」

 

 

「「「わあぁぁぁ!!!」」」

 

会場は歓声に包まれる…どうやら鋼の騎士は人々の希望になれているらしい。

 

 

『力強い言葉をありがとうボマー、メタルナイト、私がこの場を用意したのは正に2人が語った事が全てなのです!私はレクス・ゴドウィン…ネオ童実野シティー治安維持局を預かる責任者…そして、日頃の治安維持への感謝を込めてこの大いなるデュエルの祭典を企画した1人であります!決闘者には、身分も貧富の差も関係ありません!真の平等がここにあるのです!!』

俺の言葉に続いてゴドウィンが観客に語り掛ける…会場は再び歓声に包まれた…。

 

 

『ゴドウィン長官!ボマー選手!メタルナイト!感動のスピーチをありがとう!興奮冷めやらぬ中だが…早速1回戦の発表といこうか!1回戦の組み合わせはこれだ!』

 

 

 

1回戦

ボマー対龍可(龍亞)

 

十六夜対ジル

 

遊星対メタルナイト

 

フランク対虎堂

 

 

 

「…マジかよ、これで『閃光竜』を使えって?」

俺はスタジアムからゴドウィンを睨みつける、奴はいい顔で笑っていた。

 

 

 

 

 

 

〜選手合同控室〜

 

 

 

「め…メタルナイト!!」

 

「ん?どうした龍可…少女?」

控室で待機していた俺の下に龍可に変装した龍亞がやってくる、化粧は落としたらしい

 

「ぼ、僕あなたのファンなんです!!サインください!!」

 

「フッ…ありがとう小さなファンよ、こんな事もあろうかと色紙は何枚か持っているんだよ……はい!完成だ!」

俺はあらかじめ用意していた色紙にサインを書く

 

【鋼の騎士から龍亞君へ】

 

「あっ…ありがとうメタルナイ…ト…あれ…!?」

 

「君は龍可の兄だろう?大丈夫、誰かに話すつもりはない…存分にデュエルを楽しみなさい!」

 

「う、うん!!ありがとう!!」

お礼を言って龍亞は遊星の方へ走っていった…あの子は嘘をつくのが苦手だからな…

 

「………!!!」

 

 

…斜め後ろ辺りから殺気を感じる…恐らく黒薔薇の魔女こと十六夜 アキからだろう、彼女が暴れるたびに止めに行ったから多少なり恨まれてるかもしれない…遊星に任せよう…。

 

 

 

『メタルナイト』

 

「不動 遊星…どうした?」

遊星が話しかけてくる

 

『仲間達から話は聞いてる…「チームサティスファクション」が解散した後、サテライトの不良達を懲らしめてくれていると…』

 

「大丈夫だ、ほとんど小手先だけの者ばかりだったからな…」

 

 

鬼柳率いるデュエルチーム「サティスファクション」はサテライトの統一を果たした…しかしその後鬼柳が暴走しセキュリティへのゲリラ行為を始めた…そして鬼柳がセキュリティに捕まりサテライトは再び群雄割拠となった、しかしそこにメタルナイトが介入しデュエルギャングの9割を壊滅させサテライトに平穏を取り戻したのだ…。

 

「しかし…これとそれとは別だ、オレはジャックと決着を着けなければならない…オレは貴方に勝つ…!」

 

『望むところだ…本気で戦おう遊星…!』

 

 

そして戦いが始まった…

 

 

 

 

 

F・C ダイジェスト

 

 

ボマー対龍可(亞)

 

「オレが何かをするたびに800ダメージ…こんな時遊星や鋼の騎士なら…カードを信じる!行け!『ガジェット・トレーラー』!」

 

「少年…君は戦士の心を持っている!しかしまだ足りない!ゆけ!『ジャイアントボマー・エアレイド』!!」

 

 

ボマーWIN!

 

 

 

 

 

 

十六夜対ジル

 

 

「(追い詰められたが我が剣は不屈!伏せカードで『マスクド・ナイトLv7』の攻撃力を倍にして…!)」

 

「『ブラックローズドラゴン』の効果を発動!墓地の植物族モンスターを除外して相手の攻撃力を0にする!これで終わりよ!!」

 

「しまった!?0では何をかけても0…うわぁぁぁ!!」

 

十六夜WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レディース&ジェントルマン!続いては皆様お待ちかねのライティング・デュエル!不動 遊星対メタルナイトのデュエルだ!!』

 

「「「わあぁぁー!!」」」

 

 

ついに第三試合俺対遊星の試合がやって来た…先程のアキの試合で痣が共鳴するという事があったが…とりあえず遊星にはバレずに済んだ…まぁこのデュエルでわかるとは思うけど…。

 

 

「きゅ〜……」

 

「イェーガー、彼を頼みますね?」

 

「しょうがありませんね…」

 

今、イェーガーに連れていかれたのは「スピードキング☆」でお馴染みの炎城さんである…後ろから殴られたけど鎧の防御を貫通できずに返り討ちになったのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあいくぞ遊星…!」

 

『メタルナイト…あなたを越えていく!!』

 

 

[[ライティングデュエル・スタンバーイ!]]

 

 

『さぁライティングデュエル…今スタートだ!!』

 

 

『「ライティングデュエル!アクセラレーション!!」』

 

 

 

 

 

 

遊海LP4000

遊星LP4000

 

特殊ルール

ライティングデュエル

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP0→1

「俺は魔法カード『Spースタンダード・ルール』を発動!自分のスピードカウンターを全て取り除く!その後俺は『Spー』を発動できなくなる!その代わり魔法カードを『スピードワールド』のコスト無しで発動できる!」SP1→0

 

『なんだと!?』

このカードはフェニックス氏に秘密裏に作ってもらった俺と翠専用のオリジナルスピードスペル…つまりオリカである。

 

 

「魔法カード『竜の霊廟』を発動!デッキから『竜王の聖刻印』と『神龍の聖刻印』を墓地に送る!そして『聖刻龍ードラゴンヌート』を召喚!」

水色の人竜が現れる ATK1700

 

「カードを2枚伏せターンエンド!」

遊海LP4000 SP0

ヌート 伏せ2 手札1

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP0→1

『「スピード・ウォリアー」を召喚!』

遊星デッキの切り込み隊長が現れる ATK900

 

『バトル!「スピードウォリアー」で「ドラゴンヌート」を攻撃!そしてバトルする時攻撃力が倍になる!ソニック・エッジ!』

加速したスピードウォリアーが蹴りでドラゴンヌートを破壊する!

 

ATK900→1800

 

遊海LP4000→3900

 

 

『オレはカードを2枚伏せターンエンド!』

遊星LP4000

スピードウォリアー 伏せ2 手札3

 

 

 

 

「やるな遊星!しかしここからだ!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP0→1

「魔法カード『招集の聖刻印』を発動!デッキから『聖刻龍ーシユウドラゴン』を手札に加える!そして『聖刻龍ードラゴンゲイヴ』を召喚!」

オレンジ色の龍人が現れる ATK1800

 

「バトル!『ドラゴンゲイヴ』で『スピードウォリアー』を攻撃!」

 

『リバースカードオープン!「ガード・ブロック」!戦闘ダメージを0にして1ドロー!』

ゲイヴがスピードウォリアーを殴り倒すがダメージは半透明のバリアで弾かれる!

 

「『ゲイヴ』の効果!相手を破壊した事で墓地の『龍王の聖刻印』を攻守0で特殊召喚!」

青いウジャト眼を刻んだ月光石が現れる DEF0

 

「ターンエンド!」

遊海LP3900

龍王印 ゲイヴ 手札1

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP1→2

『「ジャンク・シンクロン」を召喚!』

オレンジ色のロボットが現れる ATK1300

 

『「ジャンクシンクロン」の効果発動!墓地の「スピードウォリアー」を効果を無効にして特殊召喚!』

再び特攻隊長が現れる DEF400

 

『さらにモンスターが墓地から特殊召喚に成功した時手札から「ドッペルウォリアー」を特殊…!』

 

「カウンター罠『反射の聖刻印』を発動!『ゲイヴ』をリリースして『ドッペルウォリアー』の効果を無効にして破壊する!」

ゲイヴが魔法陣を展開し黒い兵士を破壊する

 

「さらにリリースされた『ゲイヴ』の効果でデッキから『神龍の聖刻印』を特殊召喚!」

赤いウジャト眼を刻んだ太陽石が現れる DEF0

 

『くっ…オレはレベル2「スピードウォリアー」にレベル3「ジャンクシンクロン」をチューニング!』

 

3+2=5

 

「集いし星が新たな力を呼び起こす!光さす道となれ!!シンクロ召喚!いでよ!『ジャンク・ウォリアー』!!」

遊星のフェイバリットカードである青い戦士が現れる ATK2300

 

「来たか…遊星のフェイバリットモンスター…!(遊星の生のシンクロ召喚キター!!)」

内心超感動している遊海であった…

 

 

『バトル!「ジャンクウォリアー」で「神龍印」を攻撃!スクラップ・フィスト!!』

加速をつけた戦士の拳が太陽石を打ち砕く!

 

『ターンエンド!』

遊星LP4000 SP2

ジャンクウォリアー 伏せ1 手札2

 

 

 

 

「流石だな…遊星、俺も…本気でいくぞ!!」

遊海はフィールを高める…!

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!!」SP1→2

「俺は『龍王印』をデュアル召喚!これにより『龍王印』の効果を発動!このカードをリリースして『聖刻龍ーアセトドラゴン』を守備表示で特殊召喚!」

朝を司る紫色の龍が現れる DEF1200

 

「さらに『アセト』をリリースして『聖刻龍ーシユウドラゴン』を特殊召喚!このカードは『聖刻』モンスターをリリースして特殊召喚できる!」

青色の龍が現れる ATK2200

 

「さらにリリースされた『アセト』の効果でデッキから『ギャラクシーサーペント』を特殊召喚!」

小さな煌めく竜が現れる DEF0

 

 

「俺は…レベル6『シユウドラゴン』にレベル2『ギャラクシーサーペント』を…チューニング!!」

 

6+2=8

 

『レベル8のシンクロモンスター…!』

 

 

「…星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に轟け!!シンクロ召喚!『閃光竜スターダスト』!」

《キュオオオン!!!》

聖なる光を纏う白銀の竜が現れる ATK2500

 

 

『馬鹿な…「スターダストドラゴン」…!?っ…痣が…メタルナイトも…シグナー!?』

遊星の痣が輝く…それと共に遊海・アキ・ジャックの痣も強く輝く…!

 

「メタルナイト…貴様も選ばれしデュエリストという事か…!しかも2体目の『スターダスト』だと?面白いではないか!!」

 

「忌々しい鋼の騎士…お前も…!」

 

 

「遊星!まだデュエルは続いているぞ!バトル!『閃光竜』で『ジャンクウォリアー』を攻撃!流星突撃(シューティング・アサルト)!!」

光を纏った閃光竜がジャンクウォリアーに迫る!

 

『くっ!リバース罠「くず鉄のかかし」!相手の攻撃を無効にして再びセットする!!』

廃品でできたかかしが攻撃を受け止める!

 

 

「流石だな…メイン2、魔法カード『超再生能力』を発動しエンドフェイズ!2ドロー!」

遊海LP3900 SP2

閃光竜 伏せ1 手札2

 

 

 

 

『メタルナイト…あなたはいったい何者なんだ…!』

 

「今はどうでもいい事だ遊星…さぁ、お前も召喚しろ!お前の相棒を!!」

 

 

 

 

『オレのターン…ドロー!』SP2→3

『オレは「Spーエンジェル・バトン」を発動!スピードカウンターが2つ以上ある時、カードを2枚ドローし1枚捨てる!』

 

墓地送り

ボルトヘッジホッグ

 

『そして「チェンジ・シンクロン」を召喚!』

頭にスイッチの付いた赤い翼のロボットが現れるATK 0

 

『さらに墓地の「ボルトヘッジホッグ」はフィールドにチューナーがいる時、特殊召喚できる!』

ネジの生えたハリネズミが現れる ATK800

 

『オレはレベル5「ジャンクウォリアー」とレベル2「ボルトヘッジホッグ」にレベル1「チェンジシンクロン」をチューニング!!』 

 

5+2+1=8

 

『集いし願いが新たに輝く星となる!光さす道となれ!!シンクロ召喚!飛翔せよ!「スターダスト・ドラゴン」!!』

風が吹き荒れ遊星のエースたる白銀の竜が現れる ATK2500

 

 

『「チェンジシンクロン」がシンクロ素材になった時!相手モンスターの表示形式を変更する!「閃光竜」を守備表示に変更!』

チェンジシンクロンの幻影が閃光竜を守備表示に変える

ATK2500→DEF2000

 

『バトルだ!「スターダスト」で「閃光竜」を攻撃!響け!シューティング・ソニック!!』

白銀のブレスが放たれる!

 

「『閃光竜』の効果を発動!1ターンに一度カードの破壊を無効にする!波動音壁(ソニックバリア)!」

閃光竜がバリアを張り白銀のブレスを防ぐ!

 

『…カードを2枚伏せてターンエンド!』

遊星LP4000 SP3

スターダスト 伏せ3(うち1枚かかし) 手札0

 

 

 

 

「流石だな遊星…ここまで熱いデュエルは久方ぶりだ…しかし決めにいくぞ!」

 

『オレは負けるわけにはいかない!防いでみせる!』

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP2→3

「罠カード『貪欲な瓶』を発動!墓地の『シユウ』『アセト』『反射印』『ゲイヴ』『超再生能力』をデッキに戻して1ドロー!」

 

「魔法カード『ハーピィの羽根箒』を発動!相手の場の魔法・罠を全て破壊する!」

 

『させない!「スターダストドラゴン」の効果を発動!自身をリリースして破壊を無効にする!ヴィクテム・サンクチュアリ!!』

スターダストが粒子に変わり羽根箒が破壊される!

 

「ならば速攻魔法『銀龍の轟咆』を発動!墓地の『ギャラクシーサーペント』を特殊召喚!さらにリリースして『エレキテルドラゴン』をアドバンス召喚!!」

電気を纏ったワイバーンが現れる ATK2500

 

「『閃光竜』を攻撃表示に変更…バトル!『エレキテル』でダイレクトアタック!」

 

『リバースカード「くず鉄のかかし」発動!攻撃を無効にする!』

かかしが体当たりを受け止める! 

 

 

「ならば『閃光竜』でダイレクトアタック!流星閃撃(シューティング・ブラスト)!」

光のブレスが遊星に直撃する!

 

『うわぁぁぁ!!』

遊星LP4000→1500 SP3→1

 

「メイン2…魔法カード『星呼びの天儀台』を発動、『エレキテル』をデッキの下に戻して2ドロー!…ターンエンドだ!」

 

『その時効果でリリースした「スターダストドラゴン」が蘇る!再び飛翔せよ!「スターダストドラゴン」!』 ATK2500

遊海LP3900 SP3

閃光竜 手札2

 

 

 

 

 

「どうした…遊星?その…程度か?」

 

『いや…貴方を倒す手段はもう見つけた…あとはこのドローに賭ける…!』

 

「かかってこい…遊星!!」

 

 

 

 

『オレのターン……ドロー!!』SP1→2

 

カンコーン☆

 

『オレはトラップカード「バスターモード」を発動!「スターダストドラゴン」をリリースし…「スターダストドラゴン/バスター」をデッキから特殊召喚する!』

 

「なんだと!?」

 

スターダストドラゴンが光を放つ…そして重厚な鎧を纏ったスターダストが現れる! ATK3000

 

『さらに「Spーヴィジョン・ウィンド」を発動!スピードカウンターが2つ以上ある時、墓地のレベル2以下のモンスター「スピードウォリアー」を特殊召喚!』

三度スピードウォリアーが現れる…少し疲れているようだ… ATK900

 

『バトル!「スターダスト/バスター」で「閃光竜」を攻撃!』

 

「『閃光竜』の効果発動!戦闘破壊を無効に…」

 

『その瞬間カウンタートラップ「バスター・カウンター」を発動!自分フィールドに「/バスター」がいる時に相手のモンスター・魔法・罠の効果が発動した時、その効果を無効にし破壊する!』

 

「なっ…しまった!!」

閃光竜が粒子になり消え去る…

 

『いけ!「スターダスト」!アサルト・ソニック・バーン!』

スターダストが俺の横を音速で通過しダメージを与える!

 

「ぐおぉぉぉ!?」

遊海LP3900→900

 

『そして「スピードウォリアー」でダイレクトアタック!ソニックエッジ!!』

スピードウォリアーの一撃が遊海に直撃…勝負は決まった

 

 

 

遊海LP0

 

遊星WIN!

 

 

 

 

 

 

『き…決まった〜!!圧倒的強さを誇るメタルナイトとのデュエル!鏡写しのドラゴン合戦を制したのは不動 遊星!!準決勝進出を決めた〜!!』

 

「「「わあぁぁぁ!!」」」

 

 

「遊星…流石だな、完敗だよ…いいデュエルだった」

 

『メタルナイト…あなたは…』

 

「この戦いが終わったらまた会えるさ…次の試合も頑張れよ!」

 

『…はい!ありがとうございます!!』

 

2人は握手を交わす

 

 

「メタルナイト〜!凄かったぞ〜!」

 

「マーカー野郎…いや遊星!強いじゃねぇか!頑張れよ!!」

 

「応援してるぞー!」

 

観客達も2人にエールを送る…2人のデュエルはそれほどのものだったのだ。

 

「じゃあな遊星…頑張れよ!」

 

『はい!!』

そうして遊海は舞台裏に下がっていった…。

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…ゴホッ…ゴホゴホッ…さ…流石に力を使いすぎたか…ゴボッ…!」

メタルナイト専用に割り当てられた控室の中で遊海は壁に凭れていた…病弱になった遊海にとってはデュエル一つ一つが大仕事…しかもシグナー同士の戦いならば尚更だ。

 

ガチャ!

 

《マスター!翠を連れてきました!大丈夫です…か!?》

 

「遊海さん!!しっかりしてください!!」

翠とアヤカが部屋に入ってくる

 

「ゴホッ…翠、すまない無理をし過ぎた…」

 

「だから無茶しないでって言ったのに!…でも久しぶりにかっこいい遊海さんが見れてよかったです…」

 

「ハハハ…ありがとう、なんとか人払いの結界は張ったから…少し休…む、まったく…嫌になるなこの弱さは…」

 

「遊海さん…大丈夫です、あなたの頑張りは私が一番知ってますから…」

自分の弱さを呪いながら遊海は眠りについた…翠はソファに遊海を寝かせ彼を見守っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふむ…やはり彼もシグナーでしたか、確認できているのは頭・翼・足・尾…恐らく龍可嬢は手でしょう…では白野は?』

 

ゴドウィンは遊海の右腕を捉えた映像を見ていた…炎のような痣…それは伝承には無いものだった。

 

『恐らくシグナーの予備システムのようなものでしょう…あとは「閃光竜スターダスト」…「スターダストドラゴン」に酷似した竜…やはり何処かで…?』

眼下で繰り広げられるフランクと虎堂のデュエルを尻目にゴドウィンは考えに耽るのだった…。




今回のスピードスペル!

・Spースタンダード・ルール 通常(オリカ)
このカードは自分のスピードカウンターが一つ以上ある時に発動できる。
①自分のスピードカウンターを全て取り除く、その後自分は「Spー」と付く魔法カードを発動できなくなる。その後、このデュエル中自分はスタンディングデュエル用の魔法カードを「スピードワールド」と名のついたカードのダメージを無視して発動できる。


・Spーエンジェル・バトン 通常
自分のスピードカウンターが2つ以上ある時に発動できる。
①デッキから2枚ドローする、その後手札を1枚捨てる。


・Spーヴィジョン・ウィンド 通常
自分のスピードカウンターが2つ以上ある時に発動できる。
①自分の墓地からレベル2以下のモンスターを1体特殊召喚する、そのモンスターはエンドフェイズに破壊される。


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妖精竜との約束〜精霊界に迫る危機〜

注意!

この話でのみ龍可を強化します!

…ロリコンサディスト死すべし慈悲はない


《遊海…遊海…》

 

 

…誰かが俺を呼んでいる、意識はあるが身体は動かない…ならば夢なのだろう…

 

 

《約束を果たして…あの子を…》

 

 

…約束…?そうか、お前は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…ここは…?」

 

「あ、遊海さんおはようございます!早かったですね!」

目が覚めると俺はソファで横になっていた、翠が驚いた様子で俺を見ている…。

 

「翠…大会は?」

 

「えっと…今は休憩時間です!もう少しで何か発表があるみたいですよ?」

 

「そうか…なら体調もよくなったから見に行こうか!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

「ん…あれって…!お〜い白野!こっちこっち〜!!」

観客席に出た俺達を誰かが呼んでいる…見るとツンツン頭のマッチョとお爺さん、あとメガネをかけた少年と共にいる龍亞と龍可の姿があった。

 

 

「おっ!龍亞じゃないか!さっきはかっこよかったぞ?変装はバレバレだったけどな!」

 

「やっぱりそうよね〜龍亞ったら…」

 

「なんだよー!代わりに出てやったのにー!!」

 

「こらこら2人共!喧嘩はよさんか!…オッホン!ワシは矢薙という者じゃ!あんた達は?」

2人の口喧嘩を宥めつつお爺さん…矢薙が話しかけてくる。

 

「俺は岸波 白野、龍亞達とは少し縁があって…隣にいるのは妻の翠です!」

 

「翠といいます!よろしくお願いします!」

 

「あなたが翠さん…綺麗…、あっ私は龍可です!よろしくお願いします!」

 

「オレは龍亞!ヨロシク!」

 

「ボクは早野 天兵です!」

 

「オレは氷室だ!立ち話もなんだ!座りなよ!兄さん顔色悪いぞ?」

 

「あはは…少し病弱でね、ありがたいです」

遊海達も客席に座る

 

「白野!見て見て!メタルナイトのサイン貰っちゃった!」

龍亞は先程の色紙を見せてくる…はしゃぎすぎだな

 

 

「よかったじゃないか!あの人みたいな立派な決闘者になれるように頑張るんだぞ!」

 

「うん!オレ頑張る!!」

 

「(クスクス…)」

メタルナイトの正体を知ってる翠は隠れて笑っていたのであった…。

 

 

 

 

 

 

『スタジアムの観客の方々にサプライズのお知らせだ!先程1回戦で負けてしまった龍可選手!なんと敗者復活戦が行われる事が決定したぞ!!』

 

「やったあ!もう一度デュエルできるぞぉ!今度は勝ってやる〜!」

 

「龍亞〜いい加減してよ〜…また負けて恥かいちゃうよー」

MCからの突然のサプライズに龍亞は浮かれている…龍可は呆れているようだ。

 

 

『敗者復活戦は敗退者の中からランダムに選ばれた!一人目は実力はゴドウィン長官お墨付き!将来有望な女の子!龍可!』

 

「は〜い!…あれっ?」

 

「えっ…?」

スタジアムの天井からスポットライトが本物の龍可を照らし出す…ゴドウィンは未だ覚醒しない龍可をシグナーとして目覚めさせるつもりだろう…

 

『そして対戦相手は…先程のデュエルで敗れたデュエルメンタリスト・フランク!!』

 

スポットライトが反対側の男を照らし出す…たしかアイツは…

……よし、介入しよう、あの顔芸は許せない…

 

 

 

「わかったわ…このデュエルだけは勝つから後はお願いね龍亞…」

龍亞と話していた龍可が立ち上がる、どうやらこのデュエルだけは龍可がやる事になったようだ…なら…

 

 

 

「(頼む…龍可に力を貸してあげてくれないか?)」

 

《…いいのですか?人目がありますが…》

 

「(ちょっとの嫌な場面を思い出したんだ…頼む

!)」

 

《(…わかりました!できるだけ正体は隠しましょう…久々に羽を伸ばしたいですし!)》

 

「(ありがとう…頼んだぞ…!)」

ある精霊と念話で許可をもらう 

 

 

「龍可!」

 

「ん?…白野どうしたの?」

 

「これをお守りにデッキに入れてくれるかい?これは俺の大切なカードなんだ、きっと龍可を守ってくれる!」

俺はカードを龍可へ手渡す…

 

「…何も描いてないカード…?」

 

「俺を信じて…頼む…!」

 

「…わかった!あとで返すね白野!」

龍可はカードをデッキに入れてステージに向かった…。

 

 

 

 

「ハ、ハクノサン?…今渡したカードって…!?」

 

「…精霊界と女の子を傷つけるデュエリストに慈悲は無い…それに彼女との約束があるからな…」

 

 

 

 

 

 

 

Side龍可

 

 

『初めまして龍可さん、よろしくお願いしますね?』 

 

チャイナ服を着た男の人が挨拶してくる…なんだろう…顔は笑ってるのに…何だか怖い…!

 

 

『このデュエルで本当の貴女を探しに行きましょう!』

 

《クリー…》

「クリボン…あなたも感じるのね…でも頑張らなくちゃ…!」

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

龍可LP4000

フランクLP4000

 

 

 

 

 

「わたしのターン!ドロー!」

「お願いね!『ジェリー・ビーンズマン』を召喚!」

剣を構えた小さな豆の戦士が現れる ATK1750

 

「ターンエンド!」

龍可LP4000

ビーンズマン 手札5

 

 

 

 

 

『ではボクのターン、ドロー!』

『「L⇔Rロールシャッハー」を召喚!』

紫色の靄のようなモンスターが現れる ATK1200

 

『ボクは手札から魔法カード「攻撃封じ」を発動、「ジェリービーンズマン」を守備表示に変更!』

ジェリービーンズマンが盾を構えてしゃがみ込む ATK1750→DEF0

 

『バトル、「ロールシャッハー」で「ビーンズマン」を攻撃!』

紫色の靄がビーンズマンを包み破壊する…

 

 

 

『龍可さん、ロールシャッハーテストという物は知っていますか?』

 

「いいえ…知らないわ?」

攻撃が終わった後にフランクさんが話しかけてくる…

 

『このテストは紙にインクを垂らしてその染みが何に見えるかでその人の不安を明らかにするテストです…ボクの「ロールシャッハー」は何にでも見えるモンスター…貴女には何が見えますか?』

 

わたしは紫色のモンスターを見つめる…するとそれは可愛い妖精のような姿に変わった…でも

 

《シャアアア!!!》

 

「きゃ…!」

妖精の顔が突然怖いモンスターになっちゃった…!

 

『このテストでは貴女が恐れているモノが判ります…貴女は妖精やカードの精霊を無意識で恐れています…』

 

「そんな事ないわ!皆わたしのお友達よ!」

 

『偽らなくて大丈夫…このデュエルでその問題を解決していきましょう…貴女は特別な人間だ、貴女の深層意識にはカードの精霊の世界に繋がる入口がある…そこから精霊世界に旅立ちましょう…!』

 

「そんな世界ある訳が…」

フランクさんは難しい話をしてくる…何だか怖い…!龍亞…助けて…!

 

 

『おっと、デュエルを再開しなければ…「ロールシャッハー」は相手モンスターを破壊した時にデッキトップを表がにします、一番上のカードを教えて頂けますか?』

 

「…『クリボン』よ…」

デッキの一番上はわたしの一番のお友達のクリボンだった…

 

 

『ほう…可愛いモンスターですね〜、もしかしてその子の声も聞こえるのでは?ボクはカードを2枚伏せてターンエンド』

フランクLP4000

ロールシャッハー 伏せ2 手札2

 

 

 

 

 

 

「天兵…白野…何だか変な感じがする…何だか怖い…!」

 

「龍亞?どうしたんだよ?」

 

「…大丈夫、龍可にはお守りを渡してある…だから大丈夫だよ」

 

「白野…」

双子故の感覚なのか、それとも内に眠るシグナーの力なのか…龍亞は龍可に迫る危険を感じているようだ、デュエルも俺の覚えている進行と変わっている…もしもの時は…!

 

 

 

 

 

「わたしのターン…ドロー!」

「『クリボン』を召喚!」

短い尻尾にリボンを付けたクリボーが現れる ATK300

 

『その時!罠カード発動!『深層へと導く光』!相手が光属性のモンスターを召喚した時、相手のデッキ上から5枚のカードを墓地に送り…6枚目を手札に加えて貰います…さぁカードを墓地に送ってください…』

 

「はい…えっと…」

 

墓地送り

妖精王オベロン

フェアリーアーチャー

踊る妖精

サニーピクシー

アーマードホワイトベアー

 

☆古の森

 

 

 

…なんだろう…眠くなってきた…

 

『さぁ…6枚目のカードは何かな?おじさんに教えてくれるかい?』

 

「…6枚目のカードは…全てをあからさまにする…争いを許さない聖地…『古の森』を発動…」

フィールドが明るい森に包まれる…それと共に龍可、そして龍亞の瞳から光が消えていく…。

 

「私は…ターンエンド…」

龍可LP4000

クリボン 古の森 手札5

そして龍可の意識は深層意識…精霊界へと墜ちていった…。

 

 

 

 

『ボクのターン、ドロー』

『彼女は無事に精霊世界へと向かったようですね…ボクは装備魔法「不死のホメオスタシス」を「クリボン」に装備、この効果により装備モンスターは戦闘では破壊されない…さらに罠カード「ゲシュタルト・トラップ」を装備カードとして「クリボン」に装備、これにより効果は無効となり攻守は0になる』

クリボンに大きな手錠が嵌められる ATK300→0

 

 

『ボクはさらに「ロールシャッハー」をリリースし…「超魔神イド」をアドバンス召喚!』

紺色のエネルギーでできたトカゲのようなモンスターが現れる ATK2200

 

『バトル!「イド」で「クリボン」を攻撃!しかし「不死のホメオスタシス」の効果で破壊はされない!』

 

「……!」

イドの尾がクリボンを弾き飛ばす!

 

龍可LP4000→1800

龍可は風圧を腕で防ぐ…しかし意識は無いようだ…

 

「…『古の森』では争いは許されない…戦闘を行なったモンスターは破壊される…」

龍可の言葉と共にイドが森の制裁を受けて破壊される

 

『ボクはこれでターンエンド、その時破壊された「イド」が墓地から特殊召喚される』

再び紺色のトカゲが現れる ATK2200

フランクLP4000

イド ホメオスタシス ゲシュタルト 手札2

 

『さぁ…龍可、痛みを味わい苦しみの中から貴女の本当の使命を思い出すのです…!』

 

 

 

 

 

「龍亞…?大丈夫か?龍亞…?」

 

「……」

 

「くっ…嫌な予感的中か…!しょうがない!」

龍亞も龍可も精神への干渉を受けてる…無事なのはわかってるけど…放ってはおけない…!

 

「翠…俺の身体を頼む…行ってくる!」

 

「…わかりました…気をつけて!」

俺はカバンから千年玉を取り出す…今いくぞ2人共…!

 

「おい…白野の兄ちゃん!それはもしや…!」

 

「千年玉よ!我が心を龍可の下へ導け…!」

そして俺を意識は深く沈んでいった…。

 

 

 

 

「わたしのターン…ドロー…」

 

『装備魔法「ホメオスタシス」の効果発動!スタンバイフェイズに装備モンスターの攻撃力が変動していた場合300ダメージを与える!』

 

龍可LP1800→1500

 

「『サンライト・ユニコーン』を召喚…」

青い鬣のユニコーンが現れる ATK1800

 

「さらに装備魔法『一角獣のホーン』を『ユニコーン』に装備…攻撃力が700アップ…」

ユニコーンの角が長くなり光を纏うATK1800→2500

 

「バトル…『ユニコーン』で『イド』を攻撃…グレースダッシュ…」

ユニコーンの突進が魔神を退ける

 

フランクLP4000→3700

 

「そして戦闘した『ユニコーン』は破壊される…そして『一角獣のホーン』はデッキトップに…」

ユニコーンが森の裁きを受け破壊される

 

「そしてメインフェイズ2で魔法カード『緊急救命』を発動…破壊されたレベル4モンスター『サンライト・ユニコーン』を特殊召喚…」

再びユニコーンが現れる ATK1800

 

「そして『ユニコーン』の効果…デッキトップを確認して装備魔法なら手札に加える…当然デッキトップは『一角獣のホーン』…手札に加えて…再び装備…」

再びユニコーンが強化される ATK1800→2500

 

「…カードを2枚伏せてターンエンド…」

 

『そのエンドフェイズに「イド」は再び蘇る…』

三度魔神が復活する ATK2200

龍可LP1500

サンライトユニコーン(ホーン装備) クリボン(ホメオスタシス・ゲシュタルト装備) 伏せ2 手札2

 

 

 

 

『ボクのターン…ドロー…』

フランクの瞳も光を失う…彼も精霊世界に迷い込んだようだ…

 

「罠カード発動『ガリトラップーピクシーの輪』、あなたは攻撃力の低い『クリボン』を攻撃対象にできない…」

 

『ボクは映像魔法「悪意の波動」を発動…効果によりボクのモンスターが戦闘で破壊される度に300ダメージを与える…バトル…「イド」で「ユニコーン」に攻撃…返り討ちになる…』

イドがユニコーンに襲いかかるが角で切り裂かれる

 

フランクLP3700→3400

 

『戦闘でモンスターが破壊されたから300ダメージを与える…』

 

龍可LP1500→1200

 

『さらに魔法カード「精神汚染」を発動…モンスターが戦闘で破壊された時に相手のカードを破壊する…「ガリトラップ」を破壊…ターンエンド…そして「イド」は蘇る…』

再び魔神が復活する ATK2200

フランクLP3400

イド ホメオスタシス ゲシュタルト 悪意 手札0

 

 

 

 

 

 

「わたしのターン…ドロー…」

 

『「ホメオスタシス」の効果を発動…300ダメージ…』

 

龍可LP1200→900

 

「…『貪欲な壺』を発動…墓地の『踊る妖精』『オベロン』『サニーピクシー』『ジェリービーンズマン』『フェアリーアーチャー』をデッキに戻して2ドロー…!!」

カードをドローした瞬間、龍可の意識が覚醒する!

 

「わたしは負けない…!精霊世界を守ってみせる!魔法カード『死者蘇生』を発動!墓地の『アーマードホワイトベア』を特殊召喚!」

鎧を着たシロクマが現れる ATK1800

 

「そして魔法カード『癒やしの風』を発動!フィールドのモンスターの数✕300のライフを回復する!900回復!」

精霊達が龍可に力を分け与える

 

龍可LP900→1800

 

「お願い…力を貸して!!召喚!!」

《キュアアアア!!》

龍可のフィールドが炎に包まれる…そして全身を炎で包んだ鳥が現れる ATK???→3900

 

「精霊世界を脅かす悪い意思よ!消え去りなさい!」

 

龍可LP1800→800

 

《キュアアアア!!!》

 

炎の鳥がイド諸共フランクを呑み込んだ…

 

 

フランクLP0

 

龍可WIN!

 

 

 

 

 

『デュエルエ〜ンド!敗者復活戦を制したのは龍可選手だ〜!!…でも最後のモンスターはなんだったのでしょう…??』

 

 

 

『あ…ああ…』バタン

フランクは酔っ払ったように地面へと倒れた…。

 

「はぁ…はぁ…ありがとう白野さん…わたし…」パタッ

 

「…お疲れ様、龍可…いいデュエルだったぞ…」

倒れかけた龍可を遊星が受け止める…龍可の異変を察知し駆けつけたのだ。

 

「遊星…わたし…棄権するわ…」

 

「…ああ、それがいい…奴も文句は言わないだろう…」

遊星はゴドウィンを睨みつけフィールドから下がっていった…そして龍可の腕には赤き竜の痣、「ドラゴン・クロー」が仄かな光を放っていた…

 

 

『フムフム……観客の皆様に残念なお知らせです!龍可選手は体調不良のため棄権しました!よって復活戦は無くなりました!!それでは今日はここまでだ!また明日!!シーユーアゲイン!!』

 

 

龍可Sideout

 

 

 

 

「ゴホッ…コフッ…なんとか…なったか…」

 

「白野さん…やりすぎです、どうしてそこまでして…!」

 

「恩人との約束を思い出してね…精霊界を救う彼女を…守ってくれって…」 

気を失った龍亞と共に医務室へ運ばれた遊海は意識を取り戻していた。

 

「なぁ…白野の兄ちゃん、さっきの金色の卵…もしかしなくても古代エジプトの『千年アイテム』じゃないかい?…いったいアンタは何者なんだ…?」

矢薙さんが話しかけてくる…彼は世界中の伝承を調べたコレクター…当然千年アイテムも知っているだろう。

 

「俺は…精霊の見えるただの決闘者ですよ、それ以外の何者でもありませんよ」

 

「ふ〜む…しかしなぁ…」

 

「矢薙の爺さん、男にゃ知られたく無い事の一つや二つあるもんだ…放っておきな」

氷室さんが矢薙さんを静止する…正直ありがたい、俺は再び意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

『モーメントがオーバーヒートした?』

 

「イエ〜ス!龍可さんのシグナー反応、そして炎の鳥!それが出てきた瞬間モーメントが緊急停止したのでーす!正体はわかりませんがあの鳥は超高エネルギーの塊でしたー!」グルグール

 

『そうですか、ありがとう阿久津君…とにかくこれでシグナーは全員覚醒しましたね…しかしあの鳥…彼女のデッキにそんなカードは無いはずですが…?』

 

報告を受けたゴドウィンは頭を捻る…イレギュラーたる6人目のシグナー…謎のモンスター、わからない事が多すぎると…

 

『あなたの仕業ですか?…岸波 白野…』

 

 

 

 

 

 

デュエル中

Side精霊世界@龍可

 

「はぁ…はぁ…森が…どうしてこんな事に…!」

わたしは精霊世界をサンライトユニコーンと共に走り抜けていた、誰かの声に導かれて森を進んでいく…でも、ある場所に近づくにつれて森が枯れていく、そしてわたしは岩山のような場所に着いた。

 

《龍可…私はここよ…ようやく来てくれた…!》

 

岩山には細い竜の絵が刻まれている…わたしはあのドラゴンの事を知っている…!

 

「エンシェント・フェアリー・ドラゴン…!」

 

《そうです龍可…思い出して…約束を…》

 

 

その時、わたしは幼い時の記憶を思い出した…。

 

大会の最中に倒れて精霊界に行った事…

 

エンシェントフェアリードラゴンと邪悪な者から精霊界を守ってほしいとお願いされた事…

 

そして…龍亞の声を言い訳に精霊界から逃げた事…怖かった、わたし一人でこの世界を守る事が怖かったから…

 

 

 

「…思い出した…わたしは約束したんだ『精霊界を守る』って…でも怖くなって逃げちゃったんだ…」

 

《龍可…でもあなたは戻って来てくれた…、この世界を守るため…龍可!後ろを!邪悪なる者が…!》

 

「えっ…!『イド』!!」

エンシェントフェアリーが注意を促す、わたしの後ろにはイド…邪悪な意思の化身が迫っていた。

 

 

『フッフッフ…まさかこのボクまでこの世界に取り込むとは…やはりお前はシグナーだ!!!』

 

「ひっ…!?まさか…この人が邪悪な意思…!?」

わたしの前に現れたイドは姿を変え対戦相手のフランクさんに変わった、でも様子がおかしい…あの人から強い闇の力を感じる…!

 

『お前の力を求めている者がいる…さぁオジサンと一緒に行こう!お前の力を正しく引き出してくれる人の下に…!!!』

 

「怖い…怖いよ!助けて!龍亞!!」

フランクさんはじりじりと近寄ってくる…怖い…!

 

(龍可…龍可…!!)

 

「はっ…!龍亞!何処なの!わたしを助けて…!!」

頭の中に龍亞の声が響く…

 

 

(龍可…約束は守らなくちゃだめだ…!龍可はオレが…()()()が絶対に守る…!だから龍可はその世界を守ってあげて…!) 

 

「龍亞…、わかった…!わたしがこの世界を守ってみせる!!」

龍可は覚悟を決めた…遠い日の約束を果たして精霊界を守ってみせると…!

 

 

『フハハハ…本当はなぁお前の力なんてどうでもいいんだ…お前や精霊の苦しむ顔が見れるならそれでいいんだょお…!!アハハハ!!』

フランクは完全に闇に呑まれる…否、ここは全てを明らかにする『古の森』…これがフランクという男の本性なのだろう…。

 

《許しません…この世界を汚す者を私は許さない…!!》ゴゴゴ…

岩に刻まれたエンシェントフェアリーのレリーフが動き出しフランクを鷲掴みにする…フランクは狂ったように笑っている…

 

「だめよ!エンシェントフェアリードラゴン!落ち着いて!このままじゃあの人が…!」

 

 

 

 

「落ち着けよ、エンシェントフェアリードラゴン…そんな奴喰ったらお腹壊すぞ?」

 

「えっ…!?」

精霊界に第三者の声が響く…

 

《…あなたは…来てくれたのですか…》

 

「当たり前だろ?3年前の約束を果たしに来た…あとは龍可に任せて休んでなよ…貴女の出番はまだ先だ」

 

《…そうですね、あとは頼みます…》

エンシェントフェアリードラゴンはフランクを離すと石版に戻っていった。

 

 

「エンシェントフェアリーの怒りが…あなたはいったい…?」

龍可は現れた人物を見る…赤い帽子に赤いジャケットを着た青年…その身体からは強い力が溢れている…

 

 

「俺は白波 遊海…『エンシェントフェアリードラゴン』からお前達の事を託されたデュエリストさ…初めまして龍可ちゃん」

 

「えっ…あの初めまして…」

 

『くっ…おのれぇ!邪魔をするなぁ!!』

フランクが立ち上がる…その眼は闖入者である男を睨みつけている…。

 

「さぁ…龍可、彼を倒す事が精霊界を救う第一歩になる、君には強力な精霊が付いてる…俺がサポートするからその力を使うんだ!」

 

「うん、わかった!ドロー!」

私はカードをドローする…すると暖かい力がわたしを包み込む…!

 

「繰り返して…『精霊は歌う…大いなる力…すべての万物を司らん…その命、その魂…そしてその骸でさえも』」

 

「精霊は歌う…大いなる力…すべての万物を司らん…その命、その魂…そしてその骸でさえも…お願い!精霊界を救う力を貸して!召喚!」

私はドローしたカード…白野さんに渡された「白紙のモンスター」を召喚する…すると

 

《キュアアアア!!》

 

「綺麗…!」

全身を炎で包んだ鳥…不死鳥のようなモンスターが現れる…  

 

 

「我が友たる不死鳥よ!邪悪なる意思を焼き払え!ゴッド・フェニックス!!」

 

《キュアアアア!!》

不死鳥はその炎をさらに強くしてイドに突撃…邪悪なる意思は焼き払われた…。

 

 

「すごい…!これが白野さんの大切なカード…!」

 

「とりあえず危機は去った…ではまた会おう龍可、俺はいつでも駆けつけるから…」 

 

「待って!あなたはいったい何者なの?」

 

「君と同じさ龍可、精霊に選ばれた…只の決闘者さ…」

 

そう言って彼は姿を消した…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

「白野さん!ありがとうございました!」

 

「ああ、龍可…無事でよかった、確かに返して貰ったよ」

 

 

医務室に龍可と遊星が訪れる…俺は彼女に渡した『ラーの翼神竜』のカードを返してもらう、なお図柄はフレアに頼んで見えなくしてもらっている…。

 

『しかし驚いた…白野さんと龍可達が知り合いだったとは…』

 

「ちょっとした縁でね…そうだ遊星も準決勝出場おめでとう!これでジャックにも近づいたな!」

 

『はい…!絶対に勝ち進んでみせます…!応援していてください!』

 

「ああ、頑張れよ!」

 

「はい!!」

遊星は部屋をあとにした…しかし龍可はまだ残っている…何か聞きたい事があるようだ。

 

「ねぇ…白野、わたしさっき不思議な人に会ったの…とても強い力を持った人…誰だかわかる?白波さんって言うだけど…」

 

「う〜ん、たぶん俺に聞くよりも本を見た方がいいな…有名な決闘者だよ…だいぶ前のね…」

 

「…わかった!調べてみる!じゃあお大事に!」

龍可も遊星に続いて部屋をあとにした…

 

 

 

 

「無理させて悪かったなフレア…」

 

《大丈夫ですよ遊海、精霊界の事は私も無関係ではありませんから…》

 

「…これで龍亞以外のシグナーは覚醒した…さて物語はどんな風に進むのかな…」

遊海は天井を見上げる…これから起きるであろう騒動を思いながら…。



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シグナーを導く赤き竜〜避けられぬ戦い〜

「バトル!『炎魔竜王レッドデーモン・カラミティ』で『超魔神イド』を攻撃!真紅の絶対破壊!!」(クリムゾン・アブソリュートブレイク)

 

『うぎゃああああ!?』

 

フランクLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

『メ、メタルナイト…何故ボクを襲って…』

 

「ネタは割れてるんだよプロフェッサー・フランク!患者に対して淫らな行為をしたってな!…罰ゲーム!!マインド・クラッシュ!!」ズギャアアン!!

 

『うわぁぁぁぁぁ!!?』バリーン!

 

「心を入れ替えて反省しろ!」

 

『あ…あう……』

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪は倒した、あとは海馬社長に報告すればいいな…」

今はF・C終了後の夜、俺は龍可の対戦相手であるフランクを調べあげた…その中でいくつかキナ臭い情報があった事からフランクにデュエルを仕掛けた…結果はギルティ、カウンセラーが悪に染まっていたら患者に対しても悪影響があるからサクッとマインド・クラッシュした…その内に治るから大丈夫だろう…彼の更生を願う…。

 

 

「さて、家に帰るか…おっ…と?」グラリ

 

《大丈夫ですかマスター?今日は力を使い過ぎです…》

 

「あぁそうだな…早く帰ろう…」

遊海は歩き出そうとしてバランスを崩す、昼間に力を使い過ぎ体力も少なくなっていた…。

 

《…無理はしないでください、本来なら今の状態で神を使ったら…》

 

「わかってる…さぁ休むためにも早く帰…伏せろ!」

 

ビシュン! ドゴォン!!

 

遊海は殺気を感じて咄嗟に倒れ込む…その首の辺りを茨のムチが通過する!

 

《っ…敵襲…!マスターすみません…!》

 

「大丈夫、いきなり手荒いな…『黒薔薇の魔女』…!」

 

『よく避けたわねメタルナイト、首を狙ったのだけど…』

暗がりから仮面を着けた少女…十六夜 アキが現れる、そして彼女からは殺気が漏れ出している…!

 

 

『私はこの痣…忌々しい痣を憎む…!メタルナイト!あなたもそう!ぶっ壊してあげる…!』

 

「黒薔薇の魔女…いや十六夜 アキ、君は勘違いをしてる…この痣は誰かを傷つけるものじゃない、世界を悪しき者から守るための…」

 

『うるさい!…私は破壊する…痣を持つ者を…!』

アキはデュエルディスクを構える…

 

「問答無用か…ならば少し相手になろう…!」

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

十六夜LP4000 D40

遊海LP4000  D60

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『魔法カード「偽りの種」を発動!手札から「イービル・ソーン」を特殊召喚!』

棘の付いた実を持つ植物が現れる DEF300

 

『「イービル・ソーン」の効果を発動!自身をリリースし相手に300ダメージを与える!そしてデッキから2体の「イービル・ソーン」を特殊召喚する!イービル・バースト!』

イービルソーンの実が爆発しトゲが飛び散る!

 

「っ…ぐあぁぁぁ!!」

 

遊海LP4000→3700

 

そして種の破片から新たなイービルソーンが生える DEF300 ✕2

 

 

「ぐっ…サイコデュエルのダメージは…流石にキツイな…!」

サイコデュエルによるダメージは闇のゲームに匹敵するダメージを相手に与える…弱体化している遊海ではそのダメージには耐えられない…!

 

 

『フフフ…いい様ねメタルナイト、その鎧を壊してお前の正体を暴いてやるわ…!私は「黒薔薇の魔女(ブラックローズ・ウィッチ)」を召喚!』

自身の二つ名と同じ名前を持つ魔女が現れる ATK1700

 

『私はレベル1の「イービルソーン」2体にレベル4の「黒薔薇の魔女」をチューニング!』

 

1+1+4=6

 

『聖なる森の女王よ!愚か者に茨の裁きを与えよ!シンクロ召喚!「ヘル・ブランブル」!』

全身を茨で包んだ野イバラの女王が現れる ATK2200

 

『「ヘル・ブランブル」がフィールド上に存在する限り植物族以外のモンスターを召喚・特殊召喚したプレイヤーに1000ダメージを与える…カードを2枚伏せターンエンド!』

 

十六夜LP4000

ブランブル 伏せ2 手札1 D32

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「モンスターをセット…ターンエンド!」

遊海LP3700

セットモンスター 手札5 D54

 

 

 

『あら…それで終わりなの?拍子抜けねメタルナイト!』

 

「くっ…」

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『私は「返り咲く薔薇の大輪(リバイバル・ローズ)」を召喚!』

巨大な薔薇の花が現れる ATK1300

 

『そして魔法カード『フレグランス・ストーム』を発動、「返り咲く薔薇の大輪」をリリースして1ドロー…ドローしたのは植物族「グローアップ・バルブ」!よってさらに1ドロー!』

 

『バトル!「ヘルブランブル」で裏守備モンスターを攻撃!』

ブランブルの茨が一つ目の巨人を打ちすえる!

 

「セットモンスターは『ゴゴゴゴーレム』!1ターンに一度戦闘では破壊されない!」 DEF1500

 

『フン…私はターンエンド!』

十六夜LP4000

ブランブル 伏せ2 手札2 D29

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「フィールド魔法『岩投げエリア』を発動!」

遊海の後ろに巨大な投石器が現れる。

 

「さらにモンスターをセット…ターンエンド」

遊海LP3700

ゴゴゴゴーレム(守)セットモンスター 岩投げエリア 手札4 D53

 

 

 

『フフフ…黒薔薇の魔女を目の前にして防戦だなんて…よっぽど死にたいらしいわね!!』

 

 

『私のターン!ドロー!』

『手札から「グローアップバルブ」を召喚!』

一つ目の球根が現れる ATK100

 

『私はレベル6の「ヘルブランブル」にレベル1の「グローアップバルブ」をチューニング!!』

 

6+1=7

 

『冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の花よ…開け!!シンクロ召喚!現れよ!「ブラック・ローズ・ドラゴン」!!』

赤い花弁のような身体のシグナー竜が花開く ATK2400

 

『「ブラックローズドラゴン」の効果発動!墓地の「イービルソーン」を除外し「ゴゴゴゴーレム」を攻撃表示に変更し攻撃を0にする!ローズ・リストレクション!』

 

黒薔薇竜の茨のツルがゴーレムの自由を奪い無理矢理戦闘態勢に変える! DEF1500→ATK1800→0

 

「ヤバッ…!?」

 

『バトル!「ブラックローズドラゴン」で「ゴゴゴゴーレム」を攻撃!ブラックローズフレア!!』

破壊の黒炎がゴーレムを破壊し、その衝撃が遊海に直撃する!

 

「ガッ…ぐあぁぁぁ!!」ドカァン! パリーン…

 

遊海LP3700→1300

 

 

『…それがあなたの正体?メタルナイト…ガリガリの病人じゃない…そんな身体でよくギャングを壊滅させたわね?』

 

「ガリガリで悪かったな…イケメンかと思ったか?」

サイコデュエルの衝撃に耐えられず変身が解ける…そしてガリガリに痩せ細った遊海の姿があらわになる…

 

『フッ…興味なんてないわ、あなたみたいな奴ならもっと倒しやすくなる!リバース罠「リビングデッドの呼び声」を発動!墓地の「ヘルブランブル」を特殊召喚!』

再び茨の女王が現れる ATK2200

 

『「ヘルブランブル」でセットモンスターを攻撃!』

ヘルブランブルがリュックを背負った蟲人を破壊する。

 

「リバースした『魔導雑貨商人』の効果を発動!デッキから魔法・罠カードが手札に加わるまでカードを墓地に送る!」

 

 

墓地送り

 

恵みの像

グランモール

磁石の戦士α

ロストガーディアン2

ミッドピースゴーレム

フォッシルダイナ 3

カオスポッド

磁石の戦士γ

スモールピース

ホプロムス2

超電磁タートル

怒気土器3

メタモルポット

メガロック

リバイバルゴーレム2

タックルセイダー3 ☆

ギガストーンオメガ

ゴゴゴゴーレム2

伝説の柔術家

番兵ゴーレム

磁石の戦士β

ブロックドラゴン

キャッスルゲート

ゴゴゴギガース

マグネットバルキリオン

ロックストーンウォリアー3

メデューサワーム

計40

 

☆封魔の矢

 

 

「墓地に送られた『タックルセイダー』の効果を発動!相手の『リビングデッドの呼び声』を手札に戻す!そのカードはこのターン発動できない!よって『ヘルブランブル』は破壊される!」

 

『ならばもう一度セットすればいいだけの話よ!カードをセットしてターンエンド!』

十六夜LP4000

ブラックローズドラゴン 伏せ2 手札1

 

 

 

『あなたのターンになったら私は「ヘルブランブル」を特殊召喚する、そしてモンスターを出せばあなたのライフは残り300…モンスター1体では私を倒す事は不可能よ!(それに伏せカードは「茨の壁」…それで奴のモンスターを破壊すれば…私の勝利よ!)』

 

「コフッ…確かにそうだな、でもデュエルは最後までわからない…!それに俺は既に勝利の方程式ができている!!」

 

『フン…やれるならやってみなさいよ…そのボロボロの身体でね!』

 

 

「俺のターン…ドロー!!」

 

『リバースカード「リビングデッドの呼び声」を発動!「ヘルブランブル」を特殊召喚!』

茨の女王が再び現れる ATK2200

 

「俺は…墓地の岩石族モンスター40体を除外してこのモンスターを特殊召喚する!来い!俺を守護する優しき岩石竜!『メガロックドラゴン』!」

《小娘…我が主を傷付けた報い…受けてもらうぞ!!》

岩の肉体を持つ竜が降臨する ATK?

 

『モンスターが喋った!?…いいえ、今は関係ないわ!「ヘルブランブル」の効果発動!1000ダメージよ!』

茨の女王がトゲを伸ばし遊海を締め付ける!

 

「ぐあぁぁ…!」

遊海LP1300→300

 

《ゆ…白野!大丈夫か!》

 

「メガロック…大丈夫、頼むぞ…!」

 

『攻撃力0のモンスターに何ができる!』

 

「『メガロック』の攻撃力は…召喚時に除外した岩石族モンスターの数✕700になる…よって…!」

 

ATK?→28000

 

『攻撃力28000ですって…!』

 

「ハァ…ハァ、バトルフェイズ…!速攻魔法『封魔の矢』を発動…!バトルフェイズ中相手は魔法・罠を発動できない…!『メガロック』で『ブラックローズ』を攻撃!鳴動富嶽!!」

《我が主の痛みを思い知れ!ぬぅおおおお!!!》 

 

メガロックが大地を踏みしめる…大地が隆起しブラックローズは大地の槍で串刺しとなった!

 

『そんな…きゃああああ!!?』

 

 

十六夜LP0

 

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

『おのれメタルナイト…手加減を…!』

 

メガロックに吹き飛ばされた十六夜はすぐに立ち上がる、遊海は十六夜に向けて力を使わなかった、だからダメージが少なく済んだのだ…。

 

『何処だ!メタルナイト!どこに行った!!』

フィールドを覆っていた砂煙が晴れる…しかしそこに遊海の姿は無かった。

 

《キュオォォン!》バサッ!

煙を振り払い閃光竜が飛翔する、その背中には遊海の姿があった。

 

「じゃあな十六夜アキ!準決勝頑張れよ!」

 

『っ…お前も…逃さない!「ブラックローズドラゴン」!ブラックローズフレア!』

《ギシュアアア!》

 

十六夜が地上からブレスを放つ!

 

「『閃光竜』!波動音壁!アヤカ!目潰し頼む!」

《キュオン!!》

《了解です!閃光弾発射!》

 

黒炎はソニックバリアで防ぎ、アヤカが閃光弾で視界を奪った…。

 

『くっ…覚えてなさいよ!メタルナイトォォォ!!』

コンクリートジャングルに十六夜の叫びとセキュリティのサイレンが響き渡った…。

 

 

 

 

 

 

 

「アキ…なんであんな事をしたんだい?奴は危険だから手を出すなと言ったはずだよ…」

 

『ごめんなさいディヴァイン…あいつにもこの痣が浮かんでいたから…つい…』

アルカディアムーブメントの代表室…そこでアキはディヴァインに諭されていた、一年前のメタルナイトによる襲撃…それはディヴァインの()の目的に大ダメージを与えた、それ以来ディヴァインはメタルナイトを警戒しているのだ…。

 

『でも聞いてディヴァイン、奴の素顔を見たわ…ガリガリに痩せた男だった、しかも私がダメージを与えたからしばらくは動けないはずよ…!』

 

「…ガリガリの男だって…?赤い帽子を被った強い力の男ではなかったかい?」

 

『?…いいえ、確かに超能力は持っていたけど…』

 

「そうか…!ありがとうアキ、今日はゆっくり休みなさい…明日、アルカディアムーブメントの名を世界中に知らしめるために…!」

 

『わかったわ…おやすみなさいディヴァイン…』

そうして十六夜は部屋をあとにした。

 

 

 

 

 

「くくく…これはいい事を聞いた!覚えていろ白波 遊海!貴様を地獄に叩き落としてやる…!」

ディヴァインは顔を歪ませる…その目には復讐の炎が宿っていた…。

 

 

 

 

 

 

「アイタタタ…流石にリアルダメージはキツイ…!」

 

「災難でしたね遊海さん、ゆっくり休んでください…でもこんな状態でダークシグナーと戦ったら…」

 

遊海はなんとか家に辿り着きベッドで横になっていた…身体は包帯でグルグル巻きで血が滲んでいる、以前ならすぐに回復したが…今では常人並みの回復力しかない…。

 

「死にはしないだろうけど大ダメージだな…まぁシグナーとダークシグナーは戦う相手が決まってるようなものだから…サポートに回るさ…ごめん、もう寝るよ…」

 

「わかりました…おやすみなさい遊海さん…」

そうして遊海の意識は深い眠りに墜ちていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん?ここは?」

遊海がふと目を覚ます…眼下に広がるのは宇宙のような星空、そしてその中心にある光の道…そして2台のDホイールと赤いバリアに包まれる2人の人影…

 

「これは…フォーチュンカップの決勝か…!精霊変身…!」

遊海はその身を鎧に包み降下する…そこには戦う遊星とジャック、そして空を飛び追走するアキと龍可の姿があった…。

 

 

 

 

「あっ…メタルナイト!貴方もここに…!」

 

「ああ、赤き竜に招かれたようだ…大丈夫かい龍可少女?」

 

「うん…大丈夫!」

 

「ならばよかった…ならあとは見守ろう…2人の決着を…」

 

遊海達は誇りをぶつけあう遊星達に目を向けた…。

 

 

 

ダイジェスト

 

 

「そんな…!サテライトは滅びるというのか!?」

 

「遊星!今はそんな事どうでもいい!俺達の決着を着けるのだ!」

 

 

……

 

「ジャック!これで最後だ!『Spーファイナル・アタック』!」

 

「馬鹿な!攻撃力5000の『スターダスト』だと!?」

 

「いけ!『スターダスト』!シューティングソニィィック!!」

 

「ぐわああああ!!」

 

ジャックLP0

 

遊星 WIN!

 

 

 

『WINNER!不動 遊星!サテライト出身のニューキングの誕生だ〜!!』

 

 

 

「おめでとう遊星…これがお前の運命の1歩になる…!」

遊星の優勝を見届け俺の意識は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…ここは家か…?」

 

「あっ!遊海さん!大丈夫でしたか!?」

 

「ああ大丈夫…少し赤き竜に連れて行かれてただけだから…」

 

「そうだったんですか…痣が光っ放しで大汗かいていたので…」

 

「ごめん、心配かけた…確かに汗が凄いな…」

目が覚めると家のベッドにいた…先程までは精神だけが飛ばされていたらしい。

 

「少しシャワーを…痛っ…ダメそうだな」

 

「あっ、じゃあ着換えと濡れタオル持ってきますね!」

 

「ああ…ありがとう」

翠は部屋から出ていった…時間は午後3時、さっきのは本当の決勝だったのだろう…ならこれから待ち受けるのは…

 

 

ドクン!

 

 

 

「やっぱりか…!」

痣が皮膚を抉るような痛みと共に光を放つ…ここから真の戦いが始まる…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クックック…ようやくシグナー共が揃ったようだな…』

 

『ああ…5000年振りの戦い…長かったな…』

 

『全てを焼き尽くす闇の帳を下ろす時が来た…しかしイレギュラーもある…』

 

『6人目か…奴はお前が始末するんだろう…異邦の者よ』

 

『ククク…ああ、奴には深い恨みがあるからなぁ…存分に痛めつけてやるよぉ…フフフ…フハハハハ…!楽しみだなぁ…白波 遊海…!』

 

 

 

 

シグナーとダークシグナー…2つの勢力の争いが動き出す…



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第2章 破壊と再生の輪廻 ダークシグナー襲来
復活の邪神〜動き出す亡者達〜


「嫌な気配を感じる…これがダークシグナーの気配か…?」

 

遊海は痛む体をおして夜のベランダへと出ていた、痣の知らせ…そして虫の知らせとも言える胸のざわつきで落ち着かないのだ。

 

 

「…なんだろうこの感覚は…何処かで知っている気配が…」

 

《マスター大丈夫ですか?確かに闇の気配は感じますが…》

 

《ユウミ、気のせいかもしれませんが…私の故郷の闇の気配がするような…?》

 

「エジプトの?そんな事ある訳が…第一『地縛神』はインカ・アステカ神話が元の筈だし…」

 

神であるフレアは闇の気配を感じ取った…それは3000年前のエジプトで破壊を齎した『闇』と似通ったモノだった…

 

《…そうですよね、すいませんユウミ》

 

「いや、大丈夫だよフレア…俺がいる以上何かしらのイレギュラーがあってもおかしくな」

 

 

ドクン!

 

 

 

「痣が…!誰かが戦っている…遊星か!」

 

痣が痛みを発しながら輝く、そして伝わってくるイメージ…それは遊星が何処かのビルでフードの男と戦うイメージだった…。 

 

「…この戦いは遊星が勝つ筈だ、心配は無いが…」

 

《マスター、警戒を…!誰かに見られています!》

 

「ああ、殺気を感じる…!トフェニ、メガロック!家の警戒を頼む…迎撃する!」

 

《御意!》 

 

《わかった、無理するでないぞ!》

 

「できる限り努力はする!」

 

遊海は精霊アーマーを纏い飛び出した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまでくれば大丈夫だな…姿を見せろ!ダークシグナー!!」

 

遊海は殺気の主を誘いながらとある公園に辿り着く…そこは二十数年前、遊海が城之内と初めてデュエルをした公園だった。

 

 

 

『ククク、潔いじゃないかメタルナイト…いや、()() ()()()!』

 

闇から湧き出るように黒いフードの男が現れる

 

「何者だ…!俺の真名を知っている奴は昔からの知り合いだけだ!」

 

『おいおい…オレ様も昔からの知り合いだろ…?忘れるなんてひどいじゃないか…!』バサッ

 

 

「貴様…どうやって戻って来やがった!」

 

 

ダークシグナーがフードを下ろす…フードの下には白い髪を逆立て、邪悪な眼差しで遊海を睨みつける青年の姿があった…

 

 

 

「バクラ…いや、大邪神ゾーク!!」

 

 

 

 

 

『フハハハハ!…「冥界の王」とか名乗る奴に蘇らせて貰ったのさ!誰かの下になるのは正直好きじゃないが…貴様らに復讐できるのなら話は別さぁ…さぁ殺し合おうぜ白波…三千年の怨みを受けてみろ!そのボロボロの身体でなぁ!!』

 

 

 

「遊戯達に手は出させない!冥界に送り返してやる!!」

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP4000

バクラLP4000

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『マジシャンズ・ロッド』を召喚!」

魔法使いの杖を持った影が現れる ATK1600

 

「『ロッド』が召喚に成功した時!デッキから永続魔法『黒の魔導陣』を手札に加え…発動!効果によりデッキトップ三枚を確認し…『マジシャンズ・ナビゲート』を手札に加える!カードを2枚伏せターンエンド!」

遊海LP4000

ロッド 伏せ2 手札4

 

 

 

 

 

『オレ様のターン!ドロー!』

『まずは邪魔なカードを掃除するとしようか!魔法カード「大嵐」を発動!』

 

「っ…リバースカード『マジシャンズ・ナビゲート』を発動!手札から現われよ!最上級魔術師『ブラックマジシャン』!さらにデッキから来い!魔法使いの弟子!『ブラック・マジシャン・ガール』!」

空中に描かれた魔法陣から最強の魔術師師弟が現れる ATK2500 2000

 

『ソイツらは…!チッ、まあいい…フィールド魔法「ダークサンクチュアリ」を発動!』

バクラは嫌そうに顔を歪めながらフィールド魔法を発動…周囲が気味の悪い空間に変わる  

 

『モンスターを伏せ…カードを3枚セットしてターンエンドだ!』

バクラLP4000

セットモンスター サンクチュアリ 伏せ3 手札0

 

 

 

 

「(バクラが得意なのはロック戦術…そして『ダークサンクチュアリ』という事はウィジャ盤デッキ…慎重に攻める…!)」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺は『マジシャンズロッド』を生贄に『幻想の見習い魔導師』を守備表示で召喚!」

褐色肌の見習い魔法使いが現れる DEF1700

 

「…バトル!『ブラックマジシャン』でセットモンスターを攻撃!黒・魔・導(ブラック・マジック)!」

 

『「ダークサンクチュアリ」の効果発動だ!さぁ…運命の神に祈りな!』

コインのソリッドビジョンがゆっくり落下する…

 

 

『チッ…「裏」か…まぁいい!リバースモンスターは「メタモルポット」だ!』

魔力弾が一つ目の壺を破壊する

 

『リバース効果発動!オレ様の手札は0枚…よって5枚ドローだ!』

 

「俺は手札三枚を捨てて5枚ドローする!」

 

墓地送り

マハード

マジシャンオブブラックイリュージョン

見習い魔導師

 

『そしてオレはトラップカード「死霊ゾーマ」を発動!モンスターゾーンに特殊召喚!』

骨のできた死霊が現れる ATK1800

 

「くっ…戦闘破壊したらそのモンスターの攻撃力分のダメージを受けるトラップモンスター…!俺は『おっと逃しはしないぜ!罠カード「立ちはだかる強敵」を「ゾーマ」を対象に発動だ!』しまった!攻撃強制カード!?」

 

バクラは相手に攻撃を強制させる罠カードを発動した…これにより遊海は「ダークサンクチュアリ」でダメージを受けるか「ゾーマ」の効果によるダメージを受けるかの「死の二択」を迫られる!

 

 

『さぁ…かかってこいよ「ブラックマジシャンガール」!』

《!?》

マジシャンガールの意思に関係無く杖に魔力が集中…魔力弾が放たれる!

 

『「ダークサンクチュアリ」の効果を発動!…命拾いしたなぁ「表」だ!攻撃力の半分のダメージを受けなぁ!!スピリットバーン!』

魔力弾はゾーマに直撃する直前に邪悪なバリアに反射され遊海に直撃する!

 

遊海LP4000→3000

 

「ぐあぁぁぁ…!ガハッ…!?」

闇のダメージにより遊海は吹き飛ばされ遊具の支柱に背中を打ち付ける

 

「ガッ…やっぱりサイコデュエルとは…桁違いのダメージ…ゴボッ…!」

 

『フハハハ!…弱くなったなぁ白波ィ!よくもまぁそんなボロボロの体で生きてるもんだなぁ、デュエルは続けられるか?骸骨男!』

 

「ぐっ…お前には負けるわけには行かないんだよ!クソ邪神!…コフッ…!」

遊海は支柱を支えに立ち上がる…

 

『へっ、その気概だけは認めてやるよ!オレ様はさらに罠カード「ウィジャ盤」を発動!貴様の命は残り4ターンだ!』

バクラの頭上に呪いの降霊板が現れる…現在は「D」を指し示している…

 

 

「俺はカードを2枚伏せて…ターンエンド…!」

遊海LP3000

ブラックマジシャン マジシャンガール 見習い魔導師 伏せ2 手札3

 

 

『「ウィジャ盤」と「ダークサンクチュアリ」の効果を発動!手札の「死のメッセージーE」をモンスター扱いで特殊召喚する!』

 

バクラのフィールドに青い炎に包まれた「D」の文字が現れる DEF0

 

 

 

『さぁ…何もしなくても貴様の命は残り3ターンで尽きるが…貴様は楽には死なせねぇぜ…!』

 

 

 

 

 

『オレ様のターン!ドロー!』

『「死霊騎士デスカリバーナイト」を召喚!』

馬に乗った死霊騎士が現れる ATK1700

 

『バトルだ!「ゾーマ」で「ブラックマジシャン」を攻撃!』

ゾーマがするどい爪で襲いかかるがブラックマジシャンは魔力弾でゾーマを木っ端微塵に吹き飛ばす!

 

バクラLP4000→3300

 

『ぐっ…破壊された「ゾーマ」の効果を発動!さぁ…2500のダメージを喰らいなァ!!』

霊体のゾーマが遊海を切り裂く!

 

「うぐぁぁ…!!」

 

遊海LP3000→500

 

『そしてオレは魔法カード「暗黒の扉」を発動!これでターンエンドだ!』

バクラLP3300

デスカリバーナイト メッセージE ダークサンクチュアリ 暗黒の扉 手札4

 

 

 

 

 

 

「かっ…ごほっ…!」

 

視界が赤く染まる…心臓の音は早鐘のように鳴り響き体温が下がっていく…正直ヤバイ、意識が飛びそうだ…俺の手札には奴を倒す手段がある…動け…動いてくれ…俺の身体…!

 

『ククク…なんだぁ?もうおねんねの時間か?貴様の次はそうだな…貴様の女でも狙うか?一人じゃ寂しいだろうからなぁ!ククク…アハハハ…!』

 

 

 

バキャ…

 

「させるかぁ…!!貴様は俺が…倒す!!!」

大地が砕け悲鳴をあげる…凄まじい殺気を発しながら幽鬼(遊海)が立ち上がる!

 

『ククク、魂を燃やして立ち上がるか…何処までそれが保つかな?』

 

「1ターン保てば十分だ…!覚悟しろ…バクラ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン…ドロォォォ!!!」

「最強の魔術師弟よ!その力で全てを焼き尽くせ!!魔法カード『黒・爆・裂・破・魔・導(ブラック・バーニング・マジック)』!」

 

魔術師弟が飛び上がり杖を重ねる、そして師弟の魔力は相乗効果で何倍にも膨れ上がりバクラのフィールドを全て焼き尽くした!

 

『なんだとぉ!?』

 

「『黒爆裂破魔導』は『ブラックマジシャン』と『ブラックマジシャンガール』の魔術師弟がフィールドにいる時に使う事ができる最上位呪文!その効果は相手のフィールドを全て焼き尽くす!バトル!『ブラックマジシャン』と『マジシャンガール』でダイレクトアタック!」

《ハッ!!》

ブラックマジシャンとマジシャンガールが飛び上がり魔力を溜める!

 

「喰らえ!双・黒・魔・導(ツイン・ブラックマジック)!!」

弟子の魔力がブラックマジシャンに力を与え極大の魔力弾が放たれる! 

 

『ククク…フハハハ!!やるじゃねぇか白波!しかし戦いは始まったばっかりだ!この5000年に一度の祭りを楽しもうじゃないか!フフフ…フハハハハハ!!』

 

ズガーンッッッ!!

 

 

 

バクラLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様の出番は来ねぇよバクラ…とっとと冥界に還りやが…なにっ…!?」

遊海は痛む体を引き摺りながらバクラに近づく…しかしそこにあったのは無貌の人形だった…。

 

 

【ククク…じゃあな白波、まだ祭りは始まったばかりだ…決着はいづれ着けてやるよ…フフフ…フハハハ…!】

夜の公園にバクラの笑い声が響き消えていった…

 

「逃げられたか…あぐっ…!」ズシャ

力が抜け遊海は膝をつく…周囲の遊具は壊れ荒れ地となっていた…。

 

 

「遊海さん!」

 

「翠…」

荒れ地となった公園に翠が駆け込んでくる

 

「全身傷だらけ…いったい何が…!」

 

「ダークシグナーが動き出した…奴らの中にバクラ…ゾークがいた…!」

 

「なんですって…!?そんな事が…ゾークはアテムさんが完全に…!」

 

「『冥界の王』が奴を引っ張り出しやがった…!」

 

「そんな…!」

翠は顔を青褪めさせる、大邪神ゾーク・ネクロファデス…三千年前のエジプトを荒らし回り存命のアテムが命を賭けて封印した、しかし三千年後に獏良 了を媒体として暗躍…最終的にアテムの記憶世界での決戦でアテムと遊戯達仲間の結束に呼び覚まされた創造神ホルアクティにより完全に消滅した…。

 

その力はゲーム盤の上と言えど凄まじく、守護神エクゾディア・三幻神・青眼…さらに遊海の召喚したホープザライトニング・攻撃力16000相当のサイバーエンドドラゴンの攻撃を受けても立ち上がりその全てを殲滅する程の力を誇る…文字通り大邪神である。

 

 

 

「…俺のせいなのか…?イレギュラーの俺がいるから…倒さなきゃ…アイツだけは…俺…が……」バタッ

 

「ゆ…遊海さん!?しっかりしてください!遊海さん!!」

遊海は顔から地面に倒れ込む…闇のデュエルのダメージは深刻で身体中がボロボロとなっていた…。

 

その後、遊海は連絡を受けた海馬の指示によりKC傘下の病院へと搬送された…闇のゲームの舞台となった公園は「ガス爆発による事故」という形で秘匿され1週間程で元通りになった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『話が違うではないか異邦の邪神よ…白波 遊海はお前が倒すのではなかったのか?』

 

『あ〜ん?「倒す」なんて言ってないぜ蜘蛛男?』

 

『貴様…ルドガー様に向かって…!』

ここはダークシグナーの集う場所…そのテーブルには蜘蛛・猿・巨人の痣を持つダークシグナー達が1人足をテーブルに乗せ悪態をつくバクラを問い詰めていた…。

 

『オレ様は奴を「痛めつける」って言ったんだ、最終的にはオレ様が殺るさ…だがなぁ奴らに対する…()の憎しみは収まらないんだよぉ!!!』ゴゥッ!!

 

『『くっ…!』』

バクラは尋常ではない殺気を放つ…それは既に亡者である2人を畏怖させるモノだった

 

『安心しろよ…次はアイツを始末する、手をもぎ足を砕いて恐怖に歪む奴の顔を見ながらなぁ…!フフフ…フハハハ…!!』

そう言ってバクラは部屋を後にした…。

 

 

 

『既に亡者であり理から外れた身であるが1つだけ言える…奴は狂っている…!』

猿の痣を持つ男が呟く

 

『あれが古代エジプトを崩壊させた邪神か…奴ならあの者を倒すかもしれないな…』

 

『ヒャハハハ…いいじゃねぇか奴のノリ…オレも許せない奴がいるからなぁ…さぁ、始めようぜ大将?この世をぶっ壊す戦いをよぉ…!』

巨人の痣を持つ男が蜘蛛に問いかける

 

『うむ、今こそ世界を闇に沈める時だ…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…」

 

「………」

翠はベッドにて眠る遊海を看病する…襲撃から3日、遊海は目を覚ます事無く眠り続けている…。

 

ガラッ…

 

「翠、遊海の具合はどうだ?」

 

「海馬さん…すいません、わざわざ来て頂いて…」

 

病室に海馬が訪れる…この病院はKC傘下の病院であり…治安維持局ですら手を出せない安全地帯である…。

 

 

「遊海さんはずっと眠っています…たまに痣が光ると苦しそうな顔をするんですが…目を覚ましてくれないんです…」

 

「そうか…しかし本当なのか?あの『ゾーク』が甦ったというのは?」

 

海馬は記憶の世界でゾークと遭遇している…切り札である『究極竜』、そして遊戯との最強モンスターである『究極竜騎士』すらも跳ね除けた邪神の存在は30年以上の時が経った現在でも記憶に刻まれている…。

 

 

「はい…アヤカちゃんやフレアちゃんに確かめました…完全ではないそうですが…」

 

「…そうか、ゴドウィンめ…裏でコソコソしていると思えば…!奴はこの状況を把握しているのだろうな…!あのタヌキめ…!」

 

「海馬さん…」

 

「いくら弱体化しているとはいえ遊海は遊海だ…そのうち必ず目を覚ます、心配せずに待ってやれ…さらばだ」

 

「はい…ありがとうございます…!」

 

 

 

「ハァ…」

 

《翠姉…ちゃんとご飯食べなきゃだめだよ?ずっと遊海兄に付きっきりでまともにご飯食べてないでしょ?》

遊海の看病を続ける翠の隣にウェンが現れる、彼女の言うとおり翠はこの3日程まともな食事を摂っていなかった。

 

「ウェン…私は大丈夫、遊海さんはもっと辛い思いをしてるんだもの…それに食べなくても私は…」

 

《でも…遊海兄が起きた時翠がそんな顔じゃあ心配しちゃうよ?ほらっ!》

 

「あっ…」

ウェンが手鏡で翠の顔を映す…髪はボサボサで目元には隈が出来ていた。

 

《翠が元気なら遊海兄もきっとすぐに元気になるよ!だから一回休もうよ…ねっ?》

 

「そうね、一回家に帰りましょうか…遊海さん、また来ますから…ゆっくり休んでくださいね…」チュ

翠は遊海の頬にキスをして病院を後にした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「…」」」



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卑劣なる復讐〜運命に導かれし者達〜

すいません!今日からFGOのクリスマスイベのため更新速度が低下します!少しづつ書き進めますので少々お待ちください…目指せBOX50箱以上…!

それでは最新話をどうぞ!


「…知らない天井だ…ここは何処だ…?」

意識が覚醒する、見慣れない天井…清潔感のある部屋…何処かの病院のようだ。

口の中はカラカラ…身体中で痛まない所は無く力もはいらない…たしかダークシグナー?になった偽バクラとの闇のゲームで…

 

 

《お目覚めですかマスター…おはようございます、マスターが昏睡して4日ほど経っています…気分はいかがですか?》

 

「おはようアヤカ、そんなに眠ってたのか…気分はいつも通り最悪だよ、それに身体中が痛い…!」 

 

《しょうがありませんよマスター…マスターの肉体は17年前から著しく弱体化しています、闇のデュエルのダメージは今のマスターにとって1番の毒なのですから…》

 

「ああ、わかってる…でも戦いは避けられない、俺が眠っている間に変わった事は?」

 

《…昨日の夜サテライトで大規模なエネルギー反応を確認しました、識別パターン『Ccapac Apu』です…!》

 

 

「そうか…遊星は無事だろうか…」

サテライトにおける地縛神の出現…それはダークシグナーが本格的な活動開始を意味していた。

 

 

巨人の痣を持つ「復讐者」『鬼柳 京介』

 

猿の痣を持ちルドガーに忠誠を誓う『ディマク』

 

蜥蜴の痣を持ち唯一理性を保つモデル 『ミスティ・ローラ』

 

ハチドリの痣を持ちただ一人への「愛」のために復活した 『カーリー渚』

 

シャチの痣を持ち故郷の恨みを晴らそうとする 『ボマー』

 

蜘蛛の痣を持つダークシグナーのリーダーである 『ルドガー・ゴドウィン』

 

コンドルの痣とドラゴン・ヘッドの痣を受け継いだ「新世界の神」になろうとした悲しき男 『レクス・ゴドウィン』

 

…そして詳細は不明だが冥界から復活した「大邪神」『バクラ=ゾーク』

とにかくバクラだけは俺が倒さなければ…倒さなきゃダメなんだ…!

 

 

《遊海、あまり思い詰めるでない…顔に出ているぞ?》

 

《そうです主よ、我らも付いています!何より主の強さは拙者達が1番わかっています!》

 

《ユウミ…私達があなたを護ります!だからユウミはやれる事を精一杯してください!》

 

「メガロック…みんな…ありがとな…!こんな情けないマスターでごめん…!!」

遊海は精霊達の応援を聞いて涙する、ゼロ・リバースから17年…遊海は精霊達にも大きな苦労を掛けてしまっていた。

 

《マスター、私達はあなたに付いていくと決めています!これまでもたくさんの困難を乗り越えてきました!今回も乗り越えていきましょう!》

 

「ありがとうアヤカ…みんな!」

 

 

 

 

 

 

 

「…そういえば翠は…?」

ナースコールを押し一通りの検査を受けた遊海はポツリと呟く…

 

《翠は一度家へと戻っています、昨日までの3日間付きっきりで看病していたので…疲れて眠っているのではないでしょうか?》

 

「そうだったのか、今度何か埋め合わせしないとな…トリシューラ・プリンがいいかな?それとも旅行にでも行こうか?」

 

《なら旅行がいいかもしれませんね!いつかの約束もありますし!》

 

「世界の祭り巡りか…無事に騒動が解決したらみんなで行こ…コフッ!」

 

《…その前にその病弱を直さないといけませんね…なんとか解決策はないでしょうか…》

 

「ああ…回復系統のカードもダメ…消滅してからの再生でも…DT界の煉獄の封印穴での回復もダメ…本当に神様にでも頼まないとダメか…?」

遊海は最後の切り札として自分を転生させてくれた神に頼む事も考えていた…しかしそれは本当の最終手段にしている、遊海はできれば自分でこの状況をなんとかしたいと思っていたからだ。

 

「神様は俺に新たな人生と相棒、そして翠と再会させてくれた…これ以上は頼り過ぎてはいけない気がするんだ…」

 

《マスターらしい考えですね、きっとまだ方法はあるはずです!探していきましょう!》

 

 

 

(えー…普通に頼ってくれて良いのにのう…)

 

(あなた、彼の意見を尊重しましょう…彼が頼ってくるまでは…)

 

(そうじゃのう…頑張るのじゃ遊海…)

 

 

 

「…なんか誰かに褒められた気がするが…まぁいいか、少し休むよ…」

 

《そうですか…おやすみなさいマスター…》

そして俺は再び意識を手放した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…少し寝過ぎたか…?」

次に目を覚ますと陽が落ちていた…サイドテーブルには夕食であろうラップをしたお粥が置いてある…

 

「アヤカ…翠は…?」

 

《来てませんね…どうしたのでしょうか…?》

俺が寝ている間にも来ていないらしい…なんだろう胸騒ぎがする…!

 

「アヤカ…サーチしてくれ、この町ぐらいならいけるだろ?」

 

《了解です!サーチ開始………あれ…?》

 

「どうした?」

町をサーチしたアヤカが怪訝な声をあげる…

 

《家にいませんね…というかこの場所は…?マップ展開します!》

空中に町の地図が投影される…翠を示す紫の点は家ではなく埠頭近くを指していた…

 

「埠頭…だと?なんだってそんな場所に…?」

 

Buuu…Buuu…

 

 

「電話…」

サイドテーブルに置かれたスマホがバイブ音で着信を知らせる…液晶には"翠"と表示されている…

 

「もしもし翠?心配かけてごめん、どうしたんだ?」

 

『やぁ…岸波 白野、いや…白波 遊海…元気かい?』

 

「その声…!貴様…ディヴァインだな!!!」

 

『フッフッフッ…正解だよ、私の事を覚えてくれているなんて光栄だなぁ…』

電話口から聞こえてきたのは翠ではなくアルカディアムーブメントの代表…ディヴァインの声だった…。

 

 

『貴様の大事な大事なお姫様は預かった…返してほしくば今すぐドミノ埠頭の倉庫まで来い…失われた決闘王!』ピッ…

ディヴァインは一方的に要件を伝え電話を切った…

 

「ディヴァイン…貴様ァァァ!!!!」

 

 

 

 

「遊海!目が覚めたそうだな!今回の話を…なっ!?奴め!何処に行った!!」

海馬が遊海の病室を訪ねる…しかし遊海の姿は無く、ベッドには破り捨てられた包帯と血だけが点々と落ちていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズゴァン!!

 

 

「ディヴァイン…貴様ァ…!」

 

『いやはや…早いお着きじゃないかメタルナイト・白波 遊海…電話してまだ10分と経っていない…よっぽどあの女が大切なんだなぁ…』

遊海は電話を受けてすぐに倉庫へと向かった…しかし傷が開き鎧の下は血塗れとなっている。

 

 

「翠は何処だ…!」

 

『ああ…ここだよ、まったく彼女を捕らえるのも一苦労でね…少々手荒になってしまったよ!』

 

「ん〜!!んんー!!」

 

「翠…!…貴様…よっぽど地獄に堕ちたいらしいな…!」

 

ディヴァインの隣に椅子に拘束され口を塞がれた翠が照らし出される…自慢の長い髪をショートに切られ、傷だらけの姿で…

 

 

『さぁ…デュエルといこうか白波…私に勝てたら女は返してやるよ…!』

 

「許さない…許さないぞ貴様ァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ディヴァインLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「静寂のサイコウィッチ」を召喚!』

桃色の髪のサイキッカーが現れる DEF1200

 

『カードを2枚伏せターンエンド!』

ディヴァインLP4000

サイコウィッチ 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!!ドロー!」

「貴様だけは徹底的に潰す!!手札から『融合』を発動!手札の3体の『サイバー・ドラゴン』を融合!!現われよ!最強の機械龍!『サイバーエンドドラゴン』!!!」

機械族屈指の攻撃力を誇る巨大な機械龍が顕現する ATK4000

 

 

『これは…かのプロデュエリスト「皇帝」のエースモンスター…、一撃で勝負を決めるつもりか…』

 

「そうだ!俺は装備魔法『エターナル・エヴォリューション・バースト』と『リミッター解除』を発動!『サイバーエンド』の攻撃力は倍となりバトルする時相手はモンスター・魔法・罠の効果を発動できなくなる!!」

サイバーエンドの体長が倍になり全てを破壊する光を纏う ATK4000→8000

 

 

「バトル!『サイバーエンド』で…!」  

 

『いいのかい?白波、君の女がどうなっても?』

 

「何…!?」

ディヴァインは一つのスイッチを懐から取り出す

 

『このスイッチを押せば女の頭上から重さ数百キロの鉄板が落下する…これを私のライフが0になる瞬間に押そう…さぁ…彼女はどうなるかな?』

ライトが翠の頭上を照らす…そこには黒く光る巨大な鉄板があった…

 

『条件を変えよう白波…お前がこのデュエルで負ければ彼女は開放しよう…君が勝てば…ぺしゃんこだ』

 

「き…貴様…貴様ァァァ…!!」 

遊海は拳を握り締める…翠は自身とは違い力は万全…鉄板に潰されても死ぬ事はないだろう、しかし…痛みは伴う…

 

「んー!!ん〜!!」

 

翠は何かを訴えかける…恐らくこう言っているのだろう…「私の事はいいからディヴァインを倒して」と…それでも俺は……翠にこれ以上傷ついてほしくない…!

 

 

「…ターンエンド…『リミッター解除』の効果を受けた『サイバーエンド』は破壊される…」

 

「ん"ん〜!!?」

遊海LP4000

手札0

 

 

 

『フッ…自身の勝利よりも女の安全を取るか…泣かせるなぁ、しかしその甘さが命取りになる!』

 

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『自分のフィールドにレベル3のモンスターがいるとき、手札を「サイコ・ウィールダー」と「サイコ・トラッカー」を特殊召喚!』

 

一輪車に乗ったロボットとヨーヨーを操るロボットが現れる DEF0   DEF600

 

『そして私はレベル3の「サイコウィッチ」と「サイコトラッカー」にレベル3の「サイコウィールダー」をチューニング!』

 

3+3+3=9

 

『我が魂を燃やす復讐の黒炎よ!世界を破壊せよ!シンクロ召喚!「メンタルオーバーデーモン」!』

強化された白い悪魔が現れる ATK3300→3900

 

『シンクロ素材になった「トラッカー」の効果で「メンタルオーバーデーモン」の攻撃力は600アップしている!さらに魔法カード「ファイヤーボール」を発動!500ダメージを与える!』

巨大な火の玉がリアルダメージを伴って遊海に直撃し爆発する!

 

「ガッ…うぐぁぁぁ!!?」

遊海LP4000→3500

 

 

『ハハハハ!貴様のその声が聴きたかった!17年前のあの日!私の野望を踏み躙った貴様の苦しむ声が!!さぁ…消えろ!「メンタルオーバーデーモン」でダイレクトアタック!!』

 

悪魔の巨大な爪が遊海に迫り…

 

 

 

遊海LP0

 

ディヴァイン WIN!

 

 

 

 

 

 

「ガッ…!」

巨大な悪魔の爪は遊海の胸を貫通…コンテナに遊海を張り付けた…

 

 

『フフフ…フハハハハ…!!やった…やったぞ!!私は最強だ!最強の決闘王を殺したのだ!フハハハ!アハハハハハハ!!!』

ディヴァインは狂ったように笑い続ける…その目には復讐の炎が揺らめいていた

 

「ん"ん"ー!?ん〜!!」

翠は遊海を助けようと拘束を解こうとする

 

『無駄だ、その拘束は「闇の呪縛」を使った拘束…力を使えねば君もただの人だろう?さぁもう一眠りしてもらおうか…大丈夫、お前達の身体は有効活用させてもらう…我が野望「世界征服」のために…!』

ディヴァインは拘束された翠に近寄る…その手には注射器が…

 

『さぁ…おねんねの時間だ…永遠に…!』

 

「ん…!!」

ディヴァインの注射器が翠の首筋に…

 

 

 

 

 

 

ガシッ…

 

 

 

 

「俺の妻に触るな、ゲスが…!」

 

『なにっ…なぜ生きてグボァッ!?』

ディヴァインの顔面に遊海の拳が突き刺さり吹き飛ばされる!

 

 

「んんー!」

 

「ごめんな翠…今解くから…」

 

「貴様…確かに胸を貫いたはず…!」

 

「お前の目は節穴か?よく見ろよ、貴様が倒したモノを…!」

 

『何だと…岩…!?』

起き上がったディヴァインは遊海が張り付けになっていたコンテナを見る…そこには人の形をした岩人形があった。

 

 

「すまないなメガロック、トフェニ…助かった」

 

《いいのです主殿…先に決闘者のルールを破ったのは相手方…ならば我らも相応の手段を講じるまで!》

 

《覚悟はできているか小物、翠への暴力の報いを受けてもらうぞ!!》

 

「カードの精霊共の仕業か…!」

 

 

ディヴァインにファイヤーボールを受けた直後、遊海は爆炎に紛れ離脱、その後メガロックの岩操作で人形を造りトフェニが幻術を使いディヴァインと翠に偽りの姿を見せたのだ。

 

 

「遊海さん!ごめんなさい…私…」

 

「いいんだよ翠、ショートカットも似合ってる…明日、美容院で整えてもらおう…その前にこのバカに仕置をしてからだけどな…!!」

 

『ぐっ…お前達!こいつらを殺せぇ!!』

 

「「「…」」」

 

倉庫のいたる所から10人程の男が現れる、瞳に光は無い…洗脳を受けているようだ…

 

 

 

「遊海さん!気をつけて!あの人達全員サイコデュエリストです!私もいきなり襲われて…」

 

「…そういう事か…アヤカ、トフェニ、メガロック…遠慮なくブッ飛ばせ!」

 

『『『了解!!』』』

そこからは一瞬だった、アヤカの体当たりで全員纏めてふっ飛ばし、トフェニが魔法陣で拘束し…メガロックがサッカーボール大の石で全員を気絶させた…この間わずか1分ほどである。

 

 

 

「報いを受けろディヴァイン!30%キラーナックル!!」 

 

『グボァァァ!?』

最後に遊海の怒りの鉄拳がディヴァインの腹に突き刺さり…蹂躙は終わった…。

 

 

「なんでこんな力があるのに平和のために使わないんだよこの馬鹿野郎…アイタタ、傷が全部開いたなこりゃ…翠…その…乱暴はされてないな?」

 

「はい…殴られたりはしましたけど…それ以外は…」

 

「そうか…よかった、あとは海馬社長に任せよう…歩けるか?」

 

「ごめんなさい…逃げられないように足を切られてしまって…」

椅子に座る翠の足元には血溜まりが出来ていた…アキレス腱を切られたようだ…。

 

「この外道め…!とにかく脱出しよう、俺のいた病院に戻って治療してもらって…回復魔法で治そう…ほらっ」

遊海は翠に背中を見せてしゃがみ込む…いわゆるおんぶの体勢である。

 

「えっ…でも遊海さん…身体が…!」

 

「翠…これくらいなら大丈夫だよ、さぁ乗って…」

 

 

 

 

 

グサッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えっ…?」

その瞬間、遊海は何が起きたのかわからなかった、唯一確かな事は…自分の胸から巨大な刃が生えているという事だ…、その刃を握っていたのは…

 

 

《翠!!何をしているんですか!!?》

 

「……」

虚ろな瞳で遊海に刃を突き立てる翠の姿だった…。

 

 

 

 

 

「み…みどり、何を…するんだ…!!」

 

「…!」

遊海は翠を振り払う…翠はそのまま尻もちをついて倒れ込む…

 

「ゴボッ…まさか…『後催眠』とか言う奴か…?」

 

後催眠…それは催眠状態の人間に一定の刺激を受けた時に一定の行動を取るように仕向ける催眠術の一種である…本来は心の病の治療などに使われるが…

 

 

「くっ…『洗脳解除』…!」

 

「…あれ…私…何を…?な、何これ…!遊海さん…私…!」

翠の催眠が解ける…意識を取り戻した翠は状況を認識できずに混乱する…

 

「…翠、ごめん…!!」

 

「あ、ああ…私…!うぐっ…!?」パタッ 

遊海はできる限り弱い力で翠を気絶させる…

 

 

「ハァ…ハァ…ガッ……」バタンッ

翠が気絶した事で胸の刃が消失する…それにより栓が無くなり遊海の身体から鮮血が溢れ出す…

 

「…トフェニ…翠を連れて逃げろ…早く…!」

 

《し、しかし主よ!》

 

「マスター命令だ…もう…意識が保たない…早ゴフッ…!」

遊海と精霊達の繋がりは特殊で本来は遊海の意識が無くとも精霊達は自由に実体化ができる…しかし弱体化した遊海の場合…遊海の意識が無い間は精霊達も実体化できなくなってしまうのだ…。

 

《御意…!翠殿を連れて病院へと向かいます…!!》

 

「頼む…!!」 

トフェニは翠を抱き上げ空へと飛び立った…

 

 

『フフフ…ハハハハ…どんな気分だ白波?自分の愛する女に殺される気持ちは?』

 

「ディヴァイ…きさ、ま…!」

倒れていたディヴァインが平然と立ち上がる…彼の腹部から歪んだ鉄板が地面に落ちる…

 

『フフフ…こうもシナリオ通りに行くとはなぁ…しかしパンチだけなら17年前の方が痛かった…よ!!』

 

「カハッ…あ"あ"あ"あ"…!!」

ディヴァインは遊海の腹を踏み付ける…

 

『正直あの女のデータをもう少し調べたかったが…まぁいい、こうして貴様を痛めつけられればなぁ!!!!』

ドガッ!バキ!ボキッ…!

 

ディヴァインは何度も遊海を踏み付ける…17年前、遊海に捕まったディヴァインはゼロ・リバースの混乱に乗じ逃げ出した…それから時が過ぎてなおディヴァインは行方不明となった遊海を探し復讐の機会を狙っていたのだ…。

 

 

「ゴハッ…うぐぁぁぁ…!!(意識を切らすな…せめてトフェニが病院に着くまで…)」

骨の砕ける痛みに耐えながら遊海は意識を保とうとする…

 

『17年…貴様を探し続けた!「お前の力には鉄の強さも鋼の意思も感じない」だと?貴様に何がわかる!!私は最強だ!進化した新たな人類だ!私は!この力で!世界に復讐する!!私を蔑んだ者を蹂躙するために!!!』バキ!グシャ!ゴリッ…!

 

「ガッ…貴様…は…間違…てる…、憎…みは…憎しみしか生…ない、世界…敵…回し…勝ち…無い…!」  

 

『うるさい!うるさいうるさいうるさい!!!この減らず口が!!!』ガン…ボキッ…

 

「…ゴボッ…ヒュ…ヒュ…(駄目だ…まだ………少し…)」

 

《(主殿!翠殿と病院に到着!海馬殿に引き渡しました!まもなく…)》 

トフェニから念話が届く…翠を安全地帯まで連れて行けたようだ…

 

『はぁ…はぁ…これで終わりだ白波…貴様の身体はバラバラに解剖して我らの糧にしてやる…じゃあな!!』

 

 

ザンッ…グサッ…

 

ディヴァインはサイコソードを実体化…遊海の心臓を完全に斬り裂いた…

 

 

「……!(この世で一番怖いのはどんなモノよりも人間……よく言ったもんだ…な……)」

この思考を最後に遊海の意識は黒く塗りつぶされていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷室・矢薙Side

 

 

 

「う〜む…?ありゃ?ここはどこじゃ?龍亞と龍可はどこじゃ?」

 

「ぐっ…どうしたんだ爺さん…?何だこの部屋は…?」

 

矢薙と氷室は暗い牢屋のような部屋で目を覚ます…彼らは龍亞達と4人でメタルナイトと謎の5人目を除いたもっとも近くにいるシグナーである十六夜 アキに協力を求めるためにアルカディア・ムーブメントを訪れていた…、その際サイコデュエルで怪我をしたというディヴァインと食事を取る中…麻酔ガスで眠らされこの部屋に監禁されたのだ…。

 

 

「やはりアルカディア・ムーブメントはヤバイ組織だったか…龍亞達が無事だといいんだが…」

 

「それもそうじゃが、ワシ達はどうなるんじゃ!?なんだか嫌な予感がするぞ氷室ちゃん!」

 

「とにかく脱出方法を…ん?なんだかこの部屋臭くないか…?」

 

「な、なんじゃ!ワシはオナラはしとらんぞ!」

 

「いや…違う、これは…血の匂いだ…!」

脱出方法を考える中氷室は部屋に漂う鉄の匂い…血の匂いに気がつく…

 

「ま、まさか実体化したモンスターにワシらを食べさせようというんじゃ…!」

 

「いや…違う…あの袋からだ…!」

 

「あ、あれは…死体袋という奴では…!?」

 

2人は部屋の隅に人間大の黒い袋…いわゆる死体袋を発見する…

 

 

「ワ…ワシらもああなるんかのぅ…!?」

 

「…中を見てみよう、オレ達はこんな正装で脱出に使えるモノは身体しかねぇ…針金1本でもあれば儲けもんだ…!」

 

「ひ、氷室ちゃん!やめた方が…!」

 

矢薙の静止を無視して氷室はチャックに手をかけ袋を開く…

 

 

「…こいつはひでェ…身体中がボコボコだ…コイツ、いったい何をやらかしたんだ…?」

袋の中身は全身血塗れの男だった…胸を刺され身体中の骨が折れているようだ…

 

「ヒィ…これは…んん?まさか…氷室ちゃん!この男…シグナーだ!腕に痣がある!」

 

「なんだって…!確かに右腕に痣が…この模様…まさか…メタルナイト…!?」

氷室は覚えていた、フォーチュン・カップのさなか遊星と戦ったメタルナイト…その腕と同じ痣が浮かんでいたからだ…。

 

「まさか…!」

氷室はハンカチで男の血を拭き落とす…その顔は…彼らの知る男…岸波 白野その人だった。

 

「白野…お前がメタルナイトだったのか…!でも…なんでお前がこんな目に…!」

 

「白野の兄ちゃん…アンタ…!氷室ちゃん!まだ息がある!生きとるぞ!!」

 

「なんだって!?…いったいどんな生命力してやがるんだ…?」

矢薙は血濡れの遊海を見てその命の灯火が消えていない事に気づく…遊海は文字通りの「不老不死」…少しづつだが傷付いた身体を修復していた…。

 

 

「氷室ちゃん!早く脱出しよう!早くせんと白野が死んじまう!」

 

「でも迂闊に出たら…なんだ!?」

 

ゴゴゴ…ガガガガガガ…!

 

突如として地震が起きる…外ではディヴァインに殺され復活したカーリーとディヴァインのデュエルが始まろうとしていた…。

 

 

 

 

「…収まったか…デカイ地震だった、今ならば行けるかもしれない…!どぉりゃ!!!」

氷室は頑丈な身体を活かし扉に体当たりする…そして3回目で扉は外れ、外への道が開いた!

 

「よっしゃ!ナイスじゃ氷室ちゃん!早く龍亞達を探して脱出じゃ!」

 

「わかった!…白野、少し手荒になるが我慢してくれよ!」

氷室達は遊海の入った袋を担ぎ、牢屋から脱出した…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

龍亞・龍可Side

 

 

 

 

「さっきの揺れはいったい何なの…!?」

龍可はアルカディア・ムーブメントの一室に閉じ込められていた、やさしいと思っていたディヴァインは悪者だった…ディヴァインとのデュエルに負けた龍亞はガラスを隔てた部屋で気絶している…助けはいまだに来なかったが…

 

 

ドシン!…ドシン!…バキ!!

 

 

「龍可ちゃん!無事かの!?」

 

「遅くなってスマン!助けに来た!」

 

「氷室さん!矢薙さん!!」

 

扉を破って矢薙と黒い袋を担いだ氷室が部屋に入ってくる!

 

「氷室さん!龍亞が!」

 

「ガラスか!2人共!どいてろ!せりゃ!!」

 

 

バリーン!!

 

黒い袋をベッドに置いた氷室がソファでガラスを割り龍亞を助け出す

 

 

「おい!龍亞!大丈夫か!ケガはないか!」

 

「う〜ん…あれっ…氷室のおっちゃん…そうだオレ、ディヴァインに負けて…ハッ!?龍可は!」

 

「龍亞!わたしは大丈夫よ!」

 

「龍可!!…よかった〜…」

龍亞は龍可の無事に安堵する…

 

「とにかくここから脱出するぞ!なんだかヤバそうだ!」

黒い袋を担ぎ直した氷室が2人に脱出を促す…そして4人は部屋を飛び出した…

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ、おっちゃん!それ…何を背負ってるの!そんな袋置いていきなよ!」

 

「ダメなんだ龍亞…コイツだけは置いて行けねぇ…コイツを連れて早く脱出するぞ!」

 

「その袋…人が入ってるの?知ってる人…?」

 

「ああ…その話は後だ!早く脱出するんだ!」

 

「…待って!痣が…誰かシグナーが戦ってる!」

龍可の痣が光を放つ…それは近くでシグナーが決闘している事を示していた…。

 

「まさか…!」

 

「おい!待てよ龍可!!」

龍可は反対方向に走り出す…そして龍亞達もそれを追いかけた…。

 

 

 

 

 

戦っていたシグナーはアキだった、彼女はダークシグナーと化したスーパーモデル・ミスティと戦っていた、しかしそのデュエルのさなかにダークシグナーとなったカーリーに敗北したディヴァインがビルから落下…アキは戦意を喪失してしまう…。

 

「…貴女との勝負はお預けね…さようなら…」

 

そう言ってミスティは姿を消した…後には呆然自失となったアキだけが残されていた…。 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…なんとか間に合ったか…!」

 

ビルが崩壊する中、龍亞達4人はなんとかアルカディア・ムーブメントから脱出する…息は切れているが全員ケガは無い

 

 

ギュイイーン…キキーッ!!

 

「お前達!いったい何があった!!」

 

「ジャック!!」

 

新生したホイールオブフォーチュンに乗り、元キングとなったジャックが現れる…騒ぎを聞き駆けつけたのだ。

 

 

「詳しくはわからん!十六夜 アキとダークシグナーのデュエルがあったんだ!」

 

「そうか…十六夜はまだ中か!?」

 

「あ、ああ…ってオイ!中は危険だ!戻れ!ジャック!!」

 

答えを最後まで聞かずジャックは崩壊するアルカディアムーブメントへと突っ込んで行った…。  

 

 

 

「氷室ちゃん!ワシらは早く離れるんじゃ!あと早く病院へ!彼が死んじまう!!」

 

「くっ…無事でいろよジャック…!」

氷室達は袋を担ぎ直しビルから離れた…

 

 

 

『……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜…ここまでくれば安心じゃわい…老体には…堪えるのぉ…」

 

「はぁ…はぁ…こ、怖かった…!龍可は大丈夫?」

 

「うん…走り過ぎて…疲れちゃた…」

 

「ダメだ…急がなくちゃならないが…体力が限界だ…!」

龍亞達はビルから100メートル程離れた場所で座り込む、特に氷室の疲労は凄まじいものだった…。

 

 

「龍亞、龍可…携帯は持ってないか?」

 

「ううん、持ってないよ…ねぇ…その袋の人…生きてるの?」

龍亞は氷室に訪ねる

 

「…正直わからねぇ…そもそも生きてるのが不思議なくらいだ…」

 

 

 

 

『…そいつは死なないのではない…死ねないのだ…』

 

「「「「!?」」」」

 

 

突如、4人の目の前に人影が現れる…それは黒いコートを着た顔を隠した男だった。

 

 

「お前…何者だ!」

 

『お前達に名乗る名は無い、しいて言うなら()()味方だ…そいつを治療しにきた、そいつの怪我はこの時代の技術では治す事はできない…』

 

「龍可ちゃん…あいつはダークシグナーではないのかい…!」

 

「ううん…違うわ、痣が光らない…それに大丈夫な気がする…」

矢薙に問われた龍可は首を横に振る…そして一つの確信があった…「この人ならば大丈夫」と

 

「…何か変な事をしようとしたらすぐに止めるからな…!」

 

氷室は前に出て袋を開く…中には傷付いた遊海が眠っていた…。

 

 

「そんな…白野!白野!!生きてるの!?生きてるんだよね!?」

 

「ヒッ…!」

子供達は傷付いた遊海を見て目を覆ってしまう…

 

 

『まったく…貴様はどうしてここまでボロボロになってまで人を救おうとする…?とにかく貴様には死んで貰っては困る…イレギュラーである奴を倒して貰わなければな…「ディアンケト」よ、愚か者の傷を癒せ…』

黒コートの手から緑色の光が放たれる…そして遊海の身体からゴキゴキと嫌な音がしながら傷が塞がっていく…

 

 

「貴方もサイコデュエリストなの…?」

 

『似て非なる者だ、こいつが起きたら伝えろ…「塩を贈るのは一度だけだ、イレギュラーを倒せ」…とな、さらばだ…』

 

そう言って黒コートの男は姿を消した…。

 

 

 

「いったい奴は何者なんだ…?白野のキズがほとんど治ってやがる…」

 

「…わたし…あの人に会った事があるかもしれない…少し雰囲気は違うけど…確か白波 遊海って名乗ってたような…?」

 

「白波 遊海じゃと!?龍可ちゃん、それは絶対にありえないぞ!?」

 

「矢薙さん?なんで…?」

 

「ワシも聞いた話じゃが…17年前、この町では『バトルシティ』という大会が開かれていた…その決勝戦の日…ゼロ・リバースが起きたんじゃ…彼は特別な力を持っていてサテライトの離れ島『希望の島』にいた5万人近くの人々を救って行方不明なんじゃ…もう死んでおるかもしれん…」

 

「そんな…でも…!」

 

 

ビシューン!!

 

「わわ…今度はなんだ!?」

 

「ジェット機…まさかアレは…!」

龍亞達の頭上にジェット戦闘機が現れ着地する…その中から出てくるのは当然…

 

 

「白野…!無事か!!」

 

「なっ…KCの海馬 瀬人社長…!?」

 

「うそッ…!?」

海馬が飛行機から飛び降りる…そして眠っている遊海を見つける…

 

「お前は…元プロデュエリストの氷室 仁だな?我が友を救ってくれたようだな…感謝する」

 

「あ…いえ…どうして貴方がここに…?」

 

「白野の携帯に発信器を付けていてな…昨日アルカディアムーブメントに襲撃されて行方不明だったのだ…まったく無茶をしおって…コイツはオレが預かる!見舞いに来るならばKCブルーアイズ病院へ来い!さらばだ!!」

海馬は駆けつけた青眼救急車に遊海を託しブルーアイズジェットで去って行った…。

 

 

 

「…いったい白野って何者なの?精霊が見えて、海馬社長と知り合いで…」

 

「あと、白野もシグナーだ…さっき痣を見た…」

 

「「えっ!?」」

 

「もしかして白野って…」

 

「ああ…あいつは『鋼の騎士』だ…オレも驚いたんだが…」

 

「「え、えぇぇぇ!?」」

 

 

 

 

ネオドミノシティに双子の叫び声が響き渡ったのだった…。



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集いし希望〜シグナー集結!〜

「…ここ…は…?」

意識が覚醒する、全身が鈍い痛みを放っている…確か俺はディヴァインに殺されかけて…でも今いる場所は元の病室…?

 

 

「遊海…目が覚めたか、何故貴様は面倒事にばかり巻き込まれるのだ…?」

 

「海…馬社…長…ど…して…?」

ベッド横に海馬社長が座っていた、声がうまく出ない…たしかディヴァインに喉の辺りも踏まれてたな…

 

「無理に喋るな、傷はほとんど治っているようだがそれでも重傷だ…今、オレの知っている事を話してやる」

 

 

海馬さん曰く、バクラの襲撃を受けた俺の覚醒を聞いて病院に向かうと病室には包帯と血を残して俺の姿が無い、何かがあったと直感し携帯の通信記録から俺の居場所を特定しようとすると翠を抱えた龍…トフェニが病室に戻ってきた、少し医師達がパニックになったが急いで翠に治療を施したそうだ…。

 

そして消滅直前のトフェニから俺の危機を聞いて急いで埠頭の倉庫に向かうも大量の血痕を残して中はもぬけの空…携帯の電波を追うもアルカディアムーブメントの近くで電波が途切れたらしい。

 

そしてアルカディアムーブメントへの突入準備を進める中シティで地震と火事が発生…そして巨大な蜥蜴と鳥のモンスター…地縛神がビルを囲むように出現、さらにそのタイミングで携帯の電波が復活、ブルーアイズジェットで急行すると元プロデュエリストの氷室達に保護されている俺を発見…急いで病院に搬送してくれたらしい…。

 

 

「結果的にアルカディア・ムーブメントは半壊、幸いにも死者は0、ただしシグナーの一人である十六夜 アキが意識不明…総帥ディヴァインが行方不明だ、ビルも壊れている…生き埋めになっている可能性が高いだろう…」

 

「そ…ですか…翠…は?」

 

「翠は隣の病室で休んでいる、翠も多少なり怪我を負っていたからな…大丈夫だ、大事は無い」

 

「ありが…とう…ござ…います」

 

「…瞼が重そうだな…オレはゴドウィンに呼ばれているから行かなくてはならん、ゆっくり寝ていろ」

 

そう言って海馬さんは出ていった…この17年で一番お世話になっているのは海馬さんだろう、住民票のパーソナルの改変…俺でもできる仕事の提供…とにかく色々お世話になっている…考え事をしていると眠く…なって…

 

 

 

 

 

 

 

「ん…?」

 

「あっ!起きた…!白野!大丈夫…?」

 

「龍亞!白野は病人なんだから!」

 

目を覚ますと緑色の髪の男の子…龍亞が至近距離で俺を覗き込んでいた…他にも龍可や矢薙さんと氷室さんもいる…

 

 

「おはよう龍亞…少し久しぶりだな、みんなで俺を助けてくれたって聞いたよ…ありがとな…」

 

「白野…おれ何もできなかった、助けてくれたのは氷室のおっちゃんと矢薙さんだよ…」

 

「まったく…びっくりしたぞ?閉じ込められたと思ったら同じ部屋に瀕死のお前さんがいたんだから…」

 

「白野…お前は何者なんだ?アルカディアムーブメントにあそこまで痛めつけられるなんて…お前が『メタルナイト』だからか?」

 

「!?…どうしてそれを…」

遊海は驚きをあらわにする 

 

 

「死体袋に入れられていたお前の身体を検めた時に見たんだよ…右腕の炎の痣を…だから正体に気づいた」

 

「死体袋って…はぁ…バレちゃったか、龍亞…ゴメンな?メタルナイトの正体がこんなガリガリで残念だろ?」

 

「ううん!メタルナイトはメタルナイト!白野は白野だよ!どっちもオレにとってのヒーローだよ!」

龍亞は俺の目をまっすぐ見ながら答えてきた…少し恥ずかしい気持ちだ…。

 

「ありがとう龍亞…そう言ってくれるなら俺も頑張ってきた甲斐があったよ、…そういえば俺、ものすごいボロボロだったと思うんだけど…誰が治療してくれたんだ?普通の医療技術じゃ無理だと思うんだが…?」

 

「その事なんだけど…黒いコートを着て仮面を着けた男の人が治してくれたの…たぶんカードの力を使っ…!?」ゾクッ

 

「「「!?」」」

その瞬間、4人は背筋が凍ったように感じた…それは遊海から放たれた殺気だった、骨と皮だけのような彼からどうしてそんな殺気が出せるのか誰もわからなかった。

 

 

「『ゲイザー』…貴様の目的はなんだ…!!」

遊海は布団を握り締める…17年前に死んだはずの人物が生きている、それだけでも不可解なのに…殺そうとした遊海を助ける…その意味がわからなかった。

 

 

ボガッ!

 

「痛てっ!?」  

遊海の頭に拳大の石が落下する…

 

《白野!何をしておる!…幼子が怖がっているだろう…》

 

「あっ…みんなごめん…!」

 

気づくと龍亞は椅子から転げ落ち、矢薙は腰を抜かし、龍可は氷室に抱き着いていた…まともに立っているのは氷室だけだった…。

 

「…とりあえずアンタがただ者では無い事はわかったよ白野…それからソイツからの伝言だ『塩を送るのは一度だけだ、イレギュラーを倒せ』…だとよ、奴はお前の因縁の相手ってところか?」

 

「ええ、少しばかり因縁があって…すいません…」

 

その後は気を取り直し俺が鋼の騎士になった経緯を話したり…今回の事件の後遊星とアキがデュエルし親御さんと和解した事を話してくれた…なお事件から3日程経っているらしい。

 

 

「じゃあオレ達今日は帰るよ!ゆっくり休んでね白野!」

 

「お大事に!」

 

「ああ…ありがとう二人とも、また会おう」

そう言って龍亞達は帰って行った。

 

 

 

 

 

「さて…あとは隠れんぼしてる奴を連れてくるだけだな…アヤカ、フレア…!」

 

『『はい!ちょっと待っててください!』』

 

俺の呼びかけに答えた二人は部屋を飛び出していく…

 

 

ドタバタ…

 

隠れてないで行きましょうよ!マスターは怒ってませんから!

 

アヤカちゃんちょっと待って…!

 

貴女の無事を確認しないとユウミも安心できないんですから!ほらほら!!

 

フレアちゃんまで!ちょっと本当に待って…きゃ!」

 

フレアに手を引っ張られ、アヤカに押される形で翠が歩いてくる…龍亞達がいる時からチラチラ見え隠れしてたんだよなぁ…。

 

 

「翠、無事でよかった…足も大丈夫そうだな…」

 

「はい…遊海さん…その…ごめんなさい!!」

翠は地面に土下座する…某語り部さんのような見事な土下座である…

 

「わ、私…遊海さんを刺して…!傷つけて…!」

 

翠によるとディヴァインに拉致・暴行され意識が朦朧とした時に暗示を掛けられたらしい…鍵は「人の背中」と「大丈夫」の言葉、その状況になった時にあらかじめ仕込まれていた「サイコソード」を実体化させ人を刺すように仕組まれていたようだ…なお翠はこの事を忘れていたがウィンダ達に魔法をかけてもらい思い出したらしい…。

 

 

「私が攫われなければ遊海さんは危険な目に遭わないで済んだのに…せっかく助けに来てくれたのに…私…わたし…!」

翠は頭を下げたまま涙を流す…

 

「私は…遊海さんの奥さん失格です…旦那さんを支えられない奥さんなんて…「翠…もういい…!」えっ…」

翠は体を抱き起こされる…遊海がベッドから降り翠の体を抱き上げたのだ…。

 

「翠…そんな事を言ったら俺も旦那失格だ…怪我や病弱になったのを理由に翠を助けられなかったんだ、俺がもっと警戒していればディヴァインの企みを阻止できた…今回は俺のせいで起きた事件だ…翠に責任はない…!」

 

「でも…でも…!」

 

「俺は翠が元気ならそれで良い…愛するお前が元気ならそれだけでいいんだ…!」

 

「遊海さん…ゆうみさぁ〜ん…!!うぇ〜ん!!」

 

「ヨシヨシ…今はたくさん泣いていい、そうすれば嫌な思い出も全部流れていくから…」 

 

遊海と翠は抱きあいお互いに涙を流した、二人の絆を…愛を確かめるように…。

 

 

 

 

「…この事を伝えるのは明日の方がいいな…流石に水を差す事はできん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜3日後〜

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ!おれ達に用事って何なんだよ?」

 

『龍亞君…君を招待した覚えはありませんが?』

 

ゴドウィン邸の前にはシグナー4人+1人が集められていた…シグナーとダークシグナーについての説明のために呼び出されたのだ…。

 

 

『私が集めたのはシグナーのみ…君にはお帰り願いましょうか…』

 

「長官さん!わたし…龍亞と一緒じゃないと行かない!」

 

『…しょうがありません、許可しましょう…まだ人も揃っていませんしね…』

 

「この場にいるシグナーはオレ、アキ、ジャック、龍可の4人…あとはメタルナイトだけか?」

遊星はゴドウィンに問いかける

 

『その事なのですが…メタルナイトの痣は伝承には無いモノ…よって計6人のシグナーがいる事になります』  

 

「6人目のシグナー…それがメタルナイトなら…5人目は?」

 

『彼は別の場所で待機しています…どうやら来たようですね…!』ヒュー

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 

ドガァン!!

 

 

ゴドウィン邸の前の道路に人影が着地する…それは…

 

「俺が来た!…ってね!」

 

「メタルナイト…!」  

上空から着地したメタルナイトだった…

 

 

 

 

『お待ちしていましたメタルナイト、これで揃いましたね…では…』

 

「ゴドウィン…ちょっと待ってくれ、俺から皆に話したい事がある」

 

『いいでしょう…話してください』

 

 

「メタルナイト!話とはなんだ?」

 

「…俺の正体についてだ、俺達は仲間になる…なら隠し事は少ない方がいいだろう?」

ジャックの問いかけに遊海が答える

 

「め、メタルナイト…いいの?」

 

「ああ…龍亞、もう隠す理由もないだろう…アーマーオフ!」

遊海は変身を解除する…そこにいたのは鎧を纏った戦士ではなく…病的に痩せ包帯を巻いた1人の青年の姿だった…。

 

「なっ…あなたは…!」

ジャックも驚き、呆然とする…彼にとっても恩人の1人であるからだ…。

 

「改めて名乗り直そう、メタルナイトこと『ドラゴン・フレイム(仮)』の痣を持つシグナー…岸波 白野だ、よろしくな!」

 

 

 

 

「…まさか貴方がシグナーだったとは…いつから痣を…?」

 

「だいたい17年前からかな…ゼロリバースの直前に腕に痣が現れたんだ、その頃から病弱になってね…」

 

「あなたがメタルナイトだったとは、ならばあの強さも納得できる…勝てる訳が無い…」

ゴドウィン邸の中を歩きながら遊星やジャックと言葉を交わす…サテライトで遊星やジャック達にデュエルの手ほどきをしたのは遊海だったりする…。

 

「メタルナイト…いえ白野、あの時はごめんなさい…私…」

 

「いいんだよアキ、全部『間が悪かった』だけさ…それより身体は大丈夫か?ダークシグナーに襲われコフッ!」

 

「「わぁ〜!?白野(さん)無理しないで!!」」

 

『オホン…そろそろ着きますが…大丈夫ですか?』

遊海が加わって若干カオスになりつつある空気を整えるように咳払いする…遊海達の目の前には巨大な祭壇があった。

 

 

『では…改めて説明しましょう、貴方達の腕にある「シグナーの痣」について…!』

そう言ってゴドウィンはシグナーについての説明を始めた。

 

シグナーとは数千年前から存在する赤き竜に選ばれた戦士である事

 

シグナーは惹かれ合い、この場にいる5人が集まったのも偶然ではなく必然である事

 

シグナーとは「生命」の力を扱う戦士であり、逆にダークシグナーは「冥府」の力を使う戦士である事

 

ダークシグナーはナスカに封印されていた邪神「地縛神」に選ばれた亡者であり、そのデュエルからは逃げる事が出来ずダメージが実体化する「闇の決闘」である事…などなど、ゴドウィンからは俺達が戦うのに必要な情報が提供された。

 

 

ジャックは「そんなオカルトが信じられるか!」などと言っていたが…一応全員が納得してくれたようだ。

 

『ダークシグナーとの戦いが始まるまで時間はありません…どうかよく考えて答えを出してください』

 

ゴドウィンはそう場を締め括りひとまずの解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…鬼柳…」

遊星は一人ゴドウィン邸のバルコニーで悩んでいた、かつての親友が恨みを持って死に…ダークシグナーとして蘇った…遊星は彼を倒す覚悟が出来ずにいたのだ。

 

「悩んでるな遊星、大丈夫か?」

 

「白野さん…」

そんな遊星に遊海が声をかける

 

「鬼柳がダークシグナーか…お前にとっては戦い辛いんだろう?…いや、恐れているってところか?」

 

「白野さん…本当に鬼柳は救い出せないのか…?オレはあいつをもう一度…!」

 

「遊星…きっと鬼柳は苦しんでいる、それを開放できるのはお前だけだ…」

 

「鬼柳が…苦しんでいる…?」

下を向いていた遊星は遊海を見る

 

「鬼柳がお前を目の敵にするのはお前に裏切られたと思っているからだ、信頼していた仲間に裏切られた…それはあいつに強い絶望を与えたはずだ、でもな復讐は何も生み出さない…仮に鬼柳がお前を倒してもあいつは満足しない…きっと新たな破壊を始めるはずだ、終わらない破壊の輪廻…それを止められる、止めてやれるのはお前だけだ」

 

「白野さん…」

 

「もし…まだ迷いがあるならジャックの所に行ってこい、あいつなら答えを聞かせてくれるだろうよ」

 

「…ありがとう白野さん…もう少し考えてから行ってみます…!」

 

「まだ覚悟を決める時間はある…今のうちに悩んでおけ」

 

「はい…!」

遊星は俺に一礼して去って行った…。

 

 

 

 

 

 

「白野…少しいいかしら?」

 

「アキ?どうしたんだ?」

遊星の去ったバルコニーにアキが入ってくる

 

「謝らせてほしいの…ごめんなさい…!」

 

「…もう大丈夫だよフォーチュンカップの日の事は…」

 

「違うの…ディヴァインに…」

 

「龍可達から聞いたんだな…別に大丈夫だよ、この通り体は動くから…」

遊海は腕を曲げ伸ばしする…実際はまだ痛みが残っていたりする…

 

 

「私のせいなの…ディヴァインにあの日の事を話したから貴方は死にかけて…」

 

「君に罪はないよ…ディヴァインとは少し因縁があってね…過去に破壊活動をした奴をふっ飛ばした事があったんだ、それをずっと恨んでいた…それだけさ、まったく…あんな力があるなら人を助ける方に力を使えばよかったのに…アキ、君も強い力を持ってる…もう使い方を間違えないようにな?」

 

「わかったわ…ありがとう、あと…一つ聞いていいかしら?」

 

「なんだい?」

 

「白野って…何才なの?遊星とだいぶ長い付き合いみたいだけど…?」

 

「う〜ん…だいたい40才位かな?海馬社長と同い年だよ」

 

「…嘘よね?見た目が若すぎるもの…」

 

「さぁ?信じるか信じないかは貴女次第です…ってね!」

 

 

 

 

 

 

〜夜〜

 

 

 

「何なんだ…この映像は…!?」

 

「サテライトが…黒いドームに覆われて…!」

 

ダークシグナーと戦う覚悟を決めた俺達は緊急事態の知らせにより治安維持局へと呼び出された…そこで見せられたのは巨大な闇のドームに覆われたサテライトの映像だった…。

 

「ダークシグナーの侵攻が始まったみたいだな…!」

 

「こんなところでグズグズしていられん!今すぐサテライトへ向かう!」

ジャックはいても立ってもいられないという感じで叫ぶ

 

「アトラス様、ヘリの準備があります…明日の朝5時にヘリがでます!もう少し待ってください…!」

 

「ぬぅ…!歯痒い…!」

狭影さんに静止されるジャックなのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

「翠、明日サテライトへ向かう…シティは頼んだ…!」

 

『わかりました…!気をつけて!…無事に戻ってきてください…!』

 

「ああ…少なくともバクラは絶対に倒してみせる!明日全てが終わったら会おう…!」

 

「はい…!!」

 

 

ピッ…

 

 

「ついに決戦か…対戦カードは確か…一応保険は賭けておくか…」

 

 

ピッポッパ…

 

プルル…プルル…ガチャ!

 

 

『もしもし!久しぶりだな先生!…どうしたんだ?』

 

「これから大きな戦いがある…精霊界に向かってほしい…!」

 

『また世界の危機って奴か?』

 

「ああ…精霊界で1人の女の子の手助けをしてほしいんだ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌朝〜

 

 

 

俺達はゴドウィン邸の屋上でヘリを待っていた…辺りは静寂に包まれている…。

 

『サテライトの謎の霧の中心地は旧モーメントのようです…やはり運命なのでしょう、旧モーメントの開発者不動博士の息子よ…シグナー諸君の目的は2つ、ダークシグナーの打倒…そして暴走しつつある旧モーメントの制御となります…!』

 

「えっ…?遊星がモーメント開発者の息子…!?」

 

「どういう事…?」

 

「二人共…話は後だ、迎えが来たみたいだ…!」

 

バラバラ…

 

遊星の言葉と共に迎えのヘリが現れる…そこに乗っていたのは…

 

「牛尾捜査官!只今現着しました!」

 

『ご苦労…』

 

「なんだ…お前か」

ヘリから現れたのはもちろんセキリュティとなった牛尾さんである…相変わらず遊星からの扱いが酷い…

 

「なんだとはなんだクズ野郎!お前達をサテライトまで送り届け……おい…嘘だろ?なんでアンタがここにいるんだ白な「チェスト!!」ムゴオッ!?」

 

「「白野!?何してるの!?」」

 

「いや…お腹空いてそうだったから…」

俺の事に気づいたらしい牛尾さんの口にオニギリをシュート!見事命中!

 

 

「(牛尾さん…俺の事はまだ秘密でお願いしますね?俺は岸波 白野です)」

 

「なっ…頭に声が…!?…わかったよ事情があるらしいな…」

 

「牛尾捜査官?彼と知り合いですか?」

 

「狭霧さん…ええ、高校時代の後輩なんです、久々に会ったもので…」

 

「…ちょっと待って、牛尾君40才超えてるわよね…!?」

 

「さ、さぁ!シグナーの出陣だ!行こう!サテライトへ!」

狭霧さんの疑問を掻き消すようにみんなに声をかける…見た目年齢若いからな俺達←見た目年齢20才

 

 

 

 

こうして俺達はヘリに乗り込み一路サテライトへと向かったのであった…。



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決戦!ダークシグナー!〜開戦〜

祝!お気に入り300人突破しました!ありがとうございます!
駄文な拙作ですがこれからも応援よろしくお願いします!


またダークシグナー編の展開に伴いデュエル描写が減少しますがよろしくお願いします。

それでは最新話をどうぞ!


「17年前に起きたゼロ・リバース、旧童実野町をシティとサテライトに分断する原因となった大規模災害…それはサテライト地区の最深部にあった旧モーメント、その暴走が原因なの…」

 

「そのモーメントの開発責任者が遊星のお父さん…」

 

サテライトに向かうヘリの中、そこでは狭霧さんからゼロ・リバースの真実…そして遊星の父・不動博士の事が語られていた…。

 

 

「ちょっと待て!?なんでサテライト出身の奴がそんな重要プロジェクトのリーダーやってるんだ!?」

ヘリを運転しながら牛尾が驚いている…今のシティの価値観からすれば無理もないだろう…

 

「何を言っている、遊星は元々はシティの出身だ!…ゼロリバースの爆発の直前、両親にこちら側に逃されたのだ…!」

 

「なっ…コイツはサテライトのクズじゃ…」

 

「俺はサテライト出身だ…それがどうした!!」

 

「むぅ…」

 

「牛尾さん…『グリード』がいいですか?それとも『マインド・クラッシュ』?」

 

「…岸波、それだけはマジで勘弁してくれ…!!」ガクブル

 

「「「(この二人の間にいったい何が…?)」」」

 

ジャックに便乗して少し牛尾さんを驚かせてみる…未だにトラウマになっているようだ。

その後ヘリは暗雲を抜け…安全地帯であるマーサハウスへと着陸した。

 

 

 

 

 

 

 

「おやまぁ…いっぱい来たねぇ!遊星に白野に…ジャック!ジャックじゃないかい!大きくなったね〜!!」

 

「マーサ…久しぶりだな、何年経ったと思っている…」

着陸した俺達のもとにマーサや無精髭の男…雑賀?と子供達がやってくる、マーサはジャックを見つけるなり駆け寄ってきた

 

 

「ほら!ジャック!昔みたいに!…キングたる者?」

 

「フッ…」

 

「…キングたる者、レディーに畏敬の念を…」

ジャックは差し出されたマーサの手の甲にキスをする…誰に習ったんだろうか…?

 

「ジャック〜!やっぱりアンタは本当にいい男だよ〜!!」ギュ〜

 

「くっ…マーサ!いい加減にしてくれ!?」

母は強し…キングだったジャックも育ての親には敵わないのだった…マル

 

 

 

 

「白野さん!」

 

「ん?おぉ!元気だったかトビー!」

ヘリの近くにいた俺のもとにトビーが駆け寄ってくる

 

「白野…その子…何処かで見たような…?」

アキがトビーの顔を見て反応を示す…多少なりは残ってたか…

 

「…アキ、この子はトビー…俺が一年前にアルカディア・ムーブメントから助け出した子供の一人…そしてミスティ・ローラの弟だ…」

 

「えっ…!?ミスティは私のせいで弟が死んだって…!?」

アキは動揺する…死んだはずの人物が目の前にいるからだ…

 

「…お姉さん僕の事知ってるの…?」

 

「えっ…?」

 

「トビーはな…ディヴァインの無茶なトレーニングのせいで命を落としかけたんだ、そこにメタルナイトが突入…この子を含めて10人くらいの子どもを救出した、でもトビーは訓練のせいで記憶喪失になってしまったんだ…それで俺はこの子を守るためにマーサに彼を預けたのさ…ディヴァインからこの子を守るために…!」

 

「そんな事が…ごめんなさい…ごめんなさいねトビー…!」

 

「お姉さん…?どうして泣いてるの…?」

アキはトビーを抱き寄せる…アキはなんとなくわかっていた、アルカディアムーブメントに入ってきた子ども達が『黒薔薇の魔女』に憧れを抱いていた事…そしてトビーもその中の一人なのだろうと…。

 

「アキ、君はきっとミスティと戦う事になる…覚悟を決めてくれ…!」

 

「…ありがとう白野、ミスティとは私が決着をつけてみせる…!」

アキは俺の瞳をまっすぐ見てそう宣言したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロウが…行方不明…!?」

 

「ああ、ラリーやナーヴ達とも連絡が取れないんだよ…」

場所をマーサハウス内に移し、今は情報交換の最中である…サテライトはそのほとんどを謎の霧に覆われてしまっていた…そしてそこにいた住人達も行方不明となっている…

 

「おそらくあの霧はダークシグナーの炎と同じモノ…サテライトの住人達を取り込んで何かの生贄にした可能性が高いだろう…」

 

「白野さん…サテライトの人々を助ける事はできるんだろうか…!」

遊星は拳を握りしめながら聞いてくる…親友や仲間を助けたいのだろう…。

 

「まだ可能性はある、生贄は生きていなければ意味は無い…以前とある秘密結社が似たような事をした事があったが…その時は首魁以外全員無事に生還した、まだ希望はある」

 

「…白野、それはいったい何年前の話だ?そんな事件があったらニュースになっていそうだが…」

 

「う〜ん…二十数年前かな…?表向きはソリッドビジョン暴走事件ってなってたからな…あとは16年前の『消えた1日』事件も…似たような感じかな…」

 

「…知識が深すぎる…!」

 

「当たり前だよジャック!白野はアンタ達の倍は生きてるんだからねぇ…」

 

「「(本当に四十代だと…!若すぎないか!?)」」

初めて考えが一致した遊星とジャックなのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

第三者視点

 

 

「「「いただきまーす!!」」」

時間は夕食時…マーサハウスを拠点とした遊星達はマーサや子供達と食事を摂っていた…。

 

 

 

「あれ?白野は?」

 

「先程吐血してな…部屋で休んでいる、相当無理をしていたみたいだ…」

食事の場に遊海の姿は無い、ゲイザーの治療を受けたとはいえ累積したダメージは抜けきらなかったのだ…

 

 

「そっか…あとで部屋に持っていってあげなきゃ!」

 

「龍亞が自分から言うなんて珍しい…!」

 

「へへっ!白野にいろんなヒーローの話を聞きたいんだ!」

 

「もう…白野さんに無理させないでよ…?」 

龍亞は遊海がメタルナイトであると知ってから度々遊海の活躍を聞きに行っている…しかし龍可は少し呆れているようだ

 

 

 

 

「このシチューはセキリュティのお兄さんが作ったんだよー!」

 

「おいしー!」

 

「セキリュティのおじちゃんありがとー!」

 

「いっぱい食べろよ!まだお替りあるからな〜!」 

 

「「「は〜い!」」」

 

牛尾はすっかりマーサハウスの子供達に懐かれていた…牛尾自身もサテライトの人達と直に触れ合い偏見が無くなったからだろう 

 

 

 

「お前達、この戦いが終わったらサテライトとシティの間に橋が架かるんだ…そうすれば差別も無くなる…お前達がなりたいものになれる時代が来るんだ…!」  

 

「オレ!Dホイーラーになる!」

 

「わたしはお花屋さん!」

 

「オレはセキリュティになりたい!」

遊星は子供達に未来の話をしている…もう少しでやってくる希望の未来の話を…

 

 

 

 

 

ゴロゴロ…ビシャーン!! パリーン

 

 

「「きゃー!?」」

 

「なんだ!!」

団欒の食事…それを邪魔するように雷がマーサハウスの近くに落下する…そして 

 

 

『ふ…フハハハハ!!』

 

「お前は…!」

突如として邪悪な笑い声が響く…遊星が外を見ると黒いローブの蜘蛛の痣の男・ルドガーが立っていた。

 

『私の名はルドガー!蜘蛛の痣を持つダークシグナーだ!シグナー達が到着したと聞いて歓迎しにきた!…もちろんデュエルでな!!』

 

「貴様…!このジャック・アトラスが相手だ!」

 

「待てジャック!ここで戦えば子供達が巻き添えになってしまう!子供達を頼む!…ルドガー!オレが相手だ!付いてこい!!」

 

『フッ…いいだろう!』

遊星はルドガーと共にマーサハウスから離れる…アキも戦いを見届けるために付いていった…。

 

 

「あいつはクロウ兄ちゃん達を攫った悪者だ!」

 

「俺達でアイツからみんなを助けるんだ!」

 

…蛮勇の少年達3人を連れて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この辺りでいいだろう…さぁデュエルだ!』

 

「望むところだ!お前を倒してサテライトのみんなを救ってみせる!!」

マーサハウスから離れた廃墟…そこで遊星とルドガーは対峙する!

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

……

 

 

「くそ…不味い事になった…!」

遊星は焦る…デュエルは遊星が不利になっていた、ダークシンクロモンスターである「地底のアラクネー」をラリーから貰った「ワンショットブースター」で撃破したものの…ルドガーは罠カード「縛られし神への祭壇」を発動させた、このカードは地縛神カウンターが4つ乗ったこのカードをリリースしデッキから「地縛神」を特殊召喚する効果を持っていた…しかしもっと不味いのは…

 

 

「ど、どうしよう…!?」

 

「怖いよ〜!」

 

サテライトの仲間を救おうとした少年達が蜘蛛の地上絵に取り残されてしまった事、このまま地縛神が召喚されれば二人とも生贄になってしまうだろう…

 

「地縛神が召喚される前に決着をつけるしかない!」

 

『ネズミが紛れていたか…しかし好都合だ!我が神の贄としてくれる!』

 

 

 

 

 

『準備は整った!いでよ我が神!「地縛神Uru」!』

 

「「うわぁぁぁ!!」」スゥ

 

「しまった!地縛神が…!」

 

ルドガーは遊星との攻防戦の末に自分のライフ、そしてサテライトの人々の魂が溶け込んだ黒雲を生贄に赤いラインの入った蜘蛛の地縛神・Uruを召喚する…そして地上絵に巻き込まれた少年達からも魂が抜けかけて…

 

「また俺は地縛神の前に為す術も無く…!」

 

「そうはさせるかぁ!!」

 

「「「ジャック!!」」」

子供達の魂が吸い取られる直前、ホイールオブフォーチュンに乗ったジャックが駆けつける!

 

「地縛神などどれほどのものかぁ!ジャック・アトラスは応援してくれる子供達を決して裏切りはしない!!うおぉぉぉ!!!」

炎の地上絵を飛び越えたジャックは少年達を抱え込む…するとジャックのドラゴンウィングの痣が光り、バリアを展開する、それにより少年達は間一髪助かった…。

 

 

『…とんだ茶番だったな!しかし「Uru」は召喚された!』

《ギシュアアア!!》

ルドガーの声に答えるようにUruが咆哮する!

 

「遊星!子供達は守った!地縛神など捻り潰せ!!」

 

「ジャック…ああ!なんとしても奴を倒す!」

後顧の憂いの無くなった遊星はデュエルディスクを構える

 

『フッ…フハハハハ!できると思っているのか地縛神をお前がどうやって倒す?地縛神は全てのモンスターの頂点に立つモンスター…そう、まるで究極のエネルギー・モーメントのようだ!しかしこの5000年の覇権を賭けて戦う相手がまさか不動博士の息子とはなぁ!!』

 

「不動博士…!?お前…親父を知っているのか!」

 

『ああ知っているとも…何故なら私はあの人の部下だったのだから!』

 

そしてルドガーの口から語られる17年前の真実…それはルドガーとレクスの二人が不動博士の下でモーメントの研究をしていた事、そしてモーメントの逆回転による危険性に気づいた不動博士を追い出し…ゼロリバースを起こしたのが自身である事を…

 

 

「ゼロリバースを故意に起こしただと…!答えろ!お前達と親父の間にいったい何があった!!答えろルドガー!!」

 

『それは今語るべき事ではない…さぁ、デュエルを再開する!いけ!「地縛神Uru」で攻撃!ヘルズブレッド!』

 

「くっ、罠カード!『アイアンリゾルブ』!自身のライフを半分にして戦闘ダメージを0にする!」

 

地縛神(アニメ)は魔法・罠カードの効果を受けない…しかしそれは「自身」に対する効果のみ、遊星は自身に対し効果を発動する事で地縛神の攻撃を防ぐ…しかし

 

 

ドカーン!!

 

 

「うわぁっ…!」

 

「マーサ!危ねぇ!!」

 

「あ、ありがとう…」

攻撃によるダメージが実体化し子供達を探しにきた牛尾とマーサのいるビルを破壊する…そしてそのビルには…

 

「うわぁぁ!誰か助けて〜!?」

 

「この声…タクヤか!?」

牛尾達のいるビルの屋上…そこには遊星を追いかけてきた子供の1人…タクヤが取り残されていた…。

 

 

「タクヤ!今行くよ!!」

 

「マーサ!牛尾の兄ちゃん!!」

崩れかけたビルの屋上、マーサは取り残されたタクヤを助けに向かう…

 

「ごめんなさい…!ぼくみんなの役にたちたくて!」

 

「いいんだよタクヤ…それぐらいの勇気が無くちゃセキリュティになんてなれやしないよ!」

マーサはタクヤを牛尾のもとまで逃がす…しかしそこでビルが限界を迎えビルの傾きが大きくなる…!

 

「マーサ!手を伸ばせ!!諦めるな!!」

牛尾はマーサへと手を伸ばす…しかし手は届かない…

 

「アンタ!タクヤを頼んだよ!アンタはタクヤのヒーローなんだから…!」

 

「何がヒーローだ!!俺はサテライトの人間を侮辱して…!」

 

 

「マーサ!」

 

「マーサ!!」

 

「ゆ、遊星…ジャック!アンタ達は本当にいい子だった…!アンタ達がサテライトとシティの…架け橋になるんだよ…!!」

マーサはそう言葉を言い残しビルから落下する…そしてその魂は…

 

「マーサ!!マーサァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《キュオオオン!!》シュイン

 

 

 

「へっ…?アタシは…?」

 

一筋の閃光がマーサを受け止め離脱する、その正体は…

 

「すまない遊星、遅くなった!マーサは無事だ!」

 

「「白野さん!!」」

 

閃光竜に乗りマーサを救い出した遊海の姿があった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

少し前…

 

 

 

ドタバタ…ガチャ!

 

「白野さん!起きて!!大変だ!!」

 

「うっ…?トビー?どうしたんだ?」

夕方に吐血し眠っていた俺の部屋にトビーが慌てて駆け込んでくる…時間は夜…まさか…!?

 

「ダークシグナーが襲ってきて遊星さんが戦いに行っちゃったんだ!それからタクヤ達3人がいないんだよ!!マーサ達が探しに行った!!」

 

「なんだって…!?」

しまった…こんな大事な時に寝過ごすなんて…!

 

「アヤカ!サーチ開始!みんなを探せ!」

 

《了解ですマスター!…ここから2キロ程先にいます!!》

 

「カードのモンスターが…実体化してる…!」

トビーは実体化しているアヤカに驚いているようだ

 

「トビー、お前はみんなといるんだ、タクヤ達は任せろ!」

 

「白野さん!…でも身体が…!」

 

「フッ…ハウスのみんなには内緒だぞ?…精霊変身!」

遊海はその身に鎧を纏う…そこにいたのは鋼の騎士・メタルナイトだった…。

 

「メタル…ナイト!?白野さんが…!?」

 

「トビー、必ずマーサ達は助けてみせる…行ってくる!『アクセラレーション』!」バッ

遊海は窓から飛び出しDホイールを召還…戦いの場へと向かった。

 

 

 

「くそっ…戦いは始まってるか!」

遊海の痣が輝く…既にデュエルは始まっている

 

《マスター!巨大なエネルギー反応を感知…識別パターン『Uru』です!》

 

「ああ…見えてるよ!」

上空に巨大な心臓のようなパーツが浮かび周りの黒雲を吸収…巨大な蜘蛛・Uruが現れる!

 

《マスター!》

 

「ああ…このままじゃ間に合わない!頼む!『閃光竜』!!」

《キュオオン!》

 

俺はDホイールをしまい閃光竜を召喚し急いで現場に向かう!

 

 

 

「マーサ!」

 

「マーサ!!」

地上絵が近づくと共に遊星達の声が聞こえてくる

 

《前方2時の方向でマーサがビルから落下しかけています!》

 

「了解!…間にあえ!『閃光竜』!流星突撃(シューティング・アサルト)ォ!!」

《キュオオオン!!》

 

俺は閃光竜の必殺技を発動させる、凄まじいGがかかるが…負けてたまるかぁ!!

 

 

そして遊海は無事にマーサを救出…地上絵に取り残されたジャック達も回収し絵の外側に着陸する…

 

 

 

 

 

 

 

「みんな無事か!」

 

「あ、ありがとうメタルナイト…いやアンタ…白野なんだね?」

 

「ええ…黙っていてすいません、無事でよかった…!」

 

「白野さん…!ありがとう!」

 

「いいんだ遊星…決着をつけろ!!」

遊星はマーサ達の無事を確認しルドガーへと向き直る

 

「ルドガー!お前だけは許さない…サテライトを救うためにお前を倒す!!」

 

『…まさか奴の介入を受けるとはな…かかってこい不動遊星!』

 

ルドガーは想定外の事態に少し動揺していたが…そのままデュエルを続行した…。

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…ラリー!?」

 

『フハハハ…皮肉だな不動 遊星、貴様には救わねばならぬ人質がもう1人いたのだ!』

 

「卑怯な手を…!!」ギリッ!

遊星の戦っていたルドガーは闇の力で操られたラリーだった…このデュエルは闇のデュエル、敗者は消滅してしまう…。

 

『さぁ!生き残りたくば戦え…戦うのだ小僧!』

 

「ダメだ…遊星は…遊星はサテライトの希望なんだ!お願い!サテライトを救って!遊星!!」

 

「ダメだラリー!やめろぉぉぉ!!!」

 

サレンダーすら封じられたデュエル、ラリーが取った行動…それは「Uru」のコントロール奪取効果を使い遊星の場の「ワンショットブースター」を奪い自身の「ワンショットロケット」でシンクロ召喚した「ワンショットキャノン」で「Uru」を破壊し攻撃力の半分のダメージを自身が受ける…希望を繋ぐための自爆だった…。

 

 

ルドガー(ラリー)LP0

 

遊星 WIN…

 

 

 

 

 

「ラリー!!」

デュエルが終わり遊星はラリーに駆け寄る…ラリーの身体は黒く炭のようになっていた…

 

「遊星…サテライトを…守っ…て…!」サラサラサラ…

 

「ラリー…ラリィィィィ!!!!」

ラリーの身体は砂のように崩れ消滅する…サテライトの空に遊星の慟哭の声が虚しく響いた…。

 

 

 

 

 

『フッフッフッ…面白い見世物だったな…しかし、シグナーとダークシグナーの本当の戦いはこれからだ…そうだろう?お前達?』

ルドガーは高台で遊星をあざ笑う…彼の後ろには5人のダークシグナーが集まっていた…。

 

『それぞれの闘いは宿星によって決められる…』

猿の痣の男…ディマクが呟く

 

『地縛神の恐怖を忘れたわけじゃないよなぁ遊星…!まだまだ残っている筈だ…オレへの恐怖がよぉ!!』

 

「ああ…オレは恐ろしい、貴様達を倒す事を…これ程欲している自分の怒りが…!!」

遊星が立ち上がる…その目には覚悟の光が宿っていた

 

 

 

『フハハハハ…よぉボロボロ野郎!決着つけようぜ!3000年前のなぁ!!』

 

「バクラ!すぐに冥界に送り返してやるよ!!」

俺もバクラを睨みつける…下手をすればダグナーの中で一番危険なのは奴かもしれない…!

 

 

 

『緑色の髪の少女よ…このカードに見覚えはあるか?』

 

「それは…『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』のカード!!」

 

『このカードを取り戻したくば私とデュエルする事だ…我が名はディマク…「Cusillu」の痣を持つ者だ…』

ディマクはエンシェントフェアリーのカードを龍可に見せつける…龍可はディマクの手から友達を取り戻す事を決意する。

 

 

 

『「黒薔薇の魔女」…私は貴女を許さない…!弟の敵を獲ってみせる…!』

 

「待ってミスティ!私は弟さん…トビーの事は知らなかった!それに…トビーは生きているわ!!」

 

『…嘘はつかないで頂戴、ここで貴女を殺したくなるから…!』

 

「ミスティ!!」

アキはミスティにトビーの生存を伝えるも…信じて貰えなかったようだ…。

 

 

『では…それぞれの宿星…宿命の地で会おうシグナー共!』

 

「待て!ダークシグナー!ここで決着をつけろ!」

ルドガー達はこの場を去ろうとするが遊星はそれを引き留める…

 

『慌てるな不動 遊星…貴様の宿命に従い来るがいい…宿星の地へ!』

そう言ってルドガー達は去って行った。

 

「待て!!オレと…オレとデュエルしろぉぉぉ!!!」

遊星の叫びがサテライトに木霊した…。

 

 

 

「待て!そこの女!お前に話がある!」

ジャックは1人でダークシグナーの女を追う、言葉を発しなかった女にある人物の姿を見たのだ…それは…

 

『ジャック…』

 

「カーリー…!お前が何故ダークシグナーに…!?」

カーリーはジャックの役に立とうと単身アルカディアムーブメントに潜入…ディヴァインに殺害されダークシグナーとなってしまったのだ。

 

『私に逢いに来て…私の愛しいジャック…』

カーリーは一筋の涙を残して去って行った…。

 

 

ダークシグナーとの戦いが…ついに開戦する…!



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対決!ダークシグナー・猿〜精霊界を救え!〜

…しまった…詰め込み過ぎた…15000字オーバーしてる…まぁいっか!


それでは最新話をどうぞ!


「「「ごめんなさい!!」」」

 

「お前達の気持ちはわかるけど…もう危ない事はしないでおくれよ!さぁ今日は寝なさい!」

 

「「「は〜い…」」」

 

 

 

「ジャック、白野…改めて礼を言うよ…アタシと子供達を助けてくれてありがとう…!」

 

「フン…俺はキングたる者として最善を尽くしただけだ!」

 

「いいんだよマーサ、俺もやれる事をやっただけだから…」

 

ダークシグナー達との顔合わせを終えた遊海達はマーサと子供達を送るためにマーサハウスへと戻ってきていた…。

 

 

 

 

「それでこれからどうするかだが…奴らの言っていた『宿星の地』とは何処なんだ…?」

 

「それは…旧モーメントの制御装置の事だと思います」

 

「旧モーメントの制御装置…?」

遊星の疑問に狭霧さんが答える、ゴドウィン曰く旧モーメントには4っの制御装置がありそれぞれが古代ケチュア語で「猿」「ハチドリ」「トカゲ」「巨人」のコードネームがありモーメント本体には「蜘蛛」のコードネームが付いている事…さらに遊星の持つ「スターダスト」、ジャックの「レッドデーモンズ」、アキの「ブラックローズ」、そしてダグナーであるディマクの持っていた「エンシェントフェアリー」はモーメントを制御する鍵である事が語られた…。

 

 

 

 

「既に賽は投げられています…制御装置とモーメントの位置関係はこうなっています…」

狭霧さんはサテライトの地図を広げる…サテライトの中心に旧モーメント、その四方を囲むように4機の制御装置が設置してあるようだ。

 

 

「場所がそれぞれ離れているな…」

 

「しょせんデュエルは1対1…俺は1人で行かせてもらうぞ、金魚のフンのように全員で行くのは時間の無駄だろう」

 

「そうだな…それぞれの因縁の相手は決まっている…各個撃破していこう、それに離れていてもオレ達が仲間である事は変わらない!」

ジャックの意見に遊星も賛成する。

 

 

「まずは巨人…そこには鬼柳がいるはずだ、オレが行こう…!」

遊星は巨人の制御装置へ

 

「なら私はトカゲ…ミスティのところへ行くわ!」

アキはトカゲの制御装置へ

 

「猿は…ディマク、わたしは『エンシェントフェアリードラゴン』を取り戻したい!」

 

「おれは龍可を応援する!シグナーじゃなくたっておれは龍可のヒーローなんだ!」

龍亞と龍可は猿の制御装置へ

 

「残るはハチドリ…俺が行く!」

ジャックはハチドリの制御装置へ向かう!

 

「白野さん…あなたはどうするんだ?」

遊星が俺に尋ねてくる

 

「俺はとりあえず龍可達と行こう、バクラの場所を探ってたんだが…レーダーに引っ掛からなくてな…」

 

《申し訳ありませんマスター…さっきからノイズが酷くて…》

アヤカが俺の隣に実体化する…ダークシグナーと出会った辺りからジャミングを受けているらしい

 

「白野さん…?その機械は…?」

 

「ああ…紹介がまだだったな、俺も龍可と同じで精霊が見える…まぁ俺の家族だ!みんな!出てきてくれ!」

俺の掛け声で精霊達が実体化する…ちなみに牛尾さんは気絶している…

 

 

《マスターのパートナーの彩華です!》

 

《トフェニだ、いつも主が世話になっている》

 

《フレアです!(神)鳥の精霊ですよ!》

 

《メガロックだ…白野、みんな驚いているが…よかったのか?》

 

「大丈夫だよメガロック、すぐに馴れるだろうし」

 

 

「…前に戦った時の声は気のせいじゃなかったのね…」

 

「この人は何でもアリか…」

 

「あっ!アヤカちゃん久しぶり!」

 

《お久しぶりです龍可!頑張りましょう!》

 

「牛尾君!しっかりしなさい!なさけないわよ!!」

 

「う〜ん…遊戯…罰ゲーム…ごめんなさい…」

精霊達の登場でカオスになるマーサハウスなのだった…。

 

 

 

 

 

「それでみんなに一つ伝えておく事がある、もしも白髪の髪の逆立った男…バクラに出会ったら…すぐに逃げてくれ」

 

「白野の宿星の相手…何故だ?もし出会ったのならこのジャック・アトラスが捻り潰してくれる!」

 

「そうだ白野さん、オレもジャックもダークシグナー相手に負けるつもりは…」

 

「あいつが…『決闘王』を追い詰めた決闘者だとしてもか?」

 

「「「「!?」」」」

 

遊海の言葉を聞きシグナー達は驚きをあらわにする。

 

 

「アイツが『決闘王』を…武藤 遊戯を追い詰めただと!?」

 

「しかし…『決闘王』が活躍したのは今から三十年以上も前のはず…なんでそんな奴がダークシグナーに!?」

 

「それは俺もわからない、でもアイツを倒すのは俺の役目だ…もし出会う事があったら注意してくれ!」

遊海は全員に注意を促す…バクラは何をしてくるかわからないからだ…

 

 

「白野さん、あなたはいったい何者なんだ…?」

 

「この戦いが終わったら話すよ遊星…俺の事もな…」

そしてその場は解散となる…休憩を挟み明朝…戦いへと向かう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《マスター…》

 

「ああ…気づいてるよ、出てきたらどうですか…牛尾さん?」

 

「隠れてるつもりはなかったんだが…少し話そうぜ()() ()()()

外でDホイールの調子を確かめる遊海のところへ牛尾が訪ねてくる…他のメンバーはマーサハウスで休憩している。

 

 

「お前、この17年…ゼロリバースから何やってやがった?それにその姿…ガリガリじゃねぇか…」

 

「17年前…爆発に飲み込まれそうになったスタジアムを守って…その代償で病弱になったんです、それでまともに動けなくなって…ここまで動けるようになったのも最近で…」

 

「ネットの都市伝説…『たった1人の人間がKCスタジアムをゼロリバースから救った』…お前の事だったのか」

 

「あの場には遊戯も海馬さんも城之内さんも…俺の教え子達も居た…彼らを護りたかった、それだけですよ」

 

「なぁ白波…お前ならダークシグナーなんて瞬殺なんじゃねぇか?『失われし決闘王』のお前なら…」

 

遊海はゼロ・リバース後、表舞台から姿を消した…新たに付いた異名は『失われし決闘王』…ただ一瞬に存在した最強の称号である。

 

 

「たぶんそうですね…でも()()()()()()()()()()、彼らが成長してこそ未来を切り拓けるんです、それに"ゴホッゴホッ…!…身体が保ちませんしね…」

咳き込む遊海…その手には血が付いていた…。

 

「…そういう事か、ならオレは何も言わねぇさ…オレは車で龍可達と一緒に行動する、何かあったら頼むぜ?メタルナイト?」

 

「ええ…この命に替えてでも…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここから先、勝敗を分かつのは己の実力のみだ!」

 

 

翌朝一番…サテライト中心部へ向かう橋の前にシグナー達が揃っていた、遊星・ジャックは単独、アキは狭霧さん、龍可と龍亞は牛尾さんの車に乗り俺は車に並走する。

 

「みんな!ダークシグナーは一筋縄ではいかない相手だ!オレ達は苦戦を強いられる事になるだろう!だがその時こそ思い出してほしい!オレ達仲間の事を!オレ達は離れていても強い絆で繋がっている!」

遊星が全員を鼓舞する…

 

「みんな!必ず勝ってもう一度会おう!」

 

「互いの健闘を祈る!俺達の目指すのは勝利だけだ!!」

遊星、そしてジャックの宣言を以てサテライト…そして世界を救う戦いが始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『カー!カー!』』

 

「ひぇ〜…何なんだよこのカラス達〜…」

 

「龍亞?」

 

「ぎょえぇぇ!?」

 

「ビビリ過ぎだぞ龍亞…」

 

猿の制御装置へ向かう龍可と俺達…その前には不気味なカラス達が俺達を監視するように飛び回っていた…。

 

 

「びっくりさせないでくれよ龍可〜危うく勇気とカラスがドッキングするところだったよ〜」

 

「落ち着け龍亞、何を言ってるかわけわからなくなってるぞ…」

勇気とカラスがドッキング…出てくるのはBFだろうか…

 

 

「ごめんね龍亞…わたしが無理やり頼んだから…」

 

「何言ってるんだよ龍可!おれ達は兄妹だろ!おれは龍可をいつでも守るって決めたんだから!…そのために…!」

龍亞は持ってきたカバンを漁る

 

「ジャジャーン!デュエルディスク〜!」

 

「…龍亞が付けてどうするのよ?戦うのはわたしの役目なのよ〜?」

 

「へへっ!気合だよ気合!さぁ…かかってこいダークシグナー!!」

龍亞はデュエルディスクを付けた腕を掲げる

 

「まったく、無邪気なもんだぜ…なぁ岸波?」

 

「ええ!俺達も二人をサポートしましょう!…彼らの笑顔を守るために…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

《マスター!周囲の時空が歪み始めています、精霊界への扉が…!》

 

「…ここから先は龍可の戦いだ、大丈夫…助っ人も頼んであるから!」

アヤカが時空の変化を感じ取る…そして

 

《クリリー!!》

 

「精霊界が何かが起きてるのね…わかった!わたしを連れて行って…!」

 

 

キュピーン!

 

 

「な、なんだぁ!?」

龍可達の乗る車を閃光が包む…光が収まると龍可の姿は忽然と消えていた…。

 

 

 

「おい!?今何があった!龍可ちゃんがいねぇじゃねぇか!?」

牛尾は車を停め周囲を見回す

 

「牛尾さん、龍可は今デュエルモンスターズの『精霊界』へ向かいました…でも大丈夫です、助っ人も頼んであります」

 

「…お前が言うなら本当なんだろうな…でも一応周りを見ておこう、何か手がかりがあるかもしれねぇ」

牛尾さんは車から降り周りを探し始める…警察官の彼としては「もしも」の可能性を捨て切れないのだろう。

 

「白野!おれも探してくる!」

 

「わかった、気をつけろよ龍亞!」

そう言って龍亞も駆け出して行った

 

 

《マスター、よかったのですか?》

 

「…戦いは龍亞のために必要だ、それに俺もただ見ているだけじゃないからな…!」

 

ボウッ!

 

その時、空に猿の地上絵が浮かび上がる…どうやら始まったみたいだ!

 

 

 

 

 

 

 

龍亞Side

 

 

 

『お待ちしておりました、シグナー殿…!』

 

龍可を探していたおれに何処からか低い男の人の声が聞こえてくる、それと同時に周りに炎の壁が出てくる…もしかしておれ…龍可と間違えられちゃった!?

 

『…誰だ?お前はシグナーじゃないな?』

黒い服を着た黒い肌の人が現れる…確かディマクって名前だったな…!

「それがどうした!文句あるか!おれは龍可のお兄ちゃんだ!アイツを守るって約束した男だ!」

 

「ハァ…ハァ…!龍亞!何やってやがる!!」

 

「龍亞!…もう地上絵の中か…!」

牛尾のおっちゃんと白野がやってくる…空に浮かんだ地上絵を目印に来てくれたみたいだ

 

 

『何だ?シグナーでもないのに死にに来たのか?』

 

「…望む所だ!おれがお前を倒せば龍可は危ない目に遭わないで済むんだ!だったらおれが相手だ!」

 

『…意気だけは認めてやろう…だがシグナーで無い者が我々に勝てる訳がないだろう!』

 

「やってみなくちゃわからない!!」

おれはデュエルディスクを構える…龍可のために勝ってみせる…!

 

 

 

「キラーナックル!!」

 

 

ズゴァ!!

 

『「うわぁっ!/なにっ!?」』

 

突然強い風が吹いて地上絵の炎が2つに割れる…

 

「龍亞…決意は変わらないんだな?今なら俺が変わる事ができる…それにこのデュエルは『闇のデュエル』、ダメージは実際の痛みとして襲って来るぞ…いいのか?」

 

『…馬鹿な、闇のデュエルに介入するだと!?』

 

「白野…」

炎を通り抜けてメタルナイトの鎧を着た白野が歩いてくる…

 

 

「…このデュエルはおれがやらなきゃ駄目なんだ!おれが龍可を守るために!!」

おれは白野の目をまっすぐ見てそう伝えた

 

「…いいだろう、なら俺はサポートに回るとしよう…ダメージは俺が全て引き受ける、デュエルに集中するんだ龍亞!」

そう言うとおれの周りに薄いバリアが現れる

 

「ありがとう白野…おれ頑張る!!」

龍亞はディマクへと向き直る

 

 

『貴様がバクラの言っていたシグナーか、相当に強い力を持っているようだが…果たして身体が保つかな!』

 

「俺は闇には屈しない!龍亞の心が折れない限り…俺が膝をつく事は無い!!」

 

「おれは龍可を守るためにお前を倒す!デュエルだ!」

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

『バトル!「マジシャンズエイプ」でダイレクトアタック!』

 

「うわぁぁ…あれ?そんなに痛くない…?」

デュエル序盤、マジシャンズエイプの効果「カースド・ニードル」で「マグネンU」を奪われた龍亞はダイレクトアタックを受ける…しかしダメージは受けたものの痛みは通常のデュエルレベルでしかなかった…

 

「龍亞、そのバリアがお前を守っている限りお前にくる痛みは半分以下になる…自分のデュエルで奴を倒せ!」

 

「白野…ありがとう!!ここから逆転だ!」

 

 

デュエルは進む、遊海や遊星、ボマーとの戦いを経て成長した龍亞はパワーツールドラゴンを召喚しマジシャンズエイプを撃破…ディマクに大ダメージを与える…

 

「(上手いぞ龍亞…相手の盤面をしっかり見て戦っている!成長したな…!)」

猿の地上絵を目撃し引き返してきた遊星も龍亞の成長を認める

 

 

 

『フフフ…こうこなくてはな!運命の決闘の前座としては面白くなくてはな!』

 

「前座だとぉ!?おれ達は命を懸けて戦ってるんだ!」

 

『フッ…ならば私も少し本気を出そうか!レベル-5となっている「ファイターズエイプ」にレベル2の「DTダークエイプ」をダークチューニング!』

黒い星に変化したダークエイプがファイターズエイプに食い込む!

 

-5-2=-7

 

『暗黒より生まれし者…万物を負の世界へ誘う覇者となれ!ダークシンクロ!「猿魔王ゼーマン」!』

ローブを纏った赤い毛の魔王が現れる ATK2500

 

「ダークシンクロモンスター…!何が魔王だよ!おれにだって『パワーツール』が付いてるんだ!」

 

『フッ…さらにフィールド魔法「クローザーフォレスト」を発動!』

 

「不味い!地縛神を召喚する条件が整ってしまう…!」

地縛神の強さを知る遊星は警戒を促す

 

「龍亞、耐えろよ…ここが踏ん張り所だ…!」

 

 

 

 

 

『バトル!「クローザーフォレスト」の効果で攻撃力3000となった「ゼーマン」で「パワーツール」を攻撃!』

 

「『パワーツール』は装備魔法を墓地へ送って破壊を無効にできる!」

 

『しかしダメージは受ける!喰らえ!!カースド・フレア!』

 

「うわぁぁ!」

杖から放たれた炎が龍亞に襲いかかる…しかし炎はバリアとパワーツールが盾となり威力が減衰する

 

「『パワーツール』…おれの事を守ってくれてるのか!」

 

「そうだ…龍亞、カードには決闘者の想いが宿る…その想いに必ずカードは…応えてくれる…!まだ勝ち目はある…耐えろ…龍亞…!」

 

「白野…!そうだ…おれも守るんだ!龍可の事を!!」

 

 

 

 

「来た!装備魔法『巨大化』発動!これで攻撃力は倍だ!」

 

『無駄だ、私とお前のライフは同じ…よって効果は発動しない!』

 

「しまった!いつもなら大逆転のコンボなのに…!これ以上の手はムリだよ!」

 

「「諦めるな!!」」

 

「遊星…白野…!」

 

「龍亞!さっき白野さんが言った通りだ!お前のデッキにはお前の想いを込めたカードが入っているはずだ!カードを信じろ!必ずカードは応えてくれる!!決してカード達はお前を裏切りはしない!!」

 

「遊星…わかった!『パワーツール』は装備魔法を破壊して破壊を無効にできる!その時が来るまで耐えてみせる!守備表示に変更!ターンエンド!」

 

 

 

 

『バトルだ!「ゼーマン」で「パワーツール」を攻撃!さらに永続罠「吠え猛る大地」を発動!貫通ダメージを与える!』

 

「『パワーツール』の効果!『巨大化』を墓地に送って破壊を無効にする!あっ!?」

再びゼーマンの炎がパワーツールに襲いかかる…巨大化を盾にする事で破壊を防いだがパワーツールの装甲にヒビが入る…さらに龍亞を覆うバリアの光が弱くなっていく…

 

「『パワーツール』が…傷付いてる…!?」

 

『「吠え猛る大地」は相手に効果を適用してダメージを与えた時に相手モンスターの攻守を300下げるのだ…それにそいつもそろそろ限界のようだな!』

 

「えっ…?」

 

 

ガシャン…バリ…バリバリ…

 

 

「ハァ…ハァ…まだいけるさ、舐めるなよダークシグナー…!」

 

「白野!?どうしたの!大丈夫!?」

遊海は膝をつく、鎧の端々からはスパークが起きている…そして手からは「我が身を盾に」のカードが零れ落ちた

 

『気づいていなかったようだな…その男はさっきからお前の受けるリアルダメージを全て肩代わりしていたのだ、お前の受けた痛みが少ないのはその為…気楽なものだな自分がどれだけ護られているかも知らないで…』

 

「そんな…!?白野!しっかりして白野!!」

 

「龍亞…心配するな、お前はまっすぐ前を見ろ…戦いは続いてる…!」

 

「白野…(『パワーツール』も白野も…ボロボロになりながらおれを守ってくれてる…ならそれに応えなくちゃダメだ!)…おれだってどんなにボロボロになったって戦ってみせる…おれが龍可を守るんだ!!」

 

 

 

「『パワーツール』に装備魔法『ダブルツールD&C』を装備して攻撃力を1000アップ!そして『ゼーマン』に攻撃!クラフティ・ブレイク!」

 

『相討ち狙い…いや…!?』

 

「そうさ!『パワーツール』は装備魔法を墓地に送って破壊を無効にできる!いっけぇぇぇ!!」

パワーツールによるドリルの一撃がゼーマンを粉砕する!

 

「やったな龍亞!」

 

「うん!これならいける!!」

 

『フッ…甘いぞ!トラップカード「ダークマター」を発動!デッキトップのカード2枚をモンスター扱いでセットする!』

 

「龍亞!守りを固めろ!来るぞ!」

 

 

 

『さぁ…2体のセットモンスター、そして精霊の魂を生贄に降臨せよ!「地縛神Cusillu」』

数多の精霊の魂を生贄に巨大な猿の地縛神クシルが顕現する…!

 

「龍亞!気をつけるんだ!『地縛神』は直接攻撃してくるぞ!!」

 

『そうだ、さらにあらゆる魔法・罠の効果を受け付けない!』

 

「そんな…!」

 

『神々の戦いに土足で踏み込んだ己を呪うがいい!「クシル」でダイレクトアタック!』

 

「負けるもんか!装備魔法『パワー・コンバーター』を墓地に送って『パワーツール』の攻撃力をエンドフェイズまで0にしてその分攻撃力を回復する!」

巨大な手が龍亞と遊海に迫る…!

 

「龍亞!離れてろ!!…精霊アーマー・リミッター解除…キラーナックル・オーバーロードォォォ!!」

 

クシルの手、そして遊海の拳が激突…大爆発が起きる!

 

「うわぁぁぁ!!?」

 

 

 

 

「うっ…イテテテ…ハッ!白野は!?」

龍亞は全身傷だらけになりながら立ち上がる、既にバリアは無くなっている…

 

 

『…まさか「地縛神」に拳一つで立ち向かうとは…見事だ、貴様がダークシグナーであればよかったのにな…』

 

「…残念だが俺は二度と闇に墜ちる事は無い…悲しむ人が…いるからな…!」

 

「「「白野!!」」」

遊海は拳一つでクシルの一撃を受け止めた…その代わり鎧は砕け、足は地面にめり込み埋まっている

 

 

「龍亞…すまん、手助けできるのはここまでだ…後は…」ガクッ

遊海は立ったまま意識を失う…龍亞に希望を託して…

 

 

「白野!白野!!…おれは負けられない!白野の為に!龍可を守る為に…負けられないんだぁぁ!!」

龍亞は魂の叫びをあげる、その想いが届いたのか…一筋の閃光が龍亞の隣に落下する!

 

『なんだと…!?』

 

「あれは…!」

 

「お帰り…龍可…!」

 

「ただいま、龍亞…遅くなってごめんなさい…!」

 

精霊界からついに龍可が帰還した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍可Side@精霊界

 

 

 

「ハァハァ…行き止まり…!どうしよう…!?」

 

 

わたしはクリボンに導かれて精霊達の世界へとやってきていた、でも精霊界では不思議な事が起きていた…

 

階段を登るボール

 

木にくっつく落ち葉

 

逆さに流れる川

 

そして町があるのに姿が見えない精霊達…キーメイスや踊る妖精はいたけどすぐに逃げてしまった…でもその理由はすぐにわかった…

 

 

『精霊ノ匂イスル…!』

 

『精霊ドコダ!』

 

サテライトにで見た霧が町に入って来る、それと一緒に怖い目をした猿の兵士達がやってきた…そして…

 

『女イタ!精霊ノ匂イスル!』

 

『捕マエロ!!』

 

「見つかっちゃった…!逃げなきゃ!」

 

《クリクリ…クリリーン!!》

 

《ヒヒィーン!!》

 

「クリボン!サンライトユニコーン!!」

デッキからわたしの精霊達が飛び出してくる、わたしを逃がそうとしてくれている!

 

『イタ!精霊イタ!!』

 

『マイナスにナレ〜!!』 バリバリバリ

 

「だめ…やめてぇぇ!!」

猿の兵士は手に持った杖から魔法を放つ…それはクリボン達に直撃する!

 

《クリリー!!?》 カチーン

 

《ヒーン!?》カチーン

 

「ああ…そんな…!?」

 

魔法に当たったクリボンや精霊達は石版に封印されてしまった…

 

『ドーダ?マイナスにナッタ気分は?』

 

『次、オ前ノ番!』

 

「みんな…ごめん!必ず助けるから…!!」

わたしはその場から逃げ出した…。

 

 

……

 

 

『女ドコダ?』

 

『近ク居ル…探セ!』

 

猿達の声が聞こえてくる、目の前は高い壁…わたしじゃ越えられない…!

 

 

カタン!

 

《お嬢さん!こっちじゃ!早く来い!》

 

「あっ!」

 

 

 

《ふぅ〜…行ったようじゃの!》

 

「ありがとう、おかげで助かったわ…」

 

わたしは間一髪のところで大きな帽子を被った男の子に助けられた…近くには猿達はいないらしい…

 

 

《お嬢さん…人間の世界から来なさったな?やれやれ…こんな女の子がたった1人で精霊界に迷い込むとは…儂がいなかったらどうなっていたと思っておる!》

 

「な…なによ!お姉さんにむかってそれはないんじゃないの!あなただって子供じゃない!」

ついカチンとなって男の子に言い返してしまう…わたしより小さい男の子にこんなに言われたら黙っていられないわ!

 

《儂は子供ではない!こんなナリじゃが立派な爺さんじゃよ…儂はトルンカ、よろしくな嬢ちゃん…とにかく場所を変えよう、あの猿共に見つかる前に…!》

 

「えっ…嘘でしょ…!?」

 

とりあえずわたし達はその場から離れる…人って見た目じゃわからないわね…。

 

 

 

 

 

 

《かくかくしかじか…まぁこんな感じじゃ…》

 

「精霊界でそんな事が…」

 

わたしは今とある家に隠れながら精霊界に起きている事態をトルンカに聞いていた…。

平和だった精霊界に「ゼーマン」という猿の魔王と兵士達が現れて「カースドニードル」という杖を使って精霊達を捕まえ始めた事…

 

「ゼーマン」の目的はこの世界全てを「マイナス化」する事…「カースドニードル」は強いマイナスエネルギーで時間すら巻き戻してしまう事…

 

トルンカ達「魔法使い族」の精霊は何とか精霊狩りから逃れたもののマイナス化の影響で子供になってしまった事…このままでは精霊界がなくなってしまう…!

 

 

「ねぇ…トルンカ、『レグルス』って精霊の事を知らないかしら?」

 

《むっ?何故お主がレグルス殿の名前を知っておるんじゃ?》

 

「わたし…『エンシェント・フェアリー』を助けに精霊界に来たの、それで『レグルス』が彼女を助ける方法を知ってるらしくて…」

 

《お主まさか…!ちょいと右腕を見せてくれるか?》

 

「ええ…いいわよ」

龍可は袖を捲る…そこには赤い竜の腕の形をした痣があった…

 

 

《やはりシグナーだったか…しかし今、レグルス殿に会いに行くのはオススメできんのう…》

 

「えっ…どうして!?」

 

《レグルス殿は近くのボヤールの森に住んでおる、しかし最近様子がおかしいのじゃ…近づく者に見境なく襲いかかってくる、もしかしたら「エンシェントフェアリー」様を守りきれなかった無念からヤケになっているのかもしれん…》

トルンカは顔を曇らせながら話す…

 

「…レグルスはその森にいるのね…トルンカ!お願い!その森に連れて行って!」

 

《待ちなさいお嬢さん!今は危険だと言ったじゃろう!》

 

「わたしは止まってられないの…エンシェントフェアリーとクリボン達を助けなきゃならないの!お願い!!」

龍可はトルンカの手を握り、頼み込む…

 

《しょうがないのう…案内しよう!》

トルンカは悩んだ末に龍可を案内する事を決意する…それは彼女に期待したからだ…彼女がこの世界を救ってくれる事を…

 

「ありがとうトルンカ!行きましょう!」

 

《待ちなさい龍可!今不用意に外に出たら…!》

 

ガチャ

 

『アッ…』

 

「《あっ…》」

扉を開けた龍可とたまたま通りかかった猿兵士の目が合う…

 

『女ト精霊ガイタゾ!!』

 

『捕マエロ!!』

 

「《うわぁぁぁ!!!》」

龍可とトルンカは急いで逃げ出した…。

 

 

 

『『マテ〜!!』』

 

「きゃああ!どうしよう!?」

 

《嬢ちゃん!何をしておるんじゃ〜!!》

 

「ご、ごめんなさ〜い!!」

2人は逃げ続ける…その後ろにはたくさんの兵士達が迫っていた

 

「トルンカって魔法使いなんだよね!魔法使えないの〜!?」

 

《スマン!この身体じゃ無理なんじゃ〜!!》

 

「そんなー!…あっ…!」

 

《しまった!行き止まりじゃ!走るコースを間違えた!!》

 

「そんなぁ〜!?」

 

『追イ詰メタ…観念シロ…』

 

『ゼーマン様ノタメ…全テをマイナスに!』

龍可達は壁際に追い詰められる…!

 

 

《嬢ちゃん…森はここから今、太陽がある方向じゃ…儂が隙を作る!精一杯走るのじゃ!》

 

「ダメよトルンカ!それじゃああなたが!」

 

《龍可ちゃん…君の肩、いや痣に精霊界の存亡が掛かっておる!あとは頼んだぞ…!》

トルンカは前に出る

 

《スゥ…や〜い!や〜い!当てられるものなら当ててみろ!》

 

『餓鬼ガ!オ前モマイナスにナレ!』

杖に魔力が貯まる…!

 

「トルンカ!ダメぇぇ!!」

 

 

 

 

 

「融合召喚!来い『ワイルド・ジャギーマン』!サル共を吹っ飛ばせ!インフィニティ・エッジ・スライサー!」

 

《ハアッ!》

 

『ナ、ナンダト〜!ウギャアアアア!!』

 

 

 

 

「えっ…!?」

 

《な、なんじゃ…!?》

それは一瞬の事だった、龍可達の頭上から金のバイザーを着けた戦士が現れ…周囲にいた猿達を全て打ち倒したのだ…。

 

 

「よっと…!2人とも無事か?」

家の屋根から赤い制服のような服を着た男が飛び降りてくる…

 

「助けてくれてありがとう…あなたは…?」

 

「オレか?オレは遊城 十代!遊…じゃなかった、白野先生から君を助けるように言われてきた決闘者さ!」

戦士を従えた男…十代はそう名乗りをあげた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、精霊界でそんな事が…」

 

「ええ、それでエンシェントフェアリーを助けるためにレグルスに力を借りに行くの!」

龍可は十代に今の状況を説明する

 

「なら早速森に行こう、早くしないと大変な事になりそうだ…!」

 

「うん!…そういえば十代さんって白野さんと知り合いなの?」

 

「ああ!先生から精霊界に危機が迫ってるから手を貸してほしいって頼まれたんだ、ついでに白野先生はオレのアカデミア時代の寮長で…オレの命の恩人なんだよ」

 

「そうなんだ…」

 

《…なぁ、十代といったかの?ちょっと聞いていいか?》

 

「ん?なんだ?」

トルンカが十代に問いかける

 

《お主…「覇王」ではないか?》

 

「!?…よく気づいたな…ああ、オレは覇王の力を持ってるぜ」

 

「覇王…?トルンカ、覇王って何…?」

 

《覇王とは…精霊界に昔から伝わる伝説の「優しき闇を統べる者」の事じゃ、確か二十年程前に復活してとある世界を支配しかけたというが…まさかお主がのぉ…しかしお前が仲間なら千人力じゃ!エンシェントフェアリー様も救えるかもしれん!急いで森に向かおう!》

 

「ああ!案内を頼むぜ!トルンカ!…の前に…」

十代はしゃがみ込み地面に落ちたカースドニードルを拾い上げる…

 

「これを1本ずつ持って行こう…何かの役にたつかもしれないからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ここがボガールの森じゃ、気をつけるんじゃぞ?さっきも言ったとおりレグルス殿は冷静さを失っておる…》

 

1時間程歩いて森に到着した、町とは違い穏やかな空気が流れている…

 

「スゥ…レグルスー!何処にいるのー!お話ししましょ〜!!

 

 

《わぁ〜!バカバカ!何をしておる!?襲われたらどうするんじゃ!!》

龍可は森に向かって呼びかける…その声は森に響きわたった

 

「大丈夫よ!ちゃんと話せばわかってくれるわ!」

 

「ああ、話す事がデュエルの次に分かり合う事ができる事だ!それに…来たみたいだぜ!」

 

《グルルル…人間共、この森に何用だ!》

十代の言葉と共に鎧を纏い額に角を生やした獅子が現れる、その体はボロボロでこちらを睨みつけている

 

「あなたがレグルスなのね…そんなにボロボロになって…怖がらないでわたしはあなたを傷付けたりしな…」

 

《GUooooo!!!》

 

「《ひゃっ!?》」

レグルスは咆哮する…その迫力に龍可とトルンカは飛び上がってしまう

 

《レグルス殿!お、落ち着いてくだされ!この娘はエンシェントフェアリー様を助ける為に世界を渡って来たのです!》

 

《なんだとぉ…!》

 

「そうなの…だから安心してほ」

 

《クズ野郎ォがぁ!!!》

レグルスは龍可達を怒鳴りつける…その瞳には怒りが宿っている…!

 

「レグルス!落ち着いて!わたし、エンシェントフェアリーと約束したの!精霊界を護るって!」

 

《フフフ…やはりそうか、貴様らは私を捕まえエンシェントフェアリー様の力を悪用しようと言うのだな!ここで引き裂いてくれるわ!!》

 

「レグルス!ちょっと待って!わたしは…!」

 

「龍可!レグルスの後ろ足を見ろ!それが原因だ!」

 

「えっ…あ!カースドニードル!!」

 

《まさか…レグルス様は中途半端にマイナスに…!?》

十代に言われてレグルスを見る…彼の後ろ足にはカースドニードルが突き刺さっていた…。

 

「あれが原因だろうな…おそらくレグルスには龍可の言葉が逆の意味に聞こえていたんだ…」

十代の言う通りレグルスには龍可達のセリフがこのように聞こえていた…

 

 

 

「あなたがレグルスなのね…そんなにボロボロになって…怖がらないでわたしはあなたを傷付けたりしない」→「お前がレグルスか、ボロボロの貴様など敵ではない!さぁ貴様を捕らえてやる!」

 

 

《レグルス殿!お、落ち着いてくだされ!この娘はエンシェントフェアリー様を助ける為に世界を渡って来たのです!》→《レグルス!貴様を捕らえエンシェントフェアリーの力を使い精霊界を支配してくれる!》

 

なお龍可達の姿も異形の怪物に見えている…

 

 

 

 

「いったいどうすればいいの…!?」

 

《フッ…簡単な事だよ小娘、奴の杖にお前達の杖をぶつければいいのさ!》

 

「きゃ…!?あ、あなたは…?」

龍可の隣に異形の女性?型の精霊が現れる

 

「こらユベル!勝手に出てくるなよ!龍可がびっくりしてるじゃないか!悪いな龍可…コイツはオレのパートナーのユベルだ!」

 

《別にいいじゃないか十代…さぁ来るよ!》

 

《精霊界を荒らす者に鉄槌を!グオォォ!!》

しびれを切らしたレグルスが飛びかかってくる!

 

 

 

「遊海先生直伝!鉄・拳・聖・裁!!」

 

 

 

《なにっ!?ギャン!?》

瞳をオッドアイに変化させた十代の拳がレグルスの鼻っ柱を捉え弾き飛ばす!

 

「今だ!」

 

《まかせろ!!そぉい!!》

 

ガキーン!!

トルンカのカースドニードルがレグルスの足に刺さるカースドニードルに直撃する…そして強い光を放ちカースドニードルが対消滅する…

 

 

《う、ううむ…私は守らねば…この世界を…!》

頭を振ってレグルスが立ち上がる…

 

「レグルス!話を聞いて!わたしは龍可!エンシェントフェアリーを助けにきたの!これが証拠よ!」

龍可はシグナーの痣を見せる…

 

《むっ…まさしくシグナーの印!…どうかご無礼をお許しください、シグナーの少女よ…あなたの到着を心待ちにしていました…!》

 

「レグルス…!よかった…!」

龍可はレグルスに抱き着いた…。

 

 

 

 

《そういえば十代…何故カースドニードル同士をぶつけろと?》

 

「ん?簡単な算数の話だよ、プラスにマイナスをかけるとマイナスになるけど…マイナスにマイナスをかけたらプラスになる…カースドニードルはマイナスエネルギーの塊なんだろ?なら同じ事ができると思ったんだ!」

 

《なるほどのぉ…お主意外に頭がいいのぉ…》

 

「へへっ、ありがとよトルンカ!(まぁ実際は遊海先生に聞いてたんだけどな…)」

 

 

 

 

 

「精霊界の危機?いったい何が…」

 

『「地縛神」っていう三幻魔に匹敵する邪神達が目覚めたんだ…そのうちの1体が精霊界の精霊達を生贄に復活しようとしてる…さらに精霊界にそいつらを倒せる竜が封印されてる、その竜を助けようとある少女が精霊界に行こうとしてるんだ…そのサポートを頼みたい!』

 

「そういう事か…、わかった!アカデミアの遺跡から精霊界に向かうぜ!」

 

『すまないな十代…俺も別の邪神を相手にしなくちゃならないんだ…コフッ…精霊界にはおそらく「マイナスエネルギー」が充満してる…マイナスエネルギーとそれをコントロールする杖に気をつけてくれ!』

 

「わかった!先生も無理しないでくれよ?ただでさえ身体がボロボロなんだから…」

 

『ああ、善処するさ…じゃあな十代!頼んだぞ!』

 

 

 

 

 

 

「(遊海先生…17年前の借りは返せた…かな?)」

 

「十代さん!ごめんなさい!出発します!龍亞…お兄ちゃんが現実世界で戦ってるの!早く戻らないと…!」

 

「わかった!目的地は城だな?早速行こう!レグルス!案内頼むぜ!」

 

《了解した!行くぞ十代殿!》

レグルスは龍可とトルンカを背に乗せ走り出した…十代も走ってそれを追う!

 

 

「えっ!?十代さん速くない!?」

 

「身体を鍛えてるからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おのれぇ…エンシェントフェアリーめ…抵抗しおって…!これではディマク様のお役にたてんではないか!!】

ゼーマンは城の玉座で苛ついていた…彼の目的はこの世界をマイナス化し地縛神の生贄を確保する事…しかしそれにはエンシェントフェアリーのマイナス化が必要であり…それは難航していた。

 

【ならばこの世界のマイナス化を先に進めるまで!】

ゼーマンは立ち上がり魔法陣を起動する…

 

 

 

ゴゴゴ…

 

【むっ…地震か?いや…違うな…】

広間が少し揺れはじめる…それは地震ではない

 

ゴゴゴ…ガガガ…ギュイイン!!

 

【な、なんだと〜!?】

広間の地面から巨大なドリルを持った戦士が飛び出す!

 

 

「今だ!行け!『グランネオス』!『レグルス』!」

 

《ハアッ!》

 

《ゼーマン!覚悟!!》

 

【馬鹿な!どうやってここに…!ウギャアアアア!!?】

城の近くまで来た龍可達はグランネオスの力を使い地下から城に侵入…一気に玉座まで襲撃をかけたのだ!

 

【がっ…これで済むと思うなよ…我が倒れてもマイナスの呪いはディマク様の元に送られるの…だ…】

そこまで伝えゼーマンは力尽きた…それとともに猿兵士達も消滅していく…。

 

 

「ガッチャ!魔王退治達成だぜ!」

 

《フン、覇王である十代がいるのに魔王を名乗るなんて烏滸がましい…さっさと消えなよ!》

 

 

「やったねレグルス!」

 

「ありがとう龍可、十代…2人のおかげでゼーマンを倒す事が出来た!これでエンシェントフェアリー様を開放できる!」

 

《それに儂も元の姿に戻れたぞ!ありがとうよ!》

 

「「えっ!?誰!?」」

 

《儂じゃよ儂!トルンカじゃ!》

トルンカの正体…それはブラックマジシャンの最終進化体…「黒衣の大賢者」だったのだ…

 

「…本当にお爺さんだったんだ…」

 

《ホッホッ…これで精霊界も平和…ってなんじゃ!?》

 

ゴゴゴゴゴゴ…

城全体が鳴動し始める

 

《まさかゼーマンが倒れた事で城が壊れようとしてるのでは!?》

 

「全員避難だ!」

十代達は急いで城から飛び出した!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ…ハアッ…あっ!空を見て!!地上絵が!」

 

「あれは…ナスカで消えた猿の地上絵!あれが邪神なのか!?」

城から脱出した龍可達が見たもの…それは空に浮かぶ地上絵、そしてそれに吸い込まれる数多の精霊達だった…

 

《しまった…間に合わなかったのか…!うおっ!?身体が浮いて…!》

 

「ネオス!トルンカとレグルスを!」

 

《わかった!》

覇王の力を開放した十代はバリアを張りトルンカ達を救出する…

 

「どうしよう…!地縛神が目覚めようとしてる!」

 

 

 

龍可…!

 

 

 

「…まさか龍亞がピンチなの!?」

龍可の頭に兄の龍亞の声が響く

 

「龍可!急いで人間界に戻るんだ!これを!」

十代は2枚のカードを龍可に手渡す

 

「このカードは?」

 

「元の世界に戻ったらそれを先生に渡してくれ!あの人絶対にボロボロになってるから!それで治療できる!」

 

《なら儂の魔法で龍可ちゃんを送り届けよう!準備はいいか?》

トルンカが杖を構える

「うん!」

 

 

《頼んだぞ龍可、地縛神を倒してこの世界を救ってくれ!》

 

《私はエンシェントフェアリー様の封印を解く!そちらは頼みます!》

 

「龍可!()()()()によろしく伝えてくれ!また会いに行くからって!」

 

「えっ…遊海…?」

 

「あっ…やべ…!?」

困った顔の十代の顔を最後に龍可の視界は光に包まれる…そして彼女は人間界に帰還した…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍可!やっと戻ってきた…!」

 

「龍亞…ごめん!こんなにボロボロになってまで…!」

龍可は龍亞の体を支える…全身に切り傷がありその姿は痛々しい…

 

「…白野がおれを守ってくれたんだ、白野が守ってくれなかったらおれ…もっとボロボロになってた…!」

 

「えっ…あ…!?白野さん!!」

龍亞の後ろのクレーターに足を膝下まで埋めた白野が気絶している…よく見ると右腕はひしゃげ、全身から血を流している

 

「龍可…おれは龍可のヒーロー失格だ…龍可が戻ってくるまでに奴を倒そうとしたけど無理だった…、それに白野がいなきゃおれ…!」

 

「龍亞…そんな事ないよ!龍亞はわたしだけのヒーロー!白野さんもきっとそんな龍亞を助けたいから手伝ってくれたの!そんな顔してたら白野さんに怒られちゃうよ!!」

 

「龍可…ありがとう…!」

 

『フッフッフッ…ついに役者が揃ったか!地縛神の生贄になってもらうぞ!シグナーの娘!』

ディマクが龍可に声をかける…その声色はシグナーを倒せる喜びに満ちていた

 

「わたしは許さない!精霊達を傷つけ…わたしの大事な人達を傷つけたあなたを!!龍亞のデュエルはわたしが引き継ぐ!決着をつけましょう!!」

残りライフ400…そこから龍可はデュエルを引き継いだ

 

 

『フフフ…燃えカス程度のライフでも神への貢ぎ物には充分だ!さてそんな少女に敬意を表しとっておきの精霊を見せてやろう!永続罠「呪縛牢」を発動!エクストラデッキの「エンシェントフェアリードラゴン」を召喚条件を無視して守備表示で特殊召喚!』

ディマクの場に囚われたエンシェントフェアリーが現れる

 

「エンシェントフェアリー!!」

 

『フフフ…如何かな!我が虜となった竜の姿は!』

 

「許さない!絶対にエンシェントフェアリーを助けてみせる!わたしは『パワーツール』に装備魔法『集中防御盾』を装備!このカードの効果でわたしは『パワーツール』との戦闘以外のダメージを受けない!…この盾が龍亞と白野の想いと一緒にわたしを守ってくれる!」

 

 

『フッ…そんなオモチャのドラゴンなど「クシル」で叩き壊してやる!行け!「クシル」!!』

クシルの拳が龍可達に迫る…!

 

「今よ!速攻魔法『リミッター解除』!『パワーツール』の攻撃力を倍にする!お願い!地縛神を倒して!クラフティ・ブレイク!!」

 

『倍だと!?』

パワーツールがクシルを押し返す!

 

『ぐぬぬ…神に歯向かう不届き者め!だが「クシル」は自分フィールドのモンスターをリリースし戦闘破壊を無効にしお前達のライフを半分にする!「エンシェントフェアリードラゴン」をリリース!神の裁きを受けよ!』

エンシェントフェアリーが粒子に変わる…そしてクシルは地面に腕を叩きつけ…凄まじいエネルギーが龍可に迫る…!

 

 

 

《鳴動富嶽!》

 

ゴゴン!

 

 

『なんだと…!?精霊がシグナーの娘を…!』

 

「メガロック!!」

 

龍可の前にメガロックドラゴンが実体化し闇のエネルギーを防ぐ!

 

《無事だな龍可、龍亞?ギリギリセーフだったな白野》  

 

「ああ、ありがとうメガロック…助かったぜ…子供達が頑張ってるのに俺が寝てる訳にはいかないからな…!」

 

「白野さん!大丈夫なの!?」

遊海は目を覚ます…体はボロボロだがその目は敵を見据えている…

 

「ああ…しかし今がチャンスだ龍可…!『エンシェントフェアリー』を助けだせ!」

 

「ええ!これで本当の戦いができる!リバース罠『リスペクト・シンクロン』を発動!カード効果で相手のシンクロモンスターが墓地に送られた時、そのモンスターをわたしのフィールドに特殊召喚する!返してもらうわ!わたしの親友を!戻ってきて!『エンシェントフェアリードラゴン』!!」

 

『なっ…しまった!?』

龍可のフィールドに鎖で縛られたエンシェントフェアリーが現れる…そして…

 

《エンシェントフェアリー様!今お助けいたします!!》

 

バキーン!!

 

龍可のデッキから現れたレグルスがエンシェントフェアリーの鎖を噛み千切る…これにより永き封印から妖精竜が解き放たれた!

 

 

「やったぜ龍可!」

 

「うん…!やっと会えたね!エンシェントフェアリー!」

 

《ありがとう龍可…遠い日の約束を忘れないでくれた事…心より感謝します!本当にありがとう…!》

エンシェントフェアリーは約束を守ってくれた龍可にお礼を言う

 

「やったなエンシェントフェアリー、約束は果たした…龍可の事は頼むぜ?」

 

《ええ、精霊に愛されし者よ…私は龍可を守る盾となり剣となり彼女を守りましょう!》

 

 

 

「あれが龍可ちゃんのドラゴン…大した子だぜまったく…!」

牛尾は龍可の事を称賛する…弱冠11才の子供が目の前の邪神に臆する事なく戦いを挑み、親友たるドラゴンを助け出した…普通の子供にはできない事だろう

 

「ああ…だが勝負はまだ終わっていない…!」

 

遊星は油断なくフィールドを見つめる…ディマクの場には高攻撃力の「クシル」、さらに貫通ダメージを与える「吠え猛る大地」がある…次のターンで突破できなければ残りライフ200の龍可達は敗北してしまう…!

 

 

 

 

 

『私はこれでターンエンドだ、しかし「リミッター解除」のコストで「パワーツールドラゴン」は破壊される!』

 

「『パワーツール』は装備魔法を墓地に送って破壊を無効にできる!…お願い龍亞、力を貸して!」

 

「うん!おれ達のラストターンだ!」

龍亞と龍可はデッキトップに指をかける

 

 

「「おれ達(わたし達)のターン!ドロー!!」」

 

「『エンシェントフェアリー』の効果発動!フィールド魔法を破壊して1000ライフを回復する!」

《閉ざされし森よ!消え去りなさい!》

 

『しまった!』

エンシェントフェアリーから放たれた波動がクローザーフォレストを破壊し龍可達に祝福を与える!

 

「上手いぞ!フィールド魔法が無ければ『地縛神』の効果は無効になる!」

オリジナルの地縛神はOCGのカードと違いフィールド魔法が無くなると効果が無効になりエンドフェイズに自壊する効果を持っている…つまり今ならばクシルに攻撃を当てる事ができる!

 

「装備魔法『ロケットパイルダー』を『パワーツール』に、『Pain to Power』を『エンシェントフェアリー』にそれぞれ装備!バトルよ!『パワーツール』で『クシル』に攻撃!クラフティ・ロケット!!」

ロケットを装備したパワーツールがクシルに突撃する!

 

『血迷ったか!攻撃力で劣る「パワーツールドラゴン」で攻撃するだと!?』

 

 

「それはどうかしら!(かな!)」

 

『なにっ!?』

 

「『ロケットパイルダー』の効果で『パワーツール』は破壊されないんだ!」

 

「そして相手モンスターがその戦闘で破壊されなかった時!『パワーツール』の攻撃力分相手の攻撃力を下げるのよ!」

 

『なんだと!?』

クシルはパワーツールの攻撃を受け止める…しかし胸に大穴が空き、威圧感が小さくなる!

 

「そして『ペイントゥパワー』はこのターンわたし達が受けた戦闘ダメージ分攻撃力をアップする!わたし達の痛みを力に変えて…『エンシェントフェアリードラゴン』で『クシル』を攻撃!エターナルサンシャイン!!」

《精霊界を侵す邪神よ!消え去りなさい!!》

 

エンシェントフェアリーから聖なる光が放たれフィールドを包み込んだ…

 

『そんな…そんな馬鹿なぁぁぁ!!?』

 

 

ディマクLP0

 

龍亞&龍可 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったな龍可!」

 

「ありがとう龍亞!白野さん!2人のおかげよ!これで精霊達も…!」

 

「2人とも!後ろだ!!」

 

「えっ…げげっ!?」

デュエルが終わり喜ぶ2人に遊海が注意を促す…そこにはボロボロになりながらも近づいてくるディマクの姿があった

 

 

『うぅ…おのれ、こんなところで負けるとは…!ルドガー様…お許しを…!』

 

「く、来るな!龍可!逃げ…」

 

「龍亞!龍可!」ガシッ

遊星が二人を抱えディマクから離れる!

 

『ダークシグナー…に…栄光…あ…レ…』サラサラサラ…ボフン

ディマクの身体が灰となり崩れ去る…これが闇のゲームの末路である…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?白野さん、酷い怪我だ…」

 

「イテテ…流石に闇のゲームは身体にクるな…翠がいてくれれば治るんだが…」

 

「ボロボロになりすぎだぜアンタ…」

どうにか遊星達に掘り出してもらった遊海は地面に横たわっていた…この状態ではDホイールの運転も難しいだろう…

 

 

「あっ…そうだ!十代さんから預かったカードがあるんだ!」

 

「十代…?まさかバトルシティレジェンドのファイナリストの遊城 十代か!?なんでそんな人と会ってるんだよ龍可ちゃん!?」

牛尾は驚愕する…十代は常に世界を巡り中々逢えない人物だからだ…

 

「えっ…精霊界でその人に助けてもらったの…そんなにすごい人だったんだ…、えっと…これだ!『ギフトカード』!…あっ!?」

龍可の手から『ギフトカード』が飛ばされ遊海の身体に舞い落ちる…すると遊海の身体が暖かい光に包まれ傷が癒えていく…

 

 

 

 

 

「十代の奴…こんな事もできるようになったのか、あいつも成長してるな…」

遊海は体を起こす、その体は傷が無くなり元の状態に戻っていた。

 

 

「ありがとう龍可、そっちも大変だったろう?」

 

「うん、でもトルンカやレグルス…十代さんが手伝ってくれたからエンシェントフェアリーを助けられたの!」

 

《龍可、龍亞、白野…本当にありがとう、囚われた精霊達も無事に精霊界に戻る事ができました…》

エンシェントフェアリーとレグルスが実体化する

 

「あれ…ソリッドビジョンの故障…じゃないよな…アハハ…ハハ…う〜ん…」バタ

 

「牛尾さん…ドンマイです、あとで慣れやすい精霊召喚しますから…」

 

「まったく…これだから大人は…」

遊海と龍亞は呆れている…

 

「『エンシェントフェアリードラゴン』…オレ達と一緒にダークシグナーと戦ってくれるのか?」

遊星がエンシェントフェアリーに問いかける

 

《ええ、もちろんです!冥界の王がこの世界を支配すれば精霊界にも再び危機が訪れるでしょう…私も5000年の時を越え共に戦いましょう、例えこの身が滅びようとも…》

 

《このレグルスもエンシェントフェアリー様と共に力になりましょう!》

そう言うと2体は光に包まれる…そして龍可の手にレグルスとエンシェントフェアリーのカードが収まった…。

 

 

「よし…とりあえずモーメントの制御装置を作動させよう…龍可、『エンシェントフェアリー』のカードを貸してくれ」

 

「うん!遊星お願い!」

遊星達は猿の塔の中に入る…そして塔の中央部の石版にエンシェントフェアリーのカードを填める…

 

 

ウィィィン…ゴゴゴ…!

 

石版が発光し塔が揺れはじめる!

 

「2人共!脱出だ!」

エンシェントフェアリーのカードを外し遊星達は脱出する…その直後、猿の制御塔は地面へと消えていった…。

 

 

「これで残る制御装置は3つ…今度はオレの番だ!鬼柳 京介!お前のいる巨人の塔へ!」

 

「遊星…お前はアイツを倒す事ができるのか?…迷いは晴れたか?」

 

「白野さん…オレはまだ決められていません、でも鬼柳を救う為に全力を尽くします!」

遊星は遊海を見てそう答えた、その瞳はまっすぐ前を向いていた…

 

「そうか…ならその決意を邪魔させる訳にはいかないな!!」ゴウッ!

遊海はクリフォートの鎧を纏い遊星に殴りかかる!

 

「なっ!?白野さん!?」

 

 

ガキィィン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不意打ちとは…ふざけた真似をするんだな…バクラ!!」

 

 

 

「えっ…!?」

 

『チッ…ディアバウンドの透過能力を見抜きやがったか、仕留めたと思ったんだがなぁ!』

 

遊海の拳は遊星の顔の横をすり抜け…遊星の首に牙を伸ばしたディアバウンドの蛇の牙を圧し折った…

 

「一旦下がるぞ遊星!」

遊海は遊星を抱え後ろに跳躍する…

 

 

 

 

「遊星!大丈夫!?」

 

「精霊が襲ってきたの…!?」

 

「ああ…オレは無事だ、気配にまったく気が付かなかった…!」

龍亞達が駆け寄ってきて遊星の無事を確認する…。

 

 

『フハハハ…さぁ、決着をつけようぜ遊海…!』

ディアバウンドの後ろからバクラが姿を現す…

 

「白野さん…奴が…!」

 

「ああ…そうだ、奴がバクラ…いや、3000年前のエジプトを荒らし回った大邪神…ゾーク・ネクロファデスだ…!」

 

 

この戦いにおけるイレギュラー対イレギュラーの戦いが幕を上げる!

 



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対決・ダークシグナー・闇〜破滅の大邪神〜

ダークシグナー・ディマクを倒した龍亞と龍可…戦いが終わり一息ついた矢先、遊海を狙いダークシグナーとなったバクラ=ゾークが現れた…!

 

 

 

 

 

「エジプトの大邪神…!?しかも3000年前って言ったら…!」

 

「遊戯の野郎に宿ってた『名もなきファラオ』のいた時代と一緒じゃねぇか…!?」

遊星と牛尾は驚きをあらわにする…この時代では「『決闘王』武藤 遊戯には古代エジプトのファラオが宿っていたらしい」という事実が認知されている…。

 

 

『ククク…紹介ありがとうよ白波 遊海、しかし弱くなったなぁ貴様…あのハゲ程度の決闘者相手にボロボロになってよぉ、オレ様を斃した時の力は何処行っちまったんだ?』

バクラは遊海を見て煽る、そしてその言葉を聞いて驚く者がいた…

 

 

「…待って…、白野さんが…白波 遊海…!?」

 

「その人って…ゼロ・リバースの日に行方不明になったって…!」

龍亞と龍可は遊海の背中を見つめる…矢薙に存在を教えられてから2人は遊海について調べていた。

 

 

旧童実野町・童実野高校出身、バトルシティ・ファイナリスト、その後プロデュエリストの世界に進みプロリーグチャンピオンに登り詰める、その直後バトルシティ・レジェンドに参加、決闘王を降し「2代目決闘王」の称号を得た直後…ゼロ・リバースに巻き込まれ行方不明になった最強の決闘者「赤帽子」…その人物が目の前にいる、それは龍可達を驚かすには充分だった。

 

 

「遊星、龍亞、龍可、牛尾さん…離れて…!奴を迎撃します…!」

遊海はデュエルディスクを構える…!

 

『ほう…オレ様に挑むか白波、覚悟はいいんだろうなぁ?』

 

「覚悟なんてとっくに決めてるさ!今度こそ冥界に送り返してやる!」

 

『ハッ…やってみろよ!前回は遊びだ!今回は本気で殺るぜ…さぁ貴様の恐怖に歪む顔を見てやるよ!』

バクラもデュエルディスクを構える、それとともに遊星達と炎の壁で分断される…

 

 

「白野…いや、遊海さん!オレは貴方の事情は知りません!でも…勝ってください!!」

 

「遊海さん!頑張って…!!」

 

「勝ってくれ遊海!」

 

「ああ…勝つさ、我が友『名もなきファラオ』の真名に懸けて!」

遊星達の応援に応える遊海…3000年の因縁を清算する戦いが始まる…!

 

 

 

『フハハハ…さぁ闇のゲームの始まりだ!!』

 

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

バクラLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

 

『オレ様のターン!ドロー!』

『「おろかな埋葬」を発動!デッキから「ゴブリンゾンビ」を墓地に送る!そして「ゾンビマスター」を召喚!』

色白のゾンビを操る者が現れる ATK1800

 

 

『さらに魔法カード「生還の宝札」を発動し「ゾンビマスター」の効果発動!手札の「ディアバウンド・カーネル」を墓地に送り、墓地の「ゴブリンゾンビ」を特殊召喚だ!そして「生還の宝札」の効果で1ドロー!』

骨だけになったゴブリンが現れる DEF1050

 

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

バクラLP4000

ゾンビマスター ゴブリンゾンビ 生還宝 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「バクラが使うのはアンデットデッキ…とにかく『ゾンビマスター』を除去する…!」

 

『ククク…やれるならやってみろよ…!』

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『星呼びの天儀台』を発動!手札のレベル6『エレキテルドラゴン』をデッキ下に戻して2ドロー!」

「そして『聖刻龍一トフェニドラゴン』は自分フィールドにモンスターがいない時に特殊召喚できる!」

遊海の精霊である白い龍が現れる ATK2100

 

 

《主よ、油断無きように…!奴は強敵です…!》

「わかってる!俺は『聖刻龍一アセトドラゴン』を妥協召喚!このモンスターは攻撃力を1000にする事で生贄なしで召喚できる!」

朝を司る紫の龍が現れる ATK1900→1000

 

 

「そして『アセト』をリリースし『聖刻龍一ネフテドラゴン』を特殊召喚!このモンスターは自分の『聖刻』をリリースして特殊召喚できる!さらにリリースされた『アセト』の効果でデッキから『ギャラクシーサーペント』を攻守0にして特殊召喚!」

夜を司る紫の龍と星の煌めく竜が現れる ATK2000  DEF0

 

 

「『ネフテ』の効果発動!手札の『龍王の聖刻印』をリリースして『ゾンビマスター』を破壊する!」

ネフテが尾を振るう、すると三日月状のカッターが現れゾンビマスターを両断する!

 

『チッ…』

 

「バトル!『ネフテ』で『ゴブリンゾンビ』を攻撃!」

ネフテがゴブリンゾンビに突撃し粉砕する!

 

『「ゴブリンゾンビ」の効果発動!デッキから守備力1200以下のアンデットモンスター「死霊伯爵」を手札に加える!』

 

「メイン2!俺はレベル6の『トフェニドラゴン』にレベル2の『ギャラクシーサーペント』をチューニング!」

 

6+2=8

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に響け!!シンクロ召喚!『閃光竜スターダスト』!」

遊海の痣が強く輝き光のスターダストが降臨する ATK2500

 

 

「カードを一枚伏せ、速攻魔法『超再生能力』を発動!ターンエンド!2ドロー!」

遊海LP4000

ネフテ 閃光竜 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

『チッ…身体は弱ってもタクティクスは変わらねぇか』

 

「遊海さんすごいプレイングだ…1ターンで相手のモンスターを一掃した…!」

 

「あれが…伝説の決闘者の力…!」

 

「『閃光竜』…!やっぱりカッコいい…!!」

バクラは歯噛みし、遊海達はその実力を見て改めて遊海の凄さを知る…

 

 

「バクラ、俺は確かに弱体化してる…でも貴様に負けるほど弱くはないぞ!」

 

『ヘッ、そんな事わかってるよ…!さぁ、蹂躙の始まりだ!』

 

 

 

 

 

『オレ様のターン!ドロー!』

『リバースカード発動!「リビングデッドの呼び声」!墓地の「ゾンビマスター」を特殊召喚!「生還の宝札」で1ドロー!』

再びゾンビを操る者が現れる ATK1800

 

 

『「ゾンビマスター」の効果発動!手札の「死霊伯爵」を捨て「ゴブリンゾンビ」を特殊召喚!1ドロー!』

再びゴブリンのゾンビが現れる DEF1050

 

 

『そして手札から「クリッター」を召喚だ!』

毛むくじゃらの三眼の悪魔が現れる ATK1000

 

 

 

「たくさんモンスターが出てきちゃった…!」

 

「でもチューナーはいない!攻撃力も遊海の『閃光竜』の方が上だ!」

 

『ケッ…うるせぇ餓鬼達だなぁ、なんだよシンクロ召喚なんてよぉ…最凶の闇の前には意味がねぇんだよ!魔法カード「二重召喚」を発動だ!これでオレ様はもう一度召喚ができる…!さぁ…出てこいよ!!我が分身たる闇の太陽!』

バクラが一枚のカードを掲げる…すると闇が強まりフィールドを覆う!

 

 

「なんだよこれ…ソリッドビジョンじゃねぇ…!?」

 

「シグナーの痣が痛む…!何か来る!!」

 

「おいおい…嘘だろ…!?」

 

 

『3体のモンスターを生贄に…「邪神アバター」を召喚だぁ!』

フィールドに闇が集まる…そして漆黒の太陽が顕現した ATK?

 

 

 

「なに?…あのモンスター…!怖い…!!」

 

「あのカードが奴の切り札なのか…!?地縛神と同じ…いやそれ以上の闇を感じる…!」

遊星達はアバターを見て畏れを感じる…

 

 

「嘘だろ…そのカードはペガサス会長が処分した筈だ!」

 

「おい遊海!そのカードを知ってるのか!?」

牛尾が遊海に問いかける

 

「…あのカードはペガサス会長の作った『三幻神』の抑止力として作られた『三邪神』の1枚、『ラーの翼神竜』の対になる邪神『アバター』…!でもそのカードは二十年以上も前に失われたはずなんです…!!」

 

「三幻神の抑止力だって…!?」

約二十年前…とあるカードデザイナーの手で持ち出された三邪神…それは遊海と翠の奮闘により回収されペガサス会長の手によって処分されたはずだった…。

 

 

『ヘッ…処分されたからこそオレ様が持ってるのさ、処分された三邪神は冥界に流れ着いた…それを持って来たのさぁ…!まずは生贄になった「クリッター」の効果発動!デッキから「ネクロフェイス」を手札に加える!そして「アバター」の効果発動!相手は2ターンの間、魔法・罠を発動できず…攻撃力は常に全フィールドのモンスターで1番高い攻撃力に+100の攻撃力となる!「閃光竜」の姿を写し盗れ「アバター」!!』

アバターの姿が揺らめき…漆黒の閃光竜が現れる ATK?→2600

 

 

「漆黒の『スターダストドラゴン』…!?」

 

「ひっ…!」ギュッ

漆黒のスターダストへの恐怖で龍可は龍亞にしがみつく

 

「龍可…大丈夫!白野…遊海ならきっとすぐに倒してくれる!!」

龍亞は震える足を抑えながら龍可を抱き寄せる

 

 

『バトルだ!「アバター」で「閃光竜」を攻撃!流星闇撃(ダークネス・シューティング・ブラスト)!!』

漆黒のブレスが遊海に迫る…!

 

「『閃光竜』の効果発動!自身を戦闘破壊から守る!波動音壁(ソニックバリア)…うわぁぁぁ!!!」

閃光竜が翼で自身を守る…しかしその衝撃は遊海とギャラリーに襲いかかる!

 

遊海LP4000→3900

 

 

 

「おいおい!こっちにも来るぞ…!?逃げろ!」

 

《させません!!》

 

「エンシェントフェアリー!!」

衝撃が届く直前、エンシェントフェアリードラゴンが実体化し闇の波動を防ぐ

 

《皆さん無事ですか…!》

 

「ありがとうエンシェントフェアリー…!」

 

「あっ…遊海が!」

龍亞がフィールドを見る…既に鎧は無くなり遊海は膝をついていた…。

 

 

「ぐっ…たった100ダメージなのに何て衝撃だよ…!?」

 

『フハハハ…!脆いなぁ!さぁ…我を恐れよ!このゾークを!!フハハハハ!!』

 

バクラLP4000

アバター 生還宝 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

 

「まさかそんな奴を引っ張り出して来るか…反則だろそれ…!」

遊海はフラフラと立ち上がる

 

「遊海さん!大丈夫ですか!?」

 

「ああ…心配するな遊星、あんな奴には負けねえよ…こんなところでへこたれたら…翠に怒られちまう…!」

 

『ハッ!痩せ我慢しやがって…さぁ貴様の無残な死はすぐそこまで迫ってるぞ…!』

 

「そっくりそのまま返すぜバクラ…!慢心は敗北の元だ!いくぞ…!闇の貯蔵は充分か!!」

 

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!!」

「『ネフテ』をリリースして『聖刻龍ーシユウドラゴン』を特殊召喚!さらに『ネフテ』の効果で墓地の『ギャラクシーサーペント』を特殊召喚!」

青の聖刻龍と煌めく竜がが現れる ATK2200 

DEF0

 

 

「シンクロ召喚の用意が整った!!」

 

「俺はレベル6の『シユウドラゴン』にレベル2の『ギャラクシーサーペント』をチューニング!!」

 

6+2=8

 

「漆黒の闇を裂き天地を焼き尽くす孤高の絶対王者よ!!万物を睥睨しその猛威を振るえ!シンクロ召喚!『炎魔竜レッドデーモン』!!」

体に赤いラインの入った悪魔竜が現れる ATK3000

 

 

「ジャックの『レッドデーモンズ』にそっくりだ!」

 

「強いオーラを感じる…!これが伝説のデュエリストの本気…!」

 

 

『ヘッ、何が闇を裂く竜だ!我の闇はこの程度では晴れる事はない!!「アバター」の攻撃力はさらにアップする!』

アバターの姿が黒い炎魔竜に変わるATK2600→3100

 

「それはどうかな!『炎魔竜』の効果発動!このカード以外の表側モンスターを全て破壊する!燃え尽きろ漆黒の太陽!真紅の地獄炎(クリムゾン・ヘル・バーン)!!」

 

『なっ…なんだとぉぉ!?』

炎魔竜が大地に拳を叩き付ける…そして大地の怒りたる獄炎が偽りの太陽を燃やし尽くした…閃光竜は波動音壁を張る事で破壊を免れる。

 

「バトルだ!『炎魔竜』でダイレクトアタック!極獄の絶対独断(アブソリュート・ヘル・ドグマ)!!」

覇竜の拳がバクラに突き刺ささり殴り飛ばす!

 

『ぐ…ぐうぉぉぉ!!?』

 

バクラLP4000→1000

 

 

 

「やったー!!大逆転だ!!」

 

「いいぞ遊海!!そのままそいつを吹っ飛ばせ!」

 

 

『フフフ…フハハハ…!痛い…痛いぞ…!!だがこの痛みが真なる闇を呼び起こすのさぁ…!戦闘ダメージを受けた事で「トラゴエディア」は手札から特殊召喚できる!!』

 

「なんだと!?」

バクラのフィールドに異形の悪魔が現れる DEF?→600

 

 

《フフフ…!久しいな…覚えているかオレの事を!!貴様を倒す為に邪神に付いてきたのだ!》

 

「っ…!貴様…封印したはず…!」

トラゴエディア…アテムの時代近くのクル・エルナ村出身の男の魔物…偶然遺跡に入ったディーヴァに取り憑き世界を闇に沈めかけたが…遊海を依代にしたアテムに倒され封印されていた邪悪なる者である。

 

『コイツも冥界での拾いモンだ…さぁ、攻撃するか?』

 

「…『炎魔竜』の効果を使ったターンは他のモンスターは攻撃できない、ターンエンドだ…!」

遊海LP3400

炎魔竜 閃光竜 伏せ1 手札2 (魔法・罠使用不可残り1ターン)

 

 

 

 

 

 

 

『我のターン!ドロー!』

『魔法カード「貪欲な壺」を発動!墓地の「ディアバウンド」「ゾンビマスター」「アバター」「死霊伯爵」「ゴブリンゾンビ」をデッキに戻し2ドロー!…フハハハ…リバース魔法「闇の支配者との契約」を発動!レベル10の「トラゴエディア」を生贄に捧げ我自身「闇の支配者ーゾーク」を儀式召喚する!さぁトラゴエディアよ!我と貴様の闇を1つに!!!』

《おぉぉ…偉大なる邪神よ!我が力を使い真の姿に…!》

バクラの姿が闇に包まれ、そして消える…バクラの姿は消え去り、邪悪なる破壊神ゾークが顕現する…! ATK2700

 

 

「えっ…!?ひ、人がモンスターになっちゃった!?」

 

「そんな…!?」

 

【フハハハ!まだだぁ…!手札から装備魔法『巨大化』を発動!さぁ愚かなる人間共よ…我が供物となるがいい!!】

巨大化を発動したバクラ…否、ゾークがサテライトの霧…人々の魂を吸収する、そして現れるは『闇の支配者』に非ず、正真正銘の闇の神…大邪神ゾーク・ネクロファデスが3000年の時を超え顕現した! ATK2700→5400

 

 

 

       大邪神顕現

 

 

 

「デカい…!地縛神と同じ…いや、それ以上の力を…!?」 

 

「あ、あわわわ…!?」

 

「え、エンシェントフェアリー…!!」

 

《大丈夫です龍可、あなた達だけは守り抜きます…!!》

遊星達は絶望する、攻撃力5000越え…それはまさに神の領域だった…

 

 

「チートが過ぎるだろお前…!」

 

【グハハハ…!!ようやく貴様を蹂躙できる…!さぁ…苦痛の叫びをあげろ!我の効果発動!洗脳ダイス!】

サイコロのソリッドビジョンが回転する…出目は…4!

 

【4…ならば貴様の『炎魔竜』を破壊する!ダークカタストロフィー!!】

闇の破壊光線が炎魔竜に迫る…!

 

「『閃光竜』!波動音壁!!」

閃光竜が闇の破壊光線を弾く!

 

【ならば我で『炎魔竜』を攻撃!ゾーク・インフェルノ!!】

巨大な火球が炎魔竜を燃やし尽くす!

 

「ガッ…ぐああああああああああ!!!」

 

遊海LP3900→1500

 

 

「「「「遊海(さん)!!!」」」」

巨大な火球は遊海すらも飲み込み燃え上がる…遊海は身体を焦がし倒れ伏した

 

【ハハハハハハ!!どうだ!痛いか!苦しいか?貴様は楽には死なせん!その魂までも壊し尽くしてやろう…!】

 

 

 

ゾークLP1000

ゾーク(巨大化) 生還宝 手札1

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…あ…(ダメージが…大きすぎる…意識…が…)」

遊海は倒れ伏したまま動けない…アテムや過去の遊海すらも追い詰めた邪神…その闇のダメージは凄まじいものだった。

 

「遊海さん!立て!立ってくれ!!」

 

「負けないで!!起きて!!」

遊星達が必死に呼び掛ける…しかし起き上がる事ができない…!

 

【フハハハハ!動けないか?ならばトドメを刺してやる…!】

ゾークの手が伸び倒れた遊海を掴む…そしてそのまま握り締める…!

 

「ガッ…ぐあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!?!」バギバギバギメキ

 

 

「イヤァァァァ!!!」

 

「くっ…!」

 

「貴様ァ!デュエリストなら正々堂々デュエルで決着をつけやがれ!!遊海を離せ!!!」

子供達は耳を塞ぎ牛尾はゾークに向かって叫ぶ!

 

【ガハハハハ…笑止!我は決闘者に非ず…我は『神』!!この者を殺し、再び世界を闇に染めてくれるわ!ハハハハ!!…だが、コイツは離してやろう…ほら!】

 

「ガッ…あ…」

 

ゾークは握っていた遊海を手放す…しかしその高さは約100メートル地点、重力に従い遊海は地面に向かって墜ちていく…。

 

 

「遊海さん!!」

 

「遊海!!」

 

 

「(…流石にこの高さから落ちたら意識が飛ぶな…すまない遊星…遊戯…アテム…!!)」

遊海には精霊達を呼び出す余力も回避する余裕もない…そして地面が迫り…

 

 

 

 

 

「遊海さん!!」ビュウ!ガシッ

 

 

 

 

【貴様は…!】

 

地面に叩きつけられる寸前…遊海は誰かに抱きとめられる…

 

 

 

「み、翠…ど…して…?」

 

「嫌な予感がしたから飛んで来たんです!!こんなに…ボロボロになって…!」

 

《翠!とにかく着陸するよ!!》

ウィンダ…キムンファルコスの背中に乗った翠だった、シティで待機していたが虫の知らせを感じサテライトに向かっていたのだ。

 

 

 

 

 

「翠さん!?どうしてサテライトに…!?」

 

「話は後よ遊星くん…まずゾークをなんとかしないと…!」

 

【フッ…情けないな白波…女に助けられるとは…さぁ、デュエルを続けてみろ!】

 

 

 

 

「翠…頼む…ドロー…を…!」

 

「わかりました…!一緒に戦いましょう遊海さん!」 

翠は遊海を抱き起こしカードをドローする

 

「今…『アバター』…効果、魔法ダメ…だ…」

 

「はい…!伏せカードがこれなら…このままターンエンドでいいですね?」

 

「ターン…エンド…」

 

遊海&翠LP1500

閃光竜 伏せ1 手札3

 

 

 

 

 

【我のターン!ドロー!】

【我の効果を発動!洗脳ダイス!】

出目は…1!

 

 

【お前達のモンスターを全て破壊する!カタストロフ!】

大地が砕け遊海達に迫る!

 

「『閃光竜』の効果発動!波動音壁!!」

閃光竜が遊海と翠を守護する!

 

【防ぐか…しかしこれで終わりだ!我で『閃光竜』を攻撃!ゾークインフェルノ!!】

 

再び火球が遊海達に迫る!

 

「リバースカード『攻撃の無力化』!バトルフェイズを終了します!」

 

【小癪な…我はターンエンドだ!しかし次のターンで終わりだ!!】

ゾークLP1000

ゾーク(巨大化) 宝札 手札2

 

 

 

 

 

 

「なんとか凌いだ…!」

 

「でもこのままじゃアイツらの負けだ!」

 

「負けないで…負けないで!遊海!翠!!」

 

「遊海さん!翠さん!!お願い…!勝って…!!」

遊星達は祈る思いで遊海達を見守る

 

 

 

 

「翠…一緒に引いて…くれ…」

 

「はい!私達のラストターン…このドローにかかっています!」

遊海と翠は手を重ねる、その手は輝き光を纏う…!

 

 

 

 

 

 

「「私達のターン!ドロー!!」」

「これなら…!私は魔法カード『死者蘇生』を発動!墓地の「炎魔竜」を特殊召喚!」

再び悪魔竜が降臨する ATK3000

 

 

「さらに『銀龍の轟砲』を発動!墓地の『ギャラクシーサーペント』を特殊召喚!」

三度煌めく竜が現れる DEF0

 

 

「そして『ギャラクシーサーペント』を除外する事で『レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン』は特殊召喚できます!」

黒い鋼の龍が現れる ATK2800

 

 

 

【グハハハ!いくら雑魚を揃えようと無駄だ!我には勝てないぞ!!】

 

「「それはどうかな(でしょう)…?」」

 

【なに…!?】

 

 

「我が身…守りし…太陽よ…!世界を照らせ…!」

 

「3体のモンスターを生贄に…現れて!『ラーの翼神竜』!!」

周囲を光が包む…暗雲は消え去り暖かい光が大地を照らす…そして黄金の翼竜が顕現する!

 

《ゾーク!!我が主を傷つけた罪…神の名において断罪します!!》 ATK?→8300

 

【馬鹿な…ラーだとぉ!?】

 

 

「で、伝説の『神』のカード…!」

 

「綺麗…!」

 

「すごい…すごいよ遊海!!」

太陽神の光は人の希望も照らし出す…遊星達は伝説の神にその目を奪われた…

 

 

「「聖なる太陽よ!全ての闇を焼き尽くせ!ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」」

 

《闇よ…消え去りなさい!!!》

 

全てを燃やす太陽の炎がゾークを包み込む!

 

【ガアアァァァ!?…負ける?負けるだと!?このゾークが?!おのれ…おのれぇぇぇ!!!】

怨嗟の断末魔を残し…邪神は燃え尽きた…

 

 

 

ゾークLP0

 

遊海&翠WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おわっ…た…翠、ありが…と…」

 

「お疲れ様です遊海さん…あとは私に任せて休んでいてください…」

 

「ああ…すまな…い…」

デュエルが終わりボロボロの遊海は意識を手放した…

 

 

 

「遊海さん!翠さん!大丈夫ですか!?」

 

「お前達!無事か!」

炎の壁が消え去り遊星達が走ってくる

 

 

「ええ、ありがとう遊星くん、牛尾さん…遊海さんは大丈夫、私達の正体…バレちゃったわね」

 

「オレも正直驚きました…まさかこんな近くに伝説の決闘者がいたなんて…どうして正体を隠すような事を…?」

 

「…ゼロ・リバースの時、遊海さんは精霊達と一緒にスタジアムにいた人達を守ったの、その時のマイナスエネルギーで身体を侵された遊海さんは身分を偽って痩せ細った体で人々を救い続けた、それがこの人の真実…メタルナイトの真実よ」

 

 

「翠さん…遊海さんは治る…?」

 

「すごい怪我してる…」

龍亞達は心配そうに遊海を覗き込む…

 

「大丈夫!遊海さんは不死身よ…すぐに元気になるから…でも時間がないわ、次の制御塔に向かいながら治療しましょう」

 

「鬼柳…今度こそ…お前を倒しに行くぞ…!」

 

「幸いオレの車はまだ乗れる、一緒に乗っていけ!」

 

「ありがとうございます…牛尾さん!」

 

 

 

こうして猿、そして大邪神を降した遊星達は巨人の塔へと走り出した…。




オマケ

ダークシグナー バクラ=ゾーク
初代・記憶編にて遊戯達の結束により呼び出された「ホルアクティ」に倒された邪神…その存在を「冥界の王」が復活させたもの。
ただし「大邪神」の状態で復活させた場合、自身に反逆する可能性を恐れ盗賊王バクラと闇バクラの肉体をベースにその精神を復活させた。

遊海とのデュエル中、自身の分身たる「闇の支配者ーゾーク」を依代に「大邪神ゾーク・ネクロファデス」として復活、遊海を瀕死に追い込んだが「ラーの翼神竜」の攻撃により完全に消滅した。


…もしも、遊海がデュエルに負けていた場合…ゾークは全ての「地縛神」と「冥界の王」を取り込み、この世界を滅ぼしていただろう…しかしそれはあり得ざる未来である。


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対決!ダークシグナー!〜それぞれの戦い〜

メリーアフタークリスマス!

皆さんどのようにクリスマスを過ごしましたか?S.Kは家族と過ごしました!年末で忙しいですが体調に気をつけて過ごしましょう!

それでは最新話をどうぞ!


『バクラはともかく…ディマクが敗れたか…!おのれシグナー共め…!!』

 

ダークシグナーの本拠…旧モーメントにてルドガーは拳を握りしめていた、その原因はシグナーによるダークシグナーの敗北である。

 

 

『ディマクは私によく尽くしてくれた…これは落とし前をつけて貰わねばな…!』

ルドガーは地下…牢屋へと降りていく、牢屋には長髪で大柄な青年ボマーの姿があった…

 

『ボマーよ…貴様には一度死んでもらう、そして転生するのだ…ダークシグナーとして!!』

ルドガーは冷酷な笑顔でそう告げた…。

 

 

 

 

 

 

翠Side

 

 

「回復が…追いつかない…!!」

 

「翠さん…」

 

私達は今、鬼柳君と戦う為に旧モーメントの制御塔へと向かっている…私は車の後ろで全身ボロボロになってしまった遊海さんの治療をしている、遊海さんはゾークの火焔による全身ヤケド、そして握り潰された事で頭以外の骨が全て折れていた…私の精一杯の力で回復魔法を使っているけど…まったく回復の兆しが見えない、…まるで穴のあいた風船に空気を入れているみたい…!

 

 

《翠、マスターのステータスに異常を確認…回復阻害の呪い…並びに魂の一部の破損を確認しました…!》

 

「っ…!アヤカちゃん治療できる?」

 

《回復阻害の解呪を試みます、魂の方は…》

 

《任せてください!魂は私の専門です!》

 

「アヤカちゃん、フレアちゃん…お願い…!」

翠は一時的に2人に力を供給する、実体化した2人は遊海の身体を光で包み治療を開始した…。

 

 

 

「翠さん…遊海…治るよね…?」

龍亞が翠に話しかける

 

「うん、大丈夫よ…アヤカちゃん達も頑張ってるし私も頑張るから…!」

 

翠は回復カードを持つ手に力を込める…翠の力は全盛期の遊海にも及ばない、それでも自分の大切な人を助ける為に全力を尽くしている。

 

 

《!…地縛神の反応を確認!パターン「Chacu Challhua」!》

アヤカの言葉と共に上空にシャチの地上絵が浮かびあがり炎の道が形成される!

 

「そんな…誰かが戦ってるの!でもシャチの痣のダークシグナーなんていなかったよ!?」

 

「それに痣が光らない…もしかして…!」

 

「まさか…シグナーではないデュエリストがダークシグナーと戦っているのか!?」

車に並走する遊星が驚きの声をあげる、シグナーの痣は誰かが強敵と戦っている時に知らせる力がある…しかしそれが反応しないという事は一般人が戦っている事に外ならない…!

 

「オレがデュエルを見に行く!危険だからお前達は…」

 

「遊星!おれ達も一緒に行くよ!」

 

「わたしと遊海さんがいれば地上絵に入っても大丈夫だから!」

龍亞と龍可が声をあげる

 

「…わかった!オレが先行する!後から付いてきてくれ!」

 

「遊星君!気をつけて!!」

 

「はい!」

翠の声に答えた遊星はスピードをあげる…そして道路から飛び降り地上絵のサーキットに姿を消した。

 

「いったい…誰がデュエルをしているんだ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト ボマー対クロウ

 

 

 

 

 

「デュエルだ!ダークシグナー!テメェらは絶対に許さない!!」

 

『それは私のセリフだ!貴様を降しゴドウィンの走狗たる不動 遊星を抹殺するのだ!』

 

 

シャチの地上絵で戦う者達…1人は色黒のダークシグナー・ボマー、ゴドウィンにより滅ぼされた故郷の仇討ちをするために転生した決闘者

そしてもう1人は顔中にマーカーを刻んだオレンジ色の髪の青年、クロウ・ホーガン…元「チームサティスファクション」メンバーで「鉄砲玉のクロウ」の異名を持っている、彼は危うく黒い霧に巻き込まれる直前にロッカーに逃げ込み逃れる事ができた…しかし彼の保護していた子供達は地縛神の生贄となってしまった…彼はその復讐の為にボマーに挑んでいた…

 

 

 

 

「やめるんだ!ボマー!クロウ!」

 

「『遊星!?』」

デュエル中の2人に遊星が追いつく、遊星は一目で状況を察しデュエルを止めようとする

 

 

『来たか不動 遊星!!待っていろ…コイツを倒し!ゴドウィンの手先である貴様を血祭りにあげてやる!』

 

「っ…クロウ!デュエルをやめろ!ダークシグナーとのデュエルは危険だ!オレに任せてくれ!」

 

「遊星…いくらお前の頼みでもそれだけは聞けねぇ!!こいつらのせいでオレのところにいた子供達は全員消えちまったんだ!!」

 

「そんな…あの子達が…!?」

遊星の脳裏にクロウが庇護し、ライディングキングとなった自身を憧れの眼差しで見る子供達の姿がよぎる…。

 

 

「オレは奴らに復讐する…!いくらお前でも止められねぇ!…あいつらはオレの希望だった!だがダークシグナーはオレの希望を粉々にした!絶対に許さない!!!」

 

「クロウ…!」

 

『許さないのは私も同じ事だ!受けて立つぞクロウ!復讐こそ消して消える事のない心の闇なのだぁ!!』

 

「やめるんだ二人とも!お前達が心に受けた傷は似ている…だからこそお前達は互いの事をわかりあえる筈だ!ボマー…ダークシグナーになっても、お前なら心の底で故郷の事を思っているはず!あの時!共に見上げた空で!俺達が見つけようとした未来は!オレ達が目指したデュエルはこんなものだったのか!?」

 

遊星は二人を説得しようと試みる…ゼロ・リバースで両親を失い、ダークシグナーに子供達を消されたクロウ、そして自分の村を失ったボマー…奇しくも二人の抱く悲しみは似たものだった。

 

 

 

「遊星!それじゃあオレのこの怒りは何処にぶつければいいんだよ…!!」

 

「クロウ!復讐は新たな復讐を生んでしまう!どうしてわかってくれないんだ!!」

 

「わかってる…頭ではわかってるんだよ!でも!オレの心はどうにもならねぇ!!遊星…オレ達は戦わずにはいられねぇ…見届けてくれ!オレ達のデュエルを!!」

 

「…いいだろう、お前達の決闘をオレが見届けてやる!!」

遊星は説得を諦めた、二人の男は決着をつけねば止まらない…遊星は二人の魂のぶつかり合いを見届ける!

 

 

 

 

 

 

 

『積年の怨み積もりし、大地に眠りし魂達よ!今こそ汚された大地より出でて我に力を貸さん!現われろ「地縛神Chacu Challhua」!!』

 

「出てきやがった…!」

 

クロウとボマーは戦いは佳境を迎える、遊星を追い詰めた「ジャイアントボマー・エアレイド」、そしてエアレイドを何度でも復活させるダークシンクロモンスター「ダークフラット・トップ」をBFで撃破したクロウ…しかしそこにシャチの地縛神が現れる!

 

「あれが地縛神…!確かにすげぇ力を感じる!だが…負ける訳にはいかねぇ!」

クロウは「鉄鎖のフェーン」の効果でチャクチャルアを守備表示にしてその場を凌ごうとする、しかしチャクチャルアは守備の時その守備力の半分のダメージを与える効果がありライフ100まで追い詰められてしまう…!

 

 

『クロウ!これでトドメだ!永続罠「バサラ」!「ダーク・シー・フロート」をリリースし「フェーン」を破壊!そして800ダメージを与える!!』

 

「させるかぁ!リバース罠『ボムガード』!モンスターを破壊する効果を無効にし、500ダメージを相手に与える!」

クロウはすんでのところでダメージを回避する…しかしライフは風前の灯火、次のターンで決めなければ勝機はない…!

 

「…オレは負けられねぇんだ…力を貸してくれ!ドロォォ!!…ありがとう…お前らのくれたチャンス、無駄にはしねぇ!!」

クロウは子供達の想いを乗せてカードを引く…それはボマーを倒す逆転の一手となる!

 

「オレは『極北のブリザード』に『鉄鎖のフェーン』と『蒼炎のシュラ』をチューニング!吹き荒べ嵐よ!鋼鉄の意思と光の速さを得てその姿を昇華せよ!シンクロ召喚!『BFー孤高のシルバーウィンド』!!」

子供達の想いを乗せた孤高の鳥人が現れる!

 

 

『無駄だ!「チャクチャルア」には自身が守備表示の時攻撃を無効にできる!』

 

「まだだ!『シルバーウィンド』は攻撃できなくなる代わりにこのカードの攻撃力より低い守備力の相手モンスターを破壊できる!いけ!『シルバーウィンド』!パーフェクト・ストー《たすけて…助けて…!》…!?」

効果で地縛神を倒そうとするクロウ…しかし地縛神に浮かびあがった子供の顔を見て動きを止めてしまう…。

 

『どうした?効果を使わないならば私のターンだ!』

 

「ボマー!!お前の目には視えないのか!?」

 

『?…私に見えるのは勝利のゴールのみ!』

ボマーには子供達の顔が見えていない…

 

「待つんだボマー!その地縛神をよく見るんだ!!」

 

『…くどいぞ遊星、いったい何が……馬鹿な!何故子供達が地縛神の中に!?』

 

ボマーは自分の目を疑う、地縛神に囚われた魂達…それはナスカに住むボマーの村の人々だったからだ、ボマーの村を滅ぼしたのは「赤き竜」ではなくダークシグナーの仕業だった…ボマーは騙されていたのだ。

 

 

「ボマー!このデュエルは無意味だ!デュエルを中止しろ!」

 

『遊星、クロウ…すまない、私はサ…うぐぅっ!?』

真実を目の当たりにし正気を取り戻したボマー…しかし冥界の王が許すはずはない…!

 

【戦エ、戦ウノダ、ボマー…オ前ハ冥界カラ甦ッタダークシグナー…!シグナーヲ皆殺シニスルノダァ…!】

 

『うぐぁぁ…!!…【我はダークシグナー…冥界の闇のもとに貴様を抹殺する…!】』

 

「ボマー!!」

ボマーの精神は地縛神に乗っ取られる、ダークシグナーは冥界の王の駒…自由意思は無い…!

 

『【クロウ…!私を倒せ…!私を倒せば囚われた魂は…開放される!早く…!!…うぐぅ…!!】』

【クロウ、お前がターンを進めないのならば我が進行する…いけ!「チャクチャルア」でダイレクトアタック!!】

完全にボマーを乗っ取った地縛神の攻撃が迫る!

 

「なっ…うわぁあぁぁあ!!」

 

「クロウ!ボマーの思いを無駄にするな!!」

 

「ボマーの思い…そうか!!リバース罠『パラサイトマインド』!ボマーの永続罠『バサラ』をカードのコントローラーの代わりに発動できる!!」

遊星の一喝を受けたクロウに電流が走る、無敵に近い効果を持つ地縛神…しかしその無敵性はプレイヤー自身からの効果には意味が無い!

 

「『バサラ』の効果で『シルバーウィンド』をリリースして『チャクチャルア』を破壊する!!」

《ハァ!!ウォォォ!!!》

シルバーウィンドが炎に姿を変えチャクチャルアに突撃…その身体を貫いた!!

 

【グアアアアア!!!?】

 

ボマーLP0  

 

クロウWIN!

 

 

 

 

 

《グギャアアアアア!!?》

チャクチャルアが断末魔をあげながら海に沈み暴れる、その振動でビルが崩れクロウに降りそそぐ!

 

「しまった!?」

 

『クロウ!!!』ズガン!

 

「「ボマァァ!」」

 

 

 

 

『ぐ…クロウ…遊星…無事か…?』

 

「ボマー!しっかりしろ死ぬんじゃねえ!!」

正気を取り戻したボマーがクロウを弾き飛ばす事でクロウは事なきを得た…しかしボマーは瓦礫に埋まり瀕死の状態だった…

 

『クロウ…子供達を助けて立派に育てろ…』

 

「お前に言われるまでもねぇ!わかってるよ!」

 

『遊星…お前言う通りだった…復讐は何も生まない…遊星…ダークシグナーを倒せ…私の…代わり…に…』サラサラサラ

 

「「ボマー!!」」

遊星に願いを託しボマーは消え去った…

 

 

「ボマー…お前との約束、必ず果たしてみせる!!」

こうしてクロウとボマーの悲しき戦いは幕を閉じた…

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロウくん大丈夫!?今治療するから!」

 

「翠!?なんでアンタがこっちに!?」

デュエルの決着から数分後、車で追いかけて来た牛尾チームが合流する、呪いの解呪中の遊海を寝かせ翠はクロウを治療し、それと共に遊星が事情を説明する

 

 

「…メタルナイトが白野で翠さんがピンチに駆けつけたねぇ…まったくわからねぇや、とにかくオレ達は3人のダークシグナーを倒して…4人残ってるって訳か、遊星…鬼柳のトコ行くんだろ?」

 

「…ああ、オレの戦いはまだこれからだ…今度こそ決着をつける!」

 

「ならオレも行くぜ…チームサティスファクションのメンバーとしてお前達の戦いを見届ける!」

 

「すまないクロウ…ありがとう…!」

 

「…OK!治療完了よ!」

 

「すまねぇ翠!…まさかアンタ達がサイコデュエリストだったなんてな…」

 

《だからサイコデュエリストじゃないよ!それよりも力は強いんだから!!》

 

「モンスターが実体化して喋った!?」

 

「すまない、その説明は後だ…時間が無い…行こう!」

 

遊星達は巨人の塔へ向かう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊星対鬼柳

 

 

 

『ようやく来たか遊星…!さぁ始めようぜあの時叶えられなかったチーム・サティスファクションのラストデュエルを!!』

 

「ラストデュエル…」

遊星はついに鬼柳のいる巨人の塔にたどり着く、牛尾や龍亞達は近くの高台でデュエルの様子を見守っていた。

 

『オレはこの日を待ってたんだ…3年前…お前達に裏切られたあの日から!この復讐の時を!!!』

鬼柳が復讐鬼に変貌した理由…それは約3年前に遡る…。

 

 

鬼柳・遊星・ジャック・クロウの4人で構成されたデュエルチーム「チームサティスファクション」はサテライト全てのデュエルチームを倒しサテライトを統一した、しかしリーダーである鬼柳は「満足」できなかった…そして鬼柳は暴走しセキュリティに攻撃を仕掛け始めた、その様子を見た遊星達3人は一度チームから離脱する…そして運命の日は訪れた。

 

鬼柳を危険人物と判断したセキュリティは大規模な作戦を展開…鬼柳を追い詰めた、しかしそれをみかねた遊星達が鬼柳を救う為に駆けつけるも既に手遅れ…鬼柳の精神は既に壊れていた…遊星は自分が「鬼柳 京介」だと偽り、身代わりになろうとした…しかしセキュリティの隊長はそれを看破し鬼柳を連行してしまう…その時に彼とのすれ違いが起きた。

 

セキュリティの隊長は遊星の肩に手を置いた、鬼柳には「遊星が自分を売った」ように見え…遊星を恨む原因となった。

…実際は「セキュリティに反逆したらもう2度と会えないだろう、残念だったな」という事だったのだが…その時点で鬼柳は正常な判断力を失っていた…。

 

 

 

『行くぜ遊星!今度こそ死の淵から復讐の劫火の中に蹴り落としてやるよ…地縛神の力でなぁ!』 

 

「鬼柳はこんな奴じゃなかった…!そして何よりも仲間を…オレ達を思ってくれていた!だからこそオレはこのデュエルでお前を…救ってみせる!!」

 

炎のサーキットが展開し…ついに因縁のデュエルが始まった!

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

『遊星…!貴様を地獄に送ってやる!降臨せよ!「地縛神Ccapac Apu」!!』

 

「来たか…!」

 

デュエルは佳境を迎える…インフェルニティのハンドレスコンボ、そして墓地の悪魔族の効果をコピーするダークシンクロモンスター「ワンハンドレット・アイ・ドラゴン」を乗り越えた遊星の前に巨人の地縛神が立ちはだかる!

 

 

『再び味わえ…地縛神の恐怖を!!「コカパクアプ」でダイレクトアタック!』

 

「オレは逃げない!トラップカード『軍神の采配』を発動!攻撃対象を『ジャンクウォリアー』に変更する!」

 

『だが!「コカパクアプ」は破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える!これで終わりだぁ!』

 

「まだだ!トラップカード『バースト・シンクロ・サモン』を発動!相手のモンスター効果によるダメージを0にする!そして…エクストラデッキから0にした効果ダメージと同じ攻撃力のシンクロモンスターを召喚条件を無視して特殊召喚する!」

本来であれば「ジャンクウォリアー」の攻撃力は2300、しかし装備された罠カード「シンクロ・ストライカー・ユニット」の効果で1000上がり3300…そして自身の効果でエンドフェイズに攻撃力が800下がり…現在の数値2()5()0()0()、これが意味する事は…!

 

 

「友を救う為に飛翔せよ!『スターダストドラゴン』!!」

遊星の声に応え星屑の竜が飛翔する!

 

「鬼柳!このデュエルでお前を破滅から救い出す!!」

 

 

デュエルは熾烈を極めた、スターダストでダイレクトアタックを狙うも罠カード「鎮守の煌画」で攻撃対象をコカパクアプに固定され攻撃できず、返しのターンで地縛神に攻撃を受ける…しかし遊星は罠カード「孤高の守人」でスターダストを守る、そして鬼柳は罠カード「悪鬼蹂躙」で戦闘ダメージを倍化し遊星を追い詰める…しかしその時!

 

『ぐっ!?しまった…!うわぁぁ!!』

地縛神の攻撃のあおりを受けた鬼柳がバランスを崩し炎壁に突っ込んでしまう!

 

「鬼柳!!!」

遊星は鬼柳に手を伸ばす!

 

「オレは間違っていた!あの時オレは一人で犠牲になる事でお前を救えると思い上がっていた…だが違う!仲間を救えるのは仲間達との結束…その想いだったんだ!!」

 

その瞬間、遊星…シグナー達の痣が光を放つ!

 

 

 

「これは…遊星の思いを感じる…!」

 

「遊星…鬼柳…っ!?痣が…!」

 

「痣が…遊星のところに!」

光を放った痣はそれぞれの腕から離れ遊星の背に集結、赤き竜の姿が完成する、それと共に遊星のデッキトップが輝きを放つ!

 

 

 

「オレ達の思いが集まり…完成していく…!そうか!このカードが鬼柳を救うオレ達の思いを乗せた奇跡のカード!!…オレのターン!ドロー!!」

遊星はカードを引く…そのカードの名は「救世竜セイヴァー・ドラゴン」!

 

「オレはレベル8の『スターダストドラゴン』とレベル1の『スターダストシャオロン』にレベル1の『セイヴァードラゴン』をチューニング!!」

巨大化したセイヴァードラゴンに2体の竜が融合する!

 

「集いし星の輝きが新たな奇跡を照らし出す!光さす道となれ!シンクロ召喚!光来せよ!!『セイヴァー・スター・ドラゴン』!!」

遊星が光に飛び込み一体化する、これこそが赤き竜の奇跡…救世の星「セイヴァー・スター・ドラゴン」!

 

 

「『セイヴァースター』は相手モンスターの効果を無効にし…その効果を得る!サブリメーションドレイン!!」

その瞬間、コカパクアプの身体から青白い光が飛び出しセイヴァースターに吸収される!

 

「『セイヴァースタードラゴン』で『コカパクアプ』を攻撃!シューティング・ブラスター・ソニック!!」

音速を超えた光の一撃が邪悪なる巨人を貫通…大爆発を起こした!

 

鬼柳LP0

 

遊星WIN!

 

 

 

 

 

『うわぁぁぁ!!』

 

「鬼柳ゥゥゥ!!!」

闇の爆発に呑まれかける鬼柳…遊星はそれを神速で助け出した…。

 

 

 

 

 

「鬼柳!しっかりしろ!オレは友を見捨てない!今度こそお前を…!」

 

『遊星…オレはダークシグナーになる時…2つ願い事をしたんだ…』

セイヴァースターの内部空間…そこで遊星と憑き物の落ちた鬼柳は言葉を交わしていた

 

『一つはお前達への復讐、そして…あの時叶わなかった「チームサティスファクション」のラストデュエルをしたいって…』

 

「鬼柳…お前…っ!」

鬼柳は確かに復讐を願った…しかしそれは「憎しみ」からではなく「怒り」からくるもの…彼は仲間を…遊星を憎みきれなかったのだ…

 

『カッコ悪いよな…こんなんじゃ…満足できねぇぜ……』サラサラサラ

 

「鬼柳…!」

 

こうして因縁…否、チームサティスファクションのラストデュエルは遊星の勝利を以て決着した。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊星…やったな…」

 

「クロウ…ありがとう」

デュエルを終え、制御装置を稼働させた遊星のもとにクロウ達が到着する。

 

 

「お疲れ様遊星君、…辛い戦いだったわね…」

 

「翠さん…大丈夫です、ケジメは着けました…オレはダークシグナーを倒します…!」

遊星は翠の目をまっすぐ見てそう答えた…迷いは消えたようだ。

 

「それよりも翠さん、ゆ…白野さんの容態は?」

 

「今、アヤカちゃん達が解呪してるわ…解呪が終わらないと完全な治療ができないから…心配してくれてありがとう遊星君」

翠は眠り続ける遊海に目を向ける…遊海は苦しそうな表情で眠り続けている…。

 

《ご心配なく!命に別状はありません!単に傷や怪我の回復が遅くなる呪いですから…必ず解呪します…!》

アヤカが解呪しながら答える…遊海の胸からは呪言のような黒い文字が飛び出しては消えていく…

 

「…白野さんに迷惑は掛けない、オレ達5人でダークシグナーを倒してみせる…!」

遊星は眠り続ける遊海を見て決意を固める。

 

 

「遊星!見てサテライトの人達が…!」

 

「戻ってきてる!やったぁ!」

 

「なんだって…!?」

遊星は高台から周囲を見る…するとサテライトに光が降りそそぎ人々が実体を取り戻していく…本人達は何が起きたかわからないという感じだ…。

 

 

「そうか…鬼柳の地縛神を倒したから中にいた奴らが戻ってきたのか!やったな遊星!」

 

「ああ…でも喜ぶのは早い、旧モーメントを止め…冥界の扉を閉じるにはあと2ヶ所の制御装置を作動させ封印しなければならない…それにダークシグナーはあと3人いる…」

 

 

 

『フッ…そうだな不動 遊星、よくも4人を倒してくれたなぁ…!』

 

 

「えっ…!?」

 

「牛尾のおっちゃん!?どうしたんだよ!」

牛尾の口から低い声が発せられる…腕には蜘蛛の痣が浮かんでいる…。

 

「龍亞!龍科!牛尾から離れろ!…貴様…ルドガーだな!!」

 

『そのとおりだ…不動 遊星、決着をつけよう…旧モーメントまで来るがいい…貴様の相手をしてやろう…!』ガクッ

 

「ん?…なんだお前ら…俺の事見て…?」

牛尾は正気を取り戻す…ただの連絡役として使われたようだ…。

 

「牛尾さん!ダークシグナーに乗っ取られてたんですよ…!」

 

「マジか翠…すまん面目ねぇ…」

牛尾には責任はない…米粒サイズの蜘蛛に気づけと言うのは無理な話である。

 

 

「…遊星、どうする?確実に罠だぜ…?」

 

「クロウ、確かに罠の可能性が高い…だがチャンスでもある!奴を倒せば未だに戻らないサテライトの人々も帰って来るはずだ!行こう旧モーメントへ!!ルドガーとの決着をつける!」

 

「…わかった、行こうぜ遊星!」

 

「おれ達も行く!」

 

「ああ、ここまで来たんだ!旅は道連れってな!」

 

「龍亞、龍可、牛尾…すまない」

 

「いいのよ遊星君、行きましょう!」

 

「はい!!」

 

こうして次の目的地は定まった…シグナーとダークシグナーの戦争は佳境を迎える…!



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対決!ダークシグナー!・蜘蛛〜17年前の真実〜

たぶん今年最後の投稿です!2019年も「決闘の観測者」をよろしくお願いします!

それでは最新話をどうぞ!


4人のダークシグナーを倒したシグナーチーム、そんな中ダークシグナーのリーダー・ルドガーを倒すため旧モーメントへと向かっていた…。

 

 

 

 

 

《報告します、マスターの解呪に成功しました!これでもう大丈夫です!》

 

《魂の修復も完了です!無茶をしなければ大丈夫ですよ!》

 

「ありがとう2人共!あとは私に任せて!」

旧モーメントに向かう途中、遊海の解呪が完了する…翠は強く回復魔法を使い遊海のボロボロの身体を癒やしていく。

 

 

 

「ふぅ…これで一安心ね…」

 

「遊海治ったの!?…よかったぁ〜…」

翠の隣に座っていた龍亞が安堵の声を漏らす

 

「ええ…これで大丈夫のはず、あとは遊海さんが……」カクッ

 

「あっ!?翠さん!!」

翠は意識を失う…眠ってしまったようだ。

 

《龍可大丈夫ですよ、翠は少し疲れただけですから…》

 

《カードの力を使うには精神力を使いますし…それにユウミの事を心配していましたから緊張の糸が切れたのだと思います》

 

「そうなんだ…翠さん、遊海さんの事が本当に大好きなんだね…」

龍可は遊海に膝枕しながら眠る翠を見てそう呟いたのだった。

 

 

 

 

「見えてきたな…あれが旧モーメントのある場所か…!」

 

「すごい大きい…穴…!?」

サテライトの中心に近づくにつれ目的地が見えてくる、旧モーメント周辺は巨大なクレーターになっていた。

 

「龍亞…なんだか怖い…!あそこから怖い力を感じる…!」

 

「龍可!大丈夫!おれが絶対に龍可を守ってみせる!」

精霊の力を持つ龍可はその場所から得体の知れない力を感じる…龍亞は心配させないように龍可を励ますのだった。

 

 

 

 

 

 

「ここが…親父の作った旧モーメントか…!」

 

「遊星!階段がある!ここから降りようぜ!」

遊星達はついに旧モーメントまでたどり着いた…旧モーメントの周りは陥没し高さ30メートル程の穴になっていた…まるでクレーターのようだ。

 

「おい遊星…行くのはいいが2人はどうする?オレが見てるか?」

 

「むっ…翠さんも寝てしまってるのか…」

遊星は車を覗く…そこでは回復した遊星と疲労で眠っている翠の姿があった。

 

「確かに2人を置いていくのは少し危ねえしな…」

 

《大丈夫だよ!翠達は…》

 

《私達が守るよ!》

 

「うわっ!?なんか出てきた!?」

クロウの言葉に答えるように2人の精霊が姿を現す。

 

 

「あなた達は…翠さんの精霊?」

 

《うん!私はウィンダ!》

 

《わたしはウェン!よろしくね!》

龍可の問いに答えて自己紹介をする2人…ついでに霊獣状態である。

 

 

《私達が翠達とみんなのDホイールを守ってる!あなた達はダークシグナーを倒してきて!》

 

「ウィンダといったか…任せて大丈夫なんだな?」

遊星がウィンダに問いかける

 

《任せておいて!戦い(物理)には慣れてるから!》

 

「…すまない2人を頼む…!」

 

《うん!頑張ってね遊星!》

 

こうしてシグナーチームは旧モーメントへと降りて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊星対ルドガー

 

 

 

 

『来たな遊星…かつての仲間を地獄に突き落として来たか…』

 

「違う!オレと鬼柳の間に憎み合う理由は無かった!!お前達ダークシグナーがオレ達のすれ違いを利用したんだ!!」

旧モーメントの内部…その薄暗い吊り橋の上で遊星とルドガーは対峙している…。

 

 

『誤解?違うな、最初からお前達は命を懸けて憎しみ合う運命だったのだ!憎しみと悲しみに彩られた火花を散らしながら破壊へのモーメントを回す…私と不動博士のように!』

 

「なんだと!?」

 

『フハハ…これを見るがいい!!』クイ、カチッ!

 

 

ズガガーン! キュイイーン!! バチバチ!

 

 

「うわぁぁっ!?」

 

「な、なんだぁ!?」

 

ルドガーが義手のスイッチを押す、するとモーメントの何処かで爆発が起き足元から禍々しい虹色の光が溢れ出す…その光はモーメントの光、それが左回転しながら上へと昇っていく…!

 

 

『見えるか?遊星…これこそが17年前に私と不動博士が見つけた新たな可能性への扉だ!この光の向こうにはこの世界を変える力が眠っているのだ!やがてこの光はここから溢れ…この世界を覆い尽くす!』

 

「そこに…そこに大きな犠牲が伴うとしてもか!!」

遊星は声を荒らげる…その脳裏には消えていくサテライトの人々、そしてラリーの姿があった。

 

「ルドガー!オレは貴様を許さない!許すわけにはいかない!!」

 

『フッ…新たな可能性の前に多少の犠牲はつきものだ!見るがいい!この美しい光を!この光は運命そのものだ!この光は生きている!私の!不動博士の運命を飲み込み生命を得たのだ!!』

ルドガーは光に酔ったように捲し立てる…その瞳は鬼柳やバクラとは違う狂気に支配されていた…。

 

 

「ルドガー!貴様は狂っている!!これ以上貴様の好き勝手にはさせない!!」

遊星はルドガーの言葉を否定しデュエルディスクを構える!

 

『理解を得ようとは思わない!父親と同じように貴様もこの光の中に葬ってくれる!!』

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…!」

 

『フハハハ…無様だな遊星、もうすぐ逝かせてやろう…光の中に眠るお前の両親のもとにな…!』

 

 

遊星は追い詰められていた…ルドガーによる先攻2ターン目の「地縛神Uru」の召喚、さらにサポートカードによる徹底したロック…遊星の残りライフは僅か50となっていた…。

 

 

「まだだ…!オレのライフはまだ残っている…!!」

遊星はダメージを受けボロボロの体で立ち上がる…その瞳には未だ闘志が灯っている

 

『フッ…不屈の闘志は父親譲りのようだな、強い運命を感じるよ…私を倒しに来たのが不動博士の息子とは…!』

 

「オレは貴様との運命など認めない!」

 

『強がらなくてもいい…お前のライフは残り50、間もなくお前の魂はモーメントの光の中に消える…その前に17年前の真実を話してやろう…!』

そしてルドガーは語り始める…17年前に何が起きたのかを…。

 

 

遊星の名前の由来…それは不動博士の見つけた新粒子「遊星粒子」に因んで名付けられた…人と人を繋ぐ歯車のような人物になってほしいと…そんな願いを込めて付けられた事

 

自分とレクスは不動博士の助手でありモーメント研究の手助けをしていた事、実験は順調に進んでいた…小さな異変が起きるまでは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜17年前〜 ルドガーSide

 

 

「不動博士、出張願いを提出します!」

 

「ルドガー?何処に行くんだ?」

研究室で不動博士はある調査を行なっていた…それはモーメントの実験の度に起きる小さな地震についてだった、無論海馬社長にも報告しモーメントの稼働は一時停止している…。

 

「ナスカへ行きたいのです、あの地ではモーメントの稼働と同じタイミングで地震が起きているらしいのです」

 

「…その因果関係を調べたいという事か…確かにモーメントのコードネームはあの辺りの言葉から取っているが…うん、いいだろう!調査を頼むよルドガー」

 

「はい!ありがとうございます不動博士!」

 

こうしてルドガーは遠くナスカの地へ向かった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(五千年周期で争う邪神と天空の竜の神話…そして『ナスカの地上絵』は五千年前の邪神の封印された姿か…興味深いな、確かに地上絵には「蜘蛛」「トカゲ」「ハチドリ」「巨人」があるが…)」

ルドガーは荒野でバギーを走らせる…そしてこの地に残る神話とモーメントの関連性について考えていた。

 

 

「もう少し詳しく調べねば…」

ルドガーは地上絵を見つめ考える…

 

 

 

 

『ごきげんいかがですか?ルドガー・ゴドウィン博士』

 

「っ!?誰だ!!」

その青年はいつの間にかルドガーの後ろに立っていた…服装は熱帯で暑いはずなのに黒いコートを纏い黒いバイザーのような仮面を付けていた、しかし汗をかいている様子はない…。

 

 

『オレはイリアステルからやって来た者です…ドラゴンヘッドの痣を持つシグナー、ルドガー博士』

 

「イリアステル…?ドラゴンヘッド?なんの事だ…?」

 

『ルドガー・ゴドウィン、貴方は神に選ばれた人間だ…その左腕の痣が何よりの証拠…』

 

「この痣は生まれつきのモノだ!」

ルドガーは自身の左腕を見る…そこにはドラゴンの頭のような痣が刻まれていた…。

 

『それが赤き竜に選ばれた証…シグナーの痣、貴方は5000年周期で行われる争いに巻き込まれる運命にある…貴方はもう逃れられない…』

 

「馬鹿な…本当に神話の戦いが起きるというのか!?」

 

『既に準備は始まっています…我々イリアステルは貴方に期待している…貴方がモーメントを動かす事で人類に新たな進化をもたらす事を…!』

 

「モーメントを動かすだと!?あれはまだ完璧ではない!しっかり異常の原因を見つけなければ…!」

 

『…この世界の貴方は少しまともすぎるようだ…このままじゃいけないな…』

その瞬間青年は姿を消す

 

「なっ…何処に…」

 

『頼みますよルドガーさん、貴方はこの世界を救う礎になる人なのだから…!』

 

「なっ…うわぁぁぁ!!!」

青年は一瞬にしてルドガーの背後に回り込み背中に手を当てる…手からルドガーの身体を侵食する黒いエネルギーが放たれ…ルドガーは気を失った…。

 

 

 

 

 

 

「っ…私はいったい…これは…!?」

しばらくして意識を取り戻したルドガー…その右腕には紫の蜘蛛の痣が現れていた…。

 

 

 

 

 

 

 

〜運命の日〜

 

 

ビーッ!ビーッ!

 

「な、何事だ!?」

モーメント研究所に警報が鳴り響く

 

「不動博士!大変です!制御装置のカードが盗まれました!」

 

「なんだって!?犯人は!」

 

「…ルドガー…ルドガー・ゴドウィンです!」

 

「なんだって!?」

 

「ルドガーはモーメントのコントロールルームへ向かっています!!」

 

「っ…わかった!君は避難と通報を!私はルドガーを止める!!」

 

「わ、わかりました!!」

不動博士は研究員に避難するように伝え研究室を飛び出した…。

 

 

 

 

 

 

「ルドガー!!」

 

『不動博士…よくいらっしゃいました』

モーメントの前で二人は対峙する…ルドガーは数人の黒服の男を従えていた…。

 

 

「お前…いったい何をするつもりだ!」

 

『モーメントの限界を見たいのです…モーメントは人類に新たな進化をもたらす光!それをこの目に焼き付けたいのです…!』

ルドガーは狂気に侵された目で不動博士に叫ぶ

 

「ルドガー!わかっているのか!?今この町にはたくさんの人々がいる!大勢の人を危険に晒すつもりか!」

 

『危険かどうかはやってみないとわからないでしょう…!制御装置を取り除いたモーメントの力は想像できないのですから!』

ルドガーは「スターダスト」「レッドデーモンズ」「エンシェントフェアリー」「ブラックローズ」のカードを不動博士に見せつける…

 

「ルドガー…せめてそのカード達は返してもらうぞ!!」ドン

 

『ぐっ!?』

不動博士はルドガーに体当りし4体のドラゴンを奪い返す…しかし

 

『お前達!カードを取り返せ!!』

 

バンバンバンバン!!

 

「ぐはっ…!ぐぅぅぅ!!」

黒服軍団による一斉射撃…不動博士は数発被弾しながらも彼らから逃げ延びた…「エンシェントフェアリー」のカードを落とした事に気づかずに…

 

 

 

 

 

『…逃げられたか、まぁいい…ん?「エンシェントフェアリー」のカードだけ落としていったか…』

不動博士に逃亡を許したルドガーは「エンシェントフェアリー」のカードを拾いあげる…

 

 

ドクン!

 

 

「…イリアステルよ、私がモーメントを起動する…避難するがいい」

 

『ぬかるなよルドガー、あの方も結果を楽しみにしているのだから…』

黒服軍団はそのまま去っていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私は…なんという事を…!!」

ルドガーは「エンシェントフェアリー」のカードを手にした瞬間、正気を一時的に取り戻した…それは赤き竜の最後の抵抗なのだろう、しかし頭の中には冥界の王の声が響いている…。

【モーメントヲ動カセ…冥界ノ扉ヲ開ケ…】と

 

 

「…私が正気でいられる時間はあと僅か…ならば…!!」

ルドガーは自身の左腕を見つめ覚悟を決めた…!

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん!」

ルドガーの弟・レクス・ゴドウィンが制御室に駆け込む…不動博士から三枚のドラゴンを託されたレクスは兄を止めるために探していたのだ。

 

『ぐっ…来たかレクス…これを…受け取れ!!』ガラン

 

「兄さん!?…これは…!!」

制御盤の光だけが室内を照らす中ルドガーは大きなビーカー型の機械を投げ渡す…その中には切断された自身の左腕が入っていた。

 

『レクス…私の腕を持って逃げろ…私の正気が保たれているうちに…早く!!』

 

「兄さん!なんだ…なんでこんな事を!!」

 

『レクス…私の体には赤き竜と邪神…2つの神がやどった!しかし私は邪神の道を選ぶ!!早く行け…行くんだ!!』バンバン! チュイン

 

「兄さん…!」

ルドガーはレクスの足元に銃弾を打ち込む

 

『これから先…「シグナー」という者達が少なくとも4人現れる!何年かかってもいい!彼らを助け…私を斃せ!!』

 

「兄さん…ごめん…!!!」

レクスは腕を持って立ち去った…一筋の涙を残して…

 

 

 

 

 

「これでいい…あとは頼んだぞ、我が弟よ…!」

ルドガーは制御盤の前に立つ

 

『これで私は生まれ変わるのだ…ダークシグナーとして!!』カチッ

 

 

ルドガーは破滅へのスイッチを押す…モーメントは致命的な負の回転を始め…閃光が全てを包み込んだ…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの時冥界の扉は開かれたのだ…5000年の時を超えて…』

 

ルドガーは過去の話を語り終える…17年前に起きた赤き竜と邪神、その前哨戦の顛末を…

 

 

「ルドガー!それで貴様は神を気取るつもりか!!その手で…どれだけの人々の生命を弄べば気が済むんだ!!」

 

『遊星…我が運命は気づけば神の手の中にあり…光と闇、2つの選択肢もあった!…私は心の闇を選んだ!間もなくこの世界は生まれ変わる!!それが私の答えだ!!』

 

「ルドガー…!」

遊星はルドガーを睨みつける

 

『フフフ…いい目だ、感じるぞお前の憎しみを…!私を憎め!その憎悪は我々の力となる!…デュエルを再開する!いけ!「地縛神Uru」でダイレクトアタック!!』

 

「まだだ!断ち切らせはしない!『ゼロガードナー』をリリースしバトルダメージをこのターン0にする!!」

 

再開されるデュエル、地縛神の糸による攻撃を遊星の場の小さな青いロボットの切り離した『0』型のモニュメントが受け止める!

 

『なんとか攻撃を防いだか…しかし私に勝つ事は不可能だ!』

 

「いや!言ったはずだ!オレのライフはまだ残っている!!オレは掴んでみせる…勝利への道筋を!!」

 

 

「どうしよう…!次にダイレクトアタックを受けたら遊星が…!」

 

「遊星を信じろ…アイツはこんなところで負けるデュエリストじゃねぇ…!アイツはきっと勝つ!!」

不安を口にする龍亞…牛尾は2人のデュエルを見つめながら遊星の勝利を信じ続けていた…。

 

 

 

 

 

「オレはこの時を待っていた!『スターライトロード』の効果により現われろ!『スターダストドラゴン』!」

 

『なんだと!?』

遊星はルドガーの戦術を読み2枚のカードを伏せる…そしてルドガーのターン、遊星の希望である3枚の伏せカードを「地縛旋風」で破壊しようとするルドガー…遊星はそれを逆手に取り「スターライトロード」を発動、その効果により遊星の真の希望…相棒たる「スターダストドラゴン」が飛翔する!

 

 

「そして更に罠カード『シューティング・スター』を発動!フィールド魔法『スパイダーウェブ』を破壊する!」

 

『甘いぞ遊星!トラップカード「虚無坑」を発動!「Uru」の攻撃力をエンドフェイズまで0にする事で魔法・罠の発動と効果を無効にする!』

 

「そう上手くはいかないか…!しかしここからだ!!」

止められこそしたものの流れは遊星に傾いた、遊星は反撃に打って出る!

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「魔法カード『舞闘円舞(バトルワルツ)』を発動!『スターダスト』と同じステータスを持つ『ワルツトークン』を特殊召喚する!」

スターダストドラゴンが分身し、その姿そっくりのトークンが現れる

 

「バトルだ!『ワルツトークン』でルドガー!お前にダイレクトアタック!」

ワルツトークンがルドガーに突進する!

 

『血迷ったか!「地縛神の咆哮」の効果を発動!「ワルツトークン」を破壊し攻撃力の半分のダメージを与える!これで私の…!』

 

「やらせない!『スターダストドラゴン』の効果発動!カードを破壊する効果を無効にし破壊する!ヴィクテムサンクチュアリ!」

スターダストがその身を粒子に変え「地縛神の咆哮」が破壊される!

 

「いけ!『ワルツトークン』!」

 

『まだだ!トラップカード「鎮守の煌画」を発動!相手モンスターを強制的に「Uru」と戦闘させる!』

 

攻撃がルドガーに直撃する寸前、トラップの効果を受けたワルツトークンは急上昇…Uruへと特攻し爆散した…

 

 

『残念だったな遊星…私を倒すにはあと一手足りなかった!しかし恥じる事はない…我々は輝かしい1ページを刻んだのだ!』

 

 

 

 

 

「それはどうかな?」

 

 

『なにっ!?』

 

ルドガーは勝利を確信し爆煙の中の遊星に話しかける…しかし煙の中から現れた遊星は無傷、ライフもそのままの状態だった。

 

「『舞闘円舞』のもう一つの効果…『ワルツトークン』がバトルする時、お互いの受ける戦闘ダメージは0になる!さらに『ワルツトークン』を破壊したモンスターを戦闘破壊したモンスターの攻撃力はトークンの攻撃力分…つまり2500ダウンする!」

 

『なんだと!?』

ワルツトークンの力を受けたUruの力が減衰する。

 

 

「ルドガー!お前の運命なんて知ったことじゃない!だがお前は忘れている!狂わされた多くの人生がある事を!!残された人間がどれだけつらい目に遭ってきたかを!!!」

 

「遊星…」

 

「オヤジの研究が無ければ17年前の事故は起きずにすんだ…あの事故がジャックやクロウの両親の命を奪った!みんなの人生をめちゃくちゃにしたんだ!あれさえなければみんな暖かい両親がいて…幸せな日々を送れた筈なんだ!」

遊星の脳裏にはある風景が浮かぶ…それはサテライトから孤独にサテライトを見つめるクロウ、そして両親と遊ぶ子供を見つめるジャックの姿だった。

 

 

「なのに…どうしてあいつらはオレに笑いかけてくれる!?オレはどうしたらいいんだ!あいつらにどう償えばいいんだ!!答えろ!!答えてみろ!ルドガー!」

 

『…それがお前の心の闇か、遊星…』

遊星の口から吐き出される罪の意識…幼い頃から付き合う仲間達に対する罪悪感…それが不動 遊星が仲間との「絆」を大切にする起源だった…。

 

 

「それはオレが答えるぜ遊星!」

 

 

「クロウ…!」

遊星達のいる吊り橋の少し下の窓からクロウが叫ぶ…彼は別行動で旧モーメント研究所を探索していたのだ。

 

「遊星…お前はそんな気持ちを背負って生きてきたんだな…すまなかった!仲間なのに今まで気付いてやれなくてよぉ…だけどな遊星!オレは自分の人生がお前やお前のオヤジさんのせいだなんて思った事は一度たりともねえ!…だからお前がそんな事に責任を負う必要はねえんだ?もしオレに運命があるんだとしたら…それはお前やジャックと…かけがえの無い仲間と出会った事だけだ!…遊星勝て!オレ達と…サテライトのみんなの為に!!」

 

「クロウ…」

クロウの…仲間達の本心を聞いた遊星、闇に沈みかけた心に再び火が灯る…彼の心を占めるのは絶望に非ず…彼の心を照らすモノ、それは…

 

 

「ルドガー…オレの心を照らすのはお前の狂気の光じゃない…!オレのかけがえの無い仲間達との『絆』の光だ!…そしてこのデュエル、このカードがオレの場に残った最後の希望!!トラップカードオープン!『星屑の残光(スターダスト・フラッシュ)』!!」

遊星の場に光の柱が立ち昇る…その中から再び「スターダストドラゴン」が飛翔する!

 

『バカな…「スターダスト」が復活しただと!?』

 

「『星屑の残光』の効果により墓地から『スターダストドラゴン』が復活する!…これで決める!いけ『スターダスト』!シューティング・ソニック!!!」

スターダストから白銀の息吹が放たれる…それは弱体化したUruに直撃…邪神を粉砕した!

 

『ぐ…うおぁぁっ!!?』

 

 

ルドガーLP0

 

遊星WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

『グッ…あ…ああ…フ…フハハハ…!』

ライフが尽きたルドガーは膝をつく…しかしその顔は不敵に笑っていた…

 

『シグナー共…これで終わったと思うな…!既に最強の地縛神は解き放たれた…!そして日没までに全ての制御装置を作動させなければ冥界の扉が開き…「冥界の王」は復活するのだ…!』

 

「なんだと!?」

 

ダークシグナーの勝利条件を話しながら他のダークシグナー達と同じように炭化していくルドガー…しかしその機械の左腕が怪しい光を放つ!

 

『不動 遊星…!お前をここから帰すわけにはいかんのだ…!ウォォォ!!』カチッ

ルドガーは義手のスイッチを起動するそれは…

 

 

 

 

 

 

 

ズガガァァァン!!

 

 

爆弾の起爆装置だった…遊星は不安定な吊り橋の上…支えを失った遊星はモーメントの禍々しい光に吸い込まれていく…!

 

 

「しまった!!う、うわぁぁぁ!!!?」

 

 

「「「遊星ぇぇぇ!!」」

 

そして遊星はモーメントの光へと消えていった…。

 



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対決!ダークシグナー!〜悲恋の決闘と闇の中の邂逅〜

遅れながら…ハーメルンの皆様、あけましておめでとうございます!S.Kです!年始以降忙しく更新できずにすいません!また更新していきますので今年も「決闘の観測者」をよろしくお願いします!

そしてダークシグナー編もいよいよ佳境!残るダークシグナーは3人…遊海達はどのような結末を迎えるのか?

それでは最新話をどうぞ!


遊星がモーメントに落下した頃…サテライトの荒野を1台のDホイールが岩を砕きながら疾走していた、そのDホイールを駆るのはジャック・アトラス…ダークシグナーと化したカーリーを救うためにハチドリの制御塔へと向かっていた…。

 

 

「カーリー…!そこにいるのか…?何故お前がダークシグナーなどに…!」

前方に制御塔が見えはじめる…ジャックの脳裏では短い間だったが自分を甲斐甲斐しく世話してくれていたカーリーの姿を思い出していた…。

 

 

 

 

「カーリー!俺だ!ジャックだ!いるならば出てこい!!」

ハチドリの塔に到着したジャックはカーリーに呼びかける…すると

 

ブルル…ギュイーン!

 

ジャックのDホイールを飛び越え1台の赤いDホイールが現れる…それはカーリーの駆るDホイール「ミネルヴァ」だった。

 

 

『待っていたわ…ジャック』

ヘルメットを外しカーリーがジャックに声をかける

 

「カーリー…本当にお前なのか?」

 

『ええ、そうよ…眼鏡が無いから見間違えちゃったかしら…貴方にもう一度逢う為にダークシグナーとして蘇ったの』

 

「何故…何故だ!ダークシグナーとは死した亡者だと聞いた!何故お前は死んだのだ!」

 

『…ディヴァインに殺されたの、私は貴方の役に立ちたかった…だからアルカディア・ムーブメントに潜入して情報を手にいれようとしたけど…失敗しちゃった…』

 

 

鬼柳と遊星の初デュエル後…ジャックはカーリーの元から離れた、彼なりに世話になった彼女を危険に晒すまいとした行動だったが…それは裏目にでてしまう。

ジャックに好意を抱いていたカーリーはジャックの役に立とうとアキの所属していたアルカディア・ムーブメントに潜入する…しかしディヴァインに見抜かれサイコデュエルに突入、デュエルの末に墜落死し…ダークシグナーとして復活してしまったのだ…。

 

 

「…俺はお前があの場所で地縛神の生贄になったと思っていた…だからダークシグナーを倒せばあるいはと…!」

 

『私が戻ってくると思っていた?…ジャック、まさか私と戦えないなんて言わないわよね?』

 

「馬鹿を言うな!…お前が俺に弓を引くなら…力づくで矢をへし折ってやる!!」

 

『そう…それでこそジャック・アトラス…私と貴方はシグナーとダークシグナー!捻れた運命で結ばれた者!』

カーリーの痣が妖しく輝き地上絵のフィールドが現れる。

 

 

『準備が整ったわ…始めましょうジャック、私達の運命のデュエルを!!』

 

「(本気なのだなカーリー…本気で俺に挑むというのか!!)…いいだろう!かかってこい!!このジャック・アトラスがお前を止めてみせる!!」

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト ジャック対カーリー渚

 

 

 

 

…………

 

 

 

『ジャック…ジャック…!目を覚まして…!』

 

「うぅ…ここは…?」

 

朦朧とした意識を引き上げる…俺は何をしていたんだ?それよりもいつの間に眠っていた?

 

『ずいぶん魘されていたわ…大丈夫?』

 

「カーリー…!?デュエルは…デュエルはどうなった!?」

俺を起こした声の方を向けばダークシグナーの姿のカーリーの姿があった…俺はカーリーを助ける為にデュエルをしていたはず…いったい何が…!

 

『ジャック?覚えてないの?貴方はダークシグナーになったのよ』

 

「なんだと?そんな馬鹿な…事……バカな…!」

カーリーに言われ自分の身体を確認する、右腕にはハチドリの痣が…そして鏡には黒い衣装を纏い白目が黒く染まった…ダークシグナーと化した自分自身の姿があった。

 

 

『ジャック…貴方はあの時私に負け、魂は失われた…そして私の力でダークシグナーとして蘇ったのよ』

 

その時、ジャックの脳裏に今までの出来事が蘇る…

 

 

「未来王の予言」の効果を受けた「フォーチュンレディ・アーシー」のダイレクトアタックが直撃しカーリーとのデュエルに負けた事

 

死した直後にカーリーを通して冥界の力を得てダークシグナーとして復活した事

 

…そして十六夜を、龍可を、白野を…そして遊星を打倒し赤き竜を滅ぼしダークシグナーを勝利に導いた事を…。

 

 

 

『貴方が私達の味方になってくれたおかげで冥界の王が蘇り…この世界は地獄へと変わったのよ!』

ジャックはベッドから立ち上がり外の世界を眺める、そこに広がるのは太陽の光を通さない程の闇雲、そして大地を流れる灼熱の溶岩の河…大気を汚す硫黄の匂い…まさに地獄と呼ばれる景色だった…。

 

『貴方は私以外のダークシグナーを降しこの地獄の覇者…ダークキングになったの!』

 

「ダーク…キング…、そうだ…!思い出した!俺は死によって目覚めたのだ!仲間も…絆も…ぬるま湯の平和もいらん!!力こそが支配するこの世界こそキングの目指した高みだ!」

 

『ああ…すばらしいわジャック…!この世界こそ私達の望んだ世界!行きましょう!この世界を見に!』

 

 

 

 

部屋から出たジャックとカーリーは死人の担ぐ黄金の御輿に乗り地獄の世界を練り歩く…

 

『ジャック…今やこの世界のモノ全てが貴方に忠誠を誓っているわ!本当に素敵よ…!』

 

「うむ…しかしこの世界には生者はいないようだな…ん?…あれは…」

灼熱が支配する地獄…その中でジャックはキラリと光る物を見つける、それはひび割れたカーリーのメガネだった…その時、ジャックの脳裏に笑顔を浮かべだカーリーの姿が蘇る…!

 

「違う…」

 

『どうしたのジャック?』

 

「違うと言ったのだ!!この世界は本当にお前が望んだ世界ではない!!!」

 

ジャックは正気を取り戻す、彼の知る「本当のカーリー」はこのような地獄は望まない…彼女が好きなモノ、それは人々の笑顔なのだから…!

 

 

 

…………

 

 

 

「ハッ…!?」

ジャックは現実に戻ってきた…今までの出来事はカーリーの見せた白昼夢…幻覚だったのだ

 

『ジャック!?どうして!!運命に逆らおうとするの…私が勝てば私達は幸せな未来を手にできるのよ!?』

幻覚から開放されたジャックにカーリーが呼びかける

 

「…わかっていないなカーリー…」

 

『えっ…?』

ジャックは地面に落ちたカーリーの眼鏡を拾い上げながら呟く

 

「あのような紛い物の未来など俺達が辿り着く未来ではない!…これは他ならぬお前が教えてくれた事だ!リバース罠『チェンジ・デステニー』を発動!『アーシー』の攻撃を無効にする!!」

ジャックは眼鏡を大事に抱きながらトラップを発動し「アーシー」の攻撃を防ぐ、そのカードは奇しくも『運命を変える』カードだった…。

 

「『チェンジ・デステニー』のさらなる効果!お前は2つの効果から選ぶ事ができる!1つは『アーシー』の攻撃力の半分…1400ダメージを俺に与える事!そして同じく攻撃力の半分自分のライフを回復する事だ!…これを見ろカーリー!」

ジャックはカーリーの眼鏡をカーリー自身に見せつける

 

「思い出せカーリー!俺の知っている『カーリー渚』は地獄と化した世界で幸せを掴む事なんて望むはずがない!」

 

『ぐっ…そんな事はない!私はダークシグナー…この世界を闇に染める使者なのだから…!』

 

ブルル…バシューン!

 

「っ…待て!カーリー!!」

カーリーは停止していたDホイールを走らせる、ジャックもそれを再び追いかける!

 

 

『私がダークシグナーとして蘇ったのは、貴方と一緒にこの世を地獄色に染めて二人で世界を支配する為!それが私達の望みそれが私達の運命なのよ!!』

 

「それは違うぞ!かつてのお前はまやかしの運命に翻弄されていた俺を目覚めさせてくれた!…俺はあの時の言葉を忘れない!俺は自分で生きる道を決めてみせる!カーリー!『チェンジデステニー』の効果を決めろ!それがお前の本当に望んだ未来だ!!」

現在のジャックのライフは800、カーリーがダメージ効果を選べばその時点でデュエルは決着する…!

 

 

『どうして!?さっきは「アーシー」の攻撃を躱しておきながら…!』

 

「定められた運命など存在しない!…その事をお前に知らしめる為だ!」

 

『(バカなジャック…、散々焦らしておいて結局は私の言う事に従うのね…いいわ!今度こそ私のモノにしてあげる…!)私は…第い…!』トクン!

ジャックを自分のものにしようとするカーリーは1つ目の効果を選ぼうとする…しかしその時、胸にチクリと針が刺さったような感覚に陥る、その瞬間カーリーの脳裏には短いながらもジャックと共に過ごした楽しい日々が蘇っていた。

 

『…私は…自分のライフを回復する効果を選択する!』

 

「カーリー…!正気に戻ったのか!」

 

「チェンジデステニー」の回復効果を選んだカーリー、その瞳は元の白目に戻っていた…そもそもカーリーを殺したディヴァインは既に倒されておりカーリーのダークシグナーの力による侵食は半端なものになっていた、そしてカーリーのジャックに対する『愛』が正気を呼び戻したのだ…。

 

「カーリー!」

 

『ジャック…!私…こんな戦いは望んでない…!』

 

「ああ…!お前は人を傷つける事を望んだりする奴じゃない!…俺がその事はよくわかってる!!」

 

『ジャック…私がこのデュエルを終わらせる!…私は…』

 

 

 

 

 

お前の望みなと関係ない…このデュエルはダークシグナーとしての宿命なのだ…!戦え、シグナーを殺せ…!

 

 

『【う…うああああ…!ジャック…助け…!!】』

 

「カーリー!?しっかりしろ!」

サレンダーを宣言しようとしたカーリー…しかし彼女に宿る地縛神がそれを許すはずがない、低い声が響き地縛神の意思は再びカーリーの意識を黒く塗り潰した。

 

 

「貴様か!!カーリーを闇へ引きずり込んだ張本人はぁぁぁ!!!」

 

【『フフフ…シグナーよ!愛する者の手によってその魂を喰らい尽くしてくれるわ…!』】

 

「許さん…許さんぞ貴様ぁぁぁ!!!」

ジャックは怒りの咆哮を上げる、カーリーを救うためにジャックはその魂を燃え上がらせた!!

 

 

 

 

 

 

 

【『フフフ…ジャックよ!我の生贄となるがいい!…5000年の時を越え冥府の扉が開く!我らが魂を新たなる世界の糧とするがいい!降臨せよ!「地縛神Aslla Piscu」!!』】

 

《ピョロロロロ!!!》

 

「現れたな…地縛神!!」

サテライトの黒い霧を生贄にオレンジのラインの入ったハチドリの地縛神が降臨する…!

 

「カーリー…俺は命を懸けてお前を止めてみせる!」

 

【『ならばそのまま死ぬがいい!「アスラピスク」でダイレクトアタック!!』】

 

「させん!!手札から『バトルフェーダー』を特殊召喚!効果によりバトルフェイズを終了する!!」

ジャックの手札から振り子時計のような悪魔が現れ鐘の音が鳴り響く…その音波に怯んだアスラピスクは攻撃を中断する!

 

【『チィッ…!』】

 

「カーリー…聞いてくれ!かつての俺は他人を思いやる事など無い傲慢な人間だった!…友を裏切り、傷つける事を厭わず…己の欲望の為にあらゆるものを犠牲にしてきた男だ!だが俺は…お前に出逢って教えられた!傷付き荒んだ心も真に思いやる心によって救われるのだと!俺は今…心の全てを掛けて願う!真に愛する者…お前を救いたい!!!」

 

それはジャックからの愛の告白だった、自身を尊敬し本当に愛してくれた人…そして『ジャック・アトラス』を真の意味で復活させてくれた女性へのジャックからの精一杯の愛の言葉…それは奇跡を引き寄せる!

 

シュイイン…!

 

「これは…!!」

ホイールオブフォーチュン、そしてジャック自身が赤い光を纏う…そしてその背中に赤き竜の痣が集い完成していく…!!

 

「仲間達の痣が…俺に力を貸してくれるのか…?この光は…!」

ジャックのデッキトップが光輝く、それは希望を導く奇跡の光…シグナーの絆を束ねる事で現れるそのカードの名は…!

 

「俺のタァァン!!…これは赤き竜の奇跡…!『ジャック…ジャック…!』カーリー…!?」

希望をドローしたジャックの頭にカーリーの声が響く

 

 

 

『ジャック…もう終わりにして…!私…これ以上みんなを傷つけたくない…!』

 

「馬鹿を言うな!きっとまだ方法があるはずだ!お前を救い出す手段が!!」

 

『本当に私を想ってくれるなら…お願い…!』

 

「カーリー…そんな事をしたらお前が!!」

 

『これは私が自分で選んだ運命なの…貴方は私の事を本当にわかってくれた…!だから、貴方の手で止めを刺して…』

 

「…わかった、お前がそれを望むなら…!!」

 

『…ありがとう…ジャック…』

夕やけが見える灯台…そこでカーリーは一番の笑顔をみせた…

 

 

 

 

 

 

「この命は一度お前に救われたようなもの…いくぞ!現われろ赤き竜の奇跡!『救世竜ーセイヴァー・ドラゴン』!!」

赤き竜の化身たるピンク色の竜が現れる!

 

「俺はレベル8の『レッドデーモンズドラゴン』とレベル1の『バトルフェーダー』にレベル1の『セイヴァードラゴン』をチューニング!!」

セイヴァードラゴンが巨大化し2体のモンスター、そしてジャックを包み込む!

 

「研磨されし孤高の光!真の覇者となりて大地を照らす!光輝け!シンクロ召喚!!大いなる魂…『セイヴァー・デモン・ドラゴン』!!」

現れたのは世界を…愛する者を救う救世の悪魔竜…セイヴァー・デモン・ドラゴン!!

 

 

「『セイヴァーデモン』の効果!エンドフェイズまで相手モンスターの効果を無効にし…その攻撃力分自分の攻撃力がアップする!パワーゲイン!!」

セイヴァーデモンが光線を吐き出しアスラピスクを赤い結晶に閉じ込める!

 

【『攻撃力6500だと!?』】

 

「カーリー!望み通り…一撃でトドメを刺してやる!!(…だが安心しろ、お前1人で逝かせはしない…!)」

ジャックは1枚の伏せカードを見つめる…それは罠カード「ショック・ウェーブ」…、自分のモンスターを破壊しお互いにその攻撃力分のダメージを受けるカード…所謂「破壊輪」の相互互換となるカードである

 

「(このカードを発動すれば俺達2人のライフは0になる…)これこそがジャック・アトラスの選んだ運命だ!…お前と共に果てるなら悔いはない!!」

ジャックはその身を犠牲にしてカーリーと共に死のうとしていた…それが自身の運命だと…

 

 

「トラップ発ど『【トラップ発動!「地縛開放」!!】』なんだと!?」

ジャックの言葉を遮るようにカーリーが1枚の罠カードを発動させる…その効果は…!

 

『【このカードの効果により「アスラピスク」をリリース!そしてフィールドのモンスター全てを破壊し、その攻撃力の合計分のダメージを相手に与える!!】』

 

「バカな!『セイヴァーデモン』の効果は相手のカードによる破壊を無効にして自身の攻撃力分のダメージを相手に与える効果!…まさかお前自分から!!」

アスラピスクの水晶が砕け爆発する…その爆発がセイヴァーデモンを飲み込むが自身の耐性で爆発を耐えセイヴァーデモンは巨大な火球を解き放つ!

 

 

『(私の本当の願いは…貴方が全ての人に愛され、みんなに幸せを与えられる『決闘王』を超えた本物のキングになる事!貴方ならきっとなれるわ!ジャック・アトラス!)』

 

「カァァリィぃぃ!!!」

ジャックの脳裏に一つの幻影が浮かぶ…「みんなのキング」と書かれたカードを持って微笑む愛しい女の姿を…。

 

セイヴァーデモンから放たれた豪炎はカーリーを飲み込み決着となった…。

 

 

 

カーリー LP0

 

ジャックWIN!

 

 

 

 

 

 

 

「カーリー!カーリー!!しっかりしろ!!死ぬな…死ぬんじゃない!!」

ジャックはデュエルが終わりDホイールから投げ出されたカーリーを抱き抱え呼びかける…

 

『ジャック…ジャック…?何処にいるの?真っ暗で見えないよ…』

 

「カーリー!ここだ!俺はここにいる…!」

 

『おかしいな…何も…見えない…』

辛うじて意識を取り戻したカーリー…しかしその瞳は既に光を失っていた…。

 

「カーリー…!しっかりしろ…!俺を見るんだ…!!」

ジャックはカーリーに割れた眼鏡をかける…

 

『私…ジャックみたいに…頑張っている人を応援するのが好きだった…なのに自分勝手な幸せを望んだりしたから…きっとバチが当たったんだね…』

 

「何を言う!誰にでも幸せを願う権利がある!それが罪だというのなら…この俺も同罪だ」

 

『ジャック…きっと世界を…救ってね……わたし、応援しちゃうんだから…!』

 

「カーリーッ!!」

ジャックとカーリーは抱擁を交わす…しかし

 

『大好き…大好きよ……ジャック……』サラサラサラ…カタン

 

「あ…ああ…!カーリー…!!」 

カーリーの身体は虚しく崩れ去り…ジャックの手は虚空を掴む…こうしてジャックとカーリーのデュエルは決着を迎えた…。

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前 旧モーメント

 

 

 

「うわぁぁぁん!!遊星が死んじゃった〜!!」

 

「馬鹿野郎!遊星がこんな所で死ぬわけないだろうが!!」

カーリーとジャックがデュエルを始める頃…龍亞達は悲しみに沈んでいた…ダークシグナーのリーダー・ルドガーを倒した遊星、しかしルドガーの悪足掻きにより吊り橋が落下…遊星はモーメントの光の中に落ちてしまったのだ…!

 

「アイツはただあの中に落ちちまっただけなんだよ…!」

クロウは禍々しい光を放つモーメントを見つめる…彼はまだ遊星が生きていると信じていた…

 

「牛尾さん!クロウ!龍亞!龍可!無事か…!!」

 

「あっ…!遊海さん!翠さん!」

 

「お前達…大丈夫なのか!?」

モーメントを覗き込む牛尾達の後ろから声がかけられる…それは翠に肩を支えられながら歩いてきた遊海だった。

 

「白野!?お前怪我大丈夫なのかよ!それよりも遊海?それって伝説の…!」

 

「クロウ、その話は後だ…!状況を教えてくれ!」

 

「…遊星はルドガーに勝った…だが奴のせいでモーメントに落ちちまった…!オレ達はどうすればいいんだ!」

クロウは少し戸惑いながら簡潔に状況を説明する

 

「…モーメントは超高エネルギーの永久機関…普通は助からない…、俺達は信じるしかない…遊星の運と赤き竜の力を…!」

遊海もモーメントを覗き込む…そこでは虹色の光が渦を巻いていた…

 

「(たしか旧モーメントの先は冥界に繋がっていたはず…頼む不動博士…!自分の息子を助けてやってくれ…!!)」

遊海はただ祈る…そしてその時、モーメントから金色の光が溢れ出した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊星Side@冥界?

 

 

「ッ…ここは何処だ?オレは…死んだのか?」

遊星が目を覚ますとそこは一面の赤い大地だった、周囲に生命の気配は無く…ここが死後の世界だと言われたら納得してしまいそうだった…そしてそれを肯定するように世界に変化が訪れる…!

 

()()()()()()()

 

「なっ!?なんだコイツらは!!」

遊星の周りに白い光が無数に現れる…光は人型を成していく…それは無数の亡者達の姿だった…、亡者は遊星を見つけると襲いかかってきた…!

 

「ぐっ…何をするやめろ!!離せ!!」

 

()()()()()()()()()()

無数の亡者が遊星へと群がる…!その身体からは強い負の感情を感じる

 

「怨んでいる…!おびただしい数の怨念がこのオレを…!まさかこの亡者達はゼロリバースで死んだ人々なのか…!!」

遊星は赤き竜の痣を通して亡者の恨みを感じ取る…あの日亡くなった無数の人々の無念が遊星に襲いかかる…!

 

 

「ぐっ…沈む…!?」ズブズブ

遊星の足が底なし沼に沈んでいく…冥界に生者がいる事は許されない…沈みきってしまえば遊星も亡者の仲間入りになってしまう…!

 

 

「う、うわぁぁぁ…!!」ズブズブズブズブ

 

()()()()()()()()

亡者達が地面に遊星を押しつける…その身体は胸まで地面へと沈んでいた…

 

「(オレはここまでなのか…?サテライトを救う事もできずこのまま死ぬのか…?)」

遊星の脳裏に「死」の一文字がチラつく…しかし遊星が諦めかけたその時…一つの奇跡が起きる…!

 

 

 

 

 

 

 

ポーン………

 

黄金の光と共に清らかな音が冥界に鳴り響く…それはまるで魂を浄化するような優しい光と音だった、亡者達もその光に目を奪われている…

 

「いったい…何が…?」

 

『…亡者達よ、その者に罪は無い…開放するがいい…!』

冥界に若い青年の声が響く…そしてその声は威厳に溢れ絶対的なカリスマを感じる声だった…

 

()()()()()()()()

亡者達は金色の光に包まれるように姿を消していく…そしてその場には遊星と光を纏った男だけが残される…

 

 

『無事か?不動 遊星、本来であればオレはこんな風にお前と出会う事は無かっただろうな…』

青年は地面に埋まっていた遊星を引き上げる…その姿は遊星からは顔を見る事もできない程輝いていた

 

「あなたは…いったい…?」

 

『…そのうちまた会えるさ遊星、さぁ行くがいい…17年前からお前を待ち続ける者がいる…彼に会ってやれ…』

 

「なっ…うわっ…!?」

遊星の身体は光に包まれ上昇していく…

 

『遊星…我が友を頼む、あいつがいればお前達の行く道に光が生まれるだろう…』

 

「待ってくれ!あなたはいったい何者なんだ!!」

 

『オレか?…遊海の古き友さ!また未来で会おう!』

その時…一瞬だが青年の姿が見えた、白い衣を纏い、金色の三角錐を首からかけたある青年の姿が…そして遊星の視界は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

「うぅ…ここは…」

遊星が目を開けるとそこは先程と違い真っ暗な空間だった…そして目の前には光の玉が浮いている…

 

…遊星…遊星…

 

「オレを呼んでいるのか…?」

光の玉は遊星を先導するように離れていく…遊星は無意識のうちに光の玉を追いかけていった…

 

 

「ここは…」

光の玉に導かれた遊星はとある河原にいた…それは昔話で聞くような場所、小さな石の塔のある河原…賽の河原だった…。

 

『遊星…ここはまだお前の来る場所じゃない…』

 

「あ…あなたは…!」

光の玉は姿を変え人型をとる…現れたのは遊星に似た髪型をした白衣の男…遊星の父・不動博士だった

 

「父さん…!」

 

 

『我が息子、遊星よ…許して欲しい、私はお前に…途方も無い運命を背負わせてしまった…!だが、運命は必ず変えられる!』

不動博士はゆっくり遠ざかっていく…遊星は走ってそれを追いかける

 

『お前が行く道には真にお前を待っている人達がいる…!行くんだ、遊星!』

「父さん!待ってくれ…!!父さん!!父さん!!!」

そして遊星の視界は再び光に包まれた…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ!?なんだ!?」

モーメントから金色の光、そして白い光の柱が立ち昇る…光が収まるとゆっくりと落下してくる遊星の姿があった…牛尾とジャックは慌てて遊星を受け止める

 

「遊星!しっかりしろ!遊星!!」

 

「…クロウ…牛尾…遊海さん…」

 

「お帰り遊星…無事で何よりだ」

クロウの呼びかけで遊星は意識を取り戻す、特に外傷もないようだ

 

「しかしオメェ…どうやって助かったんだ?」

 

「ある人達に助けられたんだ…父さんと金色の男に…すまないみんな苦労をかけてしまったみたいだ…」

 

「本当によ遊星!わたし…本当に心配したんだから!!」

 

「遊星!よかったー!!」

 

「龍亞…龍可…すまなかったな…」

遊星の無事を確認して2人が遊星に抱きつく

 

 

「(…金色の…男?まさか…な、でも…ありがとう…!)」

遊海はモーメントを見つめる…気のせいか金色の光が瞬いた気がした…。

 

 

 

 

 

 

「遊星…こんな時になんだか時間がねぇ…!」

 

「ああ…日没までにあと2つの制御装置を作動させなければ『冥界の王』が蘇ってしまう…!急ごう!」

 

遊星達は急いで旧モーメントから脱出する、そして道中にジャックの勝利を痣を通して知る事になる…。

 

 

 

「ジャックがダークシグナーに勝った…!なら残す制御装置はあと一つ…!ダークシグナーの野望を必ず阻止してみせる!!」

 

遊星達は決意をあらわに最後の制御装置…トカゲの塔へと向かった…!

 

 

 



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終結!ダークシグナー〜希望のバッドエンド〜

「…残るダークシグナーはミスティだけなんだな?」

 

「ええ、他のダークシグナーは遊星君達が倒しました!」

 

 

俺達は旧モーメントから離れアキの向かったトカゲの塔へと向かっている、メンバーは牛尾さんの車に乗る龍亞、龍可、俺、翠と並走する遊星の6人、クロウはジャックを迎えにハチドリの塔方面へと向かっている。

 

「おい遊海!身体は本当に平気なのか?」

 

「ええ…とりあえず無理しなければ大丈夫です!」

牛尾さんの問いに嘘を交えて答える、正直言えば体調は最悪…身体中が痛いし正直決闘盤を構えられるかも怪しい、そもそも精霊アーマーすら纏えないだろう…

 

 

「遊海…さん!大丈夫だよ!アキ姉ちゃんは強いからきっとダークシグナーにも楽勝さ!遊海さんが心配しなくても大丈夫だよ!」

 

「いつもの呼び方でいいよ龍亞…そうだなアキは強い…あの子を信じよう」

 

少し暗くなった俺の顔を見て龍亞が話しかけてくる…アキは確かに強い…でも俺がした事を考えると…。

 

 

「翠…お願いしたい事がある」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたが…アキと御影さんは既に入場した後か…」

俺達はトカゲの塔の所在地「カプモンランド」へと到着する…ここは元々KCの運営していた子供向けテーマパークだった場所だ、しかし17年前の災害のあとは放棄され荒れ果てている…。

 

 

「…エンジンはまだ温かい…入ってそう時間は経っていない筈だ、手分けして探そう!」

 

「わかった!牛尾、龍亞達を頼む!」

 

「わかった!気をつけろよ遊星!…遊海、お前はどうする?翠は何処かに行っちまったみたいだが…」

 

「俺は精霊達と捜索します!…時間がありません…行きましょう!」

現在時刻16:30…あと1時間程で日が沈んでしまう…、俺達は手分けしてアキと御影さん…そしてミスティを探し始めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アヤカ、レーダーによるサーチはどうだ?」

 

《すいません…まだノイズがかかっています、あの黒い霧に含まれる人々の魂が原因と思われます…》

俺はアヤカと共に園内を探索する…フレアやトフェニを召喚して一緒に探せれば手早いのだが…体力が保ちそうにない…。

 

「…たしかアキとミスティの戦う場所はミラーハウスだったか…地図でその場所を見つけよう…案内板は何処だ?」

俺は案内板を探すために荒れ果てた園内を歩く…園内には壊れたメリーゴーランドや汽車があり哀愁を漂わせている…そんな中、広場で案内板を発見する…

 

 

「あったあった…えっと…現在地がここだから…もう少し奥《マスター!伏せて!!》なっ…うわっ!?」ビュン!! バキャ!!

 

アヤカの声に反応し咄嗟に地面に倒れ込む…その瞬間、俺の見ていた案内板がバラバラに砕け散った…

 

「ッ…『アルティメット・サイキッカー』…!?」

遊海の後ろ…そこには「メンタルスフィアデーモン」の最終進化系とも言える融合モンスター…アルティメットサイキッカーが殺気の籠もった目で遊海を見下ろしていた、

 

「チッ…やっぱりアイツは生きていたか…」

 

《グゥオオオ!!》

 

「くっ!!」ズガン

振り下ろされた爪をギリギリで回避する…サイキック族のコイツがいるって事はアイツがいる…!

 

「…考えるのは後だ…精霊変し…ぐぅ…!?」ドクン!!

精霊アーマーを纏おうとした瞬間、身体中に激痛が走る…

 

《グゥオオオ!!》ビュ!!

 

《危ない!マスター!!グッ…!!》ガキン!!

俺に振り下ろされた爪をアヤカが受け止める…しかしだんだんと押されていく…!

 

「アヤカ!!」

 

《マスター…!早く逃げて…ください…!!今の私達では対処できません…!!》

 

「ダメだ…コイツはここで倒さないと…牛尾さん達の所に行くかもしれない…!何か…何か方法は…!」

遊海は頭をフル回転させる…満身創痍の身体で目の前のモンスターを倒す方法を…!

 

「…そうだ…!全身が無理なら…一箇所に集中させればいい!アヤカ!もう少し耐えてくれ!!」

 

《わかりました…!!でも…早く…!》

 

《グゥオオオ!!!》

 

「精霊アーマーを右腕に限定展開…エネルギー充填…!!」

遊海は右腕に全ての力を籠める…エネルギーが過剰に溜まった右腕は光を纏う、イメージするのは前世でやっていたスマホゲームの英霊の絶技…右腕一つで強大な女神に立ち向かった1人の騎士の必殺技…その名は

 

「アヤカ!離れろ!!…我が魂喰らいて奔れ!模倣(イミテーション)銀の腕(アガートラム)!!」ズバン!!

 

《グゥオオオ!?…オ…オ……》ズズン

光を纏った右腕の一閃、それはアルティメットサイキッカーの身体を両断し破壊した…

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…なんとか倒したか…うっ…ゴホ!!ゴッ…!!」

 

《マスター!!》

喉の奥から血が溢れ…耐えられずに吐き出し地面に倒れる…さ、流石に無理があったか…

 

「や、やっちまった…動けねぇ…」

踏み切りで右足の骨は砕け右腕も変な方向に曲がっている…宝具の再現なんて満身創痍でやっていい技じゃなかった…

 

「アヤカ…応急処置できるか…?」

 

《…あと30秒待ってください…自己修復を終わらせます…》

アヤカを見ると機体に爪の跡が付いていた、しかし自己修復機能で少しづつ修復されていく…

 

「くそ…これじゃあ完全にみんなの足手まといじゃないか…早く…行かないと…!」

 

 

 

 

 

『いや、お前はここで死ぬんだ白波 遊海!「サンダーボルト」!!』

 

 

その瞬間、俺の視界は閃光に包まれ意識はブラックアウトした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

「くっ…どうすればいいんだ…!」

遊海さんや牛尾達と分かれて遊園地を捜索していたオレだったが治安維持局員を名乗る男に騙され建物の地下に閉じ込められてしまった…同じ場所には御影さんも捕まっている、出口は5メートル程上の鉄格子…脱出方法が無い…!

 

 

カンカンカン…ガチャ

 

 

『ほら、貴様の大事な仲間を連れてきてやった…ぞ!』

 

ドサッ

 

「なっ…遊海さん!?貴様…遊海さんに何をした!!」

 

再び戻ってきたトレンチコートの男が人を投げ落とす…それはボロボロになってしまった遊海だった、肌はところどころ焼け焦げている…まるで何かに感電してしまったようだった。

 

 

『アキに仲間はいらない…アキは私だけのものだ…!』バリバリ

 

「貴様…ディヴァイン!?」

 

トレンチコートの男はマスクを破り取る、その正体はアルカディア・ムーブメントの崩壊と共に行方不明となっていた総帥・ディヴァインだった

 

『フフフ…これで私の計画に邪魔な奴らはいなくなった…アキは私の望む世界でこそ輝くんだよ!』カチッ!

 

 

ボカーン!!サバババ…!!

 

ディヴァインがスイッチを押す、すると壁が爆発し大量の水が遊星達のいる地下へと流れ込む!

 

『フハハハ…!さぁそこで醜く溺れ死ぬがいい!フフフ…フハハハハ!!』

ディヴァインは唯一の脱出口を「ファイヤーボール」で歪めその場から去っていった…。

 

 

「くっ…!水が…!」

 

「とにかく白野さんを起こさないと!溺れてしまうわ!!」

 

「ッ…!遊海さん!起きろ!起きてくれ!!」

オレは遊海さんを揺らす…水位は足首辺りまで来ようとしていた…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「うぅ…?遊星…狭霧さん…?俺は…」

 

「遊海さん!しっかりしてくれ!緊急事態だ!このままじゃ全員溺れてしまう!」

遊星の鬼気迫る声で意識が浮上する…全身ズブ濡れだ…俺は何をしていたんだっけ…?というか身体が痺れて感覚が無い…!

 

 

「白野さん動けますか!私達は敵の罠に嵌って閉じ込められてしまっているの!そのうえ大量の水が流し込まれているのよ!」

 

「っ…すまない…身体が痺れて身動きがとれない…!俺の事はいい…!2人が助かる方法を考えるんだ…!」

狭霧さんの説明で状況を把握する、水深は約170cm以上…真上に見える鉄格子まで約3m…身体は痺れて動かないし目で見える右腕は水に揺蕩っていて力が入らない…俺の生存は通常ならば絶望的…俺は遊星に俺を切り捨てるように伝える。

 

「そんな訳にはいかない!3人で絶対に生き延びるんだ!!」

 

「あなたをこんなところで死なせる訳にはいきません!!」

遊星と狭霧さんは俺と肩を組んで立ち泳ぎを始める、水深は既に2mを超えた、もし水位があの鉄格子を超える前に助けが来なければ全員がお陀仏だ…!

 

 

 

 

 

 

「ふんぬぬぬ…!!!開けよコンチクショウ!!!」

 

「牛尾くん!頑張って!!もう少…し!!」

水位が4mを超えた頃…狭霧さんの落とした警察手帳を頼りに牛尾さんが危機迫る俺達の居場所に到着する、狭霧さんも遊星も既に体力は限界…牛尾さんも鉄格子をテコの原理で開けようとしているが苦戦している…!

 

 

「(…タイムリミットは5分弱…力を温存している場合じゃない…!)…遊星…狭霧さん…俺を離してくれ…!」

 

「遊海さん何を言うんだ!貴方の右腕と足は折れている!今、手を離したら…!」

 

「…心配するな遊星…別に自殺しようって訳じゃない、だから俺から離れてくれ…!」

 

「…わかった…!でも危ないと思ったらすぐに引き揚げます…!」

遊星と狭霧さんは俺から手を離して離れる…支えを失った俺は水底へと沈んでいく…

 

 

 

 

「(…やるんだな?遊海…呑まれるなよ…!)」

 

「(…わかってる…一瞬で決める…()()()()()()()()()開放…!!!)」

 

その瞬間、水が沸騰したように泡立ち…水面近くに迫った鉄格子は飴細工のように砕け散った…

 

 

 

 

 

 

 

 

Side牛尾

 

 

 

 

「ぐぐぐっ…!!!クソっ…!開け!開けよ!!!」

 

俺は今、人生で一番の本気を出しているかもしれねぇ…最後のダークシグナーを探すために廃遊園地を調査していた俺だったが途中で狭霧さんの治安維持局の証明書を発見…周囲を調べていたら遊星や傷ついた遊海と共に閉じ込められて溺れかけている狭霧さんを発見した、俺は熱で歪められた扉を開けようとしてるが…ビクともしねぇ…!水が鉄格子に来るまであと僅か…早く扉を開けねぇと…!

 

 

「牛尾くん!そこから離れて!早く!」

 

「っ!?狭霧さん!どうしてだ!…アイツはどうした!?」

狭霧さんの焦った声で下を見る…遊星と狭霧さんは水面に浮かんでいるが…遊海の姿が見えねぇ…!

 

「牛尾!遊海さんには何か作戦があるみたいなんだ!だから…っ!?」

 

 

ゴボ…ゴボゴボゴボゴボ!!!!

 

突如として牛尾の足元の水面が激しく泡立つ…そして…

 

 

ザババッ…バキーン!!! 

 

 

「う…うわぁぁぁ!!?」

激しい水柱で牛尾は吹き飛ばされる…その直後、強い強度を誇るはずの鉄格子はガラス細工のように吹き飛んだ…

 

 

「な…なんだってんだよいったい!?アイツ何しやがっ…!?」 

 

その瞬間、牛尾は未だに立ち昇る水柱の中に影を見た…翼を生やした黒いナニカの姿を…しかしそれは一瞬の事、水柱が治まると呼吸を荒くした遊海が力なく水面に浮かんでいた…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

「すごい…鉄格子が粉々に…」

 

「これが遊海さんの力なのか…!」

遊海の砕いた鉄格子から脱出した狭霧と遊星は鉄格子の上で息を整えていた…傍には力を使い果たした遊海が寝かせられている…。

 

 

「少し無理…し過ぎたな…完全にエネルギーが空っぽになっちまった…指も動かせねぇ…」

 

「遊海さん…すいません!貴方に負担をかけないでダークシグナーを倒したかったのに…!」

 

「いいんだ遊星…だが俺はここまでだ…あとは頼む、既に戦いは始まってる…!」

遊海は右腕に目を向ける、シグナーの痣はアキとミスティが戦っている事を知らせていた。

 

「遊星…これを持っていけ…何かの役に立つかもしれん…」プチッ

遊海は胸からカルトゥーシュを外し遊星に手渡す…

 

「これは…?」

 

「ちょっとしたお守りだ…大切な物だから後で返してくれ…アキを頼む…!」

 

「…わかった!行ってくる!!」

遊星は駆け出した、アキの居場所は痣が教えてくれるだろう…。

 

「御影さん、オレはコイツを車まで連れていきます!遊星の奴を追ってください…!」

 

「わかったわ!彼をお願いね!」

タオルで水気をとった狭霧も急いで遊星の後を追いかけていった…。

 

 

 

「…遊海、歩けるか?」

 

「すいません、今は無理そうです…」

 

「わかった、おぶってくぞ…少し痛いが我慢してろ」

身動きのとれない遊海を牛尾が背負い、そのまま入り口の方に歩いていく

 

 

「遊海…お前、運が悪すぎだろ…なんで会うたびにボロボロになってるんだよ…バトルシティの時も今もよ…」

 

「わからないです…でも俺は少し怪我を引き寄せる体質なのかも…コフッ」

 

「無理して喋るなよ、あとはあいつ等に任しておいて休んでろ…大丈夫だよ、あいつらは強いからな!」

 

「ええ…きっと彼らなら乗り越えられるはずです…この後も…」

 

「この後…?遊海、それはどういう事だ…?」

 

「……」

不穏な言葉を聞いた牛尾は遊海に問いかける…しかし遊海は気絶していた…。

 

「遊海…お前はいったい…?」

牛尾の問いに答える者は無く…疑問は不気味な夕暮れの空へと消えていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト アキ対ミスティ

 

 

 

 

 

 

「…私は黒薔薇の魔女…!貴女を消す!!」

 

『ついに正体を現したわね…!貴女だけは絶対に許さない!!』

 

アキとミスティのデュエルは佳境を迎えていた。

狭霧と分かれてミスティを探していたアキはアトラクションのミラーハウスへと足を踏み入れミスティと対峙した。

そしてミスティが繰り出したのは「サッド・ストーリー」と名のつく3枚の永続魔法、そのカードを通してミスティはアキにトビーについての記憶を見せた。

 

 

「悲しみの記憶」…トビーは姉思いのいい弟だった、ただ普通の人間と違うのは彼が「サイコデュエリスト」だった事…そんなある日、ミスティへ誕生日プレゼントを渡したトビーはアルカディア・ムーブメントへと入るとミスティに伝える、この時ミスティは弟を止めるべきだったと後悔した…。

 

「揺るがない真実」…アルカディアムーブメントへと通い始めたトビー、彼は廊下で当時「黒薔薇の魔女」として活躍していたアキに自分はどうしたら強くなれるかを聞いた…アキは「ディヴァインに頼り、ディヴァインの言う事を聞いていればいい」と言って去っていった…アキからすればほんの些細な出来事だったがこれがトビーの運命を変える事になった。

 

「忌むべき日」…その日、ミスティのもとに電話がかかってきた…それはトビーの失踪を伝える電話だった、トビーはダイモンエリアで戦うアキを見に行ったまま行方不明となった…ミスティは悲しみに暮れトビーを捜し回った、その中で車の運転を誤り崖から転落…ダークシグナーとして蘇ったのだ。

 

その話を聞いたアキはトビーについて伝えた、1年前にアルカディアムーブメントで拷問を受け、命を落としかけた事。間一髪メタルナイトこと白野が突入しトビーを救った事…そしてサテライトで彼は生きているという事を…しかしダークシグナーになり復讐に呑まれているミスティに声は届かずにアキを糾弾し続ける。アキはついに戦意を失いかけてしまう…自分は何もしていないとはいえトビーとミスティの人生を狂わせてしまったアキはミスティと戦う事ができなくなってしまっていた、しかし…

 

 

「冥界の扉は魔女の島にある」

 

 

遊星達を閉じ込めたディヴァインがアキの目の前に現れる…ディヴァインはアキに戦いを促す為に彼女の秘められしサイコパワーを開放…アキは強制的に「黒薔薇の魔女」へと変貌しミスティへと襲いかかる…!

 

 

「あわわ…!アキ姉ちゃんが魔女に戻っちゃった…!?」

 

「そんな…アキさんどうして…!」

そんな2人のデュエルを見つめるのは龍亞兄妹、彼らが一番にこの場所へと到着したのだが…再びおそろしい表情を浮かべデュエルするアキを見守る事しかできないのだった…。

 

 

「龍亞!龍可!」

 

「「遊星!!」」

デュエルが進むなか水攻めから脱出した遊星が龍亞達と合流する。

 

「大変なんだ!アキ姉ちゃんが昔みたいな怖い顔でデュエルを…!」

 

「なんだって…!くっ…アイツは…いた!」

龍亞から話を聞いた遊星は周囲を見渡す…そしてその姿を見つける、下卑た表情でデュエルを観戦するディヴァインの姿を…!

 

 

 

 

「いいぞアキ…!お前の力はダークシグナーをも凌駕する!やれ!!」

 

バタン!!

 

「ディヴァイン!!」

遊星がディヴァインのいるビルの部屋へと突入する!

 

「不動 遊星…!もうあそこから脱出してきたのか…」

 

「ディヴァイン!貴様の目的はなんだ!なぜここに現れた!」

 

「フッ…ダークシグナーがアルカディアムーブメントに襲撃してきたせいで私の計画は潰えた!しかも私の顔までこのザマさ…!」

ディヴァインは髪を掻き上げる…その目の下には太い傷跡が付いていた

 

「しかし…アキに対するマインドコントロールは完璧だ!私はアキの力を使い私をこんな目に合わせた奴らに復讐し!アルカディアムーブメントを再興するのさ!」

狂気の宿る瞳でディヴァインは告げる…既にディヴァインの精神は復讐心で塗りつぶされていた…

 

「ディヴァイン!アキを開放しろ!アキは自分の力を克服した!生まれ変わったんだ!」

 

「アキが生まれ変わった?アキは私の下僕だ!アキの進む道は…私が決める!!出てこい!『メンタルスフィアデーモン』!!」

 

《グオオオ!!》

 

「なっ…モンスターの実体化だと!?」

ディヴァインはモンスターボール実体化させる…悲しいかな17年前、遊海にボコボコにされたディヴァインは遊海に復讐する為に力を高めた…その恩恵として精霊使いと同じようにモンスターを実体化できるようになっていたのだ。

 

「やれ!」

《グオオオ!!》ザン!!

 

「くっ…!?」 

メンタルスフィアデーモンが爪を振り下ろす、遊星は間一髪避けるが部屋にあった机がひしゃげ潰れる!

 

「人の心を操るなんて…許さない!」ピッ

 

「フッ…私の手にかかれば人の心など、どうにでもなる!心の弱みに少し刺激を与えてやればいくらでも私の思うとおりだ!いけ!」

《グオオオ!!》

 

「ぐっ!?ガッ…!」ガキン! ズガン!!

デーモンの爪をデュエルディスクで受け止める遊星…しかし攻撃力2700を誇るデーモンの攻撃は凄まじく壁に叩きつけられる!

 

「強力なサイコパワーを所持していたばかりに孤独を抱えていたアキの心…そこを少しくすぐってやるだけでいいぃ…ミスティも哀れな女だなぁ…弟のトビーがいなくなった怨みでダークシグナーになり、サイコデュエリストにデュエルを挑む!泣ける姉弟愛じゃあないか!だが…所詮アキにやられる運命だがねぇ…!」

 

「くっ…遊海さんから聞いているぞ!トビーや他の子供達を傷つけ何人も死なせたと!!」

 

「チッ…奴め余計な事を…!ああそうさ!私はトビー達に過酷な実験を課した!だがアイツが邪魔に入って殺し損ねたがな!弱いサイコデュエリストなどいらん!…ここまで聞いたからには貴様も生かしておけん!やれ!」

《グオオオオ!!》バチバチ…バン!

 

指示を受けたデーモンはサイコパワーのエネルギー弾を遊星に向かって放つ!

 

「っ…!しまっ…!?」

 

 

 

 

キュイン…カキン!!

 

 

 

「なんだと!?」

 

遊星に迫ったエネルギー弾…それは遊星の懐から飛び出したカルトゥーシュによって防がれる…そして…!

 

『ディヴァイン、よくも俺の仲間に手を出したな…!』

 

カルトゥーシュが光に包まれる…そして現れたのは半透明の赤い帽子を被った青年だった

 

「貴方は…まさか…!」

 

「白波 遊海…!?貴様、さっきまでボロボロだったはず…!?」 

 

『本体の事は知らん、だが貴様が再び害を為すなら…俺は貴様に罰を与える!』

 

「う、うるさい!!もう一度死ねぇ!!」

《グオオオ!!》

 

デーモンの爪が遊海に迫るが…

 

スルッ…ズガン!

 

「すり抜けただと…!?」

 

『ディヴァイン…たくさんの人を悲しませた貴様に「罰」を与える…罰ゲーム!「邪神の餌食」!!』

その瞬間、ビルの天井が破壊され巨大な黒い手がディヴァインを掴み上げる!

 

「うわぁぁぁ!な、なんだァァァ!?」

 

『ディヴァイン…お前だったのね…!お前のせいでトビーは!!』

ギョロリとした巨大な目がディヴァインを睨みつける…その正体は「地縛神Ccarayhua」…ミスティの地縛神である。

 

『許さない…許さない!!』

 

「うわぁぁぁ!!ギッ………」ゴクン

 

「あわわわ…た、たたた食べちゃった…!?」

 

「ヒッ…!」

ディヴァインはコカライアに捕食され退場する…子供には刺激が強かったからか龍亞達は顔を背けている…

 

 

『ディヴァイン…遊星のデュエルディスクは手作りでね…マルチデュエル用の音声ネットワークでアキやミスティにも話が聞こえていたのさ…聞こえてないだろうがな…』

遊海は1人呟く…身の危険を感じた遊星は咄嗟に通信のスイッチを入れた、それが功を奏した形となった…。

 

「遊海…さんなのか?」

 

『ああ、ただし残留思念体だけどな…俺の役目は終わった、またな遊星…』スゥ…カタン

遊海の姿は薄くなり完全に消滅し…あとにはカルトゥーシュだけが残っていた…

 

「遊海さん…」

 

《キュイイイ!!》

 

「あれは…!?」

甲高い鳥の鳴き声を聞いた遊星は空を見上げる…そこには巨大化した緑色の鳥の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

 

『トビー…仇は討ったわ、ごめんなさいアキさん…トビーが死んだのは貴女のせいでは無かった…』

 

「ミスティ…」

ディヴァインを捕食し仇を討ったミスティは正気に戻りアキに話しかける…アキは魔女になった反動か座り込んでいる…

 

『もう私には戦う理由はない…私はサレンダーするわ…』

ミスティはデッキトップに手を伸ばす…しかし

 

 

 

 

させぬぞミスティ…戦え…戦うのだ…!

 

『【うぐっ…!?神が…私の中の神が…!】』

 

倒せ…シグナーを倒すのだ…!

サレンダーしようとしたミスティの頭に地縛神の声が響き…黒いオーラに覆われていく…!

 

《キュイイイ!》

 

「『!?』」

その時、甲高い鳥の鳴き声が響き渡る

 

 

「ミスティさん!弟さん…トビー君を連れてきました!!」

 

「「翠/さん!!」」

 

鳥が地上に着地する…その正体はウィンダとキムンファルコス…そしてその背中に乗る翠とトビーだった、翠は遊海の頼みによりマーサハウスまでトビーを迎えに行っていたのだ…

 

 

『トビー…あなた…本当に生きて…!』

ミスティは涙を浮かべる…二度と会えないはずの弟が目の前にいる…それだけでミスティは嬉しかったのだ

 

『私は…負けない…!トビーの為に…負けちゃ駄目なのよ!!』

 

ミ…ミスティ!な、何をする!!やめろ!!

地縛神の制御を振り切りミスティはデッキトップに手を伸ばす…そして…

 

『これで終わりよ地縛神!私はサレンダーを宣言するわ!!』

 

おのれ人間風情がぁ…うっ…うおおぁぁぁ!!!

サレンダーが宣言された瞬間、コカライアは爆発と共に砕け散り…ミスティもそれに巻き込まれた、それは人の愛が神に勝利した瞬間だった…。

 

 

 

 

ミスティ サレンダー

 

アキWIN!

 

 

 

「「ミスティ!!」」

遊星とアキは倒れたミスティに駆け寄る…依代である地縛神がいなくなった事でミスティの身体は崩れ初めていた…。

 

『アキさん…ありがとう、貴女のお陰で私はトビーに逢えた…!』

 

「ミスティ!ダメよ!気をしっかり持って!!」

アキはミスティの手を握り締める…

 

 

「…お姉ちゃん…なの?」

 

『トビー…?』

ミスティのもとにトビーが歩いてくる…しかしその顔は何が起きているかわからないようだった…

 

「ミスティ…トビーはディヴァインのせいで記憶喪失になってしまっているの…でも大丈夫、絶対に彼は私が守るから…!」

 

『ありがとうアキさん…トビーをお願い…私の大切な弟を……』サラサラサラ

 

「ミスティ…!」

トビーの事を託しミスティは逝った…トビーからプレゼントされたペンダントを遺して…。

 

 

 

「トビー…これは貴方が持っていて、ミスティの…お姉さんの形見よ…」

アキはペンダントをトビーの首にかける…

 

「ありがとうアキさん…今の人…」

 

「いつかきっと思い出すわ…きっと…!」

アキはトビーを抱き締めながらそう伝えたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

「…ごめんなさい遊星…みんな…日が落ちてしまったわ…!」

 

「アキ…しょうがなかったんだ、大丈夫だ!サテライトの人々も戻ってきている!きっと解決策はあるはずだ!」

結局、アキはタイムリミットには間に合わなかった…しかしこれでサテライトの人々は全員(一名除く)帰ってきただろう…しかし変化は急激に訪れた…!

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

 

 

「うわぁ!地震だ!!」

突如としてサテライトが激しく揺れ始める…そして…!

 

 

「な、なんだあれは…!」

 

「シティの真上に…コンドルの地上絵だと!?」

 

サテライトの対岸…ネオドミノシティ上空に巨大な地上絵が現れた…!

 

 

 

「いったい…何が起きようしているんだ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

これより始まるは神への挑戦…すなわち最終決戦である…



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最終決戦!・序〜冥界の王復活〜

サテライトで待ち受けていた7人のダークシグナーを打倒したシグナー達…しかし、僅かにタイムリミットである夕暮れを過ぎてしまった…そしてサテライトを大きな地震が襲い、ネオドミノシティの上空には巨大なコンドルの地上絵が浮かび上がっていた…!

 

 

 

 

「遊星!無事か!?」

 

「あの地上絵はなんだ!地縛神は全て倒したのではないのか!」

 

「ジャック!クロウ!」

遊星達のもとにジャックとクロウが合流する、これでこの場には遊海を除いた4人のシグナーと牛尾と狭霧、翠とトビーが集まっていた…。

 

 

「お前が十六夜 アキか…デュエルには勝ったらしいが…いったい何があった?」

 

「あなたがクロウね…ごめんなさい、私がモーメントの制御装置を作動させるのが間にあわなかったの…!」

アキと初対面のクロウが事情を聞く、しかしこの状況を説明できる人物はいなかった…。

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴ…!

 

 

 

「また地震…!?」

 

「いったい何が起きてるんだ!?」

 

「みんな気をつけて!()()()!」

 

「翠さん!来るって…何が!?」

翠の言葉に遊星が問いかける

 

「…邪悪な『冥界の王』が復活する…!」

 

 

 

 

 

旧モーメントにて…その禍々しい光が黒く塗り潰されていく…その正体は重油のような黒い泥、それは旧モーメントの位置するクレーターから溢れ出す…それは徐々に人型をとり、最終的に巨大な異形の魔神が現れる…その正体こそダークシグナーを使い現世を破壊しようとする者…冥界の王だった。

 

 

 

 

      冥界の王出現

 

 

 

 

 

 

 

[オオオ…!!!]

 

 

「あれが…冥界の王…!」

 

「な…何なんだよありゃあ…!」

遊星達は地上から巨大なる冥界の王を目撃する…規模としては地縛神以上の大きさである

 

 

[オオオオオオ…!]

そして冥界の王は歩みを進める…その赤い眼が見据える先には新たに現れたコンドルの地上絵があった。

 

 

「ねぇみんな、あの巨人…シティに向かってない…!?」

 

「遊星…たしかルドガーの野郎『制御装置の封印に失敗したら冥界の王が現れる』って言ってたよな…!」

龍可が冥界の王の目的に気付き、クロウはルドガーの言葉を思い出す。

 

 

「あれが冥界の王だって言うんならこの世界は終わりなのか…?全てが闇に閉ざされちまうって言うのかよ!!」

 

「牛尾君!まだ諦めては駄目よ!まだ私達は…シグナー達は誰も欠けてはいない!まだ完全に閉ざされた訳じゃないわ!」

弱気になっている牛尾に狭霧が発破をかける…確かに冥界の王は出現した、しかしその身体は完全ではない…!

 

《クリリーン!!》

 

「クリボン…どうしたの?」

 

《クリクリリーン!!》

 

「龍可、どうしたんだ?カードの精霊が何かを伝えようとしてるのか?」

 

「…クリボンが言ってる…!アレをコンドルの地上絵に行かせてはダメって…!」

 

「なんだって…!?」

龍可が精霊の声をみんなに伝える…クリボンは怯えている、精霊だからこそ分かる事もあるのだろう…。

 

 

《…クリボンの言うとおりよ…!あのドロドロの巨人があの地上絵に到達したら…世界は闇に包まれてしまうわ!》 

 

「ウィンダ…でもあんなデカイのどうやって止めるんだよ!」

龍亞が現れたウィンダに問いかける、今の状況はミジンコがクジラに挑むようなものだろう。そしてまた変化が現れる、それは…

 

「ッ…!赤き竜の痣が…!」

 

「光ってる…!」

4人に刻まれた赤き竜の痣が光を放つ…!

 

 

《キュオオォォン…!》

 

「赤き竜!?」

冥界の王の瘴気に覆われた空から赤き竜が姿を現す…

 

《キュオオォォン!》

 

「「「なっ…うわぁぁぁ!?」」」

赤き竜がシグナー達に向かって突進し彼らを飲み込んだ…!

 

 

 

 

「ここは…?」

遊星達が気付くと宇宙空間のような空間を飛ぶように移動していた。

 

 

「ここは…赤き竜の中なの…?」

 

「いったい俺達を何処に連れていこうというのだ…!」

 

「…わからない、でもここを抜けた先にこの事態を解決する鍵がある…そんな気がするんだ…!」

 

そして前方に光が現れ遊星達の視界は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

「イテッ!」

 

「ここは…ゴドウィンの家…なっ!?何故祭壇が地上に!?」

光が消えるとそこはネオドミノシティのゴドウィンの自宅だった…ただ、前と違うのは地下にあったはずの祭壇が家を破壊し地上に現れているという事である。そしてシグナーチームにも変化があった、それは…

 

 

「あっ…遊海さん!?大丈夫ですか!!?」

 

「なっ…遊海さん!?」

 

「イテテ…連れて来るのはいいが…もう少し優しく連れてきてくれよ…」

シグナーチームの少し後ろ…そこには怪我をした遊海が倒れ込んでいた、車で休んでいる時に赤き竜に拉致されたのだ…。

 

「待て…白野が遊海…『伝説の決闘王』白波 遊海だというのか!?」

 

「嘘でしょ…ゼロ・リバースの時に行方不明になったって…!」

遊星の言葉にジャックとアキが反応する、身近にいた人物が決闘者であれば必ず名前は知っている有名人だったのだから無理もない…

 

 

「嘘をついてて悪かったな、アイツに警戒されないように偽名を名乗ってたんだ…」

 

「アイツ…それはいったい…?」

 

「姿を見せろ…レクス・ゴドウィン!!」

 

『気づいていましたか…ダークシグナーに勝利したようですね、シグナーの諸君…だが、冥界の扉を閉じる事はできなかった』

 

「ゴドウィン!」

祭壇の頂上…そこに光を放つビーカーを持ったレクスが現れる。

 

「ゴドウィン!教えてくれ!オレ達は冥界の王に負けてしまったのか?この世界は『終わりです』なん…だと…!?」

遊星の問いかけにレクスは一言で返す、その顔はポーカーフェイスを保っている

 

『冥界の王はこの場所へと向かっています』

 

「冥界の王が…何故!」

 

『この場所…この神殿で儀式を執り行う為です、その儀式を行う為に赤き竜の力を使い、私が貴方達をこの場所へと呼んだのです』

ゴドウィンはビーカーを掲げる、そこにはドラゴン・ヘッドの痣を刻んだ左腕があった。

 

「その腕…貴様の腕なのか!」

ジャックがゴドウィンに問いかける、以前ゴドウィンは自分に向かってきた機械の破片を義手であった左腕で受け止めた事があった…。

 

『答えは否です、ジャック…この腕は我が兄・ルドガーの遺したモノ…そして…!』

ゴドウィンは遊星達に向かって背中を見せる…その背中にはコンドルの地上絵が浮かび上がっていた…!

 

「その痣…まさか…!」

 

『そう…そのまさかです!うおおぉぉぉ!!!』バリバリバリ!

ゴドウィンの肉体が肥大化し服を破る、そして肌に紫色のラインが刻まれ白目は黒目へと変わった…

 

 

 

【私はダークシグナーとなったのだ!!そして…まだ終わりではない!!】

そう言うとゴドウィンは義手を取り外しビーカーから取り出したルドガーの腕を自身の左腕へと接着する、その腕は不思議な力により完全に接合される…!

 

 

「ゴドウィン!貴様なにを…なにをしようとしている!?」

 

【ふむ、完全に我が物になるには時間がかかるか…遊星!我は神となる!赤き竜と冥界の王…この2つの力を得て『究極の神』となるのだぁ!!】

ゴドウィンは左腕を空に突き上げる…それと共に大地が鳴動し祭壇の高さが倍以上巨大化する!

 

「まずい!離れるんだ!!」

遊星達は慌てて祭壇の近くから避難する

 

 

 

 

【これより冥界の王を迎える儀式を始める…!その儀式はコンドルの地上絵におけるライティングデュエルによって執り行われる!…そして我がシグナーである君達を倒し、その魂を冥界の王に捧げる!そうする事で冥界の王は完全に復活するのだ!!】

空中へと投影されたゴドウィンが腕を広げながら宣言する。

 

「ふざけるんじゃねぇ!ゴドウィン!!お前が…お前が遊星達にダークシグナーを倒せって頼んだんじゃないのかよ!!」 

 

【フッフッフッ…最初から我の計画の内だったのだ!さぁ…どうする?冥界の王は間もなくここにやってくるぞ!!】

クロウが叫ぶがゴドウィンは計画の内と吐き捨てる…冥界の王はサテライトとシティの間の海を渡って来ている…時間の猶予は少ない…!

 

 

 

「ゴドウィン!このデュエルに勝てば…冥界の王は消えるんだな!?」

 

【消えるでしょう、だが…それは私がさせない!神たる我が!!!】

ゴドウィンの答えを聞いた遊星は覚悟を決める…ゴドウィンを倒し冥界の王を倒すと…!

 

 

「このデュエル…受けて立つ!!」

 

「ゴドウィン!貴様など蹴散らしてくれる!!」

シグナーの痣を輝かせ遊星とジャックがゴドウィンに宣戦布告する!

 

「ならオレだってやってやる!!…と言いたいが…ここはアンタに任せるべきなのか…遊海」

クロウは遊海を見つめる…しかし遊海は首を横に振る

 

 

「クロウ…デュエルはお前に任せる、俺は…奴を相手する…!」

遊海の見つめる先…そこにはゆっくりと進行する冥界の王の姿があった

 

「なっ…あんなデカブツと戦うっていうのか!?無茶だ!」

 

「無茶は承知の上だ、俺がアイツを翻弄し時間を稼ぐ…ゴドウィンはお前達に任せる!チームサティスファクションの底力を見せてくれ!」

遊海はクロウを見据え拳を突き出す

 

「遊海…アンタの想い確かに受け取った!決闘王に任されたんなら負ける訳にはいかねぇ!オレはシグナーじゃねぇが…サテライトの奴らの為に…アイツを倒す!!」

クロウは拳を突き合わせ遊海からのバトンを受け取る…これでメンバーは確定した…!

 

 

 

 

「翠、トビーを頼む…安全な場所まで連れて行ってくれ…!」

 

「はい…!遊海さん!その前に回復を!」

翠は遊海に回復魔法を使う、そのお陰で傷は完全に塞がった。

 

「白野…絶対に帰って来て…!」

 

「トビー…ああ、絶対に帰ってくる!だからいい子にしてるんだぞ…翠!頼む!」

 

「はい!…ウィンダ!」

 

《うん!全速力で行くよ!》

《キュイィィ!》

翠はキムンファルコスを召喚しこの場を一時離脱する。

 

 

「さて…精霊変身!!」

翠を見送った遊海はクリフォートの鎧を纏う…修復が終わっていないのか全身傷だらけになっている

 

「遊海…無理だけはしないで…!」

 

「わたし達も応援してるから…!」

 

「龍亞…龍可、お前達はここで見届けるんだ、遊星達の戦いを…お前達の信じる心が俺達の力になってくれるはずだから…!」

遊海は2人の頭を優しく撫でながら言葉を伝える

 

「牛尾さん、アキ…2人を頼む!」

 

「ええ…任せて!」

 

「お前こそ無事に帰って来いよ…遊海!」

 

「はい…それじゃあ戦いが終わったら会いましょう!…来い!『閃光竜』!!」

《キュオオオン!!》バサッ!

シグナーの痣を輝かせ遊海は閃光竜を召喚し冥界の王に向かって飛び立った…。

 

 

 

 

 

「勝負だゴドウィン!!オレ達のデュエルで冥界の王を止めてみせる!!」

 

【フッ…ルールは3対1の変則デュエル、貴方達には1人4000のライフを、私は3倍の12000のライフ…お互いに最初のターンは攻撃できない、異存はありませんね?】

 

「ねぇよ!」

 

「いくぞゴドウィン!これが俺達の…」

 

「最後の戦いだ!!!」

 

【いいでしょう…さぁ、儀式を始めるぞ!我は神となる!!!】

そしてついにこの世界の命運を決めるデュエルが始まった!

 

 

 

 

    「「「【デュエル!!】」」」

 

 

 

デュエルダイジェスト

 

超越者 レクス・ゴドウィン LP12000

 

クロウLP4000

ジャックLP4000

遊星LP4000

 

 

特殊ルール

変則ライティングデュエル

「スピードワールド」常時発動

 

初ターン攻撃不可

 

ターン進行

クロウ→ジャック→遊星→レクス

 

 

「オレのターン!ドロー!」

 

「『BFー銀盾のミストラル』を召喚!さらに手札の『BFー黒槍のブラスト』の効果により自身を特殊召喚!カードを1枚伏せターンエンド!」

クロウLP4000

 

「俺のターン!ドロー!」

 

「『マッドデーモン』を召喚!カードを伏せターンエンドだ!」

ジャックLP4000

 

「オレのターン!ドロー!」

 

「『マックスウォリアー』を召喚しカードを1枚伏せターンエンド!」

遊星LP4000

 

このデュエルではお互いに最初のターンは攻撃できない、遊星達はそれぞれモンスターを召喚し盤面を固める。

 

 

「ゴドウィン!何故お前はダークシグナーになった!俺達はお前からダークシグナーを倒せと言われたんだぞ!!」

 

【フン、簡単な話だ!赤き竜と冥界の王…この2柱の神の戦いに決着をつける為だ!!】

 

「なんだって…!?」

 

ゴドウィンは語る、5000年周期で行われてきた赤き竜と冥界の王の血みどろの戦争…そして17年前、レクスの兄・ルドガーの身体で始まった前哨戦、ルドガーはダークシグナーの力に支配されたが希望を繋ぐ為に左腕を切り落とし…ゼロ・リバースを起こした。

 

 

【私は我ら兄弟の運命に従い君達シグナーを集め…兄のもとに向かった、私はその時までにある結論に達していた、運命の底の底を見つめた果てに……私は兄に負けた】

 

クロウがボマーと戦っていた頃…レクスは旧モーメントでルドガーと対峙しデュエルを行った…結果はルドガーの勝利…それはレクスが手を抜いた仕組まれた勝利だった。

 

 

【私は兄に敗北しその死の間際に願ったのだ!「兄と同じく2つの神を身体に宿したダークシグナーになる」という願いを…!我は神となり赤き竜と邪神の戦いに決着をつける!冥界の王の力で世界を破壊し!赤き竜の力で世界を再生する!私が…我が!新世界を創造するのだ!!!】

 

「ふざけるなゴドウィン!!」

 

「そんな事の為にサテライトのガキどもや他の奴らも消えなきゃならなかったのか!?」

 

「このジャック・アトラス!貴様の妄想に付きあう気は無い!」

ゴドウィンの言葉を聞いた遊星達はゴドウィンに物申す!

 

「ゴドウィン!お前は間違っている!運命を変えるのは神の力じゃない!俺達が抗い勝ち取るものだ!!」

 

【笑止!では貴様らは何を以て戦うと言うのだ!】

 

「それは…俺達!仲間達との絆の力だ!!」

 

 

 

【いいだろう!お前達の言う絆の力など脆いものだと教えてやろう!我のターン!ドロー!】

 

【自分の場にモンスターがいない時!「太陽の神官」は特殊召喚できる!さらにチューナーモンスター「赤蟻アスカトル」を召喚!】

ゴドウィンのフィールドに太陽を祀る神官と赤蟻が現れる

 

【我はレベル5の「太陽の神官」にレベル3「アスカトル」をチューニング!】

 

5+3=8

 

【太陽昇りし時!全ての闇を照らし出す!降り注げ光よ!シンクロ召喚!いでよ!「太陽龍インティ」!】

フィールドに四本の首を持つ「シグナー」としてのゴドウィンのドラゴンが現れる、しかし展開はまだ終わらない。

 

 

【墓地の「アスカトル」を除外しデッキから「泣き神の石像」を特殊召喚!さらに1000のライフを払い手札の「DT 黒の女神ウィタカ」を特殊召喚する!】

黒いローブを着た魔女と石像が現れる

 

ゴドウィンLP12000→11000

 

【1ターンに一度「ウィタカ」のレベルは場のシンクロモンスターと同じにできる!よって「インティ」のレベルを得た「ウィタカ」はレベル8となる!我はレベル2の「泣き神の石像」にレベル8の「ウィタカ」をダークチューニング!】

 

2-8=-6

 

【闇に月満ちる時…魔の囁きが聞こえ出す!死へと誘え!ダークシンクロ!いでよ!「月影龍クイラ」!】

フィールドに4本の首を持つ「ダークシグナー」としてのゴドウィンのダークシンクロモンスターが現れる…しかし…

 

 

【「クイラ」は召喚されたターンのエンドフェイズに破壊される!カードを2枚伏せターンエンド!】

エンド宣言と共にクイラは雲の中に沈んでいった…。

ゴドウィンLP11000

 

 

「へっ…大層な登場した割にもう退場かよ!神だか運命だか知らねぇがよぉ…飛び越えてやるぜ!伝説のDホイーラの様になぁ!!」

クロウはゴドウィンに叫ぶ…昔サテライトに存在し、ダイダロスブリッジから空へと飛び立った伝説のDホイーラの想いを胸に宿しながら…

 

【フッ…「伝説のDホイーラー」ですか…、だが彼は代償として腕を失った…】

 

「…何を言ってやがる…?」

ゴドウィンは伝説のDホイーラーを馬鹿にするように呟いた。

 

 

「今は関係ねぇ…オレのターン!ドロー!」

 

「オレは『Spーチューンアップ123』を発動!ダイスロール!…出目は2だ!よって「ミストラル」のレベルを1アップする!オレはレベル4の『ブラスト』にレベル3になった「ミストラル」をチューニング!!」

 

3+4=7

 

「黒き旋風よ!天空に駆け上がる翼となれ!シンクロ召喚!現われろ!『BFーアーマード・ウィング』!!」

クロウのエースカードたる黒き翼の戦士が現れる

 

「さらに手札から『BFー漆黒のエルフェン』を召喚!このカードは自分フィールドにBFモンスターがいる時、リリース無しで召喚できる!」

その名の通り全身が漆黒の羽で覆われた鳥人が現れる

 

「バトルだ!『アーマードウィング』で『インティ』を攻撃!ブラックハリケーン!!」

アーマードウィングが飛翔しインティの本体である太陽に拳を叩き込む!…しかし。

 

【だが攻撃力は「インティ」が上!消え去るがいい!】

インティは2本の首でアーマードウィングを拘束し太陽から熱線を放ちアーマードウィングを消し飛ばす…だがアーマードウィングは無傷で後退する

 

「『アーマードウィング』が戦闘する時、このカードは破壊されず自分が受ける戦闘ダメージは0になる!そして『楔』は撃ち込んだぜ!」

 

【なに?】

攻撃を受けたインティには黒い棘が突き刺さっている…!

 

「『アーマードウィング』の効果だ!このカードが攻撃したモンスターに楔カウンターを置く!さらに、その楔カウンターを取り除いてそのモンスターの攻守を0にする!!」

楔が消え去りインティの身体に巨大な亀裂が刻まれる!

 

 

「『エルフェン』で『インティ』を攻撃だ!」

エルフェンはインティのもとまで飛び立ちその身体を斬り裂いた!

ゴドウィンLP11000→8800

 

 

【フッフッフッ…愚かな…!太陽に…神に歯向かう事は許されない事なのだ!…あの時、伝説のDホイーラーは左腕を失う事で嫌というほど思い知った…!】

 

「なにを言っているんだ…!」

 

「まさか…伝説のDホイーラーとは…!」

遊星は気づく、伝説のDホイーラー…失った左腕…そして今戦っているゴドウィンの話…それが1本の糸で繋がった…!

 

【「インティ」の効果を発動!このカードを破壊したモンスターを破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!神罰を受けるがいい!】

インティからの呪いがエルフェンを破壊し…祭壇からの雷撃がクロウに直撃する!

 

「うっ…うわぁぁぁ!!」

クロウLP4000→1800

 

 

「クロウ!無事か!!」

 

「チィ…なんとかな…!」

 

【フッ、頑丈なものだ…そして墓地の「インティ」の効果を発動!墓地の「クイラ」を特殊召喚する!日が沈めば月が闇夜を照らす、月が沈めば太陽は再び昇る!これが世界の理だ!】

雲の中からクイラが現れる…!

 

「ゴドウィン!聞きたい事がある!」

 

【なんだ?遊星】

 

「サテライトの伝説Dホイーラー…それはお前の事だな!!」

 

【いかにも!その通りだ!】

 

「「なんだと!?」」

クロウとジャックは驚愕する、サテライトの伝説の正体が目の前のレクスだと言う事に…!

 

【伝説のDホイーラーは学んだ!運命には抗えないと!…だがそれは凡人だからだ!くだらない人間だからだ!運命を変える為には人間を超越し神と為る!その時初めて奇跡は起きるのだと!!】

 

「ふ…ふざけんじゃねぇぇ!!オレは絶対に信じねぇ!オレ達の伝説を穢されてたまるかよぉぉ!!」

クロウは魂の雄叫びをあげる…伝説のDホイーラーにもっとも憧れたからこそ、その本人が世界を破滅させようとしている事が信じられないのだ。

 

【受け入れろクロウ・ホーガン、これが真実だ!…そして()()()()()!】

ゴドウィンが左腕を掲げる…それと呼応するように下さい遊星達のシグナーの痣が輝き()()()()()()()()()()()

 

 

「なっ…なんだと!?」

 

「痣が…消えちゃった…!?」

 

【フフフ…フハハハ!準備は整った!我は究極の神へと近づいたのだ!】

ゴドウィンの胸…そこには完成された赤き竜の痣が輝いていた…。

 

「そんな…!全ての痣がゴドウィンに…!?」

 

【諦めろ人間共!我に勝ち目は無い!…誰であろうとな…!】

 

「なに…!」

 

 

「ぐおあああ!!」

 

ズカーン!!

 

「「「なんだ!?」」」

ゴドウィンが勝利宣言をした瞬間、龍亞達の近くで爆発が起きる…否、その正体は…

 

「うっ…うぐああ…!」

 

「遊海さん!!」

 

「そんな…!」

瀕死となり身体を()()()()()遊海がクレーターの底で痛みに苦しんでいた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

[オオオ…]ズシー…ン ズシー…ン

 

「あれが冥界の王か…!」

 

遊星達と別れた遊海は冥界の王の近くまで近づいていた、冥界の王はサテライトとシティ間の海峡を我が物顔で進んできていた。

 

「本当なら俺の手出しは不要だろう…だが、貴様を阻ませてもらう!『閃光竜』!海面スレスレまで行ってくれ!」

 

《キュオオ!!》

閃光竜は降下し海面近くで滞空する

 

「…本当ならやりたくないが…いくぞ!精霊転身!モードネクロス・トリシューラ!!…絶対零度!!」

 

ビキビキ…カチーン!

遊海は十数年振りにトリシューラの力を纏う、世界を氷結させた最強の龍の冷気は周囲の海水を氷結させ冥界の王の足を凍らせた。

 

[オオオ…!?]

 

「少しは効いたみたい…ゴボォ!!…クソッ…!やっぱり無理か…!」 

遊海は吐血し変身も解除される…身体がトリシューラの力に耐えられなかったのだ…。

 

「でも…この氷は簡単には溶けねぇ、あとは…!」

 

[オオオ!!]ブゥン!

 

「コイツを翻弄するだけだ!閃光竜!」

《キュオオン!!》

遊海に迫った巨大な腕をバレルロールで回避する、あくまで凍ったのは脚のみ…両腕は自由に動いてしまう、さらに…!

 

[ゴオオオ!!]バシュン!!

 

「くっ!?波動音壁!」

冥界の王が炎の息吹を放つが、それをバリアで受け止める…!

 

「あれが街に当たったら大変な事になる…閃光竜!上空を旋回しつつ流星閃撃で攻撃だ!」

《キュオオン!!》

 

閃光竜は上昇し光のエネルギーを打ち込むが冥界の王にはたいしたダメージは入っていない…冥界の王が腕を振り回し、遊海が避けて反撃する…その攻防が数分間続いた…。

 

 

「くそっ、ジリ貧だ…!攻撃力が足りねぇ!こうなったら…アヤカ!行けるか!!」  

 

《マスター!しかし身体が…!》

 

「俺の身体はどうでもいい!アイツを倒す事が先決だ…!」

17年前…その身に大量のマイナスエネルギーによる汚染を受けた遊海は著しく弱体化した、精霊アーマーはクリフォートの力しか使えず、精霊の実体化…特にアポクリフォート・キラーやラーの翼神竜などと言った強力なモンスターを召喚しようとすれば…一気に体力を使い切ってしまうだろう…

 

「アヤカ…頼むぞ…!我が魂を守りし機殻の王よ!今こそ顕現せ…うぐっ…!?」

相棒を召喚しようとした遊海の右腕に痛みが走る…そして…

 

《キュオオ…ン…》

「そんな…痣が…うわっ!?」

 

《マスター!!》

遊海の痣が消え去ると共に閃光竜も消滅する…赤き竜の痣はそれ自体が強い力をもっており、遊海はその力を使い閃光竜を実体化させていた…しかし痣が離れた事で閃光竜の実体化を維持できなくなり落下したのだ、そして…

 

[オオオオオオ!!!]

 

「しまっ…!」

 

ズガン!!

 

「ガハッ…!?」

遊海に冥界の王の手が直撃する…それは遊海に飛行機が直撃したような衝撃を与え、ボールのように吹き飛ばした…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぐああああっ…!!」

 

「おい!遊海!大丈夫か!!」

苦しむ遊海に牛尾が駆け寄る…しかし

 

「牛尾…さんっ!来ない…で…!汚染され…る…!!」

 

「なんだと…!」

遊海の身体は黒いエネルギーに汚染され黒く染まっていく…黒いエネルギーは遊海の体力を根こそぎ奪っていく…!

 

 

【フフフ…無様なものですね「失われし決闘王」白波 遊海!冥界の王は生贄を求めている!そこに自分から突っ込むなどとは!さぁ…冥界の王の生贄になるがいい!】

 

「うるせぇな…ゴドウィン…!俺を舐めるな…!伊達に何回も世界を救う手助けはしてねぇんだよ…!」

遊海はヨロヨロと立ち上がる

 

【フッ、やせ我慢を…我には見えているぞ遊海!貴様の身体も!魂も!冥界の色に染まっている!貴様はとっくに死していてもおかしくない筈だ!なぜまだ立ち上がる!】

 

「決まってるだろ…俺が『決闘王』の名を背負ってるからだ!我が友に懸けて、この程度の闇には屈する訳にはいかないんだよ…!」

遊海はゴドウィンを睨みつける…その白目は黒く染まっていく…!

 

【は、ハハハハ…!何を言っている!その闇に堕ちようとする身体で何ができる!!】

 

「遊海さん!」

 

「心配するな遊星…お前達はデュエルを続けろ…!俺は死にはしない、まだ俺の心は折れてはいない…!!」

遊海の肉体は黒く染まる…数多の悪意が遊海を侵食する…しかし遊海の瞳は未だ輝いている…!

 

 

 

「我、全てを破戒する者…全ての闇を乗り越え人を救う者…!我が身に満ちる闇よ…我に力を!!マイナスエネルギー…開放!!」

 

その瞬間、遊海の身体は闇に包まれた…。




今回のスピードスペル!

Spーチューンナップ123
通常魔法
自分のスピードカウンターが2個以上ある時発動できる。
①自分のモンスター1体を対象に発動できる。サイコロを振りその出目の半分の数値分、そのモンスターのレベルを上げる。
(出目が1の場合はレベルが1上がる)


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最終決戦!・破〜絶対絶命〜

「な、なにが起きてやがる…!?」

 

「遊海…!いったい何をしようとしているの!?」

シグナーの痣をゴドウィンに奪われ大ダメージを受けた遊海、彼は短い詠唱と共に身体を闇で包んだ…そして

 

 

【オオオ…Aaaaaaa!!!!】

闇が弾け遊海が姿を現す、体にはクリフォートの鎧を纏っているが…その色は黒く染まり、鎧の隙間からは赤い瞳が覗き…喉が張り裂けんばかりの咆哮をあげている…!

 

 

「黒い…メタルナイト…!?」

 

「怖い…!」

 

龍亞と龍可は恐怖を抱く、そこにいた憧れのヒーローは闇のオーラを纏い狂い果てていた…。

 

「遊海…さん…!?」

 

【ユウセイ…ゴドウィンヲ倒セ…頼ンダゾ!!】

 

「!!…はい!」

 

【オオオ…!ウオォォォ!!!】バサッ!

遊海は遊星に視線を送る、そして背中から黒い翼を生やし冥界の王へと突撃して行った…。

 

 

 

 

【フッ…ハハハハ!闇に堕ち狂気に侵されながら、この世界を守ろうとするか…面白い!いつまで正気が保つか見物だな!】

 

「ゴドウィン!お前に遊海さんを笑う資格は無い!!」

遊星はゴドウィンにに向かって叫ぶ

 

「遊海さんは命を懸けて冥界の王に挑んでいる!それはオレ達も一緒だ!」

 

「そうだ!俺も知っている!17年前のゼロ・リバースの時!奴は1人で数万人の人間をその手で守り切った!…あれこそ真の決闘者の一人だ!!」

 

「そして傷付き、ボロボロの身体でサテライトとネオドミノシティの平和を守ってきた!!あの人こそ本当の英雄だ!」

遊星に続きジャック、クロウも叫ぶ、遊海は正体を隠し『鋼の騎士』としてネオドミノシティ、そしてサテライトの平和を守り続けてきた。

その遊海が命を…全てを懸けて冥界の王を止める為に奮闘している、その様が遊星達の魂を燃え上がらせる…!

 

 

【フッフッフッ…『英雄』か、だが奴は冥界の王には勝てまい!遊星!お前達も同じだ!神たる我に敗北は無い!!】

 

「オレ達は負けない!例え1人では勝てなくとも…仲間達との絆の力でお前を倒す!!」

 

「そうだ遊星!オレ達の絆はぜってぇに切れねぇ!見せてやるぜゴドウィン!オレ達の絆の力を!オレはカードを2枚伏せてターンエンド!」

クロウLP1800

 

 

【愚かな…人間の絆など脆いものよ!…運命を覆すには我自身が神となり新たな世界を創造する以外には無いのだ!!】

 

「フン!俺は神など知らん!ましてや絆などというモノもな!…ただ俺は超えていくだけだ、運命などに左右されん!このスピードで…追い付けぬ程先を行く!」

 

ゴドウィンの演説にジャックは神を…運命を否定する。

唯我独尊…それを体現したジャックは自身だけであらゆるものを凌駕する…!

 

「俺のターン!ドロー!」

「『マジックホール・ゴーレム』を召喚!このモンスターの効果により『マッドデーモン』は攻撃力を半分にし、ダイレクトアタックできる!ゆけ!ボーンズ・スプラッシュ!!」

ゴドウィンに肉薄したマッドデーモンの胸が開き、骨の礫がゴドウィンに直撃する!

 

【ぬぅ…!】

ゴドウィンLP8800→7900

 

「やるな!けど…冗談じゃねぇぜジャック!お前がいくら速く駆け抜けようと…オレ達の腐れ縁を振り切る事なんて出来ねぇんだ!罠カード『シャドーダンス』発動!自分のモンスターがダイレクトアタックに成功した時!相手に1000ダメージを与えるぜ!」

 

【小癪な…!】

ゴドウィンLP7900→6900

 

「そうだ!シグナーであろうと無かろうと関係無い!既にオレ達には仲間という絆がある!それは絶対に消えない印だ!この絆で…オレ達は運命を打ち砕く!罠カード『ライジングラッシュ』発動!相手が効果ダメージを受けた事により手札からチューナーモンスター『ジャンクシンクロン』を特殊召喚する!」

遊星の場にオレンジ色のロボットが現れる。

…この世に生きる人間は1人だけでは生きていけない、1人で生きていると思っていても…必ず誰かが関わってくる。ジャックも同じ…彼には彼を支える友がいる…!

 

「フン、お節介な奴らだ…俺はターンエンド!遊星!奴に見せてやれ!俺達の力を!!」

ジャックLP4000

 

 

「ああ!いくぞ!オレのターン!ドロー!!」

「オレはレベル4の『マックスウォリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

仲間達からカードのバトンを受け取った遊星は新たなモンスターを召喚する!

 

3+4=7

 

「集いし叫びが木霊の矢となり空を裂く!光さす道となれ!シンクロ召喚!いでよ!『ジャンク・アーチャー』!」

遊星の場にオレンジ色の弓兵が現れる

 

「『ジャンクアーチャー』の効果を発動!『月影龍クイラ』を除外する!ディメンジョン・シュート!」

《ハッ!!》

 

ジャンクアーチャーの放った矢が異次元の扉を開き、クイラを消し去る…!

 

「バトル!『アーチャー』でダイレクトアタック!スクラップ・アロー!!」

弓矢の第二射がゴドウィンに向かって放たれる!

 

「奴の場はガラ空きだ!いけっ!!」

 

【やらせません!リバース罠「栄誉の贄」を発動!自分フィールドにモンスターが存在しない時にダイレクトアタックを受けた時、その攻撃を無効にし「贄の石碑トークン」2体を特殊召喚!さらにデッキから「地縛神」を手札に加える!】

ゴドウィンに迫った矢は消失しフィールドに2体のトークン、そして手札に地縛神が加えられる…条件は揃ってしまった…!

 

「なっ…!地縛神を手札に呼び込んで条件を揃えやがった…!?やる事が汚えぜ!!」

 

【当たり前だ!我は神なのだから!!】

 

「くっ…カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

遊星LP4000

 

 

【我のターン!ドロー!!】

【我は「贄の石碑トークン」2体をリリース!現れよ!そして究極の破壊を齎せ!!「地縛神Wiraqocha Rasca」!!】

ゴドウィンの宣言と共に巨大な心臓型のオブジェが現れ鳴動する、そしてその場所はシティ上空…数多の人々の魂が…吸収されない。

 

【なに…?何故だ…何故だ!!】

ゴドウィンは動揺する、本来であればシティの人々の魂を生贄として地縛神を召喚する筈だった…しかし現実には少数の魂しか心臓に吸収されていないのだ…、しかしその答えはすぐにわかる事となる。

 

 

ズギャアアアアン!!

 

「「「【なんだ!?】」」」

 

遊星達の後方…冥界の王のいる辺りで凄まじい光の爆発が起きる、そこには海へと押し戻される冥界の王の姿…そしてそれを為した3っの頭を持つ白竜の姿があった。それは最強の象徴…または現存する伝説、その正体は…

 

 

「あれは『青眼の究極竜』…!」

 

「まさか…あの人が戦っているっていうのか…!」

 

【おのれ…おのれ!海馬 瀬人ぉぉぉっ!!!】

 

 

Sideout

 

 

 

 

Side遊海(半悪魔状態)

 

 

【(急がないと…!)】

遊海は背中に生えた翼を使い、空を最高速度で駆け抜ける、視線の先では冥界の王が氷を砕き侵攻を再開していた。

 

 

「(おい!勝負を決めるなら早めにやれよ!いつまでこの状態を保てるかわからねぇ!!)」

 

【(わかってる…!俺も辛いんだ…我慢してくれユウスケ…!)】

 

遊海の今の状態は半悪魔化といえる状態となっている。

冥界の王に侵食され危うくダークシグナー化しかけた遊海…しかしそれを逆手にとり忌まわしき「悪魔の力」を発動、闇の力(邪神の闇)をさらなる闇の力(破壊神の残滓)で上書きしダークシグナー化を回避した。本来であればそのまま破壊衝動に飲まれ暴走する…しかしそれを精神力で捩じ伏せ冥界の王を倒す力へと変えている…!

 

【(ぐぅ…!身体が灼ける…!!だが今の一瞬でいい…!奴を止める力を…!!)】

今の遊海は溜め込まれたマイナスエネルギーを使い動いている、しかしそれは諸刃の剣…正と負が反発し遊海に凄まじい痛みが襲いかかる…!

 

【(誰かが戦ってる…翠か!)】

冥界の王の周りで氷を伴った竜巻が渦巻きその身を切り刻んでいく…それは翠とウィンダ達が冥界の王を足止めしている証だった。

 

 

 

 

〔オオオ…!!〕

 

「ウィンダ!もっと風を強く!!」

《わかった!!え〜い!!》

グングニールの鎧を纏った翠とキムンファルコスに騎乗したウィンダが冥界の王に対して攻撃を続ける、トビーを一度マーサハウスに送り届けた翠は急いで遊海のもとへと戻っていた。

しかしその道中、遊海が冥界の王に吹き飛ばされる姿を見てしまう…翠は遊海のもとに駆けつけたい思いを我慢し冥界の王の足止めをしていたのだ。

 

〔オオオ…!!〕ブゥン…!

 

「ウィンダ!緊急回避!!」

《ファルコ!》  

《キュイイ!!》

 

ブォン! ゴオオオ…

振るわれる腕をギリギリで回避する、先程から氷結の力と風で動きを止めようとするがまったく効いていない…!

 

「これが冥界の王…!私達の力じゃ足りない…!」

 

〔オオオ!!〕ブォン!

 

「ウィンダ!もう1回来るわ!!」

《合点!!》

再び腕を回避する…しかし

 

ビュッ!

 

「しまっ…!」

《避けきれない!》

冥界の王が腕を振り抜いた先から鞭のような触手が襲いかかる!

 

【オオオオオオ!!!】

 

ジャジャキンッ!!

 

「えっ…!」

触手が翠達に直撃する直前、触手は細切れに斬り裂かれる…それをやったのは…

 

「遊海さん!?なんなんですかその姿!?」

 

【スマナイ…遅クナッタ…!】

腕に黒く光る剣を握った黒き騎士…遊海が翠を守るように羽ばたいていた

 

「遊海さん!また無茶をして…!あとでお話がありますからね!!」

 

【ハハハハ…コノ戦イガ終ワッタラ、イクラデモ聞クヨ…!翠…コノママジャジリ貧ダ…『Sopia』ノ力ヲ開放シロ!時間ハ稼グ!頼ムゾ!…オオオ!!】

 

「あっ…遊海さん!!」

遊海は切り札の使用を翠へと促し、冥界の王へと突撃した。

 

 

 

 

 

〔オオオ…!〕ブォン!

 

【ハアアア!!!】ガキィィン!!

遊海は振るわれた腕を剣を使い受け止める…悪魔化、そしてマイナスエネルギーの使用で遊海のパワーは一時的に全盛期に近い状態となっている。

 

【(翠が力を溜めるまであと5分…絶対に守りきる…!)】

遊海は剣を握る腕に力を込める…そして剣に黒い魔力が集中していく、遊海の持つ剣…それは「湖の騎士」また「最高の騎士」と呼ばれた円卓の騎士が振るいし「不毀の剣」…その名は

 

【(模倣(イミテーション)鎖縛全断(アロンダイト)/過剰湖光(オーバーロード)!!)】

 

スッパァァァン!!

剣に魔力を注ぎ込み冥界の王の腕に叩きつける、剣に込められた力は光の斬撃として黒く輝き腕を斬り落とす…しかし…

 

〔オオオ…!〕ニュルン!

 

【(まじで効いてねぇ…!)】

腕が即座に再生する、今の冥界の王の身体は泥で作られた不完全なモノ…物理攻撃の効果は薄い…!

 

〔オオオ!!〕ジジジ…!

 

【(まずい熱線が来る…!)】

王の口に炎が充填される、避ければ街と翠に直撃するコースだ…!

 

【(防いでみせる…!!)】

遊海は剣を構える、そして熱線が…

 

 

『させんぞ!!「真究極竜」よ!邪神を蹴散らせ!ハイパー・アルティメット・バースト!!』

《ギュアアアン!!》

 

〔オオオ…!?〕ズカーン!!

…放たれる直前、三条の光線が螺旋を描き冥界の王に直撃、初めて強いダメージが入り王は海へと押し戻される!

 

 

【海馬…社長…!】

 

『フン!禍々しい姿だが、意識はあるようだな遊海!街の住民は避難させてある!存分に戦え!童実野町を守るのはオレ達の役目だ!!若造にばかり任せられるか!』

ビルの屋上…そこには腕を組み邪神を見据える海馬の姿があった。

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

【ぬぅ…!おのれ余計な事を…!!地縛神よ!我が魂を生贄とし…目覚めるがいい!!】

ゴドウィンは自身の力をモニュメントに注ぎ込む…そして禍々しい光が放たれ巨大なコンドルの地縛神・ウィコラチャラスカが顕現する!

 

 

「これが最強の地縛神…っ!?何かが飛んでくる…!」

 

《ギャー!ギャー!》

 

「うわっ!?なんだよコイツらは!!」

遊星達に突如として無数の黒い鳥のような魔物が襲いかかる…!

 

【フフフ…!冥界の王も地縛神の登場に興奮を抑えられぬようだ!5000年の深き眠りから目覚め、その渇きをキミ達の血で潤わせてくれと叫んでいるのだよ!!】

 

「くっ!うっとおしい!!」

魔物達は3人の周りを旋回する…まるで獲物を狙うハゲタカのように…だが…!

 

 

【オオオ…!模倣(イミテーション)卑王鉄槌(ヴォーティガーン)!!】

 

 

ズバババ!

 

【なに!?】

遊星達の頭上を圧倒的暴力が駆け抜ける、暗黒の斬撃が魔物を斬り刻み消滅させていく…!

 

 

【スマン!打チ漏ラシタ!無事カ!!】

 

「遊海さん!」

遊星達に並走するように遊海が飛翔する…地縛神の出現と共に大量に発生した魔物を倒していたが、打ち漏らした魔物を倒しに来たのだ、さらに遊海だけではない。

 

 

「お願い!エンシェントフェアリー!」

 

「蹴散らしなさい!ブラックローズドラゴン!!」

 

《彼らの邪魔はさせません!!》

 

《キュリアアア!!》

龍可とアキがそれぞれのドラゴンを召喚し魔物を攻撃する!

 

「シグナーの竜!このフィールドなら力を出せるわ!わたしだって戦える!」

 

「この絆を…初めてできた仲間を守るために私は力を使う!!」

例えDホイールに乗れなくとも、心だけは戦う4人と共にある…龍可もアキも自分のできる事を実行する!

 

「フレー!フレー!遊星!!」

 

「アトラス様!頑張って!!」

 

「負けるんじゃねぇぞ!クロウ!遊海!!」

力を持たない龍亞や牛尾、狭霧達も遊星達に声援を贈る…!

 

 

 

「「「お前達のその思い!確かに受け取った!!」」」

【ゴドウィン!俺達ノ絆ハ…断チ切レハシナイ!!】

アキや龍可達の想いを受け取った遊星達は絶望へと挑む!

 

【フッ、とんだ三文芝居だ!】

 

「ゴドウィン!俺達の絆が運命を超えてみせる!」

 

【そんな考えではいずれ運命に呑み込まれ、永遠に続く赤き竜と邪神との戦いに翻弄され、沈黙するしかない!…だから我が神となって創造しようというのだ!より善き世界を!!「ウィコラチャラスカ」の効果を発動!バトルフェイズをスキップする事で遊星!貴様のライフを1にする!!味わうがいい!不可能を!無力を!!絶望を!!!ポーラ・スター・オベイ!!】

 

「【遊星!!】」

 

「やらせねぇよ!!罠カード『ライフ・エクスチェンジ』を発動!ライフポイントを変化させるカードが発動した時!その対象を自分に変更する!!…ゴドウィン!悪リィがサテライト育ちのオレ達はそんなモン感じやしねぇ!!」

 

「「クロウ!」」

遊星の前にクロウが割り込みトラップを発動させ、ゴドウィンに…伝説のDホイーラーに語りかける。

 

「どんなに辛くても、俺達は風を切り、前を向いて走る!それを教えてくれたのは…伝説のDホイーラーだ!」

 

【だが彼は何も成し得なかった!】

 

「違う!不可能とわかっていても!限界を打ち破ろうとするあの人の…かつてのお前の想いにオレ達は魂を打たれたんだ!ゴドウィン!…お前がどう思おうと!そのスピリットはオレが!遊星が!ジャックが!サテライトのみんなに受け継がれているんだ!絶望なんかしてたまるかよぉ!!」

 

【所詮想いだけでは届かん!その絆…断ち切ってやる!!「ウィコラチャラスカ」!クロウのライフを1にしろ!ポーラスター・オベイ!!】

 

ウィコラチャラスカから禍々しい紫色の光が放たれクロウに直撃する、さらにその闇の力は凄まじくクロウはコース外に弾き飛ばされてしまった!

 

「「「クロウ!!」」」

 

「ぐぁああ!!」

 

クロウLP1800→1

 

「チィッ…!ゴドウィン!お前の伝説はオレ様が引き継ぐ!この鉄砲玉のクロウ様がなぁ!『ライフエクスチェンジ』のさらなる効果!自分のライフが減少した時!相手のモンスター1体を破壊する!オレは『クイラ』を破壊する!飛べ!ブラックバードォ!!」

クロウはブラックバードのエンジンの出力を最大まで上げる、ブラックバードには伝説のDホイーラーをリスペクトした翼が付いている…その翼は風を掴みクイラを打ち砕く!!

 

【だが「クイラ」が破壊された事で墓地の「インティ」が復活する!!】

雲の切れ間から再び太陽竜が現れる、さらにブラックバードは地面に向かって落下していく…!

 

「【クロウ!!】」

 

「まだだ!永続罠『BFーアンカー』を発動!『アーマードウィング』をリリースする!!…伝説のDホイーラーのバトンは俺から…ジャック、遊星に引き継がれる!その想いが架け橋となってあのダイダロスブリッジを繋ぐんだ!遊星!ジャック!頼んだぞ!!」

クロウは最後の希望を繋ぎなんとか地上絵のコースに落下する…しかし着地のショックにより投げ出されコースに叩きつけられてしまった…。

 

 

【フン、走れないDホイーラーにターンは回ってこない!何が伝説のDホイーラーだ!何が絆だ!!我はカードを伏せてターンエンド!】

ゴドウィンLP6900

 

「くっ…まだ絆は断ち切れてねぇぜ…!」

クロウLP1 (走行不能によりリタイア)

 

 

【(クロウ…お前の思い、確かに受け取った…!)】

 

「(遊海さん!準備完了です!戻って来てください!!)」

 

【(わかった!)…遊星!ジャック!任セルゾ!】

翠からの念話を受けた遊海は再び冥界の王のもとへと向かう!

 

 

「任せられるまでもない!クロウの思い…無駄にはせん!俺のターン!ドロー!!」

「『ダークスプロケッター』を召喚!そしてレベル4

の『マッドゴーレム』とレベル3『マジックホールゴーレム』にレベル1の『スプロケッター』をチューニング

!」

 

3+4+1=8

 

「王者の鼓動!今ここに列をなす!天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!我が魂!!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!!」

《グオオオ!!》

ジャックの魂たる悪魔竜が降臨する!

 

「さらに罠カード『ハーフ・ストレート』を発動!『レッドデーモンズ』の攻撃力を半分にする事でダイレクトアタックができる!!いけ!アブソリュート・パワーフォース!!」

レッドデーモンズが炎を拳に宿しゴドウィンに突撃する!

 

【甘いぞジャック!「インティ」の効果を発動!自身の攻撃力を半分にする!これにより『ハーフストレート』のもう一つの効果によりダイレクトアタックはできず、攻撃は「インティ」へと向かう!】

 

「まずい!『インティ』が破壊されれば効果でモンスターが破壊されてしまう…!永続罠『強制終了』を発動!!ジャック!オレのカードを使うんだ!!」

遊星は強制終了を発動させる、だが…

 

【ジャック・アトラス、君は何の為に戦う?運命を見極める為でも無い、神に抗う為でも無い…まして絆など…君にはどうでもいい事のはずだ…】

ゴドウィンが囁く、ジャックは一度は野望のために友を捨てた…そこに漬け込もうとしているのだ…

 

 

「ジャック!惑わされるな!『強制終了』の効果を使うんだ!」

 

【孤独にならねばキングにはなれない…それをお前は知っていた!】

 

「ゴドウィン!違うぞ!お前は孤独なんかじゃない!オレ達がいる!!」

 

【不動遊星!人は本来孤独なのだ!他人を頼り!甘え!責任を分散させる!そんな絆で運命に打ち勝つ事等出来はしない!…ジャック、お前もそうだっただろう!全てを捨て、孤独となる事でキングへと登りつめた!孤高のキングである事がお前の戦いなのだ!】

 

「…確かにそうだ、俺は孤独だった!俺は『強制終了』を発動しない!いけ!『レッドデーモンズ』!!」

 

「ジャック!?」

レッドデーモンズの拳が太陽を打ち砕く…しかし…

ゴドウィンLP6900→5400

 

【破壊された「インティ」の効果を発動!「レッドデーモンズ」を破壊し攻撃力の半分のダメージを与える!さらに墓地の「クイラ」を特殊召喚!!】

太陽龍の呪いがジャックのライフを削り、再びクイラが現れる!

 

「ぬぅおおお!!」

ジャックLP4000→2500

 

【フハハハ…!それでこそだジャック!仲間を捨て、絆にも頼らない…その孤高の精神は正にキングに相応しい…!しかしキングでは駄目だ、神にならねば…!神が!我が!この世界を救い上げるのだ!】

 

「ゴドウィン、貴様…忘れてはいないか?」

今まで沈黙していたジャックがゴドウィンに問いかける。

【なに…?】

 

 

 

「俺は…キングではない!!」

 

 

【なんだと…?】

 

「絆!仲間!確かに俺が捨てて来たものだ!そして俺はキングをも捨てる事になってしまった!…だが、全てを捨てた時!俺はちっぽけなたった一つのものを得た!その想いがあるからこそ、俺はここにいる!」

 

「ジャック…!」

その時、ジャックの脳裏にはあるシルエットが浮かぶ…それは…

 

「ゴトウィン!悪いが俺は孤高だが孤独ではない!興味など無かったが…気が付けばうるさい連中の真っ只中にいる!どんなに否定しようと、絆と言うものから逃れる事は出来ないらしい!!それをわからせてくれたのは…一人の女の愛だ!!」

ジャックの脳裏に浮かんだシルエット、それは…満面の笑顔を浮かべたカーリーの姿だった、彼女の愛は孤独だった男の心を確かに変えたのだ…!

 

「ゴドウィン!人はそう簡単には孤独にはなれんらしい!俺はカードを伏せてターンエンド!」

ジャックLP2500

 

 

 

【おのれ…!皆が皆その結論にたどり着く…!だからこそ我がこの高みに到達するしかなかったのだ!!】

 

 

「そんな事はない!オレ達の絆でそれを証明してみせる!!オレのターン!ドロー!」

「『ジャンクアーチャー』の効果を発動!再び『クイラ』を除外する!」

 

【させん!リバース罠「デストラクト・ポーション」!「クイラ」を破壊し攻撃力分ライフを回復する!そして再び墓地の「インティ」を特殊召喚!】

放たれた矢は空を切る…そして再び太陽が昇る…!

 

ゴドウィンLP5400→7900

 

「くっ…!ターンエンド!」

遊星LP4000

 

【これでなす術はなくなったな…!仲間?絆?伝説?愛?…そんな言葉で何が出来た!!少しでも運命に傷をつける事はできたのか!?運命は我らをあざ笑い変わる事はない!!だからこそ我は茨の道を進む!この神となる道を!!我に全てを託せ!我を崇めよ!…新しい世界を我が創造するのだ!!】

ゴドウィンは宣言する、運命を変えるために破壊を受け入れ、その礎となれと…その時…

 

 

ピカッ!! ズゴアアアン!!  バシャアアン!!

 

「「なにっ!?」」

冥界の王の方向から激しい閃光と爆発が起き、その直後ゴドウィン邸の周りの湖から水柱が立ち昇る…。

 

【フッ…冥界の王は決着をつけられたようだな…!もうすぐだ…冥界の王がこの祭壇に辿り着けばこの世界は黄泉に閉じる…!まずは破壊をもってゼロとする!フフフ…フハハハ!!】

 

「あ…ああ!そんな…遊海さん!!」

龍可達の位置からはそれが見えてしまった。水柱が収まりその原因があらわになる…水柱の爆心地、そこには右腕を失った遊海が力なく浮いていた…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

遊海Side

『遅いぞ遊海!悔しいが奴は強い!だがお前達ならなんとかできるんだろうな!?』

 

【ハイ…!海馬サンハ離レテイテクダサイ!イイナ…翠!】

 

「はい!いつでもいけます!」

 

【頼厶!!】

冥界の王と対峙する3人…遊海と翠は切り札を使おうとしていた。

 

 

「…我が身に宿すは創星の女神…命を生み出した原初の神…!遥かなる眠りから目覚め私に力を与え給え!」

詠唱と共に翠の姿が変わる…髪は赤く染まり服は露出の高い物に変化する、背中には光と闇の翼が生え…右手には創造の力を、左手には破壊の力を宿した石が浮かんでいる。

これこそはDT世界の創星神「Sopia」の力を宿す戦闘衣装…翠の切り札である。

 

【イクゾ翠…!我ニ宿リシ破壊神ノ残滓ヨ…ソノ力ヲ解キ放チ…冥界ノ邪神ヲ滅セヨ!!『ドラグニティの神槍』ヲ発動!!】 

 

遊海の右腕にドラグニティの竜達の力が宿った槍が顕現する…そして

 

「【聖邪の神撃!!】」

空気を踏みしめた二人は遊海に残った破壊神の残滓、そして翠の創星神の力を宿した神殺しの槍を放ち、それは冥界の王に迫る…そして…

 

ズゴアアアン!!

 

槍は冥界の王に直撃…周囲は爆煙に包まれる…。

 

 

「ハァ…ハァ…やったか…?うぐっ…!」 

 

「遊海さん!」

悪魔化が解除され落下しかけた遊海を翠が受け止める、遊海の身体は冷めきっていた…。

 

 

「…身体中ボロボロだ…足の感覚が無いし頭がフラフラする…死にかけだなこりゃ…」

 

「だから無理をしないでってあれほど言ったのに…遊海さんの馬鹿…!」

 

「ああ…俺は、馬鹿だよ…しばらく無理は懲り懲りだ…(今のは今の俺達の最高攻撃力の攻撃だ、倒しきるのは無理だが…奴は無事ではないはず…)」

遊海は翠に身体を預けながら考える、冥界の王はこれでは倒せていないが大ダメージを与えられたはずだと。

 

『凄まじい威力だ…あれが海上でなければいったいどれほどの被害を…遊海!!!』

 

「ッ!?翠!避けろ!!」ドンッ!

 

「えっ…遊海さ…!」

 

バシュン!!

翠は遊海に押されよろめく…その瞬間、遊海の姿は紅蓮の炎に掻き消えた…

 

〔オオオオオオ!!!〕

煙が晴れる…そこには五体満足の冥界の王が存在していた。

 

「そんな…遊海さん!!」

翠は慌てて遊海の飛ばされた方向へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!しっかりして遊海さん!」

 

「(…翠の声が聞こえる…俺…どうしたんだっけ…?)」

意識が覚醒する、目は開かず身体はまったく動かない…この感覚はアレだ…初めて死んだ時の感覚に似てる、目覚めたはずの意識が遠のいていく…身体が冷めていく…おかしいな…俺、デュエル以外では死なないはずなのに…ここまでか……。

 

そこまでで遊海の意識は完全に失われた。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!しっかりして遊海さん!!」

 

「そんな…遊海が…死…」

 

「死んじゃいねぇ!起きろ!目ぇ覚ませ!遊海!!」

ギャラリー組は悲しみに包まれていた、翠により助け出された遊海だったがその胸は命の鼓動を失っていた。

牛尾はすぐさま心臓マッサージを始める、彼は信じているからだ…遊海の生命力を…。

 

「お前達!コイツに呼びかけ続けろ!コイツを呼び戻すんだ!!」

 

「遊海さん!起きて!アテムさんとの約束はどうするんですか!!」

 

「遊海!またヒーローの話を聞かせてくれるんじゃなかったの!?起きて!おきてよぉ!!」

 

「遊海さん…!お願い目を覚まして…!!」 

 

「遊海さん!貴方はこんなところで死んでいい人ではないわ!起きて!!」

 

翠は回復魔法を使いながら、龍亞達は必死に呼びかける…伝説の「決闘王」の復活を信じて…。

 

 

 

 

【フハハハ…!伝説の決闘者といえどこの程度か!さぁ残すはお前達だけだ!遊星!ジャック!お前達ま冥界の王の生贄になるがいい!我のターン!ドロー!】

 

「遊海の思いは無駄にはせん!永続罠『デモンズチェーン』を発動!『インティ』の効果を無効にし攻撃を封印する!」

紫色の鎖がインティを拘束する…しかし

 

【フッ、ジャック・アトラス、貴様言ったな『どれほどのものを捨てようと人は孤独にはなれない』と…だがそれは違う!人は簡単に孤独になれる…それは死だ!人は死を前にした時、自分には仲間や絆など無かったと気付かされる!極々当たり前の事だ!死出の旅は己一人なのだからなぁ…!もう一度かつてのジャック・アトラスに戻してやろう!死をも目前にした絶望的な孤独へ!「ウィコラチャラスカ」の効果発動!ポーラスターオベイ!!】

地縛神の効果が発動しジャックのライフが1になる

 

「ぐおぉぉ!!まだだ!まだ俺は負けてはいない!!」

ジャックLP2500→1

 

ジャックは一瞬バランスを崩すが、すぐに立て直す、それがジャックが一流のDホイーラーたる証だった。

 

 

【今のを耐えるか…しかしお前のライフが1となった事で「デモンズチェーン」は破壊される!】 

インティに巻き付いていた鎖が砕け散る…アニメ版のデモンズチェーンには「自身のライフが1000以下の時、このカードを破壊する」デメリットがあった。

 

【そして…偉大なる冥界の王よ!ジャック・アトラスを生贄に捧げよう!その魂を喰らうがいい!】

 

「なんだって!!」

ゴドウィンの言葉を受けた王は炎を口へと溜める…!

 

【どうだジャック!感じるか?死を!絶望を!!】

 

「フッ…絶望的な孤独など感じぬ!何故なら俺達は死を目前になどしないからだ!」

 

【減らず口を!死ぬがいい!ジャック!!】

 

〔オオオ…!〕バシュン!

冥界の王による超遠距離射撃…それはジャックへと直撃した…

 

「ぐおおあああ!!!…ガハッ…!」

炎の直撃を受けたジャックは盛大にクラッシュ…地面へと叩きつけられた…

 

「ジャック!ジャァァック!!」

 

「遊星…後は任せたぞ…!たとえ走れなくとも、その思いはお前と共にある…!」

 

「そうだぜ…たとえライフは1でもよぉ…オレ達の想いは10000ポイントだ…!!」

ジャックとクロウは遊星に最後の希望を託した…そして

 

「みんなの想い…受け取った!!ゴドウィン!お前を倒す!!」

想いを受け取った遊星はゴドウィンを睨みつける…その瞳に絶望は無い…!

 

【フッ…死を前に少しでも恐怖を誤魔化しているな…面白い!その虚勢を砕いてやろう!我はカードを伏せてターンエンド!】

ゴドウィンLP7900

 

ジャックLP1 (走行不能・リタイア)

 

 

 

「覚悟しろゴドウィン!オレ達の絆で…奇跡を起こす!」

 

 

そして世界を懸けたデュエルは決着へと向かう…!



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最終決戦!・急〜希望の未来へ〜

こんにちは!S.Kです!ダークシグナー編決着回となります!遊星達の戦いがどのような結末を迎えるのか…どうぞお楽しみに!

それでは最新話をどうぞ!


状況

クロウLP1 (走行不可)

ジャックLP1(走行不可)

遊星LP4000

ゴドウィンLP7900

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「『ジャンクアーチャー』の効果発動!『インティ』を除外する!」

 

【もうその手は効かん!カウンター罠「バイ・マーゼの癇癪」を発動!モンスター効果の発動を無効にし破壊する!】

仲間達の想いを受け取った遊星は一人でゴドウィンに挑む、しかし遂に遊星の場を守ってきたジャンクアーチャーが倒されてしまう…!

 

「くっ…『シールドウォリアー』を召喚!…カードを伏せてターンエンド!」

遊星LP4000

 

 

 

【フン、想いを受け取っただと?その答えがその守備モンスターを召喚する事か?笑わせる!地縛神の前に防御など無意味だ!…我のターン!】

【「ウィコラチャラスカ」の効果発動!バトルフェイズをスキップし…遊星!貴様のライフを1にする!遊星!貴様も味わうがいい!絶望と孤独を!!】

ウィコラチャラスカのブレスが遊星に直撃する!

 

「「遊星!!」」

 

遊星LP4000→1

 

 

「まだだ…!!」

爆発の中から遊星が飛び出す…!

 

【しぶとい奴め…だがお前達のライフは3人合わせても3!味わうがいい!この究極の絶望を…!!】

 

「ッ…!まだだ…まだオレは屈しない…希望がある限り、決して絶望しない!そして…その希望を支えるのは仲間達の絆…クロウが!ジャックが!遊海さんが!皆が繋いだ絆だ!!」

遊星の瞳に絶望の色は無い、彼に仲間達がいる限り…その心は折れる事はない…!

 

【まだ世迷い事を…!だが次のターンで我の勝ちだ!ターンエンド!】

ゴドウィンLP7900

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「『Spーエンジェルバトン』を発動!カードを2枚ドロー!そして1枚捨てる!…いくぞゴドウィン!オレ達の希望の力を見せてやる!来い『デブリ・ドラゴン』!」

遊星の場にミニチュアのスターダストドラゴンが現れる、そしてこのモンスターが全ての絆を繋ぐ希望となる!

 

「『デブリドラゴン』の効果を発動!墓地の『ロードランナー』を特殊召喚!…いくぞ!オレはレベル3の『シールドウォリアー』とレベル1の『ロードランナー』にレベル4の『デブリドラゴン』をチューニング!!」

 

3+1+4=8

 

「集いし願いが!新たに輝く星となる!シンクロ召喚!!飛翔せよ!『スターダスト・ドラゴン』!!」

星の輝きを纏い希望の竜が降臨する!

 

【来たか「スターダストドラゴン」…だが希望もそこまでだ!そのドラゴンでは攻撃力が足りん!我が『インティ』を倒す事は不可能だ!】

 

「まだだ!仲間との絆が希望を繋ぐ!」

 

【なんだと…?】

 

「バトルだ!『スターダスト』で『インティ』を攻撃!」

 

【なに…!攻撃力の低いモンスターで攻撃だと!】

 

「さらにクロウの場の永続罠『BFーアンカー』の効果を発動!このカードを墓地に送り!『スターダスト』の攻撃力をこのカードの発動時にリリースした『アーマードウィング』の攻撃力分…2500ポイントアップする!!響け!シューティングソニック!!」

スターダストにアーマードウィングの力が宿り太陽龍を打ち砕く!

 

【なんだと!?ぐおおおお…!】

ゴドウィンLP7900→5900

 

【だが…『インティ』の効果を発動!自身を破壊したモンスターを破壊しその攻撃力の半分のダメージを与える!】

 

「『スターダスト』の効果はその上をいく!自身をリリースする事で破壊効果を無効にしそのカードを破壊する!ヴィクテムサンクチュアリ!!」

スターダストがその身を盾にインティの呪いを跳ね返す!

 

【ぬぅ…!だが「インティ」の効果で墓地の「クイラ」を特殊召喚する!陽は沈み、月が浮かぶ…そして再び陽は昇る!この自然の摂理は止める事はできん!!】

 

「…それはどうかな?」

 

【なに…!】

遊星は不敵な表情で笑う

 

「へへっ…!絆が繋がったぜ…!」

 

「遊星!奴に見せてやれ…!!」

 

「永続罠『覇者の席巻』を発動!このカードを墓地に送りモンスターの特殊召喚を無効にする事ができる!」

 

【そのカードはジャックの…!】

クロウからジャック、そして遊星に繋がった絆のリレー…それは今ここに実を結ぶ!

 

「オレはこれでターンエンド!そしてエンドフェイズに『スターダスト』は復活する!」

遊星のフィールドに再びスターダストが舞い戻る!

遊星LP1

 

 

 

「ゴドウィン!この絆がある限り…オレ達は孤独じゃない!絶望など訪れはしない!お前にもわかっている筈だ!」

 

【何を言っている!完全なる孤独!完璧な絶望!我はその果てに辿り着いたのだ!!人を超越した存在…神に成らねば世界をリセットする事は出来ぬと!!】

 

「だったらお前は兄・ルドガーも忘れたというのか!?お前はかつて運命に抗い、ダイダロス・ブリッジを作った!!それは兄であるルドガーの意思を引き継ごうというお前の想いだったんじゃないのか!!」

 

ゼロ・リバースから逃れたゴドウィンはサテライトとシティを繋ぐ橋を作ろうとした…一人で始めた作業はいつしかたくさんの人達の希望となった、その時ルドガーは確かに「運命」に抗ったのだ。

 

 

【それが…それがどうだというのだ!!】

ゴドウィンは怒りをあらわにする、その表情に先程までの余裕は無い

 

【現実を見ろ!貴様のライフは僅か1!そして冥界の王はそこまで来ている!!残りの2人がライディングに戻れぬ以上貴様のライフが尽きれば我の勝利となる!!我のターン!!「ウィコラチャラスカ」で遊星にダイレクトアタック!デス・シンギュラリティ!!】

ウィコラチャラスカがその巨体で遊星に迫る…!!

 

「遊星!!今だ!お前のカードを使え!!」

 

「ジャック!?まさかお前…だからこのカードを使わずに!?」

ジャックの叫びが遊星に届く、それは遊星にあるカードを温存させる為にジャックがあえて使わなかったカード…それは…!

 

「ゴドウィン!仲間達との絆がオレの最大の武器だ!『強制終了』の効果を発動!このカードをリリースしバトルフェイズを終了する!!」

白いバリアが遊星を包みウィコラチャラスカは上昇する…仲間達の想いが遊星の窮地を救ったのだ!

 

【ぬぅ…!ならば罠カード「メテオ・プロミネンス」を発動!手札を2枚墓地に送り2000ダメージを与える!】

 

「断ち切らせはしない!罠カード『ジョイントフューチャー』発動!手札を1枚墓地に送りその発動を無効にする!さらにその効果を受けたカードはデッキに戻る!!」

 

【なんだと!?】

罠カードの戦い…それを征したのは遊星だった。

 

 

「ゴドウィン!お前は神になど成りたい訳じゃないんだろ!?兄を忘れる事なんて…お前には出来ないはずだ!!」

 

【ふっ…ふざけるなぁぁ!!!兄を…兄を越えねば神には成れぬのだぁぁ!冥界の王よ!!不動 遊星を生贄に捧げる!!この世界を破壊したまえ!!!】

 

「なんだと!?」

 

〔オオオ…!〕

 

「「遊星!!」」

ゴドウィンは苦し紛れに冥界の王の力で遊星を倒そうとする…!

 

【絆など…絆など私には不要なのだぁぁ!!】

 

〔オオオ!!〕バシュン!!

冥界の王の火炎が遊星へと迫る…!

 

「くっ…!オレは負けない!必ずこの炎に耐えてみせる!!」

遊星はグリップを握り込む…必ずこの炎に耐えゴドウィンを救ってみせると、そして炎が迫り…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の想い、確かに受け取った…俺も手を貸そう!進め!不動 遊星!!」

 

その時、遊星の後ろで金色の光が弾けた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideギャラリー

 

 

「ハァ…ハァ…なんとか息は吹き返したか…!」

牛尾が額の汗を拭う…遊海は牛尾と翠の尽力により息を吹き返したが、意識は戻っていなかった…。

 

「遊星!頑張って!」

彼らの頭上ではジャックが倒れ遊星がスターダストドラゴンを召喚している…龍亞や狭霧はその様子を見守っている。

 

 

 

「翠さん…わたし、悔しいよ…!遊星やジャックが頑張ってるのにわたしは見てる事しかできないの…?」

 

「龍可ちゃん…ううん!そんな事ないわ!あなたは自分のできる事をやったわ、ダークシグナーを倒して精霊界を救ってくれた…普通の女の子ではできない事よ?」

翠は悔し涙を流す龍可を慰める。

 

「翠さん…でもわたし一人じゃ無理だった、遊海さんと十代さんが手助けしてくれたからできたの…」

 

「龍可ちゃん…」

 

 

 

【「ウィコラチャラスカ」でダイレクトアタック!!】

 

「『強制終了』を発動!!」

 

デュエルは進んでいく…そして

 

【冥界の王よ!不動 遊星を生贄に捧げる!この世界を破壊したまえ!】

 

 

 

「っ…まずいわ!ダメージを受けてる遊星君じゃ…冥界の王の攻撃に耐えられない!!」

 

「なんだと!?くそっ…あのデカブツを止める方法は無いのか!?」

追い詰められたゴドウィンが冥界の王の力を使おうとする…冥界の王までの距離はここから2Kmほど先、防ぐ方法が無い…!

 

 

「アキ姉ちゃん!翠さん!2人のモンスターの力でなんとかならないの!?」

 

「無理だわ…冥界の王は『神』クラスの攻撃じゃなきゃ止まらない…それに力を使える遊海さんも…」

翠は視線を落とす、そこでは腕を失った遊海が眠り続けている…。

 

「オイ、遊海ならこの状況なんとかできるんだろ

!?なら早く叩き起こさねぇと…!」

 

「牛尾さん…どっちにしても無理なんです!今の()()()()()()()()()()()()()じゃ…!」

 

「…弱くなった?確かに遊海さんは写真の姿と違うけど…どういう事なの?」

牛尾と翠の会話にアキが割り込む

 

「遊海さんは17年前、ゼロ・リバースから自分の身体を盾にたくさんの人々を救ったの…その時、モーメントから漏れ出した『マイナスエネルギー』に汚染されて弱くなってしまったの、具体的にいえば10分の1くらいまで…」

 

「地縛神の攻撃を受け止められるのに…あれで10分の1だと!?」

 

「ええ…だから今の遊海さんじゃどちらにしても…!」

 

 

「マイナスエネルギー…あれ…?」

 

「龍可?どうしたの?」

 

「ちょっと待って…!何か思い出しそうなの…!」

『マイナスエネルギー』…龍可は今日、その言葉を耳にしている…そして龍可の脳裏に電流が走る…!

 

 

 

『ゼーマン一味の操る「マイナスエネルギー」は時間すら巻き戻してしまうんじゃよ』

 

『マイナスエネルギーでレグルス様は中途半端にマイナスに…!?』

 

『プラス×マイナスじゃマイナスになるけど…マイナス×マイナスはプラスになるだろ?』

 

『龍可!元の世界に戻ったらそれを先生に渡してくれ!あの人絶対にボロボロになってるから!それで()()できる!』

 

カンコーン!

 

龍可の頭に駆け巡った今日の出来事…それは一つの答えと共に一つに繋がった!

 

 

 

「翠さん!これを遊海さんに使って!!」

 

「龍可ちゃん!?このカードは…あっ!?」

龍可がポケットから取り出した1枚のカード、それは翠の手に渡ると輝きを放ち実体化する…その正体は…。

 

「あ〜っ!?それ『カースドニードル』じゃん!!龍可!それどうしたの!?」

 

翠の手に握られていた物、それは龍亞と戦ったディマクの使っていたモンスター『マジシャンズエイプ』の持っていた杖…カースドニードルだった、精霊界で猛威を振るったその杖には大量のマイナスエネルギーが込められており時間すら巻き戻してしまうほどの力を持っていた。

 

「精霊界で会った十代さんがわたしに託してくれたの!『ボロボロの遊海さんを治療できる』って!」

 

「十代君…!あなたって子は…!」

 

 

〔オオオ…!〕

 

「時間がないわ!みんな!離れてて!!」

 

「うん!」

翠は針をマイナスへと向ける…そして…!

 

「お願い遊海さん…!遊星君を助けて!!」

 

ブスッ!

 

翠は遊海の心臓に杖を突き立てる…そして光が視界を埋め尽くした…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

Side遊海@???

 

 

 

 

…落ちる…落ちる…墜ちる…どこまで落ちるかわからないほど墜ちていく、落ちるほどに自分を形作っていた何かが削げ落ちていく…。

 

 

 

遊海はひたすらに落ちていた…いや、落ちているのか昇っているのかもわからない…。

 

 

 

…意識が薄れていく、思い出が、記憶が曖昧になっていく…眠い…そうだ、寝てしまおう…僕は…私は…俺は…酷く疲れている…、少し休めば何か…。

 

 

《マ…!目…覚…!》

 

…何か聞こえてくる…。

 

 

《マスター…!気をしっかり持っください…!このままでは…!》

 

…誰だろうこの声は…、まるで機械音声のような声だ…

 

《マスター!?もしかして私の事忘れてませんか!?しっかりしてください!遊星さんも翠も戦っています!マスターの力を必要としているんです!!》

 

…戦っている…?私は…何の為に…?

 

 

 

『忘れたのか?自分なりのハッピーエンドを目指していくって…約束しただろう?』

 

 

「あっ…」

その声が耳に届いた時、凄まじい記憶の波がオレに襲いかかる。

 

 

死と転生

 

親友との出会い

 

愛する者との出会い

 

激しい戦い

 

世界の闇との戦い…俺達の紡いできた物語が蘇る…!

 

 

 

『お前はこんなところで死ぬ奴じゃないだろう…白波 遊海?』

 

「ああ…すまない、少し寝惚けてたみたいだ…ありがとう…アテム!彩華!」

 

 

パリーン!

 

 

その瞬間、景色が一変する、黒い空間は砕き割れ…白い空間へと変わる、そこで十数年振りに2人の決闘者は顔を合わせる…。

 

 

 

「アテム…久しぶりだな…」

 

『ああ、まずは謝らなくてはならないな遊海、ゾークが冥界から抜け出したのはオレ達のミスだ…すまなかった』

 

「いいんだアテム、奴は再び倒した…それでいいじゃないか」

 

『ああ…だが現実世界はそうはいかない、「冥界の王」を名乗る邪神はダークシグナー?の力を吸収し力を増している…つまりお前の知る奴よりも強くなってしまっているという事だ…!』

 

「…どおりで俺達の『神撃』が効かない訳だ…最強クラスの邪神2体分のエネルギーなら防がれて当然だ…」

アニメでもそんな描写はあった、ゴドウィンを倒した遊星は冥界の王へと突撃する、その刹那不思議な空間でゴドウィンと話す展開があった…あれは邪神の中だったのか。

 

『遊海…遊星を頼む、時代に選ばれた決闘者を…!』

 

「…無理だ、今の俺には力が無い…!フレアも…アヤカも実体化させる事が出来ないんだ…!」

 

『心配するな…オレも力を貸す、それに…お前の仲間達を…紡いできた絆を信じるんだ!さぁ…目覚めろ!オレの跡を継いだ()()()よ!!』

アテムの言葉と共に空間に黄金の光が溢れる…そして

 

 

…お願い遊海さん!遊星君を…助けて!…

 

 

「翠!!」

翠の声が…皆の焦りが聞こえてくる…!

 

『いけ!遊海!!』

 

「ああ…今いくぜ…みんな!!」

そして俺は黄金の光に手を伸ばした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海@現実世界

 

光と共に目が覚める…それと共に身体に違和感を感じる

 

「…身体が軽い…!おっと…!?」

浮いていたらしい俺は地面へと着地する、そして目の前には驚いている翠や龍亞達の姿があった。

 

 

「遊海…さん…?!その姿は…!?」

 

「おはよう翠、少し寝すぎたらしい…どうした?」

俺は自分の姿を確認する、その姿はさっきまでのボロボロの服では無く、俺のトレードマークである赤帽子・赤ジャケットの姿へと変わっていた。

 

《マスター!報告します!龍可の持っていた「カースドニードル」によりマイナスエネルギーの浄化に成功しました!能力が完全に回復しています!!》

 

「そうか…だからか、こんなに身体が軽いのは…!」

身体に漲るエネルギー、軽くなった身体、息をしても苦しく無い呼吸…間違いない…力が戻って来た…!

 

 

「これが…伝説の決闘者の本当の姿なの…!?」

 

「かっこいい…!」

アキと龍亞が何やら驚いているが…後で聞こう…。

 

「遊海さん!冥界の王が遊星君に攻撃を!!」

 

「っ…わかった!…フレア!力を貸してくれ!!」

 

《わかりました!太陽の加護を貴方に!!》

 

「いくぞ!精霊変身!」

遊星のもとに跳躍しつつ金色の鎧…太陽神の鎧を纏う!

 

 

 

「オレは負けない!必ずこの炎に耐えてみせる!!」

 

「お前の想い、確かに受け取った…俺も手を貸そう!進め!不動 遊星!!」

その刹那、遊星に迫る炎…それを俺は手刀で切り裂いた。

 

 

 

 

 

「っ…遊海…さん…?」

 

【貴様…!何者だ!】

遊星もゴドウィンも驚きをあらわにする、…当然か、こんな金ピカが急に出てきたらそれは驚くよな…ならば名乗ろう…俺の名を!

 

 

「俺は…『決闘王』の名を継ぐ者!白波 遊海!5000年に渡る光と闇の戦いに決着をつける者だ!!」

 

【5000年の戦いに決着をつけるだと!?戯言を…!】

 

「嘘じゃないさ!レクス・ゴドウィン!俺にはその力がある!!」

俺はカードケースから3枚のカードを取り出す、その力で…闇を滅する…!

 

「我が友の下僕たる『神』よ!3000年の時を越え!その姿を現せ!!いでよ!『オシリスの天空竜』!『オベリスクの巨神兵』!『ラーの翼神竜』!!」

 

【なんだと!?】

その瞬間、シティを覆っていた暗雲が吹き飛び星空が現れる。

 

そして地平線の彼方から天空神・オシリスが

 

海を割りその大地から大地神・オベリスクが

 

そして夜空を昼間のように照らしながら太陽神・ラーが顕現する!

 

「三幻神!降臨!!」 

古代エジプトから3000年の時を超えてデュエルモンスターズの原初の神がその姿を現した!

 

 

 

       三幻神降臨

 

 

 

【なんだと…!?三幻神のカードはエジプトの地中深く封印されているはずだ!!】

 

「フッ、俺にはファラオの親友がいてね!…遊星!ゴドウィンは任せたぞ!!」

 

「はい!!」

 

そして俺は冥界の王へと再び突撃した。

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

「あれが伝説の決闘者『赤帽子』の真の力か…!オレも負けてはいられない!…ゴドウィン!!」

 

【なんだ!!】

遊海の姿を見届けた遊星はゴドウィンへと話しかける。

 

「さっきは途中になってしまったがお前に伝えたい!…お前の中にはには忘れる事の出来ないものがある!誰にも断ち切れないものが…!それぞれの心の中に!」

その時、遊星の脳裏には冥界で出会った父の姿…そして写真でしか見た事の無い母の姿が浮かんでいた。

 

「ゴドウィン!お前の中にルドガーはいるはずだ!お前は神になって運命を超えようとしてるんじゃない!ルドガーと一緒に運命に抗おうとしているんだ!!…それこそが絆というものじゃないのか!!」

 

『…レクス…』

 

【っ…!?】

遊星の言葉と同時、ゴドウィンの後ろにルドガーの幻影が現れる…彼は数回首を横に振り消えていった…。

 

【兄さん…ぐぅっ!?これは…!】

ルドガーを見送ったゴドウィンの胸に鈍い痛みが走り、赤き竜の痣が光を放つ…それと同じくして遊星のデッキトップが輝きを放つ!

 

「これは…!」

 

【な…なんだと…赤き竜の痣が!!】

ゴドウィンの胸に浮かんでいた赤き竜の痣が消えていく…それと同じくしてシグナー達に痣が戻って行く、さらに変化は続く…

 

「っ…これは…!ドラゴンヘッドの痣がオレに!?」

 

「オレにシグナーの痣が…!」

遊星に宿っていたドラゴンテールの痣がクロウに宿り、ルドガーの腕に宿っていたシグナーのリーダーたる証・ドラゴンヘッドが遊星に宿る!

 

【何故だ…!赤き竜は神たる我を選んだのではなかったかぁぁぁ!!?】

シグナーの痣を失いダークシグナーとなったゴドウィンは雄叫びをあげる…ここで神を目指し、運命を超えようとした男の野望は潰えたのだ。

 

「ゴドウィン!赤き竜はオレ達の絆を選んだんだ!オレ達の絆が運命を超えていく!!」

遊星の背中に再び痣が集い、完成する!

 

 

 

「いくぞ!!オレのタァァン!!!」

遊星は希望をドローする、それこそは赤き竜の奇跡!

 

「『スターダスト』がフィールドに存在する時!墓地に眠る『スターダスト・シャオロン』は特殊召喚できる!さらに『救世竜セイヴァー・ドラゴン』を召喚!」

遊星のフィールドに東洋風の小さな龍と赤き竜の化身たる竜が現れる! 

 

「オレはレベル8の『スターダストドラゴン』とレベル1の『シャオロン』にレベル1『セイヴァードラゴン』をチューニング!!」

 

8+1+1=10

 

「集いし星の輝きが新たな奇跡を照らし出す!光さす道となれ!!シンクロ召喚!光来せよ!!『セイヴァー・スター・ドラゴン』!!」

遊星の場に世界を救う救世の竜が降臨する…さらに…!

 

 

「なんだこれ…暖かい光が空に昇っていく…!」

 

「綺麗…!」

 

「この光は…遊海さん…まさか…!!」

 

大地から暖かい光が空へと昇る…それは1箇所に集い人型を成す…冥界の王の目の前に大いなる女神が降臨する!

 

「光の創造神…ホルアクティ…!」

 

 

「遊海さんの力か…!…あれは…?」

セイヴァースターと同化しながら顕現した女神を見る遊星…その目は空に浮かんでいる遊海の隣に人影を見たような気がした…。

 

 

「考えるのは後だ!『セイヴァースター』の効果を発動!『ウィコラチャラスカ』の効果を無効にする!」 

 

【なんだと!?】

 

「さらに罠カード『シンクロバトン』を発動!自分の墓地に存在するシンクロモンスターの数につき600ポイント攻撃力をアップする!墓地に存在するのは4体!…仲間の絆が今ここに集結する!!」

セイヴァースターに仲間達の力が集まっていく…その攻撃力は6200…そしてゴドウィンのライフは5900!

 

「『セイヴァースター』で『地縛神Wiraqocha Rasca』を攻撃!シューティング・ブラスター・ソニック!!」

 

 

ジェセル(光創生)

 

 

【あっ…白波 遊海…不動 遊星…!】

シューティングスターが光を纏いウィコラチャラスカを貫通する…そしてウィコラチャラスカは爆散した!

 

【うわああああああ!!!】

 

ゴドウィンLP0

 

遊星&クロウ&ジャック WIN!!

 

 

 

「遊星!冥界の王にトドメをさせ!!!」

 

「遊海さん!うおおお!!」

 

《キュオオォォン!》

地縛神を貫いたシューティングスターはさらに赤き竜の力を纏い、光でひび割れながら苦しむ冥界の王へと突撃…その身体を貫いた…。

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「さぁ…頼むぜ!フレア!オベリスク!オシリス!」

 

《わかりました!いきますよ2人共!!》

 

《ギュアアアン!!》

 

《グオオオ!!》

 

遊海の号令のもと三幻神が冥界の王を攻撃する、オシリスのサンダーフォース、オベリスクのゴッドハンド・インパクト、ラーのゴッド・フェニックスが直撃し冥界の王は大きく後退する!

 

〔オオオ…ファ…ラオ…!!〕

 

「くっ…!堅い!しかも少しアイツの意思が混じってるな…!?これは…!」

遊海の右腕に熱が宿る…そして再び炎の痣が腕に刻まれる…!

 

「赤き竜…!信じてたぜ!」

《ギュアン?》

「違う、お前じゃない…ん?あれは…?」

 

サテライトの方角から金色の光が飛び出し遊海に直撃する…!

 

 

「っっ…!!…来たかアテム…!」

 

『待たせたな遊海…さぁいくぞ!!』

 

「ああ、俺達が揃えばできない事は無い!!」

遊海の隣に立ったアテムと遊海はお互いに手を掴み、その祝詞を紡ぐ 

 

『ファラオの名の元に…三幻神を束ねん!!』

 

「汝、光を生む者…悪しき闇を祓う希望の光!」

2人の言葉と共に三幻神が輝き、大地から祝福の光が集い形を成していく…!

 

「「光臨せよ!『光の創造神 ホルアクティ』!!」」

 

〔ホルアク…ティ…〕

 

ー……!ー

2人の願いに応え大地母神たる光の神が顕現する!

 

《キュオオオン!!》

 

「『セイヴァースター』…!アテム!頼む!!」

 

『ああ!闇よ!消え失せろ!!』

 

ジェセル(光創生)

 

〔オオ…オオオオオ!?!?〕

冥界の王の身体を閃光が包む…光の神による裁きが冥界の王の身体を砕いていく…!

 

「よし…これなら…!」

 

【うわあああ!!!】

背後からゴドウィンの断末魔が響く…!

 

 

「向こうも勝ったみたいだ…!遊星!冥界の王にトドメをさせ!!」

 

《キュオオォォン!!》

遊海の呼びかけに答えるようにセイヴァースターが突撃…赤き竜と化しながら冥界の王に突撃…その身を貫いた。

 

Sideout

 

 

Side遊星@???

 

 

「…ここは…っ!鬼柳…ボマー…!」

遊星はふと目を覚ます、眼前に広がるのは宇宙空間のような世界…そこにはダークシグナーとなっていた5人が倒れていた…。

 

『…』

 

「ゴドウィン…ルドガー…」

遊星の前に元に戻ったレクスとルドガーが現れる、その顔は憑き物が落ちたかのように穏やかだった…。

 

『兄さん…どうやら私達は回り道をしてしまったようですね…』

 

「レクス…」

兄弟2人は顔を見合わせる

 

『不動 遊星、君がいなければ気づく事さえなかっただろう…』

 

「ゴドウィン…!」

 

『この運命に立ち向かう手段…それは人間の…仲間の絆…、ずっと…私の中にあったものなのに…』

ゴドウィンは少し後悔するように俯く

 

『遊星…彼らを頼む、彼らはじきに蘇る…』

 

「えっ…!」

レクスはダークシグナーだった彼らを見る、邪神の被害者である彼らは蘇るのだ…

 

『決着を着けよう…この因縁に…!我ら兄弟の「絆」で…!』

 

「うむ…行こう…!」

その時、ゴドウィン兄弟の後ろに光が現れる、そしてゴドウィン兄弟はその光に向かい歩んでいく…

 

「ま『待て、レクス・ゴドウィン、ルドガー・ゴドウィン』」

 

「『「!?」』」

生と死の間の世界…そこに遊星とゴドウィン達以外の声が響く…その声は2人が歩もうとした光の中から聞こえてくる…!

 

ポーン

 

『お前達の抱える5000年の因縁は既に清算された、お前達が償う必要は無い…!』

黄金の光を纏い一人の人物が光の中から歩み出る…それは特徴的な髪型をして胸から金色の三角錐を掛けた男だった…。

 

「貴方は…あの時の…!」

 

『決闘王に宿りし…「名もなきファラオ」…!』

 

『冥界の王を名乗る邪神は完全に打ち倒した…この悲しい因縁が巡る事は無い…』

 

『しかし…私達兄弟は罪を犯した…それは償わねばならない…』

 

『ならば…オレからお前達に「罰」を与える…』

 

「『!?』」

 

『お前達への罰…それは「犯した罪を現世で償う事」だ!…お前達の犯した罪の分、現世で善を為し人々を救え!それを以て一連の出来事の償いとする!』

 

『…名もなきファラオよ…確かに罰を承りました…!』

 

『ならば往くがいい!お前達の為す事は全て見ているぞ!!』

アテムの宣言の瞬間、ゴドウィン兄弟の身体が粒子になっていく…

 

『少々格好がつきませんが…私達は贖罪をしなければならないようです…不動 遊星、いつかまた会いましょう』

 

「遊星…お前達のいく道に光があらん事を、そして…『イリアステル』に気をつけろ…」

 

「ゴドウィン!ルドガー!」

そして2人は粒子となり消え去った…。

 

 

 

『不動 遊星…見事だった、お前は立派な決闘者だ…お前の父も喜んでいたぞ』

 

「名も無きファラオ…」 

 

『さて…オレもコイツを連れて冥界に戻るとしよう…マハード!』

 

《ハッ!》

アテムの後ろにマハードが現れる、彼は鎖でバクラを拘束し担ぐ

 

『ゾークを逃してしまったのはオレの責任だ…コイツは冥界に厳重に封印する…不動 遊星!』

 

「はい…!」

 

『いつか…共にデュエルをしよう、それまで遊海を頼む…無茶ばかりする我が友を…さらばだ!』  

アテムは振り返り光の中を進んでいく…そして遊星の視界も光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおお!!」

セイヴァースターが邪神を貫通し女神と並び立つ…そして…

 

〔グオ…オオオ…!!!〕

 

ズゴアアアン!!

 

邪神は光の爆発と共に木っ端微塵に砕け散る…ここに5000年に渡る死者との戦いは終焉を迎えたのだ…そして忘れてはならない事が一つある、それはゴドウィン戦が()()で行われていた事…つまり…

 

「うわっ!?」

 

「うおっ!」

 

「「「あっ!?」」」

 

「アトラス様!!」

 

「クロウ!!」

力を失い地上絵が消え去る…それと共に行動不能のジャックとクロウが落下する!

 

「ジャック!クロウ!!」

遊星はすぐさま2人とDホイールを回収する…そしてセイヴァースターの飛んだ軌跡が光となってシティへと降りそそいだ…。

 

Sideout

 

 

Side遊海

 

 

「…終わったな、とりあえず…、ありがとうアテム、お前のおかげで助かった」

 

『いや、オレ達はお前の手助けをしただけだ…遊海、お前と共に戦う事ができてよかった』

 

「それは…こっちのセリフだよ親友!…ありがとう…!」

 

ーアテム、間もなく時が来ます…戻りましょう…ー

 

「ホルアクティ、貴方にも感謝を…人間である俺に力を貸してくれありがとうございます…!」

 

ーよいのです遊海、貴方と仲間達の歩んで来た道すじ…とても良いものでした…これからも励みなさい、アテムと共に見守っています…さらばですー

そう言うとホルアクティは一足先に消えていった…そして彼女を構成していた三幻神のカードが遊海の手に収まる。

 

「ありがとうホルアクティ、そして…お帰りフレア…」

 

《ただいま戻りました!少し疲れたので…休ませてくださいね?》

遊海の肩に実体化したフレアはそのまま消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

『さて…オレも戻ろうか…』

 

『遊戯!!』

 

「っ…!?海馬社長…!」

息を切らせて海馬が遊海達のもとにやってくる

 

『海馬…老けたな…当たり前か…あれから20年以上も経ったからな…』

 

『遊戯…貴様がどうして蘇ったかなど…どうでもいい…!貴様とオレが相まみえたならば…やるべき事は一つだ!』ジャキン!!

 

『…大人しく冥界に戻ろうと思ったが…やるべき事ができたようだ…!遊海、立会人を頼むぜ!』シュイン!

 

「ああ…!さぁ…いくぜ!海馬 瀬人対アテム!エクストラデュエル…開始ィィィ!!!」

 

『『デュエル!!』』

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…どうしたんだろう…?」

旧ゴドウィン邸に続く道路…そこで翠は遊海の帰りを待っていた、遊星達は近くの広場で再会を喜びあっている…。

 

「お〜い!翠〜!!」

 

「あっ…遊海さん!!」

朝日を背に閃光竜に乗った遊海が翠のもとに舞い降りる

 

「遊海さん…遅いですよ!!また倒れてるんじゃないかと…!私、心配して…!!」

 

「ごめんごめん…ちょっと戦いを見届けて来たんだよ、2人の漢の戦いを…翠」

 

「なんですか…?」

 

「…ただいま!」

 

「っ…おかえり…!おかえりなさい!遊海さん!!」

 

  

 

 

こうしてシグナーとダークシグナーとの戦いは決着を迎え…遊星達は希望の朝を迎えたのだった。

 

また後日談ではあるが…ドミノシティから遠く離れたアフリカにて2人の男が貧しい人々を助ける姿が目撃されたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…こちらゲイザー、レクス・ゴドウィンによる世界再生作戦は失敗に終わった…プランBへと移行する事を推奨する』

 

【そうですか、ではアポリア…三皇帝とアンチノミーを別ルートでネオドミノシティへと向かわせましょう、引き続き監視を頼みます…我が友よ】

 

『了解…連絡を終了する』ピッ

 

 

『…世界はようやく救われる…、オレは…間違っていたのか…〜?』

 

 

 




これにてダークシグナー編終了となります!予定ではこれで日常編を少し挟んで次章『WRGP編』へと移りたいと思います!
この章では展開の都合上遊海や翠のデュエルが少な目でしたが次章からは増やしていきたいと思います!これからも『決闘の観測者』をよろしくお願いします!









NextEpisode?










ライディングデュエル…それはスピードの世界で進化した デュエル…

そこに命を賭けるデュエリストを… 人々はライディングデュエリストと呼んだ…!



光と闇の戦いを経てネオドミノシティは一つとなった、そしてシグナー達に新たな戦いの舞台がやってくる…!

WRGP…ワールド・ライディングデュエル・グランプリ…世界一のライディングチームを決める戦い、そこに黒い陰が忍び寄る…!



「シンクロ召喚を抹殺する…!」

「キッヒッヒッ…!面白そうじゃん!」

「全ては我らが神の思いのままに…」



そして…新たな出会い

「不動遊星…私とチームを組むつもりはないかしら?」


「遊星!シンクロ召喚のその先を見せてやろう!!」



戦いの先にシグナー達が見るものとは…?

決闘の観測者第3部三章 WRGP編 近日執筆予定!






「ゲイザー…貴様はいったい何がしたいんだ…!」

『オレの為す事は世界を救う事…そして……!』


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幕間 束の間の平和
伝えるべき事〜激突する魂〜


こんにちは!S.Kです!ちょっとした日常回を2〜3話投稿したいと思います!

…ここだけの話、自分のオリジナルストーリー(断章・幕間とか)…人気がないみたいなんですよね…(PV数的に)

まぁ、暖かい目で見て頂ければ幸いです!

それでは最新話をどうぞ!


「十代、あの時は協力してくれてありがとう…お前のおかげで力を取り戻す事ができた」

 

『へへっ!気にすんなよ先生!オレも精霊界であの杖を見てから気づいたんだ、上手くいってよかったぜ!…それにもう一度三幻神を見れたしな!』

 

「そうか…そのうちにお礼をさせて貰うよ、コッチに来る事があったらなんでも言ってくれ!」

 

『ああ!楽しみにしてるぜ先生!じゃあなー!』ガチャ

 

 

「ふぅ…この3ヶ月忙しくて連絡が遅れちまった…おっと!そろそろ時間だな!少し早めに行かないと!」

 

 

 

 

 

 

ダークシグナーとの戦いから3ヶ月が過ぎた、ネオドミノシティは超特急で復興作業の最中である。

あの戦いを経てネオドミノシティは大きく変わろうとしている、まずは治安維持局長官レクス・ゴドウィンの失踪…ゴドウィンは冥界の王と赤き竜の戦いの輪廻を終わらせる為に光へと消えた…それにより今は長官の席は空席となっている…現在は磯野さんが代理をしているらしい。

 

そしてシティとサテライトを繋ぐ巨大橋『ネオ・ダイダロスブリッジ』の建設、海馬社長の号令のもと急ピッチで建造が進んでいる…この橋が完成すれば遂にサテライトとシティが一つになるのだ、尚一部区間は完成していてサテライトにも復興部隊が入り少しづつ町が綺麗になっている。

 

そして俺はこの3ヶ月、「メタルナイト」としてシティとサテライトを往復する日々を送っていた、サテライトに人が流れ込んだ事でギャングや犯罪集団の動きが活性化しその対応に追われていたのだ…なお、完全に力が戻ってきたおかげで楽に処理する事ができている、そして今日は…。

 

 

 

「待たせたな遊星、ジャック、クロウ…俺になんの用だ?」

 

「遊海さん、忙しい中来てくれてありがとう…教えて欲しいんだ、貴方の事…そして貴方の持つドラゴン達の事を…!」

 

 

 

 

 

 

〜とあるカフェ〜

 

 

「ほら…これを見て!ミスティから絵葉書が届いたの、相変わらず忙しいみたい」

 

「そうみたいね…でも笑顔が輝いてるわ!」

 

ここはシティにあるとあるカフェ…そこにはダークシグナー事件に関係した人物達、特に女性陣であるアキ・狭霧・翠、そして龍亞と龍可が集っていた、あの日から3ヶ月…落ち着きを取り戻しつつあるシティでパーティーをしようと男性陣を待っているのだ。

 

「でも、よかったね!トビーの記憶が戻って!」

 

『えぇ!力を取り戻した遊…白野さんにできない事はほぼないわ、この2年ずっと気にしていたから本当によかった…!』

アキが見せたミスティからの絵葉書…そこにはエッフェル塔をバックにミスティとトビーが笑顔で写っていた…。全盛期の力を取り戻した遊海にできない事はほぼ無い、それこそ死者蘇生や宇宙創造、次元分割レベルの事だろう…。

 

「ボマーさんとディマクはナスカに戻っちゃったし、鬼柳さんは旅から当分戻らないみたいだし…」

蘇った元ダークシグナー達はそれぞれにシティから離れて行った、ただし…例外もいるが。

 

「ていうか…遊星遅いね?」

 

「ああ、ジャックとクロウ…それに遊海も居ねぇじゃねぇか」

 

「あっ!牛尾のおっちゃん!」

龍亞の呟きに丁度到着した牛尾が答える…この場には遊星達4人がまだ来ていなかった。

 

『あっ…遊海さんなら3人に呼ばれたって先に…「なんですって〜!?」きゃっ!?』

突如としてアキ達の後ろに座っていた老人…に変装した女性…カーリーが声を荒げる。

 

「あの4人がいないなんて怪しいわ!何か重大なスクープの匂いがするのに〜!!」

 

「あのなぁ…お前こそスクープネタになるんじゃないのか元ダークシグナーさんよ…」

取り乱すカーリーに牛尾が話しかける、ダークシグナーだったメンバーで唯一シティに残っているのがカーリーなのだが…その記憶はほとんど消えてしまっていた…。

 

 

「それが悔しいのよ!!サテライトの人達は記憶が無いって言うし!シティの人達は避難訓練で屋内にいたからほとんど何も見ていないって言うし!唯一残ってる映像が『アレ』だけってどういう事よ〜!!」

 

カーリーの言う映像…それは奇跡的に起動していた1台の監視カメラに残っていた映像、『巨大な邪神に時を超えて復活した三幻神がシティを守る為に戦いを挑む』という映像だった。しかし公開された直後KCから「フェイク映像」であると発表され、すぐに忘れ去られたのだ…。

 

「でも本当によかった、町の人達が無事で…」

 

『そうね…やっぱり平和が一番よ!』

翠は青い空を見上げながら呟いたのだった。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドラゴン達…それは『閃光竜』の事か?」

遊星達に呼び出された遊海は遊星に問いかける。

 

「えぇ、それもそうなんですが…これを見てください、その方が早いと思います…!」

遊星はDホイールのモニターを遊海に見せる、そこには…。

 

 

 

『白銀の翼を持つ竜よ!今こそ羽ばたけ!!シンクロ召喚!「スターダスト・ドラゴン」!!』

 

『荒ぶる王者がここに顕現する!現われろ!「レッドデーモンズ・ドラゴン」!!』

 

『戦場に咲く1輪の薔薇よ!今こそ花開け!!「ブラック・ローズ・ドラゴン」!!』

 

『精霊を守護する古き竜よ!その輝きで全てを照らせ!「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」!!』

 

 

 

「これは…懐かしい映像だな…」

遊星の見せた映像…そこには18年前、プロリーグの戦いでシグナーの竜を召喚する俺の姿が写っていた。

 

「遊海さん、貴方は『スターダスト』達をオレ達が手にする前から知っていた、それだけじゃない…!この映像から貴方は()()()()()()()()!」

 

「遊星…この映像は何処から見つけた?この事をジャックとクロウ以外に話したか?」

 

「この映像はジャンク品のパソコンから見つけたんだ…ジャック達以外には見せていない」

 

『俺達も喋っていない、話してくれないか…貴方の事を…!』

 

「アンタは普通の人じゃねえとは思ってたが…いったいどういう事なんだ?」

 

「遊海さん…貴方はいったい何者なんだ…?」

遊星達は真剣な目で俺を見つめてくる…流石は遊戯王シリーズ随一の天才だ、まだ転生者である事は伏せて…ある程度の事を話そう。

 

 

 

「俺は…『決闘王』を継ぐ者、そしてこの世界を見届ける者さ…まずは俺が老いない理由、それはこれだ」

俺は最近会得した力で手から千年玉を取り出す…最近やっとできるようになったのだ。

 

 

「それは…伝説の『千年アイテム』!?」

 

「千年アイテムって言ったら…全てエジプトの地下に封印されてるって聞いてるぜ、いったいどうして…!」

 

「二十数年前…名もなきファラオが冥界へと帰った時、俺と翠はその場にいたんだ…彼らの親友として、そしてその時に俺達はファラオの祝福を受けた、その結果俺と翠は条件付きの『不老不死』を与えられたんだ」

 

「なっ…不老不死だって!?」

 

『そんな物語のような事が本当にあるのか!?』

クロウとジャックは驚きをあらわにする、不老不死は人類の夢…それを体現した人物が目の前にいれば驚くのは当たり前だろう。

 

「だが…条件付きとはいったい…?」

 

「不老不死の条件…それはデュエル以外では死なない、つまり『命懸けのデュエル以外』では死なないという条件だ」

 

「「『デュエルで死ぬ!?』」」

 

『デュエルで命を落とす事など…本当にあるのか…!?』

 

「ジャック、世界は広い…人為的な事もあれば今回のような『闇のデュエル』のように…意外とある事だ、俺も何度も死にかけたよ…」

そう言って遊海は空を見上げ遠い目をする…その時遊海はミスターT軍団との無限デュエルや異世界での戦いを思い出していた。なお、その様子を見た遊星達は…

 

「『「(遊海さんはいったいどんな修羅場を潜り抜けて来たんだ…!?)」』」

若干、死んだ目をしている遊海を見て引いていた…。

 

 

 

 

「話が逸れたな…名もなきファラオと別れた俺達はそれから10年程デュエルアカデミアで働きながらプロリーグに参加していた…そんなある日、I2社のペガサス会長が4枚のカードを持って海馬社長のもとを訪ねて来たんだ」

 

『ペガサス・J・クロフォード…デュエルモンスターズの生みの親か…!』

 

「ああ、あの人曰く『夢でレッドなドラゴンがこのカードのイメージをくれたのデース!』という事らしいが…赤き竜が邪神の復活を感じて先手を打ったのかもな、…そして海馬社長はその4枚を開発中のモーメントの制御装置に組み込む事を決定、その前にトラブルが起きないようにKCの所属プロだった俺がドラゴン達のテストプレイを頼まれたんだ」

 

「そういう経緯で遊海が『スターダスト』や『レッドデーモンズ』を使ってたのか…ん?待てよ…遊星の親父さんもKCの所属だったよな!?」

 

「まさか…」

 

「遊星、クロウ…その通りだ、俺はお前の父親…不動博士に会った事がある、研究熱心ないい人だったよ…お前が生まれてとても喜んでいた…!」

 

「親父…」

遊星は目元を拭う…生きている時の父の事を聞いて感極まったみたいだ…。

 

「…話を続けよう、無事にテストを終えたドラゴン達はモーメントの制御装置に組み込まれた…それから約一ヶ月後…ゼロ・リバースが起きる事になる、バトルシティ・レジェンドの会場にいた俺は全力でモーメントから放たれたエネルギーを受け止めた…その結果がお前達の知る痩せた俺の姿だったって訳だ…俺の話はまずここまでだな」

 

「ありがとう遊海さん、そして聞かせて欲しい…あなたの持つ『スターダスト』に似た『閃光竜』の事を…」

 

「ああ、こいつらの事か…なら一度見た方が早いな」

遊海はカードケースから4枚のドラゴンを取り出す、それは『閃光竜』『炎魔竜』『月華竜』『妖精竜』の4枚だった。

 

 

 

 

「これが『閃光竜』のカード…『風』ではなく『光』属性なのか…」

 

『「炎魔竜」…「レッドデーモンズ」とそっくりだ、しかし…何か禍々しい力を感じる…』

 

「鋭いなジャック、その通り…『閃光竜』いや『決闘竜』と呼ばれるドラゴン達は例外を除いて闇の力を宿しているんだ」

 

「『なんだと…!?』」

 

「もちろん闇といっても『地縛神』のような『悪』じゃない、人々の欲や負の感情によるもの…まぁ使う奴次第ってところだな」

 

「しかしどうしてこんなカードが…これもペガサスが生み出したのか?」

決闘竜を一通り見た遊星が遊海に訊ねる

 

 

「お前達は…今いる世界と違う世界『平行世界』があると言ったら…信じるか?」

 

「平行世界…パラレルワールドという奴か…世界中の研究者が調べているがまだ存在は立証されていないという話だが…」

 

「平行世界は確かに存在する、何故なら『閃光竜』はとある平行世界のカードだからだ」

 

『馬鹿な…!なら…何故そのカードを貴方が持っている!』

 

「それは…まだ話す時じゃない、…この話はまた今度にしよう、そろそろアキ達との待ち合わせの時間だしな!」

 

「おっと!そういえばそんな約束してたな!まぁ難しい話は今度にして今日の祝勝会を楽しもうぜ2人共!」

 

「むっ…そうだな、アキや龍亞達を待たせる訳にはいかない…今日はここまでにしよう、でも遊海さん…いつか話してくれるよな?」

 

「ああ…約束する、時がくれば全てを話そう」

遊海の言葉で約束を思い出した遊星とクロウは納得し出発の準備をする…しかし1人納得していない人物がいた…それは…

 

 

『俺は納得いかん!遊海…俺とデュエルしろ!!』

 

「「ジャック!?」」

 

「急にどうしたんだジャック?」

ただ1人…ジャックは納得せず突然遊海へとデュエルを挑む…!

 

 

『遊海!俺はデュエルの頂点を目指す為に一度は全てを捨てシティのキングとなった!…だがその俺の目の前に「鋼の騎士」を名乗ったお前が現れ…あまつさえ俺の人気を奪った!そしてあの夜…お前に敗北した俺はあれからさらなる力を掴んだ!…そしてお前が最強の決闘者「決闘王」だと…決闘者の頂点だというのなら…!俺はそれを乗り越える!』

 

「ち、ちょっと待てジャック!話がかみ合ってねぇぞ!?」

 

「いいんだクロウ、ジャックは俺と決着をつけたいんだろう…すまなかったな、あの時は()()()()()…今回は決闘王を名乗る者として()()で受けて立とう!!」ズオッ!

遊海は力を開放する…それは凄まじい闘気となりジャック達に襲いかかる!

 

「ぐっ…!?凄まじい気合いだ…!」

 

『これが…決闘者の頂点の力…!!面白い…!俺は今一度「キング」を目指す!その為に…貴方を越える!!』

 

「ジャック、お前…遊海さんと戦う為に…!」

実を言うと遊海を呼び出して話を聞こうと提案したのは珍しい事にジャックだった、ジャックは3ヶ月前の雪辱を晴らし新たに前に進む為に遊海へと戦いを挑む…!

 

 

『いくぞ「決闘王」!俺は貴方を越え…世界のキングとなる!』

 

「かかってこいジャック!全盛期の力を取り戻した俺の力を見せてやろう!」

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

 

ジャックLP4000 SP 0

遊海LP4000 SP 0

 

・特殊ルール ライディングデュエル

 

スピードワールド常時発動

 

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』 SP0→1

『「パワーブレイカー」を召喚!』

両腕に斧の付いた狂戦士が現れる ATK1900

 

『カードを2枚伏せてターンエンドだ!』

ジャックLP4000 SP1

パワーブレイカー 伏せ2 手札3

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP1→2

「チューナーモンスター『闇竜星ージョクト』を召喚!」

闇を纏った竜が現れる ATK0

 

「『ジョクト』の効果発動!自分フィールドに自分以外のモンスターがいない時、手札の竜星カードを墓地に送りデッキから攻撃力0と守備力0の竜星モンスターを特殊召喚する!手札の『リフン』『ヘイカン』を墓地に送り、攻撃力0の『水竜星ービシキ』と守備力0の『炎竜星ーシュンゲイ』を特殊召喚!」

獅子の頭部を持った赤い竜と亀のような水色の竜が現れる ATK1900  DEF2000

 

『1ターンでシンクロ召喚を揃えたか…!』

 

「いくぞジャック!俺はレベル4の『シュンゲイ』とレベル2『ビシキ』にレベル2『ジョクト』をチューニング!!」

 

4+2+2=8

 

「星を流れる龍脈よ!その力を束ね輝く星を具象化せよ!シンクロ召喚!『輝竜星ーショウフク』!」

輝きを纏った虎柄の竜が現れる ATK2300→2800

 

『攻撃力が上がっただと!?』

 

「シンクロ素材となった『シュンゲイ』の効果により『ショウフク』の攻守は500アップする!さらに『ショウフク』の効果発動!俺は『シュンゲイ』の召喚に闇・炎・水の三属性を使用している!それによりジャックの場の『パワーブレイカー』、そして伏せカード2枚をデッキに戻す!龍脈の氾濫!」

 

『なんだと!?(「強化蘇生」と「スターゲート」が…!)』

Dホイールの走る近くの海からエネルギーが溢れ出しジャックの場を一掃する

 

「バトル!『ショウフク』でダイレクトアタック!龍脈の息吹!」

ショウフクからブレスが放たれジャックのライフを大きく削る!

 

『ぬぅおおお…!』

 

ジャックLP4000→1200 SP2→0

 

「カードを2枚伏せ…ターンエンド!」

遊海LP4000 SP2

ショウフク 伏せ2 手札1

 

 

「さぁ、どうするジャック?」

 

『これが世界最強のデュエリストの力…!凄まじい…だがこのジャック・アトラス、負けはしない!!』

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』SP0→1

『これならば…!自分フィールドにモンスターが存在しない時!「バイス・ドラゴン」は攻撃力を半分にする事で特殊召喚できる!』

紫色の恐ろしいドラゴンが現れる ATK1000

 

『さらに「フレアリゾネーター」を召喚!』

炎を背負った悪魔が現れる ATK300

 

「来るか!」

 

『俺はレベル5の「バイスドラゴン」にレベル3「フレアリゾネーター」をチューニング!』

 

5+3=8

 

『王者の鼓動!今ここに列をなす!天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!いでよ!「レッド・デーモンズ・ドラゴン」!』

ジャックの魂である赤き悪魔竜が現れる! ATK3000→3300

 

『「フレアリゾネーター」をシンクロ素材とした「レッドデーモンズ」は攻撃力が300ポイントアップする!バトルだ!「レッドデーモンズ」で「シュンゲイ」を攻撃!アブソリュート・パワーフォース!!』

 

「リバース罠発動!『竜星の具象化』!ぐぅっ!!」

シュンゲイがレッドデーモンの掌底で破壊される

 

遊海LP4000→3500

 

「『具象化』の効果発動!自分のモンスターが破壊された事でデッキから2体目の『シュンゲイ』を特殊召喚!さらに墓地の『光竜星ーリフン』は自分モンスターが破壊された時、特殊召喚できる!」

再び赤き獅子竜と光輝く魚竜が現れる ATK1900 DEF0

 

 

『チィ…!俺はカードを伏せてターンエンドだ!』

ジャックLP1200

レッドデーモン 伏せ1 手札1

 

 

 

『動きに無駄が無い…!これが決闘王の実力か…!』

 

「ジャック、お前は強い!…だが強さだけではたどり着けない場所もある!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP2→3

「『地竜星ーヘイカン』を召喚!」

虎柄の細長い竜が現れる ATK1600

 

「俺はレベル4の『シュンゲイ』とレベル3の『ヘイカン』にレベル1の『リフン』をチューニング!」

 

4+3+1=8

 

「漆黒の闇を裂き!天地を焼き尽くす孤高の絶対なる王者よ!!万物を睥睨しその猛威を振るえ!シンクロ召喚!現われろ!『炎魔竜 レッド・デーモン』!!」

レッドデーモンに鏡写しである悪魔竜が現れる ATK3000→3500

 

『来たか…もう一体の「レッドデーモン」…!』

 

「いくぞ!『炎魔竜』の効果を発動!このカード以外の表側表示モンスターを全て破壊する!真紅の地獄炎!!」

炎魔竜が大地に拳を叩きつける、そして大地から吹き出した爆炎がレッドデーモンに迫る!

 

『やらせん!!リバース罠「バスターモード」発動!!「レッドデーモン」をリリースし「/バスター」を特殊召喚する!』

 

「なんだと!?」

迫った爆発をレッドデーモンは上昇する事で回避する、さらにその身体が炎を纏う!

 

『灼熱の鎧を身にまとい!王者ここに降臨!出でよ!「レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター」!』

赤き鎧を纏い悪魔竜が再び降臨した! ATK3500

 

「なら…バトル!『炎魔竜』で『レッドデーモン/バスター』を攻撃!極獄の絶対独断(アブソリュート・ヘル・ドグマ)!!」

 

『相討ち狙いか!迎え討て!エクストリーム・クリムゾンフォース!!』

2体の悪魔竜の攻撃が直撃…大爆発が起きる!

 

 

『ぬぅぅぅ…!!「/バスター」の効果発動!このカードが破壊された時!墓地の「レッドデーモン」を特殊召喚する!これで次のターン…なんだと!?』

フィールドの煙が晴れる…そこには鎧を脱いだレッドデーモン、そして炎魔竜が変わらずに佇んでいた…

ATK3000

 

「残念だったな…『ヘイカン』を素材とした『炎魔竜』は戦闘では破壊されない!カードを伏せてターンエンド!」

遊海LP3500 SP3

炎魔竜 具象化 伏せ2 手札1

 

 

 

『強い…だが俺は…俺は負ける訳にはいかんのだぁぁ!!』

 

 

『俺のターン!ドロォォ!!』SP1→2

『「ダークリゾネーター」を召喚!』

音叉を持った悪魔が現れる ATK1300

 

『そして「Spーハイスピード・クラッシュ」を発動!「ダークリゾネーター」と「炎魔竜」を破壊する!!』

飛び出したダークリゾネーターが炎魔竜に特攻…爆発する…

 

「『具象化』の効果発動!デッキから『魔竜星ートウテツ』を召喚!」

闇の力を纏った魔竜が現れる DEF0

 

 

『「レッドデーモン」の前に防御など無駄だ!バトル!アブソリュートパワーフォース!!』

掌底が叩きつけられトウテツが爆散する

 

「『トウテツ』の効果発動!デッキから2体目の『リフン』を特殊召喚!」

再び光輝く魚竜が現れる DEF0

 

『はぁ…はぁ…俺はターンエンドだ…!』

ジャックLP1200 SP2

レッドデーモン 手札0

 

 

『どうだ遊海…!お前の喉元に喰らいついたぞ…!次のターンで俺の勝ちだ!』

 

「ジャック…確かにお前は強い、しかし…まだ足りない!見せてやろう…『炎魔竜』の真の力を!!」

 

『なんだと!』

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「リバース罠『リビングデッドの呼び声』を発動!蘇れ!『炎魔竜』!」

再び魔竜が現れる! ATK3000

 

『ぐっ…!再びフィールドを一掃するつもりか!?』

 

「いや…ジャック、お前にさらなる力を見せてやろう!俺はレベル8の『炎魔竜』にレベル1の『リフン』をチューニング!!」

 

8+1=9

 

「深淵の闇より解き放たれし魔王よ!!その憤怒を爆散させよ!!シンクロ召喚!飛び立て!『炎魔竜 レッド・デーモン・アビス』!!」。

深淵の名前を持つ進化した炎魔竜が現れる!ATK3200

 

『なっ…『炎魔竜』が進化しただと…!?』

 

「バトルだ!『アビス』で『レッドデーモン』を攻撃!深淵の怒却拳(アビス・レイジ・バスター)!!」

炎を纏った拳がレッドデーモンの頭を捉え直撃する!

 

『ぐおおっ!?』

ジャックLP1200→1000

 

『しかしこれで終わりだ…!まだ逆転のチャンスはある…!』

 

「残念だが…これで終わりだジャック、『アビス』の効果を発動!戦闘ダメージを与えた時、墓地のチューナーモンスター『リフン』を特殊召喚する!」

三度光の魚竜が現れる DEF0

 

「さらにリバース罠『竜星の極み』を発動!このカードを墓地に送る事でバトルフェイズ中に竜星モンスターを使ったシンクロ召喚を行なう事ができる!俺はレベル9の『アビス』にレベル1の『リフン』をチューニング!」

 

『なっ…!?』

 

9+1=10

 

「泰山鳴動!!山を裂き地の炎と共にその身を曝せ!!『炎魔竜 レッド・デーモン・ベリアル』!」

腕から刃を生やした悪魔の名を持つ魔竜が現界する ATK3500

『攻撃力3500…!?』

 

「『ベリアル』でジャックにダイレクトアタック!割山激怒撃(グレート・サミット・ブレイカー)!」

ベリアルの腕の刃から山を割る一撃が放たれジャックのライフを削りきった…。

 

ジャックLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れジャック…お前はよくやったぜ…なぁ遊星?」

 

「ああ、決闘王を相手にあそこまで善戦したんだ…流石はジャックだ」

デュエルを終え元の場所に戻ってきた俺達に2人が声をかけてくる…しかし…

 

『くそっ…まだ世界は遠いと言う事か…!』

ヘルメットを脱いだジャックが悔しそうに顔を歪ませる

 

「ジャック、お前は本当に強い…俺から『炎魔竜』の進化形の2体を出させたんだからな、気を落とすなよ」

 

「ん?その口ぶり…まさか…?」

 

「フッ…『炎魔竜』はあと1段階変身を残している!」

 

『「「なっ…!?」」』

遊海の言葉を聞いた3人は絶句する…あのさらに上があるのかと…

 

「まっ、機会があれば見せてやるよ…一つの頂点の姿を…それじゃあ待ち合わせ場所に行こうか!翠が美味しい料理を準備してるから楽しみにしておけよ!」

 

「「はい!」」

 

『…!』ギリリッ

 

「…遊星、クロウ少し先に行っててくれるか?すぐに追いつくから…」

 

「えっ…あ、はい…クロウ、先に行こう」

 

「ああ、わかった…ジャック、また後でな!」

遊星とクロウは俺の様子を察してその場を離れて行った…。

 

 

 

 

「…ジャック、本当は俺に相談したい事があったんじゃないか?」

 

『…』

 

「…カーリー渚の事か?」

 

『っ…!何故わかった…?』

下を向いていたジャックは顔をあげる

 

「なんとなく…かな、カーリーが目覚めて記憶が無いと言った時のお前の顔を覚えてたんだよ」

 

ゴドウィン戦の直後、元ダークシグナー達は旧ゴドウィン邸で開放され病院へと搬送された、その時ジャックはすぐにカーリーのもとへ駆けつけたが…彼女のダークシグナー時の記憶が無いと聞き見せた顔は…彼らしくもない切ない顔だったのだ…。

 

 

『俺は…カーリーに愛を告白した…だがカーリーは覚えていない…!だがマーサから聞いたのだ…貴方が記憶喪失のトビーの記憶を蘇らせたと…だからあるいはと…!!』

ジャックは拳を握りしめる…その目からは涙が一筋、頬を伝っていた…。

 

「もしかして…俺に勝つ事ができたらカーリーの記憶を戻して貰おうと思ってたのか?そんな事…別に言ってくれればすぐに…」

 

『ダメなのだ!俺はまだ…カーリーに釣り合うような男になれてはいない…その踏ん切りを着けようと貴方に挑んだのだ…!俺はもっと強くなる!上を目指し再びキングへと至ってみせる!!』

 

「そうか…ならちょうどいいな、ジャック…その機会はすぐにやって来るぞ?」

 

『なんだと…?』

 

「今KCが主催であるデュエル大会を企画中だ…それに挑めば世界最強の証が手に入る…かもな?」

 

『そうか…!ならば俺は掴み取るぞ…その称号を…!!』

ジャックは獰猛な笑みを浮かべる…!

 

 

「まぁ…その大会はまだ先だ、今日のところは楽しまないかジャック?お前の好きな唐揚げもあるぞ?」

 

『翠の唐揚げか、ずいぶんと久しぶりだな…楽しみだ』

そして俺達はその場所をあとにする…ジャックの新たな門出を祝福するようにダイダロスブリッジが輝いていた…。

 




今回のスピードスペル!
Spーハイスピード・クラッシュ
通常
自分のスピードカウンターが2個以上ある時、このカードを発動できる。
①自分フィールドと相手フィールドのカードを1枚ずつ対象に発動できる、そのカードを破壊する。


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未来からの訪問者〜想定外の出会い〜

〜とある時代〜

「よし!かっとビングだ!!遺跡のNo.を見つける為に…出発だぁ!!」

「「「おー!!!」」」





「これは…この前に通った時より荒れてますわね…!?」

《これも先程の異変が関係しているのか…?》

ドガン!!
『うわぁぁぁ!』

「なっ…なんだぁ!?」

《っ…何かと衝突したらしい!不時着するぞ!!何かに捕まれ!!》

「「うわあああ!?」」

…これはもしものIF、とある世界の希望の創造者は目的地を外れ墜落する…その出会いは何を齎すのか…?


「ふぅ…久々にゆっくりできる…」

 

「いつもいつもお疲れ様です遊海さん!コーヒー飲みます?狭霧さんからトリシューラプリンを頂いたんですよ!」

 

「おっ!それは美味しそうだ!」

 

祝勝会から早1ヶ月が経った、シティとサテライトの復興作業も概ね終わり、あとはネオ・ダイダロスブリッジの本格開通を待つばかりである…そして今日は翠と共に久々の休みが取れたのでリラックスタイムである。

 

 

 

「甘ーい!これがシティで最高級のプリン…!」

 

「たしか『高価格・高人気・高カロリー』の三拍子が揃ったスイーツだったかな…前世で食べたプリンよりも美味いかもな…!」

シティの人気店「ターミナル・エイト」の看板メニューであるトリシューラプリン…流石である。

 

 

ツンツン

 

「ん?」

椅子に座っていた俺の胸あたりを誰かにつつかれる、視線を落とすと心なしか目を輝かせたフレアが俺を見上げていた…この流れは…

 

「…プリン食べる?」

 

《是非!!》

俺はスプーンでプリンを一口掬いフレアの口元に持っていく…

 

《いただきます!…!!》チュルン

フレアは一口でプリンを平らげると顔が弛み膝の上で蕩けたようになってしまった…なんだろう、前世で見たやる気のないフクロウの動画を思い出すな…

 

《甘くて美味しいです〜…》

 

「(遊戯やアテムに見られたらどんな反応するのかな…)」

 

《(たぶん目を丸くして驚くでしょうね…あっ、データを取れたので材料さえあればプリンの再現が可能になりましたよ?)》

 

「(…サラッと念話してるうえにデータいつの間に取ったんだ?アヤカ…)」

なお、この後…アヤカが中古の冷蔵庫を改造して「無限トリシューラプリン製造器」を造ったのはまた別の話である…まさか本当に作るとは…。

 

 

 

 

「でも…ついにこの時が来たか…」

俺は手元のA4の紙を見つめる、そこには…

 

『集え!最強の座を求めるDホイーラー!第1回WRGP(ワールド・ライディングデュエル・グランプリ)開催!』と書かれたポスターがあった、全世界から強者が集うであろうライディングデュエルの大会が遂に開催される…そして…。

 

 

「イリアステルの介入が始まるまであと2ヶ月…あいつと戦う日も近い…!」

 

「イリアステル滅四星のゲイザー…ですね」

 

「ああ…転生者だと思われる謎の男…アイツも絶対に出てくる…!決着をつけてやる…!」

 

 

イリアステル滅四星…それはこの時代から200年以上先「モーメントにより滅びた未来」からやって来る未来人達の事だ。

 

一人目は絶望の番人・アポリア

当初はルチアーノ・プラシド・ホセという「自分の人生で3度絶望を味わった時の自分」に分割し表向きのイリアステルのリーダーとして振る舞っていた、そしてWRGP決勝戦で正体を現し遊星やジャック達と激戦を繰り広げた。

 

二人目は戦律のアンチノミー

遊星にアクセルシンクロを伝える為にゾーンが全ての記憶を消して遊星達の「仲間」になるように送り込まれた男…アーククレイドルで自分の正体を思い出して遊星に希望を繋げた。

 

三人目は逆刹のパラドックス

モーメントが暴走する一因になった「デュエルモンスターズ」を破壊する為に過去へと遡りペガサス会長を殺そうとした男、記憶がないが…少なくとも2回俺は出会っているらしい…。

 

四人目…無限界帝・ZーONE

俺の知るイリアステルメンバーの中で唯一の生身の人間であり、他の「イリアステルメンバーの記憶を宿したアンドロイド」の創造主…年齢は少なくとも百歳以上、長い時間を孤独に過ごし未来を救う為に全てを捧げた偉人。

何度も過去を改変し未来を救おうとしたが未来を変える事はできず、さらに自身の寿命を感じ最終手段として「未来のネオドミノシティ」であるアーククレイドルを現在のネオドミノシティに衝突させモーメントごと全てを消そうとした男。

 

そして…謎の五人目、観測者・ゲイザー

17年前、突如として俺の前に現れた未来人の「転生者」…バトルシティ・レジェンドで自爆して死んだと思っていたが…ディヴァインによって瀕死状態だった俺の前に再び現れてあろう事か怪我の治療をしたらしい。

17年前は俺に対して凄まじい殺意を持っていたが…いったい奴の目的は…?

 

 

 

「…考えても仕方ないか、奴と対峙した時に直接聞けばいい…だが17年前のようにはいかないからな…!」

 

「遊海さん…」

翠は複雑な思いを抱いていた…翠とゲイザーには直接の面識は無い、あるとすればバトルシティにおいて遊海と戦う姿だけだった…そしてその時、翠は戦うゲイザーの姿を見て「哀しい」と思ってしまったのだ…それが何故かは自分でもわからなかった…。

 

 

「…空気が重くなっちゃったな…翠、ツーリングでも行こうか?」

 

「あっ!いいですねそれ!行きましょう!」

 

 

 

……

 

 

「うわ〜!速ーい!!」

 

「翠ー!落ちるなよ〜!」

 

現在、翠と二人乗りをして高速道路を疾走中である、前世と違って制限速度がないんだよな…

 

「このままサテライトの方まで行ってみようか?」

 

「了解です!風になりましょー!!」

 

「(翠ってもしかして…スピード狂の気があるのかな…?)よーし!行くぞ!ゴールデンドライブー!!!」

 

 

 

 

 

 

「あ〜楽しかった!これがスピードの世界なんですね!私もDホイール乗ってみようかな〜」

 

「まずはライセンスを取るところからだな!本気なら機体は頼んでおくよ?」

 

「はい!お願いします!」

サテライトからシティを一望できる高台にて遊海達は休息を取る…そこでは平和な時間が流れていた。

 

「翠…きっとこれから先、また激しい戦いになる…だけど俺は必ずこの町とお前を守ってみせる…!」

 

「…遊海さん、無理だけはしないでくださいね?いつも心配する私の身にもなってください…」

 

「ああ…無理はしない、全力を尽くすだけさ!」

 

「それまったく変わってないじゃないですかー!!」

 

「あはは…ごめんごめん、冗談だよ!」

 

「もう…」

こうして遊海と翠の平和な時間はこのまま過ぎて行く…と思われた、しかし…

 

 

《マスター!時空間の歪みを感知しました!何かが来ます!!》

 

「なんだと!?まだ早すぎる!イリアステルが来るのまだ2ヶ月も先のはずだぞ!?」

アヤカが注意を促す…そして()()()()()()()

 

「なっ…あれは!?」

遊海達の視線の先、そこでは「たくさんの歯車が合わさったような飛行船」がサテライトの外れへと落下していく様子があった…。

 

「遊海さん!!」

 

「ああ!行くぞ!!(なんで…なんでかっとび遊馬号がこの時代に…!?)」

遊海達はDホイールに跨り飛行船の落下地点へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

「イテテ…皆大丈夫か〜?」

 

「うん、なんとか…」

 

「いきなりひどい目に遭いました…」

 

「たくっ…!なんなんだよさっきのは…!」

乗ってきた飛行船から投げ出された4人の子ども達は周囲を見回す…

 

「ていうか…ここは何処なんだ?目的地は森の中なんじゃなかったか?」

 

「たしかに…でもここは…一面の荒れ地ですね」

 

《遊馬!みんな!無事か!》

 

「アストラル!オレ達は無事だぜ!…ていうか…ここは何処なんだ?」

 

半透明の青い少年?が特徴的な髪型の少年…九十九 遊馬に話しかける、彼は未来でアストラルの記憶のカード『No.』を集めるために戦う勇士である。

 

 

《現在地は日本だ…ただし遊馬の故郷であるハートランドが生まれる前…過去の日本のようだ》

 

「か、過去〜!?オレ達タイムスリップしちまったって事か!?」

 

《ああ、飛行船に何かがぶつかった衝撃で時空間の穴に落ちてしまったらしい…それに今の衝撃で飛行船が故障してしまったようだ、修理をしなければならない》

 

「マジかよ!?アストラル直せるか?」

 

《ああ、そこまで致命的なものでは無い…1時間もあれば終わるだろう、その間周囲の見張りを頼む…ここは過去の世界だ、何が起きるかわからない》

 

「ああわかった!頼むぜアストラル!」

 

《ああ、それでは修理に…》

 

「待て、アストラル、遊馬!誰か来るぞ!!」

 

「《!?》」

 

ブルル…キキーッ!

 

紫髪の少年・神代 凌牙の声で二人は警戒する…そして五人の前に1台のバイクが現れ停車する…。

 

「これは…!お前達怪我はないか?飛行船が落下するのを見て駆けつけたんだ!」

 

「私達は敵ではないわ、安心して!」

赤帽子の青年と紫髪の少女がそう声を掛けてきた

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

「(おいおい…本当に遊馬達じゃないか…!メンバー的に『No.44』を探しに行く最中か?)」

飛行船の落下地点に到着した俺は内心焦りを隠せないでいた…目の前にいるのは跳ねた赤い前髪が特徴な少年…ZEXALの主人公・九十九 遊馬と半透明の青い少年アストラル、その彼女(?)である観月 小鳥、そして遊馬のライバルであり後の「バリアン七皇」の1人・ナッシュこと神代 凌牙と妹である璃緒が揃っていた…なんでこんな場所にいるんだ!?

 

 

《すまない、私達は事故でこの場所に不時着してしまったのだ…ここは何処だろうか?》

 

「ここは日本・ネオドミノシティの旧サテライトだ…とりあえず怪我が無いようでよかった、俺は白波 遊海、そして妻の翠だ」

 

《そうか…情報提供感謝する、そして…》

 

「アンタ達…何者だ?アストラルに驚かないばかりか飛行船まで見えてるみたいだからな…!まさかバリアンの手先か!!」

 

「あっ…!(しまった!?アストラルは普通の人間には見えないんだった!?)」

 

 

「おい二人ともどうしたんだよ!?この人達はオレ達を心配して来てくれたんだぞ!?」

 

《遊馬…彼らからは複数のNo.の力を感じる…!彼らは少なくともただの人間では無い…!》

 

「なんだって…!?」

その言葉を聞いた遊馬も表情を険しくする

 

《ユウミと言ったな…私達はNo.というカードを集めているのだが…心当たりはないか?》

 

「それは…(しまった…どうする…!)」

 

《沈黙は肯定と判断する!遊馬!彼とデュエルするんだ!》

 

「わかった!…ちょっと気分が引けるけどしょうがねぇ!かっとビングだ!」

 

「遊海さん…!」

 

「こうなったらしょうがない…!デュエルで説得する!!」

 

 

 

 

『デュエルディスクセット!Dゲイザーセット!』

 

「デュエルディスク・マスタールール3開放!ハアッ!」

デュエルディスクが展開し右目の周りに模様が現れる。

 

 

【ARビジョン・リンク完了…デュエルターゲット・ロックオン!】

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊馬LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

《遊馬!最初から全力でいくんだ!》

 

『わかった!オレは「ゴゴゴ・ゴーレム」を召喚!』

モノアイの巨人が現れる ATK1800

 

『さらにレベル4モンスターの召喚に成功した時!「カゲトカゲ」は特殊召喚できる!』

ゴーレムの影から薄いトカゲが這い出してくる ATK1100

 

『いくぜ!オレはレベル4の「ゴゴゴゴーレム」と「カゲトカゲ」でオーバレイ!!』

 

No.39

 

『2体のモンスターでオーバレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!現われろ!「No.39希望皇ホープ」!』

《ホープ!!》

銀河から白い塔が現れ光の戦士へと変形する! ATK2500

 

「エクシーズ召喚…いきなりか…!」

 

『オレはカードを2枚伏せてターンエンド!』

遊馬LP4000

ホープ 伏せ2 手札2

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「手札の『連撃の帝王』を墓地に送り魔法カード『汎神の帝王』を発動!2ドロー!さらに墓地から『汎神』を除外し効果発動!デッキから三枚の『帝王』となのついたカードを相手にみせ相手の選んだ1枚を手札に加える!俺は三枚の『帝王の深怨』を見せる!」

 

「全部同じカードじゃねぇか!?」

《計算されたプレイングだ…!彼は並のデュエリストではない!》

 

 

「俺は手札の『烈風帝ライザー』を公開し魔法カード『帝王の深怨』を発動!効果によりデッキからフィールド魔法『真帝王領域』を手札に加え…発動!」

フィールドがギリシャ調の神殿に変わる

 

「そして『天帝従騎イデア』を召喚!さらに効果によりデッキから『冥帝従騎エイドス』を特殊召喚!」

光の騎士と闇の魔法騎士が現れる ATK800 DEF1000

 

 

「攻撃力800…?しかも通常召喚もした…エクシーズ召喚もできないけど…?」

《遊馬!油断するな!》

 

「『エイドス』を召喚したターン、俺は追加でアドバンス召喚ができる!2体のモンスターをリリース!現われろ!『天帝アイテール』!」

天空から天界を治める帝が降臨する ATK2800

 

「アドバンス召喚モンスター…!」

 

「さらにリリースされた『イデア』の効果発動!除外されている『汎神』を墓地に戻す!さらに『アイテール』の効果!デッキの魔法カード『帝王の開岩』と『再臨の帝王』を墓地に送り…デッキから現われろ!『怨邪帝ガイウス』!」

天帝がゲートを開くと禍々しい闇の帝王が現れる ATK2800

 

「そんな…!高い攻撃力のモンスターが2体も…!」

 

 

「バトル!『エイドス』で『ホープ』を攻撃!邪帝滅殺撃!」

 

《遊馬!》

 

「わかってる!『ホープ』の効果を発動!自身のORUを一つ使い、攻撃を無効にする!ムーンバリア!」

ORUを吸収したホープは邪帝の拳を受け止める!

 

「ならば『アイテール』で『ホープ』を攻撃!天帝の怒り!」

 

「もう一度ムーンバリア!」

天空からの魔力弾を再び無敵のシールドが受け止める!

 

「ッ…やはり硬い…!」

 

《今だ!遊馬!》

「応っ!リバースカード『反発力』発動!相手モンスターの攻撃が無効になった時!戦闘を行なうはずだった2体の攻撃の差分のダメージを与える!300ダメージだ!」

遊馬の罠からちいさな悪魔が飛び出し俺に突進する

 

「痛てッ!?」

遊海LP4000→3700

 

「くっ…カードを伏せてターンエンド!『アイテール』の効果で特殊召喚された『ガイウス』は手札に戻る!」

遊海LP3700

アイテール 真帝王領域 伏せ1 手札3

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

《「アイテール」の攻撃力は「ホープ」より上だ、戦法を変えるぞ!》

 

「応!『ガガガガール』を召喚!」

着崩した魔法使いの服を着た少女が現れる ATK1000

 

「さらに装備魔法『ワンダーワンド』を『ガガガガール』に装備!そして『ワンダーワンド』の効果発動!装備モンスターをリリースする事で2ドロー!」

ガールが緑色の宝玉が付いた杖を装備する、さらに杖を振りマスターである遊馬に祝福を与える。

 

「よし!来たぜ!魔法カード『RUMーヌメロン・フォース』を発動!『希望皇ホープ』でオーバレイネッ【ビー!ビー!】なんだ!?」 

《「ヌメロンフォース」が発動できないだと!?》

 

「そんな…なんでよ!?」

 

遊馬がドローしたのは希望の象徴「ヌメロンフォース」…しかしデュエルディスクはエラー音を発し効果が発動しない!

 

「悪いな、フィールド魔法『真帝王領域』の効果だ、俺の場にアドバンス召喚したモンスターがいる限り相手はエクストラデッキからの特殊召喚はできなくなる」

 

「なんだって!?」

「『ヌメロンフォース』の効果無効が発動するのはランクアップの後…遊馬の手が読まれている…!奴はいったい…!」

 

「くっ…ターンエンドだ!」

 

「エンドフェイズにリバースカード!永続罠『真源の帝王』を発動!墓地の『連撃』と『深怨』をデッキに戻して1ドロー!」

 

遊馬LP4000

ホープ 伏せ2 手札3(内1枚『ヌメロンフォース』)

 

 

 

 

《攻防一体のデッキ…エクストラデッキからの特殊召喚メタ…隙がまったく無い、彼はカイト以上のデュエリストだ…!》

 

「でも負ける訳にはいかねぇ…相手がバリアンなら尚更だ…!」

 

 

「(どうしたもんかなぁ、話すタイミングが…遊馬達はなんだかヒートアップしてるし…早めに誤解を解いた方がよさそうだな…)」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「永続魔法『進撃の帝王』を発動!さらに再び墓地の『汎神』を除外して効果発動!再びデッキの『深怨』3枚を公開し1枚を手札に加える!そして『深怨』を発動!手札の『烈風帝ライザー』を公開しデッキから『帝王の烈旋』を手札に加える!さらに『真源』の効果を発動!墓地の『開岩』と『深怨』をデッキに戻して1ドロー!」

 

「動きが止まらねぇ!?」

 

「すまない…これで終わりだ、魔法カード『帝王の烈旋』を発動!さらに手札の魔法カード『帝王の凍気』の効果発動!フィールドに攻撃力2400以上守備力1000のモンスターがいる時、相手のセットカードを破壊する!右の伏せカードだ!」

 

「『エクシーズリボーン』が!?」

 

「さらに墓地に送られた『凍気』の効果発動、墓地の『再臨』と共に除外する事でさらにセットカードを1枚破壊する!」

 

《っ…『ダメージ・ダイエット』までも…!》

 

「そして『真帝王領域』の効果発動!手札の『ライザー』を公開しそのレベルを2つ下げる!これでレベル8の『ライザー』は生贄1体で召喚できる!俺は遊馬の場の『希望皇ホープ』をリリースする!」

 

「《なんだって!?/なんだと!?》」

遊海の宣言と共に希望皇ホープが竜巻に飲み込まれる!

 

「俺がさっき発動した『烈旋』の効果…それは発動したターン、アドバンス召喚をする時に相手モンスターを生贄にできる効果だ!現れろ!『烈風帝ライザー』!」

ホープを包んだ竜巻が遊海の場に移動する…そして竜巻が消え緑色の鎧の帝王が現れる ATK2800

 

「バトルだ!『ライザー』でダイレクトアタック!風帝嵐撃!」

ライザーの凝縮された嵐の力が遊馬に襲いかかる!

 

「うわあぁぁ!?」

遊馬LP4000→1200

 

「さらに『アイテール』で追撃!天帝の怒り!」

天空から魔力弾が降り注ぐ!

 

《遊馬!》

「わかってる!手札から『ガガガガードナー』を特殊召喚!このカードは相手から直接攻撃を受ける時に特殊召喚できる!」

盾を持ったヤンキーが現れ攻撃を全て受け止め破壊される。

 

「よく耐えたな…俺はターンエンドだ!」

遊海LP4000

アイテール ライザー 真帝王領域 進撃 真源 手札3

 

 

 

 

《遊馬!大丈夫か!?》

「ああ、アストラル…まだいけるぜ…!!」

 

《ならば…このドローに全てを賭ける!ZEXALだ!》

 

「ああ!でも…この世界で使えるのか?」

 

《できなければ負けてしまう…いくぞ!!》

遊馬とアストラルは顔を見合わせ覚悟を決める!

 

 

「かっとビングだ!オレ!!オレ自身とお前で!オーバーレイ!!」

遊馬とアストラルが赤と青の光に変化し上空に飛び立つ!

 

《私達二人でオーバレイネットワークを構築!》

 

『希望に輝く心と心…二つを結ぶ強い絆が奇跡を起こす!エクシーズチェンジ…ZEXAL!!』

上空で赤と青の光が合わさり光の大爆発が起きる…現れるのは闇を光に変える、強き絆の戦士…ZEXALⅡ!!

 

「遊馬…アストラル…!」

 

「デュエリスト同士が合体した…!(これがZEXAL!!凄まじい力だ…!)」

 

 

『オレのターン!…全ての光よ!力よ!我が右腕に宿り、希望の光を照らせ!シャイニング…ドロー!!』

遊馬…否、ZEXALのデッキトップが輝き勝利に導くカードがドローされる!

 

 

 

『魔法カード「貪欲な壺」を発動!墓地の「ゴゴゴゴーレム」「カゲトカゲ」「ガガガガール」「ガガガガードナー」「希望皇ホープ」をデッキに戻し2枚ドローする!ダブルシャイニングドロー!!』

再びデッキトップが輝き2枚のカードがドローされる!

 

『「サイクロン」を発動!「真帝王領域」を破壊する!』

 

「っ…!手札から『増殖するG』の効果発動!相手が特殊召喚する度に1ドローする!」

フィールドに嵐が吹き荒れ、景色が元の荒野に戻る

 

『そして「ゴブリンドバーグ」を召喚!』

プラペラ飛行機に乗ったゴブリンの編隊が現れる ATK1400

 

「『ゴブリンドバーグ』の効果発動!手札のレベル4モンスター『ガガガマジシャン』を特殊召喚する!」

ゴブリンの編隊がコンテナを開く…その中から着崩した魔法使いの服を着て背中に「我」の文字のある青年が現れる ATK1500

 

「1ドロー!」

 

『オレはレベル4の「ガガガマジシャン」と「ゴブリンドバーグ」でオーバレイ!』

 

No.39

 

『再び現れろ!「希望皇ホープ」!!』

再び希望の戦士が降臨する ATK2500

 

「1ドロー!」

 

『さらにオレは魔法カード「RUMーヌメロンフォース」を発動!「希望皇ホープ」1体でオーバレイネットワークを再構築!!カオスエクシーズチェンジ!!』

ホープが光に変わり銀河に飛び込む!

 

「っ…チェーンして『真源』の効果を発動!墓地の『領域』『烈旋』を戻して1ドロー!!」

 

No.39

 

『現れろ!CNo.39!希望に輝く魂よ!森羅万象を網羅し!未来を導く力となれ!「希望皇ホープレイ・ヴィクトリー」!』

 

「1ドローだ!」

ホープが赤と白の鎧を纏う、これこそは遊馬とアストラル…二人の絆が生み出したホープの新たな姿だった ATK2800

 

 

『そして「ヌメロンフォース」が発動した事で「ヴィクトリー」以外の表側表示のカードの効果は全て無効になる!バトルだ!「ヴィクトリー」で「アイテール」を攻撃!さらに「ヴィクトリー」の効果を発動!このカードがモンスターを攻撃する時、そのモンスターの効果は無効となり「ヴィクトリー」の攻撃力はその攻撃力分アップする!ビクトリーチャージ!!』

ヴィクトリーに格納されていた第三・第四の腕が現れ四刀流になる!

ATK2800→5600

 

『「ヴィクトリー」で「アイテール」を攻撃!ホープ剣ヴィクトリー・スラッシュ!!』

 

4刀流となったホープの剣が振り下ろされアイテールが砕け散り大爆発を起こす!

 

「ぐおおおっ!?」

遊海LP4000→1200

 

 

『オレはカードを伏せ…ターンエンド!』

ZEXAL LP1200

ホープレイヴィクトリー 伏せ1 手札0

 

 

 

「ぐっ…ゴホッ!ゴホッ!…効いたぁ…流石につら…ガフッ…!」

 

「遊海さん!!」

アイテールの爆発に巻き込まれた遊海…ZEXALの纏うフィールは凄まじく肉体的にも大ダメージを受けてしまう。

 

『おい!アンタ…血が…!』

 

「気にするな…ちょっとした体質でね…ZEXALか…確かに凄まじい力だ、だが俺が背負う名に懸けて負ける訳にはいかないなぁ…!」

 

《背負う名だと…?》

 

『アンタ…いったい何者なんだ?』

ZEXALは遊海に問いかける

 

「名乗るタイミングがなかったからな…改めて名乗ろう!我が名は白波 遊海…古き友から受け継いだ称号は『決闘王』!その名に懸けて…お前達を倒す!!」 

 

『決闘王だって…!?』

《聞いた事がある…はるか昔、古代エジプトのあるファラオがその名で呼ばれた事があると…!彼はこの時代でその名を継いだ人物なのか…!?》

 

「さぁいくぜ希望の戦士!俺の力をその身に刻め!!」

 

 

 

「俺のターン!…ドロー!!」

「再び魔法カード『帝王の烈旋』を発動!」

 

『やらせない!カウンター罠「ゴブリンのその場しのぎ」を発動!500ライフを払い魔法カードの発動を無効にし手札に戻す!』

ZEXAL LP1200→700

 

「『烈旋』の発動は1ターンに一度のみ…しかし準備は整った!」

 

『なんだと!?』

 

「相手の場に『家臣トークン』を特殊召喚する事で『雷帝家臣ミスラ』は特殊召喚できる!」

雷を纏った鎧の女性が現れる ATK800

 

さらにZEXALの場にミスラに瓜二つのトークンが現れる DEF1000

 

「そして『ミスラ』をリリースし『邪帝ガイウス』をアドバンス召喚!」

闇を纏う帝王が現れる ATK2400

 

 

「『ガイウス』の効果!『家臣トークン』を除外する!」

ガイウスが魔力を込めた球を家臣トークンに投げつける…そしてトークンは異次元に消え去った…

 

『何故「ホープ」ではなくトークンを…?』

 

「フッ…その答えはこれだ!『ミスラ』をリリースした事で効果が発動している!俺は追加でアドバンス召喚を行なう事ができる!そして…このカードはアドバンス召喚したモンスター1体でアドバンス召喚できる!進化せよ!『怨邪帝ガイウス』!!」

ガイウスがさらなる鎧を纏い進化を遂げる ATK2800

 

『そのモンスターは…!』

《1ターン目に「アイテール」の効果で特殊召喚されたモンスター…!!》

 

「『ガイウス』の効果を発動!アドバンス召喚に成功した時!相手の場のカード1枚を除外し1000ダメージを与える!受けろ!邪帝抹殺波!!」

ガイウスが腕を地面に叩きつける…そこから闇が広がりホープをのみこみ爆発を起こした!

 

「《うわあぁぁ!!》」

 

「遊馬!アストラル!!」

遊馬&アストラル LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

「っ…!遊馬!アストラル!無事か!?」

デュエルの直後、凌牙達が倒れた遊馬達に駆け寄る

 

「イテテ…オレは大丈夫…あ!?アストラル!?」

 

《心配するな遊馬…私も無事だ、…どうやら私達は見逃されたようだ…》

倒れた遊馬の隣にアストラルが現れる、二人の身体は土汚れこそ付いているものの、大きな怪我はしていなかった。

 

 

「すまない、なるべく加減はしたんだが…大丈夫か?」

 

「ああ…アンタよりかは大丈夫だと思うぜ…」

遊海がゆっくりと歩いてくる、服はボロボロで身体も傷だらけになっている…見方によっては遊海が負けたように見えるだろう…。

 

 

「気にするな、そもそも俺のせいだからな…アストラルだったか?お前の感じたNo.の気配は…これだろ?」シュッ!

遊海は1枚のカードをアストラルに投げ渡す

 

《なっ…これは…!?》

 

「どうしたんだよアストラル?そんなに驚いて…ええ!?!?」

遊海の渡したカードを見た遊馬とアストラルは驚きのあまりフリーズしてしまう。

 

 

「おい…何を驚いてるんだ?…なっ…もう一枚の『ホープ』だと!?」

二人の間からカードを見た凌牙が目にしたのは遊馬達の持つ『ホープ』と瓜二つのカード『A(アナザー) No.39希望皇ホープ』だった。

 

「なんで『ホープ』がもう1枚あるんだ!?」

 

《待て…効果が違う!『No.』との戦闘でないと破壊されない効果が無く…エクシーズ素材が無い時に攻撃されると破壊される効果を持っている…!》

 

「俺と翠の出自は少し特殊でね…そのカードはお前達の求めるカードとは違うだろう?」

 

《…このカードには…私の記憶は宿っていない…遊馬、私達は勘違いでデュエルを挑んでしまったようだ…》

 

「マジかよ…ハッ!?…す、すみませんでしたぁぁぁ!!」

荒野に遊馬の謝罪の声が響き渡った…。

 

 

 

 

 

 

 

《一度死を経験した上での転生…そんな事があるのか…》

 

「ああ、それにしても驚いた…まさかタイムスリップどころか平行世界を移動してこの世界に来るなんて…デュエルモンスターズは不思議なもんだ…」

俺とアストラルは情報を交換する、そしてわかったのは遊馬達が「この世界の未来」では無く『アニメ寄りの未来』からやって来た事だろう…その根拠はもちろんシンクロ召喚の有無である、どうやらドルべと超空間で衝突しこの世界に落ちたようだ…。

 

 

「お前達は遺跡のNo.を探しに行く途中だったな?」

 

《ああ、早く元の世界に戻らなければ…》

 

「なら飛行船の修理を手伝おう…アヤカ、いけるか?」

 

《はい!マスター!お任せください!》

 

《デュエルモンスターズの精霊の実体化…驚きだ…だが修理を手伝ってもらえるならありがたい、協力を頼むアヤカ》

 

《えぇ!任せてください!》

 

 

その後二人がかりで修理をおこない、30分程で修理は終わった。

 

 

 

 

 

 

「座標は既にセットしてある、これで元の世界に戻れる筈だ」

 

「遊海…すまねぇ、オレ達の勘違いで…」

 

「気にするな遊馬、失敗は誰にだってあるさ…人は失敗と成功を繰り返して成長する…そういう生き物だよ」

 

「遊海…ああ!失敗は成功の母だ!」

 

「ふっ、その意気だ…遊馬、1人のデュエリストとして一つ助言をしよう」

 

「?」

 

「『お前はお前のままでいい』…どんなに辛くても自分の進んだ道を…かっとビングを信じろ、必ずお前は世界を救えるだろう!」

 

「遊海…応!かっとビングだ!オレ!!」

 

「ああ!かっとビングだ!遊馬!」

遊海と遊馬は拳を合わせエールを贈りあった…。

 

 

 

 

「遊海…疑って悪かったな…」

 

「気にするな凌牙…紛らわしい事をしたのは俺だからな…。そうだ…お前にもアドバイスだ」

 

「なんだ?」

 

「『自分を見失うな』…俺から言えるのはこれだけだ、何かに迷ったら今までの事を思い返せ…必ず答えは出る」

 

「…?わかった、心の隅に覚えておくぜ」

 

 

 

 

「じゃあな遊海!またいつか会えたらデュエルしようぜ!」

 

「ああ!じゃあな遊馬!世界を救う勇者!」

 

ウィーン…ゴゴゴ…

飛行船が浮上し空間に穴が開く…そして飛行船は超空間へと消えていった…。

 

 

 

「行っちゃいましたね…」

 

「ああ、でも…あいつらならきっと大丈夫だ!…さぁ帰ゴフッ!」

 

「きゃ〜!?遊海さーん!?」

 

 

こうしてあり得ざる異世界との交流は幕引きを迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

「しっかし…強かったな〜遊海…でも次は絶対に勝ってやるぜ!」

 

《遊馬…それは難しいかもしれないぞ》

 

「えっ…?なんでだよアストラル?」

飛行船にてあり得ざる出会いを経験した遊馬は異世界の決闘王にリベンジに燃えるが…アストラルがそれを制する…。

 

《彼に見せられた「A No.」…アレには私の記憶は宿っていなかったが…その代わり彼の記憶の一部が宿っていた。…先程の彼はおそらく本気の2割も出していないだろう…!》

 

「な、なんだって…!!」

 

《彼は幾度も困難な敵を相手にし、それに勝利している…「決闘王」の名に偽りは無い、彼は全ての決闘者の頂点に立つ男だ…!》

 

「そうなのか…でも、わずかでも勝てる可能性があるなら…オレは…オレ達は勝利を掴んでみせる!かっとビングだ!オレ!!」

 

《…君は相変わらずだな遊馬…そうだな、遊馬と私がいれば不可能な事など無い!次こそは勝つぞ!遊馬!!》

 

「応!!」

 

 

勇士達は異次元を進む…その後、彼らが障害を越え、3つの世界を救ったのはまた別の話である。




というわけで…遊戯王ZEXALから遊馬達の先行登場でした!
彼らの世界は「アニメ寄りの平行世界」なのでこの後に出てくる「遊海のいる世界」の遊馬達とは別人となるのであしからず…。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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さらなるスピードを求めて〜新たなる世界〜

「お疲れ様です海馬社長!」

 

『うむ、よく来た、では…早速頼むぞ!』

 

「はい!」

 

 

とある休日、海馬社長に呼び出された俺はKCのテストサーキットに来ていた。

 

『今回はWRGP開催に合わせた新たなフィールド魔法…「スピード・ワールド2」のテストプレイをしてもらう!準備はいいな?』

 

「はい!…それで対戦相手は…ライディングロイドですか?」

ライディングロイド…5D's本編でイリアステルに盗まれ「ゴースト」や「ディアブロ」と呼ばれる元々はDホイーラー検挙のためのロボットである。

 

『いや、今回はアレではない…これだ!!』ポチッ

海馬社長がリモコンを作動させる…そして1台の流線型のバイクが自動運転で走ってくる、どことなくブルーアイズを彷彿とさせるデザインだが…まさか…

 

『これはオレ専用のDホイール「ブルーアイズバースト」…今回のテストプレイの相手はオレだ!』

そういうと海馬社長はヘルメットを被りDホイールに跨がる。

 

「マジですか…!?」

 

『いたって真剣だ!…アテムとの戦いで久々に熱い魂を呼び起こされたのだ…手加減はいらん!デュエルだ!』

 

「受けて立ちます…海馬さん!!」

 

 

 

 

 

 

【ライディングデュエル・スタンバイ…ニューシステムアップデート…コンプリート!!】

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

 

 

 

海馬LP4000 SP0

遊海LP4000 SP0

 

 

 

特殊ルール ライディングデュエル

スピードワールド2常時発動

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP0→1

『「Spーオーバー・ブースト」を発動!自分のスピードカウンターをエンドフェイズまで4つ増やす!』SP1→5

 

『さらに「Spースピードフュージョン」を発動!自分のスピードカウンターが4つ以上ある時!自分の手札・フィールドのモンスターを墓地に送り融合召喚扱いで融合モンスターをエクストラデッキから特殊召喚する!オレは手札の「青眼の白龍」2体を融合!現れろ!「青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツインバースト・ドラゴン)」!!』

2体の龍が融合し双頭のブルーアイズが現れる ATK3000

 

「いきなりか…!」

 

『さらに「青き眼の乙女」を召喚!』

白く美しい髪を持った青目の少女が現れる ATK0

 

『カードを1枚伏せターンエンド!「オーバーブースト」の効果でオレのスピードカウンターは1つになる!』

海馬LP4000 SP1

爆裂龍 乙女 伏せ1 手札0

 

 

 

 

「容赦ないですね海馬さん!というか前より強くなってません!?」

 

『フン!当たり前だ!オレは社長であると共に決闘者だ!…お前と遊戯を超えるために研鑚を積んできたのだ!!』

 

「そうですか…なら俺も本気でいきますよ!!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP1→2

「相手フィールドにレベル5以上のモンスターがいる時!手札の『ジャンク・ジャイアント』は特殊召喚できる!」

両肩にドリルの付いた巨人が現れる DEF2400

 

「そして手札の『レベルスティーラー』を墓地に送る事で『クイックシンクロン』は特殊召喚できる!」

ガンマン風の姿をしたロボットが現れる ATK700

 

「さらに『クイックシンクロン』のレベルを一つ下げる事で墓地の『レベルスティーラー』は特殊召喚できる!」

クイックシンクロンのレベルを喰らい一つ星のてんとう虫が現れる ATK600

 

クイック☆5→4

 

「『クイックシンクロン』は『シンクロン』と名のつくチューナーの代わりにシンクロ素材にできる!俺はレベル1の『レベルスティーラー』にレベル4の『クイックシンクロン』をチューニング!」

 

1+4=5

 

「集いし星が音速の戦士を呼び覚ます!シンクロ召喚!突撃せよ!『ジェット・ウォリアー』!」

黒い機体の戦士が現れる ATK2100

 

「『ジェットウォリアー』の効果発動!シンクロ召喚に成功した時!相手の場のカードを1枚手札に戻す!俺が選ぶのは『双爆裂龍』!ジェットバウンス!」

 

『させん!リバース罠「亜空間物質転送装置」を発動!エンドフェイズまで「双爆裂龍」を除外する!』

ジェットウォリアーのジェットエンジンが作動し双爆裂龍を吹き飛ばそうとするが、亜空間へと飛ばされた事で効果が不発となる。

 

「なら『ジェット・シンクロン』を召喚!」

青と白のカラーリングのジェットエンジン型ロボットが現れる ATK500

 

「そして再び墓地の『レベルスティーラー』の効果を発動!『ジェットウォリアー』のレベルを一つ下げ、自身を特殊召喚!」

レベルを喰らい再びてんとう虫が現れる ATK600

 

ジェット☆5→4

 

「俺はレベル6の『ジャンクジャイアント』とレベル1『レベルスティーラー』にレベル1の『ジェットシンクロン』をチューニング!」

 

6+1+1=8

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に轟け!シンクロ召喚!現れろ!『閃光竜スターダスト』!」

光を纏い遊海の守護竜である決闘竜の1体が降臨する ATK2500

 

『来たか…「スターダストドラゴン」に酷似したお前のドラゴン…!』

 

 

「さらに墓地から『ジェットシンクロン』の効果を発動!手札を1枚捨て自身を特殊召喚する!…ただしこのカードはフィールドを離れたら除外される!」

再びエンジン型のロボットが現れる ATK500

 

「そして俺はレベル4の『ジェットウォリアー』にレベル1『ジェットシンクロン』をチューニング!」

 

4+1=5

 

「速さを求める魂が!新たな力を覚醒する!シンクロ召喚!疾走せよ!『アクセル・シンクロン』!」

胴体がバイクになっているロボットが現れる DEF2100

 

「『アクセルシンクロン』の効果発動!デッキからレベル3『ジャンクシンクロン』を墓地に送り、このモンスターのレベルを3下げる!」

アクセルシンクロンはジャンクシンクロンのデータを読み込みレベルを変動させる ☆5→2

 

 

「(今出せる…全力で!!)俺は!レベル8の『閃光竜』にレベル2となった『アクセルシンクロン』をチューニング!!」 

 

『それは…!17年前の!!』

 

8+2=10

 

「集いし力が拳に宿り!鋼を砕く意志と化す!アクセル…シンクロォォォ!!!」

その一瞬、遊海のDホイールは目視できるスピードを超え…限界を超えたDホイールは海馬の目の前から消え去る!

 

『なっ…遊海が消えただと!?』

海馬の目の前から消えた遊海…しかし、それは一瞬の事…ソニックブームを起こしながら再び遊海、そしてスターダストの面影を持つ戦士が現れる!

 

「現れろ!神速の戦士!『スターダスト・ウォリアー』!!」

ATK3000

 

『シンクロモンスター同士でのシンクロ召喚だと…!まだ我が社でも開発できていないぞ…!』

 

「これが今出せる俺の全力です!俺はさらに『スターダストウォリアー』のレベルを下げる事で再び『レベルスティーラー』を特殊召喚!」

三度、てんとう虫が現れる…もはや過労死レベルである ATK600 ☆10→9

 

「バトル!『スターダストウォリアー』で『青き眼の乙女』を攻撃!シューティング・スター・フィスト!!」

神速の拳が乙女へと振るわれる!

 

『させん!「乙女」の効果発動!攻撃対象となった時!攻撃を無効にし、このカードを守備表示に変更!さらにデッキから現れろ!我が魂!『青眼の白龍』!!』

《La〜…》

乙女が跪き祈りを捧げる、スターダストウォリアーの拳はバリアに防がれ…天空から伝説の龍が降臨せんとする…! ATK0→DEF0

 

 

「させない!『スターダストウォリアー』の効果発動!自身をリリースしモンスターの特殊召喚を無効にし破壊する!ヴィクテムカウンター!」

神速の戦士がその身を粒子に変える…そして降臨しかけた龍は消え去った…。

 

『チィ…これがお前の本気か遊海…!』

 

「えぇ!これが人類の行き着くシンクロ召喚の極致!アクセルシンクロ!…俺はこのままターンエンド!エンドフェイズに『スターダストウォリアー』は戻ってくる!」

 

『そしてオレの「双爆裂龍」も帰還する!』

海馬の場に再び双頭の白龍が現れる ATK3000

 

遊海LP4000 SP1

スターダストウォリアー 手札1

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』SP2→3

『バトルだ!「双爆裂龍」で「レベルスティーラー」と『スターダストウォリアー』を攻撃!「双爆裂龍」はモンスターに対し二回攻撃ができる!喰らえ!撃滅のツインバースト!!』 

2本の首がそれぞれエネルギーを貯め「滅びのバーストストリーム」を放つ!

 

「『双爆裂龍』の『スターダストウォリアー』に対する攻撃時!手札から『ラッシュウォリアー』の効果を発動!このカードを墓地に送り!攻撃力を倍にする!迎え撃て!シューティング・アサルト・ナックル!!」

攻撃力6000となったスターダストウォリアーの拳がバーストストリームを裂き『双爆裂龍』に直撃する!

 

『ぐおおお!!?』

海馬LP4000→1000 

 

『やるな…しかし!甘いぞ!!「双爆裂龍」は戦闘では破壊されず、戦闘で相手モンスターを破壊できなかった時!そのモンスターを除外する!消え去れ!「スターダストウォリアー」!』

爆煙から現れた双爆裂龍が再びブレスを放つ、それはスターダストウォリアーの身体を貫き粒子へと変える!

 

「まだだ!「スターダストウォリアー」が自分の場から離れる時!エクストラデッキからレベル8以下の『ウォリアー』シンクロモンスター…『ロード・ウォリアー』を召喚条件を無視して特殊召喚できる!!」

粒子が集い、気高き戦士の王が現れる ATK3000

 

『くっ…リカバリーも万全か…!ターンエンドだ!』

海馬LP1000 SP2

双爆裂龍 乙女 手札1

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP3→4

「『Spーエンジェルバトン』を発動!2枚ドローして1枚捨てる!…さらに墓地の『ラッシュウォリアー』を除外して効果発動!墓地の『ジャンクシンクロン』を手札に加える!そして『シンクロン・キャリアー』を召喚!」

背中にクレーンの付いたロボットが現れる ATK0

 

「さらに俺は『シンクロンキャリアー』の効果で『ジャンクシンクロン』を通常召喚!『ジャンクシンクロン』の効果で墓地の『ボルトヘッジホッグ』を特殊召喚!」

オレンジ色のロボットと全身の針がネジになっているハリネズミが現れる ATK1300  DEF800

 

「そして『ロードウォリアー』のレベルを下げて『レベルスティーラー』を特殊召喚!」

再びてんとう虫が現れる…心なしか疲れているように見える ATK600

 

「俺はレベル2『ボルトヘッジホッグ』とレベル2『シンクロンキャリアー』とレベル1の『レベルスティーラー』にレベル3『ジャンクシンクロン』をチューニング!!」

 

2+2+1+3=8

 

「集いし闘志が怒号の魔人を呼び覚ます!シンクロ召喚!薙ぎ払え!『ジャンク・デストロイヤー』!!」

破壊者の名をもつ4本腕の魔人が現れる ATK2600

 

『……』

 

「『ジャンクデストロイヤー』の効果発動!このカードのシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの数まで相手フィールドのカードを破壊する!『双爆裂龍』と『乙女』を破壊!タイダルエナジー!!」

破壊の波動が爆裂龍と乙女を飲み込み破壊する!

 

『……』

 

「…?…『ロードウォリアー』でダイレクトアタック!」

ロードウォリアーが海馬に飛びかかりそのライフを削り取った。

 

 

海馬LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

『…遊海、ちょっと来い…』

 

「はい?」

デュエル終了後、遊海は海馬に呼ばれる

 

 

『スゥ…この馬鹿者が!!』ゴチン!!

 

「あいたぁっ!?」

海馬は遊海の頭に拳骨を叩き込む…なお20才で成長が止まっている遊海よりも海馬の方が少し背が高かったりする。

 

「いつつ…なにするんですか海馬さん!」

 

『馬鹿者!今回のデュエルは「スピードワールド2」のテストデュエルだと言っただろうが!効果を使わずにデュエルを終わらせてどうする!!』

 

「あっ…(汗)」

 

『確かに本気でこいとは言ったが…限度があるだろう!!世界のデュエリストでも貴様と同じレベルなど数える程しかいないのだ!』

 

「す、すいません…熱くなりすぎました…」

 

『反省しているならば良い!…もう一度デュエルだ!!…無論、別のデッキでな…』

 

「は、はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ライディングデュエル・スタンバイ!!】

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

 

 

 

遊海LP4000 SP0

海馬LP4000 SP0

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP0→1

「『聖刻龍ーアセトドラゴン』は攻撃力を1000にする事でリリースなしで召喚できる!」

朝を司る龍が現れる ATK1900→1000

 

「さらに『聖刻龍ーシユウドラゴン』は『聖刻』モンスターをリリースして特殊召喚できる!さらにリリースされた『アセト』の効果で通常モンスター『ギャラクシーサーペント』をデッキから特殊召喚!」

青い聖刻龍と星の煌めきをもつ竜が現れる ATK2200  DEF0

 

「レベル6の『シユウ』にレベル2の『ギャラクシーサーペント』をチューニング!」

 

6+2=8

 

『再び現れろ!シンクロ召喚!「閃光竜スターダスト」!』

スターダストドラゴンの写し身の竜が現れる ATK2500

 

「カードを1枚伏せターンエンド!」

遊海LP4000

閃光竜 伏せ1 手札3

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP1→2

『「Spーオーバーブースト」を発動!スピードカウンターを4つ増やす!』

SP2→6

 

「え…」

 

『さらに手札から「Spースピードフュージョン」を発動!手札の3体の「青眼の白龍」を融合!現れろ!!|「真青眼の究極竜」《ネオブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン》!!』

新たなる力を手にした究極竜が顕現する ATK4500

 

「ちょっと…」

 

『バトル!「真究極竜」で「閃光竜」を攻撃!ハイパー・アルティメット・バースト!』

 

「待って!?『閃光竜』の効果!波動音壁(ソニックバリア)!?」

 

『無駄だ!「真究極竜」は3回攻撃ができる!!アルティメットバースト!サンレンダァ!!』

 

「それはダメだってぇぇぇ!?」

 

遊海LP0

 

海馬WIN!

 

 

 

 

 

 

『…すまん、熱くなり過ぎた…』

 

「お互い様ですね…もう一度やりましょう…」

 

 

その後、深夜までデュエルを続けたが…『スピードワールド2』が真価を発揮する事は無かった…

 

 

 

 

 

『ゼェ…ゼェ…今日はここまでだ…効果を発動できなかったが…データは取れたからな…』

 

「そ、そうですか…それならよかった……」

 

「お疲れ様です遊海さん、海馬さん…」

 

「まったく…兄様も遊海も大人げないんだから…」 

 

ピットスペースで休む遊海と海馬…そのそばには二人の帰りが遅く心配し駆けつけた翠、そして成長し好青年となったモクバの姿があった。

 

 

『遊海…WRGPの事だが…』

 

「なんですか…?」

 

『お前は出場するのか?…「決闘王」、お前が声をかければ遊戯も十代も…他の奴らも協力するだろう』

 

「それは…」

それは実際、遊海が悩んでいる事だった。イリアステルの襲撃に備え、彼らを守るには遊星達のそばにいる方がいい…その一方で遊海は決闘者の性として大会に参加したいとも思っていたのだ…。

 

 

『お前が出るとなればデュエル界に激震が走るだろう…17年前に表向き行方不明となったお前が復活を果たせばな…』

 

「まだ半年以上時間があります…ゆっくり考えますよ」

 

『そうか、じっくりと考える事だな…今日は解散だ、また何かあったら頼むぞ遊海』

 

「えぇ、いつでもどうぞ海馬さん」

二人の男は夜空を見上げる、その時…流れ星が一条、流れ落ちた…

 

 

 

 

 

Side海馬

 

 

「兄様のあんな顔、久しぶりに見たな〜」

 

『何をいうモクバ、あんな顔とはなんだ?』

海馬邸へと戻る車の中…海馬兄弟は言葉を交わす

 

「へへっ…あんな『楽しそうな顔』をした兄様はって事!嬉しいんだろ?遊海が復活してさ?」

 

『…否定はせん、奴は決闘者の頂点に立つ男だ…その復活が嬉しくないはずがないだろう?』

 

「もう、そういうのじゃなくてさぁ…あっ!そうだ報告があるんだ兄様」

 

『なんだ?』

 

「1つは…開発中のライディングロイドが治安維持局の研究所から盗まれたんだ、今セキュリティが血眼で探してる…」

 

『何?…あの研究所の防犯は完璧だった筈だが…もう1つは?』

 

「もう1つはその治安維持局、レクスの後任の長官が決まったみたいだよ」

 

『そうか…今までは磯野を出向させていたが…後任は誰だ?』

 

「うん、ホセ・イリアステルとプラシド・イリアステル、それにルチアーノ・イリアステルの三人長官だってさ…なんでも理事会の全会一致で決まったとか…」

 

『なっ「イリアステル」だとぉ…!?行き先変更だ!遊海の家に迎え!!』

 

〔り、了解しました!!〕

モクバの話を聞いた海馬はすぐさま目的地を変更する。

 

「兄様!?いったいどうしたんだよ!」

 

『モクバ…この町に危険が迫っている…!以前の「ドーマ」の時のように…!至急、遊海と相談せねばならん…!』

海馬は急いで遊海のもとへと向かう…WRGPまで残り1年に差し掛かろうとしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…久しいなホセ、プラシド、ルチアーノ』

 

『ああ、久しぶりだなゲイザー…息災だったか?我ら未来人の中で生身なのはお前と運命の神だけだからな』

 

『問題ない…それからこれを渡しておく、KC謹製のデュエルロイドだ、上手く使ってくれ』

 

「フン…ただの木偶だが…この時代の奴らにシンクロ召喚の不必要を知らしめるためには有効だ、早速リプログラミングしよう」

 

「キッヒッヒ、それで…お前はどうするのさゲイザー?」

 

『お前達に任せる…しばらくは静観するさ、全ては…』

 

「「『未来を変えるために』」」

 




今回のスピードスペル!

スピードワールド2
フィールド魔法

このカードはライディングデュエル時に必ず発動される。このカードはフィールドから離れない。
自分が「Spー」以外の魔法カードを発動した時、2000ダメージを受ける。
①お互いのターンのスタンバイフェイズ時に発動する、自分のスピードカウンターを1つ増やす。(最大12個まで)
②自分のスピードカウンターを任意の数取り除き以下の効果を発動できる。
・4個 自分の手札の「Spー」の数×800ダメージを相手に与える。
・7個 自分のデッキから1枚ドローする。
・10個 相手フィールドのカードを1枚選んで破壊できる。



Spースピード・フュージョン
通常

自分のスピードカウンターが4つ以上ある時に発動できる。
①手札・フィールドから決められたモンスターを墓地に送り、エクストラデッキから融合モンスターを特殊召喚する。(この召喚は融合召喚として扱う)


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第3章 前半 WRGP準備編
新たなる脅威〜忍び寄る魔の手〜


こんにちは!S.Kです!第3章WRGP・準備編の開幕です!

また、活動報告にてちょっとしたアンケートを取っています、よければご回答お願いします!

それでは最新話をどうぞ!


コツ…コツ…コツ…

 

真っ白な空間に足音が響く…足音の主は黒いコートを纏い黒いバイザーで目元を隠した男…ゲイザー、彼はある場所で足を止める、彼の目の前…そこには巨大な機械がさかしまに浮いていた…。

 

【来ましたか…我が友●●●●よ…】

宙に浮く機械から機械音混じりの男の声が響く、彼の名はZーONE…破滅の未来の救済を望み、永き時を生きてきた『人類最後の1人』となった男である。

 

 

『ゾーン、悪いがその名では呼ばないでくれ…オレにその名は不釣り合いだ、オレはただの傍観者なのだから…』

 

【そうでしたね…貴方はこの名前が嫌いだった、気を付けましょう…首尾はどうですか?】

 

『ダークシグナー達はシグナー達に倒された…イレギュラーである「闇の大邪神」も白波 遊海の手で完全に消滅した、想定外としては奴の力が完全に復活した事だ…シグナーの運命力までは計算に入っていなかった、すまない…』

 

【良いのですゲイザー、多少の誤差は生じるもの…大局に影響は無いでしょう】

 

『そうだといいのだが…とりあえず奴はこちらに干渉するすべは持っていない、もし何かあれば…オレが対処しよう』

 

【わかりました、ではプランB…『ネオドミノシティ抹殺作戦』を実行に移します、頼みましたよ…ゲイザー】

 

『了解した…()()()()を救う為…オレも命を懸けよう、…我が罪を償う為に…』

ゲイザーはゾーンに背中を向け歩きだした。

 

 

【…ゲイザー、あなたが気に病む事はない…滅亡の原因は人類全てのせいなのですから…ゴホッ…ゴホッ…!】

ゾーンは去っていくゲイザーの背中を見送りながら呟いた…。

 

 

 

 

 

コツ…コツ…コツ……

 

ゲイザーは歩みを進める…その気になれば瞬間的に移動できるが、彼は来た時と同じように歩いていた…そしてある場所で歩みを止める…。

 

 

『…久しぶりだな…●●●、遂にこの時がきたよ…俺の…俺達の贖罪の時が…』

ゲイザーはその場所にあるモノに声をかける…その表情はバイザーにより伺い知る事はできないが…彼は泣いていた…。

 

『お前と別れて…もう60年以上も経つのか…、もう悲しい未来は繰り返させない…必ず過去を変え、未来を救ってみせる…!…そうすれば…お前も…きっと…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダークシグナー事件から半年が過ぎた、その間にネオドミノシティは大きな変化を遂げた。

 

シティと旧サテライトを繋ぐネオ・ダイダロスブリッジの完成

 

ライディングデュエル優先の可変式高速道路・ライディング・レーンの完成

 

新たなるスピードワールド『スピード・ワールド2』の配信、そして1年後に開催が決まったライディング・デュエルの祭典…WRGPの開催、シティ全体に活気が漲っていた、そんな中…シティのとあるガレージで奮闘する三人の姿があった…。

 

 

 

 

「エンジン出力70…80…85%…!」

 

「よっしゃ!ジャック!そのままレッドゾーンにぶち込め!!」

 

「任せろ!!このジャック・アトラスに成し遂げられない事はない!!」

シティのとあるガレージにDホイールのエンジン音が鳴り響く…それは実験用のフレームでエンジンの調整をする遊星達のものだった…しかし

 

 

Warning!…Warning!…Warning!

 

「不味い!?ジャック!アクセルを緩めるんだ!!」

 

「聞こえんぞ遊星!なんだ!!」

 

「ジャック!アクセル!!アクセルを!」

 

 

ドッカーン!!!

 

 

クロウと遊星の警告も虚しくエンジンが大爆発を起こす…周囲に爆音が響き人が集まってくる…。

 

 

「ゴホ!ゴホ!!…二人とも大丈夫か!?」

 

「ゲホ!ゲホ!!なんとかな…」

爆発のガレキの中から遊星とクロウが這い出す、爆発によりガレージの中は凄まじい惨状になっていた…。

 

「…どうなってるんだ!遊星!!」

さらに爆心地にいたジャックも顔を出す…決闘者の耐久力はいったいどうなっているのだろうか…?

 

 

「ジャック!おめぇがアクセルを戻さないから!!」

 

「なんだと〜!!」

クロウとジャックが言い争いを始める…その時ガレージに女性の声が響く

 

「こらぁ〜!!またアンタ達かい!?」

 

「げっ…ゾラの婆さん…!?」

 

「くっ…うるさいババァだ…」

ジャック達を怒鳴りつけた彼女の名前はゾラ、マーサの古い知り合いであり、シティで時計店「ポッポタイム」を営む女主人である。

WRGPに出場するために遊星達はサテライトを離れ、ポッポタイムの地下を間借りし準備を進めている…つまりゾラは大家にあたる訳で…爆発が起きたら怒鳴りこんでくるのも当然だろう。

 

 

「なんだい?その言い草は!?マーサの知り合いだから貸してやってるのに!問題を起こすなら出ていっておくれ!!」

 

「待っって!!これは事故だ!!Dホイールのエンジンが!」

 

「さっそく言い訳かい!?男なら自分のした事ぐらい責任持ちな!!」

 

「むぅ…」

ジャックの言葉に耳を貸さずゾラは怒鳴る…これにはさしものジャックといえどたじたじである…が

 

「すまないゾラ…実験で無茶をしてしまって…」

 

「あら!遊星ちゃ〜ん!いいのよ!失敗は成功の母!…立場的に一応叱っておかないとね?」

 

「あ、ああ…」

遊星に対しては猫なで声である…その変わり様に遊星達も唖然とするのであった…。

 

 

 

 

 

ピーポーピーポー…

 

「あら!?この音はセキュリティかい!?」

騒ぎが一段落した頃…特徴的なサイレンの音が聞こえてくる…それはセキュリティのサイレンであった。

 

「誰だい?セキュリティを呼んだのは…こんな爆発くらいで…」

 

『フッ…なんだまた失敗したのかお前達…、ご安心を…今回は別件で来たのです』

パトカーから出てきた偉丈夫が丁寧に声をかける…それは昇進を果たし「特別捜査室」の所属となった牛尾、そして狭霧だった。

 

「あなた達に話があるの…!」

 

 

 

 

 

 

「『ゴースト』による無差別襲撃事件…?」

 

「そうだ、その解決をお前達に手伝って欲しいんだ…」

牛尾達の話…それは最近頻発している謎のDホイーラー『ゴースト』によるDホイーラー連続傷害事件への協力要請だった。

謎のDホイーラー『ゴースト』…無差別にDホイーラーを襲い、相手を違法な手段でクラッシュさせ怪我を負わせる謎の人物である。  

 

「だ、ダメだダメだ!オレ達は1年後のグランプリの準備で忙しいんだよ!!」

クロウは反対の声をあげる、遊星達3人は遂に一つとなったシティとサテライト…その新しい街に貢献したいと遊星達はスポンサーを得ず、自分達の力で準備を成し遂げようとしていた…。

 

「遊星はマシンの開発!オレとジャックは資金の調達!…そんな危ない橋を渡れるかよ!!」

 

『クロウ…』

 

 

「だったら俺が手伝いましょうか?…牛尾さん?」

 

 

「あっ…遊海さん!お久しぶりです!!」

 

『遊海!いいのか!?』

ガレージに第三者の声が響く…それは遊星達の様子を見に来た遊海であった。

 

 

「まったく…爆発に気づいて見にきてみれば厄介な事になってるな…牛尾さん大丈夫ですよ、そもそもこの街を守るのが今の俺の…『鋼の騎士』の役目ですから…!」

 

『遊海…!すまねぇ…頼むぜ!』

 

「えぇ…任せてください!遊星!お前達もDホイールの開発、頑張れよ!」

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

遂にWRGPまで、残り1年となった…研究所からのデュエルロイドの盗難、同時期からの襲撃事件…そして新たな治安維持局長官の就任…海馬さんから相談を受けた俺は秘密裏にゴースト事件を調査していたが尻尾を掴めないでいた…遂に事態が動き出す…!

 

 

 

『これよりメタルナイトと合同の違法Dホイーラー「ゴースト」の捜査を行なう!デュエルチェイサーズ…出動!!』

牛尾さんの号令と共にセキュリティのエリート部隊「デュエルチェイサーズ」が出動する…俺は彼らと合同でゴーストに挑もうとしていた。

 

 

『メタルナイト!マルタイを見つけたら無理はするなよ!アンタの強さは知ってるけどよ!』

 

 

「了解です!牛尾さん!そちらも気をつけて!!」

 

『応!アイツを捕まえたら一杯行こうぜ!!』

 

そして俺は牛尾さんと別れ、ゴースト捜索に向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アヤカ!反応は?」

 

《今のところありません!》

走り始めて数十分が経過した、未だゴーストの影も形も無い…今はシティの外れ辺りを走っているが…

 

 

「(俺もここしばらくゴーストを探してたけど…何故か姿を現さないんだよな…俺を避けてるのか…?それともたまたまか?)」

遊海は個人的にゴーストを探していたが、見つけられずにいた…しかし…今日は違うようだ。

 

 

《マスター!後方からDホイールの接近を確認しました!セキュリティ・データベース照合…コード・アンノウン!!》

 

「来たか…!」

俺の後ろからDホイールのライトが近づいてくる、しかし…その様子がおかしい…?

 

「3台だと…!?」

近づいてくるDホイールは3台…しかも近づくにつれその正体が明らかになる…それは…

 

 

 

『貴様が「メタルナイト」…いや「決闘王」白波 遊海か…』

 

『キッヒッヒ…趣味のいい鎧じゃん!おもしろそうだね、お前…!』

 

『白波 遊海…お前には消えてもらおう…!』

 

「イリアステルの三皇帝だと…!?」

 

 

遊海の前に姿を現したのはゴーストでは無かった…。

 

一人目はD・ボードに乗った赤髪の少年・ルチアーノ

 

二人目は銀色の髪をした青年・プラシド

 

三人目は三人の中で一番大柄でDホイールと合体した老人・ホセ

 

滅四星の一人・アポリアの分け身たるイリアステル三皇帝が姿を現したのだ…!

 

 

「おいおい…!いきなりラスボスの登場かよ…!」

 

『決闘王・白波 遊海、お前は我らの計画の邪魔になる…ここで倒れてもらおう…!』

 

 

【ライディングデュエルスタンバイ…バトルロイヤルモードON…!】

 

「強制デュエルモード…!チッ、しょうがねぇ…!やってやる!!」

 

 

 

『『『「デュエル!!」』』』

 

ルチアーノLP4000

プラシドLP4000

ホセLP4000

遊海LP4000

 

 

特殊ルール ライディングデュエル・バトルロイヤルモード

スピードワールド2 常時発動

 

ルチアーノ→プラシド→ホセ→遊海 

遊海ターンから攻撃可能

 

 

 

 

 

 

『僕のターン!ドロー!』SP0→1

『「スカイ・コア」を召喚!』

水色の卵のような機械が現れる ATK0

 

『カードを伏せてターンエンド!』

ルチアーノLP4000 SP1

スカイコア 伏せ1 手札4

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP1→2

『「ワイズ・コア」を召喚!』

白色の卵のような機械が現れる ATK0

 

『カードを2枚伏せターンエンド!』

プラシドLP4000 SP2

ワイズコア 伏せ2 手札3

 

 

 

『私のターン!ドロー!』SP2→3

『「グランド・コア」を召喚!』

茶色の卵のような機械が現れる ATK0

 

『キッヒッヒ!リバースカードオープン!「激流葬」を発動!フィールドのモンスターを全て破壊するよ!』

激流が三皇帝のフィールドを洗い流す…しかし

 

 

『キッヒッヒ!「スカイ・コア」の効果発動!このカードが破壊された事でデッキ・手札・墓地から「機皇帝スキエル∞」「スキエルT(トップ)」「スキエルA(アタック) 」「スキエルG(ガード)」「スキエルC(キャリア)」を特殊召喚!』

ルチアーノのフィールドに昆虫モチーフにした機械のパーツが現れる ATK0  DEF0  DEF300  DEF0  DEF0

 

『さらに「スキエル∞」の効果発動!このカードの攻撃力は自分フィールドの「スキエル」と名のついたモンスターの攻撃力の合計となる!合体しろ!「機皇帝スキエル∞」!』

5体の機械が∞の紋章が描かれたパーツを中心に合体…鳥型で青色の機皇帝・スキエル∞が現れる! ATK0→2200

 

 

『貴様にシンクロ・キラーの恐怖を教えてやろう…!「ワイズ・コア」が破壊された事でデッキ・手札・墓地から「機皇帝ワイゼル∞」「ワイゼルT」「ワイゼルA」「ワイゼルG」「ワイゼルC」を特殊召喚!』

プラシドのフィールドに白色の機械のパーツが現れる ATK0  DEF0  ATK1200  DEF1200  DEF600

 

『「ワイゼル∞」の攻撃力は自分フィールドの「ワイゼル」と名のついたモンスターの攻撃力の合計分アップする!合体しろ!「機皇帝ワイゼル∞」!』

5体の機械が∞の紋章のパーツを中心に合体…白色の機皇帝・ワイゼル∞が現れる! ATK0→2500

 

 

『覚悟するがよい、白波 遊海!「グランド・コア」が破壊された事でデッキ・手札・墓地から「機皇帝グランエル∞」「グランエルT」「グランエルA」「グランエルG」「グランエルC」を特殊召喚!』

ホセのフィールドに茶色の機械のパーツが現れる ATK0  DEF0  DEF0  DEF600  DEF1200

 

『そして「グランエル∞」の元々の攻撃力は私のライフの数値と同じになる!合体せよ!「グランエル∞」!』

5体の機械が∞の紋章を中心に合体…茶色の重厚な機皇帝・グランエル∞が現れる…これでフィールドに「天地人」を司る機皇帝が降臨した…! ATK0→4000

 

 

「おいおい…!ボスラッシュにも程があるだろ…!?」

 

『お前は我らの計画を知る者…邪魔をさせる訳にはいかない、「Spーカウント・アップ」を発動!手札の「機皇兵グランエル・アイン」を墓地に送りスピードカウンターを2つ増やす!』SP3→5

 

『さらに「Spーソニック・バスター」を発動!「グランエル∞」の攻撃力の半分、2000ダメージを相手に与える!!』

グランエルAから雷撃が放たれ遊海に直撃する!

 

「ぐあぁぁぁ!?」

遊海LP4000→2000

 

『私はカードを1枚伏せターンエンド!』

ホセLP4000

グランエル∞TAGC 伏せ1 手札1

 

 

 

 

「ぐっ…!いくらなんでも容赦なさ過ぎだろ…!?」

ダメージでふらつくDホイールを制御しながら遊海は周りを見る…前方にはスキエル、右後方にはワイゼル、左後方にはグランエル…逃げ場が無い…!

 

 

『貴様は邪魔な存在だ、貴様達は過去を改変しようと消えなかった…』

 

『だ・か・ら僕達がこうして出てきた訳!ねぇ…大人しく死んでよ?』

 

『我らは破滅の未来を救う為にこの時代に来た…神に願い、我らの石板も先に送って頂いた、白波 遊海…未来の礎になってもらうぞ…!』

 

「ふざけるな!!この街を…世界を守るのが俺の使命だ!こんな所で倒れる訳にはいかない!!精霊転身!太陽神の鎧!」

遊海は太陽神の鎧を纏う…未来を懸けてその引きに全てを賭ける…!

「(この状況から逆転するにはあのカードを引くしか無い…!頼むぜ…俺のデッキ!!)」

 

 

 

 

「全てを照らす優しき光よ!我に希望を与えよ!ソーラー…ドロー!!」シャキーン!!

デッキトップが輝き、光の軌跡を残しカードがドローされる!SP3→4

 

「来た…!『Spースタンダード・ルール』を発動!このデュエル中『Spー』を発動できなくなる代わりに魔法カードをダメージ無しで発動できる!さらに自身の効果で『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!」

鋼鉄の機械竜が現れる ATK2100

 

『「サイバー・ドラゴン」だと!?…不味い、アレの融合モンスターには機械族を素材とするモンスターがいたはず…!リバース罠「奈落の落とし穴」発ど「チェーンして俺は手札を1枚捨て速攻魔法『超融合』発動!!」なんだと!?』

サイバードラゴンの事を知っていたプラシドは奈落でサイバードラゴンを破壊しようとする…しかしそれを遮るように1枚のカードが発動する!

 

「『超融合』の効果により俺の『サイバードラゴン』とお前達のフィールドの『スキエルTACG』『ワイゼルTACG』『グランエルTACG』を融合!!」

 

『なんだって!?』

 

フィールドにいる機皇帝のパーツ達が暗雲に吸い込まれる…

 

「現れろ…!貪欲なる勝利を求めし限界を超えた機械龍!融合召喚!!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!!」

数多の頭を持つ巨大な機械龍が降臨する! ATK?→10400

 

『攻撃力10400だと!?』

 

「『キメラテックオーバー』は融合素材とした機械族モンスターの数×800の攻撃力となる!さらに装備魔法『エターナル・エヴォリューション・バースト』を装備!バトル!!『機皇帝スキエル∞』を攻撃!エターナル・レザルト・バースト!!」

機械龍から光線が放たれる!

 

『無駄だよ!罠カード…発動しない!?』

 

「無駄だ!『エターナルエヴォリューションバースト』を装備したモンスターが攻撃する自分バトルフェイズに相手は効果を発動できない!!喰らえ!!」

 

『うぎゃああ!!』

 

ルチアーノLP0

 

 

『チィ…!だが次のターンで!!』

 

「まだ俺のバトルフェイズは終わっていない!『キメラテックオーバー』は融合素材の数まで相手モンスターに攻撃ができる!!」

 

『『なんだと!?』』

 

「『機皇帝ワイゼル∞』『機皇帝グランエル∞』に攻撃!喰らえ!エターナル・レザルト・バースト!ジュウニレンダァ!!!」

無数の攻撃が機皇帝、さらにホセとプラシドに直撃…爆発した…

 

ホセ プラシドLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

《敵の沈黙を確認…お疲れ様ですマスター…少々やりすぎでは…?》

 

「うん、やりすぎたかも…」

デュエルが終わりDホイールを停止させる…舗装は荒れ果て、攻撃を受けた三皇帝は地面に倒れ伏している、/状態になっていないだけマシだろう…。

 

 

『ぐぅ…これが当代の決闘王の力…!』

 

『マジで笑えない…!』

 

「トドメは刺さない、何処へでも逃げるがいい、だが…次に俺の目の前に現れたら…その時は覚悟しておけ!」

俺は踵を返しDホイールへと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

『よぉ…油断大敵だぞ?白波 遊海』

 

 

ドスッ…!

 

 

「ガッ…!?」

 

《マスター!?》

 

 

それは突然の事だった、遊海の勘も…アヤカのサーチすらも潜り抜け、黒いバイザーの男・ゲイザーは遊海の胸を貫いた…。

 

 

 

「きさ、ま…ゲイザー…!?」

 

『ああ、17年前振りだな遊海…まさかお前が生きてるとは思わなかったぞ?』

ゲイザーは古い友人に会ったように遊海に喋りかける…手刀で胸を貫きながらだが…。

 

 

《貴様!!!》 

 

《主殿!!》

 

《ユウミ!!》

 

 

遊海の精霊達が実体化しゲイザーを囲む!

 

『おっと…動くなよ?お前達のマスターが膾になるぞ?』

ゲイザーは腕の力を強める…それだけで遊海の身体は悲鳴をあげる…!

 

《くっ…!》

 

「貴様…!わかってるはずだ…俺は死なねぇぞ…!!」

 

()()()()()、だがダメージを与えればお前の動きは制限される…それで充分だ、…ホセ・プラシド・ルチアーノ、ここから離脱しろ』

 

『ぐっ…すまないゲイザー…後は頼むぞ…!』

 

『オレがただの人間の為に逃げ帰るハメになるとはな…!』

プラシドが剣を振るい空間を裂く…そこにルチアーノを担いだホセとプラシドが通り抜け亀裂は消え去った…。

 

 

 

 

 

『行ったか、よくもオレの仲間達を傷つけてくれたな…遊海』

 

「どの口が…いいやがる…お前達のせいで…何万…もの…人々が…!」

 

『…彼らは必要な犠牲だった、破滅の未来を変える為に必要だったのだ…!』

 

「そんな事…ない!!犠牲が無くったって未来は…変えられるはずだ…!!」

 

『貴様は見ていないから言えるのだ!あの惨状を…人々の嘆きを!!』

 

「ぐぅ…があああ…!?」

 

《マスター!!》

 

 

遊海の言葉で感情が昂ぶったのかゲイザーの腕に力が入る、腕は遊海の肉に食い込み、言いようの無い痛みを与える…!

 

『オレは貴様を許さない…!許されない!お前の判断でアイツは…死んだんだ!!』

 

「ゲイザー…なにを言って…!」

 

 

ブルル…バシューン!!

 

 

「貴様ァ!!遊海に何やってやがる!!!」

『なっ…クロウ・ホーガン…!?チィッ!!』

超高速でやって来たDホイール…ブラック・バードがゲイザーにめがけて突撃する…ゲイザーは遊海を振りほどき回避する!

 

「ゴホッ…ぐっ…クロウ…どうして…」

 

「赤き竜の痣がアンタの危険を知らせてくれたんだ!ジャックと遊星もすぐに来る!!」

 

『邪魔が入ったか…今回はここまでだ、次こそは決着を《岩剣山!!!》ぐおぁっ!!?』パリン

 

逃亡しようとしたゲイザーの顔面に針状になった岩石が直撃する!

 

《逃さんぞ貴様ぁ…!遊海を傷つけた事を後悔するがいい…!!》

 

《メガロックさん…!》

岩を投げ当てたのはメガロックだった、彼は期を伺い、ゲイザーへの反撃の時を待っていたのだ…!

 

 

『メガロック…ドラゴンだと…?何故…なんでお前がそこにいる…何故だ…なぜだぁ…!』

 

「っつ!?なんだよ…!?この殺気は…!」

弾き飛ばされたゲイザーが立ち上がる…バイザーは半分に割れ、目元に濃い隈の刻まれた金色の瞳が現れる…その瞳は全てを射殺さんとばかりに遊海達を睨みつける…!

 

「ゲイザー…お前は…!」

 

『遊海…オレは貴様を許さない…!決着は必ずつける…!それまで首を洗って待っているがいい…!』

ゲイザーはそう言うと夜の闇に消えていった。

 

 

 

 

 

 

「つ…はぁ…はぁ…なんなんだよ奴は…!」

場を支配していた圧力から開放され、クロウは尻もちをつく…。

 

「クロウ…怖い思いをさせてすまなゴホッ…!」

 

「遊海!しっか…胸に穴があいてやがる!?おい!しっかりしろ!」

 

「大丈夫…これぐらいなら死なない…でも…少し寝かせ…」

 

「遊海!遊海!!寝ちゃダメだっ!!起きろ!!おい!!」

 

「(ゲイザーの奴…メガロックを見てから雰囲気が変わった…?いったい…奴は…?)」

意識を失いながら遊海はゲイザーの行動の意味を考えていた…。

 

「(それにあの瞳…何処かで…ダメだ…意識が……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「●●、また難民達を連れて来たぞ!」

 

『ああ、遊星!お疲れ様!上手くいってるみたいだな!』

 

…なんだ…?()()()()()()()()()

 

遊星らしき男に率いられて歩いてくる人々…周囲は建物が崩れボロボロになっている。

 

「あなたのおかげです、あなたのおかげで『クリアマインド』の精神を伝えるスピードが早くなっています!このままなら世界も救えるでしょう!」

 

『…礼なんていらないよ遊星…全てはオレのせいなんだ…!』

 

「あなたは悪くない…悪いのは欲望に溺れた全ての人類だ、それにあなたは…充分に罪を償っている…!」

 

『ありがとう遊星…そう言ってくれるなら…ありがたい…!』

 

 

「お〜い!●●●!デュエルしないか?」

 

『ああ!今行くよジョニー!』

 

…今のは…アンチノミー…?なら…あれはZ-ONE…?

この記憶は…まさか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ…!?イテテテッ!!?」ガバッ! ズキン

意識を失っていた遊海はベッドから飛び起きる…そして胸の痛みに蹲る。

 

 

《マスター!!》

 

「遊海さん!?大丈夫ですか!?」

 

「翠…?あれっ…ここは…?」

 

「ネオドミノ病院です!…遊海さん丸3日も意識を失ってたんですよ…」

ベッド脇に座っていた翠が遊海の背中を擦る、窓の外は真っ暗だった。

 

「牛尾さんは…ゴーストは…?」

 

「大丈夫です!牛尾さんも大怪我をしましたけど手術と治癒魔法でもうすっかり元気です!ゴーストも遊星君が倒しました!…それよりも何があったんですか…!」

 

「…ゴーストの捜索をしていたらイリアステルの三皇帝に襲われたんだ、奴らはなんとかサイバードラゴンで倒したけど…油断した隙にゲイザーに襲われた…くそっ…奴はいったい何がしたいんだ…イテテ…!」

 

「ゲイザーに三皇帝…!イリアステルが動き出したんですね…!」

 

「ああ…翠、お前も気をつけてくれ…奴は容赦がねぇ…!」

 

「遊海さん…」

 

「…ゲイザー…次こそはお前を止める…!止めてみせる…!」

遊海は拳を握り締める…未来人・イリアステルとの戦いの火蓋は切って落とされた…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハァ…ハァ…!時間が…無い…!オレの精神力が尽きるのが先か…それとも……オレは負けない…未来の救済が確定するまでは…まだ…!』




今回のスピードスペル!

Sp-カウント・アップ
通常

このカードは自分のスピードカウンターが2個以上ある時に発動できる。
①自分の手札を任意の枚数墓地に送る。自分のスピードカウンターは墓地に送ったカード1枚につき2個増える。


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歪んだ伝統〜究極の特別授業〜

「…特に事件は無し…か…ッッ…!」

 

《マスター…大丈夫ですか?》

 

「大丈夫…まだ傷跡が痛むだけだから…」

 

 

ゴースト事件から一週間程が経過した…あれから大きな動きはなく、シティには平和な時間が流れていた。

俺は病院を退院し、家で療養している最中である。

 

 

「ゲイザー…彼奴は闇の中から現れた…刺されるまで完全に気配を断っていた、あのカラクリは何なんだ…?」

 

《…私もまったく気づけませんでした、何かがいると感じた瞬間にマスターが刺されていたので…申し訳ありません…》

 

「気にするなよアヤカ、油断していた俺が悪いんだ…次こそは…!」

 

《マスター…あまり根を詰めすぎないでください、あなたの負担を軽くする為に私がいるのですから…》

 

「ありがとう、アヤカ…少し寝るか…」

 

 

タッタラータラーターラーターラッタラー

 

「ん?この着信音は…はい!白波です!」

神の降臨しそうな着信音の電話に出る…相手は海馬社長である。

 

『オレだ、お前に会いたいという奴が面会に来ている…KCまで来られるか?』

 

「俺に…?わかりました、すぐに向かいます」 

 

…俺に面会…誰だろうか…?

 

 

 

 

 

〜KC・社長室〜

 

 

 

 

「失礼します!」

 

「よく来たな遊海、病み上がりなのにすまないな」

 

「大丈夫ですよ海馬社長、これくらいならかすり傷ですから…」

 

「フン…お前らしいな」

海馬さんと他愛もない話を交わす…昔に比べて丸くなったな〜…

 

 

「それで…俺に面会したいというのは?」

 

「ああ、コイツだ…なんでも頼み事があるらしいぞ?」

 

 

「お久しぶりなノーネ!セニョール遊海!元気そうでなによりでスーノ!」

 

「あ、あなたは…!」

 

「実はアナタに特別授業をしてほしい人がいるノーネ!」

 

「へっ…?」

 

 

………

 

 

 

「なるほど…それでその人の鼻を折りたいと…」

 

「そういう事なノーネ!…まったく、昔のワタシを見てるみたいなノーネ…」

 

「わかりました、引き受けましょう!それで…海馬社長?」

 

「む?どうした?」

 

「ちょっとお借りしたいモノが…」ゴニョゴニョ

 

「ふ…ふはははは!!!いいだろう!使うがいい!」

 

「ありがとうございます!海馬社長!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

 

『ヌフフフ…!どうですか!これが究極の勝ち組デッキ「アンティーク」デッキの力です!所詮低レベルのクズモンスターなど役に立たないのです!』

 

 

「御託はいい!どんな強力なカードを使おうと勝てなければ意味はない!」

 

オレは今、とある人物から依頼を受けてデュエルアカデミア・ネオ童実野校の教頭、ハイトマンとデュエルをしている。

最初は機械の修理かと思ったが…まさか「頭のネジを締め直す」依頼だったとは…、そしてこのデュエルには学生生活を始めた龍亞と龍可、そして子供達の退学が懸かっている…負ける訳にはいかない!

 

 

ハイトマンLP4000

古代の機械巨人×3 手札1

 

遊星LP4000

ガード・オブ・フレムベル 伏せ2

 

 

 

『フン!負け惜しみを!バトルフェイズに入るであります!』

 

「その瞬間!リバース罠『チューナーズ・バリア』を発動!『フレムベル』はこのターン戦闘破壊されない!」

 

『無駄です!「機械巨人」は貫通効果を持っているのです!3体の「機械巨人」で攻撃!アルティメット・パウンド!!』

3体の巨人が守備表示のフレムベルを打ち据え、貫通ダメージが遊星を襲う!

 

「くぅ…!」

遊星LP4000→3000→2000→1000

 

『そして魔法カード「レベル・サンダー」を発動!フィールドにいるモンスターのレベルの合計×100のダメージ…2400ダメージを与えるであります!』

 

 

「そんな!?こんなコンボがあったなんて!?」

龍亞達の担任である女教師が驚きの声をあげる…遊星のライフは残り僅か…勝負の行方は…!

 

『ヌフフ!これがハイレベルのエリートだからこそできる究極の1ターンキルであります!』

 

「「「遊星!!」」」

 

「まだだ!手札から『ハネワタ』を墓地に送り、効果ダメージを0にする!!」

遊星の前にモフモフの天使が現れ効果ダメージを防ぐ!

 

『チィッ…ゴキブリ並みの生命力でありますね…!ターンエンド!』

ハイトマンLP4000

機械巨人×3 手札0

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!…ハイトマン!今度はオレが特別授業をする番だ!」

 

『なんですと?』

 

「この子達は決して低レベルなんかじゃない!その事をお前に教えてやる!」

 

『笑止!そんなレベル1のチューナー1体で何ができる!』

ハイトマンは遊星の場を見て嘲笑う…しかし

 

「行くぞ!オレは魔法カード『調和の宝札』を発動!手札の攻撃力1000のチューナー『デブリ・ドラゴン』を墓地に送り2ドロー!…引いたぜ?逆転のカードを!」

 

『なに!?』

 

「オレは『エキセントリック・ボーイ』を召喚!」

背中から赤い翼を生やした少年が現れる ATK800

 

「そして『エキセントリックボーイ』をシンクロ召喚に使う時!手札のモンスターをシンクロ素材にできる!オレは手札のレベル5『ターレット・ウォリアー』とレベル3『エキセントリックボーイ』をチューニング!!」

 

5+3=8

 

「集いし願いが新たに輝く星となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ!『スターダスト・ドラゴン』!」

遊星の相棒たるドラゴンが現れる ATK2500

 

 

『くっ…チューナーモンスターにそんな使い方が…!だが「スターダスト」を召喚しようと攻撃力は「機械巨人」が上!勝ち目はありません!』

 

「ああ、確かに『スターダスト』だけじゃお前は倒せない…だがみんなの力を合わせれば!それは可能となる!魔法カード『バラエティ・アウト』を発動!『スターダスト』をリリース!」

 

『なっ…せっかく召喚した「スターダスト」をリリースするですと!?』

 

「それだけじゃない!『スターダスト』のレベルは8!それにより墓地からレベル合計が8になるように墓地のチューナーを特殊召喚する!現れろ!『デブリドラゴン』『ハネワタ』『エキセントリックボーイ』!」 

スターダストが粒子となる…しかしその光に導かれるように3体のチューナーが現れる! ATK1000  200 800

 

『何を考えているであります!?ハイレベルの「スターダスト」をリリースしてわざわざ低レベルのモンスターを…は!?まさか…!』

 

「そうだ!このモンスター達はあの子達のカード!アンタが見下した低レベルモンスターの底力を見せてやる!」

 

遊星はデュエル前にアカデミアの生徒達のカードをデッキに加えていた…「低レベルモンスターで高いレベルのモンスター」に勝つ事で遊星は伝えたいのだ…「この世の中に不必要なものはない」と!

 

 

「罠カード『チューナー・ボム』を発動!フィールドのチューナーを任意の数リリースする!そして相手モンスターを破壊し1000ダメージを与える!『ハネワタ』『ガードオブフレムベル』『エキセントリックボーイ』をリリース!いけ!!」

3体がチューナーが虹色の光を纏い機械巨人に特攻する!

 

『うひぃ〜!?そんな!?』

ハイトマンLP4000→3000→2000→1000

 

「そしてまだオレのモンスターは残っている!『デブリドラゴン』でダイレクトアタック!!」

デブリドラゴンがハイトマンに突撃する!

 

『そんな…!ゲハッ!?』

 

ハイトマンLP0

 

遊星WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

『まさか…私の勝ち組デッキが敗れるとは…低レベルモンスターにこんな可能性が…』

 

「ハイトマン、レベルの高さじゃない」

 

『なんですと…?』

敗北し放心状態のハイトマンに遊星が話しかける。

 

「レベルの高い低いは関係ない、何かを学ぼうとする真剣に学思う…そんな心を持った子供達が揃っているんだ!」

学校は子供達を教え、導く場所…レベルの高い低いではなく「学ぼうとする心」が大切なのだと遊星は説く

 

 

「その通りです、遊星君!」

 

「むっ…あなたは…?」

 

『こ、校長先生…!?』

デュエル場の入口から声がかけられる…それは遊星にハイトマンの修理?を依頼した人物…ネオ童実野校の校長だった。

 

「騙すような真似をしてすまなかった、わしではこの頑固者を修理するのは難しくてね…」

 

『こ、校長が私を修理する為に…!?』

 

「それで…どうだったかね?ハイトマン教頭?」

 

『ハイ…私が間違っておりました…退学は撤回します…』

ハイトマンは項垂れながら生徒達の退学を撤回した…。

 

 

 

「「「遊星!」」」

 

「みんな…ありがとう、君達のカードで勝つ事ができた!」

デュエルを終えた遊星のもとに子供達がやってくる。

 

「遊星!わたし達のカードで勝ってくれてありがとう!」

 

「『スターダストドラゴン』カッコよかった!」

 

「ああ、ありがとう!次は君達の番だ!精一杯色んな事を学ぶんだぞ?」

 

「「「はーい!!」」」

遊星は子供達にエールを送る

 

「よし、それじゃあ今日は…」

 

 

《フン…少し出遅れてしまったか…》

 

 

「「「!?」」」

デュエル場に生徒でも先生でもない第三者の声が響く

 

「何者だ!」

 

《今姿を現そう!ハッ!!》

デュエル場の上から1人の男が現れる…それは

 

 

「「「カ、カイバーマンだ!?」」」

 

《フハハハ!その通り!我が名は正義の味方カイバーマン!ここに質の悪い狐がいると聞いて来たのだが…決着は着いたようだな!》

カイバーマン…海馬ランドにおける人気ヒーロー、たびたびヒーローショーを行ない悪人を高笑いと共に灼き尽くす無敵のヒーローである…余談だがモデルは十中八九海馬社長本人だろう。

 

「狐ですと…?」

 

《うむ、借り物のデッキを「究極」と言い張る「虎の威を借る狐」がいるはずだが?名は…ハイトマンだったか?》

 

『また私の事でありますか!?』

校長の問いにカイバーマンが答える…それはハイトマンを指したものだった。

 

 

《その通りだ!「伝説のアンティークデッキ」?その程度で究極を名乗るとは…片腹痛いわ!》

 

『ムムム…!言わせておけば…!このハイトマン!お前のようなコスプレ男に馬鹿にされる謂れはないであります!!』

 

《そうか…ならばデュエルでそれを示してみせよ!…負ければそのデッキは返上してもらう!》

 

『いいでしょう!デュエルだ!』

ハイトマンとカイバーマンは火花を散らす…

 

「カイバーマン…アンタは…」

 

《なに…古き友に頼まれてな、そこで見ているがいい!遊星!真の究極を!!》

 

 

 

 

 

 

『《デュエル!!》』

 

カイバーマン?LP4000

ハイトマンLP4000

 

 

 

 

 

 

 

 

《俺のターン!ドロー!!》

《「青き眼の乙女」を召喚!》

白い髪を持つ青目の少女が現れる ATK0

 

《カードを2枚伏せターンエンド!》

カイバーマンLP4000

乙女 伏せ2 手札3

 

 

 

『レベル1で攻撃力0のモンスターを攻撃表示!?正気でありますか!?』

 

《フン!ハンデだ!かかってくるがいい!》

 

 

 

 

『おのれ…私のターン!ドロー!』

『手札から「古代の機械石像」を召喚!さらに手札の魔法カード「磁石の円Lv2」を発動!2体目の「機械石像」を手札から特殊召喚!』

歯車が組み合わさった2体の像が現れる ATK500 ×2

 

『そして「機械石像」をリリース!手札から2体の「古代の機械巨人」を召喚条件を無視して召喚するであります!』

土煙と共に機械の巨人が現れる ATK3000 ×2

 

 

『バトルであります!『機械巨人』で「乙女」を攻撃!アルティメット・パウンド!!』

巨人の拳が乙女に迫る!

 

《貴様もカードに選ばれているようだな…だが甘い!「乙女」の効果を発動!自身を守備表示に変更し攻撃を無効にする!さらに俺はデッキからこのカードを特殊召喚する!!》

乙女が座り込み祈りを捧げる…そして天空から神々しい光が降り注ぐ!ATK0→DEF0

 

《降臨せよ!「青眼の白龍」!!》

 

「「「『なんだって!?』」」」

天空からデュエルモンスターズ最強のドラゴンが降臨する ATK3000

 

「そんな馬鹿な…ブルーアイズは世界にたった3枚しか存在しない伝説のカード!まさか…カイバーマンの正体は…!」

 

《フハハハ!さぁ、どうするハイトマン!このドラゴンにどう対処する!》

 

『ヌヌヌ…!「古代の機械巨人」で「ブルーアイズ」をこ《リバース罠「威嚇する咆哮」発動!バトルフェイズは終了だ!》なんと!?』

《ギャオオ!!》

ブルーアイズが咆哮する、それは窓ガラスを揺らし機械巨人に膝をつかせる…

 

《相討ち覚悟で挑むとはいい度胸だ!だが足りん!》

 

『くっ…カードを伏せターンエンド!』

ハイトマンLP4000

機械巨人×2 伏せ1 手札0

 

 

 

「教頭先生の攻撃が躱された!」

 

「しかも相手は伝説のドラゴン…!でもいったいどうして…!?」

 

 

 

 

《俺のターン!ドロー!!》

《さぁ…行くぞ!装備魔法「ワンダーワンド」を「乙女」に装備!そして「乙女」が効果の対象になった事により現れろ!2体目の「ブルーアイズ」よ!!》

2体目のブルーアイズが現れる A3000

 

《そして「ワンダーワンド」の効果発動!装備モンスターをリリースし2ドロー!終わりだ!「融合」を発動!手札とフィールドの「ブルーアイズ」3体を究極融合!!現れろ!「真青眼の究極竜」!!》

カイバーマンの場に最古にして最新たる究極のドラゴンが降臨する! ATK4500

 

 

『こ、これが…究極のドラゴン…!?』

 

「無駄のないプレイングだ…!…無駄の…無い…?もしかして…!」

遊星は何かに気づいたようだ。

 

 

《バトルだ!「真究極竜」で「機械巨人」を攻撃!ハイパー・アルティメット・バースト!!》

《ギュアアン!!》

最強の破壊光線が機械巨人に迫る!

 

『やらせないであります!リバース罠「次元幽閉」を発動!「真究極竜」を除外する!』

 

《無駄だ!チェーンして罠カード「強靭!無敵!最強!」を発動!このターン「真究極竜」は自身以外のあらゆる効果を受け付けない!粉砕せよ!!!》

《ギュアアアン!!!!》

 

真究極竜の目の前に現れた水色の壁は咆哮で粉砕され、機械巨人は爆発する!

 

『うわあああ!!』

ハイトマンLP4000→2500

 

《さらに「真究極竜」はエクストラデッキの「究極竜」「双爆裂龍」を墓地に送り2回の追加攻撃ができる!粉砕せよ!ハイパー・ツイン・バースト!!!》

 

『ひ、ひぇぇぇぇ!?』

続いて放たれた破壊の奔流は機械巨人とハイトマンを飲み込んだ…

 

 

ハイトマンLP0

 

カイバーマンWIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

《フハハハハ!粉砕!玉砕!!大喝采!!!》

 

 

「嘘でしょ…!?」

 

「これが伝説のドラゴンの力…!」

 

「教頭をノーダメージで倒しちゃった…!」

 

カイバーマンの高笑いが響く、遊星や生徒達は呆然とその様子を見ているしかなかった…。

 

 

『こ、これが本当の究極…!私はなんて思いあがりを…』

 

《思い知ったかハイトマン!これが究極にして至高のドラゴンデッキだ!…貴様は所詮「井の中の蛙」…権力に縛られ「アンティーク」デッキを持った事で自身の研鑽を忘れた愚か者だ!》

 

『わ、私の完全敗北であります…申し訳ございませんでした…』

ハイトマンは項垂れ、カイバーマンに謝罪する。

 

 

《ふん!わかればよいのだ…なぁ、クロノス校長?》

 

『その通りなノーネ!』

 

「「あ、あなたは!アカデミア本校のクロノス校長!?」」

ドミノ校長と女教師が声をあげる、カイバーマンの声と共に現れた人物…それは鮫島校長の次にデュエルアカデミア本校の校長となったクロノスだった…。

 

 

『セニョールハイトマン、教師とーは生徒を教え導き、時に壁になるものなノーネ、しかーし!「壁」といっても生徒の進路を阻むものではなーく生徒達を理不尽から守るものなノーネ!』

 

『理不尽から守る…?』

 

『そうなノーネ!生徒達にはたくさんの可能性が秘められているノーネ!…その可能性を「落ちこぼれ」だからといって切り捨ててはいけないノーネ!…「アンティークデッキ」は生徒達の可能性を拓き導く為のもの…決して忘れてはいけないノーネ!』

クロノス校長は諭すようにハイトマンに語りかける、まるで過去の自分に言い聞かせるように…。

 

 

『…わかりました…私は生徒達の成績しか見ていませんでした…私は教師失格です、アンティークデッキは…』

 

『ノンノン!今回は大目にみるノーネ!遊…カイバーマンもそれでいいノーネ?』

 

《うむ、そいつには反省の色が見える…今回はいいだろう》

腕を組み様子を伺っていたカイバーマンも同意する。

 

『で、ですが…』

 

『教師とーは生徒達を教え導く者であると同時に生徒達と一緒に成長するものなノーネ…ワタシも教頭時代にその事を生徒から教えられたノーネ!』

クロノスは昔を思い返す…その脳裏には1人の問題児と対峙したデュエルの様子が蘇っていた…。

 

 

『ハイトマン教頭、あなたのこれからに期待するノーネ!』

 

『クロノス校長…!このハイトマン!生まれ変わります!生徒を導く者になってみせます!』

 

『その意気なノーネ!頑張るノーネ!』

 

「あれがアカデミアで『伝説の指導者』といわれたクロノス校長の力…あのハイトマン教頭を改心させるとは…わしもまだまだですな…」

ドミノ校長はポツリと呟いたのであった。

 

 

 

 

「あれ?カイバーマンは?」

 

「いつの間にかいなくなってる!?」

 

「遊星もいないわ、どこに行ったのかしら…?」

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コホコホ…慣れない声を出すと疲れるな…」 

 

《お疲れ様です、マスター!見事な演技でした!》

 

俺はアカデミアの屋上にいる…まさかクロノス先生から『頑固者の鼻をへし折ってほしいノーネ!』と言われた時は驚いたけど…あの様子なら大丈夫だろう、さて…衣装を海馬社長に返しにいかないと…

 

 

「カイバーマン!」

 

《む?不動 遊星か…どうした?子供達の相手はいいのか?》

屋上にいる俺に遊星が声をかけてくる、追いかけて来たようだ…。

 

「素晴らしいデュエルだった、無駄のないプレイング…圧倒的力…まるで本物の海馬社長のようだ…」

 

《フッ…俺は正義の味方カイバーマン!あの社長とは関係ないぞ?…カードは借りたがな!》

 

「それだけではないだろう…()()()()?」

 

《(思いっきりバレとるー!?)…なんの事かな?》

 

「計算されたプレイング、無駄のない展開…あのプレイングは遊海さんに似ていた…それだけだよ」

 

《フッ…フハハハ!あの決闘王と同じように見られるとはな!しかし彼は過去の人物だ!俺とはまったく関係ないのだよ!…さらば!》

 

「あっ!?カイバーマン!?」

カイバーマンはパルクール的な動きでアカデミアから去っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハ!不動 遊星に正体を見抜かれかけたか!お前は偶にミスをするからな!フハハハハ!」

 

「笑わないでくださいよ海馬社長…割と危なかったんですから…」

KCへと戻ってきた遊海だったが…報告を受けた海馬社長は大笑いである。

 

 

「しかしお前も『ブルーアイズ』を持っていたとはな…昔のオレなら破り捨てていたかもな!」

 

「それだけは勘弁してください社長…」

 

「フッ、冗談だ…オレも丸くなったものだな…そして遊海、ここからは真面目な話だ…新しい長官共についてだ」

 

「…!」

遊海は顔を強張らせる

 

 

「件のゴースト事件から1週間…奴らに動きはない、相当手痛いダメージがあったようだな」

 

「えぇ…しばらくは大きな動きはとれないはずです」

 

「そうか…だがいいのか?奴らはオレの町に害を為す者…すぐに解任する事もできるが…」

 

「やめておいた方がいいでしょう…奴らは歴史に介入し過去を変える事ができる…つまり人を簡単に亡き者にできるという事です、奴らの件は俺とシグナー達に任せてください…!」

 

「そうか、だがいつでも協力はする…無理はするなよ遊海…あいつらも心配していたからな…」

 

「…ありがとうございます海馬社長、今日はこのあたりで…」

 

「うむ、今日はご苦労だった…ゆっくり休むがいい」

 

「はい…失礼します!」

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…疲れた…今日はもう帰ろう」

 

《マスター…》

 

「アヤカ、そんな不安そうな声をだすなよ…俺は大丈夫、きっと未来を…この町を救ってみせる…!」

 

《マスター…はい!そうですね!マスターとシグナー達の力が合わさればできない事はありません!私も全力でサポートしますから!》

 

「ああ、ありがとうアヤカ…頑張ろうな!」

 

《はい!》

遊海は夕焼け空を見つめる…イリアステル、それにゲイザー…まだわからない事は多い…それでも…

 

 

「あ!遊…白野さーん!こんにちは!」

 

「おっ!龍亞!龍可!学校帰りか?」

 

「うん!今日学校でね…!」

 

「ほう…カイバーマンに『ブルーアイズ』を見たと…」

 

「うん!すごいカッコよかった!あと笑ってた!」

 

 

この町の人々…そして子供達の笑顔を守ってみせると…

 



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龍亞の大勝負!〜遊海の秘密を守れ!〜

Side龍亞

 

 

 

 

「…こうしてデュエルモンスターズは誕生し世界に広がりました…以上です!」

 

「龍可さんよくできました!次は…」

 

「zzz…」

 

「コホン…龍亞君!」

 

「ふぇ!?は、はい!ね、寝てません!!」

 

「…思いきり居眠りしてましたよ…!次は気をつけてね!」

 

「は…はい…」

 

 

キーンコーンカーンコーン…

 

 

「それでは今日の授業はここまで!みんなまた明日ね!」

 

 

「「「は〜い!ありがとうございました!!」」」

 

 

………

 

 

 

 

「ふわぁ〜…」

 

「もう龍亞ったら!せっかく退学が無しになったのに…居眠りしてたら追い出されちゃうよ!」

 

「そう言ったって眠いのはしょうがないじゃん…次は気をつけるよ…」

 

「まったくもう…」

 

 

おれは龍亞!シグナーの妹・龍可の双子のお兄ちゃんだ、この前遊星とカイバーマンのおかげでハイトマン教頭の退学騒動が解決しておれ達は平和な学生生活を過ごしていた…って、おれ…誰に話してるんだろう?

 

 

 

「あっ…龍亞、今日は先に帰ってて!」

 

「ん?龍可、どうしたんだよ?珍しいじゃん」

 

「うん!パティや他の女の子達と文房具を買いにいくの!」

 

「へぇ〜、そっか…わかった!気をつけてね!」

 

「うん!また後でね!」

そう言うと龍可は女子のグループに走っていった…龍可も変わったな〜、半年前までは病気がちで大変だったのに…きっと遊星や遊海に会えたおかげだな、お兄ちゃんとして嬉しいや!

 

 

「よし、おれも帰ろ!」

今日はボブも天兵も都合が悪いらしいし…遊星のガレージにでも行ってみよう!

 

 

 

 

「おっ…龍亞じゃねぇか!珍しいな一人か?」

 

「あ!クロウ!バイク便の仕事中?」

ガレージに向かう途中、バイク便の服を着たクロウと会った、WRGPの為にお金を貯めてるんだよな…

 

「おう!黒ガラスのバイク便、絶賛仕事中さ!遊星のところに行くのか?」

 

「うん!遊星いるよね?」

 

「ああ、今日はデッキホルダーの改造をするって言ってたぞ?この前は大変だったからなぁ…」

 

「あはは…カードが散らばってたもんね、でも遊星ならすぐに直してくれるよ!」

 

「ああ、違いねぇ!…おっと!そろそろ時間だな!じゃあ気をつけて行けよ!最近物騒だからな!」

 

「うん!ありがとうクロウ!」

 

ブルル…バシューン!

 

クロウはDホイールに乗って走っていった、最近は物騒…か、遊星が出会ったっていうシンクロキラーの「機皇帝」…そして、遊海が出会ったゲイザー…あの時は怪我を治してくれたのに…どうして遊海を襲ったんだろう…?

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

少し前…

 

 

 

「遊海!」

 

「遊海さん!大丈夫!?」

 

 

「龍亞君、龍可ちゃん…来てくれてありがとう、遊海さんは眠っているわ…少し静かにね?」

 

遊星から連絡をもらったおれと龍可は入院している牛尾のおっちゃんと遊海のお見舞いに来ていた、牛尾のおっちゃんはゴーストに…遊海は前に出会ったゲイザーっていう人に襲われたらしい。

 

 

 

「でも…遊海さんがどうして…!遊海さんはとても強いわ!そんな遊海さんがこんな怪我をするなんて…!」

 

「うん…遊海…苦しそう…」

龍可につられてベッドで寝ている遊海を見る…呼吸を楽にするマスクを付けながら寝ている遊海は少し苦しそうな顔で眠っていた…。

 

 

「大丈夫よ!2人共!遊海さんは強い人だから少し休めば良くなるわ!また目が覚めたら会いに来てあげて…」

 

「「うん…」」

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

遊海はしばらくして目を覚ました…今は家で休んでいるらしい、いつもそうだ…おれは遊海や遊星達に守られてばっかりだった、ディヴァインの時も…ダークシグナーの時も…確かにおれはシグナーじゃない、でも少しでもみんなの力になりたいんだ…!

 

 

 

 

 

 

「お〜い!遊星いる〜?」

 

「む…龍亞か、一人で来るなんて珍しいな」

ガレージに着いたおれは遊星に声をかける、遊星はDホイールのオイルで真っ黒だった。

 

「うん、みんな都合が合わなくてさ!…少し作業を見ててもいい?」

 

「あぁ、ゆっくりしていけ」

 

おれは近くのイスに座り遊星の作業を見る、遊星はすごい集中力でテストマシンのカスタマイズをしていた。

 

 

「この配線を繋いで……よし、カードホルダーの修理完了だ…龍亞、ジュース飲みにいくか?」

 

「うん!」

 

 

 

「ごゆっくりどうぞ〜!」

 

おれと遊星はガレージの近くにあるカフェに来ていた、空は晴れていて風が気持ちいい…。

 

「ふぅ…偶にはこうして外でコーヒーを飲むのもいいものだ…ガレージに籠もってばかりいると体にも悪いしな…」

遊星はそう言ってコーヒーを飲む…そうだ、聞いてみよう。

 

 

「ねぇ…遊星、教えてほしい事があるんだ」

 

「ん?どうした改まって…?」

 

「強くなるには…どうすればいい?」

 

「強くなるには…か、龍亞…どうして強くなりたいんだ?」

 

「おれ…遊星や龍可みたいなシグナーじゃないけど、みんなの役に立ちたいんだ…!それに龍可を守るヒーローになる為に…もっと強くならなきゃいけないんだ!」

 

「龍亞…お前は充分に強いぞ、ダークシグナーであるディマクに立ち向かって勝ったじゃないか?」

 

「それじゃダメなんだ…!あの時は遊海が闇のダメージを肩代わりしてくれた!龍可に助けてもらった!…それじゃあダメなんだ…!」

 

龍亞は拳を握り締める…龍亞はずっと見てきたのだ、ボロボロの体を削りながらシティを守り続けた遊海、サテライトとシティを一つにするために戦い続けた遊星、そして絶対王者としてシティに君臨したジャック…龍亞はその強さに憧れた、自分もみんなと共に戦いたい…妹を守れる強い男になりたいと…そう思ったのだ。

 

 

「龍亞…お前はまだ幼い、そこまで気負う必要はないんだぞ?」

 

「でも…」

 

「今はダメでもお前には未来がある、お前はしっかり成長している、今はアカデミアでしっかり学んで力を付ける時なんだ…わかったか?」

遊星は龍亞に諭すように伝える、龍亞兄妹はまだ小学生…可能性を秘めた雛鳥なのだ。

 

「うん!おれ勉強もデュエルも頑張る!」

 

「ああ、その意気だ…デュエルの事だったらオレも教えられる、今度教えてやろう」

 

「本当!?ありがとう遊星!」

さっきまでの悩みは何処へやら…笑顔をみせる龍亞なのであった。

 

 

 

Sideout

 

 

Side遊星

 

 

 

「遊星!今日はありがとう!また来るね〜!」

 

「ああ、気をつけて帰るんだぞ!」

 

「は〜い!」

ジュースを飲み終わった龍亞は家へと走っていった…。

 

 

「龍亞も自分なりに色々考えてるんだな…オレも考えなければ…」

遊星は歩きながら考える…シンクロモンスターを奪いとる恐ろしいモンスター「機皇帝」について…。

 

「『機皇帝』はシンクロモンスターを吸収し攻撃力を増す恐ろしいモンスター、オレのデッキはシンクロモンスターが主戦力…次に戦う時に勝つには…どうすればいい…?」

 

 

「遊星!ちょっといいか!」

 

「むっ…ジャック?どうしたんだ?」

考えに耽る遊星にジャックが声をかける、両手には買い物袋を持っている。

 

「さっき妙な噂を小耳に挟んだのだが…」

 

「妙な噂?」

 

「変な口調の外人が遊海の家を探しているらしい…!」

 

「遊海さんの家を…?それはおかしい…遊海さんはまだ表向きには行方不明の筈だ…それを探しているって事はまさか…!」

遊海は世間的には行方不明扱いとなっている…彼が生きている事を知っているのはシグナー達と狭霧&牛尾、あとは関係の深い友人達だけである…つまり。

 

「遊海が狙われている可能性があるという事か…!?」

 

「この前の事もある…急いで遊海さんに連絡しよう!」

遊星達はガレージへと急いだ…。

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

Side龍亞

 

 

「よーし!家に帰ったら早速デッキの調整だ!絶対に強くなってやるぞ〜!」

遊星との会話で目標を新たにした龍亞は帰り道を急いでいた…しかし

 

『Oh!?』

「イテ!?」

 

道を曲がった先で人とぶつかってしまう…完全に前方不注意である。

 

『オー、スイマセンボーイ!怪我はありませんか?』

 

「イテテ…こっちこそごめんなさい!…ヒッ…!」

龍亞はぶつかった相手を見上げる、相手は中折れ帽をかぶり、肩まで届く銀髪を持った紳士だった…しかし龍亞は髪に隠れていた顔の左半分を見てしまう、その左眼には大きな傷が付いていた…。

 

 

「おじさん…目、大丈夫…?」

 

『おっと…見えてしまいましたか、ノープログレムデース!昔クレイジーな事をして怪我をしたのデース、気にしないでくだサーイ!』

 

「そ、そうなんだ…ごめんなさい…これからは前に気をつけます…」

 

『いえ、私の方こそソーリーデース!人を探すのに夢中になって前を見ていませんデシタから…』

 

「誰か人を探してるの?おれの知ってる人だったら案内するよ!」

 

『オー!サンキューですボーイ!色々な人に聞いたのですが誰も知らないらしいのデース、ベリー有名なはずなのですが…』

そう言って紳士は頭を掻く…

 

「有名な人…?遊星やジャックの事?」

龍亞は思いついた有名な人の名前を上げる

 

『違いマース…彼の名前はMrユウミ シラナミといい

マース!』

 

「ユウミ シラナミ…?白波 遊海…!おじさんあの人は行方不明なんだよ?この街にいるわけないよ!」

龍亞は咄嗟に嘘をつく、それは以前遊海に「まだ自分が復活した事は秘密にしておいてほしい」と言われたからである。

 

『ノンノン!彼がこの町にいる事はわかっていマース!私は彼に用があって来たのデース!…ボーイは何か知っていますね?教えてくだサーイ!』

 

「そ、それは…(もしかしてこの人、遊海を狙ってる奴らの仲間なんじゃ!?…時間を稼ぐんだ!おれは守られてばかりじゃない!遊海を助けるんだ!!)」

龍亞の脳裏ではボロボロの遊海が思い浮かんでいた…そして…

 

「うん…知ってるよ、でもタダでは教えられない!」

 

『ムム?ではどうすればいいデスか?』

 

「おれとデュエルしてよおじさん…貴方もデュエリストでしょ?…勝ったら教えてあげるよ…!」

龍亞は紳士の鞄からはみ出すデュエルディスクが見えていた…遊海を守る為に龍亞はデュエルに挑む…!

 

『オー!デュエルですか!流石デュエルの聖地デスね〜、いいでしょう!レッツデュエルデース!』

紳士は旧式のデュエルディスクを装着する。

 

「(見てて遊海…!遊海の秘密はおれが守る!)」

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

龍亞LP4000

銀髪の紳士4000

 

 

「おれのターン!ドロー!」

「『D・モバホン』を召喚!」

ガラケー型のロボットが現れる ATK100

 

『オー!「ディフォーマー」使いですか!なかなか良いドローデース!』

紳士は召喚されたモバホンを見て嬉しそうな顔をする…。

 

「『モバホン』の攻撃表示の効果発動!ダイヤルオーン!」

モバホンのダイヤルがランダムに点滅し止まる…数字は1!

 

「げげっ!?そんなぁ!…デッキを1枚めくってレベル4以下の『D』なら特殊召喚できる!…よし!『D・ステープラン』を特殊召喚!」

ホッチキス型のロボットが現れる ATK1400

 

「『ステープラン』が攻撃表示の時、相手はこのモンスター以外のモンスターを攻撃できない!カードを2枚伏せてターンエンド!」

龍亞LP4000

モバホン ステープラン 伏せ2 手札2

 

 

 

 

『なかなか上手なプレイですね〜!流石デュエルアカデミアの学生デース!次は私からいきマース!』

 

 

 

『私のターン!ドロ〜!』

『それではボーイを私の大好きな世界にご案内しマース!私はデッキの上から3枚のカードを裏向きで除外して…楽しい漫画の世界!フィールド魔法「トゥーン・キングダム」を発動しマース!』

紳士のフィールドに1冊の本が現れる、さらにその中からポン!と漫画のお城が現れる

 

「なっ…なんだぁ!?」

 

『ボーイ、私はカートゥーン…漫画が大好きなのデース!この「トゥーンキングダム」は「トゥーン・ワールド」として扱いマース!そして手札から「トゥーン・マーメイド」を自身の効果で特殊召喚しマース!』

貝殻に乗り弓を持ったデフォルメされたマーメイドが現れる ATK1400

 

『さらに「トゥーン・ヂェミナイエルフ」を召喚デース!』

デフォルメされた姉妹のエルフが現れる ATK1900

 

『トゥーンモンスターは召喚されたターン攻撃ができまセーン!私はカードを2枚伏せてターンエンドデース!』

紳士LP4000

マーメイド エルフ 伏せ2 手札1

 

 

 

「なんだか気持ち悪いモンスターだな〜…」 

 

『オゥ!?ボーイ!モンスター達に謝ってくだサーイ!みんな泣いていマース!』

 

「へっ…?」

あまり見慣れないモンスターに思わず気持ち悪いといってしまった龍亞だが…それを聞いたトゥーンモンスター達はメソメソ泣いていた…

 

「わわっ!?ごめんなさーい!!」

 

 

 

 

 

「なんだか調子が狂うなぁ…でも負けられない!ドロー!」

「まずは『モバホン』の効果!ダイヤルオーン!」

再びダイヤルが点滅する…数字は3!

 

めくったカード

スコープン

集中防護壁

ラジオン

 

「いいぞ!『D・スコープン』を召喚!」

顕微鏡型のロボットが現れる ATK800

 

「さらに『スコープン』の効果!手札からレベル4の『D・ラジカッセン』を特殊召喚!」

赤いラジカセ型のロボットが現れる ATK1200

 

「そしておれはレベル4の『ラジカッセン』にレベル3の『スコープン』をチューニング!」

 

3+4=7

 

「世界の平和を守るため!勇気と力をドッキング!シンクロ召喚!愛と正義の使者!『パワーツール・ドラゴン』!」

右腕がショベル、左腕がドライバー、尻尾がスコップになった機械竜が現れる ATK2300

 

『オー…「パワーツールドラゴン」…!懐かしいカードデース!そうですか…君が持ち主だったのですねボーイ…』

 

「『パワーツール』の効果を発動!デッキからランダムに装備魔法を手札に加える!パワーサーチ!…来た!装備魔法『ダブルツールD&C』を『パワーツール』に装備!これで自分のターン『パワーツール』の攻撃力は1000アップしてバトルする時、相手の効果は無効になる!」

パワーツールの右腕が鋭いドリルに、左腕がノコギリに変化する ATK2300→3300

 

「バトル!『パワーツール』で『トゥーンヂェミナイエルフ』を攻撃!クラフティ・ブレイク!!」

鋭いドリルの一撃がエルフに襲い掛かるが…

 

《アハハ!》

《キャハハ!》スカッ

 

「えっ!なんで!?」

エルフの姉妹は組み体操のように手を繋ぎハートマークの穴を作る、そしてパワーツールの攻撃はその穴を通過した!

 

紳士LP4000→2600

 

 

『「トゥーン・キングダム」の効果デース!自分のトゥーンモンスターが攻撃される時に自分のデッキトップのカードを除外してバトルによる破壊から守りマース!トゥーンモンスターは漫画の世界で生きる無敵の生命体なのデース!』

 

「そんなぁ、なんでもアリかよ!ターンエンド!」

パワーツールATK3300→2300

 

龍亞LP4000

パワーツール(D&C)モバホン ステープラン 伏せ2 手札2

 

 

 

『私のターン!ドロ〜!』

『それでは君のモンスターもカートゥーンの世界にご案内しマース!トラップカードオープン!「コミック・ハンド」発動デース!「パワーツールドラゴン」のコントロールをいただきマース!』

トゥーン・キングダムからマジックハンドが伸びてパワーツールを城の中に引き込む!

 

「『パワーツール』!?」

 

ドッタンバッタン…カンカン!…ポン!

パワーツールを取り込んだ城から音が響きパワーツールが吐き出される…そこにはデフォルメされたパワーツールドラゴンが存在していた。

 

 

「嘘!?『パワーツール』がアニメのキャラクターみたいになっちゃった!?」

 

『「コミックハンド」でコントロールを得たモンスターはトゥーンモンスターとなりマース!さしずめ「パワーツール・トゥーン・ドラゴン」と言ったところでしょうか?』

 

《wwww!》

 

「くそ〜!よくもパワーツールを!(伏せカードは『リミッター解除』と『パワーアップ・コネクター』…攻撃してきたら返り討ちだ!)」

 

『それではバトルデース!「パワーツール」でボーイにダイレクトアタックデース!』

 

「えっ!?ダイレクトアタック??おれのフィールドにモンスターがいるのに!?」

 

『トゥーンモンスターは漫画の世界の住人!普通のモンスターは彼らに触る事ができないのデース!行きなさい私のトゥーン達!』

 

『『『ワアアアア!!』』』

 

「う、うわぁぁぁ!?」

トゥーンモンスター達が龍亞に飛びかかりアニメチックに砂埃がたった…。

 

龍亞LP4000→1700→0

 

紳士WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私の勝ちデース!ボーイ、良いデュエルでした!ナイスファイトデース!』

紳士は倒れた龍亞に手を差し伸べる

 

「負けちゃった…遊海を守らなくちゃいけないのに…おれ…!うぇ〜ん!!!」

 

『ホワッ!?ボーイ!?なぜ泣いているのデスか!??どこか痛いのですか!?』

突如泣き出した龍亞に困惑する紳士…そこに…

 

 

「龍亞ー!!!

 

 

ズッドォン!!

 

龍亞の名を呼ぶ声と共に何者かが着地する

 

「遊…メタルナイト!!どうして…!」

 

「遊星達から連絡を貰ってパトロールしてたんだ!何があった!」

現れたのは遊海…遊星から自分を狙う何者かの事を聞いてパトロールしていたのだ…。

 

「この人が…遊海の居場所が知りたいって…だから…秘密を守ろうって…!」

鼻水をすすりながら龍亞は紳士を指さす

 

「なんだって!?おま……………何やってるんですか()()?」ピシュン

 

『オー!!ミスター白波!お久しぶりデース!元気そうで何よりデース!』ガシッ

 

「へっ…?グスッ…遊海…知り合いなの…?」

変身を解除した遊海と握手を交わす紳士を見て龍亞が問いかける。

 

「知り合いもなにも…お前、この人が誰かもわからないでデュエルしてたのか?…この人はペガサス・J・クロフォード、インダストリアル・イリュージョン社の名誉会長で『デュエルモンスターズ』の生みの親だぞ?アカデミアで習わなかったのか?」

 

『オゥ!自己紹介がまだでしたネ!ソーリー!龍亞ボーイ!』

 

「え、ええぇぇぇ!??!!」

シティの街角に龍亞の叫びが響き渡った…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

『アッハッハッハ!そうですか!だからこのボーイはユーの事を守ろうとしたのですネ?ソーリー!ミスター白波!』

 

「まったくもう…俺に会いたいなら携帯に連絡くださいよ…」

 

『ユーのテレフォンナンバーに繋がらなかったのデース!』 

 

「あっ…ダークシグナー事件で壊れて番号変えたんだった!」

 

 

ペガサス会長曰く、WRGPの下見にネオドミノシティに来て、プライベートタイムで俺に会おうとして人に聞いて回っていたらしい…また何故海馬社長に聞かなかったかと言うと…

 

『ミスター海馬は過労で療養中デース!』との事だった…あとでお見舞いに行こう…

 

 

「龍亞…ごめんな、不安だっただろう?でも良かったな!世界で1つだけの『トゥーン』デッキと戦えて!」

 

「遊海…おれ…やっぱり弱いよ、お兄ちゃん失格だよ…」

 

「龍亞…」

龍亞は落ちこんで座り込んでいる…

 

 

『ノンノン!龍亞ボーイ、スタンドアップ!ユーは強かったデース!ユーは自分なりにミスター白波を守ろうとしました!例え負けようとユーは役目を果たしたのデース!』

 

「ペガサスさん…」

 

『フーム…そうだ!ユーは装備魔法を使うデッキでしたネ!迷惑をかけたので私の作った新しい装備魔法をユーに進呈しましょう!受け取ってくだサーイ!』

そう言ってペガサスは1枚のカードを龍亞に手渡す

 

「『月鏡の盾』…?いいの?」

 

『そのカードは昔、私のデザインしたカードの効果をアレンジしたものデース!ユーなら使いこなせると信じていマース!』

 

「…でも、おれ…アカデミアの成績も悪いし…」

 

『何を言っているのデスか?学校の成績なんてアテになりまセーン!かの初代決闘王も流浪のヒーロー使いも学校の成績はそこまで良くなかったのデース!』

 

「えっ…そうなの…!?」

 

「そうだぞ龍亞、遊戯はいつも赤点ギリギリだったし…十代も…アイツよくアカデミア卒業できたな…ってぐらいだからな!…龍亞、大事なのは『心』だ!自分の目指す夢があれば成績なんてほとんど関係ない、思い続ければその願いはきっと叶うさ!」

 

「遊海…ペガサスさん…うん!おれ頑張る!頑張るぞ〜!!」

 

「うんうん、その調子だ!一緒に頑張ろうな龍亞!」

 

『元気が出てきたようでよかったデース!』

元気を取り戻した龍亞を見て自然と笑顔になる遊海とペガサスなのだった…。

 

 

 

 

 

 

「遊海!ペガサスさん!さよなら〜!」

 

「あぁ!今度こそちゃんと帰れよ〜!」

 

『グッバイ!龍亞ボーイ!グッドラック!』

遊海とペガサスは龍亞を見送る…既に日は黄昏色に染まっていた…。

 

 

 

『さて…そろそろ私もホテルに戻りマショウか』

 

「送りましょうか?ペガサス会長?」

 

『ノープログレム!大丈夫デース、間もなく迎えが来マース!』

 

「そうですか、それじゃあ俺もパトロールに戻ります!」シャキン

 

『…ミスター白波』

 

「どうしました?会長?」

 

鎧を纏いパトロールに行こうとする遊海をペガサスが呼び止める…その顔は老けてはいたが真剣な眼差しで遊海を見つめていた…。

 

 

『気をつけてください…先日、我が社にハッキングが仕掛けられました…何者かがあなたの事を探っていマース』

 

「何者か…?それは…『イリアステル』ですか?」

 

『わかりまセーン…ですがハッキングされたのは我が社に保管されていた「バトルシティ」関係の映像でした…恐らくKCのデータベースにはアクセスできなかったのでしょう…充分に注意してくだサーイ…!』

 

「忠告ありがとうございます、大丈夫です…俺にはたくさんの頼れる仲間達がいますから…!では!」

遊海はそのままジャンプして街へと消えていった…。

 

 

『ミスター白波…ユーの未来に神の加護がある事を祈っていマース』




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強くなる為に〜冷たき薔薇と月華の薔薇〜

こんにちは!S,Kです!
ハーメルンの皆様、たくさんのリクエストをありがとうございます!頂いたリクエストは何かしらの形で小説に反映させていただきますので楽しみにお待ちください!

それでは最新話をどうぞ!


「フンフフ〜ン♪今日もいい天気でよかった!」

シティ郊外のある住宅、そこで鼻歌を歌いながら洗濯物を取り込む女性が1人…遊海の妻である翠である。

 

《翠、今日も嬉しそうだね!》

 

《あたり前よウェン、遊海さんが復活して笑顔が増えたもの…》

庭でガーデニングをしながらその様子を見る翠の精霊であるウィンダとウェン…2人の言葉どおり翠はとても機嫌がよかった。

 

 

17年前…ゼロ・リバースの影響で大ダメージを負い、同時に病弱となってしまった遊海…翠はそんな遊海を献身的に支え続けた。

思うとおりに身体が動かずとも人を救い続けた遊海…しかし、その裏ではゼロリバースを止められなかった後悔から心が潰れかけていた…翠はそんな遊海を励まし助け続けた。

…もし遊海の隣に翠がいなければ…彼は某正義の味方のようにただ人を救い続ける機械になっていたかもしれない、だがそれは過去の事…遊海の紡いだ絆の奇跡、そして赤き竜の力で遊海は力を取り戻し今はネオドミノシティの平和を守る為に飛び回っている…翠にとってそれが一番の喜びなのだ…。

 

 

「今日の夕ご飯は何にしようかな〜♪?ハンバーグがいいかしら?それともカレーかしら?」 

 

《翠…まだお昼過ぎだって…》

 

《止めてやるなウィンダ、翠殿は本当に嬉しいのだろう…少々浮かれ過ぎだがな…》

周りに嬉しいオーラを漂わせながら夕飯の献立を考える翠…精霊達は少し困惑しながら様子を見守っていた。

本当であれば不老不死である遊海達に食事は必要無い…しかし、それでは味気無いと遊海達は食事はしっかりと摂る事にしているのだ。

 

 

ピンポーン!

 

 

「ん?はーい!」

玄関のチャイムが鳴る、やってきたのは…

 

『こんにちは!翠さん!』

 

「あら!アキさん!どうしたの?遊海さんなら遊星君達のガレージにいると思うけど?」

訪ねてきたのはシグナーの一人である十六夜 アキだった、遊海はシグナー達に自宅の場所を教えていて、たまに訪ねて来るのだ。

 

『あっ、違うんです!今日は翠さんに相談があって…』

 

「私に?それじゃあ中に入って!お茶を飲みながら聞くわ!」

 

『はい!お邪魔します!』

 

 

 

 

 

 

「力の使い方を教えてほしい?」

 

『はい…私の持っている「サイコパワー」…その力を制御してさらに使いやすくできたらって…』

 

アキは強い超能力を持ったデュエリスト『サイコデュエリスト』と呼ばれる人間である、過去にはその力で両親を始めとした多くの人達を傷つけてしまい荒れてしまった時期もあった…しかし現在はある程度力をコントロールし平和な生活を送っている…しかし

 

『遊星が戦ったっていうゴーストは「デュエルダメージを実体化する力」…サイコパワーと同じ力を使ったらしいわ、だから私も力を安定させてみんなの力になれたらって…そう思ったの』

 

「だから精霊の力を持っている私に相談に来たのね…私にできる事なら協力するわ!」

 

『ありがとう翠さん!よろしくお願いします!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは自分のできる事の把握からね!アキちゃんはサイコパワーで何ができる?」

庭へと出てきたアキと翠は能力の把握から始めていた…。

 

 

『私ができるのは「デュエル外でもモンスターを実体化させる能力」だけなんです…あとは試した事がないわ』

 

「う〜ん…それじゃあやってみてくれる?」

 

『はい!…「黒薔薇の魔女」召喚!』

アキがデュエルディスクにカードを当てる…するとメイド服に似た服を着た魔女が現れる

 

「こんにちは!」

 

《………》

翠が話しかけるが反応は無い、自我が薄い、または無いようだ…

 

「なるほどね…サイコパワーはソリッドビジョンを実体化させる力に近いのかも…じゃあ私の番ね!出てきて!『シャドール・ファルコン』!」

《ピュイ!》

翠がカードを掲げると目の前に鳥型の影人形が現れる

 

『あっ…かわいい、よしよし…』

《ピュイ〜…》

アキに頭を撫でられたファルコは嬉しそうに鳴く

 

『翠さんの力だと自我があるんですね?』

 

「うん!私達は精霊界にいる精霊にカードを触媒に呼びかけて出てきてもらってるの、たまにウィンダやウェンみたいにいつも一緒にいる精霊もいるんだけどね!」

《ピース!》

 

『なるほど…』

 

「あと私ができる事は魔法・罠の効果をデュエル外で使える事と…奥の手が1つあるわ」

 

『奥の手…?』

 

「えぇ!いくわよ…バトルドレス!ドレスアップ!」

眩い光が翠を包み込む…光が収まると紫色の機械的なドレスを纏った翠の姿があった…。

 

『翠さん…!?その姿は…!』

アキは突如変身した翠の姿を見て驚く

 

「これは私の戦闘衣装…精霊の力を纏った状態なの、この状態だと身体能力が底上げされて普通の人以上の力を発揮できるの!ついでに遊海さんの『メタルナイト』も同じ原理なのよ?」

 

『精霊の力を身に纏う…だからあの人はあんなに強かったのね…』

翠の答えを聞いたアキは過去にあった出来事を思い返していた…。

 

 

 

 

 

2年前…

 

『アハハハ!全部ぶっ壊してあげる!!』

《ギュリリリ!》

 

シティの端…ダイモンエリアで当時『黒薔薇の魔女』と呼ばれたアキは本能のままに建物を破壊していた…。

 

「破壊をやめるんだ!黒薔薇の魔女!」

 

『また来たわね「鋼の騎士」…!邪魔をしないで!!「ブラックローズドラゴン」!!』

《ギュリリリ!!》

 

魔女を止める為に現れたメタルナイト、そこに茨のムチが襲いかかる!

 

 

「遅い!!セイヤァァァ!!」ガシッ! ブゥン!

 

《ギュリリ!?》

ムチを躱したメタルナイトは茨を掴みブラックローズを振り回す!

 

「どぉおりゃあああああ!!」

 

ズガン!!

 

《ギュ…!?》

 

「嘘っ…!?」

茨ごとブラックローズは地面へと叩きつけられた…

 

「まだやるか?」

 

『くっ…覚えてなさい…!!』

ブラックローズを消したアキはそのまま逃げ去ったのだった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

『翠さん達は…どうしてそんなに「力」を使いこなす事ができるの?』

変身を解いた翠にアキが訊ねる…アキは髪留めとして「サイコパワー制御装置」を着ける事でかろうじて力を制御している、しかし遊海達は自由に力を使っているのだ。

 

 

「遊海さんは天性の才能があると思うんだけど…私は違ったの、遊海さんがいなければどうなっていたか…」

 

『えっ…それって…?』

翠の言葉にアキは首を傾げる

 

「遊海さんと私の出会いはね…暴走していた私を遊海さんが止めてくれた事だったの…命を懸けてね?」

 

『翠さんの暴走…!そんな事があったんですか…!?』

 

「うん、ちょっと長い話だから…見た方が早いかな?ウィンダ…お願いしていい?」

 

《翠…いいの?だいぶショッキングだけど…?》

 

「アキさんはホラー映画とかは見れる?」

 

『え…少しなら…大丈夫ですけど…?』

 

「うん、なら大丈夫ね?私の記憶を見せてあげる…お願いウィンダ!」

 

《うん!記憶共有魔法…発動!》ピカッ!

 

『えっ…!きゃあ!?』

アキの視界は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

約29年前……

 

 

「クスクスクス……私に手を出すからこうなるのよ…」

暗い路地裏…そこは惨劇と化していた、不気味に笑う翠の周りには腕が変な方向に曲がった男や壁にめり込み泡を吹いている男達がいた…。

 

 

(この光景は…!)

 

(これは私の過去…私は悪い男達に襲われそうになった時に力が覚醒したの)

今の翠とアキは幽霊のように透けた体で暴走する過去の翠を見下ろしていた…

 

(本当は暴走というよりも私に間違って憑依したウィンダが私を守ろうとして暴れてたの、私はまだ力をコントロールできなかったから…)

 

(そんな事が…あっ!あれは…!)

 

 

『お前がやったのか…!』

《マスター!彼女が異常な精霊の力の原因です!》

路地裏に現れたのは赤帽子の男と虹色の宝玉を持った機械…遊海とアヤカである。

 

「アナタは誰?アナタも私を傷つけるの?…ならお掃除しなきゃダメですね…?」

翠は遊海に不気味に微笑む…

 

《スキャン完了…彼女本人の意識はありません、周囲の状況から彼女の精霊が肉体を乗っ取り暴走しているものと思われます…!》

 

『マジかよ…!止める方法は?』

 

《おそらくデュエルに勝利し相手の意識を断てば…》

 

『わかった…おい、デュエルしようぜ?』

 

「クスクス…いいですよ…お掃除しますね?」

そして翠と遊海は旧式のデュエルディスクを構える…

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

……

 

 

「バトル!「ミドラーシュ」で「ゲノム」を攻撃!ウィンドストーム!!」

 

『ぐああぁぁぁ!!?』

暴走した翠は遊海のモンスターを破壊する…その威力は凄まじく…周囲の壁は壊れ、さらに破壊されたゲノムの破片が遊海に直撃し瞬く間に傷だらけになっていく…。

 

(そんな…遊海さんがあんなにボロボロに…!)

 

(…あの時の遊海さんには申し訳ないわ…これが遊海さんの初めての闇のデュエルだったらしいから…)

 

 

 

……

 

『バトル…!「アポクリフォート・キラー」でダイレクトアタック…!デストロイ…キャノン…!!』

 

「きゃああああ!!」

そしてデュエルは真の力を開放したアヤカの攻撃により遊海の勝利に終わった…。

 

 

《スキャン開始…暴走精霊を強制送界、エラー確認…精霊の力が無い…?マスター、処置は完了しました…彼女を休める場所まで連れていきましょう》

 

『ああ…わかった…行こう…』

遊海は倒れた翠をおんぶし路地裏から離れる…その後ろには血が点々と落ちていた…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

『っ…戻って来たみたいね…』

アキが気づくと元のリビングへと戻っていた、時計の針は5分程進んでいる…。

 

「今のが私と遊海さんの出会い…あのあと遊海さんはダメージで気絶して2人とも病院に運ばれたわ、そのあとに遊海さんから力の使い方を教えてもらって現在に至るのよ」

 

『なかなか刺激的な出会いだったんですね…』

 

「あはは…まぁそうね、普通の出会いではなかったわね!…でもあの出会いがなかったら今の私は居なかった、だから遊海さんには感謝しているの!」

 

『…だから結婚を?』

 

「それは…また別のお話ね!さてと…じゃあ力を使いこなす為に訓練しましょうか!」

 

『訓練…?いったい何を…?』

 

「もちろん…デュエルよ!」

 

『えっ…!?』

 

 

 

 

 

 

 

『み、翠さん!本当にやるんですか!?』

 

「そうよ〜!力をコントロールするには全力を把握しなくちゃ!サイコパワー全開でかかってきなさい!」

翠とアキは庭に張られた結界の中で対峙していた…力を制するには自分の力を把握する事が一番重要である。

 

「手は抜かないでね?…じゃないとすぐに終わっちゃうわよ?」

翠から強いオーラが放たれる…そのオーラはアキに威圧感を与える…!

 

『これは…ダークシグナーの時以上に厳しい戦いになりそう…!本気でいきますね!』

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

翠LP4000

アキLP4000

 

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「『おろかな埋葬』を発動!デッキの『シャドール・ビースト』を墓地に送る!さらに『ビースト』の効果発動!カード効果で墓地に送られた事で1ドロー!…モンスターをセット!カードを1枚伏せてターンエンド!」

翠LP4000

セットモンスター 伏せ1 手札4

 

 

 

「さぁ、アキさんのターンよ?」

 

『はい…いきます!(モンスターをセットする戦術…油断なしでいくわ…!)』

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「ローン・ファイア・ブロッサム」を召喚!』

巨大な蕾を持った植物が現れる ATK500

 

『さらに「ブロッサム」をリリースしてデッキから「フェニキシアン・クラスター・アマリリス」を特殊召喚!』

蕾が破裂し不死鳥のような彼岸花が現れる ATK2200

 

「(あれ…?『アマリリス』って自身か『フェニキシアンシード』の効果じゃないと特殊召喚できなかったような…?まさかアニメ効果なの!?)」

 

『バトル!「アマリリス」でセットモンスターを攻撃!フレイム・ペタル!』

不死鳥の炎が鳥の影人形を焼き尽くす!

 

「『シャドール・ファルコン』のリバース効果発動!墓地の『シャドール・ビースト』を裏守備表示で特殊召喚!」

 

 

『リバースモンスターだったのね…!でも「アマリリス」の効果発動!このカードは攻撃した後に破壊され…相手に800ダメージを与えるわ!スキャッター・フレイム!』

炎を纏った彼岸花が爆発し翠へと破片が降り注ぎダメージを与える!

 

「熱ッ!?…これがサイコデュエルのダメージなのね…!」

翠LP4000→3200

 

 

『カードを2枚伏せてターンエンド!そして「アマリリス」はエンドフェイズに守備表示で復活するわ!』

大地を突き破り再び彼岸花が咲き誇る DEF0

 

 

アキLP4000

アマリリス 伏せ3 手札2

 

 

 

 

 

『み、翠さん!大丈夫ですか…!?』

ターンを終えたアキは翠に訊ねる…翠の威圧感に思わず本気に近い力を出してしまったからだ…。

 

「大丈夫よ!これぐらいなんともないわ!気にしないで!…続けるわよ!」

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「セットモンスター『シャドール・ビースト』を反転召喚!」

獅子型の影人形が現れる ATK2200

 

 

「『ビースト』のリバース効果発動!デッキから2枚引いて1枚捨てる!…そして『シャドール・リザード』を召喚!」

トカゲ型の影人形が現れる ATK1800

 

「さらに手札を1枚捨てて速攻魔法『超融合』を発動!私の場の『リザード』とアキさんの場の『アマリリス』を融合!!」

 

『なっ…!私の場のモンスターを融合素材に…!?』

彼岸花とトカゲが融合の渦に吸い込まれる!

 

 

「地を這いずる人形よ!炎の力を得て巨人の王を呼び出さん!融合召喚!『エルシャドール・エグリスタ』!」

球体の関節が様々な宝玉になっている巨人が現れる ATK2450

 

「融合素材になった『リザード』の効果発動!デッキの2体目の『ファルコン』を墓地へ!さらに『ファルコン』自身の効果で自分を裏守備で特殊召喚!…バトル!『エグリスタ』でダイレクトアタック!」

エグリスタが赤い糸を振るいアキに襲いかかる!

 

『速攻魔法「偽りの種」を発動!手札の「グローアップ・バルブ」を特殊召喚!くうっ…!』

小さな目のある球根が現れるがすぐに破壊される DEF100

 

「なら『ビースト』でダイレクトアタック!」

影の猛獣が牙を剥く!

 

『まだよ!リバースカードオープン!「リビングデッドの呼び声」!お願い!「アマリリス」!』

再びアマリリスが召喚されビーストと相討ちとなる…

 

『破壊された「アマリリス」の効果発動!相手に800ダメージを与える!スキャッター・フレイム!』

破壊された彼岸花の破片が降り注ぎ翠にダメージを与える、その力は先程より強く、破片の落ちた地面が焦げていく…!

 

「くぅぅぅ…!!」

翠LP3200→2400

 

『あっ!?翠さん!!ごめんなさい!!私…また…!』

 

アキは火の粉に襲われる翠に叫ぶ…そして後悔する、忌まわしい力でまた人を傷つけてしまったと…

 

 

「目を背けないで!」

 

『えっ…!』

 

翠の叱咤が飛ぶ、服を焦がしながらも翠はアキをまっすぐ見つめていた

 

「目を背けちゃダメよ…この力は人を救う事ができるすごい力よ!…決して人を傷つけるだけの力じゃない、自分の力と向き合って!」

 

「翠さん…!はい!!」

 

「その調子よ!私はこれでターンエンド!」

翠LP2400

エグリスタ ファルコン(セット)伏せ1 手札2

 

 

 

 

『(翠さんは私の為に全力で向き合ってくれてる…!その期待に応えてみせる!)』

 

 

『私のターン…ドロー!』 

『私はデッキトップのカードを墓地に送って墓地の「グローアップバルブ」を特殊召喚!』

再び目の付いた球根が現れる ATK100

 

『そして私は魔法カード「フレグランス・ストーム」を発動!「グローアップバルブ」をリリースして1ドロー!…ドローしたのは「ボタニカル・ライオ」!植物族モンスターをドローした事でもう1枚ドローできる!』

 

『そして「夜薔薇の騎士(ナイト・ローズ・ナイト)」を召喚!効果によって手札から「ボタニカルライオ」を特殊召喚!』

黒い薔薇の鎧を着た騎士とボタンの花弁を持つ獅子が現れる ATK1000  ATK1600

 

『私はレベル4の「ボタニカルライオ」にレベル3の「夜薔薇の騎士」をチューニング!』

 

4+3=7

 

『冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の薔薇よ!開け!シンクロ召喚!現れて!「ブラック・ローズ・ドラゴン」!』

赤き花弁を持つ花竜が現れようとする…しかし

 

「『エグリスタ』の効果を発動!相手がモンスターを特殊召喚する時!手札の『シャドールヘッジホッグ』を墓地に送り特殊召喚を無効にして破壊するわ!」

 

『なんですって!?』

顕現しかけた黒き薔薇竜は粒子となって消え去る…

 

「さらに『ヘッジホッグ』の効果でデッキの2体目の『シャドールビースト』を手札に加えるわ…どうする?」

 

『っ…私はターンエンド!そして再び墓地の「アマリリス」を特殊召喚!』

彼岸花の不死鳥が再び現れる DEF0

 

 

「アキさんのエンドフェイズにリバース罠『堕ち影の蠢き』を発動!デッキの『シャドール・ドラゴン』を墓地に送って私の場にいる裏守備のシャドールモンスターを表側守備表示にする!私は『シャドール・ファルコン』をリバース!」

小さな鳥型の影人形が現れる DEF1400

 

「そして墓地に送られた『シャドールドラゴン』の効果!アキさんの場の伏せカードを破壊!さらに『ファルコン』の効果で墓地の『ビースト』をセット!」

 

『しまった…「和睦の使者」が…!』

 

アキLP4000

アマリリス 手札1

 

 

 

『まさか「ブラックローズドラゴン」の召喚が防がれるなんて…それに遊海さんもそうだけどプレイングがすごい…!』

 

「ふふっありがとう…じゃあちょっと本気でいくわね?」

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「『シャドールビースト』を反転召喚!リバース効果で2枚引いて1枚捨てるわ!」

獅子の影人形が現れる ATK2200

 

「私はレベル5の『ビースト』にレベル2の『ファルコン』をチューニング!」

 

5+2=7

 

「清廉なる花園に咲く孤高の花よ!月の雫を得て咲き誇れ!シンクロ召喚!『月華竜ブラックローズ』!」

フィールドに花吹雪が舞い、聖なる光を纏う花竜が現れる ATK2400

 

『これが遊星の言っていた「決闘竜」…!本当に「ブラックローズドラゴン」にそっくり…!』

 

「見た目はそっくりでも効果は違うのよ?『月華竜』の効果を発動!このカードが特殊召喚に成功した時!相手フィールドのモンスター1体を手札に戻す!『アマリリス』には手札に戻ってもらうわ!退華の叙事歌(ローズ・バラード)!」

フィールドに花吹雪が舞う…アマリリスは風に攫われ手札に戻ってしまう。

 

『っ…!しまった!』

 

「そして『シャドール・ヘッジホッグ』を召喚!」

ハリネズミの影人形が現れる ATK800

 

「バトル!『月華竜』でダイレクトアタック!散華の鎮魂歌(ローズ・レクイエム)!」

月華竜から放たれた光の息吹がアキに直撃する!

 

『くぅぅ…!』

アキLP4000→2600

 

 

「そして『ヘッジホッグ』と『エグリスタ』でダイレクトアタック!」

2体の影人形の攻撃がアキに命中し、デュエルは決着した。

 

 

アキLP0

 

翠WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…お疲れ様アキさん!大丈夫?」

 

『私は大丈夫ですけど…翠さんこそ大丈夫ですか!?』

デュエルが終わり翠はアキに歩み寄る…しかし翠はサイコパワーによるダメージで所々火傷していた…。

 

「大丈夫!大丈夫!昔に受けたダメージに比べれば全然だから!具体的に言うと…破壊神とデュエルした時よりはマシだから!」

 

『いったいどんな修羅場を乗り越えてきたの!?』

アキは思わずツッコんでしまう…

 

「ふふっ、冗談よ…それじゃあもうひとつ訓練ね…はい!」

 

『?…これは「治療の神 ディアンケト」…?』

翠は1枚の魔法カードを渡す…それはおなじみの回復カードであるディアンケトだった。

 

 

「そのカードの力を使って私の怪我を治してみてくれる?」

 

『えっ…でも私…やった事が…』

アキは少し躊躇する…何かを破壊する事にしか使わなかったサイコパワー、それで傷を癒やす事ができるのか不安になったのだ…。

 

「大丈夫、自分の力を信じて!まずは私のお手本ね?『ディアンケト』発動!」

翠は少し擦りむいていたアキの膝に回復の光を当てる…すると傷はすぐに治った。

 

『これが回復の力…すごい…!』

 

「それじゃあアキさんの番ね?失敗してもいいからやってみて?」

 

『は、はい!…「ディアンケト」…発動!』

アキがディアンケトを発動する…すると翠の体が優しい光に包まれ傷が消えていった…。

 

『できた…!できたわ翠さん!!』

 

「うん!ありがとうアキさん!合格よ!…貴女の力は破壊の力だけじゃない…優しい力も持っているわ、その力でみんなの役に立ってあげてね?」

 

『はい!ありがとうございます!!』

 

 

タララーラーラーラー…ターラララーラーラーラー…

 

「あら…電話?もしもし翠です!」

デュエルが終わり立ち上がった翠の携帯が鳴る

 

 

『もしもし翠?今大丈夫か?』

 

「あっ遊海さん!どうしたんですか?」

 

『いや、遊星達が最近ジャンクフードしか食べてないらしいから何か食べさせてあげたいんだけど…何か作れるか?』

 

「う〜ん…わかりました!カレーを作るのでみんなを連れて来てくださーい!」

 

『わかった!ありがとう!…えっ、龍亞達も?龍可は…ああ、もうわかったから!』プツン ツーツー

 

 

 

 

『遊海さんですか?』

 

「えぇ、遊星君達にカレーを作ってあげる事になったの!…もしよかったら手伝ってくれる?」

 

『わかりました!手伝います!』 

 

「ありがとう〜!それじゃあよろしくね!」

 

 

 

 

そしてその夜はシグナーチーム勢揃いのカレーパーティーとなった、余談だが龍可と遊海の目にはアキの肩にちょこんと乗り微笑む黒薔薇の魔女の姿が見えたとか…それは本人の知らない事である。

 

   



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未来からの侵略者! 前編〜接触〜

こんにちはS,Kです!CCCコラボ周回の為に執筆速度が低下します…申し訳ありません!

…ミッション形式はつらタン…


それでは最新話をどうぞ!


その日はどんよりとした雲がネオドミノシティを覆っていた、別によくある1日の光景…しかしその日は少し違ったのだ…。

 

 

 

 

 

「曇りか…こんなに雲が厚いのは久しぶりだな」

 

「そうですね〜…雨は降るんでしょうか?」

 

《簡易天気予報………今日は1日曇りです、降水確率40%…出かける時には折り畳み傘を持っていきましょう!》

 

「アヤカ…そんな機能もあったのか…」

とある日…俺はのんびりと朝ご飯を食べていた、大きな事件も無く三長官にも動きはない…いつも通りの平和な朝だった。

 

 

「遊海さん、今日の予定は?」

 

「今日は…特に無いかな、何処か出掛ける?」

 

「それじゃあマーサハウスに行きませんか?久しぶりに子ども達の顔を見たいですし!」

 

「そうだな!少し癒やされに行こうか!」

 

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

「「っ!?」」

 

突如として警報音が鳴り響く…それはあらかじめアヤカにセットしていたプログラム、()()()()()を感知した時に鳴る警報…それは…

 

《マスター!時空の乱れを確認!何者かがこの時代に侵入しました!!》    

 

「曇り…まさか…!翠!家を頼む!!」

 

「はい!気をつけて!!」

俺は急いで家を飛び出した。

 

 

「アヤカ!遊星達のいる場所をサーチ!」

 

《サーチ中……サテライト方面のデュエルレーンに反応確認!デュエル中です!!》

 

「くっ…()か!!」

アヤカに場所を聞いた俺は遊星のもとへと急いだ…。

 

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

ドッカーン!!

 

 

「くっ…!!」

 

「なっ…!攻撃が実体化してやがる!?ゴーストの仲間か!?」

 

 

オレは今、突如デュエルを仕掛けてきた大型Dホイールを操る仮面の男とライティング・デュエルをしている、だが奴は只者じゃない…!

 

 

「遊星!お前のフィールドは万全だ!さっさと蹴散らしてしまえ!!」

 

「ジャック…!頼むぞ『スターダストドラゴン』!オレはレベル5の『ジャンクウォリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!!」

 

5+3=8

 

「集いし願いが新たに輝く星となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!!『スターダストドラゴン』!!」

遊星は自身の切り札たる星屑の竜を召喚する…しかし

 

 

『ダメだ遊星!!『スターダスト』を召喚するな!!』

 

 

「っ…!?遊海さん!?」

通信で遊海が叫ぶ…しかしその警告は一瞬遅かった…。

 

『フッ…!』スッ

仮面の男は1枚の白紙のカードを取り出す

 

「なっ…!?白紙のカードだと!何をするつもりだ!!」

 

『こうするのだ…!』

 

バラバラバラバラ…!!

 

白紙のカードから無数のカードのような光線が放たれスターダストに直撃…スターダストの姿が消え白紙のカードに封印されてしまう…!

 

 

「『スターダスト』!?」

 

「バカな!『スターダストドラゴン』を奪ったというのか!?」

 

「ありえねぇぜそんな事!?」

遊星達は驚きをあらわにする、カード効果でモンスターを奪われる事は多々ある…しかし今回は()()()()()()()()自体が消えてしまっているのだ…!

 

 

『不動 遊星、貴様の「スターダスト」は戴いた…この時代もろとも滅びるがいい!』

 

「なんだと!?」

仮面の男は意味深な言葉と共に遊星を追い抜いていく…!

 

「待て!『スターダスト』を返せ!!」

 

『もう遅い!フッフッフッ…ハッハッハッハッ!!』

 

爆発的に加速した大型Dホイールは忽然と姿を消した。

 

 

「消えた…だと!?」

 

「奴め何処へいった…!?」

クロウとジャックは困惑する、目の前にいた人物が忽然と姿を消した…超スピードや光学迷彩では無く、完全に消滅したのだ。

 

 

「くそっ…間に合わなかったか…!」

 

「遊海さん…!」

 

仮面の男が消えた直後、遊海が遊星達に合流する。

 

「遊星…『スターダストドラゴン』は!」

 

「謎のDホイーラーに奪われました…!遊海さん…奴の事を知っているんですか?」

 

「ああ、朧げだけどな…知っている事を話す、ガレージに戻るぞ!」

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「イリアステル…!その一員が『スターダストドラゴン』を奪ったと言うんですか…!」

 

「しかし信じられん…!過去と未来を行き来する人間がいるとは…!」

 

「でもあんな加速や消え方をするのは今のテクノロジーじゃ無理だぜ…!」

 

遊海はスターダストドラゴンを奪った仮面の男・パラドックス…そして彼の所属する組織「イリアステル」について説明する…。

 

 

「俺は過去に少なくとも2回、奴と遭遇している…らしい」

 

「らしい…?どういう事だよそれ?」

クロウは疑問形で答える遊海に尋ねる

 

「それが…俺は()()()()()()が無いんだ、だから何があったかは覚えてない…だが奴の目的はわかる…それは…「「「遊星!!」」」」

遊星のガレージにアキと龍亞兄妹が駆け込んでくる

 

 

 

「え〜い!何事だ!今は大事な話の最中だぞ!」

話の腰を折られたジャックが龍亞達に怒鳴る

 

「それどころじゃないわ!これを見て!!」

 

「スクープ!大スクープなんだよ!!」

 

「わたし達、図書館でデュエルモンスターズの歴史を調べてたの!そしたら…!!」

そう言って龍可は電子スクロールを遊星へと渡す…そこには…

 

 

『バトルシティチャンピオン・武藤 遊戯君、キッズデュエリストカップにゲスト出演 見事な決闘を披露!』

 

「こりゃあ…ずいぶん昔の記事だなぁ…」

クロウが呟く…それは約30年前に遊戯とペガサスが写った記事だった。

 

「この男は…デュエルモンスターズの生みの親ペガサス・J・クロフォード…そして初代『決闘王』武藤 遊戯ではないか」

 

「うん!この前会った人なんだ!…ってそうじゃなくて!その写真の1個下をみてよ!」

 

「下?」

遊星達がその下に視線を移す…そこには会場に集うたくさんの人々…そこに見覚えのある赤帽子と紫髪の姿が写っていた。

 

「懐かしい写真だ…30年くらい前だな」

 

「本当に不老なんだな遊海さん…」

遊星は遊海の顔を見比べて呟いた…

 

 

「違うわ!その次の記事よ!」

 

「次…?」

遊星がページをスライドする…そこには

 

 

 

『バトルシティ・レジェンド開催中の童実野町で悲劇! ドラゴンが町を襲う!』

 

『白波 遊海氏が重症、死者・行方不明者多数』

 

『スターダスト・ドラゴン・レインボードラゴン・サイバーエンドドラゴンが町を破壊する様子を写した写真』

 

 

 

 

 

「『スターダスト・ドラゴン』!?」

 

「17年前だと…!?しかも遊海が重症…まさか…!?」

 

「…そのとおりだ、奴は時を遡り歴史を変えようとしている…!」

 

「遊海さん!それじゃあ奴は…!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

 

「っ…始まったか…!」

 

突然地面が揺れ、空が暗くなっていく…遊星達が外に飛び出すと黒い雪が降り注ぎ、ビル…街自体が崩れ去っていく…!

 

 

「そんな…!街が消えていく!?」

 

「いったいどうなってやがる!」

 

「これは仮説に過ぎんが…『スターダスト』が過去に出現した事で歴史が変わろうとしているのか…!?」

 

「当たりだジャック、奴の目的は『デュエルモンスターズの抹消」!過去でそれが為されようとしている!」

 

「「「「「なんだって!?」」」」」

ジャックの言葉を遊海が肯定する、デュエルモンスターズが無くなれば童実野町の発展は無くなり歴史は大きく変わってしまうだろう…。

 

 

「あっ…赤き竜の痣が…!」

そしてシグナー達に変化が起きる…痣が輝き遊星の背中で痣が完成する…!

 

「見て!遊星のDホイールが光っているわ!」

 

「赤き竜の力か…!」

 

「これは…!」

 

《キュオォン…!》

遊星号が赤い光を纏う…そして遊星に呼びかけるように赤き竜が鳴く

 

 

「遊星…行ってこい、過去改変を阻止し未来を救うんだ!」

 

「遊海さん…!いきます!!」

遊海の言葉を聞いた遊星は遊星号に乗り込む…そして加速し赤き竜と共に時を超えた…。   

 

 

 

 

「遊星が消えちゃった…!」

 

「まさか…赤き竜の力でタイムスリップしたっていうのか…!?」

クロウと龍可が呟く…遊星はこの時代を飛び出し過去へと向かったのだ…。

 

 

「ジャック!クロウ!のんびりしている暇はないぞ!とにかく街の人達を避難させるんだ!」

 

「遊海…わかった!」

 

「ならば見晴らし台に避難させよう!あそこは昔からある場所のはず…あそこなら多少は安全だ!」

 

「頼むぞ!二人とも!!」

 

「「応!!」」

こうしてシグナー達は人々を救う為に動き出した…。

 

 

 

 

 

「緊急事態が発生しています!急いで高台…見晴らし台に避難してください!!」

遊海は鎧を纏い、Dホイールに乗りながら人々に呼びかける…しかしパニックになった人々には聞こえていない…!

 

「くそっ…どうすれば!」

 

 

【聞こえているか!ネオドミノシティの住民達よ!!】

 

「海馬社長…!」

町中のオーロラビジョンから海馬社長の声が響く

 

【現在ネオドミノシティは未曾有の危機に直面している!互いに助けあい、シティの高台へと避難せよ!繰り返す!死にたくなければ高台へと避難するのだ!!】

海馬社長の絶対的カリスマを宿した声が響き渡る…それを聞いた住民達は急いで避難を開始した。

 

「さすが海馬社長だ…よし、逃げ遅れがいないか見回るぞ!」

遊海は流れに逆らいシティの中心部を目指した…。

 

 

 

 

 

 

 

《マスター!熱源反応はありません!》

 

「了解!次にいくぞ!」

生存者と逃げ遅れを探しながら遊海はシティを探索する…崩壊は加速し大きなビルも半分程消えている…。

 

《マスター!半径1Kmに人間の反応はありません!私達も避難しましょう!》

 

「わかった!…待て、誰かいるぞ!」

 

《そんなはずは…範囲内に生命反応・魂の反応はありません!》

遊海は走りながら赤い服を着た人影を見つける…しかも崩れ去っていく街の中で棒立ちの状態で…。

 

「目の前に人がいるなら救うだけだ!いくぞ!」

遊海は人影を助ける為に走り出した…。

 

 

 

 

 

 

 

「おい君!危ないぞ!高台に避難する…君は…!」

遊海が辿り着いたのは奇しくも遊星達が戦う時計台広場だった…そこに佇んでいたのは銀色の髪をツインテールにしアカデミア高等部の制服を着た少女…遊戯王TFシリーズに登場するレイン 恵だった…。

 

《マスター、変です!彼女から生命反応を感じません!》

 

「ああ、そうだろうな…彼女はたぶん()()じゃない…!」

 

レイン 恵…学校において座学・実技に関わらず平均ピッタリの成績を出す特技を持つ彼女…その正体は…

 

 

『…観察対象、白波 遊海を目視…決闘を開始します。』

レインは俺を視界に収めると同時にデュエルディスクを展開…デュエルを挑んできた、その目に生気は無く…まるで他の何者かが彼女の眼を通してこちらを視ているようだった…。

 

《マスター、この状況でのデュエルは危険です…撤退を進言します…!》

 

「いや…もう逃げられないらしい…周りを見てみろよ…!」

 

《っ…!時間流の停止を確認…時が止まっている…!》

遊海達の周囲は時が止まったかのように静かになっている…否、本当に止まっているのだ…!

 

「受けるしかないらしいな…!デュエルだ!レイン 恵!」

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!』」

 

 

 

 

レイン 恵LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『私のターン…ドロー』

『モンスターをセット…カードを2枚セット…ターンエンド』

 

レインLP4000

セットモンスター 伏せ2 手札3

 

 

「まずは様子見ってところか…なら…!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『星呼びの天儀台』を発動!手札のレベル6『エレキテルドラゴン』をデッキの下に戻し2ドロー!さらに『トレードイン』を発動!手札のレベル8『竜核の呪霊者』を墓地に送り2ドロー!そして『聖刻龍ートフェニドラゴン』を特殊召喚!」

遊海の精霊の一人である白竜が現れる ATK2100

 

 

《主よ、気をつけてください…彼女から底知れないナニカを感じます…!》

 

「ああ、ありがとう…!そして俺は『トフェニ』をリリースし『聖刻龍ーネフテドラゴン』を特殊召喚!『ネフテ』は聖刻モンスターをリリースして特殊召喚できる!さらにリリースされた『トフェニ』の効果でデッキから『ギャラクシーサーペント』を特殊召喚!」

紫色の聖刻龍と煌めく竜が現れる ATK2000  DEF0

 

 

「さらに『ネフテ』をリリースする事で『聖刻龍ーシユウドラゴン』を特殊召喚!リリースされた『ネフテ』の効果でデッキから『エレキテルドラゴン』を特殊召喚!」

青色の聖刻龍と尾がスパークする竜が現れる ATK2200  DEF0

 

「俺はレベル6の『エレキテルドラゴン』にレベル2『ギャラクシーサーペント』をチューニング!」

 

6+2=8

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に響け!シンクロ召喚!飛翔せよ!『閃光竜スターダスト』!」

遊海の守護竜である聖なる龍が現れる ATK2500

 

 

「バトル!『閃光竜』でセットモンスターを攻撃!流星閃撃(シューティングブラスト)!」

閃光竜のブレスがセットモンスターに直撃する…しかし

 

『セットモンスターは「魂を削る死霊」…戦闘では破壊されない。』

ローブを着た死神がフィールドに佇む DEF200

 

 

「戦闘破壊耐性か…メイン2魔法カード『超再生能力』発動!カードを1枚伏せターンエンド!『超再生能力』で3枚ドロー!」

 

『リバースカード発動「サイクロン」、セットカードを破壊。』 

 

「破壊されたのは罠カード『復活の聖刻印』!墓地の『トフェニ』を特殊召喚!」

再び白竜が現れる ATK2100

遊海LP4000

シユウ トフェニ 閃光竜 手札3

 

 

 

 

「エンドサイクなんてずいぶん実戦的じゃないか…!」

 

『対象カードの破壊に失敗、次の作戦に移ります。』

 

 

 

 

『私のターン、ドロー』

『魔法カード「手札抹殺」を発動、私は3枚捨て3枚ドローする』

 

「俺も3枚ドローだ!」

 

遊海

アセトドラゴン

招集印

ドラゴンゲイブ

 

 

レイン

邪神機ー獄炎

ゾンビキャリア

馬頭鬼

 

 

『魔法カード「強欲な壺」を発動、2ドロー、手札から「融合」を発動、フィールドの「魂を削る死霊」と「闇竜の黒騎士」を融合』

 

「なっ…!その召喚条件は…!?」

 

『冥府に眠る魂が冥界の主を呼び覚ます、冥界の扉を破り復活せよ、融合召喚「冥界龍 ドラゴネクロ」』

現れるのは異世界における決闘龍の1体…冥府を統べる龍だった ATK3000

 

 

「っ…なんであいつがあのカードを…!」

本来であればこの世に存在しないはずの『決闘竜』…それを持っているとすれば…!

 

「貴様の差し金か…ゲイザー…!」

 

『禁則事項の為に回答を拒否します…手札から「ゾンビマスター」を召喚』

死者を操る操者が現れる ATK1700

 

『墓地の「馬頭鬼」の効果、自身を除外して、墓地の「ゾンビキャリア」を特殊召喚』

紫色のゾンビが現れる DEF200

 

『私はレベル4の「ゾンビマスター」にレベル2の「ゾンビキャリア」をチューニング』

 

4+2=6

 

『死せし魔王よ、再び現世へ現れよ、シンクロ召喚「蘇りし魔王 ハ・デス」』

ボロボロの王衣を纏った魔王が現れる ATK2450

 

『バトル、「冥界龍」で「閃光竜」を攻撃、ソウル・クランチ』

冥界龍が閃光竜へと掴みかかる!

 

「ぐぅ…!」

遊海LP4000→3500

 

『「冥界龍」の効果により相手モンスターは破壊されない、そしてそのモンスターの攻撃力は0となり、私のフィールドに同じ攻撃力の「ダークソウル・トークン」を特殊召喚』

ドラゴネクロが閃光竜から魂を抜き取る…それは影の閃光竜へと変貌し、閃光竜は抜け殻になる ATK2500  ATK2500→0

 

「っ…!しまった…!!」

 

『バトル、「ダークソウルトークン」で「閃光竜」を攻撃』

 

「(この手札なら…賭けるしかない…!)『閃光竜』の効果!『シユウ』に破壊耐性を与える!波動音壁(ソニックバリア)!」

ダークソウルトークンから放たれた黒き閃光が閃光竜を破壊する!

 

「ぐあああああ!!!…ガハッ…!」

遊海LP3500→1000

 

遊海は攻撃の衝撃でビルの壁に叩きつけられる!

 

『「ハ・デス」で「トフェニドラゴン」を攻撃』

 

《主…!ぐわぁぁ!!》

 

「ガッ…!」

ハ・デスの魔力弾がトフェニを貫き遊海に直撃する…それにより壁が崩れ遊海は生き埋めとなってしまう…!

 

遊海LP1000→650

 

『カードを1枚セット、ターンエンド』

 

レインLP4000

ハ・デス 冥界龍 ダークソウルトークン 伏せ2 手札0

 

 

 

 

 

「ぐっ…!力が戻っててよかったよ…前なら即死コースだ…!」

瓦礫をどかしながら遊海が立ち上がる…幸いにも精霊アーマーを纏っていた為にダメージは最小限で済んでいる…しかし

 

《マスター…久しぶりのピンチでは…!》

 

「ああ…この前の三皇帝と戦った時よりも厄介だ…!」

相手の場には高い攻撃力の冥界龍とダークソウルトークン、さらに伏せカードが2枚、次のターンで挽回しなければ勝利は難しいだろう…。

 

「だが…勝たなくちゃならない、奴の目的はわからないが…負ける訳にはいかない!!」

 

『………』

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地の『トフェニ』『ゲイヴ』『アセト』『ネフテ』『エレキテル』をデッキに戻し2ドロー!…さらに2枚目の『星呼びの天儀台』を発動!手札の『ラブラドライドラゴン』を戻して2ドロー!これなら…!『シユウドラゴン』をリリースして『シユウドラゴン』を特殊召喚!」

 

『リバースカード「奈落の落とし穴」、『シユウドラゴン』を除外する。』

現れた2体目のシユウは異次元へと消え去る

 

 

「やっぱり『奈落』か…だが()()()()だ!リリースした『シユウ』の効果でデッキから『エレキテルドラゴン』を攻守0で特殊召喚!」

再びスパークする竜が現れる DEF0

 

「そして『死者蘇生』を発動!蘇れ!『シユウ』!」

再び青き聖刻龍が現れる ATK2200

 

「さらに『シユウ』をリリースして『龍王の聖刻印』をアドバンス召喚!さらに『シユウ』の効果で墓地の『竜核の呪霊者』を攻守0で特殊召喚!」

空に浮かぶ月光石と悲しき狩猟者が現れる ATK0 DEF0

 

『攻撃力、規定値に達しない、貴方の勝利確率0%。』

 

「それはどうかな!俺はレベル6の『龍王印』と『エレキテル』でオーバーレイ!!」

2体のモンスターが銀河に飛び込む!

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!現れろ!ランク6『聖刻龍王アトゥムス』!」

聖刻龍を統べる龍王が現れる ATK2400

 

 

『理解不能、データ無し…未確認の召喚法を確認。』

 

「『アトゥムス』の効果を発動!ORUを一つ取り除き、デッキから『レッドアイズダークネスメタルドラゴン』を攻守0で特殊召喚!」

 

光の玉を取り込んだアトゥムスが魔法陣を展開…そこから黒き鋼の龍が現れる DEF0

 

「さらに『レダメ』の効果発動!墓地の『閃光竜』を特殊召喚!」

再び閃光竜が飛翔する! ATK2500

 

「そして俺はレベル8の『呪霊者』と『閃光竜』でオーバーレイ!」

再び2体のモンスターが銀河に飛び込む!

 

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!現れろ!太陽の写し身たる神の龍!ランク8『聖刻神龍エネアード』!」

赤き焔を纏う太陽の龍が顕現する ATK3000

 

「『エネアード』の効果発動!ORUを一つ取り除き、手札の『トフェニ』と『ドラゴンゲイヴ』、そして『レダメ』をリリース…そしてお前の伏せカードと『冥界龍』『ダークソウルトークン』を破壊する!ドラゴニック・フレイム!!」

神龍から放たれた龍の形の炎が冥界の龍と影の龍、伏せられていた次元幽閉を焼き尽くす!

 

『想定外、しかし、私を倒し切る事は不可能。』

 

「まだだ!リリースされた2体のドラゴンの効果によりデッキから2体の『神龍の聖刻印』を特殊召喚する!」

太陽石が並び立つ DEF0 ×2

 

「俺は2体の『神龍印』でオーバーレイ!」

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!闇に輝く銀河よ!復讐の鬼神に宿りて我が下僕となれ!降臨せよ!ランク8!『銀河眼の(ギャラクシー・アイズ)光波竜(サイファー・ドラゴン)』!」

赤き装甲を持つ瞳に銀河を宿した龍が現れる ATK3000

 

「さらに俺はランク6の『アトゥムス』でオーバーレイネットワークを再構築!モンスター1体でオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズチェンジ!!ランク7『迅雷の竜騎士 ガイアドラグーン』!!」

二槍使いの竜騎士が現れる ATK2600

 

『理解不能、理解不能、理解不能…!』

 

「バトルだ!『ガイアドラグーン』で『ハデス』を攻撃!螺旋竜突槍!」

ハデスを槍が貫き爆発する!

 

『くっ…』

レインLP4000→3800

 

「『エネアード』と『光波竜』でダイレクトアタック!撃滅のシャイニング・ストリーム!!」

2体のドラゴンの息吹がレイン 恵を飲みこんだ…

 

レイン恵LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

『損傷甚大、撤退する。』

吹き飛ばされたレイン恵は身体中から火花を散らしながら立ち上がる…彼女は純粋な人間ではない、アンチノミーやパラドックス同様「イリアステルが造ったデュエルロイド」…それが彼女の正体である。

 

「なぁ…見てるんだろ?その娘にトドメは刺さない、もし次に俺を狙うなら…覚悟して来いよ『無限界帝』」

 

『禁則事……【貴方は変わりませんね、白波 遊海】』

 

「驚いた…まさか本当に視てたなんてな、未来人」

レイン恵の口調が変化する、その口調はまさしく遊海の知るゾーンのものだった…。

 

 

 

『【貴方が手を下さないならば彼女は回収します、彼女は私の眼なのですから】』

 

「そうか、勝ってにしろよ…一つ言っておく、俺は積極的にお前達の計画を邪魔する事は無い」

 

『【!?…何故です?】』

 

「お前達の選択が間違いだと教える為だ、俺はお前達を真正面からぶっ飛ばす…!」

 

『【そうですか…楽しみにしています、貴方達の希望が勝つのか…私達の悲願が勝るのかを…さらばです】』

 

そう言ってレイン恵は時空へと消えていった…。

 

 

 

「はぁ…はぁ…終わったみたいだな向こうも…」

ビデオの逆再生のように街が元に戻っていく…遊星達がパラドックスを倒し歴史を修正した証だ。

 

《お疲れ様ですマスター、時間の流れも正常に戻っています…あとは遊星を笑顔で迎えましょう!》

 

「ああ、そうだな…行こうか」

俺は痛みの残る身体を庇いながら見晴台へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!?その怪我はどうしたんですか!?」

 

「おっ、遊星!お前の方が早かったか…無事にアイツを倒せたみたいだな!」

見晴台に着くと先に到着した遊星がジャック達に迎えられたところだった、様子からして無事にスターダストを取り戻したようだ。

 

 

「遊海さん、貴方はすごい決闘者だった…過去で2回も助けてもらいました!ありがとうございます!」

 

「むっ…?2回?俺は過去でお前には1回しか会って無いはずなんだが…?」

 

「えっ?そんなはずは…?確かに遊海さんでした!オレ達3人と一緒にパラドックスを倒したんです!」

 

「そう…なのか?(変だな…遊戯に聞いた限りじゃ30年前は遊星に会ってないはずなんだが…?)まぁ、いいか…今日はゆっくり英気を養え遊星、過去の話はまた今度聞くよ!」

 

「はい!」

 

こうしてイリアステル最初の攻勢はチーム5D'sの勝利に終わったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

【…今回は想定外でした…まさかあのような召喚法があるとは、ならば…何故彼は…?しかし…やはり彼は不思議な男だ…もしかしたら彼ならば未来を………いえ、それは無いでしょう…未来を救うにはモーメントを抹殺しなければならないのですから…】



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未来からの侵略者! 後編〜超融合・時空を超えた決闘〜

Side遊星

 

「赤き竜よ!オレをスターダストのいる場所に連れて行ってくれ!!」

 

《キュオオォン!!》

 

仲間達と遊海さんに背中を押されたオレは赤き竜の導きで時を超える…必ずスターダストを取り返してみせる!!

 

 

 

 

 

17年前 童実野町

 

 

 

「ッ…!『スターダスト・ドラゴン』…!?」

 

赤き竜に取り込まれ、時を超えた先…最初に見えたのは破壊されたビル群、そしてパラドックスに操られるスターダストドラゴンの姿だった。

 

 

【不動 遊星…!?私を追って時を超えて来たのか!?】

 

「パラドックス…貴様!」

オレの姿を見て驚くパラドックス、オレは奴を睨みつける!

 

 

【邪魔が入った…十代、鎧のデュエリスト…お前達の相手はここまでだ、この時代も私の大いなる実験で滅びるのだ…!】

 

「なんだと!?」

 

『待て…パラドックス…!』

 

【ハッハッハッハッ…!!】

 

パラドックスは高笑いをしながらDホイールに飛び乗る…そしてまたも時を超えて消えていってしまった…。

 

 

 

「くっ…!逃げられたか…!」

オレは悔しさのあまりDホイールを叩いてしまう…次は必ず…!

 

『不動 遊星…まさかこんな時に会うとはな…ぐっ…!』

 

「遊海先生!?大丈夫か!酷い怪我だ…!」

 

「なっ…遊海さん!?どうして此処に!?」

背後で聞き覚えのある声を聞いて振り返る…そこには赤い制服を着た栗毛の青年と入院着を血で濡らした遊海さんの姿があった…。

 

 

『あ〜…、どうやら俺の事は知ってるみたいだな、遊星…俺はこの時代の人間だ、お前の知る『白波 遊海』じゃ無い…そっちの俺は元気か?』

 

「えぇ、元気です!貴方のおかげで地縛神の被害が最小限で済みました…!」

この遊海さんは過去の…ゼロ・リバースが起きる前の遊海さんらしい…

 

『そうか…とりあえず時間も無い、情報交換といこうか…』

 

 

そしてオレは過去の遊海さん、そしてオレ達の時代で「流浪の決闘者」として有名な遊城 十代さんと情報を交換する…そしてパラドックスの目的地が10年近く過去でデュエルモンスターズの生みの親であるペガサス氏を殺す事だと判明した。

さらにこの町にも黒い雪が降り注ぎビルが壊れ始める…!

 

 

『遊星!十代!急いで時を超えろ!!時代が崩壊する前にアイツを止めるんだ!』

 

「わかりました!!十代さん!乗ってください!」

 

「応!頼むぜ遊星!」

オレは十代さんを後ろに乗せDホイールに跨がる

 

『遊星!』

 

「なんですか!遊海さん!」

 

『…歴史が変わったら俺はおそらくこの出会いを忘れてしまう…だが頼む!未来を救ってくれ!!』

遊海さんはオレへと手を差し出しバトンを託す…

 

「遊海さん…!貴方は何処にいても変わらない…わかりました!必ず未来を救います!」

オレも手を取り、遊海さんと握手を交わす…その時

 

「っ…!?」

 

オレの右腕の痣がチリリと痛みを発する…まさか…?

 

「遊海さん…?」

 

『行け…遊星!十代を頼む!!』

遊海さんは右腕を抑えながらオレ達の背中を押す…そうか、遊海さんに現れた赤き竜の痣は…オレが目覚めさせたのか…!

 

オレと十代さんは遊海さんの見送りを受け、時を超えた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

約30年前  童実野町

 

 

次に時を超えた時…最初に目にしたのは地獄だった、先程より徹底的に破壊された街…その姿をオレ達は引き伸ばされた時間の中で見た。

そして赤き竜の前方にはボロボロの『初代決闘王』である武藤 遊戯さん、そして遊海さんの姿があった…。

 

「赤き竜よ!遊海さんと遊戯さんを!!」

 

《キュオオォォン!!》

赤き竜へと意思を伝え、赤き竜は遊戯さん、そして遊海さんを飲み込み事件発生の30分程前へと遡った…。

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁ!?」

 

『うぉぉああ!?』

 

「うわ!?おっとっと!」

 

キキー!!

 

事件の30分前へと戻ったオレ達は近くのビルの屋上に着地する…手荒になってしまい遊海さんと遊戯さんは投げ出されてしまったが…。

 

 

「イテテ…」

 

『っ……ここは…!』

 

《解、先程の襲撃から約30分前へと時間遡行したようです》

 

『時間遡行…そうか…お前達の仕業か不動 遊星、遊城 十代』

 

「遊海君!?何が起きたの!?じいちゃんは!ペガサスは!?」

 

『落ち着け遊戯…俺達はタイムスリップしたんだ、さっきの事が起きる前にな…そうだろ、二人とも?』

 

「…理解が早くて助かります、遊海さん…」

 

「やっぱり先生は何でもお見通しか…」

 

オレの知るより若い姿の遊海さんは一瞬でこちらの状況を理解したようだ…だけどなんだろう…オレの知る遊海さんと何か違うような…?

 

 

 

 

「話はわかったよ十代君、遊星君…僕でよかったら喜んで協力させてもらうよ!」

 

『俺もだ、翠を殺し…人々を殺したヤツを…俺は許さない!』

事情を聞いた遊戯さんも遊海さんも協力してくれる事になった…。

 

「よっしゃ!遊海先生と遊戯さんがいれば千人力だぜ!…そうと決まれば…だな!」

二人の答えを聞いた十代さんは悪戯を思いついたような笑みを浮かべた…。

 

 

 

 

 

チュドーン!

 

「みんな〜!早く広場から避難するんだ〜!」

ユベルの力を使い十代さんは騒ぎを起こす…大会が中止になればあの悲劇は起きないからだ…さらに

 

『キラー、封鎖・人払い結界を展開…一般人を近づけさせるな』

 

《了、結界を展開…半径500mを隔離します》

 

遊海さんもアヤカの力で人払いをする…これで…!

 

《時空の乱れを観測…対象の接敵まで3…2…1…》

 

 

ブゥゥン…バシューン!

 

空間が開き巨大Dホイールが現れ…仮面の男・パラドックスが現れた!

 

 

 

 

 

 

【これは…キング・オブ・デュエリストが勢揃いか…】

 

『よぉ…さっきはよくもやってくれたな…パラドックス…!』

 

【お前は……そうか、どうやら私はお前の逆鱗に触れたらしいな白波 遊海…いや「決闘の観測者」よ…だがこれはより良い未来の為に必要なのだ…!】

 

『より良い未来の為…?ふざけるな…!犠牲なんてなくても…きっと未来は変えられる…!それより…歯を食い縛れパラドックス…懺悔の用意は充分か!!!』

 

【後悔などしない!私はあの破滅の未来を救うのだ!!】

 

パラドックスと遊海さんの言葉は白熱する、遊海さんから聞かされたパラドックスの目的…『デュエルモンスターズを歴史から抹消し破滅の未来を救う』という事を聞いていたオレ達は遊海さんに並び立つ…!

 

 

「デュエルだ!パラドックス!決着をつけよう!」

 

【いいだろう…お前達をデュエルモンスターズで叩き潰し…私は未来を救うのだ…!】

そう言うとパラドックスのDホイールが変形し空中にホバリングする…!

 

 

 

「お前をぶっ倒す事にワクワクしてきたぜ!」

十代さんは瞳をオッドアイに変化させ、背後にユベルが現れる。

 

「オレ達の未来は…お前の好きにはさせない!」

赤き竜の痣が輝き、赤き竜がオレに力を与えてくれる。

 

『パラドックスお前は許さない!…貴様を倒す!』

見るから怒りを滲ませた遊海さんがデュエルディスクを構える。

 

ポーン!

 

遊戯さんの首に掛かった千年アイテム・千年パズルが光を放ち、伝説の決闘者…『名もなきファラオ』が現れる!

 

『人の命を踏み台にする未来なんて認めない!!』

 

 

 

 

『「『「【デュエル!!】」』」』

 

 

 

 

パラドックスLP4000

 

遊戯

十代

遊星 LP4000

遊海

 

フィールド非共有(1人各5枠 任意で味方の効果を発動できる)

 

ターン進行

 

パラドックス→遊星→パラドックス→十代→パラドックス→遊海→パラドックス→遊戯……

 

 

 

 

 

@パラドックス

 

 

【私の先行だ、ドロー!】

【私はフィールド魔法…罪深き世界「Sin World」を発動!】

パラドックスがフィールド魔法を発動する…すると周囲のビルが不気味な色に染まっていく…。

 

 

【このカードがある時、私はドローフェイズにドローする代わりに「Sin」モンスターを手札に加える事ができる!私はさらにエクストラデッキの「サイバーエンドドラゴン」を墓地に送り…現れろ!「Sinサイバー・エンド・ドラゴン」!!】

不気味な仮面を着けた機械龍が現れる ATK4000

 

 

「カイザーの『サイバーエンド』…!いきなり攻撃力4000かよ…!」

 

【我が「Sin」シリーズは対となるカードを墓地へ送る事で特殊召喚できるのだ!】

 

『対となるモンスターを生贄に現れる「Sin」モンスター…光と闇…これは闇の力という事か…!』

初手で現れた大型モンスターに遊星達は困惑する。

 

【先行は攻撃できない…私はカードを2枚伏せターンエンド!】

パラドックスLP4000

sサイバーエンド 伏せ2 Sin world 手札2

 

 

 

 

 

「遊戯さん!遊海さん!十代さん!…最初はオレから行かせてください!…オレが守りたいものの為に全力で戦いたいんです!」

遊星はターンを前にしてレジェンド達に一番槍を願い出る!

 

『…わかったぜ遊星!その熱い思いをヤツにぶつけてやるんだ!』

 

『油断するな、一つのミスが命取りになるぞ…!』

 

「遊戯さん…遊海さん…はい!!」

 

 

 

 

 

@遊星

 

「オレのターン!ドロー!!」

「魔法カード『希望の転生』を発動!手札の『ロードランナー』『ボルトヘッジホッグ』を墓地に送り2ターン目の自分のスタンバイフェイズにデッキからモンスター1枚を手札に加える!さらに『ジャンクシンクロン』を召喚!」

オレンジ色のロボットが現れる ATK1300

 

「さらに『ジャンクシンクロン』の効果で墓地のレベル1『ロードランナー』を特殊召喚!そして墓地の『ボルトヘッジホッグ』は自分フィールドにチューナーがいる時に特殊召喚できる!」

ピンク色の鳥とハリネズミが現れる DEF300  ATK800

 

 

「オレはレベル1の『ロードランナー』とレベル2の『ボルトヘッジホッグ』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!!」

 

1+2+3=6

 

「疾風の使者に鋼の願いが集う時!その願いは鉄壁の盾となる!光さす道となれ! シンクロ召喚!現れろ『ジャンク・ガードナー』!!」。

緑色の装甲を持つ戦士が現れる DEF2600

 

 

『シンクロ召喚…!遊海の「アークミカエル」と同じ召喚法か!』

 

「流石だな遊星!それが未来の召喚法か!」

 

「はい!オレはカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

遊星LP4000

ジャンクガードナー 伏せ2 手札0

 

 

@パラドックス

 

 

【私のターン、ドロー!…不動 遊星、『スターダストドラゴン』を失ったお前など敵ではない!面白いものを見せてやろう!デッキの「レインボードラゴン」を墓地に送り…現れろ!「Sinレインボードラゴン」!】

フィールドがオーロラに包まれる…そして世界に1体のみ存在する宝玉神の闇が現れる ATK4000

 

 

「貴様…!よくもヨハンの『レインボードラゴン』を!!」

親友のカードを奪われた十代は怒りの声をあげる、サイバーエンドとレインボードラゴンは彼の時代で奪われたカードだからだ。

 

【フフフ…私のデッキは各時代の最強カードを集めた異次元の強さを誇るデッキ…!その力の前に消え去るがいい!バトルだ!「レインボードラゴン」で「ジャンクガードナー」を攻撃!オーバー・ザ・レインボー!】

Sinレインボードラゴンから次元を穿つ一撃が放たれる!

 

「『ジャンクガードナー』の効果発動!自分、または相手ターンに一度モンスター1体を守備表示にする!」

ジャンクガードナーから電波が放たれ、レインボードラゴンが守備表示になる

 

レインボードラゴンATK4000→DEF0

 

【凌いだか…だが!『サイバーエンドドラゴン』の攻撃が残っている!エターナルエヴォリューションバースト!】

機械龍の火球が鉄壁の戦士を破壊し貫通ダメージを与える!

 

「ぐぁ…!!」

 

遊星LP4000→2600

 

 

『「遊星!!」』

 

『遊星!大丈夫か!(チッ…やっぱり原作効果かよ…!)』

 

「っ…大丈夫です…!」

吹き飛ばされた遊星はなんとか立ち上がる…伝わった衝撃は本物だった…!

 

【「Sin world」がある時、ダメージは現実となり…ライフが0になると共に死を迎えるのだ!】

 

「『「なんだと…!」』」

生死をかけた本物のデスゲーム…それは歴戦の決闘者である遊戯達をさらに追い詰める…!

 

「っ…!まだ終わらない!『ジャンクガードナー』のさらなる効果発動!このカードが破壊された時!相手のモンスターを守備表示にする!さらに罠カード『奇跡の残照』発動!蘇れ!『ジャンクガードナー』!」

機械龍が守備表示となり、破壊された戦士が復活する!

DEF2600

 

サイバーエンドATK4000→DEF2800

 

【くっ、小癪な真似を…私はこれでターンエンドだ】

パラドックスLP4000

sサイバーエンド sレインボードラゴン Sinworld 伏せ2 手札2

 

 

 

「すまない…ライフを大きく削られてしまった…!」

 

「気にすんなよ遊星!攻撃力4000の攻撃を2回も防いだんだ!上出来だぜ!」

 

『奴のデッキは途方もなく強力だ…だがオレ達4人の力が合わされば絶対に勝てる!』

 

『遊戯の言ったとおりだ…時空を超えて繋がる決闘者の絆があれば勝てない相手じゃない!』

遊戯達は遊星をフォローする

 

【フン…くだらんな、敗北の決まった未来を前にしてなおも足掻くか…これが人間の抱えた矛盾だ…!】

 

「へっ!言うだけ言ってろ!俺のヒーロー達がこの状況を乗り越える!」

 

 

 

@十代

 

「オレのターン!ドロー!」

「遊星!お前の力を借りるぜ!」

 

「使ってください!十代さん!」

 

「いくぜ!魔法カード『融合』を発動!手札の『ネオス』と『ジャンクガードナー』を融合!遊星!これが俺達が力を合わせたニューHEROだ!現れろ!『E・HEROネオス・ナイト』!」

武人の姿をしたネオスが現れる ATK2500→3200

 

「『ネオスナイト』の攻撃力は融合素材にした戦士族モンスターの攻撃力半分のアップする!バトルだ!『サイバーエンド』を攻撃!ラス・オブ・ネオススラッシュ!!」

鋭い剣の一撃がサイバーエンドのコアを穿ち破壊する!

 

【ぐっ…!】

 

「さらに『ネオスナイト』は2回攻撃ができる!!『レインボードラゴン』を攻撃!」

サイバーエンドから飛び出したネオスナイトがレインボードラゴンを切り裂く!

 

【おのれ…!】

 

「やったぜ!」

《流石だ十代、強力モンスターを2体共破壊するとは…》

「へへっ!サンキュー!ユベル!」

 

【調子に乗るなよ…!私のSinモンスターが破壊された事で罠カード『Sin tune』を発動!カードを2枚ドローする!】

 

「なら俺はカードを4枚伏せてターンエンドだ!」

十代LP2600

ネオスナイト 伏せ4 手札0

 

 

『十代、君は破天荒なデュエルをするんだな!』

 

『思いきり過ぎだけどな…』

 

「へっ、俺は遊戯さんと遊海先生を信じてるからな!」

 

『なるほどな…ならその信頼に応えよう…ところでなんで「先生」なんだ…?』

 

「(流石、伝説の決闘者だ…この状況を楽しんでる…!)」

 

 

 

 

@パラドックス

【おしゃべりはそこまでだ!私のターン!「Sinworld」の効果でランダムにSinモンスターを手札に加える!…ハッハッハッ!私の勝利のキーカードは揃った!】

【現れろ!「Sinスターダスト・ドラゴン」!】

パラドックスの場に邪悪な鎧を纏ったスターダストが現れる ATK2500

 

 

「貴様…!よくもスターダストをこんな姿に!!」

痛ましい姿のスターダストを目にした遊星は怒りをあらわにする…!

 

【フン…貴様の「スターダスト」の力は私が有効に使ってやる!私はさらに『Sinパラレル・ギア』を召喚!】

小さな歯車型の機械が現れる ATK0

 

【遊星!シンクロ召喚を使えるのは貴様だけじゃない!私はレベル8の「スターダスト」にレベル2の「パラレルギア」をチューニング!】

 

8+2=10

 

【次元の裂け目から生まれし闇よ!時を越えた舞台に破滅の幕を引け!シンクロ召喚!「Sin パラドクス・ドラゴン」!!】

黒き闇の光から凶悪な顔のドラゴンが現れる ATK4000

 

『また攻撃力4000…!』

 

「遊海先生のアヤカほどじゃないけど…これはヤバそうだ…!」

 

【さらに「パラドクスドラゴン」がシンクロ召喚に成功した時!自分の墓地のシンクロモンスター「スターダストドラゴン」を召喚条件を無視して特殊召喚する!】

遊星の相棒であるドラゴンが敵として現れる ATK2500

 

【そして「パラドクスドラゴン」は復活させたシンクロモンスターの攻撃力分相手フィールドのモンスターの攻撃力を下げる!呪いを受けるがいい!「ネオスナイト」!カース・オブ・パラドックス!】

 

「『ネオスナイト』!!」

ネオスナイトの身体を闇が襲い、その力を奪う!

ATK3200→700

 

「このまま攻撃を受けたら大ダメージだ…!十代さん!!」

 

【さらばだ、歴戦の決闘者達よ…バトル!「パラドクスドラゴン」で「ネオスナイト」を攻撃!矛盾のパラドックス・バースト!!】

矛盾の龍の息吹がネオスに迫る…!

 

《避けろ十代》

「わかってる!リバース罠『ヒーローバリア』!攻撃を無効にする!」

回転するバリアがブレスを弾く!

 

『上手いぞ十代!』

 

「よしっ!」

 

【小賢しい真似を!リバース罠『Sin claw stream』!自分の場にシンクロモンスターがいる時!「ネオスナイト」を破壊する!】

黒い竜巻がネオスナイトを破壊する!

 

「っ!リバース罠発動!『エレメンタル・ミラージュ』!効果破壊されたHEROモンスターを特殊召喚する!来い!『ネオスナイト』!」

 

【だが再び「パラドクスドラゴン」の呪いを受けてもらう!】

再びネオスナイトが現れるが力を奪われる ATK2500→0

 

【私はカードを2枚伏せてターンエンドだ】

パラドックスLP4000

パラドクスドラゴン スターダストドラゴン Sinworld 伏せ2 手札1

 

 

 

『攻撃力は下がってしまったが…流石だ十代!』

 

「へへっ、遊海先生達にターンを回すのにガラ空きなのは洒落になりませんから!」

 

『フッ…本当に十代らしいな…なら俺も本気でいこうか!』

 

 

 

 

 

@遊海

 

『俺のターン!ドロー!』

『遊星の「希望の転生」の効果により俺は「ガガガガール」を手札に加える!そして「ガガガマジシャン」を召喚!』

着崩した学生服の魔術師が現れる ATK1500

 

『さらに魔法カード「強欲な壺」を発動!2ドロー!さらに魔法カード「ガガガウィンド」を発動!手札の「ガガガガール」をレベル4にして特殊召喚!』

ギャル風の魔術師が現れる ATK1000

 

 

「レベル4のモンスターが2体…?レベル8のシンクロモンスターを出すのか…!」

 

「いや、違うぜ遊星!遊海さんには普段は使わない奥の手があるんだ!」

 

「奥の手…?」

十代の言葉に遊星は首を傾げる

 

『俺はレベル4のモンスター2体でオーバーレイ!』

2体の魔術師が光の銀河に飛び込む!

 

『2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ!邪悪を払う希望の戦士!「A No.39 希望皇ホープ」!!』

《ホープ!!》

白い塔が現れ変形し、希望の戦士が雄叫びをあげる! ATK2500→0

 

 

「エクシーズ召喚キター!!」

 

「未知の召喚法…エクシーズ召喚…!」

 

【エクシーズ召喚だと!?何なのだそれは!?】

未知の召喚法を見た遊星達は戸惑う…

 

『遊海…それがお前の…!』

 

『ああ、力の一つだ!俺はエクシーズ素材となった「ガガガガール」の効果を発動!「パラドクスドラゴン」の攻撃力を0にする!』

ホープから波動が放たれパラドクスドラゴンの威圧感が弱くなる ATK4000→0

 

【だがお前のモンスターの攻撃力は0だ!私のモンスターは破壊出来まい!】

 

『ああ、そうだな…だから俺は希望を託す!カードを4枚伏せてターンエンド!』

遊海LP2600

ホープ 伏せ4 手札2

 

【フン、その程度か!お前ごと叩き潰してやる!】

 

 

 

 

 

 

@パラドックス

 

【私のターン!ドロー!】

【魔法カード「Sin selector」を発動!墓地の「パラレルギア」と「サイバーエンド」を除外しSinカード2枚を手札に加える!そして現れろ!「Sin青眼の白龍」!「Sin真紅眼の黒竜」!】

デュエルモンスターズ最強の龍と可能性の竜の闇が現れる ATK3000  ATK2400

 

『っ!ブルーアイズまで!!』

 

【フハハハ!言っただろう!『各時代の最強カードを集めた』と!バトルだ!「ブルーアイズ」で「ホープ」を攻撃!滅びのバーストストリーム!!】

破壊の奔流がホープに迫る!

 

『甘い!「ホープ」の効果発動!自分のORUを一つ取り除き、モンスター1体の攻撃を無効にする!ムーンバリア!!』

ホープの翼が展開しバーストストリームを受け止める!

 

 

「すごい効果だ!これが遊海さんの本気なのか!?」

 

【だがまだ「レッドアイズ」の攻撃が残っている!!】

 

『速攻魔法発動!「ムーンバリア」!モンスターの攻撃が無効になった時!このターンのエンドフェイズとなる!…残念だったな?』

 

【おのれぇ!!!】

パラドックスLP4000

パラドクスドラゴン sブルーアイズ sレッドアイズ スターダストドラゴン Sinworld 伏せ2 手札 1

 

 

 

 

『フッ…流石だな遊海!たった2枚であの攻撃を防ぐとは…』

 

『それほどでもないよ…次のターンは頼む!』

 

『ああ!…遊星、君の「スターダスト」は必ず取り返す!』

 

「遊戯さん…!」

 

 

 

 

@遊戯

 

 

『オレのターン!ドロー!』

 

『受け取れ遊戯!リバース罠「強欲な瓶」発動!』

 

『ナイスタイミングだ遊海!ドロー!…オレは手札から魔法カード「古のルール」を発動!現れろ!我が最強のしもべ!「ブラック・マジシャン」!!』

ファラオのエースたる黒衣の魔術師が現れる ATK2500→0

 

 

「これが遊戯さんのエース…!」

 

「ブラマジキター!!」

 

【だが「パラドクスドラゴン」の効果で攻撃力は0だ!何もできまい!】

 

「…遊戯さん、『スターダスト』を破壊してくれ…!きっとアイツも利用される事は望んでない…!」 

遊星は遊戯にスターダストの破壊を頼む…敵に操られるスターダストを見ていられないのだ…。

 

『フッ…心配するな遊星!オレは魔法カード「師弟の絆」を発動!フィールドに「ブラックマジシャン」がいる時、弟子である「ブラックマジシャンガール」をデッキから特殊召喚する!』

可憐なる魔術師の弟子が現れる DEF1700

 

 

《お師匠様…なんだか敵がいっぱいなんですけど…!?》

 

《臆するな、私達とマスター達の絆があれば必ず勝利できる!》

 

《はい…!!》

 

 

『さらにオレは魔法カード「奇跡のマジック・ゲート」を発動!フィールドに2体の魔術師がいる時、相手モンスターを守備表示にしてそのコントロールを奪う!』

 

【チィ!『Sinブルーアイズ』を奪って攻撃するつもりか!させんぞ!!罠カード「Sin force」を発動!これで「Sinブルーアイズ」は奪えまい!】

 

『何を勘違いしてる?オレが選ぶのは…「スターダスト・ドラゴン」だ!』

 

【なんだと!?】 

空間に扉が開きマジック・アームが伸びる…マジックアームはスターダストドラゴンを取り込み遊星の場へと特殊召喚される! DEF2000

 

【しまった封印のカードが…!】バリン!

パラドックスの持っていた封印カードが消え去り、遊星のカードの絵柄が戻る…これで所有権は完全に遊星のものとなった!

 

 

「流石遊戯さん!最初から『スターダストドラゴン』を取り戻すつもりで…!」

 

「遊戯さん…ありがとうございます!!」

 

『フッ…これで「パラドクスドラゴン」の効果は消え、オレ達のモンスターの攻撃力は元に戻る!』

呪いが消え去りモンスター達が力を取り戻す!

 

ネオスナイトATK0→2500

 

ホープATK0→2500

 

ブラックマジシャンATK0→2500

 

 

『そしてオレは魔法カード「黒・魔・導・爆・烈・波」を発動!オレのフィールドに「ブラックマジシャンガール」が存在する時!相手のモンスターをすべて破壊する!!いけ!』

 

《いきます!!ブラック・バーニング!!》

弟子の高威力魔法がパラドックスのフィールドを焼き尽くす!!

 

 

「よっしゃ!これでフィールドはがら空きだ!」

 

『いや…どうやら悪手だったらしい…!』

 

「遊海さん!?」

爆破魔術の煙が晴れる、そこには…

 

【本当の勝負はこれからだ…!一見正しく見える今の攻撃…だがそれは大きな間違いだ!罠カード「Sin Paradigm Shift」を発動!「パラドクスドラゴン」が破壊された時!ライフを半分払い、デッキから「Sin トゥルース・ドラゴン」を特殊召喚する─!うおおおお!!!】

パラドックスは自分の身体を闇に包む…そして現れるのは「真実」の名を持つ金色の巨龍…そしてドラゴンに一体化したパラドックスの姿だった。 ATK5000

 

 

パラドックスLP4000→2000

 

「ッ…!モンスターとプレイヤーが融合しただと!?」

 

「デケェ…!」

 

『攻撃力5000…!!』

遊戯達はドラゴンを見上げ、驚くしかない…!

 

【お前達は私の手で葬り去ってくれる…!】

 

『くっ…!カードを2枚伏せてターンエンド!』

遊戯LP2600

ブラマジ ブラマジガール 伏せ2 手札2

 

 

 

 

@パラドックス

 

【私のターン!ドロー!!】

【私はデッキの2()()()()「青眼」を除外し!現れろ!「Sinブルーアイズ」!!】

 

「2体目だって…!?」

ブルーアイズの影が現れる ATK3000

 

【さらに速攻魔法「Sin close」を発動!墓地から召喚条件を無視して「Sinレインボードラゴン」を特殊召喚する!!】

再び闇のレインボードラゴンが現れる ATK4000

 

『また高い攻撃力のモンスターが…!』

 

【バトルだ!「ブルーアイズ」で「ブラックマジシャンガール」を攻撃!さらに「トゥルースドラゴン」がフィールドにいる時にSinモンスターが相手を破壊した時!相手モンスターは全て破壊される!!】

 

『やらせない!「ホープ」の効果を発動!ムーンバリア!!』

ホープが破壊光線を受け止める!

 

【だがそれで貴様も弾切れだろう!!「レインボードラゴン」で「ホープ」を攻撃!】

 

『やらせるか!十代!!オレのカードを使え!!』

 

「遊戯さん!『融合解除』を発動!現れろ!『ネオス』『ジャンクガードナー』!!」

宇宙の戦士と盾の戦士が現れる DEF2000  DEF2600

 

 

「遊星!今だ!!」

 

「はい!『ジャンクガードナー』の効果で「レインボードラゴン」を守備表示に変更する!」

遊星達の連係でレインボードラゴンの攻撃を防ぐ! ATK4000→DEF0

 

【まだ「トゥルースドラゴン」の攻撃が残っている!「ホープ」を攻撃!!】

 

『まだだ!俺は永続罠「ナンバーズ・ウォール」を発動!「ホープ」は戦闘・カード効果で破壊されなくなる!!』

 

【だがダメージは受けてもらうぞ!!喰らえぇ!!】

巨大な火球がホープに直撃し爆発が遊戯達に襲いかかる!

 

「「『『ぐあああああ!!』』」」

 

遊戯LP2600→100

 

【チィ…耐えたか!だがライフは残り100!お前達には手も足も出まい!ターンエンド!そして「Sin close」で特殊召喚された『レインボードラゴン』は破壊される!】

パラドックスLP2000

トゥルース ブルーアイズ Sinworld 手札0

 

 

 

 

 

『ぐっ…みんな無事か…!』

 

「なんとか…!」

 

「まだいけます…!」

 

『ゴフッ…ああ、問題ない…!ライフがあればまだ戦える…!!』

吹き飛ばされていた遊戯達が立ち上がる…全員満身創痍だが、目はパラドックスを見据えている…!

 

 

【フン…まだ立ち上がるか、そのまま寝ていれば楽に死ねただろうに…】

 

『うるせぇ…俺は何度やられようが立ってみせる…!俺が守るべき人がいる限り…!』

パラドックスの言葉に遊海が言い返す

 

「そうだぜ…ライフがあってモンスターがいる…なら俺達はまだ戦える!」

 

『オレ達がデュエルモンスターズを…デッキを信じる限り…未来は変えられる!!』

 

「遊戯さん…遊海さん…十代さん…!そうだ…未来は決まっていない!オレが…オレ達が未来を変える!オレはみんなのいる未来に帰るんだ!!」

レジェンド達に触発され遊星の心に火が灯る、そして思い出すのは未来に残してきた仲間達の事…仲間の思いは時空を超えて遊星へと届けられる!

 

「遊戯さん!遊海さん!十代さん!オレに力を貸してください!!」 

 

 

「『『応!!』』」

 

 

 

 

@遊星

 

「オレのターン!ドロー!!」

「『スターダスト・ドラゴン』を攻撃表示に変更!!」

《ギュオオン!!》

遊星の想いを受けてスターダストが咆哮する!DEF2000→ATK2500

 

「いくぜ!リバース罠『ネオス・スパイラル・フォース』を発動!『スターダスト』の攻撃力を倍にする!」

 

『リバース罠「ブラック・スパイラルフォース」を発動!同じく『スターダスト』の攻撃力を倍にする!!』

宇宙の戦士と最強の魔術師の力を受けたスターダストはその力を極限まで高める! ATK2500→5000→10000

 

【攻撃力10000だと!?】

 

「バトルだ!『スターダストドラゴン』で『トゥルースドラゴン』を攻撃!」

 

『いや…まだだ!俺は墓地の「ムーンバリア」の効果を発動!墓地のこのカードを除外し「ホープ」のORUの代わりとなる!俺は「スターダストドラゴン」の攻撃を無効にする!ムーンバリア!!』

 

「「『なんだって!?』」」

ホープがスターダストの前に立ちはだかる!

 

 

「何してるんだよ遊海先生!?」

 

【なんだ…?仲間割れか?】

 

『違うさ…パラドックス!あの場で傷ついた人々の痛みを思い知れ!!速攻魔法「ダブル・アップ・チャンス」を発動!!自分のモンスターの攻撃が無効になった時!そのモンスターはもう一度攻撃できる!さらに!!その攻撃力は倍となる!!やれ!!遊星!!』

ホープ、ブラックマジシャン、ネオスがスターダストドラゴンに力を与え金色に光輝く! ATK10000→20000

 

 

【な、なんだと…攻撃力20000…!?】

 

「遊海さん…!いくぞ!『スターダストドラゴン』!」

 

「『E・HEROネオス』!」

 

『「ブラックマジシャン」!!』

 

『「希望皇ホープ」!!』

 

 

 

「『「『シューティング・スパイラル・ソニック!!』」』」

 

 

解き放たれた金色の極光は呆気なく真実の龍を飲みこみ大爆発を起こした!

 

 

【バカな…私の研究は…間違っていたというのかぁぁぁ!!!!】

 

パラドックスLP0

 

主人公チームWIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう未来に帰るのか?』

 

「ええ!まだ自分の時代でやりたい事もありますから!」

 

「でも…また会える気がします!…その時はデュエルしましょう!」

 

『ああ、楽しみにしてるぜ遊星!十代!』

 

『二人とも…未来の俺を頼むぞ、きっと無茶ばかりしてると思うから…』

夕日が照らす童実野町…そこで4人の決闘者達は別れの時を迎えていた…。

 

「遊海さんは無茶と言うか…ボロボロというか…」

 

『マジで?…色々気をつけなきゃダメだな…翠に心配かけちまう…あっ!翠の事忘れてた!?すまん!また未来で会おう!遊星!十代!!』

遊海はそのままビルから駆け降りて行った…

 

 

『まったく…アイツらしいな…オレ達はデュエルモンスターズで繋がっている、きっとまた会えるはずだ!』 

 

「はい!またいつか!」

 

 

 

 

 

こうして時を超えた決闘者の饗宴は終わりを迎えたのだった…。



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夢の中の邂逅〜自分同士の喧嘩〜

「えっ!?遊星君が誘拐された…!?」  

 

『ええ、ガレージに電話があったらしいの…!だから遊海さんにも探すのを手伝ってほしいの!』

 

 

パラドックスの事件からしばらく経ったある日、アキから「遊星が誘拐された」という連絡が翠へと届けられた…、また事件の記憶は次第に人々の記憶から薄れチーム5D's関係者以外はほとんど忘れてしまっている。

 

「わかった!遊海さんに伝えておくわ!」

 

『ありがとうございます!!お願いします!』プツン プープー

 

 

 

 

「…確か遊星君を勧誘しようとした何処かの会社の仕業だったわね…とにかく遊海さんに知らせなくちゃ!」

翠は2階へと上がり遊海へと声をかける

 

 

「遊海さん!大変です!遊星君が誘拐……寝ちゃってる…」

 

「……」

 

遊海は自室のベッドで横になっていた…しかし

 

 

「っ…ぐ……!うぅ…!」

 

「遊海さん?遊海さん!起きてください!どうしたんですか!?」

魘されている遊海…翠は身体を揺さぶり起こそうとするが目覚める様子がない…

 

《翠…たぶんマスターはしばらく目覚めないかと…》

 

「アヤカちゃん!?どうして!?」

 

《それが…精神世界でユウスケとケンカしていて…》

 

「えっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海@精神世界

 

 

 

 

「…どういうつもりだ?ユウスケ」

 

『どうもこうもねぇよ遊海…お前、()()()()()()()()

眠っている遊海の精神世界、そこで赤帽子の青年と鏡写しの黒帽子の青年が対峙する…言わずもがな遊海とその闇の人格であるユウスケである。

 

 

「弱くなったって…何を根拠に言ってるんだ!俺は失っていた力を取り戻した!」

 

()()()()()()()()、お前はなにも進歩しちゃいねぇ、あの日…ゼロ・リバースからな…!』

ユウスケは遊海を睨みつける

 

『お前は17年前…()()()に負けたんだ、油断があった?相手が卑怯な手を使った?…そんなの関係ねぇ、()()()()()()()()()()

 

「言わせておけば…!ユウスケ!お前は何が言いたい!はっきり言えよ!!」

遊海はユウスケに問いかける

 

『ああ…言ってやるさ、遊海…主導権を(オレ)に寄越せ、あとは我が上手くやるから引っ込んでろ』

 

「なんだと…!?」

遊海はその言葉を聞いて唖然とする、ダーツの手で遊海の光と闇が分かたれて三十年、ユウスケとはある程度良好な関係を築けていたと思っていたからだ。

 

 

『お前は甘いんだよ…敵対したら徹底的に潰せ、基本だろ?』

 

「それは…」

 

『ああ、わかってるよ、お前は()()を壊したくないんだろ?…だが奴らにもイレギュラーはいる、もう物語通りに進む保証はねぇ…なら我がぶっ壊してやる、何処かにいる三皇帝とゲイザーを倒してゾーンを引き摺り出してやるよ』

 

「やめろユウスケ!そんな事をしたら未来がどうなるかわからなくなるんだぞ!!」

 

『なら…力ずくで止めてみろよ!腰抜け野郎!うおおお!!』

ユウスケは闇を纏い姿を変える…それは以前遊海の見せたダーク・メタルナイトの姿だった。

 

『かかってこいよ…まずは身体で語ろうじゃないか…!』

 

「やめる気はなさそうだな…!ハァッ!!!」

遊海はクリフォートの鎧を纏いユウスケと対峙する!

 

 

「『ハッ!!!』」 

 

ズガン!!

二人の拳がぶつかり空気が爆発する、カードゲームらしくもない戦闘音が響き渡る…

 

 

「ふざけるなよユウスケ!!俺はアテムと約束したんだ!『俺なりのハッピーエンド』を目指すと!!俺は…犠牲を最小限にして人々を救うんだ!!」

 

『それが甘いと言ってるんだ!犠牲を最小限に?既に数えきれない人間を取り零してるお前が何を言いやがる!』

 

「それは…!『隙アリ!!』ぐあっ!?」

 

ズガーン!

息もつかせぬ高速戦闘の中、動揺した遊海は殴り飛ばされる!

 

「っ…!カタストロフレーザー!!」

 

『ダークイレイザー!!』

二人の光線技が衝突し爆発する!

 

『それで終わりか?何が最強の決闘者だ?』

 

「まだ終わりじゃないさ…!コンプリートフォーム!!」

遊海は光を纏い姿を変える…それは17年前に遊海のたどり着いた最強形態、頭部は太陽神の兜、胴体はクリフォートの鎧、右腕は聖刻、左腕は影霊衣、脚部は岩の鎧を纏ったコンプリートフォームだった。

     

 

『ハッ…付け焼き刃で我に敵うわけないだろうがぁ!!』

ユウスケは遊海に殴りかかる!

 

「ハァッ!」 ガキン!

 

『なんだと…!』

遊海は左腕でユウスケの拳を受け止める!

 

「喰らえ!絶対零度!!」

 

『っ!?しまっ…!』

全てを凍てつかせる龍の凍気がユウスケの身を凍らせる!

 

「必殺!クインテット・バースト!!」

遊海の持つ5つの力が虹色の極光となり氷像となっていたユウスケを粉々に破壊した…。

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

全力を開放した遊海は息を切らせ膝をつく…

 

 

『やるじゃねぇか遊海、一瞬意識が飛んだぞ』

光の粒子が集いユウスケの身体が再構成される。ここは遊海の精神世界、致命的ダメージを負っても死ぬ事はない…心が折れなければだが。

 

『肉体のスペックはお前の方が上か…だが決闘ならどうかな…!』

ユウスケはデュエルディスクを実体化させる!

 

「ユウスケ、お前が何をしたいか知らないが…お前をぶっ飛ばす!!」

遊海も臨戦態勢をとる…あり得ざる自分対自分のデュエルが始まる…!

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

遊海LP4000

ユウスケLP4000

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『召喚士のスキル』発動!『クリフォート・ツール』を手札に加える!そしてPスケールにスケール9の『クリフォート・ツール』とスケール1の『クリフォート・アセンブラ』をセッティング!」

遊海の両脇に光の柱が立ち上る!

 

「『ツール』のペンデュラム効果発動!800ライフを払いデッキから『アポクリフォート・キラー』を手札に加える!」

遊海LP4000→3200

 

『フン…来るか』

 

「我が魂に寄り添う大いなる力よ!今こそ顕現せよ!ペンデュラム召喚!『クリフォート・ゲノム』『クリフォート・アクセス』『クリフォート・シェル』!」

時空の扉が開き巨大な機械達が現れる ATK1800  1800  1800

 

 

「そして3体のクリフォートモンスターをリリースし現れろ!我が相棒たる機殻の王!『アポクリフォート・キラー』!」

3体のクリフォートのコアが集い遊海の相棒である機殻王が現れる ATK3000

 

【ユウスケ、貴方は何をしたいのですか…!マスターを危険に晒すなんて!】

 

『アヤカか…お前に答える義理はない、これは我とコイツの問題だ…さっさとデュエルを続けろよ』

 

【っ…あなたって人は…!】

 

「いいんだアヤカ…決着は着ける、『キラー』の効果発動、手札のモンスターを墓地に送ってもらうぞ」

 

『我は「BK スパー」を墓地に送る!』

 

「『バーニングナックラー』だと…?俺はカードをカードを一枚伏せターンエンド!『アセンブラ』効果で3ドロー!」

 

遊海LP3200

キラー 伏せ1 Pスケール ツール アセンブラ 手札3

 

 

 

 

『フン、我を倒す為に本気で来るか…そのデッキを倒したらお前の心も折れるだろう…!』

 

「やらせないさ!かかってこいよユウスケ!」

 

 

 

 

 

『我のターン!ドロー!』

 

「罠カード『スキルドレイン』発動!1000ライフを払いフィールドのモンスター効果を無効にする!」

 

『それぐらい読んでるんだよ!魔法カード「サイクロン」発動、「スキルドレイン」は破壊だ!』

小さな竜巻がスキルドレインを破壊する!

 

「っ…!しまった…!」

遊海LP3200→2200

 

『我が何年お前を見てきたと思ってるんだ?それぐらいお見通しなんだよ!「ゴブリンドバーグ」を召喚!さらに効果で「BK シャドー」を召喚!』

小鬼の乗った飛行機と黒きボクサーが現れる ATK1400→DEF0  ATK1800→1300

 

『さらに魔法カード「バーニングナックル・スピリッツ」を発動!デッキトップを墓地に送り墓地の「スパー」を特殊召喚!』

腕にプロテクターを着けた戦士が現れる ATK1200→700

 

『我はレベル4のモンスター3体でオーバーレイ!』

3体のモンスターが銀河に飛び込む!

 

No.105

 

『現れろ!A No.105!「流星のセスタス」!』

青と黄色の鎧を纏った戦士が現れる ATK2500→2000

 

「「セスタス」…!俺に効果でダメージを与えるつもりか…!」

 

『まだだ!「RUMーバリアンズフォース」を発動!カオスエクシーズチェンジ!!』

 

No.105

 

『現れろA CNo.105!混沌をを貫く炎の拳士!「彗星のカエストス」!』

紫の鎧に混沌の紅きエネルギーを纏いし王者が現れる ATK2800→2300

 

「手札に『RUM』を…!だが攻撃力は足りないぞ!さらに『キラー』はランク5の『カエストス』の効果は受けない!!」

 

『それはどうだろうな!バトルだ!「カエストス」で「キラー」を攻撃!コメット・エクスプロージョン!!』

 

「迎え撃て!デストロイ・キャノン!!」

【主砲、発射します!!】

キラーに向けて跳躍したカエストスにキラーの光線が迫る!

 

『ダメージステップ時に墓地の「BK カウンターブロー」の効果を発動!このカードを除外し「カエストス」の攻撃力を1000アップする!』

 

「なんだと!?」

 

カエストスATK2300→3300

『歯ァ食いしばれ!スーパーノヴァ・カウンター!!!』

カエストスは拳から爆発的エネルギーを放出する、それは迫っていた光線を打ち消しキラーのコアを貫いた!

 

【まさか…こんな方法で…!すみませんマスター…!】

 

ドッカーン!!

 

「アヤカ!ぐああぁぁ!!!」

キラーの爆発が遊海へと襲いかかる!

 

遊海LP2200→1900

 

カエストスATK2300→2800

 

『まだだ!「カエストス」が相手モンスターを破壊した時!その攻撃力の半分のダメージを与える!セカンド・インパクト!!』

 

「っ…!ガハッ──!」メリッ ズドーン!

 

遊海に肉薄したカエストスは躊躇なく遊海を殴り飛ばした…

 

遊海LP1900→400

 

 

『我はこれでターンエンドだ、まだ続けられるか?』

ユウスケLP4000

カエストス 手札1 

 

 

 

 

 

「ガッ…痛ぇ…!遠慮無しかよ…!!」

遊海は叩きつけられた壁を支えに立ち上がる…

 

『お前の力はそんなもんか?世界じゃ「決闘王」なんて言われてよ…その正体は自分の闇に負ける敗北者か?情けねえ…情けねえな白波 遊海!!』

 

「うるさい…うるせぇ…!!黙れユウスケ!!」 

 

『ハッ、図星か…安心しろよ、お前を倒して周りの声の聞こえねぇ場所に封印してやるからよ…!』

 

 

「っ…(どうする…俺の手札は『機殻の要塞』『ゲノム』『機殻の再星』の3枚…!『ツール』の効果は使えない…!次のドローに賭けるしかない…!)」

遊海は追い詰められていた、勝つルートは僅か…遊海はドローに全てを賭ける!

 

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!!!」カンコーン!

「(このカードは…ごめんな、なかなか出番が無くて…力を貸してくれ!!)我が魂を守る大いなる力よ!再びその力を示せ!!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから現れよ!『ゲノム』『アクセス』『シェル』!」

再び時空の穴が開き3体の機械が現れる ATK1800  1800  1800

 

 

『へっ…また「キラー」を呼び出すつもりか?無駄だ、我の手札は2枚目の「カウンターブロー」!どちらにしても返り討ちだ!』

 

 

「ユウスケ…忘れてないか?『クリフォート』のもう一枚の()()()を!」

 

『なに…?』

 

 

「俺は3体のモンスターをリリース!現れろ!王を補佐する頭脳!『アポクリフォート・カーネル』!!」

遊海の背後に現れるのは白のコアを持つ巨大な機械、クリフォートの最上級モンスターが1体…アポクリフォートカーネル! ATK2900

 

 

『「カーネル」だとぉ!?そいつを入れていたのか…!?』

カーネルは通常のクリフォートデッキに入る事は少ない、切り札であり問答無用にモンスターを墓地に送る「キラー」、リリースする事でバウンスする「アーカイブ」がいれば事足りる事が多いからだ…だが、カーネルも召喚コストに見合う強力な効果を持っている!

 

 

「『カーネル』の効果を発動!『カエストス』のコントロールを得る!機殻催眠!」

《マスターの指令を受諾…催眠電波放出開始…》

 

カーネルから放たれた電波がカエストスに直撃する、催眠を受けたカエストスは跳躍し遊海のフィールドに移動する。 ATK2800

 

 

カーネルの効果、それは「相手モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る」効果、しかも「エネミーコントローラー」や「精神操作」のようにコストを必要としない強力な効果である。

 

「バトルだ!『カエストス』と『カーネル』で…ダイレクトアタック!!」

彗星の拳と白の破壊光線がユウスケに直撃し大爆発を起こした…。

 

ユウスケLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

ジャラジャラジャラ!

 

『チッ…もう少しだったのにな…』

攻撃で吹き飛ばされたユウスケを無数の鎖が拘束する。

 

「ユウスケ、お前またしばらく謹慎だからな!ここで大人しくしてろ!」

 

『へいへい、わかったよ…おい、遊海』

 

「なんだ?ユウスケ」

その場をあとにしようとする遊海にユウスケが声をかける

 

『…後悔するなよ、お前は止まるチャンスを棒に振ったんだからな』

 

「後悔なんてしないさ、俺は遊星達と未来を救うんだ…じゃあなユウスケ」

遊海はそのまま精神世界からログアウトした。

 

 

 

 

 

 

「っ……翠…?」

 

「遊海さん!大丈夫ですか!?ユウスケさんと喧嘩してたって聞きましたけど…!」

遊海が目を覚ますと翠が心配そうに顔を覗き込んでいた。

 

「ああ…まったく、あいつは何がしたかったんだよ…暫くは封印コースだな」

 

「もう…自分同士で喧嘩しないでくださ〜い!」

 

「ごめん翠…次からは気をつけるよ」

 

 

こうして遊海とユウスケの喧嘩は決着を迎えた…なお、遊星はアキにより救出され事無きを得た、さらにシェリー・ルブランとライティングデュエルをしたとの事だ。

 

また余談だが遊星を攫おうとした某ライティングチームは事情を知ったKCに潰されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『…遊海、お前は運命を乗り越えられるのか…?いや、奴を倒せるのか?』

 

精神世界で拘束されるユウスケ…その心中は複雑だった、とある事で知った敵の秘密…ユウスケはそれを知り遊海を守ろうとしたのだ…。

 

『お前にはとっては一番辛い戦いになるだろうな…まぁ、我にとっては関係ない事だ…覚悟を決めろよ俺』



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シンクロ召喚を封じた先に〜新たなる境地へ〜

「なに?シンクロキラーに負けない方法を教えてほしい?」

 

「ええ…この前にゴーストと戦ってからずっと考えているんです、遊海さんなら何かアイデアがあるかと…」

 

 

WRGPのレセプションパーティーが開かれる日…遊星が家を訪ねてきた、内容は「シンクロキラー」に対する対策についてである。

 

 

「う〜ん…一番なのは『シンクロ召喚をしない事』だけど…遊星のデッキじゃキツイよな…」

 

「はい…さっきジャックとデュエルをしたんですが…呆れられてしまって…」

 

「まぁ…そうなるよな(どうしたもんかな…『アクセルシンクロ』を今伝えるべきか…?いや、今日アンチノミーが姿を現すはず、なら…)」

遊海は悩む…ここで遊星にアクセルシンクロの存在を伝えれば簡単に済む…だがそれは彼の為にならないだろう、そこで遊海は2つ目の案を取る事にした。

 

 

「よし…遊星!久々にライティングデュエルだ!俺なりの考えをみせよう!」

 

「いいんですか!」

遊星は驚いた顔をする、遊海と戦うのはフォーチュン・カップ以来である。

 

「ああ、俺がシンクロキラーと戦った時は『融合デッキ』で戦ったんだ、これは『シンクロキラー』対策であると同時にWRGPで相手の虚を付く作戦にもなる…それに少しすっきりしたいだろ?」

 

「遊海さん…!胸をお借りします!」

 

「おう!じゃあ準備してデュエルだ!」

 

 

 

 

 

 

「「ライティング・デュエル!アクセラレーション!」」

 

 

 

遊星LP4000 SP0

遊海LP4000 SP0

 

 

特殊ルール

スピードワールド2常時発動

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」SP0→1

「手札の『レベル・スティーラー』を墓地に送り『クイック・シンクロン』を特殊召喚!」

ガンマンのような姿のロボットが現れる ATK700

 

「さらに『ロードランナー』を召喚!」

愛くるしいピンクの鳥が現れる ATK300

 

「オレはレベル1の『ロードランナー』にレベル5の『クイック・シンクロン』をチューニング!」

 

5+1=6

 

「集いし星が更なる力を紡ぎだす!光さす道となれ!シンクロ召喚!いでよ『ターボ・ウォリアー』!」

全身が赤色の戦士が現れる ATK2500

 

「さらに!『ターボウォリアー』のレベルを1つ下げ、墓地の『レベルスティーラー』を特殊召喚!」

1つ星のテントウムシが現れる DEF100

 

ターボウォリアー☆6→5

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

遊星LP4000 SP1

ターボウォリアー レベルスティーラー 伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

「いくぞ!俺のターン…ドロー!」SP1→2

「『霊獣使いの長老』を召喚!」

白い髭を蓄えた老人が現れる ATK200

《久しぶりだの遊海殿!お主が我らを使うとは珍しいの!》

 

「カムイ長老!力をお借りしますね!『長老』の効果で俺は霊獣モンスターを追加で召喚できる!来い!『精霊獣カンナホーク』!」

全身に稲妻を纏った鷹が現れる ATK1400

 

 

「『カンナホーク』の効果を発動!デッキの『精霊獣ラムペンタ』を除外する!そして俺は『長老』と『カンナホーク』を除外し融合!」

 

「なっ…!『融合』を使わない融合召喚だと!?」

遊星は驚く、この時代では融合召喚には『融合』または『Spースピード・フュージョン』を使う事が普通だからである…もちろん『剣闘獣』や『ネオス』などの例外もある。

 

 

「大戦を生き抜きし乗り手よ!聖なる獣と力を合わせ気高き獅子を呼び出さん!融合召喚!来い!『聖霊獣騎アペライオ』!!」

炎を纏った獅子と騎乗する女戦士が現れる ATK2600

 

「バトル!『アペライオ』で『ターボウォリアー』を攻撃!フレアドライブ!」

炎を纏った獅子がターボウォリアーに突撃する!

 

「やらせない!リバース罠『くず鉄のかかし』を発動!攻撃を無効にする!」

 

「無駄だ!『アペライオ』はダメージ・ステップ終了までカード効果を受けない!噛み砕け!」

アペライオはかかしを踏みつけて跳躍、ターボウォリアーを噛み砕いた!

 

「くっ…!」

遊星LP4000→3900

 

「俺はカードを一枚伏せてターンエンド!」

 

遊海LP4000 SP2

アペライオ 伏せ1 手札3

 

 

「『融合』を使わない融合召喚…そういう手段もあるのか…!」

 

「ああ、これなら手間も少なく済むからな、さぁ!お前のターンだ!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」SP2→3

「『Spーエンジェル・バトン』を発動!デッキからカードを2枚ドローし、1枚を墓地に送る!2ドロー!…オレは罠カード『リミッター・ブレイク』を墓地へ送る!そして効果発動!デッキから現れろ!『スピード・ウォリアー』!」

遊星の切り込み隊長が現れる ATK900

 

「さらにリバース罠『ロスト・スター・ディセント』を発動!墓地の『ターボウォリアー』をレベルを一つ下げ、守備力0で特殊召喚!」

赤き戦士が守備表示で現れる DEF0 ☆5

 

「そして『ジャンク・シンクロン』を召喚!効果で墓地の『ロードランナー』を特殊召喚!」

オレンジ色の戦士とピンクの鳥が現れる ATK1300 DEF300

 

「そしてオレはレベル5となった『ターボウォリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

5+3=8

 

「集いし願いが新たに輝く星となる!光さす道となれ!!シンクロ召喚!飛翔せよ!『スターダスト・ドラゴン』!」

遊星のエースである星屑の竜が現れる ATK2500

 

「来たか『スターダスト』!だが攻撃力は敵わない!」

 

「まだだ!『Spースピード・エナジー』を発動!『スターダスト』の攻撃力はエンドフェイズまで、オレのスピードカウンターの数×200…600ポイントアップする!」

スターダストの力が底上げされる ATK2500→3100

 

「そうきたか…!」

 

「バトル!『スターダスト』で『アペライオ』を攻撃!シューティング・ソニック!!」

白銀のエネルギーがアペライオに迫る!

 

「『アペライオ』の効果発動!自身をエクストラデッキに戻し!除外されている『霊獣使い』と『精霊獣』を特殊召喚する!戻ってこい!『長老』!『ラムペンタ』!」

 

「自分で『融合解除』だって!?」

アペライオが消え去り、再び長老と緑色のペンギンが現れる DEF1000  DEF400

 

「なら…『スターダスト』で『長老』を、『スピードウォリアー』で『ラムペンタ』を攻撃!」

白銀のブレスと脚技でモンスターが一掃される!

 

「オレはこれでターンエンド!」

スターダストATK3100→2500

 

「エンドフェイズ時に罠カード『霊獣の騎襲』を発動!墓地の『長老』と除外されている『カンナホーク』を守備表示で特殊召喚!」

 

「なんだって!?」

三度長老と鷹が現れる DEF1000  DEF600

 

 

遊星LP3900 SP3

スターダスト スティーラー スピードウォリアー ロードランナー 伏せ1(かかし) 手札0

 

 

「まさか躱されるなんて…!」

 

「遊星!これが俺の答えの一つだ!モンスターが対象に取られるならその前に別のモンスターに変えてしまえばいい!シンクロ召喚でも似た事ができるはずだ!」

 

「サクリファイス・エスケープか…!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP3→4

「『霊獣使い レラ』を召喚!」

オレンジ色の髪飾りをつけた少女が現れる ATK100

 

「『レラ』の効果発動!墓地の『ラムペンタ』を特殊召喚!」

再び緑のペンギンが現れる ATK1600

 

「さらに『カンナホーク』の効果を発動!デッキの『精霊獣アペライオ』を除外!さらに『ラムペンタ』の効果!エクストラデッキの『聖霊獣騎カンナホーク』を除外しデッキの『カンナホーク』を墓地に送る!そして『カンナホーク』と『長老』を除外融合!歴戦の賢者よ!相棒と共に飛翔せよ!融合召喚!『聖霊獣騎カンナホーク』!」

電気の力を増した鷹が現れる ATK1400

 

 

「そして『カンナホーク』の効果発動!除外されている『長老』と『アペライオ』を墓地に戻し!デッキから『霊獣の騎襲』を手札に加える!」

 

「っ…!相変わらずすごいプレイングだ!動きが止まらない…!」

遊星は遊海のプレイングに舌を巻く、現在のライティングデュエル環境では融合モンスターは不利だが…それを物ともせずに遊星を追い詰める…!

 

 

「ありがとよ!だけどこれで終わりだ!俺は『レラ』と『ラムペンタ』、そして『カンナホーク』を除外融合!星を守護する牙王よ!託されし力を絆と共に開放せよ!融合召喚!!いでよ!『聖霊獣騎ガイアペライオ』!!」

DT世界において「破壊の力」を分け与えられた最強の獅子が現れる ATK3200

 

「攻撃力3200…!」

 

「バトルだ!『ガイアペライオ』で『スターダスト』を攻撃!ダイナミックドライブ!」

「破壊の力」と星の龍脈の力を受けた牙王がスターダストに突撃する!

 

「させない!『くず鉄のかかし』発動!」

 

「甘い!!『ガイアペライオ』の効果発動!手札の『精霊獣ペトルフィン』を除外し、相手の効果の発動を無効にし破壊する!踏み砕け!『ガイアペライオ』!!」

牙王はかかしを粉砕しスターダストに突撃した!

 

「うわぁぁ!!」

遊星LP3900→3200

 

「カードを2枚伏せターンエンド!」

遊海LP4000 SP4

ガイアペライオ 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「っ…強すぎる…!これが決闘王の実力か…!」

 

「どうした遊星?弱気になったか?」

 

「いいえ…燃えてきました!!」

 

 

 

「オレのターン…ドロー!!」カーン! SP4→5 

「オレは『Spーオーバー・スピード』を発動!自分のスピードカウンターを全て取り除き、墓地の『ジャンクシンクロ』と『エンジェル・バトン』を手札に加える!そして『ジャンクシンクロン』を召喚!」SP5→0

再びオレンジ色のロボットが現れる ATK1300

 

「オレはレベル1の『ロードランナー』とレベル1『レベルスティーラー』とレベル2『スピードウォリアー』にレベル3『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

1+1+2+3=7

 

「集いし怒りが忘我の戦士に鬼神を宿す!光さす道となれ!シンクロ召喚!吠えろ!『ジャンク・バーサーカー』!!」

赤き鬼神が現れる…が ATK2700

 

 

「リバース罠『霊獣の連契』を発動!自分フィールドの霊獣モンスターの数だけ相手モンスターを破壊する!『ジャンクバーサーカー』を破壊!」

 

「しまった!」

ガイアペライオが咆哮しその衝撃波で鬼神は砕け散る…

 

 

「ターンエンドです…!」

遊星LP3200 SP0

手札0

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「バトル!『ガイアペライオ』でダイレクトアタック!」

ガイアペライオが遊星へと突撃しライフを削りきった!

 

遊星LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

「流石です遊海さん…完敗です…!」

 

「惜しかったな遊星!どうだ?少しは参考になったか?」

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

「そうか、ならよかった!」

デュエルが終わり二人は言葉を交わす、遊星の顔は来た時よりも晴れやかだった。

 

 

「ん…そろそろ戻るか、この後のWRGPのレセプションパーティーにメタルナイト名義で呼ばれてるんだ、遊星も行くんだろ?」

 

「ええ!ジャックやクロウ、それにアキ達も一緒に招待されているんです!」

 

「そうか、ならまた夜に会おう!…その時はメタルナイト呼びで頼むぞ?」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

その日の夜…

 

 

「うわ〜!すごいご馳走だ!さっすがプレミアイベント…!」

たくさんのご馳走を見た龍亞がはしゃいでいる、ここはWRGPのプレミアイベント会場…遊星やアキ達シグナーも招待されているのだ…なお、アキや龍亞達はしっかりと正装をしているが遊星とクロウは普段の姿である。

 

 

「あっ!遊星!みんなも来たのね!」

 

「おっ!カーリーじゃねぇか!取材か?」

人混みをかき分けてカーリーが遊星達に声をかける、彼女達記者にとってここはスクープの宝庫である。

 

「ねぇ!ジャックは一緒じゃないの?」

 

「ん…そういえば…」

 

「アイツなら真っ先に来てそうだけどなぁ…?」

カーリーの言葉に遊星とクロウは会場を見渡す、目立ちたがり屋なジャックであれば必ずいるだろうと…と

 

「待たせたな!!」

 

「ジャック!お前……どうしたんだそのスーツ…?」

 

遊星が振り返るとそこには普段の服の上からきらびやかなジャケットやアクセサリーを付け、白いシルクハットを被ったジャックの姿があった。

 

「フッ…この日の為にオーダーメイドしたのだ!…無論ポケットマネーでな!」

 

「ジャック〜!そんな金があるならお前もDホイールの改造に協力しやがれ!!」

 

「フン!自分の姿を整えるのもキングの務めだ!」

 

ポン

 

「むっ…?誰だ、俺の肩に手を置くのは…!」

 

『ジャック、無駄遣いはしないと約束したよな?』

 

「遊…!」

肩に手を置かれたジャックが振り返るとメタルナイト…遊海の姿があった、顔は見えないが恐ろしい怒りのオーラがにじみ出ている…!

 

『ちょっとO☆HA☆NA☆SI…しようか?』

 

「ちょっと待て!メタルナイト!これは違うぞ!待て…待ってくれ…!」ズリズリズリ

ジャックは肩を掴まれ物陰に消えていった…。

 

 

「…オレ達は何も見なかった…いいな?」

 

「「「「(コクコクコク!)」」」」

 

遊星達は今の出来事を忘れる事にした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まったく…ジャックの奴は…』

ジャックへのお仕置きを終えた俺はVIPルームへと足を運ぶ…そこには

 

「よっ!久しぶりだな遊海!」

 

「元気になって本当によかった!」

 

『久しぶりだな遊戯!城之内!元気そうで何よりだよ!』

 

そこには伝説の決闘者である遊戯、そして城之内の姿があった、海馬社長が招待状を出したのである…ちなみに参加者達は気づいていない。

 

 

「海馬にも感謝しないとな!こんなに旨い飯を食わせてくれんだから!」

 

「もう、城之内君は相変わらずなんだから…舞さんに怒られるよ?」

 

「へへっ!堅い事言うなよ遊戯!たまにはいいじゃないか!」

城之内の剛胆さは相変わらずである

 

「遊海、あれが君とこの町を救ってくれたシグナー達なんだね?」

 

『ああ、背の高い金髪がジャック、オレンジ色の髪がクロウ、赤いドレスを着てるのがアキ、緑色の髪の双子の兄妹が龍亞と龍可…そして青いジャケットを着てるのが…』

 

「不動 遊星君…そうか、彼はあの時から30年以上も未来から来たんだね…」

遊戯は30年前のパラドックスとの戦いを覚えていた…ようやく遊戯は遊星のいた時代へと辿りついたのだ…。

 

 

『ああ…そうだ遊戯、聞きたい事があったんだ…30年前のあの日、俺はお前と一緒にパラドックスと戦ったのか?』

 

「ううん、君は戦ってないはずだよ…あの時、赤い竜は僕だけを飲みこんだんだ…君は戦っていないはずだ」

実際は遊海はパラドックスと戦っている…しかし、それは本人達の知らぬ記憶である。

 

『そうか…遊星の言葉と矛盾するな、何か…嫌な予感がする、まるでボタンを掛け間違えたような…そんな感じが…』

 

「ん…二人とも!説明が始まるみたいだぜ!」

城之内の言葉でモニターを見る、そこでは3Dマッピングを併用しイエーガーがWRGPの説明をしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これにてWRGPの説明を終わらせていただきます、このあとはお時間の許す限りパーティーをお楽しみくださいませ!」

 

パチパチパチパチパチ!

 

 

「ふぅ…終わった!終わった!あとは長官達に伺いをたてなければ…」

説明を終えたドングリピエロ…イエーガーはパーティー会場を離れ別室へと向かう、そこには椅子に座り会場を眺めるプラシド、ルチアーノ、ホセの姿があった。

 

 

『ご苦労だったイエーガー、君もパーティーを楽しむがいい』

 

「はっ…失礼します」

報告を終えたイエーガーは部屋をあとにする…そして部屋には三長官、そして…

 

 

「とりあえずは上手く進んでいるな、ホセ」

 

『ああ、これで彼らは更に力を高めるはずだ…さすれば「サーキット」も浮かびやすくなるだろう…全ては大いなる力の為に…』

影から浮かぶように現れたのはゲイザーだった、彼は設置されているモニターで会場の様子を見る…。

 

『キッヒッヒ…でもなんでこんな遠まわしにするんだい?僕達が暴れればそれで済むのに』

ルチアーノがホセへと問いかける

 

『ルチアーノ、この時代のデュエリストは未知なる可能性を秘めている、GPに向けて切磋琢磨した決闘者の力が開放された時…それが大いなる力の呼び水となるのだ』

 

『フン、くだらんな…オレならば一人でサーキットを浮べてやるぜ…!』

 

「無茶をするなプラシド、傷がまだ直っていないんだからな」

 

『ちっ…忌々しい白波め…!必ずあの時の借りは返してやる…!』

プラシドは拳を握りしめる、以前に遊海にやられた傷は完全には直っていないのである。

 

『キッヒッヒ…そうかっかしないでよプラシド!ほら!面白い事が始まるみたいだよ?』

ルチアーノが画面を指し示す、そこには巨大なDホイールを操るガラの悪い男の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

「君は…もしかしてフォーチュン・カップで優勝した不動 遊星じゃないか!?まさか会えるとは思わなかったな!」

 

「お前達は…?」

 

「アンタ達は…!連勝記録更新中のチーム・ユニコーンじゃないか!アンタ達もWRGPに出場するのか!」

遊星達に話しかけたのは青いライティングスーツを着た3人組、チームライティングデュエルで連勝記録を更新しているチーム・ユニコーンだった。

 

 

「突然話しかけてすまない、君の活躍は聞いていてね…是非話してみたいと思ってたんだ!オレはアンドレ!後ろの金髪がプレオで黒髪がリーダーのジャンさ!」

赤髪の青年・アンドレがチームの紹介をする

 

「丁寧にすまないな…オレが不動 遊星だ、こっちは仲間のクロウだ…あとあっちで白くなってるのがジャックだ」

遊星が視線を向けると遊海にこってり絞られたジャックが燃え尽きていた…。

 

 

「ああ、あれがこの街の先代キングか…どうしたんだアレ?」

 

「気にしないでやってくれ…メタルナイトの説教を受けてたんだ…」

 

「メタルナイト?ああ!この街で活躍してるヒーローか!凄腕のデュエリストらしいな!」

 

「ああ、あの人に勝てるデュエリストはそうはいな…」

 

バリーン!!

 

「きゃあああ!!」 「うわぁぁ!!」

 

 

「っ!なんだ!?」

突然、パーティー会場にガラスの割れる音と悲鳴が響き渡る、遊星達が視線を向けるとそこにはガラの悪い小太りの男と規格外の大きさに改造されたDホイールがエンジンをふかしていた!

 

「おうおうおう!こんなところで着飾りやがってよぉ!上品なこったなぁ!!」

 

「アイツは…!街のゴロツキのドボックル!?」

情報通のカーリーが闖入者の正体を知らせる…ドミノシティで有名(?)なヤンキーのようだ

 

「何がだぶりゅーあーるじーぴーだ!?ライティングデュエルはそんな遊びじゃねぇんだよ!!」

ドボックルはどうやらWRGPに不満があり、この会場に乱入したようだ…。

 

「ふざけた野郎め!セキュリティ!デュエルチェイサーズ!奴を取り押さえろ!!」

警備をしていた牛尾の号令のもとセキュリティがドボックルを止めようとする…だが

 

「セキュリティがなんぼのもんだ!轢かれたくなかったら退きやがれ!!」

違法改造されたDホイールの力は凄まじく、会場を荒らしながら走り回る!

 

「オラァ!どけどけどけぇ!!」

 

「アキ!!」

暴走したDホイールはアキに向かって突進する!

 

「しょうがないわね!来て!『ブラック・ロー』…」

 

「『ブラック・マジシャン』!黒・魔・導!!」

《ハァッ!!》

 

「いきなりなんだぁ!?」

アキに迫ったバイクは魔力弾に弾かれ壁に激突する!!

 

 

「あれは…まさか!!」

遊星がアキを助けた人物の正体に気がつく…それは…!

 

「まったく、せっかくのお祝いの日なんだから乱暴な事はよしてほしいな…そう思わないかい?不動 遊星君」

 

「遊戯さん!!?」

VIPルームから姿を現したのは初代『決闘王』、そして全てのデュエリストの憧れ…武藤 遊戯その人だった…!

 

 

「うそ…!?」

 

「キング・オブ・デュエリスト…!この会場に来ていたのか!?」

 

「本物だ…!」

会場にいた人々は驚きをあらわにする…しかし

 

「けっ!何が『決闘王』だ!オレ様の邪魔をするんじゃねぇ!!!」

ドボックルは再びエンジンをふかし遊戯へと突撃する!

 

 

「遊戯さん!危ない!!」

 

「大丈夫だよ…僕には頼れるヒーローがいるからね!」

 

『ああ、その通りだ!乱入する場所を考えやがれ!!最大出力・キラーナックル!!!』ズガン!

 

「う、うわぁあああ!?」

遊戯に迫った巨大Dホイール…それは割り込んだヒーロー、メタルナイトによりガラスを突き破りダイナミック退場する!

 

 

「メタルナイト!?なんでこんなところにいやがるんだ!?」

 

『招待されててね…まだやるか?』

 

「ちくしょう!覚えてやがれ〜!!」

ドボックルは逃げ出した!

 

『ふぅ…あとは任せていいですか?牛尾さん』

 

「手間かけさせてすまねぇ!デュエルチェイサーズ出動!!」

牛尾の指示でチェイサーズがドボックルを追いかけていった…

 

 

 

「久しぶりだね遊星君、こうして会うのは30年振りくらいかな?」

 

「お久しぶりです遊戯さん、まさかこの時代でお会いできるとは思っていませんでした!」

暴走の片付けの中、遊戯は遊星へと話しかける…遊戯にとっては30年、遊星にとっては数カ月振りの再会だった…。

 

「今日のパーティーは台無しになってしまったけど…僕は君達の事を応援するよ!WRGPを楽しみにしてるからね!」

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

「僕はそろそろ行かなきゃ、また会おう遊星君!」

遊戯はそう言って去っていった…。

 

 

 

『遊星!みんなは無事か!?怪我はないか!』

 

「メタルナイト!オレ達は大丈夫です!」

 

『そうか…ならよかった…!』

遊戯と入れ違いに遊海が遊星のもとに駆け寄る、シグナー達の無事を聞いて安心したようだ。

 

『まったく、セキュリティは何をしてたんだか』

 

「まぁ、こんな事もありますよ…でも凄かった…!まさかDホイールを殴り飛ばすとは…」

 

『あれぐらいなんともないよ、少なくとも地縛神の攻撃よりはマシだよ!』

 

「…それと比べたらお終いでは…」

復活した遊海の期間の力に少し引いてしまう遊星なのだった…。

 

 

「なっ…ゴーストが現れただと!?」

 

「「「なんだって!?」」」

牛尾の無線がゴーストの出現を知らせる…ゴーストはチェイサーズを追い抜かしドボックルとデュエルを始めたらしい…!

 

 

「おのれ…ゴーストなどこのジャック・アトラスが捻り潰してくれる!!いくぞ遊星!クロウ!…メタルナイト!」

打倒ゴーストを目指すジャック達は急いで駐車場へと向かう…だが

 

 

『待て!今からゴーストのもとへ向かっても無駄だ!』

 

「なんだと…お前、何者だ!」

道を急ぐ遊星達の前に青い髪を逆立てた、赤いサングラスの男が現れる!

 

『不動 遊星、今のお前ではゴーストを倒す事はできない!…己の限界を超えなければな!』

 

「なんだって…!?」

 

『(…ついに現れたか滅四星の一人・アンチノミー!)

 

遊海はアンチノミーを見据える…シナリオ通りなら遊星に初めてのアクセルシンクロを見せるハズだが…

 

 

『口で話すよりも感じた方が早いだろう…ついてこい!遊星!』

 

そしてその後、シナリオ通りに遊星はアクセルシンクロを目にする事になる…そしてデュエルにわざと敗北したアンチノミーは正体を明かさずに去っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

『…ここまできたか、これでいいんだ…これで未来は…!だがまだだ、奴は…奴だけは…オレが…!』

 

 

 



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花の騎士と忠義の侍〜思わぬ因縁〜

こんにちはS.Kです!
最近少しスランプ気味だったりしますが…頑張ります!

それでは最新話をどうぞ!


「ありがとう!メタルナイト!」

 

「おう!もう風船は離しちゃだめだぞ!」

 

「は〜い!」

 

「…今日もネオドミノシティは平和だな、よかった…」

 

レセプションパーティーから数日が過ぎた、メタルナイトとしてパトロールをしているが大きな事件はない、ネオドミノシティには平和な時間が流れていた。

 

「さて…パトロールに戻ろうか」

俺はDホイールに乗りその場を離れた…。

 

 

『『……』』

 

 

 

 

 

 

 

「ほい、Dホイール窃盗の現行犯だな…セキュリティが来るまで大人しくしてろよ?」

 

「「「むぎゅ〜…」」」

 

…平和でもなかった、あのあとDホイールの窃盗未遂が3件、ひったくりが2件、火事が1件あった…童実野町の治安の悪さはそのままだったか…。

 

「さて…今日は帰るかな」

 

《(マスター)》

 

「(アヤカ?わざわざ念話でどうしたんだ?)」

アヤカが念話で遊海に話しかける。

 

《(先程から何者かに監視されています…数は2人、どうしますか?)》

 

「(撒くのは簡単だけど…正体が気になるな、出てきてもらおうか)」

俺はDホイールに乗り人気の無いエリアへと走りだした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

第三者視点

 

 

 

『彼は何処へいったのかしら…?』

 

『お嬢様…ご注意を、奴は相当の手練…我々に気づいている可能性があります…!』

 

シティ郊外の廃工場に二人組の男女が訪れる、1人は大柄の紳士服を着た男・ミゾグチ、もう1人は金髪のロングヘアーでライダースーツを着た麗人・シェリー・ルブラン、彼女達はある目的の為にメタルナイトを追跡し、この工場へと辿り着いたのだ。

 

 

『私達の目的の為には彼に接触する必要があるわ…もう一度探すわよ!』

 

『わかりました…しかし、その必要も無いようです…!』

ミゾグチが前を見つめる、夕暮れの暗がりの中から彼らが探していた人物が現れる。

 

「俺の事をつけてたのはお前達か…俺になんの用だ?」

 

『現れたわねメタルナイト…いいえ、伝説の決闘者、白波 遊海…!』

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「(正体バレてるし…なんでわかった…?)俺はメタルナイト、伝説の決闘者とは関係ないぞ?」

 

『とぼけなくてもいいわ、貴方の事を調べあげ…そして共通点を見つけた、前回のフォーチュン・カップそして18年前のバトルシティ…貴方は「閃光竜スターダスト」というカードを使ってる、証拠はそれで充分よ』

 

「…なるほどな、I2社にハッキングを仕掛けたのはお前達だったのか…俺になんの用だ?」

俺は変身を解きつつシェリーへと問い掛ける、ついでにバトルシティ・レジェンドの記録映像は厳重に規制されている…全てを収めた映像が残っているのはKCとI2のみである。

 

 

『私の名前はシェリー…白波 遊海、私達と一緒にWRGPに出てほしいの、その為に私は貴方を探していたのよ』

 

「…どういう風の吹き回しだ?お前は遊星に熱烈なアタックをしたらしいが?」

 

『ええ…それは本当よ、遊星の事は諦めていないわ…でも保険として…そしてWRGPで注目を集めるために貴方が欲しいのよ』

シェリーは凛とした顔で俺を見つめる、俺はWRGPに関してまだ何も決まっていない…だが…

 

「いいだろう、その申し出を受けようシェリー」

 

『本当!?「ただし!!…決闘で勝ったらの話だけどな!」…そういう事ね…!いいわ!貴方に勝ってチームに入ってもらう!』

シェリーと遊海はデュエルディスクを構える

 

「それから…そこの執事さん、あなたも決闘者でしょう?二人まとめてかかってきてください」

 

『なんと…!?いいでしょう!後悔しないでください、ワタシはミゾグチ!お嬢様を守る盾とならん!!』

 

 

 

 

 

『『「デュエル!!」』』

 

 

遊海LP4000

 

ミゾグチLP4000

シェリーLP4000

 

 

特殊ルール

 

バトルロイヤル

 

順番

遊海→ミゾグチ→遊海→シェリー…

 

シェリーのターンから攻撃可能

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『テラ・フォーミング』を発動!デッキからフィールド魔法『混沌の場(カオス・フィールド)』を手札に加え、発動!その効果により、デッキから『カオス・ソルジャー』を手札に加える!」

 

『「カオス・ソルジャー」ですって!?』

遊海の背後に光のトンネルが現れる

 

「俺は儀式魔法『カオスの儀式を発動!』手札のレベル1『サクリボー』とレベル7『疾走の暗黒騎士ガイア』を生贄に捧げる!」

フィールドに現れた祭壇にガイアとクリボーが吸い込まれる

 

「相反する光と闇が混じりし時、最強の戦士が誕生する!儀式召喚!現れろ!『カオス・ソルジャー』!!」

遊海の背後のトンネルから凄まじい力を纏う混沌の戦士が現れる ATK3000

 

『これがデュエルモンスターズの歴史に刻まれる「最強の戦士族」…!』

 

『白波 遊海…やはり彼は只者ではない…!』

シェリーもミゾグチも最強の戦士を前にたじろぐ

 

 

「フィールド魔法『混沌の場』の効果発動!手札・フィールドからモンスターが墓地に送られた時、1体につき1つ魔力カウンターを置く!」

遊海の背後に逆三角形の紋章の玉が現れる カウンター0→2

 

「さらにリリースされた『サクリボー』の効果!リリースされた事で1ドロー!さらに『疾走のガイア』の効果でデッキから『カオス・ソルジャー ー開闢の使者ー』を手札に加える!カードを1枚伏せ…ターンエンド!」

遊海LP4000

カオスソルジャー 混沌の場(2) 伏せ1 手札4

 

 

 

 

『いきなり攻撃力3000のモンスターとは…ワタシも気が抜けませんな…!お嬢様!先陣を切らせて頂きます!』

 

『頼んだわよ!ミゾグチ!』

 

 

 

『ワタシのターン!ドロー!』

『「魔頂(まちょう)武士(もののふ)」を召喚!』

黒い甲冑と細長い兜の武士が現れる ATK1200

 

『さらに「魔頂の武士」の効果発動!手札から「放踵(ほうしょう)の武士」を特殊召喚!』

赤い鎧の薙刀を持った武士が現れる ATK0

 

『ワタシはレベル4の「魔頂の武士」にレベル3の「放踵の武士」をチューニング!』

 

4+3=7

 

『二つの刃交わりしとき!ここに忠義の刃が現れん!我に仕えよ!シンクロ召喚!現れろ《不退の荒武者》!』

二刀流の武者が現れる ATK2400

 

混沌の場 カウンター2→4

 

『ワタシはカードを2枚伏せてターンエンド!』

ミゾグチLP4000

不退の荒武者 伏せ2 手札2

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「カードを1枚伏せターンエンド!」

遊海LP4000

カオスソルジャー 混沌の場(4) 伏せ2 手札4

 

 

 

 

『遊海!貴方を必ず引き込んでみせる!私のターン!ドロー!』

『「花騎士団の駿馬」を召喚!』

豪奢な装飾をされた馬が現れる ATK400

 

『「駿馬」の効果発動!デッキから「融合」を手札に加える!そして魔法カード「融合」を発動!フィールドの「駿馬」と手札の「花騎士団の槍持ち」を融合!「ケンタウルミナ」を融合召喚!』

騎士の鎧を着た女性のケンタウロスが現れる ATK2200

 

混沌の場 4→6

 

『そして私は装備魔法「最強の盾」を「ケンタウルミナ」に装備!その効果で「ケンタウルミナ」の攻撃力は自身の守備力分…1600ポイントアップする!!』

ケンタウルミナの盾が重厚な物に変わり、攻撃力がアップする! ATK2200→3800

 

 

『バトルよ!「ケンタウルミナ」で「カオスソルジャー」を攻撃!!』

人馬一体の騎士が最強の戦士に斬りかかる!

 

「甘い!俺は手札から『混沌の使者』の効果を発動!このカードを墓地に送り『カオスソルジャー』の攻撃力を1500アップする!さらに相手モンスターの攻撃力はバトルする時、元々の攻撃力になる!!」

 

『なんですって!?』

カオスソルジャーの後ろにカオスソルジャーに似た鎧を着た戦士が現れる、そしてカオスソルジャーには力を与え、ケンタウルミナの力を奪った!

 

カオスソルジャーATK3000→4500

 

ケンタウルミナATK3800→2200

 

 

「切り裂け!『カオスソルジャー』!カオスブレード!!」

斬りかかってきたケンタウロスはその剣諸共一刀両断された!

 

『くぅ…!!』

 

『お嬢様!』

 

シェリーLP4000→1700

 

 

『これが「決闘王」の力…!凄まじいわね…私はカードを1枚伏せてターンエンド!』

シェリーLP1700

伏せ2 手札3

 

 

「お前の覚悟はそんなものか?お前は…なんでWRGPを目指す?」

 

『私は…復讐するのよ…!私の両親を傷つけた「イリアステル」に!そして()を見つけ出すの!!!』

 

『お嬢様!落ち着いてください…!冷静に…!』 

遊海にGPへの目的を聞かれ取り乱すシェリー…それをミゾグチが落ち着かせる

 

「(彼?見つける…?何か俺の知ってる事と違うような…?)」

遊海は微かな違和感を覚える…しかし、その事は後回しにしてデュエルを再開する。

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「フィールド魔法『混沌の場』の効果発動!カウンターを3つ取り除き、デッキから儀式魔法『超戦士の儀式』を手札に加える!そして儀式魔法『超戦士の儀式』を発動!手札のレベル4『開闢の騎士』と『宵闇の騎士』を生贄に捧げる!」

遊海の場に魔法陣が刻まれ2体のモンスターが飛び込む!

 

混沌の場 6→3

 

「混沌を統べる究極の戦士…ここに降臨!!儀式召喚!いでよ!『超戦士カオス・ソルジャー』!!」

体がオーラに包まれた超戦士が現れる ATK3000

 

混沌の場 3→5

 

 

『2体目の「カオスソルジャー」ですって…!?』

 

「さらに墓地の『開闢の騎士』と『宵闇の騎士』を除外し、このモンスターは特殊召喚できる!現れよ!『カオス・ソルジャー ー開闢の使者ー』!」

天地の開闢を司る究極の戦士が現れる ATK3000

 

『攻撃力3000が3体…!?』

 

「『超戦士』の効果を発動!『開闢の騎士』を儀式召喚に使った事で効果を発動できる!『不退の荒武者』を除外!」

 

『しまった!!』

荒武者は次元の狭間に消え去る!

 

「バトルだ!『超戦士』と『カオスソルジャー』でミゾグチにダイレクトアタック!ダブル・カオスブレード!!」

2体の戦士の斬撃がミゾグチを吹き飛ばした!

 

『ぐっ!すみませんお嬢様!!』

 

『ミゾグチ!!』

 

ミゾグチLP4000→1000→0

 

 

 

「俺のモンスターはまだ残ってる!『開闢の使者』でシェリーにダイレクトアタック!混沌の一撃!!」

 

『まだよ!リバース罠「ハイ・ハーフ」を発動!相手の攻撃力2000以上のモンスター1体の攻撃力を半分にする!』

 

「させない!カウンター罠『超戦士の盾』を発動!自分フィールドのモンスターを対象にする効果を無効にし破壊する!斬り裂け!『開闢の使者』!」

盾で効果を受け止めた開闢の使者はそのままシェリーのライフを削りきった…。

 

シェリーLP 0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「それで…話を聞かせてもらえますね?ミゾグチさん」

 

『ええ…貴方にだけお伝えしましょう、…シェリーお嬢様、そしてルブラン家に何が起きたのか…』

デュエル終了後、気絶してしまったシェリーを看病しながらミゾグチは語り始める、彼女の身に何が起きたのかを…

 

『あれはもう10年以上前の事になります…シェリーお嬢様はカード産業で財を成したルブラン家の長女としてご主人様と奥様に愛されながら暮らしていました…そう、あの事件が起きるまでは……』

 

 

 

 

 

十数年前…

 

 

「パパ…ママ…?」

幼いシェリーは聞き慣れない音で目を覚ました…不安になった彼女は両親の部屋を訪ねる…しかし、そこで目にしたのは銃で撃たれ、血溜まりに倒れ伏した両親やメイド達の姿だった…。

 

「そんな!パ…!『お嬢様…!声を立ててはなりません!!』ヒグッ…!?」

シェリーは口を手で抑えられる、その手は若きミゾグチのものだった。

ミゾグチは地下室で作業をしていた為に襲撃から難を逃れたのだ…。

 

『お嬢様…お父上はもう…!ですが貴女だけは必ず助けます…!』

 

「そんな…!パパ…ママぁ…!嫌だ…嫌だよぉ!!」

幼いシェリーは涙を流す…そこに…

 

 

「ぎゃ…!?」

 

「ぐぇ…!?」

 

「やめろ…やめろ来るなぁ!!ガッ………」

 

 

「なに…?なんの音…?」

 

『お嬢様!隠れるのです!』

廊下から聞こえてくる襲撃犯の悲鳴…危険を感じたミゾグチはシェリーをクローゼットへと隠す

 

「ミゾグチ!ミゾグチも一緒に隠れて…!」

 

『お嬢様…ご心配無く、ワタシには護身術の心得があります…!絶対に貴女だけは守ります…!』

ミゾグチはクローゼットを背に構えをとる…そして

 

 

『まったく…惨い事をするものだ人間という生き物は…』

部屋のドアが開き、1人の男が現れる…その男は夜の暗闇でもわかる漆黒のコートを纏い、黒いバイザーで目元を隠した青年だった…その服は返り血で汚れている。

 

『お前は何者だ!ルブラン氏達を殺したのはお前なのか!!』

ミゾグチは男に問い掛ける

 

『ルブラン…?ああ、そこ倒れてる奴らか…それはオレではない、犯人なら既に消したよ…一人は逃げられたけどな』

 

『っ…!何が目的だ!これ以上何を望む!』

 

『望みか…ここに来たのは()()()()()()()()、オレに望みは…ない、だが…お前が匿っている少女には興味があるな』

 

『!?…シェリーお嬢様には指一本触れさせんぞ!!ハッ!!』

ミゾグチは男に肉薄し拳を叩き込む

 

『…何かしたか?』

 

『なっ…!』

男はミゾグチの拳を難なく受け止める

 

『拳は…こう使うのだ!』

 

『ガハッ─!?』

男の拳は重く鋭かった…拳の直撃を受けたミゾグチは壁が壊れる程の威力で叩きつけられる!

 

「そんな!ミゾグチ!しっかりして!!」

 

『お嬢様…!逃げて…ください…!』

シェリーが隠れていたクローゼットから飛び出す…両親を失い、ミゾグチも危機に瀕している…彼女は見ていられなかったのだ…。

 

『お前がシェリーか…』

 

「うぅっ…!パパを…ママを返せ!うわぁぁぁ!!!」

 

『いけません!お嬢様…!!』

シェリーは男に向かって駆け出す…そして…

 

ザシュ…!

 

『!?…』

 

『お嬢様…!』

 

「うっ…ヒグッ…!あ、ああ…!」

床に血が垂れる…それはシェリーのものではなく、足から血を流す男のものだった…シェリーはクローゼットにあったハサミを持って男に一矢報おうとしたのだ。

 

 

『…マナーのなってないお嬢さんだ、ハサミを人に向けちゃいけないって教わらなかったのか?』

 

「あ、ああ…」

男はシェリーからハサミを取り上げ、投げ捨てる…そして

 

『だが…その心は認めよう、他人の危機に自分を捨てて立ち向かう…いいだろう、お前に免じてその願いを叶えてやろう』

男は倒れているルブラン夫妻へと歩み寄る

 

『…運が良いな、まだ息があったか…だが目覚めるかは…お前達次第だ』

男の手から緑の光が放たれる…

 

『…じゃあな、お前の願いが叶うかは本人達次第だ』

 

『待て…!いったい何を…!』

 

『傷を癒やした、すぐに救急車を呼べば助かるだろうさ』

 

『なっ…!?待て!お前は…お前は何者なんだ…!』

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

『…そしてお嬢様がすぐに救急車を呼び、奇跡的にご主人様達は一命を取り戻しました…しかしご夫妻共に未だに目覚めないのです、そしてワタシとお嬢様は事件の真相について調べ…その背後に「イリアステル」なる秘密結社がある事に辿り着きました、そして今回のWRGP…そこにイリアステルが関わっている事を知り、この町に来たのです』

 

「そんな事が…(ルブラン夫妻が生きてるだと…!?なぜ…!?)」

シェリーの両親はイリアステルの干渉を受け殺され、シェリーとミゾグチが世界中を逃げ回りつつ強くなるのが本来の歴史だ…しかし、この世界ではルブラン夫妻は生きているのだ…。

 

 

「なぁ、お前達が俺に接触してきたのはチームの勧誘だけじゃないんじゃないか?」

 

『…左様です、お嬢様はバトルシティ・レジェンドの映像を見てから貴方に会いたがっていました…彼の事を聞くために…』

 

『ええ…そうよ、私は貴方に聞きたい事があったの…』

 

「シェリー…気が付いたようだな」

 

『お嬢様…!』

シェリーは体を起こす

 

『私はお父様を傷つけたイリアステルに復讐する…そして彼に…瀕死だったお父様達を助けた彼に聞きたいの…「どうしてそんな事をしたのか」って』

 

「さっきからお前が言っている『彼』は何者なんだ?」

 

『今でも鮮明に覚えているわ…お父様達を治療して立ち去った彼の名前は…「観測者(ゲイザー)」…黒いコートとバイザーを付けた男…貴方がバトルシティの準決勝で戦った男よ』

 

「はっ………?なんの…なんの冗談だよ!それは!!!」

遊海は抑えていた殺気を開放する、それにより空気を揺らし、周囲の小石が浮かび上がる!

 

『遊海殿…!?いったいどうしたのですか!?』

 

『なんていう…殺気よ…!?』

シェリー達は開放された殺気で身動きが取れない!

 

 

「奴はイリアステルのメンバーの一人で…ゼロ・リバースの主犯の一人だぞ…!そんな奴が…人助けだと…?そんな事あるわけないだろうが…!!」

 

『『なんと!?/なんですって…!?』』

シェリーもミゾグチも驚きに顔を染める…命の恩人が実は仇の一人だった、そのダメージは計り知れない…

 

《ユウミ!落ち着いて!!今のあなたが本気を出したら工場が消えちゃいますよ!!》

 

《深呼吸です!深呼吸!!》

アヤカとフレアが半実体化状態で遊海を宥める…何回も手酷く殺られているせいで怒りのパラメーターが振り切れ気味である。

 

「フー…フー………すまん、取り乱した…お前達がイリアステルを、ゲイザーを追うなら止めはしない…だが気をつけろよ、奴は血も涙もない大量破壊者だ…実際に会うことはオススメはしない…!」

 

『…ありがとう遊海、忠告感謝するわ…でも私は彼に会って聞かなきゃならないの…、今回は負けてしまったけど諦めてはないわ、GPに出るつもりになったら連絡をちょうだい…いつでも歓迎するわ!』

 

「そうかい…ま、気が向いたら連絡させてもらうよ」

そして遊海とシェリーは連絡先を交換し別れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

十数年前…

 

 

『待て…!お前は何者なんだ…!』

ミゾグチが男へと問い掛ける…事もなげにルブラン夫妻達を蘇生してみせた男の名を…

 

 

『…我が名は「観測者」ゲイザー、今回は気まぐれで立ち寄っただけだ…もう会うことは無いだろう…』

 

「待って!」

立ち去ろうとするゲイザーをシェリーが呼びとめる

 

「パパとママは…助かるの…?」

 

『……ああ、たぶんな、早く救急に通報するがいい』

 

「ありがとう…あとごめんなさい…」

シェリーは頭を下げる…それは両親を助けてくれた感謝であり、ゲイザーを傷つけた謝罪でもあった…なお、ミゾグチは気絶してしまっている。

 

 

『礼などいらん…オレは気まぐれに来ただけだ』

 

「ゲイザー、私が怪我をさせたせきにんをとるわ…私が大きくなったらあなたのおよめさんになってあげる!」

 

『…………何処でそんなセリフを覚えたんだこのお嬢様は……?』

ここに来て初めてゲイザーは表情を崩した…もちろん呆れによるものだが。

 

『小娘、世界は広い…オレなんぞよりいい男はいるだろう…オレに関われば待ち受けるのは破滅だけだ、諦めろ…じゃあな』

そのままゲイザーは闇に紛れ消えてしまった…。

 

 

「ゲイザー…私、必ずあなたを見つけてみせるから…待っていてね?」

 

これは幼きシェリーの記憶、本人が覚えていなくとも…それは記憶として彼に刻まれた…。



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スピード世界の入り口へ〜翠、アクセラレーション!〜

こんにちは!S.Kです!

お待たせしてすいません!!今回は翠のライセンス取得回となります!自分がバイク免許を持っていないのでガバガバなところもありますが…許してください!

それでは最新話をどうぞ!


「うん、似合ってるよ翠!」

 

「ありがとう遊海さん!今日から実技実習頑張りますよ〜!」

 

とある日、翠は遊海から送られた新品のライダースーツに身を包んでいた、色は紫色で露出こそ無いもののFateにでてくる魔眼のライダーに似せたデザインとなっている。

 

「じゃあ次はDホイールだな、外に停めてあるから見に行こう」

 

 

 

 

「これが私のDホイール…!」

 

「ああ、まさかここまで再現してくれるとは思わなかったよ…あの人には感謝しないとな」

そこにあったのは一言で言えばZEROセイバーの愛機、ホン○・VーMAX…のカスタムされた機体・モータードキュイラッシェ、ただし色は全体的にメタリックヴァイオレットに塗り替えられている。

 

 

「これで用意はできたな!さぁ教習所に出発だ!」

遊海は翠のDホイールを亜空間に仕舞い、二人乗りでシティの教習所へと向かった。

 

 

 

 

D・ホイール…それはデュエルモンスターズに新たなる革命をもたらした。

 

始まりは17年前に撮影された1本の動画だった…それは街中を目にも留まらぬ速さで駆け抜けながらバイクに乗りデュエルをする決闘者の姿…たった1分程のその動画は瞬く間に世界中に広がった、そしてKCを含めた各社がデュエル専用バイクの開発を始めた…しかし既存の燃料や技術では危険性などの問題もあり開発は難航した…

 

だが、そこに一つのブレイクスルーが起きる…永久機関・モーメントの登場である

 

ゼロ・リバースを経てKCにより完成されたモーメントは化石燃料を差し置き瞬く間に世界へと広がった、さらにKCに所属しているある女性プログラマーが自動車等のオートパイロット技術を完成させた…それにより全ての技術が進化を遂げ…ついにデュエル専用バイク『Dホイール』は完成したのである。

 

 

 

 

 

「よし、到着!」

遊海達はシティで一番大きなDホイールの教習所へと到着した、ここはKCと提携を結んでいてスパルタだがしっかりとした技術を教えてくれるのだ。

 

「まだ授業まで時間があるしコースの下見に行こうか?」

 

「はい!」

 

 

遊海達は階段を上がり教習所の屋上に出る、そこからは教習所のコースが一望できた。

 

レースコース並みの広さの周回トラック

 

たくさんのポールが設置されたスラロームコース

 

距離のある1本橋コースetc…

様々なコースが設置され、広大な面積を誇るこの教習所はDホイール専用の教習所なのである。

 

 

 

「翠、今のうちに伝えておくけど…教習っていっても結構危ないから気をつけてな?前世とはシステムがまったく違うから…」

 

「はい!講師の先生にも口酸っぱく言われてますから大丈夫です!」

 

前世のバイク教習とこの世界のDホイール教習はまったく違う、例えばバイク教習のスピードは大体時速30〜40キロで行われるが…Dホイールは100キロがデフォルトである、さらに違うのは前世とは違い卒業検定合格=ライセンス合格なのである…ただし、その卒検の合格率は10人に1人と中々に厳しいものになっている。

 

 

「…そろそろ時間だな、俺も観客席で見てるから安心していいからな」

 

「はい!いってきます!」

そうして俺は翠と別れ、併設されている観客席へと向かった。

 

 

 

 

 

「ん?遊星に龍亞と龍可じゃないか?どうしたんだ?」

 

「あっ!遊海!アキ姉ちゃんの応援に来てたんだ!」

 

「アキさんもライセンスを取る事になったの!」

観客席へと向かうとそこには遊星達が訪れていた、そういえばアニメでもそんな話があったような…

 

「遊海さんは…翠さんの付き添いですか?」

 

「ああ、まさか同じ日から実技が始まるとは…正直少し不安なんだけどな…」

 

「不安…?どうして?」

遊星は遊海に尋ねる

 

「翠は自転車しか乗った事がないんだ、だから不安なんだよ…」

 

「「「あ〜…(汗)」」」

遊海の呟きになんとなく納得する3人…

 

「でもでも!翠さんなら大丈夫だよ!頭もいいしスポーツも得意だし!」

 

「だといいんだけど…不安だな〜…」

 

 

「(遊海って本当に)」ヒソヒソ

 

「(翠さんの事が大好きなんだね…)」ヒソヒソ

 

「(なんだか新鮮な光景だな…)」ヒソヒソ

 

 

「…全部聞こえてるからなお前達…」

 

こうして翠とアキの実技訓練が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

side翠

 

 

「あら?アキさん!あなたもDホイールのライセンスを?」

 

「翠さん!?偶然ですね!私もそうなんです!」

実技の時間になった私はDホイールを押してコースに入る、そこには同じく赤いDホイールに座り赤いライダースーツを着たアキさんの姿があった…そういえばそんなアニメの回があったような…

 

「私、遊星と同じ世界を…風を感じたいと思って取りにきたんです!」

 

「私もなのよ!遊海さんと一緒に走れるように取りにきたの!一緒に頑張りましょう!」

 

「はい!頑張ります!」

 

 

 

『よぅし!俺がお前達の教官だ!WRGPの開催が決定した事でライセンス取得を目指す者が増えている!だがライティングデュエルはそんな甘いもんじゃない!』

竹刀を持ちジャージをきた無精髭の教官が実技前の説明をしてくれている…まるで昔の体育の先生みたい…

 

『WRGPは従来の大会と違い、オートパイロットが使えん!頼れるのは己の技術のみだ!この実技はDホイールの制御に力を入れていく!始めるぞ!!』

 

『「「はい!!」」』

 

そうして授業が始まった、基本的なマシンの動かし方からDホイールが倒れた時の起こし方、さらに高速でのスラローム走行…低速の細い橋渡りなどなど…それぞれに成功しながら授業は進みついに最後の項目に入る。

 

 

 

『次はライティングでもっとも重要な訓練!高速でのカーブ走行をしてもらう!最低速度は100キロ以上!カーブでかかる遠心力を攻略するんだ!!』

 

ライティング教習はついに一番の難関であるカーブ走行の訓練に入る、ライティングデュエルをしながらカーブを曲がるには中々に危険を伴うのだ。

 

 

 

「よっしゃ!オレが一番にパスしてやるぜ!!」

赤いメッシュの入った髪の青年が一番に挑戦する…しかし

 

「どわぁー!?」

スピードを上げすぎたのか曲がりきれず転倒して回転しながら緩衝材に衝突する…

 

『ばかもん!飛ばし過ぎだ!!』

 

 

「次は俺だ!アイツみたいにはいかないぞ!」

角刈りの青年がカーブに挑戦し無事に曲がりきったが…

 

『ダメだ!!スピード80キロしかでてないぞ!そんなではライティングデュエルに負けちまうぞ!』

スピードが足りずダメ出しを受ける。

 

「次は私よ!」

 

「頑張ってアキちゃん!」

アキはDホイールに乗りコースを走りだす!

 

「(これが本物のコースの加速…!速い!気持ちいい!!)」

初めて本気でDホイールを走らせるアキ…彼女はスピードの世界に酔っていた、それ故に…

 

「アキちゃん!危ない!」

 

「お、おい!そのスピードじゃ曲がれないぞ!?」

 

 

ギュイーン ガッシャーン!

 

「きゃ〜〜!!?」

 

遊星と翠の警告も虚しくアキはカーブを曲がりきれず緩衝材に激突しマンガのようにふっ飛ばされた…

 

 

「私の番ね…!いくわよ!」

翠の番になりコースを走りだす!

 

「(遊海さんに教えられた通りに…股を締めて重心を傾けて…!)」

劇中で「暴れ馬」と評されたキュイラッシェを翠は乗りこなす…だが

 

「あっ…!?きゃ!?」 ガシャーン!

スピードは充分だったものの重心を傾け過ぎてコースを滑るように転がってしまう…

 

「翠ー!?」

 

「あっちゃ〜…」

 

「翠さん…大丈夫かな…?」

 

…前途多難である。

 

 

『……』

 

 

 

数時間後…

 

 

「やった〜!曲がれた〜!!」

日が傾きかけた頃、翠はようやくキュイラッシェを完全に乗りこなした、10回程転んだが今はライティングの平均時速である200キロでコースを走り回っている。

 

 

「翠さん流石だわ…私だって…!」

翠に触発されたアキも再びカーブに挑戦する…しかし

 

 

「倒しすぎだ!」

「倒しすぎ…かな?」

 

「体で曲がるんだ!!」

「わかってるんだけど…!」

 

「気負いすぎだ!!!」

「気負いすぎなのよ〜!」

 

アキはこんな感じで50回ほど緩衝材にぶつかるかコケるかを繰り返している、他の生徒達はさっさと帰ってしまい残っているのはアキと翠、そして遊星達だけになっていた…そしてようやく…

 

「速度OK…侵入角度OK…そして…加速!」

 

苦節数時間…アキはようやくカーブを曲がりきった、彼女がライティングデュエルのスタートラインに立った瞬間である。

 

「やったあ!アキさんすごい!!」

 

「やったな!アキ!」

応援し続けていた遊星達も歓声をあげる

 

 

「アキちゃん!やったわね!おめでとう!」

 

「ありがとう翠さん!でもまだこれからです!頑張りましょう!」

 

こうして二人の決闘者はライティングデュエリストのスタートラインに立った、その後二人は順調に試験を突破しついに卒検デュエルを迎える…!

 

 

 

 

一週間後…

 

 

「ついにこの日が来たな翠!頑張れよ!」

 

「はい!1発で合格してみせます!」

遊海達はライセンス試験の為に教習所を訪れていた、そしてそこにはアキの応援をしようとチーム5D'sのメンバーが勢揃いしていた。

 

 

「遊星、クロウ、ジャック!お前達もアキの応援か?」

 

「ええ、今日はアキがライティングデュエルの世界に入る大事な日だからみんなで応援に来たんです!」

 

「オレ達、今日の為にアキ専用のDホイールを作ったんだ!絶対に合格するさ!」

 

「だが…相手は少し手強いぞ…!」

ジャックの見つめる先…そこでは何人目かの受験者がクラッシュし失格になっていた、試験官はセキュリティのバイクに乗った男…それは… 

 

『卒検を舐めるなよ!この試験は落とす為の試験だ!生半可な覚悟で試験を受けるな!』

 

「…試験官、牛尾さんなのか…確かに手強いな…!」

試験官はセキュリティ・デュエルチェイサーズの隊長である牛尾だった、WRGPの開催によりライセンス希望者が激増した…だが、Dホイーラーが増えればトラブルも増える、それを防ぐ為に高い実力()を持つ牛尾が試験官をしているのだ…!

 

 

『おう!白…岸波!翠も今日が試験日だったのか、運が悪かったな…手加減はしねぇからな?』

 

「大丈夫ですよ牛尾さん…翠は充分に強いですから!」

 

『へっ…楽しみにしてるぜ!…さて、まずは十六夜からだな!かかってこい!』

 

「ええ!いくわよ!牛尾さん!」

 

赤いライダースーツ、そして新しいDホイール「ブラッディー・キッス」に乗りながらアキが現れる、そして運命のデュエルが始まった!

 

 

「『ライティングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

 

 

〜デュエルダイジェスト アキ対牛尾〜

 

 

アキのライセンス取得を懸けたライティングデュエルが始まった、最初は牛尾からのラフプレーの洗練を受けたりスピードスペルの発動にスピードカウンターが必要な事を忘れたりとトラブル続きだったが持ち直し、牛尾の召喚した「ヘル・ツイン・コップ」を「スプレンディット・ローズ」で撃破した!

 

その時、嫉妬の炎がアキへと襲いかかる…!

 

 

 

 

「なんだよあの試験官!負けそうじゃねぇか…!」

 

「あの女め…!そろそろトドメをさしてやる!」

アキを嫉妬の目で見ているのは教習の時アキや翠と同じクラスだった赤いメッシュと角刈りと黒髪の青年3人組だった、彼らは教習前にアキに対して「女は部屋で人形遊びでもしてろ!」と馬鹿にしたものの試験に合格できなかった…それをアキのせいだと逆恨みし逆襲の機会を狙っていたのだ…。

 

「痛い目見やがれ!」 カチッ

 

 

バチバチバチ…バーン! ガラガラガラン!!

 

 

牛尾がコース脇の鉄パイプ置き場を通り過ぎた瞬間、鉄パイプ置き場の支柱が爆発し鉄パイプの雪崩が後方を走っていたアキへと襲いかかる!

 

 

「「「アキ!!」」」

 

「「アキさん!!」」

その瞬間を目撃した5D'sメンバー達が悲鳴をあげる!

 

『っ!何かトラブルか!?だが決まりだ、転倒したら失格だぞ!!』

牛尾は後ろを確認し叫ぶ!

 

「(私は知りたいの…!だからこんなところで止まれない!!)ハァァァ!!!」

次々と襲いかかる無数の鉄パイプ、アキはそれをスラロームの動きや遊星直伝のターンバックを使い回避した!

 

 

「アキ姉ちゃんすごい!!」

 

「特訓が役に立ったな!」

 

「アキ!お前はもう一人前のDホイーラーだぜ!」

その様子を見ていた遊星達も歓喜の声をあげる!

 

 

『まさかあの障害を躱すとはな…!やるじゃねぇか!』

鉄パイプの山を抜け追いついて来たアキに牛尾も驚愕する!

 

「私も…風になってみせる!『スプレンディットローズ』の効果を発動!このカードが攻撃したバトルフェイズに効果発動!墓地の植物族を除外する事で攻撃力を半分にしてもう一度攻撃できる!牛尾さんにダイレクトアタック!エアリアル・ツイスト!!」

薔薇の戦士が高速回転し牛尾に直撃、そのライフを削りきった!

 

牛尾LP0

 

アキWIN!

 

 

sideout

 

 

 

『十六夜 アキ!見事なライティングデュエルだった!合格だ!』

 

「ありがとう!」

Dホイールから降りた牛尾はアキへと合格を告げた!

 

「アキ…やったな!」

 

「「やった〜!アキさんすごい!」」

 

「よくやったぜ!」

遊星やクロウ達も歓声をあげコースへと入っていく、その一方で…

 

 

 

「な、なんでメタルナイトがこんなところにいるんだよぉ〜…」

 

「聞いてねぇよ…」

 

「俺は悪のあるところに現れる!もう一度出直して来い!罰ゲーム!『マインド・クラッシュ』『モザイク幻想』『奈落の闇』!!」ズキューン!

 

「「「うわぁぁぁ!!?」」」

 

 

「…えげつない仕置きだなメタルナイト…(遊海だけは絶対に怒らせてダメだな…)」

 

アキを害そうとした青年3人組に罰ゲームを叩き込む遊海なのであった…。

 

 

 

 

 

 

「アキちゃん!おめでとう!」

 

「ありがとうございます!翠さん!これで私もDホイーラーの仲間入りです!」

翠がデュエルを終えたアキを祝福する、アキはついにライティングデュエルの世界に足を踏み入れたのだ。

 

「次は翠さんの番ですよ!頑張ってください!」

 

「ええ!絶対に合格してみせるわ!」

翠は気合いをいれる…遊海と同じスピードの世界へ辿り着いてみせると…!

 

 

『よし…障害物の撤去は終わったな!最後の受験者だ!岸波 翠!ライティングデュエルを始める!…手加減はしないからな!』

 

「はい!よろしくお願いします牛尾さん!」

鉄パイプの撤去が終わり、翠と牛尾はスタート地点に並び立つ!

 

「翠ー!頑張れよー!!応援してるからなー!」

 

「はい!遊海さん!私…頑張ります!!」

 

 

ピ…ピ…ピ…ポーン!

 

 

「『ライティングデュエル!アクセラレーション!!』」

スタートの合図が鳴り響きDホイールが走り出す!

 

 

「先攻は貰いますよ!」

 

『させねぇぜ!オラァ!』

牛尾が翠のDホイールに体当たりする!

 

「くぅ…!負けません!ウィンダ!」

 

《OK!翠に「風の加護」を!!》

半実体化したウィンダが翠のDホイールに魔法をかける…緑色の光を纏ったDホイールが速度を上げる!

 

「必殺!『ウィンド・ブースター』!!」

ウィンダの魔法により空気抵抗の無くなった翠がコーナーを先に通過し先攻を取った!

 

 

 

 

 

 

 

 

翠LP4000 SP0

牛尾LP4000 SP0

 

特殊ルール ライティングデュエル

スピードワールド2常時発動

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」 SP0→1

「モンスターをセット!カードを2枚伏せてターンエンドです!」

 

翠LP4000 SP1

セットモンスター 伏せ2 手札3

 

 

『はっ!消極的じゃねぇか!そんなんじゃオレには勝てないぞ!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP1→2

『来い!「ヘルウェイ・パトロール」!』

地獄の白バイ悪魔が現れる ATK1600

 

『バトルだ!「ヘルウェイパトロール」でセットモンスターを攻撃!ヘル・チェイス!』

悪魔の白バイが翠のセットモンスターを破壊しようとするがバリアで攻撃が弾かれる!

 

「私のセットモンスターは『アロマポット』!リバースしたこのモンスターは戦闘では破壊されません!」

4本のロウソクの付いた香炉が現れる DEF400

 

『破壊耐性か…!オレはカードを1枚伏せてターンエンドだ!』

 

「エンドフェイズに『アロマポット』の効果発動!リバースしたこのカードがフィールドに存在する時に私はお互いのエンドフェイズに500ライフを回復します!さらにリバース罠、永続罠『乾きの風』を発動!自分のライフが回復した時!相手の表側表示のモンスターを破壊します!『ヘルウェイパトロール』を破壊!」

 

『なんだと!?』

カラカラに乾燥した突風が白バイの悪魔に直撃し破壊された!

 

翠LP4000→4500

 

牛尾LP4000 SP2

伏せ1 手札4

 

 

 

「私のターン!ドロー!」 SP2→3

「『アロマージ─ジャスミン』を守備表示で召喚!」

小柄な白い髪の少女が現れる DEF2000

 

「そして私は罠カード『三位一択』を発動します!効果で私はエクストラデッキの融合モンスターを選択して効果を発動!私のエクストラデッキの融合モンスターは10体です!牛尾さんのエクストラデッキの融合モンスターが11枚以下なら私はライフポイントを3000回復します!」

 

『これ以上回復させるかよ!カウンター罠「ギャクタン」!罠カードの発動を無効にしてデッキに戻す!』

発動された三位一択がデッキに戻る!

 

「でもこっちが本命です!『Sp-レッド・ポーション』を発動!スピードカウンターが3つ以上ある時、ライフを500回復します!」

赤い魔法薬の効果で翠のライフが回復する、このカードは既存のカードをSp-にリメイクした1枚である。

 

翠LP4500→5000

 

「そして私のライフが回復した事で『ジャスミン』の効果が発動!デッキからカードを1枚ドローします!さらに私のライフが相手より多い時に私は『ジャスミン』の効果で植物族モンスター1体を追加で召喚できる!私は『アロマージ─カナンガ』を召喚!」

若草色の髪の女性が現れる ATK1400

 

「バトル!『カナンガ』で牛尾さんにダイレクトアタック!」

カナンガの杖から突風が放たれ牛尾に直撃する!

 

『チイ!やるじゃねぇか!』

牛尾LP4000→2600

 

 

「私はカードを伏せてターンエンド!『アロマポット』の効果で500回復よ!」

翠LP5000→5500 SP3

ジャスミン カナンガ ポット 乾きの風 伏せ1 手札1

 

 

 

「翠さんすごい!牛尾さん相手に先制したわ!」

 

「あれが翠の実力か!すげぇな…!」

デュエルを観戦していた龍可とクロウが翠の実力を見て驚く

 

「やるな翠…!ライティングもタクティクスも問題ない、あとは油断しなければ大丈夫だ…!」

変身を解いた遊海も心配そうに様子を伺う

 

『…』

 

 

 

 

『チッ…ダメージは喰らったがこれからだ!オレのターン!ドロー!』SP3→4

『墓地の「ヘルウェイパトロール」の効果を発動!自身を除外して手札から2体目の「ヘルウェイパトロール」を特殊召喚!』

再び白バイの悪魔が現れる ATK1600→1100

 

『攻撃力が下がっただと!?』

 

「『カナンガ』のモンスター効果です!自分のライフが相手より多い時!相手モンスターの攻守は500ダウンします!そしてリバース罠発動!永続罠『潤いの風』!私のライフを1000払ってデッキから『アロマセラフィ─アンゼリカ』を手札に加えます!」

優しい風が翠の手札にモンスターを導く

 

翠LP5500→4500

 

 

『厄介な効果だが…圧倒的な攻撃力なら関係ねぇ!オレは手札の「手錠龍」2体と「アサルトガンドック」を墓地に送る!そして出やがれ!「モンタージュ・ドラゴン」!』

牛尾の場に仮面を着けた青い三頭龍が現れる ATK?

 

『「モンタージュドラゴン」の攻撃力は墓地に送ったモンスターのレベルの合計✕300アップする!レベルの合計は14!攻撃力は4200だ!』

モンタージュドラゴンが巨大化する! ATK?→4200→3700

 

『バトルだ!「モンタージュドラゴン」で「カナンガ」を攻撃!パワー・コラージュ!』

三頭龍のブレスでカナンガが吹き飛ばされる、そして攻撃の爆煙に翠が飲み込まれる!

 

「くぅ…!」

翠LP4500→2200

 

「翠!」

 

「ライフが大きく削られたぞ!」

観戦していた遊海と遊星が声をあげる!

 

「まだです!!」

煙の中から翠が飛び出す!

 

「私のライフが相手のライフよりも少なくなった事で『潤いの風』のもう一つの効果発動!私のライフを500回復します!」

優しい風が翠のライフを回復する

 

翠LP2200→2700

 

「私のライフが回復した事で『ジャスミン』と『渇きの風』の効果発動!デッキからカードを1枚ドロー!さらに『モンタージュドラゴン』を破壊します!」

三頭龍が破壊される!

 

『くっ…!?リカバリーも万全かよ!?オレはこれでターンエンド!』

 

「私は『アロマポット』の効果で回復します!」

 

翠LP2700→3200

 

牛尾LP2600

ヘルウェイパトロール 手札0

 

 

 

「私のターン…ドロー!!」

「私だって…遊海さんの力になってみせる!私は『アロマージ─ローズマリー』を召喚!」

青髪のアロマセラピストが現れる ATK1800

 

「そして私は永続罠『潤いの風』の効果発動!ライフを1000払ってデッキから『アロマージ─ベルガモット』を手札に加えます!」

翠LP2700→1700

 

「そして『潤いの風』の効果発動!500ライフ回復します!さらに『ジャスミン』の効果で1ドロー!『渇きの風』の効果で『ヘルウェイパトロール』を破壊!」

翠のライフが回復し、突風が白バイの悪魔を破壊する!

 

翠LP1700→2200

 

「さらに手札の『アロマセラフィ─アンゼリカ』の効果発動!自身を墓地に送る事で墓地の『カナンガ』の攻撃力分…1400ライフ回復します!」

花園に住む妖精が翠のライフを回復する 

翠LP2200→3600

 

『ライフがどんどん回復しやがる…!なんてプレイングだよ!?』

 

「お待たせしました…これで終わりです!墓地の『アンゼリカ』の効果発動!私のライフが相手より多く、自分フィールドにアロマモンスターがいる時!墓地から自身を特殊召喚します!」

小さな妖精が現れる DEF0

 

「私はレベル4の『ローズマリー』にレベル1の『アンゼリカ』をチューニング!」

 

4+1=5

 

「風薫る花園から現れて!シンクロ召喚!『アロマセラフィ─ローズマリー』!」

妖精の加護を受けた青のセラピストが現れる ATK2000→2500

 

「『ローズマリー』の効果でライフが相手より多い時私の植物族モンスターの攻守は500アップします!さらに『ジャスミン』をリリースして『アロマージ─ベルガモット』をアドバンス召喚!」

赤い髪のセラピストが現れる ATK2400→2900

 

「バトル!『ベルガモット』と『ローズマリー』でダイレクトアタック!ツインセラピー・マジック!!」

心地良い香りを含んだ風の魔術が牛尾に直撃した!

 

牛尾LP0

 

翠WIN!

 

 

 

『っあ〜!2連敗かよ!岸波 翠!ライセンス合格だ!!』

Dホイールを降りた牛尾が頭を掻きながら翠に合格を伝える…少し悔しそうである。

 

「ありがとうございました!」

 

「翠〜!よくやった!」

 

「遊海さん!ありがとうございます!私頑張れました!」

卒検を終えた翠に遊海が駆け寄る…その顔はここしばらくで一番の笑顔だった

 

「遊海さん!早速ツーリングにいきませんか?」

 

「ああ!そうしよう!…遊星!夜は家に来い!アキと翠の合格祝いをやろう!」

 

「遊海さん…!ありがとうございます!」

 

「やった〜!パーティーだ!」

 

こうして新たに2人のDホイーラーが誕生したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

《(気のせいかもしれませんが…誰かが私達の事を見ていたような…?まぁ、マスター達の喜びに水を差したくありませんし…仕掛けて来ないようなので黙っていましょうか…)》

アヤカはここ数日、誰かからの視線を感じていた…それは以前のシェリーのような何かを求める視線というよりも「見ているだけの視線」だった、急ぎの問題ではないだろうとアヤカも喜びの輪に入っていった…。

 

『ミドリ…お前は…どうか…そのままで…』



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登場!謎のメカニック〜暗躍する道化〜

ザザーン…ザザーン…

ここはとある海上…その海面を一人の男が()()()()()

『見つけた、こんなところに沈んでいたか…』

男はある場所で歩みを止める、その足元には一台のDホイールが沈んでいた…

『ハアッ…!』
男が海面に手を翳すとみるみるうちに水が引き、直径10メートル程の穴が空いた

『…すまない友よ、オレのする事を許してくれ…未来を変える為に…』
男はDホイールを起動し何かの設定を変更する

『…これでいい…あとは時を待てば…っぐ…!?』
作業を終えた男は胸を抑え膝をつく…その顔は苦痛に歪み、目からは血の涙が流れ落ちる
【全てを闇に…人の心を闇へと落せ…これは自然の摂理だ…我に身を委ねよ…】
『…まだだ…オレは……未来を…変える…!』

息を整えた男は異空間へと消えていった…そして水が戻り、全ては海底へと沈んだ…


翠とアキのライセンス取得から月日が流れ…WRGPまで残り半年となった、ネオドミノシティには概ね平和な時が流れていた。

…まぁ、ジャックと一緒にDホイール窃盗団を壊滅させたり、三皇帝のルチアーノが龍亞と龍可にデュエルを仕掛けて返り討ちにあったなんて事もあったが大きな事件は無く平和だった…そして事態は動きだす…。

 

 

 

 

 

「遊海さ〜ん!コーヒーが入りましたよ〜」

 

「ん…ありがとう翠」

 

とある日の午後、遊海と翠は2人でのんびりとティータイムを楽しんでいた、遊海扮するメタルナイトの存在により治安の悪化していたネオドミノシティの犯罪率は激減…またWRGPの開催が近い事もありセキュリティの警備も強まりメタルナイトとしての出番も少ないのだ。

 

 

「ここしばらくは平和でよかったですね〜イリアステルの動きもほとんどないみたいですし…」

 

「ああ…このまま平和な日々が続けばいいんだけど…」

 

ピリリ…ピリリ…

 

「…そうはいかないみたいだな…はい!岸波です!」

 

『遊海!クロウだ!ちょっと面倒くさい事になっちまった…ちょっとガレージまで来てくれないか?』

電話の相手はクロウだった、なんだか困っているようだ…

 

「ああ、わかった、すぐにいくよ!……ほらな…?」 

 

「遊海さん…頑張って!」

 

「ああ!ちょっと行ってくる!」

俺はコーヒーを飲み干し遊星達のガレージへと向かった…。

 

 

 

 

 

 

「おう!遊星!何があったん……え〜と…(そういう事か…)」

ガレージに入った遊海は一瞬言葉を失った、ガレージの中はいつもより散らかっており…パソコンの前で遊星と青い髪の青年が楽しそうに話し込んでいたからだ…。

 

 

「おっ…遊海!わざわざ来てもらってすまねぇな」

 

「ああクロウ…これはどういう状況だ?」

 

「ああ…実は…」

 

遊星と話しているのはセキュリティに保護された身元不明の青年・仮称「ブルーノ」…WRGPの開催が近づきネオドミノシティの宿泊施設は満室…その為、牛尾と狭霧の2人から彼の一時保護を頼まれたらしい。

 

 

「最初は引き取るつもりはなかったんだけどよぉ…アイツ、遊星に匹敵するメカニックだったんだ…遊星の奴、水を得た魚みたいに生き生きしててな…この2日間でオレやジャックと今までの会話以上の会話してるんだぜ?」

 

「まぁ…遊星は元々無口だからなぁ…それで俺を呼んだのはなんでだ?」

 

「それがな、ブルーノの奴は『記憶喪失』らしいんだ…それで前にミスティの弟の記憶喪失を治したアンタならどうにかなるかと思ってよ!」

 

「なるほど…そういう事か、ならやってみるよ」

俺は話し込んでいる遊星とブルーノのもとへと向かう

 

 

「よっ、遊星!なんだか楽しそうだな?」

 

「ここの調整はこうで……」

 

『いいね!それじゃあブーストのタイミングは……』

 

「(ガン無視かい!)…しょうがない」

遊星とブルーノは話し込んでしまい遊海の来た事に気づいていない…それに呆れた遊海は…

 

「メガロック、頼む」

 

《うむ…遊海が来たのだから挨拶ぐらいせんか馬鹿者!拳骨岩!》

 

 

ゴチーン!!

 

 

「『あいたぁ!?/ぐはっ!?』」

メガロックを呼び出して拳大の石を2人の頭上に召喚、容赦なく叩き落とした…2人は頭を抑え悶絶している。

 

 

「遊星、マシンの調整に精を出すのもいいが…挨拶はキチンとしろ!…昔から言っているだろう?」

 

「ゆ、遊海さん…!?いつからここに…」

 

『アイタタ…遊星…この人は…?』

 

「俺は白波 遊海、クロウから記憶喪失のお前の治療を頼まれたんだよ、お前がブルーノか?」

 

『は、はい!僕がブルーノです!!すいません!夢中になっちゃって…』

青髪の青年・ブルーノが謝罪する…どうやら俺の事は知らないみたいだな…

 

「そうか…!遊海さんの力ならブルーノの記憶を…!」

 

「そういう事だ遊星…楽しんでる所悪いけど早速やってみようか?」

 

『は、はい!お願いします…!』

 

 

 

 

「(さて…どうしたもんかな…)」

俺の正面にはブルーノが少し落ち着きなく座っている…。

 

ブルーノ…その正体はパーティーに現れた「謎のDホイーラー」であり…その真の正体はイリアステル滅四星の1人、未来人の記憶を持ったアンドロイド『戦律のアンチノミー』である。

Z-ONEは三皇帝をアーククレイドルをこの世界へ呼び出す「サーキット」を出現させる為にこの時代へと派遣した…それと共に未来の英雄である不動 遊星を成長させ「クリアマインド」「アクセルシンクロ」を習得させる為に送り込まれたのがアンチノミーだった。

アニメではアンチノミーの記憶を消し「謎のDホイーラー」として遊星に接触させ「アクセルシンクロ」の存在を遊星へと伝えた…本来ならその立ち位置のまま遊星の味方であり続けただろう…しかしここで一つの誤算が起きる…アンチノミーとプラシドによる同士討ちである。

 

アンチノミーの記憶を消されていたプラシドはアンチノミーを危険視してライティングデュエルを挑む…その最中アンチノミーは飛び出した猫を避ける為にコースアウトし海へと落下…完全に記憶を失った『二重記憶喪失』状態になってしまうのである。

 

 

「(そもそもロボットにカードの力が効くのかどうか…とりあえずやってみるか…)ブルーノ、気を楽にしていてくれ、すぐに終わる…はず」

 

『お、お願いします…!』

ブルーノは頭を下げる、そして…

 

「…忘れられし記憶よ…今こそ蘇れ!『思い出のブランコ』発動!」

遊海はブルーノの頭に手をかざす…そして暖かい光がブルーノを包みこんだ…

 

 

「…どうなのだブルーノ、何か思い出したか?」

 

『…えっと…何も…』

 

「「「なんだって!?/なんだと!?」」」

 

「(やっぱり無理か…)」

 

ブルーノの記憶は戻らなかったようだ…それを聞いた遊星達は唖然としている…

 

「まぁしょうがない!俺だって全能の神様じゃないからな、どうにもならない事だってあるさ…ごめんなブルーノ」

 

『いいんだよ遊海、記憶が無くったって僕はここにいる…それに遊星達に出会う事ができた、それで今はいいじゃないか!』

 

「ブルーノ…お前は…すごい奴だな」

 

「フッ…能天気な奴だ」

 

記憶は戻らずともブルーノは明るくそう語った、遊星達は少し呆れながらも喜んでいるようだ。

 

『さぁ!遊星、Dホイールのプログラムを仕上げよう!あれが完成すればDホイールの性能は格段にアップするはずだよ!』

 

「ああ!頼むぞブルーノ!」

遊星とブルーノはパソコンの前に戻り作業を再開する

 

 

「はぁ…熱中するのはいいけどデータのバックアップくらいは取っておけよ?誰かがコーヒーでも溢したら大変だからな!」

 

「あっ!?そうか、バックアップを取るのを忘れていた…!!ありがとうございます遊海さん!」

 

「まったく…少しは休むんだぞ遊星、ブルーノ…じゃあな!」

遊星達に少し助言をして俺は家へと戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

sideブルーノ

 

『ねぇ、遊星…さっきの遊海って人はいったいどういう人なんだい?遊星達とだいぶ親しいみたいだけど…』

プログラムの調整を続けて数時間…データのバックアップを取った僕達は少し休息をとっていた、そして僕は記憶喪失を治そうとしてくれた人物の事を尋ねる

 

「ブルーノ、これはあまり人に言わないでほしい事なんだが…あの人はネオドミノシティ最強のヒーローでありデュエリスト『メタルナイト』なんだ」

 

『メタルナイトだって…!?セキュリティに保護されている時に聞いたよ!この街の平和を守る正義のヒーロー…!それが彼なのかい!?』

遊星の言葉を聞いた僕は驚いた、僕が治安維持局に保護されていた時に連行された犯罪者…その6割はメタルナイトが逮捕した人達だったからだ。

 

「それだけじゃない…あの人はオレやジャック達と同じ赤き竜に選ばれたシグナーでもあり、その本当の姿は行方不明となった『2代目決闘王』…それがあの人なんだ!」

 

『「2代目決闘王」…!?そんなすごい人だったんだ……ん?』チクリ

 

嬉しそうに遊海の事を話す遊星…その姿を見ていたブルーノは胸が少し痛かった、その理由は自分でもわからなかった。

 

「ん?どうしたんだブルーノ?」

 

『いや…なんでもないよ遊星!さぁラストスパートといこう!このプログラムが完成したら奇跡のプログラ厶になるよ!』

 

「ああ!ラストスパートだ!」

 

 

『(…なんだろう、この胸のざわつきは…僕は彼の事を知っているんだろうか…?)』

 

 

sideout

 

 

 

 

数日後…

 

 

 

「よし…もう大丈夫だからな、しっかり掴まってろよ!」

 

「うん、メタルナイト…!」

 

遊海はとある火事現場にて救助作業をしていた…そして今、取り残された少年を助け出そうとしている…!

 

「せいやっ!」

 

ガシャーン!

 

炎に包まれたマンションの一室から少年を抱き上げ外へと飛び出す…そして10メートルほどの高さから無事に着地した!

 

「うん、脱出成功!頑張ったな少年!」

 

「ありがとう…メタルナイト!」

 

「お疲れ様ですメタルナイト!子供はお預かりします!」

駆けつけた消防隊員が少年を家族へと引き渡す、母親らしき人物が少年を抱きしめていた。

 

「よかった…さて、もうひと仕事だな…モード・トリシューラ部分展開…絶対零度(スモールVer)!」

遊海は右腕のみをトリシューラの影霊衣に換装、全てを凍らせる息吹で火事を鎮火し事件を解決したのだった。

 

 

 

 

 

「ふ〜…治安は良くなってきたけど…火事や事故はどうにもならないな…」 

 

《しかたがないですよマスター、いくら気を付けていても事故を100%無くす事は不可能ですから…》

 

火事を解決した遊海は高速を駆け抜ける、先程の火事は隣の住人のタバコの不始末が原因だった…いくら科学技術が進歩しようとも不慮の事故を無くす事は不可能である。

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

「む?誰からだ?」

Dホイールの着信音が鳴り響く、そしてモニターに困った様子の遊星が映し出される…

 

『メタルナイト!すまない…手を貸してくれ!』

 

「何があったんだ?」

 

『新しい制御システ厶のデータが…盗まれてしまったんだ!』

 

「なんだと!?」

 

 

遊星曰く、数日の徹夜の末にDホイールの性能を格段にアップさせるプログラムが完成したらしい、その後既に夜遅くだった為にDホイールへのインストールは翌朝に回しブルーノと共に仮眠をとった翌朝…遊星達のガレージに何者かが侵入…元データを消した上でデータを盗まれたとの事だ。

 

『幸いバックアップデータはオレが持っていたんだが…オレ達のデータを悪用されたら困る、それで犯人の指紋を見つけてセキュリティのデータベースで調べたら…』

 

『犯人はあのピエロ野郎…イェーガーだったんだ!それでオレ達は今、奴を追跡してる最中なんだ!』

通信にクロウが割り込む

 

『奴は今シティの工業地帯に向かってる…!奴を追い詰める為に力を貸してくれ!メタルナイト!』

 

「わかった!俺もすぐそっちに向かう!現場で合流しよう!」    

俺は遊星から送られた座標へと道を急いだ…。

 

 

 

 

 

「遊星!ブルーノ!」

 

「遊海さん、すまない…貴方に注意を受けていたのに…!」

 

「しょうがないさ遊星、こういう事故は防ぎようがない…これから取り返せばいいさ…イェーガーは中か?」

遊海は遊星とブルーノに合流する、ジャック達はまだ時間がかかるようだ…

 

「あぁ、アイツは現場を抑えなくては口を割らないでしょう…追いかけます…!」

 

「…わかった、俺は裏から回ろう、奴を挟みうちにするんだ…!」

こうして遊星とブルーノは表から、俺は裏口から謎の工場へと侵入した。

 

 

 

 

 

 

「…ここがディアブロの生産工場か…イリアステルめ、いつの間にこんな工場を…!」  

遊海は裏口を解錠(物理)し工場へと侵入する、最初に目にしたのは無数のDホイールとそれに乗るデュエルロイド・ディアブロ達だった。

 

「(被害はなるべく抑えたいな…)アヤカ、ディアブロにウィルスを仕掛けられるか?」

 

《おまかせくださいマスター!どんなウィルスにします?》

 

「ディアブロのコントロールを奪える奴を仕込んでおいてくれ、《奴ら》に気づかれないように」

 

《了解しました!》

アヤカはすぐさま近くの端末からシステムにハッキング…ウィルスの仕込みを終わらせた。

 

「ここにあるディアブロが全部ではないだろうけど…コントロールを奪って同士討ちさせれば被害も抑えられるだろ…先を急ごう…!」

遊海は先を急ぐ、数か所の区画を抜けついにメインコンピュータールームの間近まで迫った…。

 

 

《メインコンピュータルームに生命反応無し、ただしアンドロイドの反応確認…識別コード・プラシドです》

 

「ありがとうアヤカ、さて…突入と…(ガシャン)…ガシャン?」

遊海が音を聞き振り返るとシャッターが閉じ、退路が絶たれていた!

 

「流石に気づかれるよな、そりゃ…さて力づくでも出れるけど、そういう訳にはいかなさそうだ…!」

 

ウィーン…ガガガ…ガシャン

 

遊海の目の前の床が割れる…そして巨大なロボットが現れた!

 

[データ認識…メタルナイト・白波 遊海を確認]

 

「…2体目のガードロボットか」

 

[この区画はロックされた、ワタシとのデュエルに勝利しなければロックは解除されない]

 

「上等だ、かかってこいよ!」

巨大なガードロボを目の前に遊海は不敵な笑みを浮かべた…。

 

 

 

 

sideプラシド

 

 

『フン…あのドングリピエロめ…むざむざつけられやがって…!』

 

プラシドは苛ついていた、不動遊星から高性能のプログラムをイェーガーに盗ませたもののあっさりと犯行がバレてこの工場にまで辿りつかせてしまったからだ。

 

『とにかくデータをインストールする為に時間を稼がなければ…そうだ、このガードロボに不動遊星のデュエル履歴をインプット…これで時間は稼げるはずだ』

プラシドはコンソールをいじりガードロボットを遊星の前に出現させた、それと共に違うルートから迫る遊海にも気がつく

 

『チッ…奴までここに…!あのドングリピエロめ…!本当ならオレが奴を…だがこちらが優先だ…!ガードロボに奴の履歴をインプット…これでいい…!』

プラシドは2体目のガードロボを出現させる…

 

 

『よし…後はこのデータをインストールすれば…またか!』

プラシドは違う防犯カメラに目を向ける…そこでは青髪の青年が閉ざされたドアを開こうとしていた…

 

『ええい!邪魔が入り過ぎだ!!』

プラシドは青年を処理する為に扉へと向かった…

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「[デュエル!!]」

 

 

遊海LP4000

ガードロボLP4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「(あのロボットにはおそらく俺のデュエルデータがインプットされてるはず…ならば使()()()()()()()()()()()使()()()()()())」

 

[白波遊海が1ターン目にシンクロ召喚をする確率60%…]

遊海の予想通り、ガードロボには遊海のプロ時代の試合やメタルナイトとなってからのデュエル全てのデータがインプットされていた。

 

「俺は()()()()5()()()()()ターンエンド!」

 

遊海LP4000

伏せ5 手札1

 

 

[手札を5枚全て伏せる確率0%…予測演算を修正…] 

 

「残念だけど俺のデュエルはお前には予測できないぜ!」

 

 

 

[ワタシのターン、ドロー]

[永続魔法「レベル制限B地区」を発動、カードを3枚伏せてターンエン「その瞬間!リバース魔法発動!『アーティファクト・ムーブメント』を発動!俺の伏せカードを1枚破壊しデッキから『アーティファクト・モラルタ』を魔法・罠ゾーンにセットする!」デッキからモンスターをセット??理解不能!理解不能!]

遊海の伏せカードが破壊されカードが新たにセットされる

 

「そして破壊された『アーティファクト・ベガルタ』の効果発動!このカードが相手ターンに魔法・罠ゾーンで破壊された時!自身をフィールドに特殊召喚する!」

赤いコアを持つ短剣と赤い人影が現れる DEF2100

 

「特殊召喚された『ベガルタ』の効果発動!俺の伏せカードを2枚破壊する!さらに破壊された『モラルタ』と『カドケウス』の効果!自身を特殊召喚!」

青いコアの長剣と黄色のコアの杖が現れる DEF1400  DEF2400

 

「『カドケウス』の効果発動!2ドロー!さらに『モラルタ』の効果!お前の『レベル制限B地区』を破壊する!憤怒の波濤!」

モラルタから放たれた三本の斬撃がカードを破壊する!

 

「俺はさらにリバースカード『サイクロン』を発動!伏せカードを破壊する!」 

伏せられていた『攻撃の無力化』が破壊される!

 

[ターンエンド]

ガードロボットLP4000

伏せ2 手札2

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『ベガルタ』と『モラルタ』を攻撃表示に変更!」

DEF2100→ATK1400 DEF1400→ATK2100

 

「バトル!『ベガルタ』と『モラルタ』でダイレクトアタック!…双剣乱舞!」

なぜか俺の手に収まったベガルタとモラルタでガードロボを切り裂く!

 

ガードロボLP4000→2600→500

 

「さらに速攻魔法『アーティファクトの開放』を発動!『ベガルタ』と『モラルタ』でオーバーレイ!」

2振りの剣が銀河に飛び込む!

 

『2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!現われろ!古代の叡智を宿す不毀の剣!ランク5!「アーティファクト・デュランダル」!』

赤と青のラインの入った巨大な剣が現れる ATK2400

 

[計算不能…計算不能…未知の召喚を確認確認確認…]

 

「バトル!『デュランダル』でガードロボにダイレクトアタック!不毀の極剣!!」

デュランダルに取り付けられたコアが高速回転し凄まじい魔力が充填…遊海はデュランダルでオーバーヒートを起こしていたガードロボを真っ二つに切り裂いた!

 

ガードロボLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

「だから言っただろ?予測なんてできないって」

完全に破損したガードロボを前に遊海はつぶやくのだった。

 

『おい!遊海!聞こえるか!!』

 

「その声はジャックか!イェーガーは見つかったか!」

近くにあった放送設備からジャックの声が響く…どうやらメインルームに辿り着いたらしい

 

「イェーガーの奴は遊星と一緒にいるがマズイ状況だ!遊星もお前と同型のガードロボットとデュエルしているうえに…この工場はあと5分で爆発する!」

 

「なんだと!?…わかった!俺は遊星を助けに行く!ジャック達はそのまま脱出してくれ!」

 

『っ…わかった!遊星を頼むぞ!!』プツン

そのまま通信は途切れてしまった

 

「時間がないな…メガロック!頼む!」

 

《わかった!しっかり掴まっていろ遊海!!》

遊海はメガロックを召喚し怒涛の突進で壁を突き破っていく…そして何枚目かの壁を壊した時、ついに遊星のもとに到達した!

 

 

 

「『スターダストドラゴン』で『錠前龍』を攻撃!シューティング・ソニック!!」

 

遊星WIN!

 

 

「遊星!無事か!!」

 

「遊海さん…!どうして!?」

デュエル終了と共に遊海は遊星達のいる場所へと到達した…だが

 

【自爆まで残り20、19、18…】

 

「ヒィ〜!?これじゃあ脱出できない〜!?」

カウントは残り20秒弱…間に合わない!

 

「遊星!イェーガー!絶対に俺から離れるな!頼むぞ!閃光竜!!」

 

【3、2、1…0】

 

ドカーン!!

 

そして大爆発が工場を跡形もなく吹き飛ばした…

 

 

 

 

 

 

大爆発を起こした工場…なんとか逃げ出したジャック、クロウ、ブルーノはその様子を見ている事しかできなかった…

 

『遊星!!』

 

「心配すんなブルーノ、あそこには遊星だけじゃねぇ…最強のヒーローがいるんだ!そんな簡単にくたばるかよ…ほら!」

爆破現場に向かって叫ぶブルーノ…しかしジャックもクロウも目を逸す事なく煙を見つめていたが…

 

ブォン…《キュオオン!!》

煙を吹き飛ばしながら光かがやく竜が大空へと飛翔する、その背中には遊海と遊星が乗り…腕にはイェーガーが掴まっていた…。

 

「やはり無事だったか、流石だなあの人は…」

 

『あれは…スターダストドラゴン!?』

 

「いんや、あれは遊海の『閃光竜スターダスト』さ…遊海はカードの精霊の力を使う事ができるんだ!さぁ、迎えに行こうぜ!」

クロウ達は閃光竜の着地地点へと急いだ…

 

 

 

 

 

 

「ギリギリセーフだな!いや〜危なかった…」

 

「流石です遊海さん、なんだかまだ余裕そうですね…」

着地した遊海に遊星が話しかける

 

「まだこれくらいなら大丈夫だよ!俺を倒したかったら…闇の決闘者を1000人くらい連れて来なきゃだめだな!」

 

「……(前から思っていたが…遊海さんはいったいどんな戦いを生き抜いて来たんだろうか…)」

少し常識が壊れつつある遊海に対して少し引いてしまう遊星なのであった…。

 

「遊海さん…そういえばイェーガーは?」

 

「イェーガーなら閃光竜の手に…いないし!?」

閃光竜の手には脱ぎ捨てられたジャケットが掛かっていた…変わり身の術で抜け出したようだ…。

 

 

「助かりました白波遊海…しかし私はこのままおいとまさせていただきます!」

上空を見上げるとピエロ風船に掴まったイェーガーが飛び立つところだった

 

「忠告だけはしますよ不動遊星!この件からは手を引くのです!命がいくつあっても足りなくなりますからね!それでは〜!」

イェーガーはそのままシティの方向へと飛んでいった…。

 

「逃げられたな…どうする?追いかけるか?」

 

「いえ…大丈夫です遊海さん、ありがとうございました」

 

「まったく…厄介な事になってきたな…」

 

こうしてプログラムを巡る事件は一先ず終結した…だがこれはこの後に起きる事件の序章にしか過ぎないのである。



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メタルナイト大ピンチ!?〜かけられた疑惑〜

「え…これからですか?」

 

「ああ、急に海馬社長に呼び出されたんだ…ちょっと行ってくるよ」

ある日の夜、時計の針が12時を指そうとした頃…海馬さんから急に呼び出された俺はKCへと向かおうとしていた。

 

「海馬社長…こんな時間にいったいどうしたんだろ…?」

 

 

 

 

 

「こんばんは〜?」

俺は営業時間が終わり明かりが半分となっているKCへと足を踏み入れる…だが本来ならいるはずの警備員や掃除ロボの姿は無かった…

 

「…おかしいな、社長室には明かりはついてないし…人もいないし…いったい海馬社長は…」

 

 

カララン ブシューー!!

 

 

「っ!?なんだ!?」

《何事ですか!?》

突然、ロビーに煙が充満する…そして…

 

「対象を捕捉!!直ちに包囲・無力化せよ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

「なに!?」

煙で姿は見えないが数人の兵士が俺を包囲する!

 

「特殊弾発射!!」

 

「へぶっ!?…いきなり何なんだよ!?精霊変身!!セイヤッ!!」

顔に一撃を喰らった遊海は咄嗟に精霊アーマーを纏い他の弾を叩き落とす…中には液体が入っているらしく辺りに液体が飛び散る

 

「正体見せやがれ!!」

強化された腕力で辺りの煙幕を吹き飛ばす…煙の中から現れたのは10人ほどの戦闘服とデュエルディスクを装備した兵士達だった…その胸にはKCのロゴが入っている…

 

「KCの私設部隊!?なんでおれ…を……あり…?」

《えっ!?マスター!?》

KCの特殊部隊に囲まれた遊海は突如し変身が解け膝をついてしまう…

 

「あ、れ…ちからが…はいひゃ…な……なん、で…」バシャ

《マスター!?まさかこの液体は…!?》

突然倒れてしまった遊海を見て動揺するアヤカ…アヤカは急いで心当たり…先程遊海が叩き落とした液体を分析する…その結果は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《アルコール度数60%の液体…お酒!?》

 

 

アヤカは分析結果を知って唖然とする、遊海の肉体はあらゆる毒物の効果を受けない肉体だが…唯一、その効果に含まれない物がある…それが「アルコール」である…しかも遊海自身が酒に弱く、コップ半分のチューハイで泥酔してしまう…つまり遊海唯一の肉体的「弱点」である。

 

 

「対象の無力化に成功!拘束せよ!!」

 

《させません!メガロック!トフェニ!フレア!!マスターのピンチです!!時間を稼いで撤退します!》

 

《主殿!?いったい何が!》

 

《お前達!!海馬は遊海の友であろう!何故こんな事をする!!》

 

《っ…!起きなさいユウミ!!お酒でダウンしている場合ですか!?》

 

「だぇだ…まったくひはらが…はいりゃない…」

アヤカは遊海を守護する精霊達を召喚する、遊海は既にアルコールが回り呂律が回っていない…泥酔状態である。

 

「対象の精霊召喚を確認!サイコ部隊!精霊達を拘束せよ!!」

 

「「「『闇の呪縛』発動!」」」

 

ジャラジャラジャラ!

 

『『なっ…!?』』

罠に耐性を持たないトフェニとメガロックが紫色の鎖に拘束される!

 

《メガロック!トフェニ!…あなた達は…いったい何が目的なんですか!?…こうなれば…!》

アヤカは全力を開放し真体を出現させようとするが…

 

 

「させんぞ!『ブルーアイズ』!滅びのバーストストリーム!!」

 

《dTdp:d'dg'mg!?》

 

《アヤカ!!…何故です!何故ユウミにこんな事をするのです!…海馬瀬人!!》

アヤカは圧倒的な力で吹き飛ばされる…その力の正体は青眼の白龍、それを操る人間は1人しかいない…!

 

 

「…『鋼の騎士』岸波白野、お前をライティングデュエルによる傷害事件の容疑者として…拘束する!」

 

白き龍を待機させた遊海の親友…海馬が遊海に無情の判断を下したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…頭が痛い…ここは…何処だ…?」

意識が覚醒する…だが視界は暗く、何も見えない…感触からしてヘッドギアとバイザーをつけられているようだ…。

 

「身動きも取れない…海馬社長…どうして…?」

身体も拘束具で固定され動かせない中遊海は考える…海馬社長は俺を「ライティングデュエルによる傷害で拘束する」と言った…しかし遊海にその心当たりはない。

 

「アヤカ、周囲の状況は?」

《……》

 

「アヤカ?…(アヤカ!聞こえるか?…どうなってるんだ…?)」

呼びかけに対してアヤカの反応はない、遊海は念話でもアヤカに話しかけるが反応はない…繋がりこそあるものの精霊達の気配も感じないのだ…。

 

 

「そのバイザーは特別性でな、サイコデュエリストや精霊の力を遮断する機能を備えてあるのだ」

 

「その声は海馬社長…!いったいどういう事なんですか!何故俺が拘束なんて!!」

俺のいる場所に海馬社長の声が響く…感覚的に部屋へと入ってきたようだ…。

 

「手荒な真似をして悪かった、すぐに拘束を解除する…すまない遊海、こうでもしなければお前の無実を証明できなかったのだ…」

 

カチャカチャ…プシュー…

 

「ぐっ…眩しい…!」

しばらくぶりの光に目が眩む…少しすると目が慣れ、俺の正面に立つ海馬社長の姿が見えるようになる…

 

「お前を拘束してから3日ほど経っている…まずは食事を摂れ…話はそれからだ」

 

 

 

 

「はぁっ!?俺が一般Dホイーラーをわざとクラッシュさせた!?」

 

「うむ…5日前の深夜の出来事だ、セキュリティはすぐに情報を規制した…この事を知っているのは僅かな人間だけだ…無論、オレは貴様がやったとはまったく思っていなかったがな…」

 

 

海馬社長によると5日前…つまり俺が拘束される2日前の深夜、ネオドミノシティのデュエルレーンで2人のDホイーラーが別々にクラッシュ事故を起こしたらしい…そして証言により俺…「メタルナイト」が彼らに襲いかかった事が判明した。

しかし海馬社長はそれを信じず「ならばメタルナイトを拘束し犯人ではないと証明すればいいのだ!」と行動を起こし、俺を3日間拘束した…結果、昨夜またも偽メタルナイトによりクラッシュ事件が起き、俺の冤罪が判明したという事らしい…とんだ迷惑である。

 

 

《それならそうとはっきり言ってください!いきなり襲撃しなくてもマスターなら海馬社長のお願いは断りませんよ!!》

 

「すまなかった…だがメタルナイトを捕縛し拘束した映像まで撮らなければ他の者達も信用しなかったのだ…賠償金はいつもの口座に振り込んでおく」

アヤカの抗議を受けて海馬社長は再び謝罪する

 

「いいんだよアヤカ…それで…落とし前は俺がつけてもいいですね?」

 

「うむ、当たり前だ!だが気をつけろ…偽物とはいえ相当な手練らしいからな…!実際、昨日やられたのは警戒中のデュエルチェイサーズらしい…油断はするな!」

 

「了解!」

そうして遊海は陽の落ちたネオドミノシティへと飛び出した…。

 

 

 

 

 

 

 

《しかし、マスターの姿を利用するとは…犯人はいったい何者なのでしょうか…?》

 

「犯人の目星はついてるんだ…おそらくイリアステルのデュエルロイドだろう…!たぶん俺の持つ力を利用して『サーキット』を浮かばせようとしてるんだ!」

 

遊海は既に目的にも当たりがついていた…イリアステル(三皇帝)が遊海の持つ強い力を利用しサーキットを早く浮かばせようとしているのだろうと…。

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

『メタルナイト…!ようやく繋がった!いったい何処に行っていたんだ!?』

 

「遊星?どうしたんだ?何かあったのか?」 

Dホイールのモニターに焦った様子の遊星が映し出される、その後ろには何台かのセキュリティが映り込んでいる。

 

『ジャックが…ジャックが行方不明になって偽者のジャックが現れたんだ!今デュエルチェイサーズと一緒に追っているんだが…うわっ!?』

遊星との通信が乱れる、Dホイールに体当たりされたらしい

 

『ぐっ…!とにかく来てくれ!偽ジャックが手に負えないんだ!』

 

「…すまない遊星!俺も別件で動いてる!お前達だけで止めてくれ!こっちも解決したら応援に向かう!」

 

『メタルナイト…』

 

「そう不安そうな顔をするな遊星!ジャックなら大丈夫だ!あいつを信じろ!すまない…切るぞ!!」

 

『遊海さ…!』プツン

遊海は遊星との通信を切る、既に遊海に並走するように偽物のメタルナイトが現れていたからだ…!

 

 

「待たせたな偽者!俺の名前を騙っておいて悪事を働くとはな…覚悟はいいか!!」

 

『ハッ…この偽善者が…覚悟を決めるのはお前ダ!お前を倒し、オレがこの街を恐怖で支配すル!』

 

「やれるなら…やってみろ!!お前を倒して俺はこの町の平和を守る!」

 

 

 

「『ライティングデュエル!アクセラレーション!!』」 

 

 

遊海LP4000

偽メタルナイトLP4000

 

 

特殊ルール

 

ライティングデュエル

スピードワールド2常時発動

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP0→1

「『水晶機巧(クリストロン)─クオン』を召喚!」

水晶を纏った小柄なロボットが現れる ATK500

 

「カードを2枚伏せ…ターンエンド!」

遊海LP4000 SP1

クオン 伏せ2 手札5

 

 

 

 

『そんな低攻撃力のモンスターで何ができル!すぐに消し去ってやル!』

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP1→2

『「Sp─エンジェル・バトン」を発動!カードを2枚引き1枚捨てル!…相手フィールドにモンスターがいる事で「聖刻龍─トフェニドラゴン」を特殊召喚!』

 

「なっ…聖刻だと!?少し厄介か…!」

偽メタルナイトの場にウジャト眼の刻まれた龍が現れる ATK2100

 

墓地送り

ラブラドライドラゴン

 

聖刻デッキは遊海が初代バトルシティで準優勝した際に構築済みデッキとして一部のカードが販売されている、しかし値段は高く、トフェニドラゴン単体で1万円ほどするのである。

 

 

『そしてオレは「トフェニドラゴン」をリリースする事で「聖刻龍─シユウドラゴン」を特殊召喚!このカードは聖刻モンスターをリリースし特殊召喚できル!』

青いウジャト眼の龍が現れる ATK2200

 

『そしてリリースされた「トフェニドラゴン」の効果を発動!デッキから通常モンスター・ドラゴン族の「ギャラクシー・サーペント」を攻守0で特殊召喚!』

煌めく竜が現れる DEF0

 

「来るか…!」

 

『オレはレベル6の「シユウドラゴン」にレベル2の「ギャラクシーサーペント」をチューニング!』

 

6+2=8

 

『星海を切り裂く閃光よ!星の頂きより我が地平に身を移せ!シンクロ召喚!「閃光竜スターダスト」!』

 

「なに…!?『閃光竜』だと!?」

禍々しい闇を纏い…遊海の守護竜の写し身が現れる ATK2500

 

『見るがいい!この禍々しくも美しいドラゴンの姿を!オレはさらに「聖刻龍─ドラゴンゲイヴ」を召喚!』

オレンジ色のウジャト眼の龍が現れる ATK1800

 

『バトルだ!「閃光竜スターダスト」で「クオン」を攻撃!打ち砕け!シューティング・ブラスト!!』

閃光の息吹がクオンに迫る!

   

『させるかよ!「クオン」の効果発動!相手のメイン、またはバトルフェイズに効果が発動できる!手札から現われろ!「水晶機巧─ローズニクス」!』

紅い水晶に身を包んだ朱雀が現れる ATK1800

 

『いまさらそんなモンスターを出しても無駄ダ!』

 

「まだだ!『クオン』のさらなる効果発動!俺はレベル4の『ローズニクス』にレベル1の『クオン』をチューニング!」

『なに!?オレのターンにシンクロ召喚だト!』

 

4+1=5

 

「シンクロ召喚!現れろ!『水晶機巧─アメトリクス』!」

黄と紫の水晶を纏った女戦士が現れる ATK2500

 

『だが攻撃は「『アメトリクス』の効果発動!相手の特殊召喚されたモンスターの表示形式を守備表示に変更する!水晶石兵陣!」なんだト!?』

閃光竜の周りを紫の水晶が囲み動きを封じる

ATK2500→DEF2000

 

『チィ…!カードを1枚伏せターンエンド!』

偽メタルナイトLP4000 SP2

閃光竜 ゲイヴ 伏せ1 手札2

 

 

 

「まさか『閃光竜』を使ってくるとは…コピーカードなんだろうが…絶対に倒す!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP2→3

「『水晶機巧─プラシレータ』を召喚!」

緑水晶の甲羅を持つ玄武が現れる ATK500

 

「『プラシレータ』の効果発動!自身を破壊する事でデッキから『水晶機巧─シトリィ』を特殊召喚!」

黄水晶に包まれたロボットが現れる DEF500

 

「バトルだ!『アメトリクス』で『ドラゴンゲイヴ』を攻撃!」

たくさんの水晶の礫がドラゴンゲイヴに殺到する!

 

『甘い!リバース罠「抹殺の聖刻印」を発動!「ドラゴンゲイヴ」をリリースし「アメトリクス」を除外すル!』

 

「っ…!」

アメトリクスが魔法陣に囲まれ、異次元へと追放される!

 

『さらに「ドラゴンゲイヴ」がリリースされた事でデッキから「神龍の聖刻印」を特殊召喚!』

赤いウジャト眼を刻んだ太陽石が現れる DEF0

 

「俺はカードを1枚伏せターンエンド!」

遊海LP4000 SP3

シトリィ 伏せ3 手札3

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP3→4

『オレは墓地の「ラブラドライドラゴン」と「ドラゴンゲイヴ」を除外し!手札から現れろ!「聖刻龍─ウシルドラゴン」!』

緑のウジャト眼が刻まれた聖刻の上級モンスターが現れる ATK2600

 

『さらに「聖刻龍─アセトドラゴン」は攻撃力を1000にする事でリリース無しで召喚できル!』

紫のウジャト眼を刻んだ生命の龍が現れる ATK1000

 

『「閃光竜スターダスト」を攻撃表示に変更しバトル!消え去れ!「シトリィ」!シューティングアサルト!』

闇を纏った閃光竜が突撃する!

 

「『シトリィ』の効果発動!墓地の『プラシレータ』を特殊召喚!俺はレベル2の『プラシレータ』にレベル2の『シトリィ』をチューニング!」

 

『なに!?またオレのターン中に…!!』

 

2+2=4

 

「シンクロ召喚!現れろ!『水晶機巧─クオンダム』!」

白虎の鎧を纏った戦士が現れる ATK1800

 

『だが攻撃力は「閃光竜スターダスト」が上ダ!』

 

「俺はさらに罠カード『クリストロン・インパクト』を発動!除外されているクリストロンモンスターを特殊召喚する!蘇れ!『アメトリクス』!!」

再び黃と紫の水晶の戦士が現れる ATK2500

 

『ええい!雑魚モンスターがちょこまかと!!「閃光竜スターダスト」で「クオンダム」を攻撃!』

 

「まだだ!俺は『クオンダム』の効果を発動!…俺はレベル5の『アメトリクス』にレベル4の《シンクロチューナー》『クオンダム』をチューニング!!」

 

『なに!?シンクロモンスター同士のシンクロ召喚だト!?』

 

「俺は限界を超える!あいつを倒す為に…こんなところで止まってはいられないんだ!!スピードの境地…クリアマインド!!」

遊海のスピードは音速を超え相手の前から消え去る!

 

5+4=9

 

「正義を守る魂が!新たな境地を呼び醒ます!アクセルシンクロォォ!!現れろ…スピードの限界から現れし朱雀の巨人!『水晶機巧─フェニキシオン』!!」

紅い鎧を纏いし水晶の巨人が現れる ATK2700

 

『攻撃力2700…!攻撃中止だ!オレはこれでターンエンド!』

 

「エンドフェイズにリバース罠『クリストロン・エントリー』を発動!手札・墓地からクリストロンのチューナーモンスターを1体ずつ特殊召喚する!手札から現れろ!『水晶機巧─リオン』!墓地から蘇れ!『シトリィ』!」

黒水晶と黄水晶のロボットが現れる DEF500  DEF500

 

 

偽メタルナイトLP4000 SP4

閃光竜 ウシル アセト 手札1

 

 

 

 

 

「このターンで決める!ドロー!!」SP4→5

「『Sp─エンジェルバトン』を発動!2ドローして1枚捨てる!…勝利の方程式は決まった!俺は『水晶機巧─ローズニクス』を召喚!」

赤水晶の朱雀が現れる ATK1800

 

墓地送り

ローズニクス

 

「俺はレベル4の『ローズニクス』にレベル3の『リオン』をチューニング!『リオン』の効果で『ローズニクス』はデッキに戻る!」

 

4+3=7

 

「その美しくも雄々しき翼翻し!光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!!」

シンクロの名を冠する白き龍が現れる ATK2500

 

「そして墓地の『ローズニクス』の効果を発動!自身を除外しレベル1の『水晶機巧トークン』を特殊召喚!」

赤い水晶がフィールドに現れる DEF0

 

「俺はレベル1の『水晶機巧トークン』にレベル2の『シトリィ』をチューニング!」

 

1+2=3

 

「霞の谷に住まう怪鳥よ!侵入者を翻弄せよ!シンクロ召喚!『霞鳥クラウソラス』!」

巨大なクチバシを持つ、緑色の怪鳥が現れる DEF2300

 

「『クラウソラス』の効果発動!『ウシルドラゴン』の効果を無効にし、攻撃力を0にする!幻惑のフェザーダンス!」  

 

『なんだト!?』

ウシルドラゴンにクラウソラスの羽が降り注ぎ力が奪われる

 

ATK2600→0

 

「バトルだ!『フェニキシオン』で『閃光竜』を攻撃!破晶紅凰!!」

朱雀のエネルギーを纏ったフェニキシオンが閃光竜に突撃する!

 

『無駄だ!「閃光竜スターダスト」の効果発動!このターン「閃光竜スターダスト」は戦闘・効果で破壊されなくなる!ソニック・バリア!』

閃光竜の翼がバリアとなりフェニキシオンの突進を受け止める!

 

「それを待っていた!『クリアウィング』の効果発動!1ターンに1度!このカード以外のレベル5以上のモンスター効果が発動した時!その効果を無効にし破壊する!ダイクロイック・ミラー!」

 

「バ…馬鹿なぁ!?」

クリアウィングが波動を放つ…その波動は偽の閃光竜を粉砕した!

 

「そしてモンスターが破壊された事で『クリアウィング』のさらなる効果発動!このカードの攻撃力は破壊した相手モンスターの攻撃力分…2500アップする!」

 

ATK2500→5000

 

『攻撃力…5000だト……』

 

「『クリアウィング』で『ウシルドラゴン』を攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!!」

凄まじい風を纏ったクリアウィングがウシルドラゴンごと偽メタルナイトを粉砕した…

 

『そんな…バカナァァァ…!!?』

 

偽メタルナイトLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

チュドーン!!

 

粉砕された偽メタルナイト…デュエルロイドは爆発、カードが周囲に飛び散るが…光の粒子となり完全に消滅した。

 

 

「まったく…この俺に聖刻で挑むのは100年早いんだよ!もう少しまともな構築できやが…これは…向こうも決着が着くか…」

遊海の右腕から痣が消えジャックへと集う…そしてサテライト方面で巨大な炎が弾けた…

 

「ふぅ…これで解決だな、海馬社長に連絡とって早く帰ろう…なんだか精神的にも肉体的にもめちゃくちゃ疲れた…」

 

その後遊海は海馬社長に連絡をとり事件の解決を報告し帰路についた、しかし…遊海にはこのあと世にも恐ろしい事が待っていたのだった…。

 

 

 

 

 

sideイリアステル三皇帝

 

 

『キッヒッヒッ…なんだよアイツ、自力でアクセルシンクロに辿り着いてるじゃないか…ってプラシドとゲイザーは?』

 

『ジャック型デュエルロイドの証拠隠滅を頼んだ…じきに戻るだろう…しかしあれが決闘王の力か、凄まじいエネルギーがサーキットに蓄積されたぞ…』

三皇帝のアジトにてルチアーノとホセは先程のデュエルについて話し合っていた…。

 

『これなら不動遊星を狙うよりも白波遊海にどんどんロボットをけしかけたらいいんじゃないの?』

 

『…ルチアーノ、それはダメだ…神からお告げがあった「時が来るまでシグナーへの手出しを禁ずる」とな…』

 

『ちぇっ!つまんないの!…なら少しボクは席を外すよ』

 

『何処へいく?』

 

『暇潰し!じゃね〜』シュン

ルチアーノは転移し、アジトにはホセだけが残った。

 

『ふむ…白波遊海…か、私は奴を知っている気がする…気のせいか…少し調整が必要なようだな…』シュン

 

そして誰もいなくなった。

 

 

sideout

 

 

 

side???

 

…もう少し、あと少しだ…

 

 

何処とも知れぬ闇の中…悪しき者は期を窺う、全ては己の使命を果たす為に。

 




おまけ

「ふぅ…疲れた、やっと家に帰れる…」
偽メタルナイトを倒した俺は3日…日を跨いでいるので4日振りに家へと帰る事ができた、既に深夜の為明かりは全て消えている。

「今回は翠に心配かけちゃったからな…謝らなくちゃ…」

《おかえりなさい遊海兄…なんだかボロボロだね?》

「ん?ウェンか、こんなところでどうしたんだ?」
Dホイールをしまい玄関へと向かう遊海…その玄関前でウェンが待っていた。

《遊海兄…家の中に入る前にちゃんとセーブをしといた方がいいよ》

「セーブ?それって…あれ…ウェン?」
ウェンはいつの間にか消えていた…セーブしろってゲームじゃないんだから…俺は玄関を静かに開けて家へと入った。



「ただいま〜…って起きてないよな、小腹が空いたな…確かトリシューラプリンが冷蔵庫に…ん?明かりが点かないな…停電かな?」
廊下の明かりのスイッチを入れるが反応は無い、電池式の足元灯が仄かに光っている…

カチャ…キィー…

「ん?ドアが?…翠?起きてるのか?」
リビングのドアがゆっくりと開く…



【おかえりなさい遊海さん、ワタシ…待ちくたびれちゃいました…】

「翠!ただいま!ごめんな、連絡できなくて…それより電気を…」
翠が暗闇の中遊海を出迎える…しかし様子がおかしい…?

【遊海さん…ワタシね、とっても心配したんですよ…何日も連絡がなくて…遊星君も居場所を知らなくて…】

「本当にごめん…!町で俺の偽者騒動があって…」

【ワタシ…本当に…本当に心配だったんです】

「えっと…翠…?アヤカ…ちょっと明かりをつけてくれるか?」

《はい!》パシッ

「《ヒッ…!?》」
アヤカのライトが翠を照らし出す…翠の目は赤く光を放ち、美しい紫の髪は色素が抜け落ちたように白くなっている。

【だからワタシ、考えたんです…遊海さんとずっと一緒にいるにはどうすればいいかって…】

「み、翠…落ち着いて…!本当に悪かった!」
全身から冷や汗が吹き出す遊海…あまりに動揺し翠の足元からゆっくりと赤黒い影が伸びているのに気づかなかった。

【ずっと一緒にいましょう遊海さん…ずっと…】

「えっ…ちょ…!?沈む…!?う、うわああああ!?」
ズブズブ…ズブズブ…



グシャ…メリ……グチャ









その後、遊海の姿を見た者はいなかった。











【もう離しませんよ?…遊海さん、フフ…ウフフフフ……】




遊海 HP0 

DEAD END

………………………………

コンティニューしますか?

YES
NO

攻略のヒント

遠出する前にはしっかりと連絡しましょう♡


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無法の町〜魔神降臨〜

こんにちは!S,Kです!

皆さんお待ちかね(?)のクラッシュタウン編!前後編でお送りします!

それでは最新話をどうぞ!


side遊星

 

「そこにいるのか、鬼柳…」

 

遊星はネオドミノシティから離れ…ある荒野へと赴いていた、事の発端は数日前に遊星のもとに届けられた1通の手紙だった。

 

 

 

『拝啓 不動遊星様

 

貴方と彼の間柄…そして友情を知りこの手紙を書いています。

どうか彼をこの町「クラッシュタウン」から救い出していただきたいのです。

 

このままでは彼は…鬼柳京介はこの町に…殺されてしまいます…!

 

どうか彼を助けてください!

      クラッシュタウンより バーバラ』

 

 

 

その手紙を受け取った遊星は取るものもとりあえず、鬼柳のいる町…クラッシュタウンを訪れたのだ。

 

 

「クラッシュタウン」…そこは元々なんの変哲もない山地があった…しかし17年前、ゼロ・リバースの折に地殻変動が発生し瞬く間に荒野になってしまった。

 

そしてもう一つ変化が起きる、未知のレアメタル「ダイン」の発見である。

 

ダインは同時期に研究されていたDホイールに欠かせない素材になる事が判明…人々は一攫千金を求め荒れ地に集まり町を造った…それが「クラッシュタウン」の始まりである。

 

 

 

 

 

「オイオイ!Dホイールに乗って来るなんて…えらいハリキリボーイが来たもんだなぁ!」

 

「いっちょ揉んでやろうかぁ〜?」

 

「(さっそくの洗礼か…この町もだいぶ治安が悪いらしい)」

町へと足を踏み入れてすぐ、オレはマーカーを付けデュエルディスクをつけた男達に囲まれる…オレには解る、こいつらはデュエリストの皮を被ったただのチンピラだと…。

 

「悪いが…オレは『デュエリスト』としかデュエルはしないんだ」

 

「ハッ…いい啖呵を切るじゃねぇか!」

 

「ハリキリボーイの腕前…見せてもらうぜ!」

男達がオレを囲みデュエルディスクを構える…しかし

 

「やめなよ!…今はデュエルタイムじゃない、これ以上弔いの花は手向けたくないのよ!」

近くにあった花屋から黒髪の女性が現れる。

 

「チッ、そうだったな…命拾いしたな!」

男達はそのまま去っていった。

 

 

「すまない、助かった…あなたは?」

 

「私はバーバラ…貴方を待っていたわ不動遊星さん…!」

 

 

 

 

 

鬼柳に関する手紙をくれた女性・バーバラと合流したオレはクラッシュタウンについての情報を聞いていた。

 

ダイン鉱山の作業員を取り合い、争うギャングにこの町が支配されている事…1つは赤いマフラーが目印のラモンファミリー、もう1つは黒服が目印のマルコムファミリー

 

作業員を取り合う為に夕暮れ…黄昏時にデュエルを行ない敗者は棺に入れられ鉱山送りにされ生きて帰る事がないという事…

 

…そして鬼柳が自らそのデュエルに参加し、死に場所を求めるかのような決闘を続けている事を…

 

 

 

 

「そんな…あれが本当に鬼柳なのか…!?あれではまるで…!」

 

「そう…まるで死人のようでしょう…」

 

そして訪れた黄昏のデュエルタイム…睨み合う2つのギャングの間にハーモニカの音色と共にアイツは現れた、髪を長く伸ばし黒いコートを着ているが…間違いなく鬼柳京介だ…しかしその目はチームサティスファクションの時の夢に満ちた目でも、ダークシグナーの時の復讐に燃える目でもなく…無気力にどこかを映しているだけだった…。

 

 

 

鬼柳のデュエル…それはまさに「速攻」と言えるものだった、インフェルニティを使ったハンドレスコンボ…それにより僅か2ターンで勝利した…しかしその顔に喜びの色は見えなかった、

 

「彼は過去に辛い事があったらしいわ…その記憶が彼を蝕んでいる…彼はこの町を利用して死のうとしているのよ…」

 

「辛い事…まさかダークシグナーの時の記憶が…!」

 

地縛神との戦いが終わり、ダークシグナーとなってしまった者達は1人を除き現世へと復活した、その中にはミスティやボマーのようにはっきりと記憶を残している者

…そしてカーリーのように記憶を失っている者もいる、鬼柳は前者でありシティの人々を傷つけた罪悪感が重しとなり鬼柳を捕らえているのだ。

 

 

 

 

 

「鬼柳!!」

 

「………」

 

「鬼柳!どうして答えてくれないんだ!待ってくれ…!」

 

遊星は町から離れる鬼柳に声をかける…しかし鬼柳は遊星を一啓しただけで去っていった。

 

 

「鬼柳…お前がそのつもりなら…オレにも考えがある─!」

 

そして遊星は鬼柳を助ける為に動き始めた…!

 

 

sideout

 

 

第三者視点

 

 

覚悟を決めた遊星の行動は速かった…遊星はラモンファミリーに敵対するマルコムファミリーに自分を売り込んだ(マルコムの手下を1ターン3キルゥ)

 

そして翌日の黄昏時…遊星は鬼柳と対峙する。

 

 

「鬼柳…」

 

「やはりお前が相手か、遊星」

 

「鬼柳、オレはお前を連れ戻しに来たんだ…!帰るんだ…ネオドミノシティへ!」

 

「俺は…帰れない、だが…それじゃあお前は納得しないよな…わかってるよなこの町のルールの事」

 

「ああ、オレは力づくでもお前を救ってみせる!」

遊星は鬼柳を見つめガンディスクを見せる!

 

「…わかったよ、デュエルだ…遊星」

鬼柳もガンディスクを見せる…野次馬のテンションも最高潮、友を救いたい遊星と死に場所を求める鬼柳…2人の想いがぶつかりあう!!

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

デュエルダイジェスト

鬼柳対遊星

 

 

 

 

鬼柳京介と遊星のデュエルは淡々と進む…遊星はいつも通りモンスター達と魔法・罠のコンボで鬼柳を攻める、対して鬼柳は淡々と遊星にダメージを与えようとする…しかしそのプレイングに覇気はない…鬼柳の決闘者としての魂は既に燃え尽きていた…。

 

 

「鬼柳…!オレの知っているお前はいつもカードに…デッキに向きあってデュエルしていた筈だ!なんなんだそのプレイングは!!」

 

「そう熱くなるなよ遊星…『たかがデュエルだ』、勝てばいいんだろ?」

 

「『たかがデュエルだと』…?鬼柳!お前は本当にそう思っているのか!?」

 

「ああ、そうだ遊星…俺はもうカードを捲るだけの亡霊だ…思い出しちまったんだ、俺がダークシグナーだった事を…お前達を傷付け…サテライトの奴らを…!」

 

「鬼柳…!」

 

鬼柳は全てを諦めていた…過去にはチーム・サティスファクションを結成しサテライトを統一し一目置かれる存在となった、しかし彼は『満足』できずセキュリティへと無謀なテロを仕掛け拘束…遊星への怨みを抱えたまま1度目の死を迎えた。

そして…その復讐心を冥界の王に利用されダークシグナーとして現世へと舞い戻った鬼柳は遊星へと復讐を仕掛ける、そして2回のデュエル経て遊星と和解した鬼柳は2度目の死を迎えたが…黒幕であったゴドウィン兄弟の手により他のダークシグナー共々2回目の復活を果たした。

 

しかし、その心は自分の犯した罪に縛られ…決闘者の誇りすら燃え尽きてしまったのだ。

 

 

 

「鬼柳、オレはお前を助ける為にここまで来たんだ…!オレはお前を救ってみせる!お前の中に眠っている熱い心に…火をつけてみせる!!」

 

「遊星…お前って奴は昔から頑固だったよな…」

 

「フッ…それはお互い様だろ?鬼柳!」

 

そしてデュエルは進む、鬼柳は新たな切り札である「インフェルニティ・デス・ドラゴン」を召喚し遊星を追い詰める…遊星も応えるようにエースである「スターダストドラゴン」を召喚…2体のドラゴンが睨み合う…!

 

「いくぞ鬼柳!『スターダスト』で『インフェルニティデスドラゴン』を攻撃!シューティングソニック!」

 

「流石だな遊星…だがこれで終わりだ、罠カード『インフェルニティ・ブレイク』を発動!墓地の『インフェルニティドワーフ』を除外し『スターダスト』に装備されている『パワーフレーム』を破壊する!それにより『スターダスト』の攻撃力は元に戻り返り討ちになる!終わりだ!」

 

「それはどうかな…!オレは『セカンド・ブースター』の効果発動!」

 

「なんだと!」

 

「自分フィールドのモンスターの攻撃力が変化した時、このカードをリリースし攻撃力を1500アップする!…いけ!『スターダスト』!!」

ブーストされたシューティングソニックがインフェルニティデスドラゴンを貫く…そして鬼柳のライフを削りきった…。

 

「(これでいい…これで俺はデュエルから開放される…)」

 

 

鬼柳LP0

 

遊星WIN!

 

 

 

 

 

ガラガラガラガラ! 

 

決闘の決着がつき黒塗りの馬車に乗った「送り人」が鬼柳を鉱山へと連れていこうとする…しかし、それが遊星達の作戦だった。

 

「(これでいい…!これでバーバラからダイナマイトを受け取って注意を逸して…その隙に鬼柳を連れて逃げるんだ!)バーバラ!!」

遊星は手筈通りにバーバラへと声をかける…だが、バーバラは動かなかった…その間に鬼柳は棺桶に入れられてしまう!

 

 

「そんな…バーバラ!?」

 

「ごめんね?遊星…ありがとうアイツを倒してくれて…!」 バァン!!

 

「ぐぁ─!?」

バーバラは手元の花束からショック弾を放ち遊星の動きを封じてしまう。

 

「ぐっ…バーバラ、何故…!」

 

「フフフ…ごめんなさいねぇ?マルコムファミリーがこの町を支配するのに鬼柳が邪魔だったのよ…それに時間通りに彼も来たみたいね!」

 

「なに…!」

 

 

ブロロロ…!

 

『イヤッホォォォ!!!』

陽が沈みかけたクラッシュタウンにエンジン音が響く…そして巨大なDホイールに乗った男が現れる…!

 

 

「き、貴様はマルコムの弟のロットン!?」

 

『よぉ!久しぶりじゃねぇかラモン!さっそくだがデュエルといこうや…この町の支配を賭けてな…!』

突如現れた黒髪の男・ロットンはラモンへとデュエルを挑む!

 

「貴様、正気か?もう陽が沈む!デュエルタイムは終わりだ!」

ラモンの言う通り太陽はその四分の三を大地に沈めていた…。

 

『ハッ…お前を倒すのは1ターンあれば充分だ!…それとも怖気づいたか?』

 

「なんだと…!抜かしやがれ!この出戻り野郎がぁ!!」

 

そしてラモンとロットンの一騎討ちが始まり…一瞬で終わった、ロットンは自分の伏せカードを破壊し相手にダメージを与える「ガトリング・オーガ」を使い先行1キルでラモンを降したのだった…。

 

 

「悪かったなぁ先生、こりゃ全部ロットンの作戦よぉ…この町を支配する為のな…」

ショックガンで身動きがとれない遊星はマルコムの指示で送り人に拘束されマルコム達から真実を聞かされる…。

 

「でも…その前にあの凄腕の鬼柳が邪魔だった…だからサティスなんたらの仲間だったアンタを呼んで鬼柳を倒してもらったのさ!」

 

「バーバラ…!お前は鬼柳の事を想っていたんじゃなかったのか…!!」

 

「フン!アタイが好きなのはね…力のある男なの!あんな死人みたいな男はゴメンよ!アハハハハ!!」

そう言いながらバーバラはマルコムに抱きつく…その顔は完全に悪女だった。

 

「どう?不動遊星…アタイの奴隷になるならマルコムに掛け合ってあげるけど?」

 

「断る!!」

 

「可愛げのない男だね!!」パチーン!

バーバラは遊星にビンタする…そして

 

「じゃあな、不動遊星…地獄へ旅立ちな…」

遊星はラモン、鬼柳と共に鉱山へと送られてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…鬼柳兄ちゃん…!」

1人、送り人を見送る少年がいた…彼の名前はウェスト、チームサティスファクションの事を知り…鬼柳に憧れている少年である…。

 

「ウェスト…大丈夫よ、きっと()()()が鬼柳さん達を助けてこの町を救ってくれる…!」

 

「ニコ姉ちゃん…」

ウェストに声をかけた少女…彼女はニコ、ウェストの姉であり母親代わりである。

 

「でも…来てくれるわけないよ…」

 

「いいえ…あの人は来てくれる…!絶対に…!」

 

『すまない…人を探してるんだが』

 

「「えっ…」」

気づけば2人の目の前に1人の青年が立っていた。

 

 

『手紙を見たんだが…クラッシュタウンに住んでるニコってのは…お前か?』

 

「それじゃあ…貴方は…!お願いします!どうか鬼柳さんとお父さんを助けてください!!」

 

『いいだろう…だがお前達にも手伝ってもらうぞ、この町のゴミ掃除をな!』

青年は鎧を纏いその目を赤く輝かせた…

 

「お願いします…!メタルナイトさん…!!」

 

 

 

 

 

『さて…こっちは適当に暴れるから…町は頼むぜ?相棒?』

 

「ああ、奴らを絶望の底に叩き落としてやるよ…【全力でな…!!】」

 

『オレが言えた事じゃないけど…やり過ぎるなよ…?』

 

 

 

sideout

 

 

side遊星

 

カーン カーン カーン

 

マルコムファミリーとバーバラに騙されたオレはダイン鉱山へと連行されてしまった…その中ではたくさんの人々が無茶な労働を強いられていた…。

 

「オラァ!休むな!!ダインを掘って掘って掘りまくれ!!!」

 

「ぐぅ…!!」

 

監視員達は労働者に付けられた首輪を介して電撃を浴びせ無理矢理に働かせている…町に来る前に出会った男達もここから脱走したのだろう、だが…オレは鬼柳を連れてここを脱走してみせる…!

 

 

ズガーン!!

 

「っ!?」

 

「何だ!?今の爆発音は!?」

 

「大変だ!侵入者がこっちに来るぞ!!」

 

「侵入者〜!?この地獄になんの用だよ?そいつも捕まえて…」

 

 

「侵入者だって…?今がチャンスか…!」

鉱山が騒然とする…その隙に拾った釘で首輪のロックを外す…!

 

「流石だな遊星…機械ならお手のもんか、でも俺は…」

 

「鬼柳…!今がチャンスなんだ!さっき使われてない洞窟を見つけたんだ!今なら…」

 

 

ドカーン!!

 

「「「うぎゃあああ!?」」」

 

「「くっ!?」」

近くで爆発が起きて鬼柳と一緒に吹き飛ばされる…いったい侵入者は…?

 

 

 

『ふぅ…骨がない奴らだな、本当に決闘者なのか?』

 

 

「えっ…この声は…?」

 

遊星は耳を疑った、ここにはいない筈の人物の声が聞こえたからだ…。

 

『ムッ…よぉ!遊星に鬼柳!無事か?』

 

「アンタは…!」

 

「メタルナイト…!白野さん!?どうして…!」

砂埃の中から現れたのは機械の鎧に身を包んだ最強の決闘者…メタルナイトだった。

 

『ああ、手紙を貰ったのさ…「私達のお父さんと鬼柳さんを助けて」ってな!…お前は相変わらずだな鬼柳、人がお前に引き寄せられ、それが新たな人を呼ぶ…だからオレもここに来たのさ!』

 

「白野…アンタは…」

 

「いたぞ!侵入者だ!」

 

「捕まえろ!!」

マルコムファミリーの監視員がメタルナイトを見つけ駆け寄ってくる!

 

 

『まったく…おちおち話もできねぇ…かかってこい雑魚ども!!』

 

 

 

『「「「デュエル!!」」」』

 

メタルナイトLP4000

 

ラモンファミリー

A LP4000

B LP4000

C LP4000

 

特殊ルール

変則バトルロイヤル

お互いに最初のターンは攻撃不可

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『カードを三枚伏せてターンエンド!』

メタルナイトLP4000

伏せ3 手札3

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『火縄光線銃士』を召喚!」

火縄銃を持ったガンマンが現れる ATK1600

 

「ターンエンド!」

マルコムA LP4000

光線銃士 手札5

 

 

「オレのターン、ドロー!」

「『火縄光線銃士』を召喚!」 ATK1600

 

「さらに俺のフィールドに『火縄光線銃士』がいる時!同名モンスターが召喚された事で800ダメージを与える!撃て!」

銃士が発砲しメタルナイトのライフを削る!

 

メタルナイトLP4000→3200

 

「ターンエンドだ!」

マルコムB LP4000

火縄光線銃士 手札5

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『火縄光線銃士』を召喚!」ATK1600

 

「俺達の場の『火縄光線銃士』の効果発動!1600ダメージを喰らえ!!」

 

メタルナイトLP3200→1600

 

「ターンエンドだ!」

 

『エンドフェイズに速攻魔法「終焉の炎」を発動!トークン2体を特殊召喚!』

黒炎トークンが2体現れる DEF0 ×2

 

マルコムC LP4000

火縄光線銃士 手札5

 

 

 

 

『オレのターン!退きやがれ雑魚共!!』

『黒炎トークン2体をリリースし現れろ!傲慢なる堕天使の長!「堕天使ルシフェル」!!』

4対の翼を持つ堕天使のリーダーが現れる ATK3000

 

『「ルシフェル」の効果発動!相手フィールドに効果モンスターが3体いる事でデッキから現われろ!「堕天使ゼラート」「堕天使テスカトリポカ」「堕天使マスティマ」!!』

ルシフェルの招集により堕天使が並び立つ ATK3000 ATK2600 ATK2800

 

「なっ…!?大型モンスターが一気に4体だと!?」

 

『「ゼラート」の効果発動!手札の『堕天使イシュタム』を墓地に送り相手モンスターを全て破壊する!蹂躙せよ!!』

ゼラートの剣が三体の銃士を破壊する!

 

「そ、そんな!?」 

 

『そしてリバース罠「リビングデッドの呼び声」発動!蘇れ!「イシュタム」!』

妖艶な堕天使が現れる ATK2500

 

『バトルだ!堕天使モンスターで総攻撃!!堕天使の憤怒!!』

 

「「「うぎゃああああ!?」」」

 

マルコムファミリー LP0

 

メタルナイトWIN!

 

 

 

 

『ハハハハハ!ドンドンかかってきやがれぇぇ!!』

 

「…1ターン3キル…マジかよ」

 

「あ、相変わらず凄まじい強さだ…!(でもなんだ…?何かいつもの遊海さんと違うような…?)」

ハイテンションで敵を倒し続けるメタルナイトにドン引きする遊星と鬼柳なのだった…。

 

『遊星!鬼柳!ここはオレが引き受けた!…お前達は町に戻ってマルコム達を捕まえろ!あと数時間もすればセキュリティも到着するからよ!奴らを逃さないようにしてくれ!』

 

「メタルナイト…わかった!いくぞ鬼柳!」

 

「遊星…だが…俺は…」

 

『そうそう…オレに手紙を出したのはニコって女の子だ…外で待ってるから早くいってやれ、弟もいるからな!』

 

「あの馬鹿…!こんな危ないところに…!」

 

「あっ…!オイ鬼柳!!」

ニコとウェストの名前を聞いた鬼柳は急いで出口へと向かった…。

 

 

 

『さて…久しぶりの娑婆だ…まだ暴れるぜぇ!!来い!「銀河眼」!!』

 

《ギャオオン!!》

 

 

その後、鉱山にいたラモンは語る…「魔王が現れた」と

 

彼は事件ののちに改心しファミリー総出で仕事に精を出したという、魔王に殺されない為に…。

 

 

 

 

 

「ニコ!ウェスト!!」

 

「フレア…!?貴女まで…」

遊星達が鉱山の外に出ると遊星号を押してきた姉弟とその2人を守るようにして金色の小鳥が遊星達を待っていた。

 

《遊星、待っていましたよ!無事そうで何よりです!白野の指示でこの子達と貴方を待っていたのです…町へ急ぎましょう、マルコムファミリー達は油断しています…行くなら今です!》

 

「ああ、オレはデュエルを悪用するあいつらが許せない…!町をあいつらの手から開放するんだ!」

遊星は決意を新たにする…!

 

 

「ニコ…ウェスト、どうして俺なんかの為にこんな危ない事を…!」

 

「鬼柳兄ちゃん!兄ちゃんは僕にとって一番のヒーローなんだ!サテライトを一つにしたチームサティスファクションのリーダー…初めて聞いた時、僕本当にかっこいって思ったんだ!!」

 

「鬼柳さん…あなたはこんなところで燃え尽きていい人じゃないわ!あなたは私のヒーローなんだもの!」

 

「お前達…」

鬼柳は父親を鉱山に連れていかれてしまったニコ達を陰ながら気にしていた…例え口に出さずとも鬼柳は2人を守ろうとしたのだ。

 

「ヒーロー…か、遊星…こんな俺でもなれるかな?こいつらのヒーローに…!」

 

「鬼柳…ああ、なれるさ!行こう鬼柳!町をギャングの手から取り戻すんだ!」

 

「ああ…チームサティスファクション、一夜限りの復活だ!!」

鬼柳の瞳に力が戻る、罪は消えるものじゃない…だが、罪を背負い悔い改める事は絶対にできる…!遊星達はクラッシュタウンへと向かおうと…

 

 

 

ゴゴゴ……ドゴォォン!!

 

 

 

「っ…!?地震!?」

 

「デカイぞ!伏せろ!!」

 

「「うわぁぁ!?」」

クラッシュタウンへ向かおうとした一行に大きな地震が襲いかかる…しかしその揺れはすぐに治まった。

 

 

「いったい何が起きたんだ…?」

 

「そんな…町が!!」

揺れが治まり、町を見たニコが声をあげる…町からは天を焦がさんばかりの火柱が上がっていた…。

 

 

sideout

 

 

 

side???

少し前…

 

 

 

「イヤッホォォォ!!」

 

「酒だ!酒持ってこい!!」

ラモンファミリーを降し、クラッシュタウンを支配下に置いたマルコムファミリーは戦勝会を行なっていた、花火が上がり町中でDホイールが走り回り、酒を浴びるように飲む…まさに酒池肉林の騒ぎである。

 

 

「よくやってくれたぜバーバラ!全部お前のお陰だ!」

 

「フフ、ようやくこの町はアンタのものになったんだねぇ…」

 

「い〜や…この町はお前のもんだバーバラ!今夜からこの町は『バーバラタウン』よぉ!ハハハハハ!!」

 

「本当に!?嬉しい!ありがとうマルコム!!」

 

マルコムは町の名前をバーバラタウンに改名した…それだけバーバラに惚れているのだろう…。

 

 

『へへ…アニキの奴、いい顔してやがる…ん?遊星の奴のDホイールが…おい!お前!遊星のDホイールは何処に置いた!』

パーティーの様子を見ていたロットンは遊星号が無くなっているのを見て、近くの下っ端に声をかける。

 

「ふぇ…?ああ!Dホイールの塗装屋に預けましたよ!マルコムさんが乗るらしくて…」

 

『塗装屋…?そんなモンこの町にあったか?…まさか…!ヤツの仲間か…?』

ロットンは鉱山を見つめる…

 

『やっぱりあいつら…始末しておくか…!』

 

 

ジジ…ジジジ…チカチカ

 

「ん〜?なんだ灯りが…?」

 

「なんだい?やっぱり機械が古いからかねぇ」

パーティー会場を照らしていた灯りが点滅し消え…辺りは漆黒の闇に包まれる

 

【生者を貶め、死者を愚弄する者どもよ…最後の晩餐は楽しんだかな?】

地獄から聞こえるような声が町に響く…

『何者だ!姿を見せろ!!』

 

【我は冥界の王…数多の恨みを晴らす為に現世へと舞い戻った…人を人とも思わぬ人間共よ、汝が罪を数えよ…!】

 

パァン

 

「きゃあ!?」

 

『アニキ!バーバラ!!』

照明が復活する…そしてパーティー会場の中心には黒いローブを纏った人物が立っていた…その顔は闇に包まれ伺いしれない…

 

【今宵、人間共に裁きを下す…神聖なる魔術の札によって…!】

ローブの男は漆黒のデュエルディスクを展開する!

 

「裁きだぁ〜?お前こそ、この町のルールを知らねぇみたいだなぁ!!デュエルタイム以外のデュエルをする奴はな…全員からのリンチデュエルを受けるんだよ!!野郎共!このキチガイ野郎にこの町のルールを教えてやれ!ロットン!お前もだ!」

 

『わかったよアニキ…さぁ、冥界の王だか知らねぇが地獄に送ってやるよ!いくぞ野郎ども!!』

 

【愚かな…裁きの火に焼かれるがいい!!】

 

 

 

 

『【「「デュエル!!!」」】』

 

 

冥界の王(?)LP4000

ロットンLP4000

マルコムLP4000

マルコムファミリー A〜Z 各LP4000

元ラモンファミリー A〜Z 各LP4000

 

特殊ルール

変則バトルロイヤル

 

最初のターンは攻撃不可

 

 

 

【我のターン!ドロー!】

【「王立魔法図書館」を召喚!】

冥界の王の背後にたくさんの本が保管された図書館が現れる ATK0

 

『攻撃力0を攻撃表示だと?なに考えてやがる?』

 

【魔法カード『一時休戦』を発動!お互いに1ドローし、次の相手ターンエンドフェイズまでお互いにダメージを受けない、さらに魔法カードを発動した事で『図書館』に魔力カウンターを置く】

図書館の穴に黒い石が嵌まる カウンター0→1

 

【さらに「成金ゴブリン」ニ枚を発動、相手のライフを2000回復させ我は2枚ドローする、さらに魔力カウンターが2つ乗る…そして「図書館」の効果でカウンターを3つ取り除き1ドロー!】

カウンター1→3→0

 

相手ライフ4000→6000

 

【『トゥーンのもくじ』を発動、2枚目の『もくじ』を手札に加え発動、さらに三枚目を手札に加え三枚目の効果で『トゥーンアンティークギアゴーレム』を手札に加える…『図書館』の効果により1ドロー】

カウンター0→3→0

 

 

【『トレードイン』を発動!『トゥーンアンティークギアゴーレム』を墓地に送り2ドロー、2枚目の『一時休戦』と三枚目の『成金ゴブリン』を発動2ドロー…『図書館』の効果発動1ドロー!】

カウンター0→3→0

 

相手ライフLP7000

 

「おいおい…!いつまでドローするつもりだよ!?」

 

 

【『手札断札』を発動!手札を2枚捨て2枚ドロー…2枚目の『断札』発動…三枚目の『断札』発動…『図書館』の効果で1ドロー】

カウンター0→3→0

 

【2枚目の『トレードイン』を発動、手札の『ラビードラゴン』を捨て2ドロー…問おう、マルコム、そしてロットンよ…汝が罪を悔い改めるか否か】

 

『罪だぁ〜?そんなモン負けた奴らの自業自得だろ?関係ねぇ!』

 

「そうだ!オレ達はまだまだ稼ぐんだ!この町とダイン鉱山でなぁ!!」

 

【反省の余地はない…金と権力に溺れし餓鬼共よ、その魂を捧げよ!!】バッ!!

冥界の王は手札のうち5枚を空中に投げ捨てる!

 

「なんだ…?サレンダーか…?」

 

「待って!カードが奴の後ろに…??」

冥界の王の後ろに巨大な五芒星が現れる

 

【聞くがよい…魔神の裁きは汝らを指し示した…欲に塗れし人間共よ!冥界にてその罪を懺悔するがよい!!いでよ!「エクゾディア」!!】

 

五芒星から巨大な手が…足が…そして巨大な顔が現れる、それはデュエルモンスターズ原初の特殊勝利カード…封印された四肢を解き放つ事で無限の力を以て敵対する者を殲滅する破壊神にして守護神エクゾディア!!

 

 

【邪悪なる者を駆逐せよ!怒りの業火・魔神火焔砲(エグゾード・ブレイズ)!!】

 

「『「ヒギャアアアア!??」』」

エクゾディアの両手に凄まじい力が集中し解き放たれ…ギャング達は燃え尽きた…

 

 

      特殊勝利達成!

 

 

冥界の王 WIN!

 

 

 

 

【罰ゲーム、「奈落の闇」…少しやり過ぎたか…?】

 

 

「おい!お前!!」

 

【ん…?】

デュエルが終わった直後…Dホイールに乗った鬼柳と遊星達が町へと到着する…。

 

 

「お前は…何者だ!ギャング達は何処にいった!」

遊星が俺に訪ねてくる

 

【不動遊星…貴様ならわかるはずだ…我の正体が…!】

 

キィン…!

 

「っ…!痣が…!まさか…ダークシグナー…!?」

 

「なん…だと…!?」

遊星の痣が赤く輝く…それだけで正体を見抜いたようだ、鬼柳も驚いている…!

 

【半分は正解だ…我は冥界の王、この町に渦巻く負のエネルギーにより現世へと舞い戻ったのだ…】

 

「マルコムの奴らは…ラモンファミリーの奴らはどうした?」

 

【愚かにも我にデュエル挑み…冥界へと沈んだ、これで満足か?鬼柳京介?】

 

「満足できるわけないだろ…!卑怯で卑劣な事をしてたが…奴らだって精一杯生きてたんだ…!許せねぇ!!」

 

【ほう…目に光が戻っているな…許せない、ならばどうする?】

 

「デュエルだ!冥界の王!俺やあいつらの人生を…これ以上もて遊ぶんじゃねぇ!!」

 

【いいだろう…さぁ、闇のデュエルを始めよう…!】

 

冥界の王(?)と鬼柳は対峙する…その先に待つのは希望の光か…それとも…



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燃え上がれ!決闘者魂!〜最高の満足を求めて〜

こんばんは!S,Kです!今日はいつもより早く投稿させてもらいます!なんでかって?それは…

私の誕生日だからです!まためでたく年をとる事ができました!

そして、この《決闘の観測者》も無事に1周年を迎える事ができました!これも皆様ハーメルンの読者の方々のおかげです、本当にありがとうございます!
グダグダな拙作ですが…これからもよろしくお願いします!


それではクラッシュタウン編後半、最新話をどうぞ!


死の町・クラッシュタウンから鬼柳を助けに来た遊星…しかし彼らの目の前に「冥界の王」を名乗る謎の決闘者が現れたのだった。

 

 

「鬼柳!相手は冥界の王だ…!オレ達2人で奴を倒すんだ!」

遊星が鬼柳の隣に並び立つ

 

『…遊星、お前は手を出さないでくれ…奴は俺が倒す!』

 

「鬼柳!?なぜ…!」

鬼柳は遊星を制して前に出る

 

『…これは俺のケジメの問題だ、俺は奴に操られ…たくさんの人々を傷つけた…だから、オレに償いをさせてくれ…!』

 

【覚悟は決まったようだな…ならば始めるぞ、我の完全なる復活を懸けたデュエルを…!】

冥界の王の言葉と共に鬼柳と冥界の王の周りが紫色の炎に包まれる…!

 

 

『冥界の王…一つ答えろ、お前を倒せば消えた奴らは戻って来るんだろうな?』

 

【ああ、我を倒せば消えた奴らは復活し我は冥界へと再び封印されるだろう…倒せればの話だがな!!】

 

『くっ…、倒してやるさ…!デュエルだ!冥界の王!!』

冥界の王から恐ろしい殺気が鬼柳に放たれる…しかし、鬼柳はその殺気を真正面から受け止めた!

 

 

 

 

 

【『デュエル!!』】

 

鬼柳LP4000

冥界の王(?)LP4000

 

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『「インフェルニティ・デーモン」を召喚!』

額に緑色の宝玉を付けた悪魔が現れる ATK1800

 

『カードを2枚伏せてターンエンドだ!』

鬼柳LP4000

デーモン 伏せ2 手札3

 

 

 

 

【我のターン…ドロー!】

【魔法カード『増援』を発動!デッキから戦士族モンスター『ダーク・グレファー』を手札に加える…そして手札の『インフェルニティ・ジェネラル』を墓地に送り自身を特殊召喚する!】

 

『待て…!「インフェルニティ」だと!?』

闇へと堕ちた戦士が現れる ATK1700

 

【我はさらに『ダークグレファー』の効果発動!手札の『インフェルニティ・リベンジャー』を墓地に送り、デッキの『インフェルニティ・ネクロマンサー』を墓地に送る…さらに永続魔法『インフェルニティガン』を発動、効果により手札の『インフェルニティデーモン』を墓地に送る…カードを1枚セット】

 

「あれは…ハンドレスコンボ!?」

 

『「インフェルニティ」デッキを使いこなしてやがる…!』 

遊星と鬼柳は冥界の王の展開を見ているしかない…

 

【驚いたか?鬼柳京介…しかし驚くのは早い!墓地の『ジェネラル』の効果発動!手札が0の時、自身を除外し墓地の『ネクロマンサー』と『リベンジャー』を効果を無効にして特殊召喚!】

骸骨のシャーマンと小さなガンマンが現れる DEF2000  DEF0

 

【我はレベル4の『グレファー』とレベル3の『ネクロマンサー』にレベル1の『リベンジャー』をチューニング!】

 

4+3+1=8

 

【地獄と天国の間…灼熱の煉獄よりその姿を現せ…!シンクロ召喚!『煉獄龍 オーガ・ドラグーン』!】

体に赤い宝玉を埋め込み、巨大な鉤爪を持った龍が現れる ATK3000

 

『攻撃力3000のドラゴン…!』

 

【バトルだ…『オーガドラグーン』で『インフェルニティデーモン』を攻撃!煉獄の混沌却火(カオス・バースト)!】

煉獄の炎がデーモンを焼き尽くし鬼柳に襲いかかる!

 

『ぐぁ…!』

鬼柳LP4000→2800

 

『まだだ!リバースカードオープン!「インフェルニティ・リフレクター」!自分のインフェルニティモンスターが破壊された時!手札を全て墓地に送り効果を発動できる!【無駄だ、「オーガドラグーン」の効果発動!我の手札が0の時、1ターンに1度!相手の発動した魔法・罠の発動を無効にし破壊する!】なんだと!?』

 

《グオォォォ!!!》

オーガドラグーンが咆哮するとリフレクターのカードが砕け散った!

 

墓地送り

リベンジャー

ミラージュ

ビースト

 

 

【我はターンエンド】

冥界の王LP4000

オーガドラグーン インフェルニティガン 伏せ1 手札0

 

 

 

「鬼柳!大丈夫か!」

 

『ああ…少しヤケドしたが問題ねぇよ…!まさか冥界の王が俺と同じデッキを使ってくるなんてな…!』

 

【……】

鬼柳は冥界の王を睨みつける

 

『だがな…俺は負けられねぇ、この町の奴らの為に負けられねぇんだ!!』

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『来い!「インフェルニティネクロマンサー」を召喚!』

紫のローブを纏った骸骨が現れる DEF2000

 

『「ネクロマンサー」の効果発動!墓地から蘇れ!「インフェルニティ・ミラージュ」!』

半透明の悪魔が現れる ATK0

 

『「ミラージュ」の効果発動!自身をリリースする事で墓地のインフェルニティモンスター2体を特殊召喚する!現われろ!「リベンジャー」!「デーモン」!』

再び山羊顔の悪魔とガンマンが現れる DEF0 ATK1800

 

『手札が0の時に特殊召喚された「デーモン」の効果発動!デッキから「インフェルニティブレイク」を手札に加える!そして俺はレベル4の「デーモン」とレベル3の「ネクロマンサー」にレベル1の「リベンジャー」をチューニング!!』

 

4+3+1=8

 

『死者と生者、ゼロにて交わりし時…永劫の檻より魔の竜は解き放たれる!シンクロ召喚!現われろ!「インフェルニティ・デス・ドラゴン」!』

鬼柳の新たな切り札である黒き竜が現れる! ATK3000

 

「来たか!鬼柳の新たなエースモンスター!」

 

【ほう…】

 

『カードを一枚伏せて「デスドラゴン」の効果発動!相手モンスターを破壊し、攻撃力の半分のダメージを与える!デス・ファイア・ブラスト!』

魔竜の炎が煉獄の龍を焼き尽くした!

 

【やるではないか…!】

冥界の王LP4000→2500

 

『俺はこれでターンエンドだ!』

鬼柳LP2800

デスドラゴン 伏せ2 手札0

 

 

「よし!鬼柳と冥界の王のライフが逆転した!」

 

『ああ…だが奴はまだ諦めてないみたいだな…!』

 

【クク…フハハハ…!やるではないか鬼柳】

冥界の王は笑う…そのローブからは赤い眼光が覗いている

 

【だが…お前は忘れている、我が『冥界の王』である事を!!】

 

 

 

【我のターン!ドロー!!】

【我はカードを伏せ、永続魔法『インフェルニティガン』の効果を発動!このカードを墓地に送り現われろ!『リベンジャー』!『ネクロマンサー』!】

2体の悪魔が現れる DEF0 DEF2000

 

「またシンクロ召喚するつもりか!」

 

【いや…まだだ!魔法カード『強欲で貪欲な壺』を発動!デッキトップから10枚を裏側で除外し2枚ドローする!】

冥界の王が手を闇で包みカードをドローする!

 

【我はフィールド魔法『オレイカルコスの結界』を発動!さらなる闇よ!我に力を与えよ!!】

周囲の炎が消え去り地面に六芒星が刻まれる!

 

『っ…!まさか!!やらせねぇ!リバース罠「インフェルニティブレイク」を発動!墓地の「インフェルニティリフレクター」を除外して「オレイカルコスの結界」を破壊する!』

雷撃がフィールドに降り注ぐが…

 

【無駄だ…「オレイカルコスの結界」は1ターンに1度まで効果では破壊されない!】

 

「『なんだと!?』」

 

【用意は整った…2体の生け贄を捧げ、冥界より復活せよ!「地縛神Ccapac Apu」!!】

大地が鳴動し、夜空が暗雲に包まれる…そしてナスカに封印されたはずの巨人が顕現する! ATK3000→3500

 

「そんな…!地縛神だと!?」

 

『「Ccapac Apu」…!?ダークシグナーだった…俺の…罪の象徴……!』

遊星の痣が痛いぐらいに輝く…そして鬼柳は自分の罪を目の当たりにし後ずさる…

 

【我は冥界の王…この程度は造作もな…っぐ…!おのれ…やはり完全ではない分、負担がかかるか…!】

冥界の王は右腕を抑える…

 

【バトルだ…!『Ccapac Apu』で『インフェルニティデスドラゴン』を攻撃!叩き潰せ!】

巨大な手が鬼柳を潰す為に迫る…!

 

「まずい!『Ccapac Apu』には破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える効果が…!避けろ!避けるんだ鬼柳!!」

 

『っ─!リバース罠「インフェルニティ・フォース」を発動!「デスドラゴン」を破壊し、墓地の「ネクロマンサー」を守備表示で特殊召…ぐわああああ!!』

 

「鬼柳─!!」

咄嗟にインフェルニティフォースを発動し攻撃力0のネクロマンサーを召喚したが…ネクロマンサーが破壊された風圧で鬼柳は吹き飛ばされる!

 

【今の攻撃を躱すとはな…我はこれでターンエンドだ】

冥界の王LP2500

Ccapac Apu オレイカルコスの結界 手札0

 

 

 

『うぐっ…!まさか…もう一度コイツを見る事になるなんてな…!』

 

【ほう…まだ立ち上がるか】

鬼柳はなんとか立ち上がる…しかしその瞳は動揺していた…

 

【このモンスターは貴様の罪の象徴だ…罪無き人々を復讐の道具として利用した…貴様はこのモンスターに勝つ事はできない】

 

『俺…は…』

 

【鬼柳京介…辛いだろう?苦しいだろう?…ならばサレンダーするがいい、そうすれば貴様はその苦しみから開放される…】

 

「鬼柳!!そいつの言葉に耳を貸すな!お前は一人じゃない!一人で背負いきれないならオレが一緒に背負ってやる!諦めるな!鬼柳!!」

 

『遊星…』

 

 

「「その通りだ!鬼柳!!諦めるな!!」」

 

『えっ…!』

 

「なっ…!ジャック!クロウ!?どうしてここに!」

 

遊星達の背後からDホイールに乗って2人の男が現れる、それはシティにいるはずのジャックとクロウだった。

 

 

「遊海から鬼柳のピンチだって聞いて追いかけてきたんだ!っていうかなんで地縛神がいるんだよ!?」

 

「相手が誰であろうと関係ない!!鬼柳!お前はそんな事で『満足』する男ではない筈だ!それでも俺達のリーダーだった男か!!」

 

『クロウ…ジャック…ああ、そうだった…俺達は「満足」する為にチーム・サティスファクションを作ったんだったな…例え何度挫けたって俺達は立ち上がって来たんだ!』

 

チャキ バサッ! ギュ!

 

鬼柳は懐に入っていたナイフで長く伸びた髪を切り落とす…その顔には以前の無気力さは微塵もなく…光を取り戻した瞳で冥界の王を…地縛神を睨みつける!

 

【フン…仲間からの応援で力を取り戻したか、だが手札もゼロ、フィールドのカードもゼロで何ができる!】

 

『いや!「ネクロマンサー」が戦闘で破壊された事で墓地の「リベンジャー」が特殊召喚されている!そして…俺は次のドローに全てを賭ける!!』

DEF0 ☆1→3

 

【チィ…小癪な!】

 

 

 

『いくぜ…俺の…いや、俺達の…ターン!!』

遊星達の想いを乗せたカードが…ドローされる!

 

『来たぜ…逆転のカード!!』

 

【なんだと…?】

 

『俺は永続魔法「インフェルニティガン」を発動!そして効果で現われろ!「ネクロマンサー」!「ビースト」!!』

呪術師と黒い犬が現れる DEF2000 ATK1600

 

『いくぜ!俺はレベル3の「ネクロマンサー」とレベル3の「ビースト」にレベル3になっている「リベンジャー」をチューニング!!』

 

3+3+3=9

 

『破壊神より放たれし聖なる槍よ…今こそ魔の都を貫け! シンクロ召喚!「氷結界の龍 トリシューラ」!!』

鬼柳を中心に荒野に吹雪が吹きつける…そしてある世界を壊滅させた伝説の龍が現れる ATK2700

 

「そのカードは!サテライトのチーム・トリニティの戦利品…チームサティスファクションの絆のカード!」

 

『ああ、あの事件のあとにある人がセキュリティから取り返してくれたんだ!「トリシューラ」の効果発動!相手フィールドの「Ccapac Apu」と墓地の「デーモン」を除外する!アイス・エイジ!』

最強の氷龍の力が地縛神を凍てつかせ、粉々に破壊する!

 

『バトルだ!「トリシューラ」でダイレクトアタック!零凍のブリザードブラスト!!』

トリシューラの3本の首から絶対零度の光線が放たれ冥界の王を貫いた!

 

【ぐっ…おのれ…おのれぇぇ!ただの人間にこの我が…ぐおぁぁぁ…!!

 

『これで満足だぜ!…じゃあな、過去の俺』

 

冥界の王 LP0

 

鬼柳 WIN!

 

 

 

 

 

「鬼柳!やったな!」

 

「流石オレ達のリーダーだぜ!」

 

「お前なら大丈夫だと信じていたぞ!」

デュエルが終わり遊星達が鬼柳に駆け寄る

 

『お前達…ありがとな、お前達のお陰で奴との決着をつける事ができた…やっぱりお前達は最高だぜ!』

 

「ヘッ!当たり前だろ!オレ達はチームサティスファクションなんだからな!」

クラッシュタウンに朝日が昇る…まるでこの町の門出を祝福するように…。

 

──────────────────────

 

 

しばらくして牛尾率いるセキュリティが到着しロットンとバーバラを連行していった、バーバラは以前住んでいた町での結婚詐欺、ロットンは修行先で度々暴行や強盗をした為に指名手配されていたらしい。

 

マルコムとラモン達クラッシュタウンを支配していたギャングファミリーはお咎め無しとなった…冥界の王にデュエルで負けたあとに世にも恐ろしい目にあったらしく、その様子を見た牛尾が町の復興を手伝う事を条件に見逃したのだ…そして鬼柳は…。

 

 

 

 

数日後

 

 

「やはり…この町に残るのか鬼柳?」

 

『ああ、この町が俺の新しい夢になるんだ…それにニコとウェストにデュエルを教えてやんなきゃな!』

 

鉱山に囚われていた人々は無事に開放された…その中にはニコとウェストの父親もおり感動の再開を果たした、そしてウェストは鬼柳や遊星の活躍を見て鬼柳へと弟子入りしたのだ。

 

『それに…伝説のデュエリストにこの町を任されたんだ、投げ出す訳にはいかねぇよ!』

そう言って鬼柳は自分の胸を指し示す、そこには金色の星型バッジが付けられていた。

 

「ああ、まさか海馬社長にこんなところで出会えるとは…」

 

 

 

 

 

 

 

少し前…

 

『フン…ここがダイン鉱山の町、クラッシュタウンか…本当に日本なのかここは?』

 

『アンタ…まさか海馬コーポレーションの…!』

地縛神の召喚により少なくない被害を受けたクラッシュタウン…そこに数人の黒服を引き連れて1人の男が現れる…いわずもがな海馬瀬人その人である。

 

 

「ネオドミノシティの実権を握る伝説の決闘者…!どうしてこんなところに…!」

 

『お前は…不動遊星か、ダークシグナーの事件では友が世話になったな、今日はセキュリティからこの町で起きたトラブルを知って視察に来たのだ…この町の責任者は誰だ?』

 

「それは…」

クラッシュタウンは奇しくも冥界の王によりその平和を取り戻した…しかし、マルコムもラモンも精神的ショックを受けていてしばらくは使いものにならないだろう。

 

 

『…俺だ』

 

『なに?』

 

「「「鬼柳!?」」」

鬼柳が一歩前に出る

 

『俺がこの町の責任者だ…暫定的にだけどな、俺は鬼柳京介だ』

 

『フン…旧サテライトのデュエルギャング、チーム・サティスファクションの元リーダーか…いいだろう、この町の代表として決定事項を伝える』

 

『決定事項?』

海馬の言葉に鬼柳は首を傾げる

 

『この町とラモン・マルコム両ファミリーの所有するダイン鉱山…その全てを海馬コーポレーションが買い取る!…そして、新生するこの町の初代町長に鬼柳京介…貴様を指名する!』

 

『「なっ!?」』

 

「「なんだって〜!?」」

 

 

 

 

海馬社長曰く、この町とダイン鉱山をしっかりと整備し旧サテライトで仕事を探す労働者の働き場所を確保する為にこの一帯を全て買い取る事にしたらしい。

なお、労働条件は週休2日制のホワイトそのものになるそうだ。

 

sideout

 

 

 

 

「鬼柳が町長か〜チームサティスファクションの再結成も悪くねぇと思ったんだけどな〜!」

 

「冗談じゃない!…あんなハチャメチャな日々はもうゴメンだ!…だが久々にこの4人が揃って楽しかったがな!」

クロウの呟きにジャックがダメ出しする…ジャックにとっては黒歴史のようだ。

 

『フッ…そういえばお前達、チームでWRGPに出るんだろ?必ず応援に行く!絶対に優勝しろよ!』

 

「ああ、オレ達は絶対に優勝してみせる!」

 

『ああ!楽しみにしてるぜ!遊星!ジャック!クロウ!』

 

そうして遊星達はネオドミノシティへと帰っていった…例え遠く離れようとも彼らの友情は繋がっているのだ。

 

 

『…さぁて、この町を復活させてみんなが笑顔になる…そんな町になるまでは…満足できねぇぜ!』

 

その後、この町は笑顔の人々が暮らす町として後世まで語り継がれる町となる…その名は

 

『サティスファクションタウン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばさ、メタルナイト…遊海は何処に行ったんだ?」

 

「ん?確か鉱山を制圧してすぐにシティに戻ったらしいが…」

 

「…しかし、冥界の王がいたのに…何故帰ってしまったんだ…?」

 

 

 

──────────────────────

side遊海@自宅

 

 

 

「う〜ん…う〜ん…」

 

ピピピ…ピピピ…

 

「39.5分…熱が下がりませんねぇ…大丈夫ですか?遊海さん…」

 

『大丈夫な訳ないだろ翠…この馬鹿、シグナーなのに「オレイカルコスの結界(地球の闇の結晶)」を使った上に「地縛神(冥界の王の下僕)」まで使ってるんだぞ?この程度で済んでるだけでもありがたい方だ!』

 

「う〜ん…」

 

遊海は自宅で熱を出して寝込んでいた…実はクラッシュタウンに現れた冥界の王…その正体は遊海である。

遊星がクラッシュタウンに向かった後、メタルナイト宛にニコから助けを求める手紙が届いた(海馬社長の手回しにより専用の私書箱がある)

その手紙を読んだ遊海は急いでクラッシュタウンへと向かったのだ。

 

 

『まったく…(オレ)を開放したと思ったら「鉱山で暴れて遊星達を助けて来い!」って無茶ぶりにも程があるぞ遊海!…まぁ久々に暴れられたから良いけどよ!』

 

「ありがとな…ユウスケ…う〜ん…」

 

『ったく…お人好しにも程があるぞ遊海……そろそろ時間だな…翠、コイツ頼んだぞ!』ポン!

鉱山で遊星達を助け出したメタルナイト…それは『コピーナイト』で分身し実体化したユウスケである、遊海はユウスケを鉱山に向かわせると自身は変装し諸悪の根源であるマルコムファミリーを壊滅させ、罰ゲームを叩き込んだのである。

 

 

「遊海さん…何もここまでしなくても…」

 

「鬼柳を本当に助けるには…これぐらい…しなきゃ…ダメだと思って…う〜ん」

そして遊海は鬼柳の前に壁として立ちはだかり、あえて同じインフェルニティデッキを使い、鬼柳のトラウマとなっている地縛神を召喚しトラウマを乗り越えさせる事で鬼柳を救おうとしたのである。

…結果的に作戦は上手くいったものの、シグナーでありながら地縛神を使った事で赤き竜の逆鱗に触れてしまったのか…こうしてお仕置き(神罰)を受けているのである。

 

 

「赤き竜〜…もう地縛神は使わないから許しイタタタ!熱い!アツいって!!」

遊海の炎の痣が文字通り炎のように熱くなる…しばらくはこのままだろう…。

 

「ウィンダ!ウェン!もっと氷持ってきて!!」  

 

《了解!》

 

《わかった〜!》

 

「う〜ん…う〜ん…」

 

ピピピ…ピピピ…

 

「42度!?遊海さん!しっかりしてください〜!?」

 

「う〜ん…」

 

 

 

 

 

 

 

その後、遊海は1週間程高熱に魘され続けたのであった…。



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閑話〜永き時の果てに〜

「すぅ…すぅ…」

 

ピピピ…ピピピ…

 

「36.5分…ようやく落ち着いた…よかった〜…」

クラッシュタウン事件から数日後…遊海はようやく平熱に戻り翠は胸を撫で下ろす。

 

「もう…あんまり無理はしないでくださいね遊海さん…って言っても聞こえてませんよね…はぁ〜」

 

《翠姉、ため息ばっかりついてると老けちゃうよ?》

 

「私達は年を取らないから関係なーいの!…遊海さんが頑張ってるのはわかってるんだけど…心配する私の身にもなってよね!」

 

「すぅ…すぅ…」

遊海は静かに寝息をたてている…高熱に浮かされここ数日あまり寝ていなかった為とても深く眠っている。

 

 

「もぅ、気持ち良さそうに寝ちゃって〜…えい!」フニフニ ツンツン

 

「すぅ…フガッ…んむぅ…」

 

翠は眠っている遊海の頬を軽く摘んだりつついたりしている…これがちょっとしたストレス発散になっている、ちなみに精霊達は黙認するのが暗黙のルールだ…いつも心配ばかりかける遊海が悪いのである。

 

 

《それにしても…よく寝てるね遊海兄》

 

「無理もないわ…赤き竜のお仕置きであんまり寝れてなかったし…最近は大変な事が多かったし…」フニフニ

ここしばらく、遊海は中々に忙しかった…ブルーノ合流からのプログラム窃盗事件、イリアステルによる偽者騒動…そして今回のクラッシュタウン事件…そこに赤き竜の神罰を受けたらダメージは相当に深いだろう。

 

「むにゃ……あ…てむ…」

 

「…いったいどんな夢を見てるんですか?遊海さん…?」

 

無防備に眠り続ける遊海…その顔はどことなく嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『遊戯!!』

 

「海馬…少し老けたな、当たり前か…あの時から20年以上も過ぎたからな…」

 

超越者・レクス・ゴドウィン、そして冥界の王を撃破し希望の朝を迎えるネオドミノシティ…そのとあるビルの屋上で2人の男が対峙する。

 

1人は白き衣を纏い、首元から金色の首飾り…千年錘を掛けた古代エジプトのファラオにして「決闘王」アテム

 

もう1人は銀色のコートを纏い、鋭い眼光でアテムを見据える大企業の社長にして「最強のドラゴン使い」海馬 瀬人

 

遥かなる時の果てに2人の好敵手は再び対峙する!

 

 

 

『アテム…いや、遊戯!貴様がどうして蘇ったかなど…どうでもいい…!貴様とオレが相まみえたならば…やるべき事は一つだ!』ジャキン!!

海馬はデュエルディスクを展開する!

 

「…大人しく冥界に戻ろうと思ったが…やるべき事ができたようだ…!遊海、立会人を頼むぜ!」シュイン!

アテムは王族の服から見慣れた青い制服…旧童実野高校の制服を纏い、デュエルディスクを展開する…そして偶然か必然か、居合わせた親友へと声を掛けた。

 

 

「ああ!さぁ…いくぜ!海馬 瀬人対アテム!デュエル…開始ィィィ!!!」

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

海馬LP4000

アテムLP4000

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『遊戯!進化した最強ドラゴンの力を目の当たりにするがいい!手札から「融合」を発動!手札の「青眼の白龍」3体を融合!!』

海馬の手札から飛び立った3体のブルーアイズが融合する!

 

『今こそ顕現せよ!「真青眼の究極竜」─!!』

覚醒を果たした新たなアルティメットドラゴンが現れる ATK4500

 

「進化した『ブルーアイズ』か!デュエルの腕は落ちていないようだな!海馬!」

 

『フン、当たり前だ!オレは常にオレの道を歩み続けるのみだ!カードを1枚伏せてターンエンド!』

 

海馬LP4000

真究極竜 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『黒魔術のベール』を発動!俺のライフを糧として…手札から現われろ!我が最強の下僕!『ブラック・マジシャン』!」

 

《ハッ!!》

地面に刻まれた魔法陣からアテムの相棒である黒魔術師が現れる ATK2500

 

アテムLP4000→3000

 

『来たか…!「ブラックマジシャン」!』

 

「さらに俺は装備魔法『魔術の呪文書』を『ブラックマジシャン』に装備!攻撃力が700ポイントアップ!」

魔導書の叡智の力でブラックマジシャンの魔力が増大する! ATK2500→3200

 

 

『だが攻撃力は足りん!』

 

「それはどうかな?バトルだ!『ブラックマジシャン』で『真究極竜』を攻撃!!」

 

『なんだと!?』

ブラックマジシャンの杖に魔力が集中し、それを迎え撃つ為に真究極竜もエネルギーを溜める!

 

『そして!手札から「幻想の見習い魔道師」の効果発動!このカードを手札から墓地に送り、「ブラックマジシャン」の攻撃力を2000ポイントアップする!放て!超・黒・魔・導(ハイパー・ブラック・マジック)!』

《ハァ!!》

ATK3200→5200

 

《ギュアアン!?》

弟子の力を受け取ったブラックマジシャンの魔力が倍増し真究極竜のアルティメット・バーストを弾き飛ばし真究極竜を破壊した!

 

『くっ…!お前の腕も錆びていないようだな!遊戯!!』

海馬LP4000→3300

 

 

『だが…これでオレは究極のドラゴンを呼び出す事ができる!!手札からモンスター効果発動!!このカードは自分のブルーアイズが破壊された時に手札から特殊召喚できる!!』

 

「なんだと!?」

海馬は一枚のカードを掲げる!

 

『無窮の時…その始原に秘められし白い力よ!鳴り交わす魂の響きに震う羽を広げ…蒼の深淵より出でよ!『ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン』!!』

神に近しい力を得て覚醒したブルーアイズが現れる ATK0

 

 

「このドラゴンは…そうか、そこにいるんだなキサラ…永き時を超えて…!」

アテムは降臨した新たなブルーアイズに1人の女性の面影を見た気がした…

 

『「ディープアイズ」が特殊召喚に成功した事でお前は墓地のドラゴン族の種類1つにつき600…つまり1200ダメージを受ける!墓地のドラゴンの怒りを受けよ!リベンジ・ドラゴニック・フォース!!』

海馬の背後に2体のドラゴンの幻影が現れ、ブレスを放ち、アテムのライフを大きく削った!

 

「うおぉぉぉ!?…やるな海馬!!」

 

アテムLP3000→1800

 

『さらに!「ディープアイズ」の攻撃力は墓地のブルーアイズ1体の攻撃力と同じとなる!「真究極竜」の力を受け継ぐがいい!』

ディープアイズが真究極竜の力を得て攻撃力を増す!

ディープアイズATK0→4500

 

「攻撃力4500…!俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」

アテムLP1800

ブラックマジシャン(呪文書装備) 伏せ1 手札1

 

 

 

『どうだ遊戯!貴様を超える為にオレは研鑽を続けてきたのだ!!』

 

「フッ…流石だな海馬!だが勝負はこれからだ!」

 

 

「(すげぇ…!なんて激しくて楽しそうなデュエルをしてるんだよ2人共…!)」

遊海は2人の対決を見つめる…遊戯も海馬も楽しそうに笑っていた…

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『来い!「アサルト・ワイバーン」!』

鋭い翼を持ったワイバーンが現れる ATK1800

 

『バトルだ!「ディープアイズ」で「ブラックマジシャン」を攻撃!神滅のホワイト・ストリーム!!』

背中の輪から凄まじい威力の光線が放たれる!

 

「手札から『クリボー』の効果発動!このカードを手札から捨てる事で戦闘ダメージを0にする!たのむぜ!」

《クリクリクリー!!ムギュ!?》

 

クリボーが光線を受け止めて弾き飛ばされる!

 

『チィ…!だが、これで貴様のフィールドは…なに!?』

爆煙が晴れる…アテムのフィールドにはブラックマジシャンが杖を構えて佇んでいた…。

 

「フッ…俺は罠カード『ブラック・イリュージョン』を発動していたのさ!」

 

『やるな…!オレはターンエンドだ!』

海馬LP3300

ディープアイズ アサルト 伏せ1 手札0

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『天使の施し』を発動!デッキから3枚ドローし2枚捨てる!バトルだ!『ブラックマジシャン』で『アサルトワイバーン』を攻撃!黒・魔・導(ブラック・マジック)!」

黒い魔力弾がワイバーンを破壊する!

 

『ぬう…!』

海馬LP3300→1900

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

アテムLP1800

ブラックマジシャン(魔術の呪文書) 伏せ1 手札0

 

 

 

『そうだ遊戯…!これでいい!貴様とのデュエルでオレの血が沸き魂が燃えあがる!!』

 

「俺もだ海馬!魂の因縁なんて関係ない…俺とお前、その魂が共鳴し燃えあがる!」

 

『フン…だがいずれ決着はつく…遊戯!見ているがいい!オレの歩んだ闘いのロード、その辿り着いた場所を!!』

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『「強欲な壺」を発動!2ドロー!さらに儀式魔法「カオスフォーム」を発動!墓地の「青眼の白龍」1体を除外し現れろ!』

墓地からブルーアイズが飛翔し凄まじい力を纏う!

 

『ブルーアイズよ!混沌の力を宿し、この戦いに幕を引け!儀式召喚!「ブルーアイズ・カオスMAX・ドラゴン」!!』

光と闇の力を宿した、海馬の力の結晶であるドラゴンが現れる! ATK4000

 

「混沌のブルーアイズ…!だがこれ以上やらせるか!リバース罠発動!『黒魔族復活の棺』!俺の場の『ブラックマジシャン』とお前の場の『ディープアイズ』を墓地に送る!」

 

『なんだと!』

アテムのフィールドに現れた棺にブラックマジシャンとディープアイズが吸い込まれる!

 

「そして墓地から現われろ!マハードの力を受け継ぐ精霊魔導師!『守護神官マナ』!」

《お待たせしました王子…じゃなくてファラオ!御身をお守りします!》

マハードの跡を継ぎ立派な魔導師になったマナが現れる ATK2000

 

「頼むぞマナ!さらに俺は『魔術の呪文書』が墓地に送られた事でライフを1000回復する!」

魔導書の魔力がアテムのライフを癒やす

 

アテムLP1800→2800

 

『おのれ…!だが、バトルだ!「カオスMAX」で「マナ」を攻撃!混沌のマキシマム・バースト!!』

カオスMAXの全身から無数の光線が放たれる!

 

《えっ!もう退場ですか!?きゃ〜!?》

マナは圧倒的暴力で薙ぎ払われた!

 

「マナ、すまない!うおぉぉぉ…!」

アテムLP2800→800

 

『どうだ遊戯!これで貴様の場はガラ空きだ!』

 

「まだだ!『マナ』が破壊された事で効果発動!デッキから現われろ!『ブラック・マジシャン・ガール』!!」

《私、復活〜!》

マナが自分の魂を切り離し精霊として現れる ATK2000→2300

 

『フン…オレはこれでターンエンドだ!』

海馬LP1900

カオスMAX 伏せ1 手札0

 

 

 

 

『(そうだ遊戯、お前はいつもオレの前を進んで行った…それでこそ我が生涯のライバルだ…だが、だからこそ…オレはお前を超えていく!!)』

 

「(海馬…伝わってくるぜ、お前の闘気が…俺を超えようとする強い思いが!だが…勝つのは俺だ!!)」

 

 

 

「俺のターン…ドロー!!」

「俺がドローしたのは『守護神官マハード』!このカードがドローされた時、このカードを特殊召喚できる!」

《ファラオよ、我が魂は貴方と共に!》

《お師匠様!》

神官の服に身を包んだアテムの守護者が現れる ATK2500

 

「バトルだ!『マハード』で『カオスMAX』を攻撃!」

 

『なに…!まさか!!』

 

「その通りだ!『マハード』が闇属性モンスターとバトルする時!攻撃力は倍となる!やれ!マハード!!」

《ハッ!はぁ〜…!!》

マハードが跳躍し、その頭上に巨大な魔法陣が展開する!

ATK2500→5000

 

《魔導奥義!七星魔導波(グランシャリオ)!!》

光のエネルギーがカオスMAXを打ち砕いた!

 

『ぐっ…!ぬぅおおお!!』

海馬LP1800→900

 

 

「これで終わりだ!『ブラックマジシャンガール』でダイレクトアタック!!黒・魔・導・爆・裂・波(ブラック・バーニング)!!」

 

『やらせん!!リバース罠「カウンター・ゲート」発動!!直接攻撃を無効にしカードを1枚ドローする!…フッ…!』

海馬の前に現れたバリアで攻撃が弾かれる!

 

「俺はターンエンド!」

アテムLP800

マハード ブラマジガール 手札0

 

 

 

 

『遊戯!貴様に引導を渡してやる!オレのターン!!』

『魔法カード「死者蘇生」を発動!蘇れ、我が魂!「青眼の白龍」!!』

《ギュアアアン!!》

白き龍が咆哮を轟かせ復活する! ATK3000

 

「きたか…!」

 

『バトルだ!「ブルーアイズ」で「マハード」を攻撃!滅びのバースト・ストリーム!!』

最強の龍のブレスがマハードを吹き飛ばす!!

 

《ぐっ…!私は…ファラオと共にある!》

 

「マハード…いくぞ!!」

アテムLP800→300

 

「『マハード』が破壊された事で効果発動!冥界から復活せよ!『ブラックマジシャン』!!」

マハードがその魂を黒き魔術師へと変化させる ATK2500

 

ブラマジガールATK2300→2000

 

『まだだ!オレのバトルフェイズは終わっていない!手札から速攻魔法「龍の闘志」を発動!「ブルーアイズ」はもう一度攻撃できる!これで決着だ!「ブラックマジシャン」を攻撃!滅びの…!』

 

「墓地から『超電子タートル』の効果を発動!このカードを除外しバトルフェイズを終了する!」

海馬のフィールドを電子バリアが包み込み動きを封じる!

 

『くっ…!「天使の施し」で墓地に送っていたか…!ターンエンドだ!』

海馬LP900

ブルーアイズ 手札0

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

「海馬…ついに決着だ」

 

『遊戯…そうか、オレはまだお前には届かないのだな…だが待っていろ…次は…必ず…!』

 

「魔法カード『黒・魔・導・連・弾(ブラック・ツインバースト)』を発動!『ブラックマジシャン』に『ブラックマジシャンガール』の攻撃を加える!!」

《お師匠様!私の力を!》

《うむ、いくぞ!マナ!》

弟子の力を受け取り、ブラックマジシャンの魔力が上昇する!

ATK2500→4500

 

 

「バトル!魔術師弟の同時攻撃!」

《「《ブラック・ツインバースト!!》」》

 

魔術師弟の同時攻撃…それにより白龍も海馬も飲み込まれた…

 

 

海馬LP0

 

アテムWIN!

 

 

 

 

 

 

 

激しい攻防の末、デュエルは決着を迎えた…アテムは海馬に歩み寄る

 

 

「いい決闘だったぜ、海馬」

 

『フン…今回は負けたが…()は勝つ!』

 

「…ああ、向こうで待ってるぜ…だが、あんまり早く来るなよ?」

 

『当たり前だ!まだ「世界海馬ランド計画」も「WRGP」の準備も途中だ!死んでなどいられるか!』

 

「フッ…お前らしいな」

アテムの身体から光の粒子が漏れ出していく…

 

「そろそろ時間だな…じゃあな、海馬、遊海…みんなを頼んだぞ!」

 

「心配するなアテム、俺がいる限り…この世界を守ってみせる!」

 

『遊戯…さらばだ!』

 

「フッ…」シュイン 

そしてアテムは朝の光に溶けるように消えていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フガ…ん〜!よく寝…《マスター!起きないで!!》ふぁ!?」

長い眠りから目を覚ました遊海…しかしすぐにアヤカに抑えつけられる

 

「な、何事…!?」

《マスター、静かに隣を見てください…理由がわかります》

 

「隣?…あっ…」

 

「スゥ…遊海…さん…」

遊海が静かに横を見るとベッドに潜り込んだ翠が寝息をたてていた…看病で疲れていたのか遊海の右腕を抱いて眠っている。

 

 

「…ありがとうな翠、それに心配かけてごめんな…今はゆっくり休んでくれ…」

遊海は翠の絹糸のような髪を静かに撫でる…

 

「俺ももうひと眠りするかな…おやすみ、翠…」

遊海も瞼を閉じ再び眠りに落ちた…なお、その後に家を訪れた龍亞に添い寝シーンをカメラ(遊星作)に撮られ、赤面するのはまた別の話である。

 

 

 

「(…お〜い、誰か濃いめのブラックコーヒー持って来てくれ〜甘過ぎて辛い〜)」

 

《ドンマイです、ユウスケ》




こんにちは!S,Kです!読了ありがとうございます!

今回は以前頂いたリクエストアンケートで「シグナー編終了時のアテム対海馬の決闘を見たい」というリクエストに応えて執筆させていただきました!

永遠のライバルであるアテム(遊戯)と海馬…その1つの決着を書かせていただきましたが…いかがでしょうか?自分の技術が足りずこのようになりましたが…見捨てないで頂ければ幸いです…。


5D's編もいよいよ終盤…これからもよろしくお願いします!












NextEpisode?

遂に開催されるWRGP…世界各国から最強のライティングチームが集結する!


だが…そこにイリアステルの影が忍び寄る…!

遊星、そして遊海は試練を乗り越え街を…未来を救えるのか!

第3章後半 WRGP編 近日執筆開始予定!







『オレを乗り越えてみせろ!白波遊海!!』

「ゲイザァァァ!!!」




 
【…もうやめてください…我が友よ…私は…見たくないのです!】


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舞い上がれ黒翼竜!〜朋友の思い〜

こんにちはS,Kです!投稿遅れてすいません!

皆さまは無事に令和を迎える事ができたでしょうか?新しい元号と共に心機一転頑張りましょう!!

それでは最新話をどうぞ!


〜3年前・サテライト〜

 

 

ここはサテライトのとある場所、そこで眠っている子供達を見守りながら話をする2人の青年の姿があった…。

 

「なぁクロウ、サテライトの伝説って知ってるか?」

 

「サテライトの伝説?そりゃダイダロス・ブリッジから飛び立った『伝説のDホイーラー』の事だろ?」

 

「いや、サテライトの伝説はもう1つあるんだ…サテライトとシティの間にある『希望の島』を知ってるか?」

 

「希望の島…確か昔にKCの遊園地があった無人島だろ?それが関係あるのか?」

 

「ああ…クロウ、不思議じゃないか?童実野町を2つに引き裂いたゼロ・リバース…その中であの場所では()()()()()()()()んだ」

 

「誰も…!?どうしてなんだ?」

クロウは相手の青年に尋ねる

 

「それが伝説なんだよ『人々を救った伝説の決闘者』のな…」

青年が窓の外を見つめる…

 

 

「クロウ、私はゼロ・リバースの時に海馬ランドに居たんだ…そして見たんだよ『伝説の決闘者』の姿を…」

 

「へぇ〜…で、どんな奴だったんだ?」

 

「見た目は普通の男なんだが、赤い帽子が特徴的だったな…あの人はいち早く災害の予兆を感じてスタジアムから飛び出して行った…そして『神』が現れたんだ」

 

「『神』?それってもしかして…!」

 

「黄金の翼竜…『ラーの翼神竜』、それだけじゃない…何体ものデュエルモンスターが実体化して海馬ランド中の人達をスタジアムに放り込んだ…そしてゼロ・リバースが起きた」

 

「それで…その伝説の決闘者はどうなったんだ?」

 

「…彼は行方不明のままだ、だが私は信じてる…絶対にあの人は生きてる、だから私は彼のようにみんなを助けたい…って言ってもできる事は限られてるけどな!」

 

「そんな事ねぇよピアスン…お前はこいつらのヒーローさ…」

クロウは子供の毛布をかけ直しながらもう1人の青年・ピアスンに話しかける

 

「ははっ、ありがとよクロウ…さて俺らも寝るか!明日からまたDホイール作りを頑張ろう!」

 

「ああ!…そういえばその伝説の決闘者の名前は?」

 

「ああ…彼はデュエルモンスターズ界の生きた伝説、かの『決闘王』の名を受け継いだ『最強の決闘者』その名は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ…!…なんだ、ずいぶん懐かしい夢を見たもんだな…」

 

ポッポタイムのガレージでクロウは目を覚ました…パソコンの周りでは遊星とブルーノがDホイールの調整をしている…。

 

「…まだ4時じゃねぇか、あの2人また徹夜しやがったな…そうか今日は…」

クロウは頭を掻きながら起き上がる、時刻は朝の4時…そしてカレンダーの日付はクロウにとって思い入れのある日になっていた。

 

 

「あっ、おはようクロウ!ごめん、起こしちゃったかい?」

クロウに気がついたブルーノが話しかける

 

「おはようさん遊星、ブルーノ…また徹夜しやがったな?WRGPまで時間がねぇとはいえ無理すんなよ?」

 

「おはようクロウ…すまないエンジンの調整がうまくいかなくてな…少し仮眠を取るか…」

 

「そーしろよ、悪りぃがブラック・バードに乗ってくぜ?少し用事があるんだ」

 

「わかった…だが注意してくれエンジンの調整が終わってないからな」

 

「ああ…あんまり弄くり回すなよな…」

クロウはブラックバードに乗りある場所へと向かった…。

 

 

 

 

 

「…今年も来たぜピアスン、早いモンだよなあれから3年なんてよ…」

旧サテライトのとある海辺…そこには「ロバート・ピアスン」と書かれた墓標があった。

 

「なぁピアスン…信じられるか?オレ、サテライトの伝説の2人に会ったんだぜ?しかも1人はオレと同じシグナーなんだ、本当に夢みたいだぜ…」

 

ロバート・ピアスン…彼はクロウの恩人だった人物だ、彼は「チーム・サティスファクション」が解散し目標を失ったクロウに新たな夢を希望を与えた人物だった…しかし3年前、彼は不慮の爆発事故により足1本を遺し死んでしまった…クロウの乗るブラック・バードはピアスンの形見であり、ピアスンの夢の結晶なのである。

 

 

「次に来る時はWRGPの戦勝報告だな!遊星とジャックと一緒に絶対に優勝してやるぜ!…だから待っててくれよピアスン…」

そう言ってクロウはブラックバードに乗るクロウ…しかし

 

プルル…パスン…

 

「なんだよ?ご機嫌ナナメってか?…まったく改良してるんだか壊してるんだかわからねぇぜ…」

エンジンがウンともスンとも言わないブラックバード…クロウは仕方なくブラックバードを押してポッポタイムへと戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「『ブラッド・メフィスト』?」

 

「ええ…ピアスンの最期のデュエルでそのカードが使われたらしいの…何か知らないかしら?」

 

ポッポタイムに辿り着いたクロウは遊星とブルーノの修理を見ながら暇を持て余していた…そんな中、セキュリティの牛尾と狭霧が過去に起きたピアスンの事件についての新たな情報から捜査をするべく彼と親しかったクロウのもとを訪れていた…。

 

 

「『ブラッド・メフィスト』は昔に開発された危険なカード…具体的にはダメージが実際に発生しちまうらしい…ダークシグナーやゴーストの時みたいにな」

 

「幸い流通してしまったカードは少ないわ…だからこのカードを持っている人物を特定できればピアスンを襲った犯人に近づけるはずなの、一応遊海さんにも協力してもらってるんだけど…」

 

「そうなのか…そのカードを持ってる奴がピアスンを…!」ギリリ

クロウは拳を握りしめる、その脳裏にはブラッドメフィストの攻撃で吹き飛ばされ炎に包まれてしまうピアスンの姿がよぎっていた。

 

「…オレもピアスンと関係ある奴に聞いてみるぜ、絶対に犯人を見つけてやる…!遊星!ジャックのDホイールを借りるぞ!!」

 

「あっ!おいクロウ!?」

クロウはジャックのホイールオブフォーチュンに乗り、ある場所へと向かった…その後ろからジャックの叫びが響いたのは別の話である。

 

 

 

 

「(きっとあの人なら心当たりがあるはずだ…ピアスンの親友だったあの人なら…!)」

クロウが向かったのはシティ中心部に位置する大手Dホイールメーカー『ボルガー&カンパニー社』…その社長であるボルガーはサテライト出身であり、ピアスンの親友だった人物なのだ…そしてクロウはガードマンに追い返されかけたものの偶然に会社に帰ってきたボルガーによって会社に入る事ができたのだった。

 

 

 

『知らなかったとはいえすまなかったなクロウ、何か飲むか?』

 

「いんや大丈夫だよ…それにしてもすげぇな…流石は世界一のDホイールメーカーの社長だぜ…」

クロウはスーツを着たモヒカンの男・ボルガーにそう答える。

サテライト出身だったボルガーだがKCにその技術力を見出されてサテライトを脱出…今や世界有数のDホイールメーカーの社長となっていた。

 

 

『それで今日はどうしたんだ?遊びにきた訳ではないのだろう?』

 

「ああ、なぁこのカードの事を知らないか?」

そう言いながらクロウは牛尾から譲ってもらった「ブラッド・メフィスト」の写真をボルガーに見せる。

 

「ピアスンが死んだあの日、ピアスンと最期にデュエルしてた相手が使ってたんだ…心当たりはねぇか?」

 

『そのカードは…!』

カードの写真を見たボルガーは目を泳がせる

 

「何か知ってるのか!?このカードを使った奴がピアスンを殺したらしいんだ!何か知ってるなら教えてくれ!!」

クロウはボルガーに詰め寄るが…

 

『なぁクロウ…その事はもう忘れないか?そんな事をしてもピアスンは喜ばない』

 

「ボルガー…?何言って…!」

 

『それよりもクロウ、良ければ私の工場で働かないか?聞いた話だとお金に困っているんだろう?給料は弾む!』

 

「オイ、ボルガー!そんな事本気で言ってるのか!?まさかアンタがそんな事…ピアスンを忘れろなんて言うとは思ってなかったぜ!!…なるほどな、お偉い社長様には昔の事を気にしてる暇はねぇってか!?失望したぜボルガー!!!」

クロウはボルガーに向かって怒りを露わにして怒鳴り声をあげる…そしてそれはボルガーの琴線に触れた

 

『そこまで言われたら黙ってはいられないな!!…いいだろうクロウ、私とデュエルしろ!お前が勝ったら()()()の事を話してやる!…その代わり私が勝ったらお前の持っている「ブラック・フェザー・ドラゴン」を渡してもらうぞ!!』

 

「『ブラック・フェザー・ドラゴン』…!?待てよ!そのカードはあの日の火事で燃えちまったはずだ!」

 

クロウはボルガーの言葉を聞いて驚きを露わにした…『ブラック・フェザー・ドラゴン』…それはかつてピアスンのエースモンスターだったカードである。

『スターダスト』や『レッドデーモン』同様に世界に1枚しかないカードであり、ピアスンの死んだ際に燃えてしまったはずなのだ。

 

 

『隠す事はない…お前がピアスンの死の直前にブラック・バード号と一緒に託された事はしっている!』

 

「何言ってるんだよ!オレはそんな事知らねぇぞ!?」

クロウは嘘をついてはいない、確かにクロウはブラックバード号をピアスンに託され火事の中から救い出した…しかし「ブラックフェザー」の事は何も聞かされていないのだ。

 

『実は先の新型車を開発するのに無理をしてしまってね、少し資金難なんだ…融資を受ける為には「ブラックフェザー」が必要なのだ!』

 

「なっ…!?ボルガーお前…!」

 

『君の言いたい事はわかってるさ…だがピアスンが私と同じ立場なら絶対に同じ事をするはずだ…デュエルは2日後に我が社のライティングコースで行なう…異存はないな?』

 

「…わかったよ、受けてたってやるボルガー!!!」

ボルガーとクロウは火花を散らす…かたや資金を得る為に、かたや友の死の真相を知る為に…互いに負けられないデュエルとなった…!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!おかえりなさいクロウ兄ちゃん!」

 

「白野さんが翠さんの作った杏仁豆腐を持ってきてくれたの!」

 

「ジャックと遊星も遊んでくれたんだ!」

クロウはボルガーと別れマーサハウスへと立ち寄った、そこでは遊海の持ってきた杏仁豆腐を食べたりジャック達と遊ぶ子ども達の姿があった。

 

 

「クロウ、牛尾や雑賀から事情は聞いた…どうだったんだ?」

遊星がクロウに話しかけるがクロウは首を横に振る

 

「ダメだった…何か知ってるらしいだが話しちゃくれねぇ、それでライティングデュエルで話をつける事になった…ありもしない『ブラックフェザードラゴン』を賭けてな…まったく訳がわからねぇ…」

 

「…クロウ、話してくれないか…ピアスンの事を」

 

「いいぜ、ピアスンはな…オレの恩人なんだ…」

遊星に尋ねられたクロウはピアスンについて話を始めた。

 

鬼柳が逮捕された事で解散となったチーム・サティスファクション…クロウは新たな目標を見つける事ができず子ども達を世話しながらぼんやりとサテライトで生活していた。

そんなある日、クロウが世話をしている子どもの父親がシティの人間に酷い目に遭わされ、クロウは彼らに思わず殴りかかった…結果は多勢に無勢、クロウは追い詰められてしまう…そしてそこにバイクに乗った青年…ピアスンが現れた。

 

「ピアスンはオレと同じ『BF』使いだった…あの人はデッキを使いこなして『ブラックフェザードラゴン』を出してシティの奴らを撃退したんだ…」

 

 

その後クロウはピアスン達と行動を共にする事になる。

ピアスンはクロウと同じく子供達を集めて世話をしていた、それだけではなくデュエルディスクの調整や機械修理を教える事で子供達の手に職を持たせて自立できるよう訓練をしていた…ピアスンは現在の遊星に匹敵するメカニックだったのである。

 

そしてピアスンには夢があった…それは『サテライトにある物でサテライト初のDホイールを作る事』クロウもそれに賛同し彼を手伝っていた…あの事件が起きるまでは…。

 

 

 

〜3年前〜

 

 

「ピアスン!!…そんな…どうしてこんな事に!!」

ピアスンの作業場は炎に包まれていた…ピアスンを救う為に自分を顧みず火事に踏み込んだクロウが目にしたのは鉄骨に押し潰され身動きの取れないピアスンの姿だった…。

 

「ピアスン!今助ける!」

 

『来るなクロウ…!これは私の個人的な問題だ…それに私は…もう助からない…ゴボッ…!それよりも…ブラックバード号を…!』

ピアスンの視線の先には今にも炎に包まれそうなブラックバード号があった…。

 

『クロウ…ブラックバードを…子供達を頼む…うぅ…』

 

それがピアスンの遺言となった…クロウは涙ながらに炎の中からブラックバードを運び出し…作業場は完全に炎に包まれ爆発したのだった。

 

 

 

SideOUT

 

 

 

 

「オレは遊星やジャックみたいにアタマがいい訳じゃねぇ…オレにできたのはセキュリティやタチの悪い奴らからカードを盗んで子供達を喜ばせる事だけだったのさ…けどボルガーはすげぇんだ、KCに技術力を買われて今や大企業の社長だ…ピアスンの遺志を継いで旧サテライトにも工場を立てて…オレのしてきた事は何だったんだろうな…単なる罪滅ぼしに過ぎなかったのか、ピアスンを見捨てたオレの……」

クロウは自信を失くし項垂れてしまう…

 

「そんな事ないさクロウ…お前は立派にピアスンの意思を継いでいる!」

 

「遊星…」

遊星はクロウを励まし元気づける…遊星だけではない、彼らも…

 

 

「お〜い!遊星!クロウ兄ちゃん!何話してるの〜?コッチ来てよ〜!」

 

「メタルナイトが来たんだよ〜!」

子供達が笑顔で遊星とクロウに呼びかける

 

「見ろあの子達の笑顔を…あの子達に希望の笑顔を与えたのはお前じゃないか…自分を恥じる事は無い、自分が正しいと思った道を進んでいけばいいんだ!」

 

「遊星…ありがとよ!さて…あいつらと遊んでやるとするか!」

 

「ああ、それでこそだ!」

遊星とクロウは子供達と戯れるメタルナイト(遊海)のもとへと駆け寄った…。

 

 

 

「(…そういえばメタルナイトがサテライトで活躍し始めたのはあの事件のあとだったな…あの人がもう少し早く動いてくれたら…)」

 

 

 

 

 

 

 

〜2日後〜

 

ついにクロウとボルガーのデュエルを行なう日がやってきた…会場はボルガー&カンパニーのテストサーキット、そこでクロウとボルガーが対峙する…そしてコースを見渡す制御塔には戦いを見届ける為に遊星とジャックが訪れていた…。

 

 

「遊星、彼奴…遊海は来なかったのか?」

 

「ああ、一応声を掛けたんだが…用事があるらしい、オレ達だけでも見届けよう…あの2人の決着を…!」

 

 

 

『本当にいいんだなクロウ!』

 

「ああ…オレはオレなりのやり方でピアスンの遺志を継いでみせる!!」

 

『いいだろう…勝負だ!クロウ・ホーガン!!』

ピアスンの真実を賭けたデュエルが今、始まる!

 

 

「『ライティングデュエル・アクセラレーション!!』」

 

 

デュエルダイジェスト クロウ対ボルガー

 

 

 

ついに始まったクロウとボルガーのデュエル、クロウはBF特有のモンスター同士の連携で速攻をしかけようとする…しかし立ち塞がるのはボルガーの操る「黒」のBFの対になる「白」のモンスターWW(ホワイト・ウォリアーズ)、そして「相手のモンスターが受ける自身以外のモンスター効果を無効にする」効果を持つ罠カード「ホワイト・アウト」…完全なるBFに対するメタカードである。

 

 

『BFのモンスターは一体一体は脅威にはならないが仲間が仲間を呼び、連携する事で力を生み出すデッキ…ならばその「絆」を断ち切るだけだ!!』

 

さらにボルガーは「お互いのターンの終わりにそのターンに破壊されたモンスター1体に付き400のダメージを与える」罠カード「ヘブンズ・アロー」を発動しクロウを追い詰める…!

 

 

「(ならこのカードで『ホワイト・アウト』を無効にして…!)」

クロウは「トラップスタン」で逆転を図るが…相手は幾度となくデュエルしたボルガー…「WWー縄金票のスノー」と「宝盾のフォッグ」のコンボにより伏せカードを破壊されてしまう。

しかしクロウもただでは終わらない、「アームズ・ウィング」をシンクロ召喚したクロウは相手の「ヘブンズ・アロー」を逆手に取り「宝盾のフォッグ」を破壊しライフ2800までボルガーを追い詰める…!

 

 

「ボルガー!このデュエル、オレは負ける訳にはいかねぇんだ!!ピアスンを殺した奴を突き止める為に!!」

 

『なるほど…決意は固いらしいな、ならば教えてやろう!!』

追い詰められたボルガーは悪魔にその魂を売り渡す!

 

 

『私はレベル4の「鉄槌のヘイル」にレベル4の「縄金票のスノー」をチューニング!』

 

4+4=8

 

『心の闇より生まれし者よ…今、魂を引き換えに降臨するがいい!シンクロ召喚!脈動せよ!「ブラッド・メフィスト」!!』

ボルガーの場にシルクハットを被った黒い悪魔が現れる…そのモンスターこそは開発中止となったリアルダメージを相手に与える悪魔・ブラッドメフィストだった。

 

「なっ…!『ブラッド・メフィスト』だとぉ!?ボルガー!お前まさか…!!」

 

『ああ、そうさ…ピアスンを殺したのはこの私だ!だが仕方なかった…仕方なかったんだ!!』

そしてボルガーはあの日の事を語り出した。

 

 

当時、資金難によりDホイールの開発が難航していた事

 

Dホイール開発を聞きつけたシティの金持ちが融資を持ちかけたがピアスンがそれを断った事を…

 

 

『あいつにとって重要だったのはDホイールを完成させる事じゃなくて「サテライト初のDホイール開発者になる事」だったんだ!!許せる訳ないだろう!!』

業を煮やしたボルガーはピアスンからDホイールの設計図を強奪…それを止めようとしたピアスンとデュエルになり…ピアスンは炎へと消えたのだった。

 

 

『だが私は後悔していない!私のおかげで量産型Dホイールが完成した!旧サテライト地区の人々も気軽にライティングデュエルができるようになった!例え殺人犯になろうと…私は工場を守りきる!!』

ボルガーの理想は歪み果てていた…ボルガーの目は曇り、真実は見えていない…。

 

 

「そんな事信じられるか!!ピアスンがそんな奴だなんて…オレは信じねぇ!!」

 

『ならば力ずくだ!お前をピアスンと同じ目に遭わせようと…私は「ブラックフェザードラゴン」を手に入れる!!』

 

デュエルは続く、ブラッドメフィストの効果は2つある…1つは「1ターンに一度相手フィールドのカード一枚につき300ダメージを与える効果」、そして「相手がカードをセットするたびに300ダメージを与える」効果…しかもその両方にリアルダメージが発生する。

クロウも抵抗するがライフも体力も追い詰められ、残りライフ300となってしまう。

 

「(カードをセットすればオレの負け…オレはここまでなのか…?ピアスンの仇も取れずに、こんなところで…!!)」

 

 

 

 

『クロウ兄ちゃん!!負けないで!!』

 

『コッチ見て!クロウ兄ちゃん!!』

 

 

「えっ…!」

諦めかけたクロウの耳に聞き慣れた声が響く、コースを見渡す制御塔…そこにはブルーノが引き連れてきた子供達がプラカードを持って声援を送っていた!

 

『クロウ兄ちゃん!ボク達みんながついてる!!だから…負けないで!!』

 

「お前達…!」

子供達の声援がクロウの心に火をつける…さらに

 

 

 

「クロウ・ホーガン!!」

 

「っ…メタルナイト…?」

 

制御塔の上に遊海が現れ、激を飛ばす!

 

「クロウ!お前の守りたいものはなんだ!どうしてお前は戦い続けてきた!!それを思い出せ!!」

 

「オレの守りたいもの…」

その瞬間、クロウの脳裏に様々な光景がよぎる…マーサハウスの子供達、遊星やジャック達シグナーの仲間…その思いがクロウのオリジンを呼び起こす!

 

「守りてぇ…あいつらの笑顔を!あいつらに受け継がれるピアスンの遺志を!!!

クロウは思いを叫ぶ…その思いは確かに届けられた!

 

「それでこそだ!さぁ…長き眠りから目覚めろ!!シグナーの新たな竜よ!!熱き思いに応え…その姿を現せ!!」

遊海が右腕を掲げる…それに呼応するようにクロウ達の痣が輝きを放つ!

 

「なっ…赤き竜の痣が…!なんだ!?」

 

 

CERTIFIED(資格認証)

 

 

ブラックバードのモニターにコードが表情され一枚のカードが射出される…それはブラックバードの解析不能だったブラックBOXに封印されしカード「ブラックフェザードラゴン」!

 

 

「何…!?これは一体どうなっているんだ!?」

 

「ブラックバードの中にカードが!?」

遊星達も驚きを露わにする…どんな天才でもDホイールにカードを隠すなど考えつかないだろう。

 

 

「『ブラックフェザードラゴン』…そうか、だからピアスンは…!!ピアスン!アンタの想い!確かに受け取ったぜ!!!」

クロウはピアスンの本心に気がついた…その思いをボルガーに伝える為に黒き翼は再び空に舞い上がる!!

 

「オレはレベル4の『黒槍のブラスト』にレベル4の『東雲のコチ』をチューニング!!」

 

4+4=8

 

「黒き疾風よ!秘めたる思いをその翼に現出せよ!!シンクロ召喚!舞い上がれ!『ブラックフェザードラゴン』!!」

黒き羽が舞い散り、鴉の姿をした黒竜が舞い上がる!!

 

「あれが…シグナーの5体目のドラゴン…クロウの新しいエースなのか!」

遊星達が決闘の成り行きを見守る中、クロウは「エンジェルバトン」で手札を補充しその効果を発動させる!

 

「オレはカードを一枚伏せる!!」

 

『血迷ったか!?ならば引導を渡してやる!やれ!「ブラッドメフィスト」!!』

ブラッドメフィストが魔力弾を放ちクロウのライフを消そうとするが…その攻撃はブラックフェザーに吸収される!

 

『なんだと!?』

 

「見たかボルガー!これが『ブラックフェザー』の効果!ダメージドレイン!戦闘ダメージ以外のあらゆるダメージを『ブラックフェザー』は攻撃力を糧に吸収する!!オレはさらに伏せカードを戻し400ダメージを受ける事で墓地の『精鋭のゼピュロス』を特殊召喚!さらに『ゼピュロス』はカードをセットする事で破壊され、オレは『ブラッドメフィスト』の効果で300ダメージを受ける!!」

 

『こ、これは…無限ループだと!?』

セット→ダメージ→バウンス→特殊召喚→ダメージ→セット→破壊→ダメージ→バウンス……そのループが繰り返されるたびにブラックフェザーの白き翼が赤黒く染まっていく…

 

『その身を盾にクロウを守り…その身を削っていく…』

 

「ボルガー!アンタだって本当はわかってた筈だ!ピアスンはDホイールをただ完成させたかったんじゃない!!子供達に伝えたかったんだ!『自分達にも何かが成し遂げられる事』を!シティの力を借りずに自分達の手で!だからピアスンは援助を断ったんだ!!!

 

『なっ…!?まさか私は…思い違いをしていたというのか…!?』

クロウの言葉を聞いてボルガーの身体に電流が走った…ただ夢を追い続けたピアスン、金と疑念に支配されたボルガー…2人の些細なすれ違いがあの悲劇を生んでしまったのだ。

 

 

「そうだ!ピアスンは言っていた!『私には彼らの気持ちが痛い程解るんだ…親を失った彼らの心の痛みが…行き場を失い、自分が生まれた理由もわからない苦しみが…』…「ブラックフェザードラゴン」は痛みを吸収しその身を黒く染めていく…このドラゴンはピアスンと同じだ!サテライトの悲しみを…痛みをその身に背負ってサテライト初のDホイールを完成させる事で、サテライトの解放を目指したピアスンと…!だからこそ「ブラックフェザードラゴン」はピアスンの元に舞い降りた!!ボルガー!!この「ブラックフェザー・ドラゴン」の黒く染まった翼は、ピアスンがお前から受けた痛みだ!!お前もその痛みを感じろ!!『ブラックフェザードラゴン』のさらなる効果を発動!下がった攻撃力を元に戻す事で相手モンスターの攻撃力をその数値分ダウンさせる!!ブラック・バーストォ!!」

ブラックフェザードラゴンの攻撃力は2800…そしてゼピュロスにより400、ブラッドメフィストにより300…計700ポイントずつ下がり攻撃力は0、そしてブラッドメフィストの攻撃力は2800、黒き翼の怒りを受けた悪魔は苦しみの呻き声をあげる!!

 

 

「『ブラックフェザードラゴン』で攻撃力0となっている『ブラッドメフィスト』を攻撃!ノーブル・ストリーム!!」

赤黒い炎の玉が悪魔、そしてボルガーを飲み込んだ…。

 

 

『ピアスン…お前がそこまで子供達の事を思っていたとは…!名声に目が眩んでいたのは…私の方だった…すまない…!』

 

 

ボルガーLP0

 

クロウWIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「やった〜!やったねクロウ兄ちゃん!!」

 

「『ブラックフェザードラゴン』かっこよかったよ!!」

 

ライティングが終わり子供達と遊星がクロウに駆け寄る

 

「クロウ…いいデュエルだった」

 

「ああ、ありがとよ遊星…」

遊星とクロウは拳を突き合わせた…

 

 

『クロウ…私は自首するよ…自分の犯した罪を償わなければな…すまなかった』

 

「ボルガー…それはピアスンの墓に言ってやってくれ」

ボルガーは項垂れながら謝罪する…親友の真意を知り彼は深く傷ついていた…。

 

 

 

 

 

 

 

「その必要はないぞボルガー…直接謝ればいい」

 

『えっ…』

 

「メタルナイト…?」

 

「何を言って…?」

クロウ達のもとに遊海が現れる

 

「何を言っているんだ、ピアスンは死んでいる…直接謝るならば冥界にでも行かなければ無理だろう、今は冗談を言っていい場面ではないぞ!」

ジャックが遊海に正論を叩きつける

 

「ジャックにしては正論をいうな…だが()()()()()()()()()?」

 

「なんだと?まさか…!」

 

「俺を誰だと思ってるんだ?この町を守る正義のヒーローメタルナイトだ!…さて、感動の再会といこうか…ピアスン!!」

 

『あ〜…その…久しぶりだなクロウ、ボルガー…』

 

「「「『はっ!?』」」」

 

メタルナイトが少し避ける…その後ろには火傷の跡が残り、右足が義足になっているものの元気な姿のロバート・ピアスンその人が立っていた。

 

 

「ピ、ピアスン!?本当に本物なのか!?」

 

『そんな…お前は作業場の爆発で…!』

あまりの事態に動揺するクロウとボルガー…死んだはずの人間が出てくれば無理もないだろう…。

 

『いや…私も流石に死んだと思ったんだが…この人が…な?』

ピアスンは頭を掻きながら遊海を指差した…。

 

 

 

 

 

 

 

〜3年前〜

 

「ゴホッ…酷い火事だな…!」

 

《急いでくださいマスター!要救助者1名です!》

クロウがブラックバードを脱出させた直後、まだ名の知られていなかった遊海とアヤカがピアスンの火事現場へと救出に赴いていた…。

 

《要救助者発見!広範囲に火傷を負っています!急ぎましょう!!》

 

「わかってる!どりゃ!!」

遊海は鉄骨を投げ捨てピアスンを救出する

 

「おい!大丈夫か!俺がわかるか!?」

 

『うぅ…』

 

「まだ息がある!足は駄目だが命は助かりそうだ!急いでKCの病院へ連れて行くぞ!来い!『閃光竜』!!」

 

《キュオオオン!!》

遊海は閃光竜に乗り飛翔する…その風圧により作業場は完全に崩壊した…。

 

 

SideOUT

 

 

 

 

 

『それでシティに連れていかれた私はずっと治療を受けていたんだ…すまなかった2人とも…』

 

『ピアスン…謝るのは私だ!すまなかった!!お前の想いを私は…!』

ボルガーはピアスンの前に跪く

 

『ボルガー…気にしないでくれ、これからは一緒に最高のDホイールを作っていこうじゃないか…!』

ピアスンはボルガーの肩に手を置いて彼を許した…本来なら果たされる事のなかった友情が再び結ばれたのだ。

 

 

「ピアスン…オレ…オレは…グスッ!」

 

『泣くなよクロウ…悪かったなマーカーもこんなに増やして…だけどお前の叫びは聞こえたよ、やっぱり「ブラックフェザードラゴン」はお前にこそ相応しいドラゴンだ…』

 

「えっ…?」

ピアスンはクロウの頭を撫でながらブラックフェザーを譲り渡した。

 

『あのカードはな、ブラックバードに乗ったデュエリストが本当に強い願いを口にした時に取り出せるようにしてあったんだ…「子供達の笑顔を守る」、その願いを忘れるんじゃないぞ…クロウ』

 

「ああ…ああ!忘れねぇよピアスン!!オレはもっと強くなる!そして子供達の笑顔を守る決闘者になるんだ!」

クロウは涙を拭いピアスンをまっすぐ見つめた…

 

『ああ、応援してるよクロウ!』

 

「でも…その前に1発殴らせろピアスン!!心配かけやがって〜!!」

 

『おいおい!?怪我人に暴力はやめてくれ!?』

そしてクロウとピアスン…2人の朋友は黒き羽の下で再会を果たしたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

「…もはやなんでもアリか」

 

「ジャック、考えるだけ無駄だ…あの人に常識は通用しないさ…」

あまりの超展開に思考を放棄した遊星とジャックなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数週間後…

 

カチャカチャ…ギュイイン…!

 

ボルガー&カンパニー社改め「ボルガー&ピアスン・カンパニー」の工場にて運び込まれた遊星号とブラックバードの新たなエンジンの積み込みが行われていた。

 

「ピアスン社長代理!リック副社長!新型エンジンの積み込みが完了しました!ブルーノ君のプログラムとの相乗効果で出力が200%アップしています!これならどんな相手とも闘えるでしょう!これがシュミレートとテスト走行の結果です!」

 

『うん、ありがとう!どうだい?クロウ、遊星?』

作業員が端末をピアスンへと渡す…2人の隣では遊星達4人と遊海がその様子を眺めていた。

 

 

「想像以上だピアスン…これならオレ達のプログラムも最大限に活用できる…!」

 

「でもいいのかよリック?ボルガーがパクられて経営が苦しいんじゃ…」

新たなエンジンの出来に目を輝かせる遊星…クロウはその様子を見て心配そうに副社長のリックに話しかける。

 

ボルガーはライティングデュエルのあとにセキュリティに自首した…容疑はピアスンに対する()()と収賄罪、ボルガー曰く『ピアスンと共に歩む前に私の罪を精算しなければ顔向けできない』からとの事だ。しかし傷害に関してはピアスンが情状酌量を求めている為に長くはならないだろう…。

 

 

「ええ確かに社長が逮捕された事で我が社の信頼は落ちてしまいましたが…社長たっての願いです、問題ありませんよ!」

ボルガーは自首する前に『ピアスンとクロウ達にせめてもの罪滅ぼしを』と言う事でピアスンを臨時社長に、遊星達に新しいエンジンを提供したのである。

 

 

「ん?…ボルガーを社長から解任しないのか?」

遊星がもっともな疑問を口にする…しかしそれを聞いたリックは柔らかい笑顔でこう答えた。

 

「確かに社長は罪を犯しました…それは紛れもない事実です、しかしそれ以上に私達社員は社長がDホイールに懸けてきた熱意を…愛を知っています、社長が罪を償うまで私達…そしてピアスンと共に会社を守っていきます!」

 

『それに遊海さんのおかげで海馬社長との繋がりもできたからね!人の噂も75日というだろう?地道に活動して信頼を取り戻していくよ!』

 

実はピアスン、治療を受けながらKCの研究所に通い詰めさらなる知識と技術を手に入れていた、死にかけてもただでは起きない…不屈のメカニック魂である。

 

『それに私は所詮「夢追い人」…経営の方はからっきしでね、リックやボルガーに頼らないと少し危ないからね!』

 

「ハッ…アンタらしいぜピアスン!」

 

「ありがとうピアスン、リック…オレ達はその思いを無駄にはしない!必ず勝利を掴んでみせる!」

 

遊星とピアスン、リックは固い握手を交わす…こうしてWRGPの準備が整ったのだった。

 

 

 

 

 

 

『そういえば遊海、翠さんの「ヴァイオレット・キュイラッシェ」の調子はどうだい?なんなら新型エンジンつけようか?』

 

「いや、まだ完全に乗りこなした訳じゃないから今度でいいよ…それにしてもよかったなピアスン…頑張れよ!」

 

『ああ、貴方のおかげで私は仲間達との時間を取り戻す事ができた…本当にありがとう…!私はボルガー達と一緒に新たなDホイールを開発していくよ!』

遊海とピアスンは固い握手を交わす…この後ボルガー&ピアスン・カンパニーは再び人気を取り戻し、真の世界一企業になったのはそう遠くない未来の話である。

 

 

──────────────────────

 

そしてところは代わり遊星達の拠点・ポッポタイムのガレージ…そこには遊星やジャック、クロウ、龍亞&龍可にアキ…そして遊海にブルーノ、シグナーメンバーが勢揃いしていた。

なお、遊星やクロウはライティングスーツを新調していた…日頃の節約の賜物である。

 

 

「うわ〜!カッコいい〜!!」

 

「遊星!新しいスーツ似合ってるわよ!」

 

「ああ、ありがとうアキ」

 

「フン、馬子にも衣装だな!」

 

「ハッ…オメェはいつもと変わらねぇじゃねぇか!」

 

「俺は常にライティングスーツだ!これ以上のデザインなどありはしない!」

既に準備は万端…遊星達は気力に満ち溢れていた…。

 

「えっと…5D's…?これがチーム名なの?」

龍可が遊星達のライティングスーツとDホイールに貼り付けられたステッカー見て尋ねる

 

「ああ…ってもジャックが言い出したんだけどな?」

 

「貴様が提案した『噴水広場仲良し連合』よりはマシだろうが!!」

…クロウ達の命名センスは皆無だった。

 

「5D'sって事は5つの『D』でしょ?デスティニーのD…デストロイのD…デスのD…ダークのD…デッドヒートのD…デビルのD…それからみんな大好きブルーノちゃんのあいたぁ!!?」

盛大なボケを披露したブルーノの頭にジャックの鉄拳が炸裂する!

 

 

「馬鹿者!5D'sは赤き竜の基本形の5つの痣と5体のドラゴンから取った『D』だ!!…俺達は赤き竜の痣により集められた絆で結ばれている!その象徴が『5D's』だ!」

 

「いい名前じゃないかジャック、お前達の絆を象徴するいいシンボルだ」

遊海はそのチーム名に賛成する

「フッ…流石だな遊海、目の付けどころが違う」

 

「確かにおれには痣はないけど龍可の痣のおかげで皆に会えたんだもんな〜」

 

「龍亞、お前は龍可と二人で1人前だ!」

 

「「え〜!?そんなぁ!」」

 

「ジャック!僕の名前も入ってないよ!どうせならチーム5D'r withブルーノちゃ、あいたぁ!!?」

 

「お前は黙っていろ!」

再びの鉄拳が炸裂した!

 

「冗談なのに〜…そういえば遊海は?彼もシグナーの仲間だろ?仲間外れは酷いんじゃないかい!?」

 

「「「あっ」」」

ブルーノの疑問を聞いた龍亞兄妹てアキが声をあげる…遊海を入れれば6D's(7D's)になるが、それでは語呂が悪いだろう…

 

「いいんだよブルーノ…俺は伝承には無い『イレギュラー・シグナー』だ…そもそも痣があるだけでシグナーなのかもわからないしな…」

遊海は自分の痣を見つめる…遊海の痣は先日の騒動もあり未だに赤く腫れている。

 

「遊海さん…その件について話があるんだ」

 

「遊星?どうしたんだ?」

遊星が真剣な顔で遊海に話しかける…。

 

 

 

 

 

「遊海さん…いや、『決闘王』白波遊海にお願いしたいんだ…どうか、オレ達『チーム5D's』と共にWRGPで戦ってほしい…!」

 

 

「えっ…!?」

 

「「「「「えぇ〜!?」」」」」

 

ポッポタイムに5D'sの叫びが響き渡った…。



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結成!チーム・真5D's〜カミングアウト〜

こんにちは!S,Kです!

試しにアンケートを取ったらジワジワとナイトメア√が増えてる件、反映するかは未定ですが…ナイトメア√、今考えてるアイデアだと私の技量が足りないかも…??
…まぁ、いいか!

それでは最新話をどうぞ!今回はリクエストアンケートを反映させた話となっています!


「『決闘王』白波遊海にお願いしたいんだ…どうか、オレ達『チーム5D's』と共にWRGPで戦ってほしい…!」

 

 

「「「「ええ〜!?」」」」

遊星の思わぬ頼みに龍亞、龍可、アキ、ブルーノが驚愕の声をあげる…それは表向き平静を装っていた遊海も同じだった。

 

 

「遊星…お前、自分が、何を言ってるのか、わかってるのか…?俺は自分で言うのもアレだがゲームのラスボスか裏ボスみたいなモンだぞ?チートキャラだぞ?」

 

「ええ、だけどこれはオレとジャック、クロウと話し合って決めた事なんです」

遊海の問いかけに遊星はそう答える

 

「ああ、最初は俺も驚いたが…遊星の話を聞いて納得した…遊海、俺からも頼む、俺達と共に戦ってほしい…!」

 

「なっ…!?(プライドの高いジャックが自分から頭を下げた…だと!?)」

遊海は再び驚愕した…幼い頃から人に対して(マーサを除く)頭を下げる事が少なかったジャックが自分から頭を下げて遊海に頼み事をしたのだ。

 

 

「遊星…なぜ俺をチームに誘おうと思ったか聞いてもいいか?…俺がチームに参加するかはその理由次第だ…!」

 

「ええ…あれは鬼柳の事件から少し経ったあと…遊海さんが体調を崩していた時の事です…」

そして遊星は話しだした…遊海をチームに誘うきっかけとなった事件の事を…

 

 

 

 

 

 

1ヶ月程前…

 

その日、遊星はブルーノと共に治安維持局を訪れていた…訪れたのはブルーノの現状を牛尾達に伝える為だった。

そして牛尾達に報告を終えた遊星達は治安維持局をあとにしようとしたが、そこで事件が起きた…何者かが治安維持局を爆破させたのである。

 

遊星達は停止してしまったエレベーターからなんとか脱出し出口を目指した…そんな中で地下に向かうセキュリティに変装したシェリーとミゾグチの二人を発見し遊星達はそれを追いかけた…爆破事件はシェリー達がある目的の為に起こした事件だったのだ。

 

シェリーを追いかけた遊星は道を阻むミゾグチとデュエルとなる、「不退の荒武者」と罠カード「主従の覚悟」のコンボに苦しめられながらも遊星はミゾグチに勝利した…そして和解したミゾグチとシェリーを追った先に見たのは眩い光の嵐…シェリーの目的は意識不明の父親から密かに託された謎のカード『Z-ONE』をセキュリティのスーパーコンピューターで解析する事だったのだが…結果は何の変哲もないカード…しかし突如発生したエネルギーが光を放ち遊星達を飲み込んでしまったのだった。

 

 

 

 

「っ…ここは…?オレ達はコンピュータールームにいたはず…」

遊星が気がつくとそこは一面白の世界だった、周りではブルーノとシェリーが周りを見渡している。

 

「こんな場所…治安維持局の見取り図にはなかっわ…!」

 

「ねえ…あれはなんだろう…?白い…機械…?」

ブルーノの言葉に遊星達は視線を向ける…そこにはまるでアンモナイトのような白い巨大な機械が浮いていた。

 

「あれは…いったい…?」

 

 

 

『我が友の気まぐれに感謝するんだな…不動遊星』

 

 

 

「!?」

遊星はその瞬間「死」を錯覚した、突如として響いた声…そして機械の傍らに現れた人影からは濃密な死の気配が漏れ出していた。

 

 

「貴方…は…!」

 

『何処かで会ったか女?…まあいい、些細な事だろう…さらばだ』

その時、機械が()()()()()()…その直後遊星達は意識を失った。

 

 

『…ゾーン、いいのか?こいつらを放置して』

 

【よいのです、彼らは新たな脅威を知った…脅威に対する思いが彼らを成長させる事に期待しましょう】

 

『そうか…ならばいい』

 

 

SideOUT

 

 

 

 

 

 

 

「そして気づいたオレ達は治安維持局の外にいた…あの空間で出会った黒コートの男…あれは…」

 

「ゲイザー…!!!」ギリリ カタカタカタ

 

「「ヒッ…!?」」

 

遊海から殺気が溢れ出す…その迫力に龍亞兄妹とブルーノが尻もちをついてしまう

 

《マスター…》

 

「ああ、わかってる…俺は冷静だ…」

アヤカが現れ遊海に声をかける…遊海はなんとか殺気を引っ込めた…。

 

 

「遊海さん…正直に言ってオレは奴に勝てる気がしなかった…今までの敵とは()()()()()()()()()…そう思ってしまったんだ…!」

そう言った遊星の腕は少し震えている…それは自分への悔しさとゲイザーへの恐怖が混ざった震えだった。

 

「遊海、オレもアンタと一緒にゲイザーって野郎に会ったが、ありゃ本当にバケモンだ…もしあいつがGPに出てきたとしたら…勝てる気がしねぇ」

クロウも1年前、夜の高速道路でゲイザーと対峙している…その時は遊海も重症を負い、クロウ自身もゲイザーの威圧に呑まれてしまっていた。

 

「二人がここまで言うのならばゲイザーという奴はそれほどの決闘者なのだろう…俺は奴を倒せると思っていたが…ある映像を見つけたのだ」

 

「ある映像?どんな映像だったの?」

ジャックの言葉に龍亞が尋ねる

 

「17年前…バトルシティ・レジェンドの準決勝…遊海と『ラプラス』と名乗ったゲイザーのデュエルだ…!」

 

「!?…その、映像は…どうして…!」

遊海は驚いた…その映像は生放送された映像で記録も厳重に保管されていたはずだからだ。

 

「この前、ゾラに頼まれてポッポタイムの掃除を手伝った時に古いビデオを見つけたんだ…『インフェルニティ』を操るゲイザーと『まやかし』というデッキを使った貴方の決闘を…」

遊海の疑問に遊星が答える…それはまったくの偶然の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

少し前…

 

 

「おのれ…俺がなぜ倉庫の掃除など…!」

 

「まあ、たまにはいいじゃねぇかジャック…ゾラのばあさんには世話になってんだから…」

 

その日、遊星達はポッポタイムの倉庫の掃除を手伝っていた…流石に昔からある時計店なだけはあり、たくさんの時計やその部品・雑貨などが置いてある。

 

 

「ジャック、すまないがこの箱を上の段に上げてくれ」

 

「フン…任せろ、任された仕事はきっちりこなすのがこの俺だ!」

 

「まぁ、だいたい失敗するけどな…この前のバイト探しみたいに…」

 

「クロウ!その言い草はなんッうおおぁ!?」

 

ドンガラガシャーン!! バラバラバラ…

 

「…言わんこっちゃねぇ…」

 

遊星から箱を渡されたジャックが箱を上にあげるが…脚立代わりに使っていた木製のイスの座面が抜けてバランスを崩して倒れこんだ!

 

 

「おい!ジャック大丈夫か!?」

遊星が崩れた荷物からジャックを掘り起こす…

 

「ぬぬぬ…今日はなんという日だ!!ゴホッゴホッ…!」

 

「しかしこりゃイチからやり直しだなぁ…ん?ジャック、お前何を持ってるんだ?ビデオ?」

クロウがジャックが手にしている物に気づく

 

「ん?倒れる時に無意識に掴んだのか……これは…!?」

 

「どうしたんだ?そんなに驚いて…?」

 

「ゾラの昔のビデオか?」

ビデオを見て絶句しているジャックに遊星達が尋ねる…ジャックは無言でビデオのタイトルを遊星達へと見せた。

 

 

【20XX年 バトルシティ・レジェンド 準決勝】

 

 

「「なっ!?」」

そのタイトルを見た瞬間、遊星達は驚愕した…バトルシティ・レジェンドの映像は規制されほとんど残っていないのだ…。

 

『すごい音がしたけどどうしたんだ…なんだいこの散らかり方は!?アンタ達掃除をしにきたのか散らかしにきたのかどっちなんだい!?』

音を聞きつけたゾラが倉庫に入ってきて唖然とし怒鳴り声をあげる…しかし遊星がゾラへと駆け寄る…

 

「ゾラ!このビデオは…!?」

 

『ビデオ?…ああ、こりゃ私の旦那のビデオだよ…旦那もデュエルが好きでねぇ……ってそれよりも倉庫を早く片付けておくれ!?』

 

「は、はい!!」

そして遊星達は急いで倉庫を片付け、ゾラにお願いして映像を見せてもらったのだ…。

 

 

 

 

SideOUT

 

 

 

 

 

「記録されていたデュエルは凄まじい戦いだった…仮に俺があの状況に置かれたら…俺は負けていただろう…」

 

映像の中のデュエルは凄まじいものだった、高攻撃力のモンスターが2体並び、さらにカウンター罠と除去カードがフィールドにある状況…その状態から遊海は怒涛の連続シンクロコンボによって1ターンでゲイザーを倒したのだ。

 

 

「それで3人の意見が一致したんだ…ゲイザーに対抗できる決闘者は遊海さんだけだと…これが理由です」

 

「…なるほどな…奴が出てきた時の保険って訳か…」

遊海は遊星の話を聞いて考えこむ…

 

「それだけじゃない、遊海さんの戦術眼を見込んでチームの『監督』としてオレ達を導いて欲しいんだ…どうだろうか…?」

 

「…いいだろう、遊星…俺も5D'sの一員としてWRGPで戦おう!」

遊海は自分の迷いを振りきり改めてチーム5D 'sに入る事を決めた…!

 

 

「本当ですか…!ありがとうございます!!」

 

「よっしゃ!これで百人力だぜ!!」

 

「やったわね!遊星!」

遊海の加入に喜びに湧く遊星達…しかし

 

「ただし…条件がある!」

 

「条件だと…?」

 

「いったいどんな…?」

遊海の言葉にブルーノは首をを傾げる

 

 

「ジャック、クロウ、アキ…俺とデュエルをしてもらう…それが条件だ」

 

「「「なんだと!?/なんですって!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は移りポッポタイム前の広場…遊海の力によって人払いの結界を張られたその場所で遊海とジャック、クロウ、アキの3人が対峙する…!

 

 

「遊海!いきなりデュエルとはどういう事だ!しかも遊星を抜きにアキを入れるとは…!」

 

『ええ、いったいどういうつもりなの…?』

ジャックとアキはいきなりのデュエルに困惑する。

 

「簡単な話だ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()を教える為のデュエルだ」

 

「オレが知っていて…」

 

「オレ達の知らない事…?なんだそりゃ?」

遊星とクロウは首を傾げる

 

「お前達はこれから向き合う『敵』…イリアステルの危険性をわかっていない、その危険性を伝える為のデュエルだ!」

 

 

「イリアステル…?それってなんなの?」

龍亞が遊星に問いかける…遊星は子ども達にイリアステルの事を話していなかったのだ。

 

「イリアステルは遊海さん曰く、過去と未来を行き来して未来を変えようとする秘密結社の事なんだ…以前に『スターダスト』を奪ったパラドックスもその一員らしい…」

龍亞の問いに答えながら遊星はデュエルを思い返す…時空の果てにて伝説の決闘者達と共に全てを懸けて戦った事を…。

 

 

「イリアステルのデュエルは今までのデュエルとはレベルが違う…その力の差をお前達に認識してもらう…!さぁ…【かかってこい…!】」ズン…!

 

「「「くっ…!?」」」

遊海の生み出した本気の闘気が場を支配する…

 

 

「いいだろう…!ジャック・アトラスはこの程度で怯みはしない!!」

 

「アンタと戦うのは初めてだよな…!いくぜ遊海!!」

ジャックとクロウはデュエルディスクを構える!

 

『私だって…翠さんから特訓を受けて強くなったわ!いくわよ!!』

《(≧▽≦)》

アキもデュエルディスクを構える…その肩に黒薔薇の魔女が現れる!

 

【さぁ…デュエルだ!!】

 

 

 

 

 

 

 

「「『【デュエル!!】』」」

 

遊海LP4000

 

クロウ

アキLP4000

ジャック

 

特殊ルール 変則バトルロイヤル

 

フィールド非共有(1人各5枠 任意で味方の効果を発動できる)

遊海は相手フィールドにモンスターがいる時は相手プレイヤーにダイレクトアタックできない

 

順番

 

遊海→クロウ→遊海→アキ→遊海→ジャック→遊海…

 

 

 

 

 

 

 

「何なのだこのルールは!?お前1人で俺達を相手にしようというのか!?」

 

【そうだ、これは俺からのハンデだ…油断したら…すぐに終わるぞ?】

 

「(このルール…これは…!)」

不自然なルールに疑問を抱くジャック…それと共に遊星は既視感を抱いていた…。

 

 

 

【俺のターン!ドロー!!】

【俺は永続魔法「SinTerritory 」を発動!その効果によりデッキからフィールド魔法「Sin World」発動!!】

周囲の空間が歪み不気味なビル群に包まれる!

 

「なんだ…!この場所は…!」

 

「なんだろう…この場所…怖い…!」

《クリリ〜ン…》

一変した景色にジャックは驚き、龍可はクリボンを抱き寄せる…

 

「そんな…!?このフィールドは!!」

 

「どうしたんだ遊星!このカードの事を知ってるのか!?」

動揺する遊星にクロウが問いかける…しかし、返ってきたのは予想外の答えだった。

 

「このカードはパラドックスの使ったカードだ!!遊海さんが何故このカードを持っているんだ!!」

 

「「『なんだって!?』」」

その答えを聞いたジャック達は驚愕する…遊星が未来で伝説の決闘者達と共に戦った強敵…そのカードは燃え尽きてしまったはずだった…。

 

【心配するな遊星、死にはしない…答え合わせはデュエルのあとだ!!俺は『SinWorld 』が存在する事でエクストラデッキの『サイバー・エンド・ドラゴン』を除外し!現われろ!『Sinサイバー・エンド・ドラゴン』!!】

黒と白の仮面を装着した機械龍が咆哮する! ATK4000

 

『攻撃力4000…!』

 

「いきなり出てきやがった!?」

 

「伝説の決闘者『皇帝』の操るサイバードラゴンだと…!?」

いきなりの大型モンスターの登場に3人は絶句する…

 

【俺はさらにエクストラデッキの『スターダストドラゴン』を除外!現われろ!「Sinスターダストドラゴン」!!】

 

「「「「な、なんだって!?」」」」

遊海のフィールドに仮面を着けた星屑の竜が現れる ATK2500

 

 

「遊星!君の『スターダスト』は!?」

 

「ある!この手に持ってる!!なのにどうして!?」

ブルーノの言葉に遊星は自分のデッキを確認する…遊星のスターダストはしっかりとその手に握られている…

 

【先攻は攻撃できない、カードを2枚伏せターンエンド!】

遊海LP4000

sサイバーエンド sスターダスト SinWorld Sinテリトリー 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「これがアンタの本気って訳か…!いいぜ!乗り越えてやる!」

 

【かかってこい!クロウ!!】

 

 

 

@クロウ

 

「オレのターン!ドロー!」

「『BF-黒槍のブラスト』を召喚!」

槍を持った鳥人が現れる ATK1700

 

「さらにオレは『BF-疾風のゲイル』を特殊召喚!」

黄色い嘴が特徴の鳥人が現れる ATK1300

 

「『ゲイル』の効果発動!相手の攻撃力を半分に【リバース罠発動!『Sin ClawStream』を発動!自分フィールドに『Sinモンスター』がいる事で『ゲイル』を破壊する!】なんだと!?」

黒い竜巻がゲイルを破壊した!

 

【その程度か?】

 

「っ…!カードを3枚伏せてターンエンドだ!」

クロウLP4000

ブラスト 伏せ2 手1

 

 

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【バトルだ!『スターダスト』で『ブラスト』を攻撃!シューティング・ソニック!】

Sinスターダストの口にエネルギーが集中する!

 

『やらせねぇ!リバース罠オープン!「ブラック・バック」!このターンの通常召喚を封じる代わりに墓地から「ゲイル」を特殊召喚する!』

再び黄色い嘴の鳥人が現れる ATK1300

 

「さらに罠カード『緊急同調』を発動!オレはレベル4の『ブラスト』にレベル3の『ゲイル』をチューニング!!」

 

3+4=7

 

「黒き旋風よ!天空へ駆け上がる翼となれ!シンクロ召喚!『BF-アーマード・ウィング』!」」

単眼の鎧を纏った鳥人が現れる ATK2500

 

【『アーマードウィング』か…攻撃中止だ!…カードを一枚伏せてターンエンド!】

遊海LP4000

sサイバーエンド sスターダスト SinWorld テリトリー 伏せ2 手札1

 

 

 

 

@アキ

 

『私のターン!ドロー!』

『「黒薔薇の魔女」を召喚!』

《(>∆^)/!》

可愛らしいメイド服の魔女が現れる ATK1700

 

『「黒薔薇の魔女」の効果発動!カードを1枚ドローしてそれが植物族モンスターなら手札に加えられる!…ドローしたのは「薔薇の妖精」!自身の効果で特殊召喚!』

頭に薔薇を載せた妖精が現れる ATK600

 

『私はレベル3の「薔薇の妖精」にレベル4の「黒薔薇の魔女」をチューニング!』

 

3+4=7

 

『冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の花よ、開け!シンクロ召喚!現れて!「ブラック・ローズ・ドラゴン」!』

シグナーの竜の1体である薔薇のドラゴンが現れる ATK2400

 

『さらに私は魔法カード「『攻撃』封じ」を発動!「Sinサイバーエンド」を守備表示に変更するわ!』

サイバーエンドが守備態勢を取らされる ATK4000→DEF2800

 

『さらに「ブラックローズ」の効果を発動!墓地の「薔薇の妖精」を除外して「サイバーエンド」を攻撃表示に変更して攻撃力を0にする!ローズ・リストレクション!』

薔薇の妖精の力を吸収したブラックローズが蔦を伸ばしサイバーエンドを拘束する!

DEF2800→ATK4000→0

 

【おぉっ!?、上手いコンボだ!】

 

『ありがとう!バトルよ!「ブラックローズ」で「サイバーエンド」を攻撃!ブラック・ローズ・フレア!!』

闇色の炎がサイバーエンドを破壊する!

 

【ぐぅ…!】

遊海LP4000→1600

 

 

「流石だぜアキ!遊海相手に先制だ!」

 

『いいえ…クロウが最初の攻撃を防いでくれたおかげよ!』

 

「フン…だが油断するな!遊海はこの程度で終わる男ではないぞ…!」

 

【その通りだ!リバース罠「Sin Turn」を発動!自分のSinモンスターが破壊されたことで2ドロー!】

 

『私はカードを2枚伏せてターンエンド!』

アキLP4000

ブラックローズ 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「戦況はジャック達が有利…だが…!」

 

「遊星…どうしたの…?」

不安な顔をしている遊星に龍可が声をかける

 

「もし、遊海さんのデッキがパラドックスのデッキと同じデッキだとしたら…まだ終わりじゃない…!」

 

 

 

 

 

【俺のターン!フィールド魔法『SinWorld』の効果発動!ドローする代わりにデッキから三枚のSinカードを選択し相手の選んだカード1枚を手札に加える!アキ、一枚選べ!】

遊海はデッキから三枚のカードをアキにみせる

 

『私は…真ん中のカードを選ぶわ!』

 

【わかった…残りのカードはデッキに戻しシャッフルする!…俺はさらに魔法カード「Sin Selector」を発動!墓地の『サイバーエンド』と『クロウ・ストリーム』を墓地から除外しデッキから『Sinレインボードラゴン』『Sinパラドクスギア』を手札に加える!さらに俺はデッキの『究極宝玉神レインボー・ドラゴン』を除外し…現れろ!『Sin レインボー・ドラゴン』!!】

仮面を着けられた虹を司る龍が現れる ATK4000

 

 

『っ…!また攻撃力4000…!?』

 

「インチキモンスターはいい加減にしてくれ!?」

一難去ってまた一難…再び現れた大型モンスターにクロウとアキは絶句する…

 

「今度は『宝玉獣の導き手』の切り札カードだと…!?」

 

【バトルだ!「レインボードラゴン」で「ブラックローズ」を攻撃!オーバー・ザ・レインボー!!】 

虹の破壊光線が黒薔薇に迫る!

 

『リバース罠発動!「ハーフカウンター」!「ブラックローズ」の攻撃力を「レインボードラゴン」の攻撃力の半分…2000ポイントアップするわ!』

 

【甘い!カウンター罠「魔宮の賄賂」!相手にドローさせる事で魔法・罠の効果を無効にする!】

 

『そんな…!きゃあ!?』

虹色の息吹がブラックローズを消し飛ばした!

 

アキLP4000→2400

 

【俺はカードを2枚伏せ…ターンエンド!】

遊海LP1600

sレインボードラゴン sスターダスト SinWorld テリトリー 伏せ2 手札3

 

 

 

 

「強いな遊海…だが俺がお前を倒す!そして力を示す!!」

 

【来い!ジャック!!】

 

 

 

 

 

@ジャック

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

 

「ジャック!コイツを使え!!リバース罠『リビングデッドの呼び声』!墓地から蘇れ『黒槍のブラスト』!」

再び槍を持った鳥人が現れる ATK1700

 

「フッ…遠慮なく使うぞクロウ!フィールドにシンクロモンスターが存在する事で『シンクローンリゾネーター』は特殊召喚できる!」

背中にト音記号のモニュメントを背負った悪魔が現れる DEF100

 

「さらに『マジック・ホール・ゴーレム』を召喚!」

円形のゴーレムが現れる ATK0

 

「さらに俺は永続魔法『共鳴波』を発動!そしてクロウのレベル4の『黒槍のブラスト』とレベル3の『マジックホールゴーレム』にレベル1の『シンクローンリゾネーター』をチューニング!」

 

4+3+1=8

 

「王者の鼓動、今ここに列をなす!天地鳴動の力を見るがいい!!シンクロ召喚!現われろ!「レッドデーモンズ・ドラゴン」!!」

シグナー竜の1体である紅蓮の竜が現れる ATK3000

 

「来た!ジャックの『レッドデーモン』だ!!」 

 

「さらに『シンクローンリゾネーター』がシンクロ素材として墓地に送られた事で『共鳴波』の効果を発動!消え去れ!『レインボードラゴン』!!」

シンクローンリゾネーターの幻影が現れ音叉を打ち鳴らす、そしてその高周波に耐えられなかったレインボードラゴンは爆発した! 

 

【ぐぉ…!?やるな…!】

 

「バトルだ!消え去れ『Sinスターダスト』!アブソリュート・パワー・フォース!!」

悪魔竜の掌底が闇のスターダストを殴り倒す!

 

【くっ!】

遊海LP1600→1100

 

「追い詰めたぞ遊海!俺はカードを2枚伏せターンエンド!」

 

【エンドフェイズにリバース罠2枚目の『Sin ClawStream』を発動!『アーマードウィング』を破壊する!】

 

「しまった!?」

黒の竜巻が鎧の鳥人を破壊する

 

ジャックLP2400

レッドデーモン 共鳴波 伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

【流石はダークシグナーと戦い抜いた決闘者だ、即席な連携で俺をここ待て追い詰めるとはな、だが…まだ足りない…!】 ゴゥッ…!

追い詰められながらも遊海の闘志は衰える事なく更に強くなる…!

 

 

「くっ…なんだよこれ…!追い詰めてるはずなのに…!」

 

『まだこれ以上があるというの…!?』

 

「狼狽えるなクロウ!アキ!相手の気迫に呑まれたらそれまでだ!!」

 

 

 

【俺のターン!ドロー!!】

【現われろ!『Sinパラドクスギア』!】

四角い歯車の付いた機械が現れる ATK0

 

【『パラドクスギア』の効果発動!このカードをリリースしデッキから『Sinパラレルギア』を特殊召喚!さらにデッキから『Sin青眼の白龍』を手札に加える!】

歯車が組み合わさったような人形が現れる ATK0

 

 

「っ…まずい!気をつけろジャック!あのデッキのエースがくるぞ!!」

 

「なんだと…!?」

 

【俺は『パラレルギア』の効果発動!俺は手札のレベル8『Sin青眼の白龍』にレベル2の『パラレルギア』をチューニング!!】

 

「『手札からシンクロ召喚…!?』」

 

8+2=10

 

【次元の闇より現われろ!シンクロ召喚!『Sinパラドクス・ドラゴン』!!】

黒と白の鎧を身に着けた矛盾を象徴するドラゴンが現れる ATK4000

 

「また攻撃力4000…だとぉ!?遊星!お前、どんな相手と戦ったんだよ!?」

クロウの言葉は無理もない…仮にあの場にいたのが遊戯や十代ではなく他の決闘者だったならば…遊星はパラドックスに敗北していただろう…。

 

 

【『パラドクスドラゴン』の効果発動!我が下僕となれ!『アーマードウィング』!】

 

『なんですって!?』

パラドックスドラゴンの力によりアーマードウィングが墓地から遊海の場へと現れる ATK2500

 

【バトルだ!『アーマードウィング』で『レッドデーモン』を攻撃!】

 

「やべぇ!『アーマードウィング』に攻撃されたら『レッドデーモン』の攻撃力が0になっちまう!!」

 

「させんぞ!!リバース罠『デモンズチェーン』発動!『アーマードウィング』の攻撃と効果を封印する!」

紫色の鎖がアーマードウィングを拘束する!

 

【まだだ!『パラドクスドラゴン』で『レッドデーモン』を攻撃!】

破壊の息吹がレッドデーモンに迫る!

 

「ならばこれでどうだ!罠カード『ハーフorストップ』!選べ!お前の場のモンスターの攻撃力を半分にするか!バトルフェイズを終了するか!!」

 

【俺は攻撃力を半分にする効果を選ぶ!】

 

パラドクスドラゴンATK4000→2000

アーマードウィングATK2500→1250

 

「ならば…迎え撃て!『レッドデーモン』!灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!!」

弱体化したパラドクスドラゴンのブレスとレッドデーモンの火炎が衝突…パラドクスドラゴンのブレスは押し返され爆発を起こした!

 

遊海LP1100→100

 

 

「よっしゃ!流石だぜジャック!決闘王をオレ達3人で追い詰めたぜ!!」

 

「フン…当たり前だ!このジャック・アトラスは再びキングとなる男だ!!」

 

「ジャック!クロウ!アキ姉ちゃん頑張って!あと一息!!」

遊海を追い詰め、表情が緩むジャック達…しかし…

 

「…ダメだジャック…まだ終わってない…!」

 

「えっ…!?遊星…?」

龍可が遊星の顔を見上げる…その額からは冷や汗が流れている。

 

「来る…!遊戯さんに十代さん、それに過去の遊海さんを追い詰めたモンスターが…!」

 

 

 

【お前達…油断し過ぎだ、まだ決闘は終わってはいない、最後まで気を抜くな…!】

 

「「『!?』」」

爆煙の中から遊海の声が響く…

 

【俺は『パラドクスドラゴン』が破壊された事で手札の『Sinトゥルース・ドラゴン』の効果を発動…俺のライフを半分にする事で…このモンスターを特殊召喚する!!現れろ!真実を示す龍よ!!】

 

遊海LP100→50

 

風が遊海のフィールドを中心に渦巻き、周囲の枯れ葉やゴミが空に舞い上がる…そして巨大な金色のドラゴンが姿を現した…! ATK5000

 

『そんな…!攻撃力…5000!?』

 

「デュエルモンスターズ最高攻撃力のドラゴン『F・G・D』と同じ攻撃力だと!?(遊星…お前はこんな化け物とデュエルしたのか…!)」

ジャック達は絶望する、3体の大型ドラゴンを斃した先に新たなドラゴンが立ち塞がる…その瞬間、ジャックの目には遊海の姿に重なるように白と黒の仮面を着けた男の幻影が写っていた…。

 

【バトルだ、『トゥルースドラゴン』で『レッドデーモン』を攻撃!真実のトゥルー・バースト!!】

 

『っ!リバース罠「グランド・キャプチャー」!相手から受ける戦闘ダメージを半分にする!そして半分にしたあとのダメージが1000以上の場合、私はカードを一枚ドローする!』

レッドデーモンは破壊されたものの、大地から巨大な岩の手が現れ攻撃の余波を防ぐ!

 

ジャックLP2400→1400

 

 

「助かったぜアキ…!」

 

「なんとかしのぎきったか…!だが…!」

 

『厳しい状況なのは変わってないわ…!』

ジャック達はトゥルースドラゴンを見上げ、()のターンに逆転する方法を考える…

 

 

 

 

【何を勘違いしてる?まだバトルフェイズは終わってないぞ!速攻魔法『Sin Cross』を発動!墓地から現われろ!『Sinスターダスト』!】

 

『「「なんだと!?/なんですって!?」」』

墓地から再び仮面のスターダストが現れる ATK2500

 

【バトルだ!ジャック達にダイレクトアタック!シューティングソニック!!】

 

放たれたブレスはジャック達に直撃…爆発を起こした…。

 

クロウ&アキ&ジャックLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「ジャック!アキ!クロウ!大丈夫か!?」

 

「アキさん!」

 

「クロウ!大丈夫!?」

デュエルが終わり遊星達がジャック達に駆け寄る…遊海は限りなく力を抑えたもののジャック達は最後の一撃で吹き飛ばされていた…。

 

 

「お〜イテテテ…オレはなんとか無事だぜ…っていうか遊海強すぎるだろ!?なんで普通に勝ってるんだよ!?」

 

『これが「決闘王」の…イリアステルの力だっていうの…!?』

 

「くそっ…完敗だ…!」

なんとか起き上がったジャック達は遊海に視線を向ける…視線の先の遊海は先程と比べて大きく見えた…。

 

 

「お前達、大丈夫か?怪我したんなら治療するぞ?」

戦闘態勢を解いた遊海がジャック達に歩み寄る…その顔はいつもの優しい顔に戻っていた。

 

「遊海さん…貴方は何者なんだ?何故貴方がパラドックスのカードを…それに『スターダスト』まで…!?」

 

「遊星、俺は白波遊海…エジプトのファラオに認められた二代目『決闘王』であり、この町のヒーロー『鋼の騎士』…そして俺にはもう一つの呼び名がある」

 

「もう一つの…呼び名?」

 

「『異界からの転生者』…それが俺、そして翠の正体だ」

遊海は最後の隠し事を遊星達へと伝えた…。

 

 

 

 

 

 

 

「転生…者?それって…どういう事ですか?」

 

「読んで字の通りだよ遊星、俺は一度死んでるんだ…ダークシグナー達と同じようにな」

 

「「「「はっ!??」」」」

遊海の言葉に遊星達は頭の理解が追いついていないようだ

 

「待てよ遊海!アンタも翠も足があるし、紫色の痣もねぇじゃねぇか!?一度死んだっていったい…」

 

「ああクロウ、すまないダークシグナーと同じと言っても俺達は死んだ場所が違うんだ…はっきり言おう、俺と翠は元々はこの世界の住人じゃない…この世界とは違う並行世界の人間なんだ」

 

 

そして遊海は5D'sに自分達の来歴を話し始めた。

 

自分達がデュエルモンスターズが完全に娯楽として存在する世界に居た事

 

その世界で神様の失敗により悲運の死を遂げ、神の罪滅ぼしとして転生した事

 

そして長い時の間に遊戯や十代と共に世界を影から救い続けた事を…その話を遊星達は静かに聞いていた…。

 

 

 

「そうか…その異界のカードが遊海さんの強さの秘密だったのか…」

 

「だからこそ『スターダストドラゴン』やパラドックスのカードを持っていたという訳か」

遊星もジャックも自分達の疑問の謎が解け、納得しているようだ…

 

「ねぇ遊海…辛くなかったの?お父さん達と会えなくなって…」

両親と離れて暮らす龍亞が遊海に尋ねる…自分も両親から離れているから遊海の事が心配になったのだ。

 

「ああ、寂しくないと言ったら嘘になるけど…大丈夫だよ、俺には翠がいる…翠が一緒にいれば俺は絶対に挫けないさ」

 

「遊海…」

遊海は龍亞の頭を撫でながらそう答えた。

 

 

 

 

「さて…これで俺の事は大体話したな、そして最後に一つ…お前達に伝える事がある、ゲイザーについてだ」

 

「ゲイザー…イリアステルのメンバーの1人…」

遊星は顔を強張らさせる…

 

「ゲイザー、奴はイリアステルのメンバーであり…ゼロ・リバースを起こさせた黒幕…そして俺と同じ『転生者』だ、その正体ははっきりしないし、目的もわからないけどな」

 

「ゲイザーが転生者…!?」

 

「という事は…?」

 

「奴に対抗できる決闘者は…俺か翠だけだ、本来なら俺はWRGPに出るつもりはなかったが…奴が姿を現したなら話は別だ、遊星…俺から改めてお願いする、俺をチーム5D'sの仲間に入れてくれ…!」

遊海は遊星に手を差し出す。

 

「遊海さん…はい!よろしくお願いします!!」

遊星も握手を持ってそれを迎えた…こうしてチーム5D'sはここに結成されたのだった。




「ただいま〜!」

「おかえりなさい!遊海さん!」
遊星と別れた遊海は家へと帰宅した…そして…


「翠、遊星達に俺達の事を…転生者である事を話してきたよ」

「えっ…大丈夫だったんですか遊星君!?」
翠は驚いているが遊海は静かに答えた

「ああ、遊星も頭がいいからな…すぐに俺達の事を理解してくれたよ」

「そうですか…よかった…」

「だけど…問題ができた」

「問題…?どうしたんですか?」

「ゲイザーの奴が…遊星の前に姿を現した」

「!?」

「翠、俺は絶対に奴を止める…その為に俺はチーム5D'sに入った…付いてきてくれるよな?」

「ええ…当たり前ですよ遊海さん、必ずあの人を止めましょう…これ以上の被害を出さない為に…!」

「ああ…ありがとう翠」
こうして遊海の決意は固まった…そして戦いまでは残り僅かに迫っていた…。













ピリピリピリ…ピリピリピリ…

「ん?…もしもし白波…ああ、久しぶりだな…どうした?」

『……!』

「えっ…?泊まる場所?Dホイール可で空いてる場所!?…何があったんだ??」


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幕間 陽はまた昇る〜意地と意固地のぶつかりあい〜

「ふぅ…ようやく着いたぜ、流石にアメリカから直接来るのは無理があったか…ふわぁ…」

 

ネオドミノシティの空港にサングラスをかけ、黒いYシャツを着た青年が降り立つ、見た目だけ見ればどこにでもいる商社マンに見えるが…彼には少し常人と違うところがあった、それは…

 

 

 

《アニキ〜!オイラおなか減ったよ〜!》

 

《オレも〜!ハンバーガー屋さんに行こうよ〜》

 

《え〜!牛丼がいい〜!》

 

「え〜い!!黙ってろ貴様ら!オレは時差ボケで眠いんだ!!」

青年の周りには黒・黄・緑色の妖精?が浮いていた…それだけではなくガヤガヤと騒がしい…しかしその声は主人である青年以外に聞こえる事はまずない…なぜなら彼らはデュエルモンスターズの精霊だからである。

 

 

「だが…腹ごしらえも大事だな、行くぞお前ら!」

 

《やった〜!アニキ太っ腹〜!》

青年達は騒がしく空港をあとにした。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

ここはシティの海浜公園…そこで1台のDホイールを囲み3人の若者達が黄昏れていた…。

 

「はぁ〜どうしよう太郎…」

 

『まさか都会の宿の値段がこんなに高いなんて…』

緑色のジャージの青年・吉蔵が赤いジャージの青年・太郎に話しかける、彼らはチーム太陽…WRGP予選に出場する為にネオドミノシティを訪れたライティングチームである。

 

「やっぱり、俺達には無理だったんだ…」

 

『諦めるな甚兵衛!まだサテライトの方は見てない!向こうなら可能性はまだあるさ!!』

太郎が青ジャージの青年・甚兵衛を励ましながら立ち上がる。

 

 

チーム太陽の3人は本来であればDホイーラーではなく、とある地方の農家の跡取りだった…しかし、彼らは太郎を中心として自分達の可能性を試す為にWRGPへと出場しようとしている…のだが、その前途は既に多難どころか一寸先は闇状態である。

 

まずは彼らのDホイール、彼らの少ない小遣いをかき集めて手に入れた1台だけのDホイールである…しかも相当な中古品…壊れたらその時点でアウトである。

 

そして一番の問題、それは…宿の確保である。

WRGPの予選開始が迫り各ホテルは既に満員、泊まれたとしても長期滞在は不可能…しかも料金も馬鹿にならない、彼らは壁にぶち当たっていた…。

 

『よし…とにかく行こう!きっとなんとかなるさ!』

 

「「おー…」」

太郎達は宿を見つける為に歩き出した…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side サングラスの青年

 

 

「ふ〜…やっぱり米は落ち着くな〜久しぶりに帰って来られてよかったぜ」

 

《アタシもお腹パンパンよ〜》

腹ごしらえを終えたサングラスの青年はシティの海辺を歩いていた…本当ならばすぐにでもホテルに向かうところなのだが…久しぶりにこの街を歩きたくなったのだ。

 

 

 

「あれからもう18年経つのか…この街もよくここまで復興できたな…」

 

《そうね〜…あの時は酷かったわ〜…》

青年は海に架かるネオ・ダイダロスブリッジ、そしてその先のサテライトを見て昔の事を思い出していた…。

 

 

 

 

〜18年前・海馬ランドスタジアム〜

 

 

「遊海先生どうしたんだろ?顔色を変えてスタジアムの外に飛び出して行っちゃったけど…?」

 

「丸藤先輩…オレの恐竜さんの勘が危険を感じてるドン…!なんだかヤバいザウルス!!」

 

《万丈目のアニキ!なんだかヤバいわ〜!!》

 

「なんだと!?」

オレ達は十代と遊海先生の戦いを見届け、表彰式となった…しかしその直後、『決闘王』となった遊海先生は海馬社長に何かを伝え、外へと飛び出してしまった…会場は騒然となっている…。

 

 

『狼狽えるな!!観客達よ!!』

 

「っ!?海馬社長…!」

マイクを握りしめた海馬社長が声を張り上げる!

 

『よく聞け!まもなく大きな災害が起きる!!各自頭を守って伏せろ!このスタジアムは震度7相当に耐えられる構造だ!!決して動くな!!』

 

 

「「「なんだって!?」」」

 

会場はパニックとなる…そして…

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

バシューン…!!

 

観客達の視界は光に塗り潰された…

 

 

 

………

 

 

 

「っ…いったい…何が、どうなって……なっ…!?」

気がついたオレが最初に見たのはスタジアムの天井から見えた空だった…本来であれば屋根があったはずだが、屋根は完全に消し飛んでいた…。

 

 

「みんな…無事か…!」

 

「十代…!お前!」

そして次に目に入ったのはネオスや他のE・HERO達を召喚し観客やオレ達を守っていた十代だった、他にもブラック・マジシャンや翠さんの精霊達が観客や海馬社長達を守っている…。

 

「十代!いったい何があったんだ!?どうしてこんな…!」

 

「わからねぇ…!万丈目…遊海先生が心配だ…頼む…!!」

 

「わかった!!待ってろ!!」

十代の頼みを聞いたオレはごった返す人混みを抜けてスタジアムの外へと飛び出した…。

 

 

 

ザザーン…ザザーン

 

「そんな…」

外に出たオレが見たのはスタジアム近くまで広がった海…先程まで広がっていた遊園地の姿は跡形も無く消え去っていた…そして、海面には巨大な要塞…遊海先生の相棒であるアヤカがスパークしながら墜落していた…。

 

 

《アヤカの姉さん!いったい何があったの〜!?》

 

《?…こ、ど…eK助、々とひ、aが、ーた、sマ…発…くば、と…ンめ、ーモ》

 

「…ダメだ、完全にバグってやがる…っ…これは…」

アヤカは衝撃により正気を失っている…そして、近くの地面には2本の溝がコンクリートを砕いて残されている…

 

「そんな、遊海先生、嘘だろ…、嘘だと言ってくれよぉぉぉ─!!」

2本の延長線の先…スタジアムの上部の壁には巨大な穴がぽっかりと口を空けている…その縁には赤いジャケットの一部が引っかかっていた…。

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

「無敵の先生が致命傷を負って…町は引き裂かれて…よくここまでになったもんだぜ…」

 

青年がサングラスを外す…その正体は「流浪の決闘者」遊城十代の好敵手にしてプロデュエリスト「黒雷(ブラックサンダー)」こと万丈目準である。

現在はプロリーグを離れ万丈目グループ・デュエルモンスターズ部門の責任者となり世界中を飛び回っていたが…日本でWRGPが開催される事になり万丈目グループから代表として大会を観戦しにきたのだ。

 

「さて…腹ごなしも済んだしホテルに行くとするか!いくぞお前達!」

 

《待ってくれ万丈目のアニキ!あそこに怪しい奴らがいるぞ!》

 

「怪しい奴ら?」

黒色の妖精…おジャマブラックの指差す方向を見ると1台のDホイールを囲んだ若者達が頭を抱えていた…。

 

「1台のDホイールを囲んだ若者達…もしかして噂のDホイール窃盗団か!?あのDホイールが盗品なら問題だな…話を聞きにいくぞ!」 

 

《あ!待ってよアニキ〜!》

万丈目はズンズンと若者達に近づいていった…。

 

Sideout

 

 

 

 

 

Sideチーム太陽

 

 

「なんだよ〜!サテライトのホテルも全滅じゃないか〜!?」

 

『おかしいな…事前の情報ではサテライトは治安が悪くて、宿も空いてるはずなのに…』

 

チーム太陽の3人は想定外の事態に頭を抱えていた…実は遊海が活躍したせいもありサテライトの治安は急速に回復…生活レベルも以前の童実野町レベルまで回復してきていた…ホテルが空いていないのはその弊害である。

 

「これから野宿かぁ…」

 

「『「はぁ〜…」』」

3人組は大きなため息を漏らす…そこに…

 

 

「おい!そこのお前ら!そのDホイールはお前らのか?」

黒いシャツを着た青年がチーム太陽へと声を掛けてきたのだった…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

「お前ら!そのDホイールはお前達のか!」

万丈目は頭を抱えている若者に声をかける

 

「あん?なんだよオッサン!これは俺達の小遣いで手に入れたDホイールだ!文句あるか!?」

甚兵衛が万丈目に絡む…

 

『やめるんだジン!…すいません、アナタは…?』

ジンを制止した太郎は万丈目へと話しかける。

 

「お前達の持ち物だったのか…すまなかったな、オレは通りかかった者だ1台のバイクを3人で囲んでいるお前達が噂のDホイール窃盗団かと思ってな…」

 

『ああ…そういう事か、紛らわしい事をしてすいません…俺達はチーム太陽!WRGPに出る為にこの街にでてきたんです!』

 

「チーム太陽…?ああ!確か名簿に乗ってたな!」

チーム太陽の名前を聞いて万丈目は事前に入手していた参加チーム名簿を思い出した。

 

「名簿…?もしかしてアンタWRGPの関係者か?」

ジンが万丈目に問いかける

 

「ああ、オレの会社がスポンサーの1社なんだ…それで?お前達は何をしてたんだ?こんな場所でライティングの練習ではないだろう?」

 

『はい…恥ずかしい話なんですが…』

太郎は現在の状況を万丈目へと伝えた…。

 

 

 

《アニキ〜、せっかくの大会なのに泊まる場所が無いなんてかわいそうよ〜》

 

《助けてあげようぜ〜》

イエローとグリーンが万丈目に伝える…

 

「(ああ、そうだな…オレもスポンサーの端くれだ、宿くらいは大丈夫だろう)話はわかった!いいだろう、お前達に宿を手配してやる!」

 

「『本当ですか!?やった〜!』」

万丈目の提案を聞いた太郎と吉蔵は感激の声をあげる…だが…

 

「待てよ太郎!そんな奴の話に乗るな!詐欺師かも知んねぇぞ!?」

 

「なんだと!?人が好意で言ってやってるのに!!」

ただ1人、甚兵衛だけはその提案に反対する…甚兵衛には過去の出来事でトラウマがあり、人を信頼する事ができないのである…。

 

 

『ジン!今はそんな事言ってる場合じゃないだろ!?俺達が予選に出場できるかがかかってるんだぞ!?まさかずっと野宿で過ごすつもりか?』

甚兵衛の態度に温厚な太郎も呆れをあらわにする…

 

「ああ!胡散臭い奴に頼るんならその方がマシだ!」

 

「言わせておけば…!お前達のためを思って言ってるんだぞ!!」

生来プライドが高い万丈目も甚兵衛に怒りはじめる…2人の間には火花が散っていた…。

 

 

「もう…こうなったら…!やめろよジン!そんなに揉めるならデュエルで決着着けようよ!!」

 

「『なんだって?』」

2人の口喧嘩に嫌気が差した吉蔵が2人に提案する…

 

「だからさ…デュエルしてボク達が勝ったらお兄さんの援助を断る、お兄さんが勝ったらボク達は泊まらせてもらう…それでいいんじゃないかな?」

 

「いいだろう…そのデュエルに乗ってやる!」

万丈目はカバンからデュエルディスクを取り出しセットする

 

「ならオレが…!」

 

『待てよジン!…俺がやる!』

 

「太郎!?なんでだよ!」

甚兵衛のデュエルディスクを太郎が取り上げる…

 

『これは個人じゃなくチーム全体の問題だ!なら俺がデュエルするのが筋だろ?』

 

「…チッ、わかったよ」

甚兵衛は太郎の説得を受けて身を引いた…。

 

 

『お兄さん、こんな事になってすいません…ですが本気でいきますよ!』

 

「望むところだ!オレも久しぶりのデュエルだ…手加減はしないぞ!!」

太郎と万丈目は対峙する…そしてデュエルが始まった!

 

 

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

太郎LP4000

万丈目LP4000

 

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『頼むぞ!「キーメイス」を守備表示で召喚!』

可愛らしい青の妖精が現れる DEF300

 

「『キーメイス』だと…?なかなか珍しいカードを使うな?」

万丈目はいきなり現れた通常モンスターを見て驚く…

 

「ああ、これが俺達の戦い方なんだ!カードを三枚伏せてターンエンド!」

 

太郎LP4000

キーメイス(1) 伏せ3 手札2

 

 

 

 

『(あいつらを見てると…なんだかアカデミア時代の事を思い出すな…)』

万丈目は通常モンスターを召喚した太郎の姿を見て昔の事を思い出していた…万丈目はデュエルアカデミアの買収をかけて『元々の攻撃力500以下のモンスターだけのデッキ』でデュエルした事があった…。

 

「(こういう相手はとにかく時間を稼いで何かを仕掛けてくる…早めに決着をつけるぜ…!)」

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!…おい」

カードをドローした万丈目は顔をしかめる…

 

《アニキ〜、久しぶりのデュエルだから使ってよ〜》

《オレ達の出番だ〜!》

《いえ〜い!》

 

「誰が使うか!!魔法カード『おジャマ改造』を発動!エクストラデッキの『XYZ-ドラゴン・キャノン』を公開し、手札の『おジャマブラック』・『おジャマグリーン』・『おジャマイエロー』を除外する事でデッキから現れろ!『X-ヘッド・キャノン』『Y-ドラゴン・ヘッド』『Z-メタル・キャタピラー』!」

 

『『『え〜!?そんな殺生な〜!?』』』

おジャマ達の叫びを無視し万丈目は青色の砲台、赤色のドラゴン型戦闘機、黄色のキャタピラ戦車を呼び出す!

 

ATK1800  1500  1500

 

 

「さらに『X』『Y』『Z』の3体をフィールドから除外する事でこのモンスターはエクストラデッキから特殊召喚できる!合体召喚!『XYZ-ドラゴン・キャノン』!!」

二門の砲台を持つ巨大な戦車が現れる ATK2800

 

『な…!?1ターン目から高攻撃力のモンスターを呼び出すだって!?』

 

「なんて手際だ…並みのデュエリストじゃないぞ…!?」

 

「あれ…?あの人、何処かで見たような…?」

チーム太陽の面々はいきなりの大型モンスターに驚くしかない…。

 

 

「まだだ!さらにオレは『V-ウィング・タイガー』を召喚!」

虎の顔を持つ戦闘機が現れる ATK1600

 

『今だ!リバース罠オープン!『隠れ兵』!手札の闇属性モンスター「手をつなぐ魔人」を特殊召喚!』

大きな両手を持つ悪魔が現れる DEF1600 

 

『「手をつなぐ魔人」の守備力は自分フィールドの守備表示モンスターの守備力の合計分アップし、他のモンスターを攻撃対象にできなくなる!』

キーメイスと魔人が手を繋ぎ、守りが強化される! DEF1600→1900

 

「それでも守備力は1900だ!バトル!『ドラゴン・キャノン』で『手をつなぐ魔人』を攻撃!X・Y・Zハイパー・キャノン!!」

3本の破壊光線が魔人に迫る!

 

『リバース罠オープン!「和睦の使者」!このターン、俺のモンスターは戦闘では破壊されない!』

2体のモンスターがバリアで守られる!

 

「やるな…オレはカードを1枚伏せてターンエンド!」

万丈目LP4000

ドラゴン・キャノン ウィングタイガー 伏せ1 手札0

 

 

 

 

『危ねぇ〜…いきなりやられるところだった…!』

 

「フン、よく防いだな!さぁ、どうする?」

 

『オレは自分のデュエルをするだけです!』

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『魔法カード「魔の試着部屋」を発動!ライフを800払ってデッキを4枚めくる!そしてその中のレベル3以下の通常モンスターを特殊召喚する!』

 

「ほう…面白いカードを使うじゃないか!」

 

太郎LP4000→3200

 

めくったカード

岩石の巨兵

粘着テープの家

はにわ

ワイト

 

『よし!頼むぞモンスター達!』

岩の巨人とはにわ、そして骸骨が現れる DEF2000  500  200

 

『そして「手をつなぐ魔人」の守備力もアップする!』

召喚されたモンスター達が結束し、守りがさらに強固になる DEF1900→4600

 

「守備力4600だと…!?」

 

『俺はこれでターンエンド!』

太郎LP3200

キーメイス(2)魔人 巨兵 はにわ ワイト 伏せ1 手札2

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「どんな鉄壁な守りでも打ち砕いてやる!『ドラゴン・キャノン』の効果発動!手札の『ゲットライド!』を墓地に送り『手をつなぐ魔人』を破壊する!X・Y・Zハイパー・デストラクション!!ファイア!!」

2門砲台からミサイルが発射される!

 

『させない!リバース罠オープン!永続罠「スクラム・フォース」!このカードは自分フィールドに守備表示モンスターが2体以上いる時に発動できるトラップカード!守備表示モンスターは効果の対象にならず効果では破壊されなくなる!』

モンスター達を包むようにバリアが現れる!

 

「くっ…!オレはターンエンド!」

万丈目LP4000

ドラゴンキャノン ウィングタイガー 伏せ1 手札0

 

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『ターンエンド!』

太郎LP3200

キーメイス(3)魔人 巨兵 はにわ ワイト スクラムフォース 手札3

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「(くそ…打開できるカードが来ない…!)ターンエンド!」

万丈目LP4000

ドラゴンキャノン ウィングタイガー 伏せ1 手札1

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『カードを伏せてターンエンド!』

太郎LP3200

キーメイス(4)魔人 巨兵 はにわ ワイト スクラムフォース 伏せ1 手札3

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「よし!『W-ウィング・カタパルト』を召喚!」

青色の翼型の機械が現れる ATK1300

 

「オレは『タイガーウィング』と『ウィングカタパルト』を除外し合体召喚!『VW-タイガー・カタパルト』!」

青い翼と虎の戦闘機が合体し大型爆撃機に合体する ATK2000

 

『また合体した…!』

 

「まだだ!オレは『タイガーカタパルト』と『ドラゴンキャノン』を除外し合体召喚!現れろ!『VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルト・キャノン』!」

5体の機械が合体し最強の戦闘ロボットが現れる! ATK3000

 

 

『攻撃力3000…!だけど「手をつなぐ魔人」の守備力には届かない!』

 

「それはどうかな?」

 

『なに…!』

万丈目は不敵に笑う

 

「『ドラゴンカタパルトキャノン』の効果発動!1ターンに一度、相手フィールドのカード1枚を除外する!邪魔な『スクラム・フォース』を除外!」

 

『しまった!!(「スクラムフォース」の破壊耐性は除外されたら意味が無い!!)』

スクラムフォースが斬り裂かれ消え去る!

 

「そして『ドラゴンカタパルトキャノン』で『手をつなぐ魔人』を攻撃!その瞬間、効果発動!相手モンスターの表示形式を変更する!いくら高い守備力を持っていても発揮できなければ意味はない!!」

 

魔人が手を離し攻撃態勢をとる DEF4600→ATK1000

 

「いけ!!VWXYZ-アルティメット・デストラクション!!」

ロボットの連続射撃が発射される!

 

『くっ…!リバース罠「はさみ撃ち」発動!俺のフィールドの「はにわ」と「ワイト」を破壊し、「ドラゴンカタパルトキャノン」を破壊する!!』

はにわとワイトがオーラを纏いロボットに特攻を仕掛ける!

 

「無駄だ!永続罠『おジャマパーティー』を発動!自分の『アームドドラゴン』か光属性の融合モンスターが戦闘・効果で破壊される時!手札の『おジャマッスル』を除外し身代わりにできる!貫け!『ドラゴンカタパルトキャノン』!!」

 

《は〜い!!》

《おジャマしてま…あいたぁ!?》

《せっかく出てきたのに〜!?》

 

ワイトとはにわの目の前にブラック・グリーン・イエローが現れ壁となって特攻を防いだ!

 

『そんな…!うわぁ!!』

太郎LP3200→1200

 

「よし!オレはこれでターンエンド!」

万丈目LP4000

ドラゴンカタパルトキャノン おジャマパーティー 手札0

 

 

 

 

『まさかあの布陣が破られるなんて…!あの人はいったい何者なんだ…!?』

 

「『おジャマ』…『アームドドラゴン』…『XYZ』…あ、ああ〜っ!!思い出したぁ!?」

 

「なっ!?どうしたんだよヨシ!?」

考えこんでいた吉蔵が声をあげる!

 

「太郎!そ、その人プロデュエリストだ!!『黒雷(ブラックサンダー)』の万丈目準さんだー!!」

 

『「な、なんだって〜!?」』

チーム太陽の2人も驚きの声をあげる!

 

「ん?まだ名乗ってなかったか…その通り!オレは万丈目ブラックサンダーだ!…まぁプロ活動は休業中だけどな?」

万丈目は今更に名前を教えていない事に気づいて名乗りをあげる

 

『プロが相手か…それは勝てるはずがなかったな…』

 

「フン、怖気づいたか?」

 

『いいえ…万丈目プロ!胸をお借りします!!』

太郎は劣勢ながらも万丈目をまっすぐ見つめる!

 

「フッ…かかってこい!(あの目…あの馬鹿(十代)を思い出すな…)」

ふと、万丈目はかつてライバルの姿を太郎に見たような気がした…。

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『よし…!魔法カード「悪魔への貢物」発動!「ドラゴンカタパルトキャノン」を墓地に送って「音速ダック」を特殊召喚!』

ドラゴンカタパルトキャノンが悪魔に捧げられバケツを被ったアヒルが現れる ATK1700

 

「くっ、『おジャマパーティー』の穴を突かれたか…!やるな!」

 

『ありがとうございます!バトル!「音速ダック」でダイレクトアタック!』

 

音速のアヒルが体当たりする!

 

「くっ…!」

万丈目LP4000→2300

 

『よし…!ターンエンド!』

太郎LP1200

キーメイス(5) 巨兵 ダック 手札2

 

 

 

 

『よし…万丈目プロのフィールドには罠カードが一枚だけ…これなら勝てる…!』

 

「フッ…やるじゃないか!だがまだわからないぞ?」

 

『えっ…?』

 

「『このドローで世界がガラリと変わるかもしれない…そう思うとワクワクしないか?』…オレの友の言葉だ!さぁ、決着を着けるぞ!!」

 

 

 

 

「オレのターン…ドロー!」

「オレは墓地の魔法カード『おジャマ改造』の効果を発動!除外されている『ブラック』『イエロー』『グリーン』をデッキに戻し…1ドロー!」

 

「さらに永続罠『おジャマパーティー』のもう一つの効果を発動!デッキから『おジャマジック』を手札に加え…そのまま墓地に送る!そして墓地に送られた『おジャマジック』の効果発動!デッキからおジャマ3兄弟を手札に加える!さらに『おジャマイエロー』を召喚!」

赤いブリーフを履いた黄色の妖精が現れる ATK0

 

 

『なっ…!連続して墓地から魔法の効果を…!?しかも攻撃力0!?』

 

《やった〜!万丈目のアニキ!アタシ信じてたよ〜!!》

イエローが歓喜の声をあげる…しかし…

 

 

 

 

 

「何を勘違いしてる?」

 

《へっ!?》

 

 

「確かにお前はオレのエースだが…今はただの踏み台だ!速攻魔法『おジャマッチング』発動!手札の『おジャマグリーン』を墓地に送りデッキから『アームドドラゴンLv5』と『おジャマ・レッド』を手札に加え、さらにこの効果で手札に加えたモンスター1体を召喚できる!『イエロー』をリリース!現れろ!『アームドドラゴンLv5』!!」

 

《そんな〜!?アニキのイケズぅぅ〜!!》

イエローが泣きながら粒子となり、赤と黒の重厚なドラゴンが現れる ATK2400

 

 

『ここで上級モンスター…!でもまだ耐えられる!!』

 

「まだだ!魔法カード『レベルアップ!』を発動!『Lv5』を墓地に送り…現れろ!『アームドドラゴンLv7』!!」

アームドドラゴンが成長し、重厚さが増しスタイリッシュな姿に進化する! ATK2800

 

 

「そして…これがオレの奥の手だ!オレは『Lv7』と墓地の『ドラゴンカタパルトキャノン』を除外する!!」

 

「『「なんだって!?」』」

太郎達は驚きの声をあげる

 

『せっかく召喚したドラゴンを!?』

 

「勘違いするな!見せてやる…オレの切り札!重厚なるドラゴンよ!その身にさらなる鎧を纏い進化せよ!!究極合体!『アームド・ドラゴン・カタパルトキャノン』!!」

アームドドラゴンの身体にドラゴンカタパルトキャノンが合体した最強の機龍が現れる ATK3500

 

『攻撃力3500…!』

 

「『アームドドラゴン』の効果発動!エクストラデッキの『おジャマキング』を除外し、相手のフィールド・墓地のカードを全て除外する!デストロイ・バニッシャー!」

 

《グォォォン!!!》

アームドドラゴンが咆哮する…それだけで太郎のフィールドは跡形もなく消し飛んだ…

 

『これが…プロの世界…!』

 

「バトルだ!『アームドドラゴン・カタパルトキャノン』でダイレクトアタック!アルティメット・デストロイ・バースト!!」

アームドドラゴンの火炎とドラゴンカタパルトキャノンの兵装が火を吹きライフを完全に消し飛ばした…。

 

 

太郎LP0

 

万丈目WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと…デュエルはオレの勝ちだな!おとなしく人の好意は受け取っておけ!」

 

『あはは…、ありがとうございます…大会前のいい経験になりました!』

デュエルが終わり万丈目はチーム太陽の宿を取るために電話をかける…。

 

 

「それにしても…まさかプロ相手にデュエルする事になるなんて思ってなかったよ〜」

 

「悪かったな太郎…俺のせいで…」

 

『いいんだよジン…大会前に負けておけば本番にその経験を活かせるさ!気合いを入れていこうぜ!』

チーム太陽は世界の強さを前もって知る事ができた…この経験は大会で必ず生かす事ができるだろう。

 

 

「なんだと!?満室!?」

 

「『「へっ…!?」』」

万丈目の怒鳴り声にチーム太陽は万丈目を見つめる…

 

 

「…す、すまん、万丈目グループ直営のホテルが全滅だった…」

 

「そ、そんな〜…」

 

「…またイチから探し直しか…」

吉蔵と甚兵衛はへたり込む…

 

『ほ、他のホテルは…?』

 

「う〜む…オレもこの街に詳しい訳じゃないからなぁ…」

万丈目は腕を組み考える…そして

 

「そうだ!詳しい人に聞けばいいんだ!えっと…あの人の番号は……あった!」

 

「『「??」』」

首を傾げるチーム太陽を尻目に万丈目は電話をかける…

 

 

 

「ご無沙汰してます!万丈目です!…Dホイール可で泊まれる場所を教えて欲しいんです……えっと、これこれこういう事で……ありがとうございます!!」ポチッ

 

「少し待っててくれ!」

 

『アッハイ…』

 

 

〜5分後〜

 

 

『万丈目プロ?何を待っているんですか…?』

 

「オレの知り合いにホテルを調べてもらってるんだが……来たな…!」

 

『へっ?』

 

 

ヒュー…ドッカァァン!!

 

 

「「何事だべ!??」」

万丈目達の近くで爆発が起きる…そして砂煙の中から人影が現れる。

 

『久しぶりだな万丈目!せめて居場所を教えてくれよ?この町は広いんだから…』

 

「あっ!?すいません先生!!伝え忘れてました!?」

 

『まったく……ん?君達がチーム太陽か?待たせたね…俺が来た!』

 

「メ…メ…」

 

「『「メタルナイトだ〜!?!?」』」

チーム太陽の叫び声が公園に響き渡った…。

 

 

 

 

「とりあえず…はい!この住所のホテルに行けば泊まれるよ!」

 

『あ、ありがとうございます……ま、万丈目プロ…メタルナイトさんとはどんな関係で…!?』

 

「ん?ああ、オレの恩師だよ!あまりに強すぎて1度も勝てなかったけどな!」

 

「「(嘘…だろ…?)」」

吉蔵も甚兵衛も目を丸くする…凄まじいデュエルをする万丈目以上のレベルなど想像もつかなかったからだ…

 

『それじゃあ万丈目、しばらくはこの町にいるんだろ?』

 

「ええ、大会が終わるまでは」

 

『そうか…なら家に寄ってくれよ?待ってるから!じゃあな!』ドン!!

メタルナイトは高く跳躍しドラゴンに飛び乗り、去って行った…。

 

 

 

『万丈目プロ、あの人はいったい何者なんです…?ドラゴンに乗ってませんでしたか…!?』

 

「あの人は世界最強の精霊使いさ…正体は…オレからは言えないな!さて、チェックインの時間もあるしオレも行かなければ…そうだ、これを渡しておこう!」

万丈目は「カオス・ネクロマンサー」のカードを渡す

 

『このカードは…?』

 

「なに!オレからの餞別だ!きっと相性も良いだろうさ!…応援してるぞ!チーム太陽!」

 

「「『あ、ありがとうございます!!』」」

そうして万丈目は去って行った…そしてチーム太陽は大会への第一歩を踏み出したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

『…住所はここのはずだけど…』

 

「「マジで?」」

チーム太陽はメタルナイトに渡された住所を探し当てた…そこはKC直営の5ッ星ホテルだった…。

 

追記するとすれば部屋はトリプルベッドのジュニアスイートで宿泊費はメタルナイト持ちだった事を追記しておく、チーム太陽は2日程寝られね夜を過ごしたそうな…。




という訳でリクエストアンケートで頂いた『チーム太陽対万丈目』のデュエルでした!
…本来であれば「ズシン」対「アームドドラゴンカタパルトキャノン」をしたかったのですが…私の技術が足りず申し訳ありません!

残り2つ程リクエストがありますが…話の都合上イリアステル編後に執筆する事になると思いますので、もう少しお待ちください!


そして…ついに物語はWRGP・本戦編ヘ…


遊海は5D'sと共にどのように戦うのか?

遊海を狙うゲイザー…その目的は?

そして遊海は全ての戦いを乗り越えられるのか?


これからの「決闘の観測者」をどうぞお楽しみに!


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第3章 後半 決闘疾走混沌都市 WRGP
開幕!WRGP! VSチームユニコーン〜忍び寄る闇〜


こんにちは!S,Kです!お待たせしました!WRGP編の開幕です!

それでは最新話をどうぞ!


〜???〜

 

ここは時空の果て、生命の存在しない暗黒の世界…その場所に叫び声…否、咆哮が響く

 

『ガアアアアアアア!!!!』

 

痛み、そして苦しみを背負い破壊の限りを尽くす一人の男…血の涙を流し、その身をボロボロにしてなお、その狂乱は鎮まる事はない…。

 

 

『グウアアアア!!!…オオオオオ!!!』

 

拳の一撃で大地が砕け、手刀でビルの残骸が真っ二つになる…そして世界は紫の極光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

『ハァ…ハァ…』

暴れ続ける事数日…男は平静を取り戻した、しかしその周囲は草木1本生えない死の土地に変貌していた…だが、男の背後に人影が現れる。

 

『何故…ついてきた…ゾーンの…指示か…?』

 

「違う、今は感覚共有はしていない…でも貴方が心配だったから来た…」

現れた人影…銀髪の少女は男にコートを掛ける、男の身体はボロボロ…服もボロ布になっていた…。

 

『心配…か、アンドロイドに心配されるなんて…オレも落ちたものだ…』

 

「身体から異常なエネルギーを計測…何故こんな事を…?」

 

『レイン恵…これから話す事はゾーンを含め誰にも話すな…いいな』

 

「はい」

 

『いい子だ…さて、何処から話したものか…オレの背負った【罪】を…』

 

 

…………

 

 

 

「痛い…私の中の、ナニカが…」

 

男から話を聞かされた銀髪の少女・レイン恵はアーククレイドルのあてがわれた部屋で胸を抑えていた。

 

 

「この話をマスターが聞いたら、きっと…とても悲しむ…でも…私は…」

男は自分に堅く口止めをした…話せば自分はきっと解体されてしまうだろう…レインはそう結論した…だが…。

 

「私は…貴方に死んでほしくない…」

レインはアーククレイドルのデータベースにアクセスする、これは誰からの命令でもない…「レイン恵」が思考し行動している…彼女が『心』を獲得した証だった。

 

 

「これは…この力なら…!」

レインは膨大なデータの中から一つの可能性を見つけだした、それは僅かな…本当に小さな光だった。

 

「マスター…どうか、私の勝手な行動を許してください…マスターの友を救う為に…!」

レインは決断し準備を始めた…これは、誰にも気づかれてはならない極秘任務…その名は…。

 

 

 

『ミッション・ファントムスナッチ』

 

 

 

 

 

──────────────────────

チーム5D 's結成から1週間が経った、そしてWRGPまで残り5日…今日は予選グループの発表、そしてデュエルレーンの練習走行…プラクティスの日である。

遊海と翠は遊星達と共に発表会場を訪れていた。

 

 

「聞いてはいたけど…参加チームが多いな…」

 

「本当ですね〜…」

遊海はモニターを見ながら呟く…参加チームは全32チーム、それを4チーム1ブロックとしてA〜Hの8ブロックに分け総当たり戦を行う…そして各ブロック上位2チーム計16チームが本戦トーナメントに進めるのだ。

 

 

「それにしても…最初の相手が『チームユニコーン』だなんて…」

 

「まったくだぜ…ツイてねぇなぁ…」

5D'sは予選Aブロック…最初の相手はレセプションパーティーで出会った、チーム・ユニコーンだった。

 

 

「アメリカのアトランティス大会や数々の大会で勝利している強豪チーム…今回の優勝候補だ…!」

 

「フン…優勝候補だろうがなんだろうが…俺達の前に立ち塞がるなら叩き潰すだけだ!」

遊星の説明にジャックは強気に応える

 

「フッ…ジャック言う通りだ、優勝を目指すなら必ず強豪と当たるからな…」

 

ピンポンパンポーン…

 

【お知らせします、まもなくプラクティス交代時間です…次のチームは準備をお願いします、チーム・5D's、チーム・ダイナソー&ビークル、チーム・カタストロフ……】

 

「おっと!遊星、プラクティスの時間だぜ!」

 

「プラクティス?」

クロウの聞き慣れない言葉に龍亞が反応する

 

「ええ、Dホイールの走行練習の事なの、マシンの調子やコースの走り具合を確かめられる時間よ!」

 

「その通りだアキ、よく勉強しているな!」

 

「ありがとう遊星!私もチームの一員だもの!」

 

 

 

 

 

ところは代わりスタジアム…遊星達3人はデュエルレーンに、アキと龍亞兄妹、遊海達は観客席でその様子を眺めている…そこに見知った顔が現れる。

 

「よぉ!お前達!遊星達の応援か?」

 

「あ!牛尾のおっちゃん!どうしたの?セキュリティの制服着て…?」

デュエルレーンから牛尾が声をかける、普段のYシャツ姿ではなくセキュリティの制服を着ている。

 

 

「ああ、今回の大会はDホイールのオートパイロットは禁止だからな、トラブルがあっちゃ困る…だからこうして昔の格好で引っぱり出されてるのさ!」

 

「なるほど〜」

牛尾は胸を叩く

 

「大変ですね牛尾さん…」

 

「ん?なんて事はねぇよ遊海、それよりお前は走らなくていいのか?お前も『メタルナイト』名義で出るんだろ?」

手にした端末でメンバー表を確認した牛尾が遊海に問い掛ける。

 

「ああ…一応俺は『秘密兵器』ですから、なるべく人目に触れない方がいいでしょう…」

 

「なるほどな…の割には普通に出歩いて大丈夫なのか?いくら活躍したのが18年前とはいえ、お前の顔を覚えてる奴もいるんじゃないか??」

 

「それが…不思議と大丈夫なんですよ、どうも『赤帽子』を被ってないと『白波遊海』として認識されないみたいで…」

今の遊海の格好はスニーカーにジーンズ、上は長袖Tシャツにレザージャケット、頭には何も被っていない…この姿だと親しい人間以外にはどこにでもいる若者に見えるのだ…。

 

「不思議な事もあるもんだ…ま、出るのを楽しみにしてるぜ!じゃあな!」 

 

そう言って牛尾は去って行った、他の場所の見回りに行ったのだろう…。

そうして時間は過ぎていく…ボルガー社製のエンジンにピアスンが改良を加えた新エンジンの加速、そして遊星とブルーノの新プログラムのマッチングは凄まじく、その性能は飛躍的にアップしていた…。

 

 

ピンポンパンポーン…

【お知らせします…まもなくプラクティス交代時間です、次のチームは準備をお願いします…チーム・フォーチュンアーク、チーム・ユニコーン、チーム・太陽、チーム・レッドアイズ……】

 

 

「お前達〜!そろそろ戻ってこ〜い!」

 

「もう時間か…ジャック!クロウ!ピットに戻ろう!」

遊海に声を掛けられた遊星が2人に呼びかける。

 

「うむ、そうしよう!クロウ!戻るぞ!」

 

「ちょっと待ってくれ!あと1週だけ回ってくる!」

 

「おい!クロウ!?」

クロウはスピードを上げてレーンに戻る…ピアスンとボルガー、そして自分の手で完成した新ブラック・バードに乗っていたいのだろう…だが、そこで事件が起きる…クロウがスピードを上げた瞬間、ピットからDホイールが飛び出してきたのだ!

 

「っ!?ヤベェ!!」

 

クロウはハンドルをきるが間に合わずに接触、相手のDホイールは転倒し大破して…

 

 

 

 

 

 

 

 

『タイム…タイラント!!!』

 

 

 

《グオオオオン!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ…!?」

 

「…監督のいう事は聞くもんだぞクロウ…危なかったな」

気づけばブラックバードは遊海に受け止められていた、しかもピットとレーンの合流地点の直前で…

 

 

「あれ、オレ…今ぶつかって…??」

 

『おい!?なんだよ今の!?!?俺今アンタとぶつかったよな!?』

路肩にDホイールを停車させたDホイーラー…チーム・ユニコーンのブレオが駆け寄ってくる…。

 

「お前…チームユニコーンの!?すまねぇ!オレも何がなんだか…!」

 

「「クロウ!!」」

 

『『ブレオ!!』』

 

遊星とジャック、そしてユニコーンのアンドレとジャンも駆け寄ってくる…

 

 

「お前達…今、接触しなかったか!?」

 

『オレもぶつかる所を見てたぜ、だが…傷1つねえ…メタルナイト…アンタ何したんだ!?』

赤髪のアンドレがDホイールを検めてから遊海に尋ねる…

 

「すまないなチーム・ユニコーン、俺の友が迷惑をかけた…ちょっとしたマジックさ!()()()()()()()()()()()()()()!」

 

『あ、ああ…方法はどうあれアンドレを救ってくれたんだ、感謝する(まさか、見抜かれた…のか!?)』

ユニコーンの司令塔であるジャンは動揺する。

 

今の接触事故はジャンの指示のもとで起きた()()()()()()()だったのだ。

 

 

「すまない、久しぶりだなチームユニコーンの…」

 

『俺はアンドレ!金髪がブレオで黒髪がジャンだ!久しぶりだな遊星!…今のは流石に少しヒヤッとしたぜ…』

チームユニコーンが改めて自己紹介する

 

「すまねぇ…オレが終了時間を無視したから…」

 

『まぁ、良いって事よ!少し俺も早く出ちまったからな!それに怪我も破損も無いし!…いい突っ込みだったぜ?』

クロウはブレオに謝罪しブレオはそれを軽く受け入れた。

 

『それで…どうかな?今の騒ぎのお詫びと言ってはなんだけど…オレとデュエルしないか遊星?』

 

「えっ?」

アンドレの思わぬ提案に遊星は聞き返す

 

『今はチームユニコーンのプラクティスだ、別に問題は無い…それにオレも興味があるんだ、この街のキングの実力にね?』

アンドレはお茶目にそう伝える

 

「メタルナイト…」

 

「やってこい遊星、世界のレベルを知れるいいチャンスだ!ま、練習デュエルだな!」

 

「…わかった、相手になろう!」

 

『そうこなくっちゃな!』

遊海の後押しを受けた遊星はデュエルを受け入れ、アンドレとライディングデュエルを始めたのだった。

 

 

 

 

Sideチーム・ユニコーン

 

『おい、ジャン!話が違うじゃねぇか…!』

 

『すまないブレオ…メタルナイトがいるのは計算外だった…!』

アンドレと遊星のデュエルを観戦する為に観客席に上がったブレオとジャンは話し合っていた…。

 

 

『しかも…今の事故がワザとだと見抜かれたようだ…』

 

『なっ…!?な、何者なんだよ、メタルナイトは…!』

 

『…ブレオ、今はアンドレのデュエルに集中しよう、遊星の情報を集めるんだ…』

 

『ああ…』

 

 

『(メタルナイトから感じたあの感じ…以前に何処かで…?)』

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「まったく…無茶をするなよクロウ、さっきのは中々大変なんだからな…?」

 

「す、すまねぇ遊海…助かりました…」

観客席に戻ったクロウは変身を解いた遊海に叱られていた…。

 

「だが遊海!お前はいったい何をしたのだ?俺達は相手がクラッシュした瞬間を見たぞ!?」

 

「うん、でも…その瞬間に時間が巻き戻ったというか…なかった事になったというか…?」

ジャックとブルーノは遊海に事の真相を尋ねる…

 

「ブルーノ、正解だ…()()()()()()()()()

 

「「「「「ええ〜っ!?」」」」」

その場にいた翠以外の人間は驚きをあらわにする…

 

「時間を巻き戻しただと!?そんな事どうやって!?」

 

「このカードの力を限定的に使ったのさ」

遊海はジャック達の見慣れない黒いカードを見せる…

 

「『超銀河眼の時空龍』…?何なのだこのカードは??」

 

「このカードは『時間の流れを支配する龍皇』…その力を使って()()()()()()5()()()()()()()()()んだ、その間にクロウの前に割り込んでブラックバードを止めたんだよ…」

 

「あなたって人は…本当に規格外ね、もう驚くのに疲れちゃったわ…」

アキは呆れたように呟く…

 

「でも…なんでそんな事できるのに使わなかったんだよ?その力があれば今までのピンチだって…」

 

「まぁ、そうなんだけど……あっ、ヤベ……」

 

ドッターン!

 

「「「遊海!!?」」」

話していた遊海は突如ふらついて仰向けに倒れてしまった…

 

「さ、流石に…無理が…、短時間なのに全部エネルギー持ってかれた……ダメだこりゃ……」

 

《…世界の時の流れを変えるのには相当なリスクが掛かります、連発はできないですし、しばらく身動きが取れなくなるんです…なので悪用する事は考えないでくださいね?》

 

「「「あ、ああ…」」」

遊海の言葉を引き継いだアヤカの言葉にジャック達は首を縦に振るしかなかった…。

 

 

「遊海さん…大丈夫…?」

 

「大丈夫よ龍可ちゃん!少し休めばよくなるから…もう、他にも方法がありましたよね?遊海さん…」

 

「と、咄嗟に使えたのがあれだけだったんだよ〜…」

翠はしばらくの間、目を回してしまった遊海を膝枕していたのだった。

 

 

 

 

 

 

アンドレと遊星のデュエルは白熱していた、遊星は連続スピードスペルや『ジャンクアーチャー』を召喚しアンドレを攻めるが…天性のプレイング技術を持ったアンドレは『おとぼけオポッサム』と『森の番人グリーンバブーン』のコンボ、『素早いモモンガ』からの『ベヒーモス』といったパワーデッキで逆に遊星を追い詰める…。

そしてデュエルは終盤…アンドレは攻撃力3000を誇る『ナチュル・ガオドレイク』を、遊星はエースである『スターダスト・ドラゴン』を召喚する!

 

 

『ようやくお出ましか!だが攻撃力は『ガオドレイク』には及ばない!』

 

「それはどうかな!リバース罠『シンクロストライク』を発動!『スターダスト』のシンクロ素材は『デブリドラゴン』・『スピードウォリアー』・『シールドウィング』の3体!よって攻撃力は4000となる!バトルだ!『グリーンバブーン』を攻撃!シューティングソニック!」

 

『なんだと!?うぉっ!?』

スターダストによってグリーンバブーンは破壊されアンドレのライフは残り100となる、そして『スピードワールド2』にはスピードカウンターを取り除いて手札のスピードスペルを捨て800ダメージを与える効果がある…勝負は決まったかと思われたが…

 

 

ピンポンパンポーン…

 

【プラクティスタイム終了の時間です、各チームはすぐにライディング、ライディングデュエルを終了してください…繰り返します…】

 

「なっ…!?時間切れ…!」

 

『プラクティスタイム終了…デュエルは中断だな、いいデュエルだったぜ遊星!』

決着の着く直前、無情にもプラクティスタイムは終了…デュエルは引き分けとなったのだった。

 

 

 

「…チーム・ユニコーン…恐ろしい相手だった…!予選…いや、本戦でもオレ達の最大のライバルになるかも知れない…!」

 

「フン、臆するな遊星!奴の速攻パワーデッキはこの俺が叩き潰してくれる!!」

デュエルが終わりチーム・ユニコーンは予選での再戦を約束し去っていった…遊星達はチームユニコーンの実力を確認し脅威を感じるが…。

 

 

「何を見てたんだ?お前達、…戦いは既に始まってるんだぞ?」

 

 

「白野さん…?それはどういう事ですか?というか大丈夫なんですか!?」

頭に冷えピタを貼った遊海が少しフラつきながら歩いてくる…。

 

「問題ない…遊星、お前達が見たのはあくまで『チームユニコーン』の『アンドレ』の戦い方だけだ…あいつらは世界で活躍するトップ『チーム』だ、今回見た事だけがあいつらの実力とは考えるなよ?」

 

「白野さん、つまり…オレは試されたという事ですか…?」

 

「ああ、更に言えば最初の接触事故もおそらく()()()()()()、チーム戦は情報戦だ…戦う前にどれだけ情報を集められるかが勝利を左右する事になる…それは覚えておいてくれ…わかったな?」

 

「はい…!」

 

「わかったならいいさ…さて、今日は戻ろう!大会に向けて体調を整えておけよ!」

遊海の話を聞いて遊星達は気持ちを引き締める…そしてその日は解散となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ククク…「チーム・ユニコーン」が恐ろしい相手ねぇ?』

 

『羨ましいな…あいつらは本当の恐怖を知らないらしい…!』

 

『いずれ…真の恐怖を味わってもらうぜ?そしてあの若い男…アイツ曰く、奴は先に始末しないといけないらしいな…おい、準備は?』

 

『ああ、チンピラにカードを渡してある…いつでもいけるぜ?』

 

『ならいい…強い奴はさっさと潰すに限るぜ…!』

 

闇はそこまで迫っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

「遊海さん、先に戻ってますね!」

 

「ああ!俺は海馬社長のところに行ってから戻るよ、出場の挨拶しとかないと!」

遊星達と別れた俺は海馬コーポレーションへと向かう…本来なら実名出場が原則のWRGPに『鋼の騎士』名義で出させてもらう挨拶に行くのだ。

 

 

 

「よく来たな遊海、今回の大会は実質お前の復帰戦となる…楽しみにしているぞ?」

KCを訪れた遊海は海馬と面会する、その顔は少し嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「ありがとうございます海馬社長!まぁ、俺はあくまで遊星達のサポートに回るつもりです…何事もなければですけど」

 

「…()()()()()()()

海馬は腕を組み遊海を見据える

 

「その可能性はあります…社長、大会により一層の警備をお願いします、俺も準備はしてますが…対処しきれるかわからないので…」

 

「フン…わかった、準備しておく…無茶はするなよ?」

 

 

 

 

「さて…用事も済んだし家に帰ろう!今日の夕飯は何かな?」  

 

《たしか今日はハンバーグだと言ってましたよ!》

 

「そっか!じゃあ早く戻らないとな!」

 

 

ブォンブォン! ドルルルル!!

 

 

「な、なんだぁ?」

 

海馬社長との面会を終えた遊海は夜のハイウェイを疾走する…そんな中、ハイウェイにけたたましい爆音が響く…遊海の後ろからは改造されたDホイールが迫ってきていた…。

 

 

「大会の前に一人暴走かよ…しょうがない、止めるか!」

遊海は少し速度を落とし改造Dホイールを走らせる男に声をかける

 

 

 

 

「おい!近所迷惑だからエンジン吹かすなよ!そんな爆音出してたらすぐにセキュリティに捕まるぞ?」

 

『うるせー!どんな走り方しようとオレっちの勝手だろ!止めたきゃ力づくで止めてみやがれ!!』

Dホイールの男は遊海にそう啖呵を切る…

 

「(先に鎧を着ておくべきだったか…しょうがない)なら力づくで止めてやるよ!デュエルだ!」

 

『かかってこいよ優男!オレっちの走りは止められねぇぜ!!』

 

 

【ライディングデュエルが開始されます、一般車両は退避してください…繰り返します…】

機械音声と共に海からデュエルレーンが迫り上がり、ルートが構築されていく…

 

 

 

 

 

 

『「ライディングデュエル!アクセラレーション!!」』

 

 

遊海LP4000

チンピラLP4000

 

特殊ルール

ライディングデュエル

 

スピードワールド2常時発動

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP0→1

「『闇竜星─ジョクト』を召喚!」 

瘴気に覆われた亀に似た竜が現れる ATK0

 

「そして『ジョクト』の効果発動!手札の『光竜星─リフン』と『魔竜星─トウテツ』を墓地に送り、デッキからそれぞれ攻撃力0と守備力0の竜星モンスターを特殊召喚する!現れろ!『水竜星─ビシキ』!『地竜星─ヘイカン』!」

水の竜脈から生まれた亀に似た竜と大地の竜脈から生まれた虎に似た竜が現れる DEF2000  ATK1900

 

「俺はレベル3の『ヘイカン』とレベル2の『ビシキ』にレベル2の『トウテツ』をチューニング!」

 

3+2+2=7

 

「魔を纏いし竜よ!その凶暴なる力で全てを薙ぎ払え!シンクロ召喚!『邪竜星─ガイザー』!」

闇を纏った破壊竜が現れる ATK2600

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

遊海LP4000  SP1

ガイザー 伏せ2 手札2

 

 

 

『チィ!いきなりヤバめなモンスター出してくんじゃねぇよ!』

 

「ならさっさと降参しなよ!今ならセキュリティにも黙っててやるから!」

 

『嫌なこった!こちとら金もらってやってるんだからな!!』

 

「(金…?誰かに頼まれた…?)」

 

 

 

『オレっちのターン!ドロー!』

『オレっちのフィールドにモンスターがいない時!「インヴェルズの魔細胞」は特殊召喚できる!』

背中に悪魔のマークが刻まれたテントウムシが現れる DEF0

 

「『インヴェルズ』だと?…中々に珍しいテーマだな…」

 

『オレっちはさらに「魔細胞」をリリースする事で「インヴェルズ・ギラファ」をアドバンス召喚!このモンスターはレベル7だがインヴェルズモンスター1体のリリースで召喚できる!』

ギラファノコギリクワガタのハサミを持った捕食者が現れる ATK2600

 

『「ギラファ」の効果発動!インヴェルズモンスターをリリースしてこのモンスターを召喚した時!相手モンスターを墓地に送りオレっちはライフを1000回復する!プレデター・サクリファイス!』

 

「無駄だ!『ガイザー』は相手のカード効果の対象にならない!よって効果は不発だ!」

 

《ギャオオン!!》

ガイザーが恐ろしい咆哮を轟かせる…それに戸惑ったギラファは効果を中断してしまう。

 

『なら攻撃力で超えてやる!「Sp-スピード・エナジー」発動!オレっちのスピードカウンターは2!よって「ギラファ」の攻撃力がエンドフェイズまで400ポイントアップする!』

 

ギラファATK2600→3000

 

『バトルだ!「ギラファ」で「ガイザー」を攻撃!プレデター・キャノン!!』

ギラファの右腕からエネルギー弾が発射されガイザーに直撃する!

 

『どうだ!お前の切り札を破壊してやった《ギャオオン!!》なんだと!?』

爆煙の中から無傷のガイザーが飛び出す!

 

「悪いな!シンクロ素材となった『ヘイカン』の効果で『ガイザー』は戦闘破壊されないんだ!…まぁ、ダメージは受けるけどな?」

 

遊海LP4000→3600

 

『チッ!カードを2枚伏せてターンエンド!』

ギラファATK3000→2600

 

チンピラLP4000 SP2

ギラファ 伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP2→3

「『風竜星─リフン』を召喚!」

緑色の中華風の竜が現れる ATK0

 

「そして『ガイザー』の効果発動!『ホロウ』を破壊する事で『ギラファ』を破壊する!龍脈の影縛り!」

ガイザーの影が広がりホロウとギラファを引きずり込み破壊した!

 

『なっ!?オレっちの「ギラファ」が!?』

 

「そして『ホロウ』の効果発動!このモンスターが破壊された時、デッキから『炎竜星─シュンゲイ』を特殊召喚!さらにリバース罠オープン!『竜星の具象化』!自分のモンスターが破壊された事で同じくデッキから2枚目の『ヘイカン』を特殊召喚!さらに墓地の『光竜星─リフン』の効果発動!自分のモンスターが破壊された時、このモンスターを墓地から特殊召喚できる!現れろ!龍脈の化身達!」

炎の獅子竜、地の虎竜、光の魚竜が現れる ATK1900  ATK1900  DEF0

 

『ぎぇ…!一気にモンスターが!?』

 

「そして俺はレベル4の『シュンゲイ』とレベル3の『ヘイカン』にレベル1の『リフン』をチューニング!」

 

4+3+1=8

 

「星を流れる龍脈よ!その力を束ね輝く星を具象化せよ!シンクロ召喚!『輝竜星ーショウフク』!」

輝きを纏った虎柄の竜が現れる ATK2300→2800

 

 

『これ以上好き勝手にさせるか!リバース罠「奈落の落とし穴」!「ショウフク」は破壊して除外だ!』

召喚されたショウフクは異次元の穴に吸い込まれる!

 

「むっ!?やるな…だがダメージは受けてもらう!バトル!『ガイザー』でダイレクトアタック!龍脈の息吹!」

星の力を宿したブレスが直撃する!

 

『ぐおお!?』

 

チンピラLP4000→1400

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

遊海LP3600 SP3

ガイザー 伏せ1 手札1

 

 

 

 

『つ、強い…!(オイオイオイ…!こんなヤベー奴を倒せって無理だって!?あのヤローなんのつもりだよ!?)』

このチンピラ、溜まり場でたむろしていた所に見慣れない男が現れ遊海(変装)の写真と金、そしてカードを渡され襲うように依頼されたのだ…。

 

「どうした?これで終わりか?」

 

『う、うるせぇ!まだ終わっちゃいねぇぞ!!』

 

 

 

 

『オレっちのターン!ドロー!!…このカードなら…!』

カードを引いたチンピラは笑みを浮かべる…

 

『オレっちは「Sp-エンジェルバトン」を発動!2枚引いて…手札の「インヴェルズ万能態」を墓地へ!そしてさらに「Sp-ヴィジョン・ウィンド」を発動!墓地のレベル2「インヴェルズ万能態」を特殊召喚!』

ミノムシ型の悪魔が現れる DEF0

 

『そしてリバース罠「侵略の波紋」を発動!ライフを500払って墓地から蘇れ!「インヴェルズの魔細胞」!』

再びテントウムシが現れる DEF0

 

チンピラLP1400→900

 

「リリース素材を揃えた…出てくるのは奴か…!」

 

『オイ!優男!オレっちの手にいれた切り札モンスターを見せてやる!!オレっちは「魔細胞」、そして「万能態」を2体分のリリースとして…出やがれ!全てを喰らい尽くす暴食の悪魔!「インヴェルズ・グレズ」!!』

《ゴオオオ!!》

2体の生け贄を噛み砕き、ヘラクレスオオカブトの意匠を持つ巨大なる悪魔が現れる ATK3200

 

 

「インヴェルズの切り札モンスター…!だがこの感じは…!」

召喚された悪魔を前に遊海は強い闇の気配を感じとる…

 

《マスター!そのモンスターに強い闇の力が籠められています!!既にソリッドビジョンではなく実体化しています!!》

 

「なんだと!?お前!そのカードを使うのをやめるんだ!!」

アヤカの分析を聞いた遊海はチンピラに叫ぶ!

 

『はっ…!今更ビビりやがったか!この攻撃で大人しく負けやがれ!!「グレズ」の効果発動!ライフを半分にする事で自身以外のカードを全て破壊する!!捕食王の雷!!』

 

チンピラLP900→450

 

「やめろぉぉぉ!!!」

 

《グガァァァ!!!!》

遊海の静止も間に合わずグレズの力が解き放たれフィールドにカミナリが降り注ぐ…そのカミナリはモンスターや伏せカードだけでなくデュエルレーンのアスファルトや防音壁にも降り注ぎ破壊していく、それだけではなく…

 

『な、なんだよこれ!聞いてな…ぎゃああああ!!?』ビシャーン!!!

 

《マスター!意図的にカードが暴走させられています!!》 

 

「ちぃ!やっぱり!!うぉ…!!」

降り注ぐカミナリを避けながら遊海は舌打ちする…闇のカードは生半可な決闘者では扱えない、もし使ってしまえばカードは暴走し、手に負えなくなるだろう…

 

 

「くっ…!はっ!だっ!!」ギャン! キキー!! 

遊海は降り注ぐカミナリを避け続ける…!

 

「くっそ…!精霊変し《ガアアアアア!!》しまっ…!」

精霊アーマーを纏い状況を打開しようとしたがグレズの力が増し…

 

ピシャアアアン!!

 

「がああああああ…!!!」 ギャン…ズガーン!!

 

《マスター!!》

カミナリは遊海に直撃…コントロールを失ったDホイールは壁に衝突しクラッシュした…。

 

 

双方決闘続行不可 

 

Duel Draw…

 

 

 

 

 

《オオオ……》

 

「ガッ…ゴフッ…!」

デュエルが強制終了されグレズは消え去る…あとに残されたのは破壊されたデュエルレーンと倒れ伏す2人の決闘者だけだった…。

 

《マスター!大丈夫ですか!気をしっかりもってください!!》

 

「ちく…しょ…奴ら…め…!卑怯な…!!」

遊海は薄れゆく意識の中、今回の黒幕に思い当たる…大方、正攻法では遊海を倒せないと考え力技で干渉したのだろう…。

 

「覚えて…やがれ…プラシ…ド…」

そのまま遊海の意識は闇に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side三皇帝

 

 

 

『何をしているのだ馬鹿者!!』

 

三皇帝のアジトにホセの怒号が響き渡る…それは同じく三皇帝の一人であるプラシドに向けられていた…。

 

『そう怒鳴るなホセ、オレは何もしていない…チンピラが手にいれたカードに()()()()データの不備があっただけだろう?』

プラシドは飄々とホセの怒りを受け流す…罪悪感は無いようだ。

 

 

『あれほどシグナーには手を出すなと言っただろう…!』

 

『フン…知らんな、だいたいオレ達はサーキットを浮かびあがらせる事が目的のはずだ…オレはその障害を排除しただけだ!』

 

『減らず口を…!ここにゲイザーがいればなんと言ったか…!』

 

『フン…いない奴の事を言ってもどうにもならないだろう?』

そう言ったプラシドは踵をかえす

 

『…何処へいく』

 

『フン…アンタには関係ないだろう』

プラシドはそのまま瞬間移動した。

 

『キッシッシ…プラシドは反抗期かな?』

 

『黙れ、ルチアーノ』

 

『おぉ怖っ…』

 

 

『(見ているがいいホセ…オレの完璧な計画でこの街をカオスに陥れてやるよ…!)』

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

「う…うぅ……」

 

「遊海さん…?遊海さん!!翠さん!遊海さんが!!」

 

「遊海さん!私がわかりますか!!遊海さん!!」

 

「遊…星、翠…ここ、は…」

意識が覚醒する、俺は…チンピラとデュエルして…傷はほぼ治ってるけど全身包帯だらけだ…

 

 

「ここはネオドミノ病院です!…デュエルレーンで倒れてる遊海さんともう1人が見つかって2日経ってます…いったい何が…!」

 

「暴走するチンピラを止めようとしたら…闇のカード使って来やがった…!アイツは…!『そっからは俺が話すぜ遊海』牛尾さん…」

遊海が身体を起こしかけたところでカーテンが開いて牛尾が現れる。

 

『相手のチンピラは別の病院だ…そいつ曰く、見知らぬ男に金とカードを渡されてお前を襲えって言われたらしいぜ、まぁ…そいつとお前のDホイールにデュエルログは残ってなかったらしい…いつかのゴーストの時みたいにな…』

 

「っ…そう、ですか…イタタ…」

全身を包む痛みと倦怠感に遊海は再びベッドに倒れ込む…

 

 

「遊海さん…それだけではないんだ…、クロウがクラッシュ事故を起こしてしまった…幸い怪我は翠さんが治してくれて大事はないんだが…ブラックバードの修理が間に合いそうにない…!」

遊星は悔しそうに遊海に伝える

 

「そうか…なら、俺が出るしかな《無理です、マスター…》アヤカ?」

 

《ホイール・フォートレスは先のデュエルで大破…修復には最短3日はかかってしまいます…何より機体がまだ治安維持局に…》

 

「な、なんてタイミングの悪い…!」

遊海は手で顔を覆う…こうなれば物語どおりにいくしかないだろう…

 

「遊星…アキに聞いてみろ」

 

「えっ…」

遊星は目を丸くする…

 

「まだ初心者とはいえアキも立派なDホイーラーだ…それに翠と一緒に特訓も積んでる…やってみる価値はあるだろう?」

 

「わかりました…!クロウとアキを説得してみます!!」

遊星は病室を飛び出していった…。

 

『遊星の奴、なんとかなりゃいいが…俺もセキュリティに戻るぜ?お前なら心配ないだろうが…早くあいつらを導いてやれよ?』

 

「ええ…ありがとうございます牛尾さん」

 

 

「遊海さん…」

 

「すまない翠、不覚だった…まさか一般のデュエリストに闇のカードを渡すなんてな…!」

遊海は布団を握りしめる…

 

「相手がその気なら…俺にも考えがある…!」

遊海の瞳には静かな怒りが宿っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後〜WRGP当日〜

 

 

ついにやって来たWRGPの開催日…会場となるスタジアムは熱狂に包まれていた、そしてお馴染みのピンクスーツに超デカイリーゼントを持つ男・通称MCが実況し始めた…。

 

 

『レディース&ジェントルマン!ついにこの日がやってきた!!第1回WRGP…ワールド・ライディングデュエルグランプリの開幕だ〜!!』

 

「「「わあああ!」」」

 

『そして大会の開催にあたり…KC社長・海馬瀬人氏の開会の言葉だ!!』

MCの言葉と共に会場の立体映像に海馬社長の姿が映し出される!

 

 

『よくぞ集まった!歴戦のライディング・デュエリスト達!18年前…この町は未曾有の災害に見舞われ2つに分断された…だが!長い時間をかけようやく復興を遂げた!!…そしてこのグランプリは全ライディングチームの頂点を決める戦いとなる!最強の称号を掴み取れ!新たな決闘者達よ!!!』

 

「「「オオオオオ!!」」」

会場がさらなる熱狂に包まれる…ここに戦いの火蓋は切って落とされた…。

 

 

 

 

『海馬社長!見事な演説をありがとう!…では早速予選を始めていくぞ!予選はこのスタジアムを中心にネオドミノシティ内4ヶ所で行われる!最初の戦いは注目の対戦カード!ネオドミノシティの英雄!チーム5D 's対今大会の優勝候補!チーム・ユニコーンだ!さぁ…準備を頼むぜ!!』

 

 

 

 

「遊星!ユニコーンの一番手はアンドレだって!」

 

「コッチはもちろん遊星だよね?」

情報収集をしていたらしい龍亞と龍可が遊星に尋ねる

 

「いや…一番手はジャック、二番手がアキ…そして最後がオレだ」

 

「えっ!?どうして!」

 

「いやな…オレは最初、アキを一番手にしようとしたんだけどよ…」

クロウが肩をすぼめる

 

「奴のパワーに対抗できるのは俺だけだ!」

 

「という事でジャックのパワーデッキでアンドレに対抗しようという訳さ!」

 

「なるほどー…」

ジャックとブルーノの言葉に龍亞が頷く

 

「遊…白野さんはそれでよかったの?監督さん的に…」

龍可が心配そうに包帯(見せかけ)を巻いた遊海に話しかける

 

「ああ…パワーにはパワー、悪くない選択だ…だが気をつけろジャック、相手は世界で戦ってきた決闘者だ…油断はするなよ?」

 

「うむ、そこで見ているがいい白野!ジャック・アトラスの完全勝利を!!」

 

「ああ、頑張ってこい!(…すまん、ジャック…治療はちゃんとするから…)」

 

「?」

苦笑いを浮かべる遊海を不思議そうに見つめる龍可なのだった…。

 

 

 

そして2人のDホイーラーがスタート地点に並び立つ!

 

『両チーム準備が整ったようだ!さぁ…ライディングデュエル…スタートだ!』

 

 

『「ライディングデュエル!アクセラレーション!!」』

 

 

 

 

デュエルダイジェスト ジャック対アンドレ

 

 

ついに始まったチーム5D 'sのファーストデュエル…先攻は一時的にスピードを底上げする『オーバーブーストシステム』によってアンドレが勝ち取った。

アンドレは攻撃を誘うように2体のモンスターを召喚…後攻となったジャックは挑発に乗って『レッドデーモンズドラゴン』を召喚、アンドレの『一角獣の使い魔』を攻撃する…しかしその攻撃は読まれていた、アンドレは『使い魔』の効果を発動し自分の場の『モノケロース』を除外する事で攻撃を回避…さらに自分のモンスターがバトル中に戦闘破壊以外で場を離れた時に発動できる罠カード『異次元のバリア─ロスト・フォース』により『レッドデーモン』の攻撃力分のダメージを受けてジャックのライフは大きく削られてしまう。

…アンドレのデッキはパワーデッキではなくジャック対策のパワーメタデッキだったのだ。

 

その後、ジャックはなんとか立て直しを図りアンドレのライフを2700まで削ったものの追い詰められ『スピード・ワールド2』の効果でダメージを受け、そのまま敗北…しかもそれだけではなくマシントラブルでタイヤがロックされクラッシュ…ジャックはデュエルレーンに投げ出されてしまう…!

 

ジャックLP0

 

 

「大変だ…!WRGPのルールブックによると周回遅れになる度に相手のスピードカウンターは増えてボク達のスピードカウンターは減っていく…そしてスピードカウンターが無くなったらボク達の負けだ!!」

 

「「「な、なんだって!?」」」

ブルーノの読み上げた文章に遊星達は騒然となる、既にジャックは満身創痍…ホイール・オブ・フォーチュンは自走不可…しかもレース中のホイーラーに他の人間が触れればその時点で失格となってしまう…!

 

 

「くそぉ!どうにもならないのかよ…!」

クロウが拳を握りしめる…

 

「ジャック!頑張ってくれ!!」

 

「お願い…ジャック…!」

遊星達は祈る思いでジャックに声援を送る…!

 

「白野さん…!ジャックが…」

 

「心配するな龍可…大丈夫」 

遊海は龍可を安心させるように優しく頭を撫でる…

 

「ジャックはこんなところで倒れる奴じゃない…それに…()()()()()()()()()()

 

「え…?あぁ!?」

龍可の視線の先…そこにはなんとかピットまで辿り着いたジャックの姿があった…。

 

 

 

 

Sideジャック

 

「(くそっ…!ジャック・アトラスともあろう男が…こんな敗北など…!)」

ジャックは朦朧とする意識の中Dホイールを押し続ける…

 

「(Dホイールが重い…!ここしばらく筋トレをサボったツケか…!まだだ…俺達の戦いはこれからなのだ…!!)」

たくさんの人々の声に混じって仲間達の声援が聞こえてくる…ジャックはその声援に応える為に足を進める。

 

「(遊海にあれほどの啖呵を切っておいて何というザマだ…!俺は…遊海を…決闘王を超える男だ!!)」グン!

 

ジャックはより一層力を込める…その時

 

「(…!Dホイールが少し軽くなった…!これならば…!力を貸してくれ…遊星!クロウ!アキ…!!)」

ジャックの思いが力となり速度が上がる…そしてジャックはスピードカウンターを2つ残しピットへと辿り着いたのだった…。

 

 

 

 

《(許せジャック殿…主からの指示だ…!)》

ジャックの頭上…そこには少しだけDホイールを持ち上げるトフェニの姿があった…。 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

なんとかピットに辿り着いたジャックはアキへとタスキを託し倒れ込んでしまう…

 

「ジャック!大丈夫か!!」

 

「っ…遊星、クロウ…」

 

「たく…ヒヤヒヤさせやがって…!」

 

「楽にしてろ、治療するから…」

 

「後は…頼む…!」

ジャックはそのまま気を失った…

 

 

 

 

 

 

 

アキ対アンドレ

 

ジャックからタスキを受け取ったアキはアンドレとのデュエルに臨む、先攻はアキが勝ち取った…先のオーバーブーストによってアンドレの速度が上がらなかった事でチャンスが回ってきたのだ。

先攻を取ったアキは『フェニキシアンクラスターアマリリス』を召喚し地道!アンドレのライフを削ろうとする…しかしアンドレはその天性のプレイングで『Sp-ダッシュ・ピルファー』を発動、自身の効果で守備表示となったいた『アマリリス』のコントロールを奪い、限定的な蘇生効果を内蔵した『ユニバード』と共に除外されアンドレのエースである『サンダーユニコーン』を呼び戻されてしまい、ライフを半分にされてしまう。

だがアキも負けてはいない、アキは自分のエースである『ブラックローズドラゴン』を召喚、さらに遊星から託された奇策によって『スターダスト・ドラゴン』を召喚する。

だが…アンドレの壁は高かった、『ブラックローズ』による攻撃は罠カード『次元均衡』により躱され、さらに『ブラックローズ』は除外され破壊した『サンダーユニコーン』が復活…さらに返しのターンで『Sp-スピード・エナジー』で攻撃力4600となった『サンダーユニコーン』によって『スターダスト』は破壊されてしまう。

そしてアキのライフは残り800…『スピードワールド2』のデッドラインとなってしまう…だが、アキはただでは終わらなかった、ダメージを受ける刹那『ウィキッド・リボーン』を発動…自分のライフを糧として遊星へと『スターダストドラゴン』を繋ぎ敗北した。

 

アキLP0

 

 

 

「ごめんなさい遊星…私、何もできなかった…!」

 

「アキ姉ちゃん!そんな事ないよ!」

 

「そう、龍亞の言う通りだよアキ」

 

「龍亞…ブルーノ…」

ピットに戻り落ち込むアキをピットクルーのブルーノ達が慰める、そしてアキの繋いだバトンは遊星へと繋がれる!

 

「アキ…お前の気持ちは受け取った…あとは任せろ!」

遊星はジャック、そしてアキの想いと共にデュエルレーンへと向かった…!

 

 

 

「遊星…ごめんなさい…!」

 

「アキさん、泣かないで…」 

遊星を見送ったアキはDホイールから動けなかった…自分の無力を痛感し悔し涙を流すアキ…しかし

 

 

「アキちゃん!お疲れ様!いいデュエルだったわよ!」

 

「翠、さん…」

観客席から降りてきた翠がアキに声をかける

 

「そうだぜアキ…観客席をみてみろよ!」

 

「クロウ…あっ…!」

顔を上げたアキが観客席を見上げるすると…

 

『うおぉぉ!アキー!よかったぞぉぉぉ!!』

 

『アキ〜!カッコよかったわよ〜!!』

 

 

「パパ…ママ…ありがとう…!」

観客席ではアキの両親が声を張りあげアキを労っていた…父の英雄に至っては巨大な「IZAYOI」旗を振り回している…その様子に心を打たれた観客やMCも惜しみない拍手をアキに送ったのだった。

 

 

 

 

 

遊星対アンドレ

 

「アキ…お前が『スターダストドラゴン』と共に残した思い…無駄にはしない!!」

 

そしてついに対峙するアンドレと遊星…遊星はアキの残した『スターダスト』、そして一時的に攻撃力を上げる事のできる『マックスウォリアー』で『サンダーユニコーン』を撃破する。

対してアンドレはカードを2枚フィールドに伏せただけでターンを終える、その目的はスピードカウンターのある状況で、お互いのフィールドのモンスターを全て破壊し1体につき300のダメージを相手に与える『Sp-ジ・エンド・オブ・ストーム』を仲間に残す為の布石だった。

しかし遊星はそれを見逃さない、遊星はフィールドの魔法・罠を墓地に送り特殊召喚できる『カードブレイカー』を特殊召喚し『ジ・エンド・オブ・ストーム』の破壊に成功する。

 

しかし…それすらもアンドレの作戦だった。

 

アンドレが伏せたもう1枚のカードは自分の伏せカードが破壊されるとお互いに2000ダメージを与える『マジック・マイン』アンドレは敗北こそしたものの遊星のライフを半分にしたのだ…!

 

アンドレLP0

 

 

「(なんとかアンドレは倒す事ができた…だが…ここからが正念場だ…!)」

遊星は気合いを入れ直す…アンドレを倒す事はできたがその表情は暗い、それはアンドレの今までの戦績に理由がある。

 

5D'sから1万ポイントのライフを奪ったアンドレ…その実力は凄まじいもので、なんと1人でライディングデュエル30人抜き、さらにチームユニコーンはアンドレ1人で100連勝している…それゆえにブレオとジャンのデータを集める事ができなかったのだ。

 

「(ここからは何が起きるかわからない…だが、オレは自分のデュエルをするだけだ!!)」

 

 

 

 

遊星対ブレオ

 

続いて始まったブレオとのデュエル…ブレオは遊星の攻撃を防ぎつつ、エースモンスターである『ボルテック・バイコーン』を召喚するが…『スピードワールド2』のスピードカウンターを10個取り除く効果で『バイコーン』を破壊してしまう、しかし…これがブレオの狙い、『バイコーン』が破壊された事で効果が発動…遊星とブレオのデッキが7枚も削られてしまう…ブレオのデッキは『デッキ破壊』デッキだったのだ。

 

デュエルは続く…遊星はブレオの思惑に気付き速攻で決着を着けようとするがブレオは『ボルテックバイコーン』を何回も蘇生…その後遊星は『スターダスト』を破壊されながらも『ジャンクデストロイヤー』を召喚、ブレオを撃破したが残りライフは1000、残りデッキ4枚まで追い詰められてしまった。

 

ブレオLP0

 

 

 

遊星対ジャン

 

そして…ついに訪れたジャンとのデュエル、ジャンは攻撃力2800を誇るチーム・ユニコーンの象徴『ライトニングトライコーン』を召喚し『ジャンクデストロイヤー』を破壊しようとするが、遊星は先ほど墓地に送られていた『シールドウォリアー』により戦闘破壊を防ぐ…だがジャンは『スピードワールド2』のバーン効果を使い遊星のライフを削り切ろうとするが…またも墓地から『ダメージイーター』のモンスター効果が発動し遊星はライフを1600まで回復する…墓地が第2の手札とはよく言ったものである。

 

返しのターン、遊星は『スピードワールド2』の破壊効果を使い『トライコーン』を破壊…ダイレクトアタックでダメージを与える事に成功するがジャンは罠カード『波動再生』を発動しダメージを半減、さらに『トライコーン』が復活してしまい、遊星は攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない『ロードランナー』を召喚しターンを終えた。

しかしジャンは攻撃力1800の『ライノタウルス』を召喚し『トライコーン』と共に遊星のフィールドを一掃、さらに『ライノタウルス』の効果で2回目のダイレクトアタックを仕掛ける…だが遊星は罠カード『調和の結晶』を発動しエースである『スターダスト』を復活させジャンのライフを削る…そして遊星は返しのターンで『ライノタウルス』を破壊し、ジャンのライフを700まで削るが3回までライフを1000に戻す効果のある罠カード『サウザンドクロス』に阻まれてしまう。

そしてジャンの攻撃をなんとか凌いだ遊星だったが…残りデッキはあと2枚…遊星達の脳裏に『敗北』の二文字がちらつく…しかし、まだ諦めない漢がここにいた…!

 

 

「遊星!!この俺にいつまで腑抜けたデュエルを見せるつもりだ!!」

 

「ジャック…!」

遊海の治療により復活したジャックが声を張りあげる

 

「アキ!ブルーノ!お前達もだ!可能性があるのなら諦めるな!!俺達ができるのは遊星を信じる事だけだ!」

 

「ジャック…フッ、その通りだ!デッキがあるのならデュエリストはまだ戦える!諦めるな!限界を超えて勝利を掴め!遊星!!」

 

「ジャック…遊海…!そうだ!遊星頑張って!!」

 

「負けないで!遊星」

ジャックと遊海の言葉を聞いた龍亞が声をあげる…その声援は遊星の魂に熱い炎を灯す!

 

「(みんな……そうだ、これはオレ一人の戦いじゃない!オレ達みんなの戦いなんだ!オレ達の信じる勝利への可能性を……掴んでみせる!)オレのターン…ドロー!!」

遊星がカードを引く、そのカードは…

 

「(シンクロ召喚を超えたシンクロ…『アクセルシンクロ』……あの日からオレはずっとデュエルの新たな可能性を捜し求めて来た…アクセルシンクロの謎はまだ解き明かせてはいない、だが…これが俺の導き出した答えだ!)オレは『シンクロン・エクスプローラー』を召喚!その効果により墓地の『ジャンクシンクロン』を特殊召喚!そしてレベル2の『エクスプローラー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

2+3=5

 

「集いし星が新たな力を呼び起こす!光さす道となれ!シンクロ召喚!来い!『ジャンク・ウォリアー』!」

遊星の場にもう1体のエースであり切り込み隊長である戦士が現れる!

 

「そして…これがオレの答えだ!『Sp-スピード・フュージョン』を発動!『スターダストドラゴン』!『ジャンクウォリアー』!お前達の力を…今こそ一つに!!」

 

『なっ…!融合召喚だと!?』

冷静沈着なジャンですら驚きをあらわにした…彼らのデータでは遊星はシンクロ召喚以外を使った事がなかった…想定外の出来事だったのだ…!

 

「融合召喚!!現れろ!『波動竜騎士ドラゴエクィテス』!!」

遊星の場に巨大な翼と槍を持った竜騎士が現れた!

 

 

そして遊星は『ドラゴエクィテス』で『トライコーン』に攻撃を仕掛けるがジャンは戦闘ダメージを相手に与える罠カード『リターンダメージ』を発動する…しかし、『ドラゴエクィテス』は効果ダメージを反射する効果がありジャンに2回目の『サウザンドクロス』の効果を

使わせる事に成功する。

対してジャンは遊星のデッキ切れを狙う事を諦め、『トライコーン』の効果によりデッキを削る『ボルテックバイコーン』を蘇生、自爆特攻で勝負を決めようとするが遊星の十八番である『くず鉄のカカシ』に阻まれる。

 

そして遊星のターン…デッキ最後のカードは『Sp-オーバー・スピード』、遊星は『スピードワールド2』の効果を使い『サウザンドクロス』の効果を使い切らせ『オーバー・スピード』の効果を発動…スピードカウンターを使い切ったが墓地から直接攻撃効果を持つ『ラピッドウォリアー』を手札に加えジャンに最後の攻撃を仕掛ける…だが攻撃はジャンの罠カード『波動障壁』に阻まれライフを900まで減らされてしまう、そこで遊星は無念のターンエンド…だが、その瞳は未だに勝利を諦めていなかった。

 

 

『オレのターン…ドロー!』

 

「リバース罠オープン!『サモン・タックス』!モンスターが召喚・特殊召喚された時、そのプレイヤーは召喚されたモンスターの攻撃力の半分のダメージを受ける!」

 

『このタイミングで『サモン・タックス』…もう1枚のカードは『リフレクトバリア』…何かを狙っている…?』

ジャンは遊星の行動に疑問を抱く、自分が何もせずにターンを終えればその時点で5D'sの敗北は決定する…しかし

 

『何を考えているかは知らないが…その作戦を潰させてもらう!私は『Sp-タイラントフォース』を発動し!さらに『スピードワールド2』の破壊効果を発動する!「サモンタックス」は破壊だ!』

 

「その瞬間を待っていた!!『ドラゴエクィテス』の効果発動!墓地の『スターダストドラゴン』の効果をコピーする!ヴィクテム・サンクチュアリ!!」

 

『なっ…!しまったぁ!』

『スピードワールド2』の効果は無効にされ『サモンタックス』は破壊を免れる、それだけではなく『ドラゴエクィテス』はエンドフェイズに帰還…そして『リフレクトバリア』の効果でジャンにダメージを反射する事でライフを削り切る事ができる…遊星は召喚への道を掴んだのだ…!

 

『迂闊だった…だがこれで終わりだ!「幻角獣ヒュプノコーン」を召喚!』

 

「『サモンタックス』の効果発動!700のダメージだ!」

 

『まだだ!「ヒュプノコーン」が相手フィールドにのみモンスターがいる時に召喚された事で「サモンタックス」を破壊!さらにリバース罠「連鎖旋風」を発動!カード効果でフィールドのカードが破壊された時!フィールドの魔法・罠カードを2枚破壊する!伏せられた「リフレクトバリア」「くず鉄のかかし」を破壊!さらに『タイラントフォース』の効果で合計900のダメージだ!』

ジャンによる怒涛の猛攻によって遊星のライフは300、フィールドには守備表示の『ラピッドウォリアー』のみの状況まで追い詰められてしまう…!

 

『(遊星をここまで追い詰める事ができた…だが…!)』

遊星のフィールドを蹂躙したジャンは遊星を見る…ヘルメットの隙間から見える遊星の目にはまだ勝利への希望があった。

 

『(コイツ…なんて目をしてやがる、フィールドには守備表示のモンスター1体、オレがターンエンドすれば勝利は確定する…しかし……オレは…!!)』

ジャンは迷っていた、このままターンを終えれば『チームユニコーン』は勝利する事ができる、しかし遊星は1人で絶体絶命の状態からチームをここまで追い詰めた…ジャンは思ってしまったのだ…遊星のモンスターを破壊する事で「完全勝利」をしたいと…。

 

『(不動遊星…オレはこんなにもデュエルで燃えた事は1度もなかった…今のオレにあるのはお前に勝ちたいという渇望のみ…!だが…それは…!)』

ジャンは『自分の勝利』と『チームの勝利』の間で揺れ動く…しかし、その葛藤はすぐに終わる事になった…それは…

 

 

『ジャン!!』

 

【Go!JDAN】

 

『アンドレ…ブレオ…!!』

ピットスペースからブレオがジャンの背中を押したのだ…いつも冷静沈着でチームの事を考えていたジャン…そのジャンの唯一のワガママを仲間である2人が後押ししたのだ…!

 

 

『ありがとう…お前達…!遊星!受けてみろ!オレの攻撃を!!』

 

「望むところだ!!」

 

『「ヒュプノコーン」で「ラピッドウォリアー」を攻撃!!』

 

『『いけ〜!!ジャン!!』』

ジャンの渾身の一撃が遊星に迫る…しかし、遊星もその背中に仲間達の想いを背負っている!!

 

「みんながオレに繋いでくれた最後の1枚…それがこのカードだ!!手札から『牙城のガーディアン』の効果発動!このカードを墓地に送り…『ラピッドウォリアー』の守備力を1500ポイントアップする!!」

 

ラピッドウォリアーの守備力は1700までアップ…そしてヒュプノコーンの攻撃力は1400、そしてジャンのライフは300…長きに渡ったチームユニコーンと5D'sの…遊星とジャンの戦いはここに決着を迎えたのだった。

 

 

ジャンLP0

 

チーム5D's WIN!!

 

 

 

 

 

 

『な、何という事だぁ!!12000ライフを削り、激戦に次ぐ激戦を潜り抜け最後までコースに立ち続けていたのは…!チーム・5D's!不動遊星!!まさか!まさかの!奇跡の大逆転勝利を掴み取った!!』

 

「「「わあああああ!!」」」

興奮したMCがチーム5D'sの勝利を伝える…観客席も歓声に沸いている!

 

 

「遊星!よくやった!!」

 

「ジャック!もう大丈夫なのか!?」

ピットに戻った遊星にジャックが駆け寄る

 

「うむ!お前の勝利と白野の治療で痛みなど吹っ飛んだ!」

 

「やったな!遊星!!」

 

「「遊星〜!」」

 

「クロウ…龍亞、龍可…!」

他のメンバーも遊星に駆け寄り勝利を喜びあう中…チームユニコーンがピットスペースに訪れる…。 

 

 

「ジャン…」

 

『オレ達はこの試合の為に万策を尽くしてきた、そして…アンドレもブレオも勝利の為に全力を尽くした、だがオレは最後の最後に…チームの勝利を忘れ「お前と勝負したい」という渇望に似た誘惑に負けた…策士が策士に徹し切れなかった!…これはチーム・ユニコーンの敗北じゃない、オレの敗北だ…』

 

「ジャン…」

敗北に落ち込むジャン…しかしそこに彼の仲間が声をかける…

『な~にカッコつけてんだよジャン!』

 

『気にすんな!勝負は所詮時の運…こんな事もあるさ!』

 

『ブレオ…アンドレ…すまない!オレはお前達の努力を無駄にした…!』

 

『無駄なもんか!このデュエルでお前は新しい経験をしただろう?』

仲間に謝罪するジャンだったが…ブレオとアンドレはまるで気にしていなかった…それどころか彼らは笑顔だった。

 

『お前はようやく出会ったんだろ?本当に勝ちたい相手に!』

 

『ああ…その通りだ…!』

この戦いは両チーム共に得る物がある戦いだった。

5D'sはチーム戦の大切さを…

 

ユニコーンはデュエルの楽しさを…

 

新たな事を学んだ両チームは大きな成長を遂げるだろう…。

 

 

「チームユニコーン!お前達はオレの出会った中で一番強いチームだった!また決勝で会おう!」

 

『ああ遊星…!望むところだ!!』

グランプリの予選は総当たり戦…ユニコーンとはまた戦う可能性があるのだ。

 

「チームユニコーンの健闘を祈って!」

『チーム5D'sとの再戦を願って!』

 

「『決勝で会おう!!』」

 

「「『『おー!!』』」」

 

2つのチームは円陣を組んでお互いの健闘を称え合った…こうしてチーム5D'sは勝利を掴んだのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideチームユニコーン

 

 

『いい奴らだったなジャン!』

 

『ああ…次は正々堂々決着を着けたいものだ…』

 

『そうだな!オレの連勝記録も切れちまった…次は取り返してやるぜ!』

 

戦いを終えて控え室に戻るジャン達…そこに…

 

 

「チームユニコーン…いいデュエルだったな!」

 

『アンタは…5D'sの…?』

通路で革のジャケットを着た青年がチームユニコーンを待ち受けていた。

 

「お前達に感謝する…これで遊星達はチームプレイの大切さを学ぶ事ができた、次はもっと手強くなるぞ?」

 

『ああ…望むところさ!そういえばなんでアンタがここに…?』

 

「なに…今の戦いの礼をしにきたのと…忠告するためさ」

 

『忠告…?なんの事だ?』

ジャンが青年に尋ねる

 

「お前達の次の相手はチーム・カタストロフだが…情報は知ってるか?」

 

『カタストロフ…5D'sと同じく新しいチームだが、目立った情報はないな、その相手がどうしたんだ?』

 

「奴らは『闇の力』を持っている可能性が高い…充分に注意してくれ」 

 

『闇の力…?』

 

『待て、なぜアンタがそんな事を教えてくれる?』

 

「言っただろ?『お礼』だよ…ありがとうな、遊星達の最初の相手がお前達でよかった!…じゃあな!」

そう言って青年は去っていった…。

 

 

『なんだったんだ…今の?』

 

『まさか…今の人は…』

 

『ジャン?どうしたんだ?今の奴を知ってるのか?』

アンドレがジャンに尋ねる

 

『気のせいかもしれないが…似た人を知っているんだ…ありえない話だがな…』

 

『ありえない…?誰なんだよそれ?』

 

『…伝説の決闘者…「赤帽子」』

 

『「赤帽子」〜?ありえねぇよジャン!あの人は死んだんだろ?』

 

『…そうだな…気のせいか…』

 

Sideout

 

 

 

 

 

「それじゃあ…5D'sの初勝利を祝って…カンパーイ!!」

 

「「「カンパーイ!!」」」

ポッポタイムのガレージでは遊星達の祝勝会が行われていた、メンバーは5D'sメンバーに何故か狭霧、カーリー、それから噴水広場のカフェのティファニーが混じっていた。

 

 

「でもジャックとアキ姉ちゃんが負けた時はハラハラしちゃったよ!」

 

 

「龍亞!貴様俺にケンカを売ってるのか!?」

 

「落ち着けよジャック!事実なんだしよ!」

 

 

「アキさん!カッコよかったよ!」

 

「ありがとう龍可…私ももっと頑張らなくちゃ…!」

 

 

「遊星!これを見て!これがマシントラブルの原因だよ…」

 

「これは…オレ達でなんとかなりそうだな!」

 

思い思いに歓談する遊星達…そこに…

 

 

 

『たった1回勝っただけでお祭り騒ぎね…5D's』

 

「シェリー!?」

突然、ガレージにシェリーが訪れる…

 

「貴女!何者よ!?」

カーリーがシェリーに尋ねる

 

『始めましての人もいるわね…私はシェリー・ルブラン、チームシェリーのDホイーラーよ…まぁ遊星と遊海に振られたせいでミゾグチと2人で戦うハメになったけどね?』

 

「なーんだ弱小チームじゃない!2人だとライフは8000だし負けちゃったのよね?」

 

「カーリー…ジャーナリストならしっかり情報の確認をしなくちゃな…チームシェリーは初戦をシェリーの3人抜きで勝利してるんだよ…おめでとうシェリー」

 

「えっ!?嘘でしょ〜!?」

遊海の言葉にカーリーは叫ぶ…ジャックを気にしすぎて情報を見ていなかったようだ。

 

『ありがとう遊海、私は負ける訳にはいかないわ…イリアステルの事を調べる為に…』

 

「イリアステル…!」

そして遊星とシェリーはイリアステルの情報を交換する。

 

ゴースト事件の首謀者やアカデミアに現れたルチアーノがイリアステルである事。

 

そして…遊星とシェリー達が飛ばされた先にいた者がイリアステルのボスかもしれないという事…遊星は危ない事に首を突っ込む事をやめさせようとするが…シェリーは首を横に振った。

 

『遊星、私は目的を果たす為に止まれないの…それに気になる事もあるわ…遊星、貴方も気をつけてね?』

そう言ってシェリーは去っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

「オレはまだ…自分の限界を超えられた訳じゃない…でも、必ず辿り着いてみせる…!『アクセルシンクロ』に…!」

シェリーの話を聞いた遊星は改めてアクセルシンクロの習得を考え始める。

 

「(しかし…シンクロモンスター同士でのシンクロ召喚…そんなモンスターがいるんだろうか…?)」

 

 

「(悩んでるな遊星…大丈夫、お前なら必ず辿りつけるさ、だから…心配するな)」

悩む遊星…遊海はそれを影から見守っていたのだった…。

 



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VSチーム・カタストロフ 〜逆鱗に触れるべからず〜

Side遊星

 

「…よし!ホイール・オブ・フォーチュンの修理完了だ!」

 

「お疲れ様遊星!これで次の試合も大丈夫だね!」

 

チーム・ユニコーンとの激戦の翌日、遊星とブルーノは破損したジャックのDホイールの修理を終わらせ一息ついていた。

 

 

「おっ!Dホイールの修理終わったのか?」

Dホイールの修理を終えた遊星にクロウが声をかける

 

「今終わったところだ…傷は大丈夫か?クロウ」

 

「当たり前だろ!翠の事は下手な医者より信用してるぜ!」

クロウは肩を回しながら答える、クロウは数日前のライディング中にクラッシュ事故を起こし肩の骨にヒビが入ってしまった…しかし、翠の治癒魔法によって既に万全の状態まで回復していた。

 

「時間できたんならチーム・ユニコーン対チーム・カタストロフの試合を見に行こうぜ!次の試合の参考にしよう!」

 

「ああ!ジャックも呼んでこよう!ブルーノ、留守を頼む!」

 

「うん!行ってらっしゃい!」

遊星はジャックとクロウと共にスタジアムへと向かった…。

 

 

 

 

「おい…!」

 

「これは…いったい何があったんだ!?」

スタジアムについた遊星達が目にしたのは異様な熱狂に包まれたスタジアム、そして…

 

『な…なんという事だぁ!?圧倒的優勢だと思われたチーム・ユニコーン!なんと2人連続でクラッシュ!勝利を掴んだのはチーム・カタストロフだ〜!!』

 

大破した2台のDホイール…そして担架で搬送されるジャンとアンドレの姿だった…。

 

 

 

 

 

「ブレオ!いったい何があったんだ!!」

 

『遊星、ジャック、クロウ…!来てくれたのか…』

遊星達はジャン達が運ばれたネオドミノ病院を訪れる、処置室の前では唯一無傷だったブレオが項垂れていた…。

 

『わからないんだ…デュエルの最中にDホイールがクラッシュして…』

 

ガラガラ…

 

『その通りだ…突然の事で対応する事ができなかった…!』

 

「「「ジャン!?」」」

 

『ジャン!大丈夫なのか!?』

処置室の扉が開いて車イスに乗ったジャンが現れる、右足と左腕は包帯で固定されている。

 

『心配をかけたなブレオ…腕と足を折ったがなんとか大丈夫だ、念の為にプロテクターとヘルメットを頑丈な物に変えておいてよかったよ…アンドレも手首を骨折しているが命に別状はないそうだ…』

 

『よ、よかった〜…』

気の抜けたブレオはイスに座り込む… 

 

『すまない遊星…どうやら約束は果たせないらしい』

 

「いいんだ、お前達が無事でよかった…またチャンスはあるさ」 

遊星も胸を撫で下ろす

 

『遊星、奴らは不気味な相手だ…注意してくれ…!』

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side三皇帝

 

 

三皇帝のアジト…そこにある3つの巨大な玉座にホセ、プラシド、ルチアーノの3人が座している…彼らの足元には巨大なネオドミノシティの地図が展開され、地図上には∞の形をした記号が浮かび始めていた…。

 

 

『キッシッシ…!どんどんサーキットが完成していくね〜!』

ルチアーノが地図に現れた記号…「サーキット」を見ながら笑い声をあげる。

 

『これがライディングデュエルが生み出す力の源…サーキットが完成した時、未来は変わるのだ…!』

 

『ふん…(やはり、まどろっこしい…!)』

ホセが感慨深げに呟くなか…プラシドの目には不満の色があった…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし…だいぶ出力が安定してきた…フラグメントを上げてみよう!」

 

「ああ…やってみよう!」

チームユニコーンの事故の翌日、遊星とブルーノは遊星号の調整をしていた…そこに

 

 

『遊星!ちょっと見て貰いたい物があるんだ!』

 

「ブレオ!どうしたんだ?ジャン達は…」

ブラックバードを磨いていたクロウがブレオに声をかける

 

『2人とも絶賛入院中さ…それよりこのメモリーチップを見て欲しいんだ!』

 

 

「「「メモリーチップ?」」」

 

 

ブレオ曰く、プロのDホイーラーであるアンドレとジャンが何もない場所でクラッシュするはずが無いとDホイールのメモリーをチェックしたところ、2台共に不自然に後輪がロックされた形跡があった…それをさらに詳しく調べてもらう為に遊星とブルーノを頼ったのだ。

 

 

「タイヤがロック…確かオレがクラッシュした時も…一瞬タイヤがロックした感覚が…」

 

「なんだって…!ブルーノ!ブラックバードのメモリーも調べてくれ!」

 

「了解…!」カタカタカタ

クロウの証言を受けてブルーノがブラックバードのメモリーを調べる…そのデータでも確かにロックされた形跡があった。

 

 

「まさか…オレがクラッシュしたのも…!!許さねぇ!チーム・カタストロフ!!」

クロウは拳を握り締めながら怒りをあらわにする…!

 

「落ち着くんだクロウ…まだ奴らが犯人だと決まった訳じゃない」

 

「悔しいがその通りだ、第一にデュエル中のDホイールをロックするなど無理にも程がある…疑わしきは罰せず…証拠がなければ…」

怒るクロウを遊星とカフェから戻ってきたジャックが宥める…しかし、そこで思わぬ事が起きる。

 

 

「じゃあ…見て見ましょう!アタシ昨日のデュエルの画像データを持ってきたの!…あれ?」

そんな声をあげたのはジャックにカタストロフの情報を伝えに来ていたカーリーだった、だが…彼女はタイミングが悪かったようだ…

 

「「「「『………(ジト目)』」」」」

 

「あの〜…アタシなんかやっちゃった…??」

 

「お前は…!持っているなら早く言わんか!!」

 

「ご、ごめんなさ〜い!!」

 

ジャックに雷を落とされながらカーリーはUSBを手渡した。

 

 

 

 

『「ヒドゥン・ナイト─フック─」…このモンスターが効果を発動した時に「何か」が起きたみたいだな…』

 

「ステータス的には普通のモンスターのはずなんだけど…」

 

遊星達はカーリーの記録映像を注意深く観察する…その結果わかったのは2人がクラッシュした時には『ヒドゥン・ナイト─フック─』というモンスターが存在し、効果を発動した直後にDホイールがクラッシュしたという事だけだった。

 

 

「もしや…デュエルモンスターズの精霊の仕業か?」

 

「いや…それはないだろう、映像を見る限りこのモンスターはソリッドビジョンのはずだ…それに奴らに精霊が使いこなせるとは思えない」

 

『カードの精霊?おいおいジャック!遊星!お前達そんな御伽話を信じてるのか…?』

唐突に精霊の話をし始めた遊星達にブレオがツッコむ

 

「それが実はオレ達には身近なんだよ…サイコデュエリストもいるし…何より精霊使いも知ってるしな…」

 

『お、おう…そうなのか(何なんだよこの街は…デュエルモンスターズの魔境か何かなのか…?)』

 

「みんな気をつけてよ?誰が狙われてもおかしくないんだから!」

 

「そうは言っても試合は明日だし…出るメンバーは全員いるしな」

 

「うむ、白野はそんな小細工に引っかかる奴ではないから問題ない!」

 

「待て…アキはどうした?」

 

「「あ…!」」

遊星の一言に場が凍りつく

 

「ねぇ、アキさんってまだ初心者よね?…もし狙われたりしたら…!」

 

「「「アキが危ない/ねぇ!!!」」」

遊星達は顔を見合わせ叫ぶ…遊星達は急いでアキに連絡を取ろうとするが…

 

 

「心配するなお前達、既に手は打ってあるさ」

 

『なっ…アンタは…』

 

「「「白野!!」」」

ポッポタイムのガレージに遊海が現れる

 

 

「今回は災難だったなチーム・ユニコーン…俺は5D'sの監督をやらせてもらってる岸波白野だ、名義上だけどな?」

 

『アンタが5D'sの監督…』

 

「待ってくれ白野さん!手は打ったって…」

遊星が遊海に尋ねる

 

「アキは翠と一緒に行動してるんだ、多少のトラブルは回避できるさ!」

 

「なるほど…それなら安心だ」

 

『おい!?それで納得するのかよ遊星!?』

安心した様子の遊星にブレオが尋ねる

 

「さっき言っただろ?ブレオ、白野と奥さんの翠は世界最強レベルの精霊使いなんだぜ?」

 

『この人が…お前達が信頼するのも納得だな…存在感がハンパない…』

クロウの答えにブレオも納得する

 

「まぁ…万全を期した方がいいな…ブルーノ、アキに連絡を取るか居場所は判るか?」

 

「ちょっと待って……見つけた!シティの湾岸エリアを走ってるみたいだ」

ブルーノがアキのDホイールの位置を捕捉する

 

「このスピードなら問題なさそうだな…一応連絡を取ろう」

遊星がDホイールの通信を開こうとする…しかし

 

「ん!?ちょっと待って!信号がロストした!!」

 

「なんだって!?おい!アキ!聞こえるか!アキ!!」

ブルーノの知らせを聞いた遊星が通信を呼びかけるが…反応はない…

 

「アヤカ!翠の位置をサーチ!」

 

《了解です!…湾岸エリアに停止して…!救難信号を受信しました!!》

 

「っ…!遊星!後から来い!俺はアキと翠のいる場所へ向かう!!」

 

「はい!!」

そう言って遊海はガレージを飛び出した

 

「遊星!俺達も急ぐぞ!!」

 

『待ってくれ!何が起きたんだ!?』

状況についていけないブレオが尋ねる…

 

「アキ達に何か問題が起きたんだ!」

 

《キュオオン!!》

 

『っ!なんだ今の!?』

轟いた咆哮にブレオが飛び出す、外で彼が見たのは飛翔する白いドラゴン、そして鋼の鎧を纏ったヒーローの姿だった…。

 

 

 

 

 

Side遊海

 

「(油断した…!翠…無事でいてくれ!)」

遊海は閃光竜の背に乗り翠のいる場所へと急ぐ…チームカタストロフの襲撃を知っていた遊海は翠を同行させる事で被害を最小限に抑えようとしたが…

 

「あそこか…!閃光竜!頼む!!」

 

《キュオン!!》 

遊海は煙が立ち昇るハイウェイへと急行した…。

 

 

 

 

 

「翠!アキ!」

 

「う…遊海さん…こっち…です…」

 

現場に辿り着いた遊海が目にしたのは壁に衝突し炎上するブラッディ・キッスと道路に投げ出されたヴァイオレット・キュイラッシェ…そして、壁に叩きつけられたのであろうアキと翠の姿だった…。

 

「翠!いったい何があった!」

 

「ごめんなさい遊海さん…アキちゃんを庇いきれません…でした…!」

傷ついた翠を助け起こしながら遊海は翠に尋ねる、そして翠は痛みに苦しみながら状況を話始めた。

 

 

 

 

 

Side翠〜数分前〜

 

 

 

「アキちゃん!運転が上手くなったわね!やっぱり本番を経験したからかしら!」

 

「ありがとう翠さん!練習に付き合ってくれた翠さんとクロウのおかげです!」

 

アキは翠を誘ってハイウェイをツーリングしていた…アキは先日のデュエルで大きな活躍をする事ができなかった…それを悔やみ次の出番に備えてライディング技術を磨いていたのだ。

 

 

「私はこの前のデュエルで遊星に繋ぐ事しかできなかった…だから次があるなら…!」

 

「その調子よ!私も今日一日付き合うわ!(きっと…何処かからカタストロフがアキちゃんを狙っているはず…気をつけないと…!)」

翠は生前に見ていた原作の事を思い出し周囲を警戒しながら走っていた…その時!

 

 

「えっ…きゃ!?」

 

「アキちゃん!!」

突如、アキがバランスを崩しDホイールから投げ出されようとする!

 

「くっ…!『ローズ・テンタクルス』を召喚!」

投げ出される刹那、アキはサイコパワーを発動させながらモンスターを召喚し着地しようとするが…  

 

スカッ…

 

「(そんな…!発動しない…!!)」

アキはローズ・テンタクルスの身体をすり抜けてしまう!

 

「ウィンダ!!」

《風よ!!》 ビュゴォォ!

翠は即座にウィンダを呼び出しアキの落下速度を落とそうとする…しかし

 

「(だめ…間に合わない!!)千年指輪!私達を守って!!」バッ!!

《翠!!》

風ではアキに間に合わない…それを感じた翠はDホイールから飛び降りアキを抱きとめる…そして翠の持つ千年指輪のバリアに守られながら壁へと叩きつけられたのだ…。

 

Sideout

 

 

 

 

「翠…よくやった、アキも大きな怪我はしてない…ありがとな…」

遊海は翠を治療しながらアキの容体を確認する…数カ所を打撲し気絶しているものの、命に別状はないだろう…。

 

「私がもう少し早く動ければ…」

 

「あんまりネガティブに考えなくていい…翠は出来る事をしてくれた…それでいいんだ」

 

「遊海さん…」

 

「大丈夫…必ず仇は討つ、ゆっくり休んでくれ…(チーム・カタストロフ…覚悟しておけよ…!!)」

 

遊海は拳を握り締めながら怒りを噛み殺したのだった。

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

クラッシュ事故の後、アキと翠は病院へと搬送された…遊海が治療を施した為大きな怪我はなかったが、念の為に3日間の検査入院となった。

 

アキのDホイールにはやはりというべきかロックされた形跡が残っていた…チーム・カタストロフの犯行である事は決定的となった…!

 

 

 

「アイツら…許せねぇ!!」

病院へと駆けつけた遊星達…2人に面会したクロウは廊下を駆け出す…。

 

「待て!クロウ、何処へ行くつもりだ!」

ブルーノと電話していた遊星が慌ててクロウを静止する…

 

「どこって…決まってるだろ!アキと翠をこんな目に合わせたチーム・カタストロフを見つけ出してギタギタにしてやるんだよ!!」

 

「気持ちは解るが落ち着くんだクロウ!そんな事をしたら奴らと同じだぞ!」

 

「じゃあ…どうしろってんだよ!!セキュリティに通報するか?証拠がなくてしらばっくれるのがオチだぜ!?」

クロウが言う事は当たっている…「ブラッド・メフィスト」の例があるとはいえその証拠を探すのは難しいだろう…。

 

「いや…奴らとのカタはデュエルで着ける…!それがデュエリストだ!!」

 

「デュエルで…」

この世界は全ての事がデュエルで解決する世界…デュエルモンスターズこそがこの世界における絶対不変の『法』なのである。

 

 

「わかった…なら、オレが奴らをぶっ飛ばす!!」

クロウが拳を握りしめながら決意する…しかし

 

「待ってくれないか…クロウ」

 

「っ…遊海、」

クロウの後ろから遊海が歩いてくる…

 

「次の試合…俺にファーストホイーラーをさせて欲しい…!」

 

「な…!何を言っている遊海!奴らは所詮闇のカード頼りの三下!貴方が出るまでも無い!」

ジャックが反対の声をあげる

 

「ああ…奴らは雑魚だ、本来なら俺が出るまでもない…でもなぁ…」ゴゴゴ…

 

「俺の仲間と女に手を出されて黙ってられるほど…我はお人好しじゃない─!!」

病院の廊下に風が吹き荒れ威圧感が場を支配する…!

 

 

「ぐっ…!なんて怒りだ…!」

 

「遊海…アンタ…!」

クロウは遊海の手元を見て気付く、遊海の拳は固く握り締められ血が滲んでいる事に…それはカタストロフへの怒りと仲間を守れなかった自分への怒りだった…

 

「わかったよ遊海、次の試合はアンタに任せる…元々アンタが監督だからな…その指示に従うさ!」

 

「すまないクロウ…だけどここで宣言する、次のデュエル…俺には油断も慢心も…慈悲もない!!!」

 

 

 

 

 

 

 

翌日…

 

 

 

 

 

「なにぃ!?ホイールをロックだと!!」

 

「そう!どうやってるかわからないけど…大スクープなんだから!!」

 

「それが呪われたチームの正体だったのね…!」

観客席にてカーリーがセキュリティである牛尾と狭霧にチーム・カタストロフの仕掛けたクラッシュ事件を伝えている。

 

「それが事実なら違法カードの使用のルール違反だ!すぐにカードを調べて失格にしてや…!」

 

「ちょっと待って!それで岸波さんから伝言があるんです…!」

 

「アイツから?何なんだよいったい…!」

カーリーに遊海からの伝言があると言われた牛尾は立ち止まる…

 

「えっと…ゴホン!『今回の決闘に手出しは無用、ユニコーンとアキ・翠を傷付けた罪は必ず償わせる』…だそうです…」

 

「…奴ら、終わったな」

その言葉を聞いた牛尾は客席に座り直す…

 

『あっ…いいのかよ?アンタらは治安維持が仕事だろ?』

牛尾の後ろに座っていたブレオが尋ねる

 

「本来ならすぐにでもお縄にするんだが…奴が動いてるなら話は別だ、カタストロフの奴ら…無事だといいが…」

尋ねられた牛尾は逆にチーム・カタストロフを心配し始める始末である。

 

『気になってたんだがアイツは何者なんだ?遊星達の信頼もハンパないし…セキュリティにも顔が効く…ネットの情報もないし…』

 

「なんだ?情報収集が得意なチーム・ユニコーンがあいつの事は調べ損ねたか?あいつは…この街で最強の決闘者であり…ヒーローだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハロー!エブリボディ!!盛り上がってるか〜!!』

 

 

「「「うおぉぉ!!」」」

MCの問いかけに観客は歓声をもって応える!

 

 

『Aブロック予選も大詰め!早速チーム紹介だ!!まずはチーム・ユニコーンをクラッシュに追い込み勝利を掴んだ…チーム・カタストロフ!!』

 

「やっちまえ〜!カタストロフ!!」

 

「今日もクラッシュを見せてくれ〜!!」

カタストロフのメンバーが現れると観客席からは不良を中心とした歓声と常識のある観客からのブーイングが響く…

 

 

『対するは!フォーチュンカップ優勝の不動遊星率いる…チーム5D's!!』

 

「「頑張れ!5D's!!」」

 

「アトラス様〜!!」

観客達はシティの英雄である遊星達を歓声で迎えいれる!

 

 

『おい…!なんで潰したはずのクロウがいやがる!!』

紫の角刈り・ヘルマンが観客に手を振るクロウを見て驚く

 

『だったら「また」潰すまでだ…!狼狽えるな!…チッ、コッチに来やがる』

チームのリーダーであるニコラスがヘルマンを窘めるがクロウが彼らのもとを訪れる。

 

 

「よぉ、ちょっと挨拶に来たぜ…カタストロフ」

 

『ハッ…病み上がりが!せっかく治った身体なんだから大事にしろよ?』

ヘルマンがクロウの挨拶に答える

 

「ああ…あんときは痛かった、だけどよ…アンドレやジャン…アキも痛い思いをしてるんだ…その礼はたっぷりさせてもらうぜ?」

 

『『なっ…(ば、バレてやがる!)』』

カタストロフのメンバーはクロウの言葉に顔を強張らさせる…

 

「それに、オレから一つ忠告だ…お前達はこの街で一番怒らせちゃダメな龍の逆鱗に触っちまった、覚悟しておけよ?…じゃあな!」

 

『龍の逆鱗…?なんの事だ…?』

手をひらひらさせながら戻っていくクロウをカタストロフは見送るしかなかった…。

 

 

 

 

 

『さぁ!ついにデュエルの始まりだ!チームカタストロフはヘルマン!チーム5D'sは…おや…?誰もいないぞ〜??』

 

『なに…?クロウの奴じゃないのか??』

スタートラインに立ったヘルマンが5D'sのピットを見るが…そこにはクロウだけではなくジャック、遊星もフィールドを眺めている…

 

 

『妙だな…もう1人の女ホイーラーは潰した、いったいなんのつもりだ…!』

カタストロフのピットでニコラスは苛つきながら5D'sを見る…その時…

 

 

 

《キュオオオン!!!》

 

スタジアムに咆哮が響き渡る…!

 

『な、なんだこの咆哮は!ソリッドビジョンの不具合…いや!違う!空をみろ!あれは鳥か!飛行機か!?いや…違う!あれは!!』

 

《キュオオン!!》

 

咆哮を轟かせながら閃光竜がスタジアムを旋回する…そしてその背から1人の男が飛び降りた!

 

 

「チーム・カタストロフ!お前達の相手は…この俺だ!!」

 

『な…なんという事だぁ!シティのキングと最強のヒーローが手を組んだ!!チーム5D'sのファーストホイーラーは…「鋼の騎士」メタルナイトだ!!』

 

「「「わぁぁぁ!!!」」」

 

『メ、メタルナイトだとぉぉ!?』

 

MCは届けられたカンペによりメタルナイトの参戦を伝える…観客席は歓声に包まれ、カタストロフは絶望した。

 

 

「待たせたなチーム・カタストロフ…さぁ、お前達の罪を数えろ!!」

 

『な、何が最強のヒーローだ!お前もぶっ潰してやる!』

ヘルマンは強気に遊海を睨みつける…

 

「やれるならやってみろ…お前達に傷つけられた友の無念…ここで晴らす!!」

 

 

『さぁ…スタジアムの熱狂は最高潮!ライディングデュエル…スタート!!』

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

カウントが変わり遊海とヘルマンはスタートする…そして遊海はわざと後攻を選んだ。

 

 

『貴様…なんのつもりだ!!』

 

「ハンデだ…先行は譲ってやる」

 

『調子に乗りやがって…後悔しやがれ!!』

 

 

 

ヘルマンLP4000

遊海LP4000

 

特殊ルール

ライディングデュエル

スピードワールド2常時発動 

 

WRGP特別ルール適用

・相手ライフが0になった時点で自分ターンは終了する。

・選手交代の際はフィールドのカードとスピードカウンターのみが引き継がれる、ライフは再び4000から

・周回遅れはスピードカウンターが0になったら失格

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP0→1

『「ヒドゥン・ナイト─フック─」を召喚!』

両腕がフックになったモンスターが現れる ATK1600

 

『カードを1枚伏せてターンエンド!』

ヘルマンLP4000 SP1

ナイトフック 伏せ1 手札4

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」SP1→2

「自分フィールドにモンスターが存在しない時!『SRベイゴマックス』は特殊召喚できる!」

連結したベイゴマが現れる ATK1200

 

「『ベイゴマックス』が特殊召喚に成功した事で俺はデッキの『SRタケトンボーグ』を手札に加える!さらにこのカードは自分フィールドに風属性モンスターがいる時!特殊召喚できる!」

フィールドに竹トンボが現れ小さなロボットに変形する ATK600

 

「さらに!『タケトンボーグ』をリリースする事で、デッキから現れろ!チューナーモンスター『赤目のダイス』!」

1の目が赤い瞳になったサイコロが現れる ATK100

 

「『赤目のダイス』の効果発動!『ベイゴマックス』のレベルを6に変更する!そして俺はレベル6になっている『ベイゴマックス』にレベル1の『赤目のダイス』をチューニング!!」

 

6+1=7

 

「その雄々しくも美しき翼を翻し!光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!」

緑色に輝く翼を持つドラゴンが現れる ATK2500

 

「さらに!俺はまだ通常召喚を行っていない!現れろ!『SRダブルヨーヨー』!」

ヨーヨーの車輪を付けたロボットが現れる ATK1400

 

「『ダブルヨーヨー』の効果発動!蘇れ!『赤目のダイス』!」

再び赤目のサイコロが現れる ATK100

 

「俺はレベル4の『ダブルヨーヨー』にレベル1の『赤目の』ダイスをチューニング!!」

 

4+1=5

 

「双翼抱くきらめくボディーと翼で天空に跳ね上がれ!シンクロ召喚!『HSRマッハゴー・イータ』!」

羽根突きの羽根のようなピットを持った戦闘機が現れる ATK2000

 

 

『メタルナイト!凄まじいプレイングで2体のシンクロモンスターを並べたぞぉ!?』

 

 

「『マッハゴーイータ』の効果発動!自身をリリースする事で『クリアウィング』と『ナイトフック』のレベルを1つアップする!」

クリアウィング☆7→8

 

ナイトフック☆4→5

 

『貴様…何を…!』

 

「バトルだ!『クリアウィング』で『ナイトフック』を攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!」

音速を超えたクリアウィングがナイトフックに迫る!

 

『バカめ!真正面から突っ込んで来やがった!『ナイトフック』の効果発動!シャドーフック!自身と攻撃モンスターを守備表示に変更し相手に800ダメージを与える!』

 

「馬鹿は…貴様だ!!『クリアウィング』の効果発動!ダイクロイックミラー!!」

《グオオン!!》

 

クリアウィングの咆哮でナイトフックは砕け散った…

 

『な、なんだとぉ!?』

 

「『クリアウィング』は自身以外のレベル5以上のモンスターが効果を発動した時、その効果を無効にし破壊する!さらに破壊したモンスターの攻撃力分自身の攻撃力をアップする!よって攻撃力は…」

 

ATK2500→4100

 

『こ、攻撃力4100だと!?』

 

「報いを受けろ!旋風のヘルダイブスラッシャー!!」

 

『う、うわあああ!!?』

力を増した突進によりヘルマンのライフは削り取られた…。

 

ヘルマンLP0 SP2 伏せ1

 

遊海LP4000 SP2

クリアウィング 手札4

 

 

 

 

『なんという事だ!ヘルマンはメタルナイトに手も足も出ず1ターンキル!!チームカタストロフの必勝コンボが破られた〜!』

 

 

 

 

「あ〜あ…やっぱりこうなったか…奴らは怒らせちゃいけない奴を怒らせたんだ」

観客席で牛尾は呆れたように呟く

 

『あれがメタルナイト…!なんて強さなんだ…!?』

同じく観客席のブレオも驚きのあまり固まってしまっている…。

 

「アイツらは白野のカミさんに手を出したんだ…当然の結果なんだよなぁ…」

 

     

 

 

「いくら相手が弱いとはいえ…まさか1ターンキルかよ…えげつねえ…」

 

「遊海め…まだ力を隠していたのか…!」

 

「それだけじゃない、遊海さんはとても怒っている…!その怒りを噛み殺して全てをデュエルに向けているんだ!」

ピットでデュエルの様子を観戦している遊星達は遊海の放つ威圧に圧倒されている…。

 

 

「ねぇ…遊星、おれ思ったんだけど…」

 

「どうしたんだ龍亞?」

 

「遊海…まだ()()()()()()()()んじゃないかな…?」

 

「なっ…!どうしてそう思うんだ?」

龍亞の呟きに遊星は聞き返す…

 

「だって、シグナーの竜の『閃光竜』…遊星と戦った聖刻龍の『トフェニ』…アキ姉ちゃんが戦った『メガロックドラゴン』…バクラと戦った『ラーの翼神竜』…遊海の連れてる精霊達の中でパートナーのアヤカだけ、まだデュエルで出てない気がするんだけど…」

 

「言われてみれば…!龍亞、お前よく気が付いたな!」

龍亞の疑問に遊星は驚いている  

 

「うん!何だかそんな気がしたんだ!」

 

龍亞の直感は彼の才能の発露なのか…それとも偶然なのか…それは神のみぞ知る事である。

  

 

 

 

 

 

 

『何やってやがるヘルマン!負けてんじゃねぇよ!?』

 

『しょうがねぇだろ!?奴が強過ぎるんだよ!!』

ピットに戻ったヘルマンはニコラスに叱責される…

 

『オレ達はこんなところで負ける訳にはいかないんだよ!!』ガシッ!

リーダーのニコラスはヘルマンからバトンを奪い取り発進する!

 

 

 

「お前がカタストロフのリーダーか?お前達が傷つけた仲間達の痛みを思い知れ!!」

 

『へっ…!もう勝ったつもりかヒーロー!貴様だけは倒す!!』

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

ニコラスLP4000 SP2

遊海LP4000 SP2

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP2→3

『…!カードを1枚伏せ、ターンエンド!』

ニコラスLP4000 SP3

伏せ2 手札5

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」SP3→4

「来い!『SR三つ目のダイス』!」

三角形の3面サイコロが現れる ATK300

 

「さらに墓地の『マッハゴーイータ』は自分フィールドにチューナーがいる時に特殊召喚できる!」

再び羽子板の戦闘機が現れる ATK2000

 

「俺はレベル5の『マッハゴーイータ』にレベル3の『三つ目のダイス』をチューニング!」

 

5+3=8

 

「その雄々しくも煌めく翼で風を受け!無双の力で殲滅せよ!シンクロ召喚!『HSRカイドレイク』!!」

緑色の翼を持つ機械のワイバーンが現れる ATK3000

 

『ここで攻撃力3000だと…!』

 

「まだだ!『カイドレイク』の効果発動!自身以外のフィールドのカードを全て破壊する!…が、さらに『クリアウィング』の効果発動!効果発動を無効にし破壊!さらに自身の攻撃力をアップする!!ダイクロイック・ミラー!!」

クリアウィングの咆哮でカイドレイクが砕け散りクリアウィングの攻撃力が増す!

 

ATK2500→5500

 

『攻撃力5500だとぉ!?』

 

「バトルだ!『クリアウィング』でプレイヤーにダイレクトアタック!旋風のヘルダイブスラッシャー!!」

音速を超えた突撃がニコラスに迫る!

 

『来たか…!だが、ただでは負けん!!リバース罠「ドゥームズ・レイ」!相手がダイレクトアタックをする時!オレの手札を任意の枚数捨てる事で1枚につき800ダメージ…つまり4000ダメージをお互いに与える!!』

ニコラスの場に点滅する爆弾が現れる

 

「な…!あいつ自爆するつもりか!!」

ピットの遊星が身を乗り出す!

 

『メタルナイト…貴様はここでDホイール諸共お陀仏だ…闇の力によってなぁ!!』

 

「なっ…闇の力だって!?」

 

「メタルナイトぉ!!」

ピットからブルーノと龍亞の叫びが響く…

 

 

 

 

 

 

 

「それはどうかな…ニコラス、デュエルを甘く見過ぎだ!」

 

『なんだと!?』

 

「俺は手札から『ジャンクリボー』の効果発動!自分にダメージが発生する効果が発動した時!このカードを墓地に送り…その効果を無効にし破壊する!」

遊海のフィールドに機械の身体のクリボーが無数に現れ、爆弾に飛びかかり喰らい尽くした!

 

『なんだとぉぉぉ!?』

 

「クロウとアンドレとジャンにアキ…そして俺の妻の痛み…その報いを受けろ!!旋風の…ヘルダイブスラッシャー!!!!!」

 

『う、うわあああああ!!!』

遊海は精霊の力をMAXにしてニコラスに攻撃…あまりの風圧に耐えきれなかったニコラスはクラッシュしDホイールは大破した…。

 

チーム・カタストロフ 決闘続行不可

 

チーム5D's WIN!!

 

 

『チームカタストロフのニコラスがクラッシュ!大会ルールによりチーム5D'sの勝利!!決勝進出決定だ〜!強い!強すぎるぞメタルナイト〜!!』

 

「「「わああああ!!」」」

スタジアムが歓声に包まれる、勝利方法こそチーム・カタストロフと同じだが、真正面から相手を圧倒した遊海のデュエルが観客達に受け入れられたのだ。

 

「あれが決闘王の実力の一端か…恐ろしいな…!」

 

「…絶対に遊海を怒らせないようにしよう…命が幾つあっても足りなくなりそうだぜ…」

ピットのメンバー達は改めて遊海の強さを実感したのだった…。

 

 

 

 

『ぐっ…まさかこんな事が…!』

転倒したニコラスは拳を握り締めていた、デュエリストの流儀に反して闇のカードに手を出したものの結果は惨敗…彼らの戦いはこれで終わったのだ。

 

「ニコラス、こんな言葉を知ってるか?…人を呪わば穴2つ…お前達が闇に手を出した時点でこの結末は決まっていたんだ」

 

『メタル…ナイト…身体が…!』 

ニコラスに近づいた遊海がニコラスの身体を癒やす…

 

「お前達はまだやり直せる…やるべき事はわかるな?」

 

『わかった…セキュリティに自首するよ…』

 

「それでいい…しっかり罪を償ってこい」 

それを伝えて遊海はピットへと戻った…。

 

 

 

 

 

 

「やったな!メタルナイト!すげぇデュエルだったぜ!」

 

「カッコよかった!!」

 

「ありがとうお前達、アキや翠の敵はしっかり討ったよ…ワガママを言ってすまなかった」

ピットに戻った遊海は遊星達に歓声で受け入れられる

 

「いいのだ遊海、貴方のデュエルを見ていて俺も胸がすいた思いだ!」

 

「そうか…後の戦いは任せたぞ?俺はゲイザーが出なければ後はお前達に任せ《マスター!緊急事態発生です!無数のゴースト反応が出現しました!!》っ!?」

 

「「「なんだって!?」」」

アヤカが警戒を促す…そして…

 

 

『緊急事態発生だ!予選の行われているデュエルレーンやネオドミノシティに大量のDホイーラーが乱入!事故が多発している!観客の皆様はスタジアムから出ないでください!』

知らせを受けたMCが焦った様子で放送する…イリアステル(プラシド)がついに動き始めた…!

 

 

 

 

 

『ついに…この時が来た…!今こそ…イレギュラーを抹殺し…世界(未来)を……救う(滅ぼす)!』



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明鏡止水の境地─クリアマインド─

『緊急ニュースだ!予選の行われているデュエルレーンやネオドミノシティに大量のDホイーラーが乱入!事故が多発しています!観客の皆様はスタジアムから出ないでください!』

 

MCが焦った様子で放送を続ける…この事件の発端は数分前に遡る…。

 

 

 

Sideプラシド

 

『チッ…彼奴らめ!余計な事をしたな…!』

スタジアムのドーム上でチーム・カタストロフに対して苛つきをあらわにしていた、原因は彼らの起こした行為だった。

 

『白波の女を傷つけたら奴が出てくるのは当たり前だろう…!』

 

『キッヒッヒッ!僕は知らないよ〜、ホセにめちゃくちゃ怒られるよ〜』

 

『うるさい!黙っていろルチアーノ!!』

プラシドはいつの間にか隣にいたルチアーノに怒鳴る…プラシドはホセのまどろっこしい作戦に嫌気が差し自分で新たな作戦を実行していた。

 

作戦はチーム・カタストロフに闇のカードを渡しWRGPに出場させる事で自分達の障害となるシグナー達を排除するという至極単純なもの…しかし、人選が悪かった…カタストロフがアキを狙った際に同伴していた白波翠を巻き込んでしまったのだ。

 

そうなれば当然遊海…メタルナイトが介入する、プラシドの眼下ではチームカタストロフがクラッシュし敗北してしまっていた。

 

『キッヒッヒッ!プラシドの作戦ダメダメじゃん!…っていないし…まぁいいか!』

 

 

『こうなればプランBだ…!この街をカオスに陥れてやる!!』 

そしてプラシドは事前に製造していた多数の改良型デュエルロイド『ディアブロ』を開放…Dホイーラーに無差別かつ強制的にデュエルを仕掛ける事でサーキットを浮かび上がらせようとしたのだ…!

 

『WRGPの予選は終了した…!これより始まるのは「バトルロイヤル」!オレ達のライディングデュエルは命懸け…さぁ死にたくなければ戦え!Dホイーラーども!そしてサーキットを浮かび上がらせるのだ!!』

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「牛尾!御影さん!ゴーストが!」

 

「ああ、わかってる!デュエルレーンになだれ込んで無差別にデュエルを仕掛けてるらしい!しかもデュエルのルールが『バトルロイヤルモード』に書き換えられて大変な事になってやがる!!」

遊海から事態を聞いた遊星達がセキュリティの2人のもとに集まる…ネオドミノシティは大混乱となっている…。

なお、遊海本人は既にゴースト討伐に向かっている。

 

 

「あれだけ大量のゴースト…この大会を潰すつもりか…!!」

 

「だったら戦うしかねぇ!せっかくの大会を潰させてたまるか!!」

ジャックとクロウが戦う意思を固める!

 

「なら…私達も手伝うわ!」

 

「シェリー!ミゾグチ!」

遊星達のもとにシェリーとミゾグチもやってくる…シェリーはチーム・カタストロフにイリアステルの影を感じて偵察に来ていたのだ。

 

 

「しかし遊星殿、ゴースト達はまさに大軍…どうするのです?」

 

「今回の襲撃には黒幕がいるはずだ…そいつを探し出して止めるんだ!」

 

「「「応!!」」」

遊星の指示のもとに決闘者達が結束する!

 

「行くぞ!取り戻したシティの平和をオレ達で守るんだ!!」

そして遊星達は散開しディアブロの討伐に乗り出した!

 

「みんな…待ってよ〜!」

ブルーノ1人を除いて…

 

 

 

 

 

 

Side三皇帝

 

『ヘー…しっかりとサーキットが出来てきてるね〜、でもDホイールを走らせないと完成しないなんて…ちょ〜めんどくさい!』

 

三皇帝のアジトでルチアーノはネオドミノシティに描かれていくサーキットを眺めていた…。

 

『サーキットを完成させるにはモーメントの力…つまりDホイールの力が必要なのだ…この時代の何も知らぬ決闘者達がしのぎを削り力を高め…それが最高潮まで高まった時、その時こそ「神の城」はこの時代に顕現するのだ…!』

ホセも地図を眺めながらルチアーノに目的を伝える…「神の城」の顕現…それが三皇帝の目的なのである。

 

『神の城ねぇ…でもサーキットの大きさからするとめちゃ大きいよね?街がペッシャンコになるんじゃないの〜?』

 

『未来を救う為の些細な犠牲だ、未来を救う為には…むっ?何が起きている…?』

ホセが視線を移すと多数のディアブロ軍団がネオドミノシティを襲撃している映像が写し出される…。

 

 

『これってプラシドのディアブロ軍団じゃん!我慢の限界だったみたいだね!キッヒッヒッ…!』

 

『おのれ若僧が余計な真似を…!!無理矢理戦わせたのでは完全なサーキットは浮かばんのだ!そんな事もわからんのか!!…むっ…この反応は…!』

 

『どうしたのさ?ホセ』

動きを止めたホセにルチアーノが尋ねる

 

 

『友が動き出したようだ…』

 

『わぁお…!?』

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

Side遊星

 

 

ゴースト討伐、そして黒幕探しの為にデュエルレーンに突入した遊星達…先程まで晴天だった空は厚い雲に覆われ…デュエルレーンはまさに戦場と化していた。ディアブロに襲撃されクラッシュした選手達や選手に返り討ちになったディアブロの残骸…さらに実体化した攻撃で破壊されたデュエルレーンや建物の残骸が散らばっている…。

 

そんな状況の中遊星、そして行動を共にしているシェリーとミゾグチは未だに戦い続ける選手とディアブロのデュエルに乱入し、他の選手達を助けていく…。

 

そして戦っているのは遊星達選手だけではない、牛尾率いるセキュリティのデュエルチェイサーズ…さらには有事の際に控えていたKCの特殊部隊が時にはデュエルで、時にはまきびしや網を使いディアブロ達を捕獲・無力化していく…さらには遊星達から離れた場所で何度も爆発が起きる…おそらく遊海が派手に暴れているのだろう…。

 

そんな中、シティに散らばっていたディアブロ達が一斉に何処かへ向かい始める…その目的は遊星だった、黒幕が遊星を倒す為に戦力を集中させたのだ…ディアブロ達は数の暴力でシェリーとミゾグチを瞬殺…遊星に襲いかかる!

 

 

「くっ…!この数で捕まったらオレもやられる…!!」

遊星を追うのは20体を超えるディアブロ達…遊星はスピードを上げて振り切ろうとするが追いつかれ光属性キラーの『A・ボム』の連続攻撃を受けてしまう…その時!

 

 

『私のターン!!「TG-ブレード・ガンナー」に「バスターショットマン」を装備!「A・ボム」を攻撃!バスター・ショット!!』

 

突如、青髪の男…遊星にアクセルシンクロの存在を伝えた謎のDホイーラーが遊星を囲むA・ボムとディアブロを全て吹き飛ばす!!

 

 

「お前は…!」

 

『遊星!加速してスリップ・ストリームでついてこい!スピードの限界を超えなければ奴らは振り切れない!』

 

「わかった!!」

遊星は謎のDホイーラーの後ろに付く…そして謎のDホイーラーのDホイールは爆発的に速度を上げ、その気流に巻き込まれる形で遊星も加速…ディアブロ軍団を振り切る事に成功する!…だが、そこに事件の黒幕が迫る…!

 

 

『不動遊星…!貴様は虫ケラの分際で目障り過ぎる…これ以上邪魔ができないようオレの「機皇帝」で踏み潰してやる!!』

 

「機皇帝だと!?お前がゴースト達のボスか!!」

遊星に追いついてきたのは白いDホイールに乗ったプラシド…彼は遊星を排除する為にデュエルを仕掛ける…!

 

「(まずい…!今のライフでデュエルを受けたら…!)」

 

遊星のライフは先程のディアブロ軍団によって減らされてしまっている、ライフを回復するにはこの場を一旦離脱しなければならないが…プラシドはそれを許さないだろう…しかし、この場にいるのは遊星だけではない…!

 

 

『やらせない!!』 

 

ズガン!!

 

『貴様ァ!!』

謎のDホイーラーがプラシドにリアルダイレクトアタックを仕掛け失速させる!

 

 

『遊星!この危機を乗り越えるには「アクセルシンクロ」を体得するしかない!心を研ぎ澄ますんだ!』

 

「心を…研ぎ澄ませる…?」

 

『そうだ遊星!…お前の操るDホイール…その動力であるモーメントはただのエネルギーじゃない!人間の心を読み取る「生きたエネルギー」なのだ!』

 

「!?…モーメントが人の心を読み取る…!?」

Dホイーラーの言葉に遊星は驚愕する。

 

謎のDホイーラー曰く、モーメントの核である遊星粒子は人間の心を読み取りその性質を変化させる…それはモーメントが開発される以前から利用されている…それこそが赤き竜と冥界の邪神の真実である事。

そしてその善悪を超越し、真にモーメントの力を使いこなした者が辿り着く境地…それこそが…

 

 

『「クリアマインド」…それこそがアクセルシンクロの鍵!遊星!今、それを習得するんだ!既に答えは君の中にある!!風を感じるんだ!!』

 

「風を…感じる…!」

Dホイーラーの言葉を聞いた遊星は神経を研ぎ澄ませ目を閉じる…本来であれば事故を起こす行動だが、遊星は走る事を止めずスピードを上げていく…!

 

 

「(オレはゴーストと戦ってからアクセルシンクロの方法を探し続けてきたが…見つける事ができなかった、それは…オレに機皇帝への恐怖があったからだ…、その恐怖を乗り越えた先に…クリアマインドはある!!)」

 

遊星は機皇帝への畏れを消し去る…その先で遊星は光の道、そして白いドラゴンの姿を垣間見た…!

 

「見つけた…スピードの中でしか見えない境地…クリアマインド!!」

遊星はようやくクリアマインド…「超スピードでの無我の境地」へと辿り着いた…しかし…

 

『不動遊星ぇぇぇ!!!』

リアルアタックで失速したプラシドがブースト装置で遊星を猛追する…その瞬間、厚い雲の中に一筋の流星が輝き遊星はその場から消え去った!!

 

『見つけたか…遊星!!』

 

『馬鹿な…消えただと!?』

満足そうに頷く謎のDホイーラーと状況を理解できていないプラシドを残し、遊星はその場から離脱した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…」

スピードと白きドラゴンに導かれ遊星が辿り着いたのは旧サテライト外れの荒野…以前に隕石騒動があった場所だった。そしてクレーターの中には1枚の石版がそびえ立っている、その表面には遊星の垣間見た白きドラゴンの姿が彫り込まれている…。

 

 

「このカードがオレに光の道を見せたのか…?」

遊星が石版に触れる…その瞬間、遊星の視界は白く塗りつぶされた…。

 

 

 

「っ…いったい何が…ここは…!!」

遊星の目の前には白い空間が広がる…そこは以前にブルーノ・シェリーと共に訪れた場所…そこにはまたもやアンモナイトのような機械が浮いている…!

 

 

「お前はっ…!」

 

【不動遊星…あなたはあなたの可能性を手に入れました】

 

「なんだと…?ハッ…!」

遊星が機械から発せられた声を聞き自身の手を見ると「カード名もイラストも描かれていない」カードを手にしている…。

 

【それがクリアマインドの境地…アクセルシンクロを可能にするカード…あなたにはそれを受け取る権利がある…全ての可能性が平等であるように…】

 

「お前は…オレを知っているのか…!」

 

【あなたは自分の正しいと思う道を進むのです、そして…願わくば…我が─を…止めてほしい、悲しき運命を背負いし─…】

 

「お、おい!!」

アンモナイトはその場から消え去る…遊星は気付けば元の荒野へと戻っていた。

 

「(今の人物は…それに悲しき運命…なんの事だ…?)」

白紙のカードを見ながら遊星は先程の人物に考えを巡らせるが…カードをしまいDホイールに乗り込む

 

「今オレがしなくてはならないのは…この街を救う事だ!」

遊星は再び亜空間に消え去り、混沌渦巻くネオドミノシティへと戻った…。

 

 

 

 

 

デュエルレーンに戻った遊星が見たのはプラシドとデュエルする謎のDホイーラー、そして3体のディアブロがデュエルに乱入する姿だった…しかし遊星を見つけたDホイーラーは、乱入したディアブロを弾き飛ばし前への道を作る!

 

『行け遊星!奴との決着を着けるんだ!雑魚達は引き受けた!!』

 

「ああ…!お前の相手はオレだ!!」

 

『丁度いい…2人纏めて始末してやる!!』

戦闘態勢を取るプラシド…そこにホセからの通信が入る!

 

『やめるのだプラシド!不動遊星は新たな力を手に入れている!』

 

『何…?どういう事だ!』

 

『不動遊星も「神のお告げ」を聞いたんだよ!チョービックリだ!!』

 

『なんだと…!』

ルチアーノの言葉を聞いたプラシドは驚くが…すぐに不敵な笑みを浮かべる…

 

 

『奴がどんな力を手に入れていようと…捻り潰すだけだ!!』

そう言うとプラシドは腰に挿していた剣をDホイールに突き刺す…そしてその身体が変形し人馬一体ならぬ人機一体の姿となった…!

 

『不動遊星…今度は逃さん!デュエルだ!!』

 

「この街は…オレが守る!!」

 

 

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 遊星対プラシド究極体

 

 

 

街を守る為に始まった遊星とプラシドのデュエル…プラシドの場には既に「機皇帝ワイゼル」シリーズが召喚されている、その状況で遊星は「ジャンク・デストロイヤー」を召喚しプラシドを攻める…結果、破壊効果は躱されたものの「ワイゼルG」を戦闘破壊し、さらにシンクロ素材としていた『ニードルガンナー』で大ダメージを与える事に成功する。

しかしプラシドもただでは終わらない、「ワイゼル」の強化パーツである「ワイゼルG3」を召喚し「ワイゼル∞」の効果で「デストロイヤー」を吸収しようとするが…遊星の罠カード「スターシフト」により「スターダストドラゴン」を特殊召喚する事で回避する。

 

返しのターン、遊星は罠カードを駆使してプラシドのライフを削っていくが…プラシドのターンで予想外の事が起きる…プラシドがルチアーノの機皇帝「スキエル∞」のパーツである「スキエルC3」を召喚し「ワイゼル」に合体させたのだ…いつの間にかルチアーノから盗んでいたようだ…。そしてワイゼルと究極体プラシドの放つエネルギーが周囲に影響を与え突風や雷などの異常気象や電子機器の異常を起こし始める、その様子を見た遊星はアクセルシンクロをする事を決意…シンクロチューナーである「フォーミュラシンクロン」を召喚する!

 

 

「今こそ見せてやる!シンクロ召喚を超えた…アクセルシンクロを!!オレはレベル8の『スターダストドラゴン』にレベル2シンクロチューナーの『フォーミュラシンクロン』をチューニング!!」

遊星はスピードの限界に達し新たな道を切り拓こうとする、だが…!

 

『いいのか不動遊星!!貴様が行おうとしているシンクロ召喚こそ、愚かな人類の進化の象徴!…だが進化を求めた人類は結局何をした?ゼロリバースの惨劇を忘れたか!貴様はまさに父親が犯した過ちを…その呪われた運命によって繰り返そうとしているのだ!!』

 

「なっ…!」

プラシドの言葉を聞いた遊星の脳裏にある光景が浮かぶ…それはゼロ・リバースによって壊滅する童実野町の姿だった、遊星はそのイメージによってクリアマインドを保つ事ができず…アクセルシンクロは失敗してしまう…。

 

「アクセルシンクロが…失敗した…!?」

 

『フン…どんな手品を見せてくれるのかと思えば…拍子抜けだなぁ!さぁ…この街と共に滅びるがいい!!』

 

 

アクセルシンクロを妨害したプラシドはついに「スターダストドラゴン」を吸収し遊星へと襲いかかり「フォーミュラシンクロン」も破壊されてしまう…。

しかし、遊星もまだ諦めてはいない…ワイゼルの猛攻を凌いだ遊星は「レスキューウォリアー」を召喚、その効果で「スターダスト」を取り返す事に成功…さらに「ネクロ・リンカー」の効果で「フォーミュラシンクロン」を蘇生する!

 

『フン、また手品のタネを仕込んだか…だが!お前はオレに勝つ事はできん!己の無力さを思い知れ!!』

さらに力を開放したプラシドは竜巻を発生させる…あらゆる物が吹き飛び被害が広がっていく…

 

 

『もう一度言おう不動遊星!お前は機皇帝に勝つ事はできん!それが貴様の運命だ!!』

 

「オレはそんな運命など信じない!一人一人の人間が自らの意思に従い歴史を紡いできた!その意思が大きな流れとなり…人類全体を進化に導いてきたんだ!!」

 

『愚かな…モーメントが、シンクロ召喚こそが肥大した人類の欲望の象徴だ!再び「スターダスト」を奪い…決着を着けてやる!やれ!「ワイゼル∞」!!』

ワイゼルの触手がスターダストに迫る!

 

「『スターダスト』は二度と渡さない!もう二度と…あんな悲劇は繰り返させない!その為にも必ず俺の手で…シティーを守り抜いてみせる!」

遊星は決意を新たにする…自分の父のせいで壊滅してしまったこの街を…仲間達のいるこの街を守ってみせる、その想いに呼応しドラゴン・ヘッドの痣が輝き、仲間達の想いが遊星に集う!

 

「遊星…勝て!!」

 

「オレ達がついてるぜ!!」

 

「遊星…お願い!!」

 

「「遊星!!」」

 

「」

 

 

「今のオレには…仲間達との絆がある!!」

その瞬間、遊星は自分の限界を突破する、プラシドに対する怒り…機皇帝への恐怖…街を破壊された焦り…その全てがスピードの世界へ融けていく、永遠の刹那…その中で遊星はついに辿り着いた…!

 

 

─ピチョン─

 

 

「クリアマインド!!オレはレベル8の『スターダストドラゴン』にシンクロチューナー『フォーミュラシンクロン』をチューニング!!」

 

8+2=10

 

「集いし夢の結晶が新たな進化の扉を開く!光差す道となれ!!」

遊星が白紙のカードを掲げる…カードはクリアマインドにより共鳴し…その真の姿を現す!!

 

 

「アクセルシンクロォォォォ!!!」

 

『消えた…!?』

スピードの限界を超えた遊星は目視できる速度を超え亜空間へと消え去る…そして…!

 

「招来せよ!『シューティング・スター・ドラゴン』!!」

亜空間から帰還した遊星と共に1体の白いドラゴンが天へと昇る…その力は暗雲に穴をあけ、ネオドミノシティに光が降り注ぐ…そのドラゴンこそが遊星の新たな力…アクセルシンクロモンスター『シューティング・スター・ドラゴン』!

 

 

『認めんぞ…そんな力なぞ…認めてたまるかぁ!!』

アクセルシンクロを目にしたプラシドは『スピードワールド2』の効果で「シューティングスター」の破壊を狙うが…流石は「スターダスト」の進化体、破壊効果を無効にする事で切り抜ける…そして遊星のターン、その真の力を開放する!

 

「『シューティングスター』はデッキトップ5枚をめくりその中のチューナーの数だけ攻撃する事ができる!みんな…力を貸してくれ!!」

遊星の痣が輝く…その光は遊星に力を与えていく!

 

 

「1枚目…『ジャンクシンクロン』!」

 

「2枚目…『ニトロシンクロン』!」

 

「3枚目…『デブリドラゴン』!」

 

「4枚目…『エフェクトヴェーラー』!!」

 

「そして5枚目……オレ達の未来!『ハイパーシンクロン』!!!」

 

『馬鹿な!?5回の連続攻撃だとぉ!?』

仲間達の絆が奇跡を起こす!!

 

「受けてみろ!!シューティング・ミラージュ!!」

5体に分身したシューティングスターがワイゼルに連続攻撃…ワイゼルを粉砕した!!

 

 

『馬鹿な…こんな事がぁぁぁ!?』

 

プラシドLP0

 

遊星WIN!

 

 

 

ズガッ…バリン!!ガッシャァァン!!

 

 

 

「なっ…!?大丈夫か!?」

シューティングスターのあまりの力に耐えられなかったのかプラシドはクラッシュ…さらに上半身と下半身が千切れ投げ出されてしまう、遊星はプラシドを心配し駆け寄るが…意識を失ったプラシドの身体が浮かび上がる…。

 

『敗者への情けは無用だ不動遊星…特にこの男は傷付くだろうからな…このくらいの年齢の男ならよくある事だろう?』

デュエルが決着したのは奇しくもネオダイダロスブリッジのモニュメントアーチの辺り…そのアーチの上にローブを羽織った赤髪の少年、そして大柄な老人が現れる。

 

「お前は…!龍亞と龍可を襲ったルチアーノ!こいつの仲間だったのか!!」

以前に出会ったルチアーノに気付き遊星が声を上げる

 

『キッヒッヒッ…あの時は小手調べだったけどね!それにしてもプラシドはダメだなぁ…せっかくお前達のプログラムを掠めたのに…』  

 

「プログラム…!?お前達が犯人だったのか!!」

遊星の言葉にルチアーノは自白する、以前に起きたプログラム窃盗事件はプラシドが指示をだしてイェーガーに行わせたものだったのだと…そして戦いを終えたジャックにクロウ、そして謎のDホイーラーとシェリー・ミゾグチがその場へと集合する。

 

『役者は揃ったようだな…シティとサテライトの統合の証であるこの場所でお前達に出会うとは…なんと皮肉なものだ…』

 

 

「テメェらが今回の黒幕か!何もんだ!!」

クロウがローブの男達に怒鳴る

 

『名乗っていなかったな…ワシらはイリアステルの三皇帝…ワシがリーダーのホセだ!』  

 

『え?アンタがリーダーだったんだ?じゃあ…副リーダーのルチアーノ!それでぶっ壊れてるのが下っ端のプラシド!ヨロシク!』

そしてホセは語る、イリアステルは有史以前から存在し「歴史を修正し正しい未来」を導く秘密結社であり…世界を裏から操る組織だという事を…

 

 

「なら…聞かせなさい!黒いバイザーを着けた男…ゲイザーも貴方達の仲間なの?」

シェリーがホセに問う

 

『ゲイザー…彼は我らが最高の友であり神のメッセージを届ける者だ、それがどうした?』

 

「私は彼に聞きたい事がある!!彼は何処にいるの!?」

 

『キッヒッヒッ…無駄だよシェリー?彼は神出鬼没…そう簡単には会えないさ!残念だったね!』

 

 

 

『さて…我らは戻るとしよう…チーム5D's!我らと戦いたくばWRGPの本戦を勝ち上がってくるがいい!楽しみに待っているぞ!』

そしてイリアステルの目的…『ネオドミノシティの破壊』『モーメントの根絶』を遊星達に伝えた三皇帝は去っていった…。

 

 

 

「この街を消滅などさせてなるものか…!絶対に勝ち上がるぞ遊星!」

ジャックが遊星へと決意を伝える

 

「ああ…絶対に勝つ…!オレ達がこの街を守るんだ…!」

遊星も決意を新たにする

 

「なぁ…遊星、少し気になる事があるんだが…」

 

「どうしたんだクロウ?」

遊星にクロウが声を掛ける

 

「メタルナイト…遊海はどうしたんだ?あの人なら黒幕がいたら後ろからでも攻撃しそうだと思うんだが…」

 

「そういえば…!遊海さんはいったい何処に…?」

遊星は先程から感じていた違和感に気付く…ヒーローであり精霊使いである遊海なら黒幕を察知してこちらにくるはずだが…この場にその姿はない。

 

「遊星!空を見て!!」

 

「なに…!これは!!」

シェリーの言葉に遊星達は空を見上げる…そこには未だに黒い雲が広がっている…!

 

 

「まさか…遊海さんはまだ戦っているのか!?」

 

「待てよ遊星!ゴースト達は粗方倒したぜ!今更何と戦ってるんだよ!?」

クロウが驚きの声をあげる…シティを襲ったディアブロ達はセキュリティや特殊部隊、さらにジャック達の力…さらに一部の同士討ちで全て撃破したはずなのだ…。

 

「いいえ…いるわ、あの人が戦う相手が…!」

 

「お嬢様!?」

 

「おい!待つんだシェ…なっ!?」

何かに気づいたシェリーはDホイールで走り出す…その直後…ネオドミノシティの上空に街を覆い尽くす大きさの巨大な建造物が現れた…。

 

 

「「「「『な、なんだあれは!?』」」」」

 



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宿命の戦い─罪と闇と炎─

こんにちは!S,Kです!

なんと…お気に入り件数が400件を突破いたしました!!
いつもご愛読頂いてるハーメルンの皆様…本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします!

それでは最新話をどうぞ!…遊星の戦いの裏で行われていた因縁の戦いをどうぞご覧ください!




プラシドと遊星の決着から時は遡る…

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

ディアブロLP4000

遊海LP4000

 

ライディングデュエル

スピードワールド2常時発動

 

バトルロイヤルモード発動中

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP0→1

『「A・O・J D.D.チェッカー」を召喚!』

黒い水晶体を持つロボットが現れる ATK1700

 

『カードを伏せてターンエンド!』

ディアブロLP4000 SP1

DDチェッカー 伏せ1 手札4

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP1→2

「『SRバンブー・ホース』を召喚!」

馬の顔の付いた竹馬が現れる ATK1100

 

「『バンブーホース』の効果発動!手札から『SR電々大公』を特殊召喚!」

デンデン太鼓を持ったロボットが現れる ATK1000

 

「俺はレベル4の『バンブー・ホース』にレベル3の『電々大公』をチューニング!」

 

4+3=7

 

「その雄々しくも美しき翼翻し!光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!」

 

緑色に輝く翼を持つ白きドラゴンが現れる ATK2500

 

「バトルだ!『DDチェッカー』を攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!!」

音速の突進が観測機を破壊する!

 

ディアブロLP4000→3200

 

 

「カードを1枚伏せターンエンド!」

遊海LP4000 SP2

クリアウィング 伏せ1 手札3

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP2→3

『「A・ボム」を召喚!』

紫色の光を放つ球体が現れる ATK400

 

『永続罠「DNA移植手術」を発動!』

 

「リバース罠『砂塵の大竜巻』発動!『DNA移植手術』を破壊!」

 

『ターンエンド!』

ディアブロLP3200 SP3

Aボム 手札4

 

 

 

「俺の『オレのターン!ドロー!』」SP0→1

『「A・ボム」を召喚!』

ATK400

 

『カードを伏せターンエンド!』

ディアブロB LP4000 SP1

Aボム 伏せ1 手札4

 

 

「チイッ…!乱入か!!」

 

気付けば遊海の周りには10台近くのディアブロが乱入している…!

 

 

「だが、相手が機械なら…容赦はいらないよな?メガロック!!」

 

 

《然り!戦いの場を荒らす不届きモノに慈悲はない!岩石乱武!!》

 

ズドドド!!

 

ディアブロを引き付けた遊海はメガロックドラゴンを召喚し岩のブレスを発射、全てのディアブロを破壊する!

 

ディアブロA〜Kデュエル続行不可

 

デュエル強制終了…

 

 

 

 

 

「アヤカ!残り何体だ!!」 

 

《おおよそ200体です!しかしジャックやクロウ達の活躍で少しづつ数を減らしています!》

スタジアムを離れた遊海はディアブロを遊撃し既に100体近くのディアブロを無力化していた。

 

「了解!そろそろ頃合いだな…ウィルス起動!!」

 

《命令受諾!ディアブロ叛逆プログラム起動します!!》

アヤカのコアが輝きを放ち虹色のエネルギー波がネオドミノシティを覆う…そしてエネルギー波を受けたディアブロ達が同士討ちを始める!

 

《ウィルスプログラム発動成功!50体のディアブロが他のディアブロを攻撃しています!》

 

「50体か…でも充分だ!…一度、翠達のいる病院へ向かう!」

 

《了解!》

遊海はアキと翠の入院する病院へとDホイールを走らせた…。

 

 

 

 

 

「アキ!翠!無事か!」 

 

「遊…メタルナイト!私達は大丈夫です!」

病院に到着した遊海はすぐに翠とアキを見つける事ができた…しかし突然の事態に病院内は混乱に包まれている。

 

 

「翠…ここの人達を頼む、すぐに解決してくるから!」

 

「はい!わかりました!…遊海さん…無理はしないでくださいね…?」

 

「…大丈夫だよ翠、ディアブロ如きに遅れはとらないさ!…行ってくる!!」

遊海は近くの窓から飛び出した!

 

 

「トフェニ!病院を頼む!」

 

《御意!主殿、御武運を!》

 

「ありがとう…頼んだぞ!!」

病院の守備をトフェニへと託し遊海は再びゴーストの討伐に向かった…。

 

 

《(しかし、街に渦巻くこの気配…何事もなければいいが…!)》

 

 

 

 

 

 

模倣(イミテーション)黄金疾走(ゴールデン・ドライブ)!!」

 

バリバリバリ…ズドォン!!

デュエルレーンに戻った遊海は実力行使でディアブロ達を無力化・破壊していく!

 

《ディアブロは残り50体程度…いえ!残り30体です!》

 

「そうか…遊星達も上手くやってるみたいだな…!」

ディアブロの残数を聞いた遊海は少し胸を撫で下ろす…その時…

 

 

ビュゴオ!!

 

《くっ…!?なんですかこの突風は…!》

 

「よっと…!どうやらプラシドと遊星がデュエルし始めたみたいだな…!」

 

突如として遊海達を突風が襲う…それは力を開放したプラシドと遊星が戦い始めた合図だった。

 

 

「…遊星、そいつの事は任せたぞ…!俺達はディアブロを駆逐する!」

 

《了解ですマスター!》

遊海はDホイールのスピードを上げてデュエルレーンを駆け抜けた…。

 

 

 

 

 

 

 

『「Sp-ディフェンス・バスター」を発動!「手をつなぐ魔人」を攻撃表示に変更する!』

 

「し、しまった!!」

 

手をつなぐ魔人ATK1000

 

『バトル!「A・ボム」で「手をつなぐ魔人」を攻撃!』

紫色の爆弾が魔人の手に弾かれ爆発する!

 

ディアブロLP3200→2600

 

 

『「A・ボム」の効果発動!光属性モンスターとの戦闘で破壊された事で「手をつなぐ魔人」と「スクラム・フォース」を破壊!』

 

「そんな!?う、うわぁ!!」

爆弾の爆発に巻き込まれ魔人と罠カードが破壊される、その上で爆発のリアルダメージがDホイーラー…チーム太陽の太郎に襲いかかる!

 

『これでシネ!「A・O・Jコズミック・クローザー」でダイレクトアタック!』

太郎にコズミッククローザーから放たれた雷撃が迫り…!

 

 

 

「リバース罠『抹殺の聖刻印』を発動!俺の場の『聖刻龍─ネフテドラゴン』をリリースし『コズミッククローザー』を除外!さらに墓地から『ギャラクシー・サーペント』を特殊召喚!」

 

 

『なんだと!?』

雷撃が太郎に直撃する直前にコズミッククローザーは異次元に消え去り、乱入者…メタルナイトのフィールドに煌めく竜が現れる DEF0

 

『チィ…ターンエンド!』

ディアブロLP2600 SP5

DNA移植手術(光) 伏せ1 手札3

 

 

 

「俺のターン!ドロー」SP2→3

「『聖刻龍─アセトドラゴン』を妥協召喚!このカードは攻撃力を1000にする事でリリース無しで通常召喚できる!」

太陽を象徴する紫の龍が現れる ATK1900→1000

 

「そして『アセトドラゴン』をリリースする事で『聖刻龍─シユウドラゴン』は特殊召喚できる!」

青いウジャト眼を刻んだ龍が現れる ATK2200

 

「俺はレベル6の『シユウドラゴン』にレベル2の『ギャラクシーサーペント』をチューニング!」

 

2+6=8

 

「漆黒の闇を裂き!天地を焼き尽くす孤高の絶対王者よ!万物を睥睨しその猛威を振るえ!!シンクロ召喚!現われろ!『炎魔竜 レッド・デーモン』!!」

 

獄炎を纏いし悪魔竜が現れる ATK3000 闇→光

 

『リバース罠「奈落の落とし穴」発動!「炎魔竜」を破か「チェーンして『閃光竜スターダスト』の効果発動!破壊を無効にする!波動音壁(ソニックバリア)!!」なに!?』

予め召喚されていた閃光竜が炎魔竜を防御しディアブロの罠は不発に終わる

 

「バトル!2体のモンスターでディアブロにダイレクトアタック!極獄の閃撃(アブソリュート・ヘル・ブラスト)!」

2体のドラゴンの息吹がディアブロを跡形もなく消し飛ばした!

 

ディアブロ 消滅

 

遊海WIN!

 

 

 

 

「チーム太陽の!無事か!」

 

「あ、ありがとうございますメタルナイト!助かりました!!」

遊海はDホイールを停止させチーム太陽の太郎に話しかける

 

「まだ動けるか?」

 

「無理そうだ…さっきの爆発でDホイールがやられてしまった…せっかく予選を突破したのに…!!」

そう言って太郎は自分達のDホイール…マシン・デイ・ブレイクに目を向ける、Dホイールは原型こそ留めているが黒い煙を吐き出している…。

 

 

「なら、しばらく路肩に避難していてくれ…あとからセキュリティの車両がくるはずだから、それに乗って避難するんだ」

 

「わかり…ました」

太郎は落ち込んだように下を向く…

 

「そう悲観するな…この状況ならしばらく本戦は延期になる、その間に直せばいい…諦めるのは早いぞ!」

 

「メタルナイト…わかりました!オレはまだ諦めない!ジンとヨシと協力して…絶対に修理してみせる!!」

遊海の励ましを受けた太郎は闘志を取り戻した…!

 

「その意気だ!頑張れよチーム太陽!…その前に、まだ事態は解決してない…安全な場所に居てくれ、まだネオドミノシティは荒れるからな…!俺はまだアイツらを駆逐しなければ…!」

 

「は、はい!!お願いしますメタルナイト!オレ達の大会を守ってください!!」

 

「ああ!当たり前だ!俺はこの町のヒー《マスター!危ない!!》なっ─!?」

 

 

ブオオォォォォン!! ズガン!!

 

「ガハッ──!?」

 

その出来事は一瞬だった…()()から現れた巨大なDホイールが凄まじい速度で遊海に体当たりし、そのまま連れ去ってしまったのだ…!

 

 

「メ…メタルナイト…!?メタルナイトォォォ!!」

その場に残された太郎は叫ぶ事しかできなかった…。

 

 

 

 

 

「ガッ…!きさ、ま…!」

 

『少しドライブしようぜ?ヒーロー気取りの大馬鹿野郎…!』

 

「ゲイザー…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

キキーッ!!

 

「ぐぇっ!ゴフッ…!!」

 

猛スピードで走り続けたDホイールはデュエルレーンから飛び降りシティの海浜地区へと着地する…その衝撃で遊海は地面へと叩きつけられる…。

 

 

『相変わらず耐久力は無いようだなメタルナイト…いや、白波遊海』

 

「ぐっ…来るんじゃないかと思ってたよ…ゲイザー…!」

遊海はダメージによる痛みを堪えながら目の前に立ち塞がる白いコートと黒いバイザーを着けた男・ゲイザーを睨みつける…。

 

 

「ディアブロのせいで町は大混乱…俺を排除する絶好のチャンスって訳か…!」

 

『その通りだ、歴史は正しく進み始めた…ここでイレギュラーである貴様を抹殺し…オレは未来を救う!!』

ゲイザーの纏う殺気が強くなる、それは普段の遊海の闘志やかつての敵・ダーツとは比べものにならない重圧を生み出し、近くを飛んでいたカモメが墜落するほどだった。

 

 

「イレギュラーイレギュラーうるさいんだよ!!なら、お前自身もイレギュラーのはずだ!」

 

『そうだ…オレ自身もイレギュラー…だからこそ…オレは貴様を…「白波遊海」を抹殺する!!』

 

「意味がわからねぇ…!」

 

『わかる必要はない…理解する必要もない!!ここで無惨に死ね!!』

ゲイザーはデュエルディスクを構える…!

 

 

《マスター、ゲイザーは何らかの精神汚染を受けています…!さらに彼から計測されるエネルギー数値が異常な数値を示しています!》

 

「わかった、ありがとうアヤカ…ゲイザー、なんでお前が俺を目の敵にするかは知らない…だけどなぁ…!怒ってるのはお前だけじゃない!!」

遊海も全力を開放し凄まじい殺気を纏う…遊海は今までの決闘人生で初めて()()()()()()()()をしようとしている─!

 

 

「お前のせいで死んで逝った童実野町の人達…その無念の怒りを受けてみろ!ゲイザァァァ!!!」

 

『怒りを受けるのは貴様だ!!貴様の()()()()()で死んだ者達の怒り…ここで示す!!』

 

2つの殺気がぶつかり合い凄まじいエネルギーが発生…強風が吹き荒び、近くの木々が薙ぎ倒される…天変地異の中、2人の死闘が幕を開ける…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!!!』」

 

 

遊海LP8000

ゲイザーLP8000

 

 

マスタールール3

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!!」

「『召喚師のスキル』発動!『クリフォート・ツール』を手札に加える!そしてペンデュラムスケールに『ツール』をセッティング!ペンデュラム効果発動!800ライフを払いデッキの『クリフォート・アセンブラ』を手札に加える!」

 

遊海LP8000→7200

 

「『アセンブラ』をペンデュラムスケールにセッティング!これでレベル2から8のモンスターを特殊召喚できる!我が魂を守りし大いなる力よ!今こそその力を示せ!!ペンデュラム召喚!『クリフォート・ディスク』!!」

青のコアを持つ虹色の機械と灰のコアを持つステルス迷彩の機械が現れる ATK2800→1800  ATK2800→1800

 

 

「2体のモンスターをリリース!現れろ!『クリフォート・シェル』『クリフォート・エイリアス』!」

黒のコアを持つ巻き貝のような機械が現れる 2800

 

「先攻は攻撃できない、カードを1枚伏せターンエンド!『アセンブラ』効果で2ドロー!」

遊海LP7200

シェル Pスケール・ツール アセンブラ 伏せ1 手札3

 

 

 

 

 

 

『クリフォート…か、ここでそのデッキを使ってくるとはな…敵に使うのは「tierra」の時以来か?』

 

「なに…?」

遊海はゲイザーの言葉に首を傾げる…遊海が敵に対して使ったのはドーマとの戦い…ダーツ戦以来である。

 

『貴様の象徴であるそのデッキ…諸共に消してやる…!!』

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『「魔界発現世行きデスガイド」を召喚!』

魔界から現世へ向かうバスの添乗員が現れる ATK1000

 

『「デスガイド」の効果でデッキから現れろ!「彼岸の悪鬼グラバースニッチ」!』

黒い犬の姿をした悪魔が現れる ATK1000

 

「彼岸…!!」

その名前を聞いた遊海は顔を強張らせる…18年前、遊海は突如襲いかかってきたゲイザーの彼岸に敗れているのだ…。

 

 

『さらにオレは手札から儀式魔法「善悪の彼岸」を発動!フィールドの2体を生け贄として煉獄より現われろ!邪悪なる悪魔の王!「彼岸の鬼神ヘルレイカー」!!』

4本2対の角を持つ赤い顔の煉獄の鬼神が現れる ATK2700

 

 

『さらに!墓地に送られた「グラバースニッチ」の効果発動!デッキから現われろ!「彼岸の悪鬼ハロウハウンド」!!』

痩せこけた犬のような悪魔が現れる ATK1500

 

『そしてオレは手札から魔法カード「旅人の結彼岸」を発動!フィールドの「ハロウハウンド」と手札の「スカラマリオン」「ガトルホッグ」の3体を融合!!巡礼の罪人よ…今こそ時は来た!その罪を昇華せよ!!融合召喚!「彼岸の巡礼者ダンテ」!!』

巡礼の旅を終え天国に到達した神々しい詩人が現れる ATK2800

 

 

『墓地に送られた「ガトルホッグ」の効果!墓地の「グラバースニッチ」を蘇生!「ハロウハウンド」の効果!デッキの「彼岸の沈溺」を墓地に送る!』

再び黒犬の悪魔が現れる ATK1000

 

『バトルだ…!「巡礼者ダンテ」で「クリフォートシェル」と相討ち!ヘブンズ・マジック!』

 

「っ…!迎え撃て!」

ダンテの魔術弾とシェルの体当たりが激突、シェルは魔術弾を突き破りダンテ諸共爆発を起こす…その威力は凄まじく大地にクレーターができ…海岸近くのビルの窓が全て粉々になった…!

 

『破壊された「ダンテ」の効果!お前の手札をランダムに墓地に送る!巡礼の足枷!』

 

「くっ…!」

遊海の手札にあった「クリフォートアクセス」が天国の風にさらわれ墓地に送られる…

 

「バトルはまだ続いている!『ヘルレイカー』で貴様にダイレクトアタック!煉獄火炎斬!!」

鬼神が煉獄の熱を持った剣を振り上げ遊海を袈裟がけに斬り裂いた!

 

「がっ…!ぐああああああ!!!」ジュゥゥ…

 

遊海LP7200→4500

 

 

ヘルレイカーの攻撃は実体化し斬られた場所から肉の焼け焦げる臭いが辺りに広がる…。

 

『苦しめ…!貴様の選択で死んだ者達の痛みはこんなものではない…!「グラバースニッチ」でダイレクトアタック!!』

黒犬の牙が遊海に迫る…!

 

「リバー…ス罠…『機殻の凍結』を発…ど…!モンスター扱いで…特殊─!!」

身体を灼き尽くす痛みに耐えながら遊海は罠を発動…凍りついたクリフォートのコアが現れる ATK1800

 

『チッ…攻撃中断…ターンエンドだ!「スカラマリオン」の効果でデッキの「彼岸の悪鬼ラビキャント」を手札に加える!』

ゲイザーLP8000

ヘルレイカー グラバースニッチ 手札1

 

 

 

 

《マスター!大丈夫ですか!?すぐに治癒を─!》

 

「大丈夫に…見えるか…?治療は、いい─!そのエネルギーを奴に…!!」

 

『そんな傷でもまだそんな顔ができるんだな…恐れ入ったよ白波遊海』

既に瀕死に近い傷を受けた遊海はゲイザーを睨みつける…その瞳は怒りに支配されている。

 

「ゼロ・リバースで死んだ人の痛みは…遊星やゴドウィン達が痛めた心の痛みは…こんなもんじゃない…!!うおおおお!!!!」

遊海は金色の鎧を纏う!

 

 

 

 

 

「俺のターン…!!勝利の道を照らせ…!!ソーラー…ドロー!!!」

遊海の手に金色の光が集い、勝利を照らすカードがドローされる…それはネオダイダロスブリッジで爆発が起きるのと同時の事だった。

 

「今再び…力を示せ!!ペンデュラム召喚!!エクストラデッキから現われろ!!『シェル』『ディスク』『エイリアス』!」

黒・青・灰のコアを持つ機械が再び現れる ATK1800  ATK1800  ATK1800

 

 

「俺はさらにフィールド魔法『機殻の要塞』を発動!そして…『機殻の凍結』を3体分の生け贄として降臨せよ…!!我が魂!我が相棒たる機殻の王!『アポクリフォート・キラー』!!」

シティと旧サテライト間の上空に虹色のコアを持つ巨大な要塞が顕現する ATK3000

 

ヘルレイカーATK2700→2200

 

グラバースニッチATK1000→500

 

 

《アポクリフォート・キラー…顕現完了…!マスターの受けた痛み…3倍返しです!!》

 

「さらに俺は『機殻の要塞』の効果で…もう一度召喚を行える─!3体のモンスターをリリース…現われろ!『アポクリフォート・カーネル』!!」

シティ上空にもう1体の白いコアを持つ巨大要塞が現れる ATK2900

 

 

『なっ…!?2体のアポクリフォートの同時召喚だと!?』

 

「『カーネル』の効果発動!『ヘルレイカー』のコントロールを奪う!さらに『キラー』の効果!モンスターを墓地に送れ!ゲイザー!!」

 

『チィ…!フィールドの「グラバースニッチ」を墓地に送る!効果でデッキの「ガトルホッグ」を特殊召喚!』

豚頭の悪魔が現れる DEF1200→700

 

「バトルだ!『カーネル』で『グラバースニッチ』を攻撃!バチカルニードル!!」

無数のミサイルが悪魔ごとゲイザーに直撃する!

 

『ぐおおおお…!「ガトルホッグ」の効果で墓地から現われろ!「スカラマリオン」!!』

鋭い爪を持つ悪魔が現れる DEF2000→1500

 

「『ヘルレイカー』で『スカラマリオン』を追撃!」

炎の剣が悪魔を斬り裂く!

 

「喰らえ!『キラー』でダイレクトアタック!デストロイ・イレイザー!!」

 

《全兵装開放…!殲滅開始!!》

キラーから放たれた無数のミサイルや機関銃…トドメの破壊光線がゲイザーに降り注ぐ…!!

 

『がああああ!!!』

ゲイザーLP8000→5000

 

 

「メイン2…『ツール』の効果でライフを払い『機殻の再星』を手札に加え、セット…ターンエンド!『アセンブラ』効果で4ドロー…!」

 

『「スカラマリオン」…効果…!デッキから「バルバリッチャ」を手札に…!』

遊海LP4500→3700

キラー カーネル Pスケール・ツール アセンブラ 伏せ1 要塞 手札4

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

『ゼェ…ゼェ…』

2人の苦しい息遣いが静寂の中に響く…かたや炎剣で斬り裂かれ内臓は焦げ…かたや兵器の集中砲火を受け服も身もボロボロになっている…。

 

 

『オレは…負ける訳には、いかない…貴様をここで…始末する─!』

 

「俺、だって…!この町を…世界を守る為に…負ける訳にはいかないんだよ!!」

2人の男は睨み合う…お互いに満身創痍…勝負の行方は…

 

 

 

 

 

 

『オレのターン…ドロー!!』

『オレはお前の場の「アポクリフォート・キラー」をリリース…!現れろ!「海亀壊獣ガメシエル」─!!』

 

「なっ!」

 

《不覚…!申し訳ありません!マスター!!》

唯一の弱点を突かれたキラーが消え去り巨大なウミガメの怪獣が遊海のフィールドに海から現れる ATK2200

 

ヘルレイカーATK2200→2700

 

 

『さらに自分フィールドに魔法・罠カードが存在しない事で「彼岸の悪鬼ラビキャント」は特殊召喚できる!』

狂気を纏う悪魔が現れる ATK100

 

『そして「彼岸の悪鬼バルバリッチャ」を召喚!』

鉄球を持った悪魔が現れる ATK1700

 

「リバース永続罠『機殻の再星』発動!」

 

『そんなの…関係ないんだよぉぉ!!オレは「バルバリッチャ」と「ラビキャント」でオーバーレイ!!』

2体の悪魔が赤い銀河に飛び込む!!

 

「っ…!?ダンテか!」

 

 

 

 

 

30

 

 

 

 

 

『現われろ…《ANo.30》!!全てを…その忌まわしき力で溶かし尽くせ!!エクシーズ召喚!!「破滅のアシッドゴーレム」!!』

 

「な、なん…だとぉ!?」

身体から酸を垂れ流す破滅のNo.が現れる ATK3000

 

『バトルだ!「ヘルレイカー」で「ガメシエル」を攻撃!!』

悪魔の剣が怪獣を斬り裂き、遊海に炎が降りかかる!

 

「ぐあっ…!」

 

遊海LP3700→3200

 

 

『「アシッドゴーレム」で「カーネル」を攻撃!アシッド・レイン!!』

アシッドゴーレムがカーネルに強酸性の液体を吹き掛ける…金属で構築されたカーネルはドロドロに溶け…残骸が遊海に降り注ぐ…!

 

「──!!!!」ジュワワ…

痛みで遊海は声にならない叫び声をあげる…

 

遊海LP3200→3100

 

 

『そうだ…!これで…いい!!オレはターンエンド!!』

ゲイザーLP5000

アシッドゴーレム ヘルレイカー 手札0

 

 

 

 

 

 

「ぎっ…!!!」シュウウウ…

遊海の姿は見るに堪えないものとなっている…鎧は溶け落ち、傷口から入った酸が遊海を溶かさんとする…!

 

『死ね…消えてしまえ…!それで未来は救われる…!』

 

「が…あ…!!まだ…だ!!貴様が何者だろうと…俺、は…!」

 

 

 

 

 

 

「ガッ…あああ!!!」

遊海は気合いでカードをドローする!

 

「ペンデュラム…!『シェル』『エイリアス』『ディスク』…!!」

3体のモンスターが三度現れる ATK1800

 

「…コフッ…─精─は歌─…大いなる─…すべての万物を司─…その命、─の魂…そしてその骸で、さえも─!!」

 

『貴様…!その詠唱は─!!』

途切れ途切れの詠唱…それを聞いたゲイザーは顔色を変える

 

「不死鳥よ…!『ラーの翼神竜』─!!」

【ギュアアアア!!!】

 

遊海の怒り・悲しみ・痛みを背負い…黄金の不死鳥が舞い上がる!! ATK?→8400

 

 

《2度ならず3度までも…!お前は我が主をどこまで傷つければ済むのだ!私は…我は怒ったぞ─!!!》

 

『馬鹿な…オリジナルのラーだと…?そんな訳はない、そんな事…!!』

ラーに威圧されゲイザーは後ずさる、ラーは…遊海の精霊・フレアは憤怒していた…。

 

 

「こうか…きど─!!」

【ギュアアアア!!】

遊海のライフが全て攻撃力へと変わる…フレアはその身を炎の不死鳥へと変化させる!

 

遊海LP3100→1

 

ラーATK8400→11,499

 

「バ、トル!『アシッド』を攻げ…き!《ゴッドフェニックス!!》!!」

炎の不死鳥がアシッドゴーレムに突撃…そして炎上、災いのナンバーズとゲイザーは神の炎に焼き尽くされる─!

 

『ぐっ…があああああああ!!!』

 

ゲイザーLP0

 

遊海WIN…

 

 

 

 

 

 

デュエルが終わってもなお神の炎は燃え続ける、海岸線を変える一撃はゲイザーを灼き尽くす…!

 

「…(俺は…決闘者失格だ、復讐の為に…人を殺す為に…力を使ってしまった…すまない、翠…!)」ドサッ

ゲイザーが燃える様を見届け遊海は倒れ伏した…

 

 

 

 

 

【『オ…オオオ…!!』】

 

 

「(なっ…!まだ…生きて─!?)」

倒れ伏した遊海の視線の先…黒い人影が炎の中で揺らめく…

 

「(だめだ…指一本も…意識…が……)」

遊海の意識はそこで途切れる…最後に見えたのは迫りくる異形と…黄金の──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

「遊海さん…無事でいてくれっ…!」

遊星はデュエルレーンを疾走する、突如としてシティ上空に現れた巨大な機械要塞達…遊星は確信した、アレはモンスターであり、あれ程のモンスターを操れるのは遊海しかいないと…シェリーはその直感で先行している…。

 

 

「遊星!確かなのか!あそこに遊海がいるのだな!?」

ジャックが遊星に問い掛ける

 

「間違いない!!痣が教えてくれる!遊海さんがあそこにいると!!」

遊星は通信越しにジャックに答える、遊星達の痣は僅かな痛みを発しながら赤く輝いている…。

 

「それにしても…何なんだよ、このピリピリとした空気は…!」

 

「ああ…!まるで獰猛な獣が相手を咬み殺そうとしているような…!」

空気に敏感なクロウがシティを包み込む殺気に気付く…その時…!

 

 

【ギュアアア!!!】

 

 

「「「な!?」」」

海上に黄金の炎が煌めく…それは巨大な鳥の姿となる…!

 

「あれは…三幻神『ラーの翼神竜』!?」

 

「めちゃくちゃに怒ってやがる…!!」

ジャックとクロウはラーの纏う殺気に戦慄する…神の怒りは凄まじく、距離は離れているがそれでもなお、凄まじい熱気を放っていた…。

 

「遊海さん─!!」

遊星は察してしまった…ラーの召喚は遊海にとっての秘中の秘…遊海はそれほどまでに追い詰められているのだと…、遊星はスピードを上げ海岸へと急いだ…。

 

 

 

 

 

 

 

『……!』

 

「シェリー!!…なっ!?」

 

遊星はシェリーに続き海浜地区へと到着したが…息を呑む、海岸線は熱で融け、酸で溶け…大地は粉々となっている…。

 

 

「遊せ…!何なんだよコレ…何があったんだよ!?」 

 

「っ…まるで戦争の跡のようではないか…!」

続いて到着したクロウ・ジャックも呆然と破壊された大地を目の当たりにし息を呑む…。

 

 

「っ…遊海さん!何処にいるんですか!!遊海さん!!」

気持ちを切り替えた遊星達は遊海を探す…その時、少し離れた場所から金色の光が放たれている事に気付く…

 

「遊海さんはあそこか…!」

遊星は荒れ果てた大地を踏みしめ、光のもとへと向かった…。

 

 

 

 

「遊海さ…あっ…!?」

金色の光を目印に向かった遊星…その先で見たのはおびただしい血を流し倒れ伏した遊海、そして遊海を護るように立つ金色の人影だった。

 

「貴方、は…」

 

─遊星…俺の友を頼む…!─

金色の人影はそれだけを伝え、消え去った…。

 

 

 

「遊星!見つけ…遊海!!しっかりしろ!」

 

「やべぇ怪我だ!早く救急車!!」

 

「ハッ…!?今の、は…?」

数秒か数分か…呆けていた遊星は我にかえる…

 

 

「何をしてんだ遊星!早く遊海を病院に運ばねぇと!手伝ってくれ!!」

 

「あ、ああ!!」

遊星も遊海のもとに駆け寄る…そして遊海はそのまま病院へと運ばれた…。

 

 

 

 

 

 

パリッ…パリッ…カラン

 

『貴方も…ここにいたのね、ゲイザー…』  

シェリーは焼け焦げたバイザーを拾いあげる…周囲の地面は硝子化し黒く焼け焦げている…。

 

『…貴方はいったい…何者なの…?』

シェリーの疑問は雲の晴れ始めた空に吸い込まれていった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

Side???

 

『ご無事ですか!ファラオ!』

 

『すまないマハード、心配をかけた…問題はない』

 

『遊海殿は…』

 

『…間一髪助ける事ができた、重症には変わりないが…(それに遊海の戦っていた相手…あれはいったい…?)』

遊海の危機を察した新たな冥界の王は即座に現世へと舞い戻った、ギリギリのところで異形の者を退ける事ができたが…

 

『(あいつの纏う闇はゾークとも、ダーツとも…ダークネスや冥界の邪神とも違う…まるで「そうあるように望んだような闇」…遊海…これはお前が

…)』

 

 

 

─────────────────────

 

とある空間…異形と化した未来人は苦しんでいた…

 

 

【『ダメだ…我が身の…闇を…抑えきれない…!!』】

 

『ゲイザー…!何が!?その姿は…!!』

 

『【近づくなぁ…!!】』ドン!

 

『キャ…!』

 

【『我は…我が身を封印する…!ゾーンには話すな!!』】

そう行って異形は時空間の狭間へと消えていった…。

 

 

 

 

 

 

 

『ゲイザー…いいえ、マスター…!私…は…貴方…を…!』 

 

 

銀の少女は覚悟を決めた。




6月7日追記
予備アンケートの回答数が規定値に達したのでリクエストアンケートを開催します!
リクエストのある方は活動報告へどうぞ!


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狙われた闇のカード〜小さな光〜

こんにちは!S,Kです!

予備アンケートの結果が集まったので活動報告にてリクエストアンケートを実施します!皆様のリクエストを聞かせてください!

それでは…最新話をどうぞ!


ピッ…ピッ…ピッ……

 

ここはKCの運営する、ネオドミノシティ最高峰の病院・KCブルーアイズ病院…その特別治療室で1人の青年が寝かせられている。

全身を様々な管に繋がれ、血が滲む包帯で頭から足までを完全に覆われている…唯一、規則的に鳴り続ける心電図の音と僅かに上下する胸が青年が生きている事を証明している…。

 

「遊海さん…無理はしないって、約束したじゃないですかぁ…!」

包帯まみれ青年…遊海の隣で涙を流す女性が1人…彼の妻の翠である。

 

《…マスターを責めないでください翠…ゲイザーはそれほどまでに危険な相手だったのです…》

 

遊海の相棒であるアヤカが検査入院を終え駆けつけた翠に伝える。

WRGPでのディアブロ氾濫事件から3日が経った、襲われたDホイーラーは参加者の7割に及び怪我やDホイールの大破により参加チームの8割が大会からの棄権を決めた。

事態を重く見た治安維持局とKCは街とデュエルレーンの復興の為に3週間の本戦延期を決めたのだった。

 

 

「教えてアヤカちゃん…いったい…いったい何があったの!?」

 

《実は…》

そしてアヤカは語る、遊海がディアブロの出現後に無数のディアブロを無力化していった事…その最中にゲイザーに奇襲を受け、激しいデスマッチとなり…傷つきながらも勝利した事を… 

 

 

《マスターは…初めて「人を傷つける」為に全力を使い、それでもなおゲイザーには逃げられてしまいました…ゲイザーの力はダーツやダークネスに匹敵します…その力を受けたダメージは相当なものです…しばらくは目を覚まさないかと…》

 

「そんな…!遊海さん…!」

翠は昏睡状態の遊海の手を握る、包帯越しに触る遊海はいつもより冷たいような気がした…。

 

 

 

コンコンコン…

 

 

「グスッ…はい…どなた?」

 

「失礼します…御見舞に来ました…!」

 

「遊星君…みんなも…」

病室の扉が開き入って来たのは遊星・ジャック・クロウ・アキ…チーム5D'sのメンバー達だった。

 

 

「翠さん…今回の事はなんと言っていいか…」

 

「気にしないで遊星君…遊海さんはいつもこうなの…、みんなの先頭に立って戦って…誰よりもボロボロになってしまうから…」

 

「それにしたって…酷すぎるぜ…」

翠の言葉を聞いたクロウが呟く、傍目から見て遊海は瀕死…常人なら既に死んでしまっているだろう…。

 

 

「翠さん、遊海さんの容態は…」

 

「極度の過労に出血多量…それから化学ヤケドと胸に切り傷があるそうよ…でも大丈夫!私達は死なないから、きっとすぐに良くなるわ!」

 

「そうだったな、貴方達は不死身…ならば心配は要らないな!」

ジャックが思い出したように語る…遊海と翠は転生特典の効果により『決闘以外での不老不死』となっている、極論を言えばデュエル以外で死ぬような事態になっても死ぬ事はないのである、肉体的には…であるが…。

 

 

「でも…痛みは感じるんですよね…?こんな大怪我をしたら…」

 

「大丈夫!遊海さんはこれよりも酷い怪我をした事が何回もあるから!…だから、大丈夫…!」

 

「翠さん…」

アキは気付いた…「大丈夫」と言った翠の手が固く握りしめられている事に、翠が悟られないように心配や悲しみを押し殺している事を…

 

「WRGPの本戦は3週間の延期になりました…オレ達も街の復興を手伝いながら本戦に備えます、何か手伝える事があったら…」

 

「ありがとう遊星君…何かあったらお願いね?」

 

 

コンコンコン!

 

『入るぜ!翠…っと、取り込み中だったか?遊海はまたこっぴどくやられたなぁ…』

 

「おい!?いきなり何なんだよアンタ!?」

突然病室に現れた金髪の男にクロウが驚きの声をあげる、遊海の病室は所謂VIPルームであり遊星達もチームメイトだからこそ入る事ができたのだ(龍亞兄妹とブルーノは待合室で待機中)

そんな部屋に見知らぬ人物が訪れれば驚くのも当たり前である。

 

 

『おっと!?遊海のチームメイトか?そう大声出すなよ、ここは病院だぜ?』

 

「遊海の事を知ってる…?アンタは…」

 

「城之内さん…お久しぶりです、来てくれてありがとうございます…」

 

「「「「えっ!?」」」」

翠の思わぬ言葉に遊星達は固まる…

 

「まさか…プロデュエリスト『最強の賭博師』の城之内 克也さん…なのか!?」

 

「初代決闘王と遊海さんのライバルの!?」

 

『おっ!俺もまだ有名なんだなぁ…そうだ!俺がコイツのライバルの城之内様だぜぃ!』

特徴的なAGOポーズをしながら城之内が自己紹介する。

 

『テレビでWRGPを見てて事件の事を知ってな?それにコイツの相棒のアヤカまで召喚されてたもんだから…絶対に大怪我してると思って見舞いに来たんだ!…案の定だったな…ほい、定番の盛り合わせだ』

 

「城之内さん…いつもありがとうございます」

城之内は翠にフルーツの盛り合わせを手渡す。

 

『お前達もそこまで心配しなくていいぞ?遊海は精神の強さが売りだからな!それこそ魂が無事ならあの世からでも飛び出してくるさ!』

 

「城之内さん…遊海さんの事を信じてるんですね…」

遊星が城之内に尋ねる

 

『当たり前だろ?俺は遊海の親友なんだからよ!…良かったら昔の遊海の事教えてやろうか?』

 

「いいんですか!?」

 

『ああ!遊海のダチは俺のダチってな!ちょうど1階にカフェもあるから何か奢ってやんよ!ついてこ〜い!あっ!翠!また後で来るからな〜!』

 

「遊海の昔話か…気になるな…!」

 

「こんな機会も滅多にないし…ご馳走になりましょう…!」 

 

「翠さん、また来ます…!」

 

「うん!みんなありがとう…」

遊星達を連れた城之内は騒がしく去っていった…。

 

 

 

 

『ありがとう城之内君…ここにボク達が来たら遊星君達も混乱しちゃうからね』

 

『遊星達と会うのは…また今度ですね遊戯さん』

 

「遊戯さん…十代君…そっか、城之内さんが来てたのはそういう事だったのね…」

遊星達の去った病室に新たな人影が現れる…それは遊戯、そして十代の二人だった。

 

 

『翠さん…遊海に何があったんだい?彼がここまで深手を負うなんて…』

 

『ああ、復活した遊海先生にここまでのダメージを与えられる相手なんて…そうはいないぜ…!』

 

《私からお話しします…今回の事件…いえ、デュエルの顛末について…》

アヤカは再び遊戯達にゲイザーとの戦いについて話した。

 

 

 

 

 

『18年前に遊海先生を襲ったゲイザー…やっぱり生きてたのか…!』

 

『遊海…君はずっと戦い続けていたんだね…』

アヤカから語られた壮絶なる戦い…それは遊戯達にイリアステルの危険性を再認識させるものだった。

 

 

「イリアステルはこれから本格的に動き出すわ…この町を…消滅させる為に」

 

『…ボク達の故郷を壊させる訳にはいかない…!!』

 

『翠さん、オレ達に手伝える事があったら…なんでも言ってくれ!』  

 

「ありがとう2人とも…遊海さんの事をお願いね…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後…

 

 

「遊海さ〜ん!今日はいい天気ですよ〜!」

 

「……」

 

「遊星君とジャック君は今日からナスカに行くそうですよ〜、きっと『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』を手に入れて帰って来ます!楽しみですね〜…」

 

「……」

 

「遊海…さん…!また眠り続けるんですか…!」

ディアブロ事件から1週間…遊海と十代の治療によってほとんどの傷は癒えた遊海…しかし彼は未だに眠り続けていた。

 

《やはり…胸の傷が…》

9割方治癒した遊海の怪我…その中で唯一治っていない傷があった…それはデュエル序盤に受けたヘルレイカーの刀傷に終盤に受けたアシッド・ゴーレムの酸が侵食した傷だった…。

 

 

《傷口から強い負のエネルギーを感じます…ユウミの身体を侵食していたマイナスエネルギーと同じものです…!》

 

《ならばまた「カースド・ニードル」で浄化を…!》

 

《…現物がありません、それにカードはあってもそれはマスターのカード庫の中…私達が入れる場所では…》

遊海はカードとして「マジシャンズ・エイプ」のカードを持っている…しかしそのカードは遊海だけが開く事ができる亜空間に保管されているのだ…。

 

 

《ならば…アヤカ殿、フレア様、主殿を頼みます…!》

 

《トフェニ…どこへ行くのですか?》

 

《精霊界へ向かいます…もしかしたらカースドニードルが残っているやも…!》

 

《だったら私がDT世界に行ってソンプレスちゃんを連れてきます!今回のエネルギー量なら浄化できる筈です!》

 

「みんな…ありがとうね、私にもっと力があれば…」

 

《気にしないでください翠…マスターが心配なのは私達も一緒ですから!…行ってきます!!》

アヤカはそう言ってDT世界へと向かった…。

 

 

コンコンコン!

 

「は〜い、どうぞ〜!」

 

「翠さん!こんにちは!」

 

「お見舞いに来たよ〜!」

 

「龍亞君、龍可ちゃんいらっしゃい!2人で来たの?」

 

「うん!遊海の包帯が取れたって聞いたから…」

病室にやってきたのは龍亞兄妹だった…手には小さなブリザードフラワーを持っている。

 

「これお見舞いのお花!おれが選んだんだ!」

 

「ありがとう龍亞君!遊海さんも喜ぶわ!」

 

「遊海さんはまだ…?」

 

「うん、まだ起きないの…本当にお寝坊さんなんだから…」

翠はそう言いながら遊海の頭を撫でる…

 

「手を握ってあげてもいい?」

龍可が翠に尋ねる

 

「ええ!大丈夫よ!遊海さんに元気を分けてあげて…」

 

 

 

「遊海さんの手…冷たい…」

龍可は眠っている遊海の手を握る…その体温はいつもより冷たく感じた…。

 

「ゲイザーと戦った時にまたマイナスエネルギーの攻撃を受けてしまったみたいなの…でも大丈夫、アヤカちゃんが精霊界に行って治療できる人を連れてきてくれるはずだから…」

 

「…ねぇ、翠さん…なんでゲイザーは遊海さんにこんな事したんだろう…?」

 

「えっ…?」

龍可の思わぬ言葉に翠は動きを止める

 

「わたし…一度だけゲイザーにあった事があるの…」

 

それはダークシグナーとの戦いの前…アルカディア・ムーブメントの総帥であるディヴァインの復讐に巻き込まれた遊海は重傷を負わされアルカディアムーブメントに監禁された事があった…その後偶然にもアルカディアムーブメントを訪れた龍可一行に救い出されたが…ゲイザーはその時に現れたのだ。

 

仇敵であるはずの遊海を治療する為に…

 

 

「わたしの会ったゲイザーは悪い人には見えなかったの…だからこんな事をするなんて信じられなくて…」

 

「でも、すごい嫌そうな顔してたなぁ…仮面をしてたけど…それだけはおれもわかったよ…」

龍亞も当時の事を思い出してゲイザーの姿を思い浮かべる…

 

「私にもゲイザーの目的はわからないわ…でも、遊海さんを傷付けるなら…許さない…!!」

翠は固く拳を握り締める…もしもゲイザーが自分の前に現れたら後悔するまで痛めつけると決意した…その時!

 

「っ…ぐぅ…!!」ガタン!!

 

「えっ…!遊海さん!?どうしたんですか!遊海さん!?」

突然、眠っていたはずの遊海が苦しそうな呻き声を漏らす…その身体はベッドの上で仰け反っている…!

 

 

「遊海!しっかりして!!どうしたの!?」

 

「翠さん!ナースコールを!!」

突然の変化に龍亞達も慌てる…

 

「ええ!(ガシッ…)えっ?」

ナースコールを押そうとした翠の腕を遊海が掴む…

 

「…ぁ……ァ…!」

 

「遊海さん!どうしたんですか!何か言いたい事が…!」

遊海の声を聞いた翠は口元に耳を近付ける…

 

「アカデ…ミア…けっ…かい…!誰…か…」

 

「アカデミア…結界…?そんな…まさか…!!」

遊海がうわ言のように言葉を漏らす、その言葉を聞いた翠は顔色を変える…!

 

Buuu…!Buuu…!

 

「遊海さんの携帯が…!はい!白波です!」

 

『その声はシニョーラ翠!大変なノーネ!!』

 

「その声は…クロノス校長!?どうしたんですか!?」

遊海の携帯から聞こえて来たのはアカデミア本校の校長となったクロノスからのものだった…その声色はとても焦っている…!

 

『し、七精門が…開いてしまったノーネ!!』  

 

「な、なんですって!?」

七精門…アカデミアに安置された『三幻魔』を封印する為の特殊な封印式の事である、遊海は三幻魔の守り人であり…アカデミアを離れる際に強力な結界でさらなる封印を施している…。

 

 

『犯人はセニョール遊海の結界に阻まれているけど時間の問題なノーネ!!早く来てほしいノーネ!!』

 

「わかりました!すぐに向かいます!!」

 

 

「翠さん!いったい何が…!」

 

「アカデミアの本校に封印された闇のカードが狙われているの!…すぐに行かなくちゃ…!」

翠は遊海に目を向ける…遊海は大汗をかいて再び気絶している、先程の変化は結界が攻撃されたフィードバックを受けたのだろう…。

 

「龍亞君、龍可ちゃん…ごめんなさい、アヤカちゃんが戻って来るまで遊海さんをお願い…!」

 

「うん!わかった!」

 

「翠さんも気をつけて…!」

 

「ありがとう…!ウィンダ!お願い!!」

 

《うん!ファルコ!出番だよ!》

 

《キュイ!》

ウィンダは聖霊獣騎キムンファルコスとなりアカデミア本校へと飛び出した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

『バトル…「冥界龍ドラゴネクロ」で「古代の機械究極巨人」を攻撃、ソウル・クランチ』

 

「迎え撃つノーネ!アルティメット・ゴーレム・パウンド!!」

究極巨人の拳が襲いかかってきた龍を打ち砕く…しかし

 

レイン恵LP4000→2600

 

『「ドラゴネクロ」の効果発動…戦闘した相手モンスターの攻撃力と同じ攻撃力の「ダークソウルトークン」を特殊召喚し…相手モンスターの攻撃力を0にする…』

 

「なんですと!?」

究極巨人がボロボロとなりレインのフィールドに究極巨人の影が現れる ATK4400

 

究極巨人ATK4400→0

 

『「ダークソウルトークン」で「究極巨人」を攻撃』

 

「そんな馬鹿な…!ギャース!!?」

 

クロノスLP4000→0

 

 

レイン恵WIN…

 

 

 

「む、無念なノーネ…ガクッ」

 

『大人しく寝ていてください…命までは取りません』

淡々と呟いたレインは結界を破る作業を再開する…彼女の周りにはクロノスの他に7人の生徒や教師達が倒れていた…。

 

 

『…この結界を破れば…三幻魔が手に入る…、そうすれば…っ!?』バチン! 

結界に触れていたレインの手が弾き飛ばされる…その手は黒く焼け焦げていた…。

 

 

遊海は三幻魔を安置した台座を護る為に3層の結界を張っていた。

 

一番外側には台座の場所を見えなくする隠蔽結界

 

二番目にあらゆる干渉を擬似的に遮断する要塞結界

 

最後に干渉を受けた際に侵入者に肉体・精神的にダメージを与える攻性結界…レインはその3層のうち2層を既に突破してしまったのだ…!

 

 

『攻性結界…短時間で突破しなければ、私の回路が焼き切れてしまう…それでも…私は…!』

 

バチバチバチバチ!!

 

レインは自分の手が焦げる事も気にせずに結界を解析する…アンドロイド故に痛覚を遮断できるからこその荒業である。

 

 

『解析率40…50…55……70…もう、少し…!』

徐々に結界が薄くなっていく…そして…

 

『解析率…80……90…!解析完「影糸縛り!!」っ!?』ビュン!

解析を完了しかけたレインは結界から引き剥がされる!

 

『何者…!』

 

「貴女が侵入者ね…!三幻魔は渡さないわ!!」

 

『データ照合…決闘王の妻…白波翠…!』

間一髪のタイミングで翠がレインの前に立ち塞がる!

 

Sideout

 

 

 

  

 

 

 

「っ…!七精門が…!?」

アカデミア本校に近付いた翠が見たのはアカデミアを覆うように立ち上がった7本の柱…七精門の姿だった。

 

《翠!誰かがデュエルしてる…クロノス先生だよ!》

ウィンダが翠に伝える…確かに森の中から古代の機械巨人…究極巨人の頭が覗いている…しかし

 

「あっ…!機械巨人が倒された…!?まずいわ…急いでウィンダ!!」

 

《りょーかい!ファルコ!全速力で!!》

《キュイイイ!!》

 

翠はアカデミアへと急いだ…

 

 

 

 

 

「っ…!クロノス先生!みんな!!」

台座のある地点で翠が見たのは気絶したクロノス先生や生徒達…そして結界を破ろうとしているレイン恵の姿だった。

 

「これ以上は…やらせないわ!バトルドレス・ドレスアップ!」

翠はシャドールの戦闘衣装を纏う!

 

「影糸縛り!え〜い!!」

結界の解析が完了する刹那、翠はレインを結界から引き剥がした!

 

 

 

「貴女が侵入者ね…!三幻魔は渡さないわ!!」

 

『データ照合…決闘王の妻、白波翠…!』

レインは翠を睨みながら立ち上がる

 

「レイン恵…だったわね、どうしてイリアステルが三幻魔を狙うの?そのカードは危険なカードなのよ!」

 

『…私には三幻魔のカードが必要…邪魔をするなら…排除する…!』

レインはデュエルディスクを構える…

 

「貴女の事情は知らないわ…でもね、私は今少し怒ってるの…私の旦那様とクロノス先生を傷つけた事…後悔させてあげる!!」

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

翠LP4000

レイン恵LP4000

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「私はスケール1の『剣聖の影霊衣─セフィラセイバー─』とスケール7の『影霊獣使い─セフィラウェンディ』をペンデュラムスケールにセッティング!」

翠の両脇に光の柱が現れる、その中には鎧を纏った剣士とイルカに乗った少女が浮いている

 

「これで私はレベル2から6のモンスターを同時に特殊召喚できる!神樹の加護よ!今こそ私に力を貸して!ペンデュラム召喚!『宝竜星─セフィラフウシ』!『覚星輝士─セフィラビュート』!」

空中に光のゲートが現れ、その中から水色のコアを額にはめた竜と蠅を象った鎧を着た戦士が現れる

ATK 1900  ATK 1500

 

 

『ペンデュラム召喚…?私…は…』

 

「『セフィラフウシ』の効果発動!自身をチューナーとして扱い、フィールドから離れた時デッキの一番下に戻る!私はレベル4の『セフィラビュート』にレベル3の『セフィラフウシ』をチューニング!」

 

3+4=7

 

 

「清廉なる花園に咲く孤高の花よ!月の雫を得て咲き誇れ!シンクロ召喚!『月華竜ブラックローズ』!」

フィールドに花吹雪が舞い、聖なる光を纏う薔薇竜が現れる ATK2400

 

「私はカードを2枚伏せてターンエンド!」

翠LP4000

月華竜 Pスケール セイバー ウェンディ 伏せ2 手札0

 

 

 

 

 

 

『私のターン…ドロー』

『手札から「融合」を発動、手札の「馬頭鬼」と「闇より出でし絶望」を融合…冥府に眠る魂が冥界の主を呼び覚ます、冥界の扉を破り復活せよ、融合召喚「冥界龍 ドラゴネクロ」』

 

異世界における決闘竜の1体…冥府を統べる龍が現れる、しかし…

 

「『月華竜』の効果発動!相手の場にレベル5以上のモンスターが特殊召喚された時!相手の特殊召喚されたモンスターをデッキに戻すわ!退華の叙事詩!」

フィールドに花吹雪が吹き荒れ冥界の龍は消え去った…

 

『計算外…行動修正……「ゾンビ・マスター」を召喚』

色白のネクロマンサーが現れる ATK1700

 

『効果発動、手札の「ゾンビキャリア」を墓地に送り「ゾンビキャリア」を特殊召喚』

ずんぐりとしたゾンビが現れる ATK400

 

『私はレベル4の「ゾンビマスター」にレベル2の「ゾンビキャリア」をチューニング』

 

4+2=6

 

『死せし魔王よ…再び現世へ現れよ…シンクロ召喚「蘇りし魔王ハ・デス」』

ボロボロの王衣を纏った魔王が現れる ATK2450

 

 

『バトル、「ハ・デス」で「月華竜」を攻撃…』

ハ・デスの放った魔力弾が月華竜を破壊した!

 

「くっ…!」

翠LP4000→3950

 

 

『カードを1枚伏せてターンエン ド』

レイン恵LP4000

ハ・デス 伏せ1 手札0

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「永続罠『連成する振動』を発動!Pスケールの『セフィラウェンディ』を破壊して1ドロー!…さらに魔法カード『セフィラの神意』を発動!フィールド魔法『セフィラの神託』を手札に加え、そのまま発動!」

翠の背後に巨大な門が現れる

 

「『神託』の発動時の効果処理でデッキから『秘竜星─セフィラシウゴ』を手札に加える!そしてスケール5の『智天の神星龍』をペンデュラムスケールにセッティング!」

光の柱の中に白と黒の龍が浮かび上がる

 

「『神星龍』のペンデュラム効果発動!デッキの『オルシャドール─セフィラルーツ』を墓地に送って自分のスケールを7にする!神樹の加護よ!再び力を貸して!ペンデュラム召喚!手札から『秘竜星─セフィラシウゴ』!エクストラデッキから『セフィラビュート』『セフィラウェンディ』『セフィラルーツ』!」

黒い宝玉を額に埋め込んだ竜と蝿の聖戦士、イルカに乗った少女と聖邪を併せ持つ戦士が現れる DEF2600  ATK1900  ATK1500  DEF1950

 

『させない…!リバース罠「激流葬」、フィールドのモンスターを全て破壊す…る』

 

「しまった…!でもただではやられないわ!『セフィラフウシ』の効果発動!デッキから2枚目の『セフィラの神意』を手札に加える!」

激しい水流がフィールドを一掃する!

 

「ターンエンド…!」

翠LP3950

Pスケール セフィラセイバー 神星龍 神託 振動 伏せ1 手札1

 

 

 

 

『わ、私のターン…ドロー』

『「ゴブリンゾンビ」を…召喚』

骨だけになったゴブリンが現れる ATK1100

 

『バトル、「ゴブリンゾンビ」でダイレクトアタック』

ゴブリンゾンビが翠を斬り裂く!

 

「痛っ…!」

翠ATK3950→2850

 

『「ゴブリンゾンビ」の効果…デッキトップのカードを墓地に送ってもらう』

 

墓地送り

セフィラツバーン

 

『ターンエエンド』

レイン恵LP4000

ゴブリンゾンビ 手札0

 

 

 

 

「くっ…!レイン恵!どうしてそこまでして三幻魔が欲しいの!?よく見たら貴女…ボロボロじゃないの!」

膠着したデュエルの中…幾分か冷静さを取り戻した翠が

レイン恵に問い掛ける、攻性結界に触れ続けたレインの身体は既にボロボロで身体からは火花が散っている…。

 

『わ、私は…あの人を助け…たい、だから…幻魔が必要…あの…カードが、あれば…』

 

「貴女…本当に壊れちゃうわよ!?それでも…」  

 

『私…は…!マスターを…!マスターを守らな…くちゃ…』

レインは初めて強い感情をあらわにする…まるで本当の人間のように…

 

「決意は固いみたいね…でも三幻魔は渡さない!これ以上イリアステルの好きにはさせない!!」 

 

 

 

「私のターン…!ドロー!!」カンコーン!

「『連成する振動』の効果発動!ペンデュラムスケールの『神星龍』を破壊して1ドロー!そして手札の『炎獣の影霊衣─セフィラエグザ』をペンデュラムスケールにセッティング!」

光の柱の中に炎の鎧を纏った青い龍人が浮かぶ

 

「神樹の加護よ!もう一度力を貸して!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから『セフィラシウゴ』『セフィラビュート』『セフィラウェンディ』!」

再び3体の聖選士が現れる DEF2600 ATK1500 ATK1900

 

「そして…3体のモンスターをリリース!来て!聖選士の絆の結晶…!『智天の神星龍(セフィラ・トーラ・グラマトン)』!!」

《グオオオン!!》

光と闇を宿した聖選士の絆の結晶たる龍が咆哮を響かせる! ATK3450

 

『「セフィラ・トーラ・グラマトン」…世界の、希望…』

 

「『神星龍』の効果で私はもう一度ペンデュラム召喚できる!神樹の加護よ!未来を照らせ!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから『セフィラビュート』『セフィラシウゴ』『セフィラウェンディ』『セフィラルーツ』!」

絆の龍のもとに戦士達が集結する! ATK1900  DEF0  ATK1500  DEF1950

 

「『セフィラシウゴ』の効果発動!デッキの『セフィラの星戦』を手札に加える!そしてこのカードは自分のPスケールにカードが2枚ある時、手札から効果を発動できる!罠カード『セフィラの星戦』を発動!私の場の『セフィラルーツ』と貴女の場の『ゴブリンゾンビ』を破壊!」

セフィラルーツがゴブリンゾンビに特攻し破壊する!

 

「バトル!『セフィラウェンディ』でダイレクトアタック!ドルフィン・アタック!」

《行くよ!ペトルフィン!》

《ピュイー!!》

ウェンがペトルフィンと共に突進する!

 

『くっ…!』

レイン恵LP4000→2500

 

「『神星龍』でダイレクトアタック!創星のビッグバンバースト!!」

《グオオオン!!》

神星龍の尾の10個のコアが輝き、口にエネルギーが収束…創星の息吹がレインを飲み込んだ…

 

 

レイン恵LP0

 

翠WIN!

 

 

 

 

 

 

 

『マス、ター…ごめん、なさ…私…は…貴方…を…』

神星龍の攻撃を受けたレインは倒れ伏す…その身体は黒い煙を上げている…

 

「貴方の目的は何だったの…?三幻魔の力でZ-ONEを延命しようとしたの?」

翠は倒れたレインに問い掛ける…

 

『違、う…わたし…はあの人を…助け…ル、ル…ゴメン、ナサイ…ゲ…イ……《損傷率80%…機能停止》』シュゥゥゥ

レイン恵は完全にその機能を停止した…その瞳からは透明な雫が流れ落ちた…。

 

「…ごめんなさい、貴女が何故こんな事をしたのかはわからない…でも、貴女がしようとした事は絶対に間違ってるわ…」

翠は機能を停止したレインを前にそう呟いた…。

 

 

 

 

 

「う、う〜ん…ハッ!?幻魔は!?侵入者はどうなったノーネ!?」

 

「あっ、目が覚めましたか?クロノス先生」

 

「シニョーラ翠!侵入者は!?生徒達は大丈夫なノーネ!?」

気絶していたクロノスは保健室で目を覚ました…、その直後に生徒の心配をするのは流石である。

 

 

「大丈夫です、侵入者は私が倒しました!幻魔は結界のおかげで無事です、生徒達も他のベッドで眠っています…怪我は治療してあるので安心してください」

 

「よ、よかったノーネ…シニョーラ翠、助かったノーネ…」

 

「いいんですよクロノス先生、これも私達の仕事の一つですから…」

 

「でもまさかあんなに若いセニョリータに負けてしまうとーは…我ながら情けないノーネ…侵入者はどうなったノーネ?」

 

「ウィンダが捕まえてくれてます…私がネオドミノシティまで護送するので安心してください」

 

「わかったノーネ…そういえばセニョール遊海はどうしたノーネ?ワターシが電話したのは彼の番号だったと思うノーネ?」

クロノスはこの場に姿が見えない遊海を探す…

 

「すいません…先日の騒動で深手を負ってしまって…」

 

「そういう事なノーネ…やはりテレビに写っていたのはセニョール遊海の切り札だったノーネ…、シニョーラ翠、遊海に伝えてほしいノーネ…『自分の身体を労るように』と…」

 

「ありがとうございますクロノス先生…必ず伝えます!」

 

そうして翠は機能を停止したレイン恵を連れてアカデミアをあとにした。

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました〜!…あ…!」

 

「おはよう翠…だいぶ寝過ごしちゃったみたいだな…」

 

「ゆ、遊海さん…遊海さ〜ん!!」

 

「おいおい…泣かないでくれよ翠…ごめんな、心配かけて…」

夕方になった頃、翠は病室へと戻ってきた…それを迎えたのは意識を取り戻した遊海、そしてアヤカとセイクリッド・ソンプレスだった。そして翠はそのまま遊海の胸に飛び込んだ…。

 

 

《ふぅ…今回はこれくらいで済んでよかったですよキラーさん、これ以上のマイナスエネルギーを浴びてたら…また以前の状態に逆戻りするところでしたよ?》

額の汗を拭いながらソンプレスが説明する…。

 

《ありがとうソンプレスちゃん…貴女の力が干渉できる範囲でよかった…》

アヤカも胸を撫で下ろす。

 

《うん!喜んでくれたならよかった!…そういえばマスターさん最近「破壊神」の力って使った?》

 

《破壊神の力…マスターが宿してしまった「tierra」の力ですか?…少なくともこの1年は使っていないはずだけど…》

 

《そっかー…あの傷から似た雰囲気の力を感じたんだけど…気のせいかな!じゃあ私はDT界に戻るよ!じゃあね〜!》

ソンプレスは時空間を開き元の世界へ戻っていった…

 

《「tierra」に似た力…マスターの中から漏れ出したんでしょうか…?ユウスケにお願いしておきましょう》

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…レイン恵が三幻魔を…」

 

「はい…遊海さんの結界がなければ三幻魔は奪われていたかもしれません…」

遊海は落ち着いた翠からアカデミアで起きた出来事の顛末を聞いていた…。

 

「だけど…目的はなんだ?三幻魔ができる事っていったら精霊の力を吸い取って持ち主を若返らせる事だけど…仮にも未来を救おうとするゾーンがそんな事するか…?」

確かにZ-ONEの寿命は残り僅か…しかし彼も覚悟を決めて作戦を実行しているはず…そんな延命策を取るとは思えない…遊海はそう思っていた。

 

 

「遊海さん、もしかしたらなんですけど…レイン恵は自分で考えて行動していたんじゃないでしょうか…?」 

 

「自分で考えて…?アンドロイドであるレイン恵が命令を受けずに単独行動したっていうのか?」

翠の言葉を聞いた遊海は聞き返す

 

「はい…最期の時、彼女…泣いてたんです…気のせいかもしれないんですけど…」

 

「ロボットの涙…か、ありえない話ではないな…現に一番身近に『心を持った機械』がいるからな…どう思う?アヤカ」

 

《彼女に涙腺があるかはともかく…ロボットが「心」を獲得する事はありえない話ではないと思います》

遊海の問いにアヤカが答える…彼女が心を獲得したのは偶然の出来事だったが…それは他のAIにも起こり得る事だと。

 

「…まぁ、身体を調べれば判る事か…」

遊海が自分が身体を預けるベッドから視線を向ける…そこには椅子に座らされたレイン恵がいた。

 

「アヤカ…頼む」

 

《了解しました!デュエルロイド、個体名レイン恵の調査を開始します!》

そうしてアヤカはレイン恵の調査を開始する…全身をサーチし、うなじに隠されたコネクターからデータをスキャンした…しかし

 

 

 

《解析結果……重要な記録は発見できませんでした…おそらく機能停止直前に全ての記録にロックをかけたものと思われます》

 

「そうか…流石イリアステルのアンドロイド、セキュリティは万全って訳か…」

調査の結果は空振りに終わった…しかし、収穫がない訳ではなかった。

 

《しかし興味深い点があります…腹部にエネルギー炉があるのですが…それとは別に心臓部にブラックボックスがありました》

 

「ブラックボックス…?中身は?」

 

《わかりません…ただ、大きさ的にカード1枚がやっと入る大きさかと…》

 

「心臓部のカード…か、気になるが…分解する気にはなれないな…分解したらそれこそZ-ONEか三皇帝が乗り込んで来そうだ……とりあえず安全な所に隠しておこう」

 

「何処に隠すんですか?」

 

「俺の持ってる『賢者の鍵』の亜空間さ…あれは俺にしか開けられないし電波も完全に遮断されるからな…痛っ…翠、手伝ってくれるか?」

 

「はい!任せてください!」

 

そして遊海はレイン恵の身体を厳重に封印し亜空間へと隔離したのだった。

 

 

 

 

 

 

「でも…まさか倒しきれなかったか…いったいどんな耐久力してるんだよ奴は…」

 

「でもゲイザーも深手を負っているはずです…しばらくは仕掛けてこれないはずですよ…」

 

「ああ、次にぶつかるとしたら…アーククレイドルの出現した時…ゲイザー、その時が俺とお前の因縁に決着を着ける時だ…コフッ!?」

 

「きゃ〜!?まだ無理しないでくださ〜い!!」

 

《やれやれです…》

 

こうしてディアブロ事件、そして三幻魔強奪未遂事件は解決しネオドミノシティは平穏を取り戻した…しかし、確実に試練の時は迫っているのであった。

 

 

 

──────────────────────

 

Side???

 

【レイン、レイン恵…新たな任務を与えます…すぐに私の所に来なさい…】

異次元に浮かぶ神の居城にして未来人の霊廟・アーククレイドル…そこにZ-ONEの声が響く…しかし、その声に反応する者はいない。

 

 

【レイン恵…何処にいるのです…?】

ゾーンはレイン恵の居場所を調べる…しかし彼女の痕跡を見つける事はできなかった。

 

【マシントラブルですか…我が友ゲイザー…聞こえますか?】  

 

ジジジ…

 

『…どウした、ゾーン…』

 

【レイン恵が消息を絶ちました…捜索をお願いしたいのです】

 

『すまナい…今ハ手が離セなイ、アポリア達に頼んデくレ…』

 

【そう…ですか、ところで貴方は何処に…?】

 

プツン…ジジジ…

 

【我が最後の友よ…私に何を隠しているのです…?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『【すマなイ…ゾーン、次に会ウのハ…奴とノ決着のあトになりソうダ…だが…約束すル…我は未来ヲ…】』

 

 

 

 

 



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ナスカの地にて〜荒ぶる魂〜

こんにちは!S,Kです!
今回はナスカ編!新たなる境地を掴め!ジャック・アトラス!バーニング…ドロー!!

それでは!最新話をどうぞ!


『という訳で…心配かけて悪かったな遊星、ジャック!俺は無事だ!』

 

「フン!当たり前だ、貴方以上に生命力と悪運の強い奴を俺は知らん!」

 

「遊海さん…本当によかった…」

 

『まぁ…体調は万全とは言えないから少し養生しなきゃダメだけどな…お前達もナスカを楽しんでこいよ!お土産話待ってるからな〜』

 

「はい!ありがとうございます!」

 

プツン…

 

 

「これで憂いもなくなった…行こう!ジャック!」

 

「ああ…まったく、ボマーめ…夢見如きで俺を呼び出すとはな!」

 

 

遊海とのテレビ電話を終えた遊星とジャック…彼らがいるのは日本から遠く離れた異郷の地…地縛神が封印された因縁の場所であるナスカだった。

 

 

 

時は二日ほど遡る…ディアブロ事件からの復興を手伝いながら本戦へ向けて準備していた遊星達、そんな彼らのもとに一通のメールが届く…それは故郷を離れ、再び地上絵に封印された地縛神を見守る為にナスカへと移り住んだボマーからの連絡だった。

用件はボマーの見た夢の内容『ジャックは、新たな戦い方を身につけなければ自らの力によって滅びる』というもの、それを聞いたジャックはちょうど自分の戦い方に迷っていた…ジャックは半ばオカルトだと思いながらも、キッカケを求めてナスカを訪れたのだった。

 

 

「まさか…この紋様を再び見る事になるとはな…」

 

「ああ、もう目覚めない事を祈ろう…」

遊星達は崖から大地に広がる地上絵を眺める…蜘蛛に巨人…シャチにハチドリ、トカゲとサル…そしてコンドル…地縛神達は静かに眠りについている、果たして五千年後に彼らは復活するのか…それがわかるのは遠い未来の話である。

 

 

 

 

 

「見えてきたな…あれがボマーの…」

 

「地縛神を鎮める為の祭壇か…!」

ナスカの荒野を走り続けること数時間…遊星達の前に古代インカのピラミッドが現れる、それは地縛神を鎮める為にボマーの建てた祭壇だった…その足もとに色黒で長い髪の男が佇んでいる、それは…

 

『遊星!ジャック!よく来てくれた!』

 

「「ボマー!」」

遊星達を出迎えたのはボマーだった、彼らが再会するのはダークシグナー事変以来の事だった。

 

 

「久しぶりだなボマー、元気そうでなによりだ」

 

『ああ、ありがとう遊星、君の活躍もこちらまで聞こえてきているよ!』

遊星とボマーは固く握手を交わす

 

「ふん…貴様の戯言に乗って来てやったぞ!」

 

『すまないジャック…オレの見た夢は「わぁ!キングだ!本当に来てくれたんだ!」おっと!』

ボマーの言葉を遮るように幼い少年の声が聞こえてくる…遊星達が視線を向けると2人の姉弟が駆け寄ってくるところだった。

 

『紹介しよう、弟のマックスと妹のアニーだ…ほら、ちゃんと挨拶しなければダメだぞ?』

 

「「こんにちは〜!!」」

 

「そうか…無事に再会できたんだな…」

遊星が感慨深げに呟く…ボマーはダークシグナーに家族や故郷を奪われ、その恨みから自身もダークシグナーとなってしまった過去があった。

 

「兄ちゃん!本当にキングが…ジャックが来てくれたよ!!すごいや!!」

 

「ん?…『キング』だと…?むっ?」

怪訝そうな顔のジャックにボマーが耳打ちする

 

『(すまない、弟達は地縛神に囚われていた時の記憶がないんだ…この子達の中ではまだジャックがキングという事になっているんだ…)』

 

「そういう事か…」

彼らが暮らすのはナスカの荒野…情報が届かないのも無理はないだろう

 

 

「ジャック!あのポーズやって!!ボク、あのポーズが好きなんだ!!」

マックスはキラキラした瞳でジャックを見上げる

 

『マックス…実は「待て」ジャック?』

真実を伝えようとするボマーをジャックが止める

 

「お前の弟は間違ってなどいない!…キングは1人!この俺だぁ!!

 

ジャックは自身の代名詞である右腕を突き上げたポーズを披露する…例え称号は無くとも、ジャックのプライドは変わらないのである。

 

「キングは1人!このボクだぁ!」

 

「違うぞ!右腕はこう!そして空を見上げる!」

 

「フッ…面倒見がいいのは変わらないな…」

ポーズ講座を始めたジャックを見ながら遊星は苦笑する

 

『やはり平和は…家族はいいものだ、ああして笑っている兄弟達を見て…オレは取り戻す事ができた幸せを実感できる…』

 

「ボマー…」

 

『…お前達も疲れているだろう、続きは家で話そう!』

 

そうして遊星達はボマーの家へと案内された。

 

 

 

 

夕食を食べた遊星達にボマーは今までの事を話し始めた。

 

故郷に戻り家族と再会した後に自分が起こした過ちの贖罪をする為に旅に出た事

そして旅を続ける内に自身の因縁の場所であるナスカに辿り着いた事を…

 

 

『ナスカの地は遙か昔からあるパワースポットでもあり…逆に地縛神に惹かれ無数の霊が集まる霊場でもある、冥界の王は倒され…地縛神は再び封印された、だが…邪な意思に地縛神が再び利用されないとも限らない…だからこそ、オレはこの地に留まり神殿を建てた…そうして地縛神や霊達を鎮めようとしていたのだが…最近になって不審な事件が起き始めたんだ…』

 

「不審な事件…?」

 

『ああ、家畜の不審死…キャトル・ミューティレーションというものだ…』

ボマー曰く、この数週間で近くの村の家畜の群れが不審な死を遂げた…村人曰く「紅蓮の悪魔」の仕業だという…

 

『現れた悪霊はまだ少ないが…この地で何かが起きようとしている…そんな気がするんだ…』

 

「まさか…地縛神が復活を…!いや、既に復活しているのか!?」

 

『遊星…?何か心当たりがあるのか?』

焦った様子の遊星にボマーが問い掛ける…

 

「実はしばらく前に…」

そして遊星は鬼柳とクラッシュタウンで起きた事件について伝える…

 

『冥界の王を名乗るデュエルリストと「Ccapac Apu」の復活─!?いや、それはありえない!その頃にはまだ家畜の不審死も起きていなかったが……待て、遊星、ジャック…相手の痣は…紫色の痣は見たか?』

 

「いや…ローブで姿を隠していたからな…だが右腕を抑えて………あ…」

 

「どうした遊星?何か思いだしたのか?」

 

「いや…嫌な予感が…ボマー、携帯の電波はあるか?」

 

『ああ、無線通信のアンテナがあるが…どうしたんだ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

Buuu…Buuu…

 

「電話…?遊星からか…もしもし?どうしたんだ?」

朝の検診を終えた俺に遊星からテレビ電話が入った…画面には怖い顔をした遊星とジャック、ボマーが映っている

 

『遊海さん…単刀直入に聞きます』

 

「どうしたんだ?いきなり…」

 

『先日のクラッシュタウンで現れた冥界の王を名乗るデュエリスト…貴方ではないですか?』

 

「え"…な、なんの事カナ…?」

いきなりの指摘に思わず動揺してしまう…!

 

『貴方ならやりかねないと思い出したんです…あの無駄のないプレイング…そして奴の召喚した「煉獄龍オーガドラグーン」…あれは貴方の話していた「決闘竜」の1体なんじゃないか…?』

 

「ギクッ!?…お前は探偵に向いてるよ遊星…」

そう言って遊海は画面から消えた。 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!?どうしたんですか!?」

画面から消えた遊海に遊星は呼びかける…

 

「今の反応からすると…犯人なのは確実だな…あの人ならやりかねない」

 

『今のが白波遊海…メタルナイトの正体であり、伝説の決闘王か…だがどうやって地縛神を…?』

遊海の反応から犯人を突き止めた遊星達…通信はいつの間にか切れている…

 

 

コンコンコン…

 

『むっ…?こんな夜に来客か?』

ボマーの家の扉がノックされる…ボマーが扉を開けると…

 

 

『よっ!久しぶりだなボマー』

 

 

『…はっ…!?』

 

「ボマーどうし…なんでいるんですか!?」  

 

『いや、な…こういう事はちゃんとしないとダメだと思ってな…来ちゃった!』

玄関には松葉杖をついた遊海が立っていた…。

 

 

 

 

『とりあえず…すまなかった!ややこしい真似をした!』

椅子代わりの樽に座った遊海が頭を下げる…アニーとマックスは外でトフェニとメガロックがみてくれている。

 

「聞かせてくれ遊海さん…どうしてあんな事を…」

 

『鬼柳にトラウマを乗り越えてほしかった…その為に地縛神を使った荒療治をしたんだよ』

 

鬼柳は自身がダークシグナーとして犯した罪に悩まされ自暴自棄な決闘生活を送っていた…それを乗り越えさせる為に遊海は彼の前に立ち塞がったのだ。

 

『それでは…現れた地縛神は…?』

 

『ほら、これだろ?』

遊海は机の上に7枚のカードを広げる…それは地縛神のカードだった。

 

「…やはりか、貴方なら持っていると思っていた…」

 

『「Uru」に「Ccapac Apu」、「Chacu Challhua」まで…!?だが、このカードからは悪しき力を感じない…これはいったい…?』

ボマーはカードを検めて気づく…このカードに力は宿っていないと…

 

『その地縛神はただのカードさ…俺が力を使わなければな…』

 

「じゃあ…あの時に消えたギャング達は…」

 

『罰ゲームでお仕置きしただけだよ…まさか見抜かれるとはなぁ…』

遊海は頭を掻く…

 

『いったい貴方は何者なんだ…?精霊とともにあり、神を従えるとは…』

 

『オレは…ちょっと出自が特殊な…普通の決闘者だよ!』

 

「「いや、普通ではないだろ!?」」

 

『てへっ!』

 

思わずツッコむ遊星とジャックなのだった。

 

 

 

 

『それじゃ、俺は病院に戻るかな…そうだ、お前達』

 

「どうしたんですか?遊海さん」

 

『地縛神はな…あと1体いるらしい』

 

「「『なっ!?』」」

遊海の爆弾発言に遊星達は愕然とする  

 

 

『エンシェントフェアリーから聞いた話だ…1万年前の戦いで赤き竜を追い詰めた邪神がいたらしい…その名は「スカーレッド・ノヴァ」…最強の地縛神なんだそうだ』

 

「スカーレット・ノヴァ…」

 

『紅蓮の悪魔に気をつけろよ?じゃあな!戻るぞトフェニ、メガロック!』

 

《御意!…さらばだ幼子達よ、おぬし達に太陽の加護を…》

 

《縁があればまた会おう!》

遊海を乗せたトフェニが上昇する…そして…

 

《マスター!空間跳躍を開始します!》

 

「ああ!頼むよアヤカ!」

透明な要塞に乗り込んだ遊海はワープで消えていった…

 

 

「つくづく規格外だなあの人は…」

 

「フン…今更な…」

 

『世界は広い…と言う事か…』

遊星達は瞬間移動した遊海を見送るしかなかった…なお、勝手に病院を抜け出し翠と医師に怒られたのはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

『最強の地縛神…言い伝えでは聞いた事があったが…よもや…』

 

「ボマー、教えてくれないか?その地縛神について…」

 

『ああ…オレも断片的にしか知らないのだが…』

 

そしてボマーは語りだす…1万年前の赤き竜と邪神の戦いの時、赤き竜を劣勢に追い込んだ邪神がいた事、そしてその邪神をシグナーの始祖となる人間が『荒ぶる燃え盛る魂』をもって赤き竜の力を得て奇跡を起こし、紅蓮の悪魔を撃破し封印した事を…

 

 

「燃え盛る魂…今風に言えば『バーニングソウル』と言ったところか、オカルトだが…何故かしっくりくるな…」

ボマーの話を聞いたジャックは胸に手を当てる…

 

「…ボマー、お前が見た夢の内容をもう一度教えてくれないか?」

 

『ああ…オレは「ジャックが赤く燃えた『レッドデーモンズドラゴン』に飲み込まれる夢」を見たんだ…それがパワーデッキを使うジャックが自分の力に飲まれて死ぬと……待て、何故オレはそう思った?』

夢を口に出したボマーは動きを止める…

 

「やはりか…そもそもおかしいと思ったんだ、ジャックに危機が迫っているならばメールで警戒を促せば済む話だった…ナスカまで来る必要はないはずなんだ!つまり…」

 

『紅蓮の悪魔の仕業…!オレは利用されていたのか!?』

 

「待て!?どういう事だ!?」

状況を飲み込めないジャックが問い掛ける

 

「ジャック…!お前は紅蓮の悪魔に狙われている!!」

 

 

 

【そのと〜り!我が主はジャック・アトラス…お前の身体をご所望なんだYO!】

 

 

『マックス…!?いったいどうしたんだ!?』

突然、マックスの口から聞き慣れない声が発せられる…マックスの目は虚ろで不気味に赤く輝いている…

 

「お前は…!」

 

【イ〜ヒッヒッヒッ…私の名は紅蓮の悪魔のしもべ…偉大なる地縛神「スカーレット・ノヴァ」様の忠実なる下僕でございま〜す!】

マックス…紅蓮の悪魔のしもべは仰々しく礼をする

 

「マックス!どうしたの!しっかり…!」

 

【近づくな小娘!】バン!

 

「きゃ…!」

 

「『アニー!』」

マックスを止めようとしたアニーが超能力で吹き飛ばされるが…ボマーが受け止める!

 

 

【しかし…さっきの赤帽子の御仁は厄介ですね〜…せっかくこの地に掛けた呪術が解けてしまった…だから私自身がこうして出向かせて頂きました!】

 

「遊海さん…!」

そう…実は遊海、先程の話をしている間にアヤカにこの地に掛けられた呪術を解くように指示を出していたのである…それに焦った紅蓮の悪魔のしもべは遊星達の前に姿を現したのだ。

 

【ジャック・アトラス!私はオマエにデュエルを申し込む…対価は究極の「力」とこの少年の身柄…オマエが負ければこの少年とオマエの肉体は紅蓮の悪魔の物となる!】

 

「貴様…卑怯な…!」

紅蓮の悪魔の卑怯な提案に遊星は拳を握りしめる…!

 

「フン…!いいだろう!俺は逃げも隠れもしない!小さなファンを見捨てはしない!」

ジャックは紅蓮の悪魔のしもべに指を突きつける!

 

【イッヒッヒッ…!承知しました、ならば祭壇の地下…紅蓮の悪魔の神殿でお待ちしていますよ!ジャック・アトラス!!】ボゥ!!

紅蓮の悪魔のしもべはマックスの身体を炎に包み、外に飛び出した!

 

『待て!!』

紅蓮の悪魔のしもべを追って外に飛び出したジャック達…そこで見たのは暗雲に包まれた夜空、そして祭壇の頂上に燃え盛る炎だった。

 

 

 

 

「あのふざけた悪魔はあそこか…!遊海が手を出さなかったという事はこれは俺の乗り越えるべき試練という事だ!待っていろ!マックス!!」

ジャックは祭壇を駆け上がり…消えてしまった。

 

 

「待つんだジャック!!」

 

『アニー!お前はここで待っていろ!!』

遊星とボマーもジャックを追いかけて祭壇を登る…その頂上で見たのは地下へと続く階段だった。

 

『馬鹿な…この祭壇は石を積み上げただけのもの…こんな階段はないはずだ…!』

 

「やはり…超自然的な何かが起きようとしている…!急ごう!!」

遊星とボマーも地下へと駆け下りていった…。

 

 

 

 

 

 

 

Sideジャック

 

「来てやったぞ!紅蓮の悪魔!!姿を現せ!!」

ジャックが階段を降った先…そこはインカ風の古代遺跡だった、その正面には異形の姿の魔神像が安置されている。

 

【ククク…ハハハァ…!ようこそ、紅蓮の悪魔の神殿へ…!】

祭壇に炎が灯り、その中から人型の炎…紅蓮の悪魔のしもべの本体が現れる。

 

「出たか悪魔め…!マックスは何処だ!!」

 

【少年は貴方の後ろですよぉ?気づきませんでしたかぁ?】

 

「なに…!」

ジャックが通ってきた階段に気絶したマックスが座らされている…その姿を見たジャックは胸を撫で下ろす…

 

【さぁ…始めましょうか!古代から受け継がれし神聖なる儀式…デュエルを!!】パチン!

しもべが指を鳴らすとジャックの周囲の床が抜け、退路を断たれてしまう…!

 

 

「デュエルの前に聞かせろ悪魔!何故俺を狙う!」

 

【ヒヒヒ…簡単な話でございます、ジャック・アトラス…貴方の力を求める魂に我が主が興味を示した…それだけでございます!】

 

「力を求める魂…か、いいだろう!地縛神を復活などさせん!俺の圧倒的パワーでもう一度封印してくれる!!」

しもべの答えを聞いたジャックはデュエルディスクを構える!

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 紅蓮の悪魔のしもべ対ジャック

 

 

 

ジャックの肉体を賭けた紅蓮の悪魔のしもべ(以下しもべ)の決闘が始まった、ジャックは高い攻撃力を持つ「ビッグ・ピース・ゴーレム」を召喚ししもべの「黄泉の餓鬼」を撃破する…しかし、それはしもべの思う壺…破壊された「餓鬼」の効果でジャックは800ダメージを受けてしまう。さらに返しのターン、しもべは「黄泉の舟守」を召喚し墓地の「餓鬼」の効果で破壊しさらに800ダメージを与え、ダメ押しに相手の直接攻撃を無効にしその攻撃モンスターを3ターンに渡って破壊する永続魔法「霊波障壁」を発動する…しもべのデッキはジャックのパワーデッキに対する「メタバーン」デッキだったのだ。

 

 

「召喚したモンスターを破壊してダメージを与えるバーンデッキ…!俺の力で押す戦略とは真逆の戦い方か…!!」

 

『パワーで攻めるジャックのビートダウンデッキとしもべのバーンデッキ…!この勝負はジャックの不利だ!』

 

「ジャックは今、運命の選択を迫られているんだ…!今まで通りのパワーで攻める戦術を使うのか…それとも新しい戦術を使うのか…!!」

 

苦戦するジャックを遊星とボマー、マックスは見守るしかない…マックスを助ける為に遺跡に潜入した遊星達だったが、しもべに退路を塞がれてしまった。

ジャックが負ければ彼らも紅蓮の悪魔の生贄になってしまう…!

 

「心配するな遊星!俺は負けん!!小手先の細工など圧倒的パワーで押しきってやる!!」

 

 

 

追い詰められたジャックは「パワーブレイカー」を召喚ししもべに攻撃を仕掛ける…当然「霊波障壁」の効果で破壊されるが…それはジャックの狙い通り、「パワーブレイカー」の効果で「霊波障壁」を除去する事に成功する。

しかし、しもべもただでは終わらない…追撃してきた「ビッグピースゴーレム」の攻撃を罠カード「黄泉の導き」の効果で「黄泉の防人」を召喚する事で防ぎさらに800ダメージをジャックへと与えた、この時点でライフは4000対1600…ジャックは残り2回同じ効果を使われれば敗北してしまう…!

 

 

 

【私のターン!ドロー!…残念、できる事がないのでターンエンド…おや?お目覚めですか…我が主よ?】

しもべの言葉とともに赤い蛇のような人魂がジャックの周りを旋回する…まるで獲物を品定めするように…

 

「こいつが『スカーレッド・ノヴァ』か…!」

 

『地上絵の地縛神よりも深い場所にこんなものが封印されていたとは…!』

その姿を見た遊星達が感じたのは「恐怖」…数多の戦いを越えてきた遊星ですら恐ろしいと感じてしまったのだ。

 

 

【イッヒッヒッ…!感じるでしょう…!我が主の究極の力を…!我が主こそ地縛神最強の神!あの「Wiraqocha Rasca」ですら我が主には及ばない!!】

 

「なら…どうして他の地縛神と共に復活しなかった!前回の時は8人のダークシグナーがいたはずだ!」

遊星の疑問はもっともな事だった、前回のダークシグナー事変の時…ダークシグナーにもイレギュラーの8人目バクラ=ゾークがいた、バクラは地縛神こそ召喚しなかったものの、同レベルの闇を持つ「邪神アバター」や「闇の支配者─ゾーク」を召喚し遊海を追い詰めたのだ。

 

【ああ〜あの生意気な邪神ですか…勧誘したけど断られたんですよぉ〜「オレの復讐はオレの力で果たす!邪魔すんなら…覚悟しとけ!」ってな具合でしてねぇ…まぁ負けたら世話ないんだけど…イッヒッヒッ!!】

 

「遊海さん…危なかったんだな…!」

 

「フン…くだらん!!最強の地縛神だと?そんなもの()()()の遊海に比べれば…恐れなど感じない!!」

ジャックの脳裏にはシグナー3人を相手に戦った時の遊海の姿が蘇っていた。

 

【減らず口を…!】

 

「例え劣勢であっても…俺は諦めん!!」

 

 

そしてジャックのターン、ついにジャックの魂のカードである「レッド・デーモンズ・ドラゴン」が召喚され攻撃に移るが…しもべは墓地から「舟守」の効果を発動し「防人」を特殊召喚、さらに「餓鬼」の効果でジャックのライフに800ダメージを与えライフはついに800となってしまう…!

 

 

「まずいぞ…!ジャックが次に攻撃した時点で黄泉のコンボが発動して…ジャックの負けだ…!」

 

「まだだ…俺の魂は…まだ燃えている!!」

 

 

しもべは何もせずにターンを終え、再びジャックのターン…ジャックは再び「レッドデーモン」でダイレクトアタックを仕掛ける!

 

【懲りませんね〜!再び黄泉のコンボ発動!これで…】

 

「終わりではない!手札から『エクストラヴェーラー』の効果発動!相手が特殊召喚に成功した時にこのカードを特殊召喚!効果ダメージを相手に反射する!」

 

【なんですと!?】

ジャックは初めてしもべにダメージを与える事に成功する、ジャックは初めて戦術でダメージを回避したのだ。

 

 

【ジャック…貴方ご自慢のパワーはどうしたのですかぁ?ここまで来て自分のポリシーを曲げると?それはいけませぇん!我が主も怒っていますぞ〜!】

しもべがそう告げた瞬間、遺跡に鎮座していた石像が崩れ始め赤い悪魔の肉体が露わになり始める、そして紅蓮の悪魔から衝撃波が放たれジャックを吹き飛ばそうとする!

 

「っ!?ジャック!!」

 

「うおぉっ!?」ガシッ!

落ちる寸前でジャックは足場に掴まる…穴の中では紅蓮の悪魔の一部である赤い蛇が無数に蠢いている…

 

【そうそう、デュエル中に死んでも貴方の肉体は紅蓮の悪魔のモノになるから気をつけてね〜イッヒッヒッ!】

 

「おのれぇ…!俺は貴様らの思いどおりにはならんぞ…!俺の荒ぶる魂がある限り…俺は勝利を掴む!!」

体勢を立て直しながらジャックはしもべを睨みつける、その瞳に諦めの色はない!

 

 

 

デュエルは続く、今までにデッキを回しすぎたのかしもべはカードを伏せ、ターンを終えた…そして再びジャックのターン…その時

 

【リバース罠「バトルマニア」発動!このターン攻撃可能なモンスターは攻撃しなければならない!】

しもべが発動したのは攻撃強制カード、ジャックの場には「レッドデーモン」が存在する…だが、ここで終わるジャックではない!

 

「甘いぞ!俺は『シンクロガンナー』を召喚!その効果により『レッドデーモン』を次の自分スタンバイフェイズまで除外する事で600ダメージを与える!受けてみろ!俺の魂の一撃を!!」

レッドデーモンがシンクロガンナーに力を与え、しもべにダメージを与える!

 

【チィ…!だが「シンクロガンナー」がいる限りオマエはこのターンで終わりだ!】

 

「まだだ!リバース罠『ナイトメアデーモンズ』を発動!『シンクロガンナー』をリリース!貴様の場に『ナイトメアデーモン・トークン』3体を特殊召喚する!」

しもべの場に3体の黒い悪魔が現れる

 

【なんのつもりですかぁ?私の墓地には「黄泉の餓鬼」がいる…この邪魔なトークンは破壊だ!】

 

「そうだ、それを待っていた!」

 

【なんですと?】

ジャックは不敵な笑いを浮かべる

 

「『ナイトメアデーモントークン』は…破壊された時!貴様に1体につき800ダメージ…3体で2400ダメージを与える!自分の策で自滅するがいい!!」

 

【なんですとぉ!?ウギャアアア!?】

しもべの黄泉コンボの裏をかいた一撃、それはしもべのライフを大きく削り残りライフ200となった!

 

 

「ジャックの戦術が…しもべを追い詰めた!!」

 

『ジャックの選んだ新たな戦略が実を結んだ…!』

ジャックの選んだ戦術を見たボマーと遊星は目を見張る…!

 

「ああ…そうだ、例え不本意な戦術だろうと今の俺は受け入れよう!この戦いの先に…俺は新たな魂を見つけてみせる!!」

 

 

【おのれ…おのれオのれオノレェ!!】

しもべは怒りをあらわにする…その怒りに共鳴し紅蓮の悪魔から圧力が強くなる!

 

【これ以上紅蓮の悪魔に逆らう事は許されぬ!!紅蓮の悪魔の怒りは炎となり貴様らを喰らい尽くすであろう!!】

膨れあがった力に石像が砕け紅蓮の悪魔…『スカーレット・ノヴァ』の顔が露わになる!

 

 

 

 

【私のターン!墓地に存在する「黄泉の餓鬼」「黄泉の船守」「黄泉の防人」の3体を除外し…現われよ!「黄泉の邪王ミクトランコアトル」!!】

黄泉のモンスター達が除外されしもべの切り札…攻撃力3800を誇る冥府の蛇王が現れる!

 

【バトル!「ミクトランコアトル」でダイレクトアタック!】

 

「やらせん!リバース罠『スクリーン・オブ・レッド』!攻撃を無効にする!」

すんでのところで攻撃を回避するジャック…しかし

 

【「ミクトランコアトル」のさらなる効果発動!『スクリーンオブレッド』を破壊し600ダメージを与える!!】

邪王の咆哮でカードが砕け散る…これでライフはお互いに200となった…!

 

 

【そして…永続魔法「魔導戒厳令」を発動!これでオマエは魔法カードを発動できない!!】

《オオオオ…!》

追い詰められたジャック…その状況に呼応し紅蓮の悪魔が封印を破り始める…!

 

【我が主が仰っている…ジャック!貴様のデッキに私を倒せるカードはないと!!儀式は貴様の負けで幕を閉じ…紅蓮の悪魔がオマエ達を生贄に復活するのだ!!】

 

《オオオオ!!》

紅蓮の悪魔の咆哮で大地が揺れ、瓦礫が降り注ぐ…!

 

「おのれ…そうはさせるか!大切な仲間…掛け替えの無い同志!俺を慕う小さき戦士…たとえこの身が…魂が燃え尽きようとも…絶対に守り抜く!!」

ジャックはその仲間達を守る為に闘志を魂を燃え上がらせる…その時、

 

 

─すまないなジャック…『炎魔竜』はあと1段階変身を残している─

ジャックの脳裏によぎったのは遊海の言葉だった。

 

「(遊海の持つ『炎魔竜』はまだ力を隠している…ならば、『レッドデーモン』にも…その可能性は…ある!!)」

それを自覚した時、ジャックの魂が熱く燃えあがる!!

 

 

「忘れているぞ紅蓮の悪魔!次のターンに俺の魂が戻ってくる!!」

 

【「シンクロガンナー」の効果で除外された「レッドデーモンズドラゴン」はスタンバイフェイズに戻ってくる…】

 

「そうだ…『レッドデーモン』は俺の魂に火を点ける!!」

ジャックは自分の胸に手を当てる…そこから紅蓮の炎が溢れ出す!

 

「感じるぞ…魂の鼓動を!荒ぶる俺の魂を!!

 

【ま、まさかそれはぁ!?】

《オオォォ…!?》

紅蓮の悪魔が怯えたような叫びをあげる…!

 

「あれはまさか…バーニングソウル!!まさか、ジャックは伝説の男の─!?」

遊星は気づいた、ジャックは伝説に謳われる「シグナーの始祖」…その一族なのだと!

 

『俺の…タァァン!!』

紅蓮の炎を纏い、カードがドローされる!

 

【させぬ…やらせはせぬぞぉぉ!!】

《オオオオ!!!》

紅蓮の悪魔が咆哮し遺跡が揺れ、天井がジャックの頭上に落下する!

 

『「「ジャック!!!」」』

瓦礫がジャックに降りかかるその刹那…奇跡は起きる!

 

 

 

 

 

 

キュイン…!

 

《キュオオォォン!!》

 

瓦礫が吹き飛ばされ、凄まじいエネルギーが遺跡に吹き荒れる…遊星とジャック、2人の持つ痣が共鳴し…赤き竜が顕現する!

 

 

 

「赤き竜…!」

 

「ケツァコアトル…!」

 

「えっ…!」

目覚めたマックスの呟きに遊星が反応する…

 

『ケツァコアトル…羽毛ある蛇…この地で崇められる守り神だ!!』

赤き竜の真名の1つ…それこそがケツァコアトル…南米神話における善神である!

 

 

 

《キュオォォン!!》

赤き竜がジャックになにかを促すように声をあげる…ジャックはそれに頷き、動き始める!

 

「我が魂!『レッドデーモンズドラゴン』はスタンバイフェイズに復活する!」

《グオオン!!》

復活したレッドデーモンは咆哮を轟かせる!

 

「さらにチューナーモンスター『クリエイト・リゾネーター』は自分フィールドにシンクロモンスターが存在する時特殊召喚できる!さらに!チューナーモンスター『アタック・ゲイナー』を召喚!!」

ジャックの場に2体のチューナーが出揃う…全ての準備は整った!!

 

「俺はレベル8の『レッド・デーモンズ・ドラゴン』にレベル3の『クリエイト・リゾネーター』レベル1の『アタック・ゲイナー』をダブルチューニング!!」

 

『チューナーモンスター2体でのチューニング!?』

 

「そんな召喚があるのか!?」

ジャックの思わぬ宣言に遊星とボマーは驚愕する…そして2体のチューナーが炎の輪となりレッドデーモンを包み込む!!

 

 

8+3+1=12

 

 

「レベル12のシンクロモンスター…!?」

 

「バーニングソウルを持つ者は…赤き竜の力を得て…奇跡を起こす!!」

マックスは呆然と呟く、これから現れるのはこの世界で初めてのレベル12のシンクロモンスター…!

 

「荒らぶる魂よ…その力で再び紅蓮の悪魔を封印せよ!紅蓮の悪魔よ!お前のその力…全て根こそぎ奪い取ってくれる!!」

痣が共鳴しジャックの手に白紙のカードが現れる、そこに紅蓮の悪魔が吸い込まれる!

 

【な、何をする…ま、まさかまさかまさか!!?】

 

王者と悪魔!今ここに交わる!荒ぶる魂よ…天地創造の叫びをあげよ!!シンクロ召喚!!!

 

レッドデーモンが紅蓮の悪魔の力を吸収し、進化を遂げる…紅蓮の炎から現れしそのドラゴンの名は…

 

「いでよ…!『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』!!」

《ガオオン!!!》

最強の地縛神を取り込み進化を遂げた悪魔竜が咆哮を轟かせる…その名は…スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン!

ジャックは荒ぶる魂によって紅蓮の悪魔を従えたのだ!

 

【そんな…我が主を…紅蓮の悪魔を従えた…!?】

使えるべき主を失ったしもべは呆然とする

 

「『スカーレッドノヴァドラゴン』の効果発動!このカードの攻撃力は墓地のチューナーモンスター1体につき500アップする!」

スカーレットノヴァの攻撃力は3500…墓地のチューナーは4体…その攻撃力は5500!

 

 

【そんな…!?主なき私めに…なにを…!?】

紅蓮の悪魔を失ったしもべは後ずさる…

 

「今までの礼だ…力を見せてやろう!あらゆる手を尽くし!その上で辿り着いた究極のパワーを!これが俺の新たなる闘いの魂だ!!」

ジャックはしもべに狙いを定めた…!

 

「バトルだ!『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』で『黄泉の邪王ミクトランコアトル』を攻撃!バーニング・ソウル!!」

紅蓮の炎を纏ったスカーレットノヴァが邪王に突撃…身体に風穴の開いた黄泉の王は大爆発を起こした!!

 

【うぎゃああ──!?グボハッ!?】プチッ

 

紅蓮の悪魔のしもべ LP0

 

ジャックWIN!

 

 

 

 

 

 

 

闇のゲームが終わり、しもべは紅蓮の悪魔の石像に押し潰された…しかし、あまりのパワーに脆くなった遺跡が耐えられず、全てが崩れ落ちる!

 

「し、しまった!?」

 

「『「「うわああ!!」」』」

 

 

 

 

 

《キュオオォォン!!》

 

 

 

…………

 

 

 

「はっ……ここは…」

遊星達は気づけば遺跡の外へと脱出していた…空には朝日が昇り、その空に赤き竜が飛び立つところだった。

 

「赤き竜に…助けられたのか…」

 

《キュオオォン!》

朝の空に赤き竜の優しい鳴き声が響き渡った…

 

 

 

 

 

 

『すまない…迷惑をかけてしまったな遊星…』

 

「いいんだボマー、ジャックが新たな力を手にした…それで充分さ」

翌日、疲れを取った遊星達は日本へ帰国する事になった…

 

『遊星、ジャック…また来てくれ、いつでも歓迎しよう!』

 

「ああ!」

 

「フン…今回のようなオカルトはもうゴメンだがな!」

遊星はボマーと握手を交わし…ジャックは顔を背けた…収穫はあったが相当にクるものがあったようだ。

 

 

「ジャック!ボク…絶対にジャックみたいに強くなる!だから…今度はデュエルしてね!」

 

「フッ…いいだろう、キングたる者挑戦はいつでも受け入れよう!さらばだマックス!」

ジャックは小さな戦士と拳を合わせる…マックスのデッキはジャックのパワーデッキをリスペクトしたもの…必ず強いデュエリストになるだろう…そうして遊星達は帰国の途についた…。

 

 

 

 

 

 

 

「ジャック…オレ達をナスカに呼んだのは…赤き竜だったのかもしれないな…」

 

「なに…?まさか、俺をバーニングソウルを目覚めさせる為に『紅蓮の悪魔』すら利用したというのか?」

荒野を走るジャックに遊星が自分の考えを伝える…それは間違っていないかもしれない。

 

 

「オレの手にした『クリアマインド』…」

 

「俺が目覚めた『バーニングソウル』…この2つの力でイリアステルを倒せという事か…!」

 

遊星とジャックは理解した、手にしたシンクロの境地…それがイリアステルを打ち破る鍵なのだと…イリアステルとの戦いは…そこまで迫っている…!




今回も読んで頂きありがとうございました!

お知らせです!活動報告にてリクエストアンケートを実施しています!期限は延長して20日まで!皆様のリクエストをお待ちしています!


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道化の覚悟〜守る為の闘い〜

「スゥ…スゥ…」

 

《ZZZ…》

 

ディアブロ事件から2週間が過ぎた、ナスカへ旅立った遊星とジャックも新たな力を手に入れ無事に戻り、シティには平穏な時が流れている。

事件で破壊されたデュエルレーンや町も粗方復興し(遊海とゲイザーの決闘跡を除く)WRGP本戦まで残り2週間に迫っていた。

 

病院から退院した遊海は自宅に戻り、療養を続けている…身体の傷は完治したもののゲイザーとの戦いのダメージが抜けきらないのだ。

 

 

《よく眠っているな…先の戦いのダメージがよほど大きかったのだろう…》

 

《ええ…ゲイザーの精霊の力はマスターに匹敵します、それを殺傷能力に特化させているのならマスターを凌ぐかもしれません》

遊海の近くでメガロックとアヤカが言葉を交わす、間近で見たゲイザーの強さを分析していたのだ…なお、トフェニは付近の警戒を、フレアは…遊海の枕元で眠っている。

 

 

《アヤカ、奴を改めて見て何かわかった事はあるのか?》

 

《はい、まずはゲイザーは何かしらの精神汚染を受けている可能性が高いと思われます》

 

《精神汚染…誰かに洗脳されているというのか?》

 

《はい、具体的にはわかりませんでしたが…少なくとも私達…精霊の力や魔術に近いモノと思われます、それから…ゲイザーの肉体の組成は完全に生身の人間のものでした》

 

《生身の人間…?イリアステルで生身の人間は確かZ-ONEだけなのであろう?それはおかしい話ではないのか?》

メガロックは首を傾げる、イリアステルのメンバーはリーダーであるZ-ONE以外はそれぞれの人間時代の記憶を写したデュエルロイド…ロボットのはずなのだ。

 

《18年前に会敵した時に採ったデータと比較した結果です…()()()()()()()()()()()()()()()

 

《むっ…?それは変ではないか?仮にもあの時から18年経っている、人間とは老いる生き物…変化がない…それではまるで……まさか》

メガロックは何かを悟った…しかし

 

《…この事はマスターに伝えています、他の人達…特に翠さんには伝えるなと厳命されています…》

 

《…そうか、ならば我も聞かなかった事にしよう…これは遊海が解決すべき事だ》

そう言ってメガロックは眠っている遊海を見る…その瞳は…哀しみの青に染まっていた。

 

 

 

 

《主殿!…まだ眠って…》

 

「んむ…?どうしたトフェニ…?」

眠っていた遊海はトフェニの呼び声に起こされる…陽は西へと傾き始めていた。

 

 

《お休みのところ申し訳ない…先程から不審な動きをする者…モノ?が…》

 

「はい…??」

 

《ZZZ…(パチン!)ふにゃ…?》

 

 

 

 

 

 

 

「…あれか?」

 

《然り…先程からこちらに近付いてきているのですが…》

ベランダに出た遊海が見たのは電信柱の近くに置かれた青いゴミバケツだった…しかしそれは少しずつ遊海の家へと近付いてきている。

 

《最初は子供がかくれんぼをしていると思ったのだが…》

 

「うん、怪しいね、アレ…メガロック」

 

《うむ、正体を暴いてこよう》

 

「手荒な真似は無しで頼むよ」

遊海の指示を受けたメガロックは気配を消してバケツに近づく…そして…

 

 

《(躓き岩)》

 

『うぇ!?だっは〜!?』ゴロンゴロン…カタカタカタカタ…

動くゴミバケツは動いたタイミングで石に躓き倒れ込む…その中から現れたのは…

 

『イタタタ…なんでこんな所に石があるのでしゅか…いっ!?』

 

「ずいぶん久しぶりじゃないか…イェーガー副長官?俺になんの用だ?」

半年近く姿を消していた治安維持局副長官にして特別捜査室長・イェーガーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、イェーガーさん!コーヒーをどうぞ!」

 

『いやはや…ありがとうございます…』

 

「で…俺になんの用なんだ?わざわざコソコソしながらここまで来て…」

イェーガーを家に案内(連行)した遊海はイェーガーに事情を聞こうとしていた。

 

 

『あ、あの話を…する前に精霊の方々を落ちつかせていただけるとありがたいのでしゅが…』

イェーガーは小さい体をさらに縮ませて震えているが…無理もないだろう、俺の背後ではフレアとメガロックが台所からはウェンとウィンダが殺気の籠もった目でイェーガーを睨んでいるからだ。

 

 

「ん?…フレア、メガロック…少し霊体化しててくれないか?」

 

《…わかりました、しかし近くにはいますよ》

 

《右に同じだ…そやつは信用できん》

そう言って2人は姿を隠したが…そのままの場所にいるようだ。

 

 

『た、助かりました…蛇に睨まれたカエルの気持ちがわかった気がしましゅ…』

 

「悪かったな…で、なんの用だ?」

 

『はい…実は…』

 

 

そしてイェーガーから語られたのは今までの事だった。

 

半年前…プラシドからの指示で遊星達からプログラム奪取を計画し半ば失敗した事。

その失敗によりイリアステルに目を付けられ長期休暇届を出して家族と共に身を隠していた事…そんな中、どうして俺のもとに姿を現したかというと…

 

 

 

「…家族を保護して欲しい…ね…」

 

『はい…イリアステルに関してはワタシだけの問題でしゅ!家族は…アツコとカオルは関係ないのでしゅ!』

 

「で…なんで俺なんだ?」

 

『それは…遊海様、貴方が海馬社長とのパイプがあり、イリアステルに対する最強の決闘者だからでしゅ…貴方に…海馬コーポレーションに保護して貰えれば家族も安全と思い…』

イェーガーには妻と息子がいる…家族の安全を確保する為に海馬社長と繋がりのある俺を頼ったのだそうだ…。

 

 

「…いいでしょう、海馬社長には俺から話を通します」

 

『本当でしゅか!?ありがとうございましゅ!!』

遊海の言葉にイェーガーは目を輝かせる…しかし

 

「ただし…条件があります」

 

『条件…?条件とは…?』

 

「俺とデュエルして貰います」

 

『な、なんですとぉ!?いったいどうして!!』

イェーガーの顔が驚愕で凄まじい事になる

 

「これはケジメの問題だ…イェーガー、お前…俺に何をしたか覚えてない訳じゃないよな?」

 

『あっ…!』

イェーガーは思い出す、ゴドウィンの指示で当時正体を隠していた遊海を調べあげて翠を拉致…さらには翠を取り戻しに来た遊海に対しセキュリティをけしかけ遊海に重傷(自滅)を負わせ、さらにさらにフォーチュン・カップに無理矢理参加させた…それは全てイェーガーのアイデアだったのだ。

 

 

「俺もそうだけど…精霊達が怒っているのもそれが原因だ…それに俺も貴方を信用できない」

 

『だから…デュエルでワタシを見極めようと…?』

 

「そういう事、もちろんすぐとは言わない…2日後に旧サテライト地区の…ここに来てください、ここなら人目はないでしょう」

遊海は地図アプリで場所を提示する

 

『わかりました!貴方に勝って家族の安全を守ってみせましゅ!!』

イェーガーは遊海をまっすぐ見つめる…

 

「わかった、じゃあ2日後に…翠」

 

「はい!…イェーガーさん、これを渡しておきますね」

翠は少し大きめの箱をイェーガーに手渡す

 

『えっ…これは…?』

 

「中にお弁当とレトルト食品が入ってます…家族の皆さんと食べてください!」

 

『お…おおぉ〜!!あ、ありがとうございましゅ!!』

イェーガーは涙を流しながらそれを受け取った…イェーガーは警戒しすぎるあまりに食事すらまともに摂れていなかったのだった…イェーガーは遊海と翠に感謝しながら足早に戻って行った。

 

 

 

 

「さて…(ピッポッパ…)…もしもし、俺だ、実は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜2日後〜

 

 

 

「よく来たなイェーガー、早速始めようか」

 

『ええ、遊海…いえ、メタルナイト殿…ワタシは貴方に勝ちましゅ!!…それからお弁当ありがとうございました…本当に美味しかったでしゅ』

 

遊海とイェーガーはサテライト某所で対峙する、イェーガーの目には覚悟が宿っている。

 

「それはよかった…さぁ、始めるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

イェーガーLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

『ワタシのターン!ドロー!』

『「ジェスター・ロード」を召喚!』

道化師の王が現れる ATK0

 

『さらにワタシはカードを4枚セット!そして「ジェスターロード」の効果発動!攻撃力がフィールドの魔法・罠の枚数×1000ポイントアップ!攻撃力4000でしゅ!!』

ジェスターロードが燃える火の玉をジャグリングし始める ATK0→4000

 

『私はこれでターンエンド!』

イェーガーLP4000

ジェスターロード 伏せ4 手札1

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『コアキメイル・サンドマン』を召喚!」

白い体を持つゴーレムが現れる ATK1900

 

『「ジェスターロード」の効果発動!モンスターが召喚された事で攻撃力が0になるでしゅ!』

ジャグリングしていた火の玉が消え去る ATK4000→0

 

「さらに俺は手札の『メタモル・ポット』『ゴゴゴゴーレム』『コアキメイル・ガーディアン』を除外し『ブロック・ドラゴン』を特殊召喚!」

カラフルなブロックでできたオモチャの竜が現れる ATK2500

 

「バトル!『サンドマン』で『ジェスターロード』を攻撃!サンドスマッシュ!」

砂を纏った巨大な拳が道化師に迫る!

 

『引っかかりましたね!リバース罠「王宮の帳簿」発動!自分モンスターの攻撃力がカード効果で下がった時!その数値分攻撃力をアップする!これで返り討ちでしゅ!』

 

「甘い!『サンドマン』の効果発動!自身をリリースして罠カードの発動を無効にし破壊する!」

 

『なんとぉ!?』

サンドマンの身体が砂に変わり罠カードを包み込み破壊しようとする!

 

『ですがさせません!永続罠「宮廷のしきたり」を発動!このカード以外の罠カードは破壊されなくなりましゅ!』

 

「だが、効果は無効になった!『ブロックドラゴン』で『ジェスターロード』を攻撃!ブロック・バイト!」

ブロックドラゴンが道化師を噛み砕いた!

 

『くぅ…!』

イェーガーLP4000→1500

 

「俺はこのままターンエンド!」

遊海LP4000

ブロックドラゴン 手札1

 

 

 

 

『くっ…!(やはり強い…!これが最強の決闘者の力ですか…ですが、負けるわけにはいきません…!)』

 

「(さて…どう動く?)」

 

 

 

 

 

『ワタシのターン!ドロー!』

『「ジェスター・クイーン」を召喚!』

全身にリボンをつけた女性の道化師が現れる ATK800

 

『「ジェスタークイーン」の効果発動!このモンスターが召喚に成功した時!ワタシの場の魔法・罠カードを全て破壊する…ただし!「宮廷のしきたり」の効果で破壊されるのはこのカードのみ!』

イェーガーの場のカードが爆発する

 

「そしてワタシは永続魔法『隠し通路』を発動!ワタシの場には貴方のフィールドの『ブロックドラゴン』より攻撃力の低い『ジェスタークイーン』がいる…それにより『ジェスタークイーン』はこのターン、貴方にダイレクトアタックできる!さらに!『クイーン』は自分の場の魔法・罠の枚数だけ連続攻撃ができるのです!バトル!『ジェスタークイーン』でダイレクトアタック!」

女道化師がジャグリングしたボールを遊海に投げつける!

 

「くっ…!やるな…!」

遊海LP4000→3200→2400→1600→800

 

『ワタシはこれでターンエンドです!』

イェーガーLP1500

クイーン 宮廷の帳簿(無効) 隠し通路 伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

『よし…!(いいですよワタシ…!決闘王をここまで追い詰めました…あと1歩…!)』

 

 

「いい戦略だ…見た目はピエロだけど…戦略はしっかりと練られてる、イェーガー…一つ聞いていいか?」

 

『なんですか?メタルナイト…まさか約束を反故にするなんて事は…』

話しかけてきた遊海にイェーガーは不安そうな顔をする

 

「言わないよ…なぁ、なんでイリアステルに協力してたんだ?」

 

『それは…ワタシの夢を叶える為です!…ワタシはこの地位を手に入れるまでに様々な苦労を重ねてきたのです…!!』

イェーガーが語りだしたのは今までのサクセスストーリー…貧乏だったイェーガー一家…その貧困から抜け出そうと必死に足掻き、ゴドウィンに気に入られ副長官になり…イリアステルに引き合わされた…そんな話だった。

 

 

 

『ですがワタシは気づいてしまった…イリアステルの恐ろしさに…だが、家族だけはなんとしても守らなければならないのでしゅ!』

 

「話はわかった…だが、お前はこれからどうするつもりだ?1人で逃げ続けるつもりなのか?」

 

『ワタシは…チー厶5D'sに協力するつもりでしゅ』

 

「なに…?」

イェーガーの思わぬ言葉に遊海は驚く

 

『先日の事件の時に見たのでしゅ…シティの空に舞う白き龍…そして…イリアステルの1人と戦う貴方の姿を…!』

 

「…見られていたのか」

 

それは全くの偶然だった、シティの混乱に乗じて火事場泥…もとい、食料調達をしていたイェーガー…そんな中でイェーガーは目にしていたのだ…遊海とゲイザーの死闘を…

 

 

『あまりの激しさに何が起きているかはわかりませんでしたが…生命を削りながら戦う貴方を見て…逃げ続ける自分が恥ずかしくなったのでしゅ!だから家族と相談して決めたのです!イリアステルと戦うと!!』

イェーガーは拳を握りながら堂々と想いを伝えた…その姿には一種のカリスマが見えた。

 

「イェーガー…お前の思いはわかった、いいだろう…その思いに免じて本気で相手になる!!」

遊海はクリフォートの鎧から金色の鎧…太陽神の鎧へと姿を変える!

 

『黄金のメタルナイト!?それにその鎧の意匠はまさか…!?』

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン…遍く世界を照らす太陽よ!我が勝利の道筋を照らせ!ソーラー…ドロー!!」シャキーン!

「魔法カード『隣の芝刈り』発動!俺のデッキ枚数は53枚!イェーガー、お前は?」

 

『ワタシの枚数は…33枚でしゅ!』

 

「デッキ差は20枚…よって俺のデッキから20枚を墓地に送る!」

 

 

墓地送り

磁石の戦士α

タックルセイダー☆

グランモール

リバイバルゴーレム☆

マグネットバルキリオン

災いの像

超電磁タートル

ゴゴゴゴーレム

ゴゴゴギガース

コアキメイルウォール

封魔の矢

メデューサワーム

守護者スフィンクス

怒気土器

どぐう

アロマポット

番兵ゴーレム

剣闘獣ホプロムス2

ロストガーディアン

 

計20枚

 

「墓地に送られた『タックルセイダー』の効果発動!永続魔法『隠し通路』を手札に戻す!」

 

『くっ…!』

イェーガーは弾き出されたカードをキャッチする

 

「さぁ…出番だぜ!俺は墓地の岩石族19体を除外!現れろ!我が魂を守りし巌の竜!『メガロック・ドラゴン』!」

《ウオオォォ!!》

大地を砕きながら赤い瞳の巨大なる岩石竜が現れる ATK0→13300

 

 

『こ、攻撃力13300!?』

 

「『メガロック』の元々の攻撃力は特殊召喚時に除外した岩石族の数×700になる!バトルだ!『メガロック』で『ジェスタークイーン』を攻撃!」

 

《受けてみるがいい!誇り高き道化よ!鳴動富嶽!!》

大地を踏みしめたメガロックの足元から地割れが広がっていく!

 

『ここまできて…負ける訳にはいきません!リバース罠「聖なるバリア─ミラー・フォース」を発動!相手の攻撃表示モンスターを全て…なんですとぉ!?』

イェーガーは驚愕する、敵対者を破壊するバリアはメガロックの攻撃で砕け散り、道化師は大地からの槍で串刺しになった。

 

「『ブロックドラゴン』の効果…このモンスターがいる時、自分の岩石族モンスターは戦闘以外では破壊されない…一手足りなかったな」

 

『これが…決闘王の実力でしゅか…完敗でしゅ』

 

 

イェーガーLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

『負けてしまいました…これが決闘王の実力…!』

デュエルが終わりイェーガーは膝をつく…そこに

 

 

『お父ちゃま〜!』

 

『あなた!!』

 

『アツコ!カオル!?どうしてここに!?迎えに行くまで隠れ家で待っていなさいと言ったでしょう!?』

イェーガーより少し背の高い女性と小さな少年がイェーガーに駆け寄る…その顔はイェーガーとそっくりである。

 

『私達…あなたの事が心配になってついてきたんです…』

 

『お父ちゃまをいじめるな!!』

カオルがイェーガーを守るように遊海の前に立ち塞がる、遊海はクリフォートの鎧に戻りカオルの頭を撫でる

 

「ごめんな、お父さんを虐めてた訳じゃないんだ」

 

『そうなの?』

 

「ああ、お父さんがこれからどうしたかったのかを確かめたかったんだ…イェーガー副長官、貴方の漢気をみせてもらいました、ご家族は『決闘王』の名に懸けて安全を保障します」 

 

『ほ、本当でしゅか!!あ、ありがとうございましゅ〜!!』ブンブン

遊海の言葉を聞いたイェーガーは遊海の手を握り感謝を伝える

 

「そのかわり…しっかりと協力はしてもらいますよ…お前達!出てきてくれ!」

遊海が物陰に声をかける…すると

 

 

「イェーガー、話は全て聞かせてもらったぞ?」

 

『不動遊星にチーム5D's!?どうしてここに!?』

物陰に隠れていたのは遊星をはじめとするチーム5D'sのメンバー達だった。

 

 

「俺があらかじめ呼んでおいたんだ、万が一お前がイリアステルから逃げるって言ったら捕まえるつもりでいたんだよ」

 

「話は聞かせてもらったぞイェーガー、家族の為にメタルナイトに挑むとはな…やるではないか…!」

若干涙目のジャックがイェーガーに声をかける…出自からか苦労話には弱いようだ。

 

「とりあえず、イリアステルについてお前が知ってる事は洗いざらい喋ってもらうからな!嘘はつくなよ?」

 

『もちろんです!ワタシは覚悟を決めましたよ〜!!』

イェーガーは拳を突き上げる…ここに5D'sとイェーガーの協力体制が結ばれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ遊海さん…イェーガーにだいぶ手加減してあげたんじゃないの?」

 

「いきなりどうしたんだ?アキ」

デュエルが終わった遊海にアキが話しかける

 

「確か『コアキメイル・ガーディアン』は自身をリリースしてモンスター効果を無効にして破壊する効果を持っているし…それか『メタモルポット』を伏せていたら手札が入れ替わってもう少し楽に勝てたんじゃないかと思って…」

 

「そんな事か…最初のターンの時点で『メガロック』が手札にいた、だから墓地に送りたくなかった…それにあれだけ伏せカードがあったからそっちを警戒しただけだよ」

 

「…そういう事にしておくわ…みんなが待ってる、行きましょう?」

そう言ってアキは歩いていった。

 

「流石はアカデミアの秀才だな…手加減したのは事実さ…ありがとなメガロック」

 

《良いのだ遊海、あの道化の真実を見る事ができただけ良しとしよう…》

遊海の隣に現れたメガロックはそれだけ言って霊体化した。

 

「(…次はモーメント・エクスプレスか、さて…どうしたもんかな…)」

 

 

遊海が見据えるは次の出来事…そしてゲイザーの事だった。



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潜入!モーメント・エクスプレス〜異次元に潜む者〜

シティから少し離れた荒野…そこに近未来的な外観の建物が建っている。

その会社の名前は「モーメント・エクスプレス開発機構」…そこに向かう4()()の人影があった。

 

 

「それじゃあ遊星、成功を祈る…何かトラブルがあったら手筈どおりにな」

 

「わかりました、もしもの時は頼みます…!」

 

「失敗なんてしないわ…必ずイリアステルの正体を暴いてみせる…!」

 

「心配しなくても大丈夫だよ遊海!天才の2人が行くんだ、必ず成功するさ!いってきま〜す」

3人の人影は車で建物へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

イェーガーとのデュエルから4日後…俺は遊星、シェリー、ブルーノの3人と共にモーメント・エクスプレスの近くを訪れていた…目的はイリアステルに関する情報の奪取、その為に治安維持局のデータを調べ、ボルガー&ピアスンカンパニーの伝手を借りて新型エンジンの検査員として遊星達は潜入する事になったのだ。

なお、俺は万が一の際の救出要員である。

 

「無茶はするんじゃないぞ…遊星、ブルーノ、シェリー…」

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

 

 

オレ達はイェーガーから得た情報を頼りにイリアステルの正体、そして目的を探る為にイリアステルに関係を持つ会社、モーメント・エクスプレスに潜入した…この潜入でイリアステルの目的を暴いてみせる…!

 

 

『あなた方がボルガー&ピアスンカンパニーの検査員の方ですね?えっとミスター…』

 

 

「ダニエルです」

 

「ティモシーです」

 

「エヴァよ」

現れた白髪眼鏡の男に遊星達は偽名で答える、今回は敵地への潜入任務…正体は隠すのが賢明である。

また遊星にはマーカーが刻まれているが化粧上手なアキと翠による特殊メイクでしっかりと隠されている。

 

『私が社長のクラークです…ミスターボルガーの件は残念でしたが…御社のDホイールを待っている方々はたくさんいるはずです、これからもよろしくお願いします』

 

「優しい言葉をありがとうございます、社長代理のピアスンに伝えます」

ティモシーことブルーノがクラークに感謝を伝える

 

『ええ…ん?ミス・エヴァ…でしたか?何処かで顔を見た事があるような…』

エヴァことシェリーの顔を見たクラークが怪訝な顔するが…

 

「いいえ…?私は貴方とは初対面…のはずですが…?」

 

『そう…ですか、失礼な事を聞いて申し訳ない…それでは検査の方をよろしくお願いします、検査場に案内しましょう』

クラークは遊星達を連れて検査場へと歩き始めた…。

 

 

「(シェリー、彼と会った事があるのかい…?)」

 

「(わからないわ…でもあるのかもしれない…)」

ブルーノがシェリーに問い掛けるが首を横に振る…しかしシェリーの胸には僅かなモヤモヤが残った

 

 

 

キュィイン…バシューン!!!

 

 

「ん…?あの光は…?」

会社内を移動する遊星達…その時、隣の建物から光の柱が立ち昇る…

 

『ああ、あれは我が社で研究中の物質転送装置「インフィニティ」の光ですよ、道中なので少し案内しましょう』

 

 

クラークに連れられて遊星達が訪れたのは巨大なモーメントの設置された実験場だった。

 

『あれが「インフィニティ」です、モーメントの力を使って次元を歪ませてワーム・ホールを作り、物質を転送するのです…この実験が成功すれば何百億もかけてロケットを打ち上げずとも宇宙に行けるのです!』

 

「なるほど…(あの扉は…?)」

クラークの説明を聞きながら遊星は辺りを見回す…そこで遊星はLevel10と書かれた床の先に扉を見つけた。

 

「(あの先はセキュリティが厳しいらしい…もしかしたらあの先に…)」

 

 

 

………

 

 

「ダメね…調べられる範囲で調べたけど、目立った情報はないわ」

 

「うん、ハッキングもしたけど何も出なかった」

時間は流れてランチタイム…午前中のテスト走行を終わらせた遊星達はこれからについて話し合っていた。

 

「この会社が三長官…イリアステルと連絡を取っていたのは事実だ、あと調べられるのは…あの扉の先…『インフィニティ』だけだな」

 

「でも『インフィニティ』は企業秘密…厳重なプロテクトが掛かってた、調べるにはあの扉の先に行くしかないよ?」

 

「ああ、しかも扉を開くにはカードキーが必要だ…それを持っているのは社長と役員達だけ…」

 

「だったら丁度いいわ、クラークは役員達と昼食会だそうよ…社長室に行けば予備のカードキーがあるかも…!」

 

「勝負はランチタイムが終わるまで…やるぞ!」

遊星達は覚悟を決め、社長室へと向かった…。

 

 

 

 

「ここがクラークのオフィスか…」

遊星達は人目を避けつつ社長室に到着…そして目的のカードキーを発見する。

 

「よし…!これがあればシステムにアクセスできるはずだよ!」

 

「待って…大変!クラークがこっちに戻ってくるわ!?」

 

「「なんだって!?」」

クラークの机に設置されたモニターを見たシェリーが焦りをみせる、モニターには監視カメラの映像が映し出されておりクラークが部屋に戻る様子が写っていた。

 

「不味いわ…今部屋を出たら鉢合わせよ…!」

 

「どうしよう…!?」

焦るブルーノとシェリー…しかし

 

「いや、オレに考えがある!行くんだシェリー!ブルーノ!」

 

 

 

 

 

コツコツコツ…ウィーン…

 

 

 

『おや?あなたはミスターダニエル、どうしたのですか?』

 

「貴方を待っていたんですミスタークラーク、実は貴方が面白いデュエルをするとリックに聞いたもので…」

部屋に戻ったクラークが見たのは部屋にいた遊星の姿だった、ブルーノとシェリーは間一髪で通気口から脱出し、遊星が時間稼ぎを引き受けたのだ。

 

 

『ほう、リックから…いいでしょう、私もデュエリストの端くれ、勝負を受けましょう…ただし「神経衰弱デュエル」でね』

 

「神経衰弱デュエル?」

 

神経衰弱デュエル…それはクラークの得意とする変則デュエルの事である。

ルールはシンプル、自身のデッキを机の上に裏向きで広げる、そしてカードを表向きにする時にモンスター・魔法・罠を宣言し表向きにする、そのカードが召喚可能、または発動可能ならば発動できるが発動できなければ再び伏せ直す…まさに記憶力と運が試される神経衰弱である。

 

 

『そしてこのデュエルの勝者はデッキを勝者に譲り渡す…どうだね?』

 

「(デッキを賭けたデュエル…だがブルーノ達の時間を稼ぐには…!)その勝負乗った!始めましょう!」

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

デュエルダイジェスト クラーク対遊星

 

 

 

 

「(こいつ…できる…!)」

遊星は追い詰められていた、慣れない変則デュエルにより実力を発揮できない遊星…しかしクラークは実力を発揮しデッキ破壊戦術を披露し遊星の残りデッキを10枚まで追い詰めてしまう。

 

「(しかし何かがおかしい…魔法カード『等価交換』を発動した後に『デカゴナイト』を3枚も引き当てるのは…普通ならばありえない…!何かタネがあるのか?)」

 

クラークが使った戦術は魔法カード『等価交換』を発動しデッキからレベル10の『デカゴナイト』を3枚墓地に送り遊星のデッキを30枚減らすというもの…しかし広げられたカードから同じカードを3枚当てるのはとてつもない低確率である…その時

 

 

チカチカ…バチン!

 

「明かりが…っ!?」

 

『ああ、心配しなくてもいい「インフィニティ」を起動するとよくある事だ…』

突如として部屋の明かりが落ちる…クラークは気にしていないがそれはブルーノ達のハッキングの影響だった、だが不慮の事態であるその出来事は遊星に勝利の道筋を照らした!

 

「(読めたぞクラーク…お前のした事が…!)」

 

そして明かりが復活しデュエルが再開する!

 

 

  

 

「オレのターン…モンスター召喚!」

遊星はカードをめくる、そのカードは「ジャンク・シンクロン」!

 

「『ジャンクシンクロン』の効果発動!墓地の『ロード・ランナー』を特殊召喚!そしてレベル4の『マックス・ウォリアー』とレベル1の『ロードランナー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

4+1+3=8

 

「集いし星が新たに輝く星となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!『スターダストドラゴン』!」

遊星の場にスターダストドラゴンが現れる!

 

「さらに罠カードを宣言!…罠カード『フューチャー・バトル』を発動!このカードの効果によりお前のデッキをめくり、そのカードがモンスターなら特殊召喚しバトルを強制する!オレが選ぶのは…そのカードだ!」

遊星は散らばったカードから一枚のカードを選ぶ…それは…

 

『なっ…!「デカゴ・ナイト」…モンスターカードだと!?』

現れたのは不気味な仮面を着けたモンスター…それはシューティング・ソニックによって破壊される!

 

「さらに『フューチャーバトル』にはさらなる効果がある!自分のモンスターがこのカードの効果で召喚されたモンスターを破壊した時もう一度効果を適用する!二枚目は…そのカードだ!」

 

『なんだと!?』

現れたのは再びのデカゴナイト、そして破壊される…

 

「もう一度『フューチャーバトル』の効果発動!3枚目は…それだ!!」

 

『ば、馬鹿なぁ!?』

現れたのは3体目のデカゴナイト…クラークのライフは削り取られた…。

 

 

クラークLP0

 

遊星WIN!

 

 

 

 

「その程度のイカサマはオレには通用しない…そのメガネでカードの絵柄を把握していたんだろうクラーク?まるで手品師みたいだな」

 

『まさか…あの停電の僅かな時間で見破るとは…!』

 

そう、クラークのメガネには仕掛けがしてありカードの絵柄を読み取っていたのだ、遊…星は僅かな反射からその事に気がつき、イカサマを逆手に取ったのだ。

 

『フッ…流石は不動遊星、完敗だよ』

 

「なっ!?(正体がバレてる!?)」

クラークの思わぬ言葉に遊星は驚愕する

 

『我が社のセキュリティは高性能でね…監視カメラに映った時点で君達の正体は分かっていたのさ…シェリーや名無しくんの事もね!少し遊んでやろうと思っていたが甘く見すぎたようだ…!』

 

「やはりお前達はイリアステルと…!」

 

『そんな事より…君のお友達はいいのかな?』

 

ウウゥゥゥ─!!

 

「っ─!?」

突如サイレンが鳴り響く…それは遊星達の侵入がバレたという事だった…遊星は慌てて社長室から逃げ出した。

 

 

『ククク…逃げられるとは思わない事だ…!』

 

 

 

 

 

「シェリー!ブルーノ!データは!!」

 

「バッチリよ!これは何の騒ぎ!?」

遊星はシェリー達と合流する…シェリー達は無事にデータを盗めたようだ。

 

「オレ達の潜入はバレていたんだ…!急いで脱出だ!」

 

「なんだって!?」

 

「急ぎましょう!!」

遊星達は会社内を走る…しかし

 

 

 

『侵入者は何処だ!』

 

『こっちだ!出口に向かっているぞ!回り込め!』

 

 

「くっ…凄まじい警備の数だ…!」

遊星達は隠れながら進むがたくさんの警備員が遊星達を探している…見つかるのも時間の問題である。

 

「どうすれば…!」

そして逃げ続けるうちに遊星はインフィニティの実験場に辿り着く…

 

「シャトルの中に隠れるのよ!!」

遊星達は止められていたシャトルに身を隠そうとする…しかし

 

ウィーン…ゴゴゴ…ガシャン!

 

「閉じ込められた!?」

 

「罠か…!オレ達はここに誘い込まれたんだ…!」

シャトルのハッチが閉まり、遊星達は閉じ込められてしまう…遊星達はクラークによりここに誘い込まれてしまったのだ。

 

 

 

「っ…!いったい何が起きてるの…!」

遊星達は運転席へと移動するがコントロールは効かずシャトルは自動的に移動していく…

 

『ご機嫌ようシェリールブランに不動遊星とお友達くん?まんまと私の罠に嵌まってくれたね…!』

シャトルのモニターにクラークが映し出される…

 

「クラーク…!」

 

「こんな事をするなんて…やはりあなたはイリアステルと…私の家族を傷つけた犯人を知っているのね!!」

 

『Drルブランか…懐かしい名前だ、そして忌々しい名前でもある…彼は優秀な人間だったが余計な詮索が多すぎた、彼にはインフィニティの制御カードを製造して貰っていたが…彼はインフィニティの本当の使用法に気がついてしまった』

 

「本当の使い方だと?」

 

『そう、インフィニティはただの物質転送装置じゃない、簡単に言えばインフィニティはタイムマシンだ…イリアステルの方々はインフィニティを使い歴史を改変してきたのだよ…!これは知られてはならない事実…だからルブランには死んでもらうしかなかった…それを知る家族諸共ね…でも、生きているのは予想外だったよ』

 

「あなた…!許さない!!」

真実を聞いたシェリーはクラークを睨みつける

 

『おお怖い…でもまったく意味はないな、君達には異次元に消えてもらうが…シェリー、君に一つ聞きたいな』

 

「何を…!」

 

『君は…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ…?」

思わぬ言葉にシェリーは目を見開く

 

「貴様…!何を言っているんだ!!シェリーは生きている!死んでなどいない!!」

 

『それがおかしいんだ、私は眠っていた君の首を絞めたはずなんだけど…まぁ、あの時は()()がいたから確かめた訳じゃなかったが…不可思議な事もあるものだ…まぁこれから死ぬ君達には関係ないか…さらばだシェリー、遊星』

 

 

ゴゴゴ…バシューン!!

 

そしてシャトルは虹色の光に飲み込まれ遊星達の意識はブラックアウトした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideシェリー

 

 

 

 

苦しい…息が…できない…どうして…?

 

『悪いねシェリーお嬢さん…恨むならDrルブランを恨んでくれたまえ…!!』ギュ…!

 

苦しい…苦しい…!苦しい…助けて…パパ…ママ…──

 

 

 

 

 

『……小物め、余計な事を…まだ脈はあるな』 

 

誰…?誰なの…?

 

 

『お前を死なせる訳にはいかない…今の事は悪夢だ、現実はさらなる悪夢だがな…さぁ…忘れろ…そして生きろ…オレは愚かな奴らを始末しなければならん』

 

待って…待って…あなたは──

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

「シェリー!起きるんだシェリー!」

 

「うぅ…?私は…」

気絶していたシェリーは目を覚ます…傍らには遊星がいた、シャトルの外は不気味な黄色の景色が広がっている

 

「本当にワームホールに飛ばされてちゃったみたいだ!イリアステルはボク達の想像もつかない技術を持っていた…このままじゃボク達は異次元の藻屑になっちゃうよ…!」

ブルーノが制御盤を操作しながら悲鳴をあげる…

 

《シャトル制御不能…シャトル制御不能、至急制御カードを使用してください、至急制御カードを使用してください…まもなくシャトルは航路から外れます、繰り返します…》

無機質なシステムメッセージが鳴り響く、次第にシャトルの揺れは大きくなり外壁は剥がれていく─!

 

「制御カード!?そんなものないよ!?」

 

「制御カード…もしかしてお父様の残したこのカードなら!」

シェリーは胸から一枚のカード…『Z-ONE』を取り出し制御盤にかざす…すると…

 

《制御カード認識…軌道を再設定します…》

 

「やったぁ!!」

制御カードを認識したシャトルは姿勢を安定させる…しかしそれは一瞬遅かった。

 

 

バリン!ビュオオオ!

 

「なっ…!きゃああ!!」

 

「シェリー!!」

シャトルのガラスが割れシェリーが外に吸い出される…遊星は咄嗟に腕を掴んだが…徐々に窓に引き寄せられる!

 

「っ…!まだよ!まだ…私は…死ねない…!!」

 

「シェリー!絶対に手を離すな!ぐっ…ううう!!」

遊星は必死に踏ん張るが…吸引力は容赦なく襲いかかる…!

 

「遊星!あと10秒耐えて!すぐにシャッターが閉まる!!」

ブルーノが操作するが…間に合わない…

 

「遊星…お願い、私の代わりに仇を取って…!」

 

「諦めるなシェリー!お前が自分の手で果たすんだ!」

 

 

「(ごめんなさいお父様…親不孝な私を許して…!)」バッ…

 

シェリーは自分から遊星の手を離した…遊星を守る為に…

 

 

「「シェリー!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガツン!!

 

「あぐぅ!?」

吸い出されかけたシェリーは何かに衝突する…それは窓を覆う壁だった

 

「ブルーノ!ナイスタイミングだ!」

 

「違う!ボクじゃない!それはシャッターじゃない!!何かがこのシャトルを捕まえているんだ!」

 

「なんだって!?」

遊星は周りを見渡す、確かにクレーンのようなアームがシャトルを掴んでいるのだ。

 

《危ないところでしたね皆さん!ご無事ですか?》

 

「遊星、よく頑張ったな!もう大丈夫だ!なぜって?俺が来た!」

 

「遊海さん!」

シャトルのモニターに司令室のような場所にいる遊海が映し出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

「もぐもぐ…遊星達は大丈夫かな…?」

翠のお手製弁当を食べながら遊海は遊星達を待っていた。

 

《マスター…いくら何でも油断し過ぎでは…?》

 

「ゴクゴク…大丈夫だよ、元々遊星達は無事なんだ…俺はそれをもう少しいい方向にもっていきたいだけだよ」

 

遊海は異次元に送られた遊星、そしてシェリーを助け出すつもりでいた、原作ならばシェリーはゾーンに救われ、消滅したパラドックスの穴を埋める形で遊星ギアの番人として立ち塞がるが…今回はゲイザーがいる、これ以上の戦力増強を防ぐ為に遊海はシェリーを救おうとしていたのだ。

 

 

「(シェリーを助ければ俺の戦いは誰かに見られるかもしれない…だけど、お前は絶対に助けるよシェリー…)」

 

《!…マスター!次元湾曲を確認!ワームホールが開きます!!》

 

「わかった!アヤカ!次元間航行準備開始!目標不動遊星!」

 

《了解!アポクリフォート・キラー、ステルスモードで現界します!》

姿を消した状態でアヤカの真体である要塞が顕現する!

 

「よし、行くぞアヤカ!次元航行開始!」

 

《次元航行…開始!》

そしてアヤカに乗り込んだ遊海は次元の狭間へと向かった…。

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!それにこのアームは…まさかアヤカなんですか!?」

 

「そうだ!これが我が相棒『アポクリフォート・キラー』!その真の姿だ!」

 

「うわ〜…大っきい〜!」

シャトルを捕まえたアヤカを見てブルーノが声をあげる…キラーの大きさは街一つを覆う大きさなのだから無理もない、シャトルはキラーの捕獲アームに掴まれている…それがシェリーを救ったのだ。

 

「このままシティまで戻るぞ?ミッションコンプリートだ、よくやった!」

 

「遊海…ありがとう」

 

「礼はいいよシェリー、間に合ってよかった…アヤカ!次元航行の目標変更!ネオドミノシティに帰還する!」

 

《了解!目標……レーダーに生体反応を確認!何者かが追いかけてきます!?》

 

「馬鹿な!?ここは次元の狭間だぞ!?生き物がいるはずがない!」

アヤカの警告に遊海は動揺する

 

 

《凄まじい速度…そんな、パターンブラック…!?識別コード…「tierra」…!?》

 

「なっ…!?…お前か…お前なのか!!」

遊海は苦々しげに呟く…それと共にワームホールが黒く染まっていく…!

 

「アヤカ!遊星達の回収を急げ!俺が迎撃する!!」

 

《了解!ご武運を!》

遊海は外へと飛び出した…

 

 

 

 

「遊星!ワームホールの様子が変だ!」

 

「何が起きようとしてるんだ…!」

遊星達も窓から様子を伺う…そして、それは現れた

 

 

【ガアアァァァ!!!】

 

「黒い…悪魔…!?」

遊星がみたのは黒い翼を持つ不気味な悪魔の姿だった、悪魔は異次元にも関わらず凄まじいスピードで迫ってくる!

 

《皆さん!捕まっていてください!シャトルを回収します!!》

 

「うわわわ…!!」

 

「ぐぉ…!?」

 

「くぅ…!」

凄まじい速度でシャトルは引き上げられる…あまりのGに遊星達は床に押し付けられる…!

 

「アヤカ!あれは何なんだ!!」

 

《あれは……悪魔…破壊をもたらす破壊神です!今はマスターが迎撃しています!まもなく引き上げが終わります!すぐに私に乗り移ってくださ…ッ!?…マスター!!》

 

ガシャァァン!!

 

 

「「「うわああ!?」」」

 

爆発音と共にシャトルが激しく揺れる…その原因は…

 

 

「ガハッ…!貴様…!!そんな姿に堕ちても俺が憎い…のか…!!だけどな…こいつらは守りきる…!!」

 

「遊海さん!!」

クリフォートの鎧を半ば砕かれた遊海がシャトルの上で悪魔と睨み合っていた…

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「来るか…!」

 

【ガアアァァァ!!!】

野獣のような咆哮をあげながら悪魔が迫ってくる…その姿は遊海にとって忌々しい姿だった。

 

 

()()()()…お前がどうしてその姿なのかは聞かない…大人しく退いてもらうぞ!!」

遊海はクリフォートの鎧を纏い悪魔…ゲイザー変異体へと突撃する!

 

【ガアア!!】   「だりゃ!!」

 

 

ドガン!!

 

空中で悪魔の爪と遊海の拳がぶつかり激しいエネルギーが渦巻く!

 

 

「キラーナックル!!」

 

【ガア!…■■■■■■■!!!】

遊海の拳を避けた悪魔はカウンターで拳を遊海に叩きつける!

 

「ぐっ…!?(重い…!!17年前の時以上だ!!)カタストロフレーザー!!」

距離を取るために100%の威力の光線を放つ…が

 

【ガウ…!!】

 

「なっ…!?俺のレーザーを喰っ…【ガアアアア!!】ぐああああ!!!」

遊海のレーザーを喰った悪魔は力を倍加させ遊海に跳ね返す、虚を突かれた遊海に紫の光線が直撃し引き上げ途中のシャトルに叩きつけられる!

 

 

「ガハッ…!貴様…!!そんな姿に堕ちても俺が憎い…のか…!!だけどな…こいつらは守りきる…!!」

鎧が砕けながらも遊海は悪魔を睨みつける…

 

【ア"ア"ア"ア"─!!ニクイニクイ憎イ!!貴様ヲコロスコロス殺ロスゥゥ!!】

 

「ちぃ…バーサーカーかよっ…!!」

 

「遊海さん!!」

傷付いた遊海を見て遊星が遊海に呼びかける

 

 

「遊星!しっかり隠れてろ!ハアァァ!!…精霊達よ!俺に力を貸してくれ!究極変身!!」

遊海はその身に精霊の力を集中させる、そして現れるのは精霊アーマーの究極体…!

 

「コンプリートフォーム!!…クインテットバスター!!」

 

【ギィヤ…!?】

五色の光線が悪魔を吹き飛ばす!!

 

「お前との決着は今じゃない…!吹き飛べ!クインテットバスタァァ!!」

 

【オオオ…!シラナミ…ユウミィィ!!!ダークネスカタストロフィィ!!!】

 

遊海の五色の光線と悪魔の暗黒の光線が衝突する…拮抗した光と闇のエネルギーは凝縮され…

 

 

ドッカァァァン

 

 

大爆発を起こし…全てを飲み込んだ…

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

『遊星…目を覚ませ…遊星…』

 

「っ…う…オレは…?なっ!?なんだこの風景は!?」

遊星が気づいた時、そこには地獄のような風景が広がっていた…世界は赤い炎に包まれ、大地には無数の石版となったデュエルモンスターズが散乱し空には不気味な螺旋を描いた城が逆さまに浮いている

 

『遊星…また逢えたな…』

 

「父さん…!どうして…!」

遊星が視線を移すとそこには遊星の父・不動博士が佇んでいた…

 

『遊星…あの島を近づけてはならない、アレは人類を破滅に導く最後のモーメント…遊星、戻るんだ…自分の世界へ…仲間達のもとへ…』

 

「どういう事なんだ…!待ってくれ父さん!」

不動博士の姿が薄れていく…

 

『遊星…お前が悲しみの連鎖を断ち切るんだ…頼むぞ…』

 

「父さん…父さん─!!」

 

遊星の意識は再び闇に包まれた…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

「遊星君達…大丈夫かしら…」

 

「心配してもしょうがないだろう翠…遊海まで付いているのだ、無事に決まっている!」

シティのチーム5D'sのガレージにて翠達は遊星の事を待っていた…しかし、そわそわして落ち着きがない…

 

 

『モーメントエクスプレスへの潜入…正体がバレてしまえばどんな目に遭うか…ああ〜!!髪の毛のセットが上手くいきましぇ〜ん…なんだか嫌な予感が…!』

5D'sと行動を共にしていたイェーガーは髪の毛が決まらずに悩んでいた。

 

「ふん!貴様の髪の毛と遊星達の運命を並べるな!心配ないと言ってるだろう!」

イェーガーの心配を一蹴しながらコーヒーを飲むジャック…しかし

 

「そうだぜイェーガー?あの人がいるなら大丈…あり?ピアスが外れちまった!?」

イェーガーのピアスが外れ…

 

ガシャン

 

「うわ!花瓶が!?」

 

「大丈夫龍亞!?」

掃除をしていた龍亞に突然花瓶が倒れ掛かりビショ濡れになり

 

「あっ…お皿が…!」パリパリ…ピシッ!

翠の拭いていた食器にヒビが入り割れる…

 

「あっ…!携帯が壊れた!?」

さらにはアキの携帯がフリーズした

 

「むむっ…俺には関係な(バシャ!)熱い!!?」

挙げ句の果てにジャックのコーヒーカップの取っ手が外れ、熱湯が股間に降り注ぐ!

 

「遊海さん…大丈夫…ですよね…?」

翠は片付けをしながら言い知れぬ不安に襲われる…その時…

 

 

ブゥゥン──!

 

 

「っ…!なんだコレは!?」

突然、ジャック達の持つシグナーの痣が輝き、赤いバリアが展開される…シグナーが部屋に揃っていたからか共鳴しガレージ全体を包み込む!

 

「い、今のは何事ですか!?赤い光と地震が!?」

買い出しに行っていたミゾグチがガレージに駆け込む

 

「今のは…赤き竜がわたし達を何かから守ってくれたの…?」

 

「い、いったい何が起きたんでしょう??」

シグナー達が状況を把握しかねる中で再び痣が輝く…

 

 

「この感じはなんだ?…遊星と遊海が…戻ってくる…?」

 

「でも何か変だわ…行ってみましょう!!」

ジャック達は痣に導かれるように外へと向かった…

 

 

 

 

 

 

「痣の導きではこの辺りだが…?」

痣に導かれたジャック達はドミノ埠頭へと辿り着いた…。

 

 

「ねぇ…アレなんだろう?太陽が2つ…?」

 

「本当だ…!太陽が2つある!?」

龍亞と龍可が空を指差す…そこには確かに2つの太陽があった、一つは普通の太陽…そしてもう一つは渦巻くように大きくなっていく…!

 

「待て!何か落ちて来るぞ!?」

 

「あれは…あの大きさは大きすぎるわ!ウェン!ウィンダ!!私達を守って!」

落ちてくるモノの大きさを見た翠はウィンダ達を呼び出す!

 

《任せて!ウィンドウォール!》

 

《私も!大いなる風よ!我らを護れ!風王結界!!》

2体の精霊が結界を張った刹那、空から巨大な鉄の塊…要塞が落下した!

 

ドッパーン!!!

 

「「「きゃああ〜!?」」」

 

「『「うわぁぁ!?」』」

 

要塞が落下した瞬間、周囲の水が津波となって押し寄せ埠頭と反対側の旧サテライトを蹂躙していくが…シグナー達は風の結界によって守られた…。

 

 

 

「な、なんだってんだよ!?いったい何が…この機械は…!」

 

「そんな…!アヤカちゃん!?いったいどうしたの!?」

その姿を見た翠が悲鳴をあげる…落下してきたのは遊海の相棒であるアポクリフォート・キラーだったのだ…。

 

《翠…さん…早くゆ 星達 マスター を…》

 

「えっ…!あれってロケット!?」

 

「任せて!お願い『ブラックローズドラゴン』!」

《ギュリリリ!》

アキは精霊の力を使いブラックローズを召喚…水面に浮いていたロケットを岸に引き寄せる…

 

 

「っ…!遊星!ブルーノ!シェリー!いるのか!!」

ジャックがシャトルに呼びかける…

 

パシュー…

 

「うっ…イタタ…ジャック…みんな…?戻ってこれたのか…!」

 

「「「遊星!!」」」

開いたハッチから顔を出した遊星にシグナー達は駆け寄った…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

「オレは…戻って来られたのか…!」

遊星は気づけば青空の下にいた…遊星は今まで起きた事を振り返る、モーメントエクスプレスに潜入し、正体がバレてシャトルによって異次元に送られ…ピンチやってきた遊海に助けられたが、突如として現れた異形の悪魔に襲われ…父親に会った、それが遊星の覚えている事だった。

 

 

「遊星殿!シェリーお嬢様は!?」

 

「そうだ…ブルーノ!シェリー!無事か!?」

ミゾグチの言葉に遊星は船内に呼びかける

 

「う〜ん…ボクは大丈夫だよ〜…あれっ?!シェリーは!?」

 

「そんな…まさかさっきの爆発で投げ出されたのか!?」

遊星はブルーノの無事を確認したが…シェリーを見つける事ができなかった…

 

 

 

「遊星!いったい何があったのだ!お前達はモーメント・エクスプレスに行ったはずだろう!何故空から落ちてくるのだ!?」

 

「話せば長くなる…簡潔に言えばモーメントエクスプレスはイリアステルの関係者だった、オレ達は見つかって異次元に放り出されて……そうだ!遊海…さん…遊海さんは!?」

遊星は周りを見渡す…そこに遊海の姿は見えなかった。

 

 

《主殿はこちらです…!》ザパ…

 

「トフェニさん!ああ…遊海さん!!」

 

海からトフェニがヨロヨロと飛び上がる…その腕には両腕を失い全身に傷を負った遊海が抱き抱えられていた…。

 

「遊海さん…!!そんな…どうして!?誰がこんな事…!」

 

 

「ああ…!遊海さん…!」

 

「そんな…!」

 

「見るな龍亞、龍可…見ちゃなんねぇ…」ギュ…

クロウは兄妹を抱き寄せる…

 

《主殿は…遊星殿を助けに異次元に侵入し、その先で…正体不明の魔物に襲われたのです…主殿は遊星達を守る為に必死に戦い…巨大なエネルギーのぶつかり合いで相討ちとなったのです、その余波で異次元から投げ出され、シェリー殿は…異次元に取り残されたと思われます…》

トフェニは無念そうに異次元での出来事を伝えた。

 

 

「遊海さん…すまない…!オレのせいでまた怪我を…!」

遊星は拳を握り締める…遊海が戦う中で遊星は何もできなかった…それが悔しいのだ。

 

 

「気に…する、な遊星…俺の、力不足…だ…」

 

「遊海さん…!意識が!」

遊海は辛うじて意識を取り戻すが…その瞳は光を映していなかった。

 

「謝るのは、俺だ…シェリーを、守れなか…た…」

 

「遊海殿…!」

ミゾグチは遊海の様子を見て涙を流す…

 

 

「俺の、事はいい…空を見ろ……あれ、がお前達の、倒すべき…ゴフッ…ゴボッ…!」

 

「ああ…!?遊海さんしっかりして!?」

血を吐き出す遊海に慌てて翠は回復魔法を使う

 

「空…そんな、あれは…!」

遊海の言葉に空を見上げる遊星…その先には夢と現実の狭間で見た螺旋の城が浮いていた…!

 

 

「な、なんだ!あの不気味な島は!?」

 

「逆さまに浮いてやがる!?」

遊星につられて空を見たシグナー達は驚きの声をあげる

 

 

「えっ?何かあるの?」

 

『何も…見えませんが…?』

対して痣を持たない龍亞とイェーガーにはなにも見えていない…

 

「もしかして…赤き龍の痣があれを見せているの…?」

 

「そんな〜…なんでおれには痣がないんだよ〜!?」

アキの言葉に龍亞は項垂れる…

 

「あれが…人類を破滅に導くモーメントだっていうのか…!」

遊星は父親に言われた言葉を思い出す…それを確かめる為に遊星達は再びモーメントエクスプレスへと向かった…。

 

 

 

 

「(くそ…ゲイザー…め、お前は必ず…俺が…止める…止めなくちゃ…ならねぇ……)」

薄れゆく意識の中、遊海は決意を改める…感じ取ったのだ、ゲイザーの強い憎悪…そして悲しみを…

 

 

「(この世界は…俺が…護る…!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…!モーメントエクスプレスが…!?」

 

「消えてる!?建物も…人も!確かにさっきまであったのに!?」

モーメントエクスプレス…跡地を訪れた遊星達、そこはなにもない荒野に様変わりしていた…。

 

 

「そんな馬鹿な!建物が一瞬で消えたというのか!?」

 

「見ろよ!地図アプリにもネットにも『モーメントエクスプレス』が出ねぇ!」

クロウがネットで調べるがモーメントエクスプレスの存在自体が消えてしまっていた…それはイリアステルが過去改変を行なった証だった。

 

 

 

 

「前にもこんな事があった…アカデミアにルチアーノが編入した時やパラドックスの過去改変があった時も人々からその記憶が消えていた…これがイリアステルの力だっていうのか!」

ガレージに戻った遊星達は頭を抱える…そこに…

 

『み、皆さん!これを見てください!大変な事になっているのです!!テ、テレビに三長官が!?』

 

「「「なんだって!?」」」

イェーガーの言葉に遊星達は慌ててテレビを点ける…そこにはWRGP優勝候補筆頭チーム、『チーム・ニューワールド』として脚光を浴びる三皇帝の姿があった。

 

 

「堂々と姿を現しやがった…!」

 

「まさか…!ブルーノ!対戦表を出してくれ!!」

 

「わかった!…そんな…対戦表が変わってる!『チーム・シェリー』が消えちゃってるよ!!」

 

「そんな…!これがイリアステルの力だっていうのか…!?」

ブルーノの言葉にクロウは驚愕する…

 

「もしかしてさっきの赤いバリアがおれ達を守ってくれたのかも…」

 

「…そういう事だろうな、これがイリアステルか…!!」

遊星はイリアステルの力を前に立ち向かう敵の大きさを改めて理解する、遊星達が挑むのは…人類の未来そのものなのである。

 

 

「だが…イリアステルはこれ程の力を持ちながら何故GPに出場する…?過去改変で何もかもを改変できるなら俺達を消していてもいいはずだ」

 

「可能性は2つある…一つはオレ達が赤き竜に守られているから…そしてもう一つは…オレ達に何かの役割があるから…という事だ、そうでなければわざわざ奴らは表舞台には出てこないだろう…!」

ジャックの言葉を聞いて遊星は冷静に分析する…

 

「こうなったらGPで勝ち抜いて奴らに直接聞くしかないだろう…オレ達は絶対にこの街を守るんだ!」

 

「ああ!奴らが何を考えていようと…全て捻じ伏せてやる!」

 

「この街を守るのはオレ達だ!」

遊星達は決意を固める…必ずイリアステルを倒し、この街を守る事を…WRGP本戦の開幕はそこまで迫っていた…。

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

「うっ…ここは…?」

シェリーは一面に白が広がる不思議な空間で目を覚ました…

 

 

「私は…爆発で異次元に投げ出されて…ここは死後の世界なの…?」

 

【いいえ、ここはまだ現世ですよ…シェリー・ルブラン】

 

「えっ…?お父…様?病院にいるはずじゃ…?」

シェリーの前に人影が現れる、それは未だに病院で眠り続けるルブラン博士…シェリーの父親だった。

 

 

【残念ながら私はドクタールブランではありません…貴女の望む姿が私に写し出されているのです…】

 

「貴方は…何者なの?」

シェリーは父親に似た人物に問い掛ける…

 

【私はこの世界の「真実を知る者」、真実を知りたいのであれば教えてもいい…何故、貴女の家族は襲われたのか…何故、貴女は彼に救われたのか…そして…世界の全てを…しかし、それを知れば貴女の運命は大きく変わるでしょう…】

 

「かまわない…教えて…!いったい何が起きているのかを…!」

 

【いいでしょう…時間はたっぷりとあります、教えましょう…この世界の未来を…】

シェリーは真実を知る者…Z-ONEの手をとった、そして彼女は知る事になる…世界に迫った残酷な運命を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐ…うぅ…派手に殺られたな…まさかこの場所に奴が来るとは…だが、おかげで思考がはっきりした…あとは時を待てばいい…首を洗って待っていろ…白波遊海…』

 

 

四肢を失い、傷だらけになり次元の狭間を漂う男は目を閉じる…全てはその目的を果たす為に…。

しかし彼は気づかなかった、膨大なエネルギーの激突により次元の境界が揺らぎ、異物が紛れ込んだ事に…

 

 

 

 

 

 

 

『…ここは何処だ…?融合次元ではないな…遊矢はいったい何処にいるのだ…?』

 

あり得ざる来訪者がネオドミノシティに現れた…。



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幕間 あり得ざる来訪者─異世界の荒ぶる者─

こんにちは!S,Kです!

今回はリクエストアンケートからのお話です!それでは、最新話をお楽しみください!




『シティの皆様にお知らせします!ネオ童実野シティ治安維持法第二十条に則り副長官であったワタシ、イェーガーが治安維持局長官に就任します!ワタシはシティのセキュリティを見直し、必ずや安全なWRGPを…』

 

 

シティにイェーガーの声が響き渡る…モーメント・エクスプレス潜入から2日後、歴史改変により空席となった治安維持局長官にイェーガーが就任した。

イェーガーはイリアステルと戦うチーム5D'sを後押しする為に危険を承知で表舞台へと戻ったのだ…しかし、WRGPの開催はさらに1週間…本来の日程から1ヶ月遅れる事となった、その理由は2日前にシティを襲った津波のせいである…原因は無論アヤカの墜落なのだが、世間的には「隕石の空中爆発」という事になっている…そして元凶?である遊海は…

 

 

 

 

 

 

 

「っ…う…!腕が無いのは流石に不便…だな、痒いところを掻く事もできやしない…」

 

《主殿…それ以前に身動きもとれないではないですか…》

 

「それも…そうなんだけど、な…コフッ…」

遊海は窓の外を眺める、悪魔…ゲイザー変異体との衝突で遊海の両腕は消し飛び、足は複雑骨折…さらに肋骨や背骨も骨折していた、回復魔法こそ使っているがコンプリートフォームで体力を使いきった遊海の回復は進んでいない。

また、爆発に巻き込まれ墜落したアヤカはDT世界に帰還し修理中である。

 

 

「俺が動けない間に…何も起きなければいいけど…」

 

《ユウミ…それは「ふらぐ」というものでは?》

 

「…手厳しいな、フレア…」

 

 

 

コンコンコン

 

「入るぞ遊海…見舞いに来た」

 

「おお、ジャック…よく来たな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

「イェーガー…頑張っているようだな…」

 

「うん、なんだかんだ…やる時はやる人だったんだね彼は…」

テレビを見ながら遊星はデッキの調整をしていた…クロウはマーサハウスへ、ジャックは…遊海のお見舞いへ向かったようだ、鉢植えを持っていたのが気になるが…大丈夫だろう。

 

「WRGPまで1週間…イリアステルの目的は結局わからないが…あの城が関係している事は確かだ、オレ達はイリアステルに勝ってこの街を守るんだ…!」

遊星はガレージの窓から見える謎の螺旋城を見る…父の言葉の意味ははっきりとしないが必ずイリアステルの野望を食い止める…その決意は変わらなかった。

 

 

ガチャ!

 

「ゆ、遊星!大変だ!大変なんだよ!!」

 

「えっ…ラリー!どうしたんだ!?」

ガレージに駆け込んできたのは遊星の旧サテライトの仲間であり、弟分のニット帽を被った少年・ラリーだった、彼は現在マーサハウスに身を寄せている…。

 

 

「大変なんだ!マーサハウスでクロウとジャックが喧嘩してるんだよ〜!!」

 

「なんだって?どういう事だ?」

 

「いいから早く来て!ジャックもなんだか様子が変なんだ!!」

ラリーの剣幕に遊星は急いでデッキを纏める

 

「すまないブルーノ!留守を頼む!!」

 

「うん!気をつけて!」

遊星はラリーと共にガレージを飛び出して行った…。

 

 

 

 

 

 

 

「今帰ったぞ!遊海はしばらくダメそうだな…よくもあの怪我で笑っていられるものだ…」

 

「えっ!?ジャック!?マーサハウスに行ったんじゃないの!?」

 

「なんだと?俺は遊海の見舞いに行っていたのだ!マーサハウスには行っていない!」

 

「それじゃあ…まさかまた偽物!?」

 

「なんだと?どういう事だ??」

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

Sideクロウ

 

「クロウ兄ちゃん!おかえりなさい!!」

 

「おう!今帰ったぞお前達!ほら、新しいカードのお土産だ!」

 

「「わ〜い!ありがとう!!」」

 

クロウは数日振りにマーサハウスを訪れていた、彼の周りにはたくさんの子供達が集まっている

 

 

「クロウ兄ちゃん!今日は翠お姉さんのお菓子はないの〜?」

 

「っ!?…ああ、悪いな…翠も忙しいみたいだからな…また今度作ってもらおうな…」

そう言いながらクロウは子供の頭を撫でる…翠は遊海の看病でそれどころではないのだ。

 

 

「いつも悪いねクロウ、大会も近いっていうのに…」

 

「気にしないでくれよマーサ!オレが好きで世話してるんだからよ!」

子供達の世話をしているクロウに旧サテライトの肝っ玉母さんであるマーサが話しかける。

 

 

「そういえば一昨日の津波は大丈夫だったか?」

 

「ああ!いきなり波が来たからビックリしたけど大丈夫だよ!…まぁ海辺の人達は大変みたいだけどねぇ…」

 

「そっか…(あんなデカイ要塞が落ちたら被害もあるよなぁ…)」

 

 

「そういえば…妙な噂を聞いたんだけどね」

 

「噂?また幽霊屋敷か?」

 

「違うんだよ…ジャックが人を探してるらしいのさ…」

 

「ジャックが?あいつが人探しなんてするか??」

マーサの言葉にクロウは首を傾げる、ジャックは基本的に人探しなどの面倒事はしない主義だからだ。

 

 

「なんでもサカキ・ユーヤって子を探してるらしいんだ…それから『融合を使うアカデミアは何処にいる?』って聞いてまわってるらしいんだよ…」

 

「サカキユーヤ…?そんな奴知らないけどなぁ…それにアカデミア?融合を使うデュエルアカデミアの奴を探してるのか?意味がわからねぇ…まぁ、いつもの事だけどよ…」

クロウは頭を掻く…ジャックはたまに変な事をするが、何時にも増して意味がわからなかった。 

 

 

「それから…アンタの事も探してるみたいなんだよ」

 

「ハァ?!いつも一緒にいるオレを探してどうするんだよアイツ!?頭でも打ったのか?というか今朝も一緒にいたぞオレ!?」

 

「だから奇妙だって言うんだよ…何なんだろうねホント…」

2人揃って頭を捻るクロウとマーサ…そこに…

 

 

 

ブルル…ギュイーン!!

 

 

「ん?今のエンジン音は…ホイール・オブ・フォーチュンの…ジャックが来たのか?」

既に聞き慣れたエンジン音がマーサハウスに停車する、それは紛れもなくジャックの愛機であるDホイールのものだった。

 

 

「お〜いジャック!どうしたんだよ?遊海の所に見舞いに行ったんじゃ…」

 

『貴様…ようやく見つけたぞ!クロウ・ホーガン!何をこんな所で油を売っている!!』

 

「へっ?」

ジャックの剣幕にクロウは唖然とする…

 

『貴様、榊遊矢と「ランサーズ」はどうした!お前は奴らと一緒に融合次元に乗り込んだはずだろう!!ここは「スタンダード次元」ではないのか!』

 

「はっ…?ジャック、お前何言ってるんだよ!ふざけるのもいい加減にしろよ!」

 

『ふざけてなどいない!お前はアマンダやタナー達の思いを背負って融合次元へと向かったはずだ!!ふざけているのは貴様だ!』

 

「なんだと〜!!」

 

『文句あるのか!!』

 

火花を散らすクロウとジャック…それはいつもの光景だが、何かが違っていた。

 

 

「これはただ事じゃないね…!ラリー!急いで遊星を呼んで来るんだ!早く!!」

 

『わ、わかった!!』

マーサに頼まれたラリーは急いで遊星を呼びに行ったのだった。

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

キキーッ!

 

 

「着いたが…ジャック!クロウ!お前達何をやっているんだ!?」

ラリーによってマーサハウスを訪れた遊星…彼が目にしたのは互いの襟元を掴み、睨み合うクロウとジャックの姿だった。

 

 

『貴様!遊矢の事はおろか子供達の事まで知らんだと!?見損なったぞ!』

 

「だ・か・ら!オレはユーヤなんて知らねぇしランサーズも知らねぇ!夢からとっとと覚めやがれジャック!!」

 

「やめるんだ2人共!WRGPが迫っているのに喧嘩をしている場合じゃないだろう!」

慌てて遊星が2人を引き剥がす!

 

 

「遊星!ジャックの奴が変なんだ!シンクロ次元だのランサーズだの…意味がわからねぇ!」

 

『邪魔をするな!オレはコイツの性根を叩き直さなければならん!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!』  

 

「「えっ?」」

ジャックの思わぬ言葉に遊星とクロウはフリーズする

 

 

「ジャック!何を言ってんだよ!ふざけるのもいい加減にしろ!!遊星はお前の一番のライバルでチーム5D'sの仲間だろ!?」

 

『チーム5D's?何を言っている?オレはデュエルキングのジャック・アトラスだ!このオレの認めたライバルたる男は榊遊矢ただ一人だ!』

 

「貴様、イリアステルのデュエルロイド…ジャックの偽物か!」

あまりに違うジャックの態度に遊星は以前の偽ジャック騒動を思い出す。

 

『イリアステル?知らんな…読めたぞ!貴様、融合次元の手先だな…!クロウを洗脳するとは言語道断!このオレの怒りを受けてみろ!!』

ジャックはDホイールに跨り、臨戦態勢をとる!

 

「いいだろう…!デュエルだ!偽ジャック!!」

遊星もDホイールに乗り込みジャック対遊星のライディングデュエルが始まる…!

 

 

 

 

 

 

 

【ライディングデュエルが開始されます、ライディングデュエルが開始されます、一般車両は退避してください…】

 

放送が流れデュエルレーンが構築されていく…遊星とジャックはデュエルレーンに乗り込む!

 

 

 

「フィールド魔法『スピード・ワールド2』発動!」

 

『フィールド魔法『クロスオーバー・アクセル』発動!!』

 

「『なに!?』」

互いに発動したフィールド魔法が違う事に遊星とジャックは驚く

 

「(『クロスオーバー・アクセル』?何なんだそのフィールド魔法は!?)」

 

『(「スピードワールド2」だと?「スピードワールド・ネオ」の前にあったというライディング専用のフィールド魔法…何故融合次元の奴が持っている?…だが今は関係ない!)』

 

 

 

 

 

 

 

「『ライディング・デュエル!アクセラレーション!!』」

 

ジャックLP4000

遊星LP4000 SP0

 

 

変則ルール発動中

 

遊星側

スピードワールド2常時発動

アクションマジック発動可

 

ジャック側

クロスオーバー・アクセル常時発動

魔法カード・アクションマジック発動可

 

 

 

 

 

 

 

『オレのターン!』

『「レッド・スプリンター」を召喚!』

炎を纏った細身の悪魔が現れる ATK1700

 

『「レッド・スプリンター」の効果発動!自分フィールドに他のモンスターが存在しない時!手札のチューナーモンスター「レッドリゾネーター」を特殊召喚できる!』

背中に炎を背負った音叉の悪魔が現れる ATK600

 

『オレはレベル4の「レッドリゾネーター」にレベル2の「レッドリゾネーター」をチューニング!』

 

4+2=6

 

『赤き魂、ここに1つとなる!王者の雄叫びに震撼せよ!シンクロ召喚!現れろ!レベル6「レッド・ワイバーン」!』

紅蓮の炎を纏うワイバーンが現れる ATK2400

 

『カードを2枚伏せてターンエンド!』

ジャックLP4000

レッドワイバーン 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「見たことのないモンスターだ…!」

 

『フン、どうした融合次元の手先よ!怖気づいたか!』

 

「恐ろしくなんてない!覚悟しろ!偽ジャック!」

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」SP1→2

「手札の『ボルト・ヘッジホッグ』を墓地に送り『クイック・シンクロン』を特殊召喚!」

ガンマン風のロボットが現れる ATK700

 

「そして『ジャンクシンクロン』を召喚!」

遊星が信頼を置くオレンジ色のロボットが現れる ATK1300

 

「『ジャンクシンクロン』の効果発動!墓地の『ボルトヘッジホッグ』を特殊召喚!さらに!墓地のモンスターの特殊召喚に成功した事で手札の『ドッペルウォリアー』を特殊召喚できる!」

ネジを生やしたハリネズミと銃を持った黒い兵士が現れる ATK800  ATK800

 

「オレはレベル2の『ドッペルウォリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

2+3=5

 

「集いし絆が新たな力を呼び起こす!光さす道となれ!シンクロ召喚!来い!『ジャンク・ウォリアー』!!」

遊星の切り込み隊長である青い戦士が現れる ATK2300

 

 

『フン、融合次元がシンクロを使うか…』

 

「『ドッペルウォリアー』をシンクロ素材にした時!ドッペルトークン2体を攻撃表示で特殊召喚できる!」

小さな兵士が現れる ATK400  ATK400

 

「さらに『ジャンクウォリアー』の効果発動!自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分、自身の攻撃力をアップする!パワー・オブ・フェローズ!!」

仲間達から力を受け取った戦士の力が増す! ATK2300→3900

 

 

『ほう…!やるではないか…』

 

「まだだ!オレはレベル1の『ドッペルトークン』2体とレベル5の『クイックシンクロン』をチューニング!」

 

1+1+5=7

 

「集いし思いがここに新たな力となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!燃え上がれ!『ニトロ・ウォリアー』!」

爆弾の名前を持つ緑色の戦士が現れる ATK2800

 

 

『1ターンで2回のシンクロ召喚か…やるではないか、だが…甘い!「レッドワイバーン」の効果発動!相手フィールドに自身より攻撃力の高いモンスターがいる時!その攻撃力の高いモンスター1体を破壊する!燃え尽きろ!「ジャンクウォリアー」!』

 

「なに!?ぐあっ!!」

ワイバーンの火炎弾がジャンクウォリアーを吹き飛ばす!

 

「(今の攻撃は実体化していた…!間違いない…イリアステルが関係してる…!!)だが…バトルだ!『ニトロウォリアー』で『レッドワイバーン』を攻撃!ダイナマイトナックル!!」

強力な拳がワイバーンを叩き潰す!

 

『フン…!』

ジャックLP4000→3600

 

 

「さらに『ボルトヘッジホッグ』でダイレクトアタック!」

 

『させん!罠カード「リジェクト・リボーン」を発動!バトルフェイズを終了する!』

ボルトヘッジホッグの攻撃をバリアが弾く!

 

『さらに!墓地の「レッドワイバーン」とチューナーモンスター「レッドリゾネーター」を効果を無効にして特殊召喚する!』

再びワイバーンと悪魔が現れる ATK2400  ATK600

 

「くっ…!カードを1枚伏せてターンエンド!」

遊星LP4000

ニトロウォリアー ボルトヘッジホッグ 伏せ1 手札1

 

 

 

『やるではないか遊星とやら…ならばキングの力を見せてやろう!』

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『オレはレベル6の「レッドワイバーン」にレベル2の「レッドリゾネーター」をチューニング!』

 

6+2=8

 

『王者の咆哮…今天地を揺るがす!唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいい!シンクロ召喚!レベル8!荒ぶる魂!「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト」!!』

右角が折れ、右腕に古傷を持った悪魔竜が現れる ATK3000

 

 

「なっ…!?『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!?だが、何なんだあの姿は…!」

遊星は現れた傷だらけのレッドデーモンを前に驚愕する…!

 

『「スカーライト」の効果発動!自身の攻撃力以下の相手の特殊召喚されたモンスターを全て破壊し!1体につき500のダメージを与える!アブソリュート・パワー・フレイム!!』

《グオオン!!》ダン!!

 

スカーライトが拳を大地に叩きつける…大地からは爆炎が噴き出し遊星のフィールドを蹂躙する!

 

「うわああああ!!?」

 

遊星LP4000→3000

 

『バトルだ!「スカーライト」でダイレクトアタック!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!』

灼熱の炎が遊星に襲いかかる!

 

「断ち切らせはしない!リバース罠『くず鉄のかかし』発動!攻撃を無効にする!さらにこのカードは再びセットされる!」

廃材のかかしが炎を受け止める!

 

『フッ…!やるな、オレはターンエンドだ!』

ジャックLP3600

スカーライト 伏せ1 手札3

 

 

 

「このジャック…強い…!なんて洗練されたプレイングなんだ…!」

 

『我が一撃を躱すとはな…!面白い、認めてやろう!貴様は強い!しかし、オレはそれをさらに上回る!』

 

「(偽ジャックを倒すには…オレの限界を超えるしかない!)」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」SP2→4

「『Sp-エンジェル・バトン』を発動!デッキからカードを2枚ドローし一枚捨てる!」

捨てたカード

スターダスト・シャオロン

 

『スピードスペルだと?』

 

「そして、自分フィールドにモンスターが存在しない時!『アンノウン・シンクロン』は特殊召喚できる!」

単眼の小さなロボットが現れる ATK0

 

「そして『アンノウンシンクロン』をリリースして『サルベージウォリアー』をアドバンス召喚!」

2本の鎖を持った戦士が現れる ATK1900

 

「『サルベージウォリアー』の効果発動!墓地の『ジャンクシンクロン』を特殊召喚!」

再びオレンジ色のロボットが現れる ATK1300

 

「オレはレベル5の『サルベージウォリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

5+3=8

 

「集いし願いが新たに輝く星となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ!『スターダスト・ドラゴン』

!」

遊星のエースである星屑の竜が飛翔する! ATK2500

 

 

『ふつくしい…!だが、攻撃力は「スカーライト」には及ばん!』

 

「ああ、だからオレは希望を繋ぐ!『スターダスト』がシンクロ召喚に成功した事で墓地の『スターダストシャオロン』を特殊召喚!」

スターダストに似た東洋の龍が現れる DEF0

 

 

「オレはこれでターンエンド!」

遊星LP3000 SP4

スターダスト シャオロン 伏せ1(かかし)手札0

 

 

 

 

『フン、希望か…いいだろう!その希望諸共へし折ってくれる!』

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『「チェーンリゾネーター」を召喚!』

背中にチェーンを背負った悪魔が現れる ATK100

 

『「チェーンリゾネーター」の効果発動!フィールドにシンクロモンスターがいる時にこのカードが召喚に成功した事でデッキから「ダブルリゾネーター」を特殊召喚!』

2つの頭をもつ悪魔が現れる DEF0

 

「チューナーモンスターが2体!?まさか!!」

 

『オレはレベル8の「レッドデーモンズドラゴン・スカーライト」にレベル1の「チェーンリゾネーター」とレベル1の「ダブルリゾネーター」をダブルチューニング!!』

2体の悪魔が炎の輪に変わり、スカーライトを包み込む!

 

8+1+1=10

 

王者と悪魔!今ここに交わる…赤き竜の魂に触れ、天地創造の雄たけびをあげよ!シンクロ召喚!現れろ!レベル10!「レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント」!

傷を癒やし力を増した「暴君」の名を持つ紅蓮の竜が現れる! ATK3500

 

 

「痣が…!このドラゴンから赤き竜の力を感じる…!!この力は偽物じゃない!!」

 

『当然だ!オレの力はオレの手によって掴んだもの!断じて偽物などではない!!「タイラント」の効果発動!相手フィールドのカードを全て破壊する!アブソリュート・パワー・インフェルノ!!』

 

「やらせはしない!『スターダスト』の効果発動!自身をリリースする事で破壊効果の発動を無効にし破壊する!ヴィクテム・サンクチュアリ!!」

スターダストがその身を粒子に変えて消え去る…そしてタイラントの放った紅蓮の炎が自身に襲いかかる!

 

『させん!リバース罠「レッド・クリスタル」を発動!このターン自分の「レッド」モンスターは戦闘・効果では破壊されない!』

タイラントの前に現れた赤い結晶が紅蓮の炎を防ぐ!

 

「防がれた…!」

 

『いい一撃だったが…オレには届かん!バトルだ!「タイラント」で「スターダストシャオロン」を攻撃!獄炎のクリムゾン・ヘルタイド!!』

威力を増した紅蓮の息吹がシャオロンを飲み込む!

 

「『スターダストシャオロン』は1ターンに1度戦闘では破壊されない!」

 

『やるな…認めてやろう、お前は強い!オレはターンエンドだ!』

 

「エンドフェイズにリリースされた『スターダストドラゴン』は戻って来る!」

再び白きドラゴンが飛翔する ATK2500

 

ジャックLP3600

タイラント 手札3

 

 

 

 

「(このジャックは偽物じゃない!この昂ぶりは本物ジャックと同じだ…!なら奴は何者なんだ?)」

 

『(遊星と言ったか…この強さは融合次元のアカデミアの兵士とは違う…何より、この状況で奴は()()()()()()、認めてやろう…お前は遊矢と同等の強者であると!!)』

 

デュエルを通して2人のデュエリストは心を通わせる…そしてお互いに理解した…「奴は悪い奴ではない」と

 

 

「ジャック!お前はいったい何者なんだ!」

 

『フン…ならば名乗ってやろう!我が名はジャック・アトラス!シティのデュエリストの頂点!デュエルキング…だった者だ!オレは今、子供達の願いを背負い、次元征服を企む融合次元との戦いに向かう所だったのだ!…オレも問おう!お前は何者だ!』

 

「オレは不動遊星!仲間達と共ネオドミノシティ消滅を企む秘密結社・イリアステルを倒す為に戦っている!今の目標はWRGPを勝ち抜く事だ!」

 

『そうか…どうやらお互いに早とちりしていたらしいな!どうする?このデュエルはお互いに引くか?』

 

「いや…オレはお前に勝つ!勝負だ!ジャック・アトラス!!」

遊星は改めて異世界のジャックに戦線布告する!

 

『いいだろう!かかってくるがいい!不動遊星!お前の力…全て受け止めてやる!』

 

「いくぞジャック!オレ達の絆の力を受けてみろ!!」

遊星の背中に痣が集う!!

 

 

 

 

 

「オレのターン!…ドロォォ!!」カンコーン‼

「現れろ!『救世竜セイヴァー・ドラゴン』!!」

小さなピンク色のドラゴンが現れる ATK0

 

「そしてオレはレベル8の『スターダストドラゴン』とレベル1の『スターダストシャオロン』にレベル1の『セイヴァードラゴン』をチューニング!!」

セイヴァードラゴンが巨大化し2体のモンスターを包み込む!

 

8+1+1=10

 

集いし星の輝きが、新たな奇跡を照らし出す!光さす道となれ!シンクロ召喚!光来せよ!『セイヴァー・スター・ドラゴン』!!

現れたのは赤き竜の力を得て救世をもたらす星の竜…セイヴァースタードラゴン!! ATK3800

 

 

『これがお前の本気か!遊星!!』

 

「そうだ!『セイヴァースター』の効果発動!相手モンスター1体の効果を無効にする!サブリメーション・ドレイン!」

セイヴァースターがタイラントの力を吸収しタイラントは脱力する

 

『むっ!?』

 

「そして『セイヴァースター』はこの効果で無効にした相手モンスターの効果を発動できる!アブソリュート・パワー・インフェルノ!!」

 

『なんだと!?』

セイヴァースターから放たれた紅蓮の炎がジャックの場を燃やし尽くす!

 

 

「バトルだ!『セイヴァースター』でダイレクトアタック!シューティング・ブラスター・ソニック!!」

神速の突進がジャックのライフを削りきった…。

 

『見事っ…!!』

 

ジャックLP0

 

遊星WIN!

 

 

 

 

 

 

『いいデュエルだった、不動遊星』

 

「それはオレのセリフだ、楽しいデュエルだったよジャック・アトラス」

デュエルを終えた遊星とジャックは固く握手を交わした…

 

 

「お〜い!遊星!大丈夫か〜!」 

 

「遊星!っな!?俺がもう1人いるだと!?」

 

『なに…!?これはどういう事だ?』

デュエルが終わりクロウ、そしてジャックが遊星に追いつくが…鉢合わせしたジャックは互いに顔を見合わせている…。

 

 

「こいつが俺の偽者か?デュエルはどうなった!」

 

『フン…オレは偽者ではない!どうやらオレは目的地とは別の次元…いや、世界に迷いこんだらしいな…』

 

「いったいどういう事なんだ…?」

 

「それはオレから話そう、少なくともこのジャックは悪い奴じゃない」

遊星は事態を飲み込めていないジャックとクロウに説明を始めた…。

 

 

 

 

 

 

「へぇ…世界にゃ似た顔が3人か4人いるとは言うが…まさか異世界にオレとジャックがいるなんてなぁ…案外もう1人位いるんじゃないか?」

 

「これ以上増えてたまるか!ジャック・アトラスは1人で充分だ!」

 

『違いない、世界にキングは1人で充分だ』

遊星に説明を受けたクロウとジャックは異世界から訪れたジャックの事情を聞いて一先ず納得する

 

 

「それで…ジャック」

 

「『なんだ?』」

 

「やっぱりそうなるよな…」

遊星の呼びかけに2人のジャックが反応する

 

 

「なら…『スカーライト』のジャック、元の世界に戻るか目的地に行く宛はあるのか?」

遊星は持っているレッドデーモンの種類で呼び分ける事にしたようだ。

 

『うむ…実はランサーズのリーダーから「ディメンション・ムーバー」という移動用のカードを渡されているのだが…それが反応しないのだ』

 

「『ディメンション・ムーバー』か…オレにも仕組みはわからないな…」

遊星は渡されたカードを検めるが…天才の遊星と言えど異世界の技術は理解できなかった。

 

 

「しょうがない…遊海さんを頼ろう、あの人なら何か手がかりを知っているかもしれない…」

 

『ユウミ?そいつならばオレを元の世界に戻せるのか?』

 

「可能性はある…だが…」

 

『だが…どうしたのだ?』

 

「…大怪我をして入院中なんだ…」

 

 

  

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

「…まじか」

 

「マジです遊海さん…どうにかならないでしょうか?」

入院している俺のもとを訪れたのは遊星、ジャック、クロウに異世界…アークファイブ次元のジャックだった、なんで彼がこの世界に…?

 

『貴方がこの世界の「決闘王」か…すまないがまったくそうは見えんな…』

ジャックはそう言葉を漏らすが無理もない…彼の目の前にいるのは両腕を失った男なのだから…

 

「悪いな、少し面倒くさい相手と戦ってね…さて、話を整理したいんだが…シンクロ次元から次元移動する時に何か変な事は無かったか?」

 

『変な事…次元移動は初めてだったが…しいて言うなら途中で乱気流のようなものに巻き込まれたな、そして気づけばサテライト?の路地に投げ出されていたのだ…』

 

「あ…!すまん、それ完全に俺のせいだ…」

 

「ま、まさか…あの時、ワームホールでの爆発で次元が歪んで…」

 

「ああ、偶々次元の狭間にいたジャックを巻き込んでしまったんだろう…すまなかった」

遊海は頭を下げる…

 

『次元を歪める程の戦いとは…いったいお前は何者なんだ…?』

 

「俺は…ちょっと強い決闘者さ、さて…オーソドックスだけど帰れる可能性のある方法を教えよう、まぁダメなら別の方法を考えるさ」

そうして俺はジャックが融合次元に行く方法を提示した。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

『それで…ここで「ディメンション・ムーバー」を発動すれば戻れるのか?』

 

「ああ、遊海さん曰く、この場所の次元の歪みならば戻れる可能性があるんだそうだ…ダメだったらジャックが辿り着いた路地でも試してみてほしいと言っていた」

 

遊星達が訪れたのは先日にアヤカの墜落したドミノ埠頭だった…巨大なモノが異次元から落ちたのなら歪みが大きくなり元の世界に通じやすくなると遊海は思ったのだ。

 

 

『ならば…いくぞ!魔法カード「ディメンション・ムーバー」発動!』

 

《DimensionMover…Active!》

 

ブゥーン…!

 

ネオドミノの海に向かってワームホールが開く…!

 

『「ディメンションムーバー」が起動した…!これで遊矢の下に行く事ができる!感謝するぞ遊星!』

 

「よかったな!ジャック!…そっちの戦いも厳しいかもしれないが…健闘を祈る!」

 

『うむ!…遊星、そしてこの世界のクロウにジャック・アトラスよ!もう会う事はないだろうが…お前達も困難を乗り越えてみせろ!オレも元の世界で健闘を祈る!…さらばだ!!』

 

ブルル…ギュイーン!  バシュン!!

 

加速した異世界のジャック・アトラスはワームホールの彼方へと消えていった…。

 

 

 

「行っちまったな…正直、あっちのジャックの方が強かったんじゃないか?」

 

「何を言うクロウ!俺はバーニング・ソウルを会得し、最強の力を手に入れたのだ!あの俺には負けん!!」

 

「ジャック…残念だが『スカーライト』のジャックもダブルチューニングを使ってきたぞ?」

 

「なんだとぉ!?おのれ!戻ってこい!異世界の俺!!俺と決着をつけろぉぉぉ!!」

 

 

 

ジャックの虚しい願いが埠頭に響く…こうして彼らの長い1日は終わりを迎えたのだった…。




という事でリクエストアンケートで頂いた『ARC-Vシンクロ次元のジャック対遊星』の対決でした!お楽しみ頂けたでしょうか?

次からはいよいよWRGP本戦へと進みます!


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新たなる好敵手〜不屈の太陽とヴァルハラの神〜

こんにちは!S,Kです!

ついに開幕するWRGP本戦…どうかお楽しみください!


それでは最新話をどうぞ!


「回復が遅いな…本戦には間に合わないか…まぁ大丈夫か、元々これは遊星達の戦いだ…奴が出てこなければ俺は出る必要はない…」

遊海は自宅の窓から外を眺める…退院こそしたものの、未だに左腕は再生せず、体調自体も万全に程遠かった。

 

 

「遊海さん、一応今日の本戦前のエキシビションデュエルの招待状が来てますけど…」

 

「ああ…万が一選ばれる事は無いと思うけど…この体じゃなあ…ガワだけは鎧でなんとか…あっ、海馬さんのところにも行かないと…」

 

「無理は…しないでくださいね?」

 

「ああ、大丈夫だよ翠」

 

今日はWRGP本戦開幕の1日前…イェーガー新長官主催のエキシビションデュエルが行われる日だった…遊海はエキシビションに参加する為の準備を始めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side龍亞

 

「神の国から来たデュエリスト…チーム・ラグナロクは『星界の三極神』を操る世界初のプロライディングチーム……ふん、こんなチームに遊星や遊海が負けるもんか!おれ達にだって赤き竜が付いてるんだ!…あっ!?5D'sのプラクティスが始まっちゃう!?急がなくちゃ!」

 

コンビニでデュエルマガジンを立ち読みしていた龍亞は時計を見て駆け出した、今日は本戦前のプラクティスがあり遊星達も参加しているのだ。

 

 

「急げ!急げ…っと!横断歩道では右左…よし!」

龍亞はスタジアムまで急ぐ…今日に限ってDボードを忘れてしまったのだ、しかしそれが一つの出会いをもたらす…

 

「たしか…コッチが近道だ!」

 

 

『わぁっ!?どいてどいてぇ〜!?』

 

 

「えっ!?うわぁぁ!?」

 

急ぐあまりに曲がり角から飛び出した龍亞にコントロールを失ったDホイールが迫る!

 

キキーッ! ガシャン!!

 

 

「危ないな…走る時はもう少し広い場所でやるべきじゃないか?チーム太陽」

 

『えっ…あれ??オレは…?』

 

「あれ…あっ!?メタルナイト!?」

Dホイールを避けようと倒れこんだ龍亞が見たのは暴走Dホイールを受け止める遊海…メタルナイトの姿だった。

 

 

「大丈夫か?龍亞、急いでたとはいえ…急に飛び出したら危ないだろう?」

 

「ごめんなさい…それよりも身体は大丈夫なの!?まだ腕が…」

 

「無茶しなければ片腕で大丈夫さ…ガワだけは鎧でなんとかなるからな…」

そう言った遊海の左腕は鎧によってそこにあるように見せられていた…。

 

 

『お〜い!大丈…メタルナイト!?』

少しして遊海達のもとに赤と青のジャージの2人組が駆け寄ってくる…

 

「おお、チーム太陽!1ヶ月振りだな!…Dホイールの修理は難航してるみたいだな…」

 

「メタルナイト、この人達は?」

 

「この人達は『チーム・太陽』、WRGPの決勝トーナメント出場チームだよ、元気だったか?」

 

『は、はい!…じゃなくて!すいませんでした!!Dホイールの修理がうまくいかなくて…』

赤ジャージ…リーダーである山下太郎が遊海に頭を下げる

 

「謝る相手が違うだろう?被害にあったのは龍亞だからな…龍亞、お前も謝るんだ、飛び出したお前にも非があるからな?」

 

「うっ…ごめんなさ〜い…」

 

『謝るのはオレ達の方だよ、もう少し広い場所でテスト走行をするべきだった…』

太郎と龍亞はお互いに謝る

 

 

『ところで君は?メタルナイトと親しいみたいだけど…?オレは山下太郎、チーム太陽のリーダーをやってる!青のジャージが甚兵衛!緑のジャージが吉蔵だよ』

 

「おれは龍亞!ゆ…メタルナイトと同じチーム5D'sのメンバーなんだ!…まぁ、ピットにいるだけだけど…」

 

『『『チーム5D's〜!?』』』

龍亞の言葉を聞いた太郎達は驚きをあらわにする

 

 

「ああ、龍亞も遊星も俺の仲間なんだ…言ってなかったか?」

 

『聞いてないよメタルナイト!!僕、遊星の大ファンなんだよ!チームユニコーン戦とってもかっこよかった!』

 

『…そういえばデュエルニュースに出てたな…「メタルナイトが大会最短デュエル時間を更新」って…マジかよ…』

遊星ファンである吉蔵は素直に喜び、甚兵衛はたメタルナイトの活躍を思い出して頭を抱えていた

 

『龍亞、メタルナイト、今の騒動のお詫びと言ってはなんだけどお茶でもどうかな?龍亞君も膝を擦り剥いてるみたいだし…』

 

「えっ?あ…本当だ…」

龍亞は自分の膝を擦り剥いている事にようやく気がついた 

 

「すまない、このあとに用事があってな…龍亞、お前は少し太郎達と話してくるといい、遊星の事を話せば彼らのお土産話になるだろう」

 

「うん!メタルナイトも気をつけて!」

 

『太郎、龍亞を頼む!それじゃ!』

遊海はそのままビル街へと跳躍し消えていった…。

 

 

 

『思ったんだけど…どれだけ体を鍛えればあんな動きが出来るんだろう…?』

 

「う〜ん…メタルナイトは凄すぎるから…普通の人じゃマネできないと思うよ?だってメタルナイト、自動車も持ち上げられるもん…」

 

『『『マジで!?』』』

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

コンコンコン…

 

『ん…入れ』

 

「失礼します海馬社長…なかなか来れずにすいません…」

龍亞と別れた遊海はKCの社長室を訪れた、そこにはうず高く積まれた書類と格闘…もとい、ハンコを押す海馬の姿があった。

 

 

『直接会うのは久しぶりだな遊…待て、貴様…何をやらかした?左腕はどうした!』 ドン! バラバラ…

書類の束から顔を上げた海馬は驚き、書類の山を崩しながら立ち上がる…久しぶりに顔を見た友が全身包帯だらけで腕を失っていれば慣れていても驚くだろう。

 

「またゲイザーに遭遇して…相討ちになりました、奴も同レベルの怪我を負っているはずです…」

 

『また奴か…!先のデュエルといい…奴は何故お前を狙うのだ!』

 

「…きっとそれは…『俺』がこの世界にとってのイレギュラーだからです、転生者である俺が…」

遊海は海馬の問いにそう答える

 

『イレギュラー…か、お前が何を以て自分をそういうのかは聞かん…だが、一つ覚えておけ、お前達が何者であろうと…白波遊海、お前がオレの…()()()()()である事に変わりはない!』

 

「海馬社長…」

遊海は海馬の言葉に涙を拭う…

 

『だが遊海…次は奴との決着を着けろ、WRGPも少しキナくさい事になっている…さらに、()()()の事もある』

 

「へっ…?海馬社長…まさか視えているんですか!?」

遊海は海馬の思わぬ言葉に窓の外を見る…そこには未だ異次元に存在するアーククレイドルの一部が見えていた…

 

 

『うむ、コレのおかげだがな…』ジャキン!

そう言うと海馬の腕に見慣れない決闘盤…劇場版で開発された新型デュエルディスクが展開される

 

『開発途中の新型ディスクだ、まさかこんな事ができるとは思っていなかったがな…アレがイリアステルの目的なのだろう…オレにはこの街を守る責務がある、力を貸してくれ…遊海』

 

「…あたりまえですよ海馬さん、俺はこの街の…ヒーローなんですから!」

海馬の願いもあり遊海は覚悟を決めた…何があろうと…必ずこの街を守り…全ての因縁に決着を着けると…

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

「Dホイールの修理?」

 

「うん…チーム太陽って人達が修理がうまくいかなくて困ってるんだ…」

 

プラクティスを終えてガレージへと戻ってきた遊星に龍亞が頼み事をしていた…内容はディアブロ事件に巻き込まれて故障してしまったチーム太陽唯一のDホイールの修理をしてほしいという事だった。

 

 

「3人で1台のDホイールを使い回しているのか…せっかく決勝トーナメントに出場できるのにそれは残念だろうな…」

 

「でしょ!それで遊海の知り合いなんだ!だから…」

 

「…わかった、様子を見てみよう!何か手助けになるかもしれない」

 

「やった〜!ありがとう遊星!」

龍亞の願いを聞いた遊星はチーム太陽のもとに向かおうとする

 

「おもしろそうな話だね…ボクもいってみようか!」

 

「ブルーノも!?やった!2人がいれば絶対に修理できるよ!」

チーム5D'sの2大メカニックは龍亞の案内でチーム太陽のもとへと向かった…。

 

 

 

 

 

ブルル…プスンプスン

 

 

『ダメか〜…』

 

『どうしよう太郎…これじゃあトーナメントに出られないよ〜』

チーム太陽の3人は公園で頭を捻りながらDホイールの修理をしていたが…ついにエンジンが悲鳴をあげてしまっていた…。

 

『民間の修理工場に頼むお金もないし…もうお手上げだよ…』

 

「お〜い!チーム太陽〜!」

 

『あっ、龍亞だ…待って、その後ろにいるのって…!?』

 

『ゆ、遊星だ〜!?』

吉蔵が声をあげる…龍亞の後ろには彼の憧れである遊星がいるのだから無理もないだろう

 

 

「余計な事とは思ったんだけど…まだもし直ってなかったらと思って…」

 

『だから…助けなんていらないって言っただろ…太郎!?』

龍亞の好意に反骨心の塊である甚兵衛が声を荒げる…しかしそれを太郎が諌める

 

『ありがとう龍亞、実は困ってたところなんだ…すまないジン、正直オレには何をどうやったらいいんだか…』

太郎は正直に現状を伝える…素人である彼らにDホイールの修理は荷が重すぎたのだ…

 

『だからってこんな奴らに頼まなくたって!…今までだって何とかやってこれたじゃないか…』

 

『じゃあジンはこのまま決勝トーナメントに出られなくてもいいって言うのか?初めは勝てるかすらわからなかった…でも勝った!偶然かと思ったけど次も勝てた!そして予選を通過して…ここまで来れたんだ!』

 

『太郎…』

太郎は本心を語る…彼らは自分達の力を確かめる為にWRGPに挑んだのだ。

 

『確かにジンの言う通り、自分達の力だけで戦う事に意味が有るのかも知れない…でもオレは出てみたいんだ!決勝トーナメントに出てオレ達のデュエルがどこまで通じるか試してみたいんだ!…頼むジン!このDホイールが無いと決勝トーナメントには出られないんだ!それにこんな理由で棄権したら…万丈目さんやメタルナイトに顔向けできないだろ?』

 

『うっ…………わかったよ!勝手にしろ!!』

長く考えた甚兵衛はそう言ってそっぽを向いてしまった。

 

『ありがとうジン…改めて…オレはチーム太陽の太郎!遊星、頼む!オレ達のDホイールを直してくれ!』

 

「ああ、任せてくれ!…というか…」

 

『太郎、もうこの人が直し始めてる…』

 

『え?』

吉蔵の言葉に太郎がDホイールを見ると…

 

 

「これが手作りのDホイールか〜!…へぇ…!ここはこうなってるんだ…!」

 

『『「もう始めてるし…」』』

キラキラと目を輝かせながらチーム太陽のDホイールを分析し始めているブルーノの姿があった…。

 

 

 

 

〜しばらくお待ちください〜

 

 

「よし…修理完了だ!」

 

『ありがとう遊星…!早速テスト走行だ!』

夕方になりついにDホイールの修理(魔改造)が完了した、途中で吉蔵がデッキのカードに遊星のサインを求めたり遊星の過去話に花が咲いたりしながらも無事に全ての修理が終わったのだ。

 

 

ブルル…キィーン!!

 

『う、うわぁ…!すごい加速だぁ!』

 

『す、すごい…!本当に俺達のマシンなのかよ…!?』

 

『これなら他のチームにも張り合える…!』

チーム太陽の3人は目を丸くして驚愕する、見た目こそ元のままだが…その能力は数倍に跳ね上がっていた。

 

 

「よかったね!これなら決勝トーナメントに出られるよ!」

 

『ああ!ありがとう遊星、ブルーノ、龍亞!』

 

「WRGPはお互いに頑張ろう!」

遊星と太郎は固く握手を交わす…

 

 

 

キィィン─!

 

 

「っ!?」

 

『遊星!?右腕が…?』

 

「赤き竜の痣が…!」

遊星の右腕…ドラゴンヘッドの痣が輝きを放つ…!

 

「(この感じは…!遊海さん─!!)」

遊星は感じとった…強い力の波動…遊海の力が開放される感覚を…!

 

「(まさか…!またイリアステルが!?)」

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは以前にWRGPのプレミアイベントの行われた会場…そこにはたくさんの人々が集まっていた…それはこの会場で行われるエキシビションデュエルの為である。

 

 

「レディース&ジェントルマ〜ン!!それでは登場してもらおう!WRGP決勝トーナメント優勝最有力候補!神の国から来た決闘者!チー厶・ラグナロク!」

 

暗くされた会場にお馴染みとなったMCの声が響き渡る、そして入場してきたのは狼の意匠のライディングスーツを纏った3人組…神を持つデュエリスト、チームラグナロクの3人だった。 

 

 

「ご存知の通り!チーム・ラグナロクは三極神のカードを使うあの決闘王に匹敵する最強のデュエリスト!これまでにも数々の伝説を残しているプロのライディングデュエルチームなのだぁ!」

 

 

「あれが神の力を使う決闘者か…しかし遊海に匹敵するとは…フン、笑わせるな」

 

「ジャック、聞こえちまうぜ?」

入場してきたラグナロクを見たジャックは彼らを鼻で笑う…それは間近で遊海を見たからこその自信だった。

 

 

「そうだぞジャック、あいつらも普通の決闘者ではないからな?」

 

「えっ!?遊…メタルナイト!?怪我は大丈夫なの!?」

アキは気配を消しながら現れた遊海に驚く

 

「無理しなければ大丈夫だよ…ラグナロクが持っている『三極神』は『三幻神』と同じ本当の神のカード…それを使いこなしている彼らは…間違いなく一流の決闘者だ」

 

「…貴方がそこまで言うのであれば…本当なのだろうな…しかし、このジャック・アトラス…古い神如きに…《古い神が…なんです?》な、なんでもない…!」

啖呵を切ろうとしたジャックは肩に現れたフレアの一言に発言を飲み込んだ…

 

 

「…言わんこっちゃない」

 

「フレア、トリシューラプリンあるよ?」

 

《いただきます!》

 

「…かわいい…」

 

すぐに遊海に宥められる太陽神なのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

「それでは早速エキシビションデュエルを始めるぞ!大戦相手は『怒れる神の腕を持つ男』ドラガンが指名する!」

MCの声と共にスポットライトが会場を巡る…そして黒髪に金のメッシュの入った男・ドラガンが指名したのは…

 

『オレの対戦相手は…お前だ!!』

 

 

 

 

 

 

 

『デュエルヒーロー・メタルナイト!』

 

 

 

 

「はい…!?」

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

「おっとぉ〜!?対戦相手に指名されたのはネオドミノシティ最強のヒーロー!予選での蹂躙劇が記憶に新しいメタルナイトだぁ!神対英雄の戦いが始まるぞぉ〜!!」

 

 

「(何を…考えている…!?)」

 

スポットライトに照らされた仮面の下で遊海は驚きを隠せずにいた、本来であればドラガンは因縁を持つジャックを相手に指名するはずなのだ。

 

 

『…!』

 

「(怒ってるな…だけど俺にじゃない、そうか…お前か…!)」

ドラガンの瞳は熱く怒りに燃えていた…その瞳はジャックを射抜かんばかりに見つめている、そして遊海は気が付いた…彼らのリーダーである銀髪の青年・ハラルドが遊海をルーンの瞳で見つめている事に…

 

 

 

「メタルナイト…」

アキが心配そうに遊海を覗きこむ…

 

「アンタ…まだ身体が治りきってねぇんだろ、なら…」

 

「ならば俺が代わりに前に出よう、奴の顔に見覚えがある…それに奴は俺を見ている…!」

ジャックやクロウも遊海を心配し話しかけるが…

 

「…大丈夫だよ、お前達…彼は何かの思いがあって俺を指名したはずだ、ならばそれに応えるだけだ…俺はこの町のヒーローなのだから…!アキ、フレアを頼む…!」

プリンを食べるフレアをアキに預け、遊海はデュエルリングへと歩みを進めた…

 

 

 

 

 

『来たか、お前の力をみせてもらうぞ…!鋼の騎士!』

 

「いいだろう、相手になろう…勝負だ!神の担い手よ!」

ドラガンがデュエルディスクを展開し、遊海もデュエルディスクを胸に押し当てる…そしてベルトが展開しデュエルの準備が整った!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

ドラガンLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『「極星獣タングリスニ」を召喚!』

角の尖った白いヤギが現れる ATK1200

 

『オレはカードを1枚伏せターンエンド!』

ドラガンLP4000

タングリスニ 伏せ1 手札4

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『星呼びの天儀台』を発動!手札のレベル6『エレキテルドラゴン』をデッキ下に戻して2ドロー!さらに相手フィールドにモンスターがいて自分フィールドにいない時、『聖刻龍─トフェニドラゴン』は特殊召喚できる!」

ウジャト眼を持つ白き龍が現れる ATK2100

《主殿、無理はなさらぬよう…アヤカからきつく言われております》

 

「わかってるよ…できればの話だけど…!さらに俺は『トフェニ』をリリースする事で手札の『聖刻龍─シユウドラゴン』を特殊召喚!さらにリリースされた事で『トフェニ』の効果発動!手札の通常モンスター『龍王の聖刻印』を特殊召喚!」

青いウジャト眼の龍と月光石が現れる ATK2200  DEF0

 

 

「そして魔法カード『トレードイン』を発動!手札のレベル8『神龍の聖刻印』を捨て2ドロー!…魔法カード『招集の聖刻印』を発動!2枚目の『シユウドラゴン』を手札に加える!そして『シユウ』をリリースして2体目の『シユウ』を特殊召喚!さらに自身の効果でデッキの『ギャラクシーサーペント』を特殊召喚!」

2体目の青い龍と煌めく龍が現れる ATK2200  DEF0

 

 

「俺はレベル6の『シユウドラゴン』にレベル2の『ギャラクシーサーペント』をチューニング!」

 

6+2=8

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に響け!!シンクロ召喚!『閃光竜スターダスト』!」

 

眩い光と共に遊海の守護竜である光のスターダストが降臨する ATK2500

 

 

『フン…!これがシグナーの竜か』

 

「そして俺は魔法カード『銀龍の轟咆』を発動!墓地の『ギャラクシーサーペント』を特殊召喚!」

再び煌めく竜が現れる DEF1000

 

「俺は再びレベル6の『龍王印』にレベル2の『ギャラクシーサーペント』をチューニング!」

 

『連続シンクロ…!』

 

6+2=8

 

「漆黒の闇を裂き、天地を焼き尽くす孤高の絶対なる王者よ!万物を睥睨しその猛威を振るえ!シンクロ召喚!現われろ!『炎魔竜 レッド・デーモン』!!」

紅蓮の炎と共に悪魔竜が現れる ATK3000

 

 

『「レッドデーモンズドラゴン」…!?』

 

「おおっとぉ!?メタルナイトの操る2大ドラゴンが出揃った!ゴースト事件でも数多のゴーストを倒したメタルナイトのエース達だぁ!」

 

 

「バトル!『炎魔竜』で『タングリスニ』を攻撃!極獄の絶対独断(アブソリュート・ヘル・ドグマ)!」

炎魔竜の拳がヤギを粉砕する!

 

『ぐっ…!(重い一撃だ…!ルーンの瞳で無くともわかる…!奴は只者じゃない…!)』

 

ドラガンLP4000→2800

 

『破壊された「タングリスニ」の効果発動!自分が破壊された時、「極星獣トークン」を2体特殊召喚する!さらに手札の「極星獣タングニョースト」は自分モンスターが破壊され墓地に送られた時、特殊召喚できる!』

白いヤギのトークンと目元の赤い黒毛のヤギが現れる DEF0×2  DEF1100

 

 

「バトル続行!『閃光竜』で『タングニョースト』を攻撃!流星閃撃(シューティング・ブラスト)!」

閃光のブレスが黒ヤギを粉砕する!

 

「メイン2、魔法カード『超再生能力』を発動!…ターンエンド!そして『超再生能力』の効果発動!このターンに俺がリリース、または手札から捨てたドラゴン族モンスターの数だけドローできる!3ドロー!」

遊海LP4000

閃光竜 炎魔竜 手札3

 

 

 

 

 

『流石はこの街最強のヒーローだな、三年前からまったく強さが変わらねぇ…いや、感じる闘気は昔以上だ…!』

 

「俺はこの町を守る者だ…そう簡単には負けられないんだよ」

 

『そうか…なら見るがいい!三極神の力を!』

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『オレは「極星獣グルファクシ」を召喚!』

金色の鬣を持つ黒馬が現れる ATK1600

 

「来るか…!」

遊海は身構える

 

『オレはレベル3の「極星獣トークン」2体にレベル4の「グルファクシ」をチューニング!』

 

3+3+4=10

 

『星界の扉が開くとき!いにしえの戦神がその魔鎚を振り上げん!大地を揺るがし轟く雷鳴と共に現れよ!シンクロ召喚!光臨せよ「極神皇トール」!』

会場に雷鳴が轟く…それと共に暗雲の中から巨大な槌を持つ神が現れる、それこそがこの世界において『三幻神』と同じく「神属性・幻神獣族」を持つ紛れもない『神』…北欧の雷神・トールだった ATK3500

 

 

 

 

キィィン─!

 

キィィン─!

 

 

『こ、これは何事でしゅか〜!?』

 

 

「っ…!!(やはり力の共鳴が…!)」

 

トールと赤き竜のドラゴン…それがフィールドに揃った瞬間、2つの巨大な力は共鳴し周囲に天変地異を起こす…!

 

 

『これが赤き竜の力か…!バトルだ!「トール」で「炎魔竜」を攻撃!サンダー・パイル!』

左目にルーンを光らせたドラガンが攻撃を宣言する!

 

「させるか!『閃光竜』の効果発動!『炎魔竜』を戦闘破壊から守る!波動音壁(ソニック・バリア)!」

遊海も負けじと赤き竜の痣を輝かせながらトールの攻撃を受け止める!

 

 

キィィン! ゴゴゴゴゴゴ!!

 

 

「うわああ!?」

 

「か、会場が!?」

極限まで高まった力の影響で会場が大きく揺れ始める!

 

 

『こ、これは!?神の力と赤き竜の力が共鳴して!?MC!デュエルは中止!中止するのです!!』

 

「わ、わかりました!!デュエルは中止!中止だ!!」

イェーガーの指示によりソリッドビジョンが強制的に遮断される…神と竜の激突はここで中断された…。

 

 

 

デュエル強制中断…

 

 

 

 

 

 

『残念だな、ここで終わりか…』

 

「しょうがないさ、ここは戦いには狭すぎる…本戦で決着をつけよう、チームラグナロク」

遊海とドラガンはソリッドビジョンの消えたリングで言葉を交わす…

 

『そうかい…またな、ヒーロー』

ドラガンはそう言って仲間のもとに戻っていった…。

 

 

 

 

 

「メタルナイト!大丈夫か!?」

リングを降りた遊海のもとにジャック達が駆け寄ってくる

 

「ああ、大丈、夫…」バチバチッ! フラッ…

 

「おっと!…絶対大丈夫じゃないだろアンタ…病み上がりなのに無理しやがって…!てか重い!!」

バランスを崩し倒れかけた遊海をクロウが受け止める

 

「すま、ない…少し…休めば…コフッ!」

 

「…とりあえず翠さんに連絡するわ…迎えにきてもらわないと…」

 

「アキ…それは、カンベン、して…」

 

「ダメです、翠さんから無理して倒れたら連絡するように言われてるので!」

 

「…マジか…ガクッ」

 

「ちょ…!?遊海!しっかりし…どわぁ!?」

 

 

 

この後、遊海は翠に引き取られ滅茶苦茶に怒られ、泣かれたそうな…

 

 

 

 

 

 

 

 

『おつかれさんドラガン、中々いいデュエルだったぜ?あれがこの町のヒーローか…プロでも戦えるんじゃないか?』

逆立った赤髪の青年・ブレイブがドラガンを労う

 

『ああ、奴は強かった…だが…』

 

『力を隠している…それは間違いないだろう』

 

『フッ…考えはお見通しってか?ハラルド、オレにジャックじゃなくてメタルナイトと戦わせた意味はあったか?』

ドラガンが銀髪の青年・ハラルドに問いかける

 

『ああ…彼の強さの一端、それがわかっただけでもよしとしよう…行こう、2人とも』

ハラルドは2人を連れて会場をあとにした…

 

 

 

 

 

 

 

翌日…

 

 

パン!パンパン!

 

晴天の下、ついにWRGP本戦の開会式が行われようとしていた…。

 

 

「ジャック、遊海さんは…」

 

「フン、病み上がりで力を使ったせいでグロッキーだそうだ…今日1日は翠が安静(物理)にさせるらしい」

 

「そうか…やっぱり昨日の反応は…」

遊星はジャック達から遊海とドラガンの戦いの詳細を聞いていた。

 

「落ち込んでる暇はないぜ、遊星…始まるぞ」 

 

「ああ…!」

遊星達は正面に顔を向ける、そこにはイェーガーが神妙な面持ちで立っていた…これから本戦の組み合わせ発表が始まるのである。

 

 

『それでWRGP本戦、その組み合わせを発表します!まずは…』

 

………

 

 

「チーム・ニューワールドはAブロックか…当たるのは決勝だな…」

 

「対してチーム・ラグナロクはBブロックか…あとは組み合わせ次第だな…」

トーナメントは8チームを2つに分け、2ブロックで行われる…そしてその組み合わせは…

 

 

『続いてBブロック…第一試合はチーム5D's対チーム・太陽!』

 

「『なんだって!?』」

遊星と太郎は顔を見合わせる…遊星達の次の相手はチーム・太陽…遊星達は思わぬ苦戦を強いられる事となる…!

 

 

 




〜白波家にて〜


「あの…翠…これはどういう…」
気絶から目覚めた遊海は自室のベッドに寝かされていた…それだけではなくウィンダの魔術により三肢を拘束されている

「どうもこうもありません!今日1日は大人しく寝ててください!」
ぷりぷりと怒った顔で翠が遊海に宣告する…

「いや、でも開会式が…」

「ジャック君に今日は休ませると伝えたので心配しないでください!今日は身体を回復させる事に専念してもらいます!その為の料理も作ってありますから!」

「料理?」

翠はそう言って台所に向かう…そして…


「遊海さん、これを食べて元気になりましょうね〜」

「んな!?そ、それは─!?」ガタガタガタ
その料理を見た瞬間、遊海は冷や汗と震えが止まらなくなった…それは唯一、遊海が死を覚悟した料理…黄金の王ですら素足で逃げ出す最強・最悪の獣…その名は…




「『泰山』の麻婆豆腐だとぉぉぉ─!?」





「はい!わざわざ店長さんに習ってきました!さらに私の特典の効果で味と栄養もアップです♡」
翠の手には白い丼に浮かぶ紅蓮の溶岩が抱えられていた…その髪色は少し白が混じったように見える…


「み、翠!待て!そんなの食べたら…!」

「これは遊海さんへのお仕置きも兼ねてますから…全部完食してくださいね?」
翠はゆっくりとレンゲでアカイアクマを掬い取り…

「はい、アーン!」

「い、イヤだァァァ──モガっ!?」












《アヤカ!ただいま修理を終えて帰還しま…マスター!?》

「(死〜ん…)」


修理を終え、久々に帰還したアヤカが見たのは白目を剥きながらも安らかに眠る遊海の姿だった…遊海の肉体は五体満足状態に戻っていたという…。














『…翠をあまり悲しませるでないぞ、遊海』


「…はい、魂に刻みました神様…次からは気をつけます…」



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VSチーム・太陽〜凡骨の意地〜

『さぁ!ついに始まったWRGP本戦!今日はBブロックの試合をおこなっていくぞぉぉ!!』

 

「「「ワァァァァ!!」」」

 

今日は本戦開幕2日目…5D's対チーム・太陽のライディングデュエルが行われる日である。

 

『Aブロックでは既にチーム・ニューワールドが圧倒的強さで2回戦への切符を掴んでいる!Bブロック2回戦の切符を掴むのはネオドミノシティの英雄5D'sか?それともダークホースのチーム・太陽か?決戦はそこまで迫っている!まもなく選手達の入場だ!!』

 

 

 

 

 

 

「なに?デッキにレアカードが1枚もないだと?」

 

「ああ、彼にみせて貰ったデッキにはノーマルカードしか見当たらなかったんだ」

控え室にて…ジャックが遊星の言葉を聞いて驚きの声をあげている、その理由はチーム太陽の先鋒である吉蔵のデッキにはレアカードが入っていないという言葉だった。

 

 

「そんなデッキでよく予選を突破できたわね…」

 

「ユニコーンの時みたいに力を隠してるんじゃねぇか?」

アキの言葉にクロウがチームユニコーンとの対決で経験した「フェイクデッキ」の可能性を伝えるが…

 

「クロウ!それは絶対にありえないよ!太郎達はそんな事しない!」

龍亞がその可能性を否定する…短い時間とはいえ触れ合った太陽のメンバー達はそんな事をしない、できないと知っているからだ。

 

「フン、いずれにせよチーム・太陽など敵ではない!俺達が倒すべきなのは次の試合で当たるチーム・ラグナロクの方だ!」

 

 

「それは…どうかな?ジャック、あまり先を見すぎると…足下の石で思わぬ怪我をする事に…なるぞ」

 

 

「「遊海…!?」」

 

「遊海さん!?怪我は大丈夫なんですか!?」

ジャックの言葉に待ったをかけたのは回復を終えた遊海だった…ただ、顔色はとても悪い…

 

 

「怪我は…な、遊星、ジャック、クロウ…ここまで勝ち抜いて来たチームは紛れもない強者だ…油断は…するなよ…?」

 

「…フン、そんな事はわかっている!まずは奴らを蹴散らしてからだ!行くぞ遊星!クロウ!」

 

「ああ、見ててくれよ遊海!」

ジャックは遊海の言葉を聞いて入場口へと向かって行く

 

「遊海さん、オレ達は必ず勝ちます…だから休んでいてください…顔色が青というか白色に…」

 

「き、気にするな…ちょっとした治療の副作よ…あぐっ!?す、すまん…!頑張れよ遊星…!」グギュルルル…

遊海は腹を抑えて目にもとまらぬ速さで走っていった…。

 

 

 

 

 

「…アヤカさん、遊海さんに何があったの?」

 

《…龍可、一つだけ言っておきます…絶対に翠さんを怒らせてはダメですよ…》

 

「???」

アヤカの言葉に首を傾げる龍可なのであった。

 

 

「(もしかして…前に話してた()()()()()()を出したんじゃ…!?本当に怒らせた翠さんは怖いわ…!)」カタカタカタ

アキは何かを察して震えを押さえたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レディース&ジェントルメン!大変お待たせしました!決勝トーナメント・Bブロック第一試合の始まりだ!まずは予選で強豪であるチーム・ユニコーンとカタストロフを降し本戦出場を決めた…チーム・5D's!!』

 

 

「「「わぁぁぁぁ!!」」」

 

 

「ジャック様頑張って〜!!」

 

「遊星!頑張れよー!!」

 

「クロウ〜!応援してるぞ〜!」

 

地元チームである5D'sはたくさんの歓声に包まれる!

 

 

『対するのは!無名ながらも本戦へと駒を進めた今大会のダークホース!チーム・太陽!!』

 

「「わぁぁぁ!!」」

 

「頑張れよ!チーム太陽!」

 

「応援してるぞ!!」

対するチーム太陽にもたくさんの声援が送られている!

 

 

『太郎…オレ達、本当にここまで来れたんだな…!』

 

『夢…じゃないよね…?』

 

『夢じゃないさ…俺達はこれから遊星達と戦うんだ…!』

太郎達はここに来るまでの事を思い出していた…農家の跡取りである三人、彼らはWRGPの開催を聞きゼロから準備を始めた。

なけなしの小遣いで壊れかけのDホイールを手に入れ、手を尽くしてカードを集め…その中に1枚の『切り札』を手にし…予選を突破した、全ては自分達の可能性を確かめる為…彼らの大一番が今始まる…!

 

 

 

 

 

『さぁ、ファーストホイーラーのふたりが位置に着いた!』

スタートラインにジャックと吉蔵が並ぶ…!

 

 

「おいおい…あのDホイールはまともに走れるのか?走れてもジャックのホイール・オブ・フォーチュンには敵わないんじゃないか?」

観客席に座る牛尾がそう呟くが…侮ってはならない、何故なら…あのDホイールは遊星とブルーノによって修理(という名の魔改造)が行われているのだから─!

 

『さぁWRGP・Bブロック…ライディングデュエルの始まりだ!』

 

 

ピッ…ピッ…ピッ…ポーン!

 

ギュイーン!!

カウントが変わり一斉にスタートする2台のDホイール…一見ジャックが有利かと思われたが…

 

「なっ!?遊星!ブルーノ!!あのオンボロになにをしたぁ!?」

 

『な、なんとぉ!?スタートダッシュを決めたのはチーム太陽!?凄まじい加速だ!!』

遊星達によるフルチューンを受けたマシン・デイ・ブレイクは予想外の速度でジャックを追い抜かす!!

 

「遊星!?頑張りすぎじゃないの!?」

 

「…そうかもな…」

 

 

「おのれ…すぐに追い抜いてやる!ジャック・アトラスを舐めるな!!」

一瞬たじろいだジャックだったがすぐさま加速し吉蔵を追い抜きにかかる!

 

『負けてたまるか…!うわわ!?』ギャギャギャ!!

 

「なにぃ!?」

ジャックに抜かれまいとスピードを上げた吉蔵…しかし速度に慣れていなかった為にDホイールがふらつき、それが期せずしてジャックの追走を防ぐ!

 

 

『第一コーナーを制したのはチーム太陽!序盤から思わぬ展開だ!!』

 

「おのれ…ポンコツがぁ!!この屈辱…デュエルでぶつけてやる!!」 

 

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

 

デュエルダイジェスト ジャック対吉蔵

 

 

 

 

 

デュエル序盤、吉蔵はレベル1の通常モンスターである「キーメイス」を召喚しターンを終える、ジャックは2回攻撃を可能にする「ツインブレイカー」で攻撃を仕掛けるが吉蔵の伏せカード「隠れ兵」によって自身の守備力を自分の場のモンスターの守備力の合計とする「手をつなぐ魔人」を召喚しツインブレイカーの攻撃を防ぎ、反射ダメージを与える…しかしジャックはダメージを利用して「ソードマスター」を召喚し布陣を整えた。

そして吉蔵は自分のターンに「ジャグラー」を召喚し「魔人」の守備力を2800まで上昇させる、しかし…ジャックには全ての守りを破壊する力がある…!

 

 

「王者の鼓動!今ここに列をなす!天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!!現われろ!我が魂!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!!」

ジャックは「バトルフェーダー」を召喚し自身の魂のカードである「レッドデーモンズドラゴン」を召喚する、「レッドデーモン」の効果は相手の守りを破壊する強力な効果…チーム太陽はピンチをむかえる…と思われたが…!

 

 

『リバース罠発動!「城壁」!「手をつなぐ魔人」の守備力を500アップする!!守備力は3300だ!』

 

「なんだと!?」

吉蔵はさらなる伏せカードにより「魔人」の戦闘破壊を防ぎジャックにダメージを与える!

 

「だが『レッドデーモン』の効果発動!このカードが守備モンスターを攻撃した時!お前の守備モンスターを全て破壊する!デモン・メテオ!!」

 

『させないぞ!永続罠「スクラム・フォース」発動!自分の場に守備モンスターが2体以上いる時!守備モンスターはカード効果で破壊されなくなる!』

魔人達に迫った破壊の炎は鉄壁の絆のバリアに防がれる!

 

「アイツ…!ジャックのパワーをはね返しやがった!?」

 

「徹底的に守備力を上げていく戦術…!これがチーム太陽の戦い方か…!!」

ピットの遊星とクロウも思わず声をあげる…しかし、チーム太陽の本領はここからだった。

 

 

『ボクのターン!ドロー!…「スピードワールド2」の効果発動!スピードカウンターを4つ取り除いて手札のスピードスペル1枚につき800ダメージを相手に与える!!』

 

「な、なんだと!ぐおお!?」

ジャックへと雷が落ちライフを削る!

 

 

「っ!!これが奴らの狙いか!!」

 

「『スクラムフォース』で『手をつなぐ魔人』や守備モンスターを守り『スピードワールド2』の効果で確実にダメージを与えていく…!この戦法でチーム太陽は予選を突破したのか!!」

チーム太陽の戦術…遊星の言う通りだった、徹底的に守りを固め「スピードワールド2」によって確実なダメージを与えるまさに鉄壁の盾と敵を穿つ槍を持った重装歩兵のような強硬守備…いや、「強攻守備」こそがチーム太陽が予選を勝ち抜いた戦い方だったのだ。

 

 

「やるではないか…だが!やりようはある!俺のターン!『Sp-ソニック・バスター』を発動!『レッドデーモン』の攻撃力の半分、1500のダメージを与える!」

 

『つ…!』

太陽のモンスターを守る布陣は完璧に近い、しかしジャックは僅かな隙を見つけ吉蔵に大ダメージを与える事に成功する!

 

『ボクのターン!「コピックス」を召喚!』

ダメージを受けた吉蔵はさらにモンスターを召喚する、これで「魔人」の守備力は4100まで上昇するが…傍目から見れば同じ事を繰り返しているだけ…激しい戦いに慣れてしまった観客達は少しづつ飽きてきてしまう…。

 

 

「おい!同じ事の繰り返しじゃないか!他の戦略はないのかよ〜!?」

 

『ぐっ…!!』

 

『放っておけジン!…なんと言われようと…俺達にはこの戦い方しかないんだ!!』

観客の心ない言葉に怒りかけた甚兵衛を太郎が制止する、その瞳はしっかりとふたりの戦いを見つめていた。

 

 

「俺のターン!無敵の効果を持っていようと…発動しなければ意味は無い!!永続罠『デモンズ・チェーン』を発動!「手をつなぐ魔人」の効果を無効にする!」

 

『しまった!』

ジャックの発動した罠カードから紫色の鎖が飛び出し魔人をぐるぐるに縛りあげる!

 

「さらに『ランサー・デーモン』を召喚!その効果により『レッドデーモンズ』は貫通能力を得る!バトルだ!アブソリュート・パワー・フォース!!」

 

『うわっ!!』

悪魔竜の掌底が魔人を押し潰し吉蔵にダメージを与える!

 

「さらに『ランサーデーモン』で『ジャグラー』を攻撃!」

槍の悪魔が小さなマジシャンを破壊する!

 

「やったぜジャック!太陽に大ダメージだ!」

 

「ああ!(しかし…まだ油断はできそうにないな…!)」

遊星は気づいていた、ピットにいる太郎に焦りの色はない…まだ何か作戦があるはずだと…

 

「チーム太陽、何を狙っているんだ…?」

 

 

 

 

『ボクのターン!ドロー!…もう一度「スピードワールド2」の効果発動!スピードカウンターを4つ取り除いて800ダメージを与える!』

 

「その手は喰らわん!カウンター罠『クリムゾン・ヘルフレア』を発動!自分の場に『レッドデーモンズドラゴン』が存在し効果ダメージを受ける時!そのダメージを相手に倍にして与える!やれ!『レッドデーモン』!!」

 

『な、なんだって〜!?うわぁぁ!!』

再び発動したスピードワールド2の効果を逆手に取られた吉蔵は紅蓮の炎の一撃を受けてライフを削り切られた!

 

吉蔵LP0

 

ジャックWIN!

 

 

 

 

『流石はジャック・アトラス!粘りに粘ったチーム太陽の一番手を見事撃破だ〜!!』

 

「「「わぁぁ!!」」」

ジャックの見事な勝利に会場は歓声に包まれる…

 

 

 

『ごめんよ太郎〜もう少し粘れたら良かったんだけど…』

 

『いや、これが俺達の戦い方さ!ありがとうヨシ!』

ピットへと戻った吉蔵を太郎が労う

 

『次は頼んだぞ!甚兵衛!』

 

『まかせとけ!オレ達の戦いはここからだ!』

 

バトンを受け取った甚兵衛がコースに入る!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

甚兵衛LP4000対ジャックLP2600

 

 

 

『オレのターン!ドロー!…頼むぜ!「手をつなぐ魔人」を召喚!』

デュエルを受け継いだ甚兵衛は再び「魔人」を召喚する、フィールドには「キーメイス」と「コピックス」が存在する事で守備力は3200となり再び「レッドデーモン」を上回る!

 

「おい〜!同じ事しかできないのでかよ!!」

再び現れた魔人に観客が野次を飛ばす…観客にとっては激しさこそがデュエルの醍醐味なのだから無理もない…

 

「フン…時間稼ぎの戦略で何ができる…むっ…?(あの目は…?)」

ジャックは後ろを走る甚兵衛の目を見て気づいた、彼の目は守りの目ではなく何かを狙ってう攻める目をしていたからだ。

 

「(時間稼ぎが狙いでないならば…ターンを重ねて何を狙っている…?まさか『終焉のカウントダウン』でもあるまいが…俺の直感が勝負を長引かせるなと告げている…!)」

 

ジャックの歴戦の直感が危険を感じ取る…その正体はわからないがジャックは早くに勝負を決めようとする…しかし、再び展開された布陣にジャックは機を窺うしかない…。

甚兵衛は「ザリガン」を召喚しさらに守りを固めるが…ついにジャックは決断する!

 

 

「(これ以上デュエルを長引かせる訳にはいかん…!クロウ、あとは任せるぞ…!!)『スピードワールド2』の効果発動!スピードカウンターを10個取り除く事で『スクラムフォース』を破壊する!」

 

『させるか!リバース罠「偽物の罠」!代わりにこのカードを破壊する!』

ジャックはついに動きはじめる、前回の反省を活かし自分を犠牲にしてでも甚兵衛との決着をつけようとする!

 

「さらにリバース罠『オーバー・ゲイン』を発動!『レッドデーモン』の攻撃力を1000アップする!」

 

『「手をつなぐ魔人」の守備力を超えられた!?このまま攻撃してくるのか!?』

 

「否!俺の魂を懸けて貴様には倒れてもらうぞ!リバース罠『ショック・ウェーブ』を発動!『レッドデーモン』を破壊してその攻撃力である4000のダメージをお互いに与える!!」

ジャックが選択したのはカーリー戦で見せた自爆戦法…「レッドデーモン」が爆発しふたりのライフは尽きる…と思われたが…!

 

 

『負けて…たまるかぁ!!リバース罠「ホーリーエルフの祝福」発動!ライフを1800ポイント回復する!!』

 

「な、なにぃ!?」

甚兵衛が発動したのは過去に海馬も使用したライフ回復カード、それはジャックの捨て身の一撃を躱し生き残る事に成功した!

 

ジャックLP0

 

甚兵衛WIN!

 

 

 

 

 

「くっ…抜かったか…!」

 

「ジャック!お前がチーム戦とはいえあんなに攻め急ぐなんてらしくねぇじゃないか?」

クロウがピットに戻ったジャックに声をかける

 

「クロウ!チーム太陽にターンを重ねさせるな…!お前の得意な速攻で決めろ!」

 

「なに?どういう事だ?」

ジャックからバトンと共に忠告を受けたクロウが問いかける

 

「具体的にはわからんが…俺の直感だ!」

 

「あぁ〜?…よくわからねぇが…任せておけ!!」

首を傾げながらもクロウはコースに入る!

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

クロウLP4000対甚兵衛LP1800

 

 

ジャックにあとを任されたクロウは「BF-鉄鎖のフェーン」を召喚しダイレクトアタックを仕掛ける、しかし返しのターンで甚兵衛は再びスピードワールド2の効果を発動し1600ダメージを与えるが…クロウはそのダメージを逆手にとって「黒羽の導き」を発動し「東雲のコチ」を特殊召喚する!

 

『(()()6()()()()…!)』

 

 

さらにクロウは再び「鉄鎖のフェーン」でダイレクトアタックを仕掛け、罠カード「緊急同調」を発動…エースモンスターである「BF-アーマード・ウィング」を召喚し「手をつなぐ魔人」を攻撃し自身の効果で楔を残す…!

 

『まだだ…!まだ粘るんだ…!!』

 

『頑張れ…!あと4ターンだ…!』

甚兵衛はグリップを握る力を強める…彼らの「目的」が果たされるまであと少し…

 

「オレのターン!『アーマードウィング』の効果発動!楔カウンターを取り除き『手をつなぐ魔人』の攻守を0にする!」

 

『やべっ…!』

 

「そしてチューナーモンスター「突風のオロシ」を召喚!そして『アーマードウィング』とチューニング!」

 

「黒き疾風よ!秘めたる思いをその翼に現出せよ!!シンクロ召喚!舞い上がれ!『ブラックフェザー・ドラゴン』!!」

黒い羽吹雪が舞い散りピアスンの思いを受け継ぐクロウの切り札が現れる!

 

「『突風のオロシ』がシンクロ素材になった事で効果発動!『手をつなぐ魔人』を攻撃表示に変更!バトルだ!『ブラックフェザードラゴン』で『手をつなぐ魔人』を攻撃!ノーブル・ストリーム!!」

 

『く、くっそぉぉ!!』

巨大な黒炎が魔人を飲み込み甚兵衛のライフを削りきった!

 

甚兵衛LP0

 

クロウWIN!

 

 

 

 

「「やった〜!」」

クロウが甚兵衛を撃破し5D'sのメンバーは喜びをあらわにする

 

「しかし…奴ら如きに16ターンもかかってしまうとは…!」

ジャックはふと呟く、デュエルが高速化する昨今…ここまでデュエルが続く事も珍しいだろう…

 

「ターンを重ねる…戦略…(チーム太陽は…太郎はまだ諦めていない…!いったい何を狙っているんだ…!)」

遊星はチーム太陽の真意を計りかねていた…彼らは「何か」を狙っている、しかしそう呟く「何か」がわからないのだ…

 

 

 

『すまない太郎…!』

 

『いいんだジン…残り3ターン、俺達の秘策…必ず俺が成し遂げる!!』

 

『『いっけ〜!太郎!!』』

甚兵衛からバトンを受け取った太郎はふたりの声援を背負いコースに入っていく!

 

 

 

「チーム太陽はまだ諦めていない…!それどころかまだ逆転するつもりでいるみたいだ…!」

 

「しかし奴らのフィールドにはノーマルの通常モンスターばかりだ…何を狙って…」

 

 

「まだわからないのか?あいつらはとんでもないモンスターの召喚を狙ってるぞ?」

 

 

「「「「遊海(さん)!?」」」」

ピットに現れたのはなんとかトイレから脱出した遊海だった…顔色は先程より良くなっている

 

「遊海さん…とんでもないモンスターとは…?」

 

「見ていればわかる、少しヒントを出そう…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

「奴らの場に長く残っているモンスター…だと?それは…」

 

「『キーメイス』…レベル1でステータスの低い………ま、まさか!?」

その可能性に気づいた遊星はデュエルを続ける2人を見る…!

 

「どうしたのだ遊星!?何かわかったのか!」

 

「あぁ…もしこの可能性が真実なら…オレ達は負けるかもしれない!!」

 

 

「「「なんだって!?」」」

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

太郎LP4000対クロウLP2400

 

 

 

 

『「スピードワールド2」の効果発動!スピードカウンターを4つ取り除いて相手に800ダメージを与える!』

 

「また同じ手かよ!?だが甘いぜ!『ブラックフェザードラゴン』がフィールドにいる時!攻撃力を下げる事で効果ダメージを無効にする!」

放たれた雷撃はブラックフェザードラゴンに吸収される!

 

「(よし…!これで効果ダメージは喰らわない…だが…)」

スピードワールドの効果を躱したクロウは太郎に振り返る…そこには…

 

『…!』

 

「(諦める気配はねぇ…何を狙って)…んん?」

前を向いたクロウに龍亞がプラカードを掲げている!

 

CAUTION(注意) ZUSHIN!]

 

「ズシン…『眠れる巨人ズシン』だとぉ!?」

その言葉を見たクロウは思わず驚愕の声をあげた…

 

『くっ…チーム5D'sが作戦に気づいたか…!だがもう遅い!!あと1ターンだっ!!』

 

 

 

 

 

Side5D'sピット

 

 

「『眠れる巨人ズシン』だと!?」

 

「ああ…!チーム太陽の目的はレベル1の通常モンスターである『キーメイス』を自分達のターンで10ターン…オレ達のターンも入れて20ターン生き残らせる事だったんだ!」

 

遊戯王…もといデュエルモンスターズには特殊な召喚条件を持つモンスターがいる、簡単なところでいえば『三幻魔』のように特定の種類のカード3枚をリリースして召喚するモンスターや『究極完全体グレート・モス』のように『プチモス』に『進化の繭』を装備した状態で6ターンかかるものもある…その中でもっとも難しい召喚条件を持つモンスター…それが『ズシン』なのである。

 

 

「『ズシン』は純然たるノーマルカード、誰でも持っているカードだが…召喚されればその力は三幻神にも匹敵するという…!」

 

「ああ、その通りだ遊星、ジャック…それがチーム太陽の狙いだ…俺もまさかその場面に立ち会うとは思わなかったけどな…」

 

「でも…どうして遊海さんは太郎達の作戦に気がついたの?」

龍可が遊海に問い掛ける…

 

「それはな…『ズシン』をデザインしたカードデザイナーと顔見知りだからだよ…」

 

実はこの『ズシン』…過去に『ラーの翼神竜』のコピーカードを盗み出したカードデザイナー・フランツのデザインしたカードなのだ。

遊海とのデュエルの後にペガサス会長と和解したフランツは「強すぎる力には大いなる悲劇が伴う」という言葉を胸に新たなカードを作っていった、その完成形とも言えるのが『眠れる巨人ズシン』だった…効果は強力だが、それを発揮するにはとてつもない困難が伴う…まさに『大いなる力を手にするには試練を伴う』…それがこのカードのデザインコンセプトだったのだ。

 

 

「だが…まだ召喚はされていない!クロウ!早く『キーメイス』を破壊するのだ!!」

ジャックがクロウに激を飛ばす…デュエルの行方は果たして…

 

 

Sideout

 

 

 

『な、なんとぉ!!チーム太陽は「眠れる巨人ズシン」の召喚を狙っているようだ!!もしもこのモンスターが召喚されたら…それはデュエルモンスターズの公式戦で初の事態!我々は奇跡の目撃者になるぞぉ〜!!!』

 

「「「なんだって!?」」」

資料を渡されたMCの言葉に観客は騒然となる、ズシンはありふれたカードだからこそ…その召喚された姿を誰も見た事がないのだ。

 

 

「『ズシン』を見たい!」

 

「奇跡を起こしてくれ!チーム太陽!!」

 

「「「「太陽!太陽!太陽!太陽!」」」」

 

 

「会場が…観客全員がチーム太陽を応援している…!」

会場が太陽コールに包まれる…観客の中には『ズシン』のカードを掲げて応援している者もいる…!

 

「不味い…会場全体がチーム太陽に持っていかれてる…!」

 

「これはチーム太陽にとって追い風になるぞ…!クロウ!絶対に『ズシン』を出させるな!!」

 

「わかってる!相手の作戦がわかれば…それを阻止するしかねぇ!!」

ジャックの声を聞いたクロウはキーカードである『キーメイス』を破壊する為に動きはじめる!

 

 

「オレのターン!バトルだ!『ブラックフェザードラゴン』で『キーメイス』を攻撃!ノーブルストリーム!!」

 

『やらせない!リバース罠「はさみ撃ち」!俺の場の「ザリガン」と「コピックス」を破壊する事で「ブラックフェザードラゴン」を破壊する!』

 

「させるか!リバース罠『ボム・ガード』発動!破壊効果を無効にして500ダメージを与える!これでどうだ!!」

 

『まだだ!リバース罠「ドラゴン族・封印の壺」を発動!「ブラックフェザードラゴン」を守備表示に変更する!!』

 

「ち…ちくしょおぉぉ!!!」

激しいトラップ合戦の末に…太郎はついに『キーメイス』を守りきった、そして…!

 

 

 

『来た…!やったぞ!!俺達は遂に守りきったんだ!!俺のターン!!このモンスターは自分ターンで10ターン以上フィールドに存在するレベル1・通常モンスターをリリースする事で特殊召喚できる!!現われろ!!俺達の絆の結晶!!「眠れる巨人ズシン」!!』

太郎がカードを掲げその名を叫ぶ…そしてスタジアムに変化が現れる、空が暗雲に包まれ…そして

 

 

ビシャァァン!!

 

激しいカミナリがデュエルレーンに直撃する…そして地面が砕け、長き眠りから目覚めた浅黒い肌の巨人が現れる…!それこそがチーム太陽の切り札…「眠れる巨人ズシン」!!

 

《ガアアアアア!!!!》

 

ズシンが咆哮を轟かせる、それだけで周囲のガラスが砕け散る程の衝撃波が発生する!

 

 

「これが『ズシン』…!?デカすぎるぜ!?」

クロウはズシンの姿を見て絶句する、その大きさは伝説の『オベリスクの巨神兵』を思い起こさせる程だった…!

 

『やっと会えたな「ズシン」!さぁ!一緒に戦おう!!』

 

《ガアアア!!》

太郎の言葉に応えるようにズシンが咆哮する!

 

 

 

 

『この放送を見ている…そしてこのデュエルを見に来ているみんな!!誰が…誰がこの瞬間を想像出来ただろうか!!今、我々は奇跡を目の当たりにしている!長きデュエルモンスターズ史上、このモンスターを召喚出来たデュエリストは一人もいない!そのモンスターの名は!「眠れる巨人ズシン」!そして…その奇跡を起こしたのは、無名のチーム、チーム太陽だぁぁ!!』

 

「「「ズシン!ズシン!ズシン!!」」」

スタジアムがズシンコールに包まれる…!

 

 

《…間違いありませんユウミ…今のズシンは私達に匹敵する力を発揮しています…!》

 

「なんだって?どういう事だ?」

肩に現れたフレアの言葉に遊海が尋ねる

 

《ズシンは今、たくさんの人々の想いを受けています…その想いがズシンの精霊に力を与え実体化しているのです…!》

 

「そうか…デュエルレーンのガラスが割れたのもそういう事か…!」

今のズシンはまさに人々の想い(祈り)を受けて「希望の神」とも言える状態に昇華している…フランツは本当に天才だったか…!

 

 

 

 

 

『「ズシン」の攻撃力は相手と戦闘を行う時、常に相手モンスターの攻撃力に+1000した数値になる!さらにこのカードと戦闘を行う相手モンスターの効果は無効になる!バトルだ!「ズシン」で「ブラックフェザードラゴン」を攻撃!ズシンパンチ!!』

 

「ぐぉ!?」

ズシンの巨大な拳がブラックフェザードラゴンを破壊する…さらに

 

『さらにリバース罠「パワースロー」を発動!俺の場に残った攻撃力800の「ドレイク」をリリースして攻撃力の2倍、1600ダメージを与える!!』

 

「ちぃ…!ここまでか!!だけどただでは終わらねぇ!!ジャックの残したリバース罠『モンスター・バトン』を発動!手札の『尖鋭のポーラ』を墓地に送り、このカードにその効果を与える!!うわあああ!!」

太郎のダメ押しの一撃でクロウのライフは尽きてしまった…。

 

クロウLP0

 

太郎WIN!

 

 

 

 

『強い!強いぞ「ズシン」!!クロウがここで脱落だ〜!!』

 

 

 

 

「すまねぇ遊星…ズシンを召喚させちまった…!正直あんなモンスター…どうやって倒せばいいんだ?オレにはまったくわからねぇ、策はあるのか…遊星…!」

ピットへと戻ったクロウが遊星に問い掛ける

 

「…さぁな、だがオレはこのデュエルを楽しむだけだ!…行ってくる!!」

バトンを受けた遊星が遂に太郎と相対する!

 

 

 

「すごいな太郎…まさかこんな戦術で来るなんてな…!」

 

『遊星に認められたなら…俺はとても嬉しい!!さぁ、勝負だ!遊星!!』

 

「望むところだ!!」

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

遊星LP4000対太郎LP3500

 

 

 

 

ついに始まったラストホイーラー同士のデュエル…遊星はすぐにエースカードである『スターダストドラゴン』を召喚する、対する太郎は『スピードワールド2』の効果を使い遊星にダメージを与え、『ズシン』で追撃を仕掛ける…だが遊星は罠カード『パワーシフト』を『スターダスト』を対象に発動、『スターダスト』の攻撃力を0にする事で『ズシン』の効果を逆手に取り、守備表示の『スターダスト』を攻撃させる事でカウンターダメージを与える事に成功する。

だが太郎もただでは終わらない、罠カード『白兵戦』を発動し遊星へとさらなるダメージを与える。そして次のターン、遊星は『ターボシンクロン』を召喚しターンを終える…そして太郎のターン、罠カード『メテオレイン』を発動し貫通能力を得た「ズシン」が「スターダスト」に迫るが…ここからが遊星の本領発揮である!

 

 

「リバース罠『エンジェルリフト』を発動!墓地の『チューニングサポーター』を特殊召喚!さらに『緊急同調』を発動!オレはレベル1の『チューニングサポーター』にレベル1の『ターボシンクロン』をチューニング!!」

 

1+1=2

 

「集いし願いが新たな速度の地平へ誘う!光さす道となれ!シンクロ召喚!希望の力、シンクロチューナー『フォーミュラ・シンクロン』!」

現れたのはシンクロチューナーであるフォーミュラシンクロン…そしてフィールドにはスターダストがいる!

 

『シンクロ…チューナー…!?』

 

「太郎!お前達は眠れる巨人を呼び覚ました強敵だ!君達に勝つ為にオレも全力で立ち向かう!!」

遊星はDホイールの速度を爆発的にアップする!!

 

 

「(倒せないはずの巨人を倒す力…不可能を可能にする為に今のオレにできるのは…己の限界に挑む事!!)」

遊星は再びその境地に足を踏み入れる…スピードのその先へ─!

 

 

ピチョン

 

 

「クリアマインド!!オレはレベル8の『スターダスト・ドラゴン』にレベル2シンクロチューナー『フォーミュラシンクロン』をチューニング!!」

 

8+2=10

 

「集いし夢の結晶が!新たな進化の扉を開く!光さす道となれ─!!」

クリアマインドを発動した遊星は音速を超えて光の速さへと至る!

 

 

「アクセルシンクロォォォ!!」

 

ビシュン!!

 

『き、消えた!?』

遊星は太郎の目の前から消え…新たな力と共に再び現れる!

 

 

「招来せよ!!『シューティング・スター・ドラゴン』!!」

《ギュアアアン!!》

白き龍が天空へ羽ばたき咆哮する!これこそが遊星の切り札…シューティングスタードラゴン!!

 

 

『まさか罠カードを使わないで相手ターンにシンクロ召喚をするなんて…だけど…「ズシン」は無敵だ!!いけ!「ズシン」!ズシンパンチ!!』

 

「『シューティングスター』の効果発動!!」

《ギュアアアン!》

咆哮したシューティングスターは異次元へと消え去る!

 

『『モンスターが消えた!?』』

 

「『シューティングスター』は任意のタイミングで自身をターンの終わりまで除外できる!そしてバトルの対象が消えた事で『ズシン』の攻撃力は0となる!」

 

『まだだ!リバース罠「愚者のサイコロ」発動!相手モンスターがフィールドから離れたとき、そのレベル✕200のダメージを与える!2000ダメージだ!』

 

「なにっ!!」

太郎はこの事態を予測していた…遊星のライフは残り500…スピードワールド2のレッドラインを下回ってしまう…!

 

『俺のスピードカウンターは2つ…次のターンをしのげば…俺達の勝ちだ!…だけど遊星、君はまだ諦めていないみたいだね…!』

 

「ああ!オレも君達と同じだ!仲間を信じ自分達の力を信じている!最後まで決して諦めない…それが『チーム5D's』だ!…そして諦めなければ俺達にも必ず勝機は訪れる!これがオレ達の…最後のドローだ!」

遊星がデッキトップに手をかける…!

 

 

 

 

「オレのターン…ドロォォ!!来た!!」カンコーン!

遊星が引いたカード…それは仲間を繋ぐ希望のカードだった!

 

「バトルだ!『シューティングスター』で『ズシン』を攻撃!」

 

『無駄だ!俺達の「ズシン」を倒す事は不可能だ!!』

 

「ああ、オレの『シューティングスタードラゴン』だけでは不可能だ…だが、()()()()『シューティングスタードラゴン』なら…話は違う!!」

 

『なに!?』

 

「手札のレベル5『アースクエイクジャイアント』を墓地に送り罠カード『モンスターバトン』に込められた『尖鋭のポーラ』の効果発動!!『シューティングスタードラゴン』を戦闘とダメージから守り…バトルしたモンスターを破壊する!」

 

『無駄だ!「ズシン」はバトルするモンスターの効果を…しまった!!』

 

「そうだ!この効果は『シューティングスター』の効果じゃない!ジャックやクロウ…仲間達から貰った力だからだ!!」

遊星はこの時を待っていた…仲間達から受け継がれたバトン…絆の力を!

 

 

「いけ!『シューティングスター』!!スターダスト・ミラージュ!!」

神速の突撃が眠れる巨人を貫き爆発する!

 

 

『た、倒れた!無敵の巨人が輝くドラゴンに倒された〜!!』

 

『まだだ!このターンさえしのげれば!!』

ズシンが倒れてなお太郎は諦めない…しかし、諦めないのは遊星も一緒だった!

 

「これで…最後だ!リバース罠『炸裂突破』!自分のレベル8以上のモンスターが相手のレベル8以上のモンスターを破壊し、自分フィールドにモンスターが1体だけの時!攻撃力を800下げる事で再び攻撃できる!!」

 

『2回目の攻撃─!?』

 

「『シューティングスター』でダイレクトアタック!!スターダスト・ミラージュ!!」

空中で旋回したシューティングスターが太郎へ突進…そのライフを削りきった…!ここに長きデュエルは終わりを迎えたのだった…。

 

 

太郎LP0

 

チーム5D'sWIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ついに決着〜!!チーム5D'sがズシンを倒し!奇跡の逆転勝利だ〜!!』

 

「「「わああああ!!」」」

会場が歓声に包まれる…あまりにも長く続いたデュエル、それにより太陽は沈みかけていた…。

 

 

『負けたのか、俺達?ごめん、俺……勝てなかった』

 

『馬鹿!オレ達はあの「眠れる巨人ズシン」を召喚出来たんだぞ最高じゃないか!!』

 

『超最高だったよ!ズシンが出てきた時なんてビビッてチビりそうになったよ!』

ピットへ戻った太郎を甚兵衛と吉蔵が慰める…そこへ

 

 

「良かったぞー!感動したぞ!チーム・太陽!!またズシンを見せてくれよ!」

 

「次の大会にも出てくれ〜!」

 

『お客さん達…』

大健闘を魅せたチーム太陽に暖かい拍手が送られる…

 

「みんなが君達を称えている。君達のデュエルは、これだけの人達の心を動かしたんだ」

 

「試合に勝ったのはオレ達だが、デュエルで勝ったのはお前達かもしれねえな。なぁジャック?」

「ああ、見事なデュエルだった!」

遊星達も太郎達に言葉を送る…

 

『ありがとう…遊星、みんな!チーム・太陽は何度沈もうとまた昇って光り輝く!帰ろうぜ、ヨシ!ジン!俺達は俺達の居場所で俺達の世界を照らそう!!』

遊星達と握手を交わした太郎達は晴れやかな笑顔でデュエルレーンをあとにした…。

 

『素晴らしいデュエルだったぞチーム・太陽!敗れはしたがその心はまさに太陽の様に私達の心を照らしてくれましたぁ!!勝利したチーム5D's!次の試合も期待してるぜ?今日はここまでだ!シーユーアゲイン!!』

 

MCの言葉を以て試合は締められた…しかし、邪悪な陰謀は…すぐそこへ迫っていた…。 

 

 

『勝ち進んで来い、チーム5D's…さすれば我々との決勝で我が計画は成就されるのだ…!』

 

 

運命の日まで…あと僅か…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

Side太郎

 

「さて…この部屋ともお別れだな…メタルナイトにもお世話になっちゃったな…」

 

「うん…でもお金は先払いだったみたいだし…今度ボク達の農園の野菜や果物を送ってあげようよ!」

 

「それがいい!」

大会の翌日、荷造りを終えた太郎達はネオドミノシティを離れようとしていた…。

 

 

「お土産も買ったし、大会本部から交通費も出たし…帰ろう!俺達の故郷に!」

 

『ちょっと待った〜!!』

 

「「「へっ!?」」」

街をあとにしようとした太郎達に1人の青年が声をかける…それは…

 

 

「万丈目さん!?どうしてここに!?」

 

『その言い方はないだろ?お前達に話があって探していたんだ!』

追いかけてきたのは以前にお世話になった万丈目だった、万丈目は三人に名刺を手渡す…その裏には電話番号が書いてある…

 

「あの…これは…?」

 

『その番号は万丈目グループの百貨店の社長の番号だ、お前達は農家なんだろ?そこへ掛けてオレの名前を出せ…品質にもよるが…相場以上の値段で野菜や果物を仕入れてやる……いいデュエルを見させて貰った礼だ』

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

『フッ…!これからも頑張れよ!チーム・太陽!じゃあな!!』

 

そう言って万丈目は去って行った…。

 

 

 

 

「…都会にも優しい人がいるんだなぁ…」

 

この後にチーム太陽の三人はそれぞれの家業を継ぎつつ農家デュエリストとなるのだが…それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

『さて…これで決勝を見届ければ終わりだが…あの逆さまの島はなんなんだ?』

 

《アニキ〜…なんかあの島?城?から嫌な感じがするよ〜》

 

「ああ、他の奴らには見えてないみたいだ…遊海先生に聞こう、何かわかるかもしれん」




〜番外編〜

チーム太陽戦終了後…


「遊海さん…聞きたい事があるんですが…」

「どうした遊星?」

「遊海さんならどうやってあの『ズシン』を倒しましたか?」

「俺ならか…例えば相手を対象に取らずアドバンス召喚のリリースにできる『帝王の烈旋』でリリースするか…『氷結界の龍トリシューラ』で除外するか…高い守備力の『超重武者』で返り討ち…ああ、『クリスタルウィングシンクロドラゴン』で返り討ちにも…」

「…もう1人でいいんじゃないか?」



※アニメ版ズシンは「効果の対象にならない」で、OCG版は「他のカード効果を受けない」なので注意しましょう!
(なお、ライトニングには殴り倒される模様…)




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ルーンの瞳を持つ決闘者〜神々の黄昏〜

こんにちは!S,Kです!

白猫で世界を救ったり、ぐだぐだな戦国時代を駆けていて遅れました、すいません!

それでは最新話をどうぞ!


「はぁ!?あの逆さまの島がこの街を滅ぼす!?」

 

「ああ…それが俺達の戦う秘密結社・イリアステルの目的だ、それを阻止する為に俺は遊星達や5D'sと一緒に戦ってきたんだ」

 

 

チーム太陽戦から2日後、チーム・ラグナロクとの対戦の前日に訪ねてきた万丈目に俺は事情を説明する…どうやらアーククレイドルは赤き竜の痣やルーンの瞳がなくとも一定以上の精霊の力があれば目視できるらしい…。

 

 

「まったく…なんで先生の行く先々ではいつも世界の存亡を懸けた戦いが起こるんですか?」

 

「さぁな…運命としか言いようがない、もう慣れたよ?」

 

「慣れたらダメだろ…」 

 

《アニキ〜、遊海に常識は通用しないって…》

 

《イエローに同じく〜》

 

《グリーンに同じく〜…プリンおいしい〜!》

 

「え〜い!黙ってろおジャマども!!」

万丈目とおジャマ三兄弟のコントは相変わらずである…。

 

 

 

「それで遊海先生…イリアステルと戦う為にオレが役に立てる事はあるか?先生には返しきれない恩がある…少しでも助けになりたいんだが…」

 

《アニキかっこいい〜!》

 

「手助けか…イリアステルと戦うのは俺達の役目だ、特には……いや、保険を掛けておくか…」

 

「保険…?」

遊海は考えた末に…万丈目に頼み事をする事にした…。

 

 

…………

 

 

「…まさか、そんな事が…!?」

 

「ああ…これはあくまでも『最悪の事態』を考えた時の保険だ…万丈目、お前だからこそ頼める事なんだ…いけるか?」

 

「ええ…任せてください!必ず間に合わせてみせます…!」

 

「ありがとう…頼むぞ、万丈目…!」

万丈目と遊海は固く握手を交わした…

 

 

 

 

 

 

 

 

《マスター…この事を遊星達や翠さんにも伝えた方が…》

万丈目が帰ったあと…遊海の話を聞いていたアヤカが遊海に進言する

 

「いや、遊星達にはこれ以上負担を掛けたくない…それに…これは俺の…()()が片付けるべき問題だ…!」

 

《マスター…ヒャウ!?》ナデナデ…

 

「そう心配そうな声を出すなよアヤカ、あくまでも保険さ…俺が決着をつければすむ話だからな…」

 

《ま、マスター…くすぐったいです〜》

遊海は優しい顔でアヤカを撫でる…

 

「ハハッ…たまにはいいじゃないかアヤカ、大丈夫…俺は負けないさ……アテムから受け継いだ『決闘王』の称号に懸けて…!必ずアイツを…奴を止めてみせる!」

 

《マスター…わかりました!私もマスターのパートナーとして精一杯サポートします!》

 

「ああ、頼りにしてるぜ?相棒!」

 

《はい!…ところでマスター、そろそろ遊星達との約束の時間では?》

 

「しまった!?試合前のプラクティスに付き合う約束をしてたんだ!精霊変身!」

遊海は鎧を纏い遊星達のもとに向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

「次はいよいよチーム・ラグナロクとの試合ね…!」

 

「ああ、遊戯さんや遊海さんと同じく『神』を持つデュエリスト、ドラガンにブレイブ…そしてリーダーのハラルド、イリアステルの野望を阻止するには彼らを倒して決勝へ進むしかない」

 

遊星達5D'sのメンバー達は次の対戦相手のチームラグナロクについて調べていた…、彼らは世界No.1レベルのデュエリストであると言われている…。

 

 

「しかしよぉ…この前の遊海とのデュエルは凄かったよな、『決闘王』の力の一端を見たって感じだぜ…それにドラガンの出した『極神皇トール』もすげぇパワーを感じたぜ?」

 

「フン…くだらん、『星界の三極神』など俺の『レッドデーモンズドラゴン』で粉砕してくれる!それとも神と戦うのが怖くなったか?クロウ」

エキシビジョンデュエルの事を思い出したクロウをからかうようにジャックが尋ねる

 

「冗談キツイぜジャック…んな訳ないだろ?オレだってぶっちぎりで勝ってやるぜ!」

 

「2人とも気合い充分だな、よし…本番前の最終調整に行こう!」

 

「ああ!今日も突っ走るぜ!」

遊星達はプラクティスへと向かおうとするが…ジャックが待ったをかける

 

「待て、遊海はどうした?今日は俺達に付き合うはずだろう?」

 

「そういえば…」

 

「どうせまた人助けでもしてるんじゃないか?あの人はこの町のヒーローだからな〜」

 

バタン!

 

「すまん!遅刻した!」

 

「噂をすれば、だな…」

 

「お疲れ様です遊海さん、ちょうど出発するところです」

精霊アーマーを纏った状態の遊海がガレージに駆け込む。

 

「間に合ってよかった〜、少し人と会う用事があってな…今日はよろしくなお前達!…アクセラレーション!」

遊海はキーワードを呟きDホイール・ホイールフォートレスを出現させる

 

「…前々から思ってたけど…遊海は何処からDホイールを出しているんだい?気付けば乗ってるし、気付けば消えてるし…?」

今更のようにブルーノが遊海に尋ねる

 

「ん?簡単な話だ、俺は自分専用の『アイテムボックス』を持ってるのさ」

そう言いながら遊海は一度変身を解き胸元から鍵のようなネックレス・賢者の鍵を取り出す

 

「この鍵で俺が空間を割ると専用の亜空間に行けるんだ、その中にカードやDホイールを収納してあるんだよ」

 

「すご〜い!ゲームの魔法使いみたいだ!」

 

「遊海さんにできない事はあるのか…?」

龍亞は目を輝かせながら驚き、遊星は遊海の万能さにもはや呆れている…

 

「遊海はそういう事もできるんだ〜…、そうだ!良ければ遊海のDホイールを見させてよ!車体の姿が変わったり馬力が高いのも気になるし!」チャキ

 

「ダメです」

 

「そんな〜…」

遊海は両手に工具を持ったブルーノの頼みを一言で切り捨てた

 

 

「これから走るんだから変に弄られたら困るからな…また今度にしてくれるか?」

 

「う〜ん…わかった!今度は調べさせてもらうからね?」

ブルーノは少し残念そうだったが納得してくれたようだ。

 

「待たせたな遊星、早速ひとっ走りと行こうか!」

 

「はい!」

「「いってらっしゃ〜い!」」

そして遊海と遊星達はデュエルレーンへと向かった。

 

 

 

 

…………

 

 

 

「よし、こんなところだな…今日はもう終わりにしよう、明日の試合も頑張ろうな遊星、ジャック、クロウ!」

 

「うむ、調整もバッチリだ!チームラグナロクなど蹴散らしてくれる!」

 

「遊海さん!今日はありがとうございました!」

 

「しかし…まさか壁を走るなんてな…何処でそんなライディングを身に着けたんだよ…」

時は過ぎ夕方…調整を終えた遊海達は海浜公園で休憩をとっていた…

 

 

「しかしよぉ、あの逆さまの島…なんだか大きく…いや、近づいて来てねぇか…?」

クロウが空を見上げる…その視線の先にはイリアステルの本拠地…神の居城であるアーククレイドルが浮かんでいる、その大きさは最初よりも大きくなっているように

見えた。

 

 

「ああ、あの島が何をもたらすのかはまだわからない…だが三皇帝を倒せばきっとあの島も消えるはずだ」

 

「そうだな遊星…もう少し近くでアレを見てみよう、何かわかるかもしれん」

 

「ああ!行ってみようぜ!」

4人はアーククレイドルを観察する為に見晴らし台へと向かった…。

 

 

 

 

 

「ん?誰か先客がいるみたいだな…ってあれは…!?」

 

「チーム・ラグナロク…!」

 

「…どうやら、彼らにもあの城が見えているらしいな…」

見晴らし台へと訪れた遊星達…そこではチームラグナロクの三人が空に浮かぶアーククレイドルを見つめていた…。

 

 

『どうやら…あれが見えるのは我々だけではないらしい…チーム5D's…そして鋼の騎士よ』

 

─!

 

キィン─!

 

遊星達に気付いて振り返ったラグナロクの三人の左目にルーン文字が浮かび光輝く…それと同じくして遊星達の持つ赤き竜の痣も赤く光を放つ…!

 

 

 

「痣が反応している…!何なのだあの瞳は…!」

 

「伝わってくるぜ…!奴らの目と赤き竜の痣が共鳴してやがる…!」

 

「ああ、彼らは北欧の神に選ばれた決闘者だ…俺達と同じく特別な力を持っていてもおかしくないさ」

 

『へぇ、冷静じゃないかメタルナイト…アンタも遊星達も強い力を持っているらしいな』

 

『だが…我らの力には及ばん!』

ブレイブが遊星達の力に興味を示し、ドラガンが遊星達を睨みつける…

 

 

『この瞳は星界の三極神に選ばれた証「ルーンの瞳」…どうやら君達もあの「歴史を改変する波動」の影響を受けないらしい…今、この世界には危機が訪れようとしている…そしてあの物体こそが破滅の予兆…フィンブルの冬を齎すモノだ』

 

「フィンブルの冬…?」

 

「フィンブルの冬…北欧神話の終焉『ラグナロク』の予兆といわれる現象の事だ、夏を挟まずに3度の冬が立て続けに訪れて人々が終わらない争いを始め、秩序道徳が消えてしまう…だったかな?」

遊星の疑問に遊海が答える

 

『ほう、貴方はなかなか博識のようだ、我々にも確かな事はわからない…しかし、チーム・ニューワールド…奴らと大きな関係があると思っている、我らの使命は奴らを倒す事…それがルーンの瞳を持つ者に与えられた使命だ』

ハラルドはルーンの瞳を輝かせながら話を続ける

 

『ルーンの瞳とは…星界の三極神の力を継承する者の証、君達には我々が持つ星界の三極神の力を教えておいてやろう』

 

「三極神の力だと?」

ジャックが怪訝そうな顔でハラルドに問う

 

『星界の三極神とは…遥か古の神話の時代から伝わりしカードだ、そのカードは三枚ありそのうちの一枚が古くから私の家に伝わってきた…そして「世界の危機が近づく時、星界の三極神の真の力が目覚める」と言い伝えられて来たのだ…」

 

 

そしてハラルドは語り出す、北欧の軍人だった数年前に歴史改変の力…フィンブルの冬の予兆を感じ軍を退官、その後2体の極神の継承者を探し…それがドラガンとブレイブだった事。

ドラガンはとある決闘で自身のプライドを傷付けられ、死に急ぐような登山を続ける中で生命の危機にルーンの瞳が覚醒しハラルドと出会い仲間となった。

ブレイブはトレジャーハンターとして活動しハラルドと「極神皇ロキ」の眠る遺跡を訪れカードを奪い、逃げる中でルーンの瞳が目覚めハラルドの仲間となった…それがチーム・ラグナロクの成り立ちだった。

 

 

 

『三極神は北欧の空を支える力とも言われている…我々はその力を借り、これから訪れるであろう脅威から世界を守らなければならない、その鍵を握っているのがチーム・ニューワールド…となれば決勝で奴らを倒す事でその謎が解けるはずだ』

 

「世界を脅威から守る…だとしたら俺達と目的は同じはずだ、俺達もチーム・ニューワールド…イリアステルを倒す事が目的なんだ、俺達と協力しないか?」

ハラルドの話を聞いた遊星はラグナロクに協力を持ちかける、赤き竜と三極神…2つの力が協力すればイリアステルを追い詰められると…しかし

 

『残念だが協力する事はできない…三極神は君達を味方とは思っていないようだ』

 

「なにっ?」

光を放つ『極神聖帝オーディン』のカードを持ちながらハラルドは遊星の提案を拒絶した。

 

 

『そもそも…ゼロ・リバースを招いたのは君の父である不動博士…その血を受け継ぐ君には破滅の運命が纏わりついているのかもしれないからな…!』

 

「貴様…!遊星!こんな奴らと手を組む事はない!!こんな言いがかりをつける奴らと組まずとも俺達は…!」

 

『フン…!相変わらずプライドだけは一流気取りだなジャック・アトラス!』

 

「お前は…ドラガンだったな、お前はエキシビジョンマッチの時から俺を睨んでいた…俺に言いたい事があるなら言ってみろ!」

ハラルドの言葉に怒りを露わにしたジャックにドラガンが話かける…その目はジャックを見下しているように見えた。

 

『ああ、言ってやる!ジャック・アトラス!俺と貴様には忘れられない因縁がある!貴様のせいで…俺は決闘者としてのプライドを失ったんだ!!』

 

ドラガンは語る…数年前、父と共に「トール」のカードを発掘したドラガン…その直後、「トール」の安置されていた遺跡が崩落…ドラガンの父は重傷を負い、治療には多額の治療費が掛かってしまう…ドラガンは頭を抱えていたが…そこにゴドウィンの指示を受けたイェーガーが現れたのだ。

 

『そしてあのピエロは言った…「ジャック・アトラスとデュエルをしてワザと負けてほしい、そうすれば治療費を肩代わりする」と…!!』

 

「なんだと…!?」

ジャックはその言葉を聞いて驚いた…その頃のジャックはサテライトを脱出しいわば売り出し中だった、ゴドウィンはジャックのキングとしての地位を固める為に八百長を持ちかけたのだ。

 

『…そして俺はプライドを棄てた…勝つ事ができたデュエルを放棄して俺は…!金を選んだ…!!』

ジャックとのデュエルを受けたドラガンは父を救う為に決闘者としてのプライドを傷付けられたのだ…

 

 

『俺があの時、切り札を使っていれば…お前に負ける事はなかった!!俺はお前を倒して誇りを取り戻す!!』

 

「フン…くだらんな!単なる逆恨みではないか!貴様は金を得る為に俺に負けた…だが勝てただと?思い上がるな!!その考え…もう一度貴様を叩き潰す事で改めさせてやる!!」

ドラガンの憎悪をジャックは真正面から受け止めた、遊海との出会いで精神的に成長していたジャックにはドラガンからの精神攻撃はあまり効いていなかった。

 

 

『チーム5D's!明日がWRGP事実上の決勝戦だ!そのデュエルに勝利した者がイリアステルと戦う権利を得る!!』

 

「オレ達も負けるわけにはいかない!!決着をつけよう!チームラグナロク!!!」

遊星とハラルドは静かに火花を散らす…世界を救うはずの2チームの決戦は明日に迫っていた…。

 

 

 

 

 

「チームラグナロク…こんな形で戦う事になるとは…」

 

「ああ、まさかあんなわからず屋とは思わなかったぜ…」

 

「遊星、俺はイェーガーのところへ行ってくる…!あの時の話を聞かなければな…!」

 

「ああ、わかった…遊海さん、俺達も一度ポッポタイムに…遊海さん…?」

チームラグナロクが立ち去り、遊星達もガレージに戻ろうとする中…遊海は1人、その場に立ち尽くしていた。

 

「どうしたんだ遊海…気分でも…《クロウ!離れなさい!!》えっ…!?」

遊海に話しかけようとしたクロウをフレアが制止する、その瞬間…!

 

 

ボッコォォン!!

 

 

「「「うわっ!?」」」

遊海の周囲の地面が大きく陥没する…!

 

 

「ハラルド…!お前は大きな勘違いをしてる…!!モーメントを開発したのは確かに不動博士だ…!だが!!あれは不動博士のせいなんかじゃない─!!」ビリビリビリ

 

「遊海、さん…!」

 

「め、滅茶苦茶怒ってやがる!?」

遊海は怒っていた…何も知らないのに噂だけを信じて不動博士を…遊星を貶めるハラルドに対して…そして、その怒りは自身にも向けられていた。

 

「遊海!落ち着け!お前の怒りはわかるが…!」

 

「っ……すまない、取り乱した」シュウウウ…

深呼吸した遊海は冷静さを取り戻す

 

「悪いな遊星、行くところができた、また明日会おう…来い!『閃光竜』!!」

《キュオオン!!》

 

「えっ!?遊海さん!?」

遊海はそのまま閃光竜に乗り飛び立った…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

Sideハラルド

「おかえりなさいませ、ハラルド様」

 

『今戻った…何か報告はあるか?』

遊星達と別れ拠点のホテルに戻ったハラルド達…彼らをハラルドの執事であるセバスチャンが出迎える

 

「はい、先程チームラグナロクにお会いしたいという連絡がございました」

 

『私達に?雑誌の取材か?それともスポンサーの誰かかな?』

ハラルドの答えにセバスチャンは首を振る

 

「いいえ、WRGPの主催者…海馬コーポレーションの社長・海馬瀬人氏からです」

 

『『『なんだと!?』』』

思わぬビッグネームにラグナロクのメンバーは驚きをあらわにする

 

「如何しますか?」

 

『…会いに行こう、伝説の決闘者に会えるならば我らも光栄だ』

ハラルド達は海馬の待つKCへと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フン…よく来たなチーム・ラグナロク、お前達の活躍は俺の耳にも届いているぞ」

 

『伝説の決闘者の1人である貴方に我らの事を知ってもらえているとは光栄です』

 

『(この人が決闘王のライバル…!)』

 

『(凄まじい存在感だ…!)』

Kを訪れたハラルド達は海馬と握手を交わす、神のカードを持つ彼らでも海馬の持つオーラに圧倒されていた。

 

 

『それで…私達に話があるとの事でしたが…?』

 

「うむ…俺は()の仲介をしたに過ぎん、話があるのは我が友の方だ」

 

『海馬社長の友人…?それはいったい…?』

海馬の言葉にハラルドは怪訝そうな顔をする

 

「紹介しよう…俺の友でありこの町のヒーロー…」

 

「さっき振りだな、チームラグナロク」

 

『鋼の騎士…!』

 

「メタルナイトだ」

海馬の背後に鎧を纏った戦士が姿を現した…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっき振りだな、チームラグナロク」

 

『鋼の騎士、メタルナイト…まさか、海馬社長とも繋がりがあるとは…驚きました』

突然現れた遊海にハラルドは目を見開く

 

 

『ま、待て…!今、何処にいたんだ!?』

 

『気配を感じるどころかルーンの瞳でも見えなかったぞ!?』

 

「俺は最初から此処にいたぜ?気配を消してな」

 

『ルーンの瞳の力をすり抜けるとは…!』

ラグナロクの面々は遊海の技を見て戦慄する…

 

 

「フン、相変わらずお前は特殊な力を使うな…俺もお前がいる事を忘れていたぞ?」

 

「冗談言わないでくださいよ、海馬社長」

 

『(海馬社長とあんなに気安く話すとは…友人というのは本当か…)それでメタルナイト…我らに話というのは?』

ハラルドは遊海に要件を尋ねる

 

「ああ、お前達は間違った噂しか知らないようだからな…それを訂正してもらいたい」

 

『訂正…?何を…』

 

「お前達には真実を伝えよう…ゼロ・リバースの本当の原因を…そして遊星達がどんな戦いを経てWRGPへ臨んだのかを…」

そして遊海はラグナロクにネオドミノシティで起きた出来事を語り始めた…。

 

 

 

………

 

 

 

『ゼロ・リバースの影にイリアステルの干渉があった…あくまでも不動博士はそれに巻き込まれただけだと…貴方はそう言いたいのですか…』

 

「そうだ、イリアステルがゴドウィン兄弟を唆しゼロ・リバース…そして地縛神事件が起きた、それが真実だ…確かにモーメントを作り出したのは不動博士だ、でもあの人は世界を平和にする為に開発を行なった…決して破滅の運命を背負う人なんかじゃないんだ…!」

全てを話した遊海はハラルドの確認にそう答える…しかし

 

『それでも…我々は彼らを信じる事はできない、ゼロ・リバースの裏にあった陰謀はわかった…しかしモーメントを作り出し、それによって大きな被害があったのもまた事実…三極神も納得していないようだ』

ハラルドは左目を輝かせる…事実を聴いてなお彼らは考えを変えるつもりは無いようだ。

 

 

「そう言うと思っていたよハラルド…ならば手は1つしかないな…チーム・ラグナロク、俺と決闘してもらおうか…その決闘を以て真実を見定めてもらう…!」

遊海は決闘盤を構える!

 

『ほう…!この街のヒーローでありシグナーとのデュエルか…誰がいく?』

 

『オレが相手になろう…前回のデュエルは中止になったせいで決着がついていないからな…!』

ハラルドが遊海の前に歩み出る…

 

「わかった…海馬社長、デュエルリングを借ります」

 

「うむ、使うがいい…やりすぎるなよ?」ポチッ

海馬がボタンを押すと社長室の隣にあるデュエルスペースへの扉が開く

 

 

「悪いなドラガン、1つ言っておく…前回のデュエルは少し手を抜いた…()()()()()()()()()?」ゴウッ!!

 

『『『ッ!?』』』

 

『(この力は…!?凄まじい威圧感だ!!だが…!)』

 

キィン─!

 

遊海から放たれる闘志に驚いたドラガンはルーンの瞳を発動させて威圧感を跳ね除ける…!

 

「じゃあ…あの時の決着をつけよう…デュエルだ!」

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

ドラガンLP4000

遊海LP4000

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『「極星獣ガルム」を召喚!』

赤い毛並みの狼が現れる DEF1600

 

『カードを2枚伏せターンエンド!』

ドラガンLP4000

ガルム 伏せ2  手札3

 

 

 

『(聞いた事がある…メタルナイトの強さは数多のデッキを操る柔軟性にあると…いったいどんなデッキでくる…!)』

ドラガンは遊海を警戒する…!

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『トレードイン』を発動!手札の『神龍の聖刻印』を墓地に送って2ドロー!さらに魔法カード『招集の聖刻印』を発動!デッキから『聖刻龍─トフェニドラゴン』を手札に加える!」

 

『前回と同じデッキ…!またあのドラゴンを呼ぶつもりか…!』

 

 

「自分の場にモンスターがいない事で『トフェニドラゴン』は特殊召喚できる!来い!トフェニ!!」

《御意!》

白いウジャト眼を刻んだドラゴンが現れる ATK2100

 

 

「さらに『トフェニ』をリリースする事で「聖刻龍─ネフテドラゴン」は特殊召喚できる!さらに『トフェニ』の効果でデッキの通常モンスター『エレキテルドラゴン』を攻守0で特殊召喚!』

紫色のウジャト眼を刻んだ龍と尻尾がスパークするワイバーンが現れる ATK2000  DEF0

 

「さらに『ネフテ』と同じ条件で『聖刻龍─シユウドラゴン』は特殊召喚できる!さらに『ネフテ』の効果でデッキの『ギャラクシーサーペント』を特殊召喚!」

青のウジャト眼を刻んだ龍と煌めく竜が現れる ATK2200  DEF0

 

 

『来るか…!シグナーの白いドラゴン…!!』

 

「フッ…!俺は3体のモンスターをリリースする!!」

 

『なんだと!?』

遊海の言葉にドラガンは驚愕する…デュエルモンスターズにおいて3体のモンスターをリリースする事は特別な意味がある─!

 

「天空を支配する原初の神よ!今再び力を示せ!!現れろ『オシリスの天空竜』!!」

デュエルリングの上空に暗雲が立ち込める、その雲の中から赤い蛇体と大小2つの口を持つ巨大な龍…三幻神の一柱、オシリスの天空竜が現れる! ATK?→2000

 

 

《ギュアァァアン!!》

 

 

『ば、馬鹿な!?三幻神の1体「オシリスの天空竜」だと!?』

 

『三幻神は「名もなきファラオ」と共に消えたはずだ…!しかもコピーカードを作ろうものなら神罰が下るはず…!』

 

『だがその様子はない、あれは紛れもなく…「神」!』

ラグナロクのメンバー達は顕現したオシリスに動揺する…!

 

「フン…やはりか、俺はお前が何をしようと驚かんぞ…」

 

 

「『オシリス』の攻撃力は手札の枚数✕1000アップする!攻撃力は2000!バトルだ!『オシリス』で『ガルム』を攻撃!超電導波サンダー・フォース!!」

 

《ギュアアアン!!》

オシリスの口に凄まじいエネルギーが集まり、雷の光線が狼を消し飛ばした!

 

『ぐっ…!?これが三幻神の力か…!!だが!「ガルム」が破壊された事で手札の「極星獣タングニョースト」は守備表示で特殊召喚できる!』

黒毛のヤギが現れる DEF1100

 

「俺はカードを1枚伏せ、魔法カード『超再生能力』を発動!ターンエンド!『超再生能力』の効果によりデッキから6枚ドロー!」

 

オシリスATK2000→1000→0→6000

 

遊海LP4000

オシリス 伏せ1 手札6

 

 

 

 

『攻撃力6000だと…!?』

 

『これがデュエルモンスターズ原初の神の力か…!』

 

『プレイングも凄まじいな…あれだけ動いているのに手札を増やすとは…!』

 

「どうした?お前達も『神』を持つ決闘者だろう?怖気づいたか?」

オシリスを前にたじろぐドラガンに遊海が話しかける

 

『チィ…!余裕そうだな鋼の騎士…!ならオレの「極神皇トール」の真の力をみせてやる!』

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『「極星獣タングニョースト」を攻撃表示に変更!効果によりデッキから「極星獣グルファクシ」を守備表示で特殊召喚!』

大柄な黒毛の馬が現れる DEF1000

 

『さらに手札から「極星獣タングリスニ」を召喚!』

白毛のヤギが現れる、しかし! ATK1200

 

『待てドラガン!「オシリス」に対して攻撃表示でモンスターを召喚するな!!』

 

『なにっ!?』

ハラルドがドラガンに警告を送るが…それは少し遅かった。

 

「『オシリスの天空竜』の効果発動!召雷弾!!」

《ギュアン!!》

オシリスの小さな口に黒いスパークするエネルギー弾が形成され、白ヤギに向かって放たれる…その直撃を受けたヤギは四散した!

 

 

『なっ…!?「タングリスニ」が破壊された!!』

 

『「オシリス」の効果だ…!敵対する者を葬る一撃…!』

 

「その通りだ、『オシリスの天空竜』は召喚されたモンスターに2000のダメージを与え…0になったモンスターを破壊する…、俺の知る効果とは少し違うがな…」

動揺しているブレイブに海馬が補足する

 

 

「どうする?」

 

『くっ…!魔法カード「死者蘇生」を発動!甦れ「タングリスニ」!』

再び白ヤギが現れる DEF800

 

『オレはレベル3の「タングリスニ」と「タングニョースト」にレベル4の「グルファクシ」をチューニング!』

 

3+3+4=10

 

 

『星界の扉が開くとき!いにしえの戦神がその魔鎚を振り上げん!大地を揺るがし轟く雷鳴と共に現れよ!シンクロ召喚!光臨せよ「極神皇トール」!』

雷鳴と共に巨大な魔鎚を持つ三極神の一柱、トールが現れる ATK3500

 

 

「出てきたか『トール』、だが『オシリス』の効果を受けてもらう!召雷弾!」

《ギュアアン!!》 バリバリ…バシュン!!

 

オシリスの放った雷球がトールに直撃し力を削ぐ!

トールATK3500→1500

 

 

『ちぃ…!だが、「トール」にも強力な効果がある!1ターンに一度、エンドフェイズまで相手モンスターの効果を無効にする!この効果で「オシリス」の効果を無効にする!エフェクト・アブソーバー!』

 

「っ…!『オシリス』!」

トールから放たれた波動がオシリスの力を奪い取る!

オシリスATK6000→0

 

 

『さらに「トール」はこの効果で無効化したモンスター効果を使う事ができる!オレの手札は2枚!攻撃力が2000アップする!』

トールの攻撃力が元の状態まで回復する!

トールATK1500→3500

 

 

『バトルだ!「トール」で「オシリス」を攻撃!さらにリバース罠「ミョルニルの魔槌」を発動!幻神獣族モンスターは2回攻撃する事ができ、さらに相手モンスターを破壊した時に1000ダメージを与える!ミョルニル・インパクト!』

雷の大槌を持ったトールがオシリスに殴りかかる!

 

「それは受けたくないな!リバース罠『聖なるバリア─ミラー・フォース』!相手の攻撃表示モンスターを破壊する!」

 

『なにっ!?』

トールの攻撃は虹色のバリアに阻まれ、逆にトールは反動で破壊された!

 

 

『まさかそんな古典的な手に引っかかるとはな…だが!三極神は不死身だ!オレはこのままターンエンド!そのエンドフェイズに「トール」は復活する!』

次元の間から再びトールが現れる ATK3500

 

『さらに「トール」の効果発動!墓地からの特殊召喚に成功した時!相手に800ダメージを与える!神の怒りを受けるがいい!!』

 

ゴロゴロ…ビシャァァン!!

 

「っ!?ぐ…ああぁぁ!!」

暗雲から雷が降りそそぎ遊海に痛みを伴うダメージが襲いかかり、煙が舞い上がる

 

遊海LP4000→3200

 

 

ドラガンLP4000

トール 伏せ1 手札2

 

オシリスATK0→7000

 

 

 

 

『神の力の共鳴…!「トール」と「オシリス」の力が共鳴してリアルダメージが発生している…!』

ハラルドがルーンの瞳を輝かせながら分析する

 

「凄まじい闘いだ…だが、奴はそれほどヤワではないぞ?…そうだろう?」

 

「ああ…少しビックリしたけど…このぐらいの威力なら問題ない!」

雷によって起きた煙を振り払い、黄金の鎧を纏い赤き竜の痣を輝かせた遊海が現れる!

 

『金色の鎧だと!?しかもその意匠は…!』

 

「流石は北欧神話最強の戦神を操るデュエリストだ、だが…まだ甘い!」

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

「魔法カード『超力の聖刻印』を発動!手札の『聖刻龍─ドラゴンゲイヴ』を特殊召喚!」

オレンジ色のウジャト眼をもつ人龍が現れる ATK1800

 

「さらに『ゲイヴ』をリリースする事で2枚目の『シユウドラゴン』を特殊召喚!さらに『ゲイヴ』の効果によりデッキにある2枚目の『神龍印』を特殊召喚!」

再び青のウジャト眼の龍と巨大な太陽石が現れる ATK2200 DEF0

 

「そして魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地の『トフェニ』『シユウ』『ネフテ』『ゲイヴ』『ギャラクシーーサーペント』をデッキに戻し2ドロー…そうか、頼んだぞ?」

《任せてくださいユウミ、わからず屋の神々に1発いれてやりましょう!》

 

『(金色の…小鳥?いつの間に…?いや、あれはカードの精霊か!?)』

ハラルドは遊海の肩に現れた金色の鳥に気が付いた

 

 

「俺はドラゴン族モンスターである『神龍印』を除外する事で手札から『レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン』を特殊召喚!」

黒き鋼の鎧を纏う竜が現れる ATK2800

 

「さらに『レダメ』の効果発動!墓地の『エレキテルドラゴン』を特殊召喚!」

尻尾のスパークするワイバーンが現れる ATK2500

 

『モンスターが3体…!?ま、まさか!!』

 

「俺は『シユウ』『レダメ』『エレキテル』をリリース!…せいれいはうたう…すべてのばんぶつをつかさどらん…」

遊海の詠唱と共に暗雲が立ち込め金色の光が周囲を照らす…

 

『この神威の高まりは…!!』

 

 

「現われろ!我が友たる太陽神よ!!『ラーの翼神竜』!!」

 

《キュアアア!!》

遊海の呼び掛けに応え黄金の光を纏う神鳥…ラーの翼神竜が顕現する! ATK?→7500

 

オシリスATK7000→3000

 

 

『三幻神の頂点…太陽神だと!?』

 

『マジかよ…!?』

 

「フン…そう驚くな、ラグナロク…奴は規格外だ、神を倒し…神に好かれた類稀なる決闘者…それが奴だ」

海馬は腕を組んだままデュエルの様子を見ている

 

 

「『ラー』の攻撃力は召喚時に生贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力の合計になる!さらに効果発動!我がライフを1000払い、『トール』を破壊する!殲滅せよ!ゴッド・フェニックス!!」

 

《ギュアアア!!》

ラーの身体が炎の不死鳥となりトールの身体を貫いた!

 

『こ、これが…三幻神の力…!?』

 

「バトルだ!『ラーの翼神竜』でダイレクトアタック!ゴッド・ブレイズ・キャノン!」

バトルモードに戻ったラーの口にエネルギーが集まり、すべてを灼き尽くす炎が放たれた!

 

『う、うあぁぁぁ!!』

 

ドラガンLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

『これが鋼の騎士の本気…!「オーディン」も彼を認めている…!』

ハラルドは手に持つ「極神聖帝オーディン」のカードを見つめる、カードは脈動し「勇士」であるメタルナイトを認めているようだった。

 

 

「立てるか?ドラガン、不意討ちで戦わせて悪かったな」

 

『いや、いい経験だった…シティ最強の名は伊達ではなかったな…オレの完敗だ』

遊海の手を借りてドラガンが立ち上がる、その表情は憑き物が落ちたようにスッキリしていた

 

『なぁ…まだ「ラーの翼神竜」が出たままなんだが…もしかして…』

 

「ん?ああ…お疲れ様フレア、もう戻っていいよ!ありがとな!」

【そうですか?では…】

ラーが光に包まれ…小鳥へと姿を変える

 

《あとでプリンをお願いしますね?ユウミ》

 

「うん、家に帰ったらね…よしよし」

 

《キュルル〜♪》

 

『神が、精霊が甘えている…だと…!?』

 

『それよりも…待ってくれ、ユウミ…だと?』

 

『その名は、まさか…!』

フレアの言葉を聞いたラグナロクのメンバー達は1つの答えにたどり着く…!

 

 

「フッ…茶番はいい、ラグナロクもそうそう口外はしないだろう」

 

「ええ、そうですね海馬さん…では改めて!アーマーオフ!」

海馬の言葉を受けてメタルナイトは鎧を脱ぐ、そして現れたのは赤い帽子にジャケットの青年……

 

「鋼の騎士とは仮の姿…俺は白波遊海、世間では『2代目決闘王』と呼ばれてる…ただの決闘者だ、改めてよろしくな?チームラグナロク」

 

『『『!?』』』

 

『「決闘王」…!?ゼロ・リバースの時に行方不明になったはずの…!』

 

『ならあの強さも納得だ…シティどころか世界最強のデュエリスト…!』

 

『伝説の決闘者…まさか、姿を隠して生きていたとは…』

遊海の正体を聞いたラグナロクのメンバー達は驚きを隠せないでいる…。

 

 

「ハラルド、俺1人と戦って遊星達を認めてくれとは言わない…だけどな、『遊星に破滅の運命が纏わりついている』という言葉だけは撤回してくれないか?」

 

『貴方が言うのであれば…失礼な事を言ってしまい申し訳なかった』

遊海の言葉を聞いたハラルドは素直に非礼を詫びた

 

 

「ありがとう…明日は遠慮なく遊星達と戦ってくれ、それがあいつらの…そしてお前達のさらなる成長に繋がる事になるはずだ」

 

『ええ、我らは元より5D'sと本気で戦うつもりです…世界をイリアステルから守る為に…』

 

「そうか…楽しみにしてるよラグナロク、最後に…ドラガン」

 

『なんだ?』

遊海はドラガンに語りかける

 

 

「『憎しみの果てに勝利はない』」

 

『っ!?』

 

「フッ…懐かしい言葉だな、遊海」

遊海の言葉にドラガンは目を見開き、海馬は笑う

 

「俺の友人の言葉だ、お前がジャックをどう思ってるかは知らない…だけどあいつも悪い奴じゃないんだよ、それだけさ…じゃあな!」

遊海はそのまま社長室をあとにした。

 

 

 

 

 

『「憎しみ」か、オレは奴が憎くて戦うのではない…あの日に失った「誇り」を取り戻す為に…オレは奴を倒す!』

ドラガンは遊海の言葉を思い返して拳を握る…そこにいたのは怒りに飲まれた男ではなく、敵を乗り越えようとする決闘者の姿だった。

 

 

 

 

 

 

そして翌日…WRGPにおける事実上の決勝戦が幕を開ける!

 

 



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VSチーム・ラグナロク〜宿命と運命〜

こんにちは!S,Kです!
長らくお待たせして申し訳ありません!完全にスランプになっていました!
しかし私はエタりません!必ず完結させてみせます!

それでは最新話をどうぞ!!


『レディース&ジェントルマン!!WRGP決勝トーナメントもいよいよ大詰め!既にAブロックではチーム・ニューワールドが決勝進出を決めている!果たしてこのデュエルに勝って決勝に進み、チーム・ニューワールドに挑むのはチーム5D'sか!それともチーム・ラグナロクなのかぁ?さぁ…どっちだぁ!?』

 

「「「わあぁぁぁ!!!」」」

 

MCの実況がスタジアムに響き渡る…今日はチーム・5D's対チーム・ラグナロクによる事実上の決勝戦が行われる日である。

…そんな中、スタジアムのVIP席で祈るように手を組み怯える男が1人、スタジアムを見下ろしていた…。

 

 

『ヒィィ…!ついにこの日が来てしまいました…!まさか時を経て再びジャックがドラガンと戦う事になろうとは…何たる運命の皮肉でしょうか…!』

怯える男…イェーガーは身体を震えさせながらスタジアムで睨みあうラグナロクと5D's…ドラガンとジャックを見つめる、イェーガーはレクス・ゴドウィンの指示のもとドラガンに八百長デュエルをさせていた…それがジャックにバレてしまったのだ。

 

 

『もしジャックが負ける事になれば腹いせに何をされるやら…!必ず彼に勝つのです!ジャック・アトラス!かつてキングと呼ばれし男よ…!!』

イェーガーはジャックを見つめる…そこへ

 

「フン…ずいぶんと奴に肩入れしているようだな?イェーガー」

 

『えっ…あ、貴方様はぁ!?』

 

「事情はメタルナイトとドラガン本人から聞いている、このデュエルが終わり次第事情を聞かせてもらうぞ?」

 

『あわ、あわわわわ…!?』

 

 

 

 

 

「ジャック、気合いは充分か?」

 

「うむ、俺は再びドラガンを倒し…俺こそが真の勝者である事を奴に思い知らせてやる!」

 

「そうか…なら存分に戦ってこい!」

5D'sのピットスペースで遊海はジャックの背中を押す

 

「ジャック、彼らの操る『三極神』はいずれも強力な効果を持っているらしい…気をつけてくれ…!」

 

「案ずるな遊星…俺は負けん!我が魂に懸けて!!」

遊星の言葉を背にジャックはスタート地点へと向かった。

 

 

 

 

『ついにこの時が来たな…ドラガン』

 

『ああ、ブレイブ、ハラルド…お前達には感謝してる…俺はハラルドに命を救われ…ブレイブにデュエルの熱い闘志を取り戻して貰った…そして…』

ドラガンはジャックに話しかけている遊海へと目を向ける

 

『決闘王とのデュエルで…俺の瞳の曇りは晴れた、今の俺が望むのは…ジャック・アトラスを越える事だ!』

 

『ああ、伝わってくるぜ…お前の闘志…思う存分戦ってこいよドラガン!』

 

『それが我らの…チームラグナロクの為になる、君の勝利を私は信じている!』

ドラガンもブレイブとハラルドに背中を押されスタート地点へと向かう!

 

 

 

 

『待たせたな…今度こそ貴様を越えるぞ…ジャック・アトラス!!』

 

「かかってくるがいい!貴様などに負ける俺ではない!!」

 

『「(このデュエルに勝って…俺はあの時に失くした(傷ついた)プライド(誇り)を取り戻す!!)」』

奇しくも2人は同じ事を考えていた、かたや父の為にプライドを捨てたドラガン、かたや陰謀によりプライドを傷付けられたジャック…2人の誇りを懸けたデュエルが今、始まる!

 

 

「『ライティングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト ジャック対ドラガン

 

 

 

先攻を取ったのはジャックだった、そしてお互いに手札を確認し…2人はそれぞれに驚きの声をあげる…!

 

「(なっ…!?この手札は─!?)」

 

『(あの時と全く一緒の手札だと─!?)』

それは奇跡か偶然か?はたまた神の悪戯か…2人の手札は因縁の戦いの時と同じ手札だったのだ。

 

 

「単なる偶然か?…それとも運命はあの時の再現をさせようというのか…?だが、面白い…!奴の伏せカードを破り、あの時のデュエルに本当の意味で勝利する!!」

ジャックは笑みを浮かべながらカードをドローする…そのカードもまた同じカードだった。ジャックは「トップランナー」とカードを2枚伏せターンを終える…そしてドラガンは…

 

『「トップランナー」に伏せカード2枚だと…?奴の手札にもあの時のカードが…!いいだろう、受けて立つぞジャック・アトラス!!』

ドラガンはジャックの思いを感じあの時と同じ手である「極星獣ガルム」を召喚しカードを1枚伏せターンを終えた…ここに再演の準備は整った…!

 

 

「俺のターン!『パワーブレイカー』を召喚!そしてレベル4の『パワーブレイカー』にレベル4の『トップランナー』をチューニング!!王者の鼓動!今ここに列をなす!天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!現われろ!我が魂『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!!」

ジャックの魂である悪魔竜が降臨する…そして…!

 

「バトルだ!『レッドデーモン』で『ガルム』を攻撃!アブソリュート・パワー・フォース!!」

悪魔竜の掌底がガルムに迫る…あの時はここで決着が着いたが…ここには2人の決闘を邪魔するモノはない…!

 

『この時を待っていた…!リバース罠「極星宝ブリジンガーメン」発動!』

ドラガンが伏せられていた因縁のカードを発動する!

 

 

「来たか…!見せてもらうぞ!貴様のプライドを賭けたカードの効果を!!」

 

『いいだろう…!「ブリジンガーメン」の効果発動!「ガルム」の攻撃力を「レッドデーモン」の元々の攻撃力と同じにする!さらに!このカードの対象になったモンスターが相手を戦闘破壊した時!相手プレイヤーに破壊されたモンスターの攻撃力分のダメージを与える!喰らえ!ジャック!!』

ガルムの姿が炎のレッドデーモンと化してジャックに襲いかかる!

 

「それが貴様の切り札か!だが甘い!!カウンター罠『反応召喚』を発動!相手フィールドのモンスターの攻撃力が変化した事で効果発動!墓地の『トップランナー』を特殊召喚!さらに『トップランナー』の効果発動!!このカードがフィールドに存在する時!自分のシンクロモンスターの攻撃力は600アップする!返り討ちにしろ!アブソリュート・パワー・フォース!!」

 

『なんだと!?』

襲いかかったガルムは力を増したレッドデーモンに殴り飛ばされ破壊される!!

 

「これであの時の勝負は着いた!わかったか?貴様には俺を倒す事はできん!!」

 

『フッ…!「ガルム」が破壊されるのは想定の内だ!今のトラップもただの始まりにすぎない!!自分のモンスターが破壊された事で手札の「極星獣タングニョースト」を守備表示で特殊召喚する!』

ジャックの言葉にドラガンは余裕を見せさらなるモンスターを召喚する、ジャックは「レッドデーモン」による巻き添えを防ぐ為にトップランナーで攻撃を行ないターンを終える…そしてドラガンのターン、遂に神が現れる…!

 

 

『いくぞ…!!俺はレベル3の「タングリスニ」とレベル3の「タングニョースト」にレベル4の「極星獣グルファクシ」をチューニング!』

ドラガンの左目…ルーンの瞳が光輝く!!

 

 

『星界の扉が開くとき!いにしえの戦神がその魔鎚を振り上げん!大地を揺るがし轟く雷鳴と共に現れよ!シンクロ召喚!光臨せよ「極神皇トール」!』

雷鳴と共に北欧神話における最強の戦神が降臨する!

 

「現れたな三極神の一柱…!だが、強化された『レッドデーモンズドラゴン』の攻撃力は3600!『トール』で我が魂を倒す事はできん!!」

 

『ハッ!甘いぞジャック!「極神皇トール」の効果発動!1ターンに一度相手モンスター1体の効果を無効する、さらにそのモンスターの効果を使用できる!俺は「トップランナー」の効果を無効にする!エフェクト・アブソーバー!』

 

「なにぃ!?」

トールがトップランナーの力を奪う…それによりトールの攻撃力は4100までアップし、レッドデーモンは元の3000まで攻撃力が戻ってしまう…!

 

『バトルだ!「トール」で「レッドデーモンズドラゴン」を攻撃!サンダーパイル!!』

 

「っ!!うおぉぉぉ!?(この衝撃は─!?)」

 

雷神の鉄槌がレッドデーモンを粉砕、さらに赤き竜と三極神の力が共鳴しジャックに身体を引き裂くような衝撃が襲いかかる!

 

『どうだジャック!これが三極神の力だ!!』

 

 

 

「っ…!あれが三極神の力…!ジャック…!!」

遊星は神と戦うジャックを見守るしかない…

 

「心配するな遊星、相手は神…だが、ジャックにもそれにも負けない力がある…!」

 

 

「(今の衝撃…以前に遊海と戦った時以上だ…だが、俺は負けはしない!俺には負けられぬ理由がある─!!)

ジャックは襲いかかった痛みを堪えながら考えを巡らせる、ライフは大きく削られたがその瞳に諦めの色はない!

 

 

ジャックは態勢を立て直す為に「バリアリゾネーター」を召喚しターンを終える、そしてドラガンへとターンが巡る…!

 

 

 

『ジャック!神の前にはいかなる守りも通じないぞ!!再び「トール」の効果を発動!「トップランナー」の効果を無効にしその効果を発動する!攻撃力は4100だ!』

再びトールがトップランナーの力を奪う、そしてドラガンは追撃の1手を発動する…!

 

『更にリバース罠「ミョルニルの魔鎚」!これにより神はモンスターに対して2回攻撃できる!そして相手モンスターを破壊した時、1000のダメージを与える!!バトルだ!「トール」で「バリアリゾネーター」を攻撃!』

 

再びトールの鉄槌が振り上げられバリアリゾネーターが粉砕される、さらにリアルダメージを伴った衝撃がジャックに襲いかかる…!

 

「ぐおっ…!!」

 

『更に「トップランナー」を追撃だ!サンダーパイル!!』

 

「ぐっ…!うおぉぉ…!!?」ギャギャギャ!!

続いて放たれた魔鎚がトップランナーを破壊し凄まじい衝撃がジャックに直撃、Dホイールのバランスが大きく崩れる…!

 

「俺を侮るな…!このジャック・アトラス…この程度の衝撃でクラッシュする男ではない!!」

しかしジャックも歴戦の疾走決闘者…間一髪機体を立て直してクラッシュを回避する!

 

 

『フッ…!流石だなジャック!それでこそ俺が乗り超えるべき相手だ…クラッシュなどで逃しはしないぞ!!お前は…この俺がデュエルで倒す!!』

 

「その言葉…そっくりそのままお前に返してやる!ジャック・アトラスの力を思い知るがいい!!」

ドラガンの言葉にジャックは魂を燃え上がらせ反撃に転じる!

 

「リバース罠『チューナーズ・リフレクト』発動!このターンに2体以上のチューナーが破壊された時!そのモンスターを特殊召喚する!さらに!この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力の合計分1400のダメージをお前に与える!!」

 

『なんだと!?』

墓地からバリアリゾネーターとトップランナーが復活しドラガンにダメージを与える!

 

『チィ…!やるじゃないか、俺はカードを伏せてターンエンドだ!だが、お前のライフは残り900!神の前には風前の灯火だ!!』

 

 

「俺のターン!『スピードワールド2』の効果発動!手札のスピードスペル1枚につき800ダメージを与える!!」

 

『なっ…!?神を倒す事を諦めて効果ダメージに戦略を変えて来たか!?』 

 

「そんなはずなかろう!これは下準備にすぎぬ!俺はいかなる時も絶対的な力で相手を叩き潰す!!それがジャック・アトラスのデュエルだ!!」

ドラガンは突然の効果ダメージに動揺する…、しかしそれは大きな間違いだった、ジャックは大きな成長を遂げたが…その信念は変わらない!

 

「リバース罠『ロストスター・ディセント』を発動!レベルを1つ下げる事で墓地から甦れ!我が魂!!『レッドデーモンズドラゴン』!!」

墓地からジャックの魂であるレッドデーモンズドラゴンが守護表示で現れる。 

 

 

『フン…!神の前ではそんなものは「盾」にすらならないぞ!!』

 

「誰が盾にすると言った!!我が魂は…全てを貫く『矛』となる!!」

その言葉と共にジャックの身体を赤いオーラが包み込む!

 

「刮目して見るがいい!この溢れ出す闘志を!!これが俺の手に入れた新境地…バーニングソウル!!」

ジャックの腕のドラゴン・ウィングが輝きを増し…その力を開放する!!

 

「俺はレベル7の『レッドデーモンズドラゴン』にレベル4の『トップランナー』とレベル1の『バリアリゾネーター』をダブルチューニング!!」

 

『なにっ!?』

 

『ダブルチューニング!?』

 

『レベル12のシンクロモンスターだと!?』

ジャックの突然の行動にドラガン達は驚愕する!

 

7+4+1=12

 

王者と悪魔!今ここに交わる!!荒ぶる魂よ…天地創造の叫びをあげよ!!シンクロ召喚!!いでよ!スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』!!」

赤き竜と最強の地縛神、その相反する力を宿した紅蓮の灼熱龍が降臨する!!

 

 

「攻撃力3500…レベル12…!これが…!」

 

「ジャックの新しい切り札…!」

スカーレッドノヴァを目にした龍亞兄妹が驚きの声を漏らす

 

「遊星…これがジャックの手に入れた力か」

 

「はい…!新しい力を見せてやれ!ジャック!!」

遊星はジャックへと声援を飛ばす…ジャックが悩んだ末に手に入れた「究極の力」の勝利を信じて─!

 

 

『感じるぞ…あの龍は神に匹敵する力を持っている…!』

 

『ああ…だがドラガンが負けるはずないぜ!頑張れ!ドラガン!!』

ブレイブとハラルドもドラガンに声援を送る…!

 

 

 

 

 

「『スカーレッドノヴァドラゴン』の効果発動!このカードの攻撃力は墓地のチューナー1体につき1000ポイントアップする!攻撃力は4500だ!」

 

『「トール」の攻撃力を超えただと!?』

 

「ゆくぞ!!『スカーレッドノヴァドラゴン』で「トール」を攻撃!バーニングソウル!!」

紅蓮の竜王の突進がトールに迫る、しかし…!

 

 

『攻撃力を上げたところで…神の前には無力だ!リバース罠「神の呪縛レージング」発動!その効果により「スカーレッドノヴァドラゴン」の攻撃力を2000ポイントダウンする!!さらに、この効果を受けたモンスターはお前の魔法・罠の効果を受ける事ができなくなる!』

 

「なんだと!?」

北欧神話で巨狼・フェンリルを繋ぎ止めていた鎖がスカーレッドノヴァを締め上げる!

 

『さらにダブルリバース発動!「神の威光」!フィールドの神は2回目の自分スタンバイフェイズまで相手の罠カードの効果を受けない!!』

 

 

 

「まずい!!攻撃を仕掛けた『スカーレッドノヴァドラゴン』の攻撃力は2500…!」

 

「このままじゃ返り討ちになって…ジャックの負けだ!!」

絶体絶命の状況…しかしジャックは諦めてはいない!

 

「ここで負ける訳にはいかんのだ…!共に戦う仲間達の為に…俺は負けん!!」

 

キィィン─!!

 

「これは…!赤き竜の痣が!」

ジャックの魂に呼応しシグナー達の痣が輝きを放つ!

 

「永続罠『バーニング・リボーン』を発動!『スカーレッドノヴァドラゴン』をリリースし…墓地から「レッドデーモンズドラゴン」を特殊召喚しこのカードを装備する!!」

 

『なにっ!?』

鎖の戒めを引きちぎったスカーレッドノヴァが炎に包まれる…そして三度ジャックの魂たるレッドデーモンが咆哮を轟かせる!!

 

 

 

「えっ!?『スカーレッドノヴァ』は魔法や罠の効果を受けられないんじゃ…?」

 

「龍亞、ジャックは今、『スカーレッドノヴァ』に対して罠の効果を発動した訳じゃないんだ」

 

「えっ?どういう事??」

龍亞の疑問に遊星が答える…

 

「『バーニングリボーン』の発動条件は『自分フィールドのシンクロモンスターをリリースする事』これは『モンスターに対する効果』ではなく、『カード効果を発動する為のコスト』という事になる…ジャックは『レージング』の効果の穴を突いたんだ!」

 

「つまり、リリースエスケープだね…!」

 

「??…?」

遊星の言葉をブルーノが補足するが…龍亞はいまいち理解できないのか首を傾げている…

 

「まだ龍亞には難しかったな…、簡単に言えば…ジャックはピンチをチャンスに変えたんだ…!さぁ、ジャック!お前の熱い魂を見せてやれ!」

 

《マスター、ざっくりしすぎです…》

 

 

 

 

 

『リリースエスケープとはな…だが「レッドデーモン」では「トール」は倒せまい!!』

 

「フッ…!それはどうかな!!『バーニングリボーン』の第2の効果を発動!!『レッドデーモンズドラゴン』と手札のチューナーモンスター『トラップイーター』と共にこのカードを墓地に送る事で…このカードを発動する為にリリースしたシンクロモンスターを特殊召喚する!!蘇れ!『スカーレッドノヴァドラゴン』!!」

 

『なんだと─!?』

紅蓮の炎と共に再びスカーレッドノヴァドラゴンが現れる…しかし、それだけではない!

 

「新たなチューナーが墓地に送られた事で『スカーレッドノヴァドラゴン』の攻撃力は1500ポイントアップする!よって…!」

 

『攻撃力…5000だと!?』

 

「バトルだ!『トール』を攻撃!バーニングソウル!!」

《グオォォン!!》

炎を纏ったスカーレッドノヴァがトールを貫き、ドラガンのライフを削り切った!

 

『っ…!うわぁぁぁ!!』

 

ドラガンLP0

 

ジャックWIN!

 

 

「(俺は勝ったぞ…遊星!!)」バッ!!

ジャックは腕を突き上げる…それは長らく封印していた勝利のポーズだった…。

 

 

 

「やった〜!ジャックが勝った!!」

 

「流石だぜジャック!!」

5D'sのピットは勝利に沸いていた…しかし

 

「………」

 

「遊海さん…?」

遊星は険しい表情でコースを見続ける遊海に気がつく

 

「遊星、まだ終わってないぞ…気を抜くな」

 

「えっ…!?」

 

ゴロゴロ…ピシャーン!!

 

「なっ…!?」

その瞬間、スタジアムに雷鳴が響き渡った…。

 

 

 

 

 

 

Sideジャック

 

 

『これがジャック・アトラス…キングのデュエルか…』

デュエルの決着が着きドラガンが俺へと話しかけてくる…奴は何か勘違いをしているようだな…。

 

「フン、『キング』だと?そんな過去の称号など関係ない!…俺に力を与えてくれたのは仲間との『絆』だ!」

 

『絆…?』

ドラガンは意外そうな表情を浮かべる

 

「そうだ、そして仲間と共に頂点を目指したいという想い!…それが俺をさらに強くする!!」

 

『絆…仲間…か、ジャック・アトラス…素直に認めよう、俺の負けだ!…これで俺の胸のつかえも取れた!』

ドラガンは晴々とした表情を浮かべるが…すぐに顔を引き締める

 

『だが…このデュエルに勝利し、イリアステルの野暮を打ち崩すのは俺達チーム・ラグナロクだ!』

 

「なにっ…!」

 

『俺のライフは尽きても…まだデュエルは続いている!「トール」の効果発動!!破壊されたターンのエンドフェイズに復活し…相手に800のダメージを与える!!』

 

「な、なんだと!?ぐおぉぉ!?」

プレイヤーが倒れようと神は死なず…再び現れたトールがジャックのライフを削ったのだった。

 

「おのれ…!これが神の最後の効果か!!」

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

Sideドラガン

 

『ふぅ…あとは任せたぞブレイブ!』

 

『ああ!置き土産の神…頂戴するぜ!』

ピットに戻った俺はブレイブへとバトンを渡す、ブレイブはそのままコースへと入って行った…

 

 

『ドラガン…気持ちは晴れたか?』

 

『ハラルド…ああ、俺は全てを出し切った…結局負けたけどな?』

 

『フッ…そんな顔には見えないな』

負けた顔に見えない…か、なら俺は笑ってるんだろうな…

 

『強いぞ…5D'sは』

 

『ああ、知っている…しかし、我らにも神のカードがある…()が出なければ…我らの勝利は揺らぐ事はないだろう…』

そう言ってハラルドはピットに佇む「決闘王」を見据えていた…。

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ!チームラグナロクのセカンドホイーラーはブレイブ選手だ!変幻自在のプレイングを得意とするラグナロクのトリックスター!さぁ…どんなデュエルを魅せてくれるのかー!!』

MCの実況がスタジアムに響く…そしてデュエルが始まった!

 

 

『「デュエル!!」』

 

デュエルダイジェスト ジャック対ブレイブ

 

 

 

 

 

『よし、オレのターン!ドロー!さぁ見せてやるぜ、神の圧倒的な力を!「極神皇トール」の効果発動!「スカーレッドノヴァドラゴン」の効果を無効にする!エフェクトアブソーバー!』

 

「やはりかっ!」

トールから放たれた雷がスカーレッドノヴァの効果を封印する!

 

『そして…バトルだ!「トール」で「スカーレッドノヴァドラゴン」を攻撃!互いに砕けろ!サンダー・パイル!』

 

「おのれ…!迎え撃て!『スカーレッドノヴァドラゴン』!!」

魔鎚とスカーレッドノヴァの拳が激突…反動によりお互いに砕け散った!

 

 

『そして破壊された「トール」はエンドフェイズに復活し相手に800ダメージを与える!』

 

「しまっ…!ぐあぁぁ!!」

復活したトールの一撃を受け残り100だったジャックのライフは吹き飛んだ…。

 

ジャックLP0

 

ブレイブ WIN!

 

 

『まずはジャック・アトラスから勝利を頂戴したぜ!』

 

 

 

 

 

Side5D'sピット

 

 

「ジャック!大丈夫か!?」

 

「遊星…大丈夫だ、問題ない…」

ブレイブに撃破されジャックがピットへと帰還する、ジャック自身もDホイールも神との対決によりボロボロになっていた…。

 

「クロウ、あの衝撃は本物だ…気をつけろ…!」

 

「ああ…わかってる、油断はしねぇよ!」

ジャックはクロウにバトンを手渡す…その時

 

 

「「「クロウにぃちゃ〜ん!!頑張れ〜!!」」」

 

「おっ…あいつら…!」

観客席から子ども達の声援が響く、マーサハウスに預けられていた子ども大丈夫が手作りの旗を持って応援に駆けつけたのだ!

 

「よし…お前達の為にも必ず奴をぶっ飛ばす!!」

子ども達の声援に力を貰ったクロウはコースへと飛び出した!

 

「…頼んだぞクロウ、お前ならばきっと勝てる!」

 

SideOut

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

デュエルダイジェスト クロウ対ブレイブ

 

 

 

 

「(次のスタンバイフェイズまでは『神の威光』の効果で罠の効果は使えねぇ…なら!)オレは自身の効果で『BF─暁のシロッコ』をリリース無しで召喚!さらに『BF─疾風のゲイル』は自分フィールドにBFモンスターがいる時に特殊召喚できる!さらに手札の『陽炎のカーム』の効果発動!自分フィールドのモンスターの合計レベルが8の時特殊召喚できる!」

神を前にしたクロウはBFデッキの得意技である速攻&大量展開でブレイブを攻めたてる!

 

「『ゲイル』の効果で『トール』の攻撃力・守備力を半分にする!さらにレベル4の『カーム』にレベル3の『ゲイル』をチューニング!シンクロ召喚!現れろ!『BF─アーマードウィング』!…バトルだ!『アーマードウィング』で『トール』を攻撃!そして『シロッコ』でダイレクトアタックだ!!」

 

『っ!うおぉっ!?』

「鉄砲玉」の異名を持つクロウは神を倒しブレイブのライフを大きく削る!

 

 

「神は不滅なんだろうが…それを操る人間のライフには限りがあるんだぜ!!」

 

 

『クソ〜!オレのライフが〜!?』

一気にライフを失ったブレイブは頭を抱えて悔しがる…

 

 

 

Side5D'sピット

 

「上手いぞクロウ!その方法なら2体目の神を出される前に奴を倒せる!」

遊海に治療を受けながらジャックが声をあげる

 

「確かに今の作戦は最善手だ、神が倒せないならば使い手を倒せばいい…遊戯も使った戦法だ」

 

「えっ…?遊戯さんも使った…?」

遊海の言葉に遊星が反応する

 

「ああ、バトルシティで遊戯はカード窃盗団・グールズに奪われた『オシリスの天空竜』と戦う事になった…知っての通り『オシリス』は手札の枚数×1000の攻撃力になる効果を持っている…高い攻撃力に敵わないと見た遊戯は…プレイヤーを倒す事を選んだんだ」

それは約三十年前の事、マリクに奪われた『オシリス』を取り返す為に遊戯とアテムはマリクの操る『人形』とデュエルする事になった…そのデュエルの中でマリクは『オシリス』『リバイバルスライム』『生還の宝札』『ディフェンド・スライム』『無限の手札』の5枚によるコンボ【神の領域─ゴッド・ファイブ】により遊戯を追いつめた。

その時、遊戯は海馬からのアドバイスにより勝利の方程式を見つけ出した…それが『オシリス』の召雷弾、『生還の宝札』、『リバイバルスライム』の効果を逆手に取ったデッキキル…それにより遊戯は『神』に勝利したのだ。

 

 

「状況はあの時と似てるが…仮にも相手は世界最高峰のデュエリストだ…なにも対策をしていない訳がないさ」

 

「それは…まさか…!」

 

『な〜んてな!!』

 

その時、スタジアムにブレイブの戯けた声が響いた…。

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

『な〜んてな!そうくる事はお見通しだぜ!』

 

「なにっ!?」

ブレイブを追いつめた…かに見えたクロウ、しかしその戦略は神の手のひらの上だった。

 

『リバース罠「フリッグのリンゴ」発動!俺のフィールドにモンスターがいない時、このターンに受けたダメージの数値分ライフを回復!さらに回復した数値の攻撃力を持つ「邪精トークン」を特殊召喚だ!』

ブレイブが発動したのは北欧神の不老不死を保つ黄金のリンゴ…それによりライフは振り出しに戻ってしまう。

 

 

「ちっ、やっぱ一筋縄ではいかねぇか!!カードを伏せてターンエンドだ!」

 

『そして…エンドフェイズに神は蘇る!「トール」を特殊召喚!そして800ダメージだ!』

 

「うおっっ!?(これが…神の力か…!!)」

トールが復活しダメージと衝撃がクロウを襲う!

 

 

『そして次はオレの番だ!「トール」の効果発動!「アーマードウィング」の効果を無効にし、戦闘破壊されない効果を頂戴するぜ!』

トールがアーマードウィングの力を封印する!

 

『バトルだ!「邪精トークン」で「シロッコ」を、「トール」で「アーマードウィング」を攻撃だ!』

ブレイブの猛攻でクロウの場は一掃される…しかし、クロウもただでは終わらない!

 

「この時を待ってたんだ!!BFモンスターが2体破壊された時!手札の『BF─追い風のアリゼ』は特殊召喚できる!さらに!リバース罠『ブラック・リターン』を発動!BFモンスターが特殊召喚された時…相手モンスターを手札に戻し…その攻撃力分ライフを回復する!!」

 

『なんだと!?』

クロウが発動したのはシンクロモンスターに対するメタカード、シンクロモンスターであるトールは手札ではなくエクストラデッキへと戻る…クロウは神を封じライフを回復しようとしたが…

 

『なーんてな!!リバース罠「極星宝レーヴァテイン」を発動!このターンにモンスターを戦闘破壊したモンスターを破壊する!オレは「トール」を破壊!!』

 

「何ィッ!?自分の手で神を破壊するだと!?」

クロウの渾身の作戦は見事に躱される…そして…

 

『神の封印とライフ回復で逆転を狙っていたようだが…トリックスターとしてはオレの方が1枚上手だったな!…そしてエンドフェイズにお前のライフを頂戴するぜ!』

 

「っ!ぐあぁぁ!?」

再びトールが復活しクロウに雷が降りそそぐ!

 

 

 

『やってくれるなブレイブ…一度ならず二度も俺の神を破壊するとは…』

 

『ああ、あんな手を思いつくのはブレイブくらいのものだ…神をも弄ぶ…まさにトリックスターだ』

ハラルドとドラガンもブレイブのプレイを見て舌を巻く…本来であれば守るべき切り札を敢えて破壊しダメージを与える、それは不死の神だからこそできる戦法である。

 

 

「(くそ…!残りライフ650…!『スピードワールド2』のセーフティラインを下回った…このままじゃ…!)」

 

「『「クロウ兄ちゃん!!負けないで〜!!」』」

 

「あいつら…!そうだ、まだライフは残ってる!!オレは負けねぇ!!」

追い詰められたクロウ…しかし子ども達の声援がクロウの闘志に火をつける!

 

 

 

『クロウ…お前の全力はここまでみたいだな、あの人には悪いが…お前達に任せられねぇな…子ども達を守る為にイリアステルと戦う事を!!』

 

「子ども達を…?そりゃどういう事だ?」

 

『話してやるよ…オレの戦う理由を…』

クロウに問われたブレイブは自身の戦う理由について話始めた…。

 

元々は一匹狼のトレジャーハンターとして世界を巡っていたブレイブ…彼はある沈没船を探索した際にある島へと辿り着いた、そこには戦争で両親を失った子ども達が暮らしていた…ブレイブは彼らを放っておく事が出来ずに世話をする事にした。

そしてブレイブは知ってしまった、戦争を利益とすり秘密結社・イリアステルの事を…そして彼はハラルドに出会い、子ども達の為に立ち上がったのだと。

 

 

『オレはどんな事があっても…イリアステルから子ども達を守るんだ!!』

 

「ブレイブ…お前の戦う理由はわかったぜ、だけどな…それはオレも同じだ!!オレは遊星達の為に…オレを応援してくれるガキ達の為に…負けるわけにはいかねぇんだ!!」

ブレイブの戦う理由を知ったクロウ…しかしクロウもまた子ども達の夢を背負う男…クロウは仲間と子ども達の為に神へと挑む!

 

「オレのターン!!」

クロウは再びモンスターを展開する…そしてついに朋友の想いを乗せた黒き翼が舞い上がる!

 

「オレはレベル5の『追い風のアリゼ』にレベル3の『疾風のゲイル』をチューニング!!黒き疾風よ!秘めたる思いをその翼に現出せよ!!シンクロ召喚!舞い上がれ!『ブラックフェザードラゴン』!!」」

クロウのパートナーである黒き竜が羽を舞い散らせながら現れる、さらに『トール』の攻撃力は『ゲイル』の効果で半分となり『ブラックフェザードラゴン』はシンクロ素材とした『追い風のアリゼ』の効果により攻撃力をアップさせる!

 

「バトルだ!『ブラックフェザードラゴン』で『トール』を攻撃!!ノーブルストリーム!」

黒き炎球が神を消し飛ばす!

 

『だが…神はエンドフェイズに復活する!800ダメージだ!』

 

「『ブラックフェザードラゴン』の効果発動!自身の攻撃力を700下げる事で効果ダメージを無効にする!!」

神の雷撃をブラックフェザードラゴンが吸収する!

 

 

「よし!これで復活した『トール』の効果を封じる事ができる!」

ピットの遊星は拳を握る…しかしトールに気を取られ遊星達は忘れていた、ブレイブもまた『神』を従えるデュエリストである事を…!

 

 

『ハッ…!たいしたトリックスターだなクロウ!だがダメだ!お前は目の前の神に気を取られすぎだ!!』

 

「なにっ…!」

 

そしてブレイブのターン…ブレイブは「極星霊リョースアールヴ」、「極星霊テックアールヴ」を召喚…そして場にはトールに隠れ、場に残り続けていた「邪精トークン」…神の降臨する用意が整った…!

 

『オレはレベル4の「リョースアールヴ」とレベル1の「邪精トークン」にレベル5の「テックアールヴ」をチューニング!!』

空が再び暗雲に包まれ、紫色のルーンが浮かび上がる!

 

『星界から生まれし気まぐれなる神よ…絶対なる力を示し世界を笑え!シンクロ召喚!!光臨せよ!「極神皇ロキ」!!』

現れたのは細身で捻れたエナンを被りし「北欧神話のトリックスター」…三極神の一柱「極神皇ロキ」!

 

 

『フハハッ…!ようやくだ!頂戴した神じゃなく、オレの神を呼ぶ事ができた!これで不死の神が2体…!バトルだ!「ロキ」で「ブラックフェザードラゴン」を攻撃!!』

 

「ついに出てきたな2体目の神!たけど残念だったな…お前の事は最初から忘れてねぇんだよ!!リバース罠『ブラック・ソニック』発動!!このカードは自分の場にBFモンスターがいる時、相手が攻撃してきた時に発動できるカード!その効果でお前の場の攻撃表示のモンスター全てを()()する!!これがオレの全力だっ!!」

クロウはブレイブの考えを予想していた…逆転の為の切り札が発動する!

 

 

「そうか!不死身の神は墓地にいてこそ効果が発動する!」

 

「除外なら…神は復活できないわ!」

ブルーノとアキが喜びの声をあげる

 

「追い詰められながらこんな戦術を…!すごいぞクロウ!」

遊星もクロウを賞賛する…しかし、ブレイブはさらに上手だった…。

 

 

 

『残念だったな、「ロキ」が召喚された今…何人も神に触れる事はできない!!「ロキ」の効果発動!』

 

「なに!?このタイミングで!?」

 

『「ロキ」が相手に攻撃する時、相手の魔法・罠の発動を無効にし破壊する!』

 

「なんだと!?」

神の魔力が「ブラックソニック」を破壊する…

 

『さぁ…葬ってやるよ!「ブラックフェザードラゴン」を!ロキの攻撃!ヴァニティ・バレット!』

ロキの指先から漆黒の魔力弾・ガンドが放たれブラックフェザードラゴンを粉砕する!

 

『神の攻撃はまだ残ってる!「トール」で「極北のブリザード」を攻撃!サンダーパイル!』

クロウの場に残っていた「ブリザード」が破壊される…これで残りライフは50…場にも手札にもカードは無い、まさに絶体絶命に追い込まれてしまう…!

 

 

 

『どうだ?クロウ、どんなにお前が手を尽くそうとも2体の神の前では無意味だ!そしてお前には手札は無く場もガラ空き…もう何もできないだろ?認めろよクロウ、自分の無力さを!』

 

「くっ…!」

クロウはブレイブの言葉に押し黙る…ライフも体力も限界に近い…しかし、クロウには負けられない理由がある…!

 

 

「オレのターン!ドロー!さらに『スピードワールド2』の効果発動!1ドロー!!」

クロウは最後の望みを託しカードを引く…

 

「カードを2枚伏せ…ターンエンド!」

 

『どうしたクロウ?繰り出すパンチが無いならサレンダーするのが身の為だぜ?』

クロウはカードを伏せターンを終えた…しかし、その瞳に諦めの色はない。

 

「オレは負けられねぇ…ライフがある限りオレは諦めねぇ!!」

 

『へぇ…何か手があるらしいな…なら見せてみろ!!』

クロウを前に余裕を見せるブレイブ…だがその時…!

 

 

 

 

 

「「「クロウ兄ちゃん頑張れぇぇぇ!!!」」」

 

 

 

 

『なにっ…?』

 

「馬鹿ヤロォ!!お前達何やってるんだ!!?」

たくさんの歓声や応援が飛び交うスタジアム…そこに手製の横断幕を掲げた子ども達の声が響く、しかもクロウに応援が届くように組体操のような無茶な態勢で塔を作りながら─!

 

 

「クロウ兄ちゃん!頑張れ!」

 

「クロウ兄っ…うわああああ!?」グラグラ!

 

「っ!!危ねぇ!!!」

無茶な態勢で応援していた子ども達の塔がバランスを崩し2人の子どもが観客席からコースへ落下する!

 

 

「馬鹿野郎!何やってるんだ!!」ガシッ!

 

「応援するのはいいが…怪我をしたらクロウが悲しむぞ!!」ガシッ!

 

「あっ…牛尾のお兄さん!メタルナイト!!」

落下の瞬間、偶々近くに居合わせた牛尾、そして事態を察知した遊海が子ども達を掴み取る!

 

「すまねぇメタルナイト!助かった!」

 

「クロウ!最後まで諦めるな!お前には俺達、そして子ども達が付いてる!最後まで諦めるな!!」

遊海はクロウに激を飛ばす!

 

 

「それはそうとお前達…クロウを応援したい気持ちはわかるが危ない事はしちゃダメだぞ?メタルナイトと牛尾さんとの約束だ!」

 

「「「ごめんなさ〜い…」」」

 

「ふぅ…やれやれだぜ…ありがとなヒーロー」

 

 

 

 

 

 

『クロウ、あの子達はお前の為に…』

 

「ああ、オレだってあいつらの思いを背負ってるんだ…それがオレの負けられない理由だ!!」

 

『(たくさんの声援も子どもの声援には敵わないか…どうやらオレ達は似た者同士らしいな…)だが、それはオレも同じだ!わかってるよなクロウ!次のドローでオレがスピードスペルを引けば…オレの勝ちだ!』

クロウの答えを聞いたブレイブはクロウの背負うものを

知る…しかし、それはブレイブも同じ…仲間達の為にブレイブは勝負を決めにかかる!

 

 

『オレのターン!ドロー!…スピードスペルじゃねぇか…(さて…あの伏せをどうするか…?)』

ブレイブは考えを巡らせる…クロウの伏せた2枚のカード、それを破壊するか否か…

 

『(仮に「ミラーフォース」のような攻撃反応型でも「ロキ」なら回避できるが…いや?オレに「スピードワールド2」の破壊効果を使わせて遊星を有利にする為の伏せカード…つまり、ブラフだ!!)オレは「スピードワールド2」の効果を発動!スピードカウンターを取り除き伏せカードを破壊する!』

ブレイブはクロウの伏せた罠カード「ブラック・ウィング」を破壊する!

 

 

『さぁ…頂戴するぜ!お前のライフを全て!!バトルだ!「ロキ」でダイレクトアタック!!』

 

「その時を待ってたんだ!!リバース罠『ブラック・ウィング』を発動!!墓地のBFモンスターを除外する事でこのターン、相手の攻撃力2000以上のモンスターの攻撃を封印する!」

 

『同じカードを伏せてやがったか…だが!「ロキ」の効果で罠カードは破壊される!これで終わりだ!』

 

「まだだ!!墓地の『陽炎のカーム』の効果発動!!自分がダイレクトアタックを受ける時!エンドフェイズまで墓地のシンクロモンスターを特殊召喚する!蘇れ!『ブラックフェザードラゴン』!!」

再び黒き翼が舞い上がる!

 

『何ぃ!?』

クロウの思わぬ行動にさしものブレイブも驚きの声をあげる!

 

 

「そうか!手札と場にカードが無くても、墓地にはカードが残ってる!」

 

「眠れる伏兵か…やるな!クロウ!!」

クロウの起死回生の一手にブルーノとジャックも声をあげる

 

「フッ…『墓地は第2の手札、除外は第2の墓地』…か、なんだか懐かしい気持ちだな…クロウ、意地を見せろよ!」

 

 

 

 

『墓地効果の一つや二つあるとは思ってたが…「ブラックフェザードラゴン」の攻撃力じゃ神の攻撃は防ぐ事はできない!!お前のライフを頂戴するぜ!!』

 

「頂戴されるのは…お前の方だ!!罠カード『ブラック・ウィング』の墓地効果発動!!」

 

『『『な…!?墓地から…』』』

 

「「「罠の効果!?」」」

ブレイブやラグナロクのメンバー、それどころか観客も驚きの声を上げるが無理もない…この時点で墓地発動の罠は『スキルサクセサー』や方界シリーズの数枚しかないかなり珍しいカードなのだから…!

 

 

「『ブラックウィング』は墓地に2枚あってこそ真価を発揮する罠カード!この2枚を除外しお互いの場のシンクロモンスターを破壊して相手のシンクロモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!!…お前が2枚の『ブラックウィング』を破壊してくれたおかげだぜ…!」

 

『しまった…!まさかそんな方法で神に挑んで来るとは…!?』

クロウの起死回生の一手にブレイブは動揺する

 

「正真正銘!これがオレのゼンリョクだぁぁ!!」

 

『だったらオレも全力でお前に応えてやる!リバース罠「神の束縛ドローミ」を発動!!オレの場の「ロキ」とお前の場「ブラックフェザードラゴン」を選択して効果発動!!選択したモンスターがカード効果で破壊された時!そのモンスターの攻撃力の差分のダメージを相手に与える!500ダメージだ!!』

2人は閃光に包まれる!

 

 

「何が起きている!?」

 

「簡単な話だよジャック、WRGP特別ルールが適用され…クロウのトラップもブレイブのトラップも有効、つまり…」

 

「相打ち…!」

ジャックの言葉に観客席から戻った遊海が答える、WRGP特別ルールによってライフが0になったプレイヤーもエンドフェイズまでデュエルを行える…それによりお互いのダメージが互いに有効となった、稀にみるトリックスター対決は引き分けに終わった…。

 

 

クロウ・ブレイブ LP0

 

DuelDraw…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前の全力…見せてもらったぜクロウ…』

 

「ああ、オレ達は結局…似た者同士だったらしいな…」 

クロウとブレイブはピットに戻りながら言葉を交わす…互いに子どもの夢を背負う者としてわかりあえたようだ…。

 

『だが…神は再び蘇る、あとは頼んだぜハラルド』

ブレイブの言葉と共に空間を引き裂いて再びロキが復活する。

 

 

「まだ勝負はついてねぇぜ?」

 

『フッ…ハラルドは強いぞ?』

 

「遊星もな?」

 

そして勝負はハラルド、そして遊星へと託された…。

 

 

 

 

 

 

 

『遊星、いよいよこの世界の未来が決する事になる…ルーンの瞳を持つ我らか、それとめ赤き竜の痣を持つ君達か…その運命が決まろうとしている…』

 

「運命なんて関係ない、オレは仲間達が繋いだ『絆のレーン』を走るだけだ、オレ達の答えはスピードの中にある─!!」

ハラルドの言葉に遊星はそう応えた…世界を救うのは果たして…

 

 

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

デュエルダイジェスト 遊星対ハラルド

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!『クラスター・ペンデュラム』を召喚!!」

トールとロキ、2体の神を前にした遊星はクラスターペンデュラムの効果でトークンを召喚し守りを固める!

 

 

『私のターン、ドロー!』

 

「その瞬間!リバース罠『モンスターチェーン』!このカードにチェーンカウンターを3つ置く!そしてこのカードが場にある限りお互いに攻撃できない!」

神に対して遊星は攻撃を封印した、しかしハラルドは不敵な笑みを浮かべる!

 

『神を封じたつもりだろうが…神の前に小細工は通用しない!私はチューナーモンスター「極星天ヴァルキュリア」を召喚!』

 

「なにっ!?まさか!!」

ハラルドは最高神に仕える戦乙女を召喚、さらに勇士の魂であるエインヘリアルトークンを特殊召喚する…それにより最後の神の降臨する用意が整った…!

 

 

『私はレベル4の「エインヘリアルトークン」2体にレベル2の「極星天ヴァルキュリア」をチューニング!』

ヴァルキュリアが2体の勇士を導き天へと昇る!

 

『北辰の空にありて全知全能を司る王よ…今こそ星界の神々を束ね、その威光を示せ!シンクロ召喚!天地神命を統べよ!最高神─「極神聖帝オーディン」!!』

その瞬間、ネオドミノシティは眩い光に包まれる…そして天空より北欧神話における最高神オーディンが光臨する!

 

「これが3体目の神…!?なんて大きさなんだ!?」

現れたオーディンを見て遊星は絶句する、オーディンの大きさはロキやトール以上…街一つを覆う巨大さを誇っていたからだ…。

 

 

『遊星!君は「トール」と「ロキ」を相手に時間を稼ぐつもりだったのだろうが…「オーディン」が召喚された事で無意味となる!「オーディン」の効果発動!神々への魔法・罠の効果を無効にする!インフルエンス・オブ・ルーン!』

 

「なにっ!?」

オーディンが金色の槍・グングニールを掲げる…そこから放たれた光が「モンスターチェーン」の鎖を破壊する!

 

『バトルだ!三極神で「クラスターペンデュラム」とトークン2体を攻撃!ヴァニティ・バレット!サンダーパイル!ヘヴンズ・ジャッジメント!!』

虚無の魔法、剛力の魔鎚そして裁きの光が遊星の場を一掃する!

 

『これで君の場のモンスターは全て破壊された…遊星、君がいくら優秀なデュエリストでも神の前には無意味だ!ターンエンド!』

 

 

 

「まずいよ…!『オーディン』の効果で魔法・罠は効かなくなっちゃった…!こんな状況でどうすれば!」

 

「しかも『モンスターチェーン』の効果が完全に裏目に出ちまった!遊星はあと3ターン攻撃できねぇ…!」

ブルーノとクロウは場の状況を見て焦りを隠せない…

 

「案ずるなお前達…!遊星はまだ諦めてはいない!俺達が遊星を信じないでどうするのだ!」

 

「ジャックの言うとおりだよ!遊星はどんなピンチだってきっと乗り越えてくれるよ!」

ジャックと龍亞は遊星を信じて戦いを見守る…。

 

 

 

『遊星…君には話しておこう…私の戦う理由を、私はこの戦いの為に生きて来たのだ…!』

 

「なんだって…?」

 

そしてハラルドは語り始めた、自分の戦う理由を…。

 

 

ハラルドの家系は遥か昔から「極神聖帝オーディン」の力を継承しいつか訪れるフィンブルの冬…ラグナロクから世界を護る役目を担っていた。

その一族の末裔として継承者に選ばれたハラルドは「オーディン」に認められ真の継承者になるべく修行の旅に出た…時にはデュエルモンスターズ発祥の地であるエジプトへ、ある時は太古に精霊と邪神の戦った古の遺跡へ…ハラルドは様々な土地を旅し人々の営みを、人々の喜びを…苦悩を見た、それによりハラルドはルーンの瞳を開眼し「オーディン」の継承者となった。

 

そしてフィンブルの冬の予兆を感じたハラルドは同じく三極神の継承者であるブレイブ、ドラガンを仲間とし世界を護る為にWRGPへ臨んだのだと…。

 

 

『遊星、私は掛け替えのない仲間を得た!神からの信頼を勝ち取った!それも全て真の敵を倒す為!!私の…私達の宿命を君達に邪魔される訳にはいかない!!』

 

「ハラルド…」

ハラルドは鬼気迫る気迫で遊星に迫る…!

 

『遊星、悪い事は言わない…サレンダーしろ…!君もわかっているだろうが三極神は一体でも強力だが…三体揃えばその相乗効果でさらなる力を発揮する!その神の攻撃を受ければ君もただでは済まないぞ!これは君の為でもある!!』

ハラルドは遊星にサレンダーを促す…しかし、遊星は…

 

「確かに…神を従えるお前達は強いチームだ…だが!オレにもWRGPでやらねばならない事がある!」

 

『やらねばならない事…?』

 

「そうだ!ハラルド、お前はオレに『破滅の運命が纏わりついている』と言った!…オレはお前の言葉を認めたくなかった!だが、聞いたんだ父の声を!『あの島を近づけてはならない』と!…そしてわかったんだ…!父の意識は…魂はあの中で生きていると!」

 

『不動博士が…!?』

遊星の思わぬ言葉にハラルドは動揺する、そして悟った…自分の一言が遊星にどれだけの傷を与えたのかを…

 

「オレはこの街の破滅と共に生まれた…お前が言った通り、オレの背負った破滅の運命はまだ終わっていないのだろう…もし、オレの運命があの島を引き寄せているのなら…アレを止める事がオレの宿命だ!!」

遊星はアーククレイドルを睨みながら言葉を続ける…。

 

「ハラルド、お前達がイリアステルと戦う定めなら…それはオレも同じだ!自分の手でこの宿命に打ち勝つ為に!イリアステルの手からネオドミノシティを護る為に!オレは負けられない!!オレの命に懸けて戦う!!それがオレの覚悟だ!!」

遊星の思いに赤き竜の痣が輝きを増していく…!

 

「だからオレは諦めない!仲間達の為に!この街の為に!!自分の力が尽きるその時まで!!」

 

 

キィィン─!

 

 

「これは…!赤き竜の痣が…!」

 

「遊星…頑張って!!」

 

「遊星…お前なら全てを覆せる!存分に戦え!!」

遊星の闘志に呼応しシグナー達の痣が遊星へと集う!

 

『なにっ…!赤き竜の痣が遊星の背中に…!?』

 

 

「(星界の三極神…その攻撃を防ぐには…これしかない─!)オレのターン!ドロー!!」キィン─!

遊星は光に包まれたカードをドローする…そのカードは赤き竜の奇跡─「救世竜セイヴァー・ドラゴン」!

遊星は仲間達の為に…街を守る為に再び奇跡を顕現させる!

 

 

「オレはレベル8の『スターダストドラゴン』とレベル1の『クラスターペンデュラム』にレベル1の『セイヴァードラゴン』をチューニング!!集いし星の輝きが新たな奇跡を照らし出す!!光差す道となれ!シンクロ召喚!!光来せよ…『セイヴァー・スター・ドラゴン』!!」

現れるのはシグナーの絆の結晶…救世の星「セイヴァースタードラゴン」!

 

『なっ…!?こんなモンスターはデータにないぞ!?』

 

『こんな隠し玉があったのか…!』

ピットのドラガンとブレイブは現れた竜を見て動揺をあらわにする…無理もないが『セイヴァースター』は赤き竜の奇跡…公式戦で召喚された事はないのである。

 

《キュオォォオオン!》

 

『っ…!?このモンスターは…このモンスターこそが赤き竜の化身か…!』

ハラルドはルーンの瞳を通して赤き竜の幻影を見る…!

 

 

「待て遊星!『セイヴァースター』は『モンスターチェーン』の効果で攻撃できん!それにエンドフェイズにエクストラデッキに戻ってしまうぞ!?」

遊星と同じく「セイヴァー」使いのジャックが声をあげる、しかし…

 

「落ちつけジャック、遊星もそれは承知の上だ!…遊星を信じろ」

 

「遊海…」

遊海は遊星を信じ戦場を見つめ続ける。

そして「セイヴァースター」は遊星の永続罠『ステイフォース』の効果によりライフを1000払う事でフィールドへと残った。

 

 

 

『遊星、君がそのモンスターに窮地の打開を賭けたのなら、それが君の策略という事になる…だが、神の前にはいかなる小細工も通用しない!リバース罠「オーディンの眼」発動!このカードの発動は無効化されない!そして相手の手札またはフィールドの伏せカードを1枚確認できる!』

「セイヴァースター」の登場にたじろいだハラルドだったが遊星の思惑を知る為にピーピングカードを発動させる!

 

『伏せカードは「ウェーブ・リバウンド」…そして「セイヴァースター」の効果は………そうか、君は「セイヴァースター」で神々を破壊し…神々の効果を逆手に取ろうとしていたのか…!』

遊星は「オーディン」が「モンスターチェーン」を無効にした瞬間に「セイヴァースター」の効果を発動、ハラルドの場を一掃した上で「ウェーブ・リバウンド」の効果を発動、それにより神の復活を阻み、その攻撃力分のダメージをハラルドに与えようとしていたのだ。

 

 

『これは恐ろしいコンボだ…だが、私には通用しない!ターンエンドだ!』

 

「っ…!狙いを読まれたか…!」

遊星の逆転への一手は不発に終わる…そして遊星は次のターンに勝機を賭け、「スピードワールド2」でカードをドローし「ステイフォース」の効果を使いターンを終える、残るライフは2000…!

 

 

『私のターン!…遊星、決戦の用意は整ったか?君は「モンスターチェーン」の効果が切れた時に攻撃を仕掛けるつもりだろうが…神々の戦いは常にプレイヤーの先を往く!その戦いに祝福されるのは選ばれた決闘者のみ!!私はこのターンに全てを懸ける!「オーディン」の効果発動!インフルエンス・オブ・ルーン!!』

オーディンの魔力が神々の戒めを破壊する!

 

「なにっ…!?『セイヴァースター』の効果発動!!自身をリリースし効果の発動を無効にし、相手フィールドのカードを全て破壊する!スターダスト・フォース!」

ハラルドの思わぬ行動に遊星は動揺しながらも「セイヴァースター」の効果を発動、神々は墓地へと沈む…そして…

 

『そしてエンドフェイズに神々は復活する!蘇れ!「トール」!「ロキ」!「オーディン」!!』

 

「やらせない!リバース罠『ウェーブ・リバウンド』!シンクロモンスターの墓地からの特殊召喚を無効にし、その攻撃力分のダメージを与える!」

遊星は神々の復活を阻止する為に罠の効果を発動する、しかし…それは…神の手の上だった。

 

『そうだ遊星!神の前に全ての戦略を曝け出せ!その戦略を神々はことごとく乗り越えよう!私は罠カード「ギャラルホルン」の効果を発動!』

 

「なにっ─!?」

 

 

ブオォォン! ブオォォン!!

 

 

虹の橋・ビフレストの番人ヘイムダルが現れ角笛を吹き鳴らす!

 

『「ギャラルホルン」は墓地にあってこそ効果を発動するカード…墓地からこのカードをフィールドに戻し効果を発動する!その効果によりこのターン幻神獣族の特殊召喚は無効にならない!…アースガルドの番人ヘイムダルがギャラルホルンを吹き鳴らす時、それはラグナロクの到来だ!』

 

「なんだって!?」 

ギャラルホルンの音波が「ウェーブリバウンド」を破壊する!

 

『そしてこの効果には続きがある、このカードと三極神を私の三度目のエンドフェイズに除外する…そしてその攻撃力の合計ダメージを相手に与える!』

それはまさに神の最終兵器…反逆者への終焉へのカウントダウンである…!

 

 

『そして神々が復活した事で効果が発動する!「トール」の効果発動!相手に800ダメージを与える!さらに「ロキ」の効果発動!墓地の「オーディンの眼」を手札に戻す!』

 

「なにっ!ぐああああ…!?」

遊星にトールの雷撃が襲いかかる!

 

『そして「オーディン」の効果で私は1ドロー…そしてエンドフェイズ、「ギャラルホルン」のカウントは1となる…さらに「モンスターチェーン」の効果は消える…さぁ、決戦だ…不動遊星!!』

 

 

 

「(オレの手は全て読まれていた…残りライフは1200…さらにハラルドの手札には『オーディンの眼』がある……!?…そうか!!)」

全ての手を潰された遊星は逆転の一手を考える…その時、遊星の脳裏に電流が走った…!

 

「(…()()()()()()()()()()()()!まだ逆転の手は残っている!)オレのターン!『スターダスト・ファントム』を召喚!」

遊星の場にスターダストドラゴンの意匠を持つ魔法使いが現れる!

 

「『スターダストファントム』は破壊された時、墓地から『スターダストドラゴン』を特殊召喚する!さらに守備力を800下げる事で戦闘破壊されなくなる効果を『スターダストドラゴン』に与える!」

 

『そうか…「スターダストファントム」の効果を使えば神々の攻撃をしのぎ、「スターダストドラゴン」を場に残す事ができる訳か…神の威光は地の果てまで照らすが墓地の効果は「トール」でも無効にできない…だが、君は一手見落としているぞ!』

ハラルドはついに攻撃に打って出る!

 

 

『君の見落としは…私のスピードカウンターが10個となる事だ!「スピードワールド2」の効果発動!「スターダストファントム」を破壊!!』

 

「っ!『スターダストファントム』の効果発動!舞い戻れ!『スターダストドラゴン』!」

星屑の竜がフィールドに舞い戻る…!

 

『ならば行け!「トール」!「ロキ」!』

 

「『スターダストファントム』の効果発動!守備力を下げ破壊を無効にする!」

神々の連撃を耐えたスターダスト…しかしその守備力は…

 

『これで「スターダスト」の守備力は400!「スターダストファントム」の効果を使う事はできない!ゆけ!「オーディン」!!』

神の一撃がスターダストに迫る!

 

「まだだ!!手札から『牙城のガーディアン』の効果発動!このカードを墓地に送り『スターダスト』の守備力を1500アップする!『スターダストファントム』の効果発動!!」

 

『なにっ…!?神々の攻撃を耐えただと!?』

遊星は神々の攻撃を耐えきった!

 

「すまない『スターダストドラゴン』…!よく耐えてくれた…!」

 

《キュオオン!!》

遊星の謝罪にスターダストドラゴンは鳴き声をあげる、まるで「気にするな」と言うように… 

 

 

『遊星…君の粘り強さには驚きを超えて敬意を表するよ…なればこそ、念には念をいれさせてもらう!!私の場に神がいる時!手札の「極星邪竜ヨルムンガンド」を相手の場に守備表示で特殊召喚できる!』

 

「オレの場に!?」

遊星の周りを囲むように現れたのは人間界ミッドガルズを囲む大きさを持つと言われた大蛇ヨルムンガンド…!

 

『「ヨルムンガンド」を攻撃表示にした時、相手は3000のダメージを受ける!さらに私は罠カード「神の桎梏グレイプニル」を発動!デッキから「極星邪狼フェンリル」を手札に加える!そしてこのモンスターは「ヨルムンガンド」と同じ条件で相手の場に特殊召喚できる!』

遊星の場に神々の恐れた巨狼が現れる。

…余談だが、フェンリル、ヨルムンガンドそして北欧の冥界神ヘルはロキ神と巨人アングルボザの間に生まれた兄弟である。

 

『「フェンリル」はプレイヤーのバトルフェイズにフィールドの守備モンスターを全て攻撃表示に変更する…さらにこのモンスターのバトルダメージはお互いのプレイヤーが受ける!』

 

「なにっ!?」

光明を見た遊星の前に立ち塞がるのは神を滅ぼした魔物達…遊星に残されたのはわずか1ターン…!

 

 

「(今、ハラルドが伏せたのは『オーディンの眼』…ならば、まだ勝機はある!)オレのターン!罠カード『活路への希望』を発動!相手とのライフの差が1000以上ある時に効果発動!1000ライフを払い!…3ドロー!」

遊星は自らセーフティラインを超える…そして遊星は自分の限界に…神々へと挑む!

 

「オレは『ライフガードナー』を召喚!さらに手札のチューナーモンスター『異次元の精霊』は自分の場のモンスターを除外し特殊召喚できる!『ヨルムンガンド』を除外!!」

 

『な、なんだと!!』

 

「そしてオレはレベル1の『ライフガードナー』にレベル1の『異次元の精霊』をチューニング!集いし願いが新たな速度の地平へ誘う!光差す道となれ!シンクロ召喚!!希望の力!『フォーミュラシンクロン』!!さらにシンクロ素材となった『ライフガードナー』の効果でライフを800回復する!」

遊星の場についに最後の希望が現れる!

 

「オレのデュエルの答えは…スピードの中にある!!これがオレの手に入れた境地…クリア・マインド!!」

遊星は爆発的にスピードを上げ無我の境地へと至る!

 

 

「オレはレベル8の『スターダストドラゴン』にレベル2シンクロチューナー『フォーミュラシンクロン』をチューニング!!」

 

8+2=10

 

「集いし夢の結晶が新たな進化の扉を開く!光差す道となれ!!」

遊星が白紙のカードを掲げる…カードはクリアマインドに共鳴しその真の姿を現す!!

 

「アクセルシンクロォォォ!!」

 

 

バシュン!!

 

 

『消えた!?』

あまりのスピードで遊星は視認できる速度を超えて消え去る、そして希望の力と共に再誕する!

 

「生来せよ!『シューティング・スター・ドラゴン』!!」

 

《ギュアアアアアン!!》

その竜は遊星の…チーム5D'sの最後の希望!スピードの彼方から現れた流星竜が咆哮する!

 

「さらにオレは『Sp-スター・フォース』を発動!『フェンリル』を除外する事でそのレベル×100…つまり1000ポイント攻撃力をアップする!」

 

『なんだと!?』

神殺しの狼の力を取り込んだシューティングスターは神をも超える!

 

「そして俺は「シューティングスター」の効果発動!デッキトップを5枚めくり、その中のチューナーを数だけ攻撃ができる!…チューナーは3体!!いけ!スターダスト・ミラージュ!!」

《ギュアアン!!》

 

3体に分身した「シューティングスター」が神々を打ち砕きハラルドに大ダメージを与える!

 

『ぐっ…!この私がここまで押されるとは…!あと1枚チューナーがあれば私の負けだったが…!エンドフェイズに神は蘇る!!「トール」の効果で800ダメージを!「ロキ」の効果で墓地の「グレイプニル」を手札に戻す!そして「オーディン」の効果で1ドローだ!』

 

「っぐ!!!」

遊星に再び雷撃が襲いかかる、残されたライフは僅か200…たが、遊星の瞳は勝利を見据えている!

 

「オレは全てを出し切った!かかってこい!ハラルド!!」

 

『遊星、君は伏せカードに逆転の一手を隠しているらしいが…忘れているぞ!私は「極星将テュール」を召喚!さらに「オーディンの眼」発動!神の効果を無効にし伏せカードを確認する!そして「テュール」をリリースする事で自分の発動した魔法・罠による神への影響を消滅させる!』

ハラルドは遊星の最後の策を潰す為に手を伸ばす─!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは…この時を待っていた!リバース罠『トリックミラー』発動!!このカードは相手が罠カードを発動した時に発動できる!そのカードの効果を『自分のカード』として発動する!オレは『オーディンの眼』を発動!三極神の効果は無効のままだ!」

 

『なにぃ!?!?』

遊星が発動したのは相手の罠を自分の効果として発動する罠カード…それにより「テュール」の効果は不発となり、神の効果は封じられる!

 

 

『だが…!効果は神の攻撃力は4000…!「シューティングスター」を攻撃すれば私の勝ちだ!「オーディン」で攻撃!!』

 

「『シューティングスター』は相手ターンに一度除外する事で戦闘を無効にできる!!」

シューティングスターは神の攻撃を躱す!

 

『だが、まだ神は残ってい「それはどうかな!」なっ!』

 

「リバース罠『ゼロ・フォース』発動!自分のモンスターがフィールドを離れた時!そのモンスター以上の攻撃力を持つ全てのモンスターの攻撃力を0にする!!」

紫のエネルギーが神の力を奪い取る!

 

『神の攻撃力が…ゼロ…!?』

 

「そして…エンドフェイズに『ギャラルホルン』の効果が発動…神々は除外されオレは攻撃力の合計のダメージを受けるが…」

 

『神々の攻撃力はゼロ…ダメージは与えられない……こんな、事が…!?』

神々は異次元へと消え去る…ラグナロクにおいて「トール」は「ヨルムンガンド」の毒によって、「オーディン」は「フェンリル」に丸呑みにされ、「ロキ」は「ヘイムダル」と相討ちとなり死亡したとされる…そして世界は破滅したが、冥界から一柱の神が帰還する、その神の名はパルドル…またの名を…「光の神」

 

「エンドフェイズに『シューティングスター』は戻ってくる!バトルだ!『シューティングスター』でダイレクトアタック!!」

光と共に流星竜は帰還する、そしてハラルドのライフを削りきった…。

 

ハラルドLP0

 

チーム5D.s WIN!

 

 

『き、決まったぁぁ!この決戦を乗り越えたのはチーム5D'sだ〜!!』

 

「「「わあああああ!!」」」

スタジアムに5D'sの勝利を祝う歓声が鳴り響いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『完敗だよ遊星…まさか君の目的が「オーディンの眼」を発動させる事だったとは…君の、君達の持つ人の知恵は神々を超えた』

 

「ハラルド…」

デュエルが終わり、ハラルドは遊星に話しかける…

 

『ルーンの瞳も三極神も君達を仲間だと認めている…頼んだぞ、世界の命運は君達に掛かっている─!』

 

「ああ、わかっている…いいデュエルだった、必ずイリアステルの野望を阻止してみせる!」

 

『ああ…頼む、そして…すまなかった、君には破滅の運命ではなく、「希望の運命」がついているようだ…私もまだまだだな…』

そう言ってハラルドはピットへ戻って行った…。

 

 

 

「遊星〜!」

 

「よくやった!」

 

「怪我は大丈夫か!?」

 

「みんな…!ああ!大丈夫だ!」

遊星にジャックやアキ達が駆け寄る…遊星はしばらく勝利を喜びあった…。

 

 

 

 

 

 

Sideハラルド

 

『良かったのですか?坊っちゃま…使命を彼らに託して…』

セバスチャンがハラルドに紅茶を注ぎながら問いかける

 

『ああ…不動遊星、彼こそが人の可能性を導く存在…彼らならば安心して任せられる…』

 

「だから言っただろ?遊星には破滅の運命なんて関係ないってな?」

 

『白な…メタルナイト、いいのですか?彼らに付いていなくて?』

気付けば私の横にメタルナイト…決闘王が立っていた、本当に不思議な人だ…

 

「俺はいつでも会えるからな…ハラルド、お前が負けたのは遊星が強かっただけじゃない、お前もミスをしていたんだ」

 

『私が…ミスを…?』

決闘王の思わぬ言葉に私は問かえす

 

「ミスは大きく二つ、一つは慎重に動き過ぎた事…もしお前が最後に『オーディンの眼』を発動せず、『ロキ』の効果に頼っていれば…その前に『フェンリル』と『ヨルムンガンド』を召喚しなければ…その時点で勝敗はわからなくなっていたはずだ…まぁ『策士、策に溺れる』と言ったところかな?」

 

『なるほど…ではもう一つは?』

 

「もう一つは使ったカードだ、そもそも『ギャラルホルン』『フェンリル』『ヨルムンガンド』…これは全部《ラグナロク》に関係したカードだ…それを使った時点で運命はお前達から離れていたんだよ…」

 

『はっ…!?私はフィールドで《ラグナロク》の再現を…!?デッキの構成を見直さなければ…ありがとうメタルナイト…助言は確かに受け取りました…どうか彼らを頼みます…!』

 

「ああ、ありがとうハラルド…必ず俺が…遊星達が未来を守る!…じゃあな!」

そう言ってメタルナイトは5D'sのピットへ戻って行った…。

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

ピリリ…ピリリ…

 

「もしもし、白波…」

 

『先生!お待たせしました!!できる限りのメンバーを集めました!!』

 

「本当か!?…ありがとう、明日作戦会議をする!みんなを集めてくれ!」

 

『了解!!』

 

 

 

 

「ついに始まるな…未来を賭けた決戦、そして因縁の精算が─!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【サーキットへのエネルギーは充分に集まった…あとは我らが5D'sに勝利すれば…我らが悲願は果たされるのだ…!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…時空の揺らぎが大きくなってきた、ついにこの時が来た…オレは…未来を、●●●を救う…!っぐ!?…オ、オオオオオオオッ!!!…待っテいろ…白波…遊海…!!我は…貴様を殺す!!』

 

 

 

 

 

 

決戦まで、あと少し…

 



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決戦を前に─嵐の前の静けさ─

チームラグナロクとの戦いの翌日、激戦を終えたチーム5D'sはそれぞれに時間を過ごしていた…。

 

 

「ど〜しよう!!これじゃあ間に合わないんだから〜!?」

ネオドミノシティのとある一室…記者であるカーリー渚は大焦りに焦っていた、それを見ているのは…

 

「ねえカーリー…なんで私達を呼び出したの?」

 

「おれ達WRGPの決勝前で忙しいんだぜ〜?」

カーリーに呼び出された龍亞兄妹にアキ、そして龍亞達と偶々一緒にいた翠だった。

 

 

「実は…雑誌の企画でWRGPの決勝について特集を組む事になったのよ…それなのに記事が全然間に合わないんだから〜!(泣)」

 

「ああ…それで遊星君達の近くにいる私達に話を聞いて記事の参考にしたかったのね…お疲れさま渚ちゃん…」

話を聞いた翠は察した…カーリーはアキ達に話を聞く事で記事の完成度を上げたいらしいと…

 

「ちょっと!?そんな事でアキさん達を呼び出したの!?」

 

「…言っておきますが狭霧課長!!あなたは呼んでないんだから!?」

 

「貴女が変な事を書かないように見張りに来たのよ!!」

最後に声をあげたのはアキと一緒にいた狭霧課長…やはり恋のライバルであるカーリーが気になり付いてきたらしい、2人はそのまま口喧嘩を始めてしまう…。

 

 

「あの2人はしょうがないわね…私達だけで原稿の案を作ってあげましょう…」

 

「そうね!いい記事を書きましょう!」

 

喧嘩する2人を尻目にアキ達はチーム5D'sの紹介文を打ち込み始めた…。

 

 

 

 

 

Side遊星

 

「ついに決勝だな遊星…」

 

「ああ、ついにイリアステルと決着をつける時が来たんだ…!」

シティを一望する展望台…そこで遊星達3人はシティを眺めながら迫るイリアステルとの戦いへの決意を固めていた…。

 

「オレ達は目標であるWRGPで優勝し、イリアステルの陰謀を打ち砕く!!」

 

「うむ、この戦いに必ず勝利する!!そしてこの街を守るのだ!」

遊星もジャックもクロウもネオドミノシティを…そして空に浮かぶアーククレイドルを見ながら勝利を誓う…その時…

 

 

ピコーン ピコーン

 

「むっ…通信?誰からだ?」

遊星号から着信音が鳴り響く、その画面に映し出されたのは…

 

『よっ!暇か?遊星』

 

「遊海さん!どうしたんですか?」

Dホイールに映し出されたのは遊海だった、背景にはデュエルスタジアムが映っている…。

 

『悪いんだがスタジアムまで来てくれないか?少し手伝ってほしい事がある』

 

「わかりました!すぐに向かいます!」

 

プツン……

 

「遊海が手伝ってほしい事??こんな時にどうしたんだろうな?」

 

「遊星、これは俺の勘なのだが…」

 

「…わかってる、遊海さんの事だからな…きっと…」

 

遊星達はスタジアムへと向かった…。

 

 

しばらく後…遊星達は無人のスタジアムへと到着する、そしてコース上には…

 

「よっ!よく来たな遊星、ジャック、クロウ!」

鋼の鎧に身を包んだ遊海が遊星達を待ち受けていた…。

 

SideOut

 

 

 

 

準決勝の翌日…俺は遊星達をスタジアムへと呼び出した、スタジアムは一部を除き無人…そして余計な邪魔を防ぐ為に結界を張り、のぞき見もできないようにしている。

 

『遊海さん、オレに用というのは…』

遊星が俺に訊ねてくる、それに反してその目には決意の光が宿っている…

 

「単純な事だよ遊星…俺の錆落としに付き合ってほしい、つまりは…デュエルだな!」

 

『やっぱり…でも錆落としですか?』

遊星は知っていたように納得しさらに問いかける

 

「ああ、知っての通り…俺は今まで()()()()()()()()()()()()、だがイリアステルとの…奴との戦いを前にそういう訳にはいかなくなった…!」

 

『ゲイザー…遊海さんの因縁の相手…ですね』

遊星は僅かに垣間見たイリアステルの1人の姿を思い出す…。

 

「おそらく、奴は決勝には出ないだろう…だが、奴は必ず来る…その為に勘を取り戻したい、ひとっ走り付き合ってくれるか?」  

 

『はい!胸をお借りします、遊海さん!!』

 

 

 

 

 

 

 

「クロウ!スタートの合図を頼む!!」

遊星と遊海はスタートラインへと並ぶ!

 

 

「ああ!いくぜ!!……スタートだ!!」バサッ!!

遊海と遊星はクロウの振るチェッカーフラッグと共に飛び出した!!

 

『っ…!?早い!?』

コーナーを制したのは遊海、圧倒的速さとコーナリングで遊星を追い抜いた!

 

「さぁ…スピードの向こうへ行くぞ!遊星!!」

 

 

 

『「ライディングデュエル!アクセラレーション!」』

 

 

 

 

遊海LP4000 SP0

遊星LP4000 SP0

 

 

特別ルール

スピードワールド2常時発動

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP0→1

「『水晶機巧(クリストロン)─スモーガー』を召喚!」

茶色の水晶でできた虎が現れる ATK1000

 

『クリストロン…?初めて聞くテーマだ…!』 

 

「『スモーガー』の効果発動!「スモーガー」自身を破壊し、デッキからチューナーモンスター『水晶機巧─シトリィ』を特殊召喚!」

黄色の水晶を纏ったロボットが現れる DEF500

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

遊海LP4000 SP1

シトリィ 伏せ1 手札4

 

 

 

『(遊海さんにしては…静かなデッキだな…?)』

あまり展開しなかった遊海の行動に遊星は僅かな違和感を覚える

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP1→2

『オレは「レベルウォリアー」を手札から特殊召喚!このモンスターは自分フィールドにのみモンスターがいない時、レベル4として特殊召喚できる!』

赤いマントと黄色の☆があるマスクを被った戦士が現れる ATK300 ☆3→4

 

『さらに「ロード・シンクロン」を召喚!』

ロードローラーのタイヤを持つロボットが現れる ATK1600

 

『オレはレベル4の「レベルウォリアー」にレベル4の「ロードシンクロン」をチューニング!』

 

4+4=8

 

『集いし希望が新たな地平へいざなう!光さす道となれ!シンクロ召喚!駆け抜けろ「ロード・ウォリアー」!』

ジャンクデッキの王である光の戦士が現れる ATK3000

 

 

「いきなり来たか…!」

 

『「ロードウォリアー」の効果発動!デッキから「チューニング・サポーター」を特殊召喚!』

フライパンを被ったロボットが現れる DEF300

 

『バトル!『ロードウォリアー』で『シトリィ』を攻撃!』

 

「その瞬間『シトリィ』の効果発動!墓地の『スモーガー』を効果を無効にして特殊召喚!」

 

『このタイミングで…!?』

再び水晶の虎が現れる DEF1800

 

「さらに!この効果で特殊召喚された『スモーガー』と共にシンクロ召喚を行う!俺はレベル3の『スモーガー』にレベル2の『シトリィ』をチューニング!!」

 

『っ…!?相手ターンでのシンクロ召喚!』

 

2+3=5

 

「シンクロ召喚!『水晶機巧─アメトリクス』!」

青と黄色の水晶を纏う女戦士が現れる! ATK2500

 

 

「シンクロ素材となった『スモーガー』は除外される…そして『アメトリクス』の効果発動!シンクロ召喚に成功した時、相手の特殊召喚されたモンスターを守備表示に変更する!水晶石兵陣!」

 

『なにっ…!?』

攻撃を仕掛けようとしたロードウォリアーの周りに水晶が乱立し身動きを封じる ATK3000→DEF1500

 

『手札を2枚伏せてターンエンド!』

遊星LP4000 SP2

ロードウォリアー チューニングサポーター 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「遊星の速攻をいきなり躱すとは…やはり遊海のタクティクスは凄まじい」

デュエルを眺めながらジャックはそう言葉を漏らす

 

「ああ、あの人は数多のデッキを操るデュエリストだ、何が出てきてもおかしくないが…なんだか嫌な予感がするなぁ…」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP2→3

「俺はリバース罠『クリストロン・エントリー』を発動!手札の『水晶機巧─クオン』墓地の『シトリィ』をそれぞれ特殊召喚!」

水晶を纏うロボットと黄水晶のロボットが再び現れる DEF500 DEF500

 

『またチューナーが…!』

 

「さらに手札から『Sp-ディフェンス・バスター』を発動!スピードカウンターが2つ以上ある時、相手の守備モンスターを攻撃表示に変更する!『チューニングサポーター』を攻撃表示に変更!」

チューニングサポーター DEF300→ATK100

 

「バトル!『アメトリクス』で『チューニングサポーター』を攻撃!」

 

『リバース罠オープン!「ガード・ブロック」!バトルダメージを無効にして1ドロー!』

 

「やるな遊星、俺はこのままターンエンドだ」

遊海LP4000 SP3

アメトリクス クオン シトリィ 手札3

 

 

 

 

 

『(遊海さんの場には「シトリィ」がいるが…墓地にモンスターはいない、攻めるなら今だ!)』

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP3→4

『「ジャンク・シンクロン」を召喚!』

遊星の信頼するオレンジ色のチューナーが現れる ATK1300

 

『「ジャンクシンクロン」の効果発動!墓地の「チューニングサポーター」を特殊召喚!』

再びフライパンを被ったロボットが現れる DEF300

 

『オレはレベル1の「チューニングサポーター」にレベル3の「ジャンクシンクロン」をチューニング!』

 

3+1=4

 

『シンクロ召喚!「アームズ・エイド」!』

黒い貝のような機械が現れる ATK1800

 

 

『「チューニングサポーター』がシンクロ素材になった事で1ドロー!そして『ロードウォリアー』の効果発動!デッキから現われろ!『ボルトヘッジホッグ」!』

ネジの針を持つハリネズミが現れる DEF800

 

『さらに「アームズエイド」の効果発動!このカードは「ロードウォリアー」の装備カードとなり、攻撃力を1000アップさせる!さらに相手モンスターを破壊した時、その攻撃力分のダメージを与える!』

アームズエイドがロードウォリアーの右腕に装備される ATK3000→4000

 

『「ロードウォリアー」を攻撃表示に変更!バトル!「ロードウォリアー」で「アメトリクス」を攻撃!ライトニング・スラッシュ!!』

威力を増した一撃が遊海に迫る!

 

「その瞬間、『クオン』の効果を発動!手札の『水晶機巧─シストバーン』を特殊召喚、この2体でシンクロ召喚を行なう!」

紫水晶のワイバーンが現れる ATK1500

 

『なにっ!?今度は手札から!?』

 

「遊星、先に言っておこう!クリストロンのチューナー達はモンスターによって手札・墓地・除外…それぞれの場所からシンクロ素材を呼び出す事ができる!俺はレベル3の『シストバーン』にレベル1の『クオン』をチューニング!」

 

3+1=4

 

「シンクロ召喚!現われろ!シンクロチューナー『水晶機巧─クオンダム』!」

白虎の鎧を纏った戦士が現れる ATK1800

 

 

『シンクロチューナー…!?まさか!!』

遊星は遊海の召喚したクオンダムを見て顔色を変える…

 

「俺は罠カード『クリストロンエントリー』の墓地効果発動!このカードを除外し、デッキからレベル2『水晶機巧─プラシレータ』を墓地に送る事で『クオンダム』のレベルを2に変更する!」

 

クオンダム☆4→2

 

 

「レベル7の…アクセルシンクロモンスターが出てくるのか!?」

クロウが驚きの声をあげる…しかし

 

『フッ…!俺は「クオンダム」の効果を発動!相手のメイン・バトルフェイズにシンクロ召喚を行なう!俺はレベル5の「アメトリクス」にレベル2の「クオンダム」レベル2の「シトリィ」をダブルチューニング!!』

 

「『「ダブルチューニングだと!?」』」

遊海の言葉に遊星達は驚愕する

 

5+2+2=9

 

「世界を守護する四神の力!今こそ力を示せ!シンクロ召喚!現われろ『水晶機巧─グリオンガンド』!」

神々しい光を放つ機械の巨人が現れる ATK3000

 

『遊海さんがダブルチューニングを…だが、攻撃力は「ロードウォリアー」が上だ!』

 

「『グリオンガンド』の効果発動!シンクロ召喚に成功した時、シンクロ素材にしたモンスターの数まで相手のフィールド・墓地のモンスターを除外する!俺が選ぶのはフィールドの『ロードウォリアー』と墓地の『ジャンクシンクロン』と『レベルウォリアー』!黄龍抹殺陣!」

 

『なにっ!?だがやらせはしない!リバース罠オープン!自分フィールドのシンクロモンスターをエクストラデッキに戻し、墓地にシンクロ素材としたモンスターが墓地に揃っていれば特殊召喚できる!オレは「ロードウォリアー」をエクストラデッキに戻し…蘇れ!「ロードシンクロン」!「レベルウォリアー」!』

ロードウォリアーが消え去り、2体のモンスターが復活する。 ATK1600 DEF600

 

「おっと!?うまく避けられたか!さて…どうする?」

 

『オレは手札から「Sp-ヴィジョン・ウィンド」を発動!墓地の「チューニングサポーター」を特殊召喚!』

三度、フライパンを被ったロボットが現れる DEF300

 

『オレはレベル3の「レベルウォリアー」とレベル2の「ボルトヘッジホッグ」レベル1の「チューニングサポーター」に自身の効果でレベル2となった「ロードシンクロン」をチューニング!』

 

3+2+1+2=8

 

『集いし願いが新たに輝く星となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ!「スターダスト・ドラゴン」!』

《キュオオン!》

遊星のパートナーである白き竜が飛翔する! ATK2500

 

 

「来たな『スターダスト』…!」

 

「オレはこのままターンエンド!」

遊星LP4000 SP4

スターダストドラゴン 伏せ1 手札2 

 

 

 

「な、なんてデュエルだよ…!?今のは遊星のターンのはずなのに…!」

 

「あれが遊海の本気か…!しかし、ライフは未だ五分…勝負はまだわからん…!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」SP4→5

「俺は墓地の『プラシレータ』の効果発動!自身を除外する事で手札から『水晶機巧─サルファフナー』を特殊召喚!」

水晶に覆われた黄龍が現れる ATK2000

 

「さらに手札から『水晶機巧─リオン』を召喚!」

黒い水晶を纏ったロボットが現れる ATK500

 

「俺はレベル5の『サルファフナー』にレベル3の『リオン』をチューニング!」

 

3+5=8

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に響け!シンクロ召喚!来い!『閃光竜スターダスト』!」

眩い光と共に遊海の守護竜である光のスターダストが降臨する ATK2500

 

 

「バトルだ!『グリオンガンド』で『スターダストドラゴン』を攻撃!破晶降龍波!!」

龍の形をしたエネルギー波が遊星に襲いかかる!

 

『その瞬間!リバース罠オープン!「シンクロ・ストライク」!「スターダスト」の攻撃力はシンクロ素材としたモンスターの数×500アップする!よって攻撃力は…!』

スターダストATK2500→4500

 

「4500だとぉ!?」

 

『撃ち返せ!シューティングソニック!!』

《ギュアアン!!》

白銀の息吹がグリオンガンドを貫く!

 

「うおおっ!?」

遊海LP4000→2500

 

 

「おおっ!?遊星が先制したぞ!」

 

「ふん、俺達も日々成長しているという事だ!そのまま遊海を乗り越えろ!遊星!」

 

 

「やるな遊星!だが、まだ終わりじゃない!戦闘破壊された『グリオンガンド』の効果発動!自分または相手の除外されているモンスター1体を特殊召喚する!蘇れ!『スモーガー』!」

三度、水晶の虎が現れる DEF1800

 

「メイン2に移行して『スモーガー』の効果発動!自身を破壊し、デッキの『リオン』を特殊召喚!」

黒水晶のロボットが現れる ATK500

 

「さらに俺は墓地に眠る『サルファフナー』の効果発動!手札の『プラシレータ』を墓地に送り自身を特殊召喚する!」

黄龍がフィールドに舞い戻る ATK2000

 

「そしてその後、自分フィールドのカードを1枚破壊する!『閃光竜』を選択するが波動音壁(ソニックバリア)で相殺する!そして俺はレベル5の『サルファフナー』にレベル3『リオン』をチューニング!」

 

5+3=8

 

「漆黒の闇を裂き、天地を焼き尽くす孤高の絶対なる王者よ!万物を睥睨しその猛威を振るえ!シンクロ召喚!現われろ!『炎魔竜 レッド・デーモン』!!」

 

紅蓮の炎と共に悪魔竜が現れる ATK3000

 

「ターンエンドだ!」

遊海LP2500 Sp5

閃光竜 炎魔竜 手札0

 

 

 

「すげぇ…一瞬で場を立て直した…」

 

「しかも不味いぞ…遊星は今は無傷だが次のターン、『炎魔竜』が効果を発動したら遊星は『スターダスト』の効果で無効にせざるをえない…そこで『閃光竜』が効果を発動すれば…『炎魔竜』は破壊されず、遊星は大ダメージを受けてしまうぞ!」

 

「ああ、でも遊星の手札は3枚になる…まだわからないぜ…!」

 

 

『(一瞬たりとも気が抜けない…!これが遊海さんの全力…!)』

 

 

 

『オレのターン…ドロー!』SP5→6

『…カードを1枚伏せてターンエンド!』

遊星LP4000 SP6

スターダストドラゴン 伏せ1 手札2

 

 

 

「どうした遊星、息切れか?なら次は俺の番だ!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP6→7

「『炎魔竜』の効果発動!1ターンに一度、自身以外の表側表示モンスターを全て破壊する!真紅の地獄炎(クリムゾン・ヘル・バーン)!さらに『閃光竜』の効果発動!『炎魔竜』に破壊耐性を与える!波動音壁!」

 

『やはりっ…!「スターダスト・ドラゴン」の効果発動!自身をリリースする事で破壊効果を無効にし破壊する!ヴィクテム・サンクチュアリ!!』

スターダストが破壊の業火を消し去る!

 

「しかし、波動音壁により『炎魔竜』は破壊されない!バトルだ!『炎魔竜』でダイレクトアタック!真紅の絶対独断!」

 

『リバース罠オープン!「くず鉄のかかし」!攻撃を無効にする!』

鉄の案山子が攻撃を受け止める!

 

「やるな遊星、俺は『炎魔竜』の効果で追撃はできない…メイン2、墓地の『スモーガー』の効果発動!自身を除外しデッキから2枚目の『クリストロンエントリー』を手札に加える、さらに『シストバーン』の効果!自身を除外しデッキから『シトリィ』を手札に加える!カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

『エンドフェイズに「スターダストドラゴン」は復活する!』

遊星の場にスターダストドラゴンが帰還する ATK2500

 

遊海LP2500 SP7

閃光竜 炎魔竜 伏せ2 手札1

 

 

 

「ふぅ…やっぱりデュエルはこうでないとな!久々に楽しいデュエルだ!」

 

『遊海さん…ええ!オレもとてもワクワクしています!』

遊星は久々に心からの笑顔を見せた…イリアステルとの対決が迫りザワついていた心が静まっていくのを自身でも感じていた…。

 

「さぁ、見せてみろ遊星!お前の辿り着いた境地を!」

 

『はい!!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP7→8

『オレは「Sp-エンジェル・バトン」を発動!カードを2枚ドローし、手札の「スターダストシャオロン」を墓地に送る!そして「ターボ・シンクロン」を召喚!』

エンジンを持った小さな緑色のロボットが現れる ATK100

 

『さらに墓地の「スターダストシャオロン」はフィールドに「スターダストドラゴン」がいる時特殊召喚できる!』

スターダストの面影を持つ小龍が現れる ATK100

 

『オレはレベル1の「スターダストシャオロン」にレベル1の「ターボシンクロン」をチューニング!』

 

1+1=2

 

『集いし願いが新たな速度の地平へ誘う!光差す道となれ!シンクロ召喚!!希望の力!『フォーミュラシンクロン』!!』

遊星の新たな力…F1型のロボットが現れる DEF1500

 

 

「来たか…!見せてみろ遊星!お前のアクセルシンクロを!」

 

『はい!!オレは『フォーミュラシンクロン』の効果で1ドロー!そしてレベル8の「スターダストドラゴン」にレベル2の「フォーミュラシンクロン」をチューニング!!』

 

8+2=10

 

「集いし夢の結晶が新たな進化の扉を開く!光差す道となれ!!」

遊星が白紙のカードを掲げる…カードはクリアマインドに共鳴しその真の姿を現す!!

 

 

「アクセルシンクロォォォ!!」

 

 

遊星はスピードの世界に消え去り、新たな切り札と共に再び現れる!

 

『生来せよ!「シューティング・スター・ドラゴン」!!』

遊星の切り札たるアクセルシンクロモンスターが現れる! ATK3300

 

『「シューティングスター」の効果発動!デッキトップ5枚をめくり、その中のチューナーの数だけ攻撃できる!』

 

 

めくったカード

Sp-サモンスピーダー

クイックシンクロン

デブリドラゴン

レベルスティーラー

エンジェルリフト

ドリルシンクロン

 

 

『チューナーモンスターは3体!!バトル!「シューティングスター」で「炎魔竜」を攻撃!シューティング・ミラージュ!』

 

「罠カード『王者の調和』発動!その攻撃を無効にする!」

 

『なにっ!?』

《グオオン!!》

炎魔竜のオーラが幻影を掻き消す!

 

「そして…墓地のチューナーモンスター『シトリィ』と『炎魔竜』を除外、そのレベルと同じシンクロモンスターをエクストラデッキからシンクロ召喚扱いで特殊召喚する!俺はレベル8の『炎魔竜レッドデーモン』にレベル2の『シトリィ』をチューニング!」

 

8+2=10

 

「泰山鳴動…山を裂き地の炎と共にその身を曝せ!!『炎魔竜 レッド・デーモン・ベリアル』!」

腕から刃を生やした悪魔の名を持つ魔竜が現界する ATK3500

 

『「炎魔竜」の進化体!?だが…「シューティングスター」の攻撃はまだ残っている!「閃光竜」を攻撃!シューティングミラージュ!』

シューティングスターが閃光竜を貫く!

 

「すまない、閃光竜…!」

遊海LP2500→1700

 

 

『オレはカードを2枚伏せてターンエンド!』

 

「その時!罠『クリストロン・エントリー』を発動!手札から『シトリィ』を墓地から『クオン』を特殊召喚!」

2体のロボットが現れる DEF500 DEF500

 

遊星LP4000 SP8

シューティングスター 伏せ2 手札2

 

 

「いい一撃だ遊星、まだ見せるつもりはなかったが…見せてやろう、究極の『力』を…!」

 

『遊海さんの纏うオーラが変わった…!?』

遊星は雰囲気の変わった遊海に畏れを感じる…!

 

 

 

「オレのターン…ドロー!」SP8→9

「『クリストロンエントリー』の墓地効果発動!デッキの『クオン』を墓地に送り『シトリィ』のレベルを1にする!」

シトリィ ☆2→1

 

 

「待て…まさか…!?」

 

「どうしたんだよジャック?」

クロウは冷や汗をかいているジャックに話しかける…。

 

「気づかんのか…!遊海のフィールドの合計レベルは…」

 

「12…ま、まさか出るのか!?いつか言ってた…『炎魔竜』の最後の姿が!?」

 

 

「その通り!よく見ておけ!これがもう一つの究極の力だ!俺はレベル10の『炎魔竜ベリアル』にレベル1の『クオン』とレベル1の『シトリィ』をダブルチューニング!!」

 

10+1+1=12

 

孤高の絶対破壊神よ…神域より舞い降り終焉をもたらせ!!シンクロ召喚!轟誕せよ!炎魔竜王 レッド・デーモン・カラミティ』!」

現れたのは地獄の炎を纏う破壊の竜王…レッド・デーモン・カラミティ!! ATK4000

 

 

『これが…!「炎魔竜」の最強形態…!』

 

「そうだ!これが力の極地!!『カラミティ』の効果発動!このカードがシンクロ召喚に成功したターン!相手はフィールドで発動する効果を発動できない!さらに、この効果の発動に対し相手は効果を発動できない!!」

 

『なんだと!?(「エフェクトヴェーラー」の効果どころか「シューティングスター」の効果まで封殺された…!?)』

 

「バトルだ!『カラミティ』で『シューティングスター』を攻撃!真紅の絶対破壊(クリムゾン・アブソリュート・ブレイク)!!」

カラミティのアームハンマーがシューティングスターを打ち据える!

 

『うわぁぁ…!!』

遊星LP4000→3300

 

「そして、これで終わりだ!『カラミティ』が相手を戦闘破壊した時!その攻撃力分のダメージを与える!地獄の災厄炎弾(ヘル・カラミティ・メテオ)!!」

 

「『「なに!?」』」

天空から炎を纏った無数の隕石が遊星へと降りそそいだ…

 

ドドドドォォォン

 

 

遊星LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜、ゴメンゴメン…途中からつい熱が入り過ぎたよ…」

 

「あはは…だ、大丈夫ですよ遊海さん…」

デュエルが終わり、遊海は遊星に回復魔法をかけていた…最後の一撃に力を入れすぎてしまったのだ…。

 

「遊星、お前も強くなったな…そのうちに()()()()デッキでは勝てなくなるな〜…」

 

「ありがとうございます遊海さん…遊海さんの期待に応えられるように強くなります!」

 

「ああ…楽しみにしてるよ遊星」

 

 

 

 

「今日はありがとうなお前達!だいぶ勘を取り戻す事ができた…決勝戦は2日後だ、お前達に全てが懸かってる…頼んだぞ!」

 

「「「はい!!」」」

 

夕日に照らされながら遊海と遊星の対決は終わったのだった…。

 

 

 

 

『『『……』』』

 

 

「ん…?…気のせいか…?」

 

「どうしたんだジャック?」

帰り支度の最中、ジャックはふと後ろを振り返る

 

「いや…何か視線を感じた気がしてな…」

 

「んなはずねぇだろ?このスタジアムは遊海が海馬社長に頼んで貸し切りにしてるんだし…」

 

「それもそうだな…よし、帰るとするか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コツ…コツ…コツ ガチャ

 

 

「みんな…よく集まってくれた!」

 

「水臭いぜ遊海先生!それよりも遊星とのデュエル!ワクワクするデュエルだったぜ!流石世界でナンバー1のデュエリストだ!」

 

「そうッス!久しぶりに遊海先生のデュエルを見れて良かったス!」

 

「ありがとな十代、翔…忙しいのによく来てくれた」

 

「オレの事も忘れないでほしいドン!」

 

「忘れてないよ剣山、アメリカで発掘作業をしてたそうじゃないか…悪かったな」

 

『それこそ心配無用だドン!現場はジムが上手く回してくれるザウルス!オレにとってはこっちの方が重要ザウルス!みんなも待ってるドン!』

 

「ああ、今いくよ…遊星達が万全に戦えるように…俺達でこの町を守るんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

そこはスタジアムのVIPルーム…そこには今、決闘者達が集まっていた…。

 

 

 

 

「改めて…みんなよく集まってくれた!感謝する!…特に万丈目、よく短い時間でメンバーを集めてくれた…ありがとう!」

 

「いいんだよ先生、それが俺の仕事さ!」

 

「そうですよ遊海さん、貴方に招集をかけられたのなら…世界のどこにいても駆けつけます!」

 

「それが…俺達にできる恩返しでもある」

 

「エド、カイザー…ありがとう…それではこれよりネオドミノシティに迫るイリアステル、並びにゲイザー…そして■■■■■対策会議を始める!最初に言っておくがこの事は他言無用!特にチーム5D'sと翠には知られないようにしてくれ!…オレ達の目的は遊星達が戦いに集中できるようにする事!並びにイリアステル進攻時のネオドミノシティへの被害を最小限にする事だ!」

 

 

「フン…ゲイザーとやらには不意を突かれたが…次はそうはいかん!」

 

「落ち着けよ海馬…一番因縁があるのは遊海なんだからよ…」

 

「海馬君、今回のボク達はあくまでも裏方さ…この町の未来は彼らに懸かってるんだ、ボク達は彼らのサポートをしよう」

 

集いしは歴戦の決闘者達…未来を救うべく戦う者達を助ける為に彼らも命を懸ける…!

 

 

「まずはゲイザーについて…奴は俺や翠と同じく転生者だ…その正体はおそらく───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん!やっと終わった〜!お疲れ様みんな!」

 

「アキも翠さんもありがとう!おかげでいい記事が書けそうなんだから!本が出るのを楽しみにしてて!」

同じ頃、カーリーの原稿作成も一段落し、それぞれに体を伸ばしていた…

 

 

「お礼に夕食をご馳走するわ!何処か外食でも行きましょう!」

 

「ありがとうカーリー!」

 

「「やった〜!」」

アキと龍亞兄妹は素直に喜んでいる…実はここに来るまでに様々な障害(データの保存ミス・差し入れコーヒーの洪水etc)があり、なかなかに大変だったのである…。

 

 

「いいわね!それじゃあ安くて美味しいオススメの食堂があるからそこに行きましょう?」

 

「あれ?翠さん…遊海さんのご飯は大丈夫なんですか??」

アキが翠に問いかける

 

「うん、遊海さんは人と会う約束があるらしいの、だから今日は付き合うわ!」

 

「う〜ん?遊海さんが会う人って誰だろう?海馬社長だったらスクープの匂いがするな〜」

 

「…女の人だったr「龍亞君?な、なんでもないです!!

周りで見ていた3人は悟った、『翠に冗談でも遊海の悪口を言わない方がいい』と…

 

 

「そ、そういえばオススメの食堂は何てお店なんですか?」

アキが空気を変える為に翠に問いかける

 

「うん、中華料理のお店なの!名前は─」

 

 

 

 

こうして平和な時間は過ぎていく…しかし、未来を賭けた戦い…否、戦争はそこまで迫っていた…。

 

 

 

 

 



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決戦!チーム・ニューワールド!・天〜不穏な決闘〜

こんにちは!S,Kです!
今回からついにチーム・ニューワールドとの対戦に入ります、全三部構成…気合いを入れて頑張ります!

そして、活動報告で2つアンケート&アイデア募集を行いたいと思いますので…ご協力お願いします!


それでは…最新話をどうぞ!!


崩れ落ちるビル…地割れに飲み込まれる人々…街を包む閃光…

 

ああ…またこの夢だ、オレはこの景色を忘れた事はない。

目にしていないはずのオレの始まりであり、街の終わり…オレはこの景色を生涯忘れないだろう…

 

 

 

そして場面は移り変わる…灰色の空、オレの入った脱出ポットを叩く雨音…くぐもって聞こえる自分の泣き声…オレはそれを事細かに覚えている…

 

 

ズリッ…ザリッ…

 

何かが地面を這うような…引き摺るような音が聞こえてくる…

 

「不、動…遊星…!」

 

誰かがオレの名前を呼んだ…それは……遊海さんだった。

 

 

「すまない…遊星…!俺は、お前にとんでもない十字架を背負わせてしまった…!!」

 

ああ…どうして気づかなかったんだ、オレを助けてくれたのは…傷だらけの遊海さんだったんだ…

 

 

「遊星…お前には…辛い未来が待ってる…だけど心配するな…俺が、お前を助け、導く…!だから…ぐっ…だか、ら─」

遊海さんはオレのポットを抱き締めながら気を失った、城之内さんから聞いた…遊海さんはゼロ・リバースの爆発からスタジアムを庇い瀕死の状態だったと…遊海さんはそんな状態でも最後までオレを護ろうと──

  

 

 

ザリッ…ザリッ…

 

足音が近づいてくる…?オレは見つかるまで2日程掛かったと聞いている…ならばこの足音は…

 

 

『見つけたぞ…白波遊海…!今こそ…お前を…!!』

全身は見えない…しかし、顔を隠すように着けられた黒い仮面がその人物を物語っている…

 

『フフ…ハハハ…!消えろ…イレギュラー!お前さえ…お前さえいなければ─!!!』

黒い光が男の手に集中する…やめろ…やめてくれ…!!この人をこれ以上傷つけるのは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やめろおおおおっ!!!」

 

 

 

ドタバタガターン!!!

 

 

「な、何事だ!?」

 

「遊星どうした!!何があった!!!?」

 

「えっ…あ……」

 

遊星は辺りを見回す…そこは見慣れたガレージだった、時計は夕方の6時を指している…どうやらデッキの調整をしながら居眠りをしていたようだ…。

 

「…その様子だと()()あの夢を見たんだな…」

 

「それにしても…お前がそんな魘され方をするとはな…明日は遂にイリアステルとの決戦だ、今日はしっかりと休め遊星…この騒ぎでも寝ているブルーノを見習ってな…」

 

「ZZZ…ムニャムニャ…」

ジャックの視線の先ではブルーノがソファに凭れながら寝ている…。

 

 

「心配をかけてすまない…あの夢の続きを見ていたんだ、ゼロ・リバースの時オレを助けてくれたのは…遊海さんだったんだ」

 

「なに…?どういう事だよソレ…?」

 

そして遊星はジャックとクロウに夢で見た出来事を話した…。

 

 

 

「なるほどな…遊星が赤ん坊の時に最初に見つけたのが遊海だった訳か…」

 

「だが気になるのはその後だ…遊海を消す為に現れたゲイザーらしき男…何故、奴は遊海にトドメを刺さずに立ち去ったのか、そして何故17年の間遊海や俺達に手を出さなかったのか…気になる話だな…」

遊星の話を聞いたクロウとジャックは考え込むが…答えは出なかった。

 

 

「だが…これはあくまでも『夢』の話、現実かどうかは…」

 

「なら…遊海に直接聞いてみようぜ?何か手掛かりがわかるかもしれねぇ」

 

「うむ、それがいい!明日の打ち合わせを兼ねて遊海の所へ行くぞ!」

 

「ああ、何かイリアステルの事がわかるかもしれない…」

遊星は机に広がったデッキを集め始める…

 

 

 

キィン─!

 

 

 

「「「っ…!?」」」

 

「赤き竜の痣が…!」

遊星達3人に刻まれた痣が光を放つ…まるで何かを訴えかけるように…

 

「赤き竜が…オレ達を呼んでるのか…?」

 

「とにかく行くぞ!…起きろブルーノ!!」ガンッ!

 

「うわっ!?な、なになになに!?!?」

遊星達は赤き竜の導きのままにスタジアムへと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊星!」

 

「「遊星!!」」

 

「龍亞!龍可!アキ!お前達もか!」

スタジアムに駆けつけた遊星達、そこにはアキ、そして龍亞兄妹が既に駆けつけていた…。

 

「えぇ、痣に呼ばれたの…」

 

「遊星!おれすごい発見しちゃったんだ!龍可に触りながらだと…空の島が見えたんだよ!」

 

「なんだって!?」

龍可と手を繋ぐ龍亞…その目には空に浮かぶ島が確かに見えていた…。

 

 

《キュオオン!!》バサッ!

 

「遊星!」

 

「遊海さん!翠さん!」

閃光竜の背から遊海と翠が飛び降りる

 

「痣に呼ばれて来てみたが…気づいているか?…あの城が近付いてきている事に…」

 

「はい…人類最後のモーメント…父さんはアレを近づけるなと言っていました、ですが…」

 

遊星は空に目を向ける…そこに佇んでいた島…否、城はネオドミノシティを覆うように近付いてきていた…。

 

《…次元同調率80%…間もなくアレはこの世界に実体を現します、そうなれば…》

 

「ネオドミノシティの…消滅─!」

遊星はアヤカの言葉を聞き間近に迫った危機に険しい顔色をみせる。

 

 

「おお!チーム5D's!こんなところにいましたか!…何やら深刻そうな顔ですが…?」

 

「おい遊海…何があった、この雰囲気は尋常じゃねぇな?」

そんな時…スタジアムにイェーガーに牛尾と狭霧、そしてカーリーが現れる、彼らはそれぞれに5D'sの応援をする為にポッポタイムを訪れたがすれ違い…決闘者の直感でスタジアムを訪れたのだ。

 

「牛尾さん…俺に触れてください、そうすれば判ります…この町に迫った危機が…」

 

「なにぃ…?…な、なんじゃありゃ!?」

遊海に言われるままに空を見上げた牛尾は間近に迫った島に泡を食う…

 

 

ジジジ…ブゥン…!

 

 

『フン…役者は揃った…という所か、やはり勝ち上がって来たなシグナー共…!』

 

「チーム・ニューワールド!!いや、イリアステルの三皇帝!!」

スタジアムの投影装置が作動しホセ、プラシド、ルチアーノ…イリアステル三皇帝の姿が映し出される!

 

 

「あの島は何なんだ…!?アレはお前達の仕業なのか!!」

遊星が三皇帝を問いただす

 

『教えてやろう…あれは神の居城・アーククレイドル…イレイドゥス(未来人)の眠る地だ』

 

『我々チーム・ニューワールドがWRGPで勝利した時、アーククレイドルが真の姿を現し…地上へと降り立つのだ…』

 

『キヒヒッ…!その時、このネオ童実野シティは消滅して…この世界は生まれ変わるんだぁ!』

 

「「「「なんだって!?」」」」

プラシド達の言葉に遊星達は驚愕の声を上げる

 

「ちょ…ちょっと待ってよ!?チームニューワールドが都市伝説の秘密結社イリアステルで、この街を壊そうとしてるって!?どういう事なのよ〜?!」

 

「落ち着けカーリー!…黙って空を見ろ!」

ジャックが状況を理解できていないカーリーを引き寄せ、手を握る…

 

「あっ…ジャックがアタシの手を…って何なのあれ〜!?アレがこの街に落ちてくるの!?」

カーリーもようやく状況を把握する…。

 

 

『そういえば…ドングリピエロ、お前長官になったそうだな?』

 

「ヒッ…!…そうでしゅ!!私はこの街を護る為に治安維持局の長官となったのでしゅ!!だから教えなさい!どうすればアーククレイドルを止められるのですか!」 

プラシドの問いかけにイェーガーは勇気を以って答える、その姿は堂々としていた……遊海の後ろに隠れながらでなければ……

 

 

『アーククレイドルを止めたくば…我らを倒してみせろチーム・5D's…』

 

『明日の決勝戦でオレ達の本当の力を見せてやろう!』

 

『キッヒッヒ…!明日が楽しみだよ!じゃあね〜!』

 

ジジジ…ブツン…

 

そう言い残して三皇帝は通信を切った…。

 

 

「オレ達に…この街の運命が懸かっている…!」

 

『そうだぜー5D's!それに世界の命運もな?』

 

『それがお前達の定めだ!奴らに勝利する事が唯一、この世界を救う方法だ!』

 

「「チーム・ラグナロク!?」」

観客席から遊星達に声がかけられる…それは遊星達と同じくルーンの瞳に導かれたチーム・ラグナロクだった。

 

『遊星、我らのルーンの瞳は世界を破滅から救う為のモノ…だが、三極神は赤き竜に救世を託した…!君達ならばチーム・ニューワールドを倒せるはずだ!』

 

「ならば…迷う事はない!明日の決勝で俺達の力を全て出し切るまでだ!」

ラグナロクの激励を受けたジャックが声を上げる

 

「ああ、そして奴らに勝利し…この街と世界を守るんだ!!」

 

「「「おおーっ!!」」」

 

遊星達は決意を固める…世界を救う為に…!

 

 

 

 

「遊海さん…」

 

「心配するな翠…俺がお前を…皆を守る!これ以上奴らの好き勝手にはさせない!!(その為なら…俺は…刺し違えても…奴を倒す!!)」

心配そうに遊海の名を呼んだ翠…その手を遊海は強く握りしめた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「これが…私達の…未来だというの…!?」

 

【そう…これがモーメントにより破滅した未来…貴女達の行き着く終わりです…】

 

時は暫し遡る…シェリー・ルブランはモーメントエキスプレスに潜入後、ワームホール内で起きた遊海と異形の悪魔との戦闘により異次元へと投げ出され…イリアステルの首魁・ゾーンに保護された…。

そしてシェリーはゾーンから全てを聞かされた…その最後が彼女の眼下に広がる赤い世界だった…。

 

【これで貴女には全てを話しました…この未来を見てどうしたいですか?】

 

「…私は…貴方に付いていくわゾーン、未来を救う為に…そして私の願いの為に…!」

 

【そうですか…ならば貴女に『無限騎士』の称号を与えます、どうか私に力を貸してください…シェリー・ルブラン】

 

「ええ、よろしくねゾーン」

そしてシェリーはゾーンの手を取った。

 

 

 

 

「…最後に教えて欲しい事があるわ、聞いてもいいかしら?」

 

【私に答えられる事ならば答えましょう】

アーククレイドルの王の間に戻ったシェリーは瓦礫の玉座に佇むゾーンへと問いかける…。

 

「貴方の話の通りなら三皇帝も…パラドックスもアンチノミーも彼らの記憶を宿したアンドロイドだと聞いたわ、でも…ゲイザー、彼だけは()()()()()だった…私は覚えているわ…ハサミを突き立てた感触も…私の手を濡らした赤い血も…私を撫でた手の温もりも…彼はいったい何者なの…?」

 

【…彼は私の最も古き友…そして紛れもなく人間です、あの日から100年以上経った今でも…】

 

「百…年…?それなら貴方のように─」

 

【彼は…不変、例え私が死のうとも…彼は永遠に生き続けるでしょう、貴女は本当に知りたいのですか?彼の事を…世界の破滅で全てを失った英雄の話を─】

 

「私は…知りたい…!彼の事を!!」

 

そしてシェリーは光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そん、な……」

 

 

 

 

 

 

そして…彼女は後悔した。

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

ヒュー…パン!パン!!

 

空に花火が打ち上がる…今日はWRGPの決勝戦、イリアステル三皇帝との決着をつける日だ。

遊海さんは朝早くに出掛けていった、伝言を受けたウェンによると…

 

「不測の事態の対策をする為に海馬社長に会いに行く、試合には間にあわないだろうから、回復カードやデッキを持って遊星達を守ってくれ」…との事だった。

 

…最近、遊海さんは私に冷たい気がする…ううん、違う…遊海さんは私を危ない目に遭わせたくないんだ…。

ドーマの時も七星皇の時も、光の結社やダークシグナーの時もそうだった…遊海さんは全てを一人で抱え込んでしまう…私だって遊海さんの役に…ううん、みんなを守る手助けをしたいのに…遊海さんのバカ…

 

《…どり…翠!デュエルが始まっちゃうよ!!》

 

「あっ…ごめんウィンダ!いま行くわ!」

 

今はネガティブな事は考えないでおこう…私は遊海さんの帰る場所を守る妻なんだから…!

 

 

SideOut

 

 

 

 

「遊海…本当にいいのか?翠に協力を頼まなくて…」

 

「いいんです、これは俺の問題ですから…それに翠を奴に会わせたくないんです…!」

そこはスタジアムのVIPルーム、そこには遊海、そして海馬がいた。

 

 

「会わせたくない…か、もしもお前の推測が正しいのならば…無理もないな…」

 

「…それよりも海馬社長、ガソリン車・電気自動車の用意は…」

 

「フン、露骨に話題を変えおって…抜かりはない、各100台ずつ用意し、病院関係から()()()()を始めている…しかし信じられんな、この町のモーメント製品が全て動かなくなるなど…」

 

「ありがとうございます、ここからは俺達の役目です…!」

 

「焦るな遊海、既に奴らは配置に着いている…まずは5D'sを見守るぞ…」

 

海馬と遊海は眼下へと目を向けた…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

デュエルダイジェスト ジャック対ルチアーノ

 

 

 

 

 

ついに始まったイリアステルとの直接対決…ジャックの相手はデュエルボードに乗った赤髪の少年・ルチアーノだった。

 

「俺のターン!『ダーク・リゾネーター』を召喚!カードを伏せてターンエンド!」

 

『キッヒッヒ…馬鹿の一つ覚えのシンクロ狙いかい?僕達の「機皇帝」の能力を忘れたのかい?』

 

「フン…!貴様らとの対決を前にこの俺が無駄な時間を費やしていたと思うのか?…貴様らに目にもの見せてくれる!!」

ルチアーノは「機皇帝スキエル∞」を召喚する布石である「スカイ・コア」を召喚しターンを終える、そしてジャックのターン…ジャックは凄まじいプレイングを見せる!

 

 

「俺はレベル8の『レッド・デーモンズ・ドラゴン』にレベル3の『トラスト・ガーディアン』とレベル1の『レッド・ノヴァ』をダブルチューニング!!王者と悪魔!今ここに交わる!!荒ぶる魂よ!天地創造の叫びをあげよ!!シンクロ召喚!いでよ…!スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』!」

《グオオォン!!》

ジャックの場に紅蓮の龍の咆哮が轟く…ジャックは先攻2ターンで切り札を召喚したのだ…!

 

『へっ…!性懲りもなく進化しちゃってさ…!呆れちゃうよ!罠カード「ツイン・ボルテックス」を発動!「スカーレッド・ノヴァ」と「スカイ・コア」を破壊!』

 

「無駄だ!『スカーレッド・ノヴァ』はカード効果では破壊されない!」

スカーレッドノヴァは破壊の雷を振り払う!

 

『狙いはこっちさ!「スカイコア」が破壊された事で…現われろ!「機皇帝スキエル∞」!』

ルチアーノのデッキから機皇帝のパーツが飛び出し天の機皇帝スキエルが現れる!

 

「早くもお出ましだぜ…!」

 

「油断するなよジャック…!」

シンクロキラーの登場に遊星達は警戒を強める…!

 

 

「フン!攻撃力2200など恐れるに足りん!バトルだ!『スキエル』を攻撃!バーニングソウル!」

 

『キッヒッヒ!「スキエルG」の効果発動!その攻撃を無効にする!』

スキエルが展開したピットが体当たりを受け止める!

 

「ならば罠カード『パワー・プレッシャー』を発動!自分モンスターの攻撃が無効になった時!相手に1000ダメージを与える!」

ジャックは遊星から機皇帝の特徴を聞いていた…1000ダメージがルチアーノに襲いかかる!

 

『キッヒッヒ…!永続罠「無限霊機」を発動!自分が100ダメージを受ける度にこのカードにカウンターを1乗せる!』

ルチアーノのフィールドに骸骨のような機械が現れ、カウンターが乗る…

 

「『無限霊機』…?なんだそのカードは…?」

 

『この機械はダメージを受けた時、その「痛み」を記録する装置さ…これが起動すれば…!キッヒッヒ…!』

 

「くっ…不気味な奴め…!」

ジャックは不気味に笑うルチアーノを警戒する…。

 

 

『「無限霊機」が発動したか…』

 

『作戦通りだ…』

ピットのプラシドとホセは小さく笑みを浮かべる…。

 

 

 

返しのターン、ルチアーノはスキエルの効果でスカーレッド・ノヴァを吸収しようとするがスカーレッド・ノヴァの持つ「自身を任意のタイミングで除外し、相手の攻撃を無効にする」効果で回避される…そして…

 

 

「バトルだ!!『スカーレッド・ノヴァ』で『スキエル』を攻撃!そして墓地に送った『フォース・リゾネーター』の効果で貴様はバトル時にカード効果を発動できない!砕け散れ!バーニングソウル!!」

紅蓮の龍の突進がスキエルを打ち砕いた!

 

『キヒッ…!永続罠「無限牢」を発動!手札を1枚墓地に送って墓地の「スカイコア」を魔法・罠扱いでセットする!そして「無限霊機」にカウンターが乗る…!うわ〜!?』

 

ルチアーノLP0

 

ジャックWIN!

 

 

 

「やった〜!ジャックが機皇帝に勝った〜!」

 

「よくやったぜジャック!」

5D'sはジャックの勝利に喜ぶ…だが…

 

「(おかしい…機皇帝がこんなにあっさりと負けるはずがない…妙な感じだ…)」

遊星だけはルチアーノの負け方に違和感を感じていた…。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()ルチアーノ』

 

『ケッ…うるさいよ』

ピットに戻ったルチアーノにプラシドが声をかける

 

『でも作戦とはいえ…つまらないよね、こういうの』

 

『だが…これでいい…』

悪態をつくルチアーノにホセが語りかける

 

『奴らは既に逃げ出す事のできない地獄へと足を踏み入れたのだ…』

 

『そして…終焉へのカウントダウンは今始まった…!待っていろ…不動遊星!』

そう言ってプラシドはコースへと入っていった…

 

 

『…大丈夫かな?あいつ…』

 

 

 

 

 

「来たな!くたばり損ないが!貴様もルチアーノ同様、

この俺が叩きつぶしてくれる!」

ジャックは後方を走るプラシドに宣戦布告する…!

 

『虫ケラのくせに口だけは達者だな…身の程を思い知らせてやる!!』

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト ジャック対プラシド

 

 

 

 

「(このデュエル、やはり何かがおかしい…!()()()()()()()()()D()()()()()()()()()()()()()?)」

遊星はジャックとプラシドのデュエルを見ながら考えを巡らせていた。

プラシドにはDホイールと合体する事で全力を発揮できる「究極体」がある…しかし、プラシドは通常の状態でライティングを行なっているのだ…。

 

「(奴らの作戦はまだわからない…頼むぞジャック…!)」

 

 

 

 

「バトルだ!『ワイゼル∞』を攻撃!バーニングソウッ!!」

 

『無駄だ!「ワイゼルG」の効果発動!攻撃対象をこのカードに変更する!』

 

「リバース罠『バーニング・ストライク』発動!このカードはシンクロモンスターの装備カードとなり、相手に貫通ダメージを与える!」

 

『やらせるか!リバース罠「ワイズG3」を発動!手札から「ワイゼルG3」を特殊召喚!このカードは戦闘では破壊されない!』

ジャックとプラシドのデュエルは白熱していた…早々に人の機皇帝「ワイゼル∞」を召喚したプラシドはジャックを攻める…それは本来の作戦にはない事でホセは頭を抱えていた…。

 

『そして「無限霊機」にカウンターが乗る!さらに罠カード「反射鏡」を発動!自分のモンスターが戦闘破壊されなかった事により1ドロー…そしてレベル✕300ダメージを与える!引いたのはレベル3の「ワイゼルA3」!900ダメージを喰らえ!』

 

「ぐおおぉぉ…!」

プラシドのスタンドプレーによりジャックのライフは1100、プラシドのライフは500となっていた…。

 

 

『フン、少々奴を侮り過ぎたか…だが、ライフが500もあれば充分だ!』

 

『ねぇホセ!いいのかよ!このまま好き勝手やらせといて!?このままじゃ作戦が!』

 

『う〜む…少しやんちゃが過ぎるな…(プラシド…遊びはそこまでだ…!!)』

 

『なに…!』

本来であればピットとプレイヤーの通信は禁止されているが…ホセはプラシドに直接語りかける…。

 

『(我らの使命を忘れたのか…)』

 

『チッ、わかったよ…!!作戦通りにすればいいんだろ!!』

ホセの指示を受けたプラシドはカードを伏せただけでターンを終える、そしてそれは…遊星の疑いを裏付けるものだった。

 

 

「(チーム・ニューワールド、いったい何を考えているんだ…?奴らのフィールドにあるのは『機皇帝ワイゼル』とカウンターの乗った『無限霊機』…まさか…!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?)龍亞!ピットボードを!『無限霊機』を破壊するんだ!!」

遊星はジャックに対して指示を飛ばす!

 

 

「なるほど…やはりあのカードがカギか!罠カード『シンクロソニック』を発動!『無限霊機』を破壊する!!」

 

『チィ…!気づかれたか!罠カード「インフィニティ・ガード・フォーメーション」発動!自分フィールドのモンスター効果を無効にする事で自分のカードの破壊を無効にする!!』

策に気づかれたプラシドが「ワイゼル」の効果を無効にして破壊を免れる!

 

「だが攻撃力0の機皇帝など蹴散らしてくれる!『スカーレッドノヴァ』で『ワイゼル∞』を攻撃!バーニング・ソウル!!」

再び紅蓮の突進が機皇帝を打ち砕いた!!

 

『ぐおっ…!だが…「無限牢」の効果発動!墓地の「ワイズ・コア」を魔法・罠カード扱いでセット!さらに「無限霊機」にカウンターが乗る!』

 

プラシドLP 0

 

ジャックWIN!

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

「……遊海、始まるのか?」

 

「はい…これからが本当の勝負です…!」

海馬は遊海へと問いかける

 

「遊海、お前は知っているのだろう?この先に起こる事を…何が起きる?」

 

「…5D'sに対する蹂躙…そして未来からの警告です…!」 

 

「不動遊星は…勝てるのか?」

 

「俺は…一人の男として、そして…5D'sの一員として遊星達を信じています…!!頼むぞ遊星、クロウ、ジャック…!」

遊星は拳を握りしめながら遊星達を応援した…。

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

Sideニューワールド

 

 

『何やってるんだよプラシド!!もう少しで「無限霊機」が破壊されるところだったじゃないか!?』

 

『だったらなんだ?やる事はやった…文句はないはずだ』

ルチアーノの怒りにプラシドは素っ気なく返す…

 

 

『文句って…あのねぇ!!』

 

『よせ、今は仲間割れをしている場合ではない…』

 

『ホセ!でもプラシドが〜!』

ホセが2人を諌める…

 

『あとは私に任せろ、予定通りカウンターは80…ついに奴らに勝利し、サーキットを完成させる時が来たのだ…!』

そしてホセはローブを脱ぎ捨てた…

 

『(待っていろ不動遊星…お前とはもう一度戦うチャンスがある…!)』

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

『第1回WRGPもいよいよ大詰め!チームニューワールドのラストホイーラーはホセ選手!』

MCの実況が響く中、ホセは徒歩でコースへと現れる…そして…!

 

『ハッ…!!』

 

 

ガシャンガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン!!

 

 

『な、ななななんとホセ選手!自らの足で走り出した〜!?』

 

「な、何やってるんだよアイツ!?」

 

「Dホイールに乗らないの!?」

突如、ホセは凄まじい速度で走り出す!!

 

 

『ハハハハハ!覚悟するがよい!チーム・5Ds!!これからが本当の勝負!我らの力を思い知るがいい!!ハアッ!!』

そう言ってホセは跳躍、そしてピットから現れた茶色のDホイール「G(グリード)・ヘカトンケイル」と変形・合体…ホセの真の姿「獣輪態」へと変化する!

 

「なん…だとぉ!?」

 

『なんと!?Dホイールがデュエリストと一体化した!!これぞ人機一体!チームニューワールドの底力だぁ!!』

 

 

 

『いくぞジャック・アトラス!まずは貴様から葬ってやる!!』

 

「やれるものならやってみろ!貴様如きに倒されるジャック・アトラスではない!!」

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

デュエルダイジェスト ジャック対ホセ

 

 

キィン─!

 

 

「っ…!これは…!!」

ジャックとホセを中心に光のオーラが刻まれる…それは闇のデュエルの始まりを意味していた…

 

 

『これでダメージは現実のものとなった…私のターン!!「グランド・コア」を召喚!さらに罠カード「ボム・ブラスト」を発動!自分の機械族モンスターを3体まで破壊し相手に400ダメージを与える!』

 

「なにっ!?うおおっ!!」

ホセのフィールドに現れた茶色の卵が爆発しジャックにダメージを与える!

 

『「グランド・コア」が破壊された事でデッキから「機皇帝グランエル∞」「グランエルT」「グランエルA」「グランエルG」「グランエルC」を特殊召喚!合体せよ!「グランエル∞」!!』

ホセのフィールドに地の機皇帝「グランエル∞」が現れる…!

 

 

『「グランエル」の攻撃力は私のライフポイントと同じになる!さらに「Sp-テイク・オーバー」を発動!「無限霊機」を破壊し、乗っていたカウンターの数✕100のライフを回復する…!カウンターの数は「80」…よって…』

 

「ライフ12000…攻撃力12000だと!?」

 

『フッ…サーキット完成への最終章の幕開けだ…!我らが力を見るがよい!!「グランエル」で「スカーレッドノヴァ」を攻撃!』

 

「させん!『スカーレッドノヴァ』を除外し攻撃を無効にする!」

 

『逃しはせぬ!「グランエルT」の効果により「グランエル」が攻撃する時シンクロモンスターの効果は無効になっている!グランド・スローター・キャノン!!』

グランエルの主砲がスカーレッドノヴァを消し飛ばす!

 

 

「『スカーレッドノヴァドラゴン』!ぐっ!?うわあああ…!!」

攻撃の煽りを受けたジャックは吹き飛ばされた…

 

 

ジャックLP0

 

ホセWIN…

 

 

 

『「グランエル」の効果発動…!戦闘で破壊したシンクロモンスターを吸収し、その元々の攻撃力分攻撃力をアップする…!もはやいかなるモンスターも敵ではない!』

光の触手がスカーレッドノヴァを掴み吸収する…グランエルの攻撃力は…15500…!

 

『これで勝利は我らのもの!世界は…生まれ変わるのだ!!』

 

 

 

 

Side5D's

 

「ぐっ…!クロウ…遊星…すまな…い…」ガシャン…

 

「ジャック!しっかりしろ!!」

 

「ジャック!!」

グランエルの攻撃を受けたジャックはギリギリで持ち直し何とかピットまで辿り着いたが…気を失ってしまう…

 

「ウィンダ!ウェン!」

 

《担架はOKだよ!!》

翠の指示でウィンダとウェンが駆け付ける!(実体化&私服)

 

「遊星君、ジャック君の事は任せて…!すぐに治療するわ!!」

 

「翠さん…お願いします!!(これが奴らの本気か…許さないぞ…チームニューワールド…!)」

 

遊星は拳を握り締める…遊星とチーム・ニューワールドとの戦い…否、長い1日は始まったばかりなのである…。

 

 



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決戦!チーム・ニューワールド!・地〜立ちはだかる巨帝〜

こんにちは!S,Kです!

チームニューワールドとの決戦は佳境を迎える!

それでは最新話をどうぞ!


ついに始まったチーム・ニューワールドとの直接対決、先鋒のジャックはルチアーノ・プラシドを撃破したが…それは罠だった。

ホセは2人の守った「無限霊機」を使い12000という膨大なライフを手にし自身の機皇帝「グランエル」を召喚…実体化したダメージでジャックに重傷を負わせたのだった…。

 

 

 

 

Side5D's

 

 

「クロウ!行っちゃだめだよ!あんなモンスターを相手にしたら…死んじゃうよ!!」

 

「そうよ…いかないでクロウ!」

 

「お前達…」

ピットではホセとのデュエルに挑もうとするクロウを龍亞と龍可が必死に制止していた…イリアステルとのデュエルは「闇のデュエル」…目の前でジャックが倒される姿を見た双子達はクロウを心配して止めようとする…。

 

 

「龍亞、龍可…このバトンはな、ジャックが気を失いながら繋いでくれたモンだ…オレがここでやめる訳にはいかねぇ…それに…」

クロウは空に浮かぶアーククレイドルを睨む

 

「なんとしてもオレ達がアレを止めなくちゃならねぇんだ…!」

 

「「クロウ…」」

 

「…心配すんな!オレはこんなところじゃ死なねぇ、それに翠と遊海が見てるんだ…みっともない姿は見せられねぇ!…行ってくる!!」

クロウは覚悟を決めてコースへと乗り込んだ…

 

 

「(頼んだぞ…クロウ!)」

 

SideOut

 

 

 

 

 

「待ちやがれ!怪物野郎!!今度はオレが相手だ!!」

 

『ん…?来たかクロウ・ホーガン、「グランエル」を前に逃げなかった事だけは褒めてやろう…』

クロウは先行していたホセに追いつく…

 

『さぁ、お前の全ての力をぶつけるがいい…人間の可能性を見せてみろ!』

 

「(オレの全てか…オレにはジャックや遊星みたいにシンクロキラーへの切り札はねぇ…だが、奴に対抗する方法はある…!!)」

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

デュエルダイジェスト クロウ対ホセ

 

 

「遊星…悪いが使わさせてもらうぜ!!『スピードワールド2』の効果発動!スピードカウンターを10個取り除いて『グランエル∞』を破壊する!!」

 

『無駄だ、罠カード「インフィニティ・ウォール」発動!このターン機皇帝はカード効果では破壊されぬ!』

 

「チッ…機皇帝専用の罠カードか…!なら!」

 

クロウはグランエルに1歩も引かずに挑む…クロウはシンクロキラー対策のモンスターである「BF─極光のアウロラ」を召喚する、アウロラはエクストラデッキのシンクロモンスターを除外する事で同じ攻撃力・効果になる効果を持っていた…その効果で「BF─アーマードウィング」の効果を得てグランエルへと攻撃を仕掛ける!

 

 

「バトルだ!『アウロラ』で『グランエル』を攻撃!」

 

『無駄だ!どんな策を使おうとも「グランエル」の攻撃力は超えられぬ!』

 

「無駄じゃねぇ!『アウロラ』がえた『アーマードウィング』には攻撃した相手に楔カウンターを置き、楔カウンターを取り除く事で相手の攻守を0にする!」

 

『なにっ!?』

 

「さらにオレの場の『スチー厶トークン』は相手の攻撃力が0になった時、そのモンスターを除外する!…これでどんなに攻撃力が高くても関係ねぇ!!」

これがクロウのシンクロキラー対策…コアパーツであるグランエルを除外すれば機皇帝は自壊する!

 

「これがオレの編み出したシンクロキラーへの切り札だ!喰らえぇっ!!」

アーマードウィングに変化したアウロラの攻撃がグランエルに直撃する!

 

 

『お前の切り札はその程度か…、無駄だと言ったはずだ!「グランエルG」の効果発動!我が盾となれ!「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン」!』

 

「な、なにぃ!?」

グランエルから吐き出されたスカーレッドノヴァドラゴンがグランエルの身代わりになる…!

 

『「グランエルG」は攻撃対象を吸収したシンクロモンスターに変更できるのだ…』

 

「クロウの策が躱された…!!」

強力なグランエルの効果がクロウの策を打ち砕く…!

 

 

「(くそっ…!コンボはもう効かねぇ…どうすりゃ奴に対抗できる…!?)…カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

クロウは対抗手段を思いつかぬままターンを終える…。

 

 

『ふん…全力を出してもその程度か、お前の出番はここまでのようだな…「スピードワールド2」の効果発動!「アウロラ」を破壊する!…これで貴様を守るモノはなくなった…バトルだ!「グランエル」でダイレクトアタック!グランド・スローター・キャノン!』

グランエルの主砲がクロウに直撃する!

 

「「「クロウ!!」」」

ピットの遊星達は悲痛の叫びをあげる…しかし、「鉄砲玉」のクロウはここで終わる男ではなかった…!

 

「うおお!!手札の『BF─熱風のギブリ』はダイレクトアタックを受ける時に守備表示で特殊召喚できる!!」

クロウはギブリを召喚する事で砲撃を受け止める!

 

『小癪な…』

 

「すまねぇ『ギブリ』だが…お前の犠牲は無駄にはしねぇ!!罠カード『ブラック・リベンジ』発動!自分のBFモンスターが破壊された時!『BF─ブラック・クレスト・トークン』2体を特殊召喚できる!さらに罠カード『ブラック・ブースト』発動!自分の場にBFモンスターが2体以上いる時2ドロー!」

クロウは2体のトークンを召喚し手札を増やす、これでトークンにより2ターンの猶予ができたと思われたが…

 

 

『フッ…!私の攻撃はまだ終わっていない、さらに守備モンスターを召喚した事で自分の首を絞めたな…!』

 

「なにっ!?」

 

『「グランエルA」の効果発動!「グランエル∞」が吸収したシンクロモンスターで相手モンスターを攻撃できる!さらに守備モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える…!』

 

「なっ…!?機皇帝は捕らえたモンスターを攻撃にも使えるのか!?」

クロウの前に拘束されたスカーレッドノヴァドラゴンが立ちはだかる!

 

『ゆけ!愚かなシンクロモンスターよ!己が仲間と争うのだ…!そして仲間の力を受けて苦しむがいい!』

 

「っ…!ぐあぁぁ!!」

スカーレッドノヴァの掌底がトークンを破壊し、貫通ダメージがクロウに襲いかかる!

 

『残念だったな、「グランエル」の取り込んだシンクロモンスターはダイレクトアタックはできん、モンスターを逆に召喚しなければダメージを受けなかったものを…』

 

「くそっ…!オレの相手は機皇帝だけじゃねぇ…『スカーレッドノヴァ』まで相手にしなきゃならねぇのか…!!」

クロウは拳を握り締める…ブラッククレストトークンの守備力は800、次に攻撃を受ければクロウのライフは削り切られてしまう…!

 

 

「オレは『ブラッククレストトークン』をリリースして『BF─天狗風のヒレン』を召喚!」

クロウは守備力2300のヒレンを召喚する、これでスカーレッドノヴァの攻撃を受けても耐える事ができる…

 

『フン…うまく考えたな、それでシンクロモンスターの攻撃は耐える事はできる…だがそこまでだ、続く手がなければ「グランエル」の一撃を受ける事になるぞ…?』

 

「(そんな事わかってるんだよ…!だが『ヒレン』の効果を使えば…!!)」

ヒレンの効果は「2000以上のダメージがダイレクトアタックを受けた時に墓地から自身と効果を無効にした『BFモンスター』を特殊召喚できる」効果…クロウはそこから『緊急同調』で『ブラック・フェザー・ドラゴン』に繋げようとしていた、これでさらに1ターン()()()()新たな可能性を掴む事はできる…だが。

 

「(ダメだ…!それじゃあ遊星が機皇帝と2体のシンクロモンスターを相手にする事になっちまう!!…シンクロキラー対策の『スカーレッドノヴァ』でもダメだったんだ、オレのシンクロモンスターじゃ…勝ち目はねぇ…!!オレは…ここまでなのか!!)」ダン!!

クロウは悔しさで拳を叩きつける…その時

 

 

 

 

「カードを信じるんだ─…」

 

 

「(遊星…)」

クロウの脳裏に遊星が口癖のように言っている言葉がよぎる…それはクロウに一つの策を思いつかせた…!

 

「(今のオレにできなくても…仲間に託せばできる事がある…覚悟は決まった、これしかねぇ─これが()()()()()()!!)カードを2枚伏せてターンエンド!!」

クロウはターンを終える…遊星へと未来を、希望を繋げる為に…クロウは機皇帝に立ち向かう!!

 

『覚悟は決まったようだな、人間の可能性とはこの程度か…ならば、死ぬがいい!!愚かな「スカーレッドノヴァドラゴン」よ!「ヒレン」を攻撃せよ!!』

 

「ぐうっ…!!」

操られたスカーレッドノヴァがヒレンを破壊する…これで残りライフは…100

 

 

『さぁ、「ヒレン」の効果を使え…見せてみろ、お前の本当の切り札を!!』

 

「その手には乗らねぇ…!シンクロモンスターを出したら機皇帝に破壊され、捕まり…遊星に襲いかかる事になる…!それだけは避けなきゃならねぇ!!」

クロウはホセの挑発を切り捨てる、仲間の為にその手には乗らないと…だが、ホセが次に口にしたのは予想外の言葉だった。

 

 

()()()()()()()()()()()?』

 

「なにっ…!?」

 

『仲間同士が争い傷つけあう…その愚かな構図は人間の姿そのものではないか?…見るがいい、このおぞましい姿を…シンクロモンスターこそが愚かな人間の象徴なのだ!それが争う事になんの問題がある?』

 

ホセ達の考えの根底には『シンクロ召喚・シンクロモンスターは悪』という考えがある…だからこそ機皇帝を使いシンクロモンスターを奪い、操り…さらにシンクロモンスターを破壊する…見方によっては外道な事ができる、そしてその言葉は…

 

 

「ふざけんじゃねぇ!!!」

クロウの琴線に触れた…!

 

「お前が奪った『スカーレッドノヴァドラゴン』はジャックの魂だ!!オレ達はシンクロモンスターと一緒に戦ってきた!お前達に悪く言われる筋合いはねぇ!!」

クロウ達シグナーはシンクロモンスター『シグナーの竜』に導かれて集まった、そしてシンクロモンスターと共に苦難を乗り越え戦い続けてきた…その魂を傷つけられたクロウは怒りをあらわにする!

 

 

『愚かな…その浅はかな考えこそが破滅へと繋がるのだ…!』

 

「なにを言ってやがる…?」

 

『滅びゆく者に…これ以上語る必要はない!!消え去るがいい!「グランエル」でダイレクトアタック!グランド・スローター・キャノン!!』

 

「うっ…うわあああ!!」

グランエルの主砲がクロウに直撃…そのライフを消し飛ばした…

 

 

クロウLP0

 

ホセ WIN…

 

 

 

『これで終わりだな、今の攻撃を受けては無事ではあるまい…「まだだ!!」なにっ…!?』

ホセはクロウのクラッシュを信じていたが…クロウは煙の中からその姿を現す!

 

「まだ…バトルフェイズは終わってねぇ!!『ヒレン』の効果発動!2000以上のダメージを受けた時、墓地からこのカードと『熱風のギブリ』を特殊召喚する!さらに罠カード…『緊急同調』を発動…!バトルフェイズ中にシンクロ召喚を…する事ができる!!」

クロウは痛みに耐えながらその想いを繋ぐ!!

 

「黒き疾風よ…秘めたる思いをその翼に現出せよ!シンクロ召喚!!舞い上がれ…!『ブラック・フェザー・ドラゴン』!!」

クロウの想いを乗せ、黒き竜が舞い上がる!!

 

 

『なに…?自分の身を犠牲にしてまでシンクロモンスターを残しただと…?』

 

「そうだ…これはチームの勝利の為の敗北だ…!」

 

『なんだと…!?』

ホセにとってその答えは理解に苦しむ言葉だった、仲間の為にシンクロモンスターを残す…その行動の意味も理解できなかった。

 

「意味がわからねぇって顔してるな…お前が言った仲間同士で争うだけが人間じゃねぇ…!自分の想いを…魂を仲間に託して戦う事もできる!!…人はそれを『絆』と呼ぶんだ!!」

 

『絆…』

そう言ってクロウはピットへと戻っていった…。

 

 

「はぁ…今回はちょっくら厳しかったなぁ…あとは頼んだぜ…遊星……!」

遊星に絆を託しクロウの意識は沈んでいった…。

 

 

 

 

Side遊星

 

 

「クロウ…お前が命懸けで残してくれた『ブラックフェザードラゴン』の力…決して無駄にはしない!!」

オレはクロウに…ジャックに希望を託された、オレは絆の力で機皇帝を倒して見せる!!

 

 

「遊星!!負けんじゃねぇぞ!!お前にはオレ達がついてる!そんなデカブツに負けるんじゃねぇ!!」

 

「この声は…!鬼柳!?」

遊星は聞こえた声に頭を上げる…そこには観客席から声を張り上げる鬼柳京介の姿があった。

 

 

「言っただろ!必ず応援に行くってな!…見せてやれ!チーム・サティスファクション…いや、5D'sの力を!!」

 

「鬼柳…みんな…!」

そして遊星は気づいた、集まった観客の中にたくさんの見知った顔、仲間達がいると…遊星はその想いを一身に背負う!

 

「オレは1人じゃない…!勝負だ!チームニューワールド!!」

遊星は最終決戦へと挑む…!!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

『来たか不動遊星…何故クロウがわざわざシンクロモンスターを残したかはわからん、だが機皇帝がいる限り…それは地獄の置き土産となる…!』

 

「(ニューワールド、お前達には理解できないだろうが…オレにはわかる、クロウがオレに『ブラックフェザードラゴン』を託したのは…オレ達が戦ってきた中で得た答え…それを思い出したからだ…、オレは1人で戦っているんじゃない…オレは3つのデッキで戦っているんだ!!)いくぞ、ホセ!!」

 

遊星は今までの戦いを思い返す…手に入れた情報を元にした最適の戦略で遊星達を追い詰めた「チーム・ユニコーン」、自分達の信念を曲げずに戦い抜き、誰も見向きもしなかった切り札で戦った「チーム・太陽」、神々の力を得て、世界を救う為に戦った「チーム・ラグナロク」…戦いを経て遊星達は1つの答えに辿り着いた、それが『絆』…例えそれぞれのデッキはバラバラでも…その魂は繋がっていく…!その思いを胸に遊星は機皇帝に挑む!

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 遊星対ホセ

 

 

 

 

 

 

『フン…破滅の道とわかっていてもシンクロ召喚をやめる事はできなかったか…ならばこのデュエルで下ろしてやろう、愚かな人間の終幕を!!「グランエル∞」で「ブラックフェザードラゴン」を攻撃!』

 

「やらせない!『波動の壁─ウェーブ・ウォール』のモンスター効果発動!自分の場にシンクロモンスターがいる時、相手の攻撃を無効にする!」

 

『ほう…!』

迫った攻撃を遊星の場の石柱(戦士族)が受け止める!

 

『ならば…罠カード「A・キャノン」発動!「グランエルA」を墓地に送り「ブラックフェザードラゴン」を破壊する!発射!』

 

「っ…!『ブラックフェザードラゴン』!!」

射出された機皇帝の右腕がブラックフェザードラゴンを破壊する…

 

「クロウ…お前の思いは繋げる!!罠カード『シャドーインパルス』発動!レベル8の『ブラックフェザードラゴン』が破壊された事でエクストラデッキのレベル8・ドラゴン族モンスターを攻撃力0、効果無効で特殊召喚する!飛翔せよ!『スターダスト・ドラゴン』!!」

仲間達の思いを乗せて白銀の竜が飛翔する…これがクロウの繋げた希望、進化を続ける翼にクロウは全てを託したのだ…!

 

「繋げてみせる…『シューティング・スター・ドラゴン』に!!」

 

『フン…攻撃を一度防いだくらいで浮かれおって…お前達の絆では機皇帝は倒せぬ、いくらアリが群れようとゾウを倒せぬように!!「グランエルA3」を召喚!さらに「Sp-サイレント・バーン」を発動!「グランエル」の攻撃していないパーツは4つ、1200のダメージを受けるがいい!』

 

「なにっ!?ぐわっ!!」

グランエルから放たれた光線が遊星のライフを削る…大きなダメージに遊星はバランスを崩すがすぐに立て直す!

 

 

『ふん…一息にクラッシュしていれば痛みを感じる事もなかっただろうに…つくづく人間とは愚かなものだ…』

 

「ぐっ…オレは諦めない…!歴史を改竄しようとするお前達の前に何度でも立ち塞がる!!」

遊星は痛みに耐えながらホセを睨みつける!

 

『愚かな…あまりにも幼い、ならば…お前達に教えてやろう…愚かなる人類の歴史を!!』

 

キィン─!

 

 

ホセの言葉と共に空にイリアステルの象徴たる無限の記号が浮かび上がる…さらに

 

キィン─!

 

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「痣が…!」

シグナーに刻まれた痣が共鳴し光を放つ!

 

 

『ホセ!?まさか…アレを奴らに見せんの!?』

 

『忌々しい…!再びあの絶望を見なければならんとは…!!』

 

ルチアーノとプラシドは顔を歪める…そしてシグナーとその近くにいた者の意識は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

Side遊海

 

キィン─!

 

「!?…痣が…!」

ホセと遊星のデュエルの最中…シグナーの痣が光を放つ…

 

「遊海!何が起きている!」

 

「心配しないでください…すぐに戻ります…!」

その瞬間、俺の意識は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここは…これが、破滅の未来か…!」

目を開けるとそこは一面の赤黒い空、そこに漂う黒く輝く太陽…そして大地を覆う廃墟…そこは遥かな未来、破滅を迎えた未来の姿だった。

 

 

「…これが…破滅を迎えた世界…」

 

「う、うわあああ!?落ちる!た、助けて〜!?」

 

「龍亞!龍可!お前達!」

 

「ゆ、遊海!たた助けて〜!?」

叫び声に顔を向ければ遊星やアキにブルーノの足に捕まった龍亞達、そして包帯姿のジャックとクロウが空に浮かんでいた…。

 

「落ち着け龍亞、ここは現実じゃない…俺達は記憶の世界にいる、ゆっくり手を離してみろ…そのまま浮かべるはずだ…」

 

「う、うん……あっ、落ちない…よかった〜…」

ブルーノから手をはなした龍亞は額の汗を拭う…

 

 

「みんな…見て!あれって…!?」

 

「なっ…あれは!?」

アキの言葉にシグナー達は一点を見つめる…そこあったのは廃墟に佇む未完の橋…「ダイダロス・ブリッジ」の姿だった、つまりこの廃墟は…

 

「まさか…この街は…ネオ童実野シティだっていうのか…!?」

 

『その通り、私達にとっては「現実」の…お前達にとっては「未来」のネオ童実野シティの姿だ…!』

遊星の言葉を肯定するようにホセ、プラシド、ルチアーノの幻影が俺達の前に現れる…。

 

 

『この破滅の未来は…シンクロ召喚から始まったのだ…!』

 

そして場面は移り変わる…そこはまだ繁栄していた頃のネオドミノシティ…そしてホセは終わりの始まりについて話し始めた…。

 

 

『デュエルの進化と人々の熱狂と共に人類は繁栄した…その象徴こそが「シンクロ召喚」だった…』

Dホイールが街を埋め尽くし…人々は口々にシンクロ召喚を叫んでいる…その様子はまるで一種の宗教のようだった。

 

『ある者は言った、「Dホイールがシンクロ召喚時に発する波動がモーメントと共鳴している」と…共鳴を増したモーメントは回転を早め、世界も進化のスピードを早めた…だが、それはあまりにも早すぎたのだ…』

 

『キッヒッヒ…!もっと進化を!もっとレベルを上げろ!!もっと!もっともっともっと!!!アハハハ…!』

 

『やめろ、ルチアーノ』

狂ったようにルチアーノが笑い始める、プラシドがそれを諌めるが…変化は突然だった。

 

『アハハハ…ハ…う、うわあぁぁぁ!!!』

 

「っ!?なんだ!どうしたと言うんだ!!」

突如としてルチアーノは頭を抱え、苦しみ始める…それはまるでトラウマを刺激された子供のようだった…、その目の前に広がる光景は…空を埋め尽くす機皇帝達の姿だった…。

 

 

『機皇帝とは本来、「人類を守る兵器」だった…だが、ある時機皇帝のコンピューターはこう結論したのだ「人類を最も殺すのは人類である、人類を守る為に人類を抹殺しなければならない」と…これは後になってわかった事だったが…機皇帝達はモーメントに蓄積された負の感情によりそのような暴走を起こしたのだ…!!』

 

「そんな…!」

 

『あっ…見て!!』

街を破壊し続ける機皇帝の軍団…そんな中、龍可がある光景を見つける…それは…

 

 

『早く逃げるんだ!』

 

「あれは…ルチアーノ!?」

親らしき男女と共に逃げるルチアーノらしき少年の姿だった。

 

 

『これは…ボクの時代の記憶…』

 

父と母と共に機皇帝から逃げ続けるルチアーノ親子…しかし、機皇帝からは逃げる事はできなかった…。

 

キュィイン…バシューン!!

 

『うわあっ!?』

 

グランエルから放たれたレーザーが家族を吹き飛ばす…

 

『パパ…ママ…?あ、ああ…!うわあああああ!!!』

 

吹き飛ばされたルチアーノが顔を上げる…父と母がいた場所は…跡形も無く消し飛んでいた…。

 

 

 

『次は…オレの時代だ…』

 

プラシドの言葉と共に場面は移り変わる、そこは廃墟の中…機皇帝への反乱軍へ参加したプラシドは一人の女性と共にグランエルを破壊しようとしていた、彼女は…プラシドの恋人だった。

 

『いくよ…!』

 

『おう!!』

 

物陰に隠れていたプラシドが飛び出す、それに気づいたグランエルがプラシドに注意を向けた瞬間、女性がロケット砲を放ちグランエルに直撃…グランエルを粉砕した!

 

『やったな!』

 

『ああ…!』

勝利を喜びあう二人…だが…

 

 

ギュイン…ズドォォン!!

 

『ぐあああああ!?』

突然の爆発にプラシドは吹き飛ばされる…

 

『ぐっ…何が…!エウレア!エウ…そ、そんな…』

プラシドが身体を起こす…あったはずの廃墟は吹き飛ばされ…恋人の潰れたロケット砲だけが残されていた…

 

『あ…ああ…あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"─!!!』

 

 

 

『…愚かな人間達の欲望は遂に頂点へと達した、その時突然モーメントは逆回転を始めた、まるで人の負の心に反応したように…モーメントは暴走し世界各国のモーメントが爆発した…世界を道連れに…』

ホセの言葉と共に地球のあちこちで巨大な爆発が起きる…それが世界の最後だった…。

 

 

「嘘だ!!モーメントが再び暴走したなんて…オレは信じない!!」

 

『本当の事だ…私達を含め愚かな人類のせいで…これが私の時代の記憶だ…』

モーメントの暴走を信じない遊星にホセが最後の記憶を見せる、そこには廃墟を一人で彷徨うホセの姿があった…。

 

 

『運命に選ばれた私は生き残りを探そうと一人彷徨い歩いた…だが…生き残りを見つける事は叶わなかった…』

 

 

『誰か…誰かぁぁ…!』

破滅したネオドミノシティにホセの哀しい叫びが木霊する…地球という星は終焉を迎えた…

 

 

 

 

『私は歴史を見送った…深い絶望と共に…』

 

そして再び視界は光に包まれた…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…み…遊海!!しっかりしろ!!」

 

「っ…はぁ…はぁ…!!海馬社長…どれくらい経ちましたか…?」

遊海が意識を取り戻すと海馬社長が遊海の肩を掴み揺さぶっていた…

 

「正気に戻ったか!時間にして1分程だ…何を見た…!!」

 

「破滅の未来を生きた哀しき男の生涯を…シグナー達も同じものを見たはずです…行かなければ…海馬社長、お願いします…!」

 

「ついに始まるのか…!この町の存亡を賭けた戦争が…!」

遊海の言葉に海馬は無線機を取り出す

 

「各員に伝える!警戒態勢を取れ!!間もなく戦争が始まる!!チーム5D'sの決闘を注視するのだ!」

海馬は無線機を遊海に渡す

 

「目的を確認する!Aチームはスタジアムで待機!異変が起こり次第、各個対応せよ!」

 

「「「了解!!」」」

 

「チームBはネオドミノシティで異変が起き次第対応開始!対応しつつ住民の避難を!!」

 

「「「「了解!」」」」

 

「チームCはサテライト住民の避難を頼む!特に老人や子供があつまっているマーサハウスや孤児院を優先してくれ!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

無線機からそれぞれに応答が返ってくる…準備は整った…!

 

 

「最後に…『コピーナイト』発動!出番だ!」

 

『ようやくか…(オレ)は何をすればいい?雷を撃ち落とすか?住民の救助と避難か?』

遊海の隣に黒い服の遊海…ユウスケが現れる

 

「両方だ」

 

『ハッ…!自分使いが荒いなぁ…まぁいい、久々に暴れるぜ!!』

遊海は準備を整えた…!

 

「遊星…こっちは任せろ…!!」

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンクロ召喚が…オレ達のスピードが辿り着く世界があんな世界だなんて…オレは信じない!」

 

『不動遊星!運命から目を背けようというのか!!お前達の運命は既に破滅へと向かっている…その始まりがシンクロ召喚なのだ!』

現実へと戻った遊星は破滅の未来を否定する…だが、ホセもそれは同じ事…未来を救う為にシンクロ召喚を否定する…

 

「違う!シンクロ召喚は破滅のシンボルじゃない!運命の壁を突き破るものだ!」

 

『その単純な考えが人類を破滅させたのだ!!』

 

「いや…!運命は!未来はまだオレ達の手にある!」

遊星は未来を信じ、勝利を掴む為に限界を超える!

 

「オレは信じる…オレ達の絆が未来を切り開くという事を!!クリア・マインド!!オレはレベル8の『スターダストドラゴン』にレベル2シンクロチューナー『フォーミュラシンクロン』をチューニング!!」

仲間達の願いを胸に…白銀の翼は進化を遂げる!!

 

「集いし夢の結晶が!新たな進化の扉を開く!光さす道となれ!!」

 

遊星が白紙のカードを掲げる…カードはクリアマインドに共鳴しその真の姿を現す!!

 

 

「アクセルシンクロォォォ!!!」

 

スピードの限界を超えた遊星は亜空間へと消え、再び現れる!

 

「生来せよ!『シューティング・スター・ドラゴン』!!」

《ギュアアアン!!》

 

『現れたか…「シューティングスタードラゴン」…!』

 

「『シューティングスター』の効果発動!デッキを5枚巡り、その中のチューナーの数だけ攻撃できる!…オレ達の絆を…今、この時に…!」

 

キィン─!

 

遊星の覚悟に痣が光輝き…集結する!

 

「1枚目!チューナーモンスター『ドリル・シンクロン』!2枚目『デブリ・ドラゴン』!3枚目!『ニトロ・シンクロン』!4枚目!『クイック・シンクロン』!5枚目!…チューナーモンスター『エフェクト・ヴェーラー』!!…これで5回の連続攻撃ができる!いくぞ…ホセ!!」

シューティングスターが5体に分裂する!

 

 

「1回目のバトル!『グランエルA3』を攻撃!」

 

『「グランエルG」の効果発動!攻撃対象を「スカーレッドノヴァドラゴン」に変更する!「シューティングスタードラゴン」を迎え撃て!』

ジャックの魂が遊星に立ちはだかる!

 

「リバース罠『シンクロ・ストライカー・ユニット』を発動!『シューティングスター』に装備し攻撃力を1000ポイントアップする!」

 

『おのれ!「グランエルC」の効果!「スカーレッドノヴァドラゴン」の破壊を無効にする!』

 

「だが、ダメージは受けてもらう!」

シューティングスターがスカーレッドノヴァに突撃しライフを削る!

 

「2回目の攻撃!」

 

『再び「グランエルG」の効果!盾となれ「スカーレッドノヴァドラゴン」!』

再びの突撃がスカーレッドノヴァを破壊し、機皇帝の呪縛から開放する!

 

「3回目の攻撃!『グランエルA3』を攻撃!4回目の攻撃!『グランエルT』を攻撃!!」

 

『ぐおおぉぉっ!!』

遊星の連撃が機皇帝のパーツを破壊しホセのライフは残り4100、ついにシューティングスターが機皇帝を上回った!

 

 

「5回目の攻撃!『機皇帝グランエル∞』を攻撃!シューティング・ミラージュ!!」

シューティングスターの最後の一撃が機皇帝を粉砕、さらにグランエルのデメリットによりホセの場はガラ空きとなった…!

 

 

「これがオレ達の未来を切り拓く力だ!シンクロ召喚が…アクセルシンクロがまやかしの未来を打ち砕いた!!」

 

『それはどうかな…?運命に近づいているではないか、おかげで私のフィールドは()()()()と化した…』

 

「っ…!」

ホセの言葉を聞いた瞬間、遊星の脳裏に破滅の未来の光景が蘇る…

 

『だが…安心しろ、その運命は私達が…いや、この『『アポリア』』が修正してやる!』

 

「アポリア…だと…?」

遊星はホセの呟いた言葉に困惑する…その時、遊星は目の当たりにする事になる…三皇帝の真の力を…!

 

 

『絶望より生まれし3つの魂よ…今こそ1つに!!』

 

ギィン─!

 

 

ホセの言葉と共に晴天だった空が赤黒い雲に覆われる…そこにホセ・プラシド・ルチアーノが飛び込んでいく!

 

 

『おせーよホセ、これでようやく不動遊星と戦う時が来た…!』

 

『ボクもだけどねぇ─!!』

そして3人はホセの身体をベースに合体していく…そして現れたのは額に緑色の玉を埋め込んだ巨大な一人の人間だった…!

 

 

「何が起きている…!?」

 

【…我が名は…アポリア…!】

不敵に笑うその人物の名は「アポリア」…イリアステル滅四星が1人…イリアステルの三皇帝の真の姿である。そして変化はまだ終わらない、アポリアを追走するようにプラシドのDホイール「T-666」そしてルチアーノのDボード「A・ケッアルカートル」が現れる。

そして3台の乗騎が合体…三つ首の龍をイメージした超弩級Dホイール「T・ウロボロス」へと変形、さらにアポリアが合体…その姿を現す!

 

 

「お前達は!…いや、お前は何なんだ!!」

 

【我が名はアポリア…絶望の番人…】

 

5D'sとニューワールド…否、アポリアとの戦いは遂に最終局面を迎える!

 

 

 

 

 

これから始まるは決闘に非ず…未来を賭けた戦争である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピシッ…ピシピシッ…バリーン…



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対決!絶望のアポリア!・人〜破滅への序章〜

こんにちは!S,Kです!
遂に決戦もクライマックス!遊星達の勇姿をどうぞご覧ください!

それから活動報告にてアンケートを実施していますので…ご協力よろしくお願いします!

それでは最新話をどうぞ!


「機皇帝グランエル」をアクセルシンクロの力で倒した遊星、ようやくホセを追い詰めたと思われたが…三皇帝が真の力を開放し正体を現す…。

現れた決闘者の名は『アポリア』…イリアステル滅四星が1人だったのだ…!

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊星対アポリア

 

 

 

 

 

【我が名はアポリア、絶望の番人…】

 

「アポリア…!?」

突如としてイリアステルの三皇帝が合体して現れたアポリアに遊星は困惑する…。

 

【我ら3人は元々1人…これこそが本来の姿だ、不動遊星…流石は私の見込んだデュエリストだ、お前は()()()()機皇帝を倒した】

 

「予定通りだと…!」

 

【その通り、これで「サーキット」は完成へと近づいたのだ…!】

 

「サーキット…!?お前は何を言っているんだ…!」

聞き慣れない言葉に遊星は問い返すが…アポリアは意に介さずデュエルを開始する…!

 

 

【私の…ターン!永続罠「無限牢」の効果発動!手札を1枚捨て、墓地の「グランド・コア」を魔法・罠扱いでセットする!…そして「無限牢」の第2の効果発動!このカードを墓地へ送り、第1の効果でセットしたモンスターを手札に戻す!そして…3つの絶望よ…!新たなる最強の力を降臨させよ!罠カード『機皇創生』を発動!!手札の「スカイ・コア」「グランド・コア」「ワイズ・コア」を墓地に送り…「機皇神マシニクル∞」を特殊召喚!】

アポリアの手札から離れた3枚のコアが合体する…そして現れたのは機皇帝の数倍の大きさを誇る機皇の神の姿だった…!

 

 

「最強の力…!新たな機皇帝だと!?」

 

【そうだ、「マシニクル」こそ貴様を葬り、この街を破壊するモンスターだ!!】

アポリアの言葉と共にマシニクルがオーラを纏い、そのエネルギーを開放する…エネルギーは赤黒い雲へと吸収されネオドミノシティのいたるところに稲妻が降り注ぐ!

 

「やめろ!アポリア!!」

 

【それはできない相談だ不動遊星…私を止めたくば私を倒してみせるがい…なにぃ!?】

 

「っ…!これは!」

アポリアと遊星は目を見開く…シティに降り注ぐ数多の稲妻…それが一ヶ所に吸い寄せられていくのだ…!

 

 

「おいおい…この町はデュエルの聖地で遊戯さん達の故郷なんだ、無闇やたらに壊さないでくれよ?」

 

 

「あ、貴方は!」

 

【馬鹿な…遊城十代だと!?何故貴様がこの街にいる!?】

稲妻を集めた者の正体…それは「E・HEROサンダー・ジャイアント」を従えた伝説の決闘者・遊城十代だった。

 

「オレだけじゃないぜ?…みんな!オレ達がこの町を守るんだ!」

十代の声と共にネオドミノシティの各所から光の柱が立ち昇った…。

 

 

 

 

 

スタジアムSide

 

『ど、どうした事だ!?天変地異か!?突如発生した稲妻が会場を襲い始めた〜!?』

同じ頃、5D'sや観客のいるスタジアムにも稲妻が降り注ぐ…その時!

 

 

「『閃光竜』!波動音壁最大展開!!」

 

「静まれ!お前達!!」

会場全体を光のバリアが包み込み、カリスマを感じさせる声が響き渡る!

 

 

「お、おい!あれって!」

 

「海馬社長とメタルナイトだ!オレ達を守ってくれているんだ!!」 

 

観客達は大型ビジョンに釘付けとなる、そこには海馬、そしてメタルナイトこと遊海の姿が映っていた…。

 

 

「観客に告ぐ!今、ネオドミノシティにゼロ・リバース以来の未曾有の災害が発生している!しかし案ずるな!係員、セキュリティの指示に従い避難しろ!お前達には我々がついている!!」

 

 

「現われろ!『炎魔竜レッドデーモン』!『玄翼竜ブラック・フェザー』!『妖精竜エンシェント』

!『機械竜パワー・ツール』!」

 

「頼むよ!『ブラック・マジシャン』!『ブラック・マジシャン・ガール』!」

 

「現われろ!『サイバー・エンド・ドラゴン』!」

 

「出番だ!『おジャマキング』!」

 

「その力を見せつけよ!『青眼の白龍』!」

スタジアムを護るように5体の決闘竜が、黒衣の魔術師師弟が、3つの首を持つ機械龍が、おジャマの王が、伝説の白き龍がそれぞれに現れる!

 

 

「キング・オブ・デュエリストの遊戯さんだ!」

 

「『皇帝』カイザー亮に『黒雷』の万丈目さんもいるぞ!?」

観客達は突然現れた伝説のデュエリスト達に呆然となる

 

 

「お前達は我らが守る!速やかに避難を開始せよ!!」

 

 

『こ、これは夢なのか!?伝説のデュエリスト、夢の競演だ〜!!』

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

シティSide

 

 

 

「雷を引きつけろ!『ギルフォート・ザ・ライトニング』!」

 

「いくよ『ハーピィ』達!トライアングル・X・スパーク!」

シティのとある場所、そこでは二人の決闘者が稲妻を無効化しつつ住民達を避難させていた。

 

 

「すげぇ!城之内さんと『ハーピィ使い』の孔雀舞さんだ!」

 

「ありがとうございます!!」

 

「おう!車は端に寄せて、姿勢を低くして避難するんだ!」

 

「克也!次の雷がくるよ!!」

 

「任せとけ!頼むぜ!『真紅眼の黒竜』!」

 

二人は背中合わせに周囲を見渡しながら稲妻に対処していった…。

 

 

 

 

 

「まったく…城之内さんも派手に暴れているね、ならば僕も負けてられないな!『レッドアイズ・ダークネス・ドラゴン』!ダーク・メガ・フレア!」

 

「『D・HEROBloo-D』!ブラッディ・フィアーズ!…本当に戦争みたいだ…デュエルモンスターズはこんな事の為に作られたんじゃない!」

 

 

「『ブリザード・プリンス』の吹雪さんと『運命のHERO使い』のエド・フェニックスだ!」

 

「まさかこんなところで会えるなんて!」

 

「レディ達!早く避難してくれよ〜!」

 

「…志願する場所を間違えたかな…?」

 

二人の美男子は声援に応えつつ人々を守り続けた…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

旧サテライトSide

 

 

「みんな〜!お兄さんについて来るっすよ〜!」

 

「「「は〜い!」」」

 

 

「歩ける方はこちらへ!船着き場に船が待機しています!足腰の弱い方はバスがあるのでネオダイダロスブリッジ方面へ向かってください!」

 

「『はたらく機械王』の丸藤翔さんと『アカデミアの美人教師』の天上院明日香さんだ!?」

 

 

「みんな乗ったね?『エクスプレスロイド』出発進行!」

 

「「「「しんこ〜!!」」」」

 

翔と明日香はそれぞれの得意分野を生かし人々を避難させていく…

 

 

 

 

「「うわ〜っ!?」」

 

「助けてくれ〜!!」

 

「火事場泥棒とは感心しないな、セキュリティに引き渡すまでジッとしていて貰おうか?…動いたら火傷では済まないぞ?」」

混乱に乗じて泥棒をしようとした男達は炎を纏った悪魔と色黒の兵士に拘束される…。

 

「お、お前は何なんだよ!?セキュリティの警官か!?」

 

「フッ…しがない傭兵さ、与えられた任務は…お前達のような犯罪者を捕まえる事だ!」

 

 

 

 

「うぇ〜ん!お父さんどこぉぉ…!!」

 

《どうしたんだい?ご両親とはぐれたのかな?》

 

「うん…ヒック…雷がゴロゴロして走ったらお父さんがいなくなったの〜!」

 

《それは大変だ…!マスター!この女の子を頼みます!》

 

「わかった!稲妻に気をつけろよ?『オネスト』!」

 

《わかりましたマスター!…では!!》バサッ!

背中から翼を生やした青年は迷子の親を探す為に飛び立った!

 

「綺麗…教会の天使様みたい…!」

 

「そう、彼は天使さ!ボクは優介!よろしくね?」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊星!避難は任せろ!お前はそいつをぶっ飛ばせ!」

 

「十代さん…!はい!!」

 

【おのれ…伝説の決闘者共め…!】

アポリアはシティの監視カメラにアクセスし全てを知る…街に降り注ぐ稲妻は伝説の決闘者達に無効化されてしまっているのだ…!

 

「デュエルを続けるぞアポリア!オレはお前を止める!」

 

【いいだろう…ならば絶望の魔神「マシニクル」の力を思い知るがいい!「マシニクル」の効果発動!1ターンに1度相手のシンクロモンスターを吸収し、その攻撃力分攻撃力をアップする!】

 

「無駄だ!『シューティング・スター・ドラゴン』は相手ターンに一度除外する事で攻撃を無効にする!」

シューティングスターを鹵獲する為に伸ばされた光の触手は空を切る…だが!

 

【「マシニクル」のさらなる効果発動!手札の「グランエルG3」を墓地に送る事でその効果を得る!「シューティングスタードラゴン」の効果を無効にする!】

 

「なにっ!?『シューティングスター』!!」

1回は狙いを外した触手がシューティングスターを捕獲し吸収する!

 

 

【これこそが絶望への扉…思い知るがいい不動遊星!私の味わった絶望を!!…私はその絶望に抗う為にこの時代にやって来たのだから…!】

 

「絶望に抗う…?どういう事だ!」

 

【教えてやろう…何故私が己が身体を3つに分け、イリアステルの三皇帝となったのかを…!】

 

キィン─!

 

再びシグナーの痣が光を放つ、そしてシグナー達は再びアポリアの過去を見る事になる…。

 

 

 

 

Side遊海

 

 

「…また、この世界か…」

決闘竜達にスタジアムの守護を命令した直後、遊海は再び破滅の未来を見せられていた…破滅したネオドミノシティ…、そこにホセ…否、アポリアが歩いてくる。

 

『何故…何故こんな事になってしまったのだ…!誰か…誰かああああ…!』

 

【…人類を見送った私は唯一の生き残りとして絶望の中に震えていた…だが、生き残りは…私だけではなかったのだ…!】

 

 

『大丈夫か?オレ達以外に生き残りがいるとは思っていなかった…』

 

 

『え…あ、ああ…!!』

絶望に打ちひしがれるアポリア…それを救ったのは黒髪に黒いバイザーを着けた青年、そしてローブを被った3人の老人だった。

 

『我らはこの世界最後の生き残り…残された者としてその使命を全うしよう…!』

 

『我らの使命…』

仮面の老人がアポリアに手を差し伸べ…アポリアはその手を掴んだ…。

 

 

 

 

【我々の使命…それはモーメントの負の力で滅びてしまった世界に未来の希望を取り戻す事…私達5人は力を振り絞り、破滅した世界と人類を再生する方法を模索した…しかし、それは無謀な試みだった…!】

 

アポリア達5人はあらゆる方法を試した、遺伝子工学・クローン技術・エネルギー学・機械工学…しかし、決定的な結果を得るにはあまりにも時間が足りなかった…。

 

【果てしない時間を費やし、その時間の中で仲間も1人…また1人と力尽きていった…そして私にもその時が訪れたのだ…】

 

 

『…すまないアポリア…これ以上はオレの力でも無理だ…』

 

『…そうだろうな…わしも…そうだと思った…』

そこはアーククレイドルの墓所…そこで最後の治療を試みたバイザーの青年は翳していた手を静かに降ろした…。

 

『ここに…未来はない……』

 

『アポリア…貴方も逝ってしまうのですか…!』

 

『死は平等に訪れる…、その運命だけは…変える事はできない…』

仮面の老人が悲痛な声を漏らす…バイザーの青年は拳を握り締めながら仮面の老人へと伝える…。

 

 

『…聞いてくれゾーン、ラプラス…私の心は3つの絶望から出来ている…』

 

『3つの絶望…?』

アポリアの言葉にゾーンは問い返す

 

『そうだ……子どもの頃に両親を失い【愛してくれる者を失った絶望】…そして戦いの中で恋人を失い【愛する者を失った絶望】、そして…全てが滅び去り【愛さえ失った絶望】…この力を利用しろ、我が友よ…わしの心を3つに分けて君達の下僕として使うのだ…!』

 

『アポリア…』

 

『アポリア…お前の最後の願い、確かに聞き届けた…』

 

『ああ…我が同志達よ…君達は必ず希望を…未来を…とり、戻して───』《ピー…》

無機質な機械音が静かに鳴り響いた

 

『…約束しよう、アポリア…私達は…』

 

『必ず、未来を取り戻す…!』

 

 

【…そして、私はルチアーノ、プラシド、ホセという3つの絶望として甦り…イリアステルを作り上げた…!仲間との最期の約束を果たす為に…!未来の破滅を防ぐ為に…!!】

アポリアの言葉を最後に俺達の視界は再び光に包まれた…。

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

【そして私は思いついたのだ…未来を救う為にネオ童実野シティを歴史から抹殺する事を!!】

 

「この街を…ネオ童実野シティを歴史から抹殺するだと!?」

遊星はアポリアの言葉に驚愕する、それはまさに「偉業」とも呼べる計画だった。

 

【そう…モーメントの根源を消滅させる事で未来を救う…!それが我らの計画なのだ!】

 

「ふざけるな!そんな事は絶対にさせない!!」

 

【これは運命だ!この街を滅ぼす為に我らは再び1つとなった!3つの絶望が1つとなった今!その強大な力にお前が勝てるわけがない…絶望より生まれた憎しみの力を思い知るがいい!!うおおぉぉっ!!】

アポリアの纏うエネルギーが溢れ出しコースを破壊し始める!!

 

「っ!このままじゃまずい…!ハアッ!!」

危険を感じた遊星は壊れた防音壁から公道へとジャンプし、アポリアもそれを追いかける!

 

 

【諦めろ不動遊星!「シューティングスタードラゴン」を吸収した今、最早貴様に希望はない…あるのは漆黒の絶望のみ…!「マシニクル∞」でダイレクトアタック!キューブ・オブ・ディスペアー!】

マシニクルの主砲にエネルギーがチャージされる!

 

「このままでは街にも被害が出てしまう!リバース罠『くず鉄のかかし』!相手の攻撃を無効にする!」

遊星の頼りにする案山子がエネルギー弾を受け止める!

 

「(まだ街の人々の避難も終わっていないはず…被害を避ける為には人の少ない旧BADエリアに向かうしかない!)ついてこい!アポリア!!」

遊星は街や人への被害を少なくする為に旧サテライト方面へと向かう!

 

【フン、被害を抑える為にサテライトに向かうか…だが、その前に負ける事は考えなかったのか?「マシニクル」の効果発動!エンドフェイズに吸収したシンクロモンスターを墓地に送る事でその攻撃力分のダメージを与える!】

 

「罠カード『荒野の大竜巻』発動!装備カードになっている『シューティングスタードラゴン』を…破壊する!!」

遊星は苦肉の策としてシューティングスターを自ら破壊する!

 

 

「オレのターン!『スピードワールド2』の効果発動!1ドロー!さらに『サルベージェント』を召喚!その効果により墓地の『シューティングスタードラゴン』を効果を無効にし、守備表示で特殊召喚!さらにこの効果で特殊召喚されたモンスターは『シンクロモンスターとして扱わない』!」

遊星の場にシューティングスタードラゴンが舞い戻る、だが…

 

 

 

【フハハ…!シンクロモンスターである事も効果も捨てるか…!ならばただの的に過ぎない!私のターン!私も「スピードワールド2」の効果発動!1ドロー!そして「マシニクル∞」の効果発動!手札の「ワイゼルA5」を捨てる事でその効果を得る!これにより「マシニクル」は貫通能力と貫通ダメージを2倍にする効果を得る!】

アポリアは攻勢に打って出る!

 

「だが、オレの場には『くず鉄のかかし』がある!」

 

【無駄だ!「ワイゼルA5」には相手の発動した罠カードの効果を無効にし破壊する効果がある!この攻撃で貴様のライフは尽きる…!絶望の味を知るがいい!「マシニクル∞」で「シューティングスタードラゴン」を攻撃!!】

再びマシニクルの攻撃が遊星に迫る!

 

【(この一撃で私はデュエルに勝利する…!そしてサーキットが完成する!そうすれば無限のエネルギーがアーククレイドルを呼び寄せ…この街の消滅と共に新たな歴史が始まるのだ─絶望のない新たなる未来が!)人類の新たなる未来の礎となれ!不動遊星─!!】

 

「っ…!(オレは…ここまでなのか─?)」

遊星の脳裏に「敗北」の二文字がちらつく…その時だった…!

 

 

「「諦めるな!遊星!!」」

 

「ジャック!クロウ!?どうして!」

Dホイールに乗ったジャックとクロウが遊星に追いつく!

 

「どうしてだと?お前に付き合う為に決まっているだろうが!」

 

「お前一人を戦わせはしないぜ!それに心配すんな!身体は翠のお墨付きだ!!」

 

 

 

 

 

少し前…

 

 

「っ…!やばいぜこりゃ…!!こうしちゃ居られねぇ!ぐっ!?」

 

「遊星…今、いく…!」

 

「ダメよ二人ともまだ動いちゃ!?回復はまだ終わってないのよ!?」

翠に治療を受けながら遊星とアポリアのデュエルを見守っていたジャック達…追い詰められた遊星を放ってはおけず二人はベッドから起き上がる!

 

 

「そんな事は百も承知だ!だが…俺は1人で戦う友を見捨てる事はできん!!」

 

「オレだってそうだ!例え身体がぶっ壊れたって…オレは遊星のところへ行くんだ!!」

 

「ジャック君…クロウ君…わかったわ、なら二人とも手を繋いで…一気に回復させるわ…!」

 

「「頼む…!」」

ジャックとクロウは手を合わせる!

 

「…魔法カード『身分転換』発動!!」

翠が一枚の魔法カードを発動する、その瞬間…ジャックとクロウは光に包まれ全回復していた…。

 

 

「身体が軽い…!これなら大丈夫だ!」

 

「すまない翠…いくぞクロウ!遊星の元へ!!」

ジャック達は翠に礼を言って急いで遊星を追いかけた…

 

 

 

「ジャック…お願いだから無理はしないでほしいんだから…」

ジャックを心配し駆けつけたカーリーが言葉を漏らす…

 

「でも翠さんスゴイです!二人の怪我を一瞬で直しちゃうなん…て!?ちょっと翠さん!?大丈夫ですか!?」

 

「うっ…ケホッ…ゴホッ!!」

同じくジャックを心配して来ていたステファニーが翠の異変に気が付く…翠は座り込み、手で口を抑えていた…指の隙間からは血が漏れ出している…

 

「えぇ!?翠さんどうしたの!?まさかこのカードのせい!?」

カーリーが翠に駆け寄り背中を擦りながらカードを拾う…そこには…

 

 

『身分転換 速攻魔法

自分のLPが相手より多い時、お互いのLPを入れ替える。』

 

 

「ライフを入れ替えるカード!?それじゃあジャック達が元気になったのって…!?」

 

「うっ…本当はもう少しいいカードもあるんだけど…時間が惜しかったから…私も遊海さんの事、言えないなぁ…コフッ…!」

怪我をしたジャック達の体力はライフ換算で1000程度、対して翠は8000近くのライフがあった…翠はそれを利用してジャック達のダメージを肩代わりしたのだ…。

 

ピロリン♪

 

「メール……?えっ…!い、行かなきゃ…!」

翠はふらつく足で立ち上がる…

 

「翠さん!?安静にしてなきゃダメですよ!吐血してるんですよ!?」

 

「そんな身体でどこに行こうとしてるの!?」

カーリーとステファニーが翠を引き止める…

 

「私が行かなきゃ…遊海さんが…私の事を待ってるの!」

 

翠はそのまま病室を飛び出した…。

 

 

《人手が足りない、マーサハウスへ向かってくれ ユウミ》

 

 

 

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「お前が戦ってるのにオレ達だけ寝てられっか!」

 

「例え身体が切り刻まれようと…俺達の未来は俺達3人の手で掴み取るのだ!!」

 

「俺達3人の手で…そうだ!オレは1人で戦っているんじゃない!オレには()()()()()が残っている!」

仲間達の思いを受けた遊星に再び火が灯る!

 

 

「罠カード『くず鉄のかかし』発動!」

 

【無駄だ!「マシニクル∞」の効果発動!『くず鉄のかかし』の効果を無効にし破壊する!】

無数の光球が案山子を破壊する!

 

「だが破壊できるのは1枚だけだ!ジャックの伏せた罠カード『リベンジ・ツイン・ソウル』を発動!」

遊星はジャックの繋いだ希望を発動させる!

 

「『リベンジツインソウル』は相手が攻撃した時に発動するカード!その効果は墓地のシンクロモンスターを2体除外する事で自分のモンスター1体の守備力を除外したモンスターの合計レベル×100倍にする!」

 

「オレが除外するのは『スカーレッドノヴァ』と『ブラックフェザードラゴン』!合計は20!守備力を2000アップする!」

仲間達の力を受け取ったシューティングスタードラゴンが白銀のブレスで光線を受け止める!

 

「そして守備力が相手の攻撃力を上回った時!戦闘した相手モンスターを破壊する!!」

 

【させるか!「マシニクル∞」の効果発動!墓地の「グランエルC」を除外し効果での破壊を無効にする!!】

マシニクルに迫った光線が霧散する…

 

【フン、少しは考えたようだが…所詮は無駄な悪あがきにすぎん、既に勝負は見えている!】

 

「何を言ってやがる!次はオレ達の番だ!やれ!遊星!」

 

 

「オレのターン!『Sp-エンジェル・バトン』を発動!2枚ドローし1枚を墓地へ送る!そして罠カード『次元渡航』を発動!除外されているシンクロモンスターを可能な限り特殊召喚する!ただし、この効果で召喚されたモンスターの効果は無効となり、エンドフェイズに除外される!蘇れ!『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』!『ブラックフェザー・ドラゴン』!」

遊星の場にジャックとクロウの魂が現れる!

 

「そしてバトルだ!『シューティングスタードラゴン』で『マシニクル∞』を攻撃!さらに永続罠『トラスト・チェーン』を発動!このターン、シンクロモンスターの攻撃を封じる代わりに『スカーレッドノヴァ』と『ブラックフェザードラゴン』の攻撃力をシンクロモンスター扱いではない『シューティングスタードラゴン』に加える!」

仲間達の力を受けたシューティングスタードラゴンの攻撃力がマシニクルを上回る!

 

 

「見たか!絶望野郎!!これがオレ達の絆の力だ!」

 

【フン…まだわかっていないようだな…!本当の絶望がいかなるものか、…それは中途半端な希望が見えた時に訪れるのだ!!罠カード「バニシング・クライム」発動!このカードはバトルフェイズにのみ発動できるカード!フィールド上のシンクロモンスターを全て除外する!!】

 

「「なにっ!?」」

 

「シンクロモンスターを除外するだと!?」

再びスカーレッドノヴァとブラックフェザードラゴンが異次元へと隔離されてしまう…。

 

【そして、この効果で除外されたモンスターはエンドフェイズに効果を無効にした状態でフィールドに戻ってくる…!】

 

「なっ…!?フィールドに戻るだと!?」

 

「それじゃあ『マシニクル』に吸収されちまう!!」

本来「次元渡航」の効果で除外されるはずだった2体のドラゴン…しかし、アポリアの「バニシング・クライム」に効果を上書きされた事でフィールドに残ってしまう!

 

 

 

【「マシニクル」の効果発動!「スカーレッドノヴァ」を吸収!さらに手札の「グランエルT5」を墓地に送りその効果を発動!「ブラックフェザードラゴン」を吸収する!】

 

「シンクロモンスターが2体とも吸収されただと!?」

 

「オレ達の希望が…!!」

マシニクルは2体のドラゴンを吸収する…その攻撃力は10300…! 

 

 

【この一撃で全てが終わり、新たなる未来が始まるのだ…!!トドメだ!「マシニクル」で「シューティングスタードラゴン」を攻撃!!】

マシニクルの銃口がシューティングスターに狙いを定める!

 

「負けるわけにはいかない!!墓地の『ガード・マスター』の効果発動!このカードを除外し、『シューティングスタードラゴン』を守備表示に変更!さらに戦闘破壊を無効にする!」

チャイナ服を着たカンフーの達人がシューティングスターと共に攻撃を受け止める!!

 

【攻撃を防いだか…だが「マシニクル」には吸収したモンスターを墓地に送り、その攻撃力分のダメージを与える効果がある!「スカーレッドノヴァ」を墓地へ!】

 

「まだだ!罠カード『ハードシップ』を発動!このカードを『シューティングスタードラゴン』に装備し攻守を0にする事でこのターンの相手モンスターからの効果ダメージを0にする!」

遊星の周りにバリアが現れダメージを無効化する!

 

【ならば…!「ブラックフェザードラゴン」を墓地へ送る!】

 

「なにっ!?『ハードシップ』の効果でモンスターからのダメージは無効になる!」 

 

【いくら足掻こうと貴様には私を倒す事はできん!リバース罠「無限狂宴」発動!このターン「マシニクル」に吸収されていたモンスターが墓地にある時!再びそのモンスターを吸収!そして、このターンに吸収したモンスターの数1体に付き600のダメージを相手に与える!!】

 

「なにっ!ぐあぁぁぁ!?」

このターンマシニクルが吸収したのは合計4体…2400のダメージが遊星に襲い掛かる!

 

【そして「無限狂宴」の効果で私のライフは600回復する貴様のライフは僅か100…次のターンで決着だ!不動遊星!!】

 

 

「(次にダメージを受けたら確実に負ける…!どうすれば…!)」

遊星は追い詰められていた…街には大勢の人々がいる、その運命を委ねられた遊星の肩に重圧がのしかかる…しかし、彼は1人ではない…遊星にもかけがえのない仲間達がいる!

 

 

 

「何を迷っている遊星!俺達の絆は何者にも負けはしない!」

 

「そうだぜ!オレ達はその絆で勝利を掴んできたんだ!」

ジャックとクロウが遊星に激を飛ばす…さらに…

 

「(頑張って遊星!)」

 

「(遊星…!)」

 

「(遊星、お前には俺達がついてる!お前なら勝てる!!)」

痣を通して龍可・アキ・遊海の想いが遊星に届けられる!

 

 

「そうだ…オレにはまだ『希望』がある!」

遊星はデッキトップに手をかける!

 

「このドローこそが最後の希望─カード達よ…オレに応えてくれ!…ドロー!!」

光の軌跡を残しカードがドローされる!

 

 

「来た…!これがオレの最後のターンだ!『ハードシップ』のさらなる効果発動!このカードを墓地に送り装備モンスターを破壊する!そして…フィールドの装備カード全てを破壊する!!」

 

【なんだと!?】

マシニクルに囚われていたスカーレッドノヴァとブラックフェザードラゴンが開放される!

 

【だが…貴様の場にモンスターはいない!「マシニクル」を倒す事は不可能だ!】

 

「勝負はこれからだ!現われろ!『ミスティック・バイパー』!」

遊星の場に笛を持った道化師が現れる

 

「このカードをリリースする事でカードを1枚ドローする!そしてドローカードがモンスターならばもう1枚ドローできる!…ドロー!…ドローしたのは『ロードランナー』!さらに1ドロー!!これで…オレの手札に希望が揃った!!」

 

【なんだと…?】

 

 

「永続罠『狂食召喚─グールサモナー』を発動!このターンに破壊されたシンクロモンスターを特殊召喚しこのカードを装備する!蘇れ!『ブラック・フェザー・ドラゴン』!」

遊星の場に黒き羽の竜が舞い戻る!

 

「さらに『グールサモナー』の効果発動!手札を1枚捨て、墓地のシンクロモンスターを特殊召喚する!ただし、その攻撃力分のダメージを受ける!現われろ…『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』!」

咆哮を轟かせながら紅蓮の龍が現れる!

 

【だが、3500のダメージを受けて貴様は終わりだ!】

 

「「『ブラックフェザードラゴン』の効果発動!自分が効果ダメージを受ける時!黒羽カウンターをこのカードに置き、攻撃力を700下げる事でダメージを無効にする!」」

 

【なにぃ!?】

ブラックフェザードラゴンの翼が赤く染まる…遊星はこの為にブラックフェザードラゴンを最初に蘇生させたのだ!

 

「さらに手札を1枚捨て『グールサモナー』の効果発動!墓地から『シューティング・スター・ドラゴン』を特殊召喚!そしてダメージは『ブラックフェザードラゴン』で無効にする!」

仲間達の希望を背負い流星龍が復活する!

 

「揃ったぜ…」

 

「俺達の絆が!」

 

「これがオレ達の希望の力だ!」

 

【あの状況からシンクロモンスター3体を召喚するだと…!?これがシグナーの力か…!】

遊星の場に三体のシンクロモンスターが集結する、マシニクルが絶望の化身ならば彼らこそが「希望の化身」…3人の絆がアポリアと相対する!

 

 

「アポリア!お前がどれだけ絶望を与えようと…決して希望は失われない!『ブラックフェザードラゴン』の効果発動!黒羽カウンターを全て取り除いて相手モンスターの攻撃力をカウンターの数✕700ダウンさせ、その数値分のダメージを与える!「ブラック・バースト!!」」

遊星とクロウの一撃がマシニクルを弱体化させダメージを与える!

 

「バトルだ!『ブラックフェザードラゴン』で『マシニクル』を攻撃!ノーブル・ストリーム!」

 

【墓地の「グランエルG」を除外し「マシニクル」の破壊を無効にする…!】

黒炎をマシニクルが受け止める!

 

「遊星!一気に攻めるぞ!」

 

「ああ!『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』で『マシニクル』を攻撃!バーニング・ソウル!!」

 

【ぐおぉ…!!「グランエルA」を除外し破壊を無効にする!!】

アポリアはマシニクルの破壊を防ぐ、しかし…そのライフは残り500…!

 

【馬鹿な…この私が負けるだと!?】

 

「アポリア!これがオレ達の絶望を上回る希望の力だ!!『シューティングスタードラゴン』で『マシニクル』を攻撃!スターダスト・ミラージュ!!」

《ギュアアアン!!》

遊星の…シグナーの想いを受けたシューティングスターは5体に分身、マシニクル諸共アポリアに突撃する!

 

【ば、馬鹿な…私の計画が…失敗するというのか…!?ぐっ…ぐああああああ!!】

 

ザッバァァンドオォォン!!

 

コントロールを失ったアポリアはそのまま童実野湾に投げ出され…爆発した…

 

アポリアLP0

 

チーム5D's WIN!

 

 

 

 

 

 

『つ、遂に決まった〜!!予測不可能な展開が続いたWRGP決勝!まさに歴史に残る激闘を制し、Dホイーラーの頂点に立ったのはチーム5D'sだー!!』

シティ全体にMCの実況が響き渡る、天変地異の中プロ根性で彼は実況を成し遂げたのだ…!

 

 

 

「おめでとう遊星君、でも気は抜かないで…君達の戦いはここからが正念場だよ…!」

遊戯は空を見上げながら呟いた…

 

 

 

 

Side5D's

 

 

「「遊星!」」

 

「「ジャック!クロウ!」」

 

スタジアムに凱旋した遊星達三人組、それをピットで待機していたアキやブルーノ達が出迎える!

 

 

「「ジャック〜!」」

 

「とってもカッコよかったんだから〜!」

 

「フン、当然だ!」

 

 

「おめでとう遊星、いや…チーム5D's…君達の勝利を信じていた…!」

 

「チームラグナロク…」

出迎えたのはチームメイトだけではない、ジャックを心配していたカーリー達三人娘やチームラグナロク、そして…

 

「よっ!お前達、よく頑張ったな!俺達も頑張った甲斐があったよ」

 

「遊海さん!!それにあなた方は!」

 

「プロ決闘者のカイザー亮に万丈目ブラックサンダー!?」

遊星達を出迎えたのは遊海、そして万丈目とカイザーだった。

 

『頑張ったな不動遊星、見事なデュエルだった』

 

「どうしてあなた方がこの街に…!?」

 

「簡単な話さ、オレ達は遊海先生の招集で集まったんだ…イリアステルからこの町を守る為にな」

遊星の問いに万丈目が答える

 

「集まったオレ達はアポリアの出したカミナリからこの町を守りつつ住民を避難させていたんだ…作戦は遊海先生が考えたんだぞ?お前達に負担を掛けないようにな…」

 

「遊海さん…ありがとうございます!!」

遊星は遊海に頭を下げる

 

「気にするな遊星…これが俺の仕事さ…そして、戦いはこれからだ…!気を引き締めろよ!」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

「遊海さん…?オレ達はアポリアを倒した!アーククレイドルはもう…」

遊星は空を見上げる…アポリアによって発生した赤い雲は無く、青空が広がっていたが…

 

 

ピシッ…ピシッ…バリーン…!!

 

 

突然、空が…空間が割れる…そこから実体化したアーククレイドルが現れた…!!

 

 

「そんな…あれは、アーククレイドル!!」

 

「馬鹿な…俺達の勝利でアーククレイドルは現れないのではなかったのか!?」

 

「ジャック、俺達は試合に勝って勝負に負けたんだ…俺達がデュエルに懸けたエネルギーであの城を呼び寄せてしまった…ここからが本当の勝負だ…!」

 

遊海は空を見上げる…広がる暗雲、そして佇むアーククレイドル…チーム5D's最大の戦いが幕を上げる!

 




次回予告

 
チームニューワールド…アポリアとの勝負を征し、WRGPで勝利を掴んだチーム・5D's…しかし、サーキットが完成し次元の狭間から神の居城・アーククレイドルがネオ童実野シティを破壊する為に降下し始める…!


『遊星、貴方は来てはならない…貴方はアーククレイドルで死ぬ事になるわ…!』

「オレが…死ぬ…!?」

 
シェリーの忠告を無視し、遊星達はアーククレイドルへと突入する…その先で待ち受けるのはイリアステル滅四星達…!

 


「私は…あの幸せな時間を取り戻す!!」

無限騎士 シェリー・ルブラン



『お前達に絶望を見せてやる…』

絶望のアポリア

 

『君が戦うべき相手は…ボクだ!!』

戦律のアンチノミー

 

 

そして……
 

 

 

 

『…来たか、白波遊海…ここがお前の歴史の終着だ』

 

「決着を着けよう…オレ達の因縁に─!」

 

観測者 ゲイザー改め●●の●● ●●●●

 

2人の長き戦いは遂に決着を迎える…そして、その先に待ち受ける最後の未来人…Z-ONE

 
【希望など…幻想に過ぎないのです…】

 

遊星は…遊海はネオドミノシティを守りきる事ができるのか…未来を賭けた最終決戦の火蓋が切って落とされる─!

 

 
転生したら決闘の観測者になった話 第4章

特異点 人類救済霊廟 アーククレイドル

 

 

 
 

─ここまでのようですね…あとは私に任せてゆっくりと眠るのです…─

 


─頼むぞ…遊星、お前達の…未来を…─

 



─そんな…どうして…!どうしてこんな事に─!─

 



─俺は…お前を止める…いや、救ってみせる!歯を食い縛れ!─

 





 

 

 

【全てはこの時の為…我が力を今一度思い知るがいい!!】


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第4章 特異点 人類救済霊廟/虚無浸食霊廟 アーククレイドル
突入!アーククレイドル!〜忍び寄る影〜


こんにちは!S,Kです!
ついに新章開幕…!イリアステルとの決戦です!

遊海と遊星達の奮闘をどうぞお楽しみに!





「モーメントの出力低下!止まる事なく下がり続けています!!」

 

「避難誘導中のセキュリティ隊員から入電!モーメント動力のDホイールや自動車が走行不能になっているとの事です!」

 

「モーメント出力さらに低下!このままではモーメントが完全に停止します!!」

 

「システムプログラムをチェック!各機関の点検も同時に行なうのです!」

 

ここは治安維持局の管制室…アーククレイドルの出現後、イェーガーに促される形でチーム5D'sそしてシェリーを探す旅から戻ったミゾグチはここに案内されたのだ…。

 

 

「長官!BAD区域の旧モーメントが…起動しています!!」

 

「なんですと!?」

男性オペレーターの報告にイェーガーは驚く…ダークシグナー事変の元凶となった旧モーメント…それは事件の後に完全に停止させたはずだったからだ。

 

「それだけではありません!通常とは逆の方向に回転しています!」

 

「旧モーメントが…!」

 

「これもアーククレイドルの影響なのか…?嫌な予感がするぜ…!」

オペレーターの言葉を聞いた遊星達は顔を見合わせる。

 

 

「長官!モーメント開発室の阿久津所長から通信が入っています!」

 

「回線を開きなさい!」

イェーガーの声に合わせて画面が切り替わる、そこに不動博士の跡を継ぎモーメントを開発した阿久津の姿が映し出される。

 

『私の目が回ってい〜る間に…大変な事がわかりました〜!!』

阿久津曰く、アーククレイドルそのものがマイナス回転をしているモーメントであり、その影響でシティのモーメントの動きが相殺されている…そして、アーククレイドルは徐々に下降し始めている…!

 

 

『このままではアーククレイドルは約12時間後に地表に激突…その際の衝撃波はネオドミノシティから数百キロの範囲に及びます…!』

 

「なんですとぉ…!?シティの人間を全て避難させるのに必要な時間は!!」

イェーガーがオペレーターに問いかける

 

「全員だと…確実に24時間はかかります!さらに交通網が麻痺している事を考えると…!」

 

「まったく足りんではないか!!」

予測を聞いたジャックが声を上げる…

 

「これは非常事態を宣言するしかありませんね…!!」

 

 

『行動が遅いぞイェーガー!それでも治安維持局の長官か!!』

 

 

「ヒエッ!?か、海馬社長!?」

治安維持局のモニターに海馬の姿が映し出される!

 

『既に病院・老人ホームの避難は完了している!さらにガソリン車や電気自動車をかき集めシティ住民の避難を進めている!残りの住民は6割程度だ!その分は任せるぞ!』

モニターにはガソリン車のマイクロバスや電気自動車で避難する人々の姿が映し出される!

 

「な、なんとぉ!?いつの間にこんな…!」

 

『トップたるもの、あらゆる事態を想定するものだ!きりきり働け!イェーガー!』

 

「は、はい〜!!!」

 

そしてイェーガーは非常事態宣言を発令…住民達に事情を説明し避難を促した、さらに…

 

 

「全局員に通達します!直ちに避難を開始しなさい!一刻も早く街から離れるのです!」

 

「で、ですが長官は!」

イェーガーの言葉にオペレーターの1人がイェーガーに問いかける、「全局員」…その中にイェーガー自身は含まれていないのだ。

 

「私は持ち場を離れるつもりはありません!…これは命令です!全局員は即刻退避!!…全員の無事を祈ります!」

 

「「「了解─!」」」

イェーガーの覚悟に局員は敬礼で返す…そして避難が始まった…。

 

 

 

 

 

 

Sideアーククレイドル

 

 

 

【同志アポリアよ…まだ貴方の力が必要です、どうか私に力を…】

 

『ゾーン…?私は…負けたのか…?』

アーククレイドルのとある場所…そこにはゾーン、そして損壊したアポリアの姿があった。

遊星とのデュエルに敗北し海中に沈む直前、ゾーンによって回収されたのだ…。

 

 

【えぇ、貴方は不動遊星に敗北しました、しかし意外な事が起きています…アーククレイドルがこの時代に出現したのです】

 

『なんだと…?』

 

【本来であれば貴方の勝利によってサーキットが完成しアーククレイドルが出現するはずでした…しかし、そうでなくともアーククレイドルはネオドミノシティに出現したのです…】

 

『つまり…計画は進んでいるんだな…』

アポリアはゾーンに問いかける

 

【えぇ、ですが…これは既に何らかの要素により未来が変わりつつあるという事です】

 

『未来が変わる要素…チーム5D'sか…?』

 

【おそらく…ですがいまだに未来の変化は不十分です、アポリア…もう一度、未来を変える手助けを…】

 

『もちろんだ…私は君達の永遠の友なのだから…!』

絶望の番人は再び立ち上がる、全ては友の為に…

 

 

シュイン…

 

 

『待たせたなゾーン、アポリア…今戻った』

 

【ゲイザー…貴方は今まで何処に…?】

 

『悪かったなゾーン、少し野暮用があったが…もう大丈夫だ、手土産もある…さぁ、オレ達の救済を始めよう…!』

アーククレイドルへと帰還したゲイザー…その腕の中には…─

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…大変な事になってしまった…!」

 

「ああ…だが心配するな遊星、この町には俺がいる!それに遊戯や十代、海馬社長…腕ききのデュエリスト達が避難を手伝ってくれてる…大丈夫だ」

局員が避難した治安維持局の管制室…ブルーノがアーククレイドルを解析する中で遊星と遊海は言葉を交わす…

 

 

「そういえば…翠の居場所を知らないか?お前達と一緒にいたはずだが…?」

 

「そういえば…ジャック!クロウ!翠さんを見てないか?」

 

「翠?救護室で回復させて貰ってから見てないな…?」

遊星の言葉にクロウはそう答える

 

「む?翠ならマーサハウスに向かったとカーリーが言っていたぞ?たしか遊海からメールが来たと言っていたが…」

 

「なに?俺はそんなメールは…っ!!まさか…!?アヤカ!!」

 

《サーチ開始!………えっ…?》

遊海の言葉にアヤカは翠の居場所を検索し…動きを止める…

 

「アヤカ…翠は、何処だ…!!」

 

《……アーククレイドルから4人分の生命反応を感知…翠は…》

 

「あの…野郎!!ふざけやがってぇぇぇ!!!」

遊海は激しい怒りと共に管制室を飛び出した!

 

「「「遊海(さん)!?」」」

遊星達も慌てて後を追いかけた…。

 

 

 

 

 

「許さねぇ…許さねぇぞ!ゲイザー!!!」

遊海は一息に治安維持局の屋上に駆け上がり叫びをあげる!

 

「遊海さん!いったいどうしたんですか!?」

遊星達も息を切らしながら遊海に追い付く…

 

「翠が…アーククレイドルの中にいる…!」

 

「「なんだって!?」」

遊海の思わぬ言葉に遊星達は驚愕する

 

「お前達、俺は先にアーククレイドルへと向かう…!後から来い!!精霊変身!」

遊海は金色の鎧…太陽神の鎧を纏う!

 

「待ってろ翠…今助けに行く!!」シュダッ!!

遊海は金色の流星となりアーククレイドルへと突撃する!

 

 

 

 

 

ガギン!!

 

 

 

 

 

「ガッ─!?(結、界…!?)」ゴキッ…

 

 

「「「遊海さん!!」」」

 

アーククレイドルに突撃した遊海…しかし、アーククレイドルの寸前で透明な結界に衝突…意識を失い落下する!

 

 

ガシッ!

 

 

『っとお!?何やってんだ馬鹿!いきなり突撃する奴がいるか!!』

 

「えっ!?」

 

「黒い…メタルナイト!?」

落下する遊海…それを受け止めたのは黒い翼を生やしたメタルナイトだった…。

 

『こりゃ…首の骨が逝ってるな…回復魔法は得意じゃないんだが…やるしかねぇか』

黒いメタルナイトは治安維持局の屋上に着地する

 

「お前は何者だ!まさか…ゲイザーか!?」

遊星は黒いメタルナイトに問いかける 

 

『ん?こうして会うのは始めてだな遊星、(オレ)はユウスケ…こいつのもう一つの人格さ』

変身を解きながら黒い服を纏った遊海はそう名乗った…。

 

 

 

 

Side管制室

 

 

『そうそう…そんな感じだ、流石に翠に色々習ってただけはあるな…回復魔法なら我以上だ』

 

「あ、ありがとう…」

墜落した遊海はユウスケの指示のもと、アキが治療を行なっている…。

 

 

「そろそろ話を聞かせてくれないかユウスケさん…貴方はいったい何者なんだ?」

遊星がユウスケに問いかける

 

『だから言っただろ?我は遊海の一部…いわゆる「闇の人格」さ、本来なら遊海の身体を使わねぇといけないんだが…このカードのおかげで独立して動けるんだ』

ユウスケは「コピーナイト」のカードを見せる

 

 

『我は遊海の指示で街の奴らの避難を手伝ってたんだが…その途中でこいつらを拾ったんだ』

そう言ってユウスケが取り出したのは「エルシャドール・ウェンディゴ」と「エルシャドール・ミドラーシュ」…ウィンダとウェンのカードだった…。

 

「そのカードは翠さんの!」

 

『ああ、ウィンダ達も近くにいたが…瀕死の状態だった、翠を誘い出して襲撃したのは…ゲイザーの野郎だ…!』

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

「急がないと…!」

 

《翠!しっかり捕まってて!》

時は遡る…メールを受けた翠はキムンファルコスに乗り旧サテライトを目指し急いでいた…。

 

「町には城之内さんやエド君達がいた、きっと遊海さんが集めたのね…私も頑張らなくち…コフッ!」

 

《翠姉!とにかく回復しないと…!「レッドポーション」飲んで!》

ウェンはウィンダに追走しながら回復薬を投げ渡す

 

「ありがとうウェン!マーサハウスにはイェーガーさんの家族もいるわ…急がないと!」

回復薬を呷りながら翠は急ぐ…その時!

 

 

バシュ…ボゥ

 

《キィィ!?》

 

《何これ!?ファルコ!!》

地上から放たれた蒼炎がファルコに直撃…熱に耐えられずファルコは墜落する!

 

「バトルドレス・ドレスアップ!モデル・シャドール!」

翠は紫の精霊正装を纏う!

 

「影糸!」グルグル…パシュン!

飛ばした影糸をビルの貯水槽に巻き付けゆっくりと地上に舞い降りる…

 

「みんな!大丈夫!?」

 

《う、うん…私は大丈夫…》

 

《私も大丈夫だけど…ファルコが…!》

 

《ピュイ〜…》

ウィンダとウェンは無事だったがファルコは翼に火傷を負い、元の小鳥状態になってしまっている…。

 

「…ファルコはDT世界に戻って…これから戦いになるわ…!」

翠は路地裏の暗闇を見つめる、彼女はひしひしと感じていた…自分に向けられた敵意を…!

 

 

『よく気付いたな、流石は奴の女といったところか』

路地裏から男の声が響く…獲物を前にした捕食者のような殺気が翠に襲い掛かる…!

 

「あなたは何者?いいえ、正体はわかってるわ…姿を現しなさい!ゲイザー!!」

 

ゴロゴロ…ピシャーン

 

落雷が路地裏を照らす…その闇の中に黒いバイザーをつけた男の姿が浮かび上がる…!

 

『ククク…!奴を誘き出す餌になってもらうぞ…!』

 

「私はあなたを許さない…!これ以上遊海さんをつらい目に遭わせない為に…あなたを倒します!!」

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

翠LP4000

ゲイザーLP4000

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「フィールド魔法『影牢の呪縛』を発動!さらに魔法カード『影依融合』発動!手札の『シャドール・ビースト』と『アイス・ハンド』を融合!影の獅子よ!水の力を得て冷たき女帝を呼び出さん!融合召喚!来て!『エルシャドール・アノマリリス』!」

氷龍の力を吸収した影の女王が現れる ATK2700

 

「墓地に送られた『ビースト』の効果!1ドロー!そして『影牢』の効果発動!シャドールモンスターが効果で墓地に送られた事で魔石カウンターを乗せます!」

 

影牢 魔石カウンター0→1

 

「モンスターをセット!カードを2枚伏せてターンエンド!」

翠LP4000

アノマリリス セットモンスター 影牢(1)セット2 手札0

 

 

 

 

『オレのターン…ドロー!』

『魔法カード「隣の芝刈り」を発動!オレのデッキは60枚…お前は40枚だな?使用したカードを除く差分の21枚を墓地に送る!』

 

 

墓地送り

 

煉獄の氾爛

インフェルノイド・ヴァエル2

ルキフグス2

アスタロス2

煉獄の狂宴

殻醒する煉獄

リリス2

シャイターン2

ネヘモス

煉獄の死徒

アシュメダイ

煉獄の虚夢

デカトロン

ベルフェゴル2

遡洸する煉獄

 

 

 

「インフェルノイド…!?(まずいわ…アノマリリスじゃ止められない!)」

 

『フィールド魔法「煉獄の氾爛」を発動!さらに永続魔法「煉獄の虚無」を発動!これによりインフェルノイドのレベルは全て1になり、与えるダメージは半分になる!そして墓地の「デカトロン」「ヴァエル」「ルキフグス」を除外!墓地から現われろ…!全てを破壊する赤き翼!「インフェルノイド・ネヘモス」!』

赤い翼を持つ怪鳥の悪魔が現れる ATK3000 ☆10→1

 

 

『「ネヘモス」の効果発動!フィールド上のモンスター全てを破壊する!蒼炎の氾濫!』

炎の洪水がフィールドを燃やし尽くす…!

 

「くっ…!『アノマリリス』のモンスター効果発動!墓地の『影依融合』を手札に戻します!さらに破壊されたのは『シャドール・ファルコン』!自身を裏守備でセット!」

 

『オレはさらに墓地の「アスタロス」「ベルフェゴル」「シャイターン」を除外!墓地から現われろ!誘惑の悪魔…狡猾なる蛇…!「インフェルノイド・リリス」!』

細長い身体を持つ悪魔が現れる ATK2900 ☆9→1

 

『「リリス」の効果発動!フィールドの「煉獄」と名のつく魔法・罠以外を全て破壊する!蒼炎の竜巻!』

 

「『リリス』の効果にチェーンして速攻魔法『神の写し身との接触』を発動!」

 

『その効果にチェーンして「ネヘモス」の効果発動!「リリス」をリリースする事で魔法・罠の発動を無効にし除外する!』

 

「リバース罠『堕ち影の蠢き』を発動!デッキの『シャドール・ドラゴン』を墓地に送ります!そして『ドラゴン』の効果で『煉獄の氾爛』を破壊!」

ネヘモスの巻き起こした蒼炎が翠の魔法を打ち消し、翠の場の魔法・罠を破壊しようとするが…翠は逆にゲイザーのフィールド魔法を破壊する!

 

『フン…上手く乗せられたか、だが墓地の「ヴァエル」「シャイターン」「ルキフグス」を除外する事で「リリス」は復活する!』

再び蛇の悪魔が現れる ATK2900 ☆9→1

 

 

『バトルだ、「リリス」でセット状態の「ファルコン」を攻撃!』

 

「ごめん『ファルコン』…!」

リリスが鳥の影人形を破壊する!

 

『そして「ネヘモス」でダイレクトアタック!煉獄のヘル・バーニング!』

 

「くっ…!きゃああああ!!!」

ネヘモスの煉獄の炎が翠の身体を焼き焦がす!

 

翠LP4000→2500

 

 

『メイン2…現われろ「インフェルノイド・デカトロン」!』

ボロボロの姿の悪魔が現れる ATK500

 

『そして『煉獄の虚夢』の第二効果発動!このカードを墓地に送り、フィールドの「ネヘモス」「リリス」「デカトロン」で融合を行なう!太古に封印されし破壊神よ!仮初の肉体で世界を蹂躙せよ…!融合召喚!「インフェルノイド・ティエラ」!』

3体の悪魔が合体…世界を蹂躙した破壊神が現れる ATK3400

 

『そして「ティエラ」の効果発動!お互いのエクストラデッキから3体モンスターを選んで墓地に送る、オレは2体の「ティエラ」と「旧神ヌトス」を墓地へ送る』

 

「わ、私は…『エルシャドール・シェキナーガ』『エルシャドール・エグリスタ』『エルシャドール・アノマリリス』を墓地に、送るわ…」

火傷の痛みに耐えながら翠はデュエルを続ける…。

 

 

『オレは魔法カード「大欲な壺」を発動、除外されている「シャイターン」「アスタロス」「ベルフェゴル」をデッキに戻し1ドロー!…カードを1枚伏せ…ターンエンド』

ゲイザーLP4000

ティエラ 伏せ1 手札2

 

 

 

「はあ…はあ…!(強すぎるわ…!使いづらいはずのインフェルノイドをあんなに使いこなすなんて…!)」

翠はゲイザーを睨みつける、身体は既に満身創痍…それでも彼女は諦めない…なぜなら…

 

「(ここでゲイザーを倒せれば…遊海さんはもう辛い目に遭わなくてすむの…!だから…だから!!)私は…諦めない!!」

 

『…まだ諦めないか、いいだろう…やってみるがいい!』

 

 

 

「私のターン!ドロー!!」カンコーン!

「私は魔法カード『影依融合』を発動!相手の場にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいる時!融合素材をデッキから選ぶ事ができる!私はデッキの『シャドール・リザード』と『超電磁タートル』を融合!影を這う者よ!光の力を得て、母なる巨人を呼び出さん!融合召喚!『エルシャドール・ネフィリム』!」

巨大なる影人形の女王が現れる ATK2800

 

 

『「ネフィリム」を呼び出したか…だか、オレの墓地には「煉獄の死徒」がある、効果は効かないぞ』

 

「融合素材となった『リザード』の効果!デッキの『シャドール・ヘッジホッグ』を墓地へ送ります!そして『ネフィリム』の効果!デッキの2体目の『ビースト』を墓地へ!さらに『ヘッジホッグ』の効果発動!デッキの『ファルコン』を手札に加えます!そして『ビースト』の効果!1ドロー!…そんな事はわかってます…!でも、私は負けない!!『シャドール・ファルコン』を召喚!」鳥型の影人形が現れる ATK600

 

『むっ…?』

 

 

「遊海さん…十代君…力を貸して!速攻魔法発動!『超融合』!!手札の『シャドール・ハウンド』を捨てて効果発動!『ファルコン』と『インフェルノイド・ティエラ』を超融合!!翼持つ人形よ!炎の力を受けて赤き巨人を呼び出さん!融合召喚!『エルシャドール・エグリスタ』!」

破壊神を取り込み、赤い影糸を操る巨人が現れる ATK2450

 

 

『なるほど、「超融合」か…考えたな…!』

 

「墓地に送られた『ファルコン』の効果!自身をセット!…バトル!『ネフィリ厶』でダイレクトアタック!影糸の操糸撃!」

 

『ガハッ…!!』

影糸がゲイザーを打ち据える!

 

ゲイザーLP4000→1200

 

 

「これで終わりよ!『エグリスタ』でダイレクトアタック!」

 

『リバース罠「蒼焔の煉獄」発動!手札から「インフェルノイド・ネヘモス」を効果無効で特殊召喚!』

エグリスタの前に赤き翼が立ち塞がる ATK3000

 

「っ…!バトルフェイズ終了!!…私はターンエンド!」

翠LP2500

ネフィリム エグリスタ セットモンスター 手札0

 

 

「これが私の底力よ…!次のターンであなたを倒す!!(私の墓地には『超電磁タートル』がいる…もし攻撃して来ても無効にできる…!)」

翠は勝利を確信した…しかし

 

『ククク…ハハハ…!大した強さだ…流石は奴の女か、ならば見せてやろう…希望を前にした時に訪れる…果てのない絶望を!』

 

 

 

『オレのターン…ドロー!!』ズオオオッ…!

カードを引いた瞬間…ゲイザーの身体を闇が包む…!

 

「なんなの…この、感じ…!」カタカタカタカタ

その闇を前に翠の身体は無意識に震える…それはまるで死を前にしたような恐怖の感覚だった…。

 

『魔法カード発動…【邪悪の樹─黙示録】…!』

 

 

「えっ…?」

 

その瞬間、翠は言葉を失った…目の前に現れた絶望を前にして…

 

 

 

 

 

翠LP2500→0

 

ゲイザーWIN…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぐっ…カフッ…ゴボッ…(あ、れ……わた、し…何して…)」

意識を取り戻した翠は地面に倒れていた…身体は痛みで麻痺し、思考もはっきりとしていない…

 

【…オレの勝ちだ、共に来てもらうぞ女…貴様は奴を誘き出す人質だ…】ガシッ

ゲイザーは乱暴に翠の髪を掴み、持ち上げる…

 

「あ、うぅ…(いた、い…だれか…たす…け、て…)」

 

この場に彼女を守るものはない、ウィンダもウェンも先の攻撃で翠を庇い戦闘不能…球体関節のパーツが周りに散らばっている…

 

【まだ意識があるか…起きられても面倒だ、寝てろ】

 

ズガン!

 

「(ゆう、み…さ─)」

ゲイザーは翠を地面に無造作に叩きつける…そこで翠の意識は途絶えた…

 

 

 

 

【さぁ…さっさと来い、白波遊海…貴様を殺し、オレ達は未来を救うのだ…!】

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

『翠はゲイザーに負けてアーククレイドルへと連れ去られた…それがウィンダから得られた証言だ…!』

 

「そんな…!翠さんが…!早く助けにいかないと!」

ユウスケの言葉にアキが焦りをあらわにする…

 

『すぐには無理だ、アーククレイドル全体に結界が張られている、それに…そもそもモーメントが動かない中でお前達はどうやって空を飛ぶ?遊海が結界を破ってアーククレイドルに入ってもあの通りあの城は広大だ、翠を探している間にこの街が無くなるぞ…冷静になれ』

 

「ねぇ…!どうしてユウスケはそんな冷静でいられるんだよ!!翠さんが大変な事になってるのに!!「龍亞!…止めるんだ」遊星!?どうして…!」

ユウスケに掴みかかる龍亞を遊星が止める…

 

「龍亞、ユウスケさんの手を見てみろ…」

 

「えっ…あ…!」

龍亞はユウスケの右手を見る…その手は固く握り締められ、血が床にしたたり落ちている…。

 

『悪いな龍亞…我だって冷静な訳じゃない…だけどな、遊海まで頭に血が昇ってるんだ…半身である我までが冷静さを失ったらダメだろう…!』

渦巻く怒りの中でユウスケが理性でそれを押し留めていた。

 

 

「みんな!大変な事がわかったんだ!これを見てくれ!」

1人でアーククレイドルの解析を続けていたブルーノが声をあげる、そしてモニターに拡大されたアーククレイドルの一部が映し出される!

 

「なんだよアレ…?」

 

「街…?崩壊した街じゃないかしら…?」

アキが言葉を漏らす…アーククレイドルの正体は無数の崩壊したビル群…一つの街そのモノなのだ

 

「それだけじゃないんだ…コレを見てくれ…!」

ブルーノはカメラを動かしてある場所にズームする…そこには…

 

「あ…あれは…!まさか…」

 

「ダイダロス・ブリッジ…!?」

遊星達の目に写ったのはボロボロの橋の残骸…それはサテライトの希望、ダイダロス・ブリッジそのものだった…。

 

「それじゃあ…アーククレイドルは破滅した未来のネオドミノシティそのものだって言うのか…!?」

遊星は拳を握り締める…アポリア戦で否定した破滅の未来が確実に迫っているのだ…!

 

 

「な、何かアーククレイドルを止める手立てはないのですか!?その為にずっと解析をしていたのでしょう!?」

イェーガーはブルーノに問う、ブルーノのメカニック技術は遊星に並ぶもの…そこに希望を懸けたのだ。

 

「可能性はある…かもしれない…」

 

「「「「なんだって!」」」」

ブルーノの言葉に全員が驚く

 

「これを見て欲しい…可能性の話なんだけど…」

ブルーノ曰く、アーククレイドル中心にあるモーメントは「マイナス回転」をしている…そこに強い「プラス回転」のモーメントをぶつける事で回転を相殺・「プラス回転」に変える事ができるのではないか?という作戦だった。

しかし、その作戦には穴がある…

 

「けど…この街には正常に動いているモーメントは無いわ…あったとしても…運ぶ方法がない…!」

アキの言葉に全員が悩む…モーメントが停止してしまう状況で正常に動き、持ち運べるモーメントはこの街にはないのだ…。

 

「…もはや我々にできる事は無いのかもしれません…」

イェーガーはそう弱音を漏らす…相手は人知を超えた未来の人間…常人に勝ち目は無いだろう、しかし…この街にはまだ希望がある…!

 

 

「何か方法はないのか…何か…!!…ん?あれは!ブルーノ!20番の監視カメラをモニターに映してくれ!!」

 

「えっ!?わかった!!」

モニターを見つめていた遊星が一つの異変に気付く…そのモニターには治安維持局に向けて疾走するD()()()()()が映っていた!

 

 

「あれは…チームラグナロク!?」

 

「Dホイールで走って来るぜ!?」

疾走しているDホイール…それはチームラグナロクの操るヴァルハランダーだった、遊星達は彼らと合流する為に管制室を飛び出した…。

 

 

 

 

 

「チーム・ラグナロク!どうしてお前達のDホイールは動いているんだ!?」

 

『来たか不動遊星…まだ気付いていなかったのか?』

治安維持局の前で合流したラグナロクは自分達の瞳を指し示す

 

「あっ…!ルーンの瞳!」

 

『そうだ、我らは三極神の加護でイリアステルの影響を受けなかった…それと同じくマイナスモーメントの影響も受けない!』

 

「そうか!!なら赤き竜の痣を持つオレ達も!!」

遊星達は自分達のDホイールのエンジンをかける…そしてエンジンは掛かった!

 

「動く…動くぞ!!」

 

「オレ達はまだ走れるぜ!!」

 

「「やった〜!」」

絶望を前に希望を手にした遊星達…そこに…

 

 

 

『それは間違いよ遊星…!』

 

 

「シェリー!生きていたのか!!」

 

「お嬢様!!」

遊星号に通信が入る…それは長らく行方不明だったシェリーからのものだった…。

 

『遊星…私は見たわ…これから起きる未来を…』

 

「未来だと…?」

シェリーの言葉に遊星は困惑する

 

『貴方はアーククレイドルに来ない方がいい…私の見た未来…それは貴方がアーククレイドルで死ぬという未来よ…!』

 

「オレが死ぬ…だと!?」

遊星はシェリーの思わぬ言葉に動揺する…無理もない事だがいきなり自分の死について言われて動揺しない人間はいないだろう…

 

 

「シェリー!貴女、自分が何を言っているのかわかっているの!?」

シェリーの言葉を聞いたアキがシェリーに問いかける

 

『それがアーククレイドルに来る遊星の未来よ…私はある人にその未来を見せられた…!』

 

「適当な事言うな!誰だ!そんないい加減な未来を見せたのは!?」

 

『…Z-ONE…彼はアーククレイドルの主、神の力を持つ男…異次元で私や遊星がゲイザーと共に出会った男よ』

 

「Z-ONE…?あの時の!」

遊星の脳裏に逆しまに浮かんでいた白い機械の姿が思い浮かぶ…

 

『ゾーンがしようとしている事は正しいわ…もし、ネオドミノシティを救おうとすれば…遊星、貴方は死ぬわ…そして未来が滅びる事になる…!』

 

「シェリー!わかっているのか!?そんな事をすれば数千…いや、数万の命が犠牲になるんだぞ!?」

シェリーの言葉に遊星は反論する、「生きている人々を犠牲に未来を救うのか」と

 

『けれど…その犠牲で未来の数十億という生命が助かるわ、そして遊星…貴方の命も…』

 

「多くの犠牲の上に手に入れる未来が幸せな未来になる訳がない!この街を消滅させるなんて…間違っている!!」

 

『そう、残念だわ』

遊星はシェリーの…ゾーンの「小を切り捨て大を救う」計画に反対する…しかし、その言葉はシェリーには届かなかった。

 

 

「お嬢様!お嬢様はいま、何処にいるのですか!?」

話を聞いていたミゾグチがシェリーに問いかける…この場にいる人間でもっともシェリーを心配していたのは彼だろう…

 

『私は…アーククレイドルにいる、ここにいるのは私の意思よ…ミゾグチ、私の事は忘れなさい…この時代のお父様とお母様をお願いね…』

 

「お嬢様!!」

 

『…遊星、貴方がアーククレイドルを止めようとするなら…私は全力で阻止するわ!』

 

「なにっ!?それでは俺達の敵になるという事か!?」

 

『そうよ…私は貴方達の敵…「無限騎士(ナイト・ド・イリアステル)」シェリー・ルブラン!』

ジャックの言葉を聞いたシェリーは5D'sに宣戦布告する…!

 

 

「シェリー!何故だ!お前はイリアステルを憎んでいたんじゃなかったのか!?」

 

『遊星…私は未来を見て考えが変わったの…()()()()()()()()を…私はもう見たくない!!』

その時、それまで無表情だったシェリーから僅かに感情が見て取れた…それは「哀しみ」…シェリーの目には薄っすらと涙が浮かんでいた…。

 

「シェリー…」

 

『さよならね遊星…貴方が来ない事を願っているわ』

 

「っ…!待つんだシェリー!一つだけ聞かせてくれ!!」

 

『何かしら?…何を言われようと私の考えは変わらないわ』

 

「…さっき遊海さんから翠さんがゲイザーに攫われたと聞いた!…翠さんは無事なのか!」

 

『っ…!?』

遊星の言葉を聞いたシェリーは顔色を変える…その顔は驚きの表情を浮かべている…

 

『…そう、帰って来たのね……遊星、彼には手を出さない方がいいわ、彼は止められない…貴方の死期が早まる事になる…!』ブツン…

 

「シェリー!?」

シェリーはそう言って通信を切った…。

 

 

 

 

 

 

 

Sideアーククレイドル

 

【遊星に全てを伝えたのですね…】

 

『ええ、でも…必ず彼は来るわ、彼は未来に怯えるような男ではないもの…』

通信を切ったシェリーはゾーンの問いに答える…

 

【では…何故、彼の死の未来を伝えたのです?】

 

『それが私の友人としての礼儀、彼らへの決別の証よ…彼らは私が阻止する!』

シェリーは決意を宿した瞳で答える

 

【そうですか…貴女の働きに期待しますよシェリー】

 

『ええ…ゾーン、彼は…ゲイザーは何処にいるの…?』

 

【貴女が気にする必要はありません…彼は今、仇敵を前に準備を進めています…彼はこの城の最強の守護者…貴女が心配する必要はないでしょう】

シェリーの問いにゾーンはそう答えた…

 

 

SideOut

 

 

 

 

「つ…うぅ…ここは…?」

 

『ようやくお目覚めか?遊海』

 

「ユウスケ…?」

 

遊海の意識が覚醒する…鈍化した思考の中で遊海は今までの事を思い出す…。

 

『…遊星達はダイダロスブリッジに向かったぞ?チーム・ラグナロクが「虹の橋─ビフレスト」を架けるんだとよ』

 

「っ…!!なら、俺も行かないと…!ぐっ…!?」

遊海は身体を起こすが先の衝突のダメージが残り、身体がうまく動かせない…

 

『さっきは派手にぶつかったからなぁ…遊海、以前に聞いたがもう一度聞くぞ…お前はゲイザーと戦えるのか?』

ユウスケは見定めるように遊海に問いかける

 

「当たり前だ…!!彼奴にどんな過去があろうと…俺にどんな未来が待っていようと……俺は奴を倒してみせる!!そして翠を救い出す!!」

 

『…ふぅ…わかった、ならば我も力を貸してやる、いつかにやったダメージの分割だ…戦いが終わったらしばらく動けないと思えよ?』ポン!

ため息をついたユウスケは消え去る…そして遊海の身体に力が戻る!

 

「ありがとよ…今いくぞ…翠!!」

遊海は窓から閃光竜に乗って飛び出した…。

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

「ダイダロスブリッジ…サテライトの希望の象徴…」

遊星はチーム・ラグナロクの協力を受け、ダイダロスブリッジからアーククレイドルへと乗り込もうとしていた…。

 

「かつて…サテライトの英雄が未来を賭けて飛んだ橋…ゴドウィン、オレもお前と同じ道を行く…オレを導いてくれ…ネオドミノシティを救う為に!!」

ダイダロスブリッジを見上げる遊星…その脳裏にはかつて英雄として、そして間違った手段とはいえこの街を救おうとしたレクス・ゴドウィンの姿が浮かんでいた…。

 

 

SideOut

 

 

 

 

Sideラグナロク

 

『行くぞ!ブレイブ!ドラガン!!』

 

『『おう!!』』

 

『『『ヴァルハランダー…パワー全開!!』』』

 

時を同じくして旧モーメント…ブルーノの協力で装置を完成させたハラルド達が虹の橋を架ける為に力を開放する!

 

 

『星界の扉が開くとき!いにしえの戦神がその魔鎚を振り上げん!大地を揺るがし轟く雷鳴と共に現れよ!光臨せよ!「極神皇トール」!』

 

 

『星界から生まれし気まぐれなる神よ…絶対なる力を示し世界を笑え!!光臨せよ!「極神皇ロキ」!!』

 

 

『北辰の空にありて全知全能を司る王よ!今こそ星界の神々を束ね、その威光を示せ!天地神命を統べよ!最高神─「極神聖帝オーディン」!!』

 

 

チームラグナロクの気合いと共に最強の戦神、神話のトリックスター、神々を統べる神が現れる!

 

『モーメントは操る人間の心を読み取る!我々の全身全霊を注ぎこめ!!現われよ!神の世界に続く橋「ビフレスト」!!』

ハラルドが「ビフレスト」を発動する…その瞬間、虹色の光の道がダイダロスブリッジからアーククレイドルへの道を繋いだ!

 

『頼むぞ…不動遊星!!』

 

SideOut

 

 

 

 

「あれが神の世界に通じる虹の橋『ビフレスト』…!」

遊星はアーククレイドルへ続く虹の橋を見つめる…

 

「伝説の英雄はオレの憧れだ!その橋を渡るってのに…オレにナイショってのは無しだぜ!遊星!!」

 

「そうだ!悪いが…俺も一緒に行かせてもらうぞ!!」

 

「みんな…!?どうしてここに…!」

一人で戦いに挑もうとする遊星…それを引き止めたのは遊星を追ってやってきたジャックやクロウ達5D'sの仲間達だった。

 

 

「旧サテライトの裏道ならオレの方が詳しいからな!全速力でかっ飛ばして来たぜ!」

 

「間に合ってよかったわ…!」

 

「みんな…あそこにはオレ1人で行く、どんな危険があるかわからない…!」

 

「フン…遊星、俺はお前が行く事を止めはしない!…無駄だとわかっているからな!」

みんなに背中を見せる遊星にジャックが話しかける

 

「だが…それは俺達も同じだ!お前がどんなに止めようと…俺達も共に行く!お前が死ぬという未来を見過ごせるか!」

 

「遊星…あなたに待っている未来は私達で絶対に変えてみせる!」

 

「そうだよ!おれや龍可だって最強チームの一員なんだぜ!少しは頼りにしてくれよ!」

ジャックの言葉にアキと龍亞が続く…

 

「そうだぜ、オレ達はどんな解きだって一緒に戦ってきた!それがチーム5D'sだ!」

クロウの言葉が遊星の胸に染み渡る…5D'sの絆…それが彼らの一番の切り札なのだから…!

 

「わかった…!行こう!オレ達の手でネオドミノシティを救い…翠さんを助けるんだ!!」

そして遊星達は虹の橋を駆け抜けアーククレイドルへと向かう!

 

 

 

「この橋もいつまで保つかわからない!全速で駆け抜けるんだ!!」

遊星が仲間達に激を飛ばす!

 

「っ…!?待て遊星!前を見ろ!!虹の道が途切れているぞ!?」

 

「まさか…遊海さんがぶつかった結界か!?」

ジャックの言葉に遊星は前を見つめる…虹の道はそこで途切れてしまっている!

 

「どうすればいいんだ…!このままではアーククレイドルに辿り着けない!!」

 

《キュオオン!!》

「前に進め!遊星!!道は俺が切り拓く!!」

 

「遊海さん!?」

閃光竜に乗った遊海が遊星を追い抜かす!

 

「さっきは世話になったな…おかげで頭が冷えた!!我がもとに集え!!『決闘竜』!!」

遊海の言葉と共に閃光竜の周りに9体のドラゴン達が現れる!

 

「炎魔竜レッドデーモン」「玄翼竜ブラックフェザー」「月華竜ブラックローズ」「妖精竜エンシェント」「機械竜パワーツール」「魔王龍ベエルゼ」「煉獄龍オーガドラグーン」「天穹覇龍ドラゴアセンション」「冥界龍ドラゴネクロ」…いずれも並行世界で決闘神官の操りし強力なドラゴン達である!

 

 

「俺達の道を切り拓け!結束の流星突撃(ユナイト・シューティング・アサルト)!!」

 

 

バキーン!!

 

《キュオオオオン!!》

決闘竜の力が閃光竜に収束…結界を粉々に打ち破る!

 

 

「やったぜ!!流石遊海だ!!」

 

「喜んでいる場合じゃない!先を急ぐぞ!!」

遊海によって切り開かれた道を遊星達は進む…その時…!

 

「まずい…!三極神の姿が薄れ始めた!」

旧モーメントを囲み力を制御していた三極神達…その表情が歪み、姿が薄れていく…!

 

「心配するな!あっちにも助っ人を送ってある!!」

 

 

 

 

 

 

 

『くっ…!ここまでか…!!』

急造の機械でモーメントエネルギーを制御し続けたハラルド達…しかし、それも限界を迎えようとしていた…。

 

《ルビィー!》

 

『っ…!猫!?何処から入ったんだ!?』

 

『待て!それは猫じゃない…!精霊だ!』

機械の制御に苦しむハラルド達…そこにネコに似た精霊が現れる…

 

「急ぐドン!早くしないと5D'sのみんなが落ちちゃうザウルス!!」

 

「わかってる!やっぱり地図が反対だったか〜!」

緊急事態に似合わない間延びした声が通路から響く…そして…

 

「よ〜し!到着!君達よく頑張ったね!オレも手伝うよ!」

 

「ま、間にあった〜…」

通路から現れたのは黄色バンダナを巻いた青年、そして逆立った青い髪の青年だった…。

 

『あ、貴方は…!』

ハラルドは目を見開く…

 

「さぁ!7体の宝玉獣が揃った時!世界を繋ぐ光が蘇る!これこそが宝玉獣の軌跡!蘇れ!『究極宝玉神レインボー・ドラゴン』!!」

青年の周りに7体の精霊達が現れる…彼らは光に変化し7色の宝玉をもつ白き龍に変化する!

 

「次元を繋ぐ奇跡の光よ!世界を救う彼らに力を!!」

 

《ギャオオオン!!》

白き龍…レインボードラゴンの咆哮が轟く…それと共に暴走しかけていたモーメントエネルギーが再び道を創り出す!

 

『これが…かつて異なる次元を繋いだ伝説の龍の力…「宝玉獣の導き手」ヨハン・アンデルセンの力か…!!』

 

「へへっ…これで少しは恩返しができたかな?先生」

 

 

 

 

 

「ありがとなヨハン…お前の声、確かに聞こえたよ」

 

安定した虹の道を5D's、そして後から追走してきた青髪のDホイーラーが走り抜ける、そして全員が通過したところで虹の橋は静かに消えていった…。

 

 

「全員渡りきったはいいが…お前はいったい何者だ?何故俺達に付いてきた?」

ジャックが青髪のDホイーラーに問いかける

 

『私の肝心な記憶は失われている…私はここにその答えを探しに来たのだ』

 

「へぇ…まぁ、とりあえず敵でなければいいさ!アンタは遊星の恩人だしな!さぁ…先を急ごうぜ!」

 

「ああ!目指すはアーククレイドル中心部!そこにゾーンがいるはずだ!!」

遊星の号令のもと、俺達はアーククレイドルの外周を進んでいく…そしてようやく中心部へと到達する!

 

 

「(そういえば…ここから遊星達はバラバラになるんだが…どうしてバラバラになったんだっけ…?)」

 

《(えっと…マスター、本当に言いにくい事なのですが…)》

遊海にアヤカからのテレパシーが届く…

 

「(もしかして…何かミスった…?)」

 

《(いえ…足元にご注意を…!)》

 

「あ…!?」

 

「遊海さん?どうしましたか?」

遊海の顔色が変わったのを見て遊星が話しかける

 

「…すまん遊星、先に謝っておく」

 

「えっ…?」 

 

シュイン!

 

「「「「えっ!?」」」」

 

突如として遊星達の足元に大きな穴が開く…一瞬の浮遊感の後に、遊星達は穴へと落ちていった…

 

 

「『「うわぁぁぁ!?」』」

 

 

 

 

 

 

 

【来ましたか遊星、チーム5D's…招待しましょう、我が城…アーククレイドルに…!】



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決戦!無限騎士シェリー!〜魂の開放〜

こんにちは!S,Kです!ついに始まったイリアステル滅四星との戦い…どうぞお楽しみください!

そしてカードアンケートは本日で締め切りとなります!断章アンケートはしばらく募集を続けます!皆様のアイデアをお待ちしています!

それでは最新話をどうぞ!


「『「うわぁぁぁ!?」』」

 

 

アーククレイドル中心部に辿り着いた遊星達…しかし、突如として開いた穴に落下してしまう!

 

「っ!!罠カード『重力解除』!!」

遊海は咄嗟に罠を発動、全員をゆっくりと着地させる、しかし…遊星達は3つに分断されてしまう…

 

 

 

「遊海さん…!ありがとうございます!」

 

『これが最強のデュエリストの力か…』

 

遊星と青髪のDホイーラー

 

 

「気にするな遊星!…って龍亞!?」

 

「うわわ!ジャック!遊海!?助けて〜!?」

 

「馬鹿!なんでそんな場所に着地してるんだ!」

 

「龍亞!大丈夫!?」

 

ジャックと遊海、龍亞兄妹

 

 

「みんな!大丈夫!?」

 

「なんでいきなり穴が開くんだよ…!」

 

クロウとアキ…この3チームに分かれてしまっていた。

 

 

『どうやら全員無事のようだが…』

 

「だが、これでは…みんなで一緒に進む事は不可能…いや、遊海さんがいれば…」

遊星はジャックと共にいる遊海に目を向ける

 

「ああ、俺ならみんなの位置を変えられる…だが、それは得策じゃ無いだろう…アーククレイドルの落下まで時間はそう残ってはいない!幸いそれぞれに2人づつに分かれてる、そのままそれぞれの道を行った方が良さそうだ!」

 

『ああ、その方がいいだろう…これを見てくれ!』

青髪がそれぞれのDホイールにアーククレイドルのスキャン画像を転送する。

 

『3本の道はそれぞれ遊星ギアに繋がっている、モーメントをプラス回転に戻すには太陽ギアの前に遊星ギアを止めなければならない!そして…遊海の言った通り、時間はあまり残されていない!』

 

「みんな聞いてくれ!…ここから先はこの3組に分かれてそれぞれの遊星ギアに向かうんだ!オレはみんなを信じている…必ず、太陽ギアで合流する事ができると!!」

状況を確認した遊星が声を張り上げる!

 

 

「遊星…そうだな…!だけどお前も気をつけろよ!!絶対に死ぬんじゃねぇぞ!!」

 

「太陽ギアで待ってるわ!!」

 

「ああ!太陽ギアで会おう!」

クロウとアキの言葉に遊星はそう返す

 

 

「おれ達のチームも大丈夫!ジャックと遊海がいたらどんな相手でも瞬殺だよ!」

 

「うむ…むしろ俺1人でカタをつけてくれる!」

 

「そうか?…なら、任せるぞジャック…俺にはやる事ができた…!精霊転身!ネクロス・トリシューラ!!」

遊海は氷龍の鎧を纏い、戦闘態勢を取る…!

 

「お前達!早くトンネルに入るんだ!…敵が来る!!」

 

「「「えっ…!?」」」

遊星達が上を見上げる…上には遊星達の落ちてきた穴が見えていたが…そこに無数の黒い点が現れる…!

 

 

「えっ…なに、あれ…?」

突如現れた黒い影に龍可は不安な表情を浮かべる…

 

「…龍亞、龍可よく聞くんだ…」ポン…

 

「「遊海…?」」

遊海は兄妹の頭に手を置いて話し始める

 

「お前達は今、『2人で一人前』だ…だけどな、2人は5D'sの中で一番の可能性を持ってる…何があっても決して諦めるな…約束だぞ?」

 

「「うん…!わかった!」」

遊海の言葉に2人は頷く…

 

「よし、いい子達だ…エンシェント・フェアリー…2人を頼む…!」

 

《わかりました…遊海、武運を…!》

龍可の後ろに半透明のエンシェント・フェアリー・ドラゴンが現れる。

 

「ありがとな…お前達!絶対に後ろを振り返るな!!俺も必ず太陽ギアに辿り着く!行くんだ!!」

 

「「「はい!!」」」

遊海の言葉に従って遊星達はそれぞれに遊星ギアへと向かう!

 

 

 

「あ…入口が…!?」

トンネルに入ったジャック・龍亞組…入口が徐々に凍り塞がれていく…

 

「振り返るな龍亞!…俺達は使命を果たさねばならん!遊海の為にも早く遊星ギアを止めるのだ!」

 

「う、うん!!」

ジャックの言葉に龍亞はDボードのスピードを上げた…。

 

「遊海さん…!頑張って…!」

龍可は最後に入口へ目を向ける…閉じられていくその隙間から見えたのは無数の電球のようなパーツの付いたモンスターに囲まれた遊海の姿だった…。

 

 

「奴の差し金か…!いいだろう!掛かってこい『インフェルノイド』!遊星達の邪魔はさせない!!」

 

 

そして入口は完全に閉ざされた…。

 

 

 

 

 

 

Sideクロウ&アキ

 

 

遊星達と別れ数分…暗いトンネルを進み続けたアキとクロウは開けた白い歯車のある部屋へと到達する、この場所こそが彼らの目的地・遊星ギアだった。

 

「ここが遊星ギアか…」

 

「そうみたいね…!」

クロウ達は部屋の中心にそびえ立つ柱を見つめる…その柱が遊星ギア本体である。

 

 

「でも…どうやって止めればいいのかしら…?」

アキは周りを見渡すが…コントロールパネルや制御盤の類いも見当たらない…。

 

「こうなりゃ実力行使だな…アキ、サイコパワーで吹っ飛ばせねぇか?」

 

 

『その必要はないわ、あなた達がこの先へ進む事はないのだから…』

 

「シェリー…!」

遊星ギアの影からシェリーが現れる…!

 

『私はあなた達の敵になる…アーククレイドルの落下を止めさせはしない!』

 

「そんな…!どうしてなのシェリー!あなたはずっと言っていたはずよ!『イリアステルは両親の仇』だって!」

 

「そうだ!お前の親父さん達が娘がこんな事して喜ぶと思ってるのか!?」

 

「あなた達には関係ないことよ!私の意思は変わらない!」

シェリーとクロウ達は睨み合う…

 

 

「考えは変わらないらしいな…シェリー、これを受け取れ!」シュッ!

 

『(パシッ)…このカードは…』 

 

「ミゾグチからお前に渡してくれと頼まれたんだ…大事なカードなんだろ?」

クロウはシェリーに一枚のカードを投げ渡す、そのカードは「Z─ONE」…シェリーの父がシェリーに託したカードだった。

 

「そうよ、このカードから全てが始まった…ある日、私の幸せな生活は壊された…私は復讐と彼を探す為に生きてきた…でも、その目的は果たされてしまった…。」

シェリーの両親を襲ったクラークは存在を消され…姿こそ見てはいないが彼女の恩人ともいえるゲイザーは近くにいる、そしてゾーンを通じて彼女を救った理由も聞かされた…シェリーは生きてきた意味を失ってしまっていた。

 

 

『でも…神はいたわ、ゾーンは私に希望を与えてくれた…!』

 

「希望…?シェリー、ゾーンは貴女にいったい何を…?」

 

『取引をしたのよ、彼に協力すれば…1つだけ、願いを叶えてくれると…!私は自分の願いの為にあなた達と戦うのよ!』

アキの問いにシェリーはそう答えた…しかし、それをクロウ達は見過ごせない…!

 

 

「シェリー!貴女は…自分の願いの為にネオドミノシティのみんなを危険に晒すっていうの!?」

 

『なんと言われようと…私の想いは変わらない!そして…このカードも必要ないわ!』

シェリーは「Z─ONE」を投げ捨てようとする

 

「シェリー!そのカードはお前の大切な物のはずだ!絶対に捨てちゃなんねぇ!!」

 

『…敵に塩を送るような真似をしていいの?このカードの力は強大…その力で敗北する事になるわよ?』

 

「かまわねぇ!ミゾグチとの約束だ!!」

 

「そう…ならば後悔しなさい…!」

シェリーはデッキに「Z─ONE」を加える!

 

 

『お礼に遊星ギアを止める方法を教えてあげるわ…遊星ギアの稼働装置は私のライフと直結している!私をデュエルで倒さない限り…遊星ギアを止める事はできない!』

シェリーはデュエルディスクを構える!

 

「そんな…!」

 

「チッ…!しかたねえ…シェリー!お前を倒して遊星ギアを止めてやる!!」

クロウとアキはDホイールから降り、デュエルディスクを展開する!

 

 

 

 

「「『デュエル!!』」」 

 

 

デュエルダイジェスト シェリー■アキ■クロウ

 

 

 

Sideクロウ

 

「…なんなんだこのフィールドは!アキとシェリーは何処に行ったんだ!?」

クロウは困惑していた…シェリーがフィールド魔法『エコール・ド・ゾーン』を発動した瞬間、フィールドが霧に包まれ古代の遺跡のような空間に変化…さらにアキと分断されてしまったのだ。

 

『フフフ…ようこそ、私のフィールドへ…!』

 

「シェリー!ここは何処だ!アキはどこにいった!!」

遺跡の上に現れたシェリーにクロウは問いかける。

 

『これが「エコール・ド・ゾーン」の効果…あなた達には別々のフィールドで2人の「私」と戦ってもらうわ!…私は「マスクトークン」を召喚!…ターンエンドよ』

シェリーの場に不気味な姿のトークンが現れる。

 

「チッ…妙なカードを使いやがって…!オレのターン!(オレの手札には『東雲のコチ』と『黒槍のブラスト』がいる…一気に展開してやる!)オレは『BF-東雲のコチ』を召喚!…なにっ!?」

クロウがモンスターを召喚する…しかし、紫色の風が吹いた瞬間、その姿は「マスクトークン」へと変わってしまう…

 

「これはシェリーが召喚したのと同じトークン!?これじゃBFの効果が使えねぇ…!」

 

『私のターン!カードを三枚伏せ…「マスクトークン」をアドバンス召喚!』

シェリーの場に大柄なトークンが現れる…!

 

『バトルよ!「マスクトークン」で「マスクトークン」を攻撃!!』

 

「ぐあっ…!」

シェリーのマスクトークンが困惑しているクロウのマスクトークンを破壊する!

 

 

 

「(シェリーも同じトークンしか召喚してこねぇ…このフィールドで召喚されたモンスターは全部トークンになっちまうのか…!これじゃあシンクロ召喚もBFデッキの効果も使えねぇ…!)」

クロウは必死に勝つ方法を考える…。

 

「(待てよ…?このカードならいける…!!)『BF-黒槍のブラスト』を召喚!!」

クロウの場にブラストが現れるが…破壊されマスクトークンに変わってしまう、しかし…それがクロウの狙いだった!

 

「そして手札の『BF-流離いのコガラシ』の効果発動!自分のBFモンスターが破壊された時特殊召喚できる!そしてこの特殊召喚は無効にできないぜ!」

クロウの場に腕にも翼を持つ鳥人が現れる!

 

「どうだシェリー!オレのデッキを封じられたと思ったら大間違いだぜ!!」

 

『罠カード「フルール・ド・ヴェルティージュ」を発動!相手のフィールドにモンスターが特殊召喚された時!そのモンスターを除外する!』

 

「させるか!!カウンター罠『ダウン・フォース』発動!自分のモンスターが相手の効果でフィールドを離れる時!その効果を無効にし破壊する!」

除去カードを発動したシェリーの策をクロウが躱す!

 

「よしッ…!バトルだ!『コガラシ』で『マスクトークン』を攻撃!」

 

『罠カード「ハイ・ハーフ」を発動!フィールドの攻撃力2000以上のモンスターの攻撃力を半分にする!私は「マスクトークン」を選択するわ!』

 

「なにっ!?」

シェリーのマスクトークンはコガラシに斬り裂かれる!

 

 

「(このデュエル…何かがおかしい…!)」

クロウはこのデュエルに違和感を感じ始める…シェリーは最初にクロウのモンスターを除外しようとした…しかし、次の手は敢えて自分へのダメージを増やした…その行動の意味は…

 

「(まさか…そんな事ができるのか…!?でも、今のオレには確かめる手段がねぇ…!アキ…頼む!気付いてくれ…!)」

クロウは1つの可能性に気付く…その直後、フィールドに薔薇の花吹雪が吹き荒れた…!

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

Sideアキ

 

 

 

「(モンスターを召喚してもトークンに変わってしまう…!どうすればいいの…!?)」

アキは追い詰められていた…アキの残りライフは2800…モンスターを召喚しても効果を持たないトークンになってしまうこの状況を打破できる手段は()のアキにはなかった…しかし、シェリーの不可解な行動がアキに光明をもたらす!

 

 

『私は「BF-流離いのコガラシ」を特殊召喚!』

 

「シェリーが『BF』…!?」

アキはシェリーの不可解な行動…クロウの使うはず「BF」の召喚に困惑する…そして…

 

『魔法カード「模倣─イミテーション」を発動!攻撃力1700の「マスクトークン」を相手の場に特殊召喚してその攻撃力分のダメージを相手に与える!』

 

「えっ?きゃっ!?」

アキの場に突然トークンが現れてアキにダメージを与える…その瞬間、アキの疑念は確信へと変わった…!

 

 

「(今の効果は何処から来たの?さっきも私のトークンの攻撃力が急に下がった…もしかして…別の誰かがデュエルに介入を………はっ!)」

 

─あなた達には()()のフィールドで2()()の私と戦ってもらうわ!─

その瞬間、アキの脳裏にデュエル開始時のシェリーの言葉がよぎる!

 

 

「そう…そういう事だったのね…!シェリー…貴女はとんだ()()()だわ!!」

アキはデュエルディスクを構え直す!

 

「私達の…5D'sの絆を甘く見ないで頂戴!!()()()()()()『流離いのコガラシ』の効果発動!レベル1の『マスクトークン』にレベル6の『流離いのコガラシ』をチューニング!!」

 

『なんですって!?』

不意を突く効果にシェリーは驚きの声をあげる!

 

『「コガラシ」は相手プレイヤーのシンクロ召喚に使える効果、そしてそのシンクロ召喚が無効にならない効果がある!!…冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の花よ!開け!!シンクロ召喚!現われよ…「ブラック・ローズ・ドラゴン」!!』

アキの場に美しき薔薇の竜が現れる!

 

「『ブラックローズドラゴン』の効果発動!フィールド上のカード全てを破壊する!ブラック・ローズ・ガイル!!…貴女の策略はこれで終わりよ、シェリー!」

 

『なに…!?』

エコール・ド・ゾーンが花吹雪で破壊されていく…不気味な空間は消え去り、元の遊星ギアの姿があらわになる…。

 

 

「アキ!」

 

「クロウ!」

そしてアキの隣には元の位置のままクロウが立っていた、2人はお互いの無事を確認し安堵する…。

 

『くっ…!』

 

「ずいぶんと卑怯な作戦を使うじゃねぇかシェリー…危うく同士討ちするところだったぜ…!」

 

「貴女は私達を欺いて『バトルロイヤルルール』でデュエルさせていたのね!」

シェリーはフィールド魔法を発動した瞬間にデュエルシステムに干渉…アキとクロウを分断したように見せ…幻影のシェリーを見せる事で同士討ちを狙っていたのだ。

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト シェリー対アキ対クロウ

 

 

 

 

『ふん…よく見抜いたわね…!』

 

「アキなら必ずオレの考えを見抜いてくれると思ってたぜ!」

 

「ええ…あの時の遊星のおかげよ!」

それはWRGPを間近に控えたある日…遊星はチームメイト同士の連携をよりしやすくする為に「お互いのデッキのカードを全て覚える」事を提案していたのだ…!

 

 

「私達はあの時から努力して仲間のモンスターや罠の効果を全部把握したわ!…あまりにも数が多い遊海さんのデッキを除いてね…」

 

「たとえ声が聞こえなくても、姿が見えなくても…遊星が教えてくれた5D'sの絆は絶対に断ち切る事はできないぜ!!」

 

『フフフ…あはははは…!!』

アキとクロウの言葉を聞いたシェリーは突然笑い始める…

 

「何がおかしい!」

 

『私の罠を見抜いたところまでは褒めてあげる…でもそれが本当の恐怖を招くのよ…!!』

 

「どういう事!」

アキはシェリーに問いかける…!

 

『こういう事よ!私は「ブラックローズドラゴン」の効果で破壊された魔法カード「Z─ONE」の墓地効果発動!!』

 

「墓地から魔法の効果ですって!?」

シェリーの手の中で「Z─ONE」が光を放つ!

 

『このカードは破壊された時にその真価を発揮するカード…お父様が残してくれたこのカードの力で…あなた達を葬り去ってあげる!!』

シェリーは不敵な笑みを浮かべる…!

 

 

「待ってシェリー!何が貴女をそこまでさせるの!?貴女はこんな卑怯なデュエルを仕掛ける決闘者じゃなかったはずよ!?」

アキはシェリーに問いかける、本来のシェリーは騎士の如く正々堂々としたデュエルをしていた…しかし、今の彼女は他人を顧みず、人を惑わす者…魔女のような戦い方をしているのだ…!

 

『私は…私の願いは…「失われた家族との時間を取り戻す」事…!ゾーンの力で過去を変えてお父様とお母様との日々を取り戻す事よ!!』

 

「なんですって…!?」

 

「シェリー…お前はそんな願いの為にネオドミノシティを犠牲にしようっていうのか!?」

シェリーの願いに2人は愕然とする…シェリーの両親は生きてこそいるものの10年もの間、植物状態が続いている…シェリーはゾーンの力で過去の事件を無かった事にする事で失われた時間を取り戻そうとしていたのだ…。

 

 

『私は未来に希望がない事を知った…だから、だから!私は幸せな過去を取り戻したい!!「Z─ONE」の効果発動!デッキのフィールド魔法「魂縛門」を除外!!そしてこのカードを「魂縛門」として発動できる、そしてこのカードは破壊されない!!発動なさい!「魂縛門」!!』

シェリーの背後から巨大な地獄の門が迫り上がる…その門から巨大な骸骨が現れ、シェリーを掴み拘束する…!

 

 

『これが「魂縛門」…私の命を懸けても…あなた達を先へは進ませない!!』

 

「シェリー…!お前は自分の命を懸けてでも過去を変えるつもりなのかよ!」

 

『黙りなさい!デュエルはまだ続いているわ!!』

シェリーはクロウの言葉に耳を貸そうともしない…。

 

「クロウ、こうなったらデュエルで説得するしかないわ!私は『水晶薔薇の女神(クリスタル・ローズ・エンジェル)』を召喚!」

アキはシェリーを説得する為にデュエルを続行する、しかし…!

 

『かかったわね!「魂縛門」の効果発動!私のライフより低い攻撃力を持つモンスターが召喚された時!そのモンスターを破壊してお互いに800のダメージを受ける!』

 

「えっ…きゃああ!!」

 

「ぐあぁぁ…!?」

 

『くぅぅ…!!』

魂縛門の骸骨から稲妻が放たれアキとクロウ…そしてシェリー自身にもダメージを与える…実際のダメージを伴いながら…!

 

「ぐっ…この、痛みは…!」

 

「シェリー、貴女…実際のダメージで自分の身を削ってまで私達を倒そうとするなんて…!」

 

『フフフ…あなた達はこの地獄の門を抜ける事はできないわ…!』

シェリーは笑みを浮かべる…その瞳は狂気ともいえる執念に侵されている…。

 

 

 

「(くそっ…このままじゃシェリーに勝てねぇ…!まずは『魂縛門』の効果でシェリーのライフを減らすしかねぇが…!)」

クロウは考えを巡らせる…現時点でシェリーのライフは3200、この数値を超えるモンスターはクロウ達のデッキには無い…その為『魂縛門』の効果を使ってシェリーのライフにダメージを与える必要がある…。

しかし、クロウの残りライフは1700…アキに至っては1150…2回以上効果が発動すればアキのライフが尽きてしまう…!

 

「クロウ!私の事は気にしないで!今はシェリーを倒して突破する事だけを考えて!」

 

「っ…!(アキ…オレは…!)カードを2枚伏せてターンエンド!」

アキの言葉を聞いたクロウだったが…できる事が無くカードを伏せターンを終える…。

 

『そんな事で仲間を守ったつもり?私は「死の花─ネクロ・フルール」を召喚…そして破壊!お互いに800ダメージよ!』

 

「「うあぁぁ…!!」」

 

『ぐうぅぅ…!!』

シェリーの場にモンスターが召喚された事で再びダメージが襲いかかる!

 

「アキ、大丈夫か…!?」

 

「ええ…まだ、耐えられる…!」

 

『その強がりがいつまで続くかしら…!「ネクロフルール」が破壊された事で効果発動!デッキから「時花の魔女フルール・ド・ソルシエール」を特殊召喚!』

シェリーのフィールドに鋭い目つきをした花の魔女が現れる!

 

「攻撃力2900…!『魂縛門』の効果は発動しねぇが…ダイレクトアタックでオレかアキのライフが尽きちまう!」

 

『甘いわね…そんな単純な手じゃないわ!「フルールドソルシエール」の効果発動!アキの墓地の「水晶薔薇の女神」を私のフィールドに特殊召喚!』

 

「そんな…私のモンスターが…はっ!?このままじゃ!」

アキの墓地からモンスターがシェリーの場に現れる…その攻撃力は「魂縛門」ラインを下回っている…!

 

 

『これで終わりよ!「水晶薔薇の女神」を破壊!お互いに800ダメージを与える!さよなら…十六夜アキ、貴女の後にすぐクロウを葬ってあげるわ!!』

 

「させるかよ!罠カード『カオス・ライフ』を発動!!効果ダメージでライフが0になる時!その数値分、お互いのライフを回復する!」

クロウがシェリーの策を回避する!

 

『っ…!なら貴方から倒してあげる!「フルールドソルシエール」でクロウにダイレクトアタック!』

 

「まだよ!罠カード『クリスタル・ヴェール』を発動!墓地の『水晶薔薇の女神』を除外して攻撃を無効にする!」

 

『なにっ!?』

水晶の壁が時花の魔女の攻撃を防ぐ!

 

「そして除外したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える!700ダメージよ!!」

 

『くっ…!』

水晶の礫がシェリーにダメージを与える!

 

「助かったぜアキ…!」

 

『たった1ターン持ち堪えただけでいい気にならないで…!あなた達の敗北は決まっている!!』

 

「っ…シェリー!もうこんな危険なデュエルはやめるんだ!オレ達が傷つけあう理由はねぇはずだ!」

クロウはもう一度シェリーの説得を試みる…。

 

『私は…過去を変えたい…!私は「あの日」で止まってしまった時間を取り戻したいの!!』

シェリーの脳裏に忌まわしい日の記憶が蘇る…銃弾に倒れた両親…響く悲鳴…そして現れた英雄…その光景はシェリーの脳裏に焼き付いている…。

 

 

「遊星やミゾグチから聞いたぜ、小さい頃にイリアステルの手先に襲われて…ゲイザーの野郎に命を救われたってよ…だからか?こんな事してるのは…?」

 

『それもあるわ…私は彼に命を救われた、でも…命を救われた両親はこの10年!目覚める事はなかった!!…だから私は彼に聞きたかった!「なんで私達を助けたのか?」「なんで両親は目覚めないのか」と!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideシェリー

 

 

時は遡る…

 

 

【ゲイザーがルブラン夫婦と貴女を助けた訳が知りたい…?】

 

『ええ、私はその答えを聞く為に彼を探し続けていたのよ…』

シェリーはゾーンへと問いかける、張本人たるゲイザーは行方知れず…その答えを知るのはゾーンのみだった。

 

 

【少し待っていなさい…その件の報告書があった筈です…】ブゥン─

ゾーンの前に大量のウィンドウが開く

 

 

【わかりました…彼の報告によれば「貴女の願いを叶えただけ」…との事です】

 

『えっ…?』

シェリーは呆けてしまう…確かにあの夜、彼女は「パパとママを返して!」と叫んだ…彼はその願いを聞き、叶えたのだ…。

 

【彼は生来、子供に甘いところがあります…親を失って泣いていた貴女を放置しておけなかったのでしょう…彼はそういう男です】

 

『待って!それじゃあどうして2人は目覚めないの!?』

 

【…治療の際に2人の記憶を一部改竄したとあります…その影響でしょう…彼らしくもないミスですが…】

 

『そんな…そんな、事って…!!』

 

【安心しなさいシェリー、貴女が約束を果たした時に必ず願いを叶えましょう…そうすれば貴女はまた家族と共に過ごせるのですから…】

 

 

SideOut

 

 

 

 

『あの日から私の中の時間は止まったまま…ゾーンに頼れば…私はまたお父様やお母様と過ごせるのよ!!』

シェリーは胸の内を明かす…失われた幸せな時間…彼女はそれを取り戻したいだけなのだ、しかしそれは…

 

 

「ふざけんじゃねぇ!!」

 

 

「『えっ…!?』」

クロウの叫びが響く…シェリーはクロウの怒りに触れてしまったのだ…

 

 

「シェリー!お前は大事な事を忘れてるぜ!お前の親はまだ()()()()()()!オレや遊星…世話してるガキ達の親みたいに死んでねぇんだよ!!」

クロウの脳裏に彼が世話する子供達の姿が浮かぶ、ゼロ・リバースにより遊星やクロウの親は亡くなった…そして子供達もサテライトでの生活で親を失った、しかし…シェリーの両親は生きている…。

 

『なら…私に協力しなさいクロウ!私に協力すればゾーンが貴方や子供達が両親と共に生きる世界を叶えてくれるわ!』

 

「シェリー…オレはな、一度だけ遊海に聞いたんだよ…!アンタが過去を変えられるならどうするってな…!!」

 

 

 

 

 

 

 

Sideクロウ

 

 

「なぁ遊海…アンタが過去を変えられるなら…どうする?」

 

「…いきなりどうしたクロウ?」

 

それはパラドックスの事件が解決し、しばらくしたある日…マーサハウスで眠っている子供達を前にクロウが遊海へと問いかける…。

 

 

「オレ達以外は覚えちゃいねぇが…パラドックスは過去を壊して未来を変えようとした…それを聞いて思っちまったんだ…『もしも、ゼロ・リバースが起きなかったら』ってよ…そしたらオレ達もこいつらも親を失わないで幸せに暮らしてたんだなと思って…」

 

「…俺にだって、変えたい過去はあるさ…消し去りたいぐらいのな…」

 

「そうなのか?アンタならてっきり『過去は振り返らない!』って即答しそうだと思ったんだが…」

クロウは意外そうな顔をする

 

「俺だって完璧超人じゃないさ…見てみるか?俺の()()()

 

「えっ…?」

そう言って遊海はクロウの頭に手を置く…その瞬間、膨大な情報がクロウに流れ込む…!

 

「ぐあっ…!?」

クロウが見たのは遊海がデュエルアカデミアで経験した事件…異世界での「ティエラ事件」の記憶だった。

 

悪魔…ティエラに乗っ取られた遊海が数多の生命を壊し、決闘者を葬り…最愛の女を手に掛ける…その記憶をクロウは一瞬の間で見せられた…。

 

 

「いま、のは…」

 

「俺にとっての最大の汚点さ…幸いにもその異世界の特性で死んだ奴はいなかった…でもな、思い出しちまうんだよ…この手で翠を傷付けた感触をな…おかしな話だよなぁ…俺、意識はなかったはずなのにさ…」

 

「遊海…」

遊海の右腕は微かに震えている…

 

「でもなクロウ…一度起きた事は覆らない、人間の人生ってのは一度きりだ…だから、どんな辛い事があっても懸命に生きていく…それが人間ってもんだろ?」

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

「遊海の言葉でオレは気づいたんだ、人生は一度きり…過去を変えたって意味がない!だから今を…未来を信じて懸命に生きていくんだってよ!!」

 

「クロウの言うとおりよシェリー!貴女が過去を変えたって貴女達が襲われたっていう事実はわからないわ!…だけど未来は変えられる!自分の可能性を信じて生きていれば…どんな未来にだって辿り着けるはずよ!!」

 

クロウの言葉を聞いたアキが声を上げる…過去にサイコパワーを悪用し「黒薔薇の魔女」として暴れまわったアキ…しかし、遊星の懸命な説得…そして翠や遊海に様々な事を教わりサイコパワーの代わりに精霊の力を得た…未来は自分の意思で変えられる…彼女は身を以てそれを知っているのだ。

 

 

『黙りなさい…黙れ!!私は…私は!家族との時間を取り戻したいのよ!!!』

クロウの言葉はシェリーの心に届かない…彼女の魂を縛る強すぎる過去への願いが壁となっているのだ…。

 

「アキ…オレ達でシェリーを救うんだ!過去に縛り付けられたアイツを救い出す!」

 

「ええ…わかったわ!!」

 

 

 

「(この状況で私が取れる手は…これしかない!)『ブルー・ローズ・ドラゴン』を召喚!」

 

『馬鹿め…!「魂縛門」の効果発動!そのモンスターを破壊して全員に800ダメージよ!!』

 

「アキ!?…ぐあぁぁ…!」

アキの召喚したモンスターに反応して再び稲妻が襲いかかる!!

 

「くうぅぅ…!でも、これでこのモンスターが召喚できる!破壊された『ブルーローズドラゴン』の効果!墓地の「ブラックローズドラゴン」を効果を無効にして特殊召喚!」

アキの場に再び薔薇が咲き誇る…この時点でシェリーのライフは1700…魂縛門の効果は発動しない!

 

「カードを伏せてターンエンド!…クロウ!お願い!!」

アキはクロウに全てを託す!

 

「(アキはライフを犠牲にしてまで『ブラックローズ』を召喚した…なら、あの伏せカードは!!)リバース罠『ブラック・バック』発動!このターンの通常召喚を封印する代わり、攻撃力2000以下のBFモンスター『黒槍のブラスト』を墓地から特殊召喚!さらに魔法カード『レンダリング・チューニング』を発動!手札のチューナーモンスター『BF-竜巻のハリケーン』を特殊召喚!このカードの攻撃力はフィールドのシンクロモンスター『ブラックローズドラゴン』と同じ2400になる!」

アキの思いを汲み取ったクロウのデッキがその真価を発揮する!

 

「さらに魔法カード『レベルウィング』を発動!『ハリケーン』のレベルを3つ上げる!…そしてオレはレベル4の『黒槍のブラスト』にレベル4になった『竜巻のハリケーン』をチューニング!黒き疾風よ!秘めたる思いをその翼に現出せよ!!シンクロ召喚!『ブラック・フェザー・ドラゴン』!!」

黒き翼がクロウの思いを乗せて舞い上がる!

 

 

『何をしようと無駄よ!私はお父様の残してくれたカードであなた達に勝つ!そして幸せな時間を取り戻すのよ!』

 

「いい加減にしろシェリー!親父さんはこんな事をする為にそのカードを託したんじゃないはずだ!!」

 

『黙れ!私は…私は!!』

シェリーの魂を縛るかのようにシェリーを拘束する骸骨が力を強める…!

 

「シェリー…今、お前を助けてやる!バトルだ!『ブラックフェザードラゴン』で『フルールドソルシエール』を攻撃!」

 

『無駄よ!「ブラックフェザードラゴン」では「フルールドソルシエール」には勝てない!!』

 

「たしかにな…でもそれは()()1()()()()の話だ!オレ達は未来を変える!!」

 

「そのとおりよ…この時を待っていたわ!リバース罠『シンクロ・ストリーム』を発動!『ブラックローズ』の攻撃力を『ブラックフェザードラゴン』に加える!」

 

『なんですって!?』

ブラックローズがブラックフェザードラゴンに力を託す…その攻撃力は5200!

 

「信じてたぜアキ!今度こそ目を覚ませ!シェリー!!ノーブル・ローズ・ストリーム!!」

 

『つ…あああぁぁぁ─!!?』

2体のドラゴンの力がシェリーのライフを削りきり、地獄の門を打ち砕いた!

 

 

シェリーLP0

 

クロウ&アキ WIN!

 

 

キュウゥゥン…ガガン!!

 

 

「ギアの動きが止まった…!」

シェリーのライフが尽きた事で遊星ギアの稼働が停止する…しかし、事態はそれだけでは収まらない…!

 

ゴゴゴ…ガラガラガラ…!

 

「『魂縛門』が崩れるわ!?」

 

「やべぇ!?シェリー!アキ─!」

リアルダメージを受けるデュエルの影響なのか…シェリーを拘束していた魂縛門が崩れ落ちる、そして部屋は瓦礫に覆われていった…。

 

 

 

 

 

キィン─

 

 

「今の衝撃は…遊星ギアが止まったのか…?」

 

「アキさん…アキさんとクロウが遊星ギアを止めたんだわ!」

それぞれの道を進む5D'sのメンバー達は突然の揺れと痣を通してアキとクロウの勝利を感じ取る

 

 

「クロウ!アキ!やってくれたか…!」

 

『遊星!私達も先を急ごう!』

 

「ああ!」

 

 

 

「絶対氷結!…よくやった二人とも…!俺も翠を探さなければ…!燃え上がれ!太陽神の神炎!ゴッドブレイズ!!」

 

ズドオォン!!

 

冷やされた空気が急激に膨張…全てのインフェルノイドを破壊した…。

 

 

「今助けに行く…無事でいてくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideシェリー

 

 

 

「シェリー…お父さんの話をよく聞きなさい…」

 

『(この声は…お父様…?)』

微睡む意識の中…シェリーはかつて父に言われた言葉を思い出していた…。

 

 

「これからお前の人生にはたくさんのつらい事や悲しい事があるかもしれない…だけど、挫けてはいけないよ」

優しい顔でルブラン博士は幼いシェリーに語りかける…

 

「自分の信念を…正義を曲げずに生きるんだ、そうすれば…必ず未来を切り拓く事ができる…!」

そう言ってルブラン博士はシェリーにクマのぬいぐるみを渡した…その中に「Z─ONE」のカードを…希望を託して…

 

 

『(そうだったのね…お父様は…「強く生きて欲しい」という願いを託してこのカードを…)』

シェリーはゆっくり目を開ける…その手には「Z─ONE」のカードが握られていた…。

 

『(ごめん…ごめんなさいお父様…わたし…!)』

シェリーは静かに涙を流す…彼女を縛り続けた鎖はここに断ち切られた…。

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「う〜ん…」

 

「いつつ…何がどうなったんだ…?」

クロウとアキが目を覚ます…2人はシェリーと共に魂縛門の崩落に巻き込まれ気を失っていたのだ。

 

 

「これは…ブラックローズドラゴンがオレ達を護ってくれたのか…!」

クロウが周囲を見回す…そこには身を挺してクロウ達を守る黒薔薇竜の姿があった…。

 

「2人を助けたいって必死に願ったらブラックローズドラゴンが応えてくれたの…ありがとう…!」

《キュリリリィ!》

アキの言葉にブラックローズが応える…そしてブラックローズが消え、暖かい光がアキ達に降りそそぐ…

 

「これ…なくなったはずのサイコパワー…?」

 

「暖かい光だな…ん!?傷が…!」

光を浴びたクロウ達の傷が癒えていく、それは遊海達のようにカードの力を介さない…優しい治癒の光だった。

 

「本当のサイコパワーは…人を癒す力なのかもしれねぇな…」

 

「人を癒す力…」

アキは自分の手を見つめる…たくさんの人を傷つけた忌まわしい力…それが人を癒す力に変わった瞬間だった…。

 

 

 

 

 

 

『私は…いままでなんて事を…』

 

「シェリー…」

戦いを終え、シェリーは項垂れていた…父に最後言われた言葉を思い出し、自分のおこないを深く反省していた…。

 

「シェリー…今からでも遅くねぇ、オレ達と一緒に未来を変えようぜ!」

 

『未来を…変える…』

 

「ああ、街を…そして遊星を救うんだ!アイツは絶対に死なせない!その為に力を貸してくれ!」

 

『アキ…クロウ…』

シェリーは手の中の「Z─ONE」を見つめる…

 

『(自分の信念を…正義を曲げずに生きる…!)わかったわ…私も共に行く!』

シェリーはクロウの手を取った…!

 

 

「よろしくなシェリー!…そうだ!この事件が解決したら遊海に頼んで親父さん達を治してもらおうぜ!あの人ならなんとかしてくれるさ!」

 

『えっ!?遊海はそんな事ができるの!?』

シェリーはクロウの言葉を聞いて驚く

 

「知らなかったのか?遊海の力ならきっとなんとかしてくれるさ!その為にも行こうぜ!太陽ギアに!!みんなが待ってる!」

 

「『ええ!』」

 

クロウ達は歩みを進める…仲間達を信じて…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『(ごめんなさいゲイザー…私は彼らと未来を変える…だから、貴方も…)』

 



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決戦!絶望のアポリア〜希望の創造者〜

「ねぇジャック…さっきの爆発音って…」

 

「おそらく遊海だろう…心配するな!遊海はあの程度の事は朝飯前だ!」

 

「そうよ…遊海さんなら大丈夫…!」

アーククレイドルの中を進むジャック一行…龍亞兄妹はジャックのホイール・オブ・フォーチュンに掴まりDボードで並走していた…。

 

 

「もう…後戻りはできないんだね…」

 

「フン…ここまで来て怖気づいたか?」

弱音を漏らす龍亞にジャックが問いかける

 

「大丈夫…!怖くないって言ったら嘘になるけど…おれよりも遊星や翠さんの方が怖い思いをしてるんだもん…!」

 

「遊星が死んでしまう未来…それに翠さんもゲイザーに攫われて…」

龍亞の言葉を聞いた龍可が表情を曇らせる、シェリーに宣告された「遊星の死」、そして攫われた翠…龍可は2人の事が心配なのだ…。

 

「忘れろ…遊星が死ぬ未来などない!それに翠は遊海がきっと助け出す!…俺達は遊星ギアを止める事に集中するんだ…!」

ジャックは2人を叱咤する。

 

「うん…!絶対に遊星は死なせない!翠さんだってきっと大丈夫だよ!」

 

「そうよね…きっと大丈夫よ…!」

龍亞兄妹は不安を振り払い気合いを入れた…!

 

 

 

 

 

 

 

 

「この部屋…すごく広い…!」

 

「まさか…この場所が遊星ギアか…!」

しばらくトンネルを進み続けたジャック達…彼らはついに目的地である2つ目の遊星ギアに到着した…その時!

 

 

『その通り…お前達の足元にあるのが遊星ギアだ』

 

「お、お前は…!?」

 

「そんな…なんで!?」

 

「アポリア…!生きていたのか…!!」

ジャック達の前に大柄な男…遊星との死闘の末に倒されたはずのアポリアが立ち塞がる!

 

 

『私は再び蘇った…お前達に遊星ギアを止めさせはしない…私が此処にいる限り…!!』

 

ウィーン…バシュン!! ガシャン!!

 

「えっ!?なんだよこれ!?!」

 

「取れないし…動けない!!」

 

「ぐっ…!?なんだこれは!」

ジャック達に突如円盤が発射され左胸に固定され、さらに足を鉄の足枷が拘束する!

 

シュピン!

 

「「痛ッ…!?」」

 

「今の痛みは…!?貴様、何をした!!」

さらにジャック達の胸を鋭い小さな痛みが貫く…

 

『これでお前達は逃げられない、無理に逃げようとすれば…針が心臓を刺し貫く!』

 

「「えっ…!?」」

 

「何っ…!?」

アポリアの言葉にジャック達は凍りつく…胸に装着された機械…そこから無数の針が伸び、三人の身体に突き刺さっているのだ…!

 

 

『遊星ギアと私は一体化している…ギアを止めたければ私を倒すしか方法はない!』

 

「上等だ!このジャック・アトラスが貴様を倒してやる!」

 

「こうなったらおれもやるぞ…!」

アポリアの言葉にジャックは宣戦布告し、龍亞がデュエルディスクを構える!

 

「その意気だ龍亞!これは…『チーム5D's』の戦いだ!」

 

「チーム5D's…なんだか燃えてきた!!龍可!おれ頑張るよ!!」

 

「うん…!頑張ろう…!」

気合いの入った龍亞の言葉に応える龍可…その額には冷や汗が浮かぶ、無理もないが兄妹はまだ小学生…命懸けの戦いにはまだ早すぎるのだ。

 

「(龍可…)心配するな!おれが絶対に龍可を守る!」

 

「ありがとう…龍亞」

そんな龍可の状態に気づいた龍亞が龍可を励ました…。

 

 

 

『覚悟は決まったようだな…デュエルは変則タッグルール、各々のライフは4000で行なう』

 

「なに…?お前も4000だと?」

 

『そうだ…さらに、私のターンはお前達3人の後に回ってくる、条件は圧倒的に私が不利だ、その代わり…先攻は私が貰う』

アポリアが提示したのは実質ライフ12000対4000のデュエル…しかしその表情に変化はない…!

 

「いいだろう!…いくぞ!龍亞!龍可!」

 

「「うん!」」

ジャックはその条件に同意する…そしてデュエルが始まった!

 

 

 

 

 

『「「「デュエル!!」」」』

 

 

 

デュエルダイジェスト アポリア対ジャック&龍亞&龍可

 

 

 

 

 

 

 

 

『私のターン!フィールド魔法「機動要塞フォルテシモ」発動!!うおおおっ─!!』

遊星ギアの景色が機械の城のような風景に変化、さらに中心部の台座にアポリアが合体する!

 

 

「が…合体した!?」

 

『これで私達は()()()()()()()()と一体化された…』

 

「なんだと!?どういう事だ!」

アポリアの言葉にジャックが問いかける

 

『お前達の命は数値化しライフポイントとリンクされる…そしてライフが0になった時、お前達の命も0となる』

 

「そ、それって…死んじゃうって事!?」

 

「ふざけるな!俺達の命を貴様などに弄ばれてたまるかっ!!」

アポリアの宣告にジャック達は動揺し怒りの声を上げる…!

 

 

『弄びなどしない…これは純然たる決闘(デュエル)だ、お前達が勝てば胸の装置は外れ、遊星ギアは停止する…この戦いに「感情」はいらない、勝利か敗北…生か死か…私は心を持たないマシーンとなってお前達と戦うのだ…!』

 

「心を持たないだと…!?」

 

アポリアの復活まで時は遡る…

 

 

 

 

 

 

Sideアポリア

 

 

【人間を辞める…と?】

 

『そうだゾーン…私は感情を捨て去る…!』

 

『その意味はわかっているのかアポリア?感情を捨てる…それはお前というアンドロイド(人間)がただの戦闘人形(ロボット)になるという事だぞ?』

ゾーンとゲイザーの手で復活したアポリア…しかし、彼はさらなる改造を願う…

 

【そうです…貴方は我々のなかで誰よりも「人間」であった、君の生涯を引き裂いた3つの絶望と悲しみ…私はそこからルチアーノ・プラシド・ホセという三人の君を蘇らせた…】

 

『絶望は…もういらない、WRGPの決勝で私は5D'sに敗北した…4つ目の絶望の中で死んでしまう程だった…それを君達は救ってくれた…私は絶望に…感情に負けてしまったのだ…!』

アポリアは悔しそうに拳を握りしめる…

 

『ならば感情などいらない…私は感情を君達に預け、完全なるマシーンになる…!絶望も希望もいらない!戦闘機械(マシーン)となり君達を守る!より良き未来の為に!!』

 

『アポリア…お前の覚悟はわかった、お前の感情を預かろう』

 

【頼みます…我が友よ】

 

こうしてアポリアは記憶はそのままに感情を捨て去ったのだ…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

『より良き未来の為に…お前達は絶対に行かせる訳にはいかない!お前達のライフを…ゼロにする!私は「フォルテシモ」の効果発動!1ターンに1度、手札からレベル4以下の機械族モンスターを特殊召喚する!現われろ!「機皇兵ワイゼル・アイン」!』

 

「っ…!新しい機皇モンスターだと!?」

機動要塞から「機皇帝ワイゼル∞」に似た白いロボットが射出され現れる!

 

『さらに私は「機皇兵スキエル・アイン」を召喚!…カードを3枚伏せてターンエンド!』

アポリアの場に「機皇帝スキエル∞」に似た青いロボットが現れ、先攻を取ったアポリアはターンを終えた…。

 

 

 

「ジャック!最初はおれに行かせて!…龍可を守る為にこんなところで負けられない!」

 

「いいだろう…いけ龍亞!」

 

「うん!ありがとう!!」

龍亞はジャックの言葉に背中を押されアポリアに立ち向かう!

 

 

「おれのターン!『D・ステープラン』を守備表示で召喚!」

 

『その瞬間!永続罠「レベル・カノン」を発動!互いのプレイヤーはモンスターを召喚した時!そのモンスターのレベル✕200のダメージを受ける!「ステープラン」のレベルは4!よって800ダメージだ!』

 

「えっ!?うわぁぁ!!」

 

「「龍亞!?」」

フォルテシモの壁面から砲台が現れ、赤い稲妻が龍亞に襲いかかる!

 

「今の衝撃…本物の…!」

 

『言ったはずだ、()()()()()()()()()()()()()、ライフが下がれば現実の痛みとなって互いのプレイヤーを襲う…甘い考えは捨てて本気でかかってこい…!』

龍可の言葉にアポリアは冷たく言い放つ…

 

「っ…!いい加減にしろ!貴様の相手など俺一人で充分だ!龍亞と龍可を開放しろ!!」

 

『………』

 

「返事をせんか!!」

ジャックの言葉にアポリアは答えず、冷たい視線で見下ろしている…離脱を許すつもりはないようだ。

 

 

「だ、大丈夫だよジャック…!少し驚いただけさ…たった800ダメージだから…!まだ平気…!」

 

「龍亞…!」

龍亞はなんとか立ち上がる…!

 

「(今の衝撃…地縛神と戦った時と同じ衝撃だった…!こんな衝撃を龍可が受けたら…!)おれは…カードを三枚伏せてターンエンド!!」

 

 

 

 

「わたしのターン…!(どうしよう…!このままモンスターを召喚したらダメージを受けて…龍亞が受けた衝撃を受けちゃう…!)」

ターンの回ってきた龍可は必死に打開策を考える…。

 

「龍可!」

 

「龍亞…?」

龍可は龍亞のアイコンタクトに気付く…

 

 

「(龍亞の伏せた3枚のカード…あの中にダメージを無効にできるカードがあるのね!)わたしは『アーマード・ホワイトベア』を守備表示で召喚!」

龍亞の意を汲んだ龍可は鎧を纏った白クマを召喚する!

 

『永続罠「レベルカノン」の効果発動!モンスターを召喚した事で800ダメージを与える!』

 

「龍可には指一本触れさせない!!リバース罠『ダメージ・イレイザー』を発動!効果ダメージを無効にしてその数値分のライフを回復する!」

龍可を守る為に龍亞の罠が発動する…しかし

 

『甘い、カウンター罠「ダメージ・ブースト」発動!効果ダメージを無効にする効果を無効にし破壊する!…さらに、相手の受ける効果ダメージは倍となる!1600のダメージを受けるがいい!』

 

「なに!?」

 

「そんな!?龍可!!」

 

ダメージイレイザーのカードが砕け散り、無数のミサイルが龍可に襲いかかる!

 

「きゃあああ!!?」

 

「龍可!!龍可─!!」ガシャン!ガシャン!

 

「大丈夫か!」

ダメージを受けて座り込む龍可に駆け寄ろうとする龍亞…しかし、足枷がそれを許さない…

 

「く、うぅ…わたしはターン、エンド…!」

ダメージを受けた龍可はエンドを宣言する、だが…アポリアはさらに追撃を仕掛ける!

 

『「機動要塞フォルテシモ」の効果発動!エンドフェイズに機械族モンスターをコントロールしていないプレイヤーに100のダメージを与える!』

 

「なんだと!」

 

「やめろ…やめろぉぉ!!」

龍亞の叫びも虚しく…レーザーが龍可の目の前を薙ぎ払う!

 

「うわぁっ…!!」

 

「龍可…!!そんな…おれが余計な事をしたから…!」

 

「龍亞!涙は飲み込め!!…目の前の敵と戦う事に集中するのだ!」

 

「ジャックぅ…!」

ジャックは涙を溜める龍亞を叱咤する…

 

「(ぬぅ…!命を懸けたデュエル…身体の弱い龍可には負担が掛かり過ぎる…!ここは速攻あるのみ!!)」

子供達を守る為にジャックは力を振るう!

 

 

 

 

「俺のターン!魔法カード『トラップ・ポーズ』を発動!エンドフェイズまで相手フィールドの罠カード全ての効果を無効にし、その枚数分カードをドローする!『レベルカノン』を無効にし1ドロー!!」

 

『ほう…!』

ジャックの発動したカードにアポリアは感心の声を洩らす

 

「さらに!手札からレベル1の『ニードル・ガンナー』を墓地に送り、手札の『パワージャイアント』を特殊召喚!元々のレベルは6だが、特殊召喚時に捨てたモンスターのレベルを自身のレベルから引く!さらに『ダーク・リゾネーター』を召喚!」

ジャックの場に2体のモンスターが揃う!

 

「俺はレベル5となった『パワージャイアント』にレベル3の『ダークリゾネーター』をチューニング!王者の鼓動、いま此処に列を成す!天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!我が魂…『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!!」

ジャックの魂たる悪魔竜が炎と共に現れる!

 

「やった…!やっぱりジャックはすごい…龍可を守るには強くなくちゃいけないんだ!」

雄々しい悪魔竜の姿に龍亞は希望を取り戻す!

 

「でも…今のおれじゃ役に立たない…ならせめてジャックの力に!リバース罠『パワーアップ・コネクター』を発動!このカードを『ステープラン』に装備!そしてその攻撃力を『レッドデーモン』に加える!ジャック、受け取って!!」

 

「うむ!『ステープラン』の攻撃力は1400…よって攻撃力は4400だ!!」

ステープランの力を受け取ったレッドデーモンの力がアップする!

 

 

『フン…面白い、味な真似をする…しかし、その程度は想定済みだ!リバース罠「パワー・グラヴィディ」を発動!「ワイゼルアイン」に装備!そして相手モンスターの攻撃力が変動した時!その数値を装備モンスターに加え、相手モンスターの攻撃力を0にする!』

 

「「なんだと!?/なんだって!?」」

アポリアの罠がレッドデーモンの力を奪う!

 

 

「そんな…また、おれのせいで…!!」

 

「(これでは攻撃ができん…!)カードを伏せターンエンド!」

 

『エンドフェイズに「フォルテシモ」の効果発動!100ダメージを受けて貰う!』

 

「っ…ぐおぉっ…!!」

ジャックにレーザーの衝撃が襲いかかる…アポリアのデッキはただの「シンクロキラー」デッキではなく「シンクロメタバーン」デッキへと強化されていたのだ…!

 

 

「ジャック…!ごめん、おれ…そんなつもりじゃ…!」

 

「泣くな龍亞!!」

龍亞は自分の成す事全てが裏目に出てしまった事で自身を失い膝をついてしまう…そんな龍亞にジャックの激が飛ぶ!

 

「立つのだ!腰を据えて踏ん張れ!」

 

「でも…どうしたら…!」

 

「辛いのはお前だけじゃない…」

 

「えっ…?」

 

「龍亞!わたしは平気よ…!頑張ろう!!」

 

「龍可…(ごめん龍可…こんな情けない兄貴で…!)」

龍亞は歯を食いしばり立ち上がる…「龍可を守る」…その思いだけが龍亞を支える!

 

 

 

『私のターン!私がドローしたのは魔法カード「オーロラドロー」!このカードは私の手札がこのカードの時のみ発動できる!デッキから2ドロー!…そして「機皇兵グランエル・アイン」を召喚!そして…「レベルカノン」の効果で800ダメージを受ける』

アポリアの場に「機皇帝グランエル∞」に似たロボが現れ、ダメージを受けるが…その顔色は少しも変わらなかった…。

 

「貴様…痛みを感じぬのか…!?」

ジャックはその様子を見て声をあげる、アポリアは痛みを感じていない訳ではない…痛みに反応する感情を持ちあわせていないのだ…。

 

 

『「グランエルアイン」の効果発動、「アーマードホワイトベア」の攻守を半分にする…!』

 

「そんな!」

グランエルアインに搭載された重力操作装置が白クマを地面に叩きつける!

 

『バトルだ、まずは「ワイゼルアイン」で攻撃力0の「レッドデーモン」を攻撃!クォークカーブ!』

 

「ぐっ…うおぉぉ!?」

ワイゼルアインのレーザーサーベルがレッドデーモンを両断する!

 

「そんな…ジャックのライフが3200も…!」

 

「っ…うぅ…!?(遊海は…いつもこんなダメージを受けていたのか…!?力が、入らん…!)」

 

「ジャック!!」

凄まじい衝撃にジャックは倒れ込んでしまう…!

 

『さらに「スキエルアイン」で「アーマードホワイトベア」を攻撃!「スキエル」は「ワイゼル」の効果で貫通ダメージを与える!ツインパルス!』

 

「そんな!?きゃあああ!!」

 

「龍可ぁぁぁ!!」

銃弾が白クマを破壊し龍可を吹き飛ばす!

 

『そして…「グランエルアイン」で龍可にダイレクトアタック!グラヴィティブラスター!』

 

「や、やめろぉぉぉ!!!」

 

「あっ…うああぁぁぁ!!!」

反重力のエネルギー弾が龍可に直撃、龍可も地面に倒れ伏してしまう…立っているのは龍亞1人だった。

 

 

「龍可…ジャック…どうして…どうしてこんな…!」

 

『私は手札から永続魔法「ロックオンレーザー」を発動、魔法・罠をセットしたプレイヤーは200ダメージを受ける、お前達が動けば動いただけその代償にライフは削られる…もっともシグナーの2人はもう動けぬか』

倒れ伏す龍可とジャック…膝をつく龍亞を見つめながらアポリアはデュエルを続ける、その瞳に感情はない…

 

『心が痛いか?心があるから人間は愚かな希望を抱く…そして、いともあっさりと望みは断たれ苦しみにのたうつ…くだらぬ、心がなければ絶望する事はない…心がなければ未来の破滅は無かった』

アポリアは淡々と感情の…心がある事の愚かさを龍亞に語りかける…。

 

『少年、これが絶望だ…ターンエンド、そしてエンドフェイズに「ワイゼルアイン」に装備された「パワー・グラヴィティ」は破壊される』

 

 

 

 

「そんな…龍可とジャックが…」

龍亞は絶望した…その目から涙が溢れ、地面に零れ落ちる…

 

「ぐっ…まだだ…俺は、俺がこんなところで敗れると思っているのか…!!」

 

「そうよ…!わたしだって…!」

 

「龍可!ジャック!」

倒れていた2人は死力を尽くして立ち上がる!

 

「龍亞!俺達はまだ負けていない…!だから望みを捨てるな!」

 

「ジャック…!でも、でもどうしたら…!(考えろ考えろ考えろ…!おれが…頑張らなくちゃだめなんだ…!!)」

ジャックの言葉に龍亞は涙を拭き前を向く…ジャックのライフは残り700、龍可は200…龍亞は3200…まだ勝機はある…!

 

 

「おれの…ターン!!」

 

『立ち向かってくるか…だが、いいのか?動けば動く程…お前はダメージを受ける…!』

龍亞に「ロックオンレーザー」と「レベルカノン」が照準を定める!

 

「(もう…ミスはできない…!おれが…おれがなんとか…しないと……でも)…ターン、エンド…!」

 

「「龍亞!?」」

龍亞は何もできずターンを終える…アポリアの残した「絶望」という名の鎖が龍亞を縛ってしまったのだ。

 

 

「わたしの、ターン……ターン、エンド…!」

 

「龍可…!(そうだ…!何やってるんだよおれ!?おれが動けば龍可を少しでも休ませられたのに!!)」

龍亞は後悔する…龍可は既にボロボロ、龍亞が少しでもプレイすれば龍可を休ませる事ができた…そのチャンスを失ってしまったのだ…!

 

『「フォルテシモ」の効果発動!100ダメージだ!』

 

「うっ…!?」

 

「龍可!!」

無情なレーザーが龍可を薙ぎ払う…龍可は悲鳴を上げる事もできず倒れ伏した…。

 

 

「…アポリア!!何故だ!何故子供相手にここまでやる!?」

ジャックがアポリアに叫ぶ…傷付いていく龍可をジャックは見ていられなかったのだ…。

 

『諦めてもらう為だ、お前達がネオドミノシティを救おうとする…その思いを…!その為に私と同じ絶望を味あわせているのだ!』

 

「なんだと…!?」

 

『《愛してくれる者のいなくなった絶望》…《愛する者がいなくなった絶望》…《愛さえいらなくなった絶望》…その果てにお前達は浅ましい進化を諦めるだろう!そしてゾーンが!ラプラスが!新たな未来へと導くのだ!!』

アポリアは龍亞に過去の自分を重ねていた…そして、彼に同じ絶望を与える事で進化を止め、破滅の未来を止めようとしていたのだ。

 

 

「俺は諦めんぞ…絶望なぞしてたまるかっ!!俺は『クロック・リゾネーター』を守備表示で召喚!このモンスターは守備表示の時、1度だけ戦闘・効果では破壊されない!」

ジャックの場に時計を背負った悪魔が現れる…だが…!

 

「待ってジャック!モンスターを召喚したら!?」

 

『「クロックリゾネーター」のレベルは3…「レベルカノン」で600ダメージを与える!』

 

「ぐぅ…!!…ターン、エンドだ!」

ジャックにミサイルが直撃する…しかし、ジャックは歯を喰い縛り立ち続ける…!

 

『…「フォルテシモ」の効果が発動しない…機械族か、命拾いしたな…だが、痛みに耐えて守備モンスターを出して何になる?』

 

「(違う…ジャックはおれに教えてくれようとしてるんだ…今は闇かもしれないけど…この先に…この奥に…!)」

 

「「(光は…希望はある!)」」

ジャックと龍亞の思いはシンクロした…最後の希望を守る為にアポリアへと立ち向かう!

 

 

 

 

『まだ希望はあるといった表情だな?お前達人間が託す最後の望み…シンクロ召喚!いいだろう、その希望をへし折ってやる!私のターン!魔法カード「機皇帝の賜与」を発動!自分の機皇モンスター1体につきカードを1枚ドローする!3ドロー!!』

ジャック達の希望を潰す為にアポリアはカードを引く…

 

『お前達が縋った希望…愚かな望みを断ち切ってやる!自分の場に3体の機皇兵が自分フィールドに存在する時!最強の機皇帝「機皇神龍アステリスク」を特殊召喚する!!』

アポリアの場に長い蛇体を持ち顔がアスタリスクの形をした龍…アステリスクが現れる!

 

『「アステリスク」の攻撃力は私の場の攻撃表示機械族モンスターの合計の数値…よって4600となる!』

 

「そんな…4600!?」

 

『そして…私はレベル10の「アステリスク」を召喚した事により「レベルカノン」の効果で2000のダメージを受ける…しかし、そのダメージを「スキエルアイン」の効果で無効にする!さらに相手は「アステリスク」以外の機械族モンスターを攻撃できず、さらにシンクロモンスターを()()()()したプレイヤーに1000のダメージを与える!』

 

「そんな…!?」

 

「これが究極の機皇帝の力…!」

ジャック達はアステリスクを見上げる…今の状況ではジャックの墓地の「レッドデーモン」を蘇生する事も新たなシンクロモンスターを呼ぶ事もできないのだ…!

 

 

 

「(アポリアは切り札を出してきた…つまり、このターンで勝負を決めるつもりなんだ…!)」

龍亞は考える…フィールドには破壊耐性を持つクロックリゾネーターがいる、しかし…ワイゼルアインは貫通効果を与える効果がある…このままでは全員のライフがこのターンで尽きてしまう…!

 

「(同じだ…変わらない!龍可を守るって言いながら…龍可のヒーローになるって言いながら…おれは見ている事しかできない!…願う事しかできない!!)」

龍亞は過去を思い出す…龍可が精霊界に誘われ倒れた時、龍亞は祈る事…呼びかける事しかできなかったのだ…。

 

「(おれは…おれにできる事なんてなかった…なかったんだ…!!ごめん、龍可…ジャック!!)」ポタ…ポタ…!

龍亞の悔し涙が手札へと零れ落ちる…

 

 

 

「(何があっても…決して諦めるな!)」

 

 

 

「遊、海…!(そうだ…違う、今はデュエルをしてるんだ…!おれはデュエルで龍可と繋がってる!!)おれは…もう傍観者じゃないんだ!!」

 

「龍亞…!」

遊海の言葉で龍亞は絶望の鎖を断ち切る…!最後まで希望を繋ぐために龍亞は戦い続ける!

 

 

 

「まだ絶望なんかしない!希望の光はまだ…ある!!」

 

『フン、愚かな…ならば下ろしてやろう、絶望という名の幕を!バトルだ!「スキエルアイン」でジャックの「クロックリゾネーター」を攻撃!』

 

「させない!!リバース罠『ブロック・ロック』!攻撃対象を『ステープラン』に変更する!そして『ステープラン』は守備表示の時、戦闘では破壊されない!」

 

『だが「ワイゼルアイン」の効果でお前は貫通ダメージを受ける!』

 

「うわっ…!」

龍亞に無数のレーザーが襲いかかる!

 

「だけど…『ステープラン』のさらなる効果発動!バトルしたこのモンスターは攻撃表示になる!そしてバトルした『スキエルアイン』と攻撃表示のモンスター…『グランエルアイン』を守備表示に変更する!そして『アステリスク』の攻撃力は下がる!!」

 

「龍亞…!?アステリスクの攻撃力を下げる為に攻撃を引き受けたのね…!?」

アステリスクの攻撃力は1800までダウンする…龍亞は自分のライフを糧にアステリスクを弱体化させたのだ!

 

『ならば「ワイゼルアイン」で「ステープラン」を攻撃!クォーク・カーブ!』

 

「くぅぅ…!『ステープラン』のもう1つの効果発動!攻撃表示のこのカードを破壊したモンスターの攻撃力を300ダウンする!」

 

「龍亞…!お前、ここまでの覚悟を…!」

 

『小賢しい…!それほど死に急ぎたいなら…お前から葬ってやろう!「アステリスク」でダイレクトアタック!インフィニティ・ネメシス・ストリーム!』

 

「うわぁぁ!!?」

怒りを宿した光線が龍亞に直撃し、強い衝撃が襲いかかる!

 

 

「龍亞!大丈夫か!?」

 

『私はカードを2枚伏せターンエンド…どうした?もう終わりか…絶望する前にできる事があるぞ?…サレンダーしろ、サレンダーすればライフを失う事なく勝負を終わらせられる…お前も、仲間の命も助かるぞ?』

 

「なにっ…!」

アポリアが倒れ伏した龍亞に甘い誘惑の言葉を囁く…サレンダーすれば命を助けると…しかし…!

 

「くっ…おれはまだ生きてる…生きてる限り─絶望はしない!!」

龍亞は声を大にして叫ぶ…その目に迷いの色はない!

 

 

 

「おれのターン!おれは『機動要塞フォルテシモ』の効果発動!手札の『D・ラジカッセン』を特殊召喚!さらに『D・ライトン』を召喚!!」

龍亞の場に赤いラジカセと懐中電灯のロボットが現れる…だが

 

『愚かな…「レベルカノン」の効果発動!合計1000ダメージを受けるがいい!!』

 

「くっ…うわぁぁ!!!」

龍亞に無数のミサイルが直撃する、残りライフは…僅か100…!

 

「まだだ…まだ負けない!!魔法カード『二重波紋』を発動!!それぞれのエクストラデッキからレベルと素材が同じシンクロモンスターを1体ずつ選択し、そのシンクロ素材となるモンスターをフィールドから墓地に送ってそれぞれのフィールドに特殊召喚する!」

 

「龍亞!な、何をするつもりだ!?」

龍亞の突然の行動にジャックは叫ぶ!

 

「おれは…ジャックのレベル3『クロックリゾネーター』とレベル4『ラジカッセン』を墓地に送る!そして…おれの場にレベル7の『パワーツール・ドラゴン』を、龍可の場に『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』を特殊召喚する!!」

 

「えっ…!『エンシェントフェアリー』を!?」

頭上に開いたゲートから機械の竜と妖精の竜が2人を守るように現れる、しかし、それは……

 

 

『血迷ったか…「アステリス」の効果により、シンクロモンスターを特殊召喚したプレイヤーは1000ダメージ、さらに「レベルカノン」の効果によるダメージも受けてもらう…合計3800のダメージをな…!』

 

「…『二重波紋』によって龍可の場に『エンシェントフェアリードラゴン』を呼んでも…それは龍可が召喚した訳じゃない…という事は…全てのダメージは…龍亞に!?」

 

「そんな…!」

ジャックの言葉と共にアステリスクに凄まじいエネルギーが集中する…!

 

 

『そうだ、それでも人間はシンクロ召喚を捨てる事はできなかった…そして破滅したのだ…!少年、絶望して死ぬがいい!!』

 

「違う!絶望はしない!おれは…希望を繋げたんだ!!」

 

『何…?』

間近に迫った死を前に龍亞は後ろを振り返る…

 

「『エンシェントフェアリードラゴン』…!龍可を守ってくれ!!」

 

「いや…!嫌だ!龍亞!!」

 

『天の怒りに触れよ…ネメシス・トルネード!!』

 

「っ…うあああああぁぁぁぁ!!!」

龍可の叫びも虚しく龍亞に神罰の竜巻、そして無数のミサイルが襲いかかる…ライフを大きく上回る衝撃を受け…龍亞は力尽きた…

 

龍亞LP100→0

 

 

 

 

「龍亞!!起きて!龍亞─!!うっ……!?」

 

「龍可!?どうしたのだ龍可!!」

兄の死に泣き叫ぶ龍可…しかし突然胸を押さえて座り込んでしまう…!

 

龍可LP100→99→98→97→96→95→……

 

 

「馬鹿な…ライフダメージを受けていないのにライフが減っていく!?」

 

『言っただろう…ライフと命はリンクしている、命の鼓動が弱まれば…ライフも減っていく』

龍可は元々病弱だった…そこに「兄の死」という強いストレスを受けた事で心臓の働きが弱まってしまったのだ…!

 

「そんな龍可…!起きろ!龍亞!龍亞!!妹を置いて死ぬなぁ!!」

ジャックの叫びが響く…しかし、龍亞はピクリとも動かない…

 

 

キィィン─!

 

《龍亞…起きるのです、あなたの使命はまだ残っています…龍可を救えるのはあなただけなのですよ…!》

 

「エンシェントフェアリードラゴン…!?」

優しい光が龍亞の身体を包み込む…それはエンシェントフェアリーの癒やしの光…彼女は龍亞へと語りかける…その時だった…!

 

ピッ…ピピピピピピ…!

 

「この音は…!『ライトン』の効果か!?」

ルーレット音が静かに響く…ライトンは守備表示の時にプレイヤーのライフが0になった時、二分の一の確率でライフを100にする効果がある…そしてその効果は…

 

「ルーレットの緑…!当たりだ!!」

 

ライトンのルーレットが当たりで停止する…そして希望の光が龍亞へと放たれた…!

 

 

キィン─!!

 

 

 

 

 

 

 

Side龍亞

 

 

 

気付いたら…おれは真っ暗な空間にいた…そうだ、おれは龍可を庇って死んでしまったんだ…きっと「ライトン」の効果も失敗した、龍可…お前なら「エンシェントフェアリードラゴン」の効果で「フォルテシモ」を破壊して希望を繋げられる…お兄ちゃん、あっちでずっとお前の事を守るからな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─それでいいのか?─

 

 

 

誰かの声が聞こえる…

 

 

 

─お前は妹の為に命を捨てた…だが、お前は本当にそれでいいのか?─

 

 

 

…本当はよくない…お兄ちゃんとして龍可を守りたかった…!遊海ともう一度戦いたかった…ネオドミノシティをみんなで…守りたかった…!

 

 

 

─いい願いだ、遊海もいい仲間を持ったな…ここは冥界と現世の狭間…お前はまだ現世へと戻れる─

 

 

 

本当!?どうすればいいの!?

 

 

 

─お前を迎えに来る者がいる……来たな…!─

 

 

 

えっ…!?

 

 

《キュオオォォン!!》

紅蓮の炎が暗闇を照らす─!

 

 

赤き竜…!?

 

 

 

─行くがいい、希望の子よ…お前はここでの事は覚えていないだろう…─

 

 

待って…!君は…あなたは誰なの!?

 

 

 

─オレか?オレは…「王」だ、さらばだ!現世を生きる者よ!いつか…そちらの話を聞かせてくれ!─

 

 

 

その瞬間、龍亞は金色の光を見た…

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

キィン─!

 

その鼓動を…シグナー達は痣を通じて感じ取る…

 

 

 

「あ…痣が…!」

 

「誰かが戦っている…私達の力を必要としているんだわ!」

 

 

「感じる…この輝きは今までとは違う!感じる…!息吹を…!!」

 

 

「…よく頑張ったな龍亞、お前の力を…希望を奴に教えてやれ!」

 

《マスター!翠の反応が近づいています!戦闘準備を!!》

 

 

 

シグナー達に散らばった6つの痣…それが1つに完成する

、その場所は…!

 

 

キィィン─!!

 

倒れ伏した龍亞…その背中に赤き竜の痣が完成する…ただ、いままでと違うのは…ドラゴン・クローの先に新たな紋様が刻まれている事…その紋様の名は「ドラゴンズ・ハート」…死を経験した龍亞が覚醒せしシグナーの痣である!

 

 

「る…龍亞が…」

 

「「「「「龍亞が…シグナー!?」」」」」

 

 

 

龍亞LP0→100

 

 

「っ…うぅ…あれ…?オレ…」

龍亞は緑の光を纏い起き上がる…!

 

『ば、馬鹿な…!?こんな小僧がシグナーに進化したというのか!?』

アポリアは動揺する…正史世界ではなかった7人目のシグナー…それも自分が死なせたはずの子供が進化したとなれば無理もないだろう…

 

 

 

「あれ…この痣って…!?」

 

《龍亞、貴方が6人目のシグナーなのですよ…》

腕の痣を見て戸惑う龍亞にエンシェントフェアリーが話しかける…

 

「オレが…シグナー…?遊星やジャックや龍可と同じ…!」

 

《そうです…貴方がそうなる事を私も龍可も遊海も…ずっと望んでいました…貴方の成長を信じていました…!その力で龍可を救うのです…!》

 

「エンシェントフェアリー…あっ…龍可!?」

 

「はぁ…はぁ…!」

 

龍可LP85→84→83→82→…

 

龍亞の復活に気付いていない龍可のライフがだんだんと減っていく…!

 

 

「助ける…!シグナーの力で龍可を助けるんだ!!」

痣を押さえながら龍亞は必死に祈る…!

 

「(赤き竜の痣よ…オレに…力を…!!)」

 

キィン─!

赤き竜の痣が強く輝く…そして龍亞の手に新たなカードが創造される!

 

『なんだと…!?』

 

「オレはレベル7の『パワーツール・ドラゴン』にレベル1の『ライトン』をチューニング!!」

 

7+1=8

 

「世界の未来を守る為…勇気と力がレボリューション!!シンクロ召喚!!」

2体のモンスターが天に昇る…そこに赤き竜が姿を現す!

 

「赤き竜!?」

 

『馬鹿な!?』

 

 

進化せよ!『ライフ・ストリーム・ドラゴン』!!」

赤き竜が炎弾を吐き出す…その中から装甲を灼熱させたパワーツール・ドラゴンが現れる…そして、その鎧が弾け飛び…真の姿が露わになる、その正体こそシグナーの竜最後の1体…生命を司る希望のドラゴン…ライフ・ストリーム・ドラゴン!

 

 

 

「これが…シグナーである龍亞の…新たなドラゴン!」

 

『認めんぞ…何が進化だ…!許さんぞ…シンクロ召喚など!「アステリスク」の効果発動!シンクロモンスターを特殊召喚したプレイヤーに1000ダメージを与える!』

 

「無駄だ!『ライフストリーム』がいる時効果ダメージは受けない!」

 

『なにっ!?』

ライフストリームが神罰の竜巻を弾き飛ばす!

 

「龍可!今助けるからな!『ライフストリームドラゴン』の効果発動!このカードがシンクロ召喚に成功した時!ライフ2000以下のプレイヤーのライフを2000にする!!」

 

『なんだと!?』

 

ライフストリームが癒やしの力を開放する…癒やしの力が傷付いた龍亞達を静かに癒やしていく!

 

 

龍亞LP100→2000

龍可LP50→2000

ジャックLP100→2000

 

 

「わたしの…ライフが…どうして…?」

 

「龍可!よかったぁ〜…!」

正気を取り戻した龍可に竜亞は安堵する…

 

「龍亞…!あっ…このドラゴンは…!」

天井を見上げた龍可が彼らを守るドラゴンに気が付く…そのドラゴンはかつて龍可が夢で見たドラゴンそのものだった…!

 

「オレ…頑張って頑張ったらシグナーになっちゃった…驚いただろ?」

龍亞は照れくさそうに龍可にシグナーの痣を見せる…

 

「驚かないよ…龍亞はいつもわたしを守ってくれた、自分の事よりわたしの事を考えてくれた…ずっと変わらない…わたしのヒーローだから!!」

 

「グスッ…!ヒーローが泣いたら…ダメダメじゃん…!」

龍可の感謝の言葉に龍亞は涙ぐむ…

 

「(そうか…愛する者の為にその身を投げ出した龍亞に赤き龍が応えたのか…)よくやったな、龍亞…!」

ジャックが龍亞を褒める…しかし、忘れてはならない…今はまだデュエル中なのだ…!

 

 

『やめろ…くだらん!ライフ2000のつかの間の休息が…希望がなんだというのだ!!』

 

「わからないのか!アポリア!!」

希望を信じないアポリアにジャックが言葉をかける

 

「お前は龍亞に絶望を与えた!だが…龍亞はそこから希望を掴み取った!!絶望の先にも希望はあるのだ!!龍亞のシグナーへの進化…それが俺達の希望だ!!」

ジャック達はシグナーの痣を輝かせアポリアに立ち向かう!

 

『ふざけるな…そんなもの─!!』

 

「掴んだ希望は絶対に手放さない!『ライフストリーム』で『アステリスク』を攻撃!ライフ・イズ・ビューティー・ホール!」

生命の息吹がアステリスクに直撃する!

 

『おのれ…!「アステリスク」の効果発動!機械族の「スキエルアイン」を墓地に送り破壊を無効にする!』

 

「でも…ダメージは受けてもらう!!」

 

『ぐっ…ぬうぅぅ…!!』

アポリアに始めてダメージが通る…残りライフは…1800!

 

「お前…心の痛みが戻ってきたのではないか?顔が歪んでいるぞ?」

 

『黙れ…!私は人間を辞めたのだ…!心を捨てたのだ!…心の痛み…絶望など…!!』

ジャックはアポリアの変化を見抜く…マシーンになったというアポリア…しかし、その表情がだんだんと崩れてきているのだ…!

 

『シンクロモンスターを好きにはさせん!リバース罠「カースド・シンクロ」!シンクロモンスターは攻撃できなくなる!』

 

「ぬっ!?攻撃まで封じてきたか…!」

 

『シンクロは悪だ…絶望など…もう私は感じぬのだぁ!』

 

「っ…!おれはカードを伏せてターンエンド!『ライフストリーム』の効果で『ロックオンレーザー』と『フォルテシモ』のダメージは受けない!!」

 

 

 

「わたしのターン!ドロー!」

 

《クリリ〜ン!》

《クリクリボー!》

龍亞に続いて龍可のターン…龍可の身体を心配したクリボンとクリボールの精霊が龍可に話しかける

 

「うん…もう大丈夫!ありがとう二人とも!…わたしは『エンシェントフェアリードラゴン』の効果発動!フィールド魔法『機動要塞フォルテシモ』を破壊する!お願い!ブレインバック!!」

 

《消え去りなさい!シンクロを滅ぼす要塞よ!!》

エンシェントフェアリーの光が要塞をボロボロに破壊する!

 

『おのれ…小娘が…!!』

 

「わたしは1000ライフを回復…そしてデッキからフィールド魔法を手札に加える!そしてフィールド魔法『シンクロモニュメント』を発動!このカードがある限り、チューナーの召喚とシンクロ召喚時に相手はカード効果を発動できない!『アステリスク』の効果は封じたわ!」

アステリスクを囲むように2本の柱が現れる!

 

『やめろ…シンクロ召喚など…私にまだ絶望を与えようというのか!?』

アポリアは顔を青褪めさせる…その表情は恐怖で埋め尽くされていた…

 

 

 

「まだわからんようだな…ならば教えてやる!俺のターン!!リバース罠『ロストスター・ディセント』!レベルを1つ下げ墓地の『レッドデーモンズドラゴン』を守備表示で特殊召喚!」

ジャックの場に悪魔竜が舞い戻る!

 

「そして魔法カード『紅蓮魔竜の壷』発動!フィールドに『レッドデーモン』がいる事で2ドロー!さらに魔法カード『クリムゾン・ヘル・セキュア』発動!相手の表側表示の魔法・罠カードを全て破壊する!」

 

『や、やめろぉぉぉ!?』

 

アポリアのフィールドに展開されていたアンチシンクロの布陣…それが全て砕け散る!

 

『やめて…くれ…もう…私、は…』

 

「魔法カード『コール・リゾネーター』発動!デッキから『クリエイトリゾネーター』を手札に加え特殊召喚!このモンスターはシンクロモンスターがいる時に特殊召喚できる!さらに『ドレッド・ドラゴン』を召喚!」

ジャックの場に扇風機を背負った悪魔とドレッドヘアのドラゴンが現れる…準備は整った!

 

 

「見るがいい…荒ぶる魂!バーニングソウル!俺はレベル7の『レッドデーモン』にレベル2『ドレッドドラゴン』レベル3『クリエイトリゾネーター』をダブルチューニング!!王者と悪魔…今ここに交わる!荒ぶる魂よ…天地創造の叫びを上げよ!シンクロ召喚!!いでよ!『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』!!」

紅蓮の龍王が遂に目覚める!

 

「『スカレッド・ノヴァ』の攻撃力は墓地のチューナー✕500アップする!チューナーは4体!攻撃力は5500!バトルだ!『スカーレッドノヴァ』で『アステリスク』を攻撃!!」

 

『絶望はしない…せぬぞぉぉぉ!!!

アポリアは最後の策をジャックへと仕掛ける!

 

『リバース罠「カオス・インフィニティ」発動!!フィールド上のモンスターを全て攻撃表示に変更!さらにデッキ・墓地から機皇モンスターを効果無効で特殊召喚する!現れろ!!「機皇神マシニクル∞」!「機皇兵スキエルアイン」!!』

アポリアの場に巨大モンスターが出揃う…それによりアステリスクの攻撃力は…

 

「攻撃力8300!?」

 

『私はもう絶望しない…絶望するのはお前達だ!!見ろ!この圧倒的攻撃力を!!人間共!悟るがいい!己の無力を!そして預けるのだ!ゾーンに!人類の未来を!!』

 

 

「まだだ!絶望はしない!リバース罠『シンクロ・ビック・トルネード』!『ライフストリーム』の守備力分だけ相手の攻撃力を下げる!」

 

『無駄だ!たった2400では─』

 

「カウンター罠『フェアリー・ブレス』!『ライフストリーム』の守備力を3000アップする!これで守備力は5400よ!」

 

『なん、だと!?』

息も着かせぬ攻防の末…5D'sの絆が絶望の龍の力を上回る!

 

 

「「わたし/オレ達の思い…受け取って!ジャック!!」」

 

「うむ!!」

 

『うっ…胸が…心が痛い…!何故だ、私は人間を辞めたはず…!また私は…絶望の中にのたうつのか…!?』

 

「いや、お前は絶望などしない…!」

 

『なんだと…?』

心の痛みを感じるアポリアにジャックが再び語りかける…

 

 

「龍亞が龍可の為に戦ったように…お前もゾーンの為に戦っていた!ゾーンに繋いだ希望がある限り…お前は絶望しない!そして…俺達の希望は遊星にある!だから俺達も絶望しない!」

 

『あっ…!』

 

「ゆけ!『スカーレッドノヴァドラゴン』!『アステリスク』を攻撃!バーニング・ソウル!!」

 

『ぐっ…うわああああああ…!!!』

龍王の一撃がアステリスクを粉砕…アポリアのライフを削りきった…

 

 

アポリアLP0

 

ジャック&龍亞&龍可 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プシュー…カチャン!

 

「やった!装置が外れたぞ!」

 

「それどころじゃないわ!部屋が崩れちゃう!」

 

「脱出だ!!」

デュエルが終わり3人の拘束具が外れるが…余りの衝撃に足られなかったのか、遊星ギアが崩れ落ちる!

 

 

「お前達!しっかり捕まっていろ!!」

 

ブルル…バシューン!!

 

「「うわああああ!?」」

ジャックのDホイールに掴まった2人がDボードで大ジャンプ…無事に部屋を脱出した!

 

 

「アポリアは…!」

 

 

 

 

 

 

『この痛みは…「絶望」ではないのか…違う、痛みではない…疼き…それは…「希望」…か…』

崩壊する部屋の中…アポリアは笑っていた、絶望の先の希望…それと共にアポリアは崩壊する部屋にのまれていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくやったな龍亞、龍可…お前達のおかげでアポリアに勝つ事ができた…えらかったぞ…!」

ジャックが龍亞と龍可を褒める…

 

「ありがとうジャック…でも、ジャックの最後の攻撃が一番凄かった!」

 

「うん!これはわたし達三人の勝利ね!」

 

「フッ…そうだな」

子供達の言葉にジャックは表情を緩める…

 

「少し休んだら出発しよう…遊星達が太陽ギアで待ってる筈だ!」

 

「うん!(そういえば…おれが気絶した時…誰かの声が聞こえたような…気のせいかな?)」

龍亞は自分に置きた奇跡を思い返す…その時だった…!

 

 

 

オオオオオ─!

 

 

「「「!?」」」

 

油断していた三人に一瞬、凄まじい圧力が襲いかかる…!

 

 

「なに、今の…!?全身トリハダが…!?」

 

「怖い…!」

龍可は龍亞に抱きつく…!

 

「今のは…殺気か…!?龍亞!龍可!急いでこの場を離れるぞ!!ここにいたらまずい!」

 

「「うん!!」」

 

ジャック達は疲れた身体に鞭を打って先を急ぐ…全身に冷や汗を流しながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

─勝つんだ遊海、それがお前の使命だ…奴を止めてくれ…!─



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決戦!善知の悪魔ラプラス!─覚醒─

こんにちは!S,Kです!

ついにこの話を書く事ができました!遊海とゲイザーの一つの結末…どうぞご覧ください!



これは…一つのすれ違いから起きた救いのない悲劇である。


ジャック達がアポリアと戦っている頃…アーククレイドル入口でのインフェルノイド襲撃を切り抜けた遊海は遊星達とは別の場所からアーククレイドルを進んでいた…。

 

 

 

 

《アーククレイドル内で生命反応を4つ確認…うち一つは中心部下層に…うち一つはアキ・クロウと共に太陽ギアに移動中……最後の二つまで残り500Mです!》

 

「ありがとう、わかった…!」ギリリ

アヤカの検索結果を聞いた遊海はDホイールのグリップを強く握り締める、その身が煮え返るような怒りを抑えながら遊海は冷静さを保っていた…。

 

 

《…マスター、機械である私が言うのもおかしな話ですが…とても嫌な予感がします…》

 

「奇遇だな、俺もだよ…翠は強いデュエリストだ、いくら不意を突かれたといっても…簡単に負けるはずがない…!」

遊海は翠の強さを信頼している、それ故に感じていたのだ…これから戦うであろう相手の変化を…

 

「…俺の推測が正しいなら…奴はどうしてこんな事ができるんだ…!!」

 

 

 

 

 

暗く長いトンネルを抜け、遊海は遂に終点へと辿り着く…そこはモーメントの虹色の光が仄かに部屋を照らす…幻想的であり、不気味な部屋だった。

その部屋に一人の男の姿が浮かび上がる…。

 

 

『ようやく来たか、白波遊海…ここがお前の歴史の終着だ…』

 

「翠を返してもらうぞ…ゲイザー!!」

遊海は遂に宿敵…黒いバイザーを着け黒いコートを纏った男…ゲイザーと再び対峙する!

 

 

『やはりお前はここに来た…さぁ、決着を着けるぞ…オレ達の因縁に─!』

 

「翠は何処だ…お前が攫ったのはわかっているんだ!」

 

『女か?そこにいるさ、お前のお姫様はなぁ…』

 

「っ!翠!!」

ゲイザーは自分の頭上を指し示す、そこには十字架に四肢を拘束され血塗れの翠が吊り下げられていた…。

 

「翠!無事か!?返事をしてくれ!!」

 

「──……」

翠は応えない、意識を完全に失ってしまっている…。

 

 

『さぁ、女の事なんてどうでもいいだろう?始めよう…未来を救う為の戦いを…!』

 

「…どうしてお前はこんな事ができるんだ…どうしてお前はそんなに簡単に人を傷つけられる─!」

ゲイザーの言葉を聞いた遊海は怒りを爆発させる!

 

『愚問だな…我らの目的は「破滅の未来を回避する事」…その為には多少の犠牲はやむを得ない…そしてお前もだ白波遊海…未来を救う為に…ここで死ね!』

ゲイザーも同じくして殺気を放つ…部屋を軋ませるような圧力が遊海に襲いかかる…!

 

「だったら止める…いや、目を覚めさせてやる!!()()()()!!」

 

 

『…()()()』 カチャリ…

 

遊海に突きつけられた正体…それを聞いたゲイザーは黒のバイザーを外す、その顔は遊海と瓜二つ…違いがあるとすれば瞳が金色に変化し、目元に深い隈が刻まれている事だろう…。

 

 

『一応聞いておこう…いつ分かった?』

 

「…お前が俺しか持っていないはずの『A No.』を使った時だ、あれは神様が()()N()o().()に付けてくれた目印だ…それを持ってるのは俺自身しかありえない!」

 

『そうか…そうだったな、オレはついぞ4人目の主人公に出会う事がなかったから忘れていた…ならば勘付かれるはずだ』

 

「教えろゲイザー…俺は何をした?何故お前は俺を狙う!」

遊海はゲイザーに問いかける…

 

『簡単な話だ…400年前のあの日…お前は()()()()()()()()()()()()()()()()()!…それが破滅への引き金だった!』

 

「なに…!?」

ゲイザーと最初に接触したあの日、遊海はゼロ・リバースを回避する為、海馬社長にモーメントの話をしにいった…それが破滅の引き金になったというのだ。

 

『海馬はお前を玄関で待っていた…そこでお前はモーメントの事を知られ全てを話した…!それによってモーメントは完成し「ゼロ・リバース」自体は起きなかった!…だがな、結局童実野町は2つに分かれたんだよ…地縛神復活の余波による大地震でな!!』

 

「っ…!!」

ゲイザーの言葉に遊海は拳を握り締める…破滅を回避する為の行動…それは意味を為さなかったのだ。

 

『そして未来はそのまま「正史」を辿った…!オレがいくら頑張っても未来は変えられなかった!!…そしてオレは全てを失った…!全てはオレの…「白波遊海」のせいだ!!』

 

「だからあの日…俺を葬る事で未来を変えようとしたのか!」

 

『そうだ、しかし…未来は変わらなかった!!お前は死なずとも海馬にモーメントの事を知られずに済んだ…そのはずなのに未来は変わらなかった!!』

 

「だから…ゼロ・リバースを起こしたっていうのか!?」

 

『そうだ…!ルドガー・ゴドウィンに悪意を埋め込み、モーメントの逆回転を引き起こす事で貴様ごとモーメントを消し去ろうとした!…だが、貴様は生き延びた!未来は変わらなかった!!ならば…今度こそ貴様を葬る…破滅の未来への扉を閉ざす為に!!』

 

「結局…お前の八つ当たりじゃねぇか!!」

遊海は吼える…破滅の運命を辿ったもう一人の「シラナミユウミ」…彼は未来を変える為に過去の自分を殺す事を選んだのだ、自分の存在を懸けて…

 

『八つ当たり?…おおいに結構!オレは貴様を殺す!それこそが我が悲願!我が天命…!』

ゲイザーからドス黒いオーラが溢れ出す…その瞳は狂気を宿していた…。

 

「話はもう通じそうにないな…イリアステル滅四星ゲイザー!俺は5D'sを…翠を守る為にお前を倒す!!俺に宿った赤き竜の痣に懸けて!!」

 

キィン─!

 

遊海の右腕に宿りし炎の痣が光を放つ!

 

『来るがいい…歴史に刻まれぬシグナーよ…!「観測者」とは偽りの名…我が忌むべき真名「シラナミユウミ」…!友より与えられし名は─ラプラス!貴様を殺し…未来を救う!!』

2つの殺気がぶつかりあう…その凄まじさはアーククレイドルを揺るがし地上にまで届く…!

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideシグナー

 

 

キィン─!

 

 

「っ…!この感じ…遊海か!?」

 

『まさか…彼とのデュエルが始まるの…!?』

アーククレイドル内を進むクロウ&アキとシェリー…痣の輝きと殺気で遊海の戦いの始まりを知る…。

 

「あの人ならきっと大丈夫…!私達はとにかく遊星ギアへ向かいましょう!」

 

 

 

「いたい…!遊海、本気で怒ってる…!」

 

「感じるか龍亞…このデュエル…そう長くは続かんだろう…!」

 

「負けないで遊海さん…!翠さんを助けて…!」

同じくジャックと龍亞兄妹…彼らは遊海と翠を信じて前へと進む…!

 

 

 

『遊星、始まったのか?』

 

「ああ、痣が教えてくれる…!遊海さんがゲイザーと戦い始めた…!」

トンネルを進む遊星と青髪…彼らも遊海の戦いの始まりを知った…。

 

「遊海さん…負けないでくれ…!貴方ならきっと…!」

 

『(…なんだろう、この胸のざわつきは…この先に答えがあるのだろうか…?)』

 

 

SideOut

 

 

 

Sideシティ

 

 

「…始まるのか、遊海…!」

 

「兄様!そろそろ避難しないと危ないよ!このビルはこの町で一番高い建物なんだから!」

KCの社長室…そこから指示を出していた海馬はアーククレイドルを見上げる。

 

「必ず勝て…何があろうと帰ってこい…!!」

 

 

 

 

「遊戯さん!城之内さん!この殺気は…!」

 

「ああ…遊海、君ならきっと勝てる…!僕達は信じているよ…!」

 

「当たり前だ!アイツは絶対に負けねぇ!」

避難誘導を終えた十代、遊戯、城之内達は町の高台から空を見上げる…。

 

「それよりも僕達はできる事をやろう…!みんなに連絡を!『警戒を緩めないで』と…!」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

【…始まりましたか、ラプラス…あまりの力にカメラも壊れてしまいましたが…貴方なら勝てるはずです…相手は過去の自分なのですから…】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

ラプラスLP8000

遊海LP8000

 

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!魔法カード「隣の芝刈り」発動!』

 

「っ…!デッキは35枚だ…!」

 

『オレは残り54枚…19枚を墓地に送る!』

 

 

墓地送り

インフェルノイドアスタロス

デカトロン2

煉獄の狂宴

煉獄の氾爛

シャイターン2

蒼炎の煉獄

隣の芝刈り

ベルゼブル2

アドラメレク2

煉獄の死徒

ヴァエル

リリス

ハーピィの羽箒

ネヘモス

煉獄の虚夢

 

 

 

『手札から永続魔法「煉獄の消華」を発動!手札の「インフェルノイド・ベルフェゴル」を墓地に送りデッキから「煉獄の虚夢」を手札に加え発動!さらに墓地から「ヴァエル」「シャイターン」「デカトロン」を除外し墓地から現われろ!破壊の翼!「インフェルノイド・ネヘモス」!』

 

「やはりインフェルノイドか…!」

ゲイザー…否、ラプラスの場に赤き翼の悪魔が現れる ATK3000  ☆10→1

 

『さらに墓地の「ベルゼブル」「アスタロス」「アドラメレク」を除外し墓地から現われろ!狡猾なる蛇「インフェルノイド・リリス」!』蛇体を持つ悪魔が現れる ATK2900 ☆9→1

 

『さらに永続魔法「煉獄の虚夢」の効果発動…!フィールドの「リリス」「ネヘモス」、そして手札の「ヴァエル」「ルキフグス」「デカトロン」を墓地に送り融合…!太古に封印されし破壊神よ!仮初の肉体で世界を蹂躙せよ…!融合召喚!「インフェルノイド・ティエラ」!』

5体の悪魔が融合…世界を蹂躙せし破壊神が現れる ATK3400

 

 

「いきなりかよ…!?」

 

『「ティエラ」の効果発動…!お互いにエクストラのカードとデッキを3枚墓地に送る…!オレは「ティエラ」2体と「魔王龍ベエルゼ」を墓地に送る…!』

 

「俺は…『ジャンク・デストロイヤー』『ジャンク・アーチャー』『ジャンク・ガードナー』を墓地に送る…!」

 

 

ラプラス墓地送り

ネヘモス

死徒

アシュメダイ

 

 

遊海墓地送り

リビングデッドの呼び声

シンクロンキャリアー

ダンディライオン

 

 

 

「『ダンディ・ライオン』の効果発動!墓地に送られた事で『綿毛トークン』を2体特殊召喚!」

タンポポの綿毛が現れる DEF0 ✕2

 

『ジャンクデッキ…!オレはこのままターンエンドだ!』

ラプラスLP8000

ティエラ 消華 手札0

 

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!!」

「魔法カード『調律』発動!デッキから『クイック・シンクロン』を加え、デッキトップを墓地へ!」

 

墓地送り

ジェットシンクロン

 

 

「よしっ…!手札の『レベル・スティーラー』を墓地に送って墓地の『ジェット・シンクロン』を特殊召喚!」

青と白色のジェットエンジン型のロボットが現れる DEF0

 

「俺はレベル1の『綿毛トークン』にレベル1の『ジェットシンクロン』をチューニング!」

 

1+1=2

 

「デュエルを新たな地平に導け!シンクロ召喚!『フォーミュラ・シンクロン』!

F1カー型のロボットが現れる DEF1500

 

 

「シンクロ素材となった『ジェットシンクロン』は除外される!そして『フォーミュラ』の効果!シンクロ召喚に成功した事で1ドロー!さらに手札の『ボルト・ヘッジホッグ』を墓地に送り手札の『クイックシンクロン』を特殊召喚!さらに『ボルトヘッジホッグ』を墓地から特殊召喚!」

ガンマン型のロボとネジのハリネズミが現れる DEF1400 DEF800

 

「俺はレベル2の『ボルトヘッジホッグ』とレベル1の『綿毛トークン』にレベル5の『クイックシンクロン』をチューニング!」

 

2+1+5=8

 

「勝利への道を駆け抜けろ!シンクロ召喚!君臨せよ!『ロード・ウォリアー』!」

戦士を統べる皇帝が現れる ATK3000

 

 

「『ロードウォリアー』の効果発動!デッキから『ドッペルウォリアー』を特殊召喚!」

黒い銃を持つ兵士が現れる DEF800

 

「俺はレベル8の『ロードウォリアー』にレベル2シンクロチューナー『フォーミュラシンクロン』をチューニング!!」

 

8+2=10

 

「集いし願いが最強の戦士を呼び覚ます!アクセルシンクロォォ!!煌け!『スターダスト・ウォリアー』!!」

突風と共に白銀の竜を模した戦士が現れる! ATK3000

 

 

「そして…俺はまだ通常召喚をしていない!『ジャンク・シンクロン』を召喚!」

オレンジ色のメガネをかけたロボットが現れる ATK1300

 

「『ジャンク・シンクロン』の効果発動!墓地の『シンクロン・キャリアー』を効果無効で特殊召喚!」

背中にクレーンの付いたロボットが現れる DEF500

 

「俺はレベル2の『シンクロンキャリアー』と2の『ドッペルウォリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

2+2+3=7

 

「鬼神の怒号が全ての悪を薙ぎ払う!シンクロ召喚!吼えろ!『ジャンク・バーサーカー』!!」

赤い身体を持つ狂戦士が現れる ATK2700

 

 

「シンクロ素材となった『ドッペルウォリアー』の効果発動!2体の『ドッペルトークン』を特殊召喚!」

遊海の場に小さな兵士が現れる ATK400 ✕2

 

「『ジャンクバーサーカー』の効果発動!墓地の『ジャンクシンクロン』を除外しその攻撃力分だけ相手モンスターの攻撃力をダウンする!鬼神の咆哮!!」

 

《ガアアアアア!!!》

鬼神の咆哮がフィールドに轟く…その咆哮を聞いた破壊神は怯み、攻撃力がダウンする!

 

『チィ…!!』

 

ティエラATK3400→2100

 

 

「さらに手札から魔法カード『サイクロン』を発動!『煉獄の消華』を破壊!バトルだ!『スターダストウォリアー』で『ティエラ』を攻撃!さらに手札の『ラッシュウォリアー』の効果発動!相手モンスターとバトルする時!『スターダストウォリアー』の攻撃力を倍にする!!喰らえ!シューティングスター・ラッシュ!!」

力を増した音速の連撃がティエラを粉砕する!

ATK3000→6000

 

『ぐっ…おおおお!!!』

 

ラプラスLP8000→4100

 

「さらに『ドッペルトークン』2体でダイレクトアタック!そして『ジャンクバーサーカー』でラプラスに…未来の俺にダイレクトアタック!!俺の怒りを受けてみろ!!バーサーク・ストライク!!」

兵士の銃撃とジャンクバーサーカーの持つ鉄球がラプラスに直撃…壁へと叩きつける!!

 

ババババ…ズガン!!!

 

『ガハッ─!!!』

 

ラプラスLP4100→3700→3100→600

 

 

「ハッ…ハァ…!メイン2、魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地の『クイックシンクロン』『シンクロンキャリアー』『ラッシュウォリアー』『フォーミュラシンクロン』『ダンディライオン』をデッキに戻して2ドロー!…ターンエンドだ!」

遊海LP8000

スターダストウォリアー ジャンクバーサーカー 手札2

 

 

 

「どうだラプラス…これが俺の…お前に傷付けられた全ての人達の怒りだ!!」

遊海の凄まじい連撃…それは確実にラプラスを追い詰めた、しかし…

 

『ククク…ハハハハハ…!クハハハハハハ…!!怒り…怒りときたか…!たしかに凄まじい怒りだなぁ…』

壁に叩きつけられたボロボロのラプラスは嗤う…

 

「何が可笑しい!!」

 

『感じるぞ…強い怒りを…だが、一方で希望も感じる…!《オレを倒せば全てが終わる》…《女を助けられる》…その希望が絶望に変わった時…!お前はどんな顔をするんだろうなぁ…!なぁ…白波遊海!!』

ラプラスの纏う闇のオーラがさらに強まる!

 

「虚勢を張りやがって…!次のターンでお前を倒す!!(多少のダメージは想定内…手札には『ラッシュウォリアー』がいる…おそらく出てくる『ネヘモス』を躱して…次のターンで決着をつける!!)」

 

 

 

 

 

『オレのターン…ドロー!!』ズオッ…

 

「っ…!(なんだ今のは…!?)」

ドローの瞬間、遊海は見た…ドローカードから凄まじい闇が放たれる瞬間を…!

 

『魔法カード「邪悪の樹(クリフォト)黙示録(アポカリプス)」を発動!!』

 

「なんだそのカードは!?そんなカード聞いた事がない!」

 

『このカードこそ我が憤怒…我が悲しみ…!我が力!!自分のライフを半分にし手札・除外のカードを全てデッキに戻し効果を発動する!デッキ・墓地からカード名の違うカード10種類を手札に加える!』

 

「なんだって…!?」

 

ラプラスLP600→300

 

手札に加えるカード

デカトロン

シャイターン

ベルゼブル

ルキフグス

アスタロス

アシュメダイ

ベルフェゴル

ヴァエル

アドラメレク

リリス

ネヘモス

 

 

「インフェルノイドが全て手札に…!?」

 

『ただし、この効果を発動したターン、オレは特殊召喚が一度しか行えず…エンドフェイズに手札を全て墓地に送る…だが、効果には続きがある!オレはデッキから「創星神tierra」を手札に加える!!』

 

「なに─!?」

驚愕する遊海…その瞬間、ラプラスの背後に10枚のカードが浮遊する!

 

『手札の10種類のインフェルノイドをデッキに戻す事で神は降臨する!…星を砕く破壊の神よ…我が意に応え眠りから醒めよ!降臨せよ「創星神tierra」!』

 

「っ…!?熱ちっ!!」

紅蓮の炎が部屋を覆い尽くす…そしてその神は姿を現す、DT世界を破滅寸前に追い詰めた邪神が降臨する!!

ATK3400

 

 

   破壊の創星神 復活

 

 

【ハハハハハ…!見るがいい!!貴様を滅する神の姿を!!】

 

「ラプラス…お前…!神と融合しやがったのか!?」

tierraからラプラスの声が響く…ラプラスはあろうことかその身を神と融合させたのだ…!

 

【我が神意の前にひれ伏すがいい!!我の効果発動!フィールド・手札・墓地のカードを全てデッキへと戻す!!創星の輪廻!!】

 

「っ…!?」

遊海のカードが全て光の玉となりデッキへと戻される…遊海を守るものは…何も無い…!!

 

 

【裁きの時だ!!我で白波遊海へ神罰を下す!破滅の神光!!】

破壊の力を宿した宝玉が煌めく…その瞬間、遊海の足元が爆ぜ、吹き飛ばされる!!

 

「が…!?ぐあああああ!?!?足があああ!!?」

遊海LP8000→4600

 

【喚け…叫べ…!!貴様の断末魔が未来を救う福音となるのだァ!!】

ラプラスLP300

tierra 手札0 (ドロー不可残り2ターン)

 

 

 

 

「ガッ…あああ…!?」

 

《マスター!!気をしっかり持ってください!!マスター!!》

ラプラスの一撃で遊海の両足は消し飛んでいた…遊海はあまりの激痛に転げ回っている…

 

 

【チィ…身体を狙ったが外れたか…次こそは消し飛ばしてやる…!】

 

《ユウミ…!!今、治療を!…ラプラス!お前はどうしてこんな事ができるのです!決闘者としての誇りはないのですか!!》

遊海の窮地に現れたフレアがラプラスに吼える…!

 

【誇り…?そんなもの200年も前に捨てた…!全ては貴様を殺す為に…!!】

 

「ガッ…あ…!ふざけたチート使いやがって…!!精霊…変…ガボッ…!!」

遊海は逆転の為にドロー能力を持つ太陽神の鎧を纏おうとするが…インフェルノイドとの戦いと今受けたダメージにより変身できずに吐血してしまう…!

 

【さぁ…カードを引け…!猶予は残り2ターンだ…!】

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

ドローしたのは「リミット・オーバー・ドライブ」…攻撃を防ぐ事ができない…!!

 

「ターン…エンド…!!」

遊海LP4600

手札1

 

 

 

 

【我のターン!「邪悪の樹─黙示録」の効果で我は自分のターンで数えて3ターンの間デッキからカードをドローできない…バトルだ…次こそは貴様を消し飛ばしてやる!!】

tierraの手にエネルギーが集まっていく…!

 

 

《鳴動富嶽…!!》

 

《反射の聖刻印!!》

 

《術式展開!機殻の再星…!》

 

《太陽神の聖域…!》

 

「お前達!?」

攻撃が放たれる刹那…魔法陣の刻まれた岩壁、紫色の結界…太陽の結界が遊海を守るように展開される!

 

 

「やめるんだ!!奴の攻撃を受けたらお前達まで!!」

 

《何を言うのです主殿…私は主を守る精霊…!貴方を守って果てるなら本望…!!》

 

《そうだ!我らが時間を稼ぐ…!なんとしてでもお前を守る!!》

トフェニとメガロックが力を込めラプラスを睨みつける…!

 

《防衛成功確率…50%…私達が少しでもダメージを引き受けます…!必ず翠を救ってください…!》

 

《神の名と我が主たるアテムの名に懸けて…ユウミ…貴方を死なせはしません!!》

真の姿となったアヤカとフレアが遊海を守るべく立ちはだかる!

 

 

【精霊共め…愚かなマスターと共に滅びるがいい!!破滅の神光!!】

紫色の極光が遊海に向けて放たれる!

 

『『『『はああああああ!!!!』』』』

 

「みんな!!っ…!?ぐあああああ…!!?」

 

バリーン…

 

精霊達の守りは一瞬で砕け…遊海は壁に叩きつけられる…!

 

遊海LP4600→1200

 

 

 

「ゴボッ…みん、な…!」

 

【チッ…生意気にも攻撃を防いだか…しかし、これで貴様を守るものはもう無い!!】

精霊達も破滅の光の直撃で壁に叩きつけられ意識を失う…遊海は一人でtieeraへと立ち向かうしかない…!

 

ラプラスLP300

tieera 手札0 (ドロー不可残り1ターン)

 

 

 

 

「俺のターン…!ドロー!!…ターン…エンドっ!!」

 

遊海LP1200

手札2

 

 

 

【我のターン…!これで終わりだ!お前の死によって未来は救われる!!我でダイレクトアタック…!World End─!】

破壊と創造の力が混ざり合う…全てを消滅させ新たな世界を創造するエネルギーが遊海1人に向けて放たれる!!

 

「まだ…まだだ!!手札から『速攻のかかし』の効果発動!ダイレクトアタックを無効にし、バトルフェイズを終了する!!」

 

【そんな事は関係ない─!衝撃で消え去るがいい─!!】

tierraのエネルギーが開放される…ダメージこそ遊海の場に現れたかかしが受け止めるが…リアルダメージが遊海へと襲いかかる!

 

「ぐっ…うわあああああああ!!」

 

【悪運の強い奴め…!しかし、お前に力は残されていない…安心しろ、貴様を葬った後にその女もあとを追わせてやる…ターンエンド!】

ラプラスLP300

tierra 手札0

 

 

 

 

「(っ…前が見えない…!身体が…動かない…!!)」

tierraの攻撃をなんとか回避した遊海…しかし、全身は切り刻まれ…目に瓦礫が当たったのか光をも失ってしまっていた…。

 

【フン…もう動く事すらできないか?ならば引導を渡してやる…!】

tierraの手が持ち上げられる…その手で遊海を直接葬るつもりなのだろう…。

 

「(俺は…ここまでなのか?翠を助ける事も…遊星を…この町を守る事もできずに…ここで死ぬのか…?)」

ラプラスは既に正気を失っている…遊海を倒した後にその矛先は遊星達に向かうだろう…遊海は手を伸ばし涙を流す…

 

「(ごめん遊戯、アテム、城之内、海馬さん…十代、翔、剣山、藤原、エド…遊星、ジャック、クロウ、アキ、龍亞、龍可…翠…!!)」

遊海の脳裏にたくさんの仲間達や友達…教え子…そして愛する妻の姿が浮かんでいく…

 

【最期まで醜く命乞いか…さぁ、死ね…!!】

tierraの腕が降り下ろされる…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィン─!

 

 

【なに…!?】

 

その刹那、遊海は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「…ここは…?俺は死んだのか…?」

 

 

 

「遊海!僕達は信じてる!君の勝利を…!」

 

「遊戯…みんな…?」

方向もわからない暗闇の中…遊海の前に遊戯や城之内達の姿が現れる…。

 

 

「諦めるなんて先生らしくないぜ?アンタはいつも諦めなかった!オレはそんな姿に憧れたんだ!」

 

「十代…お前達…」

 

 

 

「遊海さん…!きっと貴方は勝てる!負けないでくれ!貴方はこの町のヒーローなんだ!!」

 

「遊星…」

気づけば遊海の周りにはそれまで関わった決闘者達が集まっていた…その中には敵として戦ったダーツや藍神、キースや闇マリクの姿もある…。

 

 

『おいおい…?お前はそんな奴に負けるのか白波ィ?神なら貴様も倒してきただろぉ?』

 

『その通り…地球の闇を…オレイカルコスの神すらも乗り越えた貴方なら…その程度の神は恐れる事もないはずです』

 

『君は闇に呑まれたボクを助けてくれた…君ならきっと…!』 

 

 

 

「なんだよこれ…走馬灯って奴か…なんでお前達まで…?」

 

『ああ、そうだ…これは現実じゃねぇ、お前と共にしのぎを削った決闘者達…その思念だ』

 

「ユウスケ…」

遊海の前にもう1人の自分であるユウスケが現れる。

 

『遊海…お前はこんなところで負けるのか?未来の自分に膝をつくのか?』

 

「…負けたくない…俺は奴を倒さなきゃ…止めなきゃならない!でも…もう身体が動かない…!!」

 

『弱音を言ってんじゃねぇ!!』バチン!

 

「っあ!?」

ユウスケは遊海にビンタする!

 

『お前はこの時代最強の決闘者だ!それがこんな姿をこいつらに見せていいと思ってるのか!?それでもお前は決闘王なのか!?』

 

「…でも、もう時間がない…!手札2枚でどうすればいいんだよ!!」

 

『…それを覆す「力」があるなら…どうする?』

 

「えっ…?」

ユウスケの思わぬ言葉に遊海は思わず間抜けな声を漏らす…

 

「あるのか?そんなもの…?」

 

『あるじゃねぇか、目の前に…我を…()()()()()()()遊海』

 

「っ…!?なんだと…?」

ユウスケは自分を指し示す…

 

『元はと言えば…オレはダーツによって引き剥がされたお前の一部…お前の半身だ、つまり…お前は半人分の力しか使えなかったんだよ…「白波遊海の光」の力しかな…そして我は「白波遊海の闇」…ひいてはカオスの力だ…お前は知ってるはずだ、光と闇…その2つの力を宿した伝説の戦士の名を…!』

 

「─ZEXAL…」

 

『そう、その力だ…』

 

『ZEXAL』…それはランクアップを目指す高次世界「アストラル世界」の使者アストラルと人間世界に暮らしていた諦めない心を持つ少年・九十九遊馬が奇跡の力で合体した究極の姿である。

 

 

『お前の魂は既にランクアップ寸前だ…その最後の鍵が我だ、カオスを受け入れ、飲み干せ…!』

 

「待て…!そんな事したらお前が!!」 

 

『ああ、この人格が消えるかもな…でも、お前に迷う時間はない!!選べ白波遊海…!!このまま死ぬか、新たな力を手にするか!!』

 

「俺は…俺は…!!」

 

 

─遊海さん…私は…いつもあなたと一緒に…─

 

 

「翠…!」

その時、遊海は確かに聞いた…愛する妻の背中を押す声を…!

 

 

「…力を貸してくれユウスケ…!俺は─!」

 

『ありがとな遊海…あのバカを頼んだぜ?』

 

遊海はユウスケの手を取った…そして2人の周りに集まった決闘者達が眩い光を放つ!

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「…待たせたな…ラプラス!」ガチッ

 

【馬鹿な…我が一撃を受け止めただと!?】

 

光が消える、そこには巨大なtierraの腕を受け止めるボロボロの遊海の姿があった…その瞳はラプラスをしっかりと見据えている…!

 

 

「1つ聞かせろラプラス…」

 

【なんだ…!】

遊海はラプラスに1つの問いを投げかける…

 

「お前は未来の俺だと言ったな…なら、答えられるはずだ!…()()()()()()()()()()はなんだ!!」

 

【なに…!?】

遊海の言葉にラプラスは固まる…

 

【そんな事決まっている!あの子の…彼女の、名……?名前、は…?】

 

「お前が俺なら答えられるはずだ!彼女の名前を!彼女の姿を!!彼女との思い出を!!!」

遊海は頭を押さえ狼狽するラプラスに追い打ちをかける!

 

【おお…!?おおおお…!?思い…出せない…!?オレには妻がいたはずだ…!?いるはずなんだ!!?】

 

 

「…彼女の名前は『春風翠』…俺の妻であり…お前が傷つけた女の名前だ!!!」

 

 

【──!?!?】パキーン…

 

その瞬間、ラプラスは上を見上げる…そこには血塗れの翠がいた…その時、ラプラスは…シラナミユウミは全てを思い出した、何故自分がイリアステルに入ったのか…それは…過去を改変し…喪ったモノを取り戻す為だったのだ…!

 

【オオ…オオォォォオオ──!!】

ラプラスは慟哭する…その目からは赤い血涙が零れ落ちる…。

 

 

「…やっぱり忘れてやがったか…!わかったぜユウスケ…俺はアイツを止めるんじゃない…アイツを闇から引き上げる!!」ゴウッ!!

遊海は力を開放する…眩い光と全てを包み込む闇が遊海の身体から溢れ出す!

 

 

「俺は…俺自身でオーバーレイ!!」

遊海から溢れ出したエネルギーが螺旋を描きながら上昇…ビックバンを起こす!

 

「『世界に満ちる優しき光安寧の闇…我が身に宿り未来を紡げ!ランクアップ!エクシーズチェンジ!!』」

遊海の肉体が再構築される…眩い光の中から新たな戦士が産声をあげる!

 

 

『絆の極地…!新たなる希望!《NEXUS》!!』

現れたのは赤い鎧の帽子を被り、金色の不死鳥があしらわれた赤いロングコート、そして金色の龍が巻き付いた黒のズボン…そして瞳を金と青のオッドアイに変化させた戦士、その名はNEXUS…遊海の紡いできた絆の起こした奇跡である!

 

 

 

【ゼア…ル…?】

 

『違う、オレは…お前を救う希望の光だ!!』

 

 

 

 

『オレのターン!最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードすらデュエリストが創造する!!希望を示せ!シャイニング・ドロォォォ─!!』

眩い光の軌跡と共にカードがドローされる!

 

『オレはカードをセット!そして魔法カード「天よりの宝札」発動!!お互いに手札が6枚になるようにカードをドローする!シャイニング・ドロー!!』

 

『そしてオレは「ガガガ・マジシャン」を召喚!!』

《ガガガ!!》

「我」の文字が刻まれた学生服を着た魔法使いが現れる…本来なら遊海のデッキにないカードが、シャイニングドローにより書き換えられたのだ…! ATK1500

 

『さらにレベル4モンスターの召喚に成功した時!「カゲトカゲ」は特殊召喚できる!』

魔法使いの影から黒いトカゲが現れる ATK1100

 

『オレはレベル4の「ガガガマジシャン」と「カゲトカゲ」でオーバーレイ!!』

 

2体のモンスターが銀河に飛び込み爆発する!

 

 

39

 

 

『勇士の戦いはここから始まる!白き翼に希望を託せ!現れろ「A No.39希望皇ホープ」!!』

《ホープッ!!》

白き戦士が叫びをあげる!ATK2500

 

『さらにオレはランク4の「ホープ」でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!』

 

ホープが銀河へ飛び込み、再誕する!

 

 

39

 

 

『現れろ!闇を切り裂く希望の使者!「A CNo.39希望皇ホープ・レイ」!!』

背中に巨大な剣を背負った黒きホープが現れる ATK2500

 

 

『そしてオレは手札の通常魔法「RUM─アストラル・フォース」を墓地に送ることで…このモンスターをエクシーズ召喚できる!!オレは「希望皇ホープレイ」でオーバーレイネットワークを再構築!!シャイニング・エクシーズチェンジ!!』

ホープレイが眩い光と共にその姿を変える…!

 

 

00

 

 

『2つの遠き魂が交わる時!新たな伝説が始まる!新たな希望を未来に示せ!「SNo.0ホープ・ゼアル」!!』

希望の光を纏い現れたのは伝説の写し身…異世界において世界を喰らう邪神を退けたもう1人のZEXALだった ATK0→4000

 

【あ、ああ…希望…全てを照らす…光…!】

 

『…ラプラス、いま…お前を開放してやる!!バトル!「ホープゼアル」で「創星神tierra」を攻撃!受けてみろ!未来を切り拓くのは縦横無尽なる希望の力!これが新たな未来の天地開闢!ホープ剣ZEXALスラッシュ!!』

《かっとビングだ!オレ─!!》

 

巨大な光の剣が破壊神の身体を一刀両断する…復活した破壊神はここに滅ぼされた…

 

『すまない…ミドリ…オレ、は…─』

 

 

ドオォォン!

 

 

ラプラスLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

ピシッピシッ…パキーン…

 

デュエルの終結と共に翠を拘束していた十字架と鎖が砕け、翠が落下する…

 

 

ガシッ

 

 

『…つらい目に遭わせてごめんな、翠…行こう、遊星達のところへ…みんなが待ってる』

 

遊海が翠を優しく抱き抱える、未来の自分との長き因縁は…ようやく清算された…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

「いったいどこまで続くんだ…この道は…!」

 

『もう少しで遊星ギアのはずだ…!』

 

遊星は暗いトンネルを進み続ける…遊星の目指す遊星ギアは入口からもっとも遠く、太陽ギアに1番近い場所だった。

 

 

「そういえば…なんでアンタはオレ達に力を貸してくれるんだ?それに…スキャンしたとはいえ何故ここまでアーククレイドルの仕組みに精通している?」

 

『…わからない、わからないが…私はこの場所を知っている、そして…その答えがこの先にあるような気がするんだ…!』

 

「遊星ギアに…?」

遊星の問いに青髪のDホイーラーが答える…彼の記憶は失われているのだ…。

 

 

「…クロウやジャック、遊海さんも…遊星ギアを守る決闘者と戦った…という事は…」

 

『倒すべき相手はそこにいる…その相手を倒せば遊星ギアは止まり、太陽ギアへの道が開ける…』

 

「そして…お前の記憶も戻るという訳か…先を急ごう、どうやら出口が見えたらしい…!」

遊星達の行く先に僅かに光が見える…遊星達はその場所へと急いだ…。

 

 

 

 

「ここが遊星ギアか…オレ達の戦うべき相手は…?」

遊星達はついに遊星ギアへと到着する…しかし、その場所は無人…人の気配は無かった…。

 

キュゥゥン…

 

「つ!?なんだ!?」

突然、部屋が暗転する…そして遊星達の前に5個の光の玉が現れる…!

 

『この…光は…─』

 

「お、おい!!離れるんだ!!」

フラフラと光の玉に近づく青髪…彼が光に触れた瞬間─!

 

 

バチバチ…バーン!!

 

『ぐあああああ…!?』

 

「なっ…!?おい!大丈夫か!?」

光の玉に触れた…青髪は衝撃を受けて吹き飛ばされる!

 

「しっかりしろ!」

 

『………!』ブン

青髪を心配して駆け寄った遊星…しかし、その腕は倒れた本人によって振り払われる…

 

 

『全てを思い出した…私に課せられた使命の全てを…!』

 

「使命…!?」

様子の変わった青髪に遊星は警戒する…!

 

 

『遊星、君の戦うべき相手は…ボクだ!!』カシュ!

 

 

「!?」

青髪のDホイーラーは赤いサングラスを外す…その正体は…

 

「ブ、ブルーノ…!?お前だったのか!?」

 

『ボクの名はアンチノミー…この遊星ギアを…アーククレイドルを護る者だ!!』

 

謎のDホイーラーの正体…それはチーム5D'sの一員ブルーノ…その真の名はアンチノミー…イリアステル滅四星の1人だった…。

 

 

 

遊星とアンチノミー…命を懸けた2人のデュエルがついに幕を開ける…!




オリカ紹介

邪悪の樹(クリフォト)黙示録(アポカリプス)
通常魔法カード
このカードの発動に対して相手はカード効果を発動できない。
①自分のライフを半分にし、手札と除外されたカード全てをデッキに戻し発動できる。自分のデッキからカード名の違うカード10枚を手札に加える。
その後、デッキ・墓地から「創星神tierra」を手札に加える。
このターン、自分は魔法・罠カードの発動・セットができず、モンスターを通常召喚できずモンスターを1体しか特殊召喚できない。そしてエンドフェイズに手札を全て墓地に送る。
②このカードの①の効果を発動した後、自分のエンドフェイズで数えて3ターンの間、自分はデッキからカードをドローできない。




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決戦!戦律のアンチノミー!〜希望の記憶〜

アーククレイドルを止めるべく遊星ギアを目指していた遊星…辿り着いた遊星ギアで明らかになった衝撃の真実…それは遊星達に協力してきた青髪のDホイーラー…その正体がブルーノであり、その真の姿…それはイリアステル滅四星の1人…戦律のアンチノミーだったのだ…。

 

 

「アンチノミー…!?アーククレイドルを守る者…?ふざけるな!お前はオレ達の仲間ブルーノ…!」

 

『違う…!ボクはゾーンの仲間アンチノミーだ!ここから先に君を通す事はできない!』

動揺する遊星をアンチノミーはまっすぐ睨みつける…

 

 

「お前が…倒すべき『敵』だというのか?」

 

『そうだ、私が君達に近づいたのは…君達を利用しアーククレイドルを呼び出し、ネオドミノシティを消滅させる為だ!』

 

「オレ達を…騙していたっていうのか…!?素顔を隠し何度となく力を貸してくれたのも…全部オレ達を騙す為だと!?」

遊星の脳裏にブルーノとの日々が甦る…共にDホイールを改造し、ピンチを切り抜け…勝利の喜びを分かちあった日々が…。

 

 

『結果として…そういう事になる』

 

「結果だと…?」

 

『君達を完全に信用させ仲間となる為にボクの「アンチノミーとしての記憶」はゾーンにより消された…そして「不動遊星を護り助ける」という使命だけがボクの記憶に残された…』

 

「待て…それじゃあ…!?」

 

『…ここに辿り着くまでボク自身、君の味方であり…5D'sの仲間だと思っていた…!』

それは残酷な真実…ブルーノは本当に5D'sの仲間だった、しかし…それを上回る使命が彼に課せられていたのだ…。

 

『だが…ボクは全てを思い出した!君達はよく戦った…その力はアーククレイドルを呼び出す為の大いなる引き金となった!あとはネオドミノシティの消滅のみ…それで全ては終わる、未来は変わるんだ…!』

 

「なんで…なんでお前がそんな事をするんだ…!ブルーノ!!」

 

『─…君はボクを倒さないかぎり遊星ギアを止められず、太陽ギアへも辿り着けない…君に残された道は1つだけだ』

アンチノミーは遊星を見据えたまま伝える…この場を切り抜けるただ1つの方法を…

 

 

「…お前と…戦うしかないのか…!」

 

『君がボクを倒さなければ先には進めずネオドミノシティは救えない…だが、ボクの使命は君を先に進ませない事…』

 

「なぜ…オレ達が戦わなければいけないんだ…!!」

 

『君が仲間を裏切れないように…ボクもゾーンとラプラスに託された使命を裏切れない!』

 

「ラプラス…?誰なんだそれは…?」

アンチノミーの口から漏れた名前に遊星は聞き返す

 

『ラプラス…彼は君達が「ゲイザー」と呼んでいたボク達の仲間だ、彼はゾーンと共に長い年月を生きてきた…その思いをボクは無駄にはしたくない!』

アンチノミーから強い闘気が発せられる…その瞳は決意に満ちていた。

 

 

「他に…道はないんだなブルーノ…!」

 

『ボクはアンチノミーだ!戦うんだ遊星!君にも譲れない思いがあるはずだ!!』

 

「そうだ…オレは仲間を…みんなを守らなければならない!!」

遊星は覚悟を決める…仲間を守る為に…立ちふさがる敵を倒すと…!

 

 

「ブルーノ…いや、アンチノミー!オレは遊星ギアを止めるためにここに来た!!その前に立ちふさがるなら…誰であろうとオレは倒す!!」

 

『…それでいい、ボクとの戦いに迷っているようではどのみちゾーンは倒せないからな…来い!遊星!!』

サングラスをかけ直したアンチノミーはDホイール・デルタイーグルへと飛び乗る!

 

 

『デュエルモード・オン!…遊星、君の最期を飾るに相応しいコースに招待しよう…!』

 

「っ…!?これは…!?」

デュエルモードが起動した瞬間、周りの景色は一変する、そこはまるで宇宙空間のようなコースだった…コースの中心部には凄まじい熱を放つ恒星が浮かんでいる…!

 

 

『敗者は恒星へと飲まれ消える…どちらかが負け、消滅しない限り…この空間からは脱出できない!!』

 

「なんだって…!?」

 

『さぁ…いくぞ不動遊星!!デュエルだ!』

 

「…勝負だ!アンチノミー!!」

 

「『デュエル!!』」

仲間の思いを背負った2人のライティングデュエルがついに始まった…!

 

 

 

 

 

 

Sideシグナー

 

 

 

キィン─!

 

「あ…痣が…!?」

 

『また誰かが戦っているのね…!』

 

「たぶん遊星だな…!先を急ごうぜ!向こうが明るくなってきた!」

 

トンネルを進むクロウチームは先を急ぐ…

 

「ねぇ…クロウ、何か嫌な予感がするわ…遊星は…翠さんは大丈夫かしら…!」

アキは痣を通じて不安を感じる…

 

「…オレ達がここで心配したってしかたがねぇ…遊星を信じて前に進むんだ…!それに翠だってきっと大丈夫だ!きっと誰かが見つけて助けてるはずだ…!」

アキに答えたクロウは前へと進む…仲間達を信じて…

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊星…お前が誰と戦っているかはわからんが…お前なら必ず勝てる…!太陽ギアで待っているぞ…!!」

 

「遊星…」

 

「…あっ!向こうに光が見えるわ!きっと出口よ!」

 

「むっ…!先を急ぐぞ!龍亞!龍可!」

ジャック達も遊星を信じて先を急ぐ…

 

 

 

 

 

 

「───………」

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト アンチノミー対遊星

 

 

 

 

 

『ボクはレベル2の「TGカタパルトドラゴン」にレベル3の「TGジェットファルコン」をチューニング!リミッター開放レベル5!スラスターウォームアップOK!アップリンク…オールクリア!GO!シンクロ召喚!!カモン!「TGハイパー・ライブラリアン」!』

 

ついに始まった遊星とアンチノミーのデュエル…先攻を取ったアンチノミーはTGデッキの要であるハイパーライブラリアンを召喚する!

 

 

『「ジェットファルコン」がシンクロ素材となったとき!相手に500ダメージを与える!』

 

「なにっ…!ぐあっ!?」

遊星に質量を持ったデータの塊が襲いかかる…しかもそれだけではない…!

 

ボォォ─

 

「うわっ…!?あ、危なかった…!」

遊星の足元から高温の太陽フレアが襲いかかる…!遊星達の走るコースの真下には巨大な恒星が燃え盛っている…!

 

『遊星!この程度でもたついているようでは決着の前に炎に飲み込まれてしまうぞ!』

 

「っ…!!」

極限状態の中、アンチノミーは平然とコースを走っていく…それは彼の持つ「クリアマインド」によるもの…心頭滅却すれば火もまた涼し…アンチノミーは揺らがない精神で進み続ける…!

 

 

『何をためらっている遊星!立ちふさがる敵は誰であろうと倒すのではなかったのか?』

 

「っ…!オレは…仲間を…!」

 

『言ったはずだ!君が勝たなければ先に進む事も…仲間を救う事もできないと!…口ではなんと言おうと仲間だった者への情を捨てきれない…それが君の最大の強さであり弱点だ!』

アンチノミーの言葉は真実だった、遊星は誰よりも絆を大切にする…その思いが遊星の強さだが…アンチノミーに対してはそれが裏目に出てしまう…!

 

「ブルーノ…!」

 

『っ…!敵に対して隙を見せるな!!』

 

ギュイーン…ズガン!!ガガガガ…!

 

「うわぁぁ!?」

痺れを切らしたアンチノミーが遊星に体当たりを仕掛ける!

 

 

『見せてみろ!君のデュエルを…!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

「(オレはどうすればいい…!?オレはブルーノと…こんな形で戦いたくない…!!)」

 

遊星は思い悩む…目の前にいるのは寝食を共にし、喜びを分かちあった仲間であり…街を救う為に倒すべき敵…遊星の心は揺れていた…。

 

 

─遊星、…たとえ辛くても戦わなきゃいけない時もあるんだぜ?─

 

 

「今のは…たしか…?」

揺れ動く遊星…そんな中、遊星の脳裏にある言葉が浮かんだ…

 

 

 

 

 

「えっ!?遊海と翠さんが喧嘩した事があるの!?」

 

「あんなおしどり夫婦なのに…!?」

 

『ああ、オレも知り合いからの又聞きなんだけどな?そりゃあ凄かったらしいぜ?』

それはゲイザーとのデュエルで重傷を負った遊海をお見舞いに行った時の事…遊海の病室で伝説の決闘者である城之内に出会い、遊海の昔話を聞いていた時の事だった…。

 

 

「しかし…俺はあの2人が喧嘩をするなど信じられんが…」

 

『まぁそうだな…正確には喧嘩じゃねぇ、翠が敵に操られちまったんだよ』

 

「「「えっ!?」」」

城之内の言葉に遊星達は驚く…

 

 

『あれは…遊海がアカデミアの管理人をしてる時の事だったな…ナントカっていう秘密結社のボスに翠が洗脳されたらしいんだ』

城之内から語られたのはアカデミアで起きた「光の結社事件」の一部始終…遊海がアカデミアを離れている間に翠が洗脳を受け、敵のリーダーに遊海と戦わせられたという話だった…。

 

「その話…翠さんから聞いた事があるわ、遊海さんは翠さんを助ける為に酷い怪我をしたって…」

 

『ああ、あいつも仲間や翠には甘いからなぁ…翠を説得しようとしたら…っと、詳細は言わないでおくか、小さい子もいるしな…それにあいつが一番痛かったのは…「心」だったからな…』

アキの言葉に城之内は呟く…

 

「心…遊海さんは精神的にもとても強い人です…どんな怪我をしていてもあの人はまったく弱音を言わなかった…」

 

『…そうだろうな遊星…でもな、その時だけ遊海は()()()()()()

 

「泣いた!?あの遊海が!?」

城之内の思わぬ言葉にクロウが驚く…

 

『ああ、しかもその泣いた理由なんだが…なんでかわかるか?』

 

「むっ…それは翠に傷つけられたからではないのか?」

 

「う〜ん…翠さんと戦う事が辛かったから?」

 

『ん、龍亞の答えが近いな…正解は…翠を開放する為に傷つけちまった…そんな理由だ、自分の身体やダメージを二の次にしてだぜ?』

 

「遊海さん…本当に辛かったんだな…」

遊星はその時の遊海の心情を思い考えこむ…

 

『ああ、でもな遊星…たとえつらくても戦わなきゃいけない時もあるんだぜ?オレ達が決闘者ならなおさらだ、人質を取られたり…洗脳された仲間と戦わなきゃならねぇ時もある…それでも…オレ達は向き合わなきゃならねぇ…デュエリスト…いや、人間である限りな…』

そう言って城之内はコーラを飲み干した…。

 

 

 

 

 

 

「(遊海さんも何度となく、つらいデュエルをしてきたはずだ…オレも…乗り越えなくては…!)」

遊星は先をいくアンチノミーを見る…悩んでいてもどうにもならない…!

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

「オレはレベル4の『ジャンク・サーバント』にレベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!!集いし怒りが忘我の戦士に鬼神を宿す!シンクロ召喚!吠えろ!『ジャンク・バーサーカー』!」

遊星の場に赤き鬼神が現れる、未だに迷いは捨てきれないが…遊星は勝つためにデュエルを進める!

 

 

『「ハイパーライブラリアン」の効果!シンクロ召喚が行われた事で1ドロー!!』

 

「(シンクロモンスターが残っていれば奴は必ずアクセルシンクロを狙ってくる…!その前に叩くしかない!)『ジャンクバーサーカー』の効果発動!墓地の『ジャンクサーバント』を除外し『ハイパーライブラリアン』の攻撃力をダウンさせる!バトルだ!『ハイパーライブラリアン』を攻撃!」

 

『甘いぞ遊星!罠カード「バトル・スタン・ソニック」を発動!相手モンスターの攻撃を無効にし、手札からレベル4以下のチューナーモンスター「TGサイバー・マジシャン」を特殊召喚!』

 

「っ…かわされた!」

遊星の一撃は回避されアンチノミーの場に魔術師が現れる

 

『君の戸惑いがデュエルにブレーキをかけているようだな…それではボクのデュエルには到底ついてこれない!』

 

「っ…!!」

 

 

 

『ボクはレベル4の「ラッシュライノ」にレベル1の「サイバーマジシャン」をチューニング!リミッター開放レベル5!ブースターランチOK!インクリネイションOK!グランドサポート…オールクリア!GO!シンクロ召喚!カモン!「TGワンダーマジシャン」!』

アンチノミーの場に桃色の髪のシンクロチューナーが現れる…用意は整った…!

 

 

『遊星!見るがいい!これが真のクリアマインドだ!!』

 

「くる…!!」

清廉な闘気がアンチノミーを覆っていく…!

 

 

『レベル5の「ハイパーライブラリアン」にレベル5の「ワンダーマジシャン」をチューニング!!リミッター開放レベルレベル10!メインバスブースターコントロール…オールクリア!』

スピードを増していくデルタイーグル…それは将来、遊星が完全にモノにするシンクロの境地…それをアンチノミーは遊星に見せつける!

 

『無限の力、いまここに解き放ち…次元の彼方へ突き進め!!GO!アクセルシンクロ!!カモン!「TGブレード・ガンナー」!!』

アンチノミーのエースである銃剣を持つ戦士がスピードの彼方から現れる!

 

 

「なんという気迫だ…これが奴のアクセルシンクロ…!だが、何故だ!?なぜオレにアクセルシンクロを教えた!?」

遊星はアンチノミーに問いかける…アクセルシンクロは遊星達の力を増し、イリアステルにすら牙を剥く力となった…何故そんな事をしたのか…遊星はその理由を聞きたかったのだ。

 

『そうしなければ…君達は自分達の力だけではWRGPを突破できなかったはずだ、そしてその力はアポリアを倒し…アーククレイドルを呼び出すまでに至った!遊星、君の役目は終わりだ!』

 

「なっ…本気で言っているのか!?」

 

『そうだ、君達を成長させアーククレイドルを呼び出す可能性を高める…それがボクの役目だったからだ!』

アクセルシンクロにより遊星は力を増した…しかし、それはアーククレイドルを呼ぶ為に遊星を利用したに過ぎない…アンチノミーはそう言い切ったのだ…。

 

 

『バトルだ!「ブレードガンナー」で「ジャンクバーサーカー」を攻撃!シュートブレード!』

 

「うわっ!?」

ブレードガンナーのレーザーが狂戦士を破壊する!

 

『さらにシンクロモンスターが破壊された事で手札の「TGメタルスケルトン」を特殊召喚!ダイレクトアタック!!』

 

「ぐぅ…!」

アンチノミーの容赦ない連撃が遊星を襲う…!

 

 

『遊星!心が乱れているな…そんな事ではボクはおろかゾーンやラプラスに勝てはしないぞ!』

 

「っ…ブルーノ!ゾーンとは…ラプラスとはいったい何者なんだ!?どうしてお前はそこまでして奴らに従うんだ!」

遊星はブルーノに未だ正体不明の敵…ゾーンとラプラスについて問いかける…

 

『ゾーンにラプラス…彼らは破滅の未来を変えようとする者…破滅した世界でボクは彼らと出会ったんだ…!』

そしてアンチノミーは語り始めた…ゾーンとラプラスとの出会いを…

 

 

 

 

 

 

 

Sideアンチノミー

 

それは未来のシンクロ最盛期の事…人間だったアンチノミーはプロのDホイーラーとしてデュエル…そしてシンクロ召喚の素晴らしさを伝えていた…そんなある日…

 

 

『何故だ!?何故シンクロ召喚を使っちゃいけないんだ!?』

 

「知っているだろ!?いまや世界はシンクロ召喚が引き金になって戦争が起きようとしてるんだぞ!?そんな時に無神経にシンクロを使うわけにはいかない!それに最近新しい召喚法が出たじゃないか!お前もそれに…」

 

『だからこそ!ボク達がシンクロ召喚本来の使い方を見せるべきなんじゃないか!?』

世界は少しずつ破滅へと向かっていた…そんな中でもアンチノミーはシンクロの力を信じて使い続けていた…。

 

『かつて不動遊星という伝説の決闘者がシンクロを使って人々に希望を与えた!正しいシンクロならきっと世界を変えられる!』

 

「しかし…」

 

「た、大変だ!」

 

『どうした!?』

言い争うアンチノミー達のもとにチームメイトが駆け寄る…

 

「モーメントとシンクロの影響でネットワークが暴走を始めたらしい!!防衛ロボットが攻めてくるぞ!!」

 

「『なんだって!?』」

 

そして世界は破滅へと突き進んでいった…。

 

 

 

 

 

『どうして…こんな事に…!シンクロが間違っていたというのか…?』

 

アンチノミーは壊滅した街を見下ろし、膝をつく…彼は絶望していた…自分の信じたシンクロに裏切られ、生きる気力を失っていた…。

 

ビビビ…キュイーン…!

項垂れるアンチノミーを無数の機皇帝が囲む、彼の命運は尽きた…その時だった…!

 

 

ドドォン!!

 

《ターゲットロック…殲滅開始!》

 

「退け!これ以上命は奪わせない!!」

 

 

『なっ…!?』

それは一瞬の事だった…無数の機皇帝達は大砲で撃墜され、レーザーで消え去り、剣でバラバラに斬り裂かれた…。

そしてアンチノミーは見た…太陽を背に赤いDホイールに乗ったDホイーラー、そして赤い帽子を被り巨大な機械を従えた剣を持つ男の姿を…

 

『貴方達は…』

 

『…!』

アンチノミーを助けた人物は彼に歩み寄り手を伸ばす…そしてアンチノミーはその手を取った…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

『ボクはゾーンとラプラスに救われた…絶望の中で希望を捨てずに戦う2人を見て…ボクは自分を恥じた…!そしてゾーンを中心に生き残った5人は破滅した世界を救う研究を始めた…後はアポリアが話した通りだ…』

 

 

 

 

Sideアンチノミー

 

 

破滅した世界で世界を救う研究を続けたゾーン達…しかし、人には寿命がある…その時はアンチノミーにも訪れた…。

 

 

 

【アンチノミー…世界を救うには君の力が必要です…】

 

『ゾーン…ラプラス…アポリア…いつの日か、必ず世界を救ってくれ…その為ならば…ボクは君達の下僕となろう…!』

 

『アンチノミー…あとは任せろ…また逢おう…!』

 

『ラプラス…君のような…決闘者と共に過ごせた事…それがボクの誇りだった…ゾーンを…頼む…!』

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

『…そして、仲間達は2人を残して死んでしまった…だが、未来の為にゾーンの下僕として蘇ったのだ…!』

 

「それじゃあ…まさか…!?」

アンチノミーの言葉から遊星は全てを悟る…

 

『そうだ、ゾーンとラプラスこそが未来の人間…その最後の2人なのだ!』

 

「そんな…!」

人類は2人を残し絶滅した…それを聞いた遊星は目を見開く…

 

 

『…アポリアは3つの絶望から3つの人格として蘇り、イリアステルを作り上げた…ボクは君を守り成長させる事が使命…だが、その進化した君をボクの手で潰す事になるとはな』

 

「お前にとってオレは歯車の1つに過ぎなかったというのか!?」

 

『…アーククレイドルは出現した、もはやネオドミノシティの消滅は決定的…新しい未来は確実に訪れる!その計画を邪魔させる訳にはいかない!』

 

「勝手な事を言うな!オレや5D'sの仲間達を騙し…この街を犠牲にして…そんな未来に希望があると思うのか!?答えろ!どうなんだブルーノ!!」

 

『ボクは…アンチノミーだ!!君達が固い絆で結ばれているように…ボクとゾーン、仲間達は絶望の中で固い絆で結ばれた!彼らとの誓いがボクの使命だ!!』

 

「なら…オレは仲間とオレの未来の為にお前を倒す!ブルーノ…いや、アンチノミー!!」

アンチノミーとの問答を経て遊星は覚悟を決めた…未来を守る為に遊星は敵へと立ち向かう!

 

 

 

 

 

「もう迷いはしない…!!それが仲間を守る為なら…オレの答えはここにある!!オレが手にした境地…クリアマインド!!」

遊星は揺れていた心を治める…その心に静かな闘志を秘め力を開放する!

 

「オレはレベル8の『スターダスト・ドラゴン』にレベル2シンクロチューナー『フォーミュラシンクロン』をチューニング!!集いし夢の結晶が!新たな進化の扉を開く!光さす道となれ!!」

スピードの世界で遊星の心は研ぎ澄まされ、限界を突破する!

 

アクセルシンクロォォォ!!

生来せよ!『シューティング・スター・ドラゴン』!!」

《ギュオオオン!!》

太陽フレアを振り払いながら流星竜が咆哮する!

 

『本気になったようだな遊星!』

アクセルシンクロをした遊星を見てアンチノミーは不敵に笑う…!

 

「アンチノミー…オレは自分の限界を超えて戦う!『シューティングスタードラゴン』で『メタルスケルトン』を攻撃!」

 

『なにっ…!?』

遊星は連続攻撃効果を使わずメタルスケルトンを攻撃する…遊星はアンチノミーにダメージを与え、態勢を整える事を優先したのだ!

 

 

『君は限界を突破しようとしているようだが…それでも互角に持ち込んだだけ…残念だが、君の思っている限界など…本当の限界ではない!!』

 

「なに?」

 

『アクセルシンクロは終点ではなく()()()()()()()()という事だ!!』

 

「なんだと!?」

アンチノミーの思わぬ言葉に遊星は驚愕する…!

 

『見せてやろう…君の知る世界を遥かに超えたその先を!!』

 

 

 

『見るがいい遊星!これがアクセルシンクロの先にある答えだ!!』

 

「何をするつもりだ…!?」

アンチノミーの場には新たに召喚されたTGレシプロ・ドラゴンフライ、そしてブレードガンナーをエクストラに戻す事で復活したワンダーマジシャンとライブラリアンがいる…!

 

『限界を超えた境地…《トップ・クリアマインド》!!』

 

「なにっ!?なんだあのスピードは!?」

アンチノミーは爆発的にスピードを上げていく!!

 

 

『ボクはレベル2の「レシプロドラゴンフライ」とレベル5「ハイパーライブラリアン」にレベル5の「ワンダーマジシャン」をチューニング!!リミッター開放!レベルマックス!!レギュレーターオープン!オールクリア!!…無限の力よ!次元の壁を突き破り…未知なる世界を開け!!GO!デルタアクセル─!!』

 

ドオオォォン─!

 

「うわあぁぁぁ!?」

凄まじいスピードに共鳴したのかアンチノミーの声と共に恒星が爆発する!!

 

 

『カモン!「TGハルバード・キャノン」!!』

 

「こ、これは…!」

遊星の前に現れたのは黒い装甲と巨大な刃を持つ黒き戦士…レベル12のシンクロモンスター…ハルバードキャノン!!

 

『見たか遊星!これがシンクロモンスター3体によるシンクロを超えたシンクロ…デルタアクセルシンクロだ!』

 

「デルタアクセルシンクロ…!?」

遊星はアクセルシンクロを超えたシンクロを目の当たりにして驚きを隠せない…!

 

 

『見えるか遊星…今、まさに光をも飲み込む「ブラックホール」が誕生しようとしている…奴は全てを呑み込み、全てを消し去る…そこにあるのは全ての終わりだ…そして君達の世界もまもなく終わろうとしている!』

 

「っ…!」

爆発の影響で進路の変わったコース…その果てではだんだんと白い光が膨張していく…!

 

 

『バトルだ!「ハルバードキャノン」で「シューティングスタードラゴン」を攻撃!』

 

「『シューティングスタードラゴン』効果発動!相手ターンに除外し、攻撃を一度だけ無効にできる!」

 

『それはどうかな!』

 

「なに!?」

ハルバードキャノンの攻撃を回避する為に異次元に逃れようとしたシューティングスタードラゴンがハルバードキャノンに掴まれ、コースに叩きつけられる!

 

『「ハルバードキャノン」は相手モンスターがモンスター効果で場を離れる時、その効果を無効にし攻撃力を800ダウンさせる!「ハルバードキャノン」からは逃げられない!消えろ!「シューティングスタードラゴン」!』

 

「させない!永続罠『エンデューロ・ソウル』発動!攻撃表示モンスターの戦闘破壊を無効にする!その代わり、攻撃力は800ダウンする!」

 

『それで攻撃を防いだつもりか!ダメージは受けてもらう!!』

 

「うわあぁ…!!」

遊星にハルバードキャノンの攻撃が襲いかかる!

 

 

『君のライフは残り100…これが限界を超えた力の差だ!』

 

 

そしてデュエルは続いていく…遊星は守りを固める為に攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない効果を持つロード・ランナーを召喚するが、ハルバードキャノンの持つ召喚無効効果により破壊されてしまう…そして遊星はカードを伏せ守りを固めるが…アンチノミーは遊星の策を先読み…策を躱されてしまう。

そしてついにシューティングスタードラゴンの攻撃力は100…手札も0枚の状況に追い詰められてしまう…!

 

 

 

 

「(強すぎる…!これがデルタアクセルシンクロの実力…!まるで遊海さんを相手に戦っているようだ…!どんな事をしても先を読まれる…このままでは…!)」

追い詰められ必死に打開策を考える遊星…その時…!

 

 

ズズズ…ゴオォォォ─!

 

 

「ブラックホール…!」

遊星達の背後に巨大な漆黒の孔…ブラックホールが現れる…!

 

『どうやらボク達の決着の場は完成したようだな…君が敗者となり飲み込まれるのを漆黒の闇が待ちかねているようだな』

巨大な引力が遊星達に襲いかかる…!

 

 

 

「これがオレの死の運命なのか…!」

 

『諦めたらどうだ遊星…君に未来は変えられない!』

 

「そんな事はない!オレは未来を…運命を変える為にここに来た!みんなもそれを信じている!オレは…お前を倒し!道を切り拓く!!」

 

キィン─!

 

圧倒的絶望の中遊星は諦めない…その思いに赤き竜が…仲間達が応える!

 

 

 

 

Sideシグナー

 

キィン─!

 

 

「遊星…!」

 

「頑張って!!」

 

 

 

「「どんな事があっても…必ず…!」」

 

「必ず来い!遊星!!」

 

 

 

「」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「オレのターン!オレは絶対に諦めない!『Sp-エンジェル・バトン』!2ドロー!そして『ネクロディフェンダー』を墓地へ送る!そして自身の効果で『ワイルドハート』を特殊召喚!」

遊星の場にこん棒を持った原始人が現れる!

 

『いまさら攻撃力1000のモンスターなど…(そうか…!考えたな遊星…!)』

アンチノミーは思考する…ワイルドハートには2つの効果がある、1つはダイレクトアタックをした後に自壊する効果、もう1つは他のカード効果で破壊された時に墓地から特殊召喚できる効果を持っていた。

 

「(『シューティングスタードラゴン』はカード破壊効果を無効にし破壊する効果を持っている…遊星が狙っているのは…ダイレクトアタックの無限ループ!)…この局面でよくそんな手を思いついたな…だが、これで終わりだ!『ハルバードキャノン』で『ワイルドハート』の召喚を無効にする!」

遊星の手を読んだアンチノミーはワイルドハートを破壊する…遊星は万事窮す…

 

 

「まだだ!墓地から罠カード『リベンジリターン』の効果発動!破壊された『ワイルドハート』を特殊召喚!」

 

『無駄だと言っている!「ハルバードキャノン」で特殊召喚は無効だ!』

 

「だが…これで効果は使い切った!!」

追い詰められた遊星は不敵に笑う…!

 

 

『だが…手札も伏せカードも無い!これ以上何ができる!?』

 

「確かにオレにはアクセルシンクロを超えるデルタアクセルシンクロのようなモンスターはいない…だが!お前が教えてくれたはずだ!自分の可能性を信じれば自分が限界を超える事ができる…自分の限界に挑めと!!」

 

『…!』

今の遊星にはハルバードキャノンを超えるモンスターはいない…しかし、遊星の持つカードとの絆が…勝利の運命を引き寄せる!

 

 

「『スピードワールド2』の効果…1ドロー!!…来た…!このカードがオレの希望の光だ!!オレは『バランスシューター』を召喚!!」

遊星の場にバランスを保つロボットが現れる!

 

「これでオレの勝利へのキーカードは全て揃った!まずは墓地の『ネクロディフェンダー』を除外して効果発動!これでこのターン、オレはダメージを受けない!そして罠カード『エンデューロソウル』によって『シューティングスタードラゴン』は戦闘で破壊されない!」

 

『攻撃力100の「シューティングスタードラゴン」が攻撃力4000の「ハルバードキャノン」を攻撃してもダメージも戦闘破壊も発生しない!そんな戦いをしてなんになる!』

 

「フッ…アンチノミー!お前は『エンデューロソウル』と『バランスシューター』の効果を忘れているぞ!」

 

『忘れてなどいない、「エンデューロソウル」は戦闘破壊を無効にしたモンスターの攻撃力を800下げる…だが…まさか…!?』

 

「そうだ!『バランスシューター』は攻撃力の変動を無効にし相手にその数値分のダメージを与える!」

 

『800のダメージ…だがそれには「シューティングスタードラゴン」で3回以上の効果を発動しなければならない!』

 

「『シューティングスタードラゴン』の効果発動!デッキトップ5枚を確認する!」

遊星はデッキトップに手をかける!

 

『ボクのライフは3回の攻撃で尽きる…だが、それは5枚のなかにチューナーが3枚あればこそ…この状況だけでも奇跡…それを超えようというのか!?』

 

「超えて見せる!オレは自分の可能性を…限界を…!!」

遊星はカードをめくる!

 

 

「一枚目!『ターボ・シンクロン』!」

 

 

「2枚目!…『くず鉄のかかし』」

 

 

「3枚目!『ニトロシンクロン』!」

 

 

「4枚目!…『シールドウィング』」

 

 

そして…運命の5枚目…その瞬間…!

 

ゴオォォォ…!!

 

 

「ブラックホールの力が…!?」

ブラックホール引力が力を増していく…!

 

『まもなく我々はブラックホールの引力に囚われる…ブラックホールは光でさえ抜け出せない!君が5枚目を引けなければ…君は素粒子にまで分解され消滅する!!』

アンチノミーの言葉に遊星は目を閉じる…その目に諦めはない!

 

「5枚目!…『エフェクト・ヴェーラー』!!」

 

『バカな…3回の連続攻撃を…限界を超えた!?』

 

 

「バトルだ!『シューティングスタードラゴン』で『ハルバードキャノン』を攻撃!シューティング・ミラージュ!!」

 

3体に分身したシューティングスタードラゴンがハルバードキャノンに突撃する…ハルバードキャノンは2体の分身を撃ち落とし本体のシューティングスタードラゴンと激突する!!

 

 

『遊星…これが君の…』

 

「そうだ!お前が教えてくれた…限界を超える力だ!!」

 

遊星の場のバランスシューターがシューティングスタードラゴンに力を与える…力を受けたシューティングスターはハルバードキャノンを弾き飛ばしブレスを放つ…ブレスはハルバードキャノンを貫き…アンチノミーのライフを削りきった…。

 

 

『うわあぁぁぁ!!』

 

「アンチノミー!!しまっ…うわあぁぁぁ!!」

ダメージの余波でアンチノミーはスリップ…そして気を取られた遊星もブラックホールへとのみ込まれてしまった…。

 

 

アンチノミーLP0

 

遊星WIN!

 

 

 

 

 

 

「くっ…!これがブラックホールの中…光さえ抜け出せない空間!!」

遊星は暗闇の中を走っていた…光の無い暗闇の中…遊星は同じく走り続けるアンチノミーを見つける…

 

 

「大丈夫か!アンチノミー!!」

 

『フッ…』

 

「はっ…!」

遊星の問いかけにアンチノミーは目を向ける、欠けたサングラスから見える瞳にデュエル前の鋭さはない…それはブルーノの眼差しだった。

 

『遊星、見せてもらったよ…君の可能性を…遊星!頼みがある!この世界を…ゾーンとラプラスを救ってほしい!』

 

「どういう事だ!?お前達はこの世界を破滅させる為に戦っていたんじゃなかったのか!?」

アンチノミーの言葉に遊星は動揺する

 

『ボクは君達と過ごす中で何度となく不可能と思える壁を打ち破る君の姿を見てきた…そして記憶を取り戻した時…ボクは決意したんだ!遊星の可能性を信じようと!!』

 

「オレの可能性…!?」

 

『君なら絶対にできる!っぐ!?』シャキン!

アンチノミーの頬を壊れ始めたデルタイーグルの破片が掠める…!

 

『遊星なら自分の限界を打ち破れる…!だからボクは新しい力へ導く為にこのデュエルを始めた!それがデルタアクセルだ!君達なら必ず自分のデルタアクセルを見つけ出せる!』

 

「お前は…それをオレに伝える為に…!」

遊星とアンチノミーのデュエル…それは遊星が新たな力を手にする為の「最後の授業」だった…。

 

 

『遊星とは…もっと違う形で出会いたかった…そうすれば本当の仲間になれたかもしれない…』

 

「アンチノミー…いや、ブルーノ!!お前はオレ達の…オレの仲間だ!…ブルーノ!!」

 

『このボクを…仲間だと言ってくれるのか…遊星』

 

「…!」

遊星は頷き、拳を突き出す…遊星は認めたのだ、アンチノミーを仲間として…そしてアンチノミーも自覚した、彼はゾーンの友アンチノミーであり…5D'sのメカニック…ブルーノなのだと─

 

 

『仲間…か、ボクはみんなを励ましながらみんなと一緒にご飯を食べたり…戦っている遊星を見ているのが大好きだった…そこに君や5D'sの無限の力と可能性を感じていたから…!』

 

「ブルーノ…」

 

バチバチ…ボン!キュゥゥン…!

 

「っ!?飛び移るんだブルーノ!早く!!」

デルタイーグルから爆発音が響く…そして段々と速度を落としていく…

 

『無駄だよ…この空間から抜け出すにはどちらかが消滅するしかない…君達と過ごした時間は最高に楽しかった!!』

 

「ブルーノ!?」

後退したブルーノは遊星の真後ろに付く…

 

 

「何をするつもりだブルーノ!!」

 

『遊星、君はボクの希望だ!アクセルシンクロは()()()()()()!光を超え…未来を切り拓くんだ!!』

ブルーノは最後の力を振り絞り速度を上げて遊星号へと突進する!

 

『いけぇぇ!遊星─!!!』

 

遊星とブルーノ…2人のアクセルシンクロ使いの速度は光速を超え重力を振り払う…しかし

 

 

バシュ!ボン!ボンボン!!

 

「ブルーノ!!ブルーノォォォ!!」

 

『遊星─…』

限界を超えたデルタイーグルは失速…笑みを浮かべたブルーノと共に光の彼方へと消えていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴゥン…キキー!ガシャン!!

 

 

「ぐあっ…!?」 

ブラックホールから脱出した遊星は遊星ギアの部屋へと投げ出された…

 

「うぅっ…はっ…!」

部屋を見渡した遊星はそれを見つける…ブルーノの形見とも言える欠けた…赤いサングラスを…

 

「ブルーノ……ブルーノォォォ!!!」

遊星の悲しい叫びがアーククレイドルに響く…涙を流しながら遊星は大切な友の死を悼んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideシグナー

 

 

ゴゴゴ…ガガン!

 

 

「扉が開いた!」

 

「遊星が最後の遊星ギアを止めたか!!」

そこは太陽ギアを間近にした最後の扉…遊星を除くシグナー達は既にそこにたどり着いていた…。

 

「あっ…!遊星だ!!」

 

「遊星!!」

 

「みんな…!無事だったか…!」

龍亞と龍可が喜びの声をあげる…戦いを終えた遊星がようやく合流したのだ…。

 

 

「遊星!見てよコレ!!」

 

「龍亞…!この痣は…!」

 

「ドラゴンズ・ハートって言うらしいんだ!おれ、6番目のシグナーだったんだ!名前は遊海が教えてくれた!」

 

「お前にも見せたかったぞ遊星!龍亞の勇姿を!」

 

「龍亞がいなかったら遊星ギアは止められなかったんだから!」

 

「いや〜ちょっと褒めすぎなんじゃないの〜!?」

ジャンクと龍可に褒められた龍亞は照れてしまう…とても嬉しそうだ…。

 

 

「龍亞…頑張ったな…!」

 

「うん!!」

 

 

 

『遊星…』

 

「戻ってきてくれたんだなシェリー」

シェリーが遊星に話しかける

 

『私も決めたわ…貴方達と共に戦うと!』

 

「そうか…わかった…!」

シェリーと遊星は握手を交わす…

 

 

「…?遊星、赤いサングラスの彼は?一緒じゃないの?」

 

「あれ…そういや…?」

 

「っ…」

クロウとアキの言葉に遊星は俯く…

 

「もういない…彼は遊星ギアを守る者…その正体はブルーノだった…!」

 

「「「えっ!?」」」

 

「ブルーノだって!?」

遊星の言葉に仲間達は驚きを隠せない…

 

「ブルーノの本当の名前はアンチノミー…アポリアと同じように未来を変える為にゾーンによって送り込まれていたんだ…!」

 

「ブルーノが…ゾーンの手先だと!?」

 

「じゃあブルーノは敵だったの!?」

 

「それは違う!違うんだ!」

遊星は龍亞とジャックの言葉に首を振る!

 

 

「確かにブルーノはゾーンによって送り込まれていた…だが!オレ達と共に戦ったブルーノの気持ちは本物だ!…だからこそブルーノはオレと戦う事で教えてくれたんだ…!ゾーンと戦う為に必要な新たな力を!」

 

「新たな力だと?」

 

「それがシンクロモンスター3体を使ったシンクロ召喚…デルタアクセルシンクロ…!」

 

「デルタアクセルシンクロ…」

 

「そして…自らの命を犠牲にしてオレを守ってくれた…!!」

 

「えっ…!?」

 

「それじゃあブルーノは…」

 

「オレ達に…未来を託して…!」

遊星は俯いたまま答える…その目からは涙が零れ落ちた…。

 

 

「許せねぇ…!ブルーノを遊星ギアの盾に使うなんて!!」

クロウが怒りで拳を握りしめる…

 

「シェリー!ゾーンとやらはこの上にいるんだな!?」

 

『ええ…!』

ジャックはシェリーに確認を取り遊星の方を向く!

 

「いくぞ遊星!ブルーノの仇を取りに!!」

 

「ああ…!いくぞ!ゾーンのもとへ!!」

遊星は涙を拭き前を向く…その目には覚悟が宿っていた…。

 

 

 

 

「少しいいか遊星?」

 

「遊海さん…!また酷い怪我を…!」

ゾーンのもとへ向かう準備をする遊星にボロボロの遊海が話しかける

 

「アイツは…アンチノミーの最期は…笑っていたか?」

 

「…はい…!ブルーノはオレに希望を託しました…!オレは必ずそれに応えます!!」

 

「そうか…ありがとう遊星、いくぞ…ゾーンのところへ…」

 

「はい!…そういえば翠さんは!ゲイザーはどうなったんですか?」

遊星は背中をみせた遊海に問いかける

 

「…ゲイザーは倒した、俺達の因縁はようやく清算された…翠も無事だ、精霊に地上へ送ってもらってる…心配してくれてありがとな…時間はない…いくぞ!」

そして遊星達はゾーンのもとへと進み始めた…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【チーム5D's…とうとう来ましたか…さぁ…この場所へと上がって来なさい…!】



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希望を繋ぐ決闘─贖罪─

こんにちは!S,Kです!

遊星達はついにZ-ONEと対峙する…その先に待ち受ける結末とは…

それでは最新話をどうぞ!


それぞれに遊星ギアの番人を倒し合流したチーム5D's…彼らはイリアステルの首魁Z-ONEのもとへと向かっていた…。

 

 

「いったい何なの?ここ…」

 

「この道…どこまで続いているのかしら…?」

龍亞と龍可が言葉を漏らす、扉を抜けた遊星達は螺旋状の道をひたすらに昇り続けていた…。

 

 

「おい…!あれって…!?」

 

「あれは…旧モーメント!!」

道を昇り続けた先に遊星達はあるモノを見つける…それは紛れもなく旧サテライトにあるはずの旧モーメントそのものだった。

 

「太陽ギアは旧モーメントのエネルギーで動いていたのか…!(オレの因縁は…まだ終わっていないようだ…!)」

旧モーメントを見て何かを感じた遊星…そして彼らは遂にゾーンの待つアーククレイドル中心部へと到達する!

 

 

 

「なんなんだ…この場所は…!」

 

「ゴミだらけじゃん…!」

辿り着いたその場所は無数のくず鉄やスクラップで埋め尽くされていた…まるでここが未来の廃棄場所であるかのように…。

 

 

【ようこそ…チーム5D'sのみなさん…!】

 

「この声は…!?」

遊星達はゴミ山を見上げる…その頂点に彼はいた、未来を救う為に全てを懸けた「人類最後の1人」…Z-ONE…!

 

「遂に姿を現したな…ゾーン!!」

 

「あれが…ゾーン…!」

龍可がゾーンの姿を見て驚く…白い機械の鎧を纏った機械音声混じりの声をした男…それがゾーンだった。

 

「あれ…?(なんだろう…ゾーンの恰好…何かに似てる…?…遊星の…Dホイール…?)」

龍亞はゾーンの姿を見て既視感を覚える…その正体はゾーンの頭の後ろと遊星号のパーツが似ている事だった。

 

【皆さんのデュエルは見せてもらいました…流石はチーム5D's、見事なデュエルでした…しかもシェリー、貴女も一緒とは…】

 

「もう私は過去を振り返らない!未来だけを見て生きていく!!」

 

「その未来の為に…貴様には消えてもらうぞ!!」

 

「ネオドミノシティを破壊なんてさせねぇ!!」

 

「オレはブルーノと約束した!未来を救うと!」

シェリーの言葉を皮切りに遊星達がゾーンの前に並び立つ!

 

【アンチノミーと…フッ】

遊星達の覚悟を前にゾーンは笑う…

 

 

【貴方達に何ができるというのです?世界を滅亡に導いたのは貴方達の使うシンクロ召喚なのですよ?】

そう言ってゾーンは遊星に視線を向ける…。

 

【そもそもシンクロ召喚がなければ貴方の父が開発したモーメントが暴走する事は無かった…人類が滅亡する事はなかったのです、モーメントとシンクロによる破滅と絶望しかない未来…私はそんな未来を変える為にゼロ・リバースを起こし、モーメントを消滅させようとした…そしてパラドックスを過去に送り全ての根源である「デュエルモンスターズ」を消滅させようともした…】

 

「パラドックス…!やはりアイツもお前の仲間だったのか…!」

遊星は伝説の決闘者達と共に戦った仮面の男を思い出す…

 

【そして今、アポリアとアンチノミーを使った私の計画は成就しようとしている、アーククレイドルをネオドミノシティに落とし、モーメントをネオドミノシティごと消滅させるのです…!】

 

「……だから、記憶を消したブルーノをオレ達のもとへ送り込んだというのか…!!」

ゾーンの言葉を聞いた遊星は歯を食いしばる…

 

「そんな資格がお前にあるのか!その為にブルーノは…ブルーノは!!…オレはアーククレイドルを止めてみせる!みんなの住むこの街を…ブルーノがいたこの街を…お前の勝手にはさせない!!」

遊星は怒りを込めてゾーンを睨みつける!

 

【フフフ…いいでしょう、ならば私にデュエルで勝つ事です、アーククレイドルを動かす太陽ギアは私と連動しています…私を倒さぬ限り太陽ギアは止まりません】

 

「望むところだ…ゾーン!」

遊星はデュエルディスクを構える…!

 

 

 

 

 

『待て、不動遊星…!』

 

 

 

 

 

「お、お前は…!」

 

「貴様…生きていたのか!?」

広間に響いた声に遊星、そしてジャック達は警戒態勢を取る…

 

『…ゾーン、君の相手は…この私だ!』

5D'sを守るように…満身創痍のアポリアがゾーンに剣を向ける!

 

 

「どうして…アポリアが…!」

 

『…それが荒廃した未来を共に生き抜いた友としての使命だからだ…!』

龍亞の問いにアポリアが答える

 

「使命だと…?どういう事だ!?」

 

『私はお前達とのデュエルを通して一つの答えを見つけたのだ…!』

 

「答え…?」

 

『私はなぜ、あれほどの絶望を味わいながらも生き続けていたのか…愛する両親を…恋人を失い、この世にたった1人残されて…3つの絶望を味わいながら私は歩き続けた…それは…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…!』

アポリアは絶望の中で生き続けた…それは絶望にのたうちながらその先にある希望を見ていたから…アポリアはようやくその答えに辿り着いた…それは「絶望の番人」を名乗っていたアポリアが希望を手に入れた瞬間だった…。

 

 

「………」

 

『私は希望を探し続けていた…だからこそ私は歩き続けた、絶望の中でもどこかで希望があると信じていたからだ…私はお前達とのデュエルでそれに気付いたのだ…ゾーン!君にも思い出してほしい!君が遊星達に抱いていた希望を!!』

 

「ゾーンが…私達に希望を…!?」

 

「どういう事だ…!?」

アポリアの言葉に遊星達は驚く…遊星達を抹殺しようとしたゾーンが彼らに希望を抱いていたという事に驚いていた…。

 

 

 

『君はサーキットを完成させる為に私をネオドミノシティに送り込み、さらにサーキットを完全にする為にアンチノミーを送り込み5D'sの成長を促した…だが、()()()()()()()()()()()()()()()?それは計画の妨げにしかならない事だ!…そして彼らはアーククレイドルを止めるまでに進化を遂げた!もしかしたら…その進化こそが君の望んでいた事じゃなかったのか!?』

 

「ゾーンがオレ達の進化を…望んでいた…!?」

 

『5D'sなら人類の未来を変えるほどの進化を成し遂げるかもしれない…そう思ったからこそ君はアンチノミーを遊星達のもとへ送った…人間の僅かな可能性に最後の希望を託して!…ならば…何故進化を成し遂げ、未来を託すに足る存在となった彼らを抹殺しようとする!?答えろ!ゾーン!!』

 

【…希望など…幻想に過ぎないのです…】

アポリアの言葉を聞いたゾーンはそう答える…希望など儚く崩れ去るモノだと…

 

『だが君はその希望を抱いていた…私はそれを君に思い出してほしいのだ!!…勝負だ…!ゾーン!!』

 

「待ってアポリア!そんな身体じゃ…!」

デュエルディスクを構えるアポリアに龍亞が叫ぶ…アポリアの身体は既にボロボロ…いつ壊れてもおかしくない状態だった…。

 

 

『少年…いや、龍亞…私は君の中に希望を見た…!』

 

「えっ…?」

 

『私はわかったのだ…君の成長、それを促した5D'sの絆こそが私の探し求めていた希望であると…その希望があれば…私はまだ戦える!!』

アポリアは龍亞を見る…その瞳には希望の光が宿っていた…。

 

「でも…!」

 

「やらせてやれ龍亞…!それが奴なりのケジメのつけ方だ…!」

アポリアを心配する龍亞をジャックが諭す…許されない事をしたアポリア…そのケジメをつける為の戦いに水を差してはならないと…。

 

 

 

 

【どうしても私と戦うのですか?ならばしかたがありませんアポリア…貴方から葬るまでです…!】

 

ズズズ…ガシャアアン!

 

「なにっ…!?」

 

「「「うわあぁぁぁ!?」」」

 

ゾーンの座していたスクラップの山が吹き飛ぶ…そしてその中から巨大な二本の腕が現れる!

 

「ど、どうなっちゃうの!?」

龍亞の動揺を他所に事態はさらに動く…別のゴミ山からカードホルダーが…さらに周りの山から巨大な石版のようなカード達が飛び出しデッキとなっていく…!

 

「あれが…ゾーンのデッキ…!?」

 

「デカすぎだろ!?」

ジャック達はその異質なデッキに驚愕を隠せない…

 

 

『見ていろ5D's…これがゾーンの強さだ!』

アポリアは友に希望を示す為に立ち向かう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシャン

 

 

 

 

『ガッ─!?』

 

 

「「「えっ…!?」」」

遊星達はその一瞬、何が起きたのか理解できなかった…アポリアの前に現れた赤い影が彼を蹴り飛ばしたのだ…。

 

 

「あ…アポリア!大丈夫!?」

アポリアの姿を見た龍亞が彼に駆け寄る…

 

『ぐっ…!?何故…何故邪魔をする!白波遊海!!これは私とゾーンの戦いだ!それを…!』

アポリアは自分を蹴り飛ばした張本人…遊海を睨みつける…!

 

「…悪いなアポリア、お前の役目はここまでだ…それにしてもひどいじゃないか…()()だろ?()()達は…!」

 

遊海…だった者は赤帽子を投げ捨てる…そしてその姿が変わっていく…赤いジャケットは白いロングコートに変化し目元を歪に割れた黒いバイザーが覆っていく…!

 

「えっ…!?なん、で…!」

 

「馬鹿な…お前は…!!」

 

 

『悪いな遊星…少し嘘をついた』

遊星の前には不敵に笑うラプラスの姿があった…。

 

 

 

 

【ゲイザー…いえ、我が友ラプラス…貴方は無事でしたか…】

 

『待たせたなZ-ONE、よく言うだろう?「ヒーローは遅れてやってくる」と』

正体を現したラプラスは遊星達の前に立ちはだかる…!

 

『改めて自己紹介をしよう…ゲイザーとは仮の名、我が真名はラプラス、ゾーンと共に破滅の未来を生き抜いた…最後の友だ』

 

「ゲイザー…いや、ラプラス!遊海さんは…翠さんはどうした!!あの人達に何をした!!」

遊星はラプラスに遊海達の行方を問いただす!

 

『…これを見ればわかるだろ?』

ラプラスは足下に投げ捨てた赤帽子を遊星達に向かって投げる

 

「あっ…ああ…!?」

龍可の手元に帽子が舞い落ちる…その帽子には乾いた血糊が付いていた…

 

「貴様…!キサマァァ!!」

 

「許さねぇ…絶対に!!」

ジャックとクロウは遊星に並び立つ…その目に強い怒りを宿して…!

 

『ああ…いい怒りだ…だが、まだぬるい!!』

 

 

ズン─!!

 

 

「「「ぐっ─!?!?」」」

 

「きゃ…!?」

 

「痛い…身体が…潰れそうだ…!」

 

「なんて、殺気なの…!?」

凄まじい圧力…殺気により遊星達は地面に押し付けられる…!

 

『ラプラス…!お前は…5D'sを…!?』

 

『葬る…それで未来は救われるだろう…』

アポリアの言葉に答えたラプラスはゆっくりと歩みを進める…

 

「ぐっ…!!(動けない…!ここまでなのか…オレ達の命運は…!?)」

遊星は拳を握りしめる…遊海を倒したラプラス…そんな男に勝つ手段は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…まぁ、オレがこんな選択をしなければの話だがな』

 

 

 

 

 

「えっ…?」

唐突に遊星達に掛かっていた圧力が霧散する…地面に膝をついていた遊星達が顔を上げる、そこには…

 

 

 

【…なんのつもりですか?ラプラス…!】

 

『見ての通りさ…オレとデュエルしようぜ?ゾーン』

遊星達を背に立つラプラスの背中があった…

 

 

 

 

「ラプラス…!?お前はオレ達の敵のはずだ…!なぜお前が…!」

遊星がラプラスへと問いかける…

 

『…オレもアポリアと同じだ、お前達に希望を見た…お前達になら未来を託せると思った…という理由ではだめか?』

遊星の問いにラプラスはそう答える…そしてゾーンへと顔を向ける

 

 

『ゾーン、お前をそこまで追い詰めてしまったのは…オレにも責任がある、オレが…お前を止める…!』

 

【あなたが「希望」という言葉を使うとは思っていませんでした…我々の中でもっとも深い絶望を経験したはずの()()から…!!】

ラプラスの言葉を聞いたゾーンから怒りを感じる声が発せられる…

 

『…取り戻したのさ、奴のおかげでな…』

 

【そうですか…ならば、貴方の希望を折りましょう…!善知の悪魔よ!】

 

『ああ、最期の決闘を始めよう…無限界帝!!』

ラプラスはデュエルディスクを展開する!

 

 

「ラプラス!……負けないで…!」

泣きそうな声でシェリーがラプラスに声をかける…

 

『…ありがとう()()()()()()()()…オレは…希望を繋ぐ…!』

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

『…!……!─』

 

 

誰かが…私を呼んでる…?

 

 

『起きろ…起きてくれ!翠さん!!』

 

「う…うぅ…?誰…?ブルー…ノ…?」

かろうじて目を開く…ぼやけた視界に特徴的な青い髪が目にはいる…

 

『……ボクはアンチノミー、そしてブルーノでもある…』

 

「……─アンチノミー!?あぐっ!?うぅ…!」ガバッ!

 

『お、落ち着いてくれ!ボクはもう敵じゃない!…君達と戦うつもりはないよ!』

アンチノミーの名前を聞いて翠は飛び起きるが…全身の痛みにうずくまってしまう…アンチノミーは優しくその身体を支えた…。

 

 

「そうだ…私、ゲイザーに攫われて…」

落ち着きを取り戻した翠はそれまでの事を思い出す…。

ゲイザーに誘き出された翠はゲイザーとデュエル…そして反則的手段で召喚された「創星神tierra」に敗北し人質になっていたのだ…。

 

「そうだ…遊海さんは!遊星君達は!?なんであなたがここにいるの!?」

 

『大丈夫、遊星はゾーンのもとに向かった…それよりも貴女にお願いがある…!彼らを治療してほしい…!』

 

「えっ…!そんな…遊海さん!みんな!!」

 

翠が辺りを見回す…アーククレイドルの部屋らしきそこは()()()()()()()()が全てボロボロになり隣では遊海が意識を失っている。

さらにアヤカがコアを黒く染めて墜落…トフェニは壁へとめり込み…メガロックは岩の身体が粉々に砕かれ、その瓦礫の上に金色の羽を散らしたフレアが倒れこんでいる…凄惨な光景だった…。

 

『ボクが来た時には既にこの状況だった…頼む、貴女だけが頼りなんだ…!』

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

【『デュエル!!』】

 

 

ラプラスLP4000

ゾーンLP4000

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『魔法カード「召喚士のスキル」発動!デッキからレベル5通常モンスター「クリフォート・ツール」を手札に加える!そしてレフトペンデュラムスケールにスケール1の「クリフォート・アセンブラ」を、ライトペンデュラムスケールにスケール9の「クリフォート・ツール」を魔法カード扱いでセッティング!』

ついに始まったラプラスとゾーンのデュエル…ラプラスの両隣に光の柱が立ち昇る!

 

 

「なっ…!?モンスターを魔法カード扱いで発動!?なんだよそのカードは!?」

見慣れないカードにクロウが驚きの声を上げる…!

 

「まさか…異世界のデュエルモンスターズ…!」

 

【力を隠していたのですね、ラプラス】

 

『ああ、だが…お前もそれは一緒だろう?「ツール」のペンデュラム効果発動!ライフを800払い、デッキから「クリフォート・アクセス」を手札に加える!…そしてオレはレベル2〜8のモンスターを手札から同時に特殊召喚できる!…我が身に宿る力よ!大いなる振り子を揺らし、その力を示せ!ペンデュラム召喚!手札より展開せよ!「クリフォート・アクセス」!「クリフォート・ディスク」!「クリフォート・シェル」!』

ラプラスの頭上に空間の孔が開く、そして巨大な機械達が姿を現した!

 

ラプラスLP4000→3200

 

アクセスATK2800→1800 ☆7→4

シェルATK2800→1800 ☆8→4

ディスクATK2800→1800 ☆7 →4

 

 

『モンスターの同時召喚だと…!?こんな召喚法があったのか…!?』

アポリアは初めて目にするペンデュラム召喚に驚く…。

 

『手札を1枚伏せ、ターンエンドだ』

ラプラスLP3200

アクセス シェル ディスク 伏せ1 (Pスケールアセンブラ・ツール) 手札1

 

 

 

 

【クリフォト…邪悪の樹をモチーフとしたデッキですか…ラプラス、確かにそのカードは私にとって未知のカード…しかし、その程度で私に勝てると思っているのですか?】

 

『さあな、やってみなくちゃ…わからないだろう?』

ゾーンの言葉にラプラスは軽く返す…

 

 

「(未知のカードを前にあの余裕…ゾーンはいったいどんなモンスターを使うんだ…?)」

未知のカードを前に余裕をみせるゾーンを遊星は警戒する…!

 

 

 

【私のターン、ドロー!】 

【「時械天使」を召喚!】

ゾーンの場に機械仕掛けの天使が現れる…だが、その攻撃力は…0!

 

「攻撃力0…!?ラプラスのカードをそんなカードって言ったのに…?」

龍亞が呆れたような声を上げる…

 

【バトル、「時械天使」で「クリフォート・シェル」を攻撃!】

 

「なに!?攻撃力0のモンスターで攻撃したら1800のダメージを受けるだけだぞ!?」

 

『打ち砕け!「シェル」!』

シェルの突進が時械天使を破壊する!

 

【手札より罠カード発動「愚者の裁定」!このカードは自分ターンに手札から発動できる、これにより私への戦闘ダメージを0にする】

 

「手札から直接罠だと!?」

 

「しかも無条件で!?」

ゾーンの前にバリアが現れダメージを無効化する…それを見たジャックとシェリーが驚きの声をあげる…手札から直接発動できる罠カードはBFシリーズや十代の使う「NEX T」などの数枚しか存在しない為、無理もないだろう

 

 

【さらに「時械天使」が破壊された時、フィールドに存在するモンスターを全て手札に戻す!】

 

「なにっ…!?」

3体のクリフォートモンスターがラプラスの手札に戻る…

 

「だが…ラプラスの場にはペンデュラムカードが残っている…あれがある限り、モンスターは何度でも出てくるぞ!」

遊星が戦況を分析する…しかし、それを尻目にゾーンはさらなる一手を打つ…!

 

【さらに手札から罠カード発動「魔術師の至言」…このターンに手札に戻ったモンスター1体につき300ダメージ…合計900ダメージを受けてもらいます】

 

『ぐっ…ああああ!!ガッ…!?』

 

罠カードから光線が放たれラプラスに直撃…ラプラスは鉄くずの山に叩きつけられる!

 

ラプラスLP3200→2300

 

 

「『ラプラス!!』」

 

『ぐっ…そう騒ぐなよ…まだライフは残ってる…!ライフがあれば…デュエリストは戦える…!』

 

「ラプラス…!」

身体をふらつかせながらラプラスは立ち上がる…

 

【私はカードを1枚伏せてターンエンド】

ゾーンLP4000

伏せ1 手札2

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『再び揺れろ…!大いなる振り子よ!ペンデュラム召喚!「ディスク」!「シェル」!』

再び2体の機械が現れる ATK2800→1800

 

『そして「シェル」「ディスク」の2体をリリース!現われろ!「クリフォート・アクセス」!』

赤いコアを持つ長い身体を持つ機械が現れる ATK2800

 

 

『「アクセス」の効果発動!相手の墓地のモンスターが自分の墓地のモンスターより多い時!その差✕300のダメージを与える!』

 

「待て!ゾーンの墓地には『時械天使』だけだ!お前の墓地には2体のモンスターがいる!ダメージは与えられない!」

 

『残念だが…不正解だ遊星!()()()()()()()()()()()()()()()

アクセスから放たれたカミナリがゾーンにダメージを与える!

 

【…!】

ゾーンLP4000→3700

 

『そしてオレは同じ数値分、ライフを回復する』

ラプラスLP2300→2600

 

 

「何が起きたんだ…!?確かに2体のモンスターは墓地へ行ったはず…!?」

 

「フィールドには『次元の裂け目』のような除外できるカードはないはずよ…?」

不可解な出来事に遊星達は困惑する…

 

『答え合わせはまた後だ…バトル!「アクセス」でダイレクトアタック!』

アクセスの触手がゾーンに迫る!

 

【僅かなダメージを与えたぐらいでいい気にならない事です!手札から罠カード発動!「女教皇の錫杖」!】

 

「また手札から罠だと!?汚ねぇぞ!!」

 

「本来なら伏せてから発動する罠を手札から…戦略がまったく読めん…!」

ゾーンの反則じみたプレイングに遊星達は困惑する…。

 

 

【このカードは自分フィールドにモンスターがいない時モンスターの攻撃を無効にしてバトルフェイズを終了させ、相手に500ダメージを与える!】

 

『っ…ぐあぁっ!!』ビシャーン!

罠カードが攻撃を受け止めラプラスに稲妻が直撃…ラプラスは地面に膝をつく…

 

ラプラスLP2600→2100

 

『はぁ…はぁ…!!』

 

【その程度ですかラプラス…ならばもう止めなさい、未来には希望などない、あるのは絶望だけなのですから…それは貴方が良く知っている事のはずです…】

膝をついたラプラスにゾーンは語る…しかし…

 

『まだ…負ける訳には…いかない…!オレは見たんだ…新たな希望、を…新たな未来を導く「光」を…!オレはカードを1枚伏せてターンエンド、ペンデュラムスケールの「アセンブラ」の効果…!リリースしたクリフォート1体につき1枚ドローできる!2ドロー!』

ラプラスLP2100

アクセス 伏せ2 (アセンブラ・ツール)手札3

 

 

 

【まだやるというのですね…ならば貴方を叩き潰すまで…!】

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【永続罠発動「虚無械アイン」!自分フィールドにモンスターが存在しない時、レベル10以上のモンスターを攻撃力を0にしてリリース無しで召喚できる】

 

「なっ…!リリース無しでレベル10を召喚!?」

 

【現れよ!「時械神メタイオン」!】

金色の輪を通り抜け、赤い鎧を纏った鏡が現れる…そしてその鏡に老人の顔が映し出される!ATK 0

 

 

『あれは…ゾーンのエースモンスター…!ついに出てしまった…!!』

 

「えっ…あれがゾーンのエースなの!?」

 

「攻撃力0のエースモンスター…どんな効果を持っているんだ…!?」

突如現れたゾーンのエースモンスターを遊星達は警戒する…!

 

『リバース罠「激流葬」…発動!フィールド上のモンスターを全て破壊…する!!』

 

「上手いぞ!罠カードでエースモンスターを破壊だ!」

 

『無駄だ…ゾーンの「メタイオン」は戦闘・効果での破壊を受けない…破壊無効効果を持っている!破壊されるのはラプラスのモンスターだけだ!!』

 

「「「なんだって!?」」」

フィールドを洪水が洗い流すが…メタイオンは不思議なバリアで破壊を免れる…

 

【よく回避しましたねラプラス…「メタイオン」は攻撃の後に相手モンスターを手札に戻し1体につき300ダメージを与える効果がありましたが…】

 

「なっ…!?なんて強力な効果なんだ…!」

 

『フッ…オレを…あまり甘く見るなよ、ゾーン…!』

遊星はメタイオンの持つ効果に戦慄していたが…ラプラスはこともなげに返す…

 

【まだ余裕はあるようですね…しかし「メタイオン」は全能の神…誰にも倒す事はできない、ターンエンド】

ゾーンLP3700

メタイオン 虚無械アイン 手札1

 

 

 

『全能の神…か、デュエルモンスターズにおいて「完璧」なカードなんてない…それを教えてやる…!』

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『…三度揺れろ!大いなる振り子よ!ペンデュラム召喚!!()()()()()()()()()()現れろ!「シェル」「アクセス」「ディスク」!!』

 

「なに─!?」

 

【エクストラデッキからですと…!?】

再び空間の孔から3体のモンスターが帰還する! ATK1800 1800 1800

 

「うそ…!?エクストラデッキからどうやって…!?」

 

『ペンデュラムモンスターは魔法とモンスター、2つの特徴を併せ持つ特殊なモンスター…こいつらはフィールドから墓地に送られる代わりにエクストラデッキに表側表示で送られる!…それが墓地にモンスターのいなかった答えだ…』

龍可の疑問にラプラスは答える…

 

「これが遊海さんが警戒したデュエリストの力…!」

 

『ゾーン…懐かしいモンスターを見せてやる!オレは3体のモンスターをリリース!…輪廻を司る大いなる樹…その守護者よ!永き時を経て今再び顕現せよ!現れよ!レベル10「アポクリフォート・キラー」!!』

3体のモンスターが消え去る…そしてその数倍の面積を持つ巨大なる要塞が降臨する! ATK3000

 

 

「三幻神と同じ召喚条件のモンスターだと!?」

 

「でけぇ…!」

ジャックとクロウは現れた要塞に後ずさる…

 

「待って…!あのモンスターは…!?」

 

「遊海さんのパートナー…アヤカと同じモンスターだ!間違いない!!」

 

「『「「なんだって!?」」』」

遊星と龍可の思わぬ言葉にジャック達は驚きの声をあげる…!

 

 

「いったいどうなってんだよ…!?なんでラプラスが遊海と同じモンスターを…!?」

 

「……それは…当然の事よ…だって…ラプラスの正体は…!」

シェリーはラプラスを見つめる…

 

『…これ以上正体を隠すのは、無理そうだな…』カチャ

ラプラスは自ら黒の仮面を外す…

 

「えっ…!?ゆう、み…?」

 

「馬鹿な…遊海までも敵だったというのか!?」

現れた素顔に5D'sのメンバー達は驚く…ラプラスの素顔は黒と金のオッドアイと隈を除き遊海とそっくりだったのだから…。

 

『…違うさ、オレは遥か未来の…白波遊海の可能性の一つだ…オレは奴とは別人さ』

 

「なっ…!?あ…」

あまりの事に遊星は声を出す事ができない…

 

「ラプラスは遊海の未来の姿…遥か未来で人類の滅亡を最初から見届けた『観測者』…それがラプラスの正体よ…私もそれを知った時は…とても驚いたわ…」

シェリーはゾーンにラプラスの記録を見せられて知っていたのだ…。

 

『…デュエルを続ける、オレの話なんて…お前達には関係ない事だ…「キラー」の効果発動!相手の手札、フィールドのモンスター1体を相手が選び()()()()()!あくまでも「破壊」じゃないから「メタイオン」では無効化できない!』

 

『強力な効果だ!これなら「時械神」の弱点を突ける!!』

 

「あれが…遊海さんのエースの力か…!」

発動したキラーの効果に遊星はラプラスの…遊海の強さを再認識する…!

 

【確かに強力な効果ですが…相手に選ばせる事が弱点となります…!私は手札の「時械巫女」を墓地へ】

 

『躱されたか…オレはカードを2枚伏せてターンエンド、「アセンブラ」効果で3ドローだ』

ラプラスLP2100

キラー 伏せ3(アセンブラ・ツール)手札4

 

 

 

 

『思い出すよなゾーン…世界を救う為にキラーに乗り世界を駆け回ったあの日々を…人々を助け、機械兵を倒し続けた…』

 

【しかし…それも全て徒労に終わりました、世界は滅んだ…貴方もわかっているはずです…長年連れ添った彼女を失った貴方なら…】

 

『…もう彼女はいない、だが…オレは取り戻した希望を手放すつもりはない…!』

 

【やはり…貴方は頑固ですね…私がもう一度貴方に絶望を教えてあげましょう…!】

 

 

 

 

【私のターン…ドロー!私のスタンバイフェイズに「メタイオン」はデッキへと戻ります】

 

「や、やった…!『メタイオン』がいなくなった!これならラプラスが勝てる!」

 

「待て龍亞!何かが変だ!」

デッキに戻ったメタイオンを見て喜ぶ龍亞…しかし、それは絶望の始まりに過ぎなかった…!

 

【私は「虚無械アイン」の効果発動…()2()()()()()「時械神カミオン」を召喚!】

ゾーンの場に茶色の重厚な鎧を纏った時械神が現れる!

ATK0

 

『馬鹿な…!時械神は「メタイオン」だけではなかったのか!?』

ゾーンの事をよく知るはずのアポリアが驚愕する…時械神は…

 

【時械神は無と無限と無限光から生まれ、生命そのものを司る…互いに絡みあう()()の神からなる全能の神…「メタイオン」はそのうちの1体に過ぎないのです】

 

『なっ…!?』

 

「『メタイオン』みたいなのが…10体もいるの!?」

 

「そんな…!?ラプラス!!」

 

『………』

動揺する遊星達を前にラプラスはゾーンを真っ直ぐ見つめ続ける…

 

 

【バトル、『カミオン』で「キラー」を攻撃…『カミオン』は戦闘・効果では破壊されず、お互いに受ける戦闘ダメージは0になる】

 

『迎え撃て…!「キラー」!』

《了、「カミオン」に対して集中砲火を行います》

 

カミオンの放った無数の岩礫がキラーのレーザーで撃ち落とされる!

 

【「カミオン」の効果発動、「キラー」をデッキに戻し貴方に500ダメージを与えます】

 

《…申し訳ありません…マスター…》

 

『ぐうっ…!?…謝るのはオレ、だ…悪かったな…キラー…』

キラーがデッキに戻され、カミオンの岩礫が遊海に直撃する!

 

ラプラスLP2100→1600

 

 

【私はこれでターンエンド】

ゾーンLP3700

カミオン アイン 手札0

 

 

 

 

「ああ!ラプラスのライフが!!」

 

「まずいぞ…!モンスターで攻撃したらまたダメージを受けてしまう…!」

遊星達は新たな時械神を前に動揺するが…ラプラスは笑っていた…。

 

『……よく見ておけ遊星…ゾーンの力を…そして対策を練れ…!』

 

「えっ…!」

 

 

 

 

『オレのターン…ドロー!!』

『揺れろ…魂のペンデュラム!未来を繋げ!光のアーク!!ペンデュラム召喚!!エクストラデッキから現われろ!「シェル」「ディスク」「アクセス」!』

再び3体の機械が現れる ATK1800 1800 1800

 

『オレは「ツール」のペンデュラム効果を発動!800ライフを払い…今一度現われろ…我が相棒!「アポクリフォート・キラー」!』

再び要塞が顕現する! ATK3000

 

ラプラスLP1600→800

 

『「キラー」の効果発動!消え去れ!『カミオン』』

 

【むっ…!?】

カミオンが粒子となって消滅する!

 

『受けてみろゾーン!これがオレの…()()の一撃!「キラー」でダイレクトアタック!デストロイ・キャノン!!』

 

《了、主砲展開…発射!!》

虹色の極光がゾーンに直撃…ゴミ山へと叩きつける!

 

【ぐぅ…!?】

ゾーンLP3700→700

 

「ゾーンのライフを大きく削った!これならラプラスの勝ちだ!」

 

『待て…!ラプラスの様子がおかしいぞ!』

 

 

『っ…ターン、エンド…!』ジジッ…

ラプラスLP1600

キラー 伏せ3 (アセンブラツール) 手札3

 

 

 

 

『…もう、限界か…ゴボッ…!!』ジジッ…ボタ…ボタタッ…

 

「なっ…ラプラス!!」

ターンを終えたラプラスは膝をつく…そして全身がまるで幻影のように揺らぐ…そこにいたのは…全身から血を流し()()()()()()()ラプラスの姿だった…。

 

 

 

「そんな…なんで…なんでそんなボロボロなの!?」

 

「見るな!龍亞!龍可!」

ジャックが子供達を庇う…

 

『悪い、な遊星…オレは…嘘をついた…オレは遊海に負けた…奴は、生きてる…こうしてオレがいるのは…奇跡みたいなもんだ…』

 

 

 

 

 

 

Sideラプラス

 

 

 

 

『…ゴホッ……そうか…、オレは負けたのか…過去の自分に…新たな希望に……』

 

決闘が終わり、ラプラスは意識を取り戻す…周囲は荒れ果て、身体も満身創痍だった…。

 

 

 

『奴、め…オレにトドメを刺さないとはな…、だから甘いというんだ…ぐぅ…!!』

ラプラスは痛む身体を押して立ち上がる…

 

『ゾーン…いま、行くぞ…オレは…お前の結末を…見届けなければ……っ!』

ふらつきながら歩みを進めるラプラス…そこで目にしたのは2人で抱き合うように倒れ、意識を失った遊海と翠の姿だった、2人はお互いに血濡れで死んだように眠っている…。

 

 

『…大方、あの変身で体力を使い果たしたか………そうか、そういう事もできるか…半端者のオレに…相応しい役目だ…』 

 

何かを思いついたラプラスは2人に歩み寄り遊海へと手を伸ばす…

 

 

 

ピシュン! キィン! ガガガ! ボゥ!!

 

 

 

 

『ガハッ…!?これ、は─…』

 

遊海に手を伸ばしたラプラス…その身体をレーザーが貫き、身体を魔法陣が拘束、さらに岩石が全身に突き刺さりその周りに炎の壁が現れる…!

 

 

 

《マスターには…指1本触れさせません…!!》

 

《然り、遊星殿達が使命を果たすまで…》 

 

《お前にはここにいてもらうぞ…!》

 

『奴の、精霊達か…!』

 

ラプラスを包囲するようにアヤカ・トフェニ・メガロック・フレアが現れる!

 

 

《ラプラス、貴方の肉体は既に限界のはず…多少手荒ですが拘束させてもらいます…!》

 

『ゴバッ…!何が「多少」だ…殺る気満々じゃねぇか……だが、オレを…甘く見るなぁァッ!!』

 

バキーン!!!

 

《っ!?力任せにあの拘束を─!?》

 

ラプラスは力任せに魔法陣と岩を砕き、炎の壁を振り払う!!

 

『伊達に…400年…生きてないんだよ…!』

 

《…アヤカ殿、やはり彼奴は一筋縄ではいきませんな…!》

 

《そのようですね…総員戦闘態勢!イリアステル滅四星…ラプラスを無力化します!彼もマスターと同じく「不死身」です!気を抜かないように!!》

アヤカは本体であるアポクリフォート・キラーに変化する!

 

《すまない…未来の遊海よ、遊海を…これからの未来を守る為にお前を倒す!!》

 

【キュアアアアア!!!】

 

メガロック・フレアも元の姿に戻りラプラスを睨みつける!

 

『はっ…太陽神に神の機械、エジプトの神龍とメガロックドラゴンか…無茶にも程があるな……なぁ、オレがただここを通り抜けたいと言ったら…通してくれるか?』

 

《ありえません!マスターを何度も攻撃したお前を…信用できるはずがない!》

アヤカがラプラスの提案を却下する!

 

『…同じ「キラー」でも…こうも違うのか…ならば…押し通る!!』

ラプラスは精霊達を睨みつける…そして部屋は閃光と爆発に包まれた…。

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

【っ…そん、な……】ドスーン…

 

『悪い、な……オレの、勝ち…ゴボッ!』

 

フレアが床へと崩れ落ちる…トフェニもメガロックも既に倒され…アヤカも墜落し黒煙が部屋に漂っている。ラプラスは1人で精霊達を相手取り、その全てを倒したのだ…。

 

 

『これで、オレの役目を、果たせる…ぐっ…!!』

 

ただし、ラプラスも無事ではない…既に身体中に無数の穴が空き、左腕と右足は千切れかけ全身血塗れ…並外れた精神力でラプラスは意識を保っていた

 

 

《あなたは…何、を…!》

 

小鳥状態になったフレアは薄れゆく意識でラプラスに問いかける

 

『オレは…オレの最期の役目を…果たす、だけだ…』

 

ラプラスは欠けた剣を杖代わりに遊海へと歩み寄る…

 

 

 

『…コレ、借りてくぞ…』

 

ラプラスは遊海の赤帽子を取り上げ頭に被る…そしてその姿は赤帽子に赤ジャケット…遊海と同じ姿に変化する…。

 

《なっ…!?》

 

『…悪かったな、お前のおかげでオレは救われた…お前の持つ「希望」…未来の英雄に伝えてやれ…じゃあな、白波遊海…新たな伝説を紡ぐ者よ…』

 

ラプラスは…シラナミユウミは歩みを進める…自分の犯した罪を背負い、未来に希望を繋ぐ為の贖罪へ…

 

 

 

《マスター…どうか、ワタシも共に…》

 

『っ…その、声は…』

ラプラスは聞こえた声に足を止める…それは大昔に自分が殺したはずの相棒の声だった…。

 

『そうか…そこにいたのかレイン…いや、「キラー」…共に来てくれるのか?……相棒…』

 

 

 

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラプラス!サレンダーを!そうすれば…!」

 

『それは…できない相談だ…オレは、友に剣を向けた…それに…サレンダーは…決闘者の恥だ…!』

遊星の言葉を退けたラプラスは光を失った瞳でゾーンを見据える…

 

 

『ゾーン…本当に未来を変えたいなら…ここでオレを殺せ…!』

 

【…何を、言っているのですか…ラプラス!】

初めてゾーンの言葉が揺れる…

 

『お前が…本当に未来を救いたいなら…その覚悟を…オレを超える事で証明しろ…オレはな…()()()()()()()()

ラプラスは手札をゾーンへと見せる…そこには「クリフォート・アーカイブ」「クリフォート・ゲノム」「幽鬼うさぎ」の3枚があった…。

 

『そして伏せカードには「スキルドレイン」、「機殻の再星」…両方モンスターへの効果無効カードだ』

 

【ラプラス…!貴方という男は!!】

 

『ゾーン…お前はまだ迷っている、なら…その迷いを…オレと共に捨てろ…!』

ラプラスはゾーンを睨みつける…その心を見透かすように…

 

 

 

 

 

【私のターン…!!ドロー!!】

【「虚無械アイン」の効果発動!現われろ…「時械神サンダイオン」!!】

ゾーンの場に巨大な雷を纏う時械神が現れる! ATK4000→0

 

 

「やめろ!ゾーン!!ラプラスは…ユウミさんはお前の友なんだろう!?」

 

『…それでいい、お前の覚悟…見せて貰ったぞ…』

 

【バトル…!『サンダイオン』で『アポクリフォート・キラー』に攻撃!『サンダイオン』はバトル終了後に相手に4000ダメージを与えます…眠りなさいラプラス…救済の夢の中で…!!】

 

「やめろぉぉぉ!!」

遊星の静止も虚しく…サンダイオンは雷霆の槍を放つ、槍は無抵抗のラプラスの胸を貫き…爆発した…。

 

 

ラプラスLP0

 

Z-ONE WIN…

 

 

 

 

 

 

『ゴボッ……ぁ』

 

「『「ラプラス!!!」』」

決闘の決着が着きラプラスは崩れ落ちる…そこへ遊星、シェリー、そしてアポリアが駆け寄る…

 

 

「ラプラス!だめよ!!しっかりして!!」

 

『──…お前は……そうか、シェリー…シェリー・ルブランか…ようやく…思い出した、永く生きていると…忘れ、ぽく…なっ、ゴボッ…!』

 

「ラプラス!!ダメ!死んじゃだめ…!」

シェリーがラプラスに縋り付く…

 

『…そういえば…馬鹿な約束をした事が、あったな…すまないが諦めて…くれ、俺には…待ってくれている…大切な人が…いるんだ…』

ラプラスは…ユウミは血に濡れていない右腕でシェリーの頭を撫でる…その目は両方とも黒色になっていた…。

 

 

『ラプラス…!君はどうしてこんな事をした!君の考えはわかる!遊星にゾーンの力を教えようとしたのだろう!?ならばそれは私の役目だ!君はまだ生きている!それなのに何故!!』

アポリアが悲痛な声でユウミへと問いかける…

 

『何を…言ってるんだ…アポリア…例え、お前達が人間ではなくロボットでも…オレの友である事に…変わりはない…オレは…もう失いたくなかったんだ……これを、受け取ってくれ…』

そういったユウミは厳重に保護されたデータチップを手渡す…

 

『このチップは…』

 

『パラドックス…の、記憶チップだ…彼だけは、救えなかった…お前が…持っていて、くれ』

 

『お前は…お前は何故…1人で抱え込む…!この馬鹿者…!!』

 

 

『……不動遊星、1つだけ…俺の問いに…答えてくれ…』

 

「っ…なんですか、ユウミさん…!」

遊星はユウミの言葉に耳を傾ける…

 

『…オレは、未来を救う為にお前達にとっての「悪」を為した…しかし、それは未来にとっての…「善」となる…はずだった……遊星…オレのしてきた事は…なんだったんだろうなぁ…』

ユウミは遊星へと問いを投げかける、その目からは静かに涙が流れている…。

 

「……貴方は…未来を切り拓こうとしただけだ、貴方のした事は大きな罪だ…それでも貴方は…オレ達に希望を繋いでくれた…!決して無意味なんかじゃない!!」

遊星はユウミの言葉にそう答える…ラプラスは彼なりに未来を救おうと足掻いた、それは最終的に遊星へ残された希望となったのだ…。

 

『ありがとう遊星、やはり…お前は変わらないな…遊星、未来を導くお前達に未来を…希望を託す…』

ラプラスは右手からボロボロの金色の卵…『千年玉』を出現させる…

 

「千年…アイテム…!?」

 

『世界を…未来を…救ってくれ…!』

 

 

パキン─!

 

 

千年玉がユウミの手で粉々に砕け散る…その金色の粒子は遊星号に吸収され赤いオーラと翼が現れる!

 

「遊星のDホイールから翼が…!」

 

「ユウミさん!!」

 

『ラプラス!!』

 

 

『すまない…我が友よ………先に、いく……やっと逢える…な──ミド、リ…』

 

最後に愛した女の名を呟いたラプラス…未来のシラナミユウミは柔らかな笑みを浮かべながら長い…永い眠りに落ちた、未来への希望を夢に見ながら…

 

 

 

 

 

 

【………】

 

「勝負だ、ゾーン…!ユウミさんの残したものは…無駄にはしない!!」

遊星は静かに立ち上がりゾーンへと宣戦布告する…!

 

【いいでしょう、残された時間も残り僅か…不動遊星…これが最後のデュエルです…!】

 

ゴゴゴゴゴゴ…

 

「なんだ!?」

ゾーンの言葉と共に遊星達のいる広場の屋根が開いていく…!

 

「あれは…ネオドミノシティか!?」

 

「なんで逆さまなの…!?」

 

『逆さまのアーククレイドル自体が重力を持っているのだ…』

龍可達の疑問にアポリアが答える…そして変化は終わらない、アーククレイドルの各所から光が放たれ空中へと映像が投影される…その映像にはゾーンが映し出されていた…。

 

 

 

 

【初めまして…ネオドミノシティの皆さん、私はゾーン…このアーククレイドルの主です】

ゾーンは映像を通してネオドミノシティの住民達へ語りかける…。

 

【まもなく、ネオドミノシティはアーククレイドルによって破壊され…新たな未来が始まります…皆さんはその生き証人となるのです…!】

ゾーンはデュエルの様子をあえて公開する…遊星の敗北…それによって人々に絶望を与え、未来を変える為に…。

 

【デュエルフィールドはこの天空…さぁ、来るのです不動遊星…ラプラスが力を与えたそのDホイールで…!】

 

 

 

 

「えぇっ…!?空でデュエルをする!?」

 

「そんな事できるの…!?」

前代未聞のライディング…否、フライングデュエルに龍亞兄妹は困惑する…。

 

「でも…ゾーンを倒さないとアーククレイドルは止められない…!」

 

「奴をぶっ倒さなきゃ…オレ達は未来を勝ち取れねぇ!」

 

「ああ…オレは絶対にゾーンに勝つ!!」

遊星は拳を握り締める…!

 

 

 

流星突撃(シューティング・アサルト)ォ!!」

 

 

 

ガガガ…ドーン!!

 

《キュオオオン!!!》

 

『な、なんだ!?』

 

「あれは…!閃光竜!?遊海さん!翠さん!」

地響きと共に床が吹き飛ぶ…そして床をぶち抜いた閃光竜が遊星達のもとへ降り立った…!

 

 

「お前達!無事か!!ラプラスは何処だ!!!」

 

「遊星君!みんな!!」

 

『遊星!!』

 

「えっ…!?ぶ、ブルーノ!!生きていたのか!!」

遊星は驚く…閃光竜から降りて来たのは遊海と翠だけではなかった…ブラックホールに飲まれ消滅したはずのアンチノミーが現れたのだ。

 

『ああ、あんな別れ方をしたのに…生き残ってしまったよ…』

 

 

 

 

Sideアンチノミー

 

 

 

 

『(遊星…ゾーンの事は頼んだよ…ボクの大切な友を…)』

 

遊星をブラックホールから脱出させたアンチノミー…ブルーノは静かに最期の時を待っていた…。

 

『でも…もう一度みんなに…会いたかったなぁ…』

それはブルーノのささやかな願い…それを聞き届ける奇跡が起きた…

 

《プログラム起動…カードを排出します…》カシュ!

 

『このカードは…?』

壊れかけたデルタイーグルから排出されたカード…それは「ホワイト・ホール」だった。

 

『なんでこんなモノが…うわっ!?』

ホワイトホールのカードが発光する…そしてアンチノミーはその場から消え去った…。

 

 

 

 

 

『ぐっ…ここは…!?』

アンチノミーが気付くとそこはアーククレイドルの部屋の一つだった。

 

『ボクは…生き残ったのか…?なら、行かなくちゃ…遊星のところへ…!』

そしてアンチノミーは遊星達のもとへ歩きだした…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

『そんなこんなでアーククレイドルを進むうちに気絶していた2人を見つけて連れてきてもらったんだ…』

 

『そんな事が…!まさか、ラプラスが…!?』

アポリアは1つの可能性に気が付く、ユウミは「パラドックスだけは」救えなかったと言った…つまり、何らかの手段でアンチノミーを救う手段を残していたのではないかと…。

 

 

「待て…なんでアポリアが生きている…!?お前はゾーンとデュエルを…!」

そして驚いたのは遊海も同じだった…本来なら死ぬはずのアポリアが生きている…それは遊海が動揺するのに充分な理由だった…。

 

「ラプラスは…死んだわ…、アポリアを庇ってゾーンとデュエルを…」

 

「そんな…!」

翠はシェリーの言葉でそれに気づく…シェリーに抱えられ眠りについたラプラスの姿に…

 

「!!…貴様!!貴様!!!何を寝たフリしてやがる!!!」

 

「きゃ…!?」

 

「遊海さん!!」

遊海はシェリーを押し退けラプラスの身体を揺さぶる…

 

 

「起きやがれ!許さねぇぞ!!お前は…!お前は!!!」

 

「遊海さん!もうやめて!!もう…ラプラスは…未来のユウミさんは…!」

 

「馬鹿野郎…!この大馬鹿野郎が─!!!」

遊海の叫びがアーククレイドルに木霊する…天を仰ぎ涙を流す遊海…その瞳に怒りは無い、あるのは後悔と悲哀のみ…彼は溢れんばかりの涙と共にラプラスの死を悼んだ…。

 

 

 

「遊海さん…オレは勝ちます…!希望を託してくれたもう1人の遊海さんの為に…!!」

 

「…わかった…必ず勝て、遊星…俺がしてやれるのはこれくらいだ…『ディアンケト』…!」

遊星からラプラスの最期を聞いた遊海は落ち着きを取り戻し、遊星を全回復させる…そこにジャックが歩みよる…。

 

「…受け取れ、遊星…!俺の思いをお前に託す!」

 

「ジャック…!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を…!」

そして仲間達は自分の魂…シグナーの竜を遊星へと託す!

 

 

「みんなの思いは受け取った…!未来を必ず勝ち取ってみせる!!」

そして…希望を託された遊星はゾーンのもとへと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

「…アポリア、お前達の墓所は…どこにある…」

 

『…アーククレイドルの最下層、お前達が入ってきた辺りだ、それを聞いてどうする…』

遊星を見送った遊海はアポリアに問いかける…

 

「この馬鹿を眠らせてやらなきゃな…それは…オレのするべき役目だ…」

遊海は龍可から返してもらった赤帽子を被り直す…。

 

『遊星のデュエルを見なくていいのかい?』

 

「俺は遊星を信じてる…だから…俺は行くんだ」

遊海はラプラスを抱き抱える…

 

「遊海さん…私も一緒に行きます」

 

「…わかった」

翠も遊海と共にその場を離れていった…。

 

 

 

 

 

 

長き戦いを経て…ついに未来を懸けた最終決戦が始まる…!



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最終決戦!無限界帝Z-ONE─もう1人の英雄 集いし願い─

お久しぶりです!S,Kです!

投稿が遅れてしまってすいません!予定がたてこんでいたのと、アイデアが煮詰まってしまった上にクリスマスやらアトランティスへ行っていました!

ついに始まったゾーンとの最終決戦…全ての因縁はここに収束する…!

それでは最新話をどうぞ!!


「待たせたな…ゾーン!!」

 

ラプラスとの別れを経て…希望を託された遊星はネオドミノシティの空を赤き翼で駆け抜ける…ついにゾーンとの最終決戦が始まる…!

 

 

【不動遊星…これまで貴方は自分の力で未来を切り開いてきたつもりかもしれませんが…全ては私の敷いたレールの上を走ってきただけの事…貴方にとって私は「神」にも等しい…】

 

「お前が神だと?」

 

【そう…我々が起こしたゼロ・リバースにより貴方達の人生は大きく変わった、孤児となりサテライトに暮らし新たな飛躍として挑んだWRGP…しかし、その勝利さえもこのアーククレイドルを呼び出す手段に過ぎなかった】

 

「…オレ達はお前の掌の上で生きてきたというのか?」

 

【わかりましたか?私が貴方の神であるという意味が…貴方は…私に逆らう事はできないのです】

ゾーンは遊星へと定められた「運命」を告げる…だが、その言葉を聞いた遊星は強い闘志を秘めた瞳でゾーンを睨みつける!

 

 

「たとえオレ達が走ってきた道がお前の敷いたレールの上であったとしても…その上を走ってきたオレ達の『思い』は本物だ!たとえ神が相手でもオレはそれを乗り越えてみせる…未来は!この手で必ず切り開く!!」

 

【…いいでしょう、ならば言葉は不要…かかってきなさい不動遊星!!】

 

「いくぞ…ゾーン!!」

 

そしてついに…未来を変える為の決闘が始まった…!

 

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

デュエルダイジェスト 遊星対Z-ONE

 

 

 

 

 

【私のターン、ドロー!神の力を思い知るがいい…手札から「時械巫女」を特殊召喚!このカードは自分の場にカードが存在しない時に特殊召喚でき…天使族をアドバンス召喚する時に2体分のリリースになる!】

 

「なにっ!?」

 

【私は「時械巫女」をリリース…「時械神メタイオン」を召喚!】

ゾーンは先攻1ターンで赤き鎧の時械神、メタイオンを召喚する!

 

【私はカードを伏せ、ターンエンド…さぁ、貴方のターンです…貴方に未来を変える力が本当にあるというなら私を倒してみせなさい!】

 

「(時械神はあらゆる手段で破壊されない…しかも『メタイオン』は戦闘後に相手モンスターを手札に戻してダメージを与える効果がある…なら…!)オレのターン!ドロー!…よし…!」

時械神の効果を確かめながら遊星は攻略法を考え…実行する!

 

「相手の場にモンスターが存在し、自分の場にモンスターがいない時!『ダブル・デルタ・ウォリアー』は特殊召喚できる!さらに!手札を2枚墓地に送り『ビック・イーター』を特殊召喚!そして墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』は自分の場にチューナーがいる時に特殊召喚できる!さらに『デブリ・ドラゴン』を召喚!効果により墓地の攻撃力500以下のモンスター『クリア・エフェクター』を特殊召喚!!」

 

 

『凄まじい展開力だ…!モンスターを5体を一度に召喚するとは…!』

 

「すごいでしょ!アポリア!あれが遊星の本気なんだ!!」

 

「ああ、遊星の奴…最初から全力全開だぜ!」

後に「不動性ソリティア理論」と言われる天運と展開力、それを遺憾なく発揮する!

 

 

「みんなから託された『シンクロ』という名の絆の力…使わせてもらう!!オレはレベル6の『ダブルデルタウォリアー』にレベル2の『ビックイーター』をチューニング!」

 

キィン─!

 

「これは…!いけ!遊星!これがオレ達の絆だ!」

クロウの痣が遊星の想いと共鳴し光輝く!

 

「「黒き疾風よ…秘めたる思いをその翼に現出せよ!!シンクロ召喚!舞い上がれ!『ブラック・フェザー・ドラゴン』!」」

仲間との絆を背負い、黒翼の竜が舞い上がる!

 

 

「さらに!レベル2の『ボルトヘッジホッグ』とレベル2の『クリアエフェクター』にレベル4の『デブリドラゴン』をチューニング!」

 

キィン─!

 

「むっ…!受け取れ遊星!我が荒ぶる魂を!!」

クロウに続きジャックの痣も輝きを放つ!

 

「「王者の鼓動!今ここに列を為す!天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!」我が魂!「『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」」

絶対的力を持つ悪魔竜が咆哮を轟かせる!

 

 

「高レベルのシンクロモンスター2体を1ターンで召喚するなんて…!」

 

『これが遊星の…いや、チーム5D'sの絆の力なんだ!』

遊星の隣を2体のドラゴンが追走する…シェリーはその様子に驚き、アンチノミー…ブルーノは絆の力に目を輝かせる

 

「いけ!遊星!!」

 

「オレ達の力でゾーンを倒すんだ!」

 

「ああ!ゾーン!オレの全てをぶつけて…お前に勝つ!!」

ジャック達の声援を受けて遊星はゾーンを睨みつける…その時、シティでも大きな変化が起きていた…。

 

 

 

 

Sideシティ

 

 

『ネオドミノシティの皆さん!今、不動遊星はこの街を守る為にゾーンと戦っている!彼の気持ちを無駄にしない為にも決して立ち止まってはいけません!!今から私が皆さんの目となり耳になり実況を行ないます!だから安全に避難を続けてください!!』

 

 

「この声は…グランプリのMCか?粋な事するじゃねぇか…!」

シティに残り避難民を誘導していた城之内は街中に響き渡る声に耳を傾ける…その声はWRGPを実況していたMCのものだった。

彼は一度は避難したもののゾーンと遊星の決闘の始まりを見て実況魂に火が付き…さらに住民達がデュエルに見惚れて避難が遅れないように最終決戦の実況をかってでたのだ…。

 

『さぁ!不動遊星は「レッドデーモンズドラゴン」と「ブラックフェザードラゴン」を従えてどう攻撃に出るのか〜!?』

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

【やはり現れましたか、赤き竜の下僕達…ですがシンクロモンスターを何体召喚しようと状況は一向に変わりませんよ?】

 

「…たしかに『時戒神』はバトルでも効果でも破壊されずにダメージも受けないわ…!」

 

「そして『メタイオン』はバトルの後に相手フィールドのモンスター全てを手札に戻して1体につき300ダメージを与える効果がある…その効果がある限り遊星は攻撃する事ができない…!」

ゾーンの言葉を聞いたシェリーとアキがメタイオンの効果を再確認する…。

 

 

『「時戒神」を突破するにはラプラスの示したように効果を無効にするか…何らかの方法で破壊を介さない除去をしなければならない…だが…!遊星の場には…』

 

「いるのは我が魂たる『レッドデーモンズドラゴン』とクロウの『ブラックフェザードラゴン』のみ…このままでは…」

 

「オレのかわいい『ブラックフェザードラゴン』が無駄死にになっちまう…けど遊星なら…「必ず策はある!!」」

ジャックとクロウ、そしてアポリアは空を駆ける遊星を見上げる!

 

 

 

 

「その程度の事がわからないと思うか?もとより『ダブルデルタウォリアー』をシンクロ素材とした事でこのターン、オレはバトルをする事ができない!さらに、『クリアエフェクター』をシンクロ素材とした『レッドデーモン』の効果は無効となる!よって『ブラックフェザードラゴン』はフィールドに温存される!」

 

【ほう…?】

 

「さらに『クリアエフェクター』をシンクロ素材とした事でカードを1枚ドロー!…カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

遊星は守りを固めてターンを終える…圧倒的力を持つゾーンを前に遊星も迂闊に攻める事ができないのだ…!

 

 

 

【フフ…遊星、あなたは本当に私に攻撃できなかったのですか…?あなたは最初から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?】

 

「っ…!」

ゾーンの指摘に遊星は僅かな動揺を見せる…!

 

【『メタイオン』は私のスタンバイフェイズにデッキへと戻る…あなたの狙いは『私の場に「時械神」のいないタイミングを作り、一気に勝負を決める事』…違いますか?】

 

「ああ、その通りだ!」

 

【フフフ…あなたの読みは正解です、『時械神』達は共通してスタンバイフェイズにデッキに戻る効果を持っています】

 

「…なぜ、『時械神』の効果をわざわざオレに明かした?」

遊星はゾーンへと問いかける、遊星がモンスター効果を知っている時械神は『メタイオン』『カミオン』『サンダイオン』の3体…遊星はそこから時械神の特性を予想して戦略を組んだ…だが、ゾーンはあっさりとその予想を認め、手の内を明かした…その真意は…

 

 

【簡単な事…明かしたところで()()()()()()()()からです、私のデッキに眠る時械神は10体…確かに時械神が私の場にないターンが来る可能性もあります…しかし、その状況を何ターンも待つ事ができると思っているですか?】

 

「そうだ!そしてその状況さえ来れば…無防備なお前に攻撃を通す事ができる!」

ゾーンの言葉を聞いた遊星はそう返す…強力な時械神達を前にして遊星は徹底的に耐え抜き、一撃で勝負を決めようとしているのだ。

 

 

【…私もかつてはあなたと同じように僅かな可能性を信じて未来を救う手段を幾度となく試し、そして失敗してきました…運命とはそういうものです】

ゾーンは可能性を否定する…しかし、遊星の目に恐れはない!

 

「オレはお前とは違う!!…たとえ何ターン待つ事になっても、可能性がある限り決して諦めない!未来を自分の手で切り拓く為に…オレはどんな小さな可能性でも信じる!!」

 

 

 

 

「なんという戦略を考えるのだ遊星は…!」

 

『強力な効果を持つ時械神を前にした持久戦…並みのデュリストには不可能に近い…!』

遊星の作戦を聞いたジャックとブルーノは状況の厳しさを実感する…しかし、遊星が諦めないかぎり、彼らも折れる事はない…!

 

「でも…どんな状況に置かれても僅かなチャンスを活かして勝利を掴む…遊星はいつもそうしてきた!そうでしょ?」

 

「「うん!」」

シェリーの問いかけに龍亞兄妹が頷く

 

「わたしは信じるわ…!頑張って!遊星!!」

 

 

 

 

 

【可能性を信じるなど愚かな、あなたは…ラプラスの敗北から何も学ばなかったのですか?】

 

「なに…!?」

 

【私のターン!スタンバイフェイズに『メタイオン』はデッキへと戻る…そして永続罠『虚無械アイン』を発動!私の場にモンスターが存在しないとき、天使族モンスターを攻撃力を0にする事でリリース無しで召喚できる!現われよ『時械神ラツィオン』!】

ゾーンの場に現れた金色の輪…そこから赤い鎧を纏い、肩に炎を灯した時戒神…ラツィオンが現れる!

 

「っ…!新たな時戒神!!」

 

【バトル!『ラツィオン』で『レッドデーモンズドラゴン』を攻撃!『ラツィオン』はバトルの後にフィールドと墓地のカードを全てデッキに戻し、相手がドローした時に1000ダメージを与えます…不動遊星、あなたの目の前には僅かな希望もない…神の力の前にひれ伏すのです!】

ラツィオンの肩から灼熱の炎が放たれる!

 

「させるか!リバース罠『くず鉄のかかし』発動!相手モンスター1体の攻撃を無効にする!その後このカードは再びセットされる!」

遊星のもっとも信頼する防御カードが神の炎を受け止める…時械神の効果はバトルを介して発動する、つまりバトルを無効にすれば効果を封じる事ができるのだ…!

 

「ゾーン!お前が何度攻撃してこようとオレは倒れない!オレ達の運命は自分達の手で切り拓く!!」

 

【フッ…守り続けるだけで本当に勝てると思っているのですか?カードを1枚伏せターンエンド】

 

 

 

「ヤツの言ってる事は正論だ…守ってるだけじゃ勝てねぇ…!」

 

「それにゾーンも『くず鉄のかかし』を破る方法を考えて来るはずよ…!」

時械神の攻撃を防いだ事でシグナー達は胸を撫で下ろすが決闘は続く…遊星は勝利への一手を見つける事ができるのか…!

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

 

【『ラツィオン』の効果発動!相手がドローフェイズにドローした事で1000ダメージを与えます!】

 

「まだだ!『ブラックフェザードラゴン』の効果発動!効果ダメージを無効にしこのカードの攻撃力を700ポイント下げる!ダメージドレイッ…ぐああ!?」

 

「「「遊星!!」」」

ラツィオンの放った炎はブラックフェザードラゴンに受け止められたが、その余波が遊星を襲い大きく吹き飛ばす!

 

「ぐっ…!オレは『Sp-エンジェルバトン』を発動!2枚引いて…1枚を捨てる!!そして墓地に送られた『リジェネ・ウォリアー』は特殊召喚できる!」

遊星の場に炎の翼を持つ戦士が現れる

 

「さらに『ジャンクシンクロン』を召喚!…これで準備は整った…!無敵にみえる時械神にも…突破口はある!!」

遊星はドローしたカードを見て、瞬時に戦略を構築する!

 

「オレはレベル4の『リジェネウォリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

キィン─!

 

「これは…!遊星…私と一緒に戦って!!」

アキの痣が光を放つ!

 

「「冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の花よ、開け!!シンクロ召喚!」現れよ!『ブラックローズドラゴン』!」

アキの想いをのせて…漆黒の薔薇が花開く!

 

 

「すごいわ遊星…!シンクロモンスターが3体も揃うなんて…!」

 

「ああ…!滅多に見れるモンじゃないぜ!」

アキとクロウは遊星のプレイングに感嘆する…しかし、まだ遊星は止まらない!

 

 

「さらに『ブラックローズ』の効果発動!シンクロ召喚に成功した時!フィールドのカードを全て破壊する!ブラックローズ・ガイル!!」

 

「「「ええっ!?」」」

 

『待つんだ遊星!そんな事をしても破壊されるのは君のモンスターだけだぞ!?』

ブルーノの言葉を他所に、フィールドに黒薔薇の嵐が吹き荒れる!!

 

 

【フッ…遊星、あなたは大きな間違いを犯した…『ラツィオン』は効果では破壊されない、そしてあなたはモンスターと守りの要である『くず鉄のかかし』を失いさらに不利になるだけですよ?】

 

 

「…それはどうかな?」

 

【なに?】

遊星は嵐の中で不敵に笑う!

 

「オレ達の力を…シンクロモンスターの力を見くびるな!リバース罠『シンクロ・バリア・フォース』を発動!このカードの効果によりカードを破壊する効果を無効にする!さらに、この時に場にいるシンクロモンスター1体につき500ダメージを相手に与える!!」

遊星の場には3体のシンクロモンスターが存在する、よって与えるダメージは…!

 

「仲間との絆の力を…1500のダメージを受けてみろ!ゾーン!!」

 

《キュリリリ!》

 

《グオォォン!!》

 

《ガガァァ!!》

 

ビュゴォ!!

 

3体のドラゴンが咆哮する…フィールドに吹き荒れていた嵐が一箇所に集中…そして嵐の爆弾となりゾーンへと襲いかかる!!

 

【ぬぅぅぅ…!!】

 

ドガァァン!!

 

ゾーンは大きく吹き飛ばされアーククレイドルのビルを突き抜けて飛んでいく!!

 

 

 

 

『通ったぁぁ!!無敵と思われた時械神をものともせず…不動遊星がゾーンに強力な一撃を食らわせたぞぉ〜!!!』

MCの実況がネオドミノシティに響き渡る、その様子を見た住人達から歓声が沸き上がる!

 

『私には聞こえるぞ!みんなの歓声が…希望に燃える人々の声が!!不動遊星!君こそが…この街の救世主たぁ〜!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

【フフフ…()()()…ですか…!】

 

「っ…!ゾーン!!」

吹き飛ばされたゾーンが遊星の前に現れる…大きなダメージを受けているはずなのに…ゾーンは笑っていた…!

 

 

【不動遊星…あなたはこうして()()()()()人々に希望をもたらしてきたのですね…】

 

「何のことだ…?」

 

【伝わっているのですよ…私の生きた未来の地球にも…()()()()の英雄伝説が…!】

 

「オレ達の…英雄伝説…?」

 

【フフフ…!】パリ…パリッパリッ…ボロ…!

その時、ゾーンに変化が起きる…顔を覆っていた仮面の右半分がゆっくりと割れ、剥がれ落ちていく…その中から現れたのは…

 

 

 

「なっ…!?!?」

 

「そんな…馬鹿な…!?」

 

「遊、星…?」

投影されたモニターに映し出された映像を見てシグナー達、そしてネオドミノシティの住人達は目を疑った…仮面の下から現れたゾーンの顔は…年老いた遊星そのものだったのだ…!

 

 

 

「ゾーン…お前はいったい…何者なんだ…!?」

 

【この顔を見られてしまった以上、答えないわけにはいきませんね…不動遊星、私は…()()()()()()()なのです…!】

 

「な、なにっ…!?」

 

「「「なんだって!?」」」

その言葉を聞いた遊星、そして人々は驚きを隠せない…!

 

【未来の世界で飽くなき進化を求める人間の心が引き起こしたモーメントの暴走…それが全ての始まりでした…】

そしてゾーンは語る…遥かなる未来、人間の欲望や悪意を読み取ったモーメントは暴走し…それに影響されたコンピューターネットワークは1つの結論を出した。

 

 

『このままでは地球は滅ぶ、その前に人類を滅ぼすべき』と

 

狂ったコンピューターは無数の機械兵で人類を抹殺する為に動き始めた…その時

 

【そんな世界を滅亡から救い、人々を守る為に未来に蘇った…それが私なのです】

 

 

 

「馬鹿な…!どういう事なのだ!アポリア!ブルーノ!!ゾーンは…本当に未来の遊星だと言うのか!?」

 

『『……』』

ゾーンの言葉を聞いたジャックはアポリアとブルーノに詰め寄る!

 

『…僕達にそれに答える資格はない…それはゾーンの口から語られるべき事だ』

 

『だが、これだけは知っていてほしい…!ゾーンの覚悟を…!』

 

「ゾーンの覚悟…?」

思いつめた様子のアポリア達にアキが問いかける

 

『ラプラスは死して2度目の人生を得た…我らは死して機械の身体で蘇った…そしてゾーンは…()()()()()()()()()()()()()世界を救う為に全てを捧げてきたのだ…!!』

 

 

 

「お前が…オレだと言うのか!?」

 

【今語ったことは全て真実です、それ故にあなたがどんな戦法をとるのか…私には全て手に取るようにわかります…さぁ、デュエルを続けましょう…!】

動揺する遊星を見下ろしながらゾーンはデュエルを続行する!

 

【私のターン…!「時械神ラツィオン」はスタンバイフェイズにデッキへと戻る、そして「虚無械アイン」を墓地に送り、永続罠「無限械アイン・ソフ」を発動!効果により手札のレベル10以上のモンスターを特殊召喚できる。ただしこの時、私のモンスターの攻撃力は全て0になる!私は「時械神ザフィオン」を特殊召喚!】

水色の鎧を纏い、女性の顔を鏡に写す時械神が現れる!

 

 

【さぁ、このターンも時械神の攻撃に耐える事ができますか?不動遊星!】

 

「っ…!だが、時械神は自身がフィールドにいる時モンスターを召喚できない効果がある!1ターンに1度の攻撃なら『くず鉄のかかし』で防げる!」

 

【言ったはずです、あなたの考えは全てわかると…!「アイン・ソフ」は時械神の召喚を行えない効果を無効にする!現われろ「時械神カミオン」「時械神サディオン」!】

 

「なっ…!?3体の時械神だと!?」

ゾーンの場に緑と茶色の鎧を纏う時械神達が降臨する、遊星の戦略はゾーンの場に時械神が1体しかいない事が大前提…3体の時械神には対応できない!

 

【バトル!「ザフィオン」で「ブラックフェザードラゴン」を攻撃、「ザフィオン」はバトル後に相手の魔法・罠を全てデッキに戻す!】

 

「通す訳にはいかない!『くず鉄のかかし』発動!!攻撃を無効にする!」

かかしがザフィオンから放たれた水流を受け止める…だが、時械神はまだ2体いる!

 

【「サディオン」で「ブラックローズドラゴン」を攻撃!】

 

「っ…!」

サディオンから放たれた竜巻をブラックローズドラゴンが弾き飛ばす!

 

【「サディオン」がバトルを行なった事で効果発動、私のライフが4000以下の時、ライフを4000にする】

 

「そんな…!?」

ゾーンを癒やしの風が包み込む…遊星の苦心して与えたダメージがなかった事にされてしまったのだ…!

 

【そして「カミオン」で「レッドデーモンズドラゴン」を攻撃、「カミオン」の効果により相手フィールドのモンスターを全てデッキに戻し…1体につき500ダメージを与える!】

 

「しまっ…!?ぐあぁぁ!!」

 

「『「遊星!!」』」

カミオンから無数の岩の弾丸が放たれる…直撃を受けた3体のドラゴンはデッキへと戻され、遊星も吹き飛ばされる!

 

「ぐっ…うおおお!!!」

遊星はビルに直撃する直前でギリギリ体勢を立て直す…!

 

 

『ふ、不動遊星!なんとかマシンを立て直した…!しかしフィールドはガラ空き…手札も0!この大ピンチの状況…た、頼む遊星!この状況をなんとか乗り越えてくれ〜!!』

MCの焦りの実況が響く、その声に耳を傾けながら住人達はデュエルを見守り続ける…!

 

 

 

 

【命拾いしたようですね…ターンエンド】

 

「っ…(大ダメージを受けてしまった…だが、次のターンに繋げる事ができた…!これで…!!)」

 

【「次のターンに私が時械神を引かなければ勝機が見える」…そう思いましたね?】

 

「こいつ…!」

ゾーンに考えを見抜かれ遊星は動揺する…!

 

【確かに私の手札は0、次のターンに時械神は私のデッキに戻る…そして私は無防備のままターンを終えなければならない…そして攻撃が通れば勝機が見いだせる……私もかつては世界を救える可能性を信じていました…しかし、決して思い描いていたとおりにはならなかった…そして今の結論にたどり着きました…未来の平和の為に「今」この街を滅ぼすしかないと!】

 

「違う!!オレは何があろうと諦めない!街を滅ぼしてまで世界を救おうとは思わない!!お前は…オレなんかじゃない!!」

ゾーンの言葉を聞いた遊星はゾーンが未来の自分である事を否定する…自分ならばどんな絶望的な状況でも諦める事はないと…

 

【まだ否定するのですか…ならば教えてあげましょう、本当に私が貴方である()()を…!】

 

「なに…?」

 

そしてゾーンは語り始めた、未来で何があったのかを…最後の未来人のオリジンを…。

 

 

 

 

 

 

 

Sideゾーン

 

 

「どうすれば…どうすればいいんだ!!」

それは遊星の時代から遥か未来…人々の欲望によりモーメントが暴走、機械兵が人類抹殺の為に破壊の限りを尽くす中…名もなき科学者は頭を抱えていた。

 

「機械兵を止める為にはモーメントの動力源…人の心を読み取る遊星粒子を正しい方向に導くしかない…だが…!」

科学者は壊れかけの研究室からボロボロになったネオドミノシティを見渡す…街には難民が溢れている、そして人々は僅かな食料や金を奪い合い…街には怒号と泣き声が溢れていた…。

 

「…私1人では変えられない…!…そうだ、彼…彼らならば…!!」

その時、科学者はある英雄の名前を思い出した…。

 

1人はダークシグナーを倒し、シンクロの新たな境地「クリアマインド」を生み出した英雄─不動遊星

 

そしてもう1人…歴史に名を残す決闘者の側に必ず現れ、世界を何度も救ったという伝説の男─白波遊海

 

 

「私がこの世界を救えずとも…英雄ならば…彼らならばこの世界を…!!」

そして科学者は2人の経歴、決闘の記録を調べ上げた…そして彼は自分を捨て、英雄たる「不動遊星」を蘇らせようとしたのだ…。

 

 

 

「ついに準備が整った…この手術が成功すれば…英雄は蘇る!!」

 

彼は不動遊星の人格をコピー…そして自身を整形する事で不動遊星を蘇らせる手術を始めた…!

 

「ぐっ…があっ…!!おおおお─!!!!」

 

そして科学者は生まれ変わった、不屈の英雄「不動遊星」として…

 

 

『オレは…世界を救う!!』

そして科学者…ゾーンは世界を救う為に動き始めた…。

 

 

 

『みんな聞いてくれ!この世界はいま破滅しようとしている!!人の進化は加速し、いつしか人の心は欲望や負の感情に囚われてしまった!!その結果、モーメントが負の方向に暴走しているんだ!!』

 

「それは…本当なのか…!それよりアンタ…不動遊星じゃ…!?」

 

ゾーンは難民の集まる場所で声を響かせる…不動遊星の姿を見た難民達は浮足立つが…

 

「た、大変だ!また機械兵達が!!」

 

「そんな…!?もう、終わりだぁ…」

ゾーンは空を見上げる…そこには無数のワイゼルやスキエル、さらにグランエルがこちらに向かってきていた…!

 

『みんな…見ているんだ!!』

ゾーンが自作した遊星号に乗り加速する!

 

『…クリアマインド!生来せよ!「シューティングスタードラゴン」!!』

《ギュアアアン!!》

咆哮を轟かせながら白きドラゴンが飛び上がる、そして機械兵達の間を飛び回る…すると機械兵に搭載されたモーメントの負のエネルギーとシューティングスターの正のエネルギーが共鳴し機械兵が活動を停止していく…!

 

 

『これが揺るぎなき境地「クリアマインド」!オレ達が正しい心を持ち、己の欲望を捨てて臨めば…モーメントの暴走は止まる!!そうすれば世界は必ず救われる!!みんな!オレと一緒に行こう!!』

 

「遊星…遊星!!」

 

「「遊星!頼む!俺達を導いてくれ!!」」

 

「「「遊星─!!」」」

ゾーンは人々に囲まれる…人々に絶望の色はない、現れた希望に人々は沸いていた…そして、その想いに惹かれ…その男も姿を現した…。

 

 

 

「遊星!大変だ!また機械兵達が…!」

 

『任せてくれ!すぐに─』

 

シュイン…ズドォォン!!

 

『なにっ…!?機械兵が…爆発した!?』

それは一瞬の出来事だった、難民達の近くへ迫った機械兵が全て撃ち落とされたのだ…!

 

 

《反応はこちらからです、マスター》

 

『ありがとうキラー…ようやく見つける事ができた、未来を救う英雄を…!』

 

『長い旅でしたね…()()()()

 

『遊、海…まさか、貴方は…!』

そして、ゾーンの目の前に人影が現れる…赤い帽子を被った男、紫髪の女性、そして空中に浮かぶ虹色のコアを持つロボット…その名は─

 

『はじめまして…いや、久しぶりだな()()()()、俺は白波遊海…お前を助けにきた…決闘者だ』

 

『同じく奥さんの翠です!頑張りましょう!遊星君!』

 

『あ、ああ──!!これで世界は…』

 

 

─救われる─

 

ゾーンはその日、希望へと出会った…。

 

 

Sideout

 

 

 

「なんという話だ…」

 

「ゾーン自身が…『遊星』になったっていうの!?」

 

「自分の身体を作り変えてまで未来の世界を救おうとしたのか…!?」

ゾーンの話を聞いたジャック達は絶句する…自分の人生を投げ捨て、世界を救おうとした男の壮絶なる覚悟に言葉も出なかった。

 

「ラプラス…未来の遊海さんもゾーンと一緒に世界を救おうとしたんだ…!」

 

「遊海がいればきっと世界を守れたはずなのに…どうして…?」

そして龍亞は疑問に思った、遊星の力を得たゾーン、そして未来の遊星…どうしてその2人がいても未来は救えなかったのかと…。

 

 

【不動遊星…あなたの力は素晴らしいものでした、私はラプラスの協力を得てあなたの力をさらに広めていきました…やがて人々は優しい心を取り戻し、分かち合う事を知った事で機械の軍団も我々を攻撃しなくなった…これで世界を救う事ができる…そう思った…だが、世界は既に手遅れだった─…時間が、足りなかった…!!】

 

 

 

 

 

 

 

Sideゾーン

 

 

ドオォォン!!

 

 

「うわあああ─!!」

 

「きゃあああ!!」

 

『どうして…こんな、事に…!』

ゾーンは無力さに拳を握りしめる…世界を救う光明が見えた矢先…世界は滅びの火に包まれた。

遊海とゾーン、2人で世界を救うには…あまりにも時間が足りなかったのだ…。

 

人々の心の負の作用に影響されたモーメントは破滅的な負の回転は始めた、それに影響されたネットワークが出した結論それは…

 

 

「自滅」

 

 

コントロールを失った各地のモーメントは一斉に爆発、さらに機械兵は自爆し墜落…破滅の火と大規模な地殻変動は容赦なく人々を飲み込んだ…。

 

 

「「「助けてくれ!遊星ぇぇ!!」」」

 

『み、みんなァァァ!!!!』

ゾーンは地殻変動で溶岩に落下する人々に手を伸ばす…しかし、その腕は届かなかった…。

 

ドオォォン!!

 

『があぁぁぁ─!?』

ゾーンの近くにワイゼルが落下し爆風で吹き飛ばされる…

 

『結局…オレは誰も救う事ができなかった…!人の心を変える事はできなかった…!!』グシャ…

ゾーンは絶望に打ちひしがれ…シューティングスタードラゴンのカードを握りつぶす…

 

ジャリ…ジャリ…

 

『誰か…誰かいるのか!!生きているのか!!』

ゾーンは顔を上げる…聞こえた僅かな希望に縋るように…

 

『あっ……遊、海…?』

 

『…まだ、まだ終わってない…まだ、未来は…救える……!』

そこにいた人物にゾーンは言葉を失った…そこにいたのは遊海だった…しかし、その姿をみたゾーンが抱いたのは一種の恐怖だった。

 

燃えるような赤い服は漆黒のコートへ

 

黒髪は色素の抜け落ちた白髪に

 

目元を黒いバイザーが覆い、血涙を流している…

 

 

『その、姿は…?』

 

『姿など関係ない…オレは、世界を救う…行こう…遊星…!』

 

そして2人は歩き始めた…破滅の未来を救済する為に…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

【…そして私はこの結論へとたどり着いた、世界を救うにはあなたの父・不動博士の作ったモーメントを…このネオドミノシティごと歴史から抹消するしかないと!!】

 

「お前は…何を言っているんだ!!」

ゾーンの…ラプラスの過去を聞いた遊星はゾーンに向かって叫ぶ…!

 

「ネオドミノシティを破壊すれば大勢の人々が犠牲になる!それで本当に未来は救われるのか!?お前は未来の人々を救えれば本当にそれでいいのか!!?…そんな事があっていいはずがない!オレは今も未来も…全ての人を救う道を見つけだしてみせる!!」

 

【まだわからないようですね…あなたが未来に現れ、協力する最強の男がいても未来は変わらなかった!もはやこの街の犠牲を受け入れるしかないのです!】

遊星とゾーン、2人の男の言葉がぶつかりあう…長き時間の果てに結論を出したゾーン…そして未来の可能性を信じる遊星…2人は火花を散らす

 

【さぁ遊星…デュエルを続けなさい!】

 

「オレは…未来を諦めない!!ドロー!!…カードを伏せターンエンド!!」

遊星は可能性を信じてドローしたカードを伏せる、ゾーンから街を守るには…彼を打ち倒すしかない…!

 

 

 

【私のターン!スタンバイフェイズに「カミオン」「サディオン」「ザフィオン」はデッキに戻ります…しかし、この瞬間「ザフィオン」の効果発動!このカードがフィールドから離れた時、手札が5枚になるようにドローする!私の手札は1枚…よって4枚ドロー!!】

 

 

「なにっ!?」

 

「イ…インチキ効果もいい加減にしやがれぇぇ!!!」

ゾーンの大量ドローに思わずクロウが叫ぶ…

 

 

【遊星、あなたの思いどおりには決してならないと言ったでしょう、今のドローで私の手札に新たな時械神が加わりました…】

 

「だが…大量ドローする事は読めていた!リバース罠発動!『逆転の明札』!相手がドローフェイズ以外にドローした時!自分の手札を相手と同じ枚数にする!5枚ドロー!!」

 

【ほう…!】

遊星はゾーンの策を逆手に取り手札を補充する…そしてそれが新たな勝利への道を照らす!

 

 

「来てくれたか…!このカードは効果によって手札に加わった事で特殊召喚できる!来い!『スカウティング・ウォリアー』!さらにモンスターが特殊召喚された事でチューナーモンスター『スチーム・シンクロン』は特殊召喚できる!」

遊星の場に刀を持った戦士と汽車のようなチューナーが現れる!

 

「そして『スチームシンクロン』は相手ターンにシンクロ召喚を行なう事ができる!オレはレベル4の『スカウティングウォリアー』にレベル3『スチームシンクロン』をチューニング!…力を貸してくれ!龍可!!」

 

キィン─!

 

「遊星…!お願い!遊星を守ってあげて!!」

龍可が遊星の思いを受けて祈る…!

 

「「聖なる守護の光…今、交わりて永久の命となる!シンクロ召喚!」降誕せよ!『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』!!」

聖なる光を纏い圧倒的守備力を持つ妖精竜が現れる!

 

 

【フッ…その程度の小細工がこの私に通じるとでも?手札から罠カード発動!「女帝の冠」!相手がシンクロ召喚をした時、このカードは手札から発動できる、相手のシンクロモンスター1体につき2ドロー!…シンクロ召喚した事で自分の首を締める事になりましたね…!】

 

「っ…!!」

 

【あなたの可能性など…全て消し去ってあげましょう…「アイン・ソフ」の効果発動!現われよ時械神「ミチオン」「ハイロン」「ラフィオン」「ガブリオン」そして「時械神サンダイオン」!!】

 

「時械神5体の同時召喚だと!?」

ゾーンの場を埋め尽くす神々は遊星を見下ろす…!

 

 

【あなたが何をしてもこの街は救えない…!その身を持って知るがいい!!バトル!「ミチオン」で「エンシェントフェアリードラゴン」を攻撃!】

 

「(どうするっ…!『かかし』で防げるのは一度のみ…残りライフは2500…!ミチオンの効果はわからない……いや、ゾーンが『オレ』だというのならば…!)オレは『くず鉄のかかし』を使わない!!」

 

【「ミチオン」の効果発動!相手ライフを半分にする!】

 

「っ…!ぐあぁぁ!!…えっ…?」バチッ!!

ミチオンの火炎が遊星のライフを削る、しかしその衝撃は…遊星に伝わる前に半減される!

 

「これは…ウジャトの眼…?ラプラス…!」

遊星が目にしたのは自身を守る金色のバリア…バリアはそのまま静かに消えていった…。

 

 

【ラプラス…死してなお遊星を守ろうというのですか…!「ハイロン」で「エンシェントフェアリードラゴン」を攻撃!】

 

「『くず鉄のかかし』発動!攻撃を無効にする!」

かかしがハイロンの攻撃を受け止める!

 

 

【止めましたか…「ハイロン」はバトルした時、自分と相手のライフ差分のダメージを与える効果がありましたが…どうしてあなたは「ミチオン」の攻撃を止めなかったのです?】

 

「ゾーン、お前はオレ自身と言ったな?()()()()最初のモンスターで牽制し、次のモンスターでトドメをさす…だからあえて『ミチオン』の攻撃を受けて『くず鉄のかかし』を温存したんだ!」

遊星はゾーンの言葉を逆手にとり、戦略を読んだのだ…!

 

【…いくら足掻こうと時械神の攻撃は3回残っています、耐えられると思っているのですか?】

 

「オレはネオドミノシティを守る為に絶対に耐えてみせる!さぁ…かかってこい!ゾーン!!」

 

【遊星…3体目の時械神の力を受けるがいい!「ラフィオン」で攻撃!「ラフィオン」がバトルした時、相手モンスターを手札に戻し、その攻撃力分のダメージを与える!】

 

「手札から『シンクロ・ビリーバー』の効果発動!シンクロモンスターへの攻撃を無効にして自身を特殊召喚する!」

遊星の場に老魔女が現れラフィオンの攻撃を受け止める!

 

【ならば「ガブリオン」で攻撃!あなたにはこの攻撃を防ぐ事はできないはず!フィールドのカードを全てデッキに戻す!】

 

「なにっ!?」

遊星の場を強烈な水流が洗い流す…遊星を守る壁は…何もない─!

 

 

【これであなたの場はガラ空き…僅かな希望も全て無に帰しました…「サンダイオン」でダイレクトアタック!そして効果により4000ダメージを与えます…!これで終わりです!】

 

「っ…!!」

 

ドオォォン!!

 

サンダイオンがラプラスを葬った雷霆の槍を放つ…そして遊星へと直撃した…!

 

 

「『「遊星!!」』」

仲間達の悲痛な叫びが響く…

 

 

【やはり…あなたにこの世界は救えま「まだだ…」むっ…!?】

 

「まだ…終わってない!!」

煙が晴れる…その中から無傷の遊星と遊星を守るようにパワーツール・ドラゴンが現れる!

 

【なぜ…!?】

 

「オレは『サンダイオン』の効果が発動した瞬間、手札の『シンクロン・キーパー』の効果を発動していた!それにより効果ダメージを無効にし、さらに墓地のチューナーモンスター『ビックイーター』とこのカードを除外する事でレベル7の『パワーツールドラゴン』をエクストラデッキから特殊召喚した!!」

 

【よくぞ耐え抜いた…というところですが…残された時間はあと僅か、間もなくアーククレイドルはネオドミノシティに衝突し…この街は破壊される!!】

 

「っ…!アーククレイドルが…もうそこまで!!」

デュエルが進む中ゆっくりと降下し続けたアーククレイドル…タイムリミットが迫る…!

 

「(早く決着を着けなければ…街が…!)次のドローに…全てがかかっている…!!」

遊星は自身の手を見つめ、握り締める…!

 

 

【遊星…あなたも感じているのですね…人々の運命を背負う重圧を…私も同じでした、そしてそれを果たせなかった時の絶望と悲しみがどれだけ深かったか…!だからこそ私はこの時代に来た!!何かを救う為には何かを犠牲にしなければならない!!…今も未来も救うなどという考えはあなたの驕りです!不動遊星!!】

 

「なに!?」

 

【あなたの手札は残り1枚…その手札で何ができるというのです!!】

ゾーンの眼は射貫くように遊星を睨む…絶望を前に遊星の心を折るために…。

 

 

「(まだ勝機はある…次のターンに時械神達はデッキに戻る…そうすれば…攻撃を通す事ができる!!)オレのターン!ドロー!!」

遊星は諦めていなかった、希望を捨てず…運命のカードをドローする!

 

【…これで終わりです、永続罠「無限光アイン・ソフ・オウル」発動!「アイン・ソフ」を墓地に送りこのカードを発動できる!これにより時械神がデッキに戻る効果を無効にする!さらに時械神の攻撃力は全て元に戻る!】

 

「なん、だと…!?」

それはまさにダメ押しの一手…遊星に立ちはだかるのは4体の時械神と攻撃力4000のサンダイオン…今の遊星に時械神を突破する手段はない…そして…

 

ズズズ…ドドォォン!!

 

「うわっ…!アーククレイドルが!!」

遊星に凄まじい衝撃が襲いかかる…それはアーククレイドルの頂上とKC本社ビルが衝突した事による衝撃波だった…そして…一つの不運が遊星に襲いかかる…!

 

ドガッ…

 

「ガハっ…しまっ…!?うわあああ!!」

 

「「『遊星ぇぇ!?』」」

衝突の衝撃で崩れた瓦礫が遊星に直撃…Dホイールから投げ出されてしまったのだ…!

 

 

「(これで…終わりなのか?オレには何も救えないというのか…?)」

落下する刹那、遊星の脳裏に仲間達の顔が浮かんでは消えていく…

 

 

 

『…目を覚ませ…遊星!』

 

その瞬間、遊星は虹色の光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

『遊星…遊星……目を覚ませ…』

 

「誰だ…オレを呼ぶのは…」

遊星が目を開けばそこは光と闇の狭間…そこに虹色の粒子が集まり人の形になっていく…

 

「私だ、遊星…久しぶりだな…」

 

『父さん…!?』

遊星の前に現れたのは父親…不動博士だった…。

 

 

「オレは…デュエルに負けたのか…」

 

『まだだ、デュエルは続いている…みんながお前を待っている…』

不動博士は遊星に語りかける…

 

「…だめだ、身体がいう事を聞かない…」

 

『諦めるな遊星…お前ならきっとできる』

 

「勝手な事を言わないでくれ…オレは全力で戦った…でも今度は無理だ…ゾーンには…勝てない…」

遊星は父親を前に俯く…勝てる希望がないと弱音を吐く…

 

『……遊星、顔を上げろ』

 

「えっ─」

 

 

バチン!!

 

 

「あっ…!」

遊星の頬を不動博士の張り手が打ち据える!

 

『遊星!お前には、まだやるべき事がある!粒子と粒子を結びつける遊星粒子のように…人の心を導き、人の心を繋ぐのだ…!その先に必ず新たな境地が見えてくる…!』

 

「人と人の心を繋ぐ…」

父の言葉を聞いて遊星の目に闘志が戻る…そしてその身体を暖かい温もりが包む…

 

『そう、あなたは人と人を繋ぐ優しい子…私達の愛する息子なのよ』

 

「母…さん?」

遊星は後ろを振り返る…そこには優しい笑顔で遊星を抱きしめる母の姿があった。

 

『ふふ…王様に我儘を言ってしまったの、頑張って…遊星、みんなが貴方の事を待っているわ…』

 

「父さん…母さん…!ああ、目が覚めたよ…!オレは仲間達のところへ帰らなきゃならない!!」

遊星が立ち上がる…全てを救う意思を持って…!

 

『それでこそ私達の息子だ…未来を信じ強く生きろ遊星…お前にしてやれるのはこれが最後だ』

 

『私達はいつもあなたの側にいるわ…頑張って!遊星!!』

 

「父さん、母さん…いってきます!!」

 

『『いってらっしゃい!遊星!』』

 

そして遊星の視界は光に包まれた…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

─手を伸ばせ…遊星!─

 

 

「はっ…!?うおお!!」ガシッ

聞こえた声に遊星が目を開く、そして間近まで飛んできていた遊星号が遊星を受け止める!

 

「父さんと母さんが…助けてくれたのか…ありがとう…!」

 

─それだけじゃないぞ…オレを忘れるなよ?─

 

「この声…ラプラス…!?」

遊星は頭に響く声に問いかける

 

─正解だ、オレの意思の一部をオーブに入れておいたんだ…まぁ、もう限界なんだけどな…遊星、ゾーンを止めてやってくれ、もうあいつは自分じゃ止まれないんだ…お前が…お前だけが奴を止められる…頼んだぜ…─

 

「…ああ、安心して眠ってくれラプラス…オレがこの世界を守る!!オレは最後まで諦めない!!」

 

遊星は上昇し再びゾーンと相対する…!

 

 

 

 

【むっ…あの高さから落ちて無事とは…!】

 

「ゾーン!まだ勝負は終わってない!オレはこの街を…未来を!必ず救う!!来い!『ターボシンクロン』!オレはレベル7の『パワーツールドラゴン』にレベル1の『ターボシンクロン』をチューニング!!」

 

 

キィン─!

 

「あっ…!よっしゃぁ!遊星!おれのシグナーの力…使ってくれ!!」

龍亞の痣が強く輝きを放つ!

 

「「世界の平和を守るため!勇気と力がレボリューション!!シンクロ召喚!!」進化せよ!『ライフ・ストリーム・ドラゴン』!」

パワーツールの装甲が弾け飛び、生命の輝きを守るドラゴンが現れる!

 

「『ライフストリームドラゴン』の効果発動!ライフが2000以下の時、ライフを2000にする!!」

癒やしの力が遊星を癒やしていく…

 

 

【まだわからないのですか…!この街はモーメントと共に滅ぶ運命なのです、輝かしい未来の礎になるために…!】

 

「ゾーン、お前の言う未来とは…本当に輝かしい未来なのか?」

 

【…なに…?】

遊星の思わぬ言葉にゾーンは問い返す…

 

「例えモーメントを歴史から消しても…人間の進化の行き着く先が欲望や誘惑に囚われるならば、お前の生きた未来となんの違いがある?本当にそれで未来は救われたと言えるのか?…本当に未来を救うにはみんなの心が正しい方向へと向かい、モーメントと共に繁栄できる未来を作らなければならない!今を救わなければ…きっと未来も救われない!!そうじゃないのか…ゾーン!!」

 

【くっ…!】

遊星の言葉にゾーンが気圧される…人間は欲深いもの、しかしそれと同時に人を思いやる優しい心を持っている…人々が団結して未来を変える為に動けば…必ず未来は良い方向へ変える事ができると…その言葉はネオドミノシティ…世界へと響く!

 

「オレは未来を救う為に見つけ出してみせる…新たな境地を!!」

 

 

『人の心を導き、人の心を繋ぐのだ…』

 

 

「父さん…母さん…みんな…オレに力をくれ…!!」

遊星の背中を父と母の幻影が支える…そして遊星の思いを受けて…人々の祈りが遊星へと届く…!

 

 

 

「「「「遊星!」」」」

戦いを間近で見守るシグナーの仲間達…

 

「『『遊星!』』」

アポリアとブルーノ、シェリー

 

「「「負けるな!遊星!!」」」

治安維持局に残り、デュエルを見届けるイェーガーにMC、ミゾグチ…

 

「「「負けないで!遊星!!」」」

避難場所から叫ぶサテライトの子供達や仲間達…

 

「「「頑張れ!遊星!!」」」

チーム・ユニコーンやチーム太陽…ともにしのぎを削った決闘者達…

 

「遊星君!君は1人じゃない、ボク達がついてる!」

 

「ああ!頑張れ遊星!俺達の思いの力を受け取ってくれ!!」

街に集いし伝説の決闘者達…

 

 

「遊星、お前ならばたどり着けるはずだ…デルタアクセルのその先へ…!!」

 

「私達も負けない…!だから負けないで!遊星君!!」

 

たくさんの人々の祈りが遊星に集まっていく!!

 

 

 

「聞こえる…みんなの声が…!オレ一人が運命を背負っているんじゃない…この街の…世界のみんながオレを励ましてくれている!力を与えてくれる…!!」

 

─ピチョン─

 

「そうか…これだ…!!」

遊星は辿り着いた…新たな境地へと…!

 

 

「己の限界を超えたさらにその先へ進むには自分一人の力だけではダメだ…仲間の思いを…絆を繋がなければならない!!」

遊星はDホイールを上昇させる、赤き翼をはためかせ、雲を突き破り、上へ上へと…宙の彼方まで─!

 

「それを可能にするのがオレ達、チーム5D'sの絆…!…ブルーノ…見つけたぞ…新たな境地を!!!」

 

 

キィィン─!

 

 

遊星はついにオゾン層を突き抜ける…そして希望の光が遊星を指し示した!!

 

 

「オレは手札から『Sp-シンクロ・パニック』を発動!このカードはスピードカウンターが7以上の時に発動できる!このデュエル中に自分フィールドにシンクロ召喚したモンスターをエクストラデッキから可能な限り特殊召喚できる!ただし、効果は無効となり攻撃力は0となる!」

 

【なにをするつもりだ!!】

遊星の突然の行動にゾーンは困惑する…!

 

「オレのもとに蘇れ!『エンシェントフェアリードラゴン』!『ブラックローズドラゴン』!『ブラックフェザードラゴン』!『レッドデーモンズドラゴン』!!」

遊星の場に仲間達の魂たるシグナーのドラゴン達が並び立つ!!

 

「そして『ライフストリームドラゴン』の効果発動!1ターンに1度、自分フィールドにいるシンクロモンスターのレベルを任意の数値にする!オレは『エンシェントフェアリードラゴン』『ブラックローズドラゴン』『ブラックフェザードラゴン』『レッドデーモンズドラゴン』のレベルを全て1にする!…ジャック!クロウ!アキ!龍可!龍亞!遊海さん!未来を救う為に…オレ達の絆を繋ぐんだ!!」

 

 

 

キィン─!

 

「これは…!」

 

「何が起こってるんだ!?」

シグナー達の痣が強い光を放つ!!

 

「遊星が私達を力を求めているのよ…!」

 

「「遊星!!」」

シグナー達が痣を掲げる…そして痣は遊星のもとへと集う!

 

 

「そうか、辿り着いたんだな遊星…ならば…俺も…!負ける訳にはいかない!!」

 

 

 

 

キィン─!キィィン─!!

 

遊星の背中に完成した赤き竜の痣…そこから金色のオーラが放たれ、遊星を包み込んでいく!!

 

 

「新たな境地!オーバートップ・クリアマインド!!

 

《キュオォォオン!!》

遊星の辿り着いた新たな境地…その名は「オーバートップ・クリアマインド」、明鏡止水の中で仲間達の絆を繋ぐ…遊星が辿り着いた新たな進化の極地…!その誕生を祝うかのように赤き竜の咆哮が響く!

 

 

「オレはレベル1となった『エンシェントフェアリードラゴン』『ブラックローズドラゴン』『ブラックフェザードラゴン』『レッドデーモンズドラゴン』にレベル8シンクロチューナー『ライフストリームドラゴン』をチューニング!!」

遊星の号令のもとに…シグナーの絆が結集する!

 

1+1+1+1+8=12

 

「集いし星が一つになる時新たな絆が未来を照らす!!光さす道となれ!!」

 

リミットオーバー・

アクセルシンクロォォォ!!」

 

 

仲間達と紡いだ絆の先に…希望の光が現れる!

 

 

「進化の光!『シューティング・クェーサー・ドラゴン』!!」

 

《ギュオオオン!!》

黄金の光の中に巨大なドラゴンが現れる、その名は「シューティングクェーサードラゴン」…シグナーの絆が起こした奇跡の結晶である─!!

 

 

 

 

 

バシューン!!

 

【むっ…!?いったい何が…!】

ゾーンの目の前に巨大な光の柱が立ち上る…その中から遊星、そしてシューティングクェーサードラゴンが現れる!

 

「ゾーン!これがオレ達5D'sの力の結晶!オレ達の絆の証だ!!」

 

 

 

「やりやがったな遊星!まさかのシンクロモンスター5体の究極シンクロ…!」

 

「あれが…遊星の進化の証…!」

 

「『シューティングクェーサードラゴン』…!」

その姿を見たシグナー達は感動の言葉を漏らす…

 

 

【「リミットオーバー・アクセルシンクロ」だと…!?馬鹿な…そんなものは歴史になかった事実…!】

ゾーンはこのデュエル中で一番の動揺をみせる…ゾーンが生きた歴史の中で遊星がたどり着いたのは「デルタ・アクセルシンクロ」まで、遊星は運命を変えたのだ…!

 

「(父さん、母さん…オレは守り抜いてみせる、オレのかけがえのない人達を…オレの生まれたこの街を…!)」

遊星は目を閉じ、決意を固める…ゾーンを倒し、未来を救うと…!

 

 

 

「いくぞ!ゾーン!!オレ達の新たな力を受けてみろ!!」

 

【っ…だが!時械神は破壊されず、受けるダメージも0になる!よって時械神を破壊する事はできない!!】

 

「いいや!『シューティングクェーサードラゴン』は()()()()()()()()()にできる!!」

 

【なにぃ!?】

遊星の手に入れた新たな力…その効果はまさに「時械神キラー」の効果を持っている!

 

「さらに!このカードが攻撃する時相手のモンスター効果を受けず、シンクロ素材の数だけ攻撃できる!!」

 

 

『なんて強力な効果なんだ…!これが遊星の進化の力!!』

 

『これならば時械神を倒す事ができる…!ラプラス、見ているか…お前の繋いだ希望が…世界を救おうとしているぞ…!』

ブルーノ、アポリアが言葉を漏らす…ラプラスの繋いだ希望がゾーンを追い詰めている…!

 

 

 

「いくぞみんな…バトルだ!!」

《ギュオオオン!!》

遊星の声と共にシューティングクェーサードラゴンから赤・紫・黄・青・オレンジの光の球が飛び出す!

 

 

「いくぞ遊星!『シューティングクェーサードラゴン』!」

 

「時械神を攻撃!!」

 

「天地創造撃!」

 

「ザ・クリエーションバースト!!」

 

【ぐぁ…!】

ジャック・龍可・アキ・クロウの言葉と共に光の球が時械神に突撃…その姿をレッドデーモンズドラゴン・エンシェントフェアリードラゴン・ブラックローズドラゴン・ブラックフェザードラゴンに変え、サンダイオンを除く時械神を破壊する!

 

 

「よし!残ってるのは『サンダイオン』だけだ!!」

 

「いくぞ!龍亞!!」

 

「うん!『シューティングクェーサードラゴン』で『サンダイオン』を攻撃!」

 

【ぐっ…うわぁぁぁ…!?】

オレンジの光球がライフストリームドラゴンに変化しサンダイオンに迫る…しかし、サンダイオンも雷のエネルギーを放ち迎撃する…攻撃力は共に4000、2体のモンスターは共に破壊される!!

 

【ぐっ…!時械神が全滅…だがこれで相打ち…!君のフィールドのモンスターは消え─…なに!?】

 

 

《ギュアアアン!!》

 

フィールドを覆っていた煙が晴れる…そこには咆哮を轟かせる『シューティング・スター・ドラゴン』の姿があった!

 

【何故「シューティングスタードラゴン」が!?】

 

「『シューティングクェーサードラゴン』の最後の効果だ!このカードが破壊された時、効果を無効にしてエクストラデッキから『シューティングスタードラゴン』を特殊召喚できる!いけ!『シューティングスタードラゴン』!ゾーンにダイレクトアタック!シューティング・ミラージュ!!」

 

《ギュアアアン─!!》

 

【ぐぅ、うあぁぁぁ─!!?】

 

ドガァァン!!

 

音速の突進を受けたゾーンは激しく吹き飛ばされ治安維持局へと直撃する!!

 

 

『魂の反撃!怒涛の六連撃!!見たかゾーン!!これが遊星…いや、チーム5D'sの底力だぁぁ!!』

 

「「「うおぉぉぉ!!!」」」

MCの実況がネオドミノシティに響き渡る…ゾーンの残りライフは…700!!

 

 

 

「やったぁ!!」

 

「ゾーンにあれだけのダメージを与えるとは…!」

 

「ゾーンを倒すまでもう一息よ!!」

シグナーの仲間達も喜びを分かち合う!

 

 

 

「オレは『スピードワールド2』の効果発動!1ドロー!…(この、カードは…)…カードを伏せてターンエンド!!」

遊星はスピードワールドの効果を使いターンを終える…そしてゾーンがデュエルへと復帰する…。

 

【ぐっ…私は、人類最後の人間…私は…私達は長き歳月を苦しみぬいてきた…私には、歴史を変える権利があるのだ!!】

追い詰められてなおゾーンは揺るがない…自身の願う救済の為に遊星を睨みつける!

 

「いいやゾーン、そんな権利は誰にもない…」

遊星はそんなゾーンを諭すように語りかける

 

【遊星…君は私の存在を否定するというのか…】

 

「…たしかに、未来がお前の言うとおりならオレ達に待っているのは絶望の未来かもしれない…しかしゾーン、例え世界を救う為でも人々の未来を奪う権利は誰にもない!未来を変える可能性は生きる人々…一人ひとりに平等にある!なぜお前はそれを信じようとしない!!」

 

【私にそんな時間は…残されていない…!!君のいう可能性など…ないに等しい事を教えてやろう!…私の…ターン!!】

 

キュイン─! バシューン!!

 

「ぐあっ…!?な、なんだ!?」

 

『な、なんだこの突然の嵐はぁ!?いったい何が起きようとしているんだぁ!?』

ゾーンがカードを引く…その瞬間、「アイン・ソフ・オウル」の3つの輪が重なり合い、天空へと凄まじいエネルギーを放つ…そして周囲は突風と落雷の天変地異に襲われる!

 

【見るがいい遊星!これが私の力だ!私の嘆きだ─!!】

 

「な、なんだ…この樹は…!?」

嵐が治まる、そして遊星は驚愕した…ゾーンの背後に巨大な樹が現れたのだ、その樹の名は「セフィロトの樹」

…聖書に記されし「生命の樹」である…!

 

【永続罠「アイン・ソフ・オウル」には10種類の時械神を召喚・特殊召喚している時に発動できる効果がある、10の光からなる時械神の先に…選ばれた聖者のみ扱う事が許される隠されたダァトがある…無は無限となり、無限の光から生まれる()()()()()()!】

 

 

「馬鹿な…!?」

 

「究極の時械神だと!?」

ゾーンの言葉を聞いた遊星達は絶句する、1体1体が並の決闘者の切り札レベルの力を持つ時械神…その先にゾーンの真の切り札が存在したのだ…!

 

【「アイン・ソフ・オウル」の効果発動!このカードを墓地に送り…「究極時械神セフィロン」を特殊召喚!!】

雷鳴が轟く中…ついにそのモンスターが光臨する…「セフィロト」の名を持つ巨大なる時械神セフィロン─!

 

 

     究極時械神 降臨

 

 

「これが…究極の時械神…!?」

 

【思い知るがいい、自分の無力さを!!「セフィロン」の効果発動!時械神の効果を無効にし、攻撃力を4000にして可能な限り特殊召喚できる!現われよ時械神「メタイオン」!「サディオン」!「ガブリオン」!「サンダイオン」!】

 

「なにっ!?」

セフィロンから放たれた光の球が4体の時械神へと変化し四方から遊星を閉じ込める!

 

【それだけではない!「セフィロン」の攻撃力はフィールドの時械神の攻撃力の合計となる!!】

 

「なんだと!?」

セフィロンの元々の攻撃力は4000…その合計は2万…

巨大なる神が遊星の前に立ちはだかる!

 

 

【長かった私達の戦いも…ついに終わりを迎えたようですね…これで未来は救われる…!!ネオドミノシティの消滅と共に…!】

 

「くっ…!!」

 

【「セフィロン」で「シューティングスタードラゴン」を攻撃!アカシック・ストーム!!】

《オオオオオオ!!》

凄まじいエネルギー弾が遊星へと迫る!!

 

 

ドオオォォォン!!

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「「「遊星─!!!」」」

エネルギー弾がシューティングスタードラゴンに直撃…遊星は爆発に飲み込まれてしまう…仲間達の叫びが響く…

 

【さらばだ、遊星…消えるがいい…この街と共に─】

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだだ!!」

 

 

【なにっ…!】

爆煙を振り払い、遊星が飛び上がる!!

 

 

 

「オレはまだ…自分の未来を諦めたわけじゃない!!罠カードオープン!『集いし願い』!」

遊星は1枚の罠カードを発動させる…その名は『集いし願い』…まさに遊星を象徴するカードである

 

【集いし願い…だと?】

 

「『集いし願い』は『シューティングスタードラゴン』がバトルで破壊された時、ダメージを無効にする!さらに!墓地に眠る素材となるモンスターを除外する事で『スターダスト・ドラゴン』をシンクロ召喚する!オレはレベル7の『パワーツール・ドラゴン』にレベル1の『ターボ・シンクロン』をチューニング!!」

墓地に眠りし仲間の想いが希望の星を呼び覚ます!

 

「集いし願いが新たに輝く星となる!シンクロ召喚!飛翔せよ!!『スターダスト・ドラゴン』!!」

《キュオオオン!!》

仲間達の願いを背負い…白銀の翼が舞い上がる!

 

【今さら攻撃力2500の『スターダストドラゴン』を召喚してどうなる!私の場には攻撃力4000の時械神が4体!そして攻撃力2万の「セフィロン」がいる!】

 

「いいや!この『スターダストドラゴン』はオレ達チーム5D'sの…この街の人々の願いの結晶だ!!『集いし願い』のさらなる効果発動!『スターダストドラゴン』の攻撃力を墓地にあるドラゴン族シンクロモンスターの攻撃力の合計分アップさせる!オレの墓地にいるのは…7体のシンクロモンスター!!」

 

墓地に眠る仲間達のモンスターがスターダストドラゴンに力を与え巨大化させる…合計攻撃力は…2万3000!

 

【攻撃力2万3000だと!?】

 

「さらに『集いし願い』は墓地のシンクロモンスターをエクストラデッキに戻す事で『スターダストドラゴン』と指定したモンスターを強制的にバトルさせる!オレが指定するのは…『究極時械神セフィロン』!!」

 

【だが…「セフィロン」はフィールドの時械神を除外する事で破壊とバトルダメージを無効にする!!】

ゾーンの場の時械神が合体…鉄壁の壁へと変化する!

 

 

「勝負だ!ゾーン!!」

遊星が仲間達の願いを背負いスターダストと並走する!

 

キィン─!

 

「お願い!『エンシェントフェアリードラゴン』!」

 

「いくぞ!『ライフストリームドラゴン』!」

 

「力を貸して!『ブラックローズドラゴン』!」

 

「頼むぜ!『ブラックフェザードラゴン』!」

 

「喰らえ!我が魂!『レッドデーモンズドラゴン』!!」

仲間達の声と共にシグナーのドラゴン達が時械神の壁を破壊していく!!

 

 

「よし!これで『セフィロン』を守る盾は全て破壊した!」

 

「いけぇ!!遊星!!」

 

 

「これが…オレの()()の攻撃だ!!」

最期の攻撃を前に遊星は目を閉じて思いだす…今までに繋いだ絆の全てを─

 

シグナーの仲間達…

 

自分を導いてくれた両親…

 

サテライトの仲間…

 

シティでできた新たな仲間…

 

自分達を支えてくれたネオドミノシティの人々…

 

命を懸けて戦ったダークシグナー…

 

しのぎを削った決闘者達…

 

未来を救う為に戦ったイリアステルの滅四星…

 

そして…命を捨ててまで希望を繋げた…ラプラス…

 

今、その思いが実を結ぶ!

 

 

 

「オレ達の未来を受け取れ!ゾーン!!オレ達の思いが…未来へと続く『光さす道』となる!!」

 

世界中から集まった希望の願いが遊星に収束…そして遊星はその言葉を紡ぐ!

 

 

「『スターダストドラゴン』!『究極時械神セフィロン』に攻撃!」

 

《キュオオオン!!》

 

スターダストドラゴンに凄まじいエネルギーを収束…そして…

 

 

「シューティング…ソニィィック!!!」

 

 

 

 

白銀の息吹が究極の神を貫いた…

 

 

 

ドガァァァン!!!

 

 

 

【馬鹿な─私が、負ける…だと…!?】

 

長き戦いは…遊星の勝利を以て決着した…。

 

 

 

 

Z-ONE LP0

 

不動遊星&チーム5D's WIN!!

 

 

 

『ついに決着─!!奇跡のデュエル!!奇跡の大逆転勝利でネオドミノシティを未来に導いたのは我らがヒーロー…不動遊星ぇぇぇ─!!!』

 

「「「やったぁぁぁぁ!!!」」」

MCの勝利宣言が響き渡る…住人達は遊星の勝利を喜び、安堵した…。

 

 

 

『…これでよかったのか?ラプラス…不動遊星はゾーンに勝ったぞ…新たな未来が…きっと始まる…!』

 

─ああ、ありがとなアポリア…彼らを頼む、力になってやってくれ…─

 

『っ…!?今のは…!?』

 

『どうしたんだ?アポリア…』

シグナー達が喜びに沸くなかひとり言を漏らしたアポリアは後ろを振り返る…

 

『…いや、なんでもない…ラプラスが…いたような気がしたのだ…』

 

 

 

 

 

「あっ…ゾーン!!」

デュエルに勝利した遊星は声を上げる…敗北したゾーンはコントロールを失いアーククレイドルへと落ちていく…

 

『この世界を救い、ゾーンを救ってやってほしい!』

 

 

「ゾーン!!」

ブルーノとラプラスの願いを思い出した遊星はゾーンを追いかけた…。

 

 

 

 

Sideシグナー

 

 

キュウウウン……

 

アーククレイドルのモーメントが停止する、ゾーンの言葉の通りライフと連動していたシステムが停止したのだ…だが、それが一つのピンチを生んでしまう…。

 

 

ゴゴゴゴゴゴ…!ガラガラガラ

 

 

「まずい!アーククレイドルがぶっ壊れるぞ!?」

 

『逃げるのだ!!アーククレイドルはもう保たん!!』

アーククレイドルが崩れ始める…モーメント停止による急制動にボロボロだった建物が耐えられなかったのだ…!

 

『ぐっ…!走れ!お前達は生きなければならない!走れ!!』

 

「アポリア!?アポリアも一緒に!!」

アポリアがシグナー達を急かすが…龍亞がアポリアへと手を伸ばす!

 

『すまないな龍亞、私の身体は限界だ…走る事はできん、足手まといだ…アンチノミー…彼らを頼むぞ…!』

 

『…わかった…!急ぐんだ龍亞!!』ガシッ

 

「あっ…!?アポリア…アポリアぁぁぁ!!」

ブルーノが龍亞を抱えて走り出す!

 

『生きろ…龍亞…進化の子よ…!』

 

 

「くっ…!間に合え!!」

ジャック達はDホイールへと走る…しかし…

 

ガラガラガラ!!

 

「しまっ…!?」

 

「「「うわぁぁぁ!!」」」

地面が割れ、ジャック達は空中へと投げ出される!!

 

 

《キュオォォン!!》

 

その瞬間、赤き光がジャック達を包み込んだ…。

 

 

 

 

 

「っ……ここは…?」

ジャック達が気付けば…そこは地上…町外れの高台だった。

 

『あれは…赤き竜…!ボク達を助けてくれたのか…!』

ブルーノが空に昇る赤き竜に気づく…シグナーのピンチに赤き竜が彼らを救ったのだ…。

 

 

「あ…アポリア!!」

 

『よもや敵対した私をも救うとは…赤き竜に感謝するほかないな…』

 

「よかった…よかった〜!!」

ジャック達から少し離れたところにはアポリアの姿もあった、龍亞は彼へと駆け寄っていく

 

「見て…!アーククレイドルが止まっている!」

 

「本当だ…オレ達はこの街を救えたんだ!」

シェリーの声にシグナー達はネオドミノシティを見る、アーククレイドルはネオドミノシティに直撃する寸前で停止していた…。

 

 

「…待って…遊星、遊星は!?」

 

「なっ…まさか…まだアーククレイドルにいるのか!?」

アキが遊星の不在に気づく…空を駆けていた遊星の姿はどこにも見えない…!

 

「まさか…私が見た『遊星が死ぬ未来』は…まだ変わっていないの!?」

 

「そんな…!?」

 

「おれ達は未来を変えたんじゃなかったのか!?」

シェリーの言葉にジャック達は動揺する…遊星は…いったい何処に…?

 

 

「「「遊星─!」」」

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

キキーッ!!

 

 

「ゾーン!大丈夫か!?しっかりするんだ!」

 

【ゆう…せい…】

 

遊星はアーククレイドルに落下したゾーンへと駆け寄る…ゾーンの乗機「モーメントコア・フライホイール」は地面に埋まり、ゾーン自身も口から血を流していた…。

 

 

【無駄、です…私の生命維持装置が、今…止まろうとしています…】

 

「そんな…!?」

ゾーンは機械の力、そしてラプラスの精霊の力を借りて常人では生きる事ができない程の長い時間を生きてきた…その身体は既に限界を迎えていたのだ…。

 

 

【いいのです…私の生命は既に…限界でした…本当は私も君達が変える未来を見届けたかった…!だが、私にはその時間がなかった…!ぐっ…コフッ…!?】

 

「ゾーン!もう喋ってはダメだ…!」

遊星の言葉にゾーンは静かに首を振る…

 

【遊星…私は仲間達を失い、ラプラスと2人で長い時を過ごしてきました…ラプラスと共に、死んでいった仲間との絆を糧に自分を奮い起たせて、生きてきました…彼が…私にとっての最後の希望でした…】

 

「ゾーン…」

遊星は想像した、人間が死に絶えた世界で2人で生きていく…それはどんな地獄の日々だったのだろうと…

 

【しかし…私は…彼を手に掛けた…遊星、私は何処で間違えたのでしょうか…】

ゾーンの言葉に今度は遊星が首を振る…

 

「ゾーン、ラプラスにもオレはこう伝えたんだ…間違ってなんていない、お前は…お前達は未来を切り拓こうとしただけだ…お前達の与えてくれた警告は人々の胸に深く刻まれた…!オレ達がそれを忘れない限り、きっと未来は変えられる!」

 

【遊星…私は人生の最後に未来を切り拓く貴方の姿を見た…貴方ならきっとやれる…貴方なら人々を導ける…!】

 

「だが、オレにはまだやらなければいけない事がある…!」

 

【…()()()()()…なのですね…】

遊星の眼差しを見たゾーンは問いかける…不動遊星のするべき最後の仕事…それは…

 

「…アーククレイドルを浮上させるにはマイナス回転をしているモーメントにプラス回転をしているモーメントをぶつける必要がある…!それが…オレの最後の役目だ…!」

 

そう言って遊星は飛び立つ…自分の生まれ育った街を守る為に…。

 

 

 

 

「……!」

遊星はアーククレイドルの中を駆ける…モーメントを正常に戻し、ネオドミノシティを守る為に…

 

 

ガシャアアン!!

 

 

【遊星!!】

 

「なっ…ゾーン!?」

そんな中、アーククレイドルの壁を突き破り…ゾーンが現れる!

 

【私の身体には()()()()()()()()()()が取り付けてあります…それをマイナスモーメントにぶつけます!!】

 

「なに…!?」

ゾーンの言葉に遊星は驚愕する…ゾーンは遊星の身代わりになるために駆けつけたのだ…!

 

【貴方には新たな未来が託された…貴方は生きなければならない!!】

そういうとゾーンはマジックアームを使い遊星を出口の方向へと投げつけた!

 

「なっ…!?ゾーン!!ゾォォォン!!」

投げつけられた遊星はなす術なく飛ばされていった…。

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side Z-ONE

 

【…行きましたか…どうか生きてください、「私のヒーロー」…不動遊星…】

飛ばされていく遊星を見送ったゾーンはアーククレイドルのモーメントへとたどり着く、そして…

 

 

ビシッ…ガシャアアン!!

 

ゾーンは躊躇なくモーメントへと突撃する…その目に絶望はない、あるのは…新たな未来への希望のみ…

 

 

【アポリア、アンチノミー、パラドックス…ラプラス…いま、私も逝きます…これでやっと…】

 

 

 

 

─ばーか、一人で逝かせるかよ…お前を一人で死なせたら…ミドリに叱られちまう─

 

 

 

【あっ…あぁ…!】

 

虹色の光に包まれる刹那…ゾーンは確かに見た、長き時間を共にした、かけがえのない友の姿を…

 

 

─行こうぜ●●、みんなが待ってる─

 

【ええ、ユウミ…】

 

 

 

 

キィィン─!

 

 

モーメントから溢れ出した虹色の光がネオドミノシティを照らす…それは未来と救わんとした偽者の英雄が「本物の英雄」になった証だった…。

 

 

 

 

SideEND

 

 

 

Side遊星

 

 

「ゾーン…!」

虹色の光を背に受けながら遊星は出口に向かって飛ぶ…ゾーンから託された未来へのバトンを繋ぐ為に…

 

 

ゴゴゴ…ガラガラガラガラ

 

「うわっ…!?くっ…!オレは…生きる!!」

アーククレイドル退去の影響で瓦礫が降りそそぐ…遊星は必死に瓦礫を避けて飛び続ける…生きる為に…!

 

 

「うおおぉぉ!!!」

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

「待て…!待ってくれ!消えないでくれ!!」

 

「まだ遊星が!!」

 

アーククレイドルの退去する様子を見ながらシグナー達は叫ぶ…しかし、無情にもアーククレイドルは朝日に溶けるようにこの時代から消えていった…。

 

 

「そんな…!?遊星…遊星!!遊星!!!」

 

「そんな…嘘だろ…!?」

 

『遊星…君は…!君がいなければ!意味がないだろう!!』

龍亞の叫びが夜明けの街に響く…シグナー達の悲しみの声が響く…遊星は…

 

 

 

「まって…あれって…!?」

その時、アキの目が何かを見つけた…昇る朝日に浮かぶ黒い点…それは…!

 

「遊星…!遊星が帰ってきた!!」

 

「無事だったのか!!」

 

「心配かけやがって!!」

シグナー達の悲しみが喜びに変わる…未来は確かに変わったのだ…!

 

「「遊星!!」」

 

「おかえりなさい!遊星!!」

 

「アキ…みんな……ただいま!!」

 

 

太陽を背に遊星は仲間のもとへと帰還する…こうして遊星達は新たな未来を手に入れたのだった…。

 

 

 

 

 

 




『そうか…ゾーン…君はようやく救われたんたんだね…』

「ああ、オレが帰ってこられたのも…ゾーンのおかげだ…」
仲間達と喜びを分かち合った遊星はアーククレイドルで何が起きたのかを仲間達へと伝える…誇り高き英雄の最期を…


「しかしまぁ…街も派手に壊れたなあ、復興にどれだけかかる事やら…」
クロウは街を見渡す…アーククレイドル直撃は避けられたものの、落下した瓦礫などでシティはボロボロ…治安維持局に至っては大きな穴が空いている…。

「問題ないさ、オレ達が団結すればできない事はない…そうだろ?」

「ああ、俺達はこれから新たな未来を歩む!それが奴の望んだ事だからな…」

「よっしゃぁ!おれも頑張るぞ〜!…その前にご飯食べようよ…お腹すいちゃった!」

「もう!龍亞ったら〜!!」

「フフッ…それじゃあ一度ガレージに戻りましょう!そしたら翠さんに頼ん……えっ…あれ?」

「ん?どうしたんだアキ?そんなに周りを見回して…?」
仲間達が談笑する中…アキが不安な表情で辺りを見渡す…

「遊星…翠さんと遊海さんは…何処…!?」

「まさか…!?みんな!遊海さん達を知らないか!?」

「「「えっ…!?」」」
遊星の言葉にシグナー達は固まる… 


「待てよ…遊星とゾーンのデュエルが始まってから姿を見てねぇぞ!?」

『彼らは…ラプラスを埋葬すると言っていた…ま、まさか…!!』


「ゆ、遊海さん─!!!」


アポリアの言葉を聞いた遊星の叫びが響く…果たして遊海達に何があったのだろうか…?









キィン─!


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最終決戦!虚無邪神ダークネス─因縁終結─

こんにちは!S,Kです!

遊海の長き戦いは遂に決着を迎える…全ての絶望を断ち切る為に遊海はその力を開放する!

それでは最新情報をどうぞ!


遊星とZ-ONEの決着、ネオドミノシティの新たな夜明けから時は遡る…。

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

「うっ…ここ、は…」

意識が浮上する…身体が酷く重い、頭がまったく働かない…俺は…何を…?……─!?

 

「み、翠!!!あがっ…!?」

急速に意識が覚醒しパニックになる…俺はどうして意識を失っていた!?翠は!?ラプラスは!?遊星はどうなった!?そもそもどれくらいの時間気絶していた!?

 

 

「あ…遊海さん!遊海さん!!あっ…」

 

「み…みどっグハッ!?」

 

ドッターン!

 

意識を取り戻した遊海に翠が駆け寄り…瓦礫に躓き遊海に突っ込み、一緒に地面に倒れこむ…

 

 

「遊海さんごめんなさい!!私が攫われたりしたから…!」

 

「謝るのは俺の方だ…!怖い目に遭わせてごめん!!もっと俺が気を付けていれば…!!」

遊海と翠は互いに謝り合い、そして抱きしめあった…互いの無事を確かめあうように…。

 

 

『…取り込み中すまない遊海、今は一刻を争う状況だ…力を貸してほしい…!』

 

「っ…!?ブルーノ…いや、アンチノミーか!?なんでお前がここにいる…!遊星はどうした!!」

 

「遊海さん落ち着いて!もう彼は敵じゃありません!実は─…」

遊海は翠から今までの状況を聞かせられる…遊海がラプラスとの戦いの後に気絶していた事…アンチノミーが遊星との戦いの後に何らかの力で助かった事、そしてアンチノミーが自分達を見つけてから30分程経っている事…そして……

 

 

「ラプラスの野郎…!なんて事を…!!すまない…みんな…!!」

遊海は目の前に広がる惨状に歯を食いしばる…先に動けるようになった翠によりトフェニとフレアは治療されていたものの純粋な機械であるアヤカや、岩の身体であるメガロックは痛ましい姿を曝している…。

 

「すまないみんな…今の俺にはみんなを治す力が残っていない…精霊界で傷を癒やしていてくれ…!」

遊海はそう精霊達に語りかけ精霊界へと送還する…

 

 

《っ…ユウ、ミ…》

 

「フレア!すまない…辛い目に遭わせた…必ずラプラスは俺が…!」 

送還の直前、フレアがかろうじて意識を取り戻す…

 

《ユウミ…先に手を出したのは私達です…ラプラスがあなた達に手を出そうとしたと勘違いして攻撃を…はやく、ラプラスを追うのです…彼は…死ぬつもりです…!》

 

「なにっ…!?どういう事だ!」

 

《ラプラスは…あなたの赤帽子を被って遊星達のもとに…!急い、で…!》シュゥゥン…

 

「っ!!!『閃光竜』!!!」

《キュオオオン!!》

 

フレアの言葉を聞いた遊海はなけなしの力で閃光竜を呼び出す!

 

 

「遊海さん!どういう事なんですか!?ラプラスが死のうとしてるって…いったいどうして!?」

状況を飲み込めない翠は遊海へと問いかける…

 

「翠、最初に言っておく……ラプラスは()()()()()()()

 

「えっ…そん、な…!?なんで…!?」

遊海の思わぬ言葉を聞いた翠は固まる…

 

「…詳しい事情はわからない、だが…奴が()()に戻ったなら…奴は絶対に()()()()()()()()()()()!遊星達を追うぞ!!」

 

「わ、わかりました!!」

 

『遊海!ボクも連れて行ってくれ…!ラプラスは…ゾーンの最後の希望なんだ!』

 

「わかった…しっかり掴まってろ!!翔べ!『閃光竜』!!!」

《キュオオオオン!!!》

 

3人を乗せた閃光竜は飛翔する、遊星達のもとへ向かって…

 

 

 

 

 

 

「突き抜けろ!流星突撃(シューティングアサルト)ォ!!」

《キュオオン!!》

 

「あれは『閃光竜』!?遊海さん!!翠さん!!」

飛び続けること数分…遊海はアーククレイドルの床を突き抜けて遊星達のいる最上階へと到達する…。

 

 

「お前達無事か!ラプラスは何処だ!!」

遊海は辺りを見渡す…そして、本来この場にいないはずの人物を見つける…。

 

「待て…どうしてアポリアが生きている!?お前はゾーンとデュエルを…!」

 

『…ラプラスは、死んだわ…アポリアを庇って…ゾーンとデュエルを…!』

 

「なっ…」

シェリーの言葉に遊海は振り返る…シェリーの膝の上…そこには胸に穴を穿たれたラプラスが満足気な表情で眠っていた…。

 

「貴様…貴様!!何を寝たフリしてやがる!!」

それを見た瞬間、遊海を支配したのは激情だった…怒り、悲しみ、後悔…遊海はシェリーからラプラスを奪いとる…その体は既に熱を失っていた…。

 

「「起きやがれ!許さねぇぞ!!お前は…!お前は!!

…馬鹿野郎…!この大馬鹿野郎が─!!!」」

 

そして俺は理解した…ラプラスを支配していた()は…まだ…!

 

 

 

 

 

「…遊海さん…オレは勝ちます…!希望を託してくれたもう1人の遊海さんの為に…!!」

俺は遊星から手短にラプラスの最後を聞く…俺とのデュエル、そして精霊達との戦いで致命傷を受けながらもゾーンと対峙し、「時械神」の効果を遊星に残した…誇り高き最期を…

 

「わかった…必ず勝て、遊星…俺がしてやれるのはこれくらいだ…!」

オレは遊星の体力を回復させる、遊星の勝利を信じて…

 

 

「あの…遊海さん、これ…」

 

「龍可…ああ、ありがとな…」

龍可が俺に赤帽子を手渡す…ラプラスが託していたのだろう

 

「遊海さん…ラプラスは怖い人だったけど…本当は優しい人だったの…だから、もう…」

 

「ああ、わかってる…俺はもうあいつを憎まない、あいつもあいつなりに未来を救おうとしてたんだ…その願いは…確かに受け取った…遊星を頼んだぞ…俺にはやらなきゃならない事がある…」

 

そして俺はアポリアに霊廟の場所を聞き、ラプラスの亡骸と共にその場を後にした…。

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん、大丈夫…ですか…?」

 

「ああ、大丈夫だよ…翠」

遊海と翠はアーククレイドル内の霊廟へと到着した、ラプラスは棺へと寝かせられ、遊海はその近くの壁に寄りかかり座り込んでいる…。

 

 

「…遊海さん、私…聞きたい事があったんです…どうして遊戯さんや十代君達を集めたんですか…?」

翠は壁際に座り込む遊海に問いかける…

 

「イリアステルから町を守るにしても…戦力が多すぎます、これから()()()()()()()()()?」

翠の疑問はもっともな事だった、遊海が招集したのは精霊の力をもつ世界最高レベルの決闘者達…そこに遊海を加えればもはや国一つを相手にできるだろう…。

 

「翠…俺は考えたんだ、『もしも俺が破滅の未来を前にしたら』ってな…俺ならば精霊の力を使って大抵の事はできる、『死者蘇生』以外ならな…奴ならば世界を救う方法の1つや2つ、すぐに思いついたはずだ…でも、奴はそうしなかった…なんでかわかるか?」

 

「ラプラスは…世界を救う事が目的じゃなかった…?」

 

「そうだ、正確には…手段に過ぎなかったんだろうな」

遊海は翠の言葉を肯定する。

 

「奴は未来を救う事で間接的に取り戻そうとしたんだ、亡くした…愛する者を…」

 

「…!?」

その言葉を翠は気付いた、遊海とラプラスの分岐点…それは翠の…愛する者の存在だったのだ…。

 

 

「そして…奴は隙を突かれた…そのせいで、あいつは死ななきゃならなかった…!!…いるのはわかってるんだ…いい加減に出て来いよ…!」

 

「遊海さん…?」

遊海は静かに立ち上がる…その瞳に強い怒りを宿して…!

 

 

 

「姿を現せ…()()()()()!!!」

 

 

 

 

【ククク…ハハハハ…よくぞ見抜いたな、白波遊海…愚かな転生者よ…!】

 

 

「あっ…!?そんな…!」

ラプラスの亡骸が闇に飲み込まれる…溢れだした闇は膨張…その中から漆黒のローブを纏った者が現れる…その名はダークネス…世界創造の際に生まれた虚無の世界を支配する邪神である…!

 

 

「ラプラスが…!」

 

【世界は再び絶望に包まれようとしている…今こそ世界を虚無へと沈めん…!】

ラプラスの身体を取り込んだダークネスは両手を広げながら宣言する…。

 

「…ラプラスにダークネスが取り憑いている事は予測していた…遊戯や十代達を呼んだのは…コイツを倒す為だ…!!」

遊海の招集した決闘者達…その目的はダークネス、そして部下たるミスターTとの決戦を想定した対抗部隊だったのだ…!

 

 

【取り憑く?違うな、彼奴は絶望し自ら闇を受け入れた…そして我は内側から奴を喰い尽くし、復活の刻を待っていた…だが、我が身は未だ不完全…汝らを取り込み、再び世界を掌握する!】

 

「やらせるかよ…アイツの守ろうとした世界は…遊星達の歩む未来は…俺が守る!!」

 

「遊海さん!私も戦います…!」

翠は遊海と共にデュエルディスクを構える!

 

「いや…お前は下がっていてくれ、まだ傷が痛むだろう?それにこれは()のケジメだ…ラプラスと未来の翠…その仇は…俺が取る!!」

 

「遊海さん…負けないで…!」

 

「ああ、デュエルだ!ダークネス!!」

遊海は翠の応援を聞きながらダークネスを睨みつける!

 

【よかろう…かかってくるがよい!愚かな転生者!我が名はダークネス…この世界の真理なり!!】

ダークネスは黒き翼を広げる…遊星が未来を掴む戦いをする中…遊海の世界を守る為の戦いが始まる!   

 

 

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

ダークネス(アナザー)LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

【我のターン、ドロー!】

【我は魔法カード『二重召喚』を発動、さらにフィールド魔法『ダークネス』を発動!手札から2枚、デッキから3枚のカードをランダムにセットする、さらに『ダークネス・アイ』を召喚!】

ダークネスの場に5枚のカードがセットされ、気味の悪い目玉のモンスターが現れる ATK0

 

【『ダークネスアイ』が攻撃表示で場に存在する時、手札のモンスターをリリース無しで召喚できる、現われよ『ダークネス・ブランブル』!】

無数の目を持つ異形の植物が現れる ATK2000

 

 

【我はターンエンドだ】

ダークネスLP4000

ダークネスアイ ブランブル ダークネス 魔法・罠5 手札0

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「魔法カード『おろかな埋葬』発動!デッキの『レベル・スティーラー』を墓地に送る!そして『シンクロン・キャリアー』を召喚!」

背中にクレーンを装備したロボットが現れる ATK0

 

「『シンクロンキャリアー』が場にいる時、俺は追加で『ジャンク』モンスターを召喚できる!来い!『ジャンク・シンクロン』!」

ジャンクデッキの要であるオレンジ色のロボットが現れる ATK1300

 

 

「『ジャンクシンクロン』の効果発動!墓地の『レベルスティーラー』を特殊召喚!さらに墓地からモンスターを特殊召喚した事で『ドッペルウォリアー』は手札から特殊召喚できる!」

一つ星のテントウムシと黒い兵士が現れる DEF0 DEF800

 

 

【我はリバースカード『虚無』を発動!そして連動してこのカードが発動される…『無限』を発動!】

 

「っ…!このタイミングで来たか!」

 

【『無限』が発動した事で『虚無』と『無限』の間に伏せられたリバースカードを全て発動する…虚無と無限の間を埋めるモノ…それがダークネス…!発動せよ『ダークネス1』『ダークネス3』!『ダークネス1』が最初に発動された事で『ジャンクシンクロン』と『ドッペルウォリアー』を破壊する!】

 

「っぐ…!」

 

「遊海さん!!」

邪悪な稲妻が遊海のモンスターを破壊する!

 

 

【識っているぞ、汝はシンクロ召喚を狙っていたな…世界を滅ぼした人間どもの負の象徴を…】

 

「シンクロは負の象徴なんかじゃない!未来を切り拓く力だ!俺は手札の『グローアップ・バルブ』を墓地に送り『クイック・シンクロン』を特殊召喚!」

ガンマン風のロボットが現れる ATK700

 

「俺はレベル2の『シンクロンキャリアー』にレベル5の『クイックシンクロン』をチューニング!」

 

2+5=7

 

「集いし願いが新たな力を呼び覚ます!シンクロ召喚!燃えろ!『ニトロ・ウォリアー』!」

腕にアーマー着けた緑色の武人が現れる ATK2800

 

「さらにデッキトップを墓地に送り…墓地の『グローアップ・バルブ』を特殊召喚!」

目玉を持つ球根が現れる DEF100

 

墓地送り

ラッシュウォリアー

 

 

「俺はレベル1の『レベルスティーラー』にレベル1『グローアップバルブ』をチューニング!」

 

1+1=2

 

「デュエルを新たな地平に導け!シンクロ召喚!『フォーミュラ・シンクロン』!」

レーシングカー型のロボットが現れる DEF1500

 

 

「『フォーミュラシンクロン』がシンクロ召喚に成功した事で1ドロー!さらに『ニトロウォリアー』のレベルを1下げる事で墓地の『レベルスティーラー』を特殊召喚!」

ニトロウォリアーのレベルを喰らいテントウムシが現れる DEF800

 

ニトロウォリアー ☆7→6

 

 

「バトル!『ニトロウォリアー』で『ダークネスアイ』を攻撃!ダイナマイトナックル!!」

 

【ぐっ…!!】

強烈な一撃が異形のモンスターを破壊する!

 

ダークネスLP4000→1200

 

 

「俺はこのままターンエンドだ!」

 

【フィールド魔法『ダークネス』の効果発動、エンドフェイズに我の伏せカードをランダムにセットする…さらに『ダークネスブランブル』の効果発動、お互いのエンドフェイズ時に我のライフが4000以下の時、そのライフを4000にする!我が糧となれ…哀れな男の魂よ…!】

 

ドクン…!

 

ダークネスの身体を闇が覆い、力を与える!

 

ダークネスLP1200→4000

 

 

遊海LP4000

ニトロウォリアー フォーミュラ レベルスティーラー 手札1

 

 

 

 

「てめぇ…!!」

遊海は怒りを露わにする…ダークネスはラプラスの亡骸を自身の依代にするだけではなく、魂をも食い物にしたのだ…!

 

 

【何故、怒る必要がある?この男は貴様を何度も襲い、破壊を齎した「悪」…汝にとっての仇敵であろう?】

 

「お前が、そうなるように仕向けたんだろう…!」

 

【クク…それは心外だな、我は少し心の枷を外して囁いただけだ…『イレギュラーを排除しろ、イレギュラーがなくなれば未来は救われる』とな…!】

 

「テメェ…絶対に許さねぇ!!ラプラスの願いを…ゾーンの希望を…馬鹿にするなぁ!!!」

 

「っ…!遊海さん!落ち着いて!!ダークネスの挑発に乗らないで!!」

ダークネスの言葉に激昂する遊海を翠が落ち着かせようとする…

 

「ぐっ…!!さっさとターンを進めろ、絶対にお前を倒す!!」

 

【ククク…!強がりを…貴様はミスターTに敗れた、我に勝てると思うな…!】

 

 

 

【我のターン!ドロー!】

【リバース罠発動『無限』!さらに『虚無』を発動!『虚無』の効果により『虚無』と『無限』の間に伏せられたリバースカードを全て発動する!発動せよ『ダークネス2』『ダークネス1』!『ダークネス2』の効果により『ダークネスブランブル』の攻撃力は2000アップする!】

異形の植物が巨大化する! ATK2000→4000

 

 

「攻撃力4000…!『フォーミュラシンクロン』の効果発動!俺はレベル6の『ニトロウォリアー』にレベル2『フォーミュラシンクロン』をチューニング!!」

 

6+2=8

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に轟け!シンクロ召喚!来い!『閃光竜スターダスト』!」

光を纏い希望の竜が現れる DEF2000

 

 

【ふん…バトルだ、『ダークネスブランブル』で『閃光竜』を攻撃!】

鋭い茨の鞭が閃光竜に迫る!

 

「『閃光竜』の効果発動!1ターンに一度、破壊を無効にする!波動音壁(ソニックバリア)!」

茨の鞭はバリアに阻まれる!

 

【小癪な…我はターンエンド、『ダークネス』の効果によりリバースカードはランダムにセットされる】

 

ダークネスブランブルATK4000→2000

 

 

ダークネスLP4000

ブランブル ダークネス 伏せ5 手札1

 

 

 

 

「…堅い…!これが虚無の邪神の力か…だが、俺は負けない…!!」

遊海は攻めあぐねていた…ダークネスのセットカードはフィールド魔法『ダークネス』によりランダムに伏せられ、自分では確認できない…しかし、フィールドに一部の「ダークネス」モンスターがいる時にその効果を無視してセットカードを確認できるのだ…!

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『閃光竜』を攻撃表示に変更!バトルだ!「閃光竜」で『ダークネスブランブル』を攻撃!流星閃撃(シューティングブラスト)!」

 

【フッ…我は手札から『ダークネス・レインクロー』の効果発動!相手の攻撃宣言時、手札のこのカードとフィールドの『ダークネス・ブランブル』を墓地に送る事でデッキから『ダークネス・ネオスフィア』を特殊召喚する!】

 

「しまった…!!」

ダークネスブランブルが消え去る…そしてダークネスの切り札たる白き天使の羽と黒き悪魔の翼を持つ異形の女性型モンスターが現れる ATK4000

 

「攻撃中止!カードを伏せてターンエンド…!」

 

【ただで終わらせると思うか?発動せよ『虚無』『無限』!そして発動せよ『ダークネス3』『ダークネス2』『ダークネス1』!】

 

「しまっ…!」

発動したカードを見た瞬間、遊海の顔が青ざめる…!

 

【『ダークネス3』の効果発動!3000ダメージをその身に受けるがいい!!】

 

バリバリ…ビシャァァン!!

 

「ガッ…ぐあぁぁああ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!?」

 

「ゆ、遊海さぁぁん!!!」

遊海を闇の雷撃が襲う…その衝撃で遊海は壁に叩きつけられた…

 

遊海LP4000→1000

閃光竜 レベルスティーラー 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

「ガッ…ア…大ダメージにも、限度が…ゴボッ…!」

 

「遊海さん!しっかりして!!意識をしっかり保って!!」

倒れ伏す遊海に翠が駆け寄る…遊海は既にラプラスとのデュエルで瀕死に近いダメージを受けている…その体力は既に限界を超えていた…。

 

【無様だな、白波遊海…未来の貴様もそうだ、幾度も傷付き、自身の命を削り世界の為に尽くしたが…なんの意味も為さなかった、この世界は破滅に向かっている…そのような世界を…未来を守る事に意味があるのか?】

 

「ゴフッ…!意味は、ある…!俺は信じてる…遊星が切り拓く未来を…!」

 

「そうです!未来はまだ決まってない!例え破滅が待っていても…私達は絶対に諦めない!!」

ダークネスの言葉に遊海と翠はダークネスを見つめる…二人は知っているからだ…遊星の切り拓く新たな未来を…!

 

【詭弁を…ならば絶望の前にひれ伏すがいい!】

 

 

 

 

【我のターン、ドロー!】

【『ネオスフィア』の効果発動!伏せカードを任意の順番に並べ直す!発動せよ『虚無』『無限』!そして『ダークネス1』『ダークネス2』『ダークネス3』!『ダークネス1』の効果により汝の伏せカード、そして『閃光竜』と『レベルスティーラー』を破壊する!】

 

「ぐっ…!すまない…『閃光竜』!!効果発動!伏せカードを破壊から守る!波動音壁!!」

雷撃が遊海の場を蹂躙する!

 

【バトルだ!『ネオスフィア』よ!転生者を葬り、世界を虚無に沈めよ!】

ネオスフィアの闇の光線が遊海に迫る!

 

「リバース罠『くず鉄のかかし』発動!攻撃を無効にし、このカードをセットする!」

かかしが光線を弾く!

 

【しぶとく生き残ったか…だが、残りライフは僅か1000、手札1枚では何もできまい!ターンエンド!『ダークネス』の効果で再びリバースカードはシャッフルされる!】

 

ダークネスLP4000

ネオスフィア ダークネス 伏せ5 手札1

 

 

 

ズズ─…ン…!

 

「ぐっ…この揺れは…!?」

 

【どうやら霊廟が街を潰し始めたようだな…この街が消滅すれば人間の心は「未来への不安」という負の感情に支配される…そしてこの世はダークネスに沈むのだ…!】

デュエルを続ける遊海達に揺れが襲う…ネオドミノシティの消滅まであと僅か…しかし、それは希望の前触れでもある…!

 

 

キィン─!

 

「この光は…!」

遊海の痣が強い光を放つ…それは進化の目覚め…遊星の覚醒の証だった。

 

「遊星、お前ならばたどり着けるはずだ…デルタアクセルのその先へ…!!」

 

【フン、シグナーの痣か…何故、汝が選ばれたのだろうな?未来を破滅させる引き金を引いたお前が…赤き竜は愚かな竜だ…】

 

「─…!(そうだ…なんで赤き竜は俺を選んだ?ラプラスはシグナーに選ばれなかった…でも、俺は…)」

ダークネスの言葉を聞いた遊海は考え込む、本来であれば遊星・ジャック・クロウ・アキ・龍可そして龍亞の6人が目覚めるはずだったシグナーの痣…しかし、遊海の腕にもその痣は現れた…遊海も知らない7番目の痣「ドラゴン・フレイム」…その目覚めの意味は…

 

 

 

 

 

 

 

 

─俺は『決闘王』の名を継ぐ者!白波遊海!5000年に渡る光と闇の戦いに決着をつける者だ!─

 

 

 

 

「えっ…?」

その瞬間、遊海の脳裏に自分の叫んだ言葉が甦った…それはレクス・ゴドウィンに言い放った何気のない一言…それを突然に思い出したのだ…。

 

 

「光と闇の決着…そうか、わかった…俺の役目が…なんで赤き竜が俺を選んだのか…!!」

その時、遊海の胸にストンと何かが収まった…

 

「遊海さん…?」

 

【赤き竜が汝を選んだ理由…?それがなんだというのだ?】

 

「俺は()()を倒す為に力を与えられたんだ…俺は闇を祓い、光を導く者…観測者……決闘の観測者(デュエル・ゲイザー)だ!!」

 

キィィン─!!

 

「えっ…これは!?」

 

【な、なんだ…この光は…!!】

遊海の痣が姿を変えていく…炎のような紋様から太陽の紋様へ…その真名は「ドラゴン・ソウル」…赤き竜の魂を示す痣である!

 

 

「俺は遊戯や十代、遊星と共に『闇』と戦ってきた…地球の闇に大邪神、ダークネス…地縛神…俺は闇と戦う運命にある!俺は決闘者を導き、人々を守る者…それが…俺の役目だ!!」

 

【世迷い言を…!汝は我には勝てぬ…光あるところに闇は生まれる…!】

ダークネスを覆う闇が広がっていく…!

 

「なら、そのバランスを取るのが俺の役目だ!光と闇を宿し、世界を守る為に力を振るう…俺はハッピーエンドを掴み取る!!」

 

キィン─!

 

「…そうか、辿り着いたんだな遊星…ならば…俺も…負ける訳にはいかない!!」

痣が遊星の覚醒を…「シューティング・クェーサー・ドラゴン」の降臨を伝える…遊海は全身に闘志を纏う!

 

 

「翠…見ていてくれ…俺の手に入れた力を…闇を祓う希望の力を!!いくぞ…ユウスケ!!」

 

「遊海さん!?」

 

【何をするつもりだ!!】

 

「こうするんだ!俺は…俺自身でオーバーレイ!!」

遊海の叫びと共に眩い光と優しき闇が遊海の身体を包む!

 

「世界に満ちる優しき光安寧の闇…我が身に宿り未来を紡げ!!ランクアップ!エクシーズチェンジ!!」

遊海の身体が再構成される…それは遊海のたどり着いた境地、そして世界を守る戦士の姿…!

 

『新たなる希望!人々を導く光!《NEXUS》!!』

赤き鎧を被り、赤のコートと黒の鎧を纏った戦士が現れる…その名はNEXUS、遊海が生きながらにして魂のランクアップを遂げた姿である…!

 

「遊海…さん…!その姿は…ZEXAL…!?」

 

【馬鹿な…世界の表側…高次世界の力だと!?ありえん…ありえん事だ!!】

遊海…NEXUSの姿を見たダークネスは動揺する…感じ取ったのだ、12次元に含まれない高次世界の力を…!

 

『翠…オレは闇を…ユウスケを受け入れる事で魂のランクアップを遂げた、それがこの姿…NEXUSだ!!』

 

「すごい…!かっこいいです!!遊海さん!!」

 

『ありがとな…翠の声が…オレの一番の元気の元だ…!』

 

 

【おのれ…姿が変わったくらいで…この状況から逆転する事など不可能だ!】

 

『見せてやるよダークネス!人の希望の力を!!』

 

 

 

 

 

 

『オレのターン!最強デュエリストの決闘は常に必然!ドローカードすらデュエリストが創造する!シャイニング・ドロー─!!

光の軌跡を残し、カードがドローされる!

 

『「貪欲な壺」を発動!墓地の「ニトロウォリアー」「フォーミュラシンクロン」「ドッペルウォリアー」「グローアップバルブ」「クイックシンクロン」の5枚をデッキに戻し2ドローする!シャイニングドロー!!』

 

『力を貸してくれ…!相手フィールドにレベル5以上のモンスターがいる時!「ジャンク・ジャイアント」は特殊召喚できる!』

一つ目の大型のロボットが現れる DEF2400

 

『さらに!墓地の「ラッシュウォリアー」の効果発動!自身を除外して墓地の「ジャンクシンクロン」を手札に加え…召喚!』

再びオレンジ色のロボットが現れる ATK1300

 

『「ジャンクシンクロン」の効果発動!墓地から「シンクロンキャリアー」を特殊召喚!』

クレーンを搭載したロボットが復活する DEF1000

 

『オレはレベル2の「シンクロンキャリアー」にレベル3「ジャンクシンクロン」をチューニング!』

 

2+3=5

 

『集いし進化が新たな力を紡ぎだす!希望を導け!シンクロ召喚「アクセル・シンクロン」!』

赤いバイクを模したロボットが現れる DEF2100

 

『さらに!「ジャンクジャイアント」のレベルを1つ下げ「レベルスティーラー」を特殊召喚!』

再びテントウムシが現れる DEF800

 

【フン…レベル10のモンスターをシンクロ召喚するつもりか…やってみるがいい!(我の『虚無』と『無限』の間には『ダークネス1』『ダークネス2』がある…汝の切り札は破壊される…絶望を味わうがいい…!)】

 

『オレは…レベル5「ジャンクジャイアント」とレベル5チューナー「アクセルシンクロン」を…リリース!!』

 

【何…?】

 

「その召喚条件は…!」

遊海の行動にダークネスは困惑し、翠は…そのモンスターに気づく…!

 

 

 

『現われよ!異世界の究極神にしてこの世界を守る神龍!其の名は…「ケッツアルコアトル」!!』

 

《キュオォォン!!》

遊海の痣が強く輝く…そして虚空より赤き竜…ケッツアルコアトルが遊海の場に降臨した…! ATK0

 

「赤き竜…!?『アルティマヤ・ツィオルキン』じゃなくて!?」

 

【馬鹿な…赤き竜を…神を従えただと!?】

遊海の場に出現した赤き竜にダークネスは動揺する…!

 

【だが…!これで滅びよ!『虚無』!『無限』!そして『ダークネス1』『ダークネス2』!滅びよ!『赤き竜』!『レベルスティーラー』!】

闇の雷撃が遊海の場を襲う!!

 

 

【これで終わりだ…なにっ!?】

 

《キュオォォン!!》

 

土煙が晴れる…そこには無傷の赤き竜が佇んでいた…

 

『「ケッツアルコアトル」の効果、神の護り…1ターンに一度、いかなる破壊からも自身を守る!バトルだ!「ケッツアルコアトル」で「ネオスフィア」を攻撃!』

 

【攻撃力0で攻撃だと!?血迷ったか!!】

 

『「ケッツアルコアトル」の効果発動!自分の場にドラゴン族シンクロモンスターが存在しない時にこのカードがバトルする時!このカードの攻撃力は相手モンスターの攻撃力と同じになり、相手の伏せカード1枚を破壊する!!未来を切り拓け!神の怒り(マヤクール・スイオラル)!!』

 

【し…しまった!!】

神の炎によりダークネスの伏せカードが破壊される、そして『ダークネス』のデメリット効果が発動する…それは『自分フィールドの魔法・罠が破壊された時、フィールドの全ての魔法・罠カードを破壊する』効果…ダークネスの戦略は全て打ち砕かれた!!

 

 

 

《キュオォォン…!》

 

『すまない…そしてありがとう赤き竜…!お前のおかげで活路が開けた…!』

ネオスフィアと相打ちになり赤き竜が消えていく…しかし、その顔は遊海を心配しているようだった…。

 

『大丈夫…オレは必ず勝つ!!カードを伏せてターンエンド!』

遊海LP1000

伏せ2 手札1

 

 

 

 

【馬鹿な…人間如きにこの我が…!認めん…認めんぞぉ!!】

 

 

 

【我のターン!ドロー!!】

【現われよ!『ダークネス・ネクロスライム』!】

黒いスライムが現れる ATK0

 

【このカードをリリースする事で蘇れ!『ダークネスネオスフィア』!】

 

「っ…!また!!」

再び異形の悪魔が現れる ATK4000

 

【「ネオスフィア」でダイレクトアタック!!】

 

『リバース発動!「くず鉄のかかし」!』

再び攻撃を受け止める!

 

【おのれ…!!ターンエンド!!】 

ダークネスLP4000

ネオスフィア 手札1

 

 

 

『ダークネス…見せてやる!オレの希望の力を!!』

 

 

 

 

『オレのターン!シャイニングドロー!!

『リバースカード発動!「調律」!「ジェットシンクロン」を手札に加え、デッキトップを墓地へ!』

 

墓地送り

ダンディライオン

 

 

『墓地に送られた「ダンディライオン」の効果で「綿毛トークン」を2体召喚!』

タンポポの綿毛が現れる DEF0 ×2

 

『さらに「ジェットシンクロン」を召喚!』

再びエンジン型のロボットが現れる DEF0

 

『オレはレベル1の「綿毛トークン」2体にレベル1の「ジェットシンクロン」をチューニング!』

 

1+1+1=3

 

『霞の谷を守る怪鳥よ!敵を惑わせ!シンクロ召喚!「霞鳥クラウソラス」!』

巨大な怪鳥が現れる DEF2300

 

 

『さらに!手札の「ラッシュウォリアー」を墓地に送り、墓地の「ジェットシンクロン」を特殊召喚!』

再びエンジン型の機械が現れる DEF0

 

 

『そして墓地の「ラッシュウォリアー」の効果発動!墓地から除外する事で「ジャンクシンクロン」を手札に加える!そして召喚!効果で「シンクロンキャリアー」を特殊召喚!』

三度オレンジのロボットとクレーンのロボットが現れる ATK1300  DEF1000

 

『オレはレベル2の「シンクロンキャリアー」にレベル3「ジャンクシンクロン」をチューニング!』

 

2+3=5

 

『集いし星が新たな力を呼び起こす!シンクロ召喚!現れろ!「ジャンク・ウォリアー」!』

遊星の頼りにする青い戦士が現れる ATK2300

 

『さらに魔法カード「死者蘇生」を発動!蘇れ!「アクセルシンクロン」!』

再び赤いバイク型のロボットが現れる DEF2100

 

 

『そして「ジャンクウォリアー」のレベルを一つ下げる事で「レベルスティーラー」を特殊召喚!』

再びテントウムシが現れる DEF800

 

ジャンクウォリアー ☆5→4

 

『これで準備が整った!オレは「クラウソラス」の効果発動!「ネオスフィア」の攻撃力を0にし、効果を無効にする!幻惑のフェザーダンス!』

 

【なんだと!?】

ネオスフィアの力が奪われ弱体化する! ATK4000→0

 

 

『オレはレベル3の「クラウソラス」とレベル4の「ジャンクウォリアー」にレベル5「アクセルシンクロン」をチューニング!!』

 

3+4+5=12

 

『古の天空を彩る星々よ!!神雨となりて世界を祓え!アクセルシンクロ!!レベル12超来迎!!「聖光神竜 スターダスト・シフル」!!』

《ギュオオオン!!》

聖なる光を纏い、人々の希望の結晶が現れる!! ATK4000

 

 

 

【我が…敗れるというのか…!?この我が、人間如きに…!?】

 

『ただの人間じゃない…オレは決闘者だ!!オレ達が希望を捨てない限り…お前の出番はない!!「スターダスト・シフル」!「ダークネス・ネオスフィア」を攻撃!』

人々の希望の光がシフルに集中し、最後の攻撃が放たれる!!

 

超新星撃(シューティング・ノヴァ・ブラスト)!!」

 

《ギュオオオン!!》

 

星の爆発に匹敵する力の奔流が全ての絶望を…闇を吹き飛ばした…

 

 

 

【馬鹿な…馬鹿なァァァ─!!!】

 

 

 

ダークネスLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

オオオ…我は不滅…我は真実の闇…!必ず…復活する…!

デュエルが終結しダークネスが霧散していく…

 

『オレの目が黒い内は…お前の出番はないぜ…ダークネス』

 

【ククク…覚えておけ白波遊海…次こそは必ず…──】

 

『じゃあな、ダークネス…二度と会わない事を祈るよ』

ダークネスはそのまま消えていった…。

 

 

ドサッ…シュゥゥ…

 

『…ラプラス、終わったぜ…ゆっくり眠ってくれ…会えるといいな…お前の愛した女に…』

ダークネスから開放されたラプラスの亡骸は金色の粒子

となって消えていった…。

 

 

 

─ありがとう、すまなかった…─

 

 

 

 

 

『─…、気のせいか…』

遊海はその刹那、ラプラスの声を聞いた気がした…。

 

 

 

 

「遊海さん!遊海さん!!」

 

『おっと…!勝ったぜ翠…これで終わりだ…ありがとう』

ラプラスを見送った遊海に緑が抱きつく…遊海は頭を撫でながら勝利を伝える。

 

『さぁ、帰ろう…俺達のま、ちへ…ゴボッ!!』

 

「っ…!!遊海さん!!」

突如として遊海のNEXUSが解除されて倒れ込む!

 

「まずっ…からだ…動かね……!」

 

「そんな…!!まさかあの変身のせいで!?」

翠の推測は当たっていた…NEXUSは大量の体力を消費する、しかも遊海は連続してそれを使ってしまった…しばらく身動きは取れないだろう…。

 

 

ゴゴゴ…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!

 

 

「まずい…アーククレイドルが…退去する…!」

 

「そんな…!?」

アーククレイドルが揺れる…ちょうどその瞬間、ゾーンがモーメントへと体当たりをしたのだ…!

 

「翠…逃げろ…俺の事は気にするな…」

 

「そんな事…できる訳ないじゃないですか!!ウィンダ!ウェン!!」

翠は精霊を呼び出して避難しようとする…しかし、ウィンダ達は現れない…

 

「ダメだ…ウィンダ達も大怪我してるらしい…しばらくは出てこれない…!」

 

「なら私が背負って逃げます!外にさえ出られれば…!!」

翠は遊海を背負い走り出した…。

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…!!出口…出口は…!!」

翠は降りそそぐ瓦礫を避けながら出口へと向かう…!

 

「ダメだ、翠…俺を置いていけ…!死ぬ訳じゃない…未来に飛ばされるだけだ…必ず…戻るから…!」

 

「私は絶対に諦めません!!遊海さんと一緒に帰るんです!遊星君達のところに!!」

 

ゴゴゴ…ガラガラガラガラ!!

 

「ぐっ…翠!!」ドン!!

 

「遊海さ…きゃ!?」

遊海は翠を押し倒す…その刹那、遊海に瓦礫が降り注いだ…!

 

 

「ガッ……翠…ぶじ…ゴボッ!!」

 

「遊海さん!!やだ!あ、ああ…!!!」

翠を庇って遊海は瓦礫に押し潰された…瓦礫の隙間から血が流れ出す…

 

 

「大丈夫…死にはしない…痛いだけだ…だから…お前は、お前だけでも…逃げろ…!」

 

「いやです…!!私は遊海さんと一緒に…!!」

 

「本当に…がんこだなぁ…翠は…」

 

「遊海さんこそ…頑固で頭でっかちなんだから…!」

退去を前に遊海と翠は笑いあう…二人は既に覚悟を決めていた…。

 

「翠…未来に人間はいないぞ…いつ戻れるかも、わからない…」

 

「それでも一緒に行きます…!私は遊海さんの奥さんなんだから…!」

 

「…愛してるよ、翠」

 

「愛してます、遊海さん…」

 

 

崩落するアーククレイドルの中で二人は口づけを交わした…。

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラガラガラガラガラ……

 

 

 

 

 

《生きてください、遊海様、翠様…それがマスターの最期の願いです…!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《キュオォォォオン!!》

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

『遊星君!チーム5D'sのみんな!無事かい!?』

 

『大丈夫か!』

 

 

「あっ…!遊戯さん!十代さん!?」

遊海を探し右往左往する遊星達のもとに遊戯と十代が現れる!

 

「大変なんです!遊海さんと翠さんが…アーククレイドルと一緒に消えてしまったんです!!」

 

『そ、そんな…!!間に合わなかったのか!!』

 

『遊海先生…!まさか…戦いが長引いて…!』

 

「二人とも何か知っているんですか!?教えてください!!」

遊星は遊戯達の様子を見て問いかける… 

 

 

『遊海君は…おそらくダークネスと戦っていたはずなんだ…!』

 

「ダークネス…?なんだそいつは?イリアステルの仲間か…?」

 

『いや、ボク達の仲間にそんな奴はいない…聞いた事もない…!』

ジャックの言葉にブルーノは首を振る

 

 

『ダークネスは…簡単に言えば世界の暗黒面を支配する邪神だ…それがゲイザー…未来の遊海先生に取り憑いていたらしいんだ…!』

 

『『なにっ!?』』

十代の言葉を聞いたアポリアとブルーノは驚きを露わにする…

 

『遊海はダークネス、そしてその下僕であるミスターTと戦う為に僕達を集めた…その戦いのあとに…何かトラブルがあったのかもしれない…!』

 

「そんな…!!」

その言葉を聞いた遊星は膝をつく…

 

 

「ねぇ!アポリア!!アーククレイドルは…」

 

『…おそらく400年以上先の時代に飛ばされたはずだ…自力では…帰ってこれまい…!』

 

「そんな…!そんな事って…!!」

アポリアの言葉を聞いた龍亞は泣き崩れる…

 

 

「遊海さん…オレはゾーンに勝ちました…!!なら、あなたも勝ったはずだ!!帰って来てください!!遊海さん─!!」

 

遊星の叫びが響く…その声は…─

 

 

 

 

 

 

キィン─!

 

確かに届いた…!

 

 

 

 

「痣が…!!」

 

「みんな!願うんだ!遊海さん達の帰還を!!」

 

「っ!!帰って来い!遊海!俺との約束を果たせ!!」

 

「帰って来てくれ!二人とも!!」

 

「翠さん!まだ、教えてほしい事があるの!!だから!」

 

「「帰って来て!!」」

 

遊星達は祈る…そして…!

 

 

《キュオォォン!!》

 

「赤き竜…!!」

遊星達の前に赤き竜が姿を現す!

 

 

《キュオォォン…!》

咆哮した赤き竜は遊星達の横を掠めるようにして消え去る…そしてその場には…

 

 

「ぐ…うっ…?ここ、は…」

 

「地上…?帰って…これた…?」

 

 

 

「「「『『翠!遊海!!』』」」」

 

大怪我を負いながらも帰還を果たした遊海と翠の姿があった…。   

 

 

 

 

「遊海さん!!大丈夫ですか!?」

 

「おぅ…遊星、ギリギリな…痛いのは、しばらくこりごりだよ……」

遊星の問いかけに遊海は弱々しく返す

 

『遊海君!ダークネスは…!』

 

「遊戯…全員に伝令…ミッション・コンプリートだ…!倒し…たぜ…─」

 

「「『遊海!!』」」

遊海はそのまま意識を失う…

 

「みんな…、今は休ませてあげて…遊海さん、とても疲れているから──」

 

翠が愛おしそうに遊海を撫でる、希望の朝日に照らされながら、遊海は深い眠りに落ちた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして未来は今を生きる者に託された…彼らは未来からの警告を胸に、よりよい未来を目指して歩んでいく…。

 

 

 

明るい希望の未来を信じて…

 

 

 

 

 

 

第4章 特異点 人類救済霊廟/虚無浸食霊廟 アーククレイドル  完

 

 




これにてイリアステル編完結!…と言いたいところですが…次話にてずっと温め続けて来たラプラスのストーリーを公開します!どうぞお楽しみに!!



オリカ紹介

「ケッツアルコアトル(究極神アルティマヤ・ツィオルキン)」
☆0 闇 ドラゴン ATK0 DEF0

このカードはルール上レベル12として扱う。
このカードはシンクロ召喚できず、自分フィールドのレベル5以上の同じレベルのチューナーとそれ以外のモンスターをリリースする事でのみ特殊召喚できる。
①このカードは1ターンに一度、戦闘・効果では破壊されない。
②自分の場に魔法・罠カードがセットされた時、エクストラデッキからレベル7・8のドラゴン族シンクロモンスター、または「パワーツール」シンクロモンスターを特殊召喚する。
③このカードが自分フィールドにドラゴン族シンクロモンスターが存在しない時に戦闘を行う時に発動する。
このカードの攻撃力は戦闘を行う相手モンスターと同じ数値になる。その後相手フィールドの伏せカードを1枚破壊する。






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AnotherWorld─悪魔の生まれた日─

こんにちは!S,Kです!
今回は幕間特別編「エピソード・ラプラス」をお送りします!
そして今回の投稿が今年最後の投稿になります、皆様もどうか体調・怪我に気をつけて新年をお迎えください!

それでは…よいお年を!







〜注意〜
この物語は5D's編を執筆し始める前に書いた物です、少し本編とズレている事、または矛盾している所も多々あります。





これは一人の男の物語…運命に抗う為に足掻き続けた…堕ちた決闘者の物語である…。




転生者・シラナミ ユウミは絶望した、その心は絶望に染まり…闇へと墜ちた。

 

 

 

 

 

 

『………』

 

イリアステルの本拠地・アーククレイドルから無惨に破壊され荒廃した世界を見つめる男…その隣に紫髪の女の姿はない、彼女は既に喪われ…男の心は死んでいた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideユウミ

 

 

 

三百数十年前、オレは海馬社長に完成形モーメントを見せてしまった…俺は油断していたのだろう、パラドックスと遊星達がオレの時代へと現れた事で破滅の未来は回避された…と、しかし…それは大きな間違いだった…。

 

 

 

 

 

 

童実野町は地縛神復活による大地震で壊滅し、シティとサテライトになった…そして親しい友を喪った…

 

 

 

遊星は童実野大地震で二つに別れたサテライトで生まれた。

 

 

 

龍亞は最初からシグナーだったがクロウはシグナーではなかった。

 

 

 

ダークシグナーは4人だった…シャチとコンドルの地縛神は復活しなかった。

 

 

 

赤き竜はダークシグナーを倒し再び眠りについた。

 

 

 

WRGPは開催されず、「チーム5D's」は誕生しなかった。

 

 

 

不動 遊星はデルタアクセルシンクロにしか到達できなかった…そしてモーメント制御システムである「フォーチュン」も開発される事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして遊星の生きた時代から200年後…世界は破滅を迎える、希望の物語に分岐する事は無かった…。

シンクロに熱狂する人々…加速する負の回転…機械の反乱…戦争……人の築き上げた文明は…ここに崩壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…気を落とさないでください!●●さんが…伝説の遊星さんがいます!」

 

「そうだな翠…自らの肉体を改造し『不動 遊星』になった男…人類最後の希望だ…」

 

 

破滅に向かう世界でユウミ達は英雄の鏡像…不動遊星=ゾーンと行動を共にしていた、麻酔も無しに自身を「不動遊星」に改造し人格までインストールした名もなき科学者…彼は人々を導き、揺るがなき境地「クリア・マインド」を人々に広め世界を救おうとしていた。

そしてユウミ達は彼に協力し精霊であるキラーの機動力を活かし世界中を街宣車の如く廻り「クリア・マインド」を広め、機械兵を無力化した…だが機械兵は増える一方…イタチごっこが続いていた。

 

 

『遊海!また難民を見つけてきたぞ!』

 

「ああ、遊星!お疲れ様!上手くいってるみたいだな!」

 

遊星号を引きながらゾーンが歩いてくる、その後ろには50人程の難民達がいた。

 

『はい!あなた方のおかげで「クリア・マインド」を広めるスピードが早くなっています!これなら世界を救う事ができるかもしれません!』

 

「礼なんていらないよ遊星……元々は俺のせいなんだ…」

 

『…遊海さん、貴方のせいでは無い…悪いのは欲望に溺れた全ての人間達だ、それに貴方はそれを諌めようとした…貴方が自分を責める事はない…!』

 

「ありがとう遊星…そう言ってくれるならありがたいよ…」

 

ユウミは涙を拭う、彼の精神は罪の意識…「未来を知りながら救えなかった」という罪悪感で押し潰されそうになっていた…。

 

 

 

「遊海さ〜ん!決闘しないか〜!」

 

「あぁ!今行くよジョニー!」

遠くから青髪の決闘者・ジョニー=アンチノミーが呼び掛けてくる…さぁ正しいデュエルを広めよう!…まだ取り返せる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし…世界は既に手遅れだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「助けてくれ!!遊星ぇぇぇ!!?!」」」

 

 

『みんなぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

 

 

 

その日は突然やって来た、世界中のモーメントが一斉に爆発を起こした、それにより地球のプレートが割れ…機械兵が降り注ぎ…難民達は全滅した…そしてそれは俺達も……。

 

 

 

 

 

「翠!絶対に手を離すな!!今引き上げる!!」

 

「くっ…うぅぅ!!!」

地割れに巻き込まれた俺達はマグマ寸前の崖に辛うじて捕まっていた、手は焼け焦げ、言いようの無い痛みが襲ってくる…でも絶対に翠は助けてみせる!!

 

 

「キラー!!翠を引き上げろ!!」

 

《答、了解しました》

相棒である「アポクリフォート・キラー」が現れ翠を上へと連れて行く、そしてすぐに俺も引き上げられた。

 

 

《マスター、腕に広範囲の熱傷を確認…早めに治療する事を進言します》

 

「あぁ、わかってる…その前に移動しよう…翠、立てるか?」

 

「痛っ!…ごめんなさい遊海さん…足が…」

溶岩ギリギリにいた翠の足は重度の火傷で赤く腫れ上がっていた…

 

「っつ!?すぐに治療する…!!」

俺はカードを翳し翠を治療する…しかし、回復は思うように進まなかった…

 

 

 

 

 

 

「結局…未来は変えられなかった…俺のしてきた事はいったい…なんだったんだ!!」

 

「遊海さん…」

ユウミは翠を治療しながら涙を流す…転生して約200年…結末を知っていたのに変える事ができなかった、その後悔で遊海の精神は既に限界を迎えていた…。

 

 

「…遊海さん…大丈夫…まだ私がいます…子供を作りましょう…そうすればきっと…」

 

「新世界のアダムとイヴになる…か、それが最後の手段だなぁ…」

 

「そうですね…女の子ならイリヤなんてどうですか…?」

 

「それじゃあ男の子ならシロウか?…完全にFat○の姉弟じゃないか?」

 

「そうなっちゃいますね……あはは…」 

極限状態の中2人は他愛のない話を続ける…彼らは未だ希望を捨ててはいなかった…2人がいればなんとかなる…それを知っていたから…

 

 

「遊海さん…実は内緒にしてた事があるんです…」

 

「うん…?」

 

「実は…私…妊─」

 

「えっ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし現実は無情だった

 

 

 

 

 

《!!、警告しますマスター、頭上から多数の機械兵が落下中!直撃します!》

 

「はっ…遊海さん!!!」ドン!!

 

「み、みどり!!」

 

 

ズガーン!!!

 

 

「「うぁぁぁぁぁぁ!!!?」」

 

治療中の2人の上に無数の機械兵…ワイゼル達が落下する、翠は咄嗟に遊海を突き飛ばし…それが命運を分けた…。

 

ワイゼル達に搭載されていたモーメントが爆発を起こし2人を大きく吹き飛ばす、遊海は瓦礫にぶつかり…翠は大きく口を開けた死の谷へと投げ出された。

 

「みどりぃぃぃ!!!」

「遊海さん─!!」

瓦礫に叩きつけられたユウミはすぐさま反転し空中に投げ出された翠へと手を伸ばす、しかし…その手は届かなかった。

 

 

「きゃああああ!!!」

 

「翠─!!!」

ユウミは咄嗟に地面を蹴り落下する翠を空中で抱き寄せる、彼らは空を飛ぶ手段を持たない…ユウミの精霊はキラー1体であり、翠には精霊がいなかった…そして2人の視界は紅蓮の炎に埋め尽くされ…体が焼け弾ける感覚と共に意識を失った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…はっ…!?翠!みどり!!!」

意識を取り戻したユウミは飛び起き翠の姿を探す…しかし、目の前には虹色のコアだけのキラーの姿があった

 

 

《答、翠の救出に失敗しました。》

 

「はっ…?キラー、なんて…言った…?」

 

《翠の救出に失敗しました、2人の肉体はマグマへと落下…溶解する寸前にマスターの肉体の一部の回収に成功しました…しかし、翠の肉体の回収は間に合いませんでした》

キラーは淡々と説明する

 

「嘘だ……うそだろ…?翠…隠れてないで…出てきてくれよ…!なぁ…いるんだろ…?出てこいって…!俺達は不死だ…!死ぬわけかないんだ!!」

 

《…翠の肉体はモーメントの逆回転によるマイナスエネルギーで汚染されていました、それにより不老不死の効果が正常に作動しなかったと思われます…周囲に生命反応はありません、おそらくは……》

 

「そんな…嘘だ…嘘だぁ!!翠…みどり!!あ、ああ…あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ!!!!」

 

悲しい叫びが木霊する…ユウミの妻である愛しき女性は…そして、もう一つの命は…永遠に失われてしまったのだ…。

 

「あっ…ああ…あああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

その日…遊海の心は死んだ…かけがえの無い愛する者を喪い…心は絶望へと墜ちた…。

 

 

 

 

 

 

【いい嘆きだ…ようこそ絶望の世界へ…、さぁ、約定を果たす時だ…その身体を貰い受けよう、安寧の闇へと沈むがいい】

 

悲しみに暮れるユウミの影が大きく揺らめく…そして黒いローブの悪魔…虚無の神・ダークネスが現れる、遥か昔の約定を果たすために現れたのだ。

 

【言ったであろう、「貴様の心が折れた時に世界を掌握する」と…さぁ我の手先となるがいい…】

 

『…断る、オレは…まだ折れてはいない…!』

 

【貴様…!】

 

 

幽鬼のようにユウミが立ち上がる…その瞳はギラギラと目の前の邪神を睨みつけている。

 

 

『この時代は滅びた…しかし、過去を変えれば…未来は…翠は救われる可能性がある……そのためならオレは闇を受け入れよう、我が糧となれ!ダークネスゥゥゥ!!!』ザクッ!

 

【ナニッ!?き、貴様な、何を…!?オ…オオオオ!!?】

ユウミはダークネスを貫き吸収する…人の抱いた負の感情がユウミに流れ込むが…堕ちた英雄は全てを飲み干した…。

 

《マスター、危険です、行動の中断を推奨します》

 

『キラー…すまない、もう後戻りはできない…オレは世界を…翠を救う為に…闇に生きる、さらばだ…!』

 

《マッ》バキン パラパラパラ

 

男は異形の腕でキラーのコアを握り潰した…その目は金色の瞳に変わり、暗く淀んでいた…

 

 

 

 

『翠…お前の遺志は無駄にはしない…闇へ堕ち果てようと…この世界を救おう…我が罪を償う為に…オレは全てを踏み躙ろう…!』

白波遊海だった男の姿が変わっていく…赤き服は燃え尽き、黒いコートを纏い、顔を黒いバイザーが覆っていく…そして目元から血涙が一筋零れ落ちる…。

 

 

 

その日…未来で『英雄』といわれた男は死んだ、そして世界の救済を望む『悪魔』が生まれた…

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界の破滅から百年以上の時が過ぎた、人類「ホモ・サピエンス」は5人…否、2人を残し絶滅した。

 

旧・ネオドミノシティ…未来人の墓標、無限霊廟・アーククレイドルにて下半身を貝のような機械に包まれた老人…ゾーンとバイザーをつけた男が話をしていた…。

 

 

 

【やはり行くのですか、ラプラス…】

 

『ああ、奴を殺してくる…この世界を救うために…』

 

ラプラス…『シラナミ ユウミの成れの果て』はタイムマシンに改造されたDホイールへと跨がる…全ては過去の自分を殺すために。

 

『歴史の分岐点の一つ…それは「白波 遊海が自分のDホイールを海馬 瀬人に見せた時」…奴を殺してそれを回避する…!』

 

【ソレは下手をすれば「タイムパラドックス」を生む大きな賭けです…貴方の存在が消えるかもしれないのですよ?】

 

『承知の上だ…我が命で未来の人間を救えるのであれば…!』

 

【わかりました…私は貴方を止めません…ラプラス、貴方の往く道に祝福を…】

 

『…ありがとう、我が友よ…しかし「善知の悪魔(ラプラス)」とは呼ばないでくれ、オレは所詮「傍観者(ゲイザー)」なのだから…』

 

 

 

 

 

 

 

『なぁ、過去を変えれば…お前も…』

 

出発を控えたゲイザーはアーククレイドル内のある部屋を訪れていた、そこには写真立てがあり…愛しき少女が在りし日の笑顔のまま微笑んでいた…

 

『オレはこれから世界に…神に仇なす罪を犯す…でも、お前ならわかってくれる…よな…?』

 

写真の少女は答えない…そして男は部屋を後にした、その場にかつての相棒のデッキを残して…。

 

 

 

 

 

 

『アクセル全開、タイムトラベル…実行!!』

 

ブルル…バシューン!!

 

科学力で強化されたDホイールは光速を超え…その時代から姿を消した、それが未来を救済する悪魔の最初の旅路だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideラプラス

 

 

「うわぁぁぁ!!?」

 

ギャギャギャ…ガシャーン!!!

 

目の前で1台のバイク…Dホイールがクラッシュする、乗っているのは愚か者…ライディングデュエルに慣れていない奴をオレは打ち倒した…。

 

「貴様…転生者だろ…!何故イリアステルに…!」

 

『貴様が知る必要はない…一足先に絶望し果てるがいい…!』

オレはダークネスから抽出した負のエネルギーを奴のモーメントに照射する、研究の結果モーメントのマイナスエネルギーはオレ達に致命的なダメージを与える事がわかっている…この爆発に巻き込まれれば奴はただではすまないだろう…

 

「アヤカ!トフェニ!Dホイールを退けてくれ!!」

奴が精霊を呼び出す…キラーと…トフェニドラゴン…?しかも名前をつけてるのか、しかし奴らでは無理だろう…。

 

オレはその場をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

明くる日、とあるビルの上で新聞に目を通す…「童実野埠頭爆発事件」として奴の爆発が載っていた、しかしオレの身体に異変は無い…殺し損ねたか…ならば次は()()()()を狙うしかないだろう…。

 

 

ギュアン! キキーッ!!

 

『ッ…!?誰だ!!』

ラプラスの背後で空間の穴が開きDホイールが飛び出してくる、現れたのは黒と白の仮面を着けた細身の男…イリアステル滅四星の一人、パラドックスだった。

 

『むっ…?ラプラス、何故この時代にいる?』

 

『パラドックス…?お前こそ何故この時代にいる、お前はまだ起動していないはずだ』

ラプラスとパラドックスは顔を見合わせる…ラプラスの記憶ではパラドックスはまだ起動していないはずだからだ…。

 

『…どうやらタイムトラベルの設定を間違えたらしいな…ラプラス、私は18年先の時代で不動遊星から「スターダスト・ドラゴン」を奪い、この時代のバトルシティ・レジェンドで「サイバー・エンド・ドラゴン」と「レインボー・ドラゴン」を奪いに来たのだ…デュエルモンスターズを歴史から抹殺する為に…』

パラドックスは鏡写しの「スターダストドラゴン」を見せながらラプラスに話しかける。

 

『…残念だが大会は1ヵ月先だぞ?』

 

『やはりか…ならばもう一度、時間移動をしなければなるまい』

パラドックスはDホイールのエンジンをかける

 

『待てパラドックス…手はいるか?』

 

『なに?』

 

『お前が未来から来たという事は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…オレの計画を成功させる為にも、お前に力を貸そう』

 

『…頼むぞ、我が友よ…共に未来を救うのだ…!』

 

パラドックスとラプラス…未来を救う為に悪を選んだ二人は時を超えた…。

 

 

『……』

時間移動をしたラプラスは気配を消し町を歩く…辺りは大会の真っ只中…至る所でデュエルが行われている…。

 

「いけ!『ガイアナイト』!」

 

「なんの!『ミラーフォース』!」

 

 

《フハハハ!シンクロモンスターを新たに封入したパックの発売だ!楽しみに待つがいい!》

 

 

笑顔…笑顔笑顔笑顔、世界に希望が満ちている…未来に何が起きるかも知らないで…!!

 

 

「こんにちは〜!カキ氷2つお願いしまーす!」

 

「はいよ!600円だよ〜!」

 

『っ…!?』

聞こえてきた声にオレは思わず振り返る…そこには…

 

 

「味はどうするお姉さん?」

 

「イチゴとメロンを1つずつ!」

 

 

『あっ…!』

 

そこに彼女はいた…露店商と話している生きた彼女が…!

 

 

「ありがとうございます!また来ますね!

彼女がこちらに歩いてくる…そして

 

 

 

「…」

 

『………』

 

 

彼女はオレに気づく事なく通りすぎた…そうだよな、オレは気配を消している、気づくはずもなかった…。

 

 

そうして夜まで時間を潰し…オレは闇へと紛れた…

 

 

 

 

 

 

 

 

『…既に「スターダスト・ドラゴン」は奪取した、後はこの街にある「サイバー・エンド・ドラゴン」と「レインボー・ドラゴン」のカードを奪えばいい…そしてペガサスを消せば…!』

 

『技術の発展は大幅に遅れ…破滅の未来は回避される、悪くない計画だ、行こうパラドックス…カードを奪う…!』

 

『うむ…ターゲットは間もなくここを通る…行くぞ…!』

 

 

 

 

 

「「うわぁぁぁ!!!」」

 

 

 

 

『フッフッフッ…ヨハン・アンデルセン、丸藤 亮…貴様らのエースは私達が頂いていく…せいぜい有効活用させてもらうぞ』

 

「ま、待て…!『レインボードラゴン』を返せ…!」

 

『それは叶わない話だヨハン・アンデルセン、このカード達は未来を救う実験に協力して貰う…大人しく寝てろ「催眠術」発動』

 

「ぐ…あ…」

 

 

 

 

 

『パラドックス、オレが手伝うのはここまでだ…健闘を祈る』

ヨハンとカイザーを倒したオレはパラドックスを見送る

 

『すまないなゲイザー…お前はこれからどうする?』

 

『この時代に残り…もしお前が失敗したらモーメントの逆回転を起こす、役者は揃っている』

 

『そうか、ではさらばだ…全ては未来を救うために』

 

『未来を救うために…』

 

 

 

 

…………

 

 

 

《ギャオオオン!!》

 

『見事な暴れっぷりだ…流石パラドックス、無駄が無い』

KCの屋上から町を破壊するサイバーエンド達を見下ろす…もう何も感じない、人々が蟻のように潰されていく…

 

 

「やらせるか!!」

 

 

『チッ…奴め、生きてたか…』

暴れていたサイバーエンドが吹っ飛ぶ…奴が蹴り飛ばしたのだ…

 

 

《キュオオオン!!》

 

『スターダストドラゴン…奴を殺せ…!』

2人の戦士にしびれを切らしパラドックスはスターダストドラゴンを召喚する…だが…

 

《キュオオォォン!!》

 

『赤き竜…不動遊星…』 

赤き竜の乱入によりパラドックスは過去に遡った、そしてしばらくすると童実野町のビル群が砂の城のように崩れていく…。

 

 

『パラドックス…いいぞ…!これで未来は確実に変わる!!』

ラプラスは町を見下ろしながら歓喜の声を漏らす…しかし、それもつかの間…突如として崩壊は止まり、逆再生のようにビル群が再生していく…

 

『パラドックス…ダメだったか……ならば、念には念を…!』

再びラプラスは時を超えた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…キサマ、何者だ?」

 

『誰でもいいでしょう…海馬コーポレーション社長・海馬 瀬人…お前にはここで倒れてもらう…!』

 

オレはバトルシティ・レジェンドで遊海と対戦する前の海馬と対峙する…奴を倒し、奴を殺す…今度こそ…必ず、イレギュラーはいらない…イレギュラーは排さなければならない…全てを闇に染め………違う、未来を救う為に…奴を抹殺する…!

 

 

 

『未来への礎となれ…海馬 瀬人』

 

「フン、未来だと?未来を切り拓くのはオレだ!オレの戦いのロードに立ち塞がるのなら粉砕するまでだ!!」

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

ラプラスLP4000

海馬LP4000

 

 

『オレのターン、ドロー!』

『「おろかな埋葬」発動、デッキから「インフェルニティ・ミラージュ」を墓地に送る、さらに「ワン・フォー・ワン」発動、手札の「インフェルニティ・リベンジャー」を墓地に送りデッキの「インフェルニティ・ミラージュ」を特殊召喚!』

不気味な顔の悪魔が現れる DEF0

 

 

「『インフェルニティ』だと…?聞いた事のないカードだ…!」

 

『すぐに思い知る事になる…カードを伏せ永続魔法「インフェルニティ・ガン」を発動、効果により手札の「インフェルニティ・デーモン」を墓地に送る…「インフェルニティ・ネクロマンサー」を召喚!』

紫色のローブの悪魔が現れる DEF2000

 

 

『「ネクロマンサー」効果、墓地の「デーモン」を特殊召喚、「デーモン」効果、デッキの「インフェルニティ・バリア」を手札に加えセット、「インフェルニティ・ガン」効果、墓地の「リベンジャー」を特殊召喚、レベル8シンクロ召喚「ワンハンドレット・アイ・ドラゴン」、効果発動墓地の「ミラージュ」を除外し効果を得る、自身をリリースして墓地の「デーモン」「ネクロマンサー」を特殊召喚、「デーモン」効果デッキの「インフェルニティ・ブレイク」を手札に加えセット、「ネクロマンサー」効果、墓地の「リベンジャー」を特殊召喚、レベル8シンクロ「ワンハンドレットアイドラゴン」、フィールドの「ミラージュ」効果、自身をリリースし墓地の「デーモン」「ネクロマンサー」特殊召喚、「デーモン」効果デッキの「インフェルニティ・インフェルノ」手札に加えセット、「ネクロマンサー」効果「リベンジャー」特殊召喚、レベル8シンクロ「インフェルニティ・デス・ドラゴン」、「ワンハンドレットアイドラゴン」効果、墓地の「ミラージュ」を除外し効果を得る、自身をリリースし「デーモン」「ネクロマンサー」特殊召喚、「デーモン」効果「インフェルニティバリア」を手札に加えセット、「ネクロマンサー」効果「リベンジャー」特殊召喚、レベル8シンクロ「インフェルニティデスドラゴン」…ターンエンド』

 

ゲイザーLP4000

インフェルニティデスドラゴン インフェルニティデスドラゴン 伏せ4 手札1

 

 

「…何が…起きたのだ…!?」

海馬は自分の目を疑った、僅か2分ほどの間に攻撃力3000のモンスター2体と伏せカード4枚が現れたのだから無理もない…

 

『さぁ…あなたのターンだ…』

 

 

「チィ…!オレのターン!ドロー!!」

「魔法カード『融合』を発動!手札の3体の『青眼の白龍』を融合!現れろ!『真青眼の究極竜』!」

進化した究極竜が現れる! ATK4500

 

『「インフェルニティ・ブレイク」発動、墓地の「インフェルニティ・ガン」を除外し「究極竜」を破壊!』

 

「させん!『融合解除』!」 

 

『カウンター罠「インフェルニティ・バリア」発動、効果を無効にし破壊する』

 

「なっ…!?」

海馬の奮闘も虚しく究極竜は冥界の雷で破壊される…

 

「…カードを伏せターンエンド!」

海馬LP4000

伏せ1

 

 

 

 

『オレのターン、ドロー!』

『自身の効果で「インフェルニティ・ビショップ」を特殊召喚、「リビングデッドの呼び声」発動、「デーモン」特殊召喚、効果で「ビートル」を手札に、「ビートル」召喚、レベル10シンクロ「魔王超龍べエルゼウス」…バトル、「べエルゼウス」でダイレクトアタック』

 

「ただでは負けん!!『破壊輪』発動!!『べエルゼウス』を…!」

 

『残念だが…「べエルゼウス」は効果では破壊されない…終わりだ』

 

海馬LP0

 

ゲイザーWIN!

 

 

 

 

「ガッ…ガハッ…!キサ、マ…!」

 

『さらばだ…最強のドラゴン使い』

 

倒れ伏した海馬を尻目に部屋を去る…何も感じない…かつての友が倒れようと…何も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「喰らえゲイザー!!『コモンメンタルワールド』効果発動!これで終わりだぁぁ!!」

 

『こんな…こんな事がぁぁぁ…!?』

 

 

 

 

 

 

 

「答えろ…ゲイザー、貴様の目的はなんだ!何故俺を狙う…!!」

 

オレは過去改変を行ないバトルシティへと参加した…全ては大衆の目の前でデュエルによって奴を惨殺し、全世界の人間達にデュエルモンスターズへの恐怖を植え付ける為…だが結果としてオレは奴に敗北した、見たこともないシンクロバーンで布陣を粉砕されたのだ…だが、この状況は好都合だ…ここで奴を…殺す…!

 

 

『ガッ…ハハハハ、貴様の抹殺…それがオレの為すべき事だ!貴様というイレギュラーを殺し破滅の未来を回避する!そのためならオレは悪魔になろう!!ハアァッ!!!』

 

「チィッ!」

 

オレは闇の力で奴を弾き飛ばし既に我が身の一部となった闇を身体に纏う…イメージするのは全てを喰らい尽くす暴食の化身…奴を魂諸共虚無の世界に……魂ごと殺し尽くす…!

 

 

『ダークネスアーマー…べエルゼウス…!!!』

 

「くっ!精霊アーマー!モードクリフォート!!」

 

『消えろ!!!貴様の死で未来は救われる!!』

オレは闇を込めた両腕の龍口で奴を喰らわんと飛びかかる!

 

「こんなところで死ねるかあぁぁ!!モード岩窟王!富嶽鳴動の陣!!」

 

『ガハッ─!?(岩の鎧だと…!?何なのだその力は─!?)』

 

 

『おのれぇ!!喰い尽くせ!蝿王殲滅覇軍!!』

ラプラスは自分の身体を無数の蝿へと分裂させ、遊海へと襲いかかるが…

 

「燃やし尽くせ!太陽神の神炎!ゴッド・ブレイズ!!!」

 

『な、三幻神の力だとぉ!?ぐおああああああああ!!!(何故だ…なんでお前が神の力を─!?)』

 

闇を祓う神聖なる炎…それは闇そのものであるラプラスの身体を焼き尽くした…。

 

 

 

 

 

 

『ぐっ…ガハッ…!!』

 

 

 

「俺をここまで怒らせたのはお前が初めてだよゲイザー…貴様を捕縛する、ゆっくり話を聞かせてもらうぞ…!」

 

 

『ハハハ…まだ捕まる訳にはいかないなぁ…さらばだ白波 遊海…永遠に!!!』

オレは懐に入れていた『ヘイト・バスター』に力を込める、いつの間にか使えるようになったこのカードで…奴を…!

 

「なっ…!?自爆するつもりか!!アヤカ!結界を最大強化!絶対に被害をもらすな!!」

 

《了解!!》 

 

『フハハハ…もう遅い!!!』 

オレの胸元で黒い閃光が弾け…オレは意識を失った…。

 

 

 

 

 

『…殺し損ねたか…我ながら悪運が強い…』

爆発からしばらくしてオレは無人のスタジアムで復活する…本当ならすぐ様復活できるが…奴の目から逃れる為に時間差で復活したのだ。

 

『既にルドガーには地縛神の意思が宿っている…明日が楽しみだ……楽し…み?…………未来を……彼女を救う為だ…』

オレは闇に姿を溶かしスタジアムをあとにした。

 

 

sideout

 

 

 

 

『ククク…ハハハ…!そうだ!!これでいい!!これでいいんだ!!!』

ラプラスはKCの屋上で狂ったように笑う…先程MIDSに潜入させていたアンドロイドから「ルドガーがモーメントを乗っ取った」と連絡があったのだ…まもなくゼロ・リバースが起きる…世界が「希望の未来」へとその道を移そうとしているのだ。

 

『さぁ!!刮目して見よ!遊海!!人間共!!今ここに世界は再誕する!!救いの未来は!今ここに始まるのだァ!!』

笑い続けるラプラス…彼は気づいていなかった、KCスタジアムを守るように展開される岩の壁とバリアの存在に…そして町は閃光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

『…どういう事だ…!?なぜ…なんで海馬が!遊戯が生きている!?』

 

ゼロ・リバース発生の数時間後…ラプラスは驚愕する事になる、彼の知る史実では海馬と遊戯は地震…つまりはゼロ・リバースで死亡したはずだからだ…だが実際には海馬や遊戯、それどころかスタジアム自体が残っており数万人以上の人々が生き残っていたのだ…

 

『貴様か?貴様がやったのか!!白波 遊海─!!』

ラプラスは怒りのままに町へと飛び降りる…バイザーに隠されたその瞳は遊海に対する殺意に濡れていた。

 

 

 

 

『見つけたぞ…遊海…!今こそ…お前を…!!』

しばらく遊海を探し続けたラプラスは分断された童実野町…のちのサテライトの外れで瀕死となっていた遊海を発見した、彼の意識は無く精霊もいない…遊海を抹殺する絶好のチャンスだった…。

 

『フフ…ハハハ…!消えろ…イレギュラー!お前さえ…お前さえいなければ─!!!』

ラプラスは闇の力を凝縮し遊海へと構える…凝縮されたこのエネルギーならば「デュエル以外の不老不死」を持っている遊海を完全に消し飛ばせる、ラプラスはその力を遊海に解き放とうとし──

 

 

 

 

 

 

 

「ふぇ…うぇぇん!うぇぇん!」

 

 

バシューーン!!

 

空へと解き放った…

 

 

 

 

 

『…なんで…なんでお前がここにいるんだよ…不動遊星…!!』

遊海の傍…そこには脱出ポットに入れられた不動 遊星がいた…ラプラスはそれに気付き咄嗟に狙いを外したのだ

 

 

『お前の悪運は…いったい何なんだよ…!この…死に損ないが…!』

ラプラスは歯を食い縛る…この男はなんでいつも生き残るのかと…

 

 

pipipi…pipipi…!

 

『っ…!こんな時に!!…こちらゲイザー!なんの用だ!アンチノミー!!』

ラプラスは苛立ちながら通信へと応答する、それはアーククレイドルに残りゾーンを守っているアンチノミーからだった。

 

『ゲイザー!大変だ!ゾーンの容態が…!すぐに帰って来てくれ!!』

 

『なんだと!?わかった…すぐに戻る!!』

ラプラスは通信を切り瀕死の遊海を睨みつける…

 

「命拾いしたな遊海…だが…次は絶対に…!」

そのままラプラスは時を超えアーククレイドルへと帰還した…。

 

 

 

 

 

 

 

【世話を…掛けました…ラプラス…】

 

『いいんだ、ゾーン…大事が無くてよかった…だが…限界は近い…』

アーククレイドルへと帰還したラプラスはすぐさまゾーンの治療に取り掛かった…その結果、一命こそ取り留めたが足は膝下から、腕は肘までを切断…声帯を機械へと置換し外気に弱くなった肌を守る為に機械の鎧…生命維持装置を装着…アニメに登場した際のゾーンの姿となってしまった…。

 

 

『保って…あと20年というところか…』

 

【そうですか…貴方に言われたのならそうなのでしょう…これがラストチャンスですね…これで未来が救われなければ…実力行使で未来を変えるしかありません…】

 

『ああ…安心しろゾーン…いや、●●…オレがいる限りお前は死なせはしない…!必ず未来を救ってみせる…!』

 

【ユウミ…ありがとう、…ユウミ、貴方に友として一つ願いを聞いてほしい事があります】

 

『なんだ?』

 

【…あの世界の不動遊星がダークシグナーを倒すまで…白波 遊海に危害を…自分殺しをしないでほしいのです】

 

『っ!?…何故だ…!奴はイレギュラーだ!奴を消さなければ…!』

 

【私はもう見ていられないのですユウミ…貴方が自分を殺そうとするところを…友を失うところを…!!】

 

『ゾーン…』 

悲しみを含んだ声でゾーンはラプラスへと願いを伝える、彼は見ていられなかったのだ…友が過去の自分を殺そうとしている姿を…ゾーンにとってラプラスは最後の希望…彼を失いたくなかったのだ。

 

 

『…わかった、遊星がダークシグナーを倒すまでオレは奴に手出しはしない、…お前から授かった「善知の悪魔」の名に誓って約束を守ろう…!』

 

【ありがとうラプラス…私の最後の友よ…!】

そうしてラプラスは17年の間歯痒い思いを胸に過ごす事になるのである…。

 

 

 

 

 

 

 

〜観測者の手記〜

 

 

 

 

○月☓日(ゼロ・リバース半年経過)

 

これはゼロ・リバース後の童実野町、並びに白波 遊海の観察記録である。…こうでもしなければ奴に対する殺意を抑えきれない、だが友との約束を守る為にこの記録を残す。

 

モーメント初号機爆発事故…ゼロ・リバースから半年が経過した…町は地殻変動により二つに割れた、KCが支援をしている事でサテライトの人間達もある程度暮らしているようだ。また、不動遊星はマーサハウスへと保護された。

 

白波遊海は…酷く衰弱している。

マイナスエネルギーの塊であるモーメントの逆回転エネルギーを受け止めた事で魂にまで刻まれる致命傷を受けたようだ…あの状態ならすぐにでも─(この先は文字が黒く塗り潰され読めない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●月△日(ゼロ・リバースから3年後)

 

童実野町はネオドミノシティとして再編された、だがサテライトは治安が悪化し一種の世紀末状態だ…また伝説のDホイーラーがダイダロス・ブリッジから飛んだ(落ちた)ので一応の治療をした、彼は星護主になる者…ここで死なせるのは惜しい。

 

白波遊海は生きる屍と化している、意識はかろうじてあるらしいが身動きすら取れないようだ…武藤遊戯や遊城十代達が見舞いに訪れているが…その容態は好転する事はない…そのまま死んでしまえ。

 

 

 

 

 

 

 

■月○日(ゼロ・リバースから5年後)

 

レクス・ゴドウィンが治安維持局の長官となった、奴は噂を聞きつけイリアステルの同志となり第三百六十代星護主となった、彼は選民思想によりサテライト民のシティへの移動を原則禁止とした。

 

白波遊海…死に体のまま変化なし、さっさと……

 

 

 

 

 

 

 

◇月●日(ゼロリバースから6年後)

 

ドミノシティは特に変化は無い、白波遊海も同様だ…だがオレの調子がおかしい。

 

ここしばらく眠る事ができなくなった、強い睡眠薬や「催眠術」でもダメ、調子は悪くないが…たまに自分が何者なのかわからなくなる…オレは名を捨てしもの、未来人の生き残り…オレは…何を…為そうと……。

 

 

オレは 未来を 救う 

 

 

 

 

 

 

☆月■日(ゼロリバースから7年後)

 

今日はゾーンの指示で詮索をし始めたDr.ルブランを始末する為にルブラン家を訪れた…だが予想外の事が起きた、娘まで殺されていたのだ…確かこの娘は…死なないはず。

オレは娘…シェリー?を蘇生し記憶を弄った…そして不手際をした奴らを始末したが…1人に逃げられた、あの程度の小物はどうでもいいか。

 

もう一つの予想外は目覚めた娘がオレに立ち向かった事か…子供の泣き顔は反則だ、まだ息のあったルブラン夫妻も蘇生してやった、オレはとことん甘いらしい

 

─だが魂は我が手に…全ての人間を闇に……─

 

 

…何故…オレはシェリーの両親を救った…?何故…無意識に魂を奪っている?上の文章はいったいなんだ?…オレはいったい…

 

 

 

 

 

 

●月●日(ゼロリバース10年後) 

 

ここしばらくの体調不良の原因がわかった…ダークネスだ、取り込んだ筈のダークネスの力が暴走しオレを冒している…対抗しなければ…でないと未来は…この世界は……

 

 

 

 

 

▼月▼日(djtd5mgdp@tmt)

 

@dJd'mg'mgpd5dg'dGdg@tng

m4dGdGdpg4d4gdGqm'gpd'jnx'

dpmg'mg'm'p'mj'm5m'tj'm'w'mptd@

 

全てを 闇に 沈める

 

 

 

 

 

 

 

△月△日(ゼロリバース14年後)

 

…どうにかダークネスを抑える事に成功した、だがオレは完全に人間では無くなったらしい…以前から徴候はあったが…

オレは完全に闇と一つになった、オレは闇のある場所に一瞬で移動できるようになった…我は闇…我は世界の摂理、水が高きから低きへ流れるが如し…(この先は虚無世界へ誘いが黒くなるまで書かれている)

 

 

 

 

 

○月■日(17年後)

 

…ついに不動 遊星がシティへと足を踏み入れた…原作が始まる。

 

白波 遊海はいつの間にか復活し「鋼の騎士」と呼ばれるヒーローになっていた…意味がわからない、貴様はそのボロボロの身体で何を為そうとしているのだ…?

 

 

 

 

●月■日(フォーチュンカップ終了)

 

計算外の事態が起きた…白波遊海がシグナーとして覚醒していたのだ、オレは赤き竜に選ばれる事は無かった…なのに…なんで貴様が…!よりによってなんで!!!

 

…そして、新たにイレギュラーが起きた…なんの間違いかバクラ…「大邪神ゾーク・ネクロファデス」がダークシグナーとして復活したのだ、奴は世界に破壊を齎す邪悪の化身、下手をしたらダークネスよりも質が悪い…。

 

「異分子には異分子を」…奴にゾークを倒してもらうしかない、だが…マイナスエネルギーに冒された貧弱な身体で闇のゲームに耐えられるのか…?

 

 

 

 

 

 

 

sideラプラス

 

 

 

『愚か者め…!自分の播いた火種くらい自分で決着をつけろ…!』

 

ラプラスは気配を消しネオドミノシティを疾走していた、遊海に対する観察を続けていたが少し目を離したスキに遊海の姿を見失った。

原因は忌々しいアルカディア・ムーブメント…その総帥であるディヴァインに遊海は卑怯な作戦で敗北し連れ去られたのだ。

 

『今、貴様に消えられては困るのだ…この時代でバクラを倒せるのは貴様だけなのだ──!』

ラプラスは2体の地縛神に囲まれたアルカディアムーブメントへと向かった…。

 

 

 

『…見つけた…だがあの傷は…この時代では完治させる事はできないな…』

ラプラスはアルカディアムーブメントの近くへと辿り着いた、そこで座り込む龍亞と龍可と…誰だったか男2人、そして黒い死体袋に入れられた遊海を見つけた…遊海の傷は深くこの時代の治療では戦いには間に合わないだろう…。

 

 

『しょうがない…出るか…まさかオレが奴を救うハメになるとはな…』

 

そうしてラプラスは龍亞達の目の前に姿を現し、嫌々ながらも遊海を治療したのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダークシグナーとの戦いもクライマックスか…だがこれでいい…未来は救われる…!』

 

ラプラスはビルの屋上からシグナー達の戦いを見届ける、かたや超越者となったレクス・ゴドウィン対遊星・クロウ・ジャックの3人の戦い

そして、現れた「冥界の王」を止める為に1人で戦いを挑む遊海の戦い…だが冥界の王は強大だった、遊海は自分の身体を犠牲に無謀な戦いを挑んでいる…。

 

 

『無駄だ…冥界の王は「アポクリフォート・キラー」3体の最大攻撃でなければ倒せない…衰弱した貴様では無理だ』

ラプラスの言葉通り、遊海は冥界の王に弾き飛ばされる…マイナスエネルギーに冒され死者同然だった遊海の肉体は半ばダークシグナーとなる、だが遊海は自身に秘められた悪魔の力を開放…再び冥界の王に突撃する。

 

『不完全なティエラの力…だが、それだけ……シャドールと「sopia」の力だと?』

 

ラプラスは目を疑った、遊海は不完全なティエラの力を翠は「sopiaの影霊衣」を纏い合体技「聖邪の神撃」を冥界の王へと直撃させたのだ。

 

 

『凄まじい攻撃だ…だが甘いな』

 

ズドーン!!

 

立ち込めた煙の中から邪神の炎の息吹が油断していた遊海を吹き飛ばす、邪神は「ゾーク」の力の一部を取り込んでオレの時よりも強くなっている…死んだな…呆気なく奴の生命は燃え尽きた…これでいい、イレギュラーさえ無くなれば…未来は救われる…!

 

 

 

 

 

 

 

『これは…どういう事だ…!?』

周囲を黄金の光が包み込む…ゲイザーの視線の先、そこには空を舞う救世の竜、そして黄金の女神が降臨していた…。

 

 

『「光の創造神ホルアクティ」…だと!?三幻神は失われたはずだ!何故だ…何故……あれ、は…』

思わぬ神の出現にゲイザーは周囲を見回す、そして見つけた…力を取り戻した遊海に並び立つ偉大なる「王」の姿を…

 

『名もなきファラオ…!何故現世に!?そうか…!ゾークへの連鎖召喚─!』

そして戦いは決着を迎える、最強の地縛神は救世竜により倒され…冥界の王はホルアクティにより完全に浄化された…。

 

 

「…歴史は…正しく進んだ…イレギュラーがあっても…オレがいても…変わらなかった…オレは…何を…」

ネオドミノシティを照らす朝日の中でゲイザーは己の行いを嘆く…イレギュラーがあっても歴史は紡がれた…ならば、自分のしてきた事はいったいなんだったのかと…

 

 

【ゲイザー、レクス・ゴドウィンによる世界再生作戦はどうなりましたか?報告を…】

通信端末からゾーンの声が響く

 

「…こちらゲイザー、レクス・ゴドウィンによる世界再生作戦は失敗に終わった…プランBへと移行する事を進言する」

 

【そうですか、ではアポリア…三皇帝とアンチノミーを別ルートでネオドミノシティへと向かわせましょう、引き続き監視を頼みます…我が友よ】

 

「了解…連絡を終了する」

ゾーンへの連絡を終えたゲイザー…ユウミは空を仰ぎ涙を流す…

 

 

「…世界は…ようやく救われる…、オレは…間違っていたのか…?」

今は亡き愛すべき女にユウミは問い掛ける…その問いに答える者は…

 

 

 

ドクン…

 

 

 

 

 

─間違いなどではない、貴様はイレギュラーを排除すればいいのだ…!─

 

 

 

「ガッ…!?ダーク、ネス…!?』

ユウミの身体を闇が包む…そして頭に響くのは取り込んだはずの虚無の神の声だった。

 

─ククク…我は不滅なり…!貴様はイレギュラー…イレギュラーを排除しろ…それが貴様の使命だ…!─

 

『ぐっ…あああ…!?オレは…イレギュラーを殺す者…オレは…奴を…!チガウ…!オレは…未来を、救う、為に…うぅ…!?』

ユウミ…ラプラスの思考は闇に支配される…そして闇の中へと姿を消した…。

 

 

 

 

これが観測者を名乗るシラナミユウミの歩んだ道筋…絶望の中を足掻き続けた男の末路、彼に救いは無い…彼を待ち受けるのは…苦痛の煉獄…罪の精算だけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼にどうか死後の安寧があらん事を…

 

 

 

 

 

 




マテリアル

 

イリアステル滅四星 「観測者」ゲイザー

白いDホイールを操る仮面の決闘者、他のイリアステルメンバーの中では唯一ゾーンと同じ生身の人間である。

5D's本編17年前にライディングデュエルで遊海を強襲、死の寸前まで追い詰めた、その後も幾度となく遊海と死闘を繰り広げた末にゾーンと袂を分かち「希望を繋げる」為に激しいデュエルを繰り広げた。


 

 

正体

その正体は未来世界にて全てを失い絶望し、闇を受け入れたシラナミ ユウミ

 

小さな油断からゼロ・リバースを阻止してしまったユウミは破滅の未来を阻止しようとした。

しかし運命を変える事は出来ず遊星達の時代から200年後に世界は滅びを迎えた…。破滅の世界で翠(そしてお腹の子)を失い絶望した遊海は復活したダークネスを吸収…名前を捨てZ-ONEと共に過去改変へと動き出した…。

だが…Z-ONE達と永き時を過ごすうちに取り込んだダークネスに侵食され『イレギュラーを起こした過去の自分を抹殺すべき』という考えに支配される。

そして過去への干渉が可能となったユウミ…否、『ゲイザー』は過去の自分に襲撃を仕掛けたのである。

 

一度は遊海を瀕死へと追い込んだ彼だったが1つの誤算が起きる…遊海が『未知のシグナー』として覚醒し、それに呼応するように過去に倒した邪神ゾークがダークシグナーとして復活…当代の決闘者ではゾークを倒せない為にダークシグナー編では遊海に利する行動を取る事になった。


そしてダークシグナー事変解決後、朧気ながらも記憶に残る物語に分岐した事で正気を取り戻しかけるが…ダークネスの侵食が悪化し強い破壊衝動に支配される。

さらにゴースト反乱事件で遊海と戦いを繰り広げた後にダークネスの侵食が悪化…自分を次元の狭間に封印した。

アーククレイドル出現後、次元の狭間が不安定になった事で脱出…翠を拉致しアーククレイドルにて遊海を待ち受ける。
最終的に過去の自分である遊海が新たな希望「NEXUS」に覚醒した事で敗北…しかし、その結果ダークネスの洗脳から開放され正気を取り戻した…だが、ダークネスの力をもはや抑えきれない事を悟り、アポリアの代わりにゾーンとデュエルを行ない、遊星へと未来への希望を繋ぎ死亡した。

…しかし、ダークネスに影響はなく…死した肉体をダークネスの依代として使われる事になってしまった。

 

真名 『善知の悪魔・ラプラス』

ゾーンからは『全知全能』の悪魔の名を授かったが…あくまでも自分は『傍観する者』であった事から自嘲の意味を込めてはゲイザーを名乗っていた。

 

使用デッキ

インフェルニティ
彼岸
インフェルノイド
クリフォート
 

遊海との相違点

・精霊が『アポクリフォート・キラー』のみであり、名付けをしていない
・シグナーではない
・翠と死別
・最新のカードを知らない
・闇の人格無し
・記憶の欠落
(パートナー精霊であるキラーは長い時間を生きる遊海の記憶のバックアップという意味があった、それを破壊してしまった為に一部の記憶がなくなっている。また、ダークネスによる侵食により「白波翠」の記憶を徐々に奪われていた。)
・本編遊海と比べ慎重な性格
・精霊アーマーを纏う事ができない、その代わり装備魔法の剣や刀を実体化させリアルファイトをしていた。

 






歩んだ歴史

DM 

バトルシティでマリクに敗北し拷問を受ける

乃亜編 拷問により不参加(本編ではアヤカが海中にあった潜水艦を破壊している)

ドーマ編 翠と共にダーツに挑むが敗北

王の記憶編 遊戯達と共に記憶の世界を旅し、アテムを守る為にゾークに致命傷を受ける。
その後、翠と共に不死になる
 



GX

七精門最強の守護者として無敗・影丸を倒す

DDを倒して浄化したがエドの父は死亡

翠を洗脳した斎王を撃破

 
異世界編

ユベル・アヌビスと未邂逅→異世界でtierraに取り憑かれ暴走・翠の助けを経てtierraを吸収→亮の代わりにユベルと対峙・敗北
翠は翔と共に十代の戦いを見届ける


ダークネス編

イレギュラーとして執拗な攻撃を受ける(ミスターTの変化した闇マリク・ダーツ・バクラetc)

最終的にダークネス侵攻時にミスターTの袋叩きを受けて敗北

バトルシティ・レジェンドにて3位入賞、決勝は十代と遊戯の一騎打ちで引き分け


5D's編
ゼロ・リバースを阻止

道実野大地震で遊戯や海馬と死別

シグナーに覚醒する事はなく、遊星と共にダークシグナーと戦う

遊星と共に数々のライティング大会で優勝


遊星の時代から200年後…未来破滅





分岐点
遊戯との初対面時に千年パズルに触れる(キラーが遊海と同期した事で自我を獲得し「アヤカ」になる)

マリクに負ける(神のダメージによる深いトラウマを負う)

遊星&十代(本編世界)と遊戯(並行世界)と共にパラドックスと戦う

海馬社長にDホイール(完全型モーメント)を見られる






デザインコンセプト

「異なる可能性を歩んだもう1人の主人公」

様々なすれ違いから破滅の未来へと分岐した世界を生きた白波遊海。
敗北による痛みを知り、負けない為に無茶をし続けた結果…全てを失った。








レイン恵(半オリジナルキャラクター)

イリアステルの製造したデュエルロイド、創造主たるZ-ONEの命に従いアカデミア・ネオドミノ校に潜入しチーム5D'sの情報を集めていた。


その正体…正確に言えばその身体には制御カードとしてラプラスのパートナー「アポクリフォート・キラー」のカードがZ-ONEの手で仕込まれていた。(ラプラスがダークネスを吸収した後に瓦礫の中に放置されていたカードをZ-ONEが回収していた)

初めはイリアステルの手駒としてチーム5D'sの情報収集・監視を行なっていたが、パラドックスの起こした「デュエルモンスターズ抹殺作戦」の際に遊海の情報を得る為にデュエルを挑み、敗北した。
しかし、その際に白波遊海の持つ「精霊の力」に触れた事で封印状態となっていた「キラー」が活性化…自我を獲得し、主であるラプラスを救う為に独自に動き始める。


そしてプラシドによる「ゴースト氾濫事件」の後にラプラスがダークネスに飲まれかけている事を察知…ラプラスを救う為に手段を探し、ついに一つの可能性にたどり着く…それはあらゆる「精霊の力」を吸収する「三幻魔」を開放する事でラプラスに取り憑いているダークネスを引き剥がすという一か八かの作戦だった。

そしてレイン恵=キラーはデュエルアカデミアへと侵入…新たに組織されていた七星門守備隊とクロノス校長を倒し、三幻魔確保寸前だったが…異変を察知した翠が駆けつけデュエルへと突入、激戦の末に敗北した。
その後は遊海によって再び封印状態にあったがアーククレイドルでの遊海とラプラスの戦いの後に再起動、ダークネスの洗脳が解けたラプラスと共に未来への希望を繋げる為にZ-ONEとの戦いへと挑んだ。


そしてラプラスの最期を見届けた後、アーククレイドルの崩壊に巻き込まれた遊海と翠を庇い…未来へと希望を繋げた。


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5章 希望の未来へ
成長の証〜生命の輝き〜


あけましておめでとうございます!S,Kです!

ハーメルンの読者の皆様は無事に年を越す事ができましたでしょうか?
本年ものんびり更新していきますので、どうぞよろしくお願いします!

そして1つお知らせです!

活動報告で募集している「断章アンケート」の締め切りを1月15日とさせて頂きます、皆様のアイデアお待ちしております!


それでは最新話をどうぞ!


ネオドミノシティの…世界の未来を懸けたイリアステル、そしてダークネスとの戦いから3ヶ月が経った、アーククレイドルの直撃こそ避けられたものの、小さくない被害を受けた街もだんだんと復興を遂げている。

 

そしてシティの新たなヒーローとなったチーム5D'sも新たな生活を送っている。

 

 

龍亞・龍可、そしてアキはデュエルアカデミアでの学生生活を

 

クロウは牛尾の誘いを受けてセキュリティのハイウェイパトロールになる為の勉強を

 

ジャックはデュエルの腕を磨く為の武者修行へ

 

そして遊星はモーメントを正しく使う為の制御装置開発の為にシティの技術開発局へ通い詰めている…。

 

そして…新たな道を歩み始めたのは彼らだけではない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊星

 

 

『遊星、ここのプログラムはどうする?』

 

「…この場所の数値をもう少し上げてみよう、父さんの資料どおりならそれで上手くいくはずだ」

 

『うん、わかった!』

 

ゾーンとの未来を懸けた激闘からしばらくの時が過ぎた…オレは未来に起きたモーメントの暴走を防ぐ為の制御装置を作るプロジェクト…「プロジェクト・フォーチュン」をシティの技術開発局と合同で進めている。

この装置が完成すればモーメントを構成する遊星粒子が人の心に流される事なく、よりよい未来に導いてくれるはずだ。

 

 

『フフ…』

 

「どうしたんだ?ブルーノ」

 

『いや…ボクも変わったな〜と思ってね、まさかこんな未来があるとは考えてもなかったよ』

 

「ああ、ラプラスが…もう1人の遊海さんが新たな未来へ導いてくれたんだ…」

 

 

今、オレの隣ではアンチノミー改めブルーノが共に制御装置の開発に勤しんでいる、ラプラスにより命を救われたブルーノとアポリア…二人は新たな未来を切り開く為にオレに協力してくれているのだ。

 

 

 

『そういえば…アポリアがもう少しでパラドックスのボディが出来上がるから、一度来てほしいって言ってたよ?』

 

「パラドックスか…正直あまりいい記憶がないんだが…」

 

『大丈夫!彼の記憶データには遊星に負けた記憶があるらしいんだ…話せばきっとわかってくれるよ』

 

アポリアはラプラスに託された記憶データからパラドックスの復元に取り組んでいる、…本当ならばゾーンとラプラスも蘇らせたかったらしいが…オレがストップをかけた、彼らはきっとそんな事を望んではいない…そう思ったのだ。

 

未来はオレ達に委ねられた、この世界は新たな未来へと進んでいく…その為にオレはこの装置を完成させてみせる!

 

 

「さぁ、もうひと頑張りだ!」

 

『うん!』

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風が気持ちいいな〜…ようやく一区切りか…大変な18年だった…」

 

「そうですね遊海さん…本当に濃い日々でした…」

シティ郊外の高台…そこには車椅子に座る遊海、そしてそれを押す翠の姿があった。

ダークネスとの戦いを終えた遊海は気力・体力全てを使い果たし1ヶ月の昏睡状態となった…元々の大怪我もありリハビリに時間を要し、ようやく退院できたのだ。

 

 

「ネオドミノシティもほとんど元通りだ、ダークネスも撃退した…しばらく平和な暮らしが……できればいいなぁ」

 

「フフッ…遊海さんらしくもない事言っちゃって…すぐにでもデュエルがしたいんでしょう?」

 

「まぁな、でも…しばらく命懸けの戦いはお腹いっぱいだよ」

遊海と翠は街を眺めながら他愛もない話を続ける…二人はようやく手に入れた平和な時間を楽しんでいた…。

 

 

「遊海さん…あの時の事、覚えてますか…?」

 

「…ああ、俺達がこうしていられるのも…アイツのおかげだ…」

そして二人は思い返す…アーククレイドルでの最後の出来事を…

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

ガラガラガラ…!

 

「っ…!翠!避けろ!!」

 

「遊海さん!!」

瓦礫に押し潰された遊海…その上に再び瓦礫が崩れ落ちる!

 

ガラガラ…ガシャーン!!

 

「えっ…!?」

その刹那…瓦礫は何者かに弾かれる、それは遊海にとって見覚えのある者の仕業だった…。

 

 

《ご無事ですか、遊海様…》

 

「アヤカちゃん…!?」

 

「違う…お前は…」

 

《私はキラー、ラプラス…いえ、マスターの精霊です…最後に、間に合ってよかった…》

現れたのはラプラスのパートナー精霊である「アポクリフォート・キラー」だった…彼女が降り注いだ瓦礫から遊海達を庇ったのだ…。

 

 

《本当に、間に合ってよかっt…私も、もu限界…でssたかラ…》

 

「お前…コアが…!」

遊海はキラーのコアを見て絶句する…キラーのコアはひび割れ、崩れ始めていたからだ…。

 

《ワタシは、一度は消えタはず、でした…サイゴに、マスターと共にたたカえて、ヨカッタ…!》

 

「キラーちゃん!」

 

「キラー!」

 

《生きて、ください、遊海さま、翠様…それが、マスターの最期の、ネガイです…》

 

 

《キュオォォオン!!》

その言葉の直後、遊海と翠は赤き竜に助けだされた…。

 

 

 

 

《アア…ヨカッタ…さようなら、もう1人ノマスター…どうか、ヨイ…未来を…》

 

 

パキン…サラサラサラサラ…

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「…俺達は未来を託された、俺はこの世界を守り続ける…!」

 

「はい…!私もしっかりついて行きますね!遊海さん!…それじゃあ帰りましょうか!」

 

「ああ、まずはしっかり身体を休めよう」

そして遊海達はその場を後にした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ただいま〜」」

 

《おかえりなさい!遊海兄!》

 

《退院できてよかったね!》

 

「ああ、ありがとうウェン、ウィンダ」

自宅に戻った遊海と翠を出迎えたのはウィンダとウェンだった、ラプラスの攻撃で大怪我をしたものの身体が上手に壊れたらしく回復が早かったのだ。

 

 

 

 

「ただいま!メガロック…大丈夫か?」

 

《ううむ…まだ大丈夫ではないなぁ…我もトシかぁ…?》

 

「年って…何歳だよメガロック…」

 

《…600歳くらいか》

 

「ろっ…!?」

遊海が日向で休むメガロックへと声を掛ける…遊海の精霊の中でも一番ダメージが大きかったのがメガロックだった、ラプラスとの戦闘で全身の8割が損傷…岩の身体である事もあり未だに全身を精霊専用の包帯で覆われている…。 

 

 

《ハッハッハッ…なに、我の種族は長命だからな…人間で言えば60歳くらいか…トフェニやフレア様にはまだ及ばんよ》

 

「神様と半精神体のドラゴンと比べたらダメだって…しばらくは無理したらダメだからな?」

 

《わかっておるよ…もう一眠りするかな…グゥ…》

 

「(寝るの早ッ!?)…おやすみ、メガロック…」

遊海は静かにメガロックへと毛布を掛けた…。

 

 

 

 

「アヤカ、あれから変化はないか?」

 

《はい、アーククレイドル出現によってできた時空間の乱れも元に戻っています、遊星によればアン…ブルーノとアポリアの調子も良いようです》

 

「そうか、ならよかった…あとは何かあるか?」

 

《街での大きな事件はありません…むしろ前より街が平和になっています》

 

「そうか…なら鋼の騎士もしばらく休業かな…」

アーククレイドル事件を経てネオドミノシティの治安は劇的に改善した…ゾーンによる破滅の未来への警告、遊星による絆の奇跡によって人々の心は大きく変わり、犯罪率が激減したのだ…もちろんゼロになった訳ではないが、セキュリティで対応可能な範囲だろう。

 

 

《そういえばマスター…翠から聞きました、自力での魂のランクアップ…NEXUSについてですが…あの変身はできればしないでください》

 

「ん…?どうしてだ?一応無闇に使うつもりはないけど…」

アヤカは遊海の新たな境地…NEXUSの使用に対して釘を刺す

 

《あの変身はマスターの記憶にある『ZEXAL』と同質のモノ…人の身で『神の領域』に至る…言ってしまえば禁断の力、それ故にマスターの肉体・魂に大きな負担を掛けてしまいます…それこそ…》

 

「…俺が『死ぬ』レベルって事か?」

 

《はい…ですから、ふぇ…!?》

遊海がアヤカを静かに撫でる…

 

「心配するなよ彩華、大丈夫…そんな頻繁には使わないよ、この力は強すぎる…それこそ相手に対してフェアじゃない、だから約束する…この力だけは無闇に使わない…だから安心してくれ」

 

《う〜…!マスターのバカ〜!!》

 

「グボハッ!?」ドッターン!

アヤカの突進!遊海にかいしんのいちげき!

 

《本当に私と翠にどれだけ心配をかければ済むんですか!?マスターが目覚めないからどれだけ心配したと思ってるんです!魂も身体もボロボロ!シグナーの痣のバックアップがなかったらどうなっていたと思っているんですか〜!!》

 

「アヤカ、ごめん、本当に悪かった…!」

しばらくアヤカにみっちり説教を受けた遊海なのだった…。

 

 

 

 

 

《主殿、退院おめでとうございます…ご無事で何よりでした》

 

「ああ、ありがとうトフェニ…すまなかったな、ラプラスと派手にやりあったんだろう?」

 

《然り…ラプラスは凄まじい強さでした、マスターが圧倒的力で戦うヒーローだとすれば…ラプラスは技術を以て相手を倒す剣士…侍ともいえる戦い方だった》

トフェニはラプラスとの戦いを振り返り答える

 

「そうか…」

 

《しかし、後から話を聞けばラプラスは主達を傷つけるつもりはなかった様子…悪い事をしてしまった…》

 

「気にするなトフェニ…それはあいつの自業自得さ、ありがとな…そういえばフレアを知らないか?」

 

《ん…フレア様なら…》

 

 

 

 

 

 

《…おかえりなさい、ユウミ》

 

「ただいま、フレア」

フレアはベランダから静かに街を見下ろしていた…。

 

《今回は貴方にとってもつらい戦いになりましたね…よく頑張りました!》

 

「太陽神のお墨付きか…有り難いような勿体無いような…」

フレアの賛辞の言葉に遊海は頭を掻く

 

《そして…これからの事です》

 

「フレア…?」

フレア…否、太陽神は赤い瞳で遊海を射抜くように見つめる…

 

 

《次に戦うべきものはアヤカから聞いています…次に戦うべきは「世界」…それはわかっていますね?》

 

「ああ…わかってる」

この先の未来に待ち受けるのは「ZEXAL」の物語…主人公・九十九遊馬が世界中に飛び散ったアストラル世界の使者・アストラルの記憶を封じた100枚のカード「No.」を賭けて戦う物語だ。

前半は世界中に散った「No.」を集めながら、「No.」を求める二つの勢力との戦い…。

そして後半…それは人間界・アストラル世界・バリアン世界の三つの世界、そしてこの世の全てを決める事のできる世界創造のカード「ヌメロン・コード」をめぐる邪神との戦い…それが「ZEXAL」の物語だ。

 

 

《これからの戦いはまた熾烈なものになるでしょう…ユウミ、私が「太陽神」として貴方に問います…貴方は「世界」を相手に戦う事ができますか?》

 

「…俺は戦う、俺は…俺達は未来を託された!そして約束したんだ、ハッピーエンドを掴み取ると!!」

遊海は強い覚悟の意思を以てフレアを見据える…

 

《…わかりました、ならば私も共にその道を歩みましょう…人の身で神を倒せし勇者・白波遊海…貴方を私の真の主と認めます…これからも、よろしくお願いしますね?》

 

「どうしたんだフレア、そんなに改まって…でも、これからもよろしく…俺の守護神様!」

 

《はい!…ふふっ、一度こういう事をしてみたいと思ってたんです!…真面目な事をしたらお腹が空いちゃいました!》

 

「ふっ…ちょうどトリシューラプリンを買ってきたところだったんだ…食べ《いただきます!!》はいはい…じゃあ行こうか!」

 

《は〜い!》

 

このあと、たくさんプリンを食べて少し太ってしまうフレアなのだった、まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン!

 

 

 

「は〜い!…あら2人ともどうしたの?」

 

「こんにちは!翠さん!」

 

「遊海が退院したって聞いたからお見舞いに来たんだ!はい!これお土産!」

 

「あら!ありがとう!はいってはいって!一緒に食べましょう!」

 

「「おじゃましま~す!」」

 

退院して数日後、遊海の退院を聞いた龍亞と龍可が遊海宅へと訪れた…。

 

 

 

「よく来たな龍亞、龍可!学校生活はどうだ?」

 

「うん!ばっちりだよ!ちゃんと寝ないで授業もがんばってるよ!」

 

「わたしも友達が増えたんだ!今度一緒に海馬ランドに行くの!」

2人は笑顔で近況を伝える…

 

「そうか…それはよかった!やっぱり子どもは元気が一番だ」

 

「うん!…それよりも遊海さん、怪我は大丈夫…?」

 

「ん?ああ、まぁ普段の半分くらいかな…今回は少し無理しすぎたよ」

遊海は自分の身体を見ながら答える…少しの距離なら歩けるが未だに車椅子は手放せない状態である。

 

 

「でも驚いちゃった…遊星が戦ってる時に遊海1人で地縛神より怖い邪神と戦ってたなんて…言ってくれたらみんなで戦ったのに!」

 

「ごめんな龍亞…ダークネスは本当に『強い』デュエリストじゃないと相手にならない相手だったんだ…それにお前達の戦いの邪魔をしない為に俺が引き受けたんだ…悔いはないよ」

遊海は龍亞の頭を撫でながら答える…。

 

「強いデュエリストだったらおれだって!ちゃんとシグナーになれたもん!きっとおれだって!」

 

「コラ!調子に乗らないの!」

痣を遊海に見せつける龍亞を龍可が諌める

 

「ああ…龍亞も龍可も本当に強くなった、でも…ダークネスにはまだ勝てないな…それはジャックやクロウでも同じだ」

 

「ジャックでも!?どうして…?」

龍可が首を傾げる 

 

「ダークネスはデュエルに強いだけじゃない、相手の心を見抜く力を持っているんだ…そして相手を絶望させて弱らせ…虚無の世界に取り込む、それを突破するには絶望を前にしても折れない希望を持つか…それか遊星のようにクリアマインド…何があっても揺らがない「明鏡止水」の心で立ち向かわなくてダメなんだ…俺だってギリギリだったよ」

 

「「遊海…」」

その様子を見て兄妹はなんとなく理解した…自分達がアポリアと戦った時以上の絶望を遊海は乗り越えたのだと…。

 

 

 

「それはそれとして…2人は本当に強くなった!特に龍亞は最初に出会った時から見違える程だ…」

 

「あはは…あの時はすごい手加減してくれたのにボロ負けだったもんね…」

そして龍亞は思い出す…遊星と出会う少し前、正体を隠していた遊海にボロ負けしたデュエルを…そして、龍亞は1つの決意をした…!

 

 

「…ねぇ、遊海…おれ…」

 

「…言わなくていいぞ龍亞、その目を見ればわかる…俺とデュエルしたいんだろ?」

遊海は龍亞の様子から考えを見抜く…!

 

「うん、おれがあの時からどれだけ強くなったか…確かめてほしいんだ!!」

 

「えっ…ダメよ龍亞!!遊海さんはまだ…」

龍可は慌てて兄を制止する…遊海の傷は癒えていない、その状態を見ての事だった。

 

「心配しなくて大丈夫だよ龍可…ちょうどリハビリでデュエルをしたいと思ってたんだ、翠!頼めるか?」

 

「はい!…でも、あんまり無理はダメですよ?」

 

「わかってるよ、それじゃあ外に出よう!」

 

 

 

 

 

 

 

「用意はいいか!龍亞!」

 

「うん!ばっちり!」

白波家の庭で車椅子の遊海と龍亞は向かい合う…!

 

「龍亞…頑張って!!」

 

《マスター!ほどほどにしてくださいねー!》

 

《うむ…龍亞の顔もよい顔になったな!頑張るのだ2人とも!》

ウッドデッキでは龍可や精霊達がデュエルを見守っている。

 

 

「用意はいいかしら?…それじゃあデュエル〜…始め!!」

翠の合図で決闘が始まった…!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP4000

龍亞LP4000

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「自分の場にモンスターがいない時!手札の『フォトン・スラッシャー』は特殊召喚できる!」

光輝く剣を持った単眼の戦士が現れる ATK2100

 

「さらに『銀河の魔導師(ギャラクシー・ウィザード)』を召喚!」

ローブを纏った白い魔導師が現れる ATK0

 

「『銀河の魔導師』の効果発動!自身をリリースする事で『銀河眼の光子竜』を手札に加える!…カードを1枚伏せてターンエンド!」

遊海LP4000

フォトンスラッシャー 伏せ1 手札4

 

 

 

『いきなり攻撃力2100…!でも、負けるもんか!!』

 

 

 

『おれのターン!ドロー!』

『いくぞ!おれは「D・ラジカッセン」を召喚!』

赤いラジカセが現れロボットへと変形する ATK1200

 

 

「(龍亞の使うディフォーマー基本的に攻撃力が低いが…それを効果や装備魔法で強化できる…さて、何を使ってくる…?)」

遊海は龍亞の手を伺う…!

 

『そして装備魔法「月鏡の盾」を「ラジカッセン」に装備する!』

 

「んなっ!?」

遊海は発動されたカードに驚く…それはかつてペガサス会長から龍亞へ託されたカード…最凶の邪神「邪神アバター」の力を受け継ぐ装備魔法だった…!

 

『バトル!「ラジカッセン」で「フォトンスラッシャー」を攻撃!そして装備された「月鏡の盾」の効果発動!ダメージステップ時に装備モンスターの攻撃力は相手の攻撃力か守備力…そのどちらか高い数値に+100した攻撃力になる!』

鏡の盾にフォトンスラッシャーが写し出され、その力を鏡写しにされる!

 

ラジカッセンATK1200→2200

 

『いっけぇ!!』

 

「ぐっ!?」

ラジカッセンの一撃がフォトンスラッシャーを破壊する!

 

遊海LP4000→3900

 

 

『そして攻撃表示の「ラジカッセン」は2回攻撃できる!遊海にダイレクトアタック!!』

 

「っ…!!やるな、龍亞!!」

遊海LP3900→2700

 

『よっしゃ!先制だ!カードを2枚伏せてターンエンド!』

龍亞LP4000

ラジカッセン(月鏡の盾)伏せ2 手札2

 

 

 

「うそ…龍亞が遊海さんにダイレクトアタック!?すごい!すごいよ龍亞!!」

 

『へへっ…やったぜ!』

思わぬ龍亞の攻勢に龍可は飛び跳ねて驚く…

 

「やるな龍亞…!なら、俺も強めでいくぞ!!」

龍亞の成長を感じた遊海は気を引き締める!

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『銀河眼の雲篭(ギャラクシーアイズ・クラウドラゴン)』を召喚!」

遊海の場に小さな銀河が現れ、その中から小さなドラゴンが現れる ATK300

 

 

「あっ…かわいい…」

《きゅ?》

龍可の言葉にクラウドラゴンが可愛らしく首を傾げる

 

「…コホン、『雲篭』の効果発動!このカードをリリースする事で手札から新たなモンスターを特殊召喚する!」

《きゅ!キュア〜!!》

クラウドラゴンがその姿を赤色の十字槍に変化させる!

 

「闇に輝く銀河よ…希望の導きによりて我が下僕に宿れ!光の化身、ここに降臨!現れろ!『銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)』!!」

遊海は十字槍を空に向かって投げつける…槍は銀河に飲み込まれ光が弾ける…そして現れたのは瞳に銀河を宿すドラゴンだった…! ATK3000

 

「すごい…!『スターダストドラゴン』みたいに全身が輝いてる…!」

 

『攻撃力3000のドラゴン…!』

龍亞達は銀河眼の迫力に圧倒される!

 

 

「さらに俺は手札の『フォトン・バニッシャー』を見せる事で手札の『銀河剣聖(ギャラクシー・ブレイバー)』をレベル4にして特殊召喚!」

巨大な剣を持つ剣士が現れる ATK0

☆8→4

 

「『銀河剣聖』の効果発動!墓地の『フォトンスラッシャー』と同じ攻撃になる!」

フォトンスラッシャーの意思が剣聖の剣に宿る! ATK0→2100

 

「バトル!『銀河眼』で『ラジカッセン』を攻撃!」

 

『遊海!「ラジカッセン」は「月鏡の盾」で攻撃力をアップできる!攻撃は効かないよ!』

 

「ふっ…それはどうかな?」

その瞬間、ラジカッセンと銀河眼はフィールドから姿を消す!

 

『えっ!?なんで!?』

 

「『銀河眼の光子竜』の効果発動!相手とバトルする時、バトルフェイズ終了時までお互いを除外する!…これで『月鏡の盾』は墓地送りだな?」

 

『くっ!?…でも「月鏡の盾」の効果発動!このカードが墓地に送られた時!500ライフを払って手札に戻す!』

龍亞LP4000→3500

 

 

「バトル続行!『銀河剣聖』でダイレクトアタック!」

剣士が龍亞に斬りかかる!

 

『リバースカードオープン!「D・スクランブル」!ダイレクトアタックを無効にして手札の「D・リモコン」を特殊召喚!』

白いリモコン型のロボットが現れる DEF1200

 

 

「むっ…上手いな…俺はこのままターンエンド!」

遊海のターン終了宣言と共に2体のモンスターが帰還する

 

遊海LP2700

剣聖 銀河眼 伏せ1 手札2

 

 

 

『よし!攻撃を凌いだぞ…!』

 

「龍亞君すごい…!遊海さんの攻撃をかわすなんて…」

 

《きっと…これが遊星達との絆で鍛えられた龍亞本来の力なんです、アポリアが希望を見出す程の…!》

龍亞のデュエルを見て翠とアヤカも感心する、最初こそデュエルに不慣れでモンスターを並べるだけだった龍亞…しかし、遊星や遊海の指導や強敵との戦いを経て…その才能を開花させたのだ…!

 

 

 

 

『おれのターン!ドロー!』

『おれはレベル4の「ラジカッセン」にレベル3の「リモコン」をチューニング!!』

 

4+3=7

 

『世界の平和を守る為!勇気と力をドッキング!シンクロ召喚!愛と正義の使者!「パワー・ツール・ドラゴン」!!』

龍亞の相棒である工具の機械竜が現れる ATK2300

 

「来たか、『パワーツールドラゴン』!」

 

『うん!「パワーツールドラゴン」の効果発動!デッキからランダムに装備魔法を手札に加える!パワー・サーチ!な〜にかな!な〜にかな!!』

デッキからランダムに装備魔法が排出される!

 

『よし!装備魔法「ダブルツールD&C」を「パワーツールドラゴン」に装備!これで攻撃力が1000アップ!さらにこのカードが攻撃する時、相手モンスターの効果は無効になる!』

パワーツールの両腕が鋭いドリルとカッターに換装される! ATK2300→3300

 

『バトル!「パワーツール」で「銀河眼」を攻撃!クラフティ・ブレイク!!』

鋭いドリルの一撃が迫る!

 

「罠カード『フォトン・チェンジ』を発動!『銀河眼』をリリースして効果発動!デッキから現れろ!『フォトン・オービタル』!」

銀河眼が消え去り、ひょうきんな顔のロボットが現れる DEF2000

 

「さらに『フォトンチェンジ』のもう1つの効果発動!デッキから『破滅のフォトン・ストリーム』を手札に加える!」

 

『なら「銀河剣聖」を攻撃!クラフティブレイク!』

 

「うぉっ…!」

 

遊海LP2700→1500

 

「おれはカードを伏せてターンエンド!」

龍亞LP3500

パワーツール(ダブルツールD&C) 伏せ2 手札3

 

 

 

 

『ねぇ、遊海…また、手加減してるでしょ?』

 

「ああ、してるさ…でも、強くなったな龍亞…少し昔の事を思い出したよ…!」

遊海の目には龍亞に重なるように水色の髪の丸眼鏡の少年の姿が見えていた…。

 

 

『遊海、遊海の本気…俺に見せて…!』

 

「………」

龍亞は真剣な眼差しで遊海を見つめる…!

 

『おれは将来、遊星やジャックを超えるような強いDホイーラーになりたいんだ…!だから知りたい!今のおれの強さを!世界がどれだけ広いのかを!!』

 

「そうか…なら本気でいくぞ龍亞…!我が名は白波遊海!『決闘王』の称号に懸けて全力を尽くす!!」

 

『っ…!!』

龍亞は遊海の変化を感じ取る、今の遊海に普段の優しさはない…その身に纏うは世界最高レベルの決闘者が持つ圧倒的闘志…そのオーラが空気を震わせる…!

 

 

 

「あの、翠さん…なんだか嫌な予感が…!?」

 

「ち、ちょっと遊海さん!?無茶はしないでー!?」

翠と龍可の声は2人に届かない…それほどまでに遊海と龍亞は集中している…!

 

《無駄ですよ2人とも…ああなってしまったら龍亞も遊海も止まらないでしょう…》

 

「『エンシェントフェアリードラゴン』…!」

龍可の背後に妖精竜が現れる

 

《龍亞は先の戦いでシグナーとして目覚めました…そして世界の広さ、そして…護る者の責任を知りました、龍亞はまだ芽吹いたばかりの若葉…遊海はその成長を促そうとしているのです…!》

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「装備魔法『銀河零式(ギャラクシー・ゼロ)』を発動!蘇れ!『銀河眼の光子竜』!」

遊海の場に再び銀河眼が降臨する! ATK0

 

「『銀河零式』で特殊召喚したモンスターは攻撃力0となり効果も発動できない!そして俺は『フォトンオービタル』の効果発動!このカードを『銀河眼』に装備!そして効果発動!『フォトンオービタル』を墓地に送りデッキの『銀河戦士』を手札に加える!そして手札の『フォトンバニッシャー』を捨てて『銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)』を特殊召喚!」

白い鎧を纏った戦士が現れる DEF0

 

「『銀河戦士』の効果発動!デッキから『銀河騎士』を手札に加える!そして『銀河騎士(ギャラクシー・ナイト)』は自分の場にレベル5以上の『ギャラクシー』モンスターがいる時!リリースなしで召喚できる!」

長身の騎士が現れる ATK2800→1000

 

『攻撃力2800…!(でも、多少のダメージは大丈夫…!それに攻撃してきたら「ダブルツールD&C」の効果で破壊できる!)』

 

 

「よく見ていろ龍亞!これが1つの頂点だ!俺はレベル8の『銀河眼の光子竜』と『銀河騎士』でオーバーレイ!!」

2体のモンスターが銀河へと飛び込む!

 

『な、何が起きるの!?』

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」

龍亞の動揺をよそに銀河が爆発…周囲は光に埋め尽くされる!

 

「現れろA No.107!宇宙を貫く雄叫びよ…遥かなる時をさかのぼり、銀河の源より蘇れ! 顕現せよ!『銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)』!!」

《ギシャアアア!!》

遊海の場に巨大な四角錐が現れ展開…黒き巨大なドラゴンが降臨する! ATK3000

 

 

『これが…遊海の本気…!!』

龍亞は冷や汗を流す…アポリアの『機皇神龍アステリスク』やゾーンの『究極時械神セフィロン』に匹敵する存在感がプレッシャーを与える…!

 

「これが俺の本気の証…エクシーズ召喚!エクシーズモンスターは同じレベルのモンスター2体以上を重ねる事で特殊召喚されるエクストラデッキのモンスター…レベルを持たず、レベルに関係する効果を受けない!そして…俺は速攻魔法『破滅のフォトン・ストリーム』を発動!自分の場にギャラクシーアイズがいる時!相手のカード1枚を除外する!俺が選ぶのは『ダブルツールD&C』!」

 

『異世界のデュエルモンスターズ…!でも、負けるもんか!!リバース罠オープン!「パワー・ブレイク」!「ダブルツールD&C」をデッキに戻して遊海に500ダメージだ!!』

 

「うおっ…!!」

パワーツールから放たれた雷撃が遊海を直撃する!

 

 

遊海LP1500→1000

 

 

「効いた〜!だけどバトルだ!いけ!『タキオン』!殲滅のタキオン・スパイラル!!」

 

『ぐっ…うわああ!!』

破壊の息吹がパワーツールを吹き飛ばす!

 

龍亞LP3500→2800

 

「カードを伏せてターンエンド!」

遊海LP1000

タキオン 銀河戦士 フォトンチェンジ 伏せ1 手札0

 

 

 

「これが…遊海さんの本気…!!」

龍可は遊海の迫力に圧倒される…!

 

「もう…遊海さんもムキになって…でも、楽しそう…!」

激しい戦いを繰り広げる遊海と龍亞…しかし、2人は楽しそうに笑っていた…。

 

 

『これが…決闘王の本気…!すごい…!!』

 

「さぁ、かかってこい龍亞!!お前の成長の証を見せてみろ!!」

 

『うん!いくよ遊海!!』

 

 

 

『おれのターン!ドロー!!』

『リバースカードオープン!「リビングデッドの呼び声」発動!もう一度力を貸してくれ!「パワーツールドラゴン」!!』

再び工具の龍が現れる! ATK2300

 

『そして「D・ライトン」を召喚!!』

懐中電灯型のロボットが現れる ATK200

 

『おれはレベル7の「パワーツールドラゴン」にレベル1の「ライトン」をチューニング!!』

 

7+1=8

 

『世界の未来を守る為!勇気と力がレボリューション!!シンクロ召喚!進化せよ!「ライフ・ストリーム・ドラゴン」!』

パワーツールドラゴンの装甲が燃え上がり弾け飛ぶ…装甲の下から現れたのは生命の輝きを守護する6体目のシグナーの竜だった ATK2900

 

 

「これが龍亞の進化の奇跡か…!すごいな…!!」

初めてライフストリームドラゴンを見た遊海は、赤き竜の力を強く受け継ぐ生命の竜に感動する…!

 

『へへっ…!いくぞ!おれは装備魔法「月鏡の盾」そして「白銀の翼」を「ライフストリームドラゴン」に装備!』

 

「なにっ!?」

ライフストリームドラゴンの右腕に鏡の盾が装備され、翼が白き翼に変化する!

 

『遊星からプレゼントして貰ったんだ!これで2回まで破壊されないし、必ず相手の攻撃力を100上回る!』

《グオォォン!!》

ライフストリームドラゴンが咆哮を轟かせる…まさに最硬の盾と最強の剣を持つ無双のドラゴンとなったのだ…!

 

 

『バトル!「ライフストリームドラゴン」で「タキオンドラゴン」を攻撃!ライフ・イズ・ビューティーホール!!』

ライフストリーム ATK2900→3100

 

「強くなったな龍亞…」

 

ドオオオン!!

 

生命の息吹がタキオンドラゴンに直撃…爆発する!

 

 

『やった…!』

 

「だが、頂上には…まだ届かない!!」

 

《ギシャアアア!!》

爆煙の中からタキオンドラゴンが咆哮を轟かせる!

 

 

『ええっ!?なんで!?』

 

「攻撃を受ける瞬間、罠カード『光波防輪(サイファー・ビット)』を発動した!このカードは発動後に『タキオン』のORUになり、このターン戦闘・効果で破壊されなくなる!」

タキオンドラゴン ORU2→3

 

遊海LP1000→900

 

 

『やっぱり強い…!おれはターンエンド!』

 

 

龍亞LP2800

ライフストリーム(白銀の翼・月鏡) 手札1

 

 

 

「ふぅ〜、まだ粗削りだけど…龍亞、お前は強い!」

 

『遊海…』

遊海は龍亞に賛辞の言葉を送る…

 

「お前は遊星達と過ごす中で色々な事を経験してきた、自分よりも強い相手と戦い、自分の弱さを知り…絆の強さを知った、絶望を前にしても希望を捨てずに立ち向かった…普通の子どもにはできない事だ!…だが、お前にはまだ足りない事がある!」

 

『足りない事…?』

遊海の言葉に龍亞は首を傾げる

 

「それは単純な事…経験を積む事だ!世界は広い、まだ見ぬデュエリスト達が世界中にいる!経験さえ積めばお前はトップデュエリストになれる!」

それは遊海の心からの言葉だった、現に龍亞は10年後に若手Dホイーラーのトップに登りつめるのだ…!

 

「でも、今の龍亞ではまだ足りない…デュエリストはピンチになってこそ、その真価を発揮する…いくぞ!!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「『フォトンチェンジ』は2回目のスタンバイフェイズに破壊される、そして『銀河の修道師(ギャラクシー・プリースト)』を召喚!」

白いローブを纏う修道師が現れる ATK1500

 

「『修道師』の効果発動!墓地の『フォトンスラッシャー』『銀河の魔導師』『フォトンオービタル』『フォトンバニッシャー』『銀河剣聖』をデッキに戻して2ドロー!…いくぞ龍亞!俺はお前に対して最大の敬意を払う…刮目しろ!魔法カード『RUM-クイック・カオス』発動!」

周囲に閃光が広がる…!

 

『ランクアップマジック…!?』

 

「自分の場のエクシーズモンスターを1つランクの高いエクシーズモンスターにランクアップさせる!俺は『銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)』でオーバーレイネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!」

タキオンドラゴンが銀河に飛び込み…再誕する!!

 

「逆巻く銀河を貫いて!時の生ずる前より蘇れ!永遠を超える竜の星! 顕現せよ!『A CNo.107! |超銀河眼の時空龍』!《ネオギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン》」

現れたのは3本の首を持つ金色の巨龍…龍亞はその姿に見覚えがあった ATK4500

 

『あの時の…時間の流れを支配する龍皇…!』

 

「よく覚えていたな…その力を見せよう!ORUを1つ取り除いて効果発動!タイム・タイラント!!」

 

《グオォォオオン!!》

ネオタキオンが咆哮する…すると雲が逆方向に流れ、鏡の盾が罅割れ…白銀の翼が光を失った…

 

 

「そんな…何が起きたの!?」

龍可は状況を理解できずに翠に問いかける…。

 

「あれが『超時空竜』の効果…フィールド全ての効果を無効にして、全ての効果の発動を封じる…タイム・タイラント!」

 

『そんな!?』

 

「『銀河戦士』を攻撃表示に変更!バトル!『ネオタキオン』で『ライフストリームドラゴン』を攻撃!アルティメット・タキオン・スパイラル!!」

金色の破壊光線がライフストリームドラゴンを破壊する!

 

『うわああ…!!』

龍亞LP2800→1200

 

 

「今日は俺の勝ちだ!『銀河戦士』でダイレクトアタック!!」

 

『っ…!!…あ〜あ、もう少しで勝てたのに…悔しいなぁ…』

 

銀河戦士の拳が龍亞の目の前で止まる…決闘王の壁はまだ高かった…。

 

 

龍亞LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「惜しかったな龍亞、よく頑張った…」

 

「うん…!次は負けないからね!遊海!!」

遊海は龍亞を優しく撫でる…龍亞は元気に答えを返した…。

 

「もう…男の子ってどうしてこうなのかしら…」

 

「本当にね…でもかっこいいわね、男の友情って…」

 

「…うん!ふふっ…」

龍可と翠は笑いあう…

 

 

「さてと…2人とも〜お腹空いたでしょ!ホットケーキでも食べましょう〜!」

 

「おっ!ありがとう翠!」

 

「わ〜い!ありがとう!!」

 

「龍亞!ちゃんと手は洗ってよ〜!」

戦いを終えた遊海達は笑いながら家へと戻っていく…そして遊海は実感した、未来はきっと明るいだろうと…。

 

 




〜おまけ〜



「みんな〜ホットケーキ焼けましたよ〜」

「あっ!翠さん!シ〜!!」

「遊海さんが寝ちゃったの…」

「あ…もう〜、だから無理しないでって言ったのに…」

ホットケーキを焼きあげた翠がリビングへと戻ると車椅子で眠ってしまった遊海、そしてそれを覗き込む双子の姿があった…。


「まったく…風邪引いちゃいますよ遊海さん…」

「スゥ…スゥ…」
翠は静かに毛布を掛ける…遊海はとても幸せそうな寝顔だった。


「ねぇ、翠さん…おれ、いいモノ持ってるんだけど…?」

「あら、面白そうね…!」

「2人とも…やめておいたほうが…」



キュッ…キュッキュッ…












その日の夜…





「…なんて顔をしとるんだお前は…!早く顔を洗ってこい!!」

「んなっ!?誰だこんな事したのは〜!?」

「あははは!!傑作だぜ遊海先生!!」

「アヤカ、教えてあげないと…」

《すいません…翠に口止めされてまして…》

数時間後…そこには顔に落書きをされたまま海馬社長達に会い、怒られる遊海の姿があったとか…。



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乙女の悩み〜不安〜

「遊海さん!しっかりして!遊海さん!!」

 

「っ…あ……」

何処ともしれない場所…翠は傷だらけで倒れた遊海を抱き起こす…遊海は口から血を流し浅い呼吸を繰り返している…。

 

「だめ…起きて…!」

 

「…ごめん……みど…り…」パタッ

遊海は翠の顔に僅かに触れ…力尽きた…

 

「いや…いやぁぁぁぁ─!!!」

翠の悲しみの叫びが虚しく木霊した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁ!!…あっ…?」

 

「zzz……スゥ…」

 

「…ゆ、め…?」

翠は飛び起きる…時間はまだ早朝、遊海は隣で静かに眠っているが…翠は全身に冷や汗をかき、涙を流していた…。

 

 

「………夢で、よかった…遊海さんの、馬鹿…!夢でも私を置いていかないで…」ギュ…

 

「んむぅ…スゥ…」

翠は静かに遊海に抱きつきもう一度眠りに落ちた…悪い夢見を打ち消すように…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!翠さ〜ん!」

 

「アキさ〜んお待たせ〜!」

とある休日の昼下がり、とあるカフェテラスで翠とアキが待ち合わせをしていた…。

 

 

「髪型変えたのね!」

 

「はい!どうですか?」

アキは今までサイコパワー制御装置を兼ねた髪留めをしていた…しかし、アーククレイドルの一件の後にサイコパワーが完全に消失…制御装置を使う必要がなくなった事でカチューシャで髪を纏めている。

 

 

「もちろん似合ってるわ!前よりお淑やかに見えるかな?」

 

「はうっ…!お淑やかなんて…似合わない、かな…」

翠の言葉にアキは赤面する…

 

「あ…、そういえば…シェリーから連絡があったんです!両親共に目覚めて快方に向かってるって!」

 

「本当!?よかった〜…これでひと安心ね!」

アーククレイドル事件の後にシェリーは急いで故郷へと戻った…それは病院からの知らせでルブラン夫妻が意識を取り戻した事を知ったからだった。

襲撃事件のあったあの日、ルブラン夫妻の魂はダークネスに囚われており…遊海がダークネスを倒した事で目覚めたのだ。

 

 

 

「そういえば…今日はどうしたの?相談があるって聞いたけど…」

 

「はい、実は…」

 

アキ曰く、一週間後にアカデミア高等部の試験があり、その中にデュエルの実技試験があるらしい…。

 

 

「遊星や5D'sのみんなは忙しそうだし…遊海さんはまだ無理はできないと思って…」

 

「それで私にデュエルの相手を頼みに来たのね…私でよければ相手になるわ!」

 

「ありがとうございます!」

そして会計を済ませた2人はデュエル場へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

『いらっしゃいませ岸波様、いつもご利用ありがとうございます』

 

「お世話になってます!3時間コースでお願いします!」

 

『承りました、3番のデュエルコートへどうぞ』

 

 

 

「み、翠さん…ここって…」

アキが翠に連れられて訪れたのは厳重なセキュリティの施されたデュエル場だった…。

 

「ここはKCとI2社直営のデュエルコートよ!遊海さんが海馬君や他のプロデュエリストとデュエルする時に使ってるの!私もたまには思いっきりデュエルがしたいと思ってね!」

 

「すご〜い…(年会費どれくらいなんだろう…考えないでおこう…)」

 

 

 

 

 

「準備はいいかしら?」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

翠LP4000

アキLP4000

 

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「魔法カード『影依融合(シャドール・フュージョン)』発動!手札の『シャドール・ファルコン』と『シャドール・ヘッジホッグ』を融合!影から現れし人形よ!影の巫女の依代となれ!融合召喚!よろしくね!『エルシャドール・ミドラーシュ』!」

《まっかせて〜!久しぶりの出番だよ〜!》

影の風竜に乗るウィンダが現れる ATK2200

 

 

「そしてカード効果で墓地に送られた『ファルコン』の効果発動!自分を裏守備で特殊効果!さらに『ヘッジホッグ』の効果でデッキから『シャドール・ビースト』を手札に加えるわ!そしてモンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンド!」

翠LP4000

ミドラーシュ 裏ファルコン セットモンスター 伏せ1 手札2

 

 

 

『すごい…1ターンでモンスターが3体も…!』

 

「ふふっ、『ミドラーシュ』がいる時はお互いにモンスターの特殊召喚は1ターンに1度しかできないから気をつけてね?」

 

『嘘っ!?なんてロック能力なの…!?』

翠にミドラーシュの効果を聞かされたアキは動揺するが…

 

『でも…この状況を越えられれば…活路はある!いきます!!』

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『よし…!「ローンファイア・ブロッサム」を召喚!』

火山地帯に咲く花が現れる ATK500

 

『「ローンファイアブロッサム」の効果発動!自身をリリースする事でデッキから植物族モンスターを特殊召喚できる!来て!「姫葵(ひまり)マリーナ」を特殊召喚!』

ブロッサムの蕾が破裂…快活そうな向日葵の植物姫が現れる ATK2800

 

『バトル!「マリーナ」で「ミドラーシュ」を攻撃!』

 

《そんな〜!?もう出番終わり〜!?》

マリーナが強い光を放ちミドラーシュを破壊する!

翠LP4000→3400

 

 

「ごめんねウィンダ!『ミドラーシュ』の効果発動!墓地の『影依融合』を手札に加えるわ!」

 

『私はカードを2枚伏せてターンエンド!』

アキLP4000

マリーナ 伏せ2 手札3

 

 

「いい判断ね!じゃあ次はどうかしら!」

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「魔法カード『手札抹殺』を発動!お互いに手札を捨てて同じ枚数ドローする!」

 

『っ…!』

翠の魔法で手札がリセットされる!

 

翠 捨てたカード

影依融合

シャドールドラゴン

ビースト

 

 

アキ 捨てたカード

返り咲く薔薇の大輪

フレグランス・ストーム

ガード・ヘッジ

 

 

 

「『シャドールビースト』の墓地効果発動!1ドロー!『シャドールドラゴン』の墓地効果発動!アキちゃんの右側の伏せカードを破壊するわ!」

 

『その瞬間!リバース罠「植物連鎖」発動!「マリーナ」に装備する事で攻撃力500アップ!』

 

発動された罠が影糸で切り裂かれる!

 

『装備された「植物連鎖」が破壊された事で効果発動!墓地の「ローンファイアブロッサム」を特殊召喚!』

再び火山の花が現れる DEF1400

 

 

「うまく避けられちゃったわね…なら…!『シャドールファルコン』を反転召喚!」

鳥型の影人形が現れる ATK600

 

「『ファルコン』のリバース効果で墓地の『ビースト』を裏守備で特殊召喚!そしてリバース魔法『神の写し身との接触(エルシャドール・フュージョン)』を発動!フィールドの『ファルコン』と手札の『超電磁タートル』を融合!影の翼よ!光の力を受け、影の女王を呼び出さん!融合召喚!『エルシャドール・ネフィリム』!」

巨大なる影の女王が降臨する ATK2800

 

 

『大きい…!これが翠さんの切り札…!』

 

「いくわよ!『ネフィリム』の効果発動!デッキの『シャドール・ハウンド』を墓地に送る!そして効果発動!『ローンファイアブロッサム』を攻撃表示に変更!」

 

『しまった…!』

影糸が火山花の表示形式を変更する DEF1400→ATK500

 

「そして『シャドール・リザード』を召喚!」

トカゲ型の影人形が現れる ATK1800

 

 

「バトルよ!『ネフィリム』で『マリーナ』を攻撃!影糸の斬糸撃!」

 

『「ネフィリム」と「マリーナ」の攻撃力は互角…相討ちです!』

 

「残念!「ネフィリム」は特殊召喚されたモンスターと戦う時にそのモンスターを破壊するわ!」

 

『そんな!』

マリーナは影糸に切り裂かれ破壊される!

 

『それなら墓地の「返り咲く薔薇の大輪(リバイバル・ローズ)」の効果発動!自身を墓地から特殊召喚!』

巨大な薔薇の花が現れる DEF1300

 

 

「『リザード』で『ローンファイアブロッサム』を攻撃!」

トカゲが火山花を切り裂く!

 

『くっ…!』

アキLP4000→2700

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

翠LP3400

ネフィリム リザード 裏ビースト 伏せモンスター 伏せ1 手札1

 

 

 

『(翠さんの場にはモンスターが4体…伏せてあるモンスターはドロー加速の「ビースト」…それなら…!)』

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』カーン☆

『「レッド・ローズ・ドラゴン」を召喚!』

身体から薔薇を生やした小さなドラゴンが現れる ATK1000

 

『私はレベル4の「返り咲く薔薇の大輪」にレベル3の「レッドローズドラゴン」をチューニング!』

 

3+4=7

 

『冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の花よ!開け!シンクロ召喚!現われよ!「ブラック・ローズ・ドラゴン」!』

アキのシグナーのドラゴンたる黒薔薇のドラゴンが現れる ATK2400

 

 

「来たわね…!」

 

『シンクロ素材になった「レッドローズドラゴン」の効果発動!デッキから「ブルー・ローズ・ドラゴン」を特殊召喚!』

小さな青い薔薇のドラゴンが現れる DEF1200

 

 

『そしてこのカードが「ブラックローズドラゴン」のシンクロ素材となった事でさらなる効果発動!デッキから「漆黒の薔薇の開花」を手札に加える!そして「ブラックローズドラゴン」の効果発動!フィールドのカード全てを破壊するわ!ブラックローズ・ガイル』

薔薇の花吹雪が2人のフィールドを蹂躙する…!

 

「やってくれたわね…!」

 

『そして破壊された「ブルーローズドラゴン」の効果発動!墓地の「ブラックローズドラゴン」を特殊召喚!』

再び黒薔薇が咲き誇る! ATK2400

 

「なら私も効果を発動するわ!まず『ビースト』の効果!1ドロー!そして『ネフィリム』の効果!墓地の『影依融合』を手札に!さらに破壊された伏せカード『影依の源核』の効果!墓地の『神の写し身との接触』を手札に!さらに『リザード』の効果発動!デッキから2枚目の『ヘッジホッグ』を墓地に送って効果発動!2枚目の『ファルコン』を手札に加えるわ!」

 

『手札が5枚に増えてる…!バトル!「ブラックローズドラゴン」でダイレクトアタック!ブラックローズフレア!』

巨大な火球が翠に直撃する!

 

「きゃ…!」

翠LP3400→1000

 

 

『カードを2枚伏せてターンエンド!』

アキLP2700

ブラックローズ 伏せ2 手札2

 

 

 

「ふふっ…たまにはこういうデュエルも楽しいわねアキさん!とっても強くなってる!」

 

『ありがとうございます!』

 

「よ〜し…負けないわよー!」

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに墓地の『黄泉ガエル』の効果発動!自身を特殊召喚!」

白い羽と天使の輪の付いたカエルが現れる DEF100

 

「魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地の『ネフィリム』『ミドラーシュ』『ヘッジホッグ』『ハウンド』『ファルコン』をデッキに戻して2ドロー!…フィールド魔法『影牢の呪縛』を発動!」

フィールドの中心に蛇の装飾が施された杖が突き刺さる!

 

「さらに私は魔法カード『影依融合』を発動!手札の『メガロックドラゴン』と『ファルコン』を融合!影の翼よ!大地の力を受けて女王の玉座を呼び出さん!融合召喚!『エルシャドール・シェキナーガ』!」

アポクリフォートの玉座に座した女王が現れる ATK2600

 

「『影牢』の効果!シャドールモンスターがカード効果で墓地に送られた事で魔石カウンターを置くわ!そして『ファルコン』の効果で自身を裏守備で召喚!」

 

影牢 魔石カウンター0→1

 

「バトルよ!『シェキナーガ』で『ブラックローズドラゴン』を攻撃!」

 

『その瞬間!リバースカード『シンクロン・リフレクト』を発動!シンクロモンスターが攻撃対象になった時、その攻撃を無効にして相手モンスターを破壊します!『シェキナーガ』を破壊!』

 

「えぇっ!?」

シェキナーガの攻撃が弾かれ、ブラックローズの鞭がシェキナーガを破壊した!

 

「うまくやられちゃったわ…『シェキナーガ』の効果で墓地の『影依の源核』を手札に加えるわ!そして『影牢』に魔石カウンターを乗せる!…カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

影牢 魔石カウンター 1→2

 

翠LP1400

黄泉ガエル 裏ファルコン 影牢(2) 伏せ2 手札2

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「ブラックローズドラゴン」の効果発動!墓地の「ガードヘッジ」を除外して「黄泉ガエル」を攻撃表示に変更して攻撃力を0にする!ローズ・リストレクション!』

茨がカエルを締め上げて表示形式を変更する!

黄泉ガエル DEF100→ATK100→0

 

『バトル!「ブラックローズドラゴン」で「黄泉ガエル」を攻撃!ブラックローズフレア!』

 

「墓地の『超電磁タートル』の効果発動!このカードを除外してバトルフェイズを終了するわ!」

翠のフィールドに電磁バリアが展開し攻撃を防ぐ!

 

「でもこれで次は防げません!ターンエンド!」

アキLP2700

ブラックローズ 伏せ1 手札3

 

 

 

「ふぅ…!危ない危ない…!でもここからよ…シャドールの本領、見せてあげる!」

 

 

 

「私のターン…ドロー!」カンコーン☆

「勝利の方程式は全て揃ったわ!『シャドールファルコン』を反転召喚!」

再び鳥型の人形が現れる ATK600

 

「『ファルコン』のリバース効果発動!墓地の『ビースト』をセット!さらに『アイス・ハンド』を召喚!」

凍りついたマジックハンドが現れる ATK1400

 

「私はレベル1の『黄泉ガエル』とレベル4の『アイスハンド』にレベル2の『シャドールファルコン』をチューニング!」

 

4+1+2=7

 

「清廉なる花園に咲く孤高の花よ!月の雫を得て咲き誇れ!シンクロ召喚!『月華竜ブラックローズ』!」

花吹雪が舞い散り、聖なる光を纏う薔薇のドラゴンが現れる ATK2400

 

『「月華竜」…!という事は…!?』

 

「「月華竜」の効果発動!『ブラックローズドラゴン』を手札に戻してもらうわ!退華の叙事歌(ローズ・バラード)!」

薔薇の花吹雪がブラックローズドラゴンを吹き飛ばす!

 

「さらにリバース魔法『神の写し身との接触』を発動!手札の『ハウンド』と『ドラゴン』を融合!もう一度お願い!『エルシャドール・ミドラーシュ』!」

《まかせて〜!》

再びウィンダが現れる ATK2200

 

 

「バトルよ!『月華竜』でダイレクトアタック!薔薇の鎮魂歌(ローズ・レクイエム)!」

 

『まだ!リバース罠『漆黒の薔薇の開華(ブルーミング・ローズ)』を発動!翠さんの場にフィールド魔法がある事で「ローズ・トークン」を特殊召喚!くっ…!』

小さな黒薔薇が現れ焼き尽くされる DEF800

 

「『ミドラーシュ』でダイレクトアタック!」

《ストライク・エア!!》

濃密な空気の塊がアキに直撃する!

 

『きゃあっ…!』

アキLP2700→500

 

 

「そしてリバース罠『影依の源核(シャドー・ルーツ)』を発動!モンスター扱いで特殊召喚!」

龍頭のような髪を生やした核石が現れる ATK1450

 

『あっ…!』

 

「『源核』でダイレクトアタック!」

源核の一撃がアキのライフを削りきった…

 

 

アキLP0

 

翠WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「負けた〜!翠さん強すぎですよ〜!」

 

「あと一手足りなかったわね!でもテストに合格するならバッチリよ!お姉さん花マルあげちゃう!」

 

「ありがとうございます!」

デュエルが終わり2人は健闘を讃えあう…

 

 

「……」

 

「…アキさん、一息入れましょうか!コーヒーとジュースどっちがいい?」

 

 

 

 

 

プシュ!

 

「ふぅ…デュエルのあとのコーラは格別ね!」

 

「はい!」

2人はベンチに腰かけ、汗を拭きながら飲み物を流し込む…

 

「…アキさん、もしかして私にデュエル以外の事で相談があるんじゃないの?」

 

「…えっ…どうして…?」

 

「ふふっ…これでもデュエルアカデミアの寮母さんを10年やってたのよ?悩みがある子の事はなんとなくわかるの…話せるなら話してみて、力になるわ」

翠はアキに優しく話しかける…

 

 

「………実は…遊星の事なんです…」

 

「遊星君の?喧嘩でもしたの?」

 

「その…遊星の事を考えると胸が苦しくなるというか…ほわほわするというか…」

 

「うん、『恋』してるわね〜…」

 

「恋…!?いやっあの…その…!?」ぼふっ!

アキの顔が朱く染まりとり乱す…

 

「隠さないでも大丈夫よ、アキさんが遊星君と一緒にいる時の様子を見ればわかるわ…解決するのはアキさんと遊星君の想い次第かな?」

 

「うぅ〜…それはそうなんですけど〜…!」

思いの他核心をつく翠の言葉にアキは顔を隠す…

 

「急がなくても大丈夫、遊星君は『プロジェクト・フォーチュン』に掛かりきりになってるし、アキさんもまだ高校生だし…ゆっくり考えればいいのよ?」

 

「はい…それは自分でもわかってるんです、それで…その…参考までに翠さんと遊海さんの馴れ初めを聞けたらな…と…」

 

「私達の?」

アキの言葉に翠はキョトンとする

 

「遊海さんと翠さんはすごいおしどり夫婦だから…きっといい出会い方をしたんだろうな…と思って…」

アキはチーム5D's、そして遊海達と過ごす中で仲睦まじい2人の様子を見てきた…それを少しでも参考にできればと思ったのだ…。

 

 

「話してもいいけど…参考になるかはわからないわよ?私と遊海さんの出会いはとっても特殊だから…」

 

「教えてください…お願いします!」

アキは頭を下げる…

 

「…それじゃあ教えてあげる!私と遊海さんの出会いを…」

 

 

 

 

 

 

「まず知ってるとは思うけど…私と遊海さんは違う世界からの転生者…私と遊海さんの出会いは前世まで遡るわ…」

 

「えっ…!?前世からの知り合いだったんですか!?」

 

「そうなの…あれは私が5〜6歳、遊海さんが7〜8歳の頃の話よ…」

そして翠はアキへと在りし日の事を語る…たまたま公園で遊んでいた遊海と出会い『デュエルモンスターズ』を教えて貰った事、そして遊海が引っ越す事になり、1枚のカードを預かった事を…

 

 

「それがさっき使った『メガロックドラゴン』のカード…それから10年以上私達は会う事ができなかった…私は…どうしても遊海さんの事を忘れられなかった…」

 

「そんなに…」

 

「でも、そんなある日…私は死んでしまった、そしてこの世界に転生したの…私は絶望したわ…本当に遊海さんと会えなくなっちゃったって…」

 

「でも…逢えたんですよね?」

 

「うん、再会のしかたは最悪だったけどね…」

神の手で遊戯王世界に転生した翠…彼女を待ち受けていたのは当時、治安が最悪だった童実野町の不良達…そこで不安定だった翠は暴走、そこに駆けつけた遊海と命懸けのデュエルとなった…。

 

 

「私は遊海さんに助けられた…そして怪我をしてしまった遊海さんの足代わりとして初代バトルシティに参加したの…そこで初めてお互いが誰であるかがわかったの…」

 

「なんだかロマンチック…!」

アキは2人の再会に目を潤ませる…

 

「ふふっ、ありがとう!…そして私と遊海さんは色々な事を経験したわ、三幻神とのデュエル…世界を滅ぼそうとした秘密結社との戦い…盗まれた三邪神を取り戻して…エジプトで名もなきファラオの最期を見送って…死にかけたり、怪我したり…色々あったけど楽しい生活だったわ…」

翠は少し遠い目をしながら昔を懐かしむ…

 

 

「それで高校を卒業した遊海さんが新設されたデュエルアカデミアに就職して…私も高校を卒業してアカデミアに就職したの…その頃だったなぁ、遊海さんからプロポーズを受けたの…」

 

「えっ…!遊海さんがプロポーズしたんですか!?」

 

「そうなの!アカデミアの夕日が綺麗な場所でね…」

 

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

「わぁ…!ここがデュエルアカデミアなんだ…!大きい!!」

高校を卒業した翠は以前の約束通り、デュエルアカデミアへと採用された…時期は新学期前の夏休み、人の姿はまばらだった。

 

「お〜い!翠〜!」

 

「あっ…!遊海さん!!」

 

「おっと!?…遅くなってごめんな、よく来たな…」

校舎の前にいた翠に遊海が声をかける…翠はその声を聞いて遊海に抱きついた…。

 

 

「はい!これでずっと2人で一緒にいられますね!」

 

「ああ、とりあえずオシリス・レッドの寮に荷物を置きに行こう、そしたらアカデミアを案内するよ」

 

 

 

 

 

「ふぅ〜…アカデミアって広いんですね〜」

 

「ああ…もう次の場所で最後だよ」

アカデミアを一通り回った遊海達は森の中を進む…そして…

 

「よし…着いた!」

 

「わぁ…!綺麗な夕日!」

辿り着いたのは夕日の見える海辺だった…辺りは赤く染まり、潮騒の音が心地よい音色を奏でている…。

 

「俺がデュエル場とレッド寮の次に気にいってる場所なんだ…どうかな?」

 

「はい!私も大好きです!」

翠は綺麗な風景に目を輝かせる…

 

 

「…翠、こっちを向いてくれるか?」

 

「どうしたんです…えっ?」

遊海の声に夕日を背に振り返る翠…その足もとには片膝をつき、小さな箱を手に持った遊海の姿があった…。

 

「翠…俺はケジメを着けたいと思う…俺と、結婚してください」

遊海が箱を開く…そこには七色に輝く小さな宝石のあしらわれた指輪があった

 

「遊海、さん…」

 

「俺はこれからこの世界を救う為に…そしてお前を守る為に命を懸ける…俺と一緒に…俺の隣で俺を支えてほしい…!」

それは遊海の心からの…全てを振り絞った愛の言葉だった…。

 

「…答えは決まってますよ、遊海さん…ふつつか者ですが…よろしくお願いします!」

 

「ああ…ありがとう、翠」

 

そして2人は夕日をバックに口づけを交わした…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

「きゃ〜!!ロマンチックー!!」

 

「そ、そんなに大声出さないでアキさん!恥ずかしいから…」

2人の馴れ初めを聞いたアキは少しだけ翠をからかう…今度は翠の顔が朱く染まっていた…。

 

 

「…大丈夫よアキさん、私達だって一緒になれたんだから…焦る必要はないわ、ゆっくり考えてね」

 

「はい…ありがとうございます!話したらなんだか胸が軽くなりました!」

翠に恋の相談をしたアキの顔は晴れやかだった…。

 

 

 

 

「でもいいな〜…遊海さんみたいな人が旦那様だったら悩み事も少ないですよね…」

アキから見て遊海は完璧に近い人物に思えた、翠に気を使い、後輩である遊星達を導き、人々を守る…まさにヒーローのように見えた…。

 

「うん…でも、そうでもないのよ…」

 

「えっ…?」

アキの言葉を聞いた翠の顔が曇る…

 

「確かに遊海さんは強くて優しい人よ?その力でたくさんの人達を守ってきた…でもね、遊海さんが守る人の中には…()()()()()()()()()

 

「あっ…」

翠の言った事にアキは思い当たる事があった…遊海は誰よりも戦いの前線に立って闘ってきた、その分遊海は誰よりも傷を負い…誰よりも苦しんできたのだ…。

 

「私、怖いの…いつか遊海さんが戦いの中で…─」

 

「翠さん…」

アキには小さく呟いた翠の言葉が聞こえていた、翠の唯一の悩み…それは「遊海を失う事」だった。

 

 

「…翠さん、その…私には翠さんがどれくらい遊海さんを心配しているかはわかりません…でも、私なら…遊海さんに真正面からぶつかってみようと思います…あの時の遊星みたいに…」

アキの脳裏に浮かんだのはダークシグナーとの戦いの前…当時の心の拠り所であったディヴァインを失い、サイコパワーを暴走させた自身を真正面から相手にして心の闇から救いだしてくれた遊星の事だった。

 

 

「翠さんも真正面から遊海さんにぶつかってみたらどうですか?きっと…遊海さんなら翠さんの想いも受け止めてくれると思いますよ?」

 

「…そっか…その手があったか〜…そうよね、真正面からぶつかればよかったのよ…!ありがとうアキさん!解決する方法を思いついたわ!!よ〜し…頑張るぞー!!」

翠はアキの言葉を聞いて吹っ切れたのか…鼻息荒く立ち上がる!

 

「えっと…何をするつもりですか…?」

アキは不安げに翠に問いかける…

 

 

「それはもちろん…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

私とデュエルしてください!遊海さん!!

 

待て、いきなりどうした!?!?

 

 

 

 

 

To be continued…



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史上最大の夫婦喧嘩〜愛するが故に〜

時は少し遡る…

 

 

 

 

「よし…体調もだいぶ戻ったな…!」

遊海は身体の調子を確かめるように体を動かしていた…地道に行ってきた筋トレとストレッチによってようやく調子が戻ったのだ。

 

「翠はアキと会いに行ってるから少し遅くなりそうだな…久しぶりに料理でもするか」

 

《いい考えですね遊海!翠も喜ぶと思いますよ!》

 

「ああ!よし、さっそく買い物だ!」

 

………

 

 

「よし、これで夕食の材料は揃ったな…」

 

《ふむ…何を作るのだ?》

 

「鶏のモモ肉と玉ねぎを使った鶏のお好み焼き風だよ…父さんの得意料理だったんだ、ポン酢をかけて食べると美味しいんだよ、とりあえず下準備だけして翠が帰ってきたら焼こう!」

メガロックに見守られながら遊海は調理を進める…モモ肉と玉ねぎを刻み、卵に片栗粉を溶かして隠し味を少々…それだけの簡単な料理だ。

 

「炊飯器の予約を19時にセットして…よし!」ピッ!

調理を終えた遊海は時計を見る、時間は16時半…まだ余裕がありそうだ…。

 

「デザートも作っておくか…えっと、牛乳と寒天とバニラエッセンスと砂糖と…フルーツの缶詰…」

 

《あっ!牛乳寒天のアンニンドウフですね!》

 

「正解!牛乳に材料を混ぜて…軽く沸騰させて…寒天を溶かして…」

しばらくして牛乳寒天ができた。

 

 

 

「よし…少し休憩だな」

遊海はインスタントコーヒーを淹れてソファに腰かける。

 

《お疲れ様ですマスター、夕食が楽しみですね!》

 

「ああ、ここしばらく翠には大変な思いをさせちゃったからな…喜んでくれればいいけど…」

遊海は今までの事を思い返す…ゼロ・リバースの後遺症で病弱となり、ダークシグナーとの戦いやイリアステルとの戦いでの度重なる怪我…その度に自分を献身的に看病してくれた翠…遊海は翠に感謝してもしきれない程感謝していた…。

 

 

()()()と『フォーチュン』が完成して一段落したら旅行にでも行こうか?前にフレアと約束した祭り巡りもできてないし…」

 

《良さそうですね!前に言っていた牛追い祭りやチーズを転がす祭りに行ってみたいです!》

 

《世界一周旅行だな!お前達の休暇には丁度いいだろう!》

 

《然り、主達はよく頑張られた…次の戦いまで英気を養うべきでしょう》

 

「そうだな〜…、翠が帰ってきたら相談しよう!」

のんびりと精霊達とこれからの相談をする遊海…その顔はとても楽しそうだった…。

 

 

ガチャ バタン! パタパタ…

 

 

「おっ、噂をしたら影かな?おかえり!み─」

 

バタン!

 

「ただいま帰りました!早速ですけど私とデュエルしてください遊海さん!!」

 

「待て、いきなりどうした!?!?」

リビングに入るなりいきなりデュエルディスクを構えた翠に面喰らう遊海なのだった…。

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「落ち着くんだ翠、デュエルするのは構わないけど!とりあえず深呼吸、深呼吸だ…!」

遊海は鼻息荒くデュエルを挑んでくる翠を落ち着かせようとする…

 

「大丈夫です遊海さん!私はじゅ〜ぶん冷静ですから!」

 

「いや!全然冷静ではないでしょ!?(アヤカ!翠をサーチ!洗脳とか変なモノに憑かれてないか!?)」

 

《(……サーチ結果オールグリーン、興奮している以外は健康体です…本当に翠の意思でデュエルを挑んでいるようです…!)》

 

「(嘘だろ!?)」

翠のあまりの剣幕に遊海は以前のような洗脳を疑うが…当然ながら問題は見つからなかった。

 

 

 

「み、翠…突然にどうしたんだ?俺、なんか翠に怒られるような事したか…?」

遊海は翠を刺激しないように優しく問いかける…

 

「今日という今日は遊海さんに言いたい事があります!!…少しは自分の体を大切にしてください!!!」

 

「へっ…?」

翠の思わぬ言葉に遊海は目が点になる…

 

「いつもいつも怪我ばっかりして…!遊海さん自身が納得していても…私は辛いんです…!!貴方が神の炎に焼かれた時も…銃で撃たれたり、モンスターに殴られた時も!破壊神に身体を乗っ取られた時も!…ゼロ・リバースの時も……私は遊海さんを見て、看病する事しかできなかった…!!」

 

「翠…」

 

「たしかに私達は不死身の身体を持っています!…それでも…それでも、ラプラスは死んでしまったんです…!!」

 

「っ……」

翠の言葉に遊海は思い返す、未来の自分たるラプラス…彼はゾーンとのデュエルに敗北し、その命を散らした…それを見た翠は意識してしまったのだろう…愛する人の「死」を…

 

 

「私は貴方の妻です…!もう少し、私を頼ってください!遊海さん!!」

それが翠の本心だった、たしかに遊海は翠に頼る事もある…しかし、基本的に遊海は自分でどうにかしようとしてしまう…それが遊海の長所であり、短所だった。

 

 

「……翠、お前の言いたい事はよくわかった…たしかに俺はいろんな無理・無茶をしてきた…でも、それは必要な事だった…俺がいる事で起きたイレギュラーをなるべく無くす為に…」

遊海は自分がいる事で起きたイレギュラーな事態を自覚していた…バトルシティへの参加…記憶編でのNPC化、アカデミアに潜入した事での三幻魔とのデュエルやキース・アヌビスの乱入、魔神化…ダークシグナーに追加されたゾーク、そして介入してきた未来の自分…挙げればキリがないが…遊海はそれらを乗り越えてきた…自分が傷つく事を代償として…。

 

 

「でも、俺はこれからも戦い続ける…この世界を、なにより…お前を守る為に」

 

「…ですよね、遊海さんならそう言うと思ってました…!でも、遊海さんは忘れてます!いつも傷ついた貴方を見ている事しかできない私の悲しみを!!だからデュエルです!!私が勝ったら…もう、無茶はしないで…!!」

翠は涙目でデュエルディスクを構える…遊海を思うが故に遊海を守る為に彼女は剣を取る…!

 

「…それは翠のお願いでもできない相談だなぁ…わかった、お前が決闘で納得してくれるなら…この決闘を受けよう!」

遊海と翠は庭へと飛び出した…。

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

ドタバタ…ガチャ!!

 

「お邪魔します!!あっ…翠さん!?遊海さん!?やっぱりこうなってる…!」

 

《アキ殿…?どうしてこちらに?》

トフェニが家に駆け込んできたアキに問いかける…アキが目にしたのは庭で睨み合う遊海と翠の姿だった…。

 

「ご、ごめんなさい!私が翠さんに『悩みがあるなら遊海さんに正面からぶつかってみれば』って言ったら…『遊海さんとデュエルでぶつかる!』って飛び出しちゃって…!!」

 

《そういう事ですか…ウィンダ、ウェン…なぜ止めなかったのです?》

 

《ごめん…まったく聞く耳持ってくれなくて…》

 

《猪突猛進…》

申し訳なさそうにシャドール組が頭を下げる…

 

 

「どうしよう…まさかこんな事になるなんて…!?」

 

《落ち着いてくださいアキさん…とりあえず氷嚢を用意して貰えますか?》

 

「えっ…?」

アキはアヤカの言葉に首を傾げる。

 

《…おそらく()()で勝負が決まります》

 

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

翠LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『手札からスケール5の「智天の神星龍」とスケール1の「宝竜星─セフィラフウシ」をセッティング!』

翠の両隣に光の柱が立ち上る!

 

『さらに魔法カード「揺れる眼差し」を発動!Pゾーンの2枚を破壊!効果で遊海さんに500ダメージを与えてデッキから「秘竜星─セフィラシウゴ」を手札に加えます!!』

 

「ぐぅっ…!?」

雷撃が光柱を破壊し、遊海にダメージを与える!

 

遊海LP4000→3500

 

 

『さらに私はフィールド魔法「セフィラの神託」を発動!効果処理としてデッキの「オルシャドール─セフィラルーツ」を手札に加えます!そしてスケール1の「剣聖の影霊衣(ネクロス)─セフィラセイバー」とスケール7の「覚星輝士(アステラナイト)─セフィラビュート」をセッティング!』

再び翠の両隣に光の柱が現れる!

 

『私は「セフィラセイバー」と「セフィラビュート」でペンデュラムスケールをセッティング!神樹の加護よ!私に力を貸して!ペンデュラム召喚!手札から「セフィラルーツ」!「セフィラシウゴ」!エクストラデッキから「セフィラフウシ」!!』

それぞれに黒と青の宝玉を持ったドラゴン達と虹色のコアを持つ聖邪の力を宿す戦士が現れる DEF2600 DEF0 DEF1950

 

 

『ペンデュラム召喚に成功した事で「セフィラシウゴ」の効果発動!デッキの「セフィラの神意」を手札に加えて効果発動!デッキの「竜星因士(イーサテライト)─セフィラツバーン」を手札に加えます!そしてフィールドの3体のモンスターをリリース!エクストラデッキから現れて!「智天の神星龍(セフィラ・トーラ・グラマトン)」!』

《グオオォン!!》

聖邪の力を宿せし救星の龍が咆哮を轟かせる! ATK3450

『「神星龍」の効果で私はもう1度ペンデュラム召喚ができる!ペンデュラム召喚!もう一度お願い!「セフィラルーツ」!「セフィラシウゴ」!「セフィラフウシ」!「セフィラツバーン」!』

先ほど現れた3体のモンスターと竜の鎧を纏う赤いコアの戦士が現れる DEF1950 DEF2600 DEF0 DEF2100

 

 

『「セフィラフウシ」の効果発動!自身をチューナーにします!そしてレベル6の「セフィラシウゴ」にレベル3の「セフィラフウシ」をチューニング!』

 

6+3=9

 

『星に選ばれし龍達よ!今こそその力を開放せよ!シンクロ召喚!「幻竜星─チョウホウ」!』

神々しい鳥の頭を持った鳳凰のような龍が現れる ATK 2900

 

 

『シンクロ素材となった「セフィラフウシ」は自身の効果でデッキの一番下に戻ります…そしてフィールド魔法「セフィラの神託」の効果発動!シンクロ召喚に成功した事で「セフィラフウシ」をデッキトップに!さらにレベル4の「セフィラルーツ」と「セフィラツバーン」でオーバーレイ!』

2体のモンスターが銀河に飛び込む!

 

『2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!闇に冒されし英雄よ…永き眠りから目覚め、輝動せよ!エクシーズ召喚!「暗遷士カンガルゴーム」!』

瘴気を纏い狂気に侵された金剛石の英雄が現れる ATK2450

 

 

『私はこれでターンエンド!』

翠LP4000

神星龍 チョウホウ カンガルゴーム  Pスケールセフィラセイバー セフィラビュート セフィラの神託 手札0

 

 

 

 

「こ、これが翠さんの本気…!?」

アキは翠のフィールドを見て絶句する…翠のフィールドにはペンデュラムを駆使して並べられた高攻撃力モンスターが遊海を見下ろしている…!

 

「いくら遊海さんでもこの状況じゃ…!?」

 

《アキさん…これから起きる事は他言無用でお願いします…》

 

「えっ?」

アヤカはデュエルを見つめながら、アキにお願いをする…

 

《それからどうかマスターを軽蔑しないでください…マスターは意外に不器用ですから…本気で翠を倒すでしょう…自分の信念を曲げない為に…》

 

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー!!」

「『魔境のパラディオン』を召喚!」

 

『え"っ』

大きな杖を持った小柄な魔導師が現れる ATK400

 

 

「…?翠さん、なんであんなに慌ててるの…?」

現れたモンスターを見て動揺する翠を見てアキは首を傾げる…

 

《見ていればわかります…(-_-)》

 

 

 

「現れろ!光のサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はパラディオンモンスター1体!俺は『魔境』でリンク召喚!現われろ!『マギアス・パラディオン』!」

赤い鎧を纏う魔術師が現れる ATK100↓

 

 

「リンク…モンスター…?異世界のデュエルモンスター?」

 

『あわわ…遊海さん!それは大人げないんじゃないですか〜!?』

 

「問答無用!!翠に譲れない想いがあるように…俺にも曲げられない思いがある!『マギアス』のリンク先に『神樹のパラディオン』を守備表示で特殊召喚!」

緑の髪のエルフが現れる DEF1800

 

「リンク先にモンスターが特殊召喚された事で『マギアス』の効果発動!デッキから『星辰のパラディオン』を手札に加える!さらにリンク1の『マギアス』と『神樹』でリンク召喚!現れろ!『レグレクス・パラディオン』!」

炎の鬣を持つ白き獅子が現れる ATK1000↕

 

 

「さらにリンク先に『星辰のパラディオン』を特殊召喚!」

優しい顔をした青いドラゴンが現れる DEF2000

 

「さらに俺はリンク2の『レグレクス』と『星辰』でリンク召喚!現われろ!戦いを乗り越えし絆の勇者!『アークロード・パラディオン』!!」

人馬一体となった聖騎士が現れる ATK2000↙↑↘

 

「さらに手札から『天穹のパラディオン』と『百獣のパラディオン』を特殊召喚!」

輝く鎧を纏う戦士と雄々しき黒獅子が現れる DEF1000 DEF1600

 

 

□□□□□

□暗神チ□

 □ ア

□□天□百

□□□□□

 

 

 

「『アークロード』の攻撃力はリンク先のモンスターの攻撃力の合計分アップする!よって攻撃力は…」

 

アークロードATK2000→7700

 

 

「攻撃力7700!?(待って…この強さなら『究極時械神セフィロン』を倒せるんじゃ…!?)」

アキは遊海の召喚した勇者の強さに驚愕した…ともすればチーム5D'sの絆でようやく倒した神を倒せるのではないかと思う程に…

 

「バトル!『アークロードパラディオン』で『智天の神星龍』を攻撃!ボンド・オブ・パラディオンスラッシュ!!」

絆の力を束ねた光の斬撃が救星の龍を飲み込んだ…。

 

『みゃぁぁぁ〜!?』

 

 

翠LP0

 

遊海WIN

 

 

 

 

 

 

 

「きゅうう〜…」

 

「おっと…!あぶないあぶない…」

あまりのダメージに目を回して倒れ込んだ翠を遊海が受け止める…

 

「ごめんな翠…お前が俺を心配してくれてるのはよくわかった…少し頭を冷やしてもう一度話し合おう…」

翠を横抱き…お姫様抱っこした遊海は家へと戻る…。

 

 

 

「ん…来てたのか、アキ」

 

「えっと…お邪魔してます…あの、コレ…」

 

「おっ、氷枕か…ありがとう」

遊海は今更ながらアキが来ていた事に気づく…遊海はアキから氷枕を受け取るとソファに翠を優しく寝かせた。

 

 

「…すごい、デュエルでしたね…まさか1ターンキルなんて…」

 

「驚かせて悪かったな…強かっただろ?ゾーンを倒せそうなくらいに…」

 

「…はい…」

アキは遊海の言葉に頷く…しかし、何も言葉を続けられなかった…遊海がとても寂しそうな顔をしていたから…。

 

 

「アキ…俺はな『欲張り』なんだ…」

 

「えっ…?」

アキは遊海の言葉を疑問に思った…遊海はマーサハウスや他の施設を支援し、さらにはヒーローとしてたくさんの人々を守り助けてきた…その遊海の何処が欲張りなのだろうと…

 

「俺は、みんなに笑っていてほしい…どんなに辛い事があっても、俺が護る…例え、俺がどんなに傷つこうと…みんなを守れればそれでいいと思ってた…だけど…」

遊海は拳を強く握り締める…

 

「だけど…一番身近な人を泣かせちゃ、ダメだよなぁ……」

 

「遊海さん…」

その時、アキは初めて遊海の『素顔』を見たような気がした、気絶した翠の頭を撫でながら一筋の涙を流す遊海の姿を……無双の英雄の「弱さ」を…

 

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

「うぅ…ん…?」

意識を失っていた翠が目を覚ます…そして、辺りに香ばしい香りが広がっている事に気づく…

 

 

「おっ…目が覚めたな翠、夕ご飯できてるよ!今日は俺特製の鳥のお好み焼き風だ!」

 

「ゆうみ、さん……?わたし…?」

 

「まだ寝ぼけてるな…?1回顔洗ってきなよ、スッキリするから…」

 

「うん…」

翠はよろよろと顔を洗いに行った…。

 

 

 

「…私…あっ…!?」

顔を洗い、静かに鏡を見つめる翠…その脳裏に今日1日の事がフラッシュバックする…アキとデュエルして相談に乗ったあとに空回りして遊海にデュエルを挑んだ事を…。

 

「ど、どうしたのかしら私…なんであんな事…!?」

冷静さを取り戻した翠の顔が羞恥心で真っ赤に染まる…。

 

《大丈夫だよ翠、遊海は怒ってないよ…》

 

《うん!遊海兄もやり過ぎたって反省してるから…きっとストレスが溜まってたんだよ…》

翠を慰めるようにウィンダとウェンが現れる

 

「あう〜…やっちゃった…本当に辛いのは遊海さんの方なのに〜…!」

翠は自己嫌悪になり頭を抱える…

 

「翠〜ご飯冷めちゃうぞー!」

 

「は、は〜い…!」

遊海の声で我に返った翠はリビングへと向かった…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました〜…」

 

「うん、さぁ食べようか!」

翠がリビングに戻ると机の上には少し大きな白いお好み焼きとサラダとご飯がセッティングされていた。

 

 

「……翠、さっきはごめん…やり過ぎた」

 

「あっ…私もごめんなさい…!少しストレスが溜まってたみたいで…」

先に頭を下げたのは遊海だった、翠も続いて頭を下げる…。

 

 

「翠、俺はこれからも無理や無茶をする…でも、約束する!無謀な事はしないし、必ず帰ってくる…だから頼む、これからも俺の事を支えてくれないか?」

 

「…はい!わかりました!でも、少しは私の事も頼ってくださいね!」

 

「ああ、ありがとう…さぁ、冷める前に食べよう!ポン酢とマヨネーズをかけると美味しいよ!」

 

「はい!いただきま〜す!」

そうして2人は夕食を食べ始めた…幸せの味を噛みしめるように…。

 

 

 

 

 

「そうだ翠、今度なんだけど…実は…」

 

「え、えぇ〜!?」

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

「あった…これだな」

 

夫婦喧嘩(?)の翌日、遊海の姿はシティのとある神社にあった…その目の前には小さな地蔵が表通りを通る人々を見守っている。

その地蔵は誰が呼んだか『デュエル地蔵』…カードを供えて祈れば欲しいカードが手に入るという都市伝説のあるお地蔵さんだ。

 

「……」パンパン!

遊海は柏手を打って祈りを捧げる…そしてその視界は光に包まれた…。

 

 

 

『よくきたの遊海、しばらくぶりじゃ』

 

「お久しぶりです神様、少し相談があって来ました…!」

遊海が目を開けるとそこは一面の白い世界、そして髭を蓄えた神様の姿があった…。

 

 

 

『まずは茶でも飲みなさい、話はそれからじゃ』

 

『はい!どうぞ!』

 

「ありがとうございます、女神様」

遊海は神様の出したテーブルセットに座り、お茶を飲む…

 

 

『まずは遊海…5D'sの物語をよくぞ乗り越えた、満足に力を使えない中で冥界の邪神を倒し…平行未来世界からやってきた自分を倒し、物語をハッピーエンドに導いた…見事だった』

 

「…やっぱり知っていたんですね、ラプラスが未来の俺である事を…」

 

『そうじゃ…19年前の時点でワシはあやつの正体を見抜いておった…神様じゃからの』ズズッ…

神様はそう言ってお茶を啜る

 

「…ありがとうございます、俺達の事を思って言わないでいてくれたんですよね?」

 

『まさか礼を言われるとはの…恨み言の1つ位言われると思っておったが…』

 

「もし、あの時点で俺がラプラスの正体を知っていたら…俺は奴を倒せなかった…そう思います」

 

『そうじゃの…お主達は優し過ぎる、あの時に真実を伝えていれば…お主はラプラスを倒したとしても見逃し…ダークネスの復活が早まっていた…そこに奴の仕組んだゼロ・リバースが重なれば……世界は滅びていただろう』

神は無情な真実を告げる…遊海の選んだ道…それが正解だったと慰めるように…。

 

 

『ワシらは基本的には地上に干渉できん…できてお主達の周りの事だけと決められておる…辛い思いをさせてすまなかった』

神は遊海に頭を下げる…それほどまでに遊海に辛い人生を歩ませてしまったと思ったのだ。

 

「俺なんかに頭を下げないでください神様…たしかに辛い時間でしたが…世界を救う事ができました…それで充分です」

 

『成長したの…遊海』

神は遊海を見つめる…その目は孫を見る祖父のように優しげだった…。

 

 

「ただ、1つだけ教えてください…死んでしまったラプラスと…もう1人の翠の魂はどうなりましたか…?」

 

『…わからん、おそらくは他の人間達と同じく遊戯王世界の輪廻の輪に向かったはずじゃ…既にワシらの管轄からは外れておるから確かな事は言えんが…』

 

「そうですか…わかりました」

遊海は残念そうに顔を伏せた…。

 

 

 

 

 

『そういえば相談があるんだったの?どうしたんじゃ?』

 

「ああ、そうでした…実はこれからの戦いに備えて自分のステータスを確認したくて…あればですけど」

 

『ステータス?そりゃまたどうして…』

神は遊海の言葉に問いかける

 

「いや…この30年近く生きてきて…どうも怪我をしやすいような気がして…」

それが遊海が神様のもとを訪ねた理由だった、遊海の転生人生は怪我との戦いと言っても過言ではない…闇のデュエルをする度に怪我を負っていては身体が保たない…そう思ったのだ。

 

『ふむ…たしかにおかしいのぅ…少し待っていなさい、えっと…神文字はお主には読めんから…見やすいように直して…』

神は遊海の人生の記録簿を取り出して手元を弄る…

 

『よし、変換完了じゃ…お主の目の前に映すぞ、おまけに翠の分もじゃ』

 

「ありがとうございます!」

神の声と共にステータス情報が開示される…

 

 

──────────────────────

 

 

白波遊海 転生決闘者 善・中立

 

筋力A+ 耐久EX 敏捷B+ 魔力EX  幸運A+ 

 

 

 

白波翠 転生決闘者 善・混沌

 

筋力B+ 耐久A- 敏捷B 魔力A 幸運B+

 

 

──────────────────────

 

 

 

「うへっ!?(なんだこの高ステータス!?某聖杯戦争に呼ばれたら最強レベルじゃん!?)」

遊海は開示されたステータスに変な声が出てしまう…

 

『すごいじゃろう?お主達が遊戯王世界に適応できるように最善を尽くした…はずじゃが…』

 

「う〜ん…『耐久EX』…?」ポチッ

遊海は自身の耐久の項目を確認する…

 

 

──────────────────────

耐久:EX

 

どんな状態でもデュエル中であれば決闘を続ける事ができる、精神性と肉体の耐久力の合計数値。

…ただし、肉体自身の耐久ランクはC--である…恐ろしきは白波遊海の精神力の強さ、例え何度傷付こうと彼は世界を救う為に止まる事はない。

 

──────────────────────

 

「………神様?」

 

『………うん、間違えてたみたい…(汗)』

 

ちょっとぉ〜!?

 

遊海の叫びが神の世界に響き渡った…

 

 

──────────────────────

 

白波遊海 転生決闘者 善・中立

 

筋力A+ 耐久B+(EX) 敏捷B+ 魔力EX  幸運A+

 

──────────────────────

 

 

『ホッホッホッ…これで心置きなく戦えるの!』

 

「(ジト目)」

 

『(ラプラスの件より怒っとる…よほど昨日の夫婦喧嘩が効いたらしい…)』

ステータスの修正を終えたものの遊海の機嫌は最悪だった…それはそうだろう、自身の怪我のしやすさが神の設定ミスだったと知れば無理もない…。

 

 

『また何かあったら来るといい…いつでも待っておるよ!さらばじゃ!』

 

「ありがとうございました」

 

遊海の視界は再び光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

「……まったく…とことん、おっちょこちょいな神様だな…」

遊海はデュエル地蔵の前に戻る…既に日は西に傾いていた…。

 

《おかえりなさいマスター!…なんだか覇気が増したような?》

 

「ああ、もう戦う事に憂いはないよ…これで翠に心配をかけなくて済む…さぁ、帰ろうか!」

 

《はい!》

遊海はアヤカと共に家路に着く…1通の招待状を手にしながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「遊星!いるか!!」

「ん?ジャック!久しぶりじゃないか!?何処に行っていたんだ!?」
とある休日…ガレージで久々にデッキの調整をしていた遊星のもとにジャックが現れる…

「フン、武者修行だ!…それどころではない!!これを見ろ!!」
ジャックは1通の封筒を遊星に見せる…

「封筒?それがどうし……なにっ!?」
遊星もその文面を見た瞬間、驚愕する…!

「お〜い!遊せ…ジャックもいるじゃねぇか!丁度いいぜ!イェーガーからこんなの渡されたんだ!遊星の分もあるぜ!」
クロウが2通の封筒を持って現れる…、その文面にはこのように書かれていた…。


………

招待状


不動遊星殿

さる○月■日、ネオドミノシティの復興を祝うエキシビジョンデュエルを開催する事となった。
お前達が戦う相手は歴戦の決闘者達…チーム5D's、お前達はこの壁を乗り越える事ができるか?
真の最強の称号が欲しくば…かかってくるがいい!


海馬コーポレーション社長 海馬瀬人


………


「海馬社長直々の招待か…これは断るわけにはいかないな…!」

「最強の称号が欲しいならかかってこい…か、いいだろう!乗ってやる!!」

「ああ…!燃えてきたぜ!!チーム5D'sの強さ…見せてやろうぜ!!」


「「「おう!!」」」


遊星達は拳を合わせる…再びチーム5D'sの戦いが始まる…!


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エキシビジョンデュエル!〜黒翼と正義の味方〜

こんにちは!S,Kです!
今回から『エキシビジョンデュエル編』がスタート!
遊星達を待ち受ける相手とは…?


それでは最新話をどうぞ!


『レディース&ジェントルメ〜ン!!大変長らくお待たせいたしましたぁ!!ただいまよりネオドミノシティ復興記念エキシビジョンデュエルを開会いたします!!』

 

「「「うおぉぉぉ!!!」」」

 

 

スタジアムにMCの声と観客の歓声が響く…アーククレイドル事件から半年…ようやく復興を遂げたネオドミノシティを盛り上げる為に企画されたエキシビジョンデュエル大会が幕を上げる!

 

 

『それではまずエキシビジョンデュエルの前に…延期となっていたWRGPの優勝セレモニーを行うぞ!さぁ…大きな拍手で彼らを迎えて欲しい!ネオドミノシティを、世界を救った英雄!チーム5D's〜!!』

 

「「「わあぁぁぁ!!」」」

 

 

 

「すごい人の数だ…!ネオドミノシティの人々だけじゃない…参加した他のチーム達もみんな招待されているのか…!」

 

「フン、チーム太陽やチームラグナロク、チームユニコーンの奴らもいるではないか、よほど暇らしいな…」

 

「そう言うなよジャック!オレ達はこの街を守ったヒーローなんだぜ?あいつらも興味があるんだよ」

たくさんの歓声を受けながら5D'sのメンバーが入場する…遊星・ジャック・クロウの3人組は余裕を見せているが…。

 

 

「すごい人数ね…私、こんな所にいていいのかしら…?」

 

「大丈夫だよ!アキ姉ちゃん!おれ達も5D'sの仲間なんだからさ!いぇ〜い!!」

 

「ちょっと龍亞!あんまり調子に乗らないでよ!?」

 

「いいんだよ龍可、せっかくの晴れ舞台だ…たまには騒ぐのも悪くないさ!」

人の数に圧倒されるアキに元気に手を振る龍亞、それを注意する龍可とそれを見守るメタルナイト…そして…

 

「いいのかな…ボクまで…?」

 

「ああ、お前もオレ達の仲間だ!行こう、ブルーノ!」

 

「…うん!!」

 

 

 

 

『それでは大会主催者である治安維持局長官・イェーガー氏からのトロフィーの授与となります!』

 

 

『チーム5D's、そして不動遊星…表彰式が遅くなってしまい、まことに申し訳ありませんでした…今こそWRGPの覇者の証であるトロフィーを授与します!これからの活躍を楽しみにしていますよ!』

 

「ああ、ありがとう、オレは…オレ達は未来を託された…オレ達はデュエルを通じて世界を変えてみせる!!」

遊星はトロフィーを受け取り、高く掲げる!

 

「「「わああぁぁ!!!」」」

それに呼応して再び歓声がスタジアムを包む…この瞬間、遊星達は全ライティングチームのトップに立ったのだ…!

 

 

 

『おめでとう!チーム5D's!それじゃあ早速その力を見せてくれ!!本日のメインイベント!エキシビジョンデュエルの開幕だぁ!!今回戦ってもらう決闘者は…この3人だ!!』

 

 

バシュゥゥ─!!

 

『…』

 

『…』

 

『…』

 

 

「黒いローブの決闘者…!?」

遊星達の反対側から白い煙と共にローブを纏った3人の決闘者が現れる…!

 

『5D'sの前に現れたのは謎の決闘者達!その正体は私も伝えられていません!!しかし、その強さは折り紙付きとの事…!!さぁ、チーム5D's!最初の対戦者は…!!』

 

「もちろん…オレだ!一番槍は頂くぜ!!」

クロウが前に歩み出る!

 

『おっと!チーム5D's!最初の対戦者は鉄砲玉のクロウ・ホーガン!!さぁ…謎の決闘者チームは…!』

 

 

 

『オレが行きます…いいですよね?』

 

『うむ…行ってこい』

 

『頼んだよ!』

 

『よっしゃ!行くぜ〜!!』シュダ!

黒ローブの1人が飛び上がる!

 

 

『おっと〜!?ローブの決闘者が大きく跳躍!その正体は…!?』

 

バサッ!クルクル…ダン!!

 

跳躍した黒ローブの男は空中でローブを投げ捨て宙返りをしながら着地する!

 

 

 

 

 

 

 

 

『一番手は…このオレだ!楽しいデュエルにしようぜ?』

 

 

 

「なっ…!?」

 

『なんとぉ!?1人目の決闘者は…最強のヒーロー使い!遊城十代選手だ〜!!』

 

「十代さん!?」

 

「「「うおぉぉぉ!!?」」」

スタジアムが歓声に包まれ、遊星は驚愕する…世界を旅するHERO使いにして、世界を救いし覇王…それがクロウの相手だった。

 

 

 

『久しぶりだなチーム5D's!この街を守ったデュエリストの力、見せてくれよ!』

 

「おいおい…!?いきなりすごい人が相手じゃねぇか…!やべぇデュエルになりそうだ!」

 

デュエルコートで十代とクロウが視線をぶつけ合う…

 

『さぁ!会場の盛り上がりも最高潮!ついにデュエルの開幕だ!!』

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

クロウLP4000

十代LP4000

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「永続魔法『黒い旋風』を発動!そして『BF-蒼炎のシュラ』を召喚!」

青毛の羽を持つ鳥人が現れる ATK1800

 

 

「永続魔法『黒い旋風』の効果発動!自分の場にBFモンスターが召喚された時!その攻撃力以下のモンスターを手札に加える!オレはデッキから攻撃力1700の『BF-黒槍のブラスト』を手札に加え、さらに!自身の効果で特殊召喚!」

黒き槍を構えた鳥人が現れる ATK1700

 

「さらに自身の効果で『BF-疾風のゲイル』を特殊召喚!」

黄色のくちばしを持つ鳥人が現れる ATK1300

 

 

「オレはレベル4の『ブラスト』にレベル3の『ゲイル』をチューニング!」

 

4+3=7

 

「黒き旋風よ!天空へ駆け上がる翼となれ!シンクロ召喚!来い!『BF-アーマード・ウィング』!!」

黒き鎧を纏った鳥人が現れる ATK2500

 

「『アーマードウィング』は戦闘では破壊されず、受けるダメージも0になる!カードを伏せてターンエンド!」

クロウLP4000

アーマードウィング シュラ 黒い旋風 伏せ1 手札2

 

 

 

 

『お〜っと!!クロウが得意とする速攻が炸裂!フィールドを固めたぞぉ!!』

 

 

『おぉ!1ターンでここまで展開するのか!』

 

「へへっ!これがBFの連携の力だ!全力でいかせてもらうぜ!!」

 

『モンスターの連携か…それならオレも負けてられないぜ!な?』

 

《ああ十代、あの小僧の鼻っ柱を折ってやろうか…!》

 

「(なんか見えたぞ!?)」

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『魔法カード「テイク・オーバー5」を発動!デッキトップから5枚を墓地に送る!』

 

墓地送り

N・グランモール

NEX

ネクロダークマン

クロスポーター

R─ライトジャスティス

 

 

『よし!墓地に送られた「クロス・ポーター」の効果発動!デッキから「N・フレア・スカラベ」を手札に加えるぜ!そして「ネオスペース・コネクター」を召喚!』

小柄な宇宙人が現れる ATK800

 

『「ネオスペースコネクター」が召喚に成功した時!デッキから「E・HEROネオス」を守備表示で特殊召喚!』

宇宙の彼方からやってきた白きヒーローが現れる DEF2000

 

『さらに!「ネオスペースコネクター」をリリースする事で墓地の「N・グランモール」を守備表示で特殊召喚!』

ドリルの肩当てを着けたモグラの獣人が現れる DEF300

 

 

『いくぜ!オレは「グランモール」と「ネオス」をデッキに戻す事でコンタクト融合!来い!!「E・HEROグランネオス」!』

ネオスとグランモールが銀河に飛び込み融合…重厚な鎧と右腕に巨大なドリルを装備した戦士が現れる ATK2500

 

 

「『融合』を使わない融合召喚…!だけど、『アーマードウィング』と攻撃力は同じだぜ?」

 

『そう焦るなって!ネオスにはこのフィールドは狭すぎる!フィールド魔法「ネオスペース」発動!』

フィールドが虹色の宇宙に変化する!

 

『この宇宙はネオスのホームグラウンド!「ネオス」と融合素材に『ネオス』を含む融合モンスターの攻撃力は500アップする!』

 

「なにっ!?」

ネオスが宇宙に飛び出しその力を得る! ATK2500→3000

 

『そして「グランネオス」の効果発動!1ターンに一度、相手フィールドのモンスター1体を手札に戻す!「アーマードウィング」には退場してもらうぜ?ネビュラス・ホール!!』

 

「しまった!?」

アーマードウィングがクロウのエクストラデッキに送還される!

 

『バトルだ!「グランネオス」で「蒼炎のシュラ」を攻撃!グラン・ブレイク!』

グランネオスがドリルでシュラを粉砕する!

 

「ぐうっ…!?これが伝説の決闘者の実力か…!」

クロウLP4000→2700

 

 

『オレはカードを2枚伏せてターンエンドだ!エンドフェイズに「グランネオス」はエクストラデッキに戻る効果があるけど…「ネオスペース」がある時、その効果を発動しなくてよくなるぜ!』

十代LP4000

グランネオス ネオスペース 伏せ2 手札2

 

 

 

『十代選手クロウの布陣を難なく突破!その強さを見せつけたぞ〜!!さぁ、クロウは伝説のデュエリストを相手にどう立ち回るのか〜!?』

 

 

 

「強ぇ…!こんなにあっさり突破されるとはな…!」

 

『ありがとよ!さて、ここからどうするクロウ?お前には負けられない理由があるんだろ?』

十代が観客席を指し示す…そこには…

 

 

「クロウ兄ちゃん!頑張れ〜!!」

 

「十代もかっこいいけど…負けないで〜!!」

クロウを応援するたくさんの子供達が声を張り上げている…

 

 

『先生から聞いてるぜ?ずいぶん慕われてるな!子供達のヒーロー?』

 

「ああ…オレはあいつらの希望だ!行くぜ十代さん!オレの力を見せてやる!!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「自分の場にモンスターがいない時『BF-暁のシロッコ』はリリース無しで召喚できる!」

大柄な鳥人が現れる ATK2000

 

「そして『黒い旋風』の効果発動!デッキから攻撃力1100の『BF-そよ風のブリーズ』を手札に加える!そして『ブリーズ』はカード効果で手札に加えられた時に特殊召喚できる!」

オレンジ色の翼を持つ鳥人が現れる ATK1100

 

「さらに魔法カード『スワローズ・ネスト』を発動!レベル3の『そよ風のブリーズ』をリリースして同じレベルの鳥獣族モンスターを特殊召喚する!来い!『BF-隠れ蓑のスチーム』!」

背中に布袋を背負った鳥人が現れる ATK800

 

「オレはレベル5の『シロッコ』にレベル3の『スチーム』をチューニング!!」

 

5+3=8

 

「黒き疾風よ…秘めたる思いをその翼に現出せよ!!シンクロ召喚!舞い上がれ!『ブラック・フェザー・ドラゴン』!」

クロウの思いを乗せて黒きドラゴンが舞い上がる! ATK2800

 

 

『そいつがお前のエースか!かっこいいドラゴンだな!』

 

「ありがとよ!こいつの強さを見せてやるぜ!オレは手札から魔法カード『アゲインスト・ウィンド』を発動!墓地の『疾風のゲイル』を手札に加える!その代わり、オレは『ゲイル』の攻撃力分1300のダメージを受ける…だが、『ブラックフェザードラゴン』の効果発動!ダメージ・ドレイン!」

クロウに『アゲインストウィンドウ』から放たれた突風が放たれるが…ブラックフェザードラゴンが突風を吸収しその翼を黒く染める!

 

BFD ATK2800→2100

 

 

『効果ダメージを吸収した!?』

 

「これが『ブラックフェザードラゴン』の効果だ!自分が効果ダメージを受ける時、黒羽カウンターを乗せて自身の攻撃力を700下げる事で効果ダメージを無効にする!そしてさらなる効果発動!黒羽カウンターを取り除き攻撃力を元に戻す事で相手モンスターの攻撃力を700ポイントダウンさせ相手ライフに700ダメージを与える!ブラック・バースト!!」

《ガガァァ!!》

 

『なんだって!うおぉぉ!?』

ブラックフェザードラゴンが痛みを糧に黒雷を解き放つ…その雷はグランネオスの力を削ぎ、十代にダメージを与える!!

 

BFD ATK2100→2800

 

グランネオス ATK3000→2300

 

十代LP4000→3300

 

 

 

「バトルだ!『ブラックフェザードラゴン』で『グランネオス』を攻撃!」

 

『させるか!速攻魔法「コンタクト・アウト」発動!「グランネオス」をエクストラデッキに戻してデッキの「ネオス」と「グランモール」を特殊召喚!』

攻撃を前にコンタクト融合が解除され白き戦士とモグラが現れる  ATK2500→3000  DEF300

 

 

「っ…!なら『グランモール』を…!」

 

『「グランモール」はバトルする時、自分と相手を手札に戻す効果があるぜ?どうする?』

 

「なっ…!?クソ…!ターンエンドだ!」

クロウLP2700 ブラックフェザードラゴン  黒い旋風 伏せ1 手札0

 

 

 

『おっと!?クロウは十代選手に一矢報いたものの攻撃を躱されたぁ!!強い!強すぎる!!』

 

 

「惜しい〜!!もう少しで『ネオス』を倒せたのに!!」

 

「このままじゃクロウが負けちゃう…!」

追い詰められたクロウを見た双子は顔を見合わせる…

 

「案ずるなお前達!クロウはただでは負けん!必ず策はあるはずだ!」

 

 

「(クソ…これが一流のデュエリストの力か…!だが、伏せカードは『BF-バック・フラッシュ』…!ダイレクトアタックを躱して…このターンを凌ぐ…!!)」

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『墓地の「テイク・オーバー5」の効果発動!デッキの同名カードと一緒に除外して1ドロー!…「N・フレア・スカラベ」を召喚!』

黒き外殻を持つ昆虫人が現れる ATK500→900

 

『「フレアスカラベ」の攻撃力は相手フィールドの魔法・罠の枚数1枚につき400アップする!そしてオレはカードを1枚伏せ、「ネオス」「グランモール」「フレアスカラベ」の3体でトリプルコンタクト融合!!』

 

「なに!?3体で融合!?」

3体のモンスターが銀河に飛び込む!

 

『3つの力が1つとなった時!はるか宇宙の彼方から、熱き戦士を呼び覚ます!トリプルコンタクト融合!現われろ!星の血潮の戦士「E・HERO マグマ・ネオス」!』

黒き羽と鋭い爪を持つマグマの戦士が現れる! ATK3000→3500

 

「攻撃力3500…!」

 

『さらに「マグマネオス」の攻撃力はフィールドのカード1枚につき攻撃力が400アップする!フィールドのカードは7枚!』

 

ATK3500→6300

 

「マジかよ…!?(真正面から…ライフを上回ってきやがった!?)」

 

『バトル!「マグマネオス」で「ブラックフェザードラゴン」を攻撃!スーパーヒートメテオ!』

《ハアアッ!!》

マグマネオスが特大の火球を作り出す!!

 

「チッ…!世界の壁はまだ高けぇな!!迎え撃て!ノーブル・ストリーム!!」

《ガガァァ!!》

 

特大の火球と黒炎が衝突…黒炎は火球に飲み込まれ、クロウのライフを削りきった…。

 

クロウLP0

 

十代WIN!

 

 

 

 

『ガッチャ!いいデュエルだったぜ!』

 

『デュエルエ〜ンドォ!!エキシビジョンデュエル第一試合を制したのは遊城十代選手だ〜!!』

 

「「「わあぁぁ!!」」」

デュエルが終了しスタジアムに歓声が響く…

 

 

 

「くっそ〜…!強すぎだぜ…!」

 

『へへっ、ありがとな!先生の言ってた通りクロウも強かったぜ?またやろうな!』

 

「ああ、次はアンタを超えてやるぜ!十代さん!」

十代とクロウは拳を突き合わせる!

 

 

『おっと!熱き漢同士の約束が交わされたようだ!これは次の決闘が楽しみだぞ〜!!』

 

 

 

 

 

「わりぃ、負けちまった!」

 

「むぅ…仕方あるまい、相手が強すぎたな…」

 

「でもいいデュエルだった!お疲れ様クロウ!」

控えに戻ったクロウをブルーノとジャックが出迎える

 

 

「残る相手は2人…おそらく十代さんレベルのデュエリストのはずだ…!」

 

「フン、伝説の決闘者か…遊海、貴方なら2人の正体を知っているんじゃないか?」

遊星の言葉を受けたジャックが遊海に問いかける

 

「さてね…知りたいか?」

 

「フン…!誰が相手でも関係ない!このジャック・アトラス!例え相手が誰であろうと負けはせん!!次は俺が出る!!」

そう言うとジャックはデュエルコートに飛び出した!

 

「負けないでジャック!!」

 

「頑張れ〜!」

 

 

 

 

『チーム5D'sから飛び出したのはジャック・アトラス!武者修行から帰還したその強さはどれほどパワーアップしているのか〜!?』

 

 

 

『へへっ、バトンタッチですね!行くんですか?』

 

『フン…!熱き魂を持つ王者か、その強さ…そしてその器を俺が見定めてやろう…!』

 

そして謎の決闘者改め伝説の決闘者チームから1人の男が歩み出た…



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エキシビジョンデュエル!〜悪魔と白龍〜

こんにちは!S,Kです!

今回はエキシビジョンデュエル第二弾をお送りします!
…実はこのエキシビジョンデュエル編はとある方のリクエストが原案だったりします…大変長らくお待たせしました!


それでは最新話をどうぞ!!


『さぁ!エキシビジョンデュエル第二試合!5D'sからはジャック・アトラスが飛び出した!対する謎の決闘者チームからは…?』

 

 

 

『お前がジャック・アトラスか…こうして会うのは初めてだが…なるほど、これがかつてこの町の「キング」を名乗った男か…だが、まだ青いな』

 

「むっ…!出会い頭に貶されるとはな…!!さっさとそのローブを外せ!俺はお前に勝利する!!」

ジャックはローブの男を睨みつける…!

 

『フン、その目…その態度…まるで昔の俺のようだ、さぁ、決闘といこうか…ジャック・アトラス!!』

 

バサッ!

 

 

 

「まさか…!?これはとんでもないサプライズだな…!『伝説のドラゴン使い』!!」

 

『フン…遠慮なくかかってくるがいい!貴様の持つ究極のパワー…俺の手で粉砕してくれる!!』

 

ジャックの前に立ち塞がる決闘者…その名は海馬瀬人、伝説のドラゴンを従える『最強』の一角である!

 

 

 

『こ、これは驚いた!!ジャックの対戦者は元プロデュエリストにして海馬コーポレーション社長!!海馬瀬人氏だぁぁ!!で、伝説の「ブルーアイズ」を拝めるぞぉぉ!!』

 

「「「わああぁぁ!?」」」

姿を現した海馬にスタジアムはパニックとなる…

 

 

「マジかよ…!力対力…パワーデッキ対決じゃねぇか…!」

 

「これはジャックにとって厳しい戦いになるぞ…!」

海馬社長を前にシグナー達は動揺する…!

 

「(ジャック、お前の力を見せてみろ…相手にとって不足はないはずだ…!)」

 

 

 

 

「ゆくぞ海馬瀬人!!我が荒ぶる魂を見せてやる!!」

 

『ふぅん…いいだろう!我がブルーアイズを前にその魂が燃やせるのか…見せてもらうぞ!!』

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

 

海馬LP4000

ジャックLP4000

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『フン…現われろ!「青き眼の乙女」!』

銀色の髪を持つ少女が現れる ATK0

 

『カードを2枚伏せてターンエンドだ!』

海馬LP4000

乙女 伏せ2 手札3

 

 

 

 

『おっと?海馬社長に似つかわしくないモンスターが現れたぞ??』

 

 

『フン、くだらん事を言うなMC!この「乙女」こそが俺の新たな力となるのだ!』

《…!(ぽっ)》

海馬の言葉を聞いた乙女の頬が少し紅く染まった…。

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「相手の場にモンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在しない時!『バイス・ドラゴン』は特殊召喚できる!ただし、その攻撃力は半分になる!」

紫色の凶暴なドラゴンが現れる ATK2000→1000

 

「さらに『ダーク・リゾネーター』を召喚!」

音叉を持つ悪魔が現れる ATK1300

 

「俺はレベル5の『バイスドラゴン』にレベル3の『ダークリゾネーター』をチューニング!」

 

5+3=8

 

「王者の鼓動!今ここに列をなす!天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!!我が魂!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!!」

《グオォォン!!》

咆哮を轟かせながら悪魔竜が現れる ATK3000

 

 

『フン…現れたか、気高き悪魔竜よ』

海馬はレッドデーモンズドラゴンを見上げる…!

 

「そうだ!『レッドデーモンズドラゴン』こそ、我が魂!我がプライド!!そしてその魂はさらなる進化を遂げる!!自分の場にレベル8以上のシンクロモンスターが存在する時!『クリエイト・リゾネーター』は特殊召喚できる!」

扇風機を背負った悪魔が現れる ATK800

 

「さらに自分の場に『レッドデーモンズドラゴン』がいる時!『レッド・ノヴァ』は特殊召喚できる!!」

小さな赤い天使が現れる ATK0

 

 

「刮目せよ!伝説の決闘者よ!!見るがいい!俺の荒ぶる魂を!!俺はレベル8の『レッドデーモンズドラゴン』にレベル3の『クリエイトリゾネーター』とレベル1の『レッドノヴァ』をダブルチューニング!!」

 

8+3+1=12

 

王者と悪魔!今ここに交わる!!荒ぶる魂よ…天地創造の叫びをあげよ!シンクロ召喚!!いでよ!『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』!!

《ガオオォン!!》

赤き竜と最強の地縛神…相反する2つの力を宿した紅蓮の龍が降臨する! ATK3500

 

 

『な、なんとぉ!?後攻1ターンでジャックの切り札「スカーレッドノヴァドラゴン」が登場だ〜!!』

 

「『スカーレッドノヴァ』の攻撃力は墓地のチューナー1体につき500ポイントアップする!これが俺の手にした究極の力!!俺は貴方を超え世界のキングになってみせる!!」

ATK3500→5000

 

咆哮を轟かせる紅蓮の竜…それを前に海馬は…

 

 

『フン…()()()()

 

「なにっ…!!」

海馬の言葉にジャックは怒りを露わにする…!

 

『つまらないと言ったのだ、貴様の本気はこの程度か?この程度のモンスターなど俺は何度も倒してきたぞ!攻撃力を上げるだけならば子供でもできる…その程度でお前は「王」を名乗るというのか?』

 

「言わせておけば…!!貴方の場にいるのは攻撃力0のモンスターのみ…!どんな効果があるかは知らぬが…粉砕してくれる!!バトルだ!『スカーレッドノヴァ』で『青き眼の乙女』を攻撃!バーニング・ソウル!」

赤き炎を纏い紅蓮の龍が突撃する!

 

『「青き眼の乙女」の効果発動!自身を守備表示にする事で攻撃を無効にする!』

 

「むっ…!」

乙女が膝をついて祈りを捧げる…すると光のバリアが現れ灼熱の一撃を受け止める!!

ATK0→DEF0

 

『そして乙女の祈りが我が魂を呼び覚ます!!デッキより現われろ!俺の魂!俺のプライド!!「青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)」!!』

《ギュアアアン!!》

乙女を覆っていた光が空へと昇る…その光の中から光輝く白きドラゴン…ブルーアイズが現れる! ATK3000

 

 

『出たぁぁ!!デュエルモンスターズにおける伝説のカード…!ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴンがその姿を現したぁぁ!!』

 

「「「うおぉぉぉ!!!」」」

MCの実況を掻き消すような歓声がスタジアムに響き渡る!!

 

 

 

「これが…伝説のドラゴンか…!(なんという王気(オーラ)だ…!!)」

降臨したブルーアイズにジャックは目を奪われる…!

 

『どうした?デュエルを続けるがいい…それとも、このままターンエンドか?』

 

「っ…!俺はカードを1枚伏せターンエンドだ…!」

海馬の言葉で我に返ったジャックはカードを伏せターンを終えた…。

 

ジャックLP4000

スカーレッドノヴァ 伏せ1 手札1

 

 

 

 

『切り札をいきなり召喚したジャック!だが、その攻撃は躱された!!さぁ、伝説の男はどんなデュエルをみせるのか〜!?』 

 

 

 

「ジャックの奴、いきなり『スカーレッドノヴァ』を呼び出しやがった…!」

 

「『スカーレッドノヴァ』にはカード効果で破壊されない効果、任意のタイミングで除外して相手の攻撃を無効にする効果がある…普通のデュエリストなら、なす術はないけど…」

 

「相手は伝説の決闘者と最強のドラゴン…!油断はできないわ…!!」

 

「ああ、その通りだ…!」

シグナー達が戦況を分析する中、遊星はちらりと遊海を見る…遊星は知っているからだ…勝利をもたらす白き龍の力を…!

 

 

「(海馬さん…完全にスイッチ入ってるな…)」

遊海はデュエルを見ながら確信する、今の海馬は「社長」ではなく…1人の『決闘者』なのだと…。

 

「…ジャック、よく見ておけよ…本当の『王者』の戦い方を…!」

 

 

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『いくぞ!魔法カード「調和の宝札」を発動!手札のドラゴン族チューナー「伝説の白石」を墓地に送る事で2ドロー!さらに墓地に送られた「白石」の効果発動!デッキから「青眼の白龍」を手札に加える!さらにリバースカード、儀式魔法「カオス・フォーム」を発動!手札のレベル8「青眼の白龍」を墓地に送り儀式召喚!!光と闇…混沌の宙より現われろ!「青眼の混沌龍(ブルーアイズ・カオス・ドラゴン)」!!』

海馬の後ろに巨大な宇宙へのゲートが開く…そして無限の宇宙から混沌の力を宿した白きドラゴンが現れる! ATK3000

 

 

『さらに俺はレベル8の「青眼の白龍」にレベル1の「青き眼の乙女」をチューニング!!』

 

8+1=9

 

『我が魂たる白き龍よ…その魂を昇華し、新たな姿を見せるがいい!!シンクロ召喚!顕現せよ!「青眼の精霊龍(ブルーアイズ・スピリット・ドラゴン)」』

眩い光と共に白龍が新生…神秘的な力を纏う白き龍が現れる ATK2500

 

 

『これは素晴らしい〜!!海馬社長の場に新たなブルーアイズが降臨したぞぉ!!』

 

 

「新たなブルーアイズ…!だが、攻撃力は『スカーレッドノヴァドラゴン』が上だ!」

 

『攻撃力ばかりに気を取られるな…貴様達はあの戦いの中で思い知ったはずだ!バトル!「混沌龍」で「スカーレッドノヴァドラゴン」を攻撃!』

 

「攻撃力の低い『混沌龍』で攻撃だと!?」

 

『そして攻撃宣言時に「混沌龍」の効果発動!「青眼の白龍」をリリースして儀式召喚したこのモンスターが攻撃する時!相手フィールドのモンスターの表示形式を全て変更し、攻守を0にする!混沌龍の威光!!』

 

「なんだと!?」

混沌龍が咆哮する…その威圧に怯んだスカーレッドノヴァの力が剥奪される!

 

スカーレッドノヴァ ATK5000→DEF3000→0

 

 

『そしてこのターンに「混沌龍」が守備モンスターに攻撃する時!貫通ダメージを与える!!放て!滅びのカオス・バースト!!』

全てを消し飛ばす混沌の息吹が放たれる!

 

「チィ!!『スカーレッドノヴァ』の効果発動!1ターンに一度自身を除外する事で相手の攻撃を無効にする!」

攻撃の直前でスカーレッドノヴァが異次元へと避難する!

 

『ほう…だが、「精霊龍」の攻撃が残っているぞ!!転生のエレメント・バースト!!』

 

「仕方あるまい!!手札の『バトル・フェーダー』の効果発動!このカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了する!!」

 

ゴ〜ン! ゴ〜ン!!

 

フィールドに鐘を持った悪魔が現れて鐘を打ち鳴らす、その音に怯んだ精霊龍は攻撃を中止する!

 

 

『フン、防いだか…俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!』

 

「除外された『スカーレッドノヴァドラゴン』はエンドフェイズに戻ってくる!!」

 

海馬LP4000

混沌龍 精霊龍 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「強い…!この俺が守る事しかできんとは…!!」

ジャックは海馬との実力差を感じ歯を食いしばる…

 

『どうした?俺を超えるのではなかったか?…無理もない、我が友に勝てない男がどうして俺を超えられると思った!』

 

「ぐっ…!!俺はキングを目指す男…!俺の魂はまだ燃え尽きてはいない!!」

 

キィン─!

シグナー達の痣が強い光を放つ!!

 

「待て!ジャックの奴まさか!?」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『救世竜セイヴァー・ドラゴン』を召喚!!」

赤き竜の化身たる小さな竜が現れる ATK0

 

「さらにリバースカード『リビングデッドの呼び声』を発動!蘇れ!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!!」

墓地から悪魔竜が復活する! ATK3000

 

「俺はレベル8の『レッドデーモンズドラゴン』とレベル1の『バトルフェーダー』にレベル1の『セイヴァードラゴン』をチューニング!!」

 

8+1+1=10

 

「研磨されし孤高の光!真の覇者となりて大地を照らす!光輝け!シンクロ召喚!!大いなる魂…『セイヴァー・デモン・ドラゴン』!!」

世界を救う救世の悪魔竜が灼熱の龍と並び立つ! ATK4000

 

 

「さらにチューナーモンスターが墓地に送られた事で『スカーレッドノヴァ』の攻撃力もアップする!」

スカーレッドノヴァ ATK5000→5500

 

「さらに『セイヴァーデモンドラゴン』の効果発動!『混沌龍』の効果を封印しその攻撃力分自身の攻撃力をアップする!パワーゲイン!!」

セイヴァーデモンが混沌龍の力を奪い取る! ATK4000→7000

 

『フン…』

 

「っ…!!バトルだ!『セイヴァーデモン』で『混沌龍』を攻撃!アルティメット・パワーフォース!!」

表情を崩さない海馬に対してジャックが攻撃を仕掛ける!

 

『天をも震わす我が『青眼』の威光は全てを射竦める!速攻魔法「青き眼の威光」を発動!デッキのブルーアイズモンスター「白き霊龍」を墓地に送り「セイヴァーデモンドラゴン」を対象に効果発動!フィールドにいる限り攻撃を封印する!』

 

「なにっ!?」

海馬の背後にブルーアイズの幻影が現れ、セイヴァーデモンを威圧する!

 

『フン、さしもの赤き竜でも我がブルーアイズに恐れをなしたようだな』

 

「ぐっ…!だが、『スカーレッドノヴァ』の攻撃が残っている!『混沌龍』を攻撃!バーニング・ソウル!!

紅蓮の突進が混沌龍を打ち砕く!

 

『…すまんな「混沌龍」』

海馬LP4000→1500

 

 

『お〜っと!!ジャック・アトラスが海馬社長に対して先制ダメージ!!だが、海馬社長は余裕の表情を崩さない〜!!』

 

 

 

『ジャック・アトラス…貴様は一つミスを犯した、「精霊龍」の効果発動!転生せよ!!』

《ギュアアア!!》

 

「なんだと!?」

精霊龍が眩い光に包まれる!

 

『「精霊龍」の効果発動!このカードをリリースする事によりエクストラデッキから光属性・ドラゴン族のシンクロモンスターを特殊召喚する!現われよ!龍を守護する白銀の盾…「蒼眼の銀龍」!!』

光が収束する…そこにはブルーアイズの面影を残す銀色のドラゴンが降臨していた DEF3000

 

 

『「精霊龍」の効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊されるが…「蒼眼の銀龍」は特殊召喚された時、次のターンのエンドフェイズまで効果の対象にならず、効果では破壊されん』

 

「デメリットを計算した上でか…!俺はこのままターンエンド!エンドフェイズに『セイヴァーデモン』はデッキへと戻り、墓地の『レッドデーモンズドラゴン』が復活する!」

三度、悪魔竜が復活する ATK3000

 

ジャックLP4000

スカーレッドノヴァ レッドデーモンズドラゴン 手札0

 

 

 

「ジャックの連続攻撃が止められるなんて…!」

 

「しかも海馬社長は表情を崩さない…まだ手が残っているのか…?」

遊星は不利な状況にもかかわらず表情を変えない海馬を見つめる…

 

「海馬社長は自分のデッキを信頼してる、あのデッキこそが苦楽を共にしてきたあの人の本当の『魂』だからな」

 

「遊海さん…」

遊海が遊星に話しかける

 

「おそらく次のターンで決着が着く…用意しておけよ?」

 

 

「「「えっ…!?」」」

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『スタンバイフェイズに「蒼眼の銀龍」の効果発動!墓地より復活せよ!「青眼の白龍」!!』

再び伝説の龍が現れる! ATK3000

 

「『ブルーアイズ』が復活した…!だが、『スカーレッドノヴァ』には及ばん!!」

《ガオォォン!!》

ジャックの声に応えるようにスカーレッドノヴァが咆哮する!

 

『フン…ジャック・アトラス、お前に問おう…お前にとって「キング」とはなんだ?』

 

「なに?…俺にとっての『キング』は…自分の力で掴み取る…強者の証だ!!」

ジャックは胸を張って答える…だが

 

『…そうか、()()()()()ジャック・アトラス、よもや奴に迫るかと思ったが…お前はまだ王の器ではない!』

 

「なんだと!?」

 

『これ以上の話は無意味だ…デュエルを続ける!魔法カード「アドバンスドロー」発動!「蒼眼の銀龍」をリリースし2ドロー!さらに手札の「青眼の白龍」を公開する事で手札の「青眼の亜白龍」を特殊召喚!』

スタイリッシュな姿になった白きドラゴンが現われる ATK3000

 

 

『そしてリバースカードオープン!「融合」!フィールドの「青眼の白龍」と手札の「青眼の白龍」そしてフィールドで「青眼の白龍」として扱う「青眼の亜白龍」を究極融合!!降臨せよ!!「青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン)」!!』

《ギュオァァン!!》

 

3体のブルーアイズが融合…原初にして最強たる3つの首を持つドラゴンが降臨する! ATK4500

 

 

『出たァァァ!!伝説の3体融合!!アルティメットドラゴンだぁぁ!!』

 

 

「これが伝説の中の伝説…!だが…!」

 

『既に「スカーレッドノヴァ」の弱点は見切った!魔法カード「魂の解放」発動!貴様の墓地の「ダークリゾネーター」「クリエイトリゾネーター」「レッドノヴァ」「セイヴァードラゴン」「バイスドラゴン」を除外!』

 

「し、しまった!!」

スカーレッドノヴァの力の源であるチューナーが除外され、大きく弱体化する… ATK5500→3500

 

 

『さらに魔法カード「アルティメット・バースト」を発動!これにより「究極竜」は3回の連続攻撃を可能にする!!…究極の力の前にひれ伏すがいい!!アルティメット・バーストォォ!!!』

究極竜から最強の破壊光線が放たれ紅蓮の龍、そしてジャックのライフを消し飛ばした…

 

「馬鹿な…!!ぐおぉぉぉ!?」

 

 

 

ジャックLP4000→3000→1500→0

 

海馬WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

『き、決まったぁぁ!!最強のパワーデッキ対決を圧倒的力で相手をねじ伏せ制したのは…海馬社長だぁぁ!!』

 

「「「わあぁぁ!!!」」」

 

 

『フハハハハ!!粉砕!玉砕!!

 

「「「『大喝采─!!』」」」

 

スタジアムに海馬の笑い声、そして観客の歓声が木霊した…。

 

 

「馬鹿な…世界がこんなにも遠い筈がない…!俺は…!!」

ジャックはデュエルに敗北し膝をつく…

 

 

『ジャック・アトラス、貴様は確かに強い…だが、()()()()だ…貴様は真の王者たる者の条件を理解していないようだな?』

 

「っ…!海馬社長…!」

海馬はジャックの前に立ち見下ろす…

 

『強いだけの王などただの戦士に過ぎん、王とは心技体を兼ね備え、他者を率いる者…そして()()()だ』

 

「守る、者…」

 

『そうだ、上に立つ者は守らねばならん、それは自分の地位やプライドなどというくだらんモノではない…自分を支える仲間、家族…そして愛する者をだ…お前の近くに見本たる者もいる、守る事を理解できんうちは…お前は真の王者には程遠い!精進するがいい!ジャック・アトラス!!』

 

「っ…」

そう言って海馬はコートをはためかせて控えに戻っていった…。

 

 

 

 

 

「………」

 

「あ〜…ドンマイだジャック!相手が悪かったな!」

 

「クロウ、それじゃあ逆効果だって…」

 

「大丈夫か?ジャック」

消沈した様子で戻ってきたジャックを遊星達が出迎える…。

 

 

「少し、ひとりにしてくれ…」

 

「…ああ」

ジャックはそう言ってスタジアムの控え室に消えていった…。

 

 

 

 

「ジャック」

 

「…遊海」

通路を進むジャックに遊海が声をかける

 

「あまり気を落とすなよ…お前はよくやってる」

 

「慰めはいい…俺は……弱いっ…!!」

涙を堪えながらジャックは呟く…

 

「…安心した、お前はドン底まで落ちきった…ならば後は上に登るだけだ、這い上がって来いジャック…決闘者の頂点に……その時は俺が相手になる」

遊海はそう言って遊星達のもとに戻っていった。

 

 

「……待っていろ遊海、俺は…!キングだ!!必ず貴方を…お前を、超えてみせる…!!」

 

 

 

 

 

 

 

『…やりすぎじゃないかな?海馬君』

 

『フン、遊戯…奴は化けるぞ?もしかしたらお前や遊海を超える程にな…』

 

『…フフッ、それは少し楽しみだね!…じゃあ、行ってくる…ようやく約束を果たせそうだね、遊星君』

 



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エキシビジョンデュエル!〜英雄と伝説〜

こんにちは!S,Kです!

今回はエキシビジョンデュエル第3弾!遊戯対遊星編です!…歴代主人公同士の戦い…勝利を掴むのは…!

それでは最新話をどうぞ!


追記:『シグナル・ウォリアー』の効果について大きな勘違いをしていました…修正案を思いつき次第直しますので少しお待ちください…。


『さぁ!ついにエキシビジョンデュエルも最後の決闘となりました!!二連敗している5D'sは意地を見せる事ができるのか!!最終戦に現れるデュエリストはもちろんこの男…!!ネオドミノシティの英雄!不動遊星ぇぇぇ─!!』

 

「「「うおぉぉぉ!!!」」」

 

MCの紹介と共にスタジアムが大歓声に包まれる!

 

 

 

「……(もう、相手はわかってる…ありがとう遊海さん、オレはこのデュエル…全力で戦う!)」

遊星は静かに正面に佇むローブの男を見つめる、その人物から感じるのは静かな闘志…海馬の荒々しさや十代のような喜びを感じるモノではない、まるで水面のように静かで洗練されたオーラだった。

 

 

『…この時を楽しみに待っていたよ遊星君、もう()はいないけれど…あの時の約束を果たそう!!』

 

「えぇ、伝説のキングオブデュエリスト…()()()()!!」

 

『フッ…!』バサッ!

男はローブを脱ぎ捨てる…その正体はデュエルモンスターズの生ける伝説、古代エジプトのファラオを友とし最強の称号『決闘王』を最初に手にした男…武藤遊戯─!

 

 

『な、なんという事だぁ〜!!謎の決闘者チーム最後の一人!その正体は!初代決闘王!!武藤遊戯〜!!!』

 

「「「うわああああ!!!!」」」

 

スタジアムがこの日一番の歓声に包まれる…かたや新たな英雄、かたや真なる伝説の男…文字通りの夢の対決が幕を上げる!!

 

 

 

『さぁ、デュエルだ遊星君!この街を守ったシグナーの力をボクに見せてくれ!』

 

「遊戯さん…胸をお借りします!!」

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

遊戯LP4000

遊星LP4000

 

 

 

 

 

『ボクのターン!ドロー!』

『「アップル・マジシャン・ガール」を召喚!』

遊戯のフィールドに羽の生えた林檎が現れ、可愛らしい魔法使いに変身する ATK1200

 

『カードを2枚伏せてターンエンド!』

遊戯LP4000

アップル 伏せ2 手札3

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「魔法カード『調律』を発動!デッキから『クイック・シンクロン』を手札に加え、デッキトップを墓地に送る!」

 

墓地送り

ソニックウォリアー

 

「さらにオレは『ジャンク・シンクロン』を召喚!」

オレンジ色のロボットが現れる ATK1300

 

「『ジャンクシンクロン』の効果発動!墓地の『ソニックウォリアー』を特殊召喚!」

緑色のロボットが現れる DEF0

 

「さらに手札の『ドッペル・ウォリアー』の効果発動!墓地からモンスターの特殊召喚に成功した時!このモンスターを手札から特殊召喚!」

黒い服を着た兵士が現れる ATK800

 

「オレはレベル2の『ドッペルウォリアー』とレベル2『ソニックウォリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!!」

 

2+2+3=7

 

「集いし想いがスピードの世界を突き進む!光さす道となれ!シンクロ召喚!唸れ!『シグナル・ウォリアー』!」

遊星の場に赤いバイクが現れ変形…赤い装甲の戦士が現れる ATK2400

 

 

『おおっと!遊星の新たなモンスターが登場したぞぉ!まるで遊星のDホイールがモンスターになったようだ!!』

 

 

「そしてシンクロ素材となった『ドッペルウォリアー』の効果発動!『ドッペル・トークン』2体を特殊召喚!」

小さな黒服の兵士が現れる ATK800  ✕2

 

「さらに『ボルト・ヘッジホッグ』を墓地に送る事で『クイック・シンクロン』を特殊召喚!」

ガンマン風のロボットが現れる ATK800

 

「オレはレベル1の『ドッペルトークン』2体にレベル5の『クイックシンクロン』をチューニング!」

 

1+1+5=7

 

「集いし叫びが木霊の矢となり空を裂く!光さす道となれ!シンクロ召喚!いでよ!『ジャンク・アーチャー』!」

オレンジ色の弓を持った戦士が現れる ATK2300

 

 

「『ジャンクアーチャー』の効果発動!『アップルマジシャンガール』をエンドフェイズまで除外する!ディメンジョン・シュート!!」

次元を切り裂く矢が放たれる!

 

『そうはいかないよ!リバースカードオープン!「ディメンション・マジック」!「アップルマジシャンガール」をリリース!現われろ!「ブラック・マジシャン」!』

アップルマジシャンが現れた棺に消え去る…そして伝説の黒衣の魔術師が現れる! ATK2500

 

 

『で、出たぁぁぁ!!決闘王のエースモンスター!「ブラックマジシャン」だぁー!!』

 

「「「うおぉぉぉ!!」」」

ブルーアイズに続く伝説のモンスターの登場に観客達が沸き立つ!

 

 

 

「『ブラックマジシャン』…!いきなりエースの登場か…!」

 

『さぁ、いくよ!「ディメンションマジック」のさらなる効果!フィールドのモンスター1体を破壊する!ボクが選ぶのは「ジャンクアーチャー」!』

 

「くっ…!」

棺から放たれた魔力弾が弓兵を貫く!

 

「『ブラックマジシャン』の攻撃力は2500…『シグナルウォリアー』では敵わない…カードを2枚伏せてターンエンド!」

遊星LP4000

シグナルウォリアー 伏せ2 手札0

 

 

 

 

『遊星は得意の連続シンクロで攻めるが決闘王は魔法カード1枚でそれを一蹴!これが最強の決闘者の実力だぁ─!』

 

 

『遊星君、いきなりすごいね…まさかいきなりダイレクトアタックを狙ってくるなんて…!』

 

「しっかり躱されてしまいましたが…やはり遊戯さんは強いです…!」

 

『フフッ、ありがとう!それじゃあいくよ!』

 

 

 

 

『ボクのターン!ドロー!』

 

「スタンバイフェイズに『シグナルウォリアー』の効果発動!フィールドにある全てのカードにシグナルカウンターを1つ置く!」

遊星の言葉と共にフィールドのカードに虹色の光が灯る

 

遊星SC 0→3

遊戯SC 0→2

 

 

『フィールドのカードにカウンターを置く効果…面白い効果だね、だけど…させないよ!魔法カード「師弟の絆」発動!自分フィールドに「ブラックマジシャン」がいる時!デッキから「ブラック・マジシャン・ガール」を特殊召喚!』

ブラックマジシャンが杖を掲げる…すると魔法陣が展開し、ブラックマジシャンガールがウィンクしながら現れる! ATK2000

 

 

『うおぉぉ!!魔術師弟が揃い踏みだ〜!!』

 

「「「BMGキター!!」」」

一部の男性陣から歓声が上がる!

 

 

『「師弟の絆」のさらなる効果!デッキから魔法カード「黒・魔・導・連・弾(ブラック・ツイン・バースト)」を手札に加える!そしてそのまま発動!「ブラックマジシャンガール」の攻撃力を「ブラックマジシャン」に加える!』

《お師匠様!受け取ってください!》

 

マジシャンガールが師匠に魔力を送る! ATK2500→4500

 

『いくよ!バトル!「ブラックマジシャン」で「シグナルウォリアー」を攻撃!』

《いくぞ!》

《はい!》

魔術師弟が飛び上がる!

 

《「《黒・魔・導・連・弾(ブラック・ツイン・バースト)!!》」》

魔力弾の連撃が遊星に迫る!

 

「シグナルカウンターが乗っている『シグナルウォリアー』は戦闘・効果で破壊されない!」

 

『でもダメージは受けてもらうよ!』

 

「そうはいかない!リバースカードオープン!『スピリット・フォース』発動!戦闘ダメージを無効にし墓地の守備力1300以下のチューナー『ジャンク・シンクロン』を手札に加える!」

遊星の周りにバリアが現れ魔力弾を防ぐ!

 

 

『やるね遊星君!ボクはカードを1枚伏せてターンエンド!』

遊戯LP4000 SC2

ブラックマジシャン(1) BMG(0) 伏せ2(1) 手札2

 

 

 

 

『デュエルは一進一退!さぁ、不動遊星は決闘王をどう攻略するのか〜!?』

 

 

「あれが決闘王の実力か…!まったくプレイングに淀みがねぇ…!」

 

「でも遊星も負けてないわ!遊戯さんを前に一歩も引いてない!」

 

「遊星!頑張って〜!」

シグナー達は遊星に声援を送る!

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに『シグナルウォリアー』の効果発動!フィールドのカード全てにシグナルカウンターを置く!」

 

遊星SC2→4

遊戯SC2→6

 

 

「『シグナルウォリアー』の効果!フィールドのシグナルカウンターを7つ取り除いて効果発動!デッキからカードを1枚ドローする!」

 

『なるほど、そのモンスターは生きた「スピード・ワールド2」って事なんだね…!』

 

遊星SC4→3

遊戯SC6→0

 

 

「永続魔法『シンクロ・チェイス』を発動!さらに『ジャンク・シンクロン』を召喚!」

再びオレンジ色のロボットが現れる ATK1300

 

「『ジャンクシンクロン』の効果発動!墓地の『ドッペル・ウォリアー』を特殊召喚!」

再び黒服の兵士が現れる DEF800

 

「オレはレベル2の『ドッペルウォリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

2+3=5

 

「集いし星が新たな力を呼び起こす!光さす道となれ!!シンクロ召喚!いでよ!『ジャンク・ウォリアー』!」

遊星の切込み隊長である青い戦士が現れる ATK2300

 

 

「シンクロ素材となった『ドッペルウォリアー』の効果発動!『ドッペルトークン』2体を特殊召喚!」

小さな兵士が現れる ATK800 ✕2

 

「そして『シンクロチェイス』の効果発動!自分が『ウォリアー』『スターダスト』『シンクロン』のシンクロ召喚に成功した時!シンクロ素材となったモンスター1体を墓地から特殊召喚する!蘇れ!『ジャンクシンクロン』!」

3度オレンジ色のロボットが現れる DEF500

 

「さらに『ジャンクウォリアー』の効果発動!シンクロ召喚に成功した時!このモンスターの攻撃力は自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする!パワー・オブ・フェローズ!!」

ジャンクウォリアーが仲間の力でパワーアップする! ATK2300→3900

 

 

「バトルだ!『ジャンクウォリアー』で『ブラックマジシャン』を攻撃!スクラップ・フィスト!!」

ジャンクウォリアーが加速し黒魔導師に拳を叩きつける!

 

『その瞬間!手札から「幻想の見習い魔導師」の効果発動!このカードを墓地に送り「ブラックマジシャン」の攻撃力を2000ポイントアップする!迎え撃て黒・魔・導(ブラック・マジック)!!』 ATK2500→4500

 

「なにっ!?」

ブラックマジシャンの杖に魔力が集中…放たれた魔力弾でジャンクウォリアーは消し飛ばされた!

 

「ぐっ…!!」

遊星LP4000→3400

 

「だが…まだ『シグナルウォリアー』の攻撃が残っている!『ブラックマジシャンガール』を攻撃!ライティング・アクセル!」

シグナルウォリアーがバイクに変形…マジシャンガールに突撃する!

 

『リバースカードオープン!永続罠「六芒星の呪縛」!「シグナルウォリアー」の攻撃と表示形式の変更を封印する!』

シグナルウォリアーが魔法陣に拘束される!

 

「っ…!カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

『エンドフェイズに速攻魔法「魂のしもべ」を発動!デッキから「ブラックマジシャン」の名前が記されたカード「ティマイオスの眼」をデッキトップに置く!』

 

「『ティマイオスの眼』…!?」

遊星LP3400 SC3

シグナルウォリアー(2『六芒星』)ジャンクシンクロン(0) ドッペルトークン(0)✕2  シンクロチェイス 伏せ2(1) 手札0

 

 

 

 

 

「つ、強い…!遊星が手も足も出ねぇなんて…!!」

 

「これが…『キング・オブ・デュエリスト』の力…!」

クロウと龍亞は遊戯のあまりの強さに圧倒される、今まで数々の難敵を倒してきた遊星…その遊星でさえ遊戯の前に翻弄されているのだ…!

 

 

「まぁ、しょうがないな…遊戯はデュエルの…いや、ゲームの天才だ」

 

「ゲームの天才…?それってどういう事?」

遊海の言葉にアキが問いかける

 

「遊戯はデュエルモンスターズだけじゃない、トランプやボードゲーム…果てはパズルやギャンブルまで…あらゆるゲームにおいてほとんど負けがない、それどころか新しいゲームを創り出すほどの天才なんだ…そこに名もなきファラオと共に積んだ実戦経験があれば…」

 

「ほとんど無敵じゃん!?遊星はそんなすごい人に勝てるの!?」

龍亞が驚きの声を上げる…

 

「さぁな…それこそ『奇跡』でも起きなきゃ無理だろうなぁ…」

 

 

 

 

『ボクのターン!ドロー!』

「『シグナルウォリアー』の効果発動!シグナルカウンターを置く!」

遊星SC3→9

遊戯SC0→3

 

『墓地の「魂のしもべ」の効果!このカードを除外して自分のフィールド・墓地の「ブラックマジシャン」「ブラックマジシャンガール」の枚数だけドローできる!2ドロー!そして魔法カード「ティマイオスの眼」発動!「ブラックマジシャンガール」を墓地に送り…融合!!』

 

「なっ…!?モンスターと魔法カードで融合だと!?」

思わぬ融合に遊星は驚く…!

 

『来て!「竜騎士ブラック・マジシャン・ガール」!!』

遊戯の場に青いドラゴンに騎乗したブラックマジシャンガールが現れる! ATK2600

 

 

 

「な、何が起こったの!?魔法カードとモンスターが融合しちゃうなんて…!」

 

「そんなカード見た事ないよ…!」

龍可とブルーノが驚きの声を漏らす…

 

「あれは精霊達の世界…デュエルモンスターズ界に伝わる『名もなき竜』の1体『ティマイオス』、モンスターと融合する事で新たなモンスターになるんだ、他には罠カードと融合して新たなモンスターになる『クリティウスの牙』…そしてモンスターと融合する事で新たな装備カードを生み出す『ヘルモスの爪』がある、その3枚は世界で1枚ずつしかなくて、それぞれ遊戯・海馬社長・城之内の3人が使ってるんだ…ただし、オリジナルはもう消滅しちゃったからレプリカ…模造品なんだけどな」

 

「そんなカードが…!まるで私達のシグナーの竜みたい…」

 

「鋭いなアキ、少し説明が長くなるから省くけど…『ティマイオス』達もシグナーの竜と同じ、闇に対抗するカードなんだ…さて、どうなるかな…?」

 

 

 

『さらにボクは「チョコ・マジシャン・ガール」を召喚!』

水色の可愛らしい魔術師が現れる ATK1600

 

『「シグナルウォリアー」の効果が「スピードワールド2」と同じ効果だとしたら…カウンター4個でダメージ、10個でカードの破壊かな?なら少し数を減らさないとね!「竜騎士マジシャンガール」の効果発動!手札の「クリアクリボー」を墓地に送って効果発動!「シンクロチェイス」を破壊するよ!』

《ハアッ!!》

マジシャンガールの斬撃がシンクロチェイスを破壊する!

 

 

『バトル!「ブラックマジシャン」で「ドッペルトークン」を攻撃!黒・魔・導(ブラック・マジック)!』

魔導波が兵士を消し飛ばす!

 

「ぐあっ…!」

遊星LP3400→1700

 

『さらに「竜騎士マジシャンガール」で2体目の「ドッペルトークン」を攻撃!ブラックドラゴン・バースト!』

ドラゴンの火球とマジシャンガールの魔導弾が迫る!

 

「今だ!リバースカード『くず鉄のかかし』発動!その攻撃を無効にしてこのカードを再びセットする!」

かかしが攻撃を受け止める!

 

『「チョコマジシャンガール」で「ドッペルトークン」を攻撃!』

チョコマジシャンガールの魔法がドッペルトークンを破壊する!

 

「っ…!」

遊星LP1700→900

 

『ボクはカードを1枚伏せてターンエンド!』

遊戯LP4000 SC1

ブラックマジシャン(1) 竜騎士BMG チョコマジシャン 六芒星 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

「強い…!(これが決闘王の実力…!先の先まで手が読まれている気がする…!!)」

遊星は追い詰められていた…遊戯の持つ圧倒的タクティクス・プレイング、そしてドロー力…それらは全て遊星を上回っていた。

 

 

『ふぅ…楽しいね!遊星君』

 

「えっ…?」

遊星は遊戯の言葉に問い返す

 

『遊星君、もう少し肩の力を抜いたほうがいいよ、気を張りっぱなしじゃ疲れないかい?』

 

「あっ…」

遊戯の言葉を聞いた遊星には思い当たる事があった…ゾーンとラプラスから託された自分達の未来…遊星はより良い未来を掴む為に寝る間も惜しんで「フォーチュン」の製作に取り組んでいた…。

 

 

『そう気負う事はないよ、あの警告は全世界の人々の胸に刻まれた…君1人で無理をする事はない、ボク達1人1人が新しい未来の為に協力すれば…きっとできない事はない!』

 

「遊戯さん…」

 

『さぁ遊星君、今はこのデュエルを楽しもう!』

 

「はい!勝負は…これからだ!!」

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに『シグナルウォリアー』の効果発動!カウンターを置く!」

 

遊星SC6→10

遊戯SC1→6

 

 

『(カウンターは減らしたけど合計16個…10個を取り除いて破壊を狙ってくるのか…それとも…?)』

 

「『シグナルウォリアー』の効果発動!7つ取り除いて…1ドロー!…いきます!!自分の場にチューナーがいる時!墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』は特殊召喚できる!」

針がネジになったハリネズミが現れる DEF800

 

遊星SC10→9

遊戯SC6→0

 

「オレはレベル2の『ボルトヘッジホッグ』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

2+3=5

 

「集いし力が新たな未来を掴み取る!光さす道となれ!シンクロ召喚!駆け抜けろ!『ジャンク・スピーダー』!」

白いスカーフを巻いた銀色の戦士が現れる ATK1800

 

 

「『ジャンクスピーダー』の効果発動!デッキからレベルの違う『シンクロン』チューナーを可能な限り特殊召喚する!!」

 

『なんだって!?』

 

「現れろ!レベル1『アンノウン・シンクロン』!レベル2『ニトロ・シンクロン』!レベル3『スチーム・シンクロン』!!」

単眼のロボット、燃料タンク型のロボット、機関車型のロボットが現れる DEF0 DEF100 DEF800

 

 

「バトルだ!『ジャンクスピーダー』で『竜騎士マジシャンガール』を攻撃!」

 

『攻撃力の低いモンスターで攻撃…!何かあるね?』

 

「はい!シンクロ召喚したターンに『ジャンクスピーダー』が攻撃する時!エンドフェイズまで攻撃力が倍になります!いけ!ソニックブーム・エッジ!!」

 

超加速した銀色の戦士が伝説の竜騎士を蹴り砕く! ATK1800→3600

 

『リバースカードオープン!「マジシャンズ・プロテクション」!フィールドに魔法使い族がいる時!戦闘ダメージを半分にする!』

遊戯の周りにバリアが展開されダメージを減衰する!

 

『くっ…!ごめんねマジシャンガール!』

遊戯LP4000→3500

 

 

「そしてオレの攻撃はまだ終わっていない!罠発動!『奇跡の軌跡』!『ジャンクスピーダー』の攻撃力を1000ポイントアップしバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃できる!その代わり相手の受ける戦闘ダメージは0になり、カードを1枚ドローする!」

 

『いいカードだ…!1ドロー!』

ジャンクスピーダーLP3600→4600

 

「『ジャンクスピーダー』で『ブラックマジシャン』を攻撃!ソニックブーム・エッジ!!」

 

銀色の戦士が再び加速…黒衣の魔導師を打ち砕いた!

 

「っ…!流石だね遊星君…!」

 

「よし…!勝機が見えてきた…!メインフェイズ2!オレはレベル5の『ジャンクスピーダー』にレベル2の『ニトロシンクロン』をチューニング!」

 

5+2=7

 

「集いし思いがここに新たな力となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!!燃え上がれ!『ニトロ・ウォリアー』!」

緑色の屈強な戦士が現れる ATK2800

 

 

「『ニトロシンクロン』が『ニトロ』モンスターのシンクロ素材になった事で1ドロー!カードを2枚伏せてターンエンド!」

遊星LP900 SC6

シグナルウォリアー(4『六芒星』)ニトロウォリア(0)  アンノウン(0) スチーム(0) 伏せ3(2) 手札1

 

 

 

 

 

『不動遊星、魂の反撃!!一転して決闘王を追い詰めたぁ!!』

 

 

「よっしゃあ!!いいぞ遊星!!」

 

「これで遊戯さんのフィールドにはモンスターが1体だけ…!これなら!」

 

「でも『奇跡の軌跡』で決闘王にドローさせてるから…まだ、わからない…!」

 

「頑張って…!遊星!」

仲間達は祈るようにデュエルを見守る…!

 

 

『やっぱり強いね遊星君、君とデュエルできてよかった!』

 

「遊戯さん…!オレも同じ気持ちです!」

遊戯と遊星は笑いあう…久しぶりの命懸けではない決闘…2人はそれを楽しんでいた。

 

 

『でも、そろそろ決着をつけようか…!次のターンで勝負をつける!』

 

「っ…!望むところです!!」

 

 

 

「(…そろそろかな)」

 

 

 

 

 

『ボクのターン!ドロー!』

 

「『シグナルウォリアー』の効果発動!」

 

遊星SC6→14

遊戯SC0→2

 

 

『ボクは手札の「クリアクリボー」を墓地に送って「THE・トリッキー」を特殊召喚!』

顔に『?』マークの描かれた魔術師が現れる ATK2000

 

『そしてボクは「チョコマジシャンガール」と「トリッキー」をリリース!…黒金の暴竜よ…我が敵に滅びをもたらせ!!現れろ!「破滅竜ガンドラX」!』

全身に赤い宝玉を埋め込んだ破壊の化身が現れる ATK0

 

 

「これが遊戯さんの切り札モンスター…!」

 

『「ガンドラX」の効果発動!このカード以外のフィールドのモンスターを全て破壊する!そして破壊したモンスターの内、一番高い攻撃力を持つモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!!デストロイ・テラレイズ!!』

《ガアアアア!!》

ガンドラが咆哮を轟かせる…すると全身から赤い光線が放たれフィールドを蹂躙しようとする!

 

 

「やばいよ!これで遊星のモンスターが全部破壊されたら『ニトロウォリアー』の2800ダメージを受けて遊星の負けだ!」

 

「「遊星─!!」」

龍亞と龍可の叫びが響く─!

 

 

「…慌てるなお前達!遊星がこの程度で負けるか!」

 

「「ジャック!?」」

ジャックの凛とした声が響く…絶望的な状況を見てなお、ジャックの眼はまっすぐ遊星を見つめている…!

 

「遊星は俺の最大のライバルだ!この程度で負けたら…奴は『英雄』などと呼ばれん─!!」

 

 

 

「断ち切らせはしない!!罠カード発動!『スターライト・ロード』!相手が自分の場のカードを2枚以上破壊する効果を発動した時!その効果を無効にし破壊する!」

 

『なんだって!?』

遊星の背後から光の柱が立ち昇る…その光は破壊光線を反射し、ガンドラを破壊する!

 

「そしてエクストラデッキからこのモンスターを特殊召喚できる!…集いし願いが新たに輝く星となる!!光さす道から飛翔せよ!『スターダスト・ドラゴン』!!」

光の柱が強く輝く…そして遊星のエースたる星屑のドラゴンが現れる! ATK2500

 

 

『まさか「ガンドラX」を無効にしてくるなんてね…ボクはこのままターンエンド!』

 

遊戯LP3500 SC2

マジシャンズプロテクション (1) 六芒星(1) 手札0

 

 

 

 

「オレのターン!…ドロー!!」

「『シグナルウォリアー』の効果発動!カウンターを置く!」

 

遊星SC13→28

遊戯SC2→4

 

「バトル!『ニトロウォリアー』で遊戯さんにダイレクトアタック!ダイナマイト・ナックル!!」

緑色の戦士が遊戯を殴りつける!

 

『ぐっ…!!』

遊戯LP3500→700

 

「『スターダスト・ドラゴン』でダイレクトアタック!!シューティング・ソニック!」

 

『その瞬間!墓地の「クリアクリボー」の効果発動!墓地のこのカードを除外し、デッキからカードを1枚ドローする!引いたカードがモンスターカードだった時、そのモンスターを特殊召喚して攻撃対象をそのモンスターに変更する!…ボクはこのドローに全てを賭ける!!』

 

「!…いけ!『スターダスト・ドラゴン』!」

 

『…ドロー!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊戯LP0

 

遊星 WIN!

 

 

 

 

 

「「「…………」」」

 

デュエルが決着し、スタジアムは静寂に包まれる…

 

 

 

『…ドローしたカードは「同胞の絆」、今回は遊星君の絆の力の勝利かな?』

 

「はい…みんなの応援があったからこそ、オレは今までの戦いを乗り越えられました…これからもそれは変わりません!」

 

『うん、ありがとう遊星君…いや、遊星!またデュエルしようね!』

 

「はい!ありがとうございます!」

そして遊星と遊戯は固く握手を交わした…。

 

 

 

 

『き…き、決まったぁぁ!!?エキシビジョンデュエル第3戦!勝利を掴んだのは不動遊星!!決闘王を…乗り越えたぁぁ!!!』

 

「「「うわぁぁぁぁ─!!!」」」

 

スタジアムが割れんばかりの拍手喝采に包まれる…そして歴史的偉業を成し遂げた遊星に仲間達が駆け寄る!

 

 

 

「やりやがったな遊星!!まさか決闘王を倒すなんてよぉ!!」

 

「すごい!凄すぎるよ遊星!!」

 

「やった〜!!」

 

「おめでとう遊星!本当にすごいデュエルだった!」

 

「フン、当たり前だ!」

 

「おめでとう遊星!本当におめでとう!!」

 

「みんな…!礼を言うのはオレの方だ、みんなの応援があったからオレは戦う事ができた!ありがとう!!」

遊星は仲間達に感謝を伝える…そしてもみくちゃになった…。

 

 

 

 

 

『…よもや、お前が負けるとはな…遊戯』

 

『ふぅ…今回はボクも全力だった…少し、悔しいな』

控えに戻った遊戯に海馬が声をかける…遊戯は少し悔しさを滲ませるが…その顔は晴れやかだった。

 

『でも、次は負けないさ!』

 

『その意気です遊戯さん!…あ〜あ、オレも遊星と戦いたかったなー!』

 

『ふふっ、きっとその日が来るよ十代…きっとね』

遊星と戦いたくてウズウズしている十代を遊戯が宥める…。

 

『さて…()()はこれからだ、見せてもらうぞ不動遊星、お前の進化の力を…!』

 

 

 

 

 

 

『静まれ!!』

 

 

「「「!?」」」

 

「うわっ!なんだ!?」

 

「海馬社長…!?」

 

スタジアムに海馬社長の一喝が響く…その覇気に熱狂に沸いたスタジアムは一瞬で静まり返る…。

 

 

『チーム5D's!お前達はよく戦った!遊戯に勝利した不動遊星はもとより、ジャック・アトラス・クロウ・ホーガンも格上相手によく善戦した!それは称賛に値する!!』

海馬は戦いを終えた5D'sに称賛の言葉を送る!

 

 

『そして観客のお前達に問おう!不動遊星のデュエルをまだ見たいか!!』

 

「「「うおぉぉぉ!!」」」

スタジアムが再び熱狂に包まれる!

 

 

『そして不動遊星に問う!まだデュエルをする気力は残っているか!!』

 

「ああ、オレはまだ戦える!」

海馬の言葉に遊星は了承の言葉を伝える!

 

『ふぅん…わかった!!ここにエキシビジョンマッチ第4戦…ライディングデュエルの開幕を宣言する!!』

 

「「「わあぁぁぁ!!」」」

海馬の言葉にスタジアムが歓声に沸く!

 

 

 

「ライディングデュエルか…!それで相手は誰なんだ?」

 

「この会場にはラグナロクや他のライディングチームも揃ってる…その中の誰かか?」

ライディングデュエルを前に遊星とジャックは首を傾げる。

 

 

『ふん…聞け!お前達!…不動遊星はこの街を守り「英雄」と呼ばれるようになった!だが、お前達は忘れていないか?この街においての最初の「英雄」の事を…!』

 

ザワザワ…

海馬の言葉にスタジアムはざわめきが起こる…

 

 

『「初代決闘王」である武藤遊戯ではない…サテライトから空を飛んだ「伝説のDホイーラー」でもない…!20年前に姿を消した1人の男の事を…お前達は覚えているか!!ゼロ・リバースから我らを守り、姿を消した決闘者の事を!!』

 

「…まさか」

遊星は…いや、5D'sのメンバー達は気付いた…先程から姿の見えない最後の仲間の事を…!

 

 

()は死んでなどおらん、深い傷を負い…生死の境を彷徨いながらも…奴は「英雄」であり続けた!!今こそ…復活の刻だ!!』

 

ドルルル…キィィン!!

 

『な、なんだ!?サーキットにDホイールが乱入して来たぞ!?あれは…鋼の騎士!メタルナイトだ!!』

スタジアムのサーキットを1台のDホイールが疾走する…そしてスピードをどんどんと上げていく!!

 

 

『ま、待て待て!!メタルナイト!それ以上スピードを上げたらクラッシュ─』

 

「…クリアマインド!」

 

 

キィィン!バシュン!!

 

 

『き、消えた!!これは遊星と同じ─!』

 

『お前達に改めて紹介しよう…奴はこの町のヒーロー・メタルナイト…()()()()!奴こそは最強の称号を受け継ぎし男!人々を守りその命を燃やす最強の決闘者!』

 

 

キィン!バシュゥゥン!! キキー!!

 

 

 

「待たせたな遊星、さぁ…デュエルだ!!」

 

「遊海さん…!」

 

 

 

 

『「2代目決闘王」白波遊海!!今日がその復活の日だ!!』

海馬の声がスタジアムに響く、遊星と遊海…プライドを懸けた決闘が…今始まる!!

 



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ファイナルデュエル!〜閃珖の竜と星屑の竜〜

こんにちは!S,Kです!

ついに迎えた遊海と遊星のラストデュエル…その決着は…!

それでは最新話をどうぞ!!


『な、なんという事だぁぁ!?ネオドミノシティのヒーロー・メタルナイト!その正体は行方不明だった伝説の決闘者!!白波遊海だったぁぁ!!』

 

「「「ええぇぇぇ─!?!?」」」

海馬の言葉にスタジアムは騒然となる、無理もないが…20年近く表舞台から消えていた男が急に現れれば誰でもびっくりするだろう…。

 

 

 

「ゆ、遊海さん…!?これはいったい…!?」

遊星は人前でその正体を現した遊海に問いかける…。

 

「海馬社長から発破を掛けられたんだよ、『世界の脅威は去った…ならさっさとプロに復帰しろ!』ってね、その復帰セレモニーを兼ねてこのエキシビジョンが企画されたのさ」

 

「…なるほど、今までの戦いはあくまで前座…今回の主役は遊海さんだったという事か…」

 

「おっと?勘違いするなよ遊星、お前も主役さ…過去の英雄と現在の英雄、その強さを…進化を互いに示す、それが新たな未来の道しるべになる…!さぁ、いくぞ遊星!お前の進化を俺に見せてみろ!」

遊海はDホイールへと跨がる!

 

「ああ、今日こそ…貴方を超えてみせる!!」

 

 

 

『2人の準備は整ったようだ!!新旧最強の決闘者によるライディングデュエルがついに始まるぞぉ─!!』

 

 

 

 

 

 

ピッピッピッ…ポーン!!

 

 

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

シグナルが消えると同時に2人はスタートを切る…先攻を取ったのは…

 

 

 

『よし…!いきます!!』

 

「かかってこい!遊星!!」

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊星LP4000

遊海LP4000

 

 

ライディングデュエル

スピードワールド2常時発動

 

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP0→1

『手札の「レベル・ウォリアー」はお互いのフィールドにモンスターが存在しない時!レベル2として特殊召喚できる!』

赤い星マークのマスクを被った戦士が現れる ATK300 ☆3→2

 

『そして手札の「レベル・スティーラー」を墓地に送る事で「クイック・シンクロン」を特殊召喚!』

ガンマン風のロボットが現れる ATK700

 

『さらに墓地の「レベル・スティーラー」の効果発動!「クイックシンクロン」のレベルを1つ下げる事で墓地から特殊召喚!』

一つ星を背負ったてんとう虫が現れる DEF0

クイックシンクロン☆5→4

 

 

『オレはレベル2の「レベルウォリアー」にレベル4の「クイックシンクロン」をチューニング!』

 

2+4=6

 

『疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは鉄壁の盾となる!光さす道となれ! シンクロ召喚!現れよ「ジャンク・ガードナー」!』

堅い装甲を持つ緑色のロボットが現れる DEF2600

 

 

『カードを1枚伏せ、ターンエンド!』

遊星LP4000 SP1

ジャンクガードナー レベルスティーラー 伏せ1 手札2

 

 

 

『遊星はメタ…白波遊海を前に守りを固める!白波遊海はどんなデュエルを魅せるのか〜!?』

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP1→2

「手札の『レベル・スティーラー』を墓地に送り、『()()()()()()()()()()』を特殊召喚!」

 

『なにっ!?』

遊海の場にガンマン型のロボットが現れる DEF1400

 

 

『こ、これは…!まさかの展開だ!!白波遊海が遊星と同じモンスターを使ってきたぁ〜!?』

 

 

「遊星!『ジャンクデッキ』を使うのはお前だけじゃない!『クイックシンクロン』のレベルを下げ、墓地の『レベルスティーラー』を特殊召喚!」

星を背負ったてんとう虫が現れる DEF0

クイックシンクロン ☆5→4

 

「俺はレベル1の『レベルスティーラー』にレベル4の『クイックシンクロン』をチューニング!!」

 

4+1=5

 

「希望の星が蒼き空を駆け抜ける!シンクロ召喚!突撃せよ!『ジェット・ウォリアー』!」

黒い戦闘機を模したロボットが現れる ATK2100

 

 

『オレの知らない「ウォリアー」…!』

遊星は現れたまだ見ぬ戦士を警戒する…!

 

「『ジェットウォリアー』の効果発動!シンクロ召喚に成功した時!相手フィールドのカードを手札に戻す!手札に戻ってもらうぞ!『ジャンクガードナー』!」

 

『っ!!』

ジェットウォリアーのエンジンが高速回転し堅牢なロボットを吹き飛ばす!

 

「さらに俺は『シンクロン・キャリアー』を召喚!」

背中にクレーンを装備したロボットが現れる ATK0

 

 

「そして『シンクロンキャリアー』の効果発動!通常召喚に加えて『シンクロン』モンスターを召喚できる!現れろ!『ジャンク・シンクロン』!」

オレンジ色のロボットが現れる! ATK1300

 

「『ジャンクシンクロン』の効果発動!蘇れ!『レベルスティーラー』!」

再びてんとう虫が現れる DEF0

 

「俺はレベル2の『シンクロンキャリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

2+3=5

 

「強さを求める魂が!新たな力を呼び覚ます!シンクロ召喚!疾走せよ!『アクセル・シンクロン』!」

 

胴体がバイクになっているロボットが現れる DEF2100

 

 

「バトル!『ジェットウォリアー』で『レベルスティーラー』を攻撃!アサルト・ブレイク!!」

戦闘機に変形したジェットウォリアーがレベルスティーラーを破壊する!

 

『その瞬間、罠発動!「スクランブル・エッグ」!自分のモンスターが破壊された時!デッキから「ロード・ランナー」を特殊召喚する!』

遊星のフィールドにピンク色の卵が現れて孵化…ピンク色の鳥が現れる DEF300

 

 

「ふっ…カードを1枚伏せてターンエンド!」

遊星LP4000 SP2

ジェットウォリアー アクセルシンクロン レベルスティーラー 伏せ1 手札1

 

 

 

『これがメタルナイト…いや!「2代目決闘王」の実力!遊星の布陣を粉砕した─!!長き時を経てもその力は錆びついていなかったぁ!!』

 

 

 

「まさか遊星と同じようなデッキを使ってくるなんて…!」

 

「ああ、前から底の見えない奴だとは思ってたが…力を隠してたなんてな…!」

遊星と遊海のライディングを見ながらアキとクロウが呟く…

 

「う〜ん…どっちを応援すればいいかわからないよ〜!2人とも頑張れぇ!!」

 

「もう、龍亞!どっちを応援するか決めてから応援してよ〜!」

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP2→3

『よし…!「デブリ・ドラゴン」を召喚!』

小さな星屑のドラゴンが現れる ATK1000

 

『「デブリドラゴン」の効果発動!墓地の攻撃力500以下のモンスターを特殊召喚する!蘇れ!「レベルウォリアー」!』

再び赤い星の戦士が現れる ATK300

 

『オレはレベル1の「ロードランナー」とレベル3の「レベルウォリアー」にレベル4の「デブリドラゴン」をチューニング!!』

 

1+3+4=8

 

『集いし願いが新たに輝く星となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!!飛翔せよ!「スターダスト・ドラゴン」!』

《キュオオオン!!》

遊星の相棒である星屑の竜が現れる ATK2500

 

 

「来たか『スターダストドラゴン』…なら、俺もいこうか!!『アクセルシンクロン』の効果発動!俺はレベル5の『ジェットウォリアー』にレベル5の『アクセルシンクロン』をチューニング!!」

 

『やはり…!!』

遊星の言葉を置き去りに遊海は加速する!

 

5+5=10

 

「集いし祈りが拳に宿り、未来を拓く力となる!希望を掴め!アクセル…シンクロォォォ─!!

スピードの限界を超え、遊海の姿が異次元に消え去る!

 

「煌け!『スターダスト・ウォリアー』!!」

遊海が異次元から帰還する…その背後には白銀のドラゴンを模した巨人の姿があった! ATK3000

 

 

『これが遊海さんのアクセルシンクロモンスター…!「閃珖竜」…いや、「スターダストドラゴン」にそっくりだ…!』

遊星は現れた巨人に目を奪われる…!

 

「どうする遊星?『スターダストドラゴン』では『スターダストウォリアー』には敵わないぞ?」

 

『それでも止まるわけにはいきません!バトル!「スターダストドラゴン」で「レベルスティーラー」を攻撃!シューティング・ソニック!』

白銀の息吹がてんとう虫を消し飛ばす!

 

『カードを2枚伏せてターンエンド!』

遊星LP4000 SP3

スターダストドラゴン 伏せ2 手札0

 

 

 

『デュエルは一進一退!だが、遊海の場には攻撃力3000の「スターダストウォリアー」がいる!遊星はその攻撃を凌げるのか〜!?』

 

 

 

『…なかなかに良いデュエルだ…お前を倒しただけはあるな、遊戯』

 

『うん、遊海はライディングデュエルは()()みたいだけど…それでも強いね…!』

 

『えっ?遊海先生ってライディングデュエルが苦手なんですか?あれだけ強いのに…?』

控えでライディングデュエルを観戦する遊戯の言葉に十代が問いかける。

 

『うん、遊海曰く「スピードスペル」が使い難いんだって…だからカードデザイナーのフェニックスさんにオリジナルカードを頼んだりしたらしいんだ』

 

『なるほど…遊海先生でも苦手なデュエルがあるんだなぁ…』

遊戯の言葉に十代は納得する…。

 

『フン、くだらん…あれだけ展開しておいてライディングデュエルが苦手だと言ったら、それこそ世界中のDホイーラーが泣くぞ…』

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP3→4

「バトル!『スターダストウォリアー』で『スターダストドラゴン』を攻撃!シューティングスター・フィスト!!」

音速の拳がスターダストドラゴンに迫る!

 

『リバース罠オープン!「シューティング・スター」!自分フィールドに「スターダストドラゴン」がいる時!相手の場のカードを破壊する!「スターダストウォリアー」を破壊!!」

スターダストドラゴンが強く羽ばたき、斬撃を飛ばす!

 

 

『(おそらく遊海さんはこの効果を躱してくるはず…!そしてそれが「無効にして破壊する」種類の効果なら…「スターダストドラゴン」で破壊できる!)』

遊星は今まで出会ったアクセルシンクロモンスターの特徴からスターダストウォリアーの効果を予測し、効果を発動する!

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

ズバン!

 

「くっ…やるな遊星!」

 

『え…』

遊星は思わず戸惑いの声を漏らす…躱されると思った斬撃がそのままスターダストウォリアーを切り裂いたからだ。

…遊星の予想は半分は当たっていたが…スターダストウォリアーの効果は『相手の特殊召喚を無効にし破壊する』効果…遊星は深読みし過ぎてしまったのだ。

 

 

「…なんだその顔は?まるで『てっきり効果を無効にすると思った』って顔してるぞ?」

 

『…(まさにその通りですとは…オレには言えない…!!)』

 

「図星かよ!?」

遊星の表情を読み取った遊海がツッコミの声をあげる…

 

 

 

『おっと〜?!遊海の切り札が破壊され、なんとも言えない空気が二人の間に漂っているぞ〜?大丈夫か二人とも〜?』

二人の空気を察したMCがフォローの実況をする…。

 

 

『…言ったそばからこれか…、呆れてものも言えん…』

 

『あははは…』

 

『珍しいな…』

 

 

 

「どうしたんだ?遊星の奴…」

 

「う〜ん…簡単に倒せないと思った『スターダスト・ウォリアー』が破壊できたから動揺してるみたいだね…」

 

「なんだそりゃ…」

 

「遊星!!正気に戻れ!いつまで茶番を続けるつもりだ!!」

両チームから呆れ声が聞こえてくる…。

 

 

 

 

「…コホン、よく『スターダストウォリアー』を破壊したな遊星!だが、まだだ!『スターダストウォリアー』効果発動!このカードが破壊された時!エクストラデッキからレベル8以下の『ウォリアー』モンスターを特殊召喚できる!現れろ!『ロード・ウォリアー』!!」

 

『なにっ!?』

気を取り直した遊海の場にウォリアーの王が現れる ATK3000

 

 

「バトル!『ロードウォリアー』で『スターダストドラゴン』を攻撃!ライトニング・クロー!」

鋭い鉤爪がスターダストドラゴンに迫る!

 

『やらせない!リバース罠オープン!「くず鉄のかかし」!』

鉄のかかしが攻撃を防ぐ!

 

 

「やるな!なら…メイン2!『ロードウォリアー』のレベルを1つ下げ『レベルスティーラー』を復活!」

三度てんとう虫が現れる DEF0

 

「さらに『ロードウォリアー』の効果発動!デッキから現れろ!『アンノウン・シンクロン』!」

単眼の丸いロボットが現れる DEF0

ロードウォリアー ☆8→7

 

 

「俺はレベル7の『ロードウォリアー』にレベル1の『アンノウンシンクロン』をチューニング!」

 

7+1=8

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に轟け!!シンクロ召喚!現われろ!『閃珖竜スターダスト』!」

《キュオオン!》

光を纏い星屑の竜と鏡写しの希望の竜が現れる! ATK2500

 

 

「俺はこのままターンエンド!」

遊海LP4000 SP4

閃珖竜 レベルスティーラー 伏せ1 手札2

 

 

 

「思い出すな遊星!フォーチュンカップでお前と戦った時の事を!」

 

『はい…!遊海さんが正体を隠しながらヒーローをしていた時…あの時はオレが勝ちました、でも…それ以来オレは貴方に勝てていない!』

二人は初めてシグナーとして戦ったフォーチュン・カップを思い返す…奇しくもフィールドの盤面はあの時とよく似ていた…。

 

「あの時はだいぶ加減してたからなぁ…でも、今日は本気だ…!お前もそうだろう遊星!あの時からお前は成長した!…俺に見せてみろ!お前の成長の証を!」

 

『はい!見ていてください遊海さん!…今日こそ貴方に勝ってみせる!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』SP4→5

『「Sp-エンジェル・バトン」を発動!カードを2枚ドローし、1枚を墓地へ!』

 

墓地送り

スターダスト・シャオロン

 

『そして手札から「ターボ・シンクロン」を召喚!』

緑色のエンジン型のロボットが現れる ATK100

 

『さらに墓地の「スターダスト・シャオロン」は自分の場に「スターダスト・ドラゴン」がいる時!特殊召喚できる!』

小柄な西洋の龍が現れる DEF100

 

 

『オレはレベル1の「スターダストシャオロン」にレベル1の「ターボシンクロン」をチューニング!』

 

1+1=2

 

『集いし願いが新たな速度の地平へ誘う!光さす道となれ!シンクロ召喚!希望の力…『フォーミュラシンクロン』!!』

 

遊星の進化の証であるF1型のロボットが現れる DEF1500

 

『「フォーミュラシンクロン」がシンクロ召喚に成功した事で効果発動!カードを1枚ドローする!そしてオレはレベル8の「スターダスト・ドラゴン」にレベル2シンクロチューナー「フォーミュラシンクロン」をチューニング!』

 

「来るか!!」

今度は遊星が爆発的に加速する!

 

8+2=10

 

『集いし夢の結晶が新たな進化の扉を開く!光さす道となれ!アクセルシンクロォォォ!!!』

 

遊星はスピードの限界を超え、異次元へと消え去る…そして希望の力と共に再び現れる!

 

『生来せよ!「シューティング・スター・ドラゴン」!!』

《ギュアアアン!!》

咆哮を轟かせながら遊星の進化の証が現れる! ATK3300

 

 

『いきます!「シューティングスタードラゴン」の効果発動!デッキを5枚めくり、その中のチューナーの数だけ攻撃できる!』

遊星がデッキトップに手をかける!

 

めくったカード

 

エフェクトヴェーラー

Sp-ヴィジョンウィンド

ボルトヘッジホッグ

ハイパーシンクロン

集いし願い

 

 

『チューナーは2枚!2回攻撃ができる!…バトル!「シューティングスタードラゴン」で「閃珖竜」を攻撃!シューティング・ミラージュ!』

 

「『閃珖竜』の効果発動!1ターンに一度戦闘・効果で破壊されなくなる!波動音壁(ソニックバリア)!…ぐぅ!!」

バリアが一撃目を受け止めるが攻撃の余波が遊海を襲う!

遊海LP4000→3200

 

『2回目の攻撃!』

《ギュアアアン!!》

《キュオオオ!?》

 

シューティングスター本体が閃珖竜に突撃…バリアを破られた閃珖竜は爆発した…!

 

「うおぉぉぉ…!!」

遊海LP3200→2400

 

 

『よし…!オレはこのままターンエンド!』

 

遊星LP4000 SP5

シューティングスター 伏せ1 手札1

 

 

 

『おおっ〜と!!遊星が遊海に先制!ライフを大きく削った─!!遊星はこのまま決闘王2人を倒す偉業を成し遂げるのかぁぁ!?』

 

 

「遊星、たしかに見せてもらったぞ…お前の進化の力を…ならば、俺も応えよう!このターンで…決着を着ける!!」

 

 

 

「俺のターン!…ドロー!!」SP5→6

「相手の場にレベル5以上のモンスターが存在する時!手札の『ジャンク・ジャイアント』は特殊召喚できる!」

肩にドリルを背負った巨人が現れる ATK2000

 

「そして『ジャンクジャイアント』のレベルを下げる事で墓地の『レベルスティーラー』を復活!」

再びてんとう虫が現れる DEF0

ジャンクジャイアント ☆6→5

 

「そして『ジェット・シンクロン』を召喚!」

青と白のジェットエンジン型ロボットが現れる ATK500

 

「俺はレベル1の『レベルスティーラー』にレベル1の『ジェットシンクロン』をチューニング!」

 

1+1=2

 

「デュエルを新たな地平に導け!シンクロ召喚!『フォーミュラシンクロン』!」

遊星も使ったレーシングマシンが現れる DEF1500

 

 

『なっ…!?』

 

「『フォーミュラシンクロン』の効果発動!1ドロー!…(来たか…まさか、このカードが役に立つなんてな…!)そして墓地の『レベルスティーラー』の効果発動!再び『ジャンクジャイアント』のレベルを下げて復活!」

遊海はドローしたカードに運命を感じながら何度目かのてんとう虫を特殊召喚する! DEF0

ジャンクジャイアント ☆5→4

 

「俺はレベル1の『レベルスティーラー』にレベル2の『フォーミュラシンクロン』をチューニング!」

 

1+2=3

 

「霞の谷を守る怪鳥よ!敵を惑わせ!シンクロ召喚!『霞鳥クラウソラス』!」

巨大な緑色の怪鳥が現れる DEF2300

 

「そしてリバースカード『リビングデッドの呼び声』発動!墓地の『アクセルシンクロン』を特殊召喚!」

再び赤いバイク型ロボットが現れる DEF2100

 

「そして『アクセルシンクロン』のレベルを一つ下げる事で『レベルスティーラー』を再び復活!そして『レベルスティーラー』を墓地に送る事で墓地の『ジェットウォリアー』は特殊召喚できる!!」

てんとう虫が現れたがすぐに姿を消し、再び戦闘機のロボットが現れる ATK2100

アクセルシンクロン ☆5→4

 

 

「いくぞ遊星!これが俺の全力だ!!俺はレベル3の『クラウソラス』とレベル5の『ジェットウォリアー』にレベル4シンクロチューナー『アクセルシンクロン』をチューニング!!」

 

3+5+4=12

 

『なっ…!?レベル12のシンクロモンスターだと!?』

遊星は遊海の繰り出そうとするシンクロモンスターのレベルを見て驚愕する!

 

「遊星、俺はお前の境地を真似する事はできない…だが!俺にも『決闘王』を継ぐ者としてのプライドがある!!うおぉぉぉ!!」

遊海は爆発的にスピードをアップしていく!

 

 

古の天空を彩る星々よ…神雨となりて世界を祓え!

 

「超進化…デルタアクセルシンクロ─!!!」

 

遊海の速度は音速を突破…光の速さを超え、世界から消え去る!

 

 

「光臨せよ!『聖珖神竜 スターダスト・シフル』!!」

《ギュオオオン!!》

遊海の叫びと共に神々しい光を纏い、閃珖竜の究極の姿が現れる! ATK4000

 

 

『「聖珖神竜」…!これが遊海さんのドラゴンの最強の姿…!』

遊星は現れた光のドラゴンに圧倒される…その力は奇跡の結晶である『シューティング・クェーサー・ドラゴン』に匹敵していた…。

 

 

「バトルだ!『スターダストシフル』で『シューティングスタードラゴン』を攻撃!」

 

『させません!「シューティングスタードラゴン」の効果発動!このカードを除外する事で相手モンスターの攻撃を無効にする!!』

シューティングスターが異次元に逃れようとする!

 

「『スターダストシフル』の効果発動!相手モンスターが効果を発動した時!その効果を無効にし、相手フィールドのカードを破壊する!珖波動反撃(ソニック・シャイン・リバース)!!」

スターダストシフルの展開した魔法陣がシューティングスターを拘束…さらに伏せられたくず鉄のかかしを破壊しようとする!

 

『やらせない!!「シューティングスタードラゴン」の効果発動!相手が自分のカードを破壊する効果を発動した時!その効果を無効にし破壊する!』

 

「まだだ!『スターダストシフル』のさらなる効果発動!このカードがフィールド上にいる時!俺の場のカードはそれぞれ1回ずつ戦闘・効果では破壊されない!よって『シューティングスタードラゴン』の効果は不発になる!!波動聖句(ソニック・バース)!」

 

『なにっ!?』

激しい効果の撃ち合いの末にお互いに効果が相殺される!

 

 

「いけ!『スターダストシフル』!超新星撃(シューティング・ノヴァ・ブラスト)!!」

 

『まだだ!リバースカード「くず鉄のかかし」発動!攻撃を無効にする!!』

凄まじい光の奔流をかかしが受け止める!

 

 

「遊星…俺はこの2年間、お前と共に戦う事ができてよかった…お前は俺の…この街の誇りだ!」

 

『遊海さん…それはオレのセリフです!貴方のようなデュエリストと共に戦う事ができて…オレはとても嬉しかった!』

シフルの光線とかかしが拮抗するなか、遊星と遊海はお互いを讃え合う…

 

「そうか、それならよかった!遊星…この一枚で決着を着ける!()()()()発動!『ダブル・アップ・チャンス』!!」

 

『なに!?』

 

「「「「「なんだって!?」」」」」

 

『『『なんだと!?』』』

   

遊海の発動したカードに5D'sや伝説の決闘者チーム、観客達も驚愕する…現在行われているのは『スピードワールド2』のもとでのライディングデュエル…よって『Sp-』以外の魔法を発動した遊海に2000のダメージが襲い掛かる!!

 

「っあ"あ"あ"あ"あ"…!!」バチバチバチ!!

遊海LP2400→400

 

「これが俺のケジメ…俺の目指す未来の標!!このカードは自分のモンスターの攻撃が無効になった時に発動できる!!その効果により『スターダストシフル』はもう一度バトルでき、その攻撃力は倍になる!!」

スターダストシフル ATK4000→8000

 

『そのカードは…!』

その瞬間、遊星は遊海に重なるようにもう1人の男の姿が見えたような気がした…。

 

「『スターダストシフル』で『シューティングスタードラゴン』を攻撃!」

スターダストシフルに凄まじいエネルギーが集中…そして解き放たれる!

 

 

超新星撃(シューティング・ノヴァ)爆発(エクスプロージョン)!!」

 

 

そして光がスタジアムを飲み込んだ…

 

 

 

遊星LP0

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

「…頑張れよ遊星、お前が目指す未来の為に俺も頑張るからな…」

 

『ありがとうございます、遊海さん…とてもいいデュエルでした!』

デュエルが終了しスタジアムが静寂に包まれる中…Dホイールを停めた2人は互いに握手を交わす…。

 

 

『き、決まった─!!激しい魂のぶつかりあい…文字通り頂上決戦を制したのは!!不死鳥の如く復活を遂げた最強の男!白波遊海だぁああああああ!!』

 

 

「「「うわあああああ!!!」」」

MCの勝利宣言と共にスタジアムではスタンディングオベーションが巻き起こる…こうして決闘王・白波遊海は復活を果たしたのだ…。

 

 

 

 

 

「いいデュエルだったぜ遊星!でも残念だったな!」

 

「まさか、あのタイミングで魔法カードを使うとはな…いくら何でも無茶が過ぎる…!」

 

「ああ、でもおかげでいい気分転換になった…遊海さん達に感謝しないとな」

控えに戻った遊星をジャック達が出迎える…負けこそしたが…遊星の顔は晴れやかだった。

 

 

 

『見事なデュエルだったぞ遊海、2代目決闘王完全復活だな!…次のシーズンからプロリーグに復帰してもらう、しっかりと用意しておけ!』

 

「了解です、海馬社長!…そしてありがとうございます、俺のワガママを聞いてもらって…」

 

『ふん、気にするな!お前の復活で町の住民達はさらなる希望を手にした…お前は不動遊星とはまた違う形で人々を救ったのだ!その報酬と思えば高くはない!』

 

「遊海先生!プロリーグで待ってるぜ!」

 

「ああ、待ってろ十代!お前の玉座…すぐに獲りにいく!」

 

『頑張ってね!遊海!』

 

「ああ…!俺の戦いはここからだ!!」

 

 

 

 

 

 

こうしてエキシビジョンデュエルは終了した…白波遊海復活のニュースはまたたく間に世界を駆け巡り、遊海はプロの戦いの中に再び身を投じたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、5D'sの物語は最後の1ページを迎える…。



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光差す未来へ〜キズナ繋いで〜

大変長らくお待たせいたしました…!

5D's編最後の1ページ…どうか見届けてください!


アーククレイドルの事件から1年が経ったこの日…ネオ童実野シティは記念すべき節目を迎えた…。

 

 

 

「コホン!この度治安維持局は解体され、新たに市長制度が発足されました!そして私、イェーガーがこの街の初代市長を務めさせていただく事になりました!」

 

「「「わぁぁぁ!!」」」パチパチパチパチ

 

 

旧治安維持局・現ネオ童実野シティ市役所前でイェーガーが演説を行う…。

イリアステルとの戦いを乗り越えたネオドミノシティはついに長い間街を治めていた治安維持局を解体…普通の街と同じように市長制度を再開する事になった。

…余談だが、海馬社長は選挙に立候補せずにイェーガーの後援に回った…その影響と人柄もありイェーガーは市長になる事ができたのだ。

 

 

「あ〜あ、これで治安維持局もお役ごめんか…」

 

「これでいいのよ牛尾君、この街にもう権力は必要ない…この街は新たな未来を歩み始めるのよ!」

セキュリティ改めネオドミノシティ警察の所属となった牛尾と狭霧が言葉を交わす…ネオドミノシティは真に一つになり、お互いに手を取り合いながら歩む街になったのだ。

 

 

「私には夢があります!それはこの街をより良い街にし、人々が助けあって暮らす街にする事です!…しかし、私1人ではその夢は達成する事はできません…どうか皆様の力を貸してください!この街をより良い街にしようではありませんか!」

 

 

「「「おおぉぉぉ─!!」」」パチパチパチパチパチ!

 

イェーガーの演説に人々は惜しみない拍手で応えた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「モーメント起動準備開始…遊星粒子、シリンダー内に90%まで増加…!」

 

『システムチェック、各ポイントにおけるACB・ACCオールクリア!』

 

「ネットワーク・トランスレーターオールグリーン!」

 

場所は変わり…ここは、ネオドミノシティのモーメント研究所…ここでも一つの節目を迎えようとしていた…。

 

 

「モーメント起動準備完了…起動します!」

 

ブゥゥン…キィィン─…!

薄暗い研究所内を照らすようにモーメントが起動する…!

 

 

「モーメント正常に起動!エネルギー運動システム…異常なし!『チーフ』!最後のコードを!」

 

「ああ…!」

モーメントの様子を見守っていた青年が端末に歩みよる、そして新システムを起動するコードを打ち込む…

 

 

─Good Days─

 

 

『認証コード確認!メインフレーム「フォーチュン」…起動するよ!』

その瞬間、研究所に希望の灯が灯される…モーメントを覆うように造られたモーメント制御フレーム…その名は

「フォーチュン」…それは世界に新たな未来が訪れた瞬間であった。

 

 

「おめでとうございますチーフ!!メインフレーム・フォーチュンの完成です!!」

 

「ああ!完成させる事ができたのはみんなのおかげだ!ありがとう!!」

 

「「「やったぁ〜!!」」」

研究所の内が歓声に包まれる!

 

 

『よくやったな不動遊星…これでこの街は…世界は新たな未来を歩む事ができる!』

 

『君はすごい事を成し遂げたんだ!』

 

『…不動遊星、お前の…お前の努力と絆が新たな未来を切り拓いたのだ…おめでとう…!』

 

「アポリア…ブルーノ…パラドックス…いいや、オレ1人の力じゃない…お前達が未来の技術を指導し、研究員のみんなが協力してくれたからこそだ」

モーメント研究所のチーフとなった遊星にアポリアとブルーノ、そして復元されたパラドックスが祝福の言葉を伝える…遊星の発明によりこの世界がモーメントによって破滅する可能性は限りなくゼロに近くなったのだ。

 

 

 

「そう謙虚ならなくても良いのですよ?『不動博士』、あなたの発明は本当に未来への希望になるのですから」

 

「イェーガー…やめてくれ、『博士』なんて…オレはそんな柄じゃない…」

就任式典を終えたイェーガーが駆けつけ遊星に話しかける…。

 

「いえいえ…貴方は近い将来、お父さまを超えるでしょう遊星」

イェーガーはモーメントとフォーチュンを見上げながら話を続ける。

 

 

「このフォーチュンによってネオ童実野シティのライフラインは全て統括され、都市機能を常に正しい方向に導く事でしょう…そしていずれ、世界中の都市と繋がり…この街が世界を牽引していくのです!」

 

「ああ、これでゾーンの言っていた『破滅の未来』に突き進む事もなくなる…」

イェーガーの言葉に遊星はフォーチュンを見上げながら答える…モーメントを囲むように設置されたフォーチュン…その造形はあの日、ネオドミノシティを破壊しようとした「アーククレイドル」をモチーフとしたものになっている…「未来に起きた悲劇を忘れない」…そんな想いを込めて遊星はフォーチュンを設計したのだ。

 

 

『フッ…ドングリピエロもいい事を言うではないか』

 

「ちょっと待ちなさいアポリア!?その言い方はないでしょう!?私はこの街の市長になったのですよ!もう以前の私ではありません!」

アポリアがイェーガーをからかう、以前であれば考えられない事だが…ブルーノはもとよりアポリアもパラドックスもこの世界に馴染んでいた…。

 

 

『悪かった、ジョークだ』

 

「もう!冗談でも言っていい事と悪い事がありますよ!!」

 

『フフッ…でも、遊星…君は本当の本当にすごい事を成し遂げた…本当にすごいよ』

 

「いいや、オレ1人では無理だった…この『チー厶』だからこそできたんだブルーノ…いいチームだった」

 

「チームですか…貴方らしい言い方ですね、…『不必要な人間はいない』…かつての貴方の言葉です、その信念によって貴方はこの街を悪しき運命から解き放ってくれた…この街はこれで真の自由を手にする事ができるのです!」

 

「そうなる事を願ってる、それが2人との約束だからな…」

遊星は目を閉じて思い返す…全てを懸けて未来を変えようとした『英雄』との約束を…

 

 

 

「そして…最後に謝罪を…、完成を急がせてしまい申し訳ありません…ワタシのワガママのせいでこの半年無理をお願いしてしまいました…どうかゆっくり休息を取ってください、そして…貴方の進むべき未来を歩んでください!…ですが…」

 

「?」

言葉を言い淀んだイェーガーに遊星は首を傾げる

 

「…本音を言えば、貴方にはこれから先もこの街と共に歩んでほしい…」

 

「えっ…」

遊星はイェーガーの言葉に目を見開く…

 

「…コホン、少し言い過ぎましたね…では、ワタシはこれで失礼します」

そう言ってイェーガーは研究所を後にした…。

 

 

 

 

『不動遊星、別に市長の言葉を気にする事はないのだぞ?未来とは他人に決められるものじゃない…それはお前自身がよくわかっているはずだ…』

 

「パラドックス…ああ、ありがとう」

考え込む遊星にパラドックスが語りかける…そこに…

 

 

ピピピ!

 

「チーフ、ネオドミノシティ・ハイウェイパトロールのクロウ様から連絡が入っております、お繋ぎしてよろしいですか?」

受付の職員から遊星に取り次ぎの連絡が入る…

 

『むっ?ならば我らは席を外そう…いこうブルーノ、パラドックス』

 

「すまない3人とも…クロウと連絡を繋いでくれ」

 

 

 

 

 

『よぉ!久しぶりだな遊星!まったく…電話するにも取り次ぎが必要なんてめんどくせぇところだな!…忙しかったか?』

ディスプレイに警察の制服を纏ったクロウが映し出される、クロウは牛尾の指導もあり「旧サテライト出身者」かつ「マーカー」付の人間で初めて警察…もとい、Dホイール取締り部隊・ハイウェイパトロールに合格したのだ…。

これによりクロウは旧サテライトに暮らす子供達に大きな夢を与えたヒーローと呼ばれている…。

 

「いいや、ちょうどメインフレームが完成して一息ついたところだ」

 

『おぉ!?すげぇじゃねぇか!やったな遊星!』

 

「ああ、ありがとう…そっちの調子はどうだ?()()()がいなくなって少し荒れてる奴もいるんじゃないか?」

 

『いや…あの人が最後に街中のギャングだの暴走族を締めてくれて至って平和さ!たま〜にハメ外してる奴もいるけどな!…でも、この街も相当変わったよな…まさかマーカー持ちが取り締まる側になるなんてよ!』

 

「フッ…それを言ったらオレはマーカー持ちで初の研究所のチーフだぞ?…それに()()()()んじゃない…オレ達が()()()んだ、オレ達がこれからの未来を作るんだ!」

 

『そうだな…「チーム5D's」っていう絆で未来を切り拓いていくんだな…』

 

「…?そういえばクロウ、今日はどうしたんだ?何か用事があるんじゃないか?」

遊星はクロウの態度に少し違和感を感じながら問いかける。

 

『えっ…ああ、いや…別に大した用はねぇんだ、しばらくお前の顔を見てなかったからよ…』

 

「そうか…そうだクロウ、久しぶりにみんなで集まらないか?週末に食事でもしよう!」

 

『おっ!そりゃいい考えだ!…と思ったが…問題児がいるな…』

 

「…ジャックか…今度はどこに行ったんだ?」

 

『さぁな…あのデュエルが終わってすぐにいなくなったからなぁ…』

遊星とクロウは顔を見合わせる…エキシビジョンデュエルの後、海馬社長にボコボコにされたジャックは「武者修行の仕直しをする!」と言って姿を消してしまったのだ。

 

 

『一応メールは打つが、あの人にも頼んでおくか…まったく、ジャックはオレ達の絆ってもんがわかってるのかね…?』

 

 

 

 

 

 

数日後…

 

 

 

『遊星!急がないと遅刻だよ!』

 

「ああ…!少しのんびり買い物をし過ぎてしまった…!」

夕食会の日…遊星とブルーノはポッポタイムへと急いでいた…。

 

 

 

『よし到着ー!…って誰もいないし…』

 

「ん?…そうか、きっとみんなも用事があるんだろう…少し休んで準備に取り掛かろう…」

ガレージに駆け込んだ遊星達だったが誰も来ていなかった…遊星は郵便受から手紙を取り出し階段を降りる…。

 

 

『うわぁ…またいっぱい来たねぇ、「IFSリーグ」に「オメガリーグ」、「ペガサスリーグ」に「サイバー流ライディングリーグ」…どれも一流のプロリーグだよ…』

 

「ああ…ん?写真立てが…」

各プロリーグからの招待状を机に置いた遊星は倒れていた写真立てを手に取る…そこにはエキシビジョンデュエルの日に撮った5D'sの集合写真があった…。

 

 

ガチャ!

 

 

「「遊星!!」」

 

「ごめん!遅れちゃったわ!」

 

「アキ!龍亞!龍可!久しぶりだな!」

ガレージのドアが開く、そこにはちょうど合流したのであろうアキ、そして少し背が伸びて大人びた龍亞兄妹の姿があった、そして…

 

 

ガラガラ!

 

「わりぃ遅れた!報告書書くのに手間取っちまった!」

 

『クロウ!お疲れ様!ちょうどみんな来たところだよ!』

少し遅れてシャッターが開いてクロウが現れる、そして集まったメンバーで夕食の準備を始めた…。

 

 

 

「あれ?そういえばアポリアとパラドックスは?2人も誘ったんだよね?」

夕食のバーベキューを食べながら龍亞が遊星に問いかける…。

 

「…実は…アポリアとパラドックスはもういない…未来に戻ってしまったんだ」

 

「「「えぇっ!?」」」

遊星の思わぬ言葉に龍亞達は驚く

 

「どうしてそんな急に…」

 

『…アポリア達はこの時代での暮らしを経験して…未来の故郷を見捨てられなかったんだ、だから…あの未来を少しでも良くする為に未来に帰る事にしたんだ…』

 

 

 

 

数日前…

 

 

 

「未来に帰る…!?それは本気なのか!?」

数日前の研究所…そこでは遊星とアポリア達3人が話し合いをしていた…。

 

『ああ、これは3人で話し合って決めた事だ…まぁ、ブルーノだけはこちらに残るらしいがな…』

 

『例え滅びていようとあの未来は私達の故郷だ…それに、あの世界で眠る我が友に寂しい思いをさせる訳にはいくまい』

 

「パラドックス…アポリア…」

遊星はパラドックス達の目を見てその意志の強さを悟る…。

 

「なら、せめて龍亞達に会ってやってくれないか?」

 

『…それはできない、会ってしまえば別れが惜しくなる…次にいつ来られるかはわからんからな…私達はこのままゾーン達のもとに戻る…だが、予感がするのだ遊星』

 

「予感…?」

 

『ああ、我らはきっとまた会える…そんな予感がな…さらばだ遊星、そしてブルーノ…私達は希望を捨てはしない!我らは歴史の果てでこの世界を見守ろう!』

 

「…ああ、今までありがとうアポリア、パラドックス…また会おう!」

 

そしてアポリア達は時を超え自分達の時代へ戻っていった…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

「ちぇっ…アポリアも冷たいな〜、一言ぐらいお別れを言いたかったよ…」

 

「わたしも…」

 

『大丈夫だよ2人とも、きっとアポリア達はまた会いに来る…だから待っていてあげてほしいな』

遊星の話を聞いてむくれる龍亞達をブルーノが宥めた。

 

「未来を良くする為か、あいつららしいぜ…そういえば、なんでブルーノはこっちに残ったんだ?」

 

『ボクもそのうち戻ろうと思ってるんだけど…とりあえず「フォーチュン」の運用が安定して遊星の行く先を見届けてからと思ってね!…そういうクロウはどうなのさ?知ってるんだよ?海外のプロリーグのスカウトが来てるって事!』

 

「ゲッ…誰から聞いたんだよそれ!?」

ブルーノの一言にクロウは表情を変える…

 

『誰って…スカウトマン本人からだよ、クロウを追いかけ回してる変なDホイールがいたからちょっと、ね…!』

ブルーノは妖しい笑みを浮かべる…

 

「(そういえばこの前会った時、ボロボロだった事があったな…ブルーノにやられたのか…えげつねぇー…)」

実はクロウ、ここしばらくとあるプロリーグのスカウトマンから熱心なアプローチを受けていた…世界一になったライディングチームの一員であるから無理もないだろう…。

 

 

「よかったじゃないかクロウ!…そういえばアキにもプロリーグからオファーが来ているんだろう?それだけじゃない、海外の医大からの留学の誘いも…」

 

「えっ、どうして……パパ達ね!?」

 

「ああ、最近アキが悩んでいるから相談に乗ってほしいと頼まれたんだ」

アキにも同じくプロリーグからのオファーが来ていた…しかし、アキにも新たな夢ができた…それは「医師になる事」、今までの戦いを経てアキが見出した新たな夢だった。

 

 

「わぁ…アキ姉ちゃんもクロウもすごいなぁ……ねぇ遊星、おれ達も今日メールがあったんだ…」

 

「お父さん達から『一緒に暮らさないか』って…」

 

「「『なんだって!?』」」

 

「よかったじゃねぇか!やっぱり家族は一緒じゃなきゃな!」

龍亞と龍可の両親は多忙な生活を送り、世界中を飛び回っている…そんな両親から『一緒に暮らそう』と連絡がくれば2人の驚きも大きいだろう…。

 

 

「でもね、それにはネオドミノシティを離れなくちゃならないの…今はアメリカにいるからって…」

 

「まだ決めた訳じゃないんだけどさ、おれもみんなと一緒にいたいし…この街が好きだから…」

 

「龍亞…龍可…」

遊星達は顔を沈ませる…街を離れプロデュエリストになるのか、医師を目指すのか、両親と暮らすのか…世界の未来を切り拓いた先に待っていたのは…「自分達の未来」の選択だった…。

 

 

 

 

「フン、くだらんな!何を迷う必要がある!」

 

 

「「『ジャック!?』」」

凛とした声に遊星達が目を向ける…そこには武者修行から帰還したジャックの姿があった。

 

「お前達!俺はネオドミノシティを離れる事を決めた!世界最大のプロリーグ・ライドAで俺は世界のキングを目指す!!」

 

「「『なんだって!?』」」

ジャックの突然の宣言に遊星達は唖然とする…海馬社長に敗れ、そのプライドをへし折られたジャック…しかし、彼はそこから立ち直り…世界の頂上を目指そうとしているのだ…!

 

 

「ジャック!前から思ってたけど何言ってるんだよ!キングを目指すって…オレ達5D'sの絆はどうなっちまうんだ!!」

クロウがジャックに詰め寄る…クロウ達の決断できない原因、それはこの街で紡いだ「絆」と離れたくないという想い…言い換えれば「絆」という糸に縛られてしまっているのだ。

その絆の糸を外し、外に飛び出そうとしているジャックは流石とも言えるだろう…。

 

 

「俺達はチームで極める事は極めた!ならば次は当然、自分一人の力で世界を切り拓く事だ!…俺は世界の大きさを知った…ならば俺は自分の力を試したい!!それを邪魔するのであれば…例えチーム5D'sの絆であろうと…蹴散らしていく!!」

 

「ジャック、お前…」

クロウ達はジャックの言葉に圧倒される…その気迫は伝説の決闘者達に引けを取らない程だった…。

 

 

「……ジャック、オレと決闘しよう」

 

「『「えっ!?」』」

 

「ほう…!」

遊星は少しの間悩み…ジャックに声をかける…!

 

「デュエルはいつもオレ達を導いてくれた…オレ達が迷っているならその答えは…デュエルの中で見つけるしかない!!」

 

「いいだろう…望むところだ!世界へ飛び出す前に、貴様を倒さなければならんからな!!」

ジャックと遊星は睨み合う…その瞳に強い意志を宿しながら…!

 

 

 

ゴオォォ─!!

 

『うわっ!風が…!』

その時だった、開け放しになっていたガレージのシャッターから強い風が通り抜ける!

 

 

《キュオオオン!!》

 

「よいしょっと!!遅れてすまん!プロの試合が長引いた!…って、タイミング悪かったか?」

 

「そうみたいですね〜」

 

「「『遊海!翠さん!』」」

 

「遊海さん!」

強い風…もとい、閃光竜の羽ばたきと共に現れたのは最強の決闘者・白波遊海と翠だった、翠の手には手製のオードブルセットがある…。

 

 

 

「この感じは…それぞれの悩みを解決する為に遊星とジャックがデュエルしようとしてたってところか?」

 

『大当たり…遊海って読心術使えたっけ…?』

 

「少しだけな?さて…デュエルするのはいいけど、腹ごしらえはしっかりしておけよ?」

 

「ジャック君もお腹空いたでしょ!唐揚げいっぱい作ってきたから!」

 

「フン…急ぐ必要はあるまい、遊星…明日朝一番だ!そこで決着を着ける!!」

 

「ああ、わかった…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…今日は忙しいのにありがとうございました」

 

「ん?気にするな遊星、ちょうど明日からしばらくはオフなんだ」

食事会が一段落した頃…外で風に当たっていた遊海のもとに遊星が訪れる。翠はクロウやアキと片付けを、ジャックはデッキ調整…双子達は夢の中である…。

 

 

「遊海さん、何年か振りのプロリーグはどうですか?」

 

「う〜ん…やっぱり俺の時代からはレベルが上がってるな…まぁそれでも一部の奴を除いて俺の敵じゃないさ」

 

「さすがです…」

遊海はエキシビジョンデュエルの後にスタンディングデュエルのプロリーグへと電撃復帰を果たした、デュエル界は騒然となり「決闘王」を倒して名を上げようと挑戦者が殺到したが…遊海はそのほとんどを返り討ちにした。

その様子を見て新たに付けられた二つ名は「赤き不死鳥」…奇しくもフレアと同じものだった。

 

 

「みんなから悩み事は聞いたぞ?クロウは海外リーグからのオファー、アキは医大への留学…龍亞達はご両親との同居…ジャックの件は置いといて…遊星、お前も悩んでるんじゃないか?」

 

「…はい、『フォーチュン』が完成した事でオレは目標を達成しました…それで…その先がまだ決まらないんです…」

 

「いわゆる『燃え尽き症候群』だな…遊星、お前ならこの街で人々の為の研究者になる事やプロリーグに入る選択肢もある…誘いは来てるんだろ?」

 

「はい…だから、その決断をする為にオレはジャックと戦います!オレの人生はデュエルと共にありました…だから、きっと納得できる答えが出ると思う!」

それが遊星の心からの言葉だった…。

 

「そうか…まっ、じっくり悩め!その悩んだ先に見つけた光がお前の答えさ…明日のデュエル、楽しみにしてるからな!」

 

「あっ…待ってください遊海さん!」

 

「ん?どうした?」

ガレージに戻ろうとした遊海を遊星が呼び止める…遊星は真剣な表情で遊海を見つめている…。

 

「遊海さん…ずっと聞きたかった事があるんです…!答えてもらえますか…?」

 

「ああ、いいぞ遊星…今日は何でも答えよう」

 

「…遊海さん、貴方は…()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

「遊海さん…貴方は…この未来を知っていたんじゃないですか?」

 

「…どうしてそう思うんだ?」

遊星の問いかけを聞いた俺は遊星にその理由を聞く…

 

 

「ずっと考えていたんだ…『もし遊海さんがいなかったら』と…もし貴方がいなければゼロ・リバースの時点で海馬社長や遊戯さん、それにさらにたくさんの人々が死ぬ事になった…それにピアスンやトビーも命を落としていた…でも、そうはならなかった…貴方がみんなを救ったからだ、そしてイリアステルとの戦い…遊海さんが対策をしてくれていたおかげで街の人々はスムーズに避難できた……それで思ったんだ、貴方は何らかの方法で未来の出来事を知っていて…それを元に動いていたんじゃないかって…」

 

「やっぱりお前は天才だな遊星…お前の言う通りだ、()()()()()()()()()()

 

「…やはり、そうでしたか」

遊星はそう言うと星空を見上げる…

 

「俺は転生者だ…お前達の歩む物語を知っていた、俺はその知識でお前達の物語をより良い未来に導こうとしたが…大きな問題が起きた…」

 

「…ラプラスの事ですね…」

 

「そうだ…『どこかで何かを間違えた俺』…その介入で俺は深い傷を負い、お前達を直接導く事ができなくなった…それでも俺はお前達を…この世界を守りたかった…!」

 

「遊海さん…」

その瞬間、遊星は察した…遊海が「ゼロ・リバース」が起きる事を知っていて…なおかつ、その発生は防げなかった…ならば遊海は…人々が死んでいくのを見ている事しかできなかった遊海の抱いた絶望はどれほど大きかったのかと…。

 

「…遊星、これから先はお前が…お前達が決める未来だ…見せてくれ、お前達が掴んだ未来の輝きを…!」

 

「はい…!!」

遊星はまっすぐ俺を見ながらそう応えた…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

翌朝、霧深いネオ童実野港にDホイールに乗った遊星とジャック、そして仲間達の姿があった…。

 

「(遊星とジャックが戦う…ガキの頃から何度も見てきたはずなのに…手が震えやがる…!)」

遊星とジャックの戦いを前にクロウは震える自分の手を見つめる、それは武者震い…クロウは遊星とジャックの闘気に圧倒されていた…。

 

 

「ジャック…お前と全力でデュエルするのはフォーチュン・カップ以来だな…」

 

『ああ、その間に色々な事があったが…まさか俺がお前と共に様々な敵と戦う事になるとはな…』

 

「ああ…だが、オレは楽しかった…!」

 

『フッ、俺もだ…!』

遊星とジャックは戦いを前に思い出を語り合う…。

 

 

自分達の運命を知ったフォーチュン・カップ

 

五千年に渡る光と闇の戦いに巻き込まれた冥界の王との戦い

 

仲間達と共に世界一を目指したWRGP

 

…そして破滅の未来を変える為にやって来たイリアステルとの戦い…幾つもの戦いを乗り越えた先に遊星達は未来を掴み取った、そして…最後の戦いは…

 

 

『遊星…俺はこの時を待ち望んでいた…再び、お前とデュエルする事を!!』

 

「オレも同じだ…オレも心の何処かでそう思っていた…!」

仲間であり好敵手との戦い…それを前に2人は心を燃え上がらせる!

 

 

『もう俺達のデュエルを邪魔立てするものは何もない!!』

 

「ああ、全てをぶつける…オレのデュエルを!!」

 

『無論だ!俺もお前に全てを叩きつける!デュエルに取りつかれた…ジャック・アトラスの魂を!!』

 

「フッ…!いくぞジャック!!」

 

「『スピードワールド2セット!デュエルモードON!』」

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!』」

 

もう2人を邪魔するものはない…熱き男達の未来を切り拓く戦いが始まった…!!

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊星対ジャック

 

 

 

 

 

 

 

 

『バトルだ!「レッド・デーモンズ・ドラゴン」で「スターダスト・ドラゴン」を攻撃!アブソリュート・パワーフォース!!』

 

「リバース罠発動!『スター・エクスカージョン』!『スターダスト』と『レッドデーモンズ』を相手ターンで3ターン後のバトルフェイズ終了時まで除外する!!」

 

『なにっ!?』

最初のターンからお互いのエースを召喚した遊星とジャック…だが、2体のドラゴンは次元の狭間に消え去る!

 

 

『「スターダスト」と「レッドデーモンズ」が消えた…』

 

「ああ、2体はそれぞれの『未来』に消えた…」

 

『未来…!』

 

「ああ、そうだ!オレは…オレ自身の未来を見つけてみせる!!」

2体のドラゴンは未来に消え、その決着は未来に託された…。

 

 

 

 

「オレはレベル2の『トライアングル・ウォリアー』にレベル5の『クイックシンクロン』をチューニング!集いし思いがここに新たな力となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!燃え上がれ!『ニトロウォリアー』!」

 

スターダストドラゴンがいなくとも遊星は攻めの手を緩めない…遊星はウォリアーの中でも強力な戦闘力を持つ

ニトロウォリアーを召喚しジャックに挑む!

 

 

「そして手札から『Sp-ディフェンス・バスター』を発動!ジャックの場の『トライアングルトークン』の表示形式を攻撃表示に変更する!さらに魔法カードを発動した事で『ニトロウォリアー』の攻撃力は1000ポイントアップする!!」

 

『っ…!そういう事か!!』

ジャックの場にはトライアングルウォリアーを召喚した際に特集召喚されたトークン2体が存在する…そしてニトロウォリアーはモンスターを破壊した時に相手の場に守備モンスターがいれば、その表示形式を変更し追撃できる効果がある…遊星はその効果で1ターンキルを狙う!!

 

「バトルだ!『ニトロウォリアー』で『トライアングルトークン』を攻撃!ダイナマイト・ナックル!!」

 

『させん!罠カード「ブレイク・チューン」発動!その攻撃を無効にする!さらに手札から「インフルーエンス・ドラゴン」を特殊召喚!』

ジャックの場に細身の竜人が現れ攻撃が中断される!

 

『驕るな遊星!俺とお前の決闘がたった一幕で決着すると思っていたのか?…主役が最後のセリフを吐くまで舞台の幕は降りん…このデュエルの主役はこの俺…ジャック・アトラスだ!!』

 

 

 

『俺はドラゴン族となったレベル2の「トライアングルトークン」2体にレベル3の「インフルーエンスドラゴン」をチューニング!王者の叫びが木霊する…勝利の鉄槌よ!大地を砕け!!シンクロ召喚!はばたけ!「エクスプロード・ウィング・ドラゴン」!』

返しのターン、ジャックは遊星の残したトークンを利用しオレンジ色の翼を持つドラゴンを呼び出す!

 

 

「ピンチの後にオレの残したトークンを利用してくるか…だが攻撃力は『ニトロウォリアー』が上だぞ!」

 

『そんな事は承知の上だ!俺は「パワー・サプライヤー」を守備表示で召喚!それにより「エクスプロード」の攻撃力は400アップ!バトルだ!「ニトロウォリアー」を攻撃!キング・ストーム!!』

エクスプロードから炎の息吹が放たれる…ニトロウォリアーは息吹を一瞬受け止めるがそのまま破壊され、遊星は大きなダメージを受ける…そしてその隙を突いてジャックは遊星を追い抜かす!

 

『「エクスプロード」は己以下の攻撃力のモンスターとバトルする時…そのモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える!遊星!身をもって知ったか!俺の絶対的な力を!手札ゼロの貴様に打つ手はあるまい…これこそが圧倒的強者の豪腕!お前が「剣」であるなら俺は「斧」!その圧倒的力で荒ぶる巨人に歯向かう愚かな魂を粉砕してくれる!!』

静かに降り出した雨を切り裂きながらジャックは遊星に対して自身の持つ「力」を説く…その時だった。

 

「…!!」ギャン!!

 

『っ!?待て遊星!いったい何処に行くつもりだ!?』

デュエルレーンが二手に分かれる…本来であれば右へ進むべきルートだったが…遊星は左側へと進入する!

 

 

「ジャック…悪いがオレとお前の道は違う…オレの道は風と共にある!そのバカでかい斧じゃ捉える事はできないぞ!!」

 

『フッ…!ほざいたな!』

 

「お前がそうさせる…このデュエル、勝利は譲らない!」

 

『否!!勝利は掴み取るものだ!!』

遊星とジャックは互いに笑いあう…遊星とジャックはこのデュエルを楽しんでいた…。

 

 

デュエルは続いていく、遊星は「ターボ・ウォリアー」を召喚し「エクスプロードウィングドラゴン」を撃破する…だが、ジャックも負けてはいない、新たな力である赤き鬼神「クリムゾン・ブレーダー」を召喚…「ターボウォリアー」を撃破した上で遊星の召喚を封じ追い詰める…だが遊星はそのピンチを罠カード「スクランブル・エッグ」を発動し攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない「ロード・ランナー」を呼び出す事で回避する…そして2人の運命はついに動きだす…!

 

 

 

 

「バトルフェイズが終了した時!『スター・エクスカージョン』の効果で除外されていた『レッドデーモンズドラゴン』と『スターダストドラゴン』が戻ってくる!」

 

ジャックのバトルフェイズが終了し「スター・エクスカージョン」によって除外されていた「レッドデーモンズドラゴン」と「スターダストドラゴン」が帰還する…戦いの舞台は雨の降っていたシティから快晴の旧サテライトへと移る…!

 

 

 

「ゾーンとの戦いの時、父さんと母さんがオレの心に語りかけてくれたんだ、オレの成すべき事を…モーメントの遊星粒子のように人の心を導き、人の心を繋ぐのだと…もし、みんなが離れ離れになったとしても!オレは遊星粒子のようにみんなの心の間を繋ぐ『絆』になりたい!…だから迷う事はない!オレ達は1人で立ち、1人で進む事ができる!!」

遊星はジャック…そして仲間達へと自分の想いを伝える、例え遠く離れていようと遊星達の紡いだ『絆』はきっと断ち切れる事はない…離れていても仲間達との『絆』が勇気を与えてくれる…遊星の言葉は迷っていた仲間達の心を奮い立たせる…!

 

 

『フッ…ならば俺は立つ!!キングとして世界に進む!…遊星、最後まで見届けろ!俺の荒ぶる魂を─!!』

 

「ああ…!来い!ジャック!!」

遊星の言葉を聞いたジャックはその魂を燃え上がらせる!!

 

 

王者と悪魔!今ここに交わる!!荒ぶる魂よ…天地創造の叫びをあげよ!シンクロ召喚!!いでよ!「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン」!!

 

《ガオオォォン!!》

 

ジャックの魂の化身…スカーレッドノヴァドラゴンが咆哮を轟かせる、その攻撃力は6000…ジャックは己の全てを懸けて遊星に挑む…!

 

 

「集いし夢の結晶が新たな進化の扉を開く!光さす道となれ!アクセルシンクロォォ!!生来せよ!『シューティング・スター・ドラゴン』!!」

 

『来たか…!!』

遊星も負けてはいない、ジャックに対抗するように白き流星龍が降臨する!

 

 

『狙いは「クリムゾンブレーダー」か…だが、「スカーレッドノヴァドラゴン」は自身を除外して攻撃を無効にできる!!』

 

「だが『シューティングスター』はデッキトップを5枚めくり、その中のチューナーの数だけ攻撃できる!!…チューナーは3体!いけ!シューティング・ミラージュ!!」

チューナーを引き当てた遊星はクリムゾンブレーダーを撃破する…だが、攻撃力6000のスカーレッドノヴァには届かない…!

 

 

 

 

『遊星、このターンで決着を着ける!罠カード「スカーレッド・コクーン」を発動!このカードは「スカーレッドノヴァ」の装備カードとなり…このカードがバトルする時、相手の効果を無効にする!!』

 

「っ!!」

ジャックは遊星に王手をかける…戦いの舞台は何処を走ったのか工場地帯へと突入する!!

 

 

『バトルだ!「スカーレッドノヴァ」で「シューティングスター」を攻撃!!』

 

「まだだ!罠カード『ハイ・アンド・ロー』を発動!!デッキトップを墓地に送り、そのカードがモンスターだった時攻撃対象となっている『シューティングスター』の攻撃力をそのカードの攻撃力分アップする!そしてこの効果は3回まで繰り返す事ができるが…『シューティングスター』の攻撃力が相手の攻撃力を超えた時、『シューティングスター』は破壊される…!」

 

『なるほど…その効果でダメージを減らそうという魂胆か!!』

 

「それだけじゃない…これはオレの未来を賭けた一手だ!このドローは…きっとオレの未来を指し示してくれる!!」

ジャックが自分の全力を出したように…遊星も自分の全てをデッキに賭ける!!

 

 

「1枚目!…『ソニック・ウォリアー』!攻撃力は1000!」

 

 

「2枚目!…『スピード・ウォリアー』!攻撃力は900!」

《ギュアアアン!!》

 

この時点でシューティングスターの攻撃力5200…遊星の残りライフは900…フィールドはガラ空きになるが攻撃を耐える事ができる…

 

 

 

『これで「シューティングスター」は破壊され、お前のフィールドはガラ空きになる!』

 

「オレは…『ハイ・アンド・ロー』の3回目の効果を使う!!」  

 

『なにっ!?ここで()()()8()0()0()以上のモンスターを引けばお前の自滅だぞ!?』

 

「そんな事はわかってるさ…お前はなんのリスクも負わずに勝てる相手じゃない、オレは自分の可能性を…このドローに賭ける!!」

ジャックの驚きを他所に遊星はデッキトップに手を賭ける…だが、遊星の前にさらなる難関が立ち塞がる!

 

『っ!遊星前を見ろ!貴様の先に道はない!!諦めろ!!』

遊星達の戦いはいつの間にかに工場の中に移っていた…そして遊星の走る道は途切れ、真っ赤に燃え盛る溶鉱炉が口を開けている…!!

 

「デッキよ…オレに答えを──!!」

 

『待て!遊星─!!』

ジャックの制止を聞かず遊星はスピードを上げる!!

 

 

 

「3枚目…ドロー!!!」

 

 

 

遊星は燃え盛る溶鉱炉を飛び越えながらカードを引く、そのカードは──

 

 

 

 

 

「3枚目!!『ボルト・ヘッジホッグ』!!」

 

 

 

 

『バカな!?「シューティングスター」の攻撃力を「スカーレッドノヴァ」と同じにしただとぉ─!?』

遊星は自分の未来を引き寄せた…!

 

 

 

《ガオオォォン!!》

 

《ギュアアアン!!》

 

攻撃力が互角となった2体のドラゴンは殴り合い、炎とエネルギーの息吹をぶつけ合い…そして取っ組み合いになり、お互いに砕け散る!!

 

 

『ぐおぉぉ…!?だが、「スカーレッド・コクーン」が破壊された時!このターンのエンドフェイズに墓地から「レッドデーモンズドラゴン」を特殊召喚する!!』

 

「罠カード発動!『クラッシュ・スター』!!自分のシンクロモンスターが破壊された時手札と墓地から攻撃力1000以下のモンスターを特殊召喚する!こい!『ロードランナー』!『ソニックウォリアー』!」

お互いに切り札を破壊された2人はそれぞれにモンスターを召喚し立て直しを図る!

 

 

『遊星!そんな雑魚共では我が魂「レッドデーモンズドラゴン」には太刀打ちできんぞ!』

 

「それはどうかな?」

 

『なに!?』

ジャックの指摘に遊星は不敵に返す…!

 

 

「ジャック、どうやらオレには自分の未来が見えて来たぜ…!オレの…ターン!!」

遊星は自分の未来を引き当てる…そのカードは──

 

 

「オレは『ジャンク・シンクロン』を召喚!!」

遊星が引き当てたのは遊星のもっとも頼りにするチューナー…そしてこのカードが遊星の未来を切り拓く!!

 

「『ジャンクシンクロン』の効果!墓地の『スピードウォリアー』を特殊召喚!さらに『ボルトヘッジホッグは』チューナーがいる時、墓地から特殊召喚できる!」

遊星の場に5体のモンスターが現れる、そのモンスター達はレベルが低くても、攻撃力が高くなくとも遊星の使い続けてきたモンスター達…遊星のデュエルを支えてきた『仲間』達だった!

 

 

「レベル2の『ソニックウォリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!!集いし星が新たな力を呼び起こす!光さす道となる!!シンクロ召喚!いでよ!『ジャンク・ウォリアー』!!」

 

『ここで「ジャンクウォリアー」だと!?』

遊星の場に青き戦士が現れる…それを見たジャックは驚きをあらわにする!

 

「そして『ソニックウォリアー』が墓地に送られた事で効果発動!自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力を400アップする!さらに『ジャンクウォリアー』の攻撃力はフィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする!パワー・オブ・フェローズ!!」

ジャンクウォリアーに3体のモンスターの力が結集する…遊星はその身を以って絆の力の新たな可能性を指し示したのだ!

 

 

『攻撃力…5500だと─!?』

 

「ジャック!お前とのデュエルがオレに教えてくれた…オレの魂に宿るものを!!」

 

『やっと見つけたか、お前の道を!』

遊星がジャックに自分の決意を伝える──

 

 

「オレは──」

 

 

 

 

「この街に残る!!」

 

 

 

「「「「「!!!」」」」」

 

「…やっぱり、その道を選んだか…遊星」

遊星の言葉を聞いたジャック、そして中継を見ていた遊海と翠を除く5人は驚きをあらわにする…。

 

 

『遊星、貴様──』

 

「フッ…行くぞ、ジャック!!」

遊星は工場地帯のパイプ、そしてクレーンを使い空へと跳び上がる!!

 

 

「『ジャンクウォリアー』で『レッドデーモンズドラゴン』を攻撃!!」

遊星の言葉に従いジャンクウォリアーが加速する!!

 

 

 

「スクラップ・フィストォォォ──!!」

 

 

遊星の全力を込めた黄金の拳が振り下ろされる…レッドデーモンは炎を纏った掌底で拳を受け止めるが…ジャンクウォリアーは光を纏い巨大な拳へと変化…レッドデーモンを粉砕し、巨大な爆発がジャックのライフを削りきった…。

 

 

ジャックLP0

 

遊星 WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁ〜………見事だ、遊星…この世に不要なものなど無い…絆を合わせ強者を倒す渾身の一撃、俺の魂に響いたぞ遊星!…どうやらこの街に戻る理由ができたな』

 

「いつでも戻って来いよ!オレは待ってる!」

 

『フン!次は負けんぞ!!』

 

「また全力を尽くそう!!」

 

デュエルが決着し遊星とジャックは拳を突き合わせてから握手を交わす…今回の決闘は遊星の勝利で終わった、しかしジャックはきっと遊星に戦いを挑むだろう…好敵手に勝つ為に──

 

 

「「「遊星ー!!」」」

 

「みんな!」

2人の決着に少し遅れて観戦組が駆けつける…その目に迷いの色はない、ジャックと遊星…2人の魂の決闘の中で全員が自分の進む道を決める事ができたのだ…。

 

 

「決めたぜ遊星!オレはプロリーグに行く!」

 

「私もしっかり勉強してくる!!」

 

「わたしも!向こうについたら毎週手紙を書くわ!」

 

「今まで甘えられなかった分も甘えてくる!」

 

「みんな、それぞれの道を見つけられたんだな…!」

 

「「「「ああ!/うん!」」」」

遊星の問い掛けに全員が頷く

 

「フッ…成長したなお前達、ここから先はお前達が切り拓いていく未来だ!自分の信じる道を進んで行け!チーム5D's!!」

 

「はい!!…例え離れていようとオレ達の絆は永遠だ!」

 

「「『『「おおぉ─!!」』』」」

 

遊星達7人、そして遊海と翠が拳を突き合わせて声を上げる…新たな未来はここから始まっていくのだ…、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side龍亞&龍可

 

 

 

「いろんな事があったね…」

 

「うん、この街で起きた事はずっと忘れない…!」

引越の準備を進めながら兄妹はテラスから街を見下ろす、楽しい事や嬉しい事…辛い事や悲しい事もあった…だが、その経験は必ず2人のこれからの人生の糧になるだろう…。

 

 

「…龍亞も変わったね!」

 

「えっ、そう?」

龍亞の横顔を見ながら龍可が語りかける…

 

「昔はすぐに泣きべそかいてたのに…頼もしくなった…ううん、男らしくなった!」

 

「そ、そうかな…!でもそうじゃなきゃ!これからはおれ一人で龍可を守っていくんだから!」

龍亞は少し照れながら龍可に応える…5D'sメンバーの中で一番の成長を遂げた龍亞…彼は妹を守り、強い決闘者になる為にこれから歩み出していく…!

 

 

「ふふっ…頼りにしてるわよ!…()()()()()!」

 

「へっ!?あ!うわあ〜!?」

 

ドッシーン!!

 

「お兄ちゃん!大丈夫!?」

 

龍可の突然の「お兄ちゃん」呼びに動揺した龍亞はテラスの踏み台から転げ落ちた。

 

 

 

 

…龍亞が本当に強い男になるにはもう少し、時間が必要なようだ…。

 

 

 

SideOUT

 

 

 

Sideクロウ

 

 

 

『…そうかい、それがお前の決めた道なら私は応援するよ!』

 

「サンキューな、マーサ…でも子供達になんて言ったらいいか…」

クロウは自分の進路を育ての母であるマーサ、そして自分を慕ってくれている子供達へ報告に来ていた…

 

 

『寂しがるだろうけど…しょうがないねぇ…みんな、こっちにおいで!』

マーサが子供達を呼び寄せる…

 

「よう!クロウ!元気にしてっか!」

 

「プロリーグに行くんだってな!」

 

「クロウの実力で通用するのかな〜?」

 

「お前達…知ってたのか!?」

 

「まぁね!もう子供じゃないも〜ん!!」

マーサに呼ばれた子供達はクロウのプロリーグ行きを既に勘付いていた…一見クロウが街を離れる事をなんとも思っていないように振る舞う子供達だったが…

 

 

「さっさと行っちゃえよ!クロウが居なくても…寂しく、ないし…!」

 

「そうすりゃ、俺達もせいせい…するっ"で…!」

 

「お前達泣くなよ!ダメだろ!クロウ兄ちゃんに…心配かけないように、送り出さなきゃ、って…!!」

 

「お前達…!」

それはただの強がりだった…クロウに心配をかけないように悲しみを我慢していたが…それはもう限界だった…。

 

「…みんな、ありがとな…オレは絶対に強くなって帰って来る…!ずっと、お前達の『夢』でいるためにな…!!」

クロウは子供達抱きしめながら約束する…必ず、この街に帰って来ると…!

 

「きっと…きっとだよ!クロウ兄ちゃん!!」

 

「みんなで待ってるからね─!!」

 

「ああ…約束だ─!!」

 

子供達とクロウは暫しの間、一緒に泣き続けた…別れを惜しむように…彼らの温もりを魂に刻むように…

 

 

SideOUT

 

 

 

Sideアキ

 

 

 

「本当に行くんだね…」

 

「うん!心配しなくても大丈夫!もう子供じゃないんだから…」

アキが医大への留学準備を進めていた時、両親が彼女の部屋を訪れる…。

 

 

「お前の事だ…頑張り過ぎて倒れないかが心配だよ…」

 

「そうね…それより()にはちゃんとお別れを言ったの?」

 

「えっ…?」

母の言葉にアキは首を傾げる…

 

「…遊星君だよ、彼がいたから今のお前がいる…ちゃんと話してきなさい」

 

「アキ、行ってきなさい…彼の笑顔をその目に焼き付けるの…それが遠く離れた場所でもあなたを励ましてくれるわ」

 

「うん…わかった!」

両親の言葉を聞いたアキは荷造りを終えると外に出た…遊星に逢う為に…。

 

 

 

SideOUT

 

 

 

Sideジャック

 

 

 

「………ふぅ…」

 

「(うぅ〜…ジャックぅ〜…)」

ジャックは独りカフェでお気に入りのコーヒー「ブルーアイズ・マウンテン」を飲んでいた…この街を離れる前の最後の一杯である…その様子をカフェの店員であるステファニーが涙目で覗いている…。

 

 

「アトラス様!やっと見つけました!やはりこちらでしたか」

 

「むっ…何の用だ?」

コーヒーを味わっていたジャックのもとに御影が訪れる、どうやらジャックの事を探していたようだ…。

 

 

「元・治安維持局を代表してアトラス様に餞別を持ってきたんです!」

 

「餞別だと?………ブゥーッ!?な、なんだこの量は!?」

 

「アトラス様のファンは多いものですから…」

ジャックは思わずコーヒーを吹き出す…ジャック宛だという餞別…その量は軽く2tトラック2台分もあった、コーヒーを吹き出すのも無理ないだろう…。

 

「ええい!ここの広報宛にでも送っておけ!ここが新たな拠点だ!」

ジャックは御影にライドAの名刺を渡す…おそらく部屋はプレゼントで溢れかえる事になるだろう…。

 

「うん?…あれって…(汗)」

 

「えっ…あ!何をやってるのよカーリー!!」

 

「あ…バレちゃった?」

ステファニーがジャックの宛のプレゼントの山を指差す…そこにはプレゼントに紛れたカーリーが隠れていたのだ…。

 

「こうしてればジャックの所に行けると思って…」

 

「なわけないでしょうが!!貴女は何処のストーカーなドラゴン娘よ!?」

カーリーは御影に叱られトラックから降ろされる…その時だった…!

 

 

ビュオォォォ─!

 

 

「キャッ…!?」

 

「風が…!」

 

「なんだ…!?」

ジャック達のいる広場を強風が吹き抜ける…しかし、その風は強くとも体を包み込むような優しい風だった…。

 

 

「なんだったんだいったい…春一番はとうに過ぎたぞ…」

ジャックは風によって巻き上げられた埃を払う…

 

「いた〜い…目に埃が…」

 

「ちょっと!カーリー貴女大丈夫!?メガネは!?その前にすごい涙よ!?」

 

「えっ…?」

御影の言葉にカーリーは頬を触る…カーリーの目からはとめどなく涙が溢れてくる…。

 

「むっ…カーリー大丈夫か?メガネは…お前の足下か、まったく…お前はメガネがなければ何も見えないのだろう…気をつけろ!だが、本当に涙が止まらんのか…ステファニー、水を頼む…御影、目薬を持ってきてくれ…ガレージの救急箱にあったはずだ」

 

「わかりました!すぐに汲んでくるわ!」

 

「目薬ですね!すぐに持ってきます!」

ジャックの指示を受けた2人は必要なものを取りに行く…。

 

 

 

「どうして…涙が止まらないの…ジャックを笑顔で、見送ろうと、思って…たのに…」

 

「…泣くな、カーリー…お前に泣いている姿は似合わん、笑っていろ…その笑顔が俺は…(好きだ…とは言えん、俺は…まだ…)」

座り込んでしまったカーリーをジャックが介抱する…ジャックはカーリーへかける言葉を飲み込む…自分はまだカーリーに見合う男になる事ができていないと…。

 

「ジャックぅ…頭まで痛くなってきた〜…」ふらっ…

 

「なに…!?いったいどうしたというのだ!風邪でもひいていたのか…!」

頭を抑えてうずくまるカーリー…ジャックはバランスを崩した彼女を抱きかかえる事しかできなかった…。

 

 

SideOUT

 

 

 

 

Sideカーリー

 

 

「(私、どうしたの…?なんでジャックが私を見下ろしているの…?)」

カーリーはふらつく頭で思考を巡らせる…ぼやける視界ではジャックが必死に何かを叫んでいる…

 

「(ああ…なんだろう…前にも、こんな事があったような……)」

 

『それ以上はダメよ、私…それ以上は思い出しちゃいけない』

 

「えっ…?誰…誰なの?」

 

『…私は貴女、貴女は私…』

その声を聞いた瞬間、カーリーの意識は深く落ちていった…。

 

 

 

 

『ようこそ私…ここは貴女の心の中…』

 

「あなたは…私…?」

気づけばカーリーは真っ暗な場所にいた…彼女の正面には大きな扉、そしてその前に立つ白目が黒く染まった彼女自身…ダークシグナー・カーリーがいた。

 

 

『この扉は貴女の閉ざされた記憶の扉…優しい王様が封印していた、貴女の知りたかった記憶がここにある…』

 

「私の、知りたかった記憶…」

カーリーは静かに扉へと近づく…

 

『私は貴女を止めはしない…でも、貴女は思い出したらもう()()()()…後悔はないかしら?』

 

「私は…私の覚悟は決まってる、この先にあの人が必要としている記憶があるのなら…私は後悔なんてしないんだから!!」

カーリーは扉に手をかける、その脳裏には目覚めたあの日…ジャックの浮かべていた切ない表情があった…。

 

 

『そう…じゃあね、カーリー渚…幸運を祈ってるわ』

 

そんな声を聞きながらカーリーは扉を押し開く…そして彼女の視界は光に包まれた…。

 

 

 

SideOUT

 

 

 

Sideジャック

 

 

 

「カーリー!大丈夫か!気をしっかりもて!!」

 

『…ジャック……ジャック!!』

 

「カーリー!?うおっ!?」

突然目を覚ましたカーリーがジャックへと抱きつく!

 

「どうした大丈夫なのか!?」

 

『うん…大丈夫…!大丈夫…!思い出した、思い出せたの!!ごめんなさいジャック!!私、わたし…貴方に酷い事を!!』

 

「なっ……ダークシグナーの時の記憶が、戻ったのか!?」

カーリーの言葉にジャックは取り乱す…カーリーの記憶が戻った…それは嬉しい出来事だ、しかしそれはカーリー自身の「死」の記憶、そしてカーリーの犯した「罪」をも思い出したという事なのだ…。

 

『全部、思いだしたの…死んじゃった時の事も…ダークシグナーとしてジャックと戦って…それでも、私を好きだと言ってくれた事…ありがとうジャック…そしてごめんなさい!私──』

 

「それ以上言うなカーリー…謝るのは俺の方だ…あの時、お前を守れなかったのは…俺が弱かったからだ…なればこそ、俺はお前に見合う男になるまで待つつもりだった…だが、記憶が戻ったのなら…聞かせてくれカーリー…」

 

 

「俺に付いてきてくれるか…?」

 

『グスッ…あたりまえ…なんだからぁ!!』

 

ジャックとカーリーは熱い抱擁を交わす…もう、2人を隔てるものは何もない──

  

 

 

「……あ〜あ、結局カーリーさんの一人勝ちかぁ…悔しいなぁ…」

 

「しょうがないわ、一番アトラス様を慕っていて…一番最初に告白したのはカーリーなんだもの…完敗よ」

カーリーとジャックの様子を見守るステファニーと御影…その表情に悲しみはない…どことなく晴れやかな様子でジャックとカーリーを見守っていた…。

 

 

《キュオオオン…》

 

 

優しい風が再び広場を吹き抜けた──

 

 

 

SideOUT

 

 

 

Side遊星

 

 

ガラガラガラ

 

「ん?アキ、来てたのか…いま電気を…」

 

「…電気は、つけないで…」

 

「えっ…」

仲間達が旅立つ前の最後の夜…ガレージに戻った遊星を待っていたのはアキだった…電気を点けずにいたアキを心配して遊星が電気を点けようとするが…それはアキ自身に止められる…。

 

「ここで待ってたら色々な事を思い出して、今の顔は見せられないわ…もう、ここには遊星とブルーノしかいないのね…」

 

「ああ、ブルーノは研究所に泊まり込みで今日は帰って来ないけどな…今日はどうしたんだ?」

 

「遊星にはちゃんとお別れを言っておこうと思って…」

 

「…そうか」

薄暗いガレージの中で2人は向かいあう…

 

 

「遊星…私、貴方を!……貴方に会えて、よかった!」

 

「…ああ、オレもだよアキ」

 

「ふふっ…貴方に会った初めの頃…本当はとっても怖そうな人だと思ってたの!」

 

「フッ…アハハ!オレだってそうさ、アキに睨まれると本当に怖いからな!チーム戦で負けて帰ったら何をされるかビクビクしてたよ…」

 

「えっ…そんな事思ってたの!?」

2人は静かに、楽しそうに語り合う…

 

 

「アキ、笑顔を忘れるな…お前の笑顔は誰にも負けない」

 

「その笑顔をくれたのは貴方よ、遊星…」

 

「アキ…」

 

「遊星…」

2人は暫くの間見つめ合う…そして…

 

 

「じゃあ、行くね…」

 

「ああ、行ってこい」

アキは遊星から離れ、階段を駆け上がる…

 

「アキ!」

 

「…なに?遊星」

遊星はアキの背中に声をかける…。

 

「…オレは、待ってる…みんなが…アキが帰ってくるまで…ずっと…!!」

 

「…うん!またね!」

 

そう言ってアキはガレージを後にした…。

 

 

 

SideOUT

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「よっ!遊星、コーヒーでも飲むか?」

 

「遊海さん、いつのまに…ありがとうございます」

街を一望する高台からネオドミノシティを眺めていた遊星…その隣に遊海が缶コーヒーを持って現れ、コーヒーを手渡す…。

 

 

「…遊海さんはこのあと…どうするんですか?」

 

「ん…しばらくはこの街を拠点にプロを続けるよ、次の戦いが始まるまでな…」

 

「次の戦い…それはいつ頃なのかわかるんですか?」

 

「それがな…ま〜ったくわからないんだな!1年後か、10年後か…100年後か…まぁ、気長に待つさ…この世界を守り見届ける…それが俺の役目だからな」

遊海は静かにコーヒーを啜る…その目には遥か遠くが写っているような気がした…。

 

 

 

『不審者2名を発見〜、これより職務質問を開始するー!…ってな!よう!遊星、遊海!』

 

「牛尾…」

 

「こんばんは牛尾さん、パトロールですか?コーヒー飲みます?」

 

『おっ!ありがとよ!』

遊星達の背後から現れたのは牛尾だった、どうやらパトロールの途中でこの場所に立ち寄ったらしい。

 

 

『どうしたんだ?こんな時間に英雄サマが2人揃って…』

 

「俺は遊星に会いに来ただけですよ…遊星は…」

 

「今夜は眠りたくないんだ、あいつらがいるこの街を…この空気を胸に刻んでおきたい」

 

『はっ…言う事がキザだね〜』

 

「フッ…」

 

 

『明日にはみんな出発するんだろ?いいのか?本当に』

牛尾が遊星に問いかける…

 

「本当は言いたいさ…『みんなずっと一緒にいてくれ!』って…けど、それはできない…みんなが自分で選んだ道だからな…」

遊星も本当は仲間達とは別れたくなかった…しかし、未来を選ぶのはそれぞれの自由…誰もその歩みを止める事はできない…。

 

『それでいいのかよ?お前達の絆は…』

 

「それが『絆』ですよ牛尾さん、絆は確かに大切なモノです…でも、絆だけでは解決できない事も出てくる…時には強すぎる絆が仇になる事もあります…それでも、絆が俺達の背中を押してくれる事もある…」

 

「遊海さんの言う通りだ、自分の人生は自分で責任を持って生きていかなきゃならない…それが『今』、オレ達はそれぞれに新たなステージに向かって行くんだ!」

 

『なるほどな…いつの間にかお前達も大人になってたわけか…』

遊星と遊海の言葉に納得したのか牛尾は澄み渡る夜空を見上げる…

 

「ジャックと戦って気づいたんだ、この街は『オレ自身』だ!オレの魂はこの街と共にあったんだって…だから…よっ!!」

 

『おい!?危ねえぞ!』

遊星は見晴らし台の柵の上に立ち上がる!

 

「あいつらが帰ってきた時!オレ達の故郷は…チーム5D'sが救った街は!こんなに素晴らしい街だったんだって!…そう誇れるネオ童実野シティにしていくのがオレの役目さ!」

そう言って遊星は街を見渡す…明日への希望を見つめながら…。

 

 

 

「(見ているか?ラプラス、ゾーン…未来は正しく進み始めた…だから、安心して眠ってくれ…この世界は俺達が守っていくからさ…)」

遊星の隣で遊海も思いを馳せる…その身を犠牲に未来を救おうとした2人の英雄の安らかな眠りを祈りながら…。

 

 

 

 

 

 

 

その翌朝、早朝のハイウェイに9人の人影があった…それはチーム5D'sのメンバー達…解散式代わりのラストランをする為に集まったのだ!

 

 

「行くぞみんな!これが『チーム5D's』のラストランだ!!」

遊星の掛け声と共に7台のDホイールと2台のDボードが走り出す!

 

 

「俺は必ず帰ってくる!真の王者となって!」

 

「見てろよガキ共!オレの活躍を!!」

 

「ありがとう!ネオドミノシティ!」

 

「私達の故郷!!」

 

「さよならは言わない…また会える日まで!!」

 

ジャック・クロウ・龍亞・龍可・アキがネオドミノシティに別れを告げる…

 

 

「みんな!いつでも帰ってきなよ!ボクは遊星と待ってるからねー!」

 

「俺はプロで世界を巡るからな!会えたなら話を聞かせてくれ!」

 

「みんなー!身体に気を付けて頑張ってね〜!」

街に残るブルーノ・遊海・翠がエールを送る…その時だった!

 

 

《キュオォン!!》

 

 

「赤き竜!?」

ハイウェイを駆け抜ける遊星達の頭上に赤き竜が現れる…

 

《キュオオォォン!!》

 

キィン─!

 

 

「あっ…赤き竜の痣が…」

 

「離れていく…」

 

赤き竜の咆哮と共に6()()の痣が浮かび上がり、赤き竜へと戻っていく…

 

「赤き竜…お前も自分の役目を終えたんだな…ありがとう…!」

赤き竜はそのまま空の彼方へと昇っていく…役目を果たし、眠りにつくために…

 

 

 

そして遊星はネオダイダロスブリッジの前で旅立つ仲間とハイタッチを交わす…そして5人はそれぞれの新天地へと旅立って行った…。

 

 

 

「ここから先は俺達が作り出す未来…走り続けようぜみんな!『人生』という名のライディング・デュエルを!!」

5人を見送った遊星は加速しモニュメントを駆け上がり空中へと飛び出した!!

 

 

 

「ライディング・デュエル!アクセラレーション!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは数奇な運命に導かれた6人の決闘者とドラゴン達の物語…だが、彼らを繋ぐのはもはや運命ではない…。

 

 

6人を繋ぐのはかけがえのない『絆』

 

 

ここに絆の物語は終わりを迎える…しかし、彼らの物語はまだ終わらない…光輝く未来へ向かって道は続いていく──

 

 

 

 

 

 

第3部 5D's編 完





改めましてこんにちは!S,Kです!ようやく5D's編を完結させる事ができました!大変長らくお待たせしてしまいました…申し訳ありません!

そしてハーメルンの読者の方々に感謝を…皆さまのコメントが私の元気の元です!これからもよろしくお願いします!


そして決闘の観測者は次なる舞台へ進みます…。
遊海達を待ち受けるのはさらなる決闘者達…遊海と翠はどのように戦っていくのか…どうぞお楽しみに!











NEXTStory…?















未来を掴む戦いから月日は流れ…いま、新たな戦いが始まろうとしていた…。



【この扉を開く者は新たな力を手にする…しかし、その者は代償として「一番大切なモノ」を失うだろう…】










「だ、誰だよお前!?」

《私の名はアストラル…君の名は?》

「オレは…九十九遊馬!デュエルチャンピオンを目指してる中学1年生だ!」

謎の力に導かれ出会う2人の決闘者…



《私の記憶は失われている…記憶を取り戻すには私の記憶のカケラ…100枚の『No.』を集めなくてはならない》


『No.』…アストラルの記憶と力を宿した100枚のカード…それには人の悪意を増幅させる力…そして、世界を滅ぼしかねない力が宿っていた…!



「チッ…イラッとくるぜ…!」


「人は…俺を『ナンバーズハンター』と呼ぶ…」


『No.』を巡り戦いをくり広げる決闘者達…その果てに待つ結末とは…?



転生して決闘の観測者になった話 第4部 ZEXAL編 近日執筆開始予定!





「かっとビング!それは勇気をもって一歩踏み出すこと!
かっとビング!それはどんなピンチでも決して諦めないこと!
かっとビング!それはあらゆる困難にチャレンジすること!…デュエルチャンピオンを目指して…かっとビングだ!オレ─!!」
 





「お前は…それでも父親なのか!!答えろ!バイロン─!」

【ボクは父なんかじゃない…今のボクの目的はただ1つ、復讐だ!!】

「お前を支配する闇から…いま開放してやる!」












【A…AAaaaaaa──…】


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エピローグ─彼の地にて─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…落ちる…落ちる…墜ちる…どこまでも落ちる………墜ちていく──

 

 

 

 

オレは死んだ、落ちるほどに自分を形作っていた心が、記憶が、魂が…燃え尽きていく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ああ…それでも、たとえ全てが燃え尽きようと…この「光」は…この「後悔」だけは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ここ、は…?」

 

わたし…ぼく?…おれ…は目を覚ました、ここは何処だろうか?私は何故ここにいる?…そもそも名前は…?

 

「………」

 

…わかる事はただ1つ、拙は死んだ筈…という事だ、なんで死んだのかは覚えていない…事故か、病死か…殺されたのか…それすらもはっきりしない………ただ、一つだけ思い出した事がある…僕は「誰か」を探していた…。

「誰か」を探してワタシは命を懸けた…そうオレの魂が囁く……自分で言っていて泣きたくなる、記憶に無い「誰か」を探すなんて…不可能だ。

 

 

 

カチャ…

 

 

『目が覚めましたか?よかった…長い間眠っていたので心配しました…』

 

「…!?」

寝かされていた部屋の扉が開き人が入ってきた…その人物は…まるでお伽噺の精霊や妖精のように綺麗な女性だった、全身が青白い穏やかな光に包まれていて見た目だけで優しい人物だという事がわかる…。

 

 

『…驚かせてしまったようですね、私の名前はエナ…海岸に倒れていた貴方を見つけ、ここに運び込んだのです…自分の名前はわかりますか?』

 

「……わからない、オレは…何も覚えていない、覚えているのは『誰か』を探していた…という事だけだ」

 

『そう、ですか…きっと、それは貴方の大切な人なのでしょう…手を触ってもいいですか?』

 

「?…ああ」

 

『失礼します…これは…!』

 

キィン─…

 

私の手を取ったエナさんの身体の輝きが増す…

 

 

『貴方は…とても強い「カオス」を宿しています、この世界に来る魂では珍しい…貴方は死してなおその方を守ろうとし…そして求めているのですね…』

 

「…そうらしい…オレはその為に命を懸けた…のだと思う、オレ、は…あれ…?」

僕の目から涙が零れ落ちる…名も顔もわからない「誰か」、その人の事を考えると胸が締めつけられ、穴が空いたように痛くなる……そうか、オレは──

 

「守れなかった、のか…!おぉ…おおおぉぉ─…!!」

男は大粒の涙を零し咽び泣く…

 

 

『(優しい人…この人なら、この世界を変えられるかもしれない…!)…よければお手伝いしましょうか?』

 

「…えっ…?」

 

『この世界は人間界で生を全うした人々が辿り着く世界…もしかしたら貴方の探し人もこの世界にいるかもしれません…!』

 

「本当か…!!」

 

『はい、ですが…その代わりに私達を助けてほしいのです…!』

 

「俺が…貴女達を助ける…?」

エナの申し出にオレは首を傾げる

 

『この世界は高すぎる理想のせいで力を失いつつあります…私達はその影響で命を繋ぐ事がやっと…でも、貴方の持つ正しいカオスなら…この世界を救い、変える事ができるかもしれません…!』

 

「……世界を変える…か、何故だか懐かしい響きだ…わかった…!オレでよければ力を貸そう!」

 

『ありがとうございます…!えぇと…』

エナの様子が少しおかしくなる…そうか、名前か…

 

「探す者……探索者…シーカーと呼んでくれ、エナ」

 

『シーカー…ええ、わかりました…改めてよろしくお願いしますシーカー、この「アストラル世界」を救ってください…!』

 

「ああ、やれるだけやってみよう…!」

 

オレはエナに連れられて部屋を出る…そこには眩く清廉で幻想的な青の世界が広がっていた…。

 

 

 

「…まずは仲間集めだな、人の集まるところに連れて行ってくれるか?最低でも…4人は仲間が欲しい」

 

『わかりました、ついてきてください!』

 

オレはエナと共に歩き始めた…衰退しつつあるというこの世界を救う為に…。

 

 

 

 

「待っていてくれ…名も知らぬ「君」…必ず、みつけてみせる…!」

 

 



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断章〜新たな未来へ〜
英雄の敗北─目覚めし魔神─


こんにちは!S,Kです!

5D's編が完結してすぐなのに…久しぶりに筆が乗りました!断章スタートです!

…ノリで書いたらなんだか劇場版みたいな感じになってしまった…まぁ、いいか!





注意!
この話では既存キャラに関係するオリキャラが出ます。





「っ…うぅ…(身体中が、痛い…どうして、こんな事になった…!)」

 

遊海は地面に倒れ伏していた…辛うじて繋ぎ止めた意識で状況を整理しようとする…。

 

「(…まさか、()()()が…こんな事をするなんて……すまねぇ…遊戯…)」 

 

 

 

 

 

 

時は少し前に遡る…

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

「ただいま〜……疲れたぁ…」ぼすん

 

「おかえりなさい!遊海さん!お疲れ様でした!」

 

「ああ、人気者は…辛いよ…」

ふらふらになって帰ってきた遊海はソファに倒れ伏す…。

 

伝説の「チーム5D's」の解散から2年が経った、俺は相変わらず世界中のプロリーグのゲストや対戦相手に招待されて引っ張りだこ…今回は約2週間ぶりに家に帰る事ができたのだ…。

 

 

 

「あっ!龍亞君から手紙が来てますよ!イギリスに引越して大学卒業まではイギリスにいられるそうです!」

 

「そうか…それはよかった!なら次のイギリスリーグ出張の時に会いにいこうか?」

 

「そうですね!きっと身長も伸びてるだろうな〜」

 

5D'sの仲間達はそれぞれの場所で活躍している。

 

遊星は父と同じくKCに入社、低価格・高性能の新たなDホイールをボルガー&ピアスンカンパニーと共同開発に成功…次は子供でも乗れる量産型Dボードの開発を目指している。

 

クロウは新たなプロライディングチームに所属し連勝を重ねている、先日はチームユニコーンを1人で倒してしまったらしい…。

 

ジャックは世界一のシングルプロリーグ・ライドAでその力を見せつけている…再び「キング」の称号を手に入れる日も近いだろう。

 

アキはアメリカの医大で外科医を目指して勉強を続けている…翠とのメール文通の様子では元気そうだ。

 

龍亞と龍可は両親と共に楽しく暮らしている、この前も家族4人の元気な写真が送られてきた…そして、意外な事に龍亞は順調に学校での成績を伸ばしているらしい…この街での経験が龍亞を成長させているのだろう。

 

 

 

 

「さて、明日からはしばらくオフだな…どうかな翠、久しぶりに旅行でも行かないか?」

 

「あ!いいですね〜!温泉でも行きますか?」

 

「そうだな〜、久しぶりに温泉にゆっくり浸かるのも良さそうだ」

 

《ユウミ!何か忘れていませんか?》

 

「ん?どうしたフレア?」

遊海の肩に実体化したフレアが遊海に声をかける

 

《いつか「世界のお祭り」を見に行こうって約束しましたよね!》

 

「あ…そんな事もあったなぁ…」

それはフレアとの20年近く前の小さな約束だった…約束の後に様々な事があった事で長い間忘れられていたのだ…。

 

 

「うーん、今回の休みだとそこまで時間は取れないなぁ…でも、わかった!次は長い休みをとって世界のお祭りを見に行こう、今回はちゃんとした『約束』だ!だからあと少しだけ待ってくれるか?」

 

《わかりました、約束ですよ!ユウミ!》

 

「ああ!指切りしておくか?」

 

《はい!ゆびきりげんまん〜》

フレアの小さな足が遊海の小指を掴んで振り回す

 

「ふふっ、それじゃあ今回は温泉旅行ですね!何処にしましょうか?」

 

「そうだな〜近いのは…(ピリピリピリピリ!)電話…?はい白波!」

 

『こんばんは遊海!いま大丈夫かな…?』

 

「遊戯?久しぶりじゃないか!どうしたんだ?」

電話の相手は遊戯だった…心なしか声が暗いような気がした。

 

 

『実は少し相談したい事があるんだ…明日、時間取れるかい?』

 

「明日?ああ、わかった!いつもの場所でいいか?」

 

『うん、ありがとう…また明日ね!』プツン…

 

 

「遊戯さんからですか?」

 

「ああ、相談に乗って欲しいって…どうしたんだろうな…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

カランカラン…

 

「よ!遊戯、待たせたか?」

 

「ううん、ボクも少し前に来たところだよ」

 

翌日、俺はシティの繁華街から少し離れたカフェに来ていた…ここのマスターは口が堅く、さらにカフェが静かだから遊戯や時々遊びにくる有名人と話すにはピッタリの場所なのだ…。

 

 

「…で、今日はどうしたんだ?」

カフェオレを注文して俺は遊戯に用件を尋ねる。

 

「実は…()()のことなんだ…」

 

「遊奈ちゃん?一人娘の?」

本編世界ではわからないが…この世界では遊戯と杏子の間に生まれた一人娘がいる、その名は武藤遊奈…ゼロ・リバースの後遺症もあり、俺が彼女に会ったのは小さい頃に会ったきりだった…。

 

 

「遊戯〜、俺は子供関係の相談は得意じゃないぞ〜?相談するなら舞さんとかにすれば…」

 

「いや、そういう事じゃないんだ…一度遊奈に遊海の…いや、世界トップレベルの決闘者の姿を見せて欲しいんだ」

 

「??…どういう事だ?たしか遊奈ちゃんはアカデミア本校で主席を取っている強いデュエリストじゃないか?」

遊奈はアカデミア本校の3年生…勉学は親の遊戯に似ず高成績、デュエリストとしては少なくとも当時のカイザー亮やエドに匹敵するレベルのはずだ…。

 

「それが…将来の事で悩んでるみたいでね…」

 

遊戯曰く、卒業を控えた遊奈には既にたくさんのプロリーグからオファーが来ているらしい。

…しかし、彼女はもう一つの夢を抱いていた…それは母と同じダンサーになる事…遊奈は2つの夢を迷っているらしい。

 

 

「だから遊海に遊奈の事を試して欲しいんだ…決闘者の道を進むのか、それともダンサーになるのか…きっとキッカケがあれば…」

 

「そういう事か…でもさ遊戯、無理に決めさせる事もないと思うぞ?」

 

「うん…本当はそうなんだけど…悩み過ぎてあまりご飯も食べてないってアカデミアから連絡が来たんだ…」

 

「なるほどな…じゃあ会いに行ってみるよ、丁度明日は日曜でアカデミアの授業も休みだからな!連絡はしといてくれよ?」

 

「ありがとう遊海!君は本当に頼りになるよ!」

遊戯は俺の手を取って礼を言う

 

「気にすんなよ、俺とお前の仲だ─…ッ!!」

 

 

 

ドクン!

 

 

 

「ッ…ゴホッ!!?」

 

「遊海!?」

 

《マスター!?》

突然、遊海は吐血する…突然の事態にアヤカが実体化する!

 

「遊海!どうしたの!?」

 

「不味い…アカデミアの『結界』が…三幻魔の封印が破られた…!!」

 

「なんだって!?」

遊海の言葉に遊戯の顔色が青褪める…三幻魔を封印する七精門…その上に掛けた遊海の六重結界が破壊され…そのフィードバックが遊海に襲いかかったのだ…。

 

「以前の事もあってさらに堅くしたはず、なのに…!行かなければ…!遊戯、海馬社長に連絡を!俺はアカデミアに向かう!!」

 

「わかった!気を付けて!!」

 

「…マスター!騒がせてごめん!来い!閃光竜!!」

 

キィン─!

 

《キュオオン!!》 

遊海に残された赤き竜の痣「ドラゴンフレイム」が輝き、白きドラゴンが召喚される…遊海はそのままアカデミアへと飛び出した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロノス校長─!!」

 

「この声はセニョール遊海!来てくれたノーネ!」

音速を越えて飛ぶ事10分…遊海はアカデミア本島…封印の祭壇近くにいたクロノスのもとに到着する!

 

 

「状況は!誰が三幻魔を!」

 

「信じられない事に犯人は生徒…しかも…()()()の娘さんなノーネ…!!」 

 

「そんな、まさか…!!」

遊海はクロノスの視線の先を見る…そこにいたのはオベリスク・ブルー制服を着た、毛先が赤い茶色のショートカットに金髪のメッシュが混じった女生徒…

 

「遊奈ちゃん…!?どうして君が!!」

 

『………邪魔を、しないで…!』

 

遊戯の娘…武藤遊奈本人だったのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

「(どういう事だ…!いくらあの子でも俺の結界が破れるはずがない…!しかも彼女は見た限り()()!どういう事だ…?)」

遊海はレイン恵による三幻魔強奪未遂を受けて結界にさらなる強化を施していた、それこそ自分の最強フォームであるコンプリートモードの一撃でも傷つかないほどの堅固さを持つ結界を構築した…。

しかし、現に結界は破られ三幻魔は遊奈の手にあるのだ…!

 

「セニョール遊海…!貴方の結界はセニョリータ遊奈が触れると同時に消し飛んでしまったノーネ!」

 

「なっ…!?そんな馬鹿な…!アヤカ、彼女をサーチしろ!」

 

《既にやっています!…っ!?》

 

「どうした…!」

遊海はアヤカの動揺を見て問いかける。

 

 

《三幻魔との適合率90%以上…さらに彼女から…以前に出会った『No.39』と同種のエネルギー反応を確認!!》

 

 

「ナンバーズ…嘘だろ…!?」

 

『私は…もっと、強くならなくちゃダメなの…!強く…強く…強く!!』ゴウッ!!

遊奈の身体から禍々しいオーラが溢れ出す…!

 

「セニョリータ遊奈!落ち着くノーネ!!いつもの明るい笑顔の貴女はどうしたノーネ!?」

 

「クロノス校長は下がっていてください!…今の彼女には何を言っても届かない…!決闘で無力化します!!」

遊海はデュエルディスクを構える…!!

 

 

 

『私の邪魔を…するなあああああ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

遊海LP4000

遊奈LP4000

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札の『ブリューナクの影霊衣』の効果発動!このカードを墓地に送り、デッキから『影霊衣の術士シュリット』を手札に加える!さらに儀式魔法『影霊衣の降魔鏡』を発動!手札の『シュリット』をリリースする事で現われろ!レベル8!『ヴァルキュルスの影霊衣』!」

太古の悪魔の装備を纏った壮年の魔術師が現れる ATK2900

 

 

「そしてリリースされた『シュリット』の効果発動!デッキから戦士族の影霊衣儀式モンスター『トリシューラの影霊衣』を手札に加える!さらに『ヴァルキュルス』の効果発動!手札の『影霊衣の戦士エグザ』をリリースして1ドロー!さらにリリースされた『エグザ』の効果発動!デッキからドラゴン族儀式モンスター『ディサイシブの影霊衣』を手札に加える!さらに魔法カード『儀式の準備』を発動!デッキからレベル3の儀式モンスター『クラウソラスの影霊衣』を手札に加え、さらに墓地の『影霊衣の降魔鏡』を手札に戻す!」

 

「す、凄まじいスピードで手札が入れ替わっていくノーネ!?これが決闘王の本気なノーネ!!」

遊海の行う凄まじいタクティクスにクロノス校長も圧倒される…!

 

 

「待ってろ遊奈…すぐにその呪縛から開放してやる!!儀式魔法『影霊衣の万華鏡』を発動!エクストラデッキのレベル12『F・G・D』を墓地に送り!手札からレベル合計が12になるように儀式召喚を行なう!現われろ!レベル3『クラウソラスの影霊衣』!レベル9『トリシューラの影霊衣』!」

緑色の鎧を纏う鳥の戦士、そして最強の氷龍の力を纏う戦士が現れる! DEF2300  ATK2700

 

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!!」

遊海LP4000

ヴァルキュルス クラウソラス トリシューラ 伏せ1 手札2

 

 

 

「凄まじい展開なノーネ…!」

 

「(やれる事はやった…幻魔の弱点は展開スピードの遅さ…次のターンで決着をつける!)」

油断なく遊奈を見据える遊海…しかし、遊奈は…

 

『あなたも、私の事を見てくれないのね…!どうして…どうしてどうしてどうして─!!!』

 

 

 

 

『私のターン!!ドロー!!』キィン─!!

 

「っ…!闇の力が強く…!!」

カードをドローした瞬間、遊奈を覆う闇の力が強くなる…!

 

『魔法カード「成金ゴブリン」を発動!相手のライフを1000回復させて1ドロー!さらに「手札断殺」を発動!お互いに手札を2枚捨てて2枚ドローする!!』

 

「なに!?」

遊海の手札が切り捨てられる!

 

遊海LP4000→5000

 

捨てたカード

影霊衣の降魔鏡

ディサイシブ

 

遊奈 捨てたカード

暗黒の召喚神

カオス・コア

 

 

 

「(『暗黒の召喚神』を墓地に落とした…!『死者蘇生』か何かで蘇生して…幻魔を呼び出すつもりか…!!)」

 

 

『そしてフィールド魔法『失楽園』を発動!さらに魔法カード「次元融合殺」を発動!手札の「幻魔皇ラビエル」「降雷皇ハモン」「神炎皇ウリア」を除外して融合!!降臨せよ…「混沌幻魔アーミタイル」!!』

 

「なっ…!?」

アカデミアの周囲が暗雲に包まれ、落雷が降り注ぐ…そして遊奈の背後に禍々しき混沌の悪魔…アーミタイルが現れる…!! ATK0→10000

 

 

「馬鹿な…後攻1ターン目で幻魔どころか『アーミタイル』を呼び出すだと!?そんな神引きまるで…!」

 

『「アーミタイル」は自分ターンの間だけ攻撃力が10000になる!バトルよ!!「アーミタイル」で「トリシューラの影霊衣」を攻撃!全土滅殺─転生波!!』

 

【ガギャアアアアン!!!】

禍々しいエネルギーがアーミタイルに収束する!

 

「まだだ!リバース罠『貪欲な瓶』を発動!!墓地の『F・G・D』『万華鏡』『儀式の準備』『シュリット』『ブリューナク』をデッキに戻して1ドロー!!」

 

『吹き飛べ─!!!』

 

 

キィィン─ドオォォン!!!

 

 

凄まじい爆発が周囲を覆い尽くした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…何が、どうなったノーネ…!」

 

衝撃で失神していたクロノス校長が意識を取り戻す…周囲の木々は薙ぎ倒され、辺りには土煙が充満している…。

 

 

『……しぶといわね、アンタ』

 

「そりゃ、そうだ…俺は『決闘王』、だからな…!」

 

「ゆ、遊海!!無事なノーネ!?」

土煙が晴れた先…遊海はまだ立っていた、モンスターもフィールドに残っている…。

 

「手札の『ヴァルキュルスの影霊衣』の効果…墓地の『エグザ』を除外し、このカードを墓地に送る事で攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了した…っ…!」

遊海は膝をつく…その足下には10mほどの轍が刻まれている…。

 

『しつこい人は嫌われるわ……私は『失楽園』の効果発動!フィールドに『アーミタイル』がいる事でカードを2枚ドローする!…カードを2枚伏せてターンエンド』

 

アーミタイルATK10000→0

 

遊奈LP4000

アーミタイル 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「…なんとか、耐えきった…!これなら!!」

遊海は足に力を入れて立ち上がる!

 

「頑張るノーネ!『アーミタイル』の攻撃力は0!今なら勝てるノーネ!!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「『ヴァルキュルス』の効果発動!手札の『クラウソラスの影霊衣』と『影霊衣の舞姫』をリリースして2ドロー!さらに『舞姫』の効果で除外されている『エグザ』を手札に加える!…そして手札の『カタストル』の効果発動!このカードを墓地に送り、墓地の『ディサイシブ』を手札に加える!!バトルだ!『トリシューラ』で『アーミタイル』を攻撃!」

氷龍の戦士が混沌の悪魔に跳躍する!

 

「さらに手札から『ディサイシブ』の効果発動!このカードを墓地に送り!『トリシューラ』の攻撃力を1000アップする!悪魔を穿て!!氷結三叉槍撃(アイス・トライデント・シェイバー)!!」

ディサイシブの幻影に支援を受けたトリシューラが三叉槍を投げ放つ…槍は悪魔の頭部に直撃し身体を凍らせていく…しかし!

 

『無駄よ、「次元融合殺」で召喚したモンスターは戦闘ダメージを受けない!』

 

「なに!?」

 

ピシ…ピシ…バキン!!

 

 

【ガアアアアアア!!】

 

アーミタイルは氷を割り砕き、咆哮を轟かせる!!

 

 

「………ターンエンドだ」

遊海LP5000

トリシューラ クラウソラス ヴァルキュルス 手札3

 

 

 

 

「…クロノス校長、頼みがあります…()()()()()()()─!」

 

「遊海、何を…」

クロノス校長は遊海の突然の言葉に聞き返す…

 

「今の俺の状況では、彼女を止められません……後を頼みます…!トフェニ!校長を連れて撤退しろ!!」

 

《っ…御意!!》

 

「な、何をするノーネ!?遊海…遊海─!!」

トフェニに抱えられクロノス校長が離脱していく…

 

 

 

『私のターン…ドロー!』

『速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動!除外された『ラビエル』『ハモン』『ウリア』を墓地に戻す!そして永続罠「ハイパー・ブレイズ」を発動!手札の「暗黒の招来神」を墓地に送り…召喚条件を無視して蘇れ!「幻魔皇ラビエル」!!』

 

青き悪魔が混沌の悪魔に並び立つ ATK4000

 

 

「っ…!!(身体が、震える…!どうして、こんな事になった…!!何故…!!)」

 

『バトル!「ラビエル」で「トリシューラ」を攻撃!天界蹂躙拳!!』

青き幻魔の拳がトリシューラを粉砕する!

 

「ぐあぁぁ…!!」

遊海LP5000→3700

 

 

『「アーミタイル」で「ヴァルキュルス」を攻撃!!全土滅殺転生波!!』

 

 

全てを蹂躙する破滅の嵐が遊海を飲み込んだ…。

 

 

 

 

遊海LP0

 

遊奈WIN…

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

「……(何かが、おかしい…あんなコンボが、成立するなんて…ありえ、ない…)」

 

アーミタイルの攻撃が直撃した遊海は全身に酷い怪我を負い、地面に倒れていた…遊奈は既に姿を消している…。

 

《マスター!しっかりして…!意識を─!》

 

「(こんな負け方するなんて…何年、振りだ…?油断はなかった…慢心もない…でも、()()()()()()()…すまない、遊戯…)」

小さな違和感を覚えつつ、遊海の意識は闇に沈んでいった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──どうして、誰も「私」を見てくれないの…?私は「私」…!「決闘王」の子供でも…「世界一のダンサー」の娘でもない…!!私は──!

 

 

 

 

少女の叫びが、聞こえたような気がした──



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決闘王の覚悟〜父と娘〜

こんにちは!S,Kです!

復活幻魔編第2話をお送りします!心の闇に囚われてしまった遊戯の娘・遊奈…彼女を救う事はできるのか…!


それでは最新話をどうぞ!


「どうして、こんな事に…!!」

 

「すまない翠さん…ボク達のせいだ…!ボクが遊奈の心の闇を見抜けなかったから…!」

三幻魔が開放されて数時間後のアカデミア…その保健室ではクロノス校長から連絡を受けた翠、そして遊奈の親である遊戯・杏子夫妻が重傷を負って眠る遊海の周りに集まっていた…。

 

クロノス校長の緊急連絡で訪れた遊戯達が最初に見たのは七精門を中心に半径200mが更地となったアカデミア本島の姿…そして遊奈を止める為に戦い、敗北した遊海の無惨な姿だった。

遊奈は戦いの後に姿を消し、捜索している最中である…。

 

 

 

《…遊奈さんはおそらく、「No.」というカードの影響を受けている可能性があります…「No.」にはかつての「オレイカルコスの結界」のように人の負の心を増幅…そして欲望のままに暴走させてしまう効果があるのです…》

 

「そんな…!それじゃあそのせいで遊海は…!」

アヤカの説明を聞いた杏子が顔を覆う…

 

「でも、何かおかしい…!いくら遊奈が『No.』や『三幻魔』の力を得たからと言っても、それは付け焼き刃の力に過ぎない筈だ!たくさんのデュエルを乗り越えてきた遊海が…そんな事で負けるはずがない…!!」

遊戯は拳を握り締める…遊戯は知っている、未来を知る遊海がどれ程の覚悟で今まで研鑽を積み、戦いに身を投じてきたかを…。

 

「…もしかしたら、『No.』が持つ固有の力が影響したのかもしれない…」

 

「固有の力…?翠ちゃん、どういう事なの?」

翠の呟きに杏子が問い掛ける

 

「…『No.』の中には特別な力を持ったカードがあるの…例えば『極端に運がよくなる』、『持ち主の意識を乗っ取る』、『人形に生命を与える』…遊奈ちゃんが持っている『No.』にもそういう力があるのかも…」

 

「デュエルはデュエリストのタクティクスと『運』が大きく影響してくるゲームだ…遊海もその力に翻弄されてしまったのかもしれない…遊海、本当にごめん…!」

遊戯は眠る遊海の手を握り謝罪する…。

 

 

「…遊海にはこれ以上迷惑はかけられない…!ボクが遊奈を止める!!」

 

《待ちなさい、ユウギ!…貴方は行ってはなりません!》

 

「っ…フレア…!?どうして止めるんだい!?」

病室を出ていこうとした遊戯の前に実体化したフレアが立ち塞がる…!

 

《今の彼女は私達と同じ最上位の精霊を従え、さらに『No.』の力で強化されています…そしてその決闘は()()()()()です…!今の貴方はそれに耐えられますか…!》

 

「闇の、ゲーム…」

杏子がフレアの言葉を繰り返す…闇のゲーム…それは遊戯にとってデュエルモンスターズと切り離せないものだった…。

 

 

《島の惨状を見ましたね?ユウミは攻撃力1万の攻撃を受け敗北しました…それでもなんとか生きているのはユウミの持つ不死性と貴方の娘の抱いた「遊海への害意」が強くなかったから……ユウギ、私の言いたい事がわかりますね?》

 

「…ああ、わかってる…それでもボクは遊奈のところにいかなきゃならない…ボクはあの子の『父親』なんだ…!!」

遊戯は覚悟の籠もった瞳でフレアを見つめる…!

 

《…わかりました、それが貴方の決意なのであれば…ついて来なさい!》

 

「…ありがとう、フレア…翠さん、遊海を頼んだよ!!」

 

「あっ…!待って遊戯!!」

覚悟を決めた遊戯はフレアについて走り出し、杏子も後を追い掛けた…。

 

 

「遊戯さん……遊海さん、ごめんなさい…私も2人を追いかけます…!!どうか遊戯さんを守って…!」

少し悩んで翠も遊戯達を追う…万が一の事態に備えて…。

 

 

 

 

「…ゆ……ぎ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊戯

 

 

 

遊海の精霊フレア…ラーの翼神竜の後を追いかける事数分…遊戯がたどり着いたのはブルー寮近くにある湖…その湖畔だった。

 

「遊奈!!」

 

『パパ…来たんだ…』

人影を見つけた遊戯が叫ぶ…月明かりが照らす湖畔、そこに遊奈は座り込んでいた…。

 

「…遊奈、お前は自分が何をしたのか…わかっているのかい」

 

『…私は、悪くない…!私は強くなりたいの…強くならなくちゃならないの…!』

遊奈が静かに立ち上がる…その身体からは夜の闇でもわかる程の漆黒のオーラが溢れ出している…!

 

「遊奈が進路の事で悩んでるのはわかってた…でも、それとこれは別の事だ…遊奈、いまボクはとても怒ってる…!でも説教はお前を正気に戻した後だ!!」

遊戯は静かにデュエルディスクを構える…!

 

『パパもママも…誰も私の事なんてわかってない!私は…私は──!!』

 

オーラを爆発させながら遊奈はデュエルディスクを展開する…最強の父とその娘…最大の親子喧嘩が始まる!

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

遊奈LP4000

遊戯LP4000

 

 

 

 

 

『私のターン!!ドロー!!』キィン─!!

『魔法カード「成金ゴブリン」を発動!相手のライフを1000回復させて1ドロー!さらに「手札断殺」を発動!お互いに手札を2枚捨てて2枚ドローする!!』

 

「いきなり手札交換か…!」

 

遊戯LP4000→5000

 

 

 

遊戯 捨てたカード

クリアクリボー

磁石の戦士α

 

 

遊奈 捨てたカード

暗黒の召喚神

カオス・コア

 

 

『そしてフィールド魔法『失楽園』を発動!さらに魔法カード「次元融合殺」を発動!手札の「ラビエル」「ハモン」「ウリア」を除外して融合!!降臨せよ!「混沌幻魔アーミタイル」!!』

 

「なんだって…!!!」

 

遊戯達を照らしていた月光が闇に閉ざされる、さらに景色が不毛の大地に変化…そして混沌の悪魔が顕現する…!

ATK0→10000

 

 

「攻撃力10000…!これが十代の言っていた『融合幻魔』…!!」

 

《そんな…!?ユウミの時と…まったく同じ…!?》

 

「なんだって…!?」

フレアの言葉に遊戯は驚く…この時代のデュエリストのデッキは基本的に同名カードを1枚ずつしか入れない「ハイランダーデッキ」が多い…つまりデッキから5枚引き、その手札と同じカードを再び引く確率は約1/1600…通常のデュエルではまず起こり得ない事なのだ…!

 

『「失楽園」の効果発動!フィールドに「アーミタイル」がいる事で2ドロー!…カードを2枚伏せてターンエンド!!』

アーミタイルATK10000→0

 

遊奈LP4000

アーミタイル 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「遊戯!!…そんな…」

 

「『アーミタイル』…!?先攻1ターン目で出したっていうの!?」

遊戯に追いついた杏子と翠がアーミタイルに圧倒される…!

 

《気をつけなさいユウギ!今の「アーミタイル」は戦闘破壊されず、「失楽園」の効果で効果破壊と対象を取る効果を受けず、戦闘で受けるダメージも0になっています!》

 

「っ…!!(なんて強力なモンスターなんだ…!!それにフレアの言葉を信じるなら遊海も同じ状況で負けてる…今は耐えるしかない…!!)」

 

 

 

 

「ボクのターン!ドロー!!」

「モンスターを伏せ、カードを2枚伏せてターンエンド!!」

ターンの回ってきた遊戯は守りの態勢を整える…!

 

遊戯LP5000

伏せモンスター 伏せ2 手札3

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!!』

『リバースカード発動!「異次元からの埋葬」!除外された「ラビエル」「ハモン」「ウリア」を墓地に戻す!そして永続罠「ハイパー・ブレイズ」を発動!手札の「グレイブ・スクワーマー」を墓地に送り墓地の「ラビエル」を手札に加える!そして「暗黒の招来神」を召喚!』

巨大な翼を持つ悪魔が現れる ATK0

 

 

『「招来神」の効果でデッキから「混沌の召喚神」を手札に加える…そして「招来神」がフィールドにいる時、私は攻守0の悪魔族モンスターを召喚できる!「混沌の召喚神」を召喚!』

下半身が蛇体になった悪魔が現れる DEF0

 

『そして「混沌の召喚神」をリリースする事で手札から召喚条件を無視して三幻魔を特殊召喚できる!現われろ!「幻魔皇ラビエル」!』

蛇体の悪魔が闇に飲み込まれる…その闇が膨れ上がり巨大なる青き悪魔が現れる ATK4000

 

 

「っ…!『ラビエル』…!」

 

『バトル!「ラビエル」でセットモンスターを攻撃!天界蹂躙拳!!』

巨大な悪魔の拳が遊戯のモンスターに襲いかかる、しかし!

 

「セットモンスターは『翻弄するエルフの剣士』!攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない!!」

遊戯の場に現れた剣士が不思議な守りで巨大な拳を受け止める!

 

「ぐっ…!!(攻撃の風圧だけでなんて威力だ…!!)」

 

『…「失楽園」の効果で2ドロー…カードを1枚伏せてターンエンド』

遊奈LP4000

アーミタイル ラビエル 暗黒の招来神 ハイパーブレイズ 伏せ1 手札1

 

 

 

 

「遊奈!もうこんな事やめなさい!!お願いだから正気に戻って…!」

 

「杏子さん…!」

杏子が遊奈に向かって叫ぶ…しかし…

 

『私はずっと正気だよママ…私は私…ただ気づいただけ、私は…パパを、ママを超えなきゃ…そうしないと()()()()()()()()()()…!そんなの、ヤダ…ヤダヤダヤダ…!』

遊奈の纏うオーラが段々と強くなっていく…!

 

「遊奈!!」

 

《ユウギ、彼女は「No.」の呪縛で精神が不安定になっています…!これ以上負荷を掛けてしまったら…!》

 

「わかってる…!遊奈、いま助けるからね…!!」

 

 

 

 

「ボクのターン!ドロー!!」

「リバースカードオープン!『マジシャンズ・ナビゲート』発動!手札から『ブラック・マジシャン』を!デッキから『ブラック・マジシャン・ガール』を特殊召喚!」

遊戯のエースである魔術師弟が現れる! ATK2500 ATK2000

 

 

《マスター!これは何事ですか!?何故遊奈さんが幻魔を…!》

 

《落ち着け、我らのする事は変わらない…悪魔を倒し、遊奈嬢を開放する!…それでいいな、マスター?》

 

「うん…!頼むよ2人とも!!ボクはさらに手札から儀式魔法『カオス・フォーム』を発動!『ブラックマジシャン』をリリース!」

 

《いくぞ!!》

ブラックマジシャンが遊戯の背後に開いた宇宙へと飛び込む!

 

「黒衣の魔術師よ…混沌の力を得て魔導の深淵に至れ!!儀式召喚!レベル7…『マジシャン・オブ・カオス』!」

宇宙の混沌の力を得て重厚な鎧を纏った魔術師が現れる ATK2500

 

 

「さらにボクは魔法カード『ティマイオスの眼』を発動!『ブラックマジシャンガール』と融合!!」

 

《はい!行きます!!》

伝説のドラゴンとマジシャンガールが融合の渦に飛び込む!

 

「精霊界を守護する名もなき竜よ!魔術師の力となれ!融合召喚!『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』」

青き伝説のドラゴンに騎乗した騎士鎧のマジシャンガールが現れる ATK2600

 

 

「『マジシャンオブカオス』の効果発動!1ターンに1度魔法・罠が発動した時!相手の場のカードを破壊する!『失楽園』を破壊!!」

 

真・黒・魔・導(ネオ・ブラック・マジック)!!》

魔法陣を展開した魔導師が魔力弾を地面に叩きつける…すると不毛の大地が消え去り曇天のアカデミアの風景に戻る…

 

『っ…!』

 

「これで幻魔を守るものはなくなった!『竜騎士マジシャンガール』の効果発動!手札の『封印の黄金櫃』を墓地に送り『アーミタイル』を破壊する!」

 

《遊奈さんを返しなさい!!魔・導・裂・斬(マジック・バースト・スラッシュ)!!》

 

【グギャオオオン!!?】

マジシャンガールがティマイオスと共に上昇…急降下の勢いで融合幻魔を両断する!

 

 

「やった!『アーミタイル』を倒したわ!!」

 

「流石です!遊戯さん!!」

杏子と翠が粉砕されたアーミタイルを見て喜びあう!

 

 

「よし…!バトルだ!『竜騎士マジシャンガール』で『暗黒の招来神』を攻撃!ブラック・ドラゴン・バースト!!」

《いっけぇー!!》

《グオオン!!》

 

ティマイオスの火炎弾とマジシャンガールの魔力弾が螺旋を描きながら放たれる!!

 

『これ以上はやらせない!!罠カード発動「ヘイト・バスター」!!攻撃対象になった「招来神」と「竜騎士マジシャンガール」を破壊!そして相手に「マジシャンガール」の攻撃力分のダメージを与える!!』

 

《えっ…!?きゃああ!!》

 

「マジシャンガール!!」

攻撃を避けた招来神がマジシャンガールに飛びつき身体を発光させる!!

 

《マスター…!伏せカードを!早く!!》

 

「っ…!ごめん!マジシャンガール!!速攻魔法『痛魂の呪術』発動!自分にダメージを与える効果が発動した時!そのダメージは相手が受ける!!」

 

『なんですって!?』

招来神が自爆する…しかし、その爆発は呪術によって遊奈へと跳ね返る!

 

「うあああ…!!」

遊奈LP4000→1400

 

 

「ボクは…このままターンエンド!」

遊戯LP5000

マジシャンオブカオス 翻弄エルフ 手札0

 

 

 

「遊奈…今すぐデュエルを止めるんだ、そして母さんと一緒に進路をもう一度話し合おう、1人で全部抱え込む必要はないんだ…!」

遊戯は娘へと語りかける…少しでも彼女を傷つけない為に…しかし

 

『ふふ…ははは…!「子の心、親知らず」…よくできた言葉だよね…!パパ達は私の事少しもわかってない…!私が…どんな苦労をしてるか知らないで─!!!』

 

「「遊奈─!!」」

遊奈の心が闇に飲まれていく…彼女にはもう、何も見えていない…!

 

 

 

『私のターン!ドロー!!』キィン─!

『バトル!「ラビエル」で「翻弄するエルフの剣士」を攻撃!』

 

「無駄だよ!『エルフの剣士』は破壊されない!!」

 

『そして私は手札から「幻魔皇ラビエル─天界蹂躙拳」を捨てて効果発動!!「ラビエル」の攻撃力を倍にする!!』

 

「なんだって!?」

ラビエルが禍々しい魔力を纏う! ATK4000→8000

 

 

『天界蹂躙拳!!』

 

「うわあぁぁ…!!ガハッ…!?」

 

「遊戯!!」

放たれた拳はエルフの剣士のバリアに阻まれる…しかし、攻撃の余波がリアルダメージとして遊戯を襲い、木に叩きつけられる!

 

『そしてこのターン「ラビエル」はフィールド全てのモンスターに攻撃できる!!これで終わりよ!「マジシャンオブカオス」を攻撃!!天界蹂躙拳!!』

 

「しまっ─!!」

 

「や、やめて──!!!」

 

幻魔の豪腕が魔導師を砕き、遊戯に迫る…その一撃を受ければ遊戯に待ち受けるのは……

 

 

 

ズドオォォン!!!

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…ゴホッ…!遊戯…遊戯─!!」

土煙の立つ湖畔に杏子の叫びが響いた…

 

 

 

 

 

遊戯LP0

遊奈WIN…

 

 

 

 

 

 

『あははは…はははは…!!やった…パパを、決闘王を超えた…!これで私は──!』

遊戯を倒した遊奈は喜びに打ち震える…しかし、その目からは涙が溢れ落ちている…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ああ、たしかにお前は遊戯に勝った…でも、それはお前の力じゃないだろう?…こんな勝ち方をして嬉しいのか…遊奈」

 

 

『なに…!?』

土煙の向こうから静かに…しかし、怒りの籠もった声が響く…

 

 

「お前もだ遊戯、遊奈を助ける事を考え過ぎだ…あとは任せてくれ…」

 

「すまない、あとは頼む、よ…─」

 

土煙が晴れる…そこには木に持たれかかる遊戯、そして赤いロングコートを纏い、瞳をオッドアイに変化させた遊海が遊戯を守るように立っていた…。

 

 

 

「決着を着けよう遊奈…お前の運命は、()が切り拓く!!」

 

心の闇に飲まれた少女を救う為に…再び英雄は立ち上がる!

 



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切り拓け!新たな未来!─目指すべき夢─

こんにちは!S,Kです!復活幻魔編3話を更新します! 

少女を救う為、英雄は全てを懸ける!

それでは最新話をどうぞ!


「No.」に魅入られてしまい、心の闇のままに暴走する遊戯の娘・遊奈…父である遊戯は遊奈を止める為に決闘を挑んだ…。

しかし…闇の力を手にした遊奈は強く、ついには遊戯を打ち倒してしまう…そして、絶体絶命の窮地に眠りし英雄が目を覚ます…!

 

 

 

 

「翠、杏子…遊戯を頼む」

 

「は、はい!」

 

「あなた!しっかりして…!」

木に身体を打ちつけぐったりした遊戯を翠達に託した遊海は遊奈と視線をぶつける…!

 

 

「…遊奈、お前は辛かったんだろう?決闘王の父、そして元・世界一のダンサーの母…きっとほとんどの人がお前の事を色眼鏡で見た筈だ…そしてみんなからの視線が心の瑕になり…そこを『No.』につけ込まれた…」

 

『…そうよ…!誰も、「私」を見てくれないの…!私は「私」なのに!「決闘王」の娘だ!『世界一のダンサー』の子供だって…パパとママの事ばっかり!!私は遊奈!!私は…私は──!!』

 

「遊奈…!」

 

それは小さな心の傷だった、彼女を見てきた人々は必ずと言っていい程「流石は遊戯や杏子の子供だ」と褒める…それは彼女にとってのストレスだった。

そしてひょんな事から『No.』を拾った彼女はその心の闇を暴走させてしまったのだ…。

 

 

『私は自分を証明するの…!強くなって強くなって強くなって!!私は「私」だって!!』

 

「遊奈…」

 

「…遊奈、俺はもう一度お前に決闘を挑む…デュエルは全て平等だ、戦いの前に立場も生まれも関係ない!俺の全力を以て…君を闇から救いだす!!」

遊海は自分の胸に手を当てる、開放されるのは遊海に秘められた新たな力…全ては親友の子を…1人の少女を救う為に…!

 

 

 

我が闘いの舞台は此処にあらず…我が力を振るうは罰にあらず…我が力は…未来を導く為に使うモノ…!!その前には…何者の力も必要なし…!!展開せよ!!我が覚悟──!

 

その瞬間、世界は一変する…海風そよぐアカデミアから…風が吹き荒ぶ天空の舞台へと…!

 

 

 

 

「戦いの聖地…!『尋常なる決闘の地(コロセウム・デュエルフィールド)』─!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊戯

 

 

 

「ここは、アルカトラズ…!?」

 

「そんな…たしかバトルシティが終わった後に海馬君が爆破したはず!!」

 

遊戯達が気付いた時…風景は一変していた、曇天の湖畔ではなく、かつての戦いの舞台…アルカトラズ島の天空デュエルリングへと…!

 

 

《マスター、これ…禁呪です…!》

 

「マジシャンガール…!ここが何処だかわかるの!?」

遊戯がブラックマジシャンガールに問い掛ける。

 

《お師匠様の魔導書で見た事があります…!世界を自分の強いイメージで塗り潰す、伝説の大魔法…リアリティ・マーブル…!簡単にいえば自分の心に描いた風景をフィールド魔法として発動しているんです…!!》

 

「そんな、そんな事ができるなんて遊海は…」

 

《もう、人間の範疇には収まりません…神様の領域に足を踏み入れてます…!》

 

「遊海さん…!無茶はしないで…!!」

 

遊戯達はデュエルリングの下から2人の戦いを見届けるしかなかった…。

 

 

 

SideOUT

 

 

 

 

 

『…ここは…』

 

「なに、戦う為の舞台を整えただけさ…この場所では呪いだろうが加護だろうが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…これで遊奈と俺は対等に戦う事ができる…ぶっつけ本番で成功するとは思わなかったけどな……さぁ、リベンジマッチだ遊奈!お前の呪縛を砕く!!」

 

『私は…勝つの…!強く、強く…!強く!!』

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

遊奈LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!!』

『っ…!!永続魔法「失楽の霹靂」を発動!さらに永続魔法『七精の開門』を発動!デッキから「降雷皇ハモン」を手札に加える…!そして魔法カード3枚をセット…そしてセットされた「異次元からの埋葬」「終わりの始まり」「デッキロック」を墓地に送り…現われろ!「降雷皇ハモン」!!』

決闘場にカミナリが降り注ぐ…そして黒雲の中から雷の幻魔が降臨する…! ATK4000

 

「私は、これでターンエンド…!」

遊奈LP4000

ハモン 失楽の霹靂 七精の開門 手札1

 

 

 

「…『No.』の力を封印してもこれか…天運だけはどうしようもないな…!」

遊海はハモンをまっすぐ睨みつける…。

 

「力を貸してくれ…遙か未来の英雄よ─!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「自分フィールドにモンスターが存在しない時…このモンスターはリリース無しで召喚できる!!現われろ!『時械神ガブリオン』!」

フィールドに水の竜巻が起きる…その渦の中から青き鎧に女性の顔が映ったセフィロトの一柱が現れる ATK0

 

 

「Z-ONEの…『時械神』─!?」

現れた時械神に遊戯が驚きをあらわにする…かつて、未来を救済する為にネオ童実野シティを破壊しようとした「最後の未来人」Z-ONE…彼の従えし「神」が少女を救う為に再び顕現する!

 

『なんなのよ…そのモンスターは…!』

 

「お前を救う…その為に俺は全力を尽くす!!バトルだ!『ガブリオン』で『ハモン』を攻撃!」

 

『攻撃力0で攻撃!?…返り討ちにしなさい「ハモン」!失楽の霹靂!!』

ハモンの雷撃とガブリオンの水流が衝突…互いに弾かれる!

 

『なっ…!?』

 

「『ガブリオン』は戦闘・効果で破壊されず、自分への戦闘ダメージも0になる…しかし、『ガブリオン』のさらなる効果発動!バトルフェイズ終了時!相手フィールドのカード全てをデッキに戻す!そして相手は同じ枚数をデッキからドローする!」

 

『なんですって─!?』

遊奈のフィールドのハモンと2枚のカードが水流に流されデッキに戻される!!

 

「俺はカードを伏せて…ターンエンドだ!」

遊海LP4000

ガブリオン 伏せ1 手札4

 

 

 

「強い…!でも、なんて頼もしいんだ…!」

 

「これが…『時械神』…!」

遊戯と杏子はガブリオンに目を奪われる…敵を倒し、味方を守る…その姿はかつてとは違い、とても頼もしく見えた…。

 

 

『なんなのよ…そのモンスターは、そんなの…どうやって倒せばいいのよ─!?』

ハモンをあっさりと除去された遊奈は取り乱す…

 

 

「『No.』の力を失っただけでこれなのか遊奈!お前が遊戯を超えたというなら…諦めずにかかってこい!!」

 

『黙れ…黙れ─!!』

 

 

 

『私のターン!ドロー!!』

『フィールド魔法「失楽園」を発動!さらに魔法カード「手札断殺」を発動!お互いに手札を2枚捨てて2枚ドロー!』

 

 

遊奈捨てたカード

宮廷のしきたり

不協和音

 

 

遊海捨てたカード

アドバンスドロー

時械巫女

 

 

 

『さらに私は「混沌の召喚神」を召喚!』

蛇体の下半身を持つ悪魔が現れる ATK0

 

『そして「混沌の召喚神」をリリースする事で手札の三幻魔を召喚条件を無視して特殊召喚できる!現れなさい!「神炎皇ウリア」!!』

空に向かって炎の柱が立ち昇る…その炎の中から巨大なる炎の悪魔が現れる! ATK0→2000

 

「その時!リバースカード永続罠『虚無械アイン』発動!手札の『時械神カミオン』を墓地に送り1ドロー!」

 

 

『っ…「失楽園」の効果発動!幻魔がいる事で2ドロー!…カードを1枚伏せてターンエンド…!』

遊奈LP4000

ウリア 失楽園 伏せ1 手札2

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに『ガブリオン』はデッキに戻る!」 

ガブリオンが光の粒子になって消え去る…。

 

「そして自分フィールドにモンスターが存在しない時!『時械神メタイオン』はリリース無しで召喚できる!」

赤き鎧を纏う時械神が現れる ATK0

 

「バトル!『メタイオン』で『ウリア』を攻撃!バトル終了後に自身以外のフィールドのモンスターを手札に戻し、1体につき300ダメージを与える!」

 

『っ…!うあぁぁ…!』

ウリアがメタイオンによって手札に戻され、遊奈にダメージが与えられる! 

遊奈LP4000→3700

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

遊海LP4000

メタイオン アイン 伏せ2 手札2

 

 

 

『…なんで、邪魔するの…!私は…勝たなきゃならないの…私は強くならなくちゃならないの…!邪魔しないで…!!』

 

「強くなる為だったら…手段も方法も選ばないのか!!」

 

『ひっ…!?』

遊海の一喝に遊奈が飛び上がる…

 

「決闘者はカードと…デッキと共に成長する!自分のデッキを磨かずして何がデュエリストだ!!…借り物の力で強くなったとして…お前は本当に満足なのか!!」

 

『うるさい…うるさいうるさいうるさい!!私だって…そんな事わかってるわよ─!でも、誰も認めてくれないの!みんなパパと私を比べるの…!ダンスだってママと比べるの…!私は「私」なのに─!!』

 

「遊奈…」

それは暴走しているが故に出た本心だった…見えない親の壁…それを超えたかった、自分自身を認めて欲しかった…それが彼女の本心だった。

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!!』

『永続魔法「七精の開門」発動!デッキから「降雷皇ハモン」を手札に加える!そして魔法カード「次元融合殺」を発動!手札の「ハモン」「ウリア」「ラビエル」を除外!降臨せよ!「混沌幻魔アーミタイル」─!!』

再び遊海の前に融合幻魔が降臨する…! ATK0→10000

 

 

『『アーミタイル』がいる事で『失楽園』の効果発動!2ドロー!さらに『暗黒の招来神』を召喚!効果で『カオス・コア』を手札に加える!そして魔法カード『痛み分け』を発動!『暗黒の招来神』をリリース!そして相手は自分のモンスターをリリースしなければならない!』

 

「やるな…!『メタイオン』をリリースする!」

遊海のフィールドがガラ空きになる…だが!

 

「しかし、一手足りない!永続罠『虚無械アイン』を墓地に送り!永続罠『無限械アイン・ソフ』を発動!その効果で手札から現われよ!『時械神ラツィオン』!!」

 

『なっ…!?』

両肩に炎を灯す時械神が現れる ATK0

 

 

『私は、ターンエンド…』

遊奈LP3700

アーミタイル 伏せ1 失楽園 手札1

 

 

 

「遊奈…1つ、訂正しよう…君は強い!」

 

『えっ…?』

遊海の思わぬ言葉に遊奈は目を丸くする…

 

「借り物とはいえ…三幻魔をここまで扱えるデュエリストは数える程しかいないだろう!遊戯譲りのタクティクスと天運…そして杏子譲りの頭の回転の速さ…俺は本当の君と戦ってみたかった!!…その強さに敬意をもって見せよう!未来を救う為に命を懸けた英雄の切り札を!!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「スタンバイフェイズに『ラツィオン』はデッキに戻る!そして『無限械アイン・ソフ』を墓地に送り…永続罠『無限光アイン・ソフ・オウル』を発動!自分の場にモンスターが存在しない時、『アイン・ソフ・オウル』は真価を発揮する!手札・デッキ・墓地からカード名の違う時械神を召喚条件を無視して特殊召喚する!手札から『時械神ザフィオン』を、墓地から『時械神カミオン』を…そしてデッキからこのモンスターを特殊召喚する!」

アイン・ソフ・オウルの3つの輪が縦に重なり凄まじいエネルギーを放出する…そしてエネルギーは枝葉の茂る巨大な樹を作り出す!

 

「【無は無限となり…無限の光から生まれる、未来を救う生命の神!現われろ!『究極時械神セフィロン』─!】」

周囲に光が満ち溢れる、その聖なる光の中から生命を司る神が現れた…。 ATK4000 ATK0 ATK0

 

 

『あっ……』

 

「究極時械神セフィロン…やっぱりすごいな、遊海は…」

遊戯は遊海の背中を見ながら呟く…遊戯には見えていた、遊海と共に並び立つ名もなき男の背中が…

 

 

「バトルだ!『ザフィオン』と『カミオン』で『アーミタイル』を攻撃!」

 

【グギャオオオン!?】

2体の時械神の水流と岩弾がアーミタイルを打ち据える!

 

「バトルフェイズ終了!『ザフィオン』の効果発動!相手フィールドの魔法・罠カードを全てデッキに戻す!さらに『カミオン』の効果発動!『アーミタイル』をデッキに戻す!」

2体の時械神によってフィールドが一掃される!

 

遊奈LP3700→3000

 

「俺はこれでターンエンド!」

遊海LP4000

セフィロン カミオン ザフィオン アインソフオウル 手札0

 

 

 

『……わたし、何を…?』

 

「「遊奈!!」」

ダメージを受けて座り込んでいた遊奈が立ち上がる…その瞳に狂気の色はない…セフィロンの神威とアーミタイルがフィールドから離れた衝撃で一時的に正気を取り戻したのだ…。

 

「…正気に戻ったみたいだね遊奈ちゃん、久しぶりだね」

 

『えっ…!?遊海おじさん!?えっ…ここ何処!?なんで私デュエルしてるの!?!?』

遊奈は辺りを見渡して動揺している…どうやら今までの記憶が抜けてしまっているようだ。

 

「落ち着いて遊奈ちゃん…君は悪いカードのせいで暴走していたんだ、心当たりはあるかな?」

 

『えっ…このカードの事…?痛っ!?』

遊奈が懐から手帳を取り出す…その手帳を持った瞬間、遊奈の手に数字が刻まれる…!

 

45

 

「『No.45』…!それが遊奈のナンバーズの正体か!!」

 

『やだ…!何これ!?怖い…!!』

 

「落ち着いて遊奈!お前がデュエルを終わらせるんだ!そうしたら遊海がなんとかしてくれる!!」

手に数字が刻まれパニックを起こす遊奈に遊戯が叫ぶ!

 

『パパ…わかっ、た…!!』

 

 

 

 

 

『私のターン、ドロー!!』

『「カオス・コア」を…召喚!!』

巨大な翼を持ち、胸に光の玉を持つ悪魔が現れる ATK0

 

『バトル…!!「カオスコア」で「セフィロン」を攻撃─!!』

 

「っ…!頼む『セフィロン』!遊奈の闇を祓ってくれ!!アカシック・ストーム!!」

 

《…!(コクリ)》

 

小さく頷いたセフィロンが光の玉を作り出す…そしてその光を解き放ち、全てを包み込んだ…。

 

遊奈LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

『あっ…』

 

「「遊奈!!」」

 

「おっと…!」

デュエルが集結し遊奈が膝から崩れ落ちるが遊海がそれを受け止める…周囲の景色はアカデミアの湖畔に戻っていた…。

 

「原因は…これか」

遊海は足下に落ちた手帳を拾い上げる…その手帳には「No.45滅亡の予言者グランブル・ロゴス」が挟まっていた…。

 

「予言者か、断定はできないが…このカードの力で『武藤遊奈はデュエルに勝つ』という結果を得ていたんだろうな…まったく、こんなのがあと99枚…先は長いな…」

 

遊海は手早く「No.」を回収…アヤカ謹製の「カードの力を封じ込めるスリーブ」に仕舞い込んだ…。

 

 

「遊海さん!!」

 

「遊奈!!」

遊戯達が2人に駆け寄る…

 

「おう、遊戯…大丈夫、遊奈は無事だ…『セフィロン』がだいぶ加減してくれたらしい」

遊海は遊奈を遊戯夫妻に託した…。

 

 

 

「遊奈!しっかりするんだ!」

 

『うっ…パパ…ママ…?わたし…』

 

「「遊奈!!」」

遊戯夫妻は娘を強く抱き締める…

 

『ごめんなさい…私…』

 

「いいの…今はゆっくり休んで…ごめんね…!」

   

『うん…』

杏子の声に従うように遊奈の意識はゆっくり落ちていった…。

 

 

 

「遊海…本当にありが…あれ?遊海…?」

眠る娘を見て安心した遊戯は当たりを見回すが…恩人である遊海の姿が見えない…

 

「えっ…遊海さんなら私の隣…ああっ!?」

翠が遊海のいるはずの隣を見るが遊海の姿はない…遊海は足元に仰向けで倒れていた…

 

「ゆ、遊海さん─!?」

 

「遊海─!?」

翠が身体を揺するが反応はない…それどころか赤いコートが消え、ボロボロのジャケットに戻っていく…

 

《やはりこうなったか…無茶をしおって…》

 

遊海の隣にメガロックが現れる…少し呆れ顔である

 

 

「メガロック!遊海さん、まさか…」

 

《翠の予想通りだ…まったく、()()()()()()()()()()ような状態でデュエルをするからこうなるのだ、遊戯の前でカッコつけたかったのであろうが……》

 

「ゆ…遊海さんのバカー!!!」

 

夜のアカデミアに翠の叫びが木霊した…。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

『本当ッに…すいませんでした─!!』

 

「いいんだよ遊奈ちゃん、君が無事で良かった…」

 

三幻魔復活騒動から3日…眠り続けた遊海がようやく目を覚ました、最初に面会にやってきたのは遊戯親子…遊奈は90°の角度でしっかり謝罪している…。

とりあえず話を聞くと「No.」を手に入れたのは数日前…進路に悩んで海岸を散歩していた時に偶然拾い、その後の記憶はふわふわしているらしい…。

 

 

「まぁ、俺の怪我はすぐに治るから大丈夫だよ、それより…進路は決まったのかな?」

 

『それが…結局まだ悩んでて…デュエリストとしてはパパに及ばないし…ダンサーとしてもママみたいに踊れないし…』

遊奈は俯いてしまう

 

「そっか…なら、俺にいいアイデアがあるんだ…『アイドルデュエリスト』…なんてどうかな?」

 

「アイドル?」

 

『デュエリスト…??』

遊海の言葉に遊戯と遊奈は首を傾げる

 

「いや、最近のデュエル界はだいぶ女性は増えているんだけど…まだ男勝りな人が多くてね…」

遊海がプロの世界に復帰して2年…遊海は数多の決闘者達と戦ってきた、当然その中に女性決闘者もいたが…言ってしまえばアマゾネスじみた女傑が多かったのだ。

 

 

「それで思ったんだよ、今のデュエル界には『華』が足りない…例えばだけどデュエルで勝った時にパフォーマンスでダンスを披露する…そうすれば観客も喜ぶし女性デュエリストも増えると思うんだ…どうかな?」

 

『アイドル…デュエリスト…なんかいいかも!私、やってみます!!』

遊海の言葉を聞いて遊奈は新たな『夢』を見つける事ができたようだ。

 

「パパ!私頑張る!パパ達みたいに一番にはなれないかもしれないけど…みんなを楽しませられるデュエリストを目指してみる!!」

 

「そうか…きっと大変な道になるよ?」

 

『うん…でもやってみる!だって私はパパとママの娘だもん!!』

 

「頑張れよ遊奈ちゃん、何かあったら俺か海馬社長を頼るといい」

 

『はい!ありがとうございます!』

 

 

その後、遊奈はとあるプロリーグに所属しアイドルデュエリストとしての活動を始める。

 

彼女が最強の女性プロデュエリスト「ダンス・クィーン」と呼ばれるのは…少し未来の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん…相変わらず無茶をする男だな、お前は…」

 

「あはは……すいませんでした…」

保健室のベッドで遊海が土下座している…目の前に腰掛けるのはご立腹な様子の海馬社長である。

 

「復活した三幻魔を制圧した事は褒めてやる…だがなぁ、七精門が全損とは…どういう事だぁ!!」

遊海と遊奈の初戦で七精門は跡形も無く吹き飛んでしまっていた…遊海はその責任を全て背負ったのだ。

 

「森や防衛システムはまた構築すればいいが…七精門はもうどうにもならん!影丸も錬金術師ももういないからな…これから三幻魔の封印はどうするつもりだ?オレとしてはカードの廃棄も考えている」

 

元々この世界の三幻魔はグールズが「三幻神」のコピーカードを作ろうとした時に偶然生まれたカードだった…その強力過ぎる力故にアカデミアにアナログの「七精門」、そしてデジタルシステムで封印してきたのだ…。

 

 

「…廃棄は待ってください、海馬社長…カードには罪は無い筈です」

 

「だが、カードがある以上必ず今回のような事は起きる…その度にお前が出向いていてはイタチごっこではないか!」

 

「…なら、()()に直接聞いてみましょう…」

 

「なに?」

 

 

 

 

「…何をするつもりだ」

貸し切り状態にしたアカデミアのデュエルスペース…そこに海馬、そして杖をついた遊海が立っている…。

 

「こうするんです…!現われよ!『神炎皇ウリア』!『降雷皇ハモン』!『幻魔皇ラビエル』!!」

 

遊海はデュエルディスクに三幻魔をセットする…そして遊海達の前に三体の幻魔が現れた…!

 

 

【………】

 

「俺の言葉はわかるか?…俺は白波遊海、海馬社長からお前達の守護を任せられた決闘者だ…お前達に聞きたい事がある!」

遊海は三幻魔に問い掛ける

 

「…俺は二十年以上前からお前達の守護を任せられてきた、でも…俺がお前達を守りきれなかった事は何度もある!そこでお前達に問いたい!このまま封じられる事を望むか!それとも、他の望みはあるか!」

 

【…我ガ名ハ、ラビエル…気高キ決闘者ヨ、我ラハ平穏ヲ望厶…】

 

《我が名はハモン…我らは、幾度も邪悪な企みに使われてきた…》

 

《私の名はウリア…しかし、我らはそれを望まない…特異な力を持ち、邪悪と断じられてきた…しかし、私達は静かに眠りたい…》

遊海の問い掛けに三幻魔が答える…。

 

【我ラハ、神ノ失敗作…ダガ強力ナチカラ故ニ幾度モ狙ワレタ…我ラハ、コノ世界ニ不要ナモノ…】

 

《ならば、我らが消える事もやむなし…》

 

《お前達の話は聞いていた、我らが運命…気高き魂を持つ決闘者に委ねる…》

 

「…なんだ、意外に物分りが良い奴じゃないかお前達…」

 

「フン…予想外だがな…」

海馬と遊海は顔を見合わせる…悪魔の割に三幻魔の精霊達はなんとも大人しい性格だったのだ…。

 

 

《なら簡単な話ですよユウミ、貴方が面倒を見ればいいじゃないですか?》

 

「えっ!?ちょっと、フレア!?」

遊海の肩に現れたフレアが思わぬ事を口にする

 

《ユウミは誰にも手出しできない封印場所(亜空間カード庫)を用意できるじゃありませんか?それに…ユウセイに怒られてしまいますよ?》

 

「…この世に不要なものは無い、か…海馬社長…」

 

「フン…答えは決まっている遊海、これでアカデミアにも平穏が訪れるだろう」

 

「…!ありがとうございます!…聞いていたな?お前達…異存はないか?」

 

《神を友とする者よ…》

 

《我らが力、貴方に預けよう…》

 

【願ワクバ…我ラノチカラ、貴殿ト共ニ…】

そう言うと幻魔達は消えていった…そして遊海の手には三幻魔のカードが収められていた…。

 

「よろしくな…ラビエル、ハモン、ウリア…できればお前達の力を借りないでいたいが…その時はよろしく頼むよ」

遊海は優しくカードに語り掛けた…。

 

 

 

 

 

三幻魔が仲間になった▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海、話は変わるが…お前が遊戯の娘から取り上げた『No.』なるカード、勝手だが調べさせて貰った…オレには効果を読む事はおろかカード名すら読めなかったがな…」

 

「ちょっ…!?いつの間に取ったんですか!?」

 

「案ずるな、翠と精霊のアヤカには了承は得ている…何なのだ、このカードは…?」

海馬は遊海に「No.45」を返しながら問い掛ける

 

「…このカードは『No.』…これから先の未来で戦いの火種になるカードで…全てで1〜100番まで計100枚存在するカードです…」

 

「フン…新たな戦いか、それはいつ起きる?」

 

「…わかりません、1年か…10年か…もっと長い未来の果てか…」

 

「…なるほどな、お前も難儀な運命を背負ったものだな…できる限り情報は集めてやろう、人類の未来は…お前にかかっている…頼むぞ、白波遊海」

 

「…はい…!」

海馬の言葉に遊海は力強く返事を返した…。

 

 

 

 

 

「…それはそれとして…遊海、お前には半年の休暇を与える…充分に自分の身体と翠を労うがいい…帰るぞ!紗良!翠との話は済んだか?」

 

「はい、翠さんまた今度!」

 

「ええ!紗良さん!美味しいお菓子を用意して待ってますね!」

 

…今更だが、海馬社長はアカデミアに来るにあたり何故か奥さんを連れて来ていた、名前は海馬紗良…白い髪を持つ美人さんである………あの人、絶対キサラの生まれ変わりだよなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

「さて…休みも貰った事だし…旅行にでも行こうか!」

 

「そ・の・ま・え・に…自分の心身を充分治してからにしてくださいー!」ギュウ〜!

 

「アイタタタタ!?ちょっ、ギブギブギブ─!?翠絶対怒ってるよね─!?」

 

 

《やれやれですね、マスター…》

 

《やれやれだな…》

 

《あの無茶癖は…死んでも直らんだろうな…》

 

《まぁ、一件落着という事で!》

 

 

「だ、誰か助けて〜!?」

 

精霊達にも見放された遊海はしばらく翠の激痛マッサージの刑に処されましたとさ…。



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世界お祭りツアー〜手にした平和〜

こんにちは!S,Kです!
今回はデュエルはお休みの旅行編!キャラ崩壊気味の遊海達の旅をご覧ください!


それでは最新話をどうぞ!


※注意!
今回は何個かの世界のお祭りを巡ります、ですが現実世界ではだいぶ時期がズレているモノも…今回はそういうツッコミは無しでお願いしますm(_ _;)m


「お〜い!遊…白野!翠さーん!」

 

「こっち!こっち〜!」

 

「お〜!龍亞!龍可!大きくなったな〜!」

 

「久しぶりー!元気そうでよかった!」

 

 

イギリスのとある田舎町…そこで4人の人物が再会を喜び合っていた、それはネオドミノシティを離れた龍亞と龍可、そして旅行に訪れた遊海と翠だった。

 

 

「急に来るって連絡もらったから驚いたよ〜!プロリーグは大丈夫なの?」

 

「ああ、少し前に厄介な事件を解決してな…海馬社長から長めの休みを貰ったんだ、それで世界のお祭りを見て回る旅行をする事にしたんだよ」

 

「へぇ〜…その厄介な事件って?」

 

「ん?…復活した三幻魔の制圧」

 

「「なんで!?」」

 

「まぁ…色々あったのよ…」

 

 

三幻魔事件から少し時間が経ち、遊海達はかねてからの約束だった旅行を始めた…その最初の場所がイギリスだったのだ。

 

 

 

「でも遊海もすごいね!オレ、こんなお祭りがあるなんて知らなかったよ!」

 

「ああ、俺が一番最初に行くならこの祭りにしようと思ってたんだ」

 

《私も楽しみです!》

遊海達がいるのはイギリスのとある町…そこでこれからとあるお祭りが開かれるのだ、その名も…

 

 

「チーズ転がし祭り」

 

 

この祭りのルールは至極単純、転がるチーズを追いかけて捕まえる事…しかし、問題はその条件…チーズを転がすのは坂ではなく、もはや崖ともいえる丘から転がすのだ…。

当然、怪我人も出るが…そこはご愛嬌、この世界でもなかなかの人気を誇る伝統行事である。

 

 

 

「(…前にテレビで見て思ったけど…もはやスキージャンプの角度だよねコレ!?)」

スタート地点に立った遊海は内心ツッコミを入れる…見下ろした丘はデコボコの穴だらけ…そしてジャンプ台並の角度…ここを転がるチーズは時速100キロを超えるらしい…。

 

 

「頑張って!白野さん!」

 

「優勝できるよー!!」

 

「怪我しないようにね〜!!」

 

《派手に転がるのだ!そうすれば速いぞ!》

 

後ろで翠やメガロック達が応援してくれている…ここは俺の漢を見せる時…!!

 

 

『チーズ転がし祭り!第3レース!レディ……ゴー!!』

 

「うおおぉぉ!!!!」

 

チーズを転がり始めるのを合図に15人程の選手が走り…もとい、転がり始める…そんな中遊海は某青い槍兵のような見事なランニングフォームでチーズを追いかける!!

 

『うぉっ!?あのジャパニーズ、なんてクレイジーなんだ!?チーズと同じ速度で走ってやがる!?』

 

『こんな奴あのカワミヤ以来だ!!』

 

「怪我は慣れてるから、恐れる必要なし!!うおおー!!!」

走る、転がる、走る、走る…チーズと同じ速度で丘を駆け降り…

 

『ご、ゴール!!第3レースの優勝は日本からの刺客…ハクノキシナ……おや、あんたもしかしてデュエルキン─』

 

「HAHAHA!マイネームイズ、ハクノキシナミ!…OK?」

 

『オ、オーケー…』

 

無事に1位を勝ち取ったのだった。

 

 

 

なお、同じ場所で丘を駆け登るレースがあり、龍亞が参加する事になったが…

 

 

「よっしゃああああ!!龍可と白野に良いところ見せるんだああああ!!」

 

『ゴール!!少年の部優勝は同じく日本人!龍亞少年だー!!』

 

「まじか」

 

「お兄ちゃんすごーい!!」

 

なんと、精霊の力に目覚めており身体強化でぶっちぎりの1位を勝ち取ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

「楽しかったー!遊海さん!龍亞君!1位おめでとう!」

 

「ありがとう翠!オレ頑張った!!」

 

「ああ、流石だ龍亞…それだけの体幹と体力があればDホイールもすぐに乗れるようになるさ!頑張れよ!」

 

「うん!絶対にプロの舞台でジャックや遊海と戦ってみせる!だから待っててね!」

 

「ああ、頑張れよ!未来のトップホイーラー!」

龍亞と遊海は互いの健闘を称え、再戦を約束した…。

 

 

「翠さん!次は何処に行くの?」

 

「この後は少しイギリスを旅行してからスペインに行くつもりなの!そこからタイに行って…ナスカに行って…そこからアメリカに行くつもりよ!」

 

「ナスカにアメリカ…5D'sにとって大切な場所ね…ボマーやアキさんに会ったら私達は元気だって伝えておいてね!」

 

「うん!また写真送るからね!」

 

その後、遊海達は龍亞達の案内のもと有名な時計塔や宮殿、そしてアーサー王伝説ゆかりの湖などの名所を満喫し次の国へと旅立った。

 

 

 

 

 

 

次に遊海達が訪れたのはスペイン…そこには世界でも珍しい2つの祭りがある…。

 

「すごい賑わいだな…これがスペインのお祭りか…」

 

「これからあのお祭りが始まるんですね?」

 

「ああ、世界的に有名な『牛追い祭り』…楽しみだけど…少し怖いなぁ…」

 

 

「牛追い祭り」

 

 

 

スペインでとある聖人を称える1週間に渡る祭り…その中で一番重要な行事…それが祭りの期間中に毎日行われる牛追い祭りだ…その特徴は人間が牛を追うのではなく()()()()()()()事だろう、元々は牛舎から闘牛場に牛を移動させる為の行事だったのだが、とある年に何を思ったのか闘牛の前を走る勇者(バカ)が現れて…それ以降人々が牛に追われる行事になったんだとか…。

 

 

パンパン…パーン!!

 

 

「おっ…合図の花火が鳴った!来るぞ来るぞ〜!フレア!しっかり掴まってろよ!」

 

《了解ー!》

 

『『『ブモー!!』』』

 

花火に追い立てられた12頭の牛がスペインの町中を疾走する、当然興奮状態な訳で……

 

『うわあぁぁー!?』

 

『ギャフン!?』

 

『アイタ!?』

 

牛の突進や角で放り投げられる人々…平均して参加者の3%が重傷を負うらしい…。

 

「うおお!?やっぱり牛はやべぇぇ!!」

 

《ユウミ走って!牛に轢かれ……!?ユウミ!本気で逃げて!!》

 

「えっ?」

追いかけっこを楽しんでいたフレアの声色が変わる!

 

《精霊が混じってます─!!》

 

「な、なんでぇぇ─!?」

 

《ブモォォォ!!!》

遊海が後ろを振り返る…そこには全身が赤く、3つの目を持つ猛牛が迫っていた!!

 

「なんで『暴れ牛鬼』が!?あっ…」つまずき

 

《あっ…》

 

 

ドガッシャーン

 

 

「うわああああぁぁぁぁ──…」 キラーン☆

 

《マスターー!?》

 

「ゆ、遊海さーん!?!?」

暴れ牛鬼の突進を受けた遊海は星になりましたとさ…。

 

※暴れ牛鬼は翠とウィンダ達が捕獲し、無事に精霊界に還しました。

 

 

 

 

 

「ひ、酷い目に…あった…ガクッ」←1週間の絶対安静

 

 

 

 

 

 

 

「トマト投げ祭り」

 

 

牛追い祭りの少し後に行われるスペインの収穫祭…特徴はなんといっても数トンに及ぶ大量のトマトを投げ合う事…あまりのトマトの量にトマトの果汁で湖ができる程だ。

 

 

「おりゃー!」ベチャ!

 

「きゃ…!やりましたね遊海さん─!えーい!!」

 

「へぶっ!?」バチャ!

 

《トマト爆弾投下ー!》

スペインの人々に混じりトマトを投げ合う遊海達…祭りでの暗黙のルールとして投げるトマトは少し潰して投げるのがお約束である。

 

 

「よ〜し!特製3連トマト弾を(ゴチーン!!)あいたぁ!?誰だ!固いもの投げたの!?…ん?」

頭に直撃した衝撃に辺りを見渡す遊海…その足下には…

 

《クケケ!…クケ?》

 

「…『キラートマト』じゃねぇか─!!!」

 

《ギエピー!!?》キラーン☆

 

何故かトマトに混じっていたキラートマトは遊海のアッパーで空の彼方に飛んでいった…。

トマト投げ祭りの後は町の設置した仮設シャワーや散水車でトマトを洗い流す…その為、水着で参加する人も多いんだとか…。

 

 

「次は少し趣向を変えようか…」

 

 

 

 

 

 

「コムローイ祭り」

 

 

 

《ゴッド・ブレイズ・キャノン!(超弱火)》ポッ!

 

「よし、ありがとうフレア」

 

コムローイ祭り…それはタイで行われる収穫祭でのイベントだ、その特徴は紙と竹で作った小さな熱気球「コムローイ」を空に飛ばす事、それによって天で自分達を見守る覚者に収穫とこれからの幸せを祈る行事だ。

 

 

「うわぁ〜…綺麗ですねぇ…」

 

「ああ、本当に幻想的だ…」

 

夜空に無数のコムローイが舞い上がる…灯された炎が紙の気球を優しく照らしながらどこまでも飛んで行く…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん、おかしいなぁ…?」

 

「どうしたんだ?」

次の目的地に移動する飛行機の中…翠が首を傾げている

 

 

「アキさんにコムローイ祭りの写真を送ったんですけど…返事が来ないんです…」

 

「返事が来ない?う〜ん、たしかアキは医師のインターンが始まったんだろ?忙しいんじゃないか?」

 

「…でも、変なんです…いつもだったらすぐに返事をくれるのに…」

 

「気にしすぎてもしょうがないさ、次の場所に行ったらアキのいる街に行ってみよう」

 

「そうですね…そうしましょう!」

 

 

 

 

 

 

「ここがナスカか…前に来た時は夜だったからなぁ」

 

「ここが…地縛神の眠る場所…」

乾いた風が吹き抜ける崖の上、そこで遊海達は地縛神の眠る地…ナスカの地上絵を眺めていた、もちろん全ての地上絵が見える訳ではない…しかし、遊海の目的はそこから見えるものにあった。

 

 

「…お前達の墓は日本にもあるけどさ…遊星達の事を見守ってやってくれよ、ルドガー、レクス…」

遊海は手にしていた花束をコンドルとクモの地上絵の方向に供える…世界を救う為に光の中に消えていったゴドウィン兄弟の慰霊…それが遊海がナスカを訪れた理由だった。

 

「流石に5000年は生きてるかわからないが…この世界は俺達が守っていく、だから安心してくれ」

遊海はナスカを後にする…微かに優しい竜の声が聞こえたような気がした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん!ようやくアメリカに着いた〜!こうしてプロの仕事以外で来るのは30年振りくらいかな?」

 

「私はアメリカ初上陸です!」

旅を続ける事しばらく…遊海達は夢の国・アメリカに辿り着いた。

 

「アメリカにも面白いお祭りはあるらしいけど…とりあえずアキのいる街に向かおう…連絡はついたか?」

 

「それが…まだなんです、もう1週間も経つのに…」

 

「…いい加減おかしいな、忙しいにしてもメールを見る時間くらいはあるはずだ…、何かあったのか?」

 

ピリピリピリピリ!!

 

 

「っ…!もしもし!!」

 

『オー!!ミスター遊海!!バカンス中に申し訳ナーイ!緊急事態なのデース!!』

 

「ペガサス会長!?」

電話の相手はペガサス会長…その声色はとても焦っている…!

 

『何者かに我が社が攻撃を受けているのデース!!その攻撃のせいで我が社は大混乱…ヘルプ!助けてほしいのデース!!』

 

「っ…!!すぐに向かいます!!ちょうど別件でアメリカに着いたところです!!」

 

『な、ナイスタイミング…!!すぐに来てくだサーイ!!』ピッ…

 

 

「遊海さん─!」

 

「すまない翠、旅行は切り上げだ!!」

 

遊海達は急いでI2社へと飛び出した…。

 

 

 



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復讐者、再び

こんにちは!S,Kです!

ペガサス会長からの要請でI2社に向かう遊海達…そこで待ち受ける陰謀とは…!

それでは最新話をどうぞ!


久しぶりの休暇を楽しむ遊海と翠…だが、ペガサス会長からの緊急連絡を受けた事により旅行を切り上げ…急いでI2社へと向かった…。

 

 

 

「ペガサス会長!!」

 

『オー…ミスター遊海、そしてミス翠よく来てくれました…!!』

I2社に到着した遊海はペガサス会長のいる執務室へと通される…そこで憔悴した様子のペガサス会長の出迎えを受けた。

 

「ペガサス会長、いったい何があったんですか…!()()()()()()()()()()()()()()…!」

遊海が最初に感じた異変…それは社内で働く人間が誰も居ない事だった…。

 

『…それが貴方を呼んだ理由なのデース…!私の社員達を救ってほしいのデース!!』

 

「落ち着いてペガサスさん!何が起こったのか教えてください!」

そしてペガサス会長は語り始めた…インダストリアルイリュージョン社で何が起きたのかを…。

 

 

 

 

 

『話は1週間ほど遡りマース…我が社のカードデザイン部門に郵便物が届いたのデース…』

 

ペガサス会長曰く、1週間程前に郵便物が届いた…その郵便物に()()()人間が次々と倒れ始めたのだ…。

最初は郵便を受け取った受付嬢、郵便物を運んだ総務の職員、届け先のカードデザイン部門の社員…感染するように異変は広がり、全社員の3割が倒れてしまったのだ…。

 

「それって…ウィルステロじゃ…!!」

 

『イエス…症状は頭痛に吐き気、発熱、呼吸困難…そして皮膚の変色…すぐに政府が感染症の検査をしました…しかし、()()()()()()()()()()()()()()()のデース…!』

 

「そんな…!」

 

原因不明の病気…ペガサス会長はすぐに指示を出しI2社を閉鎖…全社員に自宅待機を命令した…その影響か感染は収まったものの、未だに感染した社員達の病状はよくならないらしい…。

 

『もはや人智を超えた異常事態…となれば強い精霊力を持つ貴方に頼るしかないと思い、来てもらったのデース…』

 

「…事情はわかりました…!すぐに患者の所に向かいます…!!翠、ペガサス会長に付いていてくれ…!」

 

「わかりました…!」

 

『サンキュー、ミスター遊海…社員達をお願いしマース…!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

ペガサス会長の依頼を受けた遊海は社員達の入院する病院を訪れる…I2社と病院には箝口令が敷かれ、病院は異様な雰囲気に包まれていた…。

 

 

『はじめまして「決闘王」白波遊海殿…私はこの病院の院長です、ペガサス氏から貴方の事は聞いています…患者達のもとに案内します…!』

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

ペガサス会長と旧知の仲らしい院長に案内され、遊海は隔離病棟へと足を踏み入れる…。

 

 

 

『幸いにも亡くなった患者はいません…しかし、患者達は今も苦しみ続けているのです…!私達医師のできる事は症状への対症療法がやっと…それ以上は手の施しようがないのです…!』

 

「これは…!」

遊海は目を疑った…何人もの患者達は呼吸器を繋がれ、苦しそうに顔を歪めている…そして彼らの肌の一部は紫色に変色してしまっている…。

 

『…この謎の病気は飛沫感染、または皮膚接触で感染します…患者の皮膚に直接触れただけで感染してしまうのです…!!こんな病を私は見た事がありません…!!』

 

「だから、患者達を看ている医者やナースの人達が少ないんですね…」

病棟にいる患者は少なくとも数百人…しかし、それを看ている医師や看護師達は数十人程しかいないのだ…。

 

『…皮膚感染がわかったのは…患者の救命に当たった()()()()()()が感染したからなのです…()()のおかげで私達はすぐに態勢を整える事ができた…!!』

 

「っ…?彼女…」

その瞬間、遊海の脳裏に嫌な予感がよぎった。 

 

 

『実を言うと、彼女が一番の重体なのです…!お願いします…!彼女を…患者達を…!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……!」

 

「…………アキ、なんで…よりによってこの街にいるんだ…!!」

病院の緊急治療室…そこに彼女はいた、チーム5D'sの紅一点…医師を目指して勉強を続けていた十六夜アキ、その彼女が全身を管で繋がれ苦しんでいたのだ…。

 

 

「…入るぞ」

 

『ち、ちょっと待ってくださいミスター!貴方も感染してしまいますよ!?』

 

「…普通の感染症なら()()()()()()

遊海は院長の制止を無視してアキの病室に入る…。

 

 

「アキ…しっかりしろ…!目を開けるんだ…」

 

「っ…遊海、さん…どうして…?」

遊海の声を聞いて薄目を開けたアキが驚く…

 

「よく頑張ったな…大丈夫、俺が来たからには必ず治す…!」

遊海はアキを安心させる為に頭を撫でる…

 

「ダメ…触らないで…病気が、伝染っちゃう…!!」

 

「心配するな、()()()()()()()()()()()()()()()()()……普通ならな」

遊海は痛みを感じて指先を見る…その指先は()()に変色していた…。

 

()()()()()()…っ、ゴホッ!!」

 

「遊海さん…!!」

 

『ミスター!!』

遊海はそのまま膝をつく…急激な目眩、呼吸困難、発熱…それらが遊海に襲いかかる!!

 

「…アヤ、カ…分析しろ…!!」

 

《はい…!……分析完了!!マスターへの精霊による攻撃を確認しました!!これは…!》

 

「……やはり、そういう事か…!!精霊アーマー…!モード太陽神!!」

遊海は眩い光に包まれる…そしてラーの翼神竜の力を纏う姿へと変身する!

 

 

「………よし、治った…アキ、次はお前の番だ」

遊海は手に金色の杯を召喚する…その杯には綺麗な水が入っている…。

 

「アキ…ゆっくりでいい、この水を飲むんだ」

 

「うん…」

遊海に助けられながらアキは杯の水を一口飲み込む…すると

 

「身体が…軽くなっていく…肌の色も…」

 

「よし…!でも、許せねぇ…いや、(オレ)は犯人を許さん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ホワッツ!?「同族感染ウィルス」!?』

 

「ええ、犯人は精霊の力を使い、郵便物にカードの菌を仕込んでI2社に持ち込んだものと思われます」

I2社を襲った謎の病気の正体…それは「同族感染ウィルス」の精霊…いや、「菌」だったのだ。

 

「今の所病院に『スキルドレイン』で結界を張ってウィルスを封殺しています、しかしこれは応急処置…すぐにでも犯人を無力化する必要があります」

 

『流石はミスター遊海…!犯人は捜査中デース!すぐにでも見つかる…『安心してペガサス会長!もう見つけたわ!』ホワッ!?』

 

「お前…もしかしてレベッカか?」

 

『イエス!久しぶりね遊海!』

遊海とペガサス会長の話に割って入ってきたのは金髪の眼鏡美人…もとい、一時は遊戯の恋人を自称していた天才プログラマー、レベッカ・ホプキンスだった。

 

 

『海馬社長から連絡を受けてすぐに防犯カメラを調べたわ!それで郵便配達員はニセモノだって事がわかって…その足取りを追い掛けたら…ここにたどり着いたわ!』

レベッカがタブレットの画面をみせる…そこにはアメリカの暗部…ギャングの一覧が載っていた。

 

 

『オウ…!相手はギャングでしたか…でも、ワタシの会社はベリーホワイト…彼らとの繋がりは無いはずデース』

 

『慌てないで会長…問題はそのギャングがここ2年で急激に成長しているの、そのギャングの名前は…』

 

「リバース・オブ・アルカディア…だろ?」

 

「えっ…!」

 

『ビンゴよ…どうしてわかったの?』

 

「…似た名前の犯罪組織を知ってる…そして、そいつらの本拠地は…この街だな?」

 

『うん、そうよ…って何処に行くの!?』

レベッカの答えを聞いた遊海は扉に向かって歩き出す…。

 

 

「決まってるだろ…奴らをぶっ潰す

振り向いた遊海の目は畏怖を感じさせるほどに赤く染まっている…。

 

『ちょっと待って!アルカディアは構成員1000人はいるやばい組織よ!?1人で突っ込むつもり!?』

 

「…()は、たくさんの人の人生を狂わせて奪った…これは俺のミスだ、俺がカタを着ける…ペガサス会長、すぐに戻ります」

 

『ミスター遊海……怒りに飲まれてはなりまセーン…しかし、1人の人間としてお願いしマース…犯人に鉄槌を…!!』

 

「了解しました…翠、アキと患者達を頼む」

 

「…わかりました…でも、油断はしないで…!」

 

「わかってる…今の俺…我には油断も慢心もない…我の友に手を出した事…後悔させてやる!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

I2社のある街の郊外、そこに綺麗な外観のビル…「リバース・オブ・アルカディア」の拠点がある…。

表向きはDホイール関連企業を謳っているが…その正体はギャングである。

 

 

「失礼します…私、I2社の者です…アポなしなんですけど…社長に面会したいのですが…」

 

「社長に、ですか?…申し訳ありません、社長のダニエルは出掛けて…」

 

「いるはずですよ…いや、わかってるんだ…いるんだろ、()()()()()()

 

「っ…!!アンタ、何者だよ?」

受付の男の表情が変わる…うまくカタギを装っていたようだが…甘すぎる

 

「伝えろよ…『死神が来た』ってな…!!」

 

「侵入者だ!!侵入者を排除─!」

 

「うるさい、黙れ…換装…絶対零度」

 

 

その瞬間、ビル1棟全てが凍結した。

 

 

 

 

 

 

Side遊海&???

 

 

ああ、ハラワタが煮えくり返る…怒りが俺を蝕んでいく、とてつもなく気分が悪い

 

遊海は凍結したアルカディアのビルを進んでいく、中にいた構成員達は頭を残して氷漬けにしてある…しかし、遊海の進んだ後に氷は無い…遊海が足を踏み締める度に氷が蒸発していく…。

 

奴だけは許しちゃダメだった、俺の甘さが今回の事態の遠因だ…─

遊海の脳裏によぎるのは数年前…救い出せた子供がいた。記憶を失った少年がいた。引き裂かれた家族があった。…救えなかった子供がいた……

 

─任せろよ、相棒…奴は我達で倒す─

 

「ああ、いくぜ!!!」

 

遊海は乱暴に社長室の扉を蹴り砕いた

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

『…もうバレたのか、早かったな白波遊海…!』

 

「生きてたか…元・アルカディアムーブメント総帥…ディヴァイン!!」

 

窓の大きな社長室…そこでその男は静かに座っていた。

かつてアキを唆し、トビーを殺害しようとし、さらに奸計によって遊海を追い詰め…そして邪神に喰われ行方知れずになった卑劣なる赤髪の男…ディヴァイン、その男が遊海の前にいた。

 

 

『フフフ…!邪神に食べられ、目覚めればペルーにいた…日本では私は犯罪者…ならばとアメリカに渡り、力を蓄えてきた…そして、今回の計画が成功すれば私の野望の近道になる…はずだったのだが…どうしてお前がアメリカにいる…?』

 

「俺は悪のある所に現れる…おとなしく逮捕されろ、ディヴァイン」

遊海はディヴァインを冷たく見下ろしながら宣告する

 

『それはできない相談だ…私の野望は実現間近なのだから…!既にホワイトハウスや各州知事・軍の基地に「同族感染ウィルス」をバラ撒いた!私が力を使えば…この国は私の手に落ちる!!しかもI2社の奴らのように身体を蝕まずに即死させる!!』

 

「…外道が…!!」

遊海はデュエルディスクを構える…!

 

『ククク…!成長したのが自分だけだと思うなよ決闘王…!貴様を殺し、私は世界を手に入れる!!』

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP4000

ディヴァインLP4000

 

 

 

 

 

(オレ)のターン!ドロー!」

「『捕食植物(プレデター・プランツ)オフリス・スコーピオ』を召喚!」

サソリのような姿をした動く植物が現れる ATK1200

 

「『オフリススコーピオ』の効果!手札の『捕食植物ダーリングコブラ』を墓地に送り!デッキから『捕食植物コーディセップス』を特殊召喚!」

赤い恐ろしい顔を持った植物が現れる ATK0

 

「そして魔法カード『融合』を発動!フィールドの『オフリススコーピオ』と『コーディセップス』を融合!!獲物を喰らいし捕食者よ…1つとなりて魔性の花を呼び覚ませ!融合召喚!『捕食植物キメラフレシア』!」

巨大なラフレシアの花と2つのハエトリグサの口を持つ魔性の花が現れる ATK2500

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

遊海LP4000

キメラフレシア 伏せ2 手札1

 

 

 

 

『ハッ…シンクロ隆盛のこの時代に時代遅れの融合デッキか?らしくないなぁ決闘王…!』

 

「………」

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『速攻魔法「緊急テレポート」を発動!デッキからレベル3「寡黙なるサイコプリースト」を特殊召喚!』

白い法衣とバイザーを纏ったサイキッカーが現れる DEF2100

 

『そしてレベル3のモンスターがフィールド上に存在する時!手札の「サイコトラッカー」と「サイコウィールダー」は特殊召喚できる!』

ヨーヨーを操るロボットとモノホイールに乗るロボットが現れる ATK1500  ATK1600

 

『私はレベル3の「サイコトラッカー」とレベル3「寡黙なるサイコプリースト」にレベル3「サイコウィールダー」をチューニング!』

 

3+3+3=9

 

『世界を燃やす復讐の黒炎よ…我が敵を撃ち抜け!シンクロ召喚!現われろ!『ハイパーサイコガンナー』!!』

黒と白の巨大な銃を持った超能力戦士が現れる ATK3000→3600

 

 

『シンクロ素材となった「サイコトラッカー」の効果で「ハイパーサイコガンナー」の攻撃力は600アップ!更に「サイコウィールダー」の効果により「ハイパーサイコガンナー」の攻撃力以下の相手モンスターを破壊する!』

モノホイールの幻影が現れキメラフレシアに特攻、諸共に爆散する!

 

 

『これで貴様を守る壁はない!バトルだ!「ハイパーサイコガンナー」でダイレクトアタック!サイキック・ブレイク!!』

 

「手札の『捕食植物セラセニアント』の効果発動!自身を特殊召喚!」

体からサラセニアを生やした蟻型の植物が現れる DEF600

 

『無駄だぁ!「ハイパーサイコガンナー」は貫通能力を持っている!そのまま吹き飛ぶがいい─!!』

 

「ぐおっ─!!」

 

ドガーン!!

 

二丁のサイコガンから放たれたエネルギー弾がセラセニアントを粉砕、そのまま遊海を直撃し部屋の壁を突き破る!!

 

遊海LP4000→1000

 

 

『そして私は守備力が攻撃力が上回った数値分のライフを回復する!』

 

ディヴァインLP4000→7000

 

 

『ク…フハハハ!!どうだ決闘王!私はかつての私ではない!!この3年で私はさらにサイコパワーを高めた!!貴様などもう恐るるに足らんのだ──!!』

ディヴァインの高笑いが響く、遊海を超え…遊海に復讐する為だけに力を高め続けた男の極地…しかし

 

 

「………『セラセニアント』の効果発動、このカードとバトルしたモンスターを破壊、さらにデッキから『捕食接ぎ木(プレデター・クラフト)』を手札に加える」

 

『なにっ…!?』

「ハイパーサイコガンナー」が爆発する…そして瓦礫を押し退けながら遊海が立ち上がる、身体は傷付いているが…その瞳はまっすぐディヴァインを睨んでいる…! 

 

「どうした?デュエルを続けろよ…!」

 

『その目だ…!その目が私を苛立たせる!!カードを2枚伏せターンエンド!!』

ディヴァインLP7000

伏せ2 手札1

 

 

 

 

「訂正しよう、ディヴァイン…貴様には我への復讐という『鉄の意思』そして、我を追い詰めた『鋼の強さ』を得た…だが、まだ我には届かん!」ゴオッ!!

 

『な、なにっ…!?』

遊海の身体から闇が溢れ出す…その闇は巨大な悪魔の影を映し出す…!

 

【1つ聞いておこうディヴァイン…貴様は「奪われた」事はあるか?…我はある、大切な友を奪われた…お前にはもう、何も奪わせない…!】

 

『な、なんだ貴様は…!?貴様は何なんだ─!?』

ディヴァインは雰囲気の変わった遊海に問いかける…!

 

【…(オレ)は『決闘王の影』…貴様のような外道を裁く、怒りの化身だ!!】

瞳を赤く輝かせながら遊海のもう1つの人格…ユウスケが目を覚ます!!

 

 

 

 

【我のターン!ドロー!!】

【スタンバイフェイズに墓地の『コーディセップス』の効果発動!このカードを除外し、墓地の『オフリススコーピオ』と『ダーリングコブラ』を特殊召喚!さらに墓地の『キメラフレシア』の効果によりデッキから『融合』を手札に加える!】

サソリ型の植物、そして蛇のような植物が現れる ATK1200 ATK1000

 

【そして『ダーリングコブラ』の効果発動!デッキから『プレデター・プライム・フュージョン』を手札に加える!】

 

『チイッ!リバースカード発動!「リビングデッドの呼び声」!蘇れ!「ハイパーサイコガンナー」!!』

ディヴァインの場に超能力戦士が復活する ATK3000

 

 

【罠カード発動!『捕食計画(プレデター・プランニング)』!デッキから『捕食植物サンデウ・キンジー』を墓地に送る事でフィールド全てのモンスターに『捕食カウンター』を置く!『捕食カウンター』の置かれたレベル2以上のモンスターのレベルは1になる!】

 

ハイパーサイコガンナー 捕食1 ☆9→1

 

オフリススコーピオ 捕食1 ☆3→1

 

ダーリングコブラ 捕食1 ☆3→1

 

 

【そして我は『融合』を発動!フィールドの『オフリススコーピオ』と『ダーリングコブラ』を融合!魅惑の香りで虫を誘う美しき花よ!獲物を喰らう毒虫よ!今ひとつとなりて、その花弁の奥の地獄から…新たな脅威を生み出さん!融合召喚!飢えた牙持つ毒龍…!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!】

紫の体色、そして鋭い牙を持つ貪食の龍が現れる ATK2800

 

 

【そして墓地の『捕食計画』の効果発動!闇属性の融合モンスターの融合召喚に成功した時!このカードを除外して『ハイパーサイコガンナー』を破壊する!】

 

『や、やらせるものか!!リバースカード発動!「バスターモード」!「ハイパーサイコガンナー」をリリースする!そして現われろ!「ハイパーサイコガンナー/バスター」!!』

重厚な鎧を纏い、ハイパーサイコガンナーが再誕する!ATK3500

 

【ならば『スターヴヴェノム』の効果発動!相手の特殊召喚されたモンスターの攻撃力分、自身の攻撃力をアップする!さらに効果発動!相手の場のレベル5以上のモンスターを効果と名前を得る!!】

 

『なんだと─!?』

スターヴヴェノムの触手が兵士に喰らいつき、その力と能力を吸収する!

 

スターヴヴェノムATK2800→6300

 

 

【さらに装備魔法『捕食接ぎ木』を発動!墓地の「キメラフレシア」を蘇生し、このカードを装備する!!】

再び魔性の花が復活する ATK2500

 

【バトルだ!『スターヴヴェノム』で『ハイパーサイコガンナー/バスター』を攻撃!貪食のプレデター・パニッシャー!!】

スターヴヴェノムの触手が兵士に喰らいつきそのまま、貪り尽くす!!

 

『うああ…!!だが、「/バスター」が破壊された事で墓地の「ハイパーサイコガンナー」を特殊召喚する─!もう1体の攻撃力は2500…!倒せはしない!!』

三度、兵士が復活を遂げる! ATK3000

 

ディヴァインLP7000→4200

 

【『スターヴヴェノム』が得た『ハイパーサイコガンナー/バスター』の効果発動!相手に破壊した『ハイパーサイコガンナー/バスター』の守備力分のダメージを与え、自分は攻撃力分回復する!殲滅せよ!】

スターヴヴェノムの身体の赤い玉が光輝き、ディヴァインに光線が降り注ぐ!!

 

『ぐおあああああ!!?』

 

ディヴァインLP4200→1200

 

ユウスケLP1000→4500

 

 

 

【そして『キメラフレシア』で『ハイパーサイコガンナー』を攻撃!】

 

『馬鹿な!自滅するつもりか!』

 

【なわけないだろう?『キメラフレシア』の効果発動!このモンスターがバトルする時!相手モンスターの攻撃力を1000下げ、自身の攻撃力を1000アップする!!】

 

『なにぃぃ!?』

 

 

ハイパーサイコガンナー ATK3000→2000

 

キメラフレシア ATK2500→3500

 

 

【「お前が虐げ、不幸にしてきた人達の怒りと悲しみを思い知れ!!紫炎の茨(サポート・ソーン)!!」】

 

 

「ぐっ…!?うわあああああ!!!」

 

キメラフレシアの鞭がディヴァインをガラスへと叩き付け、ライフを削りきった…。

 

 

ディヴァインLP0

 

ユウスケ&遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

『っ…あが…ガハッ…!』

 

「…ディヴァイン、お前は力の使い方を間違えた…お前がもしも、その力を人々の為に使っていたならば…お前はきっと『英雄』になる事ができたはずだ…」

ユウスケと交代した遊海はガラスに叩きつけられ、大怪我を負ったディヴァインに語りかける…。

 

『だま、れ…!あいつらが、愚かなんだ…!!力を持っていないのに、力を持つ者を迫害した、奴らが…!!』

 

「…人は自分の知らないものを恐れる…それはどんな世界でも変わらない、ディヴァイン…まだやり直せる、罪を償って生まれ変わらないか?まだ…人生はやり直せるはずだ」

遊海は傷だらけの手をディヴァインに差し伸べる…

 

『人生はやり直せる…か……なら、やり直してやるよ…貴様を殺してなぁ─!!』

 

ザン!!

 

「ぐっ…!!」

ディヴァインは一瞬の隙を突き、遊海の胸に「サイコ・ソード」を突き立てる!!

 

『あは…ははは…!!やった、やったぞ!!決闘王を仕留め─』

 

「悪いな、ディヴァイン…俺は死なねぇんだ、決闘以外ではな」カラン

 

『はっ…!?』

ディヴァインはその目を疑う…遊海の胸に深く突き刺さった剣が抜け落ちる、血こそ流れ落ちるが…遊海は意に介していない…。

 

『ば、()()()…!!』

 

「ああ、俺はバケモノさ…だが、よっぽどお前より─【我達は人間だ!!】」ガッ!

 

『ぐえ…!?』

遊海は間合いを詰めてディヴァインを掴み上げると空中に放り投げる!

 

「【罰ゲーム!!拳の裁き─!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ─!!!】」

 

『ごばばばばばばばばば─!?』

遊海の繰り出した無数の拳打がディヴァインを打ち据える!!

 

「悔い改めろディヴァイン!!マインドクラッシュ・ナックル!!」

 

『ガハッ─!!?』ビキ…バリーン!!

マインドクラッシュの力を乗せた拳をディヴァインに叩き込む…そのままディヴァインは壁に叩きつけられ、沈黙した…。

 

 

「…まったく…とんだ休暇に、なった、な……」ドサッ

ディヴァインの無力化を確認して遊海の意識は闇に堕ちていった…。

 

 

 

 

新興ギャング『リバース・オブ・アルカディア』…壊滅

総帥・ディヴァイン 再起不能

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ベリーサンキューデース!ミスター遊海!大統領もユーに感謝の気持ちを伝えてほしいとの事デース!』

 

「気にしないでくださいペガサス会長、俺は俺の決着をつけただけですから…」

 

事件の翌朝、病院に運ばれた遊海とペガサス会長が言葉を交わしていた。

 

新興ギャング・リバースオブアルカディアはディヴァイン以下構成員千余人全員を拘束、実質壊滅となった。

そして、捜査により国を巻き込むテロ計画が明るみになり、ディヴァインはアメリカで裁判にかけられる事になるだろう。

「同族感染ウィルス」に蝕まれた患者達は遊海がディヴァインをうち倒した瞬間に全員が回復…ほとんどが既に退院済みである。

 

 

『ですが…精霊の力の悪用がこんな恐ろしいとは…何かアクションを起こさなければなりまセーン…!』

 

「なら、KCと協力してサイコデュエリスト専門の教育機関を作ったらどうでしょう?そうすれば彼らの力を悪用しようとする人間から守れますし、きっと力を役に立てる方法を見つけられるはずです」

 

『オー!!それはグッドアイデアデース!さっそく彼と相談しまショウ!!』

そう言ってペガサス会長はI2社へと戻っていった…そしてしばらくしてデュエルアカデミアに『サイコデュエリスト学部』が創設される事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん!アキさんがお見舞いに来てくれましたよー!」

 

「おっ!元気になってよかったな!アキ!」

 

「ありがとう遊海さん…なんか変な感じね、昨日と立場が真逆だし…」

 

「ははは…それは間違いないな!」

患者の中で一番の重体だったアキも既に立って歩けるようになっていた…退院してインターンに復帰する日も近いだろう。

 

 

「でもディヴァインがアメリカにいて、しかもまた悪事を働いてるなんて…」

 

「ディヴァインは進む道を間違えたんだ…もし、ディヴァインが選んだ道が違うものだったら…あいつと俺は……いや、ありえない話だな…」

遊海は「もしも」の未来を夢想する…しかし、それはまさに夢物語だろう…。

 

 

 

「さて…とんだ休暇になったけど…後は日本に戻ってゆっくりしようか…ごめんな、翠…こんなドタバタで…」

 

「いいんです!久しぶりに2人でゆっくりできましたから…帰りましょう!日本に!」

 

そして遊海と翠の旅は終わりを迎えた…そして巨悪は潰え、世界には平和が訪れたのだった。

 



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10 years after─受け継がれるもの─

ネオ童実野シティを舞台にした未来との戦いから10年、チーム5D'sの解散から8年が経った、不動遊星の確立したモーメント制御フレーム・フォーチュンは世界中に広まり、新たな未来を導いている…そこで、チーム5D'sのその後を見てみよう…。

 

 

 

 

Side龍亞&龍可

 

 

「きゃあああ─!?」

 

ビック・ベンの鐘が鳴り響く中、渋滞中の道路を縫うように2人乗りのDホイールが疾走する…あまりのアクロバティックな運転に後ろに乗る女性は叫び声を上げているが…。

 

 

キキー!!

 

「もう!あんまりスピード出さないでって言ったよね!お兄ちゃん!!」

 

「ヘッ…未来のライティングデュエルチャンピオンにそんな事言われても無理だぜ…」

 

しばらく走り続けたDホイールは大学の前で停車する…後ろに乗っていたのは龍可、運転していたのは龍亞…しっかりと肉体的成長を遂げた兄妹はあまりのカッコよさ、美しさで周囲の注目を集めてしまう。

 

「じゃあな龍可!しっかり勉強しろよ!」

龍亞は龍可を降ろすとそのままロンドンの街に消えていった…。

 

「まったくもう…まだ遊星には遠く及ばないわね!」

 

 

 

SideOut

 

 

 

Sideクロウ

 

 

 

『クロウ…本当にチームを抜けるのか…?』

 

『どうしてだよ…!俺達は世界チャンピオンにまでなったのに!!』

 

「もうチームでやれる事は全部やった…お前達に伝える事も…もうない」

 

とあるライティングスタジアム…そこで3人の男達が話し合っていた…クロウはこの10年でチームライティングデュエルのチャンピオンになった…しかし、クロウはその称号を捨て…単身シングルリーグへと挑もうとしていた。

 

「オレも試したくなったのさ、自分の力を…ジャックのようにな!」

ジャックは射し込む夕日を睨む…その目はいまだ満足していない、かつてのジャックのように…クロウも高みを目指し続ける…!

 

「それによ、オレの代わりにチームに入る奴なら…()()()()()()()()()()()()()()()()…!」

そう言ってクロウは1枚の画像を投影する…そこにはトロフィーを抱えてピースサインをする龍亞、そして大柄な男が満足気な表情で笑っている姿が写っていた…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

Sideジャック

 

 

 

「「「「ジャック!ジャック!ジャック!!」」」」

 

世界最高のライティングデュエルリーグ「ライドA」…そのスタジアムは歓声に埋め尽くされていた…、その歓声を一身に集めるのは5年連続でライドAの王座に君臨する「ライティングデュエルキング」…ジャック・アトラスだった。

 

 

『キング!来期はクロウ・ホーガンがシングルリーグへの参戦を表明していますが…何かコメントは?』

 

『クロウは自分が新たなチャンピオンになると言っています!』

 

「フッ…!面白い!ならばクロウに伝えておけ…!貴様が束になろうと俺に土をつける事は不可能だとな!!」

 

取材陣の取材にそう答えるジャック…その瞳はただ、1点を見続けている…キングのその先を…!

 

「俺は誰にも負けん…!()()に勝つまではな─!!」

 

 

 

SideOut

 

 

 

Sideアキ

 

 

 

『クロウに伝えておけ!貴様が束になろうと─…』

 

 

「まったく、ジャックも相変わらずね…」

ジャックの言葉をテレビ中継で見ていたのは無事に医大を卒業し女医となったアキだった…ジャックのインタビューを見ながら昔と変わらない態度に苦笑していると…。

 

ガチャ!

 

『Dr.アキ!!私、もう無理です…!もう見ていられないんです!!』

 

アキの診察室に1人の看護師が駆け込んでくる…おそらく、死を前にした患者を見ているのが辛くなってしまったのだろう…。

 

「…諦めちゃ、ダメよ」

 

『えっ…』

涙を流す看護師にアキは優しく語りかける…

 

「私達は『笑顔』で患者さん達を応援しなくちゃいけないの…その私達が諦めてしまってはだめなのよ」

 

『ひっく…Dr.アキは、どうしてそんなに強いんですか…?』

 

『決して諦めない事…いつも笑顔でいる事…それを教えてくれた人がいたの、自分の可能性を信じてチャレンジする事を…』

そう言ってアキは写真立てを手に取る…そこにはかけがえのない9人の仲間達の笑顔があった…。

 

「だから頑張れる、その人と胸を張って逢えるように…!」

そう言ってアキは小さな写真立てに目を移す…そこには男性と腕を組んで笑顔を浮かべるアキ、そしてその隣には──……

 

 

 

SideOut

 

 

 

Side???

 

 

『俺は誰にも負けん!奴らに勝つまではな─!』

 

「フッ…相変わらずだな、ジャック…オレはいつでも此処で待ってるぜ…お前が帰って来るのを…」

 

小さな画面を見ながら男はビルから街を見渡す…いつでも彼らが帰って来れるように…そして仲間達の心を繋ぐ事ができるように…。

 

 

『不動博士!実験の用意が整いました!!』

 

「ああ、いま行くよ」

青年は歩きだす…より良い未来を紡ぐ為に…

 

 

SideOut

 

 

 

Side海馬

 

 

 

「フン…いいのか?もう後戻りはできんぞ?」

 

「それは承知の上です、俺の持つ称号を託せるか否か…充分に期は熟しましたから…」

 

俺は目の前に立つ男を見る、赤いキャップを被り、赤いジャケットを着た何処にでも居るような男…名を白波遊海、我が社所属のプロデュエリストにして2代目「決闘王」、そして前世の記憶を持ち特殊な力を使う「転生者」である…俺の「友」だ。

 

最初に出会ったのはいつだったか…バトルシティ開催前に気まぐれに登校し、廊下でぶつかった時だったな。

その時は気にも留めない男だった…だが、バトルシティの本戦に出場し、神を鎮め、マリクを倒し…我が終生のライバルである「遊戯」と決闘王の座を競いあった…。

 

ドーマとの戦いや三邪神の奪還作戦、そして「遊戯」の記憶世界のゲーム…奴は戦い続けた、例え倒れようと、魂を砕かれようと、奴は世界の為に戦い続けた…いつからだろうか?奴を仲間と…「友」と呼ぶようになったのは…。

 

奴は…遊海は幾度となく戦いに巻き込まれ、傷付き…そのたびに立ち上がり…そして勝ってきた、そして遂に奴は「決闘王」に登り詰め…全てを失った、他ならぬ俺や仲間達を危機から救う為に…。

全てを失い、もはや戦えぬ体になりながらも遊海は戦う事を止めなかった…不屈とも言える精神力で血を吐き、寿命を削り戦い続けた…そして奴は再び帰ってきた…!

 

我が友よ、俺はお前の選択を否定しない…時代は移ろいゆくもの…その「称号」は受け継がれるもの、遊戯から遊海へ…そして遊海は次代に称号を託そうとしている…。

 

見せてくれ、遊海…お前の中で燃えつづける「決闘者魂」を…!

 

 

 

「いいだろう、それではライドAに打診するぞ…スタンディングとライディング…その玉座を統一する為の戦いを!!」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

チーム5D'sの解散から8年が経った、デュエル界もスタンディング・ライディングを問わず変わらない盛り上がりを見せている…そしてこの日、俺は大きな決断をしようとしている…まぁ、それはアイツ次第の事なんだが…。

 

 

 

『レディース&ジェントルマン!大変長らくお待たせいたしました〜!!さぁ!どれほどの決闘者達がこの日を待ちわびただろうか…!!デュエルの王道・スタンディングデュエル!そしてデュエルの黄金期を生み出したライディング・デュエル!その頂点が激突する!!「王座統一戦」の開会だぁぁぁ!!』

 

 

「「「「うおおぉぉ!!!」」」」

 

ネオドミノシティ・メインライディングスタジアム…10年前に伝説の生まれたその場所は…いま再びの熱狂に包まれていた。

長らく2つに分かれていた「決闘者の頂点」…その頂点が激突しようとしているのだ…!

 

 

『まずは赤コーナー…最強のライディングリーグ「ライドA」で5年の間頂点に立ち続ける誇り高き「ライディングチャンピオン」!!またの名を「キング」!ジャック・アトラス─!!!』

 

「「「「うおおぉぉぉ!!」」」」

「「「キング!キング!キング!!」」」

 

「キング」コールと共にその男はDホイールに乗って現れる、ライディングデュエルにおいて『最強』の称号を持つ男…ジャック・アトラス!

 

『ついにこの時が来た…!あの挫折を乗り越え、俺はここに立っている…貴様を超え、俺は王座へと登りつめる!!』

ジャックはスタジアムの反対側を睨みつける…!

 

 

 

『対して青コーナー!!決闘黎明期より前線に立ち続ける伝説の男!!数多の戦いを乗り越え、長きに渡りその「称号」に恥じぬ戦いを続けて来た正真正銘「最強の決闘者」!!「決闘王」…白波遊海─!!』

 

「「「おおおぉぉぉ!!!」」」

 

会場を歓声が埋め尽くす…その声援をしっかりと受け止め、白波遊海はジャックと相対する!

 

「久しぶりだなジャック、相変わらずすごい人気だ…オジサンは最近人気がなくてね…うらやましいよ」

 

『ハッ!何を言っている!この歓声を聞け遊海!貴方は決闘者の頂点…人気が無いはずはないだろう!』

 

「ハハハ…そうらしい、俺もまだ捨てたもんじゃないかな!」

他愛のない話をしながらジャックと遊海は握手を交わす。

 

 

『ガッチリと握手を交わす2人の王者!さぁ、真の玉座に座るのはどちらなのかー!!』

 

 

「さぁ、始めようかジャック…お前の研鑽の果て、たどり着いた答え…俺に見せてみろ!!」

 

『いいだろう!!刮目して見ろ!我が()たる絶対王者よ!俺のたどり着いた究極の力…お前の魂に刻んでみせる!!』

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

遊海LP4000

ジャックLP4000

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

「『レッド・スプリンター』を召喚!」

炎を纏う細身の悪魔が現れる ATK1700

 

「『レッドスプリンター』の効果発動!自分フィールドに自身以外のモンスターが存在しない時!手札・墓地からレベル2以下の悪魔族チューナーを特殊召喚できる!現われろ!『レッド・リゾネーター』!」

炎を背負う悪魔が現れる ATK600

 

「『レッドリゾネーター』の効果発動!このカードが特殊召喚に成功した時!『レッドスプリンター』の攻撃力分のライフを回復する!」

 

遊海LP4000→5700

 

「そして俺はレベル4の『レッドスプリンター』にレベル2の『レッドリゾネーター』をチューニング!」

 

4+2=6

 

「赤き魂がここに1つとなる!王者の雄叫びに震撼せよ!シンクロ召喚!現れろ!『レッド・ワイバーン』!」

紅蓮の炎を纏うワイバーンが現れる ATK2400

 

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

遊海LP5700

レッドワイバーン 伏せ2 手札2

 

 

 

『やはり、()()()のように俺と似たデッキを選んだか…面白い!いくぞ…遊海!』

 

「かかってこい!ジャック!お前の超えるべき壁はここにある!!」    

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『相手フィールドにのみエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する時!手札の「ミラー・リゾネーター」は特殊召喚できる!ただし、この効果で特殊召喚したこのモンスターはフィールドを離れた時に除外する!』

大きな鏡を背負った悪魔が現れる ATK0

 

『さらに「パワー・サプライヤー」を召喚!』

給油ノズルのような杖を持った魔法使いが現れる ATK400

 

『そして「ミラー・リゾネーター」の効果発動!自身のレベルを「レッドワイバーン」と同じレベルにする!』

 

ミラーリゾネーター ☆1→6

 

『俺はレベル2の「パワーサプライヤー」にレベル6となった「ミラーリゾネーター」をチューニング!』

 

2+6=8

 

『王者の決断!今赤く滾る炎を宿す真紅の刃となる!熱き波濤を超え、現れよ!シンクロ召喚!炎の鬼神「クリムゾン・ブレーダー」!!』

二刀流の紅蓮の剣士が現れる ATK2800

 

 

「来たな…だが、やらせない!!『レッドワイバーン』の効果発動!相手フィールドの攻撃力が一番高いモンスターを破壊する!レッド・ブラスト!」

 

ワイバーンの炎弾が二刀流の剣士を破壊する!

 

『ぐっ…!やはり一筋縄ではいかんか…!!カードを3枚伏せ、ターンエンド!』

ジャックLP4000

伏せ3 手札1

 

 

 

『おお〜っと!?決闘王がジャックのモンスターを一蹴!いきなりその強さを見せつけた〜!!』

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「バトルだ!『レッドワイバーン』でダイレクトアタック!紅炎弾!」

 

『させん!リバース罠「デモンズ・チェーン」!「レッドワイバーン」の攻撃と効果を封印する!』

紫色の鎖がワイバーンを縛りあげる!

 

 

「そう来たか…ならばメイン2!来い!2体目の『レッドリゾネーター』!」

再び炎の悪魔が現れる ATK600

 

「そして『レッドリゾネーター』の効果発動!召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚する!現われろ!『ミラーリゾネーター』!」

ジャックも使った鏡の悪魔が現れる DEF0

 

「そして俺はレベル6の『レッドワイバーン』にレベル2の『レッドリゾネーター』をチューニング!!」

 

6+2=8

 

「漆黒の闇を裂き、天地を焼き尽くす孤高の絶対王者よ!万物を睥睨しその猛威を振るえ!シンクロ召喚!現われろ!『琰魔竜 レッド・デーモン』!!」

紅蓮の焔を纏い、炎の覇者が現れる! ATK3000

 

「俺はこのままターンエンドだ!」

 

遊海LP5700

琰魔竜 ミラーリゾネーター 伏せ2 手札1

 

 

 

『現れたか…もう1体の「レッドデーモン」!!』

 

「フッ…!準備体操は充分か?」

 

『あたりまえだ!我が荒ぶる魂を見るがいい!!』

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『リバース罠「ロスト・スター・ディセント」を発動!レベルを1つ下げ、守備力を0にする事で墓地の「クリムゾン・ブレーダー」を特殊召喚!』

紅蓮の剣士が復活する! DEF2600→0 ☆8→7

 

『そして「チェーン・リゾネーター」を召喚!』

鎖を持つ音叉の悪魔が現れる ATK100

 

『さらに「チェーンリゾネーター」の効果発動!自分の場にシンクロモンスターがいる時!デッキから「ダーク・リゾネーター」を特殊召喚!』

音叉を持つ悪魔が現れる ATK1300

 

 

『俺はレベル7の「クリムゾン・ブレーダー」にレベル1の「チェーンリゾネーター」をチューニング!!』

 

7+1=8

 

『王者の鼓動、今ここに列を為す!天地鳴動の力を見るがい!!シンクロ召喚!!我が魂!「レッド・デーモンズ・ドラゴン」!!』

ジャックの魂たる赤き悪魔竜が現れる! ATK3000

 

 

『おお〜っと!!両者のフィールドに2体の「レッドデーモンズドラゴン」が揃ったー!!攻撃力は共に3000!!ジャックはどのように決闘王を攻略するのか〜!?』

 

 

『ハッ…!!甘いぞMC!!キングのデュエルは常にエンターテイメントでなければならない!!我が魂はこの逆境でこそ…熱く燃え上がる!!リバース罠発動!!「スカーレッド・カーペット」!!墓地から蘇れ!「チェーンリゾネーター」!!』

再び鎖の悪魔が現れる ATK100

 

「来るか…!!」

 

『燃え上がれ…我が荒ぶる魂よ!!俺はレベル8の「レッドデーモンズドラゴン」にレベル1の「チェーンリゾネーター」とレベル3の「ダークリゾネーター」をダブルチューニング!!』

 

8+1+3=12

 

王者と悪魔…今ここに交わる!荒ぶる魂よ!天地創造の叫びを上げよ!シンクロ召喚!!いでよ!「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン」!!

《ガオォォオン!!》

ジャックの切り札…紅蓮の龍が咆哮を轟かせる! ATK3500→4500

 

 

『で、出たァァ!!ジャック・アトラスの魂の切り札!「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン」だぁぁ!!』

 

 

「現れたな『スカーレッドノヴァ』…なら俺もいこうか!!リバース罠発動!『強化蘇生』!蘇れ!『レッドリゾネーター』!」

墓地から炎の悪魔が復活する! ATK600→700 ☆2→3

 

 

『なに…!?まさか!!』

 

「さぁ、来いよジャック!!」

 

『…いいだろう、貴様の策…真正面から受けて立つ!!バトルフェイズに入る!』

 

「リバース罠発動!『緊急同調』!!俺はレベル8の『琰魔竜レッド・デーモン』にレベル1の『ミラーリゾネーター』とレベル3になった『レッドリゾネーター』をダブルチューニング!!」

 

8+1+3=12

 

孤高の絶対破壊神よ!!神域より舞い降り終焉をもたらせ!!『琰魔竜王 レッド・デーモン・カラミティ』!

《グオオォン!!!》

災厄の名を冠する竜王が紅蓮の炎と共に轟臨する!ATK4000

 

 

『な、なんとぉ!?決闘王の「琰魔竜」が究極進化!!「スカーレッドノヴァ」を迎え撃つ─!!』

 

 

『現れたな「琰魔竜王」!!だが、攻撃力は「スカーレッドノヴァ」が上だ!!喰らうがいい…我が魂の一撃!バーニング・ソウル!!さらに罠カード「スカーレッド・コクーン」を装備!フィールド上でのモンスター効果は無効となる!!』

スカーレッドノヴァが紅蓮の弾丸となり竜王に突撃する!

 

()()()()()()だけでは足りないな!!手札か『D.D.クロウ』の効果発動!ジャックの墓地の『チェーンリゾネーター』を除外する!!さぁ…ガチンコといこうか!!」

 

『し、しまった─!!』

墓地のチューナーを除外された事でスカーレッドノヴァの攻撃力が琰魔竜王と並ぶ!

 

スカーレッドノヴァATK4500→4000

 

 

《ガオオオン!!》

 

《グオオオオン!!》

 

紅蓮の龍王の突撃を炎の竜王が受け止める、そのまま殴り合い、炎をぶつけ合い…互いに爆散する!!

 

 

「おおぉぉ…!!」

 

『チイッ─!!』

爆発から身を守るジャックと遊海…しかし、2人とも笑顔を浮かべている…!

 

 

『うおぉ─!?最強のドラゴン対決!!だがお互いに砕け散った─!!?』

 

 

「ハハハ…!!してやったりだ!」 

 

『ククク…!!やるではないか遊海─!!まんまと乗せられたわ!だが「スカーレッド・コクーン」の効果で「レッドデーモンズドラゴン」がエンドフェイズに復活する!』

 

「それは俺も同じだ!『琰魔竜王』が破壊された時!墓地の『琰魔竜』が復活する!!」

紅蓮の炎と共にレッドデーモンが復活する! ATK3000

 

 

『くっ…!俺はこのままターンエンドだ!そして「レッドデーモンズドラゴン」が復活する!』

炎を纏い悪魔竜が蘇る! ATK3000

 

ジャックLP4000

レッドデーモン 手札1

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『琰魔竜』の効果発動!自身以外のモンスターを全て破壊する!真紅の地獄炎(クリムゾン・ヘル・バーン)!!」

 

『ぐっ…!!』

フィールドを炎の竜巻が覆い、全てが焼き尽くされる!!

 

「バトルだ!ジャックにダイレクトアタック!!極獄の絶対独断(アブソリュート・ヘル・ドグマ)!!」

 

『っ…!ぐおぉぉ…!!!』

炎の鉄拳がジャックに直撃する!

 

ジャックLP4000→1000

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

遊海LP5700

琰魔竜 伏せ1 手札1

 

 

 

『決闘王の一撃が炸裂─!!ジャックが追い詰められたぁぁ!!』

 

 

『くくく…やはり決闘とはこうでなくてはな…!魂をぶつけ合い、しのぎを削る!!これが俺の求めていたデュエルだ!!』

 

「ああ、ジャック!お前は大きく成長した!だが、俺はまだ…その先にいる!!」

 

『ならば俺はお前を超克する!我が魂は燃え尽きる事なく…さらに強く熱く燃え上がる!!

追い詰められたジャック…その身体を灼熱のオーラが覆っていく!!

 

 

 

 

『俺のターン!…ドロー─!!』カンコーン☆

『自分フィールドにモンスターが存在しない時!このモンスターは特殊召喚できる!来い!!「クリムゾン・リゾネーター」!』

背中に紅蓮の炎を背負った悪魔が現れる ATK800

 

『さらに!「スカーレッド・ファミリア」を召喚!』

鎧を纏った人型の炎の悪魔が現れる ATK1600

 

「ん…??『紅蓮の悪魔のしもべ』…!?」

 

《そのとーり…!我が主(紅蓮の悪魔)から宗旨替えさせて頂きました!礼を言いますよ決闘王…貴方の炎がジャック・アトラスの魂にさらなる力を与えようとしています!》

ジャックの場に現れた悪魔が遊海に仰々しい礼をする

 

「そして『ファミリア』の効果発動!自身をリリースする事で蘇れ!『レッドデーモンズドラゴン』!!」

ジャックの墓地から悪魔竜が再び復活する! DEF2000

 

 

『この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効になる…そして「クリムゾンリゾネーター」の効果発動!自分の場に存在するのがドラゴン族のシンクロモンスターのみの時!デッキから2体のリゾネーターを特殊召喚する!現われろ!「シンクローン・リゾネーター」!「ダブル・リゾネーター」!』

ト音記号を背負った悪魔、そして顔を2つ持つ悪魔が現れる ATK100  ATK0

 

 

『おおぉ─!!荒ぶるぞ…我が魂が!!さらなる進化を遂げようとしている!!名付けるならば…ネオ・バーニング・ソウル!!

 

「なに─!?」

ジャックの身体を炎が包む…まるで全てを燃やし尽くす太陽のように!!

 

『俺はレベル8の「レッドデーモンズドラゴン」にレベル2「クリムゾンリゾネーター」レベル1「ダブルリゾネーター」レベル1「シンクローンリゾネーター」をトリプルチューニング!!』

 

「トリプルチューニングだと!?」

 

8+2+1+1=12

 

 

王を迎えるは三賢人!紅き星は滅びず、ただ愚者を滅するのみ!荒ぶる魂よ…天地開闢の時を刻め!シンクロ召喚!現れろ「スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン」!!

《ゴオオオァァァ!!!》

 

ジャックのフィールドでビックバンが起きる…現れたのはまさに紅蓮の龍神、ジャックの研鑽の極地…「スカーレッド・スーパー・ノヴァ・ドラゴン」!!

ATK4000

 

 

『な、何が起きたんだぁぁ!?ジャックの魂のカードが究極…いや、表現できる言葉が思いつかない!!まさに至高の領域に辿り着いたー!!!』

 

 

「なん、だと…!?」

遊海は言葉を失う、前代未聞のトリプルチューニング…そのモンスターは遊海の知識に無く、その雄々しき姿に見惚れてしまったのだ…。

 

 

『…「スーパーノヴァドラゴン」の攻撃力は墓地のチューナー1体につき500アップする!墓地のチューナーは4体!よって…』

 

スカーレッドスーパーノヴァ ATK4000→6000

 

「攻撃力6000…!!」

 

『バトルだ!「スーパーノヴァ」で「琰魔竜」を攻撃!!バーニング・ビックバン─!!

 

紅蓮の彗星…否、隕石が琰魔竜を粉砕する!!

 

「うおおぉぉぉ─!?!?」

 

遊海LP5700→2700

 

『これが俺の手にした究極の力だ!!ターンエンド!!』

ジャックLP1000

スーパーノヴァ 手札0

 

 

 

「おお…効いたぁぁ…!すごいな…ジャック…!」

攻撃で吹き飛ばされていた遊海が立ち上がる、余りの攻撃の強さに額には血が滲んでいる…。

 

『どうだ遊海…!俺はさらなる進化を遂げた!!』

 

「ああ、凄まじい力だ…今の俺ではお前には敵わない…だが、決闘王の名に懸けて…俺は最後まで戦おう!!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「リバースカードオープン!『リビングデッドの呼び声』!蘇れ!『レッドワイバーン』!!」

紅蓮の飛竜が現れる ATK2400

 

『無駄だ!「スーパーノヴァ」は相手の効果では破壊されん!!』

 

「そうだと思った…!さらにフィールドにシンクロモンスターがいる時『シンクローンリゾネーター』は特殊召喚できる!」

ト音記号を背負った悪魔が現れる ATK100

 

「さらに!自分の場に攻撃力1500以下の悪魔族チューナーがいる時!『風来王ワイルド・ワインド』は特殊召喚できる!」

緑のマントを羽織る獣人が現れる ATK1700

 

「俺はレベル6の『レッドワイバーン』とレベル3の『ワイルドワインド』にレベル1の『シンクローンリゾネーター』をチューニング!!」

 

6+3+1=10

 

「全てを喰らう蝿の王よ!全てを喰らい、我が手に勝利の美酒を齎せ!シンクロ召喚!『魔王超龍ベエルゼウス』!!」

2つの龍の首、そして悪魔の如き顔を持つ決闘竜の1体が顕現する! DEF4000

 

 

『2体目の決闘竜…!!』

 

「俺はこのままターンエンドだ!」

遊海LP2700

ベエルゼウス 手札0

 

 

 

『禍々しい姿だ…だが、お前の魂の声が聞こえるぞ遊海…「この俺を倒す!」と!』

 

「ああ、これが俺の切り札だ…俺は最後まで諦めない!!」

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『バトルだ!「スーパーノヴァ」で「ベエルゼウス」を攻撃!!バーニング・ビックバン!!』

 

「『ベエルゼウス』は戦闘・効果では破壊されない!!」

紅蓮の隕石と邪龍の龍口が衝突する!!

 

『なるほどな…!!俺はカードを伏せ、ターンエンド!』

ジャックLP1000

スカーレッドスーパーノヴァ 伏せ1 手札0

 

 

 

「俺のターン…ドロー!!」

「『ベエルゼウス』の効果発動!!相手モンスターの攻撃を0にし、その数値分ライフを回復する!!蝿王覇権(ベエルゼウス・サプラマシー)!!」

ベエルゼウスの身体から無数の蝿の大群がスーパーノヴァに群がる!!

 

『…誇り高き決闘王よ…これで決着だ!!リバース罠発動!『スカーレッド・レイン』!!自分の場にレベル8以上のシンクロモンスターが存在する時に発動できる!!もっともレベルの高いモンスター以外のフィールド上のモンスターを全て除外する!!』

 

「な…!?」

 

《ゴオオオァァァ!!!》

スーパーノヴァの咆哮が轟く…その咆哮と共に無数の隕石が降り注ぎ、全てを灼き尽くす!!

 

 

「見事…!!ターンエンドだ!!」

遊海LP2700

手札1

 

 

 

「ジャック・アトラス…お前に問おう!お前にとって『王』とはなんだ!!」

 

『!!』

負けを悟った遊海はジャックに問い掛ける…それは約10年前、海馬社長に投げかけられた言葉と一緒だった…。

 

『…俺にとって王とは自分の力で掴み取る強者の証…だった!だが、今は違う!「真の王者」とは導く者だ!俺は貴方のように…絶対的強さで全ての決闘者を導く!!その上で俺は頂点であり続ける!!それが俺の王道だ─!!』

それはジャックの魂の咆哮…守るべき者を手に入れたジャックからの手向けの言葉だった…。

 

「…ああ、安心した…お前にならば…()()()()()

 

 

 

 

『俺のターン!!バトル!「スカーレッド・スーパー・ノヴァ・ドラゴン」で「決闘王」白波遊海にダイレクトアタック!!』

 

バーニング・ビックバン!!

 

 

紅蓮の隕石が遊海のライフを吹き飛ばした…。

 

 

遊海LP0

 

ジャックWIN!!

 

 

 

 

 

『け、決着─!!長きに渡る決闘!それを制したのは…キング!ジャック・アトラス!!デュエル界統一王座を手にしたのは…ジャック・アトラスだぁぁぁ!!!』

 

 

「「「「「うおおぉぉぉ!!!!」」」」」

 

会場全体が揺れるような歓声に包まれる…新たなる「王」の誕生に世界中が歓声に包まれていく…。

 

 

 

『…立てるか?遊海』

 

「ああ、サンキューな…ジャック、良いデュエルだった」

 

『フッ、それは俺のセリフだ…いつかは()()()()の貴方を倒したいものだ…』

デュエル場に大の字に倒れていた遊海をジャックが助け起こす…苦節10年、ジャックはついに世界の頂点に立ったのだ…。

 

 

「ジャック〜!!やったんだから〜!!」

 

『うおっ!?カーリー!?まだ早いだろう!!』

デュエルを終えたジャックにカーリーが抱きつく…流石にキングも好いた女性の勢いにはタジタジのようだ。

 

「フッ…さて、ジャック…お前はこれでスタンディング・ライディングの統一王者になった訳だが…俺からお前に渡すモノがある」

 

『なに…?』

 

「なんだろう?」

遊海の言葉にジャックとカーリーが首を傾げる…。

 

「コホン…観客の皆さん!!そして世界中の決闘者達!俺の言葉を聞いてほしい!!」

 

『おっと…!決闘王からお話があるようだ!観客の皆様!どうか一度耳を傾けてほしい!!』

 

スタジアムに響く遊海の声とMCの言葉で少しずつスタジアムが静かになっていく…。

 

 

「ありがとう…さて、俺は不在の20年を含めて30年間、『決闘王』の称号を背負ってきた!!だが、俺もトシだ!なので…俺の持つ『決闘王』の称号…それをジャック・アトラスに譲りたいと思う!!」

 

『な、なに─!!』

遊海の思わぬ言葉にジャックは驚きを隠せない…。

 

「…本来であれば以前のように『バトルシティ』を開くべきだろう…だが、世界中の決闘者と戦ってきた俺が断言する!現時点でジャックほど『決闘王』に相応しい者はいない!!…これは俺のワガママだ…だからスタジアムにいるみんなに問いたい!!俺に賛成する者は…新たな『王』を拍手をもって迎えてほしい!!…新たなる『決闘王』…その名は…ジャック・アトラス!!」

 

 

「「「「うおおぉぉぉ!!!!」」」」

 

 

『『『『わああああ!!!!』』』』

 

スタジアムが…世界が揺れる、その反応をもって…全ては決定した…!!

 

 

「ジャック・アトラス…今、この瞬間から…お前が『決闘王』だ!…後は頼んだぜ?」

 

『遊海……いや、白波遊海…確かに「決闘王」の称号、このジャック・アトラスが譲り受けた!!俺は誓おう!この称号に恥じぬ決闘者で、あり続けると─!!!』

ジャックは涙を流しながら遊海からの譲位を引き受けた…ここに、新たな決闘王が誕生したのだ!

 

 

「カーリー…いや、渚・アトラス…ジャックを支えてやってくれ…これからジャックはさらに大変になるからな?」

 

「は、はひ!わかりました遊海さん!!」

舌を噛みながらもカーリーが答える…

 

「それから…お前も身体を大事にな?」

 

「えっ…!?あ…!!」

遊海の言葉にカーリーが赤面する…。

 

「フッ…じゃあな、ジャック」

取材陣の対応に追われるジャック達を横目に遊海は控えへと去っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ〜…もう、だめだぁ〜…」

 

「遊海さん!!」

選手用の通路に入った瞬間、遊海は膝から崩れ落ちる…覚醒した『スカーレッドスーパーノヴァドラゴン』…その力は凄まじく、実際のダメージが遊海を傷付けていたのだ…。

 

 

「あとで、ジャックには伝えるだけ…伝えないとな…俺だからよかったけど…大怪我じゃ、済まないぞ…」

 

「もう…ジャック君も加減を知らないんだから…」

翠に支えられながら遊海は息も絶え絶えにつぶやく…

 

 

「お疲れ様、遊海…いい演説だったよ?」

 

「ジャックとのデュエル…本当にすごかったぜ!」

 

「よーし、あとでジャックに挑戦してみるか!」

 

疲れ果てた遊海のもとに遊戯、城之内、十代が訪れる…決闘王の名を返上した遊海を労う為にやって来たのだ…。

 

 

「ありがとう、みんな…ああ、俺は本当にいい友達を得たなぁ…」

 

「フフッ…本当ですね!さぁ、一休みして祝勝会に顔を出しましょう!」

 

「ああ…行こうか!」

そして遊海達は歩き出す、新たな未来に向けて…

 

 

 

──────────────────────

 

 

「…うん?あの子は…?」

 

「(オロオロ…)」

遊海達がスタジアムの通路を歩いていると1人の少女が目に入った…この通路はまだ関係者専用の場所である…。

 

 

「迷ってしまったみたいだね…ボクが声をかけてくるよ」

傷付いている遊海に変わって遊戯が少女に声を掛けに行く…。

 

 

 

「どうしたのかなお嬢さん?道に迷ったのかな?」

 

「えっ…あっ!??武藤遊戯、さん…!?」

声を掛けられた少女は遊戯に驚く!

 

「フフッ、そう!ボクは遊戯!友達に会いに来たのさ!」

 

「わわっ…!!城之内さんに十代さん…それに…白波、遊海さん…!!さ、サインください!!」

 

「おぉ!?俺達のファンだったのか…大方俺に会おうと探してたな?まったく…親御さんが心配するよ?」

   

「ご、ごめんなさーい…」

遊海の言葉に少女は色紙を抱いて俯いている…。

 

「まぁいいさ、サインを書いてあげよう!遊戯達もいいかな?」

 

「ああ!」

 

「やったー!!」

遊海達は少女から色紙を受け取りサインを書いていく…。

 

 

「よし…そうだ!君の名前を教えてくれるかな?」

 

「うん!『ハル』って言うの!」

 

「うん…『ハルちゃんへ…』っと!よし!出来た!」

 

「わーい!ありがとう!これからも応援してます!!」

 

「うん!ありがとうハルちゃん!これからもよろしくね!」

 

「うん!『かっとビングだよ』!!じゃあね〜!!」

 

「「!!」」

少女…ハルの去り際の何気ない一言…それに遊海と翠は目を見開いた…。

 

 

 

「おい…?遊海、翠?固まってどうしたんだよ?」

 

「先生…?」

様子の変わった遊海達を心配して城之内達が声を掛ける…

 

「…いや、ちょっと驚いただけさ…行こうか!」

 

「…?…うん!あっちには海馬君もいるらしいし…早く行こう!」

 

気を取り直した遊海達は会場に向けて歩みを進めた…。

 

 

 

 

「(彼女はおそらく『九十九春』さん…年齢は…10歳くらいかな、となると…60年は先か…目安がわかっただけよしとしようか…)」

 

 

 

 

─遊海は未来への道標を見つけた─

 

 

 

 




こんにちは!S,Kです!

これをもって断章は終わります…そして、戦いは新たなステージへ!ZEXAL編の執筆準備に入ります!
またしばらく不定期になりますが…今後とも応援をよろしくお願いします!!




そして…世界中で新型コロナウィルスが猛威を振るっています…予防にはとにかく手洗い・うがいを徹底的に!幸いにも重症化率はそこまで高くないそうです!落ち着いて収束まで耐えていきましょう!


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第4部 ZEXAL編 第1章〜出会いの刻〜
伝説の始まり〜開かれた扉〜


こんにちは!S,Kです!

筆が乗っているうちに…第4部、開幕!!

…どうか、これからもよろしくお願いします
m(_ _;)m


それでは最新話をどうぞ!!


何処ともわからぬ暗闇の中、1人の少年は歩き続ける…その先で彼は巨大な扉の前に辿り着く…。

 

 

【この扉を開く者は新たな力を得る…しかし、その者は代償として一番大事なものを失う…】

 

悪魔のような顔が刻まれた扉から声が響く…

 

「…大事なものを、失う…」

少年は胸に掛けた「皇」の形をしたペンダントを握り締める…

 

ガラッ…!

 

「えっ…うわぁぁ─!!」

少年が躊躇し、一歩下がった瞬間…地面が崩れ、少年は闇に消えていった…。

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

ジリリリ!!

 

 

「うわぁぁ!?」ドスーン!!

 

目覚まし時計の音が部屋に鳴り響く、ハンモックで眠っていた少年は驚いて床に転げ落ちる…。

 

「痛たた…またあの夢か…って!?やべぇ!!遅刻だ─!?!?」

時計の針は朝の8時を指している…完全な遅刻コースである。

 

 

「姉ちゃん!!起こしてくれてもいいじゃねぇか〜!?」

 

「朝はニュースの配信で忙しいの!それに中学生になったんだから自分で起きなさい!」

 

ドタバタと学校の準備をした少年は姉に文句を言うが…姉は在宅の仕事で忙しく、素っ気ない対応である。

 

 

シャッ…シャッ…

 

「ば、ばぁちゃん、行ってきまーす!!」

 

「待ちなさい()()…朝ご飯は食べたのかい?」

家の前を箒で掃いていた少年の祖母が少年…遊馬へと声をかける。

 

「そんな場合じゃないって!!遅刻遅刻─!!」

 

「(キラーン☆)朝ご飯は食べなきゃいかん─!!」

 

「あいたぁ!?」

 

遊馬が朝ご飯を食べていない事を知った祖母の表情は一変…手にした箒で遊馬を打ち据えて家に叩き戻した…。

 

 

〜〜〜

 

 

「うおおぉぉぉ!!遅刻だぁぁ─!?」

 

朝ご飯を詰め込んだ少年は走る、学校に遅れない為に…

 

 

「おう!おはよう遊馬!今日も遅刻かー?」

 

「白野─!!今日は絶対に遅刻しねぇぞぉぉぉぉ─…!

 

花壇に水をあげていた黒髪の青年にからかわれた遊馬は挨拶もそこそこに走り抜けていく…。

 

 

 

 

 

 

 

「…始まるのか、新たな戦いが…」

 

《フォウ?》

 

青年…かつての決闘王…白波遊海は青空を見上げながら呟いた…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5D'sの時代から約60年程の時が流れた、何人もの仲間や友を見送り…俺達はそれでも生きている。

見ての通り、俺達はネオドミノシティを離れ新たな戦いの舞台・愛園市…ハートランドシティへと移り住んだ、九十九家とは既に顔馴染み…他にも知り合った者も多いが…今は割愛する。

 

エクシーズ召喚はあの時代から10年程後に生まれた、俺の回収した「No.45」の他に数枚の「No.」からデータを取り、新たなソリッドビジョンシステム「ARビジョン」と共に世界中に広まっている…ただ、シンクロ召喚もしっかりと世界に根付いている…なんだか嫌な予感もするが…。

 

 

 

《フォウ!!》

 

「おっと、忘れてた…」

 

実は俺達に新しい家族が増えた…仲間は「フォウ」…ネコなのかリスなのか…よくわからない子だ、この街に越して来てしばらくしたある日に家の庭で眠っていたのだ…なんだか既視感があるんだけど…気のせいだろう、とりあえず精霊ではないらしい。

 

《マスター、時空間の乱れが広がっています…3日後には最大値に達するでしょう…!》

 

「…いよいよ、ですね…!」

 

「ああ、3つの世界を懸けた戦いが…ついに始まる…!!」

 

遊海達は青空を見上げる…世界を懸けた長い戦い、その幕がいま、上がろうとしている─!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九十九遊馬…ハートランド学園中等部1年生、自分の実力よりも遥かに高い目標を設定し、それを乗り越えようとするが…あまりに高い目標を設定するせいで…

 

 

 

「うおおぉぉぉ─!!跳び箱20段…かっとビングだ〜!!」

 

 

ドンガラガッシャーン!!

 

 

〜〜〜

 

 

「(25mプールを息継ぎなしで往復してやる─!!)」

 

 

ゴボゴボゴボ

 

 

 

 

目標が達成された事は…まだない。

 

 

 

 

《……よくあれで怪我をしないものだ…》

 

遊海から遊馬の観察を頼まれているトフェニはため息をつく、精霊の彼から見ても遊馬の挑戦はやりすぎと思うものだった…。

 

《彼はなんだか主殿とよく似ているな……ん…!彼は…》

トフェニは遊馬に視線を戻す…そこでは1つの諍いが起きていた…。

 

 

 

 

 

 

「鉄男のデッキを返せ!」

 

『ハッ…悪いがこれは正当なアンティの報酬だ!』

 

遊馬の幼馴染である太っちょの少年・武田鉄男…そのデッキがアンティデュエルによって奪われてしまった…その原因は…。

 

「お前の事は知ってるぜ…ハートランド学園一のワル…神代凌牙!またの名を…シャーク!!」

鉄男の相手は「シャーク」の異名を持つ凄腕のデュエリストにして不良…神代凌牙、彼はとある事件から不良になってしまい格下の相手にデュエルを仕掛け、そのデッキを奪う事を繰り返していたのだ。

 

「…オレとデュエルしろ!オレがデュエルで勝ったら…鉄男のデッキを返してもらう!!」

 

『はぁ…?寝言いうなよ!シャークさんは全国大会出場者だぞ!?勝てる訳ないだろ〜?』

凌牙の取り巻きが遊馬を馬鹿にして挑発する…

 

「やってみなけりゃわからないだろ!?オレは『デュエルチャンピオン』…いや、『決闘王』を目指してるんだ!!」

遊馬は凌牙に向けて啖呵を切る…彼の抱く夢、それはデュエリストの頂点に立つ事だった…しかし、それは凌牙の琴線に触れる事になる─!

 

 

『デュエルチャンピオン…だと!?てめぇは…デュエルチャンピオンがどれほどの重さをもってるの知ってるのか…!!』

 

「ぐっ…!?知らねぇよ!」

 

『なら、軽々しく口にするんじゃねぇ…!!』

遊馬の言葉に激昂した凌牙は遊馬に掴みかかる!!

 

「夢をみるのは…オレの自由だ!!オレは必ず!デュエルチャンピオンになる─!!」

 

『まだ言うのか…!いいだろう、お前のデュエルを受けてやる…ただし、その前にお前の()()()()()()()を出して貰う!!』

 

「っ…!!」

その時、遊馬の目は首から掛けたペンダントに向かう…そのペンダントは「皇の鍵」…行方不明になっている両親の形見とも言える大切なものだった…。

 

『どうやら…そのペンダントが大事らしいな─!!』ブチッ!!

 

「ああっ!?」

凌牙は遊馬のペンダントを奪い取る!!

 

 

『大切なものはなぁ…失った時に本当の価値がわかるんだよぉ─!!!』

 

バギン─!

 

「あっ──!!?」

奪い取った遊馬のペンダントを勢いよく踏み潰す…皇の鍵は真っ二つに砕けてしまった…!

 

 

『ハッ…次の日曜に駅前広場に来い、そこでデュエルを受けてやる!ただし、負けたらお前のデッキは貰うぜ!!』

凌牙は皇の鍵の欠片を蹴り飛ばして去っていった…。

 

 

「そんな…!父ちゃん達の…皇の鍵が…!?」

 

「なんて酷い事するの…!?ここまでする事ないじゃない─!!」

 

壊された鍵の欠片を握り締めながら遊馬は涙ぐむ…その遊馬を慰めるようにもう一人の幼馴染の少女・観月小鳥が寄り添った…。

 

 

 

《…凌牙殿…主に報告しなければ…!》

事件の一部始終を見届けたトフェニは遊海のもとへと急いだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そうか、俺は凌牙の事を救いきる事ができなかったか…」

 

「遊海さん…」

トフェニの話を聞いた遊海は頭を抱える、神代凌牙…彼は元々天才とも言えるデュエリストだった、しかし…ある陰謀に巻き込まれ、唯一の家族である妹・璃緒は昏睡状態…自身もデュエリストの誇りを傷つけられ、やさぐれてしまったのだ。

 

「……わかっていても、辛いな……俺が()()()()を止められなかったから…!」

 

《マスター…貴方は悪くありません、きっと…マスターの優しさなら彼らを救えるはずです!》

 

「そうですよ!ポジティブにいきましょう!問題は日曜日です!その日が…」

 

「ああ、わかってる…!全ての鍵は…『No.』だ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…まったくかっとビングできねぇ…」

 

「遊馬…」

凌牙とのデュエルを翌日に控えた遊馬は夕暮れの道を肩を落としながら歩いていた、両親の形見…すなわち「心の拠り所」を失い、遊馬は思うように力が出ないのだ…。

 

 

「遊馬…お前、明日のデュエルに行くつもりか?行くなよ…!お前には無理だ…!今まで()()1()()()()()()()()()()()()()…シャークに勝てるわけないだろう!!」

 

「鉄男…」

一緒に帰っていた鉄男が遊馬に声をかける、鉄男の言葉は真実だった…遊馬は()()()()()から姉の明里によってデュエルを禁止されている、そして遊馬のデッキには必要不可欠なカード…切り札たるエクシーズモンスターがいないのだ…。

 

 

「デッキが取られたのは元々俺のせいだ…お前に借りなんて作りたくねぇ…!」

 

「…勘違いすんなよ鉄男、別にお前の為に戦うんじゃねぇ…目の前で大切なものを壊されて、それで引き下がるなんて…!父ちゃんや母ちゃんなら絶対に逃げねぇ!!オレは…オレの為に戦うんだ!!!」

それは遊馬に残された最後の「誇り」だった、両親の教え…それを曲げない為に遊馬は凌牙に戦いを挑む!!

 

 

「…勝手にしろ!でも、これはお前に必要だろ!」

 

「これ…ペンダントの欠片…!探してくれたのか!?」

遊馬にそっぽを向いた鉄男は金色の欠片を手渡す、それは凌牙に蹴り飛ばされた皇の鍵の欠片だった…。

 

「勘違いすんなよ!…たまたま拾っただけだ!」

 

「(クスクス…)」

意地を張り合う男子2人を見て笑みを浮かべる小鳥…彼女は知っている、遊馬と鉄男は本当は互いを思う「友」なのだと…。

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「おっ、青春してるな遊馬!」

 

《フォウ!》

 

「あっ…白野!フォウ!」

道の反対側から黒髪で黒のジャケットを着た青年、そしてその肩に乗った白いモフモフの猫が歩いてくる。

あの人は岸波白野、父ちゃんの古い知り合いで近所に住んでいる遊馬のデュエルの先生である。(姉ちゃんには内緒)

 

 

「あ!フォウくんだ!おいで!」

 

《フォウ!キャーウ!》

 

「かわいい〜!今日もモフモフだ〜」

白野の肩から小鳥に飛び移ったのはフォウくん、白野さんの飼い猫(?)だ、なんだかリスにも見える不思議なペットなんだ。

 

 

「話は聞いたぞ?シャーク…神代凌牙とデュエルするそうだな?」

 

「あっ…うん…」

 

「…気負う事はない、お前のやれる事を精一杯やればいい…必ずデッキは応えてくれる…いくよフォウ、散歩の続きだ」

 

《フォ〜ウ〜…》

 

「ん?小鳥ちゃんともう少し一緒にいたい?まったく…夕ご飯までに帰って来いよ?…小鳥ちゃん、任せてもいいかな?」

 

「は、はい!後で翠さんに渡します!」

 

「ああ、じゃあね〜」

白野はフォウを小鳥に預けると去っていった…。

 

 

「前から思ってたけどよ…白野はフォウの言葉がわかるのか??」

 

「うん、なんだか鳴き声のニュアンスでわかるって言ってたよ?」

 

「あの人すごいよなー、50m潜水で泳げたり…100mを10秒台で走れたりするんだぜ?」

 

「えっ…嘘だろ?」

 

《フォフォ〜ウ!》

 

白野との話で少し肩の力が抜けたオレは小鳥達と他愛のない話をしながら家に帰った…。

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、遊馬達の姿はハートランド駅前にあった…そしてその前には取り巻きを従えた凌牙の姿があった…。

 

 

『怖気づかなかったのは褒めてやる、尻尾巻いて逃げればお前のデッキだけは助かったものを…』

 

「お前から逃げるくらいなら…デュエリストを辞めた方がマシだぜ!!(やるしかねぇ…やるっきゃねぇんだ!!)」

戦う相手は格上…それでも遊馬は立ち向かう、自身の信じる言葉と共に…!

 

 

「かっとビングだ!オレ─!!デュエルディスク!セット!D・ゲイザー…セット!!」

遊馬は気合いと共に赤い端末を空中に投げる、その赤い端末は遊馬の腕に装着され展開…デュエルディスクに変形する、そして銀縁のモノクル型レンズが遊馬の左目に掛けられる…それこそが新たなデュエル「ARデュエル」に必要不可欠な装置である!

 

 

「デュエルターゲット…ロックオン!!」

遊馬の言葉と共に周囲の景色が0と1の数字に覆われていく、それと共にDゲイザーをつけていない通行人の姿が消えていく…。

 

これこそが海馬コーポレーションの発明した新たなデュエル形式「ARデュエル」…拡張現実の中で新たな戦いが幕を上げる!!

 

 

【ARビジョンリンク完了!】

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対凌牙

 

 

 

 

 

 

 

デュエルは進む、遊馬が使うのは父譲りの「オノマトデッキ」、対して凌牙が使うのは水棲生物…特に「鮫」モンスターを主軸としたシャークデッキ…遊馬はモンスターや装備魔法を使って凌牙を攻めるが…さすがは全国大会出場者…華麗なるマジックコンボで遊馬を追い詰める…!

 

 

 

「(だめだ…鍵が壊れてるから…かっとべねぇ…!!)」

遊馬は首から下げた鍵の欠片を握り締める…!

 

『そんなモンに縋ってるからデュエルに勝てねぇんだ!…そうだ、いい事を思いついた…!俺がお前のデッキを奪ったら…お前の目の前で破り捨ててやる!そのペンダントみたいにな─!!』

 

「て、テメェ─!!」

凌牙は遊馬を嘲笑う、その瞳は狂気に歪んでいる…

 

『所詮オメーは自分1人じゃ何もできないヤツなんだよぉ!!ハハハ…ハハハハハハ!!!』

 

「ふざけるな!!オレはそんな奴じゃねぇ!!…いくら失敗したって…どんなに笑われたって…!今までかっとび続けてきたのは…自分を信じてきたからだ!!オレのかっとビングはまだ─終わってねぇぇ─!!」

凌牙の言葉に遊馬の心…魂に炎が灯る、例えどんなに失敗しても自分の力を信じて立ち上がる…その精神…「かっとビング」が奇跡を起こす!!

 

 

キィン─!!

 

「えっ…!?」

遊馬が手にした皇の鍵の欠片が強い光を放つ…遊馬の視界はそのまま光に塗りつぶされた…。

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「ここは…それに皇の鍵が…!」

遊馬が気づけばそこはよく夢で目にした巨大な扉の前だった…、そしてその手には壊されたはずの皇の鍵が完全な形で握られていた…。

 

 

【さぁ…扉を開けろ、さすれば…お前は新たな力を手に入れる…だが、お前の一番大切なものを失う…】

 

扉が遊馬に語りかける…いつもなら逃げてしまっていた扉の言葉…だが…!

 

「もう、オレは…迷わねぇ!!うおおぉぉ─!!!」

遊馬は鍵を握り締め、扉に向かって飛び上がる!!

 

 

「超かっとビングだ!!オレ─!!」

 

 

遊馬は鍵穴に皇の鍵を差し込み、扉を開く…その瞬間、扉を閉じていた鎖は砕け散り…光の奔流が遊馬に襲いかかる、そしてその光の中には人影が…

 

「へっ…!?」

 

その瞬間、遊馬は見た…無数のカードが飛び散るイメージを…

  

 

SideOut

 

 

 

 

「うっ…なんだ、いまの…夢か…!?」

遊馬が気づけば凌牙とのデュエルに戻っていた…夢かとも思ったが…手には皇の鍵が握られている…。

 

「夢じゃ、ねぇ…」

いま起きた事が現実だと理解した遊馬だったが…変化が起きたのは遊馬だけではなかった!

 

 

『なんだ、これ…力が…力が漲ってくる!!うおおぉぉぉ!!』キィン─!

 

「な、なんだ!?」

突然、凌牙を禍々しいオーラが覆い、雄叫びをあげる!!

 

『俺はレベル3の「スカルクラーケン」と「ビックジョーズ」でオーバーレイ!!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…!エクシーズ召喚!!』

 

17 

 

『来い!「No.17」!「リバイス・ドラゴン」!!』

《ギャオオオン!!》

凌牙の場に巨大な瞳を持つ不気味なオブジェが現れる…そのオブジェは変形し巨大なドラゴンに変化する!

 

 

「『No.』…!?」

 

「なんだあれ…!?オレの時に召喚したモンスターじゃねぇ!?」

突然現れたドラゴンに鉄男が声を上げる…本来なら凌牙は同じランク3である「潜航母艦エアロ・シャーク」を召喚するのが勝ち筋…しかし、まったく未知なるモンスターが現れたのだ…。

 

『「リバイスドラゴン」の効果発動!ORUを一つ取り除き、自身の攻撃力を500アップする!!バトル!「ガガガマジシャン」を攻撃!バイス・ストリーム!!』

光球…オーバーレイユニットを捕食したリバイスドラゴンがガガガマジシャンを消し飛ばす!!

 

 

「うわぁぁ…!!」

 

「遊馬!!」

遊馬は攻撃で吹き飛ばされ倒れ込む…!

 

『どうやら勝負は決まったな…!次の一撃で終わりだ!!』

 

「くそ…!やっぱりオレじゃ、ダメなのか…!!」

吹き飛ばされた遊馬は悔しさに拳を握り締める…その時だった!

 

 

(…立て)

 

「えっ…ああ!?」

聞こえてきた声に遊馬は顔を上げる、そこには青い光を放つ謎の少年が浮遊していたのだ…!

 

 

(立て…勝つぞ)

 

「誰だ…お前…?」

 

 

 

 

 

Side遊海

 

「…彼が『アストラル』か、どうやら俺の目でも見えるみたいだな…」

駅舎の上から遊海はデュエルの様子を窺う…その手には「No.37希望織竜スパイダー・シャーク」「No.38希望魁竜タイタニック・ギャラクシー」の2枚と白紙の「No.」が握られている。

 

《どうやら…作戦は成功のようですね、マスター》

 

「ああ、この『No.』を持っていれば…必ずあいつらは姿を現すはずだ…だが、今は…」

 

遊海は遊馬と凌牙のデュエルに目を向けた…新たな伝説の始まりを…。

 

 

SideOut

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「(まったく訳がわからねぇ…)」

デュエル中のオレは頭を抱える…原因は突然現れた謎の幽霊(?)アストラル…オレにしか声が聞こえず、オレにしか見えない謎づくしの奴…しかも記憶喪失で自分がデュエリストである事しかわからないらしい…。

 

 

 

(ワタシの…ターン!!)

「オレのターンだって!?勝手にターンを進めんな─!!」

 

遊馬はアストラルに振り回されながら決闘を続ける、遊馬は「ゴゴゴゴーレム」を召喚し、魔法カード「破天荒な風」とのコンボで「リバイスドラゴン」の戦闘破壊を狙うが…

 

『無駄だ!「No.」は「No.」との戦闘でなけれ破壊されない!』

 

「なんだって!?」

ダメージは与えたものの「No.」固有の破壊耐性により破壊を免れる…だが。

 

(…次のターンに「ゴゴゴゴーレム」は破壊され、奴の手札に「攻撃力800以上」のモンスターがいれば…我々はデュエルに敗北する…観察結果その1、君のタクティクスはワタシのそれより…遥かに劣るようだ)

 

「タクティ…?なんだよそれ?」

 

(…戦術の事だ…)

 

少し呆れた様子でアストラルが呟く…そして次のターン、アストラルの予言通りの事が起きる…「リバイスドラゴン」が自身の効果で攻撃力を3000アップし、さらに攻撃力300の「ドリル・バーニカル」を召喚し追撃してきたのだ…!

 

 

「あ、あぶねえ…!コイツの言った通り、攻撃力800のモンスターが来たらやばかった…!」

 

(今の衝撃で思い出した…「No.」はワタシの記憶のピース…!モンスター・エクシーズの中でも特別な、この世界のカードでは倒す事のできないカード…そして、「No.」所有者同士の決闘では勝者が敗者の「No.」を吸収する…!そして…全ての「No.」を失えば…ワタシは消滅する…)

 

「それって…死んじまうって事かよ!!」

 

(そうだ…ワタシは、この決闘に勝たなければならない)

 

「お前に言われるまでもねぇ…このデュエルに勝つ!!」

 

 

アストラルの命…そして友のデッキを取り返す為に遊馬はカードをドローする!!

 

 

「オレの…ターン!ドロー!!」カーン☆

 

(このカードならば…!トンマ!そのモンスターを召喚するんだ!)

 

「遊馬だ!ユ・ウ・マ!!…『ガンバラナイト』を召喚!」

アストラルの指示で遊馬は攻撃力0のモンスターを召喚する!

 

 

『攻撃力0だと?ハッ…どうやら俺の勝ちのようだな!諦めろ!!』

 

「オレは絶対に諦めない!!オレはいつだって「かっとビング」できるんだ!!」

 

(『かっとビング』…?なんだそれは?)

 

「かっとビングはチャレンジするって事だ!!絶対諦めない心だ!諦めたら…人の心は死んじまうんだよ─!!」

絶望を前にしても遊馬の心は折れる事はない…その魂に「かっとビング」という心がある限り…九十九遊馬は諦めない!!

 

『うぜぇ…うぜぇぜ!諦めない、諦めない!!…テメェみたいな奴が一番イラつくんだよ…!!第一!攻撃力0のモンスターでどうやって俺に勝つつもりだ─!!』

凌牙は禍々しいオーラを強めながら遊馬を睨みつける!

 

(いや、これでいい…遊馬、その魔法カードを使うんだ!!)

 

「お前を信じる訳じゃねぇ…でも、やってやる!!魔法カード『死者蘇生』を発動!蘇れ!『ガガガマジシャン』!!」

遊撃のフィールドに2体の()()()4()()()()()()が並ぶ!

 

『今さら攻撃力1500のモンスターで何ができる!!』

 

(これで状況は整った…レベル4の『ガガガマジシャン』と『ガンバラナイト』でオーバーレイだ)

 

「それってまさか…エクシーズ召喚!?だけどオレには…」

 

(エクストラデッキを見ろ…それが君に与えられた力だ)

 

「この、カードは…『No.』!?でも、効果が読めねぇ…!」

遊馬はエクストラデッキにあるカードを確認する…そこには見慣れない、文字化けしたようなモンスター・エクシーズがあった…!

 

(ワタシには読める…そのカードの名は…『No.39希望皇ホープ』!!)

 

「(今は…このカードに賭けるしかねぇ!!)かっとビングだ!オレ─!!レベル4の『ガガガマジシャン』と『ガンバラナイト』でオーバーレイ!!」

2体のモンスターが飛び上がり、光の銀河を作り出す!!

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」

光の銀河か収縮…光の爆発を起こす!!

 

(「現れろ!!『No.39希望皇ホープ』!!」)

 

39 

 

遊馬の場に白い塔のようなオブジェが現れる…そして変形、2振りの剣を持つ戦士が雄叫びを上げる!!

《ホープッ!!!》

 

 

(「バトルだ!『ドリルバーニカル』を攻撃!!ホープ剣スラッシュ!!」)

 

『ぐうっ!?』

戦士が剣を抜刀…ドリルバーニカルを両断、大ダメージを与える!!

 

 

「よっしゃ!シャークに大ダメージだ!!」

 

(これが我々に残された最後の切り札…「希望皇ホープ」…!)

 

 

しかし、喜びもつかの間…凌牙は魔法カード「浮上」で「ビックジョーズ」を蘇生し、上級モンスターである「ジョーズマン」を召喚…自身の効果で攻撃力を2900まで上昇させ、遊馬に襲いかかる!

 

 

「やらせるか!!『希望皇ホープ』の効果発動!ORUを一つ使い効果発動!その攻撃を無効にする!ムーン・バリア!!」

リバイスドラゴンにより一撃はホープの鉄壁に跳ね返される!

 

 

『だが、まだ「ジョーズマン」の攻撃が残ってる!戦闘破壊はされないが…ダメージを防ぎたかったら効果を使うんだな─!!』

 

(ここは奴の言う通り…)

 

「…いや、『ホープ』の効果は使わねぇ!!リバース罠『バイバイダメージ』を発動!『ホープ』は戦闘破壊されず!戦闘ダメージを受けた時、その倍のダメージを相手に与える!!」

 

(なに…!?)

 

遊馬はホープの効果を使わず、凌牙にダメージを与える事を優先する…これで遊馬の残りライフは100、凌牙は1700となった…!

 

 

『チィ…!だがリバース罠「爆弾ウニ─ボム・アーチン」を発動!これで次の俺のスタンバイフェイズにお前に1000ダメージを与える!これで俺の勝利は確定だ!諦めろ!!

 

「まだだ…オレは諦めねぇ!!」

 

『お前に残されたのは1ターンだ!どうしてデュエルを諦めない!!』

 

「お前こそ!どうして諦めさせたいんだよ!!…そんな事を言うって事は…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?!大切ななにかを…諦めたんじゃないか!?」

 

『っ…!!!』

遊馬の言葉が凌牙に突き刺さる…!

 

「諦めなきゃ…いつだってかっとべるんだよ!それをお前に見せてやる!!逆転のチャンスを…俺のデッキに残された希望のコンボを!!」

 

(まだ…逆転の手があるというのか?)

アストラルが遊馬に問い掛ける…敗北は目前、そんな中で残った最後の希望を…!

 

「あるさ…オレのデッキに…倒せるコンボが!!」

そう言うと遊馬は懐から包みを取り出す…それは戦いの前に祖母・春に渡された握り飯…「デュエル飯」だった。

 

「これはオレの…勝負飯だ─!!」

そう言うと遊馬は一口でデュエル飯を平らげる!!

 

「充電…完了!!いっくぜぇぇ!!かっとビング─!ドロォォ!!」

バク転で助走をつけた遊馬は高くジャンプしながら運命のカードをドローする…その結果は…!!

 

「キター!!!オレは『希望皇ホープ』で『リバイスドラゴン』を攻撃─!!」

 

(なにっ─!?)

 

「「攻撃力の低い『ホープ』で攻撃!?」」

遊馬の思わぬ行動にアストラル、そして鉄男と小鳥が驚きの声を上げる!

 

 

「そして『ホープ』の効果発動!自身の攻撃を無効にする!ムーン・バリア!!」

リバイスドラゴンに振りかぶった剣が消滅する!

 

『俺にダメージを与えられないコンボに!なんの意味がある!!』

 

「意味は大アリだ!!速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』発動!!自分のモンスターの攻撃が無効になった時!そのモンスターはもう一度攻撃ができる!そしてその攻撃力は()になる!!」

 

『バカな…攻撃力5000だとぉ─!?』

 

「かっとべ『ホープ』!!『リバイスドラゴン』を攻撃─!!」

 

『ぐっ…うああああああ!!?』

ホープが双剣を振りかぶる…その一撃でリバイスドラゴンは粉砕され、凌牙のライフを削りきった!!

 

 

凌牙LP0

 

遊馬WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊馬が…勝った…?」

 

「勝った…!!すごいぜ遊馬!!」

 

「オレが、勝った…シャークに!!勝ったビングだ〜!!!」

 

思わぬ勝利…大金星に遊馬達は喜びあう!

 

 

 

『まさかあんなヤツに負けるなんて…落ちぶれたな!シャーク!!』

一方、凌牙の取り巻き達は彼の敗北で見切りをつけて去っていった…。

 

 

(……!)

 

喜びあう遊馬達をよそにアストラルは倒れた凌牙に手をかざす…すると凌牙に刻まれていた数字が消え去り、アストラルの手に「リバイスドラゴン」のカードが収まる…。

 

 

(これがワタシの記憶のピース…っ!?)

取り戻したNo.を見るアストラル…すると彼の脳裏に1つの記憶が甦る…!

 

(散らばった99枚の「No.」を回収すれば…私の記憶は戻る…!!)

それはアストラルの記憶の欠片…アストラルの目的が定まった瞬間だった…。

 

 

 

 

 

『ほらよ、約束は約束だ…デッキは返してやる』

 

「確かに…鉄男のデッキは返してもらったぜ」

夕暮れの中…負けを認めた凌牙は遊馬にデッキを手渡す

 

 

『九十九遊馬…覚えておくぜ』

凌牙はそう言うと踵を返して去ろうとする…。

 

「…シャーク!!デュエル…すげぇ楽しかったぜ!!今度はアンティ無しで楽しくデュエルしようぜ!!」

遊馬は凌牙の背中に声をかける…

 

『…ああ』

凌牙は彼らに聞こえないくらい小さな声で答え、去っていった…。

 

 

(たった一枚のドローを信じ、それに全てを賭ける…か)

 

「ん?なんかお前…雰囲気変わったか?…ま、いっか!」

凌牙を見送ったアストラルは遊馬の評価を少し改める…。

 

(どうやら君は私の理解を超えたデュエリストらしい…トンマ)

 

「だから…!オレはユウマだー!!」

 

夕暮れの街に遊馬の叫びが木霊する…二人で一人の決闘者、その前途は…多難である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「くそ…俺が、あんな奴に負けるとはな…!」

夕暮れの道を凌牙は帰路につく…遊馬に負けた理由を考えながら…。

 

 

「荒れてるな、凌牙」

 

「っ…白野、さん…いつの間に…!」

帰路を急ぐ凌牙の前に1人の青年が立ち塞がる…それは遊海だった。

 

 

「聞いたぞ?学園でまたやらかしたらしいな…とりあえず…おりゃ!!」

 

ゴッチーン!!

 

「い、いってぇぇぇ!!?」

遊海のゲンコツを受けた凌牙は頭を抱えて座り込む…

 

「…らしくない事はするな、お前が本当は優しい奴だって俺は知ってる…今のお前を見たら璃緒は笑い転げるぞ?」

 

「白野…!俺は…!!」

 

「…ストレス溜まってるんだったら、相手になるぞ?」

遊海は静かにデュエルディスクを構える…。

 

「今はやめとくぜ…そんな気分じゃねぇ…」

 

「そうか…なら、コレ持って早く璃緒の所に行ってやれ」

遊海は凌牙に弁当箱を手渡す

 

「…いつも、ありがとうございます…」

 

「ああ、ちゃんと食べるんだぞ?」

そう言って遊海は去っていった…。

 

「(…今の俺じゃ、逆立ちしたってあの人には勝てねぇ……鍛え直すか…)」

 

凌牙は歩き出す、眠り続ける妹のもとへ…

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「ついに始まったな…さて、久しぶりに頑張ろうか!」

 

「はい!遊海さん!」

 

自宅で遊海は満月を見ながら呟く…戦いがついに始まった…!



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手ほどき〜師匠と弟子と幽霊と〜

こんにちは!S,Kです!

皆さん…フォウ君好きすぎません!?1日に7件も感想貰ったの初めてで心臓バクバクなんですけど!?

でも、その感想に感謝して連続投稿!…少し短めなのはカンベンしてください…序盤で書ける事少ないんです…。

それでは最新話をどうぞ!


「フォウ君〜ご飯だよー」

 

《フォウフォウー!ンキュ!》

 

「そんな焦って食べるなよ〜、誰も盗らないぞー」

 

 

遊馬とアストラルの出会いからしばらく過ぎた、この前ハートランド上空に巨大バグマンが現れたから順調に二人はNo.を回収しているのだろう…。

 

 

《ユウミ!プリンが食べたいです!》

 

「ん、わかった!いま用意するからな」

 

 

 

俺は俺で平和な日常を送っている…人探しをしたり、フォウの世話をしたり…あの騒がしかった日々が嘘のようだ…。

 

結局、俺が集める事ができた「No.」は11枚…そのうち10枚は手元かカード庫に仕舞っている。

内訳は記憶の「No.」が「37」と「38」、そして白紙の1枚

力の「No.」は「24」「28」「45」「57」「72」「78」「95」…見事に漫画版かOCGオリジナルのモンスターばかりだ、それにしても…

 

《はむはむ…》

 

「なんで白紙なんだ…?」

 

プリンを食べているフレアの横で俺は「白紙」のカードを眺める…俺が直接持ってもイラストを写さない不思議なカードだ、てっきり「93」辺りに変わると思ってたんだけど…。

 

《悩んだってしょうがないですよユウミ?きっとそのカードはまだ目覚める時じゃないんですよ》

 

「そうなのかなぁー?…というか、食べるの早くないかな!?」

 

《ケプッ…ごちそうさまでした!》

 

 

 

ピンポーン!

 

 

「ん?はいはーい?」

 

 

玄関チャイムの音が鳴る、遊海が応対すると…

 

 

『お、おっす!白野!遊びに来たぜ!』

 

「こんにちは白野さん!」

 

(………)

 

「おう!遊馬、小鳥ちゃん!よく来たな!」

 

ぎこちなく挨拶する遊馬と小鳥、そして…俺を睨むアストラルの姿があった。

 

《フォ?》

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

(遊馬!『No.』の気配だ!!)

 

「うわ!?びっくりした!!」

 

学校からの帰り道…突然アストラルが皇の鍵から飛び出してくる!

 

「『No.』の気配?この近くで??」

アストラルの言葉にオレは聞き返す…アストラルの記憶のピースである「No.」それは人の負の心を増幅して暴走させちまう効果がある、それは右京先生と徳之助との出来事でオレもわかっていた…!

 

(ああ、気配はこっちからだ!)

 

「お、おい!?」

 

「ちょっ、遊馬!?デュエルの精霊さんが何か見つけたの〜!?」

 

アストラルを追いかけて走り出す遊馬…一緒に帰っていた小鳥は慌てて後を追いかけた…。

 

 

 

 

 

(…この家だ!)

 

『ちょっ…この家…って、マジかよ!?』

 

(どうした?何か知っているのか…?)

 

走る事少し…アストラルが指さした家は遊馬にとって驚きを隠せない場所だった。

 

『この家…オレのデュエルの先生の家だぞ…!?』

 

(デュエルの先生…?君は姉にデュエルを禁止されているのだろう?)

 

『いや…ここの人は父ちゃんの古い友達で…姉ちゃんに内緒で教えてもらってたんだ…でも、白野さんが…』

 

「遊馬ー!待ちなさいよ〜!…って、なんだ…白野さん家じゃない!」

追い付いて来た小鳥が遊馬のいる場所を見て呆れ声を漏らす…。

 

「久しぶりにデュエルを習いにきたの?なら早くいきましょうよ!」ピンポーン!

 

『あっ…ちょ!!』

ためらう遊馬をよそに小鳥がチャイムを鳴らしてしまったのだった…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「フォウく〜ん!久しぶりー!」

 

《フォウ!ンキュー!》

 

「ちょうど翠は買い物に行っててな、オレンジジュースでいいか?」

 

『う、うん!』

 

(…「No.」の気配が消えた…どういう事だ?)

 

遊海に迎え入れられた遊馬達はソファに座る…小鳥はフォウ君と戯れ…アストラルは家の中を見回している…。

 

『だから言っただろアストラル?白野さんは違うって…』

 

(…おかしい、確かに気配はこの家からしたのだが…)

 

「ほい、お待ちどうさま!今日は特別にプリン付きだ」

 

「あ!ありがとうございます!翠さんのプリン美味しいんだー!」

お盆を手にした遊海が戻ってくる…お盆の上にはオレンジジュースとプリンが乗せられている。

 

 

(…この男、かなり強いな…この街で見かけたどの人間よりも強い気配を感じる…)

 

『そりゃそうだよ、白野さんは強すぎて父ちゃんでも勝てた事ないんだから…』

 

「ん?どうした遊馬?」

 

「あっ…気にしないでください!最近、遊馬ったら『デュエルの精霊』が見えるって言い出して…」

 

「へぇー」キン─!

 

((この男…私の事を()()!?))

アストラルは遊海の視線に驚く…遊馬の上に浮いている自身を確かに見たのだ…。

 

 

「そういえば今日はどうしたんだ?聞いたぞ?最近デュエルが強くなったって」

 

『ああ!ちょっと強いカードを手に入れたんだ!』

 

(遊馬…すぐに彼とデュエルするんだ!)

 

『えっ…?いきなりどうしたんだよ?』

 

(彼は「No.」に関する「何か」を知っている!)

 

『わかった…!!白野!久しぶりにデュエルしようぜ!強くなったオレを見せてやるよ!』

 

「いいだろう、その前に…おやつを食べてからな?」

 

 

 

 

 

 

《フォーウ!》

 

「遊馬ー!頑張って〜!」

 

白波家の庭で遊海、そして遊馬とアストラルは向かい合う…!

 

 

 

「手加減はいるか?」

 

『いいや…今日は本気で来てくれ!!』

 

(勝つぞ…遊馬!!)

 

 

『「デュエルディスク!セット!Dゲイザー!セット!!」』

 

遊馬は赤いデュエルディスクを、遊海は旧型デザインのデュエルディスクと赤縁のDゲイザーをセットする!

 

【ARビジョン…リンク完了!】

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP4000

遊馬LP4000

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『聖騎士アルトリウス』を召喚!」

茶髪の鎧を着た青年騎士が現れる ATK1800

 

「さらに俺は装備魔法『聖剣カリバーン』と『天命の聖剣』を『アルトリウス』に装備!『カリバーン』の効果により『アルトリウス』の攻撃力は500アップし、俺は1ターンに一度500ライフを回復する!」

アルトリウスが青い線の入った剣と重厚な盾を装備する ATK1800→2300

 

遊海LP4000→4500

 

 

「俺はこれでターンエンド!」

 

遊海LP4500

アルトリウス(カリバーン・天命) 手札3

 

 

 

 

「さぁ、かかって来い!遊馬!」

 

『おしっ…!!かっとビングだ!!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

 

(遊馬、「ホープ」を呼ベ)

 

『いきなりかよ!?まぁ…やってやる!「ゴゴゴゴーレム」を召喚!』

青い体を持つレンガのゴーレムが現れる ATK1800

 

『さらにレベル4のモンスターが召喚に成功した時!『カゲトカゲ』は特殊召喚できる!』

ゴーレムの影から影のように薄いトカゲが現れる ATK1100

 

『俺はレベル4の『ゴゴゴゴーレム』と『カゲトカゲ』でオーバーレイ!』

2体のモンスターが銀河に飛び込む!

 

『2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!』

 

39

 

『現れろ!「No.39希望皇ホープ」!!』

《ホープッ!!》

 

遊馬のフィールドに白い塔が現れ変形、白き戦士が雄叫びをあげる ATK2500

 

 

「ちょ…!?遊馬!何考えてるのよ!!白野さんに『No.』を使うなんて─!?」

 

「ほう、これが遊馬の切り札か…かっこいいじゃないか!」

 

『ありがとよ!バトルだ!「ホープ」で「アルトリウス」を攻撃!ホープ剣スラッシュ!!』

ホープが二刀流でアルトリウスに斬りかかる!

 

「『天命の聖剣』の効果発動!『アルトリウス』は1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない!…まぁ、ダメージは受けるけどな?」

ホープの一撃をアルトリウスが盾で受け止める!

 

遊海LP4500→4300

 

 

『防がれた!…カードを2枚伏せてターンエンド!』

遊馬LP4000

ホープ 伏せ2 手札2

 

 

 

「すごいな遊馬!初ダメージじゃないか?」

 

『よし…!大きく前進したぜ!』

 

(楽観するな…あの程度のダメージでは「カリバーン」の効果で回復されてしまう…!)

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「うん、いい感じだ!自分フィールドに光属性・通常モンスターがいる時、『聖騎士ガウェイン』は特殊召喚できる!」

輝く剣を持った聖騎士が現れる DEF500

 

「さらに『聖騎士べディヴィエール』を召喚!」

白髪で赤いマントを羽織った騎士が現れる ATK1600

 

「『べディヴィエール』の効果発動!デッキから『聖剣ガラティーン』を墓地に送る!…そして俺はレベル4の『アルトリウス』と『ガウェイン』でオーバーレイ!」

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!聖騎士を率いる常勝の王よ…今こそ王道を突き進め!『聖騎士王アルトリウス』!!」

威厳のある重厚な鎧を纏いし騎士王が現れる! ATK2000

 

 

『「アルトリウス」が…進化した!?』

 

「フッ…『アルトリウス』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した時、墓地に眠る三種類の聖剣を装備できる!『天命の聖剣』『聖剣カリバーン』『聖剣ガラティーン』を装備!『カリバーン』の効果で攻撃力は500アップ!さらに『ガラティーン』の効果でさらに1000アップする!」

 

アルトリウスATK2000→2500→3500

 

 

(今だ!遊馬!!)

 

『おう!!速攻魔法『トルネード』を発動!相手の場に3枚以上の魔法・罠がある時!そのうちの1枚を破壊する!『天命の聖剣』を破壊!!』

 

「甘い!『天命の聖剣』が破壊された時!自分フィールドの戦士族モンスターにこのカードを装備する!再び『アルトリウス』に装備!!」

 

(『なんだと!?』)

 

竜巻に吹き飛ばされた天命の聖剣…しかし、風に流されて再びアルトリウスの手に戻る!

 

 

「じゃあ俺からのお返しだ!『アルトリウス』の効果発動!ORUを一つ取り除き、自分フィールドの『聖剣』の数まで相手フィールドのカードを破壊する!『希望皇ホープ』と伏せカードを破壊!!風王鉄槌(ストライク・エア)!!」

 

(しまった…!!『No.』の耐性はあくまで戦闘破壊のみ…!効果では破壊されてしまう!!)

 

『なんだって─!?』

 

アルトリウスを守護する風の精霊が暴風を起こす…そしてホープと伏せられていた『燃える闘志』が破壊される!

 

「バトル!『アルトリウス』で遊馬にダイレクトアタック!勝利すべき黄金の剣(カリバーン)─!!」

 

「うわあぁァァ─!?」

アルトリウスのカリバーンに魔力が集中…光の斬撃が遊馬に襲いかかる!

 

遊馬LP4000→500

 

「『べディヴィエール』で…とどめだな?」

 

『あ、相変わらず…強すぎる〜…』

 

《フォウ〜?》

目を回している遊馬にべディヴィエールが優しく手を置いた…。

 

 

 

遊馬LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し強いカードを手に入れたからって…あんまり調子に乗るなよ遊馬?」

 

『くっそ〜!本当に強すぎるぜ…』

 

(まさか…この私が反撃する間もなく負けるとは…!)

 

 

デュエルが終わり、座り込む遊馬に遊海が語りかける…初敗北がよほど堪えたのかアストラルは肩を落としている…。

 

 

「ただいまー!あら?遊馬君に小鳥ちゃん!いらっしゃい!デュエルしてたの?」

買い物袋を提げた翠が帰宅する…。

 

「翠さん!お邪魔してます!」

 

「ああ、おかえり!遊馬が少し強いカードを手に入れてな、軽くやってみたんだよ」

 

『あっという間に負けちまったけどな!』

 

(…悔しくはないのか?遊馬)

 

「ん?もちろん悔しいさ!…でも、白野さんに勝つのはオレの一番の目標なんだ!いつかは必ず…勝ってみせる!!」

遊馬はそう言って拳を突き上げた…。

 

 

(…観察結果その10、…遊馬はとても負けず嫌いだ)

 

 

 

 

 

 

「『おじゃましました〜!』」

夕暮れになり遊馬と小鳥は帰路につく…

 

「遊馬!これを持っていけ!」ピシュ!

 

『うわ…これって、「ズババ」のモンスター・エクシーズ!?』

遊海は1枚のカードを遊馬に投げ渡す…

 

「この前にたまたま当たったんだ、使うだろ?」

 

『よっしゃー!!新しいカードゲットだ!ありがとう白野!』

遊馬は飛び跳ねて喜ぶ…

 

「それから二人とも、最近はなんだか治安が悪いらしい…あんまり遅くならないように帰るんだぞ?」

 

「『はーい!!』」

 

元気に返事をした二人は話しながら帰っていった…。

 

 

 

(…岸波白野…彼は何かを隠している、彼に会う時は注意しよう…ん?)

 

《………キュ〜?》

 

ふと玄関に目を向けたアストラル…たまたまフォウ君と目が合ったような気がした…。

 

(…まさか、な)

 

 

 

 

 

「さてさて…2人の成長が楽しみだ…コレからが正念場だぞ?いつか、あの時のようなデュエルをしような…」



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逆襲と共闘〜英雄起動〜

こんにちは!S,Kです!

この勢いはいつまで続くのか!連続投稿─!!


それでは最新話をどうぞ!


ドタバッターン!!

 

 

「白野ォォ!!」

 

「うわ!?なんだどうした!?」

 

 

とある日の午後…家でのんびりしていた遊海のもとに遊馬が駆け込んでくる!!

 

「シャークの事…!なんで教えてくれなかったんだよぉぉぉ!!!?」

 

「落ち着け!深呼吸しろ深呼吸─!!」

 

 

時は遡る……

 

 

 

 

 

 

「『No.』無しでシャークに勝って…オレが強くなったって証明してやる!!」

 

その日、遊馬は猛烈に気合いが入っていた…右京の事件で関わるようになったクラス委員長・等々力孝に「遊馬のデュエルは『No.』頼りで凌牙や先生に勝ったのもマグレだった」と言われてしまったのだ。

そこで遊馬は凌牙と「No.」無しで再戦し、再び勝利しようと息巻いていたのだ…。

 

 

「気をつけろよ遊馬?シャークの奴、最近学校を休んで不良デュエリスト相手に腕を磨いてるらしいぜ?」

 

「それがなんだ!オレは必ずシャークに勝つ!アストラル!お前のアドバイスもいらないからな!」

 

(そうか、なら私は鍵の中に入っていよう…少し考えたい事もある)

 

「遊馬…」

 

鉄男の言葉を聞きながら遊馬は仲間達を連れて進んで行く…小鳥だけはそんな様子の遊馬を心配そうに見つめていた…。

 

 

 

 

「見つけたぞ!シャーク!!」

 

「九十九遊馬…こんな場所に何をしにきた?」

ハートランドの裏路地…そこは不良達の溜まり場となっている…そこに凌牙はいた、彼の周りは彼に挑み、返り討ちにされた不良達が倒れ伏している…。

 

 

「お前とデュエルしにきた!!」

 

「ハッ…!また『No.』を使って俺に勝つ為にか?」

 

「いいや!オレは『No.』を使わねぇ!!オレの実力を証明する為に…オレのカードだけでお前に勝つ!!」

 

「いいだろう!その挑戦を受けてやる、その代わり…そのペンダントを賭けてな!!」

 

 

そして場所を裏路地からハートランドの川辺に移し、再び凌牙と遊馬は激突する…!

 

 

(遊馬、本当に彼と戦うつもりか?)

 

「言ったはずだアストラル!お前には関係ねぇ…『No.』は『No.』でしか倒せねぇ…でも、シャークはもう『No.』は持ってねぇ!そんな相手に『No.』は使えねぇ…これは…オレの意地を懸けたデュエルなんだ!!」

アストラルの確認に遊馬はまっすぐ答えた…!

 

 

『俺はお前に負けた事を忘れちゃいねぇ…この時に備えて…俺は牙を研ぎ直してきた!!勝負だ!遊馬!!』

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

デュエルダイジェスト 凌牙対遊馬

 

 

 

 

 

 

「っ…!やっぱりシャークは強えぇ…!!」

 

『どうした?俺を負かすつもりで来たんだろ?』

遊馬は追い詰められていた…勢いのままに凌牙に挑んだものの…その実力差は圧倒的だった…。

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

 

(いいカードを引いたな)

 

『さぁ、「No.」を呼べ…お前の切り札を!!あのカードを倒してこそ…「No.」を使うお前を倒してこそ!俺が勝負を受けた意味がある!!』

 

(遊馬、君はこのデュエルでは「No.」を使わないと言った…使ってしまえば卑怯な手を使う事になると…だが、私は反対しない…私は「皇の鍵」を失いたくないからだ……勝つ為の手段なら…「No.」を使うんだ)

 

「オレは…!」

遊馬はエクストラデッキを見ながら思い悩む…ここで「ホープ」を召喚すれば確実にシャークに大ダメージを与えられる…しかし、ある言葉が脳裏を過った…。

 

 

──決闘は魂と魂のぶつかりあいだ…その前に小細工なんて必要ない、その時出せる全力を相手にまっすぐぶつければいい!──

 

 

「そうだよな…そうだった!!オレは魔法カード『死者蘇生』を発動!蘇れ!『ゴゴゴゴーレム』!そして『ガガガマジシャン』を召喚!」

遊馬の場に2体のレベル4が揃う!

 

 

「オレはレベル4の『ゴゴゴゴーレム』と『ガガガマジシャン』でオーバーレイ!」

 

『覚悟を決めやがったか…!来やがれ!「No.」!!』

 

「…エクシーズ召喚!現れろ!!『ズババジェネラル』!!」

 

『なに…!?』

 

(このカードは…白野に渡されたカードか!?)

遊馬の場に大剣を構えた将軍が現れる!

 

『どういうつもりだ!?なぜ「No.」を出さねぇ!!』

 

「これは…オレの意地とプライドの問題だ!!オレは…オレの力で勝ってみせる!!『ズババジェネラル』の効果発動!ORUを一つ取り除いて、手札の『ズババナイト』をこのカードに装備する!そして、その攻撃力分『ズババジェネラル』の攻撃力はアップする!いっけぇ!!『エアロシャーク』を攻撃─!!」

攻撃力3600となったズババジェネラルが凌牙に迫る!

 

 

『チッ…!だが墓地の「キラーラブカ」の効果発動!自分フィールドの魚族モンスターが攻撃対象になった時、このカードを除外して攻撃を無効にして攻撃力を500ダウンさせる!さらに罠カード「フィッシュ・レイン」を発動!魚族モンスターが除外された時、手札のレベル3以下の魚族モンスターを特殊召喚できる!「ビック・ジョーズ」を特殊召喚!!』

遊馬の渾身の一撃は凌牙のコンボで躱される!

 

 

 

(…勝負を急いだな、「死者蘇生」は相手の墓地のモンスターも蘇生できる、シャークの墓地の「キラーラブカ」を召喚し「ガガガマジシャン」か「ズババナイト」を召喚して「リバイスドラゴン」をエクシーズ召喚すれば「エアロシャーク」を破壊できた…君のプレイングミスだ)

 

「いや…これでいいんだ、オレは全力でシャークに挑んだ…その事に意味がある!!」

 

(遊馬…)

 

『拍子抜けだな遊馬…なら見せてやる!対「No.」用の俺の切り札を!!』

 

そして返しのターン、凌牙は新たな切り札…モンスター効果を無効にする効果を持つ『ブラック・レイ・ランサー』をエクシーズ召喚…遊馬に勝利した…。

 

 

遊馬LP0

 

凌牙WIN!

 

 

 

 

 

「くっそ〜負けた負けたー!!シャークに勝てたのはマグレだったのかよ〜!?」

 

『まっすぐな奴だなお前は、そういう所は…嫌いじゃねぇ』

デュエルが終わり、倒れた遊馬に凌牙が手を差し伸べる…

 

『またかかって来い…いつでも相手になってやる』

 

「おう!次は勝ってやるぜ!!」

 

先程の約束は何処へやら…凌牙と遊馬は握手を交わした。

 

 

 

 

「シャーク!お前も学校に来いよ!そうすればいつでもデュエルできるぜ?」

 

『…悪いが…それはまだできねぇ、ケジメをつけなきゃならない事がある…それが終わってからだ…!』

そう言って凌牙は夕焼けの街に消えていった…。

 

 

そして場面は冒頭に戻る…

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「そのあと、なんでシャークが不良になったのか調べた!そしたらこんな記事を見つけたんだ!!」

 

遊馬が見せたのは1年前のとある事件の記事…要約すると凌牙がジュニア全国大会決勝で相手のデッキを覗き見た容疑で反則負け…大会失格の上で()()()()を受けたという記事、そして…

 

「…本来であれば1年間の公式戦出場停止が妥当な処分だったが…養父K,H氏の証言により、凌牙選手が当時、精神不安定状態だった事が証言されこの処分が確定した……これ、白野さんの事だよな!前からシャークの事知ってたのか!?」

 

「よく見つけたな遊馬…そうだ、書類上ではシャーク…神代凌牙は俺の()()だ…まぁ、この家にはあまり寄り付かないけどな」

 

「っ…!?どうして、そんな…!!」

遊馬は思わぬ言葉に驚き、固まっている…

 

(………)

 

「凌牙はな、幼い頃に事故に遭って両親を失ってる…そこを俺達が引き取った…凌牙達が成長してからは家を用意して料理を持っていったり、生活費を援助したりするくらいだけどな…」

 

「シャークに、そんな事が……ん?凌牙達…?」

 

「…凌牙には妹がいる、その彼女が凌牙が全国大会決勝に挑む直前、()()にあった…幸い一命は取り留めたが…この1年、眠ったままなんだ、凌牙は追い詰められて…相手のデッキを盗み見た……それが真実だ」

遊海は事件の顛末を語る…拳を握り締めながら…

 

「デュエリストとしてのプライドを傷付けられた凌牙は不良になった…だけど遊馬、お前との決闘で凌牙は多少なりともプライドを取り戻す事ができたらしい…ありがとな」

 

 

「………白野、いきなり掴みかかって悪かった…アンタがそんな苦労してたなんて、オレ…」

 

「そんな顔するな!俺は苦労したなんて思ってない、他にも何人か面倒みてるからな…で、どうしたんだ?」

 

「シャークがデュエルが終わった後に『ケジメをつける』って言ったんだ…だから何か知ってると思って…」

 

「ケジメ……思いつかないな、俺も凌牙の行動を把握してるわけじゃない……直接聞くのが早いんじゃないか?」

 

「それもそうだな…!よーし!シャークを探してくる!!うおおぉぉぉ!!」

遊馬は来た時と同じ勢いで飛び出して行った…。

 

 

 

「……多少はいい方向に向かったのか…?」

 

《熱血が過ぎるがな…(汗)》

 

《フォーウ…》

あまりの遊馬の勢いに少し呆れる遊海なのであった。

 

 

「…さて、久々に行きますか」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「強盗計画…?」

 

「ああ、街の不良のリーダー格…陸王・海王兄弟、そいつらがカード博物館からカードを盗もうとしてるらしい…俺も不良だが、やっちゃならねぇ事はわかってるつもりだ…ワルの世界から抜ける前に…奴らを止めてケジメをつけておきてぇ」

街を走り回った遊馬はようやく見つけた凌牙に事情を聞く…その結果、凌牙は不良へのケジメとしてその強盗計画を止めたいらしい…。

 

 

「ならオレも手伝うぜ!それがお前の手助けになるんだったらな!」

 

「…お前、話を聞いてたか?相手は大人で不良なんだぞ?そもそもこれは俺の…」

 

「白野さんには世話になってるんだ!だからシャークの事も放っておけねぇんだ!」

 

「…待て、なんでそこで白野さんが出てくる?あの人と知り合いなのか?」

 

「ああ!父ちゃんの古い知り合いなんだ!それに…オレ達は()()だろ?」

 

「フッ…足を引っ張るんじゃねぇぞ?」

 

凌牙と遊馬は拳を突き合わせた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─夜─

 

 

 

「あいつらは夜9時に博物館に侵入するつもりらしい…そこで奴らを防ぐ!!」

 

「おう!!」

凌牙と共に博物館へ急ぐ遊馬…その時だった!

 

 

『『うわぁぁ─!!』』

 

 

「っ─!この叫び声は!!」

 

「急ぐぞ!!」

響いた叫び声に道を急ぐ遊馬と凌牙…そこで目にしたのは…

 

「陸王!海王!!」

 

「えっ…奴らが…!?」

そこにいたのは泡を吹いて倒れる2人のガラの悪い男、そして…月光に煌めく機械の鎧を纏った人物の姿だった。

 

(彼は…!)

 

「何か知ってるのか!?アストラル!」

声を漏らしたアストラルに遊馬が問いかける

 

(『エスパースター・ロビン』の後にテレビでやっていた…『ハートランドの気になるウワサ』という番組で見た事がある…!街での事件や事故…犯罪を凄まじい力とデュエルで解決するヒーロー…メタルナイト!!)

 

「メタル、ナイト…!」

 

『ん?こんな夜遅くにどうしたんだ少年達?』

遊馬の呟きが聞こえたのか、鋼の戦士が問いかける

 

 

「…そこで転がってる陸王と海王がカードを盗もうとしてるって聞いて止めに来たんだ、どうしてアンタが…」

 

『なに、不審な動きをしてるこの2人を見つけてね!デュエルで倒した所だったんだよ、少し厄介なカードを使われたから大変だったが…問題は無さそうだ!』

凌牙への答えにメタルナイトは2枚のカードを見せる…それは…

 

「「(ナンバーズ!?)」」

遊馬達3人は声を揃えて驚く…!

 

『ほう、このカードを知っているのか?厄介な力が宿っているみたいでね…まったく、どこでこんなカードが作られたのやら…』

 

(遊馬!彼から「No.」を回収するんだ!)

 

「えっ…おう!メタルナイト!オレ、そのカードを探してる奴を知ってるんだ!その人に返したいから『No.』を預けてくれないか!」

 

『ほう、しかし…このカードは危険なものだ!君達のような少年に任せるわけにはいかないな…そうだ!私とデュエルしよう!そこで君の力を私に見せてくれ!そうすれば、このカードを君に託そう!』

メタルナイトはカードを譲る条件としてデュエルを提案する!

 

「結果はデュエル次第って訳か…わかった!そのデュエルを受けてやる!!」

 

「待て遊馬!メタルナイトは1人でギャングを壊滅させるような奴だ!1人で勝てる訳がない!!」

 

『うむ、紫の少年は私の強さを知っているようだな!…よろしい、2人で私にかかってきなさい!変則タッグデュエルだ!』

 

「凌牙…ありがとよ」

 

「気にするな、元々付き合わせたのは俺だ…行くぞ!」

 

「『デュエルディスク!セット!Dゲイザー!セット!』」

 

【ハッ!!】

遊馬達はデュエルディスクをセット、メタルナイトは青色だった両眼の片方を赤く変化させる!

 

 

【ARビジョン…リンク完了!】

 

 

 

 

 

【『「デュエル!!」』】

 

 

 

メタルナイトLP4000

遊馬LP4000

凌牙LP4000

 

特別ルール 変則タッグデュエル

フィールド非共有 墓地非共有

 

ターン進行

メタル→遊馬→凌牙→メタル→……

 

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【カードを5枚伏せ、ターンエンド!】

 

メタルナイトLP4000

伏せ5 手札1

 

 

 

「手札を全部伏せた!?そんなのありかよ!?」

 

(バーン戦術…効果ダメージを狙って来るかもしれない…気をつけろ!)

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「『ズババナイト』を召喚!」

ズバズバ切れそうな剣を持つ剣士が現れる ATK1600

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

遊馬LP4000

ズババナイト 伏せ1 手札4

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『(遊馬のターンに効果を使わなかったなら…攻撃に対する魔法・罠かもしれねぇ…なら!)「ビック・ジョーズ」を召喚!』

巨大な口を持つ鮫が現れる ATK1800

 

『さらに!魚族モンスターが召喚に成功した時!手札の「シャーク・サッカー」は特殊召喚できる!』

ビックジョーズに続くようにコバンザメが現れる ATK200

 

 

『俺はレベル3の「ビックジョーズ」と「シャークサッカー」でオーバーレイ!』

2体の鮫が銀河に飛び込む!

 

『2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!来い!「潜航母艦エアロ・シャーク」!』

2体の鮫が連結した潜航艦が現れる ATK1900

 

『「エアロシャーク」の効果発動!ORUを一つ取り除き、自分の手札1枚につき400ダメージを相手に与える!手札は4枚!1600ダメージだ!』

 

【うおっ…!?】

エアロシャークから無数のミサイルが放たれメタルナイトに直撃する!

 

メタルナイトLP4000→2400

 

 

「よっしゃー!シャークの必殺コンボが決まったぜ!!」

 

『(不気味だ…なぜ、なにもしてこない…だが、攻めるしかない!)バトルだ!「エアロシャーク」でダイレクトアタック!ビック・イーター!!』

エアロシャークが突進を仕掛ける!!

 

【手札の『アーティファクト・ヴァジュラ』の効果発動!自分がダイレクトアタックを受ける時にこのカードを特殊召喚する!さらに速攻魔法『アーティファクト・ムーブメント』を発動!私の伏せカードを破壊!そしてデッキからモンスターカード『アーティファクト・ラブリュス』を魔法カード扱いでセットする!】

青いラインの刻まれた金剛杵が現れる ATK1800

 

 

「自分の伏せカードを破壊した!?」

  

『モンスターを魔法扱いでセットするだと!?』

 

(見た事の無い戦法だ!!)

メタルナイトの突然のプレイングに遊馬達は驚愕する!

 

 

【まだ終わりではない!相手ターンに破壊された『アーティファクト・カドケウス』の効果発動!自身を特殊召喚!さらに特殊召喚に成功した「ヴァジュラ」の効果発動!自分の伏せカードを全て破壊する!】 

蛇が巻き付いた杖が現れる…さらに金剛杵から雷撃が放たれ、伏せカードが一掃される! DEF2400

 

 

【そして相手ターンに破壊された『アーティファクト・モラルタ』、『ラブリュス』、『アキレウス』の効果発動!自身を特殊召喚する!】

 

『「なんだと!?」』

メタルナイトの場に青いラインの入った剣、紫のラインの入った盾、薄紫のラインが入った斧が現れる! ATK2100  DEF2200  ATK2300

 

 

「モンスターゾーンが、埋まっちまった…!?」

 

(相手ターンに5体のモンスターの同時召喚だと!?)

 

【フッ…どうする?】

 

『くっ…カードを1枚伏せてターンエンドだ…!』

 

凌牙LP4000

エアロシャーク 伏せ1 手札3

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【じゃ、いこうか!私はレベル5の『モラルタ』と『ヴァジュラ』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!】

 

61

 

【現れろ!『No.61ヴォルカザウルス』!】

メタルナイトの場に火山型のオブジェが現れて展開…炎を纏う恐竜が現れる ATK2500

 

 

「お、おい!そのカード─!!」

 

【さらに私は『カドケウス』『ラブリュス』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!】

 

19

 

【来い!『No.19フリーザードン』!!】

フィールドに氷の結晶のオブジェが現れて展開…全身に氷を纏う恐竜が現れる! ATK2000

 

 

 

『「No.」の2体同時召喚だと─!?』

 

【いくぞ!『ヴォルカザウルス』の効果発動!ORUを一つ使い効果発動!『エアロシャーク』を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!マグマックス!】

 

『ぐおっ…!?』

ヴォルカザウルスの胸部が開き火炎が放たれる、その炎はエアロシャークを焼き尽くした!

 

凌牙LP4000→2100

 

 

【さらにもう一度『ヴォルカザウルス』の効果発動!『ズババナイト』を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!マグマックス!】

「アチチッ!!」

エアロシャークに続いてズババナイトも焼き尽くされる!

 

遊馬LP4000→2400

 

【バトル!『ヴォルカザウルス』で凌牙少年にダイレクトアタック!】

 

『させるか!罠カード「ラスト・エントラスト」を発動!俺の手札1枚を遊馬に渡してバトルフェイズを終了する!』

 

【ふむ、上手いな!カードを1枚伏せてターンエンド!】 

メタルナイトLP2400

ヴォルカザウルス フリーザードン アキレウス 伏せ1 手札0

 

 

 

 

『なんてタクティクスだ…!これがメタルナイトの力…!!』

 

「それよりもまずいぜ…!『No.』の力でメタルナイトの正気が…」

 

【ん?私の正気がどうした?私はこの通り、なんともないぞ!】

 

『「なんだって!?」』

既に追い詰められている遊馬と凌牙は驚愕する…「No.」を2体も操っているにも関わらず、メタルナイトは狂気に飲まれる事なく平然としているのだ…。

 

 

(まさか…「No.」の浸食を精神力で抑え込んでいるとでもいうのか…!?)

 

【HAHAHA!仕事柄こういう事は慣れていてね!私を浸食したければこの3倍の力がなければ無理なのさ!…そして忠告しよう!「フリーザードン」は自分のモンスターエクシーズがORUを使って発動する効果を発動する時、そのORUを補う効果を持っている!つまり…】

 

「次のオレ達のターン中に勝てなきゃ…オレ達の負け…!!」

 

【その通り!さぁ、君達の力を見せてみなさい!】

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

 

(この手札なら…遊馬、「ヴォルカザウルス」を倒すぞ!)

 

「おう!『ゴブリンドバーグ』を召喚!」

赤い飛行機に乗ったゴブリンが現れる ATK1400

 

「『ゴブリンドバーグ』の効果発動!手札から『ガガガマジシャン』を特殊召喚!」

着崩した学生服の魔法使いが現れる ATK1500

 

「俺はレベル4の『ゴブリンドバーグ』と『ガガガマジシャン』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

39

 

「現れろ!『No.39希望皇ホープ』!!」

《ホープッ!!》

白き戦士が雄叫びを上げる! ATK2500

 

 

【むむっ…!既に似たカードを持っていたのか!それは悪い事をしたな!】

 

「な、なんだか調子が狂うな…とにかく…バトル!『ホープ』で『ヴォルカザウルス』を攻撃!さらに速攻魔法『虚栄巨影』を発動!バトルフェイズの終わりまで『ホープ』の攻撃力を1000アップする!いっけぇ!ホープ剣スラッシュ!」

 

ホープATK2500→3500

 

【むっ…!】

ホープの一撃がヴォルカザウルスを両断する!

 

メタルナイトLP2400→1400

 

 

「よし!オレはこのままターンエンドだ!」

遊馬LP2400

ホープ 伏せ1 手札2

 

 

 

「『フリーザードン』は任せたぜ!シャーク!」

 

『フッ…ああ!お前が「No.」1体を倒したんだ、俺だってやってやるさ!』

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『魔法カード「浮上」を発動!蘇れ!「ビックジョーズ」!』

再び大きな口の鮫が現れる ATK1800

 

『さらに「ハリマンボウ」を召喚!』

鋭い目つきのマンボウが現れる ATK1500

 

『俺はレベル3の「ハリマンボウ」と「ビックジョーズ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ!「ブラック・レイ・ランサー」!』

赤い槍を持った黒き槍兵が現れる! ATK2100

 

 

『「ブラックレイランサー」の効果発動!ORUを一つ取り除き!「フリーザードン」の効果を無効にする!さらに墓地に送られた「ハリマンボウ」の効果発動!「フリーザードン」の攻撃力を500下げる!』

フリーザードンが力を失い、ハリマンボウが放った針が全身に突き刺さる! ATK2000→1500

 

『バトルだ!「ブラックレイランサー」で「フリーザードン」を攻撃!ブラック・スピア!!』

鋭い刺突がフリーザードンを粉砕する!

 

【ぐっ…!!】

メタルナイトLP1400→800

 

『シッ!カードを1枚伏せてターンエンド!』

凌牙LP2100

ブラックレイランサー 伏せ1 手札1

 

 

 

【見事!よく私をここまで追い詰めた!…私の場にはモンスターが1体…しかし、私は最後まで諦めない!】

 

 

【私のターン!ドロー!】

【リバース罠『エクシーズ・リボーン』!発動!墓地の「ヴォルカザウルス」を特殊召喚し、このカードをORUにする!】

再び火山竜が復活する! ATK2500

 

 

「なんだって!!」

 

(しまった─!)

 

【『ヴォルカザウルス』の効果発動!『ブラックレイランサー』を破壊し、攻撃力分のダメージを与える!】

 

『俺狙いか!…だが、読んでたぜ!リバース罠「ヘイトクレバス」発動!自分のモンスターが効果で破壊された時!相手モンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!』

 

「シャークはやらせねぇ!!リバース罠『ダメージ・ダイエット』!シャークへの効果ダメージを半分にする─!!」

 

【──見事!】

 

 

凌牙LP2100→1050

 

メタルナイトLP800→0

 

 

遊馬&凌牙 WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

『HAHAHA!!見事な連携だったな、私の完敗だ!君達にならこのカードを渡しても大丈夫そうだな!受け取るといい!』

 

「おう!ありがとうメタルナイト!」

デュエルが終わり、メタルナイトは笑いながら2枚の「No.」を遊馬に手渡す。

 

「さて、私はこの不良2人を警察に引き渡さなくてはならないから失礼するよ!…凌牙少年、君はいい友を持ったな!」

 

「ああ、遊馬はうっとおしい位うるさいが…良い奴だ」

 

『フッ…その友情、大切にしろよ!ではな!!』

 

メタルナイトは不良2人を担ぐとそのまま走り去って行った…。

 

 

「…なんだか気持ちいい人だったな!」

 

「ああ、…遊馬、さっきはありがとな『ダメージダイエット』」

 

「おう!どうせ勝つなら気持ちよく勝ちたかったからな!あっ…そうだこのカード返さなきゃな!」

遊馬は「ラスト・エントラスト」の効果で渡された魔法カード「アーマード・エクシーズ」を差し出す。

 

「ん…やるよ!まだお前はへっぽこみたいだからな…使いこなせれば強いカードだ」

 

「えっ…!いいのか!大切にするぜ!」

 

「ふっ…腹空いたな…白野さんに飯貰いにいくか…」

 

「ヤベ…こんな時間!?姉ちゃんに叱られる!!また明日なシャーク!!」

 

「…ああ、じゃあな!」

2人はそれぞれに走り出す…新たな友情を胸にして…

 

 

 

 

(…先程のデュエル…「No.」が懸かっていたはずなのに私はダメージを受けなかった…メタルナイト、彼は最初から『No.』を私達に渡すつもりだったのか…?それに取り戻した記憶…あの叫び声は………私がこの世界に来た目的は…いったい何なんだ…?)

皇の鍵に戻ったアストラルは考え込む…その答えが出る日は…まだ遠い…。

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

「ゴホゴホゴホ…ヤベ…久々過ぎてメタルナイトの時のテンション忘れちまった…」

 

《なんだかアメコミヒーローみたいでしたよ?マスター…》

 

「…やばい…今更ながら恥ずかしくなってきた…!!」

 

《…久しぶりだからってやりすぎ&手加減しすぎですよユウミ!》

 

「フレアが辛辣!?ごめんなさい!!」

 

頭を抱えながら遊海は帰路につく…今回の行動は黒歴史認定されたようだ…。

 

 

「とりあえず…凌牙が少しでも元気になったんなら良かった、後は…そろそろ彼らが動き出すかな…」

街を歩きながら遊海はハートランドの中心部、ハートランドタワーを見つめる…。

 

 

「…折れるなよ、遊馬、アストラル…」



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遊馬の危機!〜ナンバーズハンター襲来〜

こんにちは!S,Kです!


春になり 勢いだけで 書いている


…最新話をどうぞ!


キィン─

 

「…やっぱりダメか…」

とある病室…遊海の発した回復魔法の光が1人の少女を包み込む、しかし…少女に変化は起きなかった…。

 

《…マスターの力でも魂の傷までは癒せません、こればかりは時を待つしかないでしょう…》

 

「そうか、くそ…何処にいるんだ…バイロン─…!」

遊海は強く、拳を握り締めた…。

 

──────────────────────

 

「あっ!白野さん!翠さん!」

 

「ん?遊馬君と小鳥ちゃん!2人でお買い物?」

 

「おう!新しいパックが出るみたいなんだ!」

 

日曜日…人で賑わうショッピングモールに遊海と翠、そして遊馬と小鳥の姿があった、それぞれに買い物にきて鉢合わせしたのだ。

 

 

「カードを買いに来たのはいいが…明里ちゃんにバレたら怖いぞ?」

 

「大丈夫!姉ちゃんには文房具を買いに行くって事にしてあるからさ!」

 

「まったく…バレなきゃいいってもん─危ない!!」

 

「「うわっ!?」」

 

ガシャーン!!

 

「白野さん!!」

 

談笑していた遊海達…そこに突如として街の清掃を担うロボット「オボット」が落下してくる、遊海は咄嗟に遊馬達を引っ張って回避する!

 

 

「な、なんなんだよいきなりー!?」

 

「う、上よ!バットを持った人が暴れてる!!」

小鳥がショッピングモールの上の階を指さす…そこではバットを持った男が数人の客を人質に強盗を働いていたのだ…!

次々に警察官達や報道陣がショッピングモールに押し寄せ、モール内は騒然となる…

 

 

 

『カネだ!カネをもって来い!ついでにヘリもだ!!』

 

『ご覧ください!ショッピングモールに強盗が現れて厳戒態勢が敷かれています!!』

 

 

「…(さっさと解決した方が良さそうだ…)精霊変身!!」

遊馬達がモール内の中継画面に釘付けになっている隙に遊海はクリフォートの鎧を纏い、強盗のもとに飛び出す!

 

 

「悪事はそこまでだ!!」

 

『なっ…!?メタルナイト!?なんでここに!?』

 

「俺は悪のもとに現れる…お前の悪事はここまでだ!!」

 

『み、皆さん!ご覧ください!!ヒーロー・メタルナイトが現れました!!』

遊海は距離をとって強盗と対峙する…

 

 

『少しでも近付いてみろ…!人質が…』

 

「もう、遅────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────い、…ん??危ない!!」

 

バリバリバリィィン!!

 

その瞬間、遊海は目を疑った…瞬間移動して強盗を捕まえた瞬間…否、捕まえようとした時、既に強盗は倒れ、遊馬が目の前にいたのだ、ガラスの雨のおまけ付で…咄嗟に遊海は遊馬を抱いて飛び退く!

 

 

「遊馬少年!何故君がいる!?」

 

「えっ、あ……メタルナイト、時間が…止まって、強盗が『No.』を持ってて…」

 

《時間流の停止を確認しました…ナンバーズハンターが時を止め、カードを回収したようです…!》

 

「そういう事か…」

遊馬の言葉とアヤカの分析を総合すると…どうやら「No.」を持っていなかった事で天城カイトの時間停止に巻き込まれたようだった…まさか鎧を纏った状態で止められるとは…

 

 

『メタルナイト殿!その少年は!?何処から現れたのです!?』

 

「この少年は無関係だ、上から現場を見ようとして落っこちてきたんだ…咄嗟に強盗を殴り飛ばして受け止めたんだよ」

訪ねてきた警察官に嘘の事情を説明する…時間が止まったと言っても彼らは信じないだろう…。

 

『そ、そうでしたか!犯人確保の協力ありがとうございます!』

 

「ご苦労様です!」

警察官は敬礼して犯人を捕まえにいく…上手く誤魔化せたようだ…。

 

 

「メタルナイト…」

 

「気をつけろ少年、私なりに調べた限りだと君以外にも『No.』なるカードを集めている者がいるらしい…君も充分に注意するんだ!…さらば!!」

俺は遊馬に助言を送るとカイトの割った窓から外に飛び出した…。

 

 

 

 

 

Sideカイト

 

 

 

 

オレは天城カイト…アストラル世界からもたらされた危険なカード「No.」を集めるナンバーズ・ハンターだ…今日はショッピングモールに現れた強盗の持っていた…いや、奴に取り憑いていた「No.56」を()()()()()()回収し、アジトであるハートランドタワーへ戻ってきたところだ。

 

『「No.」の回収は順調かね?カイト君』

 

「ああ」

オレの目の前にいるのはMrハートランド…表向きはハートランドシティの市長、裏はオレの……上司「Dr.フェイカー」の操り人形…を演じている男だ、オレは正直…この男は嫌いだ。

 

 

『現在の回収枚数は?』

 

「11枚だ」

 

『ファンタスティック!!この短期間でこれだけの枚数を集めるとは…!私の目に狂いはなかった!!』

 

「………」

ハートランドは大袈裟にオレを褒め称える…その言葉は聞き飽きた。

 

『ん…?奪われた魂の事を気にしているのかね?仕方のない事だ…今の科学力では魂ごと奪うしか方法がない…だが、気にする事はない!「No.」を持つ者は邪悪に取り憑かれ、欲望を増幅させた悪党ばかりなのだから!!』

 

「No.」は人の欲望を増幅させて操り、暴走させる…今までオレが狩ってきた者は全員そうだった…しかし、罪悪感がない訳ではない…オレは昔、「ヒーロー」に憧れた、ある街を救った伝説のヒーローに…母のいない『弟』を守れるように……ああ、オレはいま「悪人」なのだろう…だが、それでも…!

 

 

「『No.』を100枚集めれば…ハルトは、弟は元に戻るんだろうな…!」

 

『─もちろんだとも、「No.」を揃える事でしかハルト君の治療法は手に入らない…今はそれを信じるんだ!安心したまえ…君の熱いハートはDr.フェイカーにちゃんと伝えておく!引き続き「No.」を集めたまえ!その分ハルト君の治療は早くなるのだから…!』

 

 

弟を…ハルトを救う為にならオレは悪魔にでも協力しよう…あの笑顔を取り戻せるのなら───

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

痩せた男LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『「冥界騎士トリスタン」を召喚!』

赤い目をした馬に乗った骸骨騎士が現れる ATK1800

 

『そしてフィールドに「トリスタン」が存在する時!手札の「冥界の麗人イゾルテ」は特殊召喚できる!』

黒いドレスを着た銀髪の美女が現れる ATK1000

 

 

『俺は「イゾルテ」の効果発動!「イゾルテ」と「トリスタン」のレベルを8にする!』

 

トリスタン☆4→8

 

イゾルテ☆4→8

 

 

『俺はレベル8の「イゾルテ」と「トリスタン」でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!生と死の狭間を彷徨いし魂よ…暗黒に澱みし恨みをこの地で晴らせ!!現れろ!「No.23 冥界の霊騎士ランスロット」!!』

 

23

 

男の場に騎士甲冑のようなオブジェが現れて展開…青く長いマフラーを巻いた冥界の冷気を纏う騎士が現れる ATK2000

 

『俺はこれでターンエンド!』

痩せた男LP4000

ランスロット 手札4

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「魔法カード『帝王の深怨』を発動!手札の『光帝クライス』を公開してデッキから─」

 

『「ランスロット」の効果発動!ORUを1つ取り除いてこのカード以外の発動したカードを無効にする!』

帝王の深怨のARビジョンがレイピアで突かれて砕け散る!

 

「……フィールド魔法『真帝王領域』を─」

 

『「ランスロット」の効果発動!その発動を無効にする!』

再びカードのARビジョンが砕け散る!

 

「…これで弾切れだな、『天帝従騎イデア』を召喚!」

白い法衣を纏った騎士が現れる ATK800

 

「『イデア』の効果発動!デッキから『冥界従騎エイドス』を特殊召喚!」

瘴気を纏う黒騎士が現れる DEF1000

 

『そんな低攻撃力モンスターで何ができる!!』

 

「お前を倒すんだよ…!魔法カード『帝王の烈旋』を発動!そして『エイドス』を召喚したターン、俺は追加でアドバンス召喚ができる!」

 

『無駄だぁ!ナンバーズはナンバーズでしか─』

 

「『烈旋』の効果により俺の場の『エイドス』とお前の場の『ランスロット』をリリース!!『天帝アイテール』をアドバンス召喚!!」

 

『なにぃ─!?』

ランスロットが竜巻に包まれて消え去る…そして聖なる力を纏う天帝が降臨する! ATK2800

 

 

「さらに『アイテール』の効果発動!デッキの『帝王の開岩』と『汎神の帝王』を墓地に送り…デッキから『冥帝エレボス』を特殊召喚!」

天帝の開いた扉から冥界の帝王が現れる ATK2800

 

 

「バトル、『エレボス』と『アイテール』でダイレクトアタック!」

 

『うわー!!?』

 

 

痩せた男LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

「ほい、『No.23』回収!…なんだかあっけないな…」

 

《マスターが強すぎるんですよ…》

遊海は倒した男に回復魔法をかける…この青年は「No.」の力に飲まれて女性を襲おうとした所を遊海が見つけ、カードを回収したのだ。

 

「これで俺が11枚、えっと…遊馬が6枚、カイトがたしか…10枚?そして…バイロン達が少なくとも8枚…計24枚か……まだ先は長いな」

 

《全部で100枚…実質残り70枚ですね》

 

「ああ、そうだな」

現時点では手に入れられない「No.」が少なくとも6枚ある、まずは「1」〜「4」これはおそらくドン・サウザンドが持っているから無理、そして月にある「100」と未開眼の「62」…あれはカイトとミザエルでなければ覚醒させる事はできないだろう…。

 

「さて、もう一回りパトロールを…っ!!これは…!」

 

キィン─

 

時間の流れが極端に遅くなる…この現象は…!

 

《時間流の停止を確認!近くに遊馬の反応があります!!》

 

「…いくぞ、俺がいたって何ができる訳じゃないが…」

遊海は停止した時間の中を静かに進み始めた…。

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

『貴様、ナンバーズを持っているな?』

 

(遊馬、このナンバーズハンターと言う男は危険だ…!逃げろ!)

 

『逃すわけにはいかん、デュエルアンカー!!』

 

「うわっ…!?」

 

遊馬の腕に赤いレーザーロープが巻き付く…小鳥達とハートランドの隣町で新しいデュエル広場でデュエルした帰り道、雨に降られて雨宿りできる場所に急ぐ途中…小鳥がトラックに轢かれかけてしまう、小鳥を庇う為にトラックの前に飛び出した遊馬だったが…そこで周囲の時間が停止する。

その停止した時間の中に口笛と共に現れたのがショッピングモールで見かけた「ナンバーズハンター」なる青年、そして相棒らしきオービタル7というロボットだった。

 

 

『デュエルアンカーはデュエルの勝敗が着くまで外れない…』

 

(遊馬、このデュエルは私も手を貸そう…私は「直感」は信じないが…この男は別だ…!君1人で勝てる男じゃない、おそらくは白野に匹敵するデュエリストだ…!!)

 

「お前がそこまで言うって事は相当だな…!だったら尚更やる気が出てきた!オレだって『デュエルチャンピオン』を目指してるんだ!!カットビングだ!オレ─!!」

 

『覚悟を決めたようだな…デュエルモード!フォトン・チェンジ!!』

遊馬がデュエルの覚悟を決めたと同時にナンバーズハンターも動き出す…左目に模様が刻まれ、紺色のコートが光ながら白く変わっていく!!

 

『さぁ、狩らせてもらおう…貴様の魂ごと!!』

遊馬とアストラル、そしてナンバーズハンターのデュエル…否、決闘が始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…完結に結果を言おう、遊馬とアストラルは完全な敗北を経験した。

 

先行1ターン目から「No.」の呪縛をものともせずに「No.10白輝士イルミネーター」「No.20蟻岩土ブリリアント」を召喚したカイト…更に次のターンで切り札たる「No.」を切り捨てて現れたのはカイトの真の切り札…瞳に銀河を宿す光輝くドラゴン「銀河眼の光子竜」(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)…そのドラゴンは完全なる「エクシーズキラー」、遊馬とアストラルは「希望皇ホープ」や「リバイスドラゴン」で応戦するが…カイトの戦術眼、そしてタクティクスはアストラルを凌駕していた。

そして語られる「ナンバーズ狩り」の真実…アストラルとは違い、決闘者の魂ごとナンバーズを強奪し…相手を廃人にしてしまう事を聞いた遊馬は初めて()()()()()()()()()()()

 

全ての戦略を潰され、最後の攻撃を受ける刹那…カイトの様子に異変が起きる…相棒たるオービタルから自分の弟であるハルトの急変を伝えられたからだ…!

 

 

『この勝負…貴様に預ける!オレの名はカイト!!胸に刻んでおけ!!』

カイトはバイク形態に変わったオービタルと共に飛び去った…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

Side小鳥

 

 

 

「えっ…きゃ!?」バシャン!

小鳥は雨に濡れた歩道に倒れ込む…

 

「私…トラックに轢かれかけて…!!遊馬─!?」

小鳥は周囲を見回す…トラックに轢かれかけた自分を突き飛ばした幼なじみ…遊馬の姿を…

 

 

「遊馬…遊馬!!」

そして小鳥は遊馬を見つけた…反対側の広場で雨に濡れるのも構わず、立ち尽くすその姿を…

 

 

「遊馬!大丈夫!?怪我は…」

 

「…よ…」

 

「えっ…?」

小鳥は遊馬に駆け寄って話しかける…しかし、遊馬は…

 

「手も足も出なかった…何がかっとビングだ…!何がデュエルチャンピオンだ…!!こんなんで…」

 

「デュエルチャンピオンになれるかよぉぉぉ─!!!」

 

遊馬は膝をついて叫ぶ…そこにはいつもの元気な遊馬の姿は無く、まるで全てに絶望してしまったかのようだった…。

 

「遊馬!?どうしちゃったの!?ねぇ!!」

状況を飲み込めずに遊馬を揺さぶる小鳥…しかし、遊馬は反応を返さない…そこに…

 

 

 

『っ…!!遊馬!小鳥ちゃん!!』

 

「白野さん!遊馬が…遊馬が!!」

雨の中を見慣れた黒ジャケットの青年…白野が駆けてくる、小鳥はすぐに助けを求めた…。

 

 

『…遊馬、今は何も聞かん……吐き出せるものは出しておけ…』

 

「白野…オレ…おれ…!!ああ…うわあぁあ"あ"あ"─!!!」

 

白野の胸に抱かれた遊馬は声をあげて泣き始める…その声は雨の中で静かに消えていった…。

 

 



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激闘!決闘庵〜信じるべき仲間〜

こんにちは!S,Kです!

とりあえず連続投稿は最後…かな?


最新話をどうぞ!!


ピンポーン…

 

「は〜い!…あら、春お婆ちゃん!」

 

『こんにちは翠さん、白野さんはいるかね?』

 

 

 

遊馬がカイトと遭遇して3日…白波家に遊馬の祖母・九十九春が訪ねてきた…。

 

 

『白野さん、この前は孫が世話になったね…あれ以来、遊馬はずっと塞ぎ込んでいるよ…』

 

「…そうですか、やはり決闘での敗北が相当堪えているようですね…」

お茶を飲みながら春は遊馬の近況を話す…天城カイトによって追い詰められた遊馬とアストラル…2人は共に落ち込み、学校に行く以外は部屋に籠もってしまっているようだ。

 

 

『貴方から遊馬を元気づけてほしいのぉ、伝説の決闘者…()()()()さん』

 

「…気付かれてたのか、気配は消してたんだけどなぁ」

 

『ふふふ…あのサインを貰ってから貴方の追っかけをしてましたからねぇ、30年前に貴方がこの街に来た時は目が飛び出すほど驚いたよ』

…驚くべき事に春お婆ちゃんは遊海の正体を見抜いていた、やはり年の功とも言える経験故にだろう。

 

 

「俺はまだ遊馬に正体を明かすつもりはないよ、傷付いた遊馬には強い薬になり過ぎる、それに…君なら今の遊馬にぴったりの場所を知ってるでしょ?」

 

『ズズッ…そうだねぇ…()使()()にでも行ってもらおうか……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…!な、なんでオレが、こんなお使いを〜…!」

 

「それは、私達の…セリフよ〜!」

 

週末の金曜日の夕方…遊馬、小鳥、鉄男の姿はハートランドシティから離れた山道にあった。

カイトとの戦いの後、塞ぎ込んでいた遊馬とアストラル…そこに小鳥と鉄男が訪れ、ハートランドシティで大規模デュエル大会「ワールド・デュエル・カーニバル」…WDCが約一ヶ月後に開催される事を知らされるが…遊馬の気持ちは沈んだままだった。

 

そんな時、春にハートランドから離れた山にある庵へのお使いを頼まれ、その場にいた鉄男と小鳥も同行したのだが…3人は庵に続く石段の半ばでへたばっていた…。

 

 

「ばあちゃん〜!何が『ちょっとした』お使いだよぉ〜!?」

 

「な、なんだよ遊馬…お前の、かっとビングは…こんなもんかぁ〜!?」

息も絶え絶えの鉄男が遊馬に発破をかける…なお、鉄男と小鳥は小さい鞄を、遊馬は()1()()()()()()()()リュックサックに()()()()()を背負っている…。

 

「なん、だと〜!?オレから『かっとビング』を取ったら…何が残るんだ!!かっと、ビングだ!オレぇぇぇ─!!!!」ドドドド!!!

 

「ち、ちょっと遊馬─!?」

鉄男の言葉で奮起した遊馬は2人を置き去りにして石段を駆け上がった…。

 

 

 

「つ、着いたぁ〜…!!」

かっとビングパワーで石段を登りきった遊馬だったが…

 

シュバ!

 

「うわ!?なんだ─!?」

遊馬…正確には遊馬の背負ってきた食料に黒い影が飛びかかる!

 

『モグモグ…いやぁ〜助かった!!もう少しで餓死するところだったわい!ありがとの、春さんの孫よ!』

 

「へぇ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『儂は六十郎、この決闘庵(デュエルあん)の主じゃ!』

 

「「「決闘庵…?」」」

 

小鳥の作った夕食を食べながら遊馬達は小柄な老人…六十郎の話を聞く…この場所は数々の名決闘者を輩出した「デュエルの修行場」であり、六十郎は遊馬の祖母と旧知の仲なのだそうだ。

 

 

『この辺りは交通の便が悪いから夜はバスも無い…今日は泊まっていくといいぞ…あっ、掃除は自分達で頼むぞい!』

 

「「「え〜!?」」」

 

 

 

そんなこんなで決闘庵に泊まる事になった遊馬達…Dゲイザーで家族に連絡を取り、今は寝る部屋の掃除中である…。

 

 

「なんでこんな場所に泊まる事に…」

 

「遊馬ー…」

 

「マジでごめん…」

決闘庵は辛うじて水道はあるものの、電気は通っていない…3人はロウソクの明かりで掃除している…。

 

 

「…あの扉は…?」

掃除の最中、遊馬はある扉を見つける…その扉を開くと…

 

「こ、これは─!?伝説の、モンスター達─!?」

 

「えっ…うわぁ…!」

 

「す、すげぇ…!!」

扉の先…そこにはたくさんの木像が並んでいた、それもただの木像ではない…「ブラック・マジシャン」、「青眼の白龍」、「サイバー・ドラゴン」…デュエルモンスターズで伝説と謳われるモンスター達が精緻に再現されていたのだ…!

 

『見つけたか…この木像は儂が彫ったものじゃ、弟子が一人前になって旅立つごとにのう…』

部屋に現れた六十郎は語る…この木像1体1体が巣立った弟子達を想って作り上げたものなのだと…。

 

 

「すごい…今にも動きそう…!!」

 

『動くぞ?』

 

「「「えっ…!?」」」

小鳥の呟きを聞いた六十郎の言葉に遊馬達は首を傾げる…。

 

『この木像はデュエルで動くんじゃ!…少しやってみるか?』

 

「や、やる─!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対六十郎

 

 

 

 

 

 

遊馬LP4000

スタチュー・ブラック・マジシャン スタチュー・ブラック・マジシャン・ガール 手札0

 

 

六十郎LP4000

青眼の木龍(ブルーアイズ・スタチュー・ドラゴン) 真紅眼の木竜(レッドアイズ・スタチュー・ドラゴン) 手札4

 

 

 

 

 

 

なりゆきで始まった六十郎と遊馬のデュエル…フィールドには伝説のモンスターの木像が並んでいる…。

 

 

『デッキは決闘庵特製の木製デッキ、伝説のモンスター達も今は攻撃力0で封印されておる…動くとも言えるし…動かぬとも言える、全ては()()()()()()

 

(遊馬次第…?なるほど、デュエルにおいて全てはプレイヤーの戦術次第か…)

六十郎の言葉にアストラルが反応する…プレイヤーが指示を出さなければモンスターは動けない…ならば…。

 

(遊馬、フィールドのモンスターには効果がある…全ての「鍵」となるカードがデッキに眠っているはずだ!)

 

「デッキに……そうか!オレのターン!ドロー!!」

遊馬はカードをドローする!

 

「これだ!!フィールド魔法『B2ゾーン』!!」

遊馬がドローしたカードを発動する、そのカードはフィールドの「スタチュー」モンスターの効果を無効にする効果を持っている…その効果により木像に封じられしモンスター達が動き出す!!

 

 

《ギュアアアン!!》

 

《ガアァァ!!》

 

《ハアッ!!》

 

《ヤッ!》

 

「すげぇ…これが伝説のモンスター達…!!」

咆哮を轟かせる2体のドラゴン達、そして力を開放した伝説の魔術師弟…その姿に遊馬達は目を奪われる!

 

「バトルだ!『ブラックマジシャン』で『レッドアイズ』を攻撃─!!」

ブラックマジシャンの一撃がレッドアイズを粉砕する!

 

「よっしゃー!!」

 

『なかなかやりよるわい…しかし、本当の()()はこれからじゃ…!!』

 

「えっ…!?」

 

その言葉を聞いた瞬間、遊馬の意識は暗転した…。

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

「(あ、あれ?オレ…どうなったんだ!?)」

意識が戻り辺りを見回す遊馬…そして違和感を感じる、見える景色が高い…目の前にブルーアイズがいる、そして身体が…()()()()()()()()()()()()()()()─!

 

「オレが…『ブラックマジシャン』になってるぅぅ─!?」

慌てた遊馬(ブラマジ)は後ろを振り向く…そこには木像と化した自分の体、そして狼狽するアストラルの姿があった。

 

(これは…どういう事だ…!?)

 

『ホッホッホッ…決闘黎明期、伝説の決闘者達はモンスターと共に戦い、共に傷付いたという…その思いを感じるといい!儂のターン!「融合」を発動!いでよ!「|青眼の究極木竜《ブルーアイズ・アルティメット・スタチュー・ドラゴン》」─!!』

《ギュオアアアアアン!!!》

 

遊馬の前に伝説の巨龍…アルティメットドラゴンが現れる!

 

 

『バトルじゃ!「アルティメットドラゴン」で「マジシャンガール」を攻撃!アルティメット・バースト!!』

《きゃあああ─!?》

 

「ブラマジガール─!?」

究極の一撃がマジシャンガールを吹き飛ばす!

 

『さらに儂は「融合解除」を発動!現われよ!3体の「青眼の木龍」─!』

さらに融合解除が発動され、3体のブルーアイズが遊馬をにらみつける!!

 

「やめろ…やめてくれぇぇ…!!」

 

『強い者を目にした時、誰もが恐れおののく…それは当然の事!モンスターも同じじゃ!モンスターも常にこの恐怖に晒されていると知れぃ!!3体の「ブルーアイズ」で「ブラックマジシャン」…遊馬を攻撃!!滅びのバースト・ストリーム!!』

 

「う、うわぁぁぁ!!!」

 

遊馬はなす術なく破壊の極光に飲み込まれた…。

 

 

 

 

遊馬LP0

 

六十郎WIN!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「遊馬!!」」

デュエルが終わり、攻撃に吹き飛ばされた遊馬に小鳥と鉄男が駆け寄る…。

 

 

『少し驚かしすぎたかの…遊馬よ、いまお主は「モンスターの恐怖」を知った…それはモンスターの「想い」を知ったという事じゃ』

 

「モンスターの、想い…」

六十郎の言葉を遊馬は繰り返す…。

 

『そうじゃ、モンスターの想いを知り、それに応えようとする…その気持ちがモンスターを動かすのじゃ…』

 

「…『デュエリストはモンスターと共に成長する』…白野さんも言ってたなぁ…こういう事だったのか…」

六十郎の言葉に遊馬は呟く…それは幼い頃に遊海から聞かされた言葉だった…。

 

(モンスターも恐怖を感じ、それを乗り越えようとしている…か…)

アストラルも何かを掴みかけているようだ…。

 

 

「ふむ…寝る前に少し昔話をしようかの、ついてきなさい」

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…」

 

「かっこいいドラゴンの木像…?」

遊馬達は決闘庵の最奥…8体のドラゴンの木像のある部屋に案内される…。

 

「見た事のないモンスターだ…」

 

『このドラゴン達はこの庵の守り神…儂が最初に彫った木像じゃ、このドラゴン達は世界に1枚しかない特別なモンスター…シグナーの竜と呼ばれておる』

 

「シグナーの竜…」

遊馬は他のものより大きな木像を見上げる…先程見たモンスター達もまさに魂が宿っているような木像だったが…この木像は本当に生きているような感じがした…。

 

『全てを焼き尽くす紅蓮の竜「レッド・デーモンズ・ドラゴン」

仲間を嵐から守る風の竜「スターダスト・ドラゴン」

痛みを背負い力に抗う黒き竜「ブラック・フェザー・ドラゴン」

花びらを散らす薔薇の竜「ブラック・ローズ・ドラゴン」

優しき光を纏う妖精の竜「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」

生命の輝きを守護する竜「ライフ・ストリーム・ドラゴン」…このドラゴン達は半世紀前に活躍した「チーム5D's」というデュエルチームのエースモンスター達じゃ』

 

 

「授業で聞いた事があるわ…!未来人が街1つを破壊しようとした『アーククレイドル事件』!それを解決したのが伝説の決闘者…不動遊星さんとチーム5D's!」

小鳥が声を上げる…時が経ち、アーククレイドル事件も学校の教科書に載るような歴史の一部となっていた…。

 

 

『よく知っておるのぉ…その通り、彼らはデュエルで街を…世界を救った英雄達じゃ、この決闘庵を建てる時…儂の弟子達も「世界を救うような決闘者」になってほしいと祈りを込めて彫りこんだのじゃ…』

 

「すげぇなぁ…デュエルで世界を救うなんて…想像つかないぜ」

鉄男はあまりにスケールの大きな話に感動している…。

 

 

 

(遊馬、奥の木像を見ろ…何か変ではないか…?)

 

「あれ…?『スターダストドラゴン』と『レッドデーモンズドラゴン』の木像がもう1体ずつある…?」

遊馬は木像を見て首を傾げる…手前からスターダスト、レッドデーモン、ブラックフェザー、ブラックローズ、エンシェントフェアリー、ライフストリームと並び…部屋の一番奥にもう2体のスターダストとレッドデーモンの木像があったのだ。

 

 

『違うぞ遊馬、そのモンスターは英雄を守護する光の竜「閃珖竜スターダスト」、そしてあらゆる敵を薙ぎ払う悪魔の竜「琰魔竜レッド・デーモン」…デュエルモンスターズを守護した「最強の決闘者」のエースモンスターじゃ…』

 

「『最強の決闘者』…?」

遊馬達は六十郎に釘付けになる…。

 

 

『曰く、初代決闘王と共に古の邪神を倒した男

曰く、邪悪なる幻魔を調伏し数多の決闘者を育てた者

曰く、その身に深い傷を負いながらチーム5D'sを導き、絶望の神を滅した英雄

曰く、カードの精霊を友とし、どんな窮地でも諦めなかった最強の決闘者…

名を白波遊海、世界を懸けた戦いには彼がいた…人呼んで「決闘の観測者」…儂があの「決闘王」と同じぐらい憧れたデュエリストじゃ…』

 

(最強の決闘者…そして観測者、か…すごい話だ…)

 

「じっちゃん!その人は今どうしてるんだ?」

 

『う〜む、40年前にプロデュエリストを引退して…それ以降はわからんのう…齢も生きていれば100を超えておる…だが、あのエキシビジョンデュエルは…忘れられんの〜…』

六十郎は少年のような目で当時の事を語った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、遊馬の姿は木像が安置された部屋にあった、六十郎とのデュエルを通してモンスターの気持ちを知り、少しでも恩を返したいと木像を磨いていたのだ…。

 

 

「遊馬ー、いつまでここにいるんだ〜?」

 

「帰りたきゃ帰れよ鉄男…オレはもう少しここにいる…!」

 

「ふふ…私、朝ごはん作ってくるね!」

一生懸命に木像を磨く遊馬…その様子を見た小鳥はワライながら朝ごはんを作りに行った…。

 

 

「あれ…なんだこれ!!誰だよこんな傷付いた付けたの…!酷いことするな〜!?」

しばらくサイコ・ショッカーやネオスの木像を磨いていた遊馬は声を上げる…忍者のようなモンスターの木像…その木像にはまるで刃物で真っ二つに切られたような傷があり、それを補修した跡があったのだ。

 

 

「じっちゃんがせっかく彫ったのに…誰がこんな事…」

木像の傷を撫でる遊馬…その時だった…!

 

ガラガラ!

 

『フン…師匠め、木像ばっかり増やしやがって…』

 

「っ…!?誰だよアンタ!?」

木像の部屋に目つきの鋭い忍者服を着た男が乱暴に入ってくる…!

 

『ぐっ…!逃げるのじゃ、子供達…!!』

 

「じっちゃん!?」

男に続いて傷だらけの六十郎がやってくる…

 

『その男は闇川…儂のかつての弟子じゃ…!』

 

決闘庵のかつての修行生・闇川…力を求めるあまりに闇に魅入られて六十郎と仲違いした過去があった…。

 

 

『俺はアンタを倒した、決闘庵秘伝のデッキ…大人しく渡して貰おう!』

 

『愚か者め…!闇に心を魅入られたお前に、渡すデッキはない…!!』

 

『ならば…ここの木像を全てたたっ斬る!!』

 

「やめろぉ!!」

背中に差していた刀を抜いた闇川の前に遊馬が立ち塞がる!

 

 

『貴様…!邪魔をするな!』

 

「邪魔するさ…俺は…じいちゃんの弟子だ─!!」

 

『あの老いぼれの弟子だと?笑わせる…貴様も闇に飲み込んでやろう…!!』

闇川はデュエルディスクを構える…!

 

(遊馬、私も共に戦おう…あの老人には私も大事な事を教わった…ならば、私も弟子だ!)

 

「おう!じいちゃんと決闘庵を守るんだ!!」

遊馬とアストラルの心が1つになる…師匠を守る為の戦いが始まる!!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対闇川

 

 

遊馬はデュエルをするに当たり、1つのルールを自分に課した…それは「仲間」であるモンスターを守る事…六十郎の教えを胸に遊馬はデュエルを進める…。

 

 

 

闇川は機甲忍者使い…2回攻撃の効果を持つ「機甲忍者ブレード・ハート」や機甲忍法を使い遊馬を攻め立てる、対して遊馬は例え自分のライフが削れようと徹底して仲間であるモンスターを守り続ける…!

 

 

 

「ほう…遊馬がこんなデュエルをするのかい…六さん、アンタの教えかい?」

 

「遊馬!?やっぱりデュエルしてる!!」

遊馬と闇川が激闘を繰り広げる中…姉である明里と春が決闘庵を訪れる、明里は遊馬がデュエルする事に反対している…すぐにデュエルをやめさせようとするが…

 

『待つのじゃ、あの子はいま、必死にこれまでの自分を越えようとしておる…信じてやれぃ、それがお前さんの役目じゃ…!』

 

「遊馬…!!」

明里は六十郎の言葉で止められる…姉は弟を見守るしかなかった…。

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!…キター!!魔法カード『ガガガボルト』発動!!フィールドに『ガガガ』モンスターがいる時!フィールドのカードを1枚破壊する!!『ブレードハート』を破壊だー!!」

 

『な、なにぃ─!?』

ついに転機はやってくる…ライフ残り300まで追い詰められた遊馬がついに『ブレードハート』を撃破する、それは遊馬がモンスターを信じ、モンスター達が遊馬に応えた結果だった…だが、デュエルはさらなる展開をみせる…!!

 

 

『おのれ…!ならば俺の真の力…真の闇をみせてやる!現れろ「No.12機甲忍者クリムゾン・シャドー」!!』

 

(「ナンバーズ!?」)

 

闇川は真の力…「No.」を開放する…!闇川は「No.」に取り憑かれていたのだ…!!

 

 

 

 

『くくく…!仲間を信じる力とやらもここまでだ!!次のターンで決着だ!!』

 

「くっ…!!」

「No.」を前に遊馬はカイトとの戦いを思い出し、身体が震え始める…しかし、遊馬はもう…一人ではない!!

 

(遊馬、老人の言葉を思い出せ…!モンスターと同じ想いになった時の言葉を!!)

 

「モンスターの想いを知り…それに応えようとする、その気持ちがモンスターを動かす…!そうだよな!!何が『No.』だ!!オレは仲間達と共に…このピンチを乗り越えてみせる!!」

その瞬間、遊馬は見た…木像に宿る精霊達が遊馬に向かって頷く姿を…そして…!

 

「遊馬ー!受け取って─!!」

 

「小鳥─!デュエル飯!?」

遊馬に向かって握り飯が投げられる…遊馬のピンチに春がデュエル飯を届ける事をアドバイスしたのだ…!

 

「充電完了─!!かっとビングだー!!魔法カード『減量』を発動!『ドドドウォリアー』をレベル4にする!」

デュエル飯を頬張った遊馬はついに恐怖を乗り越える!!

 

 

「エクシーズ召喚!!現れろ!『No.39希望皇ホープ』!!いっけぇ─!ホープ剣スラッシュ!」

 

『無駄だ!「クリムゾンシャドー」はORUを取り除いて戦闘破壊を無効にできる!!』

 

「速攻魔法『リベンジ・アタック』!相手モンスターを戦闘破壊できなかった時!攻撃力を1000アップしてもう一度攻撃できる!!闇を…斬り裂け─!!」

 

「ぐっ…!ぐあぁぁぁ!!?」

 

光の戦士の一撃が深い闇を切り裂いた…。

 

 

闇川LP0

 

遊馬WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュエルは遊馬の勝利で決着した、闇川も遊馬の言葉で我に返り再び決闘庵で修行を積む事になった…。

 

 

「まったく…本当にデュエルをやってたなんて…でも、アンタの思いはわかったわ!あんまりやりすぎないようにね?」

 

「や、やった!姉ちゃんからデュエルの許可が出たー!!」

明里も今回のデュエルを通して遊馬の思いを知り、ついにデュエルを解禁した…これで遊馬を縛るものは無くなったのだ。

 

『遊馬、これを渡しておこう…我が決闘庵の秘伝デッキじゃ!お主なら必ず使いこなせるじゃろう!』

 

「やった!ありがとうじっちゃん!!」

遊馬は六十郎から秘伝デッキを手渡される…しかし…

 

 

「…じっちゃん、オレ…明日までここに居ていいかな?」

 

『ん?かまわんが…どうしてじゃ?』

 

「遊馬?どうしたの?」

遊馬の思わぬ言葉に小鳥が問いかける…

 

「いや…まだ木像磨きが途中だったからさ!シグナーのドラゴンも磨きたいし…先に帰っててくれよ」

 

「ううん、私も残るよ!」

 

「う〜ん…俺も付き合ってやるよ!」

 

「2人とも!?」

今度は小鳥と鉄男の言葉に遊馬が驚く…

 

「ほっほっほっ…念の為にみんなの着替えと宿題を預かってきて良かったよ、明日は日曜日だからゆっくり帰っておいで!」

そう言って春は小鳥と鉄男の親から預かった荷物を手渡す。

 

「ありがとうばあちゃん!姉ちゃん!」

 

「まったく…しっかり勉強はしなさいよ!」

 

見送りを受けて明里達は家に帰っていった…。

 

 

「よ〜し!さっそく掃除するぞ〜!」

 

「遊馬!まずは宿題よー!」

 

「えぇ〜!?」

 

遊馬達は喋りながら決闘庵に戻っていく…。

 

 

 

 

『闇川よ、遊馬はきっと良い決闘者になる…そう思わんか?』

 

『はい!「決闘王」のような立派な決闘者になる…俺もそう思います!』

 

師匠と弟子は笑いながら頷きあった…。



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決闘庵での出会い〜戦いの記憶〜

こんにちは!S,Kです!

こんなに連続投稿したのは初めてではなかろうか…?
この後に来るであろうスランプが怖い…!


それでは最新話をどうぞ!


『いけ!「ブラックマジシャン」!黒・魔・導(ブラック・マジック)!』

 

 

『「青眼の白龍」の攻撃!!滅びのバースト・ストリィィム!!』

 

 

「真紅眼の黒竜」!ダーク・メガフレア!!』

 

 

 

─なんだろう、この人達は…顔は見えない、でも解る…これは戦いの記憶…─

 

 

 

『いっけぇ!「E・HEROネオス」!ラス・オブ・ネオス!!』

 

 

『「サイバー・ドラゴン」でダイレクトアタック!エヴォリューション・バースト!!』

 

 

『「究極宝玉神レインボー・ドラゴン」で攻撃!オーバー・ザ・レインボー!!』

 

 

 

─伝説の決闘者達がモンスターと共に戦い抜いた…人生の…─

 

 

 

『絶望はしない!!「ライフ・ストリーム・ドラゴン」で攻撃!ライフ・イズ・ビューティー・ホール!』

 

 

『わたし達の痛みを力に変えて…「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」で攻撃!エターナル・サンシャイン!』

 

 

『「ブラック・ローズ・ドラゴン」!ブラック・ローズ・フレア!!』

 

 

『「ブラック・フェザー・ドラゴン」で攻撃!ノーブル・ストリーム!!』

 

 

『我が一撃を喰らえ!「レッド・デーモンズ・ドラゴン」!アブソリュート・パワー・フォース!!』

 

 

『オレ達の未来を受け取れ!オレ達の思いが…未来へと続く光さす道となる!!「スターダスト・ドラゴン」!シューティング・ソニック─!!』

 

 

 

─モンスターとの記憶…─

 

 

 

 

『「閃光竜スターダスト」でダイレクトアタック!!流星閃撃(シューティング・ブラスト)!!』

 

 

『闇を切り裂け!「炎魔竜レッド・デーモン」!極獄の絶対独断(アブソリュート・ヘル・ドグマ)!!』

 

 

 

《少年よ、我らは常に決闘者と共にあった…決闘者は自分達の誇り、そして仲間達の為に剣を取る…次は─少年の番だ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フガッ…!?……夢…?」

 

 

 

 

 

『おはよう遊馬、精が出るの!』

 

「おはようじっちゃん!『レインボードラゴン』の木像を拭いたらあとはシグナーの竜だけだぜ!」

 

翌朝、遊馬は朝から木像磨きを頑張っていた…なお、鉄男は闇川と外回りの掃除を、小鳥は朝ごはんを作っている。

 

 

「そうだじっちゃん、オレ…昨日変な夢を見たんだ」

 

『変な夢?』

 

「ああ、顔が見えない決闘者達が木像のモンスター達と一緒に戦う夢だった…相手は大きな蛇だったり、骸骨みたいなモンスターだったり…巨人みたいなモンスターだったり…自分より強そうな相手と戦う夢だった…」

 

『ふむ…もしかしたらカードに宿る精霊達が遊馬の想いに応えたのかもしれんのぉ』

 

「カードの精霊…?」

遊馬にとって聞き慣れない言葉に遊馬は首を傾げる

 

 

『曰く、決闘者の想いが籠もったカードには精霊が宿るという、それとは逆に実はカードの精霊達が暮らす異世界があり…デザイナー達はその想いを感じ取ってイラストをデザインしている…という説もある、おそらく昨日のデュエルを見た精霊達がお主に戦いの記憶を見せたのかもしれんのぉ…』

 

「精霊達の世界…戦いの記憶かー!なんだかすごい体験をした気がするぜ!」

 

「遊馬ー!六十郎おじいさん!朝ごはんできたよー!」

 

『おっ!ありがとう小鳥ちゃん!』

 

「今いくぜ!」

 

小鳥の声に2人は話を中断…朝ごはんを食べに向かった…。

 

 

 

 

 

 

「「「お世話になりました!」」」

 

『うむ、またいつでも来るといい!WDCでの活躍を期待しておるよ!』

 

昼過ぎ…全ての木像を磨き上げた遊馬達は決闘庵をあとにしようとしていた…なお、遊馬が一人で木像を磨き、小鳥と鉄男は他の場所を綺麗にしていた。

 

 

「うへぇ…またこの石段か…」

 

「情けないな鉄男!降りる方が楽だろ!」

 

「ふふふ…あれ?誰か上がってくるよ?」

 

 

『ふぅ…ふぅ…』

 

石段を下りていく遊馬達、そこに下から日傘を差した女性が大きな袋を持ちながら上がってくる…。

 

 

「なんだか大変そうだな…オレ手伝ってくる!」

 

「遊馬!転ばないでよ〜!?」

遊馬はその様子を見て放っておけず助けに向かった…。

 

 

 

「大丈夫か?決闘庵に用があるなら荷物持ってくぜ?」

 

『あら…六さんの新しいお弟子さんかしら?いいの?』

遊馬が声を掛けたのは白髪混じりの緑色の髪の老婦人だった、年齢は春より少し下ぐらいだろうか…しかし年齢よりも若く見える女性だった。

 

「問題ないぜ!体力はあり余ってるからな!」

 

『ふふふ…じゃあお願いしようかしら!』

 

 

 

 

 

 

「じっちゃ〜ん!お客さんが来たぞ〜!」

 

『はて…?客人とな?』

決闘庵に逆戻りした遊馬は六十郎に呼びかける。

 

『こんにちは!六さん!パンを持ってきたの、よかったら食べてくれる?』

 

『おぉ!るーちゃんか!いつも悪いのぅ!』

 

「じっちゃんの知り合いなのか?」

親しげに話す婦人と六十郎に遊馬が問い掛ける

 

『うむ、儂の茶飲み友達での…るーちゃん、こやつは九十九遊馬…決闘庵期待の新人じゃ!』

 

『そうなんだ!貴方の名前は?()()()()()()?』

 

「「「へっ!?」」」

 

(なに…?私が見えているのか!?)

老婦人の言葉に遊馬達は騒然となる…婦人は確かに遊馬の背後にいるアストラルを見て話しているのだ…!

 

『なんじゃ遊馬、お主も精霊持ちじゃったのか』

 

「あ、ああ…デュエリストの幽霊?みたいな…オレにしか見えない奴が一緒にいるぜ…?」

 

(…私はアストラル…私が見えているのか?)

 

『アストラルっていうのね!もちろん視えているわ!私は精霊が見えるの!ね?クリボン!』

《クリリ〜ン!》

 

「うわ!?モンスターが出た!!」

 

「「?」」

遊馬の目の前にリボンを付けた毛玉のモンスターが現れる…小鳥達には見えていないようだ。

 

 

『るーちゃんもデュエリストでな、儂にも見えんが精霊達と言葉を交わす事ができるんじゃよ…そうじゃ!遊馬、るーちゃんに手合わせしてもらいなさい、きっといい経験になるぞ?』

 

『あら、面白そうね!どうかしら遊馬君、アストラル?』

 

(遊馬、これは老人から託されたデッキを試す良い機会になる…受けてはどうだ?)

 

「そうだな!じいちゃんのデッキで強くなったオレのデッキの試運転だ!!」

 

 

 

 

 

「『デュエルディスク!セット!Dゲイザーセット!』」

決闘庵の道場で遊馬と老婦人は対峙する!

 

 

 

【ARビジョン…リンク完了!】

 

 

「よろしくお願いします!!」

 

『ふふっ、よろしくね!』

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

老婦人LP4000

遊馬LP4000

 

 

 

 

 

 

『私のターン、ドロー!』

『「ジェリー・ビーンズマン」を召喚!』

豆の顔を持つ小さい戦士が現れる ATK1750

 

 

『カードを1枚伏せてターンエンド!』

 

老婦人LP4000

ジェリービーンズマン 伏せ2 手札4

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

 

(遊馬、ここは慎重にいくぞ)

 

「おう!『ゴゴゴゴーレム』を召喚!」

青い大きなゴーレムが現れる A1800

 

「バトルだ!『ゴゴゴゴーレム』で『ジェリービーンズマン』を攻撃!」

 

『わっ!そっか、アストラルが遊馬君にアドバイスしながら戦うのね!』

ゴーレムがデコピンで豆戦士を吹き飛ばす!

 

老婦人LP4000→3950

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

遊馬LP4000

ゴゴゴゴーレム 伏せ2 手札3

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「アーマード・ホワイトベア」を召喚!』

鎧を纏ったシロクマが現れる ATK1800

 

『そして装備魔法「一角獣のホーン」を装備!攻撃力を800アップ!』

シロクマの額に白い角が生える ATK1800→2600

 

『バトルよ!「アーマードホワイトベア」で「ゴゴゴゴーレム」を攻撃!』

 

『リバース罠「攻撃の無敵化」を発動!「ゴゴゴゴーレム」を戦闘破壊から守る!』

ゴゴゴゴーレムをバリアが包み込む!

 

遊馬LP4000→3200

 

 

『六さん直伝のモンスターを守るデュエルね!流石だわ!私はフィールド魔法…「古の森」を発動してターンエンド!』

道場が清らかな森に覆われる…

 

老婦人LP3950

アーマードホワイトベア(一角獣のホーン) 古の森 伏せ1 手札2

 

 

 

「なんだろう…あのお婆ちゃんのデュエル…なんだか静かなデュエルですね」

遊馬と婦人のデュエルを見ていた小鳥が呟く…

 

『そうじゃのう、るーちゃんは戦いを好む性格ではない…けどな、幼い頃に大きな戦いに巻き込まれた事があるんじゃよ』

 

「大きな戦い…?戦争とかか?」

 

『いいや…もっと大変な戦いじゃよ、見てればわかるじゃろうて…』

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「よし!『ガンバラナイト』を召喚!」

両手に盾を構えた騎士が現れる ATK0

 

「オレはレベル4の『ゴゴゴゴーレム』と『ガンバラナイト』でオーバーレイ!」

2体のモンスターが銀河に飛び込む!

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現われろ!新たな仲間『交響魔人マエストローク』!」

巨大な指揮棒剣を持った魔人が現れる ATK1800

 

(遊馬、装備魔法だ)

 

「おう!手札から装備魔法『幸運の鉄斧』を装備!攻撃力を500アップ!」

光かがやく斧がマエストロークに装備される ATK1800→2300

 

「そして『マエストローク』の効果発動!ORUを1つ使い相手モンスターを裏守備表示に変更する!安眠のノクターン!」

マエストロークが指揮棒を振る…すると心地よい音楽が流れてアーマードホワイトベアは眠ってしまう… ATK2600→DEF1400

 

(そして装備モンスターが裏守備表示になった事で「一角獣のホーン」は破壊される!)

 

『「一角獣のホーン」が破壊された時に効果発動!このカードが破壊された時、このカードをデッキトップに戻すわ!』

 

「バトルだ!『マエストローク』で裏守備の『アーマードホワイトベア』を攻撃!」

マエストロークが眠っていたシロクマの鼻ちょうちんを割る…シロクマはそのまま驚いて消えてしまった…。

 

「よし!」

 

『まだよ?「アーマードホワイトベア」が破壊された時に効果発動!デッキから「レグルス」を特殊召喚!よろしくね!』

《わかった!》

額から角を生やした白き聖獣がデッキから飛び出す! ATK1700

 

「すげぇ…!モンスターが喋ってる…!!」

 

(精霊とは喋るものなのか…)

 

 

『まだ終わりじゃないわ!フィールド魔法「古の森」の効果を発動!この森で争う事は許されない…バトルフェイズが終わった時、攻撃したモンスターを破壊するわ!』

 

(そうはさせない!遊馬!)

 

「『マエストローク』のもう1つの効果発動!自分の『魔人』モンスターが破壊される時!ORUを取り除いて破壊を無効にできる!オレはこれでターンエンド!」

遊馬LP3200

マエストローク(鉄斧) 伏せ1 手札2

 

 

 

『やるじゃない遊馬君、私のお兄ちゃんの小さい頃より強いかも…!』

 

「ありがとう!えっと…」

 

『あ!自己紹介がまだだったわね、私は龍可!六さんからはるーちゃんって呼ばれてるの!』

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「共闘するランドスターの剣士」を召喚!』

不思議な力を宿した妖精剣士が現れる ATK500

 

『いくわ!私はレベル4の「レグルス」にレベル3の「ランドスターの剣士」をチューニング!』

ランドスターの剣士が緑の輪に変化してレグルスを包み込む!

 

4+3=7

 

『聖なる守護の光…今交わりて永久の命となる!シンクロ召喚!降誕せよ!「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」!』

聖なる輝きを纏い、たおやかな妖精竜が現れる!ATK2100

 

 

「シンクロ召喚!?それにそのドラゴン、木像の─!?」

 

(まさか、彼女は…!)

突然の木像のモデルとなったドラゴンの出現に遊馬とアストラルは驚きを隠せない…!

 

 

 

「おじいちゃん!?もしかして龍可さんって…!」

 

『その通り!るーちゃんはシグナーの竜の使い手にして、チーム5D'sのメンバー!紛れもない伝説の決闘者の1人なんじゃよ!』

 

『六さん!もう何十年も昔の話よ?そんなに自慢げに話さないで、ね?』

龍可は頬を染めながら六十郎に抗議する…

 

 

《龍可、久しぶりのデュエルはどうですか?》

 

『大丈夫よ、エンシェントフェアリー!少し力を貸してね!『エンシェントフェアリードラゴン』の効果発動!フィールド魔法を破壊して、自分のライフを1000回復するわ!プレイン・バック!』

 

《わかりました!はぁ!》

エンシェントフェアリーが力を開放する、すると森が静かに消え去り、癒やしの力が龍可を癒やす…!

 

龍可LP3950→4950

 

 

「これが伝説のシグナーの竜の力…!」

 

(彼女がこの世界での伝説のデュエリスト…!ならば今までの強さも納得できる…!)

アストラルは冷静に戦況を分析する…

 

『そして罠カード『妖精の風』を発動!フィールドの表側表示の魔法・罠を全て破壊してお互いに1枚につき300ダメージを与える!』

 

(しまった!)

フィールドに風が吹き荒れてマエストロークの斧が吹き飛ばされる!

 

マエストロークATK2300→1800

 

龍可LP4950→4750

 

遊馬LP3200→2900

 

 

 

「破壊された『幸運の鉄斧』の効果発動!1ドロー!」

 

『さらに私は「死者蘇生」を発動!もう一度お願い!「レグルス」!』

《はっ!》

再び獅子の聖獣が現れる ATK1700

 

 

「そして『レグルス』に装備魔法『団結の力』を装備!自分のモンスター1体につき攻撃力が800アップするわ!」

《我が力は龍可とエンシェントフェアリー様の為に!!》

 

レグルスATK1700→3300

 

 

「攻撃力3300!?」

 

『バトルよ!「レグルス」で「マエストローク」を攻撃!レグルス・インパクト!』

《活路を開く!はぁぁ!!》

 

力を増したレグルスがマエストロークに突進…粉砕する!

 

「うわっ…!?」

遊馬LP2900→1400

 

 

『「エンシェントフェアリードラゴン」で遊馬君にダイレクトアタック!エターナル・サンシャイン!!』

エンシェントフェアリーから優しく強い光が放たれる、その光は道場全てを包み込んだ…

 

 

遊馬LP0

 

龍可WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、強えぇ…これが伝説のデュエリストの力…!」

 

(「No.」を使えば勝てたが…デッキ調整の課題だな)

 

『「柔よく剛を制す」…それがるーちゃんの戦い方じゃ、お主達には良い勉強じゃろうて…おや?』

デュエルが終わり、尻もちをつく遊馬に六十郎が語り掛ける…そして気づく、ARビジョンが消えたにも関わらずエンシェントフェアリードラゴンが残っているのだ…。

 

 

《真っ直ぐな心を持つ少年、そして異邦の者よ…貴方達には必ず大きな困難が訪れます…しかし、諦めてはなりません…貴方達2人の心が重なりし時…きっと大きな奇跡が起きる事でしょう…頑張るのですよ?》

 

「エンシェントフェアリードラゴン…!おう!!どんな壁があったって乗り越えてみせるぜ!」

 

(助言に感謝する、貴女の言葉は忘れない)

 

《ふふ、それではさようなら…龍可、またあとで…》

2人の答えに満足したのか…エンシェントフェアリードラゴンはそのまま消えていった…。

 

「今の、私にも見えた…」

 

「俺もだ…すっげー…」

小鳥と鉄男はその様子を眺めているしかなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ…!これがチーム5D's…!」

 

『そう、この真ん中にいるのがリーダーの遊星…隣にいるのがジャック、それにクロウにアキさん…ブルーノに小さい頃の私と龍亞…そして遊海さん、あの頃が懐かしいわ…』

デュエルが終わり、龍可は5D'sの写真を見せながら昔の話を聞かせる…。

 

 

『…遊馬君はここに来る前に危険な決闘に巻き込まれたんだっけ』

 

「ああ…危うく負けてアストラルが死んじまうところだったんだ…」

 

(……) 

龍可は2人の顔色を見て察する…かつての自分達と同じ感じがすると…。

 

「私達もね、アーククレイドル事件の時に命を懸けた戦いに巻き込まれたわ…5D'sのみんながそれぞれに危険な相手と戦った…一番大変だったのは遊海さんだったわ…」

 

「白波遊海…世界最強の決闘者が…」

遊馬は写真に写る赤帽子の青年を見つめる…

 

『秘密結社イリアステル…その中には……()()()()()()()()がいたの、遊海さんは追い詰められて「死んでしまう」と思ったそうよ…でも、あの人は諦めなかった…私達を…街の皆を守る為にあの人はボロボロで立ち向かった…そして彼は勝ったの、何があっても…()()()()は決して心を折らなかった…!』

 

「龍可ばあちゃん…」

その話をする龍可は涙を浮かべていた…あの時の悲しみを思い出すように…。

 

『遊馬君、貴方は彼や遊星、そして初代決闘王の武藤遊戯さんと同じ「遊」の字を持っているわ!きっとその事には意味がある…!だから決して諦めてはだめよ…!』

 

「…ああ、オレは絶対に諦めねぇ!今度こそ…絶対にカイトを倒してみせる!」

遊馬は拳を握って約束する…その目にもうカイトへの恐れはなかった…。

 

 

 

 

 

「「「お世話になりました!!」」」

夕方になり遊馬達はようやく決闘庵を後にする…。

 

『私の話に付き合わせて遅くなっちゃったわね…麓まで送っていくわ!』

 

「送る…どうやって?」

 

『ふふっ…!レグルス!お願いね!』

《ああ、彼らをバス停まで送ればいいのだな?》

 

「「うわぁ!?」」

突然実体化したレグルスに小鳥達は驚く…

 

《背中に乗れ、少年達よ!》

 

「「「よ、よろしくお願いしまーす…」」」

遊馬達は恐る恐る背中に跨がる…

 

《しっかり掴まっていろ!ウオオォォ!!》ダッ…!!

 

「きゃああああ─!?」

 

「うおぉぉ─!?マジやべぇぇー!?」

遊馬達は悲鳴を上げながら山を降りていった…。

 

 

『六さん、ドラゴン達の像を見せてくれる?』

 

『ああ、しかし時間は大丈夫か?あの子達のバスが最後のバスじゃよ?』

 

『大丈夫!()()()()()から問題ないわ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

Side決闘庵

 

 

遊馬達を見送った六十郎と龍可はシグナーの竜達の部屋に向かっていた…。

 

 

『ん…?扉が開いておる…闇川か?』

 

『…この、気配は……!』

2人が竜の部屋に着くと扉が少し開いている…2人は慎重に扉を開く…

 

 

『っ…!何者じゃ!!』

 

「…おっと、すまない…ついドラゴン達の像に見惚れてしまった」

六十郎は警戒態勢を取る…蝋燭に照らされた部屋の中心、そこに見覚えのない青年が立っていたからだ…。

 

 

「よくできた木像だ、あの時の事が昨日の事のように蘇るよ……ん?そこにいるのは…龍可か?」

 

『ああ…!!』

 

『るーちゃん!?ちょっと待て!そやつは!』

龍可が青年に走り寄る…そして…

 

 

 

 

『遊海さん─!!』

 

「おっとっと…!やっぱりそうか!久しぶりだなぁ!こうして会うのはもう10年振りくらいか?」

 

『え』

 

龍可は青年に抱きつく、まるで童心に返ったように…青年もそんな彼女の頭を優しく撫でている…。

 

『もう!本当に遊海さんは忙しすぎ!手紙もなかなかくれないし!!』

 

「悪い悪い、色々ドタバタしててなぁ、ほら…六十郎さんが目を丸くしてるぞ?前のお淑やかさはどうした?」

 

『アンタ…いや、貴方は…まさか…!!』

 

「感謝する、決闘庵の主・三沢六十郎…貴方のおかげで遊馬は立ち直る事ができた…あとはあいつら次第だ」

龍可を離した青年は服装を変える…黒いジャケットから赤帽子・赤ジャケットの姿へ…

 

『そうか、貴方が遊馬の「先生」か…手合わせをお願いしても?』

 

「ああ、貴方が好きそうなデッキで相手をしましょう…それが返礼になるのであれば!」

 

『願ってもない…貴方との決闘…それが儂の夢だった!』

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄昏時の決闘庵を凄まじい闘気が埋め尽くした…。



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恐怖を超えた先に〜友情覚醒〜

こんにちは!S,Kです!

今回は遊馬とアストラルの覚醒回!
2人の心が重なった時、希望の皇帝は進化を遂げる!

それでは最新話をどうぞ!


「フォウ君ー?フォウく〜ん?」

 

「ん?どうしたんだ翠?」

 

 

決闘庵の件から数日が過ぎた、遊馬は無事にかっとビングと自信を取り戻したようだが…アストラルは未だに自信が戻ってはいないようだ、遊馬と共に移動する時にずっと「考える人」の姿勢で移動しているのはなかなかシュールである。

 

 

「遊海さん、フォウ君見ませんでしたか?さっきから姿が見えなくて…」

 

「ん?見てないな…みんなはどうだ?」

 

《私達は見てないよ?》

 

《ワシも見ておらん、いつもならワシの隣で日向ぼっこしておるが…》

 

《フォウならさっき見ましたよ!野良ネコと何か話して一緒に行っちゃいましたけど…》

 

「えぇ!?なんで止めてくれないの!」

フレアの言葉に遊海は驚いて声をあげる…。

 

《ネコとは帰巣本能が強い動物ですし、フォウは賢い子だから大丈夫かと…》

 

「…はぁ…確かに賢い子には違いないけど、ちょっと探してくる!アヤカ、トフェニ!頼むよ!」

 

《御意!》

 

《了解!とりあえずネコの反応を……ハートランドって意外にネコが多いですね…》

 

「足で探すしかないか…翠、フォウが戻ってきたら連絡をくれるか?」

 

「はい!気をつけて!」

遊海はフォウを探しに街へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ〜し!!カイト!何処からでもかかってきやがれ!新しくなったデッキで絶対に勝〜つ!!」

 

(……)

同じ頃、遊馬はアストラルと共に学校に向かっていた、新しいカードを手に入れた事でカイトへのリベンジに燃える遊馬に対してアストラルは未だに浮かない表情をしていた…。

 

(…私は遊馬のように楽観的な考えはまだできない…それほどまでにカイトは恐ろしい相手だった)

 

「アストラル…」

アストラルはカイトへの恐怖を拭えていない、純粋なタクティクス…そしてデュエルに対する鬼気迫る力の入れ方…記憶も力も戻りきっていないアストラルにとってあのデュエルはまさに「悪夢」とも言えるものだった。

 

 

「遊馬〜!」

 

「お!おっす小鳥!鉄男に委員長も!」

登校中の遊馬のもとに小鳥と鉄男、そして等々力が現れる

 

「遊馬君、ズバリこの記事を見てもらえますか?」

 

「ん?…『デュエリスト連続襲撃事件』…!?」

等々力がDゲイザーで1つのネット記事を遊馬に見せてくる…そこには最近になってデュエリストが襲われる事件が多発…その被害者は廃人に近い状態になってしまっている事、そして被害者は『No.』を所持していたという事が書かれていた…。

 

「遊馬君も『No.』を持っています…トドのつまり、この記事のように危険な目に遭うのではと心配なのですよ!」

 

「へ、へぇ…そそそんな事があったなんて本当に知らなかったぜ…(汗)」

 

(…遊馬、棒読みになっているぞ)

心当たりがありすぎる遊馬は等々力にシラを切る…なお、遊馬は他人に嘘をつくのが苦手な性格である。

 

「遊馬、嘘をつかないで!『No.』って…本当は危険なカードなんじゃないの!?」

 

「わ、悪いみんな!オレ、トイレに行きたくなったから先に行ってる─!!」ピュ-‼

 

「「「遊馬!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

(遊馬、なぜ小鳥達に本当の事を言わない?)

 

「だってよぉ、カイトはあぶねえ奴だし…あいつらを巻き込みたくないんだよ…」

 

小鳥達から逃げるように学校に来た遊馬は屋上でアストラルと語り合う…他人の魂ごとナンバーズを奪う事ができるカイト…その戦いに何も知らない小鳥達を巻き込みたくなかったのだ。

 

 

「カイトの奴、またナンバーズを無理矢理集めてるみたいだし…やっぱりオレ達が直接行ってナンバーズを奪い返すべきじゃねぇか?」

 

(…そんな浅はかな考えで勝てるほどカイトは甘い相手ではない…)

 

「アストラル、お前…まだカイトが怖いのか?ナンバーズを集めなきゃお前の記憶は戻らないんだろ?」

 

(負ければどうなる…!私は消滅し、君は魂を奪われてしまうのだぞ!)

 

「アストラル、お前なぁ…」

 

『ねぇ遊馬!さっきから誰と話してるの?』

 

「うわぁ!?キャットちゃん!?」

屋上のさらに上…貯水槽の影から灰色の髪の猫耳少女が顔を出す…その少女はキャッシー…遊馬のクラスメイトであり遊馬に想いを寄せる恋する乙女である(猫耳は髪型である)

 

『覚えててくれたのね!ところでカイトって…?』

 

「じ、授業が始まるぞぞ〜!?急げー!」ピュ-‼

 

『あ、ちょっと〜!?』

…遊馬は嘘をつくのが苦手である(2度目)

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ小鳥、委員長!いい事思いついたぜ!題して『ナンバーズクラブ』!遊馬が話さないつもりなら、俺達が自力でナンバーズについて調べるんだ!」

 

「鉄男君!トドのつまりいい考えです!僕も納得がいかない事があるのは気に食わないので協力しますよ!」

 

放課後…さっさと帰ってしまった遊馬に痺れを切らした友人達は自分達で謎に包まれた「No.」について調べる為にナンバーズクラブを発足させるという話になる…それが自ら危険に足を突っ込むと知りながら…

 

「私も…遊馬の助けになりたい!」

鉄男達の考えに賛同する…あの雨の日、深く傷付いてしまった遊馬を見ているしかできなかった事で、少しでも遊馬の助けになりたいと思ったからだった。

 

「なら…オイラも協力してやるウラ〜!」

 

「「徳之助!?」」

話しかけてきたのは表裏徳之助…一度遊馬から「No.」を奪った事もある悪賢い少年である…だが、一応は改心し遊馬の友人となった。

 

 

「話は聞かせてもらったわ…私も仲間に入れてくれる?」

 

「キャッシー!」

木の上からキャッシーが飛び降りてくる…話を全部聞いていたようだ…。

 

「さっき遊馬が屋上で誰かと話していたの…『ナンバーズ』とか『カイトに勝つ』とか…」

 

「それってきっと『デュエリスト襲撃事件』の手がかりですよ!」

 

「他にも手がかりを探しましょう…!ナンバーズクラブの初仕事よ!」

 

「「「「おーっ!」」」」

円陣を組んで決意する小鳥達だったが…

 

 

『…やめておけ、「No.」はお前達の手に負えるカードじゃねぇぞ』

 

「「シャーク!」」

陸王・海王事件後から学校へと普通に通いだした凌牙が通りがかりに小鳥達に忠告する…それは「No.」の危険性を知っているが故の言葉だった。

 

 

『あのカードは俺でも使いこなせないカードだ…お前達には危険すぎる、ナンバーズには関わるな』

 

「うるさいウラ!オイラ達は遊馬に協力したいだけウラ!みんな!行動開始だウラ!!」

 

「「おー!!」」

徳之助と小鳥以外の3人は凌牙の忠告を聞かずに走っていってしまう…。

 

「ごめん、シャーク…危ない事はしないから!」

 

『……』

小鳥も凌牙に一言伝えるとみんなを追いかけていった…。

 

 

 

 

『…たくっ、お前らの事を思って言ってるのによ…ん?』

 

《フォウ!キュ〜?》

無鉄砲なナンバーズクラブのメンバーにため息を漏らす凌牙…その足元に一匹のネコがじゃれつく…

 

『…お前、白野さんトコのフォウじゃねぇか…どうしてここにいる?』

 

《フォウ!フォ〜ウ!》

凌牙はフォウを抱き上げる…フォウはつぶらな瞳で凌牙を見つめている。

 

『ダメだな…白野みたいにはお前の言葉がわからねぇ…迷子なら送ってくぞ?』

 

《フォウ!キャーウ!》

 

『あ、おい!』

首を振ったフォウは凌牙の腕から飛び下りる…。

 

『「1人で帰れる!」ってか?まったく……白野さんのトコ戻ったら、遊馬の友達が危険な事をしてるって伝えられるか?』

 

《フォウ!》

一鳴きしたフォウはそのまま走っていった…。

 

『……わかってんだろうなぁ…?』

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

「あっ!フォウ!やっと見つけたー!1人で何処に行ってたんだ〜?」

フォウを探し歩いて数時間…夕方の川辺で遊海はようやくフォウを見つける…。

 

「方向からして家に帰ろうとしたのか?出掛ける時は俺に一声掛けろって言っただろ?」

《フォウ!キャウ…フォーウ!》

 

「なに?小鳥達が危ない事をしようとしてる?…本当か!」

 

《フォウフォ〜ウ!キュー!》

 

「『No.』について調べる…!?まったく…世話が焼け「なんだって!!」ん?この声は…遊馬か?」

フォウの伝えた事に頭を抱える遊海…そこに聞き覚えのある声が聞こえてくる…それは焦った様子の遊馬と猫耳の少女ものだった…。

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「……」

放課後の遊馬は川辺で悩んでいた、小鳥達に聞かれたナンバーズの事を隠した事に…その時だった。

 

 

「ゆ、遊馬!!やっと見つけた!!」

 

「キャットちゃん!?どうしたんだよ、そんなに急いで…?」

キャッシーが息を切らせて焦った様子で遊馬のもとへとやってくる!

 

「大変なの!小鳥が、みんなが…ううっ!?」

 

「キャットちゃん!?」

突然、キャッシーが頭を抑えてふらつく…

 

【…ナンバーズカードを持つ者よ、我が名はジン…全てを見通す者にしてカイト様の下僕たるナンバーズハンター…君の友人達は預かった、彼らの命を助けたくば…我が館に来るといい…!】

 

「なんだって…!?」

キャッシーの口から彼女の物とは違う低い声が喋り、遊馬に言葉を伝える…!

 

 

「……うう…私…?」

 

「キャットちゃん!いったいみんなに何があったんだ!?」

 

「大変なのよ!!」

正気を取り戻したキャッシーに遊馬は状況を聞く、ナンバーズクラブが小鳥達によって結成された事…情報が集まらずに困ったあげく最近話題の「占いの館」を訪ねた事、その館の主がナンバーズハンターであり、罠で全員が捕まる直前にキャッシーだけが逃げ延びたという事を聞かされた…話を聞いた遊馬は拳を握り締める…!

 

 

「キャットちゃん!その場所に案内してくれ!!」

 

(待て遊馬!これは「罠」だ…彼女は私達をおびき寄せる為に()()()逃されたのだ…おそらくその場所にはカイトが待ち受けている、君は彼に勝てるのか?)

 

「罠だからってなんだってんだ!小鳥達を助けにいかないと!!何ビビってんだアストラル!!」

遊馬はアストラルに向かって叫ぶ…!

 

(カイトのタクティクス、そして力は私を超えている…今の私達に勝てる保証はない)

 

「っ…!!お前は100%勝てるデュエルしかしねぇのかよ!!」

 

(そうだ、デュエルとは私にとって「生きる意味そのもの」…負けると分かっている相手と戦うなど…愚かな行為だ、残念だか君の友人達は諦め──)

 

「っ〜!!!ふざけんなぁ!!」ブン!!ドシャ…

 

「遊馬!!」

遊馬はカイトに恐怖し小鳥達を見捨てようとするアストラルを殴りつける…だが、アストラルの身体は霊体…遊馬の拳は空振り、勢いのまま地面に倒れ込む…

 

 

(遊馬…)

 

「分かったよ…お前の気持ちはよくわかった!!お前の力なんて借りるかよ!!!」

遊馬はアストラルの力を借りずにナンバーズハンターへと挑もうとする…!

 

 

「…なんだか大変な事になってるみたいだな」

《フォウ!!》

 

「白野…!!小鳥達が!!」

 

「話は粗方聞いた…!乗っていけ!!」

遊海は川辺に止めたバイク…Dホイールを指差す…!

 

「頼む!!」

 

 

遊海は遊馬、そしてキャッシーと共に敵のアジト…占いの館へと向かった…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらぁ!!みんなを返せぇぇ!!」

 

『ククク…!来ましたね、ナンバーズを持つ者よ…!我が名はジン…カイト様の忠実なる下僕…!』

遊馬達は占いの館へと殴り込みをかける…そこにはダークシグナーじみたローブを着た怪しげな男…そして彼の後ろの水晶には、溶岩が埋め尽くした部屋で恐怖で震えている小鳥達の姿があった…!

 

 

《フォウ!!》

 

「てめぇ…!!小鳥達を返せ!!」

 

『フフフ…!お友達を助けたくば私とデュエルする事です…!カイト様の御前で!!』

 

(っ…!!)

ジンはある方向を指し示す…そこには玉座があり、そこでカイトが鋭い眼光でこちらを見下ろしていたのだ…。

アストラルはその姿を見ただけで動揺をみせている…。

 

 

『ああ、カイト様…これからあの者のナンバーズを貴方様に捧げますぅぅ!!』

 

「っ…!」

 

「…遊馬、俺が戦ってもいいんだぞ?奴は中々に強そうだ」

遊海はデュエルディスクを見ながら遊馬に問い掛ける…

 

「いいや、白野…これはオレの戦いだ!小鳥達が無茶をしたのはオレのせいだ…オレがみんなを助ける!!」

遊馬は提案を断り、前に歩み出る!!

 

「そうか…見せてみろ遊馬、お前の成長を!!」

 

「キャットビングよ!遊馬!!」

 

《フォーウ!!》

覚悟を決めた遊馬に声援を送る!!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対ジン

 

 

 

 

 

 

 

16

 

『現われろ!「No.16色の支配者ショック・ルーラー」!!』

デュエル序盤、ジンは鳥のようなナンバーズ「ショック・ルーラー」を召喚する…その効果は魔法・罠・モンスターの三種類からカードの種類を選択し、その発動を相手の2回目のエンドフェイズまで封じるという強力な効果…しかも、ジンは自称「占い師」、自身の能力だという「透視」の力で遊馬の戦略を潰そうとする…だが、遊馬も負けてままでは終わらない…!

 

 

「オレのターン…ドロー!よっしゃ!!来い!『クリボルト』を召喚!」

遊馬の場に現れたのは電気を纏うクリボー…そのモンスターがピンチを切り開く力になる!

 

「『クリボルト』は相手のORUを取り除いて『クリボルトトークン』を特殊召喚できる!さらに魔法カード『ボルテージサモン』を発動!2体の『クリボルトトークン』をリリースしてデッキから『ガンバラナイト』と『カゲトカゲ』を特殊召喚!オレは2体のモンスターでオーバーレイ!!」

 

39

 

「現われろ!『希望皇ホープ』!!」

《ホープッ!!》

遊馬のエースモンスターたるホープが逆境を切り拓く光となる!

 

 

「『ホープ』で『ショックルーラー』を攻撃!!さらに『クリボルト』でダイレクトアタック!!」

 

『チィィ!!』

遊馬はナンバーズを撃破し追撃…ジンにダメージを与える!!

 

『おのれ餓鬼がぁ…!!お前にはさらなる苦痛を味あわせてやる!!』

ナンバーズを倒された事でジンはその本性を曝け出す…!

 

 

 

 

11

 

 

『現われよ「No.11」!幻惑の瞳を持つ支配者…!「ビックアイ」!』

ジンは自身の切り札…巨大な目を持つ三角錐型のモンスター「ビックアイ」を召喚する、その効果は…

 

『「ビックアイ」の効果発動!ORUを一つ取り除き、相手モンスターのコントロールを得る!我が下僕となれ!「希望皇ホープ」!!』

 

(「なんだと!?」)

巨大な瞳から怪しいエネルギーが放たれてホープのコントロールが奪われる!

 

『「希望皇ホープ」よ!「クリボルト」を攻撃しろぉ!!』

 

「ホープッ!!うわぁぁ─!?」

ホープによって攻撃を受けた遊馬は大きくライフを削り取られる!

 

『フハハハハ!!我が真の力はカイト様に匹敵するぅ…!せいぜい死の恐怖に怯えるがいい!!』

 

さらにジンの猛攻は続く…発動した罠「氷結の舞」で手札からのモンスターの召喚・セットを封じられ、壁のない状態で再び攻撃が襲いかかる!!

 

 

『バトルだ!「希望皇ホープ」と「ビックアイ」でダイレクトアタック!!』

 

「まだだぁ!!罠カード『奇策』!手札の『ドドドウォリアー』を捨ててその攻撃力分『ビックアイ』の攻撃力を下げる!さらに罠カード『エクシーズ・ウェイト』!『ホープ』の攻撃力をエンドフェイズまでORU1つに付き800ダウンさせる!うわぁぁ!!」

 

「ショックルーラー」の封印から解き放たれた2枚の罠でダメージを軽減させる遊馬…その残りライフは…わずか100…!!

 

 

『しぶとい餓鬼め…!だが、永続魔法「弔いの舞」を発動!これで墓地からモンスターを特殊召喚する事はできない!!貴様の場はガラ空きで手札は0!!そして私の場には強力なモンスターが2体!!勝ち目はなぁい!次のターンで貴様とお友達はお終いだ!!』

 

「ぐっ…!くそぉ…!!」

心身共に追い詰められた遊馬…そこにジンが語り掛ける…

 

 

『ああ…お友達を助けるいい方法があるぞ?サレンダーして「No.」を1枚残らず私に差し出すのだ…!いい取引だろぉ…?1人の犠牲で仲間を救えるんだからなぁ…!さぁ、どうするぅ…?』

 

 

(………やはり、奴とは戦うべきではなかった…!もはや勝機はゼロに近い…今の私達にできる最善手は……「No.」を奴に渡す事だ…遊馬、ナンバーズを…私を奴に差し出せ…私も、君と共に消滅…)

 

「ふ…ふざけんじゃねぇ!!」

 

戦意を失ったアストラルの言葉を遊馬の怒声が遮る!

 

 

「オレはデュエルでたくさんの奴と出会ってきた…!負ける事もあった…だけど、一緒にデュエルをやった奴はみんなオレの大事な仲間なんだ…!そんな仲間を…オレは一人だって見捨てる事は出来ねえ!…お前も、オレの()()()()()()()()()…アストラル!!」

 

(遊馬…)

今まで遊馬はアストラルの事を成り行きの「同居人」だと思ってきた…だがそれと同時に2人は力を合わせて様々な強敵を乗り越えてきた…意見がぶつかって喧嘩する事もあった…しかし、決闘庵での戦いを通じて遊馬は気づいたのだ、他人に姿が見えなくとも、存在を認識してもらえなくても…小鳥達やデッキのモンスターと同じく、アストラルもかけがえのない「仲間」なのだと!

 

 

「…聞こえるかアストラル!…九十九遊馬っていう男はな、根っから優しい奴なんだよ…お前が遊馬をどう思ってるかは知らん!だけどな…お前はもう、遊馬にとってなくてはならない存在なんだ!!」

 

(岸波白野…!私を認識していないのに…この、想いは…!)

 

「白野…!」

遊馬に続いて遊馬から投げかけられた言葉にアストラル

の心が…魂が震え始める…!

 

『何を1人で話してやがる!さっさとサレンダーしやがれ!!』

 

「断る!!オレは…最後まで諦めねぇ!!」

ジンの提案を遊馬は切り捨てる!!

 

『いいだろう…カイト様はお前が魂を抜かれて倒れ伏す姿を見たがっている…!!貴様を倒してその魂ごと献上してお喜びいただくのだぁ!!』

 

「っ…!カイトォ!!こんな奴がお前の仲間なのかよ!!お前のデュエルは…こんな奴と一緒なのかよ─!!」

 

【………】

遊馬の言葉に王座に座るカイトは応えない…それどころか、今まで()()()()()()()()()()

 

「…というか、そこにいるのは()()()()()()()()()?」

 

ギクッ「な、何を言っている!!そこにいらっしゃるのは…」

 

「フッ…()()()()()()!ハアッ!!」

 

「にゃんと!?」

遊馬の言葉と同時に遊海は高く高く跳び上がる!

 

『なんだと!?』

 

「卑怯な真似を…するんじゃねぇぇ!!セイヤアアアア!!」

 

 

ドッガァァァン!!

 

 

(何という身体能力だ…!?)

 

飛び上がった遊海はライダーキックで玉座ごとカイトを粉砕する…そして階段から()()()()()()()()()の首が転がり落ちる!

 

 

《フォーウ!!》ペシペシ‼

 

『馬鹿な!私のカイト様が!?』

 

「薄暗い場所で見間違えるのはしょうがないが…人形と生きてる人間の見分けぐらいつくだろ?2人とも、カイトって奴の幻影を恐れてたんだよっ…と!!」ボッゴォン!!

遊海は背後の壁ごとカイト人形の残骸を拳で粉砕する…

 

 

「やっぱりそうだったのか!オレはカイトとデュエルした…たしかに怖いぐらい強い奴だったけど…人の苦しむ姿を見て楽しむような奴じゃねぇ!!絶対にカイトはお前みたいな卑怯な奴じゃねぇ!!」

遊馬は勝ち誇ったようにジンを指差す、遊馬はデュエルを通して感じていたのだ…「天城カイト」の魂を…!

 

 

 

(私は…あんな人形に恐怖していたのか…)

 

「へへっ…オレもビビってたさ!でも、諦めなければ誰にだって希望は残ってる…かっとビングだ!アストラル!」

 

(…そうか、私に生まれた感情は恐怖だけではなかった…君から伝えてもらった大切な想い、それは…私は君と、君の仲間の為に…勝ちたい!!)

遊馬とアストラル…人間と精霊、初めてその気持ちが一致する…その強い思いが奇跡を呼び寄せる!!

 

 

キィン─!!

 

「これは…!?」

遊馬の持つ皇の鍵から放たれた光がアストラルに直撃する、その光は新たな力の兆し…勝利の方程式は…ここに完成した!

 

《勝つぞ…遊馬!!》

 

「おう!!オレのターン!!…よし!魔法カード『カムバック』を発動!戻ってこい!『ホープ』!!」

 

『なにぃ!?』

 

ホープがビックアイの洗脳から開放され、遊馬のもとに舞い戻る!

 

(遊馬、エクストラデッキを見ろ…それが私の…我々の新たな力だ!!)

 

キィン─!

 

遊馬のエクストラが強い光を放つ…そのカードこそが2人の新たなる力!

 

 

「いっくぜぇぇ!オレは『希望皇ホープ』でオーバーレイネットワークを再構築!!」

 

『なんだと!?』

ホープが白い塔のオブジェに戻り、銀河へと飛び込む!!

 

「オレは『希望皇ホープ』1体でオーバーレイネットワークを再構築…カオス・エクシーズチェンジ!!」

 

39

 

(「今こそ現われろ!『CNo.39』!混沌を光に変える使者!『希望皇ホープレイ』!!」)

遊馬の場に巨大な剣と盾のオブジェが現れて展開…黒き鎧と大剣を持つ混沌の使者…ホープレイが顕現する!

 

 

「現れたか…『ホープレイ』!」

 

『カオスナンバーズだとぉ!?だ、だが攻撃力は「ビックアイ」が上だぁ!!』

 

「『ホープレイ』の効果発動!ORUを1つ使う事で自分の攻撃力を500アップし、相手の攻撃力を1000下げる!その効果をオレは3回使う!!オーバーレイ・チャージ!!」

 

『ば、馬鹿なぁ!!』

 

「いっけぇ!!『ホープレイ』!ホープ剣・カオススラッシュ!!」

ホープレイがORUを吸収…翼が第3・4の腕に変化し巨大な大剣でビックアイを両断した!

 

『ぐっ…ぎゃああああああ!!!』

 

 

ジンLP0

 

遊馬WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「遊馬〜!」

 

「小鳥!みんな!無事だったのか!!」

デュエルが終わり、ナンバーズを回収したタイミングで囚われた仲間達が戻ってくる…実は彼らのいた部屋はデュエル場所の下の階で、溶岩の幻を見せられていたのだ…。

 

 

「ねえ!あなたがアストラル?」

 

(なに…?私が見えているのか!?)

 

「えぇ!?」

小鳥の思わぬ言葉にアストラルと遊馬は驚く…

 

「どうやらさっきの光で一時的にみんなアストラルが見える状態になってるみたいだな、俺にも見えてるぞ?」

 

「マジで!?」

 

「初めましてウラ!オイラは徳之助ウラ!」

 

「委員長の等々力です!よろしく!」

 

(私はアストラル、遊馬の()()だ…よろしく頼む)

 

 

((観察結果その14…仲間がいれば希望を信じる事ができる…ありがとう遊馬、私を仲間と認めてくれて…))

アストラルは新たな観察結果を記録する…その顔は今までで一番良い顔をしていた…。

 

 

 

 

「…なんだよみんなアストラルばっかり…ガッかリングだぜ…」

ナンバーズクラブの面々は初めて見るアストラルの姿に興奮して遊馬は仲間外れになっている…。

 

「ドンマイだな遊馬、しばらくすればその効果も切れるだろうさ…さて…!」

遊馬を慰めた遊海は倒れたジンに歩み寄る…。

 

 

「…おい、てめぇ…よくも俺の弟子に卑怯な真似でデュエルをやらせやがったなぁ…!!」

 

『ヒッ…!!』

凄まじい怒気を込めた遊海の言葉にジンは震え上がる…

 

 

「闇のゲームを強いた者には()()()()の裁きが下る…罰ゲーム!死の体験&マインド・クラッシュ&ダークフォール!!」ズギュゥゥゥン!!

 

『ギッ、ギィヤアアアア!!?』バリーン!!

 

 

 

 

「ゆ、遊馬君?…あの人は何を…?」

ジンの叫び声に驚いた委員長が遊馬に問い掛ける

 

「ん?ああ…気にしなくていいぜ?あの人はエジプトの秘宝・千年アイテムを持ってるんだよ…今のは…あいつに怖い幻を見せた上で精神をバラバラにして目を見えなくしたんだな…きっと、…あの人は絶対に怒らせちゃダメだからな?」

 

(「「「「なにそれ怖い」」」」)

 

遊馬の言葉に全員の考えは一致した…。

 

 

「よし!お仕置きも終わったし解散だ!解散!みんなの親御さんが心配するから早く帰れよ〜」

 

「「「「は、はい!!」」」」

 

 

(…観察結果その15…岸波白野は怒らせてはならない…彼はいったい何者なのだ…?)

アストラルは疑問を抱く…常人離れした身体能力に知識、そして力…遊馬達がその正体を知るのはまだ先の話である…。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

「あ、『No.30』の回収忘れてた……まぁ、しょうがないな!」

 

《フォ!?》(特別意訳:ダメでしょ!?)




《カイトサマ…これは…》

「…フォトン・ハンドとは別の技術によって魂ではなく、精神を壊されているな…」

『(ピクピク)』
遊馬達が去った後の占いの館にカイトが訪れる…先ほどのデュエルのエネルギーを感知してやってきたようだ…なお、ジンは白目を剥いて痙攣しながら泡を吹いている…。

《カイトサマ、隠されていた「No.」を発見しましたでアリマス!》
カイトの相棒オービタル7がカードを手渡す

「ほう…面白い効果だな、では回収するとしよう…」
カイトはフォトンハンドでジンの魂を抜き取った…。

「(この男をこうしたのは九十九遊馬ではない…ならば誰だ?調べる必要は……保留にしておこう、今は「No.」を集める事が先決だ)」
小さな疑問を抱きながらカイトはその場をあとにした…。


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思わぬピンチ?〜緊急事態発生?〜

こんにちは!S,Kです!

とりあえず怒涛の連続更新はここまでかな……FGOで世界を救って参りますm(_ _;)m


それでは最新話をどうぞ!


「え〜っと、頼まれた買い物は…これで全部だな!」

 

《フォウ!》

とある日…翠に買い出しを頼まれた遊海は買い物を終えて帰路についていた…。

 

「最近は特に大きな事件もなくて平和だな…まぁ、嵐の前の静けさなんだけど…」

WDCの開催まで一ヶ月をきった…ZEXALにおける最大の戦いはそこまで迫っているのだ…。

 

「出る事は決めてるが…白野名義で出るか…それともメタルナイト名義で出るか……まぁ、「エスパー・ロビン」で出られるなら大丈夫だろ」

 

《キュ〜?フォウ!》

 

「ん?本名で出ないのかって?…フォウくん、俺は本名だと有名人過ぎるんだよ、それこそ()()()()に目を付けられちゃうんだ…遅かれ早かれら目は付けられるだろうけどな」

 

《キャウ…》

遊海はハートランドタワーを見ながらフォウに語り掛ける。

 

「まだ、探してる奴もいるしな……さて、今日はフォウの好きなベーコンも買ったからな、翠に美味しく料理してもらおうか!」

 

《フォーウ!!》

つかの間の平和を楽しむ遊海…しかし、それは突然に終わりを告げる…!

 

 

《マスター!「No.」の反応を感知しました!すぐそこです!!》

 

「っ!アヤカ!案内頼む!!」

アヤカの報告に遊海は一瞬で意識を切り替え、現場へと向かう!

 

 

 

 

 

《フォウ!キュ〜!?》

 

「っ…!大丈夫ですか!?」

 

「うぅ〜ん…」

アヤカの案内でたどり着いた路地裏…そこには数人の男女が倒れている…

 

「意識はないが、他に異常はない…眠ってる…?」

遊海は的確に全員の状態を見る…全員が同じように眠っており、そのうちの1人はデュエルディスクを起動したままだった…。

 

「おかしいな…デュエルディスクは勝つか負けるかすれば自動的に待機状態に戻るはずだが…」

 

《マスター!2時の方向の物陰に生命反応を確認!!》

 

「…隠れてる奴!出てきやがれ!!」

 

 

遊海はデュエルディスクを構えながら物陰を覗き込んだ…!

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

「くっそ〜、抜き打ちの数学のテストなんて卑怯だぜ〜…」

 

「簡単だったわよ?遊馬が普段から勉強してないから悪いんでしょ〜?」

 

「それはそうだけどよ〜」

 

(遊馬、テストの点が悪いのは…君がいつも授業中に居眠りをしているからではないか?)

 

「うるせーなー!」

遊馬と小鳥、そしてアストラルは普段通りに通学路を歩く…ジンとの一件以来、遊馬とアストラルはもとより仲間達の距離も縮まっていた…。

 

 

「結局、カイトの奴も姿を見せねぇし…来るなら来やがれ!」

 

(…我々は新たな力を手に入れた、だが…それでもカイトは強敵…油断は禁物だ)

 

「わかってる!でもいつかは戦う事になるんだ!その時は真正面から倒してみせる!!」

遊馬はカイトへのリベンジに燃えている…アストラルもまた楽観はできないが…カイトへの恐怖は薄れているようだ…。

 

 

 

《フォ!!フォウ!フォ〜ウ!!!》

 

 

「あっ、あれって…フォウくん?」

 

「あれ…?フォウ!どうしたんだこんなところで?」

 

(白野のネコか…距離はだいぶ離れているが…?)

歩いていた遊馬のもとにモフモフのネコ…フォウが走り寄ってくる…

 

「フォウくんどうしたの?白野さんか翠さんは?」

 

《フォウ!フォウフォウ!!!》

 

「う〜ん…?なんだか焦ってないか?」

 

(たしかに…そのようだ)

小鳥に抱き上げられたフォウは前足をバタつかせ、何かを伝えようとしている…。

 

 

 

《キャウ!キャーウ!!》

 

「あっ!フォウくん!?」

 

「追いかけようぜ!!」

 

フォウは小鳥の腕から飛び下りて走り出す…遊馬達は慌ててあとを追いかけた…。

 

 

 

 

 

《キャウ!フォーウ!!》

 

「フォウ!どこまで行くんだよ〜!?」

フォウを追うこと数分、遊馬達は路地裏に導かれる…

 

《っ…遊馬!「No.」の気配だ!この先から遠ざかって行く!》

 

「なんだって!?この先か…!かっとビングだぁぁ!!」

アストラルの言葉に遊馬はフォウを追いかける足を早め…

 

ガッ‼

 

「うわ!?…痛ってぇ〜!」

 

薄暗い路地で遊馬は何かに躓いて転んでしまう…。

 

 

「遊馬!フォウく…あ…遊馬、あ…足もと…!!」

 

「へっ…?うわぁぁ!!白野─!?」

遊馬が小鳥の言葉に釣られて足もとを見る…遊馬が躓いたモノ、それは…意識を失った遊海だったのだ…。

 

(なぜ彼がこんなところに!?)

 

「言ってる場合じゃねぇ!き、救急車─!!?」

 

遊馬は慌てて人生初の119を掛けた…。

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

「入ります、翠さん」

 

「あ…小鳥ちゃん、遊馬くん…話は聞いたわ、白野さんを見つけてくれてありがとね…」

 

「いや、オレ達はフォウを追い掛けただけなんだ…フォウのお手柄だぜ…」

 

夕方…遊馬と小鳥はハートランドの病院にいた…救急車で運ばれた遊海のお見舞いに来たのだ…遊海はベッドで静かに眠っている…。

 

 

「一応怪我はしてないらしいわ…眠ってるだけ…ただ、お医者さんに聞いたら他にも10人くらい同じ症状で入院してる人がいるらしいわ…」

 

「アストラル、これって……」

 

(「No.」の仕業…または…ナンバーズハンターによるものの可能性が高いな…)

遊馬とアストラルは1つの可能性に辿り着く…

 

 

「…ごめんなさい、あとで謝るから……アヤカちゃん!何があったのか教えてくれる…?」

 

「「えっ…?」」

遊馬と小鳥は首を傾げる…突然、翠が聞き慣れない名前を呟いたからだ…。 

 

 

《…いいのですか?マスターの許可を得なくて…》

 

「もう隠してはおけないわ…何より早く犯人を見つけたいもの…!」

 

《…了解しました!何があったのか報告します…!》

翠と言葉を交わし、虹色の核石を持つ機械…アヤカが遊馬の前に姿を現す!

 

(この機械は…デュエルモンスターズの精霊か…!?)

 

「ええ、そうよ…アストラル君」

 

(!?)

翠の言葉にアストラルは驚く…常人には存在を認識できないアストラル…その言葉に翠は答えたのだ。

 

「翠さん…まさか…あんたも…」

 

「そうよ遊馬君…私と白野さんは精霊使い…ずっとアストラル君の事は見えていたわ…黙っててごめんね?」

 

「白野も翠さんも…龍可ばあちゃんと同じデュエルモンスターズの精霊が見えるのか…!」

 

「こんな身近に精霊使いの人がいるなんて…」

遊馬と小鳥は思わぬカミングアウトに驚いている…。

 

「詳しい事はまた今度ね!…アヤカちゃん、教えて…白野さんに何があったの?」

 

《…何といえばいいのか……「事故」と「不運」が重なった…間の悪い出来事が起きたのです…》

アヤカは困ったように事件の一部始終を話し始めた…。

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

「…隠れてる奴!出てきやがれ!!」

遊海は物陰を覗き込む!

 

 

『…ヒック』

 

「…酔っ払い…?」

物陰にいた人物…それはヨレヨレのスーツを着て頭にネクタイを巻いたサラリーマン…いや、酔っ払いの男だった。

 

「…アヤカ」

 

《…間違いありません、彼はナンバーズを所持しているようです…》

 

《フォウ…?》

あまりの事に遊海とアヤカは顔を見合わせる…遊海はとりあえず男を起こして見る事にした。

 

 

「お兄さ〜ん?そんなところで寝てると風邪ひきますよー?」

 

『あ〜ん…?うるひゃいな〜気持ちよく寝てるのに…』

遊海が身体を揺すると男は目を覚ます…相当呑んでいるようだ…。

 

「…お兄さーん、そこでお兄さんと同じように寝てる人達がいるんだけど…心当たりはある?」

 

『うん…?そいつらがカツアゲしてきたんだーよ…それでデュエルしたら…眠り…ヒック、始めたんあ…』

 

「…なるほど」

遊海が倒れている男女を改めて見ると…見るからに不良、男が言っている事は真実なのだろう…。

 

 

「お兄さん、もしかして『No.』ってカード持ってない?」

 

『持ってるよ!文句あっか!?』

遊海の言葉に男は突然怒り出す…!

 

「(これは「No.」に取り憑かれて悪酔いしてるのか…早めに対処しよう…!)」

 

「お兄さん、俺とデュエルしましょう!貴方が勝ったら俺が1杯奢りますから!」

 

『ん〜?景気のいいあんちゃんじゃねぇか…よ〜し!デュエルだー!』

酔っ払い男はふらふらと立ち上がる!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

遊海LP4000

酔っ払いLP4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『聖騎士アルトリウス』を召喚!」

茶髪で鎧を着た青年騎士が現れる ATK1800

 

「さらに『聖騎士ガウェイン』は自分の場に光属性の通常モンスターがいる時!守備表示で特殊召喚できる!」

輝く剣を持った太陽の騎士が現れる DEF500

 

「俺はレベル4の『アルトリウス』と『ガウェイン』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!聖騎士を率いる常勝の王よ…今こそ王道を突き進め!『聖騎士王アルトリウス』!」

威厳のある重厚な鎧を纏いし騎士王が現れる! ATK2000

 

 

「さらに俺は装備魔法『聖剣カリバーン』、『聖剣EX-カリバーン』を『アルトリウス』に装備!これにより『アルトリウス』の攻撃力は500アップし、相手の効果対象にならない!」

アルトリウスが青いラインの刻まれた聖剣と神秘を宿す聖剣を構える! ATK2000→2500

 

「そして『聖剣カリバーン』のさらなる効果発動!1ターンに1度500ライフを回復する!…ターンエンド!」

 

遊海LP4000→4500

アルトリウス(カリバーン、エクスカリバーン) 手札2

 

 

 

『なんだよ〜!イケメンなモンスターばっかり使いやがって〜!!そういうのはキライなんだよぉ〜!』

 

 

 

『俺のタァン…ドロォ〜!』

『速攻魔法「予想GUY」を発動ー!自分の場にモンスターがいない事でぇ…デッキの「グレムリン」を特殊召喚ー!』

可愛らしい顔をした緑色の悪魔が現れる ATK1300

 

『そしてぇ、「バーサーカー」を召喚!』

凶悪な顔をした悪魔が現れる ATK1500

 

『俺は〜レベル4の「バーサーカー」と「グレムリン」でおーばーれい…エクシーズ召喚ー!』 

 

●●

 

「来るか…ナンバー…ズ…んあ…?なんだ?めまい…が……眠……zzz…」ドサッ…

 

 

《フォウ─!?》

 

《マスター…?マスター!!?》

 

 

それは突然の事だった、酔っ払いがナンバーズを召喚した途端…遊海は強い睡魔に襲われて倒れてしまったのだ…。

 

『なんだよあんちゃん!お前さんもおねむかぁ?たくっ…酒を飲み損ねたぜ…ヒック!』

酔っ払い男は千鳥足でふらふらしながら歩いて行った…。

 

 

デュエル中断

 

 

 

SideOut

 

 

 

《その後、フォウが遊馬達を連れてきてマスターを助けてくださったのです…》

 

(間違いない、その男が持っているのは強力な『No.』だ…早く回収しなければ被害はさらに広がって行くだろう…)

 

アヤカの話を聞いたアストラルは冷静に分析する

 

「アヤカちゃん…相手の居場所はわかる?」

 

《…対象を補足…!ハートランドの歓楽街に向かっています!》

 

「大変だわ…!もしその人が人の多い場所に行ったら…」

 

「周りの人達がみんな眠っちまう!?」

遊馬も事態の重大さを理解する!

 

「時間がないわ……小鳥ちゃん、遊海さんをお願い!私と遊馬君でナンバーズを持ってる人を止めに行くわ!」

 

「えっ…!?でも歓楽街まで車でも10分くらい掛かっちゃいますよ!?」

 

「簡単な話よ!()()()()()()いいわ!ウィンダ!」

 

《わかったよ!あっ、私はウィンダ!よろしくね!》

 

「えっ…飛んで行くって…まさか…!?」

 

「遊馬君…しっかり掴まってね!」

 

「へ…?」

 

 

 

 

 

 

 

「う、うわぁぁ…!本当に飛んでる〜!?」

 

《キュイー!!》

 

《急いで!ファルコ!》

病院の窓から飛び出した翠と遊馬はキムンファルコスに乗ってシティの空を飛行する!

 

「こ、これ!街の人にバレないのか〜!?」

 

《大丈夫!風の魔法で下からは見えないようになってるからー!》

 

《翠さん!遊馬!間もなく目標地点です!》

 

「わかったわ!えっと…人払いの結界をお願い!」

 

《了解しました!》

 

(…これほどまでに精霊達の力を使いこなすとは…いったいどれ程の努力をしてきたのだ…?)

アストラルは流れるように力を使う翠に対して純粋に驚いていた…。

 

 

 

 

「そこのおじさん!ちょっとまったー!!」

 

『ん〜?なんだよぉ…これから、ヒック…1杯やりに行くのによぉ…』

 

「この人がナンバーズを持ってる人…本当に酔ってるわね…」

歓楽街に着く直前…遊馬が酔っ払い男を呼び止める!

 

 

「なぁ、おじさん!『No.』持ってるんだろ?それを渡してくれないか?」

 

『ケッ…やだね!これを持ってると、気分がいいんだぞよ〜!!』

酔っ払い男は舌を出しながら拒絶する…!

 

 

「遊馬君、今回は私にまかせて…悪い大人は…大人が懲らしめなきゃ…!ねえ、お兄さん!私とデュエルしない?」

 

『んあ…!すげぇ美人さんじゃねぇか!やるやる〜!!』

翠に呼びかけられた男は目をハートマークに変えながらデュエルディスクを構える!

 

(待つんだ、「No.」は危険な力を持っている…貴女では…)

 

「心配してくれてありがとう!でも大丈夫、お姉さんも少しは強いから!」

 

「『デュエルディスク、セット!Dゲイザー!セット!』」

翠は紫のデュエルディスクと紫色のDゲイザーをセットする!

 

 

【ARビジョン…リンク完了!】

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

翠LP4000

酔っ払い男LP4000

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「フィールド魔法『影牢の呪縛』を発動!」

フィールドに蛇の巻き付いたような金色の杖が突き刺さる!

 

「さらに魔法カード『影依融合』を発動!手札の『聖なる影(カドシャドール)ケイウス』と『シャドール・ビースト』を融合!影の獅子よ!聖なる影よ!今こそ交わりて、影の女王を呼び出さん!融合召喚!『エルシャドール・ネフィリム』!」

巨大なる影の女王が現れる ATK2800

 

 

「融合召喚…!」

 

(なるほど…彼女は融合使いなのか、しかも中々のステータスだ…!)

現れた女王に遊馬とアストラルは驚く…

 

 

「融合素材になった『ビースト』の効果!カード効果で墓地に送られた事で1ドロー!さらに『影牢』の効果発動!シャドールモンスターが墓地に送られた時、1体につき1つ魔石カウンターを置く!」

 

カウンター0→2

 

 

「さらに『ネフィリム』の効果!デッキから『影霊の翼(リーシャドール)ウェンディ』を墓地に送る!さらに『ウェンディ』の効果!デッキから『シャドール・ファルコン』を裏守備で特殊召喚!さらに魔石カウンターが増える!」

 

カウンター2→3

 

 

「カードを1枚伏せて…ターンエンド!」

翠LP4000

ネフィリム 裏ファルコン 影牢(3) 伏せ1 手札3

 

 

 

(流れるようなプレイングだ…彼女は只者ではないな…!)

 

「すっげー…翠さんってこんなに強かったんだ…」

遊馬達は翠の流れるようなプレイングに驚き、感心している…。

 

 

『なかなか、強いじゃねぇか…ならよぉ…俺も見せてやるよぉ!』

 

 

 

 

『俺のタぁン!ドロ〜!』

『魔法カード「二重召喚」を発動ー!「ガーゴイル・パワード」を召喚ー!』

鋭い爪と硬い装甲を持つ悪魔が現れる ATK1600→1300

 

『さらに「ロックメイス」を召喚〜!』

邪悪な笑顔の小悪魔が現れる ATK1050→750

 

『俺はーレベル4の「ガーゴイルパワード」と「ロックメイス」でおーばーれい!2体のモンスターでおーばーれいネットワークを、構築…エクシーズ召喚ー!』

 

41 

 

『出てこい!酔いどれの「No.41」!「泥酔魔獣バグースカ」ァ!』

フィールドに巨大な徳利のオブジェが現れて変形…酒ビンを抱えたバクが現れる DEF2000

 

 

『「バグースカ」の効果発動〜!このカードが守備表示の時ー!フィールド上の表側表示モンスターは全部守備表示になる〜!泥酔吐息〜!』

ネフィリムがバグースカの息を浴びて膝をつく… ATK2800→DEF2500

 

 

「これが白野さんを眠らせた……うっ!?」

 

「っ!?翠さ…うぐっ!?」

 

(遊馬!翠!どうしたんだ!?)

ナンバーズが召喚された途端、遊馬と翠は手で顔を覆いながら座り込む…!

 

「「お…お酒臭〜い!!」」

 

(なに…?匂いだと?)

2人は共に顔を顰める…バグースカは凄まじい酒気を放出しており、2人はその匂いに耐えられなかったのだ…。

 

 

「は、白野が寝ちまった意味がわかったぜ…あの人は本当に()()()()()()()!!」

 

「だから『バグースカ』の匂いだけで酔っ払って寝ちゃったのよ!!」

 

…それが事件の真相…酔っ払い男と対峙したデュエリスト達はことごとくその酒気で昏倒していたのだ…。

 

『えへへ〜!気持ちいいー!!俺はカードを2枚伏せてターンエンド〜!』

酔っ払い男LP4000

バグースカ 伏せ2 手札1

 

 

 

「こ、このままじゃ、私も酔っぱらっひゃう…!ウィンた!!」

 

《まっかせ…キュウ〜…》

 

「ウソ〜!?」

風で酒気を吹き飛ばそうとウィンダを呼び出すが…ウィンダも酒に弱かったらしく、そのまま消えてしまう…。

 

「こ、こうなったら…つぎのターンで、勝つしかにゃいわ…!」

 

「み、翠さん…!た、頼む〜!!」

翠はふらふらになりながら立ち上がる…

 

 

 

「私のターン!ど、ドロー…!」

「これにゃら…!『シャドール・ファルコン』を…反転召喚…!」

《ピュイ!…ギュエ!?》

反転召喚されたファルコンが現れるがすぐに翼で顔をおおってしまう… ATK600→DEF1400

 

『「バグースカ」が守備表示の時…守備表示モンスターの効果は無効になる〜』

 

「私は装備魔法『魂写しの同化』を発動…闇属性を宣言して…『ファルコン』にしょうび…!効果発動…『ファルコン』と…『影牢の呪縛』のませきカウンターを3つ使って…『バグースカ』を、融合…!!」

 

「えっ…ヒク?」

 

(装備魔法の融合カードだと!?)

 

「影の鳥よ…眠れる悪魔の力を得て…王のぎょくざを…融合召喚…『エルシャドール・シェキナーガ』…!」

巨大な機械の玉座に座った影の女王が現れる ATK2600

 

 

「『ネフィリム』を攻撃表示…ば、ばば…トル!『シェキナーガ』と『ネフィリム』で…ダイレクト…!!」

 

『フワッ!?ドシェェ……!!』

2体の女王の一撃が酔っ払いのライフを削りきった…。

 

 

酔っ払いLP0

 

翠…WIN…?

 

 

 

 

 

 

「もう、だめ…そんなに強くなくて、よかっ………きゅう…」パタン

 

「翠さん─!?」

デュエルは無事に翠の勝利に終わったが…酔いが回ってしまった翠はそのままひっくりかえってしまった…。

 

 

(観察記録その16…嗅覚は人間にとってデュエル中でも強い影響を与えるようだ……ありがとう翠、貴女のおかげで新たなナンバーズを回収できる…)

アストラルは翠に感謝を伝えると男からナンバーズを回収する…。

 

ドクン

 

(っ…!?この記憶は──!?)

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

『アストラル…なぜ、この場所に来た…?』

 

「○○○○○○○○○○○…」

 

『そうか……ワシには役立てる事はほとんど無い…ワシの存在は、間もなく燃え尽きる……』

 

「○○○○○○○○○…?」

 

『無駄だ、あの頑固者はワシらの意見など聞かない……アストラル、お前は…あちらでいい出会いを………』

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

(…なんだ、今の会話は…?私は誰と話をしていた…?)

 

「お〜い!アストラル!この状況をなんとかしてくれぇぇ!!」

 

 

謎の記憶を取り戻したアストラル…その後、翠も病院へと運ばれて事なきを得た…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……イタタタ…頭がズキズキする…」

 

「あっ…!白野!大丈夫か!?」

しばらくして遊海は目を覚ます…だが、頭は酷い頭痛に襲われている…。

 

「遊馬…?…そうだ、『No.41』とデュエルしてる最中にいきなり眠くなって…!」

 

「安心してくれ!そのナンバーズなら翠さんとオレで何とか回収したぜ!」

 

「なに…?本当か!?」

 

《本当ですよマスター、その代わり…マスターと翠さんが精霊使いだとバレてしまいましたが…それから翠さんはナンバーズとの戦いの後遺症で寝込んでます…後でお見舞いに行ってあげてください…》

 

「ちょ…待て待て!?情報量が多すぎる!!なんでそんな事になって…アイタタ…」

アヤカの言葉に遊海は動揺するが…頭痛が思考を妨げる…。

 

(岸波白野、貴方に一つだけ聞きたい……貴方は我々の味方か…?)

 

「おい!?病人になんて事聞くんだよアストラル!?」

アストラルの慇懃無礼な問い掛けに遊馬は声をあげる

 

「いいんだ遊馬…アストラル、俺は何があってもお前達の味方だ…絶対に裏切りはしない」

遊海はまっすぐアストラルの目を見る…

 

 

(そうか、失礼な事を聞いてすまなかった…遊馬、一度皇の鍵に戻っている…)

アストラルはそのまま消えていった…。

 

 

「…遊馬、今回はありがとな…助かった」

 

「白野…問題ないぜ!この前の事件の時は助けてもらったからな!」

遊海に感謝された遊馬は嬉しいのか顔を紅く染めている…。

 

「フッ…頑張れよ!遊馬…これからは俺も「No.」集めに協力してやるよ…子供達ばかりに無理させる訳にはいかないからな!」

 

「やったぜ!白野がいるなら100人倍だぜ!」

 

「それを言うなら百人力…だろ?勉強も頑張れよ!遊馬!」

 

「…うっ…は〜い…」

 

 

こうして、ハートランドを襲ったお騒がせ事件は解決したのだった。



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訪問者〜繋がりし道〜

こんにちは!S,Kです!

FGOの新章が始まらなかったので更新…早く来ないかなぁ…


それでは最新話をどうぞ!!






※注意!
この話では既存キャラに関係するオリキャラが出ます。



「……ん?このカードは…?」

 

 

とある町のとある家…テラスでコーヒーを飲んでいた老紳士は何も描かれていないカードを見つける…。

 

「なんだか昔を思い出すな…どれ…」

 

キィン─…

 

老人がカードを拾った途端、カードに絵柄が刻まれていく、そのカードは…「No.」だった…!

 

「ふむ…何か強い力が宿ったカードのようだ、これは…新たな戦いが始まったと見るべきか…あの人はまた駆け回っているんだろうな…」

ナンバーズを手にしてなお、老人の穏やかな様子は変わらない…昔を懐かしむ余裕もある。

 

 

「あら?そのカードはどうしたの?」

 

「ああ、今拾ったんだよ…何処かで新たな戦いが始まったらしい」

 

「まぁ…!」

老人の妻らしい女性がカードを見ながら驚く

 

 

「確か…あの人はハートランドシティにいるはずだな…よし、あの子にお使いを頼もうか…」

 

「大丈夫かしら…?」

 

「大丈夫、あの子はそれなりに強い…それに良い経験になるはずさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、助けて〜!?!」

 

『オービタル!スピードアップしろ!あのDホイールを捕まえる!』

 

《カシコマリ!!》

 

 

ハートランドの一角…そこで青いDホイール、そして背中にグライダーを背負った少年が追跡劇を繰り広げている…だが、周りの人々は気付いていない…なぜならば彼ら以外の時間が止まっているからだ…。

 

 

「(どうしてこんな事になってるんだ!?)」

Dホイールで必死に逃げる少年は考えを巡らせる…事の始まりは数分前に遡る…。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「ここが未来都市ハートランド…ハートマークが多いなぁ、ネオドミノシティも大概だけど…ここまでじゃないぞ…」

青いDホイールに乗った少年は近未来の街並みを眺める…。

 

「えっと、お祖父ちゃんが言うには…この街にいる知り合いにこのカードを渡して欲しいらしいけど…」

少年は封筒を見る…彼は祖父からお使いを頼まれ、この街を訪れたのだ…。

 

「一応、住所は聞いたから改めてナビをセットして…よし、行こう!」

少年はDホイールのエンジンを掛けて走り出した…。

 

 

「へぇ、お掃除ロボットがこんなに普及してるんだ…このゴミはどうやって処分してるんだろう?それに…ARデュエルも色んな場所でやってるなー、そのうちライディングデュエルもそうなるのかな〜?」

街を見物しながら走る少年…その時だった!

 

 

キン─!

 

 

「え…?なんだ!?みんなが固まったぞ!?」

それは突然の事だった、足を踏み出したまま歩行者は固まり…鳥は翼を広げたまま空中に留まっている…。

 

 

『貴様、ナンバーズを持っているな?』

 

「えっ…?」

静止した世界の中で声が響く…それは少年の後ろに現れた紺色のコートの少年の声だった…。

 

『この時間の流れが1万分の1になった世界で動けるのは「No.」を持つ者のみ…オレはナンバーズ・ハンター…貴様の魂ごと…ナンバーズを狩らせてもらうぞ!』

 

「い、いきなりなんなんだよ…!?これは…逃げるが勝ちだ!!」

 

『っ…!!待て!!』

少年は咄嗟にDホイールを走らせ、コートの少年は何処から取り出したのかグライダーでDホイールを追い掛けた…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「(どうする…!空から狙われてるんじゃ僕が不利…!しかも、時が止まってる空間から脱出できない!!…相手のガス欠を待つしかない…!)」

少年は考える…モーメントエネルギーで動くDホイールにガス欠はない、だが…追い掛けてくる青年のグライダーには限界が有るはずだと…

 

『オレのガス欠狙いか?残念だがオービタル7は小型モーメントと特殊なエネルギー源を持つハイブリッド型だ!地の果てまで追いかけるぞ!』

 

「マジかよ!!ってうわぁ!?」キキーッ!!

少年はDホイールを急停車させる…気付けば目の前は川辺…逃げ場がない…!

 

「(うぅ…!爺ちゃんみたいに()()ができたら…!!)」

 

『諦めろ、貴様の持つ「No.」…奪わせてもらう!』

 

ビシュン!

 

「うわっ…!?デュエルアンカー!?」

 

『その通り、デュエルが終わるまでそのアンカーは外れない…観念しろ』

 

「(…あいつは「魂ごと狩る」って言ってた…!なんだかヤバイ…!考えろ、考えるんだ…!!)」

歩み寄る紺コートの少年を前にDホイールの少年は必死に考える…!

 

 

……

 

 

─流星…もし…もしも、自分では解決できない、逃げられない危ない目にあったら…助けを呼ぶんだ…()()()ならきっと答えてくれる!─

 

「あの人…?」

 

 

─お前も知っているさ…その名前は…─

 

 

 

……

 

 

「…助けて…」

 

『命乞いか?残念だが…意味はない、心配するな…痛みは一瞬だ』

紺コートの少年…カイトは相手の命乞いに耳を貸さない…だが、それは…彼に向けたものではない!!

 

 

「助けて!!メタルナイト─!!」

 

 

『なに…?』

 

《っ…!カイトサマ!超超高速で近いてくる反応が……来るでアリマス!!》

 

 

ドォン!! バシン!!

 

 

『なにィ─!?』

 

ソニックブームと共に人影がカイトと少年の間に入り込む…それと共にデュエルアンカーが切断される!

 

 

「やれやれ…間に合ったみたいだな、助けを呼んだのは…君かな?」

 

「メタル…ナイト…!!」

 

太陽の光を反射する機械の鎧…最高・最善を目指すヒーローが現れた!

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

《マスター!時間流の停止反応を確認…ハートランドシティを高速で移動しています!》

 

「なに?カイトが現れたのか…?」

 

「41」の事件から数日…酒気も抜けて家でのんびりしていた遊海にアヤカが事態を知らせる…!

 

 

「高速で移動…『No.』持ちが逃げてるのか?少し気になるな…様子を見てみようか…」

 

《いえ…助けに向かった方が良いかと…》

 

「ん?どうしてだ?」

 

《魂の色が、似ているんです…マスターの知り合いに…!》

 

「っ!いくぞ!!」 

遊海は慌てて家から飛び出した…

 

 

「あれか…!」

閃光竜に乗った遊海は時間停止フィールド(仮)の外側から逃げている人物を観察する…それは青いDホイールだった。

 

《この先は川辺で行き止まりです!》

 

「追い詰められたな…」

川辺近くで追い詰められた青いDホイールと追い詰めたカイト…その時だった…!

 

「助けて!メタルナイト─!!」

 

「やはり…!!」

遊海はそのまま高い高度から飛び降りた…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

『オービタル!時間はまだ遅効化したままか?』

 

《そうでアリマス!時間はまだ1万分の1のままでアリマス!》

 

『ならば…奴もナンバーズを持っている…!』

カイトは目の前に立つ鋼の戦士を睨みつける…!

 

 

「危ないところだったな、君はなんで彼に追われていた?」

 

「メタル、ナイト……僕、お祖父ちゃんにお使いを頼まれて…このカードを届けろって…!」

ヘルメットを被った少年が見せたのは「No.49秘鳥フォーチュンチュン」だった…。

 

「そういう事か…話は後で聞こう、今は…」

 

『メタルナイト…かつての「鋼の騎士」を名乗る者よ…!貴様が何者であれ…ナンバーズを持っているなら容赦はしない!貴様のナンバーズ…狩らせてもらう!』

カイトは冷たい目でメタルナイト…遊海を睨みつける!

 

「いいだろう、君がどうして『No.』を狩るかは聞かない…だが、君が無闇に人々を襲うなら…俺は君を打ち倒す!!」

 

 

『デュエルモード!フォトン・チェンジ!』

 

「ハッ!!」

カイトのコートが紺色から白に変化し、遊海の左目は青から赤に変化する!

 

【ARビジョン…リンク完了!】

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

遊海LP4000

カイトLP4000

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『一時休戦』を発動!お互いに1ドローし、次の相手エンドフェイズまでお互いの受ける全てのダメージは0になる!さらに『超量妖精アルファン』を召喚!」

白いウサギのような妖精が現れる ATK0

 

「『アルファン』の効果発動!自身をリリースしてデッキから『超量士レッドレイヤー』『超量士グリーンレイヤー』『超量士ブルーレイヤー』を公開…そして相手の選んだ1枚を特殊召喚し、残りの2枚を墓地に送る!選んでもらおうか!」

遊海の背後に3枚のARビジョンが現れる

 

『…右だ!』

 

「『超量士ブルーレイヤー』を特殊召喚!」

母なる海の力を宿した戦士が現れる ATK1200

 

 

「『ブルーレイヤー』の効果発動!召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから『超量』カード『超量合神─マグナフォーメーション』を手札に加える!さらに墓地に送られた『超量士レッドレイヤー』の効果発動!墓地の『超量士グリーンレイヤー』を効果無効で特殊召喚!」

全てを吹き飛ばす風の力を宿した戦士が現れる ATK1600

 

「そしてフィールド魔法『超量機艦マグナキャリア』を発動!」

遊海の背後に巨大な宇宙船が現れる!

 

 

『さらに「マグナキャリア」の効果発動!手札の「超量士ホワイトレイヤー」を墓地に送り…「グリーンレイヤー」と同じ風属性の「超量機獣」をエクシーズ召喚する!俺は「グリーンレイヤー」1体でオーバーレイ!』

 

『なに!?モンスター1体でのエクシーズ召喚だと!?』

グリーンレイヤーが腕を掲げ信号をマグナキャリアに送信する!

 

「現われろ!騎乗召喚!『超量機獣エアロボロス』!」

マグナキャリアから緑色のドラゴン型飛行機が射出され、グリーンレイヤーが操縦席に乗り込む! ATK2200

 

 

「墓地に送られた『ホワイトレイヤー』の効果発動!デッキから2体目の『アルファン』を手札に加える!さらに再び『マグナキャリア』の効果発動!手札の『アルファン』を捨て…オーバーレイ!」

ブルーレイヤーが腕を掲げ、信号を送信する!

 

「騎乗召喚!『超量機獣グランパルス』!」

マグナキャリアからイルカ型の潜水艦が射出され、ブルーレイヤーが操縦席に乗り込む! DEF2800

 

「カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

遊海LP4000

エアロボロス グランパルス  マグナキャリア 伏せ3 手札0

 

 

 

「すごい…まるで戦隊ヒーローみたいだ…!」

Dホイールの少年は現れたモンスターに目を奪われている…。

 

 

『フン、モンスター1体でのエクシーズ召喚には驚かされたが…我が「銀河眼」の前には無力にすぎない!!』

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『自分の場にモンスターがいない時!「フォトン・スラッシャー」は特殊召喚できる!』

輝く剣を持つ単眼の剣士が現れる ATK2100

 

『さらに「フォトン・クラッシャー」を召喚!』

光輝く棍棒を持った戦士が現れる ATK2000

 

『そして攻撃力2000以上のモンスター2体をリリースする事で、このモンスターは特殊召喚できる!現われろ!光の化身!「銀河眼の光子竜」!!』

《ギャオオン!!》

 

カイトが手元に現れた赤い十字架を投擲する…そして十字架を中心に光が集い、瞳に銀河を宿すドラゴンが現れる! ATK3000

 

 

「『ギャラクシーアイズ』…綺麗なドラゴンだな」 

 

『フン…我が「ギャラクシーアイズ」の攻撃にひれ伏すがいい!バトルだ!「ギャラクシーアイズ」で「エアロボロス」を攻撃!破滅のフォトン・ストリーム!』

 

「甘い!『エアロボロス』の効果発動!ORUを一つ取り除き、『銀河眼』を裏守備表示に変更する!ダウン・フォース!!」

 

『なに!』

ORUを取り込んだエアロボロスから凄まじい風が放たれ銀河眼を地面に叩き付ける! ATK3000→DEF2500

 

 

『くっ…!魔法カード『太陽の書』を発動!「ギャラクシーアイズ」を攻撃表示に変更!カードを2枚伏せてターンエンド!』

銀河眼が光を取り戻す!DEF2500→ATK3000

 

カイトLP4000

裏光子竜 伏せ1 手札2

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「リバース罠『リビングデッドの呼び声』発動!甦れ!『超量士レッドレイヤー』!」

全てを燃やし尽くす炎の力を宿した戦士が現れる ATK2000

 

 

「『レッドレイヤー』の効果発動!墓地の『グリーンレイヤー』を手札に加える!さらに『マグナキャリア』の効果発動!手札の『超量要請アルファンコール』を墓地に送り!『レッドレイヤー』でオーバーレイ!!」

レッドレイヤーが腕を掲げ、信号を送信する!

 

「騎乗召喚!『超量機獣マグナライガー』!」

マグナキャリアから赤き獅子型ロボットが射出されレッドレイヤーが操縦席に乗り込む! ATK2600

 

 

「さらに『エアロボロス』の効果発動!手札の『グリーンレイヤー』をORUに変換する!」

手札から飛び出したグリーンレイヤーがエアロボロスに騎乗する! ORU0→1

 

 

『チィ…!(焦るな…!伏せてあるのは『光子化』…そして相手がモンスターエクシーズである限り…オレに負けはない!!)』

 

 

「俺は『マグナキャリア』の最後の効果発動!このカードを墓地に送り!フィールドの3体の『超量機獣』とそのORU全てを素材にエクストラデッキから特殊召喚を行なう!!オレは『マグナライガー』『エアロボロス』『グランパルス』で疑似オーバーレイネットワークを構築!GO!マグナフォーメーション!!」

 

『な、なんだと─!?』

 

《違うランクのモンスターエクシーズでのエクシーズ召喚!?》

カイトもオービタルも遊海の常識外の行動に驚愕する!!

 

「宇宙の平和を守るため!戦士の魂が1つとなる!超量合神!完成!『超量機神王グレート・マグナス』!!」

3体の機獣と3人の戦士に魂が1つとなり最強のロボットが現れる! ATK3600

 

 

《ランク12のモンスターエクシーズですと!?》

 

『くっ…!!』

 

「すげぇ…!!超カッコいい!!」

 

 

「バトルだ!『グレートマグナス』で『銀河眼の光子竜』を攻撃!!」

 

『させるか!罠カード「光子化(フォトナイズ)」を発動!相手モンスターの攻撃を無効にする!!』

 

「無駄だ!ORUを4種類以上持った『グレートマグナス』は『超量』カード以外の効果を受けない!!」

 

『なんだと!?』

グレートマグナスが目の前に現れた光のオーラを切り裂く!

 

「さらに罠カード『超量機神剣─マグナスレイヤー』を発動!このカードを『グレートマグナス』に装備し攻撃力をランク×100アップする!エネルギーチャージ!」

巨大な光の剣が虹色の光を纏う! ATK3600→4800

 

 

「竜を切り裂け!機神剣・マグナスラッシュ!!」

 

『「ギャラクシーアイズ」!?うわぁぁ─!!』

《カイトサマ!?》

機神剣の一撃が銀河眼を両断…爆発する!

 

カイトLP4000→2200

 

 

「さらに『マグナスレイヤー』のもう一つの効果発動!このカードを墓地に送り…『グレートマグナス』は3回まで攻撃できる!プレイヤーへ…ダイレクトアタック!」

 

『っ…!!!』

グレートマグナスの龍口の一撃がカイトのライフを削りきった…

 

 

 

カイトLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴様…情けを掛けたつもりか…!!』

 

「そんなつもりはない…既に()()()()の奴をいたぶるような趣味は…俺にはないだけだ」

 

『っ…!』

グレートマグナスの拳はカイトに直撃する寸前で止められている…。

 

「今は去れ、ナンバーズハンター…貴様の目的は聞かん!だが、覚えておけ!この街には俺がいる!お前が無辜の人々を…無害な人々の魂をこれ以上奪うなら…俺は容赦しない!!」ギン─!

 

『っ…オービタル!』

 

《か、カシコマリ!!》

バイクモードに変形したオービタルに乗り、カイトは去っていった…。

 

 

 

 

 

「…ふぅ、危なかったな少年!」

 

「あ、ありがとうございます!」

カイトの退却を見届けた遊海は少年に声を掛ける…

 

 

「それで…君は誰にそれを届けようとしたんだ?」

 

「あっ…えっと…ハートランドに住んでる…白波遊海さんに…メタルナイトは知ってますか?あの2代決闘王と同じ名前なんですけど…?」

 

「…待ってくれ、君の名前は?」

 

「あ…!すいません!僕は…」

少年は青いヘルメットを脱ぐ…あらわになった顔は黒髪に赤のメッシュに蟹のような髪型…とある人物の若い頃に瓜二つだった。

 

 

「僕は不動流星です!お祖父ちゃんの不動遊星から頼まれてカードを届ける為に来ました!」

 

「そうかそうか…!よく来たな流星!…小さい頃にあった以来だったか…アーマーオフ!」

 

「えっ…?メタルナイト!?」

鎧を脱いだメタルナイトに流星は驚く!

 

「俺がメタルナイト…そして遊星の友達の白波遊海だ!久しぶりだな!」

 

「え…うえええぇ─!?」

 

夕方の川辺に流星の声が響き渡った…。

 

 

 

 

 

 

 

Sideカイト

 

 

 

「はぁ…はぁ…!!メタルナイト、め…!」

 

《カイトサマ…お身体の調子は…》

 

「オービタル、しばらく1人になりたい…あっちへ行っていろ」

 

《…カシコマリ》

 

「…くそっ…!」ドサッ

オービタルが退出した後、カイトは自室のベッドに身体を投げ出した…カイトがデュエルの際に使う「フォトンモード」…その力は科学の力で「No.」を制御する為のものでもあるのだが…その強力過ぎる力はカイトの身体を確実に蝕んでいた…。

 

 

「…メタルナイト…あの男は、本物だ…!デュエリストではない……本物の『決闘者』だった…!」

カイトは対峙したメタルナイトの様子を思い出す…No.を持つにもかかわらず…力に飲まれず、弱きを助け…悪を挫く…その姿はまさに幼い頃に憧れた「英雄」そのものだった…。

 

 

「ハルト…オレはいったい、何をしてるんだろうな──……」

そのままカイトの意識は落ちていく、幼い頃の小さな幸せ…それを夢に見ながら…カイトはつかの間の眠りに落ちた…。

 



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明鏡止水─走り続けた先へ─

こんにちは!S,Kです!

無事にオリュンポス攻略終わりました!


…ベリル、そしてリンボ…おめーらは…絶対に許さねぇ!!


コホン…それでは最新話をどうぞ!

P.S

忘れてた…今日は私の誕生日だった…。


「遊星!お前なぁ…『No.』を拾ったなら拾ったで先に俺に連絡をくれよ!?コレ、結構危ないカードなんだぞ!?」

 

『そうだったのか…アキや流星に手渡しても大丈夫そうだったから安心していたんですが…』

 

カイトとの遭遇の後、動揺していた遊星の孫・流星を家に案内した俺はネオドミノシティの遊星とテレビ電話をしていた、見た目は…穏やかに歳を重ねたZ-ONEといえば伝わるだろうか?

 

 

「おそらく…お前が『クリアマインド』を習得してたおかげで元々負のカードだった『No.』の力が相殺されたんだと思うが…まぁ、お前らしいカードだよ」

 

『ははは…ありがとうございます…』

遊海は手にした『秘鳥フォーチュンチュン』を見る…かつて遊星の開発した『フォーチュン』、そして『幸運の青い鳥』をイメージしたであろうこのカードはまさに遊星の心を写したと言われれば納得である。

 

 

「…で、なんで流星をこの街に向かわせたんだ?」

 

『……やっぱり遊海さんには全部お見通しですね…実はあの子は…「クリアマインド」には到達しているんですが…「アクセルシンクロ」ができないんです…』

 

「なんと…?」

遊星の言葉に遊海は首を傾げる…アクセルシンクロは超スピードの中で明鏡止水の境地…「クリアマインド」を習得する事で可能になるライディングデュエルでの切り札…本来であれば「クリアマインド」を身に着ければ自然とアクセルシンクロは可能になるのだが…?

 

『流星は少し気弱なところがあって…おそらく()()()でブレーキを掛けてしまっているようなんです…』

 

「なるほどな、それで俺に修行をつけてほしいと…わかった!普通にライディングすればいいな!」

 

『相変わらずですね遊海さん…流星を頼みます』

 

「ああ、まかせとけ!キッカケぐらいは掴ませるさ」

遊海はそう言って電話を切った…。

 

 

 

 

 

《フォウ、フォ〜ウ!キュー!》

 

『あはは!フォウってモコモコだな〜!よしよし〜』

 

「…なんだか新鮮な光景だな…」

リビングに戻ると流星とフォウが戯れていた、遊星似の彼が無邪気な笑顔を浮かべていると昔を思い出す…なかなか感情を表に出さなかった遊星、その孫がこうして笑っていると…あの時に未来を守る事ができてよかったと改めて感じる事ができる…。

 

『あっ、遊海さん!お祖父ちゃんは何か言ってましたか?』

 

「ん?ああ、お前に修行をつけてほしいってさ!なんだか悩み事があるらしいじゃないか?」

 

《フォウ?》

遊海はソファに座っていた流星の隣に腰掛ける

 

『実は…僕、お祖父ちゃんみたいなアクセルシンクロができないんです…若い頃のお祖父ちゃんの事は昔から聞かされてきました、アクセルシンクロを使ってすごく強い決闘者としのぎを削ったって…だから僕もお祖父ちゃんの…「ネオドミノシティの英雄」みたいにアクセルシンクロを受け継ぎたいんです!』

流星はまっすぐな目で思いを語る…

 

「なるほど…流星、お前は本当に遊星に憧れてるんだな…わかった、明日は日曜日だ…俺がライディングデュエルに付き合おう!」

 

『本当ですか!?ありがとうございます!伝説の決闘者とデュエルできるなんて光栄です!』

《フォウ!キュー!》

遊海の提案に流星は目を輝かせて喜んでいる。

 

「2人とも〜ご飯できましたよー!」

 

「おっ、ありがとう!流星、今日は家に泊まっていくといい!」

 

『ありがとうございます!』

 

《フォ〜ウ!》

 

「ふふっ、フォウ君も嬉しそうね!」

 

 

その日は3人で楽しい食卓を囲んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし…用意はいいか、流星!」

 

 

『はい!いつでも行けます!』

翌日、遊海と流星の姿は隣町のデュエルサーキットにあった…そしてその観客席では……

 

 

 

「スゲー!これがライディングデュエルのサーキットか!」

 

「私、生で見るの初めて!」

 

「あの人…本当になんでもできるよな…」

 

(ライディングデュエル…興味深いな…)

 

遊馬にアストラル、そして小鳥と鉄男がライディングサーキットを眺めている、その経緯は少し遡る…

 

 

 

 

─朝─

 

 

 

「じゃあ、先に行ってるからな!」

 

「はい!あとからお弁当持って行きますね!」

 

『ありがとうございます!』

翌朝、朝食を摂った遊海と流星はDホイールの整備を終えてライディングレーンへと向かおうとしていた、そこへ…

 

 

 

「あ!おはよう白野!…あれ、その人は…?」

 

(この辺りでは見かけない顔だな…それに、デュエルディスクと一体化したバイク…?)

 

たまたま遊馬とアストラルが通りかかる、私服を着てる事から何処かへ遊びに行くのだろう。

 

 

「おう!おはよう遊馬!こいつは俺の知り合いの流星君だ!」

 

『こんにちは!不動流星です!』

 

「おう!オレは九十九遊馬!白野の一番弟子だ!」

 

(…不動…?何処かで聞いたような……?)

流星と遊馬は握手を交わす、アストラルは…何故か首を傾げている…。

 

 

『今日はゆ…白野さんにライディングデュエルを習いに来たんです!』

 

(ライディングデュエル…?)

 

「(バイクに乗りながらやる特別なデュエルなんだ!スピードの世界で戦うのが楽しいらしいぜ?)」コソコソ

アストラルの疑問に遊馬が小さな声で答える…。

 

「遊馬、俺達はこれから隣町のデュエルサーキットに行くんだが…一緒に来るか?」

 

「いいのか!?ちょうどオレ達も鉄男と小鳥と一緒に隣町に行くところだったんだ!」

 

「そうか…ならちょうどいい!きっとWDCの参考になるはずだ!」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

そんなやり取りがあり、遊馬達の前でライディングデュエルをする事になったのだ。

 

 

 

(遊馬、私にはライディングデュエルに関する記憶がない…どのようにデュエルするのだ?)

 

「え〜っと…オレもそんなにわからないんだけど…とりあえず普通のデュエルと違うのは3つ!1つ目に専用のフィールド魔法が常に発動してる事…2つ目に普通の魔法カードは使えずに『スピード・スペル』っていう専用の魔法カードを使える事…それから負ける条件にクラッシュしたら負け、っていうルールが追加される事ぐらいか?」

 

(なるほど…君の説明は少しわかりづらいが…あとは見ながら分析するしかないようだ)

アストラルはサーキットで準備を進める2人を見つめた

…。

 

 

 

「ルールは『スピードワールド2』でいいな?」

 

『はい!大丈夫です!』

 

 

【デュエルモードスタンバーイ!フィールド魔法『スピードワールド2』発動!】

2人がデュエルモードを起動し、スタートラインにつく!

 

 

『「ライディングデュエル!アクセラレーション!!」』

 

ドルル…ギュアァァン!!

掛け声と同時に流星と遊海はスタートをきる!専攻は…

 

 

「先攻はもらうぞ!」

 

『速い…!!』

 

全盛期の遊星に匹敵するライディングテクニックで遊海が第一カーブを先取する!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

遊海LP4000

流星LP4000

 

 

 

特殊ルール

 

ライディングデュエル

 

スピードワールド2 常時発動

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」Sp0→1

「『水晶機巧(クリストロン)─シストバーン』を召喚!」

紫水晶の身体を持つワイバーンが現れる ATK1500

 

「『シストバーン』の効果発動!自身を破壊してデッキからクリストロンチューナー『水晶機巧─シトリィ』を特殊召喚!」

黄水晶の身体の小さなロボットが現れる DEF500

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

遊海LP4000 SP1

シトリィ 伏せ1 手札4

 

 

 

(遊馬、スピードカウンターとはなんだ?)

 

「えっと…スピードカウンターは『スピードスペル』を使うのに必要なカウンターで、お互いのスタンバイフェイズに1つずつ増えていく…だってさ!」

 

「遊馬はアストラルと一緒に勉強中か?」

 

「そうみたい…あんなにパンフレットとにらめっこして…あの集中力が勉強でもできたらなー」

遊馬は貰ってきたパンフレットを見ながらアストラルの疑問に答えている…。

 

 

 

『僕のターン!ドロー!』 SP1→2

『「スピード・ウォリアー」を召喚!』

高速で疾走する戦士が現れる ATK900

 

『バトル!「スピードウォリアー」で「シトリィ」を攻撃!召喚されたターンに「スピードウォリアー」が攻撃する時!攻撃力は倍になる!ソニック・ダッシュ!!』

スピードウォリアーの足蹴りがシトリィに迫る! ATK900→1800

 

 

「『シトリィ』の効果発動!相手のメインまたはバトルフェイズに墓地の『シストバーン』を効果を無効にして特殊召喚!」

 

『このタイミングでモンスター効果!?』

遊海の場に再びワイバーンが現れる DEF1500

 

「さらに!そのモンスターと『シトリィ』でシンクロ召喚を行なう!俺はレベル3の『シストバーン』にレベル2の『シトリィ』をチューニング!」

 

2+3=5

 

「シンクロ召喚!『水晶機巧─アメトリクス』!」

紫水晶の鎧を纏う戦士が現れる! ATK2500

 

 

『モンスターが「緊急同調」の効果を持っているのか…!』

 

「そしてシンクロ素材となった『シストバーン』は除外される…さて、どうする?」

 

『…バトルフェイズを終了!カードを2枚伏せてターンエンド!』

流星LP4000 SP2

スピードウォリアー 伏せ1 手札4

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP2→3

「『水晶機巧─クオン』を召喚!」

水晶の身体を持つロボットが現れる ATK500

 

「バトルだ!『アメトリクス』で『スピードウォリアー』を攻撃!」

 

『罠カード「ガード・ブロック」を発動!戦闘ダメージを0にして1ドロー!』

アメトリクスがスピードウォリアーを粉砕する!

 

 

「ふむ…俺はこのままターンエンド!」

遊海LP4000 SP3

アメトリクス クオン 伏せ1 手札4

 

 

 

 

「…なんか、白野のデュエルにしては静かなデュエルじゃねぇか?」

 

「本当だ…いつもなら2ターン目には高い攻撃力のモンスターが出てくるのに…?」

遊馬と小鳥は首を傾げる…普段の遊海なら速攻でデュエルを決める事が多いからだ…。

 

(…おそらく、彼の為に手加減をしているのだろう…彼に何かを掴ませる為に…)

 

 

 

 

『僕のターン!ドロー!』SP3→4

『…手札の「レベルスティーラー」を墓地に送り、「クイックシンクロン」を特殊召喚!』

ガンマン風のロボットが現れる DEF1400

 

『そして墓地の「レベルスティーラー」の効果発動!レベル5の「クイックシンクロン」のレベルを1つ下げて自身を墓地から特殊召喚!』

1つ星のテントウムシが現れる ATK800

 

クイックシンクロン☆5→4

 

 

『さらに!墓地からモンスターが特殊召喚された事で手札の「ドッペル・ウォリアー」を特殊召喚!』

黒い銃を持った兵士が現れる ATK800

 

『僕はレベル1の「レベルスティーラー」とレベル2の「ドッペルウォリアー」にレベル4の「クイックシンクロン」をチューニング!』

 

1+2+4=7

 

『集いし叫びが木霊の矢となり空を裂く!希望を繋ぐ道となれ!シンクロ召喚!来い!「ジャンク・アーチャー」!』

単眼のオレンジ色の弓兵が現れる ATK2300

 

 

『そして「ドッペルウォリアー」の効果発動!このカードがシンクロ素材になった時!「ドッペルトークン」2体を特殊召喚!』

黒い小さな兵士が現れる ATK400  ×2

 

『さらに!「ジャンク・シンクロン」を召喚!』

オレンジ色のメガネを掛けたロボットが現れる ATK1300

 

『さらに手札の「ジャンク・サーバント」の効果発動!フィールドに「ジャンク」モンスターがいる事で特殊召喚できる!』人型の単眼ロボットが現れる ATK1500

 

『……いきます!!レベル1の「ドッペルトークン」とレベル4の「ジャンクサーバント」にレベル3「ジャンクシンクロン」をチューニング!!』

 

1+4+3=8

 

『集い願いが新たに輝く星となる!!希望を繋ぐ道を示せ!シンクロ召喚!!飛翔せよ!「スターダスト・ドラゴン」!!』

《キュオオン!!》

煌めく光を纏い星屑のドラゴンが咆哮する! ATK2500

 

 

「…久しぶりだな『スターダスト』!元気にしていたか!」

 

《キュオ!キュオオン!!》

スターダストは遊海の言葉に応えるように咆哮する!

 

 

「ねぇ!あれって決闘庵にあった木像の…!?」

 

(不動…流星……まさか、伝説の英雄・不動遊星の子孫か!?)

 

「なっ…!?英雄の子孫だって─!?」

観客席の遊馬達はスターダストドラゴンの登場、そして流星の正体に驚きを隠せない…

 

 

 

 

『行きます!「ジャンク・アーチャー」の効果発動!「クオン」をエンドフェイズまで除外する!ディメンジョン・シュート!!』

弓兵が次元を裂く矢をクオンに放つ!

 

「甘い!『クオン』の効果発動!手札から『水晶機巧─スモーガー』を効果無効で特殊召喚!」

煙水晶の身体の虎が現れる ATK1000

 

『今度は手札から!?』

 

「俺はレベル3の『スモーガー』にレベル1の『クオン』をチューニング!」

 

3+1=4

 

「シンクロ召喚!『水晶機巧─クオンダム』!」

煙水晶の鎧を纏う戦士が現れる DEF2000

 

 

「これで『ジャンクアーチャー』の効果は躱した!そして言っておく!クリストロンのチューナー達はモンスターによって手札・墓地・除外…それぞれの場所からシンクロ素材を呼び出す事ができる!……なんか、同じ事を遊星にも言った気がするなぁ…?」

 

《……約70年前に言ってますね、マスター》

 

「だよね!?」

 

 

『(これが最強の決闘者のデュエル…!でも、負ける訳にはいかない!!)バトル!「スターダストドラゴン」で「クオンダム」を攻撃!シューティング・ソニック!!』

《キュオオオ─!!》

 

スターダストドラゴンがエネルギーを溜める…!

 

 

「流星、見せてやろう!お前が目指す境地を!シンクロチューナー『クオンダム』の効果発動!相手のメイン・バトルフェイズにシンクロ召喚を行なう事ができる!!」

 

『っ…!来る!!』

流星は先をいく遊海の言葉に目を見開く…!

 

キン─

 

「クリアマインド!!俺はレベル5の『アメトリクス』にレベル4シンクロチューナー『クオンダム』をチューニング!!」

 

5+4=9

 

 

「正義を貫く魂が…新たな境地を呼び醒ます!」

 

 

「待って白野さん!!その先は─!!」

 

「その速さじゃカーブに突っ込んじまう─!!」

 

遊海がDホイールを爆発的に加速させる、その先はカーブ…通常なら曲がりきれずにクラッシュする…だが、明鏡止水の境地には問題にはならない─!

 

 

「アクセル─シンクロォォ!」

 

キィン─バシュン!!

 

 

『き─!』

 

(「「「消えたぁ!?」」」)

遊海は一瞬にしてコース上から消え去る…そして

 

キィィン──ギュイン!!

 

「現れろ…!スピードの限界から現れし朱雀の巨人!『水晶機巧─フェニキシオン』!」

ソニックブームと共に遊海が流星の後ろから現れる…そのフィールドには赤水晶の鎧を纏う巨人が佇んでいる! ATK2800

 

 

『アクセルシンクロモンスター…!!』

 

「あ、アストラル…!いま、何が起きたんだ!?」

 

(…推測に過ぎないが…あのバイクのスピードが我々には知覚できない程に加速し、一種の亜空間から再び現れたのではないか…?)

 

「ま、まったく意味がわからねぇ…!」

目の前の出来事を遊馬達は理解できないでいる…しかし、1つ理解できた事があった…「白野は普通ではない」と…

 

 

『アクセルシンクロ…!僕の目指す境地…!!バトルフェイズを終了!ターンエンド!』

流星LP4000 SP4

アーチャー スターダスト ドッペルトークン 手札0

 

 

 

「どうだ流星!これがお前の目指す場所だ!」

 

『白野さん…!本当に貴方はすごい!凄すぎる!!』

流星は現れたアクセルシンクロモンスターに感動する…!

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP4→5

「バトルだ!『フェニキシオン』で『ジャンクアーチャー』を攻撃!破晶紅鳳!」

朱雀の巨人の一撃がアーチャーを粉砕する!

 

『くっ…!?』

流星LP4000→3500

 

 

「流星!…猶予は1ターンだ!決めてみせろ!お前のアクセルシンクロを!!ターンエンド!」

遊海LP4000 SP5

フェニキシオン 伏せ1 手札4

 

 

 

『(僕はアクセルシンクロに成功した事が1度もない…カードが応えてくれた事も…まだない…!)』

流星はエクストラデッキから取り出した()()()()()()を見つめる、それは遊星から引き継いだ『シューティング・スター・ドラゴン』のカード…流星は未だにその姿を祖父の手によるもの以外見た事がない…。

 

『(僕は…必ず受け継いでみせる!!)』

 

 

 

 

 

『僕のターン!…ドロー!!』SP5→6

『よし!「Sp-エンジェル・バトン」を発動!スピードカウンターが2つ以上ある時!2枚引いて…1枚捨てる!』

 

捨てたカード

パワーフレーム

 

 

『「エフェクト・ヴェーラー」を召喚!』

青い髪の妖精が現れる ATK0

 

『レベル1の「ドッペルトークン」にレベル1の「エフェクトヴェーラー」をチューニング!』

 

1+1=2

 

『集いし願いが新たな速度の地平へ誘う!希望を繋ぐ道となれ!シンクロ召喚!進化の力!「フォーミュラ・シンクロン」!』

F1カー型のロボットが現れる DEF1500

 

「来たな…!」

 

 

『「フォーミュラシンクロン」の効果発動!シンクロ召喚に成功した事で1ドロー!…行きます!!』

流星はDホイールの速度を上げる!!

 

「………」

 

『…クリアマインド!!僕はレベル8の「スターダストドラゴン」にレベル2シンクロチューナー「フォーミュラシンクロン」を…チューニング!!』

流星は爆発的に速度を上げていく!!

 

 

「おい!流星もスピードを上げていくぞ!?」

 

「まさか…アクセルシンクロをするつもりなんじゃ…!」

 

「うおぉぉ─!!いけ!流星─!!」

 

 

『アクセルシン…!ッ─!?』

 

 

「…!」

アクセルシンクロをしようとした瞬間、流星の速度が僅かに下がる…アクセルシンクロは…失敗した…!

 

『やっぱり、だめか…!!ターンエンド…!』

流星LP3500 SP6

スターダスト フォーミュラ  手札0

 

 

 

 

「えっ…?どうして失敗したんだ!?」

 

「わからないわ…動きは白野さんと同じなのに…!?」

 

「…あの子はまだ、『迷い』を捨てきれてないのよ」

 

「「「翠/さん!!」」」

アクセルシンクロの失敗に首を傾げる遊馬達のもとにランチセットを持った翠が現れる。

 

「アクセルシンクロはスピードの中での無我の境地…『クリアマインド』に達しないとできないの、クリアマインドは少しでも迷いがあれば揺らいでしまう…その迷いを無くさないと…彼はアクセルシンクロに辿り着けない…!」

 

 

 

 

「…流星、お前…()()()()()()()()のが怖いんだろ?」

 

『っ…!』

遊海の言葉に流星は動揺をみせる…

 

「Dホイーラーは危険な目に遭う事が多い…決闘中の平均時速は100キロ超、アクセルシンクロなら()()()()()()()()…普通ならDホイールを制御する事もままならない速さだ、俺が思うに…初心者の頃にDホイールでクラッシュしたな?」

 

『…その通りです、アカデミアでの授業中に…全治3ヶ月の怪我をしました…!痛かった……怖かった…!!』

 

 

…それは彼がライセンスを取って初めての授業の時の事…ライセンスを取ったばかりの流星は無謀にもアクセルシンクロに挑戦した…しかし、結果は失敗…原因は制御不足と使用したのが練習用の量産型Dホイールだった事…流星は1週間生死の境を彷徨い、何とか生還したのだ…。

 

 

『その時の僕は焦っていました…じいちゃんの…「不動」の名を背負って…父さんでも習得できなかったアクセルシンクロをやってやろうって…!でも…!』

 

「怖いのは当たり前だ…俺だって怖いさ」

 

『えっ…?』

遊海の思わぬ言葉に流星は聞き返す

 

 

「俺の人生初ライディングはな、敗北で始まった…イリアステルの…ラプラスのせいでな…」

 

『ラプラス…その人って…』

流星はその名に聞き覚えがあった、遊星から聞かされた昔話…その中でイリアステル最強と言われた…哀しい決闘者の事を…。

 

 

「俺はクラッシュして…全治…いや、常人なら治らないレベルの怪我をした…次にDホイールに乗ったのは…それから1()0()()()()()()だ」

 

『っ…!!』

 

「戦う為にはDホイールが必要だった…だから俺は恐怖を乗り越えた…!怪我をしたら半年寝たきりになりかねない身体でな……流星、乗り越えるべきは『不動遊星(過去の英雄)』じゃない……『不動流星(自分自身)』だ!」

 

『乗り越えるべきは…自分自身…!』

長き時を生きた遊海の言葉…それは流星の魂に小さな火を点ける…!

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP6→7

「『Sp-ヴィジョン・ウィンド』を発動!スピードカウンターが2つ以上ある時!墓地のレベル2以下のモンスター『シトリィ』を特殊召喚!」

再び黄水晶のロボットが現れる ATK500

 

「さらに手札の『水晶機巧─サルファフナー』の効果発動!手札の『水晶機巧─プラシレータ』を捨てて自身を特殊召喚!」

レモンクォーツの身体を持つ龍が現れる DEF1500

 

 

「そして『サルファフナー』の効果により『シトリィ』を破壊!そしてリバース罠『クリストロン・エントリー』を発動!手札から『水晶機巧─リオン』、そして墓地から『クオン』を特殊召喚!」

灰水晶と水晶のロボット達が現れる ATK500 ATK500

 

 

「俺はレベル5の『サルファフナー』にレベル3の『リオン』とレベル1の『クオン』をダブルチューニング!!」

 

『ダブルチューニング!?それってジャックさんの─!?』

リオンとクオンが水晶でできた輪に変化しサルファフナーを包み込む!

 

5+3+1=9

 

「世界を守護する四神の力!今こそその力を示せ!シンクロ召喚!現われろ…黄龍の機神!『水晶機巧─グリオンガンド』!」

神々しい光を放つ機械の巨人が現れる ATK3000

 

 

「チューナー2体でのシンクロ召喚!?そんなのアリかよ!?」

 

「これで驚いちゃダメよ遊馬君、世界にはチューナー3体でトリプルチューニングする人もいるのよ?」

 

(…これがシンクロ召喚の力か…!)

アストラルは遊海の見せるシンクロの境地を目を皿のようにして観察している…。

 

 

『攻撃力3000…!』

 

「『グリオンガンド』の効果発動!シンクロ召喚に成功した時!シンクロ素材の数まで相手のフィールド・墓地のカードを除外する!除外するのは『スターダストドラゴン』『フォーミュラシンクロン』そして墓地の『レベルスティーラー』!黄龍抹殺陣!!」

水晶でできた龍が流星に襲いかかる!!

 

 

『(この効果を受けたら…負ける!!)』

流星は本能的に理解する、遊海との実力差…自分の弱さ

…そして…僅かに残された「希望」を…!

 

『(僕は……いや、()()は…まだ終わりじゃない…!!)』

 

 

キィン─!!

 

 

 

 

─…なんだ、目が醒めたと思ったら…面白い事になってるな()()

 

 

 

『えっ…?』

 

 

─調子が悪いんだろ?力を貸してやるよ…さぁ、行けよ…スピードの向こう側へ…!─

 

 

キィィン─!!

 

「なに…!?」

流星のDホイールが赤い光を纏う…その姿はまるで…

 

「まさか、そのDホイール…!遊星の─!?」

 

 

『今なら…いける気がする!!』

流星は爆発的に速度をアップさせる!!

 

 

─心配するな、お前は真っ直ぐ前を見ていればいい…もう一度見せてくれ…希望の翼を…!─

 

 

『(風に身体が解けていく…焦りも、恐怖も感じない……オレは……ただ……勝ちたい!!)』

 

 

『クリアマインド!!僕は…オレは!レベル8の「スターダスト・ドラゴン」にレベル2シンクロチューナー「フォーミュラ・シンクロン」をチューニング!!』

 

8+2=10

 

『集いし夢の結晶が!新たな進化の扉を開く!希望を示す道となれ!!』

流星が白紙のカードを掲げる…カードはクリアマインドと共鳴…その真の姿を現す!!

 

『「アクセルシンクロォォォ!!」』

 

バシュン!!

 

 

「やった…!!」

流星は遊海の目の前から消え去る…そして…!

 

『招来せよ!「シューティング・スター・ドラゴン」!!』

《ギュアアアアン!!》

 

赤い翼を持つDホイールと共に奇跡の龍は再び現れる…その名は…シューティングスタードラゴン! ATK3300

 

 

 

(なんだ、あのモンスターは…!『No.』…いや、それ以上の力を秘めている!!)

 

「それよりも見ろよ!流星のDホイールに翼が…!」

 

「す…すごい!!」

 

「あれが…伝説のモンスター…!!」

奇跡のドラゴンの出現に遊馬達は目を奪われる…!

 

 

 

「土壇場で『シューティングスター』を呼び出すか…!しかも、その翼は…!」

遊海は流星のDホイールから生えた光の翼に見覚えがあった…Z-ONEとの決戦の時、フライングデュエルを可能にした赤き翼…それは本来なら己の希望を遊星へと託したアポリアの力…しかし、この世界では…

 

「まだ、そこに居たのか……ばかやろー」

 

遊海の目には見えた気がした…白いコートを翻す男の背中が…

 

 

『やった…!できたよ!「シューティングスター」!!』

《ギュアァァン─!!》

流星は嬉しそうにシューティングスターへと声を掛ける…!

 

「流星!まだデュエルは続いているぞ!俺はこのままターンエンドだ!」

遊海LP4000 SP7

グリオンガンド フェニキシオン 手札1

 

 

 

 

『よし…!力を貸してくれ!「シューティングスター」!!』

《ギュアァン!!》

 

 

 

『オレのターン!ドロー!…いける!!』SP7→8

『「シューティングスタードラゴン」の効果発動!デッキトップ5枚をめくり!その中のチューナーの数だけ攻撃できる!』 

流星はデッキに手をかける!

 

「1枚目!…『アンノウン・シンクロン』!」

 

「2枚目!…『ロード・ランナー』…!」

 

「3枚目!…『ニトロ・シンクロン』!」

 

「4枚目!…『ドリル・シンクロン』!」

 

「5枚目!………『チェンジ・シンクロン』!!」

 

 

(「「「4回の連続攻撃!?」」」)

 

「すごい引き運だ…!だが、『グリオンガンド』は破壊された時、除外されている『シストバーン』を、『フェニキシオン』は俺の墓地に眠るモンスターを特殊召喚できる!」

 

『いいえ…この一撃で決める!!「Sp-ファイナル・アタック」!!スピードカウンターが8つ以上ある時!ダイレクトアタックができなくなる代わりに「シューティングスター」の攻撃力を2倍にする!』

 

「なにぃ─!?」

 

《ギュアアアアアン!!》

流星の想いを受けたシューティングスターが巨大化する! ATK3300→6600

 

 

『バトル!「シューティングスタードラゴン」で「グリオンガンド」と「フェニキシオン」を攻撃!スターダスト…ミラージュ─!!』

 

「これが…流星の真の力か──」

 

4体に分身したシューティングスタードラゴンが遊海へと突撃…そのライフを削りきった…。

 

 

 

 

─ああ、綺麗なものを見た……─

 

 

 

 

遊海LP0

 

流星WIN!

 

 

 

 

 

『……か、勝っちゃた…?僕が、遊海さんに…?』

 

「ああ、お前の勝ちだ…いやはや……昔の遊星を見てるみたいだったぞ?」

デュエルが終わり呆然としている流星に遊海が話し掛ける…。

 

 

『遊海さん、あの…「声」が聞こえたんです、「力を貸してやる」…「希望の翼を見せてくれ」って…』

 

「流星……そのDホイール、色は塗り替えてあるけど…遊星のDホイールを改造した奴だな?」

遊海は流星の青いDホイールを見る…それは色を除けば遊星号に瓜二つだった…。

 

『あ、はい…おじいちゃんが僕の為に再チューニングしてくれたんです…それが…?』

 

「…イリアステルとの決戦…遊星はDホイールで空を駆け、宙にまで昇った…その翼は、死の間際にラプラスが全ての力を使って遊星に与えたものだ……きっと、その力が僅かにDホイールに残っていたんだろう…それが流星を導いたんだ…あいつは本当に不器用な奴でな…たった1人の想い人を救う為に、全てを敵に回したんだ……本当に、馬鹿な奴だ」

 

『遊海さん…』

流星は気付いた…遊海は()()()()()…実際には涙は見せていない…それでも、遊海は泣いているのだと…。

 

 

「どうする流星?俺なら残った力を全て取り除けるが…」

 

『…そのままにしておいてください…ラプラスさんに、これからも見守っててもらいたいんです…!僕の、僕達の歩む道を…!!』

 

「そうか…だってよ、ラプラス…流星の事、頼んだぜ?」

そう言って遊海は優しくDホイールを撫でた…。

 

 

 

 

「白野!流星!すっげーライディングデュエルだった!!」

 

「まさか伝説のドラゴンが見られるなんて…!本当にすごかった!」

 

『あはは…あ、ありがとう…!』

観客席に戻った流星は遊馬達に誉められて照れてしまっている…だが、流星はこのデュエルで本当に大きな成長を遂げたのだ…。

 

 

「白野さんも流星君もお腹減ったでしょう!ゆっくりおにぎりでも食べながら話しましょう!」

 

「うん、そうだな!本当は行儀が悪いが…今日ぐらいはいいだろう!」

 

そうして流星達は楽しい一時を過ごし…流星は自分の街へと帰っていった…新たな希望を胸にして…。

 

 

 

 

 

 

 

『驚きましたよ遊海さん…まさか流星が貴方を倒すとは…!』

 

「俺が一番驚いたよ!いくら『決闘竜』を使わなかったとはいえクリストロンはまぁまぁ強いぞ!?」

その日の夜…遊海は遊星とテレビ電話をしていた…流星の現状報告をする為に…

 

 

『しかしまさか…彼の意識がまだ残っていたとは…』

 

「それだけ強い想いをお前に託したんだよ、遊星…ありがとな」

 

『お礼を言うのはオレの方です…流星の迷いを解決して…新たな「夢」を与えてくれてありがとう、遊海さん』

 

「新たな夢?流星がそんな事を言ったのか?」

 

『ええ、貴方のような「決闘王」になると…今も部屋で必死に勉強をしていますよ』

 

「『決闘王』…か、今は6代目だったか……きっとなれるさ、なんたって遊星とアキ…お前達の孫で俺の弟子なんだからな…」

 

『…はい!オレもその日がくるのを楽しみにしています!』

遊星と遊海は笑いあった…希望の未来を思い描きながら──



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対決!『黒』のナンバーズ!〜希望と友情〜

《フォウ!フォ〜ウ〜》

 

《んん?どうしたのだ?今日はワシの背中で日向ぼっこか?》

 

《フォウ!》

 

「(まるでおじいちゃんと孫だな…)」

 

《(そうですね〜)》

とある日の昼下がり…遊海は久しぶりに穏やかな時間を過ごしていた、窓際ではフォウがメガロックの背中で日光浴をしている…その様子はまるで親子亀またはおじいちゃんと孫のようだった…。

 

 

「…大会も近づいてきた…そして、ナンバーズもこの街に集結する」

 

《私達がナンバーズ持ちに接触する可能性もあります…注意が必要ですね…》

 

「ああ…俺のカードを駆使すれば『No.』相手でも問題なく倒せる…まぁ、ボロを出さないようにしないとな…」

遊海は1人考える…遊海の現在の戦術は大きく制限されている…現在使えないデッキが多く(使えば正体がすぐにバレてしまう等)遊海の主力・使いやすいものはほとんどが表だっては使えないのだ。

 

 

「う〜ん、だいたいは使えるデッキで倒せるけど……何かあった時がなー…」

 

《たまに心配症になってしまうのがマスターの悪いクセですね…マスターは強いです!きっとなんとかなりますよ!》

 

「ありがとうアヤカ…そうだな、先の事を考えてもしょうがない…俺はやれる事を頑張るだけさ!…おっと」

 

《スゥ…スゥ…》

 

《ZZZ……》

遊海は静かに窓辺を見る…そこではフォウとメガロックが静かに眠っている…。

 

「なんだかメガロック達を見てたら俺も眠くなってきたな…少し眠るかな…」

遊海はソファに横になり寝息をたてはじめた…。

 

《おやすみなさいマスター…よい夢を…》

 

 

 

 

 

 

 

 

…夢を見た

 

 

『ねぇ…どうして父さまは帰って来ないの…?』

 

 

……夢を見た

 

 

『父さんは…絶対に帰ってくる!オレは信じてる…!』

 

 

………夢を見た

 

 

『父は…教授と共に…』

 

 

 

…夢を、みた

 

 

─私達は真実を知った、必ず…Dr.フェイカーに罪を償わせる!─

 

 

 

……………俺は…俺では──

 

 

 

 

 

 

ゾワッ─

 

 

 

 

 

「っ…!?」ガバッ!

 

遊海はなんとも言えない不快感を感じながらソファから飛び起きる、陽は既に西に傾き始めている…。

 

《マスター、強力な闇のエネルギーを感知しました…!!発生源は…!》

 

「遊馬とアストラルからだろ…!いくぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

それは小さな喧嘩から始まった、正体不明のナンバーズに対して無謀な攻撃を仕掛けた遊馬、そしてその遊馬を咎めた鉄男…幼なじみとのいつものような小さな喧嘩、しかしそれは遊馬とアストラルに大きな危機をもたらしてしまう…!

 

 

 

 

【ハハハハ…!オレはこの時を待っていたァ!お前に取り憑き…完全体となるこの時をなァ…!破壊してやる…全てを破壊し尽くしてやる!!】

 

96

 

『へっ…!?うわぁぁぁ!?』

 

「遊馬!?」

 

 

鉄男と喧嘩した遊馬…いつものように意地を張り「鉄男なんて友達じゃない!」と言った言葉を運悪く本人に聞かれてしまう、踵を返して去ろうとする鉄男に謝ろうとする遊馬だったが…鉄男は遊馬の腕を振り払う…その時、遊馬の胸元の「皇の鍵」が落ちた…それが異変の始まりだった。

 

遊馬のエクストラデッキからドロリとした黒いモノが溢れ出す…その「闇」はアストラルに襲いかかりアストラルを乗っ取ると遊馬をも拘束してしまったのだ…!

 

 

 

『離せ!離せよ!?アストラル!!』

 

【ククク…お前はもう、逃げられない!!】

 

(…遊、馬…!『ホープ』を、鉄男に…渡せ…!!)

 

『アストラル!?…わかった!!鉄男─!!』

 

「うおっ…て!?『希望皇ホープ』!?」

力を振り絞ったアストラルの言葉に遊馬は鉄男に向かってホープを投げ渡す!

 

【クフフ…!これでオレは()()()()()()()()となった!!ふはははは!!】

アストラルを完全に取り込んだ闇……「No.96」は笑い声をあげる、多かれ少なかれ自意識を持つ『No.』…その中でも「96」は一際強い自我を持ち、()()()アストラルに吸収される事でアストラルを乗っ取ろうとしていたのだ…!

 

 

【んん…?ナンバーズを小僧に渡したか…!そのナンバーズ…渡してもらうぞ!!】ニュルン!!

 

「うわっ─!?」

 

ガキィン─!

 

【なに…?】 

 

96がホープを奪う為に放った触手は不思議なバリアによって弾かれる!

 

 

「鉄男君!今の…!」

 

「わからねぇ…でも、この「鍵」のおかげらしい…!」

鉄男は手にした皇の鍵を見つめる…そして気付く、96をデュエルで倒し…遊馬に鍵を返せばこの状況を解決できるのではないかと…その時だった!

 

ブルルル…ギュイーン!! キキ─!!

 

 

「まったく…厄介な事になってるな…!」

 

【貴様…何者だ!】

膠着状態の96と鉄男達の間に1台のバイクが乱入する…それは…

 

 

「『白野!!』」

遊馬の師たる男…白波遊海だった…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

『白野…!』

 

「おう、遊馬…なんだか大変な事になってるな」

現場へと到着した遊海は遊馬…正確には黒く変色したアストラル…「No.96」を睨みつける!

 

【貴様は…何者だ?】

 

「名乗るなら自分からだろ?()()()()()()()…俺は岸波白野…遊馬の決闘の先生さ」

 

【先生ねぇ…?我が名は「No.96」!最強のナンバーズだ!アストラルはオレが取り込んだ!そこの小僧の持つ「ホープ」を取り込めばオレは世界全てを破壊できる!!】

 

『てめぇ…アストラルを返せぇぇ─!!』

96の言葉を聞いた遊馬は拘束を解こうと暴れるが…96は拘束を緩めない…!

 

 

「白野!俺のせいなんだ!俺が遊馬の鍵を弾いたから…!」

鉄男は遊海に「ホープ」のカードと皇の鍵を見せる…。

 

「…だいたいわかった、No.96!俺とデュエルしろ!お前が勝てば『ホープ』とこのカードをくれてやる!」

遊海は流星から預かった「No.49」を見せる!

 

【ひひっ…!貴様もナンバーズ持ちか…!いいだろう、その勝負に乗ってやる!】

 

『うわっ…!』

 

【お前に自由はない…オレの操り人形として奴とデュエルしてもらうぞ!】

96は遊馬の拘束を解除するが…身体の自由は無く、96の操り人形になってしまっている…!

 

 

「悪趣味な事を…!鉄男、『ホープ』を俺に貸してくれ!」

 

「えっ…でも、『No.』は…!」

遊海の言葉に鉄男は戸惑いをみせる…『No.』は人間の負の心を増幅し、暴走させてしまう…それは「ホープ」ですら例外ではない…!

 

「心配するな、俺が奴を倒して隙を作る…その間に遊馬に皇の鍵を渡すんだ…頼めるか?」

 

「…アンタを信じるぜ、白野!!」

鉄男は遊海へと希望を託す!

 

 

『白野…すまねぇ…!!』

 

「ふっ…心配するな遊馬、すぐに助けてやるからな」

申し訳そうな顔をする遊馬に遊海は軽く返す…そして96を睨みつけた…!

 

 

【「デュエルディスク!セット!Dゲイザー…セット

!!」】

 

 

 

【ARビジョン…リンク完了!】

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

 

 

 

遊海LP4000

遊馬(No.96)LP4000

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『増援』を発動!デッキから『星因子(サテライト)ウヌク』を手札に加える!そして『星因子ベガ』を召喚!」

夜空に輝くこと座の女戦士が現れる ATK1200

 

「『ベガ』の効果発動!召喚・特殊召喚に成功した時!手札の『星因子デネブ』を特殊召喚!」

はくちょう座の力を持つ戦士が現れる ATK1500

 

 

「『デネブ』の効果発動!デッキから2体目の『星因子ベガ』を手札に加える!そして俺はレベル4の『ベガ』と『デネブ』でオーバーレイ!」

2体の戦士が銀河に飛び込む!

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!」

 

39

 

「現われろ!希望の戦士!『No.39希望皇ホープ』!!」

《ホープッ!!》

白き希望の戦士が現れる! ATK2500

 

キィン─!!

 

「『ホープ』、お前の主を救う為だ…力を貸してもらうぜ?…カードを2枚伏せてターンエンド!」

遊海LP4000

ホープ 伏せ2 手札2

 

 

 

【貴様…本当に人間か?なぜナンバーズを使ってそんな平然としていられる?】

96は遊海に問いかける、手の甲に番号こそ刻まれているか…遊海は意に介さず96を睨みつけている…。

 

「俺には『決闘の神様』が付いてるからな!それに…この程度の事で俺の『クリアマインド』は揺らぎはしない!」

遊海は96に啖呵を切る…実際には精霊の力での抑え込み・クリアマインドなど色々な効果の合わせ技で浸食を抑え、コントロールしているのだ。

 

【フン…ならば我が分身によって貴様を塗り潰してくれる!】

 

 

 

 

【オレのターン!ドロー!!】

【手札の『マツボックル』を捨て『コロボックリ』を特殊召喚!さらに手札から捨てられた『マツボックル』は特殊召喚できる!】

ドングリのような妖精と松ぼっくりを被った妖精が現れる ATK200  400

 

【そして『ダークロン』を召喚!】

不気味な笑顔を浮かべた栗の妖精が現れる ATK100

 

【『ダークロン』が召喚に成功した時!自分フィールドのモンスターのレベルは1上がり、闇属性になる!】

 

コロ ☆1→2 地→闇

 

マツ ☆1→2 地→闇

 

ダークロン ☆1→2

 

 

【オレはレベル2闇属性の『コロボックリ』『マツボックル』『ダークロン』でオーバーレイ!】

3体のモンスターが銀河に飛び込む!

 

 

【3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!】

 

96

 

【現われろ…我が分身『No.96』!漆黒の闇からの使者!『ブラック・ミスト』!】

遊馬のフィールドに紫色の雫のオブジェが現れる…その雫から手足が生え、恐ろしい形相の悪魔が現れる!ATK100

 

 

「これが…『ブラックミスト』!?」

 

『前と全然姿が違う!?』

遊馬と小鳥が驚愕の声を上げる…彼らの知る『ブラックミスト』とは姿形がまったく違うのだ…!

 

【ククク…!これがオレの本当の姿なのさぁ!!】

 

「アストラルを油断させる為に変装してた訳か、だが…これ以上は好きにさせん!永続罠『神聖なる波動』を発動!」

 

【好きにさせん?貴様なんぞにオレが止められるか!バトルだ!『ブラックミスト』で『ホープ』を攻撃!】

 

「『神聖なる波動』の効果発動!自分メインフェイズか相手バトルフェイズに手札から『テラナイト』を特殊召喚できる!現われろ!『ベガ』!さらに『星因子アルタイル』!」

こと座とわし座の力を宿す戦士が現れる! ATK1200  17000

 

 

【どれだけモンスターを召喚しようと無駄だ!『ブラックミスト』の効果発動!ORUを一つ使い!『ホープ』の攻撃力を半分にしその攻撃力分『ブラックミスト』の攻撃力をアップする!シャドウゲ─!】

 

「カウンター罠『神聖なる因子』を発動!相手のモンスター・魔法・罠の効果が発動した時!『ベガ』を墓地に送る事でその発動を無効にし、破壊する!!星の裁きを受けよ!!」

 

【な、なぁにぃィィィ!?】

天空に描かれた魔法陣が裁きの光でブラックミストを蒸発させる!!

 

 

「そして、俺はカードを1枚ドローする…何が()()()()()()()()だ…口だけか?」

 

『残念だったな!96!自慢じゃないけど…オレはあの人に一度も勝った事がねぇ!!』

 

【馬鹿な…馬鹿なバカな!?こんなに強い人間がいるはず─!?】

 

()()ズン─!

 

【ガッ─!?】

 

『えっ…!?』

いきなり分身を破壊された96…取り乱した彼を凄まじい圧力…殺気が襲い地面に叩きつける!…なお、遊馬には被害はなく、突然の事に驚いている…。

 

「さっさとターンを進めろ、貴様がどんな策を考えようと…真正面から粉砕する!」

 

【チ、ィ…!!カードを2枚伏せ、ターンエンド…!】

 

No.96 LP4000

伏せ2 手札1

 

 

 

 

『(今伏せたのは『攻撃の無敵化』と『魔法の筒』…!最低でも1ターンは凌がれちまう…!!)』

遊馬は焦る…手札にあったのは2枚の攻撃反応型の罠…白野でも大ダメージを受けてしまうのではないかと…だが…

 

((遊馬、心配するな…))

 

『(アストラル!お前なのか!?)』

遊馬の心へと囚われたアストラルが語りかける…

 

((白野が「ブラックミスト」を倒した事で…支配が揺らいでいる、大丈夫だ…彼は…君の先生なのだろう…?))

 

『(…ああ!)』

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『神聖なる波動』の効果発動!手札から『星因子ウヌク』を特殊召喚!」

へび座の力を宿す戦士が現れる ATK1800

 

「さらに『星因子シリウス』を召喚!」

おおいぬ座の力を宿す戦士が現れる ATK1600

 

「ダメ押しだ!速攻魔法『創星の因子』を発動!フィールドの『テラナイト』カードの数だけフィールドの魔法・罠を破壊する!『神聖なる波動』と伏せカード2枚を破壊!!」

 

【なんだと─!?】

 

『よっしゃー!!』

96の場のカードが一掃される!

 

 

「俺はレベル4の『アルタイル』『ウヌク』『シリウス』の3体でオーバーレイ!」

3体の戦士が銀河に飛び込む!

 

「3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!宙に輝く星達よ!絆を繋ぎ力を示せ!『星輝士(ステラナイト)デルタテロス』!」

夏の空に浮かぶ大三角を象徴する戦士が降臨する!ATK2500

 

 

「バトル!『デルタテロス』で96にダイレクトアタック!デルタスラッシュ!!」

 

【ぐあぁぁ─!?】

デルタテロスの一撃が正確に96を斬りつける!

 

96 LP4000→1500

 

 

【ば、馬鹿な…ただの人間如きに、このオレが負ける…!?そんな、そんなはず─!】

 

「現実を受け入れろ!『希望皇ホープ』でダイレクトアタック!ホープ剣スラッシュ!!」

 

『馬鹿な…ばかなぁぁぁ!!!』

希望の剣士の一撃が邪悪なるナンバーズを両断した…。

 

 

No.96 LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

「今だ─!」

 

「受け取れ!遊馬─!!」

 

『よしっ!!』

デュエルが終了した瞬間、遊海の合図で鉄男が皇の鍵を遊馬に投げ渡す!

 

キィン─!

 

(助かった!白野!鉄男!)

皇の鍵の光と共に囚われていたアストラルが復活…96を再び封印したのだった…。

 

 

 

 

 

 

『鉄男…ごめん!オレ…』

 

「気にすんなよ、俺も少し言い過ぎたぜ…でも、あんまり無茶はしないでくれよ?」

 

『ああ…今回はオレも反省だぜ…』

遊馬と鉄男は仲直りの握手を交わす、雨降って地固まる…2人の友情はこれからも続いていくだろう。

 

 

「う〜む、これからは遊馬に精霊の力の訓練もした方がいいかな?」

 

『えっ!?精霊の力って訓練できるの!?』

遊海の呟きに遊馬が反応する

 

「ああ、精霊の力を極めれば身体強化にドロー力の強化、それに精霊を現実世界でも召喚できるようになる…言っとくけど厳しいぞ?」

 

『やるやる!!教えてくれ白野─!!』

 

「まったく…遊馬は本当に能天気なんだから…」

小鳥は少し呆れながら白野と話す遊馬を見つめる…こうして平和な一時は過ぎていった…。

 

 

 

 

 

 

(…「No.96」…あのカードはいったい…?それに、あのイメージは…)

騒がしい遊馬達を見ながらアストラルは考え込んでいた…96を回収した際に戻った記憶…それは「地球が何らかの原因で滅亡する」という記憶だったからだ。

 

(それに96の自我…厳重に封印しなければ…)

 

《アストラル、少しよろしいですか?》

 

(むっ…アヤカ、どうしたんだ?)

考え込むアストラルにアヤカが話し掛ける

 

《マスターから「これ」を渡すように、と預かりました》

 

(これは「No.49」…感謝する)

アストラルはアヤカからナンバーズを受け取る

 

《どうです?どんな記憶が戻りましたか…?》

 

(……どうやら人間世界の物語に関する記憶のようだ…灰かぶり姫…人魚姫…桃太郎…青い鳥……興味深いな)

 

《あ、そうですか(汗)…そんな記憶もあるんですね…》

アストラルの突飛な言葉にアヤカも驚いている…。

 

 

(…アヤカ、一つ訪ねたいのだが…君のマスター…岸波白野は…本当に人間か?)

 

《…ええ、マスターは誰よりも優しく、誰よりも人間らしい人間です…それは私が保証します》

 

(そうか…)

アストラルは遊海を見る…ナンバーズを手にしても揺るがないその心…そしてケタ外れの強さ…アストラルは人間という基準がわからなくなってきていた…。

 

 

((岸波白野…貴方は…何者なんだ?))



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開かれた扉の先に─遠き魂が交わる時─

こんにちは!S,Kです!

ついにあの変身が登場!新たな伝説がここから始まる!


それでは最新話をどうぞ!!



『おはようハルト…ホットチョコレートを持ってきたぞ…』

 

「…兄さん…」

 

 

柔らかな風が吹く草原…そこで柔らかな笑顔を浮かべたカイトが1人の子供に声をかける…薄い水色の髪に虚ろな目をした少年、それはカイトにとっての唯一の()()…弟である天城ハルトだった。

 

『…ここを覚えているか?オレ達が小さい頃はこの別荘で過ごしていた…その頃のお前はよく喋り、笑って冗談を言っていた…』

 

「……」

カイトの言葉にハルトは言葉を返さない…その瞳はカイトの姿を写しているだけだった…。

 

『…ハルト…!お前を、お前をそんな風にしたのは…!!』

カイトを悔しげに拳を握り締め、歯を食い縛る…その時、風景に変化が起きる…草原と小さな家は薄れ、薄暗い夜の部屋へと変わる…そこはハルトの自室であるハートランドタワーの最上階だった。

 

 

「ハルト、さぁ…仕事の時間だよ」

 

『ハートランド…!』

投影映像の消えた部屋に胡散臭いメガネを掛けた男・Mr.ハートランドが現れる、ハルトの「仕事」…それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 

『ハートランド!ハルトは力の使い過ぎで倒れた!これ以上、ハルトの力を使うな…!!』

 

「ふむ…これはDr.フェイカーからの命令なのだよ…なんでも…アストラル世界が()()()()で守られていて攻撃の8割が届いていないのだそうだ…しかし、その力も薄れつつある…アストラル世界を滅ぼすにはハルトの力が必要なのだよ」

 

『だが…!!』

 

「兄さん、ぼくは大丈夫…ぼくの力がこの世界の為になるなら…ぼくの心配なんてしなくてもいいよ」

 

『ハルト…!』

ハルトの言葉にカイトを顔を歪める…

 

「ファンタスティック!!その言葉を聞いたらDr.フェイカーもお喜びになるだろう!…カイト、君もハルトの事を早く治したいのならば…少しでも早く全ての『No.』を集める事だ!」

そう言ったハートランドはハルトを連れて地下へと降りていった…。

 

 

『(オレに…オレにもっと力があれば…!!いや、オレが…今すべき事は…!!)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は曇りか…さっきまでは晴れてたんだけどなぁ…」

 

《キャウ〜》

 

「昼過ぎからは晴れるって天気予報で言ってました!」

とある日、ハートランドは重たい雲に覆われていた…今にも雨が降り出しそうなほどに…

 

 

「曇りか……なんだか曇りの日は悪い事が起きる気がするよ…」

遊海は過去を思い返す…マリクとの決戦…ミスターTやラプラスとの戦い…そのいずれもどんよりとした曇りの日だったからだ。

 

 

「…気のせいだといいんだが…」

 

《フォウ、フォーウ!》

 

「ん?気にしすぎだって?そうだといいんだけどなぁ…」

 

《…ミドリ、ユウミはどうしてフォウの言葉が解るのでしょう?》

 

「う〜ん?たまたま波長が合ってるとか?フレアさんはわかるんじゃないんですか?」

フォウと会話する遊海を見ながらフレアが翠に問いかける…。

 

《私も精霊の言葉なら鳴き声でも解るのですが…フォウの言葉はあまりわからないのです…う〜ん?》

 

「本当にフォウ君って不思議な子…図鑑にも乗ってないし…なんだか頭が良いし……でも、何処かで見た事あるような…?」

フレアと翠はお互いに首を傾げる…

 

《フォウ!》

 

「お腹がすいた?まったく…確かミャオ○ュ〜ルがあったかな?」

 

《フォウ!キャーウ!》

 

「…でも、楽しそうだからいっか!遊海さん!○ュ〜ルはこっちですよ〜」

 

《フォ〜ウ!》

翠は小さな疑問を隅に置いて遊海とフォウの戯れに加わった…。

 

 

 

 

 

 

「予報通りに晴れたな…アヤカ、フォウ、散歩にでも行くか?」

 

《フォウ!》 

 

《はい!お供します!》 

先程までの曇りは何だったのか…晴れた空を見ながら遊海は出かける準備をしていた…その時だった…!

 

 

プルルル…プルルル…

 

ピリリリ…ピリリリ…

 

 

「んあ!?翠!家電を頼む!…もしもし!」

 

『は、白野!大変だ!!』

 

「遊馬!?まだ学校の時間だろう?どうしたんだ!?」

電話とDゲイザーが同時に着信音を鳴らす…Dゲイザーを鳴らしたのは学校にいるはずの遊馬だった…!

 

『皇の鍵が盗まれたんだ!それに、シャークが!!』

 

「すぐに学校に行く!!」

遊海は通信を切ると外へと飛び出す!

 

「遊海さん!ハートランド学園から!凌牙君が!!」

 

「遊馬から同じ内容を聞いた!行ってくる!!」

Dホイールを飛ばして遊海はハートランド学園へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

「凌牙…!」

ハートランド病院の一室…そこに凌牙の姿はあった、酷く衰弱し髪の色も白髪に近くなった状態で意識を失っている…。

 

「…白野…すまねぇ、オレのせいだ…!オレが皇の鍵を更衣室に置きっぱなしにしたから…!!」

遊馬は事情を話し始める…プールの授業の時に注意を受けて「皇の鍵」を手放していた事、授業を終え更衣室に戻ると更衣室が荒らされ「皇の鍵」が無かった事…そして、屋上で倒れた凌牙……その内容を総合した事で導かれた答え、それは皇の鍵窃盗現場に居合わせた凌牙が窃盗犯と戦い…「魂」を抜かれたという事だった。

 

 

「…アヤカ、デュエルレコードにアクセスしろ」

 

《了解しました…!》

半実体状態のアヤカは凌牙のデュエルディスクからデュエルの履歴を読み取る…。

 

《…デュエリスト名アンノウン…召喚モンスター…「銀河眼の光子竜」…「No.30」を確認…!》

 

「…遊馬、『銀河眼の光子竜』というモンスターに聞き覚えはあるか?」

 

「っ…!カイト!!」

遊馬は拳を握りしめる…そして理解した、皇の鍵を盗んだのはカイトなのだと…

 

 

「ねぇ、遊馬…『カイト』っていったい誰なの?シャークがこんな事になった原因を知ってるの…?」

 

「オイラも気になってたウラ!あの占い師もカイト様がどうって言ってたウラ!知ってる事を教えるウラ!」

 

遊馬達の様子を窺っていたナンバーズクラブのメンバー達が遊馬に問いかける。

 

「…カイトはオレと同じように『No.』を集めてるナンバーズハンターなんだ…しかも、倒した相手から『魂』ごと『No.』を奪う危ない奴だ…!しかも、皇の鍵の中にはアストラルが入ったままなんだ…!」

 

「「「「なんだって!?」」」」

遊馬は仲間達に真実を明かす…どうして一時自分が落ち込んでいたのか、そしてナンバーズがどれだけ危険なのかを……その時だった

 

 

【主ヨ、少シイイカ?】

 

「ラビエル?お前が起きてるなんて珍しいじゃないか?」

説明をする遊馬の様子を見ていた遊海に普段は眠っているラビエルが語りかける…。

 

 

【魂ヲ奪ワレタ少年…「魂」ハ奪ワレテイナイ、ソノ代ワリ「デュエルエナジー」ガ殆ド失ワレテイル…】

 

「本当か…!アヤカ!」

 

《サーチ開始…ラビエルの言う通りです…!魂は彼の中に残っています…!かつての「デュエルゾンビ」に酷似した状態です!》

 

「そういう事か…カイトは「魂」を奪っていたんじゃない…!ナンバーズと共に相手の「デュエルエナジー」を極限まで吸い取っていたんだ…!ありがとうラビエル!」

 

【主ノ役ニ立テタナラ、良カッタ…オヤスミ…】

そのままラビエルは再び眠りについた…

 

 

「遊馬、凌牙はなんとかなるかもしれない」

 

「えっ…!本当か!?」

遊海の言葉に遊馬の表情が明るくなる!

 

「精霊の力の使い方その①だ…他人に力を分け与える!ハッ!!」

遊海は凌牙の胸に手を当ててオレンジ色のエネルギーを流し込む…すると凌牙の顔色が良くなっていく…!

 

『っ…うぅ…?白野、さん…?』

 

「よう凌牙、酷い目にあったらしいな…よく頑張った」

デュエルエナジーを受け取った凌牙が弱々しく目をあける…遊海は優しくその頭を撫でた…。

 

「シャーク!!」

目を覚ました凌牙に遊馬が駆け寄るが…

 

『っ…馬鹿野郎!大事なモンはしっかり持ってやがれ─!』

状況を把握した凌牙は布団を被りながら遊馬にそう叫んだ…。

 

 

 

 

 

 

「…やっぱりカイトの仕業か…!」

 

『ああ…たくっ、とんだ貧乏くじだったぜ…』

ナンバーズクラブのメンバー達を追い出した後、遊海と遊馬は凌牙に事情を聞く…。

たまたま廊下を歩いている時に不審な動きをするロボットを見つけた事…そのロボットが遊馬の皇の鍵を奪おうとしたのを妨害、攻撃を回避しながら逃げた事…そして、屋上でナンバーズハンターを名乗る男にデュエルを仕掛け、そのまま敗北した事を…。

 

 

『それで…そのカイトって奴を探すアテはあるのか?』

 

「それは……」

 

「心配するな、すぐにわかるさ」

 

「えっ…?」

遊海の言葉に首を傾げる遊馬…その時だった。

 

 

「遊馬!皇の鍵がある場所がわかったわ!ハートランドの第四埠頭にあるって!!」

 

「小鳥!?どうして…!」

病室に小鳥が駆け込んでくる…遊馬はその言葉に驚く

 

「委員長が右京先生に頼んでハートランド中のコンピューターを調べてくれたの!!そしたら埠頭のコンピューターが皇の鍵をスキャンしたってわかったのよ!」

病室を追い出されたナンバーズクラブは遊馬とアストラル、そして凌牙の為に自分達なりにできる事をした…その努力が実を結んだのだ…!

 

 

「だから言っただろ?心配するなって…お前には頼れる仲間がいるんだからな……さて、サクッとアストラルを助けに行こうか!おっと…凌牙はちゃんと寝てろよ?デュエルエナジーは渡したけど無理は禁物だからな?」

 

『そもそも…体がだるくて動けねぇよ…気をつけろ遊馬…アイツは強いぞ』

 

「わかってる…オレは絶対にカイトに勝つ!!」

そう言って遊馬は小鳥と遊海と一緒に走り出した…。

 

 

 

《フォウ!》

 

『…なんで病院なのにお前がいるんだ?』

 

《キャウ…フォウ》

 

『…まったく、布団の中に入ってろ…バレたら怒られるのは俺なんだからな…?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここにアストラルが…!」

遊馬と遊海、そしてナンバーズクラブは埠頭の倉庫に辿り着く…しかし扉は固く閉ざされている…。

 

「くそ…!アストラルが戦ってるのに…!オレには何もできないのか…!!」

扉の周りにスイッチはない、そして遊馬のデッキは仄かに光を放っている…それはアストラルが決闘をしている証だった…扉を開けられずに悔しがる遊馬…だが、それを許さない者がいた…それは…

 

「しっかりしなさい!遊馬!!」

 

バチン!!

 

「小鳥…!?」

小鳥が遊馬にビンタする…それは彼女なりの遊馬への激励だった…!

 

 

「遊馬が諦めちゃダメ!!アストラルだって戦ってるんでしょ!?」

 

「…アストラル…!そうだよな!!アストラルを助けられるのは…オレだけなんだ!!」

遊馬は気持ちを持ち直す…アストラルが闘っているのに諦める訳にはいかないと…!

 

「その調子だ遊馬…それでこそ俺がついてきた意味がある!」

 

「白野…!」

倉庫の扉を前に遊海が歩み出る…!

 

「精霊の力の使い道その②だ…少し離れてろ」

 

「えっ…!?」

 

「はぁぁ…!!」

遊海は右腕に全力を込める!!

 

「強い思いは岩をも通す…ならば我が腕は鉄を切り裂く!我が魂喰らいて奔れ…!模倣(イミテーション)銀の腕(アガートラム)!!」

 

キィィ─ン!! ガラガラガラ…!

 

銀色の光が一瞬煌めく…そして瞬きの間に鉄の扉は呆気なく崩れ落ちた…

 

 

「「「え、ええぇぇ─!?」」」

 

「マジかよ…!!すっげぇぇ!」

あまりの出来事にナンバーズクラブメンバーは叫び、遊馬は目を輝かせている…。

 

「さて…いくぞ遊馬!!もう抜けられない障害物は無いはずだ!」

 

「おう!!今いくぜ!アストラル!!」

遊海に勢いづいた遊馬達は倉庫へと突入した…!

 

 

 

 

Sideオービタル7

 

 

 

《ややや…!?侵入者にクラッキングですとぉ─!?》

 

「「「バグバグ〜!!」」」

 

カイトの相棒(?)であるオービタル7は焦っていた、カイトの命令で遊馬から異世界の物資でできた「皇の鍵」を盗み出し、主人であるカイトはナンバーズのオリジナルである「アストラル世界の使者」を倒す為に鍵の中の異世界へと消えた…そんな時、侵入者を知らせる警報が倉庫…に見せかけた研究所に響き渡り、さらにバグマン型のウィルスによるクラッキングが仕掛けられたのだ…。

 

 

《ひぃぃ…!?これではカイト様に怒られてしまうでアリマス〜!!我が兄弟「オービタル5」!「オービタル6」!出番でアリマス!!》

オービタル7がメインコンピューターを操作する…そして門番が放たれた…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

「これは『倉庫』なんてもんじゃない…!何かの研究所だな…!」

遊海達は長い廊下を進む…データ上では倉庫だという建物…そこはまるで研究所のようになっていた…。

 

「この先にアストラルが…!早くしないと…!」

遊馬のデッキは光を放ち続けている…アストラルの為に走る遊馬達…そこに…!

 

 

[侵入者、ハッケン]

 

[排除スル!]

 

「ろ、ロボット!?」

先を急ぐ遊馬達の前に5mほどの大きさがある緑色のゴリラ型ロボットと赤色のクモ型ロボットが立ち塞がる!

 

「侵入者撃退用のロボットか…!遊馬、レッスンその③だ!我が敵を薙ぎ払え!『メガロック・ドラゴン』!」

 

《オオオオ!!》

 

[強力なエネルギー反応、確認!!]

 

遊海がカードを掲げる…そして大地が揺れ、頑強なる岩の龍が現れる!

 

 

「ARビジョン!?デュエル中でもないのに!?」

 

「き、聞いた事があるウラ!ソリッドビジョンを実体化させる力を持ったデュエリスト…サイコデュエリストの事…白野はサイコデュエリストなんだウラ!」

 

「す、すごい!!」

メガロックの登場に徳之助や等々力が驚きの声をあげる…!

 

「よく知ってるな!…遊馬!俺達がこいつらを引き受けた!お前は先に行け!」

 

《走れ!友を救うのであろう!》

 

「わ、わかった!ありがとう白野!メガロック!!」

遊馬はロボット達の隙間を抜けて走り出す!

 

 

「メガロック!ゴリラ型を抑えろ!!」

 

《わかった!オオオオ!!》

 

ドガーン!!

 

メガロックがゴリラロボに突進し壁に叩きつける!!

 

 

「俺達も負けてられねぇ!や〜い!こっち向けクモロボ〜!!」

 

「え〜い!!」

鉄男と小鳥がクモ型ロボを挑発し、石を投げつける!

 

「キャットビングよ!わたし─!!」

 

ガシャーン!!

注意が逸れたクモロボにキャッシーの跳び蹴りが炸裂する!

 

 

「やるなお前達!…メガロック!勝負を決めろ!」

 

《オオオ…!鳴動富嶽!!》

 

ガガガ…ドガーン!!

 

大地から巨大な岩が現れゴリラロボを穿つ…そのままゴリラロボは活動を停止した…。

 

 

「白野さん!こっちもお願いします!!」

 

「オーケー!!ハッ!!」

小鳥の言葉を聞いた遊海は高く飛び上がる!

 

「セイヤァァァ─!!」

 

ゴシャ!!

 

ライダーキックがクモロボの胴体を貫く…クモロボはそのまま地面に叩きつけられ沈黙した…。

 

「ふぅ…サンキュー、メガロック」

 

《うむ、しばらく振りに暴れて肩コリがほぐれたな…先に戻っているぞー!》

そう言うとメガロックは消えていった…。

 

「…本当にあの人は本当にデュエリストウラ?兵士とか格闘家じゃなくて…」

 

「とどのつまり、強すぎですね…デュエルも強いそうですし…飛龍司にも負けないのでは…?」

徳之助と等々力は遊海の人間離れした動きに目を点にして驚いている…。

 

「さて…先を急ごうか!」

 

《マスター!この先の部屋から異常なエネルギー反応を確認…!このままでは爆発します!!》

 

「「「なんだって─!?」」」

 

アヤカの言葉通り、建物が揺れ、崩れ始める…!

 

 

「っ…!!(上手くやれよ、遊馬…!お前とアストラルの()()()を目覚めさせろ─!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideアストラル

 

 

 

時は少し遡る、遊馬達が研究所に突入する少し前…皇の鍵の中でもう一つの戦いが始まろうとしていた…。

 

 

 

『貴様がアストラル世界の使者か?』

 

《カイト…やはり君だったか》

皇の鍵の中の世界…その歯車の構造体でアストラル、そしてバリアン世界の物資『バリアライト』の共鳴によって侵入してきたカイトが相対する…!

 

『なぜ、お前がオレの名前を知っている?』

 

《君とは一度デュエルした事があるからだ》

そう言いながらアストラルは『希望皇ホープ』をカイトに見せる…。

 

『そのナンバーズは…なるほど、九十九遊馬にナンバーズのオリジナルが取り憑いていた訳か…』

 

《カイト、何故君は『No.』を集める?》

 

『それはこちらのセリフだ…何故お前は「No.」を集める?』

 

《…『No.』は私の記憶の欠片…私は記憶を取り戻す為に『No.』を集める》

 

『オレはアストラル世界と「No.」…そしてバリアン世界の秘密を探る為だ…その為にオレは「No.」を全て集め、その謎を解かなくてはならない!その為に貴様の持つ「No.」…全て回収させてもらう!』

 

《この一戦にお互いの全ての「No.」を賭けると?》

 

『その通りだ!デュエルモード!フォトンチェンジ!!』

アストラルとの問答を終えたカイトはその身を光に包む!

 

《いいだろう…!勝負だ!カイト!》

アストラルは腕からデュエルディスクを生やし、遊馬のデッキを投影したものをセットする…天才と天才…2人の決戦が始まった…!

 

 

 

 

《『デュエル!!』》

 

 

デュエルダイジェスト アストラル対カイト

 

 

 

 

 

天才と天才…2人のデュエルは熾烈を極めた、「ゴゴゴゴーレム」をセットし守りを固めるアストラル…しかしカイトはセットモンスターの効果を封じる「リバース・バスター」を召喚し、難なく壁を突破する…!

 

 

《素晴らしいなカイト…君のデュエルは常に私の想像を超えていく…》

 

『光栄だ…だがそんなセリフで油断を誘っても無駄だ』

 

《そんなつもりはない、私の知る限り君は…2()()()に強いデュエリストだ…そして君のデュエルには強い思いが…『魂』が込められている…何が君をそうさせる?》

アストラルはカイトのプレイングを称賛する…そしてカイトに問い掛けた…『何が』カイトをそこまでカイトをかき立てるのかと…

 

 

『オレを観察する余裕があったとはな…敢えて言うなら貴様達とはモノが違う、という事だろうな…だが、2番目だと?貴様はオレより強い者を知っているというのか?』

 

《ああ、君が荒々しくも計算された強さなのであれば…彼は底がまったく窺い知れない…そんな男がいる!…さて、君のデュエルに懸ける思い…それはナンバーズを集めているのと関係がありそうだが…》

 

『…消えて行くお前に話すつもりは…ない!』

 

《それは残念だ…私は君に魅せられている…遊馬と()()()()を持っている君にだ、私はこの世界に来た時、遊馬に乗り移ろうとした…だから彼の心を感じる事が出来た……遊馬の心の奥にあったのは…両親を失った悲しみ、そして悲しみの中で両親の教えを信じて生きていこうと足掻きもがいている…そんな思いだった、君はどうなんだ?》

アストラルはカイトに本心を明かす…使命を果たす為に遊馬に乗り移ろうとしたアストラル…そのアストラルが見た遊馬の心の内を…だが…

 

『オレと…奴が同じだと?…ふざけるな!オレに両親などいない…!いるのはハルトだけだ!時間稼ぎはここまでだ!デュエルを続けろ…!アストラル!』

遊馬に似ていると言われたカイトは激昂する…ひたすらにデュエルを楽しもうとする遊馬、そして悲願の為にデュエルをするカイト…その在り方は正反対ともいえるものだった…。

 

 

 

そして返しのターン、アストラルは墓地のゴゴゴを復活させる「ゴゴゴジャイアント」を召喚しエクシーズの用意を整えるが…カイトを警戒するあまりエクシーズ召喚を行わず「ダブル・ディフェンダー」を発動して守りを固める…しかし、カイトはその手を読んでいた…なんと、カイトの伏せカードは所謂ブラフであり、伏せられていた「フォトン・ハリケーン」によってアストラルの伏せカードは全てバウンスされ、さらに召喚された「フォトン・レオ」と貫通効果を与える装備魔法『フォトンスピア』によって大ダメージを受けてしまう…!

 

 

『アストラル…少々残念だな、今の貴様は我が「銀河眼」に怯え、守りを固め過ぎている…前のターンで「ホープ」を召喚していれば…この状況は変わっていただろう』

 

《っ…!そうか、私はまだ…君への恐怖を完全には拭えていなかったようだな…!それでは勝てないはずだ…私は大切な事を忘れていた…》

アストラルは反省する…乗り越えたと思っていた「銀河眼」への…カイトへの恐怖…それは無意識にアストラルを守りの戦略に傾けていたのだ…!

 

 

『貴様の腕は悪くない…だが、諦めろ!オレに勝つには貴様の心は弱すぎる!』

 

《…かつての私なら諦めていただろう…だが!「今」の私は諦めない!!私は友から…遊馬から「かっとビング」を教えられたからだ!!》

アストラルは恐怖を振り払い、カイトを睨みつける…その瞳にまだ諦めの色はない…!

 

 

 

 

39

 

《今こそ現れよ!『No.39希望皇ホープ』!!》

《ホープッ!!》

 

『来たか…!「希望皇ホープ」!』

アストラルはついに「ホープ」を呼び出し、攻撃に打って出る!

 

《「ホープ」で「フォトンレオ」を攻撃!ホープ剣スラッシュ!!》

 

『ぐっ…!やるな…だが!リバース罠「アーマード・バック」を発動!装備魔法を装備したモンスターが破壊された時!そのモンスターを特殊召喚し再び装備魔法を装備する!』

ついにカイトに一太刀を浴びせたアストラル…だが、カイトは再び光子の獅子を蘇らせる…そして…!

 

 

『「フォトンスピア」の効果により「フォトンレオ」を2体分のリリースとして現れよ!「銀河眼の光子竜」!!』

 

《っ…!「ギャラクシーアイズ」!!》

ついにエクシーズキラー…ギャラクシーアイズがアストラルの前に現れる!

 

『バトルだ!「ギャラクシーアイズ」で「ホープ」を攻撃!そしてバトルフェイズ終了時まで除外!さらに「フォトン・サークラー」でダイレクトアタック!』

 

《くぅ…!!》

カイトの連撃がアストラルを襲う!

 

『そしてこれで「ホープ」は終わりだ!魔法カード「ギャラクシー・ストーム」!ORUのないモンスターエクシーズを破壊する!消え去れ!「ホープ」!!』

除外された事でORUを失ったホープに銀河の竜巻が襲いかかる!

 

《まだだ!カウンター罠「エクシーズ・リフレクト」!モンスターエクシーズを対象にした効果を無効にして破壊!そして相手に800ダメージを与える!!》

 

『なにっ…!』

アストラルの発動した罠が銀河の竜巻を薙ぎ払い、カイトにダメージを与える!

 

 

《まだ…私のかっとビングは終わっていない!!私は『ホープ』1体でオーバーレイ!!》

 

『なに…!?』

最大のピンチを前にアストラルは遊馬との友情の力を開放する!

 

39

 

《「ホープ」1体でオーバーレイネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!現われよ!混沌を光に変える使者!「CNo.39希望皇ホープレイ」!!》

アストラルの場に希望の化身たる黒き戦士が現れる!

 

『カオスナンバーズだと!?』

 

《「ホープレイ」の効果発動!ORUを1つ使い!「フォトンサークラー」の攻撃力を1000下げ、自身の攻撃力を500アップする!オーバーレイチャージ!!いけ!ホープ剣カオススラッシュ!!》

ホープレイの効果を使ったアストラルは一撃必殺を狙う…だが…!

 

『「フォトンサークラー」の戦闘によって受けるダメージは半分になる!!』

 

《くっ…!仕留めきれなかったか…!》

渾身の一撃を躱されたアストラル…そしてカイトの反撃が襲いかかる!

 

 

『これで終わりだ!「ギャラクシーアイズ」で「ホープレイ」を攻撃!破滅のフォトン・ストリーム!!』

 

《…まだだ!リバース罠「潔癖のバリア─クリア・フォース」を発動!相手モンスターの攻撃力を元々の攻撃力に戻す!そして「ホープレイ」は「No.」の戦闘破壊耐性によって破壊されない!!ぐあぁぁ…!!》

 

『チッ…耐えたか…しかし、残りライフは僅か400!次のターンで終わりだ!!』

 

《…ここまでか…!》

カイトの攻撃で吹き飛ばされ、ダメージで体が明滅するアストラル…彼1人の力ではカイトに勝つ事はできなかった…。

 

 

《…お別れだ、遊馬……》

アストラルの瞳から一筋の涙が零れ落ちる…その時、1つの奇跡が起きる!

 

 

 

「1人で諦めてんじゃねぇ!アストラル─!!」

 

 

掛け替えのない「友」の声が響いた…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「えっと…!どうすれば扉が開くんだ!?…え〜い!やけくそだァァァ!!!」

遊海と仲間達により道が開かれた遊馬は皇の鍵のある部屋の手前までやって来ていた…しかし、最後の扉が開かないのだ…!

 

カタカタカタカタカ…ピピッ!

 

「えっ…なんだ、この写真…?カイト…?」

適当にコンピューターを操作する遊馬…その目にたまたま写ったのはブランコに乗る子供…そしてその様子を優しい笑顔で見つめるカイトの姿だった…。

 

「…この子、誰なんだろう……って、そんな場合じゃねぇ!!って今度なんだ─!?」

 

キィン─!

 

遊馬のデッキが強い光を放つ…そして…!

 

 

 

 

【お前との契約を続ける…この扉を開く者は新たな力を得る、その代わり…1番大切なものを失う…】

 

「この場所は…この扉は…!!」

遊馬が気付けばアストラルと出会った謎の扉の前だった…扉の声は言葉を続ける…

 

【お前との契約を邪魔する者がいる…汝の力でその者を排除しろ、この扉を開き…Z()E()X()A()L()の力を手にするのだ…!】

 

「ZEXAL…?っ…またかよ…!」

 

扉の言葉と共に遊馬はコンピューターの前に戻る…そして扉は開いていた…!

 

 

「な、なんだか知らないけどラッキー!!今いくぞアストラル!!」

 

《させないでアリマス!!》

 

「うわ…!お前はカイトのロボット!?」

 

《ワタシの名前はオービタル7!カイト様のところへは行かせないでアリマス!バトルモード!!》

 

「ひょ!?」

遊馬の前に立ち塞がったオービタル7が両手にドリルを持つ巨大な姿に変形する!

 

《ワタシの…ターン!!》ギュイイン!!

 

「うわぁ!!」

オービタルのドリルが壁を貫く威力で遊馬に襲いかかる!!

 

《これで…お終いでアリマス─!》

 

《させん!反射の聖刻印!!》

 

ガキーン!!

 

《なんとぉ!?》

 

「えっ…精霊…!?」

白い龍の魔法陣がドリルの一撃を受け止める!

 

《我が名はトフェニ!我が主・白野の命により加勢する!早くアストラル殿のもとへ向かうのだ!》

 

「あ、ありがてえ!!そのロボットを頼む!!」

 

《承った!!》

トフェニの助力を得た遊馬は走り出す!

 

《おのれ…どくでアリマス─!!》

 

 

 

 

 

 

「あった…!皇の鍵!!」

たどり着いた部屋…その巨大な装置の中で皇の鍵が浮かんでいる…そして…!

 

キィン─

 

「鍵が…!」

機械から弾かれるように皇の鍵が遊馬の手元に戻る!

 

 

 

【この扉の中へ飛び込み、新たなる力を手に入れろ…だがその者は代償として、一番大事なものを失う…お前にその覚悟があるか…?】

 

「っ…!また!!」

遊馬の前に再び扉が現れる…そしてひとりでに開き、反対側から光が溢れ出す…!

 

「あっ…!アストラル!!」

扉の先を除く遊馬…その眼下にはカイトに追い詰められ、倒れ伏すアストラルの姿があった…!

 

「1人で諦めてんじゃねぇ!アストラル─!!」

 

遊馬は思わず声を張り上げた…!

 

 

 

SideOut

 

 

Sideアストラル

 

 

《遊馬…!そこにいるのか!?》

 

「ああ!夢の扉がお前のいる場所を教えてくれたんだ!!」

聞こえてきた声にアストラルは声をあげる!

 

《こちらに来てはダメだ!私のライフは残り僅か!そしてこの世界は君の世界とは違う!このデュエルで私が負けた時…君が無事かどうかわからない!!それにこれは私1人の戦いだ!》

 

「うるせぇぇ!アストラル!自分1人で抱え込んでんじゃねぇ!!オレとお前は…一心同体の友達だろうが─!!」

 

《遊馬…!》

遊馬の言葉にアストラルは気付く…遊馬と自分はもうただの友ではない…運命を共にする掛け替えのない存在なのだと…!

 

「アストラル!ZEXALだ!扉の声はZEXALの力を手に入れろって言ったんだ!」

 

《ZEXAL…!?ZEXALを知っているのか!?》

 

「アストラル!ZEXALって…なんなんだ!?」

 

《ZEXAL…それは…アストラル世界を救う…希望の力だ!君がそれを手に入れたのなら…勝ち目はある!!》

 

「お前を助けられるなら…どんな代償でも払ってやる!!超かっとビングだ!オレ─!!」

遊馬は扉を抜け…アストラルのもとへと飛び出す!!

 

 

《私のターン!私は…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!》

立ち上がったアストラルが青い閃光となって飛び上がる!!

 

遠き2つの魂が交わる時!語り継がれし力が現れる!来い!遊馬─!!

 

かっとビングだぜ!!オレ─!!

 

遊馬の赤い閃光とアストラルの青い閃光が螺旋を描きながら上昇…そして…!

 

 

エクシーズチェンジ!ZEXAL!!

 

 

キィン─!

 

光の大爆発と共に新たな決闘者が降り立つ…その身に纏うは赤と白の鎧、その目が見るのは勝利への道…逆立った金髪に赤の前髪…その者こそ、アストラル世界に伝わる伝説の戦士…ZEXAL!!

 

 

『どういう…事だ…!?お前達が合体したというのか!?』

突然の事態に取り乱すカイト…それは無理もないが…驚く者はもう1人いた…

 

 

「……え、これが…オレぇ!?」

遊馬は自分の身体を見回す…まるで本当のヒーローになったような感じで落ち着かないのだ…。

 

『これが君の…そして私の力…「ZEXAL」!』

2人の心が真に1つとなった事で開放された伝説の力…それがZEXALなのだ…!

 

《遊馬、このドローに全てを賭ける!》

 

「えっ…うわぁ…!?」

 

キィン─!

ZEXALの右手が眩い光に包まれる!

 

《最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!!》

 

「『すべての光よ、力よ!我が右腕に宿り…希望の道筋を照らせ!!シャイニング・ドロー!!』」

金色の軌跡を残してカードがドローされる…そのカードこそ、ZEXALの持つ奇跡の力…!

 

『「手札の「ZW-一角獣皇槍(ユニコーン・キングスピア)」を「ホープレイ」に装備!チェンジ!ユニコーンスピア!!」』

ZEXALの手札から現れた機械の一角獣が巨大な槍に変化し、ホープレイに装備される!

 

「これにより『ホープレイ』の攻撃力は1900アップしバトルする時、相手がフィールドを離れる効果を無効にはする!!」

 

『な、なんだと─!?』

ゼアルウェポン…その能力は必ず窮地を打開する一手となる!

 

『「バトルだ!『ホープレイ』で『銀河眼の光子竜』を攻撃!!ユニコーン・スラッシュ!!」』

ホープレイの手にした槍がギャラクシーアイズを貫く!しかし…まだ終わってはいなかった!!

 

『仕方あるまい!罠カード「フォトン・ショック」!フォトンモンスターの戦闘で受けるダメージはお互いが受ける─!!』

 

《なんだと!?》

 

ZEXALとカイトを爆発が包み込む…因縁の対決は…引き分けに終わった…。

 

 

 

遊馬&アストラル LP0

 

カイトLP0

 

 

DuelDraw……

 

 

 

 

「痛て!?」

 

『くっ…!』

 

《これは…現実世界に戻ったのか?》

 

デュエルが終わり、遊馬達は強制的に現実世界へと送還される…。

 

 

「カイト…!なんでお前はナンバーズを集めるんだ!どうしてあんな悪の手先みたいな事ができるんだよ…!!」

 

『…オレは…弟の為に悪魔に魂を売った…!今日のところは引いてやる…それからアイツの「魂」もな』

そういうとカイトはフォトンハンドから光の玉を開放する…それは奪われた凌牙のデュエルエナジーだった…。

 

「カイト…お前…」

 

《カイト様!この場所はもう限界であります!機械がオーバーロードして…爆発するでアリマス─!!》

 

「『なんだって!?』」

オービタルがカイトに危機を伝える…未知のエネルギーを計測しきれなくなった機械が暴走…爆発しようとしていたのだ…!

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「っ…!なんとか脱出できたか…!」

ナンバーズクラブのメンバー達を連れた遊海が建物から脱出する…!

 

「白野さん!遊馬が…遊馬が─!!」

 

「大丈夫だ!遊馬はこんなところで死なない!もう助けは向かわせてある!」

建物に戻ろうとする小鳥を制止する遊海…その時だった…!

 

 

ドッガアアアアン!!

 

 

「「「「遊馬!!」」」」

 

「『聖なるバリア─ミラー・フォース』!!」

建物は轟音と共に崩れ落ち爆発する…遊海は咄嗟にナンバーズクラブを守ったが…小鳥達の叫びが響く──

 

 

 

《主殿!遊馬殿の救出成功だ!》

 

「あ、あっぶね〜!!サンキューだぜ、トフェニ…」

 

「遊馬─!!」

爆発が落ち着いた頃…空から白い龍が降り立つ、その腕には満身創痍だが元気そうな遊馬の姿があった…。

 

 

「まったく、心配をかけさせるなよ遊馬、アストラル」

 

《感謝する、白野…貴方の精霊のおかげで我々は助かった》

ナンバーズクラブのメンバー達にもみくちゃにされる遊馬を他所にアストラルと遊海は言葉を交わす…

 

 

『九十九遊馬!そしてアストラル!』

 

「っ…!カイト!!」

遊馬達と同じようにグライダーで空に逃れたカイトが声を張り上げる…!

 

『お前達との決着はWDCで着ける!!首を洗って待っているがいい!!』

 

「WDC…ワールドデュエルカーニバルか…!待ってやがれカイト!次はオレ達が勝ーつ!!」

 

捨て台詞を残してカイトは去っていった…新たな力を手にした遊馬とアストラル…その戦いは新たな局面を迎える…!

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

一方その頃…

 

 

『…おい、フォウ…いつまでいるつもりだ…?』

 

《スゥ…スゥ…》

 

「白野…早く戻って来てくれ…」

 

 

 

※このあとフォウは翠がくるまで凌牙と一緒にいたのだった…。



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第2章 決闘熱狂祭典 ワールド・デュエル・カーニバル
WDC開幕!〜陰謀の始まり〜


こんにちは!S,Kです!

WDC編開幕!陰謀渦巻くハートランド…待ち受ける困難を遊海は乗り越える事ができるのか…!


それでは最新話をどうぞ!


ピンポーン!

 

「は〜い!…凌牙君!体はもう大丈夫なの?」

 

「はい、心配掛けてすんません翠さん…白野さんはいるすか?」

 

 

カイトと遊馬の激突から数日が経った…WDCの前日、体調の戻った凌牙が白波家を訪ねた…。

 

 

 

「で…どうしたんだ?俺に相談なんて久しぶりじゃないか?」

 

「白野さん…さっき、この街で()()()に会った…!全国大会の対戦相手…トーマス…Ⅳの野郎に!!」

 

「っ…!!」

凌牙の言葉を聞いた瞬間、遊海の纏う雰囲気が変わる…そこに普段の穏和な遊海はいない…その瞳は「あり得た自分」を前にした時のように鋭く変わる…!

 

「…アイツは言いやがったんだ…!璃緖の怪我も…デッキの事も…自分が仕組んだと…!!」

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

放課後…授業を終えた凌牙はバイク(Dホイールではない)に乗り、街中を走っていた…そんな時…

 

 

うおおぉぉおぉおぉおぉ〜〜!?!?!?」

 

 

「………何やってんだ、あの馬鹿は」

 

ハートランドの道路をクルマ並みの速度で疾走する人影を見つける…それは遊馬だった、尋常ではない様子の遊馬を止めるべく凌牙は遊馬の前に回り込む…。

 

 

「お前な…なにこんな場所を走ってんだ?」

 

「ワールド・デュエル・カーニバルの為なんだよシャーク〜!!」

 

「……お前、まさか…申し込みし忘れたのか?」

遊馬の様子を見た凌牙はなんとなく察する…遊馬ほどの馬鹿ならばそれもあり得るだろうと…。

 

「そうなんだよぉぉ〜!!だからMr.ハートランドに直談判しに行くんだ!!…なぁ!シャークも出るんだろ?」

 

「いいや…今の俺は称号には興味はねぇ、今回はやめとくよ」

 

「シャーク…」

凌牙の意外な言葉に遊馬は残念そうな顔をする…

 

 

「白野さんから聞いてるだろ?俺はデュエリストとしてやっちゃなんねぇ事をした……今は自分のデュエルと向き合うつもりだ…きっと今はその時じゃねぇ…」

 

「シャーク…!」

遊馬達との付き合い、そして心の支えである遊海達の存在により凌牙は大きく変わっていた…その顔には悔いはない…。

 

「じゃあな遊馬、WDC…頑張れよ!」

 

「ああ!サンキュー!シャーク!」

 

遊馬へと応援の言葉を送った凌牙はそのまま走り去った…。

 

 

 

 

 

「………っ!!」バシッ

 

遊馬と別れ、しばらくハートランドをツーリングしていた凌牙…そこに一枚のカード手裏剣が飛来する!

 

「『聖なるバリア─ミラー・フォース』…!!どこから…あそこか…!!」

凌牙は辺りを見回し、建設現場へと駆け上がる!

 

 

 

『久しぶりですね凌牙…いえ、シャークと呼んだ方がいいかな?』

 

「テメェ…!なんのつもりだ!!」

建設現場の影から1人の青年が現れる…青年は親しげに凌牙に話しかけるが…凌牙自身は怒りをあらわにして青年を睨みつける…!

 

『ふふ…ただの挨拶ですよ、WDCの前のね…』

 

「…俺は大会には出ない…!それよりも…!」

 

『大会には出ませんか…それじゃあ…()()()()()()()()()()

青年は凌牙の言葉を遮って話を続ける…。

 

 

『あの決勝戦の時、貴方は私のデッキを盗み見て失格になった…だが、あの時の貴方は()()()()()()()()()()()()()…大切な人の不幸な事故を目の当たりにしてね…』

 

「っ…!」

 

─凌牙…絶対に優勝して…わたしは、大丈夫…だから─

 

青年の言葉を聞いた凌牙の脳裏に忌まわしい記憶…悲しい妹の言葉が蘇る…

 

 

『もし、対戦相手が()()()デッキを見えるようにした…としたら?そして…そもそも璃緖の事故が()()ではなかったら…?』

 

「お前…まさか…!俺を嵌める為に璃緖を…!!」

青年の言葉を聞いた凌牙は殴りかからんばかりの勢いで青年に詰め寄る!!

 

『おっと、暴力はいけません…ハハハハ…!ですが、笑えますねえ!あの一件で貴方はデュエルの表舞台から消え…一方私は極東エリアのデュエルチャンピオン!!随分と差がついてしまいました…悔しいでしょうねぇ…?』

 

「……!!」

凌牙は歯を食い縛る…震える手を抑えながら…

 

 

『悔しいでしょう?…なら()を倒してみろ、WDCでな…!待ってるぜ?凌牙』

 

「っ…!」

残虐な本性を覗かせた青年は凌牙にある物を投げ渡す…それはWDCの参加証であるハートピースだった…。

 

「待て…!待ちやがれⅣ!いや…トーマス!!」

 

『なんだよ?決着はWDCで…』

凌牙は立ち去ろうとする青年…Ⅳに向かって叫ぶ…!

 

「お前は…お前達兄弟は!どうして白野さんのところからいなくなった!!お前達がいなくなって…あの人達がどれだけ心配したのか…わかってるのか!!!」

 

『っ…!?』

凌牙の予想だにしない言葉にⅣは動きを止める…。

 

 

「俺は…お前達兄弟の事情は知らねぇ!!それでも…あの人はお前達を本当の()()だと思ってたはずだ!!それなのに…お前はあの人の思いを踏みにじった!!俺は許さねぇ…!俺を嵌めた事よりも…璃緖を傷付けられた事よりも…!…あの人の優しさを踏みにじったお前を許さねぇ─!!!」

 

『っ……俺達には為さなければならない事がある…!俺は、「家族」の為なら…どんな事でもやってやる…!!』

 

そう言いきったⅣはそのまま去っていった…。

 

 

 

SideOut

 

 

ベギッ…

 

「トーマス…!!」

 

「白野さん…!手が!」

話を聞き終えた遊海は手にしていたコップを砕く…破片が手に突き刺さり、血が流れるが…遊海は破片を強く握り締め続ける…!

 

 

「…ありがとな、凌牙…ようやく、俺のやるべき事をやれる…!…お前は、WDCに出るんだな…?」

 

「…ああ、アンタの思いを踏みにじって…璃緖を傷付けた落とし前は…俺が着ける!!」

凌牙は遊海をまっすぐ見つめながら答える…。

 

「そうか…なら、一つアドバイスだ…決して『憎しみ』や『復讐』をしようと思ってデュエルをするんじゃない…憎しみの先に勝利はない…!怒りをコントロールしろ、その思いを奴にぶつけるんだ…!!」

遊海は自分に言い聞かせるように凌牙にアドバイスを送る…叫びだしそうな、強い怒りの衝動を抑え込みながら…。

 

「わかった…できる限り、やってみる…!」

凌牙は遊海の放つ怒りの圧力に気圧されながら、そう答えた…。

 

 

 

 

《キャウ…キャーウ…》ペロペロ…

 

「…怖がらせてごめんな、フォウ…もう、大丈夫だから…」

 

《フォウ…》

 

「遊海さん…」

凌牙が帰ったあと…コップの破片と血を掃除した遊海はフォウを優しく撫でる…。

 

《…ユウミ、大丈夫ですか?》

 

《お前の怒り…そして後悔…我らはずっと見てきた…怒りに呑まれてはならんぞ》

遊海を諭すようにフレアとメガロックが声を掛ける…。

 

「俺は、大丈夫…少しすれば、落ち着く……俺の怒りは…バイロン…!お前の闇を…灼き尽くす!!」

遊海はそう言いながら再び拳を握りしめた…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

ハートランドシティのとあるホテル…そのスイートルーム…そこに3人の人影があった、それだけなら普通だが…その部屋の投影モニターにはたくさんのカートゥーンアニメが流れ…それを見ながら無邪気に笑う玉座に座る子供…そして、その様子をただ見守る2人の青年の姿…普通ではないだろう…。

 

 

ガチャリ…

 

 

『お望み通り…神代凌牙はWDCに参加するぜ』

 

【ハハハハ……それはどうもご苦労さまでした】

扉が開きⅣが入ってくる…そしてⅣは子供に凌牙の件を報告する…。

 

『だが…どうしてアイツを気にする?アイツはデュエリストとしては…』

 

【それでも彼は必要なんですよねぇ…我々が「No.」を集めきった時に…!】

子供はⅣに向かってそう答える…Ⅳの行動は全てこの「子供」の指示だったのだ…!

 

『それから…あの人が我々の事を探していたようだ…』

 

【そうか〜…彼には君達が世話になったからねぇ…!()()をしてあげないとね…ふふふ…アハハハ!!】

子供は邪悪に嗤う……その目に憎しみの炎を燃やしながら…。

 

 

『(悪りぃな、白野…俺達は止まる訳にはいかねぇ……それがたとえ、アンタの逆鱗に触れようと…!)』

 

 

 

SideOut

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

「う〜ん…迷うなぁ…!どうしたらいいかなぁ…」

 

直談判の結果、ギリギリでハートピースを貰う事のできた遊馬は自室でデッキ構築をしていた…世界中から様々なデュエリスト達…そして「No.」が集うであろうWDC…それを前に遊馬は最善のデッキで臨もうとしているのだ。

 

『遊馬、ちょっと降りといで』

 

「えっ…ばぁちゃん?」

デッキ構築を悩む遊馬に春が声を掛ける…遊馬は声に従ってリビングへと向かう…。

 

 

 

「どうしたんだよ?オレ、明日の為のデッキ構築が…」

 

『なに、明日からの大会にどういう気持ちで臨むのか…聞いておきたくてねぇ…』コポコポコポ

春は緑茶を淹れながら遊馬に問いかける。

 

「…オレは、デュエルチャンピオンを目指したい…!父ちゃんとの約束だから…でも、『勝ち』にこだわるつもりはない!…いつも負けてばっかりだったオレが友達のおかげで強くなれた…俺にとってデュエルは()()()なんだ…!だからオレは…勝ち負けにこだわらないで…色んな奴らとデュエルをしたい!」

春の言葉に遊馬はそう答える…遊馬にも背負うものはたくさんある、それでも…遊馬はデュエルを通じて色々な事を学びたいと思ったのだ…。

 

 

『うんうん…それでいいんだよ遊馬、デュエルは楽しむもの…昔の決闘者もそう言っておる、そんな優しい孫に私の宝物を見せてあげよう…』

 

「宝物…?」

遊馬の答えに満足したのか…春は小さな風呂敷包みを取り出す、その中には古びた色紙が入っていた…。

 

「昔の色紙…このサインって…!?」

遊馬は目を見開く、古びた色紙…そこには武藤遊戯・城之内克也・遊城十代…そして白波遊海…伝説の決闘者達のサインが書かれていたからだ…。

 

『私の1番の宝物だよ…もう何十年も昔、あの人達に書いてもらったのさ…この時の決闘は本当にワクワクしたねぇ…』

春は昔を懐かしむように瞼を閉じる…浮かぶのは手に汗握る決戦…紅蓮の炎がぶつかりあう伝説の決闘の様子だった。

 

 

『遊馬、本当に強い決闘者はただ勝つだけじゃなく…見る者を惹き付ける決闘をするものさ…それをよく覚えておくんだよ』

 

「…ありがとうばぁちゃん!オレ…頑張る!!」

 

春の言葉に勇気を貰い遊馬はデッキ構築に戻ったのだった。

 

『遊馬…お前が何を抱えているかはわからん、それでも…1人で全部を背負うんじゃないよ…』

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

パーン!パーン!!

 

翌朝、ハートランドシティはお祭り騒ぎに包まれていた…打ち上がる花火、音楽を奏でるオボットの楽団、アクロバット飛行で描かれるハートの形の飛行機雲…まさにワールド・デュエル・カーニバルに相応しい盛り上がりである!

 

 

「…いよいよだな」

遊海は鋼の鎧を身に纏い、空に浮かぶ飛行船を見ながら決意を固める…遊海は「鋼の騎士」としてWDCに参加する…それ故に…

 

「パパ〜!メタルナイトがいるよ!カッコいいー!!」

 

「メタルナイト!この前は助けてくれてありがとう!」

 

「握手して〜!」

…このようにたくさんの子供達やファンに囲まれていた。

 

 

「みんなありがとな!でもそろそろ開会式だ!Dゲイザーを着けるんだよ?」

 

「「「は〜い!!」」」

遊海の言葉に従ってみんながDゲイザーを装着する…そしてARビジョンによって全身にハートマークを付けたスーツを着た男・Mr.ハートランドが現れる!

 

 

『ハートランドシティに集まりしデュエリストの同志達よ!これよりデュエルカーニバルのルールを説明する!』

 

ハートランドから示されたルールは3つ

 

・予選期間は3日間

 

・参加者は挑まれたデュエルには必ず応じなければならない。

 

・ハートピースを全て失ったら失格、ハートピースを5つ集め()()させる事ができれば本戦出場

 

 

『以上がこの大会の大まかなルールだ!…ではここにワールドデュエルカーニバルの開催を宣言する!君達の熱いハートでハートランドを盛り上げてくれたまえ!ハート!バーニン─!!』

ハートランドの姿が消えると共に花火が打ち上がる…ついにWDCが開幕した…!!

 

 

「(俺の目標は…アイツをぶっ飛ばす事…!その為には決勝トーナメントには出なくちゃならない……でも、今は……)」

 

 

「「「デュエルしてください!メタルナイト!!」」」

 

 

遊海の周りにはたくさんの子供達が集まっていた…ハートランドでもメタルナイトは大人気である…。

 

 

「来る者は拒まず!今日は俺も子供達の声に応えるとしよう!そこの少年!デュエルだ!」

 

『ありがとうメタルナイト!負けないぞ〜!』

 

遊海は1人の少年を指名してデュエルを始める!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

築根優也LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『ボクのターン!ドロー!』

『「ギアギアーセナル」を召喚!』

黄色の歯車を持つドリルや大砲を装備したロボットが現れる ATK1500

 

 

『そして「ギアギア」モンスターがいる時!手札の「ギアギアクセル」は守備表示で特殊召喚できる!』

歯車を持つレーシングカー型のロボットが現れる DEF800

 

『ボクはレベル4の「ギアギアーセナル」と「ギアギアクセル」でオーバーレイ!』

2体のモンスターが銀河に飛び込む!

 

『2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!現われろ!「ギアギガントX」!!』

巨大な歯車を背負った機械の戦士が現れる! ATK2300

 

『「ギアギガントX」の効果発動!ORUを1つ取り除き効果発動!デッキの「ギアギアーノMk-3」を手札に加える!…カードを1枚伏せてターンエンド!』

 

優也LP4000

ギアギガントX 伏せ1 手札4

 

 

「うん!なかなかいい手際だ!では…俺の番だな!」

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『トレード・イン』を発動!手札のレベル8『神龍の聖刻印』を墓地に送って2ドロー!…さらに!相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない時!『聖刻龍─トフェニドラゴン』は特殊召喚できる!」

《任せられよ!》

ウジャト眼を刻んだ白き龍が現れる ATK2100

 

 

「さらに!『トフェニ』をリリースする事で『聖刻龍─シユウドラゴン』は特殊召喚できる!」

ウジャト眼を刻んだ青い龍が現れる! ATK2200

 

「さらにリリースされた『トフェニ』の効果発動!デッキからドラゴン族の通常モンスター『エレキテル・ドラゴン』を攻守を0にして特殊召喚!」

尾をスパークさせたドラゴンが現れる DEF0

 

 

「さらに『シユウ』の効果発動!手札の『聖刻龍─ドラゴンゲイヴ』をリリースして相手のフィールドの伏せカードを破壊する!」

 

『うわっ!「ホーリーライフバリアー」が!?』

魔法陣が刻まれた罠カードが砕け散る!

 

 

「ふぅ…!リリースされた『ドラゴンゲイヴ』の効果発動!デッキから「神龍の聖刻印」を特殊召喚!」

赤いウジャト眼の刻まれた太陽石が現れる DEF0

 

「そして俺はレベル6の『エレキテル』と『シユウ』でオーバーレイ!」

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!聖なる文字を刻みし龍王よ…その姿を現せ!『聖刻龍王─アトゥムス』!」

紫色のウジャト眼を刻んだ龍王が降臨する! ATK2600

 

 

「『アトゥムス』の効果発動!ORUを1つ取り除き、デッキからドラゴン族モンスター『神龍の聖刻印』を特殊召喚!そしてこのターン、このカードは攻撃できない!」

2体目の太陽石が現れる DEF0

 

「俺はレベル8の『神龍印』2体でオーバーレイ!」

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!現われよ!太陽の写し身たる龍神!『聖刻神龍エネアード』!」

赤いウジャト眼を刻みし太陽の化身が現れる ATK3000

 

 

「『エネアード』の効果発動!ORUを1つ取り除き、手札の「竜核の呪霊者」をリリースして『ギアギガントX』を破壊する!ソーラー・フレア!」

 

『っ…!すごい…!!』

魔法陣から放たれた熱線が戦士を焼き尽くす!

 

 

「そして俺はランク6の「アトゥムス」を素材にオーバーレイネットワークを再構築!進化せし竜騎士よ!迅雷の如く出陣せよ!『迅雷の騎士ガイアドラグーン』!!」

人竜一体となったドラゴンナイトが現れる! ATK2600

 

「バトル!『エネアード』と『ガイアドラグーン』でダイレクトアタック!」 

2体のドラゴンの攻撃がライフを削りきった…。

 

 

優也 LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

『あ〜あ!負けちゃった!でもメタルナイトに負けたならしょうがないや!はい!ハートピース!』

 

「うん、ありがとう!君の分まで俺も頑張ろう!」

遊海はハートピースを受け取り、少年と固い握手を交わした…。

 

 

 

「よ〜し!次に戦いたいのは誰かな?」

 

『オレだ!』

 

『私!』

 

『おれさまだ〜!!』

 

「(…これは、長い一日になりそうだな…(汗))」

 

《頑張ってくださいマスター!》

 

子供達に囲まれた遊海は仮面の下で苦笑いを浮かべながら子供達(一部大人を含む)の相手を始めた…長い長いWDCはまだ始まったばかりである…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ここが、ハートランドか…この街の、何処かに…!はやく、見つけなければ…!このままでは…大変な事になる…!』



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その王位は誰が為に─義憤─

こんにちは!S,Kです!

筆が乗ったので連続投稿!遊海の次なる相手とは…?


それでは最新話をどうぞ!


「ふぁ〜…疲れたぁ〜…」

 

《デュエル20連戦お疲れ様です、マスター…》

 

《久々の連戦…だいぶ疲れているのでは?》

 

「ああ…こんな事なら素直に岸波白野で参加するんだった…」

 

 

予選開始から数時間…遊海は変身を解いて公園のベンチで燃え尽きていた…朝10時の開会からぶっ続けで3時間近くデュエルをし続けていたのだ…なお、何処かから爆発音が聞こえるが無視している…おそらく暴走特急少女の仕業だろう…。

 

 

「集まったハートピースは…2つか、中々にシビアだなぁ…」

 

《バトルシティやジェネックスよりキツイですね…》

集まったハートピースは20人と戦って2つ…完成まで残り2ピースである。

 

「少し休憩して…また変身するか…ん?なんだ…あの騒ぎは…?」

遊海は公園を見渡す…その一角にはたくさんの人々が集まっていた…。

 

 

『「決闘王」の飛龍さんが来てるぞ─!!』

 

「サインくださーい!!」

 

「決闘王…か、少し覗いてみるか」

遊海は気配を消して人混みへと向かった…。

 

 

 

 

『いやぁ!みんなありがとう!ありがとう!決勝大会でも応援よろしくね〜!』

人混みの中心…そこには1人の男がいた、逆立った銀髪でキツネのような細目…そして深緑色の軍人のような服を着た青年…その名は飛龍(ヒリュウ) (ツカサ)…第6代決闘王の称号を持つ男である。

 

「(あれが現在の『決闘王』…なんだろう、違和感があるな…)」

周りの人々から凄まじい人気を受ける司に遊海は違和感を感じる…。

 

 

「司さん!どうしてWDCに?既に決闘王の称号を持っているのに…」

 

『それはね…王座は私1人のものだけで充分だと示す為さ!デュエル界にトップは2人も3人もいらないだろう?だから私はこの大会に来たのさ!私が1番だと証明する為にね!!』

ファンからの問い掛けに司は傲岸不遜に司は言いきった、この大会で優勝すると…!

 

『私はあと1つでハートピースを完成させる!そして戦う相手はもう決めているのさ…!それでは諸君!次は決勝大会で私の勇姿を見てくれたまえ!!』

そう言うと司は悠然と去っていった…。

 

 

「……嫌な予感がする」

遊海は静かにその後を追いかけた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オイ…!メタルナイトも極東ジュニアチャンピオンのⅣも見つからないとは…いったいどういう事だよオラァ!!』

 

「ひっ…も、申し訳ありません司様!!メタルナイトもⅣも午前中は目撃情報があったのですが!!」

 

『言い訳は聞いてねぇんだよ!!』ガン! ボガッ!!

 

「申し訳ありません!!」

 

ハートランドの路地裏…そこに飛龍司、そしてマネージャーらしき男の姿があった…そしてマネージャーは苛立ちをみせる司に殴られている…司には人々を前にしていた時の穏やかさはない…彼の本性…それは他人を見下し、自身が一番だと信じてやまない自己中心的なものだった…。

 

 

『チッ…!せっかく決闘王になったのによぉ…!人気は未だジュニアのⅣとプロでもないヒーローモドキよりも下…あいつらをぶっ潰して…オレ様がデュエル界のトップだって証明してやらぁ…!オラァ!さっさと探して来いやぁ!!』

 

「は、はい〜!!」

マネージャーは蹴り出されるように街中へ消えていった…。

 

 

『たくっ…!イライラするぜぇ…!どうして使えねぇ奴しかいねぇんだ!!』ガン!

 

 

「…問おう、決闘王の称号を持つ者よ…お前にとって『王』とはなんだ?」

 

 

『あぁん…?…お前は…!』

苛立ちを募らせる司…そこに低い声が響く、それは鋼を纏いしヒーロー…遊海の声だった。

 

『へぇ…!メタナイト、そっちから来てくれるとはなぁ…!!決まってんだろ?オレ様にとって「決闘王」は金儲けに便利な「称号」だよ…!そしてオレはこれからも「決闘王」であり続ける!オレ自身の為になぁ!!』

 

「…失望した、俺は…()()は、お前のような奴の為に『王』を継承したのではない…!!」

司の答えを聞いた遊海は拳を握り締める…決闘者の頂点であり、代々受け継がれた決闘者達の「魂」ともいえる称号…それは彼によって穢されてしまっていた…。

 

『勝手に言ってろ!先代の奴も「決闘者の模範となる王になってほしい」とか言ってたがよぉ…そんな事は関係ねぇ!!とりあえず…オレの裏の顔を見られたからにはただじゃおかねぇ……鋼の騎士!!』

 

「それは俺のセリフだ…!決闘者の頂点を穢した愚か者…お前を断罪する!!」

 

 

「『デュエルディスク!セット!Dゲイザー!セット!』」

 

【ARビジョンリンク完了!】

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

飛龍司LP4000

遊海LP4000

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『「幻獣機メガラプター」を召喚!』

恐竜の顔を持つ戦闘機が現れる ATK1900

 

「手札から『増殖するG』の効果発動!このターン、相手が特殊召喚する度にカードを1枚ドローする!」

 

『ハッ…!手札なんていくらでもくれてやるよ!オレは魔法カード「おろかな埋葬」を発動!デッキの「幻獣機オライオン」を墓地に送る!そして「オライオン」の効果で「幻獣機トークン」を特殊召喚!さらにトークンが特殊召喚された事で「メガラプター」の効果発動!さらに「幻獣機トークン」を特殊召喚!』 

メガラプターの投影機能により半透明の戦闘機が現れる! DEF0 DEF0

 

『さらに墓地の「オライオン」を除外して効果発動!手札の「幻獣機ハリアード」を特殊召喚!』

鬣を持つ豹顔の戦闘機が現れる ATK1800

 

 

『さらに「メガラプター」の効果発動!トークンをリリースする事でデッキから「幻獣機ブルーインパラス」を手札に加える!そして「ハリアード」の効果!自分のモンスターがリリースされた時!「幻獣機トークン」を特殊召喚!』

ハリアードから半透明の戦闘機が投影される DEF0

 

『「ハリアード」の効果発動!トークンをリリースして手札の「ブルーインパラス」を特殊召喚!』

角を持つ青い戦闘機が現れる ATK1400

 

『そしてオレは「ブルーインパラス」の効果により手札の幻獣機モンスターをシンクロ素材に機械族のシンクロモンスターをシンクロ召喚できる!手札のレベル4の「幻獣機コルトウィング」にレベル3の「ブルーインパラス」をチューニング!』

 

4+3=7

 

『音速を超える神鳥よ!全ての敵を撃墜せよ!シンクロ召喚!「幻獣機コンコルーダ」!!』

インド神話の神鳥の名前を冠する音速飛行機が現れる ATK2400

 

 

『そして見せてやるよ…!テメェと生意気な極東チャンピオンを倒すオレ様の切り札を!「メガラプター」と「ハリアード」のレベルは自分の場の「幻獣機トークン」のレベルの合計分アップする!「幻獣機トークン」は1体!よってレベル7となる!』

 

 

メガラプター☆4→7

 

ハリアード☆4→7

 

 

『オレはレベル7となった「メガラプター」と「ハリアード」でオーバーレイ!』

2体の戦闘機が銀河に飛び込む!

 

『2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!』

 

42 

 

『星を攻め落とす巨大なる戦闘母艦よ!全ての敵を殲滅せよ!「No.42スターシップ・ギャラクシー・トマホーク」!!』

ビルより遥かに巨大な戦闘母艦が現れる DEF3000

 

 

「『No.』…やはりそうか…!」

遊海は感じていた違和感の答えを見つける…司はナンバーズを手にし、その欲望を肥大化させていたのだ…!

 

 

『ふははははは!!どうだオレ様の切り札は!シンクロとエクシーズを使いこなし!そして「No.」をも操るオレこそが「決闘王」に相応しいのだ─!!「ギャラクシートマホーク」の効果発動!ORUを2つ取り除き、「バトルイーグルトークン」を可能な限り特殊召喚する!!』

戦闘母艦から2体の艦載機が射出される ATK2000  ×2

 

『オレはカードを1枚伏せてターンエンド!「バトルイーグルトークン」はエンドフェイズに破壊されるが…「コンコルーダ」の効果により戦闘・効果では破壊されない!』

司LP4000

コンコルーダ ギャラクシートマホーク 幻獣機トークン バトルイーグルトークン×2 伏せ1 手札1

 

 

 

「1つ問おう飛龍司…俺は『増殖するG』で何枚ドローした?」

 

『8枚だろ?手札がいくらあろうと貴様はオレ様には勝てねぇ…!オレの無敵の軍団にはなぁ!!』

 

「…本当にARビジョンは便利なもんだ、設定を変えればどんなモンスターを召喚しても()()()()()()()()()()()()()()()…」

 

『チッ…!貴様もナンバーズ持ちか!!ならそのナンバーズもオレが手に入れてやる!!』

 

「…1つ、『お前の精神性を見抜けなかった』…2つ、『決闘王を選ぶ基準をきちんと定めるべきだった』…3つ、『お前のような者でも決闘王になれるようにしてしまった』…俺は自分の罪を数えた…さぁ、お前の罪を数えろ!!」

 

『うるせぇ!オレ様には罪なんてねぇ!オレは決闘王だ!!何をしても許される!!そしてこれからもオレ様はデュエリストの頂点だ─!!』

 

 

 

「俺のターン、ドロー」キィン─!

「魔法カード『ハーピィの羽箒』を発動、伏せカードを破壊する」

 

『っ…「弾幕回避(バレルロール)」が…!だが…!』

 

「機能開放…ペンデュラムスケールにスケール1の『クリフォート・アセンブラ』とスケール9の『クリフォート・ツール』をセッティング」

遊海の背後に光の柱が立ち昇り、紫と黄のコアを持つ機械が現れる 

 

『っ…!?な、なんだ…!?何をしようと…!』

 

「お前が知る必要は…ない、フィールド魔法『機殻の要塞(クリフォートレス)』を発動、さらに『ツール』のペンデュラム効果を発動、800ライフを払いデッキから『クリフォート・ディスク』を手札に加える」

 

遊海LP4000→3200

 

 

「俺はスケール1の『アセンブラ』とスケール9の『ツール』でペンデュラムスケールをセッティング…これにより俺は手札からレベル2〜8のモンスターを同時に特殊召喚できる…我が魂を守りし大いなる力よ…今こそその力を示せ!ペンデュラム召喚!手札より現われよ!『クリフォート・ディスク』『アクセス』『エイリアス』『シェル』『アーカイブ』!」

遊海の頭上に巨大なワームホールが現れ、ギャラクシートマホークより巨大な5体の機械が降臨する!

 

 

ディスクATK2800→1800

 

アクセスATK2800→1800

 

エイリアスATK2800→1800

 

シェルATK2800→1800

 

アーカイブATK2400→1800

 

 

『じょ、上級モンスター5体の同時召喚だと─!?』

 

「特殊召喚された『クリフォート』モンスターの攻撃力は1800、レベル4になる…悪いな、久々の相手がこんな奴で…」

 

《いいえ…ユウミの怒りはもっともな事…!貴方の怒り…私が背負いましょう…!!》

遊海の肩に金色の小鳥が現れる

 

 

…精霊は歌う…大いなる力、すべての万物を司らん…その命、その魂…そしてその骸でさえも…俺は『ディスク』『アクセス』『エイリアス』の3体をリリース!我が声に応え…顕現せよ!『ラーの翼神竜』─!!」

 

【ギュアアア─!!!】

周囲が暗雲に包まれる…そしてその暗雲に金色の小鳥が飛び込む…そして暗雲から金色の光が溢れ、太陽神がその姿を現す! ATK?→8400

 

 

『ば、馬鹿な…!?「ラーの翼神竜」!?!?既にう、失われたカードのはず─…!』

 

「飛龍司、お前は俺を怒らせた…決闘王の名を穢した罪…我が全力を以て断罪する!」

鋼の鎧が燃え尽きる、その場に現れるは瞳に怒りを宿した赤帽子の男…その名は…

 

『に、2代目決闘王…白波、遊海…!?ば、馬鹿な!生きていれば100才を超えて─』

 

「装備魔法『機殻の生贄(サクリフォート)』を発動、『アーカイブ』に装備」

狼狽する司を尻目に遊海は展開を続ける…

 

 

「『機殻の生贄』を装備したモンスターは『クリフォート』モンスターのアドバンス召喚によってリリースする時、2体分のリリースとなる…そして俺はフィールド魔法『機殻の要塞』の効果により通常召喚に加えてクリフォートモンスターを召喚できる、2体分のリリースとなった『アーカイブ』と『シェル』をリリース!顕現せよ!我が魂!我が相棒!『アポクリフォート・キラー』!!」

《真体…顕現します!》

 

暗雲の合間から虹色のコアを持つ、ギャラクシートマホークの数十倍巨大な機殻の王が降臨する! ATK3000

 

 

『あ、あわわわわ…!!?』

太陽神と機殻王を目の当たりにした司は腰を抜かして空を見上げる…いや、見上げる事しかできない…それはまるで判決を待つ罪人のようだった…。

 

「『アポクリフォートキラー』がモンスターゾーンに存在する限り、特殊召喚されたモンスターの攻守は500ダウンする…機殻の重圧(クリフォート・グラヴィティ)!」

周囲の重力が倍化し、滞空していた戦闘機が墜落する…!

 

ギャラクシートマホーク DEF3000→2500

 

コンコルーダ ATK2400→1900

 

バトルイーグルトークン ATK2000→1500

 

幻獣機トークン DEF0

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()?バトルだ、『アポクリフォートキラー』で『バトルイーグルトークン』を攻撃…デストロイ・イレイザー!」

《主砲…発射!!》

 

アヤカから放たれた破壊光線が艦載機を飲み込みスクラップ状態にする!

 

『うわあぁぁぁ!!』

司LP4000→2500

 

 

「『ラーの翼神竜』で『バトルイーグルトークン』を攻撃…力に溺れ、金に溺れた『決闘王』の名を騙る愚か者よ!神の炎による裁きを受けろ!」

《その邪な魂を燃やし尽くす!!罪を悔い改めよ!!》

 

《「ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」》

 

罪人に裁きが下される…太陽神の炎は全てを飲み込み、断末魔の叫び諸共焼き尽くした…。

 

 

 

司LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

『っ…うぅ…!』

 

「目が覚めたか?」

 

『ひ…!?ひぃ!!』

目を覚ました司は思わず後ずさる…そこには冷たい眼差しで自分を見下す白波遊海、そして申し訳なさそうな表情で縮こまるマネージャーの姿があった。

 

 

「マネージャーから全て聞かせてもらった、対戦相手への脅迫、八百長試合の強要、違法決闘賭博への参加…違法なアンティデュエル…問答無用で有罪(ギルティ)だ、よって『2代目決闘王』…そして『KC特殊顧問デュエリスト』の名を以て貴様の称号を剥奪し…罰を下す!」

 

『や、ヤメ!やめてくれ!!』

遊海は司の額に指を置く…

 

 

「ゼロから決闘者としてやり直してこい…マインドクラッシュ!!」

 

 

バリーン…

 

 

『あが…が…──』

精神を粉砕された飛龍司は白目を向いて倒れ伏した…

 

 

「…マネージャー、悪いがあなたの記憶も一部消させてもらう…正確には俺に関する記憶をな」

 

「……覚悟しています、司様を止める事ができなかった私にも責任がありますから…申し訳ありませんでした…それから、これは司様のハートピースです…」

マネージャーは深々と頭を下げ、ハートピースを手渡す…。

 

「確かに受け取った…次はもっといいデュエリストに付くといい」

 

「いいえ…私は司様…飛龍司だけのマネージャーです!必ず彼を立ち直らせてみせます!!」

マネージャーは遊海の目を見ながら答える

 

「見事だ、その思いを忘れないようにしろよ…魔法発動…『記憶抹消』!」

 

「っ…─」

 

「よっと…これでよし、あとで証拠と一緒にKCに報告しよう…お前達のこれからの努力に期待する…頑張れよ」

気を失ったマネージャーを抱きとめ、司と同じように壁に凭れさせると遊海はその場を離れる…。

後日、KCとI2社の合同発表により飛龍司の称号剥奪が正式に発表された…。

 

 

 

 

 

 

 

「嫌な事件だった…」

 

《…お疲れ様でした、マスター…大丈夫ですよ…きっと次の方は遊戯さんやマスター、ジャックの意思を繋いでくれるはずです…》

沈んだ表情をする遊海をアヤカが慰める…信じて次代へと託した称号…それをこんな形で奪う事になるとは遊海自身も思っていなかっただろう…。

 

「…そうだといいな…さて、気を取り直してWDCに戻ろうか」

飛龍司のハートピースは嵌らなかった…決勝に出る為にも早めに残り2つのハートピースを見つけなければならない…!

 

《はい!頑張りましょうマスッ!マスター!前─!》

 

 

「えっ…うわっ!?」ドスン!

アヤカと話しながら歩いていた遊海は何かにぶつかり尻もちをつく…それはボロボロのローブを纏った大柄な人物の背中だった。

 

「イテテ…すいません!よそ見してて…」

 

『こちらこそ申し訳ない…人探しを──!?貴方は…!!』

 

「えっ…っ─!?」キィン─!

フードで顔を隠した人物は遊海を見た途端に驚きをあらわにする…それと同時に赤き竜の痣が強く輝く…!

 

『まさか、貴方がこの街にいたとは…!これも赤き竜の導きなのか…白波遊海…!』

 

「…お前、何者だ…!何故、俺の事を知っている─!」

遊海はデュエルディスクを構える…!

 

『……私が()()()()()()は許される事ではない…それでも、世界の為に…力を貸してくれ…!最強の決闘者よ…!』バサッ…

 

「っ…!馬鹿な、なんでお前が生きている!?」

遊海は驚愕する…その男は過去に遊海達と敵対し、激戦ののちに光の中へと消えたはずだったからだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてお前がここにいるんだ…!答えろ!レクス・ゴドウィン─!!」



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英雄と勇士〜奇跡の共闘〜

こんにちは!S,Kです!

ハートランドへと現れたレクス・ゴドウィン…その目的とは…?
そして、遊海を待ち受ける相手とは…!


それでは最新話をどうぞ!


「どうしてお前がここにいるんだ…!答えろ!レクス・ゴドウィン!!」

 

 

遊海は目の前に現れた男を睨みつける…ネオドミノシティ旧治安維持局長官にしてイリアステルの名代である星護主…そしてなにより、赤き竜と冥界の王の戦いを終わらせる為に光の中に消えたはずの元シグナーにしてダークシグナーだった男…レクス・ゴドウィン…年齢は110歳を超えているはずだが…その姿は日焼けをして皺は増えているものの遊海の記憶にある60年以上前の姿とほとんど変わっていない…!

 

 

『…警戒するのも無理はない、だが…私の話を聞いてほしい…!今、この街に…世界に危機が迫っているのだ…!』

 

「なに…?どういう事だ?」

 

 

 

そしてレクスは語り始める…遊星との決戦の後、赤き竜と冥界の邪神との戦いに決着を着ける為にルドガーと共に新たな戦いに臨もうとした事。

その直前、真の冥界の王たる「名もなきファラオ」に出会い、今までの罪の精算の為に善行を積む事を課されアフリカに飛ばされていた事。

そしてその身に残留した赤き竜と冥界の邪神の力によってルドガーと共に命を永らえ…ひたすらにアフリカの人々の為に必死に働いてきた…そんな奇跡のような話だった…。

 

 

「俺の知らないところでそんな事が…」

遊海はその話を聞いてただ呆然としていた…遊海達は転生特典による「不老不死」であり、長い人生を歩む覚悟ができている、しかし…レクス達は違う、その体に宿る力が消えれば彼らの生は終わりを迎える…それがいつなのかわからぬまま生きる続けるのは…まさに「罰」にふさわしいだろう…。

 

 

『…そんな顔をしないでください、私と兄はその罰を受け入れた…怪我をしても貴方のような治癒はせず、病気にもかかる…それでも私達は自分の罪を償う為にこの道を選んだのです…それに悔いはありません』

 

「ゴドウィン…わかった、貴方が納得しているなら俺は何も言わない…だが、聞かせてくれ…どうしてハートランドに来た?何が起きようとしてるんだ…?」

遊海はレクスに問いかける、アフリカから日本に戻るのは容易な事ではない…そんな苦労をしてまでレクスがハートランドを訪れた理由とは…

 

『…兄が、ルドガーが…再び闇の力に飲まれてしまった…!そして危険な力を宿したカードを持ってこの街に潜んでいるのです…!!』

 

「危険なカード…まさか『No.』か!?」

 

『その通りです…!そのカードを手にした兄はダークシグナーの時のように豹変してしまったのです…!』

 

レクス曰く、ある村で井戸を掘っていた時に地面の中から3枚の白紙のカードを見つけたらしい、レクス自身は赤き竜の力故か何事もなかったが…冥界の力を強く宿していたルドガーはカードを持った途端に豹変…村から姿を消してしまったのだという…。

 

 

『なんとか目撃情報を辿って兄がこの街に来た事がわかりました…そしてこの街で開かれている大規模なデュエル大会…!兄はこの街で何事かを為そうとしているのです…!』

 

「…『No.』の意思に取り憑かれたか…!大事になる前に見つけないと…!アヤカ!」

 

《過去のデータとレクス・ゴドウィンのデータを参照にハートランド内を検索……ヒット!少し離れた場所に……っ!?マスター!ルドガーの近くに遊馬とアストラルが…!!》

 

「っ…それは不味い!精霊変身!!急ぐぞ!!」

アヤカの言葉を聞いた遊海はすぐさまルドガーのもとへ走り出した…。

 

 

 

 

 

 

side遊馬

 

 

 

「ひ、酷い目にあった…」

 

「本当にお騒がせだったわね…」

 

(先程の事は…しょうがない、運がなかったな)

 

 

 

とある公園のベンチで遊馬と小鳥は座りこんでいた…ここまで遊馬がデュエルしたのは3人、サッカーデッキの使い手・国立カケル、重機デッキの使い手・油圧ショーベェ…そして、遊馬を初恋の人と勘違いして追い掛け回した暴走特急少女・神月アンナの3人…しかも、アンナに関してはWDCの参加者ではなかった為ハートピースは得られず、無駄骨で終わってしまった…。

 

 

 

「とりあえずデュエル飯を食って…もう一度戦う相手を探さないとな~…」

 

「まだ予選は3日も残ってる!大丈夫よ!」

疲れた様子の遊馬を励ます小鳥…遊馬に嵌まったハートピースは1つ、完成まで残り3ピースである。

 

(…!遊馬、ナンバーズの気配だ…近いぞ!)

  

 

「もがっ!?…なんだって!?」

デュエル飯を頬張っていた遊馬にアストラルが注意を促す…!

 

(しかも、この気配は一枚のナンバーズではない…!強敵の可能性がある…!)

 

「…それでも行くっきゃねぇ!小鳥!ここで待ってて…」

 

「ナンバーズを持ってる人がいるのね…!私も行くわ!遊馬だけを危険な目にはあわせられない!」

 

「…わかった!いくぞ!!」

小鳥の言葉を聞いた遊馬は頷き、ナンバーズの反応があった方向に走り出した…。

 

 

 

 

 

「っ…!大丈夫か!?」

 

「ぐっ…痛いんだな〜…あのおじいさんは…強すぎるんだな〜…」

遊馬達が辿り着いた時、その場所には何人ものデュエリスト達が倒れていた…その中心地点には紺色のローブを纏った男が立っている…銀髪を逆立て、目の下には赤いラインが刻まれた壮年の男…その男は遊馬達を見つけると笑みを浮かべる…!

 

【ほう、新たな獲物が狩られに来たか…】

 

((この男…強い…!))

アストラルは男を見てその強さを感じ取る…身体から発せられる覇気、そしてその男の眼光がその男の歩んだ人生を現しているようだった。

 

「アンタがデュエリストのみんなを襲ったのか…!どうしてこんな事をするんだ!」

 

【我が名はルドガー…私は「No.」を求める…!この世を救う為に!】

 

「世界を救う…!?」

男…ルドガーの思わぬ言葉に遊馬は驚愕する…

 

【然り…この世は貧困や犯罪、悪に満ちている…!この世の理を破壊し、この世界をあるべき姿へと蘇らせる!!】

 

(…遊馬、彼は本来は善良な人間なのだろう…だが、ナンバーズに取り憑かれて暴走してしまっている…!)

 

「ああ…!あの人からナンバーズを回収して正気に戻すんだ!!」

遊馬はアストラルの言葉を聞いて腰のデッキに手を掛ける…その時だった…!

 

 

「そこまでだ!ルドガー・ゴドウィン─!!」

 

ドドォン!!

 

土煙と共に新たな人影が現れる、それは…

 

「メタルナイト…!」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「少し遅かったか…!」

遊海がその場所に辿り着いた時、その場には倒れたデュエリスト達…そしてその中心で遊馬、そして黒いローブを纏った男…ルドガーが相対していた…。

 

 

【お前は…そうか、こちらへと活動場所を移していたのか、鋼の騎士よ…!】

 

「ああ、もう一度お前を止める事になるとは思ってなかったよ、ルドガー…!」

遊海はルドガーと睨み合う…ルドガーも遊海の記憶とはそこまで変わってはいない…ただ、その身に纏う覇気はダークシグナー時よりも強くなっているような気がした…。

 

 

「メタルナイト!どうしてここに!?それにあの人と知り合いなのか!?」

 

「やぁ、遊馬少年…彼はルドガー…俺達とかつて敵対した男だ、改心して平和に過ごしていたんだが…ナンバーズによって闇の心を刺激されてしまったらしい…!」

遊馬の問いに遊海が答える…しかし、それに驚く人物がいた…。

 

(ルドガー…?それは過去に起きた『ダークシグナー事件』の関係者ではないか?)

 

「えっ…!?なんでアストラルがそんな事知ってんだよ!?」

 

「(えっ、なんで知ってるの!?)」

遊海はアストラルの言葉に冷や汗をかく…!

 

(遊馬が先日買った不動遊星の自伝に書いてあった…60年以上前、不動遊星と仲間達…赤き竜の力を得たシグナーと敵対した冥界の王の力を宿した死の決闘者達・ダークシグナー…そのリーダーがルドガーという男だったと書いてあった…!)

 

「待てよ!その事件って70年くらい前の話だろ!?それじゃあの人は100歳以上のじいちゃんだって事になるぞ!?」

アストラルの言葉に遊馬は混乱する…。

 

 

(…推測でしかないが、彼は何かしらの力で生命を永らえている…そう考えるしかないだろう…!そして…それは貴方も同じのはずだメタルナイト…いや、白野…!)

 

「えっ…?アストラル!何言ってんだよ!メタルナイトが白野なわけ…!」

 

(遊馬、君も聞いていただろう?ルドガーとメタルナイトは『かつて敵対した』と言った…つまり、彼も同じ時代の人間という事になる…そして、メタルナイトの鎧と白野の精霊・アヤカには共通する意匠がある……つまり、貴方は精霊の力を身に纏い…鋼の騎士として活動していた…違うか?)

 

「…恐れ入ったよアストラル、流石は天才デュエリストだ…他人に正体を見抜かれたのは初めての事だ…黙ってて悪かったな遊馬、小鳥ちゃん」

遊海は鎧の頭を外し素顔を晒す…。

 

「うそ…!?」

 

「ま、マジで白野さんだったのかよ!?」

白野の顔を見た遊馬と小鳥は驚いて開いた口が塞がらない…

 

(そして…貴方には()()1()()()()がある…それは…まだ言わない方がいいか?)

 

「…ああ、今はその時じゃない…今は…」

遊海は前を見据える…!

 

 

【話は終わったかな?ならば決闘だ…お前達のナンバーズ…奪わせてもらう!】

 

「遊馬、悪いが手を貸してくれるか?」

 

「ああ、白野には聞きたい事がいっぱいあるけど…今はあの人を止めるのが先だ!!」

遊海と遊馬はルドガーを睨みつける!

 

 

「【デュエルディスク!セット!Dゲイザー、セット!】」

 

「デュエルディスク!セット!Dゲイザー…っ!?」

 

キィン─!

 

Dゲイザーを着けようとした遊海の左目に焼け付くような痛みが走る…その目の周りにはドラゴン・フレイムの痣が変化した炎のような紋様が刻まれる!

 

「(ドラゴン・アイ…ってか?ありがとよ、赤き竜…!)」

 

 

 

 

 

「『【デュエル!!】』」

 

 

 

 

ルドガーLP4000

 

遊海LP4000

遊馬LP4000

 

 

 

特殊ルール

変則タッグデュエル

最初のターンは全員攻撃不可

 

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【『グランド・スパイダー』を召喚!】

単眼の大きな蜘蛛が現れる DEF1500

 

【カードを2枚伏せてターンエンド!】

ルドガーLP4000

グランドスパイダー 伏せ2 手札3

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『トレード・イン』を発動!手札のレベル8『神龍の聖刻印』を捨て、2ドロー!さらに魔法カード『招集の聖刻印』発動!デッキから『聖刻龍─トフェニドラゴン』を手札に加え…自身の効果で特殊召喚!」

《御意!》

ウジャト眼を刻んだ白龍が現れる ATK2100

 

「さらに『トフェニ』をリリースして『聖刻龍─アセトドラゴン』をアドバンス召喚!」

紫色のウジャト眼を刻む朝日の龍が現れる ATK1900

 

 

「リリースされた『トフェニ』の効果発動!デッキからドラゴン族通常モンスター『神龍の聖刻印』を特殊召喚!」

赤いウジャト眼を刻む太陽石が現れる DEF0

 

「『アセト』の効果発動!フィールドの聖刻モンスターのレベルを自分フィールドのドラゴン族通常モンスターと同じレベルにする!よって『アセト』のレベルは8になる!」

 

アセト☆5→8

 

 

「俺はレベル8の『アセト』と『神龍印』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!現われよ!偉大なる龍の力を宿す騎士!『神竜騎士フェルグラント』!」

神竜の力を宿す龍騎士が現れる ATK2800

 

 

「そして俺は魔法カード『超再生能力』を発動!カードを2枚伏せてターンエンド!『超再生能力』の効果により2ドロー!」

 

遊海LP4000

竜騎士フェルグラント 伏せ2 手札3

 

 

 

(やはり流れるようなプレイングだな…遊馬、私達はまだ攻撃する事はできない、守りを固めるぞ)

 

「おう!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「『ライライダー』を召喚!」

大型バイクに乗ったライダーが現れる ATK1200

 

「さらに相手フィールドにモンスターがいて、自分フィールドにレベル3モンスターがいる時!手札の『ミミミック』は特殊召喚できる!」

ネジ巻きのおもちゃが現れる ATK300

 

「オレはレベル3の『ライライダー』と『ミミミック』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!」

 

49 

 

「来い!『No.49秘鳥フォーチュンチュン』!」

遊馬のフィールドに卵型のオブジェが現れ変形…否、孵化…小さな木の杖を咥えた青い鳥が現れる DEF900

 

「オレはカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

「遊馬のエンドフェイズに永続罠『復活の聖刻印』を発動!デッキから『龍王の聖刻印』を墓地に送る!」

 

遊馬LP4000

フォーチュンチュン 伏せ1 手札3

 

 

 

「(いい判断だ、『フォーチュンチュン』ならカード効果への耐性と戦闘破壊にも強い…さて、ルドガーはどう動く…!)」

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【『インフォーマー・スパイダー』を召喚!】

スパイ道具を背負った蜘蛛が現れる ATK500

 

【私はレベル4の『グランドスパイダー』と『インフォーマースパイダー』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!】

 

70 

 

【現われよ!『No.70』!大罪背負いし蜘蛛!『デッドリー・シン』】

水色の身体を持つ大グモが現れる! ATK2400

 

【『デッドリー・シン』の効果発動!ORUを1つ取り除き、『神竜騎士フェルグラント』を次のスタンバイフェイズまで除外する!】

 

「『フェルグラント』の効果発動!ORUを1つ取り除き!自身を対象に効果発動!エンドフェイズまで効果は無効になるが、『フェルグラント』自身以外のカード効果を受けなくなる!」

竜騎士が光の玉を吸収し、聖なる結界を張る!

 

【ならばバトルだ!『デッドリーシン』で『フォーチュンチュン』を攻撃!】

 

(遊馬!)

 

「おう!『フォーチュンチュン』の効果発動!ORUを1つ取り除いて破壊を無効にする!」

青い鳥が光の玉を飲み込むと木の枝の杖を振るう…すると魔法陣が現れて蜘蛛の一撃を受け止める!

 

 

【『デッドリーシン』のさらなる効果発動!このカードが攻撃した時!このカードの攻撃力は300アップし、ランクは3つ上がる!】

 

デッドリーシン ATK2400→2700 ★4→7

 

【私はこのままターンエンド!】

 

「再び「復活の聖刻印」の効果発動!デッキから『聖刻龍─ドラゴンゲイヴ』を墓地に送る!」

ルドガーLP4000 

デッドリーシン 伏せ2 手札3

 

 

 

『兄さん!!』

 

【レクス…お前もこの街に来ていたのか】

デュエルが開始から少し経ち、レクスがようやくルドガーの居場所まで辿り着く…。

 

『やめるんだ兄さん!貴方のしようとしている事は間違ってる!』

 

【黙れレクス…私はアフリカで苦しむ村人達を見て思ったのだ…我々の力だけでは世界は変えられぬ…!世界を変えるには力が必要だ!その為に私は「No.」を集める…!】

 

『兄さん…!!』

 

「今は何をいっても無駄だ…!心配するな!俺達がルドガーを正気に戻す!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『星呼びの天儀台』を発動!手札の『エレキテルドラゴン』をデッキの1番下に戻して2ドロー!…『聖刻龍─ドラゴンゲイヴ』を召喚!」

オレンジ色のウジャト眼を刻んだ人龍が現れる ATK1800

 

「バトルだ!『フェルグラント』で『デッドリーシン』を攻撃!」

 

【無駄だ!『No.』は『No.』との戦闘でしか破壊されぬ!】

 

「それはどうかな!『フェルグラント』の効果を発動!ORUを1つ取り除き『デッドリーシン』の効果を無効にし、このカード以外の効果を受けなくなる!斬り裂け!『フェルグラント』!」

フェルグラントの剣に光の玉が吸収され、デッドリーシンの効果を消し去る!

 

デッドリーシン ATK2700→2400 ★7→4

 

 

【ならば罠カード発動!『進入禁止!!No Entry!!』!フィールドのモンスター全てを守備表示にするが『デッドリーシン』は『フェルグラント』の効果により表示形式は変わらない!】

フィールドに黄色の封鎖帯が現れ、フェルグラントとゲイヴは膝をつく…

 

フェルグラントATK2800→DEF1800

 

ゲイヴATK→DEF1800→400

 

 

「っ…!やるな…!カードを2枚伏せてターンエンド!」

遊海LP4000

フェルグラント ドラゴンゲイヴ 復活印 伏せ3 手札1

 

 

 

「白野の攻撃を防いだ…!」

 

(あのルドガーという男…やはり強敵のようだな…!)

 

「慌てるな遊馬、アストラル…お前達ならやれるはずだ!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

 

『スタンバイフェイズに「フォーチュンチュン」の効果発動!自分のライフを500回復する!』

フォーチュンチュンから癒やしの力が遊馬のライフを回復する!

 

遊馬LP4000→4500

 

 

「そして『ゴブリンドバーグ』を召喚!」

赤いプロペラ機に乗ったゴブリンが現れる ATK1400

 

「さらに『ゴブリンドバーグ』の効果発動!召喚に成功した時!手札のレベル4モンスター『ゴゴゴゴーレム』を特殊召喚!」

ゴブリンの乗った飛行機からコンテナが投下され、巨大な青いゴーレムが現れる ATK1800

 

「いくぜ!オレはレベル4の『ゴブリンドバーグ』と『ゴゴゴゴーレム』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!」

 

39 

 

「現われろ!『No.39希望皇ホープ』!」

遊馬のエースである白き戦士が現れる! ATK2500

 

【罠カード「激流葬」発動!相手が召喚・特殊召喚に成功した時!フィールドのモンスター全てを破壊する!】

 

「やらせない!カウンター罠『反射の聖刻印』!『ドラゴンゲイヴ』をリリースする事でモンスター効果・魔法・罠の発動を無効にし破壊する!」

激流葬のカードが砕け散る!

 

「サンキュー!白野!」

 

「どうって事ないさ!リリースされた『ゲイヴ』の効果発動!墓地の『龍王の聖刻印』を特殊召喚!」

紺色のウジャト眼を刻んだ月光石が現れる DEF0

 

 

「バトルだ!『希望皇ホープ』で『デッドリーシン』を攻撃!ホープ剣スラッシュ!」

ホープの一撃がデッドリーシンを両断する!

 

【ぐぅ…!】

 

ルドガーLP4000→3900

 

「よし!カードを1枚伏せてターンエンド!」

遊馬LP4500

ホープ フォーチュンチュン 伏せ2 手札1

 

 

 

「その調子よ!遊馬─!」

 

「へへっ!ありがとよ小鳥!」

デッドリーシンを撃破しダメージを与えた遊馬に小鳥が声援を送る!

 

『油断するな少年!兄は…少なくとも3()()のナンバーズを持っている!!』

 

「なんだって…!」

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【自分フィールドにカードが存在しない時!手札の『マザー・スパイダー』は特殊召喚できる!】

巨大な蜘蛛の女王が現れる DEF2300

 

「(俺の知ってる「マザー・スパイダー」と違う…!まさか…漫画版の─!)」

 

【「マザースパイダー」の効果発動!自身をリリースする事でデッキから3体の「ベビー・スパイダー」を特殊召喚!】

女王グモが卵を生み…3体の子蜘蛛が現れる! ATK100  ATK100  ATK100

 

【「マザースパイダー」の効果で特殊召喚された「ベビースパイダー」のレベルは5となる!さらに魔法カードスパイダー・イート・スパイダー」を発動!「ベビースパイダー」1体をリリースする事でフィールドのモンスターのレベルをそのレベル分アップする!】

ルドガーの場の子蜘蛛が仲間を喰らい、その力を得る…!

 

☆3→5

 

☆3→5→10

 

☆3→5→10

 

 

「と、共食いした…!?」

蜘蛛の共食いを見た遊馬の顔が青褪める…

 

(そしてフィールドにはレベル10のモンスターが2体…来るぞ!遊馬!)

 

 

【私はレベル10となった「ベビースパイダー」2体でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!】

 

35 

 

【現われよ!「No.35」!暴食の罪を背負いし蜘蛛「ラベノス・タランチュラ」!】

単眼の大蜘蛛が現れる ATK0→100

 

「攻撃力100のナンバーズ…?」

 

【「ラベノスタランチュラ」の攻守は相手と自分のライフポイントの差分アップする…だが、まだ終わりではない!エクストラデッキの「No.84ペイン・ゲイナー」の効果発動!自分の場のランク8〜10の闇属性モンスターエクシーズの上に重ねてエクシーズ召喚する事ができる!現われよ!「ペインゲイナー」!】

 

84 

 

3つの目を持つ大蜘蛛が現れる DEF0

 

 

(進化するナンバーズだと…!?)

 

「でも守備力は0だ!次のオレ達のターンで倒せるはずだ!」

 

「2人とも!まだだ!」

動揺する遊馬達に遊海が注意を促す!

 

【「ペインゲイナー」の守備力はフィールドのモンスターエクシーズのランクの合計×200アップする!ランクの合計は26…よって!】

 

ペインゲイナーDEF0→5200

 

「「守備力5200だって…!?」」

 

【そして「ペインゲイナー」のもう1つの効果発動!ORUを1つ取り除き、このカード以下の守備力を持つモンスターを全て破壊する!】

 

(遊馬!リバースカードだ!)

 

「リバース罠発動!『皇の波動』!『ホープ』のORUを1つ取り除いてこのターンの間、自分フィールドのモンスターエクシーズはカード効果では破壊されなくなる!」

 

【甘い!『ペインゲイナー』のさらなる効果発動!ORUを持つこのカードがフィールドに存在する時に相手が魔法・罠を発動した時!そのプレイヤーに600ダメージを与える!】

 

「なっ!?うわぁ!」

遊馬に向かって針が放たれる!

 

遊馬LP4500→3900

 

ペインゲイナーDEF5200→3600

 

 

【ククク…!カードを1枚伏せ、ターンエンド!】

ルドガーLP3900

ペインゲイナー 伏せ1 手札1

 

 

 

「大丈夫か!遊馬!」

 

「ああ、かすり傷だぜ…!でも、今の痛みは…!」

遊馬は腕を見る…そこには小さな傷痕がついている…!

 

「気をつけろ、このデュエルではダメージが実体化してる…!少しの油断が命取りになるぞ…!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「(今の手札じゃ突破は不可能…やるしかない!)罠カード『貪欲な瓶』を発動!墓地の『ドラゴンゲイヴ』『アセトドラゴン』『トフェニドラゴン』『招集の聖刻印』『反射の聖刻印』をデッキに戻して1ドロー!」

 

【『ペインゲイナー』の効果発動!600ダメージを与える!】

 

「ぐっ…!!」

遊海の腕に針が突き刺さる!

 

遊海LP4000→3400

 

 

「っ…遊馬、アストラル…少し、無茶をするから…あとは頼む…!」

 

「えっ!?」

 

(何をするつもりだ!?)

 

「魔法カード『超力の聖刻印』を発動!手札の『聖刻龍─ネフテドラゴン』を特殊召喚!」

紫色のウジャト眼を刻む夜のドラゴンが現れる! ATK2000

 

【『ペインゲイナー』の効果発動!】

 

「ガッ…!!」

遊海の胸に毒針が突き刺さる!

 

遊海LP3400→2800

 

 

「さらに、リバースカード『銀龍の轟咆』を発動!蘇れ!『神龍の聖刻印』…!」

 

【『ペインゲイナー』の効果発動!】

 

「っあ…!!」

太陽石が現れ、再び遊海に針が突き刺さる! DEF0

 

遊海LP2800→2200

 

 

「『ネフテ』の効果発動!『神龍印』をリリースする事で…『ペインゲイナー』を破壊する!!」

 

【ぐっ…!?】

ネフテの尾から三日月の斬撃が放たれペインゲイナーを両断する!

 

「バトルだ…!『ネフテ』でルドガーにダイレクトアタック!」

 

【ぐおぉぉ…!!】

ネフテがルドガーに突進を喰らわせる!

 

ルドガーLP3900→1900

 

 

「俺はこれで、ターンエンド…!」

遊海LP2200

ネフテ 復活印 手札1

 

 

 

「っ…久々の、闇のデュエルは…少し、堪えるな…!」

 

「「『白野!!』」」

ターンを終えた遊海は脂汗をかきながら膝をつく…

 

「大丈夫…まだ、戦える…!頼むぞ、遊馬…!」

 

「おう!この一撃で決める!」

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに『フォーチュンチュン』の効果発動!500ライフ回復する!」

 

遊馬LP3900→4400

 

「バトルだ!『ホープ』でルドガーにダイレクトアタック!ホープ剣スラッシュ!!」

 

【リバース罠発動!『エクシーズ・リボーン』!「ペインゲイナー」を墓地から特殊召喚し、このカードはORUとなる!】

 

「なに─!?」

ルドガーの場に再び三つ目の蜘蛛が現れる DEF0→3600

 

「っ…!カードを2枚伏せてターンエンド!」

遊馬LP4400

ホープ フォーチュンチュン 伏せ3 手札0

 

 

 

【くくく…!相変わらず強いな白野…そしてお前もだ、少年よ…だが、それもここまでだ!我が望みの為に…お前達には倒れてもらう!】

ルドガーを覆う闇の力がその強さを増していく…!!

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【私は「ペインゲイナー」を素材に新たなるナンバーズを呼び出す!私は「ペインゲイナー」でオーバーレイ!】

 

「ランク12のモンスターエクシーズだって─!?」

 

(気をつけるんだ!遊馬!白野!)

 

【私は1体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!】

 

77 

 

【化天を司る糸よ…儚き無幻となりて我が滅び行く魂を導け!!現れろ!『No.77 ザ・セブン・シンズ』】

ルドガーの背後に巨大な白い蜘蛛が現れる! ATK4000

 

 

「攻撃力…4000…!」

 

「くそっ…!ここまできてこれか…!!」

遊馬と遊海は巨大な蜘蛛に圧倒される…!

 

【「セブンシンズ」の効果発動!ORUを2つ取り除き、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て除外!その内の1体をこのモンスターのORUにする!スパイダー・シルク・レイン!】

 

「っ!!避けろ遊馬!『ホープ』を奪われたらお終いだ─!!」

 

「リバース罠『亜空間物質転送装置』発動!『ホープ』をエンドフェイズまで除外する!!」

蜘蛛糸の雨が直撃する直前、ホープは異次元に消え去る!

 

 

【私は除外された『フォーチュンチュン』をORUに変換する…まずは貴様から消え去るがいい!バトル!「セブンシンズ」で白野にダイレクトアタック!!ジェノサイド・スパイダーシルク!!】

 

「やらせねぇ!!リバース罠『逆さ眼鏡』!エンドフェイズまで攻撃表示モンスターの攻撃力を半分にする!!」

セブンシンズの目に不思議な眼鏡が掛かり、狙いが分散する! ATK4000→2000

 

「っ…!ぐああぁぁぁ─!?ガハッ…!?」

遊海に襲いかかった蜘蛛糸…糸の光線は遊海を弾き飛ばし、街灯に叩きつける!!

 

遊海LP2200→200

 

 

【悪運の強い奴め…私はカードを伏せ、ターンエンド!】

 

「エンドフェイズに『ホープ』はフィールドに戻ってくる!」

ルドガーLP1900

ザセブンシンズ 伏せ1 手札1

 

 

 

「っ…コフッ…!助かった、ぜ…遊馬」

 

「白野!大丈夫か!?」

遊海は口の端から血を流しながら立ち上がる…

 

「(強い…!『セブンシンズ』は破壊耐性を持ってる…そして遊馬のライフは余裕があり過ぎて…「ホープレイ」は使えない…それにもし、ルドガーの伏せカードが連続攻撃系か、攻撃反応型のカードだったら…俺達は勝てない…!)」

朦朧とする頭で遊海は考える…遊海は知っている、ルドガーは抜け目のない男だと…!

 

「白野!無理しないでオレ達に任せてくれ!オレがあの人を止める!!」

 

「何を言ってるんだ、遊馬…!ルドガーは、俺が止めなきゃならん…!それが、俺の…役目だ…!!」

遊海を心配する遊馬…その声を押し退けて遊海はルドガーを睨みつける…!

 

「師匠が…弟子に守られて…!黙ってられる訳…ないだろうが─!!」

 

キィン─!!

 

「っ…!この光は…!」

遊海のエクストラデッキから光が溢れ出す…その光は…

 

「白紙のナンバーズ…!」

遊馬とアストラルの出会いから回収した白紙のナンバーズ…それが強い輝きを放つ!

 

「(『No.』は人の心を映す鏡…ならば、ここに…勝機はある─!!)」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「遊馬、アストラル!!俺に…『ホープ』を貸してくれ!!」

 

(『ホープ』を!?白野、貴方は何をするつもりだ!?)

 

「…()()()()()()()!!だが、勝機はここしかない!!」

 

「…わかった!『ホープ』!白野さんに力を貸してくれ!!」

《…!》

遊馬の言葉にホープが頷く!

 

「俺に応えろ…ナンバーズ!!俺は『希望皇ホープ』でオーバーレイネットワークを再構築!!」

ホープが金色の光となって銀河へと飛び込む!!

 

「『希望皇ホープ』1体でオーバーレイネットワークを構築…!ランクアップ・エクシーズチェンジ!!」

 

93 

 

「顕現せよ!『No.93』!希望の戦士が光を宿し!闇を照らす希望となる!邪悪を燃やせ!『太陽皇ホープ・フェニックス』!!」

ホープが黄金の不死鳥の鎧を纏い、背中からは巨大な翼が展開する…この姿こそ、遊馬と遊海の絆の奇跡…『太陽皇ホープ・フェニックス』!!

 

 

「す、すげぇ…!『ホープ』が金色になった…!?」

 

(白野がナンバーズを持っていたのか…!だが、この力は…!)

遊馬とアストラルは生まれ変わったホープの姿に目を奪われる…!

 

 

『(感じますよ白波遊海…貴方はあの時のようにずっと世界を守る為に戦い続けてきたのですね…!)』

レクスはホープに重なるように光の女神の姿を幻視する…そして感じ取った、遊海の歩んだ戦いの歴史を…!

 

「『ホープフェニックス』の効果発動!自分または相手の墓地から『No.』モンスターを2体までこのカードのORUに変換し、エンドフェイズまでその2体の元々の攻撃力の合計分アップする!俺が選ぶのはルドガーの墓地の『デッドリーシン』と『ペインゲイナー』!シャイニング・チャージ!!」

 

【なに…!?】

ルドガーの墓地から2枚のナンバーズが飛び出し、ホープフェニックスに力を与える!

 

ホープフェニックス ATK3000→5400

 

「バトルだ!『ホープフェニックス』で『セブンシンズ』を攻撃!ホープ剣フェニックススラッシュ!!」

 

【まだだ!リバース罠『ドレインシールド』を発動!その攻撃を無効にし、相手の攻撃力分私はライフを回復する!】

 

「なに…!?」

 

セブンシンズを水色のバリアが守り、ルドガーのライフを回復する!

 

ルドガーLP1900→7300

 

 

「っ…!勝負を焦り過ぎた…!」

 

「まだだ!!諦めるな!白野─!」

 

(勝利の方程式の最後のピース…それは私達の手にある!)

 

(「速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』発動!モンスターの攻撃が無効になった時!そのモンスターはもう一度攻撃が可能になり…その攻撃力は倍になる!!俺達の希望を受け取れ!白野─!!」)

最後の希望が遊馬から遊海へと託される!!

 

「サンキュー…!!いけ!『ホープフェニックス』!!もう一度『セブンシンズ』を攻撃!」

 

【無駄だ!『セブンシンズ』はORUを取り除いて破壊を無効にできる!次のターンでお前のライフを削り切ってやる!!】

 

「これが最後の…ダメ押しだ!!手札から『オネスト』を捨て効果発動!光属性のモンスターがバトルする時!その攻撃力に相手モンスターの攻撃力を加える!!いっけぇぇぇ─!!!」

 

【な、なにぃぃ!?】

 

ホープの背中の翼が炎を纏う…その炎の力でホープは紅蓮の不死鳥となる!!

 

ホープフェニックスATK5400→10800→14800

 

 

「ホープ剣不死鳥終焉撃(フェニックス・エンド)─!!」

 

 

紅蓮の一撃が大罪の蜘蛛を一閃…その一撃が決着となった…

 

 

ルドガーLP0

 

遊海&遊馬 WIN!!

 

 

 

 

 

「な、なんとか…勝てた…!」

デュエルが終わり遊海は尻もちをつく…久しぶりの闇のデュエルは遊海に深いダメージを与えていた…。

 

 

「白野!大丈夫か!?」

 

「ああ…お前達のおかげで助かったよ、ありがとな…さて…」

遊海はよろよろと立ち上がり、倒れたルドガーへと歩み寄る

 

 

『ううっ…お前、は…』

 

「正気に戻ったか?ルドガー…せっかく罪滅ぼしをしてるってのに…暴れたら意味ないだろ?」

 

『すまない…迷惑をかけたようだな…』

正気を取り戻したルドガーはゆっくり起き上がる…

 

 

『情けない事だ…闇など捨て去ったつもりでいたが…』

 

「いいや、お前は正義のやり方が極端になっただけさ…お前はちゃんと立ち直ってるよ」

 

『…そう言ってもらえるならありがたい…これを受け取ってくれ』

ルドガーは4枚のナンバーズを遊海に手渡す

 

「確かに受け取った…アストラル!」

 

(ああ、たしかに)

遊海は受け取ったナンバーズをアストラルに投げ渡す

 

((…記憶が宿っていない…?だが、私の存在力が少し増したような気がする…散らばった「No.」にも何か種類があるのか…?))

 

 

 

 

 

『迷惑を掛けてすまなかった白野…私達はアフリカに戻り、少しでも人々の為になる事をしよう…』

 

『白野、そして少年よ…これを受け取ってくれ…』

夕日を背にしたゴドウィン兄弟はハートランドを去ろうとしている…そしてルドガーは遊海と遊馬にハートピースを手渡す

 

『私が襲ってしまった者から奪ってしまったものだ…お前達のハートピースに合えばいいが…』

 

「よし…嵌ったぜ!ありがとうおっちゃん!!」

 

「俺もだ、またいつか会おうルドガー、レクス…遊星にはお前達は元気にしてたって伝えておくよ」

 

『ああ…さらばだ2人とも、お前達の歩む道に赤き竜の加護があらん事を…』

そう言ってゴドウィン兄弟は去っていった…夕日に照らされた光の道を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、どういう事だよ白野!なんで60年前にいた人と知り合いなんだ!?アンタって30歳くらいだろ?全然年齢が合わないじゃんか!?」

ゴドウィン兄弟が去ったあと、遊馬は遊海に詰め寄る…!

 

「あ〜…それはだなぁ…俺は()()鋼の騎士の子孫なんだよ!それで俺はあの2人の事やシグナー達とも繋がりがあってな!それでそれらしい態度をとったのさ!HAHAHA!!」

遊海はもっともらしい嘘をつく…普通なら当然バレるだろう…だが…

 

 

「へぇ〜そうなのか!!じゃあ今度昔の鋼の騎士の話を聞かせてくれよ!!本を買ったはいいんだけどすぐに眠くなっちゃってさ〜!」

 

「ああ、WDCが終わったら()()話してやるよ!それまで頑張れよ!遊馬!(遊馬、すまん…!!)」

純真過ぎる遊馬の性格が功を奏し、遊海の嘘はあっさり受け入れられる…だが…

 

(…………)

 

「…遊馬、少しアストラルと話をさせてくれないか?さっきのナンバーズについて話があるんだ」

 

「えっー?2人で内緒話かよ〜しょうがないなー…」

 

「すまん、少し大切な話なんだよ」

そういうと遊海は皇の鍵を受け取った…。

 

 

 

 

 

 

(…感謝する白野…いや、こう呼んだ方がいいか…最強の決闘者・白波遊海…!)

 

「…お見通しだったか、遊星の本を最後まで読んだんだな?」

 

(ああ、あの本では最後の一節まで貴方の事はシグナーの1人・メタルナイトとして記されている…だが、小説の最後…そこでのみ、メタルナイトの正体は死んだはずの『決闘王』だったと記されていた…遊馬はまだ最初の数ページも読んでいないがな…)

 

遊馬達から少し離れた場所で遊海はアストラルと言葉を交わす…アストラルはその頭脳と観察眼によって遊海の正体を見抜いていた…!

 

 

(何故、相当歳を取っているはずの貴方が若い姿なのか…そもそも何故、貴方がこの街にいるのか…疑問は尽きないが…これだけは聞かせてくれ…貴方は…)

 

「…心配するなアストラル…俺はお前達の敵にはならない、俺にはたしかに()()がある…だが、それはお前達には害のないものだ…だからこそ、俺はお前にこのカードを託す…!」

遊海はアストラルに()()の「No.93」だったカードを差し出す…。

 

 

「なんでだか絵が消えちまったが…これはさっきのナンバーズだ、受け取ってくれ」

 

(白紙のナンバーズ…)

アストラルは遊海の手にしたカードを見つめる…

 

「…ナンバーズは人の心を映す鏡のようだ、悪意を抱けば暴走し…善意を抱けば優しい力となる…俺は善意と悪意をうまくコントロールしてるから白紙なのかもな…」

 

(本当に貴方はすごい決闘者だ…これからも遊馬を頼む、彼は…無鉄砲で優し過ぎる…)

 

「ああ、遊馬を導くのが『師匠』としての俺の役目だ…これからもよろしくな、アストラル」

アストラルは遊海からナンバーズを受け取る…その時だった…。

 

 

 

キィン─ジジッ…

 

 

 

 

 

 

『アストラル…なぜ、この場所に来た…』

 

《私の使命を果たす為に人間界へと向かう事になりました…貴方は人間界の記憶を持っていると聞き、訊ねにきたのです》

 

薄暗い部屋…そこでアストラルは何者かと話している、だが…彼の目の前には人影はなく…檻に囚われた光の玉が浮いているだけだった。

 

 

『そうか……ワシには役立てる事はほとんど無い…ワシの存在は、間もなく燃え尽きる……攻撃が止まらなければワシはもう存在を保てぬだろう…』

 

《○○○○○に私から頼んで…》

 

『無駄だ、あの頑固者はお前の意見など聞きもしないだろう…アストラル、人間界にはアストラル世界にないものがたくさんある…人との出会いもあるだろう…きっとその出会いは…お前の力となる…良い出会いを──』

 

[アストラル、ここで何をしている…この場所はお前の来るような場所ではない]

 

《○○○○○…》

 

話をするアストラルの背後に光の化身のような男が現れる…

 

[この者は「カオス」に囚われた罪人だ、アストラル世界の使者であるお前を貶める「悪魔」だ…言葉を交わす事は許さん]

 

ビリビリ…バチバチバチ!!

 

『ガッ…ア"ア"ア"ア"ア"ア"─!?』

檻から放たれた雷撃が光の玉を攻撃する…!

 

[罪人○○○○よ、お前はこの世界を守る礎…その身が砕けるまで…我らの世界を守るのだ]

 

『…ワシは、諦めん…!諦める訳にはいかない…!()()()を…見つけるまで…オレは─!!』

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

「アストラル?大丈夫か?」

 

(っ…すまない、アストラル世界に関する記憶の一部を取り戻したようだ)

アストラルは遊海の言葉で正気を取り戻す。

 

 

「悪いが…遊馬達には俺の正体はまだ黙っててくれるか?」

 

《ああ、今の遊馬が貴方の事を知ったらWDCどころではなくなるだろうからな…》

遊海はアストラルに念を押すと遊馬の所へと戻る…。

 

 

「悪かったな遊馬、たしかにアストラルにナンバーズは渡したから」

 

(アストラル世界の記憶の一部が宿っていた…助かったよ白野)

 

「へぇー!よかったじゃん!」

遊海は遊馬に皇の鍵を返す…。

 

 

「そういえば…白野はこれからどうするんだ?メタルナイトとしてWDCに参加してるんだろ?」

 

「ああ、少し俺にもやりたい事があってな…決勝で会おう…って感じかな?とりあえず今日は帰るとするかな…遊馬達はどうするんだ?」

 

「オレはもう少しデュエルの相手を探して見るぜ!」

 

「私もついていくわ!」

遊馬と小鳥はまだ元気があり余っているようだ…

 

「そうか、頑張れよ遊馬!」

 

「ああ!かっとビングだぜ!!じゃあな白野!!」

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れた…闇のデュエルは流石に…身体に堪えるな…ととっ…」

 

《お疲れ様ですマスター…1人で歩けますか?》

 

「少なくとも…Dホイールを運転したら事故りそうだ…」

 

遊馬と別れた遊海はおぼつかない足取りで家を目指していた…。

 

 

《ユウミ!「ホープフェニックス」かっこよかったです!ナンバーズがユウミの心に共鳴したのでしょうが…まさか私の力が現れるとは…!》

 

《私は少し悔しいです…!なんでマスターのパートナーである私の力ではないんですか─!?》

 

「う〜ん、『ホープ』がフレアの力と相性が良かったのかもなー…でも気にするなよアヤカ、お前は俺の1番の相棒なんだからさ…」

遊海は優しくアヤカのコアを撫でる

 

《あー!ずるいです!私もー!!私だって今日は頑張りましたよー!!》

 

「わかってる…家に着いたらブラッシングしてあげるから…ね?」

 

《キュルル〜♪》

アヤカとフレアと共に騒がしく家に向かう遊海…その時

 

 

「…アヤカ」

 

《…前方10m、廃ビルの屋上です!》

 

「ようやく、見つけたぞ…!!」

遊海は殺気を感じ、正面の廃ビルを睨む…その屋上には鉄仮面を着けた子供の姿があった…!




今回は以前開催した「オリジナルナンバーズ募集」に投稿された雷影さんのアイデアを少し調整して使わせていただきました!ありがとうございます!



登場オリカ


No.93 太陽皇ホープフェニックス ランク5 
光属性 戦士族 ATK3000 DEF2500

Lv5モンスター×3

このモンスターは「ホープ」モンスターエクシーズの上に重ねてX召喚する事ができ、フィールド・墓地に存在する限り「希望皇ホープ」としても扱う。

このカードの①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①X召喚、または③の効果での特殊召喚に成功した時に発動できる。自分または相手墓地からNo.Xモンスター2体まで選びこのカードのX素材にする。ターン終了時までX素材としたNo.Xモンスターの攻撃力の合計分攻撃力がアップする。
②1ターンに1度、X素材を一つ取り除いて発動する。相手のターン終了時まで戦闘、効果によって破壊されず相手のカード効果を受けない。
③このカードがフィールド上から離れた時、ライフを半分払って発動することができる。墓地または除外されたこのカードをフィールド上に特殊召喚し、このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する。この効果はデュエル中1度しか使用できない。


・見た目
遊海の精霊アーマー・モード太陽神(ラーの使徒の鎧)を纏った「希望皇ホープ」
鎧は太陽のように黄金に輝き、攻撃時には背中の翼が炎を纏う。

必殺技は炎の推進力と共に剣を振り下ろす「ホープ剣フェニックススラッシュ」

「ダブルアップチャンス」と「オネスト」によって強化された際は紅蓮の不死鳥と化して相手に突撃し、赤熱した剣で一閃する「ホープ剣不死鳥終焉撃(フェニックス・エンド)」




他のアイデアも何かしらの形で作品内に生かしたいと思っています…期待しないでお待ちください(笑)

たくさんの投稿ありがとうございました!


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怒りの決闘〜狂気の復讐者〜

こんにちは!S,Kです!

遊海はついに因縁と相対する…!


それでは最新話をどうぞ!


【よく気づいたねぇ…岸波白野、やはり君は只者ではなさそうだ…】

 

「はぁ…はぁ…!!ようやく、見つけたぞ…!()()()()()()()()()()()!!」

 

痛む身体をおして遊海は階段を駆け上がる…その先には緑色のコートを纏い、鉄仮面を着けた子供が立っていた…しかし、その子供からは子供とも思えない強いオーラが放たれている…!

 

 

【バイロン…()()()()()()()んだ、今はトロンと呼んでほしいかな?】

トロン…彼はそう名乗るが本名ではない、本名はバイロン・アークライト…ハートランドの裏の帝王・Dr.フェイカーの元助手にして…裏切りを受けた復讐鬼である…!

 

【君にはあの子達がお世話になったようだからねぇ、お礼に来たんだ…はい、飴あげるよ!】

トロンは遊海に飴を投げ渡す

 

「ふざ、けるな…!!子供達を…復讐に巻き込むんじゃねぇ!!それでもお前は父親なのか!!答えろ!トロン─!!」

渡された飴を握り潰しながら遊海はトロンへと吼える…!

 

【父親?ぼくは父親なんかじゃない…あの子達は()()さ…!Dr.フェイカーへ復讐をする為のねぇ!!】

遊海の殺気とトロンのオーラがぶつかりあう…。

 

 

 

 

 

2人の因縁は数年前に遡る…。

 

 

とある遺跡調査の中でDr.フェイカーによって行方不明となったバイロン・アークライトと遊馬の父・九十九一馬…その調査にはバイロンの長男・クリストファーも同行していた…、クリスは父が行方不明になった真実を知る為にDr.フェイカーの助手であり続けた…しかし、1つの問題があった、それは幼い2人の弟…トーマスとミハエルの事だった。

研究と弟達の世話を両立するのは無理だと感じたクリスは2人を一時的に施設に預ける事にした…そんな時、クリスに声を掛けたのが行方不明になった一馬の旧友だった白野…遊海だった。

 

当時、凌牙と璃緒を世話していた遊海は2人も4人も変わらないとミハイルとトーマスを預かった…その裏には少しでも家族の愛を感じる事ができれば最悪の事態は変えられるかもしれない…という思いもあった…。

 

そうして父を失い寂しさを感じていたアークライト兄弟や神代兄弟、そして遊馬のメンタルケアをしながら平和な日々を過ごしていた遊海…しかし、そんな日々は突然終わりを迎える。

 

 

ある日、書き置きを残してアークライト兄弟が行方を晦ましてしまったのだ。

 

 

 

手紙には行方不明だったバイロンが帰ってきた事、そしてそれによりDr.フェイカーによる裏切りを知った事、そして…Dr.フェイカーに復讐する為に父についていくという事が記されていた…。

遊海は必死に行方を探したが、「紋章」の力により捜索はうまくいかず…遊海の知る歴史と同じ道筋を進んでしまったのだった…。

 

 

 

 

 

 

【ぼくを許せないかい?決闘者なら…解決する方法は1つだろぅ?】

 

「そうだな…!尋常に勝負だ!トロン!!お前達の復讐…ここで終わらせる…!!」

 

 

「【デュエルディスク!セット!】」

 

【ハッ…!】

 

「俺は…お前を許さない!!」

トロンは鉄仮面の左目を妖しく輝かせ、遊海の左目には炎の紋様が現れる!

 

 

 

【ARビジョン…リンク完了!】

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

遊海LP4000

トロンLP4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「モンスターをセット!ターンエンド!」

遊海LP4000

セットモンスター 手札5

 

 

 

【ぼくのターン!ドロー!】

【手札の『紋章獣レオ』を捨てて『紋章獣アンフィスバエナ』は特殊召喚できる!】

体の両端に頭の付いたドラゴンが現れる ATK1700

 

【そして『紋章獣ベルナーズ・ファルコン』を召喚!】

鎧を纏ったハヤブサが現れる ATK1000

 

【さらに自分の場に『紋章』モンスターが2体いる時、手札の『紋章獣エアレー』は特殊召喚できる!】

長い角を持つ鹿の幻獣が現れる DEF1800

 

【ぼくはレベル4の『エアレー』と『ベルナーズファルコン』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!】

 

85 

 

【出てきなよ!『No.85』!悪魔のおもちゃ箱…『クレイジー・ボックス』!】

トロンの場に黒い立方体が現れ変形、巨大な赤い目を覗かせる悪魔の箱が現れる ATK3000

 

 

「いきなりナンバーズか…!」

 

【『クレイジーボックス』は攻撃できない…でも、面白い効果があるんだぁ!『クレイジーボックス』の効果発動!ORUを1つ取り除いて効果発動!サイコロを振って、その出目に応じた効果が発動する!ダイスロール!】

クレイジーボックスが激しく回転する…出目は…5!

 

【大当たり!君のセットモンスターを破壊させてもらうよ!】

 

「っ…!」

クレイジーボックスから赤色の5本の光線が放たれ、伏せられた「剣闘獣ホプロムス」が破壊される!

 

【バトルだ!「アンフィスバエナ」で白野にダイレクトアタック!】

 

アンフィスバエナの龍口から雷撃と炎の息吹が放たれ遊海を焼き焦がす!!

「ぐああ…!!」

 

遊海LP4000→2300

 

 

【ぼくはカードを1枚伏せてターンエンド!】

トロンLP4000

クレイジーボックス アンフィスバエナ 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「俺の、ターン!ドロー!」

「モンスターをセット!さらに手札の地属性モンスター『磁石の戦士γ』『メデューサワーム』『ゲートブロッカー』を除外!『ブロック・ドラゴン』を特殊召喚!」

おもちゃのカラフルなブロックでできたドラゴンが現れる! ATK2500

 

「バトルだ!『ブロックドラゴン』で『アンフィスバエナ』を攻撃!ブロックバイト!」

おもちゃのドラゴンが双頭のドラゴンを噛み砕く!

 

【ダメージ計算時に罠カード『紋章変換(チェンジ・メダリオン)』を発動!手札の『紋章獣ユニコーン』を特殊召喚!】

黒い鎧を纏ったユニコーンが現れる ATK1100

 

【そしてぼくが受ける戦闘ダメージはこの効果で特殊召喚したモンスターのレベル×1000ダウンする!よって、ぼくへのダメージは0さ!】

 

「俺はこのままターンエンド!」

遊海LP2300

ブロックドラゴン セットモンスター 手札1

 

 

 

【ぼくのターン!ドロー!】

【リバース魔法『蘇生紋章(リボーン・メダリオン)』を発動!墓地の『紋章獣レオ』を特殊召喚!】

白い鬣を持つ鎧の獅子が現れる ATK2000

 

【そしてぼくはレベル4の『ユニコーン』と『レオ』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!】

 

18

 

【現われろ!『No.18紋章祖プレイン・コート』!】

トロンのフィールドに水晶の原石のようなオブジェが現れて変形…赤い渦巻の目を持つモンスターが現れる ATK2200

 

【そしてぼくは装備魔法『爆破紋章(ブラスト・メダリオン)』を『ブロックドラゴン』にプレゼント!】

鎖の付いた紋章がブロックドラゴンに絡みつく!

 

【そして『クレイジーボックス』の効果発動!ORUを1つ使って…ダイスロール!】

 

再びクレイジーボックスが高速回転する…出目は…4!

 

【当たりだぁ!ぼくは『クレイジーボックス』自身の効果を無効にするよ!つまり…『クレイジーボックス』は攻撃ができるようになる!バトル!『クレイジーボックス』で『ブロックドラゴン』を攻撃ィ!!】

クレイジーボックスから無数の爪が伸び、ブロックドラゴンを粉砕する!!

 

「っう…!!破壊された『ブロックドラゴン』の効果発動!デッキからレベルの合計が8になるように岩石族モンスターを手札に加える!俺が加えるのはレベル1の『アロマポッド』とレベル7の『メガロック・ドラゴン』!!」

 

遊海LP2300→1800

 

【じゃあぼくも破壊された『爆破紋章』の効果を発動〜!装備モンスターが破壊された時にぃ…そのコントローラーに攻撃力の半分のダメージをプレゼント!!吹き飛んじゃいなよ!!】

 

遊海の目の前に紋章が現れ爆発する!!

 

「ぐああぁぁぁ!!!」

遊海LP1800→550

 

 

【どうだい?ぼくのプレゼントは気に入ってくれたかな?さらにぼくは「プレインコート」でセットモンスターを攻撃ー!】

プレインコートの念動波がバックパックを背負った虫人を破壊する!

 

「リバースした、『魔導雑貨商人』の…効果…!デッキから魔法、罠カードが出るまでデッキをめくり、そのカード以外を…墓地に送る…!」

 

 

墓地送り

災いの像

速攻のかかし

スモールピースゴーレム

超電磁タートル

Nグランモール

キャッスルゲート

磁石の戦士α

ホプロムス

伝説の柔術家

守護者スフィンクス

タックルセイダー

磁石の戦士β

怒気土器

ゴゴゴギガース

リバイバルゴーレム

ギガストーンオメガ

ゴゴゴゴーレム

フォッシルダイナパキケファロ

恵みの像

以上19枚

 

☆封魔の矢

 

 

 

「デッキから、墓地に送られた『リバイバルゴーレム』の効果発動…!自身を、特殊召喚!」

泥の体のゴーレムが現れる DEF2100

 

【ぼくはこれでターンエンド】

トロンLP4000

クレイジーボックス プレインコート 手札0

 

 

 

「っあ…はぁ…はぁ…!!」

 

【アハハー!もうボロボロじゃないか!Ⅴから君は強いって聞いたけど…それほどでもないねぇー…もう寝ちゃえばぁ〜?】

たび重なる攻撃で遊海の身体は既にボロボロだった…トロンはその様子を嘲笑う……現在のトロンに「感情」はほとんどない、異世界から帰還する代償…そして強い復讐心によって感情を失ってしまったのだ…。

 

 

【君には感謝してるよ、君が彼らに愛を与えてくれたから彼らはぼくの為に怒ってくれた…そしてぼくの復讐に力を貸す同志となった!アハハ「ハハハハ…!」!…何がおかしいのかなぁ?】

トロンとシンクロするように遊海が笑い声を上げる…そしてふらふらと立ち上がる…!

 

「いや、『子の心、親知らず』とは…よくできた言葉だと思ってな…!トロン…復讐鬼よ!!俺はお前を許さない…!!これから俺は…お前をブン殴る!!」

 

【やれるならやってみなよ!そのボロボロの身体でさぁ!!】

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「俺は墓地の岩石族モンスター18体を除外!現われろ!我が心を守りし岩石龍!『メガロック・ドラゴン』!!」

《グオオオォォオ─!!》

咆哮を轟かせながら巨大な岩石龍が出現する!ATK?→12600

 

 

【こ、攻撃力12600だと─!?】

 

「『メガロック』の攻守は特殊召喚時に除外した墓地の岩石族の数×700アップする!!たとえナンバーズを破壊できなくとも…それを上回る力で叩き潰せば…問題ない!!」

 

《復讐に囚われし愚か者よ!!我が一撃、受けきれるか─!!》

 

「バトルだ!『メガロック』で『クレイジーボックス』を攻撃!!鳴動富嶽!!」

《我が主の怒りを受けよ!!オラアァァァ!!》

 

【っ…!?うわあぁぁー!!】

メガロックがその巨躯でクレイジーボックスへと突進…当然破壊はできないが…衝撃波でトロンを弾き飛ばした…。

 

 

 

トロンLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…!どうだ、バイロン…!俺達の、一撃は…!」

 

【君が精霊使いだったとはね…!少し、驚いたよ…!】

遊海による渾身の一撃を受けトロンは膝をつく…その仮面にはヒビが入っている…。

 

「次は、俺が殴っ…てや…っ…」

トロンに掴み掛かろうとした遊海の視界が…世界が回り、うつ伏せに地面に倒れこむ…WDC予選での連戦…そしてルドガーとの闇のデュエルで遊海の体力は既に限界を迎えていた…。

 

 

【君が本調子だったら…ぼくの復讐はここで終わっていただろうね…天運はまだぼくの味方のようだ…!】

 

『トロン、お戯れはそこまでに』

 

【ああ、お迎えありがとうⅤ…久しぶりに少し熱くなってしまったよ】

トロンの背後に銀色のロングヘアーの青年…Ⅴが現れる。

 

【今日は楽しかったよ!僕はもう本戦に出るのが決まってるからハートピースはあげられないんだ!だから…本戦で待ってるよ?岸波白野!じゃあね〜】

トロンはひらひらと手を振ると背後に開いた空間ゲートへと消えていった…。

 

 

『さようなら白野さん…貴方も勝ち残る事を祈っています』

 

「待…て、クリス…!お前は、お前は…それで…いいのか…!」

トロンに続き去ろうとするⅤ…クリストファーに遊海は問いかける…。

 

『……いい訳がない…私は早くトロンに元の父様に戻って欲しい…!それだけです…!』

そう小さく呟いたⅤはその場から去っていった…。

 

 

 

 

「…ごめん…ごめんな、クリス…!俺では、お前達の事を…守ってやれなかった…!」

遊海は静かに涙を流す…兄弟を守れなかった後悔が遊海の心を覆っていく…。

 

「トロン…お前は、お前は…俺、が……──」

拳を握り締めた遊海の意識はそのまま暗闇へと落ちていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

【あいたた…君の言うとおりだったよⅤ、白野はとても強い決闘者だ、きっと本戦まで出てくるね〜】

 

『お身体は大丈夫ですか?』

アジトへと戻ったトロンへとⅤが尋ねる。

 

【うん、大丈夫だよ、少し仮面が壊れただけさ…それにしても…彼の感情は美味しかったなぁ…!】

トロンは舌なめずりする…トロンはどさくさに紛れて遊海の感情の一部を奪っていたのだ…。

 

【僕への純粋な「怒り」…君達への「愛情」…そして「悲しみ」に「哀しみ」…そして隠し味に「希望」…本当に美味しかった…!もう一度味わいたいなぁ…!!】

うっとりとしながらトロンは呟く…しかし、その目は冷たく遠くを睨んでいた…。

 

 

 

『(…白野さん、どうかトロンを止めてください…復讐の狂気に飲まれてしまった父を…!)』

 

クリスは強く、拳を握り締めた…。

 



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ライフ・イズ・カーニバル!〜幸運を呼ぶナンバーズ〜

「なぁアストラル〜!さっき白野と何話してたのか教えてくれよー!」

 

(大した事は話していない、私の疑問の確認と「No.93」について聞いていただけだ)

 

「だーかーら!そのお前の疑問を教えてくれって!」

遊海と別れた遊馬達は対戦相手を探しながらハートランドを歩いていた…しかし、時刻は夕食時…そして残っている決闘者も半数近くになっている為に中々相手が見つからなかった…。

 

 

「遊馬…今日はもう終わりにしない?もう時間も時間だし…パトカーも多くなってきたし…」

 

「ん…?たしかにパトカーが多いなぁ…」

小鳥の言葉に遊馬は辺りを見回す…先程からハートランド中にパトカーが走り回り、厳戒態勢が敷かれている…。

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

「ん?姉ちゃん?どうしたんだ?」

 

『遊馬!アンタ今どこにいるの?』

遊馬のDゲイザーが着信を知らせる…その相手はデュエル飯を握る明里だった…。

 

「どこって…ハートランド学園の近くだけど…」

 

『ちょうど良かったわ!今すぐにハートランド駅前の広場に行ってちょうだい!今すぐに!!』

 

「今すぐ!?どうして…」

 

『その広場にチャーリーっていうカウボーイハットを被った男がいるはずよ!私が広場に行くまで逃げないように捕まえておいて!!』

 

「わ、わかった─!!」

姉の凄まじい剣幕に遊馬は慌てて駅前へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

「『潜航母艦エアロシャーク』の効果発動!ORUを1つ取り除き、手札の枚数×400ダメージを与える!!」

 

『うわあぁぁ!!』

 

遊馬が駅前広場に到着する…そこでは凌牙が対戦者相手にパーフェクトゲームで勝利していた…。

 

 

 

「シャーク!やっぱりWDCに出てたんだな!」

 

「遊馬…ああ、やらなきゃならねぇ事ができたんだ…!だから…目的を果たしたらリタイアするつもりだ」

 

「目的…?なにかあったのか?」

思いつめた様子の凌牙に遊馬は問いかける…。

 

「…白野さんから聞いてるだろ?俺が全国大会で負けた相手…Ⅳがこの大会に姿を現した…!そいつは俺を罠に嵌める為に…無関係の人間を…!!!」

凌牙は悔しげに拳を握り締める…!

 

「俺はそのケリを着けなきゃなんねぇ…!」

 

「シャーク…お前も白野さんの弟子ならわかってるだろ?デュエルにぶつけていいのは純粋な思いだけだって…だから…」

 

「お前に言われなくてもわかってる…俺は奴を一発ブン殴りたいだけだ…!それより…お前は何しにきたんだ?ハートピースは集めは終わったのか?」

 

「いや、それが姉ちゃんにカウボーイハットのチャーリーって男を捕まえとけって言われてさ…シャークは見てないか?」

 

「カウボーイハットの男…?あそこの上にいる奴じゃねぇか?」

凌牙は駅前広場のペデストリアンデッキ*1※を指差す…その手すりにカウボーイハットを被り、ポンチョを身に着けた男がいたのだ…。

 

「あの人か…?サンキューシャーク!助かったぜ!」

 

「ああ…俺も行ってやる、捕まえとけっていうのも物騒な話だしな」

 

 

 

 

「お〜い!あんたがチャーリーか?」

 

『ん?なんでお前がオレの名前知ってんだ?』

 

「俺は九十九遊馬!明里姉ちゃんの弟だ!姉ちゃんからアンタを捕まえておけって言われたんだ!」

 

『一馬先生の息子!?』

遊馬の話しかけたポンチョの青年…チャーリー・マッコイは驚いた表情をみせる…。

 

『オレを捕まえておけって…お前の姉ちゃんらしいなぁ…』

苦笑いを浮かべるチャーリー…その時だった。

 

『おい!カウボーイハットの優男!ハートピースを賭けてデュエルしやがれ!』

 

「WDCの参加者か…」

チャーリーに対して不良風の男が声を掛ける…WDCの参加者は挑まれたデュエルは断る事ができない…!

 

『やれやれ…しょうがねぇ、オレは参加者じゃねぇんだが…そこの少年のハートピースを賭けてデュエルといこうか!』

 

「ちょっ…!?勝手にオレのハートピースを賭けるなぁ!?」

チャーリーのあまりに身勝手な言葉に遊馬は驚愕する…。

 

『心配すんなよ、オレはこのカードの()を試したいだけさ…そこらじゃ見られないデュエルを見せてやるぜ!』

そう言ってチャーリーはデュエルを始めてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

『ライフ・イズ・カーニバル!!太陽が真っ二つにならない限り…オレの運が尽きる事はない!』

 

「なに言ってんだこの人…まだ勝つつもりでいるのかよぉ…」

 

「絶体絶命の状況でここまでだと…逆に呆れるぜ…」

 

デュエルはチャーリー不利で進む…相手の場には『ダイガスタフェニクス』『サンダーエンドドラゴン』『カチコチドラゴン』の3体が並び、チャーリーの場には伏せカードが2枚のみで残りライフ100…まさに絶体絶命の状況…しかし、チャーリーは不敵に笑っている…!

 

 

『さぁ、いくぜ!魔法カード「リロード」を発動!手札3枚を戻して3枚引く!そしてリバース魔法「トリプルエース」を発動!手札のレベル1の同名モンスター「ダイスロットセブン」3体を特殊召喚!』

 

 

「えっ…!?今のドローで引き当てたのか!?」

 

「馬鹿な…!デッキが混ざってなかったんじゃねぇか!?」

チャーリーの場に3体のモンスターが現れる…だが、まだ終わりではない…!

 

『「ダイスロットセブン」はサイコロを振って出目の数字分レベルアップする!ダイスロール!』

 

3つのサイコロのARビジョンが転がる…その出目は3つとも『6』だった…!

 

 

(サイコロを3回振って6を出す確率は216分の1だ…!普通ならばありえない!)

 

「ありえない事が起きる…それってもしかして…!」

アストラルの言葉で遊馬はその可能性に気づく、ありえない事が起きるなら…()()()()()()()

 

『オレはレベル7の「ダイスロットセブン」3体でオーバーレイ!』

 

07

 

『あらわれろ!「No.7ラッキー・ストライプ」!』

《ラッキー…セブン!!》

チャーリーの場に縞々のルーレット型オブジェが現れて変形…「07」の数字が刻まれたステッキを持つナンバーズが現れる!

 

 

(「「「ナンバーズ!?」」」)

チャーリーの召喚した「ラッキーストライプ」に遊馬達は驚愕する…!

 

『そしてオレは魔法カード「ドリームダイス」を発動!サイコロを振って6が出れば相手のモンスターの攻撃力は0になり、6以外ならオレの場のモンスターの攻撃力が0になる!ダイスロール!』

再びダイスを振るチャーリー…その出目はまたしても6!

 

『さらに「ラッキーストライプ」の効果発動!ORUを使ってサイコロを振る!このカードの攻撃力はその出目×700の数値になる!ダイスロール!』

再び振るわれるサイコロ…出目は6!

 

(ここまで連続で6が出るのは7776分の1の確率だ!)

アストラルが瞬時に確率を計算する…そのままチャーリーは相手に勝利してしまった…。

 

 

 

 

「おい!!どうしてアンタがナンバーズを持ってるんだよ!?」

 

『あん?それはなぁ…』

デュエルが終わり、チャーリーに詰め寄る遊馬…その時だった…!

 

 

『チャーリー・マッコイ!!博物館からカードを盗んだ容疑で逮捕する─!!』

 

 

「「えぇっ!?」」

チャーリーを包囲するようにたくさんの警察官やパトカー、ヘリコプターが集結する…チャーリーの持っていた「No.7」はハートランドの博物館に収蔵されていたモノ…チャーリーはそれを盗み出していたのだ…!

 

 

『しょうがねぇな〜、オレは大人しくするけどよー…()()()()()()()()()()()()()()()

手を頭の後ろで組み、観念するチャーリー…その時…!

 

キィン─!  ビュオオオー!

 

 

「な、なんだぁ─!?」

ナンバーズが光った瞬間、チャーリーを中心に竜巻が発生…警察官の装備や看板…そして…!

 

「うわっ!?『ビックアイ』が!?」

 

「っ!?『エアロシャーク』!!」

 

周囲にいたデュエリストのカードケースが風圧によって開き、()()()()強力なカードが竜巻へと吸い寄せられてしまう!!

 

『だから言っただろ?()()()()()()()()ってな!』

吹き飛ばされたカード達は吸い寄せられるようにチャーリーの手に収まる…!

 

『遊馬!明里の奴が来たら謝っといてくれ!じゃあな!!』

 

「あっ!?待ちやがれ!ナンバーズを返せぇぇ─!!」

混乱する周囲を尻目にチャーリーは逃走する…遊馬達は慌ててチャーリーを追い掛けたが…人混みに紛れてすぐに見失ってしまった…。

 

 

 

 

 

「クソ…!あのふざけた野郎は何処に行った!!」

 

「逃げ足が速すぎだぜ…!」

 

「まさかナンバーズを持ってたなんて…!」

 

遊馬達は見失ったチャーリーを探す…

 

 

ブルルル! キキーッ!!

 

『遊馬!この騒ぎ…チャーリーの仕業ね!?』

 

「姉ちゃん!!」

遊馬達の前に1台のバイクが現れる…それはライダースーツを身に纏った明里だった…!

 

『あの男はチャーリー…お父さんの大学の教え子でトレジャーハンターを気取ってる男よ…!久々に顔を見せたと思ったら─!!』

明里は遊馬達に事情を説明する、遊馬達の父である一馬の教え子でありトレジャーハンター…そしてチャーリーの手にしていたカードは『持ち主が絶対的強運を手にする』という曰く付のカードで博物館から盗まれたらしいという事だった。

 

 

『いいアンタ達!絶対にチャーリーを捕まえるわよ!』

 

「おう!カードを盗まれてるのに…このまま逃してたまるか!」

盗まれたカードとナンバーズを取り戻す為に九十九姉弟は気合いを入れるが…

 

「待て、あいつが何処に逃げたかわからねぇ…闇雲に探してたら時間の無駄だ…!」

凌牙が声を上げる…ハートランドシティはそれなりに広い、それこそ街の外に出られたら探しようがないだろう…。

 

(…ライフ・イズ・カーニバル…チャーリーが言っていた言葉……私はその言葉を見た事がある、たしか以前に遊馬とモノレールに乗った時…ベイエリアの建物だ!彼はそれを目にしたのではないか?)

 

「ベイエリアの文字…!今は手がかりがそれしかねぇ…!みんな!ベイエリアのモノレールだ!あそこの終点は街の外への乗り換え場所だ!」

アストラルの言葉を聞いた遊馬は急いでベイエリアへと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

『へぇ…!よく此処に来るってわかったな…!流石は一馬先生の息子だ!』

 

結果的に遊馬とアストラルの推測は当たっていた、チャーリーは「No.7」の効果を使って警察から逃れたあと、雷によって走り出したモノレールへと乗り込んできたのだ…!

 

 

「おいテメェ…!俺達から奪ったカードとナンバーズを返しやがれ!」

 

『おお怖い…!返して欲しけりゃ…オレとデュエルしてもらおうか!』

 

「「なんだと!?」」

チャーリーに凄む凌牙…そんな彼らにチャーリーはよりによってデュエルでの決着を提案したのだ…!

 

 

『実はこのモノレール…()()()()なんだよ!どこにも止まらずに終点までノーストップ!…到着までの間にオレに勝てたら奪ったカードは返してやるよ!』

 

「テメェ…盗人猛々しいにも程があるぜ!」

 

「そのデュエル…乗った!!」

 

「「遊馬!?」」

遊馬はチャーリーの提案を受け入れる…!

 

 

『いいねぇ!!ライフ・イズ・カーニバル!!全ては運次第だ!さぁ、デュエルを楽しもうぜ!!』

 

「小鳥!シャーク!オレが時間を稼ぐ!このモノレールを止める方法を見つけてくれ!!」

 

場所をなぜかモノレールの屋根へと移したチャーリーと遊馬はナンバーズを賭けて戦いへと臨む!!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対チャーリー

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「チィ…!緊急停止装置も動かねぇ!これじゃあどうしようも…!デュエルはどうなってる!?」

 

「大変な事になってるわ…!チャーリーのライフが10万まで上がってる…!」

 

「くそっ…!俺達ができる事はねぇのか…!?」

 

凌牙と小鳥は焦っていた…遊馬がチャーリーとデュエルしている間にモノレールを止めようとしていたが…緊急停止装置もインターホンも作動しない…!唯一動いていた行き先表示のディスプレイがあと約10分で終点に着く事を知らせている…!

 

 

「…シャーク!白野さんに連絡して!!それしか方法はないわ!!」

 

「っ…!?なんでそこであの人が出てくる!」

小鳥な言葉に凌牙は驚きの表情をみせる、たしかに白野は人にはできない事ができる…だが、モノレールを止める事はできない…凌牙はそう思っていた。

 

 

「………白野さんは、メタルナイトなの!あの人の力だったら止められる!!」

 

「なに!?どういう事だ!?」

 

「説明はあとでするわ!!お願い!!」

 

「っ〜!後で色々聞かせてもらうぞ!!」

凌牙は疑問を飲み込みながら白野へとコールする…。

 

 

 

『ジジ…もし、もし…?

 

「白野さん!凌牙だ!今何処にいる!」

 

凌、牙…?どうし、たんだ…?

白野が電話へと出る…電波の悪い場所にいるのか声が途切れて聞こえてくる…。

 

「遊馬がナンバーズ持ちの奴とベイエリアの暴走モノレールに乗ってデュエルしてる…!このままじゃ、あと10分もしないで終点の駅に激突する!」

凌牙は簡潔に白野へと用件を伝える…!

 

…わか、た……すぐ──行く…!!』ブチン

 

 

「遊馬…!あとはお前次第だ…!!」

凌牙はモノレールの天井を見上げた…。

 

 

 

 

SideOUT

 

 

 

Side遊馬

 

 

07

 

『現れろ!「No.7ラッキー・ストライプ」!』

《ラッキー!セブン!!》

 

「出てきたな…!」

 

遊馬とアストラルは追い詰められていた、ナンバーズの力によって周囲の人間の「運」を吸収し所有者に強運を齎す「ラッキーストライプ」…チャーリーはその力を使いこなし、魔法カード「バイバイゲーム」の効果によりライフ10万、さらに遊馬の場にはモンスターがいないという状況まで追い詰めていた…!

 

 

『わかったか遊馬!お前の親父さん…一馬さんは俺にとって憧れの存在だった!あの人は全てを持っている人だと思っていた…だが、たったひとつ持っていないものがあった!それが運だ…!ほんの少し運があれば…あの人は行方不明になんてならなかった…!人にはここぞという時に絶対に負けられねえ勝負がある運に縋ってでも勝って…オレには行かなきゃならん場所がある!!『ラッキーストライプ』の効果発動!ダイスロール!」

 

再びサイコロを振るチャーリー…その出目はやはり6!

 

『バトルだ!「ラッキーストライプ」でダイレクトアタック!これで終わりだ!!』

 

「まだだ!リバース罠『奇策』!手札の『ズババナイト』を墓地に送って『ラッキーストライプ』の攻撃力を1600ダウンさせる!」

間一髪で遊馬は攻撃を躱す…そこに明里からの連絡が入る…!

 

 

『遊馬!アンタ「ラッキーストライプ」に苦戦してるんでしょ!あのカードには言い伝えがあるの!「太陽が2つに分かれる時…その力、風となりて去らん」…それが「ラッキーストライプ」の運を無くす方法なの!!』

 

『だから言ってるだろ!ライフ・イズ・カーニバル!!()()()()()()()()()()()()()()オレの運は尽きないってなぁ!!』

チャーリーの言ってるいる言葉は正しい…今は太陽の沈んだ夜…朝にならなければ太陽は現れず、ましてや2つに割る事など不可能だからだ…!

 

『諦めろよ遊馬!用が終わったらこのカードは返してやる、だからサレンダーしろ!』

 

「断る!!オレは…最後まで諦めねぇ!!」

遊馬はチャーリーの言葉を一蹴する…ライフが無くならない限り、決闘者は立ち上がる事ができる…!

 

 

 

39

 

「現れろ!『No.39希望皇ホープ』!『ラッキーストライプ』を攻撃─!」

返しのターン、遊馬は切り札である『ホープ』を呼び出して攻撃を仕掛ける…しかし、またしてもチャーリーの運が襲いかかる…!

 

『リバース罠「ダイス・クライシス」発動!相手が攻撃してきた時!サイコロを振って6ならそのモンスターのコントロールを得る!出目は…当然6だ!』

 

「『ホープ』!!」

チャーリーの罠によって「ホープ」のコントロールが奪われる!

 

 

 

『諦めろ遊馬!もう終点も近い!お前じゃ…オレの運には勝てない!』

 

「うるせぇ─!運が無くたって全ての力を出しきって戦う!それがデュエルだ!それが父ちゃんの教えてくれた事だ!父ちゃんは運になんて頼ってない!自分の力で道を切り拓いて来たんだ…!だからオレも…オレは絶対に諦めねぇ─!!」

遊馬は吼える…父の教えを胸に刻み、最後まで諦めはしないと…!

 

 

『わかったよ…なら終わらせてやる!オレのターン!ドロー!』

 

「罠カード『剣の采配』!フィールドに光属性・戦士族のモンスターがいる時!ドローフェイズに相手がドローしたカードを確認する!そのカードが魔法か罠ならばドローしたカードかフィールドの魔法・罠を破壊できる!!」

遊馬は逆転を賭けた1枚を発動させる!

 

『…なるほどな、「ダイスクライシス」を破壊して「ホープ」を取り戻すつもりか…だが、甘いぜ!オレの引いたのは永続魔法「太陽の祭壇」!「ホープ」を取り戻したとしてもこのカードを発動してサイコロで6が出れば相手のモンスターは全て破壊される!オレの運は尽きない!()()()()()()()()()()()()()()!!』

 

「くそ─!!!」

チャーリーの言葉に遊馬は無念の叫びをあげる…だが、それは決して無駄ではなかった…!

 

(太陽を切る…真っ二つ…「()()の祭壇」…!!遊馬!太陽だ!!「太陽の祭壇」を破壊するんだ!)

 

「アストラル!…『剣の采配』の効果発動!『ホープ』!『太陽の祭壇』を切り裂け─!!」

アストラルの言葉を聞いた遊馬が…「ホープ」が太陽の祭壇を斬り捨てる…そして、変化は起きた…!

 

キィン─パリーン─…

 

『な、なにぃ─!?』

「太陽の祭壇」が破壊された瞬間、チャーリーの身体から光が抜け出していく…それはチャーリーを守っていた「ラッキーストライプ」の特殊能力が効果を失った証だった…。

 

 

『そ、そんなはず…そんなはずはない!!「バイバイゲーム」の効果発動!ダイスロール!!』

動揺したチャーリーはサイコロを振る…出目は1()

 

『ば、馬鹿なぁぁー!?』

「バイバイゲーム」のデメリットによりチャーリーのライフは4000に戻る…絶対的強運はついに失われたのだ…!

 

 

(遊馬!今だ!)

 

「おう!オレのターン!ドロー!魔法カード『カムバック』を発動!戻って来い!『ホープ』!」

運が失われた事で戦意喪失したチャーリーを倒す為…遊馬は友情の切り札を呼び醒ます!

 

39

 

「カオスエクシーズチェンジ!現れろ!『CNo.39希望皇ホープレイ』!!」

混沌を光に変える剣士が降臨する!

 

「いっけぇ!『ホープレイ』!ホープ剣カオススラッシュ!!」

 

『っ…うわああああ…!!』

 

自身の効果で攻撃力を4000まで上げた『ホープレイ』によってデュエルは遊馬の勝利で決着した…。

 

 

チャーリーLP0

 

遊馬&アストラルWIN!

 

 

 

 

 

 

 

「まだよ遊馬!!もう終点まで時間がない!ぶつかっちゃう!!」

 

「な、なんだって〜!?」

小鳥の言葉で遊馬はモノレールの先を見る…そこにはもうそこまで迫った終着駅が見えていた…!

 

 

「ダメだ間に合わねぇ!!全員何かに掴まれぇぇ─!!」

凌牙が声を上げる…時速100キロ近くで進むモノレール…それを止める方法は…

 

 

『かっとビングよ─!わたしぃぃ!!』

 

 

「姉ちゃん─!?」

その時、モノレールと並走していたバイクに乗った明里がモノレールの前に飛び出す…明里はバイクをモノレールに当てて挟ませる事で止めようとしたのだ…だが!

 

 

『(ダメだ…!スピードが速すぎる…!轢かれる!!)』

明里の予測より勢いのついていたモノレールは止まらない…!モノレールは線路に着地した明里に迫り─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対零度」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『えっ…?』

明里は目を開ける…その目の前には凍りついて停止するモノレール、そして…。

 

「あまり、無茶を…するな……かっとビングにも、限度が、ある…」

 

『メタル…ナイト…!』

明里を庇うように前に立つ鋼の戦士の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「白…メタルナイト!来てくれたのか!」

 

「ああ、遊馬…お前も、濃い一日だった…みたいだな…」

モノレールの車両を飛び移ってきた遊馬が遊海へと声を掛ける…。

 

「早く、降りて、来い…警察…来る…ぞ……」

 

「わかってる!チャーリーからナンバーズを回収して……なぁ、大丈夫か?声が…」

 

「……大丈夫、では…ない、か…な……」フラッ

 

『メタルナイト!!』

遊海はそこで完全に意識を失った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『真由美!!』

 

「おじちゃん…!来てくれたの…?」

 

『ああ…手術、頑張るんだぞ?ほら…お守りのカードだ…かっとビングで頑張るんだぞ?』

 

「うん…!かっとビングでがんばる…!」

 

 

 

「…まさか『No.』をお守り代わりに渡そうとするとはな…やる事がデカ過ぎるぜ…」

 

「なんでも…難しい手術らしいからな、『運』に頼りたくなる気持ちもわかるぜ…」

少し時間が経ち、遊馬達は病院にいた…チャーリーがナンバーズを求めた理由、それは難手術に臨む知り合いの少女を救う為だったのだ…。

 

(君に免じて「ラッキーストライプ」をあの子に渡したが…本当に大丈夫だろうな…?)

 

「まぁ、大丈夫だと思うぜ?あの子のお母さんにも返してもらうように伝えたし…それより問題は……」

 

「白野さん…!誰がアンタをこんな目に…!!」

遊馬達は1つの病室に入る…そこには全身を包帯で巻かれた遊海が眠っていた…。

 

 

 

「遊海君、凌牙君…教えてくれてありがとう、助かったわ…」

遊海の枕元には翠が座っている…凌牙からの緊急連絡を受けて駆けつけたのだ…。

 

「助けられたのは俺達の方だ…白野さんが身体を張ってモノレールを止めてくれたから…しかも、こんなにボロボロの体で…」

モノレールを停止させた遊海はそのまま気を失った…全身が痣と切り傷だらけ…まるで何かの爆発に巻き込まれてしまったようだった…。

 

 

《…マスターは…ルドガーとの戦いの後に再びナンバーズ持ちとの戦いに巻き込まれたのです…勝利したもののその後に気を失って…凌牙からの連絡を受けてなんとかあそこまで辿り着いたのです…》

 

「そうだったのか…ありがとうアヤカ」

 

「…白野や翠さんが精霊使いか…やっぱりそうだよな…なんだか見られてる気がしたんだ…」

遊馬と凌牙はアヤカから説明を受ける…最初は凌牙も驚いていたが…自分の養父母の真実を受け入れて納得している…。

 

 

(アヤカ、そのナンバーズは回収できたのか?)

 

《いいえ…回収する前に逃げられてしまいました…気をつけなさいアストラル、WDCには私達の想像し得ない陰謀が隠されているかもしれません》

 

(忠告、感謝する…胸に留めておこう)

 

「…今日はもう遅いわ、明日も予選は続くから…早く休んでね!」

 

「「はい…!」」

 

そうして遊馬達は帰路についた…言いしれぬ不安を感じながら…。

 

 

 

 

「…アヤカちゃん、遊海さんは…」

 

《バイロン…トロン、並びにⅤと接触しました…マスターは「紋章」の力で魂まで損傷を受けています…目覚めるのに少し時間がかかるかもしれません…マスターは、兄弟を守れなかったと泣いていました…》

 

「…遊海さん…」

 

その日…翠は遊海の横で夜を明かした…遊海と同じアークライト兄弟への想いを抱きながら…。

*1
駅前広場などにある歩道橋と広場を兼ねた高架橋



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外道・陰謀・策略〜牙の目覚め〜

こんにちは!S,Kです!

白猫×鬼滅やら復刻ぐだぐだやらで執筆が進みませんでした!すいません!


それでは最新話を…どうぞ!


『勇敢なるデュエリストの諸君!グッドモーニングゥ!!』

 

ハートランドシティにMr.ハートランドの姿が投影される…遊海とトロンの激突から一夜が明け、WDCの予選2日目が始まろうとしていた…。

 

『WDCも予選2日目…今日からが本番だ!!熱いハートをぶつけ合うがいい!ハートバーニング!!』

 

 

 

 

 

「遊海さん…WDCの2日目が始まりましたよ…?」

ハートランドの病院の一室、翠は眠り続ける遊海に声をかける…闇のデュエルの連戦によって遊海の身体は深く傷付いていた…もちろん傷は既に完治している、だが…遊海は深く眠り続けている…。

 

《キュウ…》

 

「…心配しないでフォウくん、遊海さんは少し疲れてるだけ…きっとすぐに目を覚ますわ…」

カバンの中に入り込んでいたフォウを撫でながら翠は呟く…

 

「(…今日は色々な事件が起きるはず…私はどうしたらいいの…?)」

翠は強く遊海の手を握り締めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「よ〜しっ!!今日も絶好調だぜぇ!」

朝食を済ませた遊馬が家から飛び出す…大会2日目にしてハートピースを3つ集めた遊馬は波に乗っていた…。

 

「もう、調子に乗っちゃって…白野さんと戦ったナンバーズ使いの事だってあるのよ?」

家の外で遊馬を待っていた小鳥が声をかける…連戦で消耗していたとはいえ遊馬の師匠を追い詰めた謎の人物…小鳥は遊馬の事が心配だった…。

 

「…わかってる、でも…こんな時こそテンション上げていかないとな!そうじゃなきゃ白野に怒られちまう!」

 

「遊馬…」

小鳥はなんとなく理解した、遊馬も不安を抱えている…それを表に出さないで戦いに臨んでいるのだと…。

 

「とにかく!本戦に出て白野に褒めてもらうんだ!かっとビングだ─!!」

遊馬は街に向かって歩き出す…その時だった。

 

 

「早く来いよ〜!遅れちまうぞー!!」

 

「ま、待ってください〜!!」

 

「ん?鉄男と委員長…?あんなに急いで何処に行くんだ…?おーい!2人とも何処にいくんだ〜?」

遊馬達の前をスケボーに乗った鉄男とそれを追う等々力が駆け抜けていく…。

 

 

「おお、遊馬!」

 

「デュエルなんですよ!!トドのつまりこれです!!」

興奮した様子で等々力がタブレットを見せる…そこには右目の下に十字傷のあるデュエリストの姿が映っていた。

 

「遊馬知らねぇのかよ?アジアチャンピオンのⅣだよ!シャークと全国大会で戦った!」

 

「シャークの…あっ…!」

 

(シャークが言っていたのはこの男の事か…)

鉄男の言葉を聞いた遊馬の脳裏に昨日の言葉が蘇る…凌牙が全国大会で戦って負けた相手…そして、勝つ為には手段を選ばない危険な男なのだと…。

 

 

「僕達これからⅣとデュエルするんです!彼からの指名で!抽選に受かって良かった─!」

 

「えっ…!?こいつってやばい奴なんじゃ…?」

 

「どういう事です?」

遊馬の呟きに等々力が反応する…。

 

「いや、シャークが言ってたんだけど…勝つ為に手段を選ばない…危ない奴だって…」

 

「何言ってんだよ遊馬?Ⅳ程紳士的なデュエリストなんて中々いないぜ?それこそ伝説の『赤帽子』とか『ブリザード・キング』とか…そういうレベルで紳士的なデュエルをする人なんだぜ!」

 

「彼とデュエルできるなら…トドのつまり!もう思い残す事はありません!!おっと…!待ち合わせに遅れてしまいます!」

 

「そうだな!行こうぜ!!」

 

「あっ…ちょっと待てよ!」

遊馬の言葉を気に留めず鉄男達は走り出す…遊馬は慌てて2人を追いかけた…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「…こんな場所でデュエルするのか…?」

 

「こういう場所だからこそ彼とゆっくりデュエルできるんですよ!」

遊馬達が辿り着いたのはとある工事現場…Ⅳに指定された場所だったらしいが…遊馬は少し不穏な空気を感じていた…。

 

『その通りですよ…この場所だから私も君達の相手ができる』

 

「「Ⅳさん!!」」

 

「あいつが…あれ…?」

工事現場の反対側からⅣ、そしてマネージャーらしき桃色の髪の少年が歩いてくる…その顔を見た遊馬は小さく首を傾げる

 

(どうした?)

 

「いや…あの桃色の髪の奴…どっかで会った事がある気がして…」

 

 

 

『お待たせしましたね武田君、等々力君…早速デュエルを始めましょうか!』

 

「そ、その前にサインください!大ファンなんです!」

 

「お、俺も!!」

 

『おやおや…良いですよ!()()()()()()()は私のモットーですからね』

サインをねだる鉄男と委員長、そしてそれに応えるⅣ…傍から見ればなんて事のない光景だった…。

 

 

「鉄男君!デュエルの順番はどうしますか?」

 

「あっ…ジャンケンで決めるか?」

サインを貰った2人はデュエルの順番を決めようとする…しかし、Ⅳが待ったをかける。

 

『よかったら3()()でやりませんか?ルールはバトルロイヤルで…ハートピースはオールインでどうでしょうか?』

 

「えっ?バトルロイヤル?」

 

(バトルロイヤルルールは自分以外全員が敵になる…しかし、鉄男と委員長はⅣを狙う事になる…実質の2対1のデュエル…白野のような上級者でなければ彼にとって不利な戦いになるはずだ)

アストラルが冷静に状況を分析する…そしてデュエルは始まった…。

 

『私は貴方達に知って欲しいんです!デュエルの無限の可能性を…君達でも私を倒し得る可能性があると!!』

 

 

 

 

デュエルダイジェスト Ⅳ対鉄男&等々力

 

 

 

 

『…兄様、急ぎましょう…今の攻撃で繰り出して来ないなら…()()()()()()()()()()()()()()()ようですから』

 

「ナンバーズだって!?」

 

(まさか…彼らもナンバーズを集めているのか!?)

デュエル終盤…Ⅳは鉄男と委員長のタッグに追い詰められている…ように見えた、しかし…それは演技だった…!Ⅳは鉄男達が()()()()()()()()()ナンバーズを出させる為に手を抜いていたのだ…!

 

 

『そうだなⅢ…わかってる、そろそろ受けて貰おうか…()()()()()()()()()()()()を!!』

 

「Ⅳ…さん…?」

Ⅳの纏う空気が変わる…肌を刺すような殺気が鉄男達に襲いかかる…!!

 

『希望を与えられ…それを奪われる、その瞬間こそ!人間は一番美しい表情をする!!…お前達のデュエルは素晴らしかった!!だが…まるで全然このオレを倒すにはほど遠いんだよねぇ─!!』

 

 

15

 

 

『現れろ!「No.15」!地獄からの使者…運命の糸を操る人形…!「ギミック・パペット-ジャイアントキラー」!!』

Ⅳの場に漆黒の身体を持つ巨大な操り人形が現れる…それこそがⅣの操るナンバーズの1体…ジャイアント・キラー…!

 

 

「「ナンバーズ…!?」」

 

「あいつ…!ナンバーズ使いだったのか!!」

鉄男達と遊馬は驚きを隠せない…アジアチャンピオンの裏の顔…それがナンバーズ使いだったのだから…!

 

『「ジャイアントキラー」の効果発動!ORUを1つ使い相手フィールドのモンスターエクシーズを全て破壊!その攻撃力分のダメージを与える!さぁ…粉々になりなぁ!!』

 

「「なにっ!?」」

Ⅳの宣言の瞬間、「ジャイアントキラー」に異変が起きる…胸元のパーツが開き巨大な破砕機が露出…鉄男の「ブリキの大公」と委員長の「ワクチンゲール」が破砕機に引き摺り込まれ…無残に粉砕される…!!

 

『さぁ…!オレの()()()()()()()を受け取れ!デストラクション・キャノン!!』

 

「「うわあああ!!?」」

 

「鉄男!委員長─!!」

破砕されたモンスターの残骸をエネルギーとした破壊弾が鉄男達を吹き飛ばす…彼らが感じるのは実際の痛み…ダメージが実体化している…!!

 

 

『ククク…ハハハハハ!!素晴らしいよ!その苦痛で歪んだ顔!!それでこそオレもファンサービスのしがいがある!!本気のファンサービスはこれからだぁ!!』

苦しむ鉄男達を見てⅣは笑い声をあげる…Ⅳの本性…それは苦しむ人間を見て愉しむ卑劣なものだった…!

 

『墓地に眠る2体の「ギミックパペット─ベビーフェイス」の効果発動!戦闘で破壊されたこのモンスターとこのモンスターを戦闘で破壊したモンスターが相手の墓地にいる時!そのモンスター…つまり「ブリキの大公」と「ワクチンゲール」を相手の場に特殊召喚する!』

 

(これは…ループ攻撃だ!!Ⅳは「ジャイアントキラー」の効果をもう一度使って鉄男達にトドメをさすつもりだ!!)

 

「なんだって!?」

アストラルの推測は当たっていた…Ⅳは自分のモンスターが破壊される事も見越して戦術を組んでいたのだ…!

 

 

『お前らは破滅の糸に操られたデク人形…!オレの支配から逃れる事はできん!!再び「ジャイアントキラー」の効果発動!ORUを1つ使ってモンスターエクシーズを全て破壊!その攻撃力分のダメージを与える!苦しみを味わうがいい!!デストラクション・キャノン!!』

 

「「うわあああ!!!」」

再び鉄男達のモンスターが無惨に粉砕される…そして破滅の弾が鉄男と委員長のライフを吹き飛ばし…デュエルは決着した…。

 

 

委員長&鉄男 LP0

 

Ⅳ WIN…

 

 

 

 

「ひどい…!!」

 

「鉄男!委員長─!!」

デュエルフィールドに遊馬の叫びが響く…小鳥はあまりに酷い光景に顔を覆ってしまう…だが、まだ終わりではなかった…!

 

『まだだ!オレのファンサービスはまだ終わらないぜ!!「ジャイアントキラー」!!』

 

「っ!?やめろ!!もう決着は着いたはずだ─!!」

デュエルはまだ終わっていなかった…左目の紋章を妖しく輝かせたⅣは「ジャイアントキラー」に攻撃の指示を出す─!

 

『お前には彼らがファンサービスを喜んでいるのがわからないのか?スターはファンに全てを捧げるもの…!オレが全力で愉しめばファンも楽しんでくれるのさぁ!!「ジャイアントキラー」!ファイナルダンス!!』

動き出した「ジャイアントキラー」が糸を振るう…それは鉄男達に迫り─!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《聖刻反射の陣!!》

 

 

 

 

ギャキィン!!

 

 

『なにっ…?』

「ジャイアントキラー」の糸は2人に届く前に見えない何かに弾かれる!

 

《…遊馬殿への万が一に備えてついていたが…これもまた我が使命…!!》

 

「トフェニ…!」

ⅢとⅣには見えていないが…鉄男達の前には魔法陣を展開する白龍の姿があった…それは遊馬の万が一の危険を防ぐ為に遊馬についていたトフェニだった…!

 

《…我が姿はお前達には見えず、我が声も聞こえぬだろう、だが…拙者は怒っている!!消え去れ外道よ!「抹殺の聖刻印」!!》

 

キィン─!!

 

『な、なにぃ─!?』

トフェニが白い魔法陣を展開する…その魔法陣は「ジャイアントキラー」を飲み込み、異次元へと消し去った…何が起きたのか理解できていないⅣはただ戸惑っている…。

 

《遊馬殿、アストラル殿…彼らの傷は浅い…心配せずとも大丈夫だ》

 

(トフェニ…ありがとう、助かった…!)

 

《良いのだ、我が主はこのような事をする者を嫌う…主が今の光景を見ていれば…奴自身が地獄を見ていただろう…あとはお主達に任せよう》

そう言うとトフェニは静かに姿を消した…。

 

 

 

 

『テメェ…今何をしやがった!』

 

「お前には教えねぇよ!オレの先生が力を貸してくれたんだ!」

 

『先生だぁ…?意味わからねぇぞ!』

ARビジョンが解除されたフィールドに遊馬達が駆け降りる、幸いにも鉄男達は軽い怪我で済んでいたが…Ⅳは苛立ちを露わにしている…それは遊馬も同じだった…!

 

 

「Ⅳ!オレとデュエルしろ!お前は絶対に許さねぇ!!」

 

『ハッ…!いいぜぇ…!ちょうど消化不良だったんだよねぇ…お前もオレのファンにしてやるよぉ!』

遊馬はⅣにデュエルを挑む…その時だった…!

 

 

ブルルル…ギュアアアン!! キキーッ!

 

 

1台のバイクが遊馬とⅣの間に乱入する…そのライダーの正体は…!

 

 

 

「見つけたぞⅣ…お前の一番の()()()を忘れてるぜ…この俺の事を!!」

 

「「シャーク!!」」

ライダーの正体は凌牙…Ⅳがこの場所でデュエルしている事を嗅ぎ付け飛び込んで来たのだ…!

 

 

『ああ…そうだったなぁ凌牙!お前が一番のファンだった!!』

凌牙を見たⅣは獰猛な笑みを浮かべる…!

 

「俺はお前を許さねぇ…今ここで決着を着けてやる!!」

 

『望むところだ…ケリを着けようじゃねぇか…!』

にらみ合う凌牙とⅣ…その時だった…! 

 

 

シュル! ピシュン!!

 

 

「なっ…!?なんだこれはぁ!!」

 

「あれは…デュエルアンカー!?」

Ⅳと睨み合っていた凌牙の腕に赤く光る縄が巻き付く…それはデュエルアンカー…カイトが使った物と同じだった…!

 

『そこまでにしましょう…Ⅳ兄様』

 

『テメェ…Ⅲィ!!コイツはオレの獲物だ!』

デュエルアンカーを放ったのはⅣの後ろに控えていた少年・Ⅲだった…彼は柔和な笑みを浮かべながらⅣの前に歩み出る…。

 

『凌牙のデッキにナンバーズは無いでしょう…ならⅣ兄様が相手にする事はないでしょ?…それに()()()の命令は絶対だよ』

 

『…チッ、ファンサービスは終わりだ!オレのハートピースは完成してる!決勝で待ってるぜ凌牙…!フフ…ハハハハ─!!』

 

「待て!待ちやがれ!Ⅳ─!!!」

凌牙の叫びを無視してⅣは踵を返す…Ⅳはそのまま砂煙に巻かれて消えてしまった…。

 

 

『落ち着きなよ、兄様は忙しいんだ…君の相手はこの僕だよ…!』

 

「…邪魔をするなら…!お前からぶっ飛ばす!!」

凌牙はⅢを睨みつける…そして2人のデュエルが始まった…!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 凌牙対Ⅲ

 

 

 

 

 

 

 

32

 

 

『現れろ「No.32」!最強最大の力を持つ深海の帝王よ!その牙で全てのものを噛み砕け!海咬龍シャーク・ドレイク」!』

Ⅲによって発動されたフィールド魔法『深海の王国─サンケンキングダム』…海底遺跡を模したフィールドについにナンバーズが出現する…!その名はシャークドレイク…全てを噛み砕く鮫のナンバーズだった…!

 

「ナンバーズ…!!」

 

「現れやがったな…!」

 

 

『「サンケンキングダム」の効果で「シャークドレイク」の攻撃力は300アップする!バトルだ!「シャークドレイク」で「ブラックレイランサー」を攻撃!デプスバイト!!』

「シャークドレイク」から鮫の形をした光線が放たれ、凌牙のエースである「ブラックレイランサー」が破壊される!

 

『そして「シャークドレイク」の効果発動!ORUを1つ使い!このモンスターが破壊した相手モンスターを相手フィールドに特殊召喚し、その攻撃力を1000下げる!そして「シャークドレイク」はもう一度そのモンスターを攻撃できる!』

 

「なんだと!?」

「シャークドレイク」によって墓地の「ブラックレイランサー」が引き摺り出される!

 

 

『鮫は骨まで喰い尽くす!「シャークドレイク」でもう一度「ブラックレイランサー」を攻撃!デプスバイト!!』

 

「っ!!ぐああぁぁぁ…!!」

 

「シャーク!!」

 

(破壊したモンスターを蘇生する事で相手に確実にダメージを与える…強力な効果だ…!)

 

凌牙は「シャークドレイク」の連撃で吹き飛ばされる、残りライフは1000…絶体絶命の窮地である…!

 

 

『さぁ、「シャークドレイク」をどうにかしない限り君に逃げ場はない!』

Ⅲは凌牙を挑発する…だが実はこの状況を突破する手段はある…しかし、それは凌牙にとって大きな危険を伴うものだった。

 

 

 

「(勝つ為には…やるしかねぇ!!)『スカル・クラーケン』を召喚!お前の場の永続魔法『オリハルコン・チェーン』を破壊する!」

 

『そうだ…それでいい!君が生き残るにはそれしか方法はない!!』

凌牙が破壊した永続罠『オリハルコン・チェーン』…それはエクシーズ召喚時の素材を肩代わりする効果を持つ…だが、デメリットもあった…それは『このカードが破壊された時、このカードの効果を使ってエクシーズ召喚したモンスター・エクシーズのコントロールを相手に移す』効果…つまり「シャークドレイク」のコントロールが凌牙に移る…だが!

 

《グルルル…ガアァァッ!!》

 

32

 

ドクン…!

 

「っぁ…!ぐあ…!?」

 

「シャーク─!!」

「シャークドレイク」のコントロールを奪った凌牙を禍々しいオーラが蝕んでいく…ⅢやⅣは「紋章」というトロンから授かった力でナンバーズの力を制御している…だが、凌牙にそんな力はない…!!

 

『(僕の目的は凌牙にナンバーズを渡す事…!さぁ、ナンバーズの力に飲まれなよ…!)』

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

さぁ、オレを受け入れろ凌牙…!

 

「ッ…!」

凌牙の精神世界…そこで凌牙とシャークドレイクは対峙する…「No.96」と同じく強い自我を持つらしいシャークドレイクは凌牙に語りかける…!

 

オレを受け入れ…心の闇を開放しろ─!!

 

ズブッ…グサリ…!!

 

「ガッ…!?ギぃ…!!ア"ア"ア"ア"─!!?」

 

凌牙の胸にシャークドレイクの爪が突き刺さる…凌牙の精神体を貫通した爪は凌牙の心の闇を増幅させ、闇の虜にしようとする…!!

 

 

「う"あ"あ"あ"あ"!!!(だめだ…おれには…やらなきゃ、ならないことが…!!)」

必死にシャークドレイクの侵食に抗う凌牙…その時、彼が思い出したのは…

 

 

 

─デュエル…すげぇ楽しかったぜ!今度はアンティ無しで…楽しくデュエルしようぜ!!─

 

─オレは全力でシャークに挑んだ…その事に意味がある!─

 

 

 

「ユウ、マ…」

凌牙にとってお節介焼きで面倒くさいライバル…そして…

 

 

 

─お前が本当は優しい奴だって俺は知ってる…今のお前を見たら…璃緒は笑い転げるぞ?─

 

 

─凌牙、酷い目にあったらしいな…よく頑張った─

 

 

 

「白野、さん…!!」

天涯孤独となった自分達兄妹を優しく守ってくれた遊海…2人の事を思い出した凌牙の瞳に力が戻る!!

 

「俺は今までの俺じゃ…ねぇぇ─!!」

 

な、なに─!?

凌牙の体から凄まじい光のエネルギーが溢れ出す!!

 

「うおおぉぉ─!!貴様なんかに…操られるかぁぁぁ─!!」

 

グ…グオァァァ─!?

凌牙から溢れ出した光はシャークドレイクの爪をへし折り、シャークドレイク自体を精神世界から消し去った!

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

「俺は…『俺』だぁぁ!!」

 

『なっ…!?(ナンバーズに取り憑かれない…だって!?)』

凌牙は雄叫びをあげる…その瞳に狂気はない、凌牙は自分の力でナンバーズの侵食を捻じ伏せたのだ…!!

 

 

(ナンバーズの力を…精神力で抑え込んだのか…!)

 

「すげぇ…!すげぇぜシャーク!!」

 

「当たり前だ…!俺は…白野さんの息子だ─!!バトル!『シャークドレイク』でミハエル…Ⅲにダイレクトアタック!!」

凌牙に従うように「シャークドレイク」がⅢに攻撃を仕掛ける!

 

 

『そうはいかないよ!罠カード「アンティギティラ・ギア」を発動!相手フィールドに2体以上のモンスターが存在する時にダイレクトアタックを受ける時!攻撃モンスター以外の相手モンスターのコントロールを守備表示で得る!!』

 

「させるかぁ!!罠カード発動!『超水圧』!水属性の『スカルクラーケン』を破壊してカードを1枚ドローする!」

 

『なに!?』

「スカルクラーケン」が水圧で潰され「アンティギティラ・ギア」の効果が不発になる!

 

「喰らえ!デプス・バイトォ!!」

 

『っ!うわあああ─!?』

「シャークドレイク」のエネルギー弾がⅢを弾き飛ばす…残りライフは300!!

 

『くっ…!やってくれるじゃないか…!(僕の任務は既に終わってる…だけど…)』

Ⅲの仕事…それは凌牙にナンバーズを渡す事、トロンからはその後は負けていいと指示を受けていた…だが…凌牙の攻撃はⅢの中に眠る闘争心に火を点けた…!

 

『調子に乗るなよ…凌牙!!』

負けてもいいと言われた決闘…だがⅢはここから全力を出し始める!

 

 

『エクシーズ召喚!!現れろ!「先史遺産(オーパーツ)クリスタル・エイリアン」!!』

Ⅲが使うのは古代文明の遺産をモチーフとした「先史遺産(オーパーツ)」デッキ…古代文明の超科学が凌牙へと襲いかかる!

 

『「クリスタルエイリアン」の効果発動!ORUを1つ使う事でこのターン、自身は戦闘破壊されず…自分が受けるダメージは相手が受ける!!』

 

「なに!?」

 

(「クリスタルエイリアン」の攻撃力は2100…対して「シャークドレイク」はフィールド魔法の効果で攻撃力がアップして攻撃力3100…)

 

「この攻撃が通ったら…シャークの負けだ!!」

 

『これで終わりだ…凌牙!!「クリスタルエイリアン」で「シャークドレイク」を攻撃!リフレクト・フラッシュ!!』

Ⅲが攻撃を仕掛ける…だが、このまま終わる凌牙ではない!

 

 

「リバースカードオープン!『プレート・サルベージ』!2ターンの間…フィールド魔法の効果を無効にする!!」

凌牙がリバースカードを発動した瞬間、異変が起きる…海底遺跡が水中から浮上…海面へとその姿を現す、それにより凌牙はかろうじてライフを残す事に成功した!

 

『(「クリスタルエイリアン」の攻撃を躱すなんて…だけど、次のターン…凌牙は確実に「シャークドレイク」の効果を使う…勝負はその時だ…!!)』

 

 

 

 

「バトルだ!『シャークドレイク』で『クリスタルエイリアン』を攻撃!!」

 

『墓地の「先史遺産コロッサル・ヘッド」を除外して効果発動!「クリスタルエイリアン」を守備表示に変更する!』

返しのターン、凌牙は攻撃を仕掛けるが…Ⅲはダメージを回避する!

 

「だが!「シャークドレイク」の効果発動!「クリスタルエイリアン」を攻撃力を1000下げて特殊召喚する!これで終わりだ!!」

 

『君を舐めなくてよかったよ…!!罠カード発動!「先史遺産レイ・ライン・パワー」!バトルフェイズ中に特殊召喚されたモンスターがバトルする時!その攻撃力を相手モンスターと入れ替える!!このデュエル…僕の勝ちだ!!』

 

 

「フッ…俺こそ、()()()()()()()()よかったぜ─!」

 

 

『えっ…!?』

勝ちを確信したⅢに対して凌牙は不敵な笑みを見せる!

 

「罠カード『深海王の宣告』発動!その効果により相手がバトルフェイズ中に発動した罠の効果を無効にする!!」

 

『なんだって!?』

凌牙の輪なから三叉槍を持った王が現れ、三叉槍を投擲する…その槍はⅢの罠カードを粉砕した!!

 

 

「攻撃を続行しろ!『シャークドレイク』!!デプス・バイト!!」

 

《ガアアアッ!!》

「シャークドレイク」が再び鮫の光線を放つ…そして水晶の宇宙人は粉砕され、Ⅲのライフは尽きた…!

 

『馬鹿な…!うわああああ─!!』

 

 

 

Ⅲ LP0

 

凌牙WIN!!

 

 

 

 

「や、やった!!シャークが勝った─!!」

 

(凄まじい攻防だった…)

デュエルが決着し遊馬が喜びの声をあげる!

 

『くっ…なるほど、いい腕をしている…!今日のところは負けておく…だが、僕は決勝へ行く…!』

立ち上がったⅢはハートピースを投げ渡すが…その手には完成したハートピースがあった…凌牙に渡したのは余りのハートピースだったのだ…。

 

 

『今度会うときはこうはいかない…そのナンバーズは君にあげるよ…今のデュエルのご褒美だ…!』

 

キィン─! 緑

 

「「うわっ…!?」」

そう言ったⅢは左手の甲を見せる…そこには不思議な紋章があり、そこから放たれた閃光が遊馬達の目を眩ませる…光が治まるとそこにはⅢの姿は無かった…。

 

 

 

「…やったな!シャーク」

 

「ああ、ありがとな遊馬」

遊馬はデュエルを終えた凌牙に話しかける…。

 

 

「まだケリが着いた訳じゃねぇ…だが、あいつらとの決着は俺の手で着ける…特にⅣとの決着はな…!!」

 

「シャーク…」

 

「遊馬…俺はもう復讐は望まねぇ…だが…!オレは必ず!あいつをブン殴る!!」

決意を宿した目で凌牙はⅣのいた場所を睨む…!

 

「…少し熱くなっちまったな…頭冷やしてくる」

凌牙はそう言うとバイクへと乗り込む…。

 

「遊馬、まだハートピース集め終わってないんだろ?さっさと集めろよ」

 

「ああ!?そうだった!!こうしちゃいられねぇ!!じゃあな!シャーク!」

そう言うと遊馬は慌ただしく仲間達のもとに駆け出していった…。

 

 

「まったく…間の抜けた野郎だぜ…」

 

 

 

 

Sideトロン一家

 

 

 

『ただいま戻りました…トロン』

 

【うん、ご苦労さまⅢ…君は常にボクの望みに応えてくれる…】

凌牙達から離脱したⅢは拠点に戻りトロンへと話しかける…。

 

 

『僕は…トロンのために、精一杯やってるだけです…」

 

【謙虚さも君の美徳だよ…君はよくやってくれている】

 

「『でも……凌牙にナンバーズは取り付かなかった…今回は失敗してしまったようです…』

 

【いいや…そんなことは無いよ、フフッ…人の心の中に眠る闇は……わずかな綻びがあれば次第に広がるものさ…自分の気づかぬうちに、ね…!】

薄暗い部屋でトロンは嗤う…凌牙に宿った『闇の欠片』が彼を蝕む姿を想像しながら…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

コンコンコン…

 

 

「は〜い、どうぞ〜」

 

『…こんにちは翠さん、白野さんの様子はどうですか?』

遊馬達と別れた凌牙の姿は遊海の入院する病院にあった…翠に付き添われた遊海は静かに眠っている…。

 

「あっ…お見舞いありがとう凌牙君…白野さんは大丈夫、静かに眠ってるわ…ハートピースは大丈夫なの?」

 

『ああ、あと1つ集めれば完成っす』

凌牙は翠にハートピースを見せる…。

 

「そう…なら、ちょうどよかった!少し留守番を頼んでもいいかしら?白野さんの着換えと…フォウくんを家に置いて来なくちゃならないの…」

 

《フォウ!》

翠の声と共に遊海の布団の中からフォウが顔をみせる。

 

『お前…またついて来てたのか?まったく看護師さんに怒られるぞ?』

 

《フォウ、キュ〜…》

凌牙はベッドからフォウを抱き上げる…。

 

『俺がしばらく白野さんの事見てますよ』

 

「ありがとう凌牙君!すぐに戻ってくるから!」

凌牙からフォウを受け取った翠は自宅へと戻っていった…。

 

 

 

『……父さん、俺…どうしたらいいんだよ…』

誰もいなくなった病室に凌牙の言葉が虚しく響く…遊馬には『復讐はしない』と言ったが…凌牙の心中は言葉で言い表せない程にグチャグチャだった…。

 

『俺は、Ⅳの野郎が憎い…!!璃緒を傷つけて…父さん達の優しさを踏みにじったアイツらが憎い…!!でも、それじゃ、ダメなんだよな…!』

凌牙は涙を浮かべながら布団に顔を埋める…凌牙が弱音を吐ける唯一の相手…それが遊海だった。

 

『俺は…!俺はどうしたらいいんだよ─』

 

 

「……お前が、父さんって呼んでくれたのは…何年振り、かな…?」

 

 

『えっ…あ…白野さん!!』

凌牙の声で気が付いたのか…遊海が眩しげに薄目を開く…

 

「少し、寝過ぎたらしい……まったく、頑張り過ぎたかな…」

 

『本当に…頑張り過ぎなんだよ…!昨日1日でどんだけデュエルしてんだよ…!』

 

「ハハッ…20を過ぎたあたりから数えるのを諦めたよ…凌牙…悩む事はない、お前の素直な気持ちを相手にぶつければいい…でも、忘れるな…デュエルは決して自分の意思を押し付ける戦いの道具じゃない…デュエルは、相手と心を通わせて理解しあう事のできるものだ…それだけは、覚えておけよ…」

 

『…わかってるよ父さん、俺は復讐の為じゃねぇ…オレは璃緒と父さん達の為に戦う!!』

凌牙は覚悟を固め、部屋を出て行こうとする…

 

「待て待て…お前なぁ、そんな顔で外に行くつもりか…?」

 

『えっ…あ…』

凌牙は病室のガラスで自分の顔を見る…その顔は涙でクシャクシャになっていた…。

 

「そんな顔じゃ、デュエルできないだろ…?少し休んでから行け…」

 

『………そうする………』

 

 

 

後に遊海は語る…「この時の凌牙が一番可愛かった」と…それを聞いた凌牙が顔を真っ赤にして怒ったのはまた別の話である。



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偽りの未来を打ち破れ!〜恐怖のスクープ写真〜

「イタタタ…身体が、固まってる…」

 

《しょうがないですよマスター…昨日どれだけの無茶をしたと思ってるんです?》

 

凌牙が平静を取り戻してWDCに戻った後、遊海はベッドの上で軽く上半身のストレッチをする…体はガチガチに固まっていた…。

 

 

「…正直、トロンと戦った後から記憶がない…気づいたらベッドの上だし…」

 

《やれやれ…重症だな、凌牙からの連絡以降はほとんど無意識に動いていたらしい…》

 

『無意識って訳じゃねぇぞ…たくっ、仮にも父親が息子を助けない訳にはいかねぇだろ?』

 

「そういう事か…ありがとなユウスケ」

遊海の隣に半透明のユウスケが現れる…気を失った遊海に代わってユウスケがモノレールを止めたようだ…。

 

『たくっ…痛みには慣れてるけど過労は別モンだ!あんまり無理すんじゃねぇ!!ここぞって時にぶっ倒れたら意味ねぇからな?』

 

「…反省してます…」

ユウスケに叱られた遊海は肩を落とす…

 

《まったく…まだ時間はある、今日はゆっくり休むべきだろうな》

 

「そうしたいのは山々なんだけどな…」

遊海は外の景色を眺める…優勝を目指して競い合う数多のデュエリスト達…空にはその様子を眺めるかのように飛行船が浮かんでいた…が!

 

ボォォン─!!

 

「そうも、いかないらしい─!!」

 

飛行船のジェットエンジンが火を吹く…遊海は痛む身体を押して再び街へと飛び出…─

 

 

ドンガラガッシャーン!!

 

 

「痛っ…てぇ…」

…飛び出そうとしてベッドから転げ落ちた…。

 

 

《………無理をしないでくださいマスター…昨日のダメージが抜けきってないんですから…》

 

「……鍛錬は、欠かしてないんだけどなぁ…」

 

《ソレとコレは…別モノだろう…行きたければ早く回復せい…》

 

『馬鹿は死ななきゃ治らな……死んでも治ってないな、このお人好しは…』

アヤカとメガロックとユウスケは深い溜息をついた…。

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「シャークの奴、大丈夫かな…」

凌牙と別れた遊馬は小鳥と共に道を歩いていた…Ⅳに痛めつけられた鉄男と委員長は特に大きな怪我もなく、自宅で休んでいる…。

 

「Ⅳの奴はデュエルで人を傷つけるひどい奴だった…それでシャークの因縁の相手で……デュエルをしたらみんな仲間…そのはずなんだよな…それなのに…」

遊馬は独り言を漏らす…デュエルで人を傷つけたⅣ…そしてⅣを目の敵にする凌牙…「デュエルをすればみんな仲間」という信条の遊馬にとって2人の関係は辛い事だった。

 

 

「…ねぇ!遊馬!少し気分転換しない?」

 

「気分転換?」

考え事をしている遊馬に小鳥が話しかける。

 

「WDCの期間限定で飛行船が飛んでるんだって!空からハートランドを見てみようよ!」

 

(飛行船…空を飛ぶ乗り物か、少し興味があるな)

 

「気分転換か…そうだな!ちょっと乗ってみるか!」

アストラルも興味を示した事で気になったのか…遊馬は小鳥の提案に賛成する!

 

「よーし!あと20分位で出るらしいから早く行きましょう!」

Dゲイザーで時間を調べた小鳥と一緒に遊馬は走り始めた…。

 

 

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

 

「わわっ!?こんな時に電話かよ!わりぃ小鳥!先に行っててくれ!」

 

「えっ…もう、しょうがないなぁ…先に受付してるからね!」

遊馬のDゲイザーが着信を知らせる…時間も間近だった為に小鳥は先に飛行船へと向かった…。

 

「もしもし!どうしたんだよ姉ちゃん!?」

 

『遊馬!アンタ「速水秀太」って奴を知ってる!?』

 

「速水…?誰だよそれ?」

電話の相手は明里…バイクに乗りながら連絡しているらしく…少し焦っている…!

 

 

『速水はWDCの参加者よ!…彼にこれ以上事件を起こさせたくないの!』

 

「事件を起こす…?それどういう事だよ?」

遊馬は明里に問いかける…明里曰く、速水には「未来の出来事を写真に撮る」事ができるらしい…しかも、その出来事がことごとく()()()に関わる事件ばかり…明里の目の前でも実際に事件が起きてしまったのだと…。

 

『アイツ曰くその力があるからデュエルでも負けないらしいわ!とにかく速水を見つけたらすぐに連絡する事!いいわね!?』

 

「わ、わかった…!」

 

(遊馬、明里の話が本当ならその男はナンバーズを持っている可能性がある…確かめてみる価値はありそうだ)

 

「そうだな…とりあえず小鳥を追いかけないとな!オレ一人じゃちょっと大変そうだ!」

明里の剣幕とアストラルの言葉を受けた遊馬は小鳥を追いかけて走り始めた…。

 

 

 

「お〜い!小鳥ー!どこだ〜?」

 

(…飛行船の姿もない、どうやら君を待ちかねて先に行ってしまったようだな…)

 

「そんなぁ…Dゲイザーで連絡してみるか?」

 

しばらく走った遊馬は飛行船の発着場に到着するが…飛行船の姿も小鳥の姿もない…先に出発してしまったようだ。

 

 

「あら?遊馬君どうしたの?」

 

「あっ…翠さん!?どうしてここに?」

困ったように頭を掻く遊馬…そこに翠が通りかかる。

 

「白野さんの着替えを取りに行くところだったの!それにフォウくんもついて来ちゃってたから…」

 

《フォウ!》

翠の髪の中からフォウが顔を出す

 

 

「それよりどうしたの?困ってるみたいだけど…」

 

「それが…小鳥とはぐれちまって…飛行船に乗っちまったみたいなんだ…」

 

「あら…飛行船のコースは…後30分もすれば戻ってくるみたいね!喧嘩でもしちゃったの?」

 

「いや…飛行船に乗る前に姉ちゃんから頼み事の電話がきて…小鳥に手伝ってもらおうと思ったら…」

 

(小鳥とはぐれてしまったのだ、明里からは速水秀太という男を探してほしいと頼まれている…その男はナンバーズを持っている可能性がある)

遊馬の言葉を引き継いでアストラルが事情を説明する…。

 

 

「そういう事ね…私も一緒に探す?」

 

(協力してもらえるならありがたい…だが、相手の姿がわからない…ナンバーズの気配を追うしかないだろう)

 

「勝手に話を進めるなって!…でも翠さんが協力してくれるなら百人力だぜ!」

 

「あらあら…頼られたからには頑張らないとね!」

遊馬に協力する事になった翠…その時だった…!

 

(遊馬、ナンバーズの気配だ!近いぞ!)

 

「なんだって!?」

アストラルの感覚がナンバーズの気配を察知する…遊馬達は急いでその方向へと向かった…。

 

 

 

「っ…!?あれは!?」

 

25 

 

辿り着いた裏路地…そこではデュエルが行われていた、相手はハンチング帽を被った少年とガラの悪そうな男…そしてハンチング帽の少年の場には「25」の数字が刻まれたカメラ型のモンスターが佇んでいた…!

 

『僕の撮る写真には未来が写る…!その未来には逆らう事ができない!必殺影キル・ショット!』

 

『うわぁぁ─!?』

デュエルはハンチング帽の少年の勝利に終わる…そして少年はデュエル前に撮ったのであろう写真を相手に投げつける…。

 

『ほらみろ…僕の撮った写真の未来は変える事はできない…必ず予言は「現実」となる!』

 

「カメラ…写真…予言…!アイツが速水か!!」

 

(やはり、ナンバーズ使いだったか…!)

投げつけられた写真を見た遊馬が明里から聞かされた速水の特徴を思い出す…そして、遊馬は速水の行動を見て怒りを抱く…!

 

「どうしてデュエルをこんな風に使うんだ…!デュエルは…本当は楽しいもののはずなのに…!!」

 

「…遊馬君、あなたの怒りは正しいわ…デュエルは楽しむもの、それがデュエルの本質…これ以上あの子に好き勝手にさせてはダメよ!追いかけましょう!」

 

「おう!!」

遊馬達は急いで速水を追いかけた…。

 

 

 

 

 

「待て!速水秀太!!」

 

『ん?君は…さっきのデュエルを見ていた少年か?』

遊馬はしばらく進んだ先の広場で速水に追い付いた…そして問いかける…!

 

「なんでデュエルであんなに酷い事ができるんだ!デュエルは楽しむもの…デュエリストはみんな仲間だろ!?」

 

『フン、何故あんな事をするのかって…もちろん全てのナンバーズを集める為さ…!今まで当たった事はないけどね…僕は良い写真を撮りたい!!その為にナンバーズを集めるのさ!!』

 

「っ…!完全にナンバーズに取り憑かれてやがる!!」

速水は狂気を宿した表情でナンバーズを集める理由を語る…写真に熱中する思いが強すぎてその力の虜になってしまっている…!

 

『君はナンバーズを知ってるのかい?』

 

「ああ、持ってるよ!!」

 

『そうですか…ならそのナンバーズを奪わせて…』

 

 

ドルルル…ギュイーン!!

 

 

「ようやく見つけたわよ─!!」

 

「姉ちゃん!?」

 

「明里ちゃん!」

にらみ合う遊馬と速水…その2人の間に生垣を突っ切りながら1台のバイクが乱入する…それは明里だった…!

 

「遊馬!見つけたらさっさと連絡しなさいって言ったでしょ!?…速水秀太!私を覚えてる?…いいえ、私を覚えていなくてもあなたの写真をことごとくボツにしたネットニュースの編集長は覚えているはずよ…!」

 

『ええ…覚えてますよ…!「君の報道写真にはインパクトが足りない」と言われた事をね…!』

速水は明里を睨みながら言葉を返す…その目は狂気に歪んでいる…!

 

「その編集長がアンタと独占契約したいなんて言ってるけど…私は認めない!人の命を危険に晒してまでスクープ写真を取ろうとする奴なんて……私は絶対に認めない!!」

明里は拳を握り締めながら速水に詰め寄る…記者でありジャーナリストでもある明里のプライドは速水の写真を認めていない…!

 

 

『心外だなあ…僕はただ、良い写真を撮りたいだけですよ?』

「その為に怪しげな力を使って未来をねじ曲げているっていうの?…さっきの事故、あなたが起こしたんでしょ?未来を思うがままに操る力があるとか言ってたわね…!!」

 

「未来を操る…?」

明里は1枚の写真を速水に見せつける…そこには工事現場で事故に巻き込まれるデュエリストの姿が写っていたが…その事故は不自然な状況で起きた…まるで()()()()()()()()()()()()ように…。

 

 

『…ええできますよ!ナンバーズの力でねぇ!!』

 

「「「っ…!!」」」

速水の言葉に遊馬達は警戒を強める!

 

 

『見てたのなら信じて貰えますよね?…その写真は差し上げますからとっととこの場からいなくなってくれます?編集長にあげればきっと喜びますよ?何せ僕は多忙の身なんでね…僕はこれからデュエルをしなきゃならない、そこの少年とね?』

速水は遊馬を睨みつける…!

 

『貴女も記者ならこんなところで油を売っている暇はないでしょう?貴女にもう一枚取って置きのスクープ写真をあげましょう…ホントはすごく惜しいんだけど、貴女をこの場から去らせるには仕方がありません」

そう言って速水は1枚の写真を明里に投げ渡す…そこには…

 

「小鳥ちゃん!?」

 

「小鳥─!?」

 

(この写真は…!)

その写真に写っていたのは飛行船に乗っている小鳥の写真だった…だが、ただの写真ではない…そこに写っていたのは煙が充満しパニックに陥った船内で幼い少女を抱きしめる小鳥の姿だったのだ…!!

 

 

『おや?君達は彼女の知り合いだったのか…なら急いだ方がいい…間もなくハートランドシティ上空で飛行船のエンジントラブルによる事故が起きる…その写真は墜落寸前の船内を撮った大スクープ写真だ…!!』

 

「っ─!!小鳥!返事をしてくれ!小鳥!!」

 

『遊馬?ごめん!遊馬が来るの遅いから先に飛行船乗っちゃった!すごい良い景色よ〜!』

遊馬はDゲイザーで小鳥に呼び掛ける…通話に出た小鳥は無事そうだが…

 

「小鳥!なんか異常はないか!?周りで変な事は起きてないか!」

 

『えっ…異常って─』

 

ドドォォン!!

 

『きゃあぁぁぁ─!?』

 

「小鳥─!?」

爆発音と共に通信が乱れる…飛行船のエンジンが発火したのだ!!

 

「遊馬!飛行船は私がなんとかする!!コイツから目を離さないで!!」

明里はバイクを飛ばしてその場を離れる…!

 

『やれやれ…やっとうるさいのがいなくなった…あなたはどうするんですか?紫髪の美人さん?』

速水は自身を睨みつける翠に問いかける

 

 

「…速水秀太君、あなたは間違ってる…カメラは『真実』を切り取るもの…絶対に『ねじ曲げた未来』を撮るものじゃないわ!」

 

『貴女もそんな事言うんですか…これは現実です!僕が写した未来は変わらない!!』

 

「そう…偶然ね、私は…私達は()()()()()()事があるの!貴方の…ナンバーズの思い通りにはさせない!!精霊正装(バトルドレス)…メイクアップ!!」

気合いと共に翠の身体を闇が包む…闇が晴れた時、そこには機械のドレスを纏った妖艶な翠の姿があった…!

 

 

『なっ…!?姿が変わった!?』

 

(白野と同じように精霊の力を纏ったのか…!)

 

「遊馬君!私が飛行船が落ちないように時間を稼ぐわ!だから…」

 

「わかってる…!ナンバーズ使いをデュエルで倒してナンバーズを取り上げれば正気に戻る…オレがアイツを倒せば歪んだ未来は消え去るはずだ!!」

翠の言葉に遊馬は頷く、ナンバーズ使いの持つ異能はナンバーズを取り上げれば消え去る…それが事実だったからだ!

 

「…お願いね、遊馬君!!」

翠は飛行船を守る為に飛び上がった…!

 

 

「『デュエルディスク!セット!Dゲイザー…セット!』」

遊馬と速水はデュエルの用意を整える!

 

『写してあげるよ…君の未来を!』

 

パシャ!パシャ!!

速水はデュエルディスクに内蔵されたカメラで遊馬の写真を撮る…!

 

『予言しよう…君は僕に敗北し、ナンバーズは僕のものになる!!』

 

「そんな予言なんて信じるか!!オレはお前に勝つ!!」

偽りの未来を砕く為…遊馬は戦いを挑む!!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

「見つけた…!」

精霊正装を纏った翠はハートランドシティの空中を駆ける…そして左エンジンから火を吹くクジラ型飛行船を発見した!

 

「遊海さんはまだ動けない…私が少しでも被害を減らす!!…でも、正体はちゃんと隠さないとね!」

翠は紫色の魔女帽を目深に被ると両手に力を集中させる!

 

「まずはエンジンの火を消火しないと…!全てを包む水の魔力よ!影依水泡弾(シャドール・シャボン)!」

魔力を宿したシャボン玉がジェットエンジンの火を鎮火させる!

 

「ウィンダ!ウェン!広い場所まで飛行船を誘導して!」

 

《わかったわ!風王結界!》

 

《了解!ウィンドバリア!》

 

シャドール姿のウェンとウィンダが飛行船を風の膜で包んで保護する!

 

《翠…!この飛行船すごく重い…!!何かの力で上から押さえられてるみたい…!!》

杖を持つ手を必死に持ち上げながらウィンダが翠に報告する…!

 

「ナンバーズの魔力ね…!無理に上昇させようとしないでいいわ!少しでも被害が少なくなるように広い場所に誘導するのよ!」

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

Side小鳥

 

 

 

『小鳥ちゃん!聞こえる!?』

 

「翠さん!」

左エンジンが爆発し、パニックに陥る飛行船…そんな中、翠が小鳥に対して連絡する!

 

 

『落ち着いて聞いて…!その飛行船はナンバーズの力で事故が起きるように仕組まれてしまっているの…!遊馬君がその相手と戦ってるわ!』

 

「遊馬が…!飛行船はどうなるんですか!?」

 

『大丈夫…!遊馬君なら絶対に勝てる!それに明里さんに私もいる!とりあえず左エンジンの火は消したから安心して!』

 

「えっ…あ!?」

翠の言葉に小鳥は外を見る…たしかに左エンジンの火は消えており…その近くに紫の機械のドレスを纏った人影が空中を駆けている…。

 

『白野さんと同じように私も精霊の力を纏う事ができるの…このまま安全な場所まで誘導するわ…!だから安心して!』

 

「お願いします…!翠さん!」

小鳥は泣きじゃくる子供達を宥めながら遊馬の勝利を祈った…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対速水

 

 

 

(彼が写真に写した未来が本当に現実となるならば…私達に勝ち目はない…!)

アストラルは焦った様子で呟く…遊馬とアストラルは追い詰められていた…速水の写真によって遊馬に齎された予言は「5ターン目に『希望皇ホープ』を召喚する」「6ターン目に速水のナンバーズによってホープが破壊され遊馬が敗北する」という未来…その時は確実に迫っていた!!

 

 

 

 

『さぁ、運命の5()()()()()だ…!』

 

「ッ…!!」

デュエルは進み、ついに遊馬のターン…5ターン目…速水は1枚の写真を遊馬に見せつける…そこには攻撃を受けて破壊される『希望皇ホープ』の姿が写っている…!

 

『君はこのターンで「希望皇ホープ」を召喚し、6ターン目で僕に負ける…それはもう変えられない事実だ!』

 

「小鳥ッ…!!」

遊馬は街頭のスクリーンを見る…そこには速度はゆっくりだが、少しずつ墜落する飛行船が映っている…!

 

「オレのターン!!」

 

『そのドローカードは…「ゴゴゴジャイアント」だ!!』

 

「っ…!?」

速水が遊馬のドローカードを言い当てる…本来の遊馬なら「ゴゴゴジャイアント」を召喚、そして2ターン目に破壊された「ゴゴゴゴーレム」を蘇生し「希望皇ホープ」を呼ぶ…それが遊馬の敗北の未来だと言うのだ…そしてさらに遊馬は追い詰められる!!

 

 

ドドォォン!!

 

 

『きゃあああ!?』

 

「小鳥!?どうした─!」

開き放しになっていた小鳥との回線から小鳥の悲鳴が聞こえる!

 

 

『み、右側のエンジンが…!翠さんが火を消してくれてるけど…!ど、どうしよう!?』

 

「…!!待ってろ小鳥…!今、速水の奴をぶっ飛ばして必ず助けてやるからな!!」

 

『えっ…!?遊馬が戦ってるナンバーズ使いって…速水先輩なの!?』

 

「えっ…!?知り合いなのかよ!?」

小鳥の思わぬ言葉に遊馬は驚愕する…速水秀太は小鳥の先輩…彼女と親しい人物だった…!

 

「速水の奴はナンバーズに取り憑かれて『未来を自由にできる力』を持ってる…!そのせいで飛行船が墜落しかけてるんだよ!そしてその力であっちこっちの事故のスクープ写真を撮ってたんだ…!!」

 

『そんな…!?先輩はそんな人じゃない…!先輩が撮る写真はいつも優しくて、見る人を幸せに…スクープ写真の為にそんな酷い事をするなんて…信じられない!』

小鳥は速水の悪行を信じられないと呟く…きっと、小鳥の知る本来の速水は善良な男なのだろう…だが、ナンバーズによって欲望を引き出された彼は…もはや別人だった…。

 

 

「お前…小鳥が飛行船に乗るって知ってて…知っててあの写真を撮ったのか!!」

 

『イメージしただけさ…!これは僕にとっても悲劇なんだよ…僕のイメージがそのまま写真になる、そしてそれは必ず現実化する…小鳥くんには悪いけどあの時、頭に浮かんだイメージをカメラマンとして見逃す訳にはいかなかった…昔の僕とは違うんだよぉ!僕は人を和ませる写真よりもよりインパクトを与える衝撃的なスクープ写真を撮る事に目覚めたんだ!!ナンバーズを手にしたあの日から僕は生まれ変わった!僕はスクープ写真を思いのままに撮れるようになったんだ!もっともっと社会に衝撃を与えるスクープをものにしたい…!ナンバーズ1枚でこれだけの力があるのなら…たくさん手にすれば世界一の報道カメラマンにもなれる!!WDCに参加したのもその為なのさァ!』

 

速水は遊馬達に捲し立てる…そこに小鳥の知る穏やかな速水の姿はない、そこにいたのはナンバーズに飲まれたただの狂人だった…。

 

 

「うるせぇ…!!馬鹿言ってるんじゃねぇ!!」

速水の身勝手な言葉に遊馬は怒りを露わにする!

 

 

「お前は間違ってるぜ!デュエルは復讐や欲望の為の道具じゃねえ…自分の未来を決められるのは自分だけだ!お前に…オレ達の未来を決められてたまるか─!!」

 

『ククク…!どうせナンバーズは奪われるんだ、いくらでもわめくがいい…君は僕の敷いたレールの上を進むしかない!言っておくがサレンダーは認めない!!君はあくまでデュエルで僕に敗北するんだ!さぁ「希望皇ホープ」を召喚しろ!ナンバーズを僕へ渡せ!!』

速水は遊馬へと圧力をかける…その時だった!

 

 

(…焦るな遊馬、焦ったら立ち止まれ…そして道を見つけるんだ)

 

「アストラル…?」

アストラルが遊馬に語りかける

 

(急がば回れ…ということわざがあるらしい、彼に勝利する為には冷静にならなければならない…そして、彼に勝つ可能性が一つだけ残されている…)

 

「あるのかよ…そんな方法…!」

 

(それは…()()()()()()()()()()()

 

「予言に…従わない…?」

アストラルの突然の言葉に遊馬は問い返す

 

(予言の通りに動けば私達は敗北する…だが従わない事で新たな未来が生まれるかもしれない…だが、そうする事でどんな未来が待ち受けているかは…私にも分からない…しかし、自分の未来を決めるのは自分だけだと言ったのは…君だ)

 

「自分の未来は自分で決める…父ちゃん…!」

遊馬は皇の鍵を握り締め…自分の進む道を定める!!

 

 

「オレは『ゴゴゴジャイアント』を召喚!そして効果で墓地の『ゴゴゴゴーレム』を守備表示で特殊召喚!そして『ゴゴゴジャイアント』自身も守備表示になる!」

遊馬の場に2体のモンスターが並び立つ!

 

『さぁ…『希望皇ホープ』を呼べ…!呼ぶんだ!!」

 

「オレは…呼ばねぇ!!お前の予言になんて従ってたまるか─!!オレは…ターンエンドだぁぁ!!」

 

『な、なんだと─!?』

遊馬は『予言』を跳ね除ける…自分の未来は自分で決めるください遊馬は自分の未来を選んだ!!

 

『ターン、エンドだと!?…勝手な事をするな!言っただろ、この写真の通りに『ホープ』を召喚して次のターンでぼくに破壊される!!ナンバーズを奪われる君の未来は決まっているはずだ!』

 

「写真なんて関係ねぇ…!どんな未来が待っていようとオレはオレの道を行く!」

狼狽える速水に遊馬はきっぱりと言い返す!

 

『おのれ…おのれぇぇ─!!お前は僕のレールの上を進んでいればいいんだ─!!』

 

 

 

25

 

 

『現れろ!「No.25重装光学撮影機フォーカス・フォース」!!』

速水の場についにナンバーズが現れる…それは巨大なカメラ型のモンスターだった…!

 

 

『バトルだ!「フォーカスフォース」で「ゴゴゴゴーレム」を攻撃!!』

 

「無駄だ!守備表示の『ゴゴゴゴーレム』は1ターンに1度戦闘では破壊されない!!」

 

『「フォーカスフォース」の効果発動!相手モンスターの効果が発動した時!ORUを一つ使い、その効果を無効にする!魂幻像ソウル・デベロップ!』

「フォーカスフォース」のシャッター光が「ゴゴゴゴーレム」の守りを無効化する!

 

『そして「フォーカスフォース」の攻撃!必殺影キル・ショット!!』

カメラから放たれたビームがゴゴゴゴーレムを粉砕する!

 

『どうだ…!これが「フォーカスフォース」の力だ!!あはは…あははは!!』

高笑いする速水…だが、彼は自分が致命的ミスを犯した事に気付いていない…。

 

 

「なぁ、アストラル…これって…」

 

(ああ、これで予言は外れた…言ってやれ、遊馬)

 

「おう!!…おい!速水!『ゴゴゴゴーレム』を破壊してどうする!?モンスター1体じゃ…『ホープ』を呼ぶ事はできねぇ!」

 

『あははは……あ…?』

遊馬に自分のミスを指摘された速水は顔色を変える…!

 

(思った通りだな…彼はあらかじめ敷かれたレールの上を走っていただけの事、彼自身のデュエルタクティクスは驚異に値しない…彼が勝ち進む事ができたのはナンバーズの予知、そしてその予知を相手に繰り返して聞かせる事で相手に()()()()()を掛けていたからだ…だが、遊馬は自分の力でその呪縛を断ち切った!)

 

「つまり…速水!お前には未来を決定する力なんてねぇ!!」

 

『嘘だ…!!僕のイメージした未来以外はありえるはずがない!!』

速水は狼狽える…確かに「No.25」には()()()()()力はある、だがそれはあくまで使用者の「願望」を写していただけ、本当に未来を操るナンバーズ…「No.45」は既に回収されている…つまり…

 

 

「そんな写真に意味はねぇ!!未来は…変わったんだ!!」

 

『黙れ!!ナンバーズはナンバーズでしか破壊されない!君は…僕には勝てない!!』

 

(それはどうかな?見せてやれ遊馬!君が掴んだ未来を!!)

 

「おう!!いっくぜぇぇ!!」

ナンバーズの力を振り払った遊馬は攻勢に転じる!

 

 

 

 

「オレのターン!『オーバレイ・オウル』を召喚!!」

遊馬の場に赤いマントを羽織って杖を持ったフクロウが現れる!

 

 

「『オーバレイオウル』の効果発動!ライフを600払ってエクシーズモンスターのORUを一つ墓地送る!」

 

『無駄だぁ!「フォーカスフォース」の効果で─!』

 

「どっちにしたってORUは無くなるんだよ─!!」

 

『し、しまったぁぁぁ!?』

自身の浅はかさを露呈させた速水…彼に待つ未来は…

 

 

39

 

「現われよ!『CNo.39希望皇ホープレイ』!!」

 

『「ホープ」が…進化しただとぉ─!?』

遊馬の場に混沌を光に変える剣士が降臨する!

 

「『ホープレイ』の効果発動!ORUを3つ使って自身の攻撃力を1500アップさせ、『フォーカスフォース』の攻撃力を3000ダウンさせる!オーバレイ・チャージ!!」

ホープレイに希望の光が宿り、大剣を振りかざす!

 

「バトルだ!『ホープレイ』で『フォーカスフォース』を攻撃!ホープ剣カオススラッシュ!!」

 

『う、うわあああああ!!?』

速水に待つ未来…それは希望の剣士による裁きの一撃だった…。

 

 

速水LP0

 

遊馬&アストラルWIN!

 

 

 

 

 

 

 

(よし…ナンバーズは回収したぞ!)

 

「姉ちゃん!小鳥!飛行船は!!」

 

『ダメよ…!おかしな力が消えても…飛行船が落ちるのが止まらない!!』

 

「そんな…!!」

ナンバーズを回収した遊馬だったが…飛行船に変化は起きない、ナンバーズの影響が無くなったとはいえ急に機械が直る訳ではない…!!

 

『ごめん…!飛行船がだいぶ重たいわ…!私達も限界が近いわ…!このまま安全な場所に不時着させる…!!』

 

「翠さん…!」

翠が遊馬達の通信に割り込む…飛行船の重さは約200t前後…魔法を使って浮かばせるにも限界がある…その時だった…!

 

『えっ…飛行船の後ろから…!』

 

「姉ちゃん!?どうしたんだ!?」

 

(遊馬!空を見ろ!)

アストラルの言葉に遊馬が空を見上げる…そこにはグライダーを背負い空を飛ぶ少年の姿があった…!

 

「か、カイト─!?」

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

《翠姉!後ろから誰か飛んで来るよ!?》

 

「あれは…ナンバーズハンターのカイト君だわ!」

ウェンの言葉に翠が後ろを振り向く…その先にはグライダーを背負い空を飛ぶ少年の姿があった…。

 

 

『おい!この飛行船を支えているのはお前か!?』

カイトは飛行船に手を翳し空を駆ける翠に問いかける

 

「ええ、そうよ…!でもそろそろ限界が近いわ…飛行船の舵をお願い!私の力でサポートするわ!!」

 

『言われるまでもない!!』

言葉少なにカイトは飛行船の操縦席へとガラスを割って飛び込む!

 

 

『オービタル!出力全開だ!このままハイウェイに不時着する!!』

 

《カシコマリ!!》

カイトは道幅の広い高速道路に向かって舵をきる!!

 

「ウィンダ!ウェン!できる限りスピードを遅くして!!」

 

《やってみる─!!》

オービタル7の逆噴射、そして3人の魔法行使で飛行船は順調に降下していく…だが…。

 

「っ…!まだ車が…!!」

カイトが着地地点に選んだハイウェイ…そこにはまだ車が取り残されている…!

 

「よく頑張った…あとは任せろ!

 

「えっ…今の声…!」

聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、翠達の感じていた重さが軽くなっていく…

 

【アポクリフォート・キラー…ステルスモードで現界完了…!このまま飛行船発着地点まで飛行船を運搬します!】

 

《これは…超高エネルギー反応を確認…!?カイト様!!》

 

「…オレが出るまでもなかったか…鋼の騎士」

姿は見えない…だが、カイトは感じていた…圧倒的力を誇る…最強のヒーローの力を…!

 

「遅くなって悪かったな!俺が来た!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

…その日、ハートランドシティを緊急事態が襲った…街の上空を遊覧飛行していた飛行船にエンジントラブルが発生、墜落の危機に陥った…だが、奇跡的に負傷者・死者は0、街への被害も最小限で収まった…。

要因は3つ…1つは飛行船の側に現れた「紫の魔女」によってエンジンの消火が為された事、2つ目はハングライダーの男が舵をきり飛行船の姿勢を保った事…そして最後に…ハートランドシティを守護する最強のヒーローが飛行船を支え、無事に着陸させた事である…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

「小鳥!大丈夫か!?」

 

「遊馬!心配掛けてごめん!助けてくれてありがとう…!」

飛行船の発着場…そこで遊馬と小鳥は再会する、周囲には同じように再会を喜びあう家族が大勢いた…。

 

「オレはナンバーズ使いを倒しただけさ…礼を言うなら…カイト!!」

 

『……』

遊馬は人影に声をかける…それは無愛想に遊馬を睨むカイトだった。

 

「ありがとな!やっぱりデュエリストはみんな仲間だな!」

 

『…勘違いするな、飛行船が墜落して街がパニックになればWDCが中止になる可能性があった…それを避けたかっただけだ…それに…オレもたいした事はしていない』

 

「そんな事いうなカイト少年、君が飛行船の角度を整えてくれたから俺も間に合ったんだからな!」

 

『…メタルナイト、貴方と馴れ合うつもりはない』

カイトの隣に遊海が降り立つ!

 

 

「そんな事をいうなよ…頑張った少年にはご褒美だ、手を怪我しているぞ?」

 

『っ…!』

カイトは右手を隠す…操縦席に突入する時に切ってしまったのだろう…。

 

「傷は男の勲章とはいうが…それではデュエルしにくいだろう?『ディアンケト』よ、傷を癒せ…」

 

『これは…(傷が塞がっていく…身体の調子まで…)』

カイトを緑色の光が包む…手の傷は塞がり、カイトを蝕む副作用の影響も少し軽くなる…。

 

 

「俺は精霊使いでね、余計な事だったかな?」

 

『…感謝する、いくぞオービタル!』

 

《カシコマリ!》

カイトはそのままバイクで走り去っていった…。

 

 

 

 

「ハク…メタルナイト!身体は大丈夫なのか?」

 

「おう!心配掛けて悪かったな遊馬!万全とはいかないが大丈…イテテ…」

 

「全然ダメじゃん…(汗)」

カイトが去ったあと、遊馬は遊海に声をかける…元気をアピールしようとする遊海だったが…全身筋肉痛のような痛みに襲われて顔を歪める…。

 

「翠も大丈夫だから心配しないでくれ、少し無理したから先に家に帰ってる…俺もこのまま病院に戻るよ…ハートピースはどうだ?」

 

「あっ…!!速水から受け取るの忘れてた!?」

 

「まったく…サッサと行ってこい!」

 

「ああ!じゃあなメタルナイト─!また後で行くからなー!」

 

「あっ…待ってよ遊馬─!!」

遊馬と小鳥は慌ただしく走っていった…。

 

 

「…やれやれ…さて、身体も痛むし…戻るとするか…!」

遊馬を見送った遊海もジャンプしてその場を後にしようとした…その時!!

 

『見つけたぞ…メタルナイト─!!』

 

ピシュン!!

 

「えっ!?どわぁ─!?」ドガッシャーン!!

 

《マスター!?》

遊海の足首に何かが巻き付いて地面に叩きつける!!

 

『な、なんだよいったい…デュエルアンカー…?』

起き上がった遊海は足首に巻き付いたものを確認する、それはデュエルアンカーだった…。

 

 

『オレはアンタとデュエルする為にWDCに参加したんだ…オレとデュエルしろ!!』

 

「えっと……どちら様…かな?」

遊海の前に赤と白のキャップを被った少年が現れた…!

 



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訪問者〜誇りを継ぐ者〜

こんにちは!S,Kです!

遊海にデュエルを挑んだ人物…その正体とは…?


それでは最新話をどうぞ!!


『オレとデュエルしろ!メタルナイト!!』

 

「えっと…どちら様…かな?」

 

「No.25」による飛行船墜落事故が解決してすぐ…遊海にデュエルを挑む者が現れた、それは赤と白のキャップを被り何処かで見たような白いコートを羽織った少年だった…。

 

 

「(何処かで見た事があるような…?)…君もWDCの参加者かな?」

相手を観察した遊海は少年に問いかける。

 

『ああ!もうハートピースも4つ集まった!アンタを倒して決勝に出てやるんだ!』

ハートピースを掲げながら少年は宣言する! 

 

「そうか…なら相手をしよう、そもそも受けたデュエルは断われないからね!」

 

《マスター…大丈夫ですか?》

 

「(…正直大丈夫じゃないかな…まぁ、闇のデュエルじゃなきゃ問題ないよ)」

遊海はアヤカの問いかけに答える…そして謎の少年との決闘が始まる…!

 

 

『「デュエルディスクセット!Dゲイザーセット!」』

 

【ARビジョン…リンク完了!】

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

カイアLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『魔法カード「名推理」を発動!相手がモンスターのレベル宣言をしてデッキをめくる!そして通常召喚できるモンスターが出るまでデッキをめくる!レベルを宣言してもらおうか!』

 

「俺はレベル4を宣言する!」

 

 

めくったカード

 

サイクロン

陽炎獣ヒュドラー

 

 

『「陽炎獣(ヘイズビースト)ヒュドラー」を特殊召喚!』

陽炎のように揺らめく多頭の大蛇が現れる! ATK2300

 

 

「『陽炎獣』か…少し厄介かな…?」

 

『まだまだいくぜ!永続魔法「陽炎柱(ヘイズ・ピラー)」を発動!その効果でア…オレが「陽炎獣」を召喚する時のリリースを1つ少なくできる!現れろ!「陽炎獣ペリュトン」!』

陽炎のように揺らめく鹿の頭を持つ怪鳥が現れるATK1700

 

『「ペリュトン」の効果発動!手札の「陽炎獣グリプス」を墓地に送り、自身をリリースする事でデッキから「陽炎獣サーベラス」と「陽炎獣スピンクス」を特殊召喚!』

陽炎のケルベロスとスフィンクスが現れる ATK2000   ATK1900

 

『「スピンクス」の効果発動!デッキトップのカードの種類を当てた時!墓地の「陽炎獣」を特殊召喚できる!アタシが宣言するのは…罠!』

 

カイアがデッキをめくる…そのカードは罠カード『リビングデッドの呼び声』!

 

『大当たりだ!墓地の「陽炎獣グリプス」を特殊召喚!』

陽炎のグリフォンが現れる! DEF2000

 

『オレはレベル6の「グリプス」「スピンクス」「サーベラス」「ヒュドラー」の4体でオーバレイ!』

4体のモンスターが銀河へと飛び込む!

 

『4体のモンスターでオーバレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!陽炎より生まれし炎の化身!今こそ勝利の勝鬨をあげよ!「陽炎獣バジリコック」!!』

鶏のようなトサカに蜥蜴のような身体と炎の翼を持つ幻獣コカトリスが現れる! ATK2500

 

 

『エクシーズ召喚に使用された「ヒュドラー」の効果発動!墓地の「陽炎獣ペリュトン」をORUにする!』

カイアのフィールドに紫の魔法陣が現れ、そこから光の玉が飛び出す バジリコックORU4→5

 

『「バジリコック」の効果!このカードの攻撃力は自身のORU1つにつき200アップする!よって攻撃力は…』

 

バジリコックATK2500→3500

 

 

「攻撃力3500か、なかなかやるな…!」

 

『そしてORUを5つ持った「バジリコック」はカード効果の対象にならず!カード効果では破壊されない!オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!』

カイアLP4000

バジリコック 陽炎柱 伏せ1 手札1

 

 

「(うん、普通に強いな…少し本気でいこうか…!)」

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『汎神の帝王』発動!手札の『連撃の帝王』を墓地に送って2ドロー!そして墓地の『汎神の帝王』の効果発動!このカードを除外しデッキから『帝王の烈旋』『帝王の凍志』『帝王の開岩』を相手に見せる!そして相手の選んだカードを手札に加え、それ以外をデッキに戻す!」

 

『オレは…「帝王の凍志」を選ぶ!』

 

「OK…勝利の道筋は既に見えた!魔法カード『帝王の烈旋』を発動!そして『冥帝従騎エイドス』を召喚!」

黒い鎧を纏った魔法騎士が現れる ATK800

 

 

「『エイドス』が召喚・特殊召喚に成功した時!俺は通常召喚に加えてアドバンス召喚を行う事ができる!そして『烈旋』の効果により…俺はアドバンス召喚する時、相手フィールドのモンスターをリリースする事ができる!」

 

『無駄だ!「バジリコック」は効果の対象には…はっ!?』

 

「そう、これは対象は取らない!俺は『エイドス』と『バジリコック』をリリース!『爆炎帝テスタロス』をアドバンス召喚!」

2体のモンスターがリリースされ、遊海のフィールドに炎柱が立ち昇る…その中から炎の帝王が現れる! ATK2800

 

 

「『テスタロス』の効果発動!このカードがアドバンス召喚に成功した時!相手の手札を確認して1枚捨てる!そのカードがモンスターであればそのレベル×200のダメージを相手に与える!」

 

『っ…!手札はレベル6の「陽炎獣メコレオス」だ…!』

 

「1200のダメージ…そして炎属性モンスターをリリースした事により『テスタロス』のさらなる効果発動!相手に1000ダメージを与える!」

 

『うわあぁぁ!?』

炎帝の放った炎がライフを削る!

 

カイアLP4000→2800→1800

 

「さらに手札の魔法カード『帝王の凍志』の効果発動!自分の場に攻撃力2800以上守備力1000以下のモンスターが存在する時!相手のセットカードを破壊する!」

 

『「攻撃の無力化」が!?』

セットカードが氷に包まれ砕け散る!

 

 

「バトル!『テスタロス』で少年に…ダイレクトアタック!炎帝爆炎拳!」

 

『きゃああああ─!?』

テスタロスの炎を纏った拳が相手のライフを削り切った…。

 

 

 

カイアLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう『テスタロス』、見事な寸止めだ」

 

《(コクッ)》

フィールドに砂煙が立つ中…遊海はテスタロスに声をかける、攻撃が直撃する寸前…違和感を感じた遊海はテスタロスに待ったをかけていたのだ…。

 

「さて…正体を明かしてもらおうか少年…いや、()()よ!」

 

 

『うぅ…1ターンキルかよ…!本当に流星はこんな人を倒したのか…』

砂煙が晴れる…そこにいたのはキャップを被った少年…ではなく、黒髪のストレートヘアーに金のメッシュの混じった少女だった…。

 

 

 

 

 

 

『えっと、初めまして…ジャック・アトラスの孫のカイア・J・アトラスです…いきなりデュエルを仕掛けてすいませんでした…』

 

「…やっぱりそうか…どことなくジャックとカーリーに似た雰囲気だと思ったよ…なんで男装なんてしてたんだ?」

デュエルから少し経ち…遊海はデュエル相手の少女…ジャックの孫娘カイアは公園のベンチで休息を取りながら事情を聞いていた…なお、彼女は既にメタルナイトの正体が岸波白野(not遊海)である事は知っていた。

 

 

『…女がデュエルを挑んだら手加減されると思ったから…』

 

「俺はそんな事はしないよ、挑まれたら誰であれ全力で相手をする…それが俺の戦い方さ…どうして俺と戦いたかったんだ?」

 

『幼馴染の流星が今までできなかった「アクセルシンクロ」をできるようになって…話を聞いたら白野さんに修行をつけてもらって勝ったって聞いて…アタシも戦いたくなったんだ』

 

「…なるほどな、満足出来たかな?」

 

『全然…でも負けは負けさ、ハートピース受け取ってくれよ』

カイアは遊海にハートピースを手渡す、それは…

 

「…うん、完成だ!これで決勝大会に出られる」

遊海のハートピースは完成した…これで戦いの舞台に上がる事ができる…!

 

 

『あ〜あ!アカデミアでは流星以外には負け無しだったのに─!!』

カイアは吹っ切るように声を上げる…。

 

「さて…これで俺はデュエルしなくて良くなったが…どうかなカイア、もう一度俺とデュエルしないか?」

 

『えっ…いいのか!?』

カイアが遊海の言葉を聞いて驚く

 

「せっかくこの街まで来たのにデュエルで不完全燃焼なのもなんだからな!最後におもいっきりデュエルしないか?」

 

『…よ〜し!やってやる!決勝大会で使うつもりだったデッキで白野さんに勝ってやるぞ〜!』

 

「おっ?それは楽しみだ!」

 

 

 

「用意はいいか!カイア?」

 

『ああ!アタシの本当の全力…見ててくれ!』

遊海とカイアは向かいあう…そして再び決闘が始まった!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

遊海LP4000

カイアLP4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札の『聖刻龍─アセトドラゴン』は攻撃力を1000にする事でリリース無しで召喚できる!」

朝日を背負う紫色のウジャト眼を持つドラゴンが現れる ATK1900→1000

 

「そして手札の『聖刻龍─シユウドラゴン』は聖刻モンスターをリリースする事で特殊召喚できる!」

青いウジャト眼を持つドラゴンが現れる ATK2200

 

 

「さらにリリースされた『アセト』の効果発動!デッキからドラゴン族の通常モンスター『エレキテルドラゴン』を攻守0で特殊召喚!」

尾をスパークさせたドラゴンが現れる! DEF0

 

「俺はレベル6の『シユウドラゴン』と『エレキテルドラゴン』でオーバレイ!」

2体のドラゴンが銀河に飛び込む!

 

「2体のモンスターでオーバレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!現われよ!聖なる文字を刻みし龍王!『聖刻龍王─アトゥムス』!」

紺色のウジャト眼を刻みし龍王が降臨する! ATK2400

 

 

「『アトゥムス』の効果発動!ORUを1つ使い、デッキからドラゴン族モンスターを攻守を0にして特殊召喚する!来い!『レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン』!」

黒き鋼を纏ったドラゴンが現れる! DEF0

 

「『レダメ』の効果発動!墓地の『シユウドラゴン』を特殊召喚!」

再び青き聖刻龍が現れる! ATK2200

 

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

遊海LP4000

アトゥムス レダメ シユウ 伏せ2 手札2

 

 

 

『うわ…流星並みの連続召喚か…本当に強すぎる…!』

 

「さぁ、カイアのターンだ!本気の力とやら…俺に見せてくれ!」

 

 

 

『アタシのターン!ドロー!』

『魔法カード「コール・リゾネーター」を発動!デッキから「ダーク・リゾネーター」を手札に加える!』

 

「えっ…!?まさか…!!」

 

『そのまさか!相手の場にモンスターがいて、アタシの場にモンスターがいない時!「バイス・ドラゴン」は攻守を半分にして特殊召喚できる!』

狂暴な顔の紫色のドラゴンが現れる! ATK2000→1000

 

『さらに!「ダーク・リゾネーター」を召喚!』

音叉を持つ悪魔が現れる! ATK1300

 

 

『アタシはレベル5の「バイスドラゴン」にレベル3の「ダークリゾネーター」をチューニング!!』

ダークリゾネーターが緑色のリングに姿を変え、バイスドラゴンを包み込む!

 

5+3=8

 

『王者の鼓動、今ここに列を為す!天地鳴動の力を見るがいい!!シンクロ召喚!!アタシの誇り!「レッド・デーモンズ・ドラゴン」!!』

《グオォォン!!》

荒ぶる炎と共に誇り高き悪魔竜が現れる! ATK3000

 

 

「まさか…また戦う事になるとは…!これが君の本気か!」

 

『そう!このデッキがアタシの切り札!ジャック・アトラスの魂を受け継ぐ決意!!バトル!「アトゥムス」を攻撃!灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!』

 

「うおぉぉ…!」

灼熱の息吹がアトゥムスを燃やし尽くす!

遊海LP4000→3400

 

『さっきのお返し成功!カードを2枚伏せてターンエンド!』

カイアLP4000

レッドデーモン 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「驚いた…!まさかジャックからデッキを受け継いでたか…!」

 

『…うん、これがアタシの本気よ!』

 

「なら俺はさらに上をいこうか!あの時のように…俺は全力を尽くす!!」

遊海の脳裏に浮かぶのはジャックとの頂上決戦…それを思い出しながら遊海は魂を燃やす!

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『トレードイン』を発動!手札のレベル8『竜核の呪霊者』を捨てて2ドロー!…『シユウドラゴン』をリリース!来い!『聖刻龍─トフェニドラゴン』!」

《御意!》

白いウジャト眼を刻んだドラゴンが現れる! ATK2100

 

「少し疲れてると思うが…頼むぞ!リリースされた『シユウ』の効果発動!デッキから現れろ!『神龍の聖刻印』!」

赤いウジャト眼を刻む太陽石が現れる! DEF0

 

「そして『レダメ』の効果発動!墓地から甦れ!『アセトドラゴン』!」

再び朝日を背負い龍が現れる! ATK1900

 

「『アセト』の効果発動!『神龍印』を選択してエンドフェイズまで自分の場の聖刻モンスターのレベルを『神龍印』と同じレベルにする!」

 

 

アセト☆5→8

 

トフェニ☆6→8

 

 

「俺はレベル8の『神龍印』と『アセト』でオーバレイ!」

 

「2体のモンスターでオーバレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!現われよ!太陽の写し身たる龍神!『聖刻神龍エネアード』!」

赤いウジャト眼を刻みし太陽の化身が現れる! ATK3000

 

 

『攻撃力3000…!相討ちにするつもり?』

 

「いいや!こうするんだ!『エネアード』の効果発動!ORUを1つ使い、手札の『聖刻龍─ドラゴンゲイヴ』と『レダメ』をリリース!そして『レッドデーモンズドラゴン』と右側の伏せカードを破壊する!ソーラーフレア!」

 

『っ!リバース罠「スカーレッド・カーペット」を発動!墓地の「ダークリゾネーター」を特殊召喚!』

再び音叉の悪魔が現れる! DEF300

 

「『ダークリゾネーター』は1ターンに1度戦闘では破壊されない…上手いな!俺はリリースされた『ゲイヴ』の効果発動!デッキから2体目の『神龍印』を特殊召喚!」

再び太陽石が現れる! DEF0

 

 

「バトル!『トフェニ』と『エネアード』で『ダークリゾネーター』を攻撃!撃破!」

 

『っ…!!』

太陽の息吹とエジプト魔術が悪魔を破壊する!

 

 

「メイン2!俺は魔法カード『超再生能力』を発動してターンエンド!『超再生能力』の効果でこのターンリリースしたか、手札から墓地に送ったドラゴンの枚数だけドローできる!4枚ドロー!」

遊海LP3400

エネアード 神龍印 トフェニ 伏せ2 手札4

 

 

 

 

 

『強い…!!これが白野さんの全力…!でも、アタシだって…ジャックじいちゃんの孫なんだ!…熱く燃える魂で…このピンチをチャンスに変える!』

 

「その意気だ!さぁ、かかってこい!」

 

キィン…

 

「ん…?(赤き竜の痣が…痛い…?何を伝えようとしてるんだ…?)」

 

 

 

 

『アタシのターン!ドロー!』

『リバースカード「強化蘇生」を発動!墓地の「ダークリゾネーター」を…』

 

「カウンター罠『反射の聖刻印』を発動!『神龍印』をリリースして「強化蘇生」の効果を無効にして破壊する!」

 

『それはブラフよ…本命はこっち!『死者蘇生』を発動!蘇れ!『レッドデーモンズドラゴン』!」

再び悪魔龍が現れる! ATK3000

 

『そして「チェーンリゾネーター」を召喚!』

鎖を背負う悪魔が現れる! ATK100

 

『「チェーンリゾネーター」の効果発動!自分の場にシンクロモンスターがいる事で、デッキから「クロックリゾネーター」を特殊召喚!』

時計を背負う悪魔が現れる!ATK1200

 

「レベルの合計は12…くるっ…!?」

 

キィン─!!

 

右腕の痣が痛みと輝きを強める!!

 

「どうして痣が…ジャックの時はなんとも……()()()()()()()…!?そういう事か!?待つんだカイア!!」

 

 

『アタシはレベル8の「レッドデーモンズドラゴン」にレベル3の「クロックリゾネーター」とレベル1の「チェーンリゾネーター」をダブルチューニング!!…えっ?』

遊海の制止は一瞬間に合わず、レッドデーモンズドラゴンを炎のリングが包み込む!

 

8+3+1=12

 

王者と悪魔…今ここに交わる!荒ぶる魂よ!天地創造の叫びを上げよ!シンクロ召喚!!いでよ!「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン」!!

《ガオォォオン!!》

ジャックの魂の切り札…紅蓮の龍が咆哮を轟かせる…だが…!ATK3500→5000

 

ギィン─!!

 

『えっ、ちょっと…何なのよ!?』

カイアの身体を『スカーレッドノヴァ』から放たれた禍々しいオーラが覆っていく!!

 

 

「カイア!お前…()()()()()()()()を体得してないんじゃないか!?」

 

『えっ…あ…!はい…!!』

遊海の言葉にカイアは頷く…それは最悪の事態を意味していた…!

 

「地縛神スカーレッド・ノヴァが目覚めようとしてる…!?赤き竜が伝えたかったのはこの事だったのか…!!」

遊海は拳を握り締める…『スカーレッドノヴァドラゴン』…それはジャックが太古に封印された最強の地縛神『スカーレッド・ノヴァ』を荒ぶる魂『バーニングソウル』を使いねじ伏せ、従えたモンスター…逆に言えば…使用者が『バーニングソウル』を持っていなければ…『スカーレッドノヴァドラゴン』は制御できない!!

 

 

『ま、待って!身体が勝手に!!止まって!「スカーレッドノヴァドラゴン」!!』

《ガオォォォン!!!》

カイアの指示を無視して『スカーレッドノヴァ』は『エネアード』に突進…粉砕する!!

 

「ぐああああ!?」

遊海LP3400→1400

 

 

 

《マスター!大丈夫ですか!?》

 

「っ…!この、痛みは…!俺を、喰らおうとしてる、のか…!」

吹き飛ばされた遊海はなんとか立ち上がる…しかし、身体はもとより魂にもダメージを受けている…!

 

「…そう、か…俺はこの世界最後の、シグナー…俺を倒せば、奴は復活する、訳か…!」

ダークシグナー事件において彼らはシグナーの魂を「冥界の邪神」への生贄にしようとした…「スカーレッドノヴァ」も同じく最後のシグナーである遊海を喰らう事で復活しようとしているのだ…!

 

 

『ご、ごめんなさい…!アタシ、こんなつもりじゃ…!』

 

「カイア…謝るのは後でいい、ターンを進めるんだ…!」

涙目のカイアに遊海はターンを進めるように伝える…。

 

『サレンダーしたいのに…できない…!!ターン、エンド…!!』

カイアLP4000

スカーレッドノヴァドラゴン

 

 

 

 

「どうすれば、この状況を打破できる…!?」

遊海は思考を巡らせる…アニメ効果の『スカーレッドノヴァ』は強力な回避能力を持っている…その能力をかわさなければ…勝つ事はできない…!

 

『白野さん…!怖い…!!』

 

「大丈夫だよ、カイア…今…助けるから…!もう、これしか方法はない…!!詠唱破棄…展開せよ!我が戦いの聖地!尋常なる決闘の地(コロセウム・デュエルフィールド)─!!」

遊海は世界を塗り替える…現れたのは…

 

『ここは…ネオダイダロスブリッジ…!?』

 

「ああ、この場所か…なら大丈夫だ…!」

現れた場所は無人のデュエルレーン…遊海が全力を出しても問題はない…!

 

 

《マスター!ダメです!!今の状況でその力を使ったら…!!》

 

「わかってる…でも、カイアを守るには…これしかない!!聞け!『スカーレッドノヴァ』!!我が名は白波遊海!!最後のシグナーとして…再びお前を封じ込める!!」

 

キィン─!!

 

《ガオオオン!!》

 

『えっ…!?嘘、その人って…!!』

遊海の言葉を聞いて驚くカイア…それを無視して遊海は最強の力を開放する!

 

 

「俺は…俺自身でオーバーレイ!!」

遊海から溢れ出した光と闇のエネルギーが螺旋を描きながら上昇…ビックバンを起こす!

 

「『世界に満ちる優しき光安寧の闇…我が身に宿り未来を紡げ!ランクアップ!エクシーズチェンジ!!』」

遊海の肉体が再構築される…眩い光の中から未来を変えた最強の決闘者が降臨する!

 

【絆の極地…!絶望を祓う者!NEXUS!!』】

 

赤い鎧の帽子を被り、金色の不死鳥があしらわれた赤いロングコート、そして金色の龍が巻き付いた黒のズボン…そして瞳を金と青のオッドアイに変化させた伝説の戦士、その名はNEXUS…遊海の生み出した奇跡の力が長き時を超え…再び顕現する!

 

『ああ…!すごい…これが、伝説の決闘王の…!』

 

 

【オレのターン!最強決闘者のデュエルは全て必然!ドローカードすら決闘者が創造する!!シャイニング・ドロー─!!】

光の軌跡を残して希望の力がドローされる!

 

【魔法カード『死者蘇生』を発動!蘇れ!『レッドアイズダークネスメタルドラゴン』!!】

力を取り戻した黒竜が現れる! ATK2800

 

【さらに「トフェニ」をリリース!「ネフテドラゴン」を特殊召喚!!】

月光を背負う聖刻龍が現れる!ATK2000

 

【リリースされた『トフェニ』の効果!デッキから現れろ!『ラブラドライドラゴン』!】

全身が黒く輝く宝石龍が現れる DEF0

 

【『レダメ』の効果発動!蘇れ!『トフェニドラゴン』!】

《主殿…我が力を!!》

再び白い龍が現れる ATK2100

 

【トフェニ…頼むぞ!!我に宿りしシグナーの力よ…今再び奇跡を起こせ!!】

 

キィィン─!!

 

遊海の右腕に刻まれし炎の痣が…再び太陽へと姿を変える!

 

 

【オレはレベル6の『トフェニドラゴン』とレベル6のチューナーモンスター『ラブラドライドラゴン』をリリース!!世界を守りし赤き龍神よ─再びこの世界へ顕現せよ!『ケッツアル・コアトル』!!】

《キュオォォオン─!!》

遥かなる時を超え…赤き竜が再び降臨する! ATK0

 

 

『嘘…!じいちゃん達を導いた…赤き竜…!すごい…!!』

 

《ガアアアア─!!》

 

《キュオォォオン─!!》

 

赤き竜に見惚れるカイア…その頭上で2体のドラゴンは睨み合う!

 

【…眠りを邪魔してすまない…だが、力を貸してくれ!!オレは手札を1枚セットする!そして『ケッツアルコアトル』の効果発動!エクストラデッキからレベル7または8のドラゴン族シンクロモンスターまたは『パワーツール』モンスターを特殊召喚する!…神聖なる光蓄えし翼を煌めかせ…その輝きで神を討て!!現れろ!『クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン』!】

《キュオォォン!!》

赤き竜の声に導かれ、水晶の翼を持つ白龍が現れる! ATK3000

 

 

【バトルだ!『クリスタルウィング』で『スカーレッドノヴァ』を攻撃!!】

 

『攻撃力の低いモンスターで攻撃!?』

 

【『クリスタルウィング』がレベル5以上のモンスターとバトルする時!相手の攻撃力分、自身の攻撃力をアップする!】

ATK3000→8000

 

『攻撃力、8000…!!』

 

《ガアアアア─!?》

自身に突進する『クリスタルウィング』を見た『スカーレッドノヴァ』は異次元に逃れようとする!

 

【逃がすか!!『クリスタルウィング』のさらなる効果発動!!このカード以外のモンスター効果が発動した時!その効果を無効にして破壊する!『スカーレッドノヴァ』は効果では破壊されないが…これで充分だ!地縛神の悪意を貫け!烈風のクリスタロス・エッジ─!!】

光速の突進がスカーレッドノヴァを穿ち、粉砕する!!

 

『くぅ…!!』

カイアLP4000→1000

 

【『レダメ』でダイレクトアタック!ダークネスフレイム!!】

 

黒竜の炎がカイアに残った邪念を燃やす…その一撃が決着となった…。

 

 

 

カイアLP0

 

NEXUS WIN!

 

 

 

 

「…なんとか、なった…か……ゴボッ…!?」

 

『遊…白野さん!!』

固有結界が解除され遊海は膝をつく…NEXUS化による消耗と累積したダメージで喉の奥から血が溢れ、口から溢れる…。

 

『ごめん、なさい…!アタシ…じいちゃんに認めて欲しくて…!このデッキを使いこなせば…認めてくれると思って…!』

 

「泣くな、カイア…お前は、悪くないよ…ちゃんと理由を話さないジャックが悪い…本当に、ジャックは…一言足りない、な……っ…!(ダメだ、視界が歪む……まだ、やらなきゃ、ならない…こと、が……)」

遊海の視界が暗転する…そのまま遊海は意識を失った…。

 

 

『白野さん─!!』

 

『っ…!!見つけた!海亜!…遊海さん!?』

 

『海亜!!この…家出娘が─!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

『ごめんなさい…本当にごめんなさい─!!』

 

「もう謝らないで海亜ちゃん…これはきっと遊海さんのシグナーとしての役目だったのよ…」

 

夕方…翠の姿は病院にあった、その目の前には昨日よりも重傷を負って眠る遊海…そして頭を下げるジャックの孫娘・海亜・アトラスと遊星の孫である流星、そして…

 

『この馬鹿娘が…!あれ程オレのデッキはお前に渡せないと言っただろうが!荒ぶる魂なくして我が魂は操れん!!』

歳を重ねてなお凄まじい覇気を放つ三代目決闘王ジャック・アトラスの姿があった。

 

 

流星曰く、海亜は祖父であるジャックのデッキを受け継ごうとしたが…ジャック自身に拒否された、それは海亜自身が()()()()()()()()を体得していなかったのが理由だったのだが…ジャックの思いを勘違いした海亜はジャックのデッキを盗んでWDCに参加…優勝する事で認めて貰おうとしたのだ…。

 

そしてデッキが無い事に気付いたジャックはネオドミノシティ中を探し回り、遊星と流星の提案で遊海を頼る為にハートランドを訪れたのだ。。

 

 

「ジャック君もそんなに怒っちゃダメ、貴方がちゃんと理由を説明しなかったから海亜ちゃんもこんな事したのよ…!」

 

『…面目ない…』

翠の注意でジャックは肩を落とす…。

 

 

「…海亜ちゃん、遊海さんはどうだった?」

 

『すごい人でした…ボロボロなのに、アタシを安心させようと笑顔で…赤き竜の力で助けてくれたんです…!』

 

「うん…私もそうだと思った…遊海さんはね、困った人を放っておけない人なの…人を助ける事を生き甲斐にしてる優しい人…だから、海亜ちゃんも笑っていてね?そうしたら遊海さんもすぐ元気になるから…」

 

『はい…はい…!!』

海亜は翠の腕の中で涙を流す…翠はそれを優しく宥めた…。

 

 

 

 

 

「……っ…う…ここ、は…」

 

『目が覚めたか…久しいな遊海』

 

「…ジャック、か…?」

 

『ああ、俺だ…孫娘が迷惑を掛けた…すまなかった』

夕日が沈みきる頃…遊海は目を覚ました、最初に見えたのは沈んだ表情のジャックの顔だった…。

 

「気にするな…きっとこれが俺の役目だった…最後のシグナーとしてな…カイアは、大丈夫か?」

 

『問題ない…今は翠に連れられて流星と夕食を食べに行っている…情けないな、我が魂を継ぐ者…海亜にはその素質があると思ったが…』

 

「焦らないでいい…きっと彼女も目覚めるさ、荒ぶる魂に…なんたって、お前とカーリーの孫だからな…」

遊海は優しい笑顔でジャックの手を握る…。

 

 

『…遊海が言うならきっとそうなのだろうな…ネオドミノに戻ったらしっかり修行をつけよう…それより…なぜWDCに出ている?まさか…』

 

()()()()()だ…戦いが迫ってる…」

 

『貴方は絶対に聞かないだろうが…言わせてくれ、無理はしないでくれ…!!』

 

「…休める時は、休むさ……すまん、また…落ちそう、だ……」

 

『わかった…暫し休め、偉大なる決闘者──』

 

そのまま遊海の意識は再び落ちていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(兄さん……たすけて……!)

 

 

 

 



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絶望を打ち砕く兄弟の絆〜動き出す悪意〜

こんにちは!S,Kです!お待たせしました!

やっぱり執筆に波ができてしまいました…ごめんなさい!


それでは最新話をどうぞ!


─助けて…─

 

 

…声が、聞こえる…

 

 

─助けて、兄さん…!!─

 

 

助けを求める声が……

 

 

─水の中の月…白い、お城…!─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……うぅ…夢、か…?」

 

眠っていた遊海が目を覚ます…病室は暗く誰の姿もない、窓から射し込んだ月光が病室を静かに照らしている…。

 

 

「全身、痛ぇ…流石に…無理が祟ったか…」

痛み止めの効果が切れたのか…はたまた無茶ばかりする遊海に翠が怒ったのか…遊海はミイラ状態で全身を蝕む痛みに顔を歪める…。

 

 

「(さっきの声…天城ハルトの声か…?なんで俺に…?)」

天城ハルト…天城カイトの弟であり、Dr.フェイカーの次男…生まれつき病弱であり…バリアン世界からもたらされた力で命を繋いでいる少年、バリアン世界由来の力は凄まじく…空間を削り取る力とアストラル世界に攻撃を仕掛ける事のできる超能力を持っている…。

 

「(…ぁ…ダメだ、また、意識が…落ち、る…)」

 

 

 

 

 

 

─…助けて…─

 

 

声が…聞こえる…

 

 

─助けて、兄さん…!絵本のヒーローみたいに…─

 

 

………

 

 

─ぼくを…助けて…─

 

 

 

 

 

「…助けを求められて…応えない訳には…いかない、よな…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「ハルト!何処にいるんだ!返事をしてくれぇ!!」

 

「ハルト君─!!」

 

(迂闊だったな…あの男がカイトの関係者ではなかったとは…)

夜のハートランドシティを遊馬と小鳥が駆け回る…彼らが探しているのはカイトの弟…ハルトだった。

 

 

事の始まりは数時間前に遡る、飛行船事件や徳之助のルール違反による追放騒動とNo.96による反乱、そして犬の言葉が解る少女との騒動を解決した遊馬は夕方の道でふらふらと歩く少年を見つける…それはカイトの弟・ハルトだった。

 

以前、カイトの研究所の写真でハルトの顔を知っていた遊馬は慌ててハルトを保護したが…彼は強力な超能力を持ち、車に穴を開けるばかりか遊馬や遊海にしか見えなかったアストラルさえも見る事ができる程だった。

その後、遊馬はハルトを自宅に連れ帰り食事を共にし、楽しい一時を過ごした…だが、ハルトは突然姿を消してしまう…。

 

ハルトの目的…それはフォトンモードの副作用によって身体がボロボロになっていたカイトを元気づける為に、かつてカイトが渡してくれた「四角く、小さく、甘いもの」…キャラメルをカイトに渡す為にハートランドタワーから脱走して街へとやってきたのだ…だが、バリアンの力の副作用で意識が朦朧としているハルトは過去の記憶を頼りに街を彷徨い歩く…。

 

その途中、遊馬達は彷徨い歩くハルトを発見したが…同じようにハルトを探していたMr.ハートランドの部下であり、WDCの運営委員ゴーシュとドロワと鉢合わせしてしまう…だが、それは本当に運が悪かった…ハルトを探していたゴーシュ達は「ヘリコプター」に乗っていた…ヘリコプターはハルトにとっての「トラウマ」になっており…恐怖によってハルトは自分の力を暴走させてしまう…。

 

荒れ狂う破壊の嵐…ハルトの記憶を読み取ったアストラルは遊馬にキャラメルを探すように告げる…そして遊馬は小鳥がたまたま持っていたキャラメルをハルトに渡し暴走を止める事に成功した…。

 

 

だが、事件はまだ終わっていなかった。

 

 

ハルトの暴走が収まった直後…1台のヘリコプターが現れる、そこに乗っていたのはゴーシュ達ではなく銀髪長身の青年だった。

青年は「Mr.ハートランドの使い」を名乗り、ハルトを連れて行った…だが、彼は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

あとから駆けつけたゴーシュとドロワに詰問を受ける遊馬…そこに現れたのはハルトの失踪に気付いて駆けつけたカイトだった。

アストラルと小鳥の力を借りながら誘拐犯の特徴を伝えた遊馬はハルトと交わした約束…「必ずカイトに会わせる」という約束を果たす為にハルトを探し始めたのだ…。

 

 

 

 

「くっそ〜!なんでこんな時に白野と連絡がつかねぇんだよ〜!?あの人の力が借りられればすぐにハルトを見つけられるのに─!」

 

「無いものねだりしちゃダメよ遊馬!昼間の白野さんの様子を見たでしょ!?白野さんは私達が困ってるって知ったらどんなに体調が悪くても来ちゃう人よ!」

 

「っ…そうだよな…!でも、手がかりがないんじゃ探しようがねぇぜ…」

遊馬は頭を抱える…ヘリコプターで連れ去られたハルト、その手がかりを探す方法は…ない…。

 

 

(…一度わかっている情報を整理しよう…遊馬、何故ゴーシュとドロワはハルトを探している?)

 

「それは…カイトの仲間だからじゃ…?」

遊馬はアストラルの問いかけに答える

 

(確かにあの2人はカイトの仲間だろう、だが…カイトとゴーシュは仲が良いようには思えない、つまり…彼らは誰かの指示でハルトを捜索しているのだろう…彼らはWDCの運営委員も兼ねている、つまり…その上司は…)

 

「Mr.ハートランド…」 

遊馬はハートランドシティに映し出されるMr.ハートランドの立体映像を見る…。

 

(そして…そこから新たな事実が導き出される、カイトはハルトの事を「病気」だと言った、そしてカイトによる鬼気迫るナンバーズ狩り…さらに「悪魔に魂を売った」という言葉……おそらくだが、カイトはハルトの事を人質に取られ…ナンバーズを集めさせられている、そして…その黒幕は…)

 

「Mr.ハートランドが…悪魔…!」

 

(まだ仮説に過ぎないがな…だが、問題なのはハルトが私達でもなくハートランドの勢力にも属さない「第三者」に攫われてしまった…という事だ)

 

「っ…なんで、ハルトを狙うんだ…!」

拳を握り締めた遊馬は夜空を見上げた…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

Sideトロン

 

 

 

 

 

【さあ、儀式を始めようか…!】

月明かりの照らす何処か…そこでトロンは楽しげに嗤う…彼の目の前には気を失ったハルト…そして妖しく輝く紋章が刻まれている…。 

 

【今、この瞬間から私の復讐は始まる…!待っていろDr.フェイカー…!】

トロンはハルトの隣に寝そべり、紋章の力を起動する…すると2人は空中に浮かび上がりハルトに紫色の鎖が巻き付いていく…トロンはハルトの超能力を奪い盗ろうとしているのだ…!

 

 

【ああ…見える、見えるぞ…!これが「アストラル世界」…!感じるよ…ハルトの力を!!】

ハルトの力を奪い始めたトロンの脳裏に美しく輝く青い銀河が現れる…!

 

【素晴らしい…素晴らしい力だハルト!!この力を全て私のものに…!】

 

「うぅ…やめ、て…!助けて…兄さん─!!」

儀式の場にハルトの助けを求める声が木霊した…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

(っ…ハルトが助けを求めている…!)

 

「なんだって…!?ハルトが!?」

 

「えっ…!ハルト君に何かあったの!?」

 

アストラルにハルトの声が届く…苦しみ、助けを求める叫びが…!

 

 

(っ……「水の中の月」、「白いお城」…!遊馬!ハルトの居場所の手がかりだ!)

 

「水の中の月に、白い城…!?ハートランドにそんな場所…」

遊馬は夜空を見上げる、そこには輝く満月が浮かんでいる…。

 

「それって…街外れの使われてない美術館の事じゃないかしら…!たしか湖の真ん中に……あった!!」

遊馬の呟きを聞いた小鳥がタブレットで心当たりを調べる…そこには湖の真ん中にある城のような外観の古びた美術館が写っていた。

 

「白い城に湖…!きっとここだ!そうと決まれば…カイトに連絡だ!!」

遊馬はオービタル7から教えられたアドレスに連絡を取り、自分達も急いで美術館へと向かった…!

 

 

 

 

「ここにハルトが…!」

遊馬達は街外れの小さな湖の畔に辿り着く…湖の中心にはステンドガラスで彩られた白い美術館が月明かりに照らされている…。

 

「あっ…!カイトよ!」

 

「カイト!!」

小鳥が空を指し示す…そこにはちょうどグライダーで駆けつけたカイトの姿があった。

 

 

「カイト!ハルトはあの美術館の中にいる!」

 

「…何故、ハルトがこの場所にいるとわかった…!」

 

「えっ…それは、なんというか…アストラルにハルトの声が聞こえたとしか…まぁ、どうでもいいじゃんか!」

 

「お前に何がわかる…!!兄弟でもないお前に、ハルトの何がわかる!!」

強い口調で遊馬に話しかけるカイト…カイトにもハルトの叫びが聞こえていた…その声が誰かに聞こえていた事が気に入らないらしい…。

 

 

「カイト!今は争ってる場合じゃねえ…!2人でハルトを助けるんだ!」

 

「お前の力など必要ない…貴様は帰れ!」

 

「帰れる訳ないだろ!?…ハルトを渡しちまったのはオレの責任だ…それにハルトと約束したんだ!お前に会わせてやるって!!だからハルトを無事にお前に会わせるまで…オレは絶対に帰らねぇ!!」

カイトに啖呵を切る遊馬…その時だった…!

 

ゴゴゴザバーン!!

 

「水の中から道が…!」

 

(どうやら…相手に気付かれたらしい…!)

 

湖の中から美術館へと続く道が現れた…!

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

『来やがったか、意外に早かったなぁ…つけられたんじゃねぇか?Ⅴ』

 

『ありえない、ここがわかったという事は…もはや直感のようなものだろう』

監視カメラに映し出された遊馬、そしてカイトの姿を見たⅣは獰猛な笑みを浮かべ、歩き出す。

 

『ま、どうせいつかはブッ潰さなきゃならない奴らだ…早いも遅いもねぇな…行ってくる』

 

『…無理はするな』

 

『ああ…?オレには奴らを倒せねぇってか?』

 

『カイトは強敵だ、倒すことにこだわるな…トロンの儀式が終わるまで時間稼ぎをしてくれればそれでいい』

 

去ろうとするⅣの背中にⅤが注意を促す、それはⅤ…クリス自身がカイトの強さを知っているが故の言葉だった。

 

『へっ…始まっちまったらわからねぇなぁ…!奴らの命の保証もできねぇ』

 

『はぁ…Ⅲ、頼んだぞ』

 

『はい、Ⅴ兄様』

Ⅳの残虐さ(決意)を知っているⅤはⅢを一緒に向かわせる…少しでもⅣのブレーキになるように…。

 

「(あの人が今のトーマスを見たらなんと言うだろうか…ミハエルを見たら……翠さんは…泣いてしまうだろうな……それでも、私達は……!)」

儀式の様子を見つめながらクリスは拳を握り締めた…。

 

 

 

 

「ハルト!何処にいるんだ!!ハルトォォォ─!!」

美術館へと突入した遊馬達…美術館の中は静まりかえり…カイトの叫びが木霊する…

 

 

『くくッ…ハハハハ!!やっと会えたな天城カイト!待ってたぞぉ?』

 

「この声は…!!」

 

「まさか…!」

闇の中から声が響く…遊馬、そして小鳥はその声に聞き覚えがあった…!

 

『この先には行かせないよ…!』

美術館の石像の上から2人の人影が現れる…それは…

 

「「Ⅳ!?」」

 

「奴を知っているのか?」

 

「あいつはⅢとⅣ…!Ⅳの奴はアジアチャンピオンで…オレの仲間をデュエルで傷付けた奴だ!!」

遊馬はⅣを睨みつける…その様子を気にしないでⅣは遊馬達に歩み寄る。

 

 

『へぇ、誰かと思えば…そっちは仲間の復讐にやってきたか…いいぜぇ…!いつでも受けてやる』

 

「貴様…ハルトを何処に隠した!!」

カイトはⅤに向かって叫ぶ…!

 

『はっ…生きてるから大丈夫だよ…今のところはなァ?』

 

「テメェ…ハルトを返しやがれ!!」

 

『すぐに返すわけにはいかねぇなぁ…今は取り込み中でねぇ…!無理を通して弟を助けたいって言うなら…オレ達を倒していきな!!』

 

ビシュン!!

 

「っ…デュエルアンカー…!!」

 

Ⅲからカイトへ…そしてⅣから遊馬へとデュエルアンカーが巻き付く!

 

「望むところだ…貴様達を倒し…ハルトを返してもらう!!」

 

「オレもやるぜカイト…!オレとお前でハルトを助けるんだ!!」

遊馬達はハルトを救う為に戦いを挑む!!

 

 

『「『「デュエルディスク!セット!」』」』

 

「Dゲイザー…セット!」

 

「狩らせてもらうぞ…貴様達の魂ごと!!」

 

遊馬はDゲイザーを装着し、カイトの左目を青い紋様が縁取る!

 

『『ハッ!』』

ⅢとⅣの左目にも同じようにオレンジ色と紫色の紋様が現れる!

 

 

 

(憎しみに心を囚われるな遊馬…憎しみに心を囚われれば…デュエルは乱れる)

 

「…わかってる、オレはデュエルを…復讐の道具には使わねぇ!!」

アストラルのアドバイスに頷いた遊馬は戦いへと臨む!!

 

 

 

「「『『デュエル!!』』」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

 

『ついに来たか、カイト…』

モニターでⅣ達の様子を見つめていたⅣがポツリと呟く…その表情は心なしか悲しげなものだった…。

 

【Ⅳ達のデュエルが始まったのかな?…ああ、感じるよ…強い()()の感情を…!】

ハルトの力を吸収しながらトロンが左目を赤く輝かせる…!

 

【そして…そろそろ()()()()?ボクのご馳走が…】

 

『ご馳走…?それは─』

トロンの言葉に疑問を抱くⅤ…その時だった…!

 

ドガン!! ズドォォン!!

 

『っ…!?なにっ!?』

突如としてトロン達のいる広間の屋根がぶち抜かれ、何かが部屋へと現れる…!

 

「少し、遅かったか…だが、まだ…間に合う…!!」

 

【君なら来ると思っていたよ、昨日振りだねぇ?…岸波白野…!】

所々が欠けた鋼の鎧を纏い、遊海がトロン達の前に現れた…!!

 

 

『白野…!』

 

「…見損なったぞクリス、俺の知るお前は…幼子を危険に晒すような男ではなかったはずだがな…!!」ズン!!

 

『っ…!!?』

クリスに対して遊海は殺気を飛ばす…その殺気はクリスに強い圧力を与える…!!

 

【ふふふ…怖い怖い…!視線だけで人が死んじゃいそうじゃないか…悪いけどボクは取り込み中でね…後にしてくれないかな?】

 

「なぁに…すぐに終わるさ!その少年を助ければなぁ!!」

遊海は紋章の魔法陣に横たわるトロンとハルトに向かって駆け出す!!

 

「(今の俺には、戦闘や…闇の決闘を耐える余力はない…!ハルトを回収してすぐに遊馬と合流する…!そうすれば…()()()()()()()()()()()()()()!!)」

トロンは決勝大会ギリギリまで人前に出る事はしなかった、自分を貶めたDr.フェイカーに自分が生きて戻ってきた事を知られない為に…そこで遊海はハルトを救出し、すぐに遊馬のもとに行く事でトロンの追撃を防ごうとしているのだ…!

 

 

『トロン!!』

 

【ああ…優しい君なら()()()()()()()()()

 

ギィン! ジャラジャラジャラ!!

 

「っ…!?こんなもの─!!」

あと数メートルでトロンのもとに辿り着く直前、遊海の足下で紋章の魔法陣が起動…紫の鎖が遊海の手足を拘束する、だが…遊海にはその程度の鎖は問題にはならない…()()()()()()

 

【白野、君はたしかに肉体的にもデュエリストととしてもボクより強いかもね…でも、それは君が()調()()ならの話さ…!】パチン!!

 

バリバリ…バチバチバチバチ!!

 

「ぐっ…!?ガア"ア"ア"ア"─!!!」

トロンが指を弾く…それと共に遊海の全身に巻き付いた鎖、そして紋章から凄まじい威力の電撃が放たれ、遊海を蹂躙する!!

 

《マスター!!今助け─ぎゃ!?》バチン!!

 

《アヤカ!!》

遊海を助けようとしたアヤカが赤雷に弾かれ弾き飛ばされる!!

 

【無駄だよ?その紋章はボクにしか解けない特別性…精霊だろうと実体があるなら全てを灼き尽くす、ボクの復讐の赤雷さ…!そこで見ていなよ白野…ボクがハルトの力を手にする瞬間を!!】

 

「トロン…!き、きさまッ…!あ"あ"あ"あ"!!」

 

全身を灼く電撃を受けながら遊海は苦悶の叫びを上げた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬&カイト対Ⅲ&Ⅳ

 

 

 

 

 

ハルトを救う為に始まった遊馬とカイト、そしてⅢとⅣのタッグデュエル…だが、その幸先は良いものではなかった…。

 

 

 

「オレのターン!フィールド魔法『光子圧力界(フォトン・プレッシャー・ワールド)』を発動!」

カイトがフィールド魔法を発動する…すると周囲が宇宙空間へと姿を変えていく…!

 

 

「『光子圧力界』が発動している時に自分が『フォトン』または『光子』モンスターを召喚した時!『フォトン』モンスターをコントロールしていないプレイヤーに召喚したフォトンモンスターのレベル×100のダメージを与える!!」

 

「うぉい!?ちょっと待て!それじゃあオレまでダメージを受けて…!?」

 

「お前の力なぞ必要ない…ナンバーズ使いは全員オレの敵だ!!ハルトはオレの手で助け出す!!『フォトン・クラッシャー』を召喚!!そして『光子圧力界』の効果により全員に400ダメージだ!」

 

「うわあぁぁぁ─!?」

カイトがモンスターを召喚する…そして宇宙から降り注いだ隕石群が遊馬諸共フィールドを蹂躙する!

 

 

『ククッ…!仲間もお構いなしか…オレ好みだぜぇ…!』

ダメージを受けたにもかかわらずⅣは獰猛に笑う…!

 

「くっそ〜!お前がそのつもりなら…オレだって…!」

 

(待て、遊馬…このデュエルに勝利する為には…カイトと協力すべきだ)

 

「何言ってんだよアストラル!カイトが好き勝手やってるのに…!」

アストラルの助言に遊馬が抗議の声を漏らす…。

 

(…忘れたのか?このデュエルには我々だけではない、()()()()()も懸かっている…そしてあの2人はおそらくルドガー並みの強敵だ…我々も協力しなければ…勝ち目は薄い)

 

「っ…!そうだよな…その事を忘れてたぜ…!」

アストラルの言葉で遊馬は冷静さを取り戻す…。

 

 

『フッ…!お前はどうやら何も知らないようだなぁ?』

 

「なに…?」

 

『カイト。お前はハルトのために戦いを強要された哀れな兵士…Dr.フェイカーとMr.ハートランドにナンバーズを集めれば…()()()()()()()()()()()()って言われてるんだろう?』

 

「な、なんだって─!?」

Ⅳの暴露に遊馬とアストラルは驚愕する…カイトの鬼気迫るナンバーズ狩りには理由がある事はわかっていたが…それが弟であるハルトの病気を治す為とは考えていなかったのだ…。

 

 

『そうさ、そいつは弟のために死にもの狂いでNo.を集めてる!他人の魂なんてお構いなしでなぁ?涙ぐましい話だ、泣けてくるねぇ…!』

 

「カイト、お前…」

 

「お前に同情される筋合いはない、さっきも言っただろう…ナンバーズ持ちは全て敵だ!ナンバーズ持ちは…全員オレが狩る…!!」

吐き捨てるようにカイトは言い切る、そこにいたのは非情な狩人ではなく…強い覚悟を背負った決闘者だった…!

 

『いいねいいねぇ!追いつめられてるねぇ…カイト!』

 

「…アストラル…オレ達がナンバーズを集めたら、ハルトが…!」

 

(…遊馬、今は戦いに集中するんだ…この戦いに負ければハルトを取り戻す事もできない、全ては戦いが終わったあとだ…!!)

カイトの背負う事情に動揺する遊馬…アストラルはそれを窘め、戦いへと意識を向けさせる…!

 

 

 

『僕のターン!…兄様、()()()()()を仕込みます…!』

 

33 

 

『現れろ!「No.33」!「先史遺産(オーパーツ)─超兵器マシュ=マック」!』

 

「デカイ…!!」

昼間の凌牙とのデュエルでは実力を隠していたⅢ…彼が操るのは空中に浮かぶ巨大都市型のナンバーズだった…だが、ⅢとⅣはまだ知らない…目の前にいる少年が──

 

39

 

「現れろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

 

『『ナンバーズ!?』』

 

ナンバーズのオリジナルと共に戦ってきた決闘者である事を!!

 

 

 

『馬鹿な、あのガキがナンバーズを…!』

 

『彼はナンバーズ使い…!兄様、この前のデュエルは迂闊だったかもしれませんね…彼は僕たちのデュエルを1度見ている…作戦を変更しますか?兄様』

Ⅲは動揺する、昼間のデュエルで遊馬はⅣの使うナンバーズについて知っている…それによってコンボが失敗するのではないかと…だが…。

 

『ククク…!ハハハハハハ!こいつは面白い!ナンバーズくらい持ってなけりゃぶっ倒しがいもねぇ!!』

Ⅳはなおも獰猛に笑う…その目はまるで獲物を見つけた肉食獣のようだった。

 

『オレのターン!ドロー!…ここからがショーの始まりだ!!』

 

15

 

『現れろ!「No.15」!「ギミック・パペット─ジャイアント・キラー」!!』

 

「ランク8のナンバーズ…!!」

 

(こうも早く現れるとは…!)

Ⅳの場に鉄男と等々力を傷付けた漆黒の操り人形が降臨する…だが、ここからⅢとⅣによる怒涛の攻撃が始まる…!

 

『僕は永続罠「ナンバーズ・ウォール」を発動!この効果により「マシュ=マック」は効果では破壊されなくなる!』

 

(このコンボは…!?まずいぞ遊馬!!)

 

「えっ…!?」

Ⅲが罠を発動した瞬間、アストラルは顔色を変える…!

 

 

『いくぜぇ!「ジャイアントキラー」の効果発動!ORUを1つ使い!このカード以外のモンスターエクシーズをすべて破壊する!』

 

「っ…!!だけどそんな事したらⅢのナンバーズまで…ハッ!?」

 

『フハハハ…!気付いたか?』

 

『僕のナンバーズは「ナンバーズ・ウォール」の効果で守られている…よって破壊されない!』

これこそが「ジャイアントキラー」の効果を最大限に生かすコンボ…「ジャイアントキラー」から放たれた糸が「ホープ」を捕らえ、胸の破砕機に引きずり込んでいく…!!

 

「『ホープ』─!!」

 

『さらに!「ジャイアントキラー」は破壊したモンスターの攻撃力分のダメージをそのモンスターをコントロールしていたプレイヤーに与える!デストラクション・キャノン!!』

 

「ぐっ…うわあぁぁ!!?」

 

「遊馬─!!」

「ジャイアントキラー」から放たれた砲撃が遊馬を直撃…遊馬は大きく吹き飛ばされる…!

 

 

 

(まだ「ジャイアントキラー」の攻撃が残っている…!次の攻撃を受けたら…!遊馬!手札のモンスター効果を使え!!)

 

「っ…!オレは手札の『ダメージ・メイジ』の効果発動!自身を守備表示で特殊召喚!!」

なんとか立ち上がった遊馬は手札からローブを纏う魔女を呼び出す!

 

「『ダメージメイジ』は自分が効果ダメージを受けた時に特殊召喚できる!さらに受けた効果ダメージの分、自分のライフを回復する!!」

ダメージメイジの背中から光の翼が現れ、遊馬のライフを回復させる…!

 

 

『チィッ…!ライフを回復したか…面白くねぇ、だが…これならどうだ!魔法カード「アタック・ギミック」を発動!「ジャイアントキラー」の攻撃力を500アップし、相手モンスターを戦闘で破壊した時!その攻撃力分のダメージを相手に与える!』

「ジャイアントキラー」の腕に赤い鞭が握られる!

 

『覚悟しやがれカイト…!まずはお前からだ!!「ジャイアントキラー」で「フォトンクラッシャー」を攻撃!』

 

「カイトのモンスターを攻撃…!?攻撃力は同じ…」

 

(遊馬、ナンバーズはナンバーズとの戦闘でなければ破壊されない…!)

 

「あぁ!?」

 

『さぁ、2000ダメージをくらえ!カイト!!ファイナルダンス!!』

ナンバーズの効果を生かした一撃がカイトに迫り…!

 

 

ドオォォン!!

 

 

《カイト様─!?》

 

『フハハ…アハハハハ!!これでもオレの魂を狩れるかぁ?カイト!』

「ジャイアントキラー」の攻撃による黒煙がフィールドを覆う…だが…!

 

『なに…!?「フォトンクラッシャー」が破壊されてないだと!?』

煙が晴れた先でカイトは立っていた、そして破壊されたはずの「フォトンクラッシャー」もフィールドに残っている!

 

 

「カイトへの攻撃の瞬間、罠カード『攻撃の無敵化』を発動していたのさ…!その効果で『フォトンクラッシャー』を戦闘破壊から守った!」

 

『チッ、カイトを守る手まで伏せていたか…!』

カイトを守ったのは遊馬だった…伏せカードを使い、カイトをカバーしたのだ!

 

「貴様…オレをかばっているつもりでいるのか?…言ったはずだ、お前達の手は借りない…ナンバーズ持ちは全員敵だとな!」

カイトは遊馬を睨みつける…彼にとってはタッグパートナーである遊馬ですら仲間と思えないでいるのだ…。

 

 

「なによ!助けてもらったのにあの態度!!」

 

《…スミマセン…カイト様はああいうお方でして…》

…それに怒ったのは外野の小鳥だった、隣のオービタル7は申し訳なさそうに項垂れる…普段の彼の苦労が分かるようだった…。

 

 

「それとも…アストラルの指示か?」

 

「別にそんなつもりじゃねぇ!これはオレの意志だ!お前が敵だと言うならそれでも構わねえ…けど、オレはハルトと約束したんだ!…あいつはずっとお前に会いたがっていた…だから!必ずお前をハルトの元に連れて行く!!」

 

「っ…!」

カイトの言葉に遊馬は自分の想いを伝える、いま遊馬が戦っているのはナンバーズを集める為でも、Ⅳに復讐する為でもない…ハルトを救い、約束を果たす為に遊馬は戦っているのだと…!!

 

 

 

『っ〜!!ムカつくぜてめぇら!おれのサービスをことごとく拒否しやがって!!何でオレに気持ち良くデュエルさせねぇんだ!!オレはお前たちが苦しむ姿を見ていたいんだよぉ!!』

2人のやり取りを聞いて怒りをあらわにしたのはⅣだった…復讐の相手に自分の牙は未だに届かない、その事に苛立ち始めたのだ…だが、突然Ⅳは笑みを浮かべる…!

 

『そうだ、待てよ…?いいことを思いついた、これまでのサービスが気に入らないってんなら、別のサービスをしてやる…これなら気に入るんじゃねぇかぁ?」パチン

Ⅳが指を鳴らす、すると空中に映像が投影される…そこに映っていたのは…。

 

 

「ぐっ…うぅ…!?あ、あ"あ"あ"…!!」

 

 

「ハルト…!!ハルトォォ─!!」

カイトが叫ぶ…映し出された映像は…魔法陣に紫の鎖で拘束されて苦しむハルトの姿だった…!

 

 

『お前の愛しい弟の生中継だ!!フハハハハ…!!』

 

「貴様…ハルトに何をしている!!」

 

『さぁ?何かねぇ…兄貴のすることはオレよりえげつねぇからなぁ…けど、あの様子じゃ早く止めないとまずいんじゃねぇのかぁ?』

 

『兄様…』

ハルトの傷付く姿を見て激昂するカイト…その様子を見て笑うⅣにⅢは注意する…だが、それは意味を為さないだろう…。

 

「貴様…キサマアアアアア!!」

 

『フハハハハ!!いい顔だぜカイト…やればできんじゃねぇかよぉ、お前のすかした顔が歪んでいくのを見るのはたまらねぇ快感だよ…!フフ…ハハハハハ─!!』

怒りに顔を歪めるカイトをⅣは嘲笑う…その時だった。

 

 

 

ズン…!!

 

『(っ…な、なんだ…!?寒気が…!!)』

Ⅳの背中に冷や汗が流れる、Ⅳ…トーマスはこの感覚に覚えがあった…。

 

『(…あの人はここにはいないはずだ…昨日、トロンがあの人を消耗させたって言っていた…だから…!!)』

トーマスの脳裏に浮かぶのは幼い自分達を世話してくれた1人の男…その怒った時の姿だった。

 

『(白野さん…オレはもう止まれねぇ…!アンタに叱られようと…オレは…!家族を取り戻す為に…止まる訳にはいかねぇ!!!)』

Ⅳは笑顔を貼り付けたままカイトを睨む…家族を取り戻す為に汚れ役を引き受けたⅣは仇の息子を倒す為に意識を切り替えた…。

 

 

 

 

「闇に輝く銀河よ!!希望の光になりて我が僕に宿れ!光の化身…ここに降臨!現れろ!『銀河眼の光子竜』(ギャラクシーアイズ・フォトンドラゴン)!」

《ギャオオオン!!》

 

『現れたか…!』

 

『これが噂に聞く「銀河眼の光子竜」…!!』

ハルトの苦しむ姿を見て冷静さを失ったカイトは自身の切り札たる「ギャラクシーアイズ」を呼び出す…だが、それは…。

 

「『光子圧力界』の効果発動!全員に800ダメージだ!!」

 

『ぐっ…!だが、計算通りだ…!仕掛けるぞ!Ⅲ!!』

 

『はい!兄様!』

隕石の直撃を受けながらⅢとⅣはギャラクシーアイズを倒す為のコンボを発動させる!!

 

『永続罠「環状列石の結界(ストーンヘンジ・シールド)」を発動!攻撃力3000以上のモンスターの攻撃力を0にして効果を封じる!!』

 

「なに─!?」

Ⅲが発動したのは対「ギャラクシーアイズ」用のメタカード…イギリスに存在する巨石群をイメージした巨石の結界が「ギャラクシーアイズ」を封じる!!

 

『そして「マシュ=マック」の効果発動!フィールド上のモンスターの攻撃力が変化した時!その数値分のダメージを相手に与える!!インフィニティ・キャノン!!』

「マシュマック」の側面から無数の大砲が出現する!

 

 

『お前の「ギャラクシーアイズ」の攻撃力は3000から0に変わった…終わりだカイト!!3000のダメージをくらえ─!」

無数の大砲がカイトに照準を定め…一斉に砲撃する─!!

 

「やらせるかぁぁ!!罠カード『ブレイブハート』を発動!ライフを半分にする事で『マシュマック』の効果の発動を無効にする!うわあぁぁぁ─!!」

遊馬は咄嗟にカイトを守る…だが、罠のコストによるダメージでアストラル諸共吹き飛ばされる!

 

『チッ、オマケの分際で余計なことを…!』

 

『また自分を犠牲にして…?』

カイトにトドメをさせなかったⅣは苛立つが…Ⅲは遊馬の行動に疑問を抱き始めていた…。

 

 

「九十九遊馬…!余計な真似を…!」

 

「言っただろ…!お前をハルトの所に連れて行くって…!」

ボロボロになりながら遊馬は立ち上がる…カイトに邪険にされようと遊馬は揺らがない、全てはハルトとの約束を守る為に…。

 

 

(遊馬、君のデュエルは…いつもピンチばかりだな…)

 

「あっ…!?大丈夫かアストラル!?」

遊馬はアストラルの言葉で気付く、このデュエルはナンバーズを賭けたデュエルでもある…当然アストラルはダメージを受け、体が点滅している…。

 

(気にするな…仕方がない、これが君のやり方なのだから…)

アストラルは諦めたように呟いた…ピンチをチャンスに変える…それが遊馬の戦い方だとアストラルは観念していた…。

 

 

 

『僕のターン!魔法カード「先史遺産─ピラミッド・アイ・タブレット」の効果発動!自分の「先史遺産」モンスターの攻撃力を800アップさせる!さらに「マシュマック」の効果発動!自身の攻撃力が変動した事でORUを1つ使い、相手に800ダメージを与える!インフィニティキャノン!!』

 

「うわっ…!!」

次のターン、Ⅲは「マシュマック」の効果を使い、遊馬のライフを削る!

 

『これでオマケのライフは風前の灯…次は貴様の番だ!カイト!やれ…Ⅲ!』

 

『バトル!「マシュマック」で「ギャラクシーアイズ」を攻撃!ヴリルの火!』

「マシュマック」から放たれた光線が宇宙を貫く…すると暗雲が立ちこめ、その雲の中から巨大な火球がカイトに向けて襲いかかる!

 

「まだだ!!罠カード『模擬戦闘(バトルシュミレーション)』を発動!お互いのモンスターの攻撃力を半分にし、『ギャラクシーアイズ』は戦闘では破壊されない…!うおぉぉ─!!」

カイトはダメージを軽減し、「ギャラクシーアイズ」を守る事に成功する…だが、その体は満身創痍だった…。

 

 

 

『チッ!無駄な足掻きを…!大人しく弟と一緒に地獄に落ちやがれ…!!』

 

「ぐっ…キサマ…!!」

 

「落ち着けカイト!」

Ⅳの挑発に怒りをあらわにするカイト…遊馬は必死に声を掛けるが…カイトの怒りは収まらない…!

 

「…黙れ!お前に俺の苦しみの…憎しみの何が分かる!」

 

「あぁ、分からねえ…分からねえさ!お前やハルトの憎しみも…悲しみも!」

カイトの言葉に遊馬は遂に言い返した、ハルトの為に全てを懸けてナンバーズを集めてきたカイト…彼の気持ちは遊馬にはわからない…だが、遊馬だからこそ分かる事もある…!

 

「だけど、オレはお前とデュエルした!デュエルを通じてお前を知っちまったんだ!デュエルは新しい仲間を…絆を作ってくれる!そして、デュエルってのは新しい自分にかっとビングさせてくれる!決して恨みや憎しみをぶつける道具じゃねぇ!」

 

(遊馬…)

それは遊馬の魂からの言葉だった、遊馬は何人もの決闘者とデュエルを通じて絆を紡いできた…敵もいた、悩んでいる者もいた…ナンバーズに操られ苦しむ者もいた…だが、遊馬は彼らとの戦いを通じて学んできたのだ…デュエルは新たな絆を紡ぐ、大切なものなのだと…!!

 

「カイト…見せてやる!オレのかっとビングを!!」

 

 

39

 

 

「現れろ!『CNo.39』!混沌を光に変える使者!『希望皇ホープレイ』!!」

 

『カオスナンバーズだと!?』

 

『こんなナンバーズ…見た事ない!!』

『死者蘇生』で「希望皇ホープ」を蘇らせた遊馬とアストラルは最後の切り札…「ホープレイ」を召喚する!

 

 

(遊馬、「ジャイアントキラー」にはまだORUが残っている!)

 

「わかった!『ホープレイ』の効果発動!ORUを1つ使い、自身の攻撃力を500アップし『ジャイアントキラー』の攻撃力を1000下げる!オーバレイ・チャージ!!」

オーバレイユニットを吸収した「ホープレイ」が希望の大剣を引き抜く!

 

「バトルだ!『ホープレイ』で『ジャイアントキラー』を攻撃!!ホープ剣カオススラッシュ!!」

『ホープレイ』が跳躍し『ジャイアントキラー』に斬りかかる、小刀で両腕を斬り落とされた漆黒の巨人は大剣で真っ二つに両断される!!

 

 

「よしっ!!」

 

(Ⅳの残りライフは2400…これでライフは尽きたはずだが…)

「ジャイアントキラー」を撃破したアストラルは煙に包まれたⅣのフィールドを見る…その時だった…!

 

『フッ…ハハハハハ…!やるじゃないか…オマケがよぉ…!』

 

(「なんだと!?」)

煙の中からⅣが姿を現わす…ライフダメージは無く、フィールドには1枚の罠カードが発動している。

 

 

『オレは永続トラップ『ギミック・ボックス』を発動していたのさ…!このカードはプレイヤーへの戦闘ダメージが発生した時、それを無効にし、モンスターカードとなって特殊召喚される…そして無効にしたバトルダメージの数値が、このカードの攻撃力となる…!』

 

「今の攻撃でも、倒せねぇのかよ…!!」  

遊馬はⅣの強さに戦慄する…『ZEXAL』にならない状態での遊馬達の最強の一撃でも彼を仕留める事はできなかったのだ…。

 

『この俺を倒せると本気で思ったのか…?見せてやるよ、本当の絶望ってヤツを─!』

 

 

40

 

『現れろ!「No.40」!「ギミック・パペット─ヘブンズ・ストリングス」!!』

紋章を輝かせたⅣは2体目のナンバーズを呼び出す…それは左側だけ白い翼を持ち緑色の髪で左目を隠した人形のナンバーズだった…。

 

「ここで…攻撃力3000だって!?」

 

『ハハハ…ファンサービスもそろそろ終わりだ…カイト、お前は一足先に地獄に行ってろ!『ヘブンズ・ストリングス』で「ギャラクシーアイズ」を攻撃!ヘブンズ・ブレード!』

「ヘブンズストリングス」が手にしたバイオリンの弓のような剣で斬りかかる!!

 

「っ…!すまない…ハルト…!」

 

「まだだ─!!罠発動!『罠蘇生(トラップ・リボーン)』!!自分のライフを半分にする事でカイトの墓地の『模擬戦闘』を除外してその効果を発動する!『ヘブンズストリングス』の攻撃力は半分になる!!」

 

「っ…ぐああああ!!!」

間一髪、遊馬の罠がカイトのライフを守り切る…だが、カイトは吹き飛ばされ、地面に倒れ伏した…。

 

 

『また…!ふざけるなテメェら!いい加減沈めよ!沈め─!』

度重なる遊馬によるサポートにⅣはついにブチ切れる…そして『ヘブンズストリングス』の持つ、恐ろしい効果を起動する…!

 

『許さんぞ…!オレのファンサービスを無駄にしやがってぇ!貴様ら、許さねぇ─!オレは『ヘブンズストリングス』の効果を発動!1ターンに1度、ORUを1つ使い、次のターンの終わりにフィールドにいる全モンスターをぶっ壊す!そして、ぶっ壊したモンスターの攻撃力分の数値のダメージをプレイヤーに与える!!」

Ⅳの言葉と共に「ヘブンズストリングス」が自身の体から伸びた弦を弾き鳴らし、剣を掲げる…すると無数の赤い糸が空から伸び、フィールドのモンスターを拘束する!

 

 

『フハハハ…!これで正真正銘の終わりだ、さあ!貴様らのターンだ!』

 

Ⅳは必殺の効果を発動し、カイトにターンを譲り渡す…だが、カイトは立つ事ができなかった…度重なるデュエルのダメージにフォトンモードによる副作用…カイトの肉体は…精神は既に限界を迎えていた…。

 

『フッ…なんだよ、もう力尽きたかぁ?立つことも出来ねえんじゃ、オレたちの勝ちだぜ…フフフ…ハハハハハ!!』

 

 

「っ…!!立てよカイト!!まだデュエルは終わってねぇぞ!!」

 

「立って!立つのよ!カイト!!」

 

《カイト様─!!》

 

「っ──…」

倒れてしまったカイトに遊馬達は必死に声をかける…だが、カイトは応えない…応えられない…声は届いている、だが…それに応えるだけの気力が残っていない…。

 

「…ボロボロでもいいよ…!でも、最後まで諦めるなよ!!お前が諦めてどうすんだよ!お前がハルトを守らなくて…誰がハルトを守るんだよぉぉ!!」

 

「っ…!!」

遊馬の魂の叫び…それがカイトに届いた時、カイトは自分の原点を思い出す…。

病状が落ち着いた代わりに未知の超能力を得たハルト…だが、それによってハルトはアストラル世界を攻撃する為の「兵器」として扱われてしまう…その状況に耐えられなかったカイトは一度だけハルトを連れて脱走を計画した…だが、計画は当然失敗した…ハートランドに連れ戻されハルトと離ればなれにされてしまったカイト…そしてカイトは決意した、例え悪魔に魂を売り渡そうと…何を犠牲にしようと…必ずハルトを守り抜くと…!

 

 

 

「ハル、ト…!!」

 

「カイト!!」

自分の原点を思い出したカイトは痛む体に鞭を打って立ち上がる!!

 

 

「オレはお前を…絶対に守ってみせる…!ハルトォォォ─!!」

カイトの魂の咆哮が響く…カイトとハルト…2人の兄弟の絆は奇跡を呼び覚ます──!

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「っ…あ……!」バリバリバリ…

 

カイトと遊馬が窮地に陥っている時…遊海もまたピンチに追い込まれていた…トロンの紋章に囚われ攻撃を受け続けた遊海は既に叫び声を上げる力も残っていなかった…。

 

 

《マスター…!気をしっかりもってください…!!今、助け出します…!!》

 

《紋章の力がここまで強力だとは…!!》

アヤカ、そしてフレアもただ見ていただけではない…必死に遊海を開放しようとしていたが…紋章の力が強く、解除に手間取っているのだ…。

 

《こうなれば…私の全力で…!!》キィン─!

 

「ダメ、だ…フレア…お前が、全力を出したら…ハルトが無事ではすまない…!!」

 

《っ…!?》

神の力を開放しようとしたフレアを遊海が止める…神の力を使えば脱出こそできるが…僅かな距離にいるハルト…下手をすれば階下でデュエルをする遊馬達にまで危険が及ぶ可能性があった…。

 

 

「クリス…お前達は、『家族』というものを、勘違いしてる…ぞ…!」

 

『白野さん…』

息も絶え絶えに遊海はクリスへと話しかける…トロンはハルトの力を奪う事に集中しているのか…意識はないようだ…。

 

「家族はな…親が、子を守り…子は、親を支え…助けあって、生きるものだ…!だが、トロンは…バイロンはどうだ…!復讐で周りが見えなくなったコイツは…『親』と、呼べるのか…!!」

 

『…トロンは…私達の「父」です…!例え姿が変わろうと…復讐に取り憑かれていようと…!私はトロンを見捨てる事はできない…!!Dr.フェイカーを許す事はできない!!』

クリスは悲壮な顔で心境を吐露する…歪み果ててなお息子に慕われるバイロンは…きっといい父親だったのだろう…だが、今はその面影を見る事はできない…。

 

 

「そうか…だが、忘れるな…本当に強い『家族の絆』は…思いもよらない奇跡を起こす…!!」

 

キィン─バチバチバチバチ!!

 

『っ…!?なんだ…何が起こっている─!?』

遊海の言葉と共に紋章の魔法陣から赤雷が奔る…そして一際大きな輝きを発した後…紋章は光を失った…。

 

『ハルトの力が…消えた…!?』

 

「見せてやれ、天城カイト…お前達、兄弟の…『絆』の力を…!!」

 

 

 

SideOut

 

 

Sideトロン

 

 

 

【君たち兄弟全ての記憶は…ボクがもらっていくよ…!】

トロンはハルトの力の全てを奪う為に彼の深層意識へと潜っていた…ハルトの力と記憶を奪っていくトロン…その時だった…!

 

 

「そうは…させない…!!」

 

【ハルト…!?どうしてここに…!】

トロンの背後にハルトが現れる…通常であれば自分では認識できない深層意識…そこにハルトは現れたのだ…!

 

「…誰にも僕と兄さんの思い出は渡さない…!お前なんかに分からない、兄さんがどんなに僕を守ってくれたか…どれほど僕を庇ってくれたか…!今度は僕が…兄さんを守る─!!」キィン─!

ハルトは自身に残された力を開放する…その光の向かう先は…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

キィン─ドオォォオン!!

 

 

『『「なんだ─!?」』』

 

《カイト様─!?》

自身の原点を思い出して立ち上がったカイトに宇宙から落ちてきた赤い光が衝突する!

 

「な、何が起きたんだ…!?」

光の衝突を受けたカイト…彼はその光の中から現れる、その身体は赤いオーラを纏っていた…!

 

ハルト…お前がくれたんだな…この力を…!

 

(今、新たな力がカイトのデッキに宿った…彼ら兄弟の力が奇跡を起こした…!)

カイトは拳を握り締め、アストラルはその力を感じ取った…引き離されてなお心が繋がるカイトとハルト…2人の絆がカイトに新たな力を与えたのだと…!

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」キィン─!

赤い光の軌跡を描いてカイトはカードを引く!

 

『チィ─!!「ギャラクシーアイズ」の攻撃力は0!貴様のライフはわずか100!くたばり損ないに…何ができるっていうんだ!」

絶体絶命の状況になってなお、諦めないカイトに対してⅣは怒りをあらわにする!

 

「くたばるのは…貴様達の方だ!!魔法カード『オーバレイ・リジェネレート』を発動!フィールドのエクシーズモンスターのORUを1つ増やす!!」

 

『なにっ!?』

カイトの発動した魔法の効果で「ヘブンズストリングス」「マシュマック」「ホープレイ」にORUが戻る…そして、カイトは静かに目を瞑り…叫ぶ…!

 

 

「アストラル!そこにいるのか!!…お前は以前、オレと遊馬が似ていると言ったな…!だったら…()()()()()()()()()!!」

 

「カイト…!」

カイトの言葉…それは遠回しにこう言っている…「ハルトを救う為に力を貸せ」と…それは長らくアストラルを敵視していたカイトが僅かながらアストラルを信頼した証だった…!

 

 

(遊馬!我々のモンスターでカイトを助けるぞ!)

 

「へへっ…おう!!カイト!オレのモンスターを使え!!いっけぇ─!!」

アストラルの言葉を受けた遊馬はカイトの勝利を信じて「ダメージメイジ」と「ホープレイ」を向かわせる!

 

 

「オレは遊馬の場の『ダメージメイジ』と『ホープレイ』をリリースする事で『フォトン・カイザー』を召喚!このモンスターは2体分のエクシーズ素材になる事ができる!!」

遊馬の場のモンスターをリリースしてマントを羽織る皇帝が現れる…これで全ての準備が整った…!!

 

 

「オレはレベル8の『銀河眼の光子竜』と2体分となった『フォトンカイザー』でオーバレイ!!3体のモンスターでオーバレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」

《ギャオオオン!!》

巨石の結界を打ち破った「ギャラクシーアイズ」と「フォトンカイザー」が赤い銀河へと飛び込み、大爆発を起こす!!

 

逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりてその姿を現すがいい!

カイトの手元に紺色の槍が現れ、カイトはそれをオーバレイネットワークの銀河に向けて投擲し再び光の大爆発が起きる!!

 

 

降臨せよ…我が魂!!『超銀河眼の光子龍』!!

《ガオオァァァン!!》

光と共に現れるのは瞳に銀河を宿し、3つの首を持つ真紅の巨龍…カイトとハルトの絆の結晶…!「超銀河眼の光子龍」!!

 

 

「カイトの『ギャラクシーアイズ』が進化した!?」

 

(これが…私の感じたカイトの新たな力か…!!)

進化した「ギャラクシーアイズ」の姿に遊馬とアストラルは目を奪われる…!

 

 

「…いくぞ!!『超銀河眼』の効果発動!フォトン・ハウリング!!」

「超銀河眼」から放たれた音波が「マシュマック」と「ヘブンズストリングス」の力を奪う!!

 

『なんだと!?』

 

「『超銀河眼』が『銀河眼の光子竜』を素材としてエクシーズ召喚に成功した時!このカード以外の効果を全て無効にする!」

 

『なっ…!?ORUを使わなくても、効果を発動できるのか…!?」

Ⅲは進化した「超銀河眼」の力に驚く…エクシーズモンスターの基本はORUを使って効果を発動するのが基本…その効果を使わずに発動できるモンスターの数は少ない…!

 

「『超銀河眼』の第2の効果発動!ORUを1つ使い!フィールドの相手フィールドのエクシーズモンスターのORUを全て吸収し、1つにつき攻撃力を500アップさせ吸収したORUの数だけ攻撃できる!!」

 

『攻撃力6000…!?』

 

『しかも連続攻撃だと─!?』

ORUを喰らった「超銀河眼」はその体をさらに強く輝かせる!!

 

 

「バトルだ!『超銀河眼の光子龍』で『マシュマック』を攻撃!!アルティメット・フォトン・ストリーム!!」

 

『うわあああああ!!!』

カイトの怒りを宿した赤き光線が巨大空中都市を粉砕…Ⅲのライフを削りきり吹き飛ばす!!

 

『Ⅲィィィ!!』

 

「Ⅳ…懺悔の用意はできているか!!『超銀河眼』で『ヘブンズストリングス』を攻撃!アルティメット・フォトン…ストリィィム!!」

再び放たれた真紅の光線が『ヘブンズストリングス』を直撃…それがデュエルの決着となった…。

 

 

Ⅲ&Ⅳ LP0

 

 

遊馬&カイトWIN!

 

 

 

 

 

 

「やった〜!遊馬とカイトが勝った!!」

 

《やったでアリマス─!!》

デュエルが終わり小鳥とオービタル7は手を取りあって喜びあう!

 

 

 

『ぐっ…!?馬鹿な…このオレが負けるだと…!』

 

「ハルトはどこにいる…!答えろ!!」

カイトはⅣにハルトの行方を問いただす…!

 

『…ケッ…!知るかよ!そんな事!!』

 

「答えないのなら…貴様の腐った魂に直接尋問するまでだ!!」

 

キィン─!

 

シラを切るⅣに対してカイトはフォトンハンドを伸ばす…だが。

 

ギィン!

 

「なにっ!?ぐわっ…!」

Ⅳの手に刻まれた紋章が光を放ち、フォトンハンドを跳ね除ける!

 

(なら…!!)シュン!

アストラルはナンバーズを回収する為にⅢへと手を伸ばす…だが…!

 

ギィン─!

 

(っ…!?うわあぁ…!!)

 

『っ…!?(何か…見えた…青い…人型…?)』

アストラルの力でさえ紋章の力に跳ね返される…そしてその刹那、Ⅲはアストラルの姿を垣間見る…!

 

『ぐっ…!残念だったなぁ…オレ達は「紋章」の力で守られている…覚えておけカイト…!オレの…オレ達の受けた苦しみ…倍にして返してや─っ!?なにぃ!?』

 

シュイン…バシュン!

 

「Ⅳが消えた!?」

Ⅳの背後に現れた次元の裂け目がⅣを飲み込む! 

 

【(Ⅲ…今日はここまでだ…さぁ、帰ろう…)】

 

「…はい…(九十九遊馬…君は…)」

異次元の裂け目からトロンの幻影がⅢに呼び掛ける…Ⅲはそのまま扉へと消えていった…。

 

「待て…!待て貴様ら!!ハルトを返せぇぇ!!」

カイトの叫びが美術館に響く…。

 

 

『ハルトなら…ここにいる』

 

「「っ!?」」

美術館に凛とした声が響く…月光に照らされたエントランスに銀髪の青年が現れる、それはハルトを連れ去った張本人…Ⅴだった。

 

「あなた、は…なんで…!!っ…ハルト!!」

Ⅴの姿を見て動揺したが、すぐに叫ぶ…Ⅴの腕には気を失い、ぐったりとしたハルトが抱き抱えられていたからだ…。

 

『心配ない、彼は生きている…だが力を使い切ってしまった』

 

「力を…使いきった…!?」

 

『そう、残っている全ての力を…君に与えてしまったからね』ギィン…

Ⅴは額に刻まれた紋章を輝かせる…すると念動力によってハルトはゆっくりとカイト達の前に寝かせられる…。

 

「ハルト…!すまない…!!オレのせいで…!!」

 

 

「っ…!!テメェ!ハルトに何しやがった!!」

ハルトが戻ってきた事で安心し、脱力したカイトの代わりに遊馬がⅤへ問いかける…!

 

『…九十九遊馬、君は…一馬さんの息子だな』

 

「なっ…!?父ちゃんを知ってるのか!!」

Ⅴの思わぬ言葉に遊馬は動揺する…!

 

『…君のお父さんは生きている、アストラル世界で…』

 

「父ちゃんが生きてる…!?おい!それってどういう事だよ!?」

 

『…私にはこれ以上語る事はできない、さらばだ…』

 

「あっ…おい!!」

そのままⅤは遊馬の言葉に答える事なく、姿を消した…。

 

 

 

 

SideⅤ

 

 

 

『ハルトの身柄をカイトへと渡してきました…私達もアジトへ戻りましょう』

 

【うん、ありがとうⅤ…今日は疲れたからね、帰るとしようか】

ハルトをカイトに引き渡したⅤはトロンの傍らに現れる…だが、トロンの様子を見て僅かに顔色を変える…。

 

『…トロン、つかぬ事を聞きます…岸波白野は…何処へ…?』

 

【ああ…彼ならボクの()()()になってもらったよ、これ以上邪魔されても面白くないからね!彼の力も奪わせてもらった…待ってなよDr.フェイカー…!次は君を異次元へと吹き飛ばしてあげるよ…フフフ…あははははは!!】

月光を遮っていた雲が流れる…月光に照らされた儀式場、そこには巨大なクレーター…そして血溜まりだけが残されていた…。

 

 

『(そんな…!白野さん─!!!)』

Vは悲しみで拳を握り締めるしかなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…くそっ…しくじ…った……」

 



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傷だらけの英雄

「ええっ!?白野が行方不明─!?」

 

「そ、それってどういう事ですか!?」

 

 

ハートランドの病院に遊海と小鳥の叫びが響く…今日はWDC3日目…最後のハートピースを集める為に街へと繰り出した。

 

Ⅴの思わぬ言葉…「父親がアストラル世界で生きている」という事実を伝えられた遊馬は一時はWDCを諦めて一馬を探しに行こうともした…けれどデュエルの師匠である六十郎とのデュエルと語らいによって改めてWDCに挑む事を決め、さらに3日目から大会に参加した「エスパーロビン」こと奥平風也と大会委員を辞めて参加者となったゴーシュの熱いデュエルを見て「デュエルの楽しさ」を思い出した遊馬…彼はその決意を遊海へとお見舞いがてら伝えに言ったのだが…病院に遊海の姿はなく、行方不明なのだと看護師に伝えられたのだ…。

 

 

「み、翠さんはこの事知ってるのかしら…!?」

 

「い、行ってみようぜ!!」

遊馬と小鳥は慌てて遊海の家へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポン!ピンポーン!!

 

 

「は〜い…あら!遊馬君、小鳥ちゃん…どうしたの?そんなに焦って…」

 

「み、翠さん…白野さんが…病院からいなくなったって…!」

遊馬達は息を切らせて遊海の自宅へと辿り着いた…チャイムを鳴り翠が出てくるが…その様子は普段と変わらなかった…。

 

 

「あ……れ、連絡しないでごめんね!白野さんったら、病院が嫌だからって勝手に退院しちゃったのよ!今は上で休んでるから…また、明日来てくれる…?」

 

「な、なんだ〜心配して損したぜ…白野さんに伝えてくれ!オレは精一杯デュエルを楽しんで…それでWDCで勝ってみせるって!!」

遊海の無事を知って安心した遊馬は翠に伝言を頼む。

 

「わかったわ!あの人も遊馬君と戦うのを楽しみにしてるから…頑張ってね!遊馬君!」

 

「おう!かっとビングでハートピースをゲットしてやるぜ!!」

 

「あっ…待ってよ遊馬─!!」

翠に元気付けられた遊馬は駆け出して行った…。

 

 

「…ごめんね、遊馬君…」

 

 

 

「よ〜し!残り1個のハートピースを見つける為にかっとビングだー!!…って、どうしたんだ?アストラル?」

遊海の家から離れた遊馬はアストラルへと声をかける…アストラルは空中で深く考えこんでいた…。

 

(遊馬…人間とは…()()()()()()()()()()()()()()()()()()?)

 

「はぁ!?…そんなの死んじまうに決まってるだろ?!何怖い事考えてんだよ!?」

遊馬はアストラルの突飛すぎる疑問に驚く…!  

 

(…すまない、昨日の「エスパーロビン」で身体が半分に別れる敵が出てきたのを思い出したんだ…気にしないでくれ)

 

「お、おう…まったく、びっくりさせやがって…」

 

((…私は、窓から見てしまった…大丈夫なのか…白野…!))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《キャウ…キュー…》

 

「遊海さん…」

遊馬達が去った後、翠は遊海の寝室にいた…ベッドの上では苦しげな表情で遊海が眠っている…その身体はあます事なくボロボロであり、右足の一部を残して()()()()()()()()()()()()…。

 

《…我が身を犠牲にしてでも…マスターを守るべきだった…!私は…マスターのパートナーなのに…!!》

 

《…気にするでないアヤカ…元は遊海の無茶が原因だ、遊海も責めはしまい…》

 

《私が悪いのです…!ユウミは…私を庇って…!!》

 

《…主殿に何があったのです…!主がこんな傷を負うなど…!》

自責の念に駆られるアヤカとフレア…2人に遊馬の護衛として別行動をとっていたトフェニが問いかける…。

 

 

《私達は…マスターも、彼を甘く見ていました…復讐に飲まれた…トロンの漆黒の意思を…!》

 

 

 

 

 

 

時は昨夜まで遡る…。

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

 

 

「…見たか、トロン…これが、『兄弟の絆』の、力だ…!!」

 

【まさか…ハルトにあんな力が残っていたとはね、力の八割は奪ったはずなんだけどなぁ…】

ハルトの最後の力を奪い損ねたトロンは投影された映像を見る…そこには『超銀河眼の光子龍』によって吹き飛ばされるⅢとⅣの姿が映し出されていた…。

 

 

【もともと彼らには期待してなかったけど…ここまでとはね、Ⅴ…ハルトをカイトに返してきてくれるかい?】

 

『…わかりました』

トロンの指示でⅤはハルトを抱き上げ、部屋を出ていく…。

 

 

 

【ねぇ…どうして君はここに来たんだい?】

 

「助けを求める声が…聞こえたからさ…!ハルトの…そして、お前の息子達のな…!!」

 

【声が聞こえた…ねぇ…?冗談も程々にして欲しいかなぁ!!】ギィン!! バチバチバチバチ!!

 

『がっ…────!!!!』

トロンの紋章が輝き、遊海に対する攻撃が強くなる…遊海は声にならない悲鳴をあげる…!

 

《貴様…!!ユウミを離しなさい!!》ボゥ!!

フレアが火球をトロンに向けて放つ!!

 

【君が何の精霊かは知らないけど…甘く見ないでほしいな!】ギィン!!

 

《なっ…!?》

フレアの火球はあっさりとトロンに受け止められる!!

 

【ボクは今までの私じゃない…ハルトの持つ力を取り込んでその力は数倍になった…!力を発揮できない精霊なんて敵じゃないんだよ!!】

ギィン!ジャラジャラジャラ!!

 

 

《ぐっ…!?》

 

《フレア!!》

トロンの紋章から鎖が飛び出しフレアを雁字搦めに拘束する!!

 

 

「き、貴様─!!」

 

【…ああ、忘れてた…もう拷問はこれでいいね】パチン

 

「ぐっ…がは…!」

 

《マスター!!》

トロンが指を鳴らすと紋章は消え、宙吊り状態だった遊海は地面に叩き付けられる…。

 

【岸波白野…君には本当に感謝してるんだ、私がいない間に幼いⅢやⅣを親身に支えてくれたそうだね…そして君達が彼らに家族愛を教えてくれたから…あの子達は私についてきてくれる…でも、復讐の為には君はもう邪魔なんだよねー】

 

「…何度だって、邪魔…してやるよ…!クリス達を…助けるまではな…!」

 

【へぇ…まだ立てるんだ、意外にタフだねぇ】

遊海はトロンを睨みながら立ち上がる…身体は焼け焦げ、感覚もほとんどない…そんな中でも遊海は気合いだけで立ち上がる!

 

 

【ねぇ?白野、ボクのお願い…一つだけ聞いてくれないかな?】

 

「断る!!」

 

【つれないなぁ…大丈夫!簡単な事だからさ…()()()()()()()()()()()

 

ギィン─!

 

「っ─!!」

無邪気な笑みのままトロンが言葉を発した瞬間、トロンの腕から赤紫色の禍々しいエネルギーが発生する!!

 

《マスター!逃げてください!!》

巨大化していくエネルギーと遊海の間にアヤカが割り込む…だが…!

 

「ダメだアヤカ!!マスター権限において命ずる!()()()退()!!」

 

《マスター!?待っ─!》

遊海の言霊の載せられた言葉によってアヤカの姿がかき消える、遊海は思い出したのだ…ハルトの力は鋼鉄ですら削り取る程の力、それが紋章によって強化されているなら…精霊であっても無事では済まないと…!

 

「っ…!!フレア─!」

 

《っ…!鎖が…外れない…!!》

そして遊海は刹那の間に見た…マスター権限で緊急撤退させたはずのフレアが…鎖によって拘束されたままなのを…!

 

【ばいば〜い白野、恨むんなら…ボクをこんな目に遭わせた…Dr.フェイカーを恨むんだね!】

 

 

バリバリバリ…ガオン!!

 

 

巨大化したエネルギーは呆気なく遊海を飲み込んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドサッ…

 

 

 

 

「…くそっ…しくじ…った……」

 

《あ…あああ…!ユウミ!!私のせいで!!》

 

《マスター!!》

 

遊海は辛うじて生きていた…空間を削り取るエネルギーに飲まれる寸前、保険として持っていた「強制脱出装置」を起動し、命を繋いでいたのだ…だが、その代償は大きかった。

飲まれる寸前にフレアを庇った事で脱出が少し遅れ、右腕と右胸が消滅し右足も辛うじて繋がっている状態…遊海が不死の体でなければ…既に死んでいただろう…。

 

 

「まさか…あんな、躊躇なく…殺しに、くるとは……あれが復讐に飲まれた男、の…ゴボッ…!?」

 

《マスター喋らないで…!すぐに治療を!!》

 

「…ここじゃ、ダメだ…トロンに…半分、力…盗られちまった……回復、できねぇ…」

 

《そんな…!》

朦朧とする意識の中で遊海は理解していた…紋章の魔力によって遊海の持つ精霊の力の半分近くが奪われ…トロンに吸収されていた事に…。

 

「D…ゲイザー…を…」

 

ピピピ…ピピピ…

 

『遊海さん!目が覚めたんですか!?心配して…えっ…!?』

すぐに連絡に反応した翠は絶句する…病院で眠っているはずの遊海が血まみれで連絡してきたのだから…。

 

 

「翠…すま、ん…しくじった…たす、け…─」

 

『遊海さん!?今何処に…遊海さん!遊海さん─!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「…トロン…!私は…貴方を許さない…!」

翠は拳を握り締める…翠は知っている、遊海がどれほどクリスやトーマス、ミハエルを心配していたのか…そして璃緒を傷付けられどれほど怒ったのか…それ故に翠は怒りを抑えられない…!

 

 

《怒りに飲まれてはなりません、ミドリ…今回は、私の失態です…!》

 

「フレアさん…」

 

《私が力を抑えずに全力を出せば…すぐにあの少年を助け出せて、ユウミもこんな怪我をしなかった…!》

フレアは涙を流しながら反省する…翠は静かにフレアを抱き寄せる…。

 

「ううん…それは違うわ…遊海さんはきっと、そんな事思ってない…きっと遊海さんも覚悟はしてたはずよ…満身創痍でトロンの所に行ったら怪我をするって…それでも、遊海さんはハルト君を助けに行った…それが自分のできる事だと思ったから…!…少し休んで、遊海さんを治療しましょう…きっと…遊海さんは自分の手で決着を着けたいはずだから…」

 

《そうしましょう…!マスター自身が弱っていても以前のように回復が阻害されているわけではありません…!トロンとの決着の為に…マスターを必ず治しましょう…!》

翠達は部屋を後にする…残されたのは眠り続ける遊海の枕元で頬を舐めるフォウだけだった…。

 

《フォウ…キュー…》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…夢を見ている…穏やかで、楽しかったひとときの夢を…

 

 

 

「凌牙、璃緒…しばらく一緒に暮らすトーマスとミハエルだ!よろしくな!」

 

「おれは凌牙!よろしくな!」

 

「私は璃緒よ!この子はフォウくん!」

 

《フォウ!フォーウ!》

 

『オレはトーマスだ…なぁ、そいつ…ネコか?』

 

『僕はミハエル!フォウくん抱っこしてもいい?』

 

「いいよ!」

 

《フォウ!》

 

 

 

…………

 

 

 

「トーマス!凌牙!喧嘩するなよ…まったく、ホットケーキは2つとも同じサイズだって…」

 

「トーマスの方が大きい!!」

 

『凌牙の方がデカイ!!』

 

「まったく…いつも喧嘩ばっかり…これだから男の子は…」

 

『あはは…』

 

 

 

 

………

 

 

 

「お〜い!?誰だフォウをライオンみたいにしたのはー!?」

 

《キャウ…フォ〜ン!!》

 

「ハハハ…カッコいいよ?フォウ」

 

『兄さま〜?』

 

『♪〜』

 

「バレバレよ…」

 

 

 

………

 

 

 

「白野さん…トーマス達が、いなくなっちゃった…!」

 

「怖い顔をしたクリストファーさんと一緒に…!!」

 

「っ!?」

 

 

 

 

………夢を見た、俺が救えなかった…子供達の夢を…

 

 

 

 

 

「白野さん…決勝の相手…!」

 

 

「トーマス…!やっと見つけた…!」

 

 

…………

 

 

「璃緒…リオォォ─!!」

 

 

「私の事…心配しないで…勝って、凌牙…!」

 

 

 

……………

 

 

 

「オレは…デュエルする資格も…ねぇ…!!」

 

 

 

 

 

 

………俺は、何ができたのだろう…何も、できなかった…見守る事しか、できなかった…!

 

 

 

 

─遊海、お前はそれでいいんだ…お前が全て背負う必要はない…─

 

 

 

 

…─懐かしい声がする…

 

 

─お前は優しい奴だ…大丈夫、お前はお前のできる事をすればいい…それがきっと…お前にとっての正解なんだ─

 

 

…ありがとう

 

 

─遊海、お前の行く先に光は生まれる…忘れるな…─

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし…!遊海さんの治療を始め…あら…?治ってる…少ししか経ってないのに…あれだけの傷が…」

準備を終えて遊海のもとを訪れた翠が見たのは重傷がほぼ完全に治癒した遊海の姿だった…遊海自身は穏やかに寝息を立てている…。

 

《身体はとりあえず大丈夫みたいですね…でも、突然どうして…?》

 

《…(本当に…貴方はお節介焼きですね)》

フレアは枕元に置かれた1枚の写真を見つめる…そこに写った1人の青年が笑ったような気がした…。

 

 

「…遊海さん、きっと目覚めたら…また戦いに行くんですよね…でも、今だけは…ゆっくり休んでくださいね」

治っていなかった怪我の治療を終えた翠は眠っている遊海へと話し掛ける、傷は癒えたが遊海は酷く衰弱している…闇のデュエルには耐えられないかもしれない。

…それでも、遊海は戦いに飛び込むだろう…背負った使命を果たす為に…。

 

 

 

 

「さてと…私も少し眠くなっちゃった、アヤカちゃん…遊海さんをお願いね?」

 

《はい!…と言いたいのですが…問題があるんです》

 

「?…どうしたの?」

 

《トロンの力に飲み込まれた時にマスターのデッキの一部が異次元に放り出されてしまったのです…》

 

「ええっ!?それって大丈夫なの!?」

アヤカの言葉に翠は驚愕する…デッキは決闘者の命…数多のデッキを持つ遊海にとってもそれは変わらない…。

 

 

《幸いにも反応は追えています、それを回収しに行きたいのです…トフェニ、手伝って貰えますか?真体になると細かい動きが取れないので…》

 

《承った…だが、遊馬殿の護衛は…》

 

《それは問題ないでしょう、ユウマも決闘者として強くなっています…今日はトロンも動けないでしょう、ハルトの持つ力とユウミから奪い取った力を安定させる為に…》

 

《…おのれ、卑怯な真似を…!遊海が本調子であれば…歯牙にもかけず跳ね返したはず…!!》

フレアの言葉にメガロックは床を踏みしめる…仮に、遊海が全力状態であれば「紋章」を跳ね除け、ハルトを助ける事は簡単だっただろう…しかし、それも巡り合わせが悪かったとしか言えない…。

 

 

「『たら』、『れば』の話をしてもしょうがないわ…今は私達にできる事をしましょう…!お願いねアヤカちゃん、トフェニさん」

 

《はい!》

 

《御意!》

アヤカとトフェニは部屋から飛び出していく…。

 

 

《遊海はワシが見ていよう…フレア様、貴女も少しお休みください》

 

《…そうさせてもらいます、私も少し無理をしすぎました…やはり機械であるアヤカには敵いませんね…おやすみなさい…》

メガロックの言葉を聞いたフレアは遊海の枕元で眠りに就いた…紋章を解除する為に負担をかけ過ぎたようだ…。

 

「…私も少し休むわ、何かあったら…すぐに起こしてね」

翠も疲れた様子で自分の部屋へと戻っていった…。

 

 

《まったく…遊海はこの何日かでどれだけの厄介事に巻き込まれておるのだ…翠に疲れが出るのも無理はない…おや?フォウは何処へ行ったのだ…?》

メガロックはあたりを見回す…先程まで遊海のベッドの上にいたフォウの姿が消えていたのだ…。

 

《あ奴も気分屋だからな、すぐに帰って来るだろう…》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

 

『えっ…フォウ…?なんでこんな所にいるんだい…!』

 

《フォウ…クルル…》

 

 

『…ごめんよ、今は君に構っていられない…確かめなきゃならない事があるんだ、九十九遊馬の事を知る為に…!』

 



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復讐者の迷い〜家族の為に〜

こんにちは!S,Kです!

間もなく緊急事態宣言が解除されるそうですね…でも!油断せずにコロナと戦っていきましょう!

それから…Fgoの新イベの為、更新が少しかかるかもしれません、気を長くしてお待ちくださいm(_ _)m


それでは最新話をどうぞ!


「バトルだ!『弦魔人ムズムズリズム』でダイレクトアタック!」

 

『うわぁー!?』

 

 

青年 LP0

 

遊馬WIN!

 

 

 

 

 

『なかなか強いじゃないか…はい、ハートピース!』

 

「サンキュー!…ダメだぁ、またハマらない…」

 

 

 

 

(…先程のデュエリストで3人目だが、なかなか集まらないものだな…)

 

「くっそ〜!諦めてたまるかぁ─!!」

 

 

遊海の家をあとにした遊馬はハートピースを集める為にデュエルを挑み続けていた…だが、大会も最終日…残っているデュエリストも少なく、なかなか最後のハートピースに巡り会えずにいた。

 

 

 

「苦労してるみたいだな、遊馬」

 

「あっ…シャーク!」

失意の遊馬に話しかけてきたのは凌牙だった…たまたま近くを通りがかったのだろう…。

 

 

「最後の1個が集まらなくてさー…シャークはどうなんだ?」

 

「…さっき、最後の1個を手に入れた所だ…たくっ、最後の最後に徒党を組んでデュエルを挑んできやがって…」

凌牙の右手には完成したハートピースがあったが…反対の手には膨らんだ袋が握られている…おそらく、凌牙狙いでやってきたデュエリスト達を返り討ちにして手に入れたのだろう…。

 

「本当は…ここまでやるつもりじゃなかったんだけどな、Ⅳの野郎と決着を着ける為には…しょうがねぇ…!」

 

「シャーク…」

凌牙は静かに拳を震わせる…凌牙から見てⅣは妹の仇であり…養父を悲しませた許せない男だからだ…。

 

 

「…シャーク、せっかくの大会なんだから楽しんでデュエルしようぜ!…たしかにⅣはヤベー奴だってオレも知ってる…でもさ!だからこそデュエルを真剣に楽しんで…あの勘違い野郎をぶっ飛ばしてやろうぜ!!」

 

「……相変わらずのデュエル馬鹿だな…いいだろう、Ⅳの野郎は俺が倒す…そして遊馬!お前との決着は決勝で着ける!…予選落ちなんてするんじゃねーぞ?」

 

「ああ!わかってる…!かっとビングだ!オレ─!!」

凌牙と遊馬は再戦を約束して別れる…2人の顔は共に笑顔だった…。

 

 

 

『馬鹿な…シャークが、ナンバーズの力に飲まれていない…!?いったいどうして…!』

…そんな2人の様子を困惑しながら見つめる者がいた、それはトロン一家の1人…Ⅲだった。

 

『シャークの心にはナンバーズの欠片が残っているはず…トロンはそのナンバーズの欠片がシャークの心を憎しみで染めると言っていたのに…!』

Ⅲは動揺する…凌牙はトロンの策略によって「No.32海咬龍シャーク・ドレイク」を手に入れている、そしてⅢとのデュエルでナンバーズの力に飲まれかけた凌牙は精神力でナンバーズをねじ伏せ従えた…だが、それは完全ではなかった。

凌牙の心には「シャークドレイクの爪」…ナンバーズの欠片が残っている…トロンはそれを見抜き、凌牙がⅣへの復讐心によって再びナンバーズの力に飲まれる…と思っていた、だが…凌牙はナンバーズの力に飲まれる事なく、その瞳に影は無い…。

 

『凌牙の精神力がトロンの予測より強かった…?…いや、違う…彼の…九十九遊馬の影響なのか…?』

Ⅲは小鳥と共に歩く遊馬を見つめる…最初はカイトのデュエルに巻き込まれた一般人だと思っていた…しかし、その正体はナンバーズ使いであり、ナンバーズのオリジナル…アストラルと共に戦う決闘者だった。

…そして、Ⅲにはもう1つ気になる事があった。

 

 

『…九十九遊馬…彼のデュエルは僕達とは違う…憎しみで戦ってきた僕達とは…』

Ⅲは自分達のデュエルと遊馬のデュエルは違うモノだと感じていた…Dr.フェイカーへ復讐する為の手段としてデュエルをする自分達…そして、純粋にデュエルを楽しみ戦った相手すらも笑顔にしてしまう遊馬…Ⅲはそんな遊馬の事を調べる為に彼を尾行していたのだ。

 

『…彼の家に行ってみよう、きっとそこに手掛かりが……ん?』

遊馬の家へと向かおうとしたⅢ…その足元に白い毛玉のような生き物がじゃれつく…

 

《フォウ、フォーウ!!》

 

『えっ…フォウ…?なんでこんな所にいるんだい…!』

Ⅲの足元にじゃれついたのは、短い時間だったが父を失ったⅢ…ミハエル達兄弟を世話してくれた恩人…岸波白野のペットであるフォウだった…。

 

 

『…久しぶりだね、フォウくん…元気にしてたかい?』

 

《フォウ!》

ミハエルはフォウを抱き上げる…思い出すのは父を失った悲しみ…そして、それを癒やすように愛情を向けてくれた遊海と翠…そして凌牙達兄妹の事だった…。

 

《キュ〜…?》

 

『……ごめんよ、今は君に構っていられないんだ…確かめなきゃならない事がある、九十九遊馬の事を知る為に…!』

Ⅲはフォウを地面に降ろすと歩き始める…遊馬の事を知る為に…。

 

《キュ…フォウ、フォーウ!!》

 

 

 

 

 

 

 

「だぁぁ〜!!誰かハートピースを持ってる奴はいねぇのか〜!?」

 

(これは…完全に手詰まりだな)

 

「諦めないで参加者を探しましょう!まだ間に合うわ!」

遊馬は追い込まれていた、デュエリストを探して街を走り回ったが参加者はほとんどいなかった…飛び入り参加したゴーシュやドロワ達にあらかた倒されてしまったようだ…。

 

ピピピ…ピピピ…

 

「誰だよ、こんな時に…」

気が急く遊馬のDゲイザーが着信を知らせる、その相手は…

 

『遊馬、ちょっといいかい?』

 

「ばあちゃん?どうしたんだ?」

 

『遊馬の知り合いだって子がウチに来てるんだけど…心当たりはあるかい?』

着信の相手は春…遊馬は首を捻る…

 

「オレの知り合い…?どんな奴なんだ?」

 

『桃色の髪で…首にスカーフを巻いた優しい顔の男の子だよ』

 

(桃色の髪、優しい顔…?遊馬…!それはⅢの事ではないか?!)

 

「な、なんだってぇ!?す、すぐに帰る!!」

アストラルの言葉で最悪の可能性に気付いた遊馬は急いで自宅へと引き返した…。

 

 

「はぁ…はぁ…!よし、もうちょっと…あれ?フォウ?」

急いで家へと戻る遊馬…そして到着直前、見覚えのある白いネコが玄関にいるのを見つける…。

 

《フォウ!》

 

「フォウ!悪いけど今急いでるんだ!ちょっと退いてくれ─!」

 

《キャウ!?》

遊馬はフォウを飛び越えて玄関へと飛び込んだ…。

 

 

 

ドタドタ…ガチャ!!

 

「いた…!てめえ何してやが─うおぉ!?」

家に入ってすぐ自室に飛び込んだ遊馬、そして見覚えのある背中に声を掛けて…仰天した。

振り向いた少年は巨大なお面を被っていたのだ…。

 

『あっ…遊馬!!すごいよ…すごい!これは、アステカ遺跡から出土した仮面!あれは、2000年前の磨製石器…!こっちはヒッタイトで作られた鉄の鏃!ああ!インカの首飾り!どれもすごいものばかりだよ!!』

仮面を取った少年…Ⅲは興奮気味に捲し立てる、厳しい面ばかり見せていたⅢ…実は生粋の『オーパーツ』オタクだったのだ…。

 

『それにこれを見てよ!僕の大好きなカードも同じなんだ…ほら!』

そう言いながらⅢは1枚のカードを遊馬に見せる…それは遊馬の持つ仮面と同じイラストのモンスター「先史遺産─アステカ・マスク・ゴーレム」だった。

 

 

「あっ…本当だ…!Ⅲはオーパーツが好きなのか?」

 

『そうだよ、僕が使ってるのは『先史遺産』デッキっていうんだ!オーパーツって、この世界と異次元とがつながっている証拠なんだよ!この世界には、たくさんの次元が重なってて《フォウフォウフォーウ─!!》わばっ!?』

 

「フォウ─!?」

喜々としてオーパーツについて語るⅢ…その顔にフォウが飛び付いた!!

 

《フォーウ!フォウキャウウ─!!!》(君はこんな所で何をしてるのさ!遊海が君達の事をどれだけ心配してると思ってるんだ─!!)

『フォウくん!?なんでここにって…どうしてそんなに怒ってるんだい─!?』

 

《キャウ…キャウ─!!》(遊海は君達を助けようとして大怪我してるんだぞ─!)

フォウは何かに怒った様子でⅢの顔をポカポカ叩き続ける…。

 

「よくわからないけど…落ち着けよフォウ!白野に怒られるぞ?」

 

《ンキュ…!?キュウ〜…》(ウッ…遊馬の言うとおりだ…ごめんよ)

遊馬の言葉にハッとした様子のフォウは叩いていたⅢの顔を舐める…。

 

『び…びっくりした…ごめんよフォウくん、僕には君の言葉がわからないんだ、でも…ごめんね、きっと僕を心配してくれてるんだよね…』

Ⅲは悲しげな表情でフォウを撫でる…。

 

 

(遊馬、彼はフォウとは顔見知りのようだ…つまり、白野を知っているのではないか?)

 

「っ…!…なぁ、お前Ⅲって言ったよな…白野さんと知り合いなのか?」

 

『えっ…?遊馬も白野さんを知っているの?あの人は…僕達兄弟の恩人なんだ…!』

 

「白野はオレのデュエルの先生なんだ…なぁⅢ、白野の事を知ってるならわかるよな…あの人は人を傷付ける事が一番大嫌いなんだ…!それなのに…お前達はハルトを!!」

遊馬は怒りながらⅢへ詰め寄る、それに対してⅢは…

 

『ごめん!ハルトのことは…本当にすまなかった…!!』

 

「えっ…?」

素直に頭を下げたⅢに遊馬は驚く…

 

『でも、僕はああするしか…なかったんだ…!』

 

「Ⅲ…」

 

『遊馬…僕は、復讐のために…ずっと憎しみの力で戦ってきた…でも、君のデュエルを見てそれとは違う力があるのかもしれないと思ったんだ…ねぇ、どうして君は、あんなに人のために必死になれるの?君の力は…一体なんなの?』

 

「オレの…力…?」

 

『そうだよ…君は僕とは違う、君は…どうしてあんなふうに戦えるの?』

Ⅲは遊馬に問いかける…復讐の為にデュエルをする自分達…そして復讐の為ではなく、怒りに飲まれる事なくデュエルをする…遊馬の力の源を…。

 

 

「オレの力…ちから?う〜ん…うーん??…そんな難しい事わかんねぇ!」

 

『えぇ…?』

頭を捻り、考えぬいた末に遊馬はⅢにそう答える…遊馬は難しい事を考えるのは苦手だ…故に、遊馬が信条とするものは一つだけである。

 

「とにかくかっとび…かっとビングだよ!!どんな時も諦めずにチャレンジする気持ちを忘れない…父ちゃんにそう教わったんだ!」

 

『かっとビング…君のお父さんの…』

 

かっとビング、それが九十九遊馬という男を形づくる一番大切なモノ…どんな時も諦めず、一歩前に進む為の合言葉…それがかっとビングだった。

 

「父ちゃんは冒険家でさ…ここにある物も全部父ちゃんのなんだ…冒険をしてて危ない目にあった時、父ちゃんはいつもかっとビングで乗り越えて来たんだ!」

 

『すごい人なんだね…君のお父さん』

嬉しそうに父の話をする遊馬…その様子を見ながらⅢは自分の父の事を想った、そんな時…。

 

 

「遊馬ー?お昼ご飯できたわよー」

 

「姉ちゃん!?」

明里が遊馬の部屋へと顔を覗かせる…時間はちょうどお昼時だった。

 

「小鳥ちゃんもそっちの子も一緒にどうぞ?」

 

 

 

 

 

SideⅢ

 

 

 

「(…なんで、こんな事になったんだろう…)」

思わぬ事態にⅢは困惑していた…遊馬の事を探る為に彼の家に潜入した彼は…どういう訳か遊馬達一家と昼食を共にしていた…。

 

「遊馬、少し落ち着いて食べるんだよ」

 

「そんな事言ったって(ムシャムシャ)腹が減ったらデュエルはできないだろ?」

 

「喉に詰まらせても知らないわよ?」

食卓に積み上げられたおにぎり…デュエル飯へと美味しそうにがっつく遊馬…

 

 

「フォウくんには…キャットフード代わりのササミね!ヤケドしないように食べるのよ?」

 

《フォウ!フォーウ!!》

明里に出された鶏肉を食べるフォウ…

 

 

《ユウマ、オ茶、ヘタクソ》

 

「ありがとよオボミ…ってオレはヘタクソじゃね…アッチィ!?」

 

『…フフッ』

あまりに普通な…家庭的な食卓をみたⅢは思わず吹き出してしまう、復讐の為に家族である事を捨てたⅢにとって…それはあまりに眩しい光景だった。

 

 

「あっ…笑ってんじゃねぇよ!?」

 

「遊馬!少しは大人しく食べなさい!デッキ取り上げるわよ?」

 

「ちょ…それは勘弁してくれよ姉ちゃん─!?」

 

 

 

 

─兄様!カード返してよー!─

 

 

─やーだよー!─

 

 

─2人とも、やめなさい…お父様が帰ってくる、いい子にしていたら…今度の休みにデュエルを教えてあげるよ─

 

 

─やったー!─

 

 

 

 

 

『っ…ごめんなさい…!失礼します!!』

 

「あっ…Ⅲ!何処に行くんだよ!?」

 

《フォウ!?》

他愛のない姉弟…家族の会話…それは、復讐に身を委ねたⅢにとって眩し過ぎる光景だった…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「おい!待てよⅢ─!!」

 

《フォーウ!!》

昼食の最中、九十九家から飛び出したⅢ…遊馬は慌てて後を追いかけ、ようやく彼に追いつく…。

 

 

『遊馬!…君の家族を見て、よく分かったよ…君の力、君のかっとビングは…家族や仲間の笑顔を守るためのもの…でも、僕は…僕の家族は…君たちとは違う!!』

 

「Ⅲ…!」

Ⅲは遊馬へと告げる…デュエルを純粋に楽しむ遊馬と復讐に身を焦がす自分達の違いを…!

 

 

『復讐のために戦うと誓ったときから僕たち家族の笑顔は消えた…!けれど、復讐が終わればきっと、笑顔を取り戻してくれる…でも、遊馬!君がいる限り、復讐は果たせない…!だから僕は家族のために…君を倒さなきゃいけないんだ!』

Ⅲは遊馬をにらみつける…その瞳に強い決意を宿して…!

 

「Ⅲ…!お前、復讐って…その為にハルトをあんな目に遭わせたのか…!!」

 

『あれは、僕たち家族の意思だ!…今の僕には…憎しみの感情以外は無い!』

そう言うとⅢは1枚のデータディスクを遊馬に投げ渡す!

 

『遊馬!…今日の夕方、そこで待っている!君と僕で勝負だ!!』

 

そう言ってⅢは姿を消してしまった…。

 

 

(…遊馬、本当に彼とデュエルするつもりか?…彼は強いぞ)

Ⅲが去った後…アストラルは遊馬に問いかける…。

 

「ああ…!オレはアイツともっと話したい…Ⅲの本当の気持ちを知りたい!だからオレは…デュエルを受ける!!」

 

《…フォウ…》

 

 

 

 

 

Sideトロン一家

 

 

 

『ただいま戻りました…!』

 

『Ⅲ…!』

トロン一家のアジトにⅢが帰ってくる…その瞳に強い決意を宿して…。

 

【よく帰ったねえ、Ⅲ】

 

『トロン…僕は…!』

 

【何も言わなくていいよ、僕には分かっている…力が欲しいんだね?彼に勝つための『力』が…!】

 

『はい…!』

Ⅲの目を見たトロンは妖しく笑いながら問いかける…Ⅲはトロンの言葉に頷いた…。

 

【それじゃあ君に力を与えよう…ただし、全ては君次第だ…!】

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

ピンポーン!

 

 

《は〜い!…あら?遊馬君に小鳥ちゃん!…フォウ君!?遊馬君の所に行ってたの?》

 

「おっすウィンダ!だから送りに来たんだ…ほらフォウ」

 

《フォ〜ウ…》

 

デッキ調整を終えた遊馬はフォウを送り届ける為に再び遊海の家を訪れた…出迎えたのは若草色のワンピースを着たウィンダだった。

 

《ありがとね!メガロックさんが心配してたのよ…ジュースでも飲んでいく?》

 

「ああ!」

 

 

 

《ごめんね…翠も昨日の疲れが出ちゃったみたいで休んでるの…はい!私特製のフルーツジュース!》

 

「ありがとうございますウィンダさん!」

いつものようにリビングに通された遊馬達はウィンダの作ったフルーツジュースを飲む…。

 

(遊馬…この写真を見ろ)

 

「えっ…あぁ!?」

アストラルが遊馬へと声をかける…そこには野原でピクニックをする遊海と翠…そして幼い凌牙と妹の璃緒、そして…幼いⅢとⅣ、そしてⅤらしき少年の姿が写っていた…。

 

 

「ウィンダ…この写真…!?」

遊馬は写真を見せながらウィンダに走り寄る

 

《ん?…ああ、凌牙君達の小さい頃の写真…あの頃はまだ凌牙君も素直な子だったんだけど…》

 

「違う違う!!この3人って…!」

 

《あっ…クリストファー君にトーマス君、それにミハエル君ね…白野さんが少しの間お世話して─…!?》

そこまで話してウィンダは口を抑える…ウィンダはうっかりⅢ達の本名を話してしまったのだ…。

 

 

(ウィンダ、詳しく話してもらえるか?遊馬はこのあとミハエル…Ⅲと戦う事になっている、彼らについての情報を知りたい…!)

 

「教えてくれウィンダ!Ⅲの奴…復讐の為のデュエルをしようとしてる…オレはそれを止めたいんだ!!」

 

《あわわ…ごめん、ちょっと待ってて!!》

ウィンダは遊馬達を待たせて2階へと駆け上がった。

 

 

 

《翠!ごめん起きて…!!》

 

「うう…ん…どうしたのウィンダ…?誰か来たの…?」

 

《ごめん…クリス君達の事、遊馬君達に話しちゃったの…!!》

 

「…─ええっ!?」

ウィンダの言葉に翠はベッドから飛び起きる!

 

《それにミハエル君が遊馬君とデュエルするらしいの…どうしよう…!》

 

「…話しちゃったならしょうがないわ…遊馬君も当事者よ、伝えられる事は教えてあげましょう…」

軽く身支度を整えた翠は遊馬達のもとへと向かった…。

 

 

 

「待たせてごめんね、遊馬君、小鳥ちゃん」

 

「翠さん…」

 

「翠さん、教えてくれ…Ⅲ…ミハエルはどうして復讐なんてしようとしてるんだ…!?」

現れた翠に遊馬は問いかける…。

 

「遊馬君、まずは貴方の知ってる事を教えてくれる?そうしたらあの子達の事を教えてあげる…」

 

 

 

………

 

 

 

「…ありがとう遊馬君、それじゃあ私の番ね」

遊馬の知るⅢ達についての事を聞いた翠は遊馬達に語り始める…。

 

「全ての始まりは遊馬君のお父さんの事…一馬さんが行方不明になった時、どんな仕事をしてたか知ってる?」

 

「うん、Dr.フェイカーって奴をある遺跡でガイドしてたって六十郎のじっちゃんが言ってた…父ちゃんはその遺跡で行方不明になったって…」

 

「そう、その遺跡にはもう2人の同行者がいたの…それがⅤ…クリス君とそのお父さん…バイロン・アークライトさん…彼は一馬さんと一緒に行方不明になったの…遺跡から戻ったのはDr.フェイカー、そして遺跡の外で待っていたクリス君だけだった…」

 

「Ⅲも父ちゃんが…」

遊馬が顔を沈ませる…父がいなくなる悲しみ…それは遊馬が一番よくわかっていた。

 

 

「…お父さんがいなくなってクリス君の弟…トーマス君とミハエル君は施設に預けられる事になったの…でも、その前に白野さんが2人の事を引き受けた…そしてしばらくの間2人はウチで凌牙君と璃緒ちゃんと一緒に暮らしていたわ」

 

「シャーク達と一緒に…!」

 

「それって…本当に家族みたい…」

小鳥は当時の事を想像する…写真の様子からきっと彼らの仲は良かったのだろうと…。

 

 

「そして…彼らはある日突然に姿を消してしまったの…書き置きを残して…そこには行方不明だった父親が帰ってきた事…そしてDr.フェイカーに復讐するって書いてあったわ」

 

「Dr.フェイカーへの、復讐…!それがⅢ達の目的…!!」

 

(もしや…以前に白野が言っていたやりたい事とは…!)

 

「…白野さんは凌牙君から3人がこの街に戻って来た事を聞いていたの…そしてWDCに参加しながらあの子達の事を探していたわ…復讐を止める為に…!」

 

「白野…」

遊馬は思った、復讐に駆られる子供達を見て…彼はどんなに悲しみ、どんなに悩んだのだろうと…。

 

「遊馬君、ミハエル君を止めてあげて…!復讐であの子が壊れてしまう前に…!」

 

「…止められるかはわかんねぇ、でもミハエルが…Ⅲが良い奴だって事はわかる!!オレは…デュエルでⅢと分かり合ってみせる…!」

遊馬は決意を固める…優しい少年であるⅢにこれ以上復讐に手を染めさせない為に…。

 

 

「…翠さん、白野に会わせてくれないか?」

 

 

 

《むっ、遊馬か…よく来た、フォウを見つけてくれたそうだな…感謝する》

 

「メガロック…白野は…」

 

《心配するな…少し疲れているだけだ》

翠との話を終えた遊馬は遊海の寝室を訪れる…カーテンの閉じられた部屋で遊海は静かに眠っている…。

 

「白野…オレ、これからⅢ…ミハエルとデュエルするんだ…オレは白野に全然勝てないし、Ⅲよりも弱いかもしれねぇ…でも、待っててくれ…!かっとビングでⅢに勝って…アイツと分かり合ってみせる!!」

眠り続ける遊海を前に遊馬は勝利を誓った…!

 

((…白野が昨日会った時以上に衰弱している…?いったい、何があったのだ…?))

…アストラルは感じていた、眠る遊海の力が著しく弱っている事に…。

 

 

 

 

 

SideⅢ

 

 

 

『あ…ぐあああああ─!?』キィン─バリバリバリ!

 

【耐えるんだⅢ…この痛みを耐えた先に…君はさらなる力を手にする事ができる…!!】

同じ頃…Ⅲはトロンにより『紋章』の力の強化を受けていた、しかし…それは激痛を伴う苦行…Ⅲは叫び事を上げながらその痛みに耐えていた…。

 

 

『(今の僕じゃ、遊馬には勝てない…!僕は、強くなる…!強くなって…君に勝つ…!!)』

 

 

─ミハエル、お前は優しい子だ…きっとお前ならいいデュエリストになれる─

 

 

『(白野…さん…)』

激痛で朦朧とする意識の中、Ⅲは遊海に掛けられた言葉をふと思い出す。

 

 

─近所にお前に近い歳の男の子がいるんだ…今度会ってみないか?その子も…─

 

 

『(ああ、そうだったんだ…あの人が会わせたかった子…遊馬の事だったんだ…僕達は、その前に姿を消してしまった…ごめんなさい、白野さん……僕は家族の為に…復讐の為に…優しさを、捨てます…!!)』

 

Ⅲは覚悟を決めた、遊馬を倒し、Dr.フェイカーへの復讐を果たした先に…あの時のような家族が戻る事を信じて…。



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対決!優しき復讐者・Ⅲ!〜黄昏の決闘〜

こんにちは!S,Kです!

大変長らくお待たせしました!ついにぶつかりあう遊馬とⅢ…遊馬はこの戦いを乗り越えられるのか!!

そして…いつの間にかお気に入りが500件を突破してました!ハーメルンの読者の皆様…本当にありがとうございます!!

それでは最新話をどうぞ!


『…翠、遊海は大丈夫なのか…!』

 

「…大丈夫、きっとすぐに…目を覚ましてくれるはず…きっと…!」

 

夕暮れの白波家…遊海の眠るベッドの側に2人の人影があった。

1人は妻である翠…そしてもう1人、それはカイアの起した騒動でハートランドを訪れていたジャック・アトラスだった。

 

 

『病院から姿を消すのはいつもの事だが…大怪我をしてデッキを失くすとは…貴女達はいったいどんな敵と戦っているのだ!!』

ジャックは翠を問い詰める、ベッドに眠る遊海…その体は傷こそ治ったが酷く衰弱し、本来の遊海とは比べる事ができないほど力も弱まっていた。

 

「…今の相手は『復讐鬼』…復讐心のせいで感情を失くして…自分の家族も『家族』と思えなくなった男…それが遊海さんの戦っている相手よ…」

 

『復讐鬼だと?そんな奴に遊海が遅れを……海亜の、せいか…?海亜が「スカーレッドノヴァドラゴン」を暴走させ…遊海の力を削いでしまったからか…!?』

 

「違う…違うのジャック君…!この数日、遊海さんはとても疲れていたの…!それに相手は闇の…異世界由来の特殊な力を使う相手…その力で遊海さんは嵌められたのよ…」

罪悪感を感じるジャックの言葉を翠は否定する…。

遊海が仮に普段の状態であればトロンはなす術はなかっただろう…だが、WDCに参加した事による連戦…ナンバーズを賭けた闇のデュエルにトロンの襲撃…それらが重なった事で遊海には疲労とダメージが蓄積していたのだ…。

 

 

 

『…わかっていても、歯痒いものだな…!老いた俺では遊海の力になる事もできんとは…!!』

 

「そんな事ないわジャック君…貴方が来てくれている…それだけでも遊海さんは心強いはずだから…」

自分の無力さに拳を握り締めるジャックを翠は優しく慰める…その時だった…!

 

キィィン─!

 

『遊海の痣が…!また、何かが起きようとしているのか!?』

 

「まさか…遊馬君!!」

遊海の赤き竜の痣が強く輝く…それは新たな事件を伝えるものだった…!

 

 

『じいちゃん大変だ!空にいきなり黒い雲が!!』

 

『それに風が…空気が震えてるんだ!何か恐ろしい事が起きようとしてる!!』

寝室にカイアと流星が駆け込んでくる…2人も何かを感じ取ったようだ…。

 

 

『海亜、流星…ここにいろ!この場所がこの街で一番安全な場所だ…!翠、孫達を頼む…!』

 

「ジャック君!?」

孫達を翠に預けたジャックは暗雲の広がるハートランドの空を睨みつける…!

 

 

『…本来であれば遊海の為すべき事だろう…しかし、それは叶わん…!孫の不始末…俺が責任を取る!我が荒ぶる魂に懸けて!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな…Ⅲ!!」

 

『よく来たね…遊馬!!』

黄昏時のハートランドシティ…その建設途中の海上道路の工事現場…そこでⅢと遊馬は相対する!

 

 

『遊馬、僕は君を倒す為に新たな力を得た…!』

 

「新たな力…?」

 

(気をつけろ遊馬…彼から感じる力が以前より強くなっている…!)

アストラルはⅢに宿る力を感じ取る…精霊の力とは違う異質な力…それがオーラとなってⅢを覆っている…!

 

『君に会って…君の家族を見て、僕は確信したんだ…!僕の家族を取り戻す為に…君達を倒すしかないと!!』

 

「Ⅲ…オレさ、ここに来る前に白野達に会って来たんだ…そして頼まれたんだ…!お前達を止めてくれって…これ以上お前達が傷付く前に復讐を止めてくれって!!」

 

『っ…!!』

遊馬の予想だにしない言葉にⅢは驚き、それを悟られないように唇を噛みしめる…遊馬に弱みを見せないように…。

 

「Ⅲ…オレはお前の本当の気持ちが知りたい…だから!オレはお前と戦う!デュエルをしたら仲間になれて、ソイツの全部がわかる…それがデュエルなんだ!!」

遊馬はⅢに向かって話ながら後ろを振り返る、そこには小鳥…そして鉄男や等々力達ナンバーズクラブのメンバー達が遊馬の予選最後の戦いを応援する為に駆けつけていた…。

 

「ここにいる皆もデュエルで絆を作った奴ばっかりだ!…そしてオレはお前ともデュエルをした!だから…オレはお前との間にも絆があるって信じる!!…いくぜ…Ⅲ!!」

 

『来い!遊馬─!!』

復讐を果たす為に本心を押し殺すⅢ、そしてデュエルを通じてⅢを救いたい遊馬…2人の負けられない決闘がついに始まる!!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

【始まったみたいだね、Ⅲの決闘が…】

 

『……』

トロンはアジトにしているホテルのバルコニーからⅢの戦っているであろう海辺の方角を見つめる…その隣には沈んだ表情のⅤの姿があった。

 

 

【浮かない顔をしてどうしたんだい?】

 

『…アストラル世界の使者の力…侮れません…』

 

【君は心配症だねぇ…心配ないよ、Ⅲは必ず勝つ…彼は苦しみに耐えた分の力を得た…それにオマケで()の力の一部も分けてあげたからねぇ…!】

 

『っ…!!』

トロンの言葉にⅤは彼に気付かれないように拳を握り締める…恩人である白野を傷付けるばかりか、その力を奪ったトロンへの怒りを押さえる為に…。

 

『………それほど強力な力…Ⅲに御する事ができるのですか…?』

 

【フフフ…フフフフフフ…!】

Ⅴの問いにトロンは妖しく嗤うだけだった…。

 

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対Ⅲ

 

 

 

『先攻は僕が貰うよ!!…僕のターン!ドロー!!』

 

キィン─ 

 

デュエル序盤、先攻を取ったⅢはDゲイザー代わりになっている紋様と左目を妖しく輝かせる…!

 

『(トロンの力を貰った今の僕なら…アストラル、君の姿がはっきりと見える!!)』ギィン─

Ⅲの視線の先…そこには遊馬の近くに浮遊するアストラル…その姿がはっきりと見えている…!

 

『アストラル…君が遊馬の力になっているんだろう?けど、君がいたって…僕は負けない!!僕はフィールド魔法「先史遺産都市バビロン」を発動!!』

 

「うわっ…な、なんだ!?」

フィールド魔法の発動によって周囲の景色が塗り替わる…そこは「世界七不思議」の一つに数えられる「バビロンの空中庭園」をモチーフとした浮遊都市だった…。

 

 

『さらに!フィールド魔法が発動している事で手札の「先史遺産─トゥーラガーディアン」は特殊召喚できる!さらに「先史遺産─ゴールデン・シャトル」を召喚!自身の効果でレベルを1つアップする!』

 

(レベル5のモンスターが2体…来るぞ!!)

 

33

 

『現れろ!「No.33先史遺産─超兵器マシュ=マック」!!』

 

「こんなにはやく『マシュ=マック』を…!」

Ⅲの頭上に巨大な空中都市が降臨する…あまりにも速いナンバーズの登場に遊馬は気を引き締める…!

 

 

『さぁ…僕を倒してみろ遊馬!!君のデュエルで!!』

 

「Ⅲ…!誰かを傷付ける為にするなんて…そんなのデュエルじゃねぇ…!そんなんじゃねぇんだ!!デュエルは…オレが父ちゃんから教わった『かっとビング』は!!」

遊馬はⅢに呼びかける…だが、その想いはⅢには届かない…。

 

『かっとビング…残念だけど…()()()()()()()使()()()()()()…!』

 

「っ…?いくぜ…Ⅲ!!」

Ⅲの言葉に首を傾げながら遊馬は自分のターンを開始する…だが、…

 

(焦るな遊馬!彼の場には既に「マシュマック」がいる…今は守りを優先するべきだ)

 

「うぇ…?」

いつも通りに突っ走ろうとする遊馬にアストラルが待ったをかける…アストラルはⅢから以前とは違う雰囲気を感じ取っていた…。

 

(今は闇雲に攻撃するだけでは勝てない…タイミングを窺うべきだ)

 

「っ…わかってる!モンスターをセット!カードを伏せてターンエンドだ!」

遊馬はアストラルの言葉を聞いて守りを固める…だが、Ⅲはさらなる一手を繰り出す…!

 

 

『僕のターン!魔法カード「バレンケの石棺」を発動!自分の場にオーパーツと付くカードが存在する事で2ドロー!さらに自分が魔法カードを発動したターンに「先史遺産─アステカ・マスク・ゴーレム」は特殊召喚できる!』

 

「あのモンスターは…Ⅲのフェイバリットカード…!」

Ⅲの場に仮面の顔を持つゴーレムが現れる…それはⅢが父から貰ったお気に入りのカードだった…。

 

『バトルだ!「アステカマスクゴーレム」でセットモンスターを攻撃!ベレンケ・ブロー!!』

 

「セットモンスターは『ゴゴゴゴーレム』だ!!」

 

(「ゴゴゴゴーレム」は守備表示の時には戦闘では破壊されない、さらに攻守は互角…引き分けだ!)

「アステカマスクゴーレム」から放たれたエネルギーを「ゴゴゴゴーレム」がガッチリと受け止める!

 

『…そうだと思ったよ…だけど、僕の目的は()()()()()()()!バトルフェイズを終了!「先史遺産─カブレラの投石機」を召喚!』

 

「なっ…!?バトルをしないで…攻撃力0のモンスターを召喚!?」

遊馬はⅢの思わぬ行動に動揺する…「マシュマック」の攻撃を捨ててまで新たなモンスターを召喚した真意…それは──

 

『「カブレラの投石機」の効果発動!自分のモンスターをリリースする事で…相手モンスターの攻撃力をエンドフェイズまで0にする!』

 

「なにっ!?」

 

『呪いを受けろ…「ゴゴゴゴーレム」!!』

「投石機」のマジックハンドが「アステカマスクゴーレム」を掴み上げ弾丸にして「ゴゴゴゴーレム」へと投げつける…直撃を受けた「ゴゴゴゴーレム」は村の鎖で拘束され、力を奪われてしまう!

 

(っ!?まずい…このコンボは─!!)

 

『気付いたってもう遅いよ…!この瞬間に「マシュマック」の効果発動!モンスターの攻撃力が変動した時!ORUを一つ使う事でその変化した数値分だけ相手にダメージを与える!1800のダメージを受けろ!インフィニティ・キャノン!!』

 

ドドドドドド!!

 

(「うわあああ─!?」)

 

「マシュマック」に設置された砲台が火を噴き、遊馬とアストラルは大ダメージを受けて吹き飛ばされる!!

 

『効果を発動した「カブレラの投石機」は守備表示になる…僕はこれでターンエンド!』

 

 

「ぐっ…この、痛みは…!」

 

(ナンバーズによるダメージだけではない…!もっと、強い力が…!)

吹き飛ばされた2人はなんとか立ち上がる…だが、遊馬の体はARデュエルでは考えられない強いダメージを受けている。Ⅲや遊馬達は知るよしもないが…トロンによって奪われた遊海の力によってこのデュエルは闇の決闘へと変化し、遊馬達に痛みとして襲いかかっているのだ…!

 

「Ⅲの奴…前のデュエルの時とまったく違う…!いったいどうして…!」

 

(だが…これが彼の切り札なのならば策はある…!)

 

「…待ってくれアストラル…これはオレのデュエルだ…!このデュエルは…()()()()()()()で勝たなくちゃダメなんだ…!!」

 

(遊馬…)

アストラルの言う通り『勝利する』だけなら方法はある、だが…遊馬にとってはそれだけでは納得できなかった…『Ⅲを救う』…その為に遊馬は戦っているのだ…。

 

 

 

 

「オレのターン!『ガガガマジシャン』を召喚!」

 

(遊馬、装備魔法を発動して『ガガガマジシャン』の効果を発動だ)

 

「わかってるつーの!装備魔法『バウンド・ワンド』を『ガガガマジシャン』に装備!さらに『ガガガマジシャン』の効果で自分のレベルを8にする!」

 

(さらに装備魔法『バウンドワンド』の効果により装備モンスターの攻撃力は自身のレベル✕100ポイントアップする!攻撃力2300だ!)

赤い宝石の付いた杖を構えた「ガガガマジシャン」の攻撃力が上昇する!

 

「よし!…でも、これじゃあ『マシュマック』の効果が…」

 

(『マシュマック』の効果を発動してもダメージは僅か…ⅢはORUを温存するはずだ…遊馬!攻撃だ!)

 

「バトルだ!『ガガガマジシャン』で『カブレラの投石機』を攻撃!!」

Ⅲの戦略を見抜いた遊馬は攻撃を仕掛ける…だが、Ⅲも黙って見ているだけではない!

 

 

『その攻撃は読めてるよ…!罠カード「コスタリカン・ストーン・ボール」を発動!相手モンスターの攻撃を無効にし、次の相手ターンにそのモンスターは攻撃できなくなる!』

 

「くそっ…!!」

『ガガガマジシャン』に石の重りの付いた鎖が巻き付き、身動きを封じる!

 

 

(読まれていたか…遊馬、カードを伏せるんだ)

 

「あぁ〜もう!!お前が邪魔するから!!カードを伏せてターンエンドだ!」

思う通りに動けない焦りともどかしさをアストラルにぶつけながら遊馬はターンを譲り渡す…。

 

 

 

『僕のターン!フィールド魔法「先史遺産都市─バビロン」の効果発動!墓地の「ゴールデンシャトル」を除外する事で墓地の「アステカマスクゴーレム」を特殊召喚!そして「カブレラの投石機」の効果発動!「アステカマスクゴーレム」をリリース!!』

 

「っつ─!Ⅲ!!お前どうしちまったんだよ!?あんなに好きだって言ってたオーパーツ達をこんな風に使って…お前はなんとも思わないのかよ!!」

遊馬は叫ぶ…Ⅲのデュエルを何回も見たからこそ遊馬にはⅢがどんなに自分のモンスターを大事にしているかがわかっていた…だが、いまのⅢはその大切なモンスターを遊馬を倒す為の「駒」として使い潰してしまっているのだ…!

 

『…僕は変わった…!どんな犠牲を払ってでも、君を倒す!!「カブレラの投石機」の効果!「ガガガマジシャン」の攻撃力を0にする─!!』

 

 

 

「や、やばいウラ!『マシュマック』とのコンボでダメージを受けて…『マシュマック』の攻撃を受けたら!!」

 

「トドのつまり遊馬君の負けです!!」

 

「遊馬─!!」

仲間達の焦りの声が響く…現在の遊馬のライフは2200…コンボをかわせなければ敗北は決まる…だが、遊馬()の戦いはまだ終わらない!!

 

 

(この瞬間を待っていた!遊馬!『ガガガラッシュ』だ!)

 

「そうか!!リバース罠『ガガガラッシュ』発動!『ガガガ』モンスターがモンスター効果の対象になった時!その効果を無効にして破壊する!」

 

(さらに『ガガガラッシュ』の効果によって破壊されたモンスターの攻撃力か守備力…どちらか高い数値分のダメージを相手に与える!)

 

「『カブレラの投石機』の守備力は1800!お返しだぜ!Ⅲ─!!」

 

『ぐっ!?うわああ…!!』

戒めを破った『ガガガマジシャン』が投石機を破壊…Ⅲに大ダメージを与える!

 

 

 

「やったぜ!…アストラル、まさかお前…最初から…?」

 

(…いまの彼は勝利にこだわり過ぎている、それ故に慎重……めちゃくちゃなデュエルをする君よりも戦術は読みやすい)

 

「…一言多くねぇか?」

 

(フッ…このまま勝つぞ、遊馬!)

 

「おう…!!」

2人は軽く笑いあいながらⅢへと向き直る…ライフはこれで五分…だが、Ⅲのターンはまだ終わっていない…!

 

 

『ぐっ…遊馬の「かっとビング」に…アストラルの高等戦術…!2人の力は僕の上を行くというのか…!』

 

「Ⅲ…自分のモンスターを…オーパーツ達を犠牲にするなんて…そんなのお前のデュエルじゃねぇ!!」

 

『っ…!!』

立ち上がったⅢに遊馬が叫ぶ、Ⅲは明らかに無理なデュエルをしている…そう感じたからだ…。

 

 

『…君にはわからないさ…仲間に囲まれて、幸せでいる君には…!家族がバラバラになってしまった僕達の辛さは!!』

 

「っ…!お前達の父ちゃんが行方不明だってのは翠さんから聞いた!でも…写真の中のお前達は笑ってたじゃねぇか!白野達がお前達が少しでも寂しくないように一緒に居てくれたんじゃねぇのかよ!!」

Ⅲは自分の心中を吐露する…バラバラになってしまった家族の辛さを…だが、遊馬は知っている…写真の中で笑っていたⅢ達兄弟の優しい笑顔を…。

 

 

『…白野さんには感謝してる、施設に預けられるはずだった僕達を引き取って…家族の暖かさを教えてくれた…僕達を慰めてくれた…!…でも!!僕達は知ってしまったんだ!!父様がどんなに酷い裏切りを受けたのか!!…ようやく取り戻した本当の家族は壊れてしまった!!本当の…あの時の家族を取り戻せるのなら…僕はどんな事だってやってやる!!』

 

「Ⅲ!!復讐なんてやめちまえよ…!そんな事をするのが…本当に家族の為なのかよぉ!!」

 

『うるさい…黙れ!!遊馬…ウザいんだよ…目障りなんだよ!!君のいちいちが…君の()()()()()()の精神が!!』ギィン─! 

Ⅲは涙を浮かべながら怒りを露わにする、暖かい家族への憧憬…復讐へ飲まれた自分の家族への悲しみ…自分の家族をバラバラにされた怒り…負の感情が頂点に達した時、Ⅲに与えられた「紋章」が強く禍々しい輝きを放つ!!

 

 

「Ⅲ─!!」

 

(っ…!Ⅲの纏う力が強くなっていく…!!)

 

『君にはもう…かっとビングは《《使わせない》…!!』

光が収まった時、Ⅲの姿は大きく変化していた…赤い貴族服から金色の甲冑と赤いマント…まるで古代の戦士を思わせる姿へと変貌していたのだ…!

 

【…闇に落ちろ…!遊馬ぁぁぁ!!】

 

ギィン!!

 

「えっ…!?うわあぁぁ─!?」

 

(遊馬─!?)

Ⅲの紋章から放たれた実体化したエネルギーが遊馬を吹き飛ばす!!

 

(大丈夫か!?遊馬!)

 

「うぅ…あっ…皇の鍵、が───…」

 

ドクン

 

(っ!?遊馬!どうした!?しっかりするんだ!!)

吹き飛ばされた遊馬はなんとか起き上がるが…突如として異変が起きる…瞳から光が消え、先程までの闘志が嘘のように霧散していく…そして…!

 

 

「…怖い…痛い…!どうして…()()は、こんなデュエルをしてるの…?」

 

(遊馬…!?)

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

「父ちゃん…!無理だよ…こんな崖…登れないよ!!」

 

『諦めるな遊馬!お前ならできる!』

気付けば幼い姿の遊馬は崖を登っていた…少し上には父・一馬の姿もある、これは遊馬の原点…父から「大切な言葉」を教えられた運命の日…だが……

 

『登って来い遊馬!かっとビングだ!』

 

「えっ…父ちゃん?なんて…言ったの?」

遊馬にその()()は届かない…これはあり得た可能性…遊馬が諦めない精神…「かっとビング」を知らない可能性での遊馬の人生だ…。

 

 

 

「怖い…怖いよ…!!」

 

「…九十九君?あなたはチャレンジしないの?」

 

「イヤだよ…怖いもん…あんなの…跳べるわけない…」

かっとビング…諦めず挑戦する心を失った遊馬は体育館の隅で小さくなっていた、目の前では同級生達が跳び箱やプールに飛び込み台から飛び込んだりしている…だが、遊馬は「挑戦しない」…怪我をするのが怖い、痛みが怖い…失敗が怖い…恐怖心が遊馬の心を縛っているのだ…。

 

「…九十九君、チャレンジしてみないとわからないよ?」

 

「わかるよ…やらなくたって…ボクには跳べない…跳べないんだ…!!」

 

 

 

 

 

 

「バトルだ!弱虫遊馬にダイレクトアタック!!」

 

「う、うわあ〜!!」

 

 

遊馬LP0

 

鉄男LP4000 WIN!

 

 

 

「やったぜ!パーフェクトだ!!」

 

「うぅ…」

 

かっとビングを失った遊馬はデュエルにも負け続けていた…本来の遊馬もアストラルと出会うまでは連戦連敗だったが…それはかっとビングによって相手の伏せカードやブラフを気にせずに攻撃した故のいわば「勝ちを目指した敗北」だった。

…だが、かっとビングを失った遊馬は相手のブラフやモンスターを恐れ攻撃できない「恐怖ゆえの敗北」…同じ敗北でもその意味は大きく違うものだった…。

 

 

「まったく…こんな意気地なしに勝っても嬉しくないぜ…デュエリストの恥さらしが!」

 

 

「九十九君…」

 

「怖い…怖いんだ…!!」

この遊馬に友人はいない…いるのは彼を心配する小鳥だけ、両親を失い…鉄男達ともデュエルによる友情を築ないただの弱気な少年…それがこの世界の遊馬だった…。

 

 

  

 

 

 

ドン!!

 

「うわ…!?ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!」

道を歩いていた遊馬は誰かとぶつかり尻餅をつく…。

 

『すまなかったな少年…怪我はないか?』

 

「えっ…?」

遊馬はぶつかった相手を見上げる…その相手は何処かで見た事のある()()()の青年だった…。

 

『立てるか?よそ見をしてしまってな…悪かった』

 

「いえ…!ボクが悪いんです!ごめんなさい!すいません!!」

青年に引っ張られて立ち上がった遊馬は青年に謝罪する。

 

『…厄介な術に掛かったな…欠片の俺ではどうする事もできない…』

 

「えっ…?」

 

『…諦めるな九十九遊馬…お前の心の強さは俺が一番知っている…!かっとビングだ…ぐっ!?存在が、保てない…!』 シュゥゥン…

 

「えっ!?だ、大丈夫ですか─!?」

足元から消えていく青年を見た遊馬は慌てふためく…

 

『諦めるな遊馬…お前は…1人じゃな─…!』

 

「待って…行かないで…!ボクを1人にしないで!白野さん─!!」

 

 

 

 

 

青年の姿が掻き消える、そして遊馬は…大切なモノを失った。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

「怖い…!無理に決まってる…ボクがデュエルに勝てるわけがない…」

 

(遊馬…!Ⅲ!!君は…遊馬に何をした!!)

明らかに正気を失っている遊馬を見たアストラルが吼える…遊馬に異変が起きたのはⅢの力を受けた後…原因はそれしか考えられない…!

 

 

【遊馬の心から「かっとビング」を消した…遊馬には君も首のペンダントも見えていないはずだ】

 

(っ─!紋章の力…!!遊馬!!邪悪な力に飲まれるな!!気をしっかりもつんだ!!)

アストラルは必死に遊馬に呼びかけるが…遊馬は応えない…。

 

【アストラル…君にもこれ以上邪魔はさせない…!】

 

ギィン─! ゴゴゴ…!

 

(な、なんだと…!?)

 

紋章の輝きと共にⅢの背後に巨大な石造りの塔が現れる…!

 

【アストラル…この紋章には君を封印する力もあるんだよ…!!消えて貰おうか!!】

 

ギィン!!

 

(ぐあああああ─!?!?)

再び放たれた紋章の力がアストラルに直撃する…アストラルの姿はその場から消え去り、石塔の壁に鎖によって拘束されてしまう…!

 

 

【遊馬…君の心から「カッとビング」は消えた…!カッとビングが戻らない限りアストラルの姿も、君のお守りのペンダントも見えない…つまり、君は僕の敵じゃないのさ!!バトルだ!「マシュマック」で「ガガガマジシャン」を攻撃!!】

 

「ぐっ…うわああ…!」

「マシュマック」の天辺から放たれた雷撃が「ガガガマジシャン」と遊馬を吹き飛ばす!!

 

(遊馬!!っ…ぐあああああ!!?)バリバリバリ!!

吹き飛ばされた遊馬へと叫ぶアストラルに紋章による電撃が襲い掛かる…遊馬がダメージを受ければアストラルにも痛みが襲う…!

 

【遊馬…君には絶望の中で消えてもらうよ…フフフ…ハハハハハ…!!】

Ⅲは嗤う…彼の心は壊れかけている、復讐と良心の狭間で揺れ動く心…覚悟を決めてしまったⅢは何もかもを捨てて遊馬へと襲い掛かる…!

 

 

 

 

 

Sideナンバーズクラブ

 

 

 

「ねぇ…!なんだか遊馬の様子が変じゃない…?」

 

「ああ…!こんなの遊馬のデュエルじゃねぇ…!!」

遊馬のデュエルを応援していた仲間達が遊馬の異変に気が付く…遊馬は明らかに動揺し、手が震えている…それは普段の遊馬では考えられない事だった。

 

【さあ遊馬!君のターンだ!!】

 

「怖い…痛い…!!」

性格と姿が豹変したⅢが遊馬を追い詰める…遊馬はオドオドするばかりで反応を示さない…。

 

「っ─!!遊馬!何してやがる!!お前のターンだ!カードをドローするんだ!!」

 

「ひっ!?…ボクのターン…ド、ドロー…」

鉄男の声に驚きながら遊馬は弱々しくカードを引く…だが…!

 

「ぼ、ボクは……()()()()()…する…」

 

「「「「なんだって!?」」」」

遊馬の思わぬ宣言に仲間達は驚愕する…サレンダーは「自ら敗北を認める」事…普段の遊馬なら絶対に言わない言葉だったからだ…!

 

 

【ふ、フハハハハ…!まさか「かっとビング」を失った君がこんなに臆病だったとはね…!!】

 

「えっ…カッとビングって…どういう事だよ!?」

 

「遊馬とアストラルに何をしたの!?」

Ⅲの嘲笑を聞いた仲間達がⅢを問い詰める…!

 

【ククク…!遊馬の「かっとビング」の記憶とアストラルを封印したのさ…あれを見るがいい!!】ギィン─

 

「あ…!?アストラル!!」

 

「塔に捕まってるウラ!!」

Ⅲが再び紋章を光らせる、それによって小鳥達にアストラルの姿が見えるようになる…アストラルは苦しげな表情で鎖で拘束されていた…!

 

 

【かっとビングとアストラルを失った遊馬に残っているのは恐怖心だけ…】

 

「そんな…!?」

 

「テメェ…!卑怯だぞ!!」

 

「ヒドすぎます!!」

Ⅲの言葉に仲間達が怒りの声を上げる…たしかに多少の盤外戦術はデュエルには付き物ではある、だが…Ⅲの行った妨害は決闘者でも許せるものではないだろう…!

 

 

【……なんとでも言うがいいさ…!遊馬!!君のサレンダーは()()()()!!君は僕に敗北して全てを奪われるんだ!!】

 

「そんなの…嫌…だ…!」

 

【大丈夫さ…僕がすぐに楽にしてあげる…!九十九遊馬…君はここで破れ去る!!】

決闘者としての力を失った遊馬にⅢが無情な攻撃を仕掛ける…!!

 

 

 

【僕のターン!「先史遺産─マッド・ゴーレム・シャコウキ」を召喚!】

Ⅲの場に細身の遮光機土偶が現れる!

 

 

「ま、まずいわ!遊馬があんな状態で攻撃を受けたら…!」

 

「っ…!まだだ!遊馬の場には戦闘破壊されない『ゴゴゴゴーレム』がいる!このターンは耐えられるはずだ!」

 

【確かに「ゴゴゴゴーレム」は戦闘じゃ破壊されない…でも、僕は甘くはない!!「マッドゴーレム・シャコウキ」で「ゴゴゴゴーレム」を攻撃!このモンスターは守備モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える!!ジョーモン・レーザー!!】

 

「う、うわあ〜!?」

 

「「遊馬!!」」

貫通ダメージによってが吹き飛ばされる!

 

【まだだ!速攻魔法「石の心臓」を発動!オーパーツモンスターが相手モンスターを戦闘破壊できなかった時!そのモンスターはもう一度攻撃できる!「ゴゴゴゴーレム」を粉砕しろぉぉ!!】

 

「うわああああ─!?」

Ⅲの攻撃が再び遊馬を吹き飛ばす…遊馬を守るものは無くなってしまった…!

 

 

【これで終わりだ!遊馬ぁぁ!!「マシュマック」でダイレクトアタック!ヴリルの火!!】

 

「あ、あの攻撃を受けたら…トドのつまり終わりです─!?」

 

「逃げて…避けて!!遊馬─!!」

 

「うっ…あぁ…!」

Ⅲのダメ押しの一撃…天罰の業火が遊馬に迫る…!遊馬は恐怖と痛みで身動きが取れなくなってしまっている!!

 

 

(ぐっ…!遊馬…!!これが私の…最後の力だ!!)

苦しみの中…絶体絶命の遊馬を見たアストラルは自身に残された最後の力を振り絞る!!

 

(遊馬…思い出せ…!かっとビングを─!!)

 

キィン─!!

 

【なに!?】

 

「うわっ…!?」

アストラル渾身のエネルギーが遊馬へと直撃する…!

 

「(これは…なんだ…?この記憶は…)」

その瞬間、遊馬は僅かに記憶を取り戻す…アストラルとの運命的な出会い…そして2人の絆がもたらした伝説の戦士の姿を…!

 

「っ─!!ぼ、ボクは手札の『ガガガガードナー』の効果発動!!ダイレクトアタックを受ける時に特殊召喚できる─!うわああ…!」

 

【なんだと!?】

アストラルの力で僅かに勇気を取り戻した遊馬はギリギリで『マシュマック』の攻撃を耐える!!

 

【馬鹿な…っ〜!!よくも邪魔してくれたな…アストラル─!!】ギィン─バリバリバリ!!

 

(ぐぅ!?ぐあ"あ"あ"あ"…!!)

 

「アストラル─!!」

横槍を入れられた事に怒ったⅢがアストラルを紋章の力で攻撃する!

 

 

【消えろ…!消えてしまえ!アストラルゥゥ!!!】

 

ギィン!!

 

(あ"あ"あ"…!!遊馬…諦めるなぁぁ─!!!

 

…それがアストラルの最期の叫びだった、紋章の力によってアストラルは消滅した…遊馬へと最後の希望を託して…。

 

「今…何が起こったんだ…?いきなり爆発が…うわっ!?」ズルッ!

 

「「遊馬!!」」

遊馬にはアストラルの言葉は届いていない…だが、アストラル消滅の際の爆発に驚いた遊馬はバランスを崩して崖へと倒れこんでしまう!!

 

 

「やべぇ!!遊馬─!!」

 

「鉄男君!?何を慌てて…」

 

「馬鹿委員長!!遊馬の後ろは…()()()()()()()だぁ!!」

 

「あ…ああ─!?」

デュエルに熱中していた彼らは忘れていた…この場所は工事中の海上道路…落下すれば命はない!!

 

「うぐ…!あああああ!?」

 

「「「遊馬─!!!」」」ガシッ!!

落下しかけていた遊馬の腕を鉄男が掴み取る!!

 

 

「しっかりしろ!遊馬!!」

 

「な、なんで君が…」

 

「当たり前だ!!俺達は仲間だろ!!」

 

「ボクが…君達の…仲間…?」

鉄男の言葉を聞いた遊馬は鉄男…仲間達へと問いかける…遊馬を掴んでいる鉄男の後ろには彼を支える小鳥や等々力、徳之助、キャッシーの姿があった。

 

「当たり前よ!!」

 

「「「俺/私達は仲間だ!!」」」

仲間達の力で遊馬は引き上げられる!

 

 

 

「遊馬、お前…本当に何もかも忘れちまったのか!?お前はいつだって諦めなねぇ奴だったろ!?どんなピンチにも立ち向かう勇敢な男…それが九十九遊馬って男だ!!」

 

「ボクが勇敢…?君達の…仲間…?」

鉄男の叱咤に遊馬は戸惑う…いるはずのない「仲間」…その声が遊馬の心を…魂を震わせる…だが…!

 

【おしゃべりはそこまでだ、君達がいる事を忘れていたよ…!ハッ!!】

 

ギィン─!

 

「「「「うわあああ!?」」」」

 

「みんな!?」

Ⅲの力によって仲間達が弾き飛ばされ…さらに電撃を帯びた岩の結界に閉じ込められてしまう!

 

 

【そこにいる限り君達の声は届かない…遊馬、僕は君の全てを奪ってやる!!】

 

「くそっ…!!俺達にできる事はないのかよ!?」

鉄男は拳を握り締める…かっとビングとアストラルを失い、仲間達の声も届かなくなった…遊馬は完全に1人になってしまったのだ…。

 

「遊馬…!!私に…私にできる事はないの…あっ?」

遊馬の絶体絶命の危機に小鳥もまた拳を握り締める…そして、手の中に何かを握っている事に気が付く…!

 

「これ…皇の鍵…!それに…白野さんのお守り…!」

小鳥が握っていたのは先程の攻撃で弾き飛ばされた遊馬の皇の鍵…そして、翠から渡されていた銀色のカルトゥーシュだった…。

 

「(お願い…!一馬さん…!白野さん…!!遊馬を…助けて…!!)」

小鳥は祈る…その祈りは奇跡を引き起こす…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Side???

 

 

 

『バイロン…お前はここまで汚い手を使って来るのか…』

皇の鍵の異空間…そこに1人の男が現れる、それは行方不明になっているはずの遊馬の父・一馬だった…。

 

『今回は…遊馬一人の力だけじゃ無理そうだな』

そう言うと一馬は皇の鍵の建造物…飛行船の上に立ち、大きく息を吸い込む!

 

『遊馬!!一番大切な事…忘れてんじゃねぇぞぉぉぉ!!』

 

キィン─! バシューン!!

 

一馬の一喝と共に飛行船から一筋の閃光が放たれる、その光が照らすものは───

 

 

 

SideOut

 

 

 

キィン─!

 

「えっ!?キャ…!」

小鳥の握り締めていた皇の鍵が強く光を放つ!

 

 

キィン─バシューン!!

 

 

【なっ!?ぐあ─!?】

 

ギ─バリーン!!

 

皇の鍵から放たれた閃光がⅢへと直撃…紋章の力を打ち砕く!!

 

ドクン!!

 

「あっ…!!」

紋章が砕かれた瞬間、遊馬にたくさんの記憶が流れ込む…。

 

 

アストラルと出会った事

 

アストラルと共に「No.」と戦ってきた事

 

デュエルを通じてたくさんの決闘者と出会った事

 

 

「遊馬!受け取って─!!」

 

「あっ…これ、は…!」

 

 

小鳥から投げ渡される「皇の鍵」…そして遊馬は一番大切な「言葉」を思い出す…!

 

キィン─!

 

─思い出せ、遊馬…俺が教えた事を…思い出せ、俺が教えた言葉を…!─

 

「父ちゃん…ボクが…おれが…!オレが忘れていたのは…!!」

脳裏に響く父の声…その言葉が悪しき力を打ち砕く!!

 

 

「オレが忘れてたのは…かっとビングだぁぁぁ!!」

 

 

【馬鹿な…トロンの紋章の力を打ち砕いただと!?】

遊馬は正気を取り戻す…そこに先程までの弱々しい遊馬はいない、そこにいるのは紛れもなく勇敢なる()()()…九十九遊馬だった…!!

 

 

「やった…!遊馬が復活したぞ─!!」

 

「「やった〜!!」」

復活した遊馬の姿を見た仲間達は喜びあう!!

 

 

「Ⅲ…!お前紋章の力で…そこまでやるとはな…!」

記憶と闘志を取り戻した遊馬は皇の鍵を結び直しながらⅢを睨みつける…!

 

【うるさい…!君が1人なのは変わらない!!君も…アストラルの所に送ってやる!】

 

「アストラル……アストラル─!?」

Ⅲの言葉でアストラルの不在に気付いた遊馬は辺りを見回す…だが、アストラルの姿は…気配は消えてしまっていた…。

 

 

【残念だけど、アストラルはもういない…僕が紋章の力でアストラルを消滅させたからね…!】

 

「っ…嘘だ…!嘘だ!!」

遊馬はⅢの言葉を否定するが瞳から涙が零れ落ちる…認識できなくとも遊馬の記憶には…アストラル消滅の瞬間がはっきりと残っていた。

 

【往生際が悪いぞ遊馬!アストラルは死んだ…僕は家族を守る為なら…手段は選ばない!!デュエルを再開する!僕はフィールド魔法「先史遺産都市バビロン」の効果発動!墓地の「アステカマスクゴーレム」を除外して「カブレラの投石機」を守備表示で特殊召喚!】

デュエルを再開したⅢは再び古代の投石機を呼び出す…!

 

 

【僕はこれでターンエンド…遊馬、君のライフは残り400…君をかっとビング諸共捻じ伏せてやる!!】

Ⅲは遊馬を追い詰める…その時、遊馬は…泣いていた。

 

 

「許さねぇ…!Ⅲ…お前は絶対に許さねぇ─!!」

遊馬は叫ぶ…アストラルを失った悲しみ、アストラルを守れなかった自分への怒り…その強い思いが遊馬の魂に火を点ける!!

 

 

「かっとビングだ…!オレぇぇ!ドロー!!」

 

─考えろ遊馬…「今」何をすべきなのかを…!─

 

「(アストラル…!そうだ、お前はオレの心の中にいる…!思い出せ…アイツの言葉を…!)」

遊馬の脳裏にアストラルとの日々が蘇る…アストラルは仮に自分が消えてしまっても大丈夫なように「デュエルの心得」を伝えていた…それを遊馬は思い出す…!

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

(遊馬、私達は以前、白野に敗北したな?)

 

「ああ…あの時は『ホープ』を手に入れたばっかりで浮かれてたからなー」

 

(それだけではない、あの時の君は白野の『狙い』に気付く事ができず、彼のペースに持っていかれてしまった…どんなに強いデッキを作ってもペースを得られなければ…勝利を掴む事はできない、あの時の白野は次のターンのエクシーズ召喚を見据えてモンスターを守っていた…あの時の『正解』は「ゴゴゴゴーレム」を攻撃表示で召喚し…『アルトリウス』の攻撃を『燃える闘志』でカウンターするべきだったのだろう…)

 

「…よくそこまで覚えてるな…ていうか『ホープ』を出したのはお前の指示じゃ…?(汗)」

 

(…コホン、とにかく…敵の狙いを見極め、それを阻止しろ…あとは…)

 

「あとは…?」

 

(フッ…君らしく「かっとビング」すればいい…!)

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「Ⅲの狙いは『カブレラの投石機』と『マシュマック』のコンボ…それを阻止するには…どちらかを破壊するしかねぇ…!!」

アストラルの言葉を思い出した遊馬はフィールドを見渡す…Ⅲの場には相手の攻撃力を下げる『カブレラの投石機』に攻撃力が変動した時にダメージを与える『マシュマック』…どちらかを破壊しなければ、遊馬は負けるだろう…だが、遊馬にはまだ…『希望』が残っている!

 

キン─

 

「これは…!?」

遊馬のエクストラデッキが光を放つ…そこに()()()()()が残っていた…!

 

「ありがとよアストラル…いくぜ…!お前との記憶がオレの血だ!オレの肉だ─!」

アストラルの残した希望と共に遊馬は戦いに臨む!!

 

 

「オレは装備魔法『ガガガリベンジ』を発動!墓地の『ガガガマジシャン』を特殊召喚してこのカードを装備!さらに『フルエルフ』を召喚!そして効果発動!手札のレベル2モンスター『オーバーレイ・イーター』を墓地に送る事でレベル2の『フルエルフ』のレベルは2から4にアップする!!」

 

【なに…まさか!?】

 

「そのまさかだ!!オレはレベル4の『ガガガマジシャン』と『フルエルフ』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

39

 

「現れろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

 

《ホォオオープ!!》

遊馬とアストラル…2人の思いを背負い、希望の戦士が現れる!!

 

 

【馬鹿な…「ホープ」だと!?】

 

「こいつが…アストラルの残してくれた最後の希望だ─!!」

現れた「ホープ」にⅢが驚愕する、基本的に遊馬はアストラルが近くにいなければナンバーズを使う事ができない…だが、アストラルが消滅の間際に最後の希望として遊馬のデッキに残していたのだ…!

 

【…希望だって…?まだそんなものがあると思っているのか!?】

 

「ああ、あるさ!!オレの心の中に!!決して消えない『希望の炎』が…アストラルが残してくれたかっとビングだ!!装備魔法『ガガガリベンジ』のさらなる効果発動!このカードを装備したモンスターがエクシーズ素材となった時!そのエクシーズモンスターの攻撃力を300アップする!」

アストラルが残し、遊馬が継いだ希望が炎となって『ホープ』を包み込む!

 

「バトルだ!『ホープ』で『マシュマック』を攻撃!ホープ剣ツインブレード・シュート!!かっとビングだ─!!!」

 

【なにっ─!?ぐあぁぁ─!?】

「ホープ」がホープ剣を投擲する…投げ放たれた希望の剣は「マシュマック」を直撃…古代都市を撃ち落とした!!

 

 

【馬鹿な…アストラルがいないのに、ここまでのデュエルを…!?】

 

「理屈なんかじゃねぇ…これがオレとアストラルの力だぁぁ!!」

アストラルのいない状態で「マシュマック」を撃破した遊馬…アストラルと共に戦い抜いた数多の決闘の経験が遊馬を1人の決闘者として成長させていたのだ。

 

【許さない…許さないよ!遊馬!!僕の力は「マシュ=マック」だけじゃない!!】

Ⅲは怒りを露わにする…そしてついにトロンから渡された切り札が遊馬に牙を剥く!!

 

 

06

 

【これがトロンから受け継いだ…僕の新しい力だ!現れろ!「No.6」!「先史遺産─アトランタル」!!】

 

「でかい…!これが、Ⅲの新しいナンバーズ…!?」

Ⅲの場に巨大な山岳型のオブジェが現れて展開…右肩には巨大な火山、そして灼熱を纏う手足を持つ超弩級ナンバーズ…「アトランタル」が現れる!

 

 

【「アトランタル」の効果発動!このカードがエクシーズ召喚に成功した時!墓地の「No.」モンスターを装備し、その攻撃力分自身の攻撃力をアップする!!】

 

「なんだって!?」

墓地から引きずり出された「マシュマック」が「アトランタル」の腹部にある窪みにはめ込まれる…その攻撃力は…5000…!!

 

 

【バトルだ!「アトランタル」で「ホープ」を攻撃!ディヴァイン・パニッシュメント!!】

 

「させるかよ!『ホープ』の効果発動!ムーンバリア─!!」

アトランタルの火山から放たれた『天罰』の名を冠する竜巻をホープが受け止める!!

 

【まだだ!「アトランタル」のさらなる効果発動!ORUを1つ使い!相手のライフを半分にする!!オリハルコン・ゲート!!】

 

「っ!?うわああ!!?」

 

「遊馬─!!」

アトランタルの巨大な拳が遊馬を殴りつける…残りライフは…僅か200…!

 

 

【これで君のライフは残り200…今度こそトドメを刺してやる!】

 

「さ、させるかよ…!オレは…絶対に諦めねぇ!!」

痛む体を引きずりながら遊馬が立ち上がる、どんなにボロボロになろうと…遊馬は諦めない!

 

 

「オレのター…っぐ…!腕が…!」

カードを引こうとした遊馬が顔をしかめる…先程の攻撃で右腕を捻ってしまったようだ…!

 

「これくらいの、痛みで…!諦めて、たまるかぁ…!」

遊馬の魂の炎は消えていない…だが、身体が悲鳴をあげる…その時だった。

 

キィン─

 

「あっ…お守りが!」

小鳥が握っていたカルトゥーシュが彼女の手を離れ、遊馬のもとへと飛んでいく─

 

「っ…!これ、白野のペンダント…!どうして…?」

キィン…

 

遊馬は目の前に現れたペンダントを手に取る…するとペンダントから優しい光が放たれて遊馬の傷を癒やしていく…

 

【なっ…!マジックアイテム…?白野にそんな力が…!】

 

「…ありがとよ白野…!アンタの応援…無駄にはしねぇ!」

右腕の痛みが取れた遊馬は「アトランタル」へと戦いを挑む!

 

 

 

「オレのターン!見てろよアストラル…ここからが…オレの本当のデュエルだ!!オレは『ホープ』1体でオーバーレイネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!」

 

39

 

「現れろ!『CNo.39』!混沌を光に変える使者…『希望皇ホープレイ』!!」

 

【ついに現れたか…!】

遊馬の場に漆黒の希望の剣士が現れる!!

 

 

「(『ホープレイ』…お前の力なら、きっとⅢの目を覚ましてくれる!!)さらにオレは墓地の『オーバーレイ・イーター』の効果発動!このカードを除外して『アトランタル』のORUを『ホープレイ』に吸収する!!」

現れたカメレオンの幻影が『アトランタル』のORUを奪い取り『ホープレイ』に投げ渡す!

 

「これで『アトランタル』の効果は発動できない!さらに『ホープレイ』の効果発動!ORUを1つ使うごとに自身の攻撃力を500アップし、相手の攻撃力を1000ダウンさせる!オレはORUを3つ使って効果発動!オーバーレイ・チャージ!!」

『ホープレイ』の体が眩い光を纏い、希望の大剣を構える!

 

 

「バトルだ!『ホープレイ』で『アトランタル』を攻撃!ホープ剣カオス・スラッシュ─!」

 

【くっ…!アストラルがいないのにここまでの強さを…だが!これくらいの展開は読んでいたさ!リバース罠「雷雲の壺(サンダー・ポット)」を発動!オーパーツモンスターへの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する!】

 

「なんだって!?」

Ⅲのフィールドに現れた壺から電撃が飛び出し、「ホープレイ」の攻撃を中断させる…!

 

【「ホープレイ」の攻撃でも…僕には届かなかったようだね?】

 

「まだだ…まだオレは諦めねぇ!!カードを伏せてターンエンド!」

遊馬はカードを伏せてターンを終える…!

 

 

【諦めが悪いね遊馬…!『ホープレイ』の効果はターンが終われば消え、「アトランタル」の攻撃力は再び5000に戻る…!もう君に勝ち目はない!!僕のターン!ド──】

 

ズキン!

 

【っぐぅぅ…!?これ、は……!】

カードをドローしたⅢの胸に痛みが襲う…それは強力なナンバーズである「アトランタル」を操る為の副作用だった…。

 

 

 

 

Sideトロン一家

 

 

 

『ああああ…!!』

遊馬との決闘前…トロンによって紋章の力の強化を受けるⅢ…その最中、トロンがⅢへと語り掛ける。

 

 

【いいかい?Ⅲ…この紋章の力を得る事によって君は『No.6先史遺産─アトランタル』を操る事ができるようになる…だが、このカードは君に強大な力を与える代わりにキミの精神と肉体に大きな負担を与える…構わないね?】

 

『は、い…かまいません…!僕は遊馬に勝って、貴方の期待に…!!』

Ⅲは苦しみながらトロンへと答える…。

 

「キミは強い子だ…君ならきっと『アトランタル』を制御できる…その助けになるように()()()()力をあげよう…!」

 

キィン─!

 

『それ、は…?』

トロンの手の上に小さな赤い光の玉が現れる。

 

「これは()()()()()の力のカケラさ…なかなか強い力を持っていたから()()()()()()()んだ、この力は()()()()()()を制御する力…きっとキミの力になるはずさ…!」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

【(これがナンバーズの力の代償…!でも、このくらいの、痛みなら…!)僕は…トロンの期待に…!答えなきゃならない!!「アトランタル」の効果発動!自分のスタンバイフェイズにORUがない時…!お互いのライフを半分にする!!】

 

ドドド…ドオォォン!!

 

「なっ!?うわああー!?」

 

【ぐあぁぁ…!】

Ⅲの宣言と共に「アトランタル」の火山が噴火…灼熱の噴石が両者のライフを削る…だが、それだけではなかった…!

 

 

「っ…!Ⅲ…!まだ、オレのライフは残ってるぜ…!」

吹き飛ばされた遊馬はなんとか立ち上がる…残りライフは僅か100となってしまった…!

 

【っ…はぁ、はぁ…ぐっ…!?】

 

ギィン─

 

「Ⅲ…!?その姿は…!!」

同じく吹き飛ばされたⅢもなんとか立ち上がる…だが、彼の顔にはオレンジ色の紋様が刻まれ…苦しそうにうめき声を漏らしている…!

 

【僕に、構うな…!これは…僕が得た力の代償…!でも、この身が引き裂かれようと…僕は家族を守る!!】

 

「Ⅲ…お前…そこまでして…!」

 

【遊馬…この攻撃で君に勝つ!!「アトランタル」で「ホープレイ」を攻撃!!ディヴァイン・パニッシュメント─!!】

 

「まだだ!!リバース罠『バトル・ブレイク』!!バトルを強制終了させ…そのモンスターを破壊する!」

 

【罠カード…!!(このカードを使うしかないか…!)】

Ⅲは自身の伏せカードを見る…それは「アトランタル」と共にトロンから()()()として渡された切り札…Ⅲは一瞬、その使用を躊躇したが…

 

 

【僕はどんな手を使っても…遊馬に勝つんだ!永続罠『アンゴルモア』を発動!!装備魔法となっている「マシュマック」を破壊する事で罠の発動を無効にし…破壊する!!】

 

「なにっ!?『アトランタル』の攻撃力を下げてまで…!?」

「バトルブレイク」のカードが砕け散る…!

 

【君のライフは残り100…この一撃で十分だ!!攻撃を続行しろ!「アトランタル」─!!】

 

「諦めて…たまるかぁぁ!!罠カード『ハーフ・アン・ブレイク』を発動!『ホープレイ』の戦闘破壊を無効にし!受ける戦闘ダメージも半分にな…うわああ─!!」

 

「「遊馬!!」」

『ホープレイ』を泡のバリアが包み込みダメージも半減した…だが、遊馬は再び激しく吹き飛ばされる…!

 

 

【遊馬…君は、まだ…っ!?ぐあああああ!?!?】

遊馬のしつこさに苛立つⅢ…その肉体を「アトランタル」の副作用が蝕み、全身を激痛が包み込む!!

 

 

【ぐぅぅ…!まだ、だ!本当の、僕の力をみせてやる…!】

 

「やめろ…やめろよⅢ!!オレ達は友達になれたんじゃないのかよ!!」

遊馬はⅢへと叫ぶ…デュエルをして、一緒にご飯を食べた…それを「友達」と言わずしてなんと言うのかと…。

 

【僕に、友達なんて必要ない…!】

 

「オレはもっとお前と話したい!!お前や白野と一緒に…お前の家族やオレの父ちゃんの事を!!…白野と会うのが怖いなら一緒に謝りに行ってやる!!それが『友達』だ!!」

 

【遊馬…ありがとう…】

遊馬の心からの言葉を聞いたⅢは一筋の涙を零す…どんなに傷付こうとⅢとわかり合おうとした遊馬…その熱い心が…「かっとビング」の精神が閉ざされていたⅢ…ミハエルの心を開いたのだ…だが、それは…

 

()()()()()()()()()…】

 

ギィン─!

 

「なっ…!?空に紋章が…!!」

Ⅲの言葉と共に空が暗雲に覆われ、紫色に輝く紋章が展開される…!!

 

【「アンゴルモア」のもう1つの効果…次の僕のターン、お互いに「アンゴルモア」の効果で破壊された装備魔法を装備していたモンスターの攻撃力が変化した分のダメージ…つまり「マシュマック」の攻撃力分、2400ダメージをお互いに受ける…このデュエルは相討ちになる】

紋章が紫色の光の玉となり「アトランタル」の腹部に収められ、明滅する…まるで時限爆弾のように…

 

【相討ちといってもただではすまないだろう…ナンバーズ同士があれだけ戦いを繰り広げたんだ…下手をすればこの周辺が吹き飛ぶだろう…】

 

「なっ!?なんだって!?」

Ⅲの言葉に遊馬は驚愕する、異世界の力であるナンバーズ同士がぶつかりあった結果で生じたエネルギー…それは核に相当する力となっていてもおかしくない…!

 

【僕はそれでも構わない…!僕の犠牲で家族が元に戻るなら…】

 

「Ⅲ…お前…」

Ⅲは穏やかな表情で遊馬に告げる…だが、事態はそれ以上の影響をもたらし始める…!!

 

 

 

「な、なぁ…!なんだか、やばくないか…?」

 

「闇が迫ってきてる…!?」

デュエルの行方を見守っていた鉄男達が声を上げる…紋章が出現した直後から周囲の景色が闇に飲まれ…消滅するように消えてしまっているのだ…!

 

「な、何を言っているんですか…!これは『AR』ですよ?現実ではこんな事…こんな……えっ…?」

あまりの恐ろしい光景に等々力はDゲイザーを外すが…()()()()()()()()()()、空は暗雲に覆われ、「アトランタル」と「ホープレイ」が睨み合い…闇が全てを飲みながら迫り来る…そんな絶望的な光景が広がっていたのだ…!

 

「嘘、だろ…!?こんな事…ありえねぇ!!」

 

「ゆ、遊馬!!大変よ!これはARビジョンじゃないわ!本当に闇が迫って来てる─!!」

 

「な、なんだって!?」

小鳥の言葉を聞いた遊馬も慌ててDゲイザーを外す…Dゲイザーを外しても…本当に風景は変わらなかった…!

 

 

「おい!Ⅲ!!」

 

【お、おかしい…!僕にはカードを実体化させる力はない…!それに闇なんて…まさか、次元の扉が開こうとしてるのか!?…止まれ!!「アトランタル」─!!】

 

ギィン─! ギン─!!

Ⅲも緊急事態を感じて「アンゴルモア」の制御を試みる…だが、その力は制御しきれない!!

 

【そんな…!!いくらなんでもこれは…!トロン─!!】

Ⅲは叫ぶ…自分がどうなってもⅢは家族を守ろうとした…だが、まさか()()()()()()にする程の力とは思っていなかったのだ…!

 

 

ゴゴゴ…ガラガラガラ…!!

 

 

【「「「う、うわああああ─!?」」」】

闇はついに遊馬達の足場を飲み込み…遊馬達は次元の狭間へと落下した…。

 

 

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

【…どうやら、Ⅲはあのカードを使ったようだね】

 

『まさか…「アンゴルモア」をⅢに渡したのですか!?』

トロンの言葉にⅤは驚愕する…「アンゴルモア」はトロンの力の一部を使って作られた「禁断のカード」…その力は…!

 

【「アンゴルモア」はバリアン世界への扉を開くカード…発動すれば止める事はできない、しかも…ふふっ、白野の力と相性が良いようだ…!!】

トロンは笑う…世界を滅ぼす力を前にして…その瞳は狂気に塗れていた…。

 

 

 

SideOut

 

   

 

 

 

 

「おい!?これはどういう事なんだⅢ─!!」

突然の急展開に考えが追いつかない遊馬は落下しながらⅢを問い詰める…!

 

【…このデュエル、このままでは異次元への扉が開いて…全てが吸い込まれる…!僕達だけじゃない…人間界の全てが…異次元に飲み込まれてしまう!!】

 

「「「なんだって─!?」」」

Ⅲは冷静に状況を遊馬達に伝える…。

 

 

【僕は…僕は、世界が世界が滅びる事なんて望んでなかった…!!許してくれ…遊馬…!】

Ⅲは遊馬に謝罪し涙を流す…世界を滅ぼす力の前になす術は…ない

 

 

 

「かっとビングだぁぁ!!」

 

 

 

【えっ…?】

突然、遊馬が声を張り上げる…その言葉は不屈の合言葉…遊馬はまだ諦めてはいない!!

 

 

「Ⅲ、このままじゃ次元の扉が開くって言ったよな…なら!オレがお前に勝ってそいつを止めてやる!!」

 

【無理だ…!「アトランタル」は僕のライフが1000以下の時に戦闘では破壊されず…バトルダメージも無効になってしまう…もう、僕達は終わりなんだよ…!】

 

「っ…!?」

Ⅲから語られる「アトランタル」の効果の全貌…その強力さに遊馬はたじろぐ…だが、それは一瞬の事…遊馬はⅢを見つめながら叫ぶ!

 

「冗談じゃねぇ!!まだデュエルは終わってねぇ…だからオレは諦めない!!白野やアストラルだったら…絶対に最後まで諦めない!!絶対に勝つ気で……あっ─!?」

絶体絶命の窮地…その瞬間に遊馬は1つの可能性を思い出す、ドローカードを創造する事で勝利への道を照らす絆の奇跡…その名は…

 

 

「ゼアルだ…!」

 

【ゼアル…?】

 

「オレとアストラルが起こした奇跡の力…その力なら、この状況を乗り超えられる…でも、アイツは…」

遊馬とアストラル…2人の絆によって誕生する「最強のデュエリスト」…だが、アストラルがいない今、その力を使う事はできない…だが、Ⅲが思わぬ言葉を口にする…!

 

 

【…遊馬、本当に僅かな可能性だけど…アストラルを呼び戻せるかもしれない…!!】

 

「本当か!?」

Ⅲの言葉に驚く遊馬…Ⅲは自身の「紋章」を遊馬に見せる。

 

【アストラルはこの「紋章」の力で消えた…なら、この力をアストラルと繋がりのある遊馬に流し込めば…アストラルは復活できるかもしれない…!】

 

「Ⅲ…やってくれ!アイツが本当に戻って来るのなら!!」

 

【…これは大きな賭けだ…!君が「紋章」の力を制御できるとは限らない…下手をすれば力に取り込まれて…命を落とすかもしれない…!】

 

「構わねぇ!!アストラルが帰って来るなら…オレはどんな事だってやってやる!!」

遊馬は覚悟を決める…アストラルを取り戻す為に遊馬は命を懸ける!!

 

 

【(…遊馬に紋章の力を与える事ができたとしても…僕は()()()()()()()()…それでも僕は…遊馬を、()()を助けたい!!)いくよ、遊馬!!】

 

「Ⅲ…頼む!!」

落下し続ける中…遊馬とⅢは手を繋ぐ、そして…

 

 

ギィン─バリバリバリバリ!!

 

 

「う、があ"あ"あ"あ"あ"あ"!?!?」

 

遊馬へと激痛が襲いかかった…!

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「(痛い…いたいいたいいたいイタイイタイ痛い─!!!!)」

Ⅲによって遊馬に紋章の力が流し込まれる…しかし、それは想像を絶する激痛…雷に打たれ続けるような…全身を炎に包まれるような痛みが遊馬を蹂躙する!!

 

「(痛い…!!でも、アストラルが帰ってきてくれるなら…!!こんな痛み─!!)」

痛みを耐える遊馬の脳裏にアストラルとの日々が蘇る、突然の出会い…危険と隣り合わせのデュエル…喧嘩しながらも支えあって掛け替えのない「友」となったアストラル…彼を救う為に遊馬は苦しみに耐え続ける…!

 

キィン─

 

─力に抗うな、エネルギーの流れを意識して…呼吸を整えろ─

 

「白、野…?」

本当ならいるはずのない遊海の声が遊馬の脳裏に響く…

 

─少しだけ力を貸そう、お前ならこの力を制御する事ができる…あとは「想い」だ…叫べ、遊馬…取り戻したいものの名を…!!─

 

「オレは……!もう一度…!お前に会いたいんだ…!だから…こんな紋章の力になんて…負けてたまるかあぁぁ!!」

夢か現か…痛みに慣れた遊馬は呼び掛ける…掛け替えのない友の名を─!

 

 

「かっとビングだあぁぁ!!戻って来い…アストラル──!!」

 

次元の狭間に遊馬の叫びが響いた─…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Side???

 

 

 

キィン─…

 

 

(ここ、は…?私は…)

アストラルが目を覚ますとそこは見慣れた青の世界…皇の鍵の異空間だった。

そしてアストラルは思い出す…自分はⅢの紋章の力によって消えてしまったはずだと…。

 

 

(なぜ…私は生きている…?)

 

『…アストラル』

 

(っ!?貴方は…!)

自分以外がいないはずの異空間に優しげな男の声が響く…そこにいたのは行方不明になっているはずの九十九一馬だった…。

 

『アストラル…俺の息子が呼んでいる、助けてやってくれ…お前達ならきっと乗り超えられるはずだ』

 

キン─

 

(あっ…待って…!)

アストラルが声を掛ける間もなく、一馬は姿を消す…そして…

 

─戻って来い!アストラル─!!─

 

(遊馬…!)

異空間に遊馬の叫びが響く…そしてナンバーズを通してアストラルは遊馬の状況を知る…!

 

(いま行くぞ…遊馬!!)

 

青の閃光となったアストラルは飛び立つ…自分を待つ、仲間達のもとに…!!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

キィィン─!

 

 

「あ…皇の鍵が…!!」

遊馬の叫びと共に皇の鍵が眩い光を放つ…そして─

 

(…遊馬)

 

「アストラル…!お前…!!」

光の粒子と共に光を纏う人影が現れる…それは紛れもなく遊馬の相棒…アストラルだった…!

 

 

(君の声が聞こえた…勝つぞ!)

 

「グスッ…!お前…いっつも、偉そうに─!!」

いつもと変わらない調子のアストラルに遊馬は涙を拭う…最強コンビがついに揃った!!

 

 

「やった!アストラルが…アストラルが帰ってきた!!」

 

「「「やったぁぁ!!」」」

 

【遊馬…これが君の力なんだね、デュエルを決して諦めず…仲間と共に戦う、絆の力…!】

遊馬達の様子を見たⅢは理解した、遊馬の持つ全てを照らすような「光」…その源である「かっとビング」の強さを…。

 

 

ギィン─バリバリバリ…!

 

【っ…!うあ"あ"あ"あ"!!!】

 

「Ⅲ!!」

遊馬達を見守っていたⅢに対して「アトランタル」が攻撃を仕掛ける…!遊馬に「紋章」の力を譲り渡した事で「アトランタル」の制御が不可能になり暴走を始めてしまったのだ…!!

 

 

【遊馬…アストラル…!僕に、構うな…!!「アトランタル」を止めてくれ─!!】

ナンバーズの力に囚われながらⅢは叫ぶ…残された最後の希望を信じて─

 

 

(彼の思いを無駄にしてはならない…遊馬、ZEXALだ!!)

 

「おう!!行くぜ!アストラル!!」

世界を…Ⅲを救う為に遊馬とアストラル、2人の絆が奇跡を起こす!!

 

 

オレは!オレ自身とアストラルでオーバーレイ!!オレ達2人でオーバーレイネットワークを構築─!!

 

「遊馬!?アストラル!?」

遊馬とアストラルが赤と青の閃光となって次元の狭間を駆け巡る!!

 

遠き2つの魂が交わる時…語り継がれし力が現れる!!

 

 

エクシーズチェンジ!ZEXAL!!

 

 

遊馬とアストラル…その魂が、体が1つとなる…現れるのは赤き鎧を纏う伝説の戦士…「ZEXAL」!

 

 

 

「遊馬とアストラルが…合体しちゃった!?」

 

「ま、マジかよ!!」

仲間達はZEXALの姿を見て驚愕する…これがZEXALが始めて人の目に触れた瞬間だった…。

 

『行くぜ…アストラル!』

ZEXALはデッキトップに手を掛ける!

 

最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!!シャイニングドロー!!

 

光の軌跡と共に「勝利の方程式」を完成させるカードがドローされる!!

 

『来い!!「ZW─不死鳥弩弓(フェニックス・ボウ)」!!』

紅蓮の炎を纏いながら機械仕掛けの不死鳥が飛翔する!

 

『このモンスターは手札から装備カードとして『ホープレイ』に装備できる!チェンジ!フェニックス・ボウ!!』

不死鳥が巨大な弓へと変化し、ホープレイに装備される!

 

『このカードを装備した「ホープレイ」が攻撃する時!戦闘ダメージを無効にして相手モンスターを破壊し!1000ダメージを与える!!バトルだ!「ホープレイ」で「アトランタル」を攻撃!!』

ホープレイが不死鳥弩弓にホープ剣を装填し、全身を使って弦を引き絞る!!

 

『いっけえぇ!!フェニックス・フィニッシュ──!!』

 

紅蓮の矢となったホープ剣がアトランタルへと放たれる…アトランタルは巨大な拳で迎撃するが、紅蓮の一撃はアトランタルの拳を粉砕…『アンゴルモア』の核ごとアトランタルを粉砕…大爆発を起こす!!

 

 

(この爆発は…まずい!!威力が大き過ぎる!!)

 

『っ…!?小鳥!みんな─!!』

 

遊海の力によって強化された『アンゴルモア』…そのエネルギーは想定以上の強さとなって遊馬達に襲いかかり──

 

 

 

 

 

王を迎えるは三賢人!紅き星は滅びず!ただ愚者を滅するのみ!荒ぶる魂よ…天地開闢の時を刻め!現れろ「スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン」!!

 

 

《ゴオオオァァァ!!》

 

 

 

 

 

 

Ⅲ LP0

 

遊馬&アストラル WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

【馬鹿な…!Ⅲが、負けた…だと?】

 

『トロン…!』

トロンは紋章を通してⅢの敗北…そして『アンゴルモア』によって開いた次元の扉が砕けた事を知る…。

 

【何故だ…!Ⅲには充分過ぎる力を与えたはず…!九十九遊馬…!一馬の息子…!!】

トロンは遊馬への認識を改めた…明確な邪魔者の1人として…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「っ…うぅ…オレは…」

意識を失っていた遊馬は目を覚ます…そこは普段の景色へと戻った海上道路だった、近くには仲間達の姿もある…。

 

 

「みんな!大丈夫か!?」

 

「遊、馬…?」

 

「ここは…元の場所ウラ!!」

 

「助かったんだ!…やった〜!!」

遊馬の声で目覚めた仲間達も無事に目覚めお互いの無事を喜びあう!

 

 

「オレ…勝てたのか…?」

 

(ああ、私達の勝利だ…少し予期しない事もあったがな)

 

「アストラル!」

遊馬の側にアストラルが現れる…。

 

「予期しない事って何があったんだ…?オレ達は『アトランタル』の爆発に巻き込まれて…」

 

(…爆発に巻き込まれる直前、巨大なドラゴンが私達を守ってくれたのだ…私も一瞬しか見えなかったが…)

 

「そうだったのか…あっ…そうだⅢは!?」

遊馬は辺りを見回す…Ⅲは少し離れた場所に倒れていた…。

 

 

「Ⅲ!大丈夫か!?」

 

『遊馬…ありがとう、「アトランタル」を止めてくれて…』

遊馬はⅢを助け起こす…多少の怪我をしているがⅢは満足気な表情をしていた…。

 

 

『遊馬、君はありのままの僕を認めてくれた…僕の最初で最後の友達だ…』

 

「Ⅲ…」

 

『遊馬、頼みがあるんだ…僕の家族を救ってくれないか?』

 

「えっ…?」

Ⅲの言葉に遊馬は驚く…Ⅲは穏やかな表情で言葉を続ける…。

 

『君のかっとビングなら、復讐で変わってしまった兄様達を…父様をきっと…─』

 

キィン─

 

そう言うとⅢはいつかのようにワープホールの中に消えてしまう、彼のいた場所には2枚のナンバーズ…そしてハートピースが残されていた…。

 

 

「…Ⅲ、お前の思い…無駄にはしないぜ…!」

遊馬はハートピースを拾い、自分のハートピースと合わせる…その形は見事にハート型へと完成した…!

 

 

「決勝進出だね、遊馬」

 

「やったな!!」

 

「みんな…」

仲間達が遊馬の勝利…そして決勝大会への出場を祝福する、遊馬は「夢」の実現に1歩近く事ができたのだ…!

 

「ああ…!やってやるぜ!!デュエルカーニバル!かっとビングだ!オレ─!!」

遊馬は完成したハートピースを掲げながら勝利を喜んだ…。

 

 

 

 

(…先程私達を守ったドラゴン…あれは紛れもなく実体化していた…遊海ではない、荒々しい力…いったい誰の…?)

 

 

 

 

 

Sideジャック

 

 

 

『…フン、俺の手を貸すまでもなかったな…手間を掛けた「スーパーノヴァ」』

 

《グオォン…》

遊馬達を見守る1人の男…それはハートランドに起きた異変を感じ取り、解決に赴いたジャックだった。

 

 

『あれが遊海が目に掛けている九十九遊馬か…荒削りだが…フン、WDCが楽しみになったな…だが…』

遊馬とアストラルの姿を見て微笑んでいたジャックが表情を険しく変える…。

 

『相手の小僧の使った奇妙な力…僅かだが…いや、気のせいか、遊海がやすやすと力を奪われる訳がない』

首を振ったジャックはホイール・オブ・フォーチュンに乗ってその場を後にした…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

『ごめんなさい、トロン…』

 

【…いいんだよⅢ、もう休みなさい】

トロンのアジト…そこでⅢはベッドに横たわっていた、その傍らにはトロンの姿もある…。

Ⅲの身体は強すぎる紋章の力によって蝕まれ…限界を迎えていた…。

 

 

『トロン……父様、手を握ってくれませんか…?ずっと、握っていて欲しいんです…』

 

【…大丈夫だよⅢ…ボクはここに居る】

トロンはⅢの手を優しく握る…幼子を寝かしつけるように…。

 

 

『ありがとう…おやすみ…なさい─』

僅かな温もりを感じながらⅢ…ミハエルは眠りに落ちた、楽しかった家族の思い出を夢みながら─…。

 

 

 

 

 

 

【…感情は、失ったはずなんだけどな…これは…『悲しみ』か…?ごめんね、()()()()…ゆっくり眠りなさい】

トロンはしばらくの間、ミハエルの手を握り続けた…。



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戦いを前に〜波乱の兆し〜

こんにちは!S,K です!

お知らせです!ハーメルンの皆様のご愛読のおかげでお気に入り件数500件、さらには通算UAも20万を突破する事ができました!本当にありがとうございます!

つきましては活動報告にて「第三回リクエストアンケート」を開催させていただきます!期限はとりあえず7月1日まで!皆様のリクエストをお待ちしています!


それでは最新話をどうぞ!


Sideトロン一家

 

 

『待てよトロン…!!このオレを強化しろ…Ⅲと同じように!!』

 

『やめなさいⅣ…トロンへの無礼は私が許さない』

トロン一家のアジトにⅣの怒声が響く…Ⅲと遊馬とのデュエルから一夜が明け、事の顛末を知ったⅣがトロンに詰め寄っていたのだ…。

 

 

【…君にもⅢにも…失望したよ】

 

『なんだと…!?Ⅲはなぁ…アンタの為にナンバーズのオリジナルと戦って…あんな姿になったんだぞ…!?』

アジトへと戻ったⅢは眠り続けている…トロンによる紋章の強化、更には強力なナンバーズを無理矢理に制御した代償として目覚めぬ眠りへと落ちてしまったのだ…。

 

【ボクは結果が欲しいんだ、Ⅲは遊馬に勝てなかった…君は…神代凌牙をWDCに参加させたけど…まだ、何かを躊躇しているね】

 

『っ…!俺は躊躇なんか…!』

 

【君には紋章の強化は必要ない…けれど、この力を渡しておくよ】キィン─

椅子に座ったトロンの手に赤色のエネルギーが現れ、Ⅳのもとへ移動する。

 

『これは…?』

 

【とある決闘者から奪った力のカケラさ…それを使いこなして見せてよ、これ以上…ボクを失望させないでくれ】

 

『言われるまでもねぇ…この力で凌牙の野郎と決着をつけてやる…!』キィン─…ギィン

Ⅳは赤色のエネルギーを紋章で吸収した…。

 

 

【(凌牙の心が闇に落ちていなかったのは予想外だった…けれど、この力の真実を知れば…フフフ…!)】

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

Sideカイト

 

 

 

ピッピッピッ…

 

 

「………」

ハートランドタワーの医務室…そこで精密検査を受けていた、身体中に淡い光を放つチューブが取り付けられ規則的に明滅している…。

 

 

《カイト様…これ以上フォトンモードを使用してのデュエルは肉体の限界を越えてしまうでアリマス…!これ以上は…!》

 

「黙っていろオービタル…オレは止まるわけにはいかない…!」

検査を終えたカイトは上着を纏う…フォトンモードの代償によって彼の身体は限界を迎えていた…。

 

 

『やぁ、調子はどうかね?カイト』

 

「Mr.ハートランド…」

医務室のモニターにハートランドの姿が映し出される…。

 

『ナンバーズがハートランドシティに集まり、さぁこれからという時に…君には期待しているのだから…わかっているね?』

 

「…貴方に言われるまでもない…!それよりハルトは大丈夫なんだろうな…!!」

 

『ハルトの事も心配には及ばない、今は静かに眠っているよ…あとは君次第だとも』

 

「わかっている…!」

カイトは拳を握り締める…トロンに攫われて以来、ハルトは目を覚ます事なく眠り続けている…。

 

 

『ああ…そうそう、今夜の前夜祭…待っているからね?ナンバーズ持ちをその目で見ておくのも悪くはないだろう…ちゃんとおめかしをしてくるんだよ!』

 

「前夜祭か…くだらん」

カイトは医務室を離れる…その様子を見ていた少女に気づかぬまま…。

 

 

『カイト…貴方は…』

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

キィン─…

 

「まったくもう…遊馬君、私…ずっと連絡待ってたのよ?それに全身傷だらけじゃないの…」

 

《フォウ、フォーウ!》

 

「…連絡できなくてすいませんでした…」

 

(翠、今回は許してやってくれ…遊馬は昨日家に着くなり倒れるように眠ってしまったのだ…)

 

 

同じ頃、白波家を訪れた遊馬は翠によって回復魔法による処置を受けていた。

Ⅲとの決闘を終えた遊馬は家に着くなり倒れ込み、夕食も食べずに眠ってしまった…それによって預かっていたカルトゥーシュの返却やデュエルの報告を忘れ、翌日の放課後に白波家を訪れた際に翠に体の傷を見抜かれて治療を受けていたのだ…。

 

 

キィン…

 

「うん、これで大丈夫!痛い所はない?」

 

「ああ!これで明日からの決勝でもかっとビングできるぜ!」

遊馬は腕を回しながら翠に答える。

 

「それならよかった…改めて…ありがとうね遊馬君、ミハエル君を止めてくれて…」

 

「ああ…!ミハエル…Ⅲは良いやつだった…!あいつの分までオレは決勝大会で頑張るぜ!!」

 

(それより、白野はまだ…)

 

「うん…まだ寝てるの…身体は遊馬君と同じように治したんだけど…疲れが取れないみたい」

 

「白野…せっかく決勝大会に出られるのに…」

遊馬はダイニングテーブルに目を向ける…そこには今日の夜に開かれるWDC前夜祭の招待状が置かれていた…。

 

「仕方がないわ…実はね、白野さんは飛行船の事件の後にナンバーズとは関係ない闇のデュエルに巻き込まれてしまったの…そこでダメージを受け過ぎてしまったみたい…」

 

「そうだったのか…せっかく決勝大会で白野と戦えると思ったのになー…」

翠の話を聞いた遊馬は残念そうな顔を見せる。

 

(…遊馬、そろそろ帰った方がいいだろう…小鳥達との待ち合わせに遅れるぞ?)

 

「あ…そうだった!!しっかりドレスコンロがあるんだよな!」

 

「ふふっ、それを言うならドレスコードよ!私達の分まで前夜祭を楽しんでくるのよ?招待状は忘れないようにね!」

 

《フォウフォーウ!!》

 

「わかってる!ありがとう翠さん!」

 

そう言うと遊馬は帰って行った…。

 

 

 

「……遊海さん…もう、始まっちゃいますよ…?」

翠は眠り続ける遊海へと声をかける…夕陽に照らされながら遊海は死んだように眠っている…。

 

「アヤカちゃん達も帰ってこない…遊海さんも……ジャック君達が大会が終わるまで居てくれるけど…けど…!」

翠は布団を握り締める…遊海は確実に衰弱し、奪われた力はトロンによって悪用されている…それを止められるのは遊海自身か翠…あるいは…遊海を止めた事のある人物だけだろう…。

 

《フォウ、キュウ》

 

「…ありがとうフォウくん、慰めてくれてるの?」

 

《キュウ…》

フォウも心配そうに翠と遊海に寄り添っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

「うわー…すげぇ、人がいっぱいだ…」

 

夜…遊馬の姿はハートランドの前夜祭会場にあった、会場には決勝進出者を含めた決闘者や大会のスポンサーになっている要人・セレブ達が集まっていた…。

 

「でも、無事に入れてよかった!ゴーシュさんにお礼を言わないとね!」

 

「ああ!俺達まで入れてくれるなんてな!」

 

「とどのつまり最高です!」

遊馬の周りには徳之助を除いたナンバーズクラブの仲間達の姿もある…翠の助言によって遊馬は無事に会場に入る事ができ、本来なら部外者である小鳥達もゴーシュのとりなしで入場が許可されたのだ。(徳之助はハートピース偽造事件でブラックリストに入っており入場できなかった)

 

(この遊園地・ハートランドはDr.フェイカーによって創られた子供から大人まで楽しめる夢の楽園らしい…恵まれない子供達が優先的に招待され、その考えに世界中から惜しみない賞賛が送られている…その人気は海馬ランドに次ぐものになっている…らしいな)

 

「えっ…?なんでアストラルがそんな事知ってんだ??」

突然ハートランドの知識を語り出したアストラルに遊馬が問い掛ける。

 

(どうやらⅢから得たナンバーズはこの世界の全ての知識を得た欠片の様だ…他にも著名な決闘者の経歴や…有名な都市の知識も得ている)

 

「そうなんだ…すごいな、ナンバーズ…」

遊馬がナンバーズの知識に驚いていると…。

 

「見てください遊馬君!『南米の黒豹』ガルシア・パンサーに…『早撃ちガンマン』マイク・ハワード…『昆虫王』インセクト羽蛾…有名なデュエリストばかりですよ!」

 

「へぇ〜、オレにも見せてくれよ!」

等々力が双眼鏡を覗きながら名だたる決闘者達を見つけて興奮している…遊馬も見てみるとライディングデュエリストらしき女性や危ない雰囲気の3人組…フランス風のデュエリストなどたくさんのデュエリスト達が目に入る…そんな時だった…!

 

 

「っ…!あれは…カイト…!それに…Ⅴ!?」

双眼鏡を向けた先…そこには何やら言い争いをするカイト…そして、銀髪の優男…Ⅴの姿があった…!

 

「見つけた…!父ちゃんの事でアイツに聞きたい事があったんだ─!!」

双眼鏡を返した遊馬は人混みの中へと突っ込んだ…。

 

 

 

 

 

Sideカイト

 

 

「貴様…よくもハルトを…!!」

 

『君らしくないな…カイト』

会場の物陰…そこでカイトはハルトを連れ去った張本人であるⅤの姿を見つけ、問い詰めていた…。

 

「ハルトにもしもの事があってみろ…例えオレの師であっても貴様を…!」

 

『許さない…か、だが…私達はトロンの意志に従うだけだ』

 

「トロン…?何者だ…!」

 

『いずれ会うことになる…その前に、こんな身体で、私やトロンに勝つことができると思っているのか?』

 

「ぐっ…!」

カイトはⅤに軽く振り払われる…その少しの力に抵抗できない程カイトの体は衰弱していたのだ…。

 

『さらばだカイト…全ての決着はデュエルでつけよう』

そういうとⅤは人混みに消えて行った…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「やっと会えたな…Ⅳ、いつもの軽口はどうした?」

 

『凌牙…!』

会場外れの噴水広場…そこで凌牙とⅣ、因縁ある2人は対峙する…!

 

「俺はテメェに復讐しようとは思わねぇ…だが!!璃緒を傷付け…白野を裏切った落とし前…きっちりつけさせてもらうぜ!!」

 

『…いいだろう…!凌牙…もう一度お前をぶっ潰してやるよ…!!』

2人は睨み合い、火花を散らした…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「…見失った…」

 

(仕方があるまい…この人数ではな…)

Ⅴを追い掛けた遊馬だったが…あまりの人混みにⅤの姿を見失ってしまったようだ…。

 

「アイツに父ちゃんの事を聞くチャンスだったのに…」

 

(遊馬…)

「一馬はアストラル世界で生きている」…遊馬はその真意を聞きたかった…だが、それは今は叶わない…そんな時…

 

ドン!!

 

「うわっと!?危ねえ!」

 

『あっ…悪い悪い!人探してて前が見えてなかった!!』

 

「気をつけてくれよって…ヒーローみたいなマスクだな…」

人混みの中、遊馬は何者かとぶつかる…それはアメコミ風のマスクを被った学生服の青年だった…。

 

 

『悪かった!なぁ、「鋼の騎士」…メタルナイトを見なかったか?決勝大会に出るって聞いたんだけど…』

 

「メタルナイト…!?み、見てない見てない!たぶん街のパトロールでもしてるんじゃないか?」

メタルナイト…白野の事を聞かれた遊馬は慌てて答える…。

 

『そっか…こんな事なら住所を聞いておくんだったぜ…ありがとよ、じゃあな!』

 

「…何だったんだ…?」

手を振りながら去っていく青年を遊馬は首を傾げながら見送った…。

 

 

((今の男…何処かで…?))

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

『レディース&ジェントルマン!!紳士淑女、決闘者の皆様!パーティーはエンジョイして頂けただろうか!』

前夜祭も終盤となり会場の中心…巨大ケーキの前にMr.ハートランドが現れる。

 

『デュエルカーニバルもいよいよ決勝大会!これからファイナリスト24名の紹介を…』

 

バシン!!

 

『おっと?!照明のトラブルか??』

ハートランドの演説の途中…突如として会場の照明が落ち、真っ黒になる…。

 

 

「なんだろう…演出かな?」

 

「わからねぇ、はぐれるなよ小鳥」

 

 

【アハハ…アハハハー♪】

 

 

バシン!

 

『なっ…君!何処から入ったんだい!?』

スポットライトがケーキの前を照らす…そこでは鉄仮面を被っている少年が笑っていた…。

 

【わあ!おっきいケーキ!ボク、ケーキ大好きなんだ!あはは…えへへ…】

少年は無邪気にケーキの周りをくるくると回っている…。

 

『ど、どうしたのかな…?お名前は?』

ハートランドは少し動揺しながらも少年に問い掛ける。

 

【ボク、トロン!トロンって、いうんだよ…!】

 

『トロン…!?この少年が…?』

ハートランドは困惑する、前夜祭に現れなかった2人のデュエリスト…1人は神出鬼没のヒーロー・メタルナイト…そしてもう1人が少年・トロンだと言うのだ…!

 

 

【えへへへへ…オジサン!】

 

『おじ!?…な、なにかな?』

トロンは無邪気に笑いながらハートランドへと声を掛ける

 

【おじさん、貴方達のこと…ぶっ潰してあげる…!!】

 

『っ!?』

その瞬間、ハートランドはトロンの眼力に気圧される…その瞳は深い狂気を宿していた…!

 

【クフフフフ!フハハハハ!ウフフフフ!ウフフ…ボクね!本当にケーキだーい好きぃ!アハハハハ!……ねえ!そこのお兄ちゃん!】

 

「えっ…オレ…?」

ハートランドの前から離れたトロンは無邪気な…だが狂気を宿した瞳で遊馬を…()()()()()を見る…!

 

【決勝で会おうね!ウフフ…ハハハハ!!】

そういうと照明の点滅と共にトロンは消え去る…そして、前夜祭もそこで終了する事になる…何故かといえば…。

 

 

私の衣装を返せぇぇ─!!

 

しまった!バレたウラぁぁぁ!!

 

…参加者であるノスフェラトゥ中島の衣装を奪った徳之助と本物の中島の追いかけっこで会場が滅茶苦茶になってしまったからだった。

 

 

 

 

 

 

「ひ、ひどい目にあったぜ…本当に徳之助の奴は懲りねぇよな…」

 

「本当ね…」

遊馬と小鳥は仲間達とはぐれたものの混乱中の会場から脱出に成功した…そこには…。

 

 

「あっ…カイト!お前も来てたのか!」

 

「九十九遊馬…」

同じく会場から出てきたカイトの姿があった…。

 

 

「…オレは全力でお前を倒す」

 

「オレもだ!次は絶対に「お前ではない、アストラルだ」ありゃ!?」

カイトの言葉に遊馬はズッコケる…。

 

「アストラル…お前とは必ず決着をつける、じゃあな」

 

(望む所だ…カイト)

三者三様の時間を過ごし…ついに戦いの時は訪れる…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ここは、何処だ…?

 

あやふやな意識の中で遊海は目を覚ます…そこはたくさんの花が咲き乱れる花園だった…。

 

 

…俺は…トロンに…

 

─そう、君は復讐者によって手痛いダメージを受けて眠っているのさ─

 

……誰だ…?…ダメだ、頭が、回らない…

花園に優しげな男の声が響く…聞き覚えのあるような、ないような…そんな声だった。

 

 

─深く考える事はないよ、遊海君…君はどうしたい?魂が欠け、満足に動かない体で…君は最善を目指すのかい?─

 

…俺が、止めなきゃ…あの子達を、守らないと…

 

─自分が死んだとしても?─

 

…俺の戦いは、いつも命懸けだった…いまさら、変わらないよ…

 

─そうかい…なら、少しだけ力を貸してあげよう…なに、キャス…フォウくんを可愛がってくれているお礼…それに良い物語を見せてもらってる代金と思ってくれればいいさ!─

 

…なんだか、少しイライラする…

 

─ごめんね、私は基本的に人でなしなのさ…さて、君が紡ぐ物語…楽しみにしているよ!─

 

…貴方は…?

 

─う〜ん…花のお兄さんと呼んでくれたまえ!それじゃあ頑張りなさい、最善を目指す転生者君!─

 

そのまま遊海の意識は深く落ちていった…。

 

 

 

 

 

「遊海さん!おはよう──遊海さん!?」

 

《フォ!?ファッキュ─!?》

翌朝…翠が遊海の部屋を訪れた時、遊海の姿は部屋から忽然と消えていた…。



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WDC決勝大会開幕!〜胡蝶の騎士と手負いの英雄〜

こんにちは!S,Kです!

久々の連続投稿─!!

ついに始まるWDC決勝大会、そこで待ち受けるものとは…!


それでは最新話をどうぞ!!


パーン!パーン!!

 

 

花火が打ち上がり、盛り上がりをみせるハートランド…今日はWDC決勝大会…その初日を迎えていた。そんな中遊馬は……。

 

 

「ZZZ……フガッ…」

会場であるハートランドの入口で眠りこけていた…。

 

 

 

 

Side九十九家

 

 

 

「遊馬ー!さっさと起きなさい!今日はデュエルカーニバルの決勝なんでしょ─!?」

明里が遊馬を起こす為に部屋へと上がる…だが、遊馬の姿は部屋にはなかった…。 

 

 

「お婆ちゃんー?遊馬知らない?」

 

「ズズッ…遊馬なら「絶対に遅刻できない!」と言ってハートランドの入口で泊まりこんでるよ」

 

「なにそれ…」

マイペースな春の言葉に明里は呆れたようにため息をつく…。

 

「いくら気合いが入ってるからって…あの馬鹿…」

 

《オソウジ、オソウジ…バカの部屋、オソウジ》

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

「フガッ…ぐぅぐぅ…」

 

ギュ!!ギュ厶〜!!  

 

「い、痛ってぇ〜!!?」

ハートランドの入口で熟睡(毛布なし・ダンボール一枚)していた遊馬は頬や耳を引っ張られた痛みで飛び起きる…。

 

 

「もう…なんでこんなところで熟睡してるのよ〜!?」

 

「…小鳥?…みんな…?なんでオレの家にいるんだ…?」

 

「ダメだこりゃ…完全に寝ぼけてやがる」

寝ぼける遊馬の周りには仲間達が集まっていた、決勝大会を観戦しにいく途中…偶然に眠りこける遊馬を見つけたのだった…。

 

「いい加減目ぇ覚ませ!!今日はデュエルカーニバルの決勝だぞ!!」

 

「あっ…そうだった─!?デュエルが始まっちまう─!!」

遊馬は慌てて会場へと走り出した…。

 

 

 

 

「すっげぇ…!こんな場所でデュエルできるのか…!!」

 

(これは…何らかのフィールド魔法か…?)

 

遊馬は会場へと到着する…そこは数万人が収容可能なスタジアム…その中心には24本のレールとジェットコースターらしきものが設置されていた。

 

 

『ハートバーニング!!これよりワールドデュエルカーニバル…決勝大会を開会いたします!!』

 

「「「うおおぉぉ!!」」」

Mr.ハートランドのソリッドビジョンが会場へと現れ、会場は熱気に包まれる!

 

 

『まず最初は名付けて『パークセクション』!ハートランド全体を舞台としたデュエル…デュエル・コースター!!』

 

「デュエルコースター…?」

 

「トドのつまり!ライディングデュエルのようにジェットコースターに乗りながらデュエルするようですね!」

首を傾げるキャッシーに等々力が補足する…。

 

「楽しそうなデュエルだな!かっとビングだ─!」

遊馬は準備をする為にスタジアムの中心へと向かった…。

 

 

 

『さぁ!予選を勝ち抜きし24名のデュエリスト達よ!!己の知力・体力を存分に発揮して戦い抜くがいい─!!』

 

 

「すっげぇ!これがデュエルコースターか!!」

遊馬はハートランドの演説を聞きながらデュエルコースターのもとへ辿り着く…遊馬はわくわくを抑えられないようだった…!

 

『浮かれ過ぎると大怪我をするぞ…デュエルコースターは「遊び」ではない』

 

『ドロワの言う通りだ、これは生きるか死ぬかの真剣勝負だからな!』

 

「あっ…ドロワ!ゴーシュ!」

遊馬に二人組の男女が声を掛ける、それは参加者となった熱いノリを持つ青年ゴーシュと冷静沈着な女性ドロワだった…浮かれている遊馬に忠告しにきたようだが…。

 

『遊馬…お前のノリは嫌いじゃねぇ…存分に楽しもうぜ!!』

 

「ああ!もちろんだ!!」

 

『はぁ…相変わらずだな、お前は…』

相変わらず「ノリ」を重視するゴーシュにドロワはため息をついた…。

 

 

 

続々と集まってくるデュエリスト達…その中にはもちろん、彼らの姿もある…!

 

 

 

『いや〜どうもどうも〜!(キッ!!)』

 

「…(キッ!!)」

凌牙と静かに睨み合うⅣ…

 

 

 

「オービタル、時を止めろ…ナンバーズ持ちを炙り出す!」

 

《カイト様!それでは相手にも…》

 

「0.1秒でお釣りがくる!さっさとやれ!!」

 

《か、カシコマリッ!!》キィン!!

 

『……』

ナンバーズ持ちを見つけようとするカイトにその様子を見るⅤ…

 

 

 

【ふふふ…!】

既にデュエルコースターに座り不敵な笑みを浮かべるトロン…そして…

 

 

 

 

「…なん、とか…間に合ったか…!」

 

 

「えっ…?白…メタルナイト─!?」

 

【『なにっ…!?』】

会場の影から鋼の鎧を纏いしヒーロー・メタルナイト…遊海が決勝大会へと姿を現す!!

 

 

「メタルナイト!!か、体は…!」

 

「よぉ、遊馬…大丈夫、問題ないさ…」

遊海の存在に気付いた遊馬が駆け寄る…。

 

 

「大丈夫って…なんか、変だぜ…?」

 

(………)

遊馬はメタルナイトの姿を見る、本来なら白銀に輝く鋼の鎧…だが、所々が錆びたように変色している…。

 

「心配するな、俺は大丈夫…お前は精一杯、自分のデュエルを楽しんでこい」

 

「メタルナイト…おう!!」

遊海は穏やかな声を掛けながら遊馬の頭を撫でると自分の位置へと向かった…。

 

 

 

【(馬鹿な…白野はバリアン世界へと消し飛ばしたはず…自力で、戻って来たというのか…!?)】

2人の様子を見たトロンは冷や汗をかく…いないはずの男が目の前に現れたのだから無理もないだろう…。

 

【(九十九遊馬より先に…彼をどうにかした方が良さそうだ)】

トロンは瞳を妖しく輝かせた…。

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「(ああ、頭が痛い…瞼が、落ちそうだ…)」

遊海はよろよろとデュエルコースターに座る…大会開始の直前、遊海は目を覚ました…だが、本来なら遊海は身動きの取れる状態ではない。

断続的に頭痛が襲い、指先の感覚はない…それどころか身体を動かすたびに全身を刺されるような痛みが襲いかかる。

それだけではない…トロンによって精霊の力を奪われた事で精霊アーマーも纏う事がやっと…精霊達を実体化させる事もできない…だが、そんな状態でも遊海は動く事ができている…。

 

 

「(変な夢だった…でも、おかげで目覚める事ができた…)」

断片的に残る花園の夢…「力を貸す」と言った誰かのおかげか…遊海は最低限、動く事が可能になっている。

 

「(トロンからひしひしと殺気を感じる…耐えて、くれよ…!)」

呼吸を整えながら遊海はその時を待った…。

 

 

 

 

《様子がおかしい、アイツ…相当無理してるみたいだ》

 

『…()()が無理するのはいつもの事だけど…あれはマジでヤバそうだ…!』

 

心配そうに遊海を見つめる視線に気づかないまま…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

Side Dr.フェイカー

 

 

 

『フフフ…ついにこの時が来た…!』

ハートランドタワーの地下…薄暗い研究所でDr.フェイカーは静かに笑う…。

 

『ナンバーズがついにこの場所へと集まった…!カイトよ!全てのナンバーズを回収するのだ─!』

 

トロンの復讐と共に…危険な陰謀がそこまで迫っていた…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

『さぁ…間もなくゴングが鳴る!!勇者達よ!戦いの準備を整えよ!!』

ハートランドの声が響く…デュエリスト達はそれぞれにデュエルコースターへと乗り込み、DパットとDゲイザーをリンクさせていく!

 

 

『いよいよデュエルコースターに命を吹き込む時が来た!!君達が予選で集めた「ハートピース」はコースターのスタートキーとなっている!!ハートピースをハンドルへセットするのだ!』

 

「ハートピース…セット…!!」

遊海は取り出したハートピースをハンドルへとセットする…そんな時…

 

 

「ない!ナイ!?ハートピースがなぁぁい!?!?」

 

 

「………はぁ、やっぱりか…」

遊馬の慌てた声が遊海のもとへ微かに聞こえてきた…遊馬は遅刻しない事ばかりを考えて…ハートピースを家へと置き忘れてしまったのだ…おそらく明里がバイクで向かっているだろう…。

 

 

『さぁ!ついにこの時が来た…!史上最大の戦いの幕が切って落とされようとしている─!!』

スタジアムの盛り上がりは最高潮…戦いがついに始まる!!

 

 

『5…4…3…2…1!ファイヤァァ!!

 

ドーン!!!

 

 

「コースターデュエル…アクセラレーション─!!」

 

ハートランドの合図と共に1台のデュエルコースターを残し、デュエリスト達の戦いが始まった!!

 

 

 

Side翠

 

 

 

「ああ…!間に合わなかった…!!」

翠がスタジアムへと到着する…だが、デュエルコースターは発進した後だった…。

 

 

《キュウ…キュー…》

 

「遊海さん…!お願い…無事に戻ってきて…!!」

翠はわかっていた、遊海が相当な無理をしている事に…彼女ができる事は…フォウを抱きしめながら遊海の無事を祈る事だけだった…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

パークセクションのルールは大きく分けて4つある

 

 

①デュエルコースターはある程度のスピード調整・進行方向の変更・バック走行が可能。

②同一レーンに2台のコースターがある時にデュエル可能、また同一レーンから離れる事でデュエルを中断できる。

③レーン上には「魔法」「罠」「ドロー」の3つのポイントがあり、通過する事で効果が発動する。

④デュエルに負けたプレイヤーは強制的にコース上から排除される…以上がルールである。

 

 

 

「俺がやる事は変わらない…行くぞ…!!」

遊海は目的の相手に向かって舵をきった…。

 

 

 

『っ…!狙いは私か…!メタルナイト!!』

 

「済まないが…ここで退いてもらう!!」

遊海が追い付いた相手…それはハートランド陣営の1人・ドロワだった…!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP4000

ドロワLP6000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「モンスターをセット!カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 

遊海LP4000

伏せモンスター 伏せ2 手札3

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「幻蝶の刺客モルフォ」を召喚!』

双剣を持ったモルフォ蝶の騎士が現れる ATK1200

 

『さらに戦士族モンスターの召喚に成功した時!「幻蝶の刺客オオルリ」は特殊召喚できる!』

細剣を両手に持った騎士が現れる DEF1700

 

『貴方を相手に手は抜いていられない…!私はレベル4の「モルフォ」と「オオルリ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!現れろ!「フォトン・バタフライ・アサシン」!!』

黒く大きな羽を持つ蝶の暗殺者が現れる ATK2100

 

 

『「フォトンバタフライアサシン」の効果発動!ORUを1つ使い!守備モンスターを攻撃表示に変更し、攻撃力を600ダウンさせる!エキサイト・スケールス!』

黒蝶の鱗粉が遊海のモンスターに降り掛かる…!

 

「セットモンスターは…『方界胤ウィジャム』!攻撃力は0だ!」

青い卵型の身体と羽を持つ悪魔が現れる! ATK0

 

 

『攻撃力0…ならば攻めるのみ!バトル!「フォトンバタフライアサシン」で「ウィジャム」を攻撃!さらに速攻魔法「蛮勇鱗粉(バーサーク・スケールス)」を発動!エンドフェイズまで攻撃力を1000アップさせる!バタフライ・デス・ダンス!!』

黒蝶が赤い鱗粉を纏い「ウィジャム」へと迫る!

 

「罠カード『方界降世』を発動!相手の攻撃宣言時!デッキから『方界胤ヴィジャム』を特殊召喚し、攻撃対象をそのモンスターに移す!そして『ヴィジャム』は戦闘では破壊されない!!」

 

『なにっ…!?』

現れた2体目の「ヴィジャム」が攻撃を受け止める! DEF0

 

 

『一筋縄ではいかないか…!私はカードを伏せ、ターンエンド!「蛮勇鱗粉」の効果で「フォトンバタフライアサシン」の攻撃力は2000ダウンする!』

 

フォトンバタフライアサシンATK3100→1100

 

ドロワLP6000

フォトンバタフライアサシン 伏せ1 手札2

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

「永続魔法『方界(カーマ)』を発動!手札の『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』を墓地に送り1ドロー!さらに墓地の『方界降世』の効果発動!自分のライフが相手より2000以上少ない時!墓地のこのカードを除外してデッキから3体目の『ヴィジャム』を特殊召喚!」

 

『くっ…!「魔法ポイント」でライフを回復したのが仇になったか…!』

3体目の「ヴィジャム」が現れる ATK0

 

 

『オレは3体の「ヴィジャム」をリリース!降臨せよ!「方界超獣バスター・ガンダイル」!!』

3体の「ヴィジャム」が寄り集まって合体…東南アジアの寺院を思わせるモンスターが現れる! ATK0→3000

 

 

『攻撃力3000…!』

 

「バトルだ!『バスターガンダイル』で『フォトンバタフライアサシン』を攻撃!」

『バスターガンダイル』の塔が凄まじい勢いで回転…凄まじい熱を持った光線が襲いかかる!

 

『罠カード「幻蝶の護り」を発動!「フォトンバタフライアサシン」を守備表示に変更!このターン私の受けるダメージは半分になる!くぅ…!!』

光輝く蝶の鱗粉がドロワを守る!

 

フォトンバタフライアサシンATK1100→DEF1800

 

 

「まだだ!『バスターガンダイル』はバトルフェイズ中3回まで攻撃できる!」

 

『なんですって!?うあああ─!!』

再び放たれた光線がドロワのライフを削る!

 

ドロワLP6000→4500→3000

 

 

「俺はこのままターンエンド!!」

遊海LP4000

バスターガンダイル 方界法 伏せ1 手札2

 

 

 

『くっ…強い…!!これが「鋼の騎士」の力…!!(でも…私は負ける訳にはいかない!カイトの為に!!)』

ドロワは…1人の女性として天城カイトに好意を抱いている…キッカケは些細なものだった、それでも彼女はカイトを愛し続ける…例え、それが片想いに終わろうと…!

 

『(これ以上カイトが戦わなくて済むように…私が…!!)』

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!!』

「魔法カード『死者蘇生』を発動!甦れ!『幻蝶の刺客モルフォ』!」

再びモルフォ蝶の騎士が現れる ATK1200

 

『さらに魔法カード「戦士の生還」を発動!墓地の「オオルリ」を手札に加える!さらに「幻蝶の刺客アゲハ」を召喚!』

両手に槍を持つアゲハ蝶の騎士が現れる ATK1700

 

『さらに手札の「幻蝶の刺客オオルリ」を特殊召喚!』

再びレイピアを持った騎士が現れる ATK0

 

 

『私はレベル4の「アゲハ」「モルフォ」「オオルリ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!闇を舞う…美しき死の化身!「ナイトバタフライ・アサシン」!!』

青い羽を持つ蝶の暗殺騎士が現れる! ATK2600

 

『「ナイトバタフライアサシン」の効果発動!ORUを1つ使い!フィールドのORUの数1つにつき、自身の攻撃力を400アップする!存在するのは自身の2つ…攻撃力3400よ!!』

ドロワの強い『愛』が奇跡を引き起こす!

 

ナイトバタフライアサシンATK2600→3400

 

 

『バトル!「ナイトバタフライアサシン」で「バスターガンダイル」を攻撃!』

 

「すまない…罠カード発動!『方界縁起』!『ナイトバタフライアサシン』に『方界カウンター』を置く!それにより効果は無効となり、攻撃できなくなる!」

 

『なっ…!?私のモンスターが…!』

青蝶の身体が石化…否、アンディメンション化され身動きが取れなくなる…。

 

ナイトバタフライアサシンATK3400→2600

 

 

『私はこれで…ターンエンド』

ドロワLP3000

ナイトバタフライアサシン(方界カウンター) 手札0

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「永続魔法『方界法』の効果発動!手札の『法界帝ゲイラ・ガイル』を墓地に送り1ドロー!…魔法カード『方界波動』を発動!『バスターガンダイル』の攻撃力を倍にし、『ナイトバタフライアサシン』の攻撃力を半分にする!」

 

『っ…!』

バスターガンダイルから放たれた波動が相手の力を奪う…!

 

バスターガンダイルATK3000→6000

 

ナイトバタフライアサシンATK2600→1300

 

 

「すまない…俺にも、負けられない理由がある…!!バトル!『バスターガンダイル』で『ナイトバタフライアサシン』を攻撃!!」

 

『っ…!ごめんなさい、カイト…!!』

バスターガンダイルの攻撃はモンスターを粉砕してドロワのデュエルコースターに直撃…ドロワを強制離脱させた…。

 

ドロワLP0

 

 

 

 

 

 

「……バトル続行!!『バスターガンダイル』で()()()()()電子光虫(デジタル・バグ)─ライノセバス』を攻撃!!」

 

『ヒョ!?な、なんでバレたの─!?!?』

バスターガンダイルの一撃が後方にいたインセクト羽蛾のモンスターを粉砕する!

 

インセクト羽蛾LP3500→100

 

 

「気配を消して機会を窺ってたんだろうが…気づかない訳ないだろうが─!!『バスターガンダイル』!!」

 

『ヒョ〜!?』

容赦ない一撃がインセクト羽蛾を焼き尽くした…。

 

インセクト羽蛾LP0

 

遊海WIN!!

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…!息が上がる…!だが、見つけたぞ…!!」

遊海はついにその姿を捉えた…!

 

 

 

 

【ふふふ…鬼さんこちらー…!】

 

 

「待ちやがれ…トロン─!!」

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

 

『翠!これはどういう事だ…!遊海は大丈夫なのか!?』

 

「大丈夫じゃない…大丈夫じゃないのよ…!!」

翠がスタジアムでジャックと合流する…翠はとても動揺している…!

 

 

「遊海さんのデュエル…いつもと違う…!焦り過ぎてる!!」

 

『言われなくてもわかる…!まるで何かに追われているようではないか…!』

 

《フォウ…!フォーウ!!》

翠達は見守る事しかできない…遊海の勝利を信じて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ…!やっぱり様子が変だぜ…先生を止めるぞ!!』

 

《わかった…!!行こう!》



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地下セクションでの戦い〜予想外の再会〜

こんにちは!S,Kです!

書きたい話は筆が進みますね!連続投稿!


それでは最新話をどうぞ!


『さぁ!!パークセクションを突破したデュエリスト達が次なる戦いの舞台へと進んでいく!!太陽の光に包まれた「パークセクション」から暗黒の迷宮…「地下セクション」へ!!』

 

Mr.ハートランドの声と共にパークセクションを生き残った15人の決闘者達が悪魔の顔を模した入口から地下セクションへと突入していく…!

 

 

「(順位は3位か…トロン、クリス、トーマス、凌牙、カイト、遊馬、ゴーシュ…あとは一般のデュエリスト達…あとは…トロンを追いかければ…いい…!)」

遊海は静かに考える…トロンの位置は追う事ができている…あとは追い掛けるだけだと…。

 

「……(ダメだ、回復が…できない…保ってくれよ…!)」

遊海は唇を噛み締めた…。

 

 

 

 

 

Side翠

   

 

 

『それでは…ここまで勝ち残ったデュエリストの紹介をさせて頂こう!!』

翠が祈る思いでスクリーンを見つめる中…ハートランドがデュエリスト達の紹介を始める…。

 

 

『まずは優勝候補筆頭!その鋭い瞳が見つめるのは勝利のみ!天城カイト!そして同じく優勝候補!ハートランドを守る無敵のヒーロー・メタルナイト!熱いハートを持つ戦士ゴーシュ!─………』

ハートランドの声と共にデュエリスト達の姿が映し出されていく…

 

『そして先程デュエルコースターが出遅れた少年、九十九遊馬!!最後に…3日目の夕方に飛び入り参加して決勝大会出場を勝ち取ったダークホース!本名不明の謎の男!キャプテン・ブレイブ!以上がここまで勝ち残ったデュエリスト達だ!!さあ、勝ち残り地下セクションを抜ける8名はいったい誰なのか!!ハートバーニング!!』

 

 

「……あれ…?」

 

『むっ…どうしたのだ?』

困惑したような様子の翠にジャックが問い掛ける…

 

「キャプテン・ブレイブ…あの子、もしかして─…」

 

『………なんと…?』

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

【魔法ポイント通過、「治療の神ディアン・ケト」ライフ1000回復】

 

 

 

 

【罠ポイント通過、500ダメージ】

 

バイ〜ンゴシャ!!

 

「っ…ガハッ!?」

 

遊海LP5000→4500

 

 

 

「流石に、避けきれないか…」

回復とダメージを交互に受けながら遊海は薄暗い通路を走り抜けていく…!

 

「(このままいけば『ジャングルゾーン』に着く…決着をつけるぞ…トロン!!)」

マップを確認し進路を決めていく遊海…その時だった。

 

 

『待ってくれ!メタルナイト…いや、先生!!』

 

「っ…?」

暗い通路の奥から1台のデュエルコースターがやって来る…そこに乗っていたのはアメコミヒーロー風のマスクに()()()()()()()()()()()()()()()を着た青年だった。

 

 

「はっ…?」

遊海はあまりの事に目が点になる…自分の事を「先生」と呼ぶ人物はそう多くない…さらに「オシリスレッド」となれば…1人しかいないだろう!

 

 

「こ、こんな場所で何してるんだよ…十代─!?」

 

『あはは…いや、「デュエルの祭り」だって言うからつい…ああ、今は「キャプテン・ブレイブ」で頼むぜ!』

 

《まったく…十代の気まぐれにも困ったものだよ…》

 

キャプテンブレイブこと伝説の決闘者・遊城十代は頭を掻く…顔は隠しているがその姿は60年前とほとんど変わらない、その原因は彼の相棒…精霊・ユベルとの「魂の超融合」である。

 

GXの物語のなかで前世から自身を想い続けたユベルと融合した十代…それにより十代も遊海とは違う意味で「人外」となっていた、パラドックス戦で精霊に対して生身で立ち向かった事からもその強さがわかるだろう…。

 

そして「ゼロ・リバース」の後、遊海の代わりを務められるようにデュエル・精霊の力を鍛えていたのだが…一つの誤算が起きる、精霊の力を鍛え続けた結果十代の「精霊」としての力が強まり…遊海や翠に近い擬似的な「不老不死」となってしまっていたのだ…。

 

…なお、遊海に指摘されるまでその状態に気付かずにいたのは十代らしいと言えるだろう…。

 

 

 

 

 

『いや〜、先生に久しぶりに会いたいなーと思ってハートランドに来たはいいんだけど…住所とか聞くの忘れててさ!そしたらこのWDCに先生が出てるって聞いて…オレも久しぶりに出てみようと思ったんだ!』

 

「…ほんと〜に…お前らしい理由だよ十代…」

 

『あはは…』

十代の話を聞いて思わず頭を抱える遊海…その様子を見て十代は苦笑いを浮かべていたが…静かに目の色を変える…!

 

『…先生、先生こそ…そんな滅茶苦茶な身体でなんでデュエルしてるんだよ…アンタが無理をするのはいつもの事だけど…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…!!』

 

「…ケジメをつけなきゃならない相手がいる…アイツだけは…俺が止めなきゃならねぇ…!」

 

《あのトロンとかいう子供だろ?アイツからきな臭い力を感じた…君の力を含めた…ね》

 

『っ…!?先生…まさか…!力を奪われて…!』

ユベルの言葉に十代は険しい表情に変わる、遊海の持つ力を悪用すれば世界すら滅ぼしかねない…十代は身をもってその事を知っていた…。 

 

「それだけじゃない…奴は自分の復讐に子供達を巻き込んだ…!俺は…それが許せない…あの子達を守れなかった()()が許せない!!」ゴウッ!

遊海から放たれた怒気が空気を軋ませる…!

 

 

『先生が怒ってるのはわかる…!でも、そんな体じゃ!!』

 

「言っただろ十代…これは俺のケジメだ!!今は時間が惜しいんだ…!!」

 

『だったら…オレが先生を無理矢理でも止めてやる!そしてオレがトロンって奴をぶっ飛ばす!!』キン─!

十代は「覇王」としての力を開放…瞳が金と緑のオッドアイに変化する!

 

「悪いな十代……押し通る!!」

遊海と十代…師弟の本気の喧嘩決闘が始まろうとしていた…!!

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

(───!!?)

 

「ん…?アストラル、どうしたんだ?」

 

(な、なんでもない…(なんだ、今の殺気は…!?))

アストラルは突然、強い殺気を感じ取る…自分達に向けられたものではない…だが、その余波だけでアストラルは死を錯覚する程だった…。

 

 

(何が、起きようとしている─?)

 

【罠ポイント、200ダメージ】

 

「へぶっ─!?」

 

アストラルは暗い通路の先を静かに睨んだ…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

十代LP4000

遊海LP4500

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『魔法カード「ネオス・フュージョン」を発動!手札の「E・HEROネオス」とデッキの「N・アクア・ドルフィン」を墓地に送って融合!来い!「E・HEROアクア・ネオス」!!』

水の力を宿したネオスが現れる! ATK2500

 

 

『「アクアネオス」の効果発動!手札の「ネクロガードナー」を墓地へ送り!先…メタルナイトの手札をランダムに破壊する!エコー・バースト!!』

「ネオス」から放たれた超音波が遊海の手札にあった『魔妖壊劫』を撃ち抜き破壊する!

 

『…なんか、見覚えが……装備魔法「インスタント・ネオスペース」を「アクアネオス」に装備!カードを2枚伏せてターンエンド!』

十代LP4000

アクアネオス(インスタントネオスペース)伏せ2 手札1

 

 

 

「俺のターン、ドロー!!」

「『翼の魔妖(まやかし)─波旬』を召喚!」

黒い羽の肩当てをした山伏が現れる ATK600

 

「『波旬』の効果発動!デッキから『麗の魔妖─妲姫』を特殊召喚!」

妖しい雰囲気の巫女が現れる ATK1000

 

「さらに永続魔法『コモンメンタルワールド』を発動!自分がシンクロ召喚する度に相手に500ダメージを与える─!」

 

『あっ!?そのコンボは─!?』

 

「気付いた所で遅い!!俺はレベル1の『波旬』にレベル2の『妲姫』をチューニング!!」

 

1+2=3

 

「シンクロ召喚!『轍の魔妖─朧車』!」

牛車に般若面の付いた妖怪が現れる DEF2100

 

 

「『コモンメンタルワールド』の効果!500ダメージ!」

 

『ぐっ!?』

牛車から放たれた炎が十代に直撃する!

 

十代LP4000→3500

 

 

「そして『妲姫』は『魔妖』モンスターがエクストラデッキから特殊召喚された時、自身を墓地から特殊召喚できる!俺はレベル3の『朧車』にレベル2の『妲姫』をチューニング!シンクロ召喚!」

 

3+2=5

 

「『毒の魔妖─土蜘蛛』!500ダメージ!」

 

『っ…!!』

鎧を纏った蜘蛛が現れ、十代に糸弾を放つ!

 

十代LP3500→3000

 

 

「『妲己』の効果!自身を特殊召喚!レベル5の『土蜘蛛』とレベル2の『妲姫』でチューニング!シンクロ召喚!」

 

5+2=7

 

「『翼の魔妖─天狗』!500ダメージ!!」

天狗が現れ十代へと法螺貝の音でダメージを与える!

 

十代LP3000→2500

 

 

「自身の効果で『妲姫』を特殊召喚!レベル7の『天狗』とレベル2の『妲姫』でチューニング!シンクロ召喚!」

 

7+2=9

 

 

「『麗の魔妖─妖狐』!500ダメージ!!」

妖狐が十代へと狐火を放つ!

 

十代LP2500→2000

 

 

「『妲姫』を特殊召喚!レベル9の『妖狐』にレベル2の『妲姫』をチューニング!!」

 

9+2=11

 

「百鬼夜行を率いる妖怪の王よ!今こそ現世に恐怖をもたらせ!シンクロ召喚!!『骸の魔妖─餓者髑髏』!!」

遊海の背後に甲冑を纏いし巨大な骸骨が現れる! ATK3300

 

『攻撃力…3300!?』

 

「『コモンメンタルワールド』の効果!500ダメージだっ!!」

 

『うおっ!?』

十代へ向けて無数の霊が襲いかかる!

 

十代LP2000→1500

 

「そして『妲姫』を墓地から特殊召喚!」

少し息を切らせた巫女が現れて座り込む… DEF0

 

 

「バトルだ!『餓者髑髏』で『アクアネオス』を攻撃!!」

 

『罠カード「ヒーローバリア」発動!攻撃を無効にする!』

骸骨の一撃をバリアが受け止める!!

 

「カードを2枚伏せて…ターンエンド!」

遊海LP4500

餓者髑髏 妲姫 コモンメンタルワールド 伏せ2 手札1

 

 

 

「ぐっ…!?」ビキビキ

 

《アイツ…相当無理してるね、見なよ…ご自慢の鎧がどんどん錆びていってる》

 

『先生…!』

遊海の鎧が少しずつ錆びていく…鎧を維持する力がだんだんと失われているのだ…。

 

『先生にどんな思いがあるのかはオレにはわからねぇ…でも、先生…アンタの為にオレは戦う!!』

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「魔法カード『R─ライト・ジャスティス』を発動!『コモンメンタルワールド』を破壊する!!」

 

「っ…!流石のドロー力だ…!」

「コモンメンタルワールド」が砕け散る!

 

『そして「N・グラン・モール」を召喚!』

ドリルの肩当てをつけたモグラの獣人が現れる ATK800

 

 

「バトルだ!『グランモール』で『餓者髑髏』を攻撃!さらに『グランモール』の効果発動!相手とバトルする時!相手と自分を手札に戻す!ドリル・モール!」

 

「ぐっ…!」

『グランモール』が『餓者髑髏』に突撃…お互いに手札へと戻る!

 

『さらに「アクアネオス」で「妲姫」を攻撃!ラピッドストーム!!』

鋭い水流の一撃が巫女を破壊する!

 

 

『オレはこれでターンエンド!』

 

十代LP1500

アクアネオス(インスタントネオスペース) 伏せ1 手札1

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「リバース罠『魔妖変生』を発動!手札の『毒の魔妖─束脛』を墓地に送り、墓地の『妖狐』を特殊召喚!!」

再び妖狐が現れる ATK2900

 

「『妖狐』の効果発動!自身が墓地から特殊召喚された時!相手フィールドのモンスターを破壊する!『アクアネオス』を破壊!妖術・風天!」

 

『墓地の「ネオスフュージョン」の効果発動!このカードを除外して効果破壊を無効にする!』

 

「ならばバトル!『妖狐』で『アクアネオス』を攻撃!妖術・炎天!」

 

『熱ちっ!?』

妖術の炎がネオスを焼き尽くす! 

 

十代LP1500→1100

 

『装備魔法「インスタントネオスペース」の効果発動!墓地の「ネオス」を特殊召喚!!』

宇宙の力を宿した白きヒーローが現れる! ATK2500

 

「俺は、カードを伏せてターン、エンド…!」

遊海LP4500

妖狐 伏せ2 手札0

 

 

 

『やっぱり強えぇ…!どんなにボロボロでも先生は先生だぜ…!』

十代は遊海の強さに冷や汗をかく…

 

《でも痩せ我慢さ…早めに楽にしてやった方がいいんじゃないか?ほら、チャンスが来たよ!》

 

『えっ…?』

十代がユベルの言葉に首を傾げる

 

【ドローポイント!】

 

【ドローポイント!】

 

『そういう事ね…!ドロー!!』

 

「ドローだ…!!」

ドローポイントを通過した事でお互いにドローする!

 

 

『よし…いくぜ!!』

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『いくぜ!!リバース魔法「融合」を発動!手札の「ユベル」とフィールドの「ネオス」を融合!来い!新たな力!「E・HEROネオス・クルーガー」!』

十代の2体の切り札が融合…悪魔の翼を持つ正義のヒーローが現れる! ATK3000

 

「っ…!!」

 

『バトルだ!「ネオスクルーガー」で「妖狐」を攻撃!!さらに効果発動!モンスターとバトルする時!ダメージステップ前にその攻撃力分のダメージを与える!カオスティック・ノヴァ!!』

 

「ぐっ…ぐあ"あ"あ"あ"あ"─!?」

覇王の力が乗せられた混沌の一撃が遊海に強いダメージを与える!!

 

遊海LP4500→1600→1500

  

キキーッ!!ゴゴン!!

 

「っ…あ…」

 

『…少し、やりすぎた…かな?』

 

《いや、こうでもしないとアイツ…絶対にとまらないよ…》

覇王の一撃によって遊海のコースターが停止する…十代からは見えないが…既に鎧は罅割れ、原型を留めていない…

 

「墓地の、『天狗』の効果…!レベル9のシンクロモンスターが、破壊された時…!墓地の『波旬』を除外して…自身を特殊召喚─さらに、墓地の『束脛』はフィールドの魔妖が破壊された時…特殊召喚できる…!」

天狗と投げ縄を持った大男が現れる ATK2600  DEF2000

 

 

『っ…!まだ動けるのかよ…!!ターンエンド!!』

十代LP1500

ネオスクルーガー 手札2

 

 

 

 

…我が闘いの舞台は此処に、あらず…我が力を振るうは怒りに、あらず…我が力は…未来を導く為に使うモノ…その前には…何者の力も必要なし…!展開せよ…!我が覚悟…!

 

『っ…!?先生!?』

遊海を中心に凄まじい魔力が渦巻いていく!!

 

「戦いの聖地…!『尋常なる決闘の地(コロセウム・デュエルフィールド)』─!」

 

その瞬間、遊海と十代は世界から消え去った…。

 

 

 

 

 

 

 

『っ…ここは、デュエルアカデミア…!?』

 

《驚いた…!アイツ、自分の心象風景で世界を塗り替えたんだ…本当に人間辞めてるよ…!》

十代が気づけばそこは懐かしきアカデミアの校舎前…そこで満身創痍の遊海と睨み合う!!

 

 

「十代…お前が、おれを心配してくれてるのは、よくわかった…でもな、おれは…止まれない…!何故か…わかるか…?」

 

『わからねぇ…でも、今の遊海先生は普通じゃない…!怒ってるだけじゃない…泣いてるよな…遊海先生…!』

 

「十代…おれ達な…子供がいるんだ、養子だが……だけどな…子供を傷付けられて……黙ってられる…『親』がいるか─!!!」

 

『っ─!?まさか、あの子達が─!?』

十代は風の噂で遊海が双子の兄妹を養子にしたという事を聞いた覚えがあった…子供を大事にする遊海がもし、そんな事をされたなら…その怒りは…!

 

「時間がない……決着を、つけよう…!!」

壊れかけた鎧の隙間から鋭い眼光が十代を貫いた…!

 

 

 

「俺のターン…ドロー!!」

「魔法カード『生者の書─禁断の呪術』を発動!墓地の『妲姫』を特殊召喚し、お前の墓地の『ネクロガードナー』を除外する!」

再び巫女が現れる ATK1000

 

「さらにリバース罠『戦線復帰』を発動…!墓地の『土蜘蛛』を守備表示で特殊召喚…!」

大蜘蛛の妖怪が現れる ATK2000 

 

『チューナーを含めたモンスターが4体…!?いったい何を…!』

 

「…俺は「天狗」「妲姫」「束脛」「土蜘蛛」の4体で…リンクマーカーをセッティング!!」

 

『その召喚法は…!?』

遊海の頭上に四角い枠が現れ、モンスター達が赤い矢印に変化する!

 

『全てを凍てつかせる無慈悲なる乙女よ…今こそ現われよ!リンク召喚!!リンク4…「零氷の魔妖─雪女」!!』

アカデミアの景色が…遊海の心が凍てついていく、そして氷の薙刀を持つ雪女が現れた ATK2900←↙↘→

 

 

『寒い…!これが先生の全力…!』

 

《リンク召喚を他の奴らに見られないように結界を張ったわけだ…そんな事しなくてもアヤカやらトフェニにでも頼めば…》

 

「…アヤカもトフェニもいないんだ…デッキも半分近くねぇ…そもそも…みんなをデュエル外で呼び出す…余裕も…ゴボッ…!?」

 

『先生!!』

遊海は膝をつく…もう顔に生気はない…

 

 

《…おい、遊海……いくらアンタが頑丈でも……死ぬよ?》

 

「…覚悟の上だ…例え、相討ちになろうと…あの野郎をぶん殴る!!」

ユベルの警告を聞いてなお遊海の目はギラギラと光っている…「璃緒の仇を取る」「クリス達を救う」…その思いだけが遊海を動かしている…!

 

『…やっぱりダメだよ先生…!それじゃあ翠さんが悲しむ!!第一、先生が攻撃してきた時点で「ネオスクルーガー」の効果が発動して…先生の負けだ!』

 

「それは…どうかな…!!」

 

『えっ…!?』

 

「墓地の『妲姫』は…自身の効果で特殊召喚される!」

再び巫女が現れる ATK1000

 

「『雪女』の効果発動!墓地からモンスターの特殊召喚に成功した事で…『ネオスクルーガー』の効果を無効にし、攻撃力を0にする…!雪女の吐息!」

 

『しまった!!』

雪女の吐息がヒーローを氷の彫像へと変える…。

 

ネオスクルーガー ATK3000→0

 

「バトル…『雪女』で『ネオスクルーガー』を攻撃…妖麗譚─雪華月光…!」

 

流れるような動きで放たれた薙刀の演舞が雪像を斬り裂いた…。

 

 

 

 

十代LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

『っ…先生─!!』

 

「すまん、十代……また、あとでな…!」

 

強制排除される十代を見送り、遊海はボロボロのコースターを進める…そして…。

 

 

 

 

 

 

 

【やあ…待ちくたびれたよ、白野】

 

「待たせたな…トロン…!!」

 

 

 

熱帯雨林のジャングルフィールドでついに因縁が衝突する…!!

 

 

 

 

 

 

 



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対決!狂気の復讐者・トロン!〜砕骨粉身の決闘〜

『お〜っと!!様々なエリアが用意された地下セクション…ジャングルフィールドを戦いの舞台に選んだのはメタルナイトと謎の少年トロンだー!!』

 

「っ!?」

ハートランドの言葉に翠は息を呑む…キャプテン・ブレイブ…十代を必死のデュエルで倒した遊海はついにトロンと出会ってしまったのだ…!!

 

 

『掟破りの数多のデッキを使い熟すヒーローと静かに勝ち抜いて来たトロン!その勝利の行方……ありゃ!?』

 

ジジ…ザザー─……

 

スタジアムに映し出されていた映像が突如として砂嵐に覆われる…

 

『申し訳ありません!マシントラブルで中継が切れてしまったようです!!スタッフの皆さん!すぐに復旧を〜!!』

 

 

『フン、茶番だな…!トロンと遊海のデュエル…よほど見られたくないらしい』

 

「遊海さん…!もう、無理だけはしないで…!!」

翠はわかっていた…十代は()()()()()を遊海に当てていた…つまり、遊海はもう──…

 

『諦めるな翠…!遊海ならばあの程度…必ず倒す!!』

ジャックは砂嵐のモニターを睨みつけた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【やあ、待ちくたびれたよ…白野】

 

「待たせたな…トロン!!」

 

茹だるような温度のジャングルフィールド…そこで遊海とトロンは睨み合う…!

 

 

 

【1つ聞かせてくれないかな?…君は異次元に消し飛ばしたと思ったんだけど…どうやって帰って来たのかな?】

 

「フッ…俺は『ヒーロー』だ…!異次元に送られたぐらいで死ぬ訳ないだろう…?」

遊海は不敵に笑う…

 

【答えになってないなぁ…でも、そんな身体でボクに勝てると思ってるの?】

 

「ああ、勝つさ…例え、俺の身体が砕けようと……トロン、お前をぶん殴る…!!」

遊海は()()にデュエルディスクをはめる…既に右腕は動かせなくなっていた…。

 

【ああ怖い怖い…!ならボクも本気でいかないとね…!!】ギィン─

トロンは左目を妖しく輝かせ、遊海を睨みつけた…!

 

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

遊海LP1500

トロンLP4000

 

 

特殊ルール

 

フィールド魔法『ジャングル・フィールド』常時発動

モンスターを召喚・特殊召喚・セットしなかったプレイヤーはエンドフェイズに1000ダメージを受ける。

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「魔法カード『トレードイン』を発動!手札のレベル8『神龍の聖刻印』を墓地に送り2ドロー!さらに魔法カード『招集の聖刻印』を発動!デッキから『聖刻龍─シユウドラゴン』を手札に加える!さらに攻撃力を1000に下げる事でリリース無しで召喚できる!」

太陽を背負うドラゴンが現れる ATK1900→1000

 

 

「さらに『聖刻龍』をリリースする事で『聖刻龍─シユウドラゴン』は特殊召喚できる!」

青いウジャト眼を刻んだドラゴンが現れる ATK2200

 

 

「リリースされた『アセト』の効果発動!デッキからドラゴン族通常モンスター『ラブラドライドラゴン』を攻守0で特殊召喚!」

藍色に輝く鱗を持つドラゴンが現れる DEF0

 

「オレはレベル6の『シユウ』と『ラブラドライ』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ!『聖刻龍王─アトゥムス』!」

紫色のウジャト眼を刻む龍王が現れる ATK2400

 

 

【なるほど、古代エジプトのエネアド九柱神をモチーフとしたデッキか…これは手強そうだ】

 

「『アトゥムス』の効果発動!ORUを1つ使い!デッキから『レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン』を攻守0で特殊召喚!」

黒き鋼を纏うドラゴンが現れる DEF0

 

「『レダメ』の効果発動!墓地の『シユウドラゴン』を特殊召喚!」

再び青いウジャト眼のドラゴンが現れる ATK2200

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊海LP1500

アトゥムス レダメ シユウ 伏せ2 手札1

 

 

 

 

【ボクのターン、ドロー!】

【「紋章獣アバコーン・ウェイ」を召喚!】

鎧を纏った赤いドラゴンが現れる ATK1800

 

【バトル!「アバコーンウェイ」で「レッドアイズ」を攻撃!】

 

「っ…」

放たれた火球が黒龍を粉砕する!

 

【カードを2枚伏せて…ターンエンド】

トロンLP4000

アバコーンウェイ 伏せ2 手札3

 

 

 

『っ…!?メタルナイト…トロン!!』

 

「遊馬…小鳥ちゃん…迷い込んだか…」

2人が睨み合うジャングルフィールドに闖入者が現れる…それはデュエルコースターの誤作動でジャングルフィールドへと入り込んでしまった遊馬達一行だった…。

 

 

【やあ、遊馬くん!見てよコレ…怖いモンスターがいっぱいなんだよ〜】

 

『あれは聖刻デッキか…!』

 

(リリースする事で効果が発動する白野の主力ドラゴンデッキ…だが、それよりも…!)

 

『メタルナイト…なんで、なんでそんなにボロボロなんだよ─!!』

 

「ここに来る前に…ちょっと、喧嘩してきたからな…」

遊馬が悲鳴に近い声を上げる…鋼の鎧は罅割れ完全に錆色に変色…デュエルディスクを着けた右手はダラリと垂れ下がってしまっている…。

 

 

【本当に酷い有り様だよね〜、本当に尊敬しちゃうよーさっすがヒーロー!】

 

「お前に言われても嬉しくないよ…貴様は…俺が倒す!!」

おちゃらけた振りをするトロンを遊海は殺気全開で睨みつける…!!

 

(この気配…先程感じたのは白野のものだったのか…!)

 

【へぇ…君は彼の正体を知ってるんだ…】

 

(!?)

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

「『アトゥムス』の効果発動!ORUを1つ使い、デッキから『聖刻龍─ドラゴンヌート』を攻守0で特殊召喚!」

水色のウジャト眼を刻む龍人が現れる DEF0

 

「さらに『聖刻龍─ドラゴンゲイヴ』を召喚!!」

オレンジ色の人龍が現れる ATK1800

 

「さらに俺は…ランク6の「アトゥムス」を素材にオーバーレイネットワークを再構築…!進化せし竜騎士よ!迅雷の如く出陣せよ!『迅雷の騎士ガイアドラグーン』!!」

人竜一体となった騎士が現れる! ATK2600

 

 

『一気にモンスターを揃えた!!』

 

(これが白野の全力…!凄まじいプレイングだ…!)

遊馬とアストラルは遊海の展開に圧倒される…!

 

 

「バトルだ…!『ガイアドラグーン』で『アバコーンウェイ』を攻撃!螺旋竜槍殺!」

 

【くぅ…!】

鋭い槍の一撃が赤いドラゴンを粉砕する!

 

トロンLP4000→3200

 

「『シユウドラゴン』でダイレクトアタック!」

 

【罠カード『爆風紋章(バースト・メダリオン)』を発動!相手の伏せカードを全て手札に戻してバトルフェイズを終了する!】

 

「させるか…!カウンター罠『反射の聖刻印』を発動!『ドラゴンゲイヴ』をリリースする事でモンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する!」

 

【なっ…うわあ〜】

シユウの息吹がトロンを吹き飛ばす!

 

トロンLP3200→1000

 

「リリースされた『ゲイヴ』の効果…デッキの『神龍印』を特殊召喚…!」

赤いウジャト眼を刻んだ太陽石が現れる DEF0

 

「ターン、エンド…!」

 

遊海LP1500

ガイアドラグーン 神龍印 ヌート シユウ 伏せ1 手札1

 

 

 

 

『すげぇ…!1ターンでトロンを追い詰めた!!』

 

『でもメタルナイト…なんだか苦しそう…!!』

流れるようなプレイングに喜ぶ遊馬だったが、反対に小鳥は心配そうに遊海を見つめる…遊海は肩を上下させながら苦しげな様子だった…。

 

(…無理もない、2日近く眠り続けた彼にとって…デュエルは凄まじい負担になっているはずだ…)

 

【それだけじゃないよ?君達は聞かされてないのかい?】

 

『なっ…お前、アストラルが見えてるのか!?』

遊馬はトロンの言葉の驚愕する…トロンにもはっきりとアストラルの姿が見えている…!

 

 

(聞かされていない…?なんのことだ!)

 

【やれやれ…君も結構秘密主義だよねぇ白野?デュエルカーニバル2日目…君もカイトや遊馬と一緒にハルトを取り返しに来てたよねぇ!】

 

『『えっ…!?』』

 

(白野…それは本当の事なのか?)

 

「…ああ、夢見でハルトの声を聞いてな…お前達がデュエルしている間にハルトを助け出すつもりであの場所にいた…だが…」

 

【君は失敗した…ずいぶんと苦しんでいたよねぇ…君はボクの罠に嵌まり()()()()()()()()()()()!その状態でよく立っていられると思うよ!あはははは…!!】

 

「力を奪われていようと関係ない…!お前をぶん殴るだけの力は残してある…!例え、俺の身体が砕けようと…!!」

 

『白野…!どうしてそこまで…!!』

尋常ならざる様子の遊海に遊馬は問い掛ける…。

 

 

「遊馬…目の前にいるコイツこそ…トロンがⅢ…ミハエル達の父親…!バイロンだ!!」

 

 

『えっ…!?』

 

(トロンが…Ⅲ達の父親!?)

 

『嘘っ…!』

 

【な〜んだ、ここでバラしちゃうんだ!つまらないな〜、もう少し遊び心を持ったら?】

衝撃の事実を知った遊馬達…トロンは軽い調子で笑みを浮かべる…。

 

 

「お前相手に油断も慢心も慈悲もない…!かかって来い!!トロン─!!」

 

【じゃあ、お言葉に甘えて…!本気でいこうか!!】

 

 

 

【ボクのターン!ドロー!】

【「紋章獣ベルナーズ・ファルコン」を召喚!】

鎧を纏った隼が現れる ATK1000

 

【さらに魔法カード「蘇生紋章(リボーン・メダリオン)」を発動!墓地の「紋章獣」を特殊召喚する!蘇れ!「アバコーンウェイ」!】

再び赤いドラゴンが現れる ATK1800

 

「っ…来るか…!」

 

【ボクはレベル4の「アバコーンウェイ」と「ベルナーズファルコン」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!】

 

08 

 

【現れろ!「No.8」!「紋章王ゲノム・ヘリター」!】

トロンの場に白い毛の生えた仮面が現れ展開…巨大な鹿のような不気味なモンスターが現れる ATK2400

 

 

『これがトロンのナンバーズ…!』

 

【フフフ…!バトルだ!「ゲノムヘリター」で「ガイアドラグーン」を攻撃!】

 

『攻撃力の低いモンスターで攻撃!?ナンバーズはバトルじゃ破壊されないけど…!』

 

【「ゲノムヘリター」の効果発動!ORUを1つ使い、このモンスターとバトルするモンスターの攻撃力を0にして…このモンスターの攻撃力はバトルするモンスターの元々の攻撃力となる!】

 

『なんだって!?』

 

ガイアドラグーンATK2600→0

 

ゲノムヘリターATK2400→2600

 

 

(まずいぞ…!白野のライフは残り1500…2600の攻撃を受けたら…彼の負けだ!!)

 

【潰れちゃいな…!フラッシュ・インパクト!!】

「ゲノムヘリター」の毛が伸び…「ガイアドラグーン」を刺し貫き粉砕する!!

 

『白野─!!』

煙に覆われるフィールド…そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─速攻魔法『神秘の中華鍋』…!『シユウ』をリリースする事で、攻撃力分…ライフを回復する…!」

 

『白野…!』

煙の中から遊海が立ち上がる…すんでの所でライフを回復し、攻撃を耐えていたのだ…。

 

遊海LP1500→3700→1100

 

「リリースされた『シユウ』効果…デッキから『神龍印』を特殊、召喚」

2体目の太陽石が現れる DEF0

 

 

【しぶといねぇ…ボクはこれでターンエンド】

トロンLP1000

ゲノムヘリター 伏せ1 手札2

 

 

 

 

「っ…!」ガクン

 

『白野!!』

トロンのターンが終わり遊海は膝をつく…鎧は完全に砕け散り、赤く染まった入院着が遊海の苦しみを感じさせている…。

 

【フフフ…!もう立てないんだろう?そのまま寝ちゃいなよ】

 

「寝言は、寝て言え─!!」

遊海は気合いだけで立ち上がる!!

 

 

『白野!やめてくれ…そんな身体じゃ…!』

 

「…遊馬、決闘者は…ライフが残っていれば…立ち上がれる…!」

 

『白野…』

遊海を心配する遊馬…遊海は力強く遊馬へと応える…そして……

 

「遊馬…今から俺は、本気を出す……嫌いにならないで、くれよ?」

 

『えっ…?』

 

 

【本気ぃ?そんな身体で何ができるのさ…?アハハハ!!】

 

「…お前には、俺から名乗った事はなかったな…俺は岸波白野、神代凌牙の養父……そして……俺は…──」

 

ゴウッ!!

 

『白野─!?』

遊海が自分の身体を炎で包む…そして炎が掻き消えた時、そこにいたのは…赤帽子の男だった…!

 

 

【お、お前は…まさか!?】

 

「決闘者…白波遊海、それが俺の真名だ…!!」

遊海が名乗りを挙げる…傷だらけの身体で不敵に笑いながらトロンを睨みつける…!!

 

 

 

『白波、遊海…白野さんが、伝説の決闘者…!?』

 

『信じられない…!』

遊馬と小鳥は突然の出来事に固まってしまっている…。

 

(…ナンバーズの知識にあった、かつて『名もなきファラオ』が冥界へと消える時、ファラオの祝福を受けた彼は不死身となった…それ以後、彼は陰ながらデュエル界を護り続けた…そんな物話が…!)

 

 

「いくぜトロン…()()()()()()だ」

 

【チィ…!ボクの復讐はこれからだ!!こんな所で止まりはしない─!!】

 

 

 

「俺のターン、ドロー」

「俺は、レベル8の『神龍印』2体でオーバーレイ…エクシーズ召喚…『聖刻神龍─エネアード』!」

赤きウジャト眼を刻みし太陽の化身が現れる ATK3000

 

【させないよ…!「ゲノムヘリター」のさらなる効果発動!ORUを1つ使い!『エネアード』の効果を無効にし!その効果を得る!!】

 

『相手ターンにモンスター効果を!?』

「エネアード」に紫色の鎖が巻き付き、効果が奪われる!

 

【エクシーズモンスターの効果は封じた…これでお前は何も──】

 

「魔法カード『星呼びの天儀台』を発動、手札のレベル6『トフェニドラゴン』をデッキ下に戻し2ドロー」

 

【なにっ…?】

遊海の動きは止まらない…!

 

 

「…これで、充分だ…魔法カード『銀龍の轟砲』を発動、墓地の『神龍印』を特殊召喚!」

3体目の太陽石が現れる DEF0

 

【無駄だ!君の『エネアード』ではボクにトドメはさせないよ!ナンバーズはナンバーズでしか破壊されないからね!】

 

「ナンバーズ…そんなもの…さらなる力で上回ればいい!!フィールドの『ドラゴンヌート』『エネアード』『神龍印』をリリース!!」

 

【なんだと…!?】

遊海の声と共にジャングルが暗雲へと覆われていく…!

 

 

『な、なんだ…!?急に暗く…』

 

『何が起きようとしてるの…?』

遊馬と小鳥は身を寄せあい空を見上げる…!

 

 

《ユウミ…よく耐えました、小言はまた後で…今は…》

 

「…頼む、フレア」

腕に現れた金色の鳥を暗雲の空へ解き放つ…!

 

 

せいれいはうたう…おおいなるちから、すべてをつかさどらん…そのいのち、そのたましい…そのなきがらでさえも──

語るように、歌うように…遊海は言葉を紡ぐ…神へと捧げられた祝詞を…

 

「…現われよ、『ラーの翼神竜』」

 

暗闇に包まれたジャングルに一筋の光が差す…その光は徐々に大きくなり天空に太陽が現れる…その名は『ラーの翼神竜』…デュエルモンスターズ界最強の神が現れた!!

 

《ギュアアア─!!》

 

ATK0→4700

 

 

 

 

『で、伝説の…『太陽神』─!?』

 

(三幻神はファラオの眠りと共に失われた…だが、デュエルモンスターズの創始者ペガサス・J・クロフォードの手で「ラーの翼神竜」のコピーカードが作られた…そのカードは使う者に神罰を下す禁断のカード…そして、そのカードはペガサスのもとから消えた……彼の手に渡っていたのか…!)

アストラルは冷静に知識を告げる…その神威に見惚れながら…。

 

 

【馬鹿な…!】

 

「『ラー』の効果を発動、俺のライフを1000捧げ…『ゲノムヘリター』を破壊する!」

 

遊海LP1100→100

 

 

《愚かなる復讐者よ…我が怒りを受けよ!!》

ラーの身体が炎に包まれ、紅蓮の不死鳥と化す!!

 

「《ゴッド・フェニックス!!》」

 

【うわあああああ!!!】

紅蓮の不死鳥が偽りの王を焼き尽くす!!

 

「これで…終わりだ!トロンへ…ダイレクトアタック!!ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」

 

《キュアアアアア!!》

 

【ま、まさか…ボクがこんな所で─!!】

神罰の炎がトロンをあっけなく飲み込んだ…。

 

 

トロンLP

 

遊海

 

 

 

 

 

 

 

『これが、遊海の……神の怒り─』

 

『すごい…』

炎に包まれたジャングルの中で遊馬達は尻餅をつく…見た事のない白野…遊海の本気を目にして力が抜けてしまったのだ…。

 

 

「…ありがとう、フレア」

 

《いいのですユウミ、アヤカのいない中でよく頑張りました…》

遊海は優しくフレアの嘴を撫でる…先程までの怒りが嘘のように穏やかな表情で…。

 

 

「…アストラル、ナンバーズの回収は任せるぞ…俺は…限界だ…」

 

(わかった)

遊海がアストラルに声をかけ、アストラルはトロンのいる方向へと手を伸ばす…

 

「…フレア、もう戻っていいぞ?」

 

《はい…あれ?戻れ──》

 

 

 

 

 

 

 

 

あはは…!まさかさぁ…ボクがこんな所で…負けたと思った?

 

 

 

 

 

 

 

「『『《!?》』』」

炎の中から狂気に濡れた笑い声が響く…トロンはまだ、立っていた…!!

 

 

『そんな、なんで…!?』

 

【攻撃を受ける瞬間罠カード『紋章変換(チェンジ・メダリオン)』を発動していたのさ…それによって手札から『紋章獣レオ』を特殊召喚して…そのレベル×1000のダメージを無効にしていた…!】

振り払われた炎の中から仮面を着けた獅子が現れる ATK2000

 

トロンLP1000→300

 

 

「抜かった…!俺は、ターンエンドだ…!」

遊海LP100

ラーの翼神竜 手札0

 

 

 

 

【感謝するよ伝説の決闘者…!君のおかげで()()()()()()このナンバーズを開放する事ができる─!】

 

 

 

【ボクのターン!ドロー!!】

【「紋章獣ユニコーン」を召喚!】

鎧を纏ったユニコーンが現れる ATK1100

 

【さらに『紋章獣エアレー』は自分の場に紋章獣が2体以上いる時!特殊召喚できる!!】

青い毛皮の鹿が現れる ATK1000

 

【ボクはレベル4の「レオ」「ユニコーン」「エアレー」でオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!】

 

69

 

【開放しろ…怒りを!!現われよ「No.69」!「紋章神コート・オブ・アームズ」!!】

 

ギィン─!

空中に紫の紋章が刻まれる…その内より巨大な角を持つ、黒き異形の悪魔が現れた! ATK2600

 

 

『2体目のナンバーズ!?』

 

【感謝するよ遊海…君が怒ってくれたからボクはこのカードを操る事ができる…!!】

 

「っ…!」

遊海は膝をつきながら唇を噛み締める…!

 

【「コートオブアームズ」の効果発動!このカードが存在する限り!フィールド全てのモンスター効果は無効になる!堕ちなよ、太陽神!ゴッド・メダリオン・ハンド!!】

 

ギュル…ドシュ!!

 

《ガッ…!?》

 

「フレア!!」

「コートオブアームズ」から放たれた光の触手がフレアを貫く…フレアは力を奪われ…色を失い墜落した…。

 

ラー ATK4700→0

 

 

【長い間お疲れ様…もう眠りなよ、「コートオブアームズ」で「ラーの翼神竜」を攻撃!ゴッド・レイジ!!】

「コートオブアームズ」が天空に紫の光を放つ…そして暗雲の中から黒い閃光が放たれ…フレアと遊海を飲み込んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

遊海LP0

 

 

トロンWIN…

 

 

 

 

 

「ガハッ…ぁ──」

 

《ユウ、ミ…しっかり、して…!》

怒りの一撃を受けた遊海はジャングルフィールドのARビジョンを破壊しながら壁に激突…そのまま崩れ落ちた…近くには傷付き、小鳥状態になったフレアが弱々しく遊海へと呼びかけている…。  

 

 

【あっけない幕切れだったねぇ…!じゃあ…君のナンバーズを貰おうか…!!】

 

ギィン─!

 

「っ──…」

トロンの腕から伸びた紫の鎖が遊海を貫き…赤い光の玉を引き抜く…。

 

【…なんだ、ナンバーズ持ってないんじゃん…つまんないの!…でも…()()()()()()が手に入ったからいいか!…九十九遊馬、そしてアストラル…次は君達の心を食べてあげるよ…じゃあね!】ギィン

遊馬達を少しの間見つめたトロンはワープホールへと姿を消した…。

 

 

 

『ゆ…遊海─!!!』

遊海の敗北のショックでフリーズしていた遊馬達が遊海のもとへ駆け出す…。

 

 

『遊海…しっかりしろ!しっかりしてくれ─!!』

 

《…無駄です、ユウマ…ユウミは魂を、奪われてしまった……魂を取り戻さなければ、目覚める事は…》

遊海を起こそうとする遊馬…だが、遊海は目覚める事はない……トロンの紋章によって遊海の『魂』は奪われてしまっていた…。

 

 

(ラーの翼神竜…まさか、貴女が敗れてしまうとは…)

 

《……私の、せいです…私が、ユウミを止めていれば…!》

倒れたままフレアは静かに涙を流す…その時だった。

 

 

「先生…遊海先生!!」

 

『っ…アンタ、前夜祭の…!』

倒れた遊海のもとに十代が駆け寄ってくる…強制排除を力づくですり抜けて遊海のもとへ駆けつけたのだ…。

 

 

「先生は……決闘で負けたのか…!」

 

『あっ、えっと…』

 

(トロンという男に最後まで誇り高く闘い…敗北した)

 

「…そうか、ありがとよ青い精霊……この人の事はオレに任せてくれ…ネオス、フレアを頼む…!」

 

《…わかった》

 

《十代…迷惑を掛けます…》

十代の隣にネオスが現れ、傷だらけのフレアを抱きあげる…。

 

 

(私が見えている…「ネオス」…赤い服…貴方は…)

 

「オレは遊城十代…先生の教え子だ、遊海先生は翠さんの所に必ず連れていく…安心してくれ」

十代は落ち込んだ様子の遊馬へと目を向ける…。

 

『…九十九遊馬くん、だったな?』

 

「あ、ああ…」

 

「デュエルで奪われたモノは…デュエルで取り返すしかねぇ…頼むぜ…きっと、遊海先生はお前の事を信じてる!』

 

『…わかった…!オレがトロンを倒せば…遊海さんも元に戻るんだよな…!かっとビングで…やり遂げてみせる!!』

 

『あっ…待って!遊馬!!』

激励を受けた遊馬は拳を握りしめ走り出す…そのままデュエルコースターに乗って遊馬達は走り出した…。

 

 

 

 

 

「先生…今のアンタの弟子、良い奴じゃねぇか…頼んだぜ、遊馬…!」

遊馬を見送った十代は遊海を背負い地上へと向かった…。



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対決!静かなる復讐者・Ⅴ〜復讐の真実〜

こんにちは!S,Kです!

次なる戦いはカイト対Ⅴ…!師弟が再び激突する!

そしてリクエストアンケートは7月1日までとなっております…リクエストがある方は活動報告へ!



それでは最新話をどうぞ!


 

 

……暗い…身体に力が入らない…

 

 

…俺は負けた、のか…

 

 

…すまない、翠……凌牙、遊馬…あとは、頼む──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ─!?」

 

『む…?どうしたのだ?翠』

 

《フォーウ…?》

 

地下セクションの様子がモニターに映らなくなってしばらくが過ぎた時、翠は悪寒を感じた…胸に穴が開くような…氷水を浴びせられたような…何かを失ったような感覚を…

 

 

「胸騒ぎが、するの…嫌な…予感が…」

 

《…残念だけど、その予感は当たってるよ》

 

『っ…!お前は…ユベル!?』

翠とジャックの前に十代の相棒であるユベルが現れる…。

 

《探したよ翠…悪い知らせだ、遊海が…負けた》

 

「えっ─…」

 

《フォ…!?》

 

『なん、だとぉ…!?』

ユベルの思わぬ言葉に2人は固まる…。

 

《詳しい事は後で話す…急いだ方がいい》

 

「っ─!!遊海さんの、馬鹿…!」

翠の瞳から涙が零れ落ちた…。

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

『おや、遊海君は負けてしまったのか…ずいぶんと肉体と魂を酷使していたからねぇ…』

 

何処とも知れぬ花園…その中心の塔でローブを被った男がため息をつく…。

 

『君は少し休んでいるといい…「彼」には成長する為の経験が必要だ、完成された「英雄」とこれから「英雄」になる少年…君達ならきっと大丈夫…』

ローブの男は目を細めて遠くを見つめる…。

 

 

『君達の紡ぐ物語はこれからなのだから──…』

 

 

SideOut

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「うおおぉぉ─!!誰かいねぇのかああ─!」

 

「ちょ…遊馬!落ち着きなさいよ〜!?」

 

「落ち着いてなんていられるかぁぁ!」

地下セクションの線路を全速力で疾走する遊馬…遊海と別れたあと、遊馬は一騎討ちの相手を探し回っていた…。

 

「白野の事だったり、トロンの事だったり…頭の中がぐるぐるする…でも、今はこのステージを勝ち抜かねぇと─!」

 

「だから落ち着け─!?」

小鳥の制止も聞かずに遊馬はデュエルコースターを走らせる、師匠である白野…伝説の決闘者・遊海の敗北…さらにその「魂」を奪われてしまった事で遊馬は焦っていた…。

 

 

(遊馬、小鳥の言う通りだ…今の君は冷静になるべきだ、冷静にならなければ勝てる勝負にも勝てなくなってしまう)

 

「アストラル、でも…!」

 

(先程のデュエルで白野…いや、遊海は冷静さを欠いていた…おそらく、彼本来の力の半分も出す事ができていないだろう…彼は君に「希望」を託した、それを無駄にしてはならない…!)

 

「…すまねぇ、少し頭が冷えたぜ…」

アストラルの忠言を聞いた遊馬はコースターのスピードを緩める…。

 

 

「ねぇ、遊馬…ここ何処…?」

 

「わからねぇ…無茶苦茶に走り過ぎたぜ…」

辺りを見回す遊馬…マップを確認しようとしたその時…

 

 

ドオオォォン!!

 

 

「きゃ!?何なの…!?」

 

「誰かが罠に引っ掛かった…うわっ!?」

 

《ギョエエ〜!?》ドッシーン!

遊馬達の頭上で爆発が起きる…それと同時に何かが遊馬達のコースターへと落下してきた!!

 

 

 

「お前…オービタル!?」

 

《ンンッ…?お前は元祖カシコマリング!?》

コースターへ落下してきたのはカイトの相棒・オービタル7だった、彼は地下セクションでの様子がわからなくなったカイトを心配して地下セクションへと飛び込んで来たのだ。

 

「だ、大丈夫?壊れてない…?」

 

《…飛行ユニットが壊れてしまったでアリマス…カイト様の所へ行かなければならないのに…!》

 

「オービタル…」

沈んだ表情を見せるオービタルに遊馬は同情する…弟の為にナンバーズ狩りを続けているカイト…その相棒である彼は本当に彼の事を思っているのだと…。

 

 

「…オービタル!カイトの居場所はわかるのか?」

 

《もちろんでアリマス!》

 

「なら送ってやるよ!旅は股ずれだ!」

 

(遊馬、それを言うなら「旅は道連れだ」…)

遊馬はオービタルの案内でカイトのもとへと向かった…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カイト…いつか、君と戦うときが来ることは分かっていたあの真実を知った日、私の心は憎しみと復讐に囚われてしまった…あの日から…!』

 

 

「…アンタはハルトを傷付けた…!その懺悔はしてもらう!!」

宇宙空間を模した「コズミック・フロンティア」…そこでカイトとⅤは対峙する!!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

デュエルダイジェスト カイト対Ⅴ

 

 

 

 

 

 

09

 

 

『…現われよ「No.9」!星雲の王者にして機構の覇者よ…!日輪を覆え!「 天蓋星ダイソン・スフィア」!!』

 

「なに…!?」

先攻となったⅤは切り札であるナンバーズを呼び出す…だが、カイトには召喚されたナンバーズが()()()()()()…!

 

「Ⅴ…お前のナンバーズは何処だ!?」

 

『フッ…!さて、何処にいるのだろうな…?』

Ⅴは不敵にカイトを見つめている…!

 

 

 

「(奴がモンスターを召喚したのなら…見えなくとも()()()()()()()はず…!)現れろ!『フォトン・デルタ・ウィング』!奴のモンスターに攻撃!フォトンミサイル!!」

戦闘機型のモンスターを召喚したカイトは不可視のナンバーズへと攻撃を仕掛ける…だが…!

 

ギュウゥゥン

 

「なに─!?」

モンスターがいるであろう場所に放たれたミサイルは次元の歪みに掻き消される!!

 

 

『残念だが、君の攻撃は私には届かない…私のターン!「ダイソンスフィア」で「フォトンデルタウィング」を攻撃!』

 

キィーンバババババ─!!

 

「なっ!?ぐああぁあぁあ─!?」

続いて放たれた「ダイソンスフィア」による攻撃…それは無数の光線となってカイトの場を蹂躙する!!

 

 

「いったい、何が起きている…!?」

 

『…理解できないだろうな、今の私のデュエルは…君の想像を超越している…!!』

Ⅴは吹き飛ばされたカイトを見下ろす…その時だった…!

 

 

「遊馬!スピード出し過ぎよ─!?」

 

《トンマ!スピードを落とすでアリマス─!》

 

「そ、そんな事言ったって操縦が効かな─うわあああ!?!」

 

 

ドッシャァァン!!

 

 

『なんだ…?』

騒がしく叫びながら1台のデュエルコースターがカイトとⅤの間へと落下する…その正体は…

 

 

「イテテ…あっ、カイト!!」

 

「貴様ら…ここで何をしている」

カイトは呆れたように闖入者へと問い掛ける…それは遊馬と小鳥、そしてオービタル7だった…。

 

「なにって…オービタルをお前に届けに来たんだよ!お前を心配してここまで飛び込んできたんだ!」

 

《カイト様!ご無事で何よりでアリマス─!》

 

「オービタル…勝手な事を…」

カイトへと縋り付くオービタル…カイトは呆れながらも彼を叱りはしなかった…。

 

 

『九十九遊馬…一馬さんの息子…こんな所で役者が揃うとはな…これも「運命」か…』

 

「お前は…!」

歩みよってきたⅤを遊馬は睨みつける…!

 

「お前にも聞きたい事がある!!父ちゃんは…父ちゃんは何処にいる─!」

 

『…いいだろう、デュエルは中断だ…君には知る権利がある、私の知っている事を全て話そう』

詰め寄られたⅤはデュエルディスクを下ろし、遊馬達を見つめる。

 

「ふざけるな…!オレはお前の話に興味は…」

 

『カイト、君にも関係がある事だ…なぜ、私達がWDCへと姿を現したのか…そしてなぜ君達兄弟…いや、カイトの()()…Dr.フェイカーに復讐しようとしているのか…!!』

 

「なっ…!?カイトの父ちゃんが…Dr.フェイカー─!?」

Ⅴの思わぬ言葉に遊馬は驚愕する、ハートランドシティの実権を握るフェイカー…その息子がカイト達兄弟だと言うのだ…!

 

 

『これからするのは5年前の話…私達の父親が…フェイカーに裏切られた顛末だ…!!』

 

 

 

─決闘中断─

 

 

 

Ⅴ曰く、5年前…Dr.フェイカーとクリス達の父・バイロンは共同で「異世界への扉」の研究をしていた…都市伝説として語られるデュエルモンスターズの「精霊世界」とは違う…高次元世界へと至る扉、それをフェイカーは()()()()()()()()()ように探し続けていた。

 

 

そして「扉」探しが完全に手詰まりとなった矢先…バイロンはとある人物に協力を求めた、それが遊馬の父・一馬だった。

 

一馬はフェイカーの「富も名誉もいらない…ただ扉を見つけたい」という言葉を信じて彼らに協力する事となった、そして一馬はフェイカーの行なっていた世界中の21ヶ所の次元の歪みから次の場所を予測する「21次元方程式」を見直し新たな仮説「23次元方程式」を提唱した…。

 

 

『こうして我々は新たな計算式を元に一つの結論に達した…そして父達3人は次に異世界の扉が出現すると思われるある場所へと向かった…私が直接見ていたのはここまで…ここから先は、私の父が話してくれた記憶…あの遺跡で何が起きたのか…!!』

そしてⅤは話を続ける…裏切りの真実を…!

 

 

 

5年前…

 

 

 

 

「ここで行き止まりか…?」

 

長旅の末フェイカー達は遺跡へと辿り着いた…そして遺跡に仕掛けられた数々の罠を抜けた遺跡の最奥…そこは小さな祭壇らしきもの以外、何も存在しない場所だった…。

 

 

「おかしい…何かがあるはずだが…?」

 

『確かに…何かが不自然だ』

バイロンと共に周囲を探索する一馬…その時だった…!

 

ギィン─! バリバリバリ!!

 

「なっ!?これはっ…うわあああ!!」

突然、一馬達の足元が光りはじめ、電撃が一馬達に襲い掛かる!!

 

 

【ククク…ハハハハ!!ついに、ついにこの時が来た…!!】

 

『フェイカー…!?いったい、何を…!』

遺跡に笑い声が響く…それは一馬達の様子を離れた場所で見守っていたフェイカーのものだった…。

 

【君達には悪いと思っているよ、君達の立つ床にはこう書かれている…「2つの魂を捧げし時、大いなる扉が開かれる」とな…!!】

 

『まさか…我々を生け贄にするつもりなのか…!フェイカー!!!』

バイロンの怒号が遺跡に響く…フェイカーは極秘調査で異世界の扉を開く為には生け贄が必要である事を知り、一馬達2人をその生け贄にしようとしていたのだ…!

 

「フェイカー!バイロンは親友ではなかったのか!?」

 

【親友…?くだらん!!もし本当に親友だというのなら…喜んで私の犠牲になってくれバイロン─!!】

 

『フェイカー…!』

バイロンは裏切られた…その瞬間、祭壇が崩れ落ち…足元に異次元への扉が開く…!

 

『うわあああ!!』

 

「バイロン─!!」ガシッ!

落下する直前…一馬はバイロンを掴み、崖っぷちで踏み止まる…!

 

 

『手を離せ一馬…!このままでは君も!!』

 

「かっとビング…ですよ…!やんちゃ坊主曰く…!デュエルをすればみんな、仲間になれる…!私にとって()()()()()()()…!冒険をする者は…みんな仲間なんだ…!!俺は…最後まで諦めない…!!お前の為に…家族の為に!!」

力を振り絞って崖へと掴まる一馬…だが、無情にも崖は崩れ落ちた…。

 

 

「っ…!!うわあああ─!?」

 

『この怨み…忘れんぞ!!フェイカァァ─!!!』

バイロンは怨嗟の叫びと共に異次元へと放り出された…。

 

 

「(やはり、こうなるのか…だが、俺は諦めない…!遊馬…遊海…!この世界を頼む…!!)」

 

 

SideOut

 

 

 

 

『フェイカーに裏切られた父は異世界へと放り出された…だが、父は戻ってきた…!異世界の狭間を彷徨いながら、復讐だけを心の糧として…!』

Ⅴは怒りに震えながら語り続ける…。

 

『確かに父は帰ってきた…!だが、代償としてその姿は変わり果ててしまった…それが我が父…今の()()()の姿だ!』

 

「なんだと…!?」

 

「っ…!」

カイトは驚愕する、前夜祭に乱入した少年…それが異世界を彷徨った影響で幼児化したバイロンだという事実…それは到底信じられないものだった…。

 

 

『全ての元凶は、Dr.フェイカーにある!その報い…必ずや受けてもらう!』

 

「…オレにあるのはハルトだけだ…Dr.フェイカーのした事には興味はない…!!」

Ⅴの怒りを受け止めたカイトもまた怒りを露わにする…今のカイトにとってフェイカーは父ではない…否、「父と思いたくない」存在だった。

 

「デュエルを再開する!どけ遊馬!オービタル!!」

ハルトを傷付けられた怒りを燃やしながら…カイトはデュエルを再開させる!!

 

 

 

─決闘再開─

 

 

 

 

「闇に輝く銀河よ…希望の光になりて我が僕に宿れ!光の化身、ここに降臨!現れろ!『銀河眼の光子竜』!!」

《ギャオオオン!!》

 

『現れたか、「ギャラクシーアイズ」…!』

再開するデュエル…カイトはついに切り札である「ギャラクシーアイズ」を呼び出す!

 

「(さっきオレは攻撃力1800の『デルタウィング』を破壊され1000のダメージを受けた…つまり、見えない敵の攻撃力は2()8()0()0()!!)バトルだ!『ギャラクシーアイズ』で『ダイソンスフィア』を攻撃!破滅のフォトン・ストリーム!!」

自身の受けたダメージから攻撃力を推察したカイトは「ギャラクシーアイズ」で攻撃を仕掛ける!

 

『…愚かな』

 

ギュウゥゥン

 

 

「なっ…!?」

 

「攻撃が消された!?」

破滅の閃光は再び掻き消される…!

 

『いいだろう、カイト…見せてやろう、私のナンバーズを!』

 

09

 

Ⅴの背後で光の爆発が起きる…そしてさらなる変化が起きる…。

 

宇宙空間に輝く太陽…その背後から巨大な()()が現れる、それは巨大な機械…巨大な()()1つを覆い尽くし、膨大なエネルギーを得る為の空想の発電衛星…!

 

「デカすぎる…!!」

 

(あまりに巨大過ぎて視認できていなかったのか…!)

遊馬達はあまりに巨大な「ダイソンスフィア」に圧倒される…その大きさのあまり、遊馬達の周囲全てが覆われてしまっている…!

 

 

 

『「ダイソンスフィア」は、太陽をも覆い尽くす宇宙コロニー!その能力はまさに無敵…カイト、お前の攻撃など無駄だ!』

 

「馬鹿な…攻撃が通じないだと…!?」

 

『そうだ、「ダイソン・スフィア」はORUがあるとき、相手の攻撃を無効にすることができる!』

Ⅴは「ダイソンスフィア」の効果の1つを明かす、それはORUを持つ限り攻撃を無効にできる強力な効果だった…!

 

「攻撃が効かなかったその為か…!だが、効果がわかれば…!」

 

『果たしてそうかな…?君のやることは手に取るように分かっている、なにしろ…君にデュエルを教えたのはこの私なのだから…!」

 

(なに…!?)

 

「Ⅴが…カイトの師匠!?」

Ⅴの言葉に再び遊馬達は驚愕する…凄まじいデュエルタクティクスを持つカイト…そのデュエルを教えたのはⅤだったのだ。

 

 

 

『トロン…いや、父がいなくなり、私の家族はバラバラになりかけた…本当なら幼い弟たちは施設に引き取られる…そんな時、弟達を白野さんが引き受けてくれた…そして私は、父が消えた事件の真相を知るためにDr.フェイカーの元に残った…研究の忙しさで弟達に会える時間は少なかったが…あの人達には感謝している、白野さんのおかげで弟達の心の傷は小さく済んだ…』

 

「Ⅴ…」

遊馬は知っている…遊海の家に飾られた写真、その中で笑いあう兄弟達の姿を…。 

 

 

『だが…やはり弟達に会えない時は寂しかった…そんなとき、私は君たち兄弟と出会った…君たち兄弟の姿に、私は自分の兄弟を重ね見ていたのだ……君は強くなりたがっていた。弟を守るための力を欲しがっていた……だから私は君にデュエルを教えたのだ』

Ⅴの脳裏に浮かぶのは病弱なハルトへ献身的に世話をするカイトの姿…そして、子供達へあまり目を向けないフェイカー…その姿に自分達兄弟の姿を重ねたⅤは彼へと戦う手段を教えた…。

 

『…それが、こんな形で戦うことになるとは…だが!私の邪魔をするのなら、君であろうと容赦はしない!』

 

「Ⅴ…!」

カイトとⅤは睨み合う…そしてⅤによる攻勢が始まる…!

 

 

 

 

「ダイソンスフィア」にはさらなる効果…ORUを使う事でダイレクトアタックできる効果があった…Ⅴはその効果によって直接攻撃を仕掛けるが…カイトは罠カード『光子化』によって攻撃を無効にする…だが、Ⅴは罠カード『スペース・ゲート』を発動…『光子化(フォトナイズ)』を無効してカイトへ大ダメージを与える、カイトの残りライフは…200…!

 

 

『お前のライフは残りわずか200…もはや勝負は決まった、諦めろカイト!お前に私は倒せない!』

 

「ぐうっ…!」

カイトは歯を食い縛りながらⅤを睨みつける…Dr.フェイカーへの怒りが乗ったⅤの攻撃はカイトの肉体を傷付けていた…。

 

 

「カイト!立てぇ!!」

 

「っ…遊馬…?」

追い詰められたカイトへ遊馬が叫ぶ!

 

「こんな所でお前が倒れたら…誰がハルトを助けるんだよ!」

 

「…ハルト…!」

カイトの脳裏に最愛の弟の姿がよぎる…トロンによって力を奪われてしまったハルトはいまだに眠り続けていた…。

 

「カイト!!」

 

「黙っていろ遊馬…!お前に同情される筋合いはない…!!」

傷ついた体でカイトは立ち上がる…!

 

 

『意外だな遊馬、君がカイトの味方をするとは…』

2人の様子を見ていたⅤが遊馬に問い掛ける。

 

『カイトは一馬さんを裏切ったDr.フェイカーの息子…そして何より「ナンバーズハンター」だ!カイトが生き延びるということは…君もいずれ狩られるかもしれないのだぞ?』

 

「…ああ、わかってるさ!!でも、オレはカイトと()()()()()()()!だから…アイツがどう思おうと…カイトはオレの仲間だ!そして…オレの目標なんだ!!」

Ⅴの問いに遊馬はまっすぐ答える、「デュエルをすればみんな仲間」…それは例え敵対する相手であっても変わらない!

 

 

『…仲間、か…一馬さんも大切にしていた、だが…その想いもDr.フェイカーは踏みにじり、裏切った!君は許せるのか?そんな奴の息子を─!全ての真実を知ったそのとき…私は…!』

Ⅴは思い返す…父から真実を告げられた直後、彼はハートランドを去った…事情を知らずにⅤを追いかけて来た幼いカイトへさえも憤怒の眼差しを向けながら…。

 

そして…兄弟達を守ってくれた白野達に事情を直接告げぬまま…彼は復讐へと身を落としたのだ…。

 

 

「戯言はもういい…!オレはお前を倒し、ナンバーズを回収する!!」

 

『所詮、我々の恨みなど…分からぬのだろうな…!』

 

「黙れ─!!」

カイトは再びⅤへと剣を向ける…ハルトを救う為に全てを切り捨てながら…!

 

 

 

 

(「『ダイソンスフィア』は攻撃を無効にする効果とダイレクトアタックできる効果を持ち、その効果は一見無敵に見える……だが、弱点はある!」)

奇しくもカイトとアストラルは同じ事を考え、同じ結論を出した、無敵の「ダイソンスフィア」…その弱点は─

 

 

「オレは魔法カード『オーバーレイ・ブレイク』を発動!相手モンスターのORUを全て取り除き、戦闘では破壊されない効果を無効にする!!」

 

(…流石だカイト…!『ダイソンスフィア』の唯一の弱点を突くカードを引いたか…!)

『ダイソンスフィア』の弱点、それは力の源であるORUを無くす事…カイトは土壇場でそれを可能にするカードを引いたのだ…!!

 

「これで『ダイソンスフィア』は巨大な鉄くず!いけ!!『ギャラクシーアイズ』!破滅のフォトン・ストリーム!!」

 

『…残念だが、その一手も想定内だ!』

 

「なに…!?」

 

『「ダイソンスフィア」がORUがない状態で攻撃された時!墓地のモンスター2体をORUに変換する!それにより「ギャラクシーアイズ」の攻撃は無効となる!』

『ダイソンスフィア』第三の効果…それによってカイト渾身の一撃は再び阻まれる…!

 

『無駄だ、カイト…「ダイソンスフィア」は何人たりとも破壊できない!』

 

「強すぎる…!!」

 

攻撃無効化・直接攻撃・ORUの補充…強力な効果を持つ『ダイソン・スフィア』…無敵の要塞を倒せる手段は…今のカイトには無かった…。

 

 

 

『私のターン!』

 

「っ…!ダイレクトアタックが来る!!」

遊馬達は身構える…ORUを持った「ダイソンスフィア」はダイレクトアタックができる…だが、Ⅴが選んだのは…。

 

『装備魔法「重力砲(グラヴィティ・ブラスター)」を「ダイソンスフィア」に装備!このカードは装備モンスターの攻撃力を1ターンに一度400アップする事ができ、バトルする相手モンスターの効果を無効にする!』

 

「なにっ…?」

 

(何故…彼はこんな手を…?)

カイトとアストラルは困惑する…ただ勝利するだけなら「ダイソンスフィア」の効果を使い直接攻撃をすればいい…だが、Ⅴはあえて「ギャラクシーアイズ」を破壊する一手を打ったのだ…。

 

 

『カイト、お前なら分かるはずだ…勝つだけでは()()()…!私の勝利は、お前の象徴である「ギャラクシーアイズ」を粉砕することで完結する!』

 

「ぐっ…!」

Ⅴが求めたのは『完全勝利』…!カイトの魂である「ギャラクシーアイズ」をも破壊する事で全ての決着をつけようとしているのだ!!

 

 

『やれ!「ダイソンスフィア」─!!』

 

「まだだ…!罠カード『ミラー・シェード』!!ライフを半分にする事で戦闘ダメージを0にする…ぐああぁぁ!!」

 

《カイト様─!!》

 

無数に降り注ぐ光線の豪雨…「ギャラクシーアイズ」を破壊されながらもカイトは耐えきったが…その体は満身創痍だった。

 

 

『カイト…苦しかったろう、辛かったろう…だが、もういいんだ、君はここで全ての苦しみから…開放される、ナンバーズハンターの使命からも、ハルトの苦しみからも…それが君にかけてやれる最後の情けだ…』

倒れ伏したカイトにⅤは優しく語り掛ける…。

 

 

「違う…」

 

『むっ…?』

カイトは静かに立ち上がる…その瞳に強い信念を宿して…!

 

「オレは今まで…ハルトを俺の苦しみだと思った事など…一度もない!!」

 

『っ…!?』

カイトの言葉にⅤは静かに驚く…Ⅴはカイトにとってハルトは負担になっていると思っていたからだ。

 

 

「あいつは…ハルトはオレの全てだ…!生き甲斐だ!!あいつはオレに希望を与え続けてくれた…だから、俺は諦めない!」

だが、カイトはそれを否定する掛け替えのない弟を救う為に…カイトは立ち上がる!

 

 

『カイト、何故そこまでハルトの事を…』

 

「Ⅴ…覚えていないのか?貴方が教えてくれた英雄(ヒーロー)の事を…」

 

『えっ…?』

カイトの思わぬ言葉にⅤは驚く…彼にその心当たりはなかったからだ…。

 

「…かつて、ある街に1人のヒーローがいた…彼はどんなに傷付こうと人を助け、人を護り…悪を倒し続けた…鋼の鎧を纏いし伝説のヒーロー……貴方がハルトにくれた絵本に書かれていた…」

 

「それって…!」

 

(…彼もまた、遊海に憧れていたという事か)

遊馬とアストラルはすぐ気付いた、カイトの憧れた英雄の正体を…。

 

「オレは彼のように全てを守る事はできない…だが!オレはハルトの為のヒーローであり続ける!!」

それはカイトの憧憬…全てを守るヒーロー、その姿がカイトの心を支えている!

 

『そうか、いいだろう…!…来るがいい!!』

Ⅴはカイトの覚悟を受け止め、迎え撃つ!!

 

 

 

 

 

「オレの…ターン!!(この、カードは…)」

カードを引いたカイトは引き当てたカードを見て考えを巡らせ…発動する!!

 

「これがオレの運命─!魔法カード『未来への思い』発動!!」

 

『なに…!?なんだそのカードは?お前が…私の知らないカードを…!?』

カイトが1枚の魔法を発動する…すると虹色の光が周囲を照らす!

そしてそのカードはカイトと何度も戦ったⅤの記憶にはないカードだった…!

 

 

『そんなカードがお前のデッキにあったとは…!』

 

「いくらオレの手を知り尽くしたアンタでも…このカードの事は知る訳がない…何故なら、このカードは人生でたった1枚!()()()()()()()()()()だからだ!!」

 

『なっ…!?』

 

「カイトの親父…Dr.フェイカーから!?」

Ⅴは驚愕した、父を嫌っていたカイト…そのカードが1枚でも「父から貰ったカード」を入れているとは思わなかったのだ…。

 

 

「…オレはただの一度もこのカードを使った事はない」

 

『馬鹿な…!父を憎むお前が…そんなカードをデッキに入れていたというのか…!?』

 

「あたりまえだろ!!」

動揺するⅤに向けて遊馬が叫ぶ!

 

「誰だって家族を守りたい!アンタ達が家族を守ろうとするようにな!!だからカイトもそのカードを持っていたんだ…!自分の家族にだって…希望があるって思ったからだ!!」

 

『家族の、希望…』

カイトは自分から父を嫌った訳ではない…ハルトを「物」のように使いアストラル世界を破壊するフェイカー…それを見たカイトは父を嫌うようになった、だが心の何処かで思っていたのだ…「父との関係を変えたい」と…その思いが『未来への思い』に込められていたのだ。

 

 

「黙れ遊馬…お前にオレの気持ちを代弁してもらうつもりはない!『未来への思い』の効果発動!墓地に眠るレベルの違うモンスター3体を特殊召喚する!蘇れ!『銀河眼の光子竜』!『フォトン・スラッシャー』!『フォトン・パイレーツ』!!…ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は0になる!」

虹の光と共に3体のモンスターが現れる!

 

 

 

『無意味だなカイト!攻撃力は0!しかもレベルが違うモンスターで…何ができる!』

 

「果たしてそうかな…!」

 

『なに…?』

カイトは不敵な笑みを浮かべる、カイトの勝利の方程式は…既に完成している!!

 

 

「魔法カード『シフトアップ』を発動!自分フィールドのモンスターのレベルをもっともレベルの高いモンスター…『ギャラクシーアイズ』と同じレベル8にする!…オレはレベル8の『ギャラクシーアイズ』『フォトンスラッシャー』『フォトンパイレーツ』の3体でオーバーレイ!!」

3体のモンスターが閃光となって銀河へと飛び込む!!

 

「3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」

銀河から赤い光が弾け…カイトの手に巨大な槍が現れる…カイトは槍を銀河に投擲する!

 

逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりてその姿を現すがいい!降臨せよ…我が魂!!『超銀河眼の光子龍』!!

《ガオオァァァン!!》

 

光と共に現れるのは瞳に銀河を宿すカイトとハルトの絆の結晶…究極のギャラクシーアイズが咆哮を轟かせる!!

 

 

「さらにフィールド魔法『コズミックフロンティア』の効果!エクシーズ召喚に成功した事で1ドロー!!…さらに『超銀河眼』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した時!自身以外のモンスター効果を無効にする!フォトン・ハウリング!!」

《ガオオァァァン!!》

 

『なっ…!「ダイソンスフィア」!!』

咆哮と共に放たれた音波が「ダイソンスフィア」に直撃する、それにより「ダイソンスフィア」のシステムが機能不全を起こし停止…その輝きを失っていく…!

 

 

「そしてオレは魔法カード『ビックバン・パニック』を発動!その効果により相手フィールドに表側で存在する魔法・罠をORUに変換する!さらに変換した数だけ『超銀河眼』の攻撃力を800アップする!!さらに『超銀河眼』の効果発動!ORUを1つ使い!相手のエクシーズモンスターのORUを全て吸収…1つにつき攻撃力500アップし連続攻撃できる!!」

 

『攻撃力6800の…連続攻撃だと!?』

カイトの手にした究極の力…Ⅴはそれに驚愕する…。

 

 

「(Ⅴ…オレはあの日からアンタに追い付こうとしていた…今、やっと…!)」

 

『そうか…(それがお前の強さか…カイト)』

カイトの眼差しを見たⅤはデュエルディスクを降ろした、弟子の成長を見届けた師匠として…その一撃を受け入れる為に…。

 

 

「『超銀河眼の光子龍』で『ダイソンスフィア』を攻撃!アルティメット・フォトン・ストリィィィム!!」

 

 

放たれた息吹は「ダイソンスフィア」の制御ユニットを貫く…コントロールを失った機械要塞は爆発と共に宇宙の塵と消えた…。

 

 

 

 

Ⅴ LP0

 

 

カイト WIN!

 

 

 

 

 

 

『復讐の先にあるのは、虚しさだけだ…そんなことは、私にも分かっていた…』

 

「Ⅴ…いや、クリストファー・アークライト…」

 

『…その名前で呼ばれるのは、久しぶりだよ…』

デュエルが終わり、カイトとⅤ…クリスは向かい合う、そこで初めてカイトはⅤを本名で呼んだ…。

 

『私達は父とともに自分たち家族の名を捨てた…カイト、私は父を救いたかった…だが、異世界から戻ってきた父の心はすでにDr.フェイカーへの復讐に取り憑かれていた…私には、それを止められなかった…だが、それが親子ってものだろう?』

クリスは自分の本心を吐露する、歪み果てた父を救いたい…それがクリスの本心だった…だが、クリスはその想いを抑え、トロンの右腕として動いていたのだ…。

 

 

「違う…オレは違うぞ、クリス…」

 

『えっ…?』

 

「オレは親に『抗う』為に闘っている…いつか、ハルトの事が解決した時、自分の手でDr.フェイカーとの決着をつける為に…!」

 

「カイト…」

カイトはクリスの言葉を否定する、自らの手でDr.フェイカーを糾す…それがカイトの目標だった…。

 

 

『…そうか、君は…そんなに強くなったのか…』

 

「クリス…アンタの想いはオレが受け継ぐ…!オレが代わりにトロンとのケリをつける…!!」

 

『カイト…もう、()()()()()()()()()

 

「なに…?」

クリスは穏やかな表情で首を振る…まるで()()()()()()()かのような表情だった…。

 

 

『トロンはメタルナイト、私達の恩人…白野さんと戦っているはずだ…あの人は一度トロンに勝っている、きっと…父を復讐から解き放ってくれるはずだ…』

 

「メタルナイトと…?」

カイトは一度だけ戦った…その強さは凄まじいものだった、だが…。

 

 

「Ⅴ…ダメ、だったんだ」

 

 

『なに…?』

遊馬が歩み出る、唇を噛み締めながら…

 

「オレ、ここに来る前にトロンと白野のデュエルを見て来たんだ…白野は……メタルナイトは、トロンに負けちまった…!!負けて魂を取られちまったんだ!!」

 

『「なんだと…!?」』

遊馬の思わぬ言葉にクリスとカイトは驚愕する、彼らの知る限り最強の決闘者でさえ…トロンに敗北してしまっていたのだ…。

 

 

「アストラルが…白野はあまりに怒り過ぎて、冷静さを失ってた…それが原因だって…」

 

『白野さん…!すまない、私の…私達のせいだ…!!』

クリスは涙を浮かべ崩れ落ちる…自身の漏らした弱音が遊海を追い詰めてしまっていた事に気付いたのだ…。

 

「クリス…」

 

『遊馬…頼みがある、翠さんに伝えてくれ…!「すみません」…と…!!』キィン─

 

「Ⅴ!!」

遊馬に伝言を頼んだクリスはワープゲートへと消えた…自身のナンバーズを残して…。

 

 

 

 

「…戦う理由が、増えたな…!」

カイトはナンバーズを拾いながら呟く…静かに怒りを込めながら…!

 

「カイト…メタルナイトはオレの師匠なんだ、だからオレが…!」

 

「お前の指図は聞かん…オレは、ハルトの為に戦うだけだ…行くぞ、オービタル7」

遊馬の言葉を切ったカイトはオービタルに声を掛ける。

 

《カシコマリ!っと…飛行ユニットの修理をするので少々お待ちを…!!》

 

「フン…早くしろ」

オービタルが応急処置を終えるとカイトはグライダーでその場を去っていった…。

 

 

 

「……トロンにDr.フェイカー…許せねぇ…!」

カイトの背中を見送りながら遊馬は拳を握り締める…。

 

(遊馬、私は2人が動き出した時にこの世界へと送り込まれた…ならばそれはアストラル世界にいる君の父親の意志なんだろう…)

 

「父ちゃんはきっと…オレとアストラルで2人を止めろって言ってるんだ…!やってやる…!オレがガツンと言ってやる!!自分勝手な大人達に─!!」

 

「遊馬…!」

遊馬は決意する…自分の子供達を復讐や陰謀に巻き込む身勝手な大人達を絶対に倒すと…!

 

 

「待っててくれ、遊海…!まずはトロンを倒してアンタを助けてみせる─!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideクリストファー

 

 

 

 

『っ…ぐぅ…!?』

 

ギィン─!

 

アジトへと戻ったクリスは倒れ込む…それはⅢと同じ紋章の副作用…遠退く意識の中でクリスは涙を流す…。

 

『すみません、白野さん…!私の、せいです…私が余計な事を言わなければ…!』

 

クリスは遊海へと謝罪する…その声はアジトの闇に吸い込まれるように消えていった…。



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対決!怒れる復讐者・Ⅳ〜怒りの覚醒〜

こんにちは!S,Kです!

今回は凌牙対Ⅳの戦い…その結末は…?


それでは最新話をどうぞ…!


────!!

 

 

 

(っ!この気配は…!遊馬、次の分岐を左に行くんだ…!)

 

「左…?いきなりどうしたんだアストラル?」

スペースエリアを離れ対戦相手を探す為に走り回る遊馬一行…そんな時、アストラルが通路の先から異様な気配を感じ取る…!

 

(左側から強く禍々しい力の「波動」を感じた…ⅢやⅤと同じ「紋章」の力…!この先にトロンがいる可能性がある!!)

 

「この先にトロンが…わかった、行くぜ!!」

アストラルの言葉に従って遊馬は左へと舵を切った…!

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり…幾つもの火山が噴火し、大地を溶岩の海が支配する「マグマフィールド」…そこで2人の男が対峙する…!

 

 

 

「ようやく追い付いたぜ…もう逃さねぇ!!」

 

『フッ、逃げていたわけじゃない…君を此処へと()()()()()のさ、この灼熱のフィールドへ…!』

凌牙とⅣ…因縁深い2人の決闘者がついに決着を着ける時が訪れた…!

 

 

「璃緒を傷付け、白野()()()を悲しませた事…必ず償ってもらう!!」

 

『…いいだろう、かかってこい!凌牙─!!』

家族を傷付けられた怒りを胸に秘めた凌牙…そして、Dr.フェイカーへ復讐の炎を燃やすⅣ…2人のデュエルが幕を開ける!!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 凌牙対Ⅳ

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

先の2つのフィールド同様、「マグマ・オーシャン」にも効果がある、それは「水属性モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、そのモンスターを破壊する効果」…通常であれば水属性使いである凌牙には圧倒的不利な状況…だが、凌牙には問題にならない!

 

「速攻魔法『プレート・サルベージ』を発動!!発動後2ターン目のエンドフェイズまでフィールド魔法の効果を無効にする!!」

 

『チィ…!』

凌牙の対策…それはⅢ戦で見せたフィールド魔法の無効化…それにより灼熱の世界は一転、一時的に氷の世界へと変化する!

 

 

「着いた…!シャーク…それにⅣ!!」

 

「遊馬…!」

 

『ハッ…来たか!』

氷の世界に新たな人影が現れる…それは遊馬と小鳥だった。

 

「ここがマグマフィールド…?」

 

「暑いどころか寒…ハックション!?」

 

(流石はシャーク、フィールド魔法の効果を無効にしたのか…!)

瞬時に戦況を把握するアストラル…だが、彼らはまだ気付いていなかった…デュエルを見つめるもう1人の人影に…。

 

 

【フハハハハ…!ついに始まったねえ…これはⅣにも凌牙にとっても大事な一戦…さあ、存分に戦うがいい!僕が見届けてあげるからさぁ…!アハハ…アハハハハ!!】

 

 

 

 

 

「『潜航母艦エアロ・シャーク』の効果発動!ORUを1つ使い!俺の手札1枚につき400ダメージを与える!俺の手札は3枚!喰らえ!エアー・トルピード!!」

 

『ぐおぉお…!?』

 

「よっしゃ!シャークのコンボが決まったぜ!!」

フィールド魔法の効果を封印した凌牙は得意のコンボで先制ダメージを喰らわせる!

 

 

『ははっ…!初っ端からエクシーズ召喚か、やるじゃねぇか…潰し甲斐があるぜ…!』

Ⅳは獰猛な笑みを浮かべ、凌牙を睨みつける…!

 

 

15 

 

 

『現れろ!「No.15」!「ギミック・パペット─ジャイアント・キラー」!!』

 

「出やがったな…!ナンバーズ!!」

Ⅳの場に漆黒の破壊人形が現れる…!

 

 

『お前が本気で来るなら…オレも受けて立ってやる!最高のファンサービスを見せてやろうじゃねえか!』

 

【フフフ…さあ、やるんだⅣ…凌牙を闇の中に叩き落とすんだ…】

トロンは笑う…凌牙へとその毒牙を伸ばしながら…。

 

 

 

『「ジャイアントキラー」の効果発動!ORUを1つ使い!相手フィールドのエクシーズモンスターを全て破壊!その攻撃力分のダメージを与える!デストラクション・キャノン!!』

 

「っ…!?ぐあああ!!?」

 

「シャーク!!」

糸に拘束された「エアロシャーク」が破砕器に引きずり込まれ破壊される…その残骸が赤い砲弾となって凌牙に襲い掛かる…!

 

 

『さらに!「ジャイアントキラー」でダイレクトアタック!ファイナルダンス!!』

 

「やらせるか…!永続罠『バブル・ブリンガー』発動!相手モンスターの攻撃を無効にする─!」

迫った糸鞭を無数の泡が受け止める…!

 

 

「あっ、危ねぇ…!流石シャークだぜ…!」

 

『チッ…まあいい、オレがターンを終えれば「プレートサルベージ」の効果が消え…次からは灼熱地獄だ…!ターンエンド!!』

 

キン─ドドォォン!

 

「熱ちぃっ!?」

 

「これが本当の『マグマオーシャン』…!」

Ⅳがターンを終えると共に火山が噴火…フィールドが再び灼熱地獄へと変化する…!

 

「強がりかどうか…オレのデュエルを見てから言え─!」

 

 

 

 

「『ハンマー・シャーク』を召喚!さらに『バブルブリンガー』を墓地に送り効果発動!墓地の『トライポッドフィッシュ』を特殊召喚!特殊召喚されたこのカードのレベルは1つアップする!!」

凌牙の場にカナヅチ頭の鮫と深海魚が現れる…だが…!

 

 

『馬鹿め!フィールド魔法「マグマオーシャン」の効果で水属性モンスターが召喚された時それを破壊する…貴様のモンスターはここでは生きられないのさ!!燃え尽きちまえ─!!』

 

「ふっ…甘いんだよ!永続罠『逆境適応』発動!!」

 

『なに!?』

溶岩の海から現れた巨龍が凌牙に襲い掛かるが…虹色のバリアがそれを阻む!

 

「永続罠『逆境適応』…その効果により俺のモンスターは魔法・罠の効果で破壊されなくなる!これで俺のモンスターはこの灼熱地獄でも耐えぬける!!」

 

 

 

(…この一戦に懸ける彼の意気込みは半端なものではない…だが…遊馬、このデュエルが終わるまで…白野の事はシャークに伝えるな)

 

「えっ…なんで…?」

凌牙の鬼気迫る様子を見たアストラルは遊馬に進言する…。

 

(彼はいま「家族の為」に全てをデュエルに向けている…もし今の彼が白野の事を知れば…()()()()()が起きかねない…!)

 

「最悪の、事態…?」

アストラルの意味深な言葉に遊馬は首を傾げた…。

 

 

 

 

「(Ⅳ…いや、トーマス…お前は白野さんを悲しませ、全国大会で俺を罠に嵌め、挙げ句に璃緒を傷付けた…俺はお前を許さねぇ…)お前をぶっ飛ばして、白野さんに謝らせる!!」

凌牙は怒りを燃やす、その瞳に強い覚悟を宿して…!

 

 

(遊馬…彼はあのモンスターを召喚するつもりだ!!)

 

「それって…まさか、シャーク!!」

アストラルは凌牙の強い感じ取り確信した…彼の次なる一手を…!

 

 

「『バブルブリンガー』の効果で特殊召喚したモンスターは2体分のエクシーズ素材となる!俺は2体分となったレベル4の『トライポッドフィッシュ』と『ハンマーシャーク』でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!」

 

32

 

「現れろ!『No.32』!『海咬龍シャーク・ドレイク』!!」

 

《グルルァァ!!》

赤い鰭を持つ最強の牙がシャークの場に現れる!!

 

 

「で、出ちまった!」

 

(カイトのナンバーズ…「シャークドレイク」…!)

現れたナンバーズを警戒する遊馬とアストラル…だが、彼ら以上に驚いている人物がいた…。

 

 

『なっ…ナンバーズだと!?しかも、そのカードは…Ⅲの…!』

Ⅳは思わぬモンスターの出現に驚愕する…実はトロン一家の中で()()()()凌牙へナンバーズを渡した事が伝えられていなかったのだ…。

 

 

 

『トロンとⅤが何かを企んでいた事は知っていたが…Ⅲを使って、あのナンバーズを凌牙に…!?』

 

【君には話してなかったけどねー】

 

『っ…!?トロン!?…なぜだ!?』

困惑するⅣにトロンの幻影が話し掛ける…。

 

 

【だってさぁ…君に話したら計画が漏れちゃうかもしれないだろう?君は口が軽いからねぇー…人にはそれぞれ役割があるんだよ、ⅤにはⅤの…ⅢにはⅢの…】

 

『クッ…オレの…オレの役割は!?』

 

【君の役割は凌牙を心の闇の中に叩き落すことさ…でも、君はそれすらもできていないけどねぇ…がっかりだよ】

 

『な、に…?』

トロンの呆れたような言動にⅣは困惑する…。

 

 

【君は確かに彼をここまで追い詰め、『シャークドレイク』を呼び寄せた…でもね、凌牙はまだナンバーズの力に飲まれず、正気を保っているんだよ…まぁ、君が悪いだけじゃない…彼にはストッパーがいたからねぇ】

 

『…白野のことか』

 

【大正解!彼は凌牙が道を踏み外そうとするたびに彼を救いあげてきた…彼の事は本当にイレギュラーだったよ…さてと、うかうかしてると君も危ないよ?凌牙の力も、『シャークドレイク』の力も、君はよーく分かってるだろう?】

 

『凌牙の、力…!?』

トロンは言うだけ言うと姿を消してしまった…。

 

 

 

「俺は…ナンバーズの力になんて飲まれねぇ!『シャークドレイク』で『ジャイアントキラー』を攻撃!デプス・バイト!!」

 

『ぐああっ!?』

放たれた鮫型のエネルギーが殺戮人形を粉砕する!

 

「まだだ!『シャークドレイク』の効果発動!ORUを1つ使い!戦闘で破壊した相手モンスターを特殊召喚し、その攻撃力を1000下げる!」

 

『やらせるか!手札の「ギミックパペット─ナイト・ジョーカー」の効果発動!戦闘で破壊された墓地の「ジャイアントキラー」を除外する事でこのモンスターを特殊召喚できる!』

Ⅳは凌牙必殺のコンボをギリギリで回避する!

 

 

【危なかったねぇ!でも咄嗟の対応はよかったよー?これで君はまだ戦える…凌牙をさらに追い詰めることができる…ってことだよね?】

 

『っ〜!!』

トロンの幻影がⅣを小馬鹿にするように声を掛ける…まるでⅣ自身をあえて怒らせるように…。

 

 

「命拾いしたなⅣ!俺はこれでターンエンドだ…!」

 

 

【ほらほらぁ…!凌牙もまだまだ元気だよー?頑張らなくちゃあ…なんの為に君にあの力をあげたと思ってるのー?】

 

 

『っ〜!!分かってるさぁ!!

 

(「「「!?」」」)

 

あまりに酷いトロンの口撃にⅣは声を荒らげ叫ぶ…だが、その様子は凌牙達にとって()()()()()()()()()()()()()()()()()…。

 

 

「Ⅳの奴…いきなりどうしたんだ…?誰かと喋ってる…??」

 

(…まさか…?)

いきなり叫びだしたⅣ…アストラルはその原因を予測し、声を漏らす。

 

 

『わかってる…わかってるさ!!オレの役割が凌牙を心の闇の中に落とす事だって事は…!そのために今までもオレは動いてきた!!大会で奴を嵌めたのも…璃緒に怪我を負わせたのも!…全てはトロンのため!!トロンの命令に従ったまで!!』

 

「なっ…トロンの命令でシャークの妹を…!?」

 

「どういう事なの…!」

Ⅳによる罪の告白に遊馬と小鳥は動揺する。

 

 

「っ…!!いるのか、トロン!姿を見せ【いるよ!】貴様ぁ!!」

 

【おっと!危ない危ない…】

凌牙の前にトロンが現れる…凌牙はトロンを捕まえようとするが…幻影のトロンは捕まらない…。

 

 

「あそこにトロンが!?何も見えねぇけど…!?」

 

(…おそらく何らかの力で彼らにだけ自分の幻影を見せているのだろう…)

 

【そのとーり!流石はアストラル!】

 

(っ!?)

トロンの存在に気付いたアストラルにトロンの声が囁く…!

 

(トロン…君の目的はなんだ…!何故シャークを心の闇に落とそうとする!?)

 

 

【【【フフフ…!隠す必要も無いから…()()に答えるよ!】】】

 

「うわっ!?」

 

「ひゃ!?」

トロンの言葉通り、全員の前にトロンの幻影が現れる…!

 

 

 

 

 

【僕が凌牙の心を闇に落とす理由は・・・操るためさ!Dr.フェイカーを倒す刺客としてね!】

 

「なっ…刺客…!?」

 

「ふざけるな…!俺はそんなものになるつもりはない!!」

トロンの言葉に凌牙は怒りを露わにする…!

 

 

【君にその気がなくても…もう逃げられないんだよ、君はボクの操り人形になるんだ…!僕だけの人形に!】

 

『…オレ達兄弟は…!トロンのために力を尽くしてきた!なのになぜオレ達じゃなく…いや、オレじゃなくて凌牙を…!?そんなの…オレは認めない!!』

怒りを露わにしたのはⅣも同じだった、トロンの為に尽くしてきたⅣ…トロンは彼をアテにはしていなかったのだ…。

 

【言っただろぅ?人には役割がある、って。Dr.フェイカーを倒すには、君よりも、凌牙のほうが…()()()()

 

『認めない…!そんなことは断じて認めねぇ!!Dr.フェイカーはオレが倒す!こんな奴より…オレの方が強いって事を見せてやる─!!』

 

 

 

 

40

 

 

『現れろ!「No.40」!「ギミックパペット─ヘブンズ・ストリングス」!!』

トロンと凌牙への怒りが頂点へと達したⅣは堕天の演奏人形を呼び出す…!

 

『オレは更に手札から装備魔法「デステニー・ストリングス」を発動!!「ヘブンズストリングス」に装備!このカードはデッキからカードを墓地へ送り、それがモンスターカードだった時!そのモンスターのレベル分の回数攻撃ができる…しかも、お前のモンスターは破壊されずになぁ!』

 

「なんだと!?」

「ヘブンズストリングス」の持つ細身の剣がバスターソードのような大剣に変化する!

 

『俺が引いたのは…レベル8の『ギミックパペット-ネクロ・ドール』!よって!「シャーク・ドレイク」を()()()()で攻撃する!』

 

「なっ─!?」

 

『やれ!「ヘブンズストリングス」!ヘブンズブレード!!』

 

「ガッ、ぐああああ!?」

 

「シャーク!!」

「ヘブンズストリングス」が「シャークドレイク」へと斬りかかる…だが、「シャークドレイク」は破壊されず、ダメージと強力な()()()()()()()が凌牙へと襲い掛かる!!

 

 

『苦しめ…もっと苦しめぇ凌牙ァァ!』

 

「うわあああ!!ガハッ…!?」

 

「や、やめろぉぉぉ!!!」

あまりに残酷なデュエルに遊馬が叫ぶ!!

 

 

「こんなの、こんなのデュエルじゃねぇ!!デュエルは怒りや復讐の為にするモンじゃねぇぇ!!」

 

【おっと…邪魔はさせないよ】

 

ギィン─!!ジャラジャラジャラ!

 

「なっ…う、動けねぇ…!!」

 

(遊馬!!)

トロンが紋章の力で遊馬を縛り上げる…!

 

【ハハハ…ここからが本当のお楽しみなんだからさぁ…!君はそこでおとなしく見ていなよ…!】

 

 

 

「ぐあぁぁ…!!」

 

「やめろ…!デュエルは、デュエルは人を幸せにするものだぁぁ!!」

 

『苦しめ、凌牙ぁ…苦しんで…苦しんで…苦しみぬいた末に地獄に落ちるがいい─!』

縛られながらも遊馬は叫び続ける…だが、Ⅳは攻撃の手を緩めない…!トロンへの怒りと凌牙への怒りが合わさり、その心は狂気に蝕まれていく…!

 

 

「デュエルをすれば仲間に…友達になれるのに…!人を傷つけるなんてデュエルじゃねぇぇ─!!」

 

【みんな友達、ねえ…君は本当にそっくりだねえ…あの九十九一馬に…!彼もよく言ってたよ…友情!とか…人を幸せに!!とか…】

 

「っ…!お前が…お前らが父ちゃんを巻き込まなければ!!」 

遊馬はトロンの幻影へ吠える…!

 

【君から父さんを奪ったのはDr.フェイカーだ…!恨むならフェイカーを恨みなよぉ?そうすれば君の心の中にも『闇』が生まれる…それを広げて…フフフフ…!約束したよねえ?次は君の心を食べてあげるって…】

 

「ふざけるな…!オレはアンタを許さない!!白野を…っ!!」

遊馬は咄嗟に口を噤む…凌牙に遊海のことが知られればどうなるか…遊馬はようやく理解したのだ…!

 

【フフフ…ハハハ…!ありがとう遊馬…!君のおかげで()()()()()()…!確実に凌牙を闇に落とす最後の一手を…!】

トロンは笑いながらフィールドを見つめた…。

 

 

 

 

『さあ…!ラストだぁぁ!』

 

「ぐあ"あ"あ"あ"!!…ぁ…」

8回の連続攻撃を受けた凌牙は地面に倒れ込む…上着は擦り切れ、額からは血が流れている…。

 

『どうだ、凌牙ぁ…!だが、まだ終わりじゃない!「ヘブンズストリングス」の効果発動!ORUを1つ使い!「シャークドレイク」にストリング・カウンターを置く!』

「ヘブンズストリングス」が自身の体から伸びた弦を弾き鳴らし、剣を掲げる…そして無数の赤い糸が空から伸び、「シャークドレイク」に巻き付く!!

 

『これで次のターンの終わりに「シャークドレイク」は破壊され…その元々の攻撃力分のダメージをお前は受けることになる!それで本当のおさらばだ…!ターンエンド!!』

獰猛な笑みを浮かべながらⅣはターンを終える…だが、凌牙は立てなかった…!

 

 

「シャーク…シャーク!!返事をしろ!!聞こえてんだろ、シャーク!!シャーク─!!」

遊馬の叫びがフィールドに木霊した…。

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

 

「(全身が、痛てぇ…全身を殴られたみてぇだ…)」

朦朧とした意識の中、凌牙は痛みに苦しんでいた…。

 

ギィン─!

 

凌牙…凌牙…凌牙!

苦しむ凌牙へと何者かが語り掛ける…そして凌牙の意識は暗転した…。

 

 

 

 

 

凌牙…我が声を聞け…!

 

「お前、は…『シャークドレイク』…!?」

凌牙の精神世界…そこで凌牙とシャークドレイクは対峙する…。

 

凌牙…オレと1つとなれ…オレを受け入れろ…!

 

「断る…!俺はもう、ナンバーズには飲まれねぇ…!」

凌牙はシャークドレイクの言葉を一蹴する!

 

 

お前はもう逃げられない、心の闇を…受け入れろ…!

 

「諦めて、たまるか…!俺は神代凌牙…!白野さんと…翠さんの息子だぁぁ!!」

 

ガン!!

 

ガアアッ!?

凌牙はシャークドレイクの鼻先を殴りつける…そして意識は再び暗転した…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

「ぐっ…ゴホッ…!」

 

「シャーク!!」

倒れ込んでいた凌牙が咳き込みながら立ち上がる…!

 

 

「うるせぇんだよ、遊馬…ギャーギャー言わなくても、聞こえてるぜ…!!俺はもう、飲まれねぇ!!」

 

「シャーク…!」

 

「よ、よかったぁ…」

なんとか復活した凌牙に2人は胸を撫で下ろす…。

 

(体の傷もひどいが…精神にもダメージを受けている…シャークは、必死にナンバーズの力に抗っている…!)

 

「えっ…!」

アストラルの言葉に遊馬は言葉を失う…ナンバーズの侵食は常人には決して抗えない…だが、凌牙は精神力だけでナンバーズの力に立ち向かっているのだ…!

 

「アストラル…シャークなら、大丈夫…!きっと白野さんの教えが…思いがシャークを守ってくれる…!!」

 

(遊馬…)

遊馬は凌牙を信じ、戦いを見つめた…。

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!永続魔法『異次元海溝』を発動!『シャークドレイク』を…除外する!!」

 

『なんだと!?』

血を拭いながら凌牙は魔法を発動する、それは「ヘブンズストリングス」の効果をかわすと共にナンバーズの誘惑を断ち切る一手となる!

 

「オレはモンスターを伏せ…ターンエンドだ!」

 

 

『チッ…褒めてやるよ凌牙…お前がまさか「シャークドレイク」を手放すとはなぁ…』

凌牙の覚悟を見たⅣは獰猛な笑みを浮かべる…!

 

『だが、これでお前は切り札を失った!オレには攻撃力3000の「ヘブンズストリングス」がいる!このモンスターには「デステニーストリングス」が装備されている…!さっきのように連続攻撃も可能ってことだ、貴様に勝ち目は…無い!!』

勝ち誇るⅣ…だが、それに水を差す者がいた…それは…。

 

【果たしてそうかなぁ?】

 

『っ!?トロン…!?』

味方であるはずのトロン自身だった…!

 

 

【『デステニー・ストリングス』はリスクも大きい、連続攻撃を発動させるにはデッキからカードを1枚、墓地に送らなきゃならない…(パシン)】

 

「っ…鎖が…」

トロンは遊馬の拘束を解きながらⅣへと語り掛ける…。

 

 

【でも、そのカードはモンスターカードでなければいけない…もし、ドローしたカードがモンスターで無かったら?攻撃はできず…バトルフェイズは終了する!】

 

『っ!?』

 

【さっきは運よくモンスターを引き当てることができたけど…】

 

『オレが、信用できないのか…!?』

Ⅳは愕然としながらトロンに問い掛ける…トロンの口ぶりはⅣを信用せず、貶めるものだった…。

 

 

【確率の問題を言ってるんだよ…ボクは科学者だからねぇ?君は昔からそうだった…冷静で慎重なⅤやⅢと違って…直情型で、すぐにカッと熱くなる…】

 

『トロン…!』

 

【ほら、そうやってぇ…】

 

『っ〜!!!』

トロンはなおもⅣに口撃を続ける…まるでⅣの冷静さを失わさせようとするように…!

 

 

【今も冷静に考えたほうがいいよぉ?もっとも…君にそれができれば、だけど…】

 

『ぐうっ〜!!オレを…オレを!そんなに信用できないのか!?ⅤやⅢのように忠実な下僕になれないから!!でも、オレだって…アンタの、貴方の…ために…!()()()!!』

Ⅳは我慢の限界を越え叫ぶ、その様子は…親に見捨てられた子供そのものだった…。

 

『父さんは、いつもやさしく微笑んで…オレたち兄弟を暖かく見守ってくれていた…だけど…!異世界から戻ってきた父さんは…まったくの別人に変わっていた…!冷酷な「復讐鬼トロン」に…!それでも、オレ達はトロンに従った…!命じられるまま凌牙を罠に嵌め、璃緒までも傷付けた…!!』

 

「被害者ヅラするんじゃねぇⅣ!…いや、トーマス!!」

Ⅳの言葉を聞いた凌牙は怒りを込めて叫ぶ!

 

 

「例え利用されたんだとしても…!俺は…お前のした事を許さない!!」

 

『逃げるつもりは無い!…お前との決着はこの場でつける!…そしてオレが勝つ…!Dr.フェイカーを倒すのはオレだ!貴様をDr.フェイカーの刺客にはさせない!それがオレのケジメだ…!』

凌牙の言葉にⅣは覚悟を宿しながら答える…!

 

『Dr.フェイカーを倒せば…きっと、トロンも昔の姿に…我が父・バイロン・アークライトに戻ってくれると…!オレはそこまでアンタのことを思って…!アンタのために非道な事をしてきた…!アンタの為じゃなかったら…オレは璃緒や凌牙を…短い間でも()()として過ごした2人を傷付け!白野さんへの不義理な事もしなかった!!オレは、アンタが元の優しい父さんに戻るなら地獄にだって行くつもりでいた!!それなのに…それでもオレを信じ【信じないよ、ボクはもう…誰も】っ!?』

トロンはⅣの心からの言葉を…完全に切り捨てた。

 

 

【信じられるのは、ボク自身…そしてバリアン世界だけさ、ボクの命を助けてくれたのは彼らだからねえ…】

 

『フッ…ハハハハハ…!アハハハハハハ!!!』

トロンの無情なる言葉…それを聞いたⅣは狂ったように笑う…。

 

 

『オレは所詮アンタの駒ってワケだ!Ⅲはアンタに使い捨てにされた…!Ⅴもそうだ!だが、オレはただの駒じゃねぇ…!これでもデュエルのアジアチャンピオンだ!…簡単に使い捨てにされてたまるかぁ!!』

トロンへと啖呵を切ったⅣは凌牙へと向き直る…!

 

『凌牙…悪りぃが…お前に八つ当たりさせてもらうぜ…!!』

 

「かかって来やがれ…トーマス!!」

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!…っ!?』

カードはドローしたカードを見て目を見開く、それはモンスターカード…Ⅳの脳裏にトロンの言った『確率』の二文字が過る…!

 

『(ふざけるな…オレは…負ける訳にはいかねぇ!!)オレには技も運もあるってところを見せてやる!!いくぜ…!「デステニーストリングス」を装備した『ヘブンズストリングス』で攻撃!!』

Ⅳは再び攻撃を仕掛ける!

 

『「デステニーストリングス」の効果!デッキからカードを1枚ドローして墓地へ送る!それがモンスターカードだった時!レベル分の回数攻撃できる!凌牙!これが最後の攻撃─…な、なにっ…?」

 

【どうやら、ボクが心配したとおりだったようだねぇ…】

 

Ⅳはカードを引く…だが、それは…モンスターカードではなかった、だが…そもそもⅣはこんなギャンブルをする必要はなかった。

凌牙のフィールドには伏せモンスターと「逆境適応」「異次元海溝」の3枚のみ…「デステニーストリングス」の効果を発動せずに伏せモンスターを攻撃し、凌牙に消耗戦を仕掛けていればいずれⅣは勝利していた…だが、Ⅳはトロンに自分の力を証明する事ばかりを考え…自ら勝利の方程式を崩してしまったのだ…!

 

 

『くっ…!?だが、まだ終わりじゃねえぇぇ!オレは手札から「ギミックパペット-シザー・アーム」を召喚!フィールドにある装備カードを破壊しレベルを2倍にする!オレは「ヘブンズストリングス」に装備された「デステニー・ストリングス」を破壊!そして「シザーアーム」のレベルは8になる─!!』

 

【あ〜あ…冷静に考えろって忠告したのにねぇ…まぁ、これもボクが誘導した結果か…】

トロンは呆れたように笑う…Ⅳは頭に血がのぼり、正しい判断ができなくなっていた…。

 

 

『オレは「ヘブンズストリングス」をリリースして「ギミックパペット-ナイトメア」を特殊召喚!エクシーズモンスターをリリースして、特殊召喚したナイトメアは、2体分のエクシーズ素材になる…!オレはレベル8の「シザーアーム」と「ナイトメア」2体分をオーバーレイ!エクシーズ召喚─!!』

Ⅳはただ勝利を求め…自身の持つ最強のナンバーズを開放する!!

 

 

88

 

 

『これがオレの本当の切り札…!出でよ!「No.88」!「ギミック・パペット─デステニー・レオ」─!!』

溶岩の海から巨大な大剣を持ち、玉座に座した獅子王の人形が現れる…このモンスターこそⅣの切り札…「デステニーレオ」だった…!

 

 

 

「攻撃力3200…これがⅣの切り札…!!」

 

(まさに「王者」の風格…!)

遊馬とアストラルは「デステニーレオ」に圧倒される…!

 

 

『「デステニーレオ」の効果発動!1ターンに1度ORU1つを墓地に送る!!そしてこのモンスターがORUを全て失くしたとき!オレは()()()()()()()()()()()!!」

 

(なっ…!?ORUを使い切る事での特殊勝利だと!?)

アストラルがあまりに強力な効果に驚愕の声を上げる…デュエルモンスターズにおいて「特殊勝利」といえば手札に5枚のパーツを揃える「エクゾディア」や20ターン経つ事で勝利する「終焉のカウントダウン」などがある…だが、先の2つに比べても「デステニーレオ」の効果はあまりに強力すぎる…!!

 

 

『これが「無敵」のナンバーズ「デステニーレオ」の力だ!ORUは残り1つ…!次のターン「デステニーレオ」が最後のORUを使った瞬間!凌牙…お前の負けだ!』

 

「ぐっ…!!」

刃を交えずして勝利する、故に「無敵」…さらに高い攻撃力を誇る「No.」である「デステニーレオ」を破壊しなければ…凌牙に勝ち目はない…!

 

 

 

「(負ける…?俺はこんなところで負けるのか…?トーマスも倒せず、アイツらを白野さんに謝らせる事もできずに…こんなところで…!?)」

迫ったリミットを前に凌牙は考える…手札は0、フィールドにも現状を打破できるカードはない、まさに八方塞がりの状況…その時だった。

 

 

【諦めるのは早いよ?君にはまだ勝つ道が残ってる、君はⅣと違って…冷静に考えることができるからねえ…!】

 

「トロン…!?」

凌牙の前にトロンが現れる…それは()()()()()()、隠れてデュエルの様子を見守っていた…トロン本体だった…!

 

 

『トロン!?なぜ凌牙の前に…!?アンタは…アンタはオレに勝たせたくないのか!?』

 

【別にいいよ?勝たなくて】

 

『は…!?』

トロンの言葉にⅣは困惑する…。

 

【言っただろう?君は君の役目を果たしてくれればいい…でも、君には及第点もあげられないね…君はにはもう用はないよ、最後の仕上げはボクがやる…君の出番は終わりだよ】

 

『そ、んな…!』

トロンは完全にⅣを切り捨てた…Ⅳはその言葉が受け入れられずフリーズしてしまう…。

 

 

【さてと…まずは凌牙、君を褒めてあげるよ…君の精神力は素晴らしい!復讐の為じゃなくてただボク達を謝らせたいが為に怒りを我慢しながらデュエルするなんて…普通の子供にはできない事だよ!すごいすごい!!】

 

「てめえ…!なんのつもりだ!!」

一切感情の籠もっていないトロンの言葉に凌牙はトロンに掴み掛かる!

 

 

【あれぇ〜?ボクは君を買っているんだよ?そんなにまっすぐ強く育ったのは岸波白野のおかげかなぁ?】

 

「っ…あたりまえだ!!白野父さんは俺達兄妹の恩人だ!お前達は…あの人を悲しませた!!俺はそれが許せねぇ!!」

 

「シャーク…」

凌牙はトロンへと詰め寄る…身寄りの無い自分達兄妹を引き取り、育ててくれた遊海と翠…凌牙にとって2人は本当の親以上に大切な人になっていた…。

 

 

【ふ〜ん、じゃあさ…君は岸波白野の()()を知ってるの?】

 

「なんだと…?」

 

【Ⅳ達から聞いたよ…岸波白野は本当にデュエルが強い、5人掛かりで戦っても1回も勝てなかった…ってね、変だと思わないかい?それだけ強ければプロデュエリストになっていてもおかしくないのに…彼はプロデュエリストに登録していないんだ…変な話じゃないかい…?】

 

「それは…」

 

【答えは簡単な事さ…彼は()()()()()()()()()人間だからさ…!】

 

「ハッ…!何を言い出すかと思えば…!父さんが犯罪者だとでも言うのか?そんな事はありえない!!」

 

【ああ、ありえないさ…むしろその逆なんだから…!】

 

「なに…?」

 

(トロン…まさか!!)

アストラルはトロンの意図に気付く…凌牙を闇へと落とす為の作戦を…!

 

 

 

【君もデュエリストなら知ってるだろう?決闘者の頂点「決闘王」…その中で歴代最強と謳われ、世界の危機を何度も救った「赤帽子の英雄」「決闘の観測者」…!白波遊海!!…それが君の養父の正体さ!!】

 

『なん、だって…!?』

 

「っ…!!」

トロンは凌牙の養父の正体を暴露する…!

 

「………」

 

【ふふっ…ビックリし過ぎて声も出ないかい?そうだよねぇ!彼が生きていれば年齢は百歳を超えた老人のはず!でも彼は若い姿のまま!!君の父親は…化け物さ】

 

「トロン!てめぇぇ─!!」

トロンの言葉に遊馬は怒りのままに叫ぶ…自分の師匠を、あんなに優しい男を「化け物」と言ったトロンを許せなかったのだ…!!

 

 

「…()()()()()()()()?」

 

【なに…?】

凌牙は冷静にトロンを睨みつける…その心は少しも揺らいでいない…。

 

 

()()()()()!…あの人が伝説の決闘者だって事はな…!」

 

「「えっ…!?」」

 

(シャーク…彼は遊海の事に気付いていたのか…!?)

 

「ああ、忘れもしないさ…あの日の事はな…」

凌牙は思い返す…真実を知ったあの日を…。

 

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

 

「フォウ〜?何処にいるんだ〜?」

それは凌牙が幼い頃のある日…遊海夫妻は外出し、璃緒は習い事へ行っている為に凌牙1人で留守番をしていたある日…凌牙は家の中でフォウを探していた…。

 

 

「あっ…父さんの部屋が開いてる…」

2階へと上がった凌牙は普段は鍵の閉まっている遊海の私室の扉が開いているのを見つけた…。

 

「フォウ〜?いるのか〜?」

 

《フォウ!フォーウ?》

 

「こんなところにいたのか…ダメだよ、この部屋に入っちゃ…」

 

《キュー…》

フォウは部屋の椅子の上に座っていた、凌牙はフォウを抱き上げる。

 

「…ん?この写真…父さんと母さん…?」

ふと見た机の上…そこには1枚の写真があった、その写真には楽しそうに笑う赤帽子を被った遊海と翠、そして星のような髪型をした青年、栗色の髪の快活そうな青年、そして黒髪にメッシュの入った特徴的な髪型の青年が笑顔で写っていた…。

 

 

「フォウ、この人達…誰だかわかる?」

 

《フォウ!キュ!》

 

「…やっぱりフォウの言葉はわからないや!」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「そのあと…父さんと一緒にいたのが伝説の決闘者だって知った…年齢を偽ってる事も…!でも、父さん達が俺達の恩人である事は変わりはない!!俺は…父さんを尊敬してる!!」

 

「シャーク…!お前…」

凌牙は胸に手を置いて言い切った…!

 

【…君は良い子供達を持ったねぇ遊海、君が少し羨ましいよ…】

予想外の言葉にトロンは虚を突かれた表情をしたトロン…だが、再び笑みを浮かべる…!

 

 

【…話は変わるけどさぁ、ボクはもう準決勝へ出るのが決まってるんだ!…誰を倒したと思う?】

 

「なに…?」

 

「っ…!?シャーク!!それ以上トロンの話を聞くなぁ!!」

 

【邪魔しないでよ、遊馬】

 

ギィン─!

 

「っ!?うわあああ!!」

 

「遊馬!!」

遊馬がトロンの紋章の力で吹き飛ばされる!

 

 

【ボクが戦ったのは…()()()()()()!君ならもう意味がわかるよねぇ…?】

 

「っ!?き、貴様…!まさか!!」

 

【そのと〜り!君の大事な大事な父親をぶっ潰して来たのさ…!!いやあ…中々に面白いデュエルだったよぉ?遊海は全身ボロボロでさぁ…!立ってるのもやっとな状態でボクに挑んできたんだー、それで大人気なく「神のカード」なんて持ち出して……ボクに()()()()()()()()()

 

キィン…

 

「なっ…!?」

 

「父さん!!」

トロンの掌の上に弱々しい光を放つ赤い玉が現れる…凌牙は本能で…魂で理解した、トロンが持っているのは…本物の遊海の魂なのだと…!

 

 

『おい…トロン…!約束が違うだろ!?白野さんには手を出さないって…!邪魔をしてきても気絶で済ませるって!!』

 

【しょうがないじゃん、彼がボクを殺すつもりで仕掛けてきたんだから……まあ、そうなるように彼を痛めつけたのもボクなんだけど……さて、凌牙…君は…()()()()彼が死んだら…どんな表情になるのかなぁ…!!】

 

「「「『っ!?』」」」

 

 

『や、やめろ…やめてくれ!!やめろ!トロン!!』

トロンの言葉に全員の顔が青褪める…!

 

【やめないよ、君が悪いんだⅣ…君が余計な情を凌牙に掛けるから…!!】

 

「「『や、やめろぉぉぉ!!』」」

凌牙と遊馬がトロンを止める為に駆け出す…だが、それは…遅かった。

 

 

ギィン─ギチギチ…バキーン…

 

 

「あっ…」

 

「嫌…嫌ぁぁぁ!!!」

 

 

…あまりにも呆気なかった、紋章の力を使って握り締められた遊海の魂は……硝子細工のように砕け散った。

 

 

【へぇ、初めて潰したけど…魂ってこんなに脆いんだぁ…勉強になったよ】

 

 

「き、貴様あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」

 

 

凌牙は憤怒の叫びをあげる…今まで純粋な怒りと正義心で戦っていた凌牙…その心に復讐の黒炎が燃え上がる…!!

 

【アハハハ!!作戦大・成・功…!!ボクが憎いかい?憎いだろう…!なら、君の心の闇を開放するんだ!そして「シャークドレイク」と一つになるんだ!!そうしなければ君の牙はボクには届かない!!】

トロンは狂ったように笑う…闇に墜ちた凌牙を見ながら…!!

 

「テメェは…テメェは絶対に許さねぇぇ!!」

 

 

 

 

 

「俺のターン!!ドロー!!」

怒りを込めながら凌牙はカードを引く…そして強い憎しみと復讐心が深淵の底からナンバーズを呼び戻す…!!

 

「セットモンスター『ディープ・スイーパー』を反転召喚!このカードが召喚・反転召喚された時!このカードをリリースする事で永続魔法『異次元海溝』を破壊する!!戻ってこい!『シャークドレイク』!!」

《グルルァァ!!》

 

「っ…!!ダメだ…ダメだシャーク!!憎しみに飲まれちゃダメだ─!!」

遊馬が泣きながら凌牙に叫ぶ…だが、その言葉は届かない…!!

 

 

『っ!!「シャークドレイク」が復活した…!?凌牙…テメェ何をするつもりだ!?』

Ⅳが復活した「シャークドレイク」を見て叫ぶ…「シャークドレイク」の攻撃力では「デステニーレオ」を倒す事は不可能…だが、凌牙の心の闇が…新たな力を呼び覚ます!!

 

ギィン─!

 

「『シャークドレイク』よ!我が怒り…俺の復讐の為に進化せよ!!俺は『No.32海咬龍シャークドレイク』で()()()()()()()()()()()()!!」

 

(カオスエクシーズチェンジだと!?)

凌牙を禍々しいオーラが包み、「シャークドレイク」が銀河へと飛び込む!!

 

 

32

 

「現れろ!『CNo.32』!!最大最強の牙よ!我が怒りの化身となりて全てを噛み砕け!!『海咬龍シャーク・ドレイク・バイス』!!」

凌牙のフィールドに8枚の鮫鰭の合わさったオブジェが現れ展開…純白の体を持つ、最強の牙が現れる!!

 

 

「『シャークドレイク』が…カオスナンバーズに!?」

 

(な、何故…!?何故シャークにカオスナンバーズを出す力が宿っている!?)

遊馬とアストラルは動揺する…彼らにとってカオスナンバーズは友情の結晶であり、アストラルの新たな力…それを生身の人間が召喚してしまったのだ…!

 

 

【よくやったねぇ凌牙、上出来だ…フフフフ…ハハハ…!!】

トロンはほくそ笑む…まるで凌牙の…「シャークドレイク」の覚醒を知っていたかのように…。

 

 

「『シャークドレイクバイス』の効果発動!ORUを1つ使い!墓地の『シャーク』と付くモンスター『エアロシャーク』を除外!そしてその攻撃力分…!1900を『デステニーレオ』から奪い去る!!」

 

『なんだと!?』

墓地から飛び出した「エアロシャーク」が「デステニーレオ」に食らいつき、力を削る!

 

「『シャークドレイクバイス』で『デステニーレオ』を攻撃!!デプス・カオス・バイトぉぉ!!」

 

『ぐっ…!?うわあああああ!?』

 

『シャークドレイクバイス』から放たれた光線が無数に分裂…『デステニーレオ』の全身を貫き、Ⅳのライフを削り切った…。

 

 

 

 

Ⅳ LP0

 

 

凌牙WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャークが、勝った…!?」

 

(待て…!様子がおかしいぞ!!)

デュエルが終了しARビジョンが消えていく中…アストラルが異変に気付いた…「シャークドレイクバイス」が()()()()()()()()…!

 

 

 

【流石は彼の息子というべきかな…?まさか精霊の力に目覚めるなんて…】

 

「父さんを…父さんを返せぇぇ─!!」

《ガアアアッ!!》

凌牙は涙を流しながらトロンへ「シャークドレイク」をけしかける!!

 

 

【焦らないでよ凌牙…今は決着をつける時じゃない…まだ戦いは残ってるんだから…!!】

 

ギィン─!バチン!!

 

《ガアアアッ!?》

トロンの紋章が「シャークドレイク」を壁に叩きつける!!

 

【九十九遊馬…君の「かっとビング」がどこまで通じるか…見ててあげるよ…フフフ…ハハハハハ!!】

 

「待て!待ちやがれトロン─!!」

遊馬の叫びを聞かずトロンは消えていった…だが、凌牙の怒りは収まらない!!

 

「待ちやがれトロン!!許さねぇ…テメェだけは許さねぇぇ!!!」

 

《ガアアアア!!》

 

ドドド…ドガァァン!!

 

 

「きゃあああ─!?」

 

「っ!?やめろシャーク!!もうトロンは逃げちまった!!」

 

(ダメだ…!!シャークは強すぎる怒りと精霊の力の覚醒で暴走してしまっている!!)

凌牙の叫びに応じるように「シャークドレイク」が暴れ、デュエルフィールドを破壊していく…!!

 

 

「おい!?どうやったらシャークを止められるんだよ!?デュエルするしかないのか!?」

 

(いや、ダメだ…!シャークはまともにデュエルに応じる状況じゃない…!!)

涙を流しながら暴走する凌牙…彼を止める方法は…

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン─!

 

 

 

(っ…この光は…!?)

その時、不思議な事が起きる…遊馬達の目の前に赤い光が現れ…遊馬のデッキに宿ったのだ…!

 

「な、なんだ今の…!?」

 

(今の光は…賭けるしかない!!遊馬!このナンバーズを()()するんだ!!)

 

「召喚って…!?」

アストラルは1枚のナンバーズを遊馬に渡す!

 

(急げ遊馬!時間がない!!)

 

「うおおお!!かっとビングだ!オレぇぇ!!」

アストラルに言われるがままに遊馬は1枚のナンバーズをデュエルディスクに叩きつける!

 

93

 

「現れろ!『No.93』!希望の戦士が光を宿し!闇を照らす希望となる!!『太陽皇ホープ・フェニックス』─!!」

 

《……!》

遊馬達の前で黄金の光が弾ける、そこにいたのは黄金の鎧を纏う不死鳥の剣士…遊馬と遊海の絆のカードだった。

 

 

「これって…ルドガーさんと戦った時の…!?」

 

「召喚、できた…!頼む!『ホープフェニックス』!!シャークを止めてくれ!!」

 

《!!》

小さく頷いた「ホープフェニックス」は「シャークドレイク」に向けて走り出し…

 

ガシッ!

 

 

《落ち、着け…敵は、いない…!もう、やめろ…!》

 

《ガアアア!!》

 

暴れる子供をあやすように「シャークドレイク」を抱きしめた…。

 

 

「『ホープフェニックス』が…喋った…?」

 

「この声…まさか……頼む!!シャークを止めてくれ!…()()!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《もう、いい…今は、眠れ…暴れる、時は、今じゃ、ない…!》

 

《…グルル……》

 

キィン─

 

「シャークドレイクが…消えていく…」

格闘する事数分…力を使い果たした「シャークドレイク」は静かに消えていった…。

 

 

《凌牙…ごめん、な…お前に、辛い、思いを、させた…》

ホープフェニックス…否、ナンバーズに憑依した遊海は気を失った凌牙を優しく撫でる…その身は少しずつ粒子に変わっていく…。

 

 

「遊海…!アンタ…!」

遊馬達が2人のもとへ駆け寄る…

 

《賭け、が…上手くいってよか、た…心配する、な…俺は、死なん……後で、このカードを、おれの…からだ、に…》

 

キィン…

 

「遊海…アンタ、本当にすごい人だぜ…」

遊馬は手に収まった「ホープフェニックス」のカードを見ながら呟いた…。

 

 

 

 

「っ…うぅ…ここ、は…」

 

「シャーク…!気が付いたか…よかった〜…」

 

「遊馬…?」

少しだけ時間が経ち、凌牙は目を覚ました…邪悪なオーラはなんとか収まっていた…。

 

(シャーク、君はナンバーズの力と目覚めた精霊の力で暴走していたのだ…覚えているか?)

 

「……お前が、アストラルか…俺は…どうなって…っ!!トロンの野郎は!?」

凌牙は再び怒りに燃えた目で辺りを見回す!

 

『トロンなら、逃げたよ…お前の力に恐れをなしてな…』

 

「テメェ…トーマス…!!」

凌牙はなんとか身体を起こす…少し離れた場所には満身創痍のⅣが座り込んでいた…。

 

 

『時間がねぇから簡潔に言う…すまなかった…まさか、トロンがあそこまで外道に堕ちてるとは思ってなかった…!』

 

「テメェ…お前が謝って済む事じゃねぇだろうが!!」

 

『ああ…謝っても償いきれない事をオレはした…オレはトロンを止められなかった…!!恨むなら、オレだけを恨め…!全てはオレの責任だ…!!』

Ⅳは涙を流しながら謝り続ける…。

 

『時間が、ねぇ…()()()の真実は…そこの小僧達に伝えてある……頼む、凌牙…父さんを、救ってくれ…!』

そう言うとⅣは倒れ込むようにワープゲートへと消えてしまった…。

 

 

「あの日の、真実…?」

 

「…Ⅳが言ってたんだ、シャークの妹が襲われた時…何があったのか…」

遊馬はなるべく丁寧にその日にあった事を伝える…。

 

Ⅳはトロンの命令で璃緒にデュエルを仕掛けた事…本来なら璃緒は気絶させるだけだと聞いていた事……デュエル中にトロンから渡された「炎獄の祝福」というカードを発動した時、その炎が実体化して周囲を燃やし尽くした事……そして、Ⅳは必死に璃緒を救助し…その際に十字の傷を受けた事……それがあの日の真実だった。

 

 

「今更…そんな事聞かされたって…許せるかよっ…!璃緒は傷つけられ…父さんは死んだ…!!トロン…お前は許さねぇ!!」

凌牙は拳を握り締める…!

 

 

(シャーク…君の養父は…遊海は生きている)

 

「えっ…?」

アストラルの言葉に凌牙は顔を上げる…。

 

(彼は本当に規格外の決闘者だ…魂だけの状態でナンバーズに宿り、暴走していた君を止めたのだ…遊馬)

 

「おう…シャーク、このカードで遊海は休んでる…さっすが師匠だぜ!」

 

「…父…さん…!」

凌牙は遊馬から「ホープフェニックス」を受け取る…そして優しい父の鼓動を感じ取り、涙した…。

 

 

「待っててくれ!すぐに決勝進出を決めて遊海の家に行くからな…!」

 

「…わかった…!負けるんじゃねぇぞ…遊馬!!」

見よう見まねで「ゴブリンの秘薬」を使って凌牙を回復させた遊馬はデュエルコースターに乗り込む…トロンと戦う舞台へ上がる為に…!

 

 

 

 

 

「デュエルで復讐や恨みを果たしたって誰も幸せになんねぇ…!待ってろよトロン!!オレは、オレのデュエルでお前をぶっ飛ばす!!」

 

(遊馬…君は自分の信じる道を貫け、君が正しければ…必ず道は拓ける!)

 

「ああ…!どんな茨の道だろうと切り拓いてやる!!かっとビングだ─!!」

 

 

正しい道を切り開く為に…遊馬は走り出した!!



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対決!熱き決闘者・ゴーシュ!〜思いを力へ〜

【罠ポイント!「セメタリーボム」!】

 

「どわあああ!?」

 

 

ドオォォン!!

 

 

「こらぁ!しっかりしろ〜!?」

 

「ケホッ…そんな事言ったって〜!?」

 

(遊馬!また罠ポイントだ─!!)

 

「げげっ!?勘弁してくれぇぇ!?」

 

凌牙と別れた遊馬一行は地下セクションを彷徨いながらデュエルの相手を探し続けていた…だが、相手を見つける事はできず…遊馬は何度も何度も何度も「罠ポイント」ばかりに引っ掛かり、ダメージを受け続けていた…。

 

 

 

「…遊海…カイト…Ⅴ…Ⅳ…シャーク……オレは…」

罠をギリギリで回避した遊馬は今までのデュエルを思い返す…。

アークライト兄弟を救う為に命を懸けた遊海

 

ハルトの為に全てを懸けて師匠であるⅤを倒したカイト

 

兄弟の為に汚れ役を背負いトロンから見捨てられたⅣ

 

そして、遊海を…父親を傷付けられた怒りで新たな力に目覚めてしまった凌牙…

 

遊馬はこの地下セクションでデュエルの持つ「恐ろしさ」を嫌と言うほど味わっていた…。

 

 

「あっ…!?遊馬!前─!!」

 

「えっ…うわあああ!?」

考え込んでいた遊馬は線路の分岐に突っ込む…そして半ばコントロールを失いながら戦いの場へと導かれた…。

 

 

 

 

 

 

 

「な…なんだ此処…?」

 

(…どうやら、ここが私達の戦うフィールドらしいな…)

辿り着いた先はアメリカの「グランドキャニオン」に似た崖地帯…そこでは1人の漢が遊馬を待ち受けていた…。

 

 

 

『よお、待ちくたびれたぜ…遊馬!』

 

「お前は…ゴーシュ!!」

崖地帯…「デンジャラス・キャニオン」の一角にある廃駅でその男…元運営委員・ゴーシュは遊馬を待ち受けていた、ゴーシュは地下セクションで遊海を除けば唯一、ナンバーズを所持せずに勝ち残った強者である…!

 

 

『さぁ…!おっ始めようぜ遊馬!!俺達のデュエルを!!』

ゴーシュは獰猛な笑顔を浮かべながら遊馬を睨みつける!

 

「望むところだ!!」

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対ゴーシュ

 

 

 

 

 

『先攻はもらったぁ!!俺のターン!「H・Cダブル・ランス」を召喚!!』

先のフィールドとは違いデュエルコースターに乗ったまま始まった遊馬とゴーシュのデュエル…先手を取ったゴーシュは二槍使いの戦士を召喚するが…!

 

ガラガラッ

 

「ゴーシュ!危ねぇ!!」

 

『うおおっ…!?』

突如としてゴーシュが落石に襲われる!!

 

 

『説明しよう!これが「デンジャラス・キャニオン」の効果なのだっ!!』

 

デュエルコースターにMr.ハートランドが映しだされ「デンジャラス・キャニオン」の効果を解説する…それは攻撃表示でモンスターを召喚・特殊召喚または攻撃したプレイヤーに200ダメージを与えるというもの…まさにこの場所は「危険地帯」なのだ…!

 

 

 

「ちょ、ちょっと待てぇぇ!?オレのライフはたったの1()0()0()しかないんだけど〜!?」

遊馬が自分のライフカウンターを指さす、残りライフは僅か100…モンスターを攻撃表示で召喚した時点で遊馬の敗北が決まってしまう…!

 

 

『チッ…(アンタらしい仕掛けだな、Mr.ハートランド…俺を()()()()()のお膳立てか…でもよぉ…!)』

ゴーシュは気付いていた、このフィールドは明らかにゴーシュを勝たせる為のものなのだと…以前のゴーシュならハートランドの思惑に乗って遊馬を倒していただろう…だが、()のゴーシュは─!

 

 

『(アイツの…遊馬のおかげで思い出したんだ…!俺の本当に()()()()()()()()を─!!)これが…俺のやりたかったデュエルだ!!』

遊馬とのデュエルを通じて本来の自分…デュエルでの熱い戦いを求めていた自分を呼び覚まされたゴーシュは真正面から遊馬にデュエルを挑む!!

 

 

『「ダブルランス」は1体で2体分のエクシーズ素材となる事ができる!俺はレベル4の「ダブルランス」2体分でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ!「H-Cガーンテーヴァ」!!』

ゴーシュはダメージを受けながらインド神話の剛弓の名前を持つ戦士を召喚する!

 

『俺はカードを2枚伏せてターンエンド!…さぁ!遊馬!見せてみろ!お前のノリを!!』

 

「ゴーシュの奴…最初から全開じゃねぇか…!(でも、オレのライフは残り100…どうすれば…)」

遊馬はゴーシュを睨みつける…ライフは残り100、今の遊馬に打てる手は少ない…。

 

 

(遊馬、今の彼は気迫に満ちている…我々も全力でいかなければ…勝ち目はないぞ…!)

 

「っ…わかってるさ!そんな事…!!」

遊馬はアストラルの言葉に苛立ちながらデッキトップに手を掛ける!

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

 

『フッ…今だ!!()()()()()()()を喰らえ!!』

 

(「しまった!!」)

ゴーシュが罠の発動を宣言した瞬間、遊馬達の顔が青褪める…バーン系のカードなら遊馬のデュエルはここで終わってしまう──!

 

 

 

 

『罠カード発動!「ヒロイック・ギフト」!相手ライフが2000以下の時!()()()()()()4()0()0()0()()()()!そして俺はカードを2枚ドローする!!』

 

 

キィン─!

 

「うわっ…え…?」

ゴーシュの罠から放たれた光が遊馬に直撃する…だが、それはダメージではなく、遊馬を癒やす回復の光だった…。

 

 

(何故、遊馬のライフを回復させたのだ…?)

アストラルはゴーシュの行動に困惑する…デュエルモンスターズにおいて相手ライフを回復させるメリットはほぼない、それこそ回復をダメージに変える「シモッチバーン」や、ライフ差がある事が必要なカードを発動する為の手段としてがほとんどだろう…。

 

 

「てめぇぇ!なんのつもりだ〜!?」

 

『ハッ…勘違いすんな!俺はドローしたかっただけだ!』

 

(彼は遊馬のライフを回復させてまで…デュエルに全てを懸けているという事か…)

アストラルはゴーシュの意図を察した…ゴーシュはただ、()()の遊馬と()()()()()()()()()()()が為に敢えて敵に塩を送ったのだと…。

 

 

「っ…!オレはモンスターをセット…!カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

(遊馬…守りばかりでは彼に勝つ事はできないぞ…!)

 

「わかってる…!オレにはオレの作戦があるんだよ!」

遊馬は守りの一手を選びターンを終える…。

 

『ハッ…!ずいぶん慎重じゃねぇか!なら俺からいくぜぇ!』

遊馬のライフが回復した事で憂いがなくなったのかゴーシュは攻勢に打って出る!

 

 

「行け!『H・C夜襲のカンテラ』!遊馬の裏守備モンスターを攻撃!『カンテラ』は裏守備モンスターをダメージ計算なしで破壊できる!」

『カンテラ』から放たれた火炎がドリルを持ったモグラを破壊する!

 

「破壊された『モグモール』の効果発動!破壊された時!守備表示で特殊召喚できる!」

 

『無駄だ!「ガーンテーヴァ」の効果発動!ORUを1つ使う事で特殊召喚されたレベル4以上のモンスターを破壊する!!』

 

「なんだって─!?」

ORUを吸収した「ガーンテーヴァ」が「モグモール」の頭上に矢を放つ…その矢は無数に分裂、矢の雨となって遊馬の場に降りそそぐ!!

 

 

『遊馬…テメェ、()()()()()()()()なんてしてんじゃねぇぞ!!そんなデュエルを続けるなら…俺が叩き潰してやる!!「ガーンデーヴァ」でダイレクトアタック!!』

 

「まだだ!罠カード『バトル・ブレイク』を発動!攻撃モンスターを破壊してバトルフェイズを終了する!!」

 

『それで…守ったつもりかぁ!?カウンター罠「戦士の誇り」発動!バトルフェイズを終了させるカードを無効にし破壊する!!』

 

「なっ!?うわぁ!!」

 

「遊馬!!」

ゴーシュは遊馬の守備カードを粉砕…『ガーンデーヴァ』の矢が遊馬を貫く!

 

 

『わかったか遊馬!!そんなノリじゃ…俺は倒せねぇぞ!!ターンエンド!』

 

「っ…オレは…このデュエルに負ける訳にはいかないのに…!!」

自分のダメージを気にする事なく攻めてくるゴーシュに遊馬は焦りを見せる…だが、アストラルは遊馬が劣勢になっている原因に気付いていた…。

 

(…遊馬、君はこのままでは()()()()()()()()()()()()()

 

「はっ…!?何を言ってるんだよアストラル!?」

 

(今の君は…デュエル勝つ事にこだわり過ぎてデュエルを()()()()()()…おそらく遊海やカイト、そしてシャークの全てを…命を懸けたデュエルを見た事で無意識に恐れが生まれてしまったのだろう…)

 

「オレが…オレがビビってるって言うのかよ!!」

 

(違うのか?)

遊馬が声を荒らげる…アストラルの指摘は当たっていた。

今まで遊馬が経験した事のないデュエル…否、全てを懸けた「決闘」…目の前で起きた死闘が遊馬の心に「恐怖」を刻み込んでしまったのだ…。

 

「オレは…オレはビビってなんかねぇぇ!!」

遊馬は恐怖心を誤魔化すように声を張り上げる…!

 

 

 

 

「バトルだ!装備魔法『ワンショット・ワンド』を装備した『ガガガマジシャン』で『ガーンデーヴァ』を攻撃!!」

アストラルの言葉に半ばヤケになった遊馬は「ガガガマジシャン」の攻撃力を2300まで上げてゴーシュに攻撃を仕掛ける!

 

『そんなノリが通じるかぁ!!罠カード「ヒロイック・アドバンス」発動!攻撃対象を「夜襲のカンテラ」に変更する!さらにその攻撃力は倍になり、お互いのモンスターはその戦闘では破壊されない!!』

 

「なっ…!?」

『ガガガマジシャン』と『カンテラ』の攻撃がぶつかりあい『ガガガマジシャン』が吹き飛ばされる!

 

 

「ぐっ…!『ワンショットワンド』の効果発動!装備モンスターが攻撃した後、このカードを破壊する事で1ドロー!…そして手札の『グランドラン』は相手の場にエクシーズモンスターが存在する時!特殊召喚できる!!」

 

『おぉ!?』

遊馬の場に岩の体を持つモンスターが現れ、ゴーシュは目を輝かせる!

 

 

「オレはレベル4の『ガガガマジシャン』と『グランドラン』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!現れろ!『ガガガガンマン』!!」

遊馬の新たな仲間…西部劇のガンマンのようなガガガモンスターが現れる…だが、その表示形式は守備表示だった。

 

『あぁ!?守備表示だと!?』

 

(…たしかに守備表示なら『デンジャラスキャニオン』のダメージは受けないが…)

ゴーシュは守備表示で召喚されたモンスターを見て失望した様子をみせる…。

 

 

「『ガガガガンマン』の効果発動!このモンスターが守備表示の時!ORUを1つ使い効果発動!相手に800ダメージを与える!!」

 

『なっ…!?うおぉぉ…!?』

『ガガガガンマン』の銃が火を吹き、ゴーシュを貫く!

 

 

「どうだゴーシュ!!」

 

『…「どうだ!」だとぉ…?こんなチャチな攻撃しやがって…!俺は…俺はお前とこんな()()()()()()()()()をしたかったんじゃねぇ─!!!』

 

「えっ…?」

ゴーシュは遊馬に対して怒りを爆発させる…!!

 

 

 

『エクシーズ召喚!!現れろ!「H-Cクサナギ」!!』

ゴーシュは新たなエクシーズモンスター…日本神話の神剣の名を持つ戦士を召喚する!

 

 

『遊馬…!俺を倒したかったら…お前の本当のデュエルでかかってきやがれぇ!!』

 

「オレ自身の…デュエル…?」

 

『そうだ!!それこそが…()()()()()()()ってモンだろうが!!』

 

「あっ…」

そこで遊馬はようやく自分のしてきた間違いに気付いた…。

そもそも、何故ゴーシュは先攻を取ったのか?…それはライフが尽きる寸前の遊馬を「デンジャラスキャニオン」の効果で敗北させない為だった。

 

何故、遊馬のライフを回復させたのか?…それは遊馬とゴーシュが求める熱いデュエルをする為だった…。

 

 

ゴーシュはここまで「自分のデュエル」を貫いてきた…だが、遊馬はデュエルに「恐れ」を抱き…自分の信条である「かっとビング」に反するようなプレイングをしてきた……それは、全身全霊で向かってくるゴーシュをどれ程失望させ、その誇りを傷付けたのか…遊馬はようやく気付いたのだ…!

 

 

 

 

「……!」

 

「遊馬…?」

自分の過ちに気付いた遊馬はデュエルコースターを引き込み線の駅へと停車させる…。

 

 

「すまねぇ小鳥…ここで、降りてくれ…ここから先はオレ1人で行く…!」

 

「えっ…?」

 

「…頼む、アイツとのデュエル…オレは、オレの全てを懸けなきゃならないって気付いたんだ…!そうなったら…オレはお前を守りきる自信がねぇ…!」

遊馬は小鳥にコースターから降りるように促す…ゴーシュとの全てを懸けたデュエル、それは先のデュエルのように激しい攻防になる…遊馬は自分の覚悟の為に、そして小鳥を守る為にコースターから降りるように頼んだのだ…。

 

「…わかった!でも、その代わり…絶対に勝って迎えに来るんだぞ?」

 

「おう!!」

小鳥は静かにコースターから降りる…そして遊馬はゴーシュとの真剣勝負の為に走り出した…!

 

「頑張れ!遊馬ー!!」

 

 

 

(…遊馬、シャークやカイトは恐るべき力を持っていた…そして君の師匠である遊海もトロンに敗北した…彼らに君が恐怖を感じたとしても、それは私にも充分に理解できる…だが君はいつだってそんな恐怖を乗り越えてきたはずだ…)

 

「アストラル…行くぜ!オレは結局、オレのデュエルをするしかねぇんだからな!」

 

(ああ、勝つぞ…遊馬!!)

遊馬はようやく自分を取り戻した、凌牙にカイトそしてトロン…この先に待ち受ける強敵と戦う為に遊馬は覚悟を決める!!

 

 

 

「待たせたなゴーシュ!!…今度こそ、オレのデュエルを見せてやるぜ!!」

 

『おぉ!?ようやく本気になりやがったか!!さぁ…!熱いデュエルを始めようぜ!!』

覚悟を決め、熱い気持ちを取り戻した遊馬を見てゴーシュは嬉しそうな笑みを浮かべる!

 

 

『魔法カード「戦士の誘惑(ファイターズ・チャーム)」を発動!相手フィールドの攻撃力よりも守備力の高い守備表示モンスターを対象に効果発動!そのモンスターを攻撃表示にして攻撃力を守備力と同じにする!バトルだ!「クサナギ」で「ガガガガンマン」を攻撃!!』

 

「罠カード『オーバーレイ・バスター』を発動!『ガガガガンマン』の攻撃力を500アップさせ、さらに相手のエクシーズモンスターをバトルで破壊した時!相手モンスターのORU1つにつき500ダメージを与える!!」

 

『そうはさせるかぁ!「クサナギ」の効果発動!ORUを1つ使い!相手の罠カードの発動を無効にして自身の攻撃力を500アップする!!』

 

「なっ!?攻撃力3000─!?」

激しい攻防の末に「クサナギ」が「ガガガガンマン」に斬り掛かる!

 

 

「まだだ!速攻魔法『ファイティング・バンド』を発動!このターン!自分のモンスターはバトルでは破壊されなくなる─!」

 

『やるな…!だが、切れ味は受けてもらうぜ!!』

 

「うわぁ!!」

咄嗟に発動した速攻魔法で「ガガガガンマン」は炎の壁に護られるが…ダメージが遊馬に襲い掛かる!

 

 

『ハッ…!これでお前の残りライフは600…いいかげん諦めるかぁ?』

 

「何を言ってやがる…!本当の勝負はこれからだぁぁ!!」

 

『くぅぅ〜!!これだぜ!コレ!!俺が求めていたノリはよぉぉ!!ハハハハハ─!!!』

遊馬の答えを聞いたゴーシュは心の底からの笑顔をみせる…その時だった…!

 

 

ガコン!!

 

 

「『へっ!?うわあああ─!?』」

突如としてデュエルコースターの線路が途切れ、遊馬とゴーシュは地面へと投げ出される!!

 

 

「痛ってて〜…何なんだよ〜!?」

 

(どうやら新しいフィールドが発動したようだ、その名は…『夕日の決闘場』…!)

アストラルの言葉と共に周囲の景色が塗り替わる…そこは夕日の差す西部劇の荒野…。

 

その効果は『①お互いのプレイヤーは、バトルフェイズに開始時に自分の場に上にモンスターが2体以上存在する場合、その中からモンスター1体を選択し、選択したモンスター以外のモンスターを破壊する。②このカードがフィールド上に存在する限り、プレイヤーに直接攻撃する事は出来ない。③モンスターが戦闘によって破壊された時、そのコントローラーは300ポイントダメージを受ける』というもの…さながら西部劇のガンマン同士の決闘を彷彿とさせるものだった。

 

 

『いくぜ…遊馬─!』

 

「よっしゃぁぁ!!かっとビングだぁぁ!!」

夕日の荒野で遊馬とゴーシュの決闘は最終局面を迎える!!

 

 

 

「オレのターン!バトルだ!『ガガガガンマン』で『クサナギ』を攻撃─!」

 

『無駄だ!「ガガガガンマン」では「クサナギ」には勝てねぇ!』

 

「『ガガガガンマン』の効果発動!自身が攻撃表示の時!ORUを1つ使い!自身の攻撃を1000アップ!さらに相手の攻撃力を500ダウンさせる!」

 

『くっ…!やるじゃねぇか…!』

目にも止まらぬ早撃ちが「クサナギ」を撃ち据える!

 

 

「いっけぇ!『ガガガガンマン』─!」

 

『まだだ!罠カード「ヒロイック・チェンジ」を発動!さらに「クサナギ」の効果を発動!ORUを1つ使い!罠の発動を無効にし、自身の攻撃力を500アップする─!!』

「クサナギ」の剣と「ガガガガンマン」の拳がぶつかりあう、お互いに攻撃力は同じ…相討ちとなる!!

 

 

『ぐっ…!「クサナギ」を倒すとはな…!なかなかやるじゃねぇか…!』

 

「お前もな…!」

互いに吹き飛ばされながら遊馬とゴーシュは立ち上がる…!

 

 

『だが、これが最後の勝負だ!!罠カード「エクシーズ熱戦!!」発動!自分のエクシーズモンスターがエクシーズモンスターとの戦闘で破壊された時!ライフを1000払って発動できる!互いのプレイヤーは破壊されたモンスターをエクシーズ素材としてエクストラデッキから同じランクのエクシーズモンスターを特殊召喚する!現れろ!「H-Cエクスカリバー」!!』

アーサー王伝説における最強の聖剣の名を持つ、ゴーシュのエースモンスターが現れる!

 

『…ただし!この効果で特殊召喚されたモンスターはバトルフェイズ終了時に破壊される…さぁ!お前の番だ遊馬!!「希望皇ホープ」を呼びやがれ!!』

 

「『ホープ』を!?」

 

『そうだ!!じゃなきゃ面白くないだろう?エースモンスター同士で勝負だぜ!!』

 

(あえてナンバーズと勝負しようというのか…?)

ゴーシュの言葉に遊馬とアストラルは驚く…知ってのとおり、ナンバーズはナンバーズとの戦闘でなければ破壊されない…ゴーシュはそれをわかった上で『希望皇ホープ』との勝負を望んだのだ…!

 

「いいぜ…その勝負、受けて立つ!!」

 

39

 

「現れろ!『No.39希望皇ホープ』─!!」

《ホープ!!》

 

遊馬のエースたる希望の戦士が聖剣の戦士と向かい合う!

 

 

『来やがれ!遊馬─!!』

 

「バトルだ!『ホープ』で『エクスカリバー』を攻撃─!!」

 

『「エクスカリバー」の効果発動!このカードがバトルする時!ORUを全て使い!自身の攻撃力を4000にする!迎え撃て!一刀両断・必殺神剣!!』

『エクスカリバー』の剣が雷光を纏い、『ホープ』に迫る!

 

「『ホープ』の効果発動!ORUを1つ使い!自身の攻撃を無効にする!ムーンバリア!!」

 

『なにぃ!?』

「ホープ」が翼のバリアを展開…攻撃を無効にする!

 

『しかし!バトルフェイズが終われば「エクシーズ熱戦!!」の効果で「ホープ」は破壊され、「夕日の決闘場」の効果でお前の負けだ!!』

 

「まだだぁ!!オレには…このカードが残ってる!!」

遊馬は勝利の方程式を完成させる為の最後の1枚を発動させる!

 

 

『速攻魔法「ダブル・アップ・チャンス」を発動!自分のモンスターの攻撃が無効になった時!そのモンスターはもう1度攻撃でき、その攻撃力は倍になる!!』

 

『なっ…!?攻撃力5000だとぉぉ!?』

それは遊馬の切り札…『ホープ』が金色のオーラを纏い、2本の剣を振りかぶる!

 

「かっとべ『ホープ』!!ホープ剣・ダブルスラッシュ!!」

希望の一撃は「エクスカリバー」を両断…ゴーシュのライフを削り切った…!

 

 

 

 

ゴーシュ LP0

 

遊馬WIN!

 

 

 

 

 

『…すまねぇドロワ、負けちまったぜ…ハハハ…ハハハハハ!!』

負けたゴーシュは倒れたまま、ただ笑っていた…全身全霊を尽くした決闘、ゴーシュは負けはしたが悔いはなかった…。

 

 

「ゴーシュ!大丈夫か!?」

 

『おう、遊馬!やっぱりお前…いいノリしてやがったぜ…!楽しかったな!!』

 

「ああ!」

ゴーシュは先程とは違う柔らかな笑みを浮かべながら立ち上がる。

 

 

『…遊馬、コイツを持っていけ!その代わり…ノリの悪いデュエルなんてしたら…承知しねぇからな?』

そう言いながらゴーシュは1枚のカードを遊馬に手渡す…そのカードは─

 

「これ…『エクスカリバー』!?このカードってお前の大事な…!」

渡されたのはゴーシュの切り札『H-Cエクスカリバー』…思わぬ言葉に遊馬は動揺するが…。

 

(遊馬、デュエリストは時に負けたデュエリストの想いを背負い、引き継いでいくもの…彼は自分のデュエルに対する想いを君に託したんだ)

 

「…ありがとうゴーシュ!お前の想い!確かにオレが受け取ったぜ!!」

 

『おう!頼んだぜ、遊馬!!』

遊馬はゴーシュから熱い魂を引き継ぎ、握手を交わした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(遊馬、水を差すようで悪いが…何か忘れていないか?)

 

「えっ…?…ああ!?小鳥─!?」

 

 

 

 

 

「………遊馬の馬鹿!!早く戻ってこーい!!!」

 

夕焼けの「デンジャラスキャニオン」にとり残された小鳥は夕日に向かって叫ぶ…なお、デュエルコースターが壊れた事で係員が迎えにいくまで小鳥はしばらく寂しい思いをする事になったのだった…。

 

 

 

 

 

 

「ど、どうやって戻ればいいんだよぉぉ!?」

 

 

(…ドンマイだ、小鳥)



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決戦前夜〜それぞれの夜〜

こんにちは!S,Kです!

激しい戦いを終えた決闘者達は決戦を前に束の間の安息を過ごす…。


それでは最新話をどうぞ!


「シャーク!」

 

「…遊馬」

 

WDC本戦が終わった夕方、遊馬と凌牙は遊海の家の前で再会した…待ち合わせをした訳ではない、その証拠に凌牙はリュックを背負っている…。

 

 

「…小鳥の奴はどうした?」

 

「いや、ちょっと喧嘩しちゃってさ…それよりどうしたんだよ?リュックなんて持って…」

 

「翠さんに着替えを持ってから来いって言われたんだ…行こうぜ」

 

「おう!」

少し沈んだ様子の凌牙と遊馬は遊海の家へと入っていった…。

 

 

 

 

『あっ…遊馬!決勝進出おめでとう!』

 

「流星!…と、誰だ…?」

凌牙の合鍵で遊海の家に入った遊馬達…最初に出会ったのは以前に出会った流星、そして金髪の少女だった。

 

 

「遊馬、こいつらは誰なんだ?」

 

「あっ…紹介するぜ!こいつは不動流星!あの不動遊星の孫なんだ!流星、こっちはシャ…神代凌牙!遊海の息子なんだ!」

 

「養子だけどな…だが、まさかあの『ネオドミノシティの英雄』の孫か…やっぱり、父さんはすごいな…」

 

『遊海さんの息子か…よろしく!』

遊馬の紹介で凌牙と流星は握手を交わす…そこに金髪の少女が思い詰めた表情で近付いてくる…。

 

 

『ごめん…!!遊海さんがあんな目に遭ったのはアタシのせいなんだ!!本当にごめんなさい!!』

 

「っ!?いきなりなんだ!?」

出会い頭に謝罪してきた少女に凌牙は驚く…

 

『海亜、自己紹介が先でしょ?…この子は海亜・アトラス、僕の幼馴染で実はWDCの参加者だったんだけど…遊海さんとのデュエルの最中にモンスターを暴走させちゃったらしくて…そのせいで遊海さんが全力を出せなかったんじゃないかって気に病んでたんだ…』

 

「そういう事か…」

流星の紹介で凌牙は納得する、遊海は飛行船墜落事故の後から再び寝込んでいた…その原因が彼女だったのだろうと…。

 

 

(シャーク、遊海が全力を出せなかったのは彼女のせいではない…トロンが彼を罠に嵌め、その力を削いでいたのだ)

 

「……そうか、アンタは悪くねぇ…だから頭を上げてくれ、父さんもアンタを責める事はねぇよ」

 

『本当にごめん…』

アストラルの言葉を聞いてか凌牙は海亜を責めなかった…だが、少し苦しげに胸元を握り締めている…。

 

 

「流星、翠さんと…遊海さんは?」

 

『…2階の寝室にいる、会いに行ったら喜ぶよ』

 

「サンキューな!行こうぜ、シャーク!」

 

「ああ…!」

 

 

 

 

コンコンコン!

 

『入れ、扉は開いている』

 

「…入るぜ」

 

「っ…!」

 

(……彼らは…!)

聞き慣れない男の声を聞きながら遊馬達は寝室に入る、そこいたのは椅子に腰掛けた白いコートと白い中折れ帽が特徴的な壮年の紳士、窓際に座りバスケットの中で眠る金色の小鳥の看病をする赤い学生服の青年…そしてベッドで傷付いて眠る遊海と汗だくになりながら治癒魔法を掛け続ける翠の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

「父さん…!」

 

「…凌牙君…遊馬君…アストラル君…」

傷付き眠る遊海に回復魔法を掛け続けていた翠はその手を止める、入口へと目を向ければ動揺した様子でこちらを見つめる凌牙達の姿があったからだ…。

 

 

「お帰りなさい…!2人とも決勝進出おめでとう!」

 

「…ありがとう、母さん…俺…おれ…!!」ギィン─

 

「…おいで、無理しなくていいわ」

凌牙達に声をかけた翠は凌牙の胸で禍々しく輝く欠片に気付き、凌牙を抱き寄せる…。

 

 

(遊馬、部屋の外で待っていよう…彼らの時間を邪魔してはならない)

 

「…ああ」

遊馬とアストラルは一端、部屋の外に出る…傷付いている凌牙の邪魔をしないように…。

 

 

「母さん、ごめん…!俺の、俺のせいで父さんが…!!」

 

「…今は泣いて大丈夫…泣けばすっきりするから…ね?」

凌牙は静かに泣き始める…翠は彼を抱きしめ、泣きやむまで背中を擦っていた…。

 

 

 

 

 

 

『改めて自己紹介といこうか!オレは遊城十代!岸波白野…いや、「2代決闘王」白波遊海の教え子だ!』

 

『俺はジャック・アトラス!言うまでもないが…元「3代決闘王」であり、遊海の友だ!お前が遊海の息子だな?』

 

「…神代凌牙だ、妹の璃緒もいるが…病院にいる」

 

「オレは九十九遊馬!凌牙の友達で、遊海の弟子だ…です!」

凌牙が落ち着いたあと、ジャック達と遊馬達は改めて自己紹介を交わす…遊馬と凌牙は伝説の決闘者を前に少し緊張気味である。

 

 

(私はアストラル、流浪の調停者と決闘王に会う事ができて光栄だ、貴方達にも聞きたい事はあるが…今は一番の目的を果たそう…シャーク、先程渡した『No.93』を遊海の胸元に置くんだ)

 

「ああ…」

凌牙は胸元に大事に持っていた「No.93」のカードを眠っている遊海の胸元に置く…すると静かにカードの絵柄が消えていく…。

 

『カードの絵柄が…消えた?』

不可解な現象にジャックは片眉を上げる…。

 

 

「っ…うぅ…全身、痛ぇ…」

 

 

「「「『『遊海!!/さん!!』』」」」

カードの絵柄が消えると共に遊海は息を吹き返した…!

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

意識を取り戻した俺が最初に感じたのは気が狂いそうな全身の痛み、体を動かせない程の倦怠感…そして胸に穴が空いたような()()()だった。

目を開けば翠に遊馬と凌牙、ジャックと十代が俺を心配そうに覗き込んでいた…。

 

 

「遊海さん!私がわかりますか!?」

 

「…みど、り…心配かけ、て、ごめん…」

喉から出た声は驚く程掠れていた…声を出す為の動きすら億劫になりながら、俺は状況を把握しようとする…。

 

 

 

『WDCは…どうなった…?』

 

「決勝に出るのはオレとシャークにカイト…それからトロンだぜ、Ⅴはカイトが…Ⅳはシャークが倒した!」

 

「そう、か…2人とも、よく頑張った……俺だけ、無様なところを、見せちゃった…な…コフッ…!?」

 

「わわっ!?無理して喋らないでくれぇ!?」

少し血を吐いた俺を遊馬が慌てながら止めようとする…。

 

 

「大丈夫、今ので…少し楽に、なった……心配かけて悪かった、な…」

 

「遊海…」

 

(…遊海、聞きたい事がある…貴方の魂はトロンによって握り潰されてしまったはずだ…何故、ナンバーズに宿る事ができたのだ…?)

 

「『『っ…!?』』」

アストラルの言葉に翠達の顔色が変わる、遊海が敗北した上で魂をも破壊されかけた…それは遊海の強さを知る3人にとっても異常事態だったからだ…。

 

 

「…簡単な話、だ…俺は自分の中に魂…心を2つ持っていた…俗に言う二重人格だ…もう一人の俺、ユウスケが…魂が砕かれる寸前に『俺』を切り離した…そのおかげで、お前達に渡した『No.93』…いわば、俺の魂の欠片に…宿る事ができた……その代わり、俺はもう絞りカスだ…ギリギリ、お前の声が聞こえるくらいの、力しかねぇ……トロンに根こそぎ、力を奪われちまった…」

 

(っ…!!)

アストラルは予想以上に酷い容体の遊海に言葉を失う…。

 

 

(遊海、貴方に感謝を…貴方が命を懸けてトロンと戦ってくれた事で相手の手の内の一部を知る事ができた…!それは決して無駄にはしない…!!)

 

「アストラルの言う通りだ!遊海の想いは…オレがトロンの奴にぶつけてやる!!」

 

「頼もしいな…頑張れ、遊馬…今日は帰って、しっかり休め…いいな…?」

 

「おう!!かっとビングで…絶対に勝ーつ!!」

遊馬は元気に声をあげて帰っていった…。

 

 

 

「…父さん、ごめん」

 

「凌牙…謝るのは、俺だ…ずっとお前達に本当の事を隠していて、ごめんな…驚いた、だろ?」

 

「知ってたんだ…ずっと…書斎の写真を見てから…」

 

「そう、か…隠し事が下手だからな、俺は…」

遊海はそう言うと凌牙の頬に手を当てる…その手は氷のように冷たかった…。

 

 

「ごめんな、凌牙…トロンとは、俺の手で決着を着けたかったが……お前達に、任せるしかないようだ…」

 

「…父さん、俺はトロンを許せねぇ…!父さんを、璃緒を…トーマス達を傷付けたアイツを!!」

凌牙は拳を握り締める…その瞳には強い怒りの炎が揺らめいている…!

 

「…奴の前で、冷静さを失くした俺が言えないが…落ち着け…凌牙、お前の抱いた怒り…憎しみ、悲しみは俺もわかってる、復讐心に飲まれるな…トロンの思うツボだ……お前の心には、ナンバーズの『カケラ』が残ってる…抜いてやりたいが…今の俺には、無理だ…」

遊海は凌牙の胸に手を移す…残された力の一部でも、凌牙の胸に刺さった爪ははっきりと見えていた…。

 

 

「凌牙、今のお前はトロンに…狙われている、かもしれない…今日は家に泊まっていけ……いいな…?」

 

「…わかった…」

 

「いい子だ…お前もしっかり休んで、明日に備えるん、だぞ…」

 

「…うん…母さん、シャワー浴びてくる」

 

「…わかったわ、ゆっくりしててね!すぐにご飯作るから!」

凌牙は少し名残惜しそうに部屋をあとにした…。

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…大丈夫、ですか?」

 

「…全然…大丈夫、じゃ、ない…子供達がいなかったら…叫び、出しそうだ…!」

凌牙が部屋を出た後…遊海は苦しげに顔を歪める…子供達の手前、なんて事ないように振る舞っていたが、内心では全身の痛みを我慢するのに必死だった…。

 

 

「あんなに、冷静じゃなくなったのは…ラプラスと戦った時、以来だ……完敗だ、フレアの力まで…借りたのに…」

 

『遊海…』

遊海は涙を流しながら窓際に目を向ける、そこでは籠のベッドで消耗したフレアが寝かせられている…。

そして、あまりに憔悴した様子の遊海を見てジャックは言葉を失う、数十年付き合ってきた中でここまで弱った遊海を見た事がなかったからだ…。

 

 

「…色々言いたい事があったんですけど…やっぱりやめておきます!今はゆっくり休んでください、遊海さん…」

 

「そうしたいが…少しでも保険はかけておこう…メガロック」

 

《…わかっておる、遊馬の護衛だな?》

少し呆れたような表情をしながら半透明のメガロックが現れる…。

 

「…頼めるか…?」

 

《うむ、トフェニのようにはいかんが…やってみよう、フォウよ、遊海とフレア様を頼んだぞ!》

 

《フォウ!》

メガロックはいつの間にか遊海の枕元にいたフォウに後を託すと遊馬のもとへと向かった…。

 

 

 

 

『先生、これから何が起きるか…わかってるんだろ?』

十代は遊海に問いかける…。

 

「……明日の対戦カードは天城カイト対トロン、遊馬対凌牙の組み合わせになって…決勝は遊馬とトロンが、戦う事になる…」

 

『…それだけで終わるとは思えんな、地下セクションでの不自然な映像障害…そして、「No.」なるカード……フォーチュン・カップと似たキナ臭いものを感じる』

 

「正解だ、WDCは…隠れ蓑だ、世界に散らばった100枚のナンバーズ…その半分近くを…奪おうとする者がいる…!」

 

『…Dr.フェイカーか、この街は奴が創り上げたものだ…あの小僧が狙われるのか?』

ジャックは遊海の言葉から隠された陰謀を看破する。

 

 

「遊馬と一緒にいたアストラルは…ナンバーズの本当の持ち主なんだ…だが、それはあいつらが自分で解決できるはず……ジャック、会場を頼めるか?」

 

『…わかった、WRGPの時のように無関係の観客を守ればいいのだな?流星とカイアにも手伝わせる…いいな?』

 

「…すまん」

 

『フッ…気にするな!本来ならば貴方1人で出来る事を3人でやるのだ!問題はない、まかせておけ!』

ジャックは遊海の手を握り仕事を引き受ける!

 

『先生!オレは何すればいい?』

 

「十代…翠と一緒に凌牙を、頼む…あの子は、トロンに、狙われている…!」

 

『りょーかい!任せておいてくれ!』

十代は胸を叩く!

 

 

《…遊海、1つ聞いてもいいかい?》

 

「ユベル…か、どうしたんだ…?」

十代の傍に現れたユベルが遊海に問いかける。

 

《…お前の息子…本当に()()()()()()?》

 

『ユベル!?お前なんて事を聞いてんだよ!?』

ユベルの思わぬ質問に十代が咎める…。

 

《あの子供から強い力を感じた、ナンバーズを持っているだけじゃない、闇でも光でもない…いわば『混沌(カオス)』の力…潜在能力だけでも……君以上じゃないか?》

 

「…あの子は、人間だよ…俺達の大切な子供だ…例え、()()()()()()()()()()()…それは変わらない…!」

鋭い目つきのユベルに遊海はまっすぐと答える…。

 

《…そういう事か、わかったよ…今の質問は忘れてくれ》

何かを察したユベルは静かに姿を消した…。

 

 

 

 

 

 

「…翠…俺は、弱いな…肝心な時に…役に立たないなんて…」

 

「遊海さんは1人で背負い過ぎなんですよ、昔から…」

 

《フォウ!!》

 

「…フォウにまで怒られちゃ、立つ瀬がないな…ゴボッ…」

ジャックと十代が部屋を去り、2人と1匹になった寝室で遊海は弱音を漏らす…。

 

 

「…せめて、クリフォートか…シンクロン、パラディオンデッキがあれば……俺のデッキ…何処に行ったんだ…?」

 

「…トロンの攻撃を受けた時にデッキの幾つかが異次元に飛ばされてしまったみたいです…アヤカちゃんとトフェニさんが探してくれてます…そんな状態で戦いに行くなんて…!」

 

「…アヤカがいないのは、そういう事か…とことん、運がないな…はぁ…」

翠から手元にないデッキの真相を聞いて遊海は嘆息する…。

 

 

《フォウ、フォーウ!キャウ?》

 

「えっ…?寝ている時に夢を見たか…?花園にいる夢を見たけど…どうしたんだ…?」

 

《ッ〜!!フォウフォウフォウ─!!?》

 

「ちょ…フォウくんどうしたの!?」

遊海の言葉を聞いたフォウはベッドをポカポカと叩き始める…。

 

《フォウ!フォウフォウ!!》

 

「花の夢に気を付けろ?…次に会ったら殴れ…?…聞き間違いかなぁ…?フォウはこんな口の悪い仔だったかなぁ…?」

 

《キュー…》

 

「…聞き間違いとかあるんですか…?」

相変わらず意思疎通の出来るフォウと遊海の様子を見て首を傾げる翠…その時だった。

 

 

キィィン─!

 

「む…?アヤカ、か?」

遊海の真上に小さな次元の扉が現れる…それはアヤカが時空移動に使うものだった。

 

 

「……遊海さん、なんだか嫌な予感が…」

 

「奇遇だな、翠…俺も──」

 

 

《マスタァァァ!!》

 

 

ドッスーン!!

 

 

「おっごおぉおぉおぉぉ!?!?」

 

「遊海さーん!?」

 

次元の扉からコア状態のアヤカが飛び出す…だが、よほど超特急で戻ってきたのか…止まる事ができず、遊海の鳩尾の辺りに轟音と共に落下した…。

 

 

「………なんて、日だ…

 

《フォ〜ウ…》

 

とどめの一撃を受けた遊海の意識はブレーカーが落ちるようにブツリと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

 

【ほら…ボクの言う通りになったでしょ?計画は順調…明日で全てのナンバーズがボクのモノになる…】

 

トロン一家のアジト…そこで豪奢な椅子に座ったトロンは何者かと話していた…否、相手は人間ではない…異次元の扉の先に広がる異世界「バリアン世界」の人物と交信しているのだ。

 

 

【だけど…Ⅲ・Ⅳ・Ⅴという犠牲も払ったさ…今は隣の部屋で眠っているよ、彼らは良くやってくれた…流石はボクの息子達だ…】

デュエルに敗れた兄弟達は目覚めぬ眠りに落ちている…その様子を見てもトロンは笑みを崩さない…。

 

【邪魔者も殺した…あとは()をフェイカーへの刺客にするだけさ…明日が楽しみだよ…!フフフ…アハハハ!!】

暗闇のアジトにトロンの笑い声が響いた…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

「…ハルト…!」

 

同じ頃、遊馬とアストラルはハートランドの中心ハートランドタワー…その最上階にあるハルトの部屋にいた。

 

何故、遊馬がその場所にいるのか…それは遊馬がデッキを紛失し、GPSでその場所を確かめた結果既に閉園したハートランド内にある事がわかり…紆余曲折の末にハートランド内に侵入、その時にアストラルがハルトの存在を感じ取り…その様子を見る為に遊馬はやって来たのだ…なお、階下では同行した小鳥と鉄男がガードロボットを相手にデュエルを繰り広げている。

 

 

 

(…どうやら…ハルトはあの日のまま意識が戻っていないらしい…)

 

「そんな…」

ハルトの様子を見たアストラルが呟く…未知の力を持つハルトはトロン一家に誘拐され、その力を奪われた…その結果、ハルトも目覚めぬ眠りに落ちてしまっていた…。

 

「…あのな…ハルト、オレ…まだWDCで勝ち残ってるだぜ?…必ずあのトロンをぶっ飛ばして…優勝してやるからな…!」

 

(……)

遊馬は眠っているハルトに語りかける…「話しかける事」で意識不明だった病人が意識を取り戻した…そんな事を以前に遊海に聞かされた事があったのを思い出したのだ。

 

「あっ…!そうなったらカイトとも戦う事になるけど…そんときは容赦しねぇ…だから、だからさ…ッ!」

 

(遊馬…)

遊馬の目に涙が浮かぶ…あの夜、もしハルトをⅤに引き渡さなければ辛い目に遭わずに済んだ…。もし、ハルトを引き渡さなければ遊海がトロンに負ける事もなかった…そんな後悔と自分への怒りを抑えられなかったのだ…。

 

「ごめんな…ハルト…!」

遊馬の涙がハルトの頬に零れ落ちる瞬間…思わぬ事が起きる!

 

キィィン!!

 

「へっ…?うわっ!」

 

(これは…!)

遊馬の涙と共にハルトの体が眩い光を放ち、遊馬達を飲み込んだ…。

 

 

 

─…遊馬…遊馬…!─

 

 

 

 

 

 

「ここは…?」

遊馬が気が付いた場所…そこは花びらの舞い踊る草原だった、その草原には赤い屋根の小さな家があった…。

 

 

『遊馬…アストラル…声が届いてよかった…!』

 

「ハルト…!?」

赤い屋根のテラス…そこには年相応の笑顔を見せるハルトの姿があった、ここはハルトの精神世界…遊馬の想いがハルトの心と共鳴する事でこの世界に招かれたのだ…。

 

 

『来てくれると思ってた…お願いがあるんだ…』

 

「お願い…?」

 

『兄さんを…助けてほしいんだ、兄さんはとっても疲れてる…でも、僕には兄さんを助けられない…ここから、出られないんだ…』

 

「出られない…?」

ハルトは遊馬達に唯一の願いを託す…無理をし続けるカイトを救ってほしいと…。

 

 

『お願い…兄さんを助けてあげて…!』

 

キィン─

 

「ハルト!!」

願いを伝えたハルトが再び輝く…そして、遊馬達は再び光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

「今のは…」

光が収まった時、遊馬は再びハルトの部屋へと戻っていた…。

 

 

(…今のは本当のハルトの意識…おそらく、ハルトの意識は心の奥に封じられている…もし、意識を開放する事ができれば…ハルトは元に戻るかもしれない…)

 

「っ…!どうすればいいんだ!?」

アストラルの言葉に遊馬は振り返る…ハルトを救う手がかりを得る為に…。

 

(可能性は2つある…1つは…カイトに全てのナンバーズを渡す事だ)

 

「えっ…?」

遊馬はアストラルの思わぬ言葉に固まってしまう…。

 

 

(カイトがナンバーズを集める事とハルトを救う事は繋がっているはず…ならば、それが1つ目の可能性となる)

 

「っ…!!オレがナンバーズを集めればハルトは治らねぇ…でも、カイトがナンバーズを集めたらアストラルが…!!どうしろって言うんだよ!?」

遊馬は頭をかきむしる…ハルトを救うか、アストラルを死なせるか…どちらも遊馬には選べない…まさにジレンマだった…。

 

 

(焦るな遊馬、可能性はもう1つある…遊海だ)

 

「えっ…?遊海が、可能性…?」

 

(彼は千年アイテムを持っている…ナンバーズから得た知識によると千年アイテムには心や魂に干渉する能力があるらしい…彼の力ならハルトを救う事ができるかもしれない)

 

「そ、そうか!!…でも…」

アストラルの言葉を聞いた遊馬は目を輝かせるが…すぐに表情を曇らせる…。

 

(そうだ、今の彼はトロンに力を奪われ、動く事もままならない…ハルトを救う為には…トロンを倒す必要がある)

アストラルが可能性の問題点を伝える、遊海はトロンに力を奪われ行動不能…だがアストラルは確信していた。

紋章の力によって消滅した自分は紋章の力によって蘇った…ならば、トロンを倒し紋章の呪縛を解く事で…失われてしまった力を取り戻せるはずだと…!

 

 

「…なら、オレに…オレ達にできる事は1つだな、アストラル!」

 

(ああ…それは…)

 

(「かっとビングだ!!」)

遊馬とアストラルは拳を突き合わせる!

 

「オレがトロンを倒せば全部解決できる…!カイトとは…絶対にわかりあってみせる!!」

 

(私は君の思いを尊重する…勝つぞ、遊馬!)

遊馬とアストラルは決意を固めた…。

 

 

 

ピシッ…ピシッ…バリバリ…!

 

 

「っ…!?なんだ!?」

決意を固めた遊馬達の周りに電流が走る…!

 

 

『フフフ…ハハハハハ!!』

 

(この男は…!)

遊馬達の前に立体映像の人影が現れる…!

 

 

 

『私の名は…Dr.フェイカー!』

 

「こいつが…ハルトとカイトの父ちゃん!?」

遊馬達の前に現れた男…それはトロンと一馬を陥れた黒幕…Dr.フェイカーだった…!!

 

『よくこの部屋へ辿り着いたな、九十九一馬の息子…そして()()()()()()()()()()()!』

 

(私の事が見えている…!)

フェイカーの目は常人では見えないアストラルの姿を見抜く…それだけでもフェイカーは普通の男ではない事がわかる…!

 

 

(私が見えているのなら…聞かせろDr.フェイカー!何故お前はナンバーズを集めている…!ナンバーズは私の記憶ではないのか!?)

アストラルは全ての黒幕を問い詰める…!

 

 

『私はアストラル世界と並ぶもう一つの異世界…バリアン世界と取引をした!私はアストラル世界を滅ぼす事で最強の力を手に入れる事が出来る…!この世界の支配者となるのだ─!』

 

「っ…!!ふざけんなぁ!!」

フェイカーの言葉を聞いた遊馬は怒りの声を上げる…!!

 

 

「そんな…そんな事の為にカイトにナンバーズ狩りをさせてたのか!?そのせいで…にカイトやハルトがどんだけ苦しんでいるか!!二人とも…お前の子供じゃないのかよ!!」

 

『些細な犠牲だ…最強の力を手に入れる為に犠牲はつきもの、カイトもハルトも…そして、九十九遊馬…お前の父一馬もなぁ…』

 

「てめぇ…!!」

フェイカーを一言で表すならば…まさに「邪悪」…自身の欲望の為に、家族でさえも犠牲にする…その所業をトロンとまったく同じだった…!

 

 

『…人とは常に何かを捨てながら生きていくもの…オリジナル、そして九十九遊馬…明日の決勝大会、楽しみにしているぞ…!』

 

 

ガコン!!

 

 

「へっ…!?うわあああ─!?」

 

(遊馬!)

遊馬の足下の床が抜け落ちる…遊馬はそのまま暗闇へと落下していった…。

 

 

 

 

 

 

『………ハルト、もう少し…もう少しだからな…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「うわあああぁぁ!?」」」

 

 

ドッシーン!!

 

 

 

 

「イテテ…あっ!?小鳥!鉄男!!」

 

「遊馬!無事だったか!」

 

「も〜う!!また人をゴミ扱いして〜!!」

 

落下した先…再びのゴミ置き場で遊馬達3人は再会する、そして遊馬の手元には…

 

「…これ、オレのデッキ…!?」

 

(…どうやら、私達はおびき寄せられたようだな…)

遊馬とアストラルは察する…Dr.フェイカーは遊馬達を誘い出す為に遊馬のデッキを盗んでいたのだと…。

 

 

「Dr.フェイカー…待ってろよ…!絶対に、お前は許さねぇ…!」

遊馬はデッキを握り締め、静かに怒りを燃やす…。

 

 

 

 

そしてついに…因縁渦巻く決勝トーナメントの幕が上がる…!




一方その頃…



《マスター…本当にごめんなさい…》←(「私は急ぐあまり瀕死のマスターに突進したダメパートナーです」と書かれた札が掛けられた籠に入れられている)

「(死〜ん…)」←アヤカによる会心の一撃で意識不明

《主殿…力になれず申し訳ない…!》←回復魔法行使中のトフェニ


「…これ、どんな状況なんだ…?」←状況のわかっていないシャワー終わりの凌牙

「気にしないであげて…少しアヤカちゃんがドジしちゃっただけだから…」←回復魔法全力行使中の翠



《フォウ、キャーウ…》(特別意訳:泣きっ面に蜂って…こういう事を言うんだね…遊海は大丈夫かなぁ…)

《ZZZ…》←フレア睡眠による回復中


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牙を覆う闇─蝕─

こんにちは!S,Kです!

本当は遊馬対凌牙と繋げようと思ったのですが…キリがよかったので投稿します!


因縁は収束する…今までにない強敵を前に遊海は、遊馬はどう立ち向かうのか…!


それでは最新話をどうぞ!


「ぐっ…うぅ…ここ、は…?」

 

《おはようございますマスター、現在10時30分です…昨日は本当にごめんなさい…》

 

「彩華…そう、か…お前の突進で……」

一夜が明け、遊海はようやく目を覚ました…その傍らには申し訳なさそうに縮こまるアヤカの姿がある…。

 

 

「なんだか、お前と話すのも、久しぶりな気がするな……ごめんな、こんな情けないマスターで…」

 

《トロンとのデュエルの顛末はフレアから聞きました…私がいないのになんて無茶を…!》

 

「…トロンの策に、完全に嵌められた……くそっ…!」

遊海は拳を握り締める、今回の戦いは失ったものが大き過ぎた…トロンによって遊海の持つ力はほぼ全てが奪われ、遊海の身代わりとなってユウスケは消滅した…今までの敗北で一番の被害だろう…。

 

 

《マスター…大丈夫です、遊馬がトロンを打倒すればきっと…》

 

「…そう、だな…紋章の力が無くなれば…その可能性を信じるしかない…本当に、肝心な時に役に立たないな…俺は…」

 

《…マスター、WDCの準決勝が既に始まっています…テレビをご覧になりますか?》

 

「…ああ、頼む」

アヤカは落ち込んでいる遊海の気分を変える為にテレビのスイッチを入れる。

 

 

「(きっと対戦カードは変わっていないはず…凌牙には十代と翠が付いていてくれてる…きっと、大丈夫だ)」

 

遊海は不安を感じていた、本来であれば凌牙はトロンの策略によって心の闇を暴走させながら遊馬と熾烈な決闘を繰り広げる事になる…だから遊海はそうならないように凌牙のメンタルケアの為に翠、そしてトロンを凌牙に近づけさせないように十代を護衛に付けたのだ…。

 

 

 

 

 

 

「なっ…!?なんで!!」

 

《これは…!》

遊海とアヤカはモニターに映し出された光景に絶句する…そこには明らかに正気を失っている凌牙、そして戸惑いながらも必死に凌牙に呼びかける遊馬の姿が映っていたのだ…!

 

 

「っ…!翠!返事をしろ!!」

遊海は咄嗟に枕元にあったDゲイザーを掴み取り、翠に連絡を取ろうとする…だが、返ってきたのは…。

 

 

『…すまねぇ先生…!しくじった…!』

 

 

「十代…!?」

Dゲイザーに十代の姿が映し出される…その体は傷付き、ボロボロだった…!

 

『トロンの奴…真正面から、乗り込んで来やがった…!』

 

「トロン…!あの野郎ぉぉぉ!!」

 

遊海の怒りの叫びが家を震わせた…。

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡る…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凌牙君、遊馬君、準備はバッチリかしら?」

 

「おう!!」

 

『ああ』

朝、遊馬と小鳥、そして翠と凌牙は白波家の前で集まっていた…準決勝を前に時間を合わせて行こうと翠が提案していたのだ。

 

 

「翠さん、ゆ…白野は大丈夫なのか?まだ眠ってたけど…」

 

「大丈夫よ!昨日ちょ〜っとハプニングがあって疲れてるだけだから…」

 

『(…あれはハプニングで済むのか…?)』

遊海は結局気絶から目覚める事はなかった…弱った所で受けた攻撃のダメージが思いのほか強かったのだ…。

 

 

「それじゃあ…行きましょうか!アヤカちゃん、フォウくん、お留守番お願いね?」

 

《フォウ!》

 

《了解です…!マスターは必ず守ります!》

アヤカとフォウの見送りを受けて翠達はハートランドへと向かった。

 

 

 

「シャーク!オレ達は誰とデュエルするんだろうな?」

 

『フッ…案外、お前と俺が当たる…なんて事もあるかもな?』

 

「そうなったらオレだって全力でいくぜ!シャークとは1勝1敗の引き分けだからな…!決着をつけようぜ!」

 

『ああ、望むところだ…!今の俺には「切り札」もあるからな…!』

会場への道中、遊馬と凌牙は戦いに向けて語り合う…そんな中、凌牙は「No.32」のカードを取り出す…。

 

 

(…シャーク、ナンバーズは危険なカードだ…しかも君は「シャークドレイク」をカオスナンバーズへと進化させた、それは私にとっても未知の出来事だ…君は「シャークドレイク」を使うべきではない)

 

『…悪いが、今は「シャークドレイク」は渡せねぇ』

 

「シャーク…」

アストラルの言葉に凌牙は首を振る。

 

『勘違いするな、トロンの奴に…璃緒と父さんを傷付けた落とし前をつけさせるのにはこのカードの力が必要だからな…心配するな、翠さんに「ナンバーズ」の力を抑える処置をしてもらってる…』

凌牙は胸元に手を当てる、遊馬達には見えないが…凌牙の胸元に刺さった「シャークドレイク」の爪を覆うように光の結界が施されている…。

 

 

『トロンとの戦いが終わったら必ずお前達に渡す…それだけは約束しとくぜ』

 

「…わかった、じゃあオレがトロンに先に勝ったらナンバーズは渡してもらうからな!」

 

『フッ…そん時は俺に決勝で勝ったらな?』

 

「シャーク〜!?」

 

 

((…今はシャークの精神は安定しているようだ…だが…))

凌牙と遊馬の他愛のない話を聞きながら、アストラルは翠に目を向ける…。

 

「まったく…準決勝の前なのに遊馬は呑気なんだから…ねっ!翠さん!……翠さん?」

 

「……えっ!?小鳥ちゃん何か言った!?」

 

((翠は気を張り続けている…何を警戒している…?))

アストラルは遊馬達に気付かれないように鋭く周囲を睨む翠の様子が気になっていた…。

 

 

「(トロンは必ず凌牙君を狙ってくる…!絶対に手は出させない…!!)」

 

 

 

 

 

 

Side翠&凌牙

 

 

 

 

『…準決勝の相手は遊馬か…負けられねぇな…!』

 

「そうね…遊馬君は昔から比べたらすごく強くなった…強敵よ?」

 

『それでも…俺は負けない、トロンの奴を倒すまでは…!』

スタジアムの控え室で凌牙はデッキ調整をしていた…対戦相手はやはり遊馬対凌牙、カイト対トロンの組み合わせとなり…戦いに向けて凌牙は神経を研ぎ澄ませていた…。

 

コンコンコン!

 

 

「…は〜い、どうぞ〜!」

 

『入るぜ、凌牙!翠さん!』

 

『十代さん…』

 

『よっ!頑張ってるな!』

控え室にやって来たのは十代だった、本来ならば関係者以外立ち入り禁止だが…監視の目をすり抜けてやって来たのだ。

 

 

『翠さん、今のところは大丈夫だ…トロンの奴は近くにはいねぇ』

 

「ありがとう十代君、貴方がいてくれて心強いわ…」

十代は遊海の指示で凌牙の近くにトロンが近づかないように目を光らせていた。

 

十代は遊海のように精霊の力で鎧を纏ったり、結界を張ったりする事はできないが…「ネオス」などの精霊の力を借りる事で身体能力を上げる事ができる、今は「アクアドルフィン」の持つイルカの聴力を借りる事で周囲の警戒をしているのだ…。

 

 

「凌牙君、あなたは安心してデュエルの準備をしていて…あなたは私達が守るから…!」

 

『トロン…!来るならきやがれ…返り討ちにしてやる…!』

 

『…凌牙、お前がトロンを許せないのはよくわかる…アイツは復讐する為には手段を選ばない奴だ…でもな、復讐は新しい悲劇を生んじまうだけだ…凌牙、「復讐」の反対はなんだと思う?』

 

『復讐の…反対…?』

トロンに対する怒り…復讐心を燃やす凌牙に十代が諭すように問いかける。

 

 

『「復讐」の反対は…()()()だ、相手のした事を許し…受け入れる、それが復讐の連鎖を終わらせられる唯一の手段だとオレは思ってる』

 

《フッ…君が言うと説得力が違うねぇ》

 

『茶化すなよ、ユベル…』

 

『許す…俺が、トロンを…?』

凌牙は十代の言葉を聞いて思い悩む…妹を傷付け、父を玩び、自分の息子達をも使い捨てにした男を許す…それは凌牙には考えられない事だった…。

 

 

『…「もしも」の話だけどな?先生がトロンを倒していたら…あの人はトロンを許してたと思う、あの人は本当に優しい人だからな!自分の命を狙った男でも…あの人は許した、もちろん拳とデュエルで決着をつけてからだけどな?』

 

『…父さん…俺は…』

凌牙は胸元を押さえ、遊海との暮らしを思い出す…両親を失った自分達を迎え入れ、優しく守り育て…自暴自棄になった自分を見捨てなかった…優しいもう1人の父の事を…。

 

 

『…俺は、トロンを許せねぇ…!だからまずはブン殴る!!許すか許さねぇかは…そのあと決める!!』

 

『…ああ、それでいいさ!』

凌牙の心で燃えさかる黒炎が弱まる…先達であり、遊海の教えを受け継ぐ十代の言葉は凌牙の心境を少しだけ変える事ができた──

 

 

 

 

 

【困るなぁ…ボクの大事な()()に余計な事を吹き込まないでくれるかな…!】

 

 

 

『「『っ!?』」』

控え室に戯けたような声が響く…その声の主は入口近くの空間から突然現れた…!

 

 

『瞬間移動って奴か…!翠さん、凌牙を頼みます!』

 

「わかってる!凌牙君!私から離れないで!」

 

『てめぇ…!!』

 

【フフフ…!ずいぶんな歓迎だねぇ、白波翠…そして伝説のデュエリストの1人、遊城十代…!ボクの人形を渡してくれるかな?】

妖しい笑みを浮かべながら鉄仮面の子供…トロンは姿を現した…!

 

 

 

 

 

 

 

『現れやがったな…!(殺気をビリビリ感じる…!この感じは本気の遊海先生…いや、ティエラレベルか…!?)』

トロンを前に十代は冷や汗をかく、感情を見せないトロンの瞳…そこからこの数十年経験しなかったレベルの強い殺気を感じ取ったのだ…!

 

 

【遊城十代…たしか君は白波遊海がデュエルアカデミアにいた頃の教え子らしいね?なら…ボクの新しい力を試すのにちょうどいいかな…!】

 

『新しい力だと…?』

 

【そうだよ…彼から奪い取った、モンスターを実体化させる力をね!!】

 

08

 

【現れろ!「No.8紋章王ゲノム・ヘリター」!】

 

「っ!?ナンバーズ!!」

トロンの背後に仮面を被った鹿のようなモンスターが現れる…!

 

 

【さぁ、凌牙を渡してもらおうか…!】

 

『凌牙はお前には渡さない!!来い!「E・HEROネオス」!!』

 

「十代君!攻撃しちゃダメ!!」

翠の注意は間に合わずネオスがゲノムヘリターへと殴りかかる!!

 

ガギン

 

『なっ…!攻撃が効かない!?』

 

【フッ…!】

ゲノムヘリターの仮面に直撃するネオスの拳…手応えはあったが、ゲノムヘリターは動じていない…!

 

 

「十代君!ナンバーズはナンバーズじゃないと倒せないの!『ネオス』じゃ『ゲノムヘリター』は倒せないわ!!」

 

【その通り…!次はボクの番だ!「ゲノムヘリター」!フラッシュインパクト!】

 

『ネオス!?うわあああっ!!』

 

『十代さん!!』

ゲノムヘリターから放たれた光線がネオスへと直撃…吹き飛ばされたネオスは十代に直撃する…!

 

 

《十代、ここはボクの出番だと思うよ?》

 

「痛てて…ああ、頼むぜ…ユベル!!」

十代の前に大きな悪魔の翼を持つ十代の相棒が現れる!

 

【へぇ…HERO使いの君がそんな禍々しいモンスターを使うんだ〜】

 

《フン、お前には言われたくないね、復讐だけが目的になって「愛」さえ失った哀れな男には…お前、復讐を成し遂げたあとはどうするつもりなのさ?》

ユベルはトロンに問いかける。

 

【ボクの復讐は終わらない、フェイカーを消したら…次はこの街を壊そうか…!奴の造り上げたこの街を…!】

 

《呆れた…もう見境なしじゃないか、君は所詮…復讐を名分に…手に入れた力を見せびらかしたい「子供」だね》

 

【なんとでも言うがいいさ…吹き飛びなよ!フラッシュインパクト!!】

痺れを切らしたトロンが攻撃を仕掛ける!

 

 

《だから「子供」だっていうのさ…!痛みは共感する…!ナイトメア・ペイン!!》

 

キィン!!

 

【うわー!?】

ユベルに向けて放たれた光線が跳ね返り、トロンを吹き飛ばす!

 

 

『やっぱり…えげつないな、ユベル』

 

《フッ…挑発に乗るアイツが悪いのさ》

 

【君は…受けた攻撃を反射する能力を持っているのか…小賢しい真似をするじゃないか】

トロンは服の埃を払いながら立ち上がる…!

 

【でも、君自身には「ゲノムヘリター」を倒すほどの力はないみたいだね…!】

 

《たしかに…ボクは受けた攻撃を跳ね返す事しかできない乙女…でも、手段がない訳じゃないさ!今だよ!!》

 

「『エルシャドール・ネフィリム』!影糸乱舞!」

翠の前に現れた影の女王がゲノムヘリターを斬り裂く!

 

【ナンバーズを破壊した…破壊効果持ちのモンスターか…】

 

『これが…母さんと十代さんの力…!』

 

「トロン…いいえ、バイロン!ここから去りなさい!凌牙君には指1本触れさせない!」

翠はトロンに向けて声を張り上げる!

 

 

【ふふっ…!母は強し、か…なら特別に見せてあげるよ、ボクの切り札を…!!】

 

「『っ!?』」

トロンが赤紫色のオーラを纏い…威圧感が増していく…!

 

69

 

【現われろ…!『No.69紋章神コート・オブ・アームズ』!!】

トロンの背後に漆黒の身体と恐ろしい牙を持つ、異形の悪魔が現れる…!

 

 

『この感じ…!少しヤバそうだな…!』

 

《少なくとも三幻魔と同レベルの力は持ってるね…!そして感じるよ…このモンスターは『怒り』の感情で動いてる…!》

 

【正解〜、このナンバーズを操るには莫大なエネルギーが必要なんだ…それを補うのがたくさんの人々から集めた『怒り』のエネルギー…そして、白波遊海から奪った精霊の…いや、彼の魂全ての力…!神にも等しいこの力で…ボクはフェイカーに復讐するんだ!!】

 

『テメェ…!』

トロンは狂気に満ちた瞳で復讐の化身を見上げる…。

 

 

【ところでさ…なんでボクがこんな事を話したと思う…?…()()()だよ…これから斃れる君達へのねぇ!!『コートオブアームズ』!ゴッド・メダリオン・ハンド!!】

 

《■■■■■─!!》

怒りの咆哮と共にコートオブアームズから無数の光の触手が飛び出し、翠達に襲いかかる!!

 

 

《させないよ…!ファントム・ペ──》

 

「ダメ!これは()()()()()()()!!」

 

《っ─!?ハアッ!!》

ユベルは翠の言葉を聞いて咄嗟に光弾で触手を撃ち落とす!

 

【さぁ、いつまで耐えられるかなぁ!!】

無数の触手が再び翠達へと襲いかかる!!

 

 

「ウィンダ!ウェン!凌牙君を守って!!」

 

《言われなくてもやってるよ!風王結界!》

 

《ウィンド・ウォール!!》

 

『ユベル!!』

 

《わかってる─!!》

翠はウィンダ達を召喚し凌牙を守り…十代とユベルは必死に触手を撃ち落とし、切り落とす!

 

【流石は伝説のデュエリスト…でも、これはどうかな!】

 

《■■■■!!》ギュル!!

何本もの触手が寄り集まり…ドリルのようになって凌牙を守る結界へと突き刺さる!

 

《っ〜!?お、重い…!!》

 

《結界が、割れちゃっ…凌牙君!逃げ─!》

 

ビキビキ…バキーン!!

 

『なっ…!?』

一瞬の均衡の後に結界は砕け散る、遊海の力を吸収したコートオブアームズの力は…翠達の力を上回っていた…!

 

『やべっ…!!』

 

 

そして凌牙に触手が迫り─…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グサリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あっ…!?』

凌牙に迫った触手は彼を傷付ける事はなかった…何故なら…

 

 

「ぐっ…くぅ…!!」

 

『母さん!!』

 

『翠さん!?』

翠が自分の腕を犠牲にして、凌牙の盾となっていたからだ…

 

 

「凌牙くん…!下がって!!」

 

【白波翠…どうしてそこまで凌牙を守るんだい?凌牙は君達の本当の子供じゃないだろう?】

 

「例え…本当の子供じゃなくても…!凌牙くんは…璃緒ちゃんは…!!私達は家族なの!!子供を見捨てる親が…いるかぁぁ!!」ギシッ!!

 

【なにっ!?】

翠はコートオブアームズの触手を敢えて左腕に巻き付け…腕力でコートオブアームズを引き寄せる!

 

「モード影霊衣…グングニール…!!氷結制裁!!!」

 

ドゴン!!

 

『『な、殴った─!?』』

 

《…見事な右ストレートだね…》

 

引き寄せられた勢いのままコートオブアームズは…氷龍の鎧を纏った翠に殴り飛ばされ、壁に激突する!

 

 

「私を、舐めないでね…!これでも私は『決闘王』の奥さんなんだから…!」

腕に巻き付いた触手を振り払いながら翠はトロンを睨みつける…!

 

【なるほどね…君も化物だった訳だ…でも、君達は既に…ボクの掌の上なのさ!!】ギィン!!

 

バチバチ…バリバリバリバリ─!!

 

『っ…!?ぐああああ!?』

 

「きゃああああああ!?」

 

『母さん!!十代さん─!!』

いつの間に仕掛けたのか…トロンの紋章が翠と十代の足下で輝き、凄まじい電撃を浴びせる!!

 

 

【ふふふ…!君達が「コートオブアームズ」の腕を避けている時に仕掛けておいたのさ…!】

 

《貴様…!十代を…!!》

 

《翠を…!》

 

『『離せぇぇ!!』』

ウィンダの風の魔力弾とユベルの光弾がトロンに迫る!

 

【「コートオブアームズ」…ゴッド・シャーター!】

 

《■■■■■!!》バシュン!!

 

《なっ…!?きゃあああ!!》

 

《ガハッ…!?》

トロンの前に立ち塞がったコートオブアームズ…その腕から無数の赤い閃光が放たれ、ユベルとウィンダを貫いた…!!

 

『貴様…キサマぁぁぁ!!!出やがれ!!「シャーク・ドレイク」!!』

《グルルァァ!!》

 

《凌牙!ナンバーズを出しちゃダメ─!!》

凌牙は家族を傷付けられた怒りで再びシャークドレイクを呼び出す!!

 

 

【ああ…その怒りだよ凌牙…!その怒りこそ、君をフェイカーに仕立てるに相応しい…!ねぇ?()()()()()()()()()…!】

 

 

ザン!

 

 

《…え…?》

 

『なっ…!?ウェン─!!』

シャークドレイクはその腕でトロンではなく、ウェンの身体を切り裂いた…!

 

 

【残念でした〜!シャークドレイクは最初からボクの忠実なる下僕だったのさ…!さぁ、凌牙…君の闇を広げてあげよう…!君の抱いた憎しみ…怒り…!それを糧に君はさらに強くなれる…!】

 

『や、やめろ…!来るな…っ!?』

トロンから離れようとする凌牙…だが、その体をシャークドレイクが押さえつける…!

 

 

「やめ…!凌…にげ、て…!!」

 

『力が、入らねぇ…!!ちくしょおおお…!!』

十代と翠は見ている事しかできない…強化された紋章の力は凄まじく、十代達の体は完全に麻痺してしまっていた…。

 

 

【さぁ…!ボクの人形になるんだ…凌牙…!】

 

 

ズブリ

 

『ガッ…あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!?』

 

 

 

控え室にトロンの手で頭を貫かれた凌牙の絶叫が響いた…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

ドタガッシャァァン!!

 

 

《マスター!?無茶です!!動ける体ではありません!!》

 

《フォーウ!?》

 

「関係、あるか…!!例え、這いつくばってでも…!凌牙の、ところに…!!」

十代から状況を聞いた遊海はベッドから転げ落ちる…下半身に力の入らない遊海は腕の力だけで玄関へと向かう…!

 

「凌牙…翠…!俺の…俺のせいだ…!!俺のせいなんだ…!!」

 

ドタガッタァァン!!

 

階段を転げ落ち、傷を増やしながら遊海は玄関へと這う…!

 

ガチャ!!

 

『遊海さんたいへ…遊海さん!?』

 

「流星…!頼む、俺を…スタジアムに…!!」

玄関から飛び込んで来たのは流星だった…連絡のつかない翠と十代を心配したジャックが凌牙の様子を見て異変を察知し、流星を遊海のもとに向かわせていたのだ…。

 

 

 

 

「状況は、最悪だ…!!頼む、俺を…スタジアムに…凌牙の、ところに…!!」



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決戦!遊馬対凌牙〜友情と絆の光〜

こんにちは!S,Kです!大変お待たせしました!

考えに考えた遊馬対凌牙の準決勝!遊馬はトロンの手から凌牙を救い出す事ができるのか…!


それでは最新話をどうぞ!!


「う…うぅ…(体が、痺れて…動け、ない…)」

 

『翠、さん…!』

 

内装がボロボロになった控え室…そこに翠と十代は倒れ伏していた…、遊馬との戦いを前に凌牙を襲撃したトロン…2人は必死に抗ったが、遊海の力を得た事でパワーアップしていたトロンに敵わず…凌牙を奪われ、洗脳されてしまった…。

そして洗脳を受けた凌牙は既に遊馬との戦いの場に向かってしまったが…翠達は動く事ができなかった、トロンの雷撃によって体が麻痺し、身動きが取れなくなってしまっていたのだ…。

 

 

『くそっ…!先生の力を、こんな事に…使いやがって…!』

十代は悔しげに拳を握る…十代は知っている、力を持つ遊海が人々を救う為にどれだけ自分の身を削ってきたかを…。

 

「(遊馬君…お願い……凌牙君を、助けて…!)」

ダメージで意識が薄れゆくなか…翠は凌牙の無事を祈るしかなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『WDCもついに準決勝!!熱きデュエリスト達の戦う舞台は…ここだぁ!!いでよ!デュエル・タワー!』

 

「「「うおぉぉ!?」」」

熱狂に包まれるハートランドスタジアム…その中心にMr.ハートランドの声と共に地下から巨大な塔がせり上がる!

 

 

『この天空を貫くデュエルフィールドで…選手達よ!思う存分しのぎを削るがいい!対戦組み合わせは神代凌牙対九十九遊馬!そして天城カイト対トロンだ─!!』

 

 

 

 

「フン…そびえ立つ塔、天空のデュエルフィールドか……あれでは万が一に()()()()()()()()()()()()()…よほどナンバーズとやらが欲しいらしいな」

観客席でジャックはデュエルタワーを睨みつける、傍から見れば戦いを盛り上げる為の舞台装置だが…見方を変えれば…それは獲物を逃さぬ為の罠の塔へと変貌する…!

 

 

『組み合わせは凌牙君と遊馬君か…遊馬君は何回か凌牙君と戦ってるらしいから…手の内は知っているはずだね』

 

『それは凌牙も同じ事だぜ流星…それに凌牙はジュニア大会のファイナリストだ…一筋縄で勝てる相手じゃないわ』

ジャックの両隣では流星と海亜が言葉を交わしている…なお、しっかりポップコーンとジュースを用意して観戦準備は万全である。

 

 

「…お前達、状況はわかっているんだろうな?」

 

『わかってるよ爺ちゃん!でも、こんなに人が見てる中でそのドクターナントカは遊馬達を狙うの?』

 

『Dr.フェイカーね…でも、遊星おじいちゃん達のアーククレイドル事件も大会の最中だったんだ…本当に強い目的のある人は…何をするかわからないよ…!』

 

「フッ、流石の観察力だな…お前も見習え、カイア」

 

『う〜…わかりましたー…』

 

 

 

 

 

 

『さぁ!いよいよ準決勝第一回戦の始まりだ!!1人目の選手…それは大会前は無名だったにもかかわらず、ここまで幾多の激闘を勝ち抜いてきた…奇跡の男!!九十九遊馬!!』

 

「おっしゃあああ!カットビングだ─!!」

Mr.ハートランドの紹介と共に遊馬がスタジアムへと飛び出す!

 

 

『対するは…不祥事で一度はデュエル界から去り、今再び蘇った…雄々しき鮫!神代凌牙!!』

 

 

「シャーク!まさかいきなり当たるなんてな…!決着をつけようぜ!!」

 

『………』

 

「シャーク…?おい!なんとか言えよ!?」

 

『………』

遊馬は凌牙に呼びかけるが…反応を示さない、その瞳に光は無く…遊馬達の姿も見えていないようだった…。

 

(シャークの様子がおかしい……まさか…!)

普通ではない様子の凌牙を見たアストラルは一つの事に思い至る…!

 

 

『さぁ…!2人の勇者よ!いざ、決戦の舞台へ─!!』

 

ゴゴン

 

「うおっ!?」

ハートランドの声と共に2人の立つ舞台が上昇する!

 

『これより上のフィールドに行けるのは準決勝を勝ち抜いた者のみ…!さぁ…決勝へ生き残るのは遊馬か!それとも凌牙か!?戦いの火蓋が切って落とされる!!ハァァト!バーニング─!!』

 

 

 

 

「まさか…!(ピピッ!)」

明らかに正常ではない凌牙の様子を見たジャックはDゲイザーで翠へと連絡を飛ばす…だが、反応は返って来ない…!

 

 

「…流星!すぐに遊海のもとに向かえ!カイア!お前は此処に残れ!俺は翠と十代のところに行く!!」

 

『ちょ…いきなりどうしたんだよ!?確かに凌牙の様子はおかしいけど…』

ジャックの突然の言葉に海亜は戸惑う…。

 

「翠と連絡が取れん…!そしてあの小僧は既に闇に飲まれている…!トロンとやらはよほどの強敵らしい…!!」

 

『ジャックさん!僕はどうすれば…!?』

 

「遊海を叩き起こして対処法を聞け!奴は闇の力に関するエキスパート…打開策を知っているはずだ!」

 

『わかりました!!』

流星は走ってDホイールのもとへと向かう!

 

「カイア、お前はデュエルを見届け、何か変化があれば俺と流星に連絡を入れろ!わかったな?」

 

『わかった…!』

ジャックの鬼気迫る様子に海亜は強く頷いた…!

 

 

「(翠と十代が遅れを取るとは思いたくないが……念には念をだ…!待っていろ2人とも─!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしちまったんだよ…シャークの奴…!?」

凌牙と睨み合う遊馬は動揺していた…遊馬は朝に話した凌牙から強い闘志とトロンに対する怒りを感じていた…だが、今の凌牙はまるで人形のように静か…いや、何もかもを忘れた別人のようだった…。

 

 

(遊馬…1つ、可能性を確かめたい…翠と話す事はできるか?)

 

「ダメだ、大会の人から試合中のDゲイザーの通話は違反だって言われてる…!」

 

(そうか……遊馬、あくまで可能性の話だが…シャークは既にトロンの手に落ちているかもしれない…!)

 

「なんだって…!?」

アストラルの思わぬ言葉に遊馬は驚愕する…。

 

 

(…シャークから紋章の力を感じる、おそらく彼が控え室にいる時に…!)

 

「待ってくれ…!凌牙には翠さんが付いて!」

 

(遊海の力を奪ったトロンは大きく力を増しているはずだ…もし、ナンバーズを精霊として使役し…シャーク達を襲ったとしたら…)

 

「っ!?…確かめられる手段はねぇ…今のオレにできるのは、デュエルだけだ!オレ達のデュエルでシャークを正気に戻す!!」

 

(ああ、それが今の私達にできる最善の手段だ…おそらくシャークはトロンの紋章で力を増しているだろう…だが、勝つぞ…遊馬!!)

 

「おう!」

遊馬とアストラルはデュエルに勝つ為に…そして凌牙を救う為に戦いへと挑む…!

 

 

 

【ふふふ…どんな戦いを見せてくれるのかなぁ?楽しみだなぁ…!】

スタジアムのVIP席…眼下で睨み合う遊馬と凌牙を見てトロンは笑みを浮かべる。

 

【まぁ、どちらが勝つかなんて…()()()()()()()()()()()()…!フフフ…ハハハハハハ…!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!/………』」

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対凌牙

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

 

(遊馬、ここは守りを固めるべきだ)

 

「ああ…!オレはモンスターを伏せ、カードを1枚セットしてターンエンド!!」

先攻を取った遊馬は凌牙を前に守りを固める…!

 

 

(伏せたのは守備力1900の「ドドドボット」に「攻撃の無敵化」…これで最初の攻撃は凌げるはずだ…)

 

「さぁ…!掛かってきやがれ!シャーク!!」

 

 

 

『俺の、ターン…ドロー』

凌牙は視点も定まらないままカードを引く。

 

『「スピア・シャーク」を召喚…バトル、セットモンスターを…攻撃』

 

「『スピアシャーク』の攻撃力は1600…これなら…!」

 

(油断するな!シャークがそんな単純なデュエルをする訳が──)

槍の頭を持つ鮫が遊馬に攻撃を仕掛ける…アストラルは警戒したが…。

 

 

ガギィン!

 

『ぐっ……』

 

(なっ…!?)

 

「シャーク!?」

凌牙は躊躇なく「ドドドボット」を攻撃…反射ダメージを受けて吹き飛ばされる…!

 

 

『…オレはカードを伏せ…ターンエンド』

 

「シャークからまったく闘志を感じねぇ…!?いつもならビンビン感じるのに…!」

 

(シャーク…君はトロンに何をされたのだ…!?)

遊馬とアストラルは凌牙の思わぬプレイングに動揺する、本来であれば荒れた海のように荒々しく、しかし計算されたデュエルをする凌牙…だが、その実力はまったく発揮されていない…。

 

(…とにかく、警戒を怠るな…!伏せカードに注意するんだ!)

 

「おう…!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「『ゴゴゴゴーレム』を召喚!」

遊馬の仲間である石の巨人が現れる!

 

「さらに『ドドドボット』を攻撃表示に変更!バトルだ!『ゴゴゴゴーレム』で『スピアシャーク』を攻撃!」

 

(気をつけろ遊馬!リバースカードが…)

 

『ぐっ…』

 

(なっ…!?)

ゴーレムの一撃がスピアシャークを粉砕する…だが、リバースカードを発動する事なく凌牙は吹き飛ばされる…。

 

 

「シャーク…!今の一撃でもダメなのか…!?」

遊馬は今までの経験の中で相手に強い衝撃を与えれば相手を正気に戻す事ができるという事を知っていた…だからこそダメージ覚悟で凌牙に攻撃を仕掛けたが、凌牙は反応を示さない…まるで命令を入力されていないロボットや…糸の切れた操り人形のように…。

 

 

「なら…ダイレクトアタックだ!『ドドドボット』でシャークに…神代凌牙にダイレクトアタック!!サンダー・ブレード!!」

 

キン─バチバチバチバチ!!

 

『っ…ぐああああ…!?』

「ドドドボット」の剣が強い電気を纏い凌牙に振り下ろされる…放たれた電撃は凌牙に直撃、今まで反応を見せなかった凌牙も声を漏らして倒れ込む…!!

 

 

『お〜っと!?これは強烈〜!!凌牙が1800ものダメージを受けてしまった!!これは…立ち上がれるのか〜!?』

Mr.ハートランドの実況がスタジアムに響く…観客達は固唾を飲んでデュエルを見守っている…。

 

 

 

「っ〜!!立てよシャーク!!いつもみたいにオレに向かって来いよ!!」

遊馬が叫ぶ…正気を失った凌牙の心…魂に届くようにその声を張り上げる!

 

「お前…いつだって相手に噛みつく勢いで相手に向かっていっただろ!?だから『シャーク』なんだろ!?戦わないシャークは…シャークじゃねぇぇ!!」

遊馬の魂の叫び…その声は…

 

 

 

『……言って、くれるじゃねぇか…遊馬…!』

 

 

 

「シャーク!!」

確かに凌牙の魂へと届いていた…!

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

『(頭が、ガンガン痛てぇ…今は、デュエルの最中か…)』

遊馬の叫びが凌牙の正気をかろうじて呼び戻す…だが、凌牙はまるで()()()()()()()()()()ような…そんな感覚に襲われている…!

 

「シャーク!大丈夫なのか!?」

 

『ぐっ…なんとか、な…!』

凌牙はよろけながら立ち上がる…そして今までの事をおぼろげながらも思い出す…。

 

 

『遊馬…なんだか、やべぇ…!トロンの奴…俺に何か、しやがった…!』

 

(やはり…!)

 

「シャーク!トロンの力になんて負けるな!!今助けてやる!!」

 

『…遊馬、頼む…!俺を、倒せっ…!?』

 

ドクン!!

 

『っ…ぐああああ─!?』

 

「シャーク!!」

凌牙は頭を押さえ苦しみ始める…そして…。

 

 

32

 

 

…ようやく黙ったか…

凌牙は顔を上げる、その顔は邪悪で獰猛な笑みを浮かべ…右手には妖しく「32」の数字が浮かび上がっている…!

 

 

さぁ、デュエルを続けろ…!貴様達のナンバーズ…奪わせてもらおうか…!

 

 

「っ…この感じ…まさか!?」

 

(シャークが…ナンバーズに乗っ取られた…!?)

 

 

SideOut

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

【少し「シャーク・ドレイク」に力を与え過ぎたかなぁ…?完全に凌牙を乗っ取ってるじゃん】

トロンは首を傾げる…トロンは凌牙の記憶を弄ると共に「シャークドレイク」に遊海から奪った力を与え、強化した…だが、その力の配分を間違えたようだった。

 

 

【まぁ、その調整は後でいいや!さぁ…「シャークドレイク」!遊馬を…Dr.フェイカーを叩き潰すんだ…!アハハ…ハハハハハハ!!】

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

遊馬LP4000

凌牙(シャーク・ドレイク憑依)LP1700

 

 

 

 

 

「シャーク!しっかりしろ!!ナンバーズになんて負けてんじゃねぇ!!」

 

無駄だ、凌牙の精神は完全に俺と1つとなった…貴様の声はもはや届かぬ…

 

(まさか、奪われた遊海の力でナンバーズの意思が強まったのか…!彼はどれほど規格外の決闘者なのだ…!?)

ナンバーズの意思に飲み込まれてしまった凌牙…遊馬は必死に呼びかけるが…その声は届かない…!

 

 

さぁ、ターンを進めるがいい…!

 

「くっ…!!」

 

(遊馬、シャークを救うにはナンバーズを…シャークドレイクを倒すしかない…!気を引き締めろ!!)

 

「…シャーク、絶対に助けるからな…!カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

遊馬LP4000

ドドドボット ゴゴゴゴーレム 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

俺のターン…ドロー!

まずは…ここまで好き勝手してくれた礼をしてやろう…!「ツーヘッド・シャーク」を召喚!!

頭の上下に2つの顎を持つ鮫が現れる ATK1200

 

さらに魔法カード「アクアジェット」を発動!「ツーヘッドシャーク」の攻撃力はエンドフェイズまで1000アップする…!

双頭の鮫にジェットエンジンが装着され…その力を増す…! ATK1200→2200

 

 

バトルだ…「ツーヘッドシャーク」で「ゴゴゴゴーレム」を攻撃!

 

(遊馬!伏せカードだ!)

 

「罠カード発動!『攻撃の無敵化』!その効果により『ゴゴゴゴーレム』は戦闘で破壊されなくなる!!」

遊馬は咄嗟に罠を発動させるが…。

 

無駄だ…!速攻魔法「シャーク・スパーク」を発動!相手の罠のカードの発動を無効にする!

 

「なにっ!?」

凌牙…否、「No.32」の手札から水で出来た鮫の幻が現れ、「攻撃の無敵化」を噛み砕く!

 

 

攻撃を続行せよ…「ツーヘッドシャーク」!!

「ツーヘッドシャーク」が「ゴゴゴゴーレム」の両腕を噛み千切り…ゴーレムは爆発する!

 

「ぐうぅぅ…!?」

遊馬LP4000→3600

 

 

そして…「ツーヘッドシャーク」は1ターンに二回まで攻撃できる!!「ドドドボット」を噛み砕け!

 

「うわあああ…!!」

方向転換した「ツーヘッドシャーク」が「ドドドボット」を噛み砕く!

 

遊馬LP3600→3200

 

 

『おぉ〜!?凌牙が猛反撃!!眠りし鮫が…ついに目覚めた〜!!』

Mr.ハートランドの実況が響き、観客が歓声を上げる…なお、観客達には遊馬達の会話は聞こえていない…。

 

 

まだ終わらんぞ…?速攻魔法「デッド・スイープ」を発動!自分のモンスターが相手モンスターを破壊した時!攻撃力を1000下げる事で墓地の「スピアシャーク」を特殊召喚する!

墓地から尖った頭を持つ鮫が復活する! ATK1600→600

 

 

 

「スピアシャーク」よ…九十九遊馬にダイレクトアタック!

 

「っ!!ぐああああ─!!」

「スピアシャーク」の頭が鋭い鏃となって遊馬に突き刺さる…!

 

遊馬LP3200→2600

 

 

俺はカードを1枚伏せ…ターンエンド!

 

ツーヘッドATK2200→1200

 

凌牙→No.32 LP1700

ツーヘッド スピア 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「強えぇ…それに、痛てぇ…!」

 

(トロンによるデュエルタクティクスの強化に加え…精霊の力によるリアルダメージ…!今までにない強敵だ…!)

遊馬の全身を鈍い痛みが襲う…32は遊海の力を取り込み、今まで以上の強敵となっている…!

 

 

ああ、心地が良い…!凌牙の持つ心の闇がよく馴染む…!トロンには感謝しなければなぁ!

 

「テメェ…!」

闇のオーラを纏いながら32は獰猛に遊馬達を睨む…!

 

(遊馬、挑発に乗るな…!ナンバーズを召喚していない状態でこの力…奴がナンバーズを召喚する前に決着をつけるぞ!)

 

「おう!!」

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

【すっごい!!すっごーい!相手モンスターを一気に2体も葬って、更にダイレクトアタックまで!さすがボクが見込んだだけはあるよ!これならDr.フェイカーへの刺客として申し分無いよ…フッハッハッハハハ…!】

トロンは凌牙…32の凄まじい力を見て笑みを浮かべる…だが…

 

 

【でも、完全にボクの制御から外れてるんだよねー…一応、釘を刺しておこうか…!】

 

ギィン─!

 

トロンは紋章を輝かせ凌牙の精神へと潜り込んだ。

 

 

………

 

 

【やぁ、ずいぶんと楽しそうじゃないか…シャーク・ドレイク】

 

トロンか…見ているがいい、オリジナルを倒し、我が最強のナンバーズとなる姿を…!

凌牙の精神世界…闇に包まれたその場所でトロンと32は向かいあう…。

 

【シャークドレイク、一応聞いておくけど…凌牙は生きてるよね?】

 

ククク…生きてはいる、だが…自力で目覚める事は無いだろうがなぁ…

32の爪が指さす先…そこには水球があり、凌牙の魂はその中に閉じ込められていた…。

 

【ならいいや…頼むよシャークドレイク、君が遊馬とDr.フェイカーを倒したら…思う存分戦ってあげるからさ…!】

 

ククク…約束を違えるなよ、トロン…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

「オレは『ゴゴゴゴースト』を召喚!!」

遊馬は新たな仲間…鎧に宿りし幽霊を召喚する! ATK1900

 

「バトルだ!『ゴゴゴゴースト』で『スピアシャーク』を攻撃!!」

 

無駄だ…リバース罠『ポセイドン・ウェーブ』を発動!相手モンスターの攻撃を無効にし、自分フィールドに水属性モンスターがいる時!800のダメージを与える!

 

「なっ!?ぐあああぁぁ!!」

「ゴゴゴゴースト」の攻撃は海の神の怒りに防がれ…遊馬に神罰の稲妻が襲いかかる!!

 

遊馬LP2600→1800

 

 

「ぐっ…オレは、カードを1枚伏せて、ターンエンド…!」

遊馬は痛む身体を庇いながら立ち上がり、ターンを終える…。

 

遊馬LP1800

ゴゴゴゴースト 伏せ2 手札2

 

 

 

 

俺のターン…ドロー!

ククク…!これで終わりだな、小僧…!「ハンマー・シャーク」を召喚!

金槌頭の鮫が現れる! ATK1700

 

我が力で…お前達の戦いを終わらせてやろう!俺はレベル4の「ハンマー」「ツーヘッドシャーク」「スピアシャーク」の3体でオーバーレイ…エクシーズ召喚!!

 

32

 

現われよ…「No.32」!深海に潜みし、恐怖の支配者!「海咬龍シャーク・ドレイク」!!

海を支配する最強の牙…「シャークドレイク」が現れる! ATK2800

 

 

「で…出て来やがった…!」

 

(この禍々しいオーラ…昨日よりもさらに力を増している…!)

遊馬とアストラルは禍々しいオーラを纏う「シャークドレイク」を見て戦慄する…!

 

さぁ…我が牙に噛み砕かれよ!「シャークドレイク」で「ゴゴゴゴースト」を攻撃!デプス・バイト!!

 

「うわあああぁぁぁ…!?ガハッ…!」

 

(遊馬!!)

「シャークドレイク」から放たれた鮫型のエネルギーが「ゴゴゴゴースト」を粉砕…遊馬は吹き飛ばされ地面に叩き付けられる!

 

遊馬LP1800→900

 

 

(立て!遊馬!!続けて来るぞ!!)

 

「シャークドレイク」の効果発動…ORUを1つ使い!バトルで破壊した「ゴゴゴゴースト」を攻撃力を1000ダウンさせて相手の場に特殊召喚する…!

ORUを取り込んだ「シャークドレイク」が墓地に眠る「ゴゴゴゴースト」を引き摺り出す! ATK1900→900

 

そして…「シャークドレイク」はもう一度そのモンスターに攻撃できる…!これで終わりだ!!

 

「まだだ!!『ゴゴゴゴースト』の効果発動!このカードが墓地から特殊召喚された時!墓地の『ゴゴゴゴーレム』を特殊召喚し、自身は守備表示となる─!」

ゴーストの呼び声で青きゴーレムが復活する! DEF1500

 

ゴゴゴゴーストATK900→DEF0

 

 

ならば…再び砕け散れ!『ゴゴゴゴースト』!!

 

「っ〜!!」

再び「ゴゴゴゴースト」は砕け散るが…遊馬はなんとか踏みとどまる…!

 

命拾いをしたな…ターンエンドだ

 

32 LP1700

シャークドレイク 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

Side海亜

 

 

 

『あれが…ナンバーズ…!』

観客席で決闘を見守っていた海亜の手は震えていた、画面越しでも感じる威圧感は「スターダスト・ドラゴン」や「レッドデーモンズ・ドラゴン」に匹敵する…それを前に遊馬は臆する事なく戦っているのだ…!

 

 

『…爺ちゃん!凌牙がナンバーズを召喚したぞ!…聞こえてるか!?』

 

「聞こえている!こちらはそれどころではないのだ!!…カイア!すぐにスタジアムの入口に向かえ!流星が遊海を連れてこちらに向かっている!」

 

『はぁ!?』

Dゲイザーを通してジャックの言葉を聞いた海亜は驚愕の声を上げる…満身創痍どころか力を奪われ、瀕死状態の人間が向かっているとなれば無理もないだろう…。

 

「驚くのも無理ないが…気にするな!奴はそういう男だ!お前達2人で遊海を支えてやれ!!」

 

『わかった!!』

海亜は通信を切り、スタジアム入口へと向かった。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Sideジャック

 

 

 

「くっ…悪い予感ほど、当たって欲しくないものもないな…!」

海亜との通信を切ったジャックは拳を握り締める…スタッフの1人を脅して辿り着いた凌牙の控え室…そこには凄惨な光景が広がっていた…。

 

全身に火傷を負い倒れる翠と十代…身体に穴を空けられ気絶するユベルとウィンダ…深い切り傷で身体を斬り裂かれたウェン…歴戦の決闘者であり、リアルファイトも得意とするはずの伝説の決闘者達が倒れ伏していたのだ…。

 

 

「っ…!十代!意識はあるか!」

 

『ああ…悪りぃ…しくじっちまった…翠さんは、気を失ってる…』

ジャックはかろうじて意識のあった十代を助け起こす…。

 

 

「いったい何があったのだ…!貴方達があんな小僧に遅れを取るなど…!」

 

『…あの、ナンバーズってカード…マジでやべぇ…手も足も出なかった…!それに、改めて思い知ったぜ…遊海先生の…強さを……!』

 

「っ─!?」

その一言でジャックは気付いた…トロンは奪われた遊海の力を使いこなしているのだと…!

 

 

『遊馬…アストラル…!頼むぜ…お前達なら、きっと…─』

十代は気付いていた、遊馬とアストラルこそが今の時代に選ばれた決闘者なのだと…その可能性を信じて十代の意識は暗転した…。

 

 

「十代!気をしっかりもて!!…ぬぅ…!俺は回復魔法など使えん…!どうすれば良いのだ!?」

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

(遊馬、私達が勝つ為には「ホープ」を喚ぶしかない…!)

 

「わかってる…!でも、フィールドには『ゴゴゴゴーレム』しかいねぇ…あと1体…!あと1体モンスターを引ければ…いくぜ!!」

ナンバーズである「シャークドレイク」を倒す為には同じナンバーズでなければならない…遊馬はデッキトップに手を掛ける!

 

 

 

 

「オレのターン…!ドロー!!……ダメか…!」

遊馬の引いたカード…それはモンスターではない…!

 

「早くシャークを助けねぇとならないのに…!シャーク!目を覚ませ!ナンバーズなんかに負けるなぁ─!!」

 

無駄だ…言っただろう?お前達の声は届かぬと…お前は物覚えが悪いらしいなぁ…

 

「うるせぇ!!シャークはお前なんかに負ける奴じゃねぇ!!」

遊馬は凌牙に向かって叫ぶ…遊馬は信じている、神代凌牙と紡いだ「絆」を…。

 

 

「覚えてるか…!オレとお前の最初のデュエルは鉄男のデッキを賭けたデュエルだった!その次はメタルナイトと戦ったタッグデュエル!そしてお前はオレの皇の鍵を守る為にカイトとも戦ってくれた!!オレは嬉しかった…!オレとお前はデュエルで絆を繋いで来たんだ!!」

 

くだらん…デュエルとは戦いの手段に過ぎぬ…!俺が求めるのは貴様を倒し、最強のナンバーズとなる事…!仲間?絆…そんなモノに興味はない…!さぁ…デュエルを続けるがいい!!

遊馬の声は届かない…32により凌牙の魂は封じられている、彼を救うには…32を倒すほかない…!

 

 

 

「…待ってろシャーク…!ナンバーズの呪縛も、トロンの力も…全部ふっ飛ばして、お前を助ける!!『ゴゴゴゴーレム』を攻撃表示に変更!さらに速攻魔法『ゴールデン・フォーム』を発動!!自分の守備表示モンスターが攻撃表示になった時!次の自分のターンまで攻撃力は倍にする!!」

青きゴーレムが黄金の鎧を纏い、咆哮する! DEF1500→ATK1800→3600

 

 

無駄だ…!ナンバーズはナンバーズでなければ破壊されぬ…!

 

「わかってるさ!…でも、オレは…お前をぶん殴って…シャークの心を目覚めさせる!!バトル!『ゴゴゴゴーレム』で『シャークドレイク』を攻撃!!グレート・キャノン!!」

金色の光を纏った右ストレートが「シャークドレイク」に直撃…32を吹き飛ばす!

 

ぐおおぉぉ…!やってくれるではないか…!

 

 

32 LP1700→900

 

 

「目を覚ましてくれ!シャーク!!オレはカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

遊馬LP900

ゴゴゴゴーレム(GF) 伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

俺のターン…ドロー…!!

今のは効いたぞ…良いだろう、貴様は…我が噛み殺す…!!オオオォォォ!!

 

ギィン─!!

 

32は邪悪なオーラを纏い咆哮する!

 

(っ…!来るぞ!遊馬!!)

 

我は…我自身!「海咬龍シャーク・ドレイク」をエクシーズ素材としてカオス・エクシーズ・チェンジ!!

 

32

 

現われよ!「CNo.32」!怒りの化身にして…全てを噛み砕く恐怖の牙!「海咬龍シャーク・ドレイク・バイス」!!

「シャークドレイク」がニュートラル体となって銀河へと飛び込む…現れるのは白き身体を持つ恐ろしき鮫龍…「シャーク・ドレイク・バイス」! ATK2800

 

 

「とうとう出やがった…!」

 

(シャークの…カオスナンバーズ…!)

圧倒的威圧感を放ちながら「シャークドレイクバイス」が降臨する…同じカオスナンバーズである「ホープレイ」は希望の光から生まれた戦士…だが、「シャークドレイクバイス」は凌牙の怒りと復讐心から生まれし怪物…その力は凶悪である…!

 

 

ゆくぞ…!「シャークドレイクバイス」の効果発動!ORUを1つ使い!墓地のシャークモンスター「スピアシャーク」を除外…!その攻撃力の数値分…1600の攻撃力を「ゴゴゴゴーレム」から奪い取る!噛み砕け!!

 

(まずいぞ!遊馬!!)

 

「ああ…!わかってる!!永続罠『パワー・チェンジ・バリア』を発動!『ゴゴゴゴーレム』の攻撃力を600下げる事で『シャークドレイクバイス』の効果の発動を無効にする!!」

 

「ゴゴゴゴーレム」の前に金色の盾が現れ、「スピアシャーク」の突進を弾き返す!

 

ゴゴゴゴーレムATK3600→3000

 

 

無駄だ…!再び「シャークドレイクバイス」の効果発動!ORUを1つ使い!墓地の「ツーヘッドシャーク」を除外!

 

「オレももう一度『パワーチェンジバリア』の効果発動!効果の発動を無効にする!」

 

ならばもう一度効果発動!墓地の「ハンマーシャーク」を除外し1700攻撃力を下げる!】

 

「もう一度だ!守れ!!『パワーチェンジバリア』─!!」

32の怒涛の連撃…遊馬はそれをなんとか防ぎきる…だが…。

 

ゴゴゴゴーレムATK3000→2400→1800

 

 

 

【あ〜あ、せっかくの攻撃力を自分で1800に戻しちゃったよ…遊馬の残りライフは900、次の攻撃で君は終わりなのにさぁ…!】

トロンは呆れたように笑う…「シャークドレイクバイス」と「ゴゴゴゴーレム」の攻撃力の差はちょうど1000…攻撃を受ければ遊馬の敗北が決まってしまう…!

 

 

 

これで終わりだ…!バトル!「シャークドレイクバイス」で「ゴゴゴゴーレム」を攻撃!デプス・カオス・バイト!!

「シャークドレイク」から放たれた闇の息吹が無数の光線となって遊馬に襲いかかる!!

 

「まだだぁ!!リバース罠発動!『ハーフ・アンブレイク』!!『ゴゴゴゴーレム』は戦闘では破壊されず!戦闘ダメージも半分となる!!うわあああ─!!」

攻撃を受ける寸前で遊馬は罠を発動…泡のバリアが「ゴゴゴゴーレム」を守るが…遊馬はダメージで吹き飛ばされる!

 

遊馬LP900→400

 

 

しぶとい奴だなぁ…だが、次のターンで終わりだ…!カードを2枚伏せ、ターンエンド!

32 LP900

シャークドレイクバイス 伏せ3 手札0

 

 

 

 

(我々の残りライフは400…次のターンで決着をつけなければ…我々の負けだ…!)

 

「わかってる…!オレは…オレは、オレ自身とオレのデッキを信じる!!」

遊馬はデッキトップに手を掛ける…凌牙を救い、デュエルに勝つ為のカードを引く為に!!

 

 

 

「かっとビングだ!オレ─!!ドロォォォ!!」

「(来た!!)」

遊馬がドローしたカード…それは「ガガガマジシャン」…これで「ホープ」を喚ぶ事ができる…!

 

「(そして伏せカードは罠カード『好敵手の絆(ボンズ・オブ・ライバル)』…!この効果でシャークから『ナンバーズ』を引き剥がす!!)」

遊馬は伏せられた罠カード『好敵手の絆』を見る…このカードは自分の攻撃が無効になった時、相手モンスターの装備カードとなる事でそのモンスターのコントロールを得る事ができる…遊馬はその効果を使い、凌牙から「シャークドレイク」とトロンの呪縛を引き剥がそうとしているのだ…!

 

 

 

 

キィン─!

 

 

 

「えっ…?この、光は…!」

 

(まさか…!?そんなはずは…!)

遊馬が覚悟を決めた瞬間、エクストラデッキが光を放つ…遊馬はその現象に覚えがあった…。

 

 

(…遊馬、()は君に全てを託した…その意味はわかるか?)

 

「ああ…『引き剥がすだけじゃダメだ』…そういう事だよな…いくぜ…!アストラル!!」

その光を見て遊馬は心で…魂でその意味を理解した、遊馬に全てを託した男のメッセージを…!

 

 

 

「オレは『ガガガマジシャン』を召喚!!」

学生服の不良魔術師が現れる! ATK1500

 

(いくぞ…遊馬!)

 

「おう!オレはレベル4の『ガガガマジシャン』と『ゴゴゴゴーレム』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

 

39

 

「現われろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

《ホォォープ!!》

遊馬達の切り札…希望の戦士が雄叫びを上げる! ATK2500

 

 

現れたか…オリジナルの分身よ…!貴様を倒し、我は最強のナンバーズとなる…!

 

「…()()()

 

なに…?

 

(シャークドレイク…いや、ナンバーズ32と呼ぼう…お前を倒すのは「ホープ」ではない、私と遊馬の絆である「ホープレイ」でもない!)

 

「お前を倒すのは…()()()()だ!!力を貸してくれ!!オレは『希望皇ホープ』でオーバーレイネットワークを再構築!!」

 

(このモンスターは『希望皇ホープ』をエクシーズ素材とする事でエクシーズ召喚できる!!)

遊馬とアストラルは声を合わせ…そのモンスターを呼び出す!

 

 

93

 

 

(「現れろ!『No.93』!希望の戦士が光を宿し!闇を祓う希望となる!!今こそ光臨せよ!『太陽皇ホープ・フェニックス』─!!」)

《ウオオオォォ─!!!》

雄叫びを轟かせながら太陽神の鎧を纏う戦士が光臨する! ATK3000

 

 

なんだ…!?なんだ!その輝きは!?そのナンバーズは!?

現れた光の戦士を見た32は狼狽する…全ての闇を祓う太陽の光が32を苦しめる…!

 

 

「この光は…オレとシャーク…そしてあの人の絆の光だ!!『ホープフェニックス』の効果発動!!このカードがエクシーズ召喚に成功した時!自分または相手の墓地の『No.』を2体までORUに変換し!その2体の元々の攻撃力分自身の攻撃力をアップする!オレが選ぶのは…お前の墓地の『シャークドレイク』!」

 

くっ…!?我が闇の力を削ぐつもりか…!だが、無駄だ!紋章の力と凌牙の心の闇がある限り、我は不死身だ!!

 

 

《不死身か…だが、弱点はある…紋章の力と凌牙の闇を祓えば…お前は力を失う!!》

 

 

なにっ…!?貴様!!

32は驚愕する…「ホープフェニックス」が喋った事にではない…その声の主は…もはや死んだも同然の男のはずだからだ。

 

 

《なんだか変な気分だな、俺が人に使役されるというのは…遊馬、アストラル…いくぞ!》

 

「ああ!凌牙を助けるぜ…遊海さん!!」

 

 

 

 

時は少し遡る…

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

『遊海さん!スタジアムに着きました!歩けますか!?』

 

「っ…!這ってでも、意地でも…歩くさ…!」

流星に連れられ遊海は遊馬と凌牙の戦うスタジアムへと到着した…だが、無理に動いたせいで怪我が再び悪化…全身が激痛に襲われている…。

 

 

『流星!遊海さん!!』

 

「海亜…!デュエルの、状況は…!」

 

『凌牙がナンバーズを召喚して…遊馬が追い詰められてる!!』

入口から駆けてきた海亜に遊海は状況を問う…事態は最悪に近い状況だった…。

 

「頼む…!俺をデュエルが見える所まで連れて行ってくれ…!」

 

 

 

 

「っ…!この状況は…!」

遊海が観客席の最上部の通路に辿り着いた時…シャークドレイクはカオス化し、遊馬はその猛攻を必死に防いでいた…!

 

《っ…凌牙へのナンバーズ侵食率90%…!凌牙は完全にナンバーズに飲まれています…!以前の『No.96』の事件と同じ状況です…!》

 

「トロンめ…!俺の力を、好き勝手に使いやがって…!」

アヤカの言葉を聞いた遊海は唇を噛み締める…!

 

『なぁ…!どうするんだよ!?このままじゃ…遊馬が…!』

遊海に肩を貸している海亜が心配そうに問いかける。

 

 

「…今の俺にできる事はほとんどない…魂は絞りカス…精霊の力も使えない俺には…」

 

『そんな…!』

…今の遊海の力はほとんど常人と変わらない…傷付いた肉体は再生せず、精霊の力を用いた能力も使えない…だが、1つ…()()()1()()()()、今の遊海が使える異能があった…。

 

 

「今の俺じゃあ凌牙は救えない…だからこそ、俺は…命を懸ける…!」

 

キィン─!

 

遊海は右手に黄金の卵を召喚する、それは遊海の持つ最初の異能にして神からの贈り物…千年(オーブ)だった。

 

 

『それは…千年アイテム…!』

 

「…千年アイテムの本来の数は8つ、相手の心を見通す『眼』…未来を予知する『首飾り(タウク)』…罪の重さを計る『秤』…人心を操る『杖』…心を見る『錠』…人の魂をモノに封じ込める『(リング)』…善悪を調和させ、魂を導く『(キューブ)』…そして王権の象徴であり、魂の揺り籠である『千年錘(千年パズル)』……俺の持つ千年玉は全ての千年アイテムの力を扱える…!」

千年アイテムの能力を説明した遊海は千年玉を掲げる…。

 

 

『遊海さん…!?命を懸けるって…いったい何を…!』

 

「…俺の魂を…もう一度、ナンバーズに宿らせる…!そのナンバーズを通じて…凌牙の精神へ潜り込み…凌牙を救う…!」

 

『『えぇっ!?』』

遊海の言葉に流星と海亜は驚きの声を上げる…今の遊海は動けるのが奇跡のような状態…その状態でさらなる無理をすれば……。

 

「…流星、海亜…決闘者には、人生に一度は…命を賭けた戦いをする事になる…まぁ、俺は…数えきれないけどな…ハハッ」

遊海は自嘲の笑みを浮かべる…。

 

「…2人とも…おそらく、俺はもう目を覚まさないだろう……後は、頼んだぞ!千年玉よ…我が魂を…いま一度…カードに宿らせよ!!」

 

キィン─!!

 

『遊海さん!!』

千年玉が光を放つ…その光は赤い炎となって遊馬のもとへと向かう…あとに残されたのは全ての力を使い果たし…抜け殻となった遊海の肉体だけだった。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「『ホープフェニックス』の効果発動!シャークの墓地の『シャークドレイク』をORUに変換し!その攻撃力分自身の攻撃力をアップする!シャイニング・チャージ!!」

 

ぐっ…!?おのれえぇ!!

墓地から引きずり出された「シャークドレイク」がORUに変換され…「シャークドレイクバイス」の纏う闇のオーラが半減する!

 

ホープフェニックスATK3000→5800 ORU3→4

 

 

「バトルだ!『ホープフェニックス』で『シャークドレイクバイス』を攻撃!さらに『ホープフェニックス』の効果発動!ORUを1つ使い!次の相手ターンのエンドフェイズまで相手の効果を受けず、効果では破壊されなくなる!!受けてみろ!これが絆の一撃!」

 

(「《ホープ剣フェニックス・スラッシュ!!》」)

遊馬・遊海・アストラルの声が重なる…太陽の力を纏いし一撃が「シャークドレイクバイス」に迫る!!

 

 

まだだ…!まだだぁ!!速攻魔法「報復の隠し歯」を発動!我の場に伏せられた『殲滅の紋章』と『深海雪原封印』を破壊する事で…攻撃を無効にする!いくら効果を受けずとも…攻撃を無効にされれば意味はない!!我が分身よ!その牙で剣を噛み砕け!!

 

《ガアアアア!!》

 

ガキィン!!

 

「シャークドレイクバイス」のヒレが太陽の剣を受け止める…!

 

《無駄だ…!俺と凌牙の絆は…そんなもので絶対に断ち切れる事はない!!》

 

「手札から速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』を発動!!攻撃が無効になった時!攻撃力を倍にしてもう一度攻撃できる!!これで終わりだ!!」

 

な、なにぃぃ!?

 

ホープフェニックスの背中から炎の翼が現れる!

ATK5800→11600

 

 

《凌牙を…息子を返してもらうぞ!》

 

「《ホープ剣不死鳥終焉撃(フェニックス・エンド)!!》」

剣を噛み締めるシャークドレイクごと炎の翼を生やしたホープフェニックスが天空へと舞い上がる!

 

《今だ!!》

その瞬間、ホープフェニックスから分離した遊海は凌牙の精神へと飛び込んだ…。

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

「ここが凌牙の精神世界か…!」

ホープフェニックスの攻撃が炸裂する刹那、遊海は凌牙の精神世界へと飛び込んだ…凌牙の精神世界は闇に支配され、荒れ果てていた…。

 

 

「凌牙!!」

しばらく精神世界を駆けた遊海はついに水球の内に囚われた凌牙の魂を見つけ出す…!

 

「今、助けるからな…!」

 

【させると思うかい?】

 

ギィン─!!

 

「っ…あ"あ"あ"あ"!!?」

凌牙の囚われた水球に触れようとした瞬間…遊海に紫電の電撃が襲いかかる!!

 

 

【…完全に魂を砕いたと思ったんだけど…キミは本当にしぶとい男だねぇ…】

 

「トロン…!」

遊海の前にトロンが現れる…凌牙に施した「紋章」を介して精神世界へと現れたのだ…!

 

【これ以上、キミに邪魔はさせない…今度こそ、完全に消えてもらうよ…!「シャークドレイク」!!】

 

グルラアアアア!!

トロンにけしかけられたシャークドレイクが遊海へと襲いかかる!!

 

「舐めるなよ…トロン…!例え、魂のカケラになろうと…俺は…最後まで諦めない!オラアァァァ!!」

 

ドガン!!

 

【なにっ…!?】

眼前に迫ったシャークドレイクの顎…紫電を振り払った遊海はその絶死の一撃を受け止める…!

 

 

【何故だ…!お前にはもう普通の人間以下の力しかないはず…!!】

 

「そんな事は関係ねぇ…!子を守る為なら…親は…世界すらひっくり返す!そして、返してもらうぞ…俺の力を!!赤き竜の痣よ…悪しき者に奪われし我が力を取り戻せ!!」

 

【なに─!?】

 

キィン─!

遊海の右手で赤き炎が輝く…その炎は巨大な竜の姿となりシャークドレイクに喰らいつく!!

 

 

【力が吸われる…!けど無駄だよ!お前の魂では自分の力を受け止める器が足りない…!自分の力で自滅するがいい!!】

シャークドレイクを介して力を吸われながらもトロンは笑みを崩さない…今の遊海は本来の十分の一にも満たない「欠片」…強大すぎる自身の力を受け止められるはずがないと…!

 

「舐めるな…俺は…白波、遊海…!決闘王の名を…背負う男だあぁぁ!!」

 

 

 

 

【これは…!?】

それは如何なる奇跡か…遊海の持つ「光」の力…バリアン世界に由来するトロンの「闇」の力…そしてシャークドレイクから精霊の力と共に流れ込む「No.」の力…その3つが混ざり合い、遊海の右手に水晶の原石のような巨大な石斧が現れる!

 

 

「凌牙を…返してもらうぞ!偽・射殺す百頭(ナイン・ライブス)!!」

 

ガアアアア!?

遊海が石斧を振り抜く…その軌跡は超光速の連撃となり、シャークドレイクを粉砕した…!

 

 

【チィ…!どうやらここまでのようだね…しょうがないから凌牙は返してあげるよ…!】

 

「覚えておけトロン…!遊馬と凌牙の友情…そして、俺達家族の絆は…お前ごときには…決して砕けない!!」

凌牙の精神世界から消えていくトロンに遊海は剣先を指し向けながら言い切った…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「いっけぇぇ!『ホープフェニックス』─!!」

 

《オオォォ─!!》

シャークドレイクバイスと共に天空に飛び上がったホープフェニックスはシャークドレイクを空中に放り投げる!

 

《ハッ!!…キュアアアア!!》

そして全身を炎に包んだ不死鳥がシャークドレイクへと突進…邪悪なるナンバーズを粉砕した─!

 

 

馬鹿な…バカなぁぁぁ─!!?

 

 

32 LP0

 

遊馬 WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『つ…ついに決着─!!ファンタスティックでハートバーニングな準決勝を制したのは…九十九遊馬選手だぁぁ!!』

 

「「「うおおぉぉ!!」」」

 

スタジアムが大歓声に包まれる…魂を燃やす遊馬のデュエルは観客をおおいに沸かせたのだった…。

 

 

 

 

「アストラル!」

 

(ああ、ナンバーズを回収する!)

アストラルが凌牙へと手を翳しナンバーズを回収する…。

 

 

「シャーク!大丈夫か!?」

 

『………遊馬…ありがとな…お前の、声…ずっと聞こえてたぜ…』

 

「シャーク!!」

遊馬の呼びかけで凌牙は意識を取り戻す…傷だらけだが、命に別状はないだろう…。

 

 

『…遊馬…お前の声と…父さんの声も、聞こえたんだ…スタジアムに…来てるのか…?』

 

「えっ…あ…?」

遊馬は辺りを見回す…咄嗟に「ホープフェニックス」を使ったものの、遊海の姿を直接見た訳ではなかったからだ…。

 

(……遊馬、静かに後ろを見ろ)

 

「えっ…あ…」

アストラルの言葉を聞いた遊馬は後ろを振り向く…そこには赤帽子を被った遊海が()()()の状態で佇んでいた…。

 

 

─遊馬、あとは…任せた─

 

 

「あ…あぁ…!」

遊馬の脳裏に遊海の言葉が響く…優しく、強かったその男は…安らかな笑みと共に金色の粒子となって風に溶けていった…。

 

 

 

『…遊馬…?』

 

(…遊馬、伝え方は…君次第だ)

 

「…遊海さん、いたぜ…()()()()()()()()()()()()()()!」

 

『そうか…なら、よかった……遊馬、トロンは…任せたぜ…!』

 

「おう!任せとけ!お前の想い…奴にぶつけてやる!!」

それは遊馬が初めてついた小さな…優しい嘘だった…それを聞いた凌牙は安心して気を失った…。

 

 

 

(…先程のデュエル…君もシャークも全力を尽くせるデュエルではなかった…いつかもう一度デュエルをしたいな)

 

「ああ…次は誰の力も借りねぇ、オレ達のデュエルでシャークを超えるんだ…!」

凌牙を搬送する救急ヘリを見送りながら遊馬とアストラルは言葉を交わす…そして、遊馬の手は固く握り締められていた…!

 

 

「トロン…お前は絶対に許せねぇ…!!シャークと師匠の無念は…オレが晴らす!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

【これが友情…絆…だと!?どこまで…どこまでボクを邪魔すれば気が済むんだ…!!白波遊海!九十九遊馬ぁぁぁ!!】

 

バリバリバリーン!!

 

デュエルの顛末を見て激昂したトロンは超能力でVIP席のガラスを叩き割る…手駒にした凌牙は奪還され、手に入れた精霊の力は遊海が自身を犠牲にする事でほとんどを奪い返された…トロンの計画は瓦解寸前だった。

 

 

 

【…まあ、いい…白波遊海は今度こそ消えた…!九十九遊馬はあとでゆっくり始末してやる…ボク自身の手で!!】

冷静さを取り戻したトロンはオーロラヴィジョンに映し出された遊馬を睨みつけた…。

 



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幕間─英雄の最期─

こんにちは!S,Kです!

今回は少し短めです!


それでは最新話をどうぞ!


「……ここまで、か…」

凌牙の精神世界…シャーク・ドレイクを撃破し、トロンを撃退した遊海は倒れ込む…自分の持てる全ての力を使い、トロンから奪われた力を取り返した遊海の魂は…既に限界を迎えていた。

 

 

「…これ…流石に復活できねぇな……痛みも…苦しさも感じねぇ……俺の存在自体が、薄れていく…」

倒れた遊海は自分の存在が消えていくのを感じ取った…トロンを弱体化させる為に許容量の数百倍の精霊の力を取り込んだ事で遊海の魂は緩やかに自壊していく…。    

 

 

「…()()()()、こんな気持ちだったのかな…遊星に、未来を託した時には……」

遊海が思い出したのはあり得たもう1人の自分の最期…光と闇の狭間で揺れ動き、希望を未来へと繋いだラプラスの事だった。

 

 

「…まだ、少しは…動けるか…」

遊海はふらふらと立ち上がり、気を失っている凌牙のもとへと向かう。

 

 

「…ごめんな、凌牙…俺のせいで余計に辛い思いをさせちまった…父親失格だな…」

凌牙の頭を撫でながら遊海は凌牙に自分の不甲斐なさを詫びる…。

 

 

「凌牙…お前はもう1人じゃない、翠がいる…遊馬や仲間達もいる、璃緒もきっと目覚める……もう、俺が居なくても大丈夫だ……お前はまだまだ強くなれる、その背中に()()()()()()()に……凌牙、自分を見失わないようにな…お前は()()()

それは最後のアドバイス…遊海は静かに凌牙に語り掛ける。

 

「……遊馬、あとは任せたぞ…凌牙、翠を悲しませな……いや、心配をかけないように、な……」

遊海の姿が…存在が消えていく、空気に溶ける紫煙のように…

 

 

「…翠…お前は、未来を…見届けてくれ……ごめん、な…──」

 

 

 

その日、1人の決闘者が死んだ……自分の望んだ未来を見届ける事なく、その男の魂は粒子となり…世界に融けた…。

 

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

…夢をみた…悲しい夢を…

 

 

 

…夢をみた…大切な人が消える夢を…

 

 

 

 

…夢を、みた……遊海さん…私を置いて…行かないで…!──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(…ここ、は……?)」

翠が目を覚ます…ぼんやりとした意識の中で彼女は考えを巡らせる。

 

 

「(…全身が、痛い…前が見えない…包帯…病院…?)」

全身を包む痺れるような痛み…そして圧迫感と規則正しい機械音から翠は自分が病院にいる事を理解する…。

 

 

「(なんで、病院にいるの…?私は…なにを…?……っ!?)」

その瞬間、翠の脳裏に今までの記憶が甦る、トロンの急襲、十代との応戦、敗北…頭を貫かれる凌牙…翠は咄嗟に身体を起こそうとするが、身体は動かなかった…。

 

 

《…翠さん、私の声が聞こえますか?》

 

「あやか、ちゃん…?なん、で…?」

 

《マスターの…命令です、貴女の治療の為に飛んで来ました》

戸惑う翠に聞き慣れた声が問いかける…それは遊海のパートナーであるアヤカだった…。

 

 

《翠の身体は紋章の力によるダメージで自由を奪われています…現在、紋章の影響を中和する処置中です…十代も同じく治療中ですが…翠よりも軽度なので安心してください》

 

「私の事はいい、の…あの子は…凌牙君は…?!」

 

《怪我をしていますが…命に別状はありません、デュエルは遊馬の勝利で決着…トロンとナンバーズによる呪縛も消え去っています、現在は別の病院で治療中です》

 

「よかった…本当に、よかった…!」

翠の目から溢れた涙が包帯を濡らす…遊海の力によって強化されたトロン、その力を身を持って思い知っていた翠は凌牙の無事を聞いて安堵する…。

 

 

《これから本格的に紋章の力によるダメージの治療を始めます、ゆっくり休んでいてください》

 

「ありがとうアヤカちゃん……ねぇ、1つ聞きたい事があるの…」

 

《…なんですか?》

 

「遊海さんは…()()()()?」

 

《………》

翠はアヤカに問いかける…。

 

《…何故、マスターの事を聞くのですか?》

 

「だって…アヤカちゃんの声が()()んだもの……感情を押し込めたような…辛い思いを隠したような声……本当は、何があったの…?」

それは翠の()()だった、遊海に付いているはずのアヤカが自分の傍にいる事…明らかに感情を押し殺した淡々とした言葉使い…それはアヤカの普段の様子とは明らかに違っていた。

 

 

《…やっぱり、隠し事というのは苦手、ですね…感情を知らない頃の私なら…きっとボロは出さないはずなのに…!》

 

「教えて、アヤカちゃん…!遊海さんは…何をしたの…!?」

 

《……マスターは、白波遊海は……死亡、しました…!》

 

「はぇ…!?アヤカちゃん、もう、嘘をつかないで…!ねぇ…!!」

翠はアヤカの言葉を聞いて言葉を失う…。

 

 

《…トロンによる洗脳を受けた凌牙は同じくトロンによって強化された「No.32」によって完全に乗っ取られ遊馬と激しいデュエルを展開…その様子を見たマスターは流星と共にスタジアムに急行…千年玉の能力によって再び「No.93」に憑依…全ての力を…魂を使い切り凌牙を救った後…その反動で魂が完全に砕けて……》

 

「嘘よ……嘘でしょ…?遊海さん…隠れてないで…出てきてくださいよ!見てるんですよね!?今だったら許してあげるから…!ねぇ…!!」

 

《………翠…これは、本当の話です…私と流星、海亜の前で…マスターは息を引き取りました…魂の繋がりが切れる直前、マスターは遊馬と凌牙に未来を託しました…それから…翠に「ごめん」と…未来を、見届けてほしいと…!》

 

「ごめんって言うなら…!そんな事言うなら死なないで…死ぬな馬鹿ぁ…!!遊海さんのバカ─…!!!」

声を押し殺しながら翠は号泣する…。

 

《…スタジアムに向かう最中、マスターは言っていました…トロンが精霊の力を持ち続ければ遊馬達を危険に晒す事になる…それを防ぐ為なら、俺は全てを賭けると……マスターは、凌牙の精神世界に現れたトロンからほとんど全ての精霊の力を奪い返し…遊馬に希望を繋いだのです…!》

 

「うっ…ああ…!ああぁぁぁ─…!!」

病室に翠の嗚咽が静かに響いた…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「ジャックさん!!」

 

『むっ…?九十九遊馬…だったな、先程の決闘見事だった…何故ここにいる?』

遊馬と凌牙のデュエルが終結したWDC…次の試合であるカイト対トロン戦前の休憩時間に通路にいたジャックのもとへ遊馬が駆け寄ってくる…。

 

 

「いや…翠さん達は無事かと思って…翠さんのDゲイザーは通じないし…」

 

『…案ずるな、翠も十代も無事だ…今はKC傘下の病院で治療を受けている…お前もよくやったな、トロンの洗脳を受けた凌牙をよく取り戻した…遊海も安心していたぞ』

 

「ああ…あの、ジャックさん…遊海は…師匠は…!」

 

『…フッ、遊海はどんなに弱ろうと「決闘王」だ、お前達と共に戦う姿…俺にも見えていた…安心しろ、大事はない!今は流星が家に送り届けている!…奴の事は気にするな!死にかけるのは毎度の事だからな!ハッハッハッ!』

 

「そ…そっか…!よかった〜!!これで安心して決勝戦で戦えるぜ!師匠にオレがトロンを倒してデュエルチャンピオンになるところを見て貰わないとな!!」

豪快に笑うジャックを見て遊馬は胸を撫で下ろす…先程の言葉は「トロンを倒す事を任せた」という意味なのだと納得したからだ。

 

「あっ…やべぇ!そろそろカイトのデュエルの時間じゃねぇか!ライバルとして…あいつに声を掛けてやんねぇとな!ジャックさん!また後で─!」

そう言うと遊馬は選手入場口へと走っていった…。

 

 

『…忙しのない奴だ、昔の龍亞を思い出すな…』

ジャックは走り去る遊馬の背中にかつての仲間の姿を重ねる…デュエルに対して真っ直ぐ向き合う姿勢…そして仲間を想う姿はかつての彼とよく似ていた。

 

 

『…して…お前は行かないのか?青き精霊よ』

 

《…貴方に感謝を伝えたい…遊馬に真実を伝えずにいてくれて感謝する》

ジャックの前に残ったアストラルが彼に感謝を伝える…アストラルは気付いていたのだ…ジャックのついた嘘に…。

 

 

『自分のせいで教え子が負けたと知れば…奴は死んでも死にきれん…それを奴は…白波遊海は望むはずがない…!!』

アストラルに背を向けたジャックは拳を握り締め、声を震わせながら話す…。

 

『必ず勝て…!遊海の残した「希望」を…絶対に無駄にするな…!!』

 

《承知している…誇り高き決闘王の魂は…私達が受け継ぐ!》

アストラルは遊海の魂に勝利を誓った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…馬鹿者…!自己犠牲の精神にも限度があろう…!お前が死んだら…誰が世界を…翠を守るのだ!!』

とある場所…そこに怒りの声が響く、その声の主は映し出された傷ついた白波遊海の亡骸を見て声を震わせる…。

 

 

『お前は…あの子供達に全てを託したというのか…己が守り続けた世界を…!!』

悔しげに声を震わせる男は遊海が未来を託した少年…そして遊海を死に追いやった鉄仮面の復讐鬼を睨む…。

 

 

 

 

『…見届けさせてもらうぞ、お前の選択を…お前が未来に託した希望を…!』



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決戦!カイト対トロン〜復讐鬼の嘲笑〜

こんにちは!S,Kです!


ついに激突する因縁の2人…その勝負の行方は…!


それでは最新話をどうぞ!


「ハルト…行ってくるよ」

準決勝を前にカイトは眠り続けるハルトのもとを訪れていた。

 

「いよいよ決勝だ…あと2人倒せば…お前を…っ!?」

ズキン…!

 

《カイト様!?》

カイトは胸を押さえて膝をつく…度重なるフォトンモードを使ったナンバーズ狩りによってカイトの身体は限界を迎えている…だが、その瞳に宿った決意の炎は消える事はない…!

 

「待っていろ、ハルト…!オレが全てのナンバーズを狩れば…お前は治るんだ…!」

強い決意と共に…カイトは戦いへと赴く…!

 

 

 

 

 

 

 

『準決勝1回戦は奇跡のミラクルボーイ・九十九遊馬が勝利を収めた!さぁ…その九十九遊馬と次に戦うデュエリストは誰だ!?準決勝2回戦は…この2人によって行われる!』

Mr.ハートランドの声がスタジアムに響き渡る…次なる戦いを前に、スタジアムの盛り上がりは最高潮だった。

 

 

『一人目は経歴一切不明のダークホース!だが、メタルナイトを降したその実力は折り紙付きのシンデレラボーイ!その名は…トロン!!』

 

【フフフ…!】

不敵な笑みを浮かべながら鉄仮面の復讐者がスタジアムへと現れる…!

 

 

『迎え撃つのはこの若者!孤高にして至高!その敗北を見た者はまだいない!まさに天才(ジーニアス)!天城カイト─!!』

ハートランドの紹介がスタジアムに響く…一方その頃…。

 

 

 

 

 

Sideナンバーズクラブ

 

 

 

 

「…小鳥、大丈夫か?さっきから涙が止まってねぇじゃねぇか…」

 

「いったいどうしたの…?遊馬が勝ったんだから喜ぶところでしょう?」

 

『うん…そう、なんだけど…()()()の…!涙が、止まらないの…!』

観客席のナンバーズクラブ…その中で遊馬と凌牙のデュエルを見届けた小鳥は泣き続けていた。

理由はわからない…しかし、遊馬の召喚した「太陽皇」が消えてから…小鳥は涙を流し続けていた…。

 

 

『(なんで、こんなに悲しいの…?遊馬が勝って…シャークは助かったはずなのに…まるで、何か大事なモノが欠けてしまったみたい…!)』

 

…小鳥はわかっていた…「太陽皇」は遊馬の師匠である遊海がいなければ真価を発揮しない……それが意味する事は…。

 

 

 

《フォウ、フォーウ!》

 

 

『えっ…?フォウ、くん…?』

 

《フォウ!》

泣き続けていた小鳥…その足元からモコモコのネコ…遊海の飼い猫であるフォウが現れる。

 

「あっ!その子が猫達が噂してたフォウくん?なんでこんな所にいるのかしら?」

フォウに最初に反応したのは猫と意思疎通のできるキャッシーだった、フォウはハートランドの猫のあいだでも一目置かれているようだ。

 

《フォウ…フォーウ、キュ!》

 

「ふんふん…『たまたま散歩をしてたら小鳥ちゃんの匂いがしたから来た!』ねぇ…ずいぶん懐かれてるわね〜?」

 

『…フォウくん…ありがとう、なんだかあなたが来てくれたから元気が出たわ…』

 

《キュ〜、フォウ!》

フォウは小鳥の肩に登り、顔に体を擦り寄せる…そのおかげか小鳥の涙はいつの間にか止まっていた…。

 

 

「『かわいい顔に涙は似合わない』だって!なかなかキザな子ね!」

 

《フォーウ!》

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Sideカイト

 

 

 

 

「お〜い!カイトー!!」

 

「…遊馬」

選手入場口へと歩みを進めるカイト…その彼の後ろから遊馬が駆け寄ってくる。

 

「絶対、トロンなんかに負けんじゃねぇぞ!…オレはお前と戦いたいんだ、まだ決着はついてないからな!」

それは遊馬なりの激励の言葉…それに対してカイトは…

 

 

「ああ…オレもだ…お前との決着は必ずつけるぞ……()()()()()

 

「ありゃりゃ!?」

 

(カイト…)

カイトは遊馬の後ろにいるアストラルへと宣戦布告する…遊馬は思いっきりズッコケた。

 

 

「…決勝で待っていろ、お前()はオレが倒す」

 

「えっ…!カイト、お前…『達』って…!」

すれ違いざまにカイトは遊馬とアストラル…2人に声をかける、それは暗にカイトが遊馬を1人のデュエリストとして認めた瞬間だった…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

『さぁ…!役者は揃った!!2人の勇者を天空のフィールドへと誘え!デュエルタワー!!』

静かに入場したカイトはトロンと視線をぶつける…火花散る2人と共にデュエルステージか上昇していく…!

 

 

「うおおぉぉ!!ちょっと待った─!!」

 

(遊馬…君は何をするつもりだ?)

ゆっくり上昇するデュエルステージ…そこへ遊馬が走り出す!

 

「スタジアムなんかで…カイトのデュエルを見てられっか─!おりゃあああ!!」

遊馬は上昇するステージに向かって跳躍…少しバランスを崩しながらもステージの上に()()する!

 

「おっとっと〜!?」

 

《わわっ!?このバカトンマ!何をしているでアリマス─!?》

 

「フッ…見たければ見るがいい…オレの圧倒的なデュエルをな…!」

カイトは僅かに笑いながら遊馬とオービタルを見る、その顔はナンバーズハンターとしての顔ではなく…ライバルとの戦いを望むデュエリストの顔だった。

 

 

 

 

 

 

「カイト!頑張れよ〜!!」

純粋にカイトを応援する遊馬…その隣でカイトの相棒・オービタル7が物憂げに表情を沈ませている。

 

《カイト様…どうか御自愛ください…!》

 

 

 

【ククク…クフ…!フフフ…!】

カイトと対峙したトロンは静かに笑い始める…。

 

「何がおかしい…!」

 

【おかしいどころじゃない…!歓喜に打ち震えているんだよ…!ハハハハ…!感じるよぉ…!裏切り者の視線を…!フハハハハ!最高の瞬間をご覧に入れようじゃないか…フェイカー!】

トロンは空を…正確には空に浮かぶドローンを睨む、感じていたのだ…自分を裏切った張本人の気配を…!

 

 

 

Sideフェイカー

 

 

 

『トロン…いや、バイロン…まさか貴様がそんな姿で生きていようとはな…』

ハートランドタワー地下の研究室…そこでDr.フェイカーは映像越しにトロンを睨む…!

 

 

『…面白い、我が野望を邪魔する者は…誰であろうと叩き潰してくれる…!』

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「トロン…!オレは忘れんぞ…!貴様がハルトにした仕打ちを…!ハルトの為にも…貴様を葬る!!」

あらぬ方向を見るトロンにカイトは怒りを叫ぶ…最愛の弟を救う為に…トロンを倒すと…!

 

 

【まあまあ、そう怒らないでよぉ…君にあとでビックリするような()()()()が待っているからねえ?】

 

「戯言はもういい!いくぞ…デュエルモード!フォトン・チェンジ!!」

カイトは力を開放…紺色のコートが光と共に白いコートへと変化する!

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

外道の復讐鬼と孤高の決闘者…2人がついに激突する!!

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト カイト対トロン

 

 

 

 

 

「闇に輝く銀河よ!!希望の光になりて我が僕に宿れ!光の化身…ここに降臨!現れろ!『銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)』!!」

 

先攻を取ったカイトはエースである『銀河眼』を速攻で召喚する、だが…

 

ズキン…!

 

「ぐっ…!?」

 

《カイト様!!》

カイトは体の痛みに呻き声を漏らす…自身の行動一つ一つが体を蝕んでいく…!

 

 

【フハハハ・・・あれだけナンバーズで人の魂を奪っちゃ、痛いんでしょ?もう立ってらんないんでしょ?満身創痍なんでしょ?アハハハ…!!】

仮面に隠されたトロンの左目が妖しく輝く…トロンには見えていた、度重なる負担でカイトの肉体が致命的なダメージを受けている事を…。

 

【だからといって…保健室はナシだよ?フハハハハ!】

 

 

「っ…!?オービタル!カイトは大丈夫なのかよ!?」

 

《エ"ッ…!?それは、ソノ…!》

遊馬はオービタルにカイトの状態を問い詰めるが…オービタルは口を噤むしかなかった。

 

 

 

 

 

【ボクのターン、ドロー!ボクは「紋章獣バシリスク」を召喚!】

トロンの場に蛇の尾を持つ怪鳥が現れる!

 

 

【さらに…手札から装備魔法「爆破紋章(ブラスト・メダリオン)」を「銀河眼の光子竜」に装備!】

 

「なに…!?」

 

「装備魔法を…相手に装備!?」

トロンが発動した装備魔法から鎖が飛び出し、銀河眼に巻き付いていく…!

 

 

【バトルだ!「バシリスク」で『銀河眼』を攻撃!】

 

「攻撃力の低いモンスターで攻撃だと!?」

バジリスクが口から炎を吐き、その炎を身に纏う…!

 

【フハハハハァ!「バシリスク」はバトルする時!相手モンスターを道連れにして破壊する効果を持っているんだ…!そして「爆破紋章」を装備したモンスターが破壊された時…そのコントローラーは破壊されたモンスターの攻撃力の半分のダメージを受ける!】

 

「なんだって!?」

銀河眼の攻撃力は3000…破壊されればカイトは大ダメージを受けてしまう…!

 

 

【行け「バシリスク」!「銀河眼」に攻撃ィ!】

 

「『銀河眼』の効果発動!バトルの間、自身とバトルする相手モンスターを除外する!」

《ギャオオオン!!》

咆哮と共に銀河眼とバジリスクが異次元に消え去る!

 

 

《流石カイトだ、「銀河眼」を除外する事で効果破壊を回避し…「爆破紋章」を外したのだ》

 

「さっすがだぜ!カイト!!」

除外されればモンスターに掛かったステータス変化や効果の影響はリセットされる…カイトは咄嗟の判断でトロンの策略を躱したのだ。

 

 

「帰還せよ!『銀河眼』!!」

バトルフェイズが終了し、再び銀河眼とバジリスクがフィールドに舞い戻る!

 

【よくやるねえ、そんなぼろぼろの身体でさぁ…全ては可愛い弟のためかい?】

 

「……!」

トロンはターンを終え、カイトへと語り掛ける…。

 

 

 

【いいことだよね!目的が()()ってさぁ!ボクにもね…あるんだよ…!それはね、君のお父さんへの復讐だよ!Dr.フェイカーに裏切られ…異世界との狭間を彷徨ったおかげで…ボクの身体はこんな姿になってしまった…!】

トロンは自身のオリジン…異世界での地獄の日々を思い出す。

友に裏切られ、果てなき砂漠を放浪した末に…バイロンは摩耗し…復讐鬼へと成り果ててしまったのだ…。

 

【…そう、ボクは全てを失くしてしまった…スッカラカンにね……でもね、だからこそ!!これだけは大事に守っていたんだ!君の父親への…復讐を!!】

トロンは胸に手を当て禍々しい輝きの光を取り出す…それはトロンの復讐心の結晶だった…。

 

 

【復讐だけがボクの全てだった…!】

 

「『復讐』…だと?そんな事の為に、クリスは…お前の息子は犠牲になったのか!?」

カイトは怒りを叫ぶ、優しい男だったクリス…彼らを復讐の道に引きずり込んだトロンを許せなかったのだ…!

 

 

【へえ…!ボクを非難するのぉ?おかしいよ!君だって弟のために魂を狩ってたんじゃない!】

 

「っ…!」

トロンはカイトの弱点を指摘する…カイトはハルトの為に人々の魂を狩り続けた、それはカイトの精神にとって深い傷となっていた…。

 

 

【もちろん弟のためにしたことだよねぇ?でもいつしか…魂を狩る喜びを感じてたんじゃないのかなぁ?…ボクと君は似てるんだよ、目的のためには全てを犠牲にしてしまう!】

 

「……ああ、()()()()…オレはハルトを救う為なら何を犠牲にしたって構わない…そこはお前と似ているかもしれん」

 

「カイト!?」

カイトはトロンの言葉を認めた…その様子を見た遊馬は驚くが…カイトは言葉を続ける。

 

 

「だが…オレは知った、真の英雄の姿を…全てを守り、悪を挫くヒーローの姿を!!」

 

【…メタルナイトか、消えてもなお…君はボクの邪魔をする…!!】

トロンは拳を握る…彼の目には鋼の鎧を纏ったヒーローの幻影が見えていた。

 

「オレはあのヒーローのようには成れない…ナンバーズを狩り、人々を傷付けたオレには……罪を償う覚悟はできている…だが、その前に…貴様の腐った魂はオレが狩る…!この手で握り潰してやる!!」

メタルナイト…遊海と戦った事でカイトの心情は変化していた、魂で炎を燃やしながら…カイトはトロンへと立ち向かう!!

 

 

 

 

09

 

 

 

「皮肉なる運命よ、命じるがいい!Ⅴ…いや、クリスの思いを鉄槌に変え…愚かなる父へと振り落とせ!!いでよ!『No.9』!『天蓋星ダイソン・スフィア』!!」

トロンに勝つ為にカイトはⅤの超巨大ナンバーズ…ダイソンスフィアを召喚する!

 

 

【「ダイソンスフィア」…】

巨大モンスターの登場に観客がざわめく中、トロンはダイソンスフィアを見上げる…。

 

「…いくぞ!オレは装備魔法『フォトン・ウィング』を『銀河眼』に装備!その効果により自分の場のエクシーズモンスターを選択…「ダイソンスフィア」のORUを全て銀河眼に吸収する事でエンドフェイズまで『銀河眼』の攻撃力は『ダイソンスフィア』のランク×200、攻撃力がアップする!攻撃力…4800だ!!」

カイトの発動した装備魔法によって銀河眼の翼が巨大化…さらにダイソンスフィアの力を借りる事でその攻撃力は「究極竜」を超越する!

 

「さらに!『フォトンウィング』を装備したモンスターは…ダイレクトアタックができる!!」

 

「攻撃力4800のダイレクトアタック!?それって…!」

 

(トロンのライフを一撃で削り切る…ワンショットキルだ!)

 

《これで…決まってくれでアリマス!!どうかカイト様に休養を─!!》

 

「いっけぇぇ!カイト─!!」

 

「バトルだ!『銀河眼』でトロンへのダイレクトアタック!破滅のフォトン・ストリィィィム!!」

《ギャオオオン!!》

 

 

遊馬達の声援、そしてⅤの思いとカイトの怒りを乗せた光線がトロンに直撃した!

 

 

 

 

 

 

「やったか…!?」

砂煙に包まれるフィールド…息を切らせながらカイトはトロンを注視する…が…!

 

 

【フハハハハ…!アハハハハハ!!】

 

 

「なんだと!?」

 

「ライフが減ってねぇ…!?4800のダイレクトアタックを受けたのに!?」

煙の中からトロンが現れる…ダイレクトアタックを受けたはずのライフは…3200も残っている…!

 

 

(まさか…あの伏せカードは…!)

 

【フフフフ…ボクは罠カード「紋章変換(チェンジ・メダリオン)」を発動していたのさ…!】

 

(やはり…!!)

トロンの場に1枚の罠が発動されている…それは遊海の全力を凌ぎきった罠カードだった。

 

 

【相手モンスターの攻撃時に手札からレベル4以下の紋章モンスター「紋章獣アバコーンウェイ」を特殊召喚…戦闘ダメージをそのモンスターのレベル×1000ポイント分、無効にしていたのさ…!】

 

「くっ…!つまり4000のダメージを軽減された訳か…!」

 

《ひ…卑怯でアリマス─!!》

カイトはトロンを睨む…トロンは必殺の一撃を躱していたのだ…!

 

 

【フハハハハ!どうだい?喜んでもらえたかなぁ?そうだ!もっと君を喜ばせてあげよう!】

 

「…?」

そう言ったトロンは自身の顔を被う鉄仮面に手を掛ける。

 

 

【ボクから君への…プレゼントさ!!】

 

「なっ…!?」

トロンは鉄仮面を取る、その下に隠されていたのは…()()()()()だった!

 

【『いたい…痛いよ…!全部、兄さんのせいだよ…僕を治してくれる、って言ったのに…それなのに、こんな酷い目に…!』】

それだけではない…その声はハルトと同じ声色に変化していた…!

 

 

(馬鹿な…!?)

 

「いったいどうなってるんだよ!?なんでトロンがハルトと同じ顔に…!」

遊海とアストラルは驚きを隠せない…そんな中、カイトは怒りの表情でトロンを睨みつける…!!

 

「…これまで、貴様の退屈な戯言を聞いてやった……オレなりに相手をしてやったつもりだ…だが!!この侮辱は許せん!!」

弟を一番に思うカイトの怒りの咆哮…それは本気の遊海と同じレベルの殺気となってトロンへと襲い掛かる…!

 

『怒ったのぉ…?でもねぇ…()()()()()()()()()!』

 

「貴様…!ハルトを騙るな!!」

カイトはハルトの振りを続けるトロンに怒りをぶつける…!

 

『騙りじゃないよ?僕はハルトだよ!…ハルトは僕だよ!…ほら、ハルトを誘拐したときだよ…あの時ボクの身体にね、ハルトの力と記憶をぜ〜んぶ吸収しちゃったんだ!』

 

「なんだと!?」

それはWDC2日目、ハルトの持つ超能力を奪う為にハルトを誘拐したトロン…彼はハルトの力と共に記憶をも奪い去っていたのだ

…。

 

 

『そのときね…交わったんだよ!お互いの()()()()()()()()!』キィン─!

トロンが頭上へと手を翳す…そこに映像が投影される、映像にはベッドで苦しげにうなされているハルトの姿が映し出された…!

 

「ハルト!?」

 

【『フフッ…ボクとハルトの意識は繋がっている…だから、こんなことしちゃったら…』】

 

『うぅっ…!?』

トロンが自身の頬を抓る…それと同時にハルトも痛みを感じる…!

 

「ハルトォォ!!」

 

 

 

 

Side Dr.フェイカー

 

 

 

『ハルト…!?何をしている!!誰か、ハルトの部屋へ向かうのだ─!!』

デュエルの様子を見ていたフェイカーが声を荒らげる…ハルトは大事な息子であり、アストラル世界への攻撃手段…フェイカーはハルトを失う訳にはいかなかった…。

 

 

「ダメです!警備システムによって全ての扉がロックされています!!」

 

『なんだと!?…チィ…!!奴の仕業か…!!』

フェイカーは察する、トロンのハッキングによって一時的にハートランドタワーが封鎖されてしまったのだと…。

 

『おのれ…バイロン─!!』

フェイカーの叫びが研究室に木霊した…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

【『痛いよー、痛いよー兄さーん…!』】

 

「貴様…!!貴様が、本当にハルトと繋がっているというのか!?」

 

【『そうだよぉ…僕はハルトさ…!』】

自身の頬を抓りながらトロンはハルトの声でカイトを追いつめる…!

 

「くっ…!ハルトォォォ!!」

 

【フフッ…!はあっ!】

 

ギィン!ギュル!!

 

「なにっ!?」

デュエルを放棄してまでハルトのもとへと向かおうとするカイト…その腕に紫色のデュエルアンカーが巻き付く…!

 

【『ダメだよぉ!君をハルトのところへ行かせるわけにはいかないよ!』】

 

「っ…!カイト!!オレがハルトの所に行く!オレがハルトを守るから…お前はデュエルに集中しろ!」

 

「遊馬…!?」

遊馬がカイトに叫ぶ…卑劣な手段を使うトロン…遊馬はそれを見過ごす事はできなかった…!

 

「オービタル!頼む!オレをハルトの所に!!」

 

「オービタル7!遊馬を連れていけ!!」

 

《カイト様…!カシコマリ!!》

遊馬の願いとカイトの命令を聞いたオービタルはグライダーモードになって空中へと飛び上がる!

 

「かっとビングだ!オレぇぇ!!うおおぉぉ─!!」

そして遊馬とオービタルはハルトを救う為にハートランドタワーへと飛び立った…!

 

 

【元気な子だ…フフフフ…!さあ、続けようよ!デュエルを!】

飛び立った遊馬を見送りながらトロンは不敵な笑みを浮かべ…決闘が再開する!

 

 

 

 

08

 

 

『現れろ!「No.8」!「紋章王ゲノム・ヘリター」!』

トロンの場に白い毛の生えた仮面が現れ展開…巨大な鹿のようなトロンのナンバーズが現れる…!

 

 

「これがトロンのナンバーズ…!」

カイトは現れたナンバーズの不気味な姿に戦慄する…!

 

 

『「ゲノムヘリター」の効果発動!ORUを1つ使い!3つの効果から一つを選択し発動する事ができる!僕が選ぶのは…ターン終了まで、このカードとバトルするモンスターの攻撃力を0にして、その元々の攻撃力を「ゲノムヘリター」の攻撃力とする効果だ!』

 

「攻撃力を奪うだと!?」

 

『僕はねぇ…「ダイソンスフィア」を攻撃する!やっちゃえ!「ゲノムヘリター」!』

ゲノムヘリターから赤いオーラが放たれる…そのオーラはダイソンスフィアの恒星部分に直撃、機能を停止させていく…!

 

 

『クフフ…!これで「ダイソンスフィア」の攻撃力は0!僕の「ゲノムヘリター」は攻撃力2800となる!』

 

「無駄だ!『ダイソンスフィア』にはORUが無い時に攻撃を受けた時!墓地からORUを復活させる効果がある!」

 

『甘いよ!僕は2つ目のORUを使い!次なる効果を選択する!ターン終了まで相手モンスターの効果を無効にして、その効果を「ゲノムヘリター」の効果とする!』

 

「なんだと─!?」

 

『これで「ダイソンスフィア」に攻撃できる!行け!「ゲノムヘリター」!フラッシュ・インパクト!』

 

「っ…!?ぐあああああ─!!」

ゲノムヘリターが空中に飛び上がりそして極大の光線を放つ、光線はダイソンスフィアに直撃…ダイソンスフィアは爆発と共に藻屑と消えた…!

 

 

『フッ…フフフ!!僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド!…さぁ!これからがお楽しみの真骨頂だよ!フフフ!僕たちのデュエルはその衝撃がリアルダメージとなって肉体を襲う…だから、僕を襲った衝撃はぁ…?』

 

「っ…!?まさか!!」

 

【『そうだよ!兄さんは僕を相手にしなけりゃならないということさ!フハハハハ…!』】

ボロボロのカイトはトロンの真意に気付く…ハルトとトロンは紋章によって痛覚を共有している…つまり、トロンのダメージはハルトにも襲いかかる…!カイトは迂闊に攻める事はできない!!

 

 

『次は兄さんのターンだよ!二人で一緒に楽しもうよ!フハハハハハ!完璧だよ!!これでフェイカー…君の目の前でなんと息子を二人とも…潰しちゃうんだから!!』

 

「卑怯な真似を…!!」

 

【『分かるよねえ?ボクの痛みはハルトの痛み…ハルトの痛みは僕の痛みだとね…にーいさん…!』】

カイトはトロンの卑劣な行動に怒りを露わにする…だが、その怒りをトロンにぶつける事ができない…それはさらにカイトを追い詰める…!

 

 

『フフ…!兄さんにだけ、特別上映だよ』ギィン─!

 

「っ!ハルト!!」

トロンが紋章の力を使う…それと共にカイトの足元に苦しむハルトの姿が映し出される…!

 

「貴様ぁぁぁ!!」

カイトは怒りを叫ぶ事しかできなかった…。

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「くっ…!おい!もっと早く飛べないのかよ!?」

同じ頃…ハルトのいるハートランドタワーに向かう遊馬はオービタルを急かす…早くハルトを救わなければ、カイトは負けてしまうと…!

 

《トンマ!お前に言われなくてもわかってル!このまま突っ込むゾ!!》

 

「えっ!?」

 

《しっかり掴まってロ─!!》

 

「うわあああ!?」

オービタルは全力で加速し、ハートランドタワーへと突撃する…だが!

 

キィン─!バシュン!!

 

 

「へぇ!?うわわわわ─!?」

 

《しまった…!セキュリティシステムが作動してル!?》

遊馬達を撃ち落とそうと無数のレーザー光線が遊馬達に襲いかかる!!

 

《しっかり掴まってロ!トンマ─!!》

 

「うおおぉぉ!!かっとビングだぁぁ!!待ってろ!ハルトォォ!!」

バレルロールを繰り返しながら…遊馬はハルトの名を叫んだ…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

『フッ…フフフ…!さあ、兄さんのターンだよ?いいよ?僕を攻撃して!兄さんの「銀河眼」でさ!…愛するハルトがどうなってもいいのならねぇ…?』

 

「(奴を攻撃すれば…ハルトが…!!だが、オレが負ければ、ナンバーズは…!)」

カイトは必死に考える…トロンを攻撃すればハルトが苦しみ…かといってカイトが負ければ…ナンバーズは全て奪われ、ハルトの病は治せなくなる…カイトの選択は…!

 

 

 

「オレのターン!…バトルだ!『銀河眼の光子竜』で……『ゲノムヘリター』を攻撃!!破滅のフォトン・ストリーム!!」

 

『っ…!?ぐわあああ!うっ、くっ!?』

銀河眼の咆哮がゲノムヘリターに直撃、さらに攻撃の余波がトロンを吹き飛ばす…カイトは信じたのだ、ハルトの強さを…ハルトが力尽きる前に…トロンを倒す事を…!

 

『ひどい…ひどいよ、兄さん…「ゲノムヘリター」は、ナンバーズ以外のバトルでは破壊されないけど…僕は、ダメージを受ける…やっぱり兄さんは、目的のために手段なんか選ばない…ひどい人間だ!!』

 

「─オレは、ターンエンドだ!!」

カイトは耐える、全てはハルトを救う為に……トロンを倒す為に…!

 

 

 

『僕のターン、ドロー!!兄さん、僕のターンだから攻撃できなくてガッカリしてるでしょ?大丈夫だよ、兄さんを失望させやしないから…!』

 

「なに…!?」

不敵な笑みを浮かべるトロン…彼はさらに非道の1手を打つ…!

 

『僕は!装備魔法「破滅紋章(カースド・メダリオン)」を「ゲノムヘリター」に装備!お互いのプレイヤーは、1ターンに1度、場のモンスター1体につき300ポイントのダメージを受ける!場にはモンスターが2体…よって僕たち兄弟は…600ポイントのダメージを受ける!』

 

「なに─!?」

地面に刻まれた紋章から鎖が飛び出し、ゲノムヘリター・トロン・カイトを拘束する…!

 

『…一緒だよ、兄さん…!』

 

ギィン─バチバチバチ!!

 

『「ぐああああ!!?」』

鎖から赤雷が走り、トロンとカイトにダメージを与える!!

 

 

『っ…ぐぅ…!にい、さん…─』

 

「っ─!?ハルトォォ!!」

鎖が消え去った直後…トロンは膝をついて倒れ込む、そしてトロンも、ベッドで苦しんでいたハルトも…ピクリとも動かなくなった…。

 

 

 

 

 

Side Dr.フェイカー

 

 

『あ、ああ!?あってはならん…!!あってはならんぞぉぉ!!』

フェイカーは倒れたトロン…そして辛うじて見えていたハルトの部屋の監視カメラを見て激しく取り乱す…!

 

『早く…!早くセキュリティを解除しろぉぉ!!』

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

 

「かっとビングだ!」

 

《カシコマリングだ!》

     

「《オレぇぇ!!/オイラ─!!》」

 

バリバリバリーン!!

 

格闘する事数分…遊馬とオービタル7は無数の光線を避けながら…ついにハルトのもとへと辿り着いた…!

 

 

 

「っ…!ハルト!しっかりしろ!ハルト!!」

 

『ぐっ…ゴホッ!ゴホゴホッ!!』

 

「ハルト…よかったぁ〜!」

遊馬がハルトの体を揺する、するとハルトは咳き込みながら息を吹き返した…どうやらトロンと痛みを共有した事で呼吸が詰まってしまっていたようだ…。

 

「カイト!ハルトは無事だ─!!ハルトは生きてるぞ!!」

遊馬はDゲイザーのハンズフリー機能でカイトにハルトの無事を伝える…!

 

 

「そ、そうか…!ハルトは…」

カイトは安心して胸を撫で下ろすが…

 

 

【『ハッハッハッハッハッ!!!引っかかった!引っかかったぁ~!クフフフフ!驚いた?もうダメかと思ったでしょぉ!?』】

 

「貴様ぁ…!!」

死んだフリをしていたトロンが立ち上がる…トロンはカイトを追い詰める為にわざとらしい演技をしていたのだ…。

 

 

『フハハハ!…やだなあ、ちょっとした冗談じゃないか!でも、ここからが正念場だよ?ねっ、父さん?フフハハハ!アハハハハ!キャハハハハ!ヒャハハハハ!』

トロンは狂ったように笑う、トロン…バイロンの心は憎しみと復讐心によって完全に正気を喪っていた…。

 

 

 

 

「いいかげんにしろ!!ハルトは何もしてないのに…カイトと一緒にいたいだけなのに!!なんで酷い事をするんだよ─!!」

遊馬は叫ぶ…ハルトを想うカイトの気持ち…そしてカイトを思うハルトの気持ち…遊馬も姉がいるからこそ、兄弟の絆の強さはわかっていた。

 

 

「ハルト…!カイトだってお前の事を思ってる…!お前の事を助けたくて…お前の事だけを思ってる!!なのに…なんでお前達がこんな目に遭わなきゃならないんだよ…!!」

遊馬はハルトの手を握りしめながら呼びかける…その時…!

 

 

キィン─…キィィン─!!

 

「なっ…!?」

 

《この光は─!?》

遊馬が握りしめたハルトの手…そこから眩い光が放たれ、遊馬とアストラルを包み込んだ…。

 

 

 

 

 

Side遊馬@ハルトの精神世界

 

 

 

 

「ここは…!?あの時と同じ…」

 

《ハルトの精神世界…以前、私達が招かれた場所だ…》

遊馬達が気付けばそこは草原の中に赤い屋根の家のあるハルトの精神世界…遊馬達は再び招かれたのだ。

 

ギィン…ズズズ…!

 

「なっ…!?これは─!」

 

《闇が…ハルトの心を蝕んでいく…!》

穏やかに太陽の光が降り注ぐ穏やかな世界…その世界に闇が広がり、ハルトの心を浸食していく…!!

 

 

「っ…!?あれは!!」

 

【どうして…どうしてお前がぁ…!】

 

「トロン!!やっぱりハルトの心の中にいやがったのか!!」

紫色の邪悪な光を纏い…ハルトの内に潜んでいたトロンの分身が現れる…!

 

【いつも邪魔ばかりする…!目障りな奴!!ゆぅウうマぁアアああ!!!】

トロンは禍々しい闇を纏い、恐ろしき邪龍へとその姿を変貌させる…ハルトの精神世界に潜んでいたトロンはトロンの復讐心の化身ともいえるモノ…それが遊馬へと襲いかかる!!

 

 

【ガアアア!!】

 

《遊馬!!》

 

「わかってるぜ!!」

アストラルは遊馬のエクストラデッキに1枚のカードを装填する!

 

39

 

「現れろ!!『No.39希望皇ホープ』!!」

《ホープ!!》

遊馬は希望の戦士を呼び出し、邪龍トロンへ立ち向かう!!

 

「いっけぇぇ!!ホープ!!」

 

《ウオオォォ!!》

ホープが飛び上がり…邪龍を一閃…両断する!

 

「よし!!」

 

《っ…!?まだだ!!》

しかし、邪龍は倒れない…両断された断面から新たな頭と新たな体が再生し、2体の邪龍が遊馬に襲いかかる!!

 

【【グルラアアアア!!】】

 

「ホープ!ムーンバリアだ!!」

 

《ハァ!!》

邪龍の火炎をムーンバリアが受け止める…!

 

 

【無駄ダ…!決闘王の力を得たボクは…キミには倒せない…!!ゆうぅまああああ!!】

 

「そんな…!?」

邪龍トロンは無数に分身し遊馬達を取り囲む…遊海が取り戻せなかった最後の力…それが遊馬達を追い詰める…!

 

「冗談じゃねぇ…例えどんな相手だろうとオレは諦めねぇ!!これ以上…ハルトの心を好き勝手させてたまるかああああ!!」

遊馬は叫ぶ…例え、どんなに追い詰められても遊馬は諦めない…ハルトを救う為に、遊馬は命を燃やす!!

 

【【【ならば…ここで倒れろ!遊馬ああああ!!】】】

無数の邪龍が遊馬へと殺到する…!!

 

「くっ─!!」

 

 

 

 

 

 

─若き決闘者よ…お前の叫び、たしかに聞こえたぞ!─

 

 

 

キィン─!!

 

 

《千本ナイフ!!》

 

【な、なにィぃ─!?】

遊馬が追い詰められた刹那…眩い光が辺りを照らし、無数のナイフが遊馬達を避けて邪龍へと降り注ぐ!!

 

「えっ…?この、声…?」

遊馬は聞こえてきた声に聞く覚えがあった…その声は決闘庵で見た夢で遊馬に語りかけた声と同じだったのだ。

 

 

《少年よ、我らは常に決闘者と共にある…決闘者は自分達の誇り、そして仲間の為に剣を取る…その想いが我が主の心を動かした》

 

《ブラック・マジシャンの…精霊…!?》

ホープを守るように黒衣の魔術師が現れる…それは伝説のモンスターの1人…ブラックマジシャンだった!

 

 

【キサマ…!キサマは何者だァ!!】

 

《私はファラオの下僕…我が王の露払いの為に来た》

 

【王…だとぉ?】

トロンは目の前の魔術師を睨みつける…!

 

《…少年、お前は最後の希望…誇り高き決闘王の遺志を受け継ぐ者よ、その目に焼き付けよ…王の力を!》

 

「王の力…!?」

 

─マハード、そんなにプレッシャーをかけなくてもいい…その少年は既に覚悟ができている─

遊馬の背後から光を纏った人影が現れる…それは逆立った髪に古代の王の王衣を纏い、首からは金色の三角錐の首飾りを掛けた男…!

 

《名もなき…ファラオ…!?》

 

─フッ…好きなように呼ぶといい、青い精霊よ…少年、あとは任せろ─

遊馬達は言葉を失った…伝説の決闘王が目の前に現れたのだから…!

 

 

 

【馬鹿な…!?名もなきファラオだト!?なぜ…!なぜこの場所に来る!?】

 

─…声が聞こえた、子供達を想う我が友の声が…そして、仲間を救う為に駆けた…若き決闘者の声が!!─

トロンが狼狽するなかファラオ…アテムは静かにトロンへと語る…!

 

─哀しき復讐者よ…我が友を貶め…その命を奪った罪…僅かでも償ってもらう!降臨せよ!大地の神…オベリスクの巨神兵!!─

 

《グオオオオ─!!》

 

【ば、馬鹿な!!三幻神だと─!?】

闇に包まれた大地を砕き…青き巨人が顕現する!

 

─神の怒り…その身に受けてみよ!ゴッドハンド・インパクト!!─

 

【馬鹿な…馬鹿なあああああああ─!?】

それは一瞬の出来事だった、神威を纏った腕をオベリスクが振り抜く…それだけで無数の邪龍は粉砕され、ハルトの精神世界は平穏を取り戻した…。

 

 

「これが…最強の、決闘王…三幻神の力…!」

光に包まれた世界で遊馬はアテムの神威に圧倒される…。

 

 

─若き決闘者よ…闇は去った、お前は自分の為すべき事をするんだ…あの男の闇を祓えるのは…お前達だけだ─

 

「名もなきファラオ…」

アテムは優しく遊馬へと語り掛ける、その様子はまさに王そのものだった。

 

─覚えておけ…憎しみは脆いものだ、憎しみを束ね力を得た所で…それは弱い、お前達の持つ光…それをあの男にぶつけるのだ…さらば!─

 

「あっ!?ちょっ─!?」

アテムの声と共に再び遊馬の視界は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─遊海…お前は、本当に死んでしまったのか?オレ達のいる冥界に来る事もなく…翠を残して…お前は、そんな男だったか?─

その身を金色の粒子に変えながらアテムは呟く…。

 

 

 

 

─遊海…オレは…()()()は信じているぞ…!─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

キィン─バッキィィン!!

 

 

 

【『ぐっ…!?うわあああ!』】

カイトと対峙していたトロンが突如として吹き飛ばされる!

 

 

【ぐぅ!…くっそぉ…!おのれ、遊馬ぁ…!どこまでも邪魔を!!】

 

「何が起きている…!?」

吹き飛ばされたトロンは立ち上がるが…少しずつハルトの顔が薄れていく、カイトはその様子を見守っていたが…。

 

 

「カイト!ハルトの中にいたトロンの意識をぶっ飛ばしてやったぜ!!ハルトはもう大丈夫だ!!安心してトロンをぶっ倒せ─!!」

遊馬がハルトの無事を…トロンの呪縛からの開放を伝える…それを聞いたカイトは…トロンを睨みつける!

    

「そうか…おぉ…!うおおぉぉ!!

カイトは力を…ハルトとの絆の力を開放する!!

 

 

「貴様だけは許す事はできんぞ…トロン!!」

 

 

【ぐっ!?ううぅっ…!】

トロンは鉄仮面を被り直して立ち上がるが…カイトの放つ気迫に圧倒される…!

 

 

懺悔の用意は…できているか─!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりてその姿を現すがいい!降臨せよ!我が魂!!『超銀河眼の光子龍』!!

《ガオオァァァン!!》

赤いオーラを纏ったカイトは力を開放…兄弟の絆の結晶である赤き巨龍が降臨する!

 

 

【コイツが…『銀河眼』の進化系…!?】

初めて対峙する超銀河眼…その威圧感にトロンは後ずさる…。

 

「『超銀河眼』の効果発動!このモンスターが『銀河眼の光子竜』をエクシーズ素材としてエクシーズ召喚に世界した時!フィールド上に存在する他のモンスターの効果を無効にする!フォトン・ハウリング!!」

《ガオオァァァ!!》

 

【『ゲノムヘリター』の効果が!?】

超銀河眼の咆哮がフィールドに轟く…その咆哮はあらゆるモンスターの力を奪い去る…それはナンバーズであっても例外ではない─!

 

 

「これで貴様のモンスターはただの木偶人形!…トロン!例え100万回の命乞いをしようと…オレの怒りは消えん!地獄でも異世界でもいい…!オレとハルトの目の前から消え去れ!!『ゲノムヘリター』を攻撃!!アルティメット・フォトン・ストリィィィム!!」

 

【ぐ…ぐわあぁぁぁ!?】

カイトの怒りの籠もった真紅の閃光がゲノムヘリターを…トロンを直撃、大爆発がフィールドを包み込んだ…!!

 

 

 

「やったぁ!!」

 

《お見事です!カイト様─!!》

Dゲイザーを通してデュエルの様子を見守っていた遊馬とオービタルが歓声をあげる!

 

 

 

「はぁ…はぁ…!やった、ぞ…!ハルト…!!」

息をきらせながらカイトは爆煙を睨む…カイトの魂を込めた一撃…それによってトロンは…─

 

 

 

【フハハハハ…!ハハハハハ!─!】

 

 

「なん、だと…!?」

トロンは…倒れていなかった…!

 

 

【フフフ…ボクを倒したと思っちゃったでしょぅ…?ボクは永続罠「無敵の紋章(プロテクション・メダリオン)」を発動していたんだよ…!】

 

「なにっ!?」

トロンの場で発動した罠…それにより超銀河眼の体に拘束具が取り付けられている…!

【そう…!「無敵の紋章」の効果で「超銀河眼」の攻撃力を800ポイントダウンさせていたんだよ】

 

「そんな…!?だから、トロンのライフを削り切れなかったのか…!」

 

 

【フフフフフ…さあ、カイト…どうするぅ?】

 

「くっ…ターン、エンドだ…!!」

悔しさを滲ませながら…カイトはターンを終えた…。

 

 

 

 

【フフフフフ…君には感謝しているよ、カイト】

 

「なに…?」

トロンは不敵な笑みを浮かべながらカイトを静かに見つめる…!

 

 

【全ては君と…()のおかげだよ、君達の怒りで…ボクは最強の「紋章神」を操る事ができる!!】

 

ギィン!!ギィィィン!!

 

「な、なんだ─!?」

トロンが全力を開放…フィールドに不気味な紋章が刻まれ…脈動する…!

 

 

 

 

 

 

 

【ボクはレベル4の「紋章獣ベルナーズ・ファルコン」「紋章獣バシリスク」「紋章獣エアレー」でオーバーレイ!3体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!】

トロンの場に召喚された3体の紋章獣が銀河へと飲み込まれる!!

 

 

【解放しろ…!怒りを!!】

 

 

69

 

 

【現れろ!「No.69」!「紋章神(ゴッドメダリオン)コート・オブ・アームズ」!!!】

トロンの紋章が暗雲へと投影される…その紋章の中から異形の黒き悪魔が現れる!!

 

 

「なんだ、このナンバーズは…!?」

カイトは初めて目にしたトロンの切り札に圧倒される、紋章神の放つ威圧感は…カイトの狩ってきたどのナンバーズよりも重たかった…!

 

 

 

【コイツを操るには莫大なエネルギーが必要だったんだよ…それは…「怒り」…!】

 

「怒りだと…?」

 

【そのとおり!!ボクには感情がない!純粋な怒りが無いんだぁ…!だからみんなに怒ってもらった!白野やシャーク、そしてボクの息子たちさえも使って…怒りを貯めて来たんだぁ…!】

 

「なにっ…!?」

 

【君はよく怒ってくれたよぉ…!ハルトのことだと怒る怒る!白野も子供達を救う為にたくさん怒ってくれたぁ!!お・か・げ・でぇ…!見てよぉ!「コートオブアームズ」を喚び出し…フェイカーへ復讐する事ができる!!】

 

「貴様…!その為にハルトを…クリス達を!!」

トロンは今まで外道の所業で遊海を含めた決闘者達を怒らせてきた…それは全て紋章神を喚ぶ為の手段だったのだ…!!

 

 

【そして…!「コートオブアームズ」はORUを使わずとも効果を発動できる!フィールドにいる自身以外のモンスターが持つ効果を全て無効にし!さらにその効果を全て得る!】

 

「なんだと!?」

 

【いけえ!「コートオブアームズ」!「超銀河眼」の効果を奪えぇ!ゴッド・メダリオン・ハンド!】

 

《ギュアアアン!?》

 

「っ…!?ぐあああぁぁ!?」

紋章神から放たれた光の触手が超銀河眼を貫き、その力を奪う…そしてそのダメージはカイトにも襲いかかり…カイトのオーラすら奪い取る…!

 

 

 

【これで君のモンスターの効果は全て消え…ボクのモノだ!】

 

「『超銀河眼』が…!?」

紋章神によって力を奪われた超銀河眼は色を失い、脱力してしまう…!

 

 

 

「カイト…カイトォォ!!」

 

《カイト様─!!》

カイトのピンチに遊馬とオービタルはハートランドタワーから飛び出す、遊馬の脳裏には…最悪の瞬間が蘇っていた…!

 

「嫌だ…!嫌だよ!!遊海─!!」

 

 

 

 

 

【さあ…!行くよぉ!カイトぉ!!!】ボクは「超銀河眼」から奪ったモンスター効果を発動!ORUを一つ使い、「コートオブアームズ」以外の全てのORUを墓地へ送る!これにより「コート・オブ・アームズ」の攻撃力はORU1つにつき500アップ!よって、攻撃力は1500アップする!】

紋章神の津のから放たれた暗黒の光が超銀河眼のORUを奪い、自身の力へと変える…!

 

 

【さらにィ!「コートオブアームズ」は墓地へ送ったORUの数だけモンスターを攻撃する事ができる!つまり…三回連続攻撃だぁ!!】

 

「しまった…!!」

超銀河眼はエクシーズモンスターの中でも特に強力な効果を持つ、その効果を奪ったトロンはさらに追撃の1手を打つ…!

 

 

【さらにぃ!永続罠「無敵の紋章」の効果により「超銀河眼」は破壊されない!フハハハァ!】

「無敵の紋章」…本来ならば自分の場のモンスターを守る為の効果なのだろう…だが、連続攻撃が可能な紋章神によって…超銀河はまさにサンドバッグになってしまう…!

 

 

【君を、味わいつくしてやるよぉ!そしてフェイカー…!!!よぉーく見ておけぇ!貴様の息子がのたうつ姿を!ハハハハハ…!ハハハハハ!!!】

狂気に身を落としたトロン…その凶気の攻撃がカイトに襲いかかる!!

 

 

【バトルだぁ!「コートオブアームズ」で「超銀河眼」を攻撃!ゴッド・レイジ─!】

 

「っ…!!ぐあああああ─!!」

紋章神による暗黒の神撃が超銀河眼に直撃…カイトは大きく吹き飛ばされる!

 

 

【もう一度だっ!ゴッド・レイジィィ!!】

 

「ぐっ!?うわあああああ…!!」

再び放たれた神撃がカイトを直撃…そのライフを削り切る……だが、トロンは攻撃の手を緩めない…!

 

カイトLP 0

 

【まだだぁ!まだ倒れさせてあげない!だって君の怒りはぁ、こんなものじゃないだろう!?3回目の攻撃ィィ!!ゴッド・レイジィイイ!!!】

 

 

「や、やめろぉぉぉ!!」

遊馬の叫びが木霊する…それはまさに致命の一撃、暗黒の光線がカイトへ襲いかかる…!

 

 

「…ハル、ト…」

 

 

キィン─!

 

キィン─!

 

 

【っ!?なんだ…!?うわぁっ!?】

攻撃が直撃する直前、青い光のバリアがカイトを守り…赤い光がトロンを吹き飛ばす!!

 

 

【っ…馬鹿な…お前は…!】

 

「ハルト…?」

立ち上がったトロンが見たもの…それは兄を守るようにバリアを展開するハルトの姿だった。

 

 

『…兄さん…ありがとう…』

 

「ハルト…よかった…」

兄を助けたハルト…その魂は姿を消し…カイトは穏やかに意識を失った…。

 

 

トロン WIN

 

 

 

 

 

【フン…わずかに残っていた力を兄のために使ったか…だが、今の衝撃は…?】

トロンは顔を抑える…ハルトのバリアと同時に自身を襲った衝撃…それはまるで誰かに顔を張られたような痛みだったのだ…。

 

【…まぁ、いい…カイト、君のナンバーズを戴くよ…!】

 

ギィン─!

 

トロンはカイトに対して紋章の力を使う…カイトの胸から数枚のナンバーズが飛び出し、魂諸共トロンへと吸収された…。

 

  

【マズい、マズい…不味い復讐だったよ…!フフフハハハハ…フハハハハハ…!】

カイトからナンバーズを奪ったトロンは嗤いながらワープホールへと消えていった…。

 

 

「カイト!おい!しっかりしろ!カイト─!!」

 

《カイト様─!!》

トロンと入れ違うようにして遊馬とオービタル7がカイトのもとに辿り着く…だが、カイトは目を覚ます事はなかった…。

 

 

「カイト…!そんな…!カイトォォォ!!」

 

遊馬の悲しい叫びが…スタジアムへと木霊した…。

 

 

 

因縁はついに収束する、復讐に飲まれた男と諦めない心を持つ希望の少年…2人の戦いがついに始まる…!

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─これは驚いた…!今までたくさんの人々の「夢」に入り込んだけど…まさか、()がまだ…─

 

 

 

………

 

 

 

─…思考をする事も叶わない、か……君はよく頑張った、もう全てを投げ出してもいいんだよ?─

 

 

 

………

 

 

 

─…そうか…君はまだ…諦めていないんだね?例え砂粒のような欠片になろうとも……ならば「予言」をしよう─

 

 

 

………

 

 

 

─君がまだ世界に望まれているのなら…君はきっと目覚めるだろう…それまでは休むといい、急がば回れ…急いでは何事も上手くいかないものさ…─

 

 

…ありが、とう…

 

 

 

─君は…本当に私好みの子だね!…よぅし!花のお兄さん…少し頑張ろうかな!─

 

 

 

 



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ナンバーズ総力戦!遊馬対トロン─恩讐の彼方─

大変長らくお待たせしました!S,Kです!

ついにぶつかりあうトロンと遊馬…その戦いの行方は…。

そして、遊海の運命は…!


それでは最新話をどうぞ!


「…ついに決勝か…トロンという男の実力…改めて見直すしかあるまい」

決勝戦を前に沸くスタジアム…その中でジャックは腕を組みながらトロンについて考えていた。

 

 

「対エクシーズ・対効果モンスターに特化した紋章デッキ…強力な切り札、そして感情が無い故の容赦の無さ…かつての俺ならば苦戦していたかもしれん…」

 

『それだけじゃないぜ…ヤツの持ってる「紋章」とかいう力…それのせいで半端な決闘者じゃ太刀打ちできねぇ』

 

「むっ…?十代…身体は大丈夫なのか?」

 

『ああ、なんとかな…』

ジャックの隣に十代が腰掛ける…左腕は固定され、所々に巻かれた包帯が痛々しい…。

 

 

『…流星と海亜は?』

 

「…翠と遊海に付いて病院へ向かわせた、今の翠を1人にする訳にはいかん…それに、あの年頃で…「人の死」は重すぎる…!」

 

『…オレの、せいだ…オレが凌牙を守れていれば…こんな事には…!!』

ジャックと十代は拳を握り締める…2人はトロンの力を過小評価していた…トロンという男のドス黒い復讐心を甘く見ていたのだ…。

 

 

「…嘆いた所で遊海は帰って来ない…!今の俺にできるのは…奴の最後の願いを叶える事…それだけだ…!」

ジャックは静かにデュエルタワーを睨んだ…。

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

 

「……ゆうみ…さん…そん、な…!」

 

KC傘下の病院、その特別病室…そこに治療を終えた翠はいた、そして…彼女の目の前にはベッドに寝かせられた遊海がいる。

…もう、遊海は目覚める事はない…世界の為に戦い続けた最強の決闘者は…子供達を守る為にその生命を燃やし尽くしたのだ…。

 

 

 

《……本来、マスターと翠は「決闘以外で死なない」という転生特典を持っています、ですが…それは「魂」の持つ力…今回、マスターはその「魂」を砕かれてしまいました…》

 

「魂が、壊れたなら…ユベルの時と一緒じゃない…!ティエラの時は…遊海さんは死ななかった!!」

 

《あの時は…ユベルがセーフティを掛けていたんです…異世界で決闘に負けるか…瀕死のダメージを受けた者を異世界へと飛ばして力を奪う為に……私達の世界ではそれは適用されません…トロンの「紋章」で砕かれたマスターの魂は…私やフレアでも捉えられないほどの粒子となって霧散しました…僅かに残っていたマスターの魂も…もう…》

 

「そん、な…!」

翠は遊海の手を握る…その手にはまだ…微かに温もりがあった。

 

 

《…おそらく、ですが……Z-ONEの未来の翠の最期もそうだったのでしょう…全てのモーメントが爆発した事で発生した世界全てを汚染するマイナスエネルギー…それによって特典にエラーが起きて……復活する事ができなかった…それが、マスターにも…起こってしまうなんて…!》

アヤカのコアから透明な雫が流れ落ちる…アヤカは初めて「悲しみ」という感情を理解した…。

 

 

「…遊海さん…約束、しましたよね?『無謀な事はしない、必ず帰ってくる』って……あれは、嘘だったんですか…?」

翠は遊海に語り掛ける…それは数十年前の約束だった…。

 

「これから、遊馬君とトロンの戦いが始まります…その次はDr.フェイカー…そしてバリアン…!言ったじゃないですか!『俺達の知ってる物語以上のハッピーエンドにしよう』って!!遊海さんがいなくなったら…ハッピーエンドじゃないじゃないですか──!!」

 

 

 

 

 

 

「…翠さん…」

 

「…海亜、そっとしておこう…僕達では…翠さんの力になれない…」

病室の外…そこには翠達に付いてきた流星と海亜の姿があった、翠の慟哭を聞きながら流星は海亜を支えている…。

 

 

「…なぁ、アタシ達…もっとできる事、なかったのかな…」

 

「しょうがないよ…僕達と遊海さんでは力の差がありすぎる…僕達の何十倍の経験を積んだ遊海さんが選んだ『答え』…僕達じゃ…何もできなかった…!」

流星は拳を握る…遊海は凌牙の為に躊躇なくその命を燃やした…だが、流星達にはそんな選択は取れない…何もできなかった無力感が流星と海亜にのしかかっていた…。 

 

 

「…遊星さんには、連絡したのか?」

 

「もう、ばあちゃんと一緒こっちに向かってる……どんな顔して、じいちゃんに会えばいいんだよ…!」

 

「流星…」

悔し涙を流す流星…海亜はその背中を擦る事しかできなかった…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

Side Dr.フェイカー

 

 

 

「フェイカー様…!Dr.フェイカー様!!カイトが…あのカイトがトロンに敗れてしまいました…!大会を今すぐ中止にすべきです!!」

ハートランドスタジアムの一室…そこでMr.ハートランドが通信でDr.フェイカーへとWDCの中止を進言していた。

WDCは世界に散らばったナンバーズを集める為に開かれた大会…そのナンバーズを狩るはずのカイトがトロンに倒された事で計画に影響が出る事をハートランドは懸念したのだ…。

 

 

『慌てる必要はない…!リスクは想定内だ、WDCはこのまま続行する』

 

「なんと…!?」

だが、フェイカーは余裕を崩さない…カイトが敗北する事も…フェイカーは計算していたのだ。

 

『我々に「スフィア・フィールド」がある限り…我が計画に失敗はない!』

フェイカーは怪しげな笑みを浮かべながら言い切った…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

「カイトが、負けた……カイトの魂は…トロンに奪われちまった…!カイトはただ…ハルトを助けたかっただけなのに…!」

決勝を控えた遊馬は割り当てられた個室で拳を握りしめていた…ライバルであるカイトの敗北…それはカイトの強さを知る遊馬にとって大きな動揺となっていた…。

 

 

 

(…遊馬、カイトやハルトの魂も…遊海の魂も「紋章」の力によって奪われた…ならば、我々が決闘に勝利し…紋章の力を砕く事ができれば…彼らの魂を取り戻せるはずだ)

 

「ああ…やってる!必ず奴をぶっ飛ばして…カイトや遊海を助けるんだ!!」

打倒トロンに燃える遊馬…そんな時だった。

 

 

「「「「遊馬!!」」」」

 

「み、みんな!?」

控室にやって来たのは鉄男・等々力・徳之助・キャッシー…ナンバーズクラブの仲間達だった。

 

 

「頑張ってくださいよ!遊馬君!」

 

「応援してるウラ!」

 

「みんな…!おう!任せとけって!トロンにかっとビングの力を見せつけてやる!」

激励に来た仲間達に遊馬は自信をもって答える!

 

「絶対…優勝してニャン!」

 

「遊馬…!お前は俺達、デュエリストの代表だ…!トロンになんて負けんじゃねぇぞ!!気合い入れの円陣だ!!」

鉄男の号令で仲間達が手を重ねる!

 

「ほら!遊馬も!」

 

「ああ!…えっ?」

遊馬も円陣へと手を重ねる…その上に透けた青い手が添えられる。

 

「アストラル…お前…」

 

(…)

静かに頷くアストラル…その様子を見た遊馬は仲間達と向かい合う。

 

「…みんな、ありがとう…!オレは必ず優勝する!みんなの気持ちと一緒に!!」

 

(「「「「おおーっ!!」」」」)

  

 

 

 

 

 

「…いよいよだな…!待ってろよ、トロン!」

仲間達の想いを背負ったは入場口へと進む…その時…。

 

 

《フォウ、フォーウ!!》

 

「えっ…?フォウ?どうしてこんなトコに…?」

 

《フォウ!》

背後から聞き覚えのある鳴き声が遊馬のもとに届く…それはフォウの声だった、駆け寄ったフォウは遊馬に抱き上げられる…。

 

 

「フォウく〜ん!もう、走るの早いよ〜!!」

 

「小鳥!?」

フォウに少し遅れて小さな包みを持った小鳥がやってくる。

 

「間に合ってよかった!遊馬!コレで絶対にトロンに勝つのよ!」

 

「おおっ…と!これ…デュエル飯じゃん!!サンキューな!小鳥!」

小鳥は包みを遊馬に投げ渡す…それは遊馬の元気の源・デュエル飯だった、小鳥は遊馬が勝つ事ができるように、願いを込めながらデュエル飯を握ってきたのだ。

 

 

「遊馬…私、信じてるからね!」

 

「ああ…絶対にトロンに勝つ!!」

 

「絶対の絶対だからね!!」

 

「絶対の絶対の…絶対だ!!」

遊馬と小鳥は勝利の誓いを交わす…。

 

 

「それじゃ…行ってくる!フォウ!お前も小鳥と一緒に応援してくれよな!」

 

《フォウ!フォウ!(遊馬…ボクは君を信じてる、君なら…きっと…アイツに勝てる!)》

 

「応!!…あれ?フォウ…お前…?」

 

《…フォウ!》

遊馬は確かに聞いた…フォウの応援の言葉を…フォウはそのまま小鳥の肩へと飛び乗る。

 

「ヘヘっ…!ありがとよ…やってやるぜ!!」

 

「頑張れ!遊馬─!!」

 

《フォーウ!!》

2人の応援を背に…遊馬は戦いの場へ向かった…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

『この空に太陽は一つ、輝く栄光はまた一つ…その道を阻む者は全て敵、数々の死闘が繰り広げられたサバイバルデスマッチ…第1回ワールドデュエルカーニバル!数多の敵を薙ぎ倒し、遂にその太陽…!輝き溢れる栄光を掴まんとする二人が生き残った!!』

スタジアムにMr.ハートランドの声が響く…それと共に2人の決闘者が入場する!

 

 

『今大会のダークホース!謎の仮面デュエリスト…トロン!…対するは新進気鋭のミラクルワンダーボーイ…九十九遊馬!さぁ、世紀の決勝戦…!その舞台となるのはハートランドシティの技術の粋を集めて作られた!『スフィア・フィールド』だ!!』

ハートランドの紹介と共にデュエルフィールドの四方から怪しげな装置が現れる…そして装置から光線が放たれ、球状の結界を作り出す!!

 

 

 

『「スフィア・フィールド」はこれまでのフィールドとは全く違う、異世界の擬似空間だ…トロンに遊馬、お前達のナンバーズを存分に使い切るがいい…!どの道お前達は……フフフフ…!』

その様子を見たDr.フェイカーは研究室で笑みを浮かべた…。

 

 

 

 

 

「な、なんじゃこりゃ…!?」

 

(気をつけろ遊馬…!)

遊馬とアストラルは目の前に現れた謎のフィールドを警戒する…!

 

 

「この中でデュエルするって…どう入れば…うわぁ!?」

スフィアフィールドをおっかなびっくり突いた遊馬…その身体は一瞬にして結界の中に取り込まれる!

 

 

「びっ、ビックリした〜!?どんな仕掛けなんだよこれ!?」

 

(これがスフィアフィールドか…!)

結界の中は無重力状態…慣れない遊馬はフィールドの壁に弾かれ続けている…。

 

 

ゴツン!

 

 

《ムゴッ!?入れん…!》

 

(むっ…?メガロック!私達に付いてきていたのか?)

 

「メガロックじいちゃん!?何でこんな所に!?」

結界から聞こえた異音に遊馬とアストラルが目を向ける…そこには結界の中に入れず苦戦する半透明のメガロックの姿があった。

 

 

《遊海からお前達の護衛を頼まれていたのだが…入る事ができん…!遊馬!こんな時は大抵…嫌な事が起きる…!気を抜くな!!》

 

「わかった…!メガロックはそこで待っててくれ!遊海は…オレが助ける!」

メガロックの助言を聞いた遊馬は気を引き締めてフィールドの中心へ向かった…。

 

 

《(…あの様子では…遊海の事は伝わっておらんようだ………馬鹿者…!遊馬を導くのは…お前の役割だろう…!)》

遊馬を見送ったメガロックは地面を踏み締めた…。

 

 

 

 

『さぁ、スフィアフィールドよ!最強のデュエリスト達を天空の舞台へ導くのだ─!!』

2人を飲み込んだスフィアフィールドはデュエルタワーの最上部へと上昇する…そして、ついに遊馬とトロンは相対する…!

 

 

 

【アハハハハ…!よくここまで来たねぇ?】

 

「トロン…!」

 

【ボクは異世界の狭間を彷徨った地獄の時間の中…何度も何度も生きるのを諦めかけた…そんな時、いつもキミの父…一馬のことを思い出したよ…彼はボクによく言っていたよ…大切なのは「友情」…「仲間」…そして「諦めない心」だとね…!】

トロンは変わり果てた自分の原初を思い出す、どこまでも果てしなく続く異世界の砂漠…死の淵に立たされたトロン…バイロンは一馬の言葉を糧に生き延びた…だが、その心は感情を失い、歪んでしまった…。

 

 

【でも、ボクはフェイカーに裏切られてよ〜く分かったんだ…!彼が言ってた友情、仲間……そんなものは全部無意味だって!けれども…彼の言っていた「諦めない心」って大切だよねぇ?諦めなかったおかげで、ボクは復讐という希望を持ち、こうして生まれ変われたんだぁ…!】

 

「…そんなの間違ってる!オレはⅢと約束したんだ…Ⅲは言ってた!『僕の家族を救ってくれ』って!トロン…!オレはⅢの…ミハエルの為に全力でアンタと戦う!!そして…アンタを救う!!」

遊馬はトロンへ叫ぶ…Ⅲから…かけがえのない友から託された願いを叶える為に…!

 

 

【ボクを救うだって?何からぁ〜?】

 

「そんな事決まってる!アンタから『復讐』っていう悪魔を追い出してやるんだ!…アンタの復讐の為にⅢにⅣ…Ⅴは犠牲になった!!」

 

【けれど、結局あの子達は役に立たなかった…罰として、今は三人そろって()()()()()になってるけどさ…】

 

「魂の、抜け殻…!?」

 

【そうだよ…ボクが三人に与えた「紋章」は力を得る代償として魂に直結していたからね…力の強いナンバーズを使い、デュエルに負ければ魂も消耗しちゃう…当然の結果だよ…!】

 

「お前…そうなるとわかってて!!」

 

(…ここまで心が醜い人間もいるのか…!!)

非情なトロンの言葉を聞いた遊馬は拳を握り締める…危険を承知で力を受け入れたⅢ達兄弟…そしてそれをなんとも思っていないトロン…遊馬はその心が許せなかった…!

 

 

「お前…それでも『親』なのかよ!!あいつらはとっくに復讐の虚しさに気付いてた!!それなのに!!」

 

【だってさぁ、それが「親子の絆」だろう?そもそも悪いのはフェイカーなんだ…!ねぇ?遊馬…どうして君は復讐しないの?君から一馬を奪った、Dr.フェイカーに…】

遊馬に対しトロンは問いかける、復讐に堕ちた自分と復讐する事なくトロンに立ち向かう遊馬…その違いを…。

 

 

「父ちゃんはオレに復讐なんて望んでねぇ!!」

 

【そうかなぁ?】

 

「っ…!?」

遊馬の答えを聞いたトロンは遊馬を睨む…。

 

【本当に一馬はそう思っているのかな?いや…もう復讐し始めてるんじゃないのかなぁ?ねぇ、アストラル?】

 

(何が言いたい…!)

 

【ナンバーズには恐るべき力が宿っている…この世界を滅ぼしかねない強大な力が…!】

 

(「っ…!」)

遊馬とアストラルはトロンの言葉に心当たりがあった、手にすればただの決闘者が悪意に呑まれ暴走する「No.」…その恐ろしい力を間近で見てきた遊馬達はその言葉を否定できなかった…。

 

 

【だとしたら君は…この世界に報復する使者に力を貸しているワケだぁ…一馬がこの世界に送り込んだアストラルにね?】

 

「そんな…!?アストラルが、この世界に報復する、使者…!?」

遊馬は動揺する、かけがえのない相棒だと思っていたアストラル…彼が報復の使者ではないという証拠は…現時点ではなかったからだ…。

 

 

【そして…君だってその恐ろしい力を集めているんだろう…Dr.フェイカー!】

 

ジジッ…ジジッ…!

 

『フフフ…ハハハハ…!!』

 

動揺する遊馬を尻目にトロンは声を張り上げる、それと同時にスタジアムに不気味な笑い声が響き…遊馬達の頭上に巨大なDr.フェイカーのARビジョンが現れる!

 

 

 

『久しぶりだなぁバイロン…!そんなに若返っているとは驚きだよ…!』

 

【全て君のおかげさ!もうすぐ君に会いに行くよ!遊馬のナンバーズを手に入れたらねぇ…!】

ざわめく観客達を気にする事なく、因縁の2人は言葉を交わす…だが、遊馬は黙ってはいられなかった…!

 

 

「冗談じゃねぇ!!Dr.フェイカー…それにトロン!お前達みたいな駄目大人は…オレがやっつけてやるぜ!!」

 

『フハハハ…!それは面白い…楽しみにしているよ!フハハハハハハハ!!』

遊馬の叫びを聞いたDr.フェイカーは高笑いと共に姿を消した…。

 

「やってやる…絶対に勝つぜ!アストラル!!」

倒すべき「悪」を前に…遊馬は決意を固めた…!

 

 

 

 

 

『コホン!少しハプニングもありましたが…改めて観客の皆様に「スフィア・フィールド」の効果を説明しましょう!!』

咳払いをしたMr.ハートランドの声がスタジアムに響く、彼の口から語られたのは「スフィアフィールド」の効果…その概要は大きく2つ。

 

 

①互いのプレイヤーは手札の同じレベルのモンスター2体をエクシーズ素材としてエクストラデッキからランダムに「No.」エクシーズモンスターを召喚条件を無視してエクシーズ召喚できる。

(例 手札のレベル4モンスター2体でエクシーズ素材がレベル8×3の「デステニー・レオ」を召喚できる)

 

②ただし、①の効果で特殊召喚したエクシーズモンスターはORUを全て失った時に破壊される。

 

 

 

『さぁ…!存分に使うがいい!選ばれしデュエリストのみが持てる最強の「No.」達を!!ハートバーニング!!』

 

 

 

「よし…!行くぜ!!」

 

【フフフ…アハハハハ!!】

遊馬とトロンはそれぞれにデュエルディスクとDゲイザーを装着、準備を整え…ついに決戦が始まる!!

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─見えて…いや、聞こえているかい?遊海君、君の弟子と復讐鬼の戦いが始まったようだよ─

 

 

………

 

 

何処とも知れない花園、その中心にある塔の中…白いローブの青年は魔法陣の中に浮かぶ弱々しい赤い光へと語り掛ける…。

 

 

 

─君の魂は異世界の力によって砕かれ、世界へと融けてしまった…でも、()()()()()()()()()()…辛うじて君はまだ現世へとしがみついている…─

 

………

 

─君達の特異な性質…「特典」が君を生かしている、でも…このままなら君の魂は本当に消えてしまうだろう…どうにかしてあげたいけど…禍々しい「紋章」の力が君の魂の再生を妨げているんだ─

 

 

…………

 

 

─君が助かるには…あの少年が復讐鬼を倒す事が1つ…そして…彼が懺悔する事が必要だ、そうでなければ…君の魂は無へ還ってしまうだろう…─

 

 

………

 

 

─…何となく君が言いたい事がわかる…いや、強い意思を感じるよ…「信じる」ってね…さて、私は基本的に個人に肩入れはしないんだけど…今回ばかりは少年を応援するとしようか!─

 

そう言うとローブの青年は遠くに目を向ける…未熟な勇士と復讐鬼の戦いを見守る為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬&アストラル対トロン

 

 

 

 

56

 

 

【現れろ!「No.56」!「ゴールド・ラット」!】

デュエルの先攻を取ったのはトロン…彼は「スフィアフィールド」の効果によって「No.56」を呼び出す!

 

 

「守備力600…!これならすぐに倒せるぜ!」

トロンが呼び出したナンバーズはステータスの低いいわゆる「ハズレ」のナンバーズ…だが、ターンの回ってくる前にアストラルが遊馬へと問いかける…。

 

 

(遊馬…ナンバーズは本当にこの世界を滅ぼす力があるのだろうか?)

 

「アストラル…お前、さっきトロンに言われた事を…」

 

(…私には記憶がない…!本当に私は復讐の為にこの世界に送り込まれたのか…?)

 

「アストラル…」

それはアストラルの懸念…トロンに指摘された「報復の使者」と言う言葉が記憶を失ったアストラルにのしかかっていたのだ…。

 

 

「…オレはお前がどういう理由でこの世界に来たのかは知らない…けど、お前が悪いヤツじゃないって事はオレが一番よく知ってる!遊海だって言ったじゃねぇか!『俺はお前達の敵にはならない』って!伝説の決闘者がお前の事を認めてるんだぜ?」

 

(遊馬…)

遊馬はアストラルをまっすぐ見つめながら本心を伝える、それはトロンの言葉を否定し…アストラルを信じる事だった。

 

「それにナンバーズにすげぇ力があるってんなら、なおさらあんな奴らに渡してたまるかよ!…アストラル、お前が手にして絶対正しい事に使ってくれ!…オレはお前を信じる!!」

 

(遊馬…わかった、今は私達の全力を尽くし、あのトロンを倒すぞ!)

アストラルは遊馬の言葉で迷いを振り払い、トロンを睨みつける!

 

 

「よーし!そうとなったらお前の取って置きの作戦でトロンをギャフンと言わせてやろうぜ!!」

 

(…そんな都合のいいものはない)

 

「あらら!?」ズコッ!

 

(この後に及んで私頼みになられても困る…そもそも君にはデュエルにおいて戦略というものが…無いに等しいからな)

 

「へへっ、いつもの調子が戻ってきたな!そうこなくっちゃ!なら、オレ達2人の力で…トロンを倒す!!」

緊張がほぐれた遊馬とアストラル…2人はトロンを倒す為に力を合わせる!

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!…よしっ!!かっとビングだ!オレ!!」

ドローしたカードを確認した遊馬は仲間との絆と共にトロンへと挑む!

 

 

12 

 

 

「来い!『No.12』!『機甲忍者クリムゾン・シャドー』!!」

遊馬が「スフィアフィールド」によって呼び出したのは決闘庵の兄弟子である闇川のナンバーズ…赤き忍者だった!

 

「バトルだ!『クリムゾンシャドー』で『ゴールドラット』を攻撃!月影・紅斬り!!」

クリムゾンシャドーの鋭い一撃がゴールドラットを粉砕する!

 

 

 

「オレはこれでターンエンドだ!」

 

 

【フフフ…ボクのターン!ドロー!いいよぉ…!遊馬、アストラル!その調子だ!もっと力を出すんだ!君たちが力を出せば出すほど、自分の首を絞めることになる!】

トロンは余裕の笑みを崩さない…そしてトロンは攻勢に出る!

 

 

       10

 

     30   08

 

 

【現れろ!「No.10白輝士イルミネーター」!「No.30破滅のアシッド・ゴーレム」!そして「No.8紋章王ゲノム・ヘリター」!】

 

「ナンバーズが一気に3体も!?」

 

(そして現れたか…「ゲノムヘリター」…!)

トロンは「スフィアフィールド」の効果と自身のタクティクスによってカイトの持っていた2体のナンバーズ、そして自身のエースであるゲノムヘリターを呼び出す!

 

【ククッ…!君も知ってるよねぇ?「ゲノムヘリター」には色々モンスター効果がある…!さあ、行くよ!ボクは「ゲノムヘリター」の効果発動!ORUを1つ使い!このターンバトルする相手モンスター1体の攻撃力を0にする!これで「クリムゾンシャドー」の攻撃力は0になる!さらに自身の攻撃力をバトルする相手モンスターのもともとの攻撃力と同じにする!まあ、攻撃力は変わらないけどねぇ…!】

ゲノムヘリターが自身の毛を伸ばし、クリムゾンシャドーの力と姿を奪い取る…!

 

「っ…!やばい!!」

 

 

【「ゲノムヘリター」!「クリムゾンシャドー」にトドメだぁ!】

 

「やらせるか!『クリムゾンシャドー』の効果─!」

 

(待て遊馬!罠カードを使え!!モンスター効果で攻撃を耐えてもダメージは受ける…連続攻撃を受けたら我々は…!)

 

「っ─!?罠カード『ハーフガード』発動─!」

 

(その効果により「クリムゾンシャドー」はこのバトルでは破壊されず、バトル終了後に守備表示になる─!!)

 

アストラルの助言で遊馬は咄嗟に罠カードを発動…だが、攻撃の余波で吹き飛ばされ「スフィアフィールド」の壁に叩きつけられる…。

 

 

「ぐうっ…!派手にライフを削られちまったぜ…!」

 

【ちぇ、守備表示になっちゃったかぁ…まぁ、いいや!バトル続行!「アシッドゴーレム」!アシッド・スプラッシュ!】

続いて放たれた強酸の大砲がクリムゾンシャドーを破壊する!

 

「『クリムゾンシャドー』の効果発動!ORUを1つつかい!自身の破壊を無効にする!」

自身の効果でクリムゾンシャドーが復活する…だが…。

 

【まだまだぁ!いけぇ!『イルミネーター』!『クリムゾンシャドー』を攻撃ぃぃ!】

 

「もう一度『クリムゾンシャドー』の効果発動!自身の破壊を無効にする─!!」

イルミネーターの剣で一閃されたクリムゾンシャドーはなんとかその攻撃を耐え抜いた…!

 

「くっ…なんとか、防いだぜ…!」

 

 

【そうかなぁ…?君のモンスターはORUがなくなった…!この瞬間!「スフィアフィールド」の効果で特殊召喚したモンスターは破壊される!】

 

「っ…!」

スフィアフィールドの壁面から無数の光線が放たれ、クリムゾンシャドーは粉砕された…。

 

 

【アハハハハ…!これでボクのターンは終わりだよ】

 

「トロン…!」

 

(怯むな遊馬…!君の戦いはこれからだ…!!)

遊馬の残りライフは1600…だが、デュエルはまだ始まったばかり…遊馬は反撃の狼煙を上げる!

 

 

       34

 

     17   39

 

 

「現れろ!『No.34電算機獣テラ・バイト』!『No.17リバイス・ドラゴン』!そして…来い!『No.39』!『希望皇ホープ』!」

遊馬はエクシーズ環境に於いて最強のドローカード『エクシーズ・トレジャー』を発動…それによりホープを含めた3体のナンバーズを召喚する!

 

 

(遊馬、本当の勝負はこれからだ!!)

 

「ああ、わかってる!」

遊馬は仲間達の願いを背負い、反撃を仕掛ける!

 

【フフフフ…ボクの怖さを見せてあげるよ…たっぷりとね!!】

 

「望むところだ!!その前に…お前のフィールドをガラ空きにしてやるぜ!!『リバイスドラゴン』の効果発動!ORUを1つ使い!自身の攻撃力を500アップする!」

 

(この布陣なら勝てる!いくぞ!遊馬!!)

 

「おう!!『リバイスドラゴン』で『イルミネーター』を攻撃!バイス・ストリーム!!」

ORUを捕食したリバイスドラゴンの一撃が白騎士を粉砕する!

 

【くぅ…!】

 

「さらに!『希望皇ホープ』で『ゲノムヘリター』を攻撃!ホープ剣スラッシュ!!」

 

【チィ─!!】

ホープが剣を振るいゲノムヘリターを両断する、もしもゲノムヘリターが正規召喚されていればホープの攻撃を防ぐ事ができていたが…「スフィアフィールド」の効果で召喚された事でその効果は使えない─!

 

 

【けど、どうって事はない…!まだボクのフィールドには攻撃力3000の「アシッドゴーレム」が残っている!】

 

「まだだ!手札から魔法発動!『エクシーズ・トライアングル・フォース』!!自分フィールドに3体のエクシーズモンスターが存在する時!相手の場のカード1枚を破壊する!『アシッドゴーレム』をぶっ飛ばせ─!!」

 

【くっ…!こんなカードまで用意していたとは…!】

3体のナンバーズの連携でアシッドゴーレムが破壊される!

 

 

「トロン!これでお前のナンバーズは全部倒してやったぜ!さぁ…かかってきやがれ!!」

トロンのナンバーズを一掃し勢いに乗る遊馬…だが、トロンは余裕の笑みを崩さない…!

 

【…なんか、もしかして本気でボクに勝てると思ってるのぉ?】

 

「当たり前だ!オレはⅢやカイト…白野の為に、絶対にお前に勝つ!!」

 

【フッ…君のフィールドには、ナンバーズが3体…どうやらボクが本気を出す舞台は整ったようだねぇ?】

 

「なにっ…!?」

 

(っ…!遊馬、気をつけろ!トロンはまだ切り札を残している!)

アストラルはトロンの思惑にいち早く気付いた…!

 

 

【これが僕のデステニードロー!かっとビングだぜ…ボク!!…なんちゃって!】

遊馬の決めゼリフを真似したトロン…そのフィールドに災厄の悪魔が現れる…!

 

 

【ボクはレベル4となった「ゲノムヘリター」「イルミネーター」「紋章獣ベルナーズ・ファルコン」の3体でオーバレイ!エクシーズ召喚!!】

 

 

69

 

 

【現れろ!「No.69」!…見せてあげるよ、ボクの本当の切り札!「紋章神(ゴッド・メダリオン)コート・オブ・アームズ」!!】

ついにトロンの切り札…巨大な双角と恐ろしい牙を持つ悪魔が降臨する!

 

(ついに来たか…!)

 

「くっ…!」

遊海とカイトを降したナンバーズの出現に身構える遊馬…だが、変化は終わらない…。

怒りのエネルギーに呼応するように黄色のエネルギーだった「スフィアフィールド」が紫色に染まっていく…!

 

 

(このナンバーズがトロンの復讐の化身…!)

 

ぅ…ああぁ…!!苦しい…憎しみがあふれて、息苦しい!もう仮面なんて、いらない…!

トロンの鉄仮面の隙間から禍々しいエネルギーが漏れ始める…そしてトロンは仮面に手をかける…!

 

どうせ君たちはこのデュエルが最後なんだ…終わったらボクに記憶を…いいや、何もかも奪われちゃうんだからねぇ!…見せてあげるよ…特別に、ボクの素顔を!

 

カシャ…カラン!

 

「っ─!?!?」

 

(な、その顔は…!?)

ついに仮面を外したトロン、その素顔…その右半分はバイロンの面影を残す幼い少年のものだった、だが…問題は左半分…そこには()()()()()()

 

その左半分は伽藍堂…左眼があるはずの場所に虚無に通じるかのような穴が開いていたのだ…!

 

 

 

「お前、その、顔は…!?」

 

【そう、異世界との狭間をさまよう間に…ボクはこんな姿になってしまった、ボクの身体に残っているのは…復讐の心だけさ!】

トロンは自分の髪を玩びながら呟く…

 

(トロン…その正体は、もはやこの世界の人間ではないという事か…!)

トロンの正体…それは異世界に投げ出された事で人外となってしまった…「怪人」だった。

 

なお、トロンの顔はARビジョンを通じて観客達も目にしているが…ほとんどの人間が「ARビジョンによる演出」だと思いこんでいた…。

 

 

 

 

Sideジャック

 

 

 

「っ…!!なんと禍々しい力だ…!仮面を外した途端、闇の力が溢れ出して…!」

 

『っ…!あれが奴の…復讐の源か…!』

ジャックと十代は息をのむ…トロンから感じる禍々しい力…それはかつての強敵以上のものだった…!

 

 

「闇の力に飲まれるな…!遊馬、アストラル…!!」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

【遊馬ぁ、アストラル!見てよ!ボクの力を!これがボクが手にした究極のナンバーズさ!コイツには特殊な効果があるんだ…「コートオブアームズ」はカード効果では破壊されず、コイツ以外のフィールドにいるモンスター全ての効果を無効にして…その効果を全て自分のモノにできる!】

 

「他のモンスターの効果を…自分のものに!?」

遊馬は強力なコートオブアームズの効果に驚愕する、効果を無効にされれば鉄壁の守りを持つホープの効果も、攻撃力を上げる事ができるリバイスドラゴンの効果も意味を為さない…!

 

 

【そうさ!どんなモンスターを持っていようと「コートオブアームズ」の前じゃ無力!…見せてあげるよ…友情なんて、希望なんて無いって事を!!「コートオブアームズ」の効果発動!ゴッド・メダリオン・ハンド!】

コートオブアームズの背中から無数の禍々しい光の腕が伸び、遊馬のフィールドのナンバーズの力を奪い去る…!

 

(モンスター効果が、奪われた…!?)

 

【それじゃあ…早速使わせてもらうよ!「コートオブアームズ」の効果発動!ORUを1つ使い!奪った「リバイスドラゴン」の効果…すなわち「コートオブアームズ」の攻撃力を500ポイントアップさせる!さらにボクは墓地にいる「紋章獣レオ」の効果発動!自分のモンスターの攻撃力が変化した時!墓地のこのカードを除外し、その変化した攻撃力分、相手モンスターの攻撃力を下げる!】

リバイスドラゴンの効果によってコートオブアームズの力が増し…リバイスドラゴンは墓地から飛び出した禍々しい光によって弱体化してしまう!

 

【さあ!やるんだ!「コートオブアームズ」!「リバイスドラゴン」を葬れぇ!喰らえ!ゴッド・レイジ!】

 

「っ…!!ぐあああああ!!」

太陽神をもうち倒した邪神の怒りがリバイスドラゴンを…遊馬達を吹き飛ばす!

 

(っ…!だ、大丈夫か?遊馬…!)

 

「ああ…!まだまだ、いけるぜ…!!」

遊馬はなんとか立ち上がる…だが、そのライフは残り500…アストラルの体もダメージで明滅してしまっている…!

 

 

 

【まだ?フフフ…もう!いい加減諦めちゃいなよ!使えないⅢやⅣやⅤと違ってボクは無敵なんだ…!そう!この「コートオブアームズ」は親と子ほどの力の差があるのさ!】

トロンは饒舌に語る…無敵の力を前に遊馬達になすすべはないと…!

 

 

「親と子か…確かにそのモンスターはお前そっくりだぜ!!」

 

【なに…?】

遊馬の言葉にトロンは首を傾げる…。

 

 

「今だったらよくわかる!!Ⅲだって!Ⅳだって!Ⅴだって!みんな大した奴だった…!立派だった!必死に自分を支えようとして最後にはみんなアンタの事を心配していた!!なのに…なんであんないい奴らがアンタみたいな奴の為に全部投げ出しちまうのか!!アンタはそれを親子だから当たり前だと思っている!…けど、そうじゃねぇ!!みんな信じてたんだよ…!アンタがいつか元に戻ってくれるって…!どうしてアンタは戻って来た時…あいつらに優しくしてやれなかったんだよ!?どうして…復讐なんてくだらない事をやり始めたんだよ─!!」

遊馬は叫ぶ…Ⅲ達の感じていた寂しさを…悲しみを…苦しみを…!父親がいない遊馬だからこそわかる…兄弟達の本心を…!

 

 

【わかるわけないさ…君みたいな子供には…!】

 

「わかるさ!!…父ちゃんがいなくなってどんなに寂しい思いをするのか…オレにはわかる!あいつらは…みんなアンタがいなくて寂しかったんだ…!白野が…支えてくれる人がいても!!…不安で…泣きたくて!一生懸命だったんだよ!!」

 

【っ─!!】

涙ながらに叫ぶ遊馬の言葉…トロンはその姿に圧倒される…!

 

【…黙れ!お前にそんなことを言われる…っ!?】

 

トクン…

遊馬の言葉を否定しようとするトロン…その脳裏にかけがえのない子供達の姿が浮かぶ…

 

 

【(家族…思い出…!そんな…そんなものは……!この、顔と、ともに…!)】

トロンは頭を抑えて苦しむ…それは僅かながらトロンに残された「優しい心」…良心の小さな光だった…。

 

 

「オレは諦めねぇ…!このデュエル!オレはみんなからいろんなものを預かってきた!!アンタにそれが伝わるまでは…オレは絶対に諦めねぇ─!!」

 

【ぐっ……まあいい!すぐに「コートオブアームズ」の餌食にしてやる!ボクはこれで…ターンエンドだ!】

 

 

 

「行くぜ、アストラル…!奴に勝つにはZEXALの力しかねえ!」

遊馬はアストラルに静かに決意を告げる…絶体絶命の状況を覆す、奇跡の力を使う事を…!

 

(この「スフィアフィールド」は異世界に似せて創られた擬似空間…ここでならZEXALになれる…ただし、このデュエルは大勢が見ているぞ?)

 

「そんなことはどうだっていい!…みんなの想いをアイツに渡せるなら…いくぜ、アストラル!」

 

(フッ…行こう遊馬…私と共に!!)

 

「おう!!かっとビングだ!オレぇぇ!!」

遊馬とアストラル…2人の想いが重なりし時…奇跡が起きる!!

 

 

オレと!!

 

私で!!

 

オーバーレイ!!

 

【なにっ!?】

遊馬とアストラル…赤と青の閃光がスフィアフィールドを駆け巡る!!

 

遠き2つの魂が交わる時…語り継がれし力が現れる!!

 

エクシーズチェンジ!ZEXAL!!

 

光の爆発と共に現れるのは赤い鎧を纏いし奇跡の決闘者…ZEXALが絶望を希望に変える為に顕現した!!

 

 

 

 

 

 

Sideナンバーズクラブ

 

 

 

 

《フォーウ!?!?(特別意訳:2人が…合体した─!?)》

 

「フォウくん、あれが遊馬とアストラルの絆の力…ZEXALよ!」

 

「アイツ…!みんなが見てるのに…!?」

 

「トドのつまり…どうなんでしょう…?(汗)」

 

「キャット…みんなARの演出だと思ってるみたいだけど…」

フォウや観客達が遊馬(とアストラル)の変身に驚くさなか、鉄男やナンバーズクラブの仲間達も驚きを隠せなかった…「ZEXAL」は特別な力…それを堂々と人前で見せるとは思っていなかったのだ…。

 

 

「でも、今の遊馬…とってもカッコいいウラ!」

しかし、徳之助だけは素直に目を輝かせていた…絶体絶命の状況に現れる「英雄」…その状況に心踊らない少年はいないだろう…!

 

 

『本物のヒーローみたい〜!』

 

『かっこいい〜!メタルナイトより強そう〜!』

 

『名前はなんて言うんだろう!?』

その思いは観客達も同じだった、突然現れた赤い鎧のヒーロー…みんながその名前を知りたがっていた…!

 

 

「そうウラ!!あれは『鋼の騎士』や『カイバーマン』に並ぶ…本物のヒーローウラ─!!」

 

「お、おい!徳之助─!?」

ZEXALのカッコよさにテンションが上がったのか…徳之助は大声でその名を叫ぶ!

 

「あれは『ZEXAL』ウラ!ハートランドを闇から守るオレ達のヒーロー!!その名は…『ZEXAL』ウラ─!!」

声高らかにヒーローの名を叫ぶ徳之助…だったが。

 

 

『…ZEXALウラ…?』

 

『ゼアルウラ?』

 

()()()()()っていうのか!!』

 

「「「「え"っ…!?」」」」

 

「あ、その…()()は…あぁ…!?」

 

《…フォ〜ウ〜…(特別意訳:混ざっちゃった…ダメだこりゃ!)》

徳之助の口癖が混ざった結果…ZEXALは「ゼアルーラ」として観客達に覚えられてしまった…。

 

 

「な、なんか…取り返しのつかない、誤解を…させてしまった、ウラぁ…!?」

 

 

『『『ゼアルーラ!ゼアルーラ!!ゼアルーラ!!』』』

 

後悔するも既に後の祭り…スタジアムは「ゼアルーラ」コールに埋め尽くされてしまった…。

 

 

「なんだか間違って伝わっちゃったけど…みんなが遊馬とアストラルの事を応援してくれてる…!頑張って…!2人とも!!」

 

《フォウ、フォーウ!》

ゼアルーラコールが響く中…小鳥はZEXALの勝利を祈った…!

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

【まさか…合体変身なんて裏技を隠していたなんてね、驚いたよ…!】

突然のZEXALの登場に動揺していたトロンは改めてZEXALを睨む!

 

 

《…なんだよ「ゼアルーラ」って…?》

 

(…小さな事は気にするな、デュエルに集中だ!)

 

《…ああ、わかった!》

突然のゼアルーラコールに戸惑っていた遊馬はアストラルの言葉で再び戦いに集中する!

 

 

 

《オレのターン!ドロー!》

 

(遊馬!カオスエクシーズチェンジだ!)

 

《おう!!オレは「希望皇ホープ」でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!》

ZEXALの号令と共に…希望の戦士がカオスの力を纏い、再誕する!

 

 

39

 

 

《現れろ!「CNo.39」!混沌を光に変える使者!「希望皇ホープレイ」!》

遊馬の場に黒き希望の戦士が降臨する!1736

 

 

 

【「希望皇ホープレイ」のお出ましか…だけど無駄だよ!「コートオブアームズ」の効果発動!ゴッド・メダリオン・ハンド!「ホープレイ」…お前のモンスター効果をもらう!】

現れた希望の戦士に再び光の腕が突き刺さる…!

 

 

《させるかよ!オレは魔法カード「セブンストア」を発動!》

 

(「セブンストア」は自分フィールドのエクシーズモンスターをリリースする事でカードを1枚ドローする事ができる!さらに、そのモンスターがORUを持っている時!その数だけカードをドローできる!)

 

《オレは「テラバイト」をリリースする!「テラバイト」の持っていたORUは2つ…よって3枚ドローできる!》

テラバイトが光の粒子となり、ZEXALの新たな力を呼び覚ます!

 

(最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえも…デュエリストが創造する!!)

ZEXALの右手に光が集まり、新たな希望を創造する!

 

 

全ての光よ!力よ!我が右腕に宿り、希望の道すじを照らせ!!

 

シャイニング・ドロー!!

 

 

《来たぜ…!ゼアルウェポン!!》

光の軌跡と共に3枚のカードが創造される…そのうちの1枚は最強の武器「ZW」…そのカードが希望を導く!

 

(「コートオブアームズ」は相手のモンスター効果を無効にし、吸収する…だが!装備魔法となる「ZW」の効果は奪えない!!)

 

【なるほどね…そう来るんだ?】

ゼアルウェポン…それは無敵の効果を持つコートオブアームズの唯一の弱点となる!

 

 

《オレは手札の「ZW-雷神猛虎剣(ライトニング・ブレード)」を「ホープレイ」に装備!》

 

(このカードは、フィールドに召喚する事なく直接装備する事ができ!その攻撃力を1200アップさせる!)

ZEXALの手札から機械仕掛けの白虎が飛び出しホープ剣と合体…雷光を纏う剣となる!

 

(さらに!このカードが装備されている時!自分フィールドの魔法・罠カードは効果では破壊されなくなる!)

 

《いっけぇ!「ホープレイ」!「コートオブアームズ」を攻撃!ホープ剣ライトニングブレード!!》

雷光を纏った剣が異形の悪魔へと振り下ろされる!

 

(「コートオブアームズ」が奪った力に…この一撃を避ける力はない!!)

 

《いっけぇぇ!!》

 

【これこれぇ…!()()()()()()()()()()()()「コートオブアームズ」の効果発動!】

 

《なにっ!?》

ホープレイの攻撃を前に…トロンは獰猛な笑みを浮かべていた…!

 

 

 

【「コートオブアームズ」は相手が攻撃してきたとき、ORUを1つ使い、フィールドにあるカードを1枚破壊する!ボクは「ホープレイ」を選択!破壊する!】

 

《なんだと─!?》

それはコートオブアームズの隠された効果…ORUを喰らったコートオブアームズはその身体を翼を持つ巨大な盾のような姿に変形する…!

 

 

 

【見せてあげるよ!神本来の力を…!やれ!「コートオブアームズ」!ゴッド・シャーター!!】

コートオブアームズから無数の赤い閃光が放たれ…ホープレイを刺し穿く!!

 

《まだだ!「雷神猛虎剣」のさらなる効果発動!装備モンスターが効果で破壊される時!このカードを手札に戻す事で…その破壊を無効にする!》

光に貫かれたホープレイの手からライトニングブレードが零れ落ちる…だが、それによりホープレイは効果破壊を免れた!

 

 

【フン、また小細工を…でも、まだバトルは続行中だからね?どの道「ホープレイ」は終わりだ!やってしまえ!「コートオブアームズ」!「ホープレイ」を握りつぶしてしまえ─!】

コートオブアームズが紫色の腕を伸ばし、ホープレイに掴み掛かる…だが!

 

《オレは墓地から「タスケルトン」の効果発動!》

 

【なっ…墓地だと!?】

 

(墓地の「タスケルトン」を除外する事で自分フィールドの戦闘破壊されるモンスターの破壊を無効にし、ダメージを0にする!!)

 

《たすけるト〜ン!!》

遊馬の墓地から黒い子豚が飛び出しホープレイの身代わりになる!

 

 

 

 

《よし…!助かったぜ!「タスケルトン」!!》

 

【ちっ、ふざけた真似を…!そんなモンスターを墓地に仕込んでたとはね!】

 

《ヘヘっ…!オレは再び手札の「雷神猛虎剣」の効果発動!このカードを「ホープレイ」に装備する!》

トロンの反撃を凌いだ遊馬は再びライトニングブレードをホープレイに装備し、態勢を立て直す…!

 

《オレはカードを伏せ、ターンエンドだ!》

 

【しぶといねぇ…さすが一馬の息子だ、つまらないとこだけソックリだ!】

 

《オレは絶対に諦めねぇ…!トロン!オレはこのデュエルで必ず!みんなの思いを伝えてみせる!!》

遊馬はアストラルと共にトロンを睨みつける…ライフは3800対500の劣勢…だが、遊馬達はまだ諦めてはいない!

 

 

 

【フン…君から貰うモノなど無いさ!とっておきの必殺技を破られた君達に…もう勝ち目は無いんだから!!】

ZEXALの力を見てもトロンは余裕の態度を崩さない…そしてトロンは最後の攻勢を開始する…!

 

 

 

 

【ボクのターン!ドロー!…これが君たちの最後だ!「コートオブアームズ」の効果発動!ORUを1つ使い、「ホープレイ」から奪った効果を使用する!このターン「コートオブアームズ」は攻撃力を500ポイントアップし「ホープレイ」の攻撃力は1000ポイント下がる!】

 

《っ!!》

トロンが使ったのは何度となく強敵を倒してきたホープレイの力…その力が遊馬達に牙を剥く!!

 

【「ホープレイ」の効果で…君達を消し去ってあげよう!「コートオブアームズ」!「ホープレイに」攻撃だぁ!ゴッド・レイジ!】

紋章神の怒りの一撃がホープレイに襲いかかる!

 

《リバース罠発動!「ハーフ・アンブレイク」発動!自分のモンスターの戦闘破壊を無効にし!受ける戦闘ダメージも半分になる!うわああああ!!》

怒りの一撃が直撃する寸前、無数の泡のバリアがホープレイを守るが…遊馬は攻撃の余波で壁に叩きつけられる、残りライフは…僅か50…!

 

 

【しぶといヤツだ…!】

 

《まだだ…まだ、オレのライフは尽きてねぇぇ!!》

肩で息しながらZEXALは…遊馬は立ち上がる…!

 

【その諦めの悪さを見ていると…一馬と遊海を思い出すよ…!むかつく一馬の姿を…しつこい遊海の無様な姿を!!】

 

《父ちゃんを…遊海さんを馬鹿にするんじゃねぇぇ!!》

 

(落ち着け遊馬!トロンの言葉に乗せられるな!)

大切な人達を貶され激昂する遊馬…アストラルは冷静に遊馬を制止する。

 

(…どうやら今の攻撃で勝利の方程式が見えてきた…!)

 

《なっ…!本当か!?》

絶体絶命の中、アストラルはコートオブアームズに対して1つの勝機を見いだす…だが…。

 

 

【フハハ!アストラル…まさか「コートオブアームズ」のORUが無くなったから…それで勝てるなんて思ってないよねえ?ボクは墓地に眠る「紋章獣ツインヘッド・イーグル」の効果発動!墓地にいるこのモンスターを除外することで「コートオブアームズ」のORUを2つ復活させる!】

トロンの墓地から光の玉が飛び出しコートオブアームズのORUに変化する…遊馬達は唯一の勝機を潰されてしまった…!

 

【いい加減諦めるんだねえ?ボクはカードを1枚伏せて、…ターンエンドだ!】

 

 

《はぁ…はぁ…はぁ…!》

 

(っ…!遊馬、大丈夫か…!?)

 

《くそっ…!これは、本格的にやばいぜ…ぐっ!?》

 

(遊馬!!)

遊馬は苦しげに膝をつく…長時間のデュエルにZEXAL化による消耗が遊馬に深刻なダメージを──……

 

 

 

 

ぐるるるる〜〜

 

 

 

《腹が…腹へった〜…》

 

(…何を言ってるんだ、こんな時に……)

 

《だって…ハラがへったんだからしょうがないだろ〜?》

…ダメージを受けたわけではなく、遊馬はお腹を空かせていた…時間は昼過ぎ、デュエル前に緊張のせいで昼食を食べ損ねた遊馬の空腹さは…限界を迎えていた。

…なお、あまりにも突飛で空気を読まない遊馬の言葉にアストラルは目を点にして呆れている…。

 

 

《……そうだ!これがあったんだ!!》ゴソゴソ

 

(それは…小鳥のデュエル飯!)

遊馬はZEXALの鎧から1つの包みを取り出す…それは小鳥が心を込めて握ったおむすびだった。

 

《ヘヘっ!小鳥印のデュエル飯!これがあったぜ!いただきまーす!!》

お腹の空いていた遊馬は大きなデュエル飯へとがっついた…。

 

 

【はぁ…呆れたね…デュエル中に食事なんて…】

あまりに空気を読まない遊馬の行動に流石のトロンも呆れてしまう…だが、たった1つのおむすびが小さな奇跡を起こす事を…彼は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬&アストラル

 

 

 

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ…!」

 

(……これは…?)

夢中でデュエル飯にかぶりつく遊馬、その様子を呆れた様子で見ていたアストラル…その手の中に遊馬が食べているのと同じデュエル飯が現れる。

 

(…いただきます…はむっ……これは…!?)

少し躊躇しながらデュエル飯を口にしたアストラル…その胸中になんとも言えない幸福感が広がっていく…!

 

(なんだ…この感覚は…!これが「美味しい」という感覚なのか…!?)

 

「そっか!アストラル、お前…()()()()()()()()()()()()()()!!」

アストラルの様子をみた遊馬がその事に気付く…2人は知らない事だが、アストラル世界の人間は基本的に食事を必要としない…だが、ZEXALとなって遊馬と感覚を共有したアストラルは食べる事の充実感を思いがけず知る事ができたのだ。

 

 

(これが食事というものか…!)

 

「ああ!『腹がへったら戦はできない』!昔の偉い人もそう言ってたんだぜ!」

遊馬とアストラルは夢中でデュエル飯を食べる…!

 

(不思議だ…!体の底から闘志が湧いてくる…!これが生きる実感…!!いま消えるかも知れないという瞬間にこの感覚…!面白い!遊馬!君といると実に面白い!!)

アストラルは少しずつ力を取り戻していく…生と死の刹那の中…たった1つのデュエル飯によって2人は元気を取り戻していく!

 

 

「勝とうぜ!アストラル!」

 

(ああ…!私はもっとデュエル飯が食べたい!大盛りで2つ…いや、3つだ!!そして生きる事をもっと感じたい!!)

 

「その調子だぜ!アストラル!!」

子供のように目を輝かせるアストラル…生の実感を得る為に…2人は勝利の道を歩み始める!

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

(遊馬!既に勝利の方程式は揃っている!私を信じろ!!)

 

《おう!オレの…いや、オレ達のターン!!》

闘志を取り戻したZEXAL…その右腕に再び光が集う!!

 

 

 

全ての光よ!力よ!再び我が右腕に宿り!希望の道すじを照らせ!

 

 

ファイナル・シャイニングドロー!!

 

2人の心が重なり、勝利の方程式を完成させる最後のピースを創造する!

 

 

(私が待っていたのは…このカードだ!!)

 

《オレはこのカードを手札から「ホープレイ」に装備する!来い!「ZW-風神雲龍剣(ストーム・ブリンガー)」!!》

空の彼方から機械仕掛けの龍が現れホープ剣と合体…風の力を纏う大剣となる!

 

 

【なっ…!?ゼアルウェポンの二刀流だと!?】

 

 

《「風神雲龍剣」を装備した「ホープレイ」の攻撃力は1300ポイントアップする!》

 

【攻撃力…5000だと!?】

 

《さらに「風神雲龍剣」を装備したモンスターは効果破壊の対象にできなくなる!さらに、「雷神猛虎剣」は自分フィールドの魔法・罠を破壊の対象にできなくする!つまり…どっちも破壊できないって事だ!!》

 

【なっ…!?「ZW」の相互に働く効果のせいで…「コートオブアームズ」の効果が封じられただと!?】

 

《そうだ!2つの「ZW」を装備した「ホープレイ」は…まさに無敵!いっけぇ!「ホープレイ」!「コートオブアームズ」に攻撃!ホープ剣ダブル・カオススラッシュ─!》

まさに無敵の戦士となったホープレイ…その一撃がコートオブアームズを両断する…だが、トロンは奥の手を隠していた…!

 

 

【ハハハ…!それはどうかなぁ!!】

 

《なにっ!?》

 

【罠カード発動!「爆風紋章(バースト・メダリオン)」!このカードはバトル中に君の場の魔法・罠を全て手札に戻し、バトルを終了させることができる!】

 

《しまった!!》

「破壊を介さない除去」…それがトロンの奥の手だった、遊馬の手札に2枚のゼアルウェポンが舞い戻る…!

 

 

【そしてさらに!「爆風紋章」の効果で手札に戻ったカード1枚につき、このターンの終わりに500ポイントのダメージを君たちに与える!】

 

《っ…!》

遊馬達の残りライフは50…受けるダメージは1000…!遊馬がターンを終えた瞬間に、トロンの勝利によってデュエルは決着してしまう…!

 

 

《それでも…それでもオレは諦めねぇ…!!諦めねたくねぇ!!》

絶体絶命…その状況でも遊馬の闘志が消える事はない…最後の一瞬まで…ライフが尽きる時まで…デュエルは終わらない!!

 

 

(よく言った遊馬…で、この状況を君ならどうするつもりだ?)

 

《えっ…それは……》

 

(フッ…相変わらず根拠はなしか…だが、()()()()()()()()()()()()()()()()!)

 

 

【見苦しいよ、アストラル!君達のバトルは終わったんだ!】

 

(言ったはずだ…既に()()()()()()()()()()()()()!)

 

【なに…?】

 

(いくぞ!遊馬!!)

 

《おう!アストラル─!!》

絶体絶命…だが、それは窮地ではない…なぜならアストラルには見えているからだ…勝利への道が…!

 

 

《魔法カード「ゼアル・カタパルト」発動!手札の「雷神猛虎剣」を特殊召喚!》

遊馬の手札から白虎がフィールドへと現れる!

 

 

【無駄なことを…!忘れたのか?「コートオブアームズ」の効果発動!フィールドにいる全てのモンスター効果を無効にし、その効果を吸収する!】

コートオブアームズの腕が白虎を貫く…だが、遊馬達は手を止める事はない!

 

《さらに!墓地の「アマリリース」の効果発動!このカードを除外する事でアドバンス召喚のリリースを1つ減らす事ができる!現れろ!「風神雲龍剣」!!》

遊馬達の場に機械仕掛けの龍が現れる!

 

 

【…だから、無駄だといったろう!「コートオブアームズ」の効果発動!「風神雲龍剣」の効果を奪え!…これで2体のゼアルウェポンの効果は吸収された!】

再び紋章神の腕が龍を貫く…!

 

【無駄な足掻きだったなぁ…遊馬!アストラル!】

 

《フッ…!()()()()()()()!!》

 

【なにっ…?】

アストラルと遊馬は不敵な笑みを浮かべる…!

 

 

(「雷神猛虎剣」と「風神雲龍剣」のレベルは…2体とも5…)

 

《これで条件は揃った!!》

 

【っ─!?まさか、2体のゼアルウェポンで!?】

 

《そのまさかだ!トロン!オレはレベル5の「雷神猛虎剣」と「風神雲龍剣」の2体でオーバーレイ!!》

遊馬とアストラルの逆転の秘策…それは…最強のゼアルウェポンを呼び出す事だった!!

 

 

《2体のゼアルウェポンでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!現れろ!「ZW-獣王獅子武装(ライオ・アームズ)」!!》

光の爆発と共に金色の鬣を持つ最強のゼアルウェポンが咆哮する!

 

 

 

【ゼアルウェポンの、エクシーズモンスターだと!?】

 

《このカードは「ホープレイ」がいる時、その装備カードとなり、攻撃力を3000アップさせる!さらに、この効果は無効化されない!!》

ホープレイが飛び上がり、百獣の王の鎧をその身に纏う!

 

《闘士が纏いしその衣…轟く咆哮、大地を揺るがし!たばしる迅雷、神をも打ち砕く!獣装合体 「ライオ・ホープレイ」!!》

ホープレイが纏うは最強の鎧…攻撃力5500を誇る究極のホープレイが誕生する!

 

 

【ぐっ…!だが、忘れたのか!?お前のターンの攻撃は終わっている!】

 

《いいや!「獣王獅子武装」の効果発動!「獣王獅子武装」を装備したモンスターはメインフェイズ2にもう一度だけ攻撃する事できる!》

 

【バカな!?1ターンに2度のバトルだと!?】

それが究極のゼアルウェポンの能力…勝利を掴む希望の力は…常識さえも捻じ曲げる!

 

 

【だが、ゼアルウェポンが一つになったことで、相互に働く無敵効果は消えたはずだ…!「コート・オブ・アームズ」の効果発動!見るがいい…これが「紋章神コート・オブ・アームズ」の真の姿だ─!】

ORUを喰らったコートオブアームズが真の姿へと変身する…両手は槍のように変化し、凶悪な牙と巨大な角を持つ異形の姿…それがコートオブアームズの真の姿だった…!

 

【これで相手フィールドに存在するカードを1枚、破壊できる!「ホープレイ」を噛み砕け!ゴッド・シャーター!】

 

《「獣王獅子武装」のさらなる効果を発動!このカードは1ターンに一度!相手モンスターの効果を無効にし、攻撃力を半分にする!!》

 

【な、そんな…馬鹿な!!】

獣王の鎧から放たれた炎が邪神の力を奪い去る!

 

 

 

《いっけぇ!「ライオ・ホープレイ」!ホープ剣トリプル・カオス・スラッシュ─!!!》

 

【馬鹿な…バカなぁぁぁぁ!!!!】

ライオホープレイは3本の大剣を使い紋章神を両断…長き決闘に終止符を打った…!

 

 

トロンLP0

 

 

ZEXAL WIN!!

 

 

 

 

 

 

「勝った…!遊馬が勝ったぁぁ!!」

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

『『『わああああ!!』』』

 

静まりかえったデュエルスタジアムに小鳥の声が響く…それが起点となってスタジアムが大歓声に包まれる!!

 

 

『つ、九十九遊馬が、勝った……ハッ!?第1回ワールド・デュエル・カーニバル!その優勝者は…九十九遊馬だぁぁ!!』

予想外の事態に呆然としていたMr.ハートランドの宣言がスタジアムに響く…長き戦いの末、遊馬は現時点での決闘者の頂点に立ったのだ…! 

 

 

 

 

…だが、それは…陰謀の序章でしかなかった…!

 

 

 

 

 

SideDr.フェイカー

 

 

『バイロンが敗れるか…だが、どちらが勝とうと関係はない…!いまここでナンバーズは全て私のモノになるのだから…!』

デュエルの勝敗を見届けたDs.フェイカー…彼は不敵な笑みを浮かべながら破滅へのスイッチを押した…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

ギィン…!バリバリバリバリ!!

 

 

 

「っ…!?な、なんだ!?」

 

【これは…!?】

デュエルの決着がついた直後…スフィアフィールドが凄まじいエネルギーを発しながら回転し始める…!

 

「いったい、何が起きて─」

 

 

ドクン!!

 

【「ぐうっ!?」】

それは突然の事だった…共に強い胸の痛みに襲われる遊馬とトロン…その胸元から彼らの持つ全てのナンバーズがスフィアフィールドの中心に吸い寄せられてしまったのだ…!

 

【くっ…!?させん、させないぞ!フェイカッ…ぐわああああああああ!?】

 

「トロン!!」

フェイカーの思惑を感じたトロンは咄嗟に紋章の力を使うが…遊馬とのデュエルで消耗し、弱体化した紋章の力は砕け…トロンはスフィアフィールドから放たれた電撃にその身を焼かれてしまう!

 

そして異変は収まらない、スフィアフィールドから放たれる凄まじいエネルギーが暴走…デュエルタワーを破壊し、スタジアムに破片が降りそそぐ…熱狂に沸くスタジアムは一転…最悪の災害現場へと変貌してしまう!

 

 

 

 

 

Sideジャック

 

 

 

「っ!?遊海が心配していたのはこの事か!!十代!!」

 

『わかってる!みんなを守るんだ!「サンダー・ジャイアント」!「フレイム・ウィングマン」!「ネオス」!!』

崩壊を始めるデュエルタワーを前に十代は精霊達を召喚…降りそそぐ瓦礫から人々を守る!!

 

 

「王者の鼓動!今ここに列を為す!天地鳴動の力を見るがいい!『レッドデーモンズ・ドラゴン』!!」

 

《グオォォン!!》

 

「我が魂よ!悪しき結界を打ち砕け!アブソリュート・パワー・フォース!!」

 

《ガアアアア!!》

レッドデーモンズドラゴンを召喚したジャックは遊馬を救う為に力を振るう…だが

 

 

ガキン!!

 

 

「っ…!?我が一撃が…!おのれ…!あと10年若ければ…!!」

スフィアフィールドはビクともしない、ジャック自身の力が全盛期よりも弱っている事もあるが…異世界科学の結晶であるスフィアフィールドが堅すぎるのだ…!

 

 

「っ…?あの光は…!」

その時、ジャックはスフィアフィールドから離れていく無数の光を見た…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

【うあ"あ"あ"あ"!!…ガハッ…】

スフィアフィールドによる攻撃を受けたトロンは壁へと叩きつけられる…力を失ったトロンはナンバーズの集合体となったスフィアフィールドの中心に吸い寄せられていく…!

 

 

「トロン─!!」

激しい風が吹き荒れる中…遊馬は咄嗟にトロンの腕を掴む!

 

 

「出てくれ!『雷神猛虎剣』─!!」

遊馬はそのままライトニングブレードをスフィアフィールドの壁に突き立てる…結界を破る事はできないが…なんとか遊馬は凄まじい吸引に耐える…!

 

 

【…遊馬……一馬…?】

意識を取り戻したトロンは必死に自分を助けようとする遊馬に一馬の姿を重ねる、今の状況は…奇しくも5年前のあの時と同じだった…。

 

 

 

 

「いったい…何が起きてるんだよ─!?」

ナンバーズが奪われた事による脱力感に苦しみながら遊馬は叫ぶ事しかできない…!

 

【遊馬、アストラル…スフィア・フィールドは、ナンバーズを全て回収するためのフィールドだ…!】

 

(なにっ!?)

 

「どういう事だよ!?」

遊馬とアストラルは事情を知るらしいトロンに問いかける。

 

【デュエルカーニバルで集まったナンバーズは、決勝戦に集結する…この絶好の機会をDr.フェイカーが逃すはずはないだろう…!】

 

「じゃあ…このフィールドは最初から罠…!?」

 

【そうだ!ヤツは我々が戦い、ナンバーズの力が高まるのを待っていたんだ!】

 

「くっそぉ…!そんな罠に飛び込んじまうなんて…!っ!?」

フェイカーの罠を見抜けなかった事を悔しがる遊馬…だが、考え込む暇はない…壁に刺さったライトニングブレードが抜けかかっているのだ…!

 

 

【手を離せ!このフィールドでは、僕は異物…このままでは君たちも!】

 

「嫌だ…!オレは絶対に諦めねぇ!!絶対にお前の手は離さない!」

遊馬はトロンを掴む腕に力を込める…!

 

【なぜだ…!?なぜ、僕を助ける…!?】

 

「当たり前だろ!?デュエルをやったら…仲間なんだよ!!」

 

【遊馬…】

 

「難しい事はわかんねぇ…けどデュエルは仲間を、絆を作ってくれる!だから…デュエルをしたら、()()()()()()()()()!!」

遊馬は叫ぶ、遊馬の信条…「デュエルをしたらみんなが仲間」…例え、それが憎い人物であろうとも、遊馬はその思いを曲げる事はないのだ…。

 

 

 

【…フッ…今、やっと分かったよ…君がなぜ諦めないのか…君たちのデュエルは、僕の復讐の先にあったんだね…】

トロンはようやく、九十九遊馬という少年を理解した…遊馬はようやく、トロンの心に巣食った憎しみという名の「悪魔」を祓らう事ができたのだ…。

 

 

 

【遊馬、僕は一馬や君のようには、生きられなかった…でも、全てをフェイカーの思い通りにはさせない…!僕が捕えた魂は…全て解放する!】

 

キィン─!

 

憎しみを捨てたトロンの身体から無数の光が飛び出していく…それはナンバーズと共に奪われた人々の魂…それがあるべき場所へと戻っていく…!

 

【これで、遊海以外の魂は…身体に戻った……お別れだ、遊馬…アストラル…僕は、自分の罪を償わなければ…】

 

「と、トロン!!トロン─!!」

トロンは遊馬の手をすり抜ける…そのまま彼は光の中へと消えていった…。

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

【(遊馬が離れていく…身体に力が入らない…これが、僕の…私の最後の力…!)】

トロンは自身の左手を見る…そこには子供達の魂…そして、純粋な紋章の力の結晶があった…。

 

 

【遊海…僕は、君を殺した…許されない事をした…でも、頼む…君が本当に不死身の英雄なら…僕を、僕達家族を救ってくれた遊馬を、守ってくれ…!!】

 

キィン─!

 

トロンは4つの光を解き放つ…その目に涙を浮かべながら…。

 

 

【身勝手な話だと怒ってくれてもいい…僕を許さなくてもいい…!それでも…遊馬を助けてくれ…最強の決闘者よ─!】

トロンはスフィアフィールドに完全に取り込まれる…その胸に希望と、家族の姿を刻みながら…。

 

 

 

 

『ごめんよ…みんな、もう…忘れないから…!』

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

ギィン─!バリバリバリ!!

 

 

 

「ア、アストラル…!?」

 

(遊馬─!)

 

「(う、うわああああ─!?)」

 

トロンを取り込んだスフィアフィールドは遊馬達を飲み込み…ハートランドタワーへと飛び去った…その場所に()()()()()()()と花吹雪を残して…。

 

 

 

 

 

 

 

これより始まるのは世界崩壊への序章…それを止める事ができるのは…。

 

 

 

「遊馬、待ってろ…!今行くからな…!」

 

 

「ハルト…!何処にいるんだ─!!」

 

 

「遊馬…!待ってて…!すぐに行くからね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン

 



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崩壊の序曲─目覚めし希望─

こんにちは!S,Kです!
 
ついに動き出したDr.フェイカー、凌牙達は囚われた遊馬とアストラルを助けられるのか…!


それでは…最新話をどうぞ!!


9/24 Mr.ハートランドの本名周りの文章を修整しました…ハートランドって本名だったのね…(汗)


「う…ううっ…?ここ、は…」

Dr.フェイカーの策略によって「スフィア・フィールド」ごと連れ去られ、気を失っていた遊馬は意識を取り戻す、姿はZEXALに変身したままであり…周囲はスフィアフィールドに覆われたままだった…。

 

 

 

『お目覚めかねぇ?九十九遊馬…そしてアストラルよ…!』

 

「っ…!Dr.、フェイカー…!」

遊馬が頭上を見上げる、そこには笑みを浮かべた細身の老人…Dr.フェイカーのソリッドビジョンが佇んでいた。

 

 

『さぁ…!最後の仕上げを始めよう、アストラル世界を滅ぼすという…最後の仕上げをなぁ…!!』

 

「最後の仕上げ…!?アストラル世界を滅ぼすって…どういう事だ!!」

トロンと同じように「狂気」を瞳に宿すフェイカー…遊馬はその目的を問い詰める…!

 

 

『クッ…!簡単な事だ…お前達にはアストラル世界を滅ぼす()()になってもらう!この「スフィア・フィールド砲」のなぁ…!』

 

「スフィアフィールド砲…!?」

 

(っ…!遊馬!下を見るんだ!)

 

「…ここは…あの時のゴミ処理場…!?」

フェイカーの言葉を理解できない遊馬にアストラルが注意を促す、遊馬達の現在地…それはハートランドの地下に造られた巨大なゴミ処理場だった…!

 

 

『フハハハ…!これから君達が向かうのはスフィアフィールド砲の発射台だ…!そしてその照準はアストラル世界に合わせてある…!』

 

「なに…!?」

 

(そうか…!「No.61」や「No.96」を回収した時に見えたビジョン…!あれはアストラル世界がフェイカーによって攻撃を受けていた記憶だったのか…!)

アストラルの中で点が一本の線に繋がる…ナンバーズを回収する中で見た「悲鳴をあげる世界」…それはフェイカーによって攻撃を受けるアストラル世界の姿だったのだ…。

 

 

『フフフ…今回の攻撃は今までの攻撃とはレベルが違う!このスフィアフィールドはナンバーズの力を集約させた弾丸…!それを撃ち放つ事でアストラル世界は砕け散るのだ─!!』

 

「そんな、そんな事の為に…カイトにナンバーズを集めさせたのか!!」

 

『それだけではない!WDCもナンバーズを集める為に開催した…カイトがバイロンに敗れたのは残念だったが…それも想定内の事だ…ようは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだからなぁ…!』

 

「…それじゃあ、オレも…トロンも、カイトやシャークも…Ⅲ達兄弟や参加者全員が…お前の道具だったって事かよ!!」

遊馬は怒りを叫ぶ…ナンバーズによって引き起こされたたくさんの悲劇…その元凶…それはフェイカーだったのだ…!

 

 

「ふざけんじゃねぇぞ…!テメぇぇ!!」

遊馬はフェイカーに殴りかかるが…それはソリッドビジョン…遊馬の拳は空を切る…。

 

「間もなく時は来る…!さぁ、()()()よ!これがお前の…最後の仕事だ!!」

 

「っ!?ハルト!?」

フェイカーの言葉に遊馬スフィアフィールドの外を見る、そこには虚ろな表情をしたハルトが立っていた…!

 

「ハルト!返事をしろ!!ハルト─!!」

遊馬はハルトに必死に声をかけるが…ハルトは反応を示さない…。

 

 

『さぁ、ハルトよ!お前自身が引き金となり…アストラル世界を滅ぼすのだ!!』

 

「ハルトが、引き金…!?」

 

(まさか、ナンバーズのエネルギーを弾丸として…ハルトの超能力で放とうというのか!?)

 

『もうすぐ、我が野望が叶う…!アストラル世界を滅ぼす事で、バリアンの力を得て…この世界を支配するという…我が念願が!!』

フェイカーの言葉と共にハルトがスフィアフィールド砲の銃身に取り込まれる…そしてハルトは苦しげな呻きと共に力を開放し始めた…!

 

「ハルト…!ハルトォォ!!」

ハルトの悲鳴が木霊する中…囚われた遊馬はハルトの名を叫ぶ事しかできなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side小鳥

 

 

 

ピピピ!ピピピ!

 

 

『小鳥ちゃん!返事をして…!小鳥ちゃん!!』

 

「明里さん!?」

 

『小鳥ちゃん…!無事だったのね!!今何処にいるの!?』

 

「私はいま…ハートの塔の、中にいます!!」

 

『ハートの塔って…!?なんでそんな所にいるのよ─!?』

 

「遊馬がきっと…ここにいるはずなんです!!」

 

サイレンが響く緊急事態のハートランドシティ…そんな最中、ナンバーズクラブの仲間達から抜け出した小鳥は遊馬を探す為にスフィアフィールドが飛び去った先…ハートの塔へと侵入していた。

そして…ナンバーズクラブから小鳥がいない事を聞いた明里は小鳥を心配して連絡を取ったのだ…。

 

 

「遊馬は、きっと…きっとこの場所にいる…!!」

 

『危険よ!早く避難して!!ハートの塔が崩壊し始めてる!!』

 

「わかってます!」

スフィアフィールドの影響か…ハートの塔は崩壊し始めていた…瓦礫が散乱する回廊を小鳥は必死に駆ける…その時…!

 

 

 

《カイト様!しっかり…しっかりするでありマス─!!》

 

 

「あれは…!?明里さん!また掛けます!!」

 

『ちょっ!こと─!』

通信を切った小鳥は積み重なった瓦礫に埋もれてしまったカイト、そしてカイトを必死に助けようとするオービタル7へと駆け寄る…。

魂を開放されたカイトはハルトの無事を確かめる為にハートの塔内を探し回っていたが…オービタルからハルトがスフィアフィールド砲の引き金となっている事を聞いて地下に向かう途中、崩落に巻き込まれてしまったのだ…。

 

 

 

「オービタル!大丈夫!?」

 

《お前は怪力女!なんでココに!?》

 

「遊馬を探しに来たの!それよりもカイトを助けなくっちゃ!!そっちの瓦礫を持って!!」

 

《か、カシコマリ─!!》

オービタルと小鳥は協力しながらカイトにのしかかる瓦礫を退かそうとするが…中学生の少女と小さなロボットでは大きな瓦礫を退かす事ができない…!

 

 

 

「小鳥、そこをどけ!」

 

「あっ…!シャーク!!」

 

《お前はあの時の!?》

 

必死に瓦礫を退かす小鳥達のもとに新たな助っ人が現れる…それは遊馬とのデュエルで怪我をして眠っていた凌牙だった。

決勝戦が終わる頃に目を覚ました凌牙は崩壊し始めるデュエルタワー、そしてハートの塔に飛び去った光に嫌な予感を感じ、この場所へと向かっていたのだ。

 

 

「俺が瓦礫を持ち上げる!その隙にコイツを引っ張り出せ!!」

 

「わかったわ!!」

凌牙の手を借りた小鳥とオービタルはなんとかカイトを助け出す事ができたのだった…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

《カイト様…!》

助け出されたカイト…幸いにも大きな怪我はしていないが、とても消耗してしまっている…。

 

 

「ありがとう、シャーク…」

 

「礼はいい…それより、ここは危ねぇ…ソイツを連れてこっから逃げろ」

凌牙は小鳥にカイトを託し、自分は先ヘ…遊馬のもとへ向かおうとする…。

 

 

「ぐっ…逃げるわけには、いかない…!」

 

《カイト様!?無理をしてはダメでありマス!!》

痛む体に鞭を打ちながらカイトは立ち上がる…。

 

「こうしてる間にも…ハルトが、苦しんでいる…!」

 

「えっ…!?ハルト君が!?どういう事なの!?」

 

《そ、それは……》

小鳥に問い詰められたオービタルは現在の状況を話し始める。

決勝の舞台であった「スフィア・フィールド」はアストラル世界を滅ぼす為の兵器「スフィア・フィールド砲」の弾丸であり、それを放つ為の引き金としてハルトが囚われている事…そしてスフィアフィールドの中には未だに遊馬達が閉じ込められているという事を…!

 

 

 

「スフィアフィールド砲だと…!?それは何処にある!?」

 

「…時間がない、行くぞオービタル」

 

「っ…待てよ!!まだ、話は終わってねぇ!!」

カイト達にスフィアフィールド砲の場所を問い詰める凌牙…だが、カイトは凌牙の言葉に耳を貸さずに背中を向ける…。

 

 

「…礼はいらないと言ってなかったか?オレは感謝の言葉は持ち合わせていない…それとも、デュエルの申し込みか?それも後に─」

 

「違う!!…俺は礼が欲しい訳でも!お前とデュエルしたいって訳でもねぇ!!俺は遊馬を助けたいだけだ!!…遊馬はオレと父さんの代わりにトロンを倒してくれた…何より…俺は()()を助けたいんだ!!」

 

「シャーク…!」

カイトは思いを叫ぶ…自分を顧みず凌牙をナンバーズとトロンの呪縛から救い、トロンを倒してくれた遊馬…凌牙は今も苦しんでいる遊馬を見捨てられなかったのだ…。

 

 

「おい!教えろロボット!スフィアフィールド砲は何処から発射される!?」

 

《ロボッ…!?今までで一番酷い!?オイラには「オービタル7」という名前が有るでありマス!!》

凌牙はオービタルを問い詰める…そんな時…。

 

 

《フォウ!》

 

「フォウ…!?」

 

「えっ…フォウ君!?ついて来ちゃったの!?」

凌牙の怒鳴り声が聞こえたからか…小鳥のポーチに隠れていたフォウが飛び出してくる…どさくさに紛れて隠れていたようだ。

 

《な、なんでありマスか?この仔猫は…?》

 

《フォウ、フォーウ…キュ〜…》

ポーチから飛び出したフォウはつぶらな瞳でオービタルを見つめる…。

 

 

《か、カワイイ……なんだか罪悪感が…か、カイト様〜…》

 

「…お願い、カイト!私も遊馬を助けたいの…もちろんハルト君の事も…!遊馬もハルト君の事をずっと心配してた!その事はあなたもわかってるでしょ…!!」

 

「っ…」

フォウにたじろぐオービタル…そして小鳥はカイトに問いかける、遊馬はカイトと共にハルトを一生懸命に助けようとした、その姿を思い出したカイトは…

 

 

「…スフィアフィールド砲は地下のゴミ処理場にある、そこに遊馬もいるはずだ…ついてくるなら勝手について来い…行くぞ!オービタル!」

 

「…!ありがとう、カイト…!」

 

《フォーウ!!》

カイトは小鳥達に遊馬が囚われている場所を伝える…そして一緒に走り出した…!

 

 

 

 

 

 

 

「この先が…ゴミ処理場だ!!」

崩落したハートの塔を駆け回る事しばらく…最短ルートが崩落していた為に明里の力を借りながら…小鳥達はついにゴミ処理場へ到達する…!

 

 

 

 

『フフフ…!やはり来てしまったねぇ、カイト…!弟の苦しむ声が聞こえてしまったかなぁ…?』

 

「貴様…!Mr.ハートランド!!」

ゴミ処理場への扉を抜けた先…そこでは醜悪な笑みを浮かべたMr.ハートランドがゴンドラに乗って待ち受けていた…!

 

 

「っ…!ハルト!!」

 

「遊馬!!アストラル!!」

 

《フォウ─!!》

そのハートランドの頭上…そこにスフィアフィールドに閉じ込められた遊馬…そしてスフィアフィールド砲の銃身に取り込まれてしまったハルトが囚われていた。

 

「はぁ…はぁ…!ぐぅぅ…!」

遊馬はZEXALの姿で苦しげに蹲っている…スフィアフィールドによってアストラルの力が吸収され、それが遊馬にも影響を与えているのだ…。

 

 

『Dr.フェイカーの邪魔をする者は…誰であろうと容赦はしない…!さぁ!やってしまいなさい!()()()()達よ!邪魔者を掃除してしまいなさい!!』

 

[[[オソウジ!オソウジ!オソウジ!]]]

 

「オボット!?」

ハートランドがステッキを輝かせる…それと共に周囲の扉からハートランドの清掃を担うロボット…「オボット」の大群が現れる。

ただし、手にしているのは箒や塵取りではない…身体を変形させ、鎌やノコギリを構えながら向かって来るのだ!!

 

 

「気をつけろ!今のオボットにセーフティはない!!迎え討て!オービタル7!!」

 

《カシコマリ!オービタル、バトルモード!!》

カイトはオービタルに指示を出し、自身もオボット達に立ち向かう!

 

 

「父さん直伝の喧嘩殺法を喰らえ!!おらぁぁ!!」

凌牙は高い身体能力と遊海に学んだリアルファイトでオボットを蹴り倒す!

 

 

「お、おりゃあああ〜!!」ガッシャーン!

 

《フォ!?》

 

《おお!?なかなかやるでありマス!》

小鳥はカイト達が倒したオボットの残骸でオボットを叩き壊す…あまりに見事な一撃にフォウも驚いている…。

 

 

[[[[オソウジ!オソウジ!オソウジ!]]]]

 

「クソっ…!キリがねぇ!!」

 

「このままでは、ハルトが!!」

しかし、オボットの大群は減るどころか数を増して子供達に襲いかかる…その数に子供達は追い詰められてしまう…!

 

 

『案ずる事はないよカイト…ハルトは立派に役に立つ!父であるDr.フェイカーの役に立つのだ…!あの子もきっと本望だろう…!』

 

「貴様…!ふざけるな!!」

ハートランドの言葉にカイトは怒りを叫ぶ…だが、ハートランドは意に介していない…。

 

『ふざけてなどいない…!私は()()()()()()!Dr.フェイカーの長年の願いが間もなく達成されようとしている…!それは私の夢にも繋がる…!!私はDr.フェイカー様に全てを賭けて来たのだから!!』

ハートランドは嬉々として語る…!

 

『だから…誰にも邪魔させる訳にはいかない!君達には九十九遊馬と共に消えてもらう!!さぁ…開くがいい!地獄の門よ!!』

 

キィン─ゴゴゴゴゴゴ…!

 

「な、なんだ!?」

ハートランドのステッキの光と共に凌牙達の立つ地面が揺れ始める、凌牙達の立つ場所…それこそがスフィアフィールド砲の発射口…アストラル世界への異次元の扉に繋がっていたのだ!!

 

 

『この下はアストラル世界に繋がっている…お前達とも永遠にオサラバだ!』

 

「チィ…!奴め!俺達をゴミと同じように放り出すつもりか!?」

ゴンドラで高みの見物をしながらハートランドは眼下を見る…少しずつ床は壁の中へと消えていく…!

 

『さぁ…奴らを叩き落とせ!!』

 

[[[オソウジ!オソウジ!オソウジ!!]]]

ハートランドはオボットに指示を飛ばす…オボット達は子供達を排除する為に自身を顧みずに襲いかかる!

 

 

「きゃあ!」

 

「っ…!小鳥!!」

無限に襲いかかるオボット達…その魔の手が武器を取り落とした小鳥に迫る!

 

 

「(誰か…誰か、助けて…!!遊馬─!!)」

迫る凶刃に思わず目を瞑る小鳥…その刃は小鳥を…

 

 

 

《フォウ…!フォォーウ─!!!》

 

 

 

キン──

 

 

 

一陣の風が小鳥の肌を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えっ…()()…!?」

目を瞑っていた小鳥が感じたのは凍えるほどの寒さだった、恐る恐る目を開けると全てのオボット、そしてオボットの出入口が氷結し、その動きを止めている…。

 

 

『な、なんだ!?何が起きている!?』

 

「この力は…まさか…!!」

ゴンドラの上で狼狽するハートランド…そして凌牙は気付いた、世界でこんな事ができるのは……()()()1()()()()だと!

 

 

《キュオオオン!!》

 

『なんだ…!?この咆哮は…!』

ゴミ処理場にモンスターの咆哮が木霊する…。

 

《超、超高エネルギー反応が急速接近…!このパターンは…!!》

 

《キュオオオン!!》

オービタルの声と共にゴミ処理場の上部から白銀のドラゴンが降下する…!その背中から1人の男が飛び降りた!

 

 

「どうやら、ギリギリ間に合ったみたいだな…ありがとうフォウ、お前の声が聞こえたおかげだ…」

 

《フォウ!キュウゥゥ〜!》

 

「あ、ああ…!」

フォウが小鳥から離れ、白銀の鎧を纏った男に嬉しそうに擦り寄る…。

 

「貴方は…!」

 

「と、父さん!!」

 

 

「悪かったな、お前達…遅くなったが、こう言わせて貰おう…もう大丈夫!俺が来た!!」

虹色のエネルギーを纏いながら…白波遊海はその声を響かせた…!

 

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

 

……落ちる……堕ちる…おちる……どこまでも、落ちていく…

 

 

 

 

何もない「無」の世界…魂を砕かれた遊海はそこを落ち続けていた…否、正確には落ちているのか、昇っているのか…それすらも判らなかった。

 

 

 

……静かだ…なんの音もしない…たくさん、やらなきゃならない事が…あった気が、するのに……

 

 

 

 

……ねむい…なんだか、つかれた…おれは……だれ…だっけ…?

 

 

 

少しずつ…『白波遊海』を形作っていた「自我」が消えていく…それと共に魂が色を失い、透明になっていく。

 

 

 

 

……ああ……おれは、わすれちゃダメなのに…もう、からだが、いうことを、きかない………ごめん…●●●…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─よぅし!間に合った!!悪いけど…君はまだ消えちゃダメだよ!君をたくさんの人々が待っているからね!─

 

 

 

 

 

 

…だ、れ…?

 

 

無の世界に優しげ…なのに、どことなく軽い感じの声が響く…。

 

 

 

─自我が薄れているけど…まだ大丈夫だ…!○○○君!自分をしっかり意識するんだ!遊馬少年がトロンを見事に打ち負かして改心させた!そして…彼が、君の()()が助けを求めている!─

 

 

 

……息、子…?

 

 

 

─ああ、もう!魂を引き締めるんだ!事態は君が知るよりも性急だ!君が生き返らないと…()()()()()()()()()よ!?─

 

 

せかいが、ほろぶ…?

 

少し焦ったように声が叫ぶ…それと共に魂に少しずつ「色」が戻っていく…!

 

 

 

─よしよし…!今から君に「紋章」の力を流し込む!それで君の魂は復元し、体に戻るはずだ!─

 

その言葉と共に遊海の前に虹色の光が現れる…。

 

 

 

『…まったくよぉ…せっかく逃してやったのに、どうして無茶に無茶を重ねるんだよ…?ほら、迎えに来たぜ』

 

 

─…ごめん…?─

遊海は突然聞こえてきた声に謝罪する…。

 

 

 

『記憶も摩耗してるのか…まっ、体に戻ればなんとかなるだろう…行こうぜ()()…ここからは我達の見せ場だ!』

 

キィン─!

 

遊海が虹色の光に触れる…その瞬間、膨大な記憶が魂に流れ込んだ…!

 

 

 

 

 

 

「……ああ、本当に悪かった、ユウスケ…行こう、俺達の息子を…そして遊馬を助けに!!」

 

 

 

 

 

─あ、ここでの事は起きたらたぶん覚えてないからね〜─

 

 

 

 

「『え』」

 

 

 

 

なんとも締まらない声をあげながら…遊海の視界は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

 

「あっ…!?デュエルタワーが!!」

遊海の亡骸を前に失意に沈んでいた翠が悲鳴をあげる…窓から遠くに見えていたデュエルタワーが崩れ去り、遊馬を取り込んだスフィアフィールドが消え去ってしまったのだ…。

 

 

「行かなきゃ…!遊馬君を…凌牙君を、助けなきゃ…ぐぅ…!?」

 

「『翠さん!?』」

部屋から聞こえた声に飛び込んできた流星達が見たのは…窓際で倒れ込んでしまった翠の姿だった…。

 

 

『翠さん!しっかりしてください!!』

 

「行かなきゃならない、のに…!体が…!」

 

《…翠…マスター亡き今…私の性能は低下しています…先程の回復では…翠が戦えるほどの回復はできていないのです…!》

 

「そん、な…!?」

流星に助け起こされた翠はアヤカの言葉に顔を覆う…トロンとの戦闘によるダメージと遊海を失った事による精神的動揺のせいで…翠は戦えるような状態ではなかったのだ…。

 

 

 

『…翠さん!指示をください!僕達にできる事はありますか!!』

 

「アタシ達は遊海さんが必死に戦っていたのに…見てる事しかできなかった!…だから、なんでも言ってくれ!」

 

「流星君…海亜ちゃん…!」

流星と海亜は覚悟を決めていた…遊海の力になれなかった後悔を少しでも活かせるように…!

 

 

「…海亜ちゃん、ジャック君に連絡を取って…!流星君は遊星君に状況を…っ!?」

 

「っ…!?な、なんだぁ!?」

 

ビュオオ…サラサラサラ…

 

 

翠が2人に指示を出そうとした瞬間…開いていた窓から花吹雪が部屋へと入り込む…!

 

 

『花…吹雪…!?いったい何処から…あっ!?』

部屋の中で吹き荒れる花吹雪、その中で流星は見た…花吹雪の中…遊海の中に虹色の光が入り込む瞬間を…!

 

《っ…!?今の光は…!まさか!!》

 

 

ドクン…

 

 

それは小さな変化だった、青白かった遊海の肌…そこに暖かな色が戻り…そして…

 

 

「う、うぅ…?俺…は…?」

 

 

 

「『えっ…!?ええぇぇ─!?』」

 

「あ、ああ…!遊海さん…遊海さん─!!」

 

《マスター…!!》

全ての生命を燃やし尽くしたはずの遊海が…息を吹き返したのだった…!

 

 

 

 

SideOut

 

 

Side遊海

 

 

 

 

「…ここ、は…?」

俺は目を覚ました…だが、体が重い…それに、記憶が混濁している…ここは…何処なんだ…?

 

 

「遊海さん…遊海さん─!!」

 

「ゴフッ─!み、翠─!?」

 

状況を把握しようとしていた遊海の思考は一瞬で吹き飛ぶ、なぜなら…遊海が息を吹き返した事で感極まった翠が遊海に飛び付いたからだ…。

 

 

遊海さんのバカバカバカ─!!!なんで貴方は1人で無茶ばっかりするんですかぁぁ!?

 

「み、翠…ごめ……重…ガクッ」

目を覚まして早々…遊海は再び気を失うハメになった…。

 

 

 

 

「『…嘘でしょ…?』」

流星と海亜は思わぬ復活劇にただただ呆然としていた…。

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

「…そういう事か、俺は…死んでたのか…」

アヤカによって叩き起こされた遊海はそれぞれに状況を確認する…それによって自分が死んでいたらしい事、そしてWDCの顛末を知る…。

 

 

『遊海さん!僕達に手伝える事はありますか!』

 

「…海亜、お前は翠に付いていてくれ…流星、お前は…()()()()?」

 

『へっ…!?』

流星は遊海の思わぬ言葉に目を点にする…。

 

「なんだか…嫌な予感がする、お前にはすぐに連れて来て欲しい奴がいる…頼めるか?」

 

『…はい!!』

流星は遊海にまっすぐ返事を返した…!

 

 

 

 

 

「翠…行ってくるよ」

 

「はい…!でも、無理は禁物ですよ!!」

流星を送り出した遊海は鋼の鎧を身に纏う…

 

 

『…待て、遊海』

 

()()…」

遊海の病室…そこに声が響く、それは備え付けのモニターからだった…。

 

 

『そんなボロボロの身体で…戦いの場に向かうつもりか?』

 

「これが…俺の役目だからな…それに、息子を守るのは…親の役目だろ?」

 

『フン…ならば俺にはお前を止める権利はないな…だが、約束しろ、この一件が片付いたら俺のもとに来い…いいな?』

 

「りょ〜かい…じゃ、行ってくる!!」

 

「遊海さん!気をつけて!!」

遊海は病室の窓から飛び降りる…そして閃光竜と共にハートの塔へと向かった…!

 

 

 

 

「み、翠さん…?今の、声って…!?」

 

「…みんなにはナイショにしておいてね、海亜ちゃん」

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

『馬鹿な…!メタルナイトだと!?貴様はトロンに敗北して昏睡状態だったはず…!?』

 

「フッ…助けを求める声があるのなら…俺はあの世からでも飛んで来るのさ!」

狼狽するハートランドを遊海は睨みつける。

 

 

「さて、Mr.ハートランド…いや、敢えてこう呼ぼうか?闇デュエル界の四悪人が1人!詐欺師、ノエル・ハートロウ・ハートランド!!通称『蝿紳士』!!」

 

『ぐうっ…!?何故、何故その事を─!?』

 

「Mr.ハートランドが…詐欺師…!?」

遊海のさらなる指摘にハートランドは動揺し、小鳥は驚く。

 

 

「そう、コイツはお金持ち専門の詐欺師…上手く整形や情報操作で警察の手からは逃げ延びたらしいが…俺の目は誤魔化せない!」

 

『ッ─!?私の過去を知られたからには…生かしてはおけない!!貴様もアストラル世界へと落ちてもらうぞ!厄介なヒーローもどきめ!!』

 

「どうやって俺を倒すつもりだ?お前の手駒は全て凍らせたぞ?」

 

『無論…デュエルでだ!トロン如きに敗れるヒーローなど…私の敵ではない!!』

 

「ああ…痛い所を突くなぁ…なら、名誉挽回といこうか!!」

遊海とハートランドはそれぞれにデュエルディスクを構える!

 

 

「父さん!」

 

「フッ…心配するな凌牙!すぐにコイツを倒して…遊馬も助ける」

心配げに名前を呼ぶ凌牙に遊海は穏やかな声で返す。

 

「もう少しの辛抱だからな…頑張れ、遊馬…!!」

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP4000

Mr.ハートランド LP4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『聖騎士の三兄弟』を召喚!」

3人組の兄弟騎士が現れる! ATK1200

 

 

「『三兄弟』の効果発動!このターン『聖騎士』モンスターしか特殊召喚できなくなる代わりに手札から2体の聖騎士モンスターを特殊召喚できる!現れろ!『聖騎士アルトリウス』!『聖騎士ベディヴィエール』!」

茶髪の青年騎士と白髪の騎士が現れる ATK1800  1600

 

 

「そして『ベディヴィエール』の効果発動!デッキの『聖剣EX-カリバーン』を墓地に送る!そして俺はレベル4の『聖騎士アルトリウス』と『聖騎士の三兄弟』の2体でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!」

聖騎士達が銀河へと飛び込む!

 

「聖騎士を率いる常勝の王よ…今こそ王道を突き進め!『聖騎士王アルトリウス』!!」

威厳のある重厚な鎧を纏いし騎士王が現れる! ATK2000

 

 

「『聖騎士王アルトリウス』の効果!このモンスターがエクシーズ召喚に成功した時!墓地の『聖剣』装備魔法を3枚まで装備できる!俺は墓地の『EX-カリバーン』を装備!さらに手札から『聖剣カリバーン』と『天命の聖剣』を装備!!」

3本の聖剣が騎士王に力を与える! ATK2000→2500

 

「『聖剣カリバーン』の効果発動!このカードを装備したモンスターの攻撃力は500アップし、1ターンに1度ライフを500ポイント回復できる!」

聖剣の癒やしの力が遊海のライフを回復させる。

 

遊海LP4000→4500

 

 

「俺はこれでターンエンド!」

遊海LP4500

アルトリウス(カリバーン・EXカリバーン・天命) ベディヴィエール 手札2

 

 

 

「すごい…!一気にモンスターを揃えたわ!」

 

「『聖騎士』デッキは父さんの愛用してるデッキの1つだ…!ハートランドなんて敵じゃねぇ!」

鮮やかな展開に小鳥達は目を輝かせる…!

 

 

『フン…!流石はヒーローデュエリスト、見事な手際ですが…貴方は私に勝つ事はできない!!その理由を教えて差し上げましょう…!』

 

「気をつけろメタルナイト!Mr.ハートランドはフェイカーにデュエリストの育成を一任されていた男だ!何をしてくるかわからないぞ!」

不敵な笑みを浮かべるハートランド…彼はカイトやドロワ達ナンバーズハンターとなるデュエリストを育てた男…その実力は…。

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!!』

『まずはキミを私のホームグラウンドへと招待しよう!フィールド魔法「ランド・パワー」を発動!』

フィールド魔法の発動と共に周囲の景色が夢の王国…ハートランドへと塗り変わる!

 

『そして私は「ハートン」を召喚!』

ハートマークのような体型の豚型モンスターが現れる ATK1500

 

『私が「ハート」の名の付くモンスターをした事で「ランドパワー」の効果発動!手札から「ハートマト」を特殊召喚!』

ハート型のトマトの帽子を被った妖精が現れる ATK1400

 

 

『そして私はレベル4の「ハートン」と「ハートマト」の2体でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!』

 

82

 

『現れよ!「No.82」!キュート&ストロングなハートのドラゴン!「ハートランドラコ」!』

ハートランドのフィールドに「82」の数字を持つ、ピンク色のドラゴンが現れる! ATK2000

 

 

「な、ナンバーズ!?」

 

「チッ…!隠し持っていたか…!」

ナンバーズの登場にカイト達は警戒を露わにする…!

 

『隠す?ノンノン!このナンバーズはフェイカー様から預かっていたのだ!ナンバーズはナンバーズでしか破壊されぬ!つまり、ナンバーズを持たないキミでは…私に勝つ事は不可能なのだよ!「ハートランドラコ」の効果発動!ORUを1つ使い効果発動!このターン、他のモンスターの攻撃を封じる代わりにこのモンスターはダイレクトアタックできる!』

 

「なっ…!?攻撃力2000のダイレクトアタックだと!?」

 

「クッ…!」

強力なダイレクトアタック効果を持つナンバーズが遊海に襲いかかる!

 

 

『バトルだ!「ハートランドラコ」でプレイヤーへダイレクトアタック!ハート・バーニング・フレイム!!』

 

「つ…!ぐああぁぁ…!?カハッ!!」

聖騎士を飛び越えたドラゴンが遊海に火炎弾を吐きつける…そして直撃を受けた遊海は吹き飛ばされ、氷像になっていたオボットに叩きつけられた…!

 

遊海LP4500→2500

 

 

「父さん!!」

 

『ククク…!やはり本調子にはほど遠いようだねぇ…!そんな身体で私に立ち向かうとは…本当に命知らずな男だ…』

攻撃を受けた遊海の鎧が砕け、ボロボロの黒ジャケットの姿が露わになる、虚勢を張ってはいたが…遊海自身も既に戦える状態ではなかったのだ…。

 

「コフッ…ああ、俺は元からそういう性格でね…!これくらいの傷は…問題ねぇんだよ!!」

遊海はハートランドを睨みながら立ち上がる…!

 

『フン…これだから正義の味方は嫌いなんだよ…まるでゴキブリのように何度でも立ち上がってくる…!私は永続魔法「フィールド・バリア」を発動!さらにカードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

 

Mr.ハートランド LP4000

ハートランドラコ  ランドパワー フィールドバリア 伏せ2 手札0

 

 

 

 

「父さん!大丈夫か!?」

 

「心配するな…大丈夫、まだ戦える…!ちょうどいい、眠気覚ましだったよ…!」

ふらつく遊海に凌牙が叫ぶ…それでも、遊海の精神は揺らがない…!

 

 

《フォウ…キュ〜…!(特別意訳:遊海…無理しちゃダメだよ…!もう倒れちゃいそうじゃないか…!)》

 

「フォウくん…ありがとう、危ないから小鳥ちゃんの所に行ってるんだ…俺は…もう、負けない!」

心配げに寄り添うフォウに遊海は決意を伝えた…!

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー!!」

「『カリバーン』の、効果発動!ライフを500回復する!」

聖剣の魔力が遊海のライフを癒やす…。

 

遊海LP2500→3000

 

 

『ククク…ライフを回復しても無駄無駄ぁ!お前の命がほんの僅か伸びただけ…そして「ハートランドラコ」は私のフィールドに魔法カードがある限り攻撃対象にはならない!まさに鉄壁だ!』

 

「それは…やってみなければわからない!俺は『伝説の預言者マーリン』を召喚!!」

《さて…夢のように片付けようか》

 

遊海の目の前に魔法陣が描かれ…その中から()()()()()を羽織った青年が現れる ATK1400

 

「ん…?(イラストと…違うような…?)」

遊海は目を擦る…目の前のモンスターはマーリンだが()()()()()()()()ような気がしたのだ。

 

《おっと…うたた寝してしまったようだね…さぁ、我が主よ(マイロード)…考え込んでいるヒマはないよ?》

 

「ああ…うん…?(なんだか頭がモヤモヤする…戦いに集中しないと…!)」

遊海はマーリンが話している事に()()()()()()()にデュエルを再開する。

 

 

 

「『マーリン』の効果発動!自身をリリースする事でデッキから聖騎士モンスターを特殊召喚する!現れろ!『聖騎士トリスタン』!」

《では…とある悲しみの騎士の話をするとしよう!》

マーリンが杖を振るう…すると花吹雪と共に堅琴を持つ悲しげな顔の騎士が現れる! ATK1800

 

 

「そして『ベディヴィエール』のさらなる効果発動!『アルトリウス』に装備された『EX-カリバーン』を『トリスタン』に装備し直す!それにより『トリスタン』の効果発動!このカードが装備魔法を装備した時!相手フィールドの表側表示のカードを破壊する!」

 

『無駄だ!永続罠「ナンバーズ・ウォール」を発動!自分の場のナンバーズモンスターはカード効果では破壊されなくなる!』

   

「なら、『フィールドバリア』を破壊!痛哭の幻奏(フェイルノート)!」

トリスタンが手にした堅琴をかき鳴らす…すると遊園地を覆っていたバリアが消え去る!

 

 

「『アルトリウス』の効果発動!ORUを1つ使い!装備している『聖剣』の数だけ相手フィールドの魔法・罠カードを破壊する!風王鉄槌(ストライク・エア)!」

 

『くっ…!よくも私の王国を!!』

アルトリウスの聖剣から暴風が放たれ…華やかな遊園地とナンバーズを守るバリアを吹き飛ばす!

 

 

「バトルだ!『アルトリウス』で『ハートランドラコ』を攻撃!勝利すべき黄金の剣(カリバーン)!!」

 

『くぅ…!だが、「ハートランドラコ」は破壊されぬ!』

黄金の光がピンクのドラゴンを貫く!

 

Mr.ハートランドLP4000→3500

 

 

「俺はこれで、ターンエンド!」

遊海LP3000

アルトリウス(カリバーン・天命) トリスタン(EXカリバーン)ベディヴィエール 手札2

 

 

『死にぞこないのヒーローめ…!引導を渡してやる!』

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『まずはその邪魔な装備カードに消えて貰おう!魔法カード「ハーピィの羽箒」を発動!相手フィールドの魔法・罠を全て破壊する!』

 

「『聖剣カリバーン』と『天命の聖剣』の効果発動!1ターンに1度、このカードが破壊された時!このカードをフィールドの聖騎士モンスターに装備する!2枚の聖剣を『アルトリウス』に再装備!」

 

『おのれ…姑息な真似を!!』

フィールドに風が吹き荒れる…だが、聖剣は再び王の手に舞い戻る!

 

 

『だが…これならどうだ!「ハートランドラコ」の効果発動!ORUを1つ使い、ダイレクトアタックできる!ハートバーニング・フレイム!!』

 

「ぐっ…!?うわあぁぁ…!!」

再び放たれた火炎弾が遊海を吹き飛ばす…!

 

遊海LP3000→1000

 

 

『これで終わりではない!私は罠カード「オーバーレイ・ユニット・リボーン」を発動!自分の墓地にエクシーズ召喚に使われたモンスターが2体いる時!その2体を特殊召喚する!甦れ!「ハートン」!「ハートマト」!』

墓地から2体のハートモンスターが復活する! ATK1500 1400

 

 

『私はレベル4の「ハートン」と「ハートマト」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!』

 

 

52

 

「現れよ『No.52』!アメイジング&ハードな輝く鋏!『ダイヤモンド・クラブ・キング』!!」

ハートランドの場に巨大な金剛石を背負う巨大な蟹が現れる! DEF3000

 

 

「2体目のナンバーズ…!?」

 

『これこそが私の切り札…!次のターンでお前はジ・エンド!ターンエンド!!』

Mr.ハートランド LP3500

ハートランドラコ ダイヤモンドクラブキング 手札0

 

 

 

 

「はぁ…!はぁ…!流石、に…キツイか…!」

遊海は立ち上がる…だが、その身体は満身創痍…立ち塞がるのは2体のナンバーズ…絶体絶命である…!

 

『ククク…先に「ダイヤモンドクラブキング」の効果を教えてやろう…このカードはORUを使い、守備力を0にする事で攻撃力を3000にできる…そして攻撃したエンドフェイズに攻撃力は0となり、守備力が3000に戻る…まさに、最強の「盾」にして最強の「矛」となるナンバーズなのだ!!』

 

《そ、そんな効果、卑怯でありマス─!!》

強力な効果にオービタルは思わず叫ぶ…。

 

『卑怯で結構!デュエルに勝つ為ならば何をしても許されるのだよ─!!(そして…次のターンで貴様はおしまいだ、メタルナイト…!)』

ハートランドはデッキトップを見る…ハートランドのDゲイザーには仕掛けがしてあり、カードを透かして見る事ができる…デッキトップは「ブラック・ホール」だった…!

 

 

「(冷静になれ…まだ、勝機は残ってる…)」

遊海は墓地を見る…墓地には「聖剣EXカリバーン」がある…それによって遊海は聖騎士の切り札モンスターを出せる状況にある…だが、それでは()()()()と直感していたのだ。

 

「(ナンバーズはナンバーズでしか戦闘破壊できない…だが「ANo.」を使うのは悪手だ…どうする…!)」

 

 

─深く考える事はないよ、君は既に()()()()()()()()

 

キン─

 

「っ─!?この光は…!」

遊海の脳裏に声が響いた瞬間、エクストラデッキが光を放つ…そこには、()()()()()()()()()()()()があった…!

 

─さぁ、君の新たな力を…世界を救う「王」の姿を見せておくれ!僕は…君の()()姿()が大好きなんだ!─

 

 

 

「…わかった、誰だかは知らないけど…この力、使わせてもらう!」

 

『何をゴチャゴチャと…!早くターンを進めるがいい!ヒーローモドキ!!』

傷ついても傷ついても立ち上がる遊海の姿にハートランドは苛立ちを露わにする…!

 

 

「ヒーローモドキ…ああ、そうさ…俺はヒーローじゃない、俺は…人々を守る、決闘者だ!!」

 

キィン─!

 

その瞬間、遊海は全ての迷いを捨て去り…自身の象徴である赤の衣装に身を包む!!

 

 

『き、貴様…その姿は、まさか!?』

 

「俺は決闘王…白波遊海!大切な子供達を守る為に…俺は貴様を倒す!!」

遊海の周りに強い風が吹き荒れる!

 

 

《メタルナイト…白波遊海のエネルギー値が急速上昇…!》

 

「見ていろ凌牙!これが俺のゼンリョクだ!!俺は…俺自身でオーバーレイ!!」

 

『なんだと!?』

遊海の身体から飛び出した光と闇のエネルギーがフィールドを駆け抜ける!

 

 

世界に満ちる優しきと安寧の…我が身に宿り、未来を紡げ!!ランクアップ・エクシーズチェンジ!

 

 

光と闇のエネルギーは混ざりあい…ビックバンを起こす!

 

 

絆の極地!希望を護る者…NEXUS!!

 

 

遊海の体が再構成され進化を遂げる…赤いロングコートに黒き鎧、赤い帽子に金と青のオッドアイ…この姿こそ、遊海の辿り着いた決闘者の境地…NEXUS!

 

 

《フォ…!フォーウ!!》

 

「父さんが…変身した…!?」

 

「暖かい光…すごい…!」

 

「この力は…遊馬とアストラル…ZEXALと同じ力か…!?」

遊海の変身したNEXUSの姿に子供達は圧倒される…!

 

 

 

『なっ…!?NEXUSだと!?なんだ…何なのだその力は─!?』

 

《この姿こそ…俺が紡ぎ繋いだ絆の軌跡…!さぁ、ラストターンだ!!》

遊海はハートランドと決着をつける為に立ち向かう─!!

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

「この、光は……遊海!?」

 

(それだけじゃない…!小鳥やシャーク、カイトもいる…!)

スフィアフィールドの影響で苦しんでいた遊馬達は眩い光に目を向ける…そこにはMr.ハートランドとデュエルする遊海…そして様子を見守る小鳥達の姿があった…。

 

 

《遊海のあの姿…あれは…ZEXALの力だ…!》

 

「ははっ…先生は…本当に、スゲぇ…!なら、オレも…諦めねぇぞ…!!!」

希望の光を放つ遊海…その光は消えかけた遊馬の光に再び火を灯した…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

最強決闘者のデュエルは全て必然!ドローカードすら決闘者が創造する!シャイニング・ドロー!!

 

希望を導くカードが光の軌跡と共にドローされる!

 

 

《俺は墓地の装備魔法「聖剣EX-カリバーン」の効果発動!!墓地のこのカードを除外する事で「聖騎士」エクシーズモンスターを素材として新たなエクシーズモンスターをエクシーズ召喚する!》

 

『なっ…!?墓地から魔法!?しかもエクシーズモンスターでのエクシーズ召喚だと!?』

 

《俺は「聖騎士王アルトリウス」を素材にオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズチェンジ!!》

アルトリウスの周りに神々しい光が集まり…再誕する!

 

《王道を歩む常勝の王よ…聖なる光と共に邪悪を裂く英雄となれ!『神聖騎士王アルトリウス』!!》

邪悪を祓う神の力を宿した騎士王が堂々と降臨する!ATK2200

 

 

《「アルトリウス」の効果発動!エクシーズ召喚に成功した時!墓地の聖剣を3種類まで装備できる!墓地の「カリバーン」と「天命の聖剣」を装備!さらに、手札から「聖剣ガラティーン」を装備!その効果により攻撃力を1000アップする!》

三本の聖剣がアルトリウスに力を与える!

 

アルトリウスATK2200→2700→3700

 

 

『新たなエクシーズモンスター出したところで無駄だ!ナンバーズは破壊されん!!』

 

《ああ、そうだな…だが、それはナンバーズへの過信が過ぎるぞ、ハートランド!!》

 

『なに?』

 

《俺はレベル4の『トリスタン』と『ベディヴィエール』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!》

遊海の言葉と共に2体の騎士が銀河へと飛び込み…白紙のカードが開眼する!

 

 

 

 

《現れろ!『No.∞』!俺が歩みし戦いのロード…今こそ未来を切り拓け!!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!》

 

『なっ…!?な、なんだそのナンバーズは─!?』

現れた数字は「∞」…アストラル由来ではない、新たな力が遊海の場へと現れる!

 

キン─!

 

《これは…あの時の…剣?》

光が収まり「No.∞」の姿が露わになる…それは地面に突き刺さる巨大な剣…凌牙の精神世界でシャークドレイクを退けた斧剣だった。 ATK2500

 

 

『ハ…ハハハハ!!御大層な登場をしたと思えば…ただの「剣」とは!?お笑いにも程があるぞ!!ハハハハ!!!』

ハートランドはゴンドラの上で笑い転げる…ステータスがダイヤモンドクラブキングに及ばない「No.∞」を完全に見下していたのだ…。

 

 

《『決闘の守護者』の効果発動!このカードがエクシーズ召喚に成功した時、カードを1枚ドローできる!そして『アルトリウス』の効果発動!ORUを1つ使い!相手フィールドのモンスター1体を破壊する!砕け散れ!『ダイヤモンドクラブキング』!カリバーン・スラッシュ!!》

 

『な、なんですと─!?』

騎士王が巨大な蟹に斬りかかり、両断する!

 

《これで『盾』は消え去った!バトル!『アルトリウス』で『ハートランドラコ』を攻撃!束ねるは星の息吹…輝ける命の輝きを受けてみろ!約束されし勝利の剣(エクスカリバー)!!》

 

『ぐっ、ぐおおお─!?』

アルトリウスの持つ聖剣に膨大なエネルギーが集中…強烈な光の斬撃となってハートランドラコを斬りつける!

 

Mr.ハートランド LP3500→1800

 

 

 

『ぐっ…だが、「決闘の守護者」の攻撃力は2500…!「ハートランドラコ」が破壊されてもライフは残る!!』

 

《バトルだ!「決闘の守護者」で「ハートランドラコ」を攻撃!その瞬間、効果発動!ORUを1つ使い、自身の攻撃力をバトルする相手モンスターの攻撃力または守備力…そのどちらか高い数値分アップし、貫通能力を得る!願いを力に(ウィッシュトゥパワー)!!》

 

『なんだとぉぉぉ─!?』

ORUを取り込んだ『決闘の守護者』の水晶が砕け散る…その中から現れたのは…初期型のデュエルディスクを彷彿とさせる巨大な剣だった…!

 

決闘の守護者ATK2500→4500

 

 

《『決闘の守護者』で『ハートランドラコ』を攻撃!!…これが俺の希望!絆の一撃!勝利へ導く決着の剣(デュエルカリバー)!!》

攻撃を宣言した遊海がフィールドへと駆け出し剣を抜刀…膨大な魔力を宿した剣でハートランドラコを切り裂いた…。

 

 

『ば、馬鹿な…!?馬鹿なあああああ…!!』

 

 

Mr.ハートランド LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

「や、やったああ!!遊海さんが勝った!!」

 

「デュエリストが自分で攻撃するモンスター…!スゲぇ…!!」

 

「あれが、伝説の決闘者の力…!!」

デュエルが決着し子供達が歓声を上げる!!

 

 

『くっ…!能ある鷹は爪を隠すどころか…虎の尾を踏み抜いていたと、は…!?』

 

ガクン!キュルルルル……

 

『えっ、ちょっ…!?ちょっと待って!?』

デュエルの決着と同時にハートランドの乗るゴンドラが異音と共に降下する…その先は異世界への扉である…!

 

 

『だ、誰か!!フェイカー様!!た、助けてぇぇぇぇ…!!

 

《自業自得だ、ゼロからやり直して来い》

Mr.ハートランドは情けない声をあげながらアストラル世界へと落ちていった…。

 

 

 

《ふぅ…やっぱり病み上がりは、ダメ、だな…》

 

「父さん!!」

デュエルが決着し、遊海は僅かに力を抜く…そこへ凌牙達が駆け寄ってくる。

 

 

《凌牙…小鳥ちゃん、カイト…よく子供達だけで耐え抜いた、そのおかげで…俺も間に合った!あとは遊馬とハルトを助け出すだけだ》

 

 

【いいや…既に手遅れだよ、白波遊海!】

 

 

ピピッ…バシュン!!

 

《ガハッ…!?》

 

「遊海さん!!」

部屋に響き渡る不気味な老人の声…それと共に遊海の胸がレーザービームに貫かれる!!

 

 

「貴様…!Dr.フェイカー!!」

 

【カイトよ、私の事を裏切るとはな…私は悲しいぞ…】

ゴミ処理場の壁面が開いていく…そしてコントロールパネルに座したDr.フェイカーが姿を現した…!

 

 

【心配しなくてもいい…それはただの麻痺光線だ、しばらく身動きは取れんだろうがなぁ…!】

 

「くそっ…油断、した…!」

 

「父さん!しっかりしろ!!」

凌牙に体を支えられた遊海のNEXUS化が解ける…。

 

【ハートランドが時を稼いだおかげでスフィアフィールド砲のエネルギー充填が完了した!これが…アストラル世界の最後だ─!!】

 

「ゆ、遊馬!アストラル─!!」

スフィアフィールド砲が凄まじい唸りをあげ始める…!

 

 

 

 

「フッ…()()()()()()()()…!!」

 

 

バチン

 

 

【な、なに─!?】

 

「電気が、消えた!?」

フェイカーがスイッチを作動させようとした瞬間、ハートの塔の全ての電源がダウンする!

 

《か、カイト様!ハートランドに電力を供給している「モーメント」が停止したようでありマス!!》

 

【な、なんだと─!?】

変化はそれだけでは終わらない、非常用バッテリーが作動し部屋の明りが点灯するが…スフィアフィールド砲に繋がれていたハルトのエネルギー値が半分ほどに減っていたのだ。

 

 

「フフフ…ハハハハ…!して、やったりだ…!」

 

【貴様…キサマ!!いったい何をした!白波遊海─!!】

弱々しく笑う遊海をフェイカーは問い詰める…!

 

 

「フェイカー…お前が造ったこの街は、本当にいい街だ…!火力発電所はなく、全体の発電力の4割は自然エネルギー…そして、残り6割は()()()()()による発電だ…!時間稼ぎをしてたのは…()()()だったんだよ…!唯一()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の作業時間を稼ぐ為にな…!!」

 

【ま、まさか…!?間に合うはずがない!!】

 

「フッ…!決闘王を、舐めないで貰おうか…!!」

遊海はあまり見せない…悪い笑顔を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

Ark Cradle

 

 

 

[緊急停止コードの入力を確認…モーメントをシャットダウンします…]

 

ハートランドシティ近郊のモーメント発電所…ある男だけが知る緊急停止コードが書き込まれたモーメントはその動きを停止する…。

 

 

 

 

『じ、じいちゃん!モーメントは…!』

 

「ああ、無事に停止したよ…間に合っていればいいんだが…」

 

『よ、よかった〜…』

作業を終えた老人…不動遊星は額の汗を拭う…その様子を見た流星は安堵して座り込んだ…。

 

 

《急がせてしまって申し訳ありません、ユウセイ》

 

「いや、大丈夫だよフレア…久々に生身で空を翔んだのは少し肝が冷えたけどな…」

遊海は不意に感じた()()()()に従い、流星とフレアの力で遊星をハートランドシティのモーメントへ向かわせていたのだ…。

 

 

『でも…大丈夫なのかな…?モーメントからの電力供給が切れたら街が混乱するんじゃ…』

 

「その点は心配ない…ハートランドシティの発電は太陽光や風力、波力などたくさんの発電施設と蓄電設備がある、影響があるとすれば…遊園地とモノレール…あとは一度に電力を大量に使う兵器…ぐらいだろうな」

 

『それならよかったけど…いつまでモーメントを止めてるの?』

 

「…遊海さんか翠さんから安全確認の連絡が来るまでだな、それまでにいつでもモーメントを動かせるようにして……これは…!?」

 

『どうしたの?』

モーメントの再稼働の為にコンソールを操作していた遊星が手を止める…。

 

 

「このモーメント…フォーチュンシステムから切り離されている…!?しかも、一定以上の電力が消費された時…()()()()()()()()()()()プログラムが仕込まれている…!」

 

『ええっ!?それって…!』

 

「…危うく『ゼロ・リバース』の再来が起きる所だった…!遊海さんの直感は…これを感じていたのか…!」

冷や汗を拭った遊星は急いでフォーチュンシステムとの接続、そしてプログラムの改変を始めた…。

 

 

 

「(誰だ…?いったい誰が、こんな恐ろしい事を…!)」

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

【おのれ…おのれおのれおのれ─!!】

遊海の妨害を受けたDr.フェイカーは凄まじい勢いでコンソールを操作する…!

 

 

「ははっ…コフッ…!今だ、アストラル!!ZEXALを解け!!」

血を吐きながら…遊海はアストラルへと叫んだ…。

 

 

 

 

 

Side遊馬&アストラル

 

 

 

 

(っ…!スフィアフィールドの力が弱まった…!ZEXALを解くぞ!)

 

「アストラル!?」

遊海の叫び…そしてスフィアフィールドの影響が弱まった事を感じたアストラルはZEXALを解除…遊馬と分離する!

 

 

(…行くんだ、遊馬…遊海が繋いでくれた、この一瞬を無駄にするな…!)

 

「な、何を言ってんだよ!?行くならお前も一緒だ!!」

アストラルは遊馬にスフィアフィールドから逃げるように伝える…アストラルも共に行こうと言う遊馬に対してアストラルは首を横に振る…。

 

 

(それはできない、私はもはや…このスフィアフィールドの中でしか存在できなくなっている…何故なら、私は()()()()()()()()()だからだ…)

 

「そんな…!?」

スフィアフィールドの力に侵食された結果…ナンバーズのオリジナルであるアストラルは外部に出られない程に衰弱してしまっていた…。

 

 

(遊馬…君に「希望」…そして「未来」を託す…!)

 

「これは…『ホープ』と『シャークドレイク』…!?」

アストラルはスフィアフィールド内にあるナンバーズ…その中の2枚を遊馬へと託す。

 

 

(行くんだ遊馬、行ってハルトを助け…アストラル世界を救ってほしい…!)

 

キン─!

 

「あ、アストラル!?アストラル─!!!」

遊馬に希望を託したアストラルは遊馬を仲間達のもとへと押し出した…。

 

 

(君に…未来を託す…頼んだぞ、遊馬…)

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

キィィン─

 

 

「うわあぁぁ…!?イテッ!!」

 

「遊馬!?」

 

「遊馬…!!」

スフィアフィールドから青い閃光が放たれた瞬間…アストラルによってスフィアフィールドから逃された遊馬が仲間達の近くへと落下した…!

 

 

「よぉ…遊馬…よく、頑張ったな…」

 

「遊海…小鳥…シャーク…カイト…!」

遊馬は辺りを見回す…そこには少し安心した様子の仲間達がいた…。

 

 

【おのれ…余計な事をしてくれたな、白波遊海…!だが、問題はない…!予備バッテリーから電力を供給すればいいだけの話だ…!】

少し苛ついた様子のフェイカーが遊海を睨みつける…!

 

 

「そうはいかないぞ、フェイカー…俺はもう、戦えないが…ここには、お前を止められる勇者達がいる…!そうだろう?遊馬、凌牙、カイト…!」

 

「遊海…そうか、アストラルがオレにナンバーズを託したのは…!!」

遊馬は手にしたナンバーズを見る、それは残された最後の希望…強大な敵に立ち向かう為の力だったのだ。

 

 

「シャーク!カイト!!オレに…オレに力を貸してくれ!!アストラルに託された『希望』と『未来』を守るんだ!!」

遊馬はカイトと凌牙に協力を頼む…!

 

 

 

「…小鳥、父さんを頼む…!」

 

「う、うん!!」

凌牙は体の自由を奪われた遊海を小鳥へと託す…。

 

 

「凌牙…頼んだぞ、遊馬を支えてやってくれ…!」

 

「ああ、父さんが作ってくれたチャンスは…無駄にしねぇ!!」

 

 

 

「ハルト…お前もオレに託してくれるんだな…!」

カイトは兄弟の絆…「超銀河眼の光子龍」を見つめ…覚悟を決めた…!

 

 

「オレ達の覚悟は決まったぜ…!みんなの未来を懸けて…デュエルで勝負だ!Dr.フェイカー!!」

『希望皇ホープ』を掲げた遊馬、『シャークドレイク』を掲げた凌牙、『超銀河眼』を掲げたカイト…3人の若き勇士達はDr.フェイカーへと全てを賭けた決闘を挑む!!

 

 

【いいだろう…!エネルギーが再充填され、システムが復旧するまでの時間潰しに丁度よい…!よかろう、相手になってやる!】

余裕を取り戻したDr.フェイカーは3人を見下ろし…決闘を受け入れた…!

 

 

 

 

 

 

「(遊馬、凌牙、カイト…見せてくれ、お前達の繋いだ…絆の力を…!)」

途切れそうな意識を必死に繋ぎ止めながら…遊海は3人の勝利を祈った…。




オリジナルナンバーズ紹介



No.∞ 決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)

光属性 戦士族 
レベル4×2
ATK2500  DEF2000


このカードは「No.」モンスターとの戦闘以外では戦闘破壊されない。このカードの属性は「闇」としても扱う。
①このカードがX召喚に成功した時に発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。
②このカードが戦闘を行うダメージステップ時にX素材を一つ取り除いて発動できる、このターンのエンドフェイズまで、このカードの攻撃力をこのカードと戦闘する相手モンスターの攻撃力または守備力どちらか高い数値分アップし、攻撃力が守備力を上回った時、その数値分のダメージを相手に与える。
この効果は相手ターンでも発動できる。
③このカードがフィールドから墓地へ送られた時に発動できる。自分のライフを1000払う事で墓地のこのカードを特殊召喚し、自分の墓地のモンスター1体をエクシーズ素材にする。この効果はデュエル中1度しか発動できない。




武器型モンスター 攻撃時はプレイヤーが直接相手モンスターへ攻撃する。


見た目 初代決闘盤の意匠を持つ大剣、数字はライフカウンター部分に刻まれている。
また、初登場時は力が封印され水晶の斧剣(Fateのヘラクレスの石斧)のような見た目だった。


デザインコンセプト

・白波遊海の実力を最大限に発揮する「武器」

・白波遊海のオリジン

・「決闘の守護者」とは遊海自身の事を指している。

・「∞」とは数多の可能性を秘めた進化の証


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最終決戦!Dr.フェイカーVS未来を守る三勇士!

こんにちは!S,Kです!


遊海が繋いだ希望のバトンは…三勇士へと受け継がれる。

遊馬達は闇を斬り裂き、光を掴む事ができるのか…!


それでは最新話をどうぞ!


「遊海さん!大丈夫ですか…!?」

 

「くっ…すまない、小鳥ちゃん…それから、オービタル、だったか…体の自由が、効かない…俺を壁に、寄りかからせて、くれ…」

 

《任せるでありマス!》

睨み合うDr.フェイカーと遊馬達を前に俺は地面に倒れ込んでいた…フェイカーに受けた麻痺光線…正確には高電圧のレーザーの直撃を受けた俺の肉体は完全に麻痺…指を動かす事すらできなくなっていた…。

 

 

「(NEXUS化の副作用も相まって…意識が落ち…そうだ…全身、ズタボロ…どちらにしても…NEXUSが解けた時点で、行動不能だった、な…)」

『NEXUS』は凄まじい力を持つ形態だが…その分、消耗は精霊アーマーの比にならないほど大きい。

今の遊海は全身重度の筋肉痛のような痛みと倦怠感に襲われたうえで、ハートランドとのデュエルで負った複数箇所の骨折と火傷…さらに感電による全身麻痺に加え、負荷を掛けすぎた魂にも罅が入り…危険な状態に陥っていた。

 

 

《キャウ…キュゥゥン…》ペロペロ

 

「ありがとう、フォウ…心配して…くれてるんだな…大丈、夫…少し、休めば…動ける、はずだ…」

心配そうに自分の頬を舐めるフォウに遊海は語り掛ける…消耗しているせいでスピードは遅いが、少しずつ遊海の傷は治癒を始めている…。

 

 

「(これ…帰ったら、翠のお説教確定コースだなぁ…)」

 

《(マスター、今は遊馬達の戦いに集中しましょう…それから、私からもマスターにはたくさん言いたい事がありますので…覚悟しておいてくださいネ…?)》

 

「(…ハイ…)」

壁に寄りかかった遊海はそんな事をアヤカと話しながら決闘へ目を向けた…。

 

 

 

 

 

 

 

【フフフ…ハハハハ!貴様達がこの私に何ができる…!この場で叩き潰してやろう!!】

 

「冗談じゃねぇ!!叩き潰れるのはお前だ!!」

 

「アンタとは…ここで決着をつける!!」

 

「お前のくだらない野望…ぶっ潰してやる!!」

遊馬達と睨み合うDr.フェイカー…彼は不敵な笑みを浮かべながら立ち上がる…。

 

 

【よかろう…!このワシに盾突いた事…後悔させてやろう!!】

 

ギィン─!バリバリバリ!!

 

「な、なに!?」

 

【うおぉおぉおぉ…!!でりゃあああああ!!】

 

立ち上がったフェイカーにスフィア・フィールド砲から溢れ出したエネルギーが降りそそぐ、ハルト由来のバリアンの力…さらにナンバーズの力がフェイカーへと流れ込む、そして細身であった彼の肉体を半ばサイボーグの筋骨隆々の大男へと変貌させた…。

フェイカーは服の下に強化スーツを着込んでおり…そのスーツが膨大なエネルギーによって活性化したのだ…!

 

 

 

【さぁ…3人纏めて掛かってくるがいい!!】

 

「くっ…!負けてられっかよ!いくぜ!シャーク!カイト!!」

 

「「おう!!」」

異形化したフェイカーに動揺しながらも遊馬は止まらない、3人は共にアストラルを…ハルトを、そして世界を守る為に立ち向かう!!

 

【「「「デュエル!!」」」】

 

 

 

デュエルダイジェスト Dr.フェイカー対遊馬&凌牙&カイト

 

 

フェイカーLP12000

 

遊馬

凌牙LP4000

カイト

 

特殊ルール

変則タッグフォース

 

フェイカー→遊馬→凌牙→カイト→フェイカー……

 

 

 

 

 

@フェイカー

 

【私のターン!ドロー!…見せてやろう、我が魂の決闘を!!】

ドローカードを確認したフェイカーは不敵に笑う…!

 

 

【私は手札から「ガーベージ・オーガ」を墓地に送り、効果発動!デッキから「ガーベージ・ロード」を手札に加える!そして「ガーベージ・ロード」はライフを1000払う事で特殊召喚できる!私は手札の3体の「ガーベージロード」を特殊召喚!!】

 

「「「なんだって─!?」」」

 

「っ…!海馬社長や、カイザーじゃ、ねぇんだぞ…!」

遊馬達が驚く中…3体のゴミの法衣を纏ったモンスターが現れる、そのレベルは…5!

 

 

【私はレベル5の「ガーベージロード」3体でオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイネットワークをを構築…エクシーズ召喚!!】

 

 

53 

 

 

【これが「No.」の頂に立つ最強のナンバーズ…! 超然の鎧を纏い、世界を震撼させよ!現れろ!「No.53 」!「偽骸神 Heart-eartH(ハート・アース)」!!】

フィールドに嵐が吹き荒れる…その中より現れるのは異形の悪魔、巨大な塔のようなナンバーズだった…。

 

 

「攻撃力…100だと?」

 

「このモンスターは…いったい…?」

現れたモンスターの攻撃力は僅か100…だが、凌牙とカイトは警戒する…!

 

【ククク…我がナンバーズはお前達の魔法・罠・モンスター効果を受けつない…!私はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!】

 

 

 

「よっしゃ…!最初はオレだ!!」

ターンを終えたフェイカーの前に遊馬が立つ!

 

「っ…!待て、遊馬!奴のナンバーズ…()()あるぞ!」

 

「わかってる!でも、じーっとしてたってどーにもならねぇ!効果が効かないなら…攻撃するしかねぇ!」

無鉄砲に行こうとする遊馬に凌牙が待ったをかける…だが、遊馬も無策ではない…カード効果が効かないなら攻撃あるのみ…それは決して間違いではないからだ。

 

 

【フフフ…最初の相手はお前か、九十九遊馬…お前から叩き潰してくれる!】

 

「そうはいくかよ!今のオレにはシャークがいる!カイトがいる!!アストラルが居たからできた…仲間がいる!待ってろ!アストラル!すぐに助けてやる!!」

遊馬は囚われたアストラルへと叫ぶ…仲間との絆を背負い、遊馬は戦う!

 

 

 

 

@遊馬

 

 

 

 

39

 

 

「現れろ!「No.39」!オレとアストラルの絆の力!『希望皇ホープ』!!」

《ホォォープ!!》

遊馬の場にアストラルから託された最後の希望が現れ、雄叫びをあげる!

 

【現れたな「希望皇ホープ」…!だが、私はこの瞬間を待っていた!永続罠「バトル・ルート」を発動!その効果により、私の場にモンスターが存在する時、相手のモンスターは必ずバトルしなければならない!】

 

「チッ…!やっぱりバトルによって発動する効果か…!」

凌牙がフェイカーの発動したカードを見て舌打ちする…!

 

 

「悩んでたって…仕方ねぇ!!いっけぇ『ホープ』!『Heart-eartH』を攻撃!ホープ剣スラッシュ!!」

明らかに誘われた攻撃…遊馬はそれに乗り、攻撃を仕掛ける!

 

【向こう見ずは一馬と同じという訳か…愚かな!『Heart-eartH』の効果発動!このカードが攻撃を受ける時!墓地のモンスターを装備できる!私は墓地の『ガーベージオーガ』を装備!これにより『Heart-eartH』の攻撃力はバトルする相手モンスターの元々の攻撃力分アップする!】

 

「なにっ!?」

 

「つまり…『Heart-eartH』は攻撃力が低くても、攻撃されれば…()()相手の攻撃力を上回るって事か!!」

凌牙がHeart-eartHの効果を知って声を上げる…言ってしまえば劣化版「邪神アバター」とも言える効果…それが遊馬達に襲いかかる!

 

 

【これで「Heart-eartH」の攻撃力は2600となる!喰らえ!フェイク・バーン!!】

Heart-eartHから強力な熱線が放たれる!

 

「させるかぁ!『ホープ』の効果発動!ムーン・バリア!!」

しかし、遊馬もただ黙って攻撃を受ける訳がない…『ホープ』の効果で自身の攻撃を無効化し、熱線を跳ね除ける!

 

「よし…!今だ!遊馬!!」

 

「おう!!オレは速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』を発動!モンスターの攻撃が無効になった時!攻撃力を2倍にしてもう1度攻撃できる!!」

それは遊馬が数多の敵を倒した必殺コンボ…それがフェイカーへと炸裂する!

 

「いっけぇ『ホープ』!!『Heart-eartH』にもう1度攻撃!ホープ剣ダブルスラッシュ!!」

二刀流となった必殺の一撃がHeart-eartHの両腕を切り落とし、爆散させる!

 

 

 

「いょし!!これがオレの希望だ!!」

 

【ククク…やるではないか、だが…貴様の希望など私の前ではゴミ同然…!粉々に掃き捨ててやるわ!!私は「Heart-eartH」の効果発動!】

 

「「なにっ!?」」

爆煙の奥から余裕の笑みを浮かべたフェイカーが現れ…Heart-eartHの効果を発動させる!

 

 

【「Heart-eartH」は装備したモンスターを墓地に送る事で破壊を無効にできる!!】

 

「なんだって!?」

ホープに切り落とされたHeart-eartHの腕が瞬く間に再生される!

 

 

【さらに!「Heart-eartH」が装備カードを墓地に送った時!変化した数値の半分のダメージを与える!】

 

「なっ…!?うわあぁぁ─!?」

 

「遊馬─!!」

装備カードを捨てた事で攻撃力が100に戻っていたHeart-eartH…遊馬達に1250のダメージがゴミの竜巻となって襲いかかる!!

 

 

【さらに!ORUを使った「Heart-eartH」の効果発動!このモンスターが相手に効果ダメージを与えた時!ORUを1つ使い、その数値分だけライフを回復する!】

 

「っ…!このナンバーズ、ライフ回復能力まで…!」

遊馬が苦心して与えたダメージ…その半分が回復されてしまう…!

 

 

 

(「効果耐性に攻撃力アップ、そして効果ダメージにライフ回復…まさに『最強のナンバーズ』…!」)

その時、奇しくも遊海と囚われたアストラルは同じ事を考えていた…。

 

 

「だが…『無敵』のカードなんて、ない…!弱点を見極めろ…!ぐぅっ…!?」

 

《フォウ…!!》

痛みに表情を歪めながら遊海は遊馬達を見つめた…。

 

 

 

 

 

「っ…オレ、は…カードを伏せて…ターンエンド…!」

攻撃で吹き飛ばされた遊馬はなんとかターンを終える…そして2番手は…。

 

 

「フッ…相変わらず下手くそなデュエルだな遊馬…だが、上出来だ…!あとは任せろ!」

 

「シャーク…!」

強力な効果を前に一歩も引かなかった遊馬…その想いを胸に凌牙が立ち向かう!

 

「(見つけたぜ、父さん…最強のナンバーズ…その『弱点』を!!)」

 

 

@凌牙

 

 

 

 

32 

 

 

 

「現れろ!『No.32』!『海咬龍シャーク・ドレイク』!!」

凌牙の場に最強の『牙』が現れる…それはアストラルに託された『未来』を守る力、回収された事で完全に凌牙の力となったシャークドレイクが牙を剥く!

 

 

「遊馬、お前のデュエルがヒントをくれた…見ていろ!俺は装備魔法『シールド・フィン』を『希望皇ホープ』に装備!」

ホープが魚の尾ビレのような盾を装備する!

 

 

「バトルだ!『希望皇ホープ』で『Heart-eartH』を攻撃!」

 

【フン…!お前の攻撃など…この天才(ジーニアス)には届かん!『Heart-eartH』の効果発動!墓地の『ガーベージオーガ』を装備し、『ホープ』の攻撃力分アップする!喰らえ凌牙!貴様もゴミくずとなって消えるがいい!フェイクバーン!】

再びHeart-eartHの効果が発動…ホープへと襲いかかる!

 

 

「フッ…!この時を待ってたぜ!!」

 

【なに…?】

 

「俺は「シールドフィン」の効果発動!バトルフェイズ中に相手がモンスター効果を発動した時!装備モンスターの元々の攻撃力を0にし、戦闘では破壊されなくなる!」

ホープが構えた盾が光を放ち熱線を受け止める…それがHeart-eartHの弱点となる!

 

 

「確かにダメージは受けるが…僅か100!これで『Heart-eartH』は攻撃力アップ効果を使い切った!そして攻撃力が変化しなければ()()()()()()()()()()()()()!」

 

【ムッ…!】

Heart-eartHの僅かな隙を突いた凌牙…その牙がフェイカーへと食らいつく!

 

「吼えろ!『シャークドレイク』!『Heart-eartH』を攻撃!デプス・バイト!!」

シャークドレイクから放たれた鮫の光線がHeart-eartHへと食らいつく!!

 

 

【フフハハハハ…!!飢えた鮫が僅かな血の匂いを嗅ぎつけたか…!だが!その程度の傷では私には効かん!!「Heart-eartH」の効果発動!装備カードを捨てて破壊を無効にする!】

 

「また直っちまった!!」

Heart-eartHは再び身体を再生し立ち塞がる!

 

 

【貴様の希望も廃棄してくれる…!私は「Heart-eartH」のさらなる効果発動!1ターンに1度!ORUを1つ使う事で受けたダメージのその半分を相手に与える!この天才(ジーニアス)の裁きを受けよ!!】

 

「なっ…馬鹿な!?うわあああ…!!」

 

「シャーク!!」

再び放たれたゴミの竜巻が凌牙を吹き飛ばす…!

 

 

「ぐっ…!奴のライフ回復を…相手へのダメージにも変えられるのか…!」

地面に叩きつけられ立ち上がれない凌牙…しかし、その想いは…

 

 

「貴様らの思い…オレが受け継ぐ…!」

 

「カイト…!」

怒りに燃える男へと託された…!

 

 

 

 

@カイト

 

 

 

「今度はオレの番だ!Dr.フェイカー!!」

 

【カイト…!愚かな息子だ…まさか私に楯突くとはなぁ…!お前も叩き潰してくれる!!】

 

「うるさい…!オレは必ずアンタをぶっ飛ばし、ハルトを救う!!」

フェイカーとカイト…思いを違えた親子の対決が始まる!

 

 

 

「闇に輝く銀河よ…希望の光となりて我がしもべに宿れ!光の化身、ここに降臨!!現れろ!『銀河眼の光子竜(ギャラクシー・アイズ・フォトン・ドラゴン)』!!」

《ギャオオン!!》

 

カイトのエース…魂たるドラゴンが咆哮を轟かせる!

 

 

《おぉ…!「ギャラクシーアイズ」が!!》

 

「ああ…!『ホープ』『シャークドレイク』『ギャラクシーアイズ』…遊馬達の絆が1つになって…みんなのエースモンスターが並んだ!!」

小鳥が嬉しそうに呟く…時にぶつかりあい、時に協力し合った3人の決闘者達…その絆がフェイカーを倒す希望となる!

 

 

「…遊馬、凌牙、カイト…大丈夫…お前たちなら、きっ…と…あいつ、を…──」

 

《フォウ…?フォウ!フォーウ!!!(特別意訳:遊海…?しっかりして!まだ寝ちゃダメだ─!!)》

 

「ゴフッ─!?」

 

 

 

 

【さぁ、カイト…愚かな息子よ!掛かってくるがいい!!】

 

「望むところ(ズキン)っぐぅ…!!」

 

「カイト!?」

 

《カイト様!?》

フェイカーに立ち向かおうとしたカイト…だが、体を襲った激痛に膝をついてしまう…!

 

 

「構うな…!なんでもない…!」

 

「なんでもないって…お前…!」

ふらつきながら立ち上がるカイト…その様子を見たフェイカーは笑う。

 

 

【どうやらナンバーズハンターとしてのお前の体は既に限界のようだな…!】

 

「ふ、ふざけんな!!カイトは…お前のせいでこんな体になったんだろうが!!それでもアンタは…カイトの父ちゃんなのかよ!!」

フェイカーに遊馬が叫ぶ…カイトはハルトの為に命をすり減らして戦い続けてきた…それによってカイトの身体はいつ壊れてしまってもおかしくない状態だった。

 

 

「Dr.フェイカー…アンタの嘘によってオレと『ギャラクシーアイズ』の誇りは穢されてきた…今こそ、その償いをしてもらうぞ…!」

 

【フッ…お前にできるのかな?カイト…この状況から…!】

息も絶え絶えの様子でフェイカーを睨むカイト…彼は必死に考えを巡らせる…!

 

 

「(確かに『シールドフィン』の効果を使えば奴にダメージは与えられる…だが、問題は『Heart-eartH』のORUを使う効果…ダメージを与えても反射される、どうやってもオレ達に勝ち目はない…だが、()()()()()!!)」

カイトは手札を確認しフェイカーへと仕掛ける!

 

 

「遊馬!お前のモンスターを借りるぞ!!」

 

「おう!いっけぇ!カイト!!」

 

「『希望皇ホープ』で『Heart-eartH』を攻撃!!」

 

【無駄だ!!「Heart-eartH」の効果発動!墓地の「ガーベージオーガ」を装備!】

 

「『シールドフィン』の効果発動!『ホープ』の攻撃力を0にして戦闘破壊を無効にする!そして『シャークドレイク』で『Heart-eartH』を攻撃!デプスバイト!!」

 

【フッ…同じ事の繰り返しか!!】

再び行われる攻防…フェイカーに大ダメージを与えるが…!

 

【「Heart-eartH」の効果発動!装備カードを墓地に送り破壊を無効にする!そしてORUを使い、受けたダメージの半分のダメージを相手に与える!!これで終わりだぁァ!!跪け!カイトォォ!!】

再び放たれるゴミの竜巻…遊馬達の残りライフは1200…受けるダメージを耐える事はできない…だが、カイトの手札に勝利への鍵が握られていた!

 

 

「跪くのは貴様だ!!速攻魔法発動!『フォトン・プリヴェント』!!自分フィールドにフォトンモンスターがいる時!効果ダメージを無効にする─!!」

 

【なんだと─!?】

遊馬達に迫った竜巻がバリアに無効化される!!

 

 

「よし!!カイトには『ギャラクシーアイズ』の攻撃が残ってる!!奴の残りライフは2450!」

 

「攻撃力3000の『ギャラクシーアイズ』の攻撃が決まれば…!」

 

 

「…Dr.フェイカー…オレはずっとアンタの命令を守ってきた…ナンバーズハンターとして、罪なき人々の魂を刈り続けてきた!ハルトを救えると信じて…だが、それは嘘だった!!オレは絶対にお前を許さない!!」

 

【カイト…お前はぁぁ!!】

怒りに燃えるカイトはフェイカーへと断罪の言葉を告げる!

 

「ハルトに…そして多くの魂に懺悔の用意はできているか─!!いけ!『ギャラクシーアイズ』!破滅のフォトン・ストリィィィ厶!!」

怒りを込めた一撃がHeart-eartHへと放たれる、ORUを失ったHeart-eartHにこの一撃を避ける手段はない…!そしてフェイカーは爆炎へと飲み込まれた…。

 

 

 

「や、やった!!遊海達が勝ったのね!!」

 

《カイト様!流石でありマスー!》

破滅のフォトンストリームの直撃に遊馬達の勝利を確信する小鳥達…だが…。

 

「まだ、だ…!気をつけろ…()()()…!」

 

「えっ…!?」

遊海の言葉に戸惑う小鳥…そして…

 

 

《ガアアアア─!!》

 

【フフフ…ハハハハ!!】

煙の中から咆哮と共に巨大な影が現れる…さらに、Dr.フェイカーの笑い声が響く…!

 

 

【貴様達の攻撃など…この天才(ジーニアス)には届かぬ…!見るがいい!これが『偽骸神Heart-eartH』の真の姿…!『No.92偽骸神龍Heart-eartHDragon(ハート・アース・ドラゴン)』だ!!】

 

「新しいナンバーズだって!?」

 

 

92

 

 

煙が晴れる…現れるのは紺色の巨大なドラゴン…偽りの姿を捨てた神本来の姿だった…!

 

 

「なんでフェイカーの場に新しいナンバーズが…!?それになんでライフが残ってるんだ!?」

思わぬ事に動揺する遊馬…ギャラクシーアイズの攻撃を受けたはずのフェイカーのライフはまったく変動していなかったのだ…。

 

 

【フフフ…愚かなお前達に教えてやろう…!ORUを失った「Heart-eartH」が攻撃対象となった時、自身をORUとする事で「Heart-eartHDragon」を特殊召喚できる…!そして、このモンスターが召喚に成功した時!相手の攻撃表示モンスターを全て守備表示に変更させていたのだ!!】

 

「っ…!だから攻撃が届かなかったのか…!」

それはまさに「神の威光」…ハートアースドラゴンの効果によって遊馬達のモンスターは動きを封じられていたのだ…。

 

 

【さぁ…いくぞ!私は罠カード『フェイク・フォーム』を発動!その効果により、貴様達のモンスターが守備表示になった事で1体につき400のダメージを与える!!】

 

「なっ…やべぇ!オレ達のライフは…ピッタリ1200だ─!!」

 

【これで終わりだ─!!】

フェイカーの罠から放たれた光線が遊馬達に迫る!!

 

 

「っ─!オレは手札の『クリフォトン』の効果発動!自分が効果ダメージを受ける時、このカードを手札から捨て…ライフを半分にする事で効果ダメージを無効にする!!」

 

【なにっ…!?】

《クリクリクリ〜!!》

カイトの手札から現れた黒い電球型のクリボーが現れ、ダメージを受け止める…だが…

 

ズキン…!

 

「ぐっ…!!」

 

「カイト!!」

再びカイトに襲いかかる激痛…その痛みにカイトは膝をついてしまう…。

 

「騒ぐな…!オレは、まだ…燃え尽きる訳にはいかない…!フェイカーを倒すまでは…!!」

駆け寄ってくる遊馬を制止しながらカイトは立ち上がる…彼を支えているのはもはや気力だけだった…。

 

【…愚か者め…ここで倒れていれば苦しまずに済んだものを…】

無理に無理を重ねるカイト…その様子を見つめながらフェイカーはターンを迎える…!

 

 

 

 

@フェイカー

 

 

 

【私のターン!…私を倒すだと?お前達には聞こえぬのか…目前に迫った敗北の足音が…アストラル世界滅亡への鼓動が…!!「ハートアースドラゴン」よ!「シャークドレイク」を攻撃せよ!】

 

「なっ…!?攻撃力0で攻撃だと!?」

その見た目に反して攻撃力の低いハートアースドラゴン…だが、その効果は強力なものだった…!

 

 

【「ハートアースドラゴン」はバトルでは破壊されず、さらに!バトルによって発生するダメージを無効にし、私が受けるはずだったダメージを相手に与える!!】

 

「なんだって!?」

 

「『シャークドレイク』の守備力は2100…つまり、オレ達は2100の反射ダメージを受けるという事か…!!」

 

【喰らえ…!ハート・ブレイク・キャノン!!】

 

「この攻撃を受けたら…オレ達の負けだ…!」

ハートアースドラゴンの口にエネルギーが集中する!!

 

 

「だが…させるかぁ!!罠カード発動!『エスケープ・ルアー』!『ハートアースドラゴン』の攻撃対象を『希望皇ホープ』に変更し、バトルで受けるダメージを半分にする!!」

 

【馬鹿め…!そんな事になんの意味がある!!】

攻撃対象がホープに変更される…だが、その守備力は2000…半分になっても1000のダメージを受けてしまう…!!

 

 

「今だ遊馬!その伏せカードを使え!!」

 

「奴のダメージを減らせば、オレ達へのダメージも減る!!」

 

「っ!?そうか!!リバース罠『ハーフ・アンブレイク』を発動!このカードはバトルするモンスターを戦闘破壊から守り、自分の受けるダメージを半分にする!オレは…この効果を『ハートアースドラゴン』に使う!!」

 

【なに…?自分を守る罠を私のモンスターに使うだと?】

ハートアースドラゴンから放たれた火炎の息吹がホープへと襲いかかる…!

 

「そうさ…!これでお前の受けるダメージは半分になる…!つまり!オレ達の受けるダメージも…軽減される!!」

ハートアースドラゴンの効果は自分が受けるはずだった戦闘ダメージを相手に跳ね返すもの…「エスケープルアー」により半減され、「ハーフアンブレイク」の効果でフェイカーの受けるダメージはさらに半分になった…よって、フェイカーが受けるダメージは500…つまり…!

 

「オレ達が受けるダメージも…500だ─!!」

 

【くっ…!?悪あがきを─!!!】

 

「へへっ…!うわあああ…!!」

再び放たれる火炎の息吹…だが、遊馬達は吹き飛ばされながらも、ライフ100を残して…その攻撃を耐える!!

 

 

【おのれ…だが、この瞬間「ハートアースドラゴン」のさらなる効果発動!無効になったダメージの数値分、私のライフを回復する!】

フェイカーのライフが回復し2950となる…だが、遊馬達は希望を繋いだのだ…。

 

 

 

「ッ…遊馬、凌牙…よく凌いでくれた…」

 

「くっ…そんなザマでも上から目線、かよ…!」

満身創痍の3人…そんな中でもカイトと凌牙は軽口を言いながら立ち上がる…。

 

「くっそぉ…!オレ達のライフはたった100…このままじゃ…!」

強力な効果を持つハートアースドラゴンに対して遊馬は少し弱気になる…だが…。

 

 

「…どうした?遊馬、弱音を吐くなら…そこで寝てるんだな…!」

 

「んな…!?弱音なんかじゃねえ─!!」

凌牙に発破をかけられた遊馬は勢い良く立ち上がる!

 

「諦めてたまるか…!アストラルはオレの助けを待ってるんだ!オレは絶対にお前を助けてみせる!!かっとビングだ!オレぇぇ!!」

凌牙の言葉で勢いを取り戻した遊馬は最強のナンバーズへと立ち向かう!

 

 

 

 

@遊馬

 

 

 

39

 

 

「現れろ!『CNo.39』!混沌を光に変える使者!『希望皇ホープレイ』!!」

遊馬の場に混沌を斬り裂く希望の戦士が現れる!

 

 

【カオスナンバーズ…ナンバーズの新たな力か…!だが、そんなモンスターでは「ハートアースドラゴン」を倒す事はできん!】

 

「(確かに『ハートアースドラゴン』は攻撃を無効にしてオレ達にダメージを跳ね返してくる…けど、手はある!!)」

手札を確認した遊馬は覚悟を決める!

 

 

「バトルだ!『ホープレイ』で『ハートアースドラゴン』を攻撃!ホープ剣カオス・スラッシュ!」

 

【ついに観念したか!自らライフをドブに捨てるとはなぁ!!】

 

「冗談じゃねぇ!諦めてたまっかよぉ!!速攻魔法『ガムシャラッシュ』を発動─!!」

遊馬は希望を繋ぐ為に…全力を尽くす!

 

 

「『ガムシャラッシュ』はモンスター同士がバトルする時!『ホープレイ』の攻撃力を0にして…相手プレイヤーに600ダメージを与える!」

 

【なにっ…!ぐおぉぉ…!?】

ホープレイが振り抜いた剣圧がフェイカーにダメージを与える、さらに攻撃力0同士のモンスターがバトルした事でハートアースドラゴンの効果も不発に終わった!

 

「よし…!オレはカードを伏せてターンエンドだ!」

 

 

 

 

「なるほど…少しは考えたな…!」

 

「攻撃がダメなら効果でライフを削る…まっ、600ダメージで無理し過ぎだがな!」

突破口を開いた遊馬にカイトと凌牙は苦笑いを浮かべる…一見無茶苦茶な遊馬のデュエルだが、アストラルと経験した戦いの中で確実に成長していたのだ。

 

 

「オレ達の力で…絆で奴を倒すんだ!次は頼むぜ…シャーク!!」

 

「フッ…任せろ!!」

希望のバトンは遊馬から凌牙へと渡る!

 

 

 

 

@凌牙

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

【その瞬間!「ハートアースドラゴン」の効果発動!このモンスターが特殊召喚された後…相手フィールドに召喚またはセットされたカードは次のターンのスタンバイフェイズに除外される!!】

 

「なんだと!?」

ハートアースドラゴンが紫色の光を放つ…それによってホープレイと遊馬の伏せカードは異次元に追放されてしまう!!

 

 

「『ホープレイ』!!」

 

【ハハハハ!!絆だと?くだらん…そんなものは幻想だ…!あるというのなら見せてみろ…見せてみろ!絆の力というものを!!】

 

「たしかに『絆』は目に見えるもんじゃねぇ…もっともっと…心の奥底で繋がってるもんだ!それがある限り…絆の力は必ず届く!!」

凌牙はフェイカーへと叫ぶ…絆の力で救われた凌牙は…その力を開放する!

 

 

32

 

 

「現れろ!『CNo.32』!『海咬龍シャーク・ドレイク・バイス』!!」

凌牙が手に入れた『カオス』の力…それによってシャークドレイクは白き牙として再誕する!

 

「(俺は諦めねぇ…見ててくれ、遊馬…父さん…!俺なりのかっとビングを─!!)」

遊馬から学んだ諦めない心…そして遊海から聞かされた絆の力を胸に…凌牙はフェイカーに立ち向かう!

 

 

「俺は魔法カード『ディープ・シー・アタック』を発動!手札の攻撃力2000以上の水属性モンスター『ジョーズマン』を墓地に送る事で…『シャークドレイクバイス』は相手にダイレクトアタックができる!いけ!『シャークドレイクバイス』!Dr.フェイカーにダイレクトアタック!デプス・カオス・バイト!!」

シャークドレイクバイスから放たれた無数の光線がフェイカーへと殺到する!

 

 

【バカめ…甘いわ!!罠カード発動!『フェイク・ライフ』!ダイレクトアタックを無効にし、攻撃モンスターの攻撃力分だけ自分のライフを回復する!!】

 

「なっ…!?」

シャークドレイクバイスの光線が消え去り…フェイカーのライフは5150まで回復してしまう!

 

 

「くっ…!俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド…!ぐっ…!?」

 

「シャーク!!」

ターンを終えた凌牙は膝をつく…遊海の到着が僅かに早かったおかげで凌牙はオボットによる怪我を負う事はなかった…だが、遊馬とのデュエル…さらにその前に受けたトロンの策略によるダメージが抜けきっていなかったのだ。

 

 

【神代凌牙…バイロンの策略でプライドと妹を失い、またここで自らをも失うのか?】

 

「ハッ…俺は、何も失っちゃいねぇ…俺は、一人じゃなかったからな…!俺には憧れた人がいる…仲間がいる!!だから、これぐらいなんとも…っぐ…!」

 

「シャーク!!」

フェイカーの言葉を否定しながら立ち上がろうとする凌牙だったが…ダメージは深く、立つ事ができない…!

 

 

「…凌牙、お前の想い…たしかに受け取ったぞ!!」

 

「カイト…!」

凌牙の前にカイトが立つ…そして、その想いを…託された希望のバトンを胸にフェイカーへと立ち向かう!

 

 

 

@カイト

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

 

【「ハートアースドラゴン」の効果発動!凌牙の「シャークドレイクバイス」とセットカードを除外する!!】

再び放たれる追放の光…その光の中で凌牙は…

 

「フフフ…ははははは!!待ってたぜ、()()()()()!!」

 

【なんだと…?】

獰猛な笑みを浮かべていた…!

 

 

「除外された『エクシーズ・ディメンション・スプラッシュ』の効果発動!!このカードが相手によって除外された時!デッキからレベル8の水属性モンスター2体を特殊召喚する!!」

 

【なっ…!?除外をトリガーとして発動する罠だと!?】

凌牙の奥の手…それは掟破りの除外からの罠の発動、狙いを定めた獲物は絶対に離さない…鮫の意地が勝利への道をこじ開ける!

 

「オレは『エンシェント・シャーク─ハイパー・メガロドン』2体を特殊召喚!なお、この効果で特殊召喚されたモンスターは効果を発動できず、攻撃できない!」

フィールドに現れるのは太古の海の支配者たる巨大鮫…凌牙は痛む体を気にせずに叫ぶ…!

 

 

「言っただろ…思いは必ず繋がると!!カイト!これが俺がお前に託す…最後の希望だ─!!」

 

「凌牙…お前の覚悟…確かに受け取った!うおおぉぉ─!!

凌牙から託された2体のモンスター…その2体がカイトとハルト…その兄弟の絆の力を呼び覚ます!!

 

 

「オレは『銀河眼の光子竜』と『メガロドン』2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

カイトの手に赤き槍が現れ、それをエクシーズ召喚の銀河へと投擲する!!

 

 

逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりてその姿を現すがいい!降臨せよ!我が魂!!『超銀河眼の光子龍』!!

赤きオーラを纏いし光の巨龍が鉄槌を下す為に咆哮する!

 

 

「っ…こんな、ところで…果てる訳にはいかん…!『ネオギャラクシーアイズ』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した時!全てのモンスター効果を無効にする!フォトン・ハウリング!!」

 

【なっ…!?『ハートアースドラゴン』の効果が…!?】

視界も定まらぬ中で発動したネオギャラクシーアイズの効果…それによって無敵の効果を誇っていたハートアースドラゴンの効果が剥奪される!

 

 

「さらに!『ネオギャラクシーアイズ』のさらなる効果発動!ORUを1つ使い!フィールド上のORUを全て吸収し、1つにつき『ギャラクシーアイズ』の攻撃力は500アップする!!」

 

【攻撃力…5000だと─!?】

ハートアースドラゴンのORUを吸収したネオギャラクシーアイズが咆哮する!

 

 

「Dr.フェイカー…オレがこの手で、アンタを生まれ変わらせてやる!!懺悔の用意はできているか─!!」

 

【ば、馬鹿者がぁぁ─!!】

 

「バトルだ!『ネオギャラクシーアイズ』で『ハートアースドラゴン』を攻撃!アルティメット・フォトン・ストリィィィム!!

 

【ぐっ!ウオァァァ─!?】

放たれるのは究極の一撃…赤き螺旋の光は邪悪なる龍を貫き、粉砕した!!

 

 

 

 

「や、やったぜ!フェイカーに大ダメージだ!!」

遊馬が歓声を上げる…フェイカーの残りライフは僅か150…強大な敵をようやく追い詰めたのだ…!

 

 

「諦めろ、Dr.フェイカー…もう終わりだ!今すぐハルトを開放しろ!!」

フェイカーへとハルトの開放を促すカイト…だが、事態は思わぬ方向に進む事になる…。

 

 

【ぐっ…カイト、貴様…自分が何をしているのかわかっているのか…!?()()()()()()()()()()()()…アストラル世界を滅ぼすしかないのだ…!!】

 

「「「な、なんだって!?」」」

半ば機能を停止したパワードスーツを無理矢理動かしながら…フェイカーは思わぬ言葉を口にする…!

 

 

「ど、どういう事だよ、それ!?」

 

【……ハルトは、バリアンの力がなければ…生きてはいなかったのだ…!】

 

「なんだと…!?」

追い詰められたフェイカーはカイトにすら隠していた『真実』を話し始める…。

 

 

 

ハルトは生まれながらに病弱であり…あらゆる手を尽くしても数年も生きられないと言われていた事……フェイカーはそれを憂い、ハルトを救う為に人間世界とは違う力…『異世界』の力を求め、一馬とバイロンを生贄として異次元のエネルギー世界・バリアン世界への扉を開いた事…。

 

そして現れたバリアンとの契約によりアストラル世界を滅ぼす事を確約しハルトの命を救う術を手にし…契約を破ったらハルトを奪われてしまうという約束をしてしまった事…。

 

Dr.フェイカーはたしかに『父親』だった…ハルトの為に誇りを、友人を…全てを捨てて戦っていたのだ…。

 

 

 

 

「っ…それが、それが真実だというのなら…!どうして…どうしてオレに話してくれなかったんだ!!」

カイトが真実を語ったフェイカーへと叫ぶ…どうして息子である自分へと真実を打ち明けてくれなかったのかと…。

 

【…言えなかった、言えば…お前は1人で全ての業を背負おうとするだろう…?】

 

「なっ…」

 

【カイト…お前には感謝していた…お前は何も言わず、ナンバーズハンターとしてハルトの為に戦ってくれた…!だから私は…これ以上、お前を苦しませたくなかったのだ…!!】

フェイカーはカイトの事をわかっていた、責任感の強いカイトなら1人で全てを背負おうとする…それがわかっていたからこそ…フェイカーは敢えて厳しい態度を取り、カイトに自身を憎ませる事で彼を守っていたのだ…。

 

 

「それは…それは違う!なんで家族を信じない…!なんでそいつらを信じて…オレを信じてくれなかったんだ!()()()!!」

 

【カイト…!?】

全てを話したフェイカー…父親へとカイトは叫ぶ!

 

 

「そいつらがハルトを奪いに来るのなら…オレがハルトを守る!!絶対に守り抜いてみせる…この命に代えても!!」

 

【カイト…!!】

…Dr.フェイカーは間違えていた、彼が信じるべきはバリアンではない…カイトを…家族の絆を信じるべきだったのだ…!

 

 

「カイト!オレも力を貸すぜ!バリアンだかなんだか知らねぇが…オレが一緒にぶっ飛ばしてやる!」

 

「俺もだ…そいつらには貸しがある…!オレがぶっ飛ばしてやる!」

 

「シャーク…!」

カイトの叫びに遊馬と凌牙応える…遊馬は友情の為に、凌牙は(間接的に)バリアンに傷つけられた璃緒の為に…バリアンへと立ち向かう事を…!

 

「よし!オレ達3人が集まれば…バリアンなんて怖くねぇ!!」

 

「父さん…もう、何も()()()()()()()!!オレ達を信じてくれればいいんだ!!オレ達が全てのケリをつける!!」

 

【カイト…ああ、私は…私が一番、愚か者だった…!!】

息子の言葉に涙を浮かべるフェイカー…捨て続けた彼は…ようやく、救われたのだ…。

 

 

 

「…Dr.フェイカー!!お前は…信じる者を間違えた!」

 

 

「遊海…?」

 

【白波、遊海…?】

部屋へと響く遊海の声に全員が目を向ける…壁に凭れる遊海はその右手にDゲイザーを握り締めていた…!

 

「今、モーメント発電所にいる不動遊星から、緊急連絡が入った…モーメントに細工が施されていたらしい…!もし、お前があのままスフィアフィールド砲を撃っていれば…モーメントの逆回転現象…『ゼロ・リバース』が起きるようにプログラムが改竄されていたそうだ!!」

 

【な、なんだと!?】

『ゼロ・リバース』…その単語を聞いた瞬間にフェイカーは顔を青褪めさせる、科学者である彼はその恐ろしさを充分に理解しているからだ…!

 

 

「ゼロリバース…??」

 

「…かつて、デュエルの聖地・旧童実野町で起きた大惨事…町1つを壊滅させた…モーメントの大爆発だ…!」

 

「な、なんだって!?」

カイトの説明に遊馬は驚愕する…かつて起きた大災害…その被害は計り知れない…!

 

 

「バリアンは、約束を守るつもりはなかったらしいな…!フェイカー、お前は危うく…この街諸共に消されるところだったんだよ…!」

 

【わ、私はなんという事を…!?】

おそらく、バリアンはフェイカーとの約束を守るつもりはなかった…アストラル世界殲滅と共にフェイカーの口を封じるつもりだったのだろう…。

 

 

「父さん!この戦いはもう無意味だ!サレンダーしてくれ!一緒にバリアンへの対策を考えよう!」

 

【カイト…!そうだ─】

 

ドクターフェイカー…─

 

【っ…!?】

フェイカーがデッキに手を置いた刹那…恐ろしい声が彼の脳裏に響く…!

 

ドクターフェイカー…残念だよ、お前の役目はここまでだ…!!

 

 

【うわわ…!来るな!くるなぁぁ!!!】

 

「父さん!?」

突然、取り乱して後退るフェイカー…その姿は誰にも見えていない、ただ1人を除けば…!

 

「遊馬!凌牙!カイト!気をつけろ!!フェイカーの目の前に…()()()()()()()!!」

 

「「「なんだって!?」」」

全ての超常を見てきた遊海の目にははっきりと見えていた…赤き炎を纏った悪魔のような者の姿が…!

 

 

もう少しやってくれると思っていたが…残念だ…!

 

【う、うわあああああ!?】

フェイカーは突然発生した赤紫色の煙に飲み込まれる…そして…

 

92

 

 

《ゴアアアアッ─!!》

 

「なっ…!?『ハートアースドラゴン』が…復活した!?」

煙の中から破壊されたはずのハートアースドラゴンが飛び出す…!

 

 

フフフ…フハハハハハハハァ…!

 

 

「な、なんなの…!?」

 

フィールドに不気味な笑い声が響く…その声は正気を失ったフェイカー…その体に取り憑いた影の声だった…!

 

 

九十九遊馬…アストラル…天城カイト…神代凌牙…デュエルの決着はついていないぞ…我こそは…「バリアン」!!

 

「バリアンだって…!?」

 

「っ…!現れたか…!」

バリアンを名乗る影に遊馬達は警戒を強める…!

 

そう…我はアストラル世界を滅ぼす為にやってきた…バリアン世界の使者だ…!貴様ら諸共なぁ…!

そう言うと赤き影はフェイカーを完全に乗っ取り、その肉体を変化させる…その姿はまさに『魔人』、最悪の敵…バリアン・フェイカーが誕生した瞬間だった…!

 

 

 

バリアン・フェイカーLP150

遊馬

凌牙LP100

カイト

 

 

 

 

【見るがよい…これが『ハートアースドラゴン』の最後の効果…!ORUを失った状態で破壊された『ハートアースドラゴン』は一度だけ復活できる…!そしてその攻撃力は除外されたカード1枚につき、1000アップする!!】

 

「ここに来て…攻撃力4000だと!?」

自身の効果で蘇ったハートアースドラゴン…バリアンはさらに効果を発動させる…!

 

【そして『ハートアースドラゴン』が特殊召喚に成功した事で…相手モンスターは全て守備表示となる!】

 

「『ネオギャラクシーアイズ』の攻撃が封じられた…!?ぐっ…!?」

 

「カイト!!」

カイトは膝をつく…彼の体は…既に限界だった…。

 

【フフフ…まだ倒れるのは早いぞ…!さぁ、ワシのターンだ…!!】

 

 

 

@バリアンフェイカー

 

 

【ワシのターン!ドロー!】

【永続魔法『バリアンズ・ゲートウェイ』を発動!このターン、破壊されたモンスター1体につき800ダメージを与える!】

 

「なっ…マズイ!!」

 

【これでお前達はおしまいだ!「ハートアースドラゴン」で「ネオギャラクシーアイズ」を攻撃!ハート・ブレイク・キャノン!!】

ネオギャラクシーアイズを破壊された瞬間…遊馬達の敗北は確定してしまう…!

 

 

「くっ─!!罠発動!『フォトン・エスケープ』!!その効果により、攻撃されたフォトンモンスターを除外し!バトルフェイズを終了させる!!」

それはカイトの苦肉の一手…ネオギャラクシーアイズが異次元へと飛び去っていく…。

 

【まだ楯突く力が残っていたか…だが、カードが除外された事で『ハートアースドラゴン』の攻撃力は5000となる!】

 

「攻撃力…5000…!?」

攻撃力5000…それは攻撃力最高のモンスター『F・G・D』に並ぶ数値だった…!

 

 

「っ…ハルト…!オレはまだ、諦めない!!」

 

「カイト…!?」

既に満身創痍のカイト…だが、彼は立ち上がる…!

 

 

「バリアン…!貴様達がハルトを奪いに来たというのなら…奪ってみろ!!ここで決着をつけてやる!!見ていろ!!ハルトォォォ!!」

カイトは命…魂を燃やして叫ぶ…その声は…

 

 

『う、うぅ…兄、さん…?』

ハルトへと届いていた…!

 

 

「オレは手札の『ディメンション・ワンダラー』の効果発動!自分のモンスターがカード効果で除外された時!このカードを墓地に送る事で除外されているモンスター2体の攻撃力の合計分のダメージを相手に与える!オレが選ぶのは『ネオギャラクシーアイズ』と『シャークドレイクバイス』!よって与えるダメージの合計は7300だ!!」

これがカイトの最後の希望…フィールドにギャラクシーアイズとシャークドレイクバイスの幻影が現れる!

 

 

「これがオレの最後の一撃!!凌牙─!」

 

「おう!!」

凌牙はカイトと呼吸を合わせる!

 

 

「受けてみろ!次元を超えた一撃を!!『ネオギャラクシーアイズ』!アルティメットフォトンストリーム!!」

 

「いけ!『シャークドレイクバイス』!デプスカオスバイト!!」

赤と紫の閃光が合わさり、螺旋の一撃がバリアンへと迫る!!

 

【フッ…いい手だ、カイト…だが!永続魔法「バリアンズゲートウェイ」のさらなる効果発動!フィールドのこのカードを墓地に送り!「ディメンションワンダラー」の効果を無効にする!!】

 

「なっ、今の一撃を…躱しただと…!?」

カイトと凌牙の最後の一撃は…バリアンによって相殺されてしまった…!

 

ズキン

 

「ぐっ…!?」

 

「くそ…!」

 

「カイト!シャーク!!」

カイトと凌牙は共に膝をつく…2人の体力は…もう限界だった…!

 

 

【フフフ…ワシはカードを伏せて、ターンエンド…残念だったなァ?これで残ったのは九十九遊馬ただ1人…!フィールドにお前達を守るカードもない!!フハハハハハハ!!】

バリアンの嘲笑がフィールドへと響く…遊馬達は追い詰められ…絶体絶命だった…!

 

 

 

 

 

『遊馬…兄さん…僕の為に…命を懸けて…』

囚われたハルトは全てを見ていた…命懸けで戦う兄の…そして遊馬の姿を…!

 

 

『僕は…僕は…!!』

ハルトは涙を流す…その涙が奇跡の呼び水となる…!

 

 

 

キィィン─!!

 

 

 

【な、何事だ!?】

スフィアフィールド砲…ハルトから虹色の光が溢れ出す!

 

 

【ハルト…!?キサマ、我の与えたバリアンの力を…!?】

それはハルトの持つバリアンの力…否、ハルトの涙で浄化された力の発露…その力でハルトはスフィアフィールドを掌握…スフィアフィールドを降下させる!

 

 

 

「っ…!遊馬!アストラルのもとへ向かえ!!」

 

「カイト!?」

カイトはハルトの思いを瞬時に理解した…!

 

「行け!遊馬!お前とアストラルの力を…奴にぶつけてやれ!!」

 

「シャーク…!」

 

(遊馬…遊馬…!!)

 

「っ…!アストラル!!」

カイトとハルトの想い…凌牙の激励…そしてアストラルの呼び声を聞いた遊馬は大きくバク転し、スフィアフィールドから距離を取る!

 

 

キィン─!

 

「っ…この、暖かい光は…!」

そして遊馬の体に暖かい力が漲る…!

 

 

「行ってこい、遊馬…!お前達の奇跡の力…俺に見せてくれ…!」

遊馬へと右手を翳した遊海の声…そして分け与えられた力が遊馬の背中を押す…!!

 

 

「ああ…!いくぜ!!うおおお!!」

仲間達の願いを背負い、遊馬は駆け出す!

 

 

「かっとビングだぁぁぁ!!オレ─!!」

「いっけぇぇ!遊馬─!!」

小鳥の声援と共に…遊馬は皇の鍵に導かれてスフィアフィールドへと飛び込む!!

 

 

(遊馬!!)

 

「アストラル!!」

 

オレとお前でオーバーレイ!!

 

スフィアフィールドから飛び出した遊馬とアストラル…赤と青の閃光がフィールドを駆け巡る!

 

オレ達2人でオーバーレイネットワークを構築!

 

遠き2つの魂が交わる時…語り継がれる力が現れる!!

 

赤と青の閃光は螺旋となって衝突…ビックバンを起こす!!

 

 

エクシーズチェンジ!ZEXAL!!

 

2人の体と魂が1つとなる…赤き鎧を纏い、金色のオーラと共に最強の決闘者…ZEXALが誕生する!!

 

 

 

《フォウ…!キャーウ!!》

 

「(ZEXAL…70年振りに…ようやく、会えたな…!)」

光を纏うZEXALを見て遊海は過去の出会いを思い出す…その輝きは…あの時と変わっていなかった。

 

 

 

「これがZEXAL…!」

 

「遊馬と…アストラルの力…!」

 

《か、カッコイイでありマス…!!》

希望の英雄の登場に全員の目が奪われる…!

 

 

【お前がアストラル世界の力…『ZEXAL』か…!】

 

《バリアン!!お前がオレ達の前に立ちはだかろうと…闇に煌めく希望が…この胸に熱く燃えるかっとビングが…お前を倒す!》

遊馬がバリアンを前に叫ぶ…そして希望のデュエルが始まった!

 

 

 

@ZEXAL

 

 

《オレのターン!》

 

(最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードすら、デュエリストが創造する!…これが我々の…運命の1枚!!)

ZEXALの右手に希望の光が集中する!

 

 

シャイニング・ドロー─!!

 

希望の力によりドローカードが創造される!! 

 

 

《オレは『ZW-玄武絶対聖盾(アルティメット・シールド)』を召喚─!》

フィールドに堅牢な甲羅を持つ、巨大な亀が現れる!

 

 

《『玄武絶対聖盾』の効果発動!このカードが召喚に成功した時!除外されているエクシーズモンスターを3体まで、効果を無効にして守備表示で特殊召喚できる!!》

 

【なんだと─!?】

 

蘇れ!『CNo.39』!『希望皇ホープレイ』!!》

玄武絶対聖盾が高速で回転…異次元へと追放された希望の戦士を呼び戻す!

 

 

「遊馬…いくぜ…!」

 

「オレ達の力を…絆を合わせるぞ!!」

遊馬の希望の光が…満身創痍の凌牙とカイトに力を与える!

 

 

吼えろ!『CNo.32』!『海咬龍シャーク・ドレイク・バイス』!」

 

「蘇れ…我が魂!『超銀河眼の光子龍』!!」

遊馬、凌牙、カイト…3人のエースモンスターが絆によって集結する!!

 

 

《さらに!3体のエクシーズモンスターがフィールドに戻った事により「ハートアースドラゴン」の攻撃力は3000下がる!!》

 

【ぬぅ…!?】

集いし絆の力がバリアンを凌駕する!

 

 

《見たか…!これがオレ達の底力だ!!》

 

【ふざけた真似を…!だが、貴様らの終わりは変わらん!!見るがいい─!!】

 

ギィン─!

 

《なっ…スフィアフィールド砲が…!!》

バリアンがスフィアフィールドにエネルギーを注ぎ込み…禍々しいエネルギーが収束する…!

 

【アストラルは逃したが…スフィアフィールド砲のエネルギーとしては十分だ!!もう、どんな手を使おうと…コイツを止める事はできない!!】

さらにハートアースドラゴンがスフィアフィールド自体を咥えこむ…遊馬達諸共、アストラル世界を攻撃するつもりなのだ…!

 

 

 

「行け!遊馬!」

 

「お前達に…全てを託す!アイツをぶっ飛ばせ!!」

 

《おう─!!》

仲間達の願いを背負った遊馬は最後の攻撃を仕掛ける!!

 

 

 

《オレは「ホープレイ」に「玄武絶対聖盾」を装備!チェンジ!アルティメット・シールド!!》

亀が頭をしまい込み、究極の盾となってホープレイに装備される!

 

《「ホープレイ」に「玄武絶対聖盾」が装備された事で守備力が2000アップする!さらに装備魔法「エクシーズ・ユニティ」を発動!「ホープレイ」を攻撃表示に変更し、さらにこのターン!「ホープレイ」の攻撃力はエンドフェイズまでフィールドの守備表示のエクシーズモンスターの攻撃力の合計分アップする!!》

ネオギャラクシーアイズとシャークドレイクバイスがホープレイに力を与える!

 

 

【なっ…!?攻撃力9800だとぉぉ!!?】

 

《いっけぇ!「ホープレイ」!》

ホープレイが黄金の光を纏い、ホープ剣を抜刀する!

 

【無駄だ!『ハートアースドラゴン』はバトルでは破壊されず、バトルダメージを無効にしてお前達に跳ね返す!】

 

 

《オレは装備魔法「エクシーズユニティ」のもう1つの効果発動!「シャークドレイクバイス」をリリースする事で「ホープレイ」の攻撃回数を1回増やし、ダイレクトアタックできる!!》

ホープレイがシャークドレイクバイスの幻影と共にバリアンへと斬りかかる!!

 

 

【そうはさせん!!永続罠発動!『バリアンズ・バトル・バスター』!墓地のバリアンズカード『バリアンズ・ゲートウェイ』を除外する事で2回まで攻撃を無効にできる─!】

罠から放たれた雷撃がホープレイを弾き飛ばす!

 

 

《ならもう一度だ!「エクシーズユニティ」の効果発動!「ネオギャラクシーアイズ」をリリースする事でダイレクトアタック!!》

 

【無駄だ!『バリアンズバトルバスター』の効果でダイレクトアタックを無効にする!】

ネオギャラクシーアイズの幻影と共に攻撃したホープレイは再び雷撃に弾かれる!

 

 

 

【そして『バリアンズバトルバスター』のさらなる効果発動!このカードを墓地に送り!『ハートアースドラゴン』と『ホープレイ』を強制的にバトルさせる!】

 

「なっ…!?このまま『ホープレイ』がバトルしたら…6800のダメージを受けちまう!!」

 

【これで…終わりだぁぁァ!!】

バリアンは勝利を確信する…だが、遊馬は…ZEXALは不敵な笑みを浮かべていた…!

 

 

《それはどうかな!!》

 

【なに!?】

 

《「玄武絶対聖盾」の効果発動!!このカードが装備されている時!効果ダメージを無効にし、「ホープレイ」の攻撃力をその数値分アップする!!さらに!「ハートアースドラゴン」の効果は…無効となる!!》

 

【な、なんだとぉぉォ!?】

スフィアフィールドを取り込んで放たれたハートブレイクキャノンはアルティメットシールドによって吸収され、ホープレイの力に変わる…その攻撃力は16600!!

 

 

【馬鹿な…馬鹿な!!ばかなぁぁ!?】

 

《16600の攻撃を喰らえぇぇ!!「ホープレイ」で「ハートアースドラゴン」を…バリアンを攻撃!!ホープ剣アルティメット・スラッシュ!!》

巨大化したホープ剣をホープレイが振り下ろす、その一撃はハートアースドラゴンを両断…バリアンを吹き飛ばした!!

 

 

おのれ…オノレ!!キサマらァァァ!!

 

究極の一撃を受けたバリアンはフェイカーと分離…怨嗟の声と共に姿を消した…!

 

 

《見たかバリアン!これがオレ達の絆の力だぁぁ!!》

 

 

 

バリアン・フェイカー LP0

 

 

三勇士 WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『う、うぅ…?私は…』

 

「父さん!!」

バリアンと分離したフェイカーは地面に叩きつけられた衝撃で目を覚ます…全てが丸く収まった…そう全員が思った矢先…!

 

 

バチ…バチバチバチバチ─!!

 

 

「っ…!?なんだ…!?」

 

「スフィアフィールド砲が…!?」

機能を停止したと思ったスフィアフィールド砲が危険なエネルギーを纏い始める…力の捌け口を失ったスフィアフィールド砲が暴走を始めたのだ…!

 

 

バチバチバチ…ドドォォォォン!

 

「ハルトォォ!!」

制御を失ったスフィアフィールド砲はついに爆発…取り込まれていたハルトは空中へと投げ出されてしまうが…。

 

キィン─

 

「ハルト!!」

 

『にい、さん…!』

 

「もう、大丈夫だ…お前の『悪夢』は全て消え去った…」

残された最後の力で緩やかに兄の腕の中へと落下…ハルトを苦しめていた悪夢は…ようやく終わったのだ…。

 

 

 

ドォン!ドドォォン!!

 

 

「きゃあああ!!」

 

「小鳥ちゃん!伏せろ!!」

 

「遊海!小鳥─!!」

安心したのも束の間…スフィアフィールド砲の爆発に連鎖するようにゴミ処理場が崩落し始めたのだ…!

 

 

「オービタル!!小鳥を連れて此方に来い!!」

 

《か、カシコマリ!!》

オービタルはグライダーモードとなって小鳥の背中に装備される!

 

 

 

「ま、待って!遊海さんが!!」

 

「小鳥ちゃん…!俺は、大丈夫…早く行くんだ!行け!オービタル7!!」

 

《カシコマリ─!!》

オービタルを背負った小鳥は遊馬達のもとへと飛び立った…。

 

 

 

 

 

Side三勇士

 

 

 

『っ…!カイト!』

ようやく正気を取り戻し、事態を把握したフェイカーは息子の名を呼ぶ…だが…。

 

 

ガラガラガラガラ!

 

 

『う、うわあああぁぁ!!』

 

「父さん─!!」

フェイカーのいた足場も崩落…アストラル世界へ続く穴へと落下してしまう…!

 

 

「遊馬!シャーク!!」

 

《カイト様!!》

そのほぼ同じタイミングで小鳥とオービタルが遊馬達のいる足場へと飛んでくる。

 

 

「っ…!オービタル!ハルトを頼むぞ!」

 

《チョッ…!?カイト様まさか!!》

 

『兄さん…!?』

ハルトを小鳥達へと託したカイトは走りだす!

 

「父さんを…必ず連れて帰る─!!」

カイトはフェイカーのあとを追いかけ、穴へと飛び込んだ!

 

 

 

「…小鳥、シャークとハルトを頼む…!」 

 

「えっ…?」

今だにZEXALのままだった遊馬は小鳥へとシャークの身柄を託すと背を向ける…!

 

「カイトとフェイカーを…必ず助ける!かっとビングだ!オレぇぇ!!」

カイト達のあとを追いかけ…遊馬も穴へと飛び降りた…!

 

 

 

「小鳥…父さん…遊海さんは…!」

 

「『俺は大丈夫』…だって…」

 

《心配ないでありマス!あの方が本物の『決闘王』ならば…精霊の力で脱出できるはずでありマス!!》

 

「っ…!父さん、無事でいてくれよ…!!」

凌牙は父の無事を信じながらオービタルへとしがみついた…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「来い…!『閃光竜』─!!」

 

キィ──……

 

「…ダメか…どうした、もんかなぁ…」

小鳥を送り出した遊海はため息をつく…『大丈夫』と言って小鳥達を逃したものの…遊海は策があるわけではなかったのだ…。

 

 

「動かせるのは…力が入らない、右手…だけ…これじゃあ…アヤカにも、掴まってられねぇ…」

 

《マスター…》

体は思うように動かず、精霊の力も使えず…メガロック・トフェニはジャック達の応援に…フレアは遊星に付いている…万事休すである。

 

「ワンチャン…ここが崩落しない事を、願うしかないが……ダメそうだ…!」

ゆっくりと広がっていくヒビを見ながら遊海は覚悟を決める…!

 

 

「…アヤカ、この足場が崩れたら…」

 

《マスターを受け止めて…脱出します…!》

 

「…俺が振り落とされずに掴まってられるか…賭け、だな…まったく…なんで、俺はいつも…ピンチばっかりなんだ…」

ほんの少し、自分の不運な運命を呪いながら…遊海はタイミングを図った…!

 

 

 

《フォウ…フォーウ!!》

 

 

「えっ…フォウ…?」

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

「父さん!何処だ!!…いた!」

フェイカーを追い、足場へと着地したカイトは父の姿を探す…フェイカーは辛うじて崩壊しかけた足場に引っ掛かっていた…!

 

 

『ぐぅ…!うわっ…!』

 

「父さん!!」

足場から落ちかけたフェイカーの腕をカイトは辛うじて掴む…だが…

 

 

ガラガラガラガラ!!

 

「くっ─!?」

カイト達のいる足場に運悪く瓦礫が落下…カイト親子は空中へと投げ出される!

 

 

「届け─!!」

カイトは咄嗟にデュエル・アンカーを伸ばす…それが掴んだのは…!

 

 

「カイト─!!」

 

「遊馬…!」

デュエルアンカーを掴んだのはZEXAL…遊馬だった、遊馬は必死にデュエルアンカーを握り締め、カイト達を繋ぎ止める…!

 

 

「待ってろカイトォ…!いま引き上げてやる…!!」

 

(気をつけろ遊馬!足場が弱くなっている!!)

 

「っ─!?」

遊馬は足元を見る、半壊した足場…そこに小さなヒビが広がっていく…!

 

 

 

『何故…なぜだ、九十九遊馬…!どうして私を助ける…!?』

フェイカーは遊馬へと問いかける…一馬とバイロンを捨て、遊馬自身をも危険に晒した自身を…どうして助けるのかと…。

 

 

「…たしかにアンタは憎いさ…!けど、アンタは必死にハルトを生かそうとした…!きっと父ちゃんなら…『仕方がない!』って…笑って許すさ!!」

フェイカーの問いかけに遊馬は苦笑する…フェイカーはその姿に九十九一馬の姿を重ね見た…。

 

 

『もういいのだ、遊馬…私の犯した罪は大きい…!私は赦されるべきではないのだ…!』

 

「父さん…!そんな事言わないでくれ…!!」

うなだれるフェイカーをカイトが叱咤する…。

 

 

【その通りだよフェイカー、キミは許されるべきでは無い…キミの罪は重すぎる】

 

 

「ト、トロン…!?」

 

『バイロン…』

遊馬の背後にスフィアフィールドから開放されたトロンが現れる…!

 

 

「トロン…!やめろ…!復讐はもう終わったんだ…!」

遊馬はトロンに必死に呼びかける…フェイカーに対してもっとも憎しみが深いのは…間違いなくトロンなのだから…。

 

【……!】

 

「っ…!?」

トロンは無言で遊馬に…フェイカーへと手を翳す、彼の力を使えば…遊馬達諸共フェイカーを突き落とす事はあまりにも簡単な事だった…!

 

 

『バイロン…!頼む!カイト達に罪はない!悪いのは、全て私なのだ…!』

 

 

【ああ…そうさ、キミはあまりにも罪深い…これが私の…最後の力だ!!】

 

キィィン─!!

 

トロンが力を開放する…激しい閃光と共に遊馬のいた足場は砕け散り、全員が空中へと投げ出された…!

 

 

「「『うわあああ─!!?』」」

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

「遊馬…アストラル…!大丈夫…!大丈夫なんだから…!!」

夕暮れのハートランドシティ…完全に崩壊したハートの塔を前に小鳥は涙を流していた…。

小鳥達が脱出して三十分余り…遊馬達から…連絡はなかった…。

 

 

「遊馬…!」

 

 

キィン─!

 

 

「えっ…!?」

 

「っ!?」

 

《イイッ!?》

祈る思いでいた小鳥達…その背後にワームホールが開く…そして…。

 

 

 

「あ、あれ…!?ここは…?」

 

(ここは…塔の外か…!?)

 

 

「ゆ、遊馬!!アストラル!!」

 

「遊馬…!」

 

《カイト様!フェイカー様!》

ワームホールから現れたのは落下したと思われた遊馬達だった…トロンは遊馬を…「友」を救う為に力を使ったのだ。

 

 

『バイロン…私を…こんな私を、許して、くれたのか…!』

フェイカーは感極まり、涙を流す…落下する刹那、トロンはフェイカーと言葉を交わした、そこでトロン…バイロンはフェイカーを再び「友」と呼び、彼の罪を許したのだ…。

 

 

 

「もう…遊馬のバカバカバカ─!!いつもいつも心配かけてぇぇ…!!!」

 

「お、おい!泣くなよ小鳥─!!」

遊馬の無事な帰還に安心した小鳥は泣きじゃくる、遊馬は慌てて宥めるが…しばらく泣きやまないだろう。

 

 

『カイト…ハルト…!本当に悪かった…!全て私のせいなのだ…!』

 

「もういいんだ、父さん…ありがとう」

息子達へと謝罪するフェイカー…そしてそれを許すカイトとハルト…ようやく、戦いは終わったのだ…。

 

 

 

 

 

「……あれ…?父さん…?遊海さんは…!?」

そんな中、凌牙は気付く…遊海の姿が見えないのだ…。

 

ぽすん

 

「…心配すんな、ちゃんといるよ…凌牙」

 

「えっ…?」

戸惑う凌牙の頭に暖かい大きな手が乗せられる、慌てて凌牙が振り返れば…ボロボロだが、笑顔を浮かべている遊海が立っていた…。

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

「フォウ…!?小鳥ちゃんと一緒に逃げなかったのか!?」

 

《フォウ!フォーウ!!(特別意訳:ボクを一番大事にしてくれるキミを…置いていけるもんか!)》

 

「フォウ…ありがとな、でも…無事に帰れるか、わからないぞ?」

胸を張って鳴くフォウに苦笑しながら遊海は語り掛ける…その時だった。

 

 

 

─そりゃあ無事に帰れるさ…なんたって君はこの物語の主人公なのだからね?─

 

 

 

「この、声は…?」

辺りに薄っすらと霧が現れる…その中から白いローブの男が現れた…。

 

 

─少しうたた寝しながら歩いていたら…そこは陰謀渦巻く廃棄口…これは夢の続きか、それとも単なる幻か…まあ、どちらでもいいのだけどね?こうして会うのは初めまして、夢の住人…花のお兄さんさ!─

 

 

「花の、お兄さん…?」

 

《グルル…!フーッ!フーッ!!》

 

《えっ…?マスター?フォウ…?いったい()()()()()()()()()()()??》

少し朦朧としながら誰かと話す遊海、そして虚空に向かって毛を逆立てるフォウにアヤカは首をかしげる…アヤカには()()()()()()()()()()

 

 

─ごめんね、精霊の彼女?には私が見えないようにしているんだ、本来なら私は「傍観者」だからね…さて、君は絶体絶命のピンチな訳だけど…キャスパリーグ?君は随分()()()()()()()()()?私はそれを使えば万事解決すると思うなー?─

 

《フォウ…!フォウフォウ!フォウ─!?(今やるつもりだったんだよ!今回は時間がないけど…次会った時は覚えてろよ─!?)》

 

─うんうん、わかったわかった…早く行きなさい、遊海君…今回は本当にお疲れ様!ゆっくり休むんだよ─

 

「えっ…?ちょっ─!?」

 

花のお兄さんとなにやら口論するフォウ…その直後に遊海の視界は光に包まれた…。

 

 

─さて…遊海君、君がこれから歩む物語…楽しみにしているよ!─

閃光に包まれた遊海を見送り…花のお兄さんは花吹雪と共に消え去った…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「心配かけたな、脱出できたはよかったんだが…身動きが取れなくてな…よく頑張った、凌牙」

 

《フォウ!》

 

「…たくっ…!どんだけ無理したら気が済むんだよ、アンタは─!」

凌牙は遊海に撫でられながら涙を流す…緊張感と安心感からくる涙を抑えられなかったのだ。

 

 

「あっ…!?遊海!!無事だったんだな…!」

 

「おぉ遊馬!お前もよく戦った…!偉かったな…お前とアストラルの絆の力『ZEXAL』…カッコよかったぞ…!」

遊海の姿に気付いた遊馬も駆け寄ってくる…遊海は同じように頭を撫で、遊馬の戦いを褒めた。

 

 

(遊海…貴方のデュエルもすごいデュエルだった、特に私の知らないナンバーズ…そして「NEXUS」なる力の事…詳しく聞きたいのだが…)

 

「それは…また今度にして、欲しいなぁ…なんせ…もう…げん、か…い…で──」

 

「あっ!父さん!?」

 

「遊海─!?」

 

子供達の無事を見て気が緩んだのか…遊海は気を失ってしまう…その後、本来ならば凌牙が乗るはずのヘリに乗せられ…遊海は病院に担ぎ込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら…カタは着いたらしいな、やれやれ…人騒がせな親子だ…」

 

『そう言うなよ、ようやく家族が仲直りできたんだ…よかったじゃねぇか!』

 

「ああ、あの少年が希望を…『絆』を信じて戦ったからこそ…Dr.フェイカーとトロン…2つの家族は『絆』という光を取り戻せたんだ」

遊馬達のいる場所から少し離れたビルの上…そこで3人の男が言葉を交わす、それは大会での被害を最小限に抑えた影の立役者達…遊星・ジャック・十代の3人だった…。

 

 

「とにかく…一度遊海のもとに向かうぞ!一言文句を言わなければ気が済まん!」

 

『ほどほどにしてやってくれよ?先生…また重症みたいだし…それより遊星…さっき言ってたのは本当なのか?』

 

「はい…!遊海さんとあの少年達が戦う相手は…本当に恐ろしい奴らです…!」

遊星は夕日を見ながら拳を握りしめた…!

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

(遊馬…終わったようだな、ワールド・デュエル・カーニバル)

緊急搬送される遊海を見送ったアストラルは遊馬へ声をかける…陰謀渦巻いたWDC…それは遊馬の優勝という形で幕を閉じた…だが。

 

 

「い〜や!!まだ()()()()()()!!まだ優勝の景品を貰ってねぇ!!」

 

「ちょっ…!?いきなり何を言い出すのよ遊馬─!?」

あまりに空気を読まない遊馬の言葉に小鳥がツッコミを入れる…なお、本来の景品は「ハートランド遊園地の生涯無料パスポート」と「Mr.ハートランドが叶えられる範囲での願いを叶えてもらう権利」である…後者に至ってはハートランドが行方不明になった為に本来なら叶えられる事はないだろうが…。

 

 

「Dr.フェイカー!オレは『願いを叶えてもらう権利』を使わせてもらうぜ!」

 

『むっ…?何を願うのだ?』

戦いを終え、毒気を抜かれたフェイカーが遊馬へと訊ねる…。

 

 

「オレの望みは…『カイト達親子が仲良く暮らす事』だ!」

 

「「「《(はっ…?)》」」」

遊馬のあまりに突拍子もない願いにフェイカー達親子や小鳥、果てはロボットであるオービタルまで唖然とする…だが、一人だけ…笑みを浮かべる者がいた。

 

 

「フッ…余計なお世話だな遊馬…お前、本当は()()()()()()があるんだろ?」

 

『カイト…?』

カイトは遊馬へと問いかける、カイトはその答えが既にわかっていた…!

 

 

「ああ!じゃあ言ってやる!カイト!オレとデュエルしやがれ!!お前との決着はまだついてねえ!!」

遊馬の本当の願い…それはライバルであるカイトとのデュエルだった!!

 

 

(面白い…事実上の決勝戦という訳か…!)

 

「いいだろう…受けて立つぞ!遊馬!アストラル!!」

 

 

 

夕暮れのハートランドで…2人の決闘者が火花を散らす…。

 

 

ワールド・デュエル・カーニバル…数多の戦いと陰謀の果てに…最後のデュエルがいま始まる…!

 



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真・決勝戦!遊馬VSカイト!〜熱きデュエリスト達〜

こんにちは!S,Kです!

ZEXAL編第一部のラストデュエル…熱きデュエリスト達の戦いがついに始まる!


それでは、最新話をどうぞ!


「遊海さん!!」

 

ハートランドの病院の一室…そこに翠が駆け込む、凌牙からの連絡で遊海が重傷を負って担ぎ込まれた事を知って駆けつけたのだ…。

 

 

 

「母さん…」

 

《フォウ!》

病室で翠を迎えたのは凌牙とフォウ、そして全身を包帯でミイラのように巻かれ、静かに眠っている遊海だった。

 

 

「Mr.ハートランドとのデュエルで大怪我して…全治半年の大怪我だって…俺達と遊馬を守る為に…」

 

「ああ…もう、あなたって人はぁ…!」

凌牙の言葉を聞いた翠は遊海の眠るベッドの横でへたりこむ…。

 

 

《状態は一応安定しています、今は眠らせてあげてください…マスターは凌牙達を守る為に死力を尽くしたのですから…》

 

「…俺、ちょっと出てくる…遊馬がカイトの奴とデュエルするらしいからな…父さんの代わりに見届けてくる」

空気を読んだ凌牙は病室を後にする…遊馬とカイトの対決を見届ける為に…。

 

 

 

 

「遊海さん…ごめんなさい、私が弱かったから…」

翠は遊海の手を握りしめる…元を辿れば翠が凌牙を守る事ができていれば遊海は捨て身の策を実行せずに済んだ…その事を謝りたかったのだ。

 

 

《…翠、謝る事はないですよ…マスターは全て覚悟の上でしたから…謝るとすれば翠を遺して死ぬところだったマスターの方です》

 

「…そう、だな…俺が…あやまら、ないと…」

 

「っ…!?遊海さん!!」

遊海がぼんやりと意識を取り戻した…声は弱りきっているが…生きてはいる。

 

 

「ごめんな…翠、また…無茶しちゃった……全身、いてぇなぁ…」

 

「グスッ…私もしばらく力は使えません…痛みと一緒に反省してください!」

 

「そ、そんなぁ…」

弱々しく話す遊海と翠…2人はお互いに涙を流していたが…共に笑顔だった。

 

 

「あぁ…久しぶりに、ゆっくり…ねむれ、そうだ……」

 

「ふふっ…おやすみなさい、遊海さん…どうかよい夢を…」

 

《フォウ、キュ〜ウ…》

夕暮れのなか、遊海は静かに眠りに落ちる…始まっているであろう2人の決闘を夢に見ながら…。

 

 

 

 

 

 

 

Sideカイト

 

 

 

『………』

 

夕暮れのハートランドシティ…崩壊したハートの塔を見ながらカイトは着替えを済ませる、遊馬との()()のデュエルを前にして…カイトの表情は穏やかだった。

 

『(オレは今までハルトの為にナンバーズハンターとして戦ってきた…だが、オレは…─)』

その胸中に去来するのは自身の戦いの日々…ハルトの為に『修羅』となってナンバーズを狩り続けた日々の事だった。

 

 

 

「兄さん…」

 

『…ハルトか』

もの思いに耽るカイト…そこにハルトが訪れる、ハルトはバリアンの超能力を手放す代わりに健康と正気を取り戻す事ができたのだ。

 

「兄さん…行くの?」

 

「ああ…大丈夫、オレは…必ず勝つ」

ハルトに勝利を誓ったカイトは歩きだす…ライバルとの決着をつける為に…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「アストラル…なんだか体がビリビリしてきたぜ…!」

 

(フッ、私もだ…!)

 

夕暮れのハートランドシティ…その川辺のデュエルリングで遊馬とアストラルは戦いの刻を待っていた…。

 

 

「カイトは強えぇ…初めてアイツに出会った時、メタメタにやられちまった…」

遊馬は今までのカイトとの戦いを振り返る…。

 

ナンバーズを手に入れ、浮かれていた心をポッキリと折られた初デュエル

 

アストラルの事を知る為に皇の鍵に侵入してきたカイトと戦い、アストラルとの奇跡の力「ZEXAL」で引き分けたデュエル

 

ハルトを救う為にⅢとⅣに挑んだタッグデュエル…幾つもの戦いを経て…遊馬にとってカイトは1つの「目標」となっていた…。

 

 

「アストラル、オレはお前と一緒に必ずあいつに勝つ!!」

戦いを前に気合いを入れる遊馬…その様子を見守るのは掛け替えのない仲間達やしのぎを削った決闘者達だった。

 

 

「な、なんだかオイラまで緊張してきたウラ…!」

 

「遊馬の奴…張り切ってやがるぜ!」

 

「トドのつまり…遊馬君は勝てるのでしょうか…!?」

 

「大丈夫よ!遊馬なら必ず勝ってくれるニャ!」

遊馬の戦いを見守る為に集まったナンバーズクラブのメンバー達が言葉を交わす…そんな時だった。

 

 

♪〜♪〜♫〜♪〜♫〜

 

 

「えっ…?」

 

「この音は…?」

夕焼けの中に響く口笛の悲しげな音色…それと共に翼を持つ黒い影が遊馬達の頭上に現れ…遊馬達の前に飛び降りた。

 

 

『待たせたな…遊馬、アストラル』

 

「カイト…!待ってたぜ!」

カイトと遊馬…ついに2人のデュエリストが対峙する!

 

 

「ヘヘッ…!見せてもらうぜ、お前らのノリを…!」

 

《カイト様!トンマの遊馬など叩き潰してくださ〜い!!》

 

「カイト…頑張って…!」

カイトの勝利を願うのはゴーシュにドロワ、そしてオービタル7…彼らも2人を見守る為に集まった、なお…Dr.フェイカーとハルトも中継によってデュエルを見守っている。

 

 

 

「カイト!今日こそ決着をつけてやる…!勝負だ!!」

 

(デュエリストの誇りを懸けて君に挑む…そして勝つ!!)

 

『遊馬…アストラル、オレの全力を賭けて…受けて立ってやろう!』

両者共に気合いは充分…!2人の戦いがついに始まる!

 

 

 

「やってやるぜ─!デュエルディスク、セット!Dゲイザー…セット!!」

 

 

『デュエルモード…!フォトンチェンジ!!』

遊馬は赤き決闘盤とモノクルをセット、カイトはフォトンチェンジによって白いコートを纏う!

 

【ARビジョン、リンク完了!】

拡張現実のフィールドが周囲を覆い…全ての用意は整った!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬&アストラルVSカイト

 

 

 

 

 

 

「遊馬!負けたらただじゃおかないわよ〜!()()()()()()むっつりしてないで頑張るのよ〜!!」

 

「ヘっ…!?小鳥、アストラルって…コイツの事見えてんの!?」

 

「なんか…見えるようになっちゃった♪」

 

「「「えぇ!?」」」

小鳥の声援に遊馬が驚愕する…なんと、小鳥にアストラルの姿が見えるようになっていたのだ…。

 

 

(…どうやら、先程の戦いで私の姿が見えるようになった者がいるようだな…)

 

「えっ…!ってことはカイトも!?」

 

『フッ…』

ゴミ処理場での一連の戦い…それは世界を賭けた大きな戦いだった…その時の凄まじいエネルギーの流れによってカイトや小鳥の潜在能力が覚醒し、アストラルを見る事ができるようになったようだ。

 

 

『どうした?遊馬、アストラル…かかってこないのか?』

 

「おっと…!わかってる!先攻はもらうぜ─!」

思わぬ事に焦ったものの…遊馬は先攻を取り、デュエルを開始する!

 

 

 

 

 

「オレは『ガンバラナイト』を攻撃表示で召喚!さらに永続魔法『ゼロゼロック』を発動!」

 

「なっ…!?あいつ、何を考えてんだよ!?攻撃されたら守備表示になるとはいえ『ガンバラナイト』の攻撃力は0だぞ─!?」

遊馬のいきなりの行動に鉄男が叫ぶ…だが、アストラルは…

 

(遊馬…それでいい!)

 

「おう!」

アストラルは遊馬の行動に頷く…遊馬は決して無策でモンスターを出した訳ではない…!

 

(カイトならば序盤から『銀河眼の光子竜』を召喚してくる可能性がある…ならば攻撃を受けたら守備表示となる『ガンバラナイト』とフィールドの攻撃力0のモンスターを攻撃できなくなる『ゼロゼロック』の二重の策で迎え撃つ…!)

 

「さぁ…!かかってきやがれ!カイト─!」

遊馬とアストラルの築いた鉄壁…それを前にカイトは…。

 

 

『(遊馬…たしかにお前は強くなった、だが…オレはその上を往く!!)』

不敵な笑みを浮かべていた…!

 

 

 

 

 

 

『闇に輝く銀河よ…希望の光となりて我がしもべに宿れ!光の化身、ここに降臨!!現れろ!「銀河眼の光子竜(ギャラクシー・アイズ・フォトン・ドラゴン)」─!!』

 

「なっ…!?この鉄壁の守りをわかった上で召喚してきやがった…!!」

カイトはアストラルの予測通り、ギャラクシーアイズを呼び出す!

 

 

『銀河の藻屑と消えるがいい…!「ギャラクシーアイズ」で「ガンバラナイト」を攻撃!』

 

「おっとカイト!『ゼロゼロック』の効果で『ガンバラナイト』には攻撃できないぜ─!」

 

『フッ…オレは速攻魔法「銀河爆風(ギャラクシー・バースト)」を発動!このターンの終わりまで「ギャラクシーアイズ」の攻撃力を半分にする事でフィールド上のカード2枚の効果を無効にする!オレは「ゼロゼロック」と「ガンバラナイト」の効果を封印する!!』

 

「し、しまった!?」

 

(流石はカイト…私達の手のその先を考え『ギャラクシーアイズ』をしたのか…!)

遊馬を守っていたバリアが消え去り…ガンバラナイトが棒立ちになる…カイトは遊馬達の行動を先読みしていたのだ…!

 

 

『「ギャラクシーアイズ」で「ガンバラナイト」を攻撃!破滅のフォトン・ストリーム!』

 

「うわあああ─!?」

放たれた破壊光線はガンバラナイトを粉砕…遊馬に1500の大ダメージを与える!

 

「痛ってて…やっぱ強えぇ…!でも、デュエルは始まったばっかりだぜ!」

吹き飛ばされた遊馬は勢い良く立ち上がる…その目はキラキラと輝いている!

 

 

『遊馬…(お前はいつもそうだった…お前は何度でも立ち上がってくる、前を向いて…!)』

カイトが思い出すのは今までの遊馬の姿…何度倒れようと、何度吹き飛ばされようと遊馬は不屈の精神で立ち上がってきたのだ…だからこそ、カイトは全力で立ち向かう…!

 

 

『オレは永続魔法「戦闘重力(バトル・グラビティ)」を発動!モンスターをコントロールしているプレイヤーがバトルしなかった時!1000のダメージを与える!』

 

「なっ…!?」

 

(攻撃力3000の「ギャラクシーアイズ」に必ず攻撃しなくてはならないということか…!!)

 

『フッ…そういう事だ!オレはカードを伏せ、ターンエンド!オレにいくら策を弄しようと…オレには通用しない!!』

カイトはダメ押しの一手を発動し、ターンを終える…だが、遊馬は笑っていた…!

 

 

「そうだよな…!やっぱお前とのデュエルはこうでなくっちゃな!!…ここでこうきて…こうなったか…!やっぱりおもしれーな!!」

 

『面白い…?オレの戦術の何処が面白い…?』

遊馬の様子を見てカイトは首をかしげる…カイトはそんな面白い動きをしたつもりはなかったからだ。

 

 

「戦術なんて知らねぇよ!オレは()()()()()()を言ってるんだ!」

 

『心の…ドキドキ?』

 

「ああ!このドキドキが『デュエル』なんだ!これが「かっとビング」なんだ!…そして、デュエルすれば相手の事がよ〜くわかる!そして仲間になれるんだ!」

 

『仲間…』

しかし、遊馬が感じていたものは違った、遊馬は()()()()()()()()を楽しんでいる…戦術だの作戦などではない、どんな状況でもデュエルを楽しむ事ができる…それが九十九遊馬という男だった。

 

 

「周りを見てみろよ!こうやってドキドキが伝わって、みんなも集まってくれたんだ!」

 

「遊馬…」

 

「そうウラ!」

 

《ドキドキビングでありマス!》

 

「相変わらずだな…」

 

「敵わねぇノリだぜ!」

遊馬の言葉に集まったデュエリスト達が頷く…その胸は全員ドキドキと高鳴っていた…!

 

 

「このドキドキがあれば仲間になれる!デュエルで1つになれる!カイト…お前もそうだろ?」

 

『フッ…だったら、お前の全力をオレに見せてみろ!』

 

「えっ…?」

 

『ナンバーズだ!オレの真の勝利はお前達のナンバーズを倒してこそ…さぁ…!呼ぶがいい!お前達のナンバーズを!!』

カイトは鋭く遊馬達を見つめる…ナンバーズを出す事で…自身を打ち倒す事で遊馬の思いを見せてみろと…!

 

 

「へっ…!ああ、見せてやるぜ…オレのかっとビングを!!」

遊馬は真正面からカイトへと立ち向かう!

 

 

 

 

39

 

 

「現れろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

 

『来たか…「希望皇ホープ」!』

カイトの言葉に応えるように希望の戦士が現れる!

 

 

「いっくぜぇ!!『ホープ』で『ギャラクシーアイズ』を攻撃ぃぃ!!」

 

『攻撃力が劣る「ホープ」で攻撃だと?』

希望の戦士が剣を振りかぶる!

 

 

「そしてオレは『ホープ』の効果発動!ORUを1つ使い!自身の攻撃を無効にする!」

 

『っ…!?何を狙っているかは知らんが…忘れたのか?「戦闘重力」の効果でバトルしなければお前は1000のダメージを受ける!』

 

(今だ!遊馬─!)

 

「おう!速攻魔法『フラッシュ・エフェクト』を発動!このカードはバトル中にモンスター効果が発動した時に発動できる!」

 

『なに!?』

自身の攻撃を無効にした遊馬はカイトに勝つ為の一手を繰り出す!

 

 

(その効果により『ホープ』の攻撃力を800アップさせ、フィールド上にいる全てのモンスター効果を無効にする!!)

 

『な、なんだと─!?』

フィールドを覆う光の波動…それによって『エクシーズキラー』であるギャラクシーアイズの効果が封印される!

 

 

「これで『ホープ』の攻撃力は3300!そして『フラッシュエフェクト』の効果で『ホープ』の発動した効果も無効になって…攻撃が続行できる!いっけぇ!『希望皇ホープ』!」

 

『まだだ!罠発動!「模擬戦闘(バトル・シュミレーション)」!お互いのモンスターの攻撃力は半分となり!バトルでは破壊されない!』

 

「上手いぞカイト!」

 

「バトルでのダメージを最小限に抑えた!」

攻撃を受ける刹那…カイトは被害を最小限に抑えようとする…だが!

 

「まだまだぁぁ!!速攻魔法『バイバインド』を発動!!」

 

『なに!?』

遊馬はカイトを超える為にさらなる1手を打つ!

 

 

「このターン!自分フィールドのモンスターの攻撃力が下がった時に発動できる!バトルの間、そのモンスターの攻撃力を倍にする!」

 

(さらに!バトルする相手モンスターの『戦闘では破壊されなくなる効果』を無効にする!!)

 

『馬鹿な…!「ギャラクシーアイズ」が…破壊されるだと─!?』

それは遊馬とアストラルの気迫の一撃…それがギャラクシーアイズをついに捉える!

 

 

「『ギャラクシーアイズ』を攻撃!ビックホープ剣スラッシュ!!」

 

『ぐっ…!?ぐあああ!?』

巨大化したホープ剣がギャラクシーアイズを両断…カイトに大ダメージを与える!

 

 

 

「オレはカードを1枚伏せてターンエンド!!……くぅぅ〜!!やったぜ!カイトに大ダメージだ!!いえぇい!!見たかアストラル─!!」

 

(はしゃぎ過ぎだ、遊馬…)

ターンを終えた遊馬は全身で喜びを表現して跳ね回る…一時はトラウマになりかけたギャラクシーアイズの打倒…それは遊馬にとって1つの山を乗り越えたような嬉しさだった…!

 

 

 

『…アイツはどんなピンチに陥ろうと…どんな窮地に立たされても諦めず、必死になって立ち上がってくる…デュエルを心の底から楽しんで…だが、今のオレは…』

吹き飛ばされたカイトは喜んでいる遊馬の姿を見てある事を()()()…それは──

 

 

『遊馬、アストラル』

 

「カイト…?」

立ち上がったカイト…だが、その様子は先程と違った…覇気を失っていたのだ。

 

 

『…これで、終わりだ……オレにはもう、デュエルはできない…このデュエル、()()()()()する』

 

「な、なに…何を言ってんだよカイト!?デュエルができないって…!どういう事だよ!?」

カイトの思わぬ発言に遊馬はカイトに問いかける…カイトの瞳は穏やか…否、闘志を失っていた…。

 

 

『オレにはもう…デュエルをする意味を見い出せないんだ……オレはこれまでハルトの為にだけ戦ってきた…だがハルトが救われた今…オレの戦う意味は全て失われた…だから、オレは…もう…」

 

「カイト…!ふざけんな!お前はオレの目標なんだ…!!勝手にやめるなんて許さねぇ!!」

 

『遊馬…オレはもう…お前のように熱くデュエルをする事はできない…』

端的に言えば…カイトは燃え尽きていた、『ハルトを守り、病気を治す』という目的の為にカイトは魂を燃やして闘ってきた…その目的が果たされた事でカイトの決闘者としての魂は…その輝きを失ってしまったのだ。

 

 

 

(カイト、それは違うのではないか?)

 

『なに…?』

燃え尽きてしまったカイトにアストラルが語りかける…。

 

 

 

(遊馬はナンバーズを集める為に私と共に戦い、その勝利は私に失われた記憶をもたらしてくれた…だが、それは過去の集まりに過ぎない、遊馬とのデュエルはもっと大切なものを私にもたらしてくれた……それは『仲間』だ、デュエルを通じて心と心で語り合い…絆を深めていった仲間達だ……カイト、君もそうだろう?君も…私にとって大切な仲間だ…!)

 

『アストラル…』

 

それはアストラルが遊馬と共に戦った中で学んできた事だった、最初は息が合わず喧嘩ばかりしていた2人…しかし、共に戦い…ナンバーズを回収する中で2人は本当の意味での『仲間』となった。

そしてたくさんのデュエリスト達と出会い、仲間を増やし…ついには隠された陰謀を砕くまでに成長した…それは小鳥や凌牙…そしてカイトという『仲間』ができたからこそ、成し得た事なのだ…。

 

 

 

(記憶は過去のモノだ…だが、仲間は未来にある…君ももう過去に縛られる必要は無い、そしてこの事に君も気付いていたのではないのか?…だからこの場所に来たのではないのか?)

 

「(オレは……)」

カイトは今までの事を思い返す…最初はナンバーズ狩りの獲物でしかなかった遊馬…しかし何度も戦い、カイトの背負っていたものを知った遊馬は…カイトと共にハルトを救う為に戦ってきたのだ…それは()()()()()()()()()()()()()()()に他ならない!

 

 

 

「カイト!!…()()()()()()()!カイト!!オレは感じていたぜ…お前のドキドキを!」

 

『遊馬…』

遊馬はカイトへと叫ぶ、『かっとビング』…それは諦めない心の合言葉…気弱だった仲間達もかっとビングを胸にその心を奮い立たせてきた…!

 

 

「だが、お前のドキドキはこんなもんじゃねぇ!もっとだ…!みせてくれよ!感じさせてくれよ!カイトビングを!」

遊馬は目を輝かせながらカイトへと気持ちをぶつけた…!

 

 

 

 

 

 

Sideフェイカー&ハルト

 

 

 

『カイト…全ては私のせいだ…私達、大人の思惑がカイトを苦しめ続けていた…それが今も……』

 

デュエルの様子を見ていたフェイカーが頭を抱える…カイトを守る為に敢えて厳しい態度を取り続け、カイトに難題を課し続けたフェイカー…それが未来あるカイトの心を潰しかけていた事に罪悪感を感じていたのだ…。

 

 

「大丈夫だよ、父さん!」

 

『ハルト…?』

頭を抱えるフェイカーにハルトが話しかける…その目はしっかり兄の姿を見据えている!

 

 

『兄さんの目は…遊馬に応えようとしてる…!』

画面越しではあるが…ハルトは気付いていた、カイトの小さな変化に…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

『…ドキドキじゃ飽きたらぬ…この先に何が待つかはわからん…だが、切り開いてやろう!オレの道を!!オレのデュエルを─!!』

 

「カイト…!!」

小さく笑みを浮かべたカイトの瞳に力が戻る…!過去からの呪縛を引きちぎり…未来へのデュエルをする為に!!

 

 

そして、その様子を安心した様子で見守る者がいた…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

『どうやら…カイトは自分のデュエルを取り戻したようだねぇ』

 

「そのようですね父様…彼もまた純粋にデュエルを楽しむ心を思い出す事ができた…」

 

「ハッ…オレ達とのデュエルの時とは別人じゃねぇか…今度はまともに戦いたいねぇ…」

遊馬達のデュエルを見下ろせるビルの上…そこにはトロンを始めとしたアークライト一家の姿があった。

トロンが復讐心を捨て、元の優しい父に戻った事で彼らも救われたのだ。

 

 

『九十九遊馬…まったく不思議な奴!一馬の息子…か…』

トロンは遊馬を優しげに見つめる、自身を復讐から開放し、フェイカー…そしてバリアンの野望を砕いた少年を…。

 

『さぁ…帰ろうか、僕達の居場所に…クリス、トーマス、ミハエル…』

 

「はい!父さま」

息子達の名前を呼んだトロンはワームホールを開く…待ち望んだあの家に帰る為に…。

 

 

「遊馬…また、いつかきっと…!」

Ⅲは小さく遊馬の名を呼ぶ…初めての「友達」との再会を願いながら…

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「さぁ…!かかってきやがれ!カイト!!」

 

『眠れる獅子を起こした事…後悔させてやる!いくぞ─!!』

 

 

 

熱き闘志を取り戻したカイトとそれを迎え撃つ遊馬…そこからのデュエルは熾烈を極めた。

 

カイトが新たなエクシーズモンスター『輝光子パラディオス』を召喚し、相手の効果を無効にする効果でナンバーズである『ホープ』を倒す。

 

ならばと返しのターンで遊馬はゴーシュから譲られた魂のカード『H-Cエクスカリバー』で『パラディオス』を打ち倒す…だが、返しのターンでカイトは装備魔法『銀河零式』の効果で『銀河眼の光子竜』を蘇生して『エクスカリバー』を消し飛ばす…そして激しいデュエルの中で2人は笑顔を浮かべていた…!

 

 

 

「くっそぉ…!まだだ!まだまだやってやるぜ!!カイト─!」

 

『フッ…望むところだ!!』

 

 

 

39

 

 

「現れろ!『CNo.39』!混沌を光に変える使者!『希望皇ホープレイ』─!!」

 

『来たか…「ホープレイ」!…希望の力よ…!』

遊馬はついに切り札…ホープレイを召喚する…!

 

『アストラル…お前は言った…もう過去に縛られる必要はないと…オレのデュエルは「誓い」のデュエルだった、ハルトを絶対助けると誓いながらデュエルをしていた…だが、これからは望み…いいや、希望!……オレ自身の為のデュエルをする!』

 

「そうだぜカイト!未来はオレ達のもんだ!未来はオレ達が決めるんだ!」

ホープレイ…遊馬とアストラルの希望の象徴を見上げたカイトは決意を固める…。

 

 

そこにかつてナンバーズハンターと恐れられた男はもういない…そこにいるのは新たな希望を…未来を手に入れた1人の決闘者だった…!

 

 

 

『さぁ来い!遊馬!!』

 

「いくぜカイト!オレは『ホープレイ』の効果発動!ORUを1つ使い!『ギャラクシーアイズ』の攻撃力を1000下げ、『ホープレイ』の攻撃力を500アップする!オーバーレイ・チャージ!!」

ギャラクシーアイズの攻撃力が下がり、ホープレイが大剣を構える!

 

 

「いっけぇ!『ホープレイ』!『ギャラクシーアイズ』を攻撃!!ホープ剣カオススラッシュ!!」

 

『オレは装備魔法「銀河零式(ギャラクシー・ゼロ)」の効果発動!このカードを墓地に送る事でこのターンの「ギャラクシーアイズ」の戦闘破壊を無効にする!』

 

「だけど…戦闘ダメージは受けてもらう!!」

ホープレイがギャラクシーアイズに斬りかかる…だが…!

 

 

ガギン!!

 

 

「な、なにぃぃ!?攻撃が弾かれた─!?」

ギャラクシーアイズに迫ったホープ剣がバリアに阻まれる…!

 

『フッ…!墓地に送られた「銀河零式」の効果さ…このカードが墓地に送られた事で「ギャラクシーアイズ」の攻撃力は0()となる!そして…』

 

(っ…!遊馬、「ゼロゼロック」の効果だ…!私達の効果を逆手に取られた…!)

 

「あっ…!?攻撃力0だから…攻撃できねぇ!?」

カイトは遊馬のカード効果を使い、窮地を切り抜ける…そして…!

 

 

『そして「戦闘重力」の効果が発動しお前を葬る!モンスターがフィールド上にいる時にバトルしなかったプレイヤーは1000ダメージを受ける!』

 

「や、やべぇ!!」

 

(遊馬!罠カードだ!!)

遊馬達の残りライフは300…ピンチを切り抜ける為に遊馬は1枚のカードを発動する!

 

 

「永続罠発動!『ディメンション・ゲート』!『ホープレイ』を除外する!!これでダメージは受けねぇ!」

 

『フッ…!やるな…!』

 

「オレはカードを伏せてターンエンドだ!」

ホープレイが異次元へと消え去り…遊馬達はギリギリでライフを残す…!

 

 

 

(…遊馬、君は強くなったな…)

 

「アストラル!?なんだよいきなり?」

アストラルはターンを終えた遊馬を褒める…あまりに突然の言葉に褒められ慣れていない遊馬は戸惑う…。

 

(君のかっとビングの精神は本当に素晴らしい…もう君は一人でも……)

 

「何を言ってんだ!オレ達は二人で1つのかっとビングだろ!?ずっと一緒に前に進もうぜ!」

遊馬とアストラルは文字通り一心同体…2人で最強のライバルへと挑む!

 

(フッ…遊馬……勝つぞ!)

 

「おう!」

 

 

『遊馬、アストラル……このデュエル、勝たせてもらうぞ!』

2人の会話を見届けてたカイト…彼はついに最強の力を解き放つ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりてその姿を現すがいい!降臨せよ!我が魂!!「超銀河眼の光子龍」!!

兄弟の絆を象徴する赤きギャラクシーアイズが降臨する!!

 

『エクシーズ素材となった「銀河魔導師」の効果が発動…このカードの効果を使ってエクシーズ召喚したモンスターの攻撃力は2000下がる…が、これで充分!お前達のライフを削りきる事はできる!!』

 

「くっ…!」

 

バトル!「ネオギャラクシーアイズ」でダイレクトアタック!アルティメット・フォトン・ストリーム!!

赤き破壊の息吹が遊馬へと迫る!!

 

「今だ!!永続罠『ディメンションゲート』の効果発動!ダイレクトアタックされる時!このカードを墓地に送り、除外されたモンスターを効果を無効にして特殊召喚する!!復活しろ!『ホープレイ』!!」

 

『なんだと!?』

異次元に封じられし戦士が地面を砕き復活する!

 

 

「『ネオギャラクシーアイズ』と『ホープレイ』の攻撃力は2500!!よって相討ちだ─!!」

ネオギャラクシーアイズとホープレイの攻撃が衝突…共に破壊される!!

 

 

(今だ!遊馬─!!)

 

「よっしゃああ!!かっとビングだ!オレぇぇ!!」

それは…遊馬とアストラル…逆転を賭けた最後の1枚─!

 

「速攻魔法『エクシーズ・ダブル・バック』を発動!エクシーズモンスター1体が破壊され、フィールド上にモンスターが存在しなくなった時!破壊されたエクシーズモンスターと、その攻撃力以下のモンスター1体を特殊召喚できる!!」

 

『なに─?!』

 

「2体降臨!現れろ!『ホープレイ』!『希望皇ホープ』!!」

遊馬の気合いと共に、2体のホープが並び立つ!!

 

 

(これで次のターン…)

 

「オレ達の勝ちだ!!」

勝利を確信する遊馬とアストラル…だが、その時だった!

 

 

ズズズ…ゴゴゴゴゴ!!

 

 

「な、なんだ─!?」

地面が…大地が鳴動する…そして、遊馬達の前で閃光が弾ける!!

 

 

《ギャオオオン!!》

 

 

《グオオォン!!》

 

 

 

 

「ぎ、『ギャラクシーアイズ』と『ネオギャラクシーアイズ』!?」

 

(あ…あれは─!?)

カイトのフィールドに降臨する2体のギャラクシーアイズ…カイトのフィールドにあった最後の1枚…それは…!

 

 

(『()()()()()()()()()()()()()』…!?)

 

「お前も…オレと、同じカードを…!?」

 

『遊馬…アストラル…!?』

それは神の気まぐれか…はたまた、ただの偶然か…それとも勝利を目指した故の奇跡か…2人が選んだ勝利の一手…それは一致していた…!

 

 

 

『ふっ…!「ギャラクシーアイズ」と「ネオギャラクシーアイズ」で「ホープ」と「ホープレイ」を攻撃!!』

カイトの号令でギャラクシーアイズ達にエネルギーが集中する…!!

 

 

『破滅のフォトン・ストリーム!いけ!アルティメットフォトン・ストリーム!!

白銀の閃光はホープを赤き閃光はホープレイをそれぞれに消し飛ばす…それが長き戦いの決着となった…。

 

 

「う、うわああぁぁぁ!?」

 

 

 

 

遊馬&アストラル LP0

 

 

カイト WIN!

 

 

 

 

 

 

 

デュエル終了を知らせるブザーが鳴り響く…だが、誰も言葉を発する事はなかった、あまりに衝撃的な決着に全員が言葉を失っていたのだ。

 

 

 

「イテテ…負けちまったぁ…」

吹き飛ばされ、大の字に倒れ込んだ遊馬が言葉を漏らす…そこに近づく者がいた。

 

 

「カイト…あっ…?」

カイトは倒れた遊馬へと手を差し伸べる…遊馬は手を取って立ち上がる。

 

 

「カイト…次は勝つからな!!」

 

『何度でも相手になってやる、何度でもな…』

少しだけ笑みを浮かべながらそう言ったカイトは踵を返す…

 

「…おう!何度でもチャレンジしてやる!諦めなきゃ…かっとビングし続ければ…いつかはお前に辿り着けるはずだからな!!」

 

『フッ…(待ってるぞ、遊馬)』

カイトはオービタルグランダーと共に空へと飛び立った…愛する家族へと勝利を伝える為に…。

 

 

 

 

 

「遊馬〜!」

 

「小鳥…みんな…あっ…?」

 

「わっ!?遊馬!?」

デュエルが終わり、駆け寄ってくるナンバーズクラブの仲間達…その様子を見た遊馬は倒れ込んでしまう…!

 

 

「遊馬…?遊馬…!?どうしたの!?しっかりして!?」

 

「遊馬君!?どうしたのですか!?」

 

「まさか…!?何処かで怪我したウラ!?」

揺すっても起きない遊馬を心配する仲間達…そこに…

 

 

「心配すんな…遊馬は大丈夫だ」

 

 

「シャーク!」

ナンバーズクラブのもとに凌牙が少し呆れた様子で歩いて来る。

 

「よく見ろよ…ただ疲れて()()()()()だ…」

 

「えっ…あ…?」

 

「かぁ〜…かぁ〜…」

凌牙の言葉に小鳥が耳を澄ます…すると遊馬は小さくイビキをかきながら寝息をたてていた。

…無理もないだろうが…遊馬はWDC準決勝から戦い放し&動き放しだった、流石の遊馬でもへたばってしまうのは当然だろう…。

 

 

「まったく…人騒がせな奴だぜ…」

 

「遊馬〜起きてよ〜!」

 

「熟睡してるウラ…」

どれだけ揺すっても遊馬は目を覚まさない…その寝顔はとても穏やかだった…。

 

 

「しょうがない…しばらくこのままにしてやるか…」

小鳥は観念して遊馬を膝枕する…その顔は穏やかな笑顔だった…。

 

(観察結果その21…どうやら、気持ちのよい敗北もあるらしい…)

アストラルは少し呆れながら夕日を見つめる…こうして、遊馬のWDCでの戦いは幕を閉じた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハートランドで渦巻いた陰謀は仲間達の絆…そして諦めない心…「かっとビング」によって無へと帰した…。

 

 

だが、まだ遊馬達は知らない…この先に待ち受ける戦いを……待ち受ける悲劇を…。

 

 

しかし、それはまた…別のお話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【九十九遊馬…アストラル…私の想定外だった】

 

赤き水晶が乱立し、大地を覆う異次元…「バリアン世界」…その中心に位置する城で4人の人影が佇んでいる…。

 

【次は…我々が出ねばなるまい…】

 

 

 

不気味に目を輝かせながら…リーダーらしき男は決意を口にした…。

 

 




NextEpisode?








絆と希望の力でナンバーズを守り、アストラル世界を守った遊馬達…彼らの前に新たな敵が立ちはだかる!



「たくっ…人間共も頼りにならねぇなぁ…」



「全てはバリアン世界の為…」



「さぁ…!熱いデュエルをしようぜ!!」



「真の『銀河眼』使いになるのはこの私だ!!」





そして…新たに出会う仲間達…



『良かれと思って!』



「アンタ…凍らすよ!!」




そして、待ち受ける最悪の敵…!




【ジャンジャジャ〜ン!いま明かされる衝撃の真実ぅ…!ギャハハハハ!!】




遊馬達はバリアンの魔の手からナンバーズを、人間界を守りきれるのか…!!





転生したら決闘の観測者になった話 ZEXAL編第2部!
近日執筆開始予定!








【おマエは…ここで殺すぅ…!殺す殺す殺すコロスぅぅ!!!】




『…これも、俺の播いた種か…せめて、その魂だけでも…俺が救ってやる!!』










……3s.RbD…3SrBd@w…──


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幕間〜英雄と勇士達〜
ZEXAL編 オリキャラマテリアル


オリジナルキャラクター

 

 

●不動流星 

 

 

所属 アカデミアネオドミノ校中等部2年

 

見た目

遊星の髪型+メッシュが赤色 遊星よりも表情が豊か

 

 

ZEXAL編一章に登場した遊星とアキの孫。

ばら撒かれたナンバーズのうち一枚が遊星のもとにたどり着き、それを遊海に渡してくるようにお使いを頼まれた。

性格は少し控えめだが、遊星譲りの熱い心を受け継ぎ、クリアマインドも習得済みである。

 

過去にDホイールで転倒事故を起こし、生死の境を彷徨った事でライディングに無意識に恐怖を抱いておりアクセルシンクロを成功させる事ができなかったが、遊海とのライティングデュエルの中でラプラスの残留思念の力を借りながらついにアクセルシンクロを成功させる事ができた。

 

5章ではネオ童実野シティの防衛に当たっていたが…突然、目の前にフォウが現れ尋常ではない様子を見てハートランドの異常事態を察知、遊星にハートランドに向かうように頼み込んだ。

 

 

 

 

使用デッキ 遊星から譲られたシンクロンデッキ

 

 

 

 

 

 

 

海亜(カイア)・アトラス 

 

 

所属 アカデミアネオドミノ校中等部3年

 

見た目 金髪ロングに黒メッシュ+鋭い目付き

 

 

ZEXAL編二章に登場したジャックとカーリーの孫娘。

ハートランドシティで開催されたWDCに参加する為にやって来た。

予選を順調に勝ち進み、最後の壁として「No.25」による飛行船墜落未遂事件を解決した遊海へとデュエルを挑む。

 

1度目のデュエルでは遊海に惨敗してしまうが…遊海の好意で持参していたもう1つのデッキで遊海と再びデュエルする事になる…そのデッキはジャックの魂であるリゾネーター&レッドデーモンズデッキだった。

 

ジャックのデッキによって遊海と互角の戦いを繰り広げる海亜だったが、思わぬ悲劇が起きる…切り札である「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン」を召喚したが…よりによってモンスターが暴走し、海亜の自由を奪い遊海へと牙を剥いた。

原因は荒ぶる魂「バーニング・ソウル」を体得せずに「スカーレッド・ノヴァ」を使った事によってジャックによって封印されていた最強の地縛神「スカーレット・ノヴァ」の意識が目覚めてしまった為だった。

 

復活の為に遊海の魂を喰らおうとする地縛神に対し、遊海は奥の手である「NEXUS」を開放する事で事態を収めたが…そのダメージが後にトロンに不覚を取る遠因となってしまった。

性格は男勝りでいじっぱり、アカデミア中等部の姉御的存在になっている。

…だが、本当は優しい女の子である。

 

余談だが、アカデミアから帰る時はほとんど流星と一緒に帰るらしい

 

 

使用デッキ 陽炎獣デッキ リゾネーター・レッドデーモンデッキ(ジャックから拝借)

 

 

 

 

 

●不動夏菜

 

所属デュエルアカデミアネオドミノ校少等部4年

 

見た目 赤いセミロングの髪 目が大きい

 

 

ZEXAL編第三章に登場した遊星とアキの孫であり、流星の妹

おっとりした性格だが…たまに言葉の切れ味が鋭くなる。アキから精霊の力を強く受け継いでおり、既にシグナーのドラゴン「ブラック・ローズ・ドラゴン」をアキから譲られている。

(実際には兄の流星に「スターダスト・ドラゴン」が譲られたのを見てアキに駄々をこねた)

 

 

ハートランド学園の学園祭に誘われた流星と海亜と共にハートランドシティを訪れたが…。

 

使用デッキ

アキに譲られた植物ローズドラゴンデッキ

 

 

 

 

 

●武藤遊奈

 

 

所属デュエルアカデミア本校→アイドルデュエリスト→女優プロデュエリスト

 

見た目 毛先が赤い茶色のショートカットに金色のメッシュ

 

 

断章に登場した武藤遊戯と真崎杏子の娘、登場時は十六夜アキと同世代。デュエルアカデミア本校首席。

 

アカデミア卒業を前に進路について悩んでいた所、たまたまアカデミアに流れ着いた「No.45」を手にしてしまい心の闇が暴走…有名人である遊戯と杏子の娘である事で色眼鏡で見られてしまうコンプレックスから「とにかく強くなって『自分』を見て欲しい」という願望に支配されてしまう。

その結果、アカデミアに封印されていた『三幻魔』の封印を解いてしまい、さらなる闇に支配される。

 

そして幻魔の異変を察知して駆けつけた遊海とデュエル…ナンバーズの持つ『運命操作能力』によって遊海を敗北させ、重傷を負わせた。

 

その後、駆けつけた遊戯と激しい親子喧嘩デュエルを繰り広げ、追い詰められたもののナンバーズの力によって勝利したが…目を覚ました遊海が『NEXUS』を開放、全ての異能を封じる結界『尋常なる決闘の地』の中でデュエルを繰り広げ…未来を守護する『神』の力を前に敗北、ナンバーズの呪縛から開放され正気を取り戻した。

 

 

その後、遊海の言葉で新たな夢…歌って踊れてデュエルできる『アイドルデュエリスト』を目指してプロリーグに進出…女性デュエリスト筆頭『ダンス・クイーン』としてアイドルデュエリストの草分けとなった。

 

 

使用デッキ

 

遊戯から譲られた『マジシャン・ガール』デッキ

 

 

 

 

●バリアン世界人 アゴール

 

所属 バリアン七皇・ベクター配下

 

見た目 人間体 赤い髪の青年

    怪人体 骸骨の魔人『スケルトン・キング』

 

 

ZEXAL編3章から登場したベクターに付き従うバリアン世界人。

人間で暗躍するベクターに付き従い、「RUM」を用いない洗脳でサイコデュエリストや精霊使いの素質ある人間を洗脳し、嫌がらせの如く遊海にけしかけ消耗させていた張本人。

 

普段は理知的な性格だが…「赤い髪の少女」「馬鹿にされる」「赤帽子」のいずれかを認識した時、本来の性格である狂気性・凶暴性が現れる。

 

 

 

その前世はアルカディア・ムーブメント総帥にして最強レベルのサイコデュエリストであった男…ディヴァインその人である

 

アメリカでバイオテロを企てたが遊海に敗れ、罰ゲームを受けた後にアメリカ警察に逮捕された。その後、そのまま牢獄で人生を終えた…と遊海には伝わっている。

 

前世の記憶のほとんどは薄れていたが、夏菜との戦いで現れたNEXUSの姿を見て記憶が完全に覚醒…復讐の為に遊海をデュエルで打ちのめそうとした。

 

サルガッソでの決戦時、遊海を異次元の魔海『バミューダ』へと拉致し復讐の為に戦いを挑む…だが、復讐の感情が大きくなり過ぎたあまり、決闘者としての誇りをもかなぐり捨てた卑劣な作戦で遊海を痛めつける暴挙に出る…。

 

そして戦いの末に遊海が手にした新たな『NEXUS』により敗北した。

 

…その後、遊海の言葉によって正気を取り戻し、叶わぬ願いと共に穏やかに眠りについた。

 

 

使用デッキ シンクロ軸サイキックデッキ

 

所持No. No.48シャドー・リッチ

 

 

 

 

●アストラル世界人 シーカー

 

 

アストラルの記憶に度々登場するアストラル人、具体的な容姿は不明だが、アストラルの記憶では人魂状で現れる。

人間界の知識があるが…アストラル世界で何らかの罪を犯し、檻に囚われているらしい。

 

どうやら誰かを探し求めているようだ…。

 

 

 

 

 

原作登場キャラ

 

 

 

●神代凌牙

 

 

遊戯王ZEXALの主要人物、九十九遊馬のライバルであり、本世界では遊海の養子となっている。

性格は原作とは大きな違いはないが…家族の愛情をしっかり受けている為、だいぶ丸くなっている。

 

妹の璃緒と共に遊海に引き取られ、遊海と翠を育ての親として慕っている。

 

 

 

●神代璃緒

 

 

遊戯王ZEXALⅡの主要人物、凌牙の双子の妹であり遊海の養子となっている。

 

本編1年前にトロンの策略によりトーマス(Ⅳ)の襲撃によってダメージを負い、昏睡状態だった。

…なお、遊海はトロンの幻影を追い掛けていた為、すぐに璃緒のもとに駆けつける事ができず…それが遊海が本編で精神的追い詰められる原因となった。

 

 

 

 

●ジャック・アトラス

 

見た目 トレードマークの白コート シルバー混じりの逆立った金髪 白い中折れ帽 見た目年齢60代

 

 

 

ZEXAL編二章に登場、伝説のライディングチーム5D'sのメンバーであり、遊海から3代目決闘王を継承した伝説の決闘者。

約30年間「決闘王」の玉座に君臨した後に勇退…ネオドミノシティに戻り、カーリーと共に穏やかな老後を送っていた。

 

そんなある日、孫娘の海亜と自分のデッキの継承を巡って喧嘩をしてしまう、原因は海亜の経験不足とバーニングソウルを体得していない事であり…ジャックは海亜がバーニングソウルを体得できたらデッキを譲るつもりでいた。

だが、海亜はその想いを理解できず(ジャックの説明不足もあるが)ジャックのデッキを盗み、WDCへと参加してしまう。

 

そして、無くなったデッキと海亜を探す為に流星と共にハートランドシティを訪れ、そこで泣きじゃくる海亜と重傷を負った遊海と再会した。

 

その後、WDCの裏に隠された陰謀を知り、遊海の手助けをするべくハートランドシティに滞在する。

 

 

 

 

 

 

●遊城十代

 

 

見た目 本編より大人びた青年姿

 

 

 

ZEXAL編二章に登場。「遊戯王GX」の主人公であり、世界を虚無の邪神「ダークネス」から救った英雄。

自身の持つ精霊の力を鍛え過ぎて体が半精霊となった事で常人以上の寿命を得た疑似的な不老不死となってしまった。

世界を旅する中で久々に遊海達に会う為にハートランドシティを訪れたが…「デュエルの祭典」であるWDCに興味を持ってしまい「キャプテン・ブレイブ」を名乗って飛び入り参加…本戦へと出場した。

 

その後、本戦会場で遊海の姿を確認するが…あまりに消耗した彼の姿を見て異変に気付き、地下セクションで接触…デュエルをする事になった。

 

WDC敗退後、遊海の手助けをする為にハートランドに滞在する。

 

 

 

 

●デュエルロイド・瀬人(カイバーマン)

 

見た目 青年期の海馬社長そのもの

 

 

 

海馬コーポレーション2代目社長にして伝説のドラゴン「青眼の白龍」を唯一使う事を許された伝説の決闘者…の姿と記憶を持つデュエルロイド。

 

死の間際、不動遊星を通して秘密結社「イリアステル」に依頼し、デュエルロイドとして復活した…その理由は自身の死後も世界を見守り続ける遊海を心配し、彼の力となる為だった。

当然、遊海は大反対したが…海馬自身の説得で押し切られてしまった。

 

デュエルロイドとなった後は自身の夢の世界・海馬ランドの園長兼正義の味方・カイバーマンとして活動している。性格は5D's編と比べてさらに丸くなり、人間関係のしがらみも減った事で第二の人生(?)を楽しんでいるらしい。

 

余談だが…海馬ランドにいるカイバーマンの身体は瀬人の端末の1つに過ぎず、本体はKCのメインサーバー内で情報体として世界中の海馬ランドを回り、ヒーローショーとヒーロー活動を行っている。

 

 

 

 

●龍可

 

 

見た目 白髪混じりの緑色セミショート 穏やかなおばあちゃん

 

 

ZEXAL編一章に登場。チーム5D'sのメンバーで精霊の力を持つ。

イギリスの大学を卒業後に日本に帰国し一時はプロデュエリストとして活躍していた、六十郎とは茶飲み友達。

 

決闘庵を訪れた際に修行を終えた遊馬と出会い、成り行きでデュエルをする事になり、力だけではないデュエルを遊馬に伝えた。

デュエル後は遊馬に5D'sと遊海の話を聞かせ、遊馬達がカイトへの恐怖を克服する手助けをした。

 

 

4章ではネームレスによって昏睡状態になった遊海と傷を負った翠の治療の為に精霊界の魔法使い『黒衣の大賢者』ことトルンカの調合した回復薬を持ってハートランドを訪れたが…。

 

 

年相応のお淑やかな老婦人になったが…遊星や遊海など親しい人の前では昔と変わらぬ爛漫さをみせる。

 

 

 

 

●龍亞

 

見た目 白髪混じりの緑髪 短めのポニーテール イケイケ系じいちゃん

 

 

ZEXAL編5章に登場。チーム5D'sのメンバーであり龍可の兄。

5D's編終了後、クロウの推薦を受ける形でプロライディングチームに所属し、チームを何度も大会優勝に導いた。

 

引退後はデュエル指導者として若いデュエリスト達の育成に当たり、何人ものプロデュエリスト・Dホイーラーを育てた。

 

バリアンの侵攻を前に遊海から頼まれてネオ童実野シティの防衛に当たっていたが、流星のもとにやって来たフォウの様子を見て遊星にハートランドシティに行く事を流星と共に進言した。

 

なお…性格はだいぶ落ち着いたが、そそっかしい所は相変わらずである。

 

 

 

 

●不動遊星

 

 

見た目 穏やかに年齢を重ねたZ-ONE、優しい顔のおじいちゃん 

 

ZEXAL編一章に登場。チーム5D'sのリーダーにして天才メカニック、ネオ童実野シティをイリアステルから守った英雄。

本編後は5D'sのメンバーの中で唯一ネオ童実野シティに残り、人類の平和の為に様々な発明品を開発…後に十六夜アキと結ばれた。

 

ZEXAL編ではアストラルから飛び散ったナンバーズの1枚が彼のもとに飛来…開眼したが「クリアマインド」によって負の影響を受けなかったばかりか…ナンバーズの負の力を無効化してしまった。

その後、修行を兼ねて流星にナンバーズを遊海に届けるようにおつかいを頼んだ。

 

WDC編では遊海の死を聞いてアキと共にハートランドへと向かっていたが、復活した遊海に遣わせられたフレアと流星に合流…遊海が感じた「嫌な予感」を止める為にハートランドシティのモーメントを停止させ、バリアンの策を阻止した。

 

 

 

●不動アキ

 

 

見た目 赤いショートヘアを髪留めで留めている。 精霊の力の影響で美魔女

 

 

ZEXAL編1章から登場、チーム5D'sのメンバーであり不動遊星の妻。

本編後は留学を終えネオ童実野シティに戻り、医師として活躍…その後遊星と無事に結ばれた。

 

精霊の力の強さは相変わらず強く、自身の治療にこっそり翠直伝の『精霊治療』を混ぜていた事で医師の間では『ゴッドハンドアキ』やら『薔薇の聖女』と呼ばれていたらしい。

 

5章ではネオ童実野シティの防衛に当たっていたが…ハートランドの方角から嫌な気配を感じ続けていた。

その後、『ブラック・ローズ・ドラゴン』を託した夏菜を補佐する為にハートランド戦線に参加、2人でフレアの窮地を救った。

 

 

 

 

●クロウ・ホーガン

 

見た目 逆立った銀髪を黒いヘアバンドで留めている。 ダンディ系じいちゃん

 

 

ZEXAL編5章に登場、チーム5D'sのメンバーであり『鉄砲玉』の異名を持つライディングデュエリスト。

 

本編後はライディングチームを抜けてジャックと同じシングルリーグ『ライドA』に参加、決闘王のライバルとして最後の最後までしのぎを削った。

プロとして稼いだお金をほとんど児童施設や福祉施設に寄付しており、今だに人々からの人気が高い。

 

5章では遊海達の救援の為にハートランドへ急行…『アーククレイドル事件』以来の異常事態にこれが『最後の大仕事』と気を引き締めている。

 

 

 

 

 

●ブルーノ(アンチノミー)

 

見た目 5D's編と同じ

 

 

チーム5D'sの天才メカニックであり、その正体は秘密結社「イリアステル」が滅四星の1人「戦律のアンチノミー」だった。

 

本編後はモーメント制御システム「フォーチュン」の完成を見届けた後に未来世界へ帰還…Z-ONEとラプラスの遺志を継いで世界を見守り続けている。

…それでも偶に遊星や流星、5D'sの仲間達の顔が見たくて帰って来てしまい、イリアステルと遊海達の連絡係になっている。

 

幕間ではデュエルロイドとなった海馬(瀬人)のメンテナンスの為に海馬ランドを訪れていたが…思わぬ形で遊海と瀬人の決闘を見守る事になった。

 

 

 

●アポリア

 

見た目 5D's編と同じ

 

 

秘密結社「イリアステル」の「三皇帝」の正体であり、イリアステルの滅四星「絶望の番人」改め、「希望の防人」

アーククレイドルの戦い後、復活したパラドックスと共に未来世界へと帰還し、Z-ONEとラプラスの眠る霊廟と共に遊海達の世界を見守り続けている。

 

遊馬達のサルガッソの決戦の際、異次元で強いエネルギーを観測し、調査に赴いたところで次元の狭間に取り残された瀕死の重傷を負った遊海を発見、人間界に連れ帰った。

 

なお、今でも龍亞や龍可と電子メールによる文通を続けている。

今の彼の一番の宝物は………兄妹と共に撮った笑顔の写真である。

 

 

 

 

●パラドックス

 

 

見た目 5D'編と同じ、ただし『仮面』はあまり着けなくなった。

 

 

 

未来を救う秘密結社『イリアステル』滅四星の1人、『逆刹のパラドックス』

 

本編で遊星達に倒された後、ラプラスにメモリーチップを回収され…「アーククレイドル事件」の時、彼の死の間際にアポリアへと託された後、アポリアの手によって復活した。

 

 

目覚めた後にアポリアとブルーノからZ-ONEとラプラスの顛末を知り、自身の行いを懴悔…遊星に狼藉を働いた事を謝罪した。

その後、未来世界のアーククレイドルに戻り遊星達の世界を見守り続けていた。

 

 

 

なお…余談になるが、このパラドックスは本編『夢幻のデュエル〜未来からの侵略者〜』のパラドックスとは『別人』であり、『バトルシティ3日目〜未来からの侵略者2〜』『未来からの侵略者 後編〜超融合・時空を超えた決闘〜』のパラドックスである。

 

実は遊星がパラドックスの前から遊戯を救い出す際に「分岐点」が発生…「遊戯だけ」の場合「本編世界」へ……『遊戯と遊海』を救うと…『破滅の未来』へと分岐する。

 

…つまり『超融合・時空を超えた決闘』において遊星と十代と共闘した『白波遊海』『武藤遊戯』は───。

 

 

 

 

これは…『彼』本人と『神様』だけが知る事実である。

 

 

 

 

★ダークネス

 

遊戯王GXにおけるラスボス…12次元の裏側を統べる「虚無の邪神」…ZEXAL編5章に登場。

 

このダークネスは遊海がアーククレイドル事件で倒したダークネスとは『別人』、GX編で十代が倒したダークネスである。

遊海が倒したのは『破滅の未来』におけるダークネスであり、こちらのダークネスは再び現世を虚無に飲み込むタイミングを待っていた。

 

 

怪物ネームレス・怪物態の規格外の力に『絶望』し、遊海の心が折れた瞬間を狙い遊海や世界の人々の絶望を糧に復活を遂げた。

 

しかし、ネームレスの秘めた力を見誤り、虚無世界から脱出された直後に捕食され…ネームレス・魔獣態を覚醒させる生贄となった。

 

なお…「不死」の存在である為、ネームレス浄化後は虚無の世界へと脱出、再び深き眠りに就いたらしい……もう復活しない事を祈るばかりである。



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英雄と勇士〜光の足跡〜

こんにちは!S,Kです!

WDCを戦い抜いた勇士達、新たな戦いを前に…彼らは束の間の平和な日々を過ごす…。


それでは最新話をどうぞ!


ピンポ〜ン!

 

 

「は〜い!…あら、遊馬君に小鳥ちゃん!」

 

「こんにちは翠さん!」

 

「遊海…さんが退院したって聞いたからお見舞いに来たぜ!」

 

「ありがとう〜!遊海さんも喜ぶわ」

 

 

 

陰謀が渦巻いたワールド・デュエル・カーニバルから1週間が過ぎた…ハートランド遊園地を中心に小さくない被害を受けたハートランドシティも徐々に平穏を取り戻しつつある…。

 

遊海はその後2日ほど眠り続け、力を取り戻した翠に治療された事で退院している…そして夏休みを迎えた遊馬達は遊海のお見舞いの為に白波家を訪れた…。

 

 

 

 

「ん…遊馬と小鳥か…」

 

《フォウ!》

 

「シャーク!それにフォウ!」

リビングに通された遊馬達を出迎えたのはソファに腰掛けた凌牙だった、その肩にはフォウが乗っている。

 

 

「シャークも遊海のお見舞いに来たのか?」

 

「ああ…正確には()()()()()()ところだ」

 

「「行く?」」

 

「ごめんね…遊海さんはここにはいないのよ」

オレンジジュースを持って来た翠が遊馬達に遊海がここにはいない事を伝える…。

 

 

「いないって…退院したとはいえ、遊海は大怪我してるんだろ!?いったい何処に…」

 

「うん…少し傷の治りが遅いから静かな場所で療養してるのよ、私達もこれから行くところだったの!」

 

(療養…では、遊海は何処にいるのだ?)

アストラルは翠へと遊海の居場所を訊ねる…。

 

 

「デュエルモンスターズ達の世界…精霊界よ!」

 

「(「精霊界!?」)」

翠の告げた場所に遊馬達は思わず驚愕の声をあげた…。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ…準備はいいかしら?」

 

「お、おう!…って、どうやって精霊界まで行くんだ?」

準備を終えた翠と遊馬達は庭へ出て翠の指示を待っていた。

 

 

「人間界から精霊界へ行くには主に2つの方法があるの、1つは人間界にある精霊界への『入口』を使う方法、そして2つ目は精霊に直接連れて行ってもらう方法…私達は後者の方法で精霊界に向かうわ!」

そう言って翠は左手に着けたウジャト眼のあしらわれた金色の指輪を空に掲げる。

 

(それは…千年アイテム…!)

 

「そう、これは私の千年アイテム『千年指輪』…これを…こうする!」

 

キィィン─!

 

翠は精霊の力を指輪へと集中…放たれた金色の光線が青空へと吸い込まれていく…。

 

「…あとは少し待つだけね!」

 

「待つ…?」

遊馬が首をかしげる…そして…

 

 

キン─

 

「あっ…?空に…穴が…!?」

 

「よかった…無事に届いたみたいね」

翠達の真上の空…空間に巨大な穴が開く…そこから虹色のコアを持つ、巨大な機械要塞がゆっくりと降下する…!

 

 

「でっ…デカッ!?なんだよアレ─!?」

 

(虹色の宝玉に…あの模様…まさか、アヤカなのか?)

 

【その通りです!この姿が私の真体…「アポクリフォート・キラー」です!…あっ、周りには私の姿は見えていないのでご安心を!】

あまりに巨大なキラーの姿に圧倒される遊馬達にアヤカが語りかける。

 

【それでは…精霊界DT世界に5名と一匹をご案内〜!】

 

キィン─!

 

「「「うわっ!?」」」

アヤカから放たれた虹色の光が静かに遊馬達を包み込んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

【お待たせしました!ターミナルワールドに到着です!】

 

 

「「「…はやっ!?」」」

 

《…これが決闘王の精霊の力の一端…凄まじいな…》

 

光に包まれる事5分ほど…遊馬達は穏やかな風が吹き抜ける草原へと到着した!

 

「ここがアヤカちゃんやウィンダ達の故郷、ターミナルワールドよ!遊海さんはこの近くで療養してるの、行きましょう!」

 

《フォウ!》

慣れた様子で歩き出す翠とフォウ…遊馬達も慌ててあとを追い掛けた…。

 

 

 

「でも…ここが精霊世界か〜…なんだか空気がうまい気がするぜ!」

 

「うん!なんだか気持ちいい!」

 

「ハートランドとは大違いだな…」

 

翠について草原から森へと進んでいく遊馬達は物珍しそうに辺りを見回している。

 

 

ガサガサ…

 

《ニャウ?》

 

「あ…可愛い〜!」

 

「すげぇ…!赤いライオンだ!」

しばらく森を進んだ先…茂みの中から赤い炎のような毛を持つ子ライオンが飛び出してきた!

 

 

「その子は『精霊獣アペライオ』よ、この近くに『霊獣使い』の村があって、その村の女の子のパートナーなの!」

 

「そうなんですか…!アペライオ!おいで〜!」

 

《ニャウ?ニャー!》

 

「わぁ…!柔らかくて暖か〜い!」

 

《フォウ…!(特別意訳:ライバル登場の予感…!)》

小鳥に呼び寄せられたアペライオは顎の下を撫でられ嬉しそうな顔をする…なお、フォウは少し鋭い目つきでアペライオを睨んでいた…。

 

 

『アペライオー!何処にいるの〜?』

 

「この声は…レラちゃ〜ん!アペライオはこっちよ〜!」

 

『あっ!翠さん!?すぐ行きます!』

アペライオを探す声に翠が答える…すると茂みの中からオレンジ色の髪で緑色の服を着た快活そうな女の子が現れる。

 

 

『いた〜!アペライオ!まだ特訓の途中だったでしょ?』

 

《ミュ!ミャウ〜》

 

『「面倒くさい〜」じゃないの!』

飛び出してきたレラはアペライオを抱き上げる…。

 

 

「翠さん、もしかしてこの人がアペライオのパートナーさん?」

 

「うん!『霊獣使い』のレラちゃんよ!」

 

『翠さんありがとう!『相絆』の特訓をしてる時に気まぐれに行っちゃって…ん?見慣れない子供達ね?』

 

「この子達は遊海さんのお見舞いに来てくれたの!ほら、挨拶してね!」

 

「こんちは!九十九遊馬だ!」

 

「観月小鳥です!」

 

「神代凌牙だ」

翠に促されて子供達は挨拶をする。

 

 

『うん!元気な子達ね!あ…でも遊海の所に行くなら気をつけた方がいいかも?』

 

「えっ?どうして?」

 

『さっき様子を見たら大きな岩の前で瞑想してたから…』

 

 

「「「瞑想?」」」

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

「………」

 

 

周囲に濃密な魔力が漂う氷結界の三龍の封印地「煉獄の封印穴」…遊海はそのほとりで巨大な丸岩を前に座り込んでいた。

 

 

 

 

「………召喚、『No.∞ 決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』…!」

遊海は静かに立ち上がり、右腕に大剣を召喚する!

 

 

勝利へ導く…決着の剣(デュエル…カリバー)─!!」

 

 

ゴッ──ズッパァァァン!!

 

 

遊海は大剣を丸岩へと振り下ろす、その一撃は巨岩を真っ二つに切断…その破片すら力の奔流で砂と化した…。

 

 

ズドン

 

 

「っ…はぁ…はぁ…流石に、本調子には…ほど遠いな…」

大剣を地面へと落とした遊海は肩で息をして胸を押さえ──

 

 

 

《フォウフォウフォーウ!!!(特別意訳:怪我人が何やってるんだ─!!!)》

 

「どっはぁぁぁ!?」

体にスピンをかけながらダイレクトアタックを仕掛けたフォウに吹き飛ばされた…。

 

 

「まったくもう…まだ無茶は厳禁ですよ?」

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「いや〜、4人ともよく来たなぁ…来てくれてうれしいよ!」

 

「いや、そんな軽く流すなよ…怪我人がしちゃダメな動きしてたぜ父さん…」

 

《フォウ!!(特別意訳:そうだよ!体は大事にしないと!!)》

巨大な穴の近くに建てられた小さなログハウス…そこで遊馬達は遊海と再会した…なお、遊海の頬には肉球形のアザができている。

 

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ凌牙、本調子に比べて体力が落ちてるだけだから…遊馬達も変わりないか?」

 

「おう!元気ビングだぜ!」

 

「もう…カイトとのデュエルの後に丸1日寝込んでた癖に…」

遊馬も元気そうに笑顔をみせる…遊海が元気そうで安心したようだ。

 

 

「この場所は魔力…エネルギーに満ちた場所でな、力が消耗した俺にとって丁度いい場所なんだよ…もう2〜3日すれば全快できるはずだ」

 

《確かに…この場所は『力』が溢れて来るようだ…私が物体に干渉できる程に…もぐもぐ》

 

「アストラル…食べながら喋っちゃダメだぜ?」

 

「本当に美味しそうに食べてるわね〜よかった!」

 

《フォウ、フォーウ!》

時間は丁度お昼時、精霊でも食事ができると知ったアストラルは翠お手製のおむすびを頬張っている…とても嬉しそうである。

 

 

 

「さて…お前達もただ、俺のお見舞いに来たわけじゃないだろ?」

 

「ああ…突然の事で色んな事を聞き逃したからな…俺達に教えてくれよ父さん…あんたの事を…」

昼食を終えた遊海達は改めて向かいあう…緊急事態の中で明かされた様々な事…遊馬も凌牙も…そしてアストラルもその事を遊海自身に聞きたいと思って来たのだ…。

 

「じゃあ…改めて自己紹介からだな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は白波遊海、自分で言うのもなんだが伝説の決闘者『赤帽子』…いや『2代目決闘王』と呼ばれた男さ」

 

「私達も学校の授業で習いました!何度も世界を救った英雄だって…でも、何十年も前の人だって…」

 

「そうだよな!?ばあちゃんが子供の頃にサインを貰って…まったく姿が変わってないって言ってたぜ!?」

改めて自己紹介をした遊海に遊馬と小鳥が年齢の事を訊ねる…。

 

 

「一番気になるのはそこだよな!端的に言えば俺…そして翠は『不老不死』なんだよ」

 

「「「不老不死!?」」」

遊海の思わぬ言葉に子供達が驚愕する。

 

 

《歴史上の偉人が追い求めた「不老不死」……どんな経緯で手に入れたのだ?》

 

「…もう90年以上前になるかな…初代決闘王・武藤遊戯に宿った「名もなきファラオ」が冥界へと帰る時…俺と翠は祝福を受けたんだ…『この世界を見届けて欲しい』と…その約束を胸に、俺達はその時代のデュエリスト達と共に戦ってきたんだ」

 

「ファラオとの、約束…」

遊馬は垣間見た名もなきファラオの姿を思い出した、遊馬を守る為にやって来た彼は…少し悲しげな様子であった事を…。

 

 

「まぁ、『不死身』と言ってもリスクが無いわけじゃない…俺達は命懸けのデュエルに負ければ……トロンにされたように簡単に死んじまう…まぁ!今回もなんとかなったけどな!ハッハッハッ!!」

 

「絶対に笑い事じゃないよな…それ(汗)」

 

「これくらい豪胆じゃなきゃ世界を何度も救ってないさ!」

若干引いている凌牙を前に遊海は笑った…。

 

 

 

《遊海、私から質問だ…貴方がMr.ハートランドとのデュエルで見せた「NEXUS」…あれは私と遊馬の「ZEXAL」に限りなく近い力だ…あの力は何なんだ…?》

 

「たしかに…!シャイニング・ドローも使ってたよな?」

アストラルは次に遊海の切り札…『NEXUS』について訊ねる。

 

 

「ふむ…あの姿は……俺が…いや、俺の『魂』がランクアップした姿…ってところかな?」

 

《魂の…ランクアップ…?》

 

「ああ、俺の感覚でしかないんだが…善悪を超越し、全ての絶望を希望に変える力…俺自身はそう思ってる」

 

「善悪を超えた力…なんだかカッケェ…!やっぱり遊海…さんはすごいぜ!」

 

「いつも通りの呼び方でいいよ遊馬…お前に「さん」付けされると調子が狂うからな…」

目を輝かせている遊馬に遊海はそう伝える。

 

 

《あとは…私の知らないナンバーズ…「No.∞」についてだ、私の記憶は100枚のナンバーズとなって世界に飛び散った…ならば、番外となる貴方のナンバーズはいったい…?》

 

「…こればっかりは俺自身にもわからないんだ、無我夢中のデュエルの中で生まれたカードだからな……お前が持ってみれば…何か判るかもな?」

アストラルのさらなる疑問に遊海は「No.∞」のカードを取り出す、その絵柄は決闘盤を模した大剣が台座の上に安置されているイラストだった。

 

 

《お借りする…(ズキン)っ─!?》

 

「おい!?アストラル!大丈夫か!?」

遊海からナンバーズを受け取ったアストラルは突然の頭痛に頭を押さえる…。

 

そしてアストラルが垣間見たのは膨大な「戦いの記憶」…遊海が巨大な蛇神や悪魔、3体の魔神や神…虚無の神や冥界の神…()()()()()()()()()()と命懸けの戦いやデュエルをする姿だった。

 

 

 

「…アストラル、大丈夫か?」

 

《ああ、落ち着いた…遊海、これは貴方の戦いの記憶の「結晶」だ…貴方という最強の決闘者が歩んだ戦いの歴史そのものだ…!》

 

「俺の戦いの歴史そのものか…ありがとう、アストラル…俺の疑問も解決したよ」

 

 

〜〜〜

 

 

「さて…質問はこんな所かな?」

 

「ああ、よくわかったぜ…俺の父さんは世界一だってな」

他にもいくつかの質問を交わした遊海はひと息つく…

 

 

「いいや…オレからもう1つあるぜ!遊海!」

 

「ん、どうした?遊馬…」

遊馬が椅子から立ち上がりながら遊海を見つめる…!

 

 

「遊海…いや、先生!オレとデュエルだ─!!!」

 

「「えぇー!?」」

 

「フッ…そうくると思ったよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「準備はいいか?ナンバーズを使ってもOKだからな!」

 

『ああ…!オレの全力で遊海と戦う!!』

 

「ふぅ…結局こうなっちゃうんだ」

封印穴のほとり…そこで遊馬とアストラルは遊海と睨み合う!

 

 

「父さん!無理すんなよ!?」

 

「心配するな!決闘王の力の一端を見せてやる!」

心配そうに声をかける凌牙に遊海は親指を立てて応える!

 

 

《遊馬、彼はカイト以上の強敵だ…だが、我々の全力で挑むぞ!!》

 

『おう!!かっとビングだ!オレぇぇ!!』

 

「頑張れ〜!遊馬〜!!」

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊馬&アストラルLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

 

《遊馬…いくぞ!》

 

『おう!「ゴブリンドバーグ」を召喚!』

飛行機に乗ったゴブリンが現れる! ATK1400

 

『「ゴブリンドバーグ」の効果発動!手札のレベル4以下のモンスターを特殊召喚できる!「ガガガマジシャン」を特殊召喚!』

ゴブリンがコンテナを投下…その中から不良の魔術師が現れる ATK1500

 

 

『オレはレベル4の『ガガガマジシャン』と『ゴブリンドバーグ』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ!「ガガガガンマン」!』

西部劇のガンマンのようなガガガの学生が現れる! DEF2400

 

 

『「ガガガガンマン」の効果発動!守備表示の時!ORUを1つ使い、相手に800ダメージを与える!』

 

「むっ…!やるな!!」

ガンマンの早撃ちが遊海のライフを削る!

 

遊海LP4000→3200

 

 

『先攻は攻撃できない!カードを2枚伏せてターンエンド!』

遊馬LP4000

ガガガガンマン 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「遊馬の奴、父さん相手に先制ダメージか…やるじゃねぇか」

 

「ふふ…やっぱりWDCで優勝しただけはあるわね!」

デュエルを見守る凌牙と翠は先制ダメージを与えた遊馬に感心する。

 

 

「先攻での効果ダメージか、いい感じだ!」

 

『よし!先生に褒められたぜ!』

 

《気をつけろ遊馬、彼のデュエルは私達の常識を超えてくる…!!》

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「ふむ…魔法カード『光の援軍』を発動!デッキトップ3枚を墓地に送って効果発動!デッキからレベル4以下のライトロード『ライトロード・アーチャー フェリス』を手札に加える!」

 

墓地送り

戒めの龍

ライトロードの裁き

ミネルバ

 

 

「さらにデッキから墓地に送られた『ライトロード・メイデン ミネルバ』の効果発動!さらにデッキトップを墓地に送る!」

 

『どんどんデッキを減らしていく…??』

 

《なるほど…デッキトップからカードを墓地に送る事でアドバンテージを稼ぐデッキらしい…!》

 

墓地送り

 

トワイライト・イレイザー

 

 

「ライトロードモンスターの効果で墓地に送られた『トワイライト・イレイザー』の効果発動!手札の『ライトロード・アサシン ライデン』を特殊召喚!」

両手に短刀を持つ光の暗殺者が現れる ATK1700

 

 

「さらに魔法カード『ソーラー・エクスチェンジ』を発動!手札の『ライトロード・アーチャー フェリス』を墓地に送り2ドロー!その後デッキトップ2枚を墓地へ!」

 

墓地送り

 

ライトロードの神域

ライトロード・ドルイド オルクス

 

 

「さらに『ライデン』の効果発動!1ターンに1度、デッキトップ2枚を墓地に送り、その中にライトロードモンスターがいればエンドフェイズまで攻撃力が200アップする!」

 

墓地送り

 

ライトロード・ハンター ライコウ

トワイライトロード・ソーサラー ライラ

 

 

ライデンATK1700→1900

 

 

「そして『ライトロード・サモナー ルミナス』を召喚!」

踊り子のような衣装を纏った召喚術師が現れる DEF2000

 

 

「『ルミナス』の効果発動!手札の『トワイライトロード・シャーマン ルミナス』を墓地に送り!墓地の『フェリス』を特殊召喚!」

弓矢を持つ獣人の少女が現れる ATK1100

 

 

『すげぇ…!まったく動きが止まらねぇ…!!』

 

《これが決闘王のタクティクスか…!》

 

「待たせて悪かったな、とりあえず一区切りだ!俺はレベル3の『ルミナス』にレベル4チューナー『ライデン』をチューニング!」

ライデンが緑色の輪に変化しルミナスを包み込む!

 

3+4=7

 

『集いし祈りが異界の勇者を呼び覚ます!悪を裁く光となれ!シンクロ召喚!「ライトロード・アーク ミカエル」!』

純白の龍に乗る天使が現れる! ATK2600

 

 

《シンクロモンスター…!》

 

『すげぇ…!!』

遊馬は純白のドラゴンに見惚れてしまう…!

 

「フッ…!『ミカエル』の効果発動!自分のライフを1000払い!『ガガガガンマン』を除外する!光の巡礼!」

 

『また除外かよ!?』

ミカエルから放たれた光がガガガガンマンを異次元に吹き飛ばす!

 

遊海LP3200→2200

 

 

 

「バトルだ!『ミカエル』で遊馬にダイレクトアタック!!ジャッジメント・レイ!」

裁きの龍にエネルギーが集中する!

 

 

《遊馬!リバースカードだ!》

 

『おう!リバース罠発動!「攻撃の無敵化」!そのこうでオレがこのターン受けるバトルダメージを0にする!』

遊馬の周りにバリアが現れ、裁きの光を弾く!

 

 

「やるな…!オレはカードを1枚伏せてターンエンド!そして『フェリス』と『ミカエル』の効果発動!エンドフェイズにそれぞれデッキトップから3枚ずつ、計6枚のカードを墓地に送る!」

 

墓地送り

 

トワイライトルミナス

ミネルバ

トワイライトライコウ

 

トワイライトジェイン

ライトロードの神域 

エイリン

 

 

「墓地に送られた『ミネルバ』の効果!さらに1枚を墓地へ!」

 

墓地送り

 

黄昏の双龍

 

 

「おっと…!当たりだ!ライトロードモンスターの効果で墓地に送られた魔法カード『黄昏の双龍(トワイライト・ツイン・ドラグーン)』の効果発動!墓地に眠る『戒めの龍』を手札に加え、デッキトップ4枚を除外する!」

 

除外されたカード

 

グラゴニス

裁きの龍

隣の芝刈り

フェリス

 

 

遊海LP2200

フェリス ミカエル 伏せ1 手札3

 

 

 

 

 

『あ、危ねー!まったく気が抜けねぇ…!』

 

《これが「決闘王」の実力か…!》

遊海の攻撃を凌いだ遊馬は額の汗を拭う…。

 

 

《だが、ライフは我々が有利だ…一気にいくぞ!》

 

『おう!!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『よし…!手札から装備魔法「ガガガリベンジ」を発動!墓地の「ガガガマジシャン」を特殊召喚してこのカードを装備する!』

墓地から不良魔術師が復活する! ATK1500

 

 

『さらに!相手の場にモンスターがいて、自分の場にレベル4のモンスターだけがいる時!手札の「トラブル・ダイバー」は特殊召喚できる!』

虎柄のダイバースーツを着たブルドッグが現れる! ATK1000

 

 

「これでレベル4のモンスターが2体…来い!!」

 

『ああ!いくぜ!!オレはレベル4の「ガガガマジシャン」と「トラブルダイバー」でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!』

 

39 

 

『現れろ!「No.39希望皇ホープ」!!』

《ホープッ!!》

遊馬のエースたる希望の戦士が雄叫びをあげる! ATK2500

 

 

《そして『ガガガリベンジ』の効果発動!このカードを装備したモンスターがエクシーズ素材となる事でこのカードが墓地に送られた時!そのエクシーズモンスターの攻撃力は300アップする!》

 

『これで「ホープ」の攻撃力は「ミカエル」の攻撃力を上回るぜ!!』

ガガガマジシャンの幻影がホープに力を与える!

 

ホープATK2500→2800

 

 

「やるな!」

 

『バトルだ!「ホープ」で「ミカエル」を攻撃!ホープ剣スラッシュ!!』

ホープ剣の一撃が天使を両断する!!

 

「フッ…!」

 

遊海LP2200→2000

 

 

「いい一撃だ…だが、甘い!破壊された『ミカエル』の効果発動!墓地のライトロードモンスターを任意の数デッキに戻す事で1体につき300回復する!俺の墓地に眠るライトロードは12体、そのうちの8体をデッキに戻して2400回復する!リターン・リカバリー!」

遊海の墓地から浮かんだ光が遊海のライフを癒やし、デッキに戻っていく…。

 

遊海LP2000→4400

 

 

 

『ライフが元に戻っちまった!?』

 

《隙がないな…!》

 

『だけど…まだまだだ!オレはこのままターンエンド!』

 

遊馬LP4000

ホープ 伏せ1 手札0

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『トワイライトロード・ファイター ライコウ』を召喚!」

黄昏の衣装を纏った猟犬が現れる! ATK200

 

 

「『ライコウ』の効果発動!召喚またはリバースした時!墓地のライトロードモンスター『トワイライトロード・ソーサラー ライラ』を除外する事で『ホープ』を除外する!」

 

『させないぜ!罠カード「もの忘れ」!フィールドの攻撃表示モンスターが効果を発動した時!その効果を無効にして守備表示にする!』

罠から放たれた光線がライコウに直撃…何をしようとしたか忘れたライコウは首を傾げながらおすわりする…。

 

ライコウATK200→DEF100

 

 

「なるほど…ならば「フェリス」の効果発動!自身をリリースする事で『ホープ』を破壊する!」

 

『しまった!!』

フェリスが天に祈りを捧げながら弓矢を空に撃ち放つ…その矢は無数に分裂しホープを貫いた!

 

 

「そしてその後デッキトップ3枚を墓地に送る、さらに『トワイライト ライコウ』の効果発動!ライトロードモンスターが効果を発動した時!さらに3枚を墓地に送る!」

 

 

墓地送り

 

ケルビム

ガロス

シャイア

 

ライデン

黄昏の交衣

シラユキ

 

 

 

 

「そして…自分の墓地にライトロードモンスターが4種類以上存在する時!このモンスターを特殊召喚できる!現れろ!『裁きの龍(ジャッジメント・ドラグーン)』!!」

天空からライトロードの決戦兵器たる純白の龍が降臨する! ATK3000

 

 

『攻撃力3000…!?』

 

「いくぞ!『裁きの龍』で遊馬にダイレクトアタック!裁きの息吹(ジャッジメント・ブレス)!」

全ての悪を裁く光が遊馬に直撃する!

 

『ぐっ!?うわああ─!?』

 

「遊馬!!」

 

遊馬LP4000→1000

 

 

「俺はこれでターンエンド!そして『裁きの龍』の効果発動!デッキトップ4枚を墓地に送る!」

 

墓地送り

閃光のイリュージョン

闇の進軍

オルクス

黄昏ルミナス

 

 

遊海LP4400

裁きの龍 黄昏ライコウ 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

『イテテ…!一瞬で大ピンチだぜ…!』

 

《次のドローに全てが懸かっている…遊馬、ZEXALだ!!》

 

「えっ!?ZEXAL!?」

遊馬はアストラルの言葉に思わず聞き返す…。

 

 

《ここは精霊界…つまり異世界だ、ZEXALになる事ができる!》

 

『それって…ちょっとやりすぎじゃねぇか…?』

 

「俺は別に構わないぞ?お前達の全力でかかってこい!!」

戸惑う遊馬…遊海はその背中を押す!

 

 

『…わかった!!いくぜ…アストラル!!』

 

《我々の全力で…遊海に応えるぞ!!》

遊馬とアストラル…2人の心が1つとなる!

 

 

 

オレと私でオーバーレイ!!

 

遊馬とアストラルが赤と青の閃光となって飛び上がる!

 

 

オレ達2人でオーバーレイネットワークを構築!

 

遠き2つの魂が交わる時!語り継がれし力が現れる!

 

 

エクシーズチェンジ!ZEXAL!!

 

 

赤と青の閃光が交わり爆発…赤き鎧を纏いし希望の英雄が現れる!

 

 

 

「ZEXAL…遊馬とアストラルの全力か…!」

 

「まさか遊海さんに使うなんて…2人とも熱くなり過ぎよ〜!?」

小鳥が戸惑う中…遊馬とアストラルは全力で遊海へと挑む!

 

 

 

オレのターン!最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードすらデュエリストが創造する!

 

シャイニングドロー!!

 

光の軌跡を残し、希望のカードがドローされる!

 

 

『オレは魔法カード「リ・エクシーズ」を発動!』

 

《自分の墓地にエクシーズモンスターとそのエクシーズモンスターの召喚に使用できるモンスター2体が墓地に存在する時!そのモンスター2体をエクシーズ素材として墓地のエクシーズモンスターをエクシーズ召喚扱いで特殊召喚できる!》

 

「なっ…!?墓地からエクシーズ召喚だとぉ!?」

あまりに無茶苦茶な効果にさすがの遊海も驚愕する!

 

『オレは墓地の「ガガガマジシャン」と「ゴブリンドバーグ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!』

 

39

 

 

『再び現れよ!「No.39」!「希望皇ホープ」─!!』

再び希望の戦士が降臨する! ATK2500

 

 

『さらにオレは「希望皇ホープ」1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!』

 

39

 

『現れろ!混沌を光に変える使者!「CNo.39希望皇ホープレイ」!』

希望の戦士が再誕…混沌を切り裂く光が現れる! ATK2500

 

 

《いくぞ!》

 

『おう!!「ホープレイ」の効果発動!ORUを1つ使い!自分の攻撃力を500アップし、「裁きの龍」の攻撃力を1000ダウンさせる!オレはその効果を3回使う!オーバーレイ・チャージ!!』

希望の光がホープレイに宿り、裁きの龍の力を剥奪する!

 

 

 

ホープレイATK2500→3000→3500→4000

 

裁きの龍ATK3000→2000→1000→0

 

 

 

《これが!》

 

『今のオレ達の全力!「ホープレイ」で「裁きの龍」を攻撃!!ホープ剣カオススラッシュ─!!』

遊海とアストラル、2人の心が重なった一撃が裁きの龍を両断…粉砕する!!

 

「っ…!ぐうぅぅぅ─!?」

 

遊海LP4400→400

 

 

 

『ぃよしっ!!オレはこれでターンエンド!!』

 

ホープレイATK4000→2500

 

遊馬LP1000

ホープレイ 手札0

 

 

 

「おお…!効いたぜ、今の一撃…!WDCでの経験が生きてるな!」

遊海は深く息を吐く…その足元には5M程の轍ができている…。

 

 

《あの一撃を受けて膝をつかないとは…!》

 

『これが…決闘王の実力…!』

遊馬達は内心冷や汗をかく…ダメージを受けてなお、遊海の闘志は圧力となって2人にのしかかる…!

 

 

「それじゃあ…いくぞ!!」

 

『っ─!?』

遊海は一瞬だけ抑えていたオーラを開放する、それはまさしく『強者の覇気』…その迫力はバリアン・フェイカーを上回る…!

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『ライトロード・マジシャン ライラ』を召喚!」

白い法衣を纏う魔術師が現れる ATK1700

 

 

「さらにリバース罠『閃光のイリュージョン』を発動!墓地の『ライデン』を特殊召喚!」

再び光の暗殺者が現れる ATK1700

 

 

《レベル4のモンスターが2体…来るぞ!遊馬!》

 

「俺はレベル4の『ライデン』と『ライラ』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」

 

 

 

 

「現れろ!『No.∞』!俺の歩みし戦いのロード…今こそ未来を切り開け!!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!!」

光の爆発と共に決闘盤を模した大剣が遊海の傍らに突き刺さる! ATK2500

 

 

『これが遊海の切り札…!』

 

「『決闘の守護者』の効果発動!このカードがエクシーズ召喚に成功した時!デッキから1枚ドローできる!…バトルだ!『決闘の守護者』で『ホープレイ』を攻撃!」

大剣を掴んだ遊海がホープレイに向けて跳躍する!

 

 

「そして『決闘の守護者』の効果発動!このカードがモンスターとバトルする時!ORUを1つ使い、バトルする相手モンスターの攻撃力または守備力…そのどちらか高い数値分、攻撃力をアップする!」

 

『なに─!?』

大剣が光を纏い、巨大化する!

 

決闘の守護者ATK2500→5000

 

 

「喰らえ!勝利へ導く決着の剣(デュエル・カリバー)─!!」

 

『うわあああ─!?』

遊海の振るった光の大剣はホープ剣を破壊…ホープレイを両断した…。

 

 

 

遊馬&アストラル LP0

 

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…やっぱりまだ()()()()ができないな…遊馬!大丈夫か〜?」

 

『イテテ、大丈夫だぜ…ってヒョエ!?』

遊海に声を掛けられた遊馬が起き上がる…その横、数センチの地面は()()()()()()()()()()小さな地割れが起きていた…。

 

 

「ゴメンゴメン…まだこの大剣を使いこなせてなくてな、さっきも岩を真半分にしようとしたら…勢い余って、な…」

 

『そんな危ない技…オレに使わないでくれよ〜!?』

遊馬の叫びが周囲へと響いた…。

 

 

《観察結果、決闘王でも…できない事はあるようだ》

 

 

 

 

 

 

 

「遊馬、お前も強くなったな!俺は嬉しいぞ〜!」

 

『わぶ!?遊海!くすぐってぇよ〜!』

 

「くすくす…」

デュエルが終わり、遊海は遊馬の頭をグシグシと撫でる…その様子を見て小鳥や凌牙達も笑っている。

 

 

『今回は負けちまったけど…次は絶対に勝ってやる!待っててくれよな!』

 

「ああ、いつでも相手になるからな!さて…成長の証を見せてくれたお前達に渡す物がある」

そう言って遊海はカードケースから数枚のカードを取り出す、それは…

  

 

《これは…ナンバーズ!?》

 

「嘘…!?こんなにたくさん!?」

 

『マジかよ!?』

 

「父さん…いつの間にこんな集めたんだよ…」

 

遊海が取り出したのは「冥界の霊騎士ランスロット」「タイタニック・モス」「スターシップ・ギャラクシー・トマホーク」「滅亡の予言者グランブル・ロゴス」「奮迅竜トレスラグーン」「ラインモンスター・チャリオッツ・飛車」…「24・37・38・78・95」を除く、遊海の回収していたナンバーズ達だった。

 

 

「俺がこの70年で回収したナンバーズ達だ…遊馬、アストラル…お前達に渡しておこう」

 

『ちょ、ちょっと待ってくれよ!?ナンバーズが散らばったのはオレとアストラルが初めて会った時じゃないのか??』

ナンバーズを受け取った遊馬は戸惑いをみせる…。

 

 

《…つまり、ナンバーズは遊馬との出会いの前に…既に生まれていた…という事か?》

 

「そうらしいな…俺が初めてナンバーズを発見したのは70年近く前…それに『No.7』には伝承もあっただろう?伝承なんて数十年やそこらで生まれるもんじゃない…ナンバーズの『謎』を増やしちまったかな?」

 

《いや…私が全てのナンバーズを回収すれば謎ではなくなる、残り47枚…その中に私の為すべき使命も記されているはずだ》

アストラルはナンバーズを回収しながら決意を固めた…。

 

 

 

 

 

 

「よし、1つ問題も解決したところで…凌牙!」

 

「ん?どうしたんだよ?」

 

「今度はお前だ、俺に…お前の成長した姿を見せてくれるか?」

 

「!?」

遊海の提案に凌牙が目を見開く…!

 

 

『うおお!シャークと遊海の親子デュエルか!?』

 

《それは…中々興味深いデュエルだな》

 

「父さん、身体は大丈夫なのか?」

 

「心配するな!昔に闇のデュエルを…だいたい500連戦ぐらいした事もあるからな!」

 

「「『どんな状況!?/ですか!?』」」

 

 

「あ、ミスターTの時の…あの時は大変でしたねぇ…私も100連戦ぐらい戦いましたし…」

少し遠い目をしながら翠は過去の戦いを思い出した…。

 

 

 

「さて…どうする?」

 

「…久々に胸を借りるぜ…!父さん!!」

 

強き絆で結ばれた遊海()凌牙(息子)…久しぶりの親子対決が始まる…!

 



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父と子〜50回目の腕試し〜

こんにちは!S,Kです!

幕間の物語第2話!遊海と凌牙はついに向かい合う…偉大な決闘者に凌牙は喰らいつく事ができるのか?


それでは最新話をどうぞ!


「ドンマイ遊馬!負けちゃったけどいいデュエルだったよ!」

 

「サンキュー小鳥!やっぱり遊海は強かったぜ…」

デュエルを終え、遊海が集めたナンバーズを受け取った遊馬は小鳥と共に()へと腰掛ける。

 

 

「でもシャークと遊海のデュエルか…そもそもシャークって遊海に勝った事あるのか?」

 

《少なくとも…1度は勝っているはずだ、遊馬とシャークが2人掛かりのデュエルでな…》

 

「いや、そういうのじゃなくて…」

 

 

《凌牙と遊海の戦績は…遊海の49戦48勝1負けだな》

 

ずずん…

 

「へっ?どわぁ!?」

 

「遊馬─!?」

何処からか声が聞こえると共に遊馬の座っていた岩が上へと浮かび上がる。

 

 

《いやいや…日光浴が気持ちよくて眠ってしまったわい…》

 

「メ、メガロックじいちゃん─!?」

 

「わっ…!岩だと思ったら…」

遊馬達が腰掛けていた岩…それは日光浴の途中で昼寝をしていたメガロックの体だったのだ…なお、小鳥は前足に…遊馬は頭に座っていた。

 

 

「じいちゃんゴメン!すぐに降りるから!」

 

《よいよい…遊海と凌牙が決闘するのであろう?上からの方がよく見える…さて、凌牙は勝てるかな?》

遊馬を頭に乗せたままメガロックは目を細めた…。

 

 

 

 

 

 

「準備はいいか?遊馬と同じでナンバーズを使ってもいいからな!」

 

『ああ…!』

凌牙は手にした「シャークドレイク」のカードを見つめる…。

 

 

『(俺は1度、力に飲まれちまった…だが、俺はもう…あの時の俺じゃねぇ!!』

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP4000

凌牙LP4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「…おっと…?…フィールド魔法『幻煌の都パシフィス』を発動!このカードの名前は『海』として扱う!」

周囲の景色が海中へと変化し、フィールドの中央に光を放つ祭壇が現れる。

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

遊海LP4000

幻皇の都 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

「えっ…!それだけ!?」

デュエルを見ていた遊馬が声をあげる…先程目まぐるしく動いていたデュエルとは趣きが違ったからだ…。

 

《先程のデッキが『動』のデッキだとすれば…こちらは『静』のデッキか…どんな戦い方をするんだ…?》

 

 

 

『いいのか?海のフィールドは俺の得意な場所だぜ?』

凌牙は遊海へと問いかける。

 

「フッ…確かにお前の使う『鮫』は海の支配者と言ってもいいだろう…だが、海は広い…人々の知らぬ深淵、その力を見せてやるよ」

 

『ああ…楽しみにしてるぜ!!』

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『「トライ・ポッド・フィッシュ」を召喚!』

細い足のようなヒレを持つ深海魚が現れる! ATK300

 

 

『さらに魚族モンスターの召喚に成功した時!手札の「シャーク・サッカー」は特殊召喚できる!』

コバンザメのようなモンスターが現れる! DEF1000

 

 

「フィールド魔法『幻煌の都』の効果発動!自分フィールドにトークンが存在せず、相手が魔法・罠・モンスター効果を発動した時!『幻煌龍トークン』を特殊召喚!」

遊海のフィールドに光が集まり、朧げな姿の首長竜が現れる。 ATK2000

 

 

『相手のターンにトークンを…?』

 

「さらに『幻煌の都』の効果発動!自分が通常モンスターの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから『幻皇龍』と付くカードを手札に加える!俺は『幻煌龍スパイラル』を手札に加える!」

 

 

 

「あれ?トークンが出たら効果が発動するのか!?」

 

《遊馬、モンスタートークンは基本的に通常モンスターとして扱うのだ…基本だぞ》

 

「そうなのか〜、初めて知ったぜ!」

 

《遊海の授業で何を聞いていたのやら…》

アストラルとメガロックは深くため息を吐いた…。

 

 

 

『俺はレベル3の「シャークサッカー」と「トライポッドフィッシュ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!来い!「潜航母艦エアロ・シャーク」!』

2体の鮫が連結した潜水艦が現れる! ATK1900

 

 

「おっと!いきなりダメージはいただけないな!リバース罠『奈落の落とし穴』発動!『エアロシャーク』は除外だ!」

 

『チッ…いきなり厳しいぜ…!!』

エアロシャークが異次元へと追放される!

 

 

『俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!』

凌牙LP4000

伏せ2 手札3

 

 

 

「シャークの必殺コンボをあんな簡単に…!」

 

《心なしか…遊馬とのデュエルより厳しくなっている気がするな》

 

《それはそうだろう、遊海にも「父」としてのプライドがある…そう簡単に負けたくはなかろう!》

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『古のルール』発動!手札のレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚できる!現れろ!『幻煌龍スパイラル』!!」

 

『通常モンスター!?』

巨大な巻角と翼を持つ新たな海の皇が現れる! ATK2900

 

 

「『幻煌の都』の効果発動!通常モンスターの召喚に成功した事でデッキから『幻煌龍の螺旋波』を手札に加える!そして手札から装備魔法『幻煌龍の螺旋波(スパイラル・ウェーブ)』『幻煌龍の螺旋絞(スパイラル・ホールド)』『幻煌龍の螺旋突(スパイラル・クラッシュ)』を装備!」

 

『装備魔法の同時装備だと!?』

装備魔法を装備したスパイラルの角・翼・腕がオーラを纏う!

 

スパイラルATK2900→3400

 

 

「『スパイラル』は『螺旋波』の効果で1ターンに1度バトルでは破壊されず、『螺旋絞』の効果で攻撃力が500アップし、『螺旋突』の効果で守備モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える!バトルだ!『スパイラル』でダイレクトアタック!螺旋突撃(スパイラル・アサルト)!!」

 

『ぐぅ!?うわあああ…!?』

大海の力を纏ったスパイラルが凌牙の頭上を通過…その余波で凌牙は吹き飛ばされる!

 

凌牙LP4000→600

 

 

「さらに『螺旋突』の効果発動!装備モンスターが相手に戦闘ダメージを与えた時!デッキ・手札・墓地から『幻煌龍スパイラル』を特殊召喚し、このカードを装備する!」

 

『なんだと!?』

遊海の場に2体目の海皇が現れる! ATK2900

 

 

 

《遊海の場に攻撃力2000の『幻煌龍トークン』と攻撃力2900の『スパイラル』…次の一撃で勝負が決まる…!》

 

「いや…まだだ!シャークは諦めちゃいねぇ…!」

絶体絶命の状況の中、遊馬は凌牙を見つめる…凌牙の目はまだ諦めてはいない!!

 

 

 

「バトル!2体目の『スパイラル』でダイレクトアタック!」

 

『まだだ!永続罠「竜巻海流壁(トルネード・ウォール)」を発動!フィールドに「海」が存在する時!自分への戦闘ダメージは0になる!!』

 

「むっ…!俺のフィールド魔法を利用されたか…!」

凌牙の前に海水の壁が現れスパイラルの攻撃を逸らす!

 

 

「よく防いだ…だが、まだ終わりじゃない!バトルフェイズ終了時に『螺旋波』の効果発動!装備モンスターがバトルした時!デッキから3体目の『幻煌龍スパイラル』を特殊召喚し、このカードを装備する!」

3体目の海皇が現れる! ATK2900

 

 

「そして相手に手札がある時!相手は手札を1枚選んで捨てなければならない!」

 

『くっ…!』

 

凌牙の捨てたカード

エンシェントシャーク・ハイパーメガロドン

 

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

遊海LP4000

スパイラル(螺旋絞) スパイラル(螺旋波) スパイラル(螺旋突)幻煌龍トークン 幻煌の都 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

「あ、危ねぇ…!崖っぷちでライフが残ったぜ…」

 

《しかし、フィールドには攻撃力2900超えのモンスターが3体…ピンチには変わりない…!》

 

「シャーク…!」

遊馬は心配そうに凌牙を見つめた…。

 

 

 

 

『…やっぱり父さんは強ぇ…今の俺でも、足元にも及ばない…!』

 

「そりゃあ…俺は『父』であり、『決闘王』の名を背負った決闘者だ、そんな簡単に負けられないさ」

 

『…でも、そんな父さんでも…負ける事がある…』

 

「凌牙……」

自分のターンを前に凌牙は沈んだ表情を見せる…。

 

 

『父さんがトロンに負けたって聞いた時…絶対に嘘だと思った…俺と璃緖二人がかりでも敵わなかった…最強の父さんが負ける訳ないって……でも、それは本当だった…!』

 

「………」

 

『父さんが…トロンのせいで死にかけた時…俺の心はグチャグチャになった…トロンに復讐したい…奴をぶん殴りたいって想いが俺の心を埋め尽くした…!…でも、その想いすらトロンに利用されて…俺は遊馬達を傷付けた…』

 

「シャーク…」

凌牙は拳を握りしめる…。

 

 

『俺…怖かったんだ、()()…失うんじゃないかって…!』

 

「凌牙君…」

凌牙と璃緖は本当の両親を交通事故で亡くしている、それは凌牙と璃緖…それぞれに心の傷となって残っている…。

 

 

 

「…凌牙…1つ、物話を聞かせよう…」

 

『物語…?』

遊海はデュエルディスクを下ろし、凌牙へと語りかける。

 

 

 

 

「あるところに仲良く暮らす夫婦がいた…本当に仲のいい夫婦で街の人も羨ましがっていた…しかし、そんなある日……街を…世界を破滅が支配した…夫婦は必死に破滅に抗い、人々を助け…未来を切り開こうとした…だが、破滅を覆す事はできなかった…何故だがわかるか?」

 

『…2人じゃ、力が足りなかったから…?』

 

「違う…『破滅』…その原因は『人々の欲望』だったからだ…人間の持つ欲望が暴走し、自ら破滅のスイッチを押してしまったんだ……その破滅によって世界は滅び…男は妻を失い、ただ()()()()生き残った」

 

『っ─!?』

 

「男は嘆き悲しみ…声が枯れ果て、涙が枯れるまで泣き続けた…そしてやり場のない『怒り』に支配された、妻を守れなかった『自分』への怒り…世界を滅ぼした愚かな『人々』への怒り…その怒りは男を『悪魔』へと変えた……そして男は悪魔となった力を使い、過去へと遡る術を得た……何をしたと思う?」

 

『過去に戻ったなら……破滅の原因を人々に教えて…破滅を無かった事にしようとする…?』

 

 

「…その男は『過去の自分』を殺そうとした」

 

 

『っ!?!?』

 

「男は思い出したんだ、破滅の原因…その元凶は『自分自身』だったんだと……そんな事をしても、未来は変わらないのにな…復讐と怒りに支配された男は既に正気を失っていた…」

 

 

《(……その話…もしや…)》

 

 

「過去の『男』は必死に『悪魔』に抗った…あらゆる手段を使って自身を殺そうとする悪魔と戦い続けた……その末に悪魔は過去の『男』に敗北した……なんでだと思う?」

 

『…わからねぇ』

 

「…悪魔は『孤独』だった、男には背中を託せる『仲間』がいた…破滅の未来を打ち砕く為に…男は『仲間との絆』と共に戦い…悪魔を倒し、正気に戻したんだ……そして破滅の未来は消えた…仲間との絆のおかげでな…」

 

『絆…』

 

 

 

「…凌牙、お前はもう1人じゃない…お前も『絆』という光を手にしている…『絆』は決して途切れない…例え、死んだとしても…その思いは…魂は、心の中で()()()()()、決して消えたりはしない…!!」

遊海は胸に手を当てる、その胸に灯るのは『絆の灯』…出会いと別れを繰り返してなお、輝きを失う事のない炎だった…。

 

 

 

「話が長くなったな…さぁ、かかってこい凌牙!お前が紡いだ絆の力…俺に見せてみろ!」

 

『父さん…(そうか、俺はもう…1人じゃない)』

遊海の話を聞いた凌牙はデュエルの様子を見守る遊馬へと目を向ける。

 

『(遊馬とアストラルは俺の事を救ってくれた…復讐に飲まれた俺を……俺は…その想いに応えてやりたい!!)』

凌牙の心に火が灯る…その火は凌牙の抱えていた闇を燃やし尽くした…!

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『よし…!永続魔法「ウォーター・ハザード」を発動!自分の場にモンスターがいない時!手札の水属性モンスターを特殊召喚できる!来い!「スピア・シャーク」!』

頭が槍になった鮫が現れる! ATK1600

 

 

『さらに「カッター・シャーク」を召喚!』

左右のヒレが円盤ノコギリになった鮫が現れる ATK1600

 

 

『「カッターシャーク」の効果発動!このターン、エクシーズ召喚しかできなくなる代わりにフィールドにいる「スピアシャーク」と同じレベルの魚族モンスターをデッキから守備表示で特殊召喚する!俺は「ツーヘッド・シャーク」を特殊召喚!』

双頭の鮫が現れる DEF1600

 

 

「レベル4のモンスターが3体…来るか!」

 

『俺はレベル4の『スピアシャーク』『カッターシャーク』『ツーヘッドシャーク』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!』

 

 

32

 

 

『現れろ!「No.32」!「海咬龍シャーク・ドレイク」!!』

凌牙の新たなエースたる最強の牙が現れる! ATK2800

 

 

「来たか…!」

 

『そして俺は「シャークドレイク」を素材にオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ─!!』

 

32

 

 

『現れろォ!「CNo.32」!これが俺の全力!!「海咬龍シャーク・ドレイク・バイス」』

凌牙の叫びと共にカオスの力を宿した白き牙が顕現する! ATK2800

 

 

「出たぜ!シャークのカオスナンバーズ!!」

 

《「シャークドレイクバイス」の効果は強力だ…逆転の可能性もある…!》

 

 

 

『いくぜ!「シャークドレイクバイス」の効果発動!ORUを1つ使い!墓地の「シャーク」モンスター「ハイパーメガロドン」を除外する事で「螺旋絞」を装備した「幻煌龍スパイラル」の攻撃力を2900ダウンさせる!』

凌牙の墓地から巨大な鮫の幻影が現れ、スパイラルの力を削ぐ!

 

スパイラル(螺旋絞)ATK3400→500

 

 

『バトルだ!攻撃力の下がった「スパイラル」を攻撃!デプス・カオス・バイトォォ!!』

シャークドレイクバイスが紫の光線を放つ、その光線は無数に分裂しスパイラルと遊海を吹き飛ばした!

 

「っ、ぐうぅぅ─!?」

遊海LP4000→1700

 

 

『俺はこのままターンエンド!!』

凌牙LP600

シャークドレイクバイス 竜巻海流壁 ウォーターハザード 手札0

 

 

 

 

「やるじゃないか凌牙…今までの攻撃で一番効いたぞ…お前も成長したな…!」

 

『ありがとよ、父さん…!(父さんのナンバーズはランク4…この状況で出す事はできない、そして俺は「竜巻海流壁」の効果でダメージを受けない…このまま「シャークドレイク」で押し切る!!)』

遊海に褒められながらも凌牙は考えを巡らせる、実質戦闘破壊されない「シャークドレイク」とダメージを無効化する「竜巻海流壁」…まさに鉄壁の布陣だった。

 

 

 

「使うつもりはなかったけど…少し本気で行こうか!!精霊変身─!!」

 

『なにっ!?』

 

「なんだ!?」

両腕をクロスさせた遊海が腕を振り下ろす…そしてその体は眩い光に包まれる!

 

 

「精霊変身…モード・太陽神!」

 

『あれは…!』

 

《太陽神の、鎧…!》

その身に纏うは太陽の威光…ラーの翼神竜の力を借りた遊海が現れる!

 

 

「スッゲェェ!!超カッコいい─!!」

 

「本当に太陽が降ってきたみたい…!」

遊馬と小鳥は黄金の光を纏った遊海に目を奪われる…。

 

 

《メガロック、遊海のあの姿はいったい…?》

 

《あれはお主達が「メタルナイト」と呼ぶ姿…その最上位に位置する力だ、遊海は我ら精霊の力を借りる事でその身を強化できる…あれは文字通り『ラーの翼神竜』の力を借りた姿だ…やれやれ、大人げないのぉ…》

アストラルに問われたメガロックは遊海の力を説明する。

 

 

《なるほど…しかし、何故このタイミングで…?》

 

《見ていればわかる…やはり遊海の負けず嫌いは変わらないな…》

 

 

 

 

「俺のターン!全てを照らす優しき光よ!俺に勝利への道を示せ!ソーラー・ドロー!!」キィン!

デッキトップが輝き、光の軌跡を残しカードがドローされる!

 

 

 

「《シャイニングドロー!?》」

光の軌跡を残すドローに遊馬とアストラルは驚く…。

 

 

《いいえ、あれは貴方達の「シャイニングドロー」とは似て非なる力ですよ》

 

《おお…フレア様、丁度よいところに…》

 

「フレア…って、ラーの…!?」

遊馬の頭に金色の小鳥が止まる…それは散歩に行っていたフレアだった。

 

 

《そう固くならなくていいのですよ?私はあくまでもユウミの精霊なのですから…「ソーラー・ドロー」は決闘者の運命力を最大限に強化し()()()になるカードを引き込む力…貴方達の勝利を確定させるカードを()()する「シャイニングドロー」とはまた違う力なんです》

 

《つまり「運命の1枚(デスティニー・ドロー)」という訳か…興味深いな…》

フレアの説明を聞いたアストラルは腕を組んで考え込む…。

 

 

《(そのせいで体力をだいぶ使うのですが…彼らには黙っていましょうか…、ユウマやリョウガを心配させないようにユウミはデュエルを受けたのですから…)》

鎧を通じて遊海の想いを感じ取ったフレアは静かにデュエルの様子を見守った…。

 

 

 

 

「良いカードを引いた!リバースカード『テラ・フォーミング』を発動!デッキから2枚目の『幻煌の都パシフィス』を手札に加える!そして()()()()()()()()()()()する!」

 

『しまった!?』

周囲の景色が大穴のほとりへと戻っていく…それによって『竜巻海流壁』のデメリット効果が発動する!

 

 

「フィールドに『海』が存在しなくなった事で『竜巻海流壁』は破壊される!」

 

『くっ…!だけど父さんの「スパイラル」の攻撃力は2900!受けるダメージは200で済む!』

 

「それはどうかな?俺はセットしていた『幻煌の都パシフィス』を発動!バトルだ!『螺旋波』を装備した『スパイラル』で『シャークドレイクバイス』を攻撃!」

 

『ナンバーズはナンバーズとの戦闘でしか破壊されない!迎え撃て!「シャークドレイクバイス」!!』

シャークドレイクが突進を仕掛けるスパイラルを迎え撃つ!

 

 

「その瞬間!手札から罠発動!『幻煌龍の浸渦』!!」

 

『手札から罠だと!?』

凌牙は遊海の思わぬ行動に驚愕する!

 

 

「『幻煌龍の浸渦』はフィールドに『海』が存在する時、手札から発動できる!自分のフィールドに通常モンスターしか存在しない時!相手の効果モンスターの効果を無効にし、攻撃力を1000ダウンさせる!」

 

『し、しまった─!?』

シャークドレイクを蒼い泡の渦潮が襲い、その力を奪う!

 

シャークドレイクバイスATK2800→1800

 

 

『「スパイラル」で「シャークドレイクバイス」を攻撃!螺旋突撃波(スパイラル・アサルト・ウェーブ)!』

 

「チッ…ちくしょおおぉ─!!」

 

 

凌牙LP 0

 

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「惜しかったな凌牙!『シャークドレイク』の効果を3回とも使って全部の『スパイラル』を弱体化させていれば勝てる可能性はあったぞ?」

 

『詰めが甘かった…これで50戦1勝49敗、か…』

デュエルが終わり、遊海は吹き飛ばされた凌牙を助け起こす。

 

 

「お前もWDCを通じて強くなったな…よく頑張った、そしてごめんな…もう俺は何処にも行かないからな…」

 

『父さん…』

遊海は優しく凌牙の頭を撫でる…その表情はとても穏やかだった…。

 

 

 

 

 

 

 

「凌牙、遊馬、アストラル、小鳥ちゃん…今日は来てくれてありがとな、全快したら俺も人間界に戻るから…」

 

「ああ!ゆっくり休んでくれよな!」

夕暮れとなり遊馬達は帰り支度をする…。

 

 

「あの、遊海さん…1つ気になる事があるんですけど…」

 

「ん?どうした?」

小鳥が少し躊躇いながら遊海に問いかける…。

 

 

「さっき遊海さんが話してくれた物語…『男』に倒されて改心した『悪魔』は…どうなったんですか?未来に帰ったんですか…?」

 

「…『悪魔』は…消えたよ」

 

「「『えっ…?』」」

 

《………》

遊海の言葉に遊馬達は目を見開く…。

 

 

「世界が破滅への道を歩まなくなった代わりに『悪魔』自身が『破滅への種』となってしまった…それを自覚した『悪魔』は…『男』と仲間達に全てを託し、その命を終えた……それが物語の最後だ」

 

「…『悪魔』…とっても良い奴だったんだな…」

 

「フッ…心配するな!今までのはただの()()()さ!そんな哀しい男がいる訳ないだろ?ハッハッハッ!」

 

『なんだ…まったく、父さんはそういう話が得意だよなぁ…』

凌牙や遊馬は笑う遊海を見て少しだけ呆れたような顔をした…。

 

 

キィン─

 

《ん…?》

遊馬達の様子を見ていたアストラルはナンバーズの鼓動を感じ取る…。

 

 

《「No.28」…?》

仄かに光を纏うナンバーズ…それを手にしたアストラルの脳裏に僅かに記憶が蘇った…。

 

 

 

 

Sideアストラル

 

 

 

《●●●●、何故貴方は牢に囚われているんだ?》

 

『…さぁな…オレは悪を為したつもりはない…』

 

そこは以前に垣間見た薄暗い部屋…そこでアストラルは籠に囚われた光の玉と話している…。

 

 

『○○○○○のヤツ曰く、オレの内包する「カオス」がアストラル世界を「穢す」事になるんだそうだ…子供達は今にも消えそうだっていうのにな……そんなに「ランクアップ」を目指すのが大事…グゥゥ…!?』

 

《●●●●…!?》

苦しみ悶える声を洩らす光の玉…そのサイズが小さくなり、光が弱くなっていく…。

 

 

『バリアン、め……お前達が、攻撃してくるたびに、オレの、存在、が……アスト、ラル…オレは、負けない…まける、わけには、いかない…んだ…!』

 

《…なぜ、そうまでして…》

 

『オレは…謝ら、ないと…あの子を……むかえ、に───』

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

「お〜い!アストラル〜?家に帰るぞ〜?」

 

《ん…すまない、考え事をしていた》

遊馬の呼び掛けでアストラルは気を取り直す…。

 

 

《(白波遊海…伝説の決闘者……いったい、どんな死線を潜ってきたのだろうか…?)》

アストラルは気付いていた、目の前で優しそうに笑っている男の語った物語は…()()なのだろうと…。

 

 

《遊海…いつか、貴方の戦いについて教えて欲しい…貴方の戦ったデュエルの事を…》

 

「ん?…ああ、今度時間がある時にな?」

 

《わかった…楽しみにしている》

アストラルの頼みに遊海は笑って返した…。

 

 

 

【では…人間界に遊馬達を送ってきます!】

 

「ああ!頼んだぞアヤカ!」

 

「凌牙君!私はもう少しこっちにいるから玄関の戸締まりだけお願いね!」

 

『わかった!』

 

「遊海!また今度な〜!」

 

キィン─

 

虹色の光に包まれた遊馬達はアヤカと共に人間界へと帰って行った…。

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ…普通のデュエルとはいえ…疲れたぁ〜…」

遊馬達を見送った遊海は草原に寝転がる。

 

 

《フォウ、フォウフォウ!》ペシペシ

 

「あたた…そんなに怒らないでくれよフォウ、俺が元気だって見せないと凌牙達が心配したままだったろ?」

フォウに額を叩かれながら遊海はフォウを優しく撫でる…。 

 

 

「まったくもう…子供達の前だからって張り切り過ぎです!決闘者(戦士)は休養も仕事のうちですよ?」

 

「そうだなぁ…まだ()()()()()()()()()()もあるし…しっかり休むよ…イテテ…」

少し怒った様子の翠に休養を約束しながら遊海は起き上がる。

 

 

「…夕日が綺麗だな、翠」

 

「はい…本当に…!」

 

《フォ〜ウ…》

Sopiaの祭壇の後ろに沈んでいく真っ赤な夕日…遊海達は沈み終わるまでその様子を共に眺めていた…。



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憧れとの戦い〜償い〜

こんにちは!S,Kです!

療養を終えた遊海…彼が向かった先は…?


それでは最新話をどうぞ!


《スゥ…スゥ…》

 

《ZZZ…ZZZ…》

 

「やっと日常に帰ってきた気がするな…いつも通りで安心した…」

 

《そうですね〜》

 

 

精霊界での療養を終えた遊海は窓辺で眠るフォウとメガロックを見ながらコーヒーを飲んでいた。

ハートランドシティも概ね日常を取り戻し、穏やかな時間が流れている。

 

 

「さて…あとは心配事を解決すれば一段落だな…」

 

《…ユウミ、本当に彼らの所に行くんですか?》

とまり木の上のフレアが心配そうに遊海に問う…。

 

 

「何事もケジメをつけないとな、そうしないと翠も納得しないだろう?」

 

《それはそうですが…》

 

「遊海さん!お待たせしました!」

 

「ん、ありがとう…それじゃあちょっと行ってくる!…準備は…程々にな?」

コーヒーを飲み干した遊海は翠の用意した紙袋を持ってとある場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

ピンポーン…

 

 

 

《どちら様でありマスか?》

 

「こんにちは!岸波です!」

 

《オォ!お待ちしていたでありマス!どうぞお入りくださいでありマス!》

紙袋を携えた遊海はハートランド遊園地にほど近い邸宅へと足を踏み入れる、そこは…。

 

 

「よく来てくださった…白波遊海さん」

 

「こうして話をするのは初めてだな…Dr.フェイカー」

遊馬達との戦いの末に改心した物語の黒幕…Dr.フェイカーの自宅だった。

 

 

 

「先の戦いでは本当にご迷惑をおかけした…本当に申し訳ない…!」

 

「いいんだよ、貴方も必死に子供達の事を考えた結果…それが間違っていただけさ…」

応接間に通された遊海はフェイカーから謝罪を受ける。

 

戦いの後、Mr.ハートランドが行方不明となった為にフェイカーは表社会へと復帰…ハートランドシティ復興の陣頭指揮を取っている…。

 

 

 

《麦茶をお持ちしたでありマス!》

 

「ありがとうオービタル7、この前は世話になったな」

 

《いえいえ!伝説の決闘者のデュエルを見る事ができてオイラも感激したでありマス!それでは!》

麦茶を遊海とフェイカーの前に置いたオービタル7は一礼して去っていった。

 

 

 

「…それで、今日はどんな用事で私の所へ…?」

 

「ハルトとカイトの治療をしにきたんだ、あれからしばらく時間が経ったとはいえ…2人の身体は治りきってはいないだろうからな」

 

「なんと…!」

フェイカーは遊海の思わぬ言葉にフェイカーは驚く…ハルトは事件の後、バリアンの力を失った代わりにほぼ健康体になったが…カイトはたび重なる「フォトン・モード」使用の影響で肉体的に重度のダメージを負っていた…。

 

 

「俺は精霊使いでね、よっぽど酷い怪我や病気でなければ治せるからな!…それに、これから先には新たな敵が待ち受けている…」

 

「…バリアン…ですな、私は彼奴らに直接出会っているから解る…彼らの持つ力の恐ろしさを…!」

フェイカーは組んだ手を握りしめる、ハルトを治療する為にバリアンと契約したフェイカー…彼は後悔していた…自分の浅はかな行動のせいで子供達を危険に晒してしまう事を…。

 

 

「心配しなくても大丈夫…あの子達はしっかりと成長してる、それに俺がいる…バリアンの好き放題にはさせないさ」

 

「…貴方の言葉ほど信頼できるものはないですな…世界を救い続けた英雄の言葉は…カイトを…子供達を頼みます…!」

遊海の言葉を聞いたフェイカーは深く頭を下げた…。

 

 

 

 

 

 

「カイト、やはりここだったか」

 

『父さん…それに、貴方は…!』

 

「シーッ…そうかしこまらないでいい、ハルトが起きちゃうぞ?」

フェイカーに案内された遊海はハルトの部屋を訪れる、そこには穏やかな表情で眠るハルト…そしてそれを見守るカイトの姿があった。

 

 

「少しだけハルトを借りるぞ…大丈夫、すぐに終わる…アヤカ」

 

《はい!スキャン開始……少し呼吸器が弱いようですが…それ以外は大丈夫そうです》

 

「わかった、それじゃあ…『アロマポット』を召喚、そして…『治療の神ディアン・ケト』発動」

 

キィン─ 

 

遊海はベット横のテーブルに4本のロウソクの灯ったアロマポットを召喚し、ハルトの身体に手をかざす…そしてその手から放たれた優しい光がハルトを包み、病を癒していく…。

 

『すごい…』

 

「これが最強の決闘者の力…私は異世界の扉を探すより、彼を探すべきだったのかもしれん…」

バリアンの力とは違う神秘的な光景にカイトとフェイカーは目を奪われた…。

 

 

 

「ふぅ…ハルトはこれで大丈夫、目が覚めたら普通の子供のように動けるようになる…『アロマポット』はロウソクが燃え尽きたら自然に消えるようにしておくから安心してくれ」

 

『…感謝する…よかったなハルト…!』

カイトは優しくハルトの頭を撫でる…その表情はとても優しいものだった。

 

 

「さて…次はカイトの番だ、まだ体が痛むだろ?俺も身体を酷使する方だからよくわかる…」

 

『…貴方を前に隠し事は無理そうだ…よろしくお願いします…』

 

 

 

 

《スキャン開始……全身がボロボロですね…「フォトン・チェンジ」を使うたびに酷く痛んだはずです…マスター程ではないにしろ頑張り過ぎですよ!》

 

「…カイト…すまなかった…!」

自室のベットで横になるカイト…その身体はボロボロだった、このまま戦っていればカイトの寿命は縮まってしまっていただろう…。

 

 

「少し手に余るな…フレア、力を貸してくれるか?」

 

《わかりました!久々に私の力の見せどころですね!》

遊海の肩にフレアが現れカイトの枕元に降り立つ…。

 

 

「さて…!『ギフトカード』と『ディアンケト』発動!」

 

《太陽の恵み…全てを遍く照らす癒しの光よ!》

それは万物を優しく照らす太陽の力…それが遊海の持つ精霊の力と合わさりカイトの体を癒やす…否、身体を再生させていった。

 

 

 

「よし…!あとはしばらく安静に、それから滋養のある物をしっかり食べる事!ナンバーズハンターをしてた時はロクな物食べてなかったんだろ?」

 

『…そこまでお見通しか…善処する』

 

「『善処する』じゃない!ほら…俺の奥さんに栄養たっぷりの野菜スープとデザートのプリンを作ってもらったから、夕食の時にみんなで食べるといい」

 

『あ、ありがとうございます…』

そう言って遊海は紙袋からスープジャーとプリン入りのタッパーを取り出す…翠が特典の効果と精霊の力を最大限に使いながら作った回復食である。 

 

 

 

『あの…白波さん…頼みがあるんですが…』

 

「…少し待ってくれ、もう1つやらなきゃならない事がある…フェイカー、次は貴方の番だ」

 

「私の?」

カイトに待ったをかけた遊海はフェイカーへと向き直る。

 

 

「貴方もカイトとハルトの為に寝る間を惜しんで研究をしていたんだろ?貴方も相当ボロボロだ…さっさと治療するぞ」

 

「…かたじけない…!」

そうして遊海はフェイカーの治療を開始する…その身体を蝕んでいた()()()()を焼き捨てながら…。

 

「(念の為の確認だったが…よかった、これでこの家族は大丈夫だ)」

 

 

 

 

 

「待たせて悪かったな…それで、頼みってなんだ?」

家族全員の治療を終えた遊海は応接間でカイトと向かい合う…カイトの目には強い決意が宿っていた。

 

 

『オレは…伝説の決闘者…そして「決闘王」であった貴方と…デュエルがしたい…!』

 

「ほう…!」

 

「カイト…!?」

カイトが望んだのは遊海とのデュエル…突然の事にフェイカーも驚いている。

 

 

『オレは遊馬とのデュエルで「自分の為のデュエル」をすると約束した…その一歩として、オレの憧れた「ヒーロー」である貴方と戦いたい!!』

それはカイトの新たな決意…新たな一歩を歩みだす為のデュエルの願いだった。

 

「フッ…あの時のお前とは別人みたいだな…!いいだろう、伝説の決闘者として…お前の願いに応えよう!」

 

 

 

 

 

「準備はいいか?俺はナンバーズは使わない…『フォトン・チェンジ』は使うなよ?」

 

『わかった!…それでもオレは…全力で貴方に立ち向かう!!』

そこはフェイカー邸地下のデュエル場…そこで遊海とカイトは対峙する!

 

 

《カイト様!頑張ってくださイ!!決闘王に負けるなでありマス!!》

 

「…まさか、生きている間に()()()()彼のデュエルを見る事ができるとは…」

カイトを応援するのはオービタルとフェイカー、そしてフェイカーは昔を思い出した…幼い頃に見た紅蓮の炎が渦巻く決闘を…。

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

カイトLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『自分フィールドにモンスターが存在しない時!手札の「フォトン・スラッシャー」は特殊召喚できる!』

単眼の光の剣士が現れる! ATK2100

 

『そして「フォトン・スラッシャー」をリリース!「フォトン・レオ」をアドバンス召喚!!』

光を纏う獅子が現れる! ATK2100

 

 

『「フォトンレオ」の効果発動!相手は手札を全てデッキに戻し、その枚数ドローする!』

 

「むっ、上手いな…中々いい手札だったんだが…!」

遊海は手札に揃っていた勝利の方程式をデッキに戻し、新たなカードをドローする!

 

 

『貴方ほどの決闘者ならと警戒していたが…やはりそうか…オレはカードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

カイトLP4000

フォトンレオ 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない時!手札の『サイバードラゴン』は特殊召喚できる!」

鋼鉄の機械竜が現れる! ATK2100

 

 

『っ…!?伝説の決闘者「皇帝」の…サイバーデッキ…!』

 

「フッ…!さらに俺は魔法カード『エマージェンシー・サイバー』を発動!デッキから『サイバー・ドラゴン・ドライ』を手札に加える!さらに魔法カード『サイバー・レヴシステム』を発動!手札の『サイバー・ドラゴン・ヘルツ』を特殊召喚!」

身体に青いエネルギーの奔る機械竜の素体が現れる DEF100

 

「特殊召喚された『ヘルツ』のレベルはエンドフェイズまで5になる!さらに手札の『サイバー・ドラゴン・フィーア』の効果発動!自分フィールドに『サイバードラゴン』が召喚・特殊召喚された時自身を特殊召喚できる、そして『フィーア』はフィールド・墓地にいる限り『サイバードラゴン』として扱う!よって特殊召喚できる!」

鋭角的な機械竜が現れる DEF1600

 

ヘルツ☆1→5

 

 

「さらに『サイバー・ドラゴン・ドライ』を召喚!」

黄色のエネルギーを纏う機械竜が現れる! ATK1800

 

 

「『ドライ』が召喚に成功した時!自身を含む『サイバードラゴン』のレベル5にできる!…これで用意は整った!」

 

ドライ☆4→5

 

フィーア☆4→5

 

 

『来るか…!』

 

「俺はレベル5の『ドライ』と『ヘルツ』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!サイバードラゴンよ…星の力を得て進化せよ!『サイバー・ドラゴン・ノヴァ』!!」

銀河に2体の機械竜が飛び込み爆発…赤きエネルギーを纏う機光竜が現れる! ATK2100

 

 

『「サイバードラゴン」のエクシーズモンスター…だが、攻撃力は「フォトンレオ」と同じだ!』

 

「ふっ…!『フィーア』がフィールドに存在する時!自分フィールドの『サイバードラゴン』の攻撃力は500アップしている!」

 

『っ…!!』

フィーアがサイバードラゴンにエネルギーを供給する!

 

サイバードラゴン ATK2100→2600

 

 

「バトルだ!『サイバードラゴン』で『フォトンレオ』を攻撃!エヴォリューション・バースト!」

 

『リバース罠発動!「光子化(フォトナイズ)」!相手モンスターの攻撃を無効にし、「フォトンレオ」の攻撃力をその数値分アップする!』

 

「そうきたか…なら『ノヴァ』の効果発動!『サイバードラゴン』を除外する事でエンドフェイズまで自身の攻撃力を2100ポイントアップする!バトルするモンスターがいなくなった事で『光子化』は不発になる!!」

 

『なんだと!?』

サイバードラゴンのエネルギーを取り込んだノヴァの全身が紅く輝く!

 

ノヴァATK2100→4200

 

 

「バトルだ!『ノヴァ』で『フォトンレオ』を攻撃!エヴォリューション・スーパーノヴァ!!」

真紅の破壊光線が光子の獅子を粉砕する!

 

『うおぉぉ…!!』

 

カイトLP4000→1900

 

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

遊海LP4000

ノヴァ フィーア 伏せ1 手札0

 

 

 

 

『これが、決闘王のタクティクス…!世界を守ってきた英雄の力か…!』

カイトは冷や汗をかく…自身を僅か1ターンでここまで追い詰めたデュエリストはカイトの記憶にはなかったからだ。

 

 

「ふぅ…ぶん回し過ぎたな、ついでに最初の手札は『サイバードラゴン』が3体と『パワーボンド』があったんだ、運がよかったな!」

 

《か、カイト様…!》

 

『(今の手札では勝ち目はない…次のドローに賭ける!)』

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『オレはリバースカード「活路への希望」を発動!ライフを1000払い、相手とのライフ差1000ポイントにつき1ドローできる!オレと白波さんのライフ差は3000…よって3枚ドローできる!』

 

「身を削って希望に賭けるか…!さぁ、かかってこい!!」

 

 

カイトLP1900→900

 

 

『よし…!オレは魔法カード「フォトン・サンクチュアリ」を発動!このターン、光属性モンスターの召喚・特殊召喚しかできなくなる代わりに「フォトン・トーク」2体を特殊召喚できる!!』

カイトのフィールドに2つの光球が現れる ATK2000 ×2

 

 

『そして攻撃力2000以上の「フォトントークン」2体をリリースする事でこのモンスターを特殊召喚できる!逆巻く銀河よ!希望の光となりて我がしもべに宿れ!光の化身、ここに降臨!!現れろ!「銀河眼の光子竜(ギャラクシー・アイズ・フォトン・ドラゴン)」!!』

カイトのフィールドに彼の魂たるドラゴンが降臨する! ATK3000

 

 

「来たか…『ギャラクシーアイズ』!さぁ、どうする!」

 

『オレは「フォトン・クラッシャー」を召喚!』

巨大な鎚を持つ戦士が現れる ATK2000

 

 

『さらにフィールドにエクシーズモンスターが存在する時!「フォトン・スレイヤー」は手札から特殊召喚できる!』

白い鎧を纏う光の剣士が現れる ATK2100

 

 

『そして魔法カード「シフト・アップ」を発動!フィールド上のモンスターのレベルをもっともレベルの高い「ギャラクシーアイズ」と同じにする!』

 

「おっと…!これは少し不味いかな…!?」

 

クラッシャー☆4→8

 

スレイヤー☆5→8

 

 

『オレはレベル8となった「フォトンクラッシャー」「フォトンスレイヤー」と「ギャラクシーアイズ」の3体でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!』

カイトが赤いオーラに包まれ、3体のモンスターが銀河へ飛び込む…そしてカイトの手元に赤い槍が現れる!

 

 

『逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりてその姿を現すがいい!降臨せよ…!我が魂!!「超銀河眼の光子龍」!!』

光の爆発と共にカイトの切り札…兄弟の絆の象徴たる龍が現れる! ATK4500

 

 

「おいおい…!まさか1ターンで出てくるか…!!」

 

『「ネオギャラクシーアイズ」の効果発動!フィールド上のモンスター効果を全て無効にする!フォトン・ハウリング!』

ネオギャラクシーアイズが咆哮…その音波によってサイバードラゴン達はショートし、機能不全に陥る!

 

 

『さらに「ネオギャラクシーアイズ」の効果発動!ORUを1つ使い!フィールド上のORUを全て吸収し、その数に1つにつき500ポイント攻撃力をアップする!』

 

「流石にそれは不味いな!速攻魔法『サイバー・ロード・フュージョン』を発動!除外されている『サイバードラゴン』とフィールドの『ノヴァ』と『フィーア』を融合!現れろ!『サイバー・エタニティ・ドラゴン』!!」

 

『なっ…!?デッキに戻す融合だと!?』

サイバーエンドドラゴンと対を成す、鉄壁の機械竜が現れる DEF4000

 

 

「これで『ネオギャラクシーアイズ』の効果は不発…そして墓地に送られた『ヘルツ』の効果発動!このカードが墓地に送られた時、デッキから『サイバードラゴン』を手札に加える!」

 

『だが…攻撃力は「ネオギャラクシー」が上回る!「ネオギャラクシーアイズ」で「エタニティドラゴン」を攻撃!アルティメット・フォトン・ストリーム!!

 

「ぐうっ…!!」

放たれた赤き破壊光線が鉄壁の竜を粉砕する!

 

 

「相手によって破壊された『エタニティドラゴン』の効果発動…!デッキから『サイバー・ドラゴン・コア』を特殊召喚!」

赤いエネルギーの奔る機械竜の素体が現れる! DEF1500

 

 

『くっ…!リカバリーも万全か!!オレはカードを伏せ、ターンエンド!』

 

カイトLP900

ネオギャラクシーアイズ 伏せ1 手札0

 

 

 

「うん!いい顔になった!以前に戦った時とは見違えるようだ!」

 

『ありがとうございます…!』

遊海はカイトを見ながら笑みを浮かべる、流星を守る為に戦った時のカイトはハルトを救う為の義務感・使命感に突き動かされていた…だが、今のカイトは違う。

遊馬によって呪縛から解き放たれた今、その表情は明るく…デュエルを楽しんでいた…!

 

 

「さて、状況は俺の不利…ここから巻き返せるかな…!!」

 

 

 

 

「俺のターン…ドロー!!」

「そう上手くはいかないか…!カードを伏せターンエンド!」

 

遊海LP4000

サイバードラゴンコア 伏せ1 手札1

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『畳み掛ける!速攻魔法「サイクロン」を発動!伏せカードを破壊する!!』

 

「破壊された『サイバネティック・オーバーフロー』の効果発動!デッキから魔法カード『サイバー・リペア・プラント』を手札に加える!」

 

『バトルだ!「ネオギャラクシーアイズ」で「サイバードラゴンコア」を攻撃!!』

 

「ぐおっ…!?」

再び機械竜が消し飛ばされる!

 

 

『オレはこれでターンエンド!』

カイトLP900

ネオギャラクシーアイズ 伏せ1 手札0

 

 

 

「カイトが決闘王を追い詰めた…!!」

 

《カイト様!流石でありマス─!!》

カイトの奮戦にフェイカーとオービタルは歓声を上げる!

 

 

『よし…!(伏せカードは戦闘ダメージを抑えられる「模擬戦闘(バトル・シュミレーション)」…油断しなければ、勝てる!)』

カイトは鋭く遊海を見つめる…!

 

「(…思い出すな、亮…お前とカイトはよく似てる…十代(遊馬)を上回るタクティクス、そして弟の為に孤高に戦っていた…お前と戦っている所を見てみたかったな…)」

手にしたサイバードラゴンを見ながら遊海はかつての教え子の事を思い出した…。

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「魔法カード『サイバー・リペア・プラント』を発動!墓地に『サイバードラゴン』が存在する時!墓地の光属性・機械族モンスターをデッキに戻すか、デッキから光属性・機械族モンスターを手札に加える効果を発動できる!ただし、墓地に『サイバードラゴン』が3体以上いる時!その両方の効果を発動できる!俺の墓地には『サイバードラゴン』として扱う『コア』『ヘルツ』『ドライ』がいる!」

 

『っ!!』

 

「それにより俺は墓地の『ドライ』をデッキに戻し、デッキから『ドライ』を手札に加える!さらに墓地の『コア』の効果発動!自分フィールドにモンスターがいない時!墓地の自身を除外し、デッキから『サイバードラゴン』を特殊召喚!」

再び機械竜が現れる! ATK2100

 

 

「そして『サイバードラゴンドライ』を召喚!効果で自身のレベルは5となる!」

再び黄色のエネルギーを纏う機械竜が現れる! ATK1800

 

 

「俺は『サイバードラゴン』と『ドライ』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!再び現れろ!『サイバードラゴンノヴァ』!!」

赤きエネルギーを纏う機光竜が現れる! ATK2100

 

 

『また『サイバードラゴンノヴァ』を…!?だが、そのエクシーズモンスターでは「ネオギャラクシーアイズ」を倒す事は不可能だ!』

 

「不可能か…それはどうかな?」

 

『なに…!?』

遊海はまっすぐカイトを見据える。

 

 

「『サイバードラゴン』は進化する…勝利を求める熱き魂がある限り!!幾重もの苦難を乗り越え…その手で勝利を掴む為に!!」

 

『っ…!?』

その瞬間、カイトを見た…遊海に並び立つ、青い髪に黒いコートを纏った青年の姿を…。

 

 

 

「俺はランク5の『サイバードラゴンノヴァ』でオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズチェンジ!!」

 

『なっ…!エクシーズモンスターでのエクシーズ召喚…!?遊馬と同じ…!』

ノヴァが赤い光となって銀河へ飛び込み、再誕する!

 

「機械竜よ!無限の力を纏い、進化せよ!『サイバー・ドラゴン・インフィニティ』!!」

現れるのは機械竜の『極致』…赤雷を纏う黒き機械竜だった…! ATK2100

 

 

 

『「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」…!』

 

「このモンスターはフィールドの『ノヴァ』に重ねる事でエクシーズ召喚できる…その攻撃力はORU1つにつき200アップする!」

 

インフィニティATK2100→2700

 

 

『だが、「ネオギャラクシーアイズ」には及ばない!』

 

「そう焦るなよ?『インフィニティ』の効果発動!1ターンに1度、相手フィールドの攻撃表示モンスターをこのカードのORUに変換する!サイバー・ソウル・ローバー!」

 

『なんだと!?』

ネオギャラクシーアイズをインフィニティから放たれた光線が貫き、ORUへと変換する!

 

インフィニティORU3→4 ATK2700→2900

 

 

「バトル!『インフィニティ』でカイトにダイレクトアタック!インフィニティ・バースト!!」

インフィニティから放たれた赤雷の光線がカイトのライフを削りきった…。

 

 

 

カイトLP0

 

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「カイトが負けるとは…これが、最強の男の実力…!」

フェイカーは遊海のデュエルを見て言葉を失い、そして想像した…仮にあの戦いの場で遊海が万全であれば、自身は為す術なく叩き潰されていただろうと…。

 

 

『負け…か、流石に悔しいな…あと1歩足りなかったか…!』

 

「惜しかったな!でも、良いデュエルだった!」

遊海は倒れたカイトを助け起こす。

 

 

「またいつでも相手になる…楽しみにしてるぞ?」

 

『はい…!』

カイトと遊海は握手しながら再戦を約束した…。

 

 

 

 

 

「もう帰ってしまうのか?」

 

「ええ、まだ行かなきゃならない場所があってね」

デュエルを終えた遊海はフェイカー達に別れを告げる。

 

 

「…そうだ、フェイカー…貴方に渡す物があったんだ…」

 

「渡す物?」

遊海は手にしていた紙袋からやけに()()タッパーと封筒を取り出す。

 

 

「封筒はとある場所への招待状だ、あとでカイトとハルトに渡してほしい…それからこのタッパーは料理なんだが……絶対にカイト達には食べさせないでください」

 

「このタッパーは…?」

 

「…実は、先の戦いで妻…翠が相当怒っててね…一種の貴方へのペナルティ…『罰ゲーム』と思って貰えれば…」

 

「なるほど……貴方も愛した女性には勝てない、と言う事ですか…」

遊海のバツの悪そうな表情を見たフェイカーは全てを察した…。

 

 

「うん…とりあえず死にはしない…はず、なので安心してください…それじゃ!」パチン キィン!

遊海が指を弾く…するとその背後に()()()()()()ワープゲートが現れる!

 

 

「その扉は…!?」

 

「死にかけた時に()の力を分けられたらしくてね…それではまた!」

遊海は手を振りながらワープゲートへと飛び込んだ…。

 

 

「もしや、彼の行く場所とは…」

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

キィン─!

 

 

 

「よし、到着!」

ワープゲートから抜け出した遊海が辿り着いたのはハートランドから少し離れたとある洋館だった。

 

 

 

コンコン!

 

 

『は〜い!……えっ…?』

遊海は洋館の扉をノックする…そして中から現れたピンク色の髪の少年は…遊海の姿を見て固まった。

 

『どうしたんだい?ミハエル……君は…!』

 

「…久しぶりだな、バイロン…悪いが、家族全員で付いてきてもらうぞ?」

 

 

 

 

 

キィン!!

 

 

 

 

「よし、着いたな…お前達は懐かしいだろう?」

 

『…まさか、こんな形で白野…ううん、遊海さんの家に来る事になるなんて…』

 

『翠さんに合わせる顔がねぇ…』

 

『…まさかこんなにすぐハートランドに戻って来る事になるとは…』

白波家の中庭…そこに遊海と4人の人影があった、それは…アークライト一家だった。

 

 

『ここが遊海の家か…普通の家だけど…なんだろう、とても温かい気がするよ』

 

「そう言ってもらえるなら嬉しいよ…さぁ、中へ入ってくれ」

白波家を見たトロンが言葉を漏らす…遊海はその言葉に笑みを浮かべながら彼らを招いた…。

 

 

 

 

「クリス君!トーマス君!ミハエル君!お帰りなさい!もう…たくさん心配したんだから…!!」

 

『翠さん…』

 

『『心配かけてごめんなさい!/すいませんでした!!』』

三兄弟を迎えたのは…翠の言葉と抱擁だった、時間にして約三年…遊海と同じく、翠も彼らの事をずっと心配していたのだ…。

 

 

『翠…先日はすまなかった…!僕は復讐に呑まれ、貴女を…十代を、遊海を傷付けてしまった…!本当に申し訳ない…!!』

子供達に続いてトロンも翠へと謝罪する、トロンの罪は重い…奇跡がなければ遊海の命は失われる所だったのだから…しかし。

 

 

「もういいんです、遊海さんから事情も、あなたがしてくれた事も聞きました…私はあなたを憎んではいません…でも、しっかり反省はしてくださいね?」

 

『…ありがとう…本当にすまなかった…!!』

翠はトロンの罪を許す…その姿にトロンは涙を浮かべた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……お前達、覚悟はできてるか?」

 

『『『はい…!』』』

 

『えっ…?これから何が始まるんだい…?「食事会」って雰囲気じゃないよね?』

少し時間は流れ…遊海と三兄弟は覚悟を決めた表情でテーブルに座っていた…。

 

 

「向こうでも言っただろ?食事会であり、()()()()だって」

 

『父様…遊海さんの家には僕達が悪い事をしたら…必ず食卓に並ぶ料理があるんです』

 

『…最後に食べたのは…凌牙と喧嘩して、皿を割った時だったな……耐えられる、かな…?』

異様な雰囲気に表情が固まるトロン…子供達は既に()()している為、覚悟はできている。

 

 

「お待たせしました!()()()()()()()()()!」

 

『これは…マーボー、ドウフ…だよね?だよね!?』

翠とウィンダ達によって料理が運ばれて来る…それは一皿の麻婆豆腐…だが、トロンは周りに訊ねた…麻婆とはこんなに()()、地獄の釜が開いたような熱気を持っていたかと…。

 

 

「この麻婆豆腐はネオドミノシティにある、とある食堂のオーナーから翠が教えられたものなんだ……大丈夫、()()()()()()それ以上に身体には良いから…」

 

『ねぇ、これって…人間の食べ物…?』

 

『諦めてくれ、父さん……これを食べきれば翠さんは本当に許してくれるから……うん』

 

『……というか、何故遊海までレンゲを…?』

 

「おれ自身への()()()()()()()だよ……さぁ、冷めないうちに食べよう、大丈夫…辛さは一瞬だから」

そう言って遊海達はレンゲとスプーンを構える。

 

 

『…これが、僕の本当の「贖罪」か…いただきます!!』

トロン達は紅い麻婆を掬い、口へと入れた…。

 

 

 

 

 

 

「「『『『『────!?!?!?』』』』」」

 

 

 

 

 

 

 

その日、ハートランドシティの2()()()で同時に悲鳴が響いたそうな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃…

 

 

(…ん?)

 

「どうしたんだ?アストラル」

 

(いや…悲鳴が聞こえた気がしてな…)

 

「ああ…ならたぶん遊海の家だな、明里姉ちゃんが翠さんが麻婆豆腐の材料を買ってたって怖がってたし…」

 

(麻婆豆腐…?たしかに辛いチュウカ料理の一種だったな?)

 

「ああ…でも、翠さんの作る奴は特別辛いんだよ…たぶん遊海がお仕置きを受けてるんだろうなぁ…ドンマイだぜ」

 

(決闘王が悶絶する麻婆豆腐…1度食べてみたいな)

 

「いや、絶対止めたほうがいい…!!」

 

(そうか、残念だ…)

 



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勇士の試練〜世界を背負う者〜

こんにちは!S,Kです!


今回は遊馬達がハートランドを飛び出します!…その先で彼らを待ち受ける者とは…?



それでは最新話をどうぞ!


「すっげぇ…!ここが日本一のデュエル遊園地…海馬ランド!!」

 

「本当にすごい!『青眼の白龍』ばっかりいる…!」

 

「…ここが伝説のデュエリストの『夢』が実現した場所か…」

夏休みのとある日…遊馬、小鳥、凌牙の3人はハートランドシティを離れ、とある場所へとやって来ていた…その場所の名は『海馬ランド』…伝説の決闘者の理想が形となった遊園地である。

 

 

(『海馬ランド』…世界一の大企業『海馬コーポレーション』が作り上げた一大テーマパーク、世界に10ヶ所以上ある中でこの場所が…海馬ランドJAPANが一番の規模を誇る、『子供達が笑顔になれる』場所…か)

 

「でもまさか…招待状が来るなんてな!」

 

「ああ…『WDCでの健闘を称えて』って、なんか引っかかるけどな…父さんが何かしただろ、これ…」

遊馬達の手にはKC社のロゴ入りの招待状がある、遊馬達はその招待状によってこの場所を訪れたのだ…なお、小鳥は遊馬の招待状の同伴者としてやって来ている。

 

 

()()何もしてないよ、お前達の戦いに海馬コーポレーションの現社長が感動したんだろうさ」

黒ジャケット姿の遊海が凌牙の言葉を否定する、確かに遊海はKCとは縁深く、顧問デュエリストの役職も持っているが…海馬瀬人亡き後のKCにはほとんど干渉していない。

 

 

「とりあえず…約束の時間まではそれぞれに楽しむといい!何か緊急事態があったら連絡する事!…では解散!」

 

「よ〜し!楽しむぜぇ〜!」

遊海の号令と一緒に遊馬達は走り出した…。

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

「うおぉぉおぉぉ!?」

 

「きゃあああああ〜!!」

 

(デュエルコースターの方がスリルがあるな)

遊馬達が最初に乗り込んだのは「ブルーアイズ・ジェットコースター」…現在、高低差と回転数で世界一である。

 

 

 

 

《キュアアア─!!!》

 

《ギュアアアン!!》 

 

《ハッ!!》

 

【ガッハッハッハッ!!】

 

「いっけぇ!ブラック・マジシャン!ゾークをぶっ倒せぇ!!」

 

「マジシャン・ガール!頑張って!!」

 

(あれは、まさか…遊海か…?肌が小麦色だが…)

続いてはアトラクションコースター『バトル・オブ・エジプト〜精霊大戦〜』…いわずもがな、アテムの記憶世界での戦いがモデルである…観客はレーザー銃で敵を攻撃して主人公達を援護できる。

 

 

「小鳥!次は『トゥーン・キングダム』に行ってみようぜ!」

 

「あっ!待ってよ遊馬〜!」

遊馬と小鳥はそれぞれに海馬ランドを楽しんだ。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「凌牙、何かアトラクション行かないのか?」

 

「…遊園地ではしゃぐって年齢でもねぇよ…父さんと色々見てるだけでいいさ」

凌牙と遊海はポップコーンを買って園内をブラブラと歩いていた。

 

 

「…璃緒と一緒に来たかったか?」

 

「…璃緒だったら…こんな時は全力で楽しむだろうな、俺が振り回されてるのが目に見えるぜ…」

少し笑いながら凌牙は青空を見上げる…戦いが終わっても璃緒は未だ目覚めてはいなかった…。

 

 

「心配するな、容体は安定してる…きっと目を覚ますさ」

 

「ああ…ん?このアトラクションは……」

 

 

 

 

 

 

王者と悪魔…今ここに交わる!荒ぶる魂よ!天地創造の叫びを上げよ!シンクロ召喚!!いでよ!「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン」!!

 

 

孤高の絶対破壊神よ!!神域より舞い降り終焉を齎せ!シンクロ召喚!!『琰魔竜王 レッド・デーモン・カラミティ』!!

 

 

 

「すげぇ…!!」

 

「運がよかったな凌牙…滅多に見れるデュエルじゃないぞ?」

凌牙が唯一、興味を持ったアトラクション…それはソリッド・ビジョンと映画のシアターを組み合わせた『リバイバル・デュエル・シアター』…目の前のデュエルリングではソリッドビジョンで再現された遊海とジャックが誇りを懸けて戦った決闘の再演が行われていた。

 

 

 

王を迎えるは三賢人!紅き星は滅びず、ただ愚者を滅するのみ!荒ぶる魂よ…天地開闢の時を刻め!シンクロ召喚!現れろ「スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン」!!

 

《ゴオオオァァァ!!!》

 

 

 

 

「これが、伝説のデュエリスト同士の戦い…!!」

凌牙は目を輝かせ、デュエルを楽しんでいた…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「お〜い!ゆ…白野〜!シャーク!」

 

「遅くなってごめんなさ〜い!」

 

「大丈夫、まだ時間に余裕はあるからな!」

 

「どうせ遊馬がはしゃぎ過ぎたんだろ…まったく…」

時間は昼過ぎ、遊馬達はとあるアトラクションの前で合流した…遊馬が遅れるのはもはやお約束である。

 

 

(招待状によると…指定の時間に『カイバーマン・ショーステージ』に来るように、と書いてあったな)

アストラルが招待状の内容を確認する。

 

「カイバーマンかぁ…!テレビでしか見た事ないけど…カッコいいんだよな!」

カイバーマン…それは海馬ランドのマスコットヒーローであり、()()()()()()()()()()デュエルヒーローでもある…鋼の騎士がネオドミノシティから去った後、入れ替わるように現れた彼は悪人を高笑いと共に倒し、高笑いと共に人を救うヒーローとして親しまれている…。

 

 

「え〜っと…『カイバーマン・ショーは海馬ランドの大人気アトラクション!ショーの最後にはカイバーマンとデュエルできるかも?』…だって!」

 

「カイバーマンとデュエルか…俺達の誰かがカイバーマンとデュエルする事になる…ってか?」

パンフレットの説明を聞いた凌牙は首を傾げる…そんな時…

 

 

「あっ…!?遊馬!小鳥!アストラル!」

 

《ゲッ…!トンマ!?》

 

「えっ!?ハルトにオービタル!?」

聞こえた声に遊馬が振り返る…そこにはブルーアイズの帽子を被り、手を振るハルトと驚いた顔をするオービタル7がいた。

 

 

(待て…ハルトやオービタルがいるという事は…?)

 

「当然、オレもいるぞ…久しぶりだな、お前達」

 

「「「カイト!?」」」

ハルトの後ろからアイスキャンディを持ったカイトが現れる…少し赤面し、バツの悪そうな表情でだが…。

 

 

「なんでカイトとハルトが…?」

 

「…招待状が届いたんだ、来るつもりはなかったが…ハルトが行きたがってな…」

遊馬の疑問にアイスキャンディをハルトに渡しながらカイトが答える。

 

 

 

「これでトロン以外のWDC決勝進出者が揃った訳だが…KCの社長は何を考えてるんだ?」

 

「まぁ…中に入ればわかるさ、そろそろ開演時間だ!いくぞ〜」

 

(………)

ますます疑問を深める凌牙だったが…遊海の声を聞いて会場へと入って行った…。

 

 

 

 

 

 

「うわ〜…お客さんが誰もいない…!」

 

(どうやら私達の貸し切りのようだな…)

遊馬達が会場へ入場するとそこは無人…遊馬達の貸し切り状態だった…。

 

 

【コホン…今日はカイバーマンショーを見に来てくれてありがとう!もうすぐ始まるから席に座って待っててね!】

 

「おっ!早く座ろうぜ!」

ステージに現れた青髪の青年が席につくように促す…遊馬達はそれに従い、ステージ前の最前列へと座る…。

 

 

 

『フハハハハ!!よく来たな!ちびっ子諸君!海馬ランドのアトラクションは楽しんだか?ならば次は俺の活躍をその目に焼き付けるがいい!!フハハハハ!!』

カイバーマンの声がステージに響き渡る…そしてカイバーマンショーが始まった!

 

 

 

「がんばれ!カイバーマン!!」

 

「いっけぇ!デビル・グールズなんかに負けるなぁ!!」

 

(デュエルとヒーローショーがこんなに相性がいいとは…胸が熱くなるな…!)

 

「「お前達の精神年齢は小学生か!?」」

 

「もう…遊馬ったら…」

ヒーローショーの内容は王道物…街で悪事を働く「デビル・グールズ」の陰謀をカイバーマンが真正面から叩き潰すというもの…普通と違うのはソリッドビジョンとARビジョンを併用した派手な殺陣とデュエルの演出だった。

…なお、ハルトと同じテンションでショーを楽しむ遊馬とアストラルに凌牙とカイトは思わずツッコミを入れた…。

 

 

 

 

【さぁ、ここでショーのメインイベント!カイバーマンとのチャレンジデュエルの始まりだよ!】

 

『フハハハハ!…この俺とデュエルできる事を光栄に思うがいい!!』

 

「ついにデュエルタイムか…」

ショーが終わり司会の青年がデュエルタイムの始まりを告げる…!

 

 

【セ…カイバーマン!今日は誰とデュエルするんだい?】

 

『フン…そんな事は当然のように決まっている!俺と決闘をするのは……お前だ!!』

スポットライトが1人の少年を照らす…それは…!

 

 

 

『ワールド・デュエル・カーニバル優勝者…九十九遊馬!!デュエルチャンピオンの実力…俺に見せてもらおうか!』

 

「えっ…オレぇ!?」

 

(なんと…!)

カイバーマンが指を指したのは遊馬だった…!

 

 

『さぁ…ステージに上がって来るがいい!!』

 

「よ〜し!かっとビングでカイバーマンに勝ってやるぜ─!!」

指名された遊馬はステージへ飛び上がる!

 

 

「がんばって!遊馬!」

 

「調子に乗って失敗しないようにね〜!」

 

「遊馬!!()()で戦えよー!じゃないとすぐに負けるぞ〜?」

ステージ上の遊馬にハルトや小鳥の声援が飛ぶ…そしてデュエルが始まった…!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊馬LP4000

カイバーマンLP4000

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

(遊馬、カイバーマンは強敵だ…気をつけろ!)

 

「おう!オレは『ガガガマジシャン』を召喚!」

背中に「我」の文字を背負う不良魔術師が現れる! ATK1500

 

「そして装備魔法『バウンド・ワンド』を装備!その効果で装備モンスターのレベル×100ポイント攻撃力がアップする!」

ガガガマジシャンが紅い宝石の付いた杖を装備する!

 

ガガガマジシャンATK1500→1900

 

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

遊馬LP4000

ガガガマジシャン(バウンドワンド) 伏せ2 手札2

 

 

 

『フン…堅実なフィールドだな、伏せカード2枚に戦闘破壊からモンスターを復活させる「バウンドワンド」か…だが、甘い!』

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『速攻魔法「手札断札」お互いに手札を2枚捨て、新たに2枚ドローする!』

 

「っ…!2ドロー!」

 

 

遊馬 捨てたカード

 

ズババナイト

ゴゴゴゴーレム

 

 

カイバーマン 捨てたカード

 

B─バスター・ドレイク

Y─ドラゴン・ヘッド

 

 

『さらにフィールド魔法「ユニオン格納庫」を発動!その効果でデッキから「A─アサルト・コア」を手札に加える!』

カイバーマンの背後に巨大な格納庫が出現する!

 

 

『そして永続魔法「前線基地」を発動!その効果により手札のユニオンモンスター『A─アサルト・コア』を特殊召喚!』

格納庫から黄色のサソリのようなモンスターが現れる ATK1900

 

 

「ユニオンモンスター…?」

 

(ユニオンモンスターはモンスターでありながらモンスターの「装備カード」になる事ができるモンスター達の事だ)

ユニオンモンスターの登場に首を傾げる遊馬にアストラルが説明する。

 

 

『そして「ユニオン格納庫」の効果発動!1ターンに1度ユニオンモンスターの召喚・特殊召喚に成功した時!デッキからそのモンスターに装備可能なユニオンモンスターを装備できる!俺はデッキの「C─クラッシュ・ワイバーン」を装備!』

紫色の飛竜がサソリに合体する!

 

『そして「X─ヘッド・キャノン」を召喚!』

両肩に大砲を持つロボットが現れる ATK1800

 

 

『そして俺はフィールドの「アサルトコア」と「クラッシュワイバーン」そして墓地の「B─バスター・ドレイク」を除外する事でこのモンスターを特殊召喚できる!いでよ!「ABC─ドラゴン・バスター」!!』

3機のロボットが合体…双頭のドラゴン戦車が現れる ATK3000

 

 

「なっ…!?除外して融合!?」

 

(しかも攻撃力3000だと…!?)

遊馬とアストラルは現れた戦車に警戒を強める…!

 

 

『「ドラゴンバスター」の効果発動!手札を1枚捨て、「ガガガマジシャン」を除外する!ディメンジョン・ブラスター!!』

 

「なんだって!?」

ドラゴンバスターからレーザー砲が放たれ、ガガガマジシャンを異次元に追放する!

 

捨てたカード

 

クローン複製

 

 

『バトルだ!「ドラゴンバスター」でダイレクトアタック!ABC─フレイム・バスター!!』

ドラゴン戦車から火炎放射とレーザー光線が放たれる!

 

「くっ!リバース罠『ダメージ・ダイエット』を発動!このターン!オレの受けるダメージは半分になる!うわあああ!!」

 

「遊馬─!」

遊馬を半透明のバリアが守るが灼熱の炎が遊馬に襲いかかる!

 

遊馬LP4000→2500

 

 

『まだだ!「ヘッドキャノン」でダイレクトアタック!』

 

「ぐうぅぅ─!?」

大砲が遊馬に直撃する!

 

遊馬LP2500→1600

 

 

『オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!』

カイバーマンLP4000

ドラゴンバスター ヘッドキャノン 前線基地 ユニオン格納庫 伏せ1 手札0

 

 

 

 

「な、なんだあの強さは…!?遊馬とアストラルが1ターンで…!」

 

「無駄のないタクティクスに…強力なモンスター…隙がない…!奴は何者だ…!?」

あまりに一方的なデュエルに凌牙とカイトは戦慄する…!

 

「(…やり過ぎだって…もう少し加減をしてやってくれよ…)」

 

 

 

「イテテ…なんだよ、この強さ…!」

 

(カイバーマン…ただのヒーローではないと思っていたが…!)

 

『…フン及第点か…だが、何故全力で向かってこない!ナンバーズを使わねばこの程度か?笑わせるな!!』

 

「っ…!」

遊馬はカイバーマンの発する覇気に圧倒される!!

 

 

『お前の背負うものはその程度か?…ならばもはや戦う意味もない…早々にステージを降りるがいい!!』

 

「言わせておけば…!だったらやってやる!いくぜカイバーマン!!」

 

(待て遊馬!相手の挑発に乗るな!)

負けん気を起こした遊馬はカイバーマンへと立ち向かう!

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「『ゴゴゴジャイアント』を召喚!」

青いレンガでできた巨人が現れる ATK2000

 

「『ゴゴゴジャイアント』の効果!墓地の『ゴゴゴゴーレ厶』を守備表示で特殊召喚!その後自身も守備表示になる!」

墓地から一つ目の巨人が復活する! DEF1500

 

ジャイアントATK2000→DEF0

 

 

「オレはレベル4の『ゴゴゴゴーレム』と『ゴゴゴジャイアント』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!」

 

39

 

 

「現れろ!『No.39希望皇ホープ』!!」

希望の戦士が現れる! ATK2500

 

 

「あの馬鹿!挑発に乗って…!」

 

「バトルだ!『ホープ』で『ドラゴンバスター』を攻撃!」

 

『フン…!』

希望の戦士が斬りかかる!

 

「その瞬間『ホープ』の効果発動!ORUを一つ使い!自身の攻撃を無効にする!そして速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』を発動!モンスターの攻撃が無効になった時!そのモンスターの攻撃力を倍にして、もう1度攻撃できる!」

ホープが二刀流の構えを取る!

 

ホープATK2500→5000

 

 

「もう1度『ドラゴンバスター』を攻撃!!ホープ剣ダブル・スラッシュ!!」

 

『…甘い!甘すぎる!!速攻魔法「収縮」を発動!モンスター1体の攻撃力を半分にする!』

 

(しまった!!)

ホープの目の前に虫眼鏡が現れ、その力を半減させる!

 

ホープATK5000→2500

 

 

『迎え撃て!「ドラゴンバスター」!!』

 

斬りかかるホープをドラゴン戦車が迎撃…ホープは火炎放射で吹き飛ばされる!

 

「ぐあああ!!?」

 

遊馬LP1600→1100

 

 

「っ…ナンバーズは、ナンバーズとのバトルじゃなきゃ破壊されない…!カードを1枚伏せて、ターンエンド…!」

 

遊馬LP1100

ホープ 伏せ1 手札1

 

 

 

『…つまらん、貴様の本気はこの程度か?この程度のモンスターなど俺は幾度も倒してきた…!攻撃力を上げるだけなら幼子でもできる!怒りに…反骨心に身を任せ、リカバリーもなく攻撃を仕掛ける…それは愚の骨頂だ!お前はその程度の覚悟で()()()()()()というのか?』

 

「っ…!」

 

(流石に言い返せないな…遊馬、一度冷静になるんだ)

 

「…悪い、アストラル…完全に頭に血がのぼってた…」

遊馬はアストラルの言葉で冷静さを取り戻す…。

 

 

『フン…反省したようだが、今更遅い!!』

 

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『魔法カード「強欲で貪欲な壺」を発動!デッキトップ10枚を裏側で除外して2ドロー!…お前に真の決闘というものを教えてやろう…魔法カード「死者蘇生」を発動!蘇れ!「Y─ドラゴン・ヘッド」!』

赤いドラゴン型の戦闘機が現れる ATK1500

 

『そして「ユニオン格納庫」の効果発動!ユニオンモンスターの特殊召喚に成功した事でデッキの「Z─メタル・キャタピラー」を装備する!』

黄色のキャタピラーが戦闘機と合体する!

 

 

『そして俺はフィールドの「ヘッドキャノン」「ドラゴンヘッド」「メタルキャタピラー」を除外!エクストラデッキより現れよ!「XYZ─ドラゴン・キャノン」!!』

3体の機械が合体…重厚なロボ戦車が現れる ATK2800

 

 

「また合体した…!?」

 

『まだだ!俺はフィールドの「ドラゴンバスター」と「ドラゴンキャノン」を除外!これにより俺は最強の兵器を呼び覚ます!!』

 

(最強の兵器だと!?)

2体のロボットが分離…再合体する!

 

『現れろ!全ての戦場を蹂躙し、全ての悪を打ち倒す最強兵器!「AtoZ─ドラゴン・バスター・キャノン」!!』

AtoZ(全て)」を意味する最強の要塞戦車が遊馬達の前に立ち塞がる! ATK4000

 

 

(攻撃力4000…!これが、カイバーマンの切り札…!)

 

『バトルだ!「ドラゴンバスターキャノン」で「希望皇ホープ」を攻撃!AtoZ─ギャラクシー・デストラクション!!』

放たれるのは破壊の一撃…装備を全開放した一撃が遊馬に迫る!

 

 

「まだだ!『ホープ』の効果発動!ORUを使って攻撃を無効にする!ムーンバリア!!」

 

『これで終わりだ…相手がモンスター・魔法・罠カードの効果を発動した時「ドラゴンバスターキャノン」の効果発動!手札の「スクランブル・ユニオン」を墓地に送り、その効果を無効にし破壊する!!諸共に吹き飛ぶがいい!!』

 

「なっ…『ホープ』!?」

ホープの鉄壁は粉砕され…最強の一撃が遊馬に迫る!

 

 

(まだだ!諦めるな!!)

 

「っ─!!手札の『ガガガガードナー』の効果発動!ダイレクトアタックを受ける時、自身を特殊召喚できる─!!」

盾を持った戦士が現れるが、攻撃を受けて粉砕される! DEF2000

 

 

「ぎ、ギリギリだったぜ…」

 

(伏せカードの『ハーフ・アンブレイク』は温存できた…次のターンを凌いで…挽回する!)

 

 

『お前達に次のターンなどない!「ドラゴンバスターキャノン」のさらなる効果を発動!このカードを除外する事で除外されている「ドラゴンキャノン」と「ドラゴンバスター」を特殊召喚する!!』

 

(「なっ─!?」)

ドラゴンバスターキャノンが分離…再び2台の戦車が現れる! ATK2800   3000

 

 

『バトル続行!「ドラゴンキャノン」でダイレクトアタック!X・Y・Z・ハイパー・キャノン─!!』

 

「う、うわああああぁぁぁ─!?」

放たれた大砲とレーザーが遊馬のライフを吹き飛ばした…!

 

 

 

遊馬 LP0

 

 

カイバーマン WIN─

 

 

 

 

「ゆ、遊馬…遊馬!大丈夫!?」

 

「遊馬!!」

吹き飛ばされた遊馬に小鳥と凌牙が駆け寄る…怪我はしていないが…遊馬の受けたダメージは大きかった…。

 

 

「くっ…くっそぉ…!」

 

『その程度で「デュエルチャンピオン」を名乗るか…やはりあの催しは()()に過ぎなかったようだな……』

小鳥に支えられて起き上がった遊馬をカイバーマンは睨みつける…その目はマスクで隠されていたが…とても冷たかった…。

 

 

 

「…そこまでだ、カイバーマン…!流石に今のデュエルはやり過ぎだ!!」

 

「白野…?」

カイバーマンと遊馬の間に遊海が割って入る!

 

 

『…やり過ぎ?何を言うか!元はと言えば…貴様が死にかけた事が原因であろうが!()()()()!!』

 

「「「えっ…!?」」」

カイバーマンの言葉に全員が騒然とする…カイバーマンは秘匿されているはずの遊海の名前を口にしたのだ…!

 

 

「…カイバーマン、遊馬はまだ子供だ…確かに未熟ですぐに熱くなる、でも…遊馬は成長して強くなった!そしてWDCで戦った全ての決闘者の思いを背負ってチャンピオンにまで登り詰めた!!いくらお前でも…遊馬の戦いを…成長と絆の証を否定するのは許さない!!」

 

『許さない…か、ならばどうする?遊海…!』

 

「決まってるだろ…!デュエルだ、カイバーマン!」

 

『いいだろう、腕の錆びついた貴様なぞ…この俺が粉砕してくれる!!』

 

 

「父さんとカイバーマンのデュエル…!?」

 

「いったいどうなっちゃうの…!?」

火花を散らす遊海とカイバーマン…凌牙達は固唾を飲んでその様子を見守るしかなかった…。

 

 

 



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大激突─プライドを賭けた決闘─

こんにちは!S,Kです!

海馬ランド編・後編!…デュエルをする事になった遊海とカイバーマン…その決闘の行方は…?

そしてカイバーマンの正体()とは!


それでは最新話をどうぞ!


「遊馬、大丈夫か?」

 

「なんとか…」

カイバーマンへと宣戦布告した遊海は遊馬へと声をかける。

 

 

「カイバーマンを嫌いにならないでやってくれ、あの人はあの人なりに世界を守ってきた…その思いを…背負った()()をわかって欲しい…」

 

(世界を守る…責任…)

 

「…なぁ、遊海はカイバーマンと…知り合いなのか?」

遊馬は遊海へと問いかける…遊海の言葉はカイバーマンの事を知っているからこそ出た言葉だと感じたからだ…。

 

 

「ああ、よく知ってる…心配するな、ちょっと決闘で語り合うだけだからな!」

遊海は遊馬の頭を撫でるとカイバーマンに向き直る。

 

 

『フン…心の用意はできたようだな!ちょうど俺の準備もできる所だ!』

《ぎゅあん!》

カイバーマンの頭上にデフォルメされたブルーアイズ型のロボットが現れ、その手に小さな箱を投下する。

 

 

『貴様と戦うにはARビジョンでは物足りぬ…!』

カイバーマンは旧型…否、ソリッドビジョン対応型のデュエルディスクを装着する。

 

「…デュエルディスクセット!ソリッドビジョンシステムON!」

遊海のデュエルディスクがソリッドビジョン対応型に変形する!

 

 

『いくぞ…!覚悟はできているだろうな!!』

 

「もちろん…!俺は…遊馬と俺の誇りの為に戦う!!」

睨み合う遊海とカイバーマン…2人の戦いが始まる!!

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP4000

カイバーマンLP4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『レッド・スプリンター』を召喚!」

炎を纏う健脚の悪魔が現れる! ATK1700

 

「『レッドスプリンター』の効果!自分フィールドに他のモンスターがいない時!手札から『レッド・リゾネーター』を特殊召喚!」

炎の衣を纏う悪魔が現れる! ATK600

 

 

「『レッドリゾネーター』の効果発動!自身が特殊召喚に成功した時!フィールドの『レッドスプリンター』の攻撃力だけライフを回復する!」

 

遊海LP4000→5700

 

 

「俺はレベル4の『レッドスプリンター』にレベル2の『レッドリゾネーター』をチューニング!」

 

4+2=6

 

 

「赤き魂がここに1つとなる!王者の雄叫びに震撼せよ!シンクロ召喚!来い!『レッド・ワイバーン』!」

紅蓮の炎を纏うワイバーンが現れる ATK2400」

 

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!!」

 

遊海LP5700

レッドワイバーン 伏せ2 手札2

 

 

 

 

『フン…なるほど、それなりに本気らしいな…だが!!()()()には遠く及ばん!!』

 

 

「っ…!このエネルギーは…!?」

遊馬を睨みつけるカイバーマン…その足元から無限の文字を刻むエネルギーが広がる…!

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『魔法カード「調和の宝札」を発動!手札のドラゴン族チューナー「伝説の白石」を墓地に送り2ドロー!さらに「白石」が墓地に送られた事で効果発動!デッキから我が魂「青眼の白龍」を手札に加える!』

 

 

「『ブルーアイズ』だって!?」

 

「馬鹿な…!?『ブルーアイズ』は伝説のカード…主であった海馬瀬人の死後、何処かに封印されたはず…!!」

カイバーマンの思わぬ行動に遊馬達は驚愕する!

 

 

『さらに俺は「融合」を発動!!手札の3体の「青眼の白龍」を究極融合!!今こそ現れよ!「真青眼の究極竜」!!!』

 

《ギュアアアアアン!!》

 

全てを畏れさせる咆哮が轟く…長き刻を経て究極の伝説が蘇る!! ATK4500

 

 

「本物の…『ブルーアイズ』…!?」

 

「嘘、でしょ…!?」

遊馬と小鳥は言葉を失う…2人は決闘庵でブルーアイズをモチーフとした「青眼の究極木竜」を目にしている、だからこそ理解したのだ…伝説が蘇ったのだと…!

 

 

『バトルだ!「真究極竜」で「レッドワイバーン」を攻撃!ハイパー・アルティメット・バースト!!』

究極の破壊光線が放たれる!

 

「『レッドワイバーン』の効果!シンクロ召喚したこのモンスターがフィールドに存在する時!一度だけ効果を発動できる!フィールドでもっとも攻撃力の高いモンスターを破壊する!レッド・ブラスト!!」

 

『甘いわ!!速攻魔法「融合解除」!「真究極竜」をエクストラデッキに戻し…降臨せよ!3体の「青眼の白龍」!!』

 

「なっ─!?」

究極竜がレッドワイバーンの火炎弾を躱すように分離…3体のブルーアイズが遊海を見下ろすように降臨する! ATK3000  3000  3000

 

 

「あれが、伝説のドラゴン…!」

 

「兄さん…!」

降臨したブルーアイズにカイトは目を奪われ…ハルトはブルーアイズのオーラに当てられたのか兄にしがみつく…。

 

『バトル続行!1体目の「ブルーアイズ」で「レッドワイバーン」を攻撃!滅びのバースト・ストリィィム!!』

 

 

「やらせない!罠カード発動『王者の調和(キングス・シンクロ)』!自分のシンクロモンスターが攻撃される時!その攻撃を無効にし、墓地のチューナーとフィールドのシンクロモンスターを除外する事でエクストラデッキから2体のレベルの合計と同じレベルのシンクロモンスターをシンクロ召喚扱いで特殊召喚する!俺はレベル6『レッドワイバーン』にレベル2の『レッドリゾネーター』をディメンション・チューニング!!」

遊海の背後に炎の柱が現れる!

 

 

6+2=8

 

 

「漆黒の闇を裂き、天地を焼き尽くす孤高の絶対王者よ!万物を睥睨し…その猛威を振るえ!シンクロ召喚!現われろ!『琰魔竜 レッド・デーモン』!!」

紅蓮の焔を纏い、炎の覇者が現れる! ATK3000

 

 

『フン、現れたか「琰魔竜」よ…!バトル続行!2体目の「ブルーアイズ」で「琰魔竜」を攻撃!!紅蓮の魔竜を撃ち滅ぼせ!滅びのバースト・ストリィィム!!』

 

「っ…!迎え撃て!極獄の裁き(アブソリュート・ヘル・ジャッジ)!!」

破壊光線と紅蓮の炎が衝突…諸共に砕け散る!!

 

 

「ぐううっ…!!」

 

『3体目の「ブルーアイズ」のダイレクトアタック!滅びのバースト・ストリィィム!!』

《ギュアアアン!!》

 

「しまッ…ぐあああぁぁ!?」

 

「父さん─!!」

 

「遊海!!」

爆煙の中から3度目の破壊光線が遊海を直撃…遊海は激しく吹き飛ばされ、機材を壊しながら壁に叩き付けられる!

 

遊海LP5700→2700

 

 

「ぐっ…ゲホッ…!!容赦、ないな…!」

 

(ダメージが…実体化している…!?)

遊海は口元から溢れた血を拭いながら立ち上がる…。

 

 

『フゥン…確かに以前よりは頑丈になっているようだな…俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!』

ブルーアイズ ブルーアイズ 伏せ1 手札1

 

 

 

「な、何なんだよこのデュエル…息が、できねぇ…!」

 

(これはもはや「デュエル」ではない…全てを賭けた「決闘」だ…!)

息をつかせぬ展開に、刹那の攻防…そしてステージを包み込む闘志と怒気…決闘の放つプレッシャーに遊馬達は圧倒される…!

 

 

 

『どうした遊海…!お前の決闘はその程度か!?この数十年で腕が錆び付いたか?』

 

「たしかにな…!WDC以前は、闇のデュエルなんて…なかった、からな…!」

冷たく遊海を睨むカイバーマン…遊海は軽口を言いながらターンを迎える!

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「リバース罠『リビングデッドの呼び声』発動!甦れ!『琰魔竜』!!」

墓地より真紅の竜が復活する! ATK3000

 

「そして『チェーン・リゾネーター』を召喚!!」

鎖を背負った音叉の悪魔が現れる! ATK100

 

「『チェーンリゾネーター』の効果!自分フィールドにシンクロモンスターが存在する時に召喚された時!デッキから『ダーク・リゾネーター』を特殊召喚!」

黒い衣の音叉の悪魔が現れる! ATK1300

 

「そしてフィールドに攻撃力1500以下の悪魔族のチューナーモンスターがいる時!手札の『風来王ワイルド・ワインド』は特殊召喚できる!」

緑のマントの獣王が現れる DEF1300

 

 

『フン…来るか…、──!』

 

「うおおぉぉ!!荒ぶる魂…バーニング・ソウル!!

 

ゴウッ!

 

「ゆ、遊海が燃えたぁぁ!?」

 

(この波動は…!!)

心臓の上に右手を置いた遊海の身体から炎が燃え上がる…それは…熱く、激しい…荒ぶる魂の発露…!

 

俺はレベル8の『琰魔竜』にレベル1の『チェーンリゾネーター』とレベル3の『ダークリゾネーター』をダブルチューニング!!

琰魔竜を4つの炎の輪が包み込む!!

 

 

8+1+3=12

 

 

孤高の絶対破壊神よ!!神域より舞い降り、終焉を齎せ!シンクロ召喚!『琰魔竜王 レッド・デーモン・カラミティ』!!

《グオオォン!!!》

 

災厄の名を冠する紅蓮の竜王が轟臨する!ATK4000

 

 

 

「レベル12のシンクロモンスター…!この覇気…白波さんは本気だ!!」

 

「あのモンスターは…!」

カラミティの発するオーラに目を見張るカイト…その横で凌牙は先程のアトラクションを思い出す、「決闘王」の継承を賭けた決闘…その戦いで猛威を奮ったモンスターが時を越えて蘇ったのだ…!

 

 

『やはり現れたか…紅蓮の竜王よ!』

 

「『琰魔竜王』がシンクロ召喚に成功した時!このターン相手はフィールド上で発動する効果を発動できない!バトルだ!『琰魔竜王』で1体目の『ブルーアイズ』を攻撃!!真紅の絶対破壊(クリムゾン・アブソリュート・ブレイク)!!」

放たれるのは紅蓮のアームハンマー…その一撃は伝説のドラゴンを直撃する!

 

カイバーマンLP4000→3000

 

 

「そして『琰魔竜王』の効果発動!相手モンスターを破壊した時!そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!地獄の災厄琰弾(ヘル・カラミティ・メテオ)!!」

 

「よっしゃあ!!遊海の逆転ワンターンキルだ!!」

 

(っ…?待て、何かおかしいぞ!)

遊海の強力な効果の発動に勝利を確信する遊馬…だが…!

 

 

《ギュアアアアアン!!!》

 

 

《グオオォ!?》

 

「なっ…!?『琰魔竜王』!?」

空から降り注ぐ無数の隕石…しかし、それは2()()のブルーアイズの咆哮によって掻き消され、琰魔竜王は砕け散ってしまった…!

 

 

「そんな…!?父さんの攻撃は直撃したはず!!なんでブルーアイズが…!?」

 

『簡単な事よ…!俺は「琰魔竜王」が召喚される前に罠カード「強靭!無敵!最強!」を発動していたのだ!その効果により1体目の「ブルーアイズ」は相手の効果を受け付けず、自身とバトルした相手モンスターはバトル終了時に破壊される!…もっとも、お前は発動を見逃していたようだがな!』

 

「くっ…!?」

カイバーマンは手にしたカードを遊海に見せつける…。

 

 

「遊海が、押されてる…!?」

 

(それだけではない、遊海がどちらの「ブルーアイズ」を攻撃するか予測し、カードを発動する…それは遊海の手の内を理解していなければできない事だ…!)

アストラルは冷静に分析する…。

 

 

「…『琰魔竜王』が相手によって破壊された時、墓地にいる闇属性・ドラゴン族のシンクロモンスターを特殊召喚できる!舞い戻れ!『琰魔竜』!!」

遊海の場に悪魔竜が復活する! ATK3000

 

 

「カードを伏せて…ターンエンド!」

遊海LP2700

琰魔竜 風来王 伏せ1 手札0

 

 

 

『…ふぅ…失望したぞ遊海、お前がここまで()()()()()()()とは…この俺が引導を渡してやる!!』

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『儀式魔法「カオス・フォーム」を発動!レベル8の「青眼の白龍」をリリースする事で俺は混沌の力を呼び覚ます!!』

ブルーアイズが飛翔し、巨大な異次元ゲートに飛び込む!

 

『光と闇の支配する混沌の青き宇宙より…光来せよ!儀式召喚!「ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン」!!』

異次元ゲートから混沌の力を宿せしブルーアイズが顕現する! ATK4000

 

 

「儀式モンスターの『ブルーアイズ』だと!?」

 

「こんなモンスター…見た事がない…!」

究極竜と同じレベルの覇気を発するカオスMAXに遊馬達は冷や汗をかく…!

 

 

『「カオスMAX」は相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない…さらに!守備モンスターを攻撃し、攻撃力が守備力を上回った時!その数値の倍の貫通ダメージを与える!』

 

「マズイ!父さんのフィールドには守備力1300の『風来王』がいる!!」

 

「…と、いう事は…!?」

 

(「カオスMAX」の攻撃力と「風来王」の守備力の差は2700…その倍ならば遊海は5400のダメージを受ける事になる、つまり…)

 

『このデュエル…一撃で終わらせる!「カオスMAX」で「風来王」を攻撃!混沌のマキシマム・バースト!!』

カオスMAXの全身から全てを破壊する光線が放たれる!!

 

 

「遊海─!!」

 

「まだだ…!罠カード『シンクロ・コール』を発動!墓地の『ダークリゾネーター』を特殊召喚!そして『風来王』とチューニングする事で闇属性のドラゴン族か悪魔族のシンクロモンスターを特殊召喚する!」

 

4+3=7

 

「太古の森よりフィールドを制圧する精霊よ…仮初の姿にその身をやつし、降臨せよ!シンクロ召喚!『妖精竜 エンシェント』─!」

闇のオーラを纏う、妖艶なる妖精竜が現れる! DEF 3000

 

 

 

「『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』…!?…でも、何か違う…?」

小鳥は遊海の場に現れた妖精竜に驚く…その姿は決闘庵で見た龍可の「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」に瓜二つだったのだ。

 

 

『あれは『決闘竜(デュエル・ドラゴン)』って言うんだ!遊海が従える10体のドラゴン達…その内の6体『閃光竜』『琰魔竜』『黒羽竜』『妖精竜』『月華竜』『機械竜』はそれぞれ『スターダスト・ドラゴン』『レッド・デーモンズ・ドラゴン』『ブラック・フェザー・ドラゴン』『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』『ブラック・ローズ・ドラゴン』『パワー・ツール・ドラゴン』と似た姿をしているのさ!』

 

「うわっ!?司会のお兄さん!いつの間に…!?」

聞こえた声に遊馬が振り返るとカイバーマンショーの司会をしていた青髪の青年が遊馬達の後ろの客席に座っていた。

 

【ステージ上にいると巻き込まれそうだから逃げて来ちゃった♪…さぁ、決闘が動くよ!】

 

 

 

『フン…小癪な!粉砕しろ!「カオスMAX」!混沌のマキシマム・バースト!!』

 

「ごめん…!ぐうあぁぁぁ!!!」

再び放たれる混沌の嵐…それは妖精竜を跡形もなく粉砕し、遊海を壁に叩き付けた…。

 

遊海LP2700→700

 

 

『俺はこれでターンエンドだ!!』

カイバーマンLP700

カオスMAX 青眼白龍 手札0

 

 

 

 

《マスター!?いったい何をしているんですか!?》

 

「…すまん、ちょっと、ヤバい…かも…?」

様子を見ていたアヤカが姿を現す、何度も攻撃を受けたは…再び瀕死状態まで追い込まれていた…。

 

 

『どうした!!決闘王の…世界を救い続けた英雄の強さとはそんなモノか!?()()()()()()()()()!!』

 

「えっ…?本気…?」

カイバーマンの激が飛び…その言葉を聞いた遊馬は驚愕した、レベル12の「琰魔竜王」を呼び出した遊海が本気を出していないと言われたのだ…!

 

 

『お前が何を恐れている!!そんな事だからバイロン・アークライトに弄ばれ、翠を悲しませたのだろう!!いい加減自分に()をつけるな!!』

 

「…瀬人…」

それは友を心配するが故の忠言…何度も死にかけ、ついに命を失いかけた友への怒りの叫びだった…!

 

 

『お前が決闘に真面目に向かい合い、デュエルを楽しむ男だというのはよく知っている…だが、それでお前が倒れては元も子もないだろう!!お前は全てのデュエリストの憧れる男の1人だ…もう一度言う!全力でかかってこい!!』

 

「……すまん、思った以上に心配をかけていたらしい…!」

 

「父さん…!?」

満身創痍の状態で遊海は立ち上がる…その瞳に強い決意を宿して…!

 

「お前達!!…これから起きる事は…他言無用だ!!」

 

 

「たごんむよう…?」

 

「ハルト、これから白波さんがする事はナイショにしてほしい…と言う事だ…わかったな、オービタル7」

 

《か、カシコマリ!!》

カイトは感じ取った、遊海の宿す闘志…否、闘気が膨れ上がっていく事を…!!

 

 

「父さん…!いったい何をするつもりなんだ…!?」

 

 

 

 

 

「俺のターン!!ドロー!!」

「墓地に眠る『風来王』の効果発動!!自身を除外する事でデッキから攻撃力1500以下の悪魔族・チューナーモンスターを手札に加える!俺は『クリムゾン・リゾネーター』を手札に加え、召喚!!」

背中に紅蓮の炎を背負う悪魔が現れる! ATK800

 

「『クリムゾンリゾネーター』の効果発動!自分フィールドに存在するのが闇属性・ドラゴン族のシンクロモンスターのみの時!デッキから2体のリゾネーターを特殊召喚できる!現れろ!『シンクローン・リゾネーター』!『ミラー・リゾネーター』!!」

ト音記号を背負った悪魔と大きな鏡を背負った悪魔が現れる! ATK100  0

 

 

「レベル8の『琰魔竜』にチューナー3体…レベルの合計は…12!?」

 

(まさか…トリプルチューニングか!?)

フィールドに揃ったモンスターを見てアストラルが声を上げる…遊馬達は以前、「トリプルチューニング」というシンクロ召喚があるという事を聞かされていた…!

 

 

「トリプルチューニング…確かに聞いた事はある、だが…それを使えるのは伝説の決闘者・ジャック・アトラスだけのはず…」

 

【そうとも言えないよ、彼は全ての決闘者の頂点…彼が本気を出したら…神様でもないと止められないよ!】

 

 

 

俺はレベル8の『琰魔竜』にレベル2の『クリムゾンリゾネーター』とレベル1の『シンクローンリゾネーター』とレベル1の『ミラーリゾネーター』をトリプルチューニング!!

 

 

8+2+1+1=12

 

王を迎えるは三賢人!紅蓮の星は滅びず、ただ邪悪を滅するのみ!荒ぶる魂よ…天地開闢の時を刻め!シンクロ召喚!現れろ『スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン』!!

 

《ゴオオオァァァ!!!》

 

遊海のフィールドでビックバンが起きる…現れるは紅蓮の龍神…全てを滅する破壊神が現れた…! ATK4000

 

 

 

(「あのモンスターは!?」)

スーパーノヴァドラゴンの出現で特に驚いたのはアストラルと凌牙だった、アストラルはⅢとのデュエルの際に遊馬達を守った姿を…凌牙はつい先程、若きジャックが呼び出した姿を見たばかりだった…! 

 

 

「『スーパーノヴァドラゴン』の攻撃力は墓地のチューナー1体につき500アップする!墓地のチューナーは5体!よって2500アップする!!」

 

『フン…!それでこそだ!我が友よ!!』

 

スーパーノヴァATK4000→6500

 

 

 

「バトル!『スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン』で『青眼の白龍』を攻撃!バーニング・ビックバン!!

 

『フハハ…ハハハハハハ!!!』

フィールドを駆け抜ける紅蓮の隕石…それはブルーアイズ諸共カイバーマン…否、瀬人のライフを粉砕した…。

 

 

 

カイバーマンLP0

 

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

「遊海が、勝った!!」

紅蓮の炎が収まったステージ…勝利を決めた遊海を見て遊馬が声をあげる!

 

 

「…っ…コフッ…!」

 

「父さん!!」

 

【おっと危ない!もう…遊海も瀬人もやり過ぎだよ!特に君は病み上がりなんだから…】

 

「すまん…()()()()…」

デュエルが終わり倒れ込む遊海…それを支えたのは司会をしていた青髪の青年…チーム5D'sのメンバーであり、イリアステルの一員…ブルーノだった。

 

 

「ブルーノって、龍可ばあちゃんの言ってた…チーム5D'sのメンバー!?」 

 

「いったい…何がどうなってるの??」

状況を把握できていない遊馬達の頭上にハテナマークが浮かんだ…。

 

 

 

 

 

「とりあえず…2人の紹介からだな…」

応急処置を終えた遊海はブルーノ、そしてカイバーマンと共に遊馬達と向かい合う。

 

 

「こっちはブルーノ、遊馬と小鳥ちゃんは知ってると思うけど…ライディングチーム・5D'sのメンバーで天才メカニックだ!」

 

【はじめまして!よかったらブルーノちゃんと呼んでほしいな!】

 

「不動遊星を支え、共に『フォーチュンシステム』を作り上げた天才メカニック…だが、年齢が合わない…少なくとも…いや、まさか…!」

ブルーノの紹介を聞いたカイトは何かに気付く…。

 

 

「そしてもう1人は…自分でやるか?」

 

『うむ、その方が合理的だ』

遊海に促されたカイバーマンが歩み出る。

 

 

『俺は正義の味方「カイバーマン」であり…その正体は…この顔を見ればわかるだろう!』

そういうとカイバーマンはブルーアイズの仮面を外す、その下は目付きの鋭い青年…そしてその顔はデュエリストであれば一度は目にした事のある顔だった…!

 

 

「あ、アンタ…海馬瀬人…KCの2代目社長の!?」

 

「待て!海馬瀬人は20年以上前に亡くなっている!!生きているはずが…」

 

「うええっ!?まさか、幽霊─!?」

カイバーマンの正体…それを見た遊馬達は混乱する、だが…それを制したのは彼本人だった。

 

 

『そうだ、海馬瀬人は死んだ…そして俺は「海馬瀬人」ではない、俺は「瀬人」…海馬瀬人の記憶と精神を受け継いだデュエルロイド…アンドロイドだ!』

 

「「アンドロイドだって!?」」

 

《オイラのお仲間でありマスか─!?》

カイバーマン…瀬人の言葉に遊馬達はなおさら混乱する…死者がロボットとして蘇ったなど聞いた事がなかったからだ…。

 

 

 

【ここからは僕が説明するよ!…海馬瀬人は死の直前、僕達「イリアステル」に自身の記憶の抽出と素体となるアンドロイドの制作を依頼してきたんだ】

 

「えっ…?イリアステルって…アーククレイドル事件の…!?」

瀬人に代わって説明を始めたブルーノの言葉に小鳥が驚く…教科書にはアーククレイドル事件の後、イリアステルは壊滅したと書かれていたからだ。

 

 

【そう…僕はアーククレイドル事件を起こしたイリアステルの一員…でも、あの後に遊星と海馬社長に許されてね、今は亡き僕達の友…Z-ONEとラプラスの遺志を継いでこの世界を見守っているんだ】

 

「ブルーノ、話が逸れてるぞ…」

 

【おっとごめん!最初は僕達も驚いたよ!海馬社長はそんな事はしないって思ってたからね、でも…】

 

『海馬瀬人は記憶を取り出し、機械の身体で第二の人生を歩む事を決意した…無茶ばかりする遊海の力になる為にな!…まったく、今回はどうなる事かと思ったぞ?』

 

「…すいません反省してます…」

瀬人の鋭い睨みに遊海は思わず縮こまる…。

 

 

「それじゃあ…今回オレ達を呼び出したのは…」

 

『無論、俺だ!WDCでのお前達の姿を見て我らの守ってきた世界を託す事ができるか見定める事…そして、無茶ばかりする遊海を諌めるのが目的だった!』

 

「テストか…なんだかアンタの心配も分かる気がするぜ…」

 

「確かに、こんなアホが世界一になればな…」

 

「ちょっ…!?そんな目でオレを見るなぁ!!」

 

(……今回ばかりはノーコメントだ)

 

「あはは…」

瀬人の言葉に凌牙とカイトはジト目で遊馬を見る、遊馬の無茶癖はテレビで放映されている…瀬人から見てもデュエル中に食事をしたり、他の対戦者のデュエルに乱入したりする遊馬は普通ではなく…不安になったのだ。

 

 

『九十九遊馬、お前は赤点ギリギリの及第点だ…遊海にしっかり教えを請い…デュエルの経験を積め!…励め、若き決闘者よ!』

 

「は、はいぃ!!頑張ります─!!」

伝説の決闘者直々の叱咤激励に遊馬は緊張しながら応えた…。

 

 

 

 

 

『そして次はお前だ遊海!!何故経験も実力も上のお前が遅れを取る!?ナンバーズという不確定要素があってもお前は余裕でトロンを倒せたはずだ!!』

 

「いや、それは…その…連戦とダメージで冷静ではなかったというか…その時にデッキの半分が行方不明で…」

 

 

「…あんなにしどろもどろになってる父さん、初めて見た…」

 

「どうやらあの人でも…海馬瀬人には頭が上がらないらしいな…」

子供達は瀬人に頭が上がらない様子の遊海を見てクスリと笑った…なお、瀬人から遊海への説教は1時間ほど続いたそうな…。

 

『…フン…今日はこれぐらいにしてやる、次に無様を晒したら許さんからな…!』

 

「はい、本当にすいません…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、父さん…聞きたい事があるんだけど…」

 

「ん?どうした凌牙」

瀬人と別れ帰路につく遊海と遊馬達(天城兄弟はオービタルバイクの為別行動)…そんな中で凌牙が遊海に声をかける。

 

 

「父さんが呼び出した『スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン』ってジャックさんの切り札だよな…?なんで父さんが持ってるんだ?」

 

(それは私も聞きたいと思っていた、私達も一度あのドラゴンを目にしているが…纏うオーラが違っていた…あのカードはいったい…?)

凌牙とアストラルは遊海へと問いかける…。

 

 

「…あれは違法カードや偽物でもない…でも、()()()()()()、すまないが…詳しい事はお前達にはまだ話せないな」

 

「えっ…?どうしてだよ?」

 

「これは俺と翠の一番重要な秘密だ…まぁ、お前達がもっと強くなったら教えてやるよ」

夕日の照らす帰り道…少し哀しげな表情の遊海は笑いながらそう答えた。

 

 

((遊海…貴方はいったい、何を隠しているんだ…?))

 

 

 

 

 

ズキン




〜おまけ〜



「た、ただいま〜…」

「遊海さん!お帰りなさ…うえぇぇ!?なんでそんなにボロボロなんですか─!?」

「ちょっと…瀬人と、真剣デュエル、してきた…流石、に──」パタリ

「きゃあああ!遊海さんしっかりしてぇぇ!!?」

《…やれやれですね…》

《フォウ─!?(特別意訳:なんでせっかく治ったのにまた怪我してるの─!?)》





白波遊海 全治2ヶ月の重傷(精霊の力による治癒含まず)


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王の試練〜神と人の絆〜

【長い間お疲れ様…もう眠りなよ…!「紋章神コート・オブ・アームズ」で「ラーの翼神竜」を攻撃!ゴッド・レイジ!!】

「っ…ぐああああぁぁぁ!!?」




《ユ…ユウ、ミ…!》


…私は、彼の仲間となって初めての敗北を経験した…ユウミには慢心も…油断もなかった…ほんの少し()()()()()()()…子供達を守りたいという思いがユウミを焦らせた…。 




【あっけない幕切れだったねぇ…じゃあ、君のナンバーズを貰おうか…!!】

「っ──…」

《ぁ…》


ユウミの魂が敵に奪われる…私は、何もできなかった…私はユウミ達の守護神…彼らを護る「神」なのに…!!





『…落ち込むなよフレア…大丈夫だって!遊馬達が絶対に先生を助けてくれる!』

《彼は強い男だ…!必ず戻ってくる!》

傷つき遠退く意識の中でジュウダイとネオスが私を必死に励ましてくれる…でも……





─プツン─




《っ…!?主殿との繋がりが…切れた…!?》

《………そん、な……!》

…ユウミは魂を燃やし尽くした、子供達を…リョウガを救う為に……自分の命を投げ出してまで……








「フレア!病み上がりで辛いと思うが…力を貸してくれ!!」

《わかりました!!行きますよリュウセイ!!》




「奇跡」…それによって遊海は黄泉返り、世界を…子供達を守る為に力を開放した…でも、私は……





「ごめんな、フレア…せっかく力を貸してくれたのに…情けないところ見せちまった…」





…どうか謝らないで…








《フォウ…キュ〜…》

 

「よしよし…ここが気持ちいいんだな〜?」

 

《キュウ…フニャ〜…》

とある日の午後、遊海は穏やかな時間を過ごしていた…膝の上ではブラッシングを受けたフォウが気持ち良さそうに伸びている…。

 

 

《ジーッ……》

 

「…彩華!お前も磨いてあげるからおいで!」

 

《はい♪》

 

 

 

キュッキュッ…

 

 

 

「…もう少しで夏休みも終わりか…つまり、バリアンの攻勢が始まる…」

 

《そうですね…次元の歪みも強くなっています…人間界・アストラル世界・バリアン世界の距離が近くなっているのでしょう…》

アヤカのコアを磨きながら遊海はこれからの事を考える…Dr.フェイカーとトロンを利用したバリアンのナンバーズ回収・アストラル世界破壊計画は失敗した…それによってバリアン達は本腰を入れて人間界とナンバーズを狙い始める。

 

 

当面の敵は……5人

 

 

「ハンド」デッキを使う巨漢策士・ギラグ

 

「BK」デッキを使う熱き拳闘士・アリト

 

2体目の「銀河眼」を操るドラゴン使い・ミザエル

 

「光天使」デッキを使うバリアンの副リーダー・ドルベ

 

…そして、既に人間界に潜伏…卑劣な策略によって遊馬達を狙う「外道」・ベクター

 

 

 

 

「……ベクターの蛮行は…静観するしかないんだよな…忌々しいが…!!」

 

《マスター…》

 

バリアンの攻勢は遊馬の周り…ハートランド学園から始まる、学園の中で起きる出来事には部外者である遊海は関与できない…そして、バリアンの先に待つ()()()()を倒すには遊馬とアストラルの覚醒は必須条件…遊海は下手に手を出す事ができないのだ。

 

 

「できるのは被害を…遊馬への負荷を軽くする事くらいか…本当ならベクターの奴をぶっ飛ばしてやりたい…!!!」

 

《マスター!力を入れ過ぎですー!(+_+)》

 

「あ、すまん!」

思わずアヤカを磨く手に力が入る遊海…だが、それも仕方がないだろう。

ベクターは人間の姿で「真月零」と名乗りハートランド学園へと転入…遊馬との絆を深める一方でアストラルに遊馬への疑念を植え付け…2人の絆を断ち切り「ZEXAL」を使えなくしようとしているのだ…。

 

 

「…こんな事ならまた清掃員として潜入するんだった…」

 

《…おそらくボロを出して正体がバレて…ハートランド学園が大混乱しますよ…やめておきましょう…》

 

「はぁ…やっぱりそうだよなぁ…」

遊海は深くため息をつく…「ZEXAL」の物語は遊戯王シリーズの中でも、もっとも「ハッピーエンド」に近い物語…だが、一歩間違えば最悪の「バッドエンド」になりかねない危うさもある…。

 

 

「まぁ…俺はできる事をやるだけさ…よし!綺麗になった!」

 

《ありがとうございます♪マスター!》

アヤカを磨き終えた遊海は背中を伸ばす…。

 

 

「次は…フレア!ブラッシングするよ〜!……あれ…?」

遊海はフレアを呼ぶ…だが、フレアは姿を現さなかった…。

 

《おかしいですね…?いつもならマスターが呼べばすぐに飛んで来るのに…》

 

「う〜ん…?俺、何か嫌われる事しちゃったかな…?なんだか最近避けられてる感じがするなぁ…」

遊海は頭を抱える…ここしばらくフレアが白波家にいない時間が増えた、そして食事の時以外は遊海に近寄ってこないのだ…。

 

 

「…失望させちゃったかな、トロンに負けたせいで…それとも…凌牙を助ける為に無茶したせいかな……はぁ…」

 

《そう自分を責めるな、フレア様もそうやって悩んでいたぞ?》

 

「メガロック…」

思い当たる事ばかりで自己嫌悪に陥る遊海…それを宥めたのは日光浴をしていたメガロックだった。

 

 

《お前が療養を終えたくらいからか…フレア様も何やら思い詰めていた…それが解決すればいつものフレア様に戻るだろうさ、心配するでない》

 

「フレアの悩み事か…次に戻ってきたら聞いてみよう…ありがとうメガロック」

 

《フォ〜ウ…?》

遊海はフレアと直接話してみようと決めたのだった…。

 

 

 

 

 

 

「…遅いですね、フレアさん…」

 

「ああ、いつもご飯の時間には帰ってくるのに…」

時間は夕食時…いつもなら真っ先にやって来るはずのフレアは未だに戻って来なかった…。

 

 

「…アヤカ、サーチしてみてくれるか?」

 

《了解しました!サーチ開始…………ハートランドシティ近辺に反応がありません…精霊界にいるのでしょうか…?》

 

「……う〜ん…アヤカ、頼んでもいいか?」

 

《わかりましっ…?小規模の次元ゲートの展開を確認!この家の真上です!》

 

「なっ!?まさかバリアンか!?」

遊海は戦闘態勢で庭へと飛び出し──

 

 

キィン──ズドォン!!

 

 

「な、なんだぁ!?」

飛び出した瞬間、真上から()()が落下…庭は土煙に覆われた…。

 

 

「ケホっ…いったい、何事ですか…!?」

 

「わからな…この気配は…!!」

 

「遊海さん!?」

土煙に覆われる庭を警戒する遊海達…だが、何かを感じ取った遊海は躊躇なく土煙の中に突っ込む…!

 

 

 

「ふ…フレア!?しっかりしろ!何があった!」

 

「えっ…!フレアさん!?」

土煙の中から遊海の絶叫が響く…そこではフレア…ラーの翼神竜が傷だらけで墜落していたのだ…!!

 

 

《うっ……ユウ、ミ…》

 

「フレア!しっかりしろ!!いま治してやるからな!!誰にやられたんだ!バリアンの襲撃か!?」

取り乱しながら回復魔法を使う遊海…その目は鋭く周囲を警戒している…!

 

 

《バリアンは、関係ありま、せん……心配しない、で……ちょっと、疲れた…だけ…ですから…!》

 

「全然ちょっとじゃない!!早く小さくなるんだ…!誰だ…誰がお前をこんな目に!!」

怒りのオーラを纏う遊海…フレアの身体は傷だらけでところどころ深い火傷を負っていた…。

 

《大丈夫…です、から…だい、じょぅ──》

 

 

 

…………

 

 

 

 

《スゥ…スゥ…》

 

《フォウ…》

 

「ようやく眠ってくれた……誰だ、誰がフレアをこんな目に…!!」

小鳥状態に戻ったフレアは籠ベットの中で静かに眠りに就いた…その横で遊海は拳を握り締める…。

 

 

《マスター、フレアの負った傷からは…()が見つかりました》

 

「砂…?」

 

《私でも詳しくはわかりませんが…人間界の物ではありません、何処か…別の世界の物です》

 

「別の世界…でも、おかしい…フレアは最上位の精霊だ…それを一方的に…」

フレア…「ラーの翼神竜」はデュエルモンスターズにおいて最上位の精霊であり「神」…相手になるとすれば同じく「神」である「三極神」や「創星神」…それか「三邪神」…「ゾーク・ネクロファデス」ぐらいのものだろう…。

 

 

「とりあえず目が覚めたら話を聞いてみよう…トフェニ、看病を頼んでもいいか?」

 

《御意……主殿、少し気になる事が…》

 

「ん?どうしたんだ?」

フレアの看病をトフェニに託して立ち上がる遊海…そこにトフェニが話し掛ける。

 

 

《うまく言えないのだが…フレア様の神威が少し強くなっている気がする…意識がない状態でも……》

 

「…力が増してるって事か…?まさか……修行してるって訳じゃないよな…?」

 

《精霊の力はその精霊の存在力とカード…そしてマスターの力量に依存します…精霊自身の鍛錬でそこまで変わる事はないはずですが…》

遊海の疑問にアヤカが答える…精霊達の力量は基本的にはほとんど変化する事はない、変化する事があるとすれば主の力量が上がり、精霊の力を十全に発揮できるようになるか……精霊自身の心の変化によるものが多いのだ。

 

 

「とりあえず、フレアが目覚めるまで待とう…トフェニ、頼む」

 

《ハッ!》

フレアを優しく撫でた遊海は部屋を後にした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタガタガタガタビュゴオォォォ!!!

 

 

 

「ふがっ!?な、なんだ!?」

翌日の早朝…遊海は家を揺らす強風の音で飛び起きる!

 

 

《あ、主殿!申し訳ない!フレア様が…!》

 

「何があった…!?」

寝室に飛び込んでくるトフェニ…話によると目を覚ましたフレアは制止するトフェニを押し退けて何処かへ飛び去ってしまったのだという…。

 

 

「アヤカ!!」

 

《追跡ロスト…座標が特定できません…!異世界へ向かった事は確かですが…》

 

「フレア…いったい何処に……あと、頼れるものは…」

アヤカの力でもわからないフレアの行き先…それを確かめる最後の手段は…。

 

 

キィン─!

 

「千年玉…千年アイテムはエジプトに…三幻神に縁あるものだ、これに賭けるしかないか……ん?ヒビ…?」

遊海は右手に千年アイテムを呼び出す…遊海の原初の異能である千年玉…それは僅かに()()()()()()

 

 

「…この前倒れた時に落としたからか…?まぁいい…千年玉よ!我が友たる太陽神の向かいし場所への道を示せ─!!」

庭に飛び出した遊海は千年玉を空へと掲げる…そうすればフレアのもとに行く事ができると直感したからだ…だが…。

 

 

キィン─…キィィィン!!

 

 

ドクン!!

 

 

「っぐぅ…!?目がまわ、る──……」

 

《マスター!?》

強い目眩と胸の痛みに襲われた遊海は…そのまま地面へと倒れ込んだ…。

 

 

「遊海さん!!………そんな…」

少し遅れて庭へと飛び出してきた翠が目にしたのは…生気を失い、虚ろな目で意識を失った遊海の姿だった…。

 

 

《マスターの魂が……消えた…?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海@???

 

 

 

 

 

「ぅ…イタタ……何が、どうなって……はっ…!?」

目を覚ました遊海は辺りを見回す…そこは灼熱の太陽が照りつける、見渡す限りの砂漠だった…。

 

 

「ここは、何処なんだ…アヤカ!…ダメか…みんなの気配を感じない…」

遊海はアヤカを呼び出そうとして異変に気付く…精霊達との繋がりが途切れ、デッキやデュエルディスクすら持っていなかったのだ。

 

 

「……どうやら、魂だけの状態で放り出されたらしいな……待て、まさか…ここは…!?」

今までの経験則から状況を把握した遊海は目の前に見える砂丘に向けて走り出す…!

 

 

 

「…マジかよ、ここって…」

 

砂丘に駆け上がった遊海はそれを見つける、青空が広がる砂漠の先…岩山の麓に築かれた巨大な()()を…!

 

 

 

「…アテムの、冥界…かよ…!?」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

「アヤカちゃん!遊海さんは…!?」

 

《肉体的に言えば…昏睡状態です…肉体は健康そのもの…ですが、魂が肉体から離れてしまっています…!》

 

「そんな…!」

同じ頃…ベッドに寝かされた遊海はアヤカによる診断を受けていた…意識を失った遊海の体からは魂が抜け出してしまっていたのだ…。

 

 

《予測にはなりますが…フレアはおそらく「冥界」に向かったのでしょう…マスターはそれを追おうとした結果、魂だけが冥界に向かった……大丈夫ですよ!きっと向こうにはフレアがいます、マスターの異変を感じれば…きっと連れ戻してくれるはずです!》

 

「そうだと、いいんだけど…」

 

《フォウ…》

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「…千年玉の導きが正しいならば…フレアはこの世界にいるはず…行ってみるか…!」

落ち着きを取り戻した遊海は王宮…アテムの治める国へと足を踏み入れた…。

 

 

 

 

 

「さぁ!いらっしゃい!野菜が安いよ〜!」

 

「質のいい鳩肉が入ったよ〜!!」

 

「ヒヨコ豆はいらないか〜?上等な小麦粉もあるよ〜!」

 

 

「本当にここは冥界か…?」

賑わう市場を歩きながら遊海は首を傾げる、行き交う人々は生き生きと笑い…商人達は食材や道具を手に声を張り上げている…。

 

 

「アテムは上手くこの国を治めてるらしいな…死んだ人間が元気っていうのも変な話だけど……神話ではよくある事か…さて、王宮までもう少しだ」

遊海は賑やかな市場を進んでいく、そんな時…

 

 

『えっ…?おい!()()!?なんでお前がコッチにいるんだ!?』

 

「えっ─!?」

人混みの中…遊海は名前を呼ばれ、肩を掴まれる…振り返った先にいたのは…

 

 

「城之内さん…!?」

 

『お前…ついに死んじまったのか…!?』

焦った表情を浮かべる今は亡き友…城之内の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

『いやはは…びっくりしたぜ…まさかフレアを追って冥界に迷い込んで来るとはな!』

 

「いや、驚いたのは俺の方だって…なんでこの冥界にいるんだよ…」

遊海は城之内に事情を話して王宮へと向かう、城之内の姿は全盛期である青年期の姿…冥界では自分である程度姿を選べるようだ…。

 

『死んだ後にアテムに招かれたんだよ、遊戯や杏子…みんなコッチで楽しく過ごしてるぜ?お前の事見たら…驚くだろうな〜!』

 

「ははは…嫌な予感しかしない…」

悪い笑みを浮かべる城之内と共に遊海は王宮へと足を踏み入れた…。

 

 

 

 

 

『お〜い!珍しい奴を連れてきたぞ〜!』

 

『ん?どうしたんだよ城之内?また現世の知り合いでも来たのか?』

 

『まったく…死んでもそんな所は変わらないんだか

ら…』

 

『城之内君!ずいぶん楽しそうな顔だね?』

 

【フッ…】

王宮の謁見の間…そこには4人の人影があった、それは懐かしき『友情』で繋がる仲間達…

 

 

『ヘッヘッヘッ…!今日の特別ゲストは…コイツだぁ!!』

 

「みんな!久しぶり!!」

 

『『『遊海!?なんで!?』』』

 

【懐かしい気配…やはりお前だったか…久しぶりだな、遊海】

王宮に響く仲間達の声…その様子を笑いながら冥界の主…アテムは遊海を出迎えた…。

 

 

 

 

『…なるほどなぁ…てっきりお前がやられたんだと思ったぜ…』

 

『本田!縁起でもない事言わないの!!遊海が死んじゃったら翠ちゃんがどれだけ悲しむか…』

 

『でも、辛い戦いを乗り越えてきた事には変わらないよ…遊海、お疲れ様だね…』

 

「ああ…いやはや…今回は流石に死んだと思ったよ…」

遊海は仲間達…遊戯・杏子・本田・アテムに現世での戦い…そして冥界に迷い込んだ目的を伝える…。

 

 

 

【遊海、確かにフレアはしばらく冥界に通って来ている…それは()()()()だ】

 

『俺の、為…?』

遊海の話を聞いたアテムは遊海を見つめながら語る…。

 

 

【現世での戦い…俺も一部始終を見ていた、復讐鬼と対峙したお前は『ラーの翼神竜』を使って負けた…もちろん、時の運もあっただろう…だが、お前は冷静さを欠いていた……違うか?】

 

「ああ、凌牙や璃緒…子供達を傷付けられた怒りで俺は平常心を失ってた…そのせいで俺は『ラー』の力を生かす事ができなかった…」

 

【…それはフレアも同じ気持ちだったんだ…言ってたぞ?『私の力不足で遊海は負けたんだ』…とな…】

 

「フレア…」

アテムから聞かされるフレアの真意…遊海の敗北を悔やしんだフレアは遊海の為に強くなろうと冥界で修行していたのだ。

 

 

【相棒、遊海を決闘場に連れて行ってくれ、フレア()はそこにいるはずだ】

 

『うん、わかった!案内するよ!』

 

「すまない…頼む、遊戯…!」

遊戯に案内され、遊海はフレアのもとに向かった…。

 

 

 

ズズーン…ズズーン…!

 

 

「…この振動は…」

 

『僕達も気になってたんだ…アテムからしばらく決闘場に行くのを止められてたから…』

決闘場に続く廊下…その奥から低い音と振動が伝わってくる…。

 

 

『でも…神様が修行なんて聞いた事ないぜ?』

 

『きっと…じっとしてられなかったんだよ…人を助ける為に傷つく遊海を見ていられなくて……着いたよ!』

 

「この先にフレアが…!」

廊下の奥に現れたのは巨大な扉…その先は魔術や呪術によって補強された決闘場がある…!

 

 

ゴゴゴゴゴゴ…!

 

 

「っ…!?2人共!壁に避けろ!扉が吹き飛ぶぞ!!」

 

『『っ─!?』』

遊海の声と一際強い振動に遊戯と城之内は飛退く…次の瞬間…!

 

ゴオオォォ!!

 

 

「うわあああああ!?」

 

『『遊海!!』』

決闘場の扉が一瞬にして融解…灼熱の炎が遊海を吹き飛ばした…!

 

 

 

─我が写し身よ、お前の力はその程度か?─

 

《く、うぅ…!まだ、まだぁぁ!!》

 

「フレ、ア…?それにあれは……!」

火傷を負い、吹き飛ばされた遊海が目にしたもの…それは傷だらけで地面に倒れ伏すラーの翼神竜…そして、空中で滞空するふた周りほど巨大な…もう一体の()()()()()()の姿だった…!

 

 

「…まさか、()()()()()の『ラー』か…!?」

圧倒的神威を放つ巨大なラー…それはフレアの本体、アテムが使役する『太陽神』の姿だった…!

 

 

─私…いえ、我が分霊フレアよ!お前の力はその程度か…?その程度の力で遊海の守護者を名乗るのか!─

 

《私は…彼を守る…!その為に、強く、ならないと!!》

 

─戯言を…私に1度も勝てずにいるお前が…世界を背負う者を守れるか!ゴッド・ブレイズ・キャノン!!─

 

《っ─!!ゴッド・ブレイズ・キャノン─!!》

 

 

ゴオオオオ!!

 

 

『ぐっ…!?なんて熱だ…!!』

 

『まさかフレアの修行って…!本体との一騎打ちかよ!?』

 

「あの馬鹿…!なんて無茶を!!」

ぶつかりあう太陽神の神炎…それを前に遊海は理解した、フレアは自身のオリジナルと戦う事で…自身を鍛えようとしているのだと…!

 

 

 

─甘い!はあっ!!─

 

《ぐっ…?!あ"あ"あ"あ"あ"!!!》

 

「フレア!!」

本体の炎の威力は凄まじく…フレアは全身を灼かれながら壁に叩き付けられる!!

 

 

《くっ…カッ…ァ…!》

 

─…この一撃で終わりにしましょう…我が身は不死鳥になりて…天を舞う!ゴッド・フェニックス!!─

重傷を負い動けないフレアに裁きの炎が迫る!!

 

 

「ダメだ…!やらせるかぁぁ!!」

 

『おい待て!やめろ遊海!!』

 

『遊海!!』

不死鳥の姿を見た遊海はフレアに向かって駆け出す!!

 

 

 

『来い!!「決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)」!!勝利へ導く決着の剣(デュエル・カリバー)─!!』

 

《ユウミ!?》

フレアの前に飛び出した遊海は魂の大剣を呼び出し、不死鳥の一撃を受け止める!!

 

 

─馬鹿者!!何故庇うのです!死ぬつもりですか!?─

 

「ただ見て、られるかよ…!フレアは俺の大事な仲間だ…友達だ!!傷付いたお前を放っておけるかぁぁぁ!!」

灼熱の炎に体を焦がされながらも遊海は叫ぶ…!

 

 

《ユウミ!すぐに避けなさい!魂だけの貴方では…!!》

 

「馬鹿…!!避けたら、お前がヤバいじゃねぇか…!!前に言っただろ…俺は、全てを守れる英雄じゃない…それでも!!手の届く相手は、必ず助ける!!!」

 

《ぁ…》

フレアは灼熱を受け止める遊海の背中が大きく見えた…その背に守る「覚悟」を背負った背中を…。

 

 

《(私は勘違いをしていた…私は遊海を守る「守護神」じゃない…共に戦い、一緒に生きていく「仲間」なんだ…)》

フレアは心の何処かで遊海を「守るべき者」として見ていた…しかし、それは間違いだった。

遊海は「守られる者」ではなく、「共に戦う者」だったのだと…フレアは気付いたのだ…。

 

 

ゴウッ!!

 

 

「っぐ…!!(剣が、熔ける…!!)」

太陽神の炎によって大剣が融解し始める…!

 

《遊海!しゃがみなさい!!我が身は不死鳥…友の道を照らす為に天を舞う!!ゴッド・フェニックス─!!》

 

「うおぉっ!?」

背後で膨れ上がる闘気に遊海は慌てて地面を転がる…そして2体の不死鳥が空中で激突した!!

 

 

 

 

─フレア…どうやら迷いは消えたようですね─

 

《ええ…!私は神であり「精霊」…遊海と共に歩む者!私は…彼らの道を照らし続ける!!》

激突する2体の炎の不死鳥…そのエネルギーは膨れあがり、決闘場を飲み込んだ…。

 

 

 

 

 

 

「……ぐっ…何が、どうなった……?」

 

『あ…!遊海!気がついたかい!?』

 

「遊戯…そうか、俺は…」

気を失っていた遊海は焼け焦げた決闘場で目を覚ました、2体の太陽神の「ゴッド・フェニックス」の激突…それによって遊海は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて失神していたのだ。

 

 

「流石に、死ぬかと思った…神の炎は、キツイ…」

 

『ある意味、遊海のトラウマの1つだもんね…ボク達も少し危なかったよ…』

思い出されるのはバトルシティの戦い…ラーと真っ向から戦う事になった闇マリクとの闇のゲームの事だった…。

 

 

─…遊海、貴方には申し訳ない事をしました…巻き込むつもりはなかったのですが…─

 

「っ…!ラーの翼神竜…!」

頭上から声が響く…それは遊海を心配そうに見つめる『ラー』だった。

 

 

─遊海、現世での窮地はフレアとアテムから聞いています、我が力を使って敗北した事も…フレアはさらなる力を求め、私に修行を頼んだのです…貴方をこれ以上つらい目に遭わせない為に…─

 

「…今回の件は俺の『弱さ』が原因だ…フレアが思い詰める事はなかったのに…」

 

【遊海、「完璧」なんてものは存在しない…それはお前が1番理解しているだろう?】

 

「アテム…フレア…!」

焼け焦げた決闘場にアテム…そして包帯を巻かれた小鳥状態のフレアがやってくる、フレアの表情はとても落ち込んでいる…。

 

 

《遊海…その…心配をかけてすいません…まさか私を追って冥界にまで来るなんて…!》

 

「まったく…本当に心配したんだからな?お前に嫌われたかと思ったぞ?…でも、ありがとな…次は絶対に負けないからな…!」

膝に降り立ったフレアを遊海は優しく撫でる。

 

 

【…完璧なものなんて存在しない…だが、完璧に近づける事はできる…仲間と力を合わせれば…お前に敵う者はいないさ】

 

「ああ、そうだな…俺は独りじゃない…翠がいる…精霊達がいる…絆を紡いだ仲間達がいる…!俺は…みんなの想いと共に世界を守ってきたんだからな…!」

遊海は胸に手を当てる…それは遊海の中で燃え続ける「炎」…希望の灯火…。

 

 

【フッ、わかっているならいいさ…遊海、フレアは試練を乗り越え、新たな力を手にした…お前…いや、お前達なら人間界に迫る闇を祓う事ができるはずだ】

 

「ああ…俺は必ず世界を守る…!俺なりのハッピーエンドを掴む為に!」

アテムの手を借りながら遊海は立ち上がる…その目に迷いはない…!

 

 

 

 

─遊海、私から貴方に1つ、伝えなければならない事があります─

 

「ラー…?」

立ち上がった遊海にラーが声をかける。

 

─…貴方の持つ「絆の奇跡」…それを使えるのは…あと…─

 

 

『遊海ィィィ!!!』

 

 

「へっ…!?」

 

『あっ…!しまった!彼の事を忘れてた!!』

決闘場にラーの声をかき消すほどの怒りの叫びが響き渡る…その声の正体は…

 

 

 

『貴様…なぜ冥界にいる!!俺との約束を忘れた訳ではあるまいな─!!』

 

「か、海馬社長─!?」

決闘場の入口で怒りのオーラを纏いながら遊海を睨む者…それは死後、遊戯達と同じように冥界へと招かれた海馬瀬人その人だった…!

 

 

『お前はぁ…!そこに直れ!我が「ブルーアイズ」で貴様を現世まで吹き飛ばしてくれる─!!』

 

「ちょっ!?俺の話を聞い─『問答無用!!』うわあああああ!?」

 

《ギュアアアアアン!!》

 

 

その後、誤解が解けるまでブルーアイズに追い回された遊海なのであった…。

 

 

 

 

 

─…話をしそびれてしまいましたが…フレア、彼を頼みましたよ…─

 

《…はい…!これ以上…ユウミに無理はさせません…!》

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

「う、う〜ん…海馬、社長…おれの、俺の話を聞いてぇ……」

 

「…フレアさん…冥界で何があったんですか…?」

 

《…まぁ、その…あはは…》

 

その後、遊海はフレアと共に無事に現世へと戻ったものの…しばらくの間寝るたびに魘されたそうな…。

 

 

 

 

 




フレアが試練を超え、遊海との絆が深まった事で「ラーの翼神竜」の効果が書き変わった!


《ラーの翼神竜》神 幻神獣族 攻守?

このカードは自分または相手の場のモンスターを3体リリースしてアドバンス召喚できる。ただし、相手フィールドのモンスターをリリースして召喚した時、このモンスターは相手フィールドに召喚される。
①このカードの元々の攻撃力・守備力はアドバンス召喚時にリリースしたモンスターの攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値になる。
②このカードは相手のカード効果を受けない。
③このカードが墓地から特殊召喚された時、または1ターンに1度、以下の効果のどちらかを発動できる。
・ライフを1000払い発動できる、相手フィールドのモンスターを全て墓地に送る。
・ライフを100になるように払って発動できる、その分このモンスターの攻撃力をアップする。
④このモンスターが魔法・罠カードの効果で墓地から特殊召喚された時、そのターンのエンドフェイズに墓地に送られる。

テキスト外効果
このカードは古代神官文字を理解しなければ①②③④の効果を使用できず、攻撃できない。
またこのカードのコントロール権は古代神官文字を唱えた者に移動する。


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第3章 バリアンの侵攻〜友情・絆・裏切り〜
新たなる戦い〜強襲のバリアン〜


こんにちは!S,Kです!

新章開幕!ついに始まるバリアンとの戦い…遊馬達にさらなる苦難が襲いかかる!


それでは最新話をどうぞ!


『人間に力を与える事で「No.」を奪い、アストラル世界を殲滅させようと考えたが…ベクターが力を与えたフェイカーも…私が力を与えたトロンもZEXALに敗れてしまった…由々しき事だ…!』

赤紫の水晶が乱立する異次元「バリアン世界…その中心に位置する城で灰色のローブを纏う男が呟く…。

 

 

『…どうするつもりだ?このまま手を拱いているつもりか?ドルベ』

 

『今度は…我々が直接手を下す』

黄色のローブのバリアンが灰色のバリアン…ドルベに問いかける…その答えはバリアンが直接人間界、そしてアストラル世界に攻め入る事を決めたものだった…!

 

 

『だが…バリアン世界とアストラル世界は高次のエネルギー世界…互いに直接干渉する事はできない、だからこそ人間を使ったのではなかったか?』

 

『それによぉ…人間界じゃオレ達は()()()姿()じゃいられねぇ!ナンバーズを直接ぶん盗れねぇじゃねぇか?』

ドルベに反論する黄色のバリアン…その言葉に茶色のローブの大柄なバリアンが同調する。

 

 

『それでもやるんだ…我々にはナンバーズが必要なのだ…!』

 

『はぁ…やってられねぇよ!』

 

『アリト!』

ドルベの話を聞いていた赤いバリアン…アリトが水晶の椅子から飛び降りる。

 

 

『オレはベクターみたいなまどろっこしい仕事はごめんだぜ?アゴールの奴にでも任せておけよ!…じゃあな』

アリトはそう言い捨てると霊体化して消えてしまった…。

 

 

『…ギラグ、君が行け』

 

『オレがぁ…?』

ドルベは大柄のバリアン…ギラグに指令を出す…!

 

『君は勇敢なバリアンの戦士だ、君ならきっと成し遂げられる…』

 

『…しょうがねぇなぁ…オラァ!!』

 

ドッゴォン!!

 

大柄なバリアン…ギラグは空中に浮かんでいた水晶を拳で砕きながら立ち上がる…!

 

『一丁…ナンバーズを根こそぎ頂いて来てやるよ…!』

 

『…頼んだぞ、ギラグ』

気合いを入れたギラグは次元の扉を開き、人間界へと向かった…!

 

 

 

『…そういえば、ベクターとアゴールは何処へ行った?』

 

『ベクターとアゴールはそれぞれに人間界に潜入している…何やら新たな策があるようだが…委細は聞いていない』

 

『フン…相変わらず何を考えているかわからない奴らだ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

「新学期が始まったか…バリアンがいつ来てもおかしくないな…」

 

「はい…心配ですね…」

ハートランド学園の新学期が始まって数日…遊海達は神経を尖らせていた、遊馬達はいつも通りの日常を送っているが…やはり、襲撃があるとわかっていれば…それだけでも気は急いてしまう…。

 

 

「…璃緖のお見舞いに行って来るよ…何か変化があるかもしれないしな」

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

「ん?お前も行きたいのか?まったく、しょうがないなぁ…」

璃緖の見舞いに行こうと立ち上がった遊海の肩にフォウが飛び乗る。

 

「じゃあ…行ってくる!」

 

「はい!気をつけて!」

 

 

 

 

「…やっぱり、そんなに変化はないか…」

 

《…バイタルは安定しています…何かのキッカケがあれば目覚めると思いますが…》

 

時間は夕暮れ…病院にやって来た遊海は目元を包帯で覆われた璃緖の頭を優しく撫でる…医師、そして遊海と翠の懸命な治療によって璃緖の怪我は完治している…だが、トロンによる干渉のせい(本人に確認済み)で彼女は目覚める事はなかった。

だが、トロンの干渉がなくなった今…璃緖はすぐにでも目覚めていいはずなのだ…。

 

 

《フォウ…キュ〜…》

 

「璃緖…情けない父さんでごめんな?お前達の事を考えるあまり…デュエルで負けちまった…まったく…また笑われちゃうな…」

フォウが璃緖に寄り添うなか…遊海は優しく語りかける…。

 

 

 

 

 

ドクン…!

 

 

《マスター…!》

 

「………来たか」

遊海は夕陽の照らす空を睨む…時空の歪む感覚…そして漏れ出す悪意を感じ取ったのだ…!

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「オレは力を手に入れる…!誰よりも強大な力を…!」

そこはハートランドシティのスラムの一角…その放棄された建設現場で数十人の部下を従えた男が威張りちらしているら彼の名は風魔…メタルナイトが抑止力となっているハートランドシティで生き残っている愚連隊のリーダーである。

その彼の前では大金の入ったスーツケースを抱えた部下が跪いている…どうやら遊海が知らぬ間に強盗を成功させたようだった…。

 

「メタルナイトがなんだ…!今に見てろ、もっと手下を増やし…奴をぶっ倒せる力を手に入れてやる…!!」

 

ギィン─!!

 

「っ…な、なんだぁ…!?」

 

「空に…穴が空いた!?」

メタルナイトを倒す算段をする風魔、その視線の先で()()()()()()()()()()…そして…。

 

ギィン…ドオォォン!!

 

 

「な、なんだ!?爆発したぞ!?」

穴が光の爆発を起こす…そして…。

 

 

『…ここが人間界かぁ…?なんだかゴミゴミした世界だなぁ…ま、虫ケラが住むには丁度いいか』

 

現れたのは背中に羽のアクセサリを着けたモヒカンの大男…ついにバリアンが人間界へと足を踏み入れたのだ…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

ビーッ!ビーッ!!

 

 

『くぅ…!?ううぅ…!?』

 

「っ…!?璃緒!!」

遊海がバリアンの侵入を感じ取った瞬間…璃緒が禍々しいオーラを纏い、苦悶の声を漏らす…!

 

《マスター!璃緒のバイタルが…!》

 

「やはり…()()の力が共鳴するか…ナースコールを!!」

苦しむ璃緒を刺激しないように遊海はナースコールを押す、そして…。

 

 

「凌牙!璃緒の容態が急変した!早く病院に来い!!」

いの一番に凌牙へと連絡を飛ばした…。

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「シャーク…!今の感じ…!?」

 

「ああ…なんだか嫌な予感がするぜ…!」

 

「えっ…!?2人とも、どうしたの!?」

 

夕暮れの通学路…遊馬は凌牙と共に嫌な予感を感じ、空を見上げる…2人は一緒に帰っていた訳ではないが話をしていたタイミングで心がザワつくような…嫌な予感を感じたのだ…なお、アストラルはしばらく王の鍵に閉じこもっていて気付いていない…。

 

 

ピリピリ!ピリピリ!!

 

「っ…!?父さん?」

そんな時、凌牙のDゲイザーが着信を知らせる…それは遊海からだった。

 

 

『凌牙!璃緒の容態が急変した!早く病院に来い!!』

 

「なっ!?なんだって!?」

 

「た、大変!!」

 

「シャーク!早く妹のところに!!」

遊海の思わぬ言葉に凌牙達は病院へと急いだ…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

「璃緒!!」

病室に駆け込む凌牙・遊馬・小鳥の3人…彼らが目にしたのは医師にやって処置を受ける璃緒…そしてその様子を険しい眼で見守る遊海の姿だった。

 

 

「父さん…!璃緒は…!」

 

「20分くらい前に容態が急変したんだ…たまたま俺がいたからすぐにナースコールを押した…大丈夫、俺がいる限り…璃緒は大丈夫だ…今は傍にいてやれ」

 

「…ああ」

遊海の言葉を聞いて落ち着きを取り戻した凌牙は璃緒へと寄り添う…その時

 

『あ…ああ…!くる…来るわ……!』

 

「璃緒…!?」

苦しげに呻く璃緒…意識がないはずの彼女が言葉を紡ぐ…。

 

『災いが来る…奴らが…!一番大事なものを、奪いに来る…!!』

 

「っ…!一番大事なものを、奪う…!?」

苦しみに魘されながら予言めいた言葉を口走る璃緒…その言葉に反応したのは遊馬だった。

この日、遊馬は件の『扉』の夢を見た…そこで再び「一番大事なものを失う事になる」と宣告されていたのだ…。

 

 

ピピッ!ピピッ!

 

「っ…?鉄男から…?」

思いつめる遊馬…そこへDゲイザーの着信音が鳴り響く、それはナンバーズクラブの特訓で学校に残っていた鉄男からだった…だが、それは…!

 

 

『フン…貴様が九十九遊馬か?』

 

「っ!?誰だお前!?」

電話をかけたのは鉄男ではない…薄紫の髪の不良が鉄男のDゲイザーを奪い、遊馬へと連絡してきたのだ…!

 

『ぐっ…!遊馬…来るな…!!来るんじゃねぇ!!』

 

「鉄男!!」

不良の声に割り込むように鉄男が叫ぶ…だが、それを押し退け再び不良が遊馬へ語りかける…!

 

 

『お前の全てを奪ってやる…今すぐ学校に来い!…ナンバーズを持ってな…!』

 

「ナンバーズを!?」

不良の要求は「ナンバーズ」を渡す事…不良は下卑た顔で話を続ける。

 

『来なければ…お前のお友達がもっと傷つく事になるぞ?ハハハ…!グハハハハハ!!』

 

「おい!?」

そう言い放つと不良は一方的に電話を切ってしまった…。

 

 

 

「ねぇ…!?何が、何が起きてるの!?」

通話を聞いていた小鳥が遊馬へと問いかける…突然の事で状況を把握できないのだ…。

 

 

「今の奴は…たしか、愚連隊のリーダーの風魔だな…どうやら、何者か…いや、バリアンに操られているらしい…!」

 

「「「バリアン!?」」」

遊海の思わぬ言葉に3人は驚愕の声をあげる…!

 

 

「ああ…さっき、時空の乱れと強い悪意の力を感じた…おそらく、バリアンがフェイカーの時のように風魔を洗脳し…ナンバーズを奪う為に動き始めたんだ」

 

「ナンバーズを…アストラルを狙って…!」

遊海の言葉を聞いた遊馬は王の鍵を握り締める…そして…。

 

 

「小鳥…コレを、持っててくれないか…?」

 

「待って…!皇の鍵を手放したら…ナンバーズが…『希望皇ホープ』が使えなくなっちゃうわ!」

遊馬は王の鍵を小鳥へと託す…その瞳に強い決意を宿して…。

 

 

「遊馬、それは悪手だぞ…バリアンの強さはお前自身が良くわかってるはずだ、バリアンを倒すにはお前とアストラル…2人の力が必要だ、それに…俺が出ればすぐに鉄男達を助けられるぞ?」

 

「父さん…!」

遊海はデュエルディスクを持って遊馬を引き止める…だが…。

 

「遊海…アストラルを守ってやれるのはオレだけなんだ…!それに…鉄男達がやられてるのを黙って見てられねぇ!!」

 

「遊馬!?」

 

「おい!?待ちやがれ遊馬…っ!?」

小鳥に王の鍵を無理矢理託した遊馬は病室から駆け出す、凌牙は慌てて追いかけようとしたが…自身の手を眠っているはずの璃緒が掴んでいたせいで追いかける事ができなかった…。

 

「(アストラル…ごめん…!オレはお前を誰にも渡さねぇ…!必ず守ってみせる…!!)」

この時、遊馬はほんの少し弱気になっていた、『扉』の宣告…璃緒の言葉…バリアンの襲撃…それが続いて起きた事でアストラルを守りきれるのか不安になってしまっていたのだ…。

 

 

 

 

「…まったく…遊馬の無茶癖は相変わらずか…凌牙、もう少し璃緒の近くにいてやれ…もう少しで翠が来る、そうしたら俺達も動くぞ…俺達じゃないとできない事がある」

 

 

「えっ…?」

 

「俺達じゃないと、できない事…!?」

遊馬を見送った遊海は凌牙に向き直る…その様子を見て小鳥と凌牙は戸惑いをみせる。

 

 

「風魔の率いる愚連隊は60人以上のメンバーがいる…用意周到なバリアンの事だ、メンバー達も洗脳しているだろう…下手をすれば風魔と遊馬のデュエルにメンバー達を乱入させる可能性もある…言いたい事はわかるな?」

 

「バリアンめ…!卑怯な事を考えやがる…イラッとくるぜ…!!」

遊海の可能性を聞いた凌牙は拳を握り締める…!

 

 

「遊海さん!お待たせしました!遊馬君をお願いします!!」

 

「翠…急がせてごめんな…行くぞ凌牙!俺は遊馬を信じてる…だからこそ、これ以上はやらせない!」

 

「ああ!」

病室に翠が駆け込んでくる…それと入れ替わるように遊海と凌牙は病室を飛び出した…!

 

 

「遊海さん…シャーク…!遊馬をお願い…!」

 

《フォウ…》

 

「大丈夫よ、小鳥ちゃん!遊海さんも凌牙君も…遊馬君も…きっと無事に帰って来るわ…!」

小鳥は皇の鍵を握り締め、遊馬達の勝利を祈った…。

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

《マスター、バイクに乗った集団がこちらに近付いてきます…!》

 

「りょーかい…!やっぱりここにいて正解だったな…」

凌牙と別れて数分…遊海は鎧を纏い、気配を消した状態でハートランド学園の正門前に陣取っていた…アヤカによるサーチの結果、愚連隊は3つに別れて行動しており…そのうちの1つが早くも学園に近付いていたのだ…!

 

 

「残りの2隊はカイトと凌牙に任せよう…来たな」

 

ブォン!ブオォォン!!

 

遊海は鋭く前を睨む…その目線の先にはバイクやDホイールに乗って学園を目指す一団がいた…!

 

 

 

「悪いが…ここから先は通す訳にはいかないな!!」

 

『なっ…!?メタルナイトだと!?』

声を張り上げるメタルナイトの姿を見た30人ほどの愚連隊達は思わず足を止める…。

 

 

「ここから先には行かせん、大人しく帰るなら痛い目に遭わずに済むぞ?」

 

『舐めるな!我らはバリアンの戦士…お前を倒してナンバーズを奪うのだ!!』

遊海の警告に愚連隊は耳を貸さない…その目は正気を失っている…。

 

 

「まったく…しょうがない…正気に戻ってもらおうか!!」

デュエルディスクを構える遊海…その時!

 

キィィン─!

 

「ん?賢者の鍵が…?」

突然、遊海の首飾りが淡い光を放つ…!

 

 

《主ヨ、我ラノ力ヲ使エ…》

 

「ラビエル…?」

遊海の脳裏に声が響く…それは普段は眠っているラビエルのものだった。

 

 

《ラー、カラ…我ラガ眠ッテイル間ノ事ヲ聞イタ…少シデモ…チカラニナリタイ》

 

「わかった…でも、加減はしてくれよ?」

遊海は賢者の鍵の空間から1つのデッキを掴み取った!

 

 

 

 

『『『「デュエル!!」』』』

 

 

チンピラA LP4000

チンピラB LP4000

チンピラC LP4000

 

遊海LP4000

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『オレは手札の「マシンナーズ・フォートレス」の効果発動!手札の自身と「アーマード・サイバーン」を墓地に送り!墓地から「マシンナーズ・フォートレス」を特殊召喚!』

巨大な電磁砲を持つロボット戦車が現れる! ATK2500

 

 

『オレはカードを伏せてターンエンド!』

 

チンピラA LP4000

マシンナーズフォートレス 伏せ1 手札4

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『ツイてる手札だ!オレは「暗黒界の番兵レンジ」を召喚!』

巨大なオレンジ色の手を持つ暗黒界の門番が現れる ATK100

 

 

「レンジ…」

 

『そしてぇ…!「レンジ」を手札に戻し、手札の「暗黒界の龍神グラファ」を特殊召喚!』

番兵が消え去り、暗黒界に君臨する灰色の龍神が現れる! ATK2700

 

『さらに魔法カード「暗黒界の取引」を発動!お互いに手札を1枚捨て、1枚ドローする!』

 

 

チンピラB捨てたカード

暗黒界の軍神シルバ

 

 

遊海捨てたカード

暗黒の召喚神

 

 

『そして手札から捨てられた「暗黒界の軍神シルバ」の効果発動!自身を特殊召喚!』

暗黒界の銀色の軍神が現れる! ATK2300

 

 

『オレはカードを伏せ、ターンエンド!』

チンピラB LP4000

グラファ シルバ 伏せ1 手札3

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『魔法カード「究極進化薬」を発動!手札の恐竜族モンスター「大くしゃみのカバザウルス」と爬虫類族モンスター「鎧蜥蜴(アーマー・リザード)」を除外!デッキから出やがれ!「超電導恐獣(スーパー・コンダクター・ティラノ)」!』

サイボーグ化された巨大な肉食恐竜が現れる! ATK3300

 

 

『さらに「セイバーザウルス」を召喚!』

角が剣のように鋭くなったトリケラトプスが現れる ATK1900

 

『さらに「超電導恐獣」の効果発動!このターン、攻撃できなくなる代わりにフィールドの「セイバーザウルス」をリリース!そして相手に1000ダメージを与える!喰らえ!コンダクト・サンダー!!』

 

「っぐ…!?(こいつらのダメージも実体化するのかよ…!?)」

セイバーザウルスを捕食した超電導恐獣が咆哮…放たれた電撃が遊海にダメージを与える!

 

遊海LP4000→3000

 

 

『オレはこれでターンエンド!』

チンピラC LP4000

超電導恐獣 手札2

 

 

 

「さぁ、お前達…歯を喰い縛れよ?俺の仕置きは少し痛いぞ!!」

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「永続魔法『七精の開門』を発動!その効果でデッキから『幻魔皇ラビエル─天界蹂躪拳』を手札に加える!そして『混沌の召喚神』を召喚!」

小さな羽を持つ蛇体の悪魔が現れる ATK0

 

『さらに墓地の「暗黒の召喚神」の効果発動!墓地の自身を除外し、デッキから「幻魔皇ラビエル」を手札に加える!そして「混沌の召喚神」の効果発動!自身をリリースする事でこのモンスターを特殊召喚できる!長き眠りから目覚め…我が力となれ!「幻魔皇ラビエル」!!』

 

《オオ…オオオオ!!》

遊海のフィールドに神鳴が落ちる、長き刻を経て…青き幻魔の皇が降臨した…! ATK4000

 

 

 

『こ、攻撃力4000だとぉぉ!?』

 

『聞いてねぇ…メタルナイトがこんなモンスターを使うなんて聞いてねぇぇ!?』

ヒーローの使うモンスターとは正反対の姿を持つラビエルの登場にチンピラ達は後ずさる…!

 

 

「俺はヒーローである前に『決闘者』だからな、そして…見た目でラビエルの事を判断するなよ?お前達より…コイツの方がずっと素直で優しい奴だからな!墓地の『混沌の召喚神』の効果発動!墓地の自身を除外し、デッキからフィールド魔法『失楽園』を手札に加え、発動!!」

周囲の景色が荒れ地フィールドへと塗り替わる!

 

 

「バトルだ!『ラビエル』で『超電導恐獣』を攻撃!」

 

『させるかよぉ!リバース罠「強制脱出装置」を発動!どんな強いモンスターでも攻撃できなきゃ意味ねーんだよぉ!!』

 

「確かにな、でも…甘い!!」

 

《オオオオオ!!》

 

遊海の言葉と共にラビエルが咆哮…チンピラAの発動した罠が砕け散る!!

 

 

『な、なんだとぉ!?』

 

「フィールド魔法『失楽園』の効果で『ラビエル』は相手の効果の対象にならず、効果では破壊されない…さらに手札から『幻魔皇ラビエル─天界蹂躪拳』を墓地に送り効果発動!このターン『ラビエル』の攻撃力は倍となり!相手モンスター全てに攻撃できる!!」

 

『『『なんだとぉぉぉ!?』』』

チンピラ達の悲鳴が重なる…そしてラビエルの拳に青白いエネルギーが集中する!

 

ラビエル ATK4000→8000

 

 

「『ラビエル』で攻撃!天界蹂躪拳!!」

 

『『『ギャアアアア!?』』』

ラビエルの拳が大地を穿つ…そこから放たれた膨大なエネルギーがチンピラ達のモンスターを跡形もなく吹き飛ばした…。

 

 

 

チンピラA

チンピラB LP4000→0

チンピラC

 

遊海WIN!

 

 

 

 

「よし!一丁あがり!さぁ、次の奴かかってこい!!……あれ??」

 

《マスター…その、ラビエルの攻撃の余波で全員気絶してます…》

 

《…ゴメン、ヤリ過ギタ…》

デュエルが決着し辺りを見回す遊海、その周りでは全てのチンピラ達が泡を吹いて気絶している…どうやらラビエルへの恐怖に耐えられなかったようだ…。

 

「…情けねぇなぁ…ネオ童実野のチンピラとかギャングはもう少し骨があったぞ?…まぁいいか、ありがとなラビエル!助かったよ!」

 

《主ノ役ニ立テタナラヨカッタ…マタ、呼ンデクレ…》

遊海に感謝の言葉を掛けられたラビエルは嬉しそうに消えていった…。

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対風魔

 

 

 

 

『ククク…ハハハ…!待ってたぜぇ…貴様が「希望皇ホープ」を使うのを!!』

 

「なんだと…!?」

仲間達を救う為に1人でバリアンの刺客・風魔とのデュエルに挑む遊馬…アストラルとの絆によって「希望皇ホープ」を召喚、風魔のエースモンスター「機装魔人エンジネル」を攻撃し大ダメージを与えたが…風魔は不敵に笑っていた…!

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『見るがいい…!これがバリアンの力だ!!魔法カード「RUM-バリアンズ・フォース」を発動!!』

 

「ランクアップマジックだって…!?」

風魔は額にバリアンの紋章を浮かばせ、異世界の力を発動させる!!

 

『さぁ…こっからが見物だぜ…!』

その様子を眺めながら…バリアンの1人・ギラグは笑みを浮かべた…!

 

 

『このカードは自分のエクシーズモンスターランクアップし、カオス・エクシーズを特殊召喚する!俺はランク3の「機装魔人エンジネル」でオーバーレイ・ネットワークを再構築…カオス・エクシーズ・チェンジ!!』

エンジネルがオーバーレイネットワークの銀河に飛び込み…闇色の爆発が起きる!

 

 

『混沌より生まれしバリアンの力…穢れし世界に今こそ裁きを下せ!!「CX機装魔人エンジェネラル」!!』

 

「カオスエクシーズだって…!?」

風魔の場に現れるたのは黒を基調とした爆撃ロボット、その身から溢れるカオスの力によって光輝いているはずのオーバーレイ・ユニットは赤い結晶のようなカオス・オーバーレイ・ユニットへと変化している…そして「バリアンズ・フォース」は新たな力を発揮する…!

 

 

『これが貴様を地獄に送るバリアンの力…!見るがいい!「バリアンズフォース」のさらなる効果発動!カオスエクシーズを特殊召喚した時!相手のエクシーズモンスターのORUを全て吸収する!カオス・ドレイン!!』

 

「な、なにぃ!?」

エンジェネラルのCORUから放たれた赤雷がホープを撃ち抜く…するとホープのORU2つがエンジェネラルへと吸収されてしまう…!

 

 

「これじゃあ『ホープ』の効果が使えない…!」

ホープの誇る鉄壁の防御はORUがあってこそ…だが、バリアンはさらに牙を剥く…!

 

『まだだ!「バリアンズフォース」によってORUを奪われたモンスターの攻撃力は…奪われたORU1つにつき300ダウンする!』

 

「くっ…!?」

バリアンによって力を奪われたホープにカオスエクシーズが襲いかかる!

 

『バトルだ!「エンジェネラル」で「ホープ」を攻撃!ドゥームズ・エアレイド!!』

 

「だけどナンバーズはナンバーズとのバトルじゃなきゃ破壊されねぇ!!」

 

『フッ…それはどうかなぁ!!』

エンジェネラルから放たれた螺旋の破壊光線…それはホープを貫き、粉砕した!!

 

 

「なっ…!?うわあああああ!!?」

 

「ゆ、遊馬─!?」

 

「ど、どういう事ウラ!?ナンバーズはナンバーズじゃないと破壊できないはずウラ!!」

攻撃で吹き飛ばされる遊馬…そしてデュエルを見守っていたナンバーズクラブの仲間達はホープが破壊された事に驚きを隠せない…!

 

『残念だったなぁ…!「バリアンズフォース」で召喚されたカオスエクシーズは相手の破壊無効効果を消滅させるのさぁ…!』

カイトの「銀河眼の光子龍」はエクシーズモンスター・キラーだった…だが「バリアンズフォース」は対ナンバーズの効果を持つ…ナンバーズ・キラーのカードだったのだ…!

 

 

『ククク…!まだ俺の攻撃は終わっちゃいねぇ…!「エンジェネラル」の効果発動!相手に戦闘ダメージを与えた時!CORUを全て使い、1つにつき500ダメージ…つまり4つで2000のダメージを与える!!カオス・フラッシュ・レイン!!』

 

「ぐっ…!?うわあああああ!!!」

遊馬に襲いかかる光弾の雨…遊馬は為す術なく吹き飛ばされてしまう!

 

 

「くっそぉ…!オレは…オレはアストラルを守るって…決めたんだぁ─!!」

 

 

………

 

 

(まったく…君はどうしてこんな無茶をした…?私達は一心同体ではなかったのか?)

 

「アストラル…!」

デュエル終盤、小鳥によって皇の鍵…アストラルが遊馬のもとに届けられる、言葉を交わす遊馬とアストラル、アストラルを守る為に遊馬は精一杯戦った…そして─

 

(遊馬、私は君を誇りに思う…今の私の体は…本当の友ができた『証』だ…私の為に傷付き、私の為に戦ってくれた証拠だ…!)

 

「えっ…?」

アストラルは遊馬を褒める…今のアストラルの体は遊馬から離れていたにもかかわらず点滅している…それは遊馬とアストラルが魂で繋がっている証拠だった。

 

 

(私の友を傷つける者は…許さない!!行くぞ、遊馬!!まだライフが尽きた訳ではない!)

 

「ヘヘっ…!相変わらず、上から目線かよ…!」

満身創痍の遊馬はアストラルと共に立ち上がる…2人で勝利を掴む為に…!

 

 

 

39

 

 

「バトルだ!『希望皇ホープレイ』で『エンジェネラル』を攻撃!!」

ホープレイを呼び出した遊馬はオーバーレイ・チャージでエンジェネラルを弱体化させ、逆転の攻撃を仕掛ける!!

 

 

『まだだ!罠カード「ワイルド・チャージャー」を発動!ORUのない「エンジェネラル」が攻撃された時!相手の攻撃力分、自身の攻撃力をアップする!!これで終わりだ!!』

 

「それはどうかな!!速攻魔法『ナンバーズ・インパクト』を発動!自分のナンバーズが攻撃力が1000以上高いモンスターとバトルする時!相手の攻撃力を自身の攻撃力に加える!!」

 

『こ、攻撃力7600だとぉぉ!?』

 

「かっとべ!『ホープレイ』!!ホープ剣カオススラッシュ!!」

 

『バカな…ぐわああああ!!?』

 

遊馬とアストラルの友情の一撃…それはバリアンの尖兵を容赦なく打ち砕いた…。

 

 

風魔LP0

 

遊馬&アストラル WIN!

 

 

 

 

「勝った…!遊馬とアストラルが勝った!!」

 

「よっしゃああ!!」

遊馬達の勝利に喜ぶ仲間達…だが、風魔は不敵な笑みを浮かべていた…!

 

 

『フハハ…ハハハヘハ!!忘れてるぜぇ…?俺の部下が…バリアンの軍勢がこの場所に向かってるって事を「悪いな、全員倒したよ」へっ?』

 

バッチーン!!

 

 

『ぐへっ!?』

 

「メタルナイト!?」

笑う風魔の前に現れたメタルナイト…遊海は強力なデコピンで風魔の額の紋章を砕きつつ、呆気なく意識を刈り取った。

 

 

「よく頑張ったな、遊馬…安心しろ愚連隊の奴らは俺に凌牙、そして…」

 

「オレが蹴散らしてやったぞ」

 

「カイト!シャーク!!」

遊海に少し遅れてカイトと凌牙がやってくる…それぞれ20人近くを相手に無双してきたのだ。

 

 

 

『チッ…まさか、あれだけの状況をひっくり返すとはな…だが、お楽しみはこれからだぜ…九十九遊馬、天城カイト、神代凌牙…そして…鋼の決闘者…!』

デュエルを見終え、風魔から回収した『バリアンズフォース』を手にしたギラグはその場から撤退した…。

 

 

(…どうやら、相手の男はフェイカーのようにバリアンに操られていたようだな)

 

「バリアンめ…!」

バリアンの卑怯な作戦に拳を握り締める遊馬…そこに遊海達が歩み寄る。

 

 

「…どうやら、本格的にバリアン世界の刺客達が動き出したみたいだな…」

 

「戦いはこれからだ…!」

 

「ああ!どんな奴が来たってオレ達が力を合わせりゃ絶対に負けねえ…!束になって掛かってこいってんだ…!かっとビングだ!オレ!!」

 

 

遊馬とアストラル、そしてカイトと凌牙…人間界に手を伸ばし始めたバリアンとの戦いがついに始まる…!

 

 

 

「とりあえず…遊馬!かっとビングする前にさっさと治療するぞ〜!」

 

「ととと…!?出鼻をくじかないでくれよ白野〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あれがターゲット…ですか?』

 

【そうだ…オレは九十九遊馬を狙う、お前はひたすらに()の邪魔をしろ…オレ達の計画を邪魔されないようになぁ…!頼んだぜぇ?アゴール】

 

『ハッ…!全ては貴方の為に…ベクター様…』



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お人好しの決闘者〜暗雲〜

『「デュエル!!」』

 

 

遊海LP4000

青年LP4000

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「儀式魔法『影霊衣の降魔鏡』を発動!手札のレベル5『影霊衣の戦士エグザ』をリリースして儀式召喚!現れろ!正義を貫く白き爪!『カタストルの影霊衣』!!」

巨大な爪型の機械を装備した龍人戦士が現れる! ATK2200

 

「リリースされた『エグザ』の効果発動!デッキから『ディサイシブの影霊衣』を手札に加える!ターンエンド!」

遊海LP4000

カタストルの影霊衣 手札4

 

 

 

『オレのタァン!ドロー!』

『フィールド魔法「化合電界(スパーク・フィールド)」を発動!』

周囲が火花が散るエネルギーシールドに覆われる!

 

『さらに魔法カード「二重召喚(デュアルサモン)」を発動!これによりオレは2回の通常召喚ができる!「化合獣カーボン・クラブ」を召喚!』

体に「C(炭素)」の記号を刻んだダイヤの鋏を持つ蟹が現れる ATK700

 

『さらに「化合獣オキシン・オックス」を召喚!』

額に「O(酸素)」の記号を刻んだ角が燃える牛が現れる ATK0

 

 

『そして「化合電界」の効果発動!オレは通常召喚に加えてデュアルモンスターを召喚できる!オレはフィールドの「カーボン・クラブ」をデュアル召喚!それにより効果発動!デッキの「進化合獣ヒュードラゴン」を墓地に送り、デッキから「進化合獣ダイオーキシン」を手札に加える!さらに魔法カード「スペシャル・デュアル・サモン」を発動!「オキシンオックス」を再度召喚状態にして効果発動!手札の「進化合獣ダイオーキシン」を特殊召喚!!』

胸元に「CO2(二酸化炭素)」の記号を刻んだ蟹の鋏と牛の身体を持つ怪物が現れる ATK2800

 

 

『「オキシンオックス」のさらなる効果!オレのフィールドのデュアルモンスターのレベルはエンドフェイズまで「ダイオーキシン」と同じレベル8となる!!』

 

オキシンオックス☆2→8

 

カーボンクラブ☆2→8

 

 

『オレはレベル8となった「オキシンオックス」と「カーボンクラブ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!現れろ!「超化合獣メタン・ハイド」!!』

銀河から現れるのは身体に「CH4O(メタノール)」の記号を刻んだキメラ…牛と悪魔の角に鷲の翼、ドラゴンの剛力を持つ怪物だった…! ATK3000

 

 

『「メタン・ハイド」の効果発動!墓地の「進化合獣ヒュードラゴン」を特殊召喚!』

身体に「H2O()」の記号を刻んだ4つの頭を持つドラゴンが現れる DEF2800

 

 

『「メタンハイド」がフィールドに存在する限り、お前はオレのデュアルモンスターを攻撃対象にできず、効果の対象にできない!バトルだ!「メタンハイド」で「カタストルの影霊衣」を攻撃!!メタノール・ブラスト!!』

 

「無駄だ!『カタストルの影霊衣』の効果発動!!俺の『影霊衣』モンスターがエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターとバトルする時!そのモンスターを破壊する!エクストラ・ブレイク!!」

 

『な、なんだと─!?』

青き龍人はメタン・ハイドの青白い火炎を避けて跳躍…正義の機械の力を宿した爪でキメラを両断した!

 

 

『ぐっ…!?だが、攻撃力は「ダイオーキシン」が上だ!!捻り潰せ!!』

 

「手札から儀式モンスター『ディサイシブの影霊衣』を墓地に送り効果発動!エンドフェイズまで『カタストルの影霊衣』の攻撃力は1000アップする!吹きとばせ!カウンター・バースト!!」

 

『なっ!?ぐあああああ!?』

突進してきたダイオーキシンは巨大な大砲の幻影を背負った龍人によって粉砕された!

 

 

カタストルATK2200→3200

 

青年LP4000→3600

 

 

『ぐっ…オレはこれでターンエンド…!』

青年LP3600

ヒュードラゴン 伏せ1 手札1

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「手札の儀式モンスター『クラウソラスの影霊衣』の効果発動!このカードを墓地に送り!デッキから儀式魔法『影霊衣の反魂術』を手札に加え、発動!手札の『影霊衣の術士シュリット』をリリース!現れろ!儀式召喚!世界を氷結させし第3の龍の魂!『トリシューラの影霊衣』!」

氷龍の鎧を纏った戦士が現れる! ATK2700

 

 

「『トリシューラ』の効果発動!お前のフィールドの『ヒュードラゴン』墓地の『メタン・ハイド』そして手札を除外する!絶対氷結!!」

 

『な、なにぃぃ!?』

青年のフィールドが氷結…フィールドがガラ空きになる!

 

 

「バトル!『トリシューラ』と『カタストル』でダイレクトアタック!氷結乱舞!!」

 

『うわあああ!!?』

2体の影霊衣の連撃が青年のライフを削りきった!

 

 

青年LP0

 

 

遊海WIN!

 

 

 

 

『うぅ…僕はいったい…?』

 

「正気に戻ったらしいな…これで()()()だ…?」

 

《マスター!ベイエリアでもデュエリストの暴走が…!》

 

「っ…!すぐ向かう…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

女学生LP4000

遊海LP4000

 

 

 

『アタシのターン!ドロー!』

『永続魔法「神の居城─ヴァルハラ」を発動!そして手札から天使族モンスター「天空騎士パーシアス」を特殊召喚!』

白い羽があしらわれた鎧を纏う騎士が現れる! ATK1900

 

『そして「パーシアス」をリリースする事で「天空勇士ネオパーシアス」を特殊召喚!!』

パーシアスが神聖な光を纏い、天空の勇士に覚醒する! ATK2300

 

『そしてフィールド魔法「天空の聖域」を発動!』

女学生の背後に神殿が現れる。

 

『これで私は天使族モンスターの戦闘でダメージを受けなくなる…!カードを伏せてターンエンド!』

女学生LP4000

ネオパーシアス  ヴァルハラ 伏せ1 手札1

 

 

 

「俺のターン、ドロー!!」

「魔法カード『隣の芝刈り』発動!デッキ差は20枚!俺はデッキトップから20枚を墓地に送る!」

 

墓地送り

 

トワイライト・イレイザー

ミネルバ×2

ライトロードの神域

閃光のイリュージョン

ヴォルフ

黄昏ルミナス

ソーラーエクスチェンジ×2

オルクス

エイリン

闇の進軍×2

ルミナス

隣の芝刈り

光の援軍

ジェイン

戒めの龍

黄昏ライラ

グラゴニス

 

 

「墓地に送られた『ライトロード・メイデン ミネルバ』2体の効果発動!さらにデッキトップ2体を墓地へ!さらに自身の効果により、デッキから墓地へ送られた『ライトロード・ビースト ヴォルフ』を特殊召喚!」

白き獣人が現れる ATK2100

 

墓地送り

シラユキ

黄昏の双龍

 

 

「ライトロードモンスターの効果で墓地に送られた魔法カード『黄昏の双龍(トワイライト・ツイン・ドラグーン)』の効果発動!墓地の『戒めの龍』を手札に加え、デッキトップ4枚を除外する!」

 

除外されたカード

ライニャン

黄昏ルミナス

ジェニス

ライデン

 

 

「そして『トワイライトロード・ファイター ライコウ』を召喚!」

黒き衣を纏う白犬が現れる ATK200

 

 

「『黄昏ライコウ』の効果発動!墓地の『黄昏ライラ』を除外しする事で『天空の聖域』を破壊!」

 

『させないわ!カウンター罠発動!「神罰」!自分フィールドに「天空の聖域」が存在する時!モンスター・魔法・罠の効果を無効にして破壊する!』

ライコウが神罰の雷で消滅する!

 

「これでいい…!手札の『裁きの龍(ジャッジメント・ドラグーン)』の効果発動!墓地にライトロードモンスターが4種類以上存在する時!このモンスターは特殊召喚できる!」

ライトロードの最終兵器たる純白のドラゴンが現れる! ATK3000

 

『攻撃力3000ですって!?』

 

「『裁きの龍』効果発動!ライフを1000払い!フィールド上の自身以外のカードを全て破壊する!ジャッジメント・レイ!!」

フィールドを裁きの光が蹂躪する!

 

遊海LP4000→3000

 

『そして!除外されたライトロードモンスターが4種類以上の時!「戒めの龍(パニッシュメント・ドラグーン)」は特殊召喚できる!』

裁きの龍に鏡写しの漆黒の龍が現れる! ATK3000

 

 

「バトルだ!『裁きの龍』と『戒めの龍』でダイレクトアタック!神滅のカオス・バースト」

 

『きゃあああ─!?』

光と闇の螺旋がデュエルの決着をつけた…。

 

女学生LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

《マスター!!次はショッピングモールです!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

遊海LP4000

チンピラLP4000

 

 

 

「俺の、ターン…ドロー…!」

「魔法カード、『真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)』、発動…!手札の『真紅眼の黒竜』と『メテオ・ドラゴン』を融合…『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』を融合召喚!」

凄まじい熱を纏う隕石竜が現れる ATK3500

 

 

「『流星竜』の効果発動…!デッキの『真紅眼の黒炎竜』を墓地に送り、攻撃力の半分…1200ダメージを与える!」

 

『ぐあっ…!?』

 

チンピラLP4000→2800

 

「そして魔法カード『黒炎弾』を発動…!『真紅眼融合』で融合したモンスターは『真紅眼の黒竜』として扱う…!3500ダメージ─!!」

 

『うわあああ…!!』

 

 

チンピラLP0

 

遊海WIN…

 

 

 

 

 

 

「もう…いい加減に、してくれ…」

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

「遊海さん…大丈夫ですか…?」

 

「なん、とか……」

夕暮れの白波家…ソファの上では額に氷嚢を乗せた遊海が倒れ込んでいる、目元には隈が浮かび…疲れきっていた…。

 

 

《…ここ数日の事件…『デュエリストの暴走』事件の発生数は異常です、マスターに疲れが溜まってしまうのも無理ないかと…》

 

「くそ…バリアンの…仕業とは、断定できないんだよなぁ…」

 

風魔との戦いから数日、ハートランドシティではデュエリストの暴走事件が相次いでいた…原因は()()、普通に暮らしていたデュエリスト達が突然変貌し、周囲の人間に見境なくデュエルを挑んだり…元々素行の悪いデュエリストが犯罪に手を出してしまう…しかも、当人には暴れていた時の記憶が残っていないのだ…。

 

 

「今日だけでも3件…この3日間で10件以上…バリアンの仕業ではないんですか?」

 

「…暴れてたデュエリスト達は『バリアンズ・フォース』を使ってこなかった…だから、バリアンの仕業とは決めつけられないんだ…」

バリアン達は基本的に「バリアンズ・フォース」を介して相手を洗脳し遊馬達にけしかけるのが基本…だが遊海の相手をした者達からはバリアンの力を感じなかったのだ。

 

 

《キュウ、フォーウ…》

 

「ありがとう、フォウ…しばらくモフらせ、て…スゥ…」

疲れがピークに達していたのか…遊海は胸元にやってきたフォウを撫でながら眠りに落ちてしまった…。

 

 

「…なんだろう…まるで、誰かが遊海さんに嫌がらせをしてるみたい…犯人の目的は何なの…?」

眠ってしまった遊海に毛布を掛けながら…翠はそんな事を思った…。

 

 

 

 

 

 

『…お前の依頼通り、世界中の犯罪記録や要注意人物を調べたが…今の世界には相手を操る程強い力を持つ者はいないな…それこそMr.ハートランドのような小物しかおらん』

 

「そうか…ありがとう瀬人…」

翌日、遊海は瀬人と連絡を取り合っていた…KC社とI2社の情報網を使い、怪しい人物を洗い出してもらっていたのだ…。

 

 

『人を操るといえば…過去では「千年杖」を持ったマリクやカリスマと陰謀で人を従えたダーツ…破滅の光に飲まれた斎王琢磨…あとは人の心の闇に付け込むダークネスのような者が思い浮かぶが…それらとは違うのか?』

 

「…しいて言うなら…俺の戦った奴らは精霊の力やサイコパワーを使う素質がある者が多かったな…ダメージも実体化してたし…」

 

『フム…サイコパワーといえば…やたらとお前に執着していた者がいなかったか?』

 

「…ディヴァインか…だが、奴は…何十年も前に死んでる、それにアルカディア・ムーブメントやリバース・オブ・アルカディアの構成員達もしっかり改心させたからな…新たな『悪』が生まれたのか…?」

瀬人と共に原因を話し合う遊海…だが、答えは出なかった…。

 

 

『遊海、だいぶ消耗しているようだが…無理はするな、こちらからハートランド警察にも警戒するように伝える、少し休め…』

 

「ありがとう、瀬人…無理はしないようにするよ…」

 

 

 

《遊海、瀬人との話し合いは終わったのか?》

 

「ああ…答えは出なかったけどな」

自室からリビングへと降りてきた遊海に日光浴をしていたメガロックが声をかける。

 

 

《今日は少し休むといい…大丈夫だ、お前が全てを背負う必要はなかろう?》

 

「…そうだな…少し、休むよ…瀬人にも同じ事を言われたしな…アヤカ、何かあったら…起こしてくれ…」

 

 

 

《マスター…》

 

《アヤカよ…遊海は大丈夫なのか?昨日も話していたがまるで遊海に対する嫌がらせのようではないか…》

 

《…たしかにそうですね…しかし、バリアンが犯人ではないというなら…いったい誰がこんな事を…》

ソファに凭れて眠ってしまった遊海の傍で精霊達は話し合う…。

 

 

《…やはり、バリアンの仕業なのかもしれませんね…》

 

《フレア、それは低い可能性です…現在人間界にいるのはハートランド学園に潜入しているギラグと…ベクターだけのはず、監視を続けているトフェニからの報告でも彼らの大きな動きは確認できていませんから…》

フレアの指摘をアヤカは否定する。

 

《ですが…遊海が存在する事による「イレギュラー」の可能性もあるんじゃないですか?私達の知らないうちに他のバリアンが潜入している…とか?》

 

《イレギュラーなバリアン…マスターの知識ではバリアン七皇や四悪人以外は戦士に成り得る者はいない…との事ですが…》

 

《我らが細かい事を考えても仕方あるまい…我らができるのは遊海と翠を守り、共に戦う事だ…!バリアンや悪人などに負けてなるものか!》

 

《それもそうですね…!とにかく警戒を続けましょう!》

精霊達は結束を強める…遊海にこれ以上の無理をさせない為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…?今、何時だ…?」

 

「おはようございます!遊海さん…寝るならちゃんとベッドで寝てくださいね?」

 

「翠…ああ、ごめん…ついウトウトしちゃったよ…」

 

《フォウ…フォーウ!!》

遊海が目を覚ますと時計は昼過ぎを指していた…翠は疲れた様子の遊海を見て苦笑し、フォウは膝の上で丸くなっていた。

 

 

《マスター、マスターが寝ている間に3件の事件が発生しましたが…全て解決しています、安心してください》

 

「そうか…ハートランドの警察もやればできるじゃないか…安心した…」

アヤカからの報告を聞いて遊海は胸を撫で下ろしたが…。

 

 

 

《フォ…!?クルルル…!!》

 

「ん?どうした?フォ……この気配は」

突然、フォウが玄関の方向を睨みながら唸り始める、その様子に怪訝な顔をした遊海だったが…すぐにその意味を理解した、ほんの僅かに漏れ出る「悪意」を感じとったのだ…!

 

 

ピンポーン…

 

 

「…遊海さん」

 

「いつも通りにしていればいい…みんなは一度姿を隠しておいてくれ…俺が出る」

来客を知らせるチャイム…遊海は全員に指示を出すと玄関へと向かった…。

 

 

「おう!よく来たな遊馬、小鳥ちゃん…それから…君は初めてかな?」

 

「おっす!白野!新しい仲間を連れて来たんだ!」

 

『こ、こんにちは!真月零と申します!遊馬クンのデュエルの先生に会えて光栄です!!』

その玄関には遊馬と小鳥…そして、人の良い笑顔で逆立ったオレンジ色の髪を持つ少年…真月零の姿があった…。

 

 

 

「…でさぁ!真月が応援してくれたからバリアンに操られた片桐プロを倒せたんだ!」

 

「なるほどな…学園にバリアンが入り込んでいたのか…」

おやつのプリンを食べながら遊馬は真月との出会いとバリアンとの戦いについて語る…その話を聞きながらも遊海は真月への警戒を緩めなかった…。

 

真月零…遊馬達の通うハートランド学園への転入生、性格は明るく調子のいい性格だが…「よかれと思って」と予期しない行動を取る天然さもある…。

…だが、それは偽りの姿…隠された本性は…。 

 

 

 

『えっと…白野さん!先ほどから抱っこしているのは…イヌ…ネコ??』

 

「ああ…フォウっていうんだ!モフモフで可愛いウチのマスコットだよ…ほら、挨拶しな!」

 

《ウヴゥ〜…!(特別意訳:遊海…!コイツはダメだ!!早く、早くやっつけないと…!!)》

 

「あれ〜?どうしたんだよフォウ?そんなに真月に唸って…?」

フォウは遊海の膝の上で真月を睨みながら威嚇し続けている…。

 

 

「フォウくん!そんな怖い顔しなーいの!おいで!」

 

《…フォウ、フォーウ(小鳥…コイツは信用しちゃダメだからね…)》

小鳥に呼び寄せられたフォウは少し不服そうな顔をしてから小鳥の膝に飛び乗った。

 

『うわ〜!本当にモコモコだ!少し撫でさ《ギャウ!!》うわわ!?』

 

「フォウくん!?今日は本当にどうしたの…?」

真月はフォウの背中を撫でようと手を伸ばしたが…フォウに完全に噛みつかれる勢いで牙を剥かれ慌てて手を引っ込めた…。

 

(…フォウが真月を嫌う…か…)

そんな様子をアストラルは怪訝な様子で見つめていた…。

 

 

 

 

「じゃあ遊馬、何か困った事があったらすぐに連絡を寄越すんだぞ?」

 

「おう!頼りにしてるぜ!先生!!」

 

『プリンおいしかったです!()()()()()!』

その後、他愛もない話をした遊馬達は帰路についた、遊海と翠はその背中を険しい表情で見送ったのだった…。

 

 

 

 

 

「父さ……どうしたんだよ父さん、そんな怖い顔して…?」

 

「凌牙…いや、なんでもないさ…今日は一緒に食べていけ…」

 

「お、おう…(なんだろう…なんだか疲れてるな、父さん…後で肩揉んでやるか…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【チッ、油断も隙もあったもんじゃねぇ…オレの正体もバレたか…?…まあいい、伝説のデュエリストだかなんだか知らねぇが…オレの敵じゃねぇ…おい、そのまま適当に人間共を使って撹乱を続けろ…奴を学園に近づけさせるな】

 

『ええ、ベクター様…!このアゴール、与えられた仕事は必ず遂行します』

 

【おう、頼んだぜぇ…!ハハハ…ハハハハハ…!!】




〜おまけ〜


「父さん、久しぶりに肩揉んでやるよ」

「おっ…ありがとう凌牙、終わったらお小遣いあげようか?」

「そんなにガキじゃねぇよ…よし…っ!?(か、かったい!!親指がビクとも動かねぇ!?どんだけ疲れが溜まってんだよぉぉ─!?)」



凌牙が両親指を突き指し、遊海に回復魔法をかけてもらうまであと1分…


《フォウ、フォーウ!(下手に肩揉みをすると指を痛めたり、逆に肩コリが悪化する事があるから気をつけてね!)》


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眠り姫の目覚め〜家族の絆〜

こんにちは!S,Kです!

今回からついにあのキャラが登場!

だが…その前に暗雲が立ち込める…!


それでは最新話をどうぞ!


「こんにちは!神代凌牙くんに…妹の璃緒ちゃんだね?」

 

『…だれだよ、アンタ』

 

「俺は岸波白野、よかったら…うちの子になってくれないか?」

 

『…凌牙…』

 

『…璃緒を泣かせたら、許さないからな…!』

 

「ああ、大丈夫!君達は…俺が守る!」

 

 

 

 

………

 

 

 

《フォウ!フォーウ!》

 

『ね、猫がいるなんて聞いてない〜!』

 

「大丈夫よ!フォウくんは賢い子だから…ほら、優しく撫でてあげて?」

 

『う…いいこ、いいこ…!』

 

《キュ…フォウ〜ン…》

 

『とけたおもちみたいになった…』

 

『…かわいい…!』

 

 

 

 

………

 

 

 

「璃緒!頑張れー!!」

 

『やった!かけっこ1番よ!!』

 

『おれも負けないぞ!!』

 

「凌牙君!頑張って!!」

 

《フォウ!フォーウ!》

 

 

………

 

 

 

『『…誕生日おめでとう!()()()!!』』

 

「えっ…?凌牙、璃緒…!今…俺のこと…!」

 

『きっと…天国の父さんと母さんも許してくれると思うんだ…俺達のワガママで名字はそのままだけど…白野さんも翠さんも…俺達の大切な父さんと母さんだから…!』

 

「ありがとう…ありがとうな…!凌牙…璃緒…!!」

 

『泣かないでくれよ父さん…はい!誕生日プレゼント!』

 

『私達2人で選んだのよ!』

 

「ありがとう…!大切にするよ…!」

 

 

 

………

 

 

 

「璃緒…!しっかりしろ!大丈夫…!すぐ…すぐに俺が治してやるからな!!」

 

『父さん…わたしの、事は…いいから…凌牙を…凌牙がデュエルに…勝てる、ように…!』

 

「璃緒…!ごめん…ごめんな…!!俺のせいだ…俺の…!許さない…許さないぞ…バイロン─!!!」

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

「─さん…!父さん!おーい!こんなところで寝てたら風邪ひくぞ!」

 

「ん…んん…?凌牙…今、何時だ…?」

 

「朝の8時だよ…まったく、なんで床で熟睡してんだよ…?」

 

「いやぁ…昨日は色々事件が多くてな…」

とある日、リビングの床で眠っていた遊海は凌牙に揺さぶり起こされた…。

 

 

「事件って…例のデュエリストが暴れる事件か?」

 

「ああ…昨日は4件…それに火事と銀行強盗…あとひったくりもあったからな…イテテ…寝違えた…」

 

「…無理しないでくれよ…?というか…ハートランドって意外と治安悪いんだな…」

 

「いやいや…昔のネオ童実野シティよりは数倍マシさ…」

 

「…どんな魔境なんだよ、デュエルの聖地…やべっ!遅刻だ!」

時計を確認した凌牙は慌てて玄関へと走り出す…。

 

 

「凌牙!」

 

「っ?なんだよ?父さん」

 

「気をつけて行って来い!」

 

「…ああ!いってきます!!」

遊海の見送りを受けた凌牙は笑顔で学校へと向かった…。

 

 

 

「…凌牙も、大きくなったな……でも、()()()()…か…」

 

《ユウミ…貴方の選んだ道は、きっと…きっと間違いではありませんよ…》

凌牙の背中を見送った遊海は…寂しげな表情で呟いた…。

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

キーンコーンカーンコーン…

 

「なぁ!これから白野の家に行かねぇか?バリアンの奴らの事もあるし、鍛えてもらおうぜ!」

 

「それはいい考えですが…白野さんも忙しいのでは?とどのつまり…最近はヒーローとしての活躍で忙しいみたいですし…」

 

「最近はハートランドも物騒になったウラ…」

同じ日の放課後…ナンバーズ・クラブのメンバー達はいつも通り談笑しながら下校しようとしていた…そんな時、遊馬に声をかける者がいた…。

 

 

『遊馬君!九十九遊馬君!ちょっといいかな!』

 

「えっ?オレ?アンタは…?」

 

『お初にお目にかかります、私は愛と冒険の漫画研究部・部長の有賀千太郎(アリガ チタロウ)と申します!』

 

「漫研…?」

 

「あっ…確か部員が1人しかいない…」

遊馬に声をかけたのは赤いポニーテールヘアにベレー帽を被った少年・有賀だった、彼はスケッチブックを手に遊馬へと近付いてくる…。

 

 

『実はお願いがありまして…九十九遊馬君!君に我が漫研の新作ヒーロー漫画の主人公のモデルになってほしいのです!』

 

「オレをモデルに…??」

 

「すごいじゃないですか!遊馬クン!」

有賀の思わぬ言葉に遊馬は戸惑うが…真月は目を輝かせる。

 

『WDCの覇者…男の中の男!君の他にヒーローのモデルはいないのです!』

 

「おおっ!?なんだかカッケェ!!」

有賀は遊馬をモデルにしたアメコミ風ヒーローのスケッチをみせる…それはなかなかの画力で描かれた物だった…。

 

 

『それでヒーローにピンチは付きもの…そこで参考までに遊馬君の弱点をお聞きしたいのですが…?』

 

「オレの弱点…?う〜ん………ない!そんなモン全然ないぜ!!」

 

「「「ああ…(呆)」」」

 

『それは…頼もしいですね…(汗)』

遊馬はまっすぐ弱点はないと答え、その様子を見て仲間達も有賀も呆れている…。

だが、実際のところ遊馬に弱点と言えるものは少ないのだから言い切るのも無理もないだろう…。

 

 

『ん…?彼は!ちょっと待って…凌牙君!神代凌牙君!!』

 

「あ…?」

次に凌牙の姿を見つけた有賀は凌牙へと駆け寄る…。

 

『漫研の有賀といいます!実は凌牙君をモデルにしたキャラも考えてあるんですよ!ホラ!!会心のデザインでしょう!』

有賀は凌牙をモデルにしたスケッチを見せる…それは凌牙をモデルにした悪魔の姿をしたダークヒーロー風のスケッチだった…。

 

 

「…俺の趣味じゃねぇな、描くんだったら…鋼の騎士みたいにもう少しスタイリッシュに描くんだな」

 

『…これは手厳しい』

スケッチを見た凌牙は容赦なくダメ出しする…アメコミの絵は人を選ぶから仕方ないだろう…。

 

 

「俺は行くところがあるんだ、どいてくれ」

 

『そう言わずに…!もっと意見を聞かせてくださいよ!もっと良い漫画を描きたいんです!!』  

 

「…しつこい!!」

 

『うわわっ!』

 

カラン!

 

凌牙はしつこく付き纏う有賀を払い除ける、その拍子に有賀は尻もちをつき、凌牙の右手の小指に着けていた指輪が地面に落ちた…。

 

 

『…指輪?』

 

「触んな!…自分で拾う…」

指輪に触ろうとした有賀へ怒鳴った凌牙は指輪を拾って踵を返した…。

 

 

「おい!大丈夫かよ?スケッチブック落ちたぜ」

 

『ああ、ありがとう!このスケッチブックは僕の宝物…命より大切なアイデアやスケッチが全て詰まってるんだ…!』

遊馬にスケッチブックを手渡された有賀は立ち上がる…

 

 

「へぇ…あっ!それじゃあオレが主人公の漫画!楽しみにしてるぜ!!お〜い!シャーク!待てよ〜!」

有賀の話を聞いた遊馬は凌牙を追いかけていった。

 

 

『…神代…凌牙…』

 

…怪しげな表情をした有賀に気付かないまま…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「璃緒…お前は、いつになったら目覚めるんだ…?」

璃緒の病室…そこで凌牙は璃緒へと語りかける、その手には銀色の指輪が握られていた。

 

その指輪は神代兄妹が本当の両親と暮らしていた時にハートランド遊園地を訪れた際に璃緒が買ったお揃いの指輪…幼い凌牙は「男が指輪なんてしてられるか!」と言って璃緒を怒らせてしまったが、今の凌牙はお守りとして大切に身に着けていた…。

 

 

 

「璃緒、父さんも母さんも…もちろん俺も…信じてるからな…お前が目覚めるのを…ずっと…!」

凌牙は手にしていた指輪を璃緒の右手の小指に優しく着ける。

指輪は着ける指によって意味が変わる、右手の小指は「自分らしさを見せる」そして「お守り」…少しでも早く璃緒が目覚めるようにという願いを込めたものだった…。

 

「また、明日も来るからな…」

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

「ふぅ…今日だけで、6件か…さっきの奴は、少し強かったな…」

 

《マスター、だいぶ疲れが溜まっているようです…今日は戻りましょう…》

 

「ああ…ちょっと、限界だ…」

ハートランドシティのとあるビルの上…疲弊した遊海は座りこんでいた…バーンデッキ使いとの戦いで鋼の鎧はボロボロになっている…。

 

 

「くそ…犯人は、誰なんだ…!やっぱりバリアンの仕業か…?」

 

《…バリアンの人間体は普通のデュエリストと見分けがつきません…本当にイレギュラーが起きているのかもしれませんね…》

初めてデュエリストの暴走事件が起きてからしばらくが経ったが…遊海達は犯人を突き止める事ができていなかった、Dr.フェイカーにも依頼し防犯カメラやオボットによる捜索も行なっているが…それでも1日に数件ペースで事件が起きているのだ…。

 

 

「…とりあえず、休める時に休もう…帰ろう、アヤカ…っ…」

 

《マスター…》

ふらつく足取りで立ち上がる遊海…その時だった。

 

 

ピリリ!ピリリ!

 

「凌牙から…?もしもし、どうした?」

 

『父さん!大変だ!璃緒が…璃緒が病室からいなくなった!!!』

 

「なにっ!?(しまった…今日だったのか!!)」

凌牙からの緊急連絡に遊海は急いで飛び出した…。

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「遊馬クン!お見舞いはこれくらいあれば足りますかね?」

 

「もう…シャークの妹さんは眠ったままの状態なのよ?お菓子も果物も食べられないわ…」

 

「大丈夫!オレが全部食うから問題ないぜ!」

 

「「……(呆れてものも言えない顔)」」

遊馬・小鳥・真月の3人は放課後、璃緒のお見舞いの為に病院へと向かっていた…真月の手にはお見舞いのお菓子をたくさん詰めた袋があるが…恐らくほとんどは遊馬のおやつとなるだろう…。

 

 

「あっ!お〜い!シャーク!妹のお見舞いに来たぜ〜!」

しばらく歩いて病院の前まで来た遊馬達…その時、血相を変えた凌牙が病院から飛び出して来た!

 

 

「璃緒が…璃緒が病室から消えた…!!」

 

「「「なんだって!?」」」

 

普段の冷静さを失った凌牙を見た遊馬達は驚愕の声をあげる!

 

 

「は、白野さん達に連絡は!?」

 

「もう連絡してある!璃緒、いったい何処に行ったんだ!?」

半ばパニックになりかけている凌牙…そこへ人影が現れる…!

 

 

 

『おやおや…!皆さんお揃いで…!』

 

「「っ…!?」」

  

「テメェ…昨日の漫画野郎…!」

声をかけて来たの有賀だった…だが、その表情は不敵な笑みを浮かべている。

 

 

『凌牙君、もしかして…妹さんをお探しかな?』

 

「っ…!何故テメェが璃緒の事を…!まさか、貴様…璃緒に何しやがった!!」

 

『ククク…妹さんの居場所が知りたいなら教えてもいいですが…その代わり、私とデュエルしてもらいましょうか…!』

 

「デュエルだと…?」

 

「有賀…お前、ふざけてんじゃねぇぞ!!」

妖しく目を輝かせる有賀のデュエルの申し込みに凌牙と遊馬は怒りを露わにする…!

 

 

(遊馬、気をつけろ…彼から異様な『気』を感じる…!)

 

「えっ…!」

有賀の様子を見て異様な気配を感じ取るアストラル…そして有賀はなおも話を続ける…!

 

 

『さぁ…どうします?凌牙君…!』

 

「面白い…!そのデュエル、受けてやるぜ!!」

璃緒を救う為…凌牙は病院の屋上に舞台を移し、有賀との決闘を始める!!

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 凌牙対有賀

 

 

 

 

 

「テメェは…絶対に許さねぇ!!出やがれ!『シャークラーケン』!!」

先攻を取った凌牙は序盤から攻撃力2400を誇るシャークラーケンを召喚…さらにカードを伏せ、万全の態勢で有賀を迎え打つ…!

 

 

 

『ククク…!私はフィールド魔法「コミック・フィールド」を発動!このフィールドは私の描いた漫画の世界…全ては私の作った()()()()()で決まるのです!!…すなわち!私の生み出したヒーローこそが愛と誠と正義のヒーローとなるのだ!!』

周囲の景色が漫画調に描かれた夕暮れの荒野、そして佇む城へと塗り替わる!

 

 

『さぁ…!ヒール・ザ・シャーク!デュエルは貴様の敗北に向かって突き進むのだ!!現れろ!「湖の騎士ランスロット」!さらに魔法カード発動!「剣の誓い」!手札から現れろ!「悲恋の騎士トリスタン」!!』

 

「チッ…円卓の騎士がモチーフのデッキか…!」

有賀のフィールドに現れるのは紫の鎧の騎士と羽の飾りを着けた白い鎧の騎士…そのレベルは共に4…!

 

 

『私は「トリスタン」と「ランスロット」の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ!「CH(コミック・ヒーロー)キング・アーサー」!!』

有賀の場に巨大な剣を持ち、長い金髪を靡かせる鎧の騎士王が現れる!

 

 

『ORUとなった「ランスロット」の効果発動!相手フィールドのモンスターの攻撃力を800下げる!「シャークラーケン」を攻撃!フラッシュ・ソード!!』

シャークラーケンを弱体化させた有賀は凌牙に攻撃を仕掛ける!

 

「甘いぜ!俺のリバースカードは『ゼウス・ブレス』!相手モンスターの攻撃を無効にし、お前に800のダメージを与えるカードだ!!」

 

『ククク…!オレにダメージを与えていいのかなぁ?』

 

「なに…?」

キングアーサーの攻撃を跳ね返そうとする凌牙…だが、有賀は不敵な笑みで待ったをかける!

 

『教えてやろう…君の妹が何処にいるのか…!!』

 

ギィン…!!

 

「なっ…!?璃緒!!」

有賀の頭上に空間が開く…そこには石造りの牢屋の中で倒れ込む璃緒の姿があった…!

 

 

『貴様の妹はオレが作り出した空想世界…()()()()()()()()()()…!もし、オレを倒せば…オレが作り出した空想世界も壊れる…さて…君の妹はどうなるのかなぁ…!!』

 

「テメェ…卑怯だぞ!!」

卑劣なる一手に叫ぶ遊馬…璃緒を人質に取られた凌牙は…。

 

 

 

 

 

「それで…俺を脅したつもりか?リバースカード発動!『ゼウス・ブレス』!!」

 

『な、なにぃ!?』

凌牙はリバースカードを発動…キングアーサーの攻撃を跳ね返す!!

 

 

 

『き、貴様!?妹がどうなってもいいのか!?』

凌牙の思わぬ行動に動揺する有賀…凌牙は怒りのオーラを纏いながら有賀を睨みつける…!

 

 

「テメェは1つ、ミスを犯した…俺に…俺達兄妹に手を出せば…この街で1番怒らせちゃならねぇ男の逆鱗に触れる事になる!!」

 

『怒らせちゃ、ならない男だと?』

 

「…ああ!?」

凌牙の言葉によって遊馬は思い出す、既に凌牙は…1番頼りになる味方に連絡している事を…!

 

 

「安心しろ凌牙!既にそいつの能力のタネは確保してある─!!」

 

 

『なっ…!?メタルナイトだとぉ!?』

 

「へっ…アンタなら必ず見つけてくれると思ってたぜ、父さん」

凌牙の背後に遊海が降り立つ…その手には有賀のスケッチブックがあった…!

 

 

『貴様…!どうやってソレを!!』

 

「簡単な話さ、自分の子供達の居場所もわからない親なんて…親じゃないからな!」

凌牙から連絡を受けた遊海は即座にハートランドシティ全体をサーチ…璃緒の反応を辿り、スケッチブックを奪取していたのだ。

 

「さて、あとはこの中から璃緒を助け出せば…凌牙は憂いなくデュエルできる訳だ…千年玉よ、我が娘のもとへ俺を導け!」

 

「頼んだぜ!父さん!」

遊海は千年玉を介してスケッチブックの世界…有賀の心象世界へと飛び込んだ!

 

 

 

 

Side遊海

 

 

「ここが漫画の世界か…さっさと璃緒を助けて脱出だ…!」

そこは有賀の描いた城の中…鋼の鎧を纏った遊海は牢屋があるであろう地下へと走り出した…。

 

 

 

「見つけた…璃緒…!!」

城の地下…遊海は予想通りの場所で牢屋、そして囚われた璃緒を発見した…!

 

「怖い思いをさせてごめん…すぐに助けるからな…!」

牢屋へと歩みよる遊海…だが、遊海は失念していた…今の自身は()()()()()ではないのだと…!

 

 

キィィン─!!

 

 

「なっ!?しまった!!」

檻に触れようとした遊海の足元で魔法陣が輝く…ここは空想世界…通常の世界の物理法則は通用しない…!

 

 

「く、くそっ…!体、が……り、お…!」

 

 

 

 

カチカチカチ…ガチン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

疲弊していた遊海は魔法陣の効果を抵抗(レジスト)できず…石像へと姿を変えられ、漫画の世界に囚われてしまった…。

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

《マスター!!》

 

「は、白野─!?」

 

「嘘…!?」

現実世界…スケッチブックを通して救出の様子を見守っていた遊馬達が悲鳴を上げる…最強のヒーローが敵の手に落ちてしまった…それはにわかに信じられない事だった…!

 

 

 

『ハハ…ハハハハ!!姫を救い出そうとした英雄王は悪しき呪いによって石像へと変えられた!!何という喜劇だ!アハハハハハハ!!』

 

「貴様…キサマァァァ!!」

遊海をあざ笑う有賀に凌牙は拳を震わせながら叫ぶ…!

 

『さぁ、少し予定外の事は起きたけど…ここからはオレのストーリー通りにデュエルして貰おうか…!ナンバーズを回収する為に!!』

有賀は禍々しいオーラを纏いながら凌牙を睨んだ…!

 

 

 

『フハハハ…!あの妄想ヤロー、なかなかやるじゃねぇか…!神代凌牙だけじゃなく、鋼の決闘者まで追い詰めるなんてよぉ…!これで奴は終わりだ!』

遠くからデュエルの様子を見物していたギラグは思わぬ成果にほくそ笑んだ…。

 

 

 

「アストラル!アヤカ!どうにかして璃緒と白野を助けられないのかよ!?」

 

《…せめて、この場にフレアがいれば神威で2人を助けられるのですが…!!》

 

(この世界…フィールドは彼の創作物だ…!その主導権は彼にある…それを打ち破るほどの大きな力がなければ、2人を助ける事はできない…!)

事態を打開しようとアストラルとアヤカに問いかける遊馬…だが、有効な作戦は思いつかなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

凌牙LP4000

シャークラーケン 伏せ1 手札2

 

 

 

有賀LP3200

キングアーサー コミックフィールド 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

「(璃緒と父さんが人質になってる…下手には動けねぇ…!)俺は『ハンマー・シャーク』を召喚!」

頭がカナヅチになった鮫が現れる! ATK1700

 

 

『ダメだダメだ!!そんなモンスターじゃ!!ナンバーズを出せよ!』

 

「なんだと…!?」

人質を取られた事で思うように動けない凌牙…だが、有賀は何を考えているのか…凌牙にナンバーズの召喚を強要する…!

 

 

『フン…仕方ない、手伝ってやるよ…!リバースカード発動!「ヒーローの受難」!自分の場に「CH」モンスターが存在する時に相手がモンスターを召喚した時!召喚したモンスターと同じレベルのモンスター2体を相手のデッキから効果を無効にして特殊召喚させる!さぁ、召喚しろ!凌牙!!』

 

「くっ…!!俺は『スピア・シャーク』と『ツーヘッド・シャーク』を特殊召喚…!!」

凌牙の場に槍のような頭を持つ鮫と2つの頭を持つ鮫が現れる! ATK1600  1200

 

 

『さぁ…呼ぶがいい!お前のナンバーズを!!』

 

「俺は…!俺はレベル4の『ハンマーシャーク』『スピアシャーク』『ツーヘッドシャーク』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

32

 

「現れろ…!『No.32海咬龍シャーク・ドレイク』!!」

凌牙の切り札…最大最強の牙が咆哮する! ATK2800

 

 

「さぁ…次はどうする…!どうせ、俺は攻撃できないんだろう…!」

 

『とぉんでもない…!()()()()()()()()()!』

 

「なんだと…?」

 

『貴様の攻撃も全て…オレの()()()()()に組み込んである…!最強の敵の出現…そのピンチに正義が立つ!それこそが真のヒーローだ!!』

 

「(コイツ…何を考えてやがる…!?)」

凌牙は有賀の思惑が理解できずに困惑する…だが、今の凌牙は有賀に従うしかない…!

 

 

「クソォ…!!行け!『シャークドレイク』!『キングアーサー』を攻撃!!デプス・バイト!!」

 

『ぐっ…!?うわあああ!!』

シャークドレイクの放った鮫型のエネルギー弾がキングアーサーを噛み砕く!

 

有賀LP3200→2800

 

 

 

『う、嘘だ…!「キングアーサー」がやられるなんて…!キングアーサー!君には世界の平和とみんなの希望がかかってる!!立ち上がれ!キングアーサー!!』

 

「自作自演にもほどがあるだろ…!?」

芝居がかった動きで立ち上がる有賀…バリアンに洗脳された彼は自分の作り出した物語に酔いしれているのだ…。

 

『フィールド魔法「コミックフィールド」の効果発動!!フィールドの「CH」が戦闘で破壊された時!その破壊を無効にし、攻撃力を500アップさせる!再び立ち上がれ!「キングアーサー」!!』

シャークドレイクに噛み砕かれたはずのキングアーサーが再び姿を現す! ATK2400→2900

 

『さらに「キングアーサー」の効果発動!自身の攻撃力が変化した時!ORUを1つ使い、アップした攻撃力分のダメージを相手に与える!!ストーム・ソード!!』

 

「ぐっ…!ぐあああ…!!」

 

「シャーク!!」

キングアーサーの剣が暴風を纏い、凌牙を吹き飛ばす!

 

凌牙LP4000→3500

 

 

『どうだ!!思い知ったか!悪の手先め─!!』

 

「俺は…シャークラーケンを守備表示に変更…カードを1枚伏せて、ターンエンド…!!」

凌牙は自分の不甲斐なさに震えながらターンを終えた…。 

 

シャークラーケンATK1600→DEF2100

 

凌牙LP3500

シャークドレイク シャークラーケン 伏せ2 手札1

 

 

 

 

『さぁ…!行くぞ!!オレのターン!!』

『装備魔法「奇跡の大剣」を「キングアーサー」に装備!それにより攻撃力が500アップする!』

 

「また攻撃力が上がっちまった!!」

キングアーサーの剣が真紅の大剣に変化する!

 

キングアーサーATK2900→3400

 

 

『「キングアーサー」の効果発動!ORUを1つ使い!攻撃力が変化した分のダメージを与える!ストーム・ソード!!』

 

「ぐああああっ…!!」

再び放たれた暴風が凌牙のライフを削る!

 

凌牙LP3500→3000

 

 

『まだだ!「キングアーサー」で「シャークドレイク」を攻撃!フラッシュ・ソード!!』

 

「ぐっ…!ナンバーズはナンバーズ以外との戦闘では破壊されない!!があああっ…!!」

キングアーサーの光の斬撃がシャークドレイクに直撃…その余波で凌牙は吹き飛ばされてしまう!

 

凌牙LP3000→2400

 

 

『残念だなぁ…確かにナンバーズはナンバーズでなければ倒せない…でもね、それも織り込み済みなんだよぉ!!「奇跡の大剣」の効果発動!装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊できなかった時!このカードを墓地に送り、手札の魔法カードを発動できる!…バリアン世界の為に悪を斃せ!!「RUM-バリアンズ・フォース」を発動!!』

 

「貴様…やはりバリアンか…!!」

有賀の額にバリアンの紋章が浮かび上がる…!!

 

 

『オレは「キングアーサー」でオーバーレイネットワークを再構築…カオス・エクシーズ・チェンジ!!今こそ現れろ!偉大なるバリアンの力の象徴…!「CX-CHレジェンド・アーサー」!!』

バリアンの力によって騎士王が闇へと染まる…そして城そのものを鎧とする巨人の王が現れた! ATK3000

 

 

「くっ…!コイツがバリアンの新たな力か…!」

カオスエクシーズの登場に警戒を強める凌牙…だが、バリアンの恐ろしさはまだ始まったばかりだった…!

 

 

『ククク…!カオスエクシーズを特殊召喚に成功した時!「バリアンズ・フォース」のさらなる効果発動!相手のORUを全て吸収し、吸収した数1つにつき攻撃力を300ダウンさせる!カオス・ドレイン!!』

 

「っ…!『シャークドレイク』!!」

レジェンドアーサーのカオスORUから放たれた赤雷がシャークドレイクを直撃…シャークドレイクはORUを奪われ弱体化してしまう…!

 

 

レジェンドアーサー ORU1→4

 

シャークドレイク ORU3→0 ATK2800→1900

 

 

『まだ、バトルは終わってなかったなぁ…!「バリアンズフォース」で召喚したモンスターはナンバーズさえも破壊できる!!「レジェンドアーサー」で「シャークドレイク」を攻撃!カオス・ブラスター!!』

 

「ぐっ…あ"あ"あ"あ"─!!!」

レジェンドアーサーの闇の斬撃によってシャークドレイクは両断され、凌牙は地面に叩きつけられる…!

 

凌牙LP2400→1300

 

 

「くそ…!父さん、璃緒…!!」

凌牙の手にはこの状況を覆す一手が眠っている…だが、それを使う事は叶わない…大切な父と妹を人質にされてしまった凌牙では…。

 

 

『ククク…ハハハ…!ネタバレになっちゃうけど、この先のストーリーを教えてあげるよ…!囚われの姫を救い出す為に悪魔の使者・シャークとヒーローのオレが戦い、ついに悪を滅ぼす…だが、時既に遅く…姫は永遠の眠りに…そして偉大なる王は石像のまま永遠に封印されるのさ…!つまり、お前はオレに負け…お前の妹とメタルナイトは助からない!!』

有賀が語るのは最悪のバッド・エンド…璃緒達を救い出す手段もなく…凌牙自身も満身創痍…絶体絶命の窮地…だが、まだ…諦めていない男がいた…!!

 

 

「ふざけんな!!そんなモンに…オレ達の運命を決められてたまるかよぉぉ!!」

 

 

「遊馬…」

有賀の身勝手な物語を聞いた遊馬が叫ぶ…遊馬は知っている、どんなに絶望的な状況でも…どんなに傷付いていようとも、最後まで諦めずに戦う男の背中を…!

 

 

「立てシャーク!立って戦えよ!!今は、お前しか璃緒と白野を守れねぇんだ!!前を塞ぐモンは全部ぶちのめす!!それが…それがシャークだろ!!」

 

「遊馬…!」

遊馬の一喝…それによって凌牙は思い出す、自身の命を顧みずナンバーズの呪縛から自分を救い出してくれた遊海の姿を…そして、大怪我を負いながら…ただ自分の勝利を願ってくれた璃緒の言葉を…!

 

 

「(そうだ…どんな未来が待っているかは知らねぇが…璃緒と父さんを必ず守る…!だから…だから…!!)父さん!璃緒!目を覚ませ!!俺は…絶対に…絶対に諦めない!!だから…目を覚ませぇぇ─!!」

それは凌牙の魂の咆哮…妹を…父を想う家族の『絆』、その叫びは…奇跡を起こす!

 

 

 

キィン─!

 

キィン─!

 

キィン─!

 

キィン─!

 

「これは…!?」

凌牙と璃緒の右手に着けられたペアリング、そして共鳴するように遊海の()()()()()()()()()が光を放つ…その光は周囲に広がり… 

 

 

 

ピシ…ピシピシ…バリーン─!

 

 

 

悪しき呪縛を打ち砕いた…!

 

 

 

─…りょうが…凌牙…!─

 

 

「この、声は…!」

何かが砕け散る音がした後…凌牙の聞き慣れた/ずっと聞きたかった少女の声が届く…その少女は「コミック・フィールド」の城の上に立っていた…!

 

 

《あれは…!》

 

「璃緒さん!!」

少女の目元の包帯が解け落ちる、凌牙によく似た紺色の髪に赤い瞳、その少女こそ凌牙の双子の妹・神代璃緒…彼女が長い…長い眠りから目覚めた瞬間だった…!

 

 

 

『馬鹿な…!?オレの空想空間を破っただと!?』

 

(凌牙が妹を…家族を想う気持ちがバリアンの呪縛を破ったという事か…!)

アストラルが凌牙の起こした奇跡を説明する…これで凌牙の憂いはなくなった…!

 

 

 

「……凌牙、もしかして…デュエルで負けてる?…()()()()()()()、私の前で負けるなんて…」

 

「んなっ…!?…いったい誰のせいだと思ってんだよ…」

璃緒の目覚めて最初の一声は…凌牙への皮肉だった、璃緒の性格は言ってしまえば女性版凌牙…なかなかに気の強い性格なのだ…。

 

 

 

『み、認めない!!オレのストーリーを…空想世界を破るなんて認めない!!』

自身の世界を打ち砕かれた有賀は激昂…凌牙に止めを刺そうとする!

 

 

『「レジェンドアーサー」の効果発動!相手モンスターを破壊した時!ORUを1つ使い!その戦闘で破壊したモンスターを墓地から除外し!その攻撃力分のダメージを与える!!』

 

「テメェは…だから甘いんだよ!!リバースカード発動!『激流蘇生』!自分の水属性モンスターが相手との戦闘・効果で破壊された時!破壊されたモンスターを全て特殊召喚し、1体につき500ダメージを与える!!」

 

『な、なにぃぃ!?』

凌牙の反撃の一手で有賀は吹き飛ばされ、凌牙の場にシャーク・ドレイクが復活する! ATK2800

 

有賀LP2800→2300

 

 

『ば、馬鹿な…!ターン、エンド…!』

有賀LP2300

レジェンドアーサー コミックフィールド 手札0

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「フッ…力を借りるぜ!父さん!リバース魔法『コズミック・サイクロン』発動!俺のライフを1000払い!『コミックフィールド』を除外する!!」

 

『な、オレの…オレの世界がああぁぁ!?』

それは遊海が凌牙へのお守りとして持たせていたカード…その力によってコミックフィールドは消滅し、元の病院の屋上に戻る!

 

凌牙LP1300→300

 

 

 

「あっ…」

 

「おっと危ない…!」

コミックフィールドがなくなった時、璃緒が立っていたのは貯水槽の上だった…そして寝たきりだった為、立ち眩みを起こしてふらついた璃緒を支えたのは…同じく呪縛から開放された遊海だった…。

 

 

「お父さん…」

 

「おかえり、璃緒…よく頑張ったな…!」

愛娘の目覚めを遊海は涙を流しながら喜んだ…。

 

 

 

「フッ…!行くぞバリアン!!俺は『海咬龍シャークドレイク』でオーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

32

 

 

「現れろォ!!『CNo.32海咬龍シャーク・ドレイク・バイス』!!」

バリアンへの強い怒りと共に…混沌の白き牙が現れる! ATK2800

 

 

「『シャークドレイクバイス』の効果発動!ORUを1つ使い!墓地のシャークモンスターを除外する事でその攻撃力分、相手モンスターの攻撃力を下げる!俺が除外するのは攻撃力2800の『シャークドレイク』だ!!」

 

『「レジェンドアーサー」が!?』

墓地から呼び出されたシャークドレイクが悪しき騎士王の力を奪い去る!

 

レジェンドアーサーATK3000→200

 

 

「さらに魔法カード『アクア・ジェット』を発動!エンドフェイズまで『シャークドレイクバイス』の攻撃力を1000アップする!バトルだ!『シャークドレイクバイス』で『レジェンドアーサー』を攻撃!デプス・カオス・バイトォォォ!!」

 

 

『う、うわあああぁぁぁ─!!?』

無数の光弾が悪しき騎士王に直撃…偽りの物語は終わりを迎え、デュエルは大団円の幕引きとなった…。

 

 

有賀LP0

 

凌牙WIN!

 

 

 

 

 

『チッ…!あと1歩のところで…!使えねぇ妄想野郎め…!!』

デュエルを見届けたギラグは捨て台詞を残して撤退した…。

 

 

 

 

「凌牙…!」

 

「凌牙、すまなかったな…不覚を取った…」

 

「璃緒…父さん…!無事でよかった…!」

デュエルが終わり、貯水槽の上から璃緒を抱き抱えた遊海が飛び降りる…そして3人の家族は再会を喜びあった…!

 

 

「とりあえず、病室に戻ろう…璃緒、何が起きてるかよくわからないと思うが…落ち着いたら説明するからな…」

 

「うん…!お願いね、父さん…」

ボロボロの父の姿を見て異常な事態を認識する璃緒…3人は共に病室へ戻る為に歩き始めた…。

 

 

 

 

「なぁ、小鳥…やっぱり、家族の力ってすげぇな!」

 

「…うん!」

その背中を見ながら遊馬は小鳥へと話しかける…その時の小鳥の顔は少し朱に染まっていたそうな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【(アゴールの奴…上手くやってるじゃねぇか…!これでいい…強い奴は弱らせてから叩くに限るぜぇ…!あの時のナッシュみたいになぁ…!)】

 

 

 




〜おまけ〜



『凌牙君!見てください!君を主人公にした漫画のキャラを考えて来たんです!』

「はぁ…?」
後日、正気に戻った有賀が凌牙に1枚の絵を見せる…そこにはジャ○プ漫画風の絵で描かれた武士風の凌牙…そして鋼の鎧を纏った遊海の姿が描かれていた…。

「くだらねえ…だが、前よりはマシなんじゃねぇか?…じゃあな」

『あ…!やった!!』
相変わらず厳しい態度の凌牙だが…少し評価はあがったのか…有賀はガッツポーズを見せる!


「なぁ!オレは!オレの絵は!?オレの役は!?」

『あ…遊馬君の役は…これです!』
有賀が1枚のイラストを取り出す、そこには岩の巨人に連携して挑む凌牙と鋼の騎士…そして巨人に踏み潰された遊馬が小さく描かれていた…。



「…やられ役かよぉ!!?」

(これは…なんとも遊馬らしい役どころだな…)





余談だが…この作品『サムライ・シャークと鋼の騎士』はこの後の学園祭で人気となり、漫画研究部の部員が増えたそうな…。


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幕間〜白波家〜

こんにちは!S,Kです!

戦いが続く中、戦士は久々に穏やかな時間を過ごす…。


「翠、準備は大丈夫か?」

 

「はい!準備万端です!凌牙君は?」

 

「学校が終わったらすぐに帰ってくるって言ってた!それじゃあ…行ってくる!」

 

「はい!お願いします!」

とある日…白波家は少し慌しかった、その理由は…。

 

 

 

 

 

「先生…大変お世話になりました!」

 

『いえいえ…私は何もしていませんよ…全ては璃緒さんが頑張った結果です!1年近くも眠っていたのに後遺症もないとは…私も驚いています!しばらくは不便な事もあるでしょうが…璃緒さんなら大丈夫ですよ!どうかお元気で!』

 

「はい!ありがとうございました!さぁ…帰りましょう!父さん!」

 

「ああ!帰ろう…俺達の家に!」

璃緒が目覚めて1週間…ついに、璃緒が病院を退院する日がやってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ…璃緒の退院を祝して…乾杯〜!」

 

「「乾杯!」」

 

「ありがとう!父さん!母さん!凌牙!」

 

《フォウ!フォ〜ウ!!》

 

「ふふっ…フォウもありがとう♪」

 

《フォウ♪》

その日の夕食は璃緒の退院祝いのパーティーとなった、メニューは翠が腕を振るった長い間眠っていた璃緒の体の負担にならない、栄養満点の美味しい料理である。

 

 

「ん〜!このハンバーグ柔らかくておいしい〜!」

 

「ふふっ、よかった!そのハンバーグはお豆腐が混ぜてあるのよ?」

 

「だからこんなに柔らかいのね…!さすが母さん!」

 

 

「母さんのシチュー…久しぶりだな…美味い!」

 

「よかったな、凌牙!まだおかわりあるからな!」

 

「デザートにはケーキを作ってみたの!楽しみにしててね!」

 

《フォウ…!フォーウ♪》

久方ぶりの穏やかな家族団欒…そのかけがえのない時間を遊海達は噛み締めた…。

 

 

 

………

 

 

 

「それじゃあ…ここからは真面目なお話だ、璃緒…心の準備はできてるか?」

 

「ええ…教えて、父さん…父さん達の事…そして、この街で何が起きてるのか…!」

団欒の夕食が終わり、遊海達と兄妹は向かい合う…璃緒に起きた事…そして、これからの事を話す為に…。

 

 

「まずは…俺達の事だな、俺の本当の名前は白波遊海…世間では『2代目決闘王』や『赤帽子』って呼ばれた伝説の決闘者の1人なんだ…自分で言うのも少し恥ずかしいけどな」

 

「うん…凌牙から聞いたわ、世を忍ぶ為に偽名で暮らしていた事…それに、長い時間を生きてきた事も…」

 

「そうか…じゃあ次は…」

 

 

そうして遊海は璃緒に説明を続けた、自分達の来歴…璃緒が怪我を負った訳…世界中に散らばった100枚「ナンバーズ」やそれを集める者達の事…WDCでの戦い…そして、人間界に迫るバリアンの脅威…遊海は時間をかけて説明したのだった。

 

 

 

 

 

「…父さん」

 

「ん?どうした?何かわからない事があったか?」

説明が終わりかけた時、璃緒が遊海に声をかける…その表情はとても沈んでいた…。

 

 

「…ごめんなさい…私のせいで…父さんが死にかけたなんて…」

 

璃緒は遊海に頭を下げた…それは、遊海から語られたWDCでの危機…璃緒を傷付けられた怒りで遊海が命の危機に晒された事への謝罪だった…。

 

 

「璃緒のせいじゃない…俺がまんまと罠に嵌ったのが悪いんだ、璃緒が謝る事はないさ…それに、今度は俺が迷惑をかけちゃうかもしれないからな…」

 

「「えっ…?」」

だが、遊海は璃緒は悪くないと首を振った…そして思わぬ事を告げると、真剣な眼差しで凌牙達を見つめる…。

 

 

「…凌牙、璃緒…俺は今…()()()()()()()()()()、誰かはわからない…だけど『悪意』を持った誰かの仕業だ……もしかしたら、その魔の手がお前達に向くかもしれない…」

 

「それって…ハートランドで起きてる暴走事件の…?」

 

「恐らく、黒幕だ…今日も璃緒を迎えに行く前に8人ほど止めて来たんだが…尻尾が掴めない」

 

「…心配するなよ父さん、俺達はそんな奴には負けねぇよ!」

 

「自分の身は自分で守れるわ!」

2人の身を案じる遊海…だが、凌牙達は胸を張って心配ないと答えた。

 

「…凌牙、璃緒…ありがとう」

頼もしい子供達の姿を見た遊海は胸を撫で下ろしたのだった…。

 

 

 

 

 

「ところで璃緒、本当に明日から学校に行くつもりなのか?体は大丈夫か?」

 

「うん!リハビリの先生にも太鼓判を貰ったわ!明日から凌牙と一緒に通うのが楽しみ!」

 

「ゲッ…!?(明日は…見つからないうちに早く行こう…!)」

遊海の問いかけに笑顔で応える璃緒…その横で凌牙は表情を引き攣らせている…。

 

 

「璃緒は頭がいいから勉強も大丈夫だとは思うが…あとはデュエルだな…さっき言った何者かの事もある…久しぶりに手合わせしようか」

 

「父さんとのデュエルね…!わかったわ!私が勝てば父さんも安心できるだろうし!」

遊海の提案に璃緒は気合いを入れる!

 

 

「…1回も勝てた事ないけどな」

 

「凌牙、何か言った?」

 

「いや、何も…」

 

「じゃあ…早速デュエルだ!…もう夜だからテーブルでな?」

1年振りに目覚めた璃緒…久しぶりの親子デュエルが始まった!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

遊海LP4000

璃緒LP4000

 

 

・テーブルデュエル

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

「魔法カード『トレード・イン』を発動!手札のレベル8モンスター『神龍の聖刻印』を捨てて2ドロー…さらに魔法カード『招集の聖刻印』を発動!デッキから『聖刻龍─シユウドラゴン』を手札に加える!そして『聖刻龍─ドラゴンゲイヴ』を召喚!」

オレンジ色の龍人が現れる ATK1800

 

 

「そして『ドラゴンゲイヴ』をリリースする事で手札の『聖刻龍─ネフテドラゴン』は特殊召喚できる」

紫色の月夜の龍が現れる ATK2000

 

 

「リリースされた「ゲイヴ」の効果によりデッキから『聖刻』と名のついたドラゴン族通常モンスター…2体目の『神龍印』を特殊召喚!」

赤いウジャト眼を刻んだ太陽石が現れる DEF0

 

 

「さらに『ネフテドラゴン』をリリースする事で手札の『聖刻龍─シユウドラゴン』は特殊召喚できる!」

青いウジャト眼を刻んだドラゴンが現れる ATK2200

 

「リリースされた『ネフテドラゴン』の効果発動!デッキからドラゴン族通常モンスター『ラブラドライドラゴン』を攻守0で特殊召喚!」

黒い輝きを放つドラゴンが現れる DEF0

 

 

「そしてレベル6の『シユウ』と『ラブラドライドラゴン』でエクシーズ召喚!『聖刻龍王─アトゥムス』!」

紺色のウジャト眼を刻む龍王が現れる! ATK2400

 

 

「『アトゥムス』の効果発動!エクシーズ素材を1つ使い、デッキから…………3体目の『神龍印』を特殊召喚!」

3体目の太陽石が現れる DEF0

 

 

「そしてレベル8の『神龍印』2体でエクシーズ召喚!『聖刻神龍─エネアード』!」

赤いウジャト眼を刻む神龍が現れる! ATK3000

 

 

「先攻は攻撃できない、俺はカードを1枚伏せ、速攻魔法『超再生能力』を発動してターンエンド!そして『超再生能力』の効果発動!このターンに手札から捨てた、またはリリースしたドラゴン族のモンスター1体につき1枚ドローできる、3ドローしてターンエンド!」

 

遊海LP4000

アトゥムス エネアード 伏せ1 手札4

 

 

 

 

「うわ…えげつねえ…」

 

『1ターンで2体のエクシーズモンスター…流石父さんだわ…でも、負けない!』

デュエルを見ていた凌牙は思わずドン引く…だが、璃緒はまっすぐと遊海に挑む!

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「ブリザード・ファルコン」を召喚!』

氷の翼を持つ隼が現れる! ATK1500

 

『さらに私は魔法カード「ブリザード・ジェット」を発動!水属性・鳥獣族の攻撃力をエンドフェイズまで1500アップするわ!』

 

ブリザードファルコンATK1500→3000

 

 

『そして「ブリザードファルコン」の効果発動!自身の攻撃力が上昇した時!その数値分のダメージを相手に与えるわ!』

 

「おっ…!やるな!」

 

遊海LP4000→2500

 

 

 

『そして自分のフィールドに魚族または鳥獣族モンスターがいる時!手札の「霊水鳥シレーヌ・オルカ」は特殊召喚できる!』

上半身が鳥人、下半身が魚の霊鳥が現れる! ATK2200

 

 

『そして「シレーヌ・オルカ」の効果発動!自分フィールドのモンスターのレベルを3〜5の任意のレベルに変化させる!私はレベル4に変更!』

 

 

シレーヌオルカ☆5→4

 

『私はレベル4の「ブリザードファルコン」と「シレーヌオルカ」でエクシーズ召喚!「零鳥獣シルフィーネ」!』

風の精霊の名を持つ氷結の鳥が現れる ATK2000

 

 

『「シルフィーネ」の効果発動!ORUを1つ使い、自身以外のフィールド上のカード効果を次の自分スタンバイフェイズまで無効にする!そして効果を無効にしたカード1枚につき相手モンスターの攻撃力を300ダウンさせるわ!私が無効にしたのは「エネアード」と「アトゥムス」の2枚!よって攻撃力を600ダウンさせる!』

 

 

エネアードATK3000→2400

 

アトゥムスATK2400→1800

 

 

『さらに装備魔法「エクシーズ・ユニット」を「シルフィーネ」に装備!装備モンスターのランク1つにつき攻撃力を200アップさせる!』

 

シルフィーネATK2000→2800

 

 

『バトルよ!「シルフィーネ」で「エネアード」を攻撃!』

 

遊海LP2500→2100

 

 

『私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!』

 

璃緒LP4000

シルフィーネ(エクシーズユニット) 伏せ1 手札1

 

 

 

『う〜!やった!大ダメージよ!』

 

「すごいな璃緒!よくここまで手を考えたな…!」

 

『ふふっ、入院してる間にちゃんとデッキを組み直したんだもの!』

遊海の称賛に璃緒は胸を張る!

 

 

「このまま負けると格好がつかないな…よし、本気でいくぞ!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺は『アトゥムス』を素材にエクシーズ召喚!現れろ!『迅雷の騎士ガイア・ドラグーン』!」

人竜一体となった騎士が現れる! ATK2600

 

 

「『ガイアドラグーン』はランク5・6のエクシーズモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる!」

 

『そんなモンスターが…!でも、させないわ!リバースカード「奈落の落とし穴」!「ガイアドラグーン」を除外!』

 

「むむっ…なら、自分フィールドにモンスターが存在せず、相手のフィールドにモンスターが存在する時!『聖刻龍─トフェニドラゴン』を特殊召喚!」

白いウジャト眼を持つドラゴンが現れる! ATK2100

 

 

「そして『トフェニ』をリリースして『聖刻龍─アセトドラゴン』をアドバンス召喚!」

紫のウジャト眼を持つ朝日のドラゴンが現れる ATK1900

 

「そしてリリースされた『トフェニ』の効果発動!デッキから『神竜ラグナロク』を攻守0で特殊召喚!」

輝く体を持つ神竜が現れる DEF0

 

 

「『アセト』の効果発動!自分フィールドの聖刻モンスターのレベルを『ラグナロク』と同じレベルにする!」

 

アセト☆5→4

 

「レベル4の『アセト』と『ラグナロク』でエクシーズ召喚!『No.∞決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!」

遊海の新たな力…魂の聖剣が現れる! ATK2500

 

 

『これが父さんのナンバーズ…不思議な力を感じる…!』

召喚されたナンバーズに璃緒は目を奪われる…。

 

「璃緒は昔から感受性が強いからな…『決闘の守護者』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した時、カードを1枚ドローできる!バトル!『決闘の守護者』で『シルフィーネ』を攻撃!」

 

『攻撃力の低いモンスターで攻撃…?』

 

「ふっ…!『決闘の守護者』の効果発動!このカードがバトルする時!エクシーズ素材を1つ使い、このモンスターの攻撃力にバトルする相手モンスターの攻撃力または守備力のどちらか高い数値を加え、守備モンスターを攻撃した時!貫通ダメージを与える!『シルフィーネ』を撃破!」

 

決闘の守護者ATK2500→5300

 

 

璃緒LP4000→1500

 

 

「これが父さんの本気…すごい…!」

 

『ありがとな!メイン2、俺は魔法カード「星呼びの天儀台(セレスティアル・セクスタント)」を発動!手札のレベル6モンスター「エレキテルドラゴン」をデッキの一番下に戻して2ドロー!カードを2枚伏せてターンエンド!』

 

遊海LP2100

決闘の守護者 伏せ3 手札2

 

 

 

「璃緒、ナンバーズはナンバーズとの戦闘でないと破壊されない効果を持ってる…さぁ、どうする?」

 

『逆転されちゃったけど…私は最後まで諦めない!』

 

 

 

『私のターン…ドロー!』

『モンスターをセット、カードを伏せてターンエンド!』

 

璃緒LP1500

セットモンスター 伏せ1 手札0

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「まずはリバース罠『貪欲な瓶』を発動!墓地の『トフェニ』『ネフテ』『ゲイヴ』『トレードイン』『超再生能力』をデッキに戻して1ドロー!そして『ドラゴンゲイヴ』を召喚!」

再びオレンジ色の龍人が現れる! ATK1800

 

「バトル!『ドラゴンゲイヴ』でセットモンスターを攻撃!」

 

『セットモンスターは「オーロラ・ウィング」!破壊されたこのモンスターは攻撃表示で特殊召喚できる!』

煌めく翼を持つ鳥が現れる ATK1200

 

 

「なるほどな…!バトル続行!『決闘の守備者』で『オーロラウィング』を攻撃!」

 

『その攻撃を待ってたわ!リバース罠発動!「聖なるバリア─ミラー・フォース」!攻撃表示モンスターを全て破壊するわ!これで…!』

 

「それはどうかな?『決闘の守護者』のさらなる効果発動!このカードがフィールドから墓地に送られた時!俺のライフを1000払い、このカードを墓地から特殊召喚する!」

 

『えぇっ!?』

破壊された聖剣が復活する! ATK2500

 

遊馬LP2100→1100

 

 

 

「さらに、墓地のモンスターをエクシーズ素材とする事ができる!バトル続行!『決闘の守護者』で『オーロラウィング』を攻撃!さらに効果発動!エクシーズ素材を1つ使い、攻撃力をアップする!『オーロラウィング』の守備力は1600…これで決着だな?」

 

『あともう少しだったのに〜!』

 

 

 

璃緒LP0

 

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

「父さん…流石にナンバーズを使うのは大人げないぜ?」

 

「何を言ってるんだ…アストラルが回収してないナンバーズはあと半分近くある、お前達がそのカードを使われる可能性もあるんだぞ?」

 

「いいのよ凌牙、ナンバーズと戦えて…感触は掴めたわ!」

デュエルが終わり遊海達は反省点を探す…璃緒の実力を確認できた遊海は胸を撫で下ろした…。

 

 

「俺とここまで戦えれば…並のデュエリストなら問題ないだろう!だけど…もし、何か問題が起きたら必ず助けを呼ぶ事…父さんとの約束だぞ?」

 

「ええ!わかったわ!…久しぶりに指切りでもする?」

 

「ははっ、やっておくか!指切りげんまん〜♪」

 

「まったく、ガキじゃねぇんだから…」

 

 

白波家に響く約束の歌…遊海は久しぶりに疲れを忘れて家族との時間を楽しむ事ができたのだった。




〜おまけ〜



「ただいま帰りました〜!」

「ただいま」

「おかえりなさい璃緒ちゃん!凌牙君!学校はどうだった?」
翌日、学校を終えた2人が帰ってくる…凌牙は少し疲れている様子だったが、璃緒は笑顔だった。


「えっと…学校の運動部の人達にマネージャーになって欲しいって言われたから…」

「うん」

「私に勝てたら入部するって条件で色んな部活の人達とスポーツ勝負をして…」

「うんうん」

「サッカー部のレギュラーメンバーを全員抜いてシュートを決めて…柔道部の主将を投げて…卓球部のダブルスに1人で勝って…野球部のエースピッチャーからホームランを打って…将棋の対局で3人抜きして…」

「うんうん」

「最後にバリアンの手先になっていた華道部の部長をデュエルで凍らせてきたわ!」

「ふふっ…流石ね璃緒ちゃん!遊海さんが心配しなくてもちゃんとできてよかったわ!」

「(いや、少しは突っ込んでくれよ母さん…)」
璃緒の武勇伝に特に驚かない翠に少し呆れる凌牙なのだった…。




「それから遊馬の友達の小鳥ちゃんにデュエルを教える約束をしたり…」

「みんなに猫が嫌いって知られたりな?」

「それは言わないでー!!」

《キュ〜…?》

「あっ…落ち込まないでフォウくん!貴方の事は大好きだから!!」

《フォウ!フォ〜ウ!!》


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拳闘士推参〜英雄を蝕む悪意〜

こんにちは!S,Kです!

久しぶりに連続投稿!…サルガッソ編が終わるまではこんなペースで書ければいいなぁ…。


それでは最新話をどうぞ!


【よぉよぉ!中々いい仕事をするじゃねぇかアゴールちゃんよぉ…!】

 

『はっ…お褒めいただき光栄です』

 

真っ暗な空間…そこで怪しげな男達が言葉を交わす…。

 

 

【メタルナイト…いや、白波遊海は疲れて動きが鈍ってきた…!もっともっと奴を追い詰めろ!九十九遊馬達への救援が間に合わないくらいになぁ…!】

 

『承知しました…ですが、ハートランドの者達も警戒を強めている様子…如何しますか?』

 

【お前には関係ねぇだろう?バリアンの力を使わずに洗脳できるお前ならなぁ…!】

 

『はっ…全ては…バリアンの為に…』

 

 

【白波ィ…!よくもオレ様の作戦を邪魔してくれやがったなぁ…せいぜい苦しみやがれよぉ…?ハハハ…ギャハハハハハハ!!】

 

 

『…しらなみ、ゆうみ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

『九十九遊馬とアストラルを倒す為にギラグを送り込んだが…少し荷が重かったか…』

 

バリアン世界…その城の中でバリアンのリーダー・ドルベはギラグの失敗した作戦の記録を見てため息をつく…そしてナンバーズを奪えない彼に業を煮やしたドルベは新たな一手を打つ事にした…。

 

『アリト…アリトはいるか!』

 

『なんだよ?ドルベ…何か用か?』

虚空へと声を張るドルベ…その声に赤いローブのバリアン・アリトが姿を現した。

 

 

『アリト、君にナンバーズの回収を命じる…今すぐ人間界へと向かえ…!』

 

『はぁ!?ちょっと待てよ!オレが人間界に!?なんでだよ!人間の世界じゃ本気でデュエルできねぇじゃねぇか!!そんなつまらねぇ仕事…』

ドルベの突然の命令に駄々をこねるアリト…だが…

 

『…アリト

 

『チッ…わかったよ…行けばいいんだろ?行けば…』

 

『…それでいい、全てはバリアン世界の為に…』

 

『バリアン世界の為に〜…』

ドルベに睨まれたアリトは渋々人間界へと向かった…。

 

 

 

『ドルベ、アリトでよかったのか?』

 

『ミザエル…』

アリトを見送ったドルベに黄色のローブのバリアン・ミザエルが声をかける…。

 

『九十九遊馬とアストラルを倒し、ナンバーズを回収せねば…我らに未来はない、その使命はあんな()()()に…』

 

『そう言ってやるな…性格や態度はともかく、デュエルの腕に関してはアリトは信頼できる…少し様子を見よう』

 

『…はぁ…』

ミザエルはドルベの言葉を聞いてため息をついた…。

 

 

 

 

『………鋼の決闘者…白波遊海…か…』

ミザエルが去った後…ドルベは違う記録を閲覧する、それは遊海のWDCでの戦い…そして、最近のデュエルの記録だった…。

 

 

『…この男は何なんだ?何故、我らと同じ…()()()()()()()()を持っている…?』

ドルベはしばらく魂の聖剣を振り回す遊海を見つめ続けた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP4000

教師風の男LP4000

 

 

 

 

 

「俺の、ターン!!ドロー!」

「『超量妖精アルファン』を召喚!」

愛らしい顔の機械妖精が現れる! ATK0

 

「『アルファン』の効果発動!自身をリリースする事でデッキから『超量士ブルーレイヤー』『超量士レッドレイヤー』『超量士ホワイトレイヤー』を相手に見せ、相手がランダムに選んだ1体を特殊召喚し、残りは墓地に送る!」

遊海の前にカードの壁が現れる!

 

『真ん中だ!』

 

「『ブルーレイヤー』を特殊召喚!」

水の力を宿す女性戦士が現れる ATK1200

 

 

「『ブルーレイヤー』の効果発動!デッキから2体目の『レッドレイヤー』を手札に加える!さらに墓地に送られた『ホワイトレイヤー』の効果発動!デッキから『アルファン』を手札に加える!さらに『レッドレイヤー』の効果!墓地の『ホワイトレイヤー』を特殊召喚!ただし、効果は発動できなくなる!」

光の力を宿す謎の戦士が現れる! ATK2400

 

 

「さらにフィールド魔法『超量機艦マグナキャリア』を発動!」

遊海の背後に巨大な宇宙船が現れる!

 

「『マグナキャリア』の効果発動!手札の『ワン・フォーワン』を墓地に送り『ホワイトレイヤー』と同じ属性のエクシーズモンスターをエクシーズ召喚扱いで特殊召喚する!機乗召喚!現れろ!『超量機獣ラスター・レックス』!」

マグナキャリアから白き恐竜型ロボットが発進…ホワイトレイヤーが乗り込む! ATK2700

 

 

『モンスター1体でのエクシーズ召喚だと!?』

 

「さらに俺はもう1度『マグナキャリア』の効果発動!手札の『ブルーレイヤー』を墓地に送り、フィールドの『ブルーレイヤー』と同じ属性のエクシーズモンスターを特殊召喚する!機乗召喚!現れろ!『超量機獣グラン・パルス』!」

連結したイルカ型のロボットが現れる! DEF2800

 

「そして墓地に送られた『ブルーレイヤー』の効果発動!墓地の『アルファン』と『レッドレイヤー』をデッキに戻す!カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

遊海LP4000

ラスターレックス グランパルス 伏せ2 マグナキャリア 手札3

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「『古代の機械石像(アンティーク・ギア・スタチュー)』を召喚!」

機械巨人の胸像が現れる! ATK500

 

「さらに魔法カード『機械複製術』を発動!デッキから2体の『古代の機械石像』を特殊召喚!」

 

「まずっ…!?『ラスターレックス』の効果発動!ORUを1つ使い、1体目の『古代の機械石像』の効果を無効にする!」

 

『甘〜い!!速攻魔法「エフェクト・シャット」を発動!モンスター効果が発動した時!その効果を無効にして破壊する!!』

 

「っ…!!」

放たれた電撃がラスターレックスを撃ち抜き粉砕する!

 

 

「墓地に送られた『ホワイトレイヤー』の効果…!デッキから2体目の『アルファン』を手札に加える!」

 

『3体の「機械石像」の効果発動!手札から現れろ!2体の「古代の機械巨人(アンティーク・ギア・ゴーレム)」!そして「古代の機械巨竜(アンティーク・ギアガジェル・ドラゴン)」!!』

2体の巨人、そして機械の巨竜が遊海の前に立ち塞がる! ATK3000  3000  3000

 

 

「やばい…!!リバース罠『エクシーズ・リボーン』を発動!墓地の『ラスターレックス』を特殊召喚し、このカードはORUになる!」

墓地からラスターレックスが復活する! ATK2700

 

 

『壁を出しても無駄だぁ!!バトル!2体の「機械巨人」で「ラスターレックス」と「グランパルス」を攻撃!アルティメット・ダブル・パウンド!』

 

「ぐっ…ぐうぅぅ…!?」

巨人の拳でロボット達が粉砕され、遊海は吹き飛ばされる!

 

遊海LP4000→3700→3500

 

 

『そして「機械巨竜」でダイレクトアタック!ガジェット・ストリー厶!』

 

「ぐあ"あ"あ"あ"─!!!がはっ…」

放たれた熱線が遊海を直撃…遊海は噴水に叩きつけられる…

 

遊海LP3500→500

 

『私はこれでターンエンド!』

 

教師風の男LP4000

機械巨人 機械巨人 機械巨竜 手札0

 

 

 

「くっ…ゲホッ…!ちょっと、やばい、な…」

咳き込みながら遊海が水の中から立ち上がる…半ば実体化した一撃で鎧には罅が入っている…。

 

 

『め、メタルナイト!お願い!!先生を止めて!!』

 

『いつもはすごい優しい先生なんだ!!』

 

『お願い!!』

 

「っ…!大丈夫、君達の先生は…俺が救ける!!」

子供達の声援を受けながら…遊海は立ち上がる!

 

 

 

 

「俺の、ターン!ドロー!!」

「自分フィールドにモンスターが存在しない時…!手札の『レッドレイヤー』は特殊召喚できる!」

炎の力を宿した赤き戦士が現れる! ATK2000

 

「『レッドレイヤー』の効果で、墓地の『ブルーレイヤー』を手札に、加える!さらに『超量士グリーンレイヤー』を召喚!」

風の力を宿した緑の戦士が現れる! ATK1600

 

 

「『マグナキャリア』の効果発動!手札の『アルファン』を墓地に送り、『レッドレイヤー』で機乗召喚!『超量機獣マグナライガー』!」

赤き獅子のロボットが現れる! ATK2600

 

 

「もう、一度…『マグナキャリア』の効果発動…!2体目の『アルファン』を捨て、『グリーンレイヤー』で機乗召喚!『超量機獣エアロボロス』!」

緑のワイバーン型のロボットが現れる! ATK2200

 

「さらに、魔法カード『死者蘇生』を発動…!蘇れ!『グランパルス』!」

再びイルカ型ロボットが浮上する! ATK1800

 

「そして…『マグナキャリア』の最後の効果発動…!!このカードを墓地に送り…!3体の『超量機獣』を素材として…合体召喚!!」

3体の機獣が空へと飛び上がる!

 

 

「世界の平和を守るため…戦士の心が1つとなる!超量合神!完成!『超量機神王グレート・マグナス』!!」

機獣と戦士に魂が1つとなり最強のロボットが現れる! ATK3600

 

 

「『グレートマグナス』の効果発動!ORUを1つ使い、『古代の機械巨竜』をデッキに戻す!ドラゴン・スマッシュ・タイフーン!!」

 

『な、なにぃ!?』

緑の竜頭から放たれた暴風が機械巨竜を吹き飛ばす!

 

 

「さらに罠カード『機神剣─マグナ・スレイヤー』を発動!このカードは『グレートマグナス』の装備カードとなり、攻撃力をランク✕100アップさせる!エネルギー・チャージ!!」

グレートマグナスの手元に大剣が現れ、虹色の光を纏う! ATK3600→4800

 

 

「バトル!『グレートマグナス』で1体目の『機械巨人』を攻撃!機神剣・マグナスラッシュ!」

 

『うおぉぉ…!?』

大剣が機械巨人を両断する!

 

教師風の男LP4000→2200

 

 

「『マグナスレイヤー』のさらなる効果発動!このカードを墓地に送り、『グレートマグナス』は3回攻撃ができる!闇を打ち払え!機神拳・マグナバスター!!」

 

『う、うわああああ─!!』

 

剣のエネルギーを吸収した機神王の拳が悪しき思念を打ち砕いた!

 

教師風の男 LP0

 

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

『うう…私はいったい…?』

 

『先生…先生!!』

 

『よかった〜!!』

 

『???』

 

 

『あれ…?メタルナイトは…?』

教師の無事を喜ぶ子供達…だが、ヒーローの姿は既に消えていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー…はー…さすが、に…これ以上、は……」

 

《マスター!気をしっかり保ってください!翠がこちらへ向かっています!!》

路地裏で満身創痍の遊海は倒れ込んでいた…連日10人近くの暴走決闘者を相手に戦い続けた事で…ついに体力の限界を超えてしまったのだ…。

 

 

「まるで、モグラたたき、だ……警察や、オボットの監視…抜けて…これだけの、事…ゴボッ…!」

 

《マスター!!》

 

「あやか…ゴメ…あと、たの、む……───」

 

 

「っ…!!先生!!」

 

 

遊海はついに気を失う…その直前、懐かしい声が聞こえたような気がした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─久しぶりに…予言をするとしよう─

 

 

「花の、お兄さん…」

微睡む意識の中…優しげな青年の声が響く─

 

 

─悪意が勇士に迫る…友情は綻び、絆は断ち切れる…だが、新たな光が…君達を照らすだろう─

 

 

 

「………」

 

 

 

─そして…本当にごめんね、遊海君……僕のせいで君は…─

 

 

 

「…違う、これは…俺の運命だ…俺の弱さが…招いた事、 だから…」

 

 

 

─…僕はいつでも見ているよ…どうか、君の往く先に希望があらん事を…─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここ、は…」

 

「先生…!オレの事がわかるか!?」

 

「十代…?なんで…」

遊海が目を覚ました時…そこは見慣れた自室だった、そして枕元には頼れる教え子…遊城十代の姿があった。

 

 

「海馬…じゃなくて瀬人さんから依頼を受けて飛んで来たんだ!『ハートランドシティでのデュエルモンスターズ絡みの問題が続いてるから遊海の救援に行って来い!』って…」

 

「…ありがとう…俺も、過労気味だったんだ…何せ、この1ヵ月で200戦近く……ゴホッ…!」

 

《無理して喋る事はないさ、アヤカから全部聞いてる…お前、無理し過ぎだよ》

 

「ははっ…娘が、元気になったから…張り切り過ぎた、かな…」

ユベルの呆れたような言葉に遊海は冗談を交えて返す…だが、意識を保つのもやっとな程だった…。

 

 

《それにお前…()()()()()()()?お前の…》

 

()()()()()…休めば…大丈夫、だから…」

 

「先生…」

ユベルは遊海の抱える()()に気付く…だが、遊海はそれを制した…。

 

 

「十代…すまない……頼む…このまちは…おれ、の………」

 

「わかってる…先生達の()()()()()…なんだよな?…任せておいてくれ、オレが一緒にこの街を守るぜ…!」

十代は意識を手放してしまった遊海の手を握り締めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

「おかしいなぁ…?白野が電話に出ねぇ…この『はたしじゅう』の相談したかったのになぁ…」

 

「きっとあの人も忙しいんですよ!それより遊馬クン!早く行かないと!」

 

「おぉ…!小鳥を渡してたまるかよ!!」

同じ頃…遊海へと電話した遊馬は首を傾げていた…だが、それも僅かな事…遊馬は「果たし状」で指定されたビルへと向かった…。

 

 

 

 

『来たか…!』

 

「おい!『小鳥を賭けた男と男の真剣デュエル』っていったいどういう事だよ!?」

 

『どういう事も何も…そのままの意味だ!!俺はテメェをデュエルでブッ倒す!!』

 

 

果たし状で指定されたビルの上…そこで待ち受けていたのは褐色肌のラテン系の少年…人間体のバリアン・アリトだった。

…だが、アリトはナンバーズを奪う為に遊馬にデュエルを挑んだ…のではない、あろう事か…遊馬の幼なじみである観月小鳥の為にデュエルしようとしているのだ。

 

簡単に経緯を説明すると…

 

アリトが人間界を訪れる→ハートランド学園でたまたま小鳥に出会い、一目惚れする→猛烈なアタックを仕掛けるが、その度に遊馬&真月に(無自覚に)邪魔される→事情をよく知らないギラグに相談→『男なら力で捻じ伏せろ!』→小鳥を賭けて遊馬に果たし状(誤字だらけ)を叩きつける…という訳である。

 

…バリアンの戦士が何をしてるのかとドルベなら呆れるだろうが、残念ながらツッコミ役はいない…ミザエルの懸念通り…アリトは(良い意味で)単細胞だったのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

『俺とデュエルするか!尻尾を巻いて逃げるか!どっちだ!!』

 

「ふざけんな!!どんな理由でも、オレがデュエルを挑まれて…逃げられっかよぉぉ!!」

小鳥と決闘者のプライドを賭けて…闘士と勇士の戦いが始まった!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対アリト

 

 

 

 

 

『エクシーズ召喚!!魂に秘めた炎を…拳に宿せ!「BK(バーニング・ナックラー)拘束蛮兵リードブロー」!!』

 

「っ…1ターン目からエクシーズモンスターを…!」

アリトの場に全身に重りを背負い、拘束具を着けた格闘家が現れる…彼が使うテーマは「BK」…ボクシング用語や技の名前を持つ筋肉質なモンスターのテーマである。

 

 

(気をつけろ、遊馬…彼からは尋常ではないプレッシャーを感じる…!)

 

「アストラル…!?」

アリトの発するオーラに気付いたアストラルが姿を現す…それほどにアリトは強いと確信していたのだ…!

 

(もしかすると…彼も()()()()()()()の可能性もある…!!)

 

 

『(馬鹿な…!?あれは…アストラル世界の使者・アストラル…!と、いう事は…あのヤローが()()()()()だってのか!?)』

遊馬達がアリトを睨むなか…アリト自身も驚愕していた、彼は今の今まで目の前の少年が『九十九遊馬』だと気付いていなかったのだ…。

 

 

『(面白ぇじゃねーか…この姿じゃ、ナンバーズも奪えず…カオスエクシーズも使えないが…お前を見極めてやるぜ…!!)』

 

 

 

「オレのターン!来い!『ガガガマジシャン』!さらに魔法カード『破天荒な風』を発動!『ガガガマジシャン』の攻撃力を1000アップだ!」

お気に入りモンスターであるガガガマジシャンを召喚した遊馬は攻撃を仕掛ける!

 

 

「バトルだ!『ガガガマジシャン』で『リードブロー』を攻撃─!」

 

『甘いぜ!「リードブロー」の効果発動!ORUを1つ使い、バトルでの破壊を無効にする!』

 

「でも…ダメージは受けてもらうぜ!!ガガガパーンチ!!」

ガガガマジシャンが魔力を込めた拳でリードブローを殴りつける、効果によってリードブローは破壊を免れるが

…拘束具に罅が入る!

 

 

(なに…!?)

 

『ヘヘッ…!中々のパンチだな…だが「リードブロー」のさらなる効果発動!自身のORUが失われた時!攻撃力が800アップする!!』

 

「なんだって!?」

 

(バトルで破壊されないうえに…攻撃力が上がるのか…!)

リードブローの拘束具が砕け…攻撃力が3000まで上昇する!

 

 

 

 

 

『俺のターン!さっきのダメージを5倍にして返してやるぜ!!永続魔法「タイマンバトル」発動!!その効果により、モンスター同士の戦闘でバトルダメージが発生した時!追加1000ダメージを相手に与える!「リードブロー」!「ガガガマジシャン」とタイマンだ!!』

 

「なっ…!?ぐあああ─!?」

リードブローの拳圧がガガガマジシャンを粉砕、遊馬に大ダメージを与える!

 

 

 

『どうだ…!俺のカウンターの味は…!』

 

「イテテ…!効いたぜぇ…!!だけど…おかげで面白くなってきたぁ!!」

ふらつきながらも遊馬は立ち上がる…久しぶりのワクワクとするデュエル…それが遊馬の魂に火を点ける!

 

 

 

 

「レベル6となった『ガガガマジシャン』と『ドドドウォリアー』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!熱き魂を引き絞り!狙いをつけろ!『ガントレット・シューター』!!」

遊馬は新たな仲間、赤き鋼のロボットを呼び出す!

 

 

「『ガントレットシューター』の効果発動!ORUを1つ使い!相手モンスターを破壊する!!」

 

『な、なんだってー!!』

ORUを装填したガントレットシューターがロケットパンチを放つ!!

 

 

『…と言うと思ったか?カウンター罠「エクシーズ・ブロック」!相手のモンスター効果が発動した時!自分モンスターのORUを使い、その効果を無効にする!!』

 

(マズイ!!『リードブロー』がORUを使ったという事は…!?)

 

『「リードブロー」はORUを使うほど強くなる!!』

アリトの言葉と共にリードブローの拘束が解き放たれ、剛力無双の闘士が立ち塞がる!!

 

 

「攻撃力…3800…!?」

 

(攻撃されればされる程強くなるとは…!)

強力な効果を持つリードブローにたじろぐ遊馬達…勝利の行方は…!

 

 

 

 

『俺のターン!そろそろトドメを刺させてもらうぜ!「リードブロー」で「ガントレットシューター」を攻撃!戒めを解かれし灼熱の拳を叩き込め!!』

 

「やらせるかぁ!!罠カード発動!『バトル・ラッシュ』!!」

 

(このカードは相手モンスターの戦闘での破壊を防ぎ、このバトルで発生するプレイヤーへのダメージをそのまま相手に与える!!)

それは逆転への1枚…しかし、アリトはそれを見抜いていた…!

 

 

『それを待ってたぜ!!そうやって打ってきてくれなきゃ…俺のカウンターが決まらないからな!!カウンター罠「アクセル・フットワーク」発動!バトル中に発生した相手の罠カードの発動を無効にし、破壊する!!喰らえ!クロス・カウンター!!』

ガントレットシューターへと吸い込まれるカウンターの一撃…だが、アストラルは冷静だった。

 

 

(これで遊馬が受けるダメージは『タイマンバトル』を含めて2400…ライフが100残るが…!)

 

「まだだ!!カウンター罠『エクシーズクロス』発動!!」

 

(なっ!?遊馬!待つんだそのカードは!!)

アストラルの予測を無視し…遊馬は逆転の一撃を狙う!!

 

 

「このカードは!相手の罠カードが発動した時に発動できる!デッキからカードを1枚ドローして、そのカードがモンスターカードなら!バトルの間、お互いのモンスターの攻撃力を入れ替え!さらに相手の攻撃力を0にする!!」

 

(だが、モンスター以外を引いた時は自分への戦闘ダメージが倍になってしまう!)

 

「失敗をビビって…奴に勝てるかよ!かっとビング…ドロォォー!!」

一か八かの一発勝負…遊馬の渾身の一撃は…!

 

 

 

「ドローカードは…モンスターカード!『ガンバラナイト』だ─!!」

 

『な、なんだって─!?』

熱き闘士を打ち砕く!

 

 

「いっけぇ!『ガントレットシューター』!ダブル・クロス・カウンターだ!!」

 

『ぐ、ぐああああ─!?』

 

カウンターを決めようとしたリードブローの拳を弾き、ガントレットシューターのロケットパンチがリードブローに直撃、勝利のゴングは遊馬へと鳴り響いた!!

 

 

 

アリトLP0

 

 

遊馬WIN!

 

 

 

 

 

 

「勝った…!勝ったぜぇぇ!!」

 

(……あのカードは…!?)

遊馬がデュエルの勝利に喜ぶ中…アストラルは吹き飛ばされたアリトへと目を向ける、散らばった手札の中…アストラルは持ち前の視力であるカードを見つけた…!

 

(あのカードは…速攻魔法『KOBK(ケーオー・バーン・ナックル)』…!『BK』モンスターが相手を戦闘で破壊した時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与えるカード…もし、遊馬が『エクシーズ・クロス』の発動を躊躇っていれば…負けていたのは私達だった…!)

それは命運を分けた1枚…遊馬の諦めない魂が紙一重の勝利を掴んだデュエルだった…。

 

 

 

「ゆ、遊馬ー!!」

 

「小鳥!?どうして此処に!?」

 

「すいません!よかれと思って黙ってようと思ったんですが…やっぱり小鳥さんには話した方が良かれと思って…」

デュエルの決着がついた後、小鳥と真月が駆けつけてくる…真月が良かれと思ってデュエルの事を小鳥に伝えたのだ…。

 

 

「遊馬…!ごめんなさい!私のせいで決闘なんて…!」

 

「えっ…あ、その…?」

小鳥は事態を把握しているが、遊馬は戸惑う……実を言うと遊馬はデュエルを挑まれたから戦っただけで…何故、小鳥を()()()戦ったのか理解していなかったのだ…。

 

 

『九十九…遊馬…!!』

 

「お前…!」

アリトがフラフラと立ち上がり、遊馬へと歩き出す…!

 

 

「や、やめて!!これ以上は…!」

 

『おい!九十九遊馬!!…お前、面白ぇなあ!!俺はアリトっうんだ!この名前…胸に刻んでおけよ!!今日からお前は…俺のライバルだ!!』

 

「「「へっ…?」」」

急に態度の変わったアリトに遊馬達の目は思わず点になる。

…アリトは生粋の武人決闘者である、色恋よりも熱い戦いを求めるアリトは…ライバルとして遊馬に惚れてしまったのだ……それでいいのか?バリアンの戦士…

 

 

「お、おう!よろしくな!アリト!!」

 

「もう…いったいなんなのよ〜!?意味分かんなーい!!!」

 

バリアンの戦士と思わぬ友情を築いてしまった遊馬…その様子に困惑した小鳥の叫びが夕暮れのハートランドに響いた…。 

 




〜おまけ〜

ピンポーン

「翠さ〜ん…」

「あら?小鳥ちゃん…どうしたの?」

「実は…」

(小鳥説明中…)


「うんうん…それは遊馬君が悪いわねぇ…でも、しょうがないわ…だって遊馬君はまだ小鳥ちゃんに比べて子どもなんだもの…でも大丈夫よ!遊馬君は小鳥ちゃんの事を大切に思ってるはずだから…きっと小鳥ちゃんの想いに向き合ってくれる日が来るわ…」

「そうだといいんですけど…」

「大丈夫!私も応援してるからね…よしよし…」

「え〜ん…」




「(しまった…入りづれぇ…)」←タイミング悪く帰宅した凌牙

「小鳥さんも苦労してるのね…」←扉の前で盗み聞く璃緒




《…なんだか何処かで聞いたような話だねぇ…》←地獄耳のユベル

「ん?なんか言ったかユベル?」←明日香に同じような事をした事がある十代


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バリアン強襲!〜時空の支配者〜

こんにちは!S,Kです!

バリアン達はナンバーズを奪う為、さらなる力を手に人間界に襲来する…。

そして、遊馬が目にするバリアンの脅威とは…!


それでは最新話をどうぞ!


『ドルベ、やはりダメだったようだな』

 

『…ミザエル』

バリアン世界の城…黄色のバリアン・ミザエルがリーダーであるドルベに声をかける…。

 

 

『ギラグとアリトでは埒があかないようだな…奴らは人間界で遊んでいるぞ』

 

『…ああ、こうなったら君に行ってもらう他はないな…』

 

『元よりそのつもりだ』

人間界にアリトを差し向けてからしばらくが過ぎたが…ギラグ・アリトはナンバーズを奪う事ができなかった、それによりドルベは最後の手札をきる事にした…!

 

 

『ミザエル、これを持っていけ』

 

『それは…?』

ドルベが差し出した物…それは赤紫色のエネルギーが封じられた3つのキューブだった。

 

 

『これは「バリアンズ・スフィア・キューブ」…これを使えば…一時的に「スフィア・フィールド」を発生させる事ができる』

 

『なるほど…「スフィアフィールド」の中ならば人間共の世界でも我々バリアン本来の力で戦える…』

 

『そうだ…人間共を洗脳する手間が省ける、そして直接九十九遊馬と戦い、ナンバーズを奪う事ができる…これを使うまでもないと思っていたが…やむを得ない、1つは君に、残り2つはギラグとアリトに渡してやってくれ』

 

『奴らの最後のチャンス…という訳か』

 

『…そういう事だ…頼んだぞ、ミザエル…必ずや九十九遊馬を倒し、ナンバーズを回収するのだ』

 

『わかっている…全てはバリアン世界の為に』

スフィアキューブを受け取ったミザエルはワームホールへと姿を消した…。

 

 

『…人間界…か…』

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ!うわっ…!?」

 

(遊馬…!!)

暗雲に覆われた荒野…遊馬とアストラルはそこを走り続けていた…その理由は…。

 

 

《ギュラアアアア!!》

 

 

(くっ…!追いつかれた!!)

禍々しいエネルギーを纏う黒いドラゴンに追われていたのだ…!

 

 

《ギュラアア…!!ギュアアアア!!》

 

 

(『希望皇ホープ』!ムーンバリ…ぐああああ!?)

 

「アストラル!!」

ドラゴンが息吹を放つ、アストラルはホープを召喚して立ち向かったが…呆気なく吹き飛ばされてしまう!

 

 

(くっ…!!)

 

「アストラル…アストラル─!!」

そしてそのまま黒いドラゴンはアストラルへと襲いかかり…───

 

 

 

ドッスーン!!

 

 

「う、うわあああああ!?!?……ゆ、夢…!?」

遊馬は寝床であるハンモックから落ちた衝撃で目を覚ます…今までの事は夢だったのだ。

 

 

「いてて…夢にしては、生々しい夢だったぜ……チクショウ…!夢にビビってどうするんだ…!」

遊馬は皇の鍵を握り締める、アストラルを守る為に戦えるのは自身だけ…その思いが遊馬自身を追い詰めていた…。

 

「こんなんで…アストラルを守りきれるのかよ…!」

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

「先生…まだ無理に戦わなくてもいいんだぜ?」

 

「何言ってる、1人よりも2人で戦った方がお互いに負担が軽くなるだろ?…俺が復活したのに今度はお前がダウンしたら元も子もないし…」

 

「だったら早めに呼んでくれって!」

 

「すまん…次からは気をつける」

 

遊海が過労でダウンしてから数日…ようやく調子を取り戻した遊海はキャプテン・ブレイブこと十代と共にハートランドシティのビル上にいた。

事件の発生数は大きくは変わらないが…対処する人数が増えた事で負担も軽くなっている…。

 

 

「そういえば先生…怪しい奴を見かけたんだけど…」

 

「怪しい奴?」

 

「ああ、公園でにゃーにゃーネコと話してる女の子なんだけど…」

 

「それは…遊馬の友達のキャットちゃんだな、ネコと会話できるんだ」

 

「それから小さいシルクハットを被って…他の奴らに嘘の事を教えてる…」

 

「それも遊馬の友達だな」

 

「…挙動不審な変な顔のロボット」

 

「…たぶんオービタル7だな、遊馬の友達のカイトが作ったロボットだよ」

 

「…なぁ、遊馬の知り合いって…変な奴が多くないか?」

 

「ははっ…俺達が言えた事じゃないだろ?精霊とか神様とか…」

 

「100年以上生きてる最強デュエリストとかな!」

 

「ふっ…言うじゃないか十代」

他愛のない話をする遊海と十代…今日もそれぞれに2人ずつデュエリストを止め、僅かな休憩を取っていたのだ…。

 

 

「それからもう1人…遊馬と一緒にいる()()()()()()()の奴…彼奴、人間じゃないだろ?」

 

「気付いたか、流石だな……奴がバリアンだ」

 

「っ…!!先生、どうして遊馬に教えないんだ…?」

十代は遊海へと疑問をぶつける…覇王の力を持ち、数多の悪を見てきた十代は真月の正体に気付いていた…!

 

 

 

「十代…これから遊馬達は大きな挫折を……裏切りを経験する事になる……だが、それが無ければ…待ち受ける『絶望』に勝つ事ができなくなる……覇王の力と絆でダークネスを倒したお前のように…」

 

「…今回の黒幕、そんなにやべぇのかよ…」

 

「…俺とお前と遊星……そしてアテムと遊戯がいて…勝率4割ってところか…高く見積ってな…」

 

「でも…()()()()()?」

 

「ああ、きっと遊馬達ならこの世界を救える…俺達はその露払いをすればいい…!」

 

「なら…もう1回パトロールだな!デュエリストを操ってる奴を見つけないと!」

 

「ああ…!この街の平和は俺達が守る!!」

休憩を終えた遊海達は立ち上がる、街の平和を守る事…それが遊馬達の勝利に繋がると信じて…。

 

 

 

ピリピリピリ!ピリピリピリ!

 

 

「むっ…?小鳥ちゃん…?もしもし!」

 

『ゆ、遊海さん!助けて!!バリアンが…バリアンが遊馬を!!』

 

「っ─!!」

小鳥からの緊急連絡…それはバリアンの襲来を知らせるものだった…!!

 

 

「小鳥ちゃん!今どこにいる!?」

 

『決闘庵の近くです!急に赤い光が飛び出してきて…!』

 

「すぐに行く!待ってろ!!」

遊海は決闘庵のある山の方角を見る…山は厚い雲に覆われていた…!

 

 

 

《マスター…!商店街で事件情報です!》

 

「先に行ってくれ先生!後から追いかける!!」

 

「すまない十代!場所はDゲイザーに送る!『閃光竜』!!」

 

《キュオオン!!》

十代に事件を任せた遊海は閃光竜の背に乗り、遊馬達のもとへ急いだ…。

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「まったくもう…ビッチャビチャじゃねぇかー…!」 

 

「ゴメンゴメン!!…でも、少しは元気になったじゃない!」

 

「あっ…!?もしかして…オレの事心配して…」

 

「もう…やっと気付いた!遊馬は明るくないとダメだぞ?」

とある休日、遊馬と小鳥は春おばあちゃんのお使いで再び決闘庵を訪れていた…なお、お使いは春おばあちゃんの口実…実際は自慢の食欲まで無くしてしまった遊馬の気分転換の為だった…。

 

数日前に見た『黒いドラゴン』の悪夢…そこから遊馬はバリアン、そしてカオスエクシーズへの対抗策を考えるあまり元気を失っていた。

それを心配した春おばあちゃんは遊馬の師匠の1人である六十郎に頼る事にしたのだ…なお、六十郎はふらりと旅に出て不在だったのだが…弟子である闇川に『攻めと守り』のカードを託していた、そのおかげで遊馬は元気を取り戻し、小鳥と笑顔で遊べるまでに回復したのだ。

 

 

 

「曇ってきたから早く戻りましょ!」

 

「そうだな!このままじゃ風邪引い…危ねぇ!!」

 

「きゃあ!?」

 

ブゥン!!

 

雑談をしながら決闘庵への道を歩んでいた遊馬達…そこに赤いエネルギー弾が襲いかかるが…遊馬は咄嗟に小鳥を押し倒して回避する!

 

 

「小鳥!大丈夫か!?」

 

「う、うん…!いったい何が…!?」

 

『お前が九十九遊馬だな…?』

 

「っ!?」

聞こえた声に遊馬は振り返る…その視線の先では貴族のような服装をした金髪の美少年が木の上から遊馬を見下ろしていた…!

 

 

「テメェ…!いきなりなにしやがる!!」

 

『フン…「バリアンズ・スフィア・フィールド」…展開!』

ギィン!! バリバリバリバリ!!

 

遊馬の問いに答える事なく、少年が空中に小さなキューブを投げる…そこから赤紫のエネルギーが周囲に広がり、球状のスフィア・フィールドとなった…!

 

 

 

「これは…スフィアフィールド!?お前はいったい…!?」

WDCの決勝で体験した無重力空間に囚われた遊馬は戸惑いの声を漏らす…!

 

 

『我が名はミザエル…九十九遊馬、お前のデュエルの最後の相手になる者だ…!』

 

「くっ…こんな妙な仕掛けを使ってくるって事は…お前はバリアンか…!!」

遊馬はミザエルと名乗った少年を睨む、彼から感じるオーラは…今まで戦ったどの刺客よりも強いものだった…!

 

 

「(バリアン…つまり、コイツを倒さなきゃアストラルを守れねぇって事か…!!)」

遊馬は皇の鍵を握り締める…ミザエルから感じるオーラから只者ではない事を感じ取ったのだ…。

 

『どうした?怖気づいたか?』

 

「馬鹿言うんじゃねぇ!!な訳ねぇだろ!!」

 

『フハハ…!精一杯の強がりか…ならばこのデュエル…受けるのだな…!!』

 

「くっ…!当たり前だ!!勝負だ!バリアン!!」

不敵な笑みを浮かべるミザエル…遊馬はアストラルを守る為に決闘を挑む!!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対ミザエル

 

 

 

(遊馬…!?いったい何が起きている!?)

 

「アストラル…!奴はバリアンだ!!突然襲って来やがった!」

 

(なに…!?)

 

『ついに現れたか…アストラル…!!』

異変を感じたアストラルが皇の鍵から飛び出してくる…それを見たミザエルは獰猛な笑みを浮かべた…!

 

 

「心配するな…オレは絶対に負けねぇ!!」

 

 

 

39

 

 

「現れろ!『No.39希望皇ホープ』!!」

先攻を取った遊馬は速攻でホープをエクシーズ召喚…そして引き込んだ2枚のカードを見つめる…!

 

 

「(手札には六十郎じいちゃんから貰った『オーバーレイ・チェーン』と『オーバーレイ・バレット』がある…負けられないこのデュエル…オレが使うべきなのは…!)六十郎じいちゃん…いや、師匠!!力を貸してくれ!オレは装備魔法『オーバーレイ・チェーン』を発動!これにより『ホープ』のORUは相手の発動した効果を受けなくなる!!」

遊馬が発動したのは「守り」のカード…カオスエクシーズに対抗する為にORUへの影響を受けなくするカードだった。

 

 

(そうか…これなら『バリアンズ・フォース』を発動されてもORUを奪われずに済む…だが、意外だな…君が『オーバーレイ・バレット』を発動しなかったとは…)

 

アストラルは遊馬の手札に残された『攻め』のカードを見る…その効果はエクシーズモンスターのORUを全て墓地に送り、1つに付き500ダメージを与えるカード…まさに短期決戦型のカードだった。

 

 

「…今回は慎重に行くんだよ…!」

 

(なるほど…悪くないタクティク「オレはこれでターンエンドだ!!」)

遊馬はこれでターンを終える…だが、遊馬は気付いていなかった…これから戦う相手の恐ろしさを…!

 

 

 

『ククク…おあつらえ向きに「希望皇ホープ」を呼び出したか…行くぞ…!』

 

 

 

『私はレベル8の「星間竜パーセク」と「半月竜ラディウス」でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!』

ミザエルの呼び出した2体のドラゴンが銀河へと飛び込み、爆発する!

 

 

『宇宙を貫く雄叫びよ…遥かなる時を遡り、銀河の源より蘇れ!!顕現せよ!そして我を勝利へと導け!!「No.107」!!』

 

 

107

 

 

『「銀河眼の時空竜(ギャラクシー・アイズ・タキオン・ドラゴン)」!!』

ミザエルの場に宝石の嵌め込まれた四角錐が現れ、変形…「107」の数字を背負う…2体目の銀河眼(ギャラクシー・アイズ)が顕現する!!

 

 

《ギュラアアアア!!!》

 

 

「な…なん、なの…!?」

時空竜の出現によって小鳥は尻もちをつく…彼女を襲ったのは…言い知れない『恐怖』だった…。

 

 

(107番目の、ナンバーズだと!?)

 

「まさか、あの夢が…本当に…!?」

自身の知らない「107番目のナンバーズ」に動揺するアストラル…だが、遊馬はそれ以上に動揺していた…夢にみた「黒きドラゴン」…それが現実に現れてしまったのだ…。

 

 

「お、おい!アストラル!ナンバーズは全部で100枚じゃなかったのかよ!?」

 

(そうだ…!遊海の持つ「∞」を除いた…100枚に分けられた私の記憶のはず…!?ならば()()()()()()()は何なんだ…!?)

遊馬の問いかけにアストラルは動揺しながら答える…ナンバーズをもっともよく知っているはずのアストラルでもイレギュラーたるナンバーズの正体はわからなかった…!

 

 

 

ブルル…ギュイイーン!!

 

 

「チィ…!スフィアフィールドだと!?」

 

「シャーク!璃緒さん!?」

 

「小鳥さん!いったい何があったの!?」

タキオンドラゴンの出現と時同じくしてバイクに乗った神代兄妹が駆けつける…休日に買い物を楽しんでいた際に璃緒の「預言」が発動…嫌な予感を感じた凌牙が遊馬達を追って来たのだ…。

 

 

 

 

《ギュラアアアア!!!》

 

『むっ…?どうした「タキオン」、何を逸っている…そうか…早く戦いたいのだな…!なら、その願いを叶えてやろう!!』

 

「くっ…!?」

恐ろしい咆哮を轟かせるタキオンドラゴン…ミザエルはその力を遊馬達へと向ける…!

 

 

『バトルだ!「タキオンドラゴン」で「ホープ」を攻撃!』

 

「無駄だ!『ホープ』の効果発動!ムーンバリア!!」

タキオンドラゴンの攻撃に遊馬はホープの効果を発動…鉄壁のバリアで攻撃を跳ね除ける!

 

 

「よし…!!」

 

『ふっ…それで防いだつもりか!!』

 

「なにっ!?」

 

『「タキオンドラゴン」の効果発動!1ターンに1度!バトルが終了した時、ORUを1つ使い!フィールドの自身以外のモンスター全ての効果を無効にし、攻撃力・守備力を元の数値に戻す!タキオン・トランス・ミグレイション!!』

 

「なっ…!?『ホープ』!?」

ニュートラル体に戻ったタキオンドラゴンから虹色の光が放たれる…その光を受けたホープもニュートラル体に変化してしまう!!

 

 

『さらに!このバトル中にカード効果が発動した時!その数1枚につき「タキオンドラゴン」の攻撃力は1000アップする!時空を遡り…再び顕現せよ!「銀河眼の時空竜」!!』

 

《ギュラアアアア!!》

ニュートラル体から現れたタキオンドラゴンが再び咆哮を轟かせる!!

 

 

『そして…「タキオンドラゴン」が自分のターンに効果を発動した時、「タキオンドラゴン」はもう一度攻撃できる!!』

 

(馬鹿な!!このモンスターは、過去に戻って…そこで有利な未来を選択する事ができるというのか!?)

あまりに強力な効果にアストラルが叫ぶ…タキオンドラゴンはまさに…「時空の支配者」と呼ばれる力を持っていたのだ…!!

 

 

 

『バトルだ!「タキオンドラゴン」で「ホープ」を攻撃!!殲滅のタキオン・スパイラル!!』

 

《ギュラアアアア!!》

 

「ぐっ!?うわああああ!!」

タキオンドラゴンから放たれた破壊光線は力を封じられたホープを粉砕…遊馬とアストラルを吹き飛ばす!!

 

 

 

ビリビリ…バリバリバリバリ!!

 

 

 

「がっ!?うあ"あ"あ"あ"─!?!?

 

(ぐっ…!?遊馬…遊馬ぁぁぁ!!)

さらにバリアンの作戦は終わらない…吹き飛ばされた遊馬はバリアンズ・スフィア・フィールドの壁に激突…張り巡らされたバリアンの力が電撃となり、遊馬に襲いかかったのだ!

 

 

 

「あ…うぅ…」

 

(遊馬!!大丈夫か!?しっかりしろ!!)

電撃から開放された遊馬は倒れ込む…歴戦を戦い抜いた遊馬といえどもまだ子供…強力なバリアンの力に耐えられなかったのだ…。

 

 

『脆い…脆いなぁ、人間というものは…「タキオンドラゴン」のたった一撃でそのザマとは…』

 

「くっ、くそぉ…!!ぐぅっ!?」

ミザエルの見下した言葉に必死に立ち上がろうとする遊馬…だが、手足は強張り…立つことができない…!

 

 

『そうだ…!立ち上がれ!貴様にはデュエルを続けてもらわねば困る、立ち上がり…無様に負けて私にナンバーズを渡すのだ!!…立てないのなら…潔くっサレンダーしろ…!!』

 

「ぐっ…!オレは、サレンダーなんてしない…!!アストラルを、守らな、きゃ…」

 

(遊馬!!)

ミザエルの言葉に歯向かうように立ち上がろうてする遊馬だったが…ついに限界を迎えてしまう…!

 

 

 

「くそっ…!こうなったらオレが!!」

遊馬の状態を見た凌牙がデュエルディスクを取り出す…その時だった…!

 

 

「待て!そのデュエル…オレが引き継ごう!!」

 

「カイト!?」

周囲に響く凛とした声…それは時空の異常を観測し、現場へと駆けつけたカイトのものだった…!

 

 

【…呼んでいる…ギャラクシーアイズが…ギャラクシーアイズを呼んでいる…!遥かな時空を超えて…2体のドラゴンが…互いを引き寄せあっている…!】

 

「璃緒…!?2体のドラゴン…まさか…!」

再び発現する璃緒の預言…それはミザエルとカイト…「時空竜」と「光子竜」…その2体のドラゴンを現すものだった…!

 

 

 

 

「あとは…オレに任せて休んでいろ遊馬、アストラル…」

 

「かい、と…」

 

(…すまない、カイト…)

ミザエルによってスフィアフィールドに招かれたカイトは遊馬達をかばうように前に立つ…!

 

 

「いいんだ…これはオレの問題でもある」

 

(君の…?)

 

「ああ…ギャラクシーアイズ使いは…1人でいい…!そしてそれは…オレだ…!!」

 

 

そして…ミザエルとカイト…2人のギャラクシーアイズ使いの戦いが始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「超銀河眼の光子龍」…これならば…私の本気を出すのに相応しい!!』

 

デュエルは熾烈を極めた…時空を操り、何度も効果を発動するタキオンドラゴン…カイトはフォトンドラゴンと共に互角の戦いを繰り広げ、ついにミザエルを追い詰めた…だが、ミザエルは…奥の手を隠していた!

 

 

『見るがいい!カイト!これが私の本気だ!!バリアルフォーゼ!!』

 

「なにっ!?」

カイトとフォトンドラゴンに敬意を持ってミザエルは真の力を開放…黄色の体に白い仮面を着けたような異形の肉体…本来の姿、バリアン体へと変身する!

 

 

 

(バリアン…その正体を現したか…!)

 

「面白い…それが貴様ら本来の姿という訳か…!」

 

『フッ…今から貴様にバリアンの力を見せてやろう!「RUM-バリアンズ・フォース」発動!私は「銀河眼の時空竜」でオーバーレイネットワークを再構築!…混沌より生まれしバリアンの力…ナンバーズに宿りて新たな混沌を生み出さん!!カオスエクシーズチェンジ!!』

闇の閃光が世界を照らす…カオスの力がギャラクシーアイズのさらなる力を目覚めさせる!!

 

 

『逆巻く銀河を貫いて…時の生ずる前より蘇れ!永遠を超える竜の星!!』

 

 

107 

 

 

『顕現せよ!「CNo.107」!「超銀河眼の時空龍」!!』

 

「『超銀河眼の時空龍』…だと…!?」

カイトの前に黄金の炎に包まれた巨龍が現れる…だが…!

 

 

《■■■■■■■─!!!》

 

 

『い、いかん!エネルギーが大きすぎる!!スフィアフィールドが保たない!!』

ネオタキオンの出現と共にスフィアフィールドが歪み、崩れ始める…ネオタキオンの内包するエネルギーにスフィアフィールドが耐えられなかったのだ!!

 

ビキビキ…ビキビキ…

 

『くっ…!?このデュエル!貴様に預けるぞ!我が名はミザエル!!いつか2体のギャラクシーアイズを支配する者だ─!!』

 

バリーン!!

 

スフィアフィールドが不安定になった事でバリアン体を保てなくなったミザエルは捨て台詞を残して撤退する…デュエルはそこで中断された…。

 

 

 

 

 

 

「スフィアフィールドがっ、うおっ!?」

 

《カイト様─!!》

ミザエルが去った直後、スフィアフィールドが崩壊…カイト達は空中に投げ出される、カイトはオービタルが回収したが…。

 

 

「っ…!!遊馬─!!」

ダメージによって気を失った遊馬は木をクッションにしながら地面に落下…さらに勢いを殺しきれず、2体のギャラクシーアイズの共鳴で発生した地面の裂け目へと転がってしまう、慌てて凌牙は手を伸ばしたが…

 

ガラッ…!

 

 

「しまっ…!うわああああ!!」

 

「凌牙!!遊馬!!」

 

「遊馬…そんな…いやあああああ!!!」

 

「凌牙…凌牙ぁぁぁ!!!」

 

 

遊馬を掴んだ凌牙ごと崖が崩落…底の見えない谷底へと落ちていく……そして、残された璃緒と小鳥の悲鳴が森へと木霊した…。

 

 

 



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バリアン強襲!〜白き盾〜

こんにちは!S,Kです!

遊馬達のもとへ向かったはずの遊海…その行方は…?


それでは最新話をどうぞ!


「頼むぞ!閃光竜!!」

 

《キュオオオン!!》

十代と別れた遊海は閃光竜と共に遊馬の戦う決闘庵へと急いでいた…。

 

 

「恐らく相手はミザエル…!デュエルは引き分けで終わるが…遊馬と凌牙が崖から落ちて怪我をするはずだ…急がないと…!!」

遊海は記憶を思い出す…遊馬とミザエル、そしてそれを引き継いだカイトとミザエルのデュエルによって大地が崩れ、遊馬達は怪我を負ってしまう…描写では軽い怪我で済んでいたが…万が一を防ぐ為に遊海は急いでいた。

 

 

 

 

《マスター!!亜空間から超高エネルギー体が急速接近!!》

 

「なっ…」

 

 

ギィン─! ズッドォォン!!

 

 

《キュオ!?》

 

「ガッ─!?」

 

《マスター!!》

アヤカの警告も虚しく…遊海達の進行方向にワームホールが展開、そこから飛び出してきた赤紫色の光球と閃光竜が正面衝突、墜落する!!

 

 

 

ガッシャーン!!

 

 

 

「ぐえっ!?ガハッ…!!」

墜落した遊海はハートランド外れの川辺に叩き付けられた…。

 

 

 

「くそ、なんだってんだ…!!」

 

ギィン…!

 

ふらつきながら立ち上がる遊海…その正面に赤紫の光が緩やかに着地する…!

 

 

『…突然の無礼を詫びよう、まさか人間界に来て早々お前と出会う事になるとは…私も運が良い…』

 

「お前は…!」

土煙が晴れる…そこに立っていたのは灰色のローブを被った男だった…!

 

『私の名はドルベ…バリアンの指揮官だ、お前は鋼の決闘者・白波遊海で間違いないな?』

ローブの下から鋭い眼光が遊海を睨んだ…。

 

 

 

「バリアン…!?なんでこのタイミングで…!!」

遊海はドルベを睨む…このタイミングで彼が来る事は想定外の事だった…!

 

 

『個人的にお前に興味が沸いてね…司令官が前線に出るのは愚策だが、私もまた戦士の1人…問題はないだろう』

 

「俺に興味だと…?」

 

『そうだ…白波遊海、お前は何者だ?何故、我らと同じ…オーバー・ハンドレット…100を超えるナンバーズを持っている?』

 

「っ…!(そうか、あの戦いを見ていた訳か…)」

ドルベが人間界を訪れた目的…それは遊海の持つ『No.∞』の正体を確かめる為だったのだ…!

 

 

「…さぁな、俺の血と汗と奇跡で生まれたカードだって言ったら信じるか?」

 

『ふっ…バリアンの熱血男(アリト)が聞いたら信じるだろうが…私には関係ない、全てのナンバーズを集めるのが我らの使命…お前の持つナンバーズ、回収させてもらう!バリアンズ・スフィア・フィールド展開!!』

 

 

ギィン!! バリバリバリバリ!!

 

ドルベが空中に小さなキューブを弾く…そこから赤紫のエネルギーが周囲に広がり、球状のスフィア・フィールドとなった…!

 

 

「くっ…!戦いは避けられないか…!ドルベだったな!戦いの前に1つ、聞きたい事がある!!」

 

『なんだ?戦士の礼儀だ…答えられる事なら答えよう』

 

「ハートランドシティで一般のデュエリスト達が見境なく暴れる事件が多発している!それはお前の指示か!!」

それは遊海がもっとも知りたい事…それに対してドルベは…。

 

 

『…私はそんな指示は出していない、そんな事をしそうな者に心当たりはあるがな…』

 

「そうか、それで充分…!人間界を守る者として…お前を倒す!!」

答えを聞いた遊海は封じていた闘気を開放する!

 

 

『凄まじいオーラだ、人間でこれ程の力を使う者がいるとは…ならば、私も全力で相手をしよう!バリアルフォーゼ!!

ドルベもまた全力を開放しローブを脱ぎ捨てる…現れたのは灰色の体に灰色の瞳、そして額に青い宝玉をはめた異形の人間…それこそがドルベのバリアン体の姿だった…!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

遊海LP4000

ドルベLP4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『伝説の預言者マーリン』を召喚!!」

 

《おやおや…少し大変な事態のようだね?》

白いローブを纏う魔術師が現れる! ATK1400

 

「『マーリン』の効果発動!自身をリリースする事でデッキから『聖騎士アルトリウス』を特殊召喚!」

 

《では…王の話をするとしよう!》

マーリンが花吹雪と共に消え去る…そして伝説の剣を抜いた青年騎士が現れる! ATK1800

 

 

「さらに自分フィールドに光属性の通常モンスターがいる時!『聖騎士ガウェイン』は守備表示で特殊召喚できる!」

騎士王の臣下たる太陽の騎士が現れる! DEF500

 

「俺はレベル4の『アルトリウス』と『ガウェイン』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!聖騎士を率いる常勝の王よ…今こそ王道を突き進め!『聖騎士王アルトリウス』!!」

威厳のある重厚な鎧を纏いし騎士王が現れる! ATK2000

 

 

「さらに手札から装備魔法『聖剣カリバーン』と『天命の聖剣』を装備!効果によって攻撃力が500アップし、1ターンに1度戦闘・効果では破壊されなくなる!!」

騎士王の両腕に伝説の剣と祝福を受けた盾が装備される! ATK2500

 

「さらに『カリバーン』の効果発動!1ターンに1度、500ライフを回復する!」

聖剣から癒やしの力が放たれる!

 

遊海LP4000→4500

 

 

「俺はカードを伏せ、ターンエンド!」

 

遊海LP4500

アルトリウス(カリバーン・天命) 伏せ1 手札1

 

 

 

『ほう…中々の手際だ…ならば我が力…存分に味わうがいい!!』

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『私は「光天使(ホーリー・ライトニング)ウィングス」を召喚!』

無機質な顔のオブジェを刻んだ翼のモンスターが現れる! ATK1200

 

 

『「ウィングス」の効果発動!召喚に成功した事で手札から現れろ!「光天使ブックス」!!』

本のような形をした天使が現れる! ATK1600

 

『さらに「ブックス」の効果発動!手札の魔法カード「我が身を盾に」を墓地に送り、手札の「光天使ソード」を特殊召喚!』

剣のような体を持つ天使が現れる! ATK1400

 

 

『我がバリアンの力を見るがいい!!私はレベル4の「ウィングス」「ブックス」「ソード」の3体でオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!』

 

 

102

 

 

『現れろ!「No.102」!光の使いよ!今、悠久の時を超え、輝きの衣を纏いて…彼の地に降臨せよ!!「光天使グローリアス・ヘイロー」!』

光の爆発と共に『100』を超える異端のナンバーズ…光を纏いし天使の騎士が現れる!! ATK2500

 

 

「100を超えるナンバーズ…これが、オーバー・ハンドレット・ナンバーズか…!」

遊海はグローリアスヘイローの纏うオーラに圧倒される、光でありながら闇…清廉でありながら邪悪…遊海の持つ『ANo.』には感じられない、相反する不気味さを感じたのだ…。

 

 

『「グローリアスヘイロー」の効果発動!ORUを1つ使い!相手モンスターの効果を無効にし、攻撃力を半分にする!』

 

「くっ…!」

グローリアスヘイローが光の弓矢を放つ…それは騎士王を貫き、弱体化させる!

 

アルトリウスATK2500→1250

 

 

『バトルだ!「グローリアスヘイロー」で「アルトリウス」を攻撃!ライトニング・クラスター!!』

グローリアスヘイローが光の槍を投げ放つ!

 

「だが!『天命の聖剣』の効果で『アルトリウス』は破壊されない!」

 

 

『ふっ…それはどうだろうな!私は速攻魔法「禁じられた聖槍」を発動!「アルトリウス」の攻撃力を800ダウンさせ、魔法・罠の効果を受けなくなる!消え去るがいい!!』 

 

「なにっ!?ぐああああ!!!」

聖槍の後押しを受けた光の槍が騎士王を貫通…大爆発を起こした!!

 

アルトリウスATK1250→450

 

遊海LP4500→2450

 

 

 

ビリビリ…バリバリバリバリ!!

 

 

 

「ぐっ!?があ"あ"あ"あ"─!?!?

 

《マスター!!!》

さらにバリアンの攻撃は終わらない…吹き飛ばされた遊海はバリアンズ・スフィア・フィールドの壁に激突…張り巡らされたバリアンの力が電撃となり遊海の体を焼き焦がす!

 

 

『私は…これでターンエンドだ』

 

ドルベLP4000

グローリアスヘイロー 手札1

 

 

 

「がっ…あ…!(これが、バリアンの力…今までの、比に、ならな、い…!)」

バリアンの力の直撃を受けた遊海は立ち上がる事ができない…魂にまで響くような一撃が遊海の体力を奪い去ってしまったのだ…!

 

 

『…やはり人間とは脆いな…我らとは違う、さぁ立て!お前がデュエリストであるのならば…!』

 

「く、そ…!!人間、舐めんじゃねぇぇ!!」

遊海は気合いだけで立ち上がる!!

 

 

 

「おれの、ターン!…ドロー!!」

「リバース魔法『聖騎士伝説の終幕』を発動!!相手の場にモンスターがいて、自分フィールドにモンスターが存在しない時!墓地の『聖騎士アルトリウス』を特殊召喚し、墓地の『聖剣カリバーン』を装備する!!」

墓地からアルトリウスが聖剣を手に蘇る! ATK1800→2300

 

 

「『カリバーン』の効果発動!ライフを500回復する!」

 

遊海LP2450→2950

 

 

「さらに、魔法カード『増援』を発動!デッキから『聖騎士ベディヴィエール』を手札に加え、召喚!」

銀髪の聖騎士が現れる! ATK1600

 

「『ベディヴィエール』の効果!デッキから『聖剣EX-カリバーン』を墓地に送る!そして俺は…2体のモンスターでオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

 

 

 

「現れろ!『No.∞』!俺の歩みし戦いのロード…今こそ未来を切り開け!!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!!」

光の爆発と共に決闘盤を模した大剣が遊海の傍らに突き刺さる! ATK2500

 

 

『それがお前のナンバーズ…「無限」を持つモンスターか…!』

 

「『決闘の守護者』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した時!カードを1枚ドローできる!…バトルだ!『決闘の守護者』で『グローリアスヘイロー』を攻撃!」

 

『だが、攻撃力は互角だ!!』

 

「『決闘の守護者』の効果発動!モンスターとバトルする時!ORUを1つ使い!バトルするモンスターの攻撃力または守備力の高い数値を自身の攻撃力に加える!願いを力に!!」

 

『なにっ!?』

遊海が魂の聖剣に虹色の魔力を込める!!

 

決闘の守護者ATK2500→5000

 

 

「受けてみろ!!これが我が魂の一撃!!勝利へ導く決着の剣(デュエル・カリバー)!!」

 

『くっ…!「グローリアスヘイロー」のさらなる効果発動!自身のORUを全て使い、戦闘・効果での破壊を無効にし、ダメージを半分にする!!うおぉぉ!!』

遊海の振るった光の刃がグローリアスヘイローに直撃…だが、グローリアスヘイローは破壊を免れる!

 

ドルベLP4000→2750

 

 

「くっ…!これで、ターンエンド…!」

 

遊海LP2950

決闘の守護者 手札2

 

 

 

 

『これが、人間界最強と謳われたデュエリストの力…いいだろう…!我が力の真髄を見るがいい!』

 

 

 

『私のターン!ドロー!!』

『私は魔法カード「RUM-バリアンズ・フォース」を発動!!「グローリアスヘイロー」1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!』

グローリアスヘイローが銀河へと飛び込み、暗黒の爆発が起きる!!

 

 

102

 

 

『現れろ!「CNo.102」!光の使いよ…今、久遠の時を超え…漆黒の衣を纏いて我を彼の地に導け!!「光堕天使(アンホーリー・ライトニング)ノーブル・デーモン」!!』

カオスの力を纏いし堕天の黒騎士が現れる! ATK2900

 

 

「カオスナンバーズ…!!」

 

『これがバリアンの力の真髄…!「バリアンズフォース」のさらなる効果発動!カオスエクシーズの召喚に成功した時、相手のエクシーズモンスターのORUを吸収し、攻撃力を300下げる!カオス・ドレイン!』

魂の聖剣のORUが奪われ、弱体化する!

 

 

決闘の守護者ATK2500→2200 ORU1→0

 

ノーブルデーモン ORU1→2

 

 

『さらに「ノーブルデーモン」の効果発動!このカードが「グローリアスヘイロー」をORUとしている時!カオスORUを1つ使い、相手モンスターの効果を無効にし攻撃力を0にする!!』

 

「ぐっ…!?ぐうぅぅ…!?」

堕天の騎士の槍が魂の聖剣の力を完全に奪い去る…そして、引きずられるかのように遊海も膝をついてしまう…!

 

決闘の守護者ATK2200→0

 

 

 

『さらに魔法カード「ホーリー・レイジ」を発動!自分フィールドの光属性モンスター「ノーブルデーモン」を破壊する!…だが、さらに「ノーブルデーモン」の効果発動!自身が破壊される時!カオスORUを全て使い、破壊を無効にする!さらに!このカードの攻撃力分のダメージを相手に与える!!』

 

「なっ…!?ゴハッ…!?」

 

 

ビリビリ…バリバリバリバリ!!

 

 

がっ…あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!

 

《そんな…!マスター!!》

ノーブルデーモンが手にした闇の槍が遊海の体を貫き、スフィアフィールドに磔にする…そして再び電撃が遊海の体を蹂躪した…!

 

 

遊海LP2950→50

 

 

 

『この一撃を餞に…散るがいい!「ノーブルデーモン」で「決闘の守護者」を攻撃!!ダークネス・クラスター!!』

カオスの力を宿した一撃が遊海に放たれる!

 

 

「あ"あ"あ"…こんな、ところで……負けて…たまるがぁぁぁ!」

 

『なにっ!?』

遊海は黄金の鎧を纏い突き刺さった槍を粉砕…逆転を賭けたカードを発動する!!

 

 

「相手モンスターとバトルする時!『オネスト』を手札から捨てる事で…光属性の『決闘の守護者』の攻撃力に相手モンスターの攻撃力を加える!!人間の…俺達の絆を…舐めるなぁぁぁ!!」

絆の力を糧に…遊海は死力を振り絞る!

 

決闘の守護者ATK0→2900

 

 

『相討ち狙い…!ならば、迎え討て!「ノーブルデーモン」!!』

 

「束ねるは友との絆…宙に煌めく命の輝き!闇を照らせ!絶望祓う希望の剣─(デュエル・カリバー・ホープ)!!」

 

 

 

ぶつかりあう光の剣と闇の槍…相反する2つのエネルギーは爆発的に巨大化し───

    

 

 

 

 

 

 

 

ビシビシ…バリーン!!

 

 

 

 

ドオオォォン!!

 

 

 

 

 

スフィアフィールド諸共に大爆発を起こした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

─スフィアフィールド崩壊の為、デュエル強制終了…─

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ…よもや、スフィア・フィールドが壊れるとは…!』

爆発によって吹き飛ばされたドルベが立ち上がる…その目線の先には川の反対側まで吹き飛ばされ、土手にめり込んで気絶した遊海がいた…その右腕はあらぬ方向に曲がってしまっている…。

 

 

『……人間界最強のデュエリスト…その名に偽り無しか…今回はお前の力に免じて退くとしよう…さらばだ、誇り高きデュエリストよ…!』

そのままドルベはワームホールへと姿を消した…。

 

 

 

 

《Error、Error…error……》

 

「(…ぜんしん、いたい…いのち…あるだけ…マシ、か………ごめん、みどり……りょうが…ゆうま…ぶじで……いて、くれ……)」

 

爆発の衝撃でアヤカもエラー状態に陥ってしまう中……遊海は意識を手放した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ドルベ、今戻っ……どうしたのだ!その傷は!?』

 

『ミザエル…よく戻った、ナンバーズの回収はどうなった?』

バリアンの城にミザエルが帰還する…彼が目にしたのは全身に傷を負ったドルベの姿だった。

 

 

『九十九遊馬からのナンバーズ回収は失敗した…私にとっての宿命と出会ってしまったからな…それより、その傷はどうしたのだ…!』

 

『…私も人間界に向かっていたのだ、白波遊海の持つ正体不明のナンバーズを回収する為に…だが、人間界最強の名は伊達ではなかった…痛み分けで終わってしまったよ』

 

『お互いに失敗した訳か…フン、ならば後はギラグとアリトに任せるしかあるまい』

 

『…私を責めないのか?』

 

『お前ほどの男が失敗したのだ…白波遊海はそれほどの強者だったのだろう、責めるのも無粋というものだ』

 

『…すまない、次は…必ず仕留めてみせよう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【だああああ!!ドルベの野郎!余計な事しやがってぇぇぇ!!】

人間界某所…1人の男が怒り、荒ぶっていた…。

 

 

【あのヤローをせっかくあそこまで弱らせたのによぉぉ!!オレ様の嫌がらせ作戦がパーじゃねぇかぁぁ─!!?】

 

『…ベクター様、この後は如何しますか?』

 

【チィ…!あの傷なら奴はしばらく戦えないはずだ…アゴール!洗脳する人数を減らして適当に暴れさせておけ!それで充分だ!】

 

『御意に…』 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシ…パリン!

 

 

「…えっ…!?」  

洗い物をしていた翠は手を止める…洗っていた皿が何もしていないのに真っ二つに割れてしまったのだ…。

 

「……まさか…」

 

いわゆる虫の知らせ…嫌な予感を感じる翠、それは現実となってしまう…!

 

 

ピリピリ!ピリピリ!

 

 

『母さん!!母さん!!』

 

「璃緒ちゃん!?どうしたの!!」

鳴り響くDゲイザーの着信音…それは璃緒からの緊急連絡だった!

 

『バリアンの襲撃があって!遊馬が襲われて、凌牙が崖から落ちて!!』

 

「っ─!?……落ち着いて!近くに誰かいる?遊海さんに連絡は!」

パニックになりかけながら状況を伝える璃緒…翠は深呼吸をして璃緒に問いかける。

 

 

『父さんには、小鳥さんが連絡してくれたらしいの…今はカイトさんが凌牙達を助けようとしてくれてる!』

 

「…待って、遊海さん…到着してないの…!?」

 

『う、うん…』

翠の脳裏に嫌な予感が過ぎった、バリアンの襲撃を知ったなら遊海はすぐに駆けつけるはず…それがまだ到着していないという事は…

 

 

「璃緒ちゃん!とにかく救急車を呼んで!すぐに折り返すから!」

 

『えっ、母さ─!!』

璃緒との通話を切った翠は遊海へと連絡を取る、だが…遊海に連絡を取る事はできなかった…。

 

「出ない……十代君!!」

 

そして翠は十代へとコールする…!

 

 

『翠さん!バリアンの襲撃があったらしい!今その場所に向かってる!!』

 

「十代君!遊海さんは…遊海さんは一緒じゃないの!?」

 

『えっ…!?先生はとっくに向かって……まさか…!?』

 

「ああ…!?ウィンダ!すぐに飛んで!!フレアさん!!」

 

《話は聞いていました!!ハートランドシティ外れの川辺です!!》

 

《超特急で行くよ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翠が重傷を負い、土に埋もれた遊海を見つけたのは…それからすぐの事だった…。



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傷付く決闘者達〜並び立ち、共に歩む〜

こんにちは!S,Kです!

デュエルによって怪我をした遊海達は病院へと担ぎ込まれた…そしてミザエルによって心に深い傷を負った遊馬は立ち直れるのか…?


それでは最新話をどうぞ!


「う…ん…?ここは…?」

気を失っていた凌牙は目を覚ます…最初に目に入ったのは暗い天井、そして…

 

「すぅ…すぅ…」

 

《キュウ…キュウ…》

 

「璃緒…フォウ…」

自分が眠っているベッドにもたれて眠る璃緒とフォウだった。

 

 

「……そうだ、スフィアフィールドが崩れて…遊馬を…遊馬!?っぐ…!?」

気を失う前の事を思い出した凌牙は起き上がろうとするが…全身を包む鈍い痛みに躊躇ってしまう。

 

 

「…ここは、病院か…たぶん、カイトの奴に助けられたんだろうが…我ながら無茶したもんだ…」

冷静さを取り戻した凌牙は状況を把握する…枕元に置かれたDゲイザーの時刻は深夜を示していた…。

 

 

「…父さん達に、心配かけちゃったな…連絡してみるか」

 

 

ブーッ…ブーッ…

 

 

「……えっ…?」

凌牙は遊海へとコールする…だが、それと同じタイミングで自分の右隣のカーテンの奥からバイブ音が聞こえてきた…。

 

「凌牙君…!良かった…目が覚めたのね…!」

 

「母さん…?」

カーテンが静かに開く…そこから顔を出したのは育ての母である翠だった…。

 

 

「凌牙君、痛いところはない…?」

 

「全身…特に首の辺りがズキズキする…それより、遊馬は…!」

 

「遊馬君は大丈夫、凌牙君の左隣のベッドで眠ってるわ……少し打ち身と骨に罅が入ってたけど、私が治したから大丈夫…ちょっと待っててね、すぐに痛いところを治すから…」

遊馬の状況を伝えた翠は璃緒を起こさないように、凌牙へ回復魔法を使った…。 

 

 

 

「…母さん、父さんは…?」

治療で痛みの取れた凌牙は翠に問いかける…翠は少し悩んだ素振りをして、口を開いた…。

 

 

 

「……落ち着いて聞いてね、遊海さんは…大怪我をして、眠っているわ…」

そう言うと翠は右のカーテンを開く…そこには全身を包帯で巻かれたミイラ男…遊海が苦しげに眠っていた、枕元には黒く染まってしまい機能を停止したアヤカのコアが置かれている…。

 

 

「父さん…!?そんな、なんで…!?」

 

「…わからないの…私が見つけた時には……わかったのは、誰かとデュエルしていたって事だけ…残りライフ50の状態で……心配しないで、すぐに元気になるから…!」

 

「…母さん…」

薄暗くて凌牙は見えていなかったが…翠の目元は赤かった、翠は悲しみを押し殺しながら…必死に凌牙達を治療していたのだ…。

 

 

「凌牙君…今はしっかり休んでいて…遊海さんが起きた時に、安心できるように…」

 

「ああ、かあ…さん…」

翠は優しく凌牙の頭を撫でる…僅かに「催眠術」の効果が乗せられた暖かい手は…静かに凌牙を眠らせた…。

 

 

 

……

 

 

 

『まったくもう!アンタときたら…!デュエル庵に遊びに行ったらはしゃぎ過ぎて崖から落ちたってどういう事よ!!しかも…白野さんのトコの凌牙くんまで巻き込んで!アンタどんだけドジなのよ!!』

「…ごめんなさい…反省してます…」

 

「(明里さんに心配かけないように『崖から落ちた』って事にしよう…って翠さんに言われたけど…これで良かったのかなぁ…?)」

 

バリアンによる襲撃の翌日、遊馬はお見舞いに訪れたナンバーズクラブの仲間達の前で姉の明里に盛大に叱られていた。

 

翠の提案で余計な心配をかけないよう、明里に本当の事情を伏せて伝えたが…見ている方が可哀想になるほど遊馬は叱られている…。

 

 

『骨は折れてなかったから良かったけど…!打ち所が悪かったら…!』

 

「明里ちゃん、怒鳴り声が廊下まで響いてるわよ?」

 

『あっ…翠さん…!今回はうちの馬鹿が…』

 

「大丈夫よ、気にしないで…凌牙君も軽傷で済んだし…それよりも時間は大丈夫?何処か行くんでしょう?」

 

『あっ…!?忘れてた!!翠さん!お詫びはまた今度に…遊馬!怪我が治るまでおとなしくしてるのよ!いいわね!!』

遊馬に厳しく釘を刺すと明里は慌てて仕事へと向かった…。

 

 

「遊馬クンのお姉さん…あんなに怖い人だったとは…」

 

「肝がキャット縮まったわ…」

凄まじい剣幕の明里を見た真月とキャッシーは体を震わせる…。

 

 

「明里ちゃんは遊馬君の事が心配だから厳しいのよ…だから悪く言わないであげてね」

 

「流石メタルナイトの奥さんウラ〜、とっても優しいウラ!」

 

「ふふっ、ありがとう徳之助君」

優しく明里へフォローを入れる翠…その優しい顔を見た徳之助と等々力は翠にメロメロになっている…。

 

 

「…おい、おめぇら…」

 

「「ヒィ!?」」

 

「凌牙、そんなにカリカリしないの!」

なお、その直後に遊馬の隣のベッドにいる凌牙に睨まれ縮みあがったのだった。

 

 

 

「それよりも…翠さん、白野さんは大丈夫なんですか…?まさか…遊馬と同じタイミングでバリアンに襲われるなんて…」

 

「ニュースは見たウラ!川の流れが変わるほどの爆発があったって聞いたウラ!」

 

「心配してくれてありがとう…まだ起きてないけど…怪我はそこまで重くないから安心してね」

小鳥の言葉に全員が病室の奥を見つめる…閉じられたカーテンの中で遊海は眠っていた。

 

なお、世間一般には『メタルナイトがデュエリスト暴走事件の捜査中にテロリストに遭遇、爆弾処理に失敗して爆発に巻き込まれた』…という事になっている。

…ドルベとの決闘跡はそれが通じてしまうほど凄惨な状態だったのだ。

 

 

 

「凌牙君も遊馬君もう3〜4日入院すれば退院できると思うから…学校で待っててあげてね!」

 

「はい!…遊馬、学校の宿題とかはメールで送ってやるから安心しろよ!」

 

「ああ…ありがとう鉄男…」

翠の言葉を聞いた鉄男は遊馬へと声をかけるが…遊馬の返事は弱々しいものだった…。

 

 

 

 

 

「遊海…まさか、アンタもやられちまうなんて…」

 

「遊馬…」

小鳥以外のナンバーズクラブが帰った後…遊馬はミイラ状態の遊海の隣に座っていた…。

朝になり再起動したアヤカから語られたバリアンの襲撃…それはミザエルと同じくオーバー・ハンドレット・ナンバーズを持つ者との壮絶な決闘の一部始終だった…。

 

 

「アストラルも、皇の鍵から出られないくらい弱っちまってる…アストラルは…オレが守らなきゃダメなのに…!」

 

 

「…おい、遊馬…ウジウジしてんなら自分のベッドでしてろ、父さんに弱虫がうつる…!」

 

「…ごめん…」

 

「…たくっ…イラッとくるぜ…」

気落ちしている遊馬に凌牙が悪態をつく…だが、遊馬は言い返さずに自分のベッドに歩き出す…。

 

 

「…遊馬、勘違いすんじゃねぇぞ…!父さんは負けてない…ライフも、手札も残ってた…絶対に父さんは勝ったはずだ…!!」

 

「シャーク…」

凌牙は静かに拳を握り締めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああああ!!」

 

『どうした?立ち上がれないのか?ならば…そのまま屈辱に塗れて眠るがいい!殲滅のタキオン・スパイラル!!』

 

《ギュラアアアア!!》

 

「あ…ああ…!?うわあああああ!!!」

 

 

 

 

………

 

 

 

「うわああああああ!!!……ゆ、夢……」

眠っていた遊馬はベッドから飛び起きた、ミザエルと「銀河眼の時空竜」に襲われる恐怖…そのせいで遊馬は夜ごとに悪夢に魘されていたのだ…。

 

 

「だぁぁー!遊馬!毎晩毎晩いい加減にしやがれ!!」

凌牙がカーテンを開いて遊馬へと文句を言う…遊馬が毎晩飛び起きるせいで…相部屋の凌牙も若干寝不足になっている…。

 

 

「だいたいなんだ!情けない顔しやがって…!たった1回負けたからって落ち込み過ぎなんだよ!!いつものお前なら…」

遊馬への不満を叫ぶ凌牙だったが…

 

 

『コラァァ!!アンタ達!今何時だと思ってんの!?』

 

「「すいません!!」」

案の定、見回りの看護師に叱られてしまうのだった…。

 

 

 

「おい…お前のせいで怒られたじゃねぇか…」

 

「…ごめん…」

看護師にお叱りを受けた後…凌牙と遊馬は寝直す為にベッドに潜り込む…そんな時だった。

 

 

「うぅ…凌牙…遊馬…」

 

「「!?」」

静かな病室に掠れた声が聞こえ、2人は飛び起きた…それは眠り続けたもう1人の男が目を覚ました証だった…!

 

 

「父さん…!!俺はここにいるぞ!」

 

「遊海…!!」

飛び起きた2人は先程の反省を生かして…できる限り静かに遊海へと声をかける。

 

 

「……はぁ…ごめん、な…心配を、かけたみたいだ…」

 

「まったくだぜ…丸3日も…寝過ぎなんだよ…!」

 

「よかった…遊海…!」

弱々しく2人に謝る遊海…凌牙は少し涙を浮かべながら遊海の手を握り締める…。

 

 

「…今は…夜みたいだな…ナースコールは、しなくていい…起こして悪かった…休んで、いいぞ…?」

 

「…完全に目が覚めちまったよ…いつも危ない目にばっかあって…心配する俺や母さんの身にもなってくれよ…」

 

「ごめんな…」

 

 

 

 

 

「「スゥ…スゥ…」」

 

「…結局、寝てるじゃないか……トフェニ、頼む…」

 

《御意》

20分ほど話した後、遊馬と凌牙は遊海のベッドに凭れて眠ってしまった…遊海はトフェニを呼び出して凌牙達をベッドへと寝かせる…。

 

 

「(全身に鈍い痛み…それに、右腕の感覚がない…しばらくデュエルは無理だな…)」

遊海は可能な限り自分の状態を把握する…翠の治療を受けてなお、全身の負傷は治りきっていなかった…。

 

 

「(バリアン…ドルベは強かった、デュエルの決着より先に…俺の身体が保たなかった…)」

遊海はドルベとの戦いを思い返す…魂の聖剣と堕天の槍の衝突、遊海はそれに競り負けて吹き飛ばされていたのだ…。

 

 

「(俺を狙ってるであろうベクターの事もある…こんなところで…寝て、られない…のに……)」

悔しさを噛み締めながら…遊海の意識は再び暗転したのだった…。

 

 

 

 

『九十九遊馬く〜ん!診察の時間ですよ〜』

 

「あ、はい」

 

「………」

診察の時間が来て遊馬は診察室へと向かう…そのベッドの上にはポツンと皇の鍵が置かれていた…。

 

 

 

「…凌牙」

 

「おはよう、父さん…気分はどうだ?」

 

「…全身痛いが…70年前の時よりはマシだよ…」

 

「感覚がすげぇな…」

それと同じタイミングで遊海が目を覚ます…声色から調子はだいぶ良くなったようだ。

 

 

「…凌牙、遊馬を頼むぞ…」

 

「えっ…?」

横たわったままで遊海は凌牙に語りかける…。

 

 

「…バリアンとの戦いで、遊馬は…遊馬の心は深く傷付いてる…未知のナンバーズへの『恐怖』、アストラルを守らなければならないという『責任』…そして、アストラルを守れなかったという『後悔』……俺は…戦えない今の俺じゃ…遊馬を慰める事しかできない…でも、今の遊馬とアストラルに必要なのは……()()()()だ…」

 

「キッカケ…か……父さん、頼みがある」

 

「…ああ、頼んだぞ…凌牙」

包帯の下で遊海は優しく笑った…。

 

 

 

 

 

「イテテ…あの先生、背中強く叩きすぎなんだよ…ってあれ!?皇の鍵がない!?」

しばらくして遊馬が背中を擦りながら帰って来たが…ベッドの上にあったはずの皇の鍵が無くなり、焦って探し回っている…。

 

 

「遊馬」

 

「あっ!?遊海!目が覚めてたのか!皇の鍵を見てないか!?」

 

「鍵なら…凌牙が持っていったぞ、屋上で待ってるそうだ…お前とデュエルする為にな…」

 

「はぁ!?」

遊海の思わぬ言葉に遊馬は驚く…。

 

 

「遊馬、早く行ってこい…凌牙が風邪をひく前に…」

 

「だぁぁ!シャークの奴は何を考えてんだよおぉぉ!!」

遊馬は急いで着替えると病室を飛び出して行った…。

 

 

 

「…遊馬…思い出せ、お前達にとって…一番大切なモノを…コフッ…」

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

『遅ぇぞ、遊馬』

 

「シャーク!いったいどういうつもりなんだよ!?」

先程まで晴天だった空が急に厚い雲に覆われる…今にも雨が降り出しそうな空の下、遊馬と凌牙は向かい合う…。

 

 

『どういうつもり…ハッ…!遊馬、皇の鍵を返して欲しかったら…俺をデュエルでぶっ倒してみろ…!』

凌牙は懐に持っていた皇の鍵を遊馬に見せつける…!

 

「…わかった…!やってやる!!」

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対凌牙

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!…モンスターを裏守備表示でセット!!…ターンエンドだ!!」

 

『はぁ…!?これで、終わりだと!?ふざけてんのか!!』

遊馬の消極的なデュエルに凌牙は思わず叫ぶ…!

 

 

「こ、これがオレのタク…タクククスだ!!」

 

プチン

 

『タクティクスもまともに言えない癖に…ふざけてんじゃねぇ!!』

 

「どわっ!?」

遊馬の一言に凌牙の堪忍袋の尾はブチ切れた…凌牙は怒りのままに皇の鍵を遊馬に投げつける!

 

ゴロゴロ…ピシャーン!!

 

『お前は…何を1回負けたぐらいで弱気になってやがる!!それでもお前は父さんの…白波遊海の弟子なのか!?…お前1人じゃ相手にならねぇ…アストラルと一緒にかかってきやがれ─!!』

凌牙の怒りに呼応するかのように雷鳴が轟き、雨が降り始める…そして凌牙は傷心の遊馬を容赦なく攻め立てる!

 

 

 

 

『俺はレベル3の「スター・フィッシュ」2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!深き水底から浮上せよ!「潜航母艦エアロ・シャーク」!さらに続けてレベル3の「スターフィッシュ」と「ドリル・バーニカル」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!漆黒の闇よりいでし紅き槍!「ブラック・レイ・ランサー」!!』

 

「なっ…!?1ターンで2体のエクシーズモンスターを!?」

凌牙は得意のマジックコンボで黒き槍兵と鮫の潜航艦を呼び出す!

 

 

 

『いくぞ…遊馬!!「エアロシャーク」の効果発動!ORUを1つ使い!手札1枚につき400ダメージを与える!俺の手札は2枚!よって800ダメージ!さらに「ブラックレイランサー」の効果発動!ORUを1つ使い!「ゴゴゴゴーレム」の効果を無効にする!』

 

「や、やべっ!!」

 

『バトルだ!「エアロシャーク」で守備表示の「ゴゴゴゴーレム」を粉砕!さらに「ブラックレイランサー」でダイレクトアタック!ブラック・スピア!!』

 

「ぐああああ!!?」

凌牙の容赦ない連続攻撃で遊馬の残りライフは僅か1100まで減らされる!

 

 

 

「ぐっ…!!オレの、ターン!!(シャークのフィールドにはエクシーズモンスターが2体…オレがやるべき事は…!)」

 

「オレは『ゴゴゴジャイアント』を召喚!さらに効果で墓地の『ゴゴゴゴーレム』を特殊召喚!」

 

遊馬のフィールドに2体のレベル4モンスターが揃う…この時点で遊馬には選べる手が無数にある…魔人モンスターである『交響魔人マエストローク』を召喚してブラックレイランサーを裏守備にして戦闘破壊する事も…遊海から貰った『ズババジェネラル』を召喚し、手札の『ガガガガードナー』を装備して攻撃する事も…そして、アストラルに声をかけて『希望皇ホープ』を呼ぶ事もできる…だが、遊馬のとった一手は…。

 

 

 

「ここは…オレは永続魔法『ゴゴゴ護符』を発動!フィールドに2体のゴゴゴモンスターは1度だけ戦闘では破壊されず、さらに2体以上のゴゴゴモンスターがいる時!オレが受ける効果ダメージは0になる!これで『エアロシャーク』の効果は封じたぜ!!ターンエンドだ!!」

 

『…舐めてんのか、遊馬!!今のお前は…臆病な負け犬だ!!闘う勇気のない奴に…掴める勝利はない!!』

 

「っ…!」

さらに消極的な遊馬の一手に凌牙は怒りを露わにする…!

 

 

『アヤカから聞いただろ…!父さんは…遊海さんは残りライフが50でも!モンスターの攻撃力を0にされていようと!諦めないで最後まで戦った!!でも…お前はどうだ!確かにあの「ギャラクシーアイズ」は強かった…俺だって勝てるかはわからねぇ!…でも…諦めたり、弱気になっちまったら…それで終わりじゃねぇか!!』

 

「シャーク…」

 

『遊馬…お前がそのまま腑抜けたツラしてんなら…俺が叩き潰してやる!!』

 

 

 

 

 

『俺はレベル5の「パンサー・シャーク」と「イーグル・シャーク」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!海を切り裂け!猛々しき鮫の巣よ!来い!「シャーク・フォートレス」!!』

現れるのは凌牙の新たな力…巨大な鮫型潜水艦が現れる!

 

 

「3体目のエクシーズモンスター!?」

 

『さぁ…これからが本番だ!装備魔法「シャーカイズ」を「ブラックレイランサー」に装備!これにより装備モンスターを「シャーク」モンスターとして扱い、攻撃力を400アップする!』

ブラックレイランサーの紅槍が鮫の意匠の槍に変化する!

 

 

『いくぞ!俺はブラックレイ…いや、「ブラック・シャーク・ランサー」の効果発動!ORUを1つ使い!「ゴゴゴゴーレム」の効果を無効にする!バトルだ!「エアロシャーク」で「ゴゴゴゴーレム」を攻撃!』

 

「くっ…!『ゴゴゴ護符』の効果で『ゴゴゴゴーレム』は破壊されない!」

巨大な黄色の護符がゴゴゴゴーレムを守る!

 

 

『「ブラックシャークランサー」で「ゴゴゴゴーレム」を攻撃!』

 

「ぐっ…!?」

ゴゴゴゴーレムが鮫の紅槍で貫かれ、破壊される!

 

 

『3発目!「シャークフォートレス」で「ゴゴゴジャイアント」を攻撃!』

 

「『ゴゴゴ護符』の効果発動─!!」

再び現れた黄色の護符がレーザー光線を跳ね返す!

 

 

「よし…!なんとか凌いだぜ…!」

 

『凌いだだと…?笑わせるんじゃねぇ!俺の本気はこれからだ!「シャークフォートレス」の効果発動!!ORUを1つ使い!フィールドの自身以外のシャークモンスターの攻撃回数を1回増やす!「エアロシャーク」でもう1度「ゴゴゴジャイアント」を攻撃だ!!』

 

「なんだって!?」

エアロシャークがシャークフォートレスに格納される…そして再び射出され、ゴゴゴジャイアントを喰い破る!

 

 

 

『これで終わりだ!!再び「シャークフォートレス」の効果発動!ORUを1つ使い!「ブラックシャークランサー」で遊馬にダイレクトアタック─!!』

 

「っ─!!(これで、終わりなのか…?このまま…なんにもできずに負けるのか…!?)」

ブラックシャークランサーが槍を構える、その刹那…遊馬は考えを巡らせる…。

 

 

「(大切な物を守れずに…このまま負けるのか…?)」

フラッシュバックするのはミザエルとの一戦…為す術もなく追い詰められたデュエル…アストラルを守れなかったデュエル…それを思い出して遊馬が思った事は…。

 

 

 

 

 

「(嫌だ…オレはもっと、先に進みたい…!!アストラルともっとデュエルしたい!!)オレはもっと…!アストラルと()()()()()()()()()()─!!」

それは遊馬の魂の言葉…それは確かに、彼へと届いた…!

 

 

 

 

キィン─!

 

 

 

(遊馬…()()()()()()()()()()

 

「あっ…!アストラル!!」

 

(私は君を助けるのでも、君が私を守るのでもない…私と君は…()()()()()()()()()!)

 

「あっ…!」

遊馬の叫びを聞いてアストラルが姿を現す…目先の恐怖に囚われて遊馬は忘れていた、遊馬とアストラルは一心同体…共に戦い、共に傷付く相棒なのだと…!

 

 

(遊馬!『ガガガガードナー』だ!)

 

「そうか!手札から『ガガガガードナー』を攻撃表示で特殊召喚!さらに手札を1枚捨てる事で戦闘破壊を無効にする─!!ぐうぅぅ!!」

すんでのところで遊馬は凌牙の攻撃を耐えきる!

 

 

『フン…防いだか…!俺はこれでターンエンド!』

 

 

(遊馬…立て!)

 

「ああ…何度でも立ち上がってやる!共に戦う仲間と…未来を切り開く為に!!」

遊馬は立ち上がる…アストラルとの「絆」…そして凌牙や仲間達との「友情」で新たな未来を手にする為に!

 

 

 

 

 

 

「オレはレベル4の『ガンバラナイト』と『ガガガガードナー』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!光纏いて現われろ!闇を斬り裂く真紅の王者!!『H-Cエクスカリバー』!!」

遊馬の場にゴーシュから託された紅蓮の騎士が現れる!

 

 

『フッ…!来やがったな!』

 

「さらにオレは装備魔法『最強の盾』を『エクスカリバー』に装備!このカードを装備した戦士族モンスターは攻撃表示の時!守備力を攻撃力に加える!守備力は2000…攻撃力4000になる!」

 

『だが、まだ足りねぇ!俺のライフは削りきれない!!』

 

「まだだ!『エクスカリバー』の効果発動!ORUを全て使い!バトルの間攻撃力を2倍にする!攻撃力…8000だぁぁ!!」

最強の盾を装備したエクスカリバーが剣を振りかぶる!

 

 

(行け!遊馬─!!)

 

『おう!!かっとビングだ!!オレぇぇ!!「エクスカリバー」で「シャークフォートレス」を攻撃!必殺の霹靂!』

エクスカリバーから放たれた光の斬撃が鮫の巣を直撃…その一撃で凌牙のライフを削りきった…。

 

 

 

『たくっ…手間かけさせやがって…』

その敗北を…凌牙は満足そうに受け入れた…。

 

 

 

 

 

 

 

凌牙LP0

 

遊馬WIN!

 

 

 

 

「シャーク!大丈夫か!?」

 

(シャーク…遊馬が立ち直ったのは君のおかげだ、君には私から礼を言おう…ありがとう)

 

『たくっ…おめぇらは本当に手間がかかる弟弟子だぜ…礼を言うんなら父さんに言えよ…お前に発破かけろって言ったのは父さんだからな』

アストラルからの礼に凌牙は顔を背ける…しかし、その表情は優しい顔をしていた…。

 

 

(ふっ…君の事だ、遊海に言われなくともやっていたろうに)

 

『馬鹿野郎…そんな事は─』

 

「シャ、シャーク…!お前って奴は…グスッ…!」

 

『なっ…!?勝手に感動してんじゃねぇよ!?だからお前は…』

アストラルと凌牙のやり取りを聞いて遊馬は涙ぐむ、凌牙は必死に取り繕うが…真意は明らかだろう…。

 

 

 

(……観察結果、人とは時に気持ちを素直に出せない時がある…それはともかく、仲間とは良いものだ)

アストラルとは近くのビルに目を向ける…そこには凌牙と同じように遊馬に発破をかけに来たのだろうカイトの姿があった。

 

遊馬は仲間達のおかげで立ち直った…その道筋を照らすかのように空は晴れ渡ったのだった…。




〜おまけ〜



「ほら、早く病室に戻るぞ!父さんが心配してるからな」

「おう!もう1度遊海にバリアンの事聞かねぇと…」

「遊海さんの馬鹿ぁぁぁ!!」

「「へっ?」」
デュエルが終わり病室へと戻ってきた遊馬達…そこに耳をつんざくような声が響き渡る…。


「もう…遊海さんのバカバカバカ─!!いつもいつも心配かけてぇぇ…!!」

「…ごめんなさい…申し開きもありません…」

「うわぁ…」

「…遊馬の姉さんの叱り方も凄かったけど…母さんもなかなかやべぇな…」
遊馬達が恐る恐る病室を覗くとベッドの上の遊海が涙目の翠に丁度怒られているところだった…。



「あの、今回ばかりは…事故みたいな、もんなんだけど…」

「(涙目の圧力)」

「ごめんなさい本当にごめんなさいすいません反省してます」


「…なんだか入りづれえな…」

「…図書室で時間潰すか…いや、でもこの格好じゃ…」
翠のあまりの剣幕に入室を躊躇う2人…2人とも雨の中のデュエルのせいで服はビチャビチャになっていた…。


「あら、凌牙…いったい怪我人が何処に行ってたのかしら?」

「げっ、璃緒…!」

「これは…その…!」
そして追い打ちをかけるように遊馬達の後ろから璃緒が現れる…!


「さっき看護師さん達が探してたわよ?怪我人が病室を抜けだしたーって……ほとんど治ってるとはいえ、何を考えてるのかしら…!!母さーん!問題児2人が帰ってきましたわ!」

「「ちょっ!?」」
璃緒の言葉に思わず血の気が引く遊馬達…だが、彼らはもう逃げられない…。


「凌牙君、遊馬君……正座」

「「はい」」

「(ごめん、2人とも…動けない俺を許してくれ…)」


翠から3人への説教は1時間ほど続き、遊馬と凌牙は仲良く風邪をひいたそうな…。





(観察結果、怒った女性ほど…怖いものはない……どう思う?カイト)

「はぁ…自業自得だな」←お見舞いに来たもののタイミングを失ったカイト

《ガクガクブルブル…でアリマス…》←小鳥以上に怖い翠を見て震えるオービタル7

「遊馬…頑張って…!」←なんとなく状況を察して遊馬を応援するハルト

『決闘王の影には妻の支えあり…か』←感心しているDr.フェイカー


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対決!バリアンの戦士・アリト!〜熱血のカウンターバトル!〜

こんにちは!S,Kです!

平安京のベクターを武蔵ちゃんで両断していて遅れました!


それでは最新話をどうぞ!


『……ミザエルの奴が来たって事は…オレ達はもう失敗できねぇ…次に失敗したらオレ達は終わりだ…』

 

『落ち込んでても仕方ねぇ!俺が真っ向勝負で九十九遊馬とアストラルを倒してやるぜ!!』

 

『はぁ…!?真っ向勝負だ!?お前…今の状況がわかってんのかよ!?』

 

ハートランド某所にあるアリトとギラグのアジト…そこで2人は言い争いをしていた。

 

ミザエルから渡された『バリアンズ・スフィア・キューブ』…それはギラグ達にとっての最終通告…失敗できない最後の作戦を前に、ギラグとアリトの意見は割れていた…。

 

 

『ギラグ…お前の言いたい事はわかってる…!でもよぉ、そんな事じゃねぇんだよ…俺は遊馬と真正面からの熱いデュエルをしてぇ…そして…俺が勝つ!!』

 

『待てよアリト!!……お前はわかってねえ…わかってねぇんだ!!』

 

 

遊馬との真っ向勝負を望むアリト、そしてナンバーズを安全に回収する為に策を練るギラグ、2人の道は…分かたれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…遊馬と凌牙は今日から学校だったな…大丈夫だといいんだが…」

 

「遊海さん…」

 

「この腕と足さえ大丈夫ならなぁ…」

病室から快晴のハートランドシティを見つめる遊海は溜息をつく…一足先に遊馬達が退院して2日、遊海自身もほとんどの包帯は取れたが…粉砕骨折した右腕と左足の回復の遅さ、そして全身を襲う疲労感のせいでいまだに入院生活を送っていた…。

 

 

《おそらく過労と…バリアンズ・スフィア・フィールドの影響でしょう、アストラルが受けたダメージから予測すると…アストラル世界やそれに類する力を持っていると特攻ダメージを受けてしまうのかもしれません》

 

「そうかもしれないな…バリアンズスフィアフィールドで受けたダメージは、今までに感じた事のない痛みだった…」

アヤカの言葉に遊海は胸に当てる…スフィアフィールドで受けたダメージは今までに受けたダメージの中でも…上位に位置するほどの痛みだったのだ…。

 

 

「(…これから、バリアンとの戦いは激しくなっていく…もう、隠しきれないな…)」

胸に手を当てた遊海は考えを巡らせる…そして、1つの決断をした。

 

 

 

 

「…翠、話しておかなきゃならない事がある……これからの事について…」

 

「えっ…どうしたんですか?そんなに改まって…?」

遊海の為にリンゴを剥いていた翠は首を傾げる。

 

「本当は、お前にも黙っていようと思ったんだ…でも、今のうちに伝えておく…翠、俺は…もしかしたら、()()()()()()…かもしれない…」

 

「えっ…?」

遊海の思わぬ言葉に…翠はリンゴを取り落とした…。

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

「だああ!?なんだってんだよぉぉ!?」

 

「ひぃえぇぇ〜!!」

 

(急ぐんだ遊馬!追い付かれる!)

同じ頃、遊馬とアストラルそして真月は走っていた…それもただ走っているのではない、バリアンに洗脳された数十人ものデュエリスト達から逃げていたのだ…!

 

 

 

(どうやら…バリアンもついに業を煮やしたらしい…!)

 

「わわっ!遊馬クン!前からも…!」

 

「囲まれた…!」

数分逃げ続けた遊馬達だったが…コンテナ倉庫に追い込まれ、退路を断たれてしまう!

 

 

『『『バリアン世界の為に…!』』』

 

「くっ…!この人数を一度に相手しなきゃならならねぇのかよ…!?(入院してる遊海には頼れねぇ…負けたらアストラルが…!)」

追い込まれ冷や汗を流す遊馬…1対1やタッグデュエルならば経験もあるが…多対1のデュエルは経験した事もない(真月はポンコツの為、戦力に数えていない)

 

しかし、遊馬は決して1人ではない!

 

 

「遊馬!!」

 

「あっ…!?シャーク!!」

コンテナの上を飛び移りながら…凌牙が遊馬のもとへ飛び降りる!

 

「へっ…朝の運動にはちょうどいいぜ…!」

バリアン・デュエリストを前に指を鳴らす凌牙…だが、助けに来たのは彼だけではない…!

 

 

「遊馬!アストラル!!」

 

「助けにきましたわ!」

 

「小鳥!妹シャーク!」

 

「…だから、その呼び方はやめなさい!」

凌牙に続いて璃緒と何故かフライパンを構えた小鳥も駆けつける…3人は遊馬より先に登校していたが、璃緒の『予言』で遊馬の危機を知って駆けつけたのだ。

 

 

「ありがてえ…!感謝感激だ!!いくぜ、みんな!!」

 

「「おう!/ええ!」」

頼もしい仲間達と共に…遊馬はバリアン・デュエリスト達と戦い始めた!

 

 

 

 

『神代凌牙にその妹…面倒な事になりやがった…』

コンテナの上からデュエルする遊馬達を窺う影…それはギラグだった、アリトと喧嘩別れしたギラグはナンバーズを回収する為の最後の作戦に打って出たのだ…。

 

 

『こうなったら…オレも()()()を出すまでだ…!』

 

 

 

 

 

「『ビック・ジョーズ』で『甲虫装機ダンセル』を攻撃!」

 

「『零鳥獣シルフィーネ』でダイレクトアタック!」

 

「いっけぇ!『ズババジェネラル』!!」

それぞれにデュエリストを蹴散らしていく遊馬達…しかし、洗脳されたデュエリストは多く…まだ終わりは見えない…!

 

 

「遊馬!もう母…翠さんには連絡してある!もう少しで援軍が来るはずだ!!」

 

「わかった!…おい!真月!大丈夫か!?」

凌牙の声を聞いた遊馬は背中合わせでデュエルしていた真月に声をかける…だが…。

 

ガシッ!

 

「えっ…!?…真月!?何すんだよ!?」

突如として遊馬は羽交い締めにされる、遊馬を捕えたのは…額にバリアンの紋章を付けた真月だった…!

 

「…ごめん、遊馬君…バリアン世界の為に……よかれと思って…」

 

(っ!既にバリアンに洗脳されていたのか!!)

 

「くっ…!おい!離せよ!真月!!」

拘束を解こうと必死に藻掻く遊馬だが…洗脳された真月の力は強く、逃れる事ができない…!

 

 

ギィン…

 

『ふははは…!ここまでだな、九十九遊馬…!』

 

「お前は…スポーツデュエル大会の…!なんで…!?」

藻掻く遊馬の前に緑のモヒカンの大男が現れる、それは遊馬が一度だけ共に戦った謎の青年だった…。

 

 

『なんでってそりゃ…コレを見ればわかるだろぅ?』

 

(『バリアンズ・フォース』…!まさか、この男は…バリアン!)

男が見せたのは『バリアンズフォース』のカード…それを見てアストラルはその正体を察した…!

 

 

「なっ…!?それじゃあ、デュエリストのみんなを洗脳したのは…!」

 

『そう…!オレの名はギラグ!バリアンの戦士だ!!今こそがナンバーズを奪う好機…!お前ら!九十九遊馬とアストラルをぶっつぶせ!!』

 

『『『全てはバリアンの為に─!!』』』

ギラグの号令と共にデュエリスト達は一斉にモンスターを召喚する、その様子はデュエルでも決闘でもない…ただの蹂躪だった…!

 

 

 

『九十九遊馬…そしてアストラル!これでお前達も終わりだ!!』

 

(まずいぞ遊馬…!これだけのモンスターの攻撃を受けたら!!)

 

「っ─!!」

遊馬を取り囲む数十体のモンスター達…遊馬は伏せカードを発動させようとするが…真月に捕まっているせいで発動できない…!

 

 

『さぁ!!九十九遊馬へダイレクトアタックだ!!』

 

『『『おおおぉぉ!!!』』』

 

遊馬へと殺到する無数のモンスター達…凌牙も璃緒も間に合わない…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっ…『戦士』って言いながら…ずいぶん卑怯な真似をするんだな!!速攻魔法発動!『クリボーを呼ぶ笛』!来い!『ハネクリボー』!!」

 

《クリクリー!!》

 

『なにっ─!?』

コンテナ倉庫に響く快活な声…それと共に羽を生やした毛玉が遊馬を守るように現れる!

 

 

 

「さらに速攻魔法『進化する翼』を発動!手札2枚と『ハネクリボー』を墓地に送り…進化せよ!『ハネクリボーLv10』!!」

 

《クリクリクリー!!!》

さらに毛玉が金色のドラゴンの鎧を纏う!

 

 

「そして『ハネクリボーLv10』の効果発動!相手バトルフェイズに自身をリリースする事で…相手モンスターを全て破壊し、その元々の攻撃力の合計分のダメージを相手に与える!やっちまえ!相棒!!」

 

《クリクリ…クリー!!》

 

『なっ…!?どわあああ!?』

毛玉…ハネクリボーが聖なる光を放つ、その光はバリアンデュエリスト達のモンスターを一掃…ギラグ以外のバリアン達を吹き飛ばした…。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜…ギリギリセーフだな!遅くなって悪かった!」

 

「じゅ…十代さん!!」

遊馬の前に降り立つ赤い影…それは翠から連絡を受けた遊城十代だった…!

 

 

「ギラグっていうんだっけ…こんな事をする奴を『決闘者(デュエリスト)』とは呼ばねーよ、遊馬からナンバーズを奪いたいんなら……正々堂々と挑めばいいだろう!!

 

『ぐっ…!?(な、なんだ、この男の纏うオーラは…!コイツ、普通の人間じゃねぇ…!!)』

覇王の力を全開にしてギラグを睨む十代、その威圧感に冷や汗をかくギラグだったが…その威圧はすぐに消え去る…。

 

 

「本当ならオレがお前の相手になってもいいんだけど…()()()()()()、今のお前に相応しい奴にな」

 

キィン─!

 

『ギラグ…テメェ、なにやってやがる─!!』

 

『なっ…!?ごっはぁぁ!?』

 

「あ、アリト─!?」

十代の言葉に間髪入れず…ギラグの前に飛び出した人影がギラグにアッパーカットを喰らわせる…その人影の正体はラテン系の青年、アリトだった。

 

 

 

『あ、アリト、テメェ…!何を考えてやがる!我ら()()()()()()()の使命を忘れたのか!?我らの世界を救う為!ナンバーズが必要だという事を─!!』

 

『…忘れてなどいない!俺は…バリアンの戦士だ!!』

 

「アリトが…バリアン…!?」

いきなり殴られたギラグはアリトに向かって叫ぶ…だが、アリトは真剣な眼差しでギラグを睨む…そんな中、遊馬はアリトの突然の告白に動揺していた…。

 

 

『ならば…何故オレを殴った!何故九十九遊馬に味方する!!』

 

『遊馬に味方した訳じゃねぇ!!…ギラグ、言ったはずだ!俺は真っ向勝負で遊馬を倒すと!』

 

『違う!!どんな手を使っても勝たなきゃならねぇんだよ…!オレの刺客は全て九十九遊馬とアストラルに返り討ちにされた…そいつらを舐めるんじゃねぇ!!』

 

『舐めてなんかねぇ!!…だから…だからこそ!俺が認めた最強のデュエリストを最ッ高のデュエルで打ち負かし!ナンバーズを手に入れる!!』

手段を選ばずにナンバーズを奪おうとしたギラグに対し…真っ向勝負を望むアリトは怒りを露わにする!

 

 

『ギラグ、俺はバリアンの戦士である前に…()()()なんだよ!!だから俺は…デュエルで決着をつける!!』

 

『アリト…!』

それはアリトの魂の叫び…その気迫にギラグは圧倒される…!

 

 

『ギラグ…お前のやった事はデュエルじゃねぇ!!ただの()()だ!遊馬とは俺がケリをつける…!お前みたいな卑怯者は…消え失せろ─!!』

 

『っ…!!』ギィン…

アリトの魂の叫び…真っ直ぐな言葉がギラグの胸に突き刺さる…そしてギラグは悔しげな顔で撤退した…。

 

 

 

 

『…感謝するぜ、赤い服のデュエリスト…身内の恥を晒したな…』

 

「へっ…心にガツンと来たぜ、お前の言葉…そして遊馬とのデュエルを望む熱い魂にな!」

アリトは遊馬…そして十代へと向き直り言葉をかける…。

 

 

「アリト、お前…」

 

「…遊馬、場所を変えてくれるか?オレは倒れた奴らの介抱しなきゃならねぇ……そして、あいつの望みに応えてやれ…!」

 

「十代さん…」

動揺していた遊馬は十代の言葉で正気に戻り、仲間達と共にその場を離れた…。

 

 

 

「あのアリトって奴…良い目をしてたな、カイザーやヨハンみたいに…」

 

《それでも…アイツは敵だ、身の内に秘めた力は…十代や遊海レベルは軽くあった…あの小僧は勝てるのかな?》

遊馬を見送った十代にユベルが声をかける…アリトを見てその強さを感じたのだ…。

 

 

「…きっと遊馬が勝つさ、とにかく…早めにデュエリストのみんなを安全な場所に運ぼうぜ!そしてデュエル観戦だ!」

 

《やれやれ…遊海もキミも…変わらないねぇ…》

 

《クリクリー(-_-)》

デュエリスト達を担ぎながら無邪気な笑みを浮かべる十代にユベルは溜息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…遊馬、俺との決闘…受けてくれるな?』

 

「待ってくれよ、アリト…!バリアンのお前がオレ達とデュエルするって事は…!」

 

『そうだ、ナンバーズを…いや、互いの存在を賭けた戦いとなる…!』

場所は変わり、ハートランドの波止場…そこで遊馬とアリトは向かい合う…!

 

 

『遊馬…俺はお前達とデュエルしたいだけだ…!お前達と最高のデュエルをして…俺は勝つ!!』

 

「アリト…」

 

(遊馬、彼の決心は変わらない…いずれにせよ、彼は戦わねばならない相手だ)

 

「…わかったよ、やってやる!!」

揺れ動く遊馬の心…しかし、アストラルの言葉でその覚悟は固まった…!

 

 

「やるからには…アストラルと一緒に勝つ!!」

 

『待ってたぜ…!その言葉を!!「バリアンズ・スフィア・フィールド」展開!!』

 

ギィン…バチバチバチ!!

 

遊馬の覚悟を聞いたアリトはスフィアフィールドを展開する!

 

 

『さぁ遊馬!思う存分…デュエルしようぜ!!』

 

「ああ!!いくぜアリト─!!」

仲間達が見守る中…熱き男とのデュエルが始まった!

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対アリト

 

 

 

 

 

 

遊馬とアリトのデュエル…その序盤は前回のデュエルの焼き直しとなった、アリトは「BK拘束番兵リードブロー」を…遊馬は「ガントレット・シューター」の代わりに「希望皇ホープ」を召喚し激しいカウンター合戦を繰り広げる。

 

初戦を制したのは…アリトだった、「ホープ」の効果を封じ、カウンター罠の応酬の末に破壊して遊馬へとダメージを与えた…だが、それで終わる遊馬とアストラルではない。

 

「エクシーズ・リベンジ」の効果で「ホープ」を蘇生した遊馬は攻撃力3800となっていた「リード・ブロー」を罠カード『燃える闘志』で攻撃力を倍化させた「ホープ」で撃破した…そして、互いの命とナンバーズを賭けたデュエルの中…アリトと遊馬は楽しそうに笑っていた…!

 

 

 

 

「アリト!オレ達のデュエルはまだまだこれからだ!!」

 

『ああ…!へへっ、いくぜぇ!遊馬─!!』

 

(遊馬とアリト…互いに惹きつけ合う2人…このデュエルの先にはいったい…ぐっ…!?)

 

ドクン…

 

(やはり、このフィールドは…!?)

闘志を燃やす遊馬とアリト…そんな中、アストラルはスフィア・フィールドによってダメージを受けていた…。

 

『いくぞ遊馬…!俺のデュエルはこれからだ!!』

 

 

 

105 

 

 

『現われろ!「No.105」!「BK流星のセスタス」!!』

 

「っ…!ナンバーズ105…!!」

 

(オーバー・ハンドレット・ナンバーズ…!アリトのエースモンスター…!)

アリトはついにエースモンスター…105の数字を背負う、青と黄色のアーマーを纏った拳闘士を召喚する!

 

 

『いくぜぇ!!「流星のセスタス」で「希望皇ホープ」を攻撃だ!!』

 

「なっ…!?『ホープ』の攻撃力は『燃える闘志』の効果で5000になってるのに!?」

一見、無謀な攻撃を仕掛けるアリト…だが、それこそが彼の狙いだった!

 

 

『俺はいく時は行くぜぇぇ!!ぶち抜け!スターダスト・インパクト!!』

流星のセスタスが無数の光線を放つ!

 

(警戒しろ遊馬!必ず…あのモンスターには()()ある!!)

 

「わかってる!!『ホープ』の効果発動!ムーンバリア!!」

遊馬は鉄壁の守りで攻撃を受け止めようとする…だが…!

 

 

『甘いぜ!!「流星のセスタス」の効果発動!ORUを1つ使い!このモンスターの攻撃力が相手よりも低い時!戦闘では破壊されず、このバトルは無効にならない!さらに!俺が受けるダメージは代わりに相手が受ける!!』

 

「なっ!?ぐああああ─!?」

流星のセスタスの攻撃はムーンバリアを粉砕…遊馬達に大ダメージを与える…残りライフは…僅か500…!

 

 

 

『どうした?俺達の楽しいデュエルはこれで終いか?』

 

「くっ…!まだまだ!!もっと楽しんでやるぜ…!!」

 

(だが、我々のライフは僅か500…このままではまずいぞ…!)

 

「……わかってる…!このデュエルは絶対に負けられないデュエルだ…でも、オレは!()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

追い詰められた遊馬はアストラルを見つめる…遊馬の目に迷いはない、その瞳の奥では闘志の炎が燃えている…!

 

 

 

「オレ達は今まで色んな奴と戦ってきた!ナンバーズを集める為…そして奪われない為に、必死になって戦ってきた!…でも!あいつと…アリトと戦ってると…!どうしようもなく、熱くなっちまうんだよ!!燃えてきちまうんだよ─!!」

 

(遊馬……フッ、私には君の燃える思いを消す事はできないな…だったら、私も覚悟を決めよう─!)

 

「サンキュー…!いくぜ!アストラル!!」

アストラルは遊馬の表情を見て覚悟を決めた…とことん2人のデュエルに付き合う事を…!

 

 

 

 

「オレのターン!…アリト!!今度はオレ達の全力モードを見せてやる!!」

 

(いくぞ遊馬─!!)

 

「おう!!かっとビングだ!オレぇぇ!!」

熱き拳闘士を前に…2人は全力を解き放つ!!

 

 

オレと!私で!オーバーレイ!赤青

 

遊馬とアストラルが光を纏い、スフィアフィールドを駆け巡る!!

 

遠き2つの魂が交わる時!語り継がれし力が現れる!!

 

エクシーズチェンジ!!ZEXAL!

 

光の爆発と共に希望の戦士…ZEXALが現れる!!

 

 

 

『遊馬…アストラル…!これがお前らのフルパワーか…!!カッケェ…カッコいいぜ─!!』

希望の戦士を前にアリトは目を輝かせる…まるでヒーローを見た子供のように…!

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ…!あれが遊馬とアストラルの本気の姿『ZEXAL』か!やっぱり近くで見ると迫力が違うなぁ!」

 

《精霊と人間の融合…なるほどね、あの2人も深い絆で結ばれてる訳だ…ボク達みたいにね》

コンテナの上からデュエルを見ていた十代は目を輝かせる…その隣ではユベルが冷静にZEXALを分析していた…。

 

 

《潜在能力でいえば…あのバリアンって奴以上…下手すればダークネスの奴を超えた力を持ってるね》

 

「ああ、ドローカードを創造するっていう『シャイニングドロー』!その力で2人はトロンをぶっ倒したんだ!」

 

《ドローカードの創造ね…まるで何処かの王様みたいじゃないか、さて…今回はどんなデュエルを見せてくれるのかな…?》

 

《(それにしても…精霊との融合なんて『超融合』みたいな理の外の力を使わないと無理があるんだけど…あの2人はいったいなんなんだろうね…今度遊海に聞いてみよう…アイツなら全部知ってるだろうし…)》

 

 

 

 

 

 

「オレは魔法カード『エクシーズ・トレジャー』を発動!フィールド上にいるエクシーズモンスターの数だけドローできる!フィールドにいるのは『ホープ』と『流星のセスタス』の2体!2ドロー!!」

 

(遊馬!エクシーズチェンジだ!)

 

 

39

 

 

「現われろ!『CNo.39』!混沌を光に変える使者!『希望皇ホープレイ』!!」

ZEXALとなった遊馬は希望の使者・ホープレイを呼び出す!

 

 

「ホープレイ…!!」

 

「で、でも不味くないですか!?せっかくの攻撃力が2500に…」

 

「いいや…!これでいいんだ!この方法なら『流星のセスタス』の裏をかく事ができる…!」

ホープレイになり、攻撃力が下がった事を心配する真月だったが…凌牙は遊馬達の意図に気付いていた…!

 

「『流星のセスタス』の効果は相手の攻撃力が自分より高くないと発動しねぇ…つまり、攻撃力が同じ『ホープレイ』なら相討ちに持ち込める!!」

 

 

 

「いっくぜぇ!アストラル!!」

 

(私達の力の全てを出しきる!!)

 

『かかってきやがれ─!!』

 

「『ホープレイ』で『流星のセスタス』を攻撃!!ホープ剣カオススラッシュ!!」

 

『突っ込め!「流星のセスタス」!!』

ホープ剣とセスタスの拳が衝突…互いに砕け散る!

 

 

(今だ!)

 

「おう!『ホープレイ』が破壊された瞬間!速攻魔法『エクシーズ・スタンドアップ』を発動!自分のエクシーズモンスターが戦闘破壊された時!そのモンスター効果を無効にして、墓地から特殊召喚する!復活しろ!『ホープレイ』!!」

 

『なにっ─!』

遊馬の場に希望の戦士が再臨する!!

 

 

「これがオレ達の力…ZEXALの力だ!!」

 

『へへっ…嬉しいぜ!じゃあ俺も…その先の底力を見せてやる!速攻魔法発動!「エクシーズ・スタンドアップ」!!戻ってこい!「流星のセスタス」!!』

 

「なっ─!?」

 

(アリトも我々と同じカードを!?)

アリトの場に拳闘士が復活する…!

 

「くっ…!『エクシーズスタンドアップ』で特殊召喚したモンスターはこのターンは攻撃できねぇ…カードを2枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

 

 

 

『ははは…アハハハ!!最高だよ遊馬!お前達の本気を感じる事ができて…!そうだ!俺が求めていたのはこんな決闘なんだ!!俺の全ての思いを力にして…ぶつけてやるぜ─!!』

遊馬とアストラル…ZEXALの全力のデュエルを見たアリトは獰猛に笑う…!

 

 

「おう!そうだぜアリト!オレもこのデュエルで…お前に全てをぶつけてやる!!」

 

『面白ぇ…!見せてやるぜ遊馬!俺の全力を!!うおおぉぉ!!バリアルフォーゼ!!

腕に金色の腕輪を装着したアリトの姿が変わる…真紅の肉体に刺々しい仮面を着けたような異形、それこそがアリトのバリアン体の姿だった…!

 

 

「これが、アリトの真の姿…!」

 

『遊馬…これで全てが揃った…お楽しみはこれからだゼ!!』

 

 

 

 

『いくぞ遊馬…!!俺は「RUM-バリアンズ・フォース」を発動!このカードは自分のエクシーズモンスターをカオス化させ!カオスエクシーズを特殊召喚する!!俺はランク4の「流星のセスタス」でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!』

流星のセスタスが赤い閃光となり…闇の爆発と共に生まれ変わる!!

 

 

105

 

 

『闇を飲み込む混沌を…光をもって貫くがよい!!現われろ!「CNo.105」!「BK彗星のカエストス」!!』

現れるのはセスタスの真の姿…紺色の体にカオスの力を漲らせた戦士が顕現する!

 

 

「これが、アリトのカオスナンバーズ…!」

 

『そうだ…!俺の思いの丈だ!』

アリトのカオスナンバーズに圧倒される遊馬…そしてアリトはその強力な効果を発動する!

 

 

 

『「彗星のカエストス」の効果発動!カオスORUを1つ使い!相手モンスター1体を破壊して、その攻撃力分のダメージを与える!!』

カエストスの背負うクロス型のパーツから真紅の閃光が放たれる!!

 

 

「罠発動!『オーバー・トレーニング』!!その効果により、このターン『ホープレイ』は戦闘・効果では破壊されなくなる!!」 

 

『なっ…!?「カエストス」の効果を弾いただと!?』

ホープレイの前にバリアが展開され、真紅の閃光を防ぐ!

 

『だが…攻撃はさせてもらうぞ!!「彗星のカエストス」で「ホープレイ」を攻撃!コメット・エクスプロージョン!!』

 

「ぐっ…!うおあぁぁ─!!」

カオスの力を纏った拳圧がホープレイを直撃…破壊こそ免れたが、ZEXALは激しく弾き飛ばされる!

 

 

(ぐっ…!ダメージは受けたが、『ホープレイ』は残った…!)

 

『流石だな、遊馬…そしてアストラル…!さぁ、お前達のターンだ!』

遊馬達のライフは僅か200…だが、その瞳に諦めの色はない…!

 

 

 

『さぁ…!来いよ遊馬!!お前達の熱い思いを…俺にぶつけてこぉぉい!!』

 

「アリト…こんな熱いデュエルなのに…!お前はバリアンで…オレ達は……!!」

熱く燃えるアリト…その姿を見て遊馬は悔しさに拳を握る、もしも…お互いにバリアンやナンバーズが賭けられていなければ、本当に…本当の意味で()()()()()だったのだろうと…。

 

『遊馬……今は、そんな事関係ねぇ!!今は…このデュエルを楽しもうぜ─!!』

 

「アリト…!」

悩む遊馬の姿を見たアリトはそう声を掛ける…バリアンの使命も、遊馬達の使命も…この瞬間だけは関係ないと…!

 

 

『俺達のデュエル…最後まで熱く楽しもうぜ!!』

 

「アリト…お前…!」

 

(そうだ遊馬…今は…彼の思いに応えよう…最後まで!!)

 

「アストラル…!!」

この瞬間、遊馬とアストラルの気持ちは完全に1つとなる…アリトに…遊馬の最高のライバルの思いに応える為に!!

 

『来やがれ!遊馬─!!』

 

「アリト!!オレもこのデュエル…全力でウルトラ楽しんでやらぁぁ!!オレのターン!!」

 

全ての思いを…(オレ)はこの1枚に懸ける!!

 

ZEXALの右腕に光が集う!!

 

 

最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえも、デュエリストが創造する!シャイニングドロー!!

 

閃光と共に勝利の道筋を照らすカードが創造された!

 

 

 

 

「オレはコイツを召喚だ!天翔ける空の王よ!汝の爪牙で万物を掌握せよ!来い!『ZW-荒鷲激神爪(イーグル・クロー)』!!」

現れるのは新たな『ゼアル・ウェポン』…鋭い翼を持つ双頭の鷲が現れる!

 

 

「『荒鷲激神爪』は自分と相手のライフに2000以上の差がある時に特殊召喚できる!」

 

『ゼアルウェポンだと…!?』

 

「そして自分フィールドに『希望皇ホープレイ』がいる時!このモンスターは『ホープレイ』の装備カードとなり、攻撃力を2000アップさせる!!イーグルチャージ!」

双頭の鷲が分裂…ホープレイの翼と合体し、荒ぶる爪牙となる!

 

 

「いっけぇ!『ホープレイ』!『彗星のカエストス』を攻撃─!」

 

『させるかぁぁ!!墓地に眠る「BKカウンター・ブロー」の効果発動!このモンスターを墓地から除外し、相手の墓地の罠カードを発動できる!遊馬の墓地の「バトル・ラッシュ」を発動─!!』

 

「なんだって!?」

アリトの墓地のモンスターの幻影が遊馬の墓地の罠を引きずり出す!

 

 

『「バトルラッシュ」の効果によりこのバトルの間「カエストス」はバトルでは破壊されず、俺の受ける戦闘ダメージは0になり!その数値分のダメージを相手に与える!!』

 

「まだだ!「荒鷲激神爪」の効果発動!バトルの時に一度だけ、相手の罠カードを無効にできる!」

 

『それも読んでいたぜ!これでトドメだ!!カウンター罠「コークスクリュー・クロス」発動!バトル中に相手のカード効果が発動した時!その効果を無効にし、さらに500ダメージを与える─!!』

 

「なっ!?ここでカウンターを!?」

激しい効果の打ち合い…カエストスの拳が遊馬達に迫る!!

 

 

「…まだだ!まだ終わってない!!オレは全ての力を吐き出す!!カウンター罠『ラストチャンス』発動!!相手の墓地からカウンター罠を発動させる!オレが発動するのは…『カウンターズ・ハイ』!!」

 

『なっ!?お前も墓地から─!?』

それは渾身の…最後の一撃!

 

「『カウンターズハイ』の効果発動!バトル中に発動したカウンター罠を無効にして破壊!!そして…このバトルで受けるダメージは倍になる!!」

 

『そんな…馬鹿な!!』

 

「かっとビングだ!オレ─!!『ホープレイ』で『カエストス』を攻撃!!イーグル・カウンター・マグナム!!」

赤熱化した爪牙がカエストスを殴り飛ばす!!

 

 

「いっけぇぇ!!ホープ剣カオス・イーグル・スラッシュ!!」

 

『ぐっ…!うわあああぁぁ─!!?』

 

 

長きに渡るカウンター合戦…それを制し、勝利のゴングを鳴らしたのは遊馬だった…!

 

 

 

アリトLP0

 

ZEXAL WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…!アリト!大丈夫か!?」

 

『ははっ……楽しかったな、遊馬…!』

スフィアフィールドが消えZEXALが解けた遊馬はアリトへと駆け寄り、助け起こす…満身創痍のアリトは笑っていた…。

 

 

「ああ…!オレも楽しかった!またやろうな!!」

 

『……それは、叶わねぇだろうなぁ…』

 

「えっ…!?アリト、お前…まさか…!」

遊馬の問い掛けにアリトは静かに首を振る…アリトはナンバーズの回収に失敗した、それはつまり…何らかのペナルティがある事を意味しているのだ…。

 

 

 

『アストラル、持っていけ…俺の「魂」を…』

 

(…わかった)

アリトはアストラルに身を委ね、「No.105」を渡そうとする…だが…。

 

 

 

(!?……ナンバーズを、吸収できない…!?)

 

 

 

『「えっ…?」』

アストラルの言葉に遊馬とアリトは戸惑う…例外()を除き「No.」はアストラルの記憶…だが、アリトのナンバーズはアストラルに吸収する事ができなかったのだ…。

 

 

キィィン…

 

 

『っ…迎えが来たな……お別れだ、遊馬…じゃあな!』

 

「アリト…!アリト─!!」

アリトの背後に現れた異次元への扉…アリトはその扉に吸い込まれるように消えてしまった…。

 

 

(アリト…君のナンバーズは……っぐ!?)

 

ドクン!!

 

「アストラル!?どうしたの!?」

 

「えっ…!?あ、アストラル─!?」

アリトを見送った直後、強い痛みに襲われたアストラルは体を明滅させながら倒れ込んでしまった…。

 

 

 

 

 

「ふぅ…とりあえず、一件落着みたいだな…熱いデュエルだったぜ…アストラルは大丈夫なのか?」

 

《どうやら…アストラルはあの『バリアンズスフィアフィールド』と相性が悪いみたいだね…とりあえず、休むしかないだろうさ》

デュエルを見届けた十代は額の汗を拭う…そしてユベルはスフィアフィールドとアストラルの相性の悪さを見抜いた…。

 

 

《それより…あの()がいなくなってるねぇ…》

 

「遊海先生には手出しするな…って言われたけど…アイツはヤバそうだぜ…『破滅の光』に洗脳された斎王…あいつよりも嫌な気配がする…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アリト!しっかりしろ!!誰だ…誰にやられた!!』

 

『ぐっ…うぅ…』

同じ頃…バリアンのアジトでギラグは叫んでいた…その腕の中では重傷を負ったアリトが苦しんでいる……遊馬とのデュエルを終えた直後、何者かに奇襲を受けたのだ…。

 

 

『誰だ!メタルナイトか!?それともカイトって奴か!?』

 

『…しん…げつ…──』

 

『おい!アリト!?アリト!!アリトォォォォ!!!』

 

ギラグの叫びがアジトに悲しく響いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

【まったく…情けないよなぁ、遊馬の奴に絆されやがって…だが、これで義理堅いギラグの奴は…さぁ、オレ様の良からぬ作戦も大詰めだぁ…!ギャハハハ!!】

 

『………(ああ…頭が痛い…ベクター様を見ていると頭が痛い…私は……)』

 

 

 

 

 

 



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対決!バリアンの戦士・ギラグ〜赫灼の希望皇〜

こんにちは!S,Kです!投稿が遅れてしまい、本当にすみません!

2020年もあと約半日…コロナで大変な1年でしたが…来年は少しでも良い年になる事を願いましょう…!


そして本年も本当にありがとうございました!どうか良い年末年始をお過ごしください!



それでは、最新話をどうぞ!


『九十九遊馬とのデュエルに敗れた挙げ句…待ち伏せに遭ってこのザマか…情けないな、アリト…』

 

『くっ…』

 

夜のハートランド…その某所にあるバリアンのアジト、そこでミザエルは負傷によって意識を失っているアリトに声を掛ける…ギラグがアリトを救う為に救援を頼んだのだ…。

 

 

 

『さて…残りの「スフィア・フィールド」は1つ…どうするつもりだ?』

 

『アリトの仇は…オレが討つ…!オレにしかできねぇ!!』

 

『ギラグ、感情に任せて目的を見失うな…我々の目的はあくまで「ナンバーズの回収」だ』

ミザエルの問い掛けにギラグは怒りのオーラを纏いながら答える…戦友であるアリトへ奇襲を仕掛けた真月への怒りはギラグの戦士としての魂に火をつけた…。

 

 

『ミザエル、そんな事は百も承知だ…!オレは()()()奴らを叩き潰す!!』

 

『お前…まさか、()()()()()()()を使うつもりか…?』

ギラグの言葉にミザエルは気づいた…ギラグは全てを賭けて任務を果たし、仇を討つつもりなのだと…!

 

 

『…わかった、お前にそこまでの覚悟があるなら…お前に任せよう、私はひとまずアリトを連れてバリアン世界に戻るぞ…』

ギラグの覚悟を見定めたミザエルはアリトと共に異次元へと消えていった…。

 

 

 

『見ていろよアリト…!必ずオレが…!!』

ギラグは強く拳を握り締めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっ!?遊馬!真月くん!どうしたのよ!その怪我は!?」

 

「いやーははは…良かれと思って近道したら…」

 

「めちゃくちゃ犬に追いかけられたぜ…イテテ…」

アリトとの決闘の翌日…遊馬と真月はボロボロになっていた…。

 

「まったく…そんなになっても遅刻かよ…もう少し早く起きろよ遊馬…」

なお、怪我をしてまで走っても遅刻だったので鉄男は呆れている…。

 

 

「ごめんなさい遊馬クン…ボクは良かれと思って…」

 

「とどのつまり!真月君の『良かれと思って』が本当に良い結果になった事は一度もありませんね!」

 

「全部裏目に出てるウラ!」

 

「…しょぼーん…すいません…」

 

「気にすんなって!今日もスリル満点で楽しかったぜ!」

等々力と徳之助にイジられた真月は落ち込むが…すかさず遊馬がフォローを入れる。

 

 

「…なんだかんだ…遊馬も楽しんでるウラ…」

 

「とどのつまり!2人はいいコンビでしょう!」

 

「間違いねぇな!ハハハハ!!」

等々力の一言でナンバーズクラブは笑いに包まれた…。

 

 

 

 

………

 

 

 

 

「ねぇ、遊馬…アストラルは大丈夫なの?」

 

「ああ…ミザエルやアリトの使ったフィールドのせいでダメージを受けちまって…今は皇の鍵で休ませるしかないって…」

時は過ぎて放課後、鉄男と小鳥と共に歩く遊馬は小鳥にアストラルの事を聞かれて昨日の事を思い出した…。

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「ゆ、遊海!!アストラルが!アストラルが!!」

 

《遊馬、静かに…マスターは眠ってしまったところです…》

 

「あっ…!?ご、ごめん…」

 

「すぅ…すぅ…」

デュエルが終わった後…遊馬はすぐに遊海の病院へと駆け込んだ…だが、遊海は深く眠ってしまっていた…。

 

 

 

《十代から連絡は来ています、バリアンのフィールドで再びデュエルをしたそうですね?》

 

「ああ…なんとかアリトは倒したんだけど…アストラルが苦しみだして…!」

アヤカの確認に遊馬は状況を説明する…。

 

 

《先程マスターと共にその話をしていました…おそらく『バリアンズ・スフィア・フィールド』はアストラル世界やそれに近い力を持つ者に特攻ダメージ…いえ、強い影響を与えてしまうフィールドなのでしょう…その影響でマスターの治癒も遅くなっています…》

 

「そんな…!?それじゃあアストラルは…!」

 

《…心配する事はないですよ、皇の鍵の空間はアストラルにとっての安息の世界…安静にしていればじきに回復するでしょう》

 

「よ、よかったぁぁ……」

アヤカの言葉を聞いた遊馬は安心からへたり込んでしまった…。

 

 

《…マスターからの言伝です…『遊馬、よくバリアンの刺客を倒したな、きっと辛いデュエルだったろう…それでも、お前は間違っていない!胸を張って次の戦いに備える事!』……との事です、よく頑張りましたね!》

 

「遊海…アヤカ…ああ!」

遊海の激励を聞かされた遊馬は少し元気を取り戻した…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「……次の戦いに備える事…か…頑張らないとな!」

遊海の言葉を思い出して気合いを入れ直す遊馬…その時だった…!

 

 

『九十九…遊馬ぁぁ!!』

 

ドッシーン!!

 

「お前は…ギラグ!!」

遊馬の前に何者かが立ちふさがる…それはバリアンの戦士、ギラグだった…!

 

 

キィン─!

 

(気を付けろ遊馬…!また何かを仕掛け、ぐっ…!)

 

「アストラル!無理すんじゃねぇ!!」

バリアンの気配を感じたアストラルが皇の鍵から飛び出してくるが…痛みに蹲ってしまう…。

 

 

『…九十九遊馬、オレとデュエルだ…!お前のナンバーズを全て戴く…!!』

 

「くっ…!」

ギラグの宣戦布告に身構える遊馬…だが、ギラグは懐から封筒を取り出す…。

 

 

『慌てるな、明日の夕方…この封筒に記した場所に来い…!今度は真っ向勝負だ!必ず()()()を連れて来い!!』

 

「っ…?真月を…?なんでだ!」

ギラグは封筒を遊馬に投げ渡す…だが、遊馬は真月を連れてという条件を聞いて問い返す…!

 

『お前達は…真月の正体を知らないらしいな…!奴は、お前とのデュエルが終わった後にアリトを闇討ちしやがったんだ!!』

 

「「「なんだって!?」」」

怒りに燃えるギラグの言葉に遊馬達は騒然とする…。

 

 

 

『オレは…あの卑怯者を許さん!!2人纏めて叩き潰してやる!!』

 

「ま、待てよ!真月はそんな事できる奴じゃねぇ!!」

 

『何故そう言い切れる!証拠は…根拠はあるのか!?』

 

「それは…それは…!」

凄まじい怒気で遊馬に詰め寄るギラグ…そこで遊馬が真月を庇う為に言った言葉は…!

 

 

「それは…それは…!真月が、ヘタレだからだあぁぁ!!」

 

ズコッ

 

 

カー カー アホー

 

 

「……遊馬、お前なりに精一杯フォローしてるんだろうけどな…」

 

「ひどい事言ってるよね…」

 

((無言で頭を抑える))

 

『…お前と話してると…調子が狂うぜ…』

周囲に木霊するほどの大声で真月をフォローしようとした遊馬…だが、それはギラグにすら呆れられるものだった…。

 

『…とにかく!本人に聞いてみろ!それではっきりするはずだ!!』

そう言い残すとギラグは去って行った…。

 

 

 

 

 

 

 

「…それで、俺に相談しにきた訳か」

 

「うん…」

しばらく後、遊馬の姿は遊海の病室にあった…ギラグに伝えられた事で悩み、遊海に相談しにきたのだ…。

 

 

「オレ…アリトの奴をバリアンだったのに嫌いになれなかったんだ…そのアリトを真月が闇討ちしたなんて…信じたくないんだ…!それに真月は弱いから、アリトに勝てるとは思えなくて…」

 

「…遊馬、お前には悪いが…俺も真月は怪しいと思ってるんだ…」

 

「えっ…!?ど、どうしてだよ!?」

遊海の思わぬ言葉に遊馬は動揺する…。

 

 

「遊馬、初めて真月を俺の家に連れて来た時の事を覚えてるか?」

 

「あ…うん、フォウがすごい唸ってたっけ…」

 

「フォウと暮らしてだいぶ時間が経つが…俺はフォウがあそこまで人を警戒した姿を見た事がない…真月は何かしらの隠し事をしてる可能性がある」

 

「そんな…!」

 

「俺はお前の友人関係に口を出す事はしない…もし、お前が真月を本当の友人だと思うなら…直接聞くのも大切な事だぞ?」

 

「直接聞いてみる……わかった!ありがとう遊海!」

遊海の言葉を聞いた遊馬は迷いを振り払った…。

 

 

「…ところでさ…フォウって何歳なんだ?オレが小さい頃から遊海のところにいるよな?」

 

「ん…?俺がこの街に来てからだから………30年、くらいか…?」

 

「ええっ!?ネコって長生きでも20年くらいだって聞いた事があるけど…!?」

 

「う〜ん…?そういえば考えた事なかったなぁ…まぁ、俺達みたいな存在もいるし…フォウもそういう不思議なネコなんだよ…たぶん」

 

「やっぱり遊海は懐が深いぜ…」

 

 

 

 

 

 

「お〜い!真月!!」

 

「あっ!遊馬クン!おはようございます!」

翌朝、少し早めに家を出た遊馬は真月の背中を見つけ声を掛けた…。

 

 

「あのさ、ちょっと聞きたいk「遊馬クン!実は新しい学校への最短ルートを見つけたんですよ!!」お、おぅ…」

遊馬が真月へと質問を投げかける寸前…真月は被せるように新しい通学路を説明し始める…。

 

 

「今回は失敗しないように自分でも走って見たんです!遊馬クン!ボクを信じてください!今度は失敗しませんから!」

 

「…ああ!信じてるに決まってるだろ!」

 

(…遊馬(遊馬は遊海の忠告を忘れたわけではない…君は…本当に真月を信じているのだな…))

人懐っこい笑顔をみせる真月…その姿を見た遊馬は彼への問いを飲み込んだ、真月もまた…遊馬の掛け替えのない友なのだから…。

 

 

「(遊海…アンタの言葉は本当によく当たる…でもさ、オレは真月を信じる!そう決めたんだ!…オレは…必ずお前を守る!)」

そして遊馬は決意した…真月を守る為に、ギラグに一人で挑む事を…。

 

 

 

 

 

 

『ん……来たか、九十九遊馬そしてアストラル…真月の奴はどうした…!』

 

「真月は来ない…!オレとデュエルだ!!」

逢魔時のハートランド…その一角、バリアンのアジトで遊馬とギラグは睨み合う…!

 

 

『真月が来ないとは…いったいどういう事だ!!』

 

「うるせぇ!来ないったら来ないんだよ!!お前の目的はオレ達のナンバーズだろ!!」

真月が現れない事で強い怒気を纏うギラグ…その圧を証明から受け止めた遊馬はギラグへと叫ぶ…。

 

『ああ、そうだ!!…だが、それ以上にオレはあの卑怯者をボロボロにしてやりてぇんだ!』

 

「真月は…アイツは絶対にそんな事しねぇ!!」

 

『くっ…なら、まずはお前をズタズタにして真月に見せつけ!奴をぶっ潰す!!』

必死に真月を庇う遊馬…ギラグは苛立ちを募らせ、2人のデュエルが始まろうとする…その時だった。

 

 

「待ってください!!」

 

 

「っ!?真月!みんな!?」

響いた声に遊馬は振り返る…そこには学校に置いてきたはずの真月、そして小鳥と鉄男の姿があった。

遊馬がギラグとデュエルする事を小鳥達から聞き出した真月が必死に追いかけて来たのだ…。

 

 

 

「真月!なんで来たんだ!?このデュエルは普通のデュエルじゃないんだぞ!?」

 

「アイツは…ボクを連れて来いって言ったんでしょ!?やっぱりボクじゃ信用できないか!?」

 

「真月…」

 

「ボク…デュエルも下手で、ヘタレだけど頑張るから…!だから…置いてかないでよ!遊馬クン!!」

涙を溜めながら遊馬に自分の思いを伝える真月…その様子を見た遊馬は覚悟を決めた…!

 

 

「…わかった…!一緒に戦おうぜ!真月!!けど…絶対に無茶すんじゃねぇぞ?」

 

「遊馬クン…!」

遊馬は真月と共に戦う事を決意する…だが、その様子に怒りを燃やす者がいた…!

 

 

ふ…ふざけるな!!お前ら…無事で済むと思うなよぉぉ!!』

 

「っ…!!」

遊馬と真月の馴れ合いを見た怒りの叫びを上げる…全ては同志であり、親友であるアリトの仇を討つ為に…!

 

『バリアンズ・スフィア・フィールド…展開─!!』

 

ギィン…バリバリバリ!!

 

ギラグがスフィアフィールドを発動…赤き結界は周囲の建物を砕きながら遊馬達を飲み込んだ…!

 

 

 

『真月…よくも…よくもアリトを闇討ちしやがったな…!!このフィールドでテメェをズタズタにしてやる!!』

 

「ちょ…ちょっと待って!!ボクはそんな事やってない!!」

 

『問答無用!テメェの仕業だとアリトが言った!!それで充分だ!!』

ギラグは真月にアリトへの闇討ちを問い詰めるが…真月は無罪を訴える…!

 

「真月…!なら、オレは真月を信じる!真月はやってねぇ!!」

 

(落ち着け遊馬…!ギラグの気迫は今までとはっ…う…!?)

 

「アストラル!!」

真月を守ろうとヒートアップする遊馬にアストラルは待ったをかけるが…先の戦いの影響で体勢を崩してしまう…。

 

 

(やはり、このフィールドの、影響か…!)

 

「アストラル…!お前は皇の鍵の中にいた方が…!」

 

(ダメだ…!真月のデュエルはまだまだ未熟…!下手をすればキミまで影響を受ける…!今は、私が必要なはずだ…!勝つぞ、遊馬…!)

 

「アストラル…わかった!!」

満身創痍のアストラルの覚悟…遊馬は負けられない戦いへと臨む!

 

 

 

『覚悟はできたようだなァ…!俺は出し惜しみなんかしねぇ!!バリアルフォーゼェェ!!

ギラグはバリアンの力を解き放つ…偽りの肉体が吹き飛び現れるのは胸元に赤き宝石を持ち、鉄騎士の仮面を着けた重戦士…それがギラグのバリアン体だった…!

 

 

「あれが、ギラグの本当の姿…!」

 

『さぁ…!おっ始めようぜ…!』

 

 

 

「「『デュエル!!』」」

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬&真月対ギラグ

 

 

 

 

ついに始まったギラグとのバトルロイヤルデュエル…ギラグは「ハンド」と名のつくモンスターを駆使し、自身の切り札である巨大なナンバーズ…「No.106巨岩掌ジャイアント・ハンド」を召喚する…対して遊馬チームはあまりにもヒドイ状態だった…言わずもがなその原因は真月である。

あろう事か…彼は攻撃力0のモンスターをリカバリー無しに攻撃表示で召喚してしまっていたのだ…!

 

 

 

『卑怯者の真月よ…!アリトの仇を取らせてもらうぜ!!バトルだ!「ジャイアントハンド」で「シャイニング・ボンバー」を叩き潰せ!!』

 

「やらせるかぁ!『希望皇ホープ』の効果発動!ムーンバリア!!攻撃は無効だ!!」

遊馬は真月を守る為にホープの効果を発動させる…だが、それがギラグの狙いだった!

 

 

『「ジャイアントハンド」の効果発動!相手モンスターの効果が発動した時!ORUを1つ使い!その効果を無効にする!モンスター秘孔・死爆無惚!!』

 

「なっ!?『ホープ』の効果が無効にされた!?」

ジャイアントハンドの人差し指部分がドリル状に変化…ホープの胸を貫き、効果を封じ込める!

 

 

『さらに…!フィールドに「ジャイアントハンド」がいる限り「ホープ」の効果は発動できなくなる!』

 

「ぐっ…!だけど、『ホープ』の攻撃力は『ジャイアントハンド』より上だ!次のターンでぶっ倒してやる!」

 

『ハハッ…!そう思うなら攻撃してみろ!()()()()()()()()()()!!』

 

(なに…!?)

不敵な笑みを浮かべたギラグは意味深な言葉を呟くと真月を睨みつける!

 

『だが、今は…!腐れ卑怯者を叩き潰す!「ジャイアントハンド」!「シャイニングボンバー」を叩き潰せ!!』

 

「うわあああ!?」

 

「真月─!!」

ジャイアントハンドの掌から放たれた波動が真月と防護服を纏ったモンスターを吹き飛ばす!

 

 

「ボクだって…ただではやられない!!破壊された『シャイニングボンバー』の効果発動!相手に600ダメージを与える!!」

 

『罠発動!「デフューズ・ハンド」!自分の場に「ハンド」モンスターがいる時!自分の受ける効果ダメージを0にする!』

 

「えっ!?」

反撃の一手を躱したギラグは呆れたように笑う…!

 

『笑えるよなぁ…!お前は自分のモンスターの効果もまともに読めないらしい…!「シャイニングボンバー」は破壊された時!()()()()()()()()()ダメージを与えるんだよぉ!!』

 

「し、しまったぁ!?」

 

(「なっ…!?」)

 

カチッ…ボッゴオオン!!

 

「「(うわあああ!?)」」

シャイニングボンバーが手にしていた自爆装置を起動…巻き添えを喰らった遊馬とアストラルもスフィアフィールドに叩きつけられる!!

 

 

「うぅ…!真月、大丈夫か…!?」

 

「す、すみません…良かれと思って…」

 

「…仕方ねぇよ…相手が一枚上手だったんだ…!」

顔を青褪めさせる真月に遊馬は庇う…だが、このデュエルは2人だけの問題ではない…。

 

 

(遊馬…!やはり、このデュエル…彼を守りながら戦うのは、危険だ…!)

 

「アストラル…!?」

体を点滅させたアストラルは遊馬に呼びかける…受けたダメージは600ポイントだが…アストラルは既に苦しげな様子だった…。

 

 

「アストラル…!真月を見捨てろって言うのかよ!」

 

(遊馬、君の気持ちはわかる…!だが…!!)

 

「だがもしかしもねぇ!!オレは…オレは真月を見捨てない!!」

 

(遊馬…!っぐぅ!?)

 

ドクン!!

 

「アストラル!?大丈夫か!!しっかりしろ!!」

身体の限界を迎えたのか…アストラルは倒れ込んでしまう…それは遊馬にとって初めての事だった…。

 

 

(ゆうま…すまない、私が付き合えるのは…ここまでの、ようだ…ギラグ、彼の実力はミザエルや遊海にも匹敵する…共に戦えず、すまない…!君にナンバーズを託す…!)

 

「アストラル!!」

そう言葉を絞り出したアストラルはナンバーズを遊馬に託し、皇の鍵へと戻ってしまった…。

 

 

 

『ハッ…!どうやらアストラルは限界のようだな!』

 

「くっ…!ごめん、アストラル…!小鳥!皇の鍵を…アストラルを頼む!!」

 

「えっ…遊馬!!」

 

『バリアンのスフィアフィールドはアストラル世界の力を持つ者に強いダメージを与える』…遊海の言葉が過ぎった遊馬はスフィアフィールドの外にいる小鳥へとアストラルを託す…!

 

 

「このデュエル…絶対に負けねぇ…!必ず…真月もアストラルも守ってみせる!!」

 

 

 

デュエルは続く…遊馬はホープでジャイアントハンドを倒そうとするが、ジャイアントハンドのさらなる効果「五死眼光」によってホープが破壊されてしまう。

遊馬は必死にフィールドを立て直そうとするが…真月が足を引っ張り、残りライフ900まで追い詰められてしまう…そして…!

 

 

 

『俺のターン!来たぜ…!貴様らを葬るカードが!!俺は「RUM-バリアンズ・フォース」を発動!!「ジャイアントハンド」をカオスエクシーズチェンジさせる!!』

 

「っ…!カオスナンバーズ!!」

ギラグの頭上で闇の光が弾ける…その瞬間…!

 

ズキン…!

 

『(ぐっ…!?)』

ギラグに耐え難い苦痛が襲いかかる…強力な力を持つ『CNo.106』…それを操るにはギラグの命を削り、供物とする必要があったのだ…!

 

『(俺の命が削られていく…それでも、俺は…!俺は迷わない!!)カオス…エクシーズチェンジィィ!!』

 

 

106

 

 

『いでよ!「CNo.106」!混沌なる世界を掴む力よ…!その手は大地を砕き、指先は天空を貫く!!「溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド」!!』

現れるのは灼熱の溶岩を纏う巨大な腕…それがギラグの切り札だった…!

 

 

「これが、奴のカオスナンバーズ…!」

 

『「ジャイアントハンドレッド」の効果発動!カオスORUを1つ使い!フィールドにあるこのカード以外の表側表示のカード効果を無効にする!紅漠無惚!!』

 

「しまった!『炎の護封剣』が!!」

ジャイアントハンドレッドの波動が遊馬の護りを粉砕する!!

 

 

『バトルだ!「ジャイアントハンドレッド」で九十九遊馬にダイレクトアタック!!万死紅掌─!!』

高速回転したジャイアントハンドレッドが遊馬へと突撃する!

 

「…やらせない!!罠カード『シャイニング・スタント』発動!!相手モンスターの攻撃を無効にして、バトルフェイズを終了させ…!ボクはそのモンスターの攻撃力の半分のダメージを受ける!!うわあああ!!」

 

「し、真月─!!」

攻撃を直撃する寸前…真月が身を挺して遊馬を庇う…残りライフは…僅か100となった…!

 

 

「遊馬、クン…少しは、お役に立てたかな…?」

 

「真月…お前…!無茶すんじゃねぇよ…!」

 

『馬鹿め…自分からダメージを受けてくれるとはなぁ……俺はカードを2枚伏せ…!フィールド魔法「侵食手の森」を発動!この効果により…俺のスタンバイフェイズが来るたびに、お互いに1000ダメージを受ける…!』

 

「な、なんだって!?」

スフィアフィールドの内部が茨に包まれる…この時点で遊馬達は次のギラグのターンでの敗北が確定してしまった…。

だが、それはギラグも同じ…「CNo.106」を呼び出した代償でギラグの身体は限界へと近付いていたのだ…。

 

 

 

「遊馬クン…今度こそ、ボクに何があっても助けないで…!ボクはどうなったっていいから…!」

 

「真月…!」

ジャイアントハンドレッドから溢れる力で炎に包まれるスフィアフィールド…真月は遊馬を助ける為に最後の攻勢に出る…!

 

 

 

「ボクのターン!『シャイニング・ラビット』を召喚!さらに魔法カード『シャイニング・ブリッジ』を発動!これで攻撃力1000以下のシャイニングモンスターは相手にダイレクトアタックできる!いっけぇ!!」

虹の橋を紳士服を着た兎が駆け抜ける!

 

 

「そして『シャイニングラビット』がダイレクトアタックに成功した時!相手の魔法カード1枚を破壊できる!!」

 

『そうはさせるかぁ!!罠カード発動!「バイス・ハンド」!相手モンスターの攻撃を無効にし!そのコントローラーにそのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!!これで貴様は終わりだ!地獄の炎に焼かれて…アリトに詫びろぉ!!』

 

「しまっ─!!」

 

「罠発動!『デスパレード・ガード』!自分のライフを半分払う事で…効果ダメージを無効にする!!」

真月のライフが尽きると思われた瞬間…遊馬は自分のライフを削り、真月を助ける!!

 

 

『テ…テメェは馬鹿か!?友情ごっこも大概にしやがれ!!』

 

「遊馬クン!どうして…!」

 

「お前を放っておけるかよ…!アストラルも、お前も…!オレの大事な仲間だ!!だから…オレは誰も見捨てない!!」

自身が傷付いても遊馬は絶対に仲間を見捨てる事はない…それが九十九遊馬という決闘者の魂…遊馬は絶対に掴んだ手は離さない!!

 

 

 

「オレのターン…!ドロー!!」

 

『往生際の悪い奴だ!罠発動!「デス・ハンド」!相手の手札1枚につき300ダメージを与える!お前の手札は3枚!これで終わりだ!!』

死を齎す手が遊馬へと迫る、絶体絶命の窮地…その時、友情が奇跡を起こす!

 

 

「罠発動!『シャイニング・リボーン』!!自分の場のモンスター2体をリリースし、さらに()()の手札を全て墓地に送る!!」

 

 

「真月!?オレの手札を─!?」

真月が発動した罠…それによって手札が失われ、死を招く手は霧散する…!

 

「…相手に手札が無ければ『デス・ハンド』は意味を為さない!」

 

『き、貴様…!』

 

「真月…!?」

…そこにヘタレでお調子者の真月の姿はない、今の真月が纏うオーラは…歴戦の戦士が纏うソレと同じだった…!

 

 

「そして『シャイニングリボーン』のさらなる効果により、遊馬の墓地のエクシーズモンスター…『希望皇ホープ』を遊馬のフィールドに特殊召喚!!さらに、()の手札1枚を遊馬の場にセットする!遊馬!コレを使え─!!」

ホープを呼び戻した真月は逆転の一手を遊馬に投げ渡す!

 

 

「こ、このカードは…!?『RUM』…『リミテッド・()()()()()・フォース』!?」

 

『なっ、バリアンだと!?』

投げ渡されたカード…それは、バリアンの名を冠するランクアップマジックだった!

 

 

「遊馬…説明は後だ!アストラルを助ける為に…私を信じてくれ!!」

 

「バリアンのカードをオレが……面白ぇ…!オレは、お前を信じる!!かっとビングだ─!!」

遊馬は手にした新たな力を解放する!

 

 

「オレは!『RUM-リミテッド・バリアンズ・フォース』を発動!このカードは!ランク4のエクシーズモンスターをランクアップさせ、カオス化させる!!オレは『希望皇ホープ』1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズチェンジ!!」

闇の閃光が遊馬と真月を照らす…そして混沌の力がホープに新たな力を与える!

 

 

39

 

 

「いでよ!『CNo.39』!混沌を統べる赫き覇王!悠久の戒めを解き放ち、赫炎となりて闇を打ち払え!『希望皇ホープレイV』!!」

それは新たなホープ…先鋭的な身体に紅紫と紺色の混沌の皇…ホープレイV!!

 

 

「これが、『ホープ』の進化…」

 

「そうだ、これがキミの新たな力だ!!」

 

『馬鹿な…ナンバーズのランクアップだと!?そんな力を人間共が持っているはずはない!!』

突然の事に動揺するギラグ…だが、勝利の方程式は既に完成している!

 

 

 

「『ホープレイV』の効果発動!カオスORUを1つ使い!相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!『ジャイアントハンドレッド』を打ち砕け!Vブレード・シュート!!」

 

『なっ!?ぐおあああ!?』

ホープ剣がジャイアントハンドレッドを粉砕する!

 

「これで終わりだ!『ホープレイV』でギラグにダイレクトアタック!ホープ剣Vの字斬り─!!」

「V」の軌跡を残す2連撃がギラグのライフを削りきり…デュエルは決着した…。

 

 

ギラグLP0

 

遊馬&真月 WIN!

 

 

 

 

 

 

『ぐっ…き、貴様…!真月…お前は、いったい…!!』

 

「いずれわかるさ、いずれな…!」

 

『くっ…そぉ……』

 

キィィン…

 

致命傷を負ったギラグは異次元の扉へと吸い込まれ、消え去った…。

 

 

 

 

 

「バリアンズ…ガーディアン…?」

 

「そうだ、私はバリアン世界の人間…こちらで言うならば『警察』のようなモノだ」

 

「え、えぇぇ!?真月がバリアン─!?」

 

「シーッ…これはナイショにしておいてくれ…おっと、スフィアフィールドが消えてしまうな…」

真月の口から語られる衝撃の真実…遊馬は驚愕するが…その直後、スフィアフィールドが消え小鳥達が駆け寄って来る。

 

 

 

「遊馬!真月君!大丈夫!?」

 

「は、はい!()()()()のおかげで勝つ事ができました!かなり足を引っ張ってしまいましたが…アハハ…」

 

「へっ!?」

真月の態度の豹変に遊馬は目を丸くした…。

 

 

 

 

 

『…ハッキング完了…「CNo.39希望皇ホープレイV」の出現を確認…マスター』

 

「わかった…戻って来てくれ、お疲れ様」

 

『了解しました』

その様子を見つめる銀髪の少女がいた事には…誰も気付かなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ…最初からアストラルが見えてたのか…」

 

「私の使命は悪のバリアンの捜索と排除…その為に人間のフリをして潜入していたんだ」

その夜、遊馬は真月の真意を聞いていた…なお、アストラルは皇の鍵の中で療養中である。

 

 

「でも…バリアンにも善とか悪ってあるんだな?」

 

「ああ、もちろんだ…バリアン世界は悪の世界ではない…正義を想う者もいる、今日からは私も真の友としてアストラルを一緒に守ろう」

 

「おお〜!アストラルもバリアンに味方がいるって知ったら驚くだろうなぁ…!」

 

「すまないが…この事は2人の秘密にしておいてくれ…それが我々の決まりなんだ…」

 

「そっか…わかったぜ!相棒!」

 

「フッ…ついでに、遊馬はバリアンズ・ガーディアンの部下扱いだからな?」

 

「そうなの!?」

 

真月の正体を知った遊馬は彼と新たな友情を結んだ…。

 

 

…それがのちに、仲間達との決定的な亀裂となる事を…遊馬はまだ知らない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

【イテテ…ギラグの野郎め…よくも痛めつけてくれやがって…だが、これでオレ様の良からぬ作戦は成功に近付いたぜぇ…!ギャハハハハハ!!!】

 

『…まどろっこしい事を…』

 

【あん?何かいったか?】

 

『…いいえ、何も…』



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スキャンダル・パニック〜ロボットは恋の夢をみるか?〜

あけましておめでとうございます!S,Kです!

旧年中は本当にありがとうございました!2021年も、のんびり頑張りますのでよろしくお願いします!


それでは新年最初のお話をどうぞ!


「…なるほど、そんな事があったのか…」

 

「ああ、色々大変だったぜ…」

 

ギラグとの戦いから数日…遊馬は入院中の遊海のもとを訪れていた…。

 

 

 

「それにしても…世界を生み出したカード『ヌメロン・コード』か…」

 

(そう…あらゆる世界の運命を決める事のできる『神のカード』…それをバリアンより先に手に入れる事、それが私に課せられた真の使命…)

 

ギラグ戦の後、遊馬とアストラルは皇の鍵の中で試練を受けた…試練を超えた先でアストラルが思い出したのは自分の本当の使命…それは世界を創り出した1枚のカード『ヌメロン・コード』を手に入れる事だったのだ。

 

 

 

「たしか…大昔に似た話を聞いた事があったなぁ…」

 

(流石だな遊海…参考までにその話を教えてほしいのだが…)

 

「ああ、問題ないよ…あれはだいたい90年くらい前の事件の時か…俺は十代と一緒に虚無の神・ダークネスと戦う事になったんだ…その時奴はこう言った『かつて宇宙が1枚のカードの表と裏から誕生した時、カードの裏側から生まれ出でた暗黒面そのもの』『自分自身こそが12次元宇宙の影』だってな…おそらく、それが『ヌメロンコード』の事なんだろうな…」

 

「…なんだか、とんでもない奴と戦ってねぇか…!?」

遊馬はあまりにもスケールが大きい敵の話に顔を青褪めさせる…。

 

 

(虚無の神…それがヌメロンコードに関係あるのなら…私達も戦う事になるのだろうか…?)

 

「心配する事はないさ、ダークネスは70年前に俺がぶっ倒したから…そう簡単に復活する事はないさ、それより問題なのは逃げ出した『No.96』の事だな…」

 

(それに関しては私の責任だ…まんまと彼の口車に乗せられてしまった…)

 

「気にすんなよアストラル!また捕まえればいい話じゃねぇか!」

遊馬とアストラルは試練の際にエクシーズメタとも言える強力なモンスター『虚構王アンフォームド・ボイド』と戦う事になった…そのモンスターを倒す為に遊馬達は因縁の『No.96ブラック・ミスト』を使い、デュエルに勝利したのだが…それと引き換えに『No.96』…黒いアストラルが解放されてしまったのだ…。

 

 

 

「過ぎた事はしょうがない…俺もようやく退院だからな、できる範囲で警戒しておくさ」

 

「なぁ…本当に退院して大丈夫なのか…?足の怪我、治りきってないんだろ?」

 

「ああ…だから、しばらくは『メタルナイト』は休業だよ…幸いにも暴走事件の件数は減ってるらしいから…少し養生するさ、しばらくは松葉杖だしな…」

遊馬はベッドに横たわる遊海の足を見る…右足は未だにギプスで固められていた。

 

 

 

「そういえば…遊馬、真月の事は大丈夫だったのか?」

 

「えっ…あ、ああ!大丈夫だった!真月は本当に良い奴だったんだ!だから安心してくれよ!」

遊海の問い掛けに遊馬は少し動揺しながら答える…。

 

「…そうか、ならいいんだが…(くそ、ベクターめ…!)」

遊海は静かに拳を握り締めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

《まったくもう…カイト様はロボット使いが荒いでアリマス…》

同じ頃、カイトの相棒・オービタル7はグライダーモードで1人ハートランドシティ上空を飛んでいた…。

 

 

《二言目には「バリアンの調査はどうなっている?」「デュエリスト暴走事件の犯人の手がかりは?」と……後者はともかく…バリアンはハートランドにはいないのでは…?と思ってみたり…》

カイトへの愚痴をこぼしながら空を飛び、バリアンの手がかりを探すオービタルだったが…

 

ビュー…ガサッ!

 

《オワッ!?な、なんでアリマスか─!?ドワァァ!?》

 

バッシャーン…

 

オービタルの顔に空を舞っていた紙くずが直撃、コントロールを失ったオービタルは公園の噴水へと落下した…。

 

 

 

《お、おのレ、紙くずめ…オイラに耐水機能がなければどうなっていた事か…ん?》

水を振り払いながら噴水から脱出するオービタル…その目の前にあったのは…とある映像だった…。

 

 

 

「君は…僕の心になくてはならない存在…!生きる為の食物!大地を潤す恵みの雨!!それが…君─」

 

「僕は…君に恋をしている…!」

 

─映画『恋の歌』絶賛公開中!─

 

 

 

キュピーン

 

 

 

《ゾゾッ!?な、なんでアリマス…?ボディに静電気が…》

ホログラムビジョンに映し出されていたのはラブロマンス映画のプロモーションビデオ…それを見たオービタルのAIに不可解なノイズが走る…。

 

 

《…フン、オイラに『恋』なんて…なんて……むむっ─!?》

プロモーションビデオの事を振り払おうと首を振るオービタル…その瞳に映ったのは沢山の恋人達が寄り添う姿…彼が墜落した公園はハートランドのデートスポットだったのだ。

 

《うぅ〜!なんでアリマスか!ドイツもコイツもイチャイチャと!オイラはカイト様の指令を全うするのに忙しいでアリマス─!》

恋人達の姿を見て嫉妬し、いじけるオービタル…その時だった。

 

 

『ねぇ、アナタ…大丈夫?墜落してきたみたいだけど…』

 

《むっ!?心配ないでアリマ──アアッ…?》

 

 

ドクン

 

 

その時、オービタルは自身に搭載されていないはずの心臓が跳ねるような衝撃を感じた、オービタルに話しかけたのは銀色の髪をツインテールにした茶色い瞳の少女…オービタル7(3歳)初めての()()()()であった。

 

 

『大丈夫ならよかった、気をつけてね?』

 

《ア、あの…貴女は?》

 

『私は…レイン、また会いましょう』

 

《あ、待って…!行ってしまったでアリマス……》

オービタルの様子を見た少女は去って行った…オービタルはその背中を見送るしかなかった…。

 

 

 

 

《……ハァ…集中、できないでアリマス…》

 

研究所に戻ったオービタルはコンソールを前に溜息をつく、昼間に出会った銀色の少女…彼女の事が記憶に焼き付いて離れない…。

本来ならロボットが『恋』をするなどありえない…だが、そもそもオービタル7はハルトの為に造られた『子守ロボット』…ハルトの為にその思考は限りなく人間に近づけられていたのだ。

 

 

《なんでアリマスか…この思考回路のノイズは…!?解析不能…解析不能…!解析不能…!!》

生まれて初めての感情に戸惑うオービタル…銀色の少女の事を考え過ぎて注意力が散漫になった結果─…

 

 

「オービタル…オービタル7!バリアンのデータはどうした?…オービタル7!!」

 

《ハッ…!?か、カイト様─!?》

バリアンに関する進捗を確かめに来たカイトに怒鳴られてしまうのだった。

 

 

「オービタル、バリアンの調査データはどうなった」

 

《は、ハイ!それが、キミはボクのココロになくてはならないモ…はっ!?》

 

「貴様…何を寝惚けている…?また何処か壊れたのか?」

 

《い、イエ!!オイラは正常…でアリマス》

銀色の少女の事を考えるあまりにトンチンカンな事を話すオービタル…その様子を見たカイトは呆れてしまう…。

 

「まったく…しっかり自分の使命を果たせ、オービタル!」

 

《か、カシコマリ─!!》

オービタルに喝を入れたカイトはそのまま研究室を後にした…。

 

 

《うぅ…!集中不可能でアリマスゥゥ〜!!》

 

研究室にオービタルの戸惑いの叫びが木霊した…。

 

 

 

「(…いったい何があった、オービタル…)」

 

 

 

 

 

《……ハァ……》

次の日の夕暮れ、オービタルは銀の少女と出会った公園を訪れていた…あのあとも仕事が手に付かず、少女の姿を求めに来てしまったのだ…。

 

 

「君は…僕の心になくてはならない存在…!生きる為の食物!大地を潤す恵みの雨!!それが…君─」

 

 

キュピーン♡

 

 

《そうか…オイラは、オイラは…恋をしていたのでアリマスね─!!?》

そして再びラブロマンス映画のPVを見た事でようやくオービタルは自覚した…自身がレインと名乗った少女に恋している事を…!

 

 

《ああ、レインさん…!お名前はなんというのでありましょうか?愛さん?恵さん…いや、海外の方かも…ローズさん…?ああ…愛しのレインさんに逢いたいでアリマス─!!》

若干熱暴走を起こしながら少女について妄想を膨らませるオービタル…その時だった。

 

 

「ん…?オービタル!どうしたんだ、こんなところで?」

 

《エッ…ああ!岸波さ…ヘッ!?》

妄想に耽るオービタルに声を掛けたのはその日に退院したばかりの松葉杖をついた遊海だった、さらにその隣にはオービタルが恋い焦がれたレインの姿があった…!

 

 

《岸波様…!その、隣の美少女は…!?》

 

「ん?こいつは俺の()()()()()だよ」

 

《パートナー…パートナー!?》

その瞬間、芽生えた恋心で熱暴走を起こしていたオービタルの思考回路がとんでもない結論を導き出す…

 

パートナー→相棒→伴侶→妻帯者→不倫!!

 

 

《岸波様…いや遊海!!貴方は…いや、お前はぁぁ!!?翠様という方がおりながら─!?》

 

「えっ、いや!?急にどうしたオービタル─!?」

 

『マスター、どうやらオービタルは思考回路の暴走を起こしているようです…たぶん、私をマスターの愛人と勘違いしているのかも…?』

 

「ちょっ!?オービタル!俺の話を聞─」

 

《問答無用でアリマス─!!》

レインの言葉で状況を超速理解した遊海はオービタルを宥めようとするが、オービタルは聞く耳を持たない…!

 

 

「しょうがない…!デュエルでオービタルを落ち着かせる!!痛ッ…!」

遊海はオービタルを落ち着かせる為にデュエルディスクを構えた…!

 

 

 

 

「《デュエル!!》」

 

 

 

 

オービタル7 LP4000

遊海 LP4000

 

 

 

《オイラのターン!ドロー!》

《オイラはフィールド魔法「ロボ・パーク」を発動!》

周囲の景色がサーカステントの景色に塗り替わる!

 

《そしてオイラは「SDロボ・ライオ」を召喚!》

フィールドに光を纏う獅子が現れ変形…両肩にライオンの顔を持つロボットが現れる! ATK1200

 

 

《さらにフィールド魔法「ロボパーク」の効果発動!機械族モンスターを特殊召喚した時!手札から「SDロボ」を特殊召喚できる!「SDロボ・エレファン」を特殊召喚でアリマス!》

両肩に象の顔を持つ重量級ロボットが現れる! ATK1400

 

《そしてオイラは「ライオ」の効果発動!自身以外のSDロボがいる時!自身のレベルを倍にするでアリマス!》

 

ライオ☆4→8

 

《オイラはレベル8の「ライオ」と「エレファン」の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!煌めく銀河よ、恋の光となりてオイラに宿れ!ガレキの化身、ここに降臨!いでよ!「廃品眼の太鼓竜(ガラクター・アイズ・ファット・ドラゴン)」─!!》

オービタルの場に光が集結、ギャラクシーアイズに似た光の影が現れ──

 

 

《…ユウミがデュエルをする気配を感じて来てみれば……なんですか、あのブサかわいいドラゴンは…》

 

『フレア…ごめんなさい、たぶん私のせい…』

駆け付けたフレアが呆れたように呟く…光の中から現れたのはガラクタが寄せ集められたような…腹部に太鼓を持つ機械竜だった。

 

…シルエット詐欺にも程がある ATK3000

 

 

《これでオイラは…カードを1枚伏せてターンエンドだ!》

 

オービタル7 LP4000

廃品眼 ロボパーク 伏せ1 手札2 

 

 

 

 

「そういえばいたな、あんなモンスター…効果はなんだったかな…?」

自信満々の様子のオービタルを見ながら遊海は考えるが…モンスター効果を思い出す事はできなかった…。

 

 

 

 

「俺のターン!ドロ…痛ッ!」

「怪我してて、派手な動きはできないからな…!来い!『超重武者カゲボウ-C』!」

虚無僧笠を被り、尺八を持ったロボットが現れる! DEF1000

 

 

「『カゲボウ-C』の効果発動!自身をリリースする事で、手札から新たなモンスターを特殊召喚できる!動かざること山の如し、不動の姿…今見せん!来い!『超重武者ビックベン-K』!」

虚無僧が尺八を吹き鳴らす、その音に導かれ巨大な刺叉槍を持つ僧兵ロボットが現れる! DEF3500

 

 

《守備力3500ですと!?》

 

「そして、『ビックベン-K』は守備表示で攻撃でき、守備力を攻撃力として扱う!バトルだ!『ビックベン-K』で『廃品眼』を攻撃!不動の地割れ!」

 

《な、なんですト─!?ノワアアア!!》

ビックベン-Kが地面に拳を叩きつける、そして発生した地割れに廃品眼は飲み込まれた…。

 

オービタル7LP4000→3500

 

 

「俺はこれでターンエンド!」

 

遊海LP4000

ビックベンK 手札4

 

 

 

《お、おのれ…!病み上がりなのにやるでアリマス…!だけど、オイラのデュエルはこれからでアリマス─!!》

 

「しまった、余計にヒートアップしてる…!」

 

 

 

《オイラのターン!ドロー!》

《オイラは魔法カード「廃品回収」を発動!墓地の機械族モンスター2体を除外して…墓地に眠る「廃品眼」を特殊召喚でアリマス!!》

オービタルの墓地からバラバラのパーツが集まり、廃品眼が復活する! ATK3000

 

《さらにオイラは「SDロボ・モンキ」を召喚!さらに!機械族モンスターが召喚された事で「ロボパーク」の効果発動!手札からもう一体の「モンキ」を特殊召喚!》

両肩に猿の顔を持つ身軽なロボットが現れる! ATK800  800

 

 

《「モンキ」の効果発動!「モンキ」は「廃品眼」のORUになる事ができる!》

 

廃品眼ORU 0→2

 

 

「しまった!」

 

《ここからがオイラの真骨頂─!「廃品眼」の効果発動!このモンスターが墓地から特殊召喚されている時!ORUを1つ使い!攻撃力を1000アップする!オイラはその効果を2回使うでアリマス!!》

廃品眼の太鼓にORUが吸収され、巨大化する!

 

廃品眼ATK3000→4000→5000

 

 

《土下座の用意はできているか─!バトルでアリマス!「廃品眼」で「ビックベン-K」を攻撃!さらにリバースカード「ストライク・ショット」を発動!「廃品眼」の攻撃力をエンドフェイズまで攻撃力を700ポイントアップさせ、攻撃力が守備力を上回った分のダメージを与えるでアリマス!喰らえ!憧れのガラクター・ファット・ストリーム!!》

 

「ぐっ!?ぐあああ!!」

炎を纏った緑色の廃液の水流がビックベン-Kに直撃、爆散する!

 

廃品眼ATK5000→5700

 

遊海LP4000→1800

 

 

「うっ…手札の、『超重武者装留マカルガエシ』の効果発動、守備表示のモンスターが破壊された時このカードを墓地に送り、破壊された墓地の「ビックベン-K」を攻撃表示で特殊召喚…!」

フィールドに小さな数珠が現れ、砕け散る…そしてビックベン-Kが蘇る! ATK1000

 

 

《オイラはこれでターンエンドでアリマス!》

 

オービタル7LP4000

廃品眼 ロボパーク 手札0

 

 

 

「ぐっ…流石に、病み上がりじゃ、厳しいか…」

 

『《マスター!!/ユウミ!!》』

遊海は膝をついて倒れ込む、支えにしていた松葉杖が攻撃の衝撃で折れてしまい、立っていられなくなってしまったのだ…。

 

 

《どうでアリマスか!!「廃品眼」はその名の通り、打ちのめされ、叩き壊され…そこから再生した時こそ真価を発揮するのでアリマス!!観念して翠様に謝るでアリマスこの色男─!!!》

 

「弱ったな、俺の失言が原因とはいえ…オービタルが怒るとここまで強いとは…」

激怒しているオービタルを見て冷や汗をかく遊海…その時だった。

 

 

『…マスター、立ってください…私が貴方の足になります!』

 

「…すまん、()()…肩を借りるぞ」

 

《へっ…?あや、か??》

地面に座り込んでいた遊海が銀髪の少女の肩を借りて立ち上がる…その刹那、少女の名前を聞いたオービタルは困惑した!

 

 

 

「俺のターン、ドロー!!」

「魔法カード『雪花の光』を発動!このカードの発動後、このデュエル中に『雪花の光』以外の魔法・罠カードの効果を発動できなくなる代わりに2ドロー!…さらに墓地の『雪花の光』のさらなる効果!このカードを除外し、手札の『超重武者タマ-C』を相手に見せて効果発動!公開したカードをデッキに戻して1ドロー!…よし!!」

 

『オービタルにキツい一撃を、マスター!』

手札を整えた遊海は不動の極意を見せつける!

 

 

「『超重武者ホラガ-E』を召喚!」

法螺貝の笛を持つ足軽ロボットが現れる! ATK300

 

 

「俺はレベル8の『ビックベン-K』にレベル2の『ホラガ-E』をチューニング!」

 

8+2=10

 

「荒ぶる神よ!千の刃の魂と共に百獣犇めく戦場に現れよ!シンクロ召喚!出陣せよ!『超重荒神スサノ-O』!!」

重厚な鎧を纏った大蛇殺しの荒神が現れる DEF3800

 

 

《守備力3800…!?しかし、攻撃力5000の「廃品眼」には敵わないでアリマス!!》

 

「それはどうかな?まずは手札の『超重武者装留ダブル・ホーン』を『スサノ-O』に装備!」

スサノ-Oの両肩に巨大な角型パーツが装着される!

 

 

「『スサノ-O』は守備表示でも攻撃できる!バトルだ!『スサノ-O』で『廃品眼』を攻撃!」

 

《攻撃力の劣るモンスターで攻撃!?》

 

「さらに俺は手札の『超重武者装留バスター・ガントレット』の効果発動!超重武者がバトルする時、このカードを墓地に送り、そのモンスターの守備力を元々の数値の倍にする!」

 

《ナントォ─!?》

 

スサノ-O DEF3800→7600

 

「『廃品眼』を攻撃!クサナギソード・斬!!」

 

《ウオアアアア!?》

スサノ-Oの大剣が廃品眼を細切れに切り裂く!

 

 

オービタル7 LP3500→900

 

「そして、『ダブルホーン』を装備したモンスターは2回攻撃できる!オービタルにダイレクトアタック!!」

 

《ドヘェェェ─!?》

スサノ-Oが大剣を振り回す…それによってオービタルは吹き飛ばされ、ライフを吹き消した…。

 

 

オービタル7 LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

《ヘッ…誤解…!?》

 

「ごめんオービタル、伝え方が悪かった…この女の子はレイン()()…俺のパートナー精霊のアヤカなんだよ」

 

《え、えぇェェェェ!?》

デュエルが終わり、冷静さを取り戻したオービタルにレインの正体を話す、レインの正体…それはアヤカが人間界で活動する為の体だったのだ…。

 

《で、でもデモ!喋り方も声質も…反応も違うでアリマスよ!?》

 

「見せないと信じてくれないか…アヤカ、一度戻ってくれ」

 

『了解です』

 

キィン─!

 

《これで信じて貰えますね?オービタル7》

 

《あ、アヤカ殿!?》

レインの体が光に包まれる…光が収まった場所にいたのは網目模様の機械と虹色のコアを持つ精霊…アヤカだった。

 

 

《ど、どうしてこんな事を!?》

 

《それは…私達、精霊の問題なんです》

 

「実はな…俺の精霊達は()が使えないんだよ」

 

《へっ…?》

遊海の思わぬ言葉にオービタルは目を点にする…。

 

 

「いやな、アヤカは機械だし…トフェニは龍人(ドラゴニュート)だから爪が鋭い、メガロックは四足歩行…フレアは鳥の脚…俺のサポートをしてくれる「手」が欲しかったんだよ…」

 

《ユウミは先のバリアンとの戦いで重傷を負い、サポートが必要になってしまいました…しかし、翠は凌牙と璃緒の世話の為に無理をかけられません…そんな時に…》

 

『翠が…この身体の存在を思い出したの』

アヤカが人間体になりながら話を引き継ぐ…。

 

『この身体は私の…姉妹機がイリアステルに作ってもらった「デュエルロイド」…高性能だから気配を隠して、マスターのそばにいても怪しまれない…と、思ったけど…やっぱり、少し目立つかな…?』

 

「そうだな、今みたいに誤解されたら敵わない…ん?どうした?オービタル、そんなに落ち込んで…」

 

《オイラの…オイラの初恋が…まさか、精霊だったとは…》

オービタルは真っ白に燃え尽きて落ち込んでいる…。

 

 

「…ちょっと、可哀想な事しちゃったな……もしもし遊馬か?ちょっと頼みたい事があるんだが…」

落ち込むオービタルを見た遊海は遊馬へと連絡を取った…。

 

 

 

 

 

 

「お〜い!白野!オボミを連れて来たぜ〜!」

 

「ありがとうな遊馬!…オービタル、お詫び…って訳じゃないけど…かわいいロボットを紹介するよ!遊馬が強盗団から助け出した天才オボットのオボミだ!」

 

《オボット…?オボットなんていつもいつも見て見飽き…はうっ!?》

 

キュピーン!♡

 

遊海に促されて顔を上げたオービタルは固まった…そこにいたのは九十九家に居付いたリボンを付けたオボット・オボミだった…その姿を見たオービタルは再び恋に落ちた…!

 

 

《ワタシ、オボミ、ヨロシク》

 

《お、オイラはオービタル7と言うでア、アリマス!よかったら…オイラと、と、友達になって欲しいでアリマス…!》

 

《トモダチ…イイヨ、握手》

 

《こ、こちらこそ…!よろしくお願いするでアリマス─!》

オービタルとオボミは仲良く手を繋いだ…。

 

 

 

「??…何がどうしたんだ??」

 

「ふふっ…ロボットでも、恋をしたくなる時があるものさ!」

オービタルとオボミの様子を見た遊馬は首を傾げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フンフフ〜ン♪》

オービタルは晴れてオボミと友達となり、上機嫌で研究所へと帰ってきたが…1つ、失念している事があった…それは……。

 

 

「オービタル、どこに行っていた?」

 

《あっ…か、カイト様─!?》

入口にいたのは腕を組んでオービタルを待ち受けていたカイトだった…!

 

《か、カイト様すみません!報告書は今すぐ─!!》

 

「お前のデュエルは詰めが甘い…だが、格上相手によくやった…」

 

《ヘッ…!?》

オービタルはカイトの思わぬ言葉に思考が停止する…実はオービタルの異変を感じたカイトは密かにオービタルを尾行していたのだ…。

 

「フッ…いくぞオービタル」

 

《えっ、あの…何処へ?》

 

「もちろん白波さんの所だ…お前の不始末はオレの責任…それに、お前の不調を直してくれたお礼に行かなければな…」

 

《カイト様…もっ、モッタイナヤ〜!!》

それはカイトからオービタルへのお叱りであり、褒め言葉…オービタルは嬉しさを全身で表現したのだった…。

 

 

 

なお、余談だが…オービタルの勘違いで遊馬と再び恋のから騒ぎを繰り広げる事になるのは…また別のお話である。




〜おまけ〜


●レイン彩華


ドルベとのデュエルによって重傷を負った遊海が、翠への負担を少なくする為に用意したアヤカの人型ロボットボディ。

その元はイリアステルとの戦いの時、翠が鹵獲したレイン恵の躯体を修理したもの…遊海の賢者の鍵の中で忘れられていた事を翠が思い出した。

元が高性能なイリアステルのデュエルロイドであり、さらに元々の頭脳が並行世界の「アポクリフォート・キラー」だった為にアヤカはすぐに慣れる事ができた…だが、何故か口調はレイン恵のものへと引っ張られてしまう。

オービタルの事件の後、遊海が周囲を混乱させてしまう可能性に気付いた事で緊急時以外での屋外使用は禁止となった。



《あの身体、けっこう使い心地が良かったのですが…》

「外に出るたびに誰かに襲われたら体が保たないって…家の中だけで頼む…」

《フォウ…(絶対に後ろから刺されるよね…)》

《しょぼーん…(´・ω・`)》


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初恋決闘〜姫に恋するブリキ人形〜

 

ドンガラガッシャドッシーン!!

 

「いっ!?痛ってぇ〜…」

とある朝の白波家にけたたましい落下音が響く…それはリハビリを兼ねて階段を降りて来た遊海が階段を転げ落ちた音だった…。

 

 

「…父さん、朝から無理するなって…朝飯は部屋に持ってくから…」

 

「いや…早くリハビリして、バリアンに備えようと思ってな…」

 

「…また身体を壊したら意味ないぜ…?」

無茶ばかりする遊海を助け起こしながら凌牙は溜息をついた…。

 

 

「おはよう父さん!…なんだかすごい音がしたけど…」

 

「おはよう璃緒!大丈夫、階段から落ちただけだから…」

璃緒は腰を擦りながらリビングにやって来た遊海に朝の挨拶をするが…()()階段から落ちたらしい遊海を見て呆れたように笑う。

 

「…小さい頃から思ってたけど、父さんって体が強いのか弱いのか…時々わからなくなるわ」

 

「ハハッ…決闘が関わらなければ、そんなに怪我しないんだがなぁ…」

 

「…やっぱり、父さんはツイてないよなぁ…」

 

《…リョウガ、ユウミの怪我体質は今に始まった事ではありませんから…しょうがないですね》

凌牙の呟きにフレアは苦笑した…。

 

 

 

 

《フォウ…キャーウ?》

 

「心配してくれてありがとなフォウ…大丈夫、だいぶ痛みは引いたから…そんな心配そうな顔するなよ?ほら、コチョコチョ〜」

 

《ファー!?キャウキャウ〜!!》

凌牙達の登校を見送った遊海は久々にフォウと戯れている、ようやく足のギプスは外れたが…未だに動きはぎこちなかった…。

 

 

《遊海…しかし、今回はどうなる事かと思ったぞ…トロンとの戦いから…ずっと戦いが続いているが、大丈夫か?》

日光浴をしていたメガロックが心配そうに問いかける。

 

「…正直な話…ちょっと、大丈夫じゃない……メガロック、お前にはまだ話してなかったな…俺の()()について…」

 

《…聞こう》

遊海の口から語られたのは自身の状態…そして、()()()()()についての事だった…。

 

 

………

 

 

 

《やはり、そうだったか…死者の蘇生などという奇跡…代償が無い筈はない…翠は知っているのか?》

 

「ああ、もう話してある…だいぶ叱られたけどな…」

メガロックの言葉に遊海は頷く…その瞳は揺れていた…。

 

 

《…()()()()?》

 

「怖くない…と言ったら嘘になる、それは俺が()()()()しれないから…って訳じゃない……翠と…そして、凌牙達の事を思うと…」

 

《遊海、死は誰にでも訪れるものだ、昔…我の出会った賢者はこう言った…「命とは終わるもの、生きる事は苦しみを積み上げる旅なのだ」…とな》

 

「…俺も似た言葉を聞いた事がある、『死』は決して断絶ではない…残した想いは必ず繋がるってな…ありがとうメガロック、少し気持ちが楽になったよ」

 

《お前が弱音を言うとは珍しい…だが、悲観するな…案外、ヌメヌメ・コード?の力であっさり蘇るかもしれんぞ?》

 

「『ヌメロン・コード』だからな、メガロック…」

 

《ハッハッハッ…爺の言い間違いだ!笑って流せ!》

 

《ファーウ…》

バリアンとの戦いからしばらく…遊海は久しぶりに笑顔を取り戻した…。

 

 

 

 

 

「翠〜少しフォウと散歩に行ってくるよー」

 

《フォーウ!》

 

「遊海さん!気をつけてくださいね?何かあったらすぐに行きますから!」

 

「大丈夫だって、アヤカは連れていくし…それにデュエルでそう遅れは取らないさ…行ってきまーす!」

 

「いってらっしゃーい!」

 

 

 

 

「ふぅ…ふぅ…やっぱり、少し動かないと、体力が落ちてるな…」

 

《フォウ…フォーウ…》

 

《あまり無理はしないでください…まだ、完全にダメージが消えた訳ではないんですから…》

遊海は近くの公園のベンチで息を切らせていた、約2週間に及ぶ入院…そしてダメージでだいぶ体力が落ちていたのだ…。

 

 

「精霊界で療養しようとも思ったけど…来週には学園祭だからなぁ…まぁ、のんびりリハビリするしかないか…」

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

「ん?璃緒の演劇が楽しみだって?…ペットは入れるのかなぁ?」

 

《キャウ…!フォーウ!!》ペシペシ!

 

「アタタ…ごめんごめん!冗談だって!」

額をフォウに叩かれながら遊海は穏やかな時間を過ごしていた…そんな時、遊海のもとに訪れる男がいた。

 

 

『あっ…!お〜い!白野ー!』

 

「ん?…なんだ鉄男じゃないか、どうしたんだ?遊馬達は一緒じゃないのか?」

遊海に声をかけてきたのは遊馬の仲間達『ナンバーズ・クラブ』の1人であり、遊馬の幼馴染の鉄男だった…珍しい事に1人である。

 

 

『いや、その…白野…さんに用があって…』

 

「俺に?珍しいな…どうしたんだ?」

 

《フォウ…?》

鉄男の珍しい言葉に遊海は首を傾げる…遊馬を通じて鉄男とも顔見知りではあるが…彼は特に遊海にデュエルを習う事もなかったからだ。

 

『えっと…まずはコレ!ナンバーズクラブの特別会員証!遊馬の奴に作って欲しいって頼まれたんだ!』

 

「おおっ!?コレを手作りしたのか!?」

鉄男が遊海に手渡したのはナンバーズクラブの特別会員証…番号は「00」番となっている。

 

 

『白野さんは「No.∞」ってカードを使うんだろ?「∞番」っていうのは言い難いから…「0」を2つ並べてみたんだ!2つ合わせれば「∞」に見えるだろ?』

 

「うん、なかなかいいセンスだ!意外と手先が器用なんだなぁ」

 

『ヘヘッ…ありがとうございます!』

遊海には素直な称賛を受けた鉄男は頭を掻く…。

 

 

「それで…まだ何かあるんだろ?」

 

『はい…!その…白野さん!オレと、デュエルしてください!!』

 

《ドフォーウ!?(マジで言ってるの─!?)》

 

「ほう…俺の強さは遊馬や小鳥から聞いてるはずだな?」

鉄男の意外な願いを聞いた遊海は静かに問いかける。

 

 

『はい…!オレ、()()()()()()()がいて…その為に…メタルナイトでもある…アンタに勝ちたいんだ!!』

鉄男は瞳に炎を宿しながら遊海をまっすぐ見つめる…!

 

 

「…なるほどな、いいだろう…丁度デュエルのリハビリをしたいと思っていたんだ…相手になろう!」

 

『あ、ありがとうございます─!!』

鉄男の願いを見抜いた遊海は…彼の壁になる為に立ち塞がる!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

遊海LP4000

鉄男LP4000

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『汎神の帝王』を発動!手札の『真源の帝王』を手札から捨て、2ドロー!さらにフィールド魔法『真帝王領域』を発動!」

周囲の景色がギリシャ調の神殿に変化する!

 

「そして『冥帝従騎エイドス』を召喚!」

黒い鎧を纏う魔法騎士が現れる! ATK800

 

 

「さらにフィールド魔法『真帝王領域』の効果発動!1ターンに1度、手札の攻撃力2800守備力1000のモンスター『烈風帝ライザー』のレベルをターン終了まで2つ下げる…よって、レベル8の『ライザー』のレベルは6になり、リリース1体でアドバンス召喚できる!さらに『エイドス』を召喚したターン、俺は追加でアドバンス召喚できる!『エイドス』をリリースし、『烈風帝ライザー』をアドバンス召喚!!」

疾風を纏った風の帝王が現れる! ATK2800

 

 

『先攻1ターン目から攻撃力2800!?』

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

遊海LP4000

ライザー 真帝王領域 手札3

 

 

 

『っ…!(負けるな鉄男…!璃緒さんとシャークに認められる為に─!!)』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『よし…!「ブリキンギョ」を召喚!』

ブリキでできた金魚のオモチャが現れる! ATK800

 

『「ブリキンギョ」の効果発動!手札の2体目の「ブリキンギョ」を特殊召喚!』

2体目のブリキの金魚が現れる! DEF2000

 

『そしてオレは魔法カード「アイアン・ドロー」を発動!自分のフィールドに機械族モンスターが2体いる時、カードを2枚ドローできる!』

鉄男の右手に鋼鉄のグローブが装着され、カードをドローする!

 

 

『よし…!!さらに魔法カード「エクシーズ・レセプション」を発動!自分のフィールドにいるモンスターと同じレベルのモンスターを攻撃力・守備力を0にして特殊召喚できる!来い!「アイアイアン」!』

小さなシンバルを持ったアイアイのオモチャが現れる!

DEF0

 

『オレはレベル4の「ブリキンギョ」2体と「アイアイアン」でオーバーレイ!!』

鉄男のフィールドのモンスター達が光となって銀河に飛び込むが…

 

 

ゴツン!!

 

 

『えっ!?なんで!?』

盛大な衝突音と共にモンスター達が激突…目を回しながらフィールドに落下する!

 

「残念だったな、『真帝王領域』の効果だ…俺のフィールドにアドバンス召喚されたモンスターがいる限り、相手はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できなくなる!」

 

『なっ…!?…オレはカードを1枚伏せて、ターンエンドだ…!』

 

鉄男LP4000

ブリキンギョ ブリキンギョ アイアイアン 伏せ1 手札2

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「ふむ…魔法カード『帝王の深怨』を発動!手札の『天帝アイテール』を公開し、デッキから永続魔法『帝王の進撃』を手札に加え、発動!さらに速攻魔法『帝王の烈旋』を発動!このターンにエクストラデッキからの特殊召喚ができなくなる代わりに、自分がアドバンス召喚をする時に1度だけ…相手のモンスターをリリースできる!」

 

『なんだって!?』

 

「俺は再び『真帝王領域』の効果発動!手札の『天帝アイテール』のレベルを2つ下げる…そして鉄男のフィールドの2体目の『ブリキンギョ』をリリース!『天帝アイテール』をアドバンス召喚!!」

ブリキンギョが消え去り天空から光が降り注ぐ…そして聖なる力を纏った帝王が光臨した! ATK2800

 

「さらに『アイテール』の効果発動!デッキの『汎神の帝王』と『連撃の帝王』を墓地に送り…デッキから『冥帝エレボス』を特殊召喚!」

天帝の導きによって冥界の帝王が降臨する! ATK2800

 

 

『こ、攻撃力2800のモンスターが3体─!?』

目の前に立ち塞がる3体の帝王を見て鉄男は後ずさる…。

 

「バトルだ!『アイテール』で『ブリキンギョ』を、『エレボス』で『アイアイアン』を攻撃!さらに『真帝王領域』のさらなる効果発動!アドバンス召喚されたモンスターが相手モンスターを攻撃する時!その攻撃力を800アップさせる!」

 

『なっ!?うわああ!!』

2体の帝王達が鉄男のモンスターを粉砕する!

 

アイテールATK2800→3600

 

鉄男LP4000→1200

 

 

「『ライザー』でダイレクトアタック!!」

 

『まだだ…まだ負けられない!!リバース罠発動!「くず鉄のかかし」!「ライザー」の攻撃を無効にする─!』

風帝の前に鉄のかかしが立ち塞がるが…ライザーはそれを()()()()()

 

『えっ…!?』

 

「永続魔法『進撃の帝王』の効果…俺のエクストラデッキからの特殊召喚を封印する代わりに、アドバンス召喚されたモンスターは効果の対象にならず…効果では破壊されなくなる…残念だったな」

ライザーの翻したマントの風圧が鉄男を吹き飛ばした…。

 

 

鉄男LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

『つ、強すぎる…!これが、璃緒様とシャークのお父さんの力…!』

 

「少し大人げなかったか…大丈夫か?」

 

『は、はい…』

遊海は吹き飛ばされた鉄男を助け起こす…。

 

 

『ありがとう、ございました…良い経験になったぜ…』

 

「ならよかったが…ふむ…」

意気消沈した様子の鉄男を見て遊海は考え込む…。

 

「鉄男、1つ言っておこう…()()()()()()()()()

 

『えっ…!?』

遊海の言葉に落ち込んだ様子の鉄男は顔を上げる。

 

 

「璃緒の事、好きなんだろ?」

 

『────!?!?!?』ボフン!!

遊海の1言で鉄男の顔色が真っ赤に染まる!!

 

 

「ハッハッハッ!図星か!おおかた凌牙に『父さんに勝てる奴になって来い!』…とでも言われたんだろ?俺は別に止めやしないさ!付き合う相手を選ぶのは璃緒自身だからなぁ!」

 

『あ、あのそのオレは…つっ〜〜!?!?』

鉄男は羞恥心から顔を隠して右往左往する…。

 

 

「1つ助言をするなら…男は顔より『心』!だが…もう少しカッコよくなる努力をするといい…そうすれば璃緒も振り向いてくれるさ!」

 

「あ、ありがとうございまぁぁす!!」

夕暮れのハートランドに鉄男の声が響いた…。

 

 

《フォウ…フォーウ?(…本当に振り向いてくれるのかなぁ?)》

 

 

 

 

 

 

「もう…!聞いてよ父さーん!凌牙のせいで学校で酷い目に遭ったのよぉ!」

 

「こら璃緒!あれは俺のせいじゃねぇよ!!盗み聞きしてた奴らのせいだからな!?」

 

「ハハハ…聞いたぞ?校内新聞で…」

 

「わーわー!言わなくていいから─!!」

 

翌日の夕方、白波家は少し騒がしかった…とある早とちりをした馬鹿2人のせいで『九十九遊馬と神代璃緒がカップルになった!』と校内新聞で報じられてしまったのだ。

 

…真実は鉄男が璃緒への好意を伝える為にまずは凌牙に認めてもらおうとデュエルを挑みに行った結果『せめて遊馬レベルの強さになるか、父さんに勝てるようになってから出直して来い!』と突っぱねた…のを盗み聞きした2人のせいで間違った形で広まってしまったのだ。

  

 

 

「そう怒るなって…人の噂も七十五日、すぐに忘れられるさ…」

 

「むぅ〜…」

遊海に頭を撫でられ、宥められながら璃緒は頬を膨らませる。

 

 

「ったく…あいつらのせいで酷い目にあったぜ…」

 

「そう言うなって…たまには騒ぐのも悪くないだろ?」

 

「…まぁな…」

遊海の言葉にそっぽを向きながら…凌牙は頬を掻いた…。

 

 

「遊海さん!十代君が話したい事があるって…」

 

「ん…わかった、俺の部屋に通してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…デュエリスト暴走事件はだいぶ減ったか…」

 

『ああ、先生が怪我した日からかな…1日に2〜3件ぐらいにいきなり減ったんだ…』

夕食前、遊海は訪ねて来た十代と件の事件について話し合う…ハートランドでの決闘者暴走事件は遊海の負傷後、急激に数を減らしていた…。

 

 

「やはり、俺が狙われてた…とみるべきか…」

 

《確実にそうだね、被害に遭うデュエリスト達もサイコデュエリストでも精霊の力を持つ者でない奴が多くなった…おそらく、キミを痛めつけ…邪魔をするのが目的だったんだろうさ》

 

『先生個人を狙うなんて…卑怯な奴だぜ…!』

ユベルの言葉を聞いた十代は拳を握る…必死に世界を護ろうとする遊海を傷付け、狙う者を許せなかったのだ。

 

「いや…狙われたのが()()()で良かった…もし、翠や凌牙達が狙われていたら…俺は怒りを抑えられなかったからな…!!」

 

『怪我してんのに、そんな殺気を出さないでくれよ…治りが遅くなるぜ?』

 

《まったく…本当にお前はヒーロー…いや、父親になったんだねぇ…》

怒りと殺気を滲ませる遊海を見た十代は…逆に冷静になったのだった…。

 

 

 

『でもよぉ…やっぱり犯人はあのオレンジの奴…ベクターって奴じゃないのか?先生もアイツが一番怪しいと思ってるんだろ?』

十代は核心を突く問いを遊海に投げかける、だが…遊海は首を振った。

 

「奴が全ての黒幕だっていうのは確かだが…()()()に関してはシロだ…証拠も無いし、アリバイもハッキリしてる…忌々しい事にな」

 

『えっ!そうなのか!?初めて聞いたぜ!?』

遊海の思わぬ言葉に十代は驚愕する…。

 

 

 

「俺が病院で寝てるだけかと思ったか?…アヤカの力を借りて事件が起きた時刻とベクター…真月のアリバイを調べてたんだよ」

 

《その結果、事件発生時には…ベクターは学校、または遊馬と一緒にいたのです…夜間は除きますが…》

 

《主殿の命で真月をずっと見張っていたが…奴は遊馬達から離れると瞬間移動で消えてしまい、それ以上の足取りは追えなかった…用心深い事だ…》

 

『先生達の捜査でも無理って…やべぇな…でもさ、他に仲間がいるとか?』

アヤカとトフェニの言葉を聞いた十代は仲間がいる可能性を出す。

 

 

「ありえない話…ではない、だけど…俺が知る限り、今のバリアンで戦えるのは5人…だが、ベクターが他の奴に頼るとは思えない」

 

『根拠は?』

 

「順を追って説明する、まずはバリアンの戦士は『7人』…バリアン七皇と呼ばれている、まずはお前が出会ったアリト…彼は誰かを洗脳せず、自分の力でナンバーズを奪おうとした…だから除外、次はギラグ…奴は他人を洗脳してナンバーズを奪おうとしたが…彼は『RUM』を介した洗脳…俺達が戦った人の中に『RUM』を使った奴はいないから…除外だ」

 

『ふんふん…』

 

「次に遊馬とカイトが戦ったミザエル…彼は俺を狙う理由がない…というより、狙うなら『銀河眼』を持つカイトを狙うはず…だから除外、そして俺が戦ったドルベ…彼は生粋の『戦士』だ…卑怯な手は好まない、それに彼は『そんな指示はしていない』と言った…だから除外、そしてベクターは…限りなくシロに近いグレー…と言ったところか…」

 

《今ので…5人、残りの2人はどうしたんだい?》

遊海の話を聞いたユベルが残り2人の七皇について問い掛ける…。

 

 

「残り2人は()()()()()()()()()()()()…絶対に…」

遊海はそう言いながら…子供達の写った写真立てを見つめた。

 

『……先生、まさか…!?』

 

《…そういう事か、お前が父親になった訳は…》

 

「…頼む、2人とも…この事は、まだ瀬人や…遊星達には黙っていてくれ……あの子達自身も…まだ知らない、()()()()()()()()事なんだ……!」

 

『先生…』

遊海はとても悲しげな…そして苦しそうな様子で十代へと頭を下げた…。

 

 

 

 

《よかったのかい?》

 

『ああ、あれは先生の…いや、『父親』の覚悟だ、オレ達が口を出していい事じゃないさ…』

遊海の家を後にした十代にユベルが問い掛ける…十代は遊海を信じ、約束した。

 

《キミがそう言うならボクは何も言わない…それに…遊海の奴は『正義の味方』…だからね》

 

『ああ、そうだな!さ〜て…先生が動けない分、オレ達が頑張って犯人を探さないとな!!』

そう言って仮面を被った十代はハートランドへと飛び出した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─もしもの時は…俺が、ケジメをつける…!─



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学園祭の凶行─悪意の浸食─

こんにちは!S,Kです!

今回は学園祭回!久々の日常を楽しむ遊海達にバリアンの狂気が迫る…!


それでは、最新話をどうぞ!


「翠、用意はいいか?」

 

「はい!今日は楽しみましょう!」

 

《フォウ!フォーウ!》

 

 

 

晴れ渡る空の下…ハートランドシティはお祭りムードに包まれていた、今日は1年に一度のハートランド学園の学園祭…その2()()()である。

 

 

「しかし…バリアンの襲撃が昨日だったとはなぁ…」

 

「逆に考えましょうよ!今日は安全に楽しめるって!」

 

「それも…そうだな!」

学園祭は2日間…ベクターに操られた羽原海美と遊馬、そして神月アンナのタッグデュエルは昨日の出来事だった…。

 

 

「えっと…行きたいのは遊馬達のクラスの『モンスターズ・カフェ』と…璃緒の出演してる劇、それから…ん!?遊奈のステージの記録映画!?マニアックなのを選んでるなぁ…」

 

「ふふっ、久しぶりに遊海さんも楽しそう…あらっ?あの髪型は…」

楽しそうにパンフレットを眺める遊海…その様子を見ながら翠は笑っていたが…見覚えのある人影を見つけて走り寄った!

 

 

「流星君?海亜ちゃん?」

 

「えっ…あっ!翠さん!白野さん!お久しぶりです!」

 

「わぉ…!?まさか会えるなんて…」

 

「どうしたんだ2人共!?」

翠が見つけた人影…それは流星とジャックの孫…流星と海亜の2人だった。

 

 

「いや〜、遊馬から『学園祭があるから見に来いよ!』って誘われて…それで海亜とそれから()と一緒に来たんです!」

 

「へぇ〜…ん?妹?」

遊海が流星の隣を見る…そこにはどことなくアキに雰囲気が似た赤いセミロングの髪の少女がいた…。

 

 

『えっと…初めまして!不動夏菜(カナ)です!小学4年生です!いつもお兄ちゃんがお世話になってます!』

 

「おっ、元気な子だな!じゃあ改めて…俺は白波遊海、遊星の親友だ!」

 

「私は奥さんの翠よ!初めまして夏菜ちゃん!」

 

《フォウ!》

 

「おっと!それからネコのフォウくんだ!」

 

『わぁ…!モコモコだぁ!』

フォウが夏菜の肩に飛び乗り、すぐに抱きしめられる…もう打ち解けたようだ。

 

 

「夏菜にはもう遊海さん達の事は話してあります!本当は学園祭の後にサプライズで行こうと思ってたんです!」

 

「そうだったの〜!本当にサプライズだったわ!」

 

「さて、挨拶もそこそこだけど…今は学園祭を楽しもうか!遊馬達に会いに行こう!」

 

「「はーい!」」

 

「うん!楽しみ…!」

ようやく打ち解けた遊海達と夏菜は遊馬達のクラスへと向かった…。

 

 

 

 

 

赤い髪…女…!あ、あ、あ…ア"ア"ア"ア"ア"─!!!

 

 

底知れぬ狂気が迫っている事も知らずに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ〜!流星に妹がいるなんて知らなかったぜ!」

 

「ああ、少しおっとりしてるけど…頼りになる妹だよ!…それより…なかなか似合ってるよ?『太鼓魔人テンテンテンポ』のコスプレ!」

 

「うぅ…本当は『ブラマジ』か『ガガガマジシャン』が良かったんだよなぁ…」

遊馬達のクラスのモンスターズ・カフェを訪れた遊海と流星達は久々の再会を喜びあう。

 

 

「………??」

 

「ん?どうしたの夏菜?遊馬の方を見て…」

 

『ん…あの人の隣にいるのは何のモンスターの精霊かなぁ?と思って…』

 

「えっ?!アストラルが見えてんの!?」

 

(どうやら…彼女は強く精霊の力を受け継いでいるらしいな)

夏菜の思わぬ言葉に遊馬は驚いている…。

 

 

「ああ、やっぱり見えてるんだ…アキおばあちゃんから僕以上に精霊の力を受け継いだみたいなんだ…僕はぼんやりとしか見えないから…」

 

「そんな落ち込むなって!お前はその分ライディングセンスはピカイチだって…ジャックじいちゃんが褒めてたぜ?」

 

「えっ…!それ本当!?嬉しい!!」

 

「ハハッ…相変わらず仲がいいなぁ!」

夫婦漫才を繰り広げる流星と海亜を見ながら…遊海と翠は笑っていた。

 

 

 

その後、遊海達は沢山の出し物を回った…漫画研究会で凌牙と遊海がモデルの漫画を貰ったり、璃緒の出演している演劇を鑑賞したり…軽音楽部の助っ人としてギターを弾く凌牙を応援したり、屋台で美味しい食べ物を楽しんだり…5人はそれぞれに学園祭を楽しんでいた…。

 

 

 

 

『お兄ちゃん!次はコレに入ってみたい!』

 

「コレ…って…お化け屋敷だぞ?」

しばらく学園祭を回った流星達はとあるクラスの出し物…お化け屋敷の前で足を止める…。

 

「えっと…なになに…『カップル歓迎!』『大人の方はお一人で!』『小学生以下は大人同伴』…だってさ、となると流星と海亜のカップルは決定として…」

 

「「カップルって言わないで!!」」

 

「おっと!?」

遊海の言葉に流星と海亜は声をハモらせて叫ぶ。

 

 

『もう〜2人ともお似合いなんだから付き合えばいいのに〜』

 

「余計な事言うなって…!ただでさえアカデミアでもからかわれてるのに…」

 

「アタシは流星とライディングデュエルがしたいから一緒に帰ってるだけだ!」

 

「(それって…実質デュエルデートなのでは…?)」

 

「本当に息ピッタリねぇ〜」

 

《フォーウ、フォウ?(もう付き合ってるよね?)》

流星と海亜は顔を真っ赤にして反論するが…その様子を微笑ましく見守る遊海達なのだった…。

 

 

 

 

「へぇ…なかなか良くできたお化け屋敷だなぁ」

 

《クラスの親御さんに有名なお化け屋敷プロデューサーさんがいるって書いてありましたね…》

一悶着あったものの…結局流星と海亜ペア、翠と夏菜(フォウ)ペア…そして遊海(とアヤカ)でお化け屋敷へと入場した…なお、遊海はお化け屋敷以上に怖い出来事に何度も遭っているのでまったく動じていない…お化け役の生徒もジト目である。

 

 

キャー!?もうやだぁー!!

 

落ち着けって海亜!  

 

 

ミャッ!?

 

キャッ!?

 

 

「派手に怖がってるなぁ…次はデュエルブースにでも連れていくか…」

怖いBGMをバックに小さく聞こえてくる流星達の悲鳴…それを聞きながら遊海は次の場所を考えていたが…。

 

 

《!?マスター!高エネルギー反応を確認!バリアンです!こちらに向かってきます!!》

 

「なっ!?」

 

 

バリーン!!

 

 

『きゃああああ!?』

 

「夏菜ちゃん!?夏菜ちゃんを離しッグッ─!?」

 

《フォウ─!?》

 

ドガッ!ドターン!!

 

「翠!!」

薄暗い教室に響く硝子が割れる音と夏菜の悲鳴、さらに翠がお化け屋敷の装飾を壊しながら吹き飛ばされて来た…!

 

 

「遊海さっ、夏菜ちゃんが、ローブの男にっ!!」

 

「っ!?アヤカ!探せ!!」

 

《緊急サーチ!…高エネルギー反応は…校庭っ!?精霊エネルギーの反応!?》

 

ズズン!!

パニックになるお化け屋敷…遊海はすぐに夏菜の場所を見つけ出すが…地震のような揺れが立て続いて発生する!

 

 

「ゆ、白野さん!いったい何が!?夏菜は!?」

 

「すまん流星!油断した!翠を頼む─!!」

 

「あっ!?」

駆け付けた流星に翠を託し、遊海は割れた窓から飛び出した!

 

 

 

 

 

《ギャオオオ!!》

 

「っ!?『ギガプラント』!?」

窓から飛び出した遊海が目にしたのは…突如として校庭に現れた植物族モンスター『ギガプラント』によってパニックになる校庭、そして…!

 

『ううっ!?あ"あ"あ"あ"あ"─!!!』

 

「夏菜ちゃん…!!!」

ギガプラントの根本で…額にバリアンの紋章を浮かべ、苦しみの叫びを上げる夏菜の姿だった…。

 

 

 

 

「遊海!!いったい何が…あれって、夏菜!?」

 

(額にバリアンの紋章が…!?洗脳されているのか!)

 

「っ!離れてろ遊馬!!これはお前の手に余るッ!!」

騒ぎを聞いて駆け付けた遊馬とアストラルが見たのは荒れ果てた校庭…そしてその中心で無数の蔦を振り回して暴れるギガプラント、そして「No.∞」を振り回して必死に攻撃を捌くメタルナイトの姿だった…!

 

 

「バリアンに、洗脳されて!力がッ暴走してるんだ!!このままじゃ…!夏菜の体が保たない!!」

 

「っ─!?」

攻撃を捌きながら状況を伝える遊海…それを聞いた遊馬は顔色を変える…!

 

 

(遊馬!遊海を助けるんだ!今のキミなら、彼を助けられる!!)

 

「アストラル…!わかった!かっとビングだぁぁ!!頼む!『No.39希望皇ホープ』!!」

 

《ホープッ!!》

 

「遊馬、お前…!」

アストラルの助言を受けた遊馬は希望皇を呼び出し、ギガプラントに斬り掛かる!

 

 

「これなら…!遊馬!一瞬でいい、隙を作ってくれ!そうしたら、俺が夏菜を安全な場所に、連れて行く─!」

 

「わかったぁ!!ホープ!ムーンバリアだ!!」

 

《ハァッ!!》

 

《ギャッ!?》

ホープの展開した無敵のバリアがギガプラントの蔦を抑え込む!

 

 

「よし…!空間ゲート展開…!転移!!」

 

『ううっ!?』

 

キィン! バシュン

 

 

ホープが作った隙を遊海は無駄にしない…遊海はギガプラントの根本で苦しむ夏菜のもとに飛び込むと…諸共に紋章の力で開いたワープゲートへと飛び込んだ!

 

 

 

「遊馬クン!いったい何があったの!?」

 

「真月…わからねぇ、でも夏菜がバリアンに洗脳されちまったんだ!とにかく追いかけるぞ!!」

 

「待って!仮装したままは不味いですよ〜!?」

ギガプラントが消え去った校庭に真月がやって来る…遊馬は軽く事情を伝えると慌てて遊海達を追い掛けた…。

 

 

 

 

 

 

【(アゴールの野郎…!?あれほど学校には来るなと言っただろうがぁ…!!)】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィン!!

 

 

 

「くっ…!?イテテ…ここなら、大丈夫だ…!」

 

遊海が転移したのはかつてドルベと戦った河川敷…とにかく人のいない場所へと転移したのだ…。

 

 

『うぅ…全ては、バリアンの為に…!』

 

「バリアンめ…!こんな幼い子供を洗脳しやがって─!!」

傷付いた体で立ち上がる夏菜は正気を失い、ふらつきながらデュエルディスクを構える…遊海はバリアンへの怒りに燃えながら向かい合う!

 

 

《マスター、精霊の力の暴走で夏菜の体力は限界です!早めに決着を!》

 

「っ…!わかった!力を貸してくれ…全てを守る翼よ!」

 

キィン─!

 

赤き竜の痣を輝かせ、遊海はデュエルへと挑む!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

夏菜LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『わたしのターン、ドロー』

『魔法カード「偽りの種」を発動…手札の「薔薇恋人(バララヴァー)」を特殊召喚!』

薔薇のドレスを纏う女性が現れる ATK800

 

『さらに魔法カード「フレグランス・ストーム」を発動…フィールドの「薔薇恋人」を破壊して1ドロー、ドローしたのは植物族の「ボタニカル・ライオ」よってさらに1ドロー…「ボタニカル・ライオ」を召喚!』

鬣が牡丹の花になった獅子が現れる ATK1600

 

 

『さらに墓地の「薔薇恋人」の効果発動…墓地の自身を除外して、手札の「ローズ・ウィッチ」を特殊召喚!』

赤と緑のストライプ柄の服を着た魔女が現れる ATK1600

 

『わたしは地属性の「ボタニカルライオ」と「ローズ・ウィッチ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!来て「妖精王アルヴェルド」!』

白い玉座に座る妖精達の王が現れる! ATK2300

 

 

『わたしはカードを2枚伏せて、ターンエンド』

 

夏菜LP4000

妖精王アルヴェルド 伏せ2 手札1

 

 

 

「っ…!どんどん顔色が悪くなっていく…!急がないと…!!」

青褪めていく夏菜の顔色…遊海は彼女を救う為に全力を尽くす…!

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『調律』を発動!デッキから『クイック・シンクロン』を手札に加え、デッキトップを墓地へ!」

 

墓地送り

ジャンクリボー

 

 

「さらに魔法カード『おろかな埋葬』発動!デッキから『ボルト・ヘッジホッグ』を墓地に送る!そして自分フィールドにモンスターがいない時!『ジャンク・フォワード』は特殊召喚できる!」

走る事に特化したロボットが現れる! ATK900

 

 

「そして『ジャンク・シンクロン』を通常召喚!」

オレンジ色のエンジンを背負ったロボットが現れる! ATK1300

 

「『ジャンクシンクロン』の効果発動!墓地の『ボルトヘッジホッグ』を特殊召喚!」

たくさんのネジを生やしたハリネズミが現れる! DEF800

 

「そして俺はレベル3の『ジャンクフォワード』とレベル2の『ボルトヘッジホッグ』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

3+3+2=8

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に轟け!!シンクロ召喚!現われろ!『閃珖竜スターダスト』!」

 

《キュオオオン!!》

光を纏い、遊海の守護竜たる希望の竜が咆哮する! ATK2500

 

 

 

「さらに俺は手札の『レベル・スティーラー』を墓地に送り、『クイック・シンクロン』を特殊召喚!」

ガンマン風のロボットが現れる! DEF1400

 

「さらに!墓地の『ボルトヘッジホッグ』は自分フィールドにチューナーがいる時、特殊召喚できる!」

再びのボルトを生やしたハリネズミが現れる! DEF800

 

 

「俺はレベル2の『ボルトヘッジホッグ』にレベル5の『クイックシンクロン』をチューニング!」

 

5+2=7

 

「集いし想いが新たな力を拳に宿す!シンクロ召喚!粉砕せよ!『ニトロ・ウォリアー』!」

緑色の体を持つ屈強な戦士が現れる! ATK2800

 

 

「いくぞ…バトルだ!『ニトロウォリアー』で『妖精王アルヴェルド』を攻撃!ダイナマイト・ナックル!」

 

『きゃあっ…!?』

緑の豪腕が妖精王を殴り飛ばす! 

 

夏菜LP4000→3500

 

 

「『閃珖竜』でダイレクトアタック!流星閃撃(シューティング・ブラスト)!!」

 

『罠カード発動!「ガード・ブロック」!戦闘ダメージを無効にして1ドロー!』

夏菜の前にバリアが現れ、攻撃を受け止める!

 

 

「っ…防がれたか…!ターンエンドだ!」

 

遊海LP4000

閃珖竜 ニトロウォリアー 手札1

 

 

 

 

「っ…!遊海さん!!」

 

「夏菜!!」

遊海がターンを終えた直後、翠と流星達が追い付いてくる!

 

 

「遊海さん!頼む!夏菜を止めてくれ!その子は、私のかわいい妹分なんだ!!」

 

「わかってる…!すぐに救ける!!」

海亜の叫びに遊海は静かに頷いた…!

 

 

 

 

『わたし、のターン!ドロー…!』

『リバース罠「エクシーズ・リボーン」を発動…墓地の「妖精王アルヴェルド」を特殊召喚、そしてこのカードをORUにする!』

墓地から妖精王が復活する! ATK2300 ORU0→1

 

 

『わたしは…魔法カード「RUM-バリアンズ・フォース」を発動!その効果で「妖精王アルヴェルド」をランクアップさせ、カオス化させる!わたしは、モンスター1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!』

 

「なにっ!?」

アルヴェルドが銀河へと飛び込み、闇色の爆発を起こす!!

 

『偉大なるバリアンの力…今こそ君臨せよ!「CX妖精大帝アルヴェルド」!!』

黒い玉座に座り、カオスの力を纏い闇へと堕ちた妖精の皇帝が現れる! ATK2600

 

 

「カオスエクシーズ…!!」

遊海は未知のカオスエクシーズを前に警戒する…!

 

『「妖精大帝アルヴェルド」の効果発動…!カオスORUを2つ使い!相手フィールドのモンスター全ての攻撃力を1000ポイントダウンさせ、この効果を受けたモンスター1体に付き500ダメージを与える!大帝の重圧!』

 

 

ズン!!

 

「なっ!?があ"あ"─っ!?」

 

「遊海さん!!?」

玉座に座っていたアルヴェルドが気怠げに指を振り下ろす…その瞬間、凄まじい重力がモンスター達と遊海に襲いかかり、地面に叩き付ける!

 

閃珖竜 ATK2500→1500

 

ニトロウォリアー ATK2800→1800

 

遊海LP4000→3000

 

 

 

『まだよ…わたしは「レッドローズ・ドラゴン」を召喚…!』

赤薔薇の花弁を纏うドラゴンが現れる ATK1000

 

『そして手札の「ホワイト・ローズドラゴン」はわたしのフィールドに植物族またはドラゴン族のチューナーがいる時、特殊召喚できる!』

白薔薇の花弁を纏うドラゴンが現れる! ATK1200

 

 

「なっ…!まさか!?」

 

『わたしは、レベル4の「ホワイトローズドラゴン」にレベル3の「レッドローズドラゴン」をチューニング!!』

 

4+3=7

 

『冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の花よ…咲き誇れ!シンクロ召喚!「ブラック・ローズ・ドラゴン」!!』

 

《キュリリリィ!!》

黒薔薇の名を持つシグナーのドラゴンがフィールドで咲き誇る! ATK2400

 

 

 

「そんな…!『ブラックローズドラゴン』!?」

夏菜のフィールドに現れた黒薔薇を見て翠は小さな叫びを漏らす…この場面でシグナーのドラゴンであるブラックローズの効果は強力すぎる…!!

 

 

『シンクロ素材となった「レッドローズドラゴン」の効果発動…「ブラックローズドラゴン」のシンクロ素材となった事でデッキから「ブルー・ローズ・ドラゴン」を特殊召喚、さらに罠カード「漆黒の薔薇の開華(グルーミング・ローズ)」を手札に加える!』

青薔薇の花弁を纏うドラゴンが現れる! ATK1600

 

『そして「ブラックローズドラゴン」の効果発動!シンクロ召喚に成功した時!フィールド上全てのカードを破壊する!ブラック・ローズ・ガイル!!』

 

「くっ…!?『閃珖竜』の効果発動!自身を破壊から守る!波動音壁(ソニック・バリア)、ぐあああああ─!?」

吹き乱れる黒薔薇の嵐…それは実体を持った攻撃となり、遊海の体を切り刻む!!

 

 

「ぐっ…だが、これで…『妖精大帝アルヴェルド』は破壊され……なん、だと…!?」

切り刻まれ、膝をついていた遊海が顔を上げる…夏菜のフィールドには涼しげな顔をした妖精大帝が遊海を見下ろしていた…!

 

『「妖精大帝」はカード効果では破壊されない…そして、破壊された「ブルーローズドラゴン」の効果で「ブラックローズドラゴン」は蘇る!!』

再び黒薔薇が咲き誇る! ATK2400

 

 

『バトルよ!「妖精大帝」で「閃珖竜」を攻撃!大帝の裁き!』

 

「『閃珖竜』!ぐああああ!!」

妖精大帝の放った魔力弾が閃珖竜に直撃、爆散する!

 

遊海LP3000→1900

 

 

『これで、終わり…!「ブラックローズドラゴン」でダイレクトアタック!ブラック・ローズ・フレア!!』

 

「まだ、だ!!自分がダイレクトアタックを受ける時!手札の『速攻のかかし』の効果発動!このカードを墓地に送り、バトルフェイズを、終了する!!」

遊海の前に現れたかかしが黒炎を受け止める!!

 

『わたしは、カードを伏せて、ターンエンド』

 

夏菜LP3500

妖精大帝 ブラックローズ 伏せ1 手札0

 

 

 

 

「…くそ…カオスエクシーズに、ブラックローズ…!遊馬達に戦わせないで、良かったが…まず、い…!」

全身を切り刻まれ、満身創痍の遊海…だが、それだけではない…!

 

『バリ、アン…の為、に…バリアンの…ううっ…』

膨大なカオスの力は幼い夏菜の体では受け止めきれず、倒れてしまう寸前だったのだ…!

 

 

「遊海さん!夏菜ちゃん!!」

 

「どうしよう…!?このままじゃ、遊海さんだけじゃなくて夏菜まで…!!」

翠と流星が声を上げる…だが、彼らには見ている事しかできない…この状況を打破できるのは、遊海だけなのだ…!

 

 

 

「俺の、ターン…ドロー…!」

「…カードを伏せて、ターンエンド…!」

 

遊海LP1900

伏せ1 手札0

 

 

 

『わたしの、ターン…ドロー…!』

『バトル…!「ブラックローズドラゴン」で、ダイレクトアタック!!』

再び黒炎の息吹が放たれる!!

 

「罠カード、発動!『星墜つる地に立つ閃珖(スターダスト・リスパーク)』!特殊召喚されたモンスターの攻撃によって、自分のライフ以上のダメージを受ける時!その攻撃を無効にし、カードを1枚ドローする!」

遊海を守るように光の柱が立ち上がる!

 

「そして、俺の墓地から…『閃珖竜』は復活する!」

 

《キュオオン!!》

遊海を守る為…再び光の翼が舞い上がる!

 

 

「な、なんで攻撃表示なんだ!?夏菜のフィールドにはまだ『妖精大帝』が残ってるのに!!」

 

「海亜、『ブラックローズドラゴン』は墓地の植物族モンスターを除外して、相手フィールドの守備表示モンスターを攻撃表示にして攻撃力を0にしてしまう効果がある…遊海さんはその効果を躱す為に敢えて攻撃表示で召喚したんだ…!」

 

 

 

『バトル!「妖精大帝」で「閃珖竜」を攻撃!』

 

「『閃珖竜』の効果発動!波動音壁─!」

閃珖竜のバリアが魔力弾を受け止める!

 

遊海LP1900→1800

 

 

『ターン、エンド…!』

 

夏菜LP3500

妖精大帝 ブラックローズ 伏せ1 手札1

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……覚悟を、決めるしか…ないな…!」

 

《マスター…!?まさか…!!》

満身創痍の遊海は()()を決めて…立ち上がる!

 

 

「遊海さん、まさか…!?」

翠は遊海の纏う気迫から異変を察知する…!

 

 

「夏菜…お前を守る為に、俺は…()()()()()!!俺は俺自身でオーバー─レイ!!」

 

「ダメ…遊海さん!!ダメぇぇぇ!!!」

翠の悲鳴が響く中…遊海の体から飛び出した光と闇が周囲を駆け巡る!!

 

 

世界に満ちる優しき光と安寧の闇!我が身に宿り…未来を繋げ!!ランクアップ・エクシーズチェンジ!

 

 

光と闇のエネルギーは混ざりあい…ビックバンを起こす!

 

 

絆の極地…未来を繋ぐ戦士!NEXUS!!

 

 

遊海の体が再構成され進化を遂げる…赤いロングコートに黒き鎧、赤い帽子に金と青のオッドアイ…遊海の辿り着いた決闘者の境地…NEXUS!

 

 

 

「っ…!!あれって…『NEXUS』!?」

 

「父さん!!」

 

「遊馬!凌牙!」

NEXUSから放たれた光が周囲を照らす中…遊馬と凌牙、小鳥・真月・璃緒が遅れて到着する!

 

 

 

「ふぅ…フゥゥ…!!俺の、ターン!!最強決闘者のデュエルは…全て必然!ドローカードすら、決闘者が創造する!シャイニング・ドロー!!

光の軌跡と共に、勝利を導くカードが創造される!

 

「魔法カード『貪欲な壺』発動!墓地の、『速攻のかかし』『ジャンクリボー』『ニトロウォリアー』『クイックシンクロン』『ジャンクシンクロン』をデッキに戻し…ダブル・シャイニング・ドロー!さらに魔法カード『調律』を発動!デッキから『ジェット・シンクロン』を手札に加え、デッキトップを墓地へ…!」

 

墓地送り

ダンディライオン

 

 

「墓地に落ちた『ダンディライオン』の効果発動!綿毛トークン2体を特殊召喚!」

タンポポの綿毛が現れる! DE0 0

 

「『ジェット・シンクロン』を召喚!」

青いエンジン型のロボットが現れる! ATK500

 

 

「俺はレベル1の『綿毛トークン』にレベル1の『ジェットシンクロン』をチューニング!」

 

1+1=2

 

「デュエルを新たな地平に導け!シンクロ召喚!『フォーミュラ・シンクロン』!」

F1マシン型のロボットが現れる! DEF1500

 

「『フォーミュラシンクロン』の効果発動、シンクロ召喚に成功した事で1ドロー…!」

 

 

 

「シンクロチューナーにシンクロモンスター…!アクセルシンクロだ!!」

 

「待て…!アクセルシンクロはライディングデュエルの到達点…スタンディングデュエルじゃ使えないはずだ!!」

遊海の場に揃ったモンスターを見て遊馬が歓声を上げるが…凌牙が待ったをかける…!

 

 

「いや…遊海さんには、常識は通用しない!!お願いします!!夏菜を守って!!」

 

 

「流星…遊星…力を、借りるぞ!!速攻魔法『リミットオーバー・ドライブ』!!シンクロチューナー『フォーミュラシンクロン』とシンクロモンスター『閃珖竜』をエクストラデッキに戻し、そのレベルの合計と同じレベルのシンクロモンスターを、召喚条件を無視してエクストラデッキから特殊召喚する!!俺はレベル8の『閃珖竜』とレベル2シンクロチューナー『フォーミュラシンクロン』をエクストラチューニング─!!」

遊海の周りに風が渦巻き、その体が黄金の輝きを放つ!

 

8+2=10

 

「集いし夢の結晶が新たな進化の扉を開く!未来を照らせ!エクストラ・アクセルシンクロ!!生来せよ…『シューティング・スター・ドラゴン』!!」

 

《ギュアアアン!!》

遊星が切り拓き、流星が繋いだ希望の翼が…少女を救う為に飛翔する! ATK3300

 

 

 

「『シューティングスタードラゴン』…!?なんで…!あのカードは流星の…!」

 

「…だから言ったでしょ、遊海さんには…常識は通用しないって!!」

思わぬシューティングスターの登場に目を丸くする海亜…その隣で流星は空を舞う翼を見つめた…。

 

 

(まただ…!伝説の決闘者だけが持つカードを…遊海、貴方に底はあるのか…!?)

 

「アストラル!今はそんな事言ってる場合じゃねぇって!いっけぇ!遊海─!!」

動揺するアストラルの横で、遊馬は必死に声を飛ばした…!

 

 

 

「『シューティングスタードラゴン』の効果発動!デッキトップ5枚をめくり、その中のチューナーの数だけ攻撃できる!」

遊海はデッキトップに手をかける!

 

 

「1枚目!『増援』…2枚目!『クイックシンクロン』!3枚目『レベルスティーラー』!4枚目『エフェクト・ヴェーラー』!5枚目『ジャンクシンクロン』!3回攻撃!バトルだ!『シューティングスタードラゴン』で『妖精大帝アルヴェルド』と『ブラックローズドラゴン』を攻撃!シューティング・ミラージュ!!」

 

《ギュアアアアアアン!!》

 

『きゃあああ─!?』

咆哮したシューティングスターは3体に分身、黒薔薇竜とカオスに飲まれた妖精王を粉砕し、ライフを削りきった…!

 

 

夏菜LP0

 

 

 

 

 

「夏菜!!」

攻撃が決まった直後、遊海は高速移動して倒れかかった夏菜を受け止める!

 

 

『う…わたし、何を…体が、痛いよぉ…』

 

「夏菜…ごめん…!俺が油断してたからだ…!本当にごめん…!ゆっくり休んでくれ…!」

夏菜を抱きしめた遊海は優しく声を掛けた…。

 

 

「遊海さん!夏菜ちゃん!」

 

「2人とも大丈夫か!?」

 

「父さん!!」

デュエルが終わり…翠や遊馬達が駆け寄ってくる。

 

 

「ごめん…心配を掛けたな!もう、大丈………ん?」

駆け寄って来る翠達に声を掛けようとした遊海は違和感を感じる…その違和感の正体は…

 

 

《ギュアアアン…?》

 

「なんで、『シューティングスタードラゴン』が…まだいるんだ…?」

デュエルが終わったはず…だが、遊海が召喚したシューティングスターが残り続けていたのだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリアンズ・スフィア・フィールド…展開…!!

 

 

 

 

 

「っ─!!みんな離れろ!!!」

 

「えっ!?」

 

ギィン!バリバリバリ!!

 

「な、何だこれ!!」

 

「スフィアフィールド…だと!?」

遊海が叫んだ瞬間、遊海と夏菜が赤紫の結界…スフィアフィールドに囚われる…!

 

 

 

ギィン─!

 

 

赤、帽子…!赤帽子ィィィ!!!

 

 

「新手の、バリアン…!?」

スフィアフィールドの中に新たな人影が現れる…それは、黒いローブを纏い…尋常ではないオーラを纏ったバリアンだった…!

 

 

貴様が憎い…憎い憎い憎い憎いニクィィィィ!!

 

「っ…マトモじゃ、ないな…!!」

遊海はその姿を見て察する…相手は正気ではないのだと…!

 

 

WARNING!WARNING!

 

 

 

乱入デュエル

 

 

 

???LP4000

 

遊海LP1900

シューティングスター 綿毛トークン 伏せ0 手札2

 

 

 

【オレのターン…!ドロー!!】

【「緊急テレポート」発動!デッキからレベル3の『メンタル・プロテクター』を特殊召喚だぁ!】

頭と左右の掌に紫の石をはめたロボットが現れる ATK0

 

【さらにィィ!!レベル3のモンスターがフィールド上に存在する事で手札の「サイコトラッカー」と「サイコウィールダー」は特殊召喚できるぅ!】

ヨーヨーを操るロボット、さらにモノホイールに乗るロボットが現れる! ATK1500  ATK1600

 

 

 

【オレはぁレベル3の「サイコトラッカー」とレベル3「メンタルプロテクター」にレベル3「サイコウィールダー」をチューニングゥ!】

 

 

3+3+3=9

 

【出てこい!!我が憤怒…!我が怨念!我が復讐!!シンクロ召喚!!「メンタル・オーバー・デーモン」!!】

サイコエネルギーを纏う…サイキック族最強クラスの悪魔が現れる! ATK3300

 

 

「バリアンが、シンクロ召喚だと!?」

 

【シンクロ素材になった「サイコトラッカー」と「サイコウィールダー」の効果発動…!「メンタルオーバーデーモン」の攻撃力は600アップしぃ…!貴様の『シューティングスタードラゴン』を破壊するぅぅ!!】

 

「『シューティングスタードラゴン』は相手の破壊効果を無効にして破壊する!」

放たれたサイコパワーがはね返される!

 

メンタルオーバーデーモンATK3300→3900

 

 

【まだだぁ…!装備魔法「サイコブレイド」を「メンタルオーバーデーモン」に装備ィ…!我がライフを2000捧げる事で攻撃力と守備力を2000アップするぅぅ!!】

悪魔の爪が全て鋭い剣へと変化する!

 

???LP4000→2000

 

メンタルオーバーデーモンATK3900→5900

 

 

 

 

「攻撃力…5900!?」

 

「や、やべぇ!父さんの残りライフは…1900のままだ!!」

 

「慌てないで!!『シューティングスタードラゴン』は自分を除外して相手の攻撃を無効にできるんだ!!」

謎のデュエリストの攻勢に叫ぶ凌牙…だが、流星は冷静にデュエルを見守る!

 

 

 

【断罪の時だぁ…!「メンタルオーバーデーモン」で「シューティングスタードラゴン」を攻撃ィィィ!ぶっ潰れろおぉぉ!!!】

 

「やらせるかよ…!『シューティングスタードラゴン』の効────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドグン!!

 

 

 

 

 

パラッ…

 

 

 

 

 

 

 

「………ぁ…(こんな、とき…に…)」

 

 

 

ビキビキビキ…バリーン!!

 

 

 

「「父さん─!?」」

 

「NEXUSが…壊れた!?」

シューティングスタードラゴンの効果を発動しようとした遊海…だが、その直前…NEXUSが解除され、手札と抱き抱えていた夏菜を取り落して倒れ込んでしまう!!

 

 

 

「まずい!!このままじゃ…夏菜諸共…!!」

 

「か、カナァァァ!!!」

無情の凶爪は止まらない…振り下ろされた爪は遊海へと迫り…!

 

 

 

 

 

ザン!ドォォン!!!

 

 

 

 

 

 

「いや…いやあぁぁぁ!!」

 

「遊海…!遊海ィィィ!!」

 

 

子供達の悲鳴が…木霊した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やらせるわけ、ないでしょう…!この、卑怯者…!!」

 

【なぁにぃ…?】

 

「えっ…!?」

スフィアフィールドの爆煙が消えていく…その奥から現れたのは紫の糸で雁字搦めに縛られた「メンタルオーバーデーモン」、そして…倒れた夏菜と遊海を守るように立つ…髪を赤く染め、踊り子のようなドレスを纏った翠の姿だった…!

 

戦闘衣装(バトルドレス)・Sophiaの影霊衣…!私は、お前を許さない…絶対に許さない!!」

 

 

 

【貴様ぁ…!どうやってこの中にィ…!】

苛ついた声でバリアンは唸る…!

 

「簡単な事よ…スフィアフィールドを()()()()()()、そして乱入して速攻魔法『神の写し身との接触(エルシャドール・フュージョン)』を発動…私は『シャドール・ハウンド』と光属性の『超電磁タートル』で融合…『エルシャドール・ネフィリム』を融合召喚した!!」

翠の背後に巨大な人形の女神が立ち上がる! ATK2800

 

 

翠LP4000

エルシャドール・ネフィリム 手札3

 

 

「そして墓地の『シャドールハウンド』の効果で『メンタルオーバーデーモン』の表示形式を変更したわ」

 

メンタルオーバーデーモンATK5900→DEF3000→5000

 

 

【貴様…余計なことぉぉ!!】

 

「余計な事をしたのはどっちよ!!遊海さんが全身全霊…命をかけて人を守ろうとしてるのに…邪魔するな馬鹿ァァ!!

 

「み、翠さん…!?」

空気を震わせる翠の憤怒の叫び…それはフィールドの外にいる子供達をも縮み上がらせる…!

 

 

「私の効果処理は終わってない…!『エルシャドール・ネフィリム』が融合召喚に成功した時!デッキから『シャドール・ドラゴン』を墓地に送る!そして効果発動!!相手の魔法・罠を1枚破壊する!『サイコブレイド』を破壊!!」

 

【チィッ!!】

影糸が装備魔法を切り刻む!

 

メンタルオーバーデーモンDEF5000→3000

 

 

【オレは『メンタルオーバーデーモン』の効果発動…!墓地の『メンタルプロテクター』を除外…!カードを1枚伏せてターンエンドォ…!】

バリアンは憎々しげな声を漏らしながらターンを終えた…。

 

???LP2000

メンタルオーバーデーモン 伏せ1 手札1

 

 

 

「…遊海さん、無理をさせて…ごめんなさい…!!」

 

翠は白目を向いて意識を手放した遊海のまぶたを優しく閉じた…。

 

 

遊海 決闘続行不可能(リタイア) 

 

 

 

 

「私のターン、ドロー!!」

「お前は絶対に…許さない!!手札を1枚捨て…速攻魔法『超融合』発動!!私のフィールドの『ネフィリム』とお前の闇属性『メンタルオーバーデーモン』を超融合!!」

 

【なにぃ!?】

スフィアフィールドが歪み、ネフィリムとメンタルオーバーデーモンが吸い込まれる!!

 

「影の女神よ…闇の輝石を得て、闇の巫女を生み出さん!融合召喚!『エルシャドール・ミドラーシュ』!!」

 

《私…参上!!》

影の龍の人形に乗る風の巫女…ウィンダが現れる! ATK2200

 

 

 

【無駄だ…!「メンタルオーバーデーモン」フィールドから墓地に送られた時、自身の効果で除外した「メンタルプロテクター」を特殊召喚する!】

再び左右の掌に紫の石をはめたロボットが現れる! DEF2200

 

【「メンタルプロテクター」が存在する限りぃ!サイキック族以外の攻撃力2000以下のモンスターは攻撃できないぃ!!そして貴様のモンスターでは…オレのモンスターは…倒せないい!!】

 

「それは…どうかしら!」

 

【なにィ?】

 

「私は『シャドール・ファルコン』を召喚!!」

鳥型の影人形が現れる! ATK600

 

 

「私はレベル5の『ミドラーシュ』にレベル2『ファルコン』をチューニング!!」

 

5+2=7

 

「清廉なる花園に咲く孤高の花よ!月の雫を得て咲き誇れ!!シンクロ召喚!『月華竜ブラックローズ』!」

花吹雪が舞い散り、聖なる光を纏う薔薇のドラゴンが現れる ATK2400

 

 

 

「決闘竜…!遊海さん達が持つ、シグナーの竜に似た姿を持つドラゴン!!」

 

「『月華竜』の効果発動!このカードが特殊召喚に成功した時!相手の特殊召喚されたモンスターを手札に戻す!退華の叙事歌(ローズ・バラード)!!」

 

【なんだとぉ!?】

薔薇の花吹雪がメンタルプロテクターを吹き飛ばす!

 

 

「遊海さんと…夏菜ちゃんの仇!!『月華竜』でバリアンにダイレクトアタック!薔薇の鎮魂曲(ローズ・レクイエム)!!」

 

【ガッ!?グアアアアア!!!】

聖なる炎の息吹が翠の怒りを代弁するように…邪悪なバリアンを灼き尽くした!!

 

 

 

??? LP0

 

 

翠WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

ニンゲンめ…ニンゲンごときが、このオレぉぉ!!

炎に焼かれたバリアンは怨嗟の声を上げる!!

 

「お前は…逃さない!!創星神権能開放…!創星の…!!」

翠は確実にバリアンを滅殺する為に権能を開放する!

 

【覚えてろぉ…!赤帽子…次は…殺す!!】

 

バサッ…

 

「えっ…!?」

攻撃をしようとした瞬間、翠は動きを止めた…ローブが燃え尽きたバリアン…その顔に見覚えがあったのだ…!

 

あああ…憎い…憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!シラナミユウミィィ…!!!

僅かな「隙」…その瞬間を見逃さなかったバリアンは粒子となって姿を消した…。

 

 

 

 

 

「父さん!母さん─!!」

 

「夏菜!!」

スフィアフィールドが崩れ去り、遊海達が開放される…。

 

 

「流星君…海亜ちゃん…夏菜ちゃん…ごめんね…!せっかく楽しい思い出を作りに来たのに…!」

 

「謝るのは…お礼を言うのは僕の方です!夏菜を助けてくれてありがとう…!!」

流星は翠と遊海にお礼を言いながら眠っている夏菜を抱きしめた…。

 

 

「母さん!父さんは!?大丈夫なのか!?」

 

「凌牙君…大丈夫、『NEXUS』はすごく負担のかかる姿だから…それで気を失っただけ、だか…ら…」

 

「母さん!!」

翠は体勢を崩して座り込む…それを璃緒と凌牙が慌てて抱きとめた。

 

 

「あはは…久しぶりに、全力全開で決闘したら、クラクラしちゃった…ちょっと、だめ…かも…」

 

「母さん!しっかりして母さん─!!」

 

「翠さん!!」

 

無理矢理に力を開放した影響で翠もまた意識を手放した…その後、遊海と翠の2人は駆け付けた十代と精霊達によって自宅に運ばれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【テメェ…!アゴール!!何を余計な事してやがる!!】

 

【申し訳、ありません…あの、赤い髪の女と…赤帽子を見たら…自分を押さえられなくなってしまいました…】

人間界某所…ベクターは満身創痍のアゴールを叱責していた…。

 

 

【チィッ…まぁいい!オレ様の計画も最終段階だ…!その時の為にしっかり傷を塞いでおけ!!】

 

【御意…】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ああ…すべて、思い出した…!待っていろ、遊海…!貴様の苦しむ声を…!断末魔を聞かせてくれぇ…!!私の味わった苦しみ…!すべてをお前にィィ!!!】




〜オリジナルカオスエクシーズ紹介〜

CX妖精大帝アルヴェルド
地属性 植物族 ATK2600  DEF1800
地属性レベル5×3

①このカードはカード効果では破壊されない
②このカードが「妖精王アルヴェルド」をエクシーズ素材としている時、以下の効果を得る。
●1ターンに1度、エクシーズ素材を2つ墓地に送り発動できる。相手フィールドの表側表示モンスター全ての攻撃力を1000ダウンさせ、この効果の対象になったモンスター1体につき500ダメージを相手に与える。



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─最後の授業─

こんにちは!S,Kです!

バリアンとのデュエルで限界を超えてしまった遊海…彼が抱えていた不調とは…。

そして、遊海は残された時間で何を為すのか…?



それでは、最新話をどうぞ!


「NEXUSを使えるのが…あと『3回』…!?」

 

【ええ、貴方の切り札たる『絆の奇跡』…それを使えるのは3回だけです】

それはフレアを追って冥界に迷い込んだ時…オリジナルのラーの翼神竜から伝えられた…非情な宣告だった。

 

 

【現世での戦いで貴方の魂は砕かれ…復讐者の懴悔によって再生しました…しかし、その直後に貴方は魂に大きな負担をかける『絆の奇跡』を使った…それによって貴方の魂はとても不安定な状態です】

 

「………」

遊海は胸に手を当てる…確かに無理をした自覚はあった、だが…そこまでひどい状態とは思っていなかったのだ…。

 

 

【今の貴方の魂は…例えるなら少し罅割れた瓶に入った水…日常や多少の決闘なら問題なくできるでしょう】

ラーは神通力で近くにあった水瓶を持ち上げる。

 

【しかし…『絆の奇跡』を使い、魂に負担をかけ続ければ……】

 

バリーン! バシャ…

 

神通力で水瓶が砕け…溢れた水が地面に広がっていく…。

 

 

【…貴方は、死ぬ事になるでしょう…それもただの死ではありません、輪廻の輪から外れ…冥界にも、アストラル世界のような高位次元にも…何処にも行けず、()()する事になる…それが最悪の結末です】

 

 

『遊海が…死…消滅する、だと!?ラーよ!遊海を救う手立てはないのか!?』

ラーの言葉を聞いた海馬が声を荒らげる…友が死ぬどころか『消滅』する…それを聞いて黙っていられなかったのだ。

 

 

【今のは…あくまで最悪の結末です、解決策…いえ、対処法はあります…『絆の奇跡』を使わず、できる限り魂に負荷をかけない事です…可能ならば10年ほど…そうすれば魂の傷も治り、魂が消滅する事もないでしょう】

 

『な、なんだよ!簡単な事じゃねぇか!遊海はただでさえ強いんだ!そんなの楽勝だぜ!!』

 

『『……』』

城之内が安堵の声を漏らす…だが、海馬と遊戯の表情は晴れなかった…。

 

 

『凡骨…簡単な事であれば苦労はせん…』

 

『だぁぁ!冥界でも凡骨呼ばわりするのかよ!』

 

『黙って聞け!…いいか?遊海がこれから戦うのは「神」だ!それもダークネスや冥界の邪神のようなエセ神ではない!何万年も前から暗躍し、世界の理を書き換えるような権能を持つ正真正銘の「悪神」だ!!……いくら遊海が強者であっても…奇跡を使わず勝利するのは…無理がある…!』

 

海馬は生前、遊海からZEXALの物語を聞かされていた…絶望を希望で書き換える…そんな物語を…だからこそ、復活する「混沌の神」の恐ろしさを理解していたのだ…。

 

 

 

 

『遊海…既に死者である僕達では、君に何もしてあげられない…でも…僕達は信じてる、君が選んだ道が…最高最善の選択なんだって…!』

 

『遊海、忘れるな…お前は1人じゃない!オレ達がついてる!最後まで…諦めるな!』

 

「遊戯…アテム…わかってる!俺は諦めない…絶対に…!!」

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

「…ここは……」

遊海は見慣れた自室で目を覚ました、不思議と身体に痛みはない…あるのは身体を動かせない程の虚脱感と疲労感だけだった。

 

 

「…やっちまった…」

ぼんやりとした頭で遊海は途切れる前の記憶を思い出す、文化祭…洗脳された夏菜…NEXUSの開放…そして、謎のバリアンの乱入…。

バリアンに立ち向かおうとした遊海は肉体…魂の限界を超えてしまい気絶したのだ。

 

「…あと、『2回』…か…」

遊海は胸に手を当てる、それは死へのカウントダウン…あと2回、NEXUSを使えば…遊海の魂は…燃え尽きてしまうのだ…。

 

 

「……後悔は、しない…夏菜を…未来への希望を…護れた、なら……」

自分の状況から夏菜の無事を確信した遊海は…再び意識を手放した…。

 

 

 

 

 

 

 

『無茶したなぁ…遊海』

 

「…ユウスケ」

 

遊海の意識の底…深層意識、遊海はもう一人の自分──ユウスケと向かい合う。

 

 

『さっきの変身だけで…ほら、千年玉の罅割れがこんなに増えた…お前達の持つ千年アイテムは魂に直結してる…これが割れれば…(オレ)達は終わりだ』

ユウスケは手にした千年玉を弄ぶ…その罅割れは以前の倍ほどに広がっていた…。

 

 

「ごめん、あの時は…あれしか方法が思い付かなかった…」

 

『…勘違いすんな』ペチン!

 

「アダッ!?」

ユウスケに対して謝る遊海…その額にユウスケはデコピンを喰らわせる。

 

 

『別にNEXUSになった事に文句を言いたい訳じゃねぇ…使わなきゃ、遊星の孫に…その心に消えない傷ができる所だったからな』

 

「…すまん」

 

『…問題はそのあとだ…わかってんだろ?()()()()()()の正体は…?』

 

「…わかってる、アイツだけは…俺が…俺達で倒さなきゃならない相手だ…!!」

ユウスケの言葉に遊海は拳を握る…。

 

 

『わかってるならいい、おそらく…奴が我達の倒すべき()()()()()()だ、奴を倒せば…あとは我達の出番はないはずさ…精々、悔いの無いように過ごせ…』

 

「…ありがとう」

 

『ハッ…お前と別れて100年…たくさんの出会いと別れがあった、我は楽しませてもらったぜ…じゃあな、さっさと翠に謝ってこい』

ユウスケの皮肉と共に…遊海の意識は暗転した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…みど、り…」

 

「あ…!母さん!父さんが目を…!!」

 

「遊海さん!!」

遊海が目を覚まして最初に目にしたのは手を握り、心配そうな表情で座っていた璃緒の顔…そして璃緒の声で慌てた様子でやって来た翠の姿だった。

 

 

「ごめん…何日、寝てた…?」

 

「もう!丸4日ですよ…!!痛い所は!?」

 

「身体がだるい以外は、大丈夫…夏菜は、大丈夫か…?」

 

「はい!今、何があったのか説明しますね…」

翠から語られたのは事件の顛末…デュエル中に遊海が意識を失った事…攻撃が直撃する直前に翠が乱入してバリアンを撃退した事…夏菜は大きな怪我なく、十代の治療で完治してネオドミノシティに戻った…との事だった。

 

「そうか…よかった…」

翠から事件の顛末を聞いた遊海は安堵の声を漏らした…。

 

 

 

「…遊海さん、気付いてますか?…あの、バリアンは…」

 

「ああ…奴は、()()()()()()だ…間違いない…!」

ディヴァイン…それは遊海にとって因縁深い決闘者の1人である。

遊海は今までで3度、ディヴァインと相対した。

 

 

1度目はバトルシティ・レジェンドにおいて暴動紛いの事件を起こして遊海に制圧され…。

 

2度目は以前に捕まった事を根に持ち…翠を人質にとり、卑怯な手段で遊海に瀕死の重傷を負わせ…。

 

3度目でアメリカのマフィアとなり、アメリカ征服を企んだが…たまたまアメリカに居合わせた遊海によって野望を粉砕され、「マインド・クラッシュ」を受けた上でアメリカ警察に逮捕されたのだ。

 

 

 

「…あのテロ事件のあと、ディヴァインはアメリカの刑務所で亡くなった…と聞いたが…バリアン世界に転生していたのか…」

 

「…遊海さん…」

バリアン世界、それはアストラル世界と対を成す高次元世界…人間界とは敵対しているが…決して「悪」の世界ではない。

 

成り立ちは遥か数千年前、「魂のランクアップ」をひたすらに目指すアストラル世界から「カオス」と呼ばれる感情…簡単にいえば『欲』や『負』の心を持つ魂が追放され、形作られた世界である。

それ故なのか…人間界で非業の死を遂げた魂や欲深い人間が死した時、バリアン世界に流れ着いてしまう事があるのだ…。

 

 

「奴は…俺を酷く恨んでいた…そして夏菜を狙ったのは彼女が執着していたアキに似ていたから……奴は、俺が倒さなきゃならない相手だ…!」

 

「遊海さん…」

遊海は拳を握りしめている…その拳の中から血が流れるほどに…。

 

 

「決戦は…サルガッソ…奴は、必ず俺を狙ってくる…!」

 

「遊海さん…!私が…私が代わりに戦います!だから…だからこれ以上は…!!」

翠は遊海の身体を心配する…だが…。

 

「翠…ありがとう…でも、これは俺のケジメなんだ…っぐ!?」

 

「遊海さん!?まだ起きちゃ…!?」

遊海は翠の制止を聞かずに起き上がる…!

 

 

「次の戦いが終われば…俺は、()()()()()()()()()()…遊馬を、呼んでくれ…!」

遊海は憂いを無くす為に、立ち上がった…。

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

「なぁ、シャーク…遊海は大丈夫なのか?もう4日も眠りっぱなしなんだろ…?」

 

「ああ…傷とかは母さんと十代さんが治してくれたけどな…」

放課後…遊馬は凌牙、小鳥と共に白波家に向かっていた…。

 

(遊馬…気付いているか?)

 

「アストラル…?気付く?なんの事だ?」

皇の鍵から飛び出してきたアストラルが遊馬に問いかける。

 

 

(あの時…遊海が変身した『NEXUS』は…明らかに力が()()()()()()()

 

「えっ…!?でも、シャイニングドローも使って…デュエルにも勝ってるじゃねぇか!」

 

「いや…アストラルの言ってる事は正しいぜ、父さんは…弱ってる」

 

「シャーク…!?」

アストラルの言葉…さらに、それを肯定する凌牙の言葉に遊馬は驚く…。

 

 

「言葉じゃ上手く言えねぇ…でも、分かるんだ…!父さんは()()()()()()()()…!!」

それは凌牙が遊海と共に暮らしているからこそ、感じた事だった。

 

(私も同じ意見だ…彼があの姿になった時、とても苦しんでいるように見えた…彼は、何かを隠している)

 

「そんな…」

 

「遊馬…大丈夫よ!きっと遊海さんは疲れていただけよ!夏菜ちゃんもしっかり助けられたんだし!」

ショックを受けた様子の遊馬…小鳥はそれを宥めた。

 

 

 

「でも…あのバリアンの奴、いったい何者なんだ…?なんで父さんの事を…」

 

(確かに、翠は彼に見覚えがあるようだったが…)

 

「でも、許せねぇ…!疲れきってる遊海を襲うなんて…!卑怯だぜ!!次に会ったらオレがぶっ飛ばしてやる!!」

遊海を襲った謎のバリアンに対して怒りを燃やす遊馬…そんな時だった。

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

 

「あっ…母さんから…もしもし!」

 

『凌牙くん!近くに遊馬君はいる?』

 

「ああ、父さんの見舞いに行きたいからって…一緒に家に向かってるぜ」

 

『ちょうどよかった!少し前に遊海さんが目を覚ましたの!それで…遊馬君に会いたいって…』

 

「それ本当なのか!?」

 

「わかった!すぐに行くぜ!!」

翠からの連絡を受けた遊馬達は急いで家に向かった…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「翠さん!遊海は大丈…へぇっ!?」

 

「父さん!?もう起きて大丈夫なのか!?」

 

「おう!よく来たな遊馬、そしておかえり凌牙…もう大丈夫だ、心配掛けたな」

白波家に着いた遊馬達が見たのはリビングのソファに座る遊海…だが、その姿はいつもと違っていた。

 

(その姿は…貴方の、決闘王としての姿…!)

遊海は普段使いの黒ジャケットではなく…自身の正装…赤帽子・赤ジャケットの姿だった…。

 

 

「遊馬…これから、お前への()()()()()を始める」

 

「えっ…!?」

ソファから立ち上がった遊海は遊馬を見つめながら、そう言い放った…!

 

 

 

 

 

『遊海…いや、先生!最後の授業って…いったいどういう事だよ!?』

 

「言葉どおりの意味だ、遊馬…これから俺と決闘(デュエル)してもらう」

中庭で向かい合う遊馬と遊海…遊馬は突然の事で動揺している…!

 

 

「遊馬、これからバリアンとの戦いは激しくなるだろう…その戦いの前に、俺がお前の()を見定める」

 

『心…?』

 

「遊馬、お前はこの決闘で…俺に()()()()()()()…全身全霊で俺に…『決闘王』白波遊海にかかってこい!!」

 

『ちょ、ちょっと待ってくれよ!!遊海はまだ病み上が──』

 

「…俺を舐めるな、遊馬!!」

 

ズン!!

 

『ぐっ─!?』

 

(この、重圧は…!?)

 

「なんて、殺気だっ!!」

 

「ひっ!?」

 

「小鳥さんっ、しっかり、息を吸って…!!」

遊馬…そしてその後ろにいた凌牙達に襲いかかるのは凄まじい重圧…遊海が歴戦の決闘者としての威圧感を開放したのだ…!

 

 

 

「…俺はこの世界をずっと守り、見届けて来た…!見せてみろ…お前達の力を!!…アヤカ!」

 

《…疑似スフィア・フィールド、展開!》

 

キィン─!

 

遊海の頭上に現れたアヤカを基点としたスフィアフィールドが遊海と遊馬を包み込む!

 

 

『なっ、スフィアフィールド!?』

 

「Dr.フェイカーにデータを提供して貰って…再現したスフィアフィールドだ、心配するな…訓練用にリアルダメージをカットする設定にしてある…さぁ、かかってこい!!」

 

『くっ…わかったぁ!!いくぜ、アストラル!』

 

(我々の成長の証…彼に見せるぞ!)

遊海の本気を感じた遊馬は…覚悟を決めて遊海へと挑む!

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

遊馬LP4000

遊海LP4000

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『よし…!「ゴゴゴゴーレム」を召喚!』

単眼の青い石の巨人が現れる! ATK1800

 

『さらに!レベル4のモンスターの召喚に成功した時!「カゲトカゲ」は特殊召喚できる!』

巨人の影から黒いトカゲが現れる! ATK1100

 

『オレはレベル4の「ゴゴゴゴーレム」と「カゲトカゲ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!』

 

39

 

『現れろ!「No.39希望皇ホープ」!!』

《ホープッ!!》

遊馬のエース…希望の戦士が雄叫びを上げる! ATK2500

 

 

『オレはカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!』

 

遊馬LP4000

希望皇ホープ 伏せ1 手札2

 

 

 

「俺のターン!ドロー」

「『召喚僧サモンプリースト』を召喚!このカードは召喚に成功した時、守備表示になる!」

紫の法衣を纏った僧侶が現れる! ATK800→DEF1600

 

「『サモンプリースト』の効果発動!手札の魔法カード『手札断殺』を墓地に送り、デッキからレベル4『ジュラゲド』を特殊召喚!」

サモンプリーストの呪文によって鋭い爪を持つ悪魔が現れる! ATK1700

 

(レベル4のモンスターが2体…来るぞ!)

 

「俺はレベル4の『サモンプリースト』と『ジュラゲド』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

 

「現れろ!『No.∞』!俺の歩みし戦いのロード、今こそ未来を切り開け!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!!」

光の爆発と共に大剣が遊海の傍らに突き刺さる! ATK2500

 

「『決闘の守護者』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した事で1ドロー!」

 

『遊海のナンバーズ…!』

 

 

「いくぞ遊馬!『決闘の守護者』で『希望皇ホープ』を攻撃!そして効果発動!ORUを1つ使い!バトルする相手モンスターの攻撃力を自身に加える!受けてみろ!勝利へ導く決着の剣(デュエル・カリバー)!!」

虹色の光を纏った大剣を掲げ、遊海が希望の戦士に斬りかかる! 

 

決闘の守護者ATK2500→5000

 

 

『やらせるか!「ホープ」の効果発動!ORUを1つ使い、攻撃を無効にする!ムーンバリア!』

無敵の盾が光の斬撃を受け止める!!

 

 

「俺はカードを伏せ、ターンエンド!」

 

遊海LP4000

決闘の守護者 伏せ1 手札4

 

 

 

『今の一撃…痺れたぜ…!やっぱり遊海は強えぇ…!』

 

(気をつけろ遊馬、遊海はどんな手で来るかわからない!)

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『このカードなら…!行くぜ!装備魔法「オーバーレイ・チェーン」を「ホープ」に装備する!その効果で「ホープ」のORUは相手の効果の影響を受けなくなる!』

ホープのORUが鎖状に変化する!

 

『そして…六十郎じいちゃん!これが本当の使い方なんだよな!!魔法カード「オーバーレイ・バレット」を発動!「ホープ」のORUを全て取り除き、1つにつき500ダメージを相手に与える!』

 

「くっ!?」

ホープのORUが弾け飛び、遊海のライフを削る! 

 

遊海LP4000→3500

 

 

『さらに装備魔法「オーバーレイチェーン」の効果発動!装備モンスターのORUが全てなくなった時!このカードを破壊して、カードを1枚ドローできる!』

 

(…そのカードは)

六十郎から託されたカードの真価を発揮した遊馬…ドローしたのは…!

 

 

『き、キタキタキタ─!!見せてやるぜ、オレの全力!!「RUM-リミテッド・バリアンズ・フォース」を発動だ─!!』

 

「…来たか」

遊馬が発動したのは新たな力…ギラグから奪ったという、バリアンの力を宿したカードだった…!

 

 

 

『このカードは!「希望皇ホープ」をカオス化させ、ランクアップさせる!「希望皇ホープ」を素材にオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!』

ニュートラル体に戻ったホープが銀河に飛び込み、闇の爆発を起こす!!

 

39

 

『混沌の力纏いて勝利を目指せ!進化した勇姿が…今ここに現れる!現れろ「CNo.39」!「 希望皇ホープレイV」!!』

混沌の力を宿した希望皇…赫焉の覇王が現れる! ATK2600

 

 

『いくぜぇ!「ホープレイV」の効果発動!カオスORUを1つ使い!相手モンスターを破壊して、その攻撃力分のダメージを与える!V・ブレードシュート!!』

 

「マズっ…!ぐおおっ!?」

ホープレイVから放たれた炎の一撃が遊海の持つ大剣に直撃、爆発と共に遊海を吹き飛ばす!

 

遊海LP4000→1500

 

 

『これで、どうだぁ!』

 

「まだまだだっ…!『決闘の守護者』の効果発動…!俺のライフを1000払い、破壊されたこのカードを特殊召喚し、墓地の『サモンプリースト』をORUにする!」

紫色の魔法陣から大剣が復活する! ATK2500 ORU0→1

 

遊海LP1500→500

 

 

『いくぜ、バトルだ!「ホープレイV」で「決闘の守護者」を攻撃!ホープ剣Vの字斬り!!』

 

「っ…!『決闘の守護者』の効果発動!ORUを1つ使い!相手の攻撃力を自身に加える!」

大剣が虹色の光を纏う! ATK2500→5100

 

 

(今だ!遊馬!)

 

『おう!罠カード「燃える闘志」を発動!』

 

(このカードは「ホープレイV」の装備カードとなり、相手フィールドに元々の攻撃力より攻撃力がアップしているモンスターがいる時!バトルの間、攻撃力を倍にする!)

 

「なにっ!?」

赤き覇王が業火を纏う! ATK2600→5200

 

 

『いっけぇ!「ホープレイV」!ホープ剣バーニング・Vスラッシュ!!』

 

「くっ…!!勝利へ導く決着の─!?ぐああああ!!!」

炎を纏ったホープ剣と虹色の大剣が衝突…遊海の大剣がへし折れ、爆発する!

 

遊海LP500→400

 

 

『よっしゃああ!』

 

「ぐっ…やるな、遊馬…だが、俺がダメージを受けた事で、手札の『ガーディアン・スライム』は特殊召喚できる…!」

黒い犬のような頭を持つ巨大なスライムが現れる! DEF0

 

『オレはカードを伏せてターンエンドだ!』

 

遊馬LP4000

ホープレイV(燃える闘志) 伏せ1 手札0

 

 

 

「遊馬の奴…!ノーダメージで父さんを追い詰めやがった…!」

 

「すごい…!」

凌牙と小鳥は遊馬の成長に驚く…彼は精霊界での決闘からさらに実力を伸ばしていた…!

 

 

 

『どうだ遊海!これがオレの全力だぁ!』

 

「…強くなったな、遊馬…何回も何回も…俺にダメージを与えられないで負けていたのが嘘みたいだ…」

 

『遊海…!?』

遊馬は驚愕した、遊海が()()()()()のだ…どんな状況でも人前で涙を見せなかった…強き男が…。

 

 

「遊馬、忘れるな…お前の強さは1()()()()()()()()()()()()()()、小鳥ちゃん…アストラル…凌牙…カイト…お前が出会い、戦った決闘者達の思いが…お前を強くしてきた…その『絆』だけは…どんな状況になっても忘れるな!」

 

『遊海…おう!オレは忘れない!絶対に!!』

遊海の魂からの言葉…それを聞いた遊馬は声を張り上げて応える!

 

 

「それでいい…遊馬、強くなったお前に敬意をもって…俺は()()で戦う!!」

 

『えっ…!…おう!!かかって来やがれ─!』

その瞬間、空気が変わった。

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「俺は…このドローに全てを賭ける!魔法カード『強欲で貪欲な壺』!デッキトップを10枚、裏側表示で除外し、2枚ドローする!」

 

(カイバーマンの使った…ギャンブルドローカード…!)

 

「いくぜ…ドロー!!…いくぞ!リバース罠『メタル・リフレクト・スライム』を発動!このカードをモンスターとして特殊召喚!」

トゲトゲのメタリックなスライムが現れる! DEF3000

 

 

『これでレベル10のモンスターが2体…!』

 

「まだだ!魔法カード『古の呪文』を発動!その効果により…『ラーの翼神竜』を手札に加える!」

 

『なあっ!?!?』

 

(神のカードだと!?)

遊海が手札に加えたカードを見て遊馬達は驚愕の声を上げる!

 

 

「そして俺はレベル10の水族・攻撃力0の『ガーディアン・スライム』をリリースする事でエクストラデッキから『(ゴッド)・スライム』を特殊召喚できる!さらに同じく『メタルリフレクトスライム』をリリースする事で2体目の『神・スライム』を特殊召喚!」

2体のスライムの形が崩れ、大地の神の姿を写したスライム達が現れる! ATK3000  3000

 

 

(な、なんだ!?このモンスター達は…!)

 

「フィールドから墓地に送られた『ガーディアンスライム』の効果!デッキから『ラーの翼神竜』の名を記した魔法・罠…『ゴッド・ブレイズ・キャノン』を手札に加える!そして俺は『神スライム』を3体分のリリースとして…『オベリスクの巨神兵』をアドバンス召喚!!」

 

《オオオオオオ─!!》

遊海の背後に黒炎が噴き上がる…その内より、青き大地の神…オベリスクが降臨する! ATK4000

 

 

『お、「オベリスクの巨神兵」─!?』

 

(馬鹿な!?遊海が持っているのは、「ラー」だけの…!?)

 

「さらに!『古の呪文』の効果により、俺は通常召喚に加えてアドバンス召喚を行なう事ができる!…せいれいはうたう…」

 

古代神官文字(ヒエラティック・テキスト)の詠唱…!』

遊馬達の動揺を尻目に遊海は祝詞を紡ぐ…!

 

 

「…『神スライム』を生贄に…現われよ!『ラーの翼神竜』─!!」

 

《キュアアアア!!》

天空の彼方から…金色の翼を持つ太陽神が降臨する!

ATK0→3000

 

 

『「ラーの翼神竜」…!!』

 

(デュエルモンスターズの伝説…三幻神が2体も…!!)

 

「と、父さん…!アンタ、いったい…!?」

 

「…何者、なんですか…!?」

失われたはずの伝説を前に、子供達は言葉も出ない…。

 

 

「魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地の『決闘の守護者』『サモンプリースト』『ジュラゲド』2体の『神スライム』をデッキに戻し、2ドロー!さらに『死者蘇生』を発動!『ガーディアンスライム』を特殊召喚!!」

再び黒いスライムが復活する! ATK0

 

「『ガーディアンスライム』をリリースする事で再び『神スライム』を特殊召喚!」

スライムが崩れ、再び大地の神の写し身となる! ATK3000

 

 

「魔法カード『二重召喚(デュアル・サモン)』を発動…その効果により、俺は追加で通常召喚を行える!!『神スライム』を生贄に…!降臨せよ!『オシリスの天空竜』!!」

 

《ギュアアアン!!》

地平線の彼方から赤き身体の龍…天空神オシリスが現れる! ATK0→2000

 

 

『三幻神が…揃った…』

 

《キュアアアア!!》

 

《ギュアアアン!!》

 

《グオオオオ─!!》

遊海の背後に集結する3体の神…それはまさに『神話の再現』のようだった…!

 

 

 

「魂に刻め、遊馬…決闘者が紡いだ歴史を…貫いた信念を!!」

 

『…でも、オレのフィールドには「燃える闘志」を装備した「ホープレイV」がいる…!「オシリス」の攻撃力がアップしてるから、攻撃力は「ホープレイV」が上回る!』

神を前に遊馬は怯まない…自分のモンスターを信頼し、遊海に向かい合う!

 

 

「良い目だ…遊戯もアテムも…十代も遊星も…伝説と言われた決闘者達も、窮地を前にお前と同じ目をしていた…遊馬、最後まで…俺に抗ってみせろ!!速攻魔法発動!『超電導波─サンダー・フォース』!フィールドに『オシリス』が存在する時!相手フィールドのモンスターを全て破壊する!『オシリスの天空竜』よ…全てを薙ぎ払え!サンダー・フォース!!」

《ギュアアアン!!》

 

『「ホープレイV」!?うわああああ─!?』

オシリスの大口から放たれた裁きの雷砲が赤き覇王を跡形もなく消し飛ばす!

 

 

「さらに、このカードを自分メインフェイズに発動した時、追加効果発動!この効果で破壊したモンスター1体につきカードを1枚ドローし、このターン俺は1回しか攻撃できなくなる!バトルだ!!『ラーの翼神竜』で遊馬にダイレクトアタック!」

 

(この攻撃を凌げば…勝機はある!遊馬!リバースカードだ!)

 

『おう!リバース罠発動!「墓地墓地の恨み」!相手の墓地にカードが8枚以上ある時!相手フィールド全てのモンスターの攻撃力を0にする!!』

遊馬の墓地から飛び出したデフォルメされた幽霊が神に取り憑くが…!

 

オシリスATK2000→0

 

オベリスクATK4000→0

 

 

『なっ…!?「ラー」の攻撃力が下がらない!?』

 

「進化し、成長しているのはお前だけじゃない…俺と『ラー』…フレアは『絆』によって新たな力を得た!今の『ラー』は相手のあらゆる効果を受けない!!」

 

『(なっ─!?)』

 

《我が願い…我が力はユウミと共に!!》

ラー…フレアの背中の光輪からクチバシへとエネルギーが集中する!

 

「さらに俺は速攻魔法『ゴッド・ブレイズ・キャノン』を発動!その効果によりこのターン、攻撃宣言をしていないモンスターを任意の数リリースし、そのモンスターの元々の攻撃力の合計分、『ラー』の攻撃力をアップする!!俺は『オベリスク』と『オシリス』を生贄に捧げる!ゴッド・ブレイズ・チャージ!!」

 

『なんだって!?』

オシリスとオベリスクが光の粒子となってラーに吸収される!

 

ラーの翼神竜ATK3000→7000

 

 

《…()()()

 

「…()()()()()、『ラーの翼神竜』の攻撃!ゴッドトリニティキャノン!!」

 

『う、うわああああぁぁ!?』

それはかつて、地球の闇『オレイカルコスの神』に放たれた神話の再現…闇を滅する一撃が遊馬へと放たれ…。

 

 

 

 

 

遊馬LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「…まったく…あんな危険な一撃をお前達に直接当てる訳ないだろう?」

 

『…あ…?』

放たれた神滅の一撃は遊馬を掠め()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()軌道で空へと消えていった…。

 

 

 

「ゆ、遊馬!大丈夫!?」

スフィアフィールドが解除されゆっくり降りてくる遊馬と遊海…いの一番に駆け寄ったのは小鳥だった。

 

『お、おう…!だ、大丈夫だぜぃ…』

 

「大丈夫じゃないでしょ…膝がガクガクしてるって…」

 

「遊馬…()()()()()?」

 

『えっ…?』

膝を震わせる遊馬へと遊海が歩み寄り、問い掛ける。

 

 

『…怖かった…だって、遊海も本気だし…フレアも本気だったし…』

 

(私も、同感だ…伝説に謳われる神の力…本当に凄まじいものだった…)

遊馬とアストラルは正直に答える…。

 

 

「…()()()()()、その恐怖を忘れるな遊馬、アストラル」

 

『恐怖を、忘れるな…?』

遊馬は遊海の言葉を繰り返す…。

 

 

「遊馬、アストラル…お前達は時代に選ばれた決闘者だ…時代に選ばれた者達は必ず…()()()()()()()()()()()

 

『最強の、敵…』

 

「そうだ…遊戯ならエジプトの大邪神…十代なら虚無の神、遊星なら遥か未来の英雄…伝説の決闘者達は最強の相手と戦い、その恐怖を乗り越えて来た…きっと、お前にもその時が来る…恐怖を乗り越え、勇気を持って戦う時がな…」

 

『遊海…』

遊海は遊馬の頭を撫でながら語りかける…。

 

 

「怖がってもいい…泣いてもいい…でも、絶対に()()()()()()…それが、俺が最後にお前に教える事だ…頑張れよ、遊馬…!!」

 

『遊海…!おう!オレは…絶対に止まらねぇ!!かっとビングだぁ!!』

 

「ああ…かっとビングだ!遊馬!!」

遊馬の元気な叫びが夕暮れの空に響いた…。

 

 

 

 

「さて…ちょっと、一眠りするかな…遊馬、小鳥ちゃん、気をつけて帰るんだぞ?」

 

「は〜い!」

 

『遊海!次は絶対に勝つからな!』

 

「……ああ、楽しみにしてるからな、遊馬」

遊馬達は遊海に見送られ家路についた…。

 

 

「凌牙、璃緒…もう少しで夕ご飯ができると思うから待っててくれ…ちょっと一眠りしてくる」

 

「うん、父さん…」

 

「…父さん」

 

『ん?どうした、凌牙』

2階に上がろうとする遊海を凌牙が呼び止める…。

 

「……いや、なんでもない!さっきのデュエル…すごかった」

 

「ハハッ…ありがとな凌牙…おやすみ〜」

 

 

「(…父さんは弱ってなんかなかった…俺の、思い過ごしだったんだな…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…うっ、ゴボッ…!!」

 

《フォウ!フォウ─!?》

 

《マスター!なんて無茶を!!約束と違うではありませんか!!病み上がりで三幻神全てを使うなんて─!?》

部屋に戻った遊海はうずくまり、血を吐いていた…無茶をした代償が遊海の服を紅く染めていく…。

 

「今しか、なかった…俺が、全力で戦える…いましか…ゴホッ…!!」

 

《マスター……本当に、貴方はしょうがない人です…服を脱いでベッドに…すぐに治療します》

 

「いつも、悪いな…アヤカ」

遊海はベッドに力なく横たわる…。

 

 

《…ユウミ、ずっと気付いていましたか?》

 

「ああ…()()()()()()…ありがとう、合わせてくれて…」

遊海はフレアに感謝を伝える…デュエルの最後の一撃…あれは()()()に見られていた事を察知したフレアがその相手を狙って放った攻撃だったのだ…。

 

 

「戦いは…すぐそこか……待ってろよ、ディヴァ、イン…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【だああああ!?痛ッてぇぇ!!!あの死に損ないがああああ─!!!】

 

【ベクター様…あまり暴れないで下さい…傷を治せません…】

人間界某所…ベクターは苦悶の叫びを上げていた、遊海達の決闘を盗み見ていたのは…ベクターだったのだ。

フレアの不意打ちを避けきれなかったベクターは右腕に大ヤケドを負っている…。

 

 

【ベクター様、作戦は延期すべきでは…?】

 

【馬鹿な事を…!作戦を決行するなら今しかねぇ…あのチート野郎が完全復活する前に…奴らを一網打尽にする!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(遊馬、私は少し考えたい事がある…何かあったら呼んでくれ…)

 

『ああ、わかったぜ!』

遊海の家からの帰路…小鳥と別れ、アストラルも皇の鍵に入った遊馬は1人で自宅へと向かっていた…。

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

『ん?真月から…?どうしたんだ?』

 

「ゆ、遊馬()()!助けてくっ、うわあああ!?」

 

『真月…!?どうしたんだ─!!』

 

 

 

 

 

 

最狂最悪の作戦は…遂に最終段階を迎えた…。



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ベクター強襲!〜凶敵、襲来〜

こんにちは!S,Kです!大変おまたせしました!!

ベクターの計画はついに最終段階へ…遊馬は狂気の陰謀を乗り越えられるのか…!


それでは最新話をどうぞ!


《…マスター…!十代が多数の洗脳デュエリスト達と交戦中!さらに湾岸地区でバリアンの反応です…!!》

 

「なっ…こんな、時に…!うぐっ…!?」

 

《フォウ!?フォーウ!》

遊馬とのデュエルを終えてベッドで休んでいた遊海はアヤカの知らせを聞いて飛び起きようとするが…凄まじい激痛と倦怠感で倒れ込んでしまう…。

 

 

《…十代の相手は…反応からして特段強い相手ではないようです…おそらく足止めが目的かと…》

 

「……すまない十代…なんとか、凌いでくれ…!アヤカ、トフェニ…十代の応援をたの、む…実力行使でも、構わない…!」

 

《わかりました…!トフェニ!》

 

《御意!》

遊海の指令を受けたアヤカとトフェニは窓から飛び出した!

 

 

《ユウミ、戦いは間近…もどかしいでしょうが…今は少しでも休むのです…》

 

「…ちくしょう……ベクター…ディヴァイン、め……」

 

《フォウ…》

自分の不甲斐なさを悔やみながら…遊海は体力回復の為に眠りに落ちた…。

 

 

 

 

 

 

「くっ…!?コイツら、何処から出てきたんだ!」

 

《十代、今は口よりデュエルに集中!》

 

「わかってる!『ネオス』でダイレクトアタック!!」

 

 

日が落ちたハートランドの一角、遊海の代わりに街の平和を守っていた十代は突然現れた十数人の洗脳デュエリスト達に囲まれていた…。

 

 

《港の方で強い力を感じる…どうやら、ボク達を足止めするのが目的らしいね…!》

 

「…遊海先生の警戒してたバリアンが動き出したって事か…!先生の援軍は望めない…だったら頑張るだけだ!!トリプルコンタクト融合!!来い!『E・HEROマグマ・ネオス』!!」

 

十代とユベルは港に現れた不穏な気配を感じながら、洗脳デュエリストの対処に当たった…。

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

『遊馬っ…!早く来てくれ!頼むッうわあああ!!』

 

「真月!待っててくれ!もう少しで着く─!!」

遊海との授業デュエルを終えた遊馬はハートランドの埠頭へ向かって走っていた、バリアン警察である真月が何者かに襲われ、助けを求めて来たのだ…!

 

 

 

「っ…!?スフィアフィールド!?」

 

『ハッ…!来てくれたのか…!遊馬巡査!』

遊馬が埠頭へと辿り着く…最初に目にしたのは巨大な赤紫色のスフィア・フィールド…そして、その中で戦う真月とローブを被った2()()()()バリアンの姿だった…!

 

 

【邪魔が入ったな…勝負はお預けだ…行くぞ、アゴール】

 

【…承知】

 

『あっ…!待て!!』

遊馬の姿を見たバリアン達はワープゲートへと姿を消した…。

 

 

 

「真月!大丈夫か!?」

 

『ああ…来てくれて助かったよ…』

スフィアフィールドが消え、開放された真月は地面に座り込む…。

 

「真月!さっきの奴らは…!?」

 

『奴らは、我々バリアン警察が長年追ってきた…最も凶悪なバリアン…ベクター、そしてその腹心のアゴールだっ…!』

 

「ベクターに、アゴール…?」

それは新たなバリアンの名前…遊馬はその名を繰り返す。

 

『紫色のローブがベクター…もう1人がアゴール…先日、白野…いいや、遊海を打ちのめした相手だ…ここしばらく起きていた「決闘者暴走事件」も奴らの仕業だ…!』

 

「あいつらが…!ハートランドのみんなや夏菜をひどい目に…!!」

真月から街で起きていた事件の真相を聞かされた遊馬は拳を握り締める…!

 

 

『遊馬…私は、奴らを追跡しなければならない…!私がいない間、この世界の平和は頼んだぞ…!』

 

「はっ!わかりました!真月警部!!」

遊馬は敬礼で真月の頼みに応える…。

 

『ありがとう…では、このカードをキミに託す…きっとキミの助けになるはずだ…!』

 

「これは、新しいバリアンのカード…!」

真月が遊馬に渡したのは『Vサラマンダー』『Vウンディーネ』『Vノーム』『Vシルフィード』『Vコール』の5枚…いずれもバリアンの力を宿したカードだった…。

 

 

『…わかっているとは思うが…()()()()()()()秘密にしてくれ、彼の安全を守る為に…!』

 

「…ああ、わかった!」

 

『必ず全てを話す時がくる…優しいキミには辛いかもしれないが…私を、信じてくれ…!』

 

「わかったであります、真月警部!」

   

『ああ、あとは頼んだぞ!』

敬礼を交わしながら真月もワープホールへと消えていった…。

 

 

 

 

 

 

『さぁて…仕込みは上々…次は……久しぶりの里帰りといくかぁ…イテテ…』

 

【……(もう少しだ…もう少しで、お前を─!!)】

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

『九十九遊馬とアストラルに敗れ、アリトとギラグは深い傷を負った…未だに目を覚ます気配もない…』

 

『ミザエル…』

バリアン世界、その中心の城…そこでは遊馬に敗れたアリトとギラグが水晶の中で深い眠りに就いていた…。

 

 

『こうなれば…我々2人で奴らと決着をつけるしかあるまい…!』

指揮官であるドルベはミザエルと共に遊馬達との最終決戦を臨む決断をする…そんな時だった…!

 

 

【ヒヒハハハハァ…!どうしたぁ?シケたツラを並べてよぉ…!懺悔でもしようってかぁ?このベクター様が聞いてやろうかぁ?】

 

 

『この声は…ベクター!!』

城に響く笑い声にドルベとミザエルは顔を上げる…その目線の先、バリアンの『王』が座る玉座にローブを纏うベクター、そして傍らに佇むアゴールの姿があった…!

 

 

【ハハハ…ザマァねぇなぁ!ギラグにアリト!!なんの成果も残せずおねんねとは…本当に笑えるなぁ!ギャハハハ!!】

 

『貴様ッ!!』

 

『やめろミザエル…!!今は、我々が争っている時ではない…!!』

 

『くっ…』

倒れた仲間達を嘲笑うベクター…その姿に怒りを抑えられなかったミザエルが拳を叩き込もうとするが…ドルベがその手を掴む…。

 

 

 

『…ベクター、相変わらず気まぐれに現れるな…お前が提案したDr.フェイカーとトロンを利用してアストラル世界を滅ぼす計画は九十九遊馬とアストラルに阻まれてしまった、その失敗の責任も取らず…何処に雲隠れしていた…!』

 

【キヒッ…!失敗なんかじゃねぇ…これも計画の内よ…!遊馬…アストラル…カイト…凌牙…そして白波遊海…奴ら5人を一気に潰す最終決戦の為のよぉ…!!】

ドルベの追求を前にベクターは笑う…!

 

【万に1つのしくじりもねぇ…お前ら…賭けろよ!このオレに!全てを…!!】

 

『誰が貴様の策に…!!』

 

『…わかった』

 

『ドルベ!?』

ベクターの作戦突っぱねようとするミザエルだったが…ドルベはベクターの提案を受け入れた…。

 

『ただし、2度と勝手な真似をするな…もし、そんな事があれば…私が…この手でお前を粛清する!!』

 

【わかってるさ…さぁ、良からぬ事を始めようじゃねか…!!】

 

最悪の作戦が…ついに始まろうとしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昨日はサンキューな、先生…アヤカとトフェニのおかげで助かったぜ…」

 

「お礼を言わなきゃならないのは俺の方だ…俺の代わりにハートランドを守ってくれてありがとな…」

翌日、十代は遊海のもとを訪れていた…遊海は横になっており、顔色は戻っていなかった…。

 

 

「バリアンがついに動いた…明日にも決戦が起きるだろう」

 

「…先生、オレは何をすればいい…?」

窓から外を見つめる遊海に十代は問いかける。

 

「十代…お前はハートランドに残って、この街を守ってほしい…俺は…遊馬達と一緒に、決戦に臨むつもりだ…!」

 

「っ…!?先生!アンタ、自分の身体の事わかってるのかよ!?もう全身ボロボロで…力だって…!」

遊海は十代に自分の真実を伝えてはいない…だが、十代は気付いていた…遊海が徐々に衰弱している事を…。

 

「…わかってる…でも、奴と…ディヴァインとのケジメをつけるのは…俺の、役目だ…!」

 

「先生…!!」

傷ついてなお、遊海の瞳は…心は揺らがない、全ては過去からの因縁を断ち切る為に…。

 

 

《マスター、ハートランドシティ中心部にバリアンの反応です…!》

 

「来たか…俺は、もう少し…休まなきゃ、ならない…十代…街を…たのむ……」

 

「先生…わかった!!」

 

 

 

 

《十代、遊海はもう無理をできる状態じゃない…止めないのかい?》

 

「…オレが止めたって無駄さ…あの人は…いつも独りで戦いに行っちまう、それをオレは止められねぇ…」

現場へ向かう十代にユベルが声をかける…。

 

「先生は…ずっと1人で重荷を背負ってきた…オレにできるのは、その重荷を少しでも減らす事だ…!」

 

《まったく、君も遊海も…難儀な性格だねぇ…》

ユベルは呆れたように呟いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「バリアンや〜い!」

 

「出てこいウラー!」

 

「はぁ…なんでこんな事に…」

 

「ふふっ…みんな遊馬の事が心配なのよ♪」

 

夕暮れのハートランド…そこで遊馬はナンバーズクラブの仲間達とバリアンを探す為のパトロールをしていた。だが、バリアンとのデュエルは命懸け…仲間達を大事にしている遊馬はあまり乗り気ではなかった…。

 

 

「まったく…新しいカードも手に入れたし、白野とのデュエルでオレも強くなってるのに…」

 

「文句言わない〜の!みんなとの絆を大切にしろって言われ…あらっ?何あれ…?」

愚痴を漏らす遊馬を宥める小鳥だったが…夕暮れの空に何か光るモノを見つけて立ち止まる。

 

「ん?流れ星……危ねえ!!」

 

「「「うわあ!?」」」

 

ビュン!!

 

それは紅く輝く球体…それは遊馬達を掠め、ハートランドのビルや道路を破壊しながら飛び回る…そして…!

 

ビュン…ギュン!!

 

「わわっ!?コッチに向かってくるウラ─!?」

 

「みんな伏せろ─!!」

 

 

ドォォン!!

 

 

方向転換した球体は遊馬達に向かって落下…彼らの眼の前の地面に衝突した!!

 

 

 

 

 

 

 

「っ…!小鳥!みんな!大丈夫か!?」

 

「な、なんとか…ウラ…」

 

「『ホープ』のおかげで助かったニャン…」

砂煙に包まれる中、遊馬は仲間達の無事を確認する…衝突の寸前、遊馬は『希望皇ホープ』を呼び出す事で仲間達を守っていたのだ…。

 

 

キィン─!

 

 

(遊馬!いったい何事だ!?)

 

「アストラル!わからねぇ、何か落っこちてきたんだ!」

異常を察知したアストラルが皇の鍵の中から飛び出してくる…そして…!

 

 

【ギャハハハ!見つけたぜぇ…!】

 

(っ…!!お前は…!?)

砂煙の奥から笑い声が響く…砂煙の中から現れたのは、紫のローブを纏ったバリアンだった。

 

 

【我が名はベクター…バリアン最強の戦士だァ!】

 

「ベクターだって!?」

バリアンの名前を聞いた遊馬は驚愕する…その名は真月から「最凶のバリアン」として聞かされたものだったからだ…!

 

 

【九十九遊馬…そしてアストラルぅ…!貴様ら諸共、この世界をぶっ潰しにきたぜぇぇ!!】

 

「なんだと!?」

 

(っ!!遊馬、みんなを逃がせ!)

 

「みんな!下がれ!巻き込まれる!!」

ベクターの目的を聞いたアストラルと遊馬は仲間達を避難させる…!

 

 

【ハハハァ!!『バリアンズ・スフィア・フィールド』!展開ィィ!!】

 

ギィン─バリバリバリ!!

 

ベクターが小さな箱を投げ放つ、そこからバリアンの力が溢れ出し…球状のスフィアフィールドとなった!

 

 

 

 

【ヒヒヒヒィ…!お前らとデュエルするのも久しぶりだなァ…!】

 

「何が久しぶりだ!?オレはお前の事なんか知らねぇ!!」

 

【キヒッ…!忘れたのかぁ?Dr.フェイカーの身体を奪って…お前達と楽しいデュエルをしたじゃねぇか…!】

 

「なっ?!じゃあ…お前が、Dr.フェイカーを操っていたバリアン!?」

ベクターの言葉に動揺する遊馬…フェイカーを乗っ取ったバリアンの使者…その正体はベクターだったのだ…!

 

 

【覚えていてくれて光栄だぜぇ…!さぁ、お前らを…いや、アストラル世界も!人間界も!!徹底的に叩き潰してやるよぉ!!】

 

「ふざけるな!!そんな事、絶対にやらせねぇ!!」

 

(遊馬!ベクターを止めるぞ!!)

世界を破壊すると豪語するベクターを止める為…遊馬とアストラルは立ち向かう!!

 

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対ベクター

 

 

 

 

66

 

 

 

【さぁ来い…!「No.66」!「覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル」!!】

先攻を取ったのはベクター…そして現れたのは新たなナンバーズ、黄金色に輝く「鍵」のような角を持つカブトムシだった…!

 

 

「くっ…!早速ナンバーズのお出ましか…!!」

未知のナンバーズを警戒する遊馬…だが、ベクターはさらなる一手を打つ…!

 

 

【さらに俺は永続魔法『魔導の封印柩』を発動…!このカードは相手のデッキに存在するカード1枚を封印するぅ…知ってるんだぜぇ?お前が我らバリアンのカードを持ってる事はなぁ!!お前の『RUM-リミテッド・バリアンズ・フォース』を封印する!!】

 

「しまった!!」

 

(ランクアップを封じられた!?)

ベクターの魔法から現れた柩から黒い霧が溢れ出す、その霧は遊馬のデッキに取り憑き、RUMを奪い去った!

 

 

【さぁ、ゆくぞ!「マスターキービートル」の効果発動!ORUを1つ使い、フィールドのカード1枚をあらゆる破壊から守る!選ぶのは「魔導の封印柩」だ…!】

 

「『リミテッドバリアンズフォース』が雁字搦めに!?」

 

(奴もそれほどランクアップを恐れているという事か…?)

封印の柩が鎖で雁字搦めに縛られ、破壊から守られる!

 

【俺はカードを1枚伏せてターンエンド…「RUM」さえなければ…お前達なんか怖くねぇんだよぉ!!ギャハハハ!!】

遊馬の切り札を奪ったベクターは笑い声を響かせた…。

 

 

 

 

 

39

 

 

「現われろ!『No.39希望皇ホープ』!!」

 

《ホープ!!》

返しのターン、遊馬はエースモンスターたる希望皇ホープを呼び出す!

 

【現れたか「希望皇ホープ」…だがよぉ!『RUM』のないホープなんて…怖くないんだよぉ!!進歩のない希望なんてさぁ!!ギャハハハ!!】

 

「くっ…!!!」

遊馬を嘲笑うベクター…その様子に遊馬は怒りを募らせる…!

 

(落ち着け遊馬、冷静さを失えば…勝負に勝てなくなる…「ガガガガール」の効果だ!)

 

「アストラル……スー…ハー……よし!エクシーズ素材になった『ガガガガール』の効果発動!相手の攻撃力を0にする!ゼロゼロコール!!」

 

【なっ!?「マスターキービートル」の攻撃力が!?】

アストラルの言葉で冷静さを取り戻した遊馬はガガガガールの効果を発動、ギャル魔法使いの幻影がケータイの電波をマスターキービートルに浴びせかけ、弱体化させる!

 

「進歩のない希望なんて…よくも言ってくれたなぁ!オレは『RUM』がなくたって…『絆』の力で戦えるんだ!!アストラル!」

 

(…そうか、いいだろう!彼との絆の力、存分に見せてやれ!遊馬!!)

 

【なにぃ…?】

遊馬の思わぬ言葉に首を傾げるベクター…彼は失念していた、遊馬には偉大な師匠がついている事を─!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベクターLP4000 マスターキービートル 伏せ1 手札2

 

 

遊馬LP4000 希望皇ホープ 手札3

 

 

 

 

 

「オレは!『希望皇ホープ』1体でオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズチェンジ!!」

 

【なにぃぃ!?!?】

遊馬の言葉と共にホープが銀河に飛び込み、紅蓮の炎と共に再誕する!

 

 

93

 

 

「現れろ!『No.93』!希望の戦士が光を宿し!闇を祓う希望となる!!今こそ光臨せよ!『太陽皇ホープ・フェニックス』!!」

紅蓮の炎の中から太陽神の鎧を纏いし、希望の戦士が現れる! ATK3000

 

 

 

【なっ…!?その、姿は…!?】

その時、ベクターの脳裏にトラウマが蘇る…全ての闇を滅却する神の炎の痛みが…!

 

「バトルだ!『ホープフェニックス』で『マスターキービートル』を攻撃!!ホープ剣フェニックス・スラッシュ!!」

 

【がっ!?ぐわああああ!!】

神の炎を纏いし一撃がマスターキービートルを両断、ベクターに大ダメージを与える!

 

ベクターLP4000→1000

 

 

【チィッ…!忌々しい奴め…!!だが、「マスターキービートル」の効果発動!このカードが破壊される時!このカードが守っていたカードを身代わりにする事で破壊を免れる!!】

封印の柩が砕け、マスターキービートルはフィールドにしがみつく…!

 

【そして「魔導の封印柩」が破壊された事で、封印されていた「リミテッドバリアンズフォース」は…このターンのエンドフェイズに相手の手札に戻る…!】

 

((…せっかく奪った「リミテッドバリアンズフォース」を…こんなに簡単に手放すのか…?))

やけにあっさりとしたベクターの言葉に違和感を感じるアストラル…だが、ベクターはさらなる一手を隠していた…!

 

【そして俺はリバースカード「罪鍵の法─シン・キー・ロウ」を発動…!自分のエクシーズモンスターが戦闘で破壊されなかった時!そのエクシーズモンスターと同じ攻撃力となる「アンブラル・ミラージュ・トークン」3体を特殊召喚する!】

 

「なにっ!?」

ベクターの場に紫水晶の石柱が現れ、小さな「マスターキービートル」を投影する! ATK 0 0 0

 

 

「って…全部攻撃力0じゃねぇか…?」

 

(油断するな遊馬、奴の事だ…必ず何か仕掛けてくるはずだ!)

 

「わかった…!オレはこれでターンエンド!そして『リミテッドバリアンズフォース』はオレの手札に戻ってくる!」

ベクターの行動を警戒しながら…遊馬達はターンを終えた…。

 

遊馬LP4000

ホープフェニックス 手札3→4(1枚は『リミテッドバリアンズフォース』)

 

 

 

【チィ…!鋼の決闘者め、余計な入れ知恵を…!だが、お楽しみはこれからだぁ…!】

 

 

 

【俺のターン!ドロー!!】

【俺は魔法カード「アンブラル・リフレッシュ」を発動!攻撃力が変化しているモンスターの攻撃力を元に戻し!その数値分、ライフを回復するぅ!!】

 

「なんだって!?」

マスターキービートルの攻撃力が元に戻り、ベクターのライフが回復する!

 

マスターキービートルATK0→2500

 

ベクターLP1000→3500

 

 

【さらにぃ!「マスターキービートル」の攻撃力が変化した事で「アンブラルミラージュトークン」の攻撃力も変化する!!】

 

アンブラルミラージュトークンATK0→2500 ×3

 

 

「攻撃力2500のモンスターが4体!?…だけど『ホープフェニックス』の攻撃力は3000だ!」

 

【ヒヒッ…それはどうだろうなぁ…!バトルだ!『アンブラルミラージュトークン』で『ホープフェニックス』を攻撃ぃ!!】

 

「なっ…迎え撃て!『ホープフェニックス』!!」

小さなカブトムシが遊馬に襲いかかるが…ホープフェニックスの剣がカブトムシを両断する!

 

ベクターLP3500→3000

 

 

(ダメージを受けてまで…何を考えている…?)

 

【ぐっ…!だが、これで『ホープフェニックス』は終わりだぁ!速攻魔法『アンブラル・デス・ブラッド』を発動!アンブラルモンスターが戦闘で破壊された時!バトルした相手モンスターを破壊するぅ!!消えろ!忌まわしい太陽─!!】

紫の稲妻がホープフェニックスを直撃…ホープフェニックスが粉砕される!

 

 

【どうだぁ…!これで『マスターキービートル』の攻撃で大ダメージだぁぁ!!】

 

 

(「それはどうかな?」)

 

 

【なにっ!?】

切り札を破壊された遊馬達…だが、2人は不敵に笑っていた。

 

 

(私達の紡いだ絆は…これぐらいの事で断ち切れる事はない!)

 

「ああ!俺は破壊された『ホープフェニックス』の効果発動!!」

 

ゴゥッ!!

 

【なんだ!?】

遊馬達を守るように…紅蓮の炎が舞い上がる!

 

「デュエル中に1度!『ホープフェニックス』がフィールドから離れた時!俺のライフを半分払う事で…墓地または除外された自身を特殊召喚する!燃え上がれ!『ホープフェニックス』!!」

紅蓮の炎が巨大な鳥の姿となり、黄金の戦士が復活する! ATK3000

 

遊馬LP4000→2000

 

 

(さらに!特殊召喚された『ホープフェニックス』は新たな効果を得る!)

 

「いくぜ!『ホープフェニックス』が特殊召喚された時!相手フィールドの全てのカードを破壊する!ベクターのフィールドを燃やし尽くせ!ファントム・ゴッド・フェニックス!!」

ホープフェニックスの姿が炎の不死鳥…幻影の太陽神(ラー)へと変わり、ベクターのモンスターを一掃した!

 

 

【なぁにぃぃ!?俺のモンスターが全滅だとおぉ!?】

 

「へへっ…!これがオレ達と白野の絆の力だ!そして『ホープフェニックス』が自身の効果で特殊召喚された時!自分か相手の墓地から『No.』モンスター2体をORUにする!オレは『ホープ』と『マスターキービートル』をORUにする!シャイニング・チャージ!」

 

【な、なんだそのインチキ効果はぁぁ!?!?】

太陽皇の規格外の効果に動揺するベクター…無理もないが…ナンバーズを生み出した男(白波 遊海)が規格外なのだから仕方がないだろう…。

 

ホープフェニックス ORU0→2

 

 

【チィィ…!!カードを伏せてターンエンドだ!】

 

 

ベクターLP3000

伏せ1 手札0

 

 

 

 

「いっくぜぇ!オレのターン!ドロー!!」

「(ごめん、真月…お前から貰ったカードの出番は…また今度だ!)ベクター!ハートランドのみんなを…カイト達を!夏菜を傷付けたのは許さねぇ!!バトルだ!『ホープフェニックス』でベクターにダイレクトアタック!」

ホープフェニックスの剣が灼熱を纏う!

 

【そう簡単に負けてたまるかよぉ!!リバース罠「次元幽閉」発動!次元の彼方に消えなぁぁ!!】

 

「無駄だ!『ホープフェニックス』のさらなる効果発動!」

 

(ORUを1つ使い!次の相手のエンドフェイズまで相手の発動した効果を受けず、効果では破壊されなくなる!)

 

【ば、馬鹿な!この俺がぁぁ!?】

 

「受けてみろ!これが絆の一撃!ホープ剣フェニックス・スラッシュ!!」

 

【ガッ…グアアアア!?】

次元幽閉を飛び越えたホープフェニックスは灼熱の剣でベクターのライフを削りきった…。

 

 

ベクターLP0

 

 

遊馬&アストラル WIN!

 

 

 

 

 

 

「よっしゃああ!勝ったぜぇ!!」

 

(……ああ、見事な勝利だったな)

ベクターが倒され、スフィアフィールドが崩れる中…遊馬とアストラルはベクターに勝利した事を喜ぶ。

 

 

「どうだベクター!これがオレ達の絆の力だ!思い知ったかぁ!」

 

【ぐっ…おのれぇぇ…!】

満身創痍のベクターは遊馬を睨みつけるが…そこに駆け寄ってくる人物がいた…。

 

 

『遊馬クン!大丈夫ですか〜!?』

 

「真月!…ああ!ベクターをやっつけたぜぇ!」

それはベクターを追って姿を消していた真月だった…だが、遊馬がほんの少し力を緩めた瞬間をベクターは見逃さなかった!

 

 

【隙を見せたなぁ!!やれ!アゴール!!】

 

【承知…!】

 

(っ!?遊馬伏せろ!!)

 

「なっ─!?」    

それは一瞬の事だった、ベクターが叫んだ瞬間…遊馬の背後に巨大な白い悪魔「メンタル・スフィア・デーモン」が現れ、遊馬に襲い掛かったのだ!!

 

 

『遊馬クン危ない─!!』

 

ガシッ!

 

「し、真月─!?」

あわや悪魔の手が遊馬を捕まえる寸前、真月が遊馬を突き飛ばし…身代わりとなって捕まった…!

 

 

【チィ…!アゴール!そいつを連れて来い!】

 

【はっ…!】

 

『うわっ…!?』

 

「真月!!」

アゴールは悪魔と共に跳躍…ベクターの背後に降り立つ…!

 

 

 

【ククッ…!この俺がお前達に負けるはずはない…今のはお遊びよ…!九十九遊馬!お前の友は預かった!その代わり、このカードをくれてやる!】

 

(っ…『No.66』…!?)

真月を捕えたベクターはアストラルにナンバーズを投げ渡す!

 

【この男を取り返したくば…そのカードに聞くんだなァ…!そいつが俺達の再会への「鍵」になる…ハハハ、ギャハハハハハ!!】

 

『ゆ、遊馬クン─!!』

 

「真月!真月─!!」

高笑いと真月の悲鳴を残し、ベクターは次元の狭間へと消えていった…。

 

 

「真月…真月ぅぅ!!」

遊馬の悲痛な叫びが夕暮れのハートランドに響き渡った…。

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

ピリピリピリ!ピリピリピリ!

 

 

「……もしもし、どうした?凌牙」

ベッドで休んでいた遊海のDゲイザーが着信を知らせる、それは凌牙からのものだった。

 

 

『休んでるトコ、ごめん…遊馬のダチ…真月がバリアンに攫われたらしい、それでカイトの奴が父さんの意見を聞きたいって…』

 

「わかった…新しいハートの塔に行けばいいな?少し待っててくれ」

 

『すまねぇ…頼む!』

 

 

「遊海さん…」

 

「ごめん、翠…ちょっと行ってくる」

心配そうな表情の翠に謝りながら…身支度を整えた遊海はハートの塔へと向かった…。

 

 

 

 

 

「……それじゃあ…真月を攫ったバリアンがフェイカーやトロンを操った黒幕、ベクターって奴だって事か?」

 

「ああ、あの時のデュエルで…奴は倒せてなかったんだ…!」

 

「なるほどな…それで今更、オレ達の前に姿を現したのか」

 

夜の帳の落ちたハートランドシティ…その再建中のハートの塔の一室で頬を腫らした遊馬はカイトと凌牙に事態のあらましを説明していた…。

真月が連れ去られた直後、遊馬は普段では考えられないほど取り乱し、カイトの張り手を受けてようやく落ち着きを取り戻したのだ。

 

 

「へっ…おもしれえじゃねぇか…ベクター…!地の果てまで追い詰めて、ぶっ飛ばしてやるぜ…!!」

 

「逸るのはいいが…何処を探すつもりだ?我々はバリアンの事を何も知らない…奴らが何処に隠れているかもな…」

 

「ぐっ…!?」

ベクターに関して因縁のある凌牙が獰猛に笑うが…カイトが待ったをかける、遊馬達はバリアンについて知らず

…別次元にある『バリアン世界』の場所もわからないのだ…。

 

 

 

「確かに…俺達はバリアンについての知識は乏しい、だが…やりようはあるさ」

 

 

「遊海!!」

 

「父さん!」

 

「白波さん…よく来てくれてた」

悩む遊馬達に声を掛けたのは…人間体の彩華に体を支えられた遊海だった。

 

 

「話はだいたいわかった…とりあえず、俺達がベクターを追うには大きく2つの問題がある」

 

「2つの問題…?」

遊海の言葉に遊馬は首を傾げる。

 

 

「ああ、1つはどうやって『追いかける』か?…今の人間界の科学では…異なる次元間を渡る技術はない、まずはそこからだ」

 

「…それなら、もう解決してるじゃねぇか…!遊海さんとアヤカの力があれば!!」

 

「…鋭いな遊馬、その通り!俺の精霊アヤカ…『アポクリフォート・キラー』は異なる次元を渡る力を持ってる…これでベクターを追う事は可能だ…だが、2つ目の問題がある」

 

「…『何処にいるか』だよな」

遊海の問いに凌牙が答える。

 

 

「その通りだ、この世界には俺達のいる『人間界』の他に『バリアン世界』『アストラル世界』『冥界』、さらにデュエルモンスターズの『精霊界』…その精霊界も1つじゃない、俺が知ってるだけでも…14個の世界がある…そこからベクターの逃げ込んだ世界を見つけなきゃならない」

 

「…父さん…フェイカーと一馬教授は『二十三次元方程式』という考え方でバリアン世界への扉を見つけたらしいが…時間の猶予はないな…」

 

「くっそぉ…!どうすればいいんだよ…!!」

ベクターの行き先がわからない事で悔しがる遊馬…そんな時だった!

 

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

 

「「「なんだっ!?」」」

突然、ハートの塔に警報音が鳴り響く!

 

 

《カイト様!大変です!我々のいる塔の真上に強力な重力変化が!!》

 

「なんだと!?まさか、バリアンか!?」

オービタル7が緊急事態を伝え…遊馬達は慌てて外へと飛び出した…。

 

 

「そうか、あの()()()か…」

 

 

 

 

 

「あの雲は…!?」

遊馬達が屋上に飛び出し、空を見上げる…そこには街の明かりに照らされた巨大な雲が広がっていた…!

 

キィン─!

 

「おわっ!?」

 

「遊馬の『皇の鍵』が…!?」

さらに変化は続く、遊馬の皇の鍵から凄まじい光とエネルギーが飛び出し、雲へと吸い込まれる…そして、光の爆発と共に巨大な()()が不時着した!

 

 

「これは…!?皇の鍵の世界にあった構造体…!?」

 

「な、なんで現実世界に!?」

その落ちてきたモノに遊馬とカイトは見覚えがあった…それは、皇の鍵の世界の砂漠にあった無数の歯車が組み合わさった謎の建物だった…!

 

 

キィン…

 

《遊馬、私達の向うべき場所がわかったぞ》

 

「アストラル─!?」

光の粒子と共にアストラルが現れる…彼が口にしたのは全ての問題を解決する一言だった。

 

 

《先程のデュエルでベクターが残したナンバーズ…あのカードが「鍵」となり、この『飛行船』が起動した…しかも、()()()()を示す座標も表示された…》

 

「場所って…何処の…?」

 

《……おそらく、バリアン世界のものだ…!》

 

「バリアン世界の!?」

アストラルの言葉に遊馬達は驚愕する…!

 

 

《ベクターは…「この飛行船に乗って来い」と言っているようだ、そして…君の友達もそこにいる可能性が高い…》

 

「真月が…!」

 

「上等だ…!やってやろうじゃねぇか…!!」

 

「待て、どうも話がうますぎる…罠かもしれないぞ」

真月救出への目星がついた遊馬、そしてベクターへの足掛かりができた凌牙はやる気を見せるが…カイトは冷静に危険性を伝える…。

 

「ハッ…ビビってるなら、留守番でもいいんだぜ?」

 

「フッ、怖気づいてなどいないがな…!」

 

「だぁぁ〜!!やめろって!?」

静かに火花を散らすカイトと凌牙の間に遊馬が割って入る…カイトと凌牙は少し相性が悪いようだ。

 

 

「…オレは真月を助けに行く!!その為なら1人でも行ってやる!!」

 

「遊馬…」

 

《…わかった、飛行船はエネルギー充填中だ…出発は明日の朝だ…!》

アストラルの言葉を最後にその場は解散となった…。

 

 

 

 

 

 

《遊馬…私は一度、皇の鍵に戻る…くれぐれも準備を忘れないように》

 

「ああ!わかったぜ!」

アストラルは皇の鍵に戻り、遊馬は1人塔の屋上に取り残される…。

 

 

「真月…待ってろよ…必ず助けるからな…!」

その場に残された飛行船を見て覚悟を固める遊馬…そこへ…。

 

 

「覚悟は決まったみたいだな、遊馬」

 

「遊海…ああ、オレは絶対に真月を助ける!」

遊馬に声をかけたのは屋上の入口に寄りかかった遊海だった。

 

「良い目だ…だが、遊馬…戦いの前に俺に話さなきゃならない事があるんじゃないか?」

 

「うっ…それは…」

遊海は鋭く遊馬を睨み、遊馬は言い淀む…その眼差しはまるで心の底を見透かすようだった。

 

 

「………話せないならいい、だが…俺もお前に話さなきゃならない事がある」

 

「えっ…?」

遊海の呟きに遊馬は振り返る。

 

 

「お前はベクター…そして、夏菜と俺を襲ったローブのバリアンに会ったらしいな?」

 

「うん、確か…アゴールってベクターの奴が呼んでたぜ」

 

「アゴール……そのバリアンは、俺の知り合い…いや、俺が()()()()()()()だ」

 

「えっ…!?知り合い!?それって…いったい!?」

遊馬は思わぬ告白に驚いている…バリアンと決闘王が知り合いと聞けば、驚くのも無理ないだろう…。

 

 

「奴は今から何十年も前に「人間」だった男だ…俺は何度となくそいつと戦い…最後にはぶん殴って決着をつけた…そいつがなんの因果か、バリアンに生まれ変わっていたらしい」

 

「人間が…バリアンに…!?」

 

「…奴がバリアンとなり、この街の人々を…お前達を危険な目に合わせたのは…俺のせいだ、この因縁には…俺が決着をつける…!!」

 

「遊海…!」

遊海は拳を握り締め、重たいオーラを纏いながら遊馬へと自身の決意を伝える…!

 

「遊馬、明日は俺と翠でお前達を全力でバックアップする…お互いに頑張ろうな……帰ろう『閃光竜』」

 

《キュオン!》

遊海は閃光竜に乗る為に踵を返す…。

 

 

 

 

 

 

「……遊海!!」

 

 

 

「…どうした?」

遊馬は遊海の背中に声をかける!

 

 

「遊海…隠しててごめん!!真月は…真月はバリアンだったんだ!!」

 

「………」

 

「お調子者でヘタレなのはお芝居で…本当はバリアンの正義を守るバリアン警察の警部だったんだ!!みんなに話したら誤解されるし、驚かせちゃうから黙ってた!!でも…真月は本当にいい奴なんだ!だから…だから!!」

 

ギュッ…

 

「よく話してくれたな、遊馬…」

 

「えっ…」

遊海に真月の真実を叫ぶ遊馬…その言葉を聞いた遊海は静かに遊馬を抱きしめた。

 

 

「嘘をついたり、隠し事が苦手なお前の事だ…ずっと辛かっただろう、苦しかったろう…無理をするな…言っただろ?お前は1人じゃないってな…」

 

「オレの事、怒らないのか…?」

 

「遊馬…お前は、お前の信じるままに進めばいい…それがお前をもっと成長させてくれるはずだ…」

 

「グスッ…ゆうみぃぃ〜…!」

 

「ほら、泣くな泣くな…まったく…お互いに頑張ろうな、遊馬…」

 

遊海は静かに泣き出した遊馬の頭を静かに撫でた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベクター…そしてアゴール…よくも遊馬の心を玩びやがったな…お前達は、絶対に許さない!!」

 

ハートランドの空を飛びながら…遊海もまた覚悟を決めた…!



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復活の復讐鬼─悪意の果てに─

こんばんは!S,Kです!

ベクターによって攫われた真月を救う為、遊馬達はバリアン世界へと向かう…遊海は子供達を守る事ができるのか…!


それでは、最新話をどうぞ!


「遊海さん、いよいよですね…」

 

「ああ…いよいよだ」

朝を迎えたハートランド…その自宅で遊海は身支度を整えていた…。

 

 

「凌牙と璃緒は先に向かったな……トフェニ、メガロック…お前達は子供達の安全に特に気を付けてくれ、もし前世の記憶があるなら…()は人質を使う可能性がある」

 

《御意》

 

《うむ、子供達には指一本触れさせん!》

 

「ありがとう…アヤカとフレアは俺の補佐を頼む、奴が人質以外の手段を使う可能性もある…俺の『目』になってくれ」

 

《いつも通りですね!マスター!》

 

《油断はしません…太陽の威光でユウミの道を照らします!》

出発を前に遊海は精霊達と心を1つにする。

 

 

「私達はみんなの回復役とサポートよ!何があっても、みんなを守るわよ!」

 

《りょーかい!》

 

《頑張る!》

翠の問いかけにウィンダとウェンもやる気をみせる!

 

 

「先生!ハートランドは任せろ!」

 

「ああ!任せたぞ、十代!行ってくる!」

 

《フォ〜ウ…》

 

「ごめんねフォウくん…今回は危ないからお留守番ね」

十代とフォウに見送られ、遊海と翠は飛行船へと向かった…。

 

 

 

《キュオオン!!》

 

「おはよう!待たせたな!」

 

「おはようございます、白波さん…協力感謝します!」

 

「まだ遊馬が来てねぇ…まったく、あいつはいつも遅刻だな…」

 

「あら、まだ時間の猶予はあるわ…焦らないでいきましょう?」

閃光竜と共に飛行船のあるハートの塔へやってきた遊海と翠…そこには既に凌牙と璃緒、そしてカイトとオービタル7の姿があった。

 

 

「その通りだ璃緒、急がば回れ…大変な時こそ余裕をもたないとな」

 

「流石は歴戦の決闘王…場慣れしているな…」

 

《カッコいいでありマスね!》

普段の様子と変わらない遊海を見てカイトは尊敬の眼差しを見せる…そして…。

 

 

「おーっす!みんな早いな〜!」

 

「たくっ…お前が遅いんだよ…」

遊海に少し遅れてリュックを背負った遊馬がやってくる!

 

「おはようございます!今日は頑張りましょう!」

 

「えっ!?妹シャ…璃緒!?どうして!?」

 

「自分も役に立つから連れてけ!ってな…本当に頑固な妹だぜ…まぁ、父さん達がいるから…出番はないかもな」

 

「フッ…なんだか、責任重大だな!…遊馬、安心しろ…お前達の背中は俺達が守るからな!」

 

「頑張りましょう!」

 

「遊海…翠さん…!頼もしい仲間がいっぱいだぜ!」

バリアンとの決着をつける為に集まった最高の仲間達を前に、遊馬は勇気を貰った…。

 

 

 

 

(準備よし…遊馬、いつでも出発できるぞ)

 

「よっしゃあ!行こうぜ…って…どうやって乗り込むんだ??」

アストラルから準備が整った事を伝えられた遊馬は飛行船を見上げる…だが、飛行船にはハッチも梯子も付いていなかった。

 

(心配ない、この「フラッシュ・トランサー」でコックピットに乗り込むんだ)

 

キィン─!

 

「おおっ!?スッゲェ!!」

アストラルの言葉と共に遊馬達に向けて緑色の光が放たれる…それはさながらSFの宇宙船のようだったが…ハプニングが起きる。

 

 

「遊馬!()()()を置いていくなんて…水臭いぜ!」

 

「なっ!?鉄男!みんな!?」

 

「あらら…何処に隠れてたんだ?」

何処に隠れていたのか…遊馬の友達であるナンバーズクラブのメンバー達が光の中に割り込んで来たのだ。

…なお、彼らが集まったのは遊馬が口を滑らしてしまったからである。

 

「み、みんな!今回はマジでヤバいんだぞ!?」

 

「だからといって…遊馬を1人で行かせられないにゃん!」

 

「真月君を助けたいのは…僕達だって一緒です!」

 

「そうだウラ!」

 

「真月君も…私達の仲間だもん!」

 

「お前ら…」

遊馬は仲間達にこの旅の危険性を伝えるが…仲間達の覚悟もまた固かった…。

 

 

 

「旅は道連れ、世は情け…心配するな!お前達の安全は()()()()()()()の名において保証する!」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

(それでは…飛行船に乗り込むぞ!)

 

「えっ、ちょっと待ってください!?今とても重要な言葉が─!?」

等々力の驚きを無視して遊馬達は光となって飛行船に乗り込んだ…。

 

 

 

 

キィン─!

 

 

 

「…ここが、皇の鍵の飛行船の中か…」

転送された先は飛行船のコックピット…その内装は現在の人間界の科学とアストラル世界の科学の融合したものとなっていた…。

 

 

(目標座標確認!ただいまより…この船は出航する!)

飛行船にいるおかげか実体を持ったアストラルが全体に号令をかける!

 

《発進シークエンス・スタート…主動力起動でアリマス!》

 

《システム・オールグリーン!いつでも出発可能です!》

オービタルとアヤカが飛行船の発進準備を整える!

 

 

(遊馬、君が発進の指示を出せ…この船は君のものだ)

 

「えっ!?オレが!?」

アストラルの言葉に遊馬は目を丸くする…そもそもこの船は遊馬の皇の鍵にあったモノ…つまり、遊馬が船長という事になるのだ。

 

「そう気負わなくていい、元気よく声を出せ!」

 

「ふっ…今回はお前に花を持たせてやる」

 

「さっさと頼むぜ?遊馬センチョー?」

遊海、カイト、凌牙が遊馬を後押しする!

 

 

「よーし!!飛行船、発進!!」

 

「「「発進─!!」」」

 

《異次元ゲート開門!異次元空間に突入するでアリマス!!》

遊馬の号令と共に飛行船は空を翔ける…そして、バリアンとの決着をつける為に、異次元空間へと飛び込んだ!

 

 

 

 

 

 

 

《現在、目標座標に向けて順調に運行中でアリマス!》

異次元へと飛び込んだ飛行船は亜光速の速さで異次元空間を進んでいく…。

 

 

 

「ま、まさか白野さんが…白波遊海…伝説の決闘者だったなんて…トドのつまりびっくりです!!」

 

「そりゃ、シャークも璃緒さんも強くなる訳だ…」

 

「世界の裏側を見たウラ…」

 

「ハッハッハ!そう固くならなくてもいいさ、俺はただ少し強いだけの決闘者だからな!」

遊海から正体を教えられたナンバーズクラブの男子勢は

目を丸くしている…。

 

「小鳥と遊馬は知ってたんでしょ?…ずるいにゃん!」

 

「ごめんね!遊海さん達にナイショにしてほしいって頼まれてたの…お菓子で許し…あら!?」

 

《フォウ!》

 

「えっ!?フォウくん!?確かに家に置いてきたのに!?」

キャッシーにお菓子を渡そうとした小鳥がリュックを覗くと…何故かフォウくんが紛れ込んでいた。

 

 

「コラ…!勝手についてくるなって…!」

 

《フォウ…キャーウ…(だって…嫌な感じがしたんだもん…)》

 

「…まったく…翠から離れるなよ?」

 

《フォウ!》

 

「(本当にフォウくんと遊海さんは仲がいいにゃん)」

フォウの為に真剣に叱る遊海を見てキャッシーは2人の絆を感じ取った…。

 

 

 

(おかしい…静かすぎる…)

ドタバタ騒ぎを聞きながらアストラルは疑問を抱く、目的地はバリアン世界…つまりバリアンの本拠地に向かっている訳だが…あまりにも静か過ぎるのだ。

 

 

「…よーし、腹が減っては戦はできねぇ!デュエル飯食べ…」

 

ビビーッ!ビビーッ!

 

ドドォォン!!

 

 

「うわあああ!?」

 

「「きゃああ!?」」

 

「ッ…とうとう来たか…!」

飛行船に突如として警報が鳴り響き、凄まじい衝撃が襲いかかる!!

 

 

「っ…飛行船前方に多数の未確認物体確認─!!」

 

「っ…!?デュエルモンスターの大群!?」

レーダーを見ていた璃緒が叫び、外の様子を映し出す…そこには無数の「バーサーク・デッド・ドラゴン」や「ワーム・ドレイク」「ダーク・ジェロイド」…さらに「メンタル・スフィア・デーモン」や「サイコ・コマンダー」「マジカル・アンドロイド」の大群…否、大軍が飛行船を取り囲んでいたのだ…!

 

 

「手荒い歓迎だな…!凌牙!遊馬!カイト!迎撃するぞ!」 

 

「「「了解!!」」」

遊海は遊馬達に迎撃の指示を出す!

 

「私も行くわ!」

 

「俺も!!」

 

「わかった…!翠!トフェニ!メガロック!子供達を頼む!」

 

「わかりました!気を付けて!」

翠と精霊達に子供達を託した遊海は外へと飛び出した!

 

 

 

 

 

「よーし!モンスターを迎え撃て!『希望皇ホープ』!」

 

「来い!『銀河眼の光子竜』!!」

 

「現われろ!『海咬龍シャーク・ドレイク』!」

 

「現れなさい!『零鳥獣シルフィーネ』!」

 

「頼むぜ!『ブリキの大公』!」

 

「我が敵を殲滅せよ!『アポクリフォート・キラー』!『ラーの翼神竜』!」

 

《キュアアア!!》

 

《殲滅対象確認…殲滅開始!!》

飛行船の外に飛び出した遊馬達はモンスターを召喚、数多のモンスター達を斬り裂き、噛み砕き、吹き飛ばし、切り裂き、氷結させ、燃やし尽くす…瞬く間に大軍は数を減らしていく!

 

 

「手応えがない…気をつけろ!まだ何か仕掛けて来るぞ!」

 

「何かって…!?」

モンスターを粗方を倒した遊海は遊馬達に警戒を促す…!

 

《カイト様!飛行船の目の間に超高重力体…ブラック・ホールが出現します!!》

 

「なんっ!?」

 

「お前達!何かに掴まれぇぇ!!」

オービタルが異常を知らせた直後、飛行船のすぐそばに時空の歪み…全てを飲み込む穴が現れる!

 

 

「アヤカ!飛行船を保護!態勢を整えろ─!」

 

《既にやって…マスター!後ろ!!》

 

白波ィィィ!!!

 

「ディヴァッ─!?」

 

「遊海ぃぃ!?」

遊海が飛行船の守る指示を出した瞬間、黒い閃光となったアゴールが遊海に突撃…そのまま何処かへと連れ去ってしまった…!

 

 

「父さん!?うわあああ─!?」

 

そして飛行船と遊馬達はブラックホールへと飲み込まれてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギィン─ズドォォン!!

 

 

「ガハッ…!?」

 

黒い閃光に攫われた遊海は数個の世界を飛び超え…次元の狭間に漂う木造船に叩きつけられた…。

 

「ここは…!」

立ち上がった遊海は周囲を見回す…そこは数多の船や飛行機がうち捨てられた異界だった…。

 

 

「くっ…遊馬達や、精霊達とも分断されたか…!」

 

【そうさぁ…お前は「絆の英雄」サマだからなぁ…!他の奴らとは別の舞台を用意したんだ…!!】

 

「っ…ディヴァイン…いや、こう呼ぶべきか…バリアンの戦士・アゴール!!」

遊海の正面に黒い光が集まり、形を成す…それは黒いローブに身を包み、右目の下に傷を持つ、赤い髪の男…バリアンの戦士ディヴァイン=アゴールだった…!

 

 

【久しぶりだなぁ白波遊海…68年と3ヶ月振りだぁ…!】

 

「その様子からすると…相当俺を恨んでるらしいな…!」

 

【ああ…お前が憎い…憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いィィ…!ベクターからの指示など関係ないぃ…お前に、私が受けた以上の苦痛を味あわせてやるぅぅ!!】

アゴールの体がドス黒いオーラに包まれる…!

 

 

【私はもう少しであの国を支配できた…世界を征服できたァ!!世界の王となるはずだった、この私をぉぉ!!】

 

「…救えないな、ディヴァイン…せめて、その魂だけでも…俺が救う!!」

遊海はバリアンへと堕ちたディヴァイン…アゴールを倒す為に足を踏み出す…!

 

 

 

 

ギィン─!バチバチバチ!!

 

 

 

 

【ヒヒヒ…引っかかったなぁ…?】

 

 

「なにっ!?っ、ぐあああああ!?」

 

ドクン…!

 

 

遊海を足を踏み出した瞬間、アゴールは嗤う…そして遊海にバリアンのエネルギーと共に凄まじい痛みが襲い掛かった!!

 

【だぁれがテメェとまともに戦うかよぉ…!お前がバリアンの力に弱い事は知ってんだよぉぉ!!ギャハハハハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハ!!】

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?!?(な、なんだこの痛みは、体が…()()()()()()!!)」

狂ったように嗤うアゴールの声が響く中…襲いかかる痛みで絶叫する遊海…そして、唐突にそれは訪れた…!

 

 

 

 

バリバリバリ…バキャン!!

 

 

 

 

 

『な、に…!?』

 

「ユウスケッ!?」

バリアンの力に耐えきれなかった遊海の身体が裂ける…そして、もう1つの人格であるユウスケが分離してしまったのだ!

 

 

【待ってたぜぇ!この時を!!オラァ!!】

 

ギィン!ジャラジャラジャラ!

 

『なっ…!?ゴハッ─!』

 

「ユウスケ!!」

遊海とユウスケが分離した瞬間、アゴールは「闇の呪縛」の鎖を使ってユウスケを木造船のマストに縛りつけてしまったのだ!

 

 

 

「き、きさま…なにを、した…!」

遊海はバリアンの力から開放されたが…とてつもない脱力感で膝をついてしまう…。

 

 

【ハハハ…!バリアンの力でお前ともう1つの人格を切り離したのさぁ…!これで…お前は忌まわしい『奇跡』の力を使えなくなった!!お前とマトモに戦っても、勝てないからなぁ!!ハハハハハハ!!】

 

『くっ…卑怯な真似を…!!これぐらいの鎖ぃぃ…!!』ギチギチギチ

ユウスケは抜け出す為に力を込めるが…鎖はビクともしなかった…。

 

 

「はぁ…はぁ…相変わらず、悪知恵が回る奴だ…!だが、舐めるな…!NEXUSが使えなくても…俺は、闘える!!」

 

【ヒヒヒ…やってみろよぉ!死にかけの英雄サマァァ!!】

戦う前から遊海の力を削いだアゴール…遊海はアゴールを倒す為に立ち上がった!!

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

 

遊海LP4000

アゴールLP4000

 

 

特殊ルール

 

破壊不可のフィールド魔法『異次元の魔海バミューダ』発動中

 

 

 

 

 

「俺の、ターン!ドロー!!」

「俺はライトペンデュラム・スケールに『クリフォート・ツール』を!レフトペンデュラムスケールに『クリフォート・アセンブラ』をセッティング!!」

遊海の背後に光の柱と共に黄色と紫色のコアを持つ機械が現れる!

 

【ペンデュラムだぁ…?】

 

 

「お前には、出し惜しみはしない!俺はスケール9の『ツール』とスケール1の『アセンブラ』でペンデュラムスケールをセッティング!これにより俺はレベル2から8のモンスターを同時に特殊召喚できる!」

 

【モンスターの同時召喚だと!?】

 

「見せてやる、俺の全力!我が魂を守りし大いなる力よ…今こそその力を示せ!ペンデュラム召喚!手札より現われよ!レベル6『クリフォート・ゲノム』!レベル7『クリフォート・アクセス』!レベル8『クリフォート・シェル』!」

遊海の背後に次元の扉が開き、黄色・赤色・黒色のコアを持つ機械達が現れる!

 

 

ゲノム☆6→4 ATK2400→1800

 

アクセス☆7→4 ATK2800→1800

 

シェル☆8→4 ATK2800→1800

 

 

「特殊召喚されたクリフォートモンスターはレベル4、攻撃力1800となる!」

 

【モンスターの同時召喚…特殊召喚をしたなぁ!この瞬間!発動されていたフィールド魔法「異次元の魔海バミューダ」の効果発動!エクシーズ召喚以外の特殊召喚をしたプレイヤーに500ダメージを与える!!】

 

ドゴォン!!

 

「なにっ!?ぐえっ…!?」

 

『遊海!!ぐあああ!?』バチバチバチ!

遊海がペンデュラム召喚をした瞬間、遊海達の戦う船の隣にある海賊船から()()()()()が放たれ遊海に直撃…さらにユウスケにもバリアンの力でダメージが与えられる!

 

遊海LP4000→3500

 

 

「卑怯な…!(今ので、足の骨が折られた…立てねぇ…!)」

鋼の弾が直撃した遊海は足を痛め、機動力を奪われてしまう…!

 

 

【卑怯か…今の私には心地よい褒め言葉だよ!ハハハハハハ!!】

 

『野郎…!人間の…決闘者の誇りまで捨てやがったか…!!』

笑い声を響かせるアゴールにユウスケは拳を握り締める…。

 

【決闘者の誇り…プライド…?そんなもの、最初から私は持ち合わせてなどいないさぁ…単なる道具に過ぎないのだからなぁ!!さぁ!戦えよ!立ってみろよ!決闘王!!】

 

「舐めるな…!これくらいの傷でぇぇ!!」

遊海は痛みを気合いで押し殺し、立ち上がる!

 

 

 

「俺は、『ツール』のペンデュラム効果発動!ライフを800払い、デッキから『アポクリフォート・キラー』を手札に加える!そしてフィールドの『ゲノム』『アクセス』『シェル』をリリース!次元を超えて…現われろ!我が魂!我が相棒!『アポクリフォート・キラー』!!」

三色のコアが次元の扉へと消える…そして数多の障害を超え、次元の彼方から遊海の相棒、巨大な機械要塞が顕現する! ATK3000

 

遊海LP3500→2700

 

 

《マスター…!その姿は…!?》

 

「すまん、完全に罠に嵌められた…頼むぞ…!」

 

《ディヴァイン…いえ、アゴールでしたね…よくも…よくもマスター達をこんな目に!!》

 

【チィ…精霊を喚ばれたか…!】

遊海とユウスケの惨状を見たアヤカは赤いオーラを纏い、怒りを滲ませる!

 

 

「リリースされた『ゲノム』の効果発動!『異次元の魔海バミューダ』を破壊する!」

 

【無駄だぁ…!『バミューダ』はこの時空そのもの…効果では破壊されないぃ!!】

 

「WDCと同じか…!なら、『キラー』の効果発動!相手は手札・フィールドのモンスターを1体墓地に送らなければならない!」

 

【ならば…手札のモンスター『リ・バイブル』を墓地に送る!】

 

「くっ…『キラー』は魔法・罠の効果を受けず、レベル・ランク10以下のモンスター効果を受けない…!カードを伏せ、ターンエンド…エンドフェイズに『アセンブラ』の効果発動…!リリースしたクリフォートモンスター1体につき、1枚ドローできる…3ドロ…っ!」

遊海LP2700

キラー (Pスケール ツール アセンブラ) 伏せ1 手札3

 

 

 

 

「う、ぐ…(目の前が、霞む…)」

 

《マスター…!なんとか、堪えてください…!》

 

『馬鹿野郎…!あんな卑怯者にいいようにされてんじゃねぇぇ…!』

ターンを終えた遊海は膝をつく…前回のデュエルから引き摺っていたダメージ、そしてアゴールの策略によるダメージで…遊海は開始1ターン目にして既に限界を迎えていた…。

 

 

【ギャハハハ…!ああ、いい眺めだぁ…もっとだ…もっと苦しめぇぇ…私の負った痛みを!苦しみを…全てお前にィィ!!】

 

ギィン─!!

 

傷ついた遊海を見たアゴールは笑いながら邪悪な力を纏う…そしてその姿を人間体から…禍々しい骸骨の王…スケルトン・キングへと変化させた…!

 

 

「それが、今のお前の正体か…!落ちるところまで、堕ちたな…!」

 

【ギャハハハハハ!力が漲る…お前を殺す為の力がぁぁぁ!!】

ぽっかり空いた眼孔の奥に復讐の炎を燃やし、ディヴァインは力を振るう…!

 

 

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【キヒヒ…!速攻魔法『サイクロン』発動!お前の伏せカードは破壊だぁ!】

 

「『スキルドレイン』が…!」

竜巻が遊海の伏せカードを吹き飛ばす!

 

【さらにいい…!魔法カード『深淵の宣告者』を発動…!私のライフを1500払いぃ…地属性・機械族を選択して効果発動〜!お前のフィールドにその種族・属性のモンスターがいれば!お前はそのモンスターを墓地に送らなければならなぁぁい!さぁ…自分の相棒を墓地に送りなぁ!!】

 

「っ…!!すまない、彩華…!俺は、『アポクリフォート・キラー』を、墓地に送る…!」

 

《マスター!どうか、どうか希望を捨てないで─!!》

遊海は悔しげにアヤカを墓地に送る…巨大な機械要塞は闇に呑まれ、消え去った…。

 

アゴールLP4000→2500

 

 

『どういうタネだ…!?なんで遊海の手が読まれる!?』

 

【ギャハ…!当たり前だろぉ?何の為にお前に何人も何人も人間共をけしかけたと思ってるぅ?…全て!お前のプレイングを!攻め方を!お前を攻略する為の生け贄なんだよぉ!!】

 

「…そういう、事か…!」

アゴールは遊海を確実に倒す為、何人ものデュエリストを戦わせ…遊海の癖を分析していたのだ…!

 

 

【さぁ、続いては…!魔法カード「強欲な壺」を発動!2ドロー!そして『サイコ・トラッカー』を召喚!】

ヨーヨーを操るロボットが現れる! ATK1600

 

 

【さらにぃ!自分フィールドにレベル3のモンスターがいる事で…『サイコウィールダー』は守備表示で特殊召喚できるぅ!】

モノホイールを操るロボットが現れる! DEF0

 

 

「だが、特殊召喚した事で…『バミューダ』の効果が発動する!500ダメージだ!」

 

【甘いんだよぉ…!速攻魔法『バミューダの羅針盤』を発動!自分が魔法カードの効果でダメージを受ける時!その効果を無効にし、このカードが墓地にある限りぃ…自分は『異次元の魔海バミューダ』の効果でダメージを受けな〜い!】

アゴールの手元に巨大な羅針盤が現れ、金色のバリアを展開する!

 

【そしてぇ…!私はレベル3の『サイコトラッカー』と『サイコウィールダー』でオーバーレイ・ネットワークを構築…エクシーズ召喚!】

 

 

48

 

 

【現れろ!『No.48』!遍く命を刈り取る、幻影の死神!『シャドー・リッチ』!!】

アゴールの場に巨大な鎌に数字を刻んだ幻影の死神が現れる! ATK1800

 

 

「ナンバーズ…!」

 

【さぁ…苦しめぇ!!バトル!「シャドーリッチ」で白波へダイレクトアタック!シャドー・デスサイス!!】

 

「ぐっ、ぎぃィィっ!?」

死神の鎌が遊海の胸を切り裂く!

 

遊海LP2700→900

 

 

【ギャハ…!ギャハハハ!!そうだぁ…!私は…その声が聞きたかったんだぁ…!私はカードを伏せ、ターンエンド!】

アゴールLP2500

シャドーリッチ 伏せ1 手札0

 

 

 

 

「痛、い…!傷が、灼ける…!」

 

『遊海…!しっかりしろ…寝てんじゃ、ねぇ…!』

シャドーリッチに吹き飛ばされた遊海は立ち上がる事ができない…斬り裂かれた傷口が灼かれたような激痛を伴っているのだ…!

 

 

【ハハハァ…!このナンバーズは特別でねぇ…バリアンのカオスをた〜っぷり込めてあるのさぁ…!】

 

「ガッ…あぁ……ふざけ、やがって…!」

遊海は傷口を庇いながら…ふらふらと立ち上がる…!

 

 

 

 

「おれ、のターン…ドロー…!」

「少しずつでも、お前のライフを、削ってやる…!ペンデュラム、召喚!エクストラデッキより、復活せよ…!『ゲノム』!『シェル』…!」

再び時空の扉から2体の機械が現れる! ATK1800  1800

 

 

【はっ…エクストラデッキから直接召喚とは面白い…だが!『バミューダ』の効果でダメージだ!!】

 

ドォン!!

 

「ゴハっ…!」

 

『遊海っ、ぐあ"あ"あ"あ"あ"!!』

再び放たれた大砲が遊海の腹部に直撃…痛ましい音をたてながら遊海を船の壁に叩き付ける!

 

遊海LP900→400

 

 

「うっ…ゴボッ…!!2体をリリース…現われろ…『クリフォート・ディスク』…!」

遊海は血反吐を吐きながら…青色のコアと虹色の機体の機械を呼び出す! ATK2800

 

 

「リリースされた、『ゲノム』の効果…!伏せカードを、破壊!」

光線がアゴールの伏せカードを撃ち抜く!

 

【チッ…『ドレイン・シールド』が破壊されたか】

 

「バトル…!『ディスク』で『シャドーリッチ』を攻撃!」

 

【ハッ…痛みで考える事もできないらしいなぁ!『シャドーリッチ』の効果発動!自身が攻撃されるか破壊効果の対象になった時!ORUを1つ使い!攻守500の『幻影トークン』を可能な限り特殊召喚する!】

 

「しまっ…!」

アゴールのフィールドにローブを纏った幻影達が現れる!

ATK500 500 500 500

 

 

【このトークンは破壊された時に相手に500ダメージを与える…さぁ、攻撃してみろよ…!お前はトークンしか攻撃できないからなぁ!ギャハハハ!】

 

「ターン、エンド…『アセンブラ』の効果で、2ドロー…」

遊海LP400

ディスク (Pスケール ツール アセンブラ) 手札5

 

 

 

 

 

「うっ、ゴホ…ゴボッ…!

 

【ああ、ああ…!いい顔だぁ…!!体はズタボロの血塗れ!そして痛みを堪えながら私を見上げるその顔…!この日を、この瞬間をどれほど待ち侘びたか!!ギャハハハ!!】

瀕死の遊海を見てアゴールは笑う…それを見て言い返す体力は…遊海には残っていない…。

 

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【私は魔法カード『命削りの宝札』を発動!このターン特殊召喚できなくなる代わりに、手札が3枚になるようにドロー!ああ…!いいカードを引いた!私はカードを伏せ、魔法カード『エクスチェンジ』を発動!お互いの手札を公開し、1枚ずつ交換する!さぁ…手札を見せなぁ!】

 

「っ…」

 

遊海手札

 

増殖するG

機殻の生贄

召喚師のスキル

金満な壺

アポクリフォート・キラー

 

 

【ふ〜ん…それじゃあ、厄介な『アポクリフォート・キラー』を貰おうか!まぁ、召喚できないけどなぁ!!】

 

「くっ…!」

遊海はアゴールに「アポクリフォートキラー」を投げ渡す

 

【それじゃあ私は…()()()()()だ!このカードを恵んでやる!】

 

「っ……『バリアンズ・フォース』…!?」

アゴールが投げたのはバリアンの力の象徴…しかし、その力は…。

 

 

バリバリバリバリバリバリ!!

 

 

────────!?!?

 

『ゆ、が、ああああああ!?!?』

遊海とユウスケの肉体を…魂を容赦なく焼き焦がした…。

 

 

【ギャハハハハハ!!ああ、なんて心地よい叫びだ!バリアンの力は素晴らしいなぁ!!ハハハはハハハは!!】

叫び狂う遊海とユウスケを見てアゴールは笑い狂う…その身体を復讐の黒炎に包みながら…。

 

 

「……ぁ…──」

 

【チッ…力尽きたか、情けないなぁ?白波ィ!】

バリアンの力は遊海の全ての体力を奪い尽くし…遊海は甲板に倒れ伏した…だが、それを許すアゴールではなかった…。

 

【ハッ、生憎だが…このデュエルにはサレンダーも、リタイアもないんだよぉ!!リバース魔法『成金ゴブリン』を発動!相手のライフを1000回復させ、私はカードをドローする!さぁ…立てよ!立って戦え!お前の苦しむ姿を…もっと私に見せろぉ!!】

遊海をさらに苦しめる為に…アゴールは遊海のライフを回復させた…!

 

遊海LP400→1400

 

 

【私はこのままターンエンドだぁ!】

 

アゴールLP2500

シャドーリッチ 幻影トークン×4 伏せ0 手札2

 

 

 

【なんだぁ?せっかく回復してやったのに…まだお寝んねかぁ?】

笑い狂うアゴールは倒れ伏した遊海を眺める……遊海はピクリとも動かなかった。

 

 

【私の怒りは貴様を殺しても治まらない…!貴様の次はお前の女を!お前大事にしてる奴らも…全てを壊し尽くしてやるよぉ!ギャハハハハハ!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

─からだが、うごかない…いたみも、かんじない……たましいの、ほのおが…きえる─

 

遊海は真っ暗な世界にいた…もう、遊海は燃え尽きる寸前だった…。

 

 

 

─ごめん、みどり……なさけないけど…おれは、ここまで、みたいだ………すまない…─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神代凌牙くんと璃緒ちゃんを……ナッシュとメラグを引き取る!?本気ですか!?」

 

─ああ、本気で正気だ…俺は、あの子達の親になりたい…!─

 

「あの子達は、ZEXALの物語の重要人物ですよ…!?」

 

─翠…俺は、あの子達に家族の「暖かさ」を知って欲しいんだ……少しでも、あの2人の心を支えてやりたい!─

 

「子育てした事もないのに?」

 

─うぐ…俺もしっかり勉強する!だから、頼む…!─

 

「はぁ…しょうがないですねぇ…遊海さんは言い出したら聞かないんだから…わかりました!初めての子育て、頑張りましょう!」

 

─ありがとう…!一緒に頑張ろう!少しでも、あの子達が幸せになれるように!!─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─かぞく…りょうが…りお…みどり…ふぉう……おれ、は……─

 

 

 

 

「父さん!」

 

 

「お父さん!」

 

 

「遊海さん!」

 

 

《フォーウ!!》

 

 

 

 

 

 

─おれは…オレは、我は…俺は……まだ、死ねない!!─

 

 

キィン!

 

 

 

 

消えかけた遊海の魂に再び火が灯る、家族との絆…家族を守りたいという願いが、奇跡を起こす!

 

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

ドクン!!

 

 

 

【なんだ…この耳障りな音は…?】

バミューダに鼓動が鳴り響く…それは倒れ伏した遊海から発せられた音だった…!

 

 

「ゲホッ…ゆう、すけ…うごけ、るか…?」

 

『……あたり、まえだ……確かに、受け取ったぜ…お前の熱く燃えた…魂の炎を…!!』

 

ボゥ!!

 

【な、「闇の呪縛」が燃え尽きただと!?】

マストに縛られたユウスケの体が発火…戒めの鎖を焼き尽くす!

 

 

『アゴール…よくも、やってくれたなぁ…!』

 

「次は、俺達の…番だ!!」

ユウスケの肩を借りて遊海が立ち上がる!!

 

 

「『俺達自身で…オーバーレイ!!』」

 

【なにっ!?】

遊海とユウスケが黄色と紫の閃光となって飛び上がる!

 

 

 

「『我が身に宿りし光と闇よ…希望の力となりて世界を照らせ!カオス・エクシーズ・チェンジ!!』」

閃光が螺旋を描き…ビックバンを起こす!

 

 

─我が絆の極致、闇を抱き希望を照らす光!NEXUS!!─

 

 

 

現れたのは新たな『NEXUS』…燃えるような赤い髪を逆立て、同じく炎の刺繍が刻まれた赤のロングコートを鋼の鎧に羽織り…赤と青の瞳でアゴールを睨む。

 

名付けるならば…『NEXUSⅡ』…家族の絆によって覚醒した、遊海の新たな到達点である!

 

 

 

 

 

─俺のターン…ドロー!─

 

【新たな、奇跡の力だと!?やらせん!『バリアンズ・フォース』よ!白波を灼き尽くせぇぇ!!】

 

─無駄だ!─

 

【なにぃ!?】

アゴールは再びバリアンの力で遊海を苦しめようとしたが…邪悪な力はNEXUSの炎のオーラで霧散する!

 

─絆の力が闇を祓い…希望を繋ぐ!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから甦れ!『ゲノム』!『シェル』!─

再び機械が顕現する! ATK1800 1800

 

 

【だが!『バミューダ』の効果発動!500ダメージだ!】

 

─もう、その手は効かん!─

NEXUSは飛んできた砲弾を蹴り飛ばす!

 

遊海LP1400→900

 

 

─さらに速攻魔法『揺れる眼差し』を発動!ペンデュラムゾーンの『ツール』と『アセンブラ』を破壊し、効果発動!お前に500ダメージを与える!─

 

【なっ…!?うがっ…!】

ペンデュラムゾーンのツールが光線を放ち、アゴールにダメージを与える!

 

アゴールLP2500→2000

 

 

─俺はレベル4の『ゲノム』と『シェル』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!─

 

 

─現れろ!『No.∞』!我が戦いのロード…今こそ未来を切り開け!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!─

魂の大剣が遊海の傍らに突き刺さる! ATK2500

 

 

【チィ…!現れたな『No.∞』…だが、その効果では『シャドー・リッチ』は倒せない!!】

 

─それはどうかな?─

 

【なにっ…?】

 

─アゴール…お前が決闘者なら、俺は既に敗北していた……だが、決闘者である事を捨てたお前に…勝利はない!『決闘の守護者』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した事でカードをドローする!シャイニング・ドロー!

光の軌跡と共に希望の光が創造される!

 

 

─覚醒せよ!新たな希望!魔法カード『RUM-ネクサス・フォース』を発動!その効果により、自分フィールドのエクシーズモンスターをランクアップさせる!俺は『決闘の守護者』1体でオーバーレイ・ネットワークを構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!─

それは新たな『RUM』…その発動と共に遊海が銀河へと魂の大剣を投擲…銀河が光の爆発を起こす!

 

 

 

 

─顕現せよ!『CNo.∞』!俺の踏みしめた戦いの路よ!絆よ!閉ざされた未来を打ち砕け!!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)(かがやき)』!─

希望の光が遊海の右手に集中…白銀に輝く決闘盤を模した手甲となって遊海に装備される! ATK2800

 

 

【か、カオスナンバーズだと!?】

アゴールは新たなカオスナンバーズの出現に驚愕する!

 

 

─『輝』の効果発動!特殊召喚に成功した時!カードを1枚ドロー!─

 

─『輝』のさらなる効果発動!ORUを1つ使い、相手モンスターを1体選び攻撃力を0にし、効果を無効にする!シャイニング・インパクト!─

 

【なっ!?『シャドーリッチ』の力が!?】

遊海が手甲から溢れ出した光のエネルギーを投げつける…それによりシャドーリッチの纏う闇が剥がされ、弱体化する!

 

シャドーリッチATK1800→0

 

─さらに!その数値分、自身の攻撃力をアップする!─

 

決闘の守護者 輝 ATK2800→4600

 

 

【攻撃力4600だとぉぉ!?】

 

─受けてみろアゴール!これが希望を繋ぐ、絆の力!『輝』で『シャドーリッチ』を攻撃!闇を祓う光の拳(シャイニング・バスター)ァァァッ!!─

 

【馬鹿な…この私が、この私がああああああ!!!】

右腕に光の力を込めた遊海がシャドー・リッチに向けて跳躍…大地を砕く光の拳によって死神を消し飛ばし、悪しき因縁を粉砕した!

 

 

 

 

アゴールLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

『馬鹿な…私が、負けた、だと……人間を超えた、この私が…』

怪人体が解け、人間体となったアゴールは甲板に倒れ伏す…。

 

 

「…お前が、俺への復讐に囚われていなければ…俺は、お前に勝てなかった……これは、お前自身が招いた敗北だ…」

 

『見るな…私を、そんな目で見るな…!私を、()()()()…!』

NEXUSを解いた遊海がアゴールへと歩み寄る…その目はアゴール…ディヴァインを泣きそうな瞳で見つめていた…。

 

「アゴール…いや、ディヴァイン…すまなかった…お前がバリアンに堕ちたのも…サイコデュエリストとして悪になるしかなかったのも…全て、俺のせいだ…!」

 

『そうだ…全部、全部お前の……お前の…せい、なのか…?』

アゴールは遊海の真意がわからない…遊海はアゴールの隣に座り込む…。

 

 

「ディヴァイン…俺は、お前の歩む道を知っていた…未来を知っていたんだ…、俺は…お前を救う為に…悪に落ちないように、お前を探した…でも、見つけられなかった…!バトルシティで出会った時には…既に、手遅れだった…!」

 

『…………』

 

「ディヴァイン…お前は本当に強い男だった、カリスマもあって…サイコデュエリストとしても強かった……出会い方が違えば…俺とお前は…『友』になれたかもしれない…」

そう言って遊海はボロボロの服を脱ぎ捨てる…。

 

『その、傷は…』

 

「ああ…お前が、あの時…俺を刺した傷だ…」

傷だらけの体の中心、そこには…刃物で刺された古傷があった…。

 

 

「俺は、この傷を『戒め』として残した…お前のような悲劇を…繰り返さない為に…」

 

『………アンタ…本当に、お人好し…だよなぁ……私は、羨ましかった…強い力を持って…光の世界で生きるアンタが…憧れだった…』

 

「ディヴァイン…」

アゴールは憑き物が落ちたような穏やかさで遊海を見る…。

 

「そういえば…アンタだけ、だったなぁ…私を、1人の人間として…憎しみも、差別もなく…叱ってくれたのは…」

アゴール…否、人間としての心を取り戻したディヴァインは人生を思い返す…3度立ち塞がった遊海…彼は、いつも人々の為に戦い、人々を傷付けた自分に純粋な正義の怒りを持って戦っていたのだと…。

 

 

 

『あぁ……『決闘王』の、友か…そんな未来が…あったら…よかった、のになぁ──』

 

静かにそう呟いたディヴァインは光の粒子となって虚空に溶けた…遊海が手にしていた『バリアンズフォース』と共に…。

 

 

 

「ディヴァイン…せめて、安らか…に……」

遊海はディヴァインの魂をバリアンの呪縛から救えた事を確信し、静かに意識を手放した…。

 




〜おまけ〜

オリジナルカード紹介


フィールド魔法 『異次元の魔海バミューダ』

①エクシーズモンスター以外の特殊召喚を行なった時、そのプレイヤーは500ダメージを受ける。

②エンドフェイズにエクシーズモンスター以外のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターをコントロールしているプレイヤーは500ダメージを受ける。



速攻魔法 バミューダの羅針盤

①自分にダメージを与える効果が発動した時、そのダメージを無効にする。
②このカードが墓地にある限り『異次元の魔海バミューダ』の効果で自分はダメージを受けない。





通常魔法 「RUM─ネクサス・フォース」


絵柄 輝く光に伸ばされた手

①自分フィールドのエクシーズモンスター1体を対象に発動できる、そのエクシーズモンスターを素材として同じ属性・種族でランクの1つ高いエクシーズモンスター1体をエクシーズ召喚する。
②墓地のこのカードをデッキに戻し発動できる。自分フィールドのエクシーズモンスター1体の攻撃力をフィールド上のエクシーズモンスターのランクの合計×100ポイントアップする。この効果は相手ターンでも発動できる。



CNo.∞ 決闘の守護者・輝(デュエル・ガーディアン・かがやき)
ランク5 光 戦士 ATK2800 DEF2000

見た目 決闘盤を模した、右手に装着する小型手甲
攻撃時には光を纏い、大地を砕く力を発揮する。


レベル5×3

①このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる、カードを1枚ドローする。
②このカードが「No.∞」エクシーズモンスターをエクシーズ素材にしている時、以下の効果を得る。
●1ターンに1度エクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。相手のフィールドのモンスター1体を選んでターン終了時までそのモンスターの攻撃力を0にし、効果を無効にする。その後、その数値分自身の攻撃力をアップする。

③デュエル中に1度、このカードフィールドから離れた時に発動できる。自分の墓地のモンスター1体を特殊召喚する。


必殺技「闇を祓う光の拳(シャイニング・バスター)」

デザインコンセプト

・遊海の実力を最大限に発揮する「武装」

・輝く希望を掴む『手』




効果調整

No.48 シャドー・リッチ

★3闇属性 アンデット族 ATK1800 DEF0

レベル3×2

①このカードが攻撃対象または破壊効果の対象になった時または除外される時、エクシーズ素材を1つ取り除いて発動する。「幻影トークン」(悪魔族・闇・星1・攻守500)を可能な限り特殊召喚する。トークンが破壊された時、相手プレイヤーにその攻撃力分のダメージを与える。
②自分フィールドに「幻影トークン」が存在する限り、このカードは攻撃・効果の対象にならない。
③1ターンに1度、このカードの攻撃力を自分フィールドの「幻影トークン」の攻撃力の合計分アップする。このターン、「幻影トークン」は攻撃できない。


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サルガッソに響く嘲笑─真の絆─

こんばんは!S,Kです!

ついに始まる遊馬とベクターの決戦の戦いの果てに遊馬達が掴むものとは…?


それでは、最新話をどうぞ!


「う、イタタ…みんな、大丈夫…?」

 

「は、はい…ウィンダさん達が、風のバリアを張ってくれたおかげで…」

 

「ひ、ひどい目にあったウラ〜…」

 

《ファウ〜…》

 

ブラックホールに飲み込まれてしまった遊馬一行…飛行船内に残っていたメンバー達は目を回してしまったものの、なんとか無事だった…。

 

 

「オービタル7、遊馬君達は…!」

 

《ウゥッ…飛行船外に、5人分の生命反応を感知…モニターに映すでありマス!》

オービタルがモニターに船外の様子を映し出す…そこは一言で表すならば『船の墓場』…朽ち果てた空母や大型船がうち捨てられた異界だった…。

 

 

「遊馬!シャーク!」

 

《カイト様!》

 

「鉄男!璃緒さん!」

そして外の様子を見たオービタルや小鳥が声を上げる…遊馬達は外の空母や船の残骸の上で倒れ込んでいた…。

 

 

「遊海さんがいない…!?」

 

《ミドリ、ユウミはアゴール…ディヴァインによって連れ去られてしまいました…!》

 

「フレアさん!」

必死に遊海を探す翠に声をかけたのは…小鳥状態に戻ったフレアだった、ブラックホールに飲まれた影響で体が傷付いてしまっている…。

 

《一瞬の隙を突かれました…アヤカが既に捜索に向かっています…それよりも、今は…》

 

「っ…!ベクター…!」

フレアがモニターへと目を向ける、そこには遊馬とアストラルに相対するベクター、凌牙と向かい合うドルベ、カイトと火花を散らすミザエルの姿があった…!

 

 

「(遊馬君…どうか、闇に…狂気に負けないで…!遊海さん…どうか無事でいて…!)」

 

《フォウ…》

翠はその様子を祈る思いで見つめるしかなかった…。

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

(遊馬…しっかりしろ…!目を覚ませ!)

 

「うっ…アスト、ラル……ここは…!?」

気を失っていた遊馬はアストラルの呼び掛けで目を覚ました、周囲を見回せば…そこは「船の墓場」のような異世界だった…。

 

 

(ここが何処なのかはわからない…だが、バリアン世界ではないのは確かだろう…!だが、この場所は何か()()()を感じる…!)

未知の世界に警戒を強めるアストラル…そこへ…ついに、悪魔が現れる…!

 

【待っていたよ、九十九遊馬…!よぉうこそ!「サルガッソ」へ!お出迎えは楽しんでもらえたかなぁ…?】

 

「お前は…ベクター!!」

遊馬の立つ空母の反対側…そこに、紫のローブのバリアン・ベクターが現れる!

 

 

【ここは異世界の墓地・サルガッソ…我々の戦いの舞台…そして貴様達が最期に見る場所さぁ…!】

 

「っ…!ベクター!真月は…真月は何処にいる!!」

『墓地』という言葉にたじろいだ遊馬だったが…ベクターに真月の行方を問いただす…。

 

【クフッ…フフフッ!そんなに会いたいかぁ?なら、会わせてやるよぉ…!大事なオトモダチになぁ…!】

 

「っ─!?真月!!」

ベクターは笑いながら指を鳴らす…するとベクターの足元に粒子が集い、倒れ伏した真月が現れたのだ…。

 

 

「真月!しっかりしろ!返事をしてくれ!!」

真月へと叫ぶ遊馬…だが、真月はピクリとも動かない。

 

「ベクター…てめぇ…真月に何しやがったぁ!!」

 

【ヒヒヒ…!お前のオトモダチは…もう2度と!目を覚まさねぇよ…!残念だったなぁ!ギャハハハハハ!】

 

「嘘だ…ウソだ…うそだぁぁ!!!!」

それはベクターの残酷な宣告…その言葉を聞いた遊馬の中で…()()()()()()

 

「真月…しんげつぅぅ─!!」

過ぎるのは真月とのたくさんの思い出…遊馬の悲しみの絶叫がサルガッソに響き渡った…。

 

 

 

Side out

 

 

 

 

「遊馬…」

遊馬から少し離れた廃墟の上…ベクターと遊馬のやり取りを見ていた凌牙は拳を握り締める…だが、その凌牙の前に現れる者がいた…!

 

 

『お前が…神代凌牙か?』

 

「なんだ、てめぇは…?」

凌牙の前に現れたのは白いローブのバリアン・ドルベだった。

 

 

『我が名はドルベ…お前をデュエルで倒す者だ…』

 

「…お前か、父さんを不意討ちしやがったバリアンは…!」

 

『…そうか、お前が白波遊海の息子か…彼は息災か?』

 

「父さんと俺達を分断しておきながら…!てめぇは絶対、ブッ倒す!!」

遊海の仇ともいえるバリアンを前に…凌牙は鋭い目付きでドルベを睨みつけた…。

 

 

 

 

『久しぶりだな、カイト…!』

 

「…ミザエルか」

同じく、廃墟の上で遊馬の様子を見つめていたカイトの前にミザエルが現れる…!

 

 

『今日こそ…真のギャラクシーアイズ使いを決める時だ!』

 

「望むところだ…!」

2体のギャラクシーアイズを操る2人…その因縁がついに衝突する…!

 

 

 

「許さねぇ…絶対に、許さねぇぇ!!ベクタァァァッ!!!お前を必ず、叩き潰してやる!!」

 

【やってみろよぉ…!ギャハハハハハ!!】

真月を失い、今までにない激情を見せる遊馬…ついに、ベクターとの決戦の時…!

 

 

 

 

「「「【『『デュエル!!』』】」」」

 

 

 

デュエルダイジェスト

 

 

遊馬対ベクター

凌牙対ドルベ

カイト対ミザエル

 

 

 

 

39

 

32

 

 

「来い!『No.39希望皇ホープ』!」

 

「吠えろ!『No.32海咬龍シャーク・ドレイク』!」

 

「現れろ!『輝光帝ギャラクシオン』!」

同時並行で始まった三勇士とバリアンのデュエル…遊馬達はそれぞれにエースモンスターや布石の為の『エクシーズモンスター』を召喚する…だが、それは…─。

 

 

【ククク…!馬鹿な奴らめ…!フィールド魔法『異次元の古戦場サルガッソ』の効果発動!エクシーズモンスターを特殊召喚したプレイヤーに500ダメージを与える!!】

 

ビリビリ…ピシャアアン!!

 

「「「ぐああああ!?」」」

 

(遊馬─!?)

 

「凌牙!!」

 

《カイト様!!》

エクシーズモンスターを召喚した遊馬達に雷が降りそそぐ…遊馬達は既に、ベクターの罠に落ちていたのだ…。

 

 

 

【ククク…この場所には既にフィールド魔法『異次元の古戦場サルガッソ』が発動していたのさぁ…!】

 

(卑怯な真似を…!)

遊馬達の戦う舞台「サルガッソ」、そこはまさにエクシーズ封じのフィールド…エクシーズモンスターを特殊召喚する度に500ダメージ、さらにエンドフェイズにエクシーズモンスターがいれば…さらに500ダメージを受けてしまうのだ…!

 

 

「なるほどな…常にダメージのリスクを伴うデュエルか…」

 

「面白れぇ事…するじゃねぇか…!」

 

「ふざけやがって…!どんな罠があろうが…オレは必ずお前をブッ倒す!!」

冷静に「サルガッソ」の攻略を見据えるカイトと凌牙…だが、遊馬だけは…真月を失った事で冷静さを欠いていた…。

 

【ヒヒヒ…そいつァ楽しみだぁ…なぁ?お前も応援してやれよぉ、し・ん・げ・つくんよぉ!!】グリグリ

 

「てめぇ!!やめろぉぉ!!!」

 

(ッ─!落ち着け、遊馬!)

遊馬の心を逆撫でるようにベクターは真月の頭を踏みにじる…思わず飛び出そうとした遊馬だったが…アストラルが必死にそれを押し留めた…。

 

(怒りに身を任せれば…奴の思うツボだ…!)

 

「くっ…そぉ!!カードを伏せてターンエンドだぁ!!」

 

「カードを伏せ…ターンエンド…!」

怒りを押さえ込みながらターンを終えた遊馬と凌牙…だが…

 

ビリビリ…ピシャアアン!!

 

 

「「っあ"あ"あ"あ"…!!」」

エクシーズモンスターを主軸とする2人は「サルガッソ」の効果でダメージを受けてしまう…だが、この男だけは…一味違う!

 

「闇に輝く銀河よ!希望の光となりて我が下僕に宿れ!光の化身…ここに降臨!現われろ!『銀河眼の光子竜』!!」

カイトは「ギャラクシオン」の効果により、自身のエースである「光子竜」を呼び出す…ダメージこそ受けてしまうが…後の布石を繋いだ…!

 

 

 

【クヒッ…!仲良く同じダメージとはなぁ…!次は俺様のターンだぁ!】

 

 

 

  104

102  107

 

 

 

【いでよ!『No.104』!その眩き聖なる光で愚かな虫ケラ共を跪かせよ!『仮面舞踏士(マスカレード・マジシャン)シャイニング』!】

 

『来い!「No.102光天使(ホーリー・ライトニング)グローリアス・ヘイロー」!!』

 

『宇宙を貫く雄叫びよ…遥かなる時を遡り、銀河の源より蘇れ!!顕現せよ!そして我を勝利へと導け!!「No.107」!!「銀河眼の時空竜」!!』

 

続いて現れるのはバリアンの切り札・オーバー・ハンドレット・ナンバーズ達…黒き時空の竜王…天使の騎士…そして仮面を着けた舞踏士を呼び出す…そして「サルガッソ」の効果が炸裂する刹那…!

 

 

【俺は速攻魔法『サルガッソの灯台』の効果発動!効果ダメージを無効にし、墓地にある限り「サルガッソ」の効果によるダメージを受けなくなるぅ!!】

 

(くっ…!やはり防衛策を…!)

ベクターとドルベは「サルガッソ」のダメージを防ぐカードを用意していた…なお、ミザエルだけはカイトと対等に戦う為に「サルガッソの灯台」を使用していない…。

 

 

【バトルだぁ!「シャイニング」で「希望皇ホープ」を攻撃!】

 

「『ホープ』の効果発動!ムーンバリア!!」

攻撃を仕掛けるベクターに対し、遊馬は無敵の盾を発動する…だが…!

 

 

【馬鹿め!「シャイニング」の効果発動!ORUを1つ使い!バトル中に発動した効果を無効にするぅ!】

 

「なにっ─!?」

シャイニングが手にしていたリングを投擲…ホープの守りを弾き飛ばす!

 

【さらにさらにィ!豪華特典として800ダメージをプレゼントだぁ!】

 

「っぐああああ!!」

さらにリングは遊馬に直撃…体を弾き飛ばす!

 

 

【まだだぁ!「ホープ」の効果は無効となったぁ!「シャイニング」の攻撃は続行だぁ!】

 

「罠発動!『ハーフ・アンブレイク』!戦闘破壊を無効にし、受けるダメージを半分にする─!!」

ダメージを受ける刹那、泡のバリアが遊馬のダメージを半減させる!

 

【おやおや…しぶといなぁ…!まぁ…()()()()()()()()()()()()()()()がなぁ…!カードを伏せて…ターンエンドォ!】

ダメージを最小限に抑えた遊馬…だが、遊馬は気付いていない…既にベクターの作戦に乗せられている事を…。

 

 

 

「っ…見てろぉ!必ずお前を、この前と同じように叩き潰してやる─!!」

 

(遊馬!落ち着け!冷静になるんだ!)

 

「オレは、オレは絶対に勝つ!勝って真月の仇を…!!」

 

(怒りに飲まれるな!遊馬─!!)

 

パシン!!

 

「っあ…!?」

真月を守れなかった罪悪感…そしてベクターへの怒りに飲まれる遊馬にアストラルの張り手が炸裂する…!

 

 

(…遊馬、君は1人ではない…!私がいる、シャークもカイトも…仲間達がいる!全てを1人で抱え込むな!)

 

「アストラル……ごめん、熱く、なり過ぎた…」

 

【チィ…!】

アストラルの張り手と言葉で遊馬は一時的に落ち着きを取り戻す…その様子を見たベクターは忌々しげな表情を浮かべ…遊馬を潰す為の一手を打つ…!

 

 

【チッ…白波遊海のせいで心が強くなってやがったか…だがよぉ…これを見て、耐えられるかなぁ…?】

 

キィン─!

 

(なっ─!?)

 

「ゆ、遊海─!」

 

「父さん!!」

ベクターが指を鳴らし、その背後にモニターが現れる…そこに映し出されていたのは…別の場所で骸骨の怪人と戦う遊海の姿だった…。

だが…その遊海は傷だらけ倒れ伏し、苦しげな表情を浮かべていた…!

 

【ギャハハハ…!アゴールの奴も上手くやってるなぁ…!何が最強の男だ?あんなボロボロになってよぉ…情けないなぁ!ギャハハハハハ!!】

遊馬達は知らない、遊海もまた罠に嵌められ、劣勢を強いられている事を……過去からの復讐鬼を相手に必死に戦っている事を…それを嘲笑うベクターを見た時…。

 

 

──プツン──

 

 

ベクタァァァ!!

遊馬の中で張り詰めていた糸が一気に引き千切れた…!

 

 

 

 

39

 

 

 

「今こそ現われろ!『CNo.39』!『希望皇ホープレイV』!!」

遊馬が引き当てたのは真月の形見『リミテッド・バリアンズ・フォース』…遊馬は激情のままに『ホープレイV』を呼び出す!

…だが、アストラルは気付いていた…ベクターが()()を狙っている事を…だが、怒りに飲まれた遊馬は聞く耳を持たない─!

 

【現れたなぁ!『ホープレイV』…!だが、『サルガッソ』の効果で500ダメージだ!】

 

ビシャーン!!

 

「っぐ─!!『ホープレイV』の効果発動─!」

サルガッソの雷を受けてしまう遊馬…だが、その痛みを無視し、ホープレイVの効果を発動させる!

 

 

「カオスORUを1つ使い!フィールド上のモンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える!!『シャイニング』をぶった斬れ!ホープ剣Vブレード・シュート!!」

 

【ぐおっ…ぐあああぁぁぁ!?】

シャイニングが効果を無効にできるのはバトルフェイズのみ…それをわかっていた遊馬は全身全霊…初めて他人を害するつもりで「精霊の力」を使い、ベクターを斬り飛ばした…!

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

「やっ、やったウラ!『ホープレイV』の効果が決まったウラー!!」

 

「トドのつまり!これでダイレクトアタックを決めれば遊馬君の勝ちです!!」

飛行船からデュエルを見守る徳之助と等々力が歓声を上げる…だが…。

 

 

《いけません…!遊馬は完全に怒りに飲まれています…この揺り戻しが来たら…!》

 

「ダメ…!ベクターの思うツボになっちゃう…!!」

状況をみていたフレア…そして遊海の痛ましい姿を見て心を痛めていた翠が遊馬を見つめる…画面の中ではベクターが消え去ってしまい、困惑する遊馬とアストラルの姿があった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「どういう事だ…!?ベクターが、消えちまった…!?」

 

(まさか、今の一撃でベクターを消し飛ばしてしまったのか…!?)

 

「そんな…じゃあ、このデュエルは……」

ホープレイVの効果による煙が晴れた先…そこにベクターは()()()()()…精霊の力を込めた一撃で不安定だった「サルガッソ」が揺らぎ、ベクターを飛ばしてしまった…とアストラルは分析した。

 

 

「…ベクターを倒しても、真月は帰ってこねぇ…帰ってこねぇんだ…!!チクショオオオ!!」

仇敵・ベクターを倒した遊馬の心を支配したのは『虚しさ』だった…ベクターを倒しても、真月は帰って来ない…それをわかっているからこそ、遊馬は叫ぶしかなかった…。

 

 

 

 

 

『…ありがとう、遊馬クン…』

 

 

 

「えっ…まさか…!?」

遊馬の叫びが響くサルガッソ…そこに、小さな声が静かに響く…それは、死んでしまったと思われた真月の声だった…!

 

「真月…!生きてたのか!!良かった…よかったぁぁ!!」

真月はゆっくりと起きあがる…涙ながらに喜んだ遊馬は

真月に駆け寄ろうとする…だが、それは…。

 

 

『くくく…!なぁぁんちゃってぇ…!

 

 

「えっ…!?」

起きあがった真月…だが、その様子は遊馬達が知るものと違っていた…彼らの知る真月は…こんなに邪な笑顔をする者ではなかった…!

  

 

『あ〜…可笑しくって腹が痛いわ〜!オモシロイ奴だなぁ、お前…ほんと〜に()()の事を…トモダチだと思ってたなんてなぁ!!』

 

「し、真月…!何を言ってるんだよ…!?」

態度が豹変した真月…その姿を見て困惑する遊馬…そして、ついに()()が姿を現す!

 

 

『なら、見せてやるよぉ…!もっとオモシロイモノをよぉ!!バリアルフォーゼェ!!

 

「「「なっ…!?」」」

赤紫のエネルギーを纏った真月が力を開放し、姿が変わる…背中にはシャツを突き破り紫の翼が、そしてその姿も悪魔のような黒き異形へと変わっていく…その姿は先程まで戦っていたベクターそのものの姿だった…!

 

 

 

「べ、ベクター!?き、貴様…真月に化けてたのか!?本物の真月はどこだぁ!!」

 

【真月ぅ…?ホンモノォ…?誰それ?オレ、ベクタァ…!鈍いなぁ…九十九遊馬…!】

姿を現したベクターを問い詰める遊馬…だが、その答えは残酷なものだった…。

 

 

()()()()()だったんだよぉ…!】

 

「なっ!?でも、さっきまでベクターはオレと戦って…!?あの時も真月とお前は…同じ場所にいた!!」

 

【まだわからないのかぁ?この前デュエルした『俺』と今までデュエルしてた『俺』は…オレが生み出した()()だったんだよぉ!!本物のオレはお前の親友『真月零』に化けていたのさぁ!ギャハハハハハ!!】

それが真月…否、ベクターの真実…真月零はベクターの人間体であり…遊馬を油断させる為に、ずっと人間界に潜伏していたのだ…。

 

 

【じゃんじゃじゃーん!今明かされる衝撃の真実ぅぅ!いや〜…本当に苦労したぜぇ…マヌケな転校生を演じて…白波遊海に正体を見破られないように、街で騒ぎを起こして撹乱して…お前につまらねぇ協力までしてさぁ!!】

ベクターは自身の悪行を笑いながら暴露する…それを聞いた遊馬達は…。

 

 

 

(……遊馬、()()()()()()()()()…前もって聞かされていなければ…私は、君を信じられなくなっていただろう…!)

 

「…ごめん、アストラル…!オレ…騙されてたなんて…!!」

 

【ん〜?おやおやぁ?アストラルに真月の事話したなぁ〜?ひどいなぁ遊馬クン…!ボクとの約束破るなんてぇ〜!!】

アストラルと遊馬の反応を見たベクターは真月の声色で遊馬を嘲る…。

 

実は遊馬、遊海に真実を話した後にアストラルにも真実を話していたのだ…無論、真月がバリアン警察である事や「RUM」を渡されたのも真月からである事も…それ故にアストラルは遊馬が騙されていた事を信じる事ができたのだ…。

 

 

【半分は失敗かぁ…?でも、楽しかったぜぇ!お前との友情ごっこォ!ヒャハハハハハハ!!】

 

「でも、嘘だ…!お前が真月な訳ねぇ…!!アイツは人を騙すような奴じゃねぇぇ!!」

遊馬を嘲笑うベクター…だが、真実を聞かされてなお、遊馬は()()を信じていた…彼と過ごした数ヶ月…遊馬は心から真月を信頼していた。

 

…その真実が判明するのはまだまだ先の事…この場にいるベクターは「邪悪」そのものである…!

 

 

「ベクター…お前は、許さねぇ!!『ホープレイV』でダイレクトアタック!!」

怒りに震える遊馬はベクターに斬りかかる…だが…!

 

【本当にヤサシイなぁ遊馬ぁ…優しいからこそ、立派なカモになるんだよォ!!永続罠『Vain-裏切りの嘲笑』を発動!『V』と名のつくモンスターが攻撃してきた時!その攻撃と効果を無効にする!さらにさらに!相手のデッキにある『V』カードを全て墓地に送り!さらに墓地に送られた『V』カード1枚につきオレのライフを500開放するぅぅ!!】

 

(なっ…!?遊馬!『V』カードは抜いておいた方が良いと言ったはず!)

 

「ご、ごめん─!!」

攻撃を仕掛けた遊馬のデッキから5枚のカードが飛び出し、墓地に送られる…遊馬から真月の真実を聞かされたアストラルは遊馬のデッキを検めた…その中には強力な『V』のカードがあった…。

嫌な予感を感じたアストラルは遊馬にカードを抜くように指示していたが…真月との友情を信じていた遊馬は…カードを抜く事ができなかったのだ…。

 

 

【さらにさらにィ!墓地に送られたVカード1枚につき、相手のデッキのカードを5枚…つまり25枚墓地に送る!!そして墓地に送られたVカードを含めればぁ…30枚だぁ!!】

 

「オレのデッキが─!!」

 

(デッキ破壊─!!)

遊馬のデッキが墓地に送られていく…残りのデッキ枚数は…僅か3枚となってしまった…!

 

 

 

【人思いにはやらねぇ…ジワジワとお前は苦しむんだよぉ!!】

 

(ドローできなくなった時…それは、デュエリストの敗北を意味する…!わざわざ自分の分身を用意してまでデュエルしていたのは…この為だったのか…!)

 

【その通り…!お優しい遊馬の事だから…『友情のカード』は必ずデッキに入れると思ったぁ…そして真月がオレに殺られたと見せかければ、頭に血が昇って…一気に『ホープレイV』を出してくると思ったのよぉ!ギャハハハハハ!!】

ベクターの回りくどく、悪質な作戦にアストラルは拳を握り締める…遊馬の心を玩び、裏切る…なんと卑劣な作戦だろうか…!

 

 

【さぁ…!残り3枚のデッキで足掻いてみせろよ!どのみち、お前達は生きて戻る事はできねぇ!全てお前が招いた結果だ!遊馬ァ!!】

 

「オレが…オレがみんなを巻き込んだせいで…!」

傷付いた遊馬の心をさらに追い詰めるベクター…遊馬の心は壊れてしまう寸前だった…。

 

 

 

 

そしてベクターは遊馬を執拗に追い詰める…ベクターは「仮面舞踏士シャイニング」を復活させ、その効果で遊馬のデッキを削り、残り2枚…残りライフは僅か1100…どちらにしても残り3ターンで遊馬は敗北する事になる…。

 

さらにそれぞれに戦う凌牙とカイトもドルベとミザエルに追い詰められていた…!

 

 

 

Side凌牙

 

 

32

 

 

『現われろ!「CNo.32」!暗黒の淵より目覚めし最強の牙よ!「海咬龍シャーク・ドレイク・バイス」!』

ドルベと戦う凌牙はついに自身の切り札…『シャークドレイクバイス』を呼び出す!

 

 

「まずい!また『サルガッソ』の効果でダメージが!!」

 

「いいえ…これが凌牙の狙いよ!」

璃緒と共に凌牙のデュエルを見守っていた鉄男が声を上げる…だが、ダメージを受ける前提で凌牙は動いていた…!

 

 

ビシャーン!!

 

「っぐ…!!『シャークドレイクバイス』は、俺のライフが1000以上の時に破壊される…!だが、これで俺のライフは900だ…!」

それは『ホープレイ』と『シャークドレイクバイス』に共通するデメリット効果…凌牙は『サルガッソ』の効果を逆手に取り、切り札を呼び出したのだ…!

 

 

『命を削っての特殊召喚…見事だ、私はお前のような男を2()()知っている…1人は敗北を前に私を相討ちに持ち込んだお前の父親・白波遊海…そしてお前は…()()()を思い起こさせる…!その荒ぶる言動の裏に、まっすぐな魂を感じる…!願わくば…お前とは真っ当なデュエルで戦いたかった…!』

見事なプレイングを見せる凌牙をドルベは称賛する…。

 

「寝言は寝て言え…!俺は…お前らを許さない!!」

凌牙は鋭くドルベを睨んだ…。

 

 

 

 

 

Sideカイト

 

 

 

 

「逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりてその姿を現すがいい!降臨せよ…!我が魂!!『超銀河眼の光子龍』!」

 

 

『現れたな…!「超光子龍」!私は罠カード「ニュートリノ・ダウジング」を発動!「時空竜」のORUを1つ墓地に送り、さらに手札の「RUM-バリアンズ・フォース」を墓地に送り!その効果を発動する!!』

 

「なっ…!?オレのターンにランクアップだと!?」

超光子龍を呼び出したカイトを前に…ミザエルも時空の竜王を呼び出す!

 

 

107

 

 

『逆巻く銀河を貫いて…時の生ずる前より蘇れ!永遠を超える竜の星!顕現せよ!「CNo.107」!「超銀河眼の時空龍」!!』

闇色の爆発と共に…ミザエルの切り札、黄金に輝く3つの首を持つ巨竜が現われる…それこそが「超時空龍」の本当の姿だった…!

 

 

「これが、奴のカオスナンバーズ…!あの時、相まみえる事なく終わった…もう1体のギャラクシーアイズ…!」

 

『さぁ…!今こそ、雌雄を決する時だ!』

火花を散らすカイトとミザエル…だが、さらなる危機が迫っていた…!

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

ビビーッ!ビビーッ!!

 

ゴゴゴ…ゴゴゴゴゴゴ!!

 

 

「きゃあああ!?」

 

「な、何事ウラか─!?」

飛行船で遊馬達を見守っていた仲間達…だが突然、飛行船を大きな揺れが襲う!!

 

 

「み、見てください!飛行船が…飛行船が吸い込まれてます─!!」

 

「っ…!ブラックホールよ!私達をここに連れてきたように…ブラックホールが飛行船を吸い込んでる!!」

翠が叫ぶ…突然発生したブラックホールが飛行船を飲み込もうとしていたのだ!

 

 

 

「飛行船が!!」

 

【ああ…時々あるんだよなぁ!サルガッソのアチコチにブラックホールが発生して、何もかも吸い込んじまうんだ!サルガッソが生け贄を欲しがってるのかもなぁ!ギャハハハ!】

 

「小鳥!みんな─!!」

ベクターが笑う中…遊馬は叫ぶ事しかできない…だが、ベクターは遊馬に悪魔の取引を持ちかける…!

 

 

【あの穴…塞いでやろうかぁ?】

 

「なにっ…!?」

 

【オレ様が持ってる「サルガッソの灯台」…その力を増幅してブラックホールを塞いでやるよぉ…その代わり!代価はお前のナンバーズ全てだ!】

 

「そんな事…そんな事できるかよ…!」

ベクターの提案…それは到底受け入れる事などできない事だった…!

 

 

【そうだよなぁ…!アストラルが大変な事になっちまうもんなぁ…!じゃあ飛行船のお仲間を諦めるか?それもできないよなぁ!】

 

「やめろ…!小鳥達は関係ないだろぉが!!」

 

【その関係ない奴らを巻き込んだのはお前だぁ!ギャハハハハハ!!さぁ、選べ!仲間か、アストラルか!2つに1つだぁ─!!】

揺れ動く遊馬の心を嘲笑うベクター…遊馬は為す術もない…だが、それは…

 

 

 

「何を迷ってるの遊馬!アストラルとデュエルを続けて!!」

 

 

 

「っ…!小鳥!?」

頼れる仲間達と…特級のイレギュラーがいなければの話である!

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

「どうしよう…!このままじゃ…!!」

ブラックホールに引き込まれる飛行船の中で震える子供達…だが、希望は失われていない…!

 

 

「立って!諦めるのはまだ早いわ!」

 

「翠さん…!」

 

「あなた達はなんの為に遊馬君と一緒に来たの?遊馬…君と一緒に戦う為に来たはずよ!遊馬君の足を引っ張る為じゃないはずよ!!」

 

「そうウラ…!オイラ達は遊馬を助ける為に来たウラ!」

 

「トドのつまり…僕達が諦めたらダメなんです!」

翠の言葉に等々力と徳之助が奮起する…!

 

 

「翠さん…!私達はどうしたらいいですか!」

 

「…私が…遊海さんと遊馬君の代わりにみんなを守る…だから、手伝って!!」

 

 

Sideout

 

 

 

「遊馬!私達は大丈夫!私達は遊馬の足を引っ張りに来たんじゃない!貴方の使命は…アストラルとナンバーズを守る事…そう誓ったはずよ!」

 

「小鳥…!」

通信越しに響く小鳥の声…それは遊馬に力を与える…!

 

「私達の事はなんとかする!だから…勝って!人を信じる事や、友達や絆を大切に思う事が間違ってないって事を!貴方が間違ってないって事を…証明して!」

 

「小鳥…わかった!オレは必ず…勝つ!!」

小鳥の激励を聞いた遊馬の魂に炎が灯る…仲間達の願いを背負い、遊馬は前を向く!

 

「心配しないで…私達には、伝説のデュエリストがついてるんだから!…かっとビングよ!遊馬!」

小鳥は通信を終える…それは希望の合図だった…!

 

 

 

「…我が身に宿すは創星の女神…命を生み出した原初の母…!遥かなる眠りから目覚め、私に力を与え給え!」

 

キィン─!

 

「あの光は…!」

吹き荒れるブラックホール…その中で神秘の光が輝く、それはSopiaの力を纏った翠が発した光だった…!

 

 

「フレアさん…私に力を貸して!」

 

《我が身は全てを照らす光…虚無の穴など、何するものぞ!!》

さらに、翠を守るようにフレアが…ラーの翼神竜が飛翔する!

 

 

「創星神権能開放…創造の前に破壊あり…破壊の後に希望あり!」

 

《遊海…私に力を…我が全力で虚無を吹き飛ばす!》

力を集中した翠とフレア…その力をブラックホールに解き放つ!

 

 

《ゴッド・ブレイズ・キャノン!!》

 

「疑似宝具…展開!クリエイト・エクスプロージョン!!」

 

キィン─! ドオオン!!

 

太陽神の炎と創星の息吹…2つの神の力は混ざり合い…ブラックホールを消し飛ばした…!

 

 

 

「や、やった!助かったウラ─!!」

 

「ま、間に合ってよかった…!」

 

《フォウ!》

それと同時に吸い込まれかけた飛行船が子供達の手で再起動…危険な領域を脱出した!

 

 

 

【チィ…!なんだあの化け物女は…!ブラックホールを打ち消しやがった!】

 

「よっしゃあ!流石だぜ!小鳥!翠さん!みんな─!!」

仲間達の全力の脱出劇…それは遊馬に笑顔を取り戻す!

 

 

「今度は遊馬達の番よ!」

 

「キャットビングよ!」

 

「頑張るウラ!!」

 

「最後まで…諦めないで!!」

 

「みんな…オレのせいで危険な目に遭わせてゴメン…!」

仲間達の激励に涙を浮かべる遊馬…彼は1人ではない、掛け替えのない仲間と共に遊馬は強くなっていく!

 

 

「勘違いすんなよ遊馬!俺は自分の意思で戦いに来た!」

 

「オレもだ、バリアンには借りがある…お前が止めようとオレも自分の意思で来た!」

 

「シャーク…カイト…!」

 

「くだらない感傷に浸ってないで…とっととベクターをブッ倒せ!父さんに叱られるぞ!」

 

「おう…任せろ!!」

共に戦う凌牙とカイトの言葉…それに頷いた遊馬はアストラルに向き直る…。

 

 

「アストラル…本当にごめん…!もっとお前と話せばよかった…!お前を信じればよかった…!!」

 

(何も言うな遊馬…勝つぞ、このデュエル!!)

 

「おう!!」

遊馬はアストラルへと謝罪する…そして2人は最強の力を開放する!

 

(いくぞ…ZEXALだ!!)

 

「かっとビングだ!!」

 

オレと私でオーバーレイ!!

 

 

それは約束された勝利を掴む奇跡…だが、それは…

 

 

 

 

【総仕上げといくかぁ…!アストラル…お前は…遊馬を()()()()()()()()()()ぁ!!】

 

(っ─!?)

ZEXALへと融合する刹那…ベクターが声を張り上げる…ベクターの計画は…全て、この瞬間の為に…!

 

 

【お前は今、心の底から遊馬を信じているのかぁ?疑ってるんじゃあないのか〜?お前に嘘をついていた遊馬の事を…?自分の心の奥底までよーく覗いてみろよぉ…!お前の心の奥底には小さな小〜さな染みが付いている筈だぁ…!】

 

(っ…!)

 

「アストラル!?」

ベクターの言葉でアストラルは自覚した…自身の心の奥底に、針の穴のような小さな黒い染みがある事を…。

 

それはアストラルが感じた「負の感情」…遊馬への「怒り」…真月への「嫉妬」…遊馬への「猜疑心」…それがアストラルの心に染みを作っていたのだ…!

 

 

【そいつを素直に認めるんだなぁ…今まで執拗に遊馬を責めて追い詰めてきたのはなぁ……アストラル、その裏でお前の心に自分を裏切った相手への疑いの根を張らせ、怒りという芽を出させる為だったんだよぉ!貴様は純潔で疑う事を知らない…そして、裏切られる事に免疫がない…!だから僅かな黒い小さな染みで十分……それだけで命取りだ!!今、その小さな染みを無限の絶望の闇に広げてやるよ…!】

 

「ふざけんな!アストラルは…そんなモンには負けねぇ!!」

アストラルとの絆を信じる遊馬はZEXALとなる…だが…!

 

 

【忘れたのかぁ…?「ホープレイV」はバリアンの力だぁ!!】

 

ギィン─!!

 

「なっ!?うわあああ─!?」

ベクターはバリアンの力に冒されたナンバーズを介してZEXALに干渉…融合を失敗させる、そして…

 

 

(ぐっ…!?ぐあ"あ"あ"あ"─!?)

 

「アストラル─!!」

アストラルの胸…心から闇が吹き出す…そしてアストラルは…

 

 

ドクン…ドクン!!

 

ハアア…!

 

「アスト、ラル…!?」

 

【ヒャハハハハハハ…!暴走しやがった!】

黒き影を纏い、闇へと…堕ちてしまった…!

 

 

ゼアル…ZEXAL…ぜある…!!

 

「アストラル!どうしちまったんだよ!?ぐあっ─!?」

闇に飲まれたアストラルは遊馬へと掴みかかり…闇色の渦へと飛び込む!

 

 

闇に飲まれし魂が交わる時…全てを破壊する力が現れる

 

「やめろ…やめろ!!うわあああぁぁぁ!?」

アストラルは遊馬の意思を無視して融合してしまう!

 

 

『エクシーズチェンジ…ZEXAL

闇の中から現れたのは…浅黒い肌に全身が赤黒く染まったZEXAL…否、暗黒の戦士…ダークZEXALだった…!

 

 

【これがZEXAL…?すっかり悪意に飲み込まれたようだなぁ…!】

闇に飲まれたZEXALを見てベクターは笑みを浮かべた…。

 

 

 

 

『暗き力はドローカードをも闇に染める…ダーク・ドロー…』

ダークZEXALの右腕に闇が集中…破滅の力が創造される!

 

【ヒャハハハハハハ…!ダークドローと来たか…!面白い!】

 

『「DZW-魔装鵺妖衣(キメラ・クロス)」を召喚』

ダークZEXALの場に日本に伝わる妖怪『鵺』を模したモンスターが現われる…!

 

 

『「キメラクロス」の効果発動…相手の魔法・罠1枚を破壊する』

 

【なに!?】

鵺の吐き出した蒼炎がベクターの「Vain-裏切りの嘲笑」を灰に変える!

 

『そして、カードを破壊した事で『キメラクロス』を『ホープレイV』に装備…それにより『ホープレイV』はモンスター効果を失い、バトルでは破壊されない…』

ホープレイVが闇の衣を纏い、巨大な鎌を構える…その姿はまるで魔王のような姿だった!

 

 

『バトル、『ホープレイV』で『シャイニング』を攻撃』

 

【馬鹿め…!攻撃力は「シャイニング」が上だ!】

ホープレイVの大鎌はシャイニングに弾かれ、ダークZEXALのライフを削る!

 

 

『「キメラクロス」の効果発動…これを装備したモンスターの戦闘でダメージを受けた時、攻撃力を2倍にして、もう1度攻撃できる…ダークチャージ…!』

ホープレイVがさらなる闇を纏い、再びシャイニングに斬りかかる!

 

【チィ…!罠カード『ハンドレット・オーバー』を発動!自分のエクシーズモンスターの戦闘破壊を無効にする!ぐおおっ!?】

流石に不味いと感じたベクターは罠を発動…ホープレイVの攻撃を受け止める!

 

 

【その代わり…攻撃してきた相手モンスターはもう一度攻撃できる!】

 

『『ホープレイV』で『シャイニング』を攻撃!』

 

【その瞬間!『ハンドレットオーバー』のさらなる効果発動!この効果の対象になったモンスターが攻撃された時!そのモンスターの攻撃力は相手の攻撃力に100を足した攻撃力になる!!】

力を倍化させたシャイニングはホープレイVの攻撃を跳ね返す…本来なら、ここでバトルは終わる…だが、ダークZEXALは…!

 

『『キメラクロス』の効果発動!ダークチャージィ…!再び『シャイニング』を攻撃!!』

再び無謀な攻撃を仕掛けた!

 

 

 

 

Side飛行船

 

 

 

《いかん…!あの黒いZEXAL…頭に血が昇り過ぎて暴走しておる!!》

 

「えっ…!?」

メガロックの呟きに小鳥が後ろを振り返る…!

 

《アストラルが闇に飲まれた事で…今のZEXALは「攻撃力を上げ続ける」事に集中していて周りが見えておらん!このままでは自滅してしまうぞ!!》

 

「そ、そんな─!!」

遊馬のライフは残り900…ライフが600を下回った時点で「サルガッソ」のダメージを耐えられず、遊馬達の敗北は決まってしまう! 

 

 

「遊馬!お願い!止まって!!正気を取り戻して…!!遊馬あああ!!」

小鳥の悲痛な叫びがサルガッソに響いた…。

 

 

 

 

ダーク…チャァァジィィ!!

ホープレイVの攻撃力はついに83200までアップした…だが、そのライフは既にデッドゾーンに踏み込んでしまっている!

 

【そうだ…!攻撃してこい!それが貴様の最後だぁ!】

 

ドクン─!

 

『っ─ぐぅぅ…!?』

 

【なに…?】

それは奇跡か偶然か…ダークZEXALが攻撃宣言をする直前、強い鼓動の音がサルガッソに響く、それは次元を超えた場所で燃え盛る、絆の鼓動…それを感じたダークZEXALは動きを止め…。

 

ギィン!

 

キィン─!

 

キィン─!

 

「ぐあっ…!?」

 

(ぐっ…)

 

「遊馬!アストラル!!」

間一髪のところでアストラルと遊馬が分離した…!

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬@アストラルの精神世界

 

 

 

 

「うっ…ここは…オレ…アストラルと…」

遊馬が目覚めると…そこは暗雲に覆われた紫の砂漠だった…そこには…

 

「アストラルの、石像…塔…?」

砂漠の真ん中にアストラルの姿を模した50mほどの塔が屹立していた…その胸の辺りには仄かな光が瞬いている…。

 

 

「まさか…ここはアストラルの心の中なのか…?…なら、謝らないと…オレが悪かったって…!待っててくれ!アストラル!!」

遊馬は走り出した…アストラルに謝罪する為に…!

 

 

 

 

 

 

「アストラル!!」

 

(来たのか、遊馬…いまさらなにをしにきた?)

無限に続く階段…数々の罠…番犬の群れを越えた先、遊馬はステンドグラスに照らされたアストラルのいる部屋へと辿り着く…そこには無表情のアストラルが佇んでいた…。

 

 

「アストラル…オレ…!お前に謝ろうと思って……!」

 

(確かに、君は私を裏切った…そして……私は君を信じる気持ちを失った……だが、その代わり…私は新たな力を手に入れた……『悪』だよ…遊馬…!知らなかったよ…!悪が…憎悪が!ここまで強い力になるとは!!

 

「アストラル!!」

影を纏ったアストラルは狂気の笑みを浮かべる…それはあまりにも強すぎる「カオスの力」…それがアストラルを蝕み、正気を失わせていたのだ…!

…かつてアストラルは復讐に狂うトロンの心情を理解できなかった、それを理解してしまったのが…今のアストラルだった…!

 

 

 

わかる…解るゾ!力が満ちてくルのが…!もっとダ!もっと憎悪ヲ!もっと怒リを!疑イを!それガ私を満たすときィ…!私は更にツヨくなるゥゥ!

 

「アストラル…オレのせいだ…!オレのせいで!!」

正気を失ったアストラルはさらなる力を…さらなる闇を求め、その体を混沌に包む…!

 

 

遊馬ァ…キミには感謝してイルぞ!この力を齎してくれたのはキミだァ!全身を満たす憎悪が!全てを壊す力を与えてくれる!!黒く…黒黒黒クゥゥ!染メルンダ!ワタシのスベテォォ!!

 

「や、やめろぉぉ!!!」

 

『ぎゃは…ギャハハハハハァ!!』

暴走するアストラルを止める為、遊馬はアストラルに突撃すると…だが、アストラルの全身から影の触手が遊馬へと襲いかかり…!

 

 

ドクン─!

 

 

なん、ダ…!コノ力は…熱、イ!!

 

「うおおぉぉ!!アストラルぅぅ!!」

 

ビキ…バリーン!!

 

それは異次元で戦う遊海が覚醒した余波…それがアストラルの隙を作り…遊馬はアストラルと共にステンドグラスを割りながら、外へと飛び出した!

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「うっ…アストラル!!」

 

「遊馬!!『ホープレイV』を止めろぉ!!」

 

「そうしなければ貴様の負けだ!!」

 

「っ!?オレはこれでターンエンドだ!!」

正気を取り戻した遊馬に凌牙とカイトが叫ぶ…遊馬はライフポイントと見た事のない鎌を振りかぶるホープレイVを見て、慌ててターンを終えた…。

 

 

【チッ…まぁ、『サルガッソ』のダメージは受けてもらうぜ!!】

 

ビシャーン!!

 

「ぐあああああ……アスト、ラル…」

降りそそぐサルガッソの雷に倒れ込む遊馬…そのライフは…僅か100となった…。

 

【お前のライフは残り100!そしてデッキは残り1枚!!おまけに頼みの相棒もそのザマだぁ!もう諦めろよぉ!!ギャハハハハハ!!】

 

「オレは、絶対諦めねぇ!アストラルを…みんなを!オレの大事なものを!これ以上絶対傷つけさせねえ─!!」

満身創痍の遊馬とアストラルを嘲笑うベクター…だが、遊馬の魂の炎は…まだ燃え尽きてはいない!

 

 

 

104

 

 

【現われろ!「CNo.104」!混沌より生まれしバリアンの力が光を覆うとき!大いなる闇が舞い上がる!「仮面魔踏士(マスカレード・マジシャン)アンブラル」!!】

業を煮やしたベクターは自身の切り札、オーバーハンドレットナンバーズである仮面の魔人を呼び出す!

 

 

 

 

「アンブラル」の効果は強力だった…その効果により装備カードとなっていた「魔装鵺妖衣」を破壊…さらにORUを使う効果で遊馬の残り手札2枚を捨てさせ、ライフを半分の半分…25にまで追い詰め、ダイレクトアタックを仕掛ける…。

 

だが…遊馬は渾身の罠カード「エクシーズ・リベンジ・シャッフル」で「希望皇ホープ」を復活させ、墓地に送られていた「ブリペントマト」でダメージを防ぎ…さらなる攻撃を墓地の「マジック・リサイクラー」の効果で墓地の()()()使()()()()()()()()をデッキに戻す代わりに墓地に送った「エクシーズ・エージェント」の効果で「希望皇ホープ」のORUを復活させる事で回避した…!

 

 

【攻撃を防がれたか…だが!お前の残りライフは25、デッキは残り1枚!手札は0!伏せカードも0!…ここまで追い詰められた気持ちはどうだぁ…?ヒャハハハハ!!オレはカードを伏せてターンエンドォ!】

 

 

【ヒヒヒ…!どうしたぁ?その様子じゃ、ドローするのもキツイんだろぉ?相棒との絆を無残に放り棄てられても…まだ戦うつもりかぁ?】

 

「…ベクター…!たしかに、オレとアストラルの絆はお前に葬られちまった…けど、わかったんだよ!例え、どんな卑怯な手で墓地に送られても!積み重ねた想いの力を信じている限り…!『希望』という名のカードは…オレを助けてくれるんだってな!!」

 

【ハァ…!知ったような事言うじゃねぇか!けどよ…お前のデッキに残った『希望』…最後のカードは()()()()()なんだぜぇ?お前と真月の友情の証のなぁ!!】

ベクターは遊馬を嘲笑う…遊馬のデッキに残る「マジックリサイクラー」で戻された魔法カード…それは「リミテッドバリアンズフォース」だった…!

 

「たしかに、そうだ…でも…オレは引くしかねぇ…希望を信じて引くしかねぇんだ!!」

遊馬はデッキトップに手をかける、「リミテッドバリアンズフォース」で再び「ホープレイV」を呼び出せば、遊馬は勝利できる…。

だが、遊馬は知らなかった…ベクターの伏せカードは「バリアン・ボム」…手札の「バリアン」カードを破壊し、1000ダメージを与えるカードだったのだ…!

 

 

 

 

「オレのターン…ドロー!……ちく、しょう…」

 

「遊馬!!」

「リミテッドバリアンズフォース」をドローした遊馬だったが…限界を迎えて地面に倒れ込む…もう、遊馬には為す術はない……。

 

 

 

 

 

(…ゆう、ま)

 

「アストラル…」

倒れてしまった遊馬へとアストラルが語りかける…。

 

 

(私は、もうこれまでの様にキミを信じる事は出来ない…だが、どんな窮地に陥っても、希望を信じて戦う君を私は信じたい……!)

アストラルは見ていた…窮地を前に、アストラルを守る為に必死に戦う遊馬の姿を…。

 

 

(遊馬…)

 

「アストラル…」

 

「(オレ達2人で…かっとビングだ…!)」

 

キィン─!

 

引き裂かれた2人の心がいま再び、重なり合い…希望の光が溢れ出す!

 

 

「…希望に輝く心と心…2つを結ぶ強い絆が奇跡を起こす…!」

サルガッソを照らす希望の光…璃緒の紡ぐ言葉と共に、遊馬とアストラルは立ち上がる!

 

 

【貴様ら…!】

 

いくぞ…遊馬!

 

おう…!オレはオレ自身と!

 

私で!

 

オーバーレイ!!

 

赤と青の光に変わった遊馬とアストラルがサルガッソを駆け巡る!

 

 

 

オレ達2人でオーバーレイ・ネットワークを構築!

 

真の絆で結ばれし2人の心が重なりし時!語り継ぐべき奇跡が現われる!

 

エクシーズチェンジ!ZEXAL!

 

光の爆発と共に新たな奇跡が現われる…重厚さを増した赤と白のアーマーに盾を思わせるデュエルディスク…逆立った赤とオレンジの髪…その戦士の名は『ZEXALⅡ』!真の絆で生まれた奇跡の決闘者である!

 

 

 

【新たなZEXALだと!?だが、もう遅いんだよぉ!!罠カードはつ─!】

 

『それはどうかな!重なった熱き思いが重なりし時!希望の未来を再構築する!リ・コントラクト・ユニバース!!』

 

キィン─キィン!!

 

【な、なにぃぃ!?カードを書き換えただとぉ!?】

ベクターが「バリアンボム」を発動しようとした刹那、ZEXALが覚醒した新たな奇跡が絶望を塗り替える。

その名は「リ・コントラクト・ユニバース」…偽りの絆を真の絆によって希望に書き換えたのだ!

 

 

(奇跡の光が闇を祓い…『リミテッドバリアンズフォース』の真の姿を呼び覚ました!)

 

『オレは「RUM-ヌメロン・フォース」を発動!このカードは自分のエクシーズモンスターをランクアップさせ、カオスエクシーズを特殊召喚する!オレはランク4の「希望ホープ」でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!』

新たなランクアップマジックの発動と共にホープが銀河に飛び込み、希望の光が爆発する!

 

 

39

 

 

『現われろ!「CNo.39」!未来に輝く勝利を掴む!重なる思い、繋がる絆が未来を変える!「希望皇ホープレイ・ヴィクトリー」!!』

それはホープの新たな姿…ヒロイックな鎧を纏いし「勝利の皇帝」…その名は『ホープレイ・ヴィクトリー』!

 

 

【『ホープレイヴィクトリー』だとぉ!?だが、『サルガッソ』の効果で貴様は終わりだあああ!!】

 

『「ヌメロン・フォース」が発動された事でフィールドで表側表示のカードの効果は無効となっている!』

 

【なぁにィィ!?】

遊馬達を何度も苦しめた雷はその力を失った!

 

 

『バトルだ!「ホープレイヴィクトリー」で「アンブラル」を攻撃!その瞬間!「ホープレイヴィクトリー」のモンスター効果発動!ORUを1つ使い、バトルする相手モンスターの攻撃力を自身の攻撃力に加える!ビクトリー・チャージ!!』

 

【攻撃力、5800だとぉ!?】

それは勝利を掴む希望の力…格納された新たな腕が現れ、四刀流となったホープレイヴィクトリーが邪悪な魂に斬りかかる!

 

 

『これがオレ達の絆の力だ!いっけぇ!「ホープレイヴィクトリー」!「アンブラル」を…ベクターをぶった斬れ!ホープ剣!ダブル・ビクトリー・スラッシュ!!』

 

【ガッ…ぎぃやああああああ!?!?】

4本のホープ剣がアンブラルを両断…ベクターは無様に大地を転がり、新たな戦士が勝利を掴み取った!

 

ベクター LP0

 

ZEXALⅡ WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「やった…!ZEXALが…遊馬が勝ったぁ!!」

 

「「「「よっしゃあああ!!」」」」

遊馬達の奇跡の大逆転勝利に仲間達は喜びを分かちあう…だが、新たな光は…さらなる事態を引き起こす…!

 

 

ゴゴゴ…ゴゴゴゴゴゴ!!

 

「ッ…!?なんだ!?」

 

『マズイ…!サルガッソが…!新たなZEXALの光のエネルギーがサルガッソのバランスを崩したか…!!』

膨大な光のエネルギーの発露…それによりサルガッソ全体が鳴動…崩れ始めたのだ!

 

 

『逃げるぞ!ミザエル!』

 

『だが…!我らの戦いが!』

 

『そんな事を言っている場合か!?異次元の藻屑になりたいのか!!』

 

『くっ…そぉぉ!!』

崩壊し始めたサルガッソ…ドルベとミザエルは撤退するしかなかった…。

 

凌牙対ドルベ

カイト対ミザエル

 

サルガッソ崩壊により中断…

 

 

 

 

 

貴様ら…これで、勝ったと思うなよ…!

 

『……!』

ホープに吹き飛ばされ、致命傷を負ったベクターはフラフラと立ち上がる…だが、その目はギラギラと遊馬とアストラルを睨んでいた…!

 

アストラルの心を穢した、悪意の染みは決して消せはしねぇ…!穢されたという思いは永遠に残り…!お前達の絆を蝕んでいくぅ…!ははは…ハハハハハハハハ!!!

そう言い捨てたベクターはワープホールへと姿を消した…。

 

そして遊馬達も飛行船に回収され、崩壊し始めたサルガッソから脱出したのだった…。

 

 



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─戦いの終わりに─

「うっ…痛ってぇ〜…安心したら、急に…痛くなってきた…」

 

「遊馬!?大丈夫!?」

 

「大丈夫よ…!すぐに治すからね!」

サルガッソを脱出した遊馬達は飛行船で人間界へと向かっていた…だが、特に遊馬とアストラルの負った手傷は深く…翠達が治療にあたっていた…。

 

 

《凌牙くん、大丈夫?》

 

「へっ…遊馬達に比べればかすり傷…イテテ…」

 

「もう…無理に強がらないの!」

ウィンダに治療を受ける凌牙は強がるが…璃緒に呆れられている…。

 

 

《包帯OK!…痛くない?》

 

「ああ、感謝する」

 

《ほぉ…!小さいのに見事な手際でアリマス!》

 

《小さいは余計だよ〜!》

カイトはウェンに治療を受け、お礼を伝えている…戦いが終わり、穏やかな時間が流れる中…ただ一つ、解決していない事があった…。

 

 

 

「なぁ…翠さん、遊海は…遊海は何処にいるんだ…?」

 

「…わからないの…まだアヤカちゃんから連絡もないし…でも、大丈夫!きっと無事だから…!」

遊馬は魔法で自分を治療している翠に問い掛ける…アゴールによって連れ去られてしまった遊海…その行方は未だわかっていなかった…。

 

 

(ベクターが見せた映像…あれはサルガッソとは別の次元のはず、見当がつけば飛行船で探す事もできるが…)

 

《飛行船のエネルギー残量30%…我々が人間界に戻るのにギリギリの量でアリマス…》

 

「そんな…!それじゃあ、遊海は何処かの世界で一人ぼっちって事かよ…!!」

アストラルの言葉にオービタルがエネルギーの残量を伝える…それは無情な宣告だった…。

 

 

「遊海さんだけを異次元に置いていく事はできないです!」

 

「なんとか…なんとか居場所を見つけるウラ!」

 

「手伝うぜ!」

等々力・徳之助・鉄男の3人はレーダーに駆け寄り、目を皿のようにして反応を探す…!

 

 

「父さん…」

 

「心配すんな…父さんは絶対生きてる…!絶対に!」

遊海を心配する璃緒…凌牙は彼女を慰める事しかできなかった…。

 

 

 

「みんな…ありがとう…でも、一度人間界に戻りましょう…!」

 

「えっ…!?翠さんどうして!!」

 

「これ以上、みんなの親御さんを心配させる訳にはいかないわ…だから、ありがとう…!」

 

《フォウ…フォーウ…》

子供達をこれ以上危険な目に遭わせない為に翠は人間界に戻るように伝えた…。

 

 

 

「ニャッ!?よ、よくわからない電波を受信したわ…通信!?」

 

「「なんだって!?」」

コントロールパネルを見ていたキャッシーが声を上げる…それは異次元で受信するはずのない電波だった…!

 

(落ち着け…モニターに繋ぐぞ)

アストラルは警戒しながら通信へ応答する…!

 

 

(こちらは……次元飛行船!貴方は何者だ!)

アストラルは砂嵐の画面の向こうへと問い掛ける…!

 

 

『応答感謝する、我が名はアポリア…イリアステル滅四星が1人である!誰か話が通じる者はいるか!』

 

 

「えっ…!?アポリアさん!?」

 

「えっ!?翠さんの知り合いキャット!?」

通信が開かれた先…それは思わぬ人物からのものだった…!

 

 

「アポリアさん!翠です!白波翠です!!聞こえてますか!?」

 

『むっ…!翠か、丁度よかった…こちらで白波遊海とアヤカの身柄を保護した!合流地点の座標を求む!』

 

「「「え、ええぇ─!?」」」

 

「遊海さん…よかった…よかったぁ…!!」

 

 

それは思わぬ嬉しい知らせだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと…指定したのはこの辺りだっけ…?」

 

(ああ、間違いない)

夕暮れのハートランド埠頭…飛行船を降りた遊馬達は埠頭で目的の人物を待っていた…その時だった!

 

 

キィン─! バシューン!!

 

 

「で、デカい!!」

 

「なんて巨大なDホイールだ!?」

遊馬達の近くに巨大なワームホールが開く…その中から3つ首のドラゴンをモチーフとした超巨大Dホイール「トリニダード・ウロボロスⅡ」が現れた!

 

 

『久しいな、翠よ』

 

「アポリアさん!」

 

「「「(でっか!?)」」」

そのDホイールから降りてきた人物もまた大きな男…イリアステル滅四星の1人・アポリア…彼が現代に現れたのは数十年振りだった。

 

 

『アーククレイドルでこちらの時代を観測していた時に次元の揺らぎを見つけてな…調査に赴いてみれば…重傷を負った遊海を見つけたのだ、流石に目を疑ったぞ…』

 

「遊海さん!アヤカちゃん!」

そう言いながらアポリアはDホイールの足元にある龍頭のハッチを開く、そこには意識を失った遊海…そして治療を施すアヤカの姿があった…。

 

 

《翠…すいません、私もデュエルでダメージを受けてしまって…そうしたらたまたまアポリアが私達を見つけて、助けてくれたのです…》

 

 

時は少し遡る…

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

《マスター…!すみません…!私が不甲斐ないばかりに……》

「深淵の宣告者」の効果で異次元に追放されていたアヤカがなんとか「バミューダ」へと帰還する…既に決闘は終わり、遊海は瓦礫の上で倒れていた…。

 

 

《こちらアヤカ!翠、聞こえますか!!……流石に次元が離れ過ぎて通じませんか…!まずはマスターの治療を…!》

通信を断念したアヤカは真体を解除…生命力を失いつつある遊海の回復に専念した…。

 

 

《…マスター…なんて、無茶を…このままでは……》

新たなNEXUSを使った…使()()()()()()()事で遊海は酷く衰弱していた…それはアヤカの治療でも治せない…そんな時だった。

 

 

 

《時空の揺らぎ…何か来る!!》

 

キィン─!

 

時空の揺らぎを感知したアヤカは警戒態勢を取る…そして現れたのは…。

 

 

『白波遊海に…アヤカ…!?こんな次元の辺境で何をしている!?』

 

《アポリア!?》

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「父さん…!しっかりして!父さん!!」

 

「遊海さん!!」

 

「っ…うぅ、みどり…りお…?ここは…」

 

「遊海!!」

 

「遊海さんが…遊海さんが目を覚ましたわ!!」

 

「「「や、やったぁぁ!!」」」

翠と璃緒の呼び掛けで遊海はうっすらと意識を取り戻した…これで異次元の戦いは誰も欠ける事なく、終結したのだ…。

 

 

 

『まったく…これではアンチノミーがお前を心配するのも無理ないな…』

 

「アポリア…?なん、で…?」

 

《マスター、異次元に取り残されていた私達をアポリアが助けてくれたのです》

 

「そうだった…のか…ありが、とう」

 

『フッ…礼などいらんさ、私達がお前と遊星に受けた恩は返せるものではない、また何かあれば手を貸そう』

 

「ありが、たい…頼りにしてる、ぜ…」

遊海と約束を交わしたアポリアはそのまま未来へと帰っていった…。

 

 

 

 

 

「遊海!無事で…無事で良かったぁ…!」

 

「遊馬…ほら、泣くな…お前もよく戦った…偉かったなぁ…」

アポリアが去ったあと、遊馬は座り込んだ遊海に抱きついて涙を流す…。

 

 

(遊海、貴方を連れ去ったバリアンは…?)

 

「心配するな…きちんと倒した…もう、俺達の前に現れる事はない…アストラル、これを…」

 

(新たなナンバーズ…たしかに受け取った)

 

「これで、一仕事…終わった、な…ふぅ…─」

遊海は「No.48」をアストラルに手渡し、そのまま眠りについた…。

 

 

「…お疲れ様、父さん…ゆっくり休んでくれよ…」

 

凌牙は眠ってしまった遊海を…父を優しく労った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─…こうして、悪しき魂を持つ者は裁かれ…勇士は新たな力を手に入れた…しかし、この戦いは…大いなる混沌の先触れに過ぎないのであった……こんなところかな?─

 

 

─うん…この世界にはもう変なモノは見えない、これで彼も少しは休めるかな……遊海くん…─

 

 

─願わくば…キミには死んでほしくないなぁ…─

 

 

 

何処かにある夢幻の花園…そこで花の魔術師は呟いた…。




NextEpisode?







強き絆によって凶敵・ベクターを撃退した遊馬達…だが、彼らの戦いは終わらない。

行方不明の一馬から知らされた重要な『7枚のナンバーズ』…それを手に入れる為、遊馬達の世界を股にかける大冒険が始まる!





『この場所には…何かある…!』

ジャングルの奥地に眠る『天馬の遺跡』




『待ってたぜぇ、アストラル…!』

絶海の孤島に浮かぶ『怨嗟の遺跡』




『熱い、デュエル…!』

湖底に眠る『闘技場』




『儂はドラゴン使いに試練を課す者』

岩山に立つ『龍の神殿』




『ポンポコポーン!』

古き庵に眠る『武将の伝説』




『我とお前は戦う定めなのだ…』

深海に沈んだ『古代文明』





7つの遺跡を巡った先…遊馬達が目にする真実とは…?




転生して決闘の観測者になった話 ZEXAL編第4章

近日執筆開始!
























947h nz:q…


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第4章 混沌暗躍遺跡郡 ナンバーズ・アドベンチャー〜英雄落陽〜
プロローグ〜眠る切望 目覚めし混沌〜


「やぁ…シーカー、久しぶりだな」

 

『…カズマ…か、何故この場所に来た…エリファスに、睨まれる…ぞ…』

 

青い光が満ちる高次世界『アストラル世界』…その中心の城の奥深く…そこに囚われる小さな光の玉に探検家のような服を着た男が声をかける…。

 

 

「心配する事はない、エリファスには許しを得てる…貴方に触れない事を条件にな…」

 

『…だろうな…オレを、疎ましく思うエリファスが…言いそうな事だ…』

 

「だが、生きているだけ儲けものさ…生きていればなんとかなるさ!」

 

『相変わらず、明るい男だ…オレはっ…ぐっ…!』

 

「シーカー!」

男と話していた光の玉が揺らぐ…まるで、苦しむように…。

 

 

『…囚われて60余年…我がカオスも、底をついた……あとは…死を待つのみ……だが、オレは……まだ消える訳には、いかない……()()()を見つけるまで…オレは…消える訳には…いかない…のだ…』

揺らめく光の玉は強い意志を宿した決意を語る…。

 

 

「シーカー…私も探してみたが…貴方の探す「あの子」を見つける事はできなかった…すまない」

 

『そうか…オレはただ…あの子に逢いたい…それだけ、なんだ……』

そう呟いた光の玉は…それを最後に沈黙してしまった…。

 

 

「シーカー…きっと、貴方の想いは届く…その時まで…どうか耐えてくれ…!」

眠りについた光の玉を哀しげに見つめたカズマは立ち上がる…。

 

 

「遊馬…お前はきっと、この世界に辿り着くだろう……待ってるぞ…!遊海…俺達の息子を頼む…!」

カズマは青い空を見上げ、家族と親友の身を案じた…。

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

『許さねぇ…ゆるさ、ねぇ…!アストラル…遊馬ァ…!オレを、こんな目に遭わせやがって…!!』

 

赤紫の水晶が乱立する高次世界『バリアン世界』…その『悪意の海』と呼ばれる場所にベクターはいた。

遊馬との決闘に敗北し、致命的な傷を負い…さらに手駒を失ったベクターは…何を考えたのか海へと向かっていた…。

 

シュゥゥ…ジュウゥゥ…!

 

『ぐぅ…!!オレは、このままじゃ、終わらねぇ…!!うがあああああ!!』

ベクターは海へと足を踏み入れる…だが、『悪意の海』は海とは名ばかりの熱湯地獄…ベクターは痛みを押し殺しながら海底へと向かった…!

 

『伝説が本当なら…悪意の海の底…そこには、必ず…!』

 

 

 

 

 

『見つけた…!あれが、あれが!バリアンの神「ドン・サウザンド」の眠る場所!!』

海底へと潜り、海底火山のマグマを抜けた先にそれはあった…バリアン世界を支配する「神」…ドン・サウザンドの封じられた扉が…!

 

 

『ぬぅぅ…!がああああああ!!』

 

グチャ…!!

封印の扉を前にしたベクターは渾身の力で自身の心臓を穿つ…!

 

『ドン・サウザンドよ!!オレの命はくれてやる!だから…このオレに!力を寄越せぇぇ!!』

 

ギィン─!!

 

ベクターは胸を穿って取り出したカードを扉へと掲げる…すると扉に刻まれた『ドン・サウザンドの紋章』が邪悪な光を放ち…大地が…世界が鳴動する…。

 

その邪悪な波動はバリアン世界に留まらず人間界…アストラル世界をも揺るがし、広がり…そして…。

 

 

 

 

【我が名はドン・サウザンド…我に命を差し出す者よ…望みはなんだ…?】

それは巨大な黒き悪魔…そうとしか形容できない存在…数万年に及ぶ永き眠りから…混沌の神が解き放たれた瞬間だった…!

 

 

 

『ドン・サウザンド…!オレにはどうしてもブッ倒したい奴らがいる!!』

 

【…アストラルか】

 

『そう…!そして九十九遊馬に白波遊海だ!!だからドン・サウザンド!お前のその力を!!』

 

【ならば…地上にある『7枚のナンバーズ』…『封印のナンバーズ』を探すのだ…!】

 

『「封印のナンバーズ」…?』

 

【そうだ…!さすれば我が力は完全に復活する…】

 

『おもしれえ…!奴らをブッ倒せるなら…なんでもやってやる!だから…オレに力を!!』

 

【良かろう…!我が力は汝の心臓となり生きていく…!これより、汝と我は一身同体となる…!】

 

 

『ふはは…ハハハ…!ギャハハハハハ─!!!』

 

 

 

問答を終えたドン・サウザンドはベクターの体に入り込む…ここに、最凶最悪のコンビが誕生したのだった…!



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飛行船再起動!〜試される『信頼』〜

こんにちは!S,Kです!

ついに目覚めたバリアン世界の神、ドン・サウザンド…彼に対抗する為…遊馬達の世界を巡る冒険が始まる!


それでは、最新話をどうぞ!


「これは…困ったなぁ…」

 

《フォウ…フォーウ…キュ〜!…(ねぇ…遊海…!大丈夫なの!?)》

 

「…そんな、泣きそうな声で鳴くなよ…オレは大丈夫さ…」

 

《マスター…》

 

サルガッソ…遊海にとってはバミューダの戦いから数日が過ぎた、重傷を負った遊海の傷もほとんど癒えたが…今までにない変化が起きていた。

 

 

 

「…まさか、一晩で髪が()()()になるとはな…こういう事はフィクションだけだと思ったんだが…」

 

《おそらく…新たな『NEXUS』を使用してしまった副作用でしょう…今のマスターはそれほどに…》

鏡に映る遊海…その髪は真っ白の白髪に変色していた…それは、百年以上生きてきた中で初めての事だった…。

 

 

「これじゃあ、ラプラスの奴と同じじゃないか…ブルーノ達が見たら勘違いするぞ…黒染めす…ゴホッ…コホッ…」

 

《…マスター…今回はしっかり養生してください、これ以上戦えば…》

 

「わかってる…俺が戦うべきはあと2()()だけさ…しばらくはデュエルを休んで、遊馬達の支援に徹するよ」

 

《フォウ…》

戦いを終えた遊海は()()()()()()()…命を、魂を燃やす「NEXUSⅡ」に変身した事で遊海は酷く衰弱していたのだ…。

 

 

 

 

「あ、おはようございます遊海さん…髪、本当に真っ白ですねぇ…」

 

「おはよう翠!…人生初の金髪にでもしてみようかな?」

 

「ぶふっ!?それは絶対にやめてくださーい!!絶対に似合いませんー!!」

 

「そうかなぁ…」

思わぬ事を言い出した遊海を翠は全力で止める…。

 

 

《フォウ!(やっぱり遊海は黒髪が似合うよ!)》

 

「むぅ…イメチェンできるかと思ったんだが…」

 

「もう…普段の遊海さんが一番ですよ!」

 

「…ありがとな、翠」

 

 

 

 

 

「たまには…のんびり日光浴も悪くないなぁ…」

 

《そうだろう…この2ヶ月ほどは本当に忙しかったからなぁ…》

 

《ファ〜……スゥ…スゥ…》

 

《ZZZ…》

食事を終えた遊海は庭でメガロックと一緒に日光浴をしていた…その膝の上ではフォウがすやすやと眠り、とまり木の上ではフレアが舟を漕いでいる…。

 

 

「次の戦いは…遺跡のナンバーズ…か…」

遊海は手にしていた1枚の「コイン」を見つめながら、これからの事を考える。

 

 

「遺跡のナンバーズ」…それは世界中の6つの場所に散らばる特別なナンバーズの事である。

 

 

1枚目は南米のジャングルに眠る「天馬」

 

2枚目は絶海の孤島の拷問城に眠る「裁断魔人」

 

3枚目は湖底のコロッセオに眠る「反骨の獅子」

 

4枚目は岩山の神殿に眠る「神影龍」

 

5枚目は決闘庵に眠る「影武者狸」

 

6枚目と7枚目は…海底都市に眠る「海神」と「海神の巫女」

 

 

その正体はバリアン七皇が「人間だった時」の記憶を封じたナンバーズ…そのナンバーズを用いて「呪縛」の元である「オーバーハンドレットナンバーズ」を倒す事でバリアン達は「呪い」から開放される…。

 

しかし、それは「諸刃の剣」…「遺跡のナンバーズ」を解き放つ事で分かたれていた混沌の神「ドン・サウザンド」の力の封印が解け…彼の力が戻ってしまうのだ。

 

 

 

 

 

「…今は、難しい事考えるのはやめとこ…頭の中がぐちゃぐちゃだ…」

 

《…少しは肩の力を抜け…ディヴァインとの因縁もようやく終わったのだ、しばらく休んでもバチは当たらんだろう》

 

「そうだな…とりあえず、少し眠る──」

 

 

 

──────

 

 

 

 

「……訳にはいかなさそうだな…」

 

《むっ…?どうしたのだ?》

瞼を閉じようとした遊海は「強大な力の波動」を感じて起き上がる…それは混沌の神が目覚めた知らせだった…!

 

 

《…マスター、今回はダメです》

 

「わかってる…遊馬達について行くとは言わないさ…それに、()()()()()()()()()()()…」

アヤカが遊海にストップをかけ…遊海は頭を抱えながら頷く…。

 

 

「俺は…俺にできる事をするだけさ…」

 

 

 

 

 

 

Sideバリアン

 

 

 

 

『これは…いったいどうしたというのだ!?』

 

『突然の天変地異…滅びの前兆か…!?』

バリアン世界は混乱に包まれていた…突然の地震に地殻変動、鳴り止まない稲妻…城に戻っていたミザエルとドルベは突然の事態に戸惑うばかりだった…。

 

 

『ドルベ…大丈夫なのか?この異変で()()が揺らぐような事があれば…!』

 

『…それは心配ないが…この異変、アストラルが力を取り戻しつつある影響なのか…?』

 

『その通り…!これはアストラルの力の影響さ…!』

 

『『ベクター…!』』

困惑する2人の前にベクターが現れる…

 

 

『貴様…!よくもおめおめと顔を出せたものだな!』

 

『なんだ?サルガッソの作戦が失敗したのはオレのせいってか?』

 

『でなければなんだというのだ!貴様のせいで遊馬とアストラルは新たな覚醒をしたのだぞ!?』

 

『なんだとぉ?ロクな作戦も立てられないお前達が何を言いやがる!オレ様だってカワイイ部下を失ったんだぜぇ?』

 

『貴様…減らず口を!ギャラクシーアイズの餌食にしてやる!!』

 

『やめろ、今は我々が争っている場合ではない!』

ベクターに詰め寄り口論となるミザエル…ヒートアップする2人を押さえたのはドルベだった…。

 

 

『オイ、オメェらも知ってるはずだ、数千年前バリアン世界の神「ドン・サウザンド」がアストラルとの戦いによって闇に封じられた…アストラルの力は強大だ、奴がこのままナンバーズを吸収し…本来の力を取り戻せば…バリアン世界は滅びる…!』

 

『つ…!』

それはバリアン世界に古くから伝わる伝承…全てのナンバーズを取り戻したアストラルは、バリアン世界を滅ぼす程の力を持つのだ…!

 

 

『そこでだ…!オレはとっておきの情報を手に入れた!なんと!奴らの世界にはまだ見つかっていない強力なナンバーズが「7枚」ある!そいつを見つけ…オレ達の力にするのさ…!!』

 

『7枚のナンバーズだと…?』

 

『そう…!そして、その在り処を知ってる奴をオレが連れてきた!』

ベクターがそう言うと彼の指に一匹の虫…ハエがとまる…。

 

 

『…なんだ、その薄汚いハエは…』

 

《何を言う!ワタシは断じて薄汚くなどな…アー!カイカイ!》

 

『コイツはオレが「悪意の海」から蘇らせた…!その正体はあのハートバーニング!フェイカーの仲間だったMr.ハートランドさ!!』

 

《ワ、ワタシの決め台詞を盗らないで─!?》

ベクターの指にとまる人語を話すハエ…その正体は遊海との決闘の後、異次元の穴に落ち…ハエへと姿が変わってしまったMr.ハートランドだった…。

 

 

『コイツはナンバーズの情報を知っていてなぁ…!おい、話せ』

そう言うとベクターは人間界の地図が記された水晶を用意する。

 

《コホン…ワタシは見た!Dr.フェイカーのラボで九十九一馬の資料を…奴は異世界への扉が開く「23ヶ所の遺跡」を見つけていた!その何処かに7枚のナンバーズが眠っているはずだ!》

 

『その話が本当なら…アストラルに吸収される前に我々が奪わねば…!』

ハートランドの説明を聞いたドルベは考え込む…そして、ベクターは最後の一押しを口にする…。

 

 

『それによぉ…奴らの世界に行けば「ナッシュ」の行方の手がかりも掴めるかもしれないぜぇ…?』

 

『ッ…ナッシュ…!』

ベクターの言葉を聞いたドルベは空の玉座を見上げる…。

 

『オレ達は本来7()()…バリアンの七皇!だが、ナッシュとメラグは消えちまった…もしかしたら…人間界にいるかもしれないぜぇ…?』

 

『…わかった…!手分けしてそのナンバーズを探すぞ!』

 

『ドルベ!?…くっ…』

ミザエルが止める間もなく、ドルベは人間界へと向かう…ミザエルはため息をつきながらワームホールへと姿を消した…。

 

 

 

『…さぁて…居眠りしてるおふたりさんよぉ…!ドン・サウザンドの力で復活させてやる…!思い出せ!アリト!ギラグ!遊馬に負けた悔しさを─!!』

 

ギィン─!!

 

城に1人残ったベクター…彼は水晶の中で眠るアリトとギラグに混沌の力を流し込む…!

 

 

【ベクターよ、彼らが復活するには少し時間がかかる…我々も()()を済ませるとしよう】

ドン・サウザンドがベクターへと語りかける…。

 

 

『わかった…!だが、少し()()()させてもらうぜ?』

 

【寄り道だと?】

 

『ああ…!アンタの力を使えば…あの()()を操れそうなんでなぁ…!』

 

【兵器か…相変わらず良からぬ事を考える男だ…】

 

 

ベクターは邪悪な笑みを浮かべ…そして誰もいなくなった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「璃緒、何か感じるか?」

 

「……いいえ…さっきは何か強いものを感じたんだけど…」

 

「妹シ……璃緒のアンテナでもダメかぁ…」

 

「でも、みんなが同時に何かを感じるなんて…」

放課後のハートランド学園…その屋上に遊馬と小鳥、凌牙と璃緒が集まっていた…。

それは遊馬・凌牙・璃緒の3人が授業中に感じた()()について話し合う為だった…なお、そのせいで遊馬は跳び箱(25段)の下敷きになってたりする。

 

 

「カイトにも聞いてみたけど…特に感じなかったってさ、オービタルと一緒に調べてみるって…」

 

「父さんは…『何処かで何か強い力が目覚めたのかもしれない』って言ってたぜ」

 

「強い力…いったい何なんでしょう…」

謎の感覚について話し合う遊馬達…そんな時だった。

 

 

 

「きゃ!いきなり風が…!」

 

「っ…!あの影は!」

屋上を吹き抜ける突風…それにつられて上を見上げた遊馬は雲の中に巨大な影を見つける…そして…

 

キィン─!

 

 

「あれ…?アストラル!?ここって、飛行船の中!?」

 

(驚かせてすまない…急ぎの用件があったんだ)

光に包まれた遊馬達4人…気づけばそこは皇の鍵の飛行船の中だった…!

 

 

(とにかく…コレを見てほしい)

そう言うとアストラルは地球儀を投影する。

 

(先程…突然ある場所の座標が映し出された、この座標は世界中にある遺跡の場所を示している…そしてその場所はナンバーズがある場所でもある…!)

 

「ナンバーズが…!?」

地球儀に表示されたのはそれぞれ『日本』『中南米』『ヨーロッパ』『中央アジア』『南太平洋』『インド洋』のとある場所を示す赤い点だった。

 

(さらに…これが出現したのだ)

 

キィン─

 

アストラルが手をかざす…その先に現れたのは…。

 

 

 

─遊馬、アストラル、遊海─

 

「父ちゃん!?」

赤い光と共に現れたのは…5年前にバイロンと共に異世界に落とされ、行方不明となっていた遊馬の父・一馬…その立体映像(ホログラム)だった…!

 

 

─お前達がこのメッセージを見ているという事は()()()()()()()()()()()()…一刻も早く、遺跡にある「7枚のナンバーズ」を見つけだすんだ…そのナンバーズは特別なモノ、もしそれがバリアンの手に渡れば彼らに強大な力が蘇る…!遊馬、アストラル…決してナンバーズをバリアンに渡してはならない!…遊海、俺の息子達を…改めて頼む…!─

 

「父ちゃん…!」

それは遊馬達に託されたメッセージ…再生された映像は静かに消えていった…。

 

 

「父ちゃんは、ナンバーズの事を知っていた…?」

 

(そして私や、遊海の事もな…)

 

「そうか…父ちゃんは、全てお見通しなんだ…!父ちゃんは何時だってオレの事を導いてくれた…だったら、信じて行ってやるぜ!!」

知るはずのないナンバーズやアストラルの事を知っていた一馬…その言葉を聞いた遊馬はナンバーズを探す事を決意する!

 

 

「たしかに、そんな力をバリアンの奴らに渡す理由はねぇ…!今は動けない父さんの代わりに俺も行ってやる!」

 

「まったく…凌牙は1度言い出すと聞かないんだから…私も一緒に行きますわ!」

 

「そうと決まれば…遊馬!出発よ!」

 

「みんな…!よっしゃあ!ナンバーズを見つける為に…かっとビングだ─!!」

凌牙・璃緒・小鳥の言葉に背中を押された遊馬は飛行船を起動…遺跡のナンバーズを手に入れる為に飛び出した!

 

 

 

 

「へぇ〜!あれが異次元を渡る飛行船か〜!1回乗ってみたいな〜!」

 

《まったく…キミのそういう所はいくつになっても変わらないねぇ…ほら、来たみたいだよ》

 

「すまん、待たせたな」

飛行船を見送る英雄達がいた事も知らずに…。

 

 

 

 

 

「なんだろう…すごく荒れてるわ…」

 

(これは…何かの影響か…?)

ナンバーズの遺跡へ向かう空間跳躍の為に突入した異世界の扉…その中はエネルギーが不安定となり荒れていた…。

 

 

 

「なぁ、アストラル…『アストラル世界』ってどんな所なんだ?」

 

(む?何故そんな事を聞く?)

異世界を進む中…遊馬はアストラルに問い掛ける。

 

 

「だってさ…父ちゃんはナンバーズの事も知ってた…絶対にアストラル世界にいるんだ…!」

 

(…私も断片的にしか思い出していないが…アストラル世界は『ランクアップした魂』だけが辿り着く場所だ)

 

「魂のランクアップ…それって…確か…」

 

(ああ、遊海の奇跡の力…『NEXUS』、あれもまた『魂のランクアップ』を利用した力だ…それだけではない、全ての生き物の魂は常に理想を目指している…誰にでもランクアップの可能性はある)

 

「でも…どうやったら魂のランクアップができるんだ?」

 

(それは…私にもわからない、遊海も…おそらくは自覚できていないだろう)

 

「むぅ…遊海に直接聞いてみるしかないかぁ…?」

 

「ランクアップした魂…か…きっと、父さんはずっと仲間の…たくさんの人々の為に闘ってきた…だからランクアップできたんだろうな…」

アストラルから魂のランクアップについて伝えられる遊馬達…ナンバーズを前に穏やかな時間が流れている…だが…!

 

キィン─!! 

 

「な、なんだ─!?」

飛行船の進路上…その先に突然光が現れる、その光は急速に飛行船に迫り─!

 

 

ズッドオオオン!!

 

 

「「「「うわああああ─!?」」」」

 

『ぐああああ─!?』

 

 

光と飛行船は互いに避けられず衝突…遊馬達は飛行船と共に墜落した…。

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

『ぐっ…うぅ…ここは…』

 

南米のジャングルの中…1人の青年が目を覚ます…彼の名は『ドルベ』…バリアン七皇の1人である。

 

 

『ぐっ…!?しまった…バリアラピスが…!これでは本来の力を使う事ができない…!まさか、異次元空間でアストラルの飛行船とぶつかるとは…!!』

飛行船とぶつかった光…その正体はナンバーズを探しに人間界に向かったドルベだった。

 

しかし…衝突の衝撃で「バリアラピス」という人間界でもバリアン体でいられる腕輪が壊れてしまった事で、今のドルベは灰色の髪に眼鏡を掛けた人間体に変わってしまっていた…。

 

 

『不味い…奴らもこの近くに落ちてきたはず…見つからないようにせねば…!』

近くに遊馬達がいる事を警戒するドルベ…だが、彼は失念していた…そこは危険あふれるジャングルなのだ…!

 

 

《グルル…!》

 

「っ…!!ジャガーだと…!?」

茂みの中から現れたのは『アメリカ大陸最強の獣』と言われる肉食獣・ジャガー…それがドルベの背後に迫っていた…!

 

「(まずい、この姿では…!)」

ドルベはジャガーと目を合わせながら後ずさる…生粋の戦士であるアリトやギラグなら人間体でも追い返す事ができるだろうが…策士タイプであるドルベはそんな事はできない、絶体絶命と思われたその時…!

 

 

「うおおぉぉ!!出てくれ!『ゴゴゴゴーレム』!!」

 

《ゴゴゴー…!》

 

『(な、九十九遊馬─!?)』

ジャガーとドルベの間に木の上から飛び降りた遊馬が着地…精霊の力を使って「ゴゴゴゴーレム」を呼び出す事でジャガーを追い払った…!

 

『(これは…本当にまずい事になった…!)』

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

「おい!アンタ大丈夫か!?」

 

『あ、ああ…すまない、助かった…っぐ…』

 

「おい!?怪我してるじゃねぇか!」

飛行船から投げ出された遊馬は小鳥と璃緒とはぐれてしまい、凌牙とアストラルと共に2人を探していた…その中でジャガーに襲われた青年を見つけ、助けに入ったのだ…。

 

 

「待て遊馬…!そいつに迂闊に力寄るな!バリアンかもしれねぇ…!」

 

「シャーク!」

騒ぎに気づいた凌牙が遊馬に駆け寄ってくる…凌牙は遊馬の助けた青年を警戒していた…。

 

 

「こんなジャングルに男1人…ガイドもいねぇ…怪しいぜ…!俺達は異次元空間で何かにぶつかった…!その相手かもしれねぇ…!」

 

『つ…私は、ただの旅行者だ…名は「ナッシュ」という…仲間達とは、はぐれてしまったんだ…』

睨みを効かせる凌牙にナッシュと名乗ったドルベは弁明する。

 

 

(遊馬…たしかに彼は怪しい、警戒すべきだ)

 

「ちょ、ちょっと待てよ2人とも!コイツ怪我してるんだぜ?」

 

「お前なぁ…何度騙されれば気が済むんだ?迂闊に人を信じるのはやめろ!」

 

「わかってる…わかってるけどさ…!」

ベクターの1件から若干人間不信になりつつある凌牙とアストラル…だが、遊馬は怪我したドルベを放っておく事はできない……その時だった!

 

 

「きゃああああー!?」

 

「この声は…小鳥!?」

ジャングルに突然響く、絹を裂くような悲鳴…それははぐれた小鳥の声だった…遊馬達は慌てて声の聞こえた方向に駆け出した…。

 

 

 

「これは…!オレ達の探してたナンバーズの遺跡!?」

ジャングルを抜けた先…そこには石造りの古い遺跡が佇んでいた…悲鳴はその中から聞こえてくる…!

 

「待ってろ小鳥─!!」

遊馬と凌牙は躊躇なく遺跡へと飛び込んだ…。

 

『(まさか…彼らも遺跡のナンバーズを探していたとは…!)』

 

 

 

 

「まったく…心配かけやがって…」

 

「うぅ…だって…ヘビは小鳥の天敵なのよ!!」

毒ヘビの群れから小鳥と璃緒を助け出した遊馬達は遺跡の奥に進む…そんな中、1つの変化が起きていた。

 

 

「あら…?飛行船の外なのにアストラルの姿がハッキリ見える…!私もランクアップできたのでしょうか…!」

 

(おそらく小鳥と同じ…間近でナンバーズ同士の戦いを見た事で潜在能力が目覚めたのだろう)

 

「まったく…のんきに話し……行き止まりか?」

アストラルが見えるようになった璃緒…そんな様子に少しイラつきながら進んでいた凌牙達は赤と青の壁がある行き止まりに到達する…。

 

 

「行き止まり!?まじかよ〜」

 

カチッ ドッスーン!

 

「「なにっ!?」」

 

『っ!?出口が!』

遊馬と凌牙がそれぞれに赤と青の壁に触れた瞬間、足元の仕掛けが作動し、退路を壁に断たれてしまう!

 

 

「お前ら下がれ!何が起きるかわからねぇぞ…」

 

『(っ…!壁が!)』

閉じ込められ、周囲を警戒する凌牙…その時ドルベは気づいた…ちょうど凌牙の頭上…そこから新たな壁が落下しようとしていたのだ!

 

 

『っ〜!!危ない!!』

 

「なっ!!テメェ!!」

 

 

ドッスーン!!

 

 

「シャーク!?」

 

「凌牙─!!」

 

壁が落下する寸前…ドルベは凌牙を押し倒す、その直後に壁が落下…遊馬・小鳥・璃緒と凌牙・ナッシュ(ドルベ)は分断されてしまう!

 

 

「心配すんな!俺は大丈夫だ!…だが、この仕掛けはいったい…!?」

 

ズスズ…!

 

「新しい通路…!」

分断された2チームの前が開き…新たな通路が現れる!

 

「どうやら…別れて進むしかないらしいな…気をつけろよ!」

 

「わかった!」

 

遊馬と凌牙は違う道を進み始めた…。

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「ここは…!?」

しばらく通路を進んだ先…遊馬達は広い場所に出る、そこは天馬の像が奉られた広間だった…!

 

(遊馬!あれを見ろ…!ナンバーズだ!)

 

「なんだって!?」

奉られたペガサス像…その上に1枚のカードがあった…それこそが探していた遺跡のナンバーズの1枚だった…だが、それは一筋縄で手に入れられるものではない…!

 

 

キィィン─!

 

「っ…!なんだ!?」

安置されていたナンバーズが眩い光を放つ…そして…!

 

 

『私は遺跡のナンバーズを守る守護者(ガーディアン)…マッハ』

 

「ナンバーズのガーディアン!?」

光が収まるとそこには見事な甲冑を纏った色白の武人が立っていた…彼はマッハ…ナンバーズの精霊にして、守護者である!

 

 

「…彼からとても強い思念を感じる…!一筋縄ではいかなさそうです…!」

 

『このナンバーズ…簡単に渡す訳にはいかない、君達がナンバーズを持つに相応しい魂の持ち主なのか…試させてもらう』

マッハは遊馬を試す為に決闘盤を構える…!

 

「デュエルを挑まれて…逃げられっかよぉ!」

遊馬もデュエルディスクを構え…マッハへと立ち向かう…試練のデュエルが始まった!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対天馬の精霊 マッハ

 

 

 

 

 

 

『ここは高貴な魂が眠る場所…その試練を君達が乗り越えられねば…その代償に()()の魂を貰う』

 

「彼ら…!?」

 

先攻を終えたマッハは遊馬達に試練の代償を伝える…不思議な力で映し出されたのは…壁が迫る部屋に閉じ込められた凌牙とドルベの姿だった!

 

 

「き、汚えぞてめぇ!!2人を離せ─!」

 

『それは君達次第…このデュエルで君達は何を見つけるか…』

マッハは遊馬に意味深な言葉を伝える…!

 

(私達が見つける…このデュエルの中に、2人を救うヒントが隠されているのか…!?)

アストラルはマッハの意図の一部を読み取った…!

 

 

 

 

「いっけぇ!『ガガガマジシャン』で裏守備モンスターを攻撃!!」

デュエルは進む、コンボで不良魔術師『ガガガマジシャン』と子ども魔術師『ガガガキッド』を呼び出した遊馬は魔法カード『ガガガタッグ』によって2体を強化し、マッハに攻撃を仕掛ける!

 

 

『…かつての英雄は言った…「互いの()が…互いの新たな道を開く」と…』

遊馬の攻撃で伏せモンスターは破壊される、それと共に凌牙達の部屋の扉が開き、辛うじて脱出する!

 

 

『破壊された「暗躍のドルイド・ウィド」の効果発動!このモンスターが破壊された事で手札から永続魔法「決断の迷宮」を発動!さらに、私は2枚の手札を墓地に送り…永続罠「不公平条約」を発動!』

モンスターを破壊されたマッハは謎のカードを発動…それと同時に凌牙達のいる部屋の天井が降下し始めた!

 

 

「くっ…!待ってろシャーク!『ガガガキッド』でプレイヤーにダイレクトアタック!」

マッハにダイレクトアタックを仕掛ける遊馬…その攻撃によって再び凌牙側の扉が開き、2人は脱出するが…それこそがマッハの狙いだった!

 

『この瞬間!2枚のカードがお前達を追い詰める!「決断の迷宮」の効果発動!相手プレイヤーが攻撃した時!バトル終了時にライフを600払い、相手の手札1枚を捨てさせる!さらに「不公平条約」の効果発動!自分が永続魔法の効果でライフを払う時!そのライフコストを相手に払わせる!』

 

(そうか…!彼の狙いは─!)

 

「くっ…オレは手札を1枚墓地に送る!ぐっ…!!」

手札を捨てた遊馬のライフが削られる…!

 

 

(彼の狙いは…我々の手札とライフを破壊するコンボ…!)

 

「それが、オレ達への試練って訳か…!」

マッハの戦術はバーンとハンデスによるメタバーン…それを前にアストラルはマッハの言葉を思い出し…試練を進める「ルール」を見つけ出す!

 

 

(…そうか…!我々が攻撃する事でシャーク達が進む為の扉が開くという事か…!!)

 

「なんだって!?」

 

(彼のコンボは我々が攻撃すればライフと手札を削られる…だが、攻撃しなければ…シャーク達を救う事はできない!!)

 

『その通り…さぁ、この試練をどう切り抜ける!!』

戸惑う遊馬をマッハは鋭く睨みつけた…!

 

 

「っ〜!!何が試練だ!ふざけんなぁ!!オレはレベル4の『ガガガマジシャン』と『ガガガキッド』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!」

 

39

 

「現れろ!『No.39希望皇ホープ』!!」

試練を仕掛けるマッハ…遊馬は希望の戦士を召喚して対抗する!

 

 

 

 

44 

 

 

『現れろ!「No.44」!悠久の大義よ!今こそ太古の眠りから目覚め、天空を翔ける翼となれ!「白天馬スカイ・ペガサス」!』

 

「これが、遺跡のナンバーズ…!」

マッハのフィールドに現れた白い盾のオブジェクトが変形…遺跡のナンバーズである白いペガサスが現れる!

 

 

『このナンバーズが…お前達に新たな試練を課す!私は「スカイペガサス」の効果発動!ORUを1つ使い、相手モンスター1体を破壊する!ただし…相手は500ライフを払う事でこの効果を無効にできる!』

 

「っ…また、オレのライフを…!」

 

(遊馬…『ホープ』を失えば、凌牙を助ける事はできない…!)

 

「わかってる!オレは500ライフを払う!」

遊馬はホープを守る為にライフを犠牲にする…!

 

 

『この瞬間、「スカイペガサス」のさらなる効果発動!相手がライフを払った時!その数値分のダメージを与える!』

 

「なにっ!ぐああああ!?」

 

「遊馬!アストラル!!」

遊馬達に金色の光を纏ったペガサスが突進…遊馬は激しく吹き飛ばされる!

 

 

「このままじゃ…どんどんライフを削られちまう…!」

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「はぁ…はぁ…次から次へと…!いったい何が起きてる…!」

罠から必死に逃げ続ける凌牙とナッシュ…2人は辿り着いた部屋で息を切らせていた…。

 

 

キィン─!

 

「っ…!遊馬!アストラル!」

追い詰められた2人の前に光の玉が現れる…そこにはマッハとデュエルする遊馬の姿があった…!

 

 

「凌牙!こっちでは遊馬と遺跡の守護者とのデュエルが始まっているわ!」

 

「遺跡の守護者とのデュエルだと…?」

 

「突然ナンバーズの精霊が出てきて、デュエルを仕掛けてきたの…!」

凌牙は光の玉から聞こえる璃緒達の説明で状況を把握する…。

 

 

(シャーク!君たちに仕掛けられた罠と私達のデュエルは連動している…!我々が攻撃するとそちら側の扉が開くようだ!)

 

「なに…!?」

アストラルの言葉に凌牙は驚愕する…だが、それだけではない…!

 

(しかも…攻撃すれば我々のライフを削るコンボが仕掛けられている…!)

 

「くそ…!俺達を足枷にしやがって…!」

 

「待っててくれシャーク!必ずお前達を助け出すからな!!」

光の玉から聞こえる遊馬の叫び…それにマッハが反応する…。

 

 

『仲間とは…離れ離れになった時こそ、その「真価」を問われる…』

 

 

(「離れ離れ」……シャーク!君達のいる場所にデュエルのヒントになるようなモノはないか!?)

 

「デュエルのヒント……あれは…壁画か?」

アストラルの言葉に部屋を見回す凌牙…そして2人は古い文字と壁画を見つける!

 

(それだ…!その壁画がヒントだ!彼の仕掛けてきたデュエルは一種の詰めデュエル…いや()()()()()()()!私達が離れた事が試練の始まりならば…シャーク達のいる場所にヒントがある!)

 

「凌牙!その壁画には…何が描かれているの!?」

アストラルの言葉を聞いた璃緒が凌牙に問い掛ける!

 

 

「なにって…絵と文字だ…文字は見た事ない奴で…俺には読めねぇ…!」

壁画の解読に苦心する凌牙…そこに思わぬ助け舟が出される…。

 

 

『…この壁画には…古の「英雄伝説」が綴られている…』

 

「お前…それが読めるのか…!?」

 

『なんとなくだが…こう記されている…』

凌牙と共に行動していたドルベ…彼は壁画を見ながら「英雄伝説」について語り始めた…。

 

 

 

 

…………

 

 

 

遠い昔、とある国に使える騎士達がいた…その1人は愛馬・ペガサスを操る「英雄」だった。

 

英雄が率いる騎士達は強く、その平和は守られていた…だが、ある日…英雄はペガサスと共に城を離れ、故郷に戻った…。

 

しかし、英雄が去った後…残った騎士の一部が王に謀反を企てた…。

 

 

 

…………

 

 

『…この壁画に記されているのは…ここまでだ』

 

「お前…いったい何者なんだ…?」

壁画を紐解いたドルベ…その姿に凌牙は疑念を抱いた…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

そしてデュエルは進んでいく…「スカイペガサス」の攻撃力は「ホープ」には劣る…遊馬は再び攻撃を仕掛けるが…マッハは装備カードとなる罠カード「陰謀の盾」を発動、戦闘破壊と効果ダメージを無効にした事で遊馬達は再びライフと手札を失ってしまう…

 

だが、攻撃した事で新たな扉が開き…壁画に刻まれた伝説の先が語られる…!

 

 

 

…………

 

 

 

騎士達の謀反を知った英雄はペガサスと共に、城に駆けつけ…仲間達に訴えた…。

 

─如何なる時でも心に掲げた正義を…共に戦った仲間との絆を思い出してほしい…!!─

 

 

だが…仲間は英雄に剣を向けた…英雄には仲間を斬る事はできず、彼は無抵抗のまま仲間の剣に傷つき、倒れた…。

 

その時、愛馬・ペガサスが主人を守る為に騎士の前に立ち塞がった…自分を犠牲に、主人を守る為に…。

 

 

 

…………

 

 

「その先は…!?」

 

『その先は…()()()()()!壁画が砕けてしまっている!!』

 

「そ、そんな…!」

途切れてしまったヒント…だが、壁画を読み勧めたドルベの胸中はざわめいていた…。

 

 

『(なんだ…この気持ちは…?私は、この話を知っている……私は、ここに来た事があるのか?)』

英雄伝説に妙な既視感を覚えるドルベ…そのざわめきが意味するのは…。

 

 

 

 

『私のターン!「スカイペガサス」の効果発動!ORUを1つ使い!「希望皇ホープ」を破壊する!ただし、500ライフを払う事でこの効果は無効となる!』

 

「っ…!遊馬!これ以上ライフを削られたら…このデュエルには勝てない!俺達の事は気にするな!!『ホープ』を破壊させるんだ!」

再び発動される「試練」の効果…凌牙は遊馬に勝つ事を優先するように叫ぶ…揺れ動く遊馬の決断…その時だった…。

 

 

『…()()()守れ!「ホープ」を守るんだ!!九十九遊馬!!』

 

 

「なっ…!?てめぇ…いい加減な事を!」

沈黙を守っていたドルベが叫ぶ…「仲間を守る」…彼はその()()を思い出したのだ…!

 

 

『私は…この伝説の続きを知っている…!』

仕掛けによって部屋の床が崩れていく中…ドルベは最後の一節を語る…。

 

 

『英雄はペガサスを見捨てられなかった…彼はペガサスと共にその場に留まり、共に息を引き取った……わからないのか!!この伝説は、仲間を守り!人を信じる気持ちを語っているんだ!!』

それまで冷静だったドルベが叫ぶ…英雄の魂の『答え』を伝える為に!!

 

『九十九遊馬!「ホープ」を守り!今だけでいい…私を信じろ!!』

 

「てめぇ…何故そんな事を…!?やはりお前は─!」

 

ガラガラガラ

 

「しまっ─!」

 

『凌牙─!!』

崩れ落ちる床に巻き込まれる凌牙…ドルベはその手を掴み…不思議な事が起きる…!

 

 

キィン─! 

 

 

『そうだ凌牙…私は…私は!()()()()()!!』

 

「てめぇ…ドルベ!?」

凌牙から溢れ出したカオスの力がドルベの『バリアラピス』を修復する…そしてドルベはバリアン体に戻り、その正体を明かした!

 

「遊馬…!コイツの事を信じるな!コイツは、バリアンだ─!!」

バリアンを信じる事ができない凌牙は遊馬へと叫んだ…。

 

 

 

 

「ナッシュが…あいつがバリアン!?」

光の玉を通じて様子を見ていた遊馬は困惑する…!

 

「遊馬!同じ失敗を繰り返すな─!」

 

「オレは…オレは…!!」

ベクターとの騒動が尾を引く遊馬…その時、遊馬は思い出した…遊海に聞かされた言葉を…。

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「なぁ、遊海…遊海が戦ったバリアン…ドルベって、どんな奴だったんだ?」

 

「ん…そうだな…」

それはドルベの襲撃を受けた遊海がまだ入院していた時の事…遊馬は彼にバリアンについて尋ねていた…。

 

 

「…彼は『戦士』だった…仲間を守る為に全力を尽くす…そんな男に見えたな…きっと、今回の襲撃も…仲間を…バリアン世界を考えての事だったんだろう…それに、手負いの俺にトドメを刺さなかった…本当に高潔な奴だよ…」

 

 

「仲間の為に…か…」

 

「遊馬…俺達には俺達の『正義』がある、それと同じように…バリアン達にも奴らなりの『正義』がある…それを忘れるな…」

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

(遊馬、君が何を信じるか…君に託そう…!)

 

「オレは…オレは…!ライフを払って『ホープ』の破壊を無効にする!!」

遊馬は…自分の信じる道を貫いた!

 

 

『「スカイペガサス」の効果発動!相手がライフを払った時!その数値分のダメージを与える!』

 

「うわああ…!!」

そして再び天馬が突撃…遊馬の残りライフは200となった!

 

 

(これで我々のライフは僅か……待て、まさか…!そういう事だったのか!?)

自分の信じるモノを貫いた遊馬…その姿を見たアストラルは試練の『答え』を見つけ出す!

 

 

「っ…!遊馬ぁ!てめぇ、なんでバリアンの言う事を信じた!!」

ドルベに崖から引き上げられた凌牙は遊馬に叫ぶ…。

 

 

「シャーク…オレには…オレにはやっぱり疑えないんだ!!疑いたくないんだ!誰も!!」

 

「遊馬…」

遊馬は叫ぶ…魂からの叫びを…人を疑いたくないと…!

 

 

 

 

「いくぜ!オレのターン!ドロー!」

 

(遊馬!()()()()()()()()()!攻撃だ!)

 

「アストラル…!おう!!『ホープ』で『スカイペガサス』を攻撃!!」

アストラルの言葉を信じた遊馬はスカイペガサスを攻撃する!

 

『「陰謀の盾」の効果により「スカイペガサス」は破壊されない!さらに「決断の迷宮」の効果発動!相手は手札を1枚墓地に送る…』

 

「くっ…カードを墓地へ!」

再び防がれる攻撃…遊馬はカードを墓地に送り、ダメージに身構える…だが…!

 

 

「………あれ…?」

 

「なにも、起こらない…!?」

小鳥と璃緒が呆ける…遊馬は「不平等条約」によってマッハのライフコストを肩代わりしなくてはならない…だが、それは…

 

 

(彼のコンボは既に外れている…なぜなら、私達は既に「決断の迷宮」の発動コストよりも()()()()()()()()()()からだ…!故に、ライフコストはマッハ自身が支払う事になる!)

 

『…!』

決断の迷宮のコストがマッハのライフを削る…だが、彼は…どことなく満足げな表情をしていた…。

遊馬が仲間を信じ、モンスターを信じて守り抜いた先に…勝利の希望は輝いていたのだ!

 

 

(君の選択は正しかった!ゆけ!遊馬!!)

 

「おう!オレは墓地に送ったカウンター罠『超速攻』の効果発動!このカードが墓地に送られた時、カードをドローし…それが魔法カードなら、速攻魔法として発動できる!!…よっしゃあああ!!」

遊馬が手にした希望…それは真の絆の象徴─!

 

 

「『RUM-ヌメロン・フォース』を発動!『希望皇ホープ』をランクアップさせる!オレは『ホープ』1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!」

 

39

 

「現われろ!『CNo.39』!希望に輝く魂よ!森羅万象を網羅し、未来を導く力となれ!『希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』!!」

絆と友情の象徴…勝利を導く希望が現れる!

 

 

「『ヌメロンフォース』が発動した事で『ヴィクトリー』以外のカード効果は無効になった!オレはさらに『ヴィクトリー』の効果発動!ORUを1つ使い!相手の攻撃力を自身に加える!ビクトリー・チャージ!!」

ホープが4本のホープ剣を掲げる!

 

 

「いっけぇ!『ホープレイヴィクトリー』!ホープ剣ダブル・ビクトリー・スラッシュ!!」

希望の剣は忠義の天馬を両断…試練の決闘の幕を下ろした…。

 

 

マッハLP0

 

遊馬&アストラル WiN!

 

 

 

 

 

 

『…お前達は、試練を乗り切った…』

デュエルに敗北したマッハは…静かに遊馬の勝利を…試練を乗り越えた事を称賛する。

 

 

(マッハ…英雄に仕えたペガサスとは…君の事だな?)

 

「えっ…?」

 

『そうだ…伝説には、さらなる続きがある…』

アストラルに自身の正体…英雄に仕えたペガサスの化身である事を見抜かれたマッハは伝説の終幕を語る…。

 

 

『騎士達は命懸けの英雄とペガサスに心を打たれ、己を恥じ、謀反の気持ちは消え失せた…彼らは英雄とペガサスを手厚く葬り、その墓の前に跪き、深々と頭を下げた…そして英雄はペガサスの魂と共に天に召されていった…これが伝説の全てだ…』

英雄の命を掛けた言葉が仲間達を改心させる…それが英雄伝説の最後だったのだ。

 

 

『遊馬…アストラル…お前達の人を信じる力に賭けてみよう──』

 

「マッハ…『No.44』…」

人を信じる遊馬達を認めたマッハは…その身をカードに変え、遊馬の手に収まった…。

 

 

 

Side凌牙

 

 

「貴様…どうして俺達を助けた…?」

 

『…わからない、あえて言うのなら…この遺跡の伝説に心を動かされたからだ…』

凌牙の問い掛けにドルベは困惑気味に答える…自分でも、何故なのか…わからなかったのだ…。

 

 

「ドルベ!ありがとな!お前が伝説の続きを教えてくれて助かったぜ!」

 

『いいや…お前が選んだ事だ、それにお前は…私の助言が無くとも、人を信じたさ……だが、こんな戯言はこれっきりだ!今度出会った時は決着をつける!』

そう言ってドルベは姿を消した…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

「あっ…これは…!?」

 

(そのコインは…?)

遊馬は遺跡の端で輝く物を見つける…それは、獅子が刻まれた金色のコインだった…。

 

 

「『覇者のコイン』…父ちゃんが冒険した場所に『証』として置いてく奴だ……父ちゃん…いつも、見てくれてたんだな…」

遊馬は父の痕跡をしっかり握りしめた…。

 

 

 

「アストラル、シャーク…オレ、ずっと思ってたんだ…バリアンの奴らは俺が人を信じる事を利用してくる、でも結局…俺は人を信じる事は出来ねえ…人を信じるしかできねぇんだ!!」

 

「まったく…お人好しな奴だぜ…」

 

(それが君の結論なら今は何も言うまい…例え、それで私と違う道を行く事になっても…)

初の遺跡を攻略した遊馬は仲間達に決意を伝えた…例え、裏切られようと…人を信じる事をやめはしないと…。

 

 

 




(遊馬、1つ気になる事があるのだが…)

「ん?どうしたんだ?」
飛行船に乗りハートランドシティに戻る途中…アストラルは遊馬に問い掛ける…。


(先程の遺跡…あれは少なくとも2()()いなければ攻略できないものだ…君の父はどうやってあの遺跡を攻略したんだ…?)

「……たしかに…でも、父ちゃんならなんとかしそうだけどなぁ…」

「遊馬の親父さんが同じ試練を受けたのかはわからねぇけど……少なくとも相棒は()()()()()()()()()人だったんじゃねぇか?」

「…もしかして…遊海さんだったりして!デュエルも強いし、身体能力も高いし…って!そんな訳ないか!」

(「「それだ!!」」)

「えぇ!?」
小鳥の何気ない一言…それはパズルのピースにしっかりハマる言葉だった…!




「「ただいま!」」

「「お邪魔しま〜す!」」

「おっ、おかえり凌牙、璃緒…ずいぶん遅かったな?遊馬と小鳥ちゃんも一緒か?」

「ああ、実は話したい事が………って…ん?」
ハートランドに帰った遊馬達は遊海に話を聞く為に白波家を訪れたが…遊馬は違和感を感じる、1つは遊海の髪が真っ白になっている事…そして、もう1つは…

「なぁ、父さん…その子は…?」

『…………』
凌牙達を出迎えた遊海の背後、足に隠れるように白い髪の少女が凌牙達を見つめていたのだ…。


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あなたはだぁれ?

『………』

 

「父さん…その子は…?」

天馬の遺跡を攻略した遊馬達…その後、白波家を訪れたのだが…遊海と一緒にいたのは見慣れない4〜5才くらいのゴシックドレスを着た少女だった…。

 

 

「驚かせてごめんな、この子は「迷子」なんだ…ちょっと縁があってウチで預かる事にしたんだよ」

遊海は頭を掻きながら事情を話し始めた…。

 

 

…時は遊馬達がハートランドを出発した頃まで遡る。

 

 

 

 

「すまん、待たせたな」

 

「先生!……なんか老けたな?」

 

「うぐっ……心にグサッときたなぁ…」

遊馬達の乗った飛行船を見送った遊城十代は遊海に呼び出され、海浜公園に来ていた…。

 

 

《アンタ…異次元の戦いでまた無理したね?…もう、取り返しはつかないよ?》

 

「手厳しいな、ユベル…覚悟の上さ…ようやく、あいつを救えたからな…」

 

「先生…」

アゴール…バリアンとなってしまったディヴァインの魂を救った遊海は少し窶れたものの、表情は晴れやかだった。

 

 

「…で、オレはどうすればいい?」

 

「ああ…十代、俺の代わりに英雄の子孫達に声をかけて…戦える者を募ってほしい」

 

「…やっぱり、一番大きな戦いがあるんだな?」

 

「ああ、バリアンの神が目覚めた…規模で言えばダークネス並みの戦いになる…!」

そして遊海は十代にこれから起きる戦いの顛末を伝える…。

 

 

 

「バリアン七皇の復活に…100万枚のナンバーズ…バリアン世界の融合…やべぇな」

遊海から語られる世界…否、次元規模の戦い…それを聞かされた十代は冷や汗をかく…。

 

「俺達にできる事はそう多くない…でも、少しでも良い未来が掴めるように万全を期したい…頼めるか?」

 

「…わかった!…でもさ、先生は…本当に大丈夫…なのか?」

 

「……俺は…世界を護る者だ…昔も…今も…これからも……それだけは、変らない」

 

「悪い…変な事聞いちまった…じゃあちょっと行って来るぜ!」

 

「ああ、頼んだ!」

遊海に頼みを任された十代はハートランドシティを離れた…。

 

 

 

 

「あとは瀬人にも連絡を取って…遊星にも…やる事はいっぱいだな…」

ハートランドの海を見ながらこれからの事を考える遊海…そんな時だった。

 

《…主殿、少し気になる事が…》

 

「ん?どうしたトフェニ」

 

《あのベンチに座っている少女…先程からずっと…ずっと1人なのだが…》

 

「むっ…?」

遊海の傍らに現れたトフェニが海浜公園のベンチを指さす…そこには黒いゴシックドレスを着た白い髪の少女が1人で座っている…周りに他の子供や、大人の姿はない…。

 

「…気になるな、声をかけてみよう」

遊海は少女に声をかける為に近付いた…。

 

 

 

 

「こんにちは!お父さんか、お母さんは一緒かな?」

 

『…………』

しゃがみ込んで少女に声をかける遊海…だが、少女は答えない…黒い瞳で静かに遊海を見つめている。

 

 

「…あー…キャンユースピークイングリッシュ?」

 

『………』

 

「……弱ったな、言葉が通じてないか…?」

遊海は頭を掻く…今までたくさんの子ども達を見てきたが…ここまで表情を変えない子どもを見た事はなかった…。

 

 

「…ごめんな、ちょっとピリッてするぞ?」

遊海は少女の頭に手を当てて記憶を読もうとするが…。

 

「………記憶喪失か…?しょうがない、ハートランド警察に任せ──ん…?」

 

『(ギュ…)』

少女の記憶を読めなかった遊海は立ち上がろうとするが…ジャケットの袖を少女が掴んだ…。

 

 

《…マスター……大丈夫ですよ、その子は普通の女の子です…邪なモノは感じません》

 

「そうか…とりあえず、Dr.フェイカーに頼るか…」

アヤカの言葉を聞いた遊海は少女を抱き上げた…。

 

 

 

 

 

 

 

「…っていう訳で、警察とDr.フェイカーと海馬コーポレーションに依頼して親探し中なんだ…まったく、ひどい親もいるもんだ」

 

「なるほどな…父さんらしいぜ」

遊海はすっかり懐いた様子の少女を膝に抱えて経緯を説明する…なお、少女は無表情である。

 

 

「でさ、親を見つけたらどうするんだ?」

 

「…マインド・クラッシュ叩き込む」

 

「「「「それはダメ!!」」」」

真顔で怖い事を言う遊海に子ども達は思いっきり突っ込んだ…。

 

 

 

「遊馬君、小鳥ちゃん!よかったら夕食一緒にどうかしら?」

 

「あ〜…今日は帰るぜ!なんだか遊海達も大変そうだし…」

 

「私もそうします!」

翠に尋ねられた遊馬て小鳥は立ち上がる。

 

「そう…じゃあお土産に包んであげるから少し待っててね!」

そう言うと翠はパタパタと台所に向かった…。

 

 

 

 

(…遊馬、遊海に遺跡の事を聞くのではなかったか?)

 

「あ、ああ!!忘れてた〜!?」

白波家からの帰路…遊馬は肝心な事を聞くのを忘れていた…。

 

 

「もう…相変わらずドジなんだから…明日また聞きに行きましょう!翠さんのハンバーグ楽しみ〜!」

 

「そうだな〜…ところでさ、遊海の髪って…あんなに白かったっけ?」

 

「う〜ん…オシャレしたくなったんじゃないかな?」

 

((……遊海から感じる覇気がまた小さくなった…彼は、何かを隠している…それも、遊馬達に心配をかけないように…))

アストラルだけは…遊海の異変に気付いていた…。

 

 

 

 

 

「「「「いただきます!」」」」

遊馬達が帰った後、遊海達は夕食を囲む…今日はハンバーグとコーンスープにご飯である。

 

 

「まったく…それにしても今日は酷い目にあったぜ…」

 

「本当にハラハラしたわ…」

 

「そうだろうなぁ…あの遺跡は大変だった…」

 

「えっ…父さん、やっぱり行った事あるのか?」

夕食を食べながら遺跡の愚痴を零す凌牙達…遊海はそれとなくその問いに応えた。

 

 

「その遺跡は一馬と未来…遊馬のお母さんに連れて行かれた事があってな…俺が罠の方に入っちゃって……俺じゃなきゃ死んでたぞ…」

 

「「(まさかの逆だった!?)」」

…実は遊海、行方不明となる前の九十九夫婦と共に天馬の遺跡を訪れていたのだが…間違えて青のエリアに入ってしまい、大変な目に遭っていたのだ…。

 

「一馬はデュエルが強い訳じゃなかったから……俺じゃなきゃ5回は死んでたぞ…最後の最後で壁画壊しちゃったし…『強制脱出装置』で無理矢理遺跡から飛び出したんだ…」

 

「最後のピンチは父さんのせいかよ!?」

 

「遊馬さんのお父さん…なかなか破天荒な方だったのね…」

遊海の苦労を感じ取った凌牙と璃緒は苦笑いするしかなかった…。

なお…遺跡からの脱出後、一馬に大笑いされて拳骨したのは余談である。

 

 

「…ん?なんだ、食欲ないのか?」

 

『………』

遊海は迷子の少女に目を向ける…彼女は食事に手を付けていなかった…。

 

「しょうがないな…はい、あーん」

 

『……?アー…ぱくっ』

遊海はハンバーグを小さく切り分け、少女の口元に運ぶ…首を傾げていた少女はハンバーグを口にする…すると…

 

 

『(。>﹏<。)!!』

 

「ははっ!そうか!美味しいか!良かったなぁ〜!」

 

「ふふっ…父さんも嬉しそう!」

ハンバーグを口にした少女は可愛らしい笑顔を浮かべた…。

 

 

 

「そういえば…この子は何て名前なの?」

 

「…たしかになぁ…ずっと「迷子ちゃん」じゃかわいそうだしなぁ」

食事が終わり、璃緒は遊海に少女の名前を問う…遊海は頭を捻るが…

 

 

「じゃあ…雪みたいに白い髪だから『雪ちゃん』にしましょう!」

 

「流石翠…ネーミングセンス抜群だな!君もそれでいいかな?」

 

『……!』

少女…雪と名付けられた少女は小さく頷いた。

 

 

「気に入ってもらえてよかった…じゃあ雪ちゃん!翠と一緒にお風呂入ろうか?」

 

『……』

 

「嫌なのか?じゃあ璃緒は…そういうの苦手そうだな…俺でもいいか?」

 

『……!』

 

「そうか、じゃあ洗ってやろうな…翠、子ども達を頼む」

 

「はい!」

遊海は雪と一緒にお風呂場へと向かった…。

 

 

「なんだか懐かしいな…俺も父さんにああやって入れてもらったっけ…」

 

「私は母さんと…ああやって支えられて私達は成長してきたのね…」

 

「………」

遊海の背中をみた凌牙達は小さい頃を思い出し、懐かしんだ…。

 

 

 

カポーン…

 

 

 

 

「さて…寝る場所は…俺のベッドでいいか、ごめんな…パジャマは璃緒お姉ちゃんのお古だ」

 

『………』

雪をお風呂にいれた遊海は彼女の髪を梳かす…。

 

 

ピリリ…ピリリ…

 

 

「むっ…ちょっとごめんな…もしもし!」

 

『遊海、俺だ…今は大丈夫か?』

 

「瀬人…ああ、大丈夫…何かわかったか?」

遊海に連絡してきたのは瀬人だった…遊海は『電子生命体』でもある彼に雪の素性探しを依頼していたのだ。

 

 

『取り急ぎ国内を調べたが…合致するデータはない、他の支社にも連絡して捜索願いを調べている』

 

「そうか…まったく、こんな子を1人にするなんてなぁ…」

遊海は雪の頭を撫でながらため息をつく…。

 

 

『……遊海、もしやとは思うが…その子どもは()ではあるまいな?』

 

「ないない!アヤカやフレアに見てもらっても大丈夫だったし…変なモノも持ってなかったしな!」

瀬人の危惧に遊海は笑って答える…万全には万全を期して遊海は検査・調査をしていたのだ…。

 

『フン…まぁ、お前なら心配はないな!何かわかれば連絡する…とにかく、お前はしっかり休息して体調を戻せ!いいな?』

 

「りょ〜かい!おやすみ瀬人」

 

『ああ、さらばだ』

 

 

 

《フォウ…フォーウ…(遊海…その子…)》

 

「ん?どうした?フォウ」

遊海の部屋にやってきたフォウは雪を見て首を傾げている…。

 

《…フォウ!(ごめん!気のせい!)》

 

「ん…?そうか…よ〜し、雪ちゃん…一緒に絵本読みながら寝ような〜」

 

『………!』

遊海は自分のベッドに雪を寝かせ、古い絵本を取り出す…その本を読み聞かせながら夜は更けていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『起きろ!!今すぐ起きるんだ!遊海くん!!』

 

 

「ん……花の、お兄さん……いや、お前は…!」

 

遊海が気づくとそこは風が吹き荒れる花畑…そしてローブの青年が立っている、そして遊海は花のお兄さんの正体に気付いた…!

 

 

「花の魔術師…マーリン…!?なんで…なんで俺の夢の中に!?」

 

『ああ!?あまりに焦って「幻術」をかけ忘れてしまった…って…!私の事はどうでもいい!!』

花のお兄さん…否、アーサー王伝説に名高い世界一のキングメーカーにして『花の魔術師』の異名を持つ、伝説の魔術師・マーリンは普段ではありえないほど動揺している…!

 

 

『遊海くん!起きろ!目覚めろ!緊急事態なんだ!!このままでは…このままじゃキミは!()()()()()()()()()!!』

 

「う、うわあああああ!?」

そう言うとマーリンは杖を振るう…そして暴風が遊海を吹き飛ばした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(…なんだ、今の夢…なんで、Fateのマーリンが、俺の夢に今更…)」

眠っていたらしい遊海は目を覚まし…寝起きの頭で先程の夢について考える…。

 

 

「(俺が、戦えなくなる……夢は、脳の情報整理っていうけど…そのせいで変な夢を見たのか…?)」

遊海は夢で異常事態に遭った経験は少ない…とりあえず起きようとした遊海だったが…。

 

 

 

「(……!?()()()()!!…金縛りだと…!?)」

横向きに寝ていた遊海…その体はピクリとも動かない…完全に固まってしまっている…!

 

「(バミューダの戦いの影響か…!?ああ、声も出ない…!)」

初めての事態に困惑する遊海…そして、ある事に気づく…!

 

「(雪がいない…?何処に行った…!)」

隣で寝ていたはずの雪がいない事に気付いた遊海は辛うじて動く目を動かして少女を探す…そして…

 

 

『…………』

 

「(な、なんだ…俺に寄り添って……待て、何か変だ…!?)」

雪は遊海にピタリと寄り添っていた…しかし、様子がおかしい…右腕を下にして眠る遊海…その首の下に顔を埋めていたのだ…!

 

 

 

ジュル…ジュル……

 

 

 

「(っ…?この、音は…それに、首元の痛み……まさか…!?)」

部屋に静かに響く()()()()()()…その発生源は、遊海の首元だった…!

 

 

 

『……6ede…!』 

 

 

「(─────!!!?)」

遊海が目覚めた事に気付いたのか、雪が遊海の顔を覗き込む…その瞬間、遊海の全身は総毛立った…。

愛らしい笑顔を浮かべる雪…その小さな口元は()()()()()()()…!

 

 

「(吸血鬼…いや、吸血種だと!?俺が…俺がそれを見抜けなかったのか!?そんな馬鹿な!!)」

遊海の体を衝撃が突き抜ける…それは遊海の人生史上、最大の恐怖だった…!

 

 

『ジュル…ジュル…』

 

「(不味い…!!なんで、なんで()()()()()()()!!)」

部屋を見回せば窓際でフレアが…ベッド下ではメガロックが眠り、枕元にはアヤカもいる…なのに、誰も()()()()()()()()()()()()()─!

 

 

「(力が…生命力が、抜けていく……なんで、なんでこんな事が…!!)」

必死に体を動かそうとする遊海…だが、体はいう事を効かず…意識が遠のいていく…。

 

 

「(くそ……こいつ、は、いった…い……)」

 

 

 

 

 

 

 

《ドッフォーウ!!(遊海から…離れろぉぉ!)》

 

 

『ギ─!?』ドッターン!!

 

「ゴホッ…!!フォ、ウ…!」

諦めかけた遊海を救ったのは…小さな体を精一杯使って飛び掛かったフォウだった…!

 

 

 

《む…ん…?なんですかこんな夜中……ユウミ!!!》

最初に異変を感じたのはフレアだった、物音で目を覚ませば…顔色を真っ青にした遊海が血を流していたのだ…!

 

《メガロック!アヤカ!トフェニ!起きなさい!敵襲です!!》

 

《ふがッ…!?遊海!何があった!!》

 

《えっ!?マスター!?》

 

《主殿!!》

フレアの怒声で飛び起きる精霊達…遊海は必死に声を振り絞る…!

 

 

「ゆ、き…敵だ、た、吸血…!ゴホッ!!」

 

《グルルル…!!》

 

『m4rbd q@zqki…』

 

精霊達はフォウが唸る先に目を向ける…そこには暗がりから赤い眼を輝かせ、不気味な笑みを浮かべる雪…否、怪物の姿があった…!

 

 

《この…!よくもマスターを!!》

 

『f7e…!』

 

ガッシャーン!

アヤカが怪物へと突進…窓を割り砕き、怪物を突き飛ばした…!

 

 

「精霊、変身…!!」

遊海もなんとか起き上がり、鋼の鎧を纏って外へと飛び出した…!

 

 

 

 

 

「貴様、いったい…何者だ…!」

 

『………』

遊海は地面に叩きつけられた怪物を睨む…!

 

 

/qm.26ーp@…!

立ち上がった怪物が何かを呟く…そして怪物の姿が変わっていく…白い髪は赤紫色に染まり、手足が伸び…黒いローブを纏う…さらに、両眼を覆うように眼帯が装着される…眼帯には…バリアンの紋章が刻まれていた…!

 

 

「新手の、バリアンだと…!?」

遊海は新たな敵の出現に困惑する…!

 

 

「遊海さん!いったい何が!?」

 

「父さん!!」

 

「翠!凌牙!コッチに来るな!敵襲だ─!!」

深夜の住宅街に遊海の怒声が響いた…。

 

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

ドッスーン!

 

 

「ん…?父さん、またベッドから落ちたのか…?」

深夜、眠っていた凌牙は物音で目を覚ました…その音は遊海の部屋の方向から…たまに遊海はベッドから落ちる為、その音だと思っていた…。

 

 

「───!!?」

 

「!!!」

 

バリーン!!

 

「なんだ…!?何か変だ!」

言い争うような声に何かが割れる音…異変を感じた凌牙は慌てて飛び起きた!

 

 

「父さん!…な、何だよこれ!?」

遊海の部屋に飛び込んだ凌牙が見たのは…血に染まったシーツ…そして割れた窓だった…!

 

「遊海さん!!っ─!?」

少し遅れて翠もやってくるが…部屋の惨状に絶句している…。

 

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

「っ…!遊海さんは外ね…!今いくわ!」

 

「母さん!俺も!!」

窓の外を示すフォウに状況を察した2人は外へと飛び出した…。

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「父さん!!」

 

「翠!凌牙!コッチに来るな!敵襲だ!!」

外に飛び出した凌牙と翠…彼らが目にしたのは街灯に照らされた鋼の鎧を纏う遊海…そして、暗がりでバリアンの紋章を輝かせる少女の姿だった…。

 

 

「雪の正体は…バリアンだった…!俺の一生の不覚だ…!!不甲斐ない!!」

 

「そんな…!」

油断なく怪物を睨む遊海…その様子を見た翠は絶句する…。

 

 

『b\dw3:@.…』

遊海達に聞き取れない言葉を呟いた怪物の手に身の丈以上の大きさの鎌が現れる…!

 

 

「翠…凌牙を頼む…!ゼアッ!!」

 

「遊海さん!!」

遊海は戦闘態勢を取り、怪物に向けて飛び出した!

 

 

『ギッ…!』

 

「っ…止められた…!」

怪物に拳を叩き込む遊海…だが、怪物は鎌の柄を使い攻撃を受け止める…!

 

『───!!!』

 

「シィッ!!」

凄まじい膂力で遊海を押し返した怪物は鎌を振るい遊海に斬りかかるが、遊海はバク転して刃を躱す…!

 

「体が、重い…!カタストロフ・レーザー!!」

 

『──!!!』

力を吸われてしまい、思うように動けない遊海は無数の光線・魔力弾を撃ち放つ…だが、その光線は鎌によって斬り裂かれ、弾かれる!

 

 

「なら…!モード・トリシューラ…絶対氷結!!」

 

『──!?ギイッ…!!』

 

「やった…!動きを止めた…!!」

氷龍の鎧に換装した遊海が冷気を解き放つ…全てを凍らせる力は怪物の足を凍りつかせる!

 

 

 

「哀しき魂よ…神の炎によって浄化せん!太陽神の──」

遊海は太陽神の鎧を纏い、浄化の炎を解き放つ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン…!

 

 

 

 

バキッ…

 

「う、がっ…!?」

 

「遊海さん!?」

浄化の炎によって決着をつけようとした遊海…だが、突然襲いかかった激痛で太陽神の鎧を保てず、膝をついてしまう…!

 

 

「(ぜ、全身が、痛い…苦しい…!!いきなり、何が…!?)」

遊海に襲いかかったのは人生で経験した事ない、全身が軋む程の激痛と苦痛…そして目眩だった。

 

「遊海さん!前─!!」

 

『───!!』

 

ザン─!

 

「っあ…!!」

 

「父さん!!」

凌牙の絶叫が響く…怪物が投擲した大鎌が回転しながら遊海の身体を斬り裂いたのだ…!

 

 

戦闘衣装(バトルドレス)・シャドール!!」

 

「すま、ん…!」

翠は即座にシャドールのバトルドレスを纏い、影糸で遊海を回収する…。

 

 

「影糸乱舞!!」

 

『────!!!』

翠は凌牙と遊海を守る為に力を奮う…怪物に無数の影糸を差し向けるが、拘束の解けた怪物は鎌を回収し、糸束を斬り捨てる!

 

 

「取った!!せぇい…りゃあああ!!」

 

『ギィ─!?』

だが、翠は糸の一本を怪物の右腕に絡ませ、空中に放り投げる!

 

 

「みんな!今よ!!」

 

《よくもマスターを…!喰らいなさい!》

 

《富嶽岩弾!》

 

《ゴッド・ブレイズ・キャノン!!》

 

《ハアッ!!》

 

ドン!!

 

翠は遊海と怪物の流れ弾を処理していた精霊達に叫ぶ、そして空中に投げ出された怪物に破壊の極光・魔力の息吹・岩の弾丸・神の炎が直撃…深夜のハートランド上空で大爆発が起きた…。

 

 

 

《っ…反応ロスト…逃げられたようです…!》

 

《手応えはありました…深手は負ったはず…!おのれ…!!》

怪物の反応を辿ったアヤカが結果を伝え…フレアは怒りを滲ませた…。

 

 

 

 

「父さん…!しっかり…!しっかりしろ!!」

 

「あ…が…痛、い…!こんな、苦しみ…は…ぐああ…!!」

 

「父さん!?いったい何があったの!?」

 

戦闘音で飛び起きて来た璃緒が見たのは胸に切り傷を受けて倒れ込む遊海…そして遊海に回復魔法を使う翠と遊海に声をかけ続ける凌牙の姿だった…。

 

 

「璃緒…バリアンだ…!父さんの助けた迷子が…バリアンの刺客だったんだ…!!」

 

「そんな…!!」

璃緒は凌牙の言葉を信じられなかった、遊海に懐いていた少女…それがバリアンとは結びつけられなかった…。

 

キィン─バチバチ…!

 

「どうして…!どうして傷が塞がらないの!?」

 

「っ…あ…がぁぁ…!?」

必死に遊海に回復魔法をかけ続ける翠…だが、鎌で傷付けられた胸の傷は塞がる気配を見せなかった…遊海の顔色はほとんど真っ白になってしまっている…。

 

 

「みど、り……こども、たちを、たの…む……!バリアンから、まも…れ…!」

 

キィン─!

 

「っ─!?遊海さん!!ダメ…!しっかりして!」

遊海は最後の力を振り絞り…赤き竜の痣の一部を翠に譲渡する…。

 

 

「(いったい、あの子は、何者…なんだ…?……ちくしょう……────)」

 

「父さん…!父さぁぁん!!」

璃緒の悲鳴が響く…何が起きたのか理解できぬまま…英雄は目覚めぬ眠りに落とされた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そんな、なんで…!なんで遊海がこんな目に…!!」

 

「遊馬…」

 

翌朝、遊馬と小鳥はKC系列の病院…その特別病室にいた…凌牙から遊海がバリアンの襲撃を受けたと聞いて駆け付けたのだ。

その病室では無数の管を繋がれ、呼吸器を装着された遊海が眠っている…表情は時折苦しそうに歪み、胸元の包帯からは血が滲んでいる…。

 

 

(…まさか、あの少女がバリアンの刺客だったとは……遊海は十分に注意を払っていたはず、その警戒を掻い潜って…)

 

《……おそらく、私やフレアの眼を掻い潜るほどの隠匿が為されていたのでしょう……そのせいで、マスター…は……私の、せいで……!》

 

《アヤカ…これは、誰の責任でもありません……相手が一枚上手だったのです…(おそらく、ドン・サウザンドの力……卑劣な…!!)》

アヤカは声を震わせながら罪悪感に打ちひしがれる…そんなアヤカをフレアは慰める事しかできなかった…。

 

 

 

『…入るぞ』

 

「瀬人さん…」

悲しみに包まれる病室に1人の男が現れる、それはハートランドでの活動用機体を介した瀬人だった…。

 

 

『検査の結果が出た…現在、遊海の身体は未知の()に侵されている…』

 

「「「毒…!?」」」

 

「そんな…でも、私達は毒に対して耐性が…!」

瀬人の言葉に項垂れていた翠が反応する…遊海達は特典の一部として「毒耐性」を持っている…それはアルコール以外の毒物ならば…人間界のあらゆる毒物を無害化できるほどである…。

 

 

『それはオレも承知している…この毒は遊海の首元から注入されたモノ…それが、全身を侵している…成分としてはヘビ毒に似たモノ…としか、わからなかった』

 

「蛇…」

 

『そして塞がらぬ「胸の傷」…それに関しては…()()()()()()()…!精霊の力による回復でも、縫合でも…その傷を完全に閉じる事ができん…!!』

 

(回復不可能のダメージに…毒による永続ダメージ…そのせいで遊海は眠り続けているという事か…)

遊海に起きている異常事態をアストラルはデュエルモンスターズに例えて遊馬達に説明する…。

 

 

『九十九遊馬、お前達は「遺跡のナンバーズ」とやらを集めるらしいな』

 

「あ、ああ…」

瀬人は遊馬に今後の目的を確認する…。

 

 

『重々気をつけろ…遊海が…世界最強の男が敗れるほどの相手だ……もし狙われたなら、すぐに逃げろ…いいな!!』

 

「…オレは、逃げねぇ…!バリアンからは、絶対に逃げない!!」

 

「遊馬…!」

傷付いて眠る遊海を前に瀬人に警告された遊馬は拳を握り締め、瀬人をまっすぐ見つめる…!

 

「相手がどんなに強敵だろうと…オレは、絶対に逃げない!!オレの信じるデュエルで…絶対にそいつを倒す!!」

 

『…そうか…ならば、翠…お前のすべき事はわかっているな…!』

 

「…遊海さんは…倒れる直前に、子ども達を託しました…そして、この痣も…!」

翠は右腕をたくし上げ、いまだに熱を持つ炎の痣を見せる…。

 

「私は、子ども達を守る為に戦います!!」

煮え滾る怒りを飲み込み…翠は子ども達を守る事を誓った…!

 

『そうだ…それで良い!KCは急ぎ血清の開発を進める…!必ず、遊海を救ってみせる!だから、お前達も必ずナンバーズを手に入れろ!若きデュエリスト達よ!』

 

「「「「はい!!」」」」

瀬人の号令のもと…遊馬達は結束を強めた…!

 

 

 

 

 

「遊海さん…必ず子ども達は守ります…!だから…だから…」

遊海の回復を祈り、遊海の手を握りしめる翠…その声が聞こえたのか…遊海の目から一筋の涙が零れた…。



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ベクターと『黒』〜試される『友情』〜

こんにちは!S,Kです!

バリアンの奇襲に倒れた遊海…しかし、時の流れは止まらない…。

新たな脅威が迫る中、遊馬達は新たな遺跡を目指す…!


それでは、最新話をどうぞ!


『………これは、困った事になった…遊海くんが倒れてしまうとは…』

夢幻の花園…その中心部の塔の中…花の魔術師・マーリンは頭を抱えていた…。

 

『ボクの「眼」でも彼女の正体はわからない…でも、彼を救う手伝いくらいは…許されるはずだ…いや、許してくれなきゃ困る!』

 

 

 

 

 

 

《翠…1度家に戻ってください…もう2日も休んでいないでしょう…?》

 

「…大丈夫、遊海さんが感じてる苦しみに比べれば…これくらい…」

遊海がバリアンの襲撃を受けて数日…翠は眠り続けている遊海に付き添い続けている…。

 

 

《なら、せめて睡眠を…もしもの時に判断が鈍ってしまいます……マスターは私達が見ていますから…》

 

「…ありがとう、アヤカちゃん…少しだけ、寝ちゃうわね…」

アヤカの言葉を聞いた翠は瀬人の用意した簡易ベッドに身を預けた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここは…どこ…?」

眠ったはずの翠は見慣れない場所に立っていた…そこは見渡す限りに桃色の花が咲く、穏やかな花園だった。

 

 

『驚かせてすまないね、貴女に会いたくて…夢に干渉させてもらったんだ』

 

「貴方は…マーリン!?なんでこの世界に!?」

花吹雪と共に人影が現れる…それは白いフワフワのローブを纏った魔術師・マーリンその人だった…。

マーリンは翠の元になった『間桐桜』にも関わる人物でもある…。

 

 

『君達が転生した世界にたまたま君達の知る「マーリン」に似た「ボク」という存在がいただけだよ、翠』

 

「私が転生者だって知ってる…!?貴方の目的は何なの…!」

思わぬ人物の登場に翠は身構える…!

 

 

『ああ!?誤解しないでほしい!ボクは君達の味方だよ!ワールド・デュエル・カーニバルの時に死にかけた遊海くんの魂を助けた…と言えば信じてもらえるかな…?』

 

「あっ…」

翠はWDCの時の遊海の復活を思い出す…その時に病室に吹き込んだ花吹雪…それは足元に咲いている花と同じものだった…。

 

 

『君達が知っての通り、基本的にボクは個人には執着しない…ボクは人類が描く「物語」が好きだからだ…でもね、ボクは遊海くんの()()()になってしまった!彼がいくつもの苦難に立ち向かい、戦う姿を好きになってしまったのさ…そしてボクは陰ながら君達を見守っていたんだ』

 

「…マーリンさん…」

翠は静かにマーリンの言葉を聞く…そして理解した、彼は本当に遊海を好いてくれているのだと…。

 

 

『納得してもらえたようだね、…時間は少ないから簡潔に用事を伝えるよ…このままでは遊海くんは()()()()()()

 

「っ…!?そんな…!!」

マーリンの無情な言葉に翠は絶句する…。

 

 

『君達が「決闘以外では死なない」というのはわかってる…たしかに肉体は死なない…でも、このままでは遊海くんの精神が保たない…痛みと苦しみに耐えられず、彼の精神が死んでしまう…!』

 

「そんな…!どうすれば、どうすれば遊海さんを助けられるんですか!?」

翠はマーリンに問い掛ける…。

 

『遊海くんを傷付けた鎌…あれは「不死殺し」に類する武器だ、その呪いで傷は治癒せず、解毒もできていない…鎌を破壊し、遊海くんの胸の傷を塞ぐんだ…そうすれば彼は持ち堪える事ができる…!』

 

「鎌を、壊す…!」

 

『…けれど、相手はまったくの「未知」…ボクの「千里眼」でも、その正体はわからない…危険を伴うだろう…それでも、やれるかい?』

 

「やります…!私は遊海さんの妻です!必ず…必ず遊海さんを助けます!!」

マーリンから示された解決策…それを聞いた翠は強く頷く…!

 

『…頼んだよ、ボクはいつも君達を応援しているから…!』

 

 

 

………

 

 

 

 

 

「ん…いま、のは…」

 

《おはよう、翠…よく寝てたよ?》

 

《マスターも安定しています…安心してください》

翠はウィンダとアヤカに見守られながら目を覚ました…時計は2時間ほど進み、遊海も静かに眠っている。

 

 

「(……遊海さん、待ってて…必ず、助けるから…!)」

翠は桃色の花弁を握り締めながら…遊海を助ける事を誓った…。

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

(異次元飛行船が第2のナンバーズがある場所を探知した…今回はそこへ向かうぞ)

 

「次の目的地は絶海の孤島か…今度は、何がいやがるのやら…」

 

「それに罠も…」

 

異次元飛行船の中…遊馬・アストラル・小鳥・凌牙・璃緒は新たなナンバーズの遺跡へと向かおうとしていた…。

 

 

「なあ、シャーク…遊海と一緒にいなくて大丈夫なのか…?」

 

「…心配するな、俺は大丈夫だ…父さんだったら『俺の事は気にせず、ドジな遊馬の力になれ』って言うさ」

 

「『ドジ』は余計だ〜!!」

 

「あはは…」

遊馬は遊海が倒れた事を気にして凌牙へと声をかけるが…凌牙は遊馬に冗談が言えるくらいの余裕はあった…。

 

 

「よし!なら…出発だ!『かっとび遊馬号』!!」

 

(遊馬号…?)

 

「いつそんな名前が付いたんだよ、この飛行船に…」

 

「ネーミングセンスゼロですね…(汗)」

若干スベった遊馬の号令と共に異次元飛行船改め、遊馬号は新たな遺跡へと向かった…。

 

 

 

 

 

「ここがナンバーズのある遺跡かぁ…?なんだかボロボロだぜ…」

不安定に荒れる異次元航路を抜けた先…遊馬達はナンバーズの眠る半壊した城の遺跡に辿り着いた…。

 

 

 

「っ…!?ここは…かなり、()()()ですね…できれば、入るのは止めた方がいいくらい…」

 

「や、やばいって…?」

遺跡の入口に踏み入った璃緒は恐ろしい気配を感じ、立ち竦む…。

 

(だが…地図が示したのはここだ…私達は進まねばならない)

 

「そう…ですね…」

だが…ナンバーズを入手する為には進まねばならない…璃緒は意を決して遺跡へと進んだ…。

 

 

 

「なんか…気味が悪い…」

 

「この壁は…」

 

「この遺跡の伝説か…」

ひんやり湿った階段を地下に降りていく遊馬達…その途中、壁に刻まれた壁画を見つける…それは人々が迫害され、嘆き悲しむ姿が描かれたものだった…。

 

 

「…嘆きあっている…過去の人々が…時を超えた生命の声が聞こえてくる…」

 

「璃緒…」

璃緒は感じ取った…この遺跡に眠る人々の叫びを…染み付いた嘆きの声を…。

 

 

「これは呪われし王宮の…残虐なる王子の伝説…」

 

 

………

 

 

 

かつて1人の王子がいた…幼い頃から人心を信じず、全ての人間に疑惑の目を向け…それを裁いた…。

 

 

そして全ての命を奪いし後、王子は1人残りて命を断つ…

 

 

 

…………

 

 

 

 

「それが、この遺跡の…っ」

 

「璃緒!」

トランス状態で遺跡の伝説を語った璃緒は倒れかけるが…凌牙がしっかりと受け止める…。

 

(島の命を全て奪った…呪われた王か…)

 

 

 

 

 

「分かれ道だわ…」

 

「どれに進めばいいんだ…?」

しばらく進んだ遊馬達は5本の道がある広間へと辿り着く…。

 

 

「…ん?あれは…目印だ!」

辺りを見回した遊馬は一番左の道の柱に☆マークを見つけた!

 

 

「きっと、父ちゃんが付けた目印だ!」

 

「ちょっ…!待て、罠かもしれねぇぞ!?」

 

「大丈夫!任せておけって!」

 

「「(大丈夫かなぁ…)」」

父を信じて前に進む遊馬に小鳥と璃緒はため息をついた…。

 

 

 

 

 

ドシン!ゴロゴロゴロゴロ

 

 

 

「わ、わあああ!?逃げろぉぉ!!!」

 

「「「やっぱりこうなったぁぁ!!!」」」

遊馬達が新たな道を進み始めた直後、彼らの背後から巨大な石の玉が迫ってきた!!

 

 

「ゆ、遊馬!なんとかしてぇぇ!!」

 

「あれは…!!逃げ道は…ここだあああ!!」

 

ガチャン!

 

石の玉から逃げる遊馬達…遊馬は再び目印を見つけ、柱を押し込む…すると壁が開き、待避所が現れた事で4人は九死に一生を得た…。

 

 

「は、はは…きっと、一番避けやすい罠に、目印を付けてくれたんだな…」

 

「絶対に、逆の意味だろ…!」

 

「ハハ…スリル、満点だったろ…」

息を切らせながら遊馬を叱る凌牙…その時だった。

 

 

カチッ!

 

 

「「「「あ…」」」」

ふらついた遊馬の手が壁に触れる…そこにはさらにスイッチがあった!

 

 

ガコン!!

 

 

「「なっ!?うわああああ!!」」

 

「「うそっ!?きゃああああ!?」」

 

そして足元が抜け落ち、遊馬達はバラバラに暗い滑り台へと落とされた…。

 

 

 

 

 

ドッシーン!!

 

 

「い、イッテぇぇ…!」

 

(遊馬!大丈夫か!?)

 

「ここは…牢屋…!?」

滑り台に落ちた遊馬は強かに腰を打ちながら何処かへと到着する…そこは古い牢屋だった…。

 

 

「遊馬…!そこにいるの!?」

 

「小鳥!みんな大丈夫か!?」

 

「ああ…なんとか無事だ…!」

 

「見事に罠に嵌まりましたね…」

仲間達の声に柵から辺りを見回す遊馬…彼らは分断され、別々の牢屋に囚われていた…。

 

 

 

『よぉ…!久しぶりじゃねぇか、遊馬クンよぉ…!』

 

「お前は…ベクター!!」

遺跡の中に響く声に遊馬は反応する…牢屋が面した広間の先、広間を見渡す玉座に遊馬達を騙し、卑怯な作戦で追い詰めた男…人間体のベクターが座っていた…!

 

 

『おやおや…もう真月とは呼んでくれないんだ…?寂しいなぁ…!』

 

「お前…!!」

真月の声色で牢に囚われた遊馬を嘲笑うベクター…彼はさらに皮肉げな笑みを浮かべる…!

 

 

『来て早々だけど…残念なお知らせだ…!遺跡のナンバーズは…既に頂戴した!』

 

「なにっ…!?」

ベクターの言葉に驚く遊馬…ベクターはとある人物と一足先に遺跡を攻略、ナンバーズを手に入れていたのだ…!

 

 

『でも〜!せっかく来たのに、このままでは味気ない…どうだ?ナンバーズを賭けたデュエルをしないかぁ?』

 

「上等だ!受けて立つ!!」

 

『ククッ…!では遊馬…お前には()()()に移って貰おうか!』

 

ガコン!

 

「うわっ!?」

ベクターの挑発に乗る遊馬…それと共にベクターの手元に何本もの鎖が下がってくる…ベクターがその内の1つを引いた途端、遊馬の牢が開き床が上昇…遊馬は投げ出され、広間にある足場の上に閉じ込められる!

 

 

 

『アハハハ…!そこは特別でなぁ…オレが装置を動かさないとお前は出られない…!オレはナンバーズからこの遺跡の()()()()の知識を手に入れているのさぁ…!』

 

「ふ、ふざけんな!こんな場所でデュエルできるかよ!?」

ベクターの言葉を聞いた遊馬は叫ぶ、遊馬の閉じ込められた足場は狭い…リアルダメージを受けるデュエルをすれば…待ち受けるのは転落死である…。

 

 

『慌てるなよ…!デュエルするのはお前じゃない、アストラルだ!』

 

(なんだと?)

 

「ベクター…あなた、良からぬ事を考えているわね…!?」

 

『おっと…それはオレの決め台詞だぜ?』

デュエルの相手にアストラルを指名したベクター…それを見た璃緒はベクターが再び卑怯な作戦を行おうとしている事に気付く…!

 

 

(いいだろう…!降りてこい、ベクター!)

デュエルを承諾したアストラルは広間の中心に降り立つ…だが、ベクターは動かない…。

 

 

『残念だが、相手はオレじゃない…!』

 

【俺だよ…アストラル…!】

 

「お前は…!『No.96』!!」

アストラルの目の前に闇が噴き出す…現れたのは漆黒の体を持つアストラル…アストラルの記憶のナンバーズの1枚にして裏切り者『No.96』だった。

皇の鍵の試練の後に開放された96…彼はとある議員の体を乗っ取り、人間界を観察していた…それをベクター(とドン・サウザンド)が見つけ出し仲間…否、一時的な協力関係を結んだのだ…!

 

 

【久しぶりだなアストラル…ここでなら、俺達でも存分にデュエルができる…ナンバーズは俺が持っているぞ…!】

 

(そのカードは…!まさか、バリアンと手を結んだのか!?)

 

【ベクターが俺が必要だと泣きついてきてなぁ…!その手を取っただけさ…!さぁ、いつか約束したなぁ?貴様の身体を貰うと…!そいつを実行させてもらうぞ!!】

 

(くっ…!遊馬…君のデッキを借りるぞ!デュエルディスク・セット!)

 

「おう!!負けるな!アストラル─!!」

アストラルを狙う96…アストラルは彼を倒す為、遊馬の魂と共にデュエルに挑む!!

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

 

デュエルダイジェスト アストラル対No.96

 

 

 

 

96

 

 

【現われろ!我が分身「No.96」!漆黒の闇からの使者!「ブラック・ミスト」!】

先攻を取ったのは96…彼はレベル2モンスターの召喚に特化した『マリスボラス』デッキは使い、自身の分身たる「ブラックミスト」を呼び出す!

 

 

 

(私のターン!自分フィールドにモンスターがいない事で、手札の『トイナイト』を特殊召喚!さらに2体目の『トイナイト』を通常召喚!)

後攻となったアストラルは2体のおもちゃの兵隊を呼び出す…そのレベルは共に4…だが、アストラルはすぐには動かない…!

 

【わかっているぞ…!お前はこのまま攻撃して「ブラックミスト」のORUを使わせるつもりだなぁ?自分のダメージを最小限に抑える為によぉ…!】

ブラックミストはORUを使う事で必ず相手よりも強くなる戦闘では無敵の効果を持っている…アストラルは攻撃力200のトイナイトを使う事でブラックミストの力を浪費させようとした…だが、96はその考えを読んでいた…!

 

 

【永続罠「スモール・ストッパー」を発動!それによりフィールドの攻撃力1000以下のモンスターは攻撃できず、さらに!攻撃表示のモンスターが攻撃しなかった時!エンドフェイズに1000ダメージを与える!】

 

「『トイナイト』の攻撃が封じられた!!」

隙を埋める96のカードに叫ぶ遊馬…だが、アストラルは動じない!

 

 

39

 

 

(いでよ!「No.39」!「希望皇ホープ」!!)

 

【現れたか…!】

アストラルは自分の希望の化身を呼び出す!

 

 

「でも…『ホープ』じゃ『ブラックミスト』には勝てねぇ…どうするんだ!?」

 

(遊馬、私が無策で『ホープ』を召喚すると思うか?私は装備魔法『エクスチェンジ・ガード・ローブ』を『ホープ』に装備!その効果により『ホープ』の攻撃力は500アップする!)

アストラルを心配する遊馬…だが、アストラルは不敵に笑い、ホープに黄色に輝くマントを羽織らせる!

 

 

 

(バトルだ!『ホープ』で『ブラックミスト』を攻撃!)

 

【「ブラックミスト」の効果発動!ORUを1つ使い!相手モンスターの攻撃力を半分にし、その数値分自身の攻撃力をアップさせる!シャドー・ゲイン!】

攻撃を仕掛けるホープ…だが、ブラックミストが吐き出した闇がホープの力を奪い去る…しかし、それは…アストラルの想定内である!

 

 

 

(『エクスチェンジガードローブ』の効果発動!このカードの効果以外で装備モンスターの攻撃力が変動した時!その数値分のダメージを相手に与える事ができる!)

 

【なにっ!?ぐうぅぅ…!!?】

それはブラックミストの効果を逆手に取った効果…黄色のマントから雷撃が放たれ、96に大ダメージを与える!

 

(さらに!ORUを1つ使い「ホープ」の攻撃を無効にする!ムーンバリア!)

 

「よっしゃ!先制パンチが決まったぜ!!」

アストラルの見事なプレイングに歓声を上げる遊馬…だが、96とベクターは笑っていた…!

 

 

【やるなぁ…!だが、俺がタダでダメージを受けると思うかあ?】

 

(なに…?)

 

ガコン…ブォン!!

 

「なっ!?あっぶねぇ!!」

 

(遊馬!?)

96が不敵に笑った瞬間、遊馬の頭上を巨大な振り子刃が通り過ぎた!

 

 

『あぁ…言い忘れてた!96のライフが減るたびに…この「悲鳴の迷宮」の仕掛けが1つ作動する…!』

 

「なんだと!ってわわ!?」

ベクターが狂気の笑みを浮かべる…これがベクターと96の思惑だったのだ…!

 

 

「それじゃあ…!アストラルが攻撃できないじゃない!!」

 

「卑怯な真似を!!」

牢屋からデュエルを見守る凌牙達が声を上げる…悲鳴の迷宮には無数の仕掛けがある…今の遊馬は足場から動けない…つまり、アストラルは遊馬を守る為に実質的に攻撃を封じられてしまったのだ!

 

 

【俺の手札はデッキの中のカードだけじゃない…悲鳴の迷宮はお前の動きを封じる…いわば『永続罠』だったのさ…!さぁ、どうする?アストラルよぉ!!】

 

(…私はカードを伏せ、ターンエンドだ)

アストラルを嘲笑う96…アストラルはそのままターンを終えるしかなかった…。

 

 

 

 

65

 

 

【見せてやろう…!遺跡のナンバーズを!!現われろ!『No.65』!呪われし裁きの執行者…!『裁断魔人ジャッジ・バスター』!!】

96の場に現れたハサミ型のオブジェが変形…両腕が鋭い刃物となった魔人が現れる!

 

 

ドクン…!

 

『っ─!?なんだ、このナンバーズは…得体の知れない力を…!』

そして召喚されたナンバーズを見たベクターの心臓が跳ねる…ベクターはこの遺跡に来た時から「恐怖」に近い感情を抱き続けていた…。

 

 

 

【バトルだ!『ブラックミスト』で『希望皇ホープ』を攻撃!さらに効果発動!シャドー・ゲイン!】

 

(「ホープ」の効果発動!ムーンバリア!)

攻撃を仕掛ける96に対してアストラルはホープの効果を使う…だが…!

 

【その瞬間!『ジャッジバスター』の効果発動!ORUを1つ使い!フィールドで発動した「ホープ」の効果発動を無効にし、相手に500ダメージを与える!】

 

(なにっ!?ぐあっ…!!)

 

「アストラル!!」

ホープのバリアが斬り裂かれ、アストラルはダメージを受ける…本来ならアストラルは「エクスチェンジガードローブ」の効果で96にダメージを与えられたが…遊馬を守る為に…そして()()()()()()()その効果を使わなかった…だが、96は攻撃の手を緩めない!

 

 

【これで「ブラックミスト」は攻撃続行だ!「ホープ」を叩き潰せ!ブラック・ミラージュ・ウィップ!】

 

(うわああああ…!)

ホープが鞭状になったブラックミストの爪で切り裂かれ、爆発する!

 

【まだだ!『ジャッジバスター』でダイレクトアタック!】

 

(ぐああああ…!ガハッ…!?)

 

「アストラル─!!」

さらに追撃の攻撃がアストラルを容赦なく斬り裂いた…アストラルの残りライフは…僅か600…!

 

 

「くそ…!アストラル…!!」

 

『ククク…!遊馬ぁ…!お前が悔しがって叫ぶ姿を見るのは…いつ見ても快感だぜぇ…!アハハハ!!』

傷つくアストラルを見て何もできない悔しさを滲ませる遊馬…その様子をベクターは嘲笑う…!

 

 

 

 

(私の、ターン!魔法カード「エクシーズ・トレジャー」を発動して2ドロー!さらに『バク団』を召喚して効果発動!このカードを『ブラックミスト』の装備カードとする事で『ブラックミスト』がORUを全て失った時、『ブラックミスト』を破壊する!)

手札を補充したアストラルは尻尾が導火線となったバクを使い、ブラックミストの動きを制限しようとする…だが…。

 

【甘いんだよ!『ジャッジバスター』の効果発動!ORUを使って『バク団』の効果を無効に!さらに500ダメージだ!】

 

(ぐうっ…!)

96はジャッジバスターの効果を使い、導火線を切り落とす…!アストラルの残りライフは…100…!

 

 

【「バク団」の攻撃力は100…「スモールストッパー」の効果でお前は終わりだ!】

 

(それはどうかな…!『バク団』をリリースする事で永続魔法『リリース・チケット』を発動!このカードを2体分のリリースとする事で「護封剣の剣士」を守備表示で特殊召喚!)

追い詰められたアストラルは守備力2400を誇る鉄壁の剣士を呼び出す!

 

(『護封剣の剣士』は1度だけ相手の攻撃を無効にし、さらに1ターンに1度戦闘では破壊されない!)

最強の『盾』となるモンスターを呼び出したアストラル…しかし、96は余裕を崩さない…。

 

 

【フン…残りライフ100で何をする?人間って奴は安っぽい仲間意識から来る『信じる心』とやらに縋りながら…己の利益の為に平気で仲間を裏切る!…そのくせ仲間の絆とやらを捨てきれない生き物なのさぁ!】

 

「っ…」

それは96が人間世界を観察して得た結論…それを聞いた遊馬は拳を握りしめる…。

 

【アストラル!お前は九十九遊馬に…人間の『弱さ』に染まったんだよ!そんなお前に…本来の使命が果たせる訳がない!】

 

(どういう意味だ?)

 

【お前がカオスナンバーズを吸収出来ないのは…何故だと思う?それはなぁ…()()()()()()()()だ!!俺がいなければナンバーズを全て揃える事はできない…お前には『ヌメロンコード』をゲットする資格はないのさぁ!!】

アストラルは1度アリトのオーバーハンドレットナンバーズの回収を試みた事がある…しかし、それは失敗した…その理由が96にあるというのだ…!

 

 

「…だったら…だったら!今ここでお前が96に勝てばいい!アストラル…オレに構わず戦ってくれ!!」

 

(遊馬…まだ、その時ではないのだ…!)

アストラルの迷いを払う為に叫ぶ遊馬…だが、アストラルはまだ動かない…そしてアストラルにバリアンの力が襲いかかる!

 

 

 

 

65

 

 

【現われろ!『CNo.65』!数多の怨念を纏いし、裁きの魔王…!『裁断魔王ジャッジ・デビル』!!】

96はついにベクターに渡された「RUM-バリアンズ・フォース」を発動…断罪の魔王を呼び出す!

 

 

【『ジャッジデビル』がフィールドにいる限り相手フィールドのモンスター効果は無効となり!発動する事もできない!】

 

「『護封剣の剣士』の効果が封じられた!!」

 

【そして『ジャッジデビル』のさらなる効果発動!カオスORUを1つ使い!相手モンスターの攻撃力か守備力を1000ダウンさせる!そして『ブラックミスト』で『護封剣の剣士』を粉砕!『ジャッジデビル』でダイレクトアタック!これで終わりだぁ!!】

護封剣の剣士を粉砕した96がアストラルに刃を向ける!

 

(罠発動!『エクシーズ・リボーン』!墓地より甦れ!『希望皇ホープ』!!そして『エクシーズリボーン』は復活したエクシーズモンスターのORUとなる!)

 

【ッチ…!悪あがきを…!攻撃は中止だ…!】

ギリギリのところで復活したホープが96の追撃を防ぐ…だが…アストラルの窮地は変らない、次のターンでアストラルが攻撃できなければ…アストラルは敗北してしまうのだ…。

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「くそ…!オレがアストラルの足を引っ張ってる…!どうする…どうすればいい…!?」

人質に取られている遊馬は必死に考える…遊馬のいる足場は高い場所にあり、自力で飛び移れる場所はない…だが、このままではアストラルは攻撃できず負けてしまう…思い詰める遊馬…その時、遊馬はあるモノを見つけた…!

 

 

「これ…『覇者のコイン』…!父ちゃん…!」

遊馬が立つ足場…その溝に金色のコインが挟まっているのを見つける…さらに…。

 

 

キィン─

 

「この光……『No.93』…そうだよな、アンタも戦ってる…オレよりも苦しい闘いを…!」

遊馬のエクストラに眠るカードが光を放つ…まるで、遊馬の背中を押すように…!

 

 

「勝利の鍵は…見えた!!」

遊馬はその瞳に強い決意を宿した…!

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

【貴様のライフは僅か100…これ以上何ができる!】

 

(デュエルはまだ…終わっていない)

 

【貴様…まだそんな目を…!!】

アストラルと向かい合う96…彼は気付いた、絶体絶命のはずのアストラル、その瞳はまったく動揺していない…揺らいでいない事に…その時だった!

 

 

 

「かっとビングだ!オレぇぇ─!!」

 

 

【『なにっ!?』】

 

「遊馬!?」

遺跡に響く遊馬の叫び…遊馬はなんと振り子刃の柄に飛び移り、足場を脱出したのだ!

 

 

「うおおぉぉ!!だっ!!」

 

『チッ…!逃がすかぁ!!』

 

「まだだあぁぁ!!」

振り子刃の柄から飛び降りた遊馬は別の柱に着地…ベクターが別の罠を作動させるが、それを身体能力で回避…アストラルと並び立った!

 

 

「いっけぇアストラル!あいつを思いっきりぶっ飛ばせぇ!!」

 

(遊馬…君なら気付いてくれると信じていた!これで…勝利の方程式は完成した!)

後顧の憂いがなくなったアストラルは反撃に出る!

 

 

 

 

39

 

 

(現われろ!『CNo.39』!混沌を希望に変える使者!『希望皇ホープレイ』!)

遊馬とアストラルの友情の戦士が現れる…さらにアストラルは勝利への道を突き進む!

 

(罠カード『スペリオール・オーバーレイ』発動!自分フィールドのORUの数が相手フィールドのエクシーズモンスターのORUの合計より多い時!相手のモンスター全てを破壊する!ただし、相手はORUを使う事でそのモンスターの破壊を無効にできる!)

 

【なっ!?くそがああああ!『ブラックミスト』のORUを使い破壊を回避する!!】

アストラルの罠によって遺跡のナンバーズを粉砕、さらにブラックミストのORUを全て使わせた!

 

 

【馬鹿な…!?お前は、この状況全てを想定していたというのか!!】

 

()()()()()

 

【なんっ!?】

96の言葉をアストラルは肯定する…アストラルはホープが破壊される事も、バク団の効果が無効にされる事も、護封剣の剣士のが破壊され、96がバリアンズフォースを使う事も…その全てを想定していた、その上で遊馬が自力で罠から脱出する事を信じて待っていたのだ!

 

 

(96、お前は『遊馬が人質に取られた私が攻撃できない』という策に溺れたのだ…)

それはまさに「策士、策に溺れる」…ベクターと96はそのことわざ通りになってしまった!

 

 

(『ホープレイ』の効果発動!ORUを1つ使い!自身の攻撃力を500アップし、相手の攻撃力を1000ダウンさせる!オーバーレイ・チャージ!)

ホープレイが希望の大剣を振り上げる!

 

 

(これで…お前の敗北は決まった!『ホープレイ』で『ブラックミスト』を攻撃!ホープ剣カオス・スラッシュ!)

 

【俺は…俺は貴様の思う通りになどならん!!ならんぞぉぉ!!!】

追い詰められた96、彼はアストラルを倒す為に…禁忌の力に手を伸ばす!

 

 

【罠カード発動!『カオス・リターン』!その効果により相手モンスターの攻撃を無効にする!】

 

(なに!?)

 

【さらに!手札の魔法カード『魔法石の採掘』を捨てる事で…墓地の魔法カード『RUM-バリアンズ・フォース』の効果を…発動する!!】

 

「「(『なんだって!?』)」」

96の選んだ最後の手段…それは自身をカオスナンバーズへと進化させる事だった!

 

 

96

 

 

【現われろ!『CNo.96』!混沌なる嵐を巻き起こし!今、ここに舞い降りよ!『ブラック・ストーム』!!】

96は自身の分身たるブラックミストをカオス化…邪悪なる炎を纏いし魔獣を呼び出す…さらに、その力は96自身にも還元され…!

 

ギィン─!

 

【うおおぉぉ…!うがあああああ!!これで、キサマは俺を吸収する事はできん─!!

 

『アイツ!自らカオス化しやがった!?』

バリアンの力は96へと逆流…アストラルに似た細身の身体は肥大化し、背中に悪魔のような翼…さらに腹部に第三の眼を持つ魔人…否、悪魔のような姿に変化する…!

あまりの変化に流石のベクターも目を丸くした…。

 

 

【『カオスリターン』のさらなる効果発動!このカードによって攻撃を無効にされたモンスターは…もう1度攻撃しなければならない!】

 

(なに!?)

闇の引力に引かれたホープレイが…再び攻撃を仕掛ける!

 

 

【『ブラックストーム』の効果発動!コイツがバトルで破壊された時!その時発生するバトルダメージは…お互いが受ける!!】

 

(なっ、しまった─!!)

ブラックストームに斬りかかるホープレイ…その剣は魔獣を両断する…だが、同時にブラックストームが爆発…アストラルと96のライフはお互いに0となり、引き分けとなった…!

 

 

アストラル LP0

 

No.96 LP0

 

 

Duel Draw…

 

 

 

 

 

(くっ…!No.96…!!)

 

【アストラルゥゥ…!!】

 

デュエルが相討ちで終わり…96とアストラルは睨み合う…!

 

 

 

 

 

 

『チッ…こうなれば…!消耗した奴らを叩き潰せ!名無しの怪物(ネームレス)!!』

 

■■■■──!

 

 

(なにっ!?)

 

「なんだ!?」

 

【この闇は…!?】

睨み合うアストラルと96の間に黒い粒子が集結する、その闇の中から現れたのは…遊海を襲い昏睡させた、鎌を構えた怪物だった…!

 

 

『コイツがオレの新しい手駒だ…!やれ!ネームレス!!』

 

『………!』

ベクターの指示を受けた怪物…ネームレスは不気味な笑みを浮かべた…!




〜次回予告〜



「アストラルとナンバーズ96のデュエルが終わった時…ベクターが遊海を襲った怪人を呼び出した!!」

(逃げるんだ遊馬!)

「遺跡が崩れる…やばい!このままじゃ!!」

(その時、怒りに燃えた彼女が私達を護る為に現れる!)

「次回!『転生して決闘の観測者になった話』!『ネームレス急襲!〜深まる謎〜』!」


「貴女は…絶対に許さない!!」


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ネームレス急襲!〜深まる謎〜

こんにちは!S,Kです!

ナンバーズ96とのデュエルに引き分けたアストラルと遊馬…その彼らの前に遊海を襲った怪物が現れる…!

それから…ついに、お気に入りが600件を突破しました!まだまだ未熟な作者ですが…これからもよろしくお願いします!


それでは!最新話をどうぞ!


「っ─!?気をつけろ遊馬!そいつが…そいつが父さんを襲ったバリアンだ!!」

 

「なんだって…!?」

第2の遺跡『悲鳴の迷宮』で衝突したアストラルと96…そのデュエルが相討ちで終わった矢先…遊馬達の前に遊海を襲撃した怪物が現れた…!

 

 

 

【ベクター…この女はなんだ…?】

 

『クックックッ…!コイツはオレ様が復活させた従順な「兵器」さ…!前の手駒は遊海の奴に倒されちまったからなぁ!』

 

「っ…!!父さんを襲わせたのはお前か!!」

 

『ギャハハハ…!オレ様も驚いたぜぇ…?あんな簡単に引っかかるなんてなぁ!!』

 

「き、キサマぁぁ!!」

遊海を嘲笑うベクター…それを見た凌牙達は怒りの叫びを上げる…!

 

 

『さぁ…!ネームレス!遊馬とアストラルを排除しろ!』

 

『──…!』

 

ギィン!

 

「なっ─!?(う、動けない!?)」

 

(遊馬!遊馬!?どうしたんだ!?)

ベクターの指令を聞いた怪物はバリアンの紋章が刻まれた眼帯を引き下ろす…そして怪物の眼が露わになった瞬間、()()()()()()()()()()…まるで蛇に睨まれた蛙のように…!

 

 

「…!?…!!(や、やべぇ!やべぇ!やべぇぞ!!動け!動いてくれ!!)」

 

『──…!』

 

「逃げろ!逃げるんだ遊馬─!!」

 

「遊馬!!」

大鎌を撫でながらゆっくり近付いてくる怪物…だが、遊馬は動けない!!

 

 

『じゃあな…!九十九遊馬─!!』

 

『──!!』

 

(遊馬!!)

 

「(やられる!!)」

ベクターの嘲笑と共に怪物の鎌が遊馬に迫り──!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達!目を閉じろ!!」

 

《閃光弾発射でアリマス!》

 

 

キィン!!

 

 

 

『ギャアアア!?!?』

 

『【なんだ!?】』

遺跡に響く凛とした声…それと共に遺跡の広場が強烈な閃光に包まれる!!

 

 

「今だ!撤退するぞ!!」

 

「か、カイト!!」

遊馬を助けた者の正体…それはオービタルグライダーを装着したカイトだった、レーダーによってバリアンの出現を察知したカイトはオービタル7と共にこの遺跡に向かっていたのだ…!

 

 

『!?!?!?』

 

「話は後だ!動けるな!?逃げるぞ!」

 

「わ、わかった!!」

閃光を直視して苦しむ怪物…それによって動けるようになった遊馬はカイトの手を掴み、広間から離脱する!

 

 

『チィィ…!こうなったら全員この城の下敷きだ!』

 

ガチャン! ゴゴゴゴゴゴ!

怪物による襲撃が失敗したベクターは城の自壊装置を作動…城が崩壊し始める!

 

 

【奴め…余計な事を…!!勝負は預けるぞ!】

 

(っ…!)

崩壊する城を前に96は姿を消した…。

 

 

『さぁ…!生き埋めか、ネームレスにやられるか…どっちだろうなぁ!ギャハハハハ!!』

 

『───!!!』

 

「くっ…!みんな!逃げるんだ!!」

ベクターは笑い声と共に姿を消した…だが、怪物は広間の中心で叫びを上げる…遊馬達は地上に向かって走り出した…。

 

 

 

「急げ!追い付かれる!」

 

「小鳥!大丈夫か!?」

 

「う、うん─!」

 

『────!!!』

急いで階段を駆け上がる遊馬達…その背後から怪物が迫ってくる!

 

 

『……!──!!』

 

「だああっ!?壁を走って来んじゃねぇぇ!!」

凌牙が叫ぶ…あろう事か怪物は壁を走り、遊馬達に飛び掛かって来たのだ!

 

 

《させん!反射の陣!!》

 

『ギッ─!?』

 

「トフェニ!!」

襲い来る怪物を退けたのは遊海の精霊の1体…トフェニだった。

万が一に備え、姿を消して遊馬達に付いていたのだ…!

 

 

《長くは保たぬ…!早く地上へ!》

 

「ありがてぇ!!みんな、今のうちだ!!」

トフェニの援護を受けた遊馬達はなんとか遺跡を飛び出した…!

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…!あ、危なかった…!」

 

「ベクターめ…!次に会ったら覚えてやがれ…!」

なんとか遺跡から脱出した遊馬達は呼吸を整える…。

 

 

《まだだ!あの怪人が追って来るぞ!》

 

「っ…!?」

 

ドガン!!

 

『ウウ…アアアアア!!!』

 

「来た…!!」

トフェニが警戒を促す…その途端、遺跡の残骸から怪物が飛び出して来た…!

 

 

「しつこい奴だ…!どうする!?」

 

「どうって…!?」

 

「遊馬…!」

ジリジリと近寄って来る怪物…その時だった!

 

 

キィン─!

 

 

「子ども達に…近づくなぁ!!」

 

『ギッ…!?』

 

「母さん!!」

 

《翠殿!》

遊馬達の頭上にワームホールが開く…その中から飛び出してきた翠が怪物に飛び蹴りを決めた…!

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

《っ…!次元の歪みを確認…バリアンが人間界に現れたようです…!》

 

「…璃緒ちゃんからメッセージがあったわ、遊馬君達と2つ目の遺跡に向かうって…たぶん『No.65』の遺跡だわ…」

翠から眠りから目覚めてしばらく…アヤカがバリアンの出現を感じ取る…。

 

 

《たしか…アストラルと黒いアストラルがデュエルするんだよね?大丈夫なの?》

 

「うん…少し大変な目に遭うけど大丈夫のはずよ、トフェニも隠れて一緒に行ってるから大丈夫だと思うんだけど…」

ウィンダの問い掛けに翠が答える…一応の流れを覚えている翠の不安は軽かった。

 

 

《でも…大丈夫なのかな?この前の怪物が来たら…》

 

「っ…!」

ウェンの言葉に翠の顔が青褪める…あの夜に戦った正体不明の怪物…もしあの怪物が遊馬達を襲ったら…遊馬達に勝ち目はない…!

 

 

《ミドリ…行きなさい、ユウミは私とメガロックで守ります…リョウガ達を守るのです…!》

 

「フレアさん…ありがとう…!アヤカちゃん!お願い!」

 

《わかりました…!行きましょう!》

フレアに背中を押された翠は遊馬達のいる遺跡に向かった…!

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「嫌な予感がして来てみたら…!貴女は、許さない!!」

子ども達を庇うように立った翠は怪物を睨みつける…!

 

 

「あ、ありがとう翠さん…!」

 

(貴女が来てくれなければ…私達は危なかった…!)

 

「もう、大丈夫…!私から離れないで…!」

翠に声をかける遊馬とアストラル…翠は少しだけ彼らに微笑む…彼らを安心させる為に…自分を鼓舞する為に…!

 

 

ドクン…!

 

 

『ウゥ…アアアアアアアアア!!!』

 

 

「ぐああああ!?なんて声だっ!?」

 

「鼓膜が、破ける…!!」

その姿を見た怪物が凄まじい叫びを上げる…あまりの音量に全員が耳を塞いでしまう…!

 

 

「っ…!?()()()()()…何かを…()()()()…?それに、怒り…あの怪物は、いったい…!?」

怪物の叫びを聞いた璃緒は怪物の抱く何かを感じ取る…!

 

 

───────!!

 

 

「な、なんだ!?」

 

(遺跡の残骸から、黒いオーラが…!)

さらに怪物の叫びに呼応するように悲鳴の迷宮から現れた黒いオーラが怪物を包む…!

 

 

「喰らっている…あの遺跡に染み付いた、人々の嘆きを…命の残滓を…!」

 

《仮称『ネームレス』のエネルギー値が増大!気を付けるでアリマス!!》

黒いオーラの正体…それは遺跡に染み付いた人々の嘆き…それを吸収したネームレスの腕に禍々しい鎌のようなデュエルディスクが現れる…!

 

 

「私が迎撃するわ…みんなは私の後ろに…!」

翠もデュエルディスクを装着し、怪物を迎え打つ…!

 

「母さん…!負けないで!!」

 

「翠さん…!」

 

「大丈夫!私だって…決闘者なんだから!!」

不安げな表情を浮かべる子ども達…翠は彼らを守る為に立ち向かう!

 

 

 

 

「デュエル!!」

 

 

翠LP4000

ネームレスLP4000

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「私は魔法カード『影依融合(シャドール・フュージョン)』を発動!手札の『シャドール・ビースト』と『影霊の翼(リーシャドール) ウェンディ』を融合!影の獅子よ!新たな風と交わりて新たな力を目覚めさせん!融合召喚!『エルシャドール・アプカローネ』!」

巨大な魚の人形と一体化した女性の魔法使いが現れる! ATK2500

 

 

「効果で墓地に送られた『ビースト』と『ウェンディ』の効果発動!『ビースト』の効果でカードを1ドロー!さらに『ウェンディ』の効果でデッキから『シャドール・ファルコン』を裏守備表示で特殊召喚!…カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

翠LP4000

アプカローネ 裏守備(ファルコン) 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「堅実なデュエルだ…!プレイングレベルは白波さんに匹敵するぞ…!」

 

(彼女のデュエルは一度しか見た事がないが…彼女は遊海の妻だ、並のデュエリストなら…彼女が負ける事はない…!)

十分に余裕を残した盤面をカイトとアストラルが称賛する…果たして怪物はどう動くのか…?

 

 

 

 

 

『………!!』

『……!』

フィールド魔法『ヴェノム・スワンプ』が発動され、周囲が毒沼に変化する!

 

『……!──!!』

さらに魔法カード『スネーク・レイン』が発動、手札の『キラー・スネーク』が墓地に送られ…デッキから4体の爬虫類族が墓地に送られる!

 

 

ネームレス 墓地送り

 

毒蛇王ヴェノミノン

デビルスネーク

キラースネーク

ヴェノム・ボア

 

 

『……!!──!』

さらに緑色の双頭の蛇『ヴェノム・サーペント』が現れる! ATK1000

 

 

『───!!』

 

「っ…!?ヴェノム・カウンターを乗せられた…!」

さらに『ヴェノム・サーペント』が『アプカローネ』に毒液を噴射…毒に侵された『アプカローネ』は弱体化する!

 

アプカローネ ヴェノム(1) ATK2500→2000

 

 

『………!』

怪物はカードを2枚伏せ、ターンを終えた…さらに『ヴェノムスワンプ』の毒が『アプカローネ』を侵食する…!

 

アプカローネ ヴェノム(1→2) ATK2000→1500

 

ネームレスLP4000

ヴェノムサーペント  ヴェノムスワンプ 伏せ2 手札0

 

 

 

 

「あのバリアン…!喋れない癖に厄介だぜ…!」

 

「な、なぁアストラル…今、何が起きてるんだ…?」

状況を理解できない遊馬はアストラルに問いかける…。

 

 

(発動しているフィールド魔法「ヴェノムスワンプ」は「ヴェノム」モンスター以外を蝕む毒沼…その効果でヴェノムカウンターを乗せられたモンスターの攻撃力は1つにつき500下がり…0になれば破壊される…厄介な効果だ…!)

 

「それじゃあ…母さんのモンスターは…あと3回カウンターが乗ったら破壊されちゃうって事…!?」

アストラルの説明を聞いた璃緒が声を上げる…。

 

 

「でも…相手のモンスターの攻撃力は1000…!まだ攻撃力は上回ってる!」

 

(そう上手くいけばいいが…!)

アストラルは油断なくフィールドを見つめた…。

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「やりにくい相手ね…!でも、負けない!バトルよ!『アプカローネ』で『ヴェノムサーペント』を攻撃!」

アプカローネが水の魔力弾を生成…双頭の蛇に投げつける!

 

『───!!!』

 

「っ!?『毒蛇の供物』!?」

発動されたのは自分の爬虫類族モンスターを破壊し、相手のカード2枚を破壊するカード…それによって『アプカローネ』と伏せられていた『影依の源核』が破壊される!

 

 

「くっ…!破壊された『影依の源核(シャドールーツ)』の効果!効果で墓地に送られた事で墓地の『影依融合』を手札に加える!さらに『アプカローネ』の効果で墓地の『影依の源核』を手札に加え、手札の『シャドール・リザード』を墓地に送る!…そして効果で墓地に送られた『リザード』の効果発動!デッキから『シャドール・ドラゴン』を墓地に送る!さらに『ドラゴン』の効果発動!『ヴェノム・スワンプ』を破壊!」

 

『───!?』

ドラゴンの影人形の起こした風が毒沼を消し飛ばす!

 

 

 

「よし…!メイン2!私は『シャドール・ファルコン』を反転召喚!」

小さな鳥の影人形が現れる! ATK600

 

「『ファルコン』のリバース効果を発動!墓地の『シャドールビースト』を裏守備で特殊召喚!…そして魔法カード『影依融合』を発動!フィールドの『ファルコン』と手札の『聖なる影(レーシャドール) ケイウス』を融合!影の翼よ!聖なる影と交わりて…影の巨人を呼び出さん!融合召喚!『エルシャドール・ネフィリム』!!」

巨大なる影人形の女神が現れる! ATK2800

 

 

「『ネフィリム』の効果発動!融合召喚に成功した事でデッキの『シャドール・ヘッジホッグ』を墓地に送る!そして効果発動!デッキから2体目の『ウェンディ』を手札に加える!…モンスターをセット、カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

翠LP4000

ネフィリム 裏守備モンスター(ビースト、???) 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「……すげぇ…!」

 

「これが、母さんの全力…!」

凄まじい速度で行われるプレイング…それを見た子ども達は目を見開いている…。

 

 

(モンスター破壊からのリカバリーにフィールド魔法の破壊…そしてさらなる展開…それを一連の流れで行うとは…!)

 

「これが…決闘王を支え続けた決闘者の力…!」

アストラルとカイトは翠のプレイングを分析し、驚いている…。

 

 

「が、頑張って!翠さん!もう少し!!」

 

「(普通の相手なら、次のターンで勝てる…でも、嫌な予感がする…!!)」

小鳥の声援を聞きながら…翠は悪寒を感じる…まるで、捕食者が何処からか見ている…そんな気配を…。

 

 

 

 

『…………!』

『……!───!!』

怪物は魔法カード『ヴァイパー・リボーン』を発動…墓地から毒蛇を統べる王…『毒蛇王ヴェノミノン』を特殊召喚する! ATK0→2500

 

 

『───!!』

 

 

「っ…!『ネフィリム』とバトルする特殊召喚されたモンスターは破壊される!!」

ネフィリムが影糸を振るい、飛び掛かって来た毒蛇諸共ヴェノミノンを切り裂く!

 

『キィ─!アアアアアアアアア!!』

 

「そのカードは…『蛇神降臨』!?」

そして発動される罠カード…切り刻まれたヴェノミノンの身体が粒子となって消え去り、半人半蛇の魔神…『毒蛇神ヴェノミナーガ』が降臨する! ATK0→3000

 

 

「な、なんなの…あのモンスター…!?」

 

「このプレッシャーは…!」

ヴェノミナーガを見た小鳥は恐れを抱き、凌牙達は警戒を強める…!

 

 

『─────!!!』

 

グサッ!

 

「っ…!!かはっ…!?」

 

「母さん!!」

ヴェノミナーガの両腕の蛇が下僕の毒蛇を放ちネフィリムを粉砕…さらに毒蛇の幻影が翠の胸を貫いた!

 

翠LP4000→3800

 

ヴェノミナーガ ハイパーヴェノムカウンター0→1

 

 

「うっ…破壊された『ネフィリム』の、効果…墓地の、『影依融合』を、手札に…!」

 

『…………!』

 

ネームレスLP4000

 

ヴェノミナーガ 手札0

 

 

 

 

ドクン!!

 

「あ、ぐ…!」

 

「母さん!!」

怪物がターンを終えた瞬間、翠は胸を押さえながら膝をついてしまう…!

 

 

「なんでだ…!?翠さんの『ネフィリム』は特殊召喚されたモンスターを破壊できる効果を持ってるのに!!」

 

(おそらく、『ヴェノミナーガ』は効果破壊への耐性を持っている…だが、あの翠の苦しみ方は…!)

ネフィリムの効果を知る遊馬はネフィリムが倒された事に驚く…そしてアストラルは翠の状態の急変に嫌な予感を感じていた…。

 

 

「はぁ…はぁ…!『ヴェノミナーガ』は、自分の墓地の爬虫類族モンスター1体につき500、攻撃力が上がって…効果の対象に、ならず…全ての効果を受けないモンスター…なの…!」

 

「なに…!?全ての効果を受けないモンスター!?」

翠は胸を押さえながら子ども達にヴェノミナーガの恐ろしさを伝える…!

 

 

「それだけじゃ、ないの…私が『ヴェノミナーガ』の攻撃でダメージを受けるたび、蛇神の毒…ハイパー・ヴェノム・カウンターが『ヴェノミナーガ』に乗る…それが、3つ乗ったら…私は、負けちゃう…!」

 

(特殊勝利効果を持つモンスター…!?翠…貴女はまさか!!)

 

「今の、攻撃で…毒を打ち込まれた、みたい…ちょっと、まずいかも…!」

 

「「「「なんだって!!」」」」

顔色が悪くなっていく翠…その身体を蛇神の毒が蝕んでいく…!

 

 

 

 

 

「私の、ターン…ドロー…!」

「私の勝ち筋は2()()…それまで、耐えない、と…!魔法カード『貪欲な壺』を、発動…!墓地の『アプカローネ』『ネフィリム』『ケイウス』『ウェンディ』『ヘッジホッグ』をデッキに戻して、2ドロー…!…カードを1枚伏せて、ターンエンド…!」

 

翠LP3800

裏守備モンスター 伏せ3 手札2

 

 

 

 

『………!』

『────!!』

再びヴェノミナーガが攻撃…伏せモンスターを破壊する!

 

「リバースした『ウェンディ』の効果…!デッキの『ビースト』を裏守備で特殊召喚…!」

 

 

『………!』

ネームレスLP4000

ヴェノミナーガ 手札1

 

 

 

「私のターン…!ドロー!」

「私はこのまま、ターンエンド…!」

 

翠LP3800

裏守備モンスター 伏せ3 手札3

 

 

 

「母さん…!なんとか耐えてくれ…!!」

 

((たしか、翠のデッキには最強の融合カード『超融合』が眠っている…その効果なら『ヴェノミナーガ』の裏をかけるが…!それまで保つのか…!?))

アストラルは翠の狙いを見抜く…しかし、翠の顔色はどんどん悪くなっていく…!

 

 

 

 

 

『…………!』

『…………!』

怪物は毒蛇、『ヴェノム・スネーク』を召喚する! ATK1200

 

 

『────!』

さらに怪物は永続魔法を発動する、それは…『アタックフェロモン』!

 

(まずい!あのカードは!!)

 

「えっ…!?」

 

 

『──!!』

ヴェノムスネークが裏守備モンスターを攻撃…だが、リバースした獅子の影人形が毒蛇を噛み、怪物に投げつける!

 

 

ネームレスLP4000→3500

 

「『ビースト』のリバース効果…!カードを2枚ドローして、手札の『テラ・フォーミング』を墓地ヘ…!」

カードをドローした翠…だが、影の獅子は攻撃表示に変わってしまう!

 

ビースト DEF1700→ATK2200

 

 

「えっ…!?なんで『ビースト』が攻撃表示に!?」

 

(永続魔法『アタックフェロモン』の効果だ…!爬虫類族モンスターが守備モンスターを攻撃した時、バトル終了後にそのモンスターを攻撃表示にしてしまう!!)

 

「マズイっ!?母さん!!」

 

 

『─────!!!』

 

グジャ…!

 

「がっ─!…あ、ぐ…」

 

「そんな…!母さん!!嫌ぁぁぁ!!」

 

「翠さん!」

 

《み、見てられないでアリマス─!!》

 

再び放たれた毒蛇が獅子を砕き、翠の胸を貫く…傷付き、苦しむ翠…子ども達はその様子を見ている事しかできない…!

 

 

翠LP3800→3000

 

ヴェノミナーガ ハイパーヴェノムカウンター1→2

 

 

『………!』

ネームレスLP3500

ヴェノミナーガ ヴェノムスネーク アタックフェロモン 手札1

 

 

 

 

 

「うっ、ゴホッ…痛い、なぁ……遊海さんも、いつも…こんな痛み……感じて、戦って……」

翠は喉の奥から溢れてきた血を吐き出し、口を拭う…。

…実を言うと、翠は「闇のデュエル」の経験がそこまで多いわけではない、いつも遊海が表に立ち…傷つきながら翠や仲間達を護ってきたからだ…。

 

故に、翠は既に限界だった…痛みへの耐性がなく、毒で意識を保つのもやっと……それでも、翠は立ち上がる…子ども達を守り、遊海を救う為に…!

 

 

 

「わたし、ターン…ドロー……うっ…」

 

「っ─!?母さん!」

 

「母さん!起きて!!諦めないで!!」

 

『………!!』

なんとかカードをドローした翠…だが、身体が限界を迎え…倒れてしまった…。

 

 

 

 

「(みんなの声が、遠くに、聞こえる…もっと……もっと…デュエルの練習、しとくんだった……遊海さんに、無理を、言ってでも…闇のデュエルの練習、しとくんだった…)」

翠の脳裏に過るのは『後悔』…もっと強くなりたいという思いだった…。

 

 

「(ごめんなさい…遊海さん……助けて…!)」

それは届かぬ願い…遊海は翠を助ける事はできない、この状況は変えられるのは…翠自身だけなのだ…!

 

 

 

キィン─!

 

 

 

「あの光は……」

 

『───!?』

流れ落ちた翠の涙…その涙に応えるように、エクストラデッキから1枚のカードが飛び出した!

 

 

「この、カードは…!」

それは赤き竜の痣と共に、遊海が託した希望の光だった…!

 

 

「…ごめんなさい、私…弱気になってた……私だって…私だって…!!戦える…!戦う、んだ…!!」

 

「翠さん!!」

翠は死力を振り絞って立ち上がる!

 

 

 

「私は、『超電磁タートル』を召喚!!」

磁力を纏う機械亀が現れる! ATK0

 

「そして罠カード『影光の聖選士(レーシャドール・リンカーネーション)』を発動…!墓地の『シャドールドラゴン』を守備表示で特殊召喚!」

ドラゴンの影人形が現れる! DEF0

 

「私はレベル4の『ドラゴン』と『超電磁タートル』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」

 

 

 

 

「現れて!『No.∞』!決闘者の戦いの路を守る、希望の光!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!」

光の爆発と共に…巨大な決闘剣が翠を守るように現れる! ATK2500

 

 

「遊海のナンバーズ!!」

 

「父さん…流石だぜ…!」

 

「自分が倒れても…翠さんに力を…希望を繋げていたのか…!」

三勇士は翠の前に現れた光の大剣に驚愕する…!

 

 

「『決闘の守護者』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した事で1ドロー!…この手札なら…!私はさらに魔法カード『影依融合』を発動!手札の『ケイウス』と『シャドール・ハウンド』を融合!力を貸して!『エルシャドール・ネフィリム』!」

再び影の巨人が現れる! ATK2800

 

 

「『ネフィリム』の効果発動!デッキの『シャドールヘッジホッグ』を墓地に送る!そして『ヘッジホッグ』の効果でデッキから『影依の巫女(ノェルシャドール) エリアル』を手札に加える!…バトルよ!『決闘の守護者』で『ヴェノミナーガ』を攻撃!さらに効果発動!ORUを1つ使って自身の攻撃力をバトルする相手モンスターの攻撃力分アップする!この効果は『ヴェノミナーガ』には止められない!!」

 

『!?』

希望の大剣が虹色の光を纏う!

 

決闘の守護者 ATK2500→5500

 

 

「う、受けてみなさい…!デュエル・カリバー!!」

 

『────!?』

翠が全力で大剣を振り下ろす…その軌跡は光の斬撃となり、蛇神を両断した!

 

ネームレスLP3500→1000

 

 

「よっしゃあああ!!『ヴェノミナーガ』を倒したぁ!!」

 

「待て、様子が変だ!」

 

『……!───!!』

ヴェノミナーガの撃破を喜ぶ遊馬…だが、蛇神が再びフィールドに現れる! ATK0→2500

 

除外したカード

 

ヴェノミノン

 

 

「『ヴェノミナーガ』が復活した!?」

 

「でも…攻撃力が下がってますわ!」

 

「『ヴェノミナーガ』は墓地の爬虫類族を除外して、復活できる…でも、これで終わりよ!『ネフィリム』で『ヴェノミナーガ』を攻撃!その瞬間、罠カード『魂源への影劫回帰(プルシャドール・アイオーン)』を発動!手札の『エリアル』を墓地に送って効果発動!『ネフィリム』の攻撃力と守護力をエンドフェイズまで1000アップする!」

ネフィリムの背後に創星神の幻影が現れ、その力を引き上げる!

 

ネフィリム ATK2800→3800

 

 

「さらに!墓地に送られた『エリアル』の効果発動!私の墓地の『ビースト』と貴女の墓地の『キラースネーク』と『ヴェノムサーペント』を除外!よって『ヴェノミナーガ』の攻撃力は1000ダウンする!」

 

ヴェノミナーガ ATK2500→1500

 

 

「遊海さんを傷付けた報いを受けてもらう…!『ネフィリム』!影糸乱舞!!」

 

『ギッ…!?アアアアア!?!!』

翠の怒りの一撃が蛇神を粉砕…怪物を大きく吹き飛ばした…!

 

 

ネームレスLP0

 

 

翠 WIN!

 

 

 

 

 

『ギッ…!』

 

「待ちなさ、くっ…!?」

 

「母さん!!」

吹き飛ばされた怪物はワームホールに撤退…翠は追いかけようとしたが、デュエルのダメージで膝をついてしまった…。

 

 

「母さん大丈夫か!!毒は!?」

 

「大、丈夫…毒はなんとか、抜けた…みたい…もっと、強く、ならなくちゃ…」

 

「あんまり、心配させないでくれよ…母さん…でも、助けてくれて…ありがとう…!」

 

「うん…みんなが無事で、よかった…」

駆け寄ってきた凌牙の肩を借りて翠は立ち上がる…その瞳は怪物のいた場所を見つめている…。

 

 

「(鎌を、壊せなかった……でも、次は必ず…!)」

遊海を救う手段を逃してしまった翠は『決闘の守護者』を握り締めながら…決意を固めた…。

 

 

 

 

 

 

 

(あの怪物は…いったい何者なんだ…?翠に匹敵するタクティクス…そしてベクターの『兵器』という言葉……謎が深まったな…)

アストラルは怪物について考え込む…しかし、その正体を明かすには…あまりに情報が足りなかった…。




マテリアルの一部が開放されました。


●名無しの怪物(ネームレス)

サルガッソの戦いを終えた遊海が見つけた迷子の少女…その正体はベクターが何らかの方法で呼び出した『兵器』だった。
油断した遊海を襲い、力を吸収した怪物は新たな姿に変化…翠や遊馬達に牙を剥いた…。



・人間体

見た目 黒いゴシックドレスを着た4〜5歳の少女 髪は腰まで伸びた白のストレートヘアー


遊海が最初に出会った時の状態、言葉を喋れない。
何者かによって神の眼を欺くほどの隠匿がされており、遊海ですら敵と気付く事ができなかった。

いわゆる『吸血種』であり、牙には蛇毒に似た未知の毒を持つ…遊海の血とデュエル・エナジーを吸収する事で魔人体へと成長した。

余談だが、遊海と璃緒に懐き、翠と凌牙にはあまり懐かなかった。



・魔人体

見た目 黒いローブを纏う14〜18歳の少女 ストレートヘアーは赤紫色に変わり、バリアンの紋章が刻まれた眼帯を着けている。


遊海の力を吸収する事で成長した姿、瞳は一種の『魔眼』であり、眼を見た者の自由を奪う。
また、普段はバリアンの紋章が刻まれた眼帯をしている…ベクターはそれを介して怪物を操っているらしい。

言葉は喋れないものの、翠を追い詰める程のデュエルタクティクスを持つ…主武装は『不死殺し』に類する大鎌…それにより遊海の不死性を貫通、致命傷を与えた。


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復活の拳闘士〜試される『情熱』〜

こんにちは!S,Kです!

投稿遅れてすいません…少し展開を迷っていました!


それでは最新話をどうぞ!


『何事だ?ベクター、我々を呼び出すとは…』

 

『つまらん用件なら…容赦はせんぞ…!』

 

バリアン世界の城…そこに手分けして遺跡のナンバーズを探していたドルベとミザエルが戻ってきていた…ベクターに呼び出されたのである…。

 

 

『ククク…喜べ…!仲間が蘇ったぞ!』

 

『なに…!?』

笑みを浮かべながら用件を伝えるベクター…その背後に長い眠りから目覚めたギラグとアリトが現れた。

 

 

『ギラグ!アリト!?』

 

『お前達、どうやって…!?遊馬とのデュエルで力を使い果たし、長い眠りに入っていたのではなかったのか!?』

仲間達の突然の復活にドルベとミザエルは驚愕する…。

 

 

『てめぇらが不甲斐ないから…おちおち寝てられなくてなぁ…!』

 

『なんだと…!?』

 

『おいおい!せっかく2人が復活したんだ…少しは歓迎してやれよぉ…!』

ドルベとミザエルを挑発するような態度を取るアリト…ベクターはそれをおちょくりながら宥める。

 

ベクター以外は知らない事だが…アリトとギラグはベクターを通じてドン・サウザンドの力を注ぎ込まれた事で復活を果たした…それ故なのか『負の感情』が増しているのだ…。

 

 

 

《ハーエバーニング!皆さまお待ちかねのナンバーズの情報を持って……あれ?お呼びでない…?》

 

 

『……早く話せ』

 

険悪な空気が流れるバリアン達…それをぶち壊したのはMr.ハーエランドだった…。

 

 

 

 

『…なるほど、その「スパルタン・シティ」という場所の遺跡にナンバーズが…』

 

《ハエ!おそらく九十九遊馬も向かっているかと…》

 

『なにィ…?』

バリアン達に次のナンバーズの場所を伝えるハーエランド…その時、アリトが憎しみのオーラを纏う…!

 

 

『つまり、その遺跡で待ってれば奴らは向こうから飛び込んで来るって訳だ…!』

 

『なら…俺が行く…!九十九遊馬は俺の獲物だ!!俺がこの手で…ぶっ潰す!!』

 

『待て!……アリトは前から単純ではあったが…?』

ドルベが止める間もなく…アリトはワープゲートへ消えてしまう…その姿を見たドルベは小さな疑問を抱いた…。

 

 

 

 

『おい…ベクター、あの城の端にいる女はなんだ?』

 

『…お前の新しい部下か?』

アリトを見送ったミザエルがベクターへと問い掛ける…ミザエルの視線の先には傷を癒やす為に眠る怪物がいた…。

 

 

『あ、紹介してなかったかぁ…?そうだ、あの女は新しい部下さ…!お前達も1度は見た事あるはずだぜぇ?』

 

『城下にあんな女は………女?』

 

『まさか……その女は…()()()()()!?』

ベクターの言葉にネームレスを見るバリアン達…ドルベはその正体に気付いた…()()()()()()()()

 

 

『ベクター!まさか、「失意の山」に封じたあのモンスターの封印を解いたのか!?貴様!なにを考えている!!』

 

『ぐあっ…!?』

ドルベはベクターの首を掴み上げる…その表情は怒りに染まっていた…!

 

 

『失意の山…えっ!?あのバケモンが…あの女!?』

 

《あの〜…バケモンとは…?》

状況を理解できないハエランドがギラグ達に問い掛ける…。

 

 

『……何十年も昔…ナッシュとメラグが行方不明になる前の話だ…!バリアン世界に突然、怪物(モンスター)が現れた…その怪物はバリアン世界を蹂躪…オレ達七皇全員で掛かっても…足止めが精一杯だった……』

 

《七皇全員で…足止めだけ!?》

ギラグの言葉にハエランドは驚愕する…姿を見た事がないナッシュとメラグはわからないが、バリアン七皇は強い、その彼らを以てしても…倒す事ができない相手だったのだ。

 

 

『バリアン世界は破滅する寸前だった…その時、ナッシュが私達全員の力を束ね…10日に渡るの戦いの末に奴をバリアン世界の辺境に辛うじて封印した…!貴様は!ナッシュの尽力を無駄にするつもりか!!』

 

『ぐっ…そう、怒るなよ…!奴は完璧にコントロールできてる…!奴は白波遊海を、倒したんだぜ…?』

 

『なんだと…!?』

そしてベクターは怪物を開放した時の事を思い出した…。

 

 

 

 

 

Sideベクター

 

 

 

 

【ここが…貴様の寄りたい場所か?】

 

『そうだ…!この場所には力が…兵器が眠ってる!!』

ベクターはバリアン世界の辺境…『失意の山』を訪れる、そこには真っ黒に染まった巨大な水晶があった…!

 

 

【確かに強い力を感じる…この場所には何がある?】

 

『この水晶の中には…バリアン世界を滅ぼしかけた「怪物」が眠ってる…!こいつを白波遊海にけしかけるのさ…!力を貸してもらうぜ…ドン・サウザンド!!』

 

【よかろう…!】

 

ギィン!

 

ベクターは両手を黒水晶に当て、力を流し込む!!

 

 

『起きやがれ!「名無しの怪物」!!お目覚めの時間だぁぁ!!』

 

 

ビシビシ…バキャーン!!

 

 

ズズズ…

 

黒水晶が砕け、闇が周囲に溢れ出す…そして闇は一箇所に集まり……

 

 

 

 

 

『………?』

 

 

『………は?これが、あのバケモン??』

ベクターの前に現れたのは…闇に包まれた少女だった…予想外の事にベクターは唖然とする…。

 

 

【ふむ…その『怪物』とやらを封印する際に『弱体化の呪い』を掛けていたらしいな…流石はナッシュの封印か…】

 

『チッ…感心してんじゃねえ!こんな餓鬼どうすりゃ─』

 

『───!!!』ガブッ!

 

『どわっ!?こいつ噛みやがった!!』

怪物に手を伸ばしたベクター…怪物はその手に噛みついた!

 

 

【…ベクター、此奴を人間界に放て…面白い事が起きそうだぞ…?】

 

『あん…?』

愉快げな様子のドン・サウザンド…その様子を訝しみながら、ベクターは怪物に制御用の洗脳と隠匿を施し、人間界に解き放ったのだった…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

『コイツのおかげ…しいてはオレのおかげで敵の最大戦力を無力化したんだ…!そんな怒る事はないだろう…?』

 

『くっ…!…しっかりと手綱を持っていろ…!使い方を誤れば…滅びるのは我々だ…!!』

 

『わかってるさ…!』

ドルベは渋々手を離す…そして眠る怪物を睨みつけた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(飛行船に表示された次の遺跡は…このスパルタン・シティにあるようだ)

 

「…なんか、今までと違って…賑やかな場所だなぁ…」

 

 

悲鳴の迷宮から数日…遊馬・凌牙・小鳥・璃緒は欧州にある「スパルタン・シティ」という賑やかな街を訪れていた…。

なお、今回の旅からは事情を知ったカイトもナンバーズ捜索に同行している。

 

 

「本当に賑やかな街…父さんや母さんと一緒に来たかったなぁ…」

 

「璃緒…」

物憂げな表情で沈む璃緒…今回の旅に翠は同行していない…その理由は…。

 

 

 

 

 

Side白波家

 

 

 

「ふぅ……ふぅ…」

 

《熱…下がらないね…》

 

《うん…やっぱり、疲れが出ちゃったんだと思う…》

 

《フォウ…》

 

白波家の翠の自室…そのベッドの上では翠が浅い呼吸を繰り返しながら寝込んでいた…。

 

なんとか怪物…ネームレスを撃退する事に成功した翠だったが…それまでの看病疲れと蛇神の毒の後遺症で数日に渡って高熱に魘されていたのだ。

 

 

《キャウ…フォーウ…》

 

「フォウくん…心配かけて、ごめんね…すぐに、元気に…なるから…」

心配そうに翠に寄り添うフォウ…翠はその頭を優しく撫でる…。

 

 

「(あの怪物…強かった……次は、もっと強くなるかも……こんな状態で…子ども達を…守れるの?私…)」

熱に浮かされながら…翠はネームレスの事を考える。

 

 

「(それに…あの姿、何処かで()()()()()()気がする……ダメだ…ぼーっとしちゃって…考えられない…)」

ネームレスの姿に引っ掛かりを覚える翠…しかし、ぼんやりした頭では思い出せなかった…。

 

 

 

「母さん…大丈夫か?」

 

「凌牙くん…おかえりなさい…」

 

「今日は璃緒と学校休んでるって…本当に辛いんだな…」

翠の部屋にスポーツドリンクを持った凌牙がやって来る…凌牙と璃緒は学校を休み、それぞれに遊海と翠の看病をしていた。

 

 

「アストラルが新しい遺跡を見つけて…明日の朝に出発するって連絡がきた…」

 

「凌牙くん…私達の事は心配しないで…遊馬くんとアストラルの力になってあげて…」

 

「…本当に…母さん達はすごいぜ…そんな状態でも、他人を思いやる事ができるなんて…」

凌牙は翠の言葉を噛み締める…自分だって辛いはずの状態…それでも翠は子ども達の事を想っていたのだ…。

 

 

「凌牙くん…私達はね、1人じゃないの…たくさんの人との繋がりがあったから、世界を守れたの……だから…だか、ら……すぅ……」

 

「…おやすみ…母さん…」

 

《…フォーウ…?》

 

「…わかってる、遊馬は危なっかしいからな」

眠ってしまった翠…その心は凌牙にしっかりと伝わった…。

 

 

 

 

 

 

Side璃緒

 

 

 

「父さん…母さんがね、父さんを襲ったバリアンを倒したのよ…逃げられちゃったけど……バリアンが持ってる『鎌』を壊せば父さんは助かるって…!だから…待ってて…!」

 

《璃緒…》

 

同じ頃、病院に入院し眠り続ける遊海…彼の隣にはアヤカと璃緒の姿があった。

ベッドに寝かされた遊海の傷は塞がる事はなく、肌は噛み傷のある場所を中心に…所々が紫色に変色してしまっていた…。

 

 

「…父さん、覚えてる?私達がまだ小さい頃…トーマスやミハエルと潮干狩りに行って…みんなでたくさん貝を取って…取りすぎちゃって母さんに怒られて…ふふっ…楽しかったね、父さん…」

幼い頃の思い出を遊海に話す璃緒…その目には涙が浮かんでいる。

…璃緒は朧げだが覚えていた、遊海が毎日のように病院を訪れ、話しかけながらマッサージをしたり回復魔法を掛けていてくれた事を…それと同じように璃緒は遊海に話しかけていた。

 

 

「…私、ずっと眠ってて…凌牙や父さん達にも心配掛けて……やっと…やっと家族が揃ったと思ったのに…!こんなのってひどいわ…神様…!」

 

《………》

呪いの傷と毒に蝕まれる遊海を前に思わず運命を呪う璃緒…そんな時だった。

 

 

 

 

 

キィン─

 

 

「っ…!なに!?」

 

《この反応は…》

遊海の手を握りしめていた璃緒…その時、遊海の病室にワープゲートが現れた…!

 

 

 

 

『驚かせてすまない、遊海のお見舞いに来たんだ…こうして会うのは初めてだね…神代璃緒』

 

 

《…バイロン》

 

「バイロン……彼が凌牙の言っていた…『トロン』…!?」

 

ワープゲートから現れたのは鉄仮面を着けた金髪の少年…その名はバイロン・アークライト…『復讐者』トロンとして璃緒を傷付けた張本人だった。

 

 

 

《バイロン、誰からここの事を?》

 

『フェイカーからさ……事情も聞いた、バリアンからの刺客に襲われたそうだね、酷い話だ…消耗している遊海を狙うなんてね……私も似たような事をしてしまったが…』

アヤカからの問いに答えながらバイロンは遊海に歩み寄り…その状態を見てバイロンは顔を伏せる。

 

 

『……よく、こんな状態で戦えたね…肉体も、魂もボロボロ…そして不治の傷に毒……生きているのが奇跡のようだ……今こそ、私が遊海の力になる時…!』

 

「…何をするつもりですの…!?」

璃緒は遊海にむけて手を翳すバイロンに問い掛ける…!

 

 

『彼には私が分け与えた「紋章」の力が宿っている…それを活性化させ、少しでも彼を癒やす…根本的な解決にはならないけど……時間は稼げるはずだ、それが…私が君達親子にできる…精一杯の贖罪だ─!』

 

キィン─! バリバリバリ!!

 

 

トロンが紋章の力を発動する…だが、その力は遊海の胸元の傷から発せられるオーラに阻まれる…!

 

 

『この傷から…強い思念を感じる…!この傷を刻んだ相手は…よほど遊海に()()があったらしい…!!』

拮抗する紋章と呪い…だが、バイロンは力を弱める事はない…!

 

 

『遊海…!ようやく、キミも家族を取り戻したんだ……だから、戻って来い─!!』

 

《バイロン…!》

 

「トロン……いえ、バイロンさん…ありがとう…!」

 

バイロンは遊海から受けた恩を返す為…力を振り絞った…!

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

「…大丈夫ですよ!璃緒さん!きっと翠さんも遊海さんも…すぐに元気になります!」

 

「小鳥さん……そうですね!少し元気が出ましたわ!」

 

((璃緒も辛いだろうに…しかし、小鳥の明るさは私達には欠かせないな…))

璃緒を元気づける小鳥…その姿を見てアストラルはこの旅に彼女の力が必要なのを痛感したのだった…。

 

 

 

「アストラル、件のバリアンの事は大丈夫なのか?前回は翠さんが退けてくれたが…また襲ってくるかもしれないぞ?」

 

(ああ、奴に関しては大丈夫だ…アヤカ曰く『デュエルで深い傷を負って動けない可能性が高い』…との事だ、万が一に備え彼女もオービタルと共に飛行船に待機してくれている)

カイトの問いにアストラルは雲の中に隠した飛行船を見上げた…。

 

 

 

Sideかっとび遊馬号

 

 

 

《まさかアヤカ殿が旅に同行してくれるとは…なんとも心強いでアリマス!》

 

『バリアン…ネームレスは強力な相手、遊馬達に万が一があればマスターが悲しみます……そして、私としても彼女を許す事はできない…!』

 

《アヤカ殿…》

飛行船でオービタルと人間体のアヤカは語り合う…アヤカは翠に頼まれ、遊馬達に同行していた…。

 

 

『もし現れたのなら…マスターから借りたデッキで…必ず殲滅します…!!』

 

《(怖っ!?本当に怒ってるでアリマス─!?)》

濃密な殺気を纏うアヤカにオービタルは震えたのだった…。

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

「ところで…ナンバーズの遺跡は何処にあるんだろう…?」

 

「確かにな…街は新しい建物が多い、街の外れにあるのか?」

遺跡を探して街を探索する遊馬一行…だが、それらしい遺跡を見つける事はできないでいた。

 

 

「あ…ああぁぁぁ─!?」

 

「どうした!?」

 

「何か見つけたのか!?」

突然、遊馬が叫び声を上げる…その目線の先には…

 

 

『スパルタンシティ・プロデュエルトーナメント!世界最強の決闘者が集結し───』

 

「なーんだ、プロデュエルリーグの宣伝じゃない…本当にデュエルにしか興味ないんだから…」

街頭ビジョンに映し出されていたのは、スパルタンシティで行われているプロデュエルリーグの大会の宣伝だった…そこには遊馬が戦った片桐プロなどの有名なプロデュエリストの姿が映し出されている。

 

 

「違うって!!アレみろよ!あのデュエリスト!!」

 

「えっ…?」

再び街頭ビジョンを指差す遊馬…そこには…。

 

 

『──今回の注目は謎の覆面デュエリスト「ゴーシュ・ザ・スターマン」!!デュエルの女神は彼に微笑むのか─!』

 

「…ゴーシュ・ザ・スターマン………まさか…」

 

「あれって…ゴーシュだよなぁ!?」

 

「「「ええぇぇ!?!?」」」

そこには星の覆面を着けた遊馬のライバル…『ヒロイック』デッキの使い手・ゴーシュの姿があった…。

 

 

 

 

 

「「ゴーシュ!サインして〜!!」」

 

「「握手!」」

 

「次のチャンピオン戦頑張って〜!」

 

「絶対勝ってね!!」

 

『おう!任せとけ!』

デュエルトーナメントの行われているスタジアム…そこでゴーシュは子供達へのファンサービスに勤しんでいた…本当に楽しそうな笑顔を浮かべながら…。

 

 

「お〜い!オレにもサインしてくれよ!ゴーシュ!ドロワ!」

 

『おおっ!?遊馬!遊馬じゃねぇか!』 

人垣の奥から叫ぶ遊馬…その姿を見たゴーシュは驚き、歓迎の声を上げた…。

 

 

 

 

 

「しっかし…驚いたなぁ!ゴーシュがプロデュエリストになって、しかも大人気なんて!」

 

『まぁな!「星からの使者」ゴーシュ・ザ・スターマン!連戦連勝で次はチャンピオンに挑戦!って訳だ!』

 

「すっげぇ!」

WDCの後にゴーシュとドロワはハートランドを離れ、プロデュエリストに転向…世界中を巡っていたのだ。

 

 

「あれ…?ドロワさんもプロデュエリストなんですか?」

 

『いいや、私はコイツのマネージャーだ』

 

『2人で「覆面タッグデュエリスト」でデビューしようぜ!…って言ったら、断られてな!ハッハッハ!』

 

『当たり前だ!!』

 

「た、たしかに…」

 

「ちょっとキツイかも…?(汗)」

覆面デュエリスト姿のドロワを想像した小鳥と璃緒は苦笑したのだった。

 

 

 

「そういえば…どうして『スターマン』なんだ?」

 

『フッ…俺はよ…子供達に希望の「星」を見せてやりたいんだ…俺とドロワの生まれた町は…ひでぇ所でよ、生きていくのが精一杯だった・・…』

遊馬に自身のプロネームの由来を聞かれたゴーシュは自分の原点を思い出す…。

 

 

『けど、デュエルだけは輝いていた!ワクワクするような熱いデュエルを…いつかは俺達も!と思いながら、夢見ていたもんさ・・・』

 

『それが…いつしかその夢が、私たちの希望の星になった…!』

 

『どんな暗い夜でも…空に輝く星があれば、それに向かって生きていける!そんな「希望の星」を今のガキどもに見せてやりてぇ・・・だから俺は、『星からの使者 』ゴーシュ・ザ・スターマンになったのさ!』

ゴーシュとドロワは2人の原点を語る…今の2人はその夢を…『希望の輝き』を掴みかけているのだ。

 

 

『それに、もう1つ願を掛けてるのさ…!』

 

「願…?」

 

「どんな願いなんだ?」

スターマンの由来の続きをカイトが問い掛ける。

 

 

「本当に昔の話だ!俺達と同じような生まれの1人のデュエリストが世界を救う『星』になった!世界中のみんなの希望を束ね、『神』を砕いた…って話を聞いてな!その男みたいなデュエリストになりたい!そんな俺の目標も掛けてあるんだ!」

 

「その話って…!」

 

(ああ、おそらく不動遊星の事だろう…英雄達の思いはこうして受け継がれていくのだな…)

ゴーシュの原点…そして目標を聞いた遊馬達は彼の思いに心が震えた…。

 

 

 

『そういえば…なんでお前達はこの街に来たんだ?別に観光しに来た…って訳じゃないだろ?』

 

「実は…オレ達『遺跡』を探してるんだ!」

 

『遺跡…?』

 

『また珍しいノリだな…まっ、メシでも食いながら聞かせてくれよ!』

 

 

………

 

 

 

『なるほどなぁ…行方不明の親父さんの手がかりを探して…』

場所を移した遊馬一行とゴーシュ達は食事をしながら遺跡探しについて話す…なお、ゴーシュ達をバリアンとの戦いに巻き込まないように、ナンバーズ関係の事は伏せて伝えている…。

 

 

「できれば…遺跡の伝説なんかがあれば教えて欲しいんだけど…」

 

『なら、あるぜ!飛びっきりの伝説がな…この街じゃ有名な話だ』

 

『遺跡のコロッセウムを彷徨う「拳闘士の魂」の伝説だ』

心当たりのあったゴーシュとドロワは遊馬達に伝説を語った…。

 

 

 

 

………

 

 

 

かつて、この地には己の「拳」一つで勝ち続けた「最強の拳闘士」がいた。

 

 

そのライバルはその国の「王子」…2人は幾度となく戦い、戦いの中で身分を越えた「友情」を築いていた…。

 

 

そのうち、2人が雌雄を決する時が来た…だが、王子が民衆の前で負ける事を恐れた側近達が拳闘士を無実の罪で捕らえてしまう。

 

 

囚われた拳闘士は無実を訴え…王子も彼を弁護した…しかし、その言葉は聞き入れられず…拳闘士は民衆の前で無残に処刑されてしまった…。

 

 

 

…………

 

 

 

「…ひどい…!」

 

「「「………」」」

ゴーシュとドロワから悲劇の伝説を聞かされた子ども達は言葉を失う…。

 

 

『…永い時が経ち、その国が滅んでコロッセウムが遺跡となった後もその遺跡には…拳闘士の魂が彷徨っているという…』

 

「…無実の罪で処刑された恨みから…か」

 

『いや…違うぜ、カイト』

 

「むっ…?」

ドロワから伝説の最後を聞かされカイトは拳闘士の想いを予想する…だが、ゴーシュはその答えに首を振る…。

 

 

『奴はまだ…()()()()()()んだよ、ライバルとの戦いを果たせぬまま倒れた無念が…奴の魂をコロッセウムに縛り付けてるんだ…』

 

『……もっとも、その遺跡も湖の底に沈んでしまった…拳闘士の魂を鎮める為に…ほら、丁度彼処にある湖だ』

 

「えぇ!?」

ドロワの言葉に遊馬はレストランに駆け寄る…その眼下には豊かに水を湛えた湖があった…。

 

 

「そんなぁ…どうすればいいんだよ…」

 

「…もうすぐ夜になるわ…続きは明日にしましょう」

 

遺跡を前に途方に暮れる遊馬…璃緒の提案でその日の捜索は止める事となった…。

 

 

 

 

 

「…って訳で、今日はスパルタンシティに泊まる事になったんだ」

 

『そうなの…ちゃんとゴーシュさんやドロワさんにお礼は言った?』

 

「ええ!本当に助かったわ」

その日の深夜、凌牙と璃緒は翠へと連絡を取っていた…スパルタンシティと日本は距離がある為に時差が開いているのだ。

 

 

「母さんはもう大丈夫?身体は辛くない?」

 

『うん、もう大丈夫!龍可ちゃんがトルンカさんの調合した回復薬を持ってきてくれてね…それを飲んだらだいぶ良くなったわ!』

 

「「(なんだろう、すごく不安な言葉が…)」」

Dゲイザーの向こうで元気そうな姿を見せる翠…その姿を見て若干の不安を覚える神代兄妹…その時だった。

 

 

ドン!ドーン!!

 

 

「ん…?なんだ、今の音…?」

 

「なんだか…爆発音のような…?母さん、また後で!」

 

『うん…気を付けてね…!』

窓の外から微かに聞こえた爆発音…凌牙と璃緒はその原因を知る為にバルコニーに飛び出した。

 

 

「っ…!?遺跡のある湖が…!」

 

「水が抜けていく…!?」

凌牙達が見たもの…それは、コロッセウムの沈む湖…その水位が急激に減っていく光景だった…!

 

 

 

 

「おい!?何があったんだよ!?」

 

「遅えぞ遊馬!」

 

「湖の水が引いている…!」

 

「えっ…!?」

凌牙と璃緒、カイトに少し遅れて遊馬がバルコニーに飛び出して来る…カイトに手渡された暗視双眼鏡で遊馬が見たもの…それは湖底から姿を現したコロッセウムの姿だった…!

 

 

「おそらく、バリアンの奴らの仕業だ…!」

 

(だとしたら…ナンバーズが…!)

 

「早く遺跡に行かねぇと!!」

 

「…凌牙…とても、嫌な予感がする…!」

コロッセウムの出現をバリアンの仕業と断定した遊馬達は遺跡に向かおうとする…だが、璃緒は湖から邪な気配

を感じていた…。

 

 

 

「すまねぇドロワ…!こんな夜中に…」

 

「気にするな、急ぐんだろう?…それにしても、ゴーシュは何処をふらついている…!」

その後、遊馬達はドロワの運転する車でコロッセウムへと急ぐ…なお、小鳥は深い夢の中の為(熟睡中)留守番(置いてきぼり)…そしてゴーシュは部屋に居らず、行方がわからなかった…。

 

 

(っ!?遺跡の方角から強い力を感じる…!急いだ方がいい!)

 

「わかった…!頼む!ドロワ!」

 

「事情はわからんが…しっかり掴まっていろ!!」

異常事態が起きている事を感じたドロワはアクセルを踏み込んだ…。

 

 

 

 

 

「あっ…!?ゴーシュ!なんでここに!?」

 

『遊馬!』

遊馬達はコロッセウムに辿り着き、先を急ぐ…そして辿り着いた闘技場…そこにはゴーシュ、そしてフードを纏った男がいた。

なお…ゴーシュがこの場所にいるのは、決勝を前に寝つけず、たまたまコロッセウムのある湖を訪れた際に()()()()の起こした爆発に巻き込まれたからである…。

 

 

『九十九…遊馬ァ…!』

 

「な…!?あ、アリト!?」

そして、遊馬の名前を聞いたローブの男が振り返る…その正体は熱き拳闘士…バリアンの戦士・アリトだった…!

 

 

「アリト…!よ、よかった…!オレ、ずっと心配してたんだぜ!?」

遊馬は思わずアリトに駆け寄る…遊馬とのデュエルの後、ベクターに闇討ちを受けたアリトはバリアン世界に連れ戻され、遊馬はその行方を知る事ができなかったからだ。

…しかし、今のアリトは……以前のアリトではない…!

 

 

『オレも心配してたぜ…!お前が、俺以外の奴らにやられちまったんじゃねぇかとな…!』

 

「…アリト…?」

遊馬を前に不敵に笑うアリト…その顔を見た遊馬は違和感を感じる、アリトはこんなにも…影のある笑みを浮かべる男ではなかったと…。

 

 

 

『お、おい!遊馬!?これはどんなノリだ?コイツはお前の知り合いなのか??』

アリトと遊馬の関係…そして今の状況がわからず困惑するゴーシュ…そしてアリトは思わぬ手段を取る。

 

 

『ゴーシュとか言ったな…!しばらくこのカードを貸してやる!』

 

『なっ……ナンバーズ!?』

 

『そいつを使って…俺と一緒に九十九遊馬を倒すんだ!!』

 

ギィン!

 

『なっ…!?があああああ!!?』

 

「アリト!?お前─!?」

 

アリトは手にしていた「遺跡のナンバーズ」をゴーシュに投げ渡す…さらに「RUM」を使い、ゴーシュを洗脳してしまった…!

 

 

「アリト…!お前、なんでゴーシュを洗脳なんて!!」

 

『なんだと…!?貴様、いったい何者だ!!』

正々堂々とした戦いを好むはずのアリトの暴挙に遊馬は困惑の叫びを上げる…そしてドロワは「洗脳」という物騒な言葉を聞き、アリトの正体を問い質す…!

 

『俺はバリアン七皇の1人…アリト!』

 

『バリアン…!?Dr.フェイカーとの戦いの際に滅んだのではなかったのか!?』

ナンバーズとは離れた生活を送っていたドロワは相手の正体に動揺する…そしてアリトは邪な笑みを浮かべる。

 

 

『頭数は揃ったな…!どうだ?タッグデュエルと洒落込もうぜ…!』

 

『タッグデュエルだと…?』

 

「…ゴーシュはバリアンの力で洗脳されちまってる…!それを解くにはデュエルで倒すしかねぇ!!」

 

『わかった…なら、私がタッグパートナーを務めよう…!私はゴーシュのマネージャーだ、奴の心が敵の手に落ちたのなら…それを取り返すのは私の役目だ!』

 

「おう…!頼むぜ、ドロワ!!」

アリトの提案したタッグデュエルを遊馬とドロワは承諾する!

 

 

 

 

「待て!奴は只者じゃねぇんだぞ!?この俺が…!」

 

「…待て、凌牙」

 

「カイト!?」

アリトの強さを知っている凌牙が飛び出そうとする…それを止めたのはカイトだった。

 

 

「…このデュエルは、ドロワにやらせてやってくれ…!」

 

「カイト…」

カイトは静かに遊馬達の様子を見つめている…彼は知っている、ゴーシュもドロワも…自分と同じ過酷な訓練を乗り越えてきたデュエリストなのだと…!

 

 

 

 

『遊馬ァ…!もっと嬉しそうな顔をしろよ…!俺とまたデュエルしたいって思ってたんだろぉ?』

 

「思ってたさ…!あの時からずっと…もう1度…熱いデュエルがしたいって!…けど!!なんでゴーシュを巻き込むんだよ!!」

 

『ハッ…心配するな、このデカブツの使()()()は考えてあるからよぉ…!』

 

「使い道…!?アリト!お前、どうしちまったんだよ!!」

アリトの豹変に困惑する遊馬…しかし、闇に侵されたアリトは待ってはくれない…!

 

 

『御託はここまでだ…!ぶっ潰してやるよ!九十九遊馬!!』

 

「くっ…やってやる!!」

遊馬とアリト…そしてドロワとゴーシュ彼らの望まぬタッグデュエルが始まった…!

 

 

 

 

「「『『デュエル!!』』」」

 

 

 

デュエルダイジェスト

 

遊馬&ドロワ対ゴーシュ&アリト

 

 

 

 

 

54

 

 

 

『現れろ「No.54」…熱き闘士の雄叫びが…眠れる魂さえも震わせる!「反骨の闘士ライオン・ハート」!』

 

「これが、この遺跡のナンバーズ…!」

ゴーシュの2回目のターン…彼のフィールドに心臓型のオブジェが現れ変形…遺跡のナンバーズたる獅子の戦士が現れる!

 

 

『だが…攻撃力は僅か100…!?』

 

(だが…確実に()()()()…!)

勇猛な見た目に反して低い攻撃力のライオンハート…アストラルとドロワはその効果を警戒する…。

 

 

『「ライオンハート」は攻撃表示の時、戦闘では破壊されない…バトルだ、「ライオンハート」で「希望皇ホープ」を攻撃!』

 

『っ─!?ゴーシュ!それは自殺行為だぞ!?自分から2400のダメージを喰らいにいくつもりか!!』

ゴーシュの思わぬ行動にドロワが叫ぶ…だが、遺跡のナンバーズの効果には続きがある─!

 

 

『「ライオンハート」の効果発動…このモンスターのバトルで受けたダメージを相手にも与える…バーニング…クロス・カウンター!』

 

「な、なにっ─!?うわああああ!!」

 

『ぐおおお…!』

 

『ゴーシュ!遊馬─!』

 

ライオンハートとホープが拳を振りかぶり激突…その余波が爆風となってゴーシュと遊馬を吹き飛ばした!

 

 

(くっ…!相討ち狙いの、捨て身の戦法か…!)

 

『ククッ…!そうさ…ただし、捨て身になるのはそこのデカブツだがなぁ…!しっかり遊馬と潰し合ってくれよぉ!』

 

『ぐっ…うぅ…』

アストラルはアリトの狙いを見抜く…だが、その姿を見て怒りに震える男がいた…!

 

 

 

「アリト…!いったいどうしちまったんだよ!?お前は…こんな戦い方する奴じゃなかったはずだ!!」

遊馬はアリトへと叫ぶ…遊馬の知るアリトは生粋の「戦士」…だが、正々堂々とした戦いを楽しむ彼の姿はそこにはない…。

 

『九十九遊馬…お前に負けた恨みが…!俺を変えたんだよぉ!あははははは─!!』

そこにいたのは復讐に燃える「悪漢」…戦士とは正反対の狂気を宿す男の姿だった。

 

 

 

(気をつけろ遊馬…!「ライオンハート」は受けたダメージを跳ね返すモンスターだ…だが、その分リスクも大きい…!)

 

「だから…だからゴーシュにナンバーズを使わせたのかよ…!!」

吹き飛ばされたゴーシュを見て遊馬は拳を握り締める…この戦いはリアルダメージを伴うデュエル、長引けばゴーシュの身体が保たない…さらに、コロッセウムに変化が起きる!

 

 

 

オオオオォォォ!

 

 

 

『な、なんだ!?この光は…!』

無人であるはずのコロッセウム…だが突然、その観客席を無数の青白い炎が埋め尽くし、歓声を上げ始めたのだ!

 

『これは……遥か昔にコロッセウムを埋め尽くした人々の()()…?』

璃緒はその炎の意識を感じ取る、それは過去の人々の「残留思念」…戦いを求めた人々の熱狂だった…。

 

 

 

「ゴーシュ…必ず、お前を戻してやる!オレのターン!」

洗脳によって熱き魂を封じられたゴーシュ…彼を救う為、遊馬は戦いへ挑む!

 

 

「バトルだ!『希望皇ホープ』でアリトの裏守備モンスターを攻撃!」

遊馬はアリトへと攻撃を仕掛ける…しかし、アリトはその手を読んでいた!

 

 

『ハッ…!甘いぜ!攻撃された「BKリベージ・ガードナー」の効果発動!裏守備だったこのモンスターが攻撃された時!攻撃対象を別のモンスターに変更する!お前が攻撃するのは「ライオンハート」だ!』

 

「し、しまった!!」

アリトの場のモンスターがリバースし、パンチングミットを構えたモンスターが現れ…素早い動きでライオンハートと入れ替わった!

 

 

(遊馬!『ホープ』の効果だ!)

 

『させるかよ!「リベージガードナー」を攻撃してきたのがエクシーズモンスターだった時!そのモンスターのORUは全て墓地に送られる!』

 

「や、やべぇ!!」

 

『この攻撃で…貴様らは終わりだ!!』

ORUを失ったホープがライオンハートに斬りかかる…だが、遊馬の残りライフは1600…この一撃で遊馬達のライフは尽きてしまう!!

 

 

『「ライオンハート」の効果発動…バーニング・クロス・カウンター!』

 

『させない!罠カード発動!「幻蝶の護り」!プレイヤーの受けるダメージを半分にする!!』

 

「ドロワっ…!うわああああ!!」

ダメージを受ける刹那…ドロワのフォローによって遊馬のライフは僅かに残る…だが、ゴーシュのライフは尽きてしまった…。

 

 

「っ…ゴーシュには悪いが…これで遊馬とドロワは有利になるはずだ…!」

吹き飛ばされたゴーシュを見てカイトが静かに呟く…しかし、遺跡のナンバーズの効果は終わっていない!

 

 

『まだだ!「ライオンハート」の効果発動!プレイヤーのライフが戦闘ダメージによって0になった時!ORUを1つ使い、そのライフを100にする!レスキュー・ショック!』

 

 

バチバチ…バン!!

 

ドクン!!

 

『がはっ…!!』

 

「なにっ…!?」

アリトが倒れたゴーシュに代わり効果の発動を宣言する…そしてライオンハートが拳を振るい、放たれた電撃がゴーシュを無理矢理に目覚めさせた!

 

 

(このナンバーズは…ORUがある限りプレイヤーを無理矢理戦い続けさせるというのか…!?)

 

『そうさ…!ただし、使ってる方はボロボロになっちまうがなぁ?』

 

「アリト…てめぇ…!!」

怒りの籠もった目でアリトを睨む遊馬……かつての剣闘士達はお互いに「死ぬまで」戦わされる事もあったという…その過酷なる運命を効果として宿す者、それがライオンハートだった…!

 

 

『……「幻蝶の護り」のさらなる効果発動!バトルが終わった時!相手モンスター1体を守備表示にする!』

 

「なるほど…!『ライオンハート』が戦闘破壊されないのは攻撃表示の時のみ!」

 

「守備表示ならナンバーズの攻撃でぶっ倒せる!」

無数の蝶の幻影がライオンハートを守備表示に変更させる…ライオンハートを攻略する為の一手にカイトと凌牙も期待を高める…!

 

 

『ゴーシュ!いつまでそんな坊やに好き勝手にされている!』

 

『ぐっ…!?坊やだとぉ!!』

ドロワは洗脳されているゴーシュに叫ぶ…彼の眠れる魂を目覚めさせる為に…。

 

『ゴーシュ!そのザマはなんだ!?今お前のしているデュエルには…熱さのカケラもないぞ!お前は忘れたのか!?お前の夢を…!答えろ!ゴーシュ!!』

 

『………』

 

『無駄だよ…!お前の声は届かない!』

ゴーシュへと必死に呼び掛けるドロワ…しかし、その声はゴーシュに届いていない…。

 

 

 

 

『全ては意のままに…黒き権威を纏いて入場せよ!「BKチート・コミッショナー」!』

アリトのターン、彼は黒のスーツを纏う怪しげなモンスターを呼び出す…そしてアリトは普段の彼は使わないであろう戦術を取る。

 

 

『バトルだ!「チートコミッショナー」で「ホープ」を攻撃!そして効果発動!このカードが攻撃する時、フィールドのモンスター全てを攻撃表示にする!フォースト・ファイティングポーズ!』

 

「なにっ!?」

チートコミッショナーが懐から魔物の顔をしたメガホンを取り出す…そこから放たれた音波によってゴーシュのライオンハート、そしてドロワの場に伏せられていた「幻蝶の刺客アゲハ」が無理矢理攻撃表示になる!

 

 

『そして「チートコミッショナー」のさらなる効果!フィールドに味方のモンスターがいる時!バトルしている「チートコミッショナー」と味方のモンスターを入れ替えてバトルを行わせる!お前がバトルするのは「ライオンハート」だ!!』

 

「なんだって!?」

手にしていたステッキを振り上げたチートコミッショナーの姿がライオンハートと入れ替わる!

 

『今度こそぶっ壊れちまえ!遊馬─!!』

 

『罠発動!「幻蝶の勇姿」!相手モンスターが攻撃してきた時!その攻撃対象を自分フィールドの「幻蝶の刺客アゲハ」に移し替える!来い!ゴーシュ─!!』

 

『「ライオンハート」の効果発動…バーニング・クロス・カウンター!』

 

『くっ…ああああ─!!』

 

「ドロワ!!」

絶体絶命の遊馬を再び救ったのはドロワだった…クロスカウンターによってゴーシュとドロワが吹き飛ばされる!

 

 

『くっ…!私の事は、気にするな…!それよりゴーシュは…!』

 

『まだだ!「ライオンハート」の効果発動!ORUを1つ使い!レスキューショック!!』

 

ドクン!

 

『がはっ…!?』

 

『ゴーシュ…!!』

吹き飛ばされたドロワはゴーシュを心配するが…ライオンハートの効果でゴーシュは無理矢理立たされる…!

 

 

『ゴーシュ…!それが今のお前の()()なのか!?そんな死んだ目をしたデュエルで…子供達の希望の「星」になれるのか!?…絶対に、お前の目を覚まさせてやる!!』

ドロワは洗脳された事で表情が変わらないゴーシュへ叫ぶ…全ては彼を救う為に…!

 

 

 

 

『現れろ!闇を舞う…美しき死の化身!「ナイトバタフライ・アサシン」!!』

ドロワは大きな青い羽を持つ蝶の暗殺者を呼び出す!

 

 

「攻撃力2600!」

 

《しかし、攻撃を跳ね返す「ライオンハート」には高い攻撃力は不利になってしまうぞ…!》

 

『いくぞ…!私は魔法カード「オーバーレイ・キャプチャー」を発動!その効果により「ライオンハート」のORUを1つ奪い!「ナイトバタフライアサシン」のORUとする!』

それは起死回生の一手…ORUがなくなればライオンハートの「レスキューショック」は使えない、ドロワはこのまま攻撃する事でゴーシュとの相討ちに持ち込もうとしていたのだ。

…だが、それを許すアリトではない…!

 

 

『ばかめ…!罠発動!「エクシーズ・バトル・チェーン」!お互いのフィールドにエクシーズモンスターがいる時!エクシーズモンスターを対象に発動したモンスター・魔法・罠の効果を無効にし、破壊する!』

 

『なに!?』

アリトの発動した罠によってドロワの魔法が無効化される!

 

『さらに!この効果がバトルを行っていない相手のターンに発動した時!相手のエクシーズモンスターを味方のエクシーズモンスターと強制的にバトルさせる!まずはお前をぶっ潰してやるよ!ドロワ!!』

 

 

『(くっ…今の私に…この攻撃を止める手立ては()()…!悔しいが…ここまでか…!!)』

アリトの作戦を止める事を止める事ができないと悟ったドロワは拳を握り締める…しかし、彼女は最後まで諦めない…。

確定した敗北…それを覆す事はできずとも、自分ができる事を最後まで為す為に…!

 

 

『やれ!「ライオンハート」!!』

 

『私は「ナイトバタフライアサシン」の効果発動!ORUを1つ使い!フィールドにある全てのORU1つにつき、攻撃力を400アップさせる!フィールドにあるORUは5つ!攻撃力は4600となる!!』

フィールドにあるORUの力を吸収したナイトバタフライアサシンが強く輝く!

 

 

「攻撃力4600…!?ダメージが自分にも返ってきてしまうのに…どうして!」

 

「あの4600は…ただの攻撃力の数値()()()()

 

「えっ…?」

ドロワの無謀ともいえる行動に戸惑う璃緒…その意図に気付いたのはカイトだった。

 

「あれはゴーシュに向けたドロワの()()()()()…己の持てる全てを使って…洗脳されたゴーシュの『魂』を呼び覚まそうとしている!!」

 

『いけぇぇ!!今の私の全てをゴーシュに叩き付け!奴の「決闘者」としての魂を呼び覚ます!!』

カイトの言葉と共に美しき暗殺者が舞い上がる!

 

 

『「ライオンハート」の効果発動…バーニングクロスカウンター!』

 

『ゴーシュ!私のありったけを喰らえぇぇ!!』

 

ゴシャ!!

 

 

蝶の暗殺者と獅子の闘士のクロスカウンターが激突…このデュエル一番の衝撃となって、ゴーシュとドロワを吹き飛ばした…!

 

 

 

ドロワLP0

 

 

 

「ドロワ!!しっかりしろ!!」

 

『…すまない、遊馬…私は、ここまでだ…』

爆発の衝撃で吹き飛ばされたドロワは遺跡の瓦礫に叩きつけられる…途切れそうになる意識の中、ドロワは遊馬に望みを託す…。

 

『私の、モンスターはフィールドに残っている…お前に、託す…ゴーシュを、頼む…アイツと、熱いデュエルをした…おまえ、なら……』

 

「ドロワ…!ドロワ!!」

遊馬へと希望を託したドロワは気を失ってしまった…。

 

 

 

『ハッ…!「ライオンハート」の効果発動!ORUを1つ使い!レスキューショック!起きやがれ!デカブツ!!ギャハハハハ!!』

 

ドクン!!

 

『ぐああ…』

 

「ゴーシュ!!」

ドロワの敗北を見届けたアリトは再びゴーシュを起き上がらせる…!

 

『そして俺は罠カード「ナンバーズ・オーバーレイ・ブースト」を発動!ナンバーズがORUを全て使い切った時!俺の手札2枚をORUにする!さぁ…今度こそ遊馬にとどめを刺せ!!』

ドロワが命懸けで削ったORUが復活する…遊馬を守る者はもういない…!

 

…だが、アリトは甘く見ていた…『決闘者の魂』の強さを!

 

 

 

 

『俺のターン…!俺は装備魔法「ストイック・チャレンジ」を発動!このカードは…O()R()U()()()()()()()()()事で装備できる!』

 

『なんだと!?おい、デカブツ!何やってやがる!!』

 

「なんだ…!?」

続いてやってくるゴーシュのターン、本来であればゴーシュは遊馬を攻撃し、ライオンハートの効果を使えば勝利が確定する…だが、洗脳されているはずのゴーシュはアリトの制御を外れ…己のデュエルをし始める!

 

『「ストイックチャレンジ」を装備した事で「ライオンハート」の効果は無効となり、墓地に送ったORU1つにつき攻撃力が600アップし、与えるダメージを倍にする!さらに装備魔法「ヒロイック・グロース」を発動!自身のライフが相手のライフより下の時、装備モンスターの攻撃力を倍にする!よって攻撃力は2600!』

 

(──!?なんで攻撃力を上げるんだ!?)

巨大化するライオンハートを見てアストラルは戸惑う…ゴーシュが確定している勝利を捨ててまで目指すものは…

 

 

『おおお…うおおおおお!!

 

─オオオオォォ!!─

 

洗脳され、表情を失っていたゴーシュが雄叫びを上げる…それと共にコロッセウムの亡霊達も熱狂する!

 

「…そうか…!そういう事か!!やっと良い()()になってきたじゃねぇか─!!」

そして遊馬はゴーシュの変化の理由に気付き、喜びの声を上げた!

 

 

 

 

『「ライオンハート」で「ホープ」を攻撃─!』

 

「ぐっ!?うわああ!!…これだ…!この熱さだぜ、ゴーシュ!!」

ライオンハートの拳がホープを粉砕…遊馬は吹き飛ばされるが、その顔は笑顔だった…!

 

 

 

『馬鹿な…何故デカブツがあんな動きを…!?』

 

「ゴーシュ…!やっぱり熱い真っ向勝負…それがお前の戦い方だ!!」

ゴーシュの行動の意味がわからないアリト…だが、遊馬は気付いていた…洗脳されたゴーシュの「魂」に火が点いている事に…!

 

 

「もしかして…洗脳が解けたの!?」

 

「違うな…ゴーシュの()()は洗脳されたままだ」

ゴーシュの様子が変わった事で洗脳が解けたと思った璃緒…その言葉を否定したのはカイトだった。

 

 

「洗脳はされている…だが、ドロワの渾身の一撃が囚われた奴の魂を震わせ、肉体…いや、細胞に刻まれた決闘者としての本能を呼び覚ました!これが…この姿が真の決闘者の姿だ!!」

 

それは…古くから伝わる決闘者の姿、洗脳され意思を奪われてなお、親友との戦いを望んだ男がいた…邪悪なる光に魅入られ暴走し、精霊の一撃で己を取り戻した男がいた…そして、虚無に記憶を奪われ、過去の自分によって希望を取り戻した英雄がいた…。

 

今のゴーシュは彼らと同じく、熱い決闘をする為に魂を燃やし…洗脳に抗っている!!

 

 

『うおおおぁぁぁ!!』

 

「いくぜゴーシュ!お前のありったけを受けてやる─!!」

雄叫びを上げるゴーシュ…その魂に応える為に、遊馬も力を振り絞る!!

 

 

 

 

「オレのターン!!ドロワ…お前の思い、無駄にはしないぜ!!魔法カード『エクシーズ・シフト』を発動!オレのフィールドの『ナイトバタフライアサシン』を墓地に送り、そのランクと同じエクシーズモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する!現れろ!『H-Cエクスカリバー』!!」

遊馬はドロワの思いを背負い、ゴーシュの魂のカード…赤き戦士エクスカリバーを呼び出す!

 

 

「さらに!『エクシーズシフト』は特殊召喚したモンスターのORUとなる!…ゴーシュ!このカードは熱いデュエルの証としてお前が託してくれたモンスターだ!!オレ達の思い…受けてみろ!!『エクスカリバー』の効果発動!ORUを1つ使い、攻撃力を倍にする!バトルだ!『ライオンハート』を攻撃!!」

 

『させるかぁ!!罠カード発動!「戦士の喊声(バトラーズ・クライ)」!相手モンスターの攻撃力がアップした時!「ライオンハート」の攻撃力を倍にする!!』

 

「いいぞ…!いいぞ!!熱くなってきたぁ!!」

攻撃力4000となるエクスカリバー…その熱意に応えるようにライオンハートの攻撃力が5200まで跳ね上がる!

 

 

(フッ…!今だ、遊馬!!)

 

「おう!!オレはさらに罠カード『魂の一撃』を発動!オレのライフが2000以下の時、自分のライフを半分払い!バトルの間、その数値分攻撃力をアップする!」

 

『ハッ…!無駄だ!お前のライフは僅か200!つまり100の攻撃力で………なにィ!?』

遊馬の一見無駄に見える一手を鼻で笑うアリト…だが、それと裏腹にライオンハートの覇気が弱まっていく!

 

 

(装備魔法『ヒロイックグロース』の効果は…お互いのライフが同じ時には発動しない!よって、その攻撃力は2600となる!)

 

『馬鹿な…!?』

 

「いっけぇ!『エクスカリバー』でトドメだ─!!」

ゴーシュの装備魔法の裏をかいた遊馬が攻撃を仕掛ける!

 

 

『ふ、ふざけんなァアアア!「チートコミッショナー」の効果発動!自身以外のモンスターがバトルしている時!ORUを全て使い、相手の手札に()()()()()があれば!バトルを終了させ、その効果を発動させる!使えデカブツ!手札の「バリアンズ・フォース」を!!』

黒衣の権力者が2人の闘士の間に割り込む…だが、熱き決闘者の力を止める事は叶わない!!

 

 

 

(遊馬!今だ!!)

 

「おっしゃあああ!!罠カード『オーバーレイ・マーカー』発動!このカードはバトルの時、エクシーズモンスターがORUを全て使い切った場合、その効果を無効にし、破壊する!」

 

(そして!そのエクシーズモンスターのプレイヤーに、バトル中のモンスター2体の攻撃力を合計した数値のダメージを与える!!)

 

『なっ…!?俺が、6700のダメージだとぉぉ!?』

 

「喰らえアリト!オレとゴーシュの熱い魂の一撃を!!」

 

『あ、ああ!?うわあああああ!!』

それは熱き戦士達の裁きの拳、魂の決闘を邪魔する魔人にエクスカリバーとライオンハートのダブルパンチが直撃…不粋なる権力者は打ち倒され、アリトは爆風に飲み込まれた…。

 

 

 

 

アリト LP0

 

 

 

 

 

 

─オオオオオオ…!─

 

 

アリトが地面に倒れ伏す、その戦いを見て満足したのか…コロッセウムを埋め尽くしていた亡霊達は万雷の喝采と共に消えていった…。

 

 

 

 

『な、なんだ…この、記憶は…!?この駆け巡る痛みは…!?』

 

「アリト…?」

倒れていたアリトが立ち上がる…だが、その表情は怯え…動揺していた…彼は吹き飛ばされる刹那に見ていたのだ、遺跡に眠っていた()()()()()()()拳闘士の記憶を…!

 

『なんだよ…なんだってんだよぉぉ!!?』

 

「アリト…」

知るはずの無い自分の記憶に混乱しながら…アリトはワームホールに消えていった…それと共にゴーシュの洗脳も解け、デュエルは終結したのだった…。

 

 

 

 

「あ、あった…!『覇者のコイン』…!父ちゃん、今回も見てくれてたんだ…」

デュエルを終えた遊馬は遺跡に置かれた金色のコインを発見…しっかりと握り締める…。

 

 

『遊馬…迷惑かけちまったな、受け取ってくれや』

 

「ゴーシュ…遺跡のナンバーズ…!」

ゴーシュは遺跡のナンバーズを遊馬に手渡す…本来、ナンバーズを手に入れたのはアリトだったのだが…動揺のあまり、ナンバーズを回収し損ねていたのだ…。

 

 

『しっかし…水臭いじゃねぇか!バリアンと戦ってるならなんで教えてくれねぇんだよ!俺も力を貸すぜ!』

 

「ば、ばっかやろぉ!今のお前にはドロワとの夢があるんだろ!?」

 

『遊馬…』

遊馬に協力しようとするゴーシュ…だが、遊馬はそれを断わった…彼らの『夢』を優先させる為に…。

 

「バリアンとの事はオレ達でなんとかする!だから、ゴーシュは子供達の『星』になってくれよ!!」

 

『そうか…そうだったな…!でも、お前も負けるんじゃねぇぞ!』

 

「おう!!」

朝焼けの中、ゴーシュと遊馬は拳を突き合わせる…この数時間後、ゴーシュは見事チャンピオンを打ち破り…子供達の希望の星になったのだった…。

 

 

 

 

 

 

「も〜う!みんなして置いて行くなんて…ひど〜い!!」

 

「ごめんなさい…起こすのも悪い気がしちゃって…」

 

《それ位で文句を言わないで欲しいでアリマス〜!オイラとアヤカ殿はずっと留守番でアリマスのに!》

次の遺跡へと向かう飛行船…1人だけ置いてきぼりになっていた小鳥を璃緒が宥める中…遊馬は物思いに耽っていた…。

 

 

 

(遊馬…アリトの事を考えていたのか?)

 

「ん…ああ…アリト…前はあんな奴じゃなかったのに…」

 

(…昨日のデュエルでわかっただろう、やはり彼はバリアン…残念だが、我々とは相容れない相手なんだ…)

 

「(アリト…なんでお前があんなひどいデュエルを…オレにはわからねぇ……それでも、オレは信じてる…またお前と熱いデュエルができるって…)」

 

「No.54」を見つめながらアリトの事を考える遊馬…その願いが届く日は…まだ遠い…。



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ドラゴン使いへの試練〜試される「絆」〜

こんにちは!S,Kです!

遊馬達は次なる遺跡へと向かう…その先で目の当たりにする真実とは…?


それでは、最新話をどうぞ!


「ああ…遊海さん…!またひどい傷を…」

 

「龍可ちゃん…」

ハートランドシティの遊海の病室…そこには翠、そして龍可の姿があった。

遊星から遊海と翠の危機を聞いた龍可は精霊界のトルンカが作った回復薬を持ってハートランドに駆けつけたのだ…。

 

 

《なんと強い呪いでしょう…!遊海をここまで弱らせてしまうとは…》

 

《エンシェントフェアリーよ…これでも、だいぶ良くなったのだ…遊海を心配したトロン…いいや、バイロンという男のおかげでな》

 

「璃緒ちゃんから聞いたわ…紋章の力で遊海さんを必死に治療してくれたって…」

 

《本人は気休めにしかならないと言っていたがな…》

遊海の状態を説明したメガロックは視線を落とす…トロンの渾身の治療によって遊海の症状は僅かに和らぎ、穏やかに眠っている…。

 

 

「遊海さんを回復させるにはネームレスの持つ『鎌』を破壊しなきゃならない…次こそは、絶対に…!!」

 

「翠さん…」

遊海の為に強い決意を抱く翠…あまり見た事のない彼女の姿に龍可は事態の重大さを悟った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(アリト…どうしてあんな戦い方を…なんで…!)

ゴーシュと別れた遊馬一行は次元トンネルを進み、中央アジアに位置する『第4の遺跡』へと向かっている…だが、操縦桿を握り締める遊馬は豹変してしまったアリトの事ばかり考えていた…。

 

 

「おい遊馬、ぼーっとしてんじゃねぇぞ…アリトって奴の事考えてやがったな?」

 

「シャーク…」

心ここにあらずといった感じの遊馬を見かねた凌牙が遊馬に声をかける。

 

 

「まったく…アリトはバリアンの()()を現しただけだ…!あれが奴の本当の姿なんだよ…!」

 

「本性って…!でもアリトはあんな奴じゃ…あんな奴じゃなかったんだ…!!」

 

「遊馬…」

アリトの変貌を「正体を現した」だけと割り切る凌牙…それを受け入れられない遊馬…2人の意見がぶつかるが…。

 

 

『遊馬、凌牙…間もなく「第4の遺跡」の座標に到着しますよ』

 

《着陸の準備をするでアリマス!》

 

「おっ…!次はどんな遺跡なんだろうな!」

アヤカとオービタルが遊馬達に声をかける、飛行船は中央アジアにある遺跡に到着しようとしていた。

 

 

 

「また…次の遺跡にも『伝説』があるのでしょうか…?」

 

「そういえば…今までの遺跡には必ず悲しい物語があったわ…」

 

「遺跡の伝説…か…」

璃緒と小鳥の言葉に遊馬は今までの旅を振り返る…。

 

 

「天馬の遺跡」に残された騎士の伝説

 

「悲鳴の迷宮」に残された残虐な王の伝説

 

「コロッセウム」に残された悲劇の拳闘士の伝説

 

…遊馬達を待ち受ける次なる伝説とは…。

 

 

 

 

 

キィン─…

 

「『銀河眼』が共鳴している…この先には、いったい何が待っている…?」

同じ頃…1人遊馬号の甲板に立つカイト、彼は感じていた…次の遺跡には自身に関わる()()があると…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………』

 

『よーし…ようやく回復したらしいな、怪物…!』

 

バリアンの城…ベクターは自身の前に佇むローブの少女ネームレスを眺め、笑みを浮かべる…翠とのデュエルで受けた傷がようやく癒えたのだ。

 

 

『…6ut、req…』

 

『あん…?チッ…なかなかに使える奴だが…まったくもって言葉がわからねぇ、気持ち悪い喋り方しやがって…!』

 

『…h4h4…6utt@…uljdq…』

 

『だから…!わからねぇって言ってんだろぉ!?』

意味不明の言葉を呟くネームレス…その様子を見たベクターは苛立ちを募らせる…。

 

 

 

『チッ…しょうがねぇ…!もう少し、力を送り込んでやるか…そうすりゃ喋れるようにはなるだろ』

 

【加減を間違えるなよベクター、しくじれば…お前は()()

 

『はぁ…?いきなり何を言いやがる!?』

ネームレスにさらなる力を与えようとするベクター…だが、ドン・サウザンドが注意を促す。

 

 

【この怪物…もしも力を完全に取り戻せば……バリアン世界を崩壊させるレベルのエネルギーを持っているぞ】

 

『そんな事はわかってるさ…!コイツのせいでバリアン七皇全員が死にかけたんだからな…!いま思い出してもまさに「悪夢」だぜ…!』

ドン・サウザンドの言葉にベクターは忌々しげな表情を浮かべる…。

 

『だが…だからこそ、あの化け物を潰すにはもってこいなのさ…!さぁ…奴にトドメを刺してこい…!ネームレス!!』

 

ギィン─!

 

 

邪悪な光がネームレスを包み込んだ…。

 

 

 

………

 

 

 

ビビーッ!ビビーッ!

 

 

「っあああ!!いったいなんなんだぁぁぁ!?」

 

「遊馬!しっかり舵を取りやがれぇぇ!!」

 

《こ、コントロール不能!コントロール不能でアリマス─!!》

 

飛行船内にけたたましい警報音が鳴り響く…次元トンネルから遺跡の近くへと飛び出した飛行船…だが、突如としてコントロールを失い、墜落しかけていたのだ!

 

 

『これは…!エネルギー波の干渉を確認!飛行船の制御系統にエラーがっ…!!』

 

「オービタル!アヤカ!どこでもいい!飛行船を着陸させろ!!」

 

《かか、カシコマリ!!》

 

『くっ…!!メインシステムに、アクセス…!強制、制御!!』

 

カイトの怒号が飛ぶ…アヤカとオービタルは共に制御に全力を尽くした…。

 

 

 

 

 

 

「ひ、酷い目に遭ったぜ…」

 

「まったくだ…」

 

《ですが…間違いありません、飛行船が指し示したナンバーズの遺跡の座標は…この場所でアリマス…》

 

「おぉ〜…!それじゃあ、遺跡はこの()()の上か…!」

遺跡の近くに不時着した遊馬達はオービタルの指し示す方向を見る…そこには天高く聳え立つ、巨大な岩山があった…。

 

 

「どうやら…ここからは()()で行くしかねぇな…」

 

「そのようだな…」

 

「「えぇ〜!?」」

凌牙が岩山を見つめながら呟く…聳え立つ岩山の頂上は雲に隠れて見えず、さらに飛行船は使用不可能…さらに…

 

 

《申し訳ありません、カイト様…カラダがまったく言うことを聞きません─!!ガクッ…》プシュー…

 

『こ、これが「体調不良」…初めての、感覚、です……全ての能力が、封じられて…うぅ…』

 

グライダーとなって空を飛べるオービタル、そして巨大な空中要塞となれるアヤカ…だが、謎のエネルギー波によって機械である2人は使い物になる状態ではなかった。

なお、オービタルは全身から煙が吹き出し…人間体のアヤカに至っては風邪をひいたように顔が真っ赤になっている…コア状態に戻ろうにもその力さえ封じられているのだ…。

 

 

 

「どうしよう、こんな所登れないよ〜…またお留守番かぁ…」

 

「……そうですわね、ここは女の子が登れる場所じゃないわ…今回は私も留守番ですね!オービタルやアヤカさんも調子が悪いみたいですし!」

 

「璃緒さん…!」

岩山を見てため息をつく小鳥…その様子を見た璃緒は今回の遺跡には行かない事を決めた…なお、コロッセウムで小鳥を一人ぼっちにさせてしまったお詫びも兼ねている。

 

 

「よ〜し!それじゃあ、行ってくるぜ!」

 

「気を付けてね!遊馬!」

 

「大丈夫だって!オレは冒険家の息子なんだ!サクッとナンバーズを回収して来るぜ!」

 

「もう…そうやって調子に乗らないの!」

小鳥と璃緒の見送りを受けた遊馬・凌牙・カイトの3人は岩山へのクライミングを始めた…。

 

 

 

 

 

「2人とも!山登りのコツは足場を確保する事と…腕をしっかり伸ばして…岩をしっかり掴むんだ!それから山は()()()()()!自分勝手はナシだからなー!!」

 

「わーってる!父さんにも、教わって、るからな…!!」

 

「くっ…!!」

登り始めて数十分…危険なエリアに差し掛かった遊馬は凌牙とカイトに山登りのコツを伝える…なお、全員命綱など付けていない為…落ちたらお陀仏である。

 

 

「遊馬!山頂は、見えるか…!」

 

「まだまだだ!雲に隠れて、見えねぇ!」

カイトは先行している遊馬に声をかける…既に数十mは登ったが…未だに山頂は見えなかった…その時だった!

 

 

 

《キュオオォォオオン──…!》

 

 

「今の声は…!?」

岩山を登る遊馬達の遥か頭上…頂上付近から雄々しく威厳を感じさせる咆哮が轟く…!

 

(今の声…おそらく、()()()()の咆哮だ…!)

アストラルは咆哮の主の正体を予測する…。

 

キィン─!

 

「ギャラクシーアイズ…!?やはり、この遺跡には…っ!?」

さらに咆哮と共に共鳴するカイトの「銀河眼の光子竜」…その様子を見たカイトは何かを確信するが…彼に試練が襲いかかる!

 

ガラガラガラガラ!!

 

 

「ら、落石!?」

 

「しまっ…!!」

 

「危ねぇ!!」

銀河眼の共鳴に気を取られたカイトの頭上…そこへ大小様々の落石が襲いかかる…だが、間一髪の所で遊馬がカイトの腕を掴み、落下を回避した…!

 

 

「ヘヘッ…!言っただろ?山は助け合いだって!」

 

「…すまん…助かった」

不慣れとはいえ…13才に助けられる18才…思わずカイトはそっぽを向いてしまった…。

 

 

 

 

Side留守番組

 

 

 

「アヤカさん…大丈夫…?」

 

『大丈夫、です…少し、慣れてきました…』

一方、遊馬達を待つ小鳥・璃緒・オービタル・アヤカの待機組…オーバーフローを起こしているアヤカは濡れタオルを持った璃緒に看病されていた…。

 

 

「遊馬…」

 

《カイト様…》

 

『……小鳥、オービタル…心配する事は、ないですよ、遊馬達は…このペースなら、あと1時間も登れば、到着するはずです』

 

「大丈夫よ!あの3人なら…私達は信じて待ちましょう…オヤツ食べる?」

心配そうに岩山を見上げる小鳥とオービタル…アヤカは辛うじて機能するレーダーで3人の無事を確認し…璃緒は彼らの事を信じて待っていた…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「ぐっ…!つ、着いたぁ…!ここが山頂か…」

 

「ふっ…!霧が深くて、何も見えねぇ…」

休憩を挟みながら3時間近く登り続けた先…遊馬達は深い霧に覆われた山頂へと辿り着いた…。

 

 

「いや…前を見てみろ、何かあるぞ…!」

 

「えっ…?あっ─!?」

 

「おい…!こんなモン、どうやって建てたんだ…!?」

カイトが霧の先に何かを見つける…その先にあったのは古代中国風の赤い王宮のような建物だった。

 

ゴゴゴ…ガシャン!

 

「扉が…!」

 

「また、バリアンの奴らが何かを仕掛けてくるかもしれねぇ…用心して行くぞ…!」

王宮の門がひとりでに開く…遊馬達は警戒しながら足を踏み入れた…。

 

 

 

(ここが…我々の目指していた遺跡なのか…?)

 

「確かに…()()()()()な…」

王宮の中は素晴らしい造りだった…綺麗に整備された中庭…龍の装飾のオブジェ…どう見ても遺跡には見えない程、綺麗過ぎた…。

 

 

「クンクン…匂う…匂うぜ…!美味そうな料理の匂いがする〜!きっと誰か住んでるんだ!」

 

「あ、待て遊馬!!」

辺りを見回す遊馬…その時、空腹な遊馬の鼻が香しい料理の匂いを嗅ぎ取る…その匂いの先には美味しそうな鍋料理があった!

 

「う、美味そう〜!!食べたいけど……勝手に食べちゃ、ダメだよな〜…」

 

『フム…多少の礼節はわきまえておるようじゃの、若者よ…それは儂の昼飯じゃて』

 

「誰だ!!」

王宮に響く老人の声…それと共に王宮の中から金色の辮髪を結い、杖をついた小柄な老人が現れた。

 

 

『それはこちらのセリフじゃ…お主達は何者だ?』

 

「オレは九十九遊馬!それからシャーク、神代凌牙と…」

 

「カイトだ…オレ達は、遺跡のナンバーズを探しにきた!」

 

『ほう…ナンバーズをのぉ…!』

カイトの言葉を聞いた老人は妖しく目を輝かせる…その瞳にはカイトを守るように佇むギャラクシーアイズの姿が見えていた…!

 

 

『お主、ドラゴン使いじゃな?』

 

「ああ…そういう貴様もか、ただならぬ()を感じる…!」

 

『…いかにも』

 

ギィン─!

 

「っ!?なんだ…!?」

カイトが老人を睨み…それと共に強風が吹き荒れる、それはドラゴン同士の共鳴…老人の背後に東洋の龍を思わせる影が現れる…!

 

 

『我が名はジンロン!このナンバーズの遺跡を護る者…!お前はなかなか良い闘志を持っているなぁ…儂もお前のような決闘者を知っておる…遥か昔、この遺跡の伝説に残るドラゴンと戦った決闘者を…』

 

「決闘者だと…?」

自らの正体を明かした老人…ジンロンは昔を懐かしむように空を見上げる…。

 

 

(ご老人…そのデュエリストの名は…()()()()というのではないか?)

 

「「「なんだって…!?」」」

 

『ほう…青き者よ、お前は遺跡の伝説を知っているのか?』

ジンロンへと問い掛けるアストラル…ジンロンはその問い掛けに頷いた…!

 

 

「ち、ちょっと待ってくれよアストラル!なんでミザエルの名前が!?奴はバリアンで………まさか…」

アストラルの言葉に驚いた遊馬は思い出した…遊海が戦ったバリアン・アゴール…彼も元々は()()だったのだと…!

 

(遺跡で回収したナンバーズが私に伝えてくれた…我々が探している『7枚のナンバーズ』…そして遺跡に伝わる伝説…それはバリアン七皇が人間だった時の物語なのだと…!)

それはナンバーズに宿る記憶からアストラルが導き出した『真実』だった…。

 

 

 

「バリアンが、人間だった…!?そんな馬鹿な…!」

 

「…遊馬、シャーク…ここでのデュエル、オレに任せてもらうぞ…ここにオレがやって来た事…単なる偶然ではない、()()…いや()()()()使()()の宿命なのだろう!」

 

「カイト…!」

思わぬ事実に動揺する遊馬と凌牙…カイトは自身の宿命を感じ、ジンロンの前に歩み出る!

 

『よかろう…儂に勝つ事ができたら「遺跡のナンバーズ」はお主に託そう…ただし!負けた時はお主のドラゴンを貰おうか…!』

 

「構わない…オレが負ける事はありえん!」

 

『カッカッカ…!その生意気な口がいつまで続くか…見物じゃな─!!』

ドラゴン使いの魂とナンバーズを賭けた決闘が…ついに始まる!

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

デュエルダイジェスト カイト対ジンロン

 

 

 

 

46

 

 

 

『現われろ!「No.46」!雷鳴よ轟け…稲光よ煌めけ…!顕現せよ!我が金色の龍!「神影龍ドラッグ・ルーオン」─!!』

 

《キュオオォォオン!!》

 

「これが、遺跡のナンバーズ!」

先攻を取ったジンロン…彼は遺跡のナンバーズ、巨大な翼と神々しき角を持つ白龍を呼び出す!

 

 

「…それが貴様のドラゴンか」

 

『そうじゃ…!()()()()()()()じゃ!その力を見せてやろう!儂は「ドラッグ・ルーオン」の効果発動!自分のフィールドに自身以外のドラゴン族モンスターがいない時!ORUを1つ使い、手札のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚できる!現われよ!「武装神竜プロテクト・ドラゴン」!』

ドラッグルーオンがORUを取り込み、鉄壁のドラゴンを呼び出す…だが、それだけではない…!

 

スウゥゥ─…

 

 

「なっ…!?『ドラッグルーオン』が消えた…!?」

カイトは目を見開く…プロテクトドラゴンが現れた途端、ドラッグルーオンが空気に融けるように消えてしまったのだ…。

 

『これぞ「ドラッグルーオン」のモンスター効果じゃ…!儂のフィールドにドラゴン族モンスターが存在する時、自身は攻撃及び効果の対象にならない!つまり…お前はナンバーズに指一本触れる事も叶わぬ!さらに装備魔法「ドラゴン・シールド」を「プロテクトドラゴン」に装備!』

ジンロンはさらに万全を期す為にプロテクトドラゴンに重厚な鎧を纏わせる!

 

 

『「ドラゴンシールド」を装備したドラゴンは戦闘・効果では破壊されず、儂が受ける戦闘ダメージも0になる!そして装備魔法を装備した「プロテクトドラゴン」の攻撃力は500アップし、自身が表側表示の限り装備魔法は効果では破壊されなくなる!さぁ…この「鉄壁の試練」を乗り越えてみせよ!!』

まさにナンバーズを護る鉄壁の盾となったプロテクトドラゴン…カイトの一手とは…!

 

 

 

 

 

「オレは攻撃力2000の『オーバーレイ・スナイパー』と『オーバーレイ・ブースター』をリリース!闇に輝く銀河よ!希望の光となりて、我が下僕に宿れ!光の化身ここに降臨!現われろ!『銀河眼の光子竜』!!」

 

《ギャオオン!!》

 

「ギャラクシーアイズ!!」

カイトは速攻で自身のエースにして魂のドラゴン…ギャラクシーアイズを呼び出す!

 

 

(そうか…「光子竜」の効果で「プロテクトドラゴン」を除外してしまえば鉄壁は破れる…流石はカイトだ)

アストラルはカイトの狙いを見抜く…だが、ジンロンは一筋縄ではいかない相手だった…。

 

 

『それがお前のドラゴンか…』

 

「そうだ!今度は貴様にオレのドラゴンの力を見せてやる!」

 

『カカッ…!それはどうかな?「ドラッグルーオン」のさらなる効果発動!相手フィールドのドラゴン族モンスターの効果を無効にする!』

 

「なにっ!?」

姿を現したドラッグルーオンが光線を放つ、それはギャラクシーアイズの足元に命中…展開された陰陽陣がギャラクシーアイズの能力を封印する!

 

 

『どうじゃ!これでお前のドラゴンは牙を抜かれたも同じ…さぁ、どうする!!』

 

「フッ…貴様は破壊不能の城壁を築き…その前で狼狽えるオレの姿が見たかったのだろうが…その鉄壁ごと、吹き飛ばす!!」

カイトを見定めるように睨むジンロン…カイトは鉄壁を攻略する為の一手を打つ!

 

 

「速攻魔法発動!『月の書』!その効果により『プロテクトドラゴン』を裏守備に変更する!それにより『ドラゴンシールド』は対象を失い、破壊される!」

 

『むっ…!』

 

(その手があったか!)

無敵に思えた「プロテクトドラゴン」と「ドラゴンシールド」のコンボはカイトの一手で崩れ…表側表示のドラゴンがいなくなった事でドラッグルーオンが姿を現す!

 

「再びナンバーズが姿を見せたか…待っていろ!鉄壁とやらを全て打ち壊し!お前のナンバーズをオレの手で狩ってやる!バトルだ!『光子竜』で裏守備の『プロテクトドラゴン』を攻撃!破滅のフォトン・ストリーム!」

 

『ぐおっ…!?』

 

「よっしゃ!カイトの先制パンチが決まったぜ!」

銀河の息吹が1つ目の鉄壁を粉砕する!

 

 

 

「これが…オレのやり方だ!オレに壊せぬ壁は…ない!!」

 

『これは愉快じゃ…!決して破壊できぬ物を破壊する…見事じゃった!お前に及第点をやろう!』

プロテクトドラゴンの爆煙の奥からジンロンが笑いながら現れる…!

 

 

「…気に入らんな、貴様に点数を付けられる筋合いはない!」

 

『カッカッカッ!褒めているのじゃ!まったく…ドラゴン使いには偏屈な奴が多いのぅ…ミザエルもそうじゃったわ!お主に良く似ていた…あいつとの戦いもな…』

 

「ふざけるな!…オレは奴とは違う」

 

『そうか…お前とミザエルは違うか!これはまた愉快じゃ!カイト…お主のデュエルの真髄…見せてもらうぞ!お主が超えるべき鉄壁はまだまだあるからのう─!!』

カイトの姿にミザエルの面影を重ねるジンロン…彼はさらなる試練を課す…!

 

 

 

 

 

 

『「ドラッグルーオン」の効果発動!ORUを1つ使い、手札より現われよ!「魂喰神龍ドレイン・ドラゴン」!』

 

「攻撃力4000だと!?」

ジンロンの場に禍々しい黒い体と胸を凄まじいエネルギーで輝かせるドラゴンが現れる!

 

 

『ドラゴンが現れた事で「ドラッグルーオン」は再び消える…そして「ドレインドラゴン」の効果発動!このカードの攻撃力は相手のライフポイントを自身の元々の攻撃力に加えた数値となる!よって…攻撃力8000じゃ!』

 

「なんだと!?」

その体を巨大化させたドレインドラゴンがカイトをにらみつける!

 

『まだじゃ!「ドレインドラゴン」は破壊された時…その時点での攻撃力の半分のダメージを相手に与える!』

 

「「なんだって─!?」」

 

「くっ…!!」

 

(今の「ドレインドラゴン」の攻撃力は8000…効果破壊すれば4000のダメージがカイトに襲いかかる…だが、高い攻撃力を乗り越えるのは困難…これが新たな試練…!)

プロテクトドラゴンが護りの鉄壁ならば…ドレインドラゴンは攻めの鉄壁…カイトはこの試練を乗り越える事ができるのか…。

 

 

 

『さぁ、どうする…!』

 

「くっ…攻撃するなら…さっさとやれ…!」

攻撃力8000のドレインドラゴンを前に覚悟を決めるカイト…だが、その様子を見たジンロンは…。

 

 

『カッカッカ…安心せい「ドレインドラゴン」は召喚・特殊召喚したターンは攻撃できん!…儂はこれでターンエンドじゃ…命拾いしたなぁ』

 

「き、貴様…!ふざけているのか!?」

強力な効果を持つドレインドラゴンのデメリット、カイトはそれによって命拾いしたが…ジンロンに対して怒りを露わにする。

 

『勘違いするな!これはお前に与えられた()()!立ち塞がる壁じゃ!…儂はお前がこの壁をどのようにして超えるか見てみたいのじゃ!…じゃが、この壁を超えられない時、この壁はお前を飲み込むじゃろう!』

 

「ふざけるな…!オレに超えられない壁はない!」

カイトを試すジンロン…カイトはその試練を乗り越える道を見つけ出す!

 

 

 

「オレは魔法カード『デスパレード・スクレイブ』を発動!オレのライフを800払い!相手モンスターの元々の攻撃力を半分にする!!ぐぅぅっ!!」

カイトの魂を賭けた一手がドレインドラゴンに炸裂する!

 

「『ドレインドラゴン』の元々の攻撃力は4000、それが半分になり2000…!さらにオレのライフが減った事で攻撃は5200となる!」

 

『ほう…「肉を切らせて骨を断つ」か…!だが!まだ「光子竜」の攻撃力を上回っているぞ!』

 

「まだだ!さらに魔法カード『ドラゴニック・ディバイン』を発動!自分フィールドにレベル8以上のドラゴン族モンスターが存在する時!ライフを1000払い、このターン使用した墓地の一番上にある魔法カードを手札に戻す!そして回収した『デスパレード・スクレイブ』をもう一度発動!ライフを800払い!相手の元々の攻撃力をさらに半分にする!!」

さらにライフを削り、カイトはドレインドラゴンを弱体化させる!

 

 

「これで『ドレインドラゴン』の元々の攻撃力は1000…!そしてオレのライフは1400…よって『ドレインドラゴン』の攻撃力は2400だ!」

 

「『光子竜』の攻撃力が『ドレインドラゴン』を上回った!」

 

「いけ!『光子竜』!『ドレインドラゴン』を攻撃!破滅のフォトン・ストリーム!!」

 

『ぐぬっ…!!儂のライフを…!』

銀河の息吹がドレインドラゴンを粉砕…ジンロンのライフを削る!

 

『だが、この瞬間!「ドレインドラゴン」の効果発動!破壊された事で攻撃力の半分のダメージを相手に与える!「ドレインドラゴン」の攻撃力は2400…よって1200のダメージじゃ!!』

 

「ぐっ…!?ぐああああ!!」

 

「カイト!!」

ジンロンの墓地から飛び出した炎の幻影がカイトを吹き飛ばす、その残りライフは…僅か200…!

 

 

 

(…見事だ、カイト…僅かな時間でこんな打開策を思いつくとは…)

 

「攻撃力8000の『ドレインドラゴン』を倒すには…この方法しかなかっただろうからな…」

 

「な、なんだよ!?2人ともカイトの狙いがわかってたのかよ!」

カイトのデュエルを見守っていたアストラルと凌牙が呟く…2人はカイトがドレインドラゴンを攻略する方法を見抜いていたのだ…なお、遊馬が一人でハラハラしていたのは余談である。

 

 

「ちくしょう…なんだかオレだけレベルが違うみたいじゃねぇか…」

 

(気にする事はない…そんな事は百も承知だ)

 

「うっせぇな!?…でも、オレだってわかってる事があるぜ!!」

 

(それは?)

 

「カイトは絶対に勝つって事だ!!」

アストラルの言葉に憤慨する遊馬…だが、彼は信じていた…カイトが勝利を掴む事を…!

 

 

 

 

『よく2つ目の壁を乗り越えた…!ドラゴン族モンスターがいなくなった事で「ドラッグルーオン」は姿を現す!』

下僕のドラゴンが消えた事でドラッグルーオンが姿を現す…!

 

「とうとう来るか…!罠カード『キリング・リワード』を発動!相手モンスターを破壊した時、そのレベルによって効果を得る!『ドレインドラゴン』のレベルは8…よってカード2枚ドローする!…カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

『さぁ…次が最後の試練じゃ…!お主はこの試練を乗り越えられるかな…!!』

ドレインドラゴンの試練を乗り越えたカイト…ジンロンは彼に最後の試練を課す…!

 

 

 

『儂は「ドラッグ・ルーオン」の最後の効果発動!自分のフィールドに自身以外のドラゴン族モンスターが存在せず、ORUを持っていない時!相手フィールドのドラゴン族モンスターのコントロールを奪う事ができる!お前の「魂」…「銀河眼の光子竜」を戴くぞ!』

 

「なっ…!?」

ドラッグルーオンが「最強のドラゴン」を名乗る所以…それはドラゴンを下僕とし、敵対するドラゴンさえも操る強力な効果を持っているが故だった…!

 

 

『ただし、この効果はお主がライフを半分払い…さらに「光子竜」を破壊する事で無効にできる!…さぁ、どうする…!』

それは二者択一の選択…自身を守る為にドラゴンを犠牲にするか…それともドラゴンを破壊せず、相手に譲り渡すか…それはカイトにとって苦渋の選択だった…。

 

 

『「光子竜」の力はお主自身が良く知っているはず…己の手で破壊するか?敵の手へ渡すぐらいなら己の手で破壊するか…?』

 

「……貴様にはわからないだろうな、オレと「銀河眼」の『絆の強さ』を…!オレなくして「銀河眼」は在らず…「銀河眼」なくしてオレも在らず!ましてや貴様に言われて()()()を破壊する事など…決してない!!」

 

『ほう…』

それはカイトと『光子竜』の絆…ハルトを救う為にナンバーズを狩り続けたカイトの『魂のカード』…カイトはその()を手放す事は絶対にない!!

 

 

『ならば…その「魂」を我が手に戴くぞ!やれィ!「ドラッグルーオン」!!』

 

《キュオオォォン!!》

 

「っ…!『光子竜』がカイトの敵に回った!!」

ジンロンの言葉と共にドラッグルーオンが咆哮…全てのドラゴンを従える声がギャラクシーアイズのコントロールを奪い取る!

 

 

 

『せめてもの情けじゃ…お主のモンスターでトドメを刺してやろう!!行け!「光子竜」!カイトにダイレクトアタック!!』

 

「永続罠『デステニー・ブレイク』発動!!相手のモンスターがダイレクトアタックをしてきた時!カードを一枚ドローし、それがモンスターカードなら…その攻撃を無効にする!!オレが引いたのは…モンスターカード『銀河騎士』だ!!」

 

『なんと!?』

カイトの起死回生の一手…それはギャラクシーアイズの息吹を受け止める!

 

 

『くっ…デュエルを()に託したか…』

 

()()()()()()()()!!」

 

『なんじゃと…?』

ジンロンの言葉をカイトは否定する…!

 

 

「最強のデュエリストは()()()()()()()()()()()()()!…これがオレとギャラクシーアイズの絆だ!!」

 

「カイト…!」

それはカイトの変化の証…ナンバーズハンターであった頃のカイトは徹底したリアリストだった…だが、遊馬やアストラル…遊海などたくさんのデュエリストと出会う中でカイトもまた成長していたのだ!

 

 

『じゃが…儂には「ドラッグルーオン」の攻撃が残っている!「ドラッグルーオン」でダイレクトアタック!火炎神撃!』

カイトに向けて裁きの炎が迫る!

 

「オレはもう一度『デステニーブレイク』の効果発動!ドローしたのは…2枚目の『銀河騎士』だ!!」

 

『なにっ─!?』

カイトは再びモンスターカードを引き、攻撃を回避する!

 

「そして『デステニーブレイク』のさらなる効果発動!バトルが終了した時!このカードを破壊し、このカードの効果でドローしたモンスターを効果を無効にして特殊召喚する!現れろ!2体の『銀河騎士(ギャラクシー・ナイト)』!!」

そしてカイトの場にホバーボードに乗る2体の騎士が現れる!

 

『くっ…!?儂はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!…いくぞ!魔法カード『デステニー・オーバーレイ』を発動!このカードの効果により、相手フィールドのモンスターと自分フィールドのモンスターでエクシーズ召喚を行なう!!」

 

『なに…!?相手の場のモンスターとエクシーズ召喚じゃと─!?』

それはギャラクシーアイズとカイトの絆が引き込んだ起死回生の一手だった!

 

「オレは貴様の場の『銀河眼の光子竜』とオレの場の『銀河騎士』2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

囚われたギャラクシーアイズと騎士が銀河へと飛び込み、カイトの切り札…絆のドラゴンを呼び覚ます!

 

 

逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりて…その姿を現すがいい!!降臨せよ!我が魂!!『超銀河眼の光子龍』!!

 

《グオオオン!!》

それはカイトとハルト…そしてギャラクシーアイズの絆の力、赤き銀河の龍が咆哮を轟かせる!

 

 

 

 

『「超銀河眼の光子龍」…自らのモンスターを奪い返し、さらに進化させるとは…だが、甘い!!「ドラッグルーオン」の効果によってお主のドラゴンの効果は封印される!!そしてナンバーズはナンバーズでなければ破壊できん!!儂に多少のダメージを与えようと…次のターンにはそのドラゴンは儂のモノになる!!』

 

「それはどうかな、既に…オレの勝利は決まっている!!」

 

『なに?』

最強のドラゴンを前にするカイト…しかし、既に彼の勝利の方程式は完成している!!

 

 

「オレは墓地の『オーバーレイスナイパー』の効果発動!自身を除外し、自分フィールドのエクシーズモンスターが持つORU1つにつき500ポイント…相手モンスターの攻撃力を下げる!『超光子龍』のORUは3つ!よって『ドラッグルーオン』の攻撃力は1500ダウンする!」

 

『なんじゃと!?』

超光子龍のORUから放たれたエネルギーがドラッグルーオンを弱体化させる!

 

 

「さらに!墓地の『オーバーレイブースター』の効果発動!自身を除外し、自分フィールドのエクシーズモンスターの攻撃力をそのORU1つにつき500アップさせる!『超光子龍』の攻撃力は6000となる!!」

 

「す、すげぇ!!すごいぜカイト─!!」

超光子龍はORUの力によってパワーアップ…その攻撃力はジンロンのライフを削り切る数値となる!!

 

 

「バトルだ!『超光子龍』で『ドラッグルーオン』を攻撃!」

 

『儂を見くびるな!!罠カード発動!「神龍演舞(ドラゴン・ダンス)」!自分のドラゴン族のエクシーズモンスターが攻撃された時、墓地のドラゴン族モンスター2体を除外する事で…除外したモンスターの攻撃力の合計分、相手モンスターの攻撃力をダウンさせる!儂の墓地には攻撃力4000の「ドレインドラゴン」と攻撃力2000の「プロテクトドラゴン」がいる!これで返り討ちじゃ─!!』

 

「消えるのは…貴様だ!!カウンター罠発動!『銀河黒龍渦(ギャラクシー・ドラゴン・レーン)』!ドラゴン族エクシーズモンスターがバトルする時、相手が発動した罠カードの発動を無効にし、破壊する!」

 

『ば、馬鹿な─!?』

ギャラクシーアイズの咆哮がジンロンの罠を粉砕する!

 

 

「オレはアンタを見くびってなどいない、ドラゴンを知り尽くし…オレをここまで苦しめた戦術は最高の物だった!だからこそ…敬意を評し、このカードを伏せておいた!」

 

『…見事じゃ』

それはダメ押しの一手…ジンロンを強者と認めたが故の尊敬の一手だった。

 

 

受けよ…我らが一撃!アルティメット・フォトン・ストリィィム!!」

 

カイトの魂の一撃が神龍に炸裂…カイトはドラゴン使いの試練を乗り越えた…!

 

 

ジンロンLP0

 

 

カイト WIN!

 

 

 

 

『カッカッカッ…実に面白いデュエルじゃった!』

 

「貴様…何故、オレを試した?」

 

『それを話す前に…この遺跡に残る伝説を話すとしょうかの…』

 

「ミザエルの伝説か…」

デュエルが終わり、膝をついたジンロン…彼はカイト達に遺跡に伝わる伝説を語り始めた…。

 

 

 

…………

 

 

 

遥か昔、この地は1体のドラゴンによって護られていた…特に勇者ミザエルはドラゴンと心を通わせた良き相棒だった。

2人の活躍でこの地は平和な日々を送る事ができていた…。

 

 

しかしある年、この地を大雨の天変地異が襲い…たくさんの人々が亡くなった…そんな時、何処からかやって来た流れ者の祈祷師が民に根も葉もない事を触れ回った。

 

【この天変地異はドラゴンの仕業だ…ドラゴンをこの地から追い出すのだ、さすれば災いは消え去るだろう】

 

 

追い詰められた人々はその言葉に惑わされ、守り神であったドラゴンを忌み嫌うようになり…ついにはドラゴンを討伐しようとした…。

 

勇者ミザエルは人々を必死に説得したが…人々はその言葉を聞き入れない…それどころか『ミザエルが真の勇者ならばドラゴンを倒すべき』と言う言葉が飛び交った…。

 

そして…ミザエルは決心した。

 

 

『私の命をドラゴンの代わりに捧げよう…その代わり、我が言葉を信じて欲しい!!』

 

 

彼はドラゴンの前で自分に剣を突き立てながら人々に嘆願した…。

 

 

 

 

その時、数百…数千の矢の雨がミザエルとドラゴン、そして民に襲いかかった。

それは隣国からの軍勢の仕業…ミザエル達を追い詰めた祈祷師は隣国からの回し者だったのだ…。

 

そしてドラゴンとミザエルは力尽き、彼の護ってきた地は滅びたのだった。

 

 

 

………

 

 

 

 

『カイト…お前にはどんな窮地に立っても、己の運命を諦めない力がある…自らの命を諦めたミザエルと違ってな…』

 

「ジンロン…」

伝説を語り終えたジンロンは顔を伏せる…悲しみを抱えた彼にカイトが語りかけようとする…その時だった!

 

 

 

『黙れ!!』

 

 

『お、お前は…!?』

 

「ミザエル!!」

王宮に響く怒号…それは遺跡のナンバーズを手に入れる為にやって来たミザエルの声だった。

…遊馬達に遅れて遺跡のある岩山に来たものの、バリアンの力によるワープができず、岩山を駆け上がって来たのだった…。

 

 

 

『み、ミザエル…!?そんな馬鹿な…!貴方が生きているはずは……だが、貴方から儂の知る「ミザエル」の魂を感じる…!!』

 

『ふざけるなぁぁぁ!!』

 

『ぐわっ…!?』

 

「ジンロン!!」

ミザエルの姿を見て動揺するジンロン…ミザエルはその彼をバリアンの波動で吹き飛ばす!

 

 

『私が…下等な人間だっただと…!?デタラメを言うな!!』

 

「テメェ!!」

 

「…待て、遊馬…!」

自分が人間だった事を受け入れられず怒りを露わにするミザエル…ジンロンを吹き飛ばした彼に遊馬は叫ぶが…それを制止したのはカイトだった。

 

 

「ミザエル…貴様の相手は、オレではなかったのか!!」

 

『カイト…!面白い!ついに決着を着ける時がきたか…!!』

 

(まさか…ここで2人のデュエルが始まるのか…!)

遺跡の試練で消耗しているはずのカイトは超光子龍のオーラを纏いながらミザエルを挑発する…ミザエルはそれを見て超時空龍のオーラを纏い、2人の間に火花が散る…その時だった…!

 

 

ゴゴゴ…ゴゴゴゴゴゴ!!

 

 

「っ!?な、何だいったい!?」

 

(遺跡が…遺跡が崩れる!!)

突如として遺跡が鳴動…崩壊し始める!

 

『くっ…!?今日の所は引いてやる!だが…次は必ず…!』

 

「ミザエル…!!」

 

崩壊し始めた遺跡を見たミザエルは悔しげな表情で撤退する、そして残された遊馬達の周囲は深い霧に包まれ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、ここは…!?()()()()()()()()()()()!?」

 

「ジンロンって奴もいないぞ…!?」

遊馬達が気付けばそこは細い岩山の山頂…そこに有ったはずの遺跡は夢幻の如く消え去り、周囲は岩山に囲まれた風景に変わっていた…。

 

 

 

「あっ…!?覇者のコイン…いったいどうなってるんだ?」

辺りを見回した遊馬は足元に一馬の残したコインを見つけた…その時だった。

 

 

《若きデュエリスト達よ、伝説には続きがある…ドラゴンの魂は『No.』に触れ、再び蘇った…そして今日まで護ってきたのじゃ…》

 

「ジンロン!?」

遊馬達の足元の雲海からジンロンの声が響く…そして雲海の中から白き龍「ドラッグ・ルーオン」が姿を現す。

…今までいた遺跡はドラゴンの神通力で作り出された夢幻の世界だったのだ。

 

 

《カイトよ、儂がお前を試したと言ったな…いかにもその通りじゃ…!》

 

「…ジンロン」

神龍(ジンロン)…ドラッグルーオンは語る、カイトに試練を課した目的を…。

 

 

《遺跡のナンバーズを求める者が現れる時、世界は大きく動く…!若きドラゴン使いよ!世界を正しき道へと導くのじゃ…!!》

 

「正しき、道…」

ドラッグルーオンの願い…それは世界を正しく導く者に自身を託す事、それを見極める為にカイトに試練を課したのだ。

 

 

《儂は見たのじゃ…!遥か昔…天空の彼方で戦う、神々しき2つの光を!》

 

(っ─!?)

ジンロンの言葉を聞いた瞬間、アストラルの脳裏に新たな記憶が蘇る…!

 

 

《その戦いは数百日に及んだ…地上には火の雨が降り注ぎ、稲妻が大地を切り裂いた!やがて2つの光はぶつかり合い、消滅してしまったのじゃ!》

 

((これは、私の記憶…!?私はかつてバリアンと戦ったのか!?))

ドラッグルーオンの言葉と共にアストラルの脳裏に断片的に記憶が流れていく。

荒廃し火の海となっている人間界…自分と黒き魔神…2つの光が激しい戦いの末にぶつかり合い、互いに吹き飛んだ光景が…!

 

 

《カイトよ、お前にこのナンバーズを託す…愚かな戦いは世界を破滅に導く、決して繰り返してはならんぞ…》

 

「ジンロン…お前の願い、確かに受け取った…!」

夕日に照らされながらドラッグルーオンはカードとなり、カイトの手に収まる…カイトは彼の願いをしっかりと握りしめたのだった…。

 

 

 

 

「とりあえず…ナンバーズゲット、だな!」

 

「ああ…さて、降りるか…」

 

「………この山を…か…?」

 

「「あっ」」

ナンバーズは手に入れたものの…自分達がいる場所を思い出した遊馬達は頭を抱えたのだった…。

 

 

 

((ようやく思い出した…私の()()()使()()…それは…『バリアン世界を滅ぼす』事だ…))

騒ぐ遊馬達を見ながら…アストラルは瞳に暗い光を宿す、バリアン世界を滅ぼす…自身が最優先すべき使命を思い出したが故に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『むっ…?システムチェック…オール・グリーン!エネルギー波の消失を確認、通常稼働が可能になりました!』

 

「それじゃあ…!遊馬達がナンバーズを手に入れたのね!やった〜!」

 

「きっとそうですわ!きっと飛行船も動くはず…すぐに迎えに行きましょう!」

 

《了解でアリマス!すぐに出航準備を整えるでアリマス!》

岩山の麓で待機していたアヤカとオービタルが調子を取り戻す…それによってナンバーズの回収を確信した彼らは遊馬達を迎えに行く準備を始めた!

 

 

キン─

 

 

『っ…?今のは…』

 

《アヤカ殿〜!早くカイト様達を迎えに行くでアリマスよ〜!》

 

『ええ!わかっています!(…一瞬、時空の揺らぎを感じた…ような…?……気の所為だといいのですが…)』

アヤカは夜の帳が落ち始めた空を見上げる、その方向は…ハートランドシティの方向だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『すべては…ばりあんの…ために…』



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恐怖の鮮血神殿〜試される『覚悟』〜

こんにちは!S,Kです!

眠り続ける遊海…彼に最大の危機が襲い掛かる…!

翠は遊海を守り、悪を倒す事ができるのか!


それでは、最新話をどうぞ!


「今日はありがとう龍可ちゃん…家まで送っていこうか?」

 

「大丈夫、エンシェントフェアリーに送ってもらうわ…翠さんは遊海さんの側にいてあげて…」

遊馬達が遺跡を踏破した頃…一足先に夜の帳が落ちたハートランドシティのKC病院…その玄関に翠と龍可の姿があった…。

2人は1日掛かりで遊海を回復させる為に手を尽くしたが…その結果は思わしくなかった…。

 

 

「…でも、翠さんの毒を治した回復薬が効かないなんて…遊海さん…」

 

「KCでも急いで血清を作ってくれてるらしいわ…きっと、大丈夫…!」

 

「翠さん、無理はしないでね…!しっかり休まないと翠さんの体が壊れちゃう…!」

 

「ありがとう…無理はしないわ、やれる事をやるだけだから…!」

 

「翠さん…」

翠は未だに本調子ではない、顔にも疲労の色が見えるが…それでも翠は笑っていた…。

 

 

 

ピリリリ…ピリリリ…

 

 

「あっ…凌牙君から…もしもし!」

 

『母さん、俺だ…遊馬達と4つ目の遺跡のナンバーズを手に入れたぜ!』

 

「本当!?よかった〜!」

翠のDゲイザーが着信を知らせる、それは遺跡を突破した凌牙からの連絡だった。

 

 

『それで…手に入れたはいいんだが…遺跡の試練のせいで飛行船が整備中で…帰るのは明日の朝になりそうなんだ』

 

「そうなんだ…あっ、遊馬君は近くにいる?」

 

『ん?ああ…遊馬!母さんがお前に話があるってよ!』

凌牙は近くにいるらしい遊馬へと声をかける…。

 

 

『翠さん!どうしたんだ?』

 

「遊馬君…遺跡のナンバーズを探しに行くのに明里ちゃんに何も言わないで行ったでしょ?…すっごく怒ってたわよ〜!」

 

『げげっ!?』

翠の言葉を聞いた遊馬の顔色が青褪める…。

 

 

「一応フォローはしておいたから…帰ったらしっかり謝ってね!」

 

『わかったぜ…どう言い訳しようかなぁ…』

 

『……やっぱり、遊馬はドジな奴だぜ…』

 

「あはは…」

遊馬と通話を変わった凌牙はため息をついた…。

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

 

「母さん…父さんの容態は…?」

遺跡のあった岩山の山頂で凌牙は翠に問い掛ける…麓にいる璃緒達と連絡は取れたものの、飛行船の整備に時間が掛かっているのだ。

 

 

『遊海さんの容態は安定してるわ…とりあえずは大丈夫そう』

 

「そうか……くそ、あのバリアンめ…!父さんの優しさを利用しやがって…!」

 

『…私は…アイツを絶対に許さない…!凌牙君、もしかしたらまた奇襲をかけてくるかもしれないわ…気を、付けて…ね…』

 

「今は大丈夫さ、標高数百メートルの山の上だし…それより母さん…母さん?」

 

『ザザッ…ザザッ…』

 

「シャーク?どうしたんだ?」

 

「いや…母さんとの連絡が途切れたんだ…電波が悪いのか…?」

突然砂嵐に変わってしまったDゲイザーの画面を見ながら…凌牙は一抹の不安を覚えた…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「凌牙君…?凌牙君!?」

 

「翠さん?どうしたの?」

 

「通話が切れちゃったの…Dゲイザーの電波は結構強いはずなんだけど…」

突然砂嵐に変わってしまったDゲイザーを見て不安げな表情を浮かべる翠…その時だった!

 

 

バチバチバチバチ…ギン!!

 

 

ズン─!!

 

 

「「っ─!?」」

それは突然の事だった、突然病院のあちこちから立ち昇った禍々しい赤雷…それが病院の真上へと集まり、そこから放たれた赤いオーラが病院を覆い尽くしてしまったのだ…!

 

 

「な、なに、これ…!?体が、重い…!」

 

「これっ…!生命力を…吸われてる…!?」

 

さらに翠と龍可に凄まじい重圧が襲いかかり、思わず膝をついてしまう…。

そして翠は気付いた…発生したフィールド…否、『結界』に自分達の生命力を吸い取られている事に…!

 

 

「あ、ぐっ…!!龍可、ちゃん…!『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』の効果を…使って…!!」

 

「っ─!エンシェントフェアリー!!」

 

《我が力は…闇を祓う!プレイン・バック!!》

 

キィン─!!

 

 

紅く染まる世界に神聖なる光が満ちる…しかし、その光は押し返され…翠と龍可を中心とした僅かな範囲で止まってしまう…!

 

《くっ…!?結界の力が強い…!発生する基点が複数あるようです…!!》

 

「でも…これで少し、楽になったわ…ありがとう…!」

冷や汗を滲ませるエンシェントフェアリー…だが、彼女の庇護で翠と龍可は呼吸を整える事ができた…。

 

 

「いったい、何が…!」

 

「バリアンの襲撃…きっと…奴の仕業だわ…!このままじゃ…病院にいる人達が危ない…!!」

安全地帯から周囲の様子を確認する翠…見える範囲でも看護師や見舞いに来た人々が気を失って倒れてしまっている…!

 

 

《翠!貴女は遊海に預けられた赤き竜の痣を持っています…!痣の力があればこの結界の中でも動けるはず…私と龍可で結界の基点を壊します…貴女は元凶を頼みます…!!》

 

「龍可ちゃん…いける?」

 

「大丈夫…!私は元シグナーで…5D'sの一員だもの…!!」

翠の問い掛けに龍可は頷く…体は衰えたものの、その眼差しの強さは変わっていなかった。

 

 

「龍可ちゃん…任せた!!」

龍可に結界の破壊を託した翠は元凶を倒す為に駆け出した…!

 

 

 

 

「酷い…!どうして、どうしてこんな事ができるの…!?」

体にのしかかる倦怠感を無視しながら翠は病院内を駆け抜ける…直感に従い、もっとも力が集中している屋上を目指しているのだ。

…だが、廊下に倒れ込む人々や気を失ってしまった患者達を見てその怒りは膨れ上がっていく…!

 

 

「翠!無事か!?」

 

「瀬人さん!!」

屋上を目指す翠に声をかける男…それは瀬人だった。

アンドロイドである瀬人には生命力を奪う結界が効かなかったのだ…!

 

 

「遊海の事は心配するな!精霊達が遊海を必死に守っている!そして援軍は期待するな!病院外へは連絡できん!!」

 

「わかりました!!私はこのまま元凶を倒しに行きます!!」

手短に現状を伝える瀬人…それを聞いた翠は自身の目的を伝える…。

 

 

「わかった…!オレは他の重い患者対応をしてから向かう!……死ぬなよ…翠!!」

 

「わかってます…!元凶は必ず倒します!!」

瀬人の言葉を背中に受けながら…翠は階段を駆け上がった…。

 

 

 

 

 

 

バタン!!

 

 

 

「ネームレス!!」

 

屋上へと駆け上がった翠は扉を蹴り破る…そこには結界の中心である赤黒い球体…そしてボロボロのフードを纏った怪人の姿があった…!

 

 

 

『きたんだ…ベクターさまのじゃまをする女……』

 

「喋った…!?」

怪人…ネームレスが翠の方を見る、その姿は…雰囲気はガラリと変わっていた。

遺跡で出会ったネームレスが「獣」だとすれば…今の彼女は「人」に近づいているように見えた…。

 

 

『あなたもじゃまだけど…あの人の方がもっとじゃま…あなたを()()()から…カレも食べてしまいましょう…すべては…ベクターさまのため…!』

そう言うと…ネームレスの腕に闇が集い、デュエルディスクを作り出す…!

 

「…遊海さんを倒す為に…病院のみんなを巻き込んだの…!?……貴女は許さない…!許さない!!!」

身勝手な理由で病院の人々を危険に曝すネームレス…その姿を見た翠の怒りは爆発した!

 

 

『あはは…許さないなら、どうするの?』

 

「貴女を…ぶっ飛ばす!!」

翠は邪悪を滅する為…その力を振るう!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

ネームレスLP4000

翠LP4000

 

 

 

 

『わたしのターン、ドロー』

『わたしはモンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンド』

 

ネームレスLP4000

伏せモンスター 伏せ1 手札4

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「魔法カード『テラフォーミング』発動!デッキからフィールド魔法『セフィラの神託』を手札に加え、発動!」

紅き世界に巨大な世界樹が現れる!

 

「『セフィラの神託』の効果処理としてデッキから『宝竜星─セフィラフウシ』を手札に加える!そして手札のスケール1の『竜星因士─セフィラツバーン』とスケール5の『智天の神星龍』をペンデュラムスケールにセッティング!」

翠の背後に光の柱と共に星の力を宿す戦士と炎を纏う龍人が現れる!

 

 

『………?』

 

「そしてペンデュラムスケールの『神星龍』の効果発動!デッキから『覚星因士─セフィラビュート』を表側表示で加え、そのペンデュラムスケールと同じスケールになる!」

 

神星龍 スケール5→7

 

「これで私はレベル2〜6のモンスターを同時に特殊召喚できる!神樹の加護よ!今こそ私に力を貸して!ペンデュラム召喚!手札から現れて!『宝竜星─セフィラフウシ』!『剣聖の影霊衣─セフィラセイバー』!『秘竜星─セフィラシウゴ』!!」

翠の頭上に異次元への扉が開き、青の核石を持つ中華風のドラゴン、白の核石を持つ剣聖、黒の核石を持つ龍が現れる! ATK1500 ATK1500 DEF2600

 

 

「ペンデュラム召喚に成功した『セフィラシウゴ』の効果発動!デッキから魔法カード『セフィラの神意』を手札に加える!さらに『セフィラフウシ』の効果発動!このターン終了時まで『セフィラセイバー』をチューナーとして扱い、この効果を発動した自身はフィールドから離れた時にデッキの1番下に戻る!…私はレベル3の『セフィラフウシ』にレベル4の『セフィラセイバー』をチューニング!」

 

 

3+4=7

 

 

「清廉なる花園に咲く孤高の花よ!月の雫を得て、咲き誇れ!!シンクロ召喚!『月華竜ブラックローズ』!」

花吹雪が舞い散り、聖なる光を纏う決闘竜の1体…薔薇のドラゴンが現れる! ATK2400

 

 

『シンクロ…』

 

「シンクロ召喚に成功した時!フィールド魔法『セフィラの神託』の効果発動!デッキの『影霊獣使い─セフィラウェンディ』をデッキトップへサーチする!…バトルよ!『月華竜』で伏せモンスターを攻撃!薔薇の鎮魂曲!」

 

聖なる炎がセットモンスターを焼き尽くす…そのモンスターは闇に染まった怪鳥だった。

 

『リバースした「ヴェルズ・フレイス」の効果はつどう…「月華竜」にはてふだに戻ってもらうわ』

 

「っ!?」

怪鳥の起こした闇の竜巻が月華竜を吹き飛ばしてしまう…!

 

 

「この前とデッキが違う…!?私はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

翠LP4000

セフィラシウゴ (Pスケール セフィラビュート セフィラツバーン)セフィラの神託 伏せ1 手札1

 

 

 

『あはは…面白いデッキ…!じゃあ、わたしの番…!』

翠を見つめながら…ネームレスは舌舐めずりする…!

 

 

 

『わたしのターン…ドロー!』

『自分フィールドのモンスターの数が相手のフィールドより少ないとき、手札の「ヴェルズ・マンドラゴ」を特殊しょーかん』

闇に侵された植物モンスターが現れる! ATK1550

 

 

『そして「ヴェルズ・カストル」をしょーかん』

闇に飲まれた双子座の片割れが現れる! ATK1750

 

 

『「カストル」の効果〜!手札から「ヴェルズ・サラマンドラ」をしょーかん』

闇に侵された恐竜が現れる ATK1850

 

 

『そしてわたしはレベル4の「カストル」と「マンドラゴ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!闇に飲まれし神よ…生者を刈り取る魔神となれ!「ヴェルズ・タナトス」!』

ギリシャ神話の死神の名前を持つ、魔轟神の成れの果てが現れる ATK2350

 

『そしてわたしは装備魔法「不死殺しの鎌─ハルペー」をエクシーズモンスターの『タナトス』に装備!攻撃力は1000アップする!』

 

「その鎌は…!!」

タナトスの手に禍々しい光を纏う大鎌が装備される、それは遊海を切り裂いた鎌と同じモノだった…!

 

タナトス ATK2350→3350

 

 

『ふふふ…!バトル!「タナトス」で「セフィラシウゴ」を攻撃!』

大鎌によってシウゴの首が切り落とされる!

 

 

「くっ…!?破壊された『セフィラシウゴ』の効果発動!デッキから『セフィラの聖戦』を手札に加える!」

 

『あはは…!「サラマンドラ」でダイレクトアタック!』

 

「あぐっ…!!」

闇の恐竜の突進が翠を屋上のフェンスに叩き付ける!

 

翠LP4000→2150

 

 

 

『あはは!変な声〜!わたしはカードを1枚ふせてターンエンド!』

 

ネームレスLP4000

タナトス(ハルペー) サラマンドラ 伏せ2 手札0

 

 

 

「うっ…コホッ…!?力が、強くなってる…!」

 

《翠!大丈夫!?》

 

「なんとか…!」

フェンスに叩きつけられた翠は口元の血を拭いながら、ウィンダの肩を借りて立ち上がる…!

 

 

『ふふっ…あなたの血…おいしそう…!なめてもい〜い?』

 

「…良いわけ…ないでしょう…!!」

無邪気な笑みを浮かべるネームレス…翠は彼女への怒りを堪えながら睨みつける!

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「永続罠『錬成する振動』を発動!ペンデュラムスケールの『神星龍』を破壊して1ドロー!さらに魔法カード『セフィラの神意』発動!デッキから『オルシャドール─セフィラルーツ』を手札に加える!そしてペンデュラムスケールにスケール7の『セフィラルーツ』をセッティング!」

光の柱の中に光と闇を宿す、虹色の核石の戦士が現れる!

 

 

「神樹の加護よ!もう一度力を貸して!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから現れて!『セフィラセイバー』!『セフィラシウゴ』!『セフィラビュート』!」

再び剣聖と黒龍、そして灰色の核石を持つ星の戦士が現れる! ATK1500 DEF2600 ATK1900

 

 

「ペンデュラム召喚に成功した時『セフィラシウゴ』の効果発動!デッキから『セフィラの神撃』を手札に加える!そして…私は3体の『セフィラ』モンスターをリリース!エクストラデッキから現れて!!聖選士の絆の結晶!『智天の神星龍(セフィラ・トーラ・グラマトン)』─!!」

《グオオオン!!》

セフィラデッキの切り札…光と闇を宿す希望の龍が咆哮する! ATK3450

 

 

「『神星龍』の効果発動!私はこのターン…もう一度ペンデュラム召喚できる!…ペンデュラム召喚!!現れて!手札から『イェシャドール─セフィラナーガ』!エクストラデッキから『セフィラビュート』!『セフィラセイバー』!『セフィラシウゴ』!」

翠のフィールドに大戦を生き抜いた紫の核石を持つ英雄、星の戦士、剣聖、黒龍が並び立つ! DEF100 ATK1900 1500 DEF2600

 

 

「そして、私はレベル4の『セフィラビュート』と『セイバー』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

 

「現れて!『No.∞』!決闘者の未来を守る、希望の光!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!!」

光の爆発と共に…遊海の魂の剣が翠を守るように現れる! ATK2500

 

 

『その剣は…』

 

「『決闘の守護者』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した事で1ドロー!さらに『セフィラの神託』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した事でデッキから1枚引いて、手札から1枚捨てる!」

 

捨てたカード

 

セフィラムピリカ

 

 

 

「バトルよ!『決闘の守護者』で『タナトス』を攻撃!その瞬間効果発動!ORUを1つ使い、自分の攻撃力に相手の攻撃力を加える!」

魂の聖剣が虹色の光を纏う!

 

決闘の守護者 ATK2500→5850

 

 

 

「受けてみなさい…!デュエル・カリバー!!」

剣を振り上げた翠が光の斬撃を放つ!

 

『その剣…痛いからヤダ…罠カード発動!「迷い風」!特殊召喚されたモンスターの効果を無効にして…元々の攻撃力を半分にする!』

 

「そんな…!!」

ネームレスの背後から放たれた風が魂の聖剣の光を奪い去る!

 

決闘の守護者 ATK5850→2500→1250

 

 

『これで返り討ちだ!斬っちゃえ!「タナトス」!』

 

ザン─!!

 

「あっ…ガッ!?あ"あ"あ"あ"あ"!!」

 

《翠!!》

タナトスが不死殺しの鎌を構えながら翠に接近…魂の大剣諸共翠の胸を斬り裂く…翠は激痛で絶叫する!!

 

翠LP2150→50

 

 

 

「がっ…あ、ぐっ…いた、い…!!」

 

《翠!気をしっかり持って!!デュエルは…デュエルはまだ終わってないよ!!》

胸を斬り裂かれた翠の身体から血が止めどなく溢れる…その傷は塞がる事なく、翠の身体を蝕んでいく…!

 

「(頭に、血が昇り過ぎた…伏せの警戒、忘れて…!)」

この時、翠は怒りのあまり、2つのプレイングミスを犯していた…1つは伏せカードの警戒を忘れた事…そしてもう1つはバトルフェイズ前に『神星龍』の効果を使い忘れ…新たなモンスターを召喚するのを忘れていたのだ。

そして『迷い風』は相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚した時に再びセットされる…つまり、翠は少なくともこのターン、新たなエクストラデッキのモンスターを呼ぶ事はできない…!

 

 

「(今だけ…痛みは忘れて、私…!私はどうなってもいい…あの鎌を…あの鎌さえ、破壊できれば!!)」

翠は痛みで震える足を押さえながら、立ち上がる!

 

 

「『神星龍』で、『タナトス』を攻撃!!砕け散れ!!創星のビッグバン…バーストォォ!!」

 

『うわっ…!?』

神星龍の尾の10個のコアが輝き、エネルギーが収束…創星の息吹が不死殺しの鎌を持つ死神を消し飛ばす!

 

ネームレスLP4000→3900

 

 

 

「やった…!これで…!」

 

『ふふっ…ざんね〜ん!装備モンスターが破壊された事で墓地に送られた「ハルペー」の効果発動!このカードを手札に戻すよ!』

 

「そんな!?」

翠が安堵したのも束の間…墓地から飛び出した大鎌がネームレスの手に舞い戻る…。

 

 

「(あとは…賭けるしか、ない…!私がどうなっても……あの鎌だけは…絶対に!!)私は、『神星龍』の、効果発動…!『セフィラナーガ』をリリースして、デッキの2体目の『セフィラルーツ』を特殊召喚…!」

虹色の核石を持つ英雄が現れる DEF1950

 

 

「私は、カードを2枚伏せ、ターンエンド…!」

 

翠LP50

 

神星龍 セフィラシウゴ セフィラルーツ (Pスケール ツバーン ルーツ)セフィラの神託 錬成する振動 伏せ2 手札0

 

 

 

 

「あぅ…ゴホッ…ゴボッ…!!」

ターンを終えた翠は膝をつく…そして喉の奥から溢れた血を吐きながら蹲ってしまう…。

 

『わあ…美味しそう…!あなたの流した血が…私のご飯になるの…!』

 

ズズズ…

 

翠の流した血が蒸発…ネームレスの体に吸収される…!

 

 

「なんで…!?なんでこんな、酷い事ができるの…!?なんで罪もない…他の人達を巻き込むの!?」

ネームレスを睨みながら…翠は彼女へと叫ぶ、こうしている間にも病院の人々は生命力を奪われ続けている…翠はそれが許せなかった…!

 

 

『だって…()()()()()()()()()()()()()()()!』

 

「は…?」

ネームレスの予想外の一言に翠はあ然とする…。

 

 

『わたしね…ずっと…ずーっと暗い所にいたの…なんでそんな所にいたのかわからないけど…それをベクターさまは助けてくれた!だからわたしはベクターさまにおんがえしするの!』

 

「そんな、そんな事の為に……!!」

 

『じゃあ…お話はおしまい!お姉さんは…わたしが綺麗に食べてあげる!わたしが強くなれば…ベクターさまは喜んでくれるから!』

笑みを浮かべながら…怪物は翠に最後の攻撃を仕掛ける…!

 

 

 

『わたしのターン!ドロー!』

『魔法カード「闇の誘惑」を発動!2枚ドローして…手札の闇属性モンスターを除外する!』

 

除外

ヴェルズ・コッペリアル

 

 

『「ヴェルズ・ヘリオロープ」を召喚!』

血色に染まったエメラルドの戦士が現れる ATK1850

  

『ふふふ…!わたしはレベル4の「サラマンドラ」と「ヘリオロープ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!闇に堕ちし龍よ…今こそ生者を喰らえ!「ヴェルズ・バハムート」!』

闇に飲まれ、黒い鎧を纏った『氷結界の龍ブリューナク』の成れの果てが現れる…! ATK2350

 

 

 

『そしてもう一度装備魔法「不死殺しの鎌─ハルペー」を「バハムート」装─』

 

「私は…この()()を待ってたの!!カウンター罠『セフィラの神撃』発動!相手がモンスターの効果・魔法・罠カードを発動した時!!エクストラデッキの『セフィラナーガ』を除外して、その発動を無効にし破壊する!!」

 

『ええー!?』

それは一か八かの賭け…翠は再び「不死殺しの鎌」が発動するタイミングを狙っていたのだ!

 

「遊海さんを…返して!!おりゃああああ─!!」

 

『「ハルペー」が!?』

 

パキン!

 

翠は手元に現れた『ドラグニティの神槍』を渾身の力で投げ放つ…その一撃は鎌に直撃、粉砕する!!

 

 

「これで…!遊海さんは、大丈夫…!!」

翠は自分の胸の痛みが軽くなった事で呪いを打ち消した事を確信する…翠の覚悟が…「愛」が遊海を救ったのだ…!

 

 

 

『お前…よくも…よくもやったな!!「バハムート」の効果発動!ORUを1つ使い!手札の「ヴェルズ・アザトース」を捨てる事でお前の「神星龍」のコントロールを奪う!!』

怒りの表情を浮かべたネームレスは翠に猛攻を仕掛ける!

 

 

「まだよ!罠カード『セフィラの星戦』を発動!ペンデュラムスケールの『セフィラルーツ』を破壊して、『バハムート』を破壊する!」

 

『っ!罠カード発動!「侵略の汎発感染」!これで「バハムート」は魔法・罠の効果で破壊されない!これで「神星龍」はわたしのものだ!!』

 

「っ─!!」

神星龍のコントロールがネームレスに移る…!

 

 

『バトルだ!「バハムート」で「セフィラルーツ」を!「神星龍」で「セフィラシウゴ」を攻撃!吹き飛んじゃえ!!』

 

「あああああ!!?」

ダメージはないが…2体のモンスターの攻撃で翠は重傷を負いながら吹き飛ばされる…。

 

 

「う…ぐ…『シウゴ』の、効果…『セフィラの神託』を手札に、加える…!」

 

『わたしはこれでターンエンド!!お前の…お前のせいで…ベクターさまに怒られちゃうじゃないか!!』

まるで子供の癇癪のような声を上げながら、ネームレスはターンを終えた…。

 

ネームレスLP3900

神星龍 バハムート 手札0

 

 

 

 

「(くらくら…する…前が…見えない……血を、流し過ぎた…)」

ネームレスに一矢報いた翠…だが、その体は限界だった…結界に生命力を奪われたうえに、あまりにも血を流し過ぎたのだ…。

 

「あの怪物は、ここで…倒さ、ないと…たおさ、なきゃ……」

 

《翠!!しっかりして!!》

なんとか立ち上がろうとした翠だったが…ついに気を失ってしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

『よくも…よくもやったな!!このまま潰れちゃえ!!「バハムート」!!』

 

《ガアアアア!!》

失神してしまった翠…その姿を見たネームレスは翠にトドメを刺そうとバハムートに指示を出す…そして巨大な尾が翠に迫り……──!

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

《ガアッ!?》

 

『なにっ!?』

翠の墓地から飛び出した()()()がバハムートの尾を弾き、翠の体に飛び込んだ!

 

 

「………」

 

《翠…?大丈夫、なの…?》

赤い光が飛び込んだ翠はゆっくりと立ち上がる…しかし、ウィンダの問い掛けには応えなかった…。

 

 

 

 

 

 

()()()()()、ドロー…」

 

《えっ…?》

 

「…手札のフィールド魔法『セフィラの神託』を発動、効果処理としてデッキから『影霊獣使い─セフィラウェンディ』を手札に加える、そしてさらに魔法カード『セフィラの神意』を発動…デッキから『セフィラビュート』を手札に加え、レフトペンデュラムスケールにセッティング」

光の柱の中に蝿の鎧を纏う星の戦士が現れる!

 

「ペンデュラム召喚…手札から『セフィラツバーン』エクストラデッキから『セフィラルーツ』2体を特殊召喚」

翠のフィールドに4体のモンスターが並び立つ! DEF 2100 1950 1950 

 

 

「『セフィラツバーン』の効果、ペンデュラム召喚に成功した時、ペンデュラムスケールの『セフィラビュート』を破壊する事で…お前の場の『神星龍』を破壊する」

 

『なにっ!?』

星の戦士の拳が囚われた神星龍を打ち砕き、開放する!

 

 

「これで『神星龍』は俺の手に戻る…俺はフィールドの『ツバーン』『ルーツ』2体をリリース、再び顕現せよ…希望の龍『智天の神星龍』」

翠のフィールドに再び神星龍が現れる! ATK3450

 

 

「さらに俺は手札のスケール7の『セフィラウェンディ』をセッティング、俺は『神星龍』の効果でもう一度ペンデュラム召喚、現れろ2体の『セフィラルーツ』」

再び虹色の核石の英雄が現れる DEF1950 1950

 

「俺はレベル4の『ルーツ』2体でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚…愚鈍なる力に抗う、反逆の牙…『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』」

黒き体を持つ反逆のドラゴンが現れる! ATK2500

 

 

「『ダークリベリオン』の効果発動、ORUを2つ使い『バハムート』の攻撃力を半分にし、その数値分攻撃力をアップする、トリーズン・ディスチャージ」

 

『なっ!?「バハムート」が!!』

紫電が堕ちた氷龍を拘束…その力を奪う!

 

バハムートATK2350→1175

 

ダークリベリオン ATK2500→3675

 

 

 

「バトル、『ダークリベリオン』で『バハムート』を攻撃、反逆のライトニング・ディスオベイ」

 

『ぐああああ!?』

反逆竜の鋭い顎の一撃が堕ちた龍を粉砕する!

 

ネームレスLP3900→1400

 

 

「『神星龍』で……怪物にダイレクトアタック、創星のビッグバンバースト」

 

 

『ぎ、ぎゃあああああ!?!!』

再び放たれる絆の一撃…それは悪しき怪人を吹き飛ばした。

 

 

 

ネームレスLP0

 

翠? WIN!

 

 

 

 

パキパキ…バキン!!

 

 

『いたいよぉ…ベクターさま…ごめん、なさい……』

 

「…………」

ネームレスの敗北と共に病院を覆っていた結界は崩壊…致命傷を負ったネームレスはワープゲートに消えていった…。

 

 

 

「翠!無事…翠!大丈夫なのか!?」

ネームレスが消えた直後…屋上に瀬人が駆け上がってくる…彼が見たのは…立ち尽くす、致命傷を負った翠の姿だった…。

 

 

「…()()()()()()を頼む…ゆっくり、休ませて…やって……たの、む…」

 

「翠!?」

瀬人に言葉を託した翠は崩れ落ちる…瀬人は慌ててその体を支えた…。

 

 

「おい!ウィンダ!お前は何が起きていたか、見ていたはずだ!何があった!?」

 

《わ、わからないの…翠がネームレスとデュエルを始めて、途中で気絶しちゃって…そしたらいきなり()()()()()()みたいなデュエルをし始めて…!》

瀬人の問い掛けにウィンダは慌てて答える…。

 

「人が変わった…?……このカードは…」

瀬人は翠が1枚のカードをしっかり握りしめている事に気付く…そのカードは『No.∞』だった…。

 

 

「馬鹿者が……無茶な事をしおって…」

そのカードを見た瀬人は…翠の行動の意味を悟った…。

 

   

 

 

 

 

 

「うっ…せと…さん…?デュエルは、ネームレス…は…?」

 

《翠!!》

翠を横抱きにした瀬人が処置室に向かう途中…気を失っていた翠が薄っすらと意識を取り戻す…。

 

「…心配するな、ネームレスは撃退した…翠の…いや、()()()2()()の勝利だ…脅威は去った、ゆっくり休め…」

 

「は…い……」

瀬人の言葉の意味を理解しないまま…翠は今度こそ意識を手放した…その胸に「No.∞」を抱きながら…。

 




オリジナルカード紹介

神殺しの鎌─ハルペー

黒い禍々しい大鎌

装備魔法
このカードはエクシーズモンスターにのみ装備できる。
①このカードを装備したモンスターの攻撃力は1000アップし、相手の「戦闘・効果で破壊されない」効果を無効にして相手モンスターを戦闘破壊できる。
②このカードが装備モンスターが破壊された事で墓地に送られた時に発動する、このカードを手札に戻す。








マテリアルの一部が開放されました。
 
ネームレス 怪人体(強化)



ベクターによってさらに力を分け与えられた事で言語能力と人格を取り戻したネームレス。

性格は見た目よりも幼い、子供のような性格…ただし、洗脳によって良心が無く…残酷な事も平気で行なってしまう。
また、洗脳の影響なのか…自身を開放したベクターを慕い、役に立とうとしている。

翠との激戦の末、致命傷を負いバリアン世界に撤退した。


鮮血神殿

強化された事でネームレスが取り戻した力の一部、一定の範囲に結界の基点を設置する事で赤黒い結界を生成…その中にいる生物から生命力・デュエルエナジーを強制的に吸い上げる…「怪物の狩場」
一般人ならば結界が発動した瞬間に失神…遊海や翠クラスの決闘者でも気絶こそしないが、生命力を奪われ…最終的には体を溶かされ、死に至る。

結界の基点は破壊する事はできない。


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幕間〜激戦の後に〜

『…ありがとう、翠…君の奮闘のおかげで遊海君は危機を脱する事ができたよ』

 

「まーりん…」

 

微睡の中…翠に優しげな声の青年…マーリンが声をかける…。

 

 

『彼の体にはまだ毒が残っている…けど、不死殺しの呪いが消えた今、少しずつ解毒する事ができるはず…まだ時間はかかるだろうけど…遊海君は必ず目覚めるよ』

 

「よかった…」

 

『あの怪人もしばらくは動けないだろう…しっかり休むんだよ』

 

優しい風が翠を労るように包み込んだ…。

 

 

 

 

 

Side飛行船

 

 

 

「くあ〜!3日振りのハートランドだ〜!」

 

「今回の冒険も大変だったね〜…」

 

「流石に…少し疲れたぜ、腕が筋肉痛だ…」

ミザエルの遺跡を攻略した翌朝、遊馬一行は久しぶりにハートランドに帰還していた…。

 

 

(飛行船のエネルギー充填完了は…明日の予定だ、次の遺跡の前に少し休息しよう)

 

「ええ、久しぶりにゆっくりお風呂に入りたいわ…」

 

「その前に…俺達は父さんの病院に行くぞ、母さんとも連絡がつかないし…」

 

「あっ…!だったらオレ達も!」

 

「遊馬…お前はさっさと雷落とされてこい」

 

「あ"っ…やっべぇぇ!!!」

 

「あっ…!待ってよ遊馬─!?」

アストラルから飛行船の状態を確認した各々は解散する…遊馬と小鳥は姉に謝る為に自宅へ、凌牙と璃緒、アヤカは連絡がつかない翠のいるであろう病院へ、カイトとオービタルも家族の待つ家へと戻って行った…。

 

 

 

Side凌牙

 

 

《キュウ…フォーウ……フォ!?フォウ〜!!》

 

「あれっ…フォウくん!?」

 

「どうして病院の前に…」

バイクで遊海のいるKC病院に向かった凌牙と璃緒…2人は病院の前で落ち込んでいたフォウを見つけた…。

 

 

《フォウ…キュウ〜!》

 

「フォウ、お前…一人で来たのか?母さんはどうした?」

凌牙はフォウを抱き上げる…フォウは悲しげな瞳で凌牙を見つめている…。

 

《凌牙、璃緒…病院全体に異常なエネルギーの残滓があります…何かがあったようです…!!》

 

「っ─!?父さん!!」

アヤカのレーダーが異常なエネルギーを感じ取る…事態を察した凌牙達は慌てて遊海の病室へと向かった…。 

 

 

 

 

「「父さん!!」」

 

『よく帰った…すぐこちらに来ると思っていたぞ』

 

《瀬人…!これは、いったい何があったのです!?》

病室に飛び込んだ凌牙達…彼らが見たのは病室に並ぶ2つのベッド、その片方には包帯の取れた遊海が…もう片方には頭や手に包帯を巻かれた翠が寝かされている。

 

さらに遊海のベッドの近くには疲弊した様子のフレアやトフェニ、メガロックが眠り…翠のベッド近くではソファで眠るウィンダとウェンの姿…そしてその様子を見守るように瀬人が椅子に腰掛けていた…。

 

 

 

『簡潔に言う…バリアンの怪人・ネームレスの襲撃があった』

 

「アイツが!?」

 

『落ち着け…翠が起きるだろう、その経緯を話す…まずは黙って聞け…』

ネームレスの襲撃を聞いて声を上げる凌牙…瀬人はそれを窘め、状況を話し始めた…。

 

 

 

……

 

 

 

『……これが、昨夜あった事件の内容だ…翠もとりあえず大事はない、心配するな』

 

「母さん…本当に、大変な…」

 

 

瀬人から昨夜の出来事が語られる、病院を包んだ「血の結界」…翠は居合わせた龍可と共に解決に奔走、元凶たるネームレスとの決闘の末に相討ちに近い形で怪人を撃退した事…。

その後、遊海の精霊達の力を借りて巻き込まれた人々の回復、さらに記憶を一部書き換えるなどなど……その疲労で精霊達もダウンしていたのだ…。

 

 

「くそっ…!あの化け物め…!父さん達に追い打ちなんて…卑怯な真似を!!」

 

《フォウ…キュ〜》

ネームレスの卑劣な作戦に拳を震わせる凌牙…フォウは凌牙の手を舐め、落ち着かせようとする…。

 

 

『…間違っても、その表情を翠に見せるな…親というのは子供の笑顔を見るだけで元気になるものだ、それに…悪い知らせだけではない、アヤカ』

 

《はい…!マスターが受けていた『不死殺し』の呪いが消えています!これなら近いうちに目を覚ますはずです!》

 

「本当に…!?よ、よかったぁ…」

アヤカの言葉に璃緒は胸を撫で下ろす…全身サーチの結果、遊海は少しずつ快方に向かっていたのだ…。

 

 

「ぅ…ん……ここは…」

 

《キュ!?フォウ!フォーウ!!》

 

「「母さん!!」」

凌牙達の声が聞こえたのか…翠がようやく目を覚ました…!

 

 

「凌牙くん、璃緒ちゃん…おかえり、なさい…ごめんね、ちょっと…無理しちゃった…」

 

「もう!!心配させないでよ…!」

 

「本当に…父さんも母さんも、すごい人だぜ…」

 

弱弱しく子供達に謝る翠…凌牙と璃緒は目を潤ませながら翠の無事を喜んだ…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

『チッ…せっかく力を分けてやったのに…これで終わりか?』

 

『…………』

 

バリアン世界某所…翠に敗北し、バリアン世界へと撤退したネームレスは回復の為に黒い水晶の中で眠りについていた…ベクターはその様子を呆れた様子で見つめている…。

 

 

【ベクター、その怪物は放っておけ…今はな】

 

『ああ、言われなくてもわかってるさ…他にもやる事はあるからな』

そのまま怪物を見る事もなく…ベクターは姿を消したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【AAA…AAAAA──!!!】

 

『おのれ、この化け物め!!これ以上は好きにさせん!!やれ!「銀河眼の時空竜」!!殲滅のタキオン・スパイラル!!』

 

 

 

 

なんだろう、この記憶…

 

 

 

 

 

 

『どうする、ナッシュ…!このままでは…!!』

 

『…ドルベ!メラグ!ベクター!アリト!ギラグ!ミザエル!…お前達の命、俺が預かる!我ら七皇の全力で…あの化け物を打ち倒す!!』

 

 

 

 

いたいなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ…!これで終わりだ!お前を…封印する!!ランド・チャリオッツ・スラッシュ!!』

 

【A…AAAAAAAAAA──!?】

 

 

 

 

いたい…痛い…痛い!私は…ただ、ただ()()()()()()()()なのに…なんで…なんで、邪魔するの?

 

 

 

 

 

私を、ひとりに…しないで…

 

 

 

 

 

 

 

 

トクン



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影武者狸の皮算用〜試される『機転』〜

……暗い…

 

 

…何も見えない…

 

 

 

…何も聞こえない…

 

 

 

 

…動けない…

 

 

 

 

 

…おれは、どうなった、んだ…?

 

 

 

 

 

 

 

……翠……凌牙……璃緒……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ぶじで……いてくれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄の目覚め…未だ遠く…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

「こらぁ!遊馬!!今まで何処に行ってたの!?いつもいつも自分勝手にいなくなって!!私とおばあちゃんがどれだけ心配したと思ってるの!?それに小鳥ちゃんや凌牙くんまで巻き込んで─!!」

 

「いや、その…これには山より高くて、海よりも深い訳が…」

凌牙達が翠と再会している頃、九十九家に明里の怒鳴り声が響き渡っていた…さしもの遊馬もタジタジである。

なお…遊馬は毎度の事であるが、家族にはナンバーズ関係の事は話していない。

 

 

「遊馬の事じゃから…デュエルの事情って奴じゃろう…ズズッ」

 

「そう!そうなんだよ!ばあちゃん!デュエルを巡る大冒険だったん──」

 

「なーにが大冒険よ!!少しは反省しなさい馬鹿遊馬─!!」ギチギチギチ!!

 

「あっぎゃあああ!?コブラツイストはやめてぇぇぇ!?」

 

「明里さーん!?」

遊馬は怒り心頭の明里に絞め技をかけられる…書き置きも無しに3日間も帰らなければ心配するのは当たり前である。

 

 

「ア・ン・タは…!白野さんが倒れてる時に…!本当に…どこ行ってたの─!!」

 

「アダダダダ!?遊んでた訳じゃないんだって─!?」

 

「明里、それぐらいにしてあげなさい…ズズッ」

 

 

『春さーん!遊馬ー!見とるかぁー!!』

 

 

「「「「へっ?」」」」

 

「六十郎じいちゃん!?」

遊馬に関節技を極め続ける明里、それを中断させたのは…テレビから聞こえてきた遊馬のデュエルの師匠の1人、六十郎の明るい声だった…。

 

 

 

 

『あはは…コホン、今回は決闘庵で発掘された「戦国武将」喜楽荘八の石像についてお話を聞く為、決闘庵の住職・三沢六十郎さんにお越し頂きました!』

六十郎が出演していたのは情報番組の特集コーナー…アナウンサーの紹介によると戦国武将の貴重な石像が発掘されたらしい…。

 

 

「…あれ?この顔…何処かで見た事があるような…?」

 

「えっ…?……ああああ!?」

 

「「ギラグ!?」」

映し出された石像の顔…その顔に既視感を覚えた遊馬と小鳥は頭を捻り…そして彼らは思い出した、石像の顔が…なんとギラグの人間体の顔にそっくりだったのだ…!

 

 

 

『六十郎さん、喜楽荘八とはどういった方だったのでしょうか?』

 

『うむ、喜楽壮八は戦上手でな!並み居る武将達と戦い、戦で得た富は全て領民達に分け与えていた…なのに、自分は徹底して質素倹約し、この地では伝説の名君だったんじゃ…』

 

「…伝説…」

六十郎が語る喜楽の「伝説」…それを聞いた遊馬は確信した、ギラグは喜楽荘八の転生した姿なのだと…!

 

 

『六十郎さん、今回は石像以外にも様々な品が見つかったそうですが…』

 

『そうなんじゃよ!今回の発掘で…ホレ!喜楽様のお宝がこんなに!』

 

「あっ!?父ちゃんのコイン─!?」

六十郎の隣に控えていた闇川が手にしていたケースをカメラに見せる、そこには翡翠の勾玉や首飾り、小判に鏡…そして一馬の残した『覇者のコイン』があった!

 

 

(そうだ、間違いない…ナンバーズの位置を示す飛行船のマップも決闘庵の近くを示していた)

 

「げっ!?なんでそれを早く言わねぇんだよぉ!?」

 

「あっ!?待ちなさい遊馬!!」

アストラルのあまりに遅い補足を聞いた遊馬は決闘庵へ向けて走り出した…。

 

 

 

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「えっ…?どうやってネームレスを倒したのか覚えてないの?」

 

「そうなの…私、決闘中に気絶しちゃって…目が覚めたらもう…」

 

「不思議な話もあるんだな…」

病院で翠から事件の話を聞いていた凌牙達…だが、翠は肝心のネームレスを撃退した時の事を覚えていなかった。

 

 

「でもね…ずっと遊海さんが傍にいてくれた気がしたの…きっと、遊海さんの『想い』が私を守ってくれたんだと思うわ…」

 

「母さん…」

翠は手にしていた『No.∞』を優しく撫でながら、眠り続けている遊海を見つめる…。

遊海は以前にも無茶を押して翠や仲間達を守った事があった…きっと、その時と同じような事があったのだろうと確信に近いものがあったのだ…。

 

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

 

「…遊馬から?…どうした?」

 

『シャーク!次の遺跡の場所がわかったんだ!決闘庵でギラグに似た石像が見つかったんだ!きっと決闘庵の近くに遺跡がある!』

 

「なんだと!?」

凌牙のDゲイザーが着信を知らせる、その相手はバスで移動しているらしい遊馬から…遊馬は早口に次の遺跡の場所を伝える…。

 

 

『今、オレと小鳥で決闘庵に向かってる!シャークは来られるか…?』

 

「……悪りぃ、遊馬…今は手が離せねぇ……俺達のいない間に…父さんと母さんがネームレスの襲撃を受けた…!」

 

『なんだって!?遊海達は大丈夫なのか!?』

凌牙の思わぬ言葉に遊馬は驚愕し、遊海達の安否を確かめる…。

 

 

「心配すんな、父さんも母さんも無事だ…母さんはネームレスとのデュエルで怪我してるけどな…」

 

『…わかった!ナンバーズはオレとアストラルでなんとかする!回収が終わったらお見舞いに行くぜ!』

そう言うと遊馬は通話を終えた…。

 

 

 

「凌牙君…よかったの…?」

 

「大丈夫さ…遊馬ももうガキじゃねぇ、アストラルと一緒ならすぐに帰ってくるさ」

遊馬の事を心配する翠に凌牙は心配ないと答える…その表情だけでも凌牙が遊馬の事を信頼しているのがわかるようだった…。

 

  

 

「遊馬さん達の事よりも…母さんは自分の事を心配して!…何かできる事はある?」

 

「……あ…璃緒ちゃん…フォウくんに、ご飯あげてくれる…?昨日の夜から食べてないと思うの…」

 

「えっ!?そうなの!?」

 

「フォウ…お前、ご飯が食べたくて病院まで来たのか…?」

 

《フォッ!?ドッフォーウ!!》

 

「アダッ!?なに怒ってんだよ─!?」

何故だか怒ったフォウにペシペシと叩かれる凌牙なのだった…。

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「伝説の主がバリアンだとしたら…やっぱりギラグも…」

 

「しっかし…ギラグが戦国武将だったなんて想像つかないぜ…」

遊馬と小鳥は決闘庵に向かう長い石段を登りながらギラグについて話し合う。

 

ギラグはたくさんの決闘者達を洗脳して遊馬達に差し向けて来た…だが、その作戦はなんとなく間の抜けたモノが多く、遊馬達に決定打を与える事はなかった…そのせいなのか遊馬の中ではギラグと喜楽のイメージが結び付かなかった…。

 

 

「戦国武将って…頭が回ったり、器用なイメージがあるんだけど…う〜ん…なんだかなぁ…」

 

「きっと石像を見れば何かわか『危ない!!避けて─!!』えっ!?」

話していた遊馬達は叫び声を聞いて上を見上げる…すると石段の上から何かがすごい速さで転がり落ちて来たのだ!

 

 

「んなっ!?小鳥危ねぇ!!ぐわっ!?」

 

「遊馬ぁぁ!?」

遊馬は咄嗟に小鳥を茂みに突き飛ばし、自分は転がってきた何かに巻き込まれてしまった!!

 

 

【「《うわああああああ!?!?》」】

 

 

ゴロゴロゴロゴロ…ドッシーン!!

 

遊馬と転がって来た何かは数十段の石段を転がり落ち、中程の踊り場に叩きつけられたのだった…。

 

 

 

 

「遊馬!大丈夫!?」

 

「痛ってぇぇ…!?何なんだよいったい〜!?」

小鳥は階段を駆け降り、遊馬の無事を確かめる…遊馬は生来の頑丈さ故なのか、特に大事はないようだった…。

 

 

『遊馬君!小鳥ちゃん!大丈夫!?』

 

「龍可ばあちゃん!?どうしてここに!?」

 

『遊海さんに用事があって六さんに宿を借りてたの!』

続いて降りて来たのは龍可だった、KC病院の事件の後、決闘庵に泊まっていたのだ…。

 

 

『私も事情がわからないんだけど…その男の子(?)が喜楽の石像に近付いたら、石像が急に動き出したのよ!』

 

「男の子……って…ギラグ!?」

龍可の言葉に転がり落ちて来たモノの正体を確かめる遊馬…それはTVに映っていた「喜楽荘八の石像」、そして人間体のギラグ本人だったのだ…!

 

 

《うぅ…はっ!?こ、これは…!やっと自由になれただ()()!!》

 

「っ…!?ギラグ!お前も遺跡のナンバーズを手に入れに来たのか!」

 

《ポン…?》

遊馬は起き上がったギラグに声をかける…だが、その様子はどことなく変だった…。

 

 

「ポン…??お前、ギラグ…だよな…?オレだよ!九十九遊馬だ!」

 

《むっ…?それはそれは…その節はお世話になっただポン…オイラはこれで失礼するだポン》

 

「えっ!?ちょ…?待てよギラグ!?」

ギラグ(?)は遊馬に対して丁寧に頭を下げ、その場を去ろうとする…その時だった。

 

 

【待てやゴラァ!!()()()を返しやがれぇぇ!?】

 

 

「「『石像が喋ったぁ!?』」」

石段に響く怒号…それと共に喜楽像が起き上がり、叫び声を上げる!

 

 

 

【石像じゃねぇ!俺は()()()だ!!なんだかわかんねぇが、この石像に魂を取り込まれちまったんだよぉぉ!そこにいる俺の中にいるのは()()()()()()()()なんだよ!!】

 

(ナンバーズの精霊だと!?)

石像ギラグの言葉に驚愕するアストラル…人の魂が石像に封じられる…それは非現実的にも程がある話だった…。

どうしてこんな事になったのかを語るには…少し時を戻す必要がある…。

 

 

 

 

Sideギラグ

 

 

 

 

『本当に俺そっくりだ…いったいこの像は何なんだ…?』

 

ドルベに遺跡のナンバーズの捜索を課されたギラグは再び人間界に戻っていた…そんな中、たまたま目にしたTVで自身によく似た石像が発掘された事を知り、その正体を確かめに来たのだ…。

 

 

キィン─!

 

『なっ…カードが……こりゃあ、ナンバーズじゃないか!?』

ギラグが石像に向かい合った時、石像の口から光を纏うカードが現れる…それは『遺跡のナンバーズ』だった…!

 

 

『あら?お客さんかしら?』

 

『不味っ!?誰かいたのか!?』

ギラグの声を聞きつけた龍可が石像の安置してある部屋へ訪れる…ナンバーズを手に入れたギラグは即座に撤退しようとしたが…。

 

 

ギィン

 

 

喜楽…!

 

『えっ…!?』

石像の目が光り、恐ろしい表情で喋り始めたのだ…!

 

喜楽…喜楽!!

 

『うわあああ!?石像が喋ったぁぁぁ!?』

 

待て…待てぇぇ!!

予想外の事態に腰が砕けてしまったギラグは慌てて建物の外へ逃げ出し…石像は飛び跳ねながらその背中を追い掛けた…!

 

 

『えっ!?石像が喋っ…動いて…!?えぇっ!?どうなってるの─!?』

龍可もまた動揺しながらも2人の背中を追い掛けた…。

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「えっ…?石像がギラグで…ギラグが精霊で…??」

 

【っ〜!九十九遊馬!俺はお前の事だったら何でも知ってるんだぞ!お前!いつもその女の弁当のおかずを盗み食いしてただろ!?バリアンの情報網舐めんじゃねぇ─!!】

 

「げげっ!?」

ギラグと石像を交互に見て混乱する遊馬…ギラグは遊馬の隠し事を伝える事で自身がギラグである事を証明しようとする…。

 

「どおりでお昼にお腹いっぱいにならないと思った─!!」

 

『2人とも!喧嘩してる場合じゃないよ!?』

それは遊馬の隠していた小さな悪行…小鳥はそれを聞いて遊馬に詰め寄る…。

 

 

「そ、そんな事知ってたってお前がギラグだって証拠にならねぇよ!?」

 

【俺とのデュエルを忘れたのか!?『ジャイアント・ハンド』の秘孔・死漠無惚を『希望皇ホープ』に喰らわせただろうが!?】

 

「「ああっ!?」」

それはギラグとのデュエル内容…あの場にいたのは遊馬・小鳥・鉄男・真月(ベクター)そしてギラグ…と隠れて見ていたアヤカだけ…それはギラグである証拠になる…!

 

 

《フッフッフッ…そうだポン!入れ替わっただポン!!今日からはオラが喜楽荘八だポン!!》

 

「入れ替わった…!?じゃあ、お前がナンバーズの精霊!?」

観念したのか…ギラグと入れ替わったナンバーズの精霊が声を上げる…!

 

 

《オラは石像の中でずっと待ってたポン…!もう1度自由になれる日を!そうしたら…!喜楽荘八がオラの前に現れただポン!!》

 

(やはり…伝説の武将・喜楽荘八はギラグだったか…!)

ミザエルとジンロンの事からアストラルは喜楽=ギラグであると確信した…!

 

 

【ゆ、遊馬!頼む!アイツにデュエルで勝って、俺の体から追い出してくれぇぇ〜!】

 

「なんでオレがお前の為に〜…?」

精霊とギラグの言葉を聞いた遊馬は半ば呆れながらギラグに問い掛ける…一応、ギラグと遊馬は敵同士…遊馬に頼むギラグもギラグである。

 

 

【いいのかよ!?アイツは遺跡のナンバーズを持ってるんだぞ?!】

 

「ええっ!?」

 

(遊馬、彼がナンバーズを持っているのなら…やるしかあるまい…)

 

「ああ…!何が何だか分からないけど…やってやる!!」

アストラルの言葉で遊馬は気持ちを切り替え、ギラグの体を乗っ取った精霊を睨みつける!

 

《面白いだポン…!オラの自由を奪う奴は…誰だろうと許さないポン!!》

自由を手に入れる為にナンバーズの精霊は遊馬に襲いかかる!

 

 

 

 

 

「《デュエル!!》」

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト  遊馬対遺跡の精霊・偽ギラグ(仮)

 

 

 

 

64

 

 

《現われろ!「No.64」!混沌と混迷の世を切り裂く知恵者よ!世界を化かせ!「古狸三太夫」!!》

 

「コイツが…この遺跡のナンバーズ…!!」

先攻を取った偽ギラグの場に茶釜型のオブジェが現れ変形…赤い甲冑を纏った狸武者が現れる!

 

 

《「古狸三太夫」の効果発動!ORUを1つ使い、「影武者狸トークン」を特殊召喚するポン!「影武者狸トークン」の攻撃力は召喚された時にフィールドで一番高い攻撃力を持つモンスターと同じになるポン!》

印を結んだ三太夫がデフォルメされたタヌキを呼び出す、さらにその姿は色違いの三太夫に変化する!

 

 

《さらに「影武者狸トークン」がいる限り、「三太夫」は攻撃されなくなるポン!》

 

「くっ…!?でも、攻撃力は1000…影武者なんか怖くないぜ!!」

 

 

《影を舐めるなポン…影を!オラはこれでターンエンドだポン!》

 

「影…?」

2体のモンスターを前に強がる遊馬…だが、偽ギラグはそんな遊馬を不敵に睨んだ…。

 

 

 

 

「オレのターン!…いくぜ!オレはカードをセット!!」

 

《む…?あのカードは…?》

ターンの回ってきた遊馬はいきなりカードをセットする…その姿に違和感を覚えた偽ギラグは思わぬ言葉を取る!

 

バサッ

 

《ポ♪…ポッポッポッポッポッ…♪》

 

「な、なんだ!?」

何処からか日の丸の描かれた扇を取り出した偽ギラグは舞を踊り始める…!

 

《ポッポッポッポッポッ…ポン!!》

 

キィン─!

 

『っ!?いけない!!避けて遊馬くん!!』

 

「えっ!?………ぁ…?」

何かを感じた龍可が叫ぶ…しかし、その警告は間に合わず、遊馬の意識は暗転した…。

 

 

(遊馬…?どうした!?)

 

《ポン♪》

突然項垂れてしまう遊馬…彼が再び顔を上げた時、その頬には可愛らしいヒゲが生えていた…!

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「ん…ああ…?なんで、()()()()()()()()()()()?」

一瞬の暗転の後、遊馬は意識を取り戻す…だが、違和感を感じた。

…普段よりも高くなった視点、がっしりとした体…なにより、()()()()()()()()が目の前に立っている!!

 

 

「えっ…!?ああ!?お前!なにオレのカードを見てやがる─!?」

 

《へへへ…!》

身体を入れ替えられた事に気付いた遊馬は自分…偽遊馬に叫ぶ!!

 

 

《(伏せカードはこれで…手札は……なるほど…!)自分フィールドにモンスターがいない時!「トイナイト」は特殊召喚できる()()!!》

 

(……ポン?)

 

「あ、アストラル!!小鳥!!そいつはオレじゃない!!()()だぁ─!!」

 

「えっ…??偽ギラグ…何を言ってるの??」

急に変わった遊馬の口調に首を傾げるアストラル…遊馬(体はギラグ)が自分の存在をアピールするが他人には伝わらない…1()()()()()()()

 

 

『アストラル!気を付けて!遊馬君は精霊に身体を乗っ取り…入れ替えられてるわ!!』

 

(なんだって!?)

 

【あ、アイツ!?またやりやがった─!?】

龍可だけはすぐ遊馬の異常に気が付いた…身体を乗っ取る者(地縛神)の存在を知っていたという事もあるが…何より遊馬の体に何かが入り込んだのを感じ取ったのだ…。

 

 

「こ、この偽者野郎!!オレの体を返せ〜!?」

 

《フッフッフッ…気付いた所で遅いポン!!フィールドに伏せカードがある事で手札の「ドドドウィッチ」は特殊召喚できるポン!》

遊馬の体を乗っ取った偽遊馬(?)はバイキング風の魔女を呼び出す…そのレベルは4、本来なら『希望皇ホープ』を呼ぶ所だが…。

 

 

《オイラは2体のモンスターを生け贄に!守備力3000の「ドドドガッサー」を攻撃表示で生け贄召喚だポン!!》

 

(ああ!?なんて事を!!)

偽遊馬はエクシーズ召喚をする事なく、三度笠を被った旅人のドドドモンスターを呼び出してしまう…その攻撃力は0である。

 

 

《そしてオラは魔法カード「死者蘇生」を発動!墓地の「トイナイト」を特殊召喚!さらに魔法カード「ガード・プラス」を発動!「トイナイト」をリリースして、「ドドドガッサー」の守備力を200アップするポン!!》

 

「や、やめろぉぉ!?攻撃表示じゃ意味ないんだよ─!?」

偽遊馬の蛮行は続き…ついに遊馬の手札を全て使い切ってしまった…なお、人間界では肉体を持てないアストラルは見ている事しかできない…。

 

 

 

《バトルだポン!攻撃力0の「ドドドガッサー」で「影武者狸トークン」を攻撃だポン!!》

 

「くっそぉ!!でも、ダメージと衝撃を受けるのはお前だ!!」

 

《アハハ…!それはどうかな?ポン♪》

 

「へっ…!?」

偽遊馬の言葉と共に…再び遊馬の意識は暗転した…。

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

「へっ…!?ああ─!?」

再び意識を取り戻す遊馬…自分の身体に戻ったもののそれが意味する事は…!

 

 

《「影武者狸トークン」で「ドドドガッサー」を返り討ちだポン!!》

 

「しまっ!?ぐああああ─!?」

ドドドガッサーが影武者狸に両断され、爆発…遊馬はダメージを受けながら吹き飛ばされる…。

偽ギラグは遊馬の場を好き勝手に荒らした上で、遊馬にダメージを与えるという卑怯な手段を使ったのだ…!

 

 

 

《オラ、やっぱり喜楽の体がいいだポン!》

 

「くっそ…!やい!偽者ギラグ!!なんでこんな事するんだ!?」

 

《フン…オイラは喜楽荘八の()()()だったポン!》

 

「影武者!?」  

 

《何が「名君」だポン!何が「伝説」だポン!全部、オイラが戦で勝ったからだポン!!》

おどけた様子の偽ギラグに遊馬は叫ぶ…それを聞いた偽ギラグが語り出したのは喜楽の伝説であり、自身の生い立ちについてだった…。

 

 

《喜楽はオラのおかげで伝説になったポン!!全部!()()()のオイラが喜楽荘八に化けてやった事だポン!!》

 

 

「た、タヌキ!?お前…タヌキだったのか?!」

 

「そういえば…ポンポン言ってたし…」

 

【デッキはタヌキデッキだった…】

 

(タヌキが、ナンバーズの精霊になっていたのか…?)

偽者ギラグのカミングアウトに騒然となる遊馬達…そして、偽ギラグは語り始めた…自身の狸生の全てを…。

 

《喜楽との出会いは戦場だったポン…激しい戦いの中、戦場に迷い込んだ子タヌキのオイラをアイツは助けてくれただポン…》

 

 

………

 

 

戦場で保護された子タヌキ…彼は昔話のように喜楽に恩返しする為に妖術を使って喜楽の「影武者」となった。

 

それだけではなく、野生の勘を持つ彼は指揮に優れ喜楽の代わりに戦い…次々に戦いに勝利し、喜楽と共に自国を強くしていった…。

 

…だが、ある時…喜楽はタヌキを追い出した…!

 

 

 

………

 

 

《喜楽はオイラの才能に嫉妬しただポン!それから喜楽の馬鹿殿はすぐに戦に負けて死んだポン!…オラが戦えば、絶対に勝てたのに!!……そしてタヌキのオイラは寿命で死んだポン…でも、気づいたらあの喜楽の石像に魂が閉じ込められていたポン!!今度は死者の影武者だポン!!》

偽ギラグ…影武者タヌキは悔しげに拳を握り締める…。

 

 

《もう、影はうんざりだポン!!オラが…今度はオラが本物になるんだポン!!》

影から「本物」になる…それがタヌキの目的だった…だが、怒りを滲ませる彼に声をかける者がいた…。

 

 

 

 

『タヌキくん…それは、違うと思うわ…』

 

《なんだポン!おばあちゃん!喜楽は裏切り者だポン!!オイラはアイツが許せないポン!!》

 

「龍可ばあちゃん…?」

タヌキに優しく声をかけたのは…龍可だった…。

 

 

『タヌキくん…私の知ってる人にね、とっても強い決闘者がいたの…彼に勝てるのは世界に1人か2人…そんな彼には唯一信頼していた「親友」がいた…』

 

《親友…》

怒っていたタヌキは龍可の話に引き込まれる…彼女の纏う雰囲気が怒りを忘れさせているのだ…。

 

 

『彼と親友は何十年も一緒に戦い続けた…他の仲間達が死んでしまっても…彼だけは親友と共に歩み続けた……そして彼は戦って闘って…戦い抜いた先で最期の戦いをする事になった…その相手は…「親友」だった』

 

《ポン…!?》

 

(龍可…?)

 

「なんだろう…この話…聞いた事が、あるような…?」

龍可の語る「決闘者」の話に遊馬達も引き込まれていく…。

 

 

『「親友」の寿命は尽きかけていたの…その前に彼は「大きな決断」をしようとしていた…「親友」の迷いを振り払う為に…「決闘者」は……「親友」に討たれる事を望んだ…!!誰よりも信頼していた「親友」に喝を入れる為に!!………タヌキくん、きっと喜楽荘八も貴方の事が大切だった…だから、貴方を追い出したのも…必ず理由があると思うの…!貴方は…そんな彼の気持ちを考えた事はある…?』

 

【(な、なんだ?この婆さんの言葉は…?心が…心がザワつく…!)】

龍可の隣で話を聞いていた石像ギラグ…彼は龍可の瞳を潤ませながら語られた物語によって魂を揺さぶられていた…。

 

 

《う、うるさいポン!!オイラは…オイラは喜楽を許さないんだポン─!!》

 

『タヌキくん…』

タヌキは首を振り叫ぶ…彼は数百年に渡る孤独の中で喜楽への憎しみを抱き続けていた、その怒りは…生半可なものではない…!

 

 

(…遊馬、ギラグの魂が体に無い今…彼を倒せばナンバーズを手に入れる事ができる)

 

「わかってる…けど、アイツに言いたい事がある…!」

龍可の話…そしてタヌキの叫びを聞いた遊馬は彼に向き直る…。

 

 

 

「なぁ、タヌキよぉ…お前が言うようにオレの知ってるギラグは卑怯な所がある、セコい所もある…嫌な野郎だ!!」

 

【んな!!テメェ─!言い過ぎだぞぉ!!】

遊馬の物言いに突っ込む石像ギラグ…だが、遊馬は言葉を続ける。

 

 

「でもさ…!オレはギラグを()()()()んだよ…!奴を!!」

 

(遊馬…)

それは遊馬の心からの言葉…確かに、ギラグと遊馬は敵同士…だが、遊馬は何処か抜けているギラグという男を憎む事ができなかったのだ…!

 

《そんな事、ないポン!あんな奴…十分憎めるだポン─!!》

遊馬と龍可の言葉を振り払い、タヌキは決着をつけるべく動き出す!

 

 

 

 

 

《オラのターン!「古狸三太夫」の効果発動!ORUを1つ使い、2体目の「影武者狸トークン」を特殊召喚するポン!!そしてバトルだポン!「古狸三太夫」でダイレクトアタックだポン!》

 

「ぐあっ…!?」

三太夫の狐火ならぬ狸火の吐息が遊馬のライフを削る!

 

 

《さらに「影武者狸トークン」でダイレクトアタック!》

 

「ぐあああっ!!」

影武者狸の炎が遊馬のライフを削る…残りライフは…1000!

 

 

《これで終わりだポン!2体目の「影武者狸トークン」でダイレクトアタックだポン!》

 

「それは、どうかなぽん!!」

 

《なにっ!?》

傷だらけになった遊馬は不敵な眼差しでタヌキを睨みつける!

 

 

「リバースカード発動!『バースト・リバース』!!自分のライフを半分払い、墓地の『ドドドガッサー』を裏守備表示で特殊召喚だ!!」

 

《ポン!?(しまった!『ドドドガッサー』の守備力は3000!)攻撃はお預けだポン─!!》

それは遊馬の起死回生の一手…タヌキは『ドドドウィッチ』を召喚する為だけの伏せカードと思っていたが…それにさらなる使い方があったのだ…! 

 

《(でも、オイラにはこのカードがある…!)カードを伏せ、ターンエンドだポン!絶対に勝つんだポン…今度はお前が…オイラの影武者になるんだポン─!!》

 

 

「オレ達だって…負ける訳にはいかねぇんだ!!いくぜ、アストラル!!」

 

(ああ!!)

遊馬とアストラル…2人はタヌキへ最後の攻撃を仕掛ける!

 

 

 

 

 

「オレのターン!オレは『ドドドガッサー』を反転召喚!」

 

《っ!?攻撃力0を攻撃表示!?》

再び現れる三度笠の旅人…彼には隠された効果が眠っている!

 

(『ドドドガッサー』が反転召喚された事で効果発動!このカードの攻撃力は自分と相手のライフの差分アップする!よって攻撃力3500だ!)

 

《なんだって!?》

 

「そして『ガッサー』のさらなるリバース効果発動!このカードがリバースした時!相手フィールドのモンスター2体を破壊する!2体の『影武者狸』を破壊!!」

ドドドガッサーがオーラを纏い、刀で影武者狸を斬り裂く!

 

 

「バトルだ!『ドドドガッサー』で『三太夫』を攻撃!!」

 

《今だポン!!罠カード「千畳敷返し」を発動!自分の狸モンスターがバトルする時!相手モンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを与えるポン!これで、オラの勝ちだポン─!》

それはタヌキの奥の手…だが、遊馬達は諦めない!

 

「そうはいくかあ!!手札から『チャウチャウちゃん』の効果発動!!」

 

《な、なんだポン!?そのカードは─!?》

それは遊馬が土壇場で引き当てたカード…それが決着の一手となる!

 

 

「このカードを墓地に送り、発動した相手の罠を…オレの罠として扱う!つまり、破壊されるのは『古狸三太夫』だ─!!」

 

《なぁぁぁ!?》

遊馬の場に現れたチャウチャウ犬がタヌキの罠を奪い、三太夫を粉砕する!

 

 

「カッとビングだ!オレ!『ドドドガッサー』でダイレクトアタック!三度笠旋風!!」

 

《う、うわああああ!!》

ガッサーの投げ放った三度笠がタヌキに直撃…そのライフを0にした…。

 

 

 

【あ、ああ…!?()()()ぁぁ!!?】

 

 

遊馬の勝利を告げるブザーが鳴り響く中…ギラグの叫びが木霊した…。

 

 

 

 

 

ポン太 LP0

 

遊馬WIN!

 

 

 

 

 

《…オラは…影じゃ、ないだポン…》

 

【そうだ…お前はポン太だ…懐かしいなポン太】

 

《殿様…!?》

 

「じゃあやっぱり…」

 

「ギラグは…喜楽…?」

デュエルに負け、項垂れるポン太…彼に声をかけたのはギラグだった。

…彼は、戦いの中で記憶の一部を取り戻していたのだ…。

 

 

《殿様…なんで、なんでオラを捨てただポン…?》

 

【…あの戦は、初めから負けが決まっていた……領民ばかりに富を与えるワシを気に入らなかった家臣達が寝返っていたのだ】

 

《そんな!?そんなのって…!?》

それはギラグから語られた真実…自身は質素な暮らしをしていた喜楽は同じ暮らしをするように家臣達に伝えていた…その結果、家臣達が喜楽を裏切っていたのだ…。

 

 

【気付いた時にはどうにもならなかった…せめてワシは…ポン太、お前だけでも逃がそうと考えたのだ…あの婆さんの言う通り……ワシはお前が大切だったのだ…】

 

《そんな…!なんで言ってくれなかったポン!?オラは…オラは殿様とずっと一緒にいたかったポン!!一緒に、戦いたかった…!!》  

 

「グスッ…ポン太…!」

ポン太は石像ギラグに縋り付く、その目から涙を溢しながら…それはポン太の心が数百年振りに救いを得た瞬間だった…。

 

 

 

《遊馬…ナンバーズはお前達が使ってくれだポン…せめてもの罪滅ぼしだポン…》

 

「アストラル…」

 

(ああ)

タヌキは自身のナンバーズをアストラルに譲り渡す…そして変化が起きる…。

 

キィン─

 

《喜楽様…》

 

「ポン太…!」

ナンバーズという「楔」を失ったポン太はギラグの体から離れ、本来のタヌキの姿となる…。

 

 

《喜楽様…いくポン、オイラ達のいるべき場所へ──》

ポン太はギラグへとその小さな手を差し出し…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んなわけ…ねぇだろうがああああ!!

 

 

バキバキ…バキーン!!

 

 

「なっ─!?ギラグ!!!」

禍々しい叫びを上げたギラグが石像を粉砕しながら魂だけでポン太の魂を掴み取る!!

 

《うぐっ─!?殿様、なんで…!》

そして、ギラグは口を大きく開き…─!

 

「や、やめろぉぉ!!!」 

 

 

 

《正しき者に祝福を…悪しき者に裁きを!エターナル・サンシャイン!》

 

 

キィン─!!

 

 

【ぐあっ!?】

 

《あうっ…!?》

 

「「エンシェントフェアリードラゴン!!」」

ポン太の魂がギラグに飲み込まれようとしたまさにその時、聖なる光が決闘庵を照らす…それはバリアン世界の人間であるギラグを怯ませ、肉体に叩き戻した!

 

 

『チィ…!()()()で上手く化かせたと思ったのになぁ…!』

 

「ギラグ!!」

ギラグは瞳を紅く輝かせながら遊馬達を睨みつける…彼は今の話を「自分が思い付いた嘘」と思っているのだ…。

 

『覚えてろ九十九遊馬…次はお前を倒すからな─!!』

そう捨て台詞を残してギラグはワームホールに消えていった…。

 

 

 

 

 

《殿様…どうして…どうしてなんだポン…!》

 

「ポン太…」

ギラグが撤退した後、ポン太は落ち込んでいた…取り戻したはずの「絆」は…他ならぬギラグの手で粉々に砕けてしまったのだ…。

 

 

《ポン太…今は眠りなさい、貴方の力が…きっと彼を闇から救う時が来るでしょう…》

 

《ポン…》

エンシェントフェアリーの優しい光に包まれたポン太…彼は再び「No.64」の中で眠りに就いた…。

 

 

 

《遊馬…アストラル…あのギラグという者…彼には強い『闇の力』を感じました…それが彼の崇高な魂を穢し、闇に貶めているのです》

 

(闇に…貶める…?その『闇』とは…?)

エンシェントフェアリーの言葉にアストラルは問い掛ける。

 

《それは…私が語るべき事ではありません、貴方達が自ら見つけるべき真実だからです…2人とも…決して、諦めてはいけませんよ…》

 

「エンシェントフェアリー…」

遊馬達に声をかけた彼女は静かに消えていった…。

 

 

 

 

 

『遊馬くん、怪我は大丈夫?私も少しなら回復の魔法が使えるから…』

 

「あ、ありがとう龍可ばあちゃん…」

ギラグが撤退し、喜楽像の破片を集め終えた遊馬は龍可に回復魔法をかけてもらう…。

 

「ギラグ…アイツ、卑怯な奴だったけど…あんな事する奴じゃなかったのに…」

 

『遊馬くん…』

遊馬はギラグの姿を思い出して落ち込む…ギラグは確かに卑怯で小細工も使う…だが、アリトの為…友の為に戦える熱い魂を持っている…遊馬はその姿を知っていた…。

 

 

 

「…そうだ、龍可ばあちゃん…さっき、ポン太に話した『決闘者』の話…あれって誰の事なんだ?」

回復を受けながら…遊馬は気になった事を問い掛ける…。

 

『うん…遊海さんからは何も聞いてないみたいね……なら、名前だけ教えてあげる、落ち着いたら遊海さんか翠さんに聞いてみて…彼の名前はラプラス、イリアステル滅四星の1人…善を知り、それでも悪を貫き通した、誇り高き「善知の悪魔」…それが彼の名前よ』

 

「ラプラス…」

 

(『全知全能の魔物』…そしてイリアステルは…アポリアの仲間という事か…?)

 

『…彼の事を語るには私じゃダメなの…でも、遊馬くん…心の隅に覚えていて、人間は憎しみや悲しみ…怒りのあまり…「悪魔」になってしまう事があるって…』

 

「人が…悪魔になる…?」

龍可の悲しげな呟き…それは夕暮れの空へ消えていった…。

 



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海底に眠る記憶〜試される『決断』そして…〜

こんにちは!S,Kです!

今日は大震災から10年目の節目の日…あの未曾有の大災害を忘れる事なく、少しでも伝えていきましょう…。


では…最新話をどうぞ


「はぁ…はぁ…はぁ…っ!?」

璃緒は必死に走っていた…見慣れない水晶の大地で何者かから逃げる為に…だが、彼女は崖っぷちに追い込まれてしまう…!

 

【ククク…!】

 

「くっ…!?」

璃緒を追い詰めるのは邪な輝きの剣を持つ邪悪な何者か…璃緒は思わず後ずさり…。

 

ガラッ…!

 

「きゃあああ!?」

足を踏み外し、奈落の底へと落ちていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁっ…!?…あれ、私…?」

 

「璃緒ちゃん…大丈夫?酷く魘されてたわよ?」

 

「母さん…」

夢を見ていたらしい璃緒は飛び起きる…そこは遊海夫妻が入院するKC病院…お見舞いに来た璃緒はいつの間にか翠のベッドに突っ伏して眠っていたらしい…。

 

 

「大丈夫よ、母さん…(また、()()()()…)」

 

「そう…?ならいいんだけど…」

遊馬が決闘庵のナンバーズを見つけて3日…遊馬は怒り心頭の明里に3日間の自宅謹慎を言い渡されてしまってい、凌牙達は待機を余儀なくされていた…。

その頃からか…璃緒は何者かに追われ、落下する夢を度々見ていたのだ…。

 

 

 

「…明日、最後の遺跡のナンバーズを探しに行くのね?」

 

「うん…心配しないで!今度も無事に帰って来るから!」

ネームレスとの決闘で衰弱してしまっている翠に心配を掛けないよう、璃緒は明るく答える…。

 

「…璃緒ちゃん、どんなに離れていようと…私と遊海さんはみんなの無事を祈ってるからね」

 

「うん!母さん!じゃあ…明日の準備があるから帰るわ!」

璃緒はそう言って翠と遊海の手を握り、帰って行った…。

 

 

 

 

「………遊海さん、ついに…この時が来ちゃいました…」

 

《翠…》

璃緒が帰った後…翠はベッドからふらふらと起き上がり、眠り続ける遊海の手を握り締める…。

ネームレスによる「不死殺しの呪い」は消えたが、遊海は未だ強力な毒に侵されたまま…高熱に魘されながら眠り続けている…。

 

 

「遊海さん…早く、起きてよぉ…凌牙君も璃緒ちゃんも…遠くに行っちゃう…!私、どうしたらいいの…?」

ポロポロと涙を零しながら…翠は遊海に縋り付いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ここが最後の遺跡…6枚目と7枚目のナンバーズが置かれている場所だ、そしてそれは…我々と出会っていない「バリアン七皇」の伝説が眠る遺跡でもある…)

 

「オレ達がまだ出会っていない七皇…」

翌日、遊海・アストラル・小鳥・凌牙・璃緒の5人は飛行船に集まっていた…インド洋に眠る、最後の遺跡へと向かう為に…。

 

 

「…ん?カイトの奴はどうした?」

 

「ああ…なんか調べ事があるんだって…」

 

「ミザエルの事か?」

 

「たぶんな…今回のメンバーはこれで決定だな!」

メンバーを見渡した凌牙はカイトとオービタル7の不在に気付く…今回、彼らは欠席である。

 

 

(地図を見てわかる通り、2つの遺跡は近い場所にある)

 

「もしかして…同じ場所にあるのかも?」

 

「とにかく…2枚のナンバーズをなんとしてでも手に入れるぜ!かっとび遊馬号、出発!!」

そしてついに、遊馬達は最後の遺跡へ向けて出発した…。

 

 

 

 

 

 

Sideバリアン

 

 

 

『それで、ジンロンというナンバーズの精霊は…お前が人間だったと言ったんだな?ミザエル』

 

『…そうだ…だが、私は信じない…!私は誇り高きバリアンの戦士…下世話な人間であるはずがない…!!』

遊馬達が出発した直後…ハートランドシティのビルの上で人間体のドルベとミザエルが話し合っていた…。

共に、自身の伝説のある遺跡に出会ったドルベ達…彼らはいまだに自身が人間であった事実を受け入れていなかった…。

 

 

『私も信じるつもりはない…だが、残った遺跡には興味がある…そこにあるのはナッシュとメラグの伝説のはずだ』

 

『…結局、お前は信じるという訳か?』

 

『そうではない、私は…2人の手掛かりを得たい…彼らがいれば…七皇の力は変わる!』

ミザエルの言葉にドルベは空を見上げる…ドルベにとって…そして七皇にとってもナッシュとメラグはいなくてはならない人物なのだ…。

 

 

『…必ず、残り2枚のナンバーズを手に入れる!!』

強い決意と共にドルベとミザエルは最後の遺跡を探しに向かった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「なぁ、アストラル…バリアンの七皇…あいつらって…本当に人間だったんだよな…?」

 

(ナンバーズから得た記憶に間違いはない…急にどうした?)

最後の遺跡に向かう飛行船の甲板…遊馬はアストラルに問い掛けていた…。

 

 

「ようするに…バリアンって、お前みたいな存在なんだよな…?」

 

(アストラル世界とバリアン世界を同じとするなら…そういう事になる)

 

「…なんで、あいつらはバリアンになったんだろう…?」

 

(彼らの伝説に共通する『何か』が…彼らをバリアンに転生させた…のかもしれないな)

以前、遊馬はアストラル世界の事を訊ねた事があった…アストラル世界はランクアップを目指した魂が辿り着く世界…ならば、バリアン世界はどんな魂が辿り着く世界なのか…遊馬達は知らなかった…。 

 

 

 

「遊馬、奴らに深入りするのは…禁物だぜ」

 

「シャーク…」

 

「センチメンタルな感情を捨てなきゃ…奴らに足元を掬われるぞ」

バリアンの事を考える遊馬に声をかけたのは凌牙だった。

 

 

「…なぁ、シャーク…お前はどうして、バリアンと戦うんだ?」

 

「……決まってるだろ?バリアンは俺や璃緒を…父さんを利用した…!その償いをさせる為だ」

凌牙は拳を握りながら自身が戦う理由を語る、バリアンはトロンを介して璃緒をや遊海を傷付けた…その行いを償わせる為に凌牙は戦っているのだ…。

 

 

「でもさ…お前はトロンやフェイカーだって許したじゃねぇか…」

 

「父さん達は奴らを許したが…俺は赦した訳じゃない、アイツらから闘志が消えた…だから、俺も止めただけだ」

凌牙は遊海や翠ほど心が広くないと自覚している、トロンはⅣを使って璃緒を傷付け、遊海を死なせかけた…Dr.フェイカーも自分達を助けに来た遊海を傷付けた…凌牙はその事を許した訳ではなかった…。

 

 

(デュエルに感情は持ち込まない…それが君の哲学という訳か)

 

「…父さんには怒られるかもしれないが…闘うのは自分の為だけでいい…俺はそう思ってる」

 

「シャーク…」

それは凌牙の「信念」…遊馬は船内に戻る彼の背中を見送るしかなかった…。

 

 

 

 

 

ビビーッ!ビビーッ!

 

「おわあああ!?うげっ…!?」

 

「おい!璃緒!ここが本当に遺跡のある場所なのか─!?」

 

「ざ、座標は合ってるわ!!ここで間違いない─!」

 

(しかし、この荒れ様はいったい何なんだ…!)

次元航路を抜けた遊馬達は遺跡のあるポイントへ到着する…しかし、その場所はインド洋のど真ん中…しかも、まるで海の神の怒りに触れてしまったように強風・大雨・大波が吹き荒れている…!

 

 

 

─おいで…─

 

 

「っ!?」

 

「おい!璃緒…大丈夫か!?」

 

「あ、うん…」

座標をレーダーで確認する璃緒…その脳裏に声が響く…。

 

 

(っ…この荒れ方は異常だ、一度退避するぞ!)

 

「待ってアストラル!飛行船の動力が止まったみたい!!」

 

「「なんだって!?」」

 

(船は…ここを動くつもりはないという事か)

嵐を前に退避を決断するアストラル…だが、飛行船はその動きを止める…まるで「ここで合っている」と言うかのように…。

 

 

 

─おいで…おいで…!─

 

 

「っ─!?誰!?誰なの!!()()()()()()()!?」

 

「璃緒…!?いったいどうしたんだ!?」

突然叫び出す璃緒に遊馬達は驚く…彼女だけに聞こえる呼び声…璃緒はその声に怯えていた…その時だった…!

 

 

バチン!

 

 

「な、なんだ!?明かりが消えた!」

 

(非常電源を!)

突然、飛行船の照明が落ちる…すぐにアストラルの手で照明が戻るが…。

 

「璃緒…!?璃緒!何処に行った!?」

僅かな停電…その間に璃緒は姿を消してしまっていた…!

 

 

「シャーク!モニターだ!璃緒が外に─!」

 

「璃緒!?あの馬鹿!!」

辺りを見回した遊馬が声を上げる…外に広がる大荒れの海…璃緒はその中をふらふらと歩いていた…。

 

 

 

─おいで…おいで…!─

 

 

「………(体の自由が、効かない…引き込まれてしまう…)」

謎の声に洗脳されてしまった璃緒は正気を失い、飛行船の甲板から嵐の海を見下ろす…そして…。

 

 

─おいで…!─

 

 

「(凌牙…父さん…)」

 

「っ─!!璃緒─!!」

璃緒は声に誘われるまま、海へとその身を投げてしまう…それを目撃した凌牙は躊躇なく海へと飛び込んだ!

 

 

「シャーク!!っ─カッとビングだァァ!!!」

 

「遊馬─!?」

そして少し遅れて来た遊馬と小鳥…凌牙を助ける為に遊馬とアストラルも嵐の海へと飛び込んだ!

 

 

「遊馬!シャーク!璃緒さん─!!」

嵐の海に取り残された小鳥の叫びが響き渡った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

(遊馬…遊馬!!しっかりしろ!)

 

「遊馬!起きろ!!」

 

「う、うぅ…?ここは…」

 

(わからない…私も渦に巻かれて意識を失ってしまったのだ…)

海に飛び込み、海流に飲まれてしまった遊馬は凌牙とアストラルの声で目を覚ました…そこは見渡す限りの砂原だった…。

 

 

(だが、どうやら此処は…()()()()()らしい)

 

「んなっ!?空に海がある!?」

アストラルの言葉に遊馬は上を見上げる…そこには空ではなく、水面があった…!

 

「どうやら…璃緒も此処にいるらしい」

 

「っ…!追い掛けようぜ!」

凌牙は砂原を見つめる…そこには璃緒の靴跡が続いていた…。

 

 

 

 

「あれは…!?」

 

「遺跡、なのか?」

璃緒を追い、不思議な砂原をしばらく歩き…砂丘を越えた先、そこには巨大な古い建造物が佇んでいた…。

 

 

「なんだこりゃ…」

 

(これは…迷宮か…?)

遺跡に踏み込んだ遊馬達…そこに広がっていたのは霧に包まれた迷宮だった…。

 

 

《クァー!クァー!》

 

「ん…?鳥……あっ!」

迷宮に響く鳥の鳴き声に遊馬が目を向けると見慣れない二羽の鳥が柱に止まっている…そして遊馬はその柱の中程に輝く何かを見つけた!

 

「よっと…これは…!父ちゃんのコイン!ここにナンバーズがあるんだ!!」

輝いていたのは2枚の覇者のコイン…ナンバーズがある事を確信した遊馬達は迷宮に突入した…!

 

 

 

 

「璃緒には不思議な力がある…璃緒はここに来るまでずっと何かを感じていた…もしかしたら、その力に導かれたのかもしれねぇ…!」

 

「その力って…『遺跡のナンバーズ』なのか…?」

 

「たぶんな…」

遊馬達は璃緒がいなくなった理由を話し合う…遺跡のナンバーズに導かれてしまった璃緒…その行方は…。

 

 

 

 

─おいで…─

 

 

「っ!?今の声は…」

迷宮を進む凌牙の脳裏に低い男の声が響く…凌牙はその声に導かれるように脇道に入り、ある物を見つけた…!

 

「これは…璃緒のカード!」

脇道に落ちていたのは…璃緒の持つ魔法カード『絶対零度』だった。

 

「おい!遊─なにっ!?」

璃緒の手掛かりを見つけた凌牙は遊馬に声を掛けようとした…だが、振り返った時…突然現れた壁によって遊馬と分断されてしまった…!

 

 

「くっ…!?進むしか、ねぇか…!」

分断された凌牙は1人で迷宮を進み始めた…。

 

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「これは…!?」

謎の声に導かれるままに迷宮を進んだ凌牙はついに迷宮の中心に位置する石の祭壇へと辿り着いた…!

 

 

「ハァ…ハァ…!あれは!!」

 

『そなたを待っていました…神代凌牙』

 

「貴様…()()!!」

階段を駆け上がった先…そこには古代の巫女のような衣装を纏った璃緒が待っていた、だが…彼女は璃緒であり…璃緒ではなかった…!

 

 

『【我が名は…アビス】』

 

「ナンバーズの、精霊か!!」

青いオーラを纏う璃緒…その背後に戦士のような幻影が現れる…!

 

 

「貴様…!璃緒を操って、俺を誘き出したのか!!」

 

【我とそなたは戦うべき()()…目覚めよ、我が力を受け継ぎし者よ…!!】

 

「……?何が狙いかは知らねぇが…お前の相手は俺がしてやる!!璃緒を離せ!!」

 

【もちろん…デュエルで私を倒す事ができたならば…!】 

 

「いいだろう…!お前をぶちのめして、璃緒を取り戻す!!」

意味深な言葉を話すナンバーズの精霊・アビス…凌牙は璃緒を取り返す為、デュエルを挑む!!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

デュエルダイジェスト 凌牙対璃緒(アビス)

 

 

 

 

 

「現れろ!漆黒の闇からいでし、紅き槍!『ブラック・レイ・ランサー』!」

先攻を取った凌牙は対応力に優れる槍使いを呼び出す!

 

「俺はカードを伏せ、ターンエンドだ!」

 

 

 

 

『見るがいい、我が力を!!エクシーズ召喚!現れろ!「ゴルゴニック・ガーディアン」!』

対する璃緒…否、アビスは赤と青の瞳を持つ、蛇の女怪を呼び出す!

 

『「ゴルゴニックガーディアン」の効果発動!ORUを1つ使い、フィールドのモンスター1体の効果を無効とし、攻撃力を0にする!』

 

「なにっ!?」

女怪の放った怪光線がブラックレイランサーを石化させる!

 

 

『まだだ!「ゴルゴニックガーディアン」のさらなる効果発動!このモンスターがフィールドに存在する時!攻撃力0のモンスターは破壊される!』

 

「なんだと!?ぐうっ!?」

瞳を輝かせた女怪の頭部から赤い蛇のようなエネルギーが放たれ、ブラックレイランサーを粉砕する!

 

『「ゴルゴニックガーディアン」!ダイレクトアタック!』

 

「があああっ!!」

守る壁の無くなった凌牙は巨大な蛇の尾によって叩き飛ばされた…。

 

『我はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ…そんなザマで璃緒を取り戻せるのか?凌牙…!』

 

「くっ…!!」

倒れた凌牙を見下ろすアビス…その時だった。

 

 

キン─

 

 

「な、んだ…!?この、光は…」

 

アビスから放たれる不可思議な光…それを見た凌牙の意識は遠のいた…。

 

 

 

………

 

 

 

「な、に…?此処は、何処だ…?」

凌牙が気付いた時、そこは見知らぬ王宮だった…自身は玉座に座り、その周りには数人の兵士達が控えている…。

 

 

「この姿は…なにが、どうなってるんだ?」

凌牙は玉座の隣にある姿見鏡を見る…そこには紺色のマントを纏い、金色の鎧を着て首から()()()()()()()()()ネックレスを身に着けた自分の姿が写っていた。

 

 

『お兄様!そろそろお時間です、皆が待っていますわ!』

 

「璃緒!?…みんな…?」

入口から歩み寄る人影…それは巫女の衣装を纏った璃緒だった、そして凌牙は璃緒に導かれるまま部屋から歩み出した…。

 

 

 

 

 

「「「王様ー!王様万歳ー!!」」」

 

 

「「「国王さまー!!」」」

 

 

 

『見てください!お兄様!皆が偉大な王を讃えていますわ!』

 

「俺が…王…?(これは…この遺跡の『記憶』なのか…?)」

バルコニーへと出た凌牙と璃緒…その眼下では老若男女たくさんの人々が凌牙の事を「偉大な王」と讃えていた…。

状況がわからない凌牙はなんとなく『遺跡の記憶』を追体験させられているのだと理解した…。

 

 

「国王様!大変です!敵が攻めて来ました!!」

 

『なんだと!?』

そんな時、兵士の1人が危急の知らせ…敵襲を知らせた…!

 

 

 

 

 

 

 

「あれは…!!」

城から前線の砦へと急いだ凌牙…彼が目にしたのは海に浮かぶ無数の侵略船団の姿だった…!

 

 

「迎え撃て─!!」

 

「「「うおおっ!!」」」

槍や大砲、弓を手にする兵士達…その時!

 

 

《ギャオオ!!》

 

「「「うわああ!?」」」

 

「お前達─!!」

海中から姿を現した数体の「ゴルゴニックガーディアン」が怪光線を放つ…それは兵士達に命中、彼らを物言わぬ石像へと変えてしまった…。

 

そして…侵略船団を率いる首領が姿を現す…!

 

 

「あれは…ベクター!?」

 

「あれこそが諸国を侵略し、略奪と虐殺を繰り返す『狂気の王』…!!」

決闘者の超視力が一際巨大な旗艦…その玉座に座る男を捉える…それは邪悪な笑みを浮かべたベクターだった…!

 

 

「何故、ベクターが…っ──!?」

 

 

 

…………

 

 

 

 

「はっ…!?」

気付いた時、凌牙はアビスとのデュエルに戻っていた…。

 

「(俺は…幻覚を見せられていたのか…!いったい、何を企んでやがる…!?)」

アビスの真意が読めない凌牙…だが、彼は戦わねばならない…!

 

 

 

 

「(今の手札じゃ『ゴルゴニックガーディアン』には勝てない…だが、表側じゃ餌食になる…)俺はモンスターをセット!これでターンエンドだ!」

ゴルゴニックガーディアンの効果を避ける為、凌牙はモンスターを伏せる…。

 

「(伏せたのは守備力1600の『スカル・クラーケン』…これで、耐える!)」

 

 

 

『フッ…我のターン!我は魔法カード「ゴルゴン・チャーム」を発動!その効果により、伏せられたモンスターを表側守備表示にする!』

 

「なにっ!?」

アビスの発動した魔法により凌牙の『スカル・クラーケン』がその姿を曝してしまう!

 

『「ゴルゴニックガーディアン」の効果!ORUを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を0にする!そして、攻撃力0のモンスターは破壊される!!』

 

「ぐっ!!」

再び放たれた怪光線がスカルクラーケンを石化させ…蛇のエネルギーが粉砕する!

 

 

『さらに!装備魔法「エクシーズ・ユニット」を「ゴルゴニックガーディアン」に装備!装備したモンスターの攻撃力はそのモンスターのランク×200アップする!よって攻撃力2200!「ゴルゴニックガーディアン」でダイレクトアタック!!』

 

「しまっ…!ぐあああ!!」

再び放たれた尾が凌牙を弾き飛ばす…残りライフは僅か200となってしまった…。

 

 

 

 

 

一方、その頃…

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

「だああああ!?いったいどうすればいいんだよ─!?」

 

(落ち着け遊馬、闇雲に動いても体力を使うだけだ…!)

凌牙とはぐれた遊馬とアストラルは迷宮を彷徨っていた…神出鬼没に生成される迷宮の壁によって方向感覚を失い、スタート地点にもゴールにも辿り着く事ができずにいたのだ…。

 

 

キン─バッシャアアア!!

 

 

「どわっ!?今度はなんだ!?」

迷宮を彷徨う遊馬…その時、頭上の水面に穴があき、大量の海水と共に何者かが遊馬達の前に現れた…!

 

 

『遊馬、アストラル…!』

 

「ドルベ!?」

現れた人影…それはドルベだった、飛行船に取り残された小鳥が口を滑らせた事で海中遺跡に勘付き、やって来たのだ…。

 

 

 

「どうしてお前がここに…!?」

 

『お前達を追って来たのだ…これ以上、ナンバーズを渡す訳にはいかない…!』

 

「…ここで、決着をつけようってのか…!」

 

『いずれ、お前は倒さなければならないと思っていた…それも悪くないな』

 

「っ…!!」

ドルベは静かにデュエルディスクを構える…。

 

 

「ドルベ…!どうしても、お前と戦わなきゃならないのか!」

 

『…何を今更…』

 

「だって…お前はオレ達を助けてくれた!あの時、あの『天馬の遺跡』でお前がいなかったら…オレ達はどうなったかわからねぇ…だから!!」

 

「それは…お前の思い込みだ、所詮…我らは戦わなければならない定めだ…」

遊馬はドルベとのデュエルを…戦いを躊躇する…だが、ドルベの意志は揺らがない…。

 

 

「なぁ、ドルベ…ナンバーズの遺跡にあった伝説は…お前達の伝説なんだろ!?お前達に何があったのかわからない…けど!お前達はオレ達と同じ、人間だったんだ!それなのに…どうしてアストラルやオレ達と戦わなきゃならないんだよ!!」

 

『ふざけるな!!我らが人間だったなどと…私は信じない!!』

遺跡を巡った遊馬はドルベに呼びかける、悲しき伝説と共に「英雄」と呼ばれたバリアン達…同じ人間だった彼らと争う事…遊馬にはその意味がわからなかった…。

 

 

『バリアン世界はアストラル世界と対になる世界…そして()()()()()()だと運命付けられている!』

 

「運命って、なんだよ…!?それってアストラルもお前も…()()()()()()()を知らないって事じゃないか…!そんな、くだらない事で戦ってるんじゃねぇぇ!!」

 

(遊馬…)

戦う事が()()()()()()というドルベ…しかし、遊馬はその言葉を否定する。

「そう決まっている」から敵対する……それはつまりバリアン達自身も戦う理由がわからないも同じ…遊馬から見れば、それは本当に「くだらない」と思う理由だった…。

 

 

 

『……お前がなんと言おうと…私達は共に生きる事はない、そうだな?アストラル!』

遊馬に正論を叩きつけられたドルベは冷たくアストラルを睨みつける…。

 

(…遊馬、私のもう1つの使命…それは、()()()()()()()()()()()だ…)

 

「アストラル…!?」

ドルベの視線に答えるようにアストラルは自身に課せられた使命を口にする…それは、遊馬の考えとは真逆の答えだった…。

 

 

 

『……問答はこれくらいにしよう…デュエルだ!!』

 

「くっ…!!」

もう語る事はないとばかりにドルベは闘志を纏う…!

 

 

(ドルベ!デュエルの前に1つ、聞きたい事がある!…バリアンの七皇の中に我々が出会っていない者が2人いる…この遺跡にはおそらく、その2人の伝説が眠っているはず…何故、その2人は姿を見せない?)

 

『……その2人とは我らバリアン七皇のリーダー「ナッシュ」そして「メラグ」…彼らは必ず生きている!そして戻ってくる!!』

 

(「っ…!?」)

ドルベの絞り出した言葉に遊馬とアストラルは察する、ナッシュとメラグなるバリアン…その2人は行方がわからないのだと…。

 

 

キィン…

 

 

「な、なんだ!?オーロラ…!?」

 

(あれは…シャーク!璃緒!既にデュエルが始まっているというのか!?)

遊馬とドルベの間で張り詰める空気…それを切り裂いたのは遺跡の中心部に現れたオーロラだった。

 

そのオーロラに映し出されていたのは古代の巫女のような衣装を纏った璃緒…そしてその璃緒とデュエルをしてボロボロになっている凌牙の姿だった!

 

 

『何故…奴らがこの遺跡でデュエルを…?お前達とのデュエルは後回しだ!』

 

ギィン─!

 

「あっ!?待ちやがれ!飛んでくなんて卑怯だぞ─!?」

その様子を見たドルベは光の玉となって遺跡の中心へと向かう…迷宮に取り残された遊馬は叫ぶしかなかった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

 

「っ…!?また幻覚か…!!」

ゴルゴニックガーディアンに吹き飛ばされた凌牙…彼は再び幻覚世界に囚われていた、玉座に座る彼の前には傷付いた兵士達が跪いている…。

 

 

「国王陛下…ご報告いたします、各方面の戦況は我が軍の劣勢…!ベクター軍は『ゴルゴン』を使い、次々と我が軍の防衛線を突破…!我が国の城下に攻め入るのも時間の問題です…!アクナムカノン王への救援要請も間に合わず…このままでは!我が国はおろか、近隣諸国全ての民が皆殺しになってしまいます!!」

凌牙の治める国に攻め入るベクター軍…その恐ろしい力に軍は追い詰められていた…。

 

 

「くっ…!?俺に何をしろって言うんだ!!」

兵士からの報告を聞いた凌牙は戸惑う…凌牙は決闘者であっても戦士でもない…彼らに指示を出す事はできないと…。

 

『お兄様…皆が貴方の指示を待っています…!この国の国王であり、指導者でもあるお兄様の指示を…!』

 

「っ─!ふざけるな!!指導者だと?俺に貴様らの人生を押し付けるな!」

 

「国王様…!?」

璃緒に似た巫女の言葉に凌牙は怒りを叫ぶ…!

 

『どうしたの!?お兄様、貴方はこの()()()()()()()()()()を束ねて来た指導者じゃない!この世界の平和を、ずっと守ってきた!!』

 

「俺が…この俺が…!?」

巫女の言葉に凌牙は驚く…その言葉は()()()()に向けられた言葉だと理解してしまったのだ。

 

 

【乗り越えろ】

 

「っ!?」

その時、凌牙の脳裏に声が響く…それは姿見に写った凌牙…否、その姿を借りたアビスの言葉だった。

 

【試練を乗り越えよ…この世界の戦いも…デュエルにも勝つのだ…さすればお前は──】

 

「黙れえぇぇ!!」

 

バキッ…!!

 

凌牙は姿見に拳を打ち付ける…鏡は割れ、アビスの気配も消えたが…凌牙の脳裏に電流が走る!

 

「…俺の、試練…」

凌牙は直感した、アビスはこの「幻覚世界」を試練と言った…つまり「天馬の遺跡」や「龍の遺跡」のように、この幻覚の中にデュエルを攻略する為のヒントがあると…!

 

 

「…鏡…?そうか…!」

拳によって砕けた鏡を見て凌牙は思い出した、かつて遊海によって教えられたとある神話の物語…その中に登場した『怪物』を倒した武器は……。

 

 

 

「俺は…指導者じゃねぇ…だが、こんな世界でもデュエルでも…負けるのはイラッと来やがる!!兵士達に新たな武装をさせろ!!」

勝利を掴む為、凌牙は声を張り上げた…。

 

 

 

 

…………

 

 

 

「っ…!今の幻覚は…!少しは役に立ちそうだぜ…『ゴルゴン』は自らの力で滅ぶ…なら、今の俺にも…手段がある!!」

凌牙の意識は再び現実に戻る…そして幻覚世界の行動を道しるべに、反撃に転ずる!

 

 

 

 

 

「俺のターン!…来たぜ!速攻魔法『絶対零度』発動!!」

凌牙の引いたカード、それはおそらく璃緒…アビスが凌牙を試す為に置いたカード…凌牙はその力を発揮する!

 

 

「このカードはORUを持っていないエクシーズモンスターの攻撃力を0にする!」

 

『無駄だ、装備魔法「エクシーズ・ユニット」はORUを使う効果を発動する時、その代わりとなる!』

 

「残念だが…効果によってORUの代わりになっても、そのカードはORUではない!!凍りつけ!!」

フィールドに極寒の吹雪が吹き荒れ、ゴルゴニックガーディアンを凍らせる!

 

 

「そして『ゴルゴニックガーディアン』の効果発動がする!フィールドの攻撃力0のモンスターは破壊される!自らの力で滅びろ!!」

 

『くっ…』

ゴルゴニックガーディアンは自らの力によって粉砕される…それは幻覚世界でも…。

 

 

 

………

 

 

 

《ギャオオオ!!》

 

「今だ!『鏡の盾』を持て─!!」

ベクター軍への反撃の為に船に乗った凌牙軍…ゴルゴンが怪光線を放った瞬間、鏡の盾によって光線を反射…跳ね返った光線はゴルゴンや敵船に命中し、大ダメージを与えた!

 

 

 

…………

 

 

 

「何を試したいのかは知らねぇが…いくぜ!自分フィールドにモンスターがいない事で『デプス・シャーク』をリリース無しで召喚!!」

凌牙の場にアンコウのような大口を持つ鮫が現れる!

 

 

「そして『デプスシャーク』でダイレクトアタック!」

 

『くっ…!』

デプスシャークの攻撃によってアビスに大ダメージを与える!

 

「俺はカードを伏せ、ターンエンドだ!」

 

 

 

 

 

『我のターン!』

 

「この瞬間!『デプスシャーク』の効果発動!相手ターンのみ、攻撃力が倍になる!よって攻撃力は2800だ!とっととこのデュエルに決着をつけてやる!」

アビスのターン、凌牙は自身の効果でデプスシャークをパワーアップさせる!

 

 

『そう上手くいくかな?我は魔法カード「ゴルゴニック・リチューアル」を発動!墓地の「ゴルゴニックガーディアン」を除外し、墓地の「ゴルゴニック・ゴーレム」「ゴルゴニック・ガーゴイル」を守備表示で特殊召喚!』

アビスの場に石の蛇と蛇頭の悪魔が復活する!

 

『さらに魔法カード「ゴルゴニック・パイル」を発動!我のフィールドの「ゴルゴニック」モンスターのレベルをフィールドに存在する「ゴルゴニック」モンスターの数だけアップさせる!よって、2体のモンスターのレベルは5となる!』

 

「レベル5のモンスターが2体…!来るのか!!」

 

『凌牙…お前の記憶を呼び起こせ!!』

 

キィン─!

 

レベル5のモンスター2体を揃えたアビス…彼は再び凌牙を幻覚世界へ誘った…。

 

 

 

 

…………

 

 

 

「べ、ベクター様!『ゴルゴン』は敵の鏡の盾によって壊滅!奴らはその勢いに乗り、反撃を開始しました!このままでは『黙れ』」

 

ザン!

 

ベクターに劣勢の報告をする兵士…彼は無情にもベクターによって斬殺された…。

 

 

『その死体を海に投げいれろ!オレにはまだ「全能の神」が付いている…!さぁ…血の契約の代償と引き換えに!お前の力をオレに貸せぇぇ!!』

ベクターは狂喜の笑みを浮かべる…そしてベクターは最後の手札を切った…!

 

 

『姿を顕せ!「全能の神」よ!!』

 

 

《オオオオ─!!》

 

 

「なにっ!?」

凌牙達の前に巨大な水柱が上がる…その中から青い鎧を纏う「全能神」が現れた…!

 

 

 

 

……………

 

 

73

 

『見るがいい!凌牙!現われよ!「No.73」!カオスに落ちたる聖なる滴よ…その力を示し、混沌を浄化せよ!「激瀧神アビス・スプラッシュ」!』

アビスの場に水色の宝玉が現れ、変形…大海を司る偉大なる海神が現れた!

 

「これが、遺跡のナンバーズ…!」

ついに現れた遺跡のナンバーズ…その力によって凌牙、そしてとある者達が幻覚世界に招かれた…。

 

 

 

@幻覚世界

 

 

…………

 

 

(これは…!?)

凌牙達の戦うフィールドから放たれた光に飲まれたアストラル…その目の前には夕暮れの海、そして「激瀧神」が何者かと戦う姿があった…!

 

(これは…遺跡の記憶なのか!?)

 

 

 

『何故だ…!?何故、私が遺跡の記憶を……あれは!?』

同じく幻覚世界に招かれたドルベ…その眼下には鎧を纏った凌牙がいた…!

 

『あの首飾りは…!()()()()()()()!?』

凌牙の下げる首飾り…それはバリアンの紋章と全く同じものだった…。

 

 

 

 

《オオオオ!!》

 

「ぐあああっ…!?」

ベクターに操られた全能神…「激瀧神」がその力を振るう、瞬く間に凌牙軍の船は沈められていく…その時だった。

 

 

『お兄様!!』

 

「璃緒!?」

馬に乗った巫女が戦場へと現れた…!

 

 

 

 

……………

 

 

「っ!?璃緒!?」

 

【神代凌牙…これから、お前の本当の試練が始まる…!我が名はアビス…今こそお前の力が試される…!】

幻覚から開放された凌牙…彼が見たのは空中に囚われた璃緒、そして青い鎧を纏い、髭を蓄えたナンバーズの精霊・アビスの本体の姿だった。

 

 

『「アビススプラッシュ」の効果発動!ORUを1つ使い!バトルの間、自身の攻撃力を倍にする!』

 

「攻撃力4800だと!?」

 

【これで…お前は終わりだ、いけ!『アビススプラッシュ』!『デプスシャーク』を攻撃!ファイナル・フォール!】

激瀧神が神罰の光線を放つ!

 

 

「まだだ!罠発動!『ハイド・アンド・シャーク』!自分のライフが2000以下で相手モンスターが攻撃してきた時!フィールドの『シャーク』モンスターを除外し、バトルを終了させる!」

凌牙のデプスシャークが消滅…バトルが終了する!

 

「そして…その代償として、ライフを半分支払う!!ガアアッ─!!」

凌牙の足元が爆発…凌牙は地面に叩きつけられる…残りライフは…僅か100…!

 

 

 

【なんとか凌いだようだな!】

 

『ぐうっ…!「ハイドアンドシャーク」の、さらなる効果!バトル終了時、除外した「デプスシャーク」を復活させ、このカードの効果で払ったライフ分、攻撃力をアップする!』

 

【モンスターを復活させたか…我はこれでターンエンドだ、だが…その程度の力では我がナンバーズは倒せんぞ】

次のターンへの布石を繋いだ凌牙…そして再び、凌牙は幻覚を見る…。

 

 

 

 

…………

 

 

 

『ギャハハハハハ!!』

 

「璃緒…璃緒─!!」

ベクターの笑い声が戦場に響く…璃緒は「激瀧神」の手に囚われてしまったのだ…!

 

 

『我に降伏しろ!さもなくば…貴様の妹は海の泡と消えるだろう!』

 

「っ─!!」

璃緒を人質に降伏を迫るベクター…その時だった!

 

 

《ヒヒーン!!》

 

『ハアアアッ!!』

 

『なにっ!?』

 

「お前は…ドルベ!?」

戦場に響く馬の嘶き…それは空を駆ける天馬の声…その天馬を操る騎士…それは人間時代のドルベだった!

 

 

『我が友よ!何を驚く!私がお前の危機に駆けつけないと思ったか─!!』

 

「俺とお前が…友…!?」

ドルベの思わぬ言葉に凌牙は驚愕する…!

 

 

『な、何をしている!奴を射落とせ!!』

 

『くっ…!?』

璃緒を救う為に空を駆けるドルベ…だが矢の雨で近付く事ができない…!

 

 

『さぁ…!選べ!妹を救うか!国を救うか─!』

 

『…「邪の呪印」を解くには…聖なる代償で神を浄化するしかない…』

 

「璃緒!?」

凌牙に無情な二択を迫るベクター…その時、璃緒がふらふらと立ち上がる…。

 

 

『お兄様…()()()が「アビス」を浄化するわ…』

 

「やめろ…やめろぉぉ!!」

兄を…国を守る為、璃緒は神の手からその身を投げた…その体は母なる海へと捧げられ…──

 

 

「璃緒…璃緒ぉぉ─!!!」

 

 

キィン─!

 

 

「あれは…あのモンスターは…!」

 

 

神を浄化する霊界の巫女として生まれ変わった…!

 

 

 

 

 

 

(あれは…遺跡の新たなナンバーズ…!?まさか、シャークと璃緒は…!!)

 

『ナッシュと…メラグだというのか…!?』

 

 

新たなナンバーズが生まれる一部始終を見ていたアストラルとドルベの驚愕と共に…幻覚は消えた…。

 

 

 

 

………………

 

 

 

「そんな…今のは、()()()()…俺は璃緒を、救う事は、できなかった…のか…?!」

幻覚が消え、凌牙は膝をつく…幻覚…否、記憶の中の璃緒を救えなかった無力感が凌牙にのしかかる…!

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴ…

 

 

「っ…!?」

 

【このフィールドは()()()()()()()()だ…お前は再び、この世界でも…妹を失うのだ…!お前の心の弱さが…大切なモノ全てを失わせる…】

凌牙の絶望と共に…璃緒の足元が崩れる、そこには全てを飲み込む渦潮が口を開けている…!

 

 

『………』ガクン

 

「や、やめろおぉおぉぉ!!」

アビスによる拘束を解かれた璃緒…その体は記憶の世界と同じく、海へと投げ出され…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン─!

 

 

 

 

 

 

 

 

《キュアアアア!!》

 

 

「カッとビングだあああああ!!」

 

 

「遊馬!!」

赤い炎と化した遊馬に見事に受け止められた…!

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「『針剣士』!頼むぞ!!」

 

《ハリ─!!》

遊馬は迷宮を駆ける…アストラルはドルベが遺跡に侵入する際に開けた穴から入る海水を見て、迷宮の攻略法を見つけた…。

それは水は「高い所から低い所」に流れる性質を利用し、水に流れに従い出口を目指す…というもの、遊馬は必死に針剣士を追いかけていた…。

 

 

「ま、まずい!シャークのライフが…!」

遺跡のナンバーズによって絶体絶命の凌牙…さらに璃緒の足元が崩れ始めている…!

 

「このままじゃ…!なんだかヤバい─!!」

嫌な予感を感じる遊馬…その時だった。

 

 

キィン─!

 

 

「うわっ!?」

遊馬のデッキケースが輝き、1枚のナンバーズが飛び出す、そのカードは…

 

「『No.93太陽皇ホープ・フェニックス』…!」

それは遊海の分身とも言える「絆のナンバーズ」…飛び出した「No.93」から炎が溢れ、火の鳥へと変化する!

 

 

「遊海…今だけでいい!力を貸してくれ!!」

 

《キュアアアアア!!》

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「シャーク!璃緒は助けたぜ!!心おきなく、そいつをぶっとばせ!!」

 

「遊馬…!」

かけがえのない友の手で璃緒は救われた…その時、凌牙の前に新たな遺跡のナンバーズが姿を現す!

 

 

「このカードは…璃緒の化身のナンバーズ…!」

 

【さぁ…凌牙!我を倒し、自分の記憶を取り戻し…王として世界を導くのだ…!】

 

「ふざけるな…!俺は誰でもねぇ…!俺は、『俺』だぁぁ!!」

凌牙に試練を課してきたアビス…彼への怒りを燃やし、凌牙は魂の咆哮を上げる!

 

 

 

 

「俺は罠カード『フル・アーマード・エクシーズ』を発動!このカードはまず、エクシーズ召喚を行い、召喚したエクシーズモンスターにフィールドのエクシーズモンスターを装備し、その攻撃力分装備モンスターの攻撃力をアップする!俺はレベル5の『デプスシャーク』と装備魔法『アクア・ミラージュ』の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

 

94

 

「現われろ!『No.94』!氷の心を纏いし、霊界の巫女!その聡明なる魂を顕せ!『極氷姫クリスタル・ゼロ』!」

凌牙の場に氷の結晶が現れ、変形…全てを凍らせ、浄化する巫女が現れる!

 

 

「そして俺は『フルアーマードエクシーズ』の効果でフィールドの『ブラックレイランサー』を『クリスタルゼロ』に装備!攻撃力を2100アップさせる!攻撃力4300だ!」

霊界の巫女が紅き槍を構えた戦士「クリスタル・ゼロ・ランサー」へと姿を変える!

 

【そうはいかん…!『アビススプラッシュ』の効果発動!ORUを1つ使い、自身の攻撃力を倍にする!】

 

「甘いぜ!『クリスタルゼロ』の効果発動!ORUを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を半分にする!俺は…その効果を2回使い!『アビススプラッシュ』の攻撃力を1200まで下げる!!クリスタル・イレイザー!」

荒々しき海神は巫女の祈りによって弱体化する!

 

 

「『クリスタルゼロ』で『アビススプラッシュ』を攻撃!クリスタル・ジャベリン─!!」

 

【ぬっ…!ぐああああ…!!】

巫女の槍が海神の胸を貫く…その一撃によって試練の決闘は終わりを迎えた…!

 

 

 

 

アビスLP0

 

凌牙Win!

 

 

 

 

 

「…何故だ、何故…俺を試した…!」

凌牙は倒れたアビスに試練の目的を問いただす…!

 

【我はそなたの命令に従ったまで…そなたの「記憶を呼び覚ませ」という命令に…】

 

「俺の…命令だと…!?」

そう言うとアビスは霞と消え…凌牙の手に「No.73」が現れた…。

 

 

「これが、()()()()()()()…!?まさか、そんな…!!」

そして…凌牙達は霧に包まれ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side飛行船

 

 

「遊馬!アストラル!シャーク!璃緒さん─!」

時刻は夕暮れ…遊馬達が行方不明となり数時間、小鳥は叫び続けていた…。

 

 

キィン─!

 

 

「ここは…飛行船!?」

 

(戻って来た…のか)

 

「遊馬!アストラル!!」

飛行船の甲板に光が集う…そして遊馬達がワープしてきた!

 

 

「っ!璃緒!!…ああ、そんな!?」

再会を喜ぶ遊馬と小鳥…だが…1人だけ、無事ではない者がいた…。

 

 

「璃緒…璃緒ぉぉ!!」

 

 

甲板に倒れ込む璃緒…彼女は、再び深い眠りに落とされた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【遺跡のナンバーズがアストラル達の手に渡ったか…ベクター、ナンバーズ96を探せ…!奴がそろそろ動き出す…!】

 

『ドン・サウザンド…!テメェ、何を知ってやがる…?』

 

 

()()()…お前が人間だった事も、お前がバリアン世界に転生し…ナッシュとメラグを()()()()もなぁ…】

 

『っ─!?』

 

 

混沌が解き放たれるまで…あと僅か…──



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『黒』の大暴走─永遠の別れ─

こんにちは!S,Kです!

ついに、遊馬とアストラルに最大の試練が訪れる…!
遊馬は…この試練を乗り越える事ができるのか…?



それでは…最新話をどうぞ


ぐうっ…!?ぐあアア…があアア!!

 

とある次元の狭間…そこにある禍々しい色をした光の玉の中から苦しげな絶叫が響く…。

 

 

カオスの力が…体の中デ、暴れ回ル…!オレの存在、全てヲ、消し去ロうトいうノかぁァ…!?

球体の正体…それは「No.96」が作り出した「繭」だった。

彼は「悲鳴の迷宮」でのアストラルとの決闘の際、自らに「RUM-バリアンズ・フォース」を使った事で膨大なカオスの力を得た…だが、あまりにも強大なカオスの力を制御できず、自壊しかけていたのだ…。

 

 

【…ダガ、オレは…!オレは!奴ヲ…アストラルを倒す、為なラば…!!この身ガ、引き裂かれヨうトも─!!この力を…我が物にィィ!!

 

 

ギィン─!!

 

 

「アストラルを倒す」…その為だけに96は無理矢理にカオスの力を呑み込む…そしてエクシーズ召喚時のような光の大爆発が起き──

 

 

 

【俺は…アストラルを…いや、万物を超えた!我は…「神」だあああぁぁ!!

凄まじい執念で96はカオスの力を制御する…肥大化した肉体は幾分か縮んだものの、宿す力は数倍に膨れ上がっている。

 

それは…まさに、新たな「邪神」が誕生した瞬間だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……遊海さん、璃緒ちゃんが…遺跡から帰って来て…昏睡状態になっちゃいました……凌牙君が、ずっと付いてくれてます…それに、きっと()()()()()()()()…」

 

遊馬達の「深海の迷宮」攻略から数日…退院した翠は眠り続ける遊海に語りかけていた…。

遺跡でナンバーズの精霊・アビスに操られた璃緒は肉体・精神に強いショックを受けた事により昏睡状態になり、ハートランド病院に入院している…それと同じくして凌牙は深く悩む様子を見せ、毎日のように見舞いに来ていた遊海の病室を訪れなくなっていた…。

 

 

「…今朝のニュースで、世界中で異常気象が起きてると言ってました……たぶん、()()…あの事件が起きます……遊海さん…お願い…起きて…!お願い…!!」

翠は涙ながらに遊海に呼びかける、遊海がネームレスによって昏倒させられてから約2週間…精神の支柱である遊海を失ってしまった翠は弱気になり、情緒が不安定になってきていた…。

 

 

《…次元の狭間で異常なエネルギー値を計測…「仮想」アストラル世界、バリアン世界への干渉…並びに人間界への影響を確認……データから「No.96」による攻撃と推察します…》

 

《ミドリ…泣いている場合ではありません、ユウミが動けない今…貴女がしっかりしないでどうするのです!》

 

「アヤカちゃん…フレアさん…」

落ち込み気味の翠を叱咤するフレア…ハートランドの空は彼女達の心情を映すかのように厚い雲に覆われていた…。

 

 

 

 

 

 

 

「クカ〜…クカ〜…」

 

(遊馬…起きろ!遊馬!)

 

「フガッ…?どうしたんだよ、アスとどわっ!?」

 

ドッシーン

 

同じ頃、自宅のハンモックで寝ていた遊馬が叩き起こされる…なお、ハンモックから落ちたのは寝ぼけた遊馬自身のせいである。

 

 

「いってぇぇ〜…!」

 

(遊馬、アストラル世界で何らかの異変が起きているようだ…!)

 

「なんだって!?」

 

(それだけではない…おそらく、この世界にも…!)

 

 

 

 

『異常現象が世界各地で多発しています!休火山の突然の噴火…世界各国でのオーロラの出現…南国への流氷の漂着、突然の大型台風の発生など──……』

 

「な、なんだよこれ…!?」

 

「まったく…!アンタはお気楽なんだから!今朝から世界中が大騒ぎなのよ!?」

身支度を整えた遊馬がリビングへとやってくる、そして明里が見ているニュース番組では世界各国で同時発生した天変地異のニュースが放送されていた…。

 

 

(やはり…!このアストラル世界と人間界の異変は関係しているようだ…!)

 

「なんだって…!」

 

((そしてこの感覚…おそらく、「No.96」の仕業か…!))

アストラルは異変を通じ、邪悪な意思を感じ取った…。

 

 

 

 

 

「璃緒…何故だ、何故お前は…また…!」

ハートランド病院のとある病室…そこには「深海の迷宮」攻略後から眠り続ける璃緒、そして彼女に付き添う凌牙の姿があった。

 

 

「いったい…俺達は…なんなんだ…!?」

眠り続ける璃緒の前で凌牙は頭を抱える、遺跡で垣間見た「記憶」…それが事実なのだとすれば、それは()()()()や遊馬にとって…()()()()()を意味する事だった…。

 

 

 

「…や、み…」

 

「璃緒…!?」

眠り続ける璃緒…意識のないはずの彼女が再び予言を語る…!

 

 

「大きな、闇が…遊馬を…包み、こむ……()()()()()()…!」

 

「遊馬…!?」

璃緒の紡いだ言葉に嫌な予感を感じた凌牙は急いで遊馬のもとへと向かった…!

 

 

 

 

 

 

「遊馬…でも、あの遺跡以来…璃緒さんはずっと目を覚まさないのよ?」

 

「わかってる…けど、前に意識がない時にバリアンの事を予言しただろ?だから…今回の手掛かりも聞けるかなって…それに!急に良くなって目を覚ましてるかもしれないしさ!」

厚い雲に覆われたハートランド…遊馬と小鳥は二人で璃緒の入院する病院へと向かっていた。

お見舞いがてらに人間界を襲っている「異変」の手掛かりを掴む為に…そして…。

 

 

「…それにさ、オレ…シャークの事が心配なんだ」

 

「シャークの事…?」

 

「ああ…ネームレスに襲われて、遊海は今も苦しんでる…それに続いて璃緒まで……そのせいなのか、ずっと考えこんでるっていうか…なんだか、変なんだ…」

 

((遊馬…))

凌牙の事を心配する遊馬…アストラルは遺跡で垣間見た「記憶」を思い返す。

…遺跡の記憶が事実ならば、それは遊馬にとって…いや、凌牙達の家族である遊海と翠にとっても…あまりにも残酷な事実だからだ…。

 

 

 

(遊馬、シャークはいずれ…君に()()()()()をしてくるかもしれない)

 

「えっ…?アストラル!シャークの悩み事に心当たりがあるのか?」

 

(…彼が自分から話さないのならば…今は何を話しても仕方のない事だ……だが、話すならば遊海や翠よりも先に……遊馬に相談するだろう)

アストラルはあえて真実を語らず、遊馬に語り掛ける…そして、確信していた…凌牙が最初に相談するのは遊馬だろうと…。

 

 

「なんだよ…!だったら遠慮しないで話してくれりゃ良いのに…」

 

(…例え、それが君に苦しみをもたらす事になっても…?)

 

「当たり前だ!だって…『仲間』じゃねぇか!」

 

(…仲間…か…)

遊馬はきっと変わらない…例え、凌牙の正体が『怪物』であろうと…遊馬は変わらずに彼を『仲間』と呼ぶ……アストラルはそう思った…。

 

 

 

ギュイーン…キキーッ!!

 

 

 

「遊馬!無事か!?」

 

「シャーク!?どうしたんだよ?無事って…なんのこっちゃ…?」

噂をすれば影がさす…バイクの音を響かせながら、凌牙が遊馬のもとへとやって来る…その様子は何処か焦っているようだった。

 

 

「璃緒が、お前が危ないって口走ったんだ…!無事な「キャッ!?」っ!?」

 

「小鳥!どうした!?」

凌牙の言葉を遮るように小鳥が小さな悲鳴を漏らす…驚いた遊馬達が小鳥を見ると…小鳥は痛そうに手のひらを擦っていた…。

 

 

「ご、ごめん…!降ってきた()に触ったら…」

 

「雪…?」

小鳥の言葉に遊馬は空を見上げる…すると、厚い雲に覆われた空から()()()が落ちて来た…遊馬は思わず手を伸ばし…

 

バチッ! 

 

「いってぇっ!?」

 

(これは…!?)

手のひらに落ちた黒い雪は強い静電気のような痺れを遊馬に与えた…!

 

 

「お前達!空を見ろ!!」

 

「な、なんだありゃ…!?」

そして再び空を見上げた遊馬達は気付いた…遊馬達の頭上の雲が台風の目のように渦を巻いていたのだ…!

 

 

ゴロゴロ…ピシャーン!

 

 

「きゃあああ…!?」

 

「い、いったいなんなんだ!?」

 

(これは…もしや…!!)

さらに異変は続く…その雲から無数の雷が発生、稲妻となってハートランドの()()()に降り注ぎ…そして…。

 

 

アハハハハ…!ギャハハハハハハ!!!

 

 

「「「っ─!?」」」

空に不気味な瞳の幻影が発生、そして不気味な笑い声と共に遊馬達に重圧がのしかかる…!

 

 

(とてつもない、パワーだ…!今までに出会った事のない程に…!)

力の正体を察したアストラルは警戒する…だが…。

 

 

 

ギャハハハハハハ!!

 

 

ギィン─!

 

 

「「「うわあああああ─!?」」」

邪悪なエネルギーが遊馬達を包み、何処かへと連れ去ってしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぅ…?ここは……?」

 

「遊馬!」

 

「小鳥!シャーク!…カイト!?どうして!?」

 

「わからん…!強力な次元の歪みに巻き込まれたんだ…!」

遊馬が目を覚ました時、周囲の景色は一変していた…そこは次元の狭間、赤い水晶が乱立する不可思議な場所だった。

そして遊馬とアストラルから少し離れた所には小鳥と凌牙、そしてカイトとオービタル7の姿があった、ハートランドで発生した異変の調査中に遊馬達を攫った謎の力に巻き込まれてしまったのだ。

 

 

 

【クハハハハ…!会いたかったぞ?遊馬…そして、アストラル…!】

 

「『No.96』!!お前の仕業だったのか!!」

次元の狭間に笑い声が響く…それは遊馬達を攫った張本人、混沌の邪神「No.96」のものだった…!

 

 

【ハッ…!招かれざる客もいるが…よかろう、お前達からは後ほどナンバーズを頂く…!首を洗って待っていろ!】

 

(「No.96」…!今、人間界で起きている異変…キミの仕業か…!)

 

【その通り…!見るがいい!!】

遊馬達の目の前に降り立った96が眼を輝かせる…すると、遊馬達の足元に攻撃を受ける青い銀河…アストラル世界の映像が浮かび上がった!

 

 

「これは…!?」

 

【キヒッ…!アストラル世界だけではない!今や俺の力はバリアン…そして人間界まで影響を及ぼす!!】

 

(お前は…アストラル世界を滅ぼそうというのか…!!)

 

【そうだ…!跡形も無く消し去ってやるつもりだ…!】

 

「なんだって…!!」

アストラル世界の惨状を見ながら96は獰猛な笑みを浮かべる…!

 

 

「お前にとって…アストラル世界は『故郷』じゃないのかよ!?」

 

()()()()()()()()()…!『神』である俺に故郷など不要!『神』として…まずは貴様らを葬る!!】

自身の故郷とも言えるアストラル世界を滅ぼすと豪語する96…その瞳には凶気が宿っていた…。

 

 

【さぁ…決着の刻だ…!ここが貴様らの墓場となる!!】

 

ギィン…バチバチバチ!!

 

 

(これは…『バリアンズ・スフィア・フィールド』だと!?)

96が腕を掲げる…すると頭上に現れた()()()を起点としてバリアンの力…スフィアフィールドが遊馬とアストラルを包み込んだ…!

 

【言っただろう?俺は『神』だと…!神に創れぬモノなどない!そして、この結界の中では…我は絶対的存在なのだ─!!】

 

ビシャーン!!

 

(「ぐあああああ!?」)

 

「遊馬!アストラル─!?」

スフィアフィールドから放たれた稲妻が遊馬とアストラルを直撃…バリアンの力が容赦なく身体を撃ち抜き、遊馬とアストラルは膝をついてしまう…!

 

 

「卑怯な…!!」

 

「ずるいわよ!正々堂々戦え─!!」

96のあまりに卑劣な行いにカイトと小鳥が声を上げる…だが、96は()()()()()()を行っていた…!

 

 

《か、カイト様!!大変でアリマス!!》

 

「どうした!」

 

《スフィアフィールドの起点となっている水晶に…()()が囚われているでアリマス!!》

 

「なにっ!?」

スフィアフィールドを分析していたオービタルがさらなる異常を見つける、カイト達は遊馬達の頭上にある水晶へと目を凝らした…そこにいたのは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…!?」

 

 

()()()!?」

 

 

 

96によって赤水晶に囚われていた人物、それは病院で眠り続けているはずの遊海だった…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

 

《次元の歪みが拡大中…ハートランド病院近くで次元の穴が開きそうです…!》

 

「…黒い雪……遊馬君…」

翠は病院の窓から黒い雪の降る外を見つめる、微かに残る物語の記憶が遊馬とアストラルに近付く危険を知らせていた…。

 

 

「……遊馬君なら、きっと乗り越えられますよね…遊海さん……私も一緒に遊馬君を…凌牙君を支えます…だから…!」

遊海へと寄り添い、遊馬達の無事を祈る翠…その時だった!

 

 

 

 

─────!!!

 

 

 

 

 

突然、翠の視界は真っ白になった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぇ…?」

失神していた翠は目を覚ます…その体は灼かれたような痛みに包まれ、服もボロボロになっていた。

 

それはあまりに一瞬の出来事だった…突然、遊海の病室に雷が落ち…その衝撃によって翠や精霊達も壁に叩きつけられ、失神していたのだ…。

 

 

《い、いったい、な、何が…この部屋、ピンポイントに、雷が、落ちるわけ、ない…!》

 

《ぶ、物理ホウソクをむ、無視、した、エネルギーガ、、発生…高密ど、のカオスのちから、ガガ、ガ…!》

突然の事にフレアとアヤカは動揺する…アヤカにいたっては雷によってバグが発生してしまっている…。

 

 

《ぐ、ぬ…!?ゆ、遊海が…!遊海がおらぬ!!》

 

《馬鹿な…!今の一瞬で主殿を連れ去ったのか…!?》

岩の肉体で一番被害の軽かったメガロックがいち早く病室を見回し…気付いた、雷の落下地点にいたはずの遊海…だが、粉砕されたベッドからその姿が忽然と消えてしまっていたのだ!!

 

「しまった…!!まさか、遊海さん…狙って…!?ゆ、遊海さん─!!」

麻痺して自由の効かない身体で翠は叫ぶ事しかできなかった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「ゆ、遊海─!?」

 

(「No.96」!お前は…いったい何を考えている!?)

囚われた遊海に気付いた遊馬達は96にその真意を問いただす…!

 

 

【クハハ…!その男は散々俺の事をコケにしてくれたからなぁ…!お前達と一緒に葬ってやろうと思ってなぁ!!】

 

「て…テメェェ!!遊海は関係ねぇだろうが─!!」

96の身勝手な言葉を聞いた遊馬は怒りを露わにする、遊海はかつて96を歯牙にもかけずに倒した事があった…96はそれを根に持っていたのだ…!

 

 

【さぁ…!その男を助けたいなら掛かって来い…!!】

 

((くっ…バリアンズスフィアフィールドは私と遊海にとっては()()…!時間が長引けば彼も…遊馬も危険だ…!私が倒れている場合ではない!!))

 

不敵に笑う96を前にアストラルは思考する…こうして考えている今も、アストラルと遊馬はスフィアフィールドから放たれる電撃にじわじわとその身を灼かれ続けている、それは水晶に閉じ込められている遊海も同じ…否、スフィアフィールドの起点に囚われているなら、さらにダメージが強いかもしれない…。

遊馬と遊海の体の事を考えれば…今の「最善手」は…。

 

 

 

(ぐっ…!!遊馬、このデュエル…勝つぞ!!)

 

「アストラル…!おう!!奴を倒して、遊海を助けるんだ!」

アストラルは全身を包む痛みを堪えながら立ち上がり、遊馬と並び立つ!

 

 

【最後の別れは済んだか?さぁ…デュエルだ!!】

 

「覚悟しやがれ!『No.96』!オレ達の絆で…お前を倒す!!」

 

 

次元の狭間で96と遊馬達の最後の決闘が始まる!!

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

 

デュエルダイジェスト 邪神・No.96対遊馬&アストラル

 

 

 

 

 

96

 

 

【現れろ!我が分身「No.96」!「ブラック・ミスト」!】

先攻を取ったのは96…彼は自身の分身を呼び出し、さらに…!

 

 

【さぁ…!神の力を見るがいい!「RUM-バリアンズ・フォース」を発動!「ブラックミスト」をランクアップさせ、カオスエクシーズに進化させる!カオス・エクシーズチェンジィィ!!】

 

 

96

 

 

【現れろ!「CNo.96」!混沌なる漆黒の風と共に舞い降りろ!「ブラック・ストーム」!!】

暗黒の爆発と共にブラックミストが新生…混沌の力を纏いし悪魔の獣が現れる!

 

 

【アストラル…!これで貴様の消滅へのカウントダウンは始まった…!俺はカードを伏せ、ターンエンドだ!】

不敵な笑みを浮かべた96は静かにターンを終えた…。

 

 

 

(遊馬、早々にカオスナンバーズを召喚する戦略…必ず何かあるはずだ、気を付けろ…!)

 

「ああ…!いくぜ!!」

 

 

 

 

39

 

 

「現れろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!」

遊馬はエースである希望の戦士を召喚…そしていきなり切り札を切る!

 

 

「一気にいくぜ!!オレは『RUM-ヌメロン・フォース』を発動!オレは『希望皇ホープ』を素材にオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

39

 

 

「現れろ!『CNo.39』!希望に輝く魂が!森羅万象を網羅し、未来を導く力となる!『希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』!」

光の爆発と共にホープが進化…遊馬とアストラルが掴んだ絆の象徴、勝利の皇帝が現れる!

 

 

【ククク…!】

 

(っ…?あの表情は…)

ホープレイヴィクトリーを前にしても…96は不敵な笑みを崩さない…!

 

 

「ぐっ…いくぜ!!『ヌメロンフォース』の効果により、このターンの間『ブラックストーム』の効果は無効となっている!!これで『ブラックストーム』の効果は発動できない!」

 

スフィアフィールドの電撃に耐えながら…遊馬は「ヌメロンフォース」の真価を発揮する。

『ブラックストーム』は戦闘破壊された時、お互いに戦闘ダメージを受ける効果を持っている…今ならば効果を気にする事なく、撃破できるが…96はそれを見透かしていた…!

 

 

【ハハハハ…アハハハハ!!まんまと俺の巡らせた策略に引っかかったなぁ…!】

 

「なにっ…!」

 

【アストラル…!このフィールドによってダメージを受け、白波を人質に取られた貴様らは不利…ならば、カオスエクシーズを召喚し、短期決戦で活路を見出す…そう来ると思っていた!!罠カード発動!「カオス・クロス」!相手が「C(カオス)」と名のつくエクシーズモンスターを特殊召喚した時!そのORUを全て墓地に送る!】

 

「なっ!?『ヴィクトリー』のORUが!?」

ホープレイヴィクトリーを紫電が貫き、その力を削ぐ…96は遊馬達を肉体・精神的に追い詰め、カオスエクシーズを召喚するように誘導していたのだ。

 

 

【そして…私はデッキからフィールド魔法を1枚、手札に加える…!さらにこのターン、「C」と名のつくモンスターは攻撃できない!】

 

「ぐっ…!攻撃を封じられた…!」

 

(遊馬…!ここは奴の出方を見るしかない…!)

 

「わかった…!カードを伏せ、ターンエンドだ!」

攻撃を封じられた遊馬はターンを終える…それは96の猛攻の狼煙だった…!

 

 

 

 

【俺のターン、ドロー!これで、神である俺の()()()()()()()()()()()()()!!俺はフィールド魔法「カオス・フィールド」を発動!】

 

(っ…!究極のフィールドだと!?)

96が禍々しいオーラを放つフィールド魔法を発動…するとスフィアフィールド突き破りながら赤紫の水晶が乱立し、遊馬達と96を包み込む…!!

 

【このカードは1ターンに1度、自分フィールドの「CNo.」のカオスORUを1つ使い、()()()()()()()()()()()からランダムに選んだ「No.」1体をモンスター効果を無効にし、自分フィールドに特殊召喚する!!】

 

 

「なんだって!?っあぐ…!?」

 

(遊馬!!)

「カオスフィールド」の規格外の効果に驚愕する遊馬に再びカオスの電撃が襲いかかる!

 

【ククッ…!「カオスフィールド」もまた『神』のフィールド…!貴様らに苦痛を与え続ける…もちろん、貴様にもなぁ─!!】

 

バヂッ!!

 

───!!?

 

「や、やめろぉぉ!!!」

96が中空に浮かぶ遊海の囚われた赤水晶に手をかざす…そしてカオスの稲妻が遊海を直撃…囚われた遊海は苦痛に顔を歪める…!

 

 

【そうだ…!もっと…もっと苦しめ!!我が「神の力」にひれ伏すがいい!!「カオスフィールド」の効果発動!貴様のナンバーズを戴くぞ!!】

 

ギィン!

 

「ぐっ!?ナンバーズが!!」

カオスフィールドから放たれたエネルギーが遊馬を直撃…96の手元にナンバーズを奪う…!

 

 

69

 

【フッ…開放しろ、怒りを!!現れろ!「No.69」!「紋章神(ゴッド・メダリオン)コート・オブ・アームズ」!】

 

「トロンのエースモンスター…!!」

96の場にWDCにおいて遊海・カイト・遊馬を苦しめた黒き魔神が現れる…!

 

 

 

「まずいぞ…!『コートオブアームズ』はエクシーズモンスターの効果を無効にして、自分の効果にできる…!」

 

「そんな…!!」

状況を見守る凌牙が冷や汗をかく…だが、神を自称する96はさらなる暴挙に出る…!

 

 

【驚くのはまだ早い…!「カオスフィールド」のさらなる効果発動!相手のエクストラデッキから奪った「No.」を1つランクが上の「CNo.」にランクアップさせる!!俺は「コートオブアームズ」でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジィ!!】

 

(『RUM』の効果を持つフィールド魔法だと!?)

コートオブアームズが銀河に飛び込み、暗黒の爆発と共に再誕する!

 

 

69

 

 

【現れろ!「CNo.69」!「紋章死神(デス・メダリオン)カオス・オブ・アームズ」!!】

 

「『コートオブアームズ』が…敵のカオスエクシーズに…!?」

混沌の力を宿した異形の死神が遊馬に立ち塞がる…!!

 

 

【さぁ…いくぞ!「カオスオブアームズ」の効果発動!カオスORUを1つ使い!相手モンスター1体の攻撃力を自分のモンスターに加え、そのモンスターの効果を奪う!】

 

「しまった!!このまま攻撃を受けたら…!」

 

(4000のダメージを受けて、我々の敗北…!!)

 

【そう…これで貴様らは終わりだ!!】

カオスオブアームズの元々の攻撃力は4000、そこにヴィクトリーの攻撃力2800を加え6800…ワンショット・キルが成立してしまう…!

 

 

 

【「カオスオブアームズ」で「ホープレイヴィクトリー」を攻撃!カオス・デス・ドゥーム!!】

死神が凄まじいエネルギーを溜め、遊馬達に向けて構える…!

 

(くっ…!!遊馬!罠カードを!!)

 

「わかった!罠カード『ナンバーズ・マジック・バスター』発動!自分フィールドの『No.』をリリースし、デッキから永続魔法の効果を発動する!オレが選ぶのは…永続魔法『炎の護封剣』だ!!」

それは遊馬とアストラルの苦肉の策…勝利の皇帝が消え、数多の炎を纏う剣が遊馬を守る壁となる!

 

 

「『炎の護封剣』の効果発動!自分の場にモンスターがいない時!相手モンスターは攻撃できない!!」

 

【フッ…苦し紛れとはいえ、咄嗟に破滅を躱したのは褒めてやる…俺はカードを伏せ、ターンエンドだ】

 

「ぐっ…オレは負けねぇ…!ぐうぅ…!! 」

電撃を受け続け、満身創痍の遊馬…だが、その目はまだ死んではいない!

 

 

 

 

「オレの、ターン!ドロー!!」

 

(遊馬…!ここは仕掛けず、様子を見るぞ…!)

 

「わかった…!オレはカードを伏せ、ターンエンド…!!」

体制を立て直すべく、遊馬達は機を窺う…!

 

 

 

【機を窺う?手も足も出ないの間違いだろう?俺のターン!ドロー!!】

96は動かない遊馬達をあざ笑いながら…再び、カオスフィールドの効果を使う…!

 

 

【「カオスフィールド」の効果発動!「ブラックストーム」のORUを1つ使い!貴様のエクストラデッキの「No.」を戴く!!】

 

「くっ…!!」

再びカオスの力が遊馬に襲いかかり、ナンバーズが奪われる…そのカードは…!

 

 

92

 

 

【ククッ…!偽りの骸を捨て、神の龍となりて現われよ!「No.92」!「偽骸神龍Heart-eartH Dragon(ハート・アース・ドラゴン)」!】

 

「Dr.フェイカーのナンバーズ…!!」

それは息子を救う為、全てを捨て続けた男の切り札…凶悪なナンバーズが再び牙を剥く…!

 

 

【「カオスフィールド」の効果発動!!俺は「Heart-eartH Dragon」でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!】

暗黒の爆発と共に偽骸の神が再誕する…!

 

 

92

 

 

【現われよ!「CNo.92」!「偽骸虚龍Heart-eartH Chaos Dragon(ハート・アース・カオス・ドラゴン)」!!】

 

「『Heart-eartH Dragon』までカオスエクシーズに…!!」

カオスの力を得て肉体を捨て去り、骨のような身体となった神龍が咆哮する!

 

 

【「Heart-eartH Chaos Dragon」の効果発動!カオスORUを1つ使い、相手モンスター及び、魔法・罠カードの効果全てをターン終了時まで無効にする!!さらに!フィールドにセットされたカードも発動できない!!】

 

「なにっ─!?」

遊馬のフィールドを煉獄の炎が覆う…それにより全てのカードが凍りついてしまう!

 

 

【これで貴様らは丸裸も同然…!これで本当に終わりだ─!!】

 

「まだだ…まだオレは──!」

 

 

バチッ!!

 

 

「っあ…!?」

 

(遊馬…?遊馬!!しっかりしろ!!)

それは小さな不運…遊馬を襲った電撃の当たり所が悪く…遊馬は一瞬、意識を失った…。

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

 

「力の流れを意識しろ、自分とモンスターの間に繋がる『糸』を意識するんだ!」

 

「ぐぬぬぬ…!」

そこは夕日の差すハートランドの海辺…そこで遊馬は遊海に精霊の力の指導を受けていた。

頭から湯気が出る程に力む遊馬…その前にはARビジョンではなく、半ば実態を持った『希望皇ホープ』が召喚されていた…。

 

 

「うおおっ…!!かっとビングだ!オレ─!!」

 

キィン─!

 

「よし!これで第二段階はクリアだ、並のサイコデュエリストよりは強くなったな!」

 

(よく頑張ったな、遊馬)

 

「ヒィ〜…疲れた〜!」

努力の結果、遊馬は単独でモンスターを実体化させる事に成功した…だが、あまりの疲労感に座り込んでしまう…。

 

 

「第三段階は『カードの精霊』と意思疎通する事だ…最近のソリッドビジョンやARビジョンは再現性が高いから勘違いしやすいが…あれは本当の意味で意思疎通できてる訳じゃない、次の目標はデュエル外で『ホープ』と動けるようになる事だな」

 

(遊馬、ホープはそこまで気難しい精霊ではない…すぐに応えてくれるさ)

 

「えっ…?アストラルはホープと話した事あるのか!?」

アストラルの思わぬ言葉に遊馬は驚く…。

 

 

(ああ、以前「No.96」の封印が緩んだ時、ホープと「No.49」だけが私に力を貸してくれたんだ…その時、僅かだがホープの意思を感じる事ができた)

 

「うぅ〜やっぱりアストラルはスゲェな〜…よーし!オレもお前に追いついて…追い抜かしてやるぜ!!」

 

(ああ…楽しみにしているぞ、遊馬……君になら、ナンバーズを託す事ができる…私が人間界で最初に出会ったのが君で良かった、ナンバーズを頼んだぞ…)

 

「アストラル…?」

 

「ほら!そんな湿っぽい話はするなよ?お前達はたくさんの人達に守られてるんだからな」

 

 

それは…バリアン襲撃前の穏やかな日々の1ページだった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

(遊馬…!遊馬!大丈夫か!?)

 

「あ、れ…?アストラル…?オレ、何して…?」

アストラルの呼びかけで遊馬は正気を取り戻す…。

 

 

(しっかりしろ!我々は「No.96」とのデュエル中だ!)

 

「っ─!!」

 

【どうしたぁ?幻覚でも見ていたのかなぁ?】

アストラルの言葉で遊馬は抜け落ちていた記憶を思い出す…ダメージの蓄積によって遊馬は一種の走馬灯を見ていたのだ。

 

 

 

 

 

『奴め…こんな所で勝手な事しやがって…』

同じ時、遊馬と96がデュエルする異次元にベクターがやって来る…彼はフィールド外の水晶に身を隠してデュエルの様子を窺っていた…。

 

『…だが、この「カオスフィールド」はいるだけで遊馬やアストラル…そして何故か捕まってる白波遊海にもダメージと苦痛を与える…楽しく見学させてもらうぜぇ…!!』

ベクターは愉快な状況を見ながら邪悪な笑みを浮かべた…。

 

 

 

 

 

 

(「Heart-eartH Chaos Dragon」の効果でフィールドの効果は封じられている…次の一手が正念場だ…!)

 

()だと?貴様らに次などない!!「カオスオブアームズ」でアストラルにダイレクトアタックだ!】

死神が再び凄まじいエネルギーを集中させる…!

 

 

(遊馬─!)

 

「おう!手札の『ガガガガードナー』の効果発動!ダイレクトアタックを受ける時、自身を攻撃表示で特殊召喚できる!そして自分フィールドにモンスターが召喚された事で『炎の護封剣』は破壊される!!」

凍りついた剣が砕け、盾を構えた戦士が現れる!

 

 

【チッ…悪あがきを!!「カオスオブアームズ」!「ガガガガードナー」を攻撃!】

 

(まだだ!「ガガガガードナー」の効果発動!手札を1枚捨てる事でバトルによる破壊を無効にする!)

 

「オレは手札の『タスケルトン』を墓地に送る─!ぐあああっ…!!」

ガガガガードナーは盾で攻撃を受け止めるが、攻撃の余波が遊馬を吹き飛ばす…!

 

 

【フン…貴様らの破滅は変わらん…!!『ブラックストーム』よ!「ガガガガードナー」を攻撃!その瞬間、効果発動!バトルする時!カオスORUを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を0にし、その数値分自身の攻撃力を上げる!】

ガガガガードナーがカオスの力に貫かれ、力を奪われる!

 

「まだだ!オレは墓地の『タスケルトン』の効果発動!墓地のこのカードを除外し、『ガガガガードナー』の戦闘破壊を無効にし…受けるダメージを0にする!!」

 

《タスケル…トーン!!》

墓地から飛び出した子豚が自身の骨格を撃ち出し、攻撃を受け止める!

 

 

【往生際の悪い…!!見苦しいぞ、アストラル!!】

 

(私達は…負けはしない!!)

攻撃を耐え続ける遊馬達に96は苛立ちを募らせる…!

 

 

【なら…さらなる苦痛を味わうがいい!「Heart-eartH Chaos Dragon」で「ガガガガードナー」を攻撃!カオス・ブレイク・キャノン!!】

 

「ぐあああっ!!」

Heart-eartH Chaos Dragonのブレスがガガガガードナーを粉砕、遊馬達は吹き飛ばされ…

 

 

バヂッ…バリバリバリ!!

 

 

「があ"あ"あ"あ"!?」

 

(あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!)

 

 

「遊馬!アストラル!!」

カオスフィールドを構成する水晶の壁に激突、今までで一番強いカオスの電撃が遊馬とアストラルの体を灼き焦がした…残りライフは僅か500…!

 

 

【クハハ…!残りライフは僅か500、そしてボロボロの体でまだ戦うつもりかぁ?】

 

「う、ぐ……まだ、まだだ…!オレ達は、負けてねぇ!!」

今までで一番の苦痛に顔を歪めながら…遊馬は96を睨む…!

 

【愚かな人間め…ならば、これを見るがいい!!「Heart-eartH Chaos Dragon」の効果発動!このターンのバトルで自分が相手にダメージを与えた時、その数値分俺のライフを回復する!俺の与えたダメージは3500…つまり…?】

 

「ライフポイント…7500…!?」

Heart-eartH Chaos Dragonから放たれた波動が96のライフを大幅に回復する…!

 

 

【どうだ…わかったか?俺には勝てないという事が…!】

 

「ふざ、けんな…!オレ達は絶対に、負けねぇ…!!オレとアストラルの、絆の力を…お前に見せてやる!!」

震える足で遊馬は立ち上がる…!その瞳に諦めの色はない…!

 

「かっとびんぐ………ぁ…」

 

(遊馬!!)

 

「遊馬!!」

 

【ギャハハハ…!口先だけか?遊馬ぁ…!】

遊馬の魂は燃え尽きてはいない…だが、度重なるダメージによって肉体は既に限界を超えてしまっていた…。

 

 

 

(遊馬…君はよく戦ってくれた…!少し休むんだ…!)

 

「うっ…何、言ってんだよ…おれは、大丈夫…!遊海を、助けねぇと…!ぐうっ…!?」

倒れてしまった遊馬は囚われた遊海を見つめる…遊馬達と同じく電撃を受け続けた遊海は明らかに顔色が悪くなっている…。

 

 

(遊馬…あとは、私に任せてくれ!)

アストラルはデュエルディスクを呼び出し、遊馬の代わりに96へと立ち向かう…!

 

(遊馬…君はいつも諦めない心、そして振り向かず…まっすぐ進む意思を持って歩み続けている…信じたモノに向かって…!遊馬…どのような形になっても、私達は共に戦っている!!)

 

「アストラル…」

アストラルは遊馬へと優しく声をかける…自身もギリギリの中、遊馬との「友情」を糧にアストラルは立ち上がる!

 

 

 

(さぁ…「No.96」!私が相手だ!!)

 

【フン…くだらん、何が諦めない心…まっすぐに進む意思だ?】

96は立ち上がったアストラルを見下しながら…「絆」を否定する…。

 

 

【アストラル世界によく似ている…ほんの僅かな()()の染みで崩壊するような脆弱な世界…その証拠にこの俺が!アストラル世界はおろかバリアン世界や人間界すら崩壊させようとしているのだ!そう…俺は「神」という存在なのだ!!アストラル、貴様は…ここで消滅する!!】

96は絆を否定し、アストラルを追い詰めるさらなる一手を打つ…!

 

 

【オレは永続魔法「ナンバーズ・カルマ」を発動!その効果により、お互いのプレイヤーは自分エンドフェイズに自分の場に「No.」が存在しない時!500ダメージを受ける!】

 

「なにっ…!」

 

「これで次のターン、アストラルがナンバーズを召喚できなければ…敗北が決まる…!」

現在、アストラルの手札は0…伏せカードは1枚、次のドロー次第で勝敗が決まる…!

 

【オレはカードを1枚伏せ、ターンエンドだぁ…!】

 

 

 

((私の伏せカードは罠カード『ナンバーズ・リターン』…それによって墓地のナンバーズを復活させる事ができる、我々の墓地に眠るのは『ホープ』『コートオブアームズ』『Heart-eartHDragon』の3体…))

伏せカードを確認しながらアストラルは考える…。

 

『ホープ』は攻撃力は低いが、『ホープレイ』に進化させる事で大ダメージを狙える。

 

『コートオブアームズ』は相手のエクシーズモンスターの効果を無効にし、効果を奪う事ができる。

 

『Heart-eartH Dragon』は特殊召喚時に相手モンスターを守備表示にし、戦闘ダメージを相手に跳ね返す事ができる…。

 

 

((おそらく、『ナンバーズカルマ』は私の思考を誘導する為のモノ…そして、あの伏せカードはおそらく「No.」への対策を狙っている……そうだったな、遊馬…私は……))

アストラルが選んだ決断は…!

 

 

 

 

(私のターン!常に前を向いて…迷わずに進む!!罠カード『ナンバーズ・リターン』を発動!このカードは自分のターンにのみ発動できる!その効果により、墓地より復活せよ!『希望皇ホープ』!!)

 

【っ…!!】

アストラルのフィールドに希望の戦士が舞い戻る!

 

 

(『ナンバーズリターン』のさらなる効果発動!墓地の『コートオブアームズ』と『Heart-eartH Dragon』を『ホープ』のORUにする!)

 

【フン、他に強力なナンバーズがいるというのに…「ホープ」を復活だと?笑わせるな!アハハハ!!】

 

「『ホープ』は…オレと、アストラルの最初の絆だ!!」

現れたホープを嘲笑う96…だが、倒れた遊馬はアストラルの想いを感じ取る!

 

 

「どんなやべぇデュエルの時でも、いつも必ず『ホープ』がいた…!『ホープ』はオレ達と一番長く、一緒に戦ってきた…!希望の仲間なんだ!だから…オレ達は信じるんだ!!」

アストラルと遊馬の衝突によってばら撒かれた数多のナンバーズ…その中で遊馬達の手元に唯一残ったのが『希望皇ホープ』だった。

 

それからホープは遊馬とアストラルと共に戦い続けた、アストラルとの『友情』で『ホープレイ』に進化し…カオスの力を得て『ホープレイV』に…そしてアストラルとの『真の絆』によって『ホープレイ・ヴィクトリー』へと進化した…遊馬達の戦いは『ホープ』と共にあったのだ…!

 

 

 

【愚かな…!その『信じる』という安っぽい感情は嫉妬や猜疑心、憎しみを生み、そして裏切りを生む!…個々の存在という煩わしい面倒なものを消し去り、ただ『神』である我だけがいればいい!それこそが理想の世界なのだ!】

96は『絆』を…『信頼』を否定する、だが…。

 

「くだらねぇ……くだらねえよ!!そんな理想の世界なんて、いらねえ─!!」

遊馬もまた96の『理想の世界(ディストピア)』を否定する!!

 

 

「みんなバラバラで…いろんな奴がいるからいいんだ!…そりゃあ失敗や間違いだってするさ!でも、間違ったら、誰かが教えてやればいいんだ!その為に友達が…!仲間がいるんじゃねぇか!!」

それは遊馬の魂の咆哮…たくさんの友達やデュエリスト達とぶつかりあい、戦い…その中て遊馬が見つけ出した『答え』だった…。

 

「仲間がいて、ひとつになって…そんで2倍も3倍もすっげぇ力が生まれるんだ!!みんなで生きているから楽しいんだ!面白いんじゃねぇか─!!」

それが遊馬の求める『理想』、みんなで手を取り合い、共に生きていく世界…遊馬は仲間達を守る為に魂の炎を燃え上がらせる!

 

 

(遊馬、2人で決着をつけるぞ…!ZEXALだ!!)

 

「ああ!!かっとビングだ─!!」

遊馬とアストラル、2人の『絆』が…再び奇跡を紡ぐ!!

 

 

 

オレはオレ自身と!

 

私で!オーバーレイ!!

 

赤と青の閃光となった2人がカオス・フィールドを駆け巡る!

 

オレ達2人でオーバーレイ・ネットワークを構築!!

 

真の絆で結ばれし2人の心が重なった時、語り継ぐべき奇跡が現れる!

 

エクシーズチェンジ!ZEXAL!

 

遊馬とアストラルが真の絆で結ばれた事で進化した、希望の光…ZEXALⅡが光臨する!

 

 

 

【ZEXALだと…?だが、既にドローフェイズが終わったお前に何ができる!!】

 

『いいや…!仲間との絆が…必ずお前を打ち砕く!!オレは「希望皇ホープ」でオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズチェンジ!!』

 

39

 

『現れろ!「CNo.39」!混沌を光に変える使者!「希望皇ホープレイ」!!』

遊馬とアストラルの絆の結晶…黒き希望の戦士が現れる!!

 

 

【馬鹿め…!罠カード発動!「ナンバーズ・デス・ロック」!相手の「No.」1体の効果と攻撃を封じる!!】

 

『っ─!!』

ホープレイがカオスフィールドから突き出した水晶に拘束されてしまう…!

 

 

【さらに、そのモンスターはこのターンの終わりに破壊され…お前達はその攻撃力分のダメージを受ける!今度こそ終わりだぁぁ!!】

 

(遊馬…いくぞ!)

 

『おう!!』

ホープレイを封印した事で勝ち誇る96…だが、ZEXALの手札にはこの状況を打開する1枚があった!

 

 

『オレは魔法カード「エクシーズ・トレジャー」を発動!フィールド上に存在するエクシーズモンスター1体につき、1枚ドローできる!よって…4枚のドローだ!!』

 

【なにィィ!?】

それは最強のドローカード…アストラルはそのカードを引き当てていたのだ…!

 

『最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえも、デュエリストが創造する!シャイニング・ドロー!』

驚異の4枚ドロー…それが勝利を導く鍵となる!

 

 

『魔法カード「希望の鼓動(ホープ・ハート・ビート)」発動!「ホープ」と名のついたモンスターは相手のカード効果を受けず、既に発動しているカード効果は無効となり破壊される!!』

ホープレイを拘束していた水晶が砕け散る!

 

『そして「ホープレイ」の効果発動!ORU3つ全てを使い、自身の攻撃力を1500アップし「カオスオブアームズ」の攻撃力を3000ダウンさせる!オーバーレイ・チャージ!!』

ホープレイが希望を纏い、全力を開放する!

 

 

『ここからだ!オレは「ZW-極星神馬聖鎧(スレイプニール・メイル)」を召喚!』

新たなゼアルウェポン…北欧神話の大神・オーディンが乗る神馬の名を持つモンスターが現れる!

 

『このカードは「ホープレイ」の装備カードとなり、その攻撃力分「ホープレイ」の攻撃力をアップする!これで攻撃力5000だ!!』

ホープレイがスレイプニルに機乗する!

 

 

『さらに速攻魔法「オーバー・テイク・サモン」を発動!相手の場のORUを1つ使い、自分の手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる!オレは「ブラックストーム」の最後のORUを使い、「ZW-阿修羅副腕(アシュラ・ブロー)」を特殊召喚!!』

 

【なにっ!?】

ブラックストームのORUを除去したZEXALは悪鬼を滅する戦闘神の名を持つ武装を呼び出す!

 

 

『「阿修羅副腕」は「ホープレイ」の装備カードとなり、その攻撃力を1000アップさせ!さらに!相手フィールド全てのモンスターに攻撃できる!!』

阿修羅副腕がホープレイに装備される…神馬に乗り、6本の腕を持つその姿…まさに全ての悪を調伏する『阿修羅』の如く!!

 

 

 

『いっけぇ!「ホープレイ!」まずは「Heart-eartH Chaos Dragon」を攻撃!!』

 

【甘いわぁぁ!!罠カード発動!「カオス・アライアンス」!自分フィールドの「CNo.」の攻撃力を自分フィールドで最も攻撃力の高いモンスターと同じにする!「ブラックストーム」の攻撃力は2500…!よって「Heart-eartH Chaos Dragon」と「カオスオブアームズ」の攻撃力は共に2500となる!!】

 

『それでも、ダメージは通る!!ホープ剣アシュラ・ディバイナー!!』

 

【うがあああ!!】

ホープレイの五連斬りがHeart-eartH Chaos Dragonを粉砕する!!

 

 

『続いて「カオスオブアームズ」を攻撃!アシュラ・ディバイナー!!』

 

【ぬああああ!!?】

最凶の死神が粉砕される…だが、最強の壁が残っている…!

 

 

『あとは…「ブラックストーム」だけ…!!これで終わりだ!!「ホープレイ」!!』

 

【忘れたのかぁ?「ブラックストーム」は破壊された時、発生するダメージをお互いに与える!!】

 

『同じ手は…2度と喰わない!!』

 

【なに…!?】

カオスの電撃に灼かれながら…ZEXALは攻撃を仕掛ける!

 

 

『「極星神馬聖鎧」のさらなる効果発動!装備モンスターがバトルする時、自身の攻撃力を相手モンスターの攻撃力と同じにできる!』

 

【なっ…相討ち狙いだと─!?】

神馬の力でホープレイの攻撃力が下がり…ブラックストームと相討ちになる!

 

 

【ぐうぅ…!!愚かな!これで貴様の場には「No.」がいなくなった!エンドフェイズに「ナンバーズカルマ」の効果でお前達の負けだぁぁ!!】

 

『それはどうかな…!オレのターンはまだ、終わっていない!!』

 

【なに…!】

爆煙が晴れた先…ZEXALは不敵な笑みを浮かべていた…!

 

 

『「極星神馬聖鎧」の最後の効果発動!装備モンスターが破壊された時、墓地から「希望皇ホープ」を特殊召喚する!!現れろ!「希望皇ホープ」!!』

 

【ば、馬鹿な─!!】

希望の光を纏い、希望の戦士が2度目の復活を遂げる!

 

『言ったはずだ…!オレ達の絆が、希望が!必ず勝利に導くと!!』

 

【馬鹿な…この俺が…神が負けるというのか!?】

 

『いっけぇ!「希望皇ホープ」!「No.96」にダイレクトアタック!ホープ剣ラグナ・カイザー・スラッシュ!!』

 

【あ、ああ…!?ぐあああああ!!】

 

希望の剣が…ついに混沌の邪神を斬り裂いた…!

 

 

 

No.96 LP0

 

ZEXALⅡ WIN!

 

 

 

 

 

 

 

『はぁ…はぁ…!やった、ぜ…!』

デュエルが終わり、ARビジョンが消えていく中…ZEXALは膝をつく…疲労困憊の遊馬は既に指1本動かすのもやっとの状態だった…。

 

 

バキッ…バキバキ…バキーン!

 

 

「っ!?父さん!!『アビス・スプラッシュ』─!!」

96の敗北によって遊海を閉じ込めていた水晶が崩壊…空中に投げ出された遊海は凌牙が咄嗟に召喚した「アビススプラッシュ」に受け止められ、彼らの横に寝かせられる。

 

 

「遊海さん!!」

 

「オービタル!」

 

《ハッ!…解析中……衰弱が激しいでアリマス…!早く病院へ連れて行かなければ危ないでアリマス!!》

カイトの指示でオービタルが遊海の身体を調べる…カオスの力を受け続けた遊海は…既に虫の息だった…。

 

 

 

『っ…早く、遊海を…翠さんの所に…っぐ…!』

 

(焦るな…君も相当ダメージが深い、ゆっくり呼吸を整えるんだ)

遊海の状況を聞いた遊馬は立とうとするが…その身体はすぐに動ける状態ではなかった…。

 

 

 

 

【負けた、のか…?神である、この俺が……あるわけない…あるわけない!!

ホープによって吹き飛ばされ、致命傷を負った96は…思わぬ行動を取る!!

 

 

 

アストラル!!貴様が勝ったというのなら…!この俺を…その身体に受け止めてみろぉぉ!!

 

『なっ─!?』

敗北した96がその身をカオスの槍に変え、ZEXALへ向けて突撃する…遊馬は身動きが取れない!!

 

 

 

 

(遊馬!!)

 

 

「うあっ…!?」

 

 

 

 

グサッ!

 

 

 

(ぐ、う…!!)

 

「あ、ああ……アストラル!!」

 

 

 

 

それは一瞬の事だった、96の突撃を回避できないと判断したアストラルは咄嗟にZEXALを解除、遊馬を突き飛ばしたが…アストラルに96の突撃が直撃したのだ。

 

 

「アストラル!!」

 

来るな!!遊馬…来ては、いけない…!!)

胸を貫かれ、光の血を流すアストラル…その身体を96のカオスの力が包み込む…!

 

アストラル…!貴様にアストラル世界は救えなィィ…!俺は神…神なのだああああ!!

 

(つ──!!!)

96の力が暴走…次元の狭間のバランスが崩れ、崩壊し始める…!

 

 

全て…スベテヲ消し去ってやる!!お前モ…オマエの仲間モ!!すべてォォォ!!

96は再びアストラルを乗っ取り、自爆する事でアストラル諸共…遊馬達を死なせようとしている…!!

 

 

(いけない…!このままでは………すまない、遊馬─!!)

遊馬を…仲間達を守る為に…アストラルは覚悟を決めた。

 

 

 

(あああ…ハアアアアアアアアア!!)

 

【や、ヤメロ…やめろぉおぉおぉおぉおぉお!!!

 

 

 

「アストラル…!?アストラル─!!」

 

アストラルは自身の持つ光をエネルギーに変え、開放する…それにより、96の邪念は消え去り…。

 

 

 

 

ドオオオン!!

 

 

 

光の大爆発が次元の狭間を包み込んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

「痛てて……あ、アストラル!!」

 

─遊馬…無事、だったか…─

光の爆発で吹き飛ばされた遊馬はアストラルに駆け寄る、その身体は静かに明滅していた…まるで消えかけの蝋燭のように…。

 

 

「バカ野郎…!無茶しやがって…なんでZEXALを解いたんだ!!」

 

─君を巻き込む訳にはいかなかったからな…許してくれ─

 

「なんでだよ!?オレ達、仲間だろ…相棒だろうが…!!」

 

─仲間か…そう、君はかけがえのない「仲間」だから…─

アストラルは穏やかに笑う…。

 

 

─君には繰り返し、教えられたな、仲間の大切さ…仲間を信じる心を……お別れだ、遊馬…ナンバーズを、頼んだぞ…─

 

「えっ…?」

お別れ…そう言ったアストラルの体が足元から粒子となって消えていく…。

 

「な、なんでだよ!?お別れって…嫌だよ!!お別れなんて!!」

 

─遊馬…君は、1人ではない…きっと大丈夫……─

 

「待て…!待ってくれよ!アストラル!!いくなよ!何処にも行かないでくれよ!!」

アストラルへと必死に手を伸ばす遊馬…だが、その手は届かない…。

 

 

─ありがとう─

 

 

穏やかな笑みを浮かべたまま、アストラルは光の粒子となってしまう…アストラルだった光は彼の足元に開いていた青い穴へと吸い込まれていく…。

 

「アストラル!!」

 

カラン…

 

絶叫する遊馬…その首から「皇の鍵」が外れ、アストラルを追うように次元の穴へと落ちていった…。

 

 

 

 

キィン─…

 

 

 

 

 

 

「ここは、元の場所…?」

気付いた時、遊馬達は元の場所に戻っていた…厚い雲は嘘のように消え去り、オレンジ色の夕日がハートランドを照らしている…。

 

 

「アストラル…アストラルは!?」

遊馬は周囲を見渡す…自分達が戻れたのなら、アストラルもと…だが…。

 

 

「うっ…うう…!」

 

「………」

 

「………」

 

「小鳥…シャーク…カイト…!?」

座り込んだ小鳥はすすり泣き、遊海を抱えた凌牙は俯き…カイトは背中を見せる…彼らはもう分かっていた、アストラルは…死んでしまったのだと。

 

 

「アストラル……アストラルぅぅ!!ああ…あ"あ"あ"あ"あ"ああぁぁ!!」

 

 

 

夕日の照らすハートランドに遊馬の慟哭が木霊した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《翠!遊馬達が……!》

 

「あ…遊馬君…!遊海さん!!」

 

「母さん…」

日が完全に沈みかけた頃、遊馬達と遊海を探していた翠が彼らを発見する…彼らの様子は一様に沈んでいた…。

 

 

「…アストラルが、死んだ」

 

「っ…!」

凌牙の一言で翠は状況を把握する、泣き崩れている遊馬…その胸元にあるはずの「皇の鍵」は失われていた…。

 

 

「あ、ああ…うあああ…」

 

「……遊馬君…」

 

 

 

翠は…泣き続ける遊馬を、静かに抱きしめる事しかできなかった…。

 

 

 

 

 

 




Next Episode…







ナンバーズ96との熾烈な戦いの末、遊馬を守ったアストラルは消滅してしまった…しかし、ベクターとドン・サウザンドは追撃の手を緩める事なく、遊馬達が持つ『No.』を奪う為…新たな刺客を差し向ける…!




『人の記憶は蜜の味…ってなぁ…!』



『テメェ…!オレの何コ下だ!!先輩を立てやがれ!!』
 


『僕チンはどデカいモンスターは嫌いなんだって蚊ァ…!』



『ハートランドよ!私は帰って来た!ハートバーニング!!』




そして…勇士達を助ける為、再び彼らが動き出す!





「君は僕の一番大事な友達…その君の悲しみを放っておけないよ」



「忘れたのか?お前の一番の『ファン』の事をよぉ!」



「今こそ、我らが動く時…!」




そして…消えてしまったアストラルの手掛かりを掴む為、遊馬はついにアストラルの故郷…「アストラル世界」へと足を踏み入れる!



『私の名はエナ…貴方にお願いがあるのです…!』



『貴方ならば…きっと、この世界を変える事ができる…そして、我が友を救う事も…!』



【我はこの世界の『理想』を求める者…アストラル世界の意思…!】



青き世界で遊馬が目にするモノとは?






そして……ついに、「覚醒の刻」が訪れる──






  







『…デュエルだ、父さん』




「ああ、受けて立とう…凌牙」




「こうしてデュエルするのも…久しぶりね、璃緒ちゃん」




『母さん…ごめん…!』










転生して決闘の観測者になった話 第4.5章 近日執筆開始予定…















『………ああ……そんなところに、いたのか……』


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第4.5章 アストラル消失〜傷心/覚醒/確信/困惑〜
失意の勇士〜支える純真〜


こんにちは!S,Kです!大変長らくお待たせしました!

…すいません、モンハン/ライズにどハマリしておりました!


それでは…最新話をどうぞ!


「こら〜!!遊馬!いつまで部屋に引き篭もってるの!?いい加減部屋から出てきなさい─!!……ダメかぁ…」

夕暮れの九十九家に明里の怒鳴り声が響く、いつもの遊馬なら飛び出して来るだろうが…その気配は一切なかった…。

 

 

「明里さん…遊馬は、まだ…?」

 

「ええ、何があったか知らないけど…あの日から1週間、閉じ籠もったきり…小鳥ちゃんが来ても顔も見せないなんて…」

 

「そう、ですか…」

96との死闘…そしてアストラルが消滅してから1週間が過ぎた、アストラルを失った遊馬は酷く落ち込み…学校も休み続けていた…。

 

 

 

「アストラル…なんで、なんで死んじまったんだよ…!」

 

夕日に照らされた部屋…その部屋に毛布に包まった遊馬の呟きが小さく響いた…。

 

 

 

 

 

 

 

「…遊海、何故お前はいつも…いつもいつも面倒事にばかり巻き込まれるのだ…!」

 

「瀬人さん…」

 

同じ頃、KC病院の地下にあるシェルター兼特別治療室…そこで再び全身管だらけの状態で眠る遊海…その傍らには翠と瀬人の姿があった。

 

No.96によって連れ去られ、カオスによる攻撃を受けた事で好転しかけていた遊海の容態は悪化…危篤状態のまま生死の境を彷徨っていた。

そして2度の襲撃を受けた事を重く見た瀬人によって遊海の身柄は地下に隠されたのだ…。

 

 

「…血清完成のメドがようやくついたというのに…!!負けるな…!遊海!バリアンの毒などに負けるな!!」

瀬人は眠り続ける遊海に声をかけ続ける、彼は信じ続けていた…英雄の復活を…。

 

 

 

「遊海さん…うっ…」

 

「翠!!…ひどい熱だ…お前達は病気にはならないのではなかったのか!?」

突然、遊海の看病を続けていた翠が椅子から崩れ落ちる…すぐに瀬人が支えたが…翠は酷く衰弱してしまっていた…。

 

《…翠の精神に強い負荷が掛かっています…無理もありません、マスターが昏睡している中で命懸けの決闘に怪我……いくら体が強くても、精神が弱ってしまったら…》

翠は決して鋼の精神を持っている訳ではない、愛する者を助ける為に2度に渡る決闘を繰り広げ、怪我を負い…さらに遊海が眠り続ける姿を見れば…そのストレスは相当なものになっているだろう。

 

 

「くっ…待っていろ、すぐに部屋を手配する…!少し休んでいろ!」

 

「でも…遊海さんが…また襲われるかもしれない…!私が、そばにいないと…!」

さらに…翠は96の襲撃から1週間、ずっと遊海を守り続けていた…ベクターや姿を見せないネームレス…その襲撃を警戒し続けていたのだ…もちろん、アヤカや他の精霊達もいるが…遊海の衰弱によって力を発揮できなくなってきているのだ…。

 

 

《現在、マスターの肉体は高濃度の毒とカオスの力に蝕まれ続けています…「不死殺し」の呪いが消え、解毒に集中できると思った矢先の襲撃……マスターの体は衰弱しきっています、次に何かがあれば…私でも命の保証はできません…!》

 

「病院の警備体制は強化している…だが、空間転移などやられては…それも無駄か…!」

バリアン達は瞬間移動を可能としている、いくら周りの警備を固めても遊海の近くに誰かが…腕の立つ者がいなければ意味がないのである。

 

 

 

 

「だったら…ここに適任がいるぜ!」

 

 

 

「あっ…十代、くん…!」

病室に響く快活な青年の声…そこにいたのはハートランドへと帰還した遊城十代だった。

 

 

「遅くなってすまねぇ…遊海先生が大変だ!って遊星から聞いたんだ…まさか、オレがハートランドを離れたその日に襲われてたなんて…!」

十代は遊海の指示で世界中に散らばっている「伝説の決闘者」の子孫達の協力を得る為、人間界と精霊界を行き来しながら世界中を回っていた…そのせいで最後まで連絡が取れていなかったのだ…。

 

 

「遊海先生はオレが守る…だから、翠さんは少しでも休んでくれ…!」

 

「ありがとう…十代君…お願い…ね……」

 

「……バリアンめ、許さんぞ…!俺の友を傷つけおって……!その報い、必ず受けさせてやる…!!」

眠ってしまった翠を抱き上げながら…瀬人はバリアンへの怒りを燃やしたのだった。

 

 

「…先生、アンタはいつもそうだよな…誰よりも戦って、戦い続けて…ボロボロになってさ…それで、いつも翠さんが泣いてるんだ……早く、目を覚ましてくれよ…遊海先生…!!」

瀬人と翠の去った病室で十代は痩せ細った遊海の手を握り締めた…。

 

 

 

 

 

Sideベクター

 

 

 

『おい、ドン・サウザンド…なんなんだぁ?このボロ城は…?』

 

【ここは我が王宮、バリアン世界を統べる者のみが入れる神聖な場所だ…】

ベクターはドン・サウザンドに導かれ、バリアン世界の聖域…ドン・サウザンドの居城を訪れていた…。

 

 

『こんな場所にいったい何が……アレは!?』

半ば仕方なくドン・サウザンドの城を訪れたベクター…彼が城の中心で見つけたのは…膨大なカオスの力の塊だった…。

 

 

【フハハハ…!ベクターよ、これは「N()o().()9()6()」だ…!アストラルは96を吸収できなかった…故に、奴の力が我の下に戻って来たのだ…!】

 

『…何故、アンタの所へ…?』

 

【それは9()6()()()()()()()()だからだ…!】

 

『なんだと!?』

カオスの塊の正体は「No.96」の成れの果て…その真の姿はドン・サウザンドの分かたれた力の一部だったのだ…!

 

 

【遥か昔、アストラルと戦いし時…我の放った力が奴の身体に残った…!故に、96はナンバーズでありながらもアストラルは相容れぬナンバーズとなったのだ…!】

 

『なるほどな…』

 

【さぁ…手に入れるのだ…封印のナンバーズを!!】

 

『………!』

 

ドグン!

 

『うがっ…!?がああああああ─!?!?』

ドン・サウザンドに言われるままに96のカオスに触れるベクター…その身体を激痛と共にカオスの力が駆け巡った。

 

 

 

『はぁ…はぁ…!なんだ、この力は…!!これが封印のナンバーズの力…!』

激痛に耐える事しばらく…ベクターはカオスの力を掌握する、その力は凄まじく…ベクターは自分の力が格段に上昇した事を実感した。

 

 

 

『これならば今すぐ遊馬や遊海の野郎をぶっ潰【焦るな、ベクター】うがっ…あああああああ!?!?』

力を手に入れた全能感に酔いしれるベクター…だが、突然その体から闇が溢れ出し…その闇は玉座へと吸収される。

 

『あがっ…!?ゴフッ!!(ドン・サウザンドが…()()()()()()()()…!?)』

突然の脱力感に崩れ落ちるベクター…その理由はベクターの『心臓』となっていたドン・サウザンドがベクターから離れたからだった…!

 

 

【ベクターよ、まだその時ではない…我らには他にやるべき事がある…!】

 

『やるべき事、だと…!』

黒き影となって玉座の前に揺らめくドン・サウザンド…彼が腕を振るうと…ベクターの背後に謎の機械が現れた…!

 

 

【見るがいい…これが我の作り上げていた人間界とバリアン世界を融合させる『装置』だ…!】

 

『なっ…!?そんな事が、できるのか…!?』

 

【ああ、できるとも…それは───】

 

『っ─!?』

 

ドン・サウザンドはベクターに自身の計画を語る…それはあまりにも大きく、大胆な作戦だった…!

 

 

 

 

 

 

 

『…確かに…!そうすりゃ人間界とバリアン世界を融合できるかもしれねぇ…だが、何故そんな事を…?』

 

力だ…!我にはもっと力が必要なのだ!!アストラル世界を滅ぼす為の力が!!

 

『っ…!』

ベクターはドン・サウザンドの気迫に圧倒される…そこにあったのは普段の全てを見透かしたような狡猾な神の姿ではなく、アストラル世界へと凶気を向ける『復讐者』の姿だった…!

 

 

【人間世界の悪を増幅し、バリアン世界と同一化する事で我が力は飛躍的に増大する…!だが…それをするにはこの『装置』を量産せねばならん、そしてその為には莫大なエネルギーが必要なのだ…!】

 

『その為に96の力が必要だった訳か…』

 

【我はしばらくこの作業に専念する、だが…貴様にはまだやってもらう事がある…】

 

『おい!?ちょっと待て!今のオレは…!』

 

【わかっておる、我と貴様は一心同体…この城を離れる事はできぬ…その代わり、このナンバーズを授けよう…人を使い、良からぬ事をしでかすのは…お手のものだろう?さぁ、玉座へと上がって来い…】

 

『ちい…!』

ドン・サウザンドに言われるままにベクターは玉座へと向かう…だが、ドン・サウザンドが体内から抜けた事でベクターは満足に動く事ができず、ヨロヨロと玉座に座り込む。

 

 

『これは…「No.1」だっ…(ギュルン!)なにっ!?な、何をする!やめ…ぐあああ──!?』

ドン・サウザンドに渡されたナンバーズに気を取られた瞬間、ベクターは玉座へと身体を縛り付けられてしまった…。

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

「う…うぅ…グスッ…アストラル…!」

夜…屋根裏部屋のハンモックで遊馬は泣き続けていた、アストラルの死を受け入れられない遊馬に普段の明るさはなかった。

 

 

「やっぱり、姉ちゃんの言う通り…デュエルなんかしなきゃよかったんだ…!こんな…悲しい思いをするぐらいなら!!」

悲しむ遊馬の目に映ったのは机の上に置きっぱなしになったデッキ…そして、アストラルが消えた後も遊馬の手元に残った「No.」…遊馬は全ての元凶とも言えるナンバーズを乱暴に掴む…。

 

「こんなモノ…こんなモノなんてなければ─!!」

窓を開けた遊馬はナンバーズを投げ捨てようとする…投げた後にどうなるかはわからない、その後を考える余裕は今の遊馬にはない…。

 

 

 

─遊馬、ナンバーズを頼んだぞ…─

 

 

「っ…!」

 

その時、遊馬の脳裏に浮かんだのはアストラルの最期の言葉…穏やかな表情で遊馬に全てを託した相棒の顔だった。

 

 

「アストラル…そんな事言われたってさ…!どうすりゃいいんだよ…!?」

アストラルの言葉を思い出した遊馬は再び泣き崩れた…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

『…やはり、アストラルの消失は事実か…』

 

『そうなると…バリアンは好機と見て、攻撃を激しくする可能性が高いな』

 

『はい…遊海さんもまだ目を覚ましていないと父様が言っていました……このままでは…』

 

『…我々が動く時が来たようだ』

 

ハートランドに向かう一艇の潜水艦、その中で3人の男達が言葉を交わす…全ては自分達を救ってくれた恩に報いる為に…。

 

 

『遊馬の事は頼んだぞ…Ⅲ』

 

『ラジャー!』

純真なる決闘者は兄の言葉に自信を持って応えた…!

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコン…

 

 

「…お邪魔します」

 

「…小鳥か」

 

「璃緒さんのお見舞いに…お花を持ってきたの」

 

「わかった…そこに置いといてくれ」

小鳥はハートランド病院に入院する璃緒のお見舞いに訪れていた…ベッドの横には疲れた様子の凌牙の姿もある。

翠は遊海につきっきりになっており…璃緒の世話は凌牙とウィンダ達が行っていた…。

 

 

「あのね、シャーク…アストラルが死んじゃってから…遊馬がずっと落ち込んでて…」

 

「……悪い、今の俺は遊馬の話をできる気分じゃねぇ…」

 

「そ、そうだよね…璃緒さんも遊海さんも大変な時に…ごめんなさい…!」

凌牙は小鳥の顔を見る事なくそう伝える…実の妹と養父が倒れてしまっている凌牙には…遊馬の事を気にする余裕はなかった。

 

 

「今日はこれで……璃緒さん、また来ます」

 

 

 

「……今の俺に、遊馬の奴に何が言ってやれるんだ…!!俺は…俺はもしかして…!クソッ!!」

小鳥が部屋を出た後、凌牙は頭を抱える…自身に対する「疑念」が凌牙を苦しめていた…。

 

 

 

 

 

「…シャークもダメかぁ…カイトも連絡つかないし…どうしたら遊馬を励ませるんだろう…?」

ハートランド病院を後にした小鳥は悩んでいた、アストラルを失った事で悲しみに打ちひしがれる遊馬…彼女は少しでも遊馬を励ましたいと考えていたのだ。

 

《フォウ…フォーウ!》

 

「あっ…フォウくん!どうしてこんな所にいるの?」

ため息をつく小鳥…その足元に見慣れた白い猫、フォウが現れる…どうやら散歩の途中のようだった。

 

 

「フォウくん…一緒に遊海さんのお見舞いに行く?もしかしたら会えないかもしれないけど…」

 

《キュウ…フォウ!》

 

「…わかった、一緒に行きましょう!」

小鳥の言葉に頷くフォウ…そんな彼を抱き上げた小鳥は遊海の入院する病院へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

「ん…ぅ……ここは…」

 

《目が覚めた?…気分はどう?》

 

「ウィンダ…わたし、どれくらい寝てた…?」

 

《ちょうど丸1日くらいかな…ちょっと頑張り過ぎだね…》

疲労で眠っていた翠が目を覚ます、そこは瀬人の用意した病院の一室だった。

 

 

《遊海の容態は変わってないよ…少し、苦しそうだったけど…》

 

「……ウィンダ…私、悔しいの…!遊海さんが苦しんでるのに…私は遊海さんに何もできないなんて…!!」

 

《そんな事ないよ…!翠があの怪物の鎌を壊せなかったら状況はもっと悪くなってた!だから泣かないで…!》

ベッドに横たわる翠は弱音と共に涙する…精霊の力による治癒もうまく効かず、遊海は苦しみ続けている…見ている事しかできないという無力感と焦りが翠を追い詰めていた…。

 

 

「私が、もっと強かったら…あの怪物の本性を見抜けていたら…!!」

 

《翠…》

翠は布団を握りしめる…そんな時だった。

 

 

コンコンコン

 

 

《あれ?誰だろう…?は〜い》

 

「あっ、ウィンダさん!翠さんは大丈夫ですか…?」

 

《小鳥ちゃん…とフォウくん!?また勝手に来ちゃったの?》

 

《フォウ!》

病室に響くノック…部屋を訪れたのは遊海の見舞いに来た小鳥とフォウだった…。

 

 

 

「瀬人さんから翠さんが過労で倒れたって聞いて…」

 

「わざわざ来てくれてありがとう…私はもう大丈夫よ!」

 

「(翠さん…無理してる…遊海さんの事が本当に心配なんだ…)」

ベッド近くの椅子に座った小鳥は目元が赤い翠を見て、その苦労を感じ取っていた…。

 

 

「…小鳥ちゃん、遊馬君の事が心配?」

 

「えっ…?」

翠に心中を見抜かれた小鳥は驚いた表情を浮かべる。

 

「春さんから聞いてるわ…アストラルがいなくなってから、ずっと引き篭もってるって……遊馬君にとってアストラルはかけがえのない存在だったから……小鳥ちゃんは遊馬君を励ます相談をしに来たんでしょう?」

 

「翠さん…読心術も使えるんですか…?」

 

「ふふっ、昔はデュエルアカデミアの寮母さんをしてたから…なんとなくわかるのよ?」

翠は小鳥に優しく笑いかけ、頭を撫でる…。

 

「遊馬君には心を整理する時間が必要なの…今は待ってあげて…心の整理ができたら、きっと出てきてくれるはずだから…」

 

 

 

 

 

 

 

Sideバリアン

 

 

 

 

《ハーエバーニング!!偉大なるベクター様!お呼びと聞いて参上し……その姿はどうなさったのですか!?》

 

ドン・サウザンドの居城に軽快な声が響く、それは蝿の姿のMr.ハートランドのもの…ベクターに呼び出された彼が見たのは玉座に禍々しい鎧のような拘束具で固定されたベクターの姿だった…。

なお、ベクターはとてつもなく不機嫌な様子である。

 

 

遅いぞ

 

《ベ、ベクター様何を─!?》

苛ついた様子のベクターは乱雑にMr.ハートランドを掴み、握り締める…!

 

ギィン─!!

 

《み、漲る─!?》

 

 

 

『は…!?こ、これは…!体が…()()()()()()()─!!』

ベクターに握り潰されたかに思えたハートランド…だが、彼はバリアンの力を注ぎ込まれ…人間の体を取り戻していた…!

 

 

『あ、ありがとうございますベクター様!!この御恩は一生忘れません!!』

 

【そう思うなら…オレの為に少し働いて貰おうか…!】

 

『おおっ…!!なんなりとお申しつけください!!』

人の姿に戻れたハートランドはベクターに忠誠を誓う…その様子を見たベクターは笑みを浮かべ、ハートランドにあるモノを渡す。

 

【コレを使って…九十九遊馬から『No.』を奪ってこい】

 

『こ、コレは…「No.1」…!?わ、私の為にこんな貴重なモノを─!?』

ベクターはドン・サウザンドから渡されたナンバーズをハートランドに預ける。

 

 

【フッ…そして、部下としてこいつらを付けてやる!見るがいい…!】

 

『こいつら…?』

そしてベクターは玉座の足下に3人の人物を呼び出す…!

 

「クックックッ…懐かしいなぁ…!『闇デュエル界の四悪人』と言われた俺達が…またこうして組む事になるとはなぁ!」

 

『蝉丸…!という事は…!』

フードの男の1人がハートランドに喋りかける、それはスキンヘッドの大柄の不良男…Mr.ハートランドの旧知の仲間であり、その言葉でハートランドは残り2人の正体を察した。

 

『ベクター様…!必ずや貴方様のご期待に応えて見せましょう…!!』

 

【ククッ…楽しみにしているぞ…!】

ベクターに跪いたハートランドはフードの男達と共に人間界へと向かった…。

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「『ハートランドシティでデュエリスト連続記憶喪失事件発生!』『人気の無い路地で連続7件!』…か、なんだかキナ臭いぜ…」

 

《バリアンの奴らが動き出したみたいだね…でも、無関係の奴を襲うって…いったい何を考えてるんだ…?》

遊海の守りについている十代がデュエルニュースを見て険しい表情を見せる、それはハートランドで発生している不可解な事件についての記事だった。

 

 

「バリアン…ベクターが遊馬君を倒す為の刺客を送り込んで来たのよ…!」

 

「翠さん!体調は大丈夫なのか?」

 

「うん、ありがとう…寝たらスッキリしたわ!」

 

《フォウ!》

ネット記事を見つめる十代に肩にフォウを乗せた翠が声をかける。

 

 

《バリアンの刺客…翠は当然知ってるよね?》

 

「ええ、2人は『闇デュエル界の四悪人』の事を知ってる?」

 

「闇デュエル界の四悪人…たしか…?」

 

《違法改造したデュエルディスクを使って悪事を働いてた奴らだったね?名前は覚えてないけど…詐欺師・情報屋・ギャング・用心棒の4人だったかな?》

 

「ああ〜いたな!そんな奴ら…でも、だいぶ前に警察が詐欺師以外の奴らは捕まえたんじゃなかったっけ…?」

翠の問いかけに十代とユベルが答える、『闇デュエル界の四悪人』は「アーククレイドル事件」以後、長らく出なかった規模の大きいデュエル犯罪者のチームだった。

 

「情報屋」が金持ちの情報を探り、「詐欺師」が取り入り、金を奪う…仮に気付かれたとしても「ギャング」と「用心棒」が追手を蹴散らし、姿を晦ます事で裏の世界で荒稼ぎをしていたのだ。

…だが、悪事は長く続かない…警察とKCの協力体制によって「詐欺師」以外のメンバーは逮捕され、投獄されたはずなのだ…。

 

 

 

 

「今回の事件の犯人は『ギャング』蝉丸、四悪人はバリアンに魂を売って…ベクターの手先になったのよ」

 

「なるほどな…オレはどうすればいい?その蝉丸って奴を倒せばいいのか?」

 

「いいえ、蝉丸を倒すのは…遊馬君達よ」

 

「なんだって…?」

翠の思わぬ言葉に十代は驚く…遊馬の身に起きた悲劇はアヤカから聞かされている、アストラルを失った遊馬が戦える状態とは…十代には思えなかったのだ。

 

 

「…遊馬君は深く傷ついてる…でも、バリアンは待ってはくれない………何があっても、遊馬君は立ち上がらなきゃならないのよ…アストラルの為にも…!」

 

《フォウ、フォーウ…》

翠は病室の時計に目を向ける…その時刻は夕暮れを示していた…。

 

 

「それよりも…私達が気を付けなきゃならない事があるわ…!」

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「…アストラル…」

夕暮れの九十九家…遊馬は自室のベッドの上でぼんやりと天井を見ていた。

…引き篭もってしまった自分を心配し、小鳥や鉄男達ナンバーズクラブの仲間達は何度も九十九家を訪れてくれている…だが、未だに遊馬は心の整理がついていなかった…。

 

 

 

『ハーエバーニング!!久しぶりだなぁ?九十九遊馬…!』

 

「っ─!?Mr.ハートランド!?生きていたのか!?」

遊馬の部屋に響く聞き覚えのある掛け声…その正体は極小のハエ型ロボットから映し出された立体映像として現れたMr.ハートランドのもの…遊馬はベッドから飛び起き、ハートランドを睨みつける…!

 

『貴様らのせいで異世界に落とされた私だが…ベクター様の力によって蘇ったのだよ!』

 

「ベクターの…!?」

ハートランドの言葉に遊馬は警戒を強める、ベクターは『悲鳴の迷宮』以後遊馬達の前に姿を現す事はなかった

…だが、ベクターはバリアン世界で暗躍を続けていたのだ…!

 

『ククッ…!これを見るがいい!!このガキ共の事は知っているはずだなぁ?』

 

「み、みんな!?」

ハートランドが腕を広げる、するとその足元に精気を失った表情で座り込む小鳥・鉄男・徳之助・等々力・キャッシーの姿が映し出された…!

 

 

『どうやら彼らは貴様を励ます為に「デュエリスト連続記憶喪失事件」に首を突っ込んだようだ…!事件を自分達だけで解決すれば貴様が喜ぶと思ったようだねぇ…!お仲間を返して欲しくば…ナンバーズを持ってハートランド記念館に来るがいい!…おっと、メタルナイトや白波翠にこの事を話したら…お仲間は…くふふ…!』

 

「っ─!!みんな!待っててくれ!!!」

下衆な表情を浮かべるハートランド…遊馬はナンバーズとデッキを引っ掴み、ハートランド記念館へと駆け出した…。

 

 

 

 

 

 

『ハハハ…!よく来たなぁ、九十九遊馬…!』

 

「ハートランド…!!」

夜の帳の落ちたハートランド記念館…その中庭で遊馬は巨大な自身の銅像の前に立つMr.ハートランドと睨み合う…!

 

「小鳥達は何処だ!?」

 

『フッ、彼処にいるよ…!』

 

「小鳥…みんな!!」

ハートランドが顎で中庭の壁近くを示す…そこには仲間達がぼんやりとした様子で座り込んでいる…。

 

 

 

「テメェ…みんなに何をしやがった!!」

 

【ククク…!この俺が()()()()もらったのさ、そのガキ共の()()全てをなぁ…!】

 

「っ…!?お前…何者だ!?」

ハートランドとは別の声を聞いた遊馬は視線を上げる、ハートランド像の台座…そこにスキンヘッドに趣味の悪い金のアクセサリーを付けた不良が座っていた…!

 

 

【俺の名は蝉丸…そいつらの記憶を返して欲しかったら、ナンバーズを賭けて俺とデュエルして貰おうか…?と言っても、結果は分かりきってるがなぁ…!】

 

「くっ…」

蝉丸は自信ありげに遊馬を見下ろす…!

 

【お前はナンバーズを奪われ、仲間も救えず…惨めに泣き叫びながら…お前は負けるのさ…!】

 

 

 

「(ナンバーズとみんなの記憶を賭けた()()()()()()デュエル…!絶対に勝つしかねぇ……ちくしょう…!!何をビビってるんだよ、オレ…!!今までだって、ずっと…オレ…………アストラル…!)」

命を賭けたデュエルを前に遊馬の心は揺れていた…遊馬は何度も命と誇りを賭けたデュエルをしてきた、しかし…その傍らにはいつもアストラルがいた。

「アストラルがいない」…その事実が遊馬の闘志を…「かっとビング」を弱らせていたのだ…。

 

 

 

【さぁ…どうする?】

 

『フッ…蝉丸、そんなに子供を追い詰めるんじゃあない…』

蝉丸を一旦制止したハートランドが遊馬へと歩み寄り、悪魔の囁きを口にする。

 

『よく考えるんだ…そもそもナンバーズを巡る争いはアストラル世界とバリアン世界の問題だ、つまり…人間のキミには関係ないはず…しかも、アストラルがいなくなった今…もうキミにナンバーズを守る意味はない!』

 

「………!」

ハートランドの言葉に遊馬は拳を握る…!

 

 

『私は善意で言っているんだよ?ナンバーズさえ渡してくれれば…今後、キミたちには手を出さないと約束しよう…もちろん、仲間の記憶も返そう……白波遊海の毒を消してやってもいい!なんならキミの中の()()()()()()()()()()を消してやろう!誰しも辛い記憶は──』

 

ドクン!

 

「ふ、ふざけんじゃねぇぇ─!!!」

 

『なにっ─?!』

ハートランドの悪魔の囁きを聞いた遊馬から凄まじい覇気が溢れ出す…その気迫はハートランドが臆するほどだった…!

 

「確かに、アストラル世界だのバリアン世界だとかはオレには関係ねぇ…けど!!ナンバーズはアストラルがオレに()()()()()()()()なんだ!!ナンバーズにはオレとアストラルが一緒に戦ってきた記憶が…仲間との全てが詰まってる!!それを…お前らなんかに渡せるかああああ!!」

 

『ぐっ…!?』

涙を溜めながら遊馬は魂の叫びを上げる、ナンバーズは遊馬にとって『友情の記憶』そのもの…アストラルや仲間達と戦い抜いた希望の証…それを簡単に手放せるほど、遊馬は弱い男ではない─!!

 

 

 

『その通りだ、遊馬!!』

 

 

『危なっ…!?』

遊馬が決意を叫んだ瞬間、中庭に凛とした声が響き、ハートランドの足元に剣が突き刺ささり、ハートランドは素早く後ろに下がる…そして、遊馬を守るように1人の少年が現れた…!

 

 

『貴様は…!』

 

「Ⅲ!!」

 

『久しぶりだね、遊馬…君の決意、確かに聞かせてもらったよ…!』

遊馬達の前に現れた人物…それは遊馬の友である「純真のデュエリスト」…Ⅲことミハエル・アークライトだった。

 

『守るべきものの為に闘う気持ちがあるのなら…僕は君の剣となり、君を守る盾となろう!!』

 

「Ⅲ…なんで…?」

遊馬は突然現れたⅢに問いかける…。

 

 

『WDCの戦いの後、僕らは兄様を中心にバリアン世界とアストラル世界の研究をしていた…その中で君がアストラルを失った事知ったんだ…!遊馬、君は僕の一番大事な友達だ…その悲しみを放ってはおけないよ!』

 

「Ⅲ…ありがとう…!」

遊馬の危機に駆け付けたⅢ…彼は遊馬を助ける為に、再び戦いに臨む…!

 

 

『ハハハハハ…!!ちびっ子パパの三バカ息子が来たところで…何ができる!!』

 

『お笑いメガネのハエを潰す事くらいできるさ…Mr.ハエランドさん?』

 

『っ〜!?可愛い顔して減らず口を!!これでも喰らえ!!』

 

ギィン─!

 

乱入者を排除する為、ハートランドは眷属たるハエの大群を遊馬達に差し向ける!!

 

()()()()よ!!」

 

キィン─!

 

『馬鹿な…!?何故紋章の力を使える─!?』

遊馬達に殺到するハエの大群…しかし、それはⅢの右腕に装着されたブレスレットから放たれた『紋章』の力によって全て叩き落される!

 

 

『兄様が開発したこの『ブレスレット』には父様が再び分け与えてくれた『紋章』の力が科学の力で封じ込めてある!そのおかげさ!』

 

「分け与えてくれた、力…トロンが…!」

Ⅲはブレスレットを掲げながら語る、『紋章』の力は直接分け与えれば肉体への負担も大きい…だが、ブレスレットへと封じ込める事でリスクを最小限にその力を発揮できるようにしたのだ。

 

 

 

『…遊馬、僕じゃアストラルの代わりにはならないだろうけど…奴らとのデュエル、僕も手を貸すよ…!かつては君と命を賭けて戦った僕だけど…今度は仲間として、力を合わせて戦おう!!』

 

「仲間として、力を…!」

遊馬を助ける為に駆け付けたⅢ…その言葉を聞いた遊馬はある決意を固めた…!

 

 

「Ⅲ、これを受け取ってくれ…!」

 

『これは…「マシュマック」に「アトランタル」…!』

遊馬がⅢに差し出したモノ…それはかつてⅢから託された2枚のナンバーズだった…!

 

「アストラルはオレにナンバーズを託してくれた…きっと、『ナンバーズを正しく使え』って意味だったんだ…だから、オレはこの力を仲間と分け合い…共に戦う!!」

 

『遊馬…わかった…!』

 

「これが正解かはわからねぇ…でも、これが…今のオレの答えだ!!」

遊馬とⅢは手を取り合い…その決意を固めた…!

 

 

 

【どうやら…話は決まったらしいなァ…!!】

事態を静観していた蝉丸が遊馬達の前に飛び降りる…!

 

 

【構わねぇ…2人纏めてかかってきやがれ!!】

 

『その余裕…後悔する事になるよ!』

 

「いくぜ…Ⅲ!!」

 

『ああ!!』

遊馬達を挑発する蝉丸…ナンバーズと仲間を守る為、遊馬とⅢはバリアンに挑む!!

 

 

 

 

 

 

「『【デュエル!!】』」

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬&Ⅲ対蝉丸

 

変則タッグデュエル

 

 

『蝉丸、貴様の晴れ舞台に私が花を添えてやろう…我が眷属よ、悪の紋章を大地に刻め─!!』

 

ギィン─!!

 

「な、なんだこれ…!?」

ハートランドの言葉と共にⅢの蹴散らしたハエが禍々しい光を放ち…中庭にバリアンの紋章が刻まれる…!

 

 

『この中ではデュエル開始と同時に蝉丸はお前達2人のライフの半分を自分のものにできる…!』

 

『っ─!卑怯だぞ!ハートランド!!』

 

『卑怯で結構…!だが、問題はあるかね?』

 

『「くっ…!!」』

下衆な笑みを浮かべるハートランド…その視線の先には囚われた仲間達がいる、遊馬達はその条件を飲むしかなかった…!

 

 

 

追加ルール 『バリアンの紋章』

 

蝉丸LP4000→8000

 

遊馬LP4000→2000

 

ⅢLP4000→2000

 

 

 

【ガハハハ…きたきたぁ…!!力がみなぎるぜぇぇ─!!

 

「っ─!!あれが、奴の本当の姿か…!」

遊馬達から力を吸い取った蝉丸はバリアンとしての姿…蝉怪人の本性を現した…!

 

 

 

 

【ガハハハ…!先攻は貰うぜ…俺のターン!】

先攻を取った蝉丸はドローカードを見て邪悪な笑みを浮かべる…。

 

【俺はまどろっこしいのはキライでな…!このタッグデュエルは()()1()()()()()()()()()()()のルールでやろうぜ…!】

 

『くっ…!?何を勝手に!!』

傍若無人に『俺ルール』を適用する蝉丸…その先手とは…?

 

 

 

【いくぞ…!俺はレベル3の『夢蝉スイミンミン』と2体分となった『オイリーゼミ』でオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現われろ!()N()o().()3()()!!】

 

『「No.3」だって!?』

蝉丸が呼び出そうとするナンバーズの数字を見てⅢが驚愕する、一桁台のナンバーズである事もそうだが…自身が名乗る数字と同じというのは…なんという偶然だろうか…。

 

 

03 

 

 

【そうよ…!これが貴様らを葬る為にベクターサマから賜ったナンバーズ!!Ⅲ…!貴様がどう名乗ろうと、真の『3番』はこの俺様のナンバーズだ!!長き眠りから目覚め…地獄の凱歌を高らかに歌え!!『地獄蝉王ローカスト・キング』!!】

 

「あれが奴のナンバーズ…!でも、守備表示…?」

光の爆発と共に巨大な蝉のナンバーズが現れた…だが、1ターン目から攻撃可能のはずなのに守備表示の召喚だった…。

 

『遊馬、油断は禁物だよ…きっと、何かを企んでいるはずだ』

Ⅲは油断なく蝉丸を睨みながら…遊馬の事を考える…。

 

 

『(遊馬、君にとってアストラルのいないこのデュエルは大きな試練になる…これを共に乗り越え、君が立ち直る姿を見る為に…僕はここに来たんだ…!!)』

傷心の遊馬を心配し…そして支える為にやって来たⅢ…アストラルのいない決闘に遊馬は挑む…!

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!……このカードは……!」

自分のターンとなり、カードを引く遊馬…彼が引き込んだのは速攻魔法「ダブル・アップ・チャンス」…遊馬とアストラル、そして「希望皇ホープ」の最強の切り札と言ってもいいカードだった…。

 

 

「(このカードは…オレとアストラルの…思い出のカード……見ててくれ、アストラル…!オレは…前に進んでみせる…!!)」

脳裏に過ぎるアストラルとの思い出…それを糧として遊馬はバリアンに立ち向かう!

 

 

39

 

 

「現われろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

遊馬はエースたる希望の戦士を呼び出す…そして、その手札には「勝利の方程式」ともいえるカードが揃っていた!

 

 

「オレは永続魔法『速攻予約特典(クイック・リザベーション・リワード)』を発動!このカードは手札から速攻魔法1枚を()()()()()()伏せる事ができる!オレは速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』をセット!」

 

【『ダブルアップチャンス』…?】

本来ならば手札から伏せるカードは相手に公開しないもの…だが、その行動には意味がある…!

 

 

「そして『速攻予約特典』の効果で伏せたカードはこのターンに発動でき、その速攻魔法の効果を受けたモンスターの攻撃力はバトルする時、2倍となり、相手モンスターの守備力を攻撃力が上回った時、その数値分の貫通ダメージを与える!!」

 

『(上手い!遊馬は「ホープ」と「ダブルアップチャンス」のコンボをさらに強化した…!これなら蝉丸に7500の大ダメージを与えられる!!アストラルと共に歩む事で君は…決闘者として大きな成長を遂げていた…!)』

遊馬の意図を察したⅢは驚嘆する…彼が知るWDCの戦いよりも、遊馬は確実に強くなっていたのだ…!

 

 

 

「バトルだ!『ホープ』で『ローカストキング』を攻撃!そして『ホープ』の効果発動!ORUを1つ使い、自身の攻撃を無効にする!ムーン・バリア!!」

 

【そうはいくかよォ!!この瞬間、「ローカストキング」の効果発動!ORUを1つ使い、相手モンスターが効果を発動した時!その効果を無効にする!メモリー・シャット!!】

 

「なにっ!?」

ホープが効果を発動した瞬間、ローカストキングが凄まじい鳴き声を発する…その音波によりホープの効果が不発となる!

 

【これでお前の使った効果は無効となった!さらに効果には続きがある!『ローカストキング』の守備力は500アップだ!!】

 

「しまった…!守備力3000!!」

 

『守備表示だったのは…これを狙っていたのか!!』

Ⅲは蝉丸の行動の意味を理解した…攻撃を誘うような言動はローカストキングの効果を発揮する為の作戦だったのだ…!

 

 

【残念だったなァ…!バトルが無効にならなかったから『ダブルアップチャンス』は発動しねぇ!よって攻撃力はそのままでバトルは続行!ダメージを喰らいな!!】

 

「ッあああ…!」

 

『遊馬!!』

 

「大丈夫だ、これぐらい…!!」

ホープの攻撃は蝉の堅牢な甲殻に阻まれ、反射ダメージがリアルダメージを伴って遊馬を傷付ける…!

 

 

 

【無駄にライフを失ってご愁傷サマだなァ…!】

 

『所詮トンマはトンマ…アストラルがいなくてはただの…ゴミデュエリストに過ぎないって事だな!ハハハハ!!』

まんまと策に嵌った遊馬をハートランドと蝉丸は嘲笑った…。

 

 

 

『(遊馬…君は1人じゃない…!アストラルを失った今、今まで育んできた『絆』がきっと大きな力となる…!それを僕が気付かせる!!)』

失策を悔やむ遊馬をカバーする為にⅢは友情の力を開放する!

 

 

 

 

33 

 

 

『現われろ!「No.33」!「先史遺産─超兵器マシュ=マック」!!』

Ⅲは先史遺産のエースとも言えるナンバーズ…巨大な空中遺跡を呼び出す!

 

 

【ハッ…!バカでかいだけのガラクタナンバーズに何ができる!!】

 

『ガラクタかどうか…その目で見るといいさ!僕は永続魔法「先史遺産─ピラミッド・アイ・タブレット」を発動!』

マシュマックを侮る蝉丸…彼に「先史遺産」の力を見せつける為、Ⅲはさらなる一手を打つ!

 

 

 

『このカードは自分フィールドの「先史遺産」モンスターの攻撃力を800アップする!この瞬間!「マシュマック」の効果発動!フィールドのモンスターの攻撃力が変動した時、ORUを1つ使い!その数値分のダメージを相手に与える!!インフィニティ・キャノン!!』

 

「待てⅢ!『ローカストキング』の効果が─!?」

Ⅲの背後に現れたウジャト眼を刻んだ石版がマシュマックに力を与え…マシュマックは無数の砲台を出現させる…だが、それは…!

 

 

【甘いんだよ!『ローカストキング』の効果発動!ORUを1つ使い、『マシュマック』の効果を無効にし!自身の守備力を500アップする!】

 

『大丈夫…!遊馬がフィールドに残してくれたカードが僕を勝利に導いてくれる!!』

蝉王の音波がマシュマックの効果を無効化する…しかし、それはⅢの狙い通りだった…!

 

 

『僕は永続魔法「速攻予約特典」の効果発動!僕は速攻魔法「石の心臓」をセット!バトルだ!「マシュマック」で「ローカストキング」を攻撃!』

 

【はぁ!?今の『ローカストキング』の守備力は3500!攻撃力3200の『マシュマック』は返り討ちだ!!】

マシュマックが裁きの稲妻を放つ…しかし、再び堅牢な甲殻が攻撃を跳ね返し、Ⅲにダメージを与える!

 

『ぐっ─!!』

 

「Ⅲ!!ダメージを受けると分かってるのに、なんで…!?」

 

『心配させてゴメン…この為さ!!速攻魔法「石の心臓」発動!!このカードは先史遺産モンスターがバトルで相手モンスターを破壊できなかった時、そのモンスターはもう一度攻撃できる!さらに!「速攻予約特典」の効果で「マシュマック」の攻撃力は2倍の6400となる!!』

それはまさに「肉を切らせて骨を断つ」一撃…Ⅲはこの一撃を狙っていたのだ!

 

 

 

『「マシュマック」!もう一度「ローカストキング」を攻撃!ヴリルの火!!』

裁きの炎がローカストキングに降りかかる─!

 

【チィィ…!!させるか!!永続罠『空蝉幻身』を発動!自分の昆虫族モンスターをバトルでの破壊から守る!!】

 

『なにっ!?だけど…ダメージは受けて貰う!!』

 

【があああっ!?】

ローカストキングは炎が直撃する寸前、幻影を囮として回避するが…蝉丸に2900の大ダメージを喰らう!

 

 

 

『思い知ったか!これが共に戦う…仲間の力だ!!』

Ⅲは遊馬との絆の力に胸を張った…!

 

 

【ガキ共め…!俺を本気で怒らせやがったな…!!許さねぇ!!オレのターン!!】

大ダメージを受けた蝉丸は怒りを露わにしながら反撃を狙う…!

 

 

【クソガキ共め…たっぷり鳴かせてやる!!俺は『ローカストキング』を攻撃表示に変更!そして『空蝉幻身』のさらなる効果発動!『ローカストキング』が攻撃表示になった事でその守備力を攻撃力に加える!攻撃力4700だ!!】

 

『なんだって!?』

 

【さっきの借りを返してやる…と、言いたいが…まずは確実に潰せる方からだ!!俺は『ローカストキング』で効果が無効になっている『ホープ』を攻撃!】

 

「やべっ…!?」

遊馬は防御カードを伏せていない…それを見ていた蝉丸は遊馬へと狙いを定める…!!

 

 

 

『そうは、させない─!罠発動!「オリハルコン・ミラージュ」!相手の攻撃対象を自分の先史遺産モンスターに変更する!お前の相手は…僕だ!!』

 

「Ⅲ!!」

ホープの姿が煙幕に隠れる…そしてローカストキングの攻撃がマシュマックを粉砕した…Ⅲの残りライフは…僅か200…!

 

 

「Ⅲ!大丈夫か!?どうして…!」

 

『僕は大丈夫…!僕は君の剣となり、盾となる…!』

捨て身で遊馬を庇い、満身創痍となったⅢ…その姿を蝉丸は嘲笑う…!

 

 

【仲間を守ったつもりかもしれねぇが…これでテメェらの負けは確定したぜ…!!永続罠『セミ・ファイナル』発動!相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、次の自分のターンにこのカードを墓地におくる事でその戦闘ダメージ分のダメージを相手に与える…!つまり、次のターンがくればお前らは1500のダメージを受けて負けるのさ!!】

 

『「くっ…!」』

それはダメ押しの一手…遊馬達に残された猶予は…2ターン…!

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

「(次の奴のターンが来たら、オレとⅢは負ける…!!)オレのターン…ドロー!!」

遊馬は追い詰められながらカードを引く…残された手札は3枚、ライフは1500…頼みの綱である「RUM」は無く、「ホープレイ」へのエクシーズチェンジもできない…しかし…勝利への道がある事に遊馬は気付いた…!

 

 

「(そうだ…!!『No.93』!!あのカードなら、墓地の『マシュマック』をORUにして奴の攻撃力を上回れる!!そうすれば活路はある!!)」

それは遊海との絆の力『太陽皇ホープ・フェニックス』…その効果を使えば自身の攻撃力を6300まで上げ、さらに蝉丸の伏せに破壊カードがあっても復活する事ができる…しかし…。

 

 

「っ─!?(そんな、カードの絵柄が…()()()()!?)」

エクストラデッキから『No.93』を取り出す遊馬…だが、そのカードはモンスター名を残し、白紙になってしまっていた…。

…原因はわからない…もしかしたら『海底迷宮』で力を使ったからだろうか……どちらにしても遊馬を支える力は無くなってしまった…!

 

 

 

Sideout

 

 

 

【(無い知恵を絞ってるみたいだが…無駄なんだよ…!)】

必死に勝利の方程式を探す遊馬を見ながら、蝉丸はほくそ笑む…。

 

【(俺の伏せカードは『蝉鳴くバリア─ミンミン・フォース』…!俺の『蝉』モンスターが攻撃された時、相手のモンスター全てを破壊する…!)】

それは保険として伏せたカード…備えは万全だった…。

 

 

 

 

「くそ…どうすれば…!!」

手札のカードから勝利の方程式を見つけられない遊馬は拳を握り締める…遊馬の心に「諦め」が浮かぶ…その時だった。

 

 

「ゆう、ま…がんばって…」

 

「がん、ばれ…ゆうま…」

 

 

「み、みんな…!!」

 

【ば、馬鹿な…!奴らの記憶は吸い尽くしたはず…!!】

ぼんやりと座り込んでいたナンバーズクラブの仲間達が遊馬へのエールを送る…記憶を奪われ、遊馬の事も覚えていないはずの彼らが…!!

 

 

『仲間だからだよ…!』

仲間達の姿を見たⅢはその思い…想いを感じ取り、声を上げる…!

 

『っ…!貴様らお得意の「友情ごっこ」か…?』

 

黙れ!!記憶を奪われようと、魂に刻まれた…友への「想い」は…変わらないんだ!!』

 

「Ⅲ…みんな…!」

かつて…WDCでの戦いの時、Ⅲは紋章の力によって遊馬の「アストラルの記憶」と「かっとビングの記憶」を奪い、遊馬を追い詰めた。

…しかし、デュエリストの魂に刻まれた「想い」が…そして仲間の声が奇跡を起こし、紋章の呪縛を打ち破った事があった、それ故にⅢは分かっていたのだ…仲間達の声なき想い…遊馬の勝利を願う祈りを…!

 

 

「そうだ…オレには…オレには仲間がいるんだ!!」

そして遊馬は気付いた、さっきまでの自分は「1人で勝つ」事を考えていた…だが、今の遊馬には…頼れるパートナーがいる!!

 

 

 

 

「Ⅲ!お前に『ホープ』を託すぜ!!魔法カード『リリース・リバース・バースト』を発動!エクシーズモンスターの『ホープ』を墓地に送り、相手の伏せられた魔法・罠カードを全て破壊する!!」

 

【『な、なにぃ!?』】

それは遊馬の渾身の一手…エースを手放し、相手の一手を潰したのだ…!

 

 

【だが…!お前達の負けは変わらねぇ!!】

 

「そしてオレはフィールドにモンスターが存在しない事で、手札の『ギラギランサー』をⅢのフィールドに特殊召喚!」

そしてⅢの場に槍を構えた輝きの戦士が現れる!

 

「そして、この効果で『ギラギランサー』を特殊召喚した時、Ⅲのエンドフェイズに500ダメージを受け、オレは500回復する…!」

 

【オイオイ…仲間割れか?次のターンでⅢのライフは尽きるじゃねぇか…!仲間を見殺しにして自分だけ助かるつもりか?】

遊馬の行動を笑う蝉丸…彼は理解していなかった、遊馬とⅢの間に繋がる『絆』の力を…!

 

 

 

「これが…仲間を信じる…()()()()()()…!カードを伏せて、ターンエンド!!」

 

【ハハハハ!!いざとなりゃ、仲間を犠牲に生き残るつもりか?ひどい奴だなぁ?】

 

うるさい!!本当の仲間っていうのは…そんなモノじゃない!!今からそれを…証明する!!』

遊馬を嘲笑う蝉丸…邪悪なるバリアンを倒す為、絆の力を示す為…Ⅲはそのドローに全てを賭ける!

 

 

 

『僕のターン!ドロー!!…来た…!!(遊馬の伏せカードが僕の予想通りなら、これで勝てる!!)』

Ⅲが引き込んだカード…それがこのデュエルを決着へと導く!

 

『永続魔法『オリハルコン・チェーン』を発動!このカードがフィールドにある時、次に召喚するエクシーズモンスターのエクシーズ素材を1つ減らす事ができる!!僕はレベル6の『ギラギランサー』1体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!』

それは掟破りのモンスター1体でのエクシーズ召喚…そしてⅢが呼び出すのは…!

 

 

06

 

 

『現われろ!「No.6」!「先史遺産アトランタル」─!!』

それは先史遺産の切り札…火山を背負いし灼熱の巨人が顕現する!

 

 

 

『「アトランタル」が召喚された時!墓地の「No.」を1体装備し、その攻撃力分だけ攻撃力をアップする!僕が選ぶのは「希望皇ホープ」!』

 

【んな…!?奴が「リリースリバースバースト」を発動したのは…この為だったのか─!?】

蝉丸は遊馬の真意を知る…遊馬はⅢと共に勝利を掴む為、あえてホープを墓地に送ったのだ!

 

 

『見よ!戦いの中で結ばれた友との絆で蘇る希望の光を!!さらに「ピラミッドアイタブレット」の効果で攻撃力が800アップだ─!!』

墓地から飛び出したホープがアトランタルの胸に飛び込み…ウジャトの石版が力を与える、その攻撃力…5900!

 

 

【だが…攻撃を受けても、俺のライフは残る!!お前達の負けは変わらない─!!】

 

『それはどうだろうね…!僕は「アトランタル」で「ローカストキング」を攻撃─!!』

アトランタルが灼熱の拳を振り上げる!

 

「その瞬間!罠発動!『オーバーレイ・ブレイク』!エクシーズモンスターの攻撃を無効にし、このカードをそのモンスターのORUにする!」

 

【攻撃を無効……?し、しまった!!】

遊馬の罠で攻撃を止めるアトランタル…だが、蝉丸は思い出した…遊馬の最後の伏せカードは…!

 

 

「今だ!速攻魔法『ダブルアップチャンス』発動!!攻撃が無効になった時、そのモンスターの攻撃力を倍にしてもう一度攻撃できる!!」

 

『さらに「速攻予約特典」の効果発動!「アトランタル」の攻撃力はさらに2倍となる!!』

 

【こ、攻撃力23600だとぉぉ!?】

それは遊馬達が繋いだ絆の結晶…邪悪を断ち切る希望の力…!!

 

 

『「アトランタル」で『ローカストキング』を攻撃!』

 

「『人智を超えた神の遺産が希望の光を宿す時!熱き絆の裁きが下される!!これが仲間の力!ホープ剣クロス・アトランタル・スラッシュ!!』」

 

【ば、馬鹿な…!?ぐああああああ!!?】

アトランタルの火山から灼熱を纏ったホープが飛び出す、灼熱のホープ剣は邪悪を断ち…デュエルの幕を降ろした…!

 

 

 

蝉丸LP0

 

 

遊馬&Ⅲ WIN!

 

 

 

 

 

『せ、蝉丸がっ…!?くっ…!!』

吹き飛ばされた蝉丸は人間の姿に戻り、赤黒い粒子となって消滅…それを見たハートランドは慌てて撤退した…。

 

 

 

「(見ててくれたか?アストラル……オレ、みんなと一緒に頑張るからな…!だから…!)」

デュエルを終えた遊馬は夜空を見上げる…アストラルを失った悲しみが癒えた訳ではない、しかし…遊馬は前に進むしかない…アストラルに託されたナンバーズを…仲間達を守る為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら、杞憂だったみたいだな…良いデュエルだったぜ、遊馬」

 

《仲間との絆で勝利を掴む…か、ダークネスとのデュエルを思い出すねぇ》

ハートランド記念館の屋根の上、そこで決闘を見守っていた十代は胸を撫で下ろす…万が一に備えて様子を見守っていたのだ。

 

 

 

《でも…アストラルを失った傷が癒えた訳じゃない、アイツの試練はこれからさ》

 

「ああ…もしかしたら、昔のオレみたいに空回るかもしれないしな……なぁ、先生…こんな時こそ、アンタがいなきゃダメじゃねぇか…」

仲間の無事を喜ぶ遊馬の姿を見ながら…十代は英雄へと呟いた…。



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困惑の勇士〜並び立つ悲哀〜

こんにちは!S,Kです!

モンハン/ライズのアップデートが来る前に急いで投稿…あと2話くらいは書きたいなぁ…。


それでは、最新話をどうぞ!


「蝉丸は実に惜しかった…!掠ってました!あともう少しというところで九十九遊馬を倒せるはずだったのに…!」

 

『………』

 

バリアン世界、ドン・サウザンドの居城…そこにMr.ハートランドの弁明の声が響く。

蝉丸が遊馬とⅢに敗れた事を報告するハートランド…その様子を玉座に座ったベクターは呆れた様子で見下ろしていた…。

 

 

「ああ…本当に悔しい…!!ですが、ご安心ください!!次の刺客は指折りの強者!!…少し気難しい先輩なのですが…」

 

『…おい、ハエ野郎…!べらべらと調子の良い事ばかりを…しくじりはもう許されねぇぞ!!』

 

「ひ、ヒィィ〜!?」

芝居がかった弁明を続けるハートランドの態度にベクターは青筋を立てる…自分が直接動けない事も相まってベクターの苛つきは頂点に達していた…。

 

 

「わ、分かっております!!次なる刺客は本当に大丈夫!文句無しに強い!のですが…本当に扱い辛い方でして…上下関係に厳し──」

 

『テメェ…!ふざけてんのか!?

 

「ぐえぇぇ…!?」

ハートランドの態度に遂に堪忍袋の緒が切れたベクターは念動力でハートランドを絞め上げる!

 

 

「す、すいません…!ですが、本当に強いのです!!せ、先輩は『水属性デッキ』最強の使い手なのです─!!」

 

『…()()()?たしか、神代凌牙も水属性使いだったな…?』

 

「あべしっ!?」

第二の刺客は水属性の使い手…それを知ったベクターはハートランドを開放し、考え込む…。

 

 

『…なんだかよぉ…凌牙の奴を思い出すと胸くそ悪くなるぜ……そうか…!ハートランド!すぐにその「先輩」とやらに凌牙のナンバーズを取りに行かせろ!!』

 

「ぎ、御意に!!(…先輩を、どう説得したものか…?)」

ベクターは2人目の刺客に凌牙を襲わせるように指示する…その裏でハートランドは「先輩」をどう説得するか頭を痛めたのだった。

…Mr.ハートランドの上司運は最悪である…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁさぁ!たんとお食べ!」

 

『ありがとうございます春さん…泊めて頂いたうえに朝食まで…』

 

「遠慮するなって!いただきま~す!」

蝉丸との戦いの翌朝、Ⅲは九十九家に滞在している…蝉丸との戦いで少し吹っ切れたのか…遊馬も小鳥や家族と久しぶりの食卓を囲んでいた。

 

 

「そういえば…Ⅲはどうして学園の制服を着てるの?」

 

『ああ…実は着替えを持って来るのを忘れちゃって、遊馬君に借りたんだ』

Ⅲは普段の貴族服ではなく、遊馬の制服の予備を借りて過ごしている。

 

 

「ヘヘッ…!ずっといたっていいんだぜ、Ⅲ!もぐもぐ…」

 

「ありがとうⅢちゃん…あんたが来てくれたおかげで、遊馬もようやっとご飯を食べるようになったよ…」

 

『いえいえ…僕もこんな美味しい料理が食べられて嬉しいです!』

ひたすらにデュエル飯を食べる遊馬を見た春はⅢに感謝を伝える…引き篭もっている間、遊馬はほとんど食べ物を口にしていなかったのだ…。

普段から大食いである遊馬がいきなりそんな状態になったせいで春と明里が驚いたのも無理はないだろう。

 

 

 

「モグモグ…やっぱりデュエル飯は最高だぜ!アストラル!お前も食べ───…ぁ……あはは」

 

「遊馬…」

デュエル飯を食べながら遊馬はアストラルを呼ぶ…だが、その声に応える相棒は…もういない。

遊馬はそれを誤魔化すように笑っていた…。

 

 

「そ、そうだ!ゆっくりメシを食ってる場合じゃねぇんだよ!ハートランドの野郎、また何かを仕掛けてくるに決まってる!!」

沈んだ空気を変える為に遊馬が声を上げる。

復活し、バリアンの手先となったMr.ハートランド…彼がこのまま手を引く筈はない…!

 

 

『カイトやシャークにも知らせた方がいいね…!』

 

「ああ…でも、カイトは何かの調査に行ってて連絡が取れねぇ……遊海も、まだ起きないし…シャークはシャークで……」

 

「ずっと璃緒さんの付き添いで病院に…この前、お見舞いに行った時も辛そうだった…」

小鳥は病院での凌牙の姿を思い出す…璃緒が眠り続ける中で凌牙も何かを悩み続けていた…。

 

 

『…これからみんなでお見舞いに行ってみようよ!もしかしたら璃緒も遊海さんも良くなってるかもしれないし!』

 

「そうだな!それじゃあシャークのいるハートランド病院から行こうぜ!」

バリアンが動き出した事を伝える為、遊馬達は璃緒達のお見舞いに行く事を決めた。

 

 

 

 

ポツ…ポツポツ…

 

 

 

「あっ…降って来ちゃった…!」

 

「よ〜し!かっとビングでダッシュだぜ!」

 

「あっ……遊馬…」

ハートランド病院へ向かう途中、街に雨がぱらつき始める…遊馬は雨に濡れないように走り出すが…小鳥とⅢは分かっていた、遊馬は()()()()()をしているのだと…。

 

 

「遊馬…無理、してるのかな…?」

 

『まだ、時間はかかるでしょう…それだけアストラルの存在は…かけがえのないものだったから…』

顔は笑い、心の中で泣く遊馬…不安定な彼を小鳥達は見守るしかなかった…。

 

 

 

 

 

「ひゃあ〜ビショビショだぜ…お見舞いが終わったら一度帰らなきゃダメかぁ?」

 

「もう…はい!ハンカチ!」

 

「サンキュー!小鳥」

ポツポツと降り出した雨が音を立てて地面を濡らし始める頃、遊馬達は病院に着き、璃緒の病室へと向かった…。

 

 

 

 

 

「シャーク!妹シャークのお見舞いに…って、翠さん!?」

 

「あ…遊馬君!小鳥ちゃん!ミハエル君!いらっしゃい!…お見舞いに来てくれてありがとう!」

 

《フォウ!》

璃緒の病室にやって来た遊馬達…彼らを出迎えたのは凌牙ではなく、遊海に付きっきりになっているはずの翠だった…その傍にはフォウとトフェニ、フレアの姿もある。

 

 

「どうして翠さんが…?遊海さんも大変なのに…」

 

「実はね、海馬コーポレーションがやっと遊海さんを苦しめていた『毒』の血清を完成させてくれたの!それで状態が落ち着いたから璃緒ちゃんの様子を見に来れたのよ!」

 

「それ本当か!?よ、よかった〜…!!」

 

『遊海さん…よかった…!』

翠の思わぬ言葉に遊馬とⅢの表情が明るくなる、時はその日の朝へと巻き戻る…。

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

『出来た!出来たぞ翠!!遊海を蝕む毒を中和する血清が!!』

 

「本当ですか!?」

遊海の眠る病室に瀬人が駆け込んで来る…その手には小さなアンプルが握られていた…!

 

 

『時間は掛かってしまったが…これで遊海を目覚めさせる事ができる!!』

 

《…おい、その血清…本当に大丈夫なんだろうね?コイツの身体は弱りきってる…本当に効くのか?》

 

「おい、ユベル!!翠さんが不安になる事言うなって…」

瀬人の持つアンプルを見てユベルが怪訝な表情を浮かべる…ユベルはKC製のロケットで辛い経験をした事が若干トラウマになっているのだ…。

 

 

『案ずるな…KCの総力を上げて開発した血清だ…!必ず、遊海を生還させてみせる!』

 

「瀬人さん…お願いします…!!」

翠は一縷の望みを瀬人へと託した…!

 

 

……

 

 

『血清投与開始…アヤカ、モニタリングを頼む』

 

《はい…!》

点滴に混ぜられた血清がゆっくりと遊海に投与されていく…その様子を翠達が固唾を飲んで見守っている…。

 

 

『血清が効果を発揮するには少し時間がかかる…これから遊海を24時間体制で監視し、容態を観察する!』

 

「わかりました…十代君、アヤカちゃん、メガロック…遊海さんをお願いね…!」

 

「ああ、任せておいてくれ!」

 

『むっ…?翠、何処へ出掛けるのだ?』

血清投与の様子を見た翠は十代達に遊海の事を託す…。

 

 

「瀬人さん…バリアンが再び動き始めたんです…!アストラルを失って落ち込む遊馬君達を狙って……その次の標的が……璃緒ちゃんと凌牙君なんです…!」

 

『クッ…最悪のタイミングだな…!相手は何者だ?』

 

「今回の刺客はかつての『闇デュエル界の四悪人』の1人、海月…昔、KCと警察が協力して捕まえた男です…!」

 

『海月……覚えているぞ、ハートランドの隣町でカード強盗を企て、その途中で……待て…!その男は…!!』

翠から刺客の詳細を伝えられた瀬人は()()()()()を思い出した…!

 

 

「これ以上、バリアンに…あの男に凌牙君達は傷付けさせない!!フレアさん、トフェニさん…力を貸して…!」

 

《御意…!》

 

《わかりました…!!》

 

《フォウ!!》

 

 

十代と瀬人に後を託した翠は璃緒の病院へと向かった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「(…でも、おかしいわ…遊馬君達が来たのに…クラゲ怪人は姿を見せない…いったいどうして…?)」

朝の出来事を思い出した翠は考える…翠の記憶では蝉丸戦の翌日、クラゲ先輩が璃緒の病室に侵入…見舞いに訪れた遊馬達の目の前で璃緒に毒を打ち込み、次に凌牙を狙うはずなのだ…。

翠はそれを阻止する為に、先回りして待ち受けていたのである。

 

 

 

『翠さん、知っているとは思いますが…バリアンが再び動き始めました…!僕達はそれを凌牙に伝えに来たんです』

 

「わざわざありがとうミハエル君…今日は私も凌牙君に会えてないの、入れ違いで出かけちゃったみたい…遊海さんの事を伝えたいんだけど、電話にも出ないし…」

 

「シャークの奴…何処に行ったんだ…?」

Ⅲの言葉を聞いて俯く翠…彼女が病院を訪れた時には凌牙の姿は無く、連絡も取れない状況だったのだ…。

 

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

 

 

「あっ…!凌牙君からかな…?もしもし?」

 

 

『翠さん!すまねぇ!しくじった─!!』

「十代君!?いったいどうしたの!?」

Dゲイザーの着信を取る翠…その相手は顔を青褪めさせた十代だった…!

 

 

『バリアンが…バリアンが遊海先生を襲撃しに来たんだ!!しかも…そのバリアンが遊海先生にまた「毒」を打ち込みやがった─!!』

 

「『「なんだって!?」』」

十代からの緊急連絡…それはバリアンの急襲を伝えるものだった…!

 

 

 

 

 

 

 

Side十代

 

 

 

 

《マスターのバイタルが安定し始めています、このまま順調にいけば…マスターは意識を取り戻せるはずです…!》

 

「そうか…!よかった…先生…!」

 

『大変なのはこれからだ…バリアンとの最終決戦は目前に迫っている、それまでに遊海が戦えるようにしなければならん…』

 

《案ずるな、遊海ならば…すぐに力を取り戻せるはずだ!》

順調に血清を投与されていく遊海…徐々に体中にあった毒は無害化され、その顔色も少しずつ良くなっていく…!

 

 

『だが、不死身の遊海をここまで苦しめるとは…バリアンめ…!この借りは必ず返してやる…!!』

 

「ああ、特にベクターって奴と…先生を襲ったネームレスって女バリアン…そいつは絶対に許さねぇ…!」

瀬人と十代は遊海を襲ったバリアンに対して怒りを燃やす…その時だった。

 

 

《っ!?瀬人!十代!警戒を…!バリアンの反応です!!》

 

「『なにっ!?』」

アヤカが瀬人達に警戒を促す…レーダーに接近するバリアンの影を捉えたのだ…!

 

『……水…?』

次いで瀬人が病室の扉の隙間から入り込む水に気付く、遊海の病室は地下…雨が入り込む事はあり得ない…!

 

 

【ハッ…随分仰々しい出迎えだなぁ?病人1人に護衛がいるなんてよぉ…!】

 

『四悪人の海月…!バリアンの手先か!!』

 

「こいつが…!」

 

【おうおう…!オレの名前もまだ有名らしいなァ…!】

遊海の病室に足元を水浸しにしながら紺色のシルクハットを被り、紺色のコートを着た白髪の男が現れる…その男こそ、バリアン第二の刺客・クラゲ先輩だった…!

 

 

【その男にゃ、なんの恨みもないが…可愛い後輩の頼みだ…!死んでもらうぜ!!】

 

「やらせねぇ!!『E・HEROネオス』!!」

啖呵と共にクラゲ先輩はコートの袖から半透明の触手を伸ばし、遊海へと襲いかかる…だが、十代の呼び出したネオスが手刀で触手を切り落とす!

 

 

【テメェ…!何中だコラァ!!先輩のやる事を邪魔するんじゃねぇ!!】

 

「ヘッ…悪いけどさ!オレはアンタより50歳は年上だからな…邪魔させてもらうぜ!!」

 

【ああ、そうかい…!お前からはっ倒してやるよ!ホラ吹き野郎─!!】

 

「嘘じゃないけどな─!!」

 

《言い返してる場合じゃない!!》

十代に攻撃を防がれたクラゲ先輩は逆上…さらに触手を増やして十代達に襲いかかった…!

 

 

 

 

【さっさとくたばれよ…!この三下ども─!!】

 

『フン…!三下は貴様だ!!』

 

「オレ達を甘く見てると…痛い目みるぜ!!」

遊海を守る戦いは十代達の劣勢だった、狭い病室の中を埋め尽くす無数の触手…それを十代は切り飛ばし、瀬人は機械の身体を使って引きちぎり、アヤカは威力を絞ったレーザーで撃ち落とす…遊海を守る為に地下に隠した事が裏目になってしまっていた…。

 

 

【このボケナス共が…大人しくやられろよぉ!!】

不気味な影をチラつかせながらクラゲ先輩はさらに触手を放つ…その時だった!

 

《倒れるのは、貴様だ!喰らえィ!!》

 

【ガハッ─!?】

激情に任せ胴体がガラ空きになった瞬間、隙を狙っていたメガロックが放った岩礫がクラゲ先輩を直撃…激しく壁に叩きつけた!

 

 

「ナイスだ!メガロック!」

 

『観念しろ、バリアン!』

 

【チッ…!いいボディを喰らった…だが、()()()()()…!】

 

『なにっ…!?』

形勢逆転…十代と瀬人はクラゲ先輩を壁際に追い詰める…だが、クラゲ先輩は妖しい笑みを浮かべていた。

 

 

ビビーッ!ビビーッ!

 

 

《ッ!?マスター!?》

 

『なっ─!?』

部屋にけたたましい警報音が鳴り響く…それは遊海の容態が悪化した事を示していた…!

 

 

【ハハハ…!知ってるかぁ?オレ達の偉大な先輩方!()()()の触手はなぁ、先輩が死んでもその()は残り続けるんだよォ!!】

 

「なにっ…しまった!!」

クラゲ先輩の言葉を聞いた十代は遊海を注視する、血清を投与する為に布団から出されていた右腕…そこに十代達が蹴散らした触手の破片の1つが突き刺さっていたのだ…!!

 

【さぁ…!次は「水属性最強」を騙る鮫野郎だ…首を洗って待ってやがれ!!】

 

『ま、待て!!』

 

《逃がさん!!》

一瞬の隙をついてクラゲ先輩はその身を水へと変える…メガロックが岩を突き刺すが、その姿は霞と消えてしまった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

『いま必死に治療しようとしてるけどダメなんだ!!戻って来てくれ!翠さん!!』

 

「す、すぐに戻るわ!!」

 

「翠さん!!」

十代から状況を伝えられた翠は遊馬が声をかける間もなく、病室から飛び出してしまった…!

 

 

《遊馬!ミハエル!急いで凌牙を探しなさい!!》

 

「えっ…!そうか、バリアンの言った『鮫野郎』ってシャークの事か!?」

 

『このままじゃ凌牙が危ない!!』

璃緒の元へ残ったフレアの言葉に遊馬達は顔を見合わせる、クラゲ先輩の次なる標的は凌牙なのだ…!!

 

 

「っ〜!!ダメだ!やっぱり出ない!!シャークは何処にいるんだよ!?」

すぐに連絡を取ろうとする遊馬だったが、Dゲイザーの連絡は繋がらない…!

 

「ナンバーズクラブのみんなにも探してもらいましょう!連絡する!」

 

『僕も兄様達に連絡を─!』

凌牙を見つける為に仲間達の力を借りようとする遊馬達…その時…!

 

 

『どうした?Ⅲ…病人の前で大騒ぎしてよ…?』

 

「あっ…!?アンタは…!!」

遊海と凌牙の窮地を前に…虚しき復讐から開放された『悲哀の決闘者』が現れた…!

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「(あの日も、こんな雨の日だったな…俺達兄妹が、()()()()()()()()()()を失った日は……)」

降りしきる雨の中、バイクに乗った凌牙はとある場所へと向かっていた、その脳裏に浮かんだのは…忌まわしき悲劇の日の事だった。

 

 

 

………

 

 

 

「りょうが!お家に帰ったら…またデュエルを教えてね!」

 

「いいけどさー…りおはすぐに泣いちゃうからなぁー」

 

「む〜!!りおは泣かないもん!!」

 

「泣くじゃん!」

 

「泣かないもん!!」

 

『ほらほら…2人とも、いい加減にしなさい?喧嘩はダメよ?』

 

『その通りだ!帰ったら私が璃緒の味方になるからな!』

 

「やったー!!」

 

「あ!?ずるいぞ、りお─!」

 

 

それは雨の降る夜だった、家族揃って外食を楽しんだ神代一家は車で家へと帰る途中だった…。

厳しいが優しくデュエルを教えてくれる父親と、優しく料理の上手な母親…家族4人での賑やかで楽しい暮らしがいつまでも続くと思っていた。

 

 

 

 

 

 

…あの瞬間が訪れるまでは…。

 

 

 

 

 

ガッシャーーーン!!

 

 

 

『あ、危ない!!』

 

 

「「あっ─!?」」

 

 

 

 

中央分離帯を飛び越えてきた大型トラック

 

 

 

鳴り響くクラクション

 

 

 

 

母親の悲鳴

 

 

 

 

衝撃

 

 

 

 

暗転

 

 

 

 

 

ずっと続くと思っていた「日常」はあまりにも呆気なく、砕け散った。

 

 

 

………

 

 

 

「(そう…あの日から、遊海さんに引き取られるまで…俺達は二人っきりだった……だから、あの場所へ…()()()の俺達の記憶がある、あの家へ…!)」

 

 

 

 

 

「ここに来るのは…あの日以来か…」

雨が止み、曇天の空から太陽が顔を出す頃、凌牙は目的の場所…自身と璃緒の生家へと辿り着いた。

 

 

『海底迷宮』で遺跡に封じられた『記憶』を垣間見た凌牙…凌牙はその記憶は自分自身の記憶だという()()があった…つまり、自分と璃緒は『バリアンだった』という事になる。

…だが、凌牙はそれを受け止められなかった…何故ならば自分には『本当の家族』と過ごした幼少期の記憶も確かに残っていたからだ…。

 

 

自分の正体を思い悩んだ凌牙は…自分が『人間』である事を確かめる為に、生家へとやって来たのだ。

 

「必ず、この場所に俺達の記憶があるはずなんだ…!」

 

 

 

 

「…綺麗に残ってる…遊海さんが、この家を買って残してくれたおかげだな…」

生家へと足を踏み入れる凌牙…その中は10年近く無人だったはずだが、埃が積もっている以外は綺麗なままだった…。

 

 

「そうだ…ここだ…!」

凌牙はリビングへと足を踏み入れる、そこは暖炉があり、家族の憩いの場となっていた場所…凌牙はそこで起きた()()()()を思い出した…。

 

 

 

………

 

 

 

「りお!カードを返せったら!?父さんから貰った大切なカードなんだから!!」

 

「嫌よ!りょうがだけズルい─!!」

 

「りお!待てったら─!?」

暖炉の前で追いかけっこをする凌牙と璃緒…その日、凌牙は父から新しいカードをプレゼントされた…しかし、それは妬んだ璃緒がカードを取り上げて逃げ回っていたのだ。

 

 

「もう…!返せったら!!」

 

「ああっ!?」

凌牙は追いかけっこの末、璃緒からカードを取り返す…だが…!

 

「あっ!?りお!危ない!!」

 

「きゃっ!?」

 

 

ガッシャーン!!

 

 

「痛っ…!?」

 

「あ、ああ…!?りょうが!りょうがー!!」

凌牙がカードを取り上げた拍子に璃緒が父親のコレクションだった騎士鎧にぶつかる…そのせいで鎧が倒れ、璃緒に襲いかかる…。

だが、凌牙が璃緒を突き飛ばし…自分が身代わりとなって鎧が持っていた剣に右肩を斬り裂かれてしまったのだ…!

 

 

 

『凌牙!大丈夫か!?何があった!?』

 

『ああ…!?大変…!!』

璃緒の泣き声を聞いた両親が駆けつける…そこには痛みでうずくまる凌牙と泣き叫ぶ璃緒が立ち尽くしていた…。

 

 

「ご、ごめんなさい…せっかく父さんがくれたカードが…」

 

『馬鹿…!そんな事を気にするな!母さん!救急箱…いや、救急に電話を!!』

痛みに耐えながらカードを汚してしまった事を謝る凌牙…だが、父親は怪我をした凌牙を優しく抱きしめた…。

 

 

 

………

 

 

 

「(そうだ…紛れもないこの俺の『傷』…あの日の傷跡は俺の肩に残ってる…!)」

右肩を押さえる凌牙…その服の下には、はっきりと傷が残っていた…。

 

「これが…『俺の記憶』…!俺は、俺達はバリアンなんかじゃないんだ」

過去の事を思い出し、自分が『人間』であると確信した凌牙は胸を撫で下ろす…。

 

 

 

 

【クハハハ…!貴様が、神代凌牙だな?】

 

「っ─!?誰だ!!」

自分以外、誰もいないはずの家に不気味な笑い声が響く…!

 

 

【さっそくで悪いが…喰らえ!!】

 

「なっ─!?」

凌牙の前に現れたのは透明な()()、その何かから無数の触手が凌牙へと襲い掛かった!

 

「(家の中じゃ…分が悪い…!!)」

 

【待ちやがれ!!】

逃げ場のない屋内で戦う事の危険を感じた凌牙は窓を突き破り、庭へと飛び出した…!

 

 

 

【姑息な真似を…!逃がしはしねぇよ!!】

 

「っ─!?」

触手の隙間を縫って外へと飛び出した凌牙だったが…追いかけて来た触手に捕まり、首筋に何かが突き刺さると同時に受け身も取れず地面を転がった!

 

 

「(首に、何か刺された…!)テメェは、いったい…!!」

 

【てめぇ…だと?てめぇドコ中だ?オレの何コ下だと思ってンだ!あ"ぁ!?】

 

「なにを、言ってんだ…!?」

痛む体を庇いながら立ち上がる凌牙…彼の前にシルクハットを被った白髪の男・クラゲ先輩が現れる、だがその言葉はどことなく古臭く…凌牙にはその意味がわからなかった…。

 

 

【っ〜!!口のきき方に気をつけろって言ってんだよ!!人間風情がこのバリアン様によぉ!!】

 

「バリアン、だと…!?」

凌牙は目の前の男の正体に驚愕する…それを無視してクラゲ先輩は話を続ける…!

 

 

【ハートランドから聞いたぞ?てめぇ「水属性最強」だとかほざいてるんだってな?鮫なんかより強い水属性がいる事を…先輩として証明してやるよ!!】

 

「ふ、ふざけんなっ…ぐぅッ…!?(な、なんだ…?体が、重い…!!)」

意味不明な先輩理論を展開するクラゲ先輩…それに反論しようとした凌牙は突然の激痛に膝をついてしまう…!

 

 

【ん…?何処かで見たツラだな…まあいい、どうだ?オレ様の()の味は?】

 

「毒…!?」

凌牙の顔に既視感を覚えるクラゲ先輩…だが、それを頭の隅に追いやると凌牙へと自分の能力を語り始める…。

 

【そうさぁ…!毒がお前の身体を完全に蝕むまで、まだ時間がある…よって、今からオレとデュエルをしてもらう!】

 

「デュエル、だと!誰が…テメェみたいな雑魚と…!!」

 

【クハハハ…痩せ我慢もいい加減にしろよぉ?テメェはいいだろう…だが、()()()()()はどうかなぁ…?】

 

「父さん……!?遊海さんに何をした!!」

クラゲ先輩の言葉を聞いた凌牙は怒りを露わにする…!

 

【何をってなぁ…?お前と同じさ!自慢の毒をブスリとなぁ…!!ハートランドから聞いてるぜ?てめぇの親父は()()()()だってな!オレの毒はオレをデュエルで倒さないと解毒できねぇ…!だーかーら!お前はオレとデュエルしなきゃならないのさ!!】

 

「くそ…!!(まずい…父さんはネームレスの毒とNo.96のせいで弱りきってる…!!早く、コイツを倒さないと!!)」

遊海の状況を思い出した凌牙は毒に蝕まれる体に喝を入れ、クラゲ先輩を睨む…その時だった!

 

 

 

『待てよ!!』

 

 

「っ…!?この声は…!」

神代家の庭にドスの効いた声が響く…それは凌牙にとってあまりにも聞き覚えのある声だった…!

 

『どうした?忘れちまったのか?凌牙…お前の一番の()()()の顔を─!!』

 

「トーマス!!」

屋根に立っていた青年が紫のブレスレットを輝かせながら凌牙の前に降り立つ…その男こそ、凌牙の因縁の相手にしてライバル…Ⅳだった…!

 

 

 

【てめぇは…トロンの息子か】

 

『フレアさんの言った場所ピタリか…流石は「神の眼」だ……情けないな、凌牙!毒?刺されるかよ、普通…こんな冴えない奴の攻撃によぉ…!!』

 

【んなっ…!?】

凌牙の前に立ったⅣはさっそく凌牙へと皮肉を言う…それを聞いて黙っている凌牙ではない。

 

「テメェが、何故ここに…!?」

 

『頼まれたんだよォ…遊馬とⅢの奴に「お前の面倒を見ろ(凌牙を探してくれ)」ってな!』

 

「っ〜!?誰が、テメェの助けなんか…!!」

 

『別に…お前を助けに来た訳じゃねぇ……だが、遊海さんには…返しきれない恩と…償いができてねぇ…!』

 

「父さん…!」

凌牙はⅣの言葉に目を見開く…。

 

 

『オレ達は…バリアンに踊らされて遊海さんを…そしてお前の妹を傷付けた…!なのによぉ…またあの人がバリアンのせいで苦しんでる……それを無視できるかよ…!だから…!!オレ様の()()()()()()()でとっととコイツをぶっ倒すから…お前は見物でもしてろ!』

 

ブチッ

 

「何を…!!勝手な事言ってんじゃねぇぇ!!」

Ⅳの物言いに凌牙の怒りが燃え上がる…!

 

【て、てめぇら!舐めてんじゃねぇぞ!?ふざけんな!!2人纏めてかかってきやがれ!!】

自分を蚊帳の外にした凌牙とⅣの言い合いにクラゲ先輩はブチ切れる!

 

 

『ほ〜う?どうするよ?凌牙』

 

「俺は…父さんを…遊海さんを、助ける!!」

蝕む毒に耐えながら…凌牙は魂を燃やす、全ては…苦しむもう1人の父を救う為に…!

 

【よーし、異論はないようだな?だが、条件がある!お前達はどう見てもオレより10コは年下だな?後輩は先輩を立てるもんだ……よって!先輩のオレのライフは8000!後輩のお前達はそれぞれライフ2000とする!『先輩ルール』発動だ─!!】

クラゲ先輩の言葉と共に、大地にバリアンの紋章が刻まれる…。

 

 

『ケッ…先輩って割にはセコい野郎だ…いいぜ、ちょうどいいハンデだ!』

 

【後輩風情が生意気な…せいぜい、勝負がつく前に毒が回って打ち上げられないようにするんだなァ…!】

ハンデルールを受け入れた凌牙達を見たクラゲ先輩はその姿をバリアンとしての姿…クラゲ怪人へと変身する…!

 

「それが、テメェの正体か…!!い、くぜぇぇ…!!」

凌牙は死力を振り絞る…遊海を救う為の凌牙とⅣのデュエルが始まろうとしていた…!

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

 

「十代君!瀬人さん!!」

 

「翠さん…!すまねぇ!!オレ達が油断したせいで…!!」

 

うぅっ…!?ぐうぅぅ…!?

 

「遊海さん…!!」

連絡を受けてKC病院へと戻って来た翠、彼女が目にしたのは…ベッドの上で苦痛に呻き声を漏らす遊海の姿だった…。

 

『翠…!早く治癒魔法を頼む!!打ち込まれた「クラゲ毒」への血清は打ったが…どうなるかわからん!!』

 

「遊海さん…ごめんなさい…!!私が離れたから…!?負けないで…負けないで─!!」

翠はありったけの回復魔法を同時に発動…必死に力を注ぎ込む…!

 

 

『(打ち込まれた毒は…『キロネックス』の毒に近いモノ…死ぬな…死ぬんじゃないぞ…!!友よ!!)』

遊海に打ち込まれたのはクラゲ毒の中でも最悪の猛毒…しかも、ネームレスの毒と反応を起こせば…遊海の身体が耐えられるかわからない…!

 

 

キィン─!

 

 

「っ!?赤き竜の痣が─!?」

 

「な、なんだ!?」

必死に治療を続ける翠…その時、翠と遊海の腕に刻まれた赤き竜の痣が強い光を放つ…そして…!

 

 

「ぐっ…!?ああ…ああああ─!?」

 

《キュオオォォオオン!!!?》

 

 

「ゆ、遊海さん─!?」

 

《こ、この光は─!?》

遊海の絶叫と共に胸から「虹色の光」「赤紫色の光」が飛び出し、さらに翠の腕の痣が消失……赤き竜の咆哮が響く中、病室は閃光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『【デュエル!!】』」

 

 

 

デュエルダイジェスト 凌牙&Ⅳ対クラゲ先輩

 

変則タッグデュエル

特殊ルール 『先輩ルール』

 

クラゲ先輩LP8000

 

凌牙LP2000

 

ⅣLP2000

 

 

 

 

 

「先攻は、俺だ…!『セイバー・シャーク』を召喚!」

凌牙は毒に蝕まれる苦痛に耐えながら頭部に刀を持つ鮫を呼び出す…!

 

「タッグデュエルは、最初のターンはお互いに攻撃できない…カードをふせ、ターンエンドだ…!!」

 

『らしくねぇなぁ…?やけに慎重じゃねぇか』

 

「この、デュエルには…負けられねぇ…んだ!!」

精彩を欠く凌牙の動きにⅣは問いかける…実を言えば今の凌牙は体調不良に加え、手札事故を起こしていたのだ…。

 

 

 

【さぁ…先輩の本気はここから始まる…!オレはレベル4の『デス・キロネックス』と『サイレンス・シーネットル』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!】

 

 

04 

 

 

【現れろ!『No.4』!!混沌に漂いし透明なる戦士!全てを見通し世界を刺せ!偉大なる先輩…ここに降臨!『猛毒刺胞ステルス・クラーゲン』!】

クラゲ先輩の場にクラゲの幼生『ポリプ』のようなオブジェが現れ、変形…漆黒の身体とクラゲに似合わぬ凶悪な爪を持ったナンバーズが現れる!

 

 

 

『No.4だぁ!?「4」はオレの専売特許だ…!特別な数字だ!何が悲しくてなんで、よりにもよってクラゲのナンバーズなんだよ─!?』

現れた『No.4』を見てⅣは呆れと怒りが混ざった声を上げる…。

 

【クラゲを舐めてんのかァ?水属性最強の生物こそ『クラゲ』だ!不死の生命が…『死の毒』でお前達を突き刺してやるぜ!!】

 

「何が、水属性最強だっ…ぐっ!?」

 

『凌牙!…言わんこっちゃねぇ…だから見学してろって言ったろうが…』

クラゲ先輩の言葉に言い返そうとした凌牙だったが…蝕む毒の痛みに膝をついてしまう…。

 

 

【クフフ…どうする?今からでもオトモダチの言う通りにするかぁ?】

 

「だ、黙れ…クラゲ野郎…!!」

 

【なら…オレがトドメを刺してやる!『ステルスクラーゲン』の効果発動!互いのターンに1度、フィールドにいる水属性モンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!ポイズン・スティックス!!】

 

「なにっ!?があああっ…!?」

ステルスクラーゲンの触手から放たれた毒がセイバーシャークを破壊…凌牙を吹き飛ばした…!

 

 

『チッ…それぐらい、どうって事ないよな?凌牙!』

 

「あたり、まえ…だ!!」

リアルダメージと毒の痛みを堪えながら…凌牙は立ち上がる!

 

 

【痩せ我慢しやがって…オレはカードを伏せ、ターンエンド!】

 

『クラゲ野郎!今度はたっぷり…オレがファンサービスしてやるぜ!!』

ターンを終えたクラゲ先輩…そしてⅣのファンサービスが炸裂する!

 

 

 

15 

 

 

『現れろ!「No.15」!運命の糸を操る、地獄からの使者!漆黒の闇の中より舞台の幕を開けろ!「ギミック・パペット─ジャイアント・キラー」!!』

 

「このナンバーズは…!!」

Ⅳの場に漆黒の巨大操り人形が現れる、凌牙の助けに向かう前にⅣは遊馬から3枚のナンバーズを託されていたのだ。

 

「シャーク!!」

 

『Ⅳ兄様!』

そしてほぼ同じタイミングで遊馬とⅢが駆けつける…デュエルを始める前にⅣが通信を送っていたのだ…!

 

「シャーク…!お前も毒に…!?」

苦しむ凌牙を見て遊馬は状況を察する…そして恐怖の演目が幕を開ける!

 

 

 

『「ジャイアントキラー」の効果発動!ORUを1つ使い、フィールドの自身以外のエクシーズモンスター全てを破壊!そしてその攻撃力分のダメージを与える!オレのファンサービスを受け取れ!デストラクション・キャノン!』

 

【なっ…!?ぐおおおっ!?】

 

「よっしゃあ!大ダメージだ!!」

ジャイアントキラーの胸元が展開し、破砕機が出現…ステルスクラーゲンはそこに引き込まれ粉砕され…その残骸がクラゲ先輩は吹き飛ばした!!

 

 

『ヘッ…本来の持ち主が使ってこそ、ナンバーズは光輝くのさ…!』

 

「トーマス…いい加減、その()()()()()()()はやめとけよ……遊海さんはそういうのが…一番嫌いなんだからな…」

 

『……黙っとけ、少なくとも()()()()()()二度としねぇよ』

嗜虐の笑みを浮かべるⅣだったが…凌牙の言葉に視線をずらしたのだった。

 

 

 

【ガハハハ…!光輝くだぁ…?この程度でつけあがるンじゃねぇぞ!!後輩風情が調子に乗ってんじゃねぇぞ、コノヤロー!!】

 

『なにっ…!?』

 

「モンスターが、()()()()だと!?」

爆煙の中からクラゲ先輩が立ち上がる…そのフィールドには小さなクラゲ型モンスターが2体に増えて浮かんでいた…。

 

 

『クラゲ野郎…何しやがった?』

 

【野郎じゃねぇ…先輩だ!!たっぷり教えてやるよ…『クラゲ最強伝説』を!!】

Ⅳの問いかけにクラゲ先輩は自分が『先輩』として敬うクラゲについて…フィールドに何が起きたのかを交えて話し始めた…!

 

 

 

【オレは『ステルスクラーゲン』の効果を発動していたのさ…!『ステルスクラーゲン』が破壊された時、その時持っていたORU1つにつき1体!エクシーズモンスターの『ステルス・クラーゲン』をエクストラデッキか墓地から特殊召喚できるのさぁ!その効果によりオレは『ステルス・クラーゲン─エフィラ』2体をエクストラデッキから特殊召喚した!!】

 

『チッ…そんな効果が…!』

フィールドに現れたクラゲモンスターの正体は『ステルス・クラーゲン─エフィラ』…クラゲの幼生の呼び名を持つモンスターだった…。

 

 

【そして効果には続きがある!この効果で特殊召喚された『エフィラ』は『ステルスクラーゲン』のORUを1つずつ得る!そして『エフィラ』は『ステルスクラーゲン』と同じ効果を持っている!】

 

「なんだと!?」

エフィラにはステルスクラーゲンと同じ『水属性モンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを与える』効果を持つ…まさに、夏の海で大量発生するクラゲのように厄介な効果だった。

 

 

【てめぇらは知らないだろぅ?クラゲの中にはな…自ら2つに分裂し元の個体に再び再生するスゲェ先輩がいるんだよ!それに老化しても若返る不老不死の先輩も…さらに驚くなぁ…!先輩達には心臓も脳もねぇンだあ─!!】

 

『脳ミソがねぇって威張ってんじゃねぇ…!馬鹿が!!(とは言ったが…あのクラゲは厄介だ…!とにかくライフを削るしかねぇ!!)』

クラゲ伝説を喜々として語るクラゲ先輩…そんな彼をⅣは一蹴する…だが、その内心はステルスクラーゲンをどう攻略するか…その方法を考えていた。

 

 

 

『オレはもう1度「ジャイアントキラー」の効果発動!!ORUを使い、2体の「エフィラ」を破壊!その攻撃力の合計分のダメージを与える!デストラクション・キャノン!!』

 

【があああっ!!】

再び開いた地獄の粉砕機がクラゲを粉砕…その残骸がクラゲ先輩を吹き飛ばす!

 

『どうだ…!ライフを3800抉ってやったぜ…!!』

エクシーズキラーの効果を持つジャイアントキラーによって大ダメージを与えたⅣ…だが、クラゲ先輩は笑みを崩さない…!

 

 

【ククッ…破壊された『エフィラ』2体の効果発動…!エクストラデッキから3体目の『エフィラ』と墓地の「ステルスクラーゲン」を特殊召喚!そしてORUを1つずつ与える!!】

 

『チッ…!!』

再びクラゲ先輩の場にナンバーズが復活する!

 

 

【どうだぁ?この世界をクラゲで埋め尽くしてやろうかァ?】

 

『くっ…オレはカードを伏せてターンエンドだ…!』

Ⅳは無限に湧いてくるクラゲに歯噛みしながらターンを終える…厄介者を駆除する方法、それは…──

 

 

 

「(()()()()…それしか、ねぇ…!)」

凌牙は至極単純な解決法を思いつく、幸いにもクラゲ達の攻撃力1900と低く…Ⅳの奮闘でクラゲ先輩のライフは残り2300、つまり…攻撃力4()2()0()0()以上のモンスターを出せばステルスクラーゲンが復活するのも関係なく、デュエルに勝利する事ができる。

…だが、今の凌牙には…カードが足りなかった…!

 

 

『おい、凌牙!!テメェがヘタばったら…遊海さんまで死んじまう!!このルールだけはもう変えられねぇんだ!テメェが勝つしかねぇんだよ!!だから…毒になんて負けてんじゃねぇぞ!!』

 

「ぐっ…誰に、ものを言ってやがる…!クラゲ野郎に…負けてたまるかよ!!」

毒の影響でふらつく凌牙…だが、Ⅳの叱咤を聞き無理矢理に声を上げる!

 

 

「(今の手札で…『一撃必殺』を成し遂げるには…あのモンスターを呼ぶしかねぇ!!)」

凌牙の脳裏に浮かぶモンスター…それは混沌を洗い流す『海神』の姿だった…!

 

 

 

 

「俺の、ターン!!…モンスターを、裏守備で…セットだ…!!」

 

『おい!?どうした凌牙!!さっきの勢いは!?いくら奴のモンスターが不死だろうと…オレのように拳を打ち込めよ!!』

ドローしたカードは望みのカードではなかった、消極的なデュエルをするしかない凌牙…その姿を見てⅣは声を上げる…。

 

 

【見苦しいな…仲間割れか?裏守備で逃げようったって…そうはいかねぇぞ!永続罠発動!『引き潮』!プレイヤーが裏守備でモンスターを召喚した時、そのモンスターを表側守備表示にする!その時リバース効果は発動しない!!】

 

「くっ…!」

セットモンスターが表側表示になる…それは闇属性の『スカル・クラーケン』だった…。

 

【なに?水属性じゃなく…闇属性?『ステルスクラーゲン』のモンスター効果を恐れてか?セコいなぁ!!】

 

『チッ…悔しいがその通りだ…!いったいどうした凌牙!?』

 

「黙ってろ…!俺は、これでターンエンド…!!」

自分らしくないデュエルを続ける凌牙…彼らに再び魔の毒が襲いかかる!

 

 

 

 

【ヘッ…死に損ないのサメ野郎が…!オレが楽にしてやるよ!!魔法カード『ジェリー・レイン』を発動!このターン、フィールド上のモンスター全てを水属性にする!!これでお前らのモンスターはクラゲの毒牙から逃げられねぇ!!】

 

『しまった!!』

曇天の空から再び雨が降りそそぐ…その雨により全てのモンスターが水属性となる!

 

 

【グフフフ…!トドメを刺してやる…まずはトロンのバカ息子からだ!!『ステルスクラーゲン』の効果発動!『ジャイアントキラー』を破壊し、攻撃力分のダメージを与える!ポイズン・スティックス!!】

 

『ぐああああ…!!』

ジャイアントキラーがクラゲの毒牙で粉砕され、Ⅳが吹き飛ばされる…残りライフは…500…!

 

 

【次はお前だ!フカヒレ野郎!『エフィラ』の効果発動!攻撃力600の『スカルクラーケン』を破壊!これで終わりだ!!】

再びクラゲの毒牙が凌牙に襲いかかる…絶体絶命の凌牙…その時だった!

 

『ぐっ…!罠発動!「ストリングス・シェード」!フィールドにいるモンスター1体の効果破壊を無効にする!!』

 

「トーマス…!お前…!?」

触手がスカルクラーケンに伸びた瞬間、吹き飛ばされていたⅣが罠を発動…操り糸がクラゲの触手を粉砕した!

…Ⅳは凌牙を守る為に罠カードを温存していたのだ…。

 

 

【チィ…ならば、バトルだ!フカヒレ野郎から一刺ししてやる!!「ステルスクラーゲン」で「スカルクラーケン」を攻撃!テンタクルス・サージョ!!】

ステルスクラーゲンの触手がスカルクラーケンを粉砕する!

 

 

【これで終わりだ!『エフィラ』でダイレクトアタック!!】

 

『凌牙!!』

 

「ぐうぅ…!!罠発動!『ディープ・カーレット』!相手モンスター1体の攻撃力を無効にし、バトルフェイズを終了する!!」

凌牙に突進するエフィラ…だが、発動された罠から溢れ出した水流に跳ね返される!!

 

【クッ…!しぶとい野郎だ…!カードを2枚伏せ、ターンエンド!!】

ギリギリで攻撃を凌いだⅣと凌牙…だが…。

 

 

ドグン

 

 

「ぐっ…!?が、あぁ……!?」

 

『凌牙─!?』

 

「シャーク!!」

凌牙は毒による激痛に耐える事ができず……遂に地面に倒れてしまった…。

 

 

「シャーク…!踏ん張れシャーク!遊海を助けられるのは…お前だけなんだ─!!」

 

「父、さん…!!(体が、動かない…俺は……ここまで、なのか…?)」

遊馬の叫びが木霊する…だが、凌牙の身体は…既に限界だった…。

 

 

『凌牙…!何を情けなく倒れてやがる…!!クラゲ野郎!!お返しだ!今度はオレがファンサービスをする番だ!!』

倒れた凌牙を見て拳を握り締めるⅣ…彼はこのターンで決着を着けるべく、さらなる力を開放する!!

 

 

 

 

40 

 

 

『現れろ!「No.40」!『ギミック・パペット─ヘヴンズ・ストリングス』!!』

光の爆発と共に2体目のナンバーズ…地獄の演奏人形が現れる!

 

『いける…!「ヘヴンズストリングス」の攻撃と効果なら─!』

現れたナンバーズを見てⅢが声を上げる、ヘヴンズストリングスの攻撃力は3000…さらにORUを使い、全てのモンスターにカウンターを置く事で次のターンのエンドフェイズにそのモンスターを破壊…その攻撃力分のダメージを与えられる…だが…!

 

 

 

【させるか!永続罠『ジェリー・バインド』発動!オレの場に水属性モンスターがいる時!相手モンスター1体の攻撃と効果の発動を封じる!!】

 

『なんだと…!?』

ヘヴンズストリングスの足下から伸びたクラゲの触手がその体を縛り上げる…!

 

【これでお前のモンスターはまさに『木偶人形』!だ!】

 

『オレは…カードを伏せて、ターンエンドだ…!』

反撃を封じられたⅣはそのままターンを終えるしかなかった…!

 

 

【さぁ…フカヒレ野郎…!お前のターンだ!!立ち上がってみろよ…!】

 

「ぐっ…あ…!!」

 

【ハハハ…!どうだぁ?クラゲの毒が全身に回る感覚は…!もはや立つ事もできまい…!】

 

『凌牙!!』

必死に立ち上がろうとする凌牙…だが、体は鉛のように重く…体勢を変える事もできなかった…。

 

【ハハハ…!してやったぜ!!クラゲがサメをぶっ倒してやったぜぇ!!】

動けない凌牙を嘲笑うクラゲ先輩…その時だった。

 

 

『あぁ…そういう事か!?テメェはそこまでの男なのかよ!凌牙!!お前は遊海さんを…家族を守れず、守られるだけのダメな男だったのかよ!!立てよ!凌牙!!』

倒れ伏す凌牙…その姿を見たⅣが声を荒らげる!!

 

「Ⅳ!!お前…シャークがどれほど家族の事を思ってるか…知って──」

 

 

『わかってる!!そんな事…オレが一番分かってる!!』

 

 

「Ⅳ…!?」

あまりの物言いに叫ぶ遊馬…だが、Ⅳはその胸の内を明かす…。

 

 

『かつて…オレは凌牙に罠を仕掛け、妹を傷付け…遊海さんを悲しませた…それはオレのやった事…!!この右目の傷と共に、一生背負っていくモノ…だから、わかる…!コイツは自分の事よりも…妹を…()()()()()()()()戦ってきた!』

 

『兄様…』

それはⅣ…トーマスが背負いし『罪』、消え去る事のない『業』…凌牙を、璃緒を、遊海を…傷付け、悲しませたトーマスの過ち。

それを経験したからこそ、トーマスは許せなかった…自分の前で倒れている凌牙の事が…!

 

 

『オレは遊馬やコイツのおせっかいのおかげでよ…()()()()()()()()()()()()…!だから…!!立てよ!凌牙!!お前は家族の為にずっと戦って来たんだろ!?家族を諦めて、くたばる男じゃねぇだろ!!()()()()って男は─!!立ち上がれ!凌牙─!!』

それはⅣの魂の咆哮……その声は…

 

 

ドクン…!

 

 

「まったく…誰だか、知らねぇが…やたら、うるさくて…オチオチ…寝てられねぇじゃねぇか…!!」

 

『ヘッ…だったら、とっととデュエルを終わらせて…ゆっくり寝る事だな!!』

 

【馬鹿な…!!】

Ⅳの声は…眠りし鮫の魂に火を点けた!!

 

 

「(父さん…必ず、助ける!)」

雌伏せの時は過ぎ…眠りし鮫が邪悪なる魔物に牙を剥く!!

 

 

 

「俺のターン!!来たぜ…!永続魔法『水神の護符』を発動!俺のフィールドの水属性モンスターは効果の対象にならなくなる!鮫は喰らいついた獲物は外さねぇ…噛み砕くまでだ!!俺はさらに魔法カード『アトランティスの威光』を発動!このターン召喚された水属性モンスターのレベルを2つアップできる!さらに、俺は魔法カードを発動した事で『ビッグ・ジョーズ』を特殊召喚!」

凌牙は巨大な口を持つ鮫を呼び出す!

 

 

「さらに!相手のフィールドにモンスターが2体以上いる時!手札の『パンサー・シャーク』はリリース無しで特殊召喚できる!」

さらに豹柄の鮫を召喚した凌牙…これで逆転の準備は整った!

 

 

「いくぜ!!俺はレベル5となっている『ビッグジョーズ』と『パンサーシャーク』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

 

73

 

 

「現れわれろ!『No.73』!カオスに落ちた聖なる滴!その力を示し、混沌を浄化せよ!『激瀧神アビス・スプラッシュ』!!」

 

【な、なんだ…!?このモンスターは─!?】

現れたのは大海を支配する神…その威光にクラゲ先輩は後ずさる…!

 

「『アビス・スプラッシュ』…あの遺跡で手に入れたナンバーズ…俺の記憶の……いいや!俺は神代凌牙!!偉大な『決闘王』白波遊海の息子だ!!!」

過去からの幻影を振り払い、凌牙は名乗りを上げる!!

 

 

「勝つぞ…!トーマス!!」

 

『ああ!!』

 

【ふざけんなよ…!何を盛り上がってやがる!罠発動!『ジェリー・ホール』!相手が水属性のエクシーズモンスターを召喚した時!このターン、相手フィールド上の全てのカード効果を無効にする!!そして『水神の護符』が無効になった事で先輩の効果を発動できる!!】

クラゲ先輩の発動した罠がアビススプラッシュと水神の護符を絡め取る…!

 

 

【『ステルスクラーゲン』の効果発動!『アビススプラッシュ』を破壊する!】

 

「それはどうかな…!速攻魔法『カスケード・バリア』発動!フィールドのモンスターのカード効果による破壊を無効にし、エンドフェイズまで攻撃力を0にする!」

アビススプラッシュを水の壁が包み、触手を跳ね除ける!

 

 

【っ〜!!ならばもう1度だ!『エフィラ』で『アビススプラッシュ』を破壊する!!これでお前のフィールドはガラ空きだ!!】

粉砕されるアビススプラッシュ…だが、凌牙達は笑っていた…!

 

 

 

『罠発動!「エンジェル・ストリングス」!オレの場に「ギミックパペット」エクシーズモンスターがいる時!墓地のエクシーズモンスターを特殊召喚する!蘇れ!「アビススプラッシュ」!!』

 

『すごい…!兄様とシャーク!』

Ⅳの発動した罠により深淵に沈んだ海神が再び浮上する!

 

『そしてその効果により「ヘヴンズストリングス」とそのORUは「アビススプラッシュ」のORUになる!!いけ!凌牙!!』

 

「『アビススプラッシュ』の効果発動!ORUを1つ使い!エンドフェイズまで攻撃力を倍にする!その効果をオレは2回使う!攻撃力は倍の倍…!9600だ!!」

 

【な、なにぃぃ!?】

地獄鮫タッグのコンビネーションが邪悪な魔物を凌駕する!!

 

 

「『アビススプラッシュ』で『ステルスクラーゲン』を攻撃!!」

 

『「ファイナル・フォール!!」』

 

【ぐ、ぐわああああ…!!!】

海神の怒りがナンバーズを粉砕…クラゲ最強伝説は終演を迎えた…。

 

 

 

クラゲ先輩LP0

 

凌牙&Ⅳ WIN!

 

 

 

 

 

「………ふぅぅ…!なんとか、なったみたいだ…!」

地面に倒れ伏したクラゲ先輩…その胸からナンバーズが飛び出しⅣに回収される、それと同じくして凌牙を蝕む毒は消え去った…。

 

 

 

 

『まったく…世話掛けさせやがって…だいたいな、詰めが甘いんだよ凌牙…』

 

「なんだと…?勝手に出しゃばってきて何を言いやがる!!」

 

『う〜ん…仲が良いのか、悪いのか……喧嘩するほど仲がいい…のかな…?』

デュエルが終わった途端に口喧嘩をする凌牙とⅣ…その姿を見たⅢは苦笑する…。

 

 

『遊馬はどう思う?……遊馬…?』

 

「…アストラル…」

遊馬に問いかけるⅢ…だが、遊馬の心はここにはない…。

喧嘩する2人の姿を見て…アストラルとのやり取りを思い出してしまったからだ…。

 

 

 

【ば、馬鹿な…この、オレが…あんなサメ野郎に…っ!?】

デュエルに敗北し、満身創痍となったクラゲ先輩が立ち上がる…そして消滅する前に忌まわしい凌牙の顔を焼き付けようとして…抱いていた既視感の正体に気付いた…!

 

 

【ま、まさか…!お前…オレがヘマやって警察に追われた時…!巻き込んじまった車の!?】

 

「なに…!?」

クラゲ先輩は過去を思い返す、凌牙と璃緒の本当の両親の命を奪った仇…それはこの男だったのだ…!

 

 

【お、思い出した…!神代凌牙に璃緒…!あ、あの事故で、お前ら家族は()()()()()はず…死んだはずなんだ!?】

 

『おい…!ふざけた事言ってんじゃねぇぞ!』

錯乱するクラゲ先輩…凌牙は真相を問いただす為にクラゲ先輩に詰め寄るが…。

 

 

【死んだはずのお前らが…何故──!?】

 

「おい!?」

詰め寄るよりも先にクラゲ先輩は消滅する…その最期の顔は恐怖に歪んでいた…。

 

 

 

「奴の言葉…どういう……ん?こ、これは…!?」

クラゲ先輩の最期の言葉に疑問を抱く凌牙…その時、彼がいた場所の背後に水が枯れ、蔦に覆われた噴水がある事に気付く…凌牙はその噴水に駆け寄り蔦を引きちぎる…!

 

 

「こ、この紋章は…!?記憶の世界で見た…王国の…!?」

蔦の下に隠れていたのは神代家の家紋…その紋章は記憶の世界で見た『ポセイドン連合国』の紋章と同じものだった…!

 

 

「(俺は、俺は…バリアン……だった、のか…!?)」

ありえないモノを見た凌牙は動揺し、膝をつく…。

だが凌牙は心を整理する時間もなかった…何故ならば…

 

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

 

 

 

『遊馬君…!凌牙君…!誰か、聞こえる…!?』

 

「翠さん!?」

その場にいた遊馬と凌牙のDゲイザーが着信を知らせる…それは翠が繋いだ同時通話だった…!

 

 

『ゆ、遊海さんが……遊海さんが…!!』

 

 

「『「『っ─!?』」』」

嗚咽交じりの翠…彼女が伝えたのは遊海の容体の急変だった…!

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

「父さん!!」

 

「遊海!!」

翠からの緊急連絡を受けた凌牙と遊馬は容態の急変したという遊海の眠る病室へと駆け込む、そこには困惑した表情を浮かべる翠と十代の姿があった…。

 

 

「凌牙君…遊馬君……遊海さんが…遊海さんが…!!」

 

「すまねぇ…オレ達が油断しなければ…!」

 

「ち、ちょっと待ってくれよ…!?コレ…どういう事だよ!?」

 

「父…さん…?」

凌牙達は遊海の眠るベッドへと目を向ける、そこにいたのは……黒髪の幼い()()だった。

 

 

 

「か、母さん…この、子どもって…?」

 

「………遊海さん、なの……遊海さんが…()()()になっちゃった……!」

 

「え、ええぇぇぇ〜!?」

 

《…フォウ(なんで、こんな事になったんだろう…)》

病室に遊馬の絶叫が響く、状況を説明するには…少し時を戻す必要がある…。

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

「い、今の光は…目が、見えない…!」

閃光に包まれた病室…光が消えた病室は静寂に包まれていた、鳴り響いていた危篤を知らせる警報も全て止まっている…。

 

 

 

『今のは…っ!?馬鹿な…!?』

 

《えっ…!?》

最初に異常に気付いたのは機械の身体である瀬人とアヤカだった、いち早く復活した2人は遊海の姿に釘付けになる…。

 

 

「瀬人さん…?アヤカちゃん…?どうしたの…!?遊海さんは…!?」

 

《ば、バイタルは…安定しています……ですが、こんな事が…!?》

 

『…前例とも言える事例はあるが……信じられん…!!』

 

「えっ…?」

瀬人とアヤカの態度に不安に駆られる翠…そして、ようやく視界が復活する…。

 

 

 

「ゆうみ、さん…?」

遊海がいたはずのベッド、そこにいたのは…ぶかぶかの入院服を着た、小学校低学年くらいの幼い子どもだった。

だが…翠は理解した、この少年は()()()()なのだと。

 

 

 

「………きゅう………」

 

「み、翠さん─!?」

だが、理解するのと受け入れるのは別の事…血の気の引いた翠は卒倒した…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

《……仮説、にはなりますが…マスターの体に打ち込まれた毒がマスターの不死の肉体、赤き竜の痣、紋章の力を暴走させ……結果的に肉体を幼児にまで逆行させてしまった……のではないか、と思います…》

 

アヤカが歯切れ悪く仮説を伝える、異世界を彷徨った末に子どもの姿になってしまったバイロン・アークライトという存在もいるが、この事態を説明するには…あまりにも情報がなかった…。

 

 

 

「う…ん……?」

 

 

「っ…!?遊海!!」

 

「父さん!?」

 

『遊海が…目を覚ました…!!』

遊馬の声が呼び水となったのか…約一ヶ月に渡って眠り続けた遊海が…ついに目を覚ました…!

 

 

 

「ゆ、遊海さん…!大丈夫…!?」

翠がぼんやりした様子の遊海に声をかける…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………?おねぇさん…()()()()

 

 

 

 

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

 

 

 

「ぼくは……だあれ…?」

 

 

 

 

 

『……記憶…喪失……だと…?』

 

《ドフォーウ!?》

 

 

 

 

 

 

長き眠りから目覚めた英雄は……全てを失っていた──

 




〜次回予告〜

「長い眠りからついに目覚めた遊海…でも、その記憶は全て失われてしまっていた!」

「これから…どうなっちゃうの…?」

「考えてたってしょうがねぇ!オレは…オレのできる事をするだけだ!」

「次回!転生して決闘の観測者になった話!『ぼくはだぁれ?』」


「あはは!遊馬兄ちゃーん!」


「…なんだか、調子狂うなぁ……」


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ぼくはだぁれ?

《キャウ…フォーウ》

 

「もこもこ〜」

 

「よかったね…はぁ……」

 

《翠…元気出して…とにかく、遊海が起きて…よかった、ね…?》

 

「うん…」

場所を新たに移した遊海の病室に翠の小さなため息が響く、アクシデントがあったものの長き眠りから目覚めた遊海…だが、体は幼い子供の姿となり…記憶を失ってしまっていた。

今の遊海はベッドの上でフォウと戯れている…精神性も幼子に戻ってしまっているようだった。

 

 

 

 

「翠()()()()()!お外行きたい!」

 

「あっ…もう少し待っててね!ゆうくんの検査が全部終わったら…先生がいいよって言うまでガマンしてね?」

 

「はーい…フォウくん、お外ダメだって…」

 

《フォウ、フォーウ》

当然、遊海は翠の事も…精霊達の事も覚えていない…遊海の精霊達は遊海を刺激しないように姿を隠していた…。

 

 

「(ねぇ…神様…!どうして、どうして遊海さんだけがこんな事に…?どうして…!?)」

翠は涙を零す…今の遊海は辛さも苦しみもない代わりに全てを失ってしまった…翠が愛していた「白波遊海」は此処にはいなかった…。

 

「お姉ちゃん…どこか痛いの?」

 

「う、ううん!大丈夫…大丈夫よ!心配しないで…」

 

「お姉ちゃん……いいこ、いいこ…」

 

「あっ…」

泣いている翠を見た遊海は小さな手を精一杯伸ばして翠の頭を撫でる…子供になっても、記憶を失っても…遊海の持つ「優しさ」は変わっていなかった…。

 

「ゆうくん…ありがとう…ありがとうね…!!」

 

「う〜…お姉ちゃん、いたいよ〜?」

翠は遊海を強く抱きしめる…そして決意した、遊海を必ず元に戻してみせると…。

 

 

 

 

 

 

『…これから、幼児化してしまった白波遊海の状況を説明する…子供には少し難しい話かもしれんが…聞くだけ聞いていろ』

 

「「「はい!」」」

遊海が目覚めて2日後、KC病院のミーティングルームには瀬人・翠・十代・遊馬・小鳥・凌牙・Ⅲ・Ⅳの姿があった…遊海の現状を話す為に集められたのだ。

 

 

 

『まず、精密検査の結果…今の遊海は健康そのものだ、蝕んでいた毒は完全に消え……外見年齢相応の健康体というのが医師の見解だ…だが、問題は…遊海が記憶喪失となっている事だ』

進行を務める瀬人がスクリーンに映像を映す。

 

『カウンセラーによる問診の結果、今の遊海は過去に出会った人物や出来事についての記憶を全て失っている…だが、基本的な会話や計算などは覚えている…との事だ』

永続にはカウンセラーと会話する遊海の姿が映し出されている…。

 

 

「はい!質問!」

 

『むっ…?どうした、九十九遊馬』

 

「記憶喪失って…全部の記憶が消えちゃうんじゃないのか?」

 

『ふむ、良い質問だ…「記憶喪失」と言っても全ての記憶が消えてしまうという事は稀な事なのだ』

瀬人は遊馬の質問に答える。

 

『記憶というのは脳の中の「海馬」という場所に蓄積されるものだ…だが、記憶されると言っても様々な「ジャンル」に分けられている…というのが知られている』

 

「ジャンル?」

 

「遊馬、簡単に言えば…人の頭の中にはたくさんの『引き出し』があるんだよ」

いまいち理解できていない様子の遊馬にⅢが補足する。

 

 

「その記憶の『引き出し』には『自分の事』とか『言葉』とか『物の名前』とか…色々な種類に分けられた『記憶』が眠ってる、今の遊海さんはその引き出しが開けられない状態なんだ」

 

「開けられない…それじゃあ、今のチビ遊海の中に元の遊海の記憶も残ってるって事か!?」

 

『通説通りならな…クラゲ怪人に毒を打ち込まれた時、遊海は酷く苦しんだ…そのショックが記憶喪失を引き起こしたのだろう、ミハエルの例えを借りるなら「引き出し」に鍵が掛かっている…というべき状態だ』

瀬人は遊馬の言葉を肯定する…。

 

 

「なぁ…!記憶喪失を治す薬とかないのかよ!?」

 

『脳は人間の「ブラックボックス」だ…医学の進んだこの世界でも、そんなモノは…ない』

 

「そんな…それじゃあ、遊馬はずっとこのままなのか!?」

 

「遊馬…」

瀬人の言葉に遊馬が声を上げる…だが、瀬人は言葉を続ける…。

 

 

 

『だが…それは()()()()()の話だ、記憶喪失は時間経過や強いショックで突然に治る事が多い……だが、遊海に関しては…手っ取り早い解決策がある…アヤカだ』

 

「えっ?」

瀬人の言葉と共にアヤカが現れる。

 

 

《私はマスターのパートナー精霊です…私はマスターを支えると同時に…マスターの記憶の()()()()()()を記録してあります…!》

 

「記憶の、バックアップ…?」

 

「つまり…アヤカがいれば、父さんの記憶が戻るって事か!?」

それは機械であり遊海のパートナー精霊であるアヤカの持つ能力…彼女の中には遊海の戦いの記憶が全て記録されているのだ…!

 

 

「それなら…すぐに記憶を戻せば…!!」

 

《それが…()()()()のです》

 

「え…?」

アヤカの意外な一言に遊馬は言葉を失う…。

 

 

 

《遊馬、貴方の中でマスターは…白波遊海はどんな存在ですか?》

 

「えっ…?えっと…デュエルが強くて、優しくて…頼りになって……でも、戦う度に()()()()になってて…」

 

《それです、マスターは普通の決闘者以上に怪我をしてきました……それが原因で今のマスターには記憶を戻せないのです》

 

「アヤカさん…それはどういう事なの?」

 

《マスターの記憶は…『戦いと痛み』の記憶…精神性が幼児になっている今のマスターに無理矢理を戻せば…最悪、マスターは…回復不可能の状態になります》

そういうとアヤカは遊馬の前に進む…。

 

《遊馬、これから貴方に…マスターが精霊界で貴方とデュエルした時の記憶の一部を()()()()…耐えてくださいね?》

 

「お、おう…?」

 

キィン─!!

遊馬の返事を聞いたアヤカはコアから光を放つ…その時だった。

 

 

「い、痛ってぇぇぇ!??!?」

 

「ゆ、遊馬─!?」

 

「遊馬君!?」

突然、遊馬が絶叫しながら椅子から転げ落ちる…!

 

 

「おい!?大丈夫か遊馬!?」

尋常ではない様子の遊馬を見た凌牙が駆け寄る…。

 

「はぁ…はぁ…!ゆ、遊海…こんな状態で、戦ってたのかよ…!?」

遊馬が体験した痛み…それは遊馬が経験してきた、どの痛みよりも凄まじい痛みだった…。

 

 

《…今、遊馬が体験した痛みは、まだ軽い方です…時に神の炎に灼かれ…時に邪神に貫かれ…握り潰され…爆発で十数Km飛ばされ……そんな記憶を今のマスターに戻せば……マスターの精神が耐えられません…運に任せ、自然に戻るのを待たなければ…》

 

「そんな…!バリアンの奴らがいつ襲って来るのかわからないのに…!?」

アヤカの言葉に遊馬は絶望する、ナンバーズを奪う為にバリアンはこれからも攻撃を仕掛けて来るだろう…そんな状態で遊海を守るのは無理がある…。

 

 

『今の我らにできる事はない…という事か…非科学な話だが、遊海を信じ…待つしかないか…!!』

 

「遊海…」

 

「父さん…」

沈んだ空気に包まれる一同…遊海を救う手立ては…もうない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ!

 

 

 

《み、翠!翠!!大変!!大変なんだよ!!》

 

「ウェン!?どうしたの!?」

突然、ミーティングルームに遊海の子守りをしていたウェンが駆け込んでくる…その手には1枚の紙が握られていた。

 

《こ、コレ見て!!遊海兄が書いたの!!》

 

「これ…『ブラック・マジシャン』と『青眼の白龍』…?」

 

「あっ…けっこう上手な絵だ…」

ウェンが差し出した紙…そこにはクレヨンで描かれた黒衣の魔術師と白いドラゴンの姿があった。

 

 

《これ、遊海が()()()()()()書いたの!!もしかして…()()()()()()()()()()()()()は残ってるんじゃない!?》

 

『っ─!?そうか…!!その検査はまだしていなかった!!それならば…可能性はある!すぐに検査の用意だ!!』

 

「ちょっ…!?瀬人さん!この絵がどうしたんだよ!?」

突然、何かに気付いた様子の瀬人に遊馬が問いかける…!

 

 

 

『例え、どんな姿になろうとも…白波遊海は「決闘者(デュエリスト)」だったという事だ!!!』

 

それは…遊海を救う一筋の光明だった…。

 

 

 

 

 

 

 

「遊馬兄ちゃーん!」

 

「おっとっと…!遊海!元気そうでよかったぜ!(な、なんだか…変な気分だなぁ…)」

翌日、遊馬達はKC病院に併設されたデュエル場へと集まっていた。

遊海は翠の見繕った子供服を着ている…なお、子供達には普段通りに接するように伝えてある。

 

 

「で…瀬人さん、ここでオレ達に何をさせようって言うんだ?」

 

「なんだか物々しい装置もあるし…」

 

『これからお前達には……遊海の記憶を取り戻す手伝いをしてもらう!』

 

「「「「なんだって!?」」」」  

 

「?」

ⅣとⅢの問いかけに瀬人は予想外の言葉を返し、遊馬達は驚愕するが…当の遊海はきょとんとしている。

 

 

 

「記憶を戻す手伝いって…父さんの記憶は簡単には戻せないんじゃないのか!?」

 

『事情が変わったのだ!さらなるカウンセリングの結果、遊海には「デュエルモンスターズ」に関する記憶が残っている事がわかった…それにより、「デュエル・エナジー」を使った治療を試す事ができる!』

 

「デュエルエナジー…?」

凌牙の問いに瀬人が装置を叩きながら答えるが…遊馬は首を傾げている。

 

 

「デュエルエナジーっていうのはオレ達、デュエリスト誰しもが持ってる『闘争心』のエネルギーの事だ!デュエルによって増幅したデュエルエナジーは死にかけた精霊を蘇らせたり…次元の壁に穴を開けたりもできるすごい力なんだぜ!」

 

「そんな力が…俺達に…?」

 

『ようするに…「決闘者の魂」の力だ、お前達にも覚えがあるだろう?洗脳された者をデュエルによって開放したり…免疫力を上げて毒を無毒化する…さらには大気圏外に生身で飛び出しても無事な者もいたな』

十代の説明に凌牙が驚き、瀬人が補足する…。

 

 

 

「つまり…遊海とデュエルして、遊海の持ってる「デュエリストの本能」を引き出す…って事か?」

 

『その通り!この装置はその者のデュエルエナジーを測定する装置だ…遊海をデュエルによって昂ぶらせ、白波遊海本来の記憶・精神を引っ張りだす!その為にお前達呼んだ!』

そこで瀬人は一度言葉を切る。

 

『お前達はこの数年でもっとも遊海と接し、絆を結んだ者達だ…若く、才能あるお前達ならば…必ず遊海を真に目覚めさせる事ができるはずだ…!』

 

「わかった!なら…オレからやらせてくれ!」

 

「遊馬…」

瀬人の話を聞いた遊馬が歩み出る…!

 

 

「遊海は何度も…何度もオレの事を助けてくれた…!今度はオレが遊海を助ける番だ!」

そう言うと遊馬は不安げな様子の遊海の前にしゃがみ込む。

 

「遊海…デュエルしようぜ!」

 

「デュエル…?いいよ!やろー!」

デュエルと聞いた遊海は無邪気な笑顔を浮かべた!

 

 

 

 

 

『2人とも!用意はいいな!』

 

「遊馬!父さんを頼むぞ!!」

 

「頑張って─!!」

 

『おう!まかせとけ─!!』

デュエルリングで向かい合う遊馬と遊海…見守る仲間達は声援を送る!

 

 

「ゆうくん、危なくなったら教えてね?」

 

「はーい!」

翠は少しデュエルディスクを重たそうにする遊海を心配しながら後ろへ下がった…。

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊馬LP4000

遊海(少年体)LP4000

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『全力で…いくぜ!「ゴブリンドバーグ」を召喚!』

赤い飛行機に乗ったゴブリンが現れる! ATK1400

 

『「ゴブリンドバーグ」の効果発動!手札からレベル4の「ガガガマジシャン」を特殊召喚!』

背中に「我」の文字を背負った不良魔術師が現れる! ATK1500

 

 

「オレはレベル4の『ゴブリンドバーグ』と『ガガガマジシャン』でオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

39

 

 

『現れろ!「No.39」!「希望皇ホープ」!!』

遊馬のエースモンスター…希望の戦士が現れる! ATK2500

 

 

『先攻は攻撃ができない…カードを2枚伏せてターンエンド!』

遊馬LP4000

ホープ 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「堅実な布陣だね…!手札にも余裕がある、だけど…」

 

「問題は…今の遊海さんがまともにデュエルできるのか?って事だな…『デュエルモンスターズ』の記憶があるって言っても…あんな子供の姿じゃ…」

ⅢとⅣは幼い姿の遊海を心配する…遊馬は手加減する事なく、全力を出している…果たして…!

 

 

『(セットカードは『エクシーズ・リボーン』に『ハーフ・アンブレイク』…手札には『ヌメロン・フォース』が来てる…遊海がどんな動きをしても…反応してみせる!)』

 

 

 

 

「ぼくのターン!ドロー…っとと!」

「ぼくは『聖騎士モルドレッド』を召喚!」

赤いマントを羽織る、金髪の聖騎士が現れる! ATK1700

 

『聖騎士デッキか…上手く使えるのかな…?』

聖騎士デッキはモンスターと装備魔法を絡めた展開をするデッキ…遊馬は何度も戦っているが、その難しさは理解していた。

 

 

「そして手札の装備魔法『聖剣カリバーン』を『モルドレッド』に装備!攻撃力が500アップ!」

裁定の剣が騎士の手に収まる!

 

モルドレッドATK1700→2200 ☆4→5

 

「『モルドレッド』の効果発動!自分のフィールドに他のモンスターがいない時、デッキから聖騎士モンスターを呼び出せる!ぼくは『聖騎士ベディヴィエール』を特殊召喚!」

白髪の聖騎士が現れる! ATK1600

 

 

「そして効果を使ったあと『モルドレッド』に装備されてた『カリバーン』は破壊されちゃう…だけど『カリバーン』の効果発動!1ターンに1度だけ、破壊されたこのカードを他の聖騎士モンスターに装備できるよ!ぼくは『カリバーン』を『ベディヴィエール』に装備!そして『ベディヴィエール』が特殊召喚された時、デッキの『聖剣EX-カリバーン』を墓地に送るよ!」

モルドレッドが裁定の剣を投げ捨てるが…ベディヴィエールが慌てて受け止める。

 

ベディヴィエール ATK1600→2100

 

 

『これでレベル4のモンスターが2体…!』

 

「そしてぼくは魔法カード『エクシーズ・レセプション』を発動!手札から『モルドレッド』と同じレベル4のモンスター『聖騎士アルトリウス』を攻撃力と守備力を0、効果も無効にして特殊召喚できるよ!」

若き茶髪の騎士が現れる ATK0

 

「そして自分のフィールドに光属性の通常モンスターがいる時、手札の『聖騎士ガウェイン』は守備表示で特殊召喚できる!」

太陽の騎士と呼ばれた偉丈夫の騎士が現れる DEF500

 

 

『レベル4のモンスターがあっという間に4体!?』

 

 

「ぼくはレベル4の『ベディヴィエール』と『モルドレッド』の2体で…エクシーズ召喚!出てきて!『鳥銃士カステル』!」

古式の銃を構えた鳥の戦士が現れる! ATK2000

 

 

「そして『アルトリウス』と『ガウェイン』でエクシーズ召喚!お願い!『聖騎士王アルトリウス』!」

王道を歩む騎士王が現れる! ATK2000

 

 

『エクシーズモンスターが…一気に2体も…!?』

 

「『聖騎士王アルトリウス』の効果!エクシーズ召喚に成功した時、墓地から聖剣を3種類まで装備できる!ぼくは墓地の『カリバーン』と『EX-カリバーン』を装備!攻撃力が500アップして、相手の効果の対象にならないよ!」

アルトリウスが2本の剣を構える! ATK2000→2500

 

 

 

『「アルトリウス」の効果発動!ORUを1つ使って自分フィールドの聖剣の数だけ、遊馬兄ちゃんの魔法・罠カードを破壊できるよ!ぼくは伏せカード2枚を破壊!』

 

『しまった!』

アルトリウスの放った剣圧が伏せカードを切り飛ばす!

 

 

「そして『カステル』の効果発動!ORUを2つ使って遊馬兄ちゃんの『ホープ』をデッキに戻すよ!」

 

『なんだって─!?』

カステルの放った銃弾がホープを撃ち抜き、強制的に撤退させる!

 

 

「ゆ、遊馬のフィールドが…ガラ空きになっちゃった!?」

 

「バトルだよ!『カステル』で遊馬兄ちゃんにダイレクトアタック!」

 

『ぐああっ…!?』

カステルの銃弾が遊馬を撃ち抜く!

 

 

『(い、今の()()は…!?)』

遊馬は胸を撃ち抜かれた衝撃によろける、遊海の攻撃…それはリアルダメージを伴っていた…!

 

 

「『アルトリウス』でダイレクトアタック!」

 

『まだだぜ、遊海!手札から「ガガガガードナー」の効果発動!ダイレクトアタックを受ける時、手札から特殊召喚、できる!』

 

「今だ!手札の『アヴァロンの魔女モルガン』の効果発動!自分のフィールドに『聖騎士モンスター』と『聖剣』装備魔法がある時、手札のこのカードを墓地に送って効果発動!『EX-カリバーン』を破壊して遊海兄ちゃんの発動した『ガガガガードナー』の効果を無効にするよ!いっけぇ!」

 

『嘘だろ!?』

遊馬の前に現れたガガガガードナーだが…彼の目の前に妖婦の幻影が現れ、魔術によってガガガガードナーを吹き飛ばしてしまった!

 

 

『う、うわあああ!?』

そしてアルトリウスの攻撃は遊馬へと直撃した…。

 

 

遊馬LP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

ドガッ!!

 

 

 

『うげっ…!?』

 

「ゆ、遊馬君!?」

 

「遊馬!?」

 

「遊馬兄ちゃん!?」

アルトリウスの攻撃を受けた遊馬はそのまま背後の壁に叩きつけられ、崩れ落ちる…壁には罅が入っていた…。

 

 

「う、嘘だろ!?あんなの、いつもの遊海先生よりヤバいぞ!?」

 

『これは…不味いな…!子供の姿とはいえ、遊海を侮りすぎたかもしれん…!』

吹き飛ばされた遊馬の姿を見て十代と瀬人は唖然とする…普段の遊海は対戦相手に合わせて力をコントロールし、余計な被害を出さないようにしている…。

…だが、幼い姿となった遊海は自身の強大な力を制御できていないのだ…!!

 

 

 

『痛って…!からだ、動かねぇ…』

 

「遊馬君!!大変…骨が折れてる…!?」

 

「「えぇっ!?」」

倒れ込んだ遊馬に駆け寄る翠…壁に叩き付けられた遊馬は重傷を負っていた…。

 

 

 

「ゆ、遊馬兄ちゃん…ごめんなさい…ごめんなさい!!」

 

『遊海…』

傷ついた遊馬を前に遊海は泣きながら謝る…。

 

 

『だ、大丈夫…!遊海が強くってびっくりしただけ、だから…次からは気をつけようぜ…!』

遊馬は遊海に心配をかけないように笑いかけた。

 

「うぅ〜…痛いの痛いの…飛んでっちゃえー!!」

 

キィン─!

 

『へっ─!?』

遊海が口にしたのは子供がよくする『おまじない』…それと共に遊馬の身体が優しい光に包まれ…。

 

 

『…痛く、ない…治っちゃった…』

 

「なんと言うか…ごめんね、遊馬君…」

遊海の『おまじない』…もとい『精霊の力』によるゴリ押し治癒で遊馬の傷は全て癒えていた…。

 

 

 

「これは…とんでもねぇ事になったんじゃねぇか…?」

 

「そうらしいな…」

あまりにも滅茶苦茶な子供遊海の力にⅣと凌牙はそろって頭を抱えたのだった…。




白波遊海(少年体)

 
ネームレスの毒とクラゲ怪人の毒、さらにNo.96による「カオスの力」と遊海の持つ「不死身の肉体」「紋章の力」「赤き竜の痣」のエネルギーが暴走を起こし、小学校低学年レベルにまで肉体年齢が逆行し、さらに記憶喪失を起こした姿。
ほとんどの記憶を失っているが…「デュエルモンスターズ」に関する記憶は残っている。

 
性格は純粋無垢で無邪気な子供そのもの…だが、遊海が普段から理性で制限している「精霊の力」や「デュエルタクティクス」のリミッターが完全に外れ、ひとたびデュエルを行なえば…相手は重傷を負ってしまう。

下手をすれば…正気の遊海より強い『本能の決闘者』


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英雄狂騒─献身の決闘─

『バトルだ!「No.40ギミック・パペット─ヘヴンズ・ストリングス」でセットモンスターを攻撃!』

 

「『魔導雑貨商人』のリバース効果発動!デッキから魔法か罠カードが出るまでカードをめくるよ!……『封魔の矢』を手札に加えます!そして墓地に送られた『タックル・セイダー』の効果!Ⅲお兄ちゃんの『No.33先史遺産─超兵器マシュ=マック』を裏守備にするよ!」

 

『墓地のカードが増えた…!』

 

『カードを1枚伏せて、ターンエンド!』

 

病院に併設されたデュエル場…そこではⅢとⅣ、そして遊海の変則タッグデュエルが行われていた…。

 

 

 

「ぼくのターン!墓地の岩石族モンスター20体を除外して『メガロック・ドラゴン』を特殊召喚!このモンスターの攻撃力・守備力は除外した岩石族1体につき700の攻撃力になるよ!」

 

『攻撃力14000だと!?』

遊海の場に巨大な岩石竜が現れる!

 

 

「バトル!その時に速攻魔法『封魔の矢』を発動!このターンのエンドフェイズまでお互いに魔法・罠の効果を発動できなくなる!」

 

『なっ…!?』

 

《トーマス!加減はする、上手く受け身を取れ─!!》

 

「『メガロック・ドラゴン』で『ヘヴンズ・ストリングス』を攻撃!」

 

『うわあああ…!?』

 

『Ⅳ兄様!!』

メガロックが足を踏みならし、礫を飛ばす…演奏人形は粉砕され、Ⅳは吹き飛ばされてしまった…。

 

 

 

ⅣLP4000→0

 

 

 

「ぼくは…モンスターをセットしてターンエンド!」

 

『(やっぱり遊海さんは強すぎる…出し惜しみをしている場合じゃない…!!)』

 

 

 

『僕のターン!永続魔法「オリハルコン・チェーン」を発動!さらに「マシュマック」をリリースして「先史遺産─ソル・モノリス」をアドバンス召喚!』

Ⅲの場に太陽暦の刻まれた石版が現れる!

 

『「オリハルコンチェーン」の効果によってレベル6の「ソルモノリス」1体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!』

 

06

 

『現れろ!「先史遺産─アトランタル」!』

 

「うわぁ…!大っきいー!」

Ⅲの場に巨大な灼熱の巨人が現れる!

 

 

『エクシーズ召喚に成功した時!「アトランタル」は墓地のナンバーズを装備して、攻撃力をアップできる!僕は墓地の「マシュマック」を装備!攻撃力は5900となる!さらに「アトランタル」の効果発動!ORUを1つ使って…遊海のライフを半分にする!』

 

「うわわ!?」

アトランタルの背負う火山が噴火…遊海に大ダメージを与える!

 

遊海LP4000→2000

 

 

 

『そして僕は魔法カード「死者蘇生」を発動!墓地の「先史遺産─マッドゴーレム・シャコウキ」を特殊召喚!』

細身の遮光器土偶が現れる!

 

 

『(僕の場には攻撃を無効にできる『雷雲の壺』が伏せてある…ここは確実にダメージを与える!)「シャコウキ」で遊海のセットモンスターを攻撃!「シャコウキ」は守備モンスターを攻撃した時、攻撃力が守備力を上回っていれば貫通ダメージを与える!』

シャコウキの剣がセットモンスターを貫く…現れたのは鉄壁の守護像だった…!

 

「セットモンスターは『ロスト・ガーディアン』!このカードの守備力は除外されてる岩石族1体につき700アップするよ!」

 

『えっ…!?守備力14000って事!?うわああああ!?』

守護像の咆哮がⅢを容赦なく吹き飛ばした…。

 

ⅢLP4000→0

 

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

 

「痛いの痛いの…飛んでけっ!!」

 

キィン─

 

 

『…これは…マジにどうすりゃいいんだ…?』

 

『2人がかりでも無理なんて…』

デュエルが終わり、遊海のおまじないでⅢとⅣは全快する…。

 

 

 

「瀬人さん…デュエルエナジーは……」

 

「……ピクリとも動かん、遊海が圧倒的に強すぎるのだ…」

 

「……今までの遊海って、どれだけ手加減してくれてたんだよ…」

翠の問いかけに瀬人は静かに首を振る…遊海のデュエルエナジーを測定する機器の数値はまったく変化していなかった…。

 

 

『デュエルエナジーはデュエリストの闘争心で生まれるエネルギーだ…だが、遊海があまりにも強すぎるせいで奴の闘争心が高まる前にデュエルが終わってしまう…どうしたものか…』

 

「…ごめんなさい…」

 

「遊海が謝る事ないぜ!みんな遊海の為に…恩返ししたくて戦ってるんだからな…」

その『強さ』故にデュエルエナジーが増幅しない遊海…子供ながらに『迷惑をかけている』と自覚したのか、その表情は暗かった…。

 

 

「よーし…!遊海!次はオレとやろうぜ!オレだったら少しは相手になるはずだ!」

遊海の様子を見かねた十代が次の相手に立候補する!

 

「十代兄ちゃん…うん!わかっ…た……あ、れ……?まわりが…回って……」

 

「遊海さん!?」

 

「遊海先生!!」

十代とデュエルをしようとする遊海…だが、目を回して気を失ってしまった…。

 

 

 

《…無理もないね…今の遊海は例えるなら自転車にジェットエンジンを積んで、アクセル全開で走ってるようなもの…自分が持っている力に肉体が追い付いてない、何回も連続でデュエルするのは難しいだろうさ…》

 

「父さん…」

ユベルは子供遊海が自分自身の力の強さに翻弄されている事を見抜く…そんな遊海を凌牙は見つめる事しかできなかった…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

─これは…ひどいね、こんな精神世界は見た事がない…─

 

遊海の精神世界…そこに1人の青年が立っていた、彼はマーリン…最高レベルの魔法使いであり、遊海のファンでもある。

 

 

─見渡す限りの全てが『閉じられている』…これは生半可な事では…遊海君は()()()()

遊海が気を失ったのを見計らって彼の世界へ飛び込んだマーリン…彼が見たのは何もない『漆黒の世界』だった。

 

 

─僕の知る遊海君の世界は『光と希望』に溢れていた…このままでは……いいや、彼はこんな所で終わる男じゃない…()()()()()()()()()…!─

マーリンは千里眼で見た…ある怪物の事を思い出す…。

 

 

 

《あの怪物を倒せる……いいや、『倒す資格』があるのは…君だけなのだから…》

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

「すう…すう…」

 

「よく寝てる…本当に疲れちゃったのね…」

 

《マスター…》

 

《フォウ…キューウ…》

夕暮れの病室…そのベッドではデュエル疲れを起こした遊海が静かに寝息を立てている、翠達はその様子を静かに見守っていた…。

 

 

《幸いにも『不死身』の力は機能しているようです…明日には元気に目覚めると思います…》

 

「そう…」

 

《キュウ…》

遊海の状態を聞いて胸を撫で下ろす翠…少し落ち込んだ様子の彼女にフォウが擦り寄る…。

 

 

「フォウくん…私、どうしたらいいんだろう……今の遊海さんに、何がしてあげられるんだろう…!!」

 

《フォウ…フォーウ》

翠はフォウを抱きしめながら弱音を吐く、彼女の問いに答える者はいない…例え、全てを見通す神であっても…全てを計算できる機械でも…そして、他ならぬ遊海自身であっても…。

 

 

………

 

 

「………遊海さんが、強すぎてデュエルエナジーが集まらないなら…誰も、遊海さんの相手ができないのなら…!私が、やるしかない……例え、()()()()()()()()()()()……」

 

《フォウ…!?》

翠は何度も何度も自問自答を繰り返した結果、1つの『答え』に辿り着く…。

バリアンとの最終決戦まで…残された時間は()()()()、故に…翠は一世一代の覚悟を決めた、病室には翠の背中を押すように満月の光が差し込んでいた…。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう!遊馬兄ちゃん!」

 

「おっす!おはよう遊海!よく眠れたか?」

 

「うん!」

翌朝、遊馬達は再びデュエル場に集まっていた…ⅣだけはⅤの手伝いがあるとの事で不参加である。

 

 

「昨日の夜、頑張ってデッキを組んでみたんだ!今日は遊海を熱くさせて見せるぜ!!」

 

「俺もだ…父さんの為なら…なんだってやってやる…!」

遊海の記憶を取り戻す為に決意を固める遊馬と凌牙…その時だった。

 

 

 

『ごめんね、2人とも……今日は、私からやらせて…!』

 

 

「み、翠さん…!?」

 

「翠お姉ちゃん…?」

遊海の背後から翠が歩いてくる…その表情は今まで見た事のないほど、真剣なモノだった。

 

 

『翠…その顔は……()()でやるつもりか?』

 

『はい…みんな、お願いがあるの……これからやるデュエルの事は…誰にも、話さないで』

 

「誰にも…?」

 

「母さん…?」

いつにも増して真剣な翠…彼女は遊海の前にしゃがみ込む…。

 

『ゆうくん、今日はこのデッキを使ってくれる?』

 

「うん…わかった!」

翠から手渡されたデッキを見た遊海は元気に頷いた…。

 

 

 

「十代さん…翠さんは何をするつもりなんだ?」

 

「…わからねぇ…でも、翠さんはこの決闘に()()を賭けてる…そんな感じがするぜ…!」

デュエルを前に遊馬は十代へと問いかける…デュエル場には凄まじい闘気が渦巻いていた…!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

遊海(少年体)LP8000

翠LP8000 

 

 

 

「なっ…!?ライフポイント8000スタートだって!?」

 

「どうしていきなり…!?」

デュエルが始まる寸前、ARビジョンに表示されたライフポイントを見て全員が驚愕する…それは通常のライフの2倍…滅多に見ない数字だった…。

 

 

 

 

 

 

「ぼくのターン、ドロー!」

「ぼくは…手札のスケール1の『クリフォート・アセンブラ』とスケール9の『クリフォート・ツール』をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

「ペンデュラムスケール…!?なんだそりゃ!?」

 

「あんなカード…見た事がない!!」

遊海の背後に光の柱が現れ、その中に黄色と紫色の核石を宿した機械が現れる!

 

 

「『ツール』のペンデュラム効果発動!ライフを800払って…デッキから『アポクリフォート・キラー』を手札に加えるよ!そして僕はペンデュラム召喚!手札から現れて!『クリフォート・アーカイブ』!『クリフォート・ゲノム』!『クリフォート・ディスク』!」

遊海のフィールドに緑・黄・青の核石を持つ巨大な機械達が現れる!

 

アーカイブ ATK2400→1800 ☆6→4

ゲノム ATK2400→1800 ☆6→4

ディスク ATK2400→1800 ☆7→4

 

遊海LP8000→7200

 

 

 

「なっ!?モンスターの同時召喚!?そんな召喚方法が…!?」

 

「み、翠さん!?何を考えてるんだよ!!力の制御ができてない遊海先生に…先生の()()()()()を使わせるなんて─!?」

 

「『「「えぇっ!?」」』」

未知のデッキを前に驚く子供達…だが、十代の言葉にさらに驚く事になる…!

 

 

『…これが、私なりの()()よ…遊海さんが強すぎるのなら、強すぎる力を()()()()()()()()()()()()…!私の命を賭けて…遊海さんを呼び戻す!!』

 

「母さん…!?」

翠は覚悟を決め、遊海に立ち向かう…全ては愛する者を取り戻す為に…!

 

 

 

「特殊召喚された『クリフォート』モンスターは攻撃力1800・レベルは4になる!そしてぼくは3体のクリフォートモンスターをリリース!『アポクリフォート・キラー』をアドバンス召喚!!」

3体のクリフォート達が天空に昇る…そして虹色の核石を持つ、機械要塞…遊海の切り札たるアヤカが現れる! ATK3000

 

 

《翠…いいのですね?》

 

『全力でお願い、アヤカちゃん…!!』

 

「『キラー』の効果発動!1ターンに1度、相手は手札・フィールドのモンスター1体を墓地に送らなければならない!」

 

『手札の『超電磁タートル』を墓地へ送るわ!』

 

「先攻は攻撃できないから…カードを1枚伏せてターンエンド!『アセンブラ』のペンデュラム効果発動!このターンにリリースしたクリフォート1体につき1枚ドロー…だから3枚ドロー!」

 

遊海 LP7200

アポクリフォートキラー (Pゾーン ツール アセンブラ)伏せ1 手札0→3

 

 

 

「あれが、父さんの本気デッキ…!?」

 

「ああ、そうだぜ…アヤカ…いいや『アポクリフォート・キラー』は先生が1番頼りにしてるモンスターだ……レベル・ランク10以下のモンスター効果を受けず、魔法・罠の効果も効かない…さらに特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力を500下げる…先生の最強の切り札だ」

 

「ちょ!?そんなモンスターをどうやって倒せっていうんだよ!?」

あまりにも強力な効果を聞いた遊馬は驚愕する…。

 

 

「何回かは倒された事があるらしいけど…少なくとも、オレは翠さんがクリフォートを倒したって話を聞いた事はない…!」

 

「そんな…!?」

 

 

 

『私のターン…ドロー!!』

『魔法カード「影依融合(シャドール・フュージョン)」を発動!手札の「シャドール・ドラゴン」と「聖なる影(レーシャドール)ケイウス」で融合!影の竜よ…聖なる影と交わりて影の巨人を呼び出さん!融合召喚!「エルシャドール・ネフィリム」!!』

シャドールの母なる巨人が現れる! ATK2800→2300

 

 

『墓地へ送られた「ドラゴン」の効果!遊海さんの伏せカードを破壊!』

影の竜の幻影が伏せられていた「スキル・ドレイン」を吹き飛ばす!

 

『さらに「ケイウス」の効果!手札の「影霊の翼(リーシャドール)ウェンディ」を墓地に送り、このターンの間「ネフィリム」の攻撃力を墓地に送った「ビースト」のレベル✕100アップする!ビーストのレベルは5!攻撃力2800になる!』

 

ネフィリムATK2300→2800

 

 

『さらに「ネフィリム」の効果!融合召喚に成功した時!デッキから「シャドール・ビースト」を墓地に送る!そして墓地に送られた「ビースト」の効果で1ドロー!さらに「ウェンディ」の効果で「シャドール・ファルコン」をデッキから裏守備で特殊召喚!…私はカードを2枚伏せて、ターンエンド!』

翠LP8000

ネフィリム (裏ファルコン) 伏せ2 手札0

 

 

 

「すごい…!」

翠の鬼気迫るプレイングに子供達は引き込まれる…!

 

「でも…あれだけデッキを回しても…倒せないのか…!?」

 

 

 

「ぼくのターン…ドロー!」

「『ツール』のペンデュラム効果発動!800ライフを払ってデッキからフィールド魔法『機殻の要塞(クリフォートレス)』を手札に加えて…発動!『クリフォート』モンスターの召喚を無効にできなくなるよ!」

フィールドが薄紫色の結界に覆われる!

 

遊海LP7200→6400

 

 

「『キラー』の効果発動!相手はモンスターを墓地に送らないとならないよ!」

 

『私は「ファルコン」を墓地へ!』

影の鳥が墓地に引き込まれる!

 

 

「スケール1の『アセンブラ』とスケール9の『ツール』でペンデュラム召喚!エクストラデッキから『ディスク』と『アーカイブ』、手札から『シェル』と『ゲノム』!」

 

『させない!罠カード発動!「奈落の落とし穴」!ペンデュラム召喚で召喚されたモンスターを全て除外よ!』

 

「そんな!?」

再び顕現する機械達…しかし、直後に現れた異次元への穴に全て吸い込まれてしまった!

 

 

「うぅ〜!バトル!『キラー』で『ネフィリム』を攻撃!」

 

『墓地の「超電磁タートル」の効果発動!デュエル中に1度、墓地からこのカードを除外してバトルフェイズを終了する!』

主砲をチャージするアヤカ…だが、超電磁タートルの磁場によってシステムが急停止した!

 

「ぼくは…カードを1枚伏せてターンエンド…」

 

遊海LP6400

キラー (Pゾーン アセンブラ ツール) 伏せ1 手札1

 

 

 

「すげぇ…!遊海の猛攻をしのぎきった…!」

 

『…翠も遊海と共に歩んできた「伝説の決闘者」の1人…!これならば…!』

息もつかせぬ攻防を繰り広げる遊海と翠…その闘志に呼応するようにエナジー測定器の数値が上がり始めた…!

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『バトルよ!「ネフィリム」で「キラー』を攻撃!!』

 

「翠さん!?攻撃力が足りてない!返り討ちに─!?」

 

『その瞬間!リバース罠発動!「魂源への影劫回帰(プルシャドール・アイオーン)」!手札の「シャドールビースト」を墓地に送って…エンドフェイズまで「ネフィリム」の攻撃力・守備力を1000アップする!!これが、私の全力!!影糸乱舞!!』

 

《翠…見事ですっ…!!》

 

「うわあああ!?」

創星神の力を受けたネフィリムが機械要塞を両断…遊海は強く吹き飛ばされる!

 

ネフィリムATK2300→3300

 

遊海LP6400→6100

 

 

『墓地に送られた「ビースト」の効果で1ドロー…カードを伏せて、ターンエンド!「ネフィリム」は裏守備になるわ』

 

翠LP8000

(裏ネフィリム) 伏せ1 手札0

 

 

 

「母さん…!すごいぜ!父さんの切り札を倒した!!」

 

「な、なんだか…オレも熱くなってきたぜ!!」

翠の魂が込められた決闘…それは子供達を圧倒する…!

 

 

「翠お姉ちゃん強い…!よーし、ぼくも負けないぞ!!」

 

 

 

「ぼくのターン!ドロー!」

「『ツール』の効果!デッキから『クリフォート・アクセス』を手札に加えるよ!そしてペンデュラム召喚!エクストラデッキから「ゲノ厶」!手札から『クリフォート・エイリアス』!!」

遊海の場に橙色と灰色のコアを持つ機械が現れる!

 

ゲノム ATK2400→1800 ☆6→4

 

エイリアス ATK2800→1800 ☆8→4

 

遊海LP6100→5300

 

「そして2体のモンスターをリリース!『クリフォート・アクセス』をアドバンス召喚!!」

赤色のコアを持つ、細長い機体のクリフォートが現れる! ATK2800

 

 

 

「リリースされた『ゲノム』の効果!翠お姉ちゃんの伏せカードを破壊!」

 

『リバースカード発動!「影光の聖選士(レーシャドール・リィンカーネーション)」!墓地の「ビースト」を裏守備で特殊召喚!』

 

「なら…『アクセス』の効果発動!ぼくの墓地にはモンスターの『キラー』が1体、翠お姉ちゃんの墓地にはモンスターが5体…4体の差があるから翠お姉ちゃんに1200ダメージを、ぼくは1200回復するよ!」

 

『っ…!ぐうぅぅっ…!?』

アクセスから放たれた電撃が翠に直撃する!

 

翠LP8000→6800

 

遊海LP5300→6500

 

 

 

「バトル!『アクセス』で裏守備の『ネフィリム』を攻撃!」

 

『くっ…破壊された「ネフィリム」の効果!墓地から「影依融合」を手札に加える!』

 

「ぼくは…このままターンエンド!『アセンブラ』の効果で2枚ドロー!」

遊海LP6500

アクセス 伏せ1 手札0→2

 

 

 

『やっぱり、遊海さんは強い……でも、負けられない…!遊海さんの為に…!(そして…凌牙君と璃緒ちゃんの為に!!)』

ライフ差を縮められた翠…だが、彼女は奥の手を隠していた…!

 

 

 

『私のターン…ドロー!!』

『魔法カード「貪欲な壺」を発動!墓地の「ファルコン」「ウェンディ」「ドラゴン」「ビースト」「ケイウス」をデッキに戻して2ドロー!……「シャドール・ビースト」を反転召喚!』

影に飲まれた獅子人形が現れる! ATK2200

 

『「ビースト」のリバース効果発動!デッキから2枚ドローして、手札の「ウェンディ」を墓地に送る!そして効果で2枚目の「ビースト」をデッキから裏守備で特殊召喚!そして墓地の「影光の聖選士」のもう1つの効果!墓地のこのカードと「ウェンディ」を除外して、セットされてる「ビースト」を表側守備表示に変更!!』

2体目の獅子が現れる DEF1700

 

 

『さらに魔法カード『死者蘇生』を発動!墓地の『ネフィリム』を特殊召喚!』

影の巨人が復活する! ATK2800

 

 

「これでモンスターが3体…一気に決めるつもりなのか…?」

 

「モンスターが3体……待てよ!?翠さん!そりゃショック療法にしてもやり過ぎだ─!?」

 

「「「えっ!?」」」

フィールドに並んだモンスターを見た十代は…翠のしようとしている事に気付いた…!!

 

 

 

 

 

精霊は歌う…大いなる力、全ての万物を司らん…その命、その魂…その骸でさえも…!

 

左手の薬指にはめられた『千年指輪』を掲げながら…翠は神への祝詞を紡ぐ…!

 

 

『フィールドの3体のモンスターを生贄に捧げ…飛翔せよ!私達の守護神!「ラーの翼神竜」!!』

 

《キュアアアア!!》

フィールドに太陽の炎が渦巻く…そして全てを照らす黄金の神鳥が光臨する! ATK?→7200

 

 

「ちょっ!?翠さんやり過ぎだぁぁ!?!?」

 

『ば、馬鹿者!!それでは遊海を救うどころの話ではないぞ!!』

現れた三幻神を見て遊馬と瀬人は慌てる!

 

 

 

「きれい…」

 

『…フレアさん…手加減なしでお願いします…!!』

 

《これが…ユウミの為となるならば…!!》

遊海を救う為に翠とフレアは覚悟を決めている…!

 

 

『「ラーの翼神竜」で「クリフォート・アクセス」を攻撃!灼き尽くせ…!』

 

《ユウミ…戻ってきなさい─!!》

 

「あ、ああ…!?」

ラーの嘴に太陽の炎が集中する!!

 

 

『《ゴッド・ブレイズ・キャノン!!》』

 

「う、うああああああ!!!?」

 

「と、父さん─!!?」

神の一撃は容赦なく遊海を飲み込んだ─!

 

 

遊海LP6500→2100

 

 

 

 

『私は…このままターン、エンド』

 

翠LP6800

ラーの翼神竜 手札2

 

 

 

 

「み、翠さん!フレア!やり過ぎだ!!遊海先生が死んじまう!!」

神の炎の爆煙がデュエル場を覆う中、十代が叫ぶ…今の攻撃は翠にとっての全身全霊の一撃…並のデュエリストなら致命傷になりかねない威力の攻撃だった…。

 

 

『わかってるわ……でも、これくらいの攻撃を叩き込まないと遊海さんには響かない…!遊海さんは戻ってこない!!』

 

「母さん…」

翠は涙を零しながら遊海のいるであろう方向を睨む…翠は遊海を()()()()()からこそ、全力の一撃を叩き込んだのだ…。

 

 

 

ビビーッ!ビビーッ!

 

 

『測定器の数値が…急激に上昇している!?』

デュエル場に警報が鳴り響く…そして…!

 

 

 

ドクン… ドクン…! ドグン!!

 

 

「この音は…()()…?」

そして小鳥がデュエル場に響く音に気付く…それは煙の奥から聞こえてくる…!

 

 

「…………」

 

 

「遊海…?」

 

『遊海さん…!!』

煙の奥には()がいた、明らかに幼児化した遊海よりも大柄な人間が…それは紛れもなく『白波遊海』だった…だが…!

 

 

 

 

 

「【おお…オオオオオッ───!!!】」

 

 

「「『っ──!?』」」

 

デュエル場が鳴動し、エナジー測定器が暴発する…眠りし英雄は狂乱の中にいた…!

 

 

 

 

■■■■■■■■─!!

禍々しい咆哮が響く…ボロボロに擦り切れた服を纏う遊海は闇のオーラを纏っている…。

 

《不味いね…()()してる、逃げる準備をしておいた方がいいかもね…!》

 

「暴走って…!?どういう事だよ!!」

状況が分かっている様子のユベルを遊馬が問いただす…!

 

《簡単に言えば「怒りで我を忘れてる」んだよ、フレアの一撃で遊海は命の危機を感じて一気にデュエルエナジーを増幅させた…その結果、遊海は大人の姿に戻った訳だけど……》

 

「今度は…増幅し過ぎたデュエルエナジーに振り回されてるのか!?」

 

 

 

【わレのターん、ドロー!!】

【ペンでュらム召喚…!「ゲノム」!「エイリアス」!!】

エクストラデッキから2体の機械が復活する!

 

ゲノムATK2400→1800 ☆6→4

 

エイリアスATK2800→1800 ☆8→4

 

 

【速攻魔法『揺れる眼差し』ヲ発動!ペンデュらむゾーンの2枚ヲ、破壊!デッキから「クリフォートツール」を手札ニ加エ、貴様に500ダメージ!!】

 

「くうぅっ!?」

ペンデュラムの光の柱が自壊し、翠にその破片が突き刺さる!

 

翠LP6800→6300

 

 

【われはレベル4のモンすター2体でオーバーれイ!エクシーズ召喚!!】

 

 

【「No.∞」!「決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)」!!】

 

「遊海のナンバーズ…!?でも、()()!?」

遊海の場に希望の大剣が突き刺さる…だが、その刃は漆黒に染まっている…! ATK2500

 

 

【エクしーズ召喚に成功しタ事デ1ドロー…ば、バトル!「決闘の守護者」で「ラー」を攻撃!ORUヲ1つ、使イ…攻撃力ヲ7200アップスル!!砕ケヨ!!】

 

《ユウミっ!?あああああっ!?》

 

「フレアさん!?きゃああああ!?」

 

『翠!!』

 

「母さん!!フレア!!」

希望の大剣を逆手に持った遊海がフレアへと跳躍…突き刺すように袈裟斬りに斬り裂いた…!

 

 

決闘の守護者ATK2500→9700

 

翠LP6800→4300

 

 

 

ドクン…

 

 

ウガアアアアっ!?!?】

 

遊海LP2100

決闘の守護者 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

『うっ…!ゲホッ…!?遊海、さん…!?』

 

ううう…あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!?!

壁に叩き付けられた翠が血を吐きながら遊海を見つめる…その視線の先では絶叫しながら遊海が頭を抱えて苦しんでいた…!

 

 

「な、なんで遊海は苦しんでるんだ…!?」

絶叫する遊海を見て困惑する遊馬…その時だった、アストラルの言葉を思い出したのは…。

 

 

─これは貴方の戦いの記憶の「結晶」だ…貴方という最強の決闘者が歩んだ戦いの歴史そのものだ…!─

 

 

「っ─!!翠さん!!遊海が、遊海は記憶を取り戻しかけてる!!ナンバーズに込められた『記憶』が遊海に流れ込んでるんだ!!」

 

『あっ…!?』

それはかつてアストラルが『No.∞』を見て呟いた言葉…ナンバーズに秘められた膨大な戦いの記憶、それが遊海に流れ込み…それにより遊海は苦しんでいるのだ…!

 

 

『なら…このまま、遊海さんを倒せば…!遊海さんを救えるかも、しれない…!私は…最後まで、諦めない!!』

痛む体に鞭を打ち、翠は立ち上がる!

 

 

 

『私のターン…ドロー!!』

』手札の『影依融合』の効果発動!相手フィールドにエクストラデッキから召喚されたモンスターがいる時、デッキから融合素材を墓地に送る事ができる!私はデッキの『シャドール・ハウンド』と『シャドール・ドラゴン』を融合!闇の番犬よ!影の竜よ!今こそ交わりて影の巫女を呼び出さん!『エルシャドール・ミドラーシュ』!!』

 

《いくよ…!翠!!》

翠のパートナーである闇の巫女人形が現れる! ATK2200

 

 

『墓地に送られた「ハウンド」の効果発動!「決闘の守護者」を守備表示に変更!さらに「ドラゴン」の効果で伏せカードを破壊!』

番犬の咆哮で剣は色を失い、伏せられていた『機殻の再星』が破壊される!

 

決闘の守護者ATK2500 →DEF2000

 

 

『バトルよ!『ミドラーシュ』で「決闘の守護者」を攻撃!さらに速攻魔法「禁じられた聖杯」を発動!「決闘の守護者」の効果を無効にする!』

《吹き荒れろ!ウィンド・ストーム!!》

聖杯によって力を失った希望の剣を風の魔術が粉砕する!

 

 

【う、ガっ…!!『決闘の守護者』の、効果…!破壊されタタ、時…ライフを1000払い、墓地カラ特殊召喚…!墓地の『キラー』をORUに、スル!】

ライフを糧に再び剣が復活する! ATK2500

 

遊海LP2100→1100

 

 

 

『私は…モンスターをセット!ターンエンド!!』

 

翠LP4300

ミドラーシュ セットモンスター 手札1

 

 

 

『(次の一撃は、まだ耐えられる…そしてセットモンスターは「ファルコン」…墓地の『ビースト』を特殊召喚して、繋いでみせる…!!)』

視界がブレる中…翠は必死に遊海を救う方法を考えていた…。

 

 

 

【オレの、ターン…ドロー…!】

【「RUM─ネクサス・フォース」…発動!】

 

「「「なっ…!?『RUM』─!?」」」

遊海が発動したカードを見て遊馬と凌牙、Ⅲが驚愕する…それは遊馬が使う「ヌメロン・フォース」ともバリアンの使う「バリアンズ・フォース」とも違う、イレギュラーのRUM…!!

 

 

【我は…「決闘の守護者」で、オーバーレイネットワークを再構築…!カオス・エクシーズ・チェンジィィ!!】

 

 

【「CNo.∞」!「決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)・輝(かがやき)」…!!】

大剣が銀河へと飲み込まれる…そして再構築された「光」は遊海の右手に装着される手甲となる! ATK2800

 

 

「か、カオスナンバーズ!?そんなの、いつの間に─!?」

未知のカオスナンバーズの出現に遊馬は驚愕する…無理もない事だが、「CNo.∞」が生まれたのは遊馬達とは隔離された異次元だった…その直後に遊海はネームレスに襲撃された為、誰も存在を知らなかったのだ…!

 

 

【うぅぅ─!?!?ORUを1つ、使い、効果…!『ミドラーシュ』の攻撃力を0、にして、自身の攻撃力をその数値分、アップする!!】

 

『なんですって!?』

 

《ま、眩しい─!?》

白銀の手甲から放たれた光がミドラーシュの力を奪い去る!

 

ミドラーシュATK2200→0

 

守護者・輝ATK2800→5000

 

 

 

【ば、とる…!『ミドラーシュ』を攻撃!!】

 

《翠…!逃げて─!!》

 

『あっ…!?』

跳躍した遊海はミドラーシュを粉砕…その勢いのまま翠へと飛び掛かる、その拳は翠の頭を正確に捉えている─!!

 

 

『避けろ!翠─!!』

 

「母さん!ダメだ!止まってくれ!父さん─!!!」

 

「遊海!!!」

瀬人や凌牙達の叫びが響く……そして…──

 

 

 

 

 

グシャ

 

 

 

翠LP0

 

 

 

 



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悲しき決闘の後に…

っ…ああああああああ─!!!

 

 

白波遊海…正確には記憶の戻っていない「子供遊海」の精神は恐慌状態に陥っていた、ラーの翼神竜の炎に飲み込まれ…気付いた時には右も左もわからない暗闇の中に取り残されていた、それによって遊海はパニックを起こしていた…さらに…。

 

 

 

痛い、いたいイタイいたい──!?!?

 

 

外の世界で暴走している遊海が「No.∞」を使った事でアヤカが危惧していた「痛み」の記憶が一気に流れ込み、遊海は苦しんでいたのだ…。

 

 

 

 

 

「(いたい、もう、いやだ)」

 

 

人はあまりに強い痛みに出会うと失神し、精神を守ろうとするという……遊海に僅かに残っていた「理性」も…安寧の闇に呑まれようとしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

─遊海君、起きるんだ…キミはその闇に身を任せてはいけない…!─

 

 

 

「だ、れ…?」

 

真っ暗な世界に優しげな…しかし強い力の込められた声が響く…。

 

 

 

─キミは…こんな痛みに負けるほど、弱い人間ではないはずだ…!思い出せ!キミの…「白波遊海」の『原点』を…!!─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇ、お兄ちゃん達…何をして遊んでるの?』

 

『これは「■■■」だよ!』

 

『私にも教えて!』

 

『いいよ!』

 

「これ、は…?」

遊海の目の前に公園で遊ぶ子供達の姿が浮かび上がる…。

 

 

 

 

『必ず取りに行くから待ってろよ!○○○』

 

『指切りしようよ!○○○○兄!』

 

 

 

「約束…」

指切りをする2人の子供達…そして景色は流れていく──

 

 

 

かけがえのない朋友達と共に大邪神の企てを乗り越え…

 

 

 

大切な教え子達と虚無の神を封じ…

 

 

 

新たな仲間と共に冥界の悪神を倒し…破滅の未来を変えんとした『もう1人の自分』を乗り超えた…

 

 

 

 

それは遊海の『原点(オリジン)』…最高最善の物語を掴む為の歩み…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぼくは……おれは……!俺は…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─世界を頼んだぜ、遊海…お前の目指す理想の未来を…必ず掴んでくれ─

 

 

 

 

 

 

「…答えは決まってますよ、遊海さん…ふつつか者ですが…よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は……俺は─!!

 

 

 

漆黒の世界に光が満ちる…『痛み』の記憶を乗り越えたその先……そこには『希望』が待っていた…!

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

グシャ

 

 

 

 

 

「か、母さん!!」

 

「翠さん!!」

子供達の悲鳴がデュエル場に木霊する…デュエルフィールドは煙に包まれ、状況が伺い知れない…だが、徐々にに煙が消えていき……──

 

 

 

 

「遊海…さん…?」

 

「………!!」

 

 

 

振り上げられた破壊の拳は翠を穿つ事はなかった、壁際へと追い詰められた翠をギリギリで避けるように…遊海の拳は鋼鉄製のデュエル場の壁に突き刺さっていた…右拳は潰れ、血がとめどなく溢れ落ちている。

 

 

 

 

「み、ど…り…──」

 

「っ!?遊海さん!!」

ちいさな声で翠の名前を呟いた遊海は…その場に崩れ落ちた…。

 

 

 

《…とりあえず、なんとかなったみたいだね》

 

「ああ、とにかくフレアやウィンダの治療をしてやんないとな…」

 

『まったく、ヒヤヒヤさせおって…信じていたぞ、友よ』

気絶した遊海に駆け寄る子供達を見送りながら…十代と瀬人は胸を撫で下ろした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「ぐっ…うぅ…ここは、どこだ…?」

遊海が目を覚ますとそこは病室だった、慣れてきた目で見回せば…どうやらKC病院の病室らしいと気付いた…。

 

 

「俺は、なんで病院に…?っ!?」

意識がはっきりし始めた遊海を頭痛が襲う…そして思い出したのは自身に襲い掛かった赤紫の髪を持つバリアンの怪人の事だった…。

 

 

「そう、だ…!!俺はバリアンの怪人に、襲われて…!!み、翠…!!あだっ!?」

ベッドから立ち上がろうとした遊海はバランスを崩して派手に転げ落ちた…。

 

 

「体が、痛い…右手が潰れてる…何が、どうなって…?」

遊海の覚えている『最後の記憶』は怪人に体を斬り裂かれ、耐えられない激痛に襲われた事だった…。

 

 

 

ガラッ!

 

 

「あっ…!?ゆ、遊海さん!!大丈夫ですか!?私の事はわかりますか!?」

 

「み、翠…!!バリアンの怪人は!?凌牙達は無事あばっ!?」

そのタイミングで所々に包帯を巻いた翠が病室にやって来て…そのまま遊海に抱き付いた…。

 

 

 

「馬鹿!遊海さんのバカ!!どうして…どうしていつも私に心配ばっかりかけるんですか〜!?うぇ〜ん!!」

 

「み、翠…!?なんで、泣くんだ…?そんな()()()()()()()()()()…?」

遊海は翠が泣いている理由が分からなかった…遊海の中では怪人に襲われて数日という認識なのだ…。

 

 

 

「ぐすっ…なにも、覚えてないんですか?」

 

「えっ…?何を…?」

 

『あっ…!?遊海さん!遊馬君!凌牙!遊海さんが目を覚ましてる!!』

 

「父さん…!!まったく…どれだけ寝れば気が済むんだよ…!」

 

「遊海!十代さんも瀬人さんも…みんな心配してたんだだぜ!?」

 

「ミハエル…?遊馬…凌牙…?えっ……ちょっと待て!?誰か、俺に今の状況を教えてくれ!?」

遊馬達と共にいるⅢの姿を見た遊海は混乱する…。

 

 

《マスター、簡潔に説明します……闇デュエル界の四悪人のうち、2人は撃退済みです》

 

 

「な、なんだってぇぇぇぇ!?!?」

 

 

アヤカの至極簡潔な説明で…遊海は自分がどれほど寝過ごしたのかを察し、驚愕の叫びがハートランドの街に木霊した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

─ふぅ…間に合って良かった…遊海君、ここからはキミが頑張る番だよ?ボクも応援してるからねー!─



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見送る勇士〜友の為に〜

こんにちは!S,Kです!

ついに長い眠りから目覚めた遊海…そして遊馬はアストラルを取り戻す為、青き異世界へと旅立つ!


それでは…最新話をどうぞ!


『なんという事だ…!蝉丸も…クラゲ先輩も…!奴らにやられてしまうなんて…しかも、ネームレスが封じた白波遊海の復活も許してしまうとは!!』

ハートランドシティの外れにある、とあるビル…そこでMr.ハートランドは途方に暮れていた。

 

ベクターによって遣わされた『四悪人』も自身を含めて残り2人…さらに怪人・ネームレスが封じた人間界の最終兵器である白波遊海も意識を取り戻してしまった…ベクターからの叱責は免れないだろう…。

 

 

【カカカッ…気にする事ないってカ?あとはボク達『害虫ブラザーズ』がいれば問題ないってカァ】

そんなハートランドに声を掛けたのは丸メガネを掛け、忍者かスパイのような服を着た男だった。

 

 

『…遊馬や神代凌牙…そして白波遊海の事も気になるが……これだけの騒ぎを起こしてカイトが姿を見せないのも──…』

 

【気になるってカ…!なら、丁度いい…ボクは()()()()()()()()()が…大嫌いなんだって蚊─!!】

 

『…頼んだよ、蚊忍者』

男はその姿を『蚊』に変えるとハートランドの街へと向かった…彼は四悪人の1人、蚊忍者と呼ばれる男だった…。

 

 

 

 

 

「よ〜し!今日もハートランドシティは何処も異常ナシだぜ!万々歳だ!」

 

『そうだね、遊馬』

夕日の差すハートランドシティの一角…そこに遊馬の声が響く…。

 

 

『遊馬…これからもこの()()()()()を続けるつもりかい?』

 

「もちろんだぜⅢ!バリアンの奴らは…またきっと現れる…!遊海も本調子じゃないからな!オレがこの街を守るんだ!」

遊馬が目覚めて数日…遊馬はバリアンの襲撃に備え、ハートランドのパトロールを行なっていた…今日はⅢが付き合ってくれていたのだ。

 

 

『遊馬…アストラルがいなくても、大丈夫…?』

 

「………ああ、大丈夫さ!お前らが来てくれて…遊海も目が覚めたんだ!百人力どころか千人力だぜ!!」

Ⅲの問いかけに一瞬、言葉を失う遊馬…アストラルを失った喪失感は未だに癒えてはいなかった…。

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「はぁぁ〜〜………」

 

《フォウ…フォウ?フォーウ!》ペチペチペチ

 

《フォウ、マスターのおでこが赤くなってますから…一度やめてくださいね…》

 

 

KC病院の病室に遊海の深いため息が消えていく、目覚めてから数日…遊海は自己嫌悪に陥っていた、その落ち込み様は頭に乗ったフォウが額を叩いたり、髪を引っ張ったり、耳たぶを噛んでも反応を見せない程である…。

 

 

 

「穴があったら入りたい……いっそ冥界に行きたい…遊戯とか克也に思いっきり叱ってほしい……」

 

《ユウミ…今回はどうにもならない事でした…アテムも逆に慰めにきますよ…》

 

「いや、もう夢に出てきたよ…思いっきり同情された…」

 

《まさかの!?》

目覚めた後、翠から語られた昏睡中の出来事…それは遊海の心を打ち砕くには十分過ぎるものだった。

 

バリアンの怪人・ネームレスの毒牙と「不死殺しの鎌」によって目覚めぬ眠りに堕ちていた事。

 

 

ネームレスを差し向けたのがベクターであり、第二の遺跡で遊馬への追撃…さらには自分への追撃の為に2度の襲撃があり、そのいずれも翠が命がけで撃退した事。

 

 

璃緒が第六の遺跡探索後に昏睡状態になった事。

 

 

遊馬&アストラル対No.96の最終決戦の際に病院から攫われた自分が人質になり…戦いの末にアストラルが消えてしまった事。

 

 

挙げ句にクラゲ先輩に襲撃され、毒を打ち込まれたうえに何故か『子供化』して翠とのデュエルで暴走…危うく翠を殺す寸前だった事……。

それらを聞いた遊海は遊馬達を導くはずの自分が大迷惑を掛けてしまった事で酷く落ち込んでいたのだ。

 

 

 

 

「うう…遊星やジャックには泣かれるし…瀬人にはいつも通り怒られるし…翠はボロボロだし……うああああ〜〜!!今生一番の黒歴史だああああ!!!

 

《マスター、落ち着いてください…キャラがすごい事に……というより、怪我人なんですから安静にしてくださーい!!》

 

《無駄だアヤカ…優介…いや、遊海はこの状態になったらしばらくはこのままだからな…》

思わず頭を掻きむしる遊海…右腕は先日のデュエルの際に全力で鉄の壁を殴りつけた事で文字通り『粉砕・玉砕・大喝采』状態の為、ギプスでガチガチに固定されている。

…念の為に精霊の力による「治癒」を使わず、遊海の自然治癒に任せている為…完治には少し時間がかかるだろう…。

 

 

…………

 

 

《フォーウ?(落ち着いた?)》

 

「ウン、アリガトウ、フォウクン」

 

《ファーウ…(うん、ダメだね!)》

しばらく悶え続けた遊海はとりあえず、落ち着きを取り戻す……若干燃え尽きているのは気の所為だろう。

 

 

コン…コンコン

 

 

「遊海!お見舞いに……って、大丈夫か…?」

 

「おお、遊馬…ミハエル…小鳥ちゃん、いつも悪いな…」

ノックと共に遊馬・小鳥・Ⅲがやって来る…彼らは遊海が目覚めてから毎日お見舞いに来ているのだ。

 

 

「みんな、目が赤いな…なにかあったのか?」

 

『実は…遊馬の友達の徳之助君が「アストラルのお墓」を勝手に作ったんです…』

 

「そしたら…なんだか、涙が止まんなくなっちまった…」

 

「そうか…」

Ⅲと遊馬から語られたのは病院に来る前の出来事だった。

 

パトロールの終わった遊馬に声を掛けた徳之助…彼は遊馬と遊馬を影から見守っていたナンバーズクラブの仲間達をとある海辺に案内する、そこにあったのは綺麗なガラスと花で彩られた『アストラルのお墓』だった…。

 

あまりにも遊馬の気持ちを逆撫でし、人として空気を読まない徳之助の行動に鉄男が憤慨するが、徳之助は『泣いていた』…遊馬のように常に姿は見えずともアストラルはナンバーズクラブの仲間だった、その死を受け入れられなかった徳之助が…『自分の為に』アストラルのお墓を建てたのだ…。

 

 

 

 

「……遊馬、ちょっと来い」

 

「あっ…うん…」

遊馬達の話を聞き終えた遊海は遊馬を自分の近くへと招く、そして…。

 

 

「…我慢する事はない、今のうちに泣いておけ……泣くのは決して恥ずかしい事じゃない…」

 

「遊海…」

遊馬を静かに抱き寄せた遊海は優しく語り掛ける。

 

 

「遊馬、お前が一番辛い時に居てやれなくてすまなかった…」

 

「ゆう、み……ああ、うああああ…!!!」

 

「遊馬…」

遊海の言葉で心のタガが緩んだのか…遊馬は彼の胸の中で泣き始めた…。

 

 

『(そうか…遊海さんは行方不明の一馬さんの代わりに、遊馬の事を守っていた……遊馬にとって家族以外で唯一「弱音を言える人」なんだ…)』

泣きじゃくる遊馬を見たⅢは…ようやく遊海が担っていた役割を理解した。

 

 

………

 

 

 

『どうだ?ミハエル…遊馬の様子は…?』

 

『遊馬はデュエリストとして一流の腕になっていた…アストラルは見事に遊馬を育てたんだ…でも、今はアストラルを失って自信を失っているみたい…』

 

『そうか…』

数日後の夜、Ⅲはアークライト一家の拠点である潜水艦に残るⅣと遊馬について話し合っていた…。

 

遊海の腕の中で泣いた後、遊馬は元気を取り戻したように見えた…だが、時折暗い表情をしたり…虚空に……いるはずのないアストラルに話し掛ける事が続いていた。

 

 

『…立ち直れそうか?』

 

『わからない…でも、遊馬ならきっと……』

 

『…そうか…それから、遊海さんの様子はどうだ?まだ入院中なんだろう?』

 

『うん…もう少しで退院できるはず、なんだけど…』

 

『…どうした?』

遊馬に続いて入院中の遊海の様子を訊ねるⅣ…その問いにⅢは不安そうな表情を見せる…。

 

『うまく言えないんだけど……あの人から感じる「オーラ」が弱くなった気がして…』

 

『わかった、療養中の父さんにも聞いてみる…そっちは頼んだぞ、ミハエル』

 

『わかった…!』

 

 

 

 

 

 

 

『フン…ようやく完治か、やはり随分と()()()な…遊海』

 

「今回ばっかりは…もう、どうにもならない……俺は…悔いなく、やれる事をするだけさ」

 

「遊海さん…」

翌日、遊海の病室には重い空気が漂っていた、ようやくギプスが外れた遊海…子供化した影響なのか、肉体的には全盛近くまで戻ったのだが、その磨り減り砕けかけた『魂』までは戻らなかったのだ…。

 

 

「俺の相手は…怪人『ネームレス』…奴はバリアン侵攻時に必ず現れる…その時は、俺が命を懸けて打ち倒す…!」

 

『バリアン共の侵攻…具体的に何が起きるかは聞いていなかったが…何が起きる?』

決意を固める遊海に瀬人が問いかける。

 

 

「まずはバリアンの手で世界中に『100万枚の偽物のNo.』がばら撒かれる…それを手にした人達の『負の心』が増幅され…人間界とバリアン世界が融合し始める…!」

 

『100万枚のナンバーズだと?…フン、『ドーマ』の事件を思い出すな…対策は考えているのだろう?』

遊海の予想を超える言葉に驚く瀬人だったが…そこまで動揺する事はなかった。

 

「十代に頼んで世界中に散らばってる『伝説の決闘者』の子孫達に協力を頼んだ…それぞれの住む地域で兆候があったらナンバーズ持ちを倒してもらうか…降りそそぐナンバーズを破壊するように伝えてある」

 

「ああ!幸いにもみんな『精霊の力』を持ってたから…大丈夫だと思うぜ!」

十代が瀬人にグッドサインを向ける!

 

 

『フン…次は…?』

 

「バリアンに堕ちたMr.ハートランドがこの街に侵攻してくる…凌牙やカイトの持つナンバーズを奪う為に…だが、それは問題ない……そしてハートランドが倒された後、バリアン七皇が人間界に出現……ハートランドに集まった遊馬の仲間達と激戦を繰り広げ……遊馬はバリアン世界に向かう事になる」

 

『元凶…ドン・サウザンドを倒す為にか……ネームレスが現れるとすれば、そのタイミングだろうな』

 

「ああ、今度は油断しない…!翠を傷付けた落とし前は、必ずつける…!」

 

「遊海さん…」

遊海は静かに拳を握り締める…!

 

 

『だが、不安要素もある…まずは1つ、九十九遊馬はアストラルを失い、不安定な状態だ……こんな状態で戦えるのか?』

 

「心配しなくても大丈夫さ…アストラルは帰ってくる、遊馬がアストラル世界に迎えに行くからな…」

 

『なにッ…?アストラル世界の場所はお前でもわからないのではなかったか…?』

瀬人は遊海に問う…アストラル世界の座標はアヤカやフレアでも分からず、干渉できないと聞かされていたのだ。

 

 

「アストラル世界に行った()()が…ちゃんと道しるべを残してくれてる、カイトとクリスがその『道』を必ず見つけてくれるはずだ」

遊海はそう言いながらデッキケースに仕舞っていた『覇者のコイン』を取り出した。

 

 

『異世界の物質…Dr.フェイカーは「バリアライト」というバリアン世界のエネルギー物質を持っているらしいが…それのアストラル世界版か……九十九一馬教授…流石はお前が「友」と認めた男だな……ならば2つ目だ、バリアンの戦士「七皇」…その残り二人の行方だ!奴らは何処にいる?今からでも…オレが粉砕してくれる!!』

 

「すまん、その二人の居場所は()()()()()()…だが、バリアンの侵攻までにあちらに合流する事に……なるはずだ」

 

『…貴様……フン、全てを知っているかと思えば…知らぬ事もある…「俯瞰した視点」というのも万能ではないな』

 

「すまん…!」

一瞬睨み合う遊海と瀬人…だが、瀬人は一先ず納得したようだ。

 

『遊海、いつでも戦えるように体調を整えておけ…我らも備えるが……我らの最終兵器はお前なのだから…!』

 

「わかってる…!」

瀬人の言葉に遊海は強く頷いた…。

 

 

 

 

 

「遊海さん…」

 

「………わかってるよ、翠…俺達の『決断の時』は迫ってる…そして…()()()()も…」

瀬人と十代が去った病室…翠は思い詰めた表情の遊海を心配する…。

 

「…2()()が何も言わずに行くのか…それとも……それはまだ、分からない…でも、俺達の為すべき事は変わらない…」

 

「…はい…!遊戯さん達から託されたこの世界を守る…そして最高の結末を掴む…!それが、私達の背負う願いだから…!」

迫る「別離」を前に…遊海と翠は覚悟を決めていた…。

 

 

 

コンコンコン!

 

 

「遊海!お見舞いに来たぜ!!」

 

『おじゃまします!』

 

「おお、遊馬にミハエル!毎日悪いな…このとーり、俺は元気だぞ!」

 

「ギプスが外れてる!よかったぜ!」

そんな時、遊馬とⅢが日課となっているパトロールついでにお見舞いにやって来る、ギプスの取れた遊海を見た遊馬は笑顔だったが…何処か暗い笑顔だった…。

 

 

「ハートランドは大丈夫か?一応アヤカにも警戒してもらってるが…」

 

「ああ!まだ半分しか回ってないけど…大丈夫!何かあったって絶好調のオレが解決してやるぜ!!なっ!アスト……あはは……」

 

『遊馬…』

遊馬は自然と後ろに声を掛け…誤魔化すように笑っていた…。

 

 

「………遊馬、『皇の鍵』の代わり…とは、いかないが…これを貸してやろう」

 

「これ……遊海のカルトゥーシュじゃねぇか…!」

空笑いする遊馬を見た遊海は枕元に置いていた銀色のカルトゥーシュを遊馬へと託した。

 

「これは元々、翠とお揃いでエジプトの土産屋で作ったんだが…いつの間にかマジックアイテムになっててな、俺以外の奴がこれを持ってると危機から守ってくれる!十代や遊星を助けたお墨付きだ……もし、ネームレスが現れても目眩ましぐらいはしてくれるはずだ!」

 

「いいのか…?大切な物なのに…」

 

「ああ、大切な物だ…だから、戦いが終わったら…必ず返してくれ……約束だぞ?」

 

「ああ…!サンキュー!遊海!」

遊馬は受け取ったカルトゥーシュを首に掛け、笑顔を浮かべた…。

 

 

 

 

「翠、今日の天気は…?」

 

「…夕方から夜にかけて『雨』だそうです…」

 

「…そうか」

遊馬達が去った後、遊海は窓の外を見る…空は少しずつ雲に覆われ始めていた…。

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「よしよし…!今日もハートランドは平和だぜ!バリアンの奴ら、オレにビビったのかな!」

 

『…だと、いいけど…』

 

「えっ…?なんだよ、その言い方…って…あれ!?みんな」

 

「「「わわっ!?」」」

遊海の見舞いと、ハートランドのパトロールを終えた遊馬とⅢは海浜地区を歩いていたが…いつの間にかに後をつけていたナンバーズクラブの仲間達に気付いた…。

 

 

「お前ら…またついて来たのかよ!?」

 

「ごめん…遊馬の事が心配で…!」

 

「心配…?オレの何が心配なんだよ!?」

小鳥の言葉を聞いた遊馬は仲間達に詰め寄る…遊馬は自分の無意識の行動に気付いていなかったのだ…。

 

 

『遊馬…それは、君がアストラルがいなくなった事を受け入れられていないからだよ…!』

 

「そんな事ないって…!オレはちゃんと…!」

 

「遊馬…お前、気付いてないのか?お前のパトロールしてる場所は……」

 

「とどのつまり、アストラルとの()()()()()()()()ばかりなんですよ…?」

 

「あっ……」

Ⅲや仲間達の言葉で遊馬はようやく自覚した…ハートランドの交差点・ハートランド博物館・建設途中のビル・ハートランドタワー・建設途中の立体道路・噴水広場…そこはアストラルと共に遊馬がデュエルした場所ばかりだった…。

 

 

「そんな事…そんな事ないって!?」

 

「…この場所だって…」

 

「アストラルのお墓のある場所…ウラ」

 

「っ──!?」

遊馬は海辺の土手を見上げる…そこには確かに徳之助の作った「ガラスのお墓」があった…。

 

 

『遊馬、君はアストラルの死を乗り越えられたと思っている…でも、違う…!君は…無意識にずっと()()()()()()()()()()()!』

 

「あっ……」

Ⅲは遊馬に真実を突きつける…みんなの前では明るく振る舞う遊馬…だが、その『心』は…アストラルを探し求め、無意識にハートランドを彷徨っていたのだ…。

 

 

『君は…思い出の場所を巡っていれば、いつかアストラルに逢えると信じてしまっているんだ…!』

 

「オレは……オレは…!!オレはっ──!!」

 

「遊馬!?何処に行くの!?」

遊馬の脳裏にアストラルとの思い出が過ぎ去って行く…そして、無情な真実に気付いた遊馬は何処かへと駆け出した…その心を現すかのようにハートランドには雨が降り始めた…。

 

 

「(そうさ…!オレは信じてねぇ…!!アストラルが死んだなんて…信じねぇぇっ!!)」

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……ここ、は……」

遊馬が無意識に走った先、そこにあったのはハートランドシティの駅前広場……アストラルと遊馬が出会った場所だった…。

 

 

─勝つぞ─

 

「アストラルっ…!!」

思えば、最悪の出会いだった…しかし、そんな出会いでさえも…今の遊馬にとってはかけがえのない思い出だった。

 

 

「遊馬……風邪、ひいちゃうよ…?」

 

「放っといてくれよ!!」

少し遅れてナンバーズクラブの仲間達とⅢが追い付き、小鳥が遊馬に声をかける…だが、遊馬はそんな仲間達を拒絶した…。

 

 

「アストラルは絶対に生きてる…!!あいつが死ぬ訳ないんだ!!だから…だから…!!」

 

「オレはずっとあいつを探すんだ!!あいつが見つかるまで探すんだぁぁぁ!!」

 

「遊馬…」

降りしきる雨の中で遊馬は叫ぶ…アストラルを探す決意を…アストラルとの再会を信じる魂の声を…。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()…遊馬、さぁ…立て!」

 

 

「えっ…カイ、ト…?」

雨のハートランドに強い声が響く…その正体は長らく姿を見せなかったカイトだった…!

 

 

「行くぞ」

 

「行くって…いったい何処に…?」

 

「決まっている、()()()()()()()()()()()()!!説明は後だ……出発するぞ!!」

 

「アストラルを、取り戻す…!?」

現れた新型輸送機をバックにカイトは遊馬を見つめた…!

 

 

 

 

「……じゃあ…!?アストラルは生きてるのか!?」

 

「それをはっきりさせる」

 

「はっきりさせるって…どうやって…?」

カイトに連れられた遊馬、そして付き添いに志願した小鳥はカイトから状況の説明を受けていた…。

 

 

「遊馬、オレ達の戦いの()()()()はなんだ?」

 

「最終、目的…?」

 

「忘れたのか?『ヌメロン・コード』の事を…おそらく、アストラルの使命はそのカードを見つけ、バリアン世界を滅ぼす事…だが、アストラルがいなければヌメロンコードを見つける事はできない」

『ヌメロン・コード』…それはいわゆる「アカシック・レコード」…全ての未来が記され、未来を書き換える事のできる『始まりのカード』…アストラルはそれを探し求めていた…。

 

 

「オレ達がいくら戦おうが…バリアンの猛攻がこのまま続けば…ナンバーズはいずれ奴らの手に渡る…!そうなればヌメロンコードは奴らの手で書き変えられ、アストラル世界と人間界は滅ぶ…!それを阻止するには…アストラルが必要だ…!」

バリアンの戦士達は強い、例え遊海や伝説の決闘者がいてもいつかは限界を迎えるだろう…カイトはそんな状況を打破する為に研究を続けていたのだ。

 

 

「お前が落ち込んでいる間、オレとⅤは…アストラル世界に行く方法を見つけた…!」

 

「なんだって…!?でも、どうやって…?」プーン…

カイトの思わぬ言葉に遊馬は驚愕する…!

 

 

「ヒントは…このコインだ」

 

「あれっ…!?父ちゃんのコイン!?いつの間に……ああっ!?1枚足りない─!?」

カイトが手にしていたのは一馬の残していた「覇者のコイン」…いつの間にか遊馬からくすねていたのだ。

 

「そう騒ぐな…少し借りただけだ、それより…このコインには重大な秘密が──」

 

キィン─!!!

 

「「「な、なんだ!?」」」

カイトが遊馬に向けてコインを弾いた瞬間、遊馬の下げていた「遊海のカルトゥーシュ」が眩い光を放つ…そして…──

 

 

ぎ、ギィィヤアアアア!?!?

 

 

「な、何が起きた…?」

輸送機の中に断末魔が木霊する……だが、それは遊馬達の声ではない……訳が分からず困惑する3人だったが…その足元に1枚のカードが落ちていた。

 

 

 

「…これは……『No.2蚊学忍者シャドー・モスキート』……?なんだ、このナンバーズは…?」

 

「あっ…もしかして…!?バリアンの刺客がいたのか!?」

 

「なにっ?どういう事だ…?」

遊馬は落ちていたナンバーズを見て状況を察し、カイトへと説明する。

ハートランドに「No.3」「No.4」を操るバリアンの刺客が現れた事、そしてそれぞれに「蝉」と「クラゲ」の怪人であり…落ちていたナンバーズから持ち主は「蚊」の怪人だったのではないかと遊馬は予想したのだ。

 

 

 

「よくわからないけど…遊海はそいつらを『四悪人』って呼んでた…もしかしてそのナンバーズを持ってた奴が虫みたいに小さくなって飛行機の中にいて……」

 

「遊海さんのカルトゥーシュが危険を察知して…駆除しちゃった…とか?」

 

「……聞いた事がある、ある種の害虫は光に誘引され…一定の波長の青い光を浴びると死ぬらしい…まさか、そんな間抜けなバリアンがいるとは思えんが……警戒するに越した事はないな…とはいえ、流石は決闘王謹製のアイテムか…」

カイトは遊馬の胸で輝きを放つカルトゥーシュを見つめた…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

『むむっ…?蚊忍者の反応が…消えた??まさかやられてしまったのか─!?』

ハートランド某所にMr.ハートランドの叫びが響く、哀れ蚊忍者…得意とする『蚊学忍法』を披露する事なく、彼は現世から退場したのだった…。

 

 

 

 

 

 

「ふぁ…ヘックション!!さ、寒みぃぃ…!!」

数時間後、遊馬達はとある雪国にいた…そこには長い谷があり、様々な装置や設備が設置されていた…。

 

「あれが…オレとⅤが完成させた『時空移動装置』だ」

 

「時空…移動装置…?」

 

《カイト様!おかえりなさいマセ!でアリマス!!》

そしてその谷に一際巨大な装置があった…オービタル7が調整していたその装置こそ、異世界への扉を開く装置だった…。

 

 

「アストラルの異次元飛行船は遺跡のナンバーズを感知できた…何故か…?それはお前の父が残したコインに秘密があった、そのコインの正体はアストラル世界の物質『アストライト』…人間界には存在しない膨大なエネルギーの塊だった」

 

「アスト…ラリト?」

 

「アストライトだ!……その膨大なエネルギーを利用して異世界への扉をこじ開け、お前をアストラル世界へと送り出す!」

 

「すげぇ…こんなモンを作ってたのかよ…!」

遊馬は装置を見てカイト達の技術と努力を理解する…遊馬には理論は分からないが…それでも「途轍もない偉業」だと分かったのだ。

 

 

 

『カイト…!?何故、遊馬を連れて来てしまったのだ…!』

 

「Ⅴ!?」

 

「オレは…アンタと違って遊馬を甘やかすつもりはないんでね」

 

『そんな問題じゃない!!』

遊馬達の背後に銀色の髪を持つ冷厳なる決闘者・Ⅴが現れる…その表情は苛立っていた…。

 

 

 

『無理に時空の扉を開けるんだ…その先がどうなっているのかもわからないんだぞ!?』

 

「Ⅴ…どうして、どうして教えてくれなかったんだよ!?」

 

『わかりきっている…!教えれば、君は必ず「行く」と言い出すからだ!』

Ⅴは遊馬の事を心配していた…心配しているが故に遊馬が来た事に怒っていたのだ…。

 

 

「そりゃ決まってるだろ!?アストラルを取り戻せるかもしれないんだ!!」

 

『君は…この実験の危険性が分かっていない…!万が一、アストラル世界に行けたとしても…!そこはまったくの「未知の世界」!どうなるかわからない……最悪の場合、生きて戻れない…!』

 

「そんな…!!」

Ⅴの語る「最悪」を聞いた小鳥は涙を浮かべる…。

 

 

「…クリス、遊馬の親父が遺跡にコインを残したのは()()じゃない…ここまで起きる事態を全て見越していたのであれば、7枚のコインは『アストラル世界に来い』という遊馬へのメッセージだ!」

 

「カイト…!だったら、アストラルはやっぱり生きてる…!生きてるんだ!!絶対に!!」

 

「私からも、お願いします…!アストラルを取り戻せるのは…遊馬しかいません!!」

 

「小鳥…!」

 

『………』

生き生きとした遊馬の表情を見たカイトと小鳥は遊馬の背中を押す…全ては遊馬の大切な相棒を救う為に…!

 

 

「頼むよ…Ⅴ!オレに行かせてくれ!!」

 

『わかった…!すぐに出発の準備をするぞ…!!』

遊馬達の想いに…Ⅴは遂に折れたのだった…。

 

 

 

 

 

 

『遊馬!これからアストラル世界への扉をこじ開け、お前を送り込む!だが、その扉がいつまで保つかわからない……扉が閉じてしまえば、帰れる保証はない!!』

 

「ああ…!小鳥、心配すんなよ!必ず、アストラルを連れて帰って来るからな!!」

 

「うん…!」

装置の上に立った遊馬は小鳥へと決意を叫ぶ…!

 

 

「オービタル!このデータを装置に組み込め!」

 

《カシコマリ!》

 

『カイト…今のデータはなんだ?』

カイトはオービタルに1枚のデータチップを投げ渡す…。

 

 

「オレは遊馬を迎えに行く為だけにハートランドに戻った訳じゃない……白波さんの精霊であるアヤカに次元の扉を安定させる術式を組んでもらっていたんだ…少しでも、安全にアストラル世界に遊馬を送り出せるように…!」

 

『そうか…君も随分丸くなったな、カイト』

 

「フッ…貴方には言われたくはないな、クリス」

2人はお互いに笑みを浮かべる…2人もまた、遊海の影響を強く受けていたのだった…。

 

 

《準備完了でアリマス!》

 

「やれ!オービタル!」

 

《カシコマリ!!》

カイトの指示を受けたオービタルがコンソールを凄まじい速さで叩き始める!

 

 

『装置に設置したアストライトに電圧を掛け、エネルギーを放出・充電し…一気に放出する事でアストラル世界への扉を開く!ただし、エネルギーの注出は1度きりだ…充電が終わるまで、絶対に動くなよ!』

 

「わかった!!」

 

キィン─!

 

装置が唸りを上げる…そして遊馬はスフィア・フィールドに似た空間に包まれる…!

 

 

《エネルギー充填…45%…50…60………》

 

「あっ…そうだ…!Ⅴ!これを持っててくれ!!」

 

『これは「No.9天蓋星ダイソン・スフィア」…!』

エネルギーの充填が進む中…遊馬はⅤにナンバーズを投げ渡す!

 

「もしも、オレがいない間にバリアンが襲って来たら…そのナンバーズで戦ってくれ!!」

 

『フッ…感謝する!確かに預かった!!』

 

 

《エネルギー充填90…95……100%!準備完了でアリマス!!》

 

『旅立ちの時が来たようだな…!』

 

「行け!遊馬!必ずアストラルを連れ戻して来い─!」

エネルギーが充填され、装置が眩い光を放つ!

 

 

「─────!!」

 

「遊馬…!絶対…絶対に帰って来てね─!!!」

 

「…!!」

スフィアフィールドに包まれた遊馬は小鳥に向かって頷く…そして…!!

 

 

キィン──!!

 

 

夜を真昼に変えるような光が周囲に満ちる…そして光の奔流と共に遊馬はアストラル世界へと向かった…!

 

 

 

 

「待ってろよ、アストラル!必ずお前を連れ戻すからな!!かっとビングだ!オレ─!!」



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遊馬、青の世界へ〜アストラル世界の真実〜

こんにちは!S,Kです!

アストラルを助ける為、ついにアストラル世界へと乗り込んだ遊馬…彼が青の世界で目にする真実とは…?


それでは、最新話をどうぞ!


「うおおおっー!!!」

カイト達によってアストラル世界へと送り出された遊馬は赤い光を纏い、異次元トンネルの中を飛び続けていた…。

 

 

「っ…?あの光は…!?」

しばらくトンネルを進んだ遊馬の前に眩い光が現れる、その光を通り抜けた先で目にしたのは…無数の「銀河」だった…。

 

 

「ここは…もしかして『世界の狭間』って奴か…?」

遊馬は以前、遊海の言っていた事…『世界は無数にある』という言葉を思い出した、目の前には数え切れない程の『世界』が浮かんでいたのだ…。

 

「いったい…アストラル世界は何処にあるんだ…!?」

無数の世界を前に戸惑う遊馬…その時。

 

キィン─…

 

「うわっ!?」

遊馬の周りに虹色の粒子が現れる、その光は遊馬の周りを何回か回るとその正体を現した。

 

《クリクリ〜!》

 

「お前は…父ちゃんの使ってた『虹クリボー』!!」

遊馬の前に現れたのは額に虹色の宝石を持つモンスター『虹クリボー』の精霊…父・一馬の持つモンスターの1体だった。

 

 

「お前…なんでこんな所に?」

 

《クリクリ〜…クリー!》

 

「あっ!?待ってくれ!…もしかして…アストラル世界に案内してくれるのか─!?」

虹クリボーは「付いて来て!」と言うかのように飛んで行く…。

 

「サンキュー、虹クリボー!アストラル世界まで連れて行ってくれ─!!」

遊馬は虹クリボーを急いで追い掛けた…。

 

 

 

 

Side???

 

 

【……やはり来たか…人間よ…】

青い水晶の浮かぶ、清廉な世界…その王宮に光の化身のような人影が現れる…。

 

【この世界には…お前は…お前の持つ『カオス』は不要なのだ…!】

光の化身はアストラル世界の空を睨んだ…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

「ん…んん…?ここは…」

アストラル世界突入の衝撃で気を失っていた遊馬が意識を取り戻す、そこは幻想的な青の世界…その静かな海辺だった。

 

「ここが、アストラル世界……おおっ!?なんじゃこりゃ…!!」

辺りを見回した遊馬は驚愕する…目にしたのはおそらくアストラル世界の「街」、その街の建物は全て天を衝く高さの塔…その中心には王宮のような一際大きい塔がそびえ立っている…。

 

「あれがアストラル世界の街…ん…?なんだコレ…枯れてる…のか?」

アストラル世界の街に目を奪われていた遊馬は足元を見る、そこには枯れかけた蔦のような植物が広がっている…それだけではない、遊馬の周りにも街にあるような塔があったのだが…その全てが廃墟と化していたのだ。

 

 

「街の方はあんなに綺麗なのに…まるで廃墟みたいだ…どうして…?」

探検家としての性なのか、遊馬は無意識に蔦に触れる…その時だった!

 

キィン─

 

「な、なんだ─!?」

遊馬が蔦に触れた瞬間、その場所から暖かい光が全体に広がっていく…そしてみるみるうちに蔦に生命力が戻り、花が咲いていく…!

 

「触っただけ、なのに…?いったい何─」

 

ビシャーン!

 

「どわあああっ!?」

遊馬が自分の起こした現象に戸惑うさなか…突然、遊馬に向けて稲妻が襲い掛かった!

 

 

 

「こ、今度はなんだってんだ─!?」

 

【…ツクモ・ユウマ…だな?】

 

「な、なんだお前は!?」

遊馬に襲い掛かった稲妻の正体…それは光の化身のような人影だった…!

 

【お前は…()()()()()()()()()()()()、排除する…!】

《ガルルル…!!》

 

「お、おい…!?ちょっと待てよ!?オレは…!」

光の化身は遊馬に対して強い「敵意」を見せ、無数の獰猛なジャッカルを呼び出した!

 

《ガルルル…!ワォーン!!》

 

「オレは戦いに来たんじゃないんだって─!?」

遠吠えと共に無数のジャッカルが遊馬へと襲い掛かる!

 

 

キィン─!

 

【なにっ?貴様は…!】

 

『遊馬!一旦引け!』

 

「ゆ、遊海!?」

ジャッカルが遊馬に襲い掛かる瞬間、カルトゥーシュが輝き…遊海の幻影が現れる!

 

 

 

『俺はカルトゥーシュの思念体だ…少しでも時間を稼ぐ…今は逃げろ!』

 

「わ、わかった!」

遊海の思念に庇われた遊馬は海に向かって走り出した!

 

 

【逃さぬ…!】

 

『それは俺のセリフだ!疑似宝具展開…妄想幻像(ザバーニーヤ)!』

 

《がうっ!?》

光の化身を足止めする為に遊海の幻影は無数に分身し、立ち塞がる!

 

【くだらぬ…!残留思念如きが私を阻めると思うな!!】

 

『っ─!?そりゃ、そうだよ、な…!』

無数の分身にジャッカル達は立ち竦んだが…光の化身の電撃によって全て薙ぎ払われてしまった…。

 

 

()()()()…何故、幽閉しているはずのお前がいるかは知らん…だが、邪魔立ては許さぬ】

 

『シー、カー…?だれ、だ…よ…──』

光の化身は遊海の幻影を誰かと勘違いする…幻影の消滅を確かめた光の化身はその身を光に変え、遊馬を追った…!

 

 

 

《クリボート!クリクリ〜!!》

 

「くっそぉ…!Ⅴの言ってた通りだ…!アストラル世界はオレを歓迎してくれてねぇ…!」

虹クリボーの変身した船で海へと逃げた遊馬はⅤの言葉を思い出していた…。

 

 

「とにかく、あの光ってる奴から逃げッ─!?追い付いて来た!?」

 

【………!】

船の前に10m程の巨人となった光の化身が現れる!

 

「面舵いっぱい─!!ゲッ…囲まれてる─!?」

すぐに逃げようとする遊馬だったが…光の化身は分身し、遊馬を取り囲む!!

 

 

【【【───!!】】】

 

「まずっ…!?」

 

《クリボール!!》

遊馬を捕える為に手を伸ばす光の化身…だが、間一髪で虹クリボーが潜水形態となり、水中に逃れる!

 

 

「す、すごいぜ!虹クリボー!…って、また─!?」

 

【──!!】

一息ついたのも束の間…追ってきた光の化身が髪らしき光の束を伸ばし、クリボールを壊してしまう!

 

 

「ごぼぼ─!?」

 

《クリ…ボーガイ!!》

 

【むっ─!?】

再び遊馬に襲い掛かる光の化身…だが、虹クリボーが吐き出した蛸墨ならぬクリボー墨で遊馬達を見失ったのだった…。

 

 

 

…………

 

 

 

「ぷはっ…!?た、助かった……」

 

《クリクリ〜》

なんとか追手から逃れた遊馬は虹クリボーによって海底洞窟へと導かれた…。

 

 

「なぁ、虹クリボー…アストラルの居場所を、知らないか…?知ってるなら教えてくれ…!」

息を整えた遊馬は虹クリボーに問いかける、虹クリボーは父からの使いだと信じていたからだ…。

 

《……クリトーエイ!》

遊馬の言葉を聞いた虹クリボーは目から光を放つ…その光は空中に投影され、ある人物を映し出した!

 

 

─久しぶりだな、遊馬─

 

「と、父ちゃん!!やっぱりアストラル世界にいたのか…!!」

投影されたのは遊馬の父・九十九一馬の姿だった…父の姿を見た遊馬は思わず映像に走り寄る…。

 

 

─遊馬、お前の事だ…コレを見たら感極まって泣き言の1つや2つも言っているだろう…だが、これは虹クリボーに託した『映像』だ…今は時間が惜しい、私の話をしている暇はない─

 

「父ちゃん…」

一馬の映像は遊馬の様子を言い当てながら話を続ける。

 

 

─遊馬、一刻も早くアストラルを救え…アストラルはこの世界にとっての「悪」…『カオス』と判断された、彼はもうすぐ…その存在を消されるだろう─

 

「なんだって!?」

 

─虹クリボーがアストラルの居場所を教えてくれる…遊馬、アストラルを救えるのは…お前だけだ…!かっとビングだぞ、遊馬…!─

 

「父ちゃん!!」

優しい笑顔を浮かべながら一馬の映像はそこで終わった…。

 

 

「……アストラルを消させてたまるか…!虹クリボー!頼む!!」

 

《クリクリ─!!》

父の言葉を聞いた遊馬はアストラルを救う為に走り出した…。

 

 

 

 

「うおおおっ!!頼むぜ『ゴブリンドバーグ』!アストラルの所へ─!!」

 

《クリー!》

遊馬は喚び出したゴブリンドバーグに掴まってアストラル世界の空を翔け抜ける…虹クリボーはアストラル世界の中心へと向かっているようだった…。

 

 

《クエエーッ!!》

 

「っ─!?またかよ!?」

しかし、中心へ向かうのは簡単な事ではない…無数のハヤブサ型のモンスターが遊馬に襲いかかり…ゴブリンドバーグと共に墜落してしまう!

 

 

「うわあああっ!?」

 

《クリクリ!!》

 

「あっだぁ!?」

地面に叩きつけられる寸前、虹クリボーがクッションとなるが…遊馬は強かに腰を強打する…。

 

 

【………】

 

「ぐっ…またお前かよ!?しつこいぞ!!」

 

【お前はこの世界に存在してはならぬ者…!】

痛みで腰をさする遊馬の前に光の化身が現れる…!

 

 

「な、なんなんだよ!さっきから…!オレはアストラルを助けに──」

 

【問答無用!!】

 

「うおあああああ─!?」

なんとか光の化身の説得を試みる遊馬…だが、光の化身は耳を貸さず…再び稲妻を放ちながら遊馬へと襲い掛かる!!

 

「じ、冗談じゃねぇ!!オレは絶対にアストラルを助け─!!」

 

ビシャーン! ガラガラガラ!!

 

 

「しまっ…!?うわあああああ!?」

必死に稲妻を避ける遊馬だったが…稲妻によって走っていた橋が崩落…底の見えぬ穴へと落ちてしまった…。

 

 

 

 

 

『この子が…彼の言っていた「正しきカオス」を持つ者…アストラル世界を救う勇者…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぅ…オレは…」

 

《クリクリ…》

 

「虹クリボー……ここは…?」

気絶していた遊馬は意識を取り戻す…目覚めた場所は綺麗なステンドグラスがある『教会』のような場所だった

 

 

『ここならば…少しの間、追手から逃れる事ができます』

 

「えっ…アンタは…?」

教会に優しげな女性の声が響く、すると遊馬の前に光の玉が現れ…長い髪を持つ、アストラルのような青白い肌の女性へと姿を変えた…。

 

 

 

『私はエナ…アストラル世界に生きる者です』

 

「エナ…?じゃあ、アンタがオレを助けてくれたのか…?」

 

『ええ、()()は貴方の事を待っていました…貴方に助けてほしい者達がいるのです…!』

 

「助ける…?わわっ!?」

エナの言葉と共に遊馬の周りに無数の光の玉が現れる、その光はエナと同じアストラル世界の住人達…だが、その体は所々が罅割れてしまっていた…。

 

『皆、この世界の者達です…そして皆「病」を患い、このままではその命の光が輝いている時は…そう長くないでしょう…』

 

「そんな…!?でも、オレに何ができるんだ…?遊海直伝の回復魔法は少し使えるけど…」

 

『いいえ…()()()()()()()、それだけでいいのです』

 

「触れる…?あっ!?」

アストラル世界の病人を前に戸惑う遊馬だったが…エナの言葉で1つの可能性を思い付く、自身が触れて生命力を取り戻した植物のように…彼らも治るのではないかと…。

 

 

『お願いします…!』

 

『……!』

 

「えっと…こう、か…?」

 

キィン─

 

遊馬が人々の中から歩み出た子供の手に優しく触れる…すると暖かな光が子供を包み、罅割れが塞がっていった。

 

 

「これは…!?」

 

『貴方から「カオス」の力を分けてもらったのです』

 

「カオスの力を…?」

『カオス』…それは遊馬にとって馴染みのある言葉だった、アストラルとの絆で生まれた『CNo.』…そしてバリアンの操る力としての『カオス』の事を…。

 

 

『このアストラル世界はあらゆる悪も憎しみも存在しない「潔癖な世界」…遥かな昔アストラル世界にもカオスは存在しました、それが数千年前…カオスをもつ魂を全て追放し、出来たのがバリアン世界…』

 

「待てよ…それじゃあ…!?」

 

『はい…バリアン世界とアストラル世界は元々、1つの世界だったのです』

 

「そんな…!?」

エナから語られたアストラル世界の真実に遊馬は驚愕する、今でこそ敵対する2つの世界…しかし、その根本は同じ世界だったのだ…。

 

 

『…「カオス」という自分の欲望の為に生きる力、それが無くなればアストラル世界はランクアップすると信じてかつてのアストラル世界はカオスを切り捨てました…でも、それは間違いでした…!「カオス」の中には『誰かを護りたい』『誰かの為に生きていきたい』…そう願う心も含まれていたのです…!』

 

「それって…」

エナの言葉に遊馬は思い当たる事があった、かつて…出会ったばかりのアストラルは記憶を失っていた事もあるが、どこか『堅い』性格だった…。

…だが、遊馬と共に過ごし…記憶を取り戻すにつれ、遊馬に似た友を想う優しい性格へと変わっていった…それは遊馬と過ごす中で『カオス』に触れていたからだったのだ。

 

 

『それこそが生きる力であり、原始的な()()()()だった……でも、それを失ってしまった為にアストラル世界の力は弱まってしまったのです…』

 

「それじゃあ、あの廃墟はそのせいで…」

遊馬がアストラル世界に来て最初に目にした廃墟…それはアストラル世界が衰退した結果だった…。

 

 

「でも…だったら、みんなで力を合わせてなんとかすればよかったんじゃないのか…?」

 

『それができなかったのです…アストラル世界はカオスを追放し、ただ「ランクアップ」を目指す存在…アストラル世界の「管理者」エリファスを作ってしまった…!』

 

「エリファス…?」

 

『貴方を追っている「光の化身」…それがエリファスです、彼はこの世界の象徴…ランクアップを目指す機械のような者なのです』

遊馬を追っていた追跡者…それはアストラル世界の「カオス」を排除する事に「固執」した管理者だった…。

 

 

 

「エリファスっていうのを自分達で作って…それで追い詰められて…!なんとかならないのかよ…!!」

 

『私達もかつてはエリファスをなんとか説得しようとしました…しかし、彼は耳を貸す事はなかった…!』

 

『エナ、そこからは…私が語りましょう』

 

「えっ…?」

教会に威厳のある男の声が響く…それと共に教会のステンドグラスの前に一様に白いローブを纏った4人の男達が現れた。

 

 

『あなたを待っていました、アストラル世界を救う「勇者」よ…我が名はアクル、かつてエリファスに戦いを挑んだ者です』

 

『…彼らは「五命星」、エリファスを説得し…アストラル世界を良い世界にしようと導いてくれる…私達のリーダーなのです…』

 

「アストラル世界の、リーダー…」

右目にモノクルを掛けた男が遊馬に語り掛ける…それを補足するようにエナが彼らの事を説明した…。

 

 

「エリファスに戦いを挑んだって…どうやって…?」

 

『我らがエリファスに立ち向かい、「五命星」を名乗ったのは…数十年前、ある1人の「英雄」がこの世界に流れついた時まで遡ります…』

 

「英雄…?」

そしてアクルは語り始めた…かつて、アストラル世界に起きた希望の戦いを…。

 

 

 

『「カオス」を失い、弱っていくアストラル世界…そんな時にある男がアストラル世界に流れ着き、エナが彼を助けました…その「彼」は記憶を失い、自分が何者だったのかもわからないのに…その身に強い「カオス」を宿していました……本当ならばアストラル世界に来るはずではない者…でも、彼は危機に瀕した我らにカオスを分け与え…助けてくれた…』

 

「アストラル世界に来た…カオスを持つ男…」

 

『彼は今の貴方のようにアストラル世界の窮状を聞き、エリファスに立ち向かう為の仲間を集った…そして、エナに私…そして私の後ろにいるガクル・パリダ・デクルと共に王宮へと乗り込み、神聖なる「決闘」をエリファスに申し込んだ……しかし、エリファスは強かった…!!』

 

 

 

 

数十年前……

 

 

 

 

「ぐああああっ─!?」

 

『『『『シーカー!!』』』』

 

シーカーLP0

 

エリファス WIN

 

王宮に悲痛な叫びが木霊する…アストラル世界を救う為にエリファスに立ち向かった『英雄』シーカー…だが、エリファスは強く…彼は返り討ちになってしまった…。

 

 

 

【その程度か?英雄と呼ばれし「カオスの罪人」よ…やはり、アストラル世界には「カオス」は不要なのだ…】

 

「く、そ…!」

冷徹に致命傷を負ったシーカーを見下すエリファス…地に伏せた英雄は言い返す事もできなかった…。

 

 

 

『やめるのですエリファス!何故わかってくれないのです!!これ以上「カオス」を排斥し続ければこの世界は滅びてしまう!!それは貴方も分かっているでしょう!?』

右目にモノクルを掛けた男…アクルがエリファスに叫ぶ、だが…エリファスは耳を貸す事はない…。

 

 

【私はこの世界の理想を求める者…ならば滅びる前にさらなるランクアップを遂げ…忌まわしきバリアン世界を滅ぼすのみ…】

 

『その考えは破綻している!ランクアップすればこの世界の力は…貴方の力は確かに増すだろう!だが、他の住民達はどうなる!?我らはもう…限界だ!』

アクルの言葉を支持するように赤いサングラスを掛けた青年・パリダが声を荒らげる。

 

 

【限界…?何をいう!お前達がさらなるランクアップを望んだからこそ、私はこうして存在している!その言葉は私にではなく、この世界への叛逆となる!罰を受けるがいい!!】

 

『っ…!!』

エリファスはエネルギーを溜め、裁きの稲妻を放つ!

 

 

 

「させ、るかぁぁ!!ガッ──!?」

 

『『『シーカー!?』』』

放たれた稲妻を満身創痍のシーカーが受ける…倒れ伏した彼に仲間達が駆け寄る…。

 

 

 

【しぶとい男だ…その身に宿る『カオス』がさせるのか?お前達はこの世界に相応しくない者達だ…このまま消えるがいい…】

再びエリファスがエネルギーを溜める…!

 

「っ…取引をしようエリファス、こいつらを扇動したのはオレだ…オレが全ての元凶だ…!オレを殺せ…!その代わり、こいつらを見逃してくれ…!!」

 

『シーカー!?何を言うのだ!!我らはお前に希望をみた!だからこそ…』

 

「…オレは、お前達を守りたい…だから、何も言わないでくれ…!」

シーカーは逆立った髪の青年・ガクルを退け、エリファスと相対する…。

 

 

【…その身に全ての責を背負うか…確かに、お前が全ての元凶…そしてそのお前を招いてしまった私にも責任の一端はある……いいだろう、その提案を受け入れよう】

 

「…感謝する」

シーカーは腕を広げ、目を閉じる…。

 

【ただし、お前にはただ死ぬより辛い目にあってもらう…それがお前への罰だ、大罪人シーカー…私と共に来てもらうぞ】

 

シュイ…ガシャン!!

 

「ぐっ…!?」

シーカーを光の帯が拘束する!!

 

『シーカー!!』

 

仮面を着けた男・デクルが囚われたシーカーへと手を伸ばす…だが、その手は届かない…。

 

 

「っ…我が同志よ、人々を頼む…必ず…『希望』は訪れる…!諦めるな─!!」

そう言い残してシーカーは人型を失い、光の玉となってエリファスの手に収まる…。

 

【…『希望』か、この世界が希望そのものだというのに何を言うか、さらばだ『五命星』…いや、『四命星』よ…次はないぞ】

エリファスはそう言ってアクル達を王宮から追い出した…。

 

 

 

 

「(すまない、同志達…名も知らぬ『君』…だが、オレは諦めない……たとえ、どんな責め苦に遭おうと…『希望』を捨ては…しない…!)」

遠のく意識の中、シーカーは希望を捨てる事はなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

『我らを庇い、シーカーはエリファスに囚われてしまった…私達アストラル世界の民ははそれ以後王宮に入る事もできず…日々を細々と生きるしかなかった…!!』

 

「アクル…」

悔しげにローブを握り締めるアクル…その様子を見た遊馬はシーカーという『英雄』がどれほど頼りされていたのかを感じ取った…。

 

 

『遊馬…今がアストラル世界を変える最後のチャンスなのです…!あなたに世界を背負って欲しいとは言いません……ですが、あなたの持つ正しい「カオス」の力をエリファスにぶつけてほしいのです!!』

 

「アクル…オレはアストラルを助ける為にアストラル世界に来たんだ…でも、みんなの話を聞いてわかった…!!オレはアストラルを救うだけじゃない…この世界だって変えてやる!!」

 

『遊馬…感謝します…!』

遊馬は胸に手を当て、アクルやエナに宣言した…この世界を救うと…!

 

 

「まずは…できる事からだな!みんなで手を繋いで輪になってくれ!オレの『カオス』を分けてやる!!」

 

《クリクリ〜!》

決意を固めた遊馬の周りを虹クリボーは嬉しそうに舞い飛んだのだった…。

 



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蘇る記憶─その王の名は…─

こんにちは!S,Kです!

遊馬がアストラル世界を救う為に奮闘する頃…1人の男に決断の刻が訪れる…。


『……本気で言っているのか、ドルベ』

 

『ああ、間違いない』

バリアン世界の城…そこには深刻げな表情で話し合うミザエルとドルベの姿があった。

 

 

『私はナッシュとメラグ、そして私の記憶が封印された遺跡を何度も訪れた…そして、少しずつ思い出したのだ…バリアンとなる前の自分の事を…!たしかに、我らは()()だった…!』

アストラル消失後、バリアン七皇は様子見と来たる決戦に備え人間界への侵攻を止めていた…そんな中、ドルベは自身に縁のある2つの遺跡に赴く事で…自身の前世である『天馬の英雄』であった記憶を思い出していたのだ。

 

『そんな…!では、あの遺跡で垣間見た記憶は…真実だというのか!?』

ミザエルはドルベの言葉を聞き動揺する、ドルベの言葉が真実ならば…自身の前世が『龍の神殿』で見た『龍の英雄』だったと言う事になるからだ…。

 

 

『我々は死後、バリアンとして蘇った…そして遺跡の伝説が我々の記憶だと言うなら…ナッシュとメラグは───』

 

『ま、まさか!?』

ドルベが口にした可能性を聞いたミザエルは驚愕する、彼らが探していた最後の同胞…彼らは思わぬ場所にいたのだから…。

 

 

『私は…彼を取り戻す…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォウ…フォウフォーウ♪》

 

「ははっ…嬉しそうだなフォウ…寂しい思いをさせてごめんな〜」

 

《フォウ!》

 

「遊海さん、1番寂しい思いをした人を忘れてませんか〜?」

 

「忘れてないよ…今回は本当にすまない…」

 

「ふふっ、冗談ですよ!とにかく今は英気を養いましょう!」

 

遊馬がアストラル世界に向かって一日が過ぎた…退院した遊海は自宅に戻り、迫る戦いを前に少しでも備える為に休んでいた…。

 

 

 

「ウィンダ…凌牙の様子はどうだ?ちゃんと食べてたか?」

 

《…うん、璃緒ちゃんが入院してから朝一番に出ていって…夜遅くに帰って来たけど…ちゃんと食べてたよ》

 

「そうか…なら、よかった」

遊海は留守を任せていたウィンダに凌牙の様子を訊ねる…遊海が目覚めた後、凌牙は再び璃緒に付きっきりになっていた…。

 

 

「今日は…凌牙君の好きなカレーにしましょう!遊海さんの退院祝いも兼ねて!」

 

「そうしよう!なら…凌牙にも連絡を取らないと──」

普段通りの日常を過ごそうとする遊海達…だが…。

 

 

 

《………マスター、()()()()()()()を感知しました……ハートランド病院に……》

 

「っ──!?」

 

「…そう、か…」

警戒を強めていたアヤカのレーダーがバリアンの出現を感知する、それは平和な日常の…終わりの始まりを示していた…。

 

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

「…璃緒、俺達は…あの時の事故で本当に命を落としたのか?」

夕暮れのハートランド病院…璃緒の病室で凌牙は自身の抱く悩みを吐き出す…。

クラゲ怪人が残した「神代一家は全員死んだ」という言葉が凌牙の心に新たに影を落としていた…。

 

 

「だが…俺とお前は今『此処』にいる……なら、なんで遺跡の伝説で見た『紋章』が俺達の家にあったんだ?……わからねぇ……俺が、何をするべきなのか…!!」

凌牙の脳裏に過ぎるのは2つの記憶…。

 

海洋国家の王として暴虐のかぎりを尽くすベクター王と戦った「過去」の記憶。

 

神代家に生まれ、璃緒と共に事故に遭い…遊海達と過ごした「現在」の記憶。

 

頭の中で混ざり合う2つの記憶…その謎は今の凌牙には解く事ができなかった…。

 

 

……

 

 

「いったい、どうなってやが……お前は!?」

考え込んでいた凌牙は…病室に第三者がいる事に気付く、医者でも看護師でもない……銀髪に眼鏡を掛けたその少年は…!

 

 

「ドルベ!?なんでバリアンがこんな所に…!!」

音もなく現れたバリアンの戦士・ドルベ…彼は凌牙に真実を突きつける…!

 

 

『凌牙…いや、()()()()!!君の目覚めの時だ…!!』

 

「貴様…何を、言って…!」

 

『君の記憶を取り戻してくれ…!君の中にはナッシュの「記憶」が眠っている!私にとって、君は「神代凌牙」じゃない…バリアン七皇のリーダー「ナッシュ」なのだ!!』

 

キィン─…

 

「っ!?」

ドルベはそう言いながら手にしていた「バリアンの紋章」を凌牙へと掲げる…放たれた赤紫の光は病室を包み込んだ…。

 

 

………

 

 

「ここは…!?」

 

『そう…君とメラグの記憶が眠っていた遺跡だ…』

凌牙が気付いた時、彼らは第6の遺跡『海底迷宮』へと瞬間移動していた…背後にはバリアン体となったドルベ、そしてその腕に抱き抱えられた璃緒の姿があった。

 

『そして…このネックレスはバリアン七皇のリーダーであるナッシュの物だ、もしもこれが君の物ならば…必ず「真実」を見せるはずだ…!』

璃緒を優しく寝かせたドルベが再びバリアンの紋章を掲げる…それは失踪する前のナッシュがバリアン世界に遺した物だった。

 

 

『さぁ…!思い出してくれ、ナッシュ!!』

 

「真実…俺の、記憶…」

 

『何故、君とメラグが人間界にいたのかはわからない…だが、我々には君の力が必要なんだ…だから!自分の目で確かめてほしい…!!』

 

「……わかった」

凌牙はドルベからバリアンの紋章を受け取る、そして凌牙の意識は再び記憶の世界へと誘われた…。

 

 

 

 

@記憶の世界

 

 

 

「ここは、あの時の…!?」

気付いた時、凌牙は再び記憶の世界にいた…目の前には璃緒を捕らえた「激瀧神」、そして邪悪な笑みを浮かべるベクター王の姿がある…!

 

 

『お兄様、私の魂が…アビスを浄化するわ…』

 

「っ─!?璃緒!りおぉぉぉ!!!」

それは遺跡のデュエルで垣間見た記憶の続き…ベクターとアビスの「血の契約」を浄化する為、聖なる魂を持つ巫女である璃緒は海へと身を投げる…だが、海へと捧げられたその魂は霊界の巫女「極氷姫」として再誕する!

 

 

《お兄様…この世界を導いて…!》

 

「璃緒…!?」

極氷姫となった璃緒が清浄な光を放つ…その光は邪な力に縛られた激瀧神を解き放ち、神は姿を消した。

 

 

【ば、馬鹿な…!神が浄化されただと!?クソ…一時撤退だ!!】

最終兵器を失ったベクターは動揺…ベクター軍は沖へと引き上げていった…。

 

 

 

「璃緒…すまない…!俺の…俺のせいだ!!」

 

『友よ…なんという事だ…!!』

夕暮れの砦は悲しみに包まれていた、ベクター軍が撤退した後、璃緒はすぐさま海から引き上げられた…だが、彼女が息を吹き返す事はなかった。

 

 

『璃緒…璃緒ぉぉ─!!』

 

凌牙の悲しき叫びが戦場に木霊した…。

 

 

 

「(璃緒…俺は、お前を守れなかった…これが、俺達の本当の記憶なのか?)」

 

凌牙はたくさんの花で彩られた祭壇に寝かされた璃緒を見つめながら問いかける…。

 

「(俺の…『神代凌牙』の記憶はあの事故の日に()()()()()()…あの時から、俺の中には『ナッシュ』がいたのか…?………違う…俺は『ナッシュ』…この記憶は確かに()()()()()()だ…ならば……そうなら…!)」

凌牙は自問自答を繰り返す…『神代凌牙』と言う存在はあの日に命を落としていた、そこに『ナッシュ』という存在が入り込み、今の『神代凌牙』となった…。

そして自分の記憶を自覚した凌牙は決意を固めた…それは──

 

 

「俺は、戦う!!」

 

 

記憶の世界であろうとも…璃緒を奪ったベクター王と戦う事を…!

 

 

 

 

「全軍…出撃─!!」

 

「「「うおおお─!!」」」

 

璃緒の弔いを終えた凌牙…否、ナッシュ軍はベクターの船団へと突き進む!!

 

 

【殺れ!奴らを薙ぎ払えぇぇ!!】

 

「ベクター…俺は、貴様を許さねぇ!!例え行き先が()()だろうと…璃緒の仇を討つ!怯むな!奴らを倒せぇぇ!!」

天馬の英雄・ドルベと共にナッシュ軍はベクター軍は激突する…そして璃緒の弔い合戦の為に士気の上がったナッシュ軍はベクター軍を粉砕した…!

 

 

【くっ─!?】

 

「追え!逃がすなぁぁ!!」

不利を悟ったベクターは撤退する…だが、それを許さないナッシュはとある島へと逃げ込んだベクターを追い掛けた…。

 

 

………

 

 

「これは…!?」

 

『惨い事を…逃げた先の街まで滅ぼすとは…!』

 

「ベクター…!!」

ベクター軍を追ったナッシュは目の前の惨状に思わず顔を背ける…ベクター軍は逃亡しながらもその先にあった街を襲撃…略奪と虐殺で罪のない街を滅ぼしていたのだ…。

 

 

「ぐすっ…お父さん…お母さん…!」

 

「あれは…?璃緒…!?いや…生き残りか…!」

 

雨の中、ナッシュ達は壊滅した街を進む…その中でナッシュは瓦礫の中で声を押し殺して泣く少女を見つける、その少女は…幼い頃の璃緒と瓜二つの顔をしていた…。

 

 

 

 

 

「ほら…食べないと体が保たないぞ?」

 

「あっ…」

ナッシュ達は街を抜けた先で夜営地を整える…そこには街で見つけた少女の姿もある。

ナッシュは家族を失った少女を保護したのだ…。

 

 

「名前はなんて言うんだ?」

 

「…イリス…」

 

「イリス…良い名だな」

穏やかな表情でイリスに食事を手渡すナッシュ…その姿を見たイリスはようやく落ち着きを取り戻した…。

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

「璃緒…この子はお前が引き逢わせてくれたのか?それとも…」

眠ったイリスを見守りながらナッシュは夜空を見上げる…空には何条もの流れ星が流れていた…。

 

 

 

………

 

 

 

『ベクターはこの先の谷に陣を構えています!今こそ最終決戦を仕掛ける時です!!』

 

『偉大なる王よ!我らはどんな決断でも従います!』

 

『私達の命…王に捧げます…!』

 

「…………」

ベクター軍との何度にも及ぶ遭遇戦・追撃戦を経てナッシュはついにベクターを追い詰めた…最後の戦いを前にナッシュの側近達の士気は高かった…!

 

 

「……わかった、総攻撃は()()()()()()()…!」

 

『『『ハッ!!』』』

ナッシュは戦いを前に冷静な指示を出す…そこで1度軍議はお開きとなった…。

 

 

 

『迷っているのか?友よ…ベクターは絶対に倒さなければならない…だが、今戦えば味方にも大勢の犠牲が出てしまうだろう…』

ドルベはナッシュに語り掛ける、ナッシュ軍も士気は高いが連戦に次ぐ連戦で疲弊しきっている…戦いでの犠牲は避けられないだろうと…。

 

「少し…1人にしてくれ」

 

 

 

………

 

 

「(この俺が戦う事で仲間が……いや、世界が戦いに巻き込まれて傷付いていく…俺はどうしたら…!)」

ナッシュは夜営地近くの湖で戦いを憂いていた、傷付いていく仲間達…そして世界を想って…その時だった。

 

 

《…凌牙》

 

「璃緒…!?」

ナッシュの…凌牙の前の湖面に半透明の璃緒が現れる、それは長い間眠っていた現実世界の「神代璃緒」だった。

 

 

《これが凌牙と私のもう一つの『過去』…この世界で私は『兄様』を見守る精霊となった、だから…ずっと見てきたの…兄様の人生を…》

水面に映る璃緒の姿は巫女の姿…神に命を捧げた璃緒は凌牙の守護精霊として彼を見守っていたのだ。

 

 

《…だからわかる、お兄様がずっと悩んでいる事も…》

 

「…璃緒…俺は、どうすればいい…?」

 

「凌牙の決断には…いつも『優しさ』がある…けれど、いつも苦しんでいる…」

 

「『憎しみは憎しみしか生まない』…そう教えてくれた人がいた…」

 

《遊馬…それに遊海さんも翠さんも……私達にそれを教えてくれた…》

 

璃緒の助言で凌牙は今までの人生を思い返す…トロンの策略で璃緒を傷付けられ、さらにデュエリストとしてのプライドを砕かれ…一度はやさぐれてしまった凌牙…だが、遊海はそんな凌牙を見捨てる事なく見守り続け…遊馬は心の闇を打ち払い、凌牙を闇から救い上げた。

…そんな彼らの姿を見た凌牙はベクターに対して怒りこそあっても『憎しみ』を抱いてはいなかった…。

 

 

 

「…だが、此処で起きている事も確かに『俺の記憶』だ…ドルベが言った通り、俺達兄妹には2()()()()()があった…」

 

《…きっと、お兄様は『選ばれた人間』だった…お兄様はこの世界の運命を決めた人、今はその運命を見つめるべきだわ……私はいつでも傍にいる…》

 

『璃緒…だが、これが俺の運命なら…!俺は俺なりに抗ってみせる!!』

璃緒の言葉によって凌牙は迷いを振り払う、見上げた夜空には『北斗七星』が輝いていた…。

 

 

 

………

 

 

『ど、ドルベ様!王が馬と共に消えてしまいました!!』

 

『な、なんだと─!?』

翌朝、ナッシュ軍の陣に王の姿は無かった…その理由は───

 

 

 

「いくぜ…!ベクタァァァ!!」

 

《オオオォォ─!!》

 

かけがえのない部下を…仲間を守る為、「激瀧神」を従えた凌牙は単騎でベクター軍へと強襲を仕掛けたのだ…!

 

 

「うおおおっ─!!」

 

《オオオオ!!》

 

『な、なんて強さだ─!?』

 

ナッシュはベクター軍の兵士を…激瀧神は数多のモンスター達を蹂躪する…そして…!

 

 

「あれは…アビスと戦った迷宮!?」

ベクター軍を乗り越えた先…そこには地上にあった頃の『海底迷宮』が佇んでいたのだ。

 

「ベクターは彼処か…!俺とキサマにここまで因縁があったとはな…!!」

凌牙は躊躇なく、迷宮へと踏み込んだ…。

 

 

 

「ベクター!!これ以上、多くの人々を巻き込むな!!俺とキサマ…サシで勝負だ!!」

 

迷宮へと踏み込んだ凌牙は迷宮に潜むベクターへと決戦を申し込む…!

 

 

【面白い…!その勝負を受けようじゃないか!!さぁ…来るがいい!!】

 

「っ…!」

迷宮にベクターの声が響く…それと共に迷宮が()()、決戦の舞台への道を指し示した…。

 

 

 

 

 

【よぉぉうこそ!ナッシュぅぅ…!ここまで一人でやって来るとはなぁ…!】

 

「ベクター…!!」

凌牙が…ナッシュが導かれたのはアビスと戦った祭壇の地下……そこはさながら闇の神殿とも言える場所だった。

 

 

【さぁて…お前の提案を受けたからには…対決方法はオレが決めさせてもらうぜぇ…!】

 

「なに?」

 

【決戦の方法は…「闇のゲーム」…!デュエルモンスターズだ!!】

ベクターが決戦の方法を叫ぶ…それと共にそれぞれ5枚の石版がベクターとナッシュの前に落下してくる…!

 

 

「(父さんから聞いた事がある…デュエルモンスターズの起源は古代エジプトの『決闘』…石版を使ったデュエルだったって…!)この俺にデュエルを挑んだ事…後悔させてやる!!」

 

【ハハハ…!いくぞぉ!!】

ナッシュとベクター…2人の古代王が激突する!!

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

 

 

決闘ダイジェスト ナッシュ王対ベクター王

 

 

 

【先攻はオレだ!オレは『ゴルゴニック・グール』を召喚!】

ベクターの場に蛇の意匠を持つゴーレムが現れる!

 

【さらに!手札からもう1体の「ゴルゴニックグール」を特殊召喚!このモンスターは自分の場に「ゴルゴニックグール」がいる時、ライフを300払って特殊召喚できる!さらに手札から300ライフを払って3体目を特殊召喚!】

ベクターの場に3体のモンスターが並ぶ…!

 

【そして魔法発動!『現状からの脱皮』!自分フィールドに同じレベルのモンスターが3体いる時!相手のデッキから同じレベルのモンスター1体をオレの場に特殊召喚する!オレは…ヒヒッ…!お前のデッキから「マーメイドシャーク」を特殊召喚!】

 

「俺のデッキからだと!?」

ベクターはナッシュのデッキの幻影から鼻先が女性のようになった鮫を選び、奪い取った…!

 

 

【オレは石版を2枚伏せ…ターンエンド!】

 

「一気にモンスターを揃えたつもりか…だが!そんなモンは一掃してやる!!」

 

 

 

「俺のターン!『スピア・シャーク』を召喚!!」

ナッシュは槍の鼻先を持つ鮫を呼び出す!

 

「そして自分の場に水属性モンスターがいる時!『サイレント・アングラー』は特殊召喚できる!さらにもう1体を特殊召喚!!」

さらに巨大な口を持つ2体のアンコウが現れる!

 

 

「いけ!『スピアシャーク』!『ゴルゴニックグール』を攻撃!」

 

【掛かったな…!永続罠『ゴルゴニック・テンプテーション』発動!!】

攻撃を仕掛けるナッシュ…だが、ベクターはその攻撃を狙っていた…!

 

 

【自分の場に『ゴルゴニック』モンスターがいる時!相手の攻撃対象を変更できる!攻撃対象を『マーメイドシャーク』に変更する!】

 

「そんな罠カードは意味ねぇ!!『スピアシャーク』の攻撃力が上だ!!」

 

【クククッ…!お前は()()()()()()の意味が分かってないらしいなぁ…!コレを見るがいい!】1116

 

ギィン─!

 

ベクターが狂気の笑みを浮かべる…それと共にベクターの背後にあった不気味な『紋章』が光を放った…。

 

 

 

 

『行け!王を救うのだ!!全軍突撃─!!』

 

『『『うおおおっ!!!』』』

 

 

「こ、これは…!?全面戦争が始まっているだと!?」

ナッシュが気付いた時、そこは迷宮上空だった…眼下ではベクター軍とナッシュ軍の全面戦争が始まってしまっていた…!

 

 

【言ったはずだぜぇ?これは『闇のゲーム』だと!!今のオレ達はゲームマスター()…このデュエルが奴らの運命を決めるのさ!!その引き金を引いたのは…お前だ─!!】

 

「っ─!?」

ベクターはナッシュを嘲笑う…そして破滅へのカウントダウンは始まってしまった…。

 

 

 

 

【ぐううッ…!!だが、この程度の痛み…キサマの心の痛みほどではない…!!】

 

「き、貴様ああああ!!」

スピアシャークがマーメイドシャークを破壊し、ベクターは大ダメージを受ける…だが、ベクターは笑みを崩さない…!

 

 

「ベクター!!何故、俺達の戦いに他の奴らを巻き込む!!」

 

【決まってるだろぅ?それがお前の『弱点』だからさ…お前の心に宿る優しさと正義こそがなぁ!!オレはお前が藻掻き苦しむ姿をた〜っぷり拝みたいのよぉ!!ぎゃはははははは!!】

 

「べ、ベクタァァァ!!」

ベクターは嗤う…ナッシュの苦しむ姿を目に焼き付けるように…!

 

 

【罠発動!「陰謀の大災害」!自分フィールドにいる元々の持ち主が相手のモンスターが戦闘で破壊され、1000以上のダメージを受けた時!破壊されたモンスター以上の攻撃力を持つ、相手のデッキのモンスターを全て破壊する!!】

 

「なにっ!?」

それは海馬社長が愛用していた「ウィルスカード」以上に害悪なデッキ破壊カード…ベクターの石版から放たれた竜巻がナッシュのデッキのほとんどを粉々に砕いてしまったのだ…!

 

 

「オレの、デッキのモンスターが…!?くっ…石版を1枚伏せ、ターンエンドだ!!」

為す術もないナッシュはそのままターンを終えるしかなかった。

 

 

 

【ぎゃはははははは!!こっからが本番だぜ!オレは「ゴルゴニック・ケルベロス」を召喚!このモンスターが召喚された時!フィールドの「ゴルゴニック」モンスターのレベルを全て3にできる!行くぜぇぇ…!オレはレベル3の「ケルベロス」と「グール」、そして「グール」2体でエクシーズ召喚!現れろ!2体の「ゴルゴニック・ガーディアン」!!】

 

「っ…!!」

ベクターの場に実際の戦場でもナッシュ軍を苦しめた魔物が現れる!

 

 

【じっくりいたぶってやるよぉ!!2体の「ガーディアン」でダイレクトアタックだ!!】

 

「ぐっ…ぐあああああっ…!?」

魔物の一撃が容赦なくナッシュを打ち据え、ライフを削る…それはナッシュ軍も甚大なダメージを受ける事を意味していた…!

 

 

【ギヒャヒャヒャ!!これでお前も…お前の軍も!もうすぐ全滅だあああ!ハハハハハハ!!】

ベクターは満身創痍のナッシュを嘲笑う…だが、ナッシュの闘志は…まだ燃え尽きてはいない!

 

 

 

「まだだ…!たとえ、肉体が滅びようとも…神に捧げた魂は…蘇る!!」

 

 

【っ…!?】

剣を支えに立ち上がるナッシュ…その圧倒的な覇気にベクターは圧倒される!

 

 

 

 

「俺のターン!墓地の「ゲイザー・シャーク」2体の効果発動!コイツは墓地に存在する時、エクシーズ召喚の素材にできる!俺は墓地の「ゲイザーシャーク」2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

【なっ!?墓地からエクシーズ召喚だとぉぉ!?】

深淵に眠りし2体の鮫が…海を支配する神を呼び覚ます!

 

73

 

 

「神よ…降臨しろ!!『激瀧神アビス・スプラッシュ』!!」

 

【こ、この状況から「全能の神」を喚び出しただと!?】

ナッシュの場に顕現した神を前にベクターは狼狽する。

 

 

 

「『アビススプラッシュ』の効果発動!エクシーズ素材を1つ使い!バトルの間、攻撃力を2倍にする!!いけ!『アビススプラッシュ』!『ゴルゴニックガーディアン』を攻撃─!!」

 

【さ、させるか!!『ゴルゴニックガーディアン』の効果発動!エクシーズ素材を1つ使い!相手モンスターの効果を無効にし、攻撃力を0に───】

 

「逃がすか!!罠カード発動!『オーバーレイ・ウェッジ』!!フィールドのモンスターがエクシーズ素材を使う効果を発動した時!その効果を無効にする!さらに!このターンの間、フィールドで1番ランクの高いエクシーズモンスター以外はエクシーズ素材を使う効果を発動できなくなる!!」

 

【なにぃぃ!?】

ベクターの悪あがきを封じる為にナッシュは無数の矢を放つ…それにより魔物のORUはただの石と化して地面に転がった。

 

 

「貴様の負けだ!ベクター!!『アビススプラッシュ』!ファイナル・フォール!!」

 

【ば、馬鹿な…!?だが!お前も…()()()()を目に焼き付けるがいい─!!ぐわああああああ!!!】

 

神罰の稲妻が魔物に直撃…ベクターに最大威力の爆発が襲い掛かる。

…だが、それでもベクターは嗤っていた…この後に苦しむ事になるナッシュの表情を想像しながら…。

 

 

 

 

ベクター王 LP0

 

 

ナッシュ王 WIN!

 

 

 

 

 

「…ベクター……勝てた、のか…ぐっ…」

闇のゲームが終結し、ナッシュは膝をつく…ベクターの姿はない…消し飛んだのか、逃げたのかは分からなかったが…ナッシュには確かめなければならない事があった…。

 

 

 

 

 

 

「これ、は…!?」

満身創痍の体を引きずりながら迷宮を脱出したナッシュ…彼が目にしたのは、大地を覆い尽くすベクター軍、そしてナッシュ軍の仲間達の亡骸だった。

…闇のゲームの影響で彼らの命は失われてしまったのだ…。

 

「みんな……そんな…!あれは…!?」

ナッシュはふらふらと戦場を進む…剛力無双の将軍がいた…優秀な軍師がいた…次代を担う若き戦士がいた…だが、彼らはもういない……そして、彼らの亡骸を越えた先にナッシュは信じられないものを見た…。

 

 

「い、イリス…!そんな…何故、お前まで!!」

 

兵士達の亡骸に隠れるように…イリスは倒れていた。

ナッシュが姿を消した事を知り、ナッシュを追いかけてきた彼女も…戦火に巻き込まれていたのだ…。

 

 

「俺は…お前を守ってやれなかった…!いや…俺が、俺が、お前達の命を…奪ったんだ…!!ああ…あ"あ"あ"あ"あ"あ"─!!!」

イリスの亡骸を抱えたナッシュは慟哭する…嘆きの叫びが黄昏の空へと吸い込まれていく…。

 

 

キィン─…

 

 

「こ、これは……」

ナッシュの嘆きが響く中…戦場に光が降りそそぐ、それは魂を導く光…照らされた仲間達の亡骸は赤い光の粒子となって、空へと昇っていく…。

 

 

『皆の魂が往く…バリアン世界へ…』

 

「お兄様…」

 

「璃緒…ドルベ…」

悲しみに暮れるナッシュ…凌牙の後ろに璃緒、そしてドルベが現れる。

 

 

「そうだ…思い出したよ…これが、本当の俺の人生…」

 

「…私も、思い出したわ…本当の記憶を…」

 

『今…わかったよ…なぜ、君が「バリアンのリーダー」として転生したのか……元々小さかったバリアン世界…それをベクターと君の戦いに巻き込まれた魂が成長させたのだ…』

 

「俺が、バリアン世界を…?」

ドルベが納得したように呟く、バリアン世界のリーダーたるナッシュ…彼がリーダーとして選ばれたのは、この戦いによる物だったのだ。

 

 

 

「俺が、バリアン……こんな皮肉な運命があるのか…!?遊馬!アストラル!カイト!……父さん……お前達が戦うべき相手が…この俺だったなんて!!」

真実を知った凌牙は絶望する…人間界で確かな絆を紡いだ勇士と英雄達、彼らに立ち塞がるバリアン…それは自分自身だったのだ…。

 

 

 

 

「俺には、できない…!あいつらとの絆を断ち切る事なんて!!」

 

「お兄様…」

 

『…会いに行こう…我らの、()()()()()に…そこには君の失くした全てがある…』

『神代凌牙』として繋いだ絆と『ナッシュ』として失った仲間との間で揺れる凌牙…彼に決心をつけさせる為、ドルベは彼らを導いた…。

 

 

 

………

 

 

 

「ここは…」

 

『ここが、バリアン世界だ』

凌牙が気付いた時、そこは赤紫色の空が広がる異世界…バリアン世界だった。

 

 

『2人とも、後ろをふり返ってくれ…みんな、君の帰りを待っていたんだ』

ドルベの優しい声と共に無数の光の玉…魂が現れる、その魂達は姿を変え…。

 

 

『王様…!』

 

『おかえりなさい!我が王よ!!』

 

「おうさま!」

 

「お、お前達…!!」

魂の正体はナッシュの仲間達…そしてイリスだった、死してなお、ナッシュを王と慕い…彼の帰還を待ち望んでいたのだ。

 

 

『バリアン世界は我らの魂を繋ぐ奇跡の空間……アストラル世界とバリアン世界の戦いは…どちらかが滅びるまで続くだろう、このままでは…かつての惨劇が繰り返されてしまう…!』

 

「あの時と、同じ…」

 

『君だけが…この戦いを終わらせる事ができる!』

 

「この世界を護るのが…俺の使命…」

 

『そうだ……例え、それが君と遊馬達の絆を断ち切る事になっても…!』

凌牙の魂に突き刺さるのは過去の『悲しみ』…心を縛るのは現在の『仲間』……その時、凌牙の中で…何かが()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺なりのケジメをつけるのが…()()()()…」



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決闘(デュエル)

『入院しているはずの神代璃緒と神代凌牙が揃って姿を消した……遊海、お前…オレに何か隠し事をしているのではあるまいな?』

 

「…すまない、今は…言えない」

 

『遊海!!』

日が落ちた白波家に瀬人の苛ついた声が響く…数時間前、璃緒の入院する病院から璃緒と凌牙が失踪したとの連絡が入ったのだ…。

 

 

『…お前が口を噤むとはな…!まぁいい…2人から連絡があったなら、必ずオレにも連絡を寄越せ!わかったな!?』

 

「わかった…必ず、連絡する」

遊海に念を押し、瀬人は通話を切った…。

 

 

 

「………!!」

 

《フォウ…フォーウ…?(ねぇ、遊海…凌牙は…璃緒は何処に行ったの…?)》

フォウがDゲイザーを握り締めたまま震える遊海に問いかける…遊海や翠の様子から尋常ではない事が起きている事を感じたのだ。

 

 

「…フォウ、ごめんな……凌牙も、璃緒も……しばらく帰ってこない……それが、あの子達の()()なんだ…!」

 

《キャウ…!(遊海…痛いよ…!なんで…なんでそんなに悲しそうなんだよ…!)》

 

「遊海さん…」

遊海はフォウを強く抱きしめる…涙を堪えた悲しい顔をしながら…。

 

 

 

 

《ユウミ…顔を上げなさい、今の貴方がするべき事は…泣く事では、ないはずです》

 

《…決戦はすぐそこに迫っています、今は…体力の回復を優先してください、マスター》

 

「そう、だな…何か異変が起きたら、教えてくれ」

しばらくの間ソファで項垂れ続けた遊海だったが…アヤカとフレアの厳しい言葉でようやく再起動した。

…アヤカとフレアも…他の精霊達も、遊海と翠の抱く悲しみは分かっていた…それでも、彼らは2人の為にあえて厳しい態度を取っているのだ…。

 

 

「…遊海さん、少し遅くなっちゃいましたけど…夕ご飯にしましょう?今日は〜カレーです!」

 

「…ああ、そうしよう…ありがとう、翠」

翠は遊海を励ます為に明るく声を掛ける…空元気なのは明らかだが、遊海はその言葉に頷いた。

 

 

 

「「いただきます」」

手を合わせた遊海と翠はカレーを食べ始める、普段ならばアヤカを除いた精霊達も一緒に食べるのだが…今日は静かに姿を消していた…。

 

 

「…うん、上手にできた!やっぱりカレーを食べると元気が出ますね!」

 

「そうだな…でも、今日は少し()()()()()な…」

 

「えっ…今日は……あっ……」

翠のカレーをしょっぱいと言う遊海…その目からは涙が零れていた…。

 

 

「思い出すよ…凌牙はうちに来たばっかりの頃、ピーマンと玉ねぎと…ニンジンも苦手で…璃緒に食べられないのを押し付けて、喧嘩してたよな…」

 

「そうでしたね…璃緒ちゃんはフォウくんから逃げ回って…それでもすぐに仲良くなって…」

 

「……ダメだなぁ…俺も、振り切らなきゃ…ならないのにさ……涙が、止まらないんだ…!」

 

「遊海さん…ぐすっ…」

カレーの味と共に蘇るのは穏やかで平和だった頃の白波家での記憶…子育て初心者の遊海達が幼い凌牙達と過ごした優しい記憶だった。

最初は我慢していた翠も…ついに涙を堪え切れなくなっていた…。

 

 

《マスター……っ?この、反応は…!?》

 

「えっ…?」

悲しみに暮れる遊海達…その時、アヤカが異変を感じ取った…!

 

 

 

 

 

 

バタン!!

 

 

 

 

『…そりゃ、バレるよな…アヤカのレーダーの範囲は広いから…』

 

 

「凌牙…璃緒…!!」

アヤカからの報告を聞いた遊海は玄関から飛び出した…そこには失踪したと思われた凌牙と璃緒がいたのだ…!

 

 

「…連絡もなしに、いなくなるんじゃない!この、馬鹿息子に馬鹿娘…!!」

 

『…お父さん…』

 

『ごめん、父さん…!』

遊海は帰ってきた凌牙と璃緒を強く…強く抱きしめた。

 

 

 

 

「「『『いただきます!』』」」

悲しみの食卓から一転…白波家の食卓は明るい雰囲気に包まれていた。

 

 

《フォウ…キャーウ!(璃緒!目が覚めてよかった!心配かけないでよ〜!)》

 

『ごめんねフォウくん…心配かけちゃったね…』

 

「そうよ…!病院からいなくなったって聞いて…私達がどれだけ心配したか…!」

 

『ごめん…2人で()()()()()()()()()()()があったんだ…』

 

「…そうか…まぁ、話は後でいい…お腹空いただろ?今日のカレーは美味しいぞ!」

 

『ありがとう、父さん…母さん』

璃緒に甘えるフォウ…いなくなった2人に怒る翠…謝る凌牙…その様子を見守る遊海…そこには普段通りの『日常』があった。

 

 

 

 

 

 

『…父さん、母さん…頼みが、あるんだ』

 

「ん…?どうしたんだ?」

食事を終え、穏やかな空気が流れるリビングで凌牙は遊海に声を掛ける。

 

 

『俺と璃緒と…決闘(デュエル)して欲しい』

 

「…それは…()()()()()()ダメなのか?」

 

『…ああ、()()()()()()ダメなんだ』

遊海達に対してデュエルを申し込む凌牙…その瞳には強い『覚悟』が宿っていた。

 

 

「…そうか、受けて立とう凌牙」

 

『…ありがとう、父さん……準備ができたらハートランドの海浜公園に来てくれ…行くぞ、璃緒』

 

『ええ…母さん、また後で…』

 

「璃緒ちゃん…凌牙君…」

ちょうど皿洗いの終わった璃緒は凌牙と共に家を出て行った…。

 

 

 

「遊海さん…」

 

「翠…これが…俺と凌牙達の()()だ…!」

 

《フォウ…!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな凌牙、璃緒」

 

「遅くなってごめんね」

 

『そんなに待ってないよ父さん、母さん』

 

『私達の我儘に付き合ってくれてありがとう』

 

深夜…ハートランドの砂浜で遊海と翠、凌牙と璃緒が向かい合う…。

 

 

 

「ルールはタッグデュエル…全員、最初のターンは攻撃できない…で、いいな?」

 

『ああ、それでいい…いくぜ、父さん…!』

 

「かかってこい!凌牙、璃緒!」

 

 

「「『『デュエルディスク・セット!Dゲイザー…セット!!』』」」

4人は同時にデュエルの用意を整える!

 

 

【ARビジョン…リンク完了!!】

 

 

 

『『「「デュエル!!」」』』

 

 

遊海LP4000

翠LP4000

 

凌牙LP4000

璃緒LP4000

 

 

 

特殊ルール

 

・タッグデュエル

全員最初のターンは攻撃不可

 

 

ターン進行

凌牙→遊海→璃緒→翠→……

 

 

 

 

 

 

@凌牙

 

 

『俺のターン、ドロー!』

『「ビッグ・ジョーズ」を召喚!』

巨大な口を持つ鮫が現れる! ATK1800

 

『さらに!手札の「シャーク・サッカー」の効果発動!自分が魚族モンスターの召喚に成功した時!特殊召喚できる!』

コバンザメ型のモンスターが現れる! DEF1000

 

 

『俺はレベル3の「ビッグジョーズ」と「シャークサッカー」の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現われろ!「潜航母艦エアロ・シャーク」!』

2匹の鮫が連結した潜水艦が現れる! ATK19

00

 

『「エアロシャーク」の効果発動!ORUを1つ使い、俺の手札1枚につき400ダメージを相手に与える!俺の手札は4枚…1600ダメージだ!!エアー・トルピード!!』

 

「きゃあああ…!」

 

「お得意の速攻か…!」

放たれた無数の魚雷が遊海達のライフを削り取る!

 

遊海LP4000→2400

 

翠LP4000→2400

 

 

『俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンド!』

 

凌牙LP4000

エアロシャーク 伏せ1 手札3

 

 

「ふっ…先攻での効果ダメージは最適解だな…次は俺の番だ!」

 

 

 

 

@遊海

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺は永続魔法『黒の魔導陣』を発動!発動した時、自分のデッキの上から3枚を確認し、その中から『ブラック・マジシャン』または『ブラック・マジシャン』の名が記されたカード1枚を手札に加える!」

 

『ブラックマジシャン!?』

凌牙は遊海の宣言したモンスターの名に驚愕する…!

 

 

「俺は…『ブラックマジシャン』を手札に加え、残り2枚をデッキトップに戻す!そして『マジシャンズ・ロッド』を召喚!」

遊海のフィールドに神秘的なオーラを纏う杖が突き刺さる! ATK1600

 

 

「『マジシャンズロッド』の効果発動!デッキから『ブラックマジシャン』の名が記された魔法・罠カード…『マジシャンズ・ナビゲート』を手札に加える…カードを3枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊海LP2400

ロッド 黒の魔導陣 伏せ3 手札3

 

 

 

『デュエルモンスターズの…伝説のモンスター…!!』

 

「さぁ、かかってこい凌牙…『決闘王』の名を遊戯から受け継いだ俺に!!」

遊海は凌牙を睨み、闘志を高める!

 

 

『父さん!私を忘れては困るわ!!』

 

 

 

@璃緒

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「ブリザード・ファルコン」を召喚!』

氷の翼を持つハヤブサが現れる! ATK1500

 

『そして、自分フィールドに鳥獣族モンスターが存在する時!手札の「霊水鳥シレーヌ・オルカ」は特殊召喚できる!』

艷やかな水の妖精が現れる! ATK2200

 

 

『「シレーヌオルカ」の効果発動!フィールドのモンスターのレベルを全て4に変更するわ!』

 

シレーヌオルカ☆5→4

 

 

『私はレベル4の「ブリザードファルコン」と「シレーヌオルカ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れて!「零鳥獣シルフィーネ」!』

氷を纏う半人半鳥のモンスターが現れる! ATK2000

 

『私はカードを2枚伏せ…ターンエンド!』

 

璃緒LP4000

シルフィーネ 伏せ2 手札2

 

 

 

@翠

 

 

「私のターン…ドロー!」

「魔法カード『紅玉の宝札』を発動!手札の『真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラック・ドラゴン)』を墓地に送って2ドロー!そしてデッキから『真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレア・ドラゴン)』を墓地に送る!」

 

 

『レッドアイズ…!?』

 

『この組み合わせは…まるで伝説の…!?』

翠が見せたカードを見た凌牙達は…遊海と翠の背後に2人の『伝説の決闘者』の姿を幻視する…!

 

 

「そして…『伝説の黒石(ブラック・オブ・レジェンド)』を召喚!」

赤い輝きを放つ黒石が現れる! ATK0

 

「『黒石』の効果発動!自身をリリース…そしてデッキから現れて!可能性を秘めし伝説の竜!『真紅眼の黒竜』!!」

黒石が罅割れ、砕け散る…そして舞い上がる黒炎の中から伝説の黒竜が現れる! ATK2400

 

 

『これが…伝説のドラゴン…!』

 

「まだよ…!魔法カード『思い出のブランコ』発動!墓地の通常モンスターを特殊召喚できる!私は墓地から『真紅眼の黒炎竜』を特殊召喚!」

フィールドに熱風が吹き付ける…そして紅き炎を纏うドラゴンが現れる! ATK2400

 

『レベル7のモンスターが2体…!来るのか…!?』

 

「私はレベル7の『真紅眼の黒竜』と『真紅眼の黒炎竜』の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!永き時を超えし黒竜よ!全てを焦がす炎を纏え!『真紅眼の鋼炎竜(レッドアイズ・フレアメタル・ドラゴン)』!!」

銀河の爆発と共にフィールドを炎が支配する…そして鋼の身体を得た黒竜が現れる! ATK2800

 

 

『レッドアイズの…エクシーズモンスター…!』

 

「私は…カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翠LP2400

鋼炎竜 伏せ1 手札3

 

 

 

「さぁ…モラトリアムは終わりだ、来い…凌牙!」

 

『いくぜ…父さん!!』

 

 

 

@凌牙

 

 

『俺のターン!ドロー!…このカードは…!』

凌牙はドローしたカードを見て、手を止める…。

 

『(このカードが…俺達の、()()()()()()…!)俺は「エアロシャーク」の効果発動!ORUを1つ使って──』

 

「通さない!速攻魔法『ディメンション・マジック』発動!俺の場の魔法使い族モンスター『マジシャンズロッド』をリリース!『幻想の見習い魔導師』を手札から特殊召喚!」

フィールドに現れた棺が杖を飲み込む、そしてその中から褐色の肌を持つ魔導師見習いの少女が飛び出した!ATK2000

 

「そして相手モンスターを1体破壊できる!『エアロシャーク』を破壊!」

 

『くっ…!?』

さらに棺から魔力弾が飛び出し、エアロシャークを粉砕した!

 

 

『なら…俺は「ダブルフィン・シャーク」を召喚!』

2対の胸ビレを持つ鮫が現れる! ATK1000

 

『そして手札の「サイレント・アングラー」の効果発動!自分フィールドに水属性モンスターがいる時、特殊召喚できる!』

巨大な口を持つチョウチンアンコウが現れる! ATK800

 

 

「ORUを持っている『鋼炎竜』の効果発動!相手が魔法・罠・モンスターの効果を発動した時!相手に500ダメージを与えるわ!鋼炎弾!」

 

『なにっ…!?ぐぅ…!!』

火球が凌牙に直撃…ライフを削る!

 

凌牙LP4000→3500

 

『「ダブルフィンシャーク」はエクシーズ召喚の時、2体分の素材になる!俺はレベル4の「サイレントアングラー」と「ダブルフィンシャーク」2体分でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!』

 

 

32

 

 

『現れろ!「No.32」!「海咬龍シャーク・ドレイク」!!』

エクシーズ召喚の銀河の中から凌牙のエース…最大最強の牙が現れる! ATK2800

 

 

 

「『シャークドレイク』を呼び出したか…さぁ、どうする?」

 

『(父さんは…()()は表情を変えない…伏せカードには攻撃を防ぐカードがあるはず…なら、()()()()()はしない…!)』

表情を変えない遊海を見た凌牙は…覚悟を決めた…!

 

 

 

『父さん……これが、俺の…俺達の決断だ!!発動しろ!「RUM-バリアンズ・フォース」!!』

 

『お兄様…!』

 

「っ…」

 

「…………そうか」

凌牙のフィールドでカオスの光が輝く…それは凌牙の……ナッシュの決意を示していた…!

 

 

『フィールドのエクシーズモンスター1体をカオス化させ、ランクアップさせる!!俺は「シャークドレイク」1体でオーバーレイネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!』

シャークドレイクがニュートラル体となって赤い銀河へと飛び込む…そして暗黒の爆発と共に再誕する!

 

 

32

 

 

『現れろ!「CNo.32」!深淵に眠りし牙よ…カオスの力で全てを喰らえ!!『海咬牙龍シャーク・ドレイク・ヴィシャス』!!』

それは再誕せし新たな「牙」…漆黒の体に3対の巨大なヒレを持ち、額を中心とした各部位では赤紫のカオスの力が輝く『深淵の鮫龍』…それがナッシュの決断の証だった…! ATK2900

 

 

「…カオスエクシーズ……そう来たか、翠」

 

「はい…!『鋼炎竜』の効果発動!相手が魔法・罠モンスターの効果を発動した事で相手に500ダメージを与えるわ!鋼炎弾!」

 

『ぐうっ…!?』

再び火球がナッシュに直撃しライフを削る!

 

凌牙LP3500→3000

 

 

『ならば、「バリアンズフォース」のさらなる効果!「鋼炎竜」のORUを全て「ヴィシャス」に吸収し、奪ったORU1つにつき、攻撃力を300ダウンさせる!』

 

「させないわ!『鋼炎竜』の効果発動!ORUを1つ使い、墓地に眠る2体目の『真紅眼の黒竜』を特殊召喚!この効果は相手ターンでも使える!!」

翠の場に赤みが強いレッドアイズが現れる! ATK2400

 

 

真紅眼の鋼炎竜 ORU1→0 ATK2800→2500

 

シャークドレイクヴィシャス ORU3→4

 

 

 

『「シャークドレイクヴィシャス」の効果発動!1ターンに1度、ORUを1つ使い!相手フィールドの表側表示のモンスターを全て破壊し、その中で1番高い攻撃力の数値分のダメージを相手に与える!()のフィールドには攻撃力2500の「鋼炎竜」がいる!これで、終わりだ!カオス・アビス・バイト!!』

ヴィシャスが強烈な水流を吐き出す…それは無数の鮫のエネルギーとなり、遊海達に襲い掛かった…。

 

 

 

 

『はぁ…はぁ…!これで、どうだ…!』

 

『ナッシュ…』

自身の持てる渾身を叩き込んだナッシュ…その顔は…悲しみで歪んでいた…。

 

『命までは、奪わない……それが、俺の……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケジメのつけ方…か?」

 

 

『『っ…!?』』

遊海達のフィールドを覆っていた煙が晴れていく…そこにはダメージを受けていない遊海達の姿、そして…。

 

 

『「ブラック・マジシャン」に…「ブラック・マジシャン・ガール」…!?』

遊海のフィールドには最強の魔術師弟が降臨していた…! ATK2500  ATK2000

 

 

 

 

「…罠カード『マジシャンズ・ナビゲート』を発動していた、その効果で手札から『ブラック・マジシャン』を…デッキから『ブラック・マジシャン・ガール』を特殊召喚したのさ」

 

『っ…でも、「ブラックマジシャン」は通常モンスターだ!「ヴィシャス」の効果を避ける事はできない!!』

 

()()()()()()()()()()、フィールドをよく見ろ」

 

『っ…!?「ヴィシャス」が、いない!?』

 

『そんな…!?』

遊海の言葉に動揺したナッシュはフィールドを見回す…そこにいたはずの新たなカオスエクシーズはその姿を消していた…!

 

 

「永続魔法『黒の魔導陣』の効果だ…「ブラックマジシャン」が召喚・特殊召喚された場合、フィールドのモンスター1体を除外できる…お前の悪い癖だ、感情が昂ぶり過ぎると詰めが甘くなる…まぁ、俺もそうなんだけどな…どうする?」

 

『くっ…俺は、これでターンエンドだ…!』

凌牙LP3500

伏せ1 手札1

 

 

 

「凌牙、璃緒……それが、お前達の選んだ道なんだな?」

 

『…俺は…俺の本当の姿は「バリアンの王」だった…俺は…バリアンの仲間達を守らなきゃならない!!』

 

『私は…それが茨の道であっても…ナッシュについていく!!』

 

「璃緒、ちゃん…」

遊海の問いに…ナッシュ、そしてメラグは強い覚悟で答える…!

 

 

「そうか、ならば……叩き潰す

 

『『っ─!?』』

遊海は闘志を…殺気を開放する、病み上がりとは思えない程の強い力を…!

 

 

 

 

@遊海

 

 

「俺のターン、ドロー!!」

「リバース罠『永遠の魂』を発動!デッキから魔法カード『黒・魔・導』を手札に加える!そして、フィールドに『ブラック・マジシャン』がいる時!魔法カード『黒・魔・導(ブラック・マジック)』を発動!相手フィールドの魔法・罠を全て破壊する!吹き飛ばせ!!」

 

《ブラック・マジック!!》

 

『伏せカードが!?』

 

『全滅…だと!?』

放たれた魔力弾がナッシュ達のフィールドを蹂躪…伏せられていた『ゼウス・ブレス』『リビングデッドの呼び声』『アイス・チェーン』が破壊される!

 

 

「そして魔法カード『ティマイオスの眼』を発動!俺のフィールドの『ブラックマジシャンガール』と融合!精霊界を救いし名もなき竜よ…魔導師と共に出陣せよ!融合召喚!!『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』!」

名もなき竜に騎乗した魔導戦士が現れる! ATK2600

 

 

「翠…モンスターを借りるぞ」

 

「はい…!!」

遊海の言葉に翠は静かに頷く…。

 

 

「さらに魔法カード発動!『融合』!『ブラック・マジシャン』と『真紅眼の黒竜』を融合!!」

ブラックマジシャンとレッドアイズが融合の渦に飲み込まれる!

 

 

「伝説の魔導師よ!可能性を秘めし黒竜よ!今こそ交わりて…魔導の覇者となれ!!融合召喚!『超魔導竜騎士─ドラグーン・オブ・レッドアイズ』!!」

融合の渦から新たな伝説が現れる…漆黒の鎧に身を包み、黒き翼と竜の尾を持つ最強の魔導騎士が降臨した!

ATK3000

 

 

『攻撃力、3000…!?』

 

「『ドラグーンオブレッドアイズ』の効果発動!璃緒の場の『シルフィーネ』を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!黒・魔・炎・弾(ブラック・フレア・マジック)!」

 

『うああああ…!!』

 

『メラグ!!』

漆黒の魔力弾がシルフィーネを粉砕…メラグに大ダメージを与える!

 

璃緒LP4000→2000

 

 

「…バトルだ!『竜騎士マジシャンガール』で璃緒にダイレクトアタック!魔・導・裂・斬(マジック・バースト・スラッシュ)!」

 

『っ…!きゃあああ!!』

竜騎士の一閃がメラグのライフを斬り捨てた…。

 

璃緒LP2000→0

 

 

『メラグ!!』

 

「まずは…自分の心配をしろ!!『ドラグーンオブレッドアイズ』で凌牙にダイレクトアタック!超・魔・導・黒・炎・弾(ハイパー・ダークネス・マジック)!!」

 

『…やっぱり、アンタは強すぎるぜ……()()()

魔導の覇者が最大威力の魔力弾を放つ…そしてフィールドは大爆発に包まれた…。

 

 

凌牙LP0

 

 

 

遊海&翠 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ…うぅ…!!』

 

『がはっ…!』

 

「凌牙君…璃緒ちゃん…!」

 

「…行くな、翠」

デュエルが終わり、ナッシュとメラグは砂浜に倒れ伏していた…翠は思わず駆け寄ろうとするが…遊海がその手を掴んだ…。

 

 

 

「…いるのは分かってる、出てこい」

 

『………久しいな、白波遊海』

遊海は砂浜の暗闇に声をかける…その中から銀髪眼鏡の青年、人間体のドルベが現れた…!

 

 

「早く、2人をバリアン世界に連れて行け…傷は深くない」

 

『何故、見逃す…ナッシュとメラグは…今のお前達にとって、最大の敵のはずだ』

ドルベは背中を見せた遊海に問いかける…。

 

「ドルベ…お前には()()がある、それに免じて見逃してやる……だが、()()()()

 

『っ…!!』

ドルベは遊海の背中から強い殺気を感じ取る…!

 

 

「お前達が、人間界の敵として現れたなら…その時は容赦しない、俺の全身全霊でお前達を叩き潰す…覚悟しておけ……翠」

 

「ドルベ…コレを渡しておくわ!」

 

『これは…』

遊海に促された翠は小さなリュックを投げ渡す。

 

 

「デュエル飯…おむすびよ、体力を回復させるおまじないを掛けてある……後で2人に食べさせてあげて」

 

『……わかった、さらばだ…人間界最強のデュエリスト達よ…!』

リュックを拾ったドルベは次元の扉を開く…。

 

 

『ゆう、み…』

 

「さよならだ…()()()()()()()…背中には気を付けろ」

 

『えっ…?』

次元の扉に吸い込まれる直前、ナッシュは遊海からの最後のアドバイスを聞いた気がした…。

 

 

 

 

 

 

 

『っ…!遊海!翠!何があった!!バリアンは何処へ行った!!』

 

「先生!翠さん!!」

次元の扉が消えた直後、バリアンの出現を感じ取った瀬人と十代が駆け付ける……そこには遊海と翠が立ち尽くしていた…。

 

 

「…バリアン七皇の最後の2人が蘇った…戦いは、近い…!!」

 

『なんだと!?』

何かを押し殺したような遊海の呟きに瀬人は驚愕する…!

 

「凌牙くん…璃緒ちゃん…!」

 

『まさか…お前達……!お前達の息子達が、バリアンだったと言うのか!?何故…何故隠していた!!』

泣き崩れる翠を見た瀬人は全てを察する、最後のバリアンとは…遊海の息子達だったのだと…。

 

 

「俺達なりに、運命を変えようとしたんだ……でも、凌牙は…璃緒は……バリアンを選んだ…それだけだっ…!!」

 

「先生…!!」

十代は気付いた…遊海も…翠も…1人では抱えきれないほどの悲しみを押し殺している事に…。

 

 

 

「…すまん、少しだけ、翠と2人に、してくれ……もう、我慢できそうに、ないんだ……!!」

 

『…後で、事情は話してもらうぞ…友よ』

 

「…この近くには、人はいないぜ…誰も、近づけさせない」

遊海の様子を見た瀬人と十代は…静かにその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

「…翠、おれは…間違った…のかな…」

 

「……間違っては、いないと思う……これが、運命だから…!」

 

「泣くのは…今だけだ……今だけは………ああ、ああああ…!凌牙…璃緒…ごめん…ごめんな…!!こんな親ですまなかった…!!」

 

「うぅ……うああああああああ─!!!」

 

 

月光が照らす砂浜に抱きあった2人の慟哭が響く…2人の泣き声は穏やかな潮騒の中に消えて行った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ…うぅ…これで、ケジメは……覚悟はできた…!おれは……俺は…バリアンの、ナッシュだ…!!』

 

『ナッシュ…よく、決断してくれた…』

 

『…ごめんなさい…父さん、母さん…!』

バリアン世界へ向かう異次元の中でナッシュとメラグは覚悟を決めた…その目から哀しみの涙を流しながら…。

 

 

 

『七皇達を…招集しろ…!』

 

『…まずは傷を癒やしてからだ、それからでも遅くない』

涙を拭ったナッシュはついに、アストラル世界との戦いへのカウントダウンを始めた…。




オリカ紹介


CNo.32海咬牙龍シャーク・ドレイク・ヴィシャス

水 海竜族 ランク5 ATK2900 DEF2100

レベル5✕4

このカードは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。

①このカードが相手によって破壊された時、墓地のエクシーズモンスター1体をエクストラデッキに戻し、このカードを守備表示で特殊召喚する。

②このカードが「No.32海咬龍シャーク・ドレイク」をエクシーズ素材にしている時、以下の効果を得る。
●1ターンに1度エクシーズ素材を1つ取り除き発動できる。相手フィールドの表側表示のモンスター全てを破壊し、破壊したモンスターの中で1番攻撃力が高いモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。


見た目

漆黒の体 頭・両腕・背中の3対のヒレ先・両足にカオスの結晶がある。

「シャークドレイク」をさらに鋭く、凶悪にしたような姿


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アストラル世界の神─人は光へ─

こんにちは!S,Kです!遅くなってすみません!

アストラルを救う為にアストラル世界へと乗り込んだ遊馬…彼はついにアストラル世界の『神』と対峙する!

それでは、最新話をどうぞ!


「……ここは…」

遊海が気付いた時、そこは見慣れたリビングだった…いつの間にか意識を失っていたらしい…。

 

『ようやく起きたか……泣き疲れて2人して砂浜で眠る馬鹿がいるか、この馬鹿者が』

 

「瀬人…そうか、俺達は……」

 

凌牙と璃緒との決別のデュエルを終えた遊海と翠は砂浜で泣き続けた…その後、2人揃って泣き疲れて眠ってしまい、瀬人と十代に自宅まで運ばれたのだ。

なお、翠は十代とウィンダ達の手で寝室に寝かされている…。

 

 

『……世界中の主要都市で「偽ナンバーズ」が発見され始めた、いくつかの地域で暴動も起きているそうだ』

 

「っ!?…そうか…」

瀬人がタブレットを遊海に見せる、そこには『No.10黒輝士イルミネーター』や『No.16闇の支配者ショック・ルーラー』『No.34電算鬼獣テラ・バイト』『No.56ダーク・ラット』など…明らかな『偽ナンバーズ』の写真が映されていた…。

 

 

『…各地域に散らばっている決闘者達も対応しているが…焼け石に水の状況だ』

瀬人がさらに画像を見せる、そこにはアメリカで奮闘するアメリカ国旗のスカーフを巻いた少年や巨大なワニと共に暴徒達を威嚇するカウガール少女…さらにヨーロッパで暴徒達を抑え込む『聖女』のような少女と『カーバンクル』を連れた青髪の青年、さらに『三極神』を率いて民衆を説得する青年達の姿があった…。

 

 

『…バリアンはハートランドシティを一番に狙うのだろう?……九十九遊馬は間に合うのか?』

 

2()()()帰ってくる…絶対に…!!」

遊海は雲に覆われ始めたハートランドの空を睨んだ…。

 

 

 

 

 

 

Sideバリアン

 

 

 

【完成したぞ…!()()()()()()!!】

 

『ようやくかよ…待ちくたびれたぜ…』

バリアン世界の古城にドン・サウザンドの歓喜の声が響く…時間は掛かったものの、人間界を侵略する用意が整ったのだ…!

 

【今こそ…地上がカオスに包まれる時だ!ハハハハハ!!】

 

『じゃあ早速…蝿野郎に最後のチャンスをくれてやるとするか…!』

邪悪な笑い声を響かせるドン・サウザンド…その声を聞きながらベクターはある人物を呼び出した…。

 

 

 

「べ、ベクター様…!?これはいったい…!」

 

『ククク…それは()()()が作った「偽ナンバーズ」…言わば偽りのナンバーズさ…!』

 

「偽りの、ナンバーズ…?」

ベクターに強制招集されたMr.ハートランドは目の前の装置の中に浮かぶ無数のカード…偽りのナンバーズに驚いている…。

 

 

『コイツを人間界にばら撒く事で…人間共の「負の心」が増幅され…最終的にはバリアン世界と人間界を融合させる事ができるのさ…!!』

   

「お、おおぉぉ!?この偽ナンバーズにそんな効果が…!!」

ベクターから偽ナンバーズの効果を教えられたハートランドは目を輝かせる。

 

『貴様はナンバーズを人間界にばら撒いて来い…そして凌牙やカイトのナンバーズを奪ってこい!成功すれば…お前を「バリアン七皇」の末席に加えてやってもいい…だが!!失敗すれば……わかってるなぁ?』

 

「は、はいぃっ!!せ、誠心誠意…必ず成功させてみせます!!」

ベクターは殺気を放ちながらハートランドを睨む…。

 

 

『それに…カイトやトロンの餓鬼共がお前の仲間から奪ったナンバーズを利用すれば…如何に無能な貴様でも奴らに勝てるさ…!さぁ、行け!!』

 

「は、はい─!!」

ハートランドはベクターから渡された無数の偽ナンバーズを手に人間界へと向かって行った…。

 

 

 

【これで…地球とアストラル世界も終わりだ…!】

 

『だが…このままじゃ、何処かにある「ヌメロン・コード」は手に入らないぜ?』

 

【構わぬ…!アストラル世界さえ滅ぼせれば…我の目的は果たせるのだ…!】

ハートランドが去った後、ドン・サウザンドは嗤う…彼にとってはアストラル世界を滅ぼす事ができれば…ヌメロンコードの在り処を探すのは二の次の事なのだ。

 

 

『そういや、ドン・サウザンド…この「装置」はもう使わねぇよな…?』

 

【むっ…?既に偽りのナンバーズは十分にある…その装置は用済みだ】

ベクターは玉座から偽ナンバーズ量産装置を見つめる。

 

 

『クククッ…!良からぬ事を思いついたぜ……なぁ、ネームレスちゃんよぉ…!』

ベクターは玉座から立ち上がり、黒水晶の中で眠り続けるネームレスを見て邪悪な笑みを浮かべる。

 

 

『最後の最後まで使い潰してやるよ…!待ってろよ?白波遊海…!』

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【九十九遊馬が…此処に来たな?】

 

『ええ、あの方は…私達を救ってくれました』

 

【カオスの力を使ってか?】

 

『はい、皆に手を差し伸べてくれました』

アストラル世界・五命星の隠れ家に光の化身がやって来る…彼の目の前にはカオス欠乏による病が治癒した住民達とエナの姿があった。

 

 

【彼は何処に行った】

 

『貴方ならば分かっているでしょう、アストラルを…この世界を救う為に彼が向かうべき場所を…!』

 

【アクル、貴様の差し金か……】

 

『私達は信じているのです、エリファス……彼ならば、この世界を変えられると』

遊馬の行方を問うエリファス…五命星の副リーダーであるアクルは物怖じせず、エリファスを睨んだ…。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁッ…!!」

  

《クリクリ〜!!》

住民達の治療を終えた遊馬はアストラル世界の王宮を目指して無限に続くかのような階段を駆け上がっていた。

 

アクルからアストラルが囚われているのが王宮である事を聞き、そしてエナから王宮までの抜け道を聞き、なんとか王宮の足元に辿り着いたのだが…王宮までのエレベーターなんてものは無く……遊馬は必死に走っていたのだ。

 

 

「待ってろよ…!アストラル─!!」

必死に息を切らせて遊馬は走る、全ては相棒を救う為に…。

 

 

 

………

 

 

 

「(くっ…くそ……目が、霞んできた…!でも、まだだ…!止まる、訳には、いかないんだ…!!)」

 

《クリクリ〜…》

王宮を走り続けて数時間…遊馬の体力は限界を迎えようとしていた、エナから貰った飲み水も僅かな食料も底を尽き…遊馬は倒れてしまう寸前だった。

…だが、ついにその尽力が報われる時が訪れた…!

 

 

「ぐっ………あれ、は…?」

階段の踊り場に倒れ込む遊馬…そのぼやけた視界が今までとは違う景色を映す。

遊馬の目の前に現れたのは巨大なアストライト結晶の「玉座」…その上には皇の鍵に似た紋章が掲げられている、そしてその玉座の背後…透き通るような水晶の中にはアストラルが静かに眠っていた…!

 

 

「アストラル!!」

探し続けていた友の姿を見つけた遊馬は玉座へと駆け寄る!

 

「アストラル!!オレ…お前を迎えに来たんだ!!目を覚ませよ!アストラル!!……アストラル…?」

必死にアストラルへと声をかける遊馬…だが、アストラルは応えない……眠り続けるアストラル、その左胸には穴が空き、禍々しい闇がその体を蝕んでいたのだ…。

 

 

【無駄だ、アストラルは目覚める事はない…】

 

 

「お前は…!?」

アストラルに声を掛け続ける遊馬…その背後に光の化身が現れる…!

 

【我が名はエリファス、この世界の「理想」を求める者…】

光の化身・エリファスが正体を明かす…白いマントに金色の兜を被った青と黄色のオッドアイの偉丈夫…それがエリファスの本当の姿だった。

 

 

「エナやアクルから話は聞いた…つまりお前がアストラル世界の『1番偉い奴』なんだろ…!なら、話は早いぜ!アストラルをこっから出せ!!」

遊馬は水晶に封じられたアストラルを開放するようにエリファスへと詰め寄る…だが…──

 

 

【それはできない】

 

「な、なんでだよ!?」

エリファスは遊馬の言葉に首を横に振った…!

 

 

【アストラルはバリアン世界を消滅させ、この世界をさらなる「ランクアップ」へと導く為に生まれた…だからこそ、彼は()()でなければならなかった…だが、アストラルは君のカオスで()()()()()()()()…故に、その存在を消さねばならない!!】

 

「オレが、アストラルを穢した…!?アストラルは…アストラルは穢れてなんかねぇ!!」

エリファスの無慈悲な言葉に遊馬は怒りを露わにする!

 

 

「確かに、アストラルは変わったのかもしれない…だけど!!あいつは穢されてなんかない!泣いたり、笑ったり…たまに喧嘩したり……それでも!オレ達は一緒に戦ってきた!!苦しい時も辛い時も…どんな時でも一緒だったんだ!!」

 

遊馬が思い出すのはアストラルとのかけがえのない思い出…出会った時は堅物で感情を見せなかったアストラル…だが、遊馬と共に戦う中で笑いあい、落ち込み、ぶつかり合い…デュエルの中で人間らしい感情を得て、遊馬のかけがえのない相棒となった。

…アストラルは変わった…だが、それは消して悪化したのではない!

 

 

「アストラルは確かに変わった!それはオレとアストラルに『絆』があったからだ!!それを…テメェなんかに分かってたまるかよ!!」

 

【………!】

遊馬の魂の叫びは王宮の空気を震わせる…!

 

「アストラルは…必ず、オレが助ける!!」

 

【君が?どうやって?ただの子供に…何ができる?】

 

 

決闘(デュエル)だ…!!」

 

 

【ほう…】

遊馬は覚悟を宿した瞳でエリファスを睨む!

 

 

「オレの師匠が言ってたんだ…遥か昔、古代エジプトで生まれた『決闘(ディアハ)』は神聖な儀式だったんだって……そして、伝説の決闘者達は自分の運命をデュエルに託してきたんだってな!!」

 

【では…私との決闘にアストラルを賭けると言うのだな?】

 

「そうだ!!」

 

【いいだろう…だが、それと同時に君の中にあるアストラルとの『記憶』も賭けてもらう】

 

「アストラルとの記憶を…!?………上等だ!やってやる!!」

エリファスは遊馬とのデュエルに応じる…しかし、遊馬の中にあるアストラルとの「思い出」も賭けて…。

それでも、遊馬はその言葉に頷いた…全てはアストラルの為に…!!

 

 

【では…これより儀式を開始する…!】

 

「(アイツはこの世界の代表…つまりアストラルぐらいに強い…でも…オレは!!)待ってろよ、アストラル!オレが…必ず助ける─!!」

アストラル世界を治める神を前に遊馬は無謀とも言えるデュエルに挑む…全てを賭けた背水の決闘が始まる!!

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対エリファス

 

 

 

 

 

【先攻は貰う…私は永続魔法「神秘のモノリス」を2枚発動!このカードはレベル4のモンスターとしてランク4のエクシーズ召喚の素材となる!】

 

「なっ…!?魔法カードをエクシーズ素材にするだって…!?」

エリファスの場に2枚の石版が現れる、その効果はエクシーズ全盛の人間界でも類を見ない効果だった…!

 

 

【私は「神秘のモノリス」2体でオーバーレイ!2枚のカードでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!】

2枚の石版が銀河へと飛び込み…異次元のエクシーズモンスターが顕現する!

 

 

 

【現われろ!「NO」(ニューオーダーズ)ランク4!「エーテリック・アヌビス」!!】

 

「ニュー…オーダーズ…!あれがエリファスのエクシーズモンスター…!!」

エリファスが呼び出したのはエジプト神話において「冥界の神」の名を持つ、光輪を背負うジャッカルだった…!

 

 

【私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ】

 

 

 

「いくぜ…オレのターン!!」

エリファスが呼び出した未知のモンスターを前に…遊馬はカードを引く!

 

《クリクリ!!》

 

「虹クリボー…!?一緒に戦ってくれるのか?」

 

《クリクリー!!》

引いたカードはいつの間にかデッキに入り込んでいた「虹クリボー」…彼に背中を押されながら遊馬は勝利の方程式を紡ぐ!

 

 

 

39

 

 

「現われろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

遊馬はアストラルとの「絆」でありエースモンスター…希望の戦士を呼び出す!

 

 

【現れたか『希望皇ホープ』…そのナンバーズこそ、君とアストラルとの出会いによって生まれた『異物』だ…!】

 

「…『ホープ』は異物なんかじゃねぇ…!!オレとアストラルの出会いは…イレギュラーなんかじゃない!!この『ホープ』こそがオレとアストラルが育ててきた『希望』だ!!」

 

【ならば…その希望もろとも打ち砕くのみ…!】

 

「くっ…!!(ダメだ、冷静になれ…!心を揺らしちゃダメだ…!!)」

「希望皇ホープ」を異物と言い捨てるエリファスに遊馬は激昂しかけるが…ギリギリで踏み止まって呼吸を整える…。

 

 

「(『エーテリックアヌビス』の攻撃力は僅か1000…絶対に、何か効果があるはず……どうする…!?)」

未知のモンスターを前に必死に考える遊馬…そんな時だった。

 

 

─遊馬、あとは君らしく…()()()()()()をすればいい─

 

 

「アストラル…そうだったよな…!!オレは装備魔法『リバース・ブレイカー』を『ホープ』に装備する─!」

アストラルの言葉を思い出した遊馬はエリファスを倒す為の一手を打つ!

 

 

「そしてオレは『アヌビス』を攻撃!その瞬間『リバースブレイカー』の効果発動!装備モンスターが攻撃する時!相手の魔法・罠ゾーンのカード1枚を破壊できる!そして!相手はこの効果に対して魔法・罠の効果を発動できない!!」

ホープ剣から放たれた光線がエリファスの伏せカードを粉砕する!

 

 

「いっけぇ!『ホープ』!ホープ剣スラッシュ!!」

 

【『エーテリックアヌビス』の効果発動!!魔法・罠ゾーンのカードが破壊された時、ORUを1つ使い!そのカードを復活させる!さらに、そのカードはこのターンに発動できる!】

 

「なんだって!?」

アヌビスがエリファスのフィールドに炎を放つ、そして伏せカードが復活してしまう!

 

 

【私は罠カード「神秘の鏡」を発動!バトルによって私のモンスターは破壊されず、私の受けるダメージは相手が受ける!】

 

「や、やべぇ!!『ホープ』の効果発動!ORUを1つ使い!自身の攻撃を無効にする!ムーン・バリア!!」

エリファスは遊馬の手を先読みしていた、ホープの一撃は巨大な鏡に受け止められるが…遊馬はムーンバリアを発動する事で難を逃れる!

 

 

【ほう…少しはデキるようだな】

 

「当たり前だ!オレのデュエルはアストラルと師匠仕込みだからな!!…オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

遊馬が効果を躱した事に関心を持つエリファス…そしてその理由がアストラルにあると知った彼は笑みを浮かべる…!

 

 

【そうか…アストラル仕込みか、だが…君は()()()()()()()!見せてあげよう…アストラル世界における本当のデュエルを─!!】

 

「な、なんだ!?」

エリファスの纏うオーラが変わる…それと共にエリファスは右手を天に掲げる!

 

 

【最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!!】

 

 

キィン─!!

 

「そ、そんな!?その光は!!」

エリファスの掲げた右腕に光が集う!!

 

 

シャイニングドロー!!

それは幾度も遊馬とアストラル…『ZEXAL』を救ってきた希望の力、それが遊馬へと立ち塞がる!

 

 

【アストラル世界のデュエル…それは全て()()()()()()()()()()()()()()!!】

 

「ぜ、全部がシャイニングドローだって─!?」

エリファスの言葉に遊馬は驚愕する、アストラル世界におけるドローは全てが「シャイニングドロー」…名もなきファラオの「望んだカードを引く力」や十代の「カードを引き寄せる力」を上回る…とんでもないデュエルがアストラル世界での「普通」だったのだ…!

 

 

【私は手札から永続魔法『ランクアップ・アドバンテージ』を発動!このカードは自分が「RUM」を使って特殊召喚した時、カードを1枚ドローできる!さらに!そのモンスターが攻撃する時、バトルする相手モンスターの効果を無効にする!そして…私はシャイニングドローで生み出したこのカードを使う!発動せよ!「RUM-アストラル・フォース」!!】

 

「っ…!新しいランクアップマジック!?」

エリファスのフィールドに光が満ちていく…それは果てなきランクアップを目指すエリファスを象徴する新たな「RUM」だった…!

 

 

【このカードはフィールドで最もランクの高いエクシーズモンスターを2つまでランクアップさせる!!私はランク4の「アヌビス」でオーバーレイ!】

 

「一気に2つランクアップ!?」

それは常識を覆すダブルランクアップ…アヌビスが銀河に飛び込み、新たな姿へと進化を遂げる!

 

 

【1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築…ランクアップ・エクシーズチェンジ!!】

 

 

【現われろ!「NO」ランク6!「エーテリック・アポビス」!】

光輪を背負し「破壊と夜闇」を司る蛇神が現れる!

 

 

【この瞬間!永続魔法『ランクアップアドバンテージ』の効果発動!『RUM』を使ってエクシーズモンスターを特殊召喚した事で1枚ドローできる!シャイニングドロー!!

エリファスは再び新たなカードを創造する!

 

【さらに『アポビス』の効果発動!ORUを1つ使い!相手フィールドのモンスターの攻撃力を2000ダウンさせる!!】

 

「なんだって!!」

さらに続いてORUを取り込んだ蛇神がホープを締め上げ、攻撃力を下げてしまう…!

 

 

【バトルだ!『アポビス』で『希望皇ホープ』を攻撃!そして『ランクアップアドバンテージ』の効果で『ホープ』は効果を発動できない!!】

 

「まだだ!罠カード『ハーフ・アンブレイク』を発動!このターン『ホープ』はバトルでは破壊されず、オレが受けるダメージも半分になるっ、うわああああ!!」

アポビスの放った破壊光線を泡のバリアが受け止める…遊馬はなんとかダメージを最小限に抑える事ができた…!

 

【私はカードを1枚伏せ、ターンエンド】

 

 

 

「ぐっ…これが、アストラル世界のデュエル…!」

 

【そうだ、これがランクアップを目指す者だけができるデュエル…アストラルが受け継ぐべきデュエルだ】

遊馬は常識を超えるエリファスの…アストラル世界のデュエルに圧倒される…!

 

【…だが、今のアストラルにその資格はない…】

 

「確かに…アストラルも最初はお前みたいに石頭だったよ…!でも、あいつは変わったんだ!オレと一緒に色んな事を経験して…!」

 

【…よく、アストラルを見るがいい…あの胸にある()()()()を…!】

エリファスは水晶の中で眠るアストラルを指し示す…。

 

【あれは君がアストラルに付けた()だ、最初は小さな傷だった…しかし、その傷から全身に毒が回り…彼の心は死んでしまうだろう】

 

「っ─!?」

アストラルの胸に空いた「穴」…それはサルガッソの戦いでベクターが開き、その後に「No.96」が突き刺さった疵…そこからカオスの毒が回り、アストラルを蝕んでいたのだ。

 

 

 

「アストラルっ……そんな事ない!アストラルは死なない!!あいつはそんな毒には負けねぇ!!」

 

【何故、そう言い切れる?…良いか?このデュエルはアストラル世界全ての者が見ている、だからこそ…はっきりしておこう…】

エリファスは1度、そこで言葉を切る…エリファスの力によってこのデュエルはアストラル世界全域に中継されていたのだ。

 

 

【君はカオスという『毒』をばら撒いたのだ!エナ達を救ったつもりでいるのだろうが…それは違う!今はいいだろう…だが、いずれ君が与えた力に飲み込まれ…彼らは苦しむ事になるだろう…!我々にカオスの力は無用なのだ!!】

エリファスは頑なに「カオス」の存在を否定する…しかし、遊馬はその言葉に反論する…!

 

「エリファス!!それは違うぜ…お前達は逃げてるだけだ!なんで戦おうとしないんだよ!!戦わないからこの世界の人達はみんな弱ってるんじゃないのかよ!?」

遊馬は知っている…「カオス」には他人を思いやる心も、命を大切にする心も混ざっている事を…カオスのない世界…それは退化も成長もない「行き止まりの世界」に他ならない…。

 

 

【…ならば、君達の世界はどうなのだ?カオスによって多くの人々は苦しみ、失敗を繰り返している…だからこそ、ランクアップできない世界なのではないか?】

 

「そんな事はねぇ!!例え失敗しても…負けてボロボロになっても!諦めずにチャレンジする!!そうだ…!オレ達の世界のみんなは、誰だって『かっとビング』できるんだ!!」

遊馬は拳を握り締めて叫ぶ、確かに人間界は「カオス」や「闇」によって幾度も戦いが起きてきた…だが、それは人々が「より良い世界」を求め、努力を重ねて来た結果…つまり遊馬が信条とする「かっとビング」をしてきたからなのだ。

 

 

【かっとビング……カオスの言葉か、君の父・九十九一馬も同じ事を言った…】

 

「父ちゃんが…!?やっぱりアストラル世界にいたんだ…!!」

エリファスの思いがけない言葉に遊馬は驚く…一馬はエリファスと面識があったのだ。

 

【そもそも…彼をこの世界に招いてしまったのが私の犯した()()()の間違いだ、彼はアストラルが地上に往く為のプログラムを勝手に変更し…アストラルを君に会わせた…九十九一馬が裏切らなければアストラルもカオスに冒される事もなかったのだ…!!】

 

「っ…!?」

アストラルと遊馬の奇跡の出会い…それは「偶然」ではなく、一馬がアストラルを導いた「必然」の出会いだった…エリファスは忌々しげにそう語る…。

 

 

「父ちゃんは…父ちゃんは何処にいるんだ!?」

 

【安心しろ、無事だ…もっとも、自由の身ではないがな…そして()()もだ…!】

 

「っ…!?エナ!アクル!!」

エリファスが空中に手を翳す…すると青い水晶の中にはエリファスの分身体に囲まれたエナや五命星…そして遊馬がカオスを分け与えた人々の姿が映し出された…。

 

 

「どうしてエナ達が…!?あいつらは関係ないだろ!?」

 

【いいや…カオスに触れた者達をそのままにする訳にはいかない…彼らの命運もこのデュエルに懸かっている、万が一…君が勝てば、この世界の価値観は変わるだろう……私に勝つ事はありえないがな…!!】

 

「オレは勝つさ…!アストラルの為に…オレを導いてくれた仲間や師匠の為に…そして助けてくれたエナ達の為に!!絶対に負けられない!!」

遊馬の双肩にさらに重圧がのしかかる…だが、遊馬は闘志を燃やす…自分を信じてくれた人々の思いに応える為に…!

 

「エリファスに出来たのなら、オレにだってできるはずだ…!この状況を覆すドロー…シャイニングドローが!!」

エリファスのドローを見た遊馬は同じように右手に力を込める…だが、遊馬の手は光を纏う事はない…。

 

 

【時間の無駄だ…君がシャイニングドローが出来たのはアストラルの力であって()()()ではない…】

 

「…それでも!オレのデッキは必ず応えてくれる!!それがデュエルモンスターズなんだ…それがかっとビングだ─!!」

エリファスの言葉を聞いた遊馬は雄叫びを上げる…確かに遊馬はただの人間かもしれない、それでも…彼の決闘者の魂は勝利を目指して突き進む!!

 

 

 

 

「オレのターン…ドロー!!…来たぜ、エリファス…!」

 

【なに…?】

遊馬は気合いと共にカードを引く、それは光の軌跡を残さぬただのドロー……だが、それは…──

 

「オレとアストラルのデッキが応えてくれた!!オレとアストラルが創り上げたカード!『RUM-ヌメロン・フォース』発動!!」

 

【なんだと!?】

窮地を脱する『デスティニードロー』となる!

 

 

「このカードはこのターン、フィールド上の表側のカード効果を無効にする!!オレは『希望皇ホープ』1体でオーバーレイネットワークを再構築!!カオスエクシーズチェンジ!!」

遊馬とアストラル…2人の真の絆が生み出した『正しきカオス』が銀河となり、大爆発を起こす!

 

 

39

 

 

「現われろ!『CNo.39』!『希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』!!」

 

【この世界を脅かすカオスの力…!!】

アストラル世界を照らす光の爆発と共に赤き希望の皇帝が降臨する!

 

 

「『ヴィクトリー』の効果発動!ORUを1つ使い!このターンバトルする相手モンスターの攻撃力をこのカードに加える!『アポビス』の攻撃力は2500…『ヴィクトリー』の攻撃力は5300だ!!ヴィクトリー・チャージ!!」

希望の皇帝が第3・第4の腕を生み出し、4本の剣を構える!

 

 

「これが、オレとアストラルが生み出した希望!!『ヴィクトリー』で『アポビス』を攻撃!ホープ剣ダブル・ビクトリー・スラッシュ!!」

 

【ぐっ…!!】

4本の剣が蛇神を粉砕…エリファスに大ダメージを与える、残りライフ…1200!!

 

 

「よし…!!これなら…【罠カード発動!『昇華螺旋(アセンション・スパイラル)』!!】なにっ!?」

アポビスを撃破し、安堵する遊馬…だが、エリファスは二の矢を用意していた…!

 

【このターンに破壊され、墓地にあるエクシーズモンスターを除外し…ランクが2つ高いエクシーズモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する!!】

 

「墓地から、ランクアップ!?」

それは見方を変えれば罠カードを使った『墓地からのランクアップ』…アストラル世界のデュエルは人間界の常識を上回る!

 

 

【私は墓地の『アポビス』を除外!現われろ!「NO」ランク8!「エーテリック・セベク」!!】

光輪を背負い、巨大な口を持った「鰐の神」が現れる!

 

 

「またランクアップを…!!」

 

【ランクアップし続ける…それこそがアストラル世界が目指す『境地』なのだ…!】

アストラル世界最強を体現するエリファス…彼はさらにその力を見せつける…!

 

 

 

 

【私のターン!墓地の「アストラルフォース」の効果発動!このカードをドローの代わりに手札に加える事ができる!】

 

「『RUM』を引き戻した!?」

 

【私は『RUM-アストラルフォース』を発動!『エーテリックセベク』1体でオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップエクシーズチェンジ!!】

 

 

 

 

【現われろ!「NO」ランク10!「エーテリック・ホルス」!!】

エリファスは再びランクアップ…「天空神」の名を持つ赤き神鳥を呼び出す、だが…まだ終わりではない…!

 

 

【私は永続魔法「ランクアップアドバンテージ」の効果発動!「RUM」を使ってエクシーズモンスターを特殊召喚した事でドローする事ができる!シャイニングドロー!!

再び奇跡の光がエリファスの望むカードを創造する!

 

 

【私が引いたのは…2枚目の「RUM-アストラルフォース」!私は「エーテリックホルス」1体でオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップエクシーズチェンジ!!】

 

「なっ…!?まさか!!」

 

 

 

 

【現われろ!「NO」ランク12!!カオスよ…その穢れた魂を高貴なる魂で浄化せよ!「エーテリック・マヘス」!!】

 

「ダブルランクアップ…攻撃力、4000…!?」

ランクアップを重ねたエリファスはデュエルモンスターズにおいて最高のランク12のエクシーズモンスター…「王の守護者」たる獅子神を呼び出した…!!

 

 

 

【さらに!再び『ランクアップアドバンテージ』の効果発動!シャイニングドロー!!

四度奇跡のドローを行なったエリファスは遊馬を倒す為の力を開放する!

 

【『エーテリックマヘス』の効果発動!1ターンに1度、ORUとなっているモンスターを全て特殊召喚できる!現われろ!「エーテリックセベク」!「ホルス」!!】

 

「一気に3体のエクシーズモンスターが…!?」

獅子神の導きによって攻撃力3000の鰐神と攻撃力3500を誇る天空神が復活する!

 

 

【さらに私は永続魔法『ランク・ドミネーション』を発動!このカードが存在する限り、ランクを持たないモンスターは攻撃できず!そして攻撃する順番はランクの低いモンスターからになる!バトルだ!「セベク」で「ホープレイヴィクトリー」を攻撃!】

 

「させるかよ─!!『ヴィクトリー』の効果発動!ORUを1つ使い!「セベク」の攻撃力を『ヴィクトリー』に加える!『セベク』は永続魔法『ランクアップアドバンテージ』の効果を受けられない!返り討ちだ!!」

遊馬はエリファスの攻撃を迎撃する…だが、それはエリファスの予測の範囲内だった…!

 

 

【永続魔法「ランクドミネーション」のさらなる効果!モンスター同士がバトルする時、ランクの低いモンスターはその差×1000ポイント攻撃力がダウンする!「ホープレイヴィクトリー」のランクは5、「セベク」のランクは8!よって攻撃力は3000ダウンする!】

 

「なっ…!?『ヴィクトリー』の攻撃力が!ぐううっ…!!」

ヴィクトリーが鰐神の大顎で咬み付かれる…だが、ナンバーズの持つ『ナンバーズとの戦闘以外では破壊されない』効果で持ち堪える…。

 

 

【ランクアップの高貴なる魂を前に…ナンバーズなど無力…!!いけ!「エーテリックホルス」!「ホープレイヴィクトリー」とのランクの差は5!よって「ランクドミネーション」の効果により「ヴィクトリー」の攻撃力は5000ダウンする!】

 

「そんなっ!!ぐあああああっ─!!」

天空神から放たれた神罰の炎と稲妻が遊馬を吹き飛ばす…残りライフは…僅か100となってしまった…!

 

 

 

 

「ぐっ…まだ、オレのライフは…残ってるぜ…!!」

 

【…何故、そうまでして戦い続ける?】

 

「決まってる、だろ…アストラルを…助ける為だ…!!」

神罰の一撃を受け満身創痍の遊馬はなんとか立ち上がり、エリファスを睨みつける…!

 

 

【…そのアストラルを見るがいい…君のライフが減った事により、彼の消滅が近付いたようだ】

 

「っ…!?アストラルを…消滅なんかさせてたまるか!!」

エリファスは水晶の中で眠るアストラルを指し示す…アストラルの体はナンバーズを賭けたデュエルの時のように明滅し始めていた…。

 

 

【九十九遊馬よ、アストラルの存在は確かに消える…だが、アストラルは()()するのだ…これまでの記憶を消去し、「バリアン世界を消滅させる」使命に従順なアストラルとして…!】

 

「そんな……そんなのは…!アストラルじゃねぇぇっ!!」

アストラルを消滅させ、創り変えると言うエリファスのその言葉に遊馬はついに感情を爆発させる!!

 

 

「どうして分かってくれねぇんだ!!誰かを守りたいとか!誰かの為に生きようって気持ちを!!」

 

【君は…アストラルを取り戻した()の事を考えているのか?】

 

「えっ…?」

遊馬の叫びを聞いたエリファスは静かに語りかける…。

 

 

【バリアンとの戦いが終わり…「ヌメロンコード」を見つけ出した時、彼の役目は終わる…()()()、君はどうするつもりだ…?アストラルと共に戦いたいという「純粋さ」はいずれアストラルを失いたくないという「恐怖」に変わるだろう、そしてそれは大きな枷となる…それが原因で君達は敗北するかもしれない、それがカオスの()()()…そんな君に我々の世界を託す訳には……いかないのだ…!】

 

「っ…!」

それはエリファスの結論…「カオス」という『喜び』も『悲しみ』も不要…不安定なモノを全て捨て去った世界…それがエリファスの望んだ世界だった…。

 

 

【この一撃で決着としよう…!「エーテリックマヘス」!「ホープレイヴィクトリー」に攻撃!!この瞬間「ランクドミネーション」と「ランクアップアドバンテージ」の効果発動!「ヴィクトリー」の攻撃力は7000ダウンし、効果は無効となる!さらばだ…!九十九遊馬!!】

 

「アストラル…オレは……オレは…!!」

再び迫る神罰の一撃…遊馬にそれを防ぐ手立ては…──

 

 

 

 

 

《クリクリー!!》

 

 

 

「虹クリボー…!?そうか!!オレは手札の『虹クリボー』の効果発動─!!」

1つだけ、残されていた!!

 

「自分が攻撃される時!手札の『虹クリボー』を相手モンスターに装備できる!そしてそのモンスターの攻撃を封じる!!」

 

【終焉の刻を僅かに伸ばしたか…】

遊馬の手札から虹クリボーが飛び出す…そしてマヘスの体に虹色の光となって巻き付き、動きを封じた!

 

 

【私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ…そしてエンドフェイズに「セベク」と「ホルス」は「マヘス」のORUに戻る】

 

「(悔しいけど…このままじゃ、勝てない…!オレに力を貸してくれ…!アストラル!!)」

遊馬は囚われたアストラルを想いながら…デッキに手をかける…!

 

 

 

「オレのターン…ドロー!!来た…!魔法カード『エクシーズ・トレジャー』を発動!フィールドにいるエクシーズモンスターは2体!よってカードを2枚ドローする!!かっとビングだ!オレ─!!」

遊馬が引き当てたのは最強のドローカード…その1枚が希望を繋ぐ!

 

 

「よし!!魔法カード発動!『ステルス・ストライク』!!このターン、エクシーズモンスターの『ヴィクトリー』の攻撃力を半分にする事で相手にダイレクトアタックができる!!」

 

【なにっ!?】

ホープ剣を構えたヴィクトリーの姿が掻き消える…半分となったヴィクトリーの攻撃力は1400、エリファスのライフを削りきる事ができる!

 

 

「モンスター同士がバトルしなければ『ランクドミネーション』の効果は発動しない!これで勝負だ!!『ホープレイヴィクトリー』でダイレクトアタック!!」

 

【その攻撃…通す訳にはいかない!罠カード発動!『ランク・ウォール』!自分フィールドのエクシーズモンスターのランクが相手モンスターより高い時!その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!】

 

「なにっ…!?」

遊馬の起死回生の一手は…バリアによって阻まれてしまう!

 

 

 

「今の攻撃も通用しないのか…!!オレはカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

【遊馬…何故、ランクアップが必要なのか君は未だに理解していない様だな…それはランクアップの先に、誰も見た事の無い()()()()()が有るからだ…!君に見せてあげよう…その奇跡の世界を…!限界を超越した化身!()()()()()のエクシーズを!!】

 

「ランク13のエクシーズモンスター…!?」

エリファスは諦めない遊馬に対し…最強の力を呼び覚ます!

 

 

 

【私のターン!墓地の「アストラルフォース」の効果発動!ドローの代わりにこのカードを手札に戻す!】

RUMを引き戻したエリファスはついに前人未到の領域に足を踏み入れる!

 

 

【デュエルモンスターズの最高レベルは12…だからと言ってランク12が頂点とは限らない!「RUM-アストラルフォース」を発動!「エーテリックマヘス」1体でオーバーレイネットワークを再構築…ランクアップエクシーズチェンジ!!】

獅子神が銀河へと飛び込み…光の大爆発がアストラル世界を照らす!

 

 

XIII

 

 

【限界を超えランクアップし続ける…!それがアストラル世界の目指すデュエルだ!!現われよ!「NO」ランク13!!秩序を制する崇高なる志よ…さらなる高みを目指し、世界をあるべき姿へ!刮目せよ…これぞ我らが意思!!「エーテリック・アメン」!!】

 

「これが、ランク13の…エクシーズモンスター…!!」

それはランクアップを目指し続けるアストラル世界の象徴…「大気の守護神」であり、ラーと習合され「太陽神」としても崇められた光の神が光臨した…!

 

 

 

【遊馬よ、ランクアップは必然の事なのだ…1つの世界が成長するには限界がある、限界の中で閉塞感や閉じた考えが蔓延り、世界を腐らせていく…その限界を超える為にはランクアップが必要なのだ!】

 

「限界を超えるって…なんだよそれ!!お前が言ってるのは『かっとビング』と同じじゃねぇのかよ!?」

 

【それは違うな、ランクアップができるのは()()()()()()()()

限界を超える為にランクアップが必要だと語るエリファス…それは遊馬の信条である「かっとビング」と同じ意味にも取れる…だが、エリファスの言うランクアップとは…選ばれなかった者達を切り捨てるものだった…。

 

 

「じゃあ…()()()()()()()()はどうするんだよ!?それがエナと一緒にいた人達の事なのかよ!あの人達はどうなってもいいってのかよ!?優等生ばかり選んで後は切り捨てる…それってみんな平等に可能性を持てないって事じゃないか!!そんな世界…オレは絶対に認めねえ!!」

エリファスの身勝手な言葉を聞いた遊馬は叫ぶ、エリファスの目指す世界は…あまりにも酷すぎると…!

 

【君に認めて欲しい訳ではない…ただ知ってほしかったのだ、最期に何も知らずに散るのはあまりにも哀れだからな…】

 

 

「……エリファス、お前は全てを知ってるつもりなのかもしれねぇ……なら、知ってるかよ!!人間界にランクアップした魂を持ってる()()()()()()()()()がいる事を!!オレとアストラルと同じ…『ZEXAL』の力を持ってる人がいるって事を!!」

 

【…なんだと…?】

遊馬の思わぬ言葉にエリファスは表情を変える、カオスに満ちた人間界に…ランクアップした魂を持つ者がいるとは知らなかったのだ。

 

 

「その人は…オレの先生は!遊海は!!何度も戦って…何度も何度もボロボロになって!それでも立ち上がって!オレ達の事を導いてくれた!そして誰も見捨てずに、例え悪人であっても手を伸ばし続けた!!あの人はだから強いんだ…!どんな逆境でも諦めないで戦い続けたからあの人は最強になれたんだ!!だから…オレも諦めない!」

 

【っ─!?】

首から下げたカルトゥーシュを握りしめながら叫ぶ遊馬…エリファスはその背後に青き巨人・赤き龍神・黄金の神鳥の姿を幻視する…!

 

 

【諦めない…か…!ならば、それを証明してみせるがいい!私は「エーテリック・アメン」の効果発動!このモンスターの召喚に成功した時!相手フィールドのエクシーズモンスターと自身のランクの差だけ、相手のデッキのカードをこのカードのORUにする!「ヴィクトリー」と「アメン」のランク差は8!よって8枚のカードをORUにする!】

 

「なっ…!?オレのデッキが!!」

アメンから放たれたエネルギーが遊馬のデッキのカードを奪い、自身の力に変えてしまう…!

 

【さらに!「アメン」の攻撃力はORU1つにつき100アップする!元々の攻撃力は5000!ORUは11個…攻撃力6100となる!そして永続魔法「ランクアップアドバンテージ」の効果により…シャイニングドロー!!】

さらにエリファスは5度目の奇跡を発動する!

 

 

【これが最後の攻撃となるようだ…「アメン」で「ホープレイヴィクトリー」を攻撃!さらに永続魔法「ランクドミネーション」の効果で「ヴィクトリー」の攻撃力は8000ダウンし…0となる!これが、ランクアップによる私と君の圧倒的な差だ…!やれ!「エーテリックアメン」!!】

 

「まだだ…オレは…諦めない!!罠カード発動!『パージ・レイ』!エクシーズモンスターの『ヴィクトリー』をリリースし、このターンのエンドフェイズにリリースしたモンスターよりランクの低いモンスターを墓地から特殊召喚する!」

 

【往生際の悪い…!ならば「アメン」でダイレクトアタックだ!!】

 

「まだだ!!墓地の『虹クリボー』の効果発動─!!」

 

【なにっ!?】

遊馬の窮地を救うカード…それは墓地に眠る虹クリボーだった!

 

 

「自分がダイレクトアタックを受ける時、墓地の『虹クリボー』は守備表示で特殊召喚できる─!!ぐあああああっ─!!」

 

《クリクリ…クリー!!》

墓地から飛び出した虹クリボーが虹色のバリアによってアメンの攻撃を受け止める…だが、あまりにも強い攻撃によって遊馬は吹き飛ばされてしまった…。

 

 

 

「すまねぇ、虹クリボー…!助かったぜ…!!」

 

【…私はこれでターンエンドだ】

 

「この瞬間!『パージレイ』の効果発動!墓地から蘇れ…!『希望皇ホープ』!!」

 

【ランクを下げてまでの特殊召喚…愚かな…!】

 

「アストラルを助ける為なら…なんだってやるさ…!絶対に負けねぇぇ!!」

満身創痍の遊馬の叫びと共に希望の戦士が復活する!

 

 

【ならば…「アメン」のさらなる効果発動!相手がエクシーズモンスターを特殊召喚した時、そのランクの差だけ相手のデッキをORUする!「ホープ」とのランク差は9!君のデッキから9枚をORUにする!そして攻撃力は7000となる!!】

 

「くっ…!!」

 

【分かったか?君は…私には勝てない…!】

 

「オレは…諦めない!!アストラル…お前はオレの人生を決めちまった…!お前は、オレの()()なんだ…!だから…オレはお前を失う事はできねぇ…!!負ける訳には…いかないんだあああああ!!」

窮地を前に遊馬はアストラルへの思いを叫ぶ…そして、勝利を求める決闘者の熱き魂が…奇跡を呼び起こす!

 

 

キィン─!!

 

 

【なっ…!?この光は!!】

 

「この感じ…!アストラル…力を貸してくれるのか!!」

遊馬の叫びに呼応するように…その右手に光が宿る、それは紛れもない奇跡の光!

 

 

「いくぜ!!最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!!シャイニングドロー!!」

光の軌跡と共に…絶望を希望に変えるカードが創造される!

 

 

【まさか…!?九十九遊馬…お前は遥かな昔、ドン・サウザンドとアストラルが戦った時の…!?】

エリファスはシャイニングドローを引き起こした遊馬を見て直感した…「九十九遊馬」という存在の起源を…!

 

 

 

「来たぜ…エリファス…!これが、オレとアストラルの絆の力だ!オレは『RDM-ヌメロン・フォール』発動!!このカードは「希望皇ホープ」をランクダウンさせ、新たな『ホープ』を特殊召喚する!!」

 

【さ、さらにランクダウンだと!?】

「ランクダウンマジック」…それが遊馬がエリファスに叩き付ける、魂の答え…遊馬の理想の形…!

 

 

「オレは『希望皇ホープ』1体でオーバーレイネットワークを再構築!ランクダウン・エクシーズチェンジ!」

光となったホープが銀河へと飛び込み、光の爆発の中から新たな姿へと回帰する!

 

 

39

 

 

「現われろ!ランク1『No.39』!希望の光、進化へと突き進む!原初の記憶を解き放て…天衣無縫の力!!『希望皇ホープ・ルーツ』!!」

それは希望の戦士が抱いた原初の光…最弱にして最優の戦士が雄叫びを上げる!

 

 

 

【愚かな…!先程の光、もしやと思ったが…私は「アメン」の効果発動!ランク1の「ホープルーツ」とのランク差は12!よって君のデッキ12枚を「アメン」のORUにする!攻撃力8200となる!!これで君のデッキは0!手札も0!ライフは僅か100!せっかくのシャイニングドローも無駄だったな…!】

 

「いいや…無駄じゃないさ…!オレの…()()()の勝利の方程式は完成してる!!」

 

【なに…?】

不敵な笑みを浮かべた遊馬はエリファスに自分の考えを叩き付ける!

 

 

「エリファス!お前は世界が限界を超える為にランクアップが必要だって言うけど…もしランクアップが必要だって言うのならそれは()()()()()()()()だ!!アストラルはお前なんかとは全然違う…いや、あいつだけじゃねえ!!遊海やカイトにシャーク…オレがデュエルを通して出会ってきた仲間全部、そいつらは全部一人一人苦しんでいた!自分自身と必死に戦っていたんだ!!」

遊馬は自分が出会ってきたデュエリスト達の事を思い返す。

 

 

弟を救う為にナンバーズを狩り続けた男がいた。

 

妹の仇を討つ為に戦い続けた男がいた。

 

子供の為に全てを捨てて走り続けた男がいた。

 

復讐の為に絆を捨てて暗躍した男がいた。

 

そして全てを救う為に命を捨てて奔走した男がいた。

…誰もが苦しみながら、より良い結果を求めて戦っていた…!

 

 

「誰でも心の中じゃ『良い心』と『悪い心』が戦ってるんじゃねえのかよ…!!でも、そこから逃げ出さなきゃ、きっとどんな事でもやり直せる!誰とだって分かりあえる!!一人一人の苦しみも見ないで…何も知らないで!本当の「ランクアップ」なんてできる訳ねぇぇっ!!」

誰にでも「欲」はあり、誰にでも「良心」はある…エリファスは「アストラル世界」全体を見ていても「そこに住む人々」を見ていなかった、例えランクアップしたとしても…誰もいない、存在しない世界など…なんの意味もない!!

 

 

 

「行っけぇ!『ホープルーツ』!『エーテリックアメン』に攻撃!!」

 

【馬鹿な!?攻撃力500のモンスターで私のモンスターに!?】

原初の希望は遊馬の抱いた光を抱え、飛翔する!

 

 

「この瞬間!『ホープルーツ』の効果発動!このカードがエクシーズモンスターとバトルする時、ORUを1つ相手に渡す事で攻撃を無効にし…このターンの間、自身の攻撃力を相手とのランクの差×100の攻撃力になる!ランク差は12…攻撃力1200だ!」

 

【その程度のパワーアップになんの意味が…!?】

 

 

「まだだ!さらにその攻撃力に相手モンスターのORUの()を掛ける!『アメン』のORUは33個…つまり33倍!」

 

【攻撃力39600だと!?…だが、攻撃は無効になっている!!】

超攻撃力を手にしたホープルーツ…しかし、そのバトルは自身の効果で無効になっている。

…失敗と思われた遊馬の一手…それは…!

 

 

「それはどうかな!!」

 

 

【なに…!?】

勝利への布石に他ならない!!

 

 

「速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』発動!モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスターはもう一度攻撃でき…その攻撃力は2倍となる!!」

 

【攻撃力…79200だとぉぉ!?】

原初の希望が魂を燃やす…『例え失敗しても、何度でも挑戦すればいい』…遊馬のかっとビングが限界のその先をこじ開ける!!

 

 

「これが!アストラルとオレが経験してきたデュエルの結晶!『ホープルーツ』の最後の攻撃!ホープ剣ルーツスラッシュ!!」

 

【これが…アストラル世界を導く、新しき「光」──】

 

 

原初の希望が歪んだ理想を両断する…それは小さな光が新たに世界を照らす「太陽」となった瞬間だった…。

 

 

 

 

エリファス LP0

 

遊馬 WIN!

 

 

 

 

 

 

「オレ…勝った、のか…?」

 

【遊馬…どうやら、()()()()は終わったようだ】

 

「エリファス…」

遊馬に敗北したエリファス…彼はどこか吹っ切れたような柔らかな笑みを浮かべていた…。

 

 

キィン…キィィン─!!

 

 

「この光は…!?」

 

【神聖なる「儀式」を経て…アストラル世界に新たな決断が下されたのだ】

王宮に世界に光が満ちていく、それはエリファスと遊馬のデュエルを見守っていた人々の「決意」の光だった。

 

 

 

 

Sideエナ

 

 

 

『みんな…遊馬が私達に力を与えてくれたように、今度は私達が遊馬に力を与える番です!』

 

『アストラルへと届けよう…我らの光を…!』

エナとアクルの言葉と共にアストラル世界の人々が自分達の力の一部…純粋な「希望の光」を解き放つ、1つ1つは小さな光…それが王宮で眠るアストラルへと届けられていく…。

 

 

 

Side out

 

 

 

アストラル世界中からアストラルに集う希望の光…遊馬とアストラルを思う希望が彼の体を蝕む毒を浄化していく…そして…。

 

 

ピキピキ…パリーン…!

 

 

「アストラル…!?」

アストラルを封じていた水晶が光と共に砕け散る…その光の中から、長き眠りから目覚めたアストラルが現れる。

 

 

(遊馬、心配をかけてすまない…)

 

「アストラル…!お前…!!」

アストラルは静かに遊馬の手を握る…。

 

 

(感じるよ…君の鼓動を…暖かな温もりを…)

 

「ば、馬鹿野郎ぉぉっ!!」

 

(遊馬…)

遊馬はアストラルに涙を流しながら抱き着く…離れてしまった絆をもう一度、結び直すように…。

 

「もう離さないからな!絶対に離さないからな!!だから…何処にも行かないでくれよ!!アストラル──!!」

堰を切ったように遊馬は泣き続ける…アストラルはそんな遊馬を優しく宥めた…。

 

 

 

………

 

 

 

 

(君の声はずっと聞こえていた…その体…ずいぶんと無茶をしたようだな?)

 

「へへっ!こんな傷、全然へっちゃらだぜ!」

ようやく泣き止んだ遊馬をアストラルが労う…傷だらけの体を見ただけでアストラルは遊馬の経験した苦労を感じ取った…。

 

 

 

ゴロゴロ…ビシャアアン!!

 

 

「っ!?なんだ!?」

 

【どうやら…再会を喜んでいる時間は無いようだ…!】

 

突然、アストラル世界に雷鳴が鳴り響く…それは新たな戦いの幕開けを示していた…!

 

 

 

 

「な、なんだありゃ!?」

 

【…バリアン世界に強大な力が蘇ろうとしている…!】

王宮のバルコニーに飛び出した遊馬達が見たもの…それはアストラル世界の果てに現れた紅い光の柱だった…!

 

 

【まさか…封印されし『バリアンの神』ドン・サウザンドが目覚めようとしているのか…!?】

 

「ドン…サウザンド…?」

 

(遥か昔…私が戦い、相討ちに近い形で倒した相手だ…!)

聞き慣れない名前に首を傾げる遊馬にアストラルが補足する…。

 

 

【アストラル、これだけの力…人間界にも影響が出ているだろう、一刻も早く地上に戻るのだ…コレを!】

 

(これは…)

エリファスは事態を察し、アストラルに人間界への道しるべとなるカードを託す。

 

 

【アストラル世界は遊馬の力によって生まれ変わったが…「バリアン世界の脅威からこの世界を救う」という君の使命は変わっていない…】

 

(必ず見つけて見せる…!私と遊馬で()()()()()を!)

 

「ああ…やってやる!」

遊馬とアストラルは決意を新たにする…!

 

 

【さぁ…往くがいい!これは餞別だ!】

 

キィン─!

 

「皇の鍵…!……あっ!?」

エリファスが遊馬の胸に手を翳す…すると失われた「皇の鍵」が復活した…。

…だが、それと同時に遊馬はアクルから頼まれた事を思い出した…!

 

 

「エリファス!最後にもう1つ、頼みがあるんだ!!」

 

【時間はあまりない…頼みとはなんだ?】

 

 

 

「アクルの仲間…五命星の最後の1人…シーカーって奴を開放して欲しいんだ!!」



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封じられし「英雄」─旅路の果てに─

こんにちは!S,Kです!

ふと小説情報を見ていたら本格投稿開始から丸三年以上経っていたり……思えば遠くまで来たなぁ…。

いつの間にかにお気に入りも600件を超えて…感想を頂いたり、評価をしてくれる方もいて……なんだかとても嬉しいです!ハーメルンの読者の皆様、本当にありがとうございます!


さて、初登場から約1年と少し…ついにあの人物の正体が明らかに…!
ZEXALの物語はここから加速していく…!


それでは…最新話をどうぞ!


「アクルの仲間、五命星の最後の1人…シーカーって奴を開放して欲しいんだ!!」

 

【シーカーを…開放、か……】

バリアンの侵攻を悟り、人間界に戻る寸前…遊馬は囚われた「英雄」の開放をエリファスに願った…だが、エリファスは困惑した表情を見せる…。

 

 

【…遊馬、君はそれがどういう意味を持っているのか…理解しているのだな?】

 

「シーカーはオレよりも先にアストラル世界を救おうとしたすげぇ奴だってエナから聞いた…それに、アストラル世界が変わったなら…」

 

【シーカーは…()()()()()()()に匹敵するカオスを内包した異端の男だ】

 

「なんだって!?」

エリファスの言葉に遊馬は驚愕する…囚われたシーカーは七皇達と同等の力を宿していると言うのだ…!

 

 

 

【……あの日、シーカーを捕らえた私は…彼を消す事を躊躇した……彼を消せば、そのカオスはバリアン世界に流れ着き…バリアン世界の力を増してしまうと考えたからだ……故に、私はシーカーを幽閉し…アストラル世界の「盾」として使う事にした…】

 

「アストラル世界の…盾…?」

 

【バリアンからの攻撃に対し、シーカーのカオスを強制的に抽出し…盾として使ったのだ…膨大なカオスを持つシーカーを自然に消滅させる為に…!!】

 

「エリファス…!!」

それはあまりにも非人道的な拷問にして処刑法……真綿で首を締めるようにエリファスはシーカーを追い詰めていたのだ…。

 

 

【…非難は甘んじて受けよう…だが、私も恐ろしかったのだ…奴の宿す膨大なカオスの力が…遊馬、これを受け取れ…】

そう言うとエリファスは小さな鍵を遊馬に手渡す…。

 

【シーカーを幽閉した牢はこの王宮の一番上にある…もし、()()()()()()()()()()()()()…その鍵で彼を開放するといい……その後はすぐに人間界に戻るのだ、こちらと人間界には僅かに時差がある…急ぐのだ】

 

「…エリファス…色々、ありがとな!!」

 

(行くぞ、遊馬!)

 

キィン─!

 

エリファスに感謝を伝えた遊馬とアストラルはその身を光に変えて王宮の天辺へと登って行った…。

 

 

【世界を脅かす危機が訪れた時、それを救う英雄が現れる…それが『ZEXAL』…頼んだぞ、遊馬…アストラル…!】

2人の背中を見送ったエリファスの兜が割れる…エリファスは希望を託した新たな光を見送った…。

 

 

 

 

 

 

「…ここが、アストラル世界の牢…」

 

(間違いない、私の記憶にも残っている)

遊馬達は王宮の天辺へと到着する…そこはアストラル世界においてもっとも「純粋」な場所…カオスがまったく存在しない場所だった。

 

 

(時間がない…急ごう)

 

「おう!」

遊馬達はシーカーがいるという牢屋の扉を押し開いた…。

 

 

 

 

「そんな…()()()()()!?」

 

(……間に合わなかった、のか…)

牢屋の中は静寂が支配していた…人の気配も無い…。

 

 

「エナ達は…まだ生きてるって、信じてたのに…!こんなのってありかよ…!!」

 

(…彼は、長い間カオスを抜かれながら閉じ込められていた……無理もない…)

アストラルは静かに目を伏せる…エリファスによって復元された「アストラル世界の記憶」…その中にはシーカーと幾度か話した記憶も残されていた…。

 

 

 

─誰だ…こんな辺鄙な…場所に来る、物好きが…カズマ以外に、いるとはな…─

 

「えっ…」

静寂の世界に囁くような細い声が響く…それは牢屋の隅にある小さな鳥籠のような檻から発せられた声だった。

 

 

(シーカー…!私だ…アストラルだ!姿を見せてくれ!!)

 

─アストラル、か……姿をみせるも、何も…()()()に、いるだろう…?─

 

(シーカー…貴方は…!!)

 

「嘘、だろ…?」

アストラルは鳥籠を注視する…その中に、ホタルの光よりも幽かで朧げな小さな光が浮かんでいた…その光はカオス欠乏で苦しんでいたアストラル世界の人々よりも弱々しかった…。

 

 

 

─ああ…消える前に、もう一度…お前の顔を、見れて良かった…見違えたな…─

 

(シーカー…!私は貴方を助けに来た!エリファスが貴方を許したのだ…!)

 

─エリファスが……そうか、お前か…アストラル世界に新たな「光」を灯したのは…─

途切れ途切れの弱々しい声が遊馬に問いかける…。

 

 

「ああ…!オレは九十九遊馬!父ちゃんの…一馬の息子だ!!」

 

─…カズマの……そうか、奴め……根拠のない、嘘を吐いたと思ったが……よもや、にんげんが…このせかい、に、くる…とは……

 

「っ!?不味い!!」

遊馬は光の玉…シーカーの存在が薄れていくのを感じ、慌てて手にしていた鍵で鳥籠を開け放つ!

 

 

「シーカー!オレの手に触ってくれ!オレのカオスを…」

 

─もう、いいんだ……()()()には、もう逢えない……おれには…この旅は、長すぎた……─

 

「ふ、ふざけんじゃねぇぇっ!!」

静かに消えようとするシーカーに遊馬が叫ぶ…!

 

 

「どうして…どうして自分勝手に消えようとするんだよ!!エナも…アクルも!ガクルもパリダもデクルも!!ずっとお前の無事を祈ってたんだ!!あの人達を放っておいて…なんとも思わないのかよ─!!」

 

(遊馬…)

それは遊馬の魂の叫び…遊馬は知っている、アストラルを失った時の喪失感を……再び逢えた時の嬉しさを…!

 

「勝手に…自分の命を諦めるんじゃねぇぇ!!」

 

 

─アクル…エナ………そうか、オレの…帰る、場所は……すまなかった…─

そう言うとシーカーは遊馬の手に触れた…その時だった…!

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

「えっ…!?」

 

(遊馬!?)

シーカーが遊馬に触れた瞬間、真紅の閃光が牢屋を埋め尽くす…それと共に遊馬はストンと尻餅をついてしまった…。

 

 

「か、からだの…力が、抜けて……なんで…?」

 

 

『…すまない、オレという存在は…だいぶ()()()いたらしい…』

遊馬のカオスを根こそぎ吸収したシーカーは実体を取り戻す…その姿は白いロングコートを纏う、白い髪の若い青年だった。

 

 

 

『感謝する…ユウマ、カオスが消えかけた事で弱気になっていたらしい…』

 

「はは…元気になったなら、良かったぜ…(あれ…?何だか…懐かしいような…?なんだろう、この感じ…?)」

遊馬に感謝を伝えるシーカー…遊馬はその姿に奇妙な懐かしさを覚えていた。

 

 

(シーカー…とりあえず、貴方のカオスを少し遊馬に分けてほしい…我々はすぐに人間界へ戻らねばならないのだ)

 

『…バリアン達が動いたか…すまなかった、すぐに余剰エネルギーを………ユウマ、その()()()はなんだ?』

 

「えっ…?」

力を取り過ぎた事を自覚したシーカーは遊馬へと力を返そうとする…その時、彼の目は遊馬の下げていたカルトゥーシュへと止まった。

 

 

「これは…オレの師匠がお守りに持たせてくれたんだ!」

 

『……見せてくれ』

 

「あ、うん…大事なモノだから丁寧に頼むぜ…?」

遊馬は銀のカルトゥーシュをシーカーへと手渡した…その瞬間!

 

 

キィン─!!

 

 

ドクン!!

 

『ぐっ…!?』

 

「遊海のカルトゥーシュが!?」

 

(これは…()()している!?)

シーカーがカルトゥーシュを手にした瞬間、強い光が再び部屋を埋め尽くした…そしてシーカーは突然の頭痛に頭を押さえ…───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『友よ…貴方に『善知の悪魔(ラプラス)』の名を授けます…善を知り、善を為し…それでも…私の『使命()』に殉じてくれる貴方に……』

 

 

『ならば…オレはお前に「Z-ONE」の名を与えよう…純粋な「人間」として、この世界に生き残った最後の1人(Z)となったお前に…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【言ったであろう…「貴様の心が折れた時に世界を掌握する」と…さぁ我の手先となるがいい…】

 

『…断る、オレは…まだ折れてはいない…!』

 

【貴様…!】

 

『この時代は滅びた…しかし、過去を変えれば…未来は…ミドリは救われる可能性がある……そのためならオレは闇を受け入れよう、我が糧となれ!ダークネスゥゥゥ!!!』

 

【なにっ!?き、貴様な、何を…!?オ…オオオオ!!?】

 

 

ミドリ…お前の遺志は無駄にはしない…闇へ堕ち果てようと…この世界を救おう…!我が罪を償う為に…オレは全てを踏み躙ろう…!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ラプラス、今こそ…お前を開放してやる!!バトル!「SNo.0ホープ・ゼアル」で「創星神tierra」を攻撃!受けてみろ!未来を切り拓くのは縦横無尽なる希望の力!これが新たな未来の天地開闢!ホープ剣ZEXALスラッシュ─!!」

 

『あ、ああ…希望…全てを照らす…光…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ、うう……ダークネスを、抑えきれない…このままじゃ…この世界、まで…………すまない、Z-ONE……オレを、殺してくれ…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バトル…!「時械神サンダイオン」で「アポクリフォート・キラー」に攻撃!「サンダイオン」はバトル終了後に相手に4000ダメージを与えます…眠りなさい、ラプラス…救済の夢の中で…!!』

 

『…それでいい…お前の覚悟、見せて貰ったぞ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラプラス!だめよ!!しっかりして!!」

 

『…お前は……そうか、シェリー…シェリー・ルブランか…ようやく…思い出した、永く生きていると…忘れ、ぽく…なるな……』

 

「ラプラス!!ダメ!死んじゃだめ…!」

 

『…そういえば…馬鹿な約束をした事が、あったな…すまないが諦めて…くれ、俺には…待ってくれている…大切な人が…いるんだ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……不動遊星、1つだけ…俺の問いに…答えてくれ…』

 

「っ…なんですか、ユウミさん…!」

 

『…オレは、未来を救う為にお前達にとっての「悪」を為した…しかし、それは未来にとっての…「善」となる…はずだった……遊星…オレのしてきた事は…なんだったんだろうなぁ…』

 

 

「……貴方は…未来を切り拓こうとしただけだ、貴方のした事は大きな罪だ…それでも貴方は…オレ達に希望を繋いでくれた…!決して無意味なんかじゃない!!」

 

 

『…ありがとう遊星、やはり…お前は変わらないな…遊星、未来を導くお前達に未来を…希望を託す…!世界を…未来を、救ってくれ…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『すまない…我が友よ………先に、いく……やっと逢える…な──ミド、リ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン!

 

 

 

 

 

 

『は、はは……はははは…はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは─!!!!』

 

「な、なんだ!?」

 

(シーカー!?)

突然、シーカーは狂ったように笑い始める…だが、その目からは大粒の涙が溢れていた…。

 

 

 

『遊星!!遊海!!お前達はやり遂げたのだな!?破滅の未来を回避し…世界を正しく導いた!!ああ…こんなに嬉しい事はない…!見ていたか!Z-ONE!!オレ達の警鐘は…確かに未来を救ったんだ!!ははは…ははははは!!!』

 

「いっ、いったい何がどうしたんだ!?」

先程までの様子からガラリと変わったシーカーは叫ぶ…その叫びと共に膨大な「正しいカオス」の力がアストラル世界を覆い尽くしていく…!

 

 

(シーカー…まさか…貴方の、正体は…!?)

 

『……それ以上は言うな、アストラル…既にオレの「物語」は終わった……これから紡ぐべきなのはお前達の「物語」だ…』

シーカーは何かに気付いたアストラルの言葉を制す…そしてカルトゥーシュを遊馬へと手渡した…。

 

 

()()…ありがとう、お前のおかげでオレは大切なモノを取り戻す事が出来た…これはせめてもの礼だ』

 

キィン─

 

「あっ…傷が…!」

穏やかな表情に戻ったシーカーが遊馬へと光を放つ…それによって遊馬の傷は治り、体力も全快した…!

 

 

『余計な寄り道をさせてすまなかった…さぁ、人間界へと向かえ!最高の物語を紡ぐ勇者よ!!』

 

「な、なんだかわからねぇけど…ありがとうシーカー!エナ達によろしくな─!!」

 

(戦いが終わったら、また話を聞かせてくれ…世界を背負った「闇の英雄」よ!)

 

キィン─!

 

『フッ…「闇の英雄」、か…オレをそう呼んだのはお前か?遊星…』

赤と青の閃光となって人間界へと向かう遊馬とアストラル…シーカーはその背中を見送った…。

 

 

 

 

 

 

 

『そして…カルトゥーシュが教えてくれた…!ようやく、()()()()()…!なんで、お前がそっちにいるんだ…!?』

シーカーは静かにバリアンの赤い柱を睨んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつ…あっという間にこの世界を変えちまったな〜」

 

「あの子…大きくなったわ…!」 

 

「ああ…!遊馬はもっともっと大きくなるぞ!」

アストラル世界の空を翔ける2つの流星…それを見守るとある夫婦の姿があった…。

 

 

「一馬さん…あの子はもっと大きくなるわ…!」

 

「ああ、なんたって…()()()()俺達を選んでくれたんだからな…未来…!」

姿を見せる事なく、2人の背中を見送る2人の親…2人は優しく笑っていた…。

 

 

「さぁ…!行ってこい!遊馬!!」

一馬の激励が遊馬の背中を押すように、アストラル世界に響いた…。



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Mr.ハートランドの大反乱〜勇者の帰還〜

こんにちは!S,Kです!

えっと、あの…この数日でお気に入り登録してくれた方が10名以上増えてるのですが…えぇ…?(困惑)

…み、みなさまの期待に応えられるように頑張らないと!!


アストラルを救い出し、アストラル世界を変えた遊馬…一方その頃、人間界にはバリアンの魔の手が伸びていた…!


それでは…最新話をどうぞ!


『臨時ニュースをお伝えします!現在、日本を含めた世界各国で一斉に暴動が発生しています!情報によりますと空から落ちてきたカードを手にした人々が──……』

 

 

「また暴動か…」

 

『この数日、世界中で起こってるね…今日の朝からハートランドでも…』

 

 

そこはアークライト兄弟が拠点とする潜水艦、そこでⅢとⅤ、そして遊馬と小鳥を除くナンバーズクラブの面々は遊馬の帰りを待ちながら臨時ニュースを聞いていた。

 

遊馬がハートランドを離れた翌日、世界中で同時多発的に暴動が発生し始めた…その影響はハートランドにも及び、遊馬を心配した彼らは一番情報が集まるであろう潜水艦で待機していたのだ。

 

 

 

「いったい、原因はにゃんなの…?」

 

『どうやら…原因は「ナンバーズ」のようです…これを見てください』

 

「「「ナンバーズが…?」」」

潜水艦の舵を握るⅢが暴動の映像を拡大する…暴動に参加している人々の手には赤紫色の光を放つカードが握られていた…。

 

 

『遊海さんによると…「何者かがナンバーズの『偽物』を作り、人々の『負の感情』を刺激している」と言っています……その影響を受けている人数は百万人近いと…』

 

「に、偽物のナンバーズが…100万枚!?」

Ⅲの言葉を聞いた等々力が驚愕する…。

 

 

『本当ならあり得ない話だが……十中八九、バリアンの仕業だろうな…お前らは()()()()()を拾ってないだろうな?』

 

「ひ、拾ってニャイわ!」

 

「僕も!」

 

「オレもだ!」

 

「オイラも拾ってないウラ!」

 

『なら良いが…』

Ⅳの問い掛けにナンバーズクラブの面々は首を振った。

 

 

「それより…遊馬はどうなったウラ!なんの連絡もないウラ!」

 

『Ⅴから「連絡するな」って言われてるんだ…バリアンの事を警戒してな』

徳之助が遊馬の行方を訊ねるがⅣはため息をつく…バリアンからのハッキング対策でⅣ達からは連絡が取れなかったのだ…。

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

『噂をすれば…!兄様達が帰って来たようです!』

潜水艦のレーダーが反応を示す、それはⅤ達の乗る輸送機の反応だった…彼らは合流するべくハートランドの港にあるカイトの研究所へと向かった…。

 

 

 

一方、その頃…

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「バトル…!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』で『No.66覇剣甲蟲マスター・ソード・ビートル』を攻撃!勝利へ導く決着の剣(デュエル・カリバー)!!」

 

『うわあああ!!』

  

 

 

「バトルだ!『E・HEROネオス』で『No.85デンジャラス・ボックス』を攻撃!さらに手札の『オネスト』の効果発動!『ネオス』の攻撃力に相手モンスターの攻撃力を加える!いっけぇ!オネスティ・ネオス・フォース!!」

 

「きゃあああ─!?」

 

 

 

「く、くそ…キリがない…!!」

 

「先生…!無理しないで休んでくれ!()()先生じゃ…!」

 

「大、丈夫……幸いにも、洗脳された人々はそこまで強くない……少しでも、人々を開放するんだ…!!」

 

「先生…!」

ハートランドの暴動現場…そこではメタルナイトとなった遊海と十代が「偽りのナンバーズ」に支配された人々を前に奮闘していた…翠と瀬人は別の場所で人々の避難を手伝っている…。

 

 

《マスター…今は()()()()()()()()を受けています…!回復を!》

 

「くっ…我ながら、考えが浅かった…!うぐっ…!!」

ハートランド降りそそいだ無数のナンバーズ…それを前に遊海は人々の手に渡る前に消し飛ばしてしまえば被害を押さえられると考えた…だが…──

 

 

 

 

 

……………

 

 

 

「遊海さん…」

 

「ナンバーズはナンバーズでなければ破壊できない…なら、俺のナンバーズで粉砕する!!絶望祓う希望の剣(デュエル・カリバー・ホープ)─!!」

翠が見守る中…渾身の力を込めた光の斬撃がハートの塔の頂上から放たれる、それは降りそそぐナンバーズを確かに斬り裂いた…だが…。

 

 

ギィン…バリバリバリ!!!

 

 

「なっ!?ぐああああああああっ!?!?

 

《マスター!!!》

 

「遊海さん!!」

 

斬り裂かれたナンバーズのエネルギーが赤雷となって遊海を焼き焦がす…遊海は全身から煙を吐きながら倒れ込んでしまった…。

 

 

「がっ…おれ、対策は……万全って、訳か……ベクター、め……」

 

「ゆ、遊海さん!す、すぐに治療を─!!」

ベクターに対する悪態をつきながら遊海は意識を失った…。

 

 

 

 

………… 

 

 

 

ギィン─!

 

 

《っ…!空間質量の変化を確認…!バリアン世界と人間界の融合が始まりました!!》

 

「ついに、始まったか…!!十代!これからのデュエルは全て命懸けになる…!気をつけろ!!」

 

「わかったっ…!!」

アヤカの言葉と共にハートランドの空を赤紫色の雲が覆っていく……ハートランドの……人間界とバリアン世界の長い戦いがついに始まった…!

 

 

 

Sideout

 

 

 

Sideナンバーズクラブ&アークライト兄弟

 

 

 

「ゆ、遊馬を送り出した『次元の扉』が…閉じた!?」

 

「ど、どうして!?それじゃあ遊馬は!!」

 

「もう、戻って来れない…ウラ…?」

 

『…わからない…』

 

カイトの研究所は重い空気に包まれていた、輸送機に乗って帰って来たのはⅤ・カイト・小鳥の3人だけだった。

遊馬を送り出したカイト達は装置の前で遊馬を待ち続けた…だが、アストラル世界で行われていたエリファス対遊馬のデュエルによる膨大なエネルギーの逆流によって装置が限界を迎えて爆発…カイト達はその直前に苦渋の決断をし、脱出したのだ…。

 

 

「そ、そうです!遊海さんに頼めば…!遊海さんの精霊にアストラル世界へ…!!」

 

『それは…難しいだろう、あの人は暴徒の対応で手一杯のようだ…それに、バリアンが動き出した状況で1番の戦力が人間界を離れるのは危険すぎる』

 

「っ…そう、ですね……」

等々力の提案をⅤが退ける…ニュースでもメタルナイトやKC、警察が必死に暴動を押さえる為に奮闘している様子が映し出されていた…。

 

 

 

「遊馬…やだ…帰ってこないなんてやだぁ!!」

 

「…大丈夫よ、キャッシー…遊馬は…遊馬は絶対に帰ってくるわ…!」

 

「小鳥…」

遊馬の退路が断たれた事を知ったキャッシーが泣き始める…だが、それを小鳥が慰める。

 

 

「今までだって、必ず無事に帰ってきたじゃない…!」

 

「そうだな…!アイツは悪運が強いからな!!」

涙を浮かべながらも遊馬を信じる小鳥、その言葉に鉄男も頷く!

 

「アイツは帰ってくる、アストラルを連れてな…」

そしてそれは脱出の判断をしたカイトも同じ…カイトは遊馬の運の強さを信じていた…。

 

 

 

 

【美しい…美しい…!実に美しい友情デスねぇ…!】

 

 

 

「「『っ!?』」」

 

「Mr.ハートランド!?」

突然、カイトの研究室のモニターが切り替わる…そこに映し出されたのはバリアンの手先となったMr.ハートランドだった!

 

 

『どうやってこの場所が…!』

 

【クフフ…もうキミ達が九十九遊馬と再会する事は永遠にありない…!さぁ、外に出てくるがいい!!】

 

「くっ…外に出るぞ!!」

カイト達は逃げ場のない屋内にいる事を避け、外に飛び出した…!

 

 

 

【ボンジュール!皆様…ゆっくり思い出話をしたいところですが…そうもいかないようです…】

 

「ハートランド…!!」

ハートランドの港…その荷物用タワークレーンの上でハートランドは不敵な笑みを浮かべる…!

 

 

【さぁ、それではご注目…!イッツ…ショータイム─!!】

 

ギィン─! ピッシャァァン!!

「なっ…!?」

 

「なんなの!?」

ハートランドの言葉と共にハートランドの空が赤紫に染まり、赤雷の柱が海に立ち上がる…それはバリアンの最終作戦の始まりを意味していた…!

 

 

ズン─!!

 

 

『ぐっ─!?』

 

「か、体が…重い…!?」

 

《空間質量の変化を確認!あの光はバリアン世界のエネルギーでアリマス!!》

 

「なん、だと…!!」

突然、重量が増したように体が重くなるカイト達…さらにオービタル7の観測結果に驚愕する…!

 

 

『もしや…あれは人間界とバリアン世界を繋ぐモノなのか!?』

 

大・正・解!!賞品はあの世への永遠の旅…!団体様にてご招待しましょう!トウッ!】

Ⅴの言葉を肯定したハートランドは彼らの前に着地する…!

 

 

「貴様…どうやって此処を突き止めた…!」

 

【フフッ…この私を誰だと思ってるんだね?Dr.フェイカーが所有している建物は全て知っているのさ……さて、冥土の土産に何が起きているのか教えてやろう…!】

カイトの問いに答えたハートランドは嬉々として語り始める…!

 

 

 

【全ては我々がこの世界に配ったナンバーズの効果…!心に人一倍欲望を持ち、それを抑えきれない…そんな心の弱い者に「偽りのナンバーズ」は引き寄せられる…そしてナンバーズを手にした人々の負の心は増幅され、感情のコントロールができなくなり……最後にはドス黒いエネルギーとなってバリアン世界と人間界を繋ぐパイプに吸い込まれる…!そして次元の異なる2つの世界を引き寄せる力となる!つまり…人間界はバリアン世界と融合するのだよ─!!】

 

「「『なんだって!?』」」

ハートランドの言葉と共に無数の光が赤雷の柱に吸い込まれていく、それは偽りのナンバーズを手にした人々の末路……彼らはバリアン世界と人間界を繋ぐ「人柱」にされてしまったのだ…。

 

 

『そんな事をして…狙いはなんだ!!』

 

【それは──】

 

「想像はつく、バリアン世界がこの世界を飲み込み融合すれば…ハルトがやっていたようにアストラル世界への攻撃が可能になる…!」

 

【わ、私のセリフを取るな─!!】

カイトがバリアンの目的を言い当てる…バリアン世界とアストラル世界は共に高次元にある異世界…それ故にお互いに直接干渉する事ができなかった…。

しかし、カオスに溢れた人間界を融合させバリアン世界の力を高める事でアストラル世界に攻撃しようとしているのだ…!

 

 

『確かにこのままでは、我々の世界がバリアン世界に飲まれ()()する可能性もある…!』

 

【安心するがいい…どうせ、間もなくみんな()()()のです…!反抗している者達も…忌々しい白波遊海も!誰も逃れる事はできない!!何故ならこの世界ごと消えるのだから!だが…その前に!皆様が持つ本物のナンバーズは全て頂戴するとしましょうか…!!】

滅びゆく人間界を前にハートランドは醜悪な笑みを浮かべる…!

 

 

「貴様の思い通りにさせん…!ナンバーズが欲しいなら、腕ずくで奪ってみろ!!」

 

【カイト…ああ…言われなくても!!お前からは腕ずく力ずくで叩きのめすつもりだ!!ナンバーズハンターにしてやった恩を忘れた裏切り者が!!】

ハートランドの前に立ち塞がるカイト…その姿を見たハートランドは激昂する…!

 

「貴様に恩などと…虫酸が走る…!第一、貴様のような雑魚の配下になった覚えはない!このコソ泥が!!」

 

【黙れ…黙れ黙れ黙れぇぇ!!デュエルだああああ!】

 

「望むところだ!!」

Mr.ハートランドとカイト…因縁深い2人のデュエルが始まる…!

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

デュエルダイジェスト カイト対Mr.ハートランド

 

 

 

ドクン…!

 

 

「っぐ…!?(な、なんだ…この痛みは…!?)」

デュエルが始まる寸前、カイトの体に激痛が襲いかかる…突然の事にカイトは膝をついてしまう…!

 

【苦しいだろう?カイト…!この世界は()()()()()()に成りつつある…つまり!地上の全てが「バリアンズ・スフィア・フィールド」となるのだ!!特に…デュエルをする者には強く影響し…身体的苦痛を味わう事になる!】

カイトの苦しむ様を見たハートランドは嬉々として原因を語る…バリアンの力は人間にとっては劇薬になってしまうのだ…!

 

「くっ…貴様相手には、手頃な…ハンデだ…!」

カイトは苦しみに耐えながら立ち上がる…!

 

【では…ハンデついでに先攻も貰うとしようか…!私のターン!!】

卑劣な盤外戦術を仕掛けるハートランド…彼はベクターから与えられた『力』を開放する…!

 

 

01 

 

 

【私はレベル8となった『インフェクション・フライ』3体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!現われろ!「No.1」!ダークなハートがファンタスティックに木霊する…アメイジングな蝿の王!『インフェクション・バアル・ゼブル』!!】

 

『な、No.1だと!?』

 

「なんであんな奴が!?」

ハートランドのフィールドに現れるのは『蝿の王』たる悪魔…その数字は『1』、全100枚存在する本物のナンバーズ…その中でも始まりの『1』と終わりの『100』は特別な数字に他ならない…!

 

 

 

【驚きのあまりに声も出ないか?全てのナンバーズの頂点!ナンバー1!出席番「それが、どうした?」…声も出まいと言ってるそばから声を出すなあああ!!

「No.1」を自慢するハートランドだが…カイトはそこまで動揺していないのであった…。

 

 

 

 

 

『クハハハ…!どうやら()()()()は揃ったなぁ…!』

一方その頃…ドン・サウザンドの居城…そこでデュエルを見物していたベクターは愉快そうに笑っていた…。

 

 

 

 

【カイト…貴様には恐怖の制裁を下してやる!!「バアルゼブル」の効果発動!特殊召喚された時、相手のエクストラデッキのカードを1枚墓地に送る!カイト…貴様のエクストラデッキには「No.2蚊学忍者シャドー・モスキート」があるはずだ…!】

 

「…『シャドーモスキート』だと…?」

 

【貴様らが私の仲間・蚊忍者から奪ったナンバーズだ…!忘れたとは言わせんぞ!】

ハートランドが指定したのはバリアンの刺客・蚊忍者が遺したナンバーズ…カイトはそのナンバーズを遊馬に渡す事なく所持していた…。

 

 

【私はその『シャドーモスキート』を墓地に送る!!】

 

ギィン─!!

 

「なにっ…!?ぐ、ぐあああああ!?!?」

 

《か、カイト様─!?》

ハートランドがカードを宣言した瞬間、カイトのエクストラデッキから禍々しい闇が溢れ出す…そしてカイトに耐え難い激痛を与えた…!!

 

 

 

Sideベクター

 

 

 

『ギャハハハハハ!!そうさ!!あいつらがバリアンの刺客から回収したナンバーズは全て「偽物」よぉ!!』

バリアン世界…水晶を通じてデュエルを見ていたベクターはカイトを嘲笑う…ⅢやⅣ、カイトの回収したナンバーズは「囮」だったのだ。

 

『偽のナンバーズは一度入れられ根を張ると…引っこ抜かれる時にバリアンズスフィアフィールドのエネルギーが普通にダメージを受けた時の数倍発生するのさ!!人間にとっては()()()()()()大ダメージさぁ!!ギャハハハハハ!!』

ベクターはダメージを受けて倒れ込むカイトを見て笑う…その時だった。

 

 

キィン……パン!! 

 

 

『この光は…バリアン七皇の緊急召集の合図…?まったく…いい所なのによぉ…』

バリアン世界の空に打ち上がったのは黄緑の光……七皇召集の合図を受けたベクターは渋々七皇の城へと向かった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

「(な、なんだ…!!今の衝撃と痛みは…!?)」

 

【ふはははは!!どうだカイト!痛かろう…苦しかろう…!!私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!】

突然の激痛に倒れ込むカイト…ハートランドはその様子を見下しながらターンを終えた…。

 

 

「ぐっ…うう…!!」

 

【ほう…立ったか、そうでなくてはつまらん…!】

カイトは痛みを堪えながらふらふらと立ち上がる…だが、ライフは減っていないのに…既に体は満身創痍だった…。

 

 

 

「オレの、ターン……ドロー!!儀式魔法『光子竜降臨』を発動!!手札のレベル4『フォトン・チャージマン』を墓地に送り、儀式召喚!現われろ…!『光子竜の聖騎士(ナイト・オブ・フォトンドラゴン)』!」

カイトのフィールドに青い炎が灯る…その中から白い鎧を纏う竜騎士が現れる!

 

「そして…!『光子竜の聖騎士』をリリース!デッキから現われろ!光の化身…『銀河眼の光子竜(ギャラクシー・アイズ・フォトン・ドラゴン)』─!!」

竜騎士がその身を光に変える…その光に導かれるようにカイトの魂のカード…ギャラクシーアイズが降臨する!!

 

 

 

「バトルだ!『光子竜』で『バアルゼブル』を攻撃!」

 

【忘れたのか?カイト!ナンバーズはナンバーズでしか……はっ!?】

 

「貴様こそ忘れたのか?ギャラクシーアイズは最強の『エクシーズキラー』だ!!バトルする時『光子竜』の効果発動!このモンスターがバトルする時、お互いのモンスターはバトルフェイズが終わるまで除外される!!」

 

【し、しまった!!】

ギャラクシーアイズはエクシーズキラーとしての能力を発揮…ナンバーズを異次元へと連れ去る!

 

「この時…除外したのがエクシーズモンスターだった時、ORUは全て墓地送られ…フィールドに『光子竜』が戻って来た時!その攻撃力は墓地に送られたORU1つに付き500…つまり1500アップする!!」

フィールドに帰還したギャラクシーアイズがORUを吸収…その輝きを増す!

 

 

「貴様のナンバーズはORUが無くては効果は使えまい!!」

 

【ノ…NOォォォ─!?】

力を奪われた蝿の王を前にハートランドは頭を抱えて座り込む……しかし…。

 

 

【……なぁんちゃって♪】

 

「むっ…?」

ハートランドは不敵に笑いながらカイトを睨む…。

 

【カイト…勝利の方程式は()()私にある…!】

 

「ハッ…アストラルの口真似か?オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

不敵に笑うハートランド…その真意は…。

 

 

【さぁ…地獄のショータイムだ!!】

 

 

 

 

【私のターン!!さぁ…いくぞ!!「バアルゼブル」の効果発動!1ターンに1度、相手の墓地のナンバーズをORUにできる!!】

 

「な、なにっ!?」

ハートランドは奥の手を発動…カイトの墓地から「シャドーモスキート」を()()()()()、それは─…

 

 

ドクン!!

 

「ガッ…!?」

再びカイトに激痛を与える…!

 

 

【苦しいか?だが…サレンダーなぞ認めんぞぉ?】

 

「きさま、相手にサレンダーなど……死んだ方がマシだ!!」

 

【ならば…望み通りにしてやる!!】

激痛に耐えながら誇り高く戦うカイト…ハートランドはそれを嘲笑う…!

 

 

【「バアルゼブル」の効果発動!ORUを1つ使い!相手フィールドのカード1枚を破壊!さらにそれがモンスターカードなら…その攻撃力分のダメージを与える!!私は「光子竜」を破壊する!!】

 

『ま、まずい!!「光子竜」の攻撃力は4500!カイトは一撃でやられてしまう!!』

ハートランドはカイトの手を読んでいた、激痛の中カイトは短期決戦を選ぶ…それを見越した布陣だったのだ…!

 

 

「くっ─!!罠、発動…!『プリベント・ドロー』!!効果ダメージが発生する時、そのダメージを半分に、する…!!」

カイトは咄嗟にリバースカードを発動…虹色のバリアがカイトへのダメージを受け止める、しかし…ギャラクシーアイズは赤黒い光線に粉砕され、その衝撃…さらにバリアンフィールドのダメージがカイトへと襲いかかり…!

 

 

バキバキ…バリーン…!

 

 

「ぐ、ぐああああああああ!!?!」

 

《カイト様!!》

カイトの絶叫とオービタルの悲痛な叫びが木霊する…ハートランドは外道な手段を使い、カイトを肉体的に追い詰める…!

 

 

 

【なんたるパワー…!これがベクター様仰った『No.1』の力か!!】

 

 

『っ…まさか…!Ⅲ!Ⅳ!バリアンから回収したナンバーズを捨てろ!何かある!!』

 

『『っ!?』』

ハートランドの言葉…さらにカイトがダメージを受ける様子を見たⅤは弟達にナンバーズを手放すように伝える…すると……。

 

 

ドクン!!

 

『『がっ!?』』

 

『い、今の、痛みは…!?』

ナンバーズを手放したⅢとⅣに凄まじい衝撃が襲いかかる…そして2人の手を離れたナンバーズは…!

 

 

【おやおや…ナンバーズを捨てるとはもったいない…!】

導かれるようにハートランドの手に収まった…!

 

ギィン─!

 

【おおっ!!チカラ…ナンバーズの力が溢れてくる!!】

ナンバーズに込められたカオスがハートランドを包み込む…!

 

 

「ぐ、う……『プリベントドロー』が、効果を発動した時…カードを、ドロー…で、き……あっ……」

 

《か、カイト様!!》

 

『カイト─!!』

オービタルとⅤが叫ぶ…バリアンの力によるダメージに耐えきれなかったカイトは…ついに意識を手放してしまった…。

 

 

【ふははははは!!これで、次のダイレクトアタックで終わりだあああ!!バトル─!】

倒れ伏すカイトを前に笑うハートランド…攻撃を宣言しようとした…その時!!

 

 

 

「そこまでだ!悪党─!!」

 

 

【なにっ!?】

 

「えっ─!」

港に快活な声が響く…それとともに赤紫の雲に覆われたハートランドの空に希望の光が顕現する!!

 

 

キィン─!

 

キィン─!

 

 

港を埋め尽くす閃光…その中から2人の勇者が現れる!

 

 

「遊馬…!アストラル!!」

 

「応!!小鳥!今帰って来たぜ─!!」

小鳥の声に応えるのは希望の勇者…遊馬とアストラルが人間界へと帰還した!!

 

 

 

【ば、馬鹿な…!?戻って来たというのか!?】

 

「遊馬…!信じてたにゃん!!」

 

「とどのつまり…万々歳です─!!」

 

「よ、良かったウラ…!!」

 

『遊馬…!アストラルも…!本当にやり遂げたんだ!!』

思わぬ勇者の帰還にハートランドは動揺…しかし、仲間達は遊馬達の帰還に歓声を上げる!

 

 

「みんな!心配かけたな!!」

 

(…遊馬、カイトを…!)

 

「っ!カイト!?しっかりしろ!!」

仲間達に手を振る遊馬…だが、アストラルの言葉で倒れ込むカイトへと駆け寄った…。

 

 

「ぐっ……遅かった、な…愚図め…」

 

「…すまねぇ…!!」

遊馬の呼び掛けに応えたカイトは再び気を失う…その表情は安堵の笑みを浮かべていた…。

 

 

カイト 決闘続行不可能(リタイア)

 

 

『遊馬…カイトは任せろ…!』

 

「Ⅴ…!頼む…!!」

Ⅴがカイトを抱き上げて下がる…遊馬はその姿を見て怒りを燃やす!

 

 

 

「許さねぇ…!!貴様だけは絶対に許さねぇ!ハートランド!!」

 

【フッ…ならば、どうする?】

 

「このデュエル…オレ達が引き継ぐ!!」

カイトはハートランドへと啖呵をきる…奇しくもそれはかつてミザエルと遊馬が戦った時と同じ状況だった…!

 

 

【愚かな…自ら残りライフ1750のデュエルを引き継ぐなんてなぁ…!!手間が省ける…!オオォォォ!!

負けデュエルを引き受けた遊馬を嘲笑うハートランド…彼はその姿を怪人体…醜悪な蝿怪人へと変化させる!

 

 

【これで…私の七皇入りは確定だ!!】

 

「それがお前の本当の姿か…!!いくぜ─!!」

怪人となったハートランドへと遊馬とアストラルは立ち向かう…!

 

 

 

 

 

 

Sideバリアン

 

 

 

『待たせたなぁ…どうしたんだ?緊急召集なんてかけてよぉ…』

その頃、ベクターはバリアン世界の王城へとやって来ていた…そこにはドルベ・アリト・ギラグ・ミザエルの七皇達が揃っていたが…それだけではない…!

 

 

「久しぶりね、ベクター…」

 

『アン…?誰だ…?』

城に凛とした女性の声が響く、それは七皇達の控える広場の上…玉座から聞こえてくる…!

 

「お忘れかしら?薄情な事ね…私達の事を忘れるなんて…」

 

『(こ、この声はメラグか…!?それじゃあ、その隣にいるのは─!?)』

声の正体に気付いたベクターは玉座を見上げる…薄暗い玉座…そこには2人の人影があった…!

 

 

『(な、ナッシュ!?生きていたのか!?という事は……)』

 

「…どうした、ベクター…彼らは地上にいたのだ、人間に姿を変え『神代凌牙』と『神代璃緒』として…!」

 

『なっ!?凌牙と璃緒だと!?』

 

「そうだ…彼らはバリアンの記憶を失くし、人間として生きていた…」

ドルベの言葉にベクターは二重の意味で驚愕する…ナッシュとメラグが生きていた事もそうだが、その人間体が凌牙と璃緒だとは気付いていなかったのだ…!

 

 

『(こ、これは良からぬ状況だ!!アイツらが…あの時の記憶も思い出していたら─!?)』

 

【(落ち着け、ベクター…今の奴に殺気はない)】

 

『(ドン・サウザンド!?)』

激しく動揺するベクターにドン・サウザンドが語りかける…。

 

【(奴らは完全には記憶を取り戻してはいまい…時間の問題だろうがな)】

 

『(そ、そうか…)』

ドン・サウザンドの言葉で一息つくベクター…その様子を見ていたナッシュが彼に語りかける。

 

 

【ベクター…お前が俺を疑う気持ちはよく分かる、確かに俺とメラグは人間界でお前達の『敵』であった…】

 

『ナッシュ…!』

ナッシュにかつての凌牙のような荒荒しさはない…その毅然とした姿はまさにバリアンの「王」に相応しいオーラを放っていた…。

 

 

【…だが、俺達はバリアンとして()()()()…今はこの世界を守る為、力を合わせる時だ!!】

ナッシュはその身に宿す「カオス」を開放…その力は7枚のカードへと姿を変える…!

 

【ただし、俺が裏切る素振りを見せたら…その時は()()()()()()()()…!!オレとメラグの運命はバリアンと共にある!!】

 

『っ…!?』

それはナッシュとしての仁義…そして仲間達への覚悟の表明だった。

 

『……わかったよ』

 

【感謝する、ベクター】

ナッシュの覚悟を聞いたベクターは渋々その言葉に従った…。

 

 

 

「…ところでベクター…これは、お前の仕業か?」

 

『っ!?』

ナッシュの話が一段落した所でドルベが人間界に現れた赤雷の柱を映し出す…!

 

 

「バリアン世界と人間世界の融合…これ程の御業、バリアンの神たるドン・サウザンドしか考えられない……()()が奴の力を蘇らせたようだな…?」

 

『オレは知らねぇな……ああ!あの蝿野郎の仕業じゃねぇか?なんだかコソコソしてたぜ?』

 

「ハートランドが?」

ベクターに疑惑の目を向けるドルベ…ベクターはその濡衣をMr.ハートランドに擦り付けた…。

 

 

『それより…!これは大チャンスだ!今なら遊馬もアストラルもいない!白波遊海も手負いだ!一気に地上を…!』

 

【ベクター…お前は人間達を…遊馬を甘く見過ぎている…!奴らは必ず帰って来る…!】

ベクターは地上への侵攻を提案するが…ナッシュがそれを諌める…ナッシュは人間の強さを…遊馬の強さを嫌と言うほど理解していた…。

 

 

【お前達に力を授けよう…奴らと戦う為の力を…!!さぁ…征くぞ!人間界へ!!】

ナッシュはその圧倒的なカオスを解き放つ…それは七皇達に新たな力を与える光…。

 

そして七皇は人間界へと向かう…!

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬&アストラル対Mr.ハートランド

 

 

ハートランドLP4000

 

遊馬&アストラルLP1750

 

 

 

ギィン─!!

 

「っ!?ぐああああああああ!?!?」

 

(あああああっ…!?)

 

「「「うわああああっ!?」」」

ハートランドがターンを再開する刹那…遊馬とアストラル、さらにはデュエルを見守る仲間達にもバリアンの力が襲いかかる…!

 

 

「な、なんだっ!?このダメージは…!!」

 

【ガハハハ…!この人間界はバリアン世界と融合し、「バリアンズ・フィールド」に変わりつつある!!苦しめ…苦しむがいい─!!】

 

「ぐあああっ…!?」

ハートランドの言葉と共に遊馬達に再び稲妻が降りそそぐ…!

 

 

「あ、アストラル…!!」

 

(大丈夫、だ…!遊馬…勝つぞ、このデュエル…!!)

 

「おうっ…!!」

カオスの力が体を蝕む中…遊馬とアストラルは勝利への方程式を紡ぐ…!

 

 

 

「カイトは罠カード『プリベント・ドロー』を発動していた…!その効果で1ドロー!!」

 

【ブヒャヒャヒャ…!無駄な事を…貴様らには伏せカードはない!攻撃力3000の『インフェクション・バアル・ゼブル』の一撃で終わりだ!!ダイレクトアタック!!】

カイトの残したカードによってカードを引いた遊馬に蝿の王が襲いかかる!!

 

 

「オレは!手札から『虹クリボー』の効果発動!ダイレクトアタックを受ける時、その攻撃モンスターに装備する事で相手モンスターの攻撃を封じる!」

 

《クリクリ─!!》

遊馬の手札から飛び出した虹クリボーが蝿の王に光の縄を巻き付け、攻撃を封じる…!

 

 

【クッ…まぁいい、お楽しみは後に取っておくとしよう…カードを伏せ、ターンエンドだ!】

 

「見ててくれよ、カイト…!お前の思いは無駄にはしねぇ!!」

倒れたカイトの思いを背負い、遊馬は希望のデュエルを紡ぐ!

 

 

 

39

 

 

「現れろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

遊馬とアストラルの希望を背負う戦士が現れる!

 

(遊馬!)

 

「応!!バトルだ!『ホープ』で『バアルゼブル』を攻撃─!」

 

【フン…!読めているぞ!!「ホープ」のムーンバリアで攻撃を無効にし、手札の「ダブル・アップ・チャンス」を発動するつもりなのだろう…だが!そうはさせん!!カウンター罠「オーバーレイ・ハント」を発動!自分のエクシーズモンスターが相手に攻撃された時!攻撃モンスターの効果を無効にし、ORUを自分のモンスターに吸収する!】

 

「『ホープ』の効果が!?」

ハートランドは遊馬のコンボを読んでいた…ホープは自身の攻撃を止められず、蝿の王へと突撃する!

 

 

【これで攻撃は止められまい…貴様らの『希望』は砕け散るのだ─!!】

 

(舐められたものだな…!)

 

「オレ達の『勝利の方程式』は…こんなもんじゃねぇ─!!」

 

【はえ…!?】

遊馬とアストラル…大きな試練を乗り越えた2人は絶望を凌駕する!

 

 

(攻撃を止める方法は…他にもある!)

 

「オレは手札から速攻魔法『ストップ・ハンマー』を発動!」

 

(このカードはモンスター1体の攻撃を無効にし、攻撃力を500下げる!)

ホープの目の前に『STOP』と描かれたピコピコハンマーが現れ、攻撃を跳ね返す!

 

 

【攻撃を、無効…し、しまったああ!?!?】

 

(本来、相手の攻撃を防ぐカードだが…)

 

「これで発動できる!速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』発動!攻撃が無効になった『ホープ』の攻撃力を倍にして、もう一度攻撃できる!『バアルゼブル』を攻撃!ホープ剣ダブル・スラッシュ─!!」

 

【ブブブブ─!?】

希望の連撃が蝿の王を粉砕…ハートランドに大ダメージを与える!

 

 

【お、おのれぃ…!貴様ら…許さん、許さんぞぉぉ!!

ダメージを受けたハートランドは激昂…次善の一手を打つ…!

 

【私は永続罠「インフェクション・ミーディアム」を発動!悪魔族エクシーズモンスターが破壊されたターン、攻撃力300の『インフェクション・バグ・トークン』5体を特殊召喚できる!】

 

「い、一気に増殖した!?」

ハートランドの場に5体の蝿が現れる!

 

 

 

(遊馬、必ず何かある…気を付けろ!!)

 

「ああ…!オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

遊馬とアストラルは警戒しながらターンを終える…そしてハートランドの邪悪な布陣が動き出す…!

 

 

 

【私のターン!バトルだ!『インフェクションバグトークン』1号で『ホープ』を攻撃─!】

 

「っ!?攻撃力300で攻撃─!?」

赤い複眼の蝿がホープによって返り討ちになる…だが、それはハートランドの作戦だった…!

 

 

【『バグトークン』の効果発動!この戦闘で私が受けるダメージは0になり、そして相手のモンスターを破壊!さらに相手に300ダメージを与える!!】

 

「な、なにっ!?ぐあああっ…!!」

破壊された蝿の中から全てを喰らう蝿の大群が出現…ホープを粉砕し、遊馬達を吹き飛ばした!

 

 

【これでお前達のフィールドはがら空き…さぁ…行くがいい「バグトークン」2号・3号・4号・5号!ダイレクトアタックだ!!】

 

「オレは墓地から『虹クリボー』の効果を発動!攻撃を受ける時に墓地から特殊召喚できるっ…ぐあああ─!!!」

 

「遊馬!アストラル!!」

虹クリボーで一撃は凌いだが…3体の連続攻撃が炸裂、遊馬達は地面に倒れ込んでしまう、残りライフ…僅か550…!

 

 

 

【さらにダメ押しだ!永続魔法『インフェクション・エクステンション』を発動!モンスターを通常召喚しなかったターンにさらに『インフェクションバグトークン』を特殊召喚できる!そしてこのカードがある限り、相手は攻撃表示でしかモンスターを召喚・特殊召喚できない!!】

 

『なっ…!?守備表示で耐えるのを封じられた!?』

それはまさに仕上げの1手…守備表示での召喚は封じられ、ハートランドはダメージを受けず…モンスターを出しても『バグトークン』により破壊される…まさに必殺の布陣!

 

 

【これで貴様らは終わりだぁぁ!!】

 

「オレ達はまだ…終わってねぇ!!相手がモンスターを特殊召喚した時!永続罠『ライト・バック』発動!」

立ち上がった遊馬は最後の希望を解き放つ!

 

(このカードは墓地の()()()()()()()()を攻撃力を1000ダウンさせて特殊召喚できる!)

 

『今、墓地にある光属性モンスターは…!』

 

《ま、まさか!!》

アストラルと遊馬の言葉にⅤとオービタルが反応する…墓地に眠りし最後の希望…それは『光の化身』に他ならない!

 

 

「墓地から蘇れ!『銀河眼の光子竜』!!これが、カイトが残してくれた『希望』…逆転への方程式だ!!」

轟く咆哮と共に、光の化身…カイトの魂のカードが復活する!

 

【愚か者め…!如何に「光子竜」の効果を使おうとも…5体の「バグトークン」全てを除外する事はできまい!!私はこれでターンエンドだ!】

 

 

 

(遊馬…分かるか?この状況を覆す()()は…)

 

「ああ、そのキーカードをドローできるか……それが全てだ!」

絶望的な状況…だが、遊馬とアストラルはその状況を覆す「奇跡」を知っている…!

 

 

【ブヒャヒャヒャ…ここで貴様らが出す切り札などお見通しだ…!Z()E()X()A()L()だろう?だが…そうはさせん!!】

ZEXALへのエクシーズチェンジを見抜いたハートランドは天へと腕を掲げる…!

 

【バリアンよ…!いま一度!我に力を─!!】

 

 

ギィン─!バリバリバリバリ─!!!

 

 

(「うわあああああっ─!!!」)

ハートランドが呼び起こすはバリアンの力…強大なカオスのエネルギーが遊馬達に襲いかかる!!

 

 

【どうだ…!これでZEXALになる力は残されていたいまい…!ブヒャヒャヒャヒャ!!】

デュエリストとして最も外道な攻撃を仕掛けるハートランド…彼は遊馬とアストラルを嘲笑う…。

 

 

【苦しかろう…?こんなに苦しい思いでデュエルするなら…いっそ戻って来ない方が良かったな─!!】

 

 

「は…はは…!冗談じゃ、ねぇ…!」

 

 

【なに…?】

カイトですら耐えられない激痛に蝕まれる遊馬とアストラル…その中でも、遊馬は笑っていた…!

 

 

「どんなに、苦しくても…()()()()()()()()()()()()()()…!お前と…また一緒に、デュエルができるんだ…!」

 

(遊馬…)

遊馬の脳裏に過るのは今までの思い出…何度も何度もアストラルと共に乗り越えて来た困難との戦い、そして別れの記憶……遊馬は知っている、痛みよりも辛く悲しい事を…!

 

 

「アストラルとデュエルができる……こんな幸せな事があるか…?」

 

(遊馬…その感情、今なら…私にも理解できるぞ…!)

涙を零しながら遊馬はアストラルを見つめる…その表情に苦笑しながらアストラルは手を伸ばす!

 

(遊馬!この程度の苦しみなど…!)

 

「お前と一緒なら…!うおおおっ!!」

 

【なにっ!?】

耐え難い苦しみ?それがなんだと言わんばかりに遊馬はアストラルの手を借りて立ち上がる!

 

 

「オレと!」

 

(私で!)

 

「(かっとビングだぁぁ!!)」

希望に輝く2つの魂が…今再び奇跡を起こす!

 

 

オレはオレ自身とお前でオーバーレイ!!

 

しっかりと大地を踏みしめた2人が閃光となって飛び上がる!

 

 

オレ達2人でオーバーレイ・ネットワークを構築!

 

絆は進化する!より強く、より固く!!

 

光の爆発と共に2人の魂が1つに重なる!

 

絆結ばれし時!力と心が1つとなり、光の奇跡と伝説が生まれる!!

 

エクシーズ・チェンジ!ZEXAL!!

 

それは新たな『奇跡』…光の翼と黄金に輝く光を纏いし新たな『伝説』…遊馬とアストラルの絆の極致…ZEXALⅢが降臨した!!

 

 

 

『あ、あれは…!?』

 

「新しい、ZEXAL…!!」

 

【お、おのれぇ!!何故だああ!?】

闇に覆われしハートランドを照らす新たな光…ZEXALⅢは新たな権能を開放する!

 

 

聖なる光は卑しき闇を浄化する!ゼアル・フィールド!

 

キィィン─!

 

【ば、馬鹿な!?バリアンの力が─!?】

それは空間を「書き換える」奇跡の技…それにより周囲のバリアンズフィールドは無効化される!

 

 

いくぜ…オレのターン!デュエリストはカードを導く!我が身が放つ一点の光を目指し…来たれ!勝利と希望のカード!シャイニング・ドロー!!

それはアストラル世界での戦いを経て精度を増した希望の一枚…それは闇を祓う力となる!

 

 

「オレは『ZS-(ゼアル・サーバス)幻影賢者(バニッシュ・セージ)』を召喚!これで勝利の方程式は完成した!!」

ZEXALの場にドラゴンの鎧を纏う賢者が現れる!

 

 

「オレは『光子竜』で『バグトークン』を攻撃!さらに効果発動!バトルするモンスターを除外する!」

ギャラクシーアイズと蝿の1体が異次元に消える…!

 

【だがそれだけだ!お前は攻撃を防ぐ事は…!】

 

「それはどうかな…!『幻影賢者』の効果発動!フィールドのモンスターが除外された時、自身を除外する事でそのモンスターを呼び戻す!戻って来い!『光子竜』!!」

 

【なに!?】

賢者が異次元の扉を開き、光の化身を呼び戻す!

 

 

「さらに!攻撃力3000の『光子竜』が戻ってきた事でさらなる効果発動!フィールドの攻撃力3000以下のモンスター全てを除外する!」

 

【な、なんだとぉぉ!?】

光の息吹が必殺の布陣を打ち砕く!

 

 

「行け!ギャラクシーアイズ!ハートランドにダイレクトアタック!破滅のフォトン・ストリーム!!」

 

【ぐ、ぐわあああああ─!!】

3人の決闘者の希望が重なった魂の一撃は闇の手先を粉砕…アストラルと遊馬は勝利の凱旋を飾った!

 

 

Mr.ハートランド LP0

 

ZEXALⅢ WIN!

 

 

 

 

 

『お、おのれ…!貴様ら、如きに…このノエル・ハートロウ・ハートランドが敗れ…ぐあっ!?』

 

ドクン…!!

 

デュエルに敗れたハートランドが遊馬とアストラルを睨みつける…だが、突然ハートランドは苦しみ始め…彼の体から4枚のナンバーズが飛び出した!

 

『こ、これは…!?』

 

ギィン…ゴウッ!!

 

ぎ、ぎゃあぁあぁあ!?!?燃え、燃える!!熱い…アツイぃぃ!?

 

「な、なんだ!?」

突然、ナンバーズが発火…邪悪な炎がハートランドを包み込む…!

 

「は、ハートランド!!」

 

燃え…燃える!!ベクター様…ベクター様ぁあぁあぁ!!!

それは悪魔に魂を売った卑しき男の末路、ハートランドは悲痛な断末魔と共に燃え尽きる…悪魔のような炎を遺して…。

 

(あの、影は…)

 

「あ、アストラル!!ナンバーズが…!?」

 

(いいや…!あれはナンバーズではない…偽物だ…!)

 

「偽物…!?」 

燃え尽きたナンバーズを心配する遊馬…だが、ハートランドが持っていたナンバーズは全て「偽りのナンバーズ」…ベクターにとってハートランドは捨て駒に過ぎなかった…。

 

 

 

 

 

「遊馬…!改めて…おかえりなさい!!」

 

「やったな!遊馬!アストラル!!」

 

「最高のデュエルだったウラ!!」

 

『2人とも…無事で良かった…!』

 

「みんな…ただいま!!」

 

(ああ…心配をかけてすまなかった!)

 

デュエルが終わり、仲間達が遊馬とアストラルに駆け寄る…最強コンビは完全復活を遂げたのだった…。

 

 

………

 

 

「偽物のナンバーズに…バリアン世界との融合!?」

 

「そうなの…!シャークにも連絡が取れないし…」

そして遊馬とアストラルは小鳥から現在の状況を聞く…ばら撒かれた偽りのナンバーズ…それによって人間界は混乱、さらにバリアン世界と融合しつつあるという最悪の状況を…。

 

 

「これから…いったいどうすれば…っ!?」

 

ギィン─!!

 

(あの光の脈動は…!?)

状況を打開する方法を考える遊馬達…その時、赤雷の柱が不気味な脈動をし始める。

 

 

 

世界を賭けた「戦争」が…ついに始まろうとしていた…!

 

 

 




NextEpisode…?






アストラルと共に人間界へと帰還し、Mr.ハートランドを打ち倒した遊馬…その時、7つの光が空を舞う…!

 

【俺はナッシュ…バリアン七皇のナッシュだ!!】

 
「シャーク…!?なんでお前が!?」

遊馬に立ち塞がるのは「記憶」を取り戻した七皇の王…ナッシュ、そして遊馬はバリアンとの決着の為に敵の牙城…バリアン世界へと向かう…!






『あはははは…!!』


「ネームレス…お前は、俺が倒す!!」

そして…遊海を襲うのは名無しの怪物、そして……。


 

 

【AAA…AAAAAA─!!】



「嘘、だろ…!?」

 
「何なんだ…!この怪物は!!」


蘇る破滅の魔獣…

 

 

 

【ククク…さぁ、全ては我が手の中に…!】

 

 


それは史上最大の戦争……世界の運命を決める「最終決戦」…

 

 

 



「……すまない、翠……俺は……俺自身でオーバーレイ!!我が魂の焔よ……闇を、照らせぇぇぇ!!」

 

 

「遊海さん…!?嫌だ…!!嫌だ!!いやぁぁぁ!!」

 

 

それは「物語」の終わり…全ての「因縁」は収束する…!

 

 

 

 

『オレが来るまでよく耐えてくれた…後は、任せてくれ』

 

 

 

『君が、この戦いを終わらせるんだ…!』

 

 

 

 

 

 

転生して決闘の観測者になった話 ZEXAL編第5章 近日執筆開始予定!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆうみさんの、ばか…」

 

 

 




「ごめん…みどり…」


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第5章 絶対決闘戦線ハートランド 〜呪われしバリアン〜
プロローグ〜皇の帰還〜


『こんにちは、ハーメルンの読者の諸君!みんな大好き花のお兄さんことマーリンお兄さんさ!』

『えっ?S,Kはどうしたって?…今頃は良い夢を見てるんじゃないかな?その代わりに私が語り部をやらせてもらうよ…実はやってみたかったんだ!』


『では…こほん、勇士の話をするとしよう……無事にアストラル世界から帰ってきた遊馬とアストラル、蝿の怪人を倒した彼らの前に、思わぬ敵が現れる…!』

『こんなところかな?さぁ、物語の始まり始まり〜』

《マーリンシスベシフォーウ!!(勝手に前書きを乗っとるな─!!)》

『ドフォウ!?』

─スピ〜……─


ギィン─!

 

「な、何が起きようとしてるんだ…!?」

バリアンの尖兵となったMr.ハートランドを倒した遊馬とアストラル…その時、人間界とバリアン世界を繋ぐ光の柱が不気味な光を放ち始めた…!

 

 

キィィィィィン──!

 

「な、なんだぁ!?」

光の柱が一際強く輝く…その内から青・白・水・紫・赤・緑・黄色の閃光が飛び出した!

 

 

「うわわわっ!?」

 

《い、いったい何事でアリマスカ─!?》

七色の閃光はハートランド港を破壊しながら遊馬達の周囲を飛び回り、コンテナの上に着地する!

 

 

 

「くっ…!?あれは…!!」

港を覆っていた砂煙が晴れていく、その奥から現れたのは人間体のバリアン七皇……彼らの中には思いがけない人物の姿があった…!

 

「し、シャーク…!?お前…?!なんで…なんでバリアンと一緒にいるんだよ!?」

 

「凌牙…!?」

 

「璃緒さん!?」

 

【………】

砂煙の中から現れた七皇…その中心にはバリアンのペンダントを下げた凌牙…そして璃緒の姿があった…。

予想外の事にⅣ、そして璃緒に恋心を抱いていた鉄男が困惑する…。

 

 

()()()()…そんな風に呼ばれていたのが、ずいぶん昔の事に感じるぜ…だが、今の俺はシャークでも…神代凌牙でもない…】

凌牙は昔を懐かしむように空を見上げた後、自身の真名を名乗る…!

 

【オレは…ナッシュ!バリアンのナッシュだ!!

 

 

「はっ…!?バリアンの、ナッシュ…!?」

 

「ど、どういう事なの!?」

 

(………!!)

凌牙…ナッシュの名乗りに困惑する仲間達…その中でアストラルだけは疑念が解決した表情をしていた…。

 

 

「し、シャーク!なに言ってるんだよ!?お前が、バリアンだなんて…!そんな…そんな事…!なんとか言ってくれよ!!シャーク!!」

 

【…まだ、わからないのか…なら…証拠を見せてやる!】

凌牙がバリアンである事を信じられない遊馬…ナッシュはその証を示す…!

 

 

【これが…俺の本当の姿だ!!バリアル・フォーゼ!!

 

「「「「「「バリアル・フォーゼ!!」」」」」」

ナッシュが天に拳を突き上げる…それは偽りの肉体を捨て、真の姿へと変じる鍵……港は閃光に包まれる!

 

 

 

【我ら…バリアンの七ツ星!!】

光の中から深紫色の肉体を持つ怪人が現れる、そしてそれぞれに名乗りを上げる…!

 

 

真の『銀河眼』使い!ミザエル!

誇り高きドラゴン使い…

 

全てのモノは我が手の中…!ギラグ!

全てを掌握する軍師…

 

唸る拳が神をも砕く!アリト!

神を砕く拳闘士…

 

ジャジャーン!オレ、ベクター!

全てを弄ぶ魔人…

 

灼熱の太陽すら瞬間凍結…氷の剣!メラグ!

鋭く冷たい氷の麗人…

 

バリアンの白き盾!ドルベ!

王を補佐する堅実なる戦士…そして…!

 

【そして俺が…バリアンの七皇を統べる者!ナッシュだ!!

七皇を統べるバリアンの「王」…それがナッシュだった…!

 

「そ、そんな…!?お前が、バリアンの、ナッシュ…!?」

バリアン体へと変身した七皇…そして凌牙と璃緒の姿を見た遊馬は動揺する…バリアン体となった事でナッシュの言葉は本当だったと理解したのだ…。

 

 

(シャーク…やはり第6の遺跡の記憶は君の本当の記憶だったのか)

 

「アストラル…!?本当の記憶って、どういう事だよ!?」

アストラルの呟きを聞いた遊馬が問いかける…アストラルは第6の遺跡でナッシュの記憶を垣間見ていたのだ…。

 

 

(私が見たビジョンは、シャークが一国の『王』であった姿…おそらく、その魂がバリアン世界に転生し…今の彼となったのだろう…!)

 

「そんな、馬鹿な…!?シャークの『魂』が昔の王様の生まれ変わり…!?けど…!バリアンに生まれ変わったなら、なんでまた人間になって…?」

 

(わからない…だが、分かっている事は……彼は我々の『敵』になったという事だ…!)

 

「そんな…!!」

何故、ナッシュがバリアンから再び人間になってしまったのかは今の遊馬達に知る術はない…分かっているのは最高の仲間が…最強の敵に回ってしまったという事実だけだった…!

 

 

 

「なんで…なんでだよシャーク!仲間同士のオレ達が…どうして戦わなきゃいけないんだよ!?」

 

【遊馬…これは決まっていた事なんだ…そう、俺とお前の()()だ…!】

 

「運命…!?ふざけんじゃねぇ!!お前…お前達が良くても!遊海は…翠さんはどうなるんだよ!?お前達を必死に守り続けてくれた、あの人達を裏切るのかよ!!」

 

【っ……】

 

『ナッシュ…』

遊馬の言葉にナッシュは思わず拳を握り締める…遊馬は知っている、遊海と翠がどれほど凌牙と璃緒を大切にしてきたのかを…!

 

 

 

ドン!!  

 

 

「「【っ!?】」」

ナッシュが言葉を言い澱んだその時、遊馬達の背後に何者かが轟音と共に着地する!

 

 

「遊馬、心配は無用だ……既に別れは済んでいる!!」

 

 

「遊海…!!」

 

【白波、遊海…!!】

砂煙が晴れる…そこにいたのは鋼の鎧に無数の傷を刻んだ遊海だった…!

 

 

「すまん、街の人達を避難させるのに時間が掛かった……よく帰って来たな遊馬、アストラル」

 

「遊海…」

ゆっくりと遊馬の隣に並んだ遊海は優しく遊馬の頭を撫で…バリアン達を睨みつける!

 

 

「ついに現れたな、バリアンの王よ!!言ったはずだ…お前が人間界の敵となるならば…俺は容赦しないと!!」

 

【っ…!!】

 

『(なんて殺気だ…フツーの人間が出せるモンじゃねぇ…!本当に手負いかよ…!?)』

遊海は殺気を開放…七皇達に重圧がのしかかる!

 

 

「ゆ、遊海!待ってくれよ!あそこにいるのは、アンタの…」

 

「…遊馬、俺達と…ナッシュとメラグの道は分かたれた……目の前にいるのは、倒すべき…敵だ!!」

 

【そうだ…オレはナッシュ…!お前の敵だ!!白波遊海!!】

 

「そんな…!?」

遊海は大剣『決闘の守護者』の切っ先をナッシュに向ける…そしてナッシュもオーラを開放…2人の殺気がぶつかり、強風が吹き荒れる!

 

 

 

「やめろ…やめてくれよ2人とも!!オレは…オレとシャークは仲間だ!!オレはデュエルを通じて魂をぶつけあって…()()()()()()きたんだ!!シャークがその絆を切っちまったのなら…オレが…!オレがデュエルでもう一度『絆』を結んでやる!!」

 

「遊馬…」

睨み合う遊海親子の間に割り込み、遊馬はナッシュへと叫ぶ…その時だった!

 

キィン─! 

 

キィン─! 

 

 

『この光は─!?』

 

「共鳴…!?」

突然、遊馬の『皇の鍵』とナッシュの『バリアンのペンダント』が共鳴…激しい閃光が周囲を包み込む…!

 

 

 

「(こ、この記憶は─!?)」

 

【(これは……そうか、お前達も世界を背負って──)】

その刹那、遊馬とナッシュはお互いの記憶を垣間見る…。

 

 

遊馬はナッシュの歩んだ『王の記憶』…そして悲壮な決断を…

 

ナッシュは遊馬が変えた『アストラル世界』の記憶を…そして2人は…──

 

 

「うわああああ─!?」

 

【ぐうううっっ…!!】

 

 

「遊馬!」

 

『ナッシュ!!』

 

共鳴から開放された遊馬は仰向けに倒れ込み、ナッシュは膝をつく…お互いの記憶を見た事で強い負荷が掛かってしまったのだ…。

 

 

「シャーク、おま、え……ぐっ──」

 

「遊馬…!?遊馬!!」

 

「心配するな…!疲れて気を失っただけだ」

遊馬はアストラル世界からの連戦疲労によって気を失ってしまう…遊海はそれを見てバリアンに向き直る…。

 

 

「(此方は手負いが2人…流石に俺一人で七皇を押さえるのは…()()()()()、ここは……)」

油断なくバリアンを睨む遊海…その時!

 

 

「遊海殿、逃げるのもタクティクスのうちですじゃ…!此処は引いてくだされ!!」

 

 

ボフン!!

 

『な、なんだこれは!?』

七皇の足元に無数の煙玉が命中…周囲が煙幕に包まれる!

 

「(引くしかない…!)お前達!撤退だ!!」

 

「遊海さん!遊馬を頼みます!オービタル!カイトを!!」

 

《か、カシコマリ!!》

煙幕に乗じる形で遊海達は撤退した…!

 

 

 

【くっ…!?七皇達よ!奴らを追え─!!】

煙幕の消えた港にナッシュの指令が響き渡った…!

 

 

 

 

 

「クリス!!俺の事は気にするな!全速力で走らせろ─!!」

 

「言われずとも!!」

七皇の手から逃れた遊馬達はⅤの運転する大型ジープで無人のハートランドを疾走する…遊海は慣れた様子でジープの屋根に乗っている。

 

 

「遊馬…ここまでよく頑張った…カイトもだ…少しでも傷を癒せ…!」

遊海はジープを包み込むように回復魔法を使い、傷付いたカイトと遊馬を癒やす…。

 

 

「お、追手は来てないようですが…」

 

「油断するな…!来るぞ!!」

七皇を振り切った事に安堵する等々力…だが…!

 

 

《マスター!ミザエルが迫って来ます!》

 

「流石に速い…!!」

 

『見つけたぞっ!!』

ジープの背後から短距離転移を繰り返しながらミザエルが迫る…その時だった!

 

 

「うおりゃああああ!!」

 

 

『なにっ!?ぐっ!!』

ジープに迫るミザエルに無数の砲弾が迫り…ミザエルは慌ててシールドを張る!

 

 

『何奴…!?』

 

「おれは…アンナだ!!この身に換えても…遊馬には指一本触れさせねぇ!!」

 

「あ、アンナ─!?」

襲撃者の正体…それは飛行砲台で駆けつけた暴走少女・アンナだった…しかし、それだけではない!

 

『くっ…小娘だろうと容赦はせんぞ!』

 

「容赦しない?それは─「こっちの台詞だ!!」ふぁっ!?」

ハートランドに響く堂々とした声…その正体は…

 

「今日も正義の大盤振る舞い!エスパー・ロビン…仲間の危機にただいま参上─!!」

 

「風也くん!!」

 

「…遊馬、お前の紡いだ『絆』が…お前を助けに来てくれたぞ…!」

 

それは遊馬の紡いだ絆の証…世界の危機を知った仲間達が遊馬の為に駆け付ける…そして…

 

 

「Ⅴさん…止めてくれ、どうしても…行かなきゃならないんだ…!!」

 

「鉄男……わかった」

Ⅴは車を止め、鉄男を車から降ろす…。

 

 

「鉄男…」

 

「……待っててください、遊海さん…!必ず、璃緒さんを連れ戻します…!!」

鉄男は覚悟の眼差しで遊海を見つめ、駆け出した…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「バリアンよ…この先は通さんぞ!」

 

「覚悟するんだな」

 

『チッ…さっきの煙玉はお前らの仕業か…!』

とあるビルの上…そこでギラグ、そして遊馬の師匠である六十郎と兄弟子の闇川が対峙する!

 

 

「我が弟子を追いかけたくば…我らを斃してゆけ…!」

 

『ケッ…おもしれえ…!!望み通りぶっ潰してやる!!』

 

 

 

 

 

カキーン!!

 

『なんだ!?』

 

「おっ…ナイスキャッチだな…!」

とあるスタジアムを探索していたアリトにライナーの打球が飛んでくる…そこにいたのはゴーシュだった!

 

 

『貴様…!どういうつもりだ!?』

 

「お前の行く手を阻むんだよ!」

 

 

 

 

『貴様…確かハートランドの部下だった女か…仲間の為に身を挺して戦うか?』

 

「ここから先は…通さない!」

風力発電施設ではドルベとドロワが火花を散らす…!

 

 

 

 

『来たのね…仲間を逃がす為?貴方らしいわね…』

 

「俺はいつだって俺です!そして璃緒さん…それは貴女も同じだ!」

懐かしき学び舎…ハートランド学園でメラグと鉄男が向かい合う…!

 

『残念だけど…貴方の前にいるのはメラグ…!璃緒はもういないの…』

 

「璃緒さんは…璃緒さんです!!俺は…遊馬と遊海さんの所に貴女を連れて帰るんだ!!」

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「止まれ!クリス─!!」

 

「っ…!!ナッシュ!」

 

「先回りされていた!!」

順調に逃げ続けるジープ…その前にナッシュが現れる!!

 

 

「ここは…オレが食い止める…!」

 

「…トーマス…」

ナッシュを食い止める為、Ⅳがジープから降りる…!

 

「待て、Ⅳ…お前を戦わせる訳にはいかない…!奴は…お前が唯一『友』と呼んだ男だ…!そんな男と戦えるのか…!?」

 

「…だからこそ、オレが行かなきゃならねぇ…!遊馬が動けず、遊海さんには2人の回復に専念してもらいてぇ…今、奴の心を動かせるのは…オレだけなんだ…!!」

Ⅳを制止するⅤ…だが、Ⅳは強い覚悟を以て答える…!

 

 

「くっ……わかった、なら…これを持っていけ!」

 

「これは…兄貴の開発していた『対バリアン』の切り札…!完成してたのか…!」

Ⅴが手渡したカード…それはアークライト兄弟の『希望』の力…。

 

「ただ…「わかってる…これがあれば充分だ」…そうか」

Ⅴが口にしかけた言葉をⅣは止める…それは『決死の覚悟』の現れだった。

 

 

「遊海さん…遊馬の事は頼んだぜ?オレもすぐに…凌牙の首根っこ捕まえて追いかけるからよ」

 

「……此処は任せたぞ、トーマス」

 

「フッ…アンタに任せられるのは…始めてだな」

Ⅳを残し、ジープはその場を離れる…覚悟の男の背中に全てを託しながら…。

 

 

  

 

 

 

《マスター…()()()…!》

 

「そうか…!アストラル、これを!!」

 

(っ…!?このナンバーズは!?)

Ⅳの姿が見えなくなった頃…気配を感じた遊海はアストラルへ隠し持っていた「No.24・37・38・78・95」の5枚を託す…。

 

 

「すまん、ちょっと訳があってな……アストラル、遊馬に伝えてくれ…『お前はお前のままでいい』と…どんなに辛い事があっても『かっとビング』を信じろと…!!」

(遊海…貴方は……!)

 

「世界を、頼んだ…!クリス!全速力で走れ!俺はここまでだ!!…決して振り返るな!!」

 

「っ!?遊海さん!?」

アストラルに言葉を託した遊海はジープから飛び立つ…そして…!

 

 

 

バキン─!

 

 

『あはははは…あはははは──!!』

 

 

「雪……いや、ネームレス!お前は、俺が倒す!!」

ジープの真上で漆黒の鎌と大剣が衝突…凄まじい衝撃波でビルの窓が砕けていく…!

 

 

「翠を傷付けた借りは…返させてもらう!!」

 

『やれるなら、やってみなよ…!!』

 

 

 

それはまさに『決闘戦線』…世界を救う為に、デュエリスト達が立ち上がる!!



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決闘者の抵抗〜希望を守れ!〜

『さてさて…決闘者の話をするとしよう…』

『バリアンとして覚醒し、倒れてしまった遊馬を追うナッシュ…その前に立ち塞がるのは覚悟を背負いし男・Ⅳ…2人のデュエルの行く末は…?』


『…こんな所かな?さぁ…物語の始まりだ!』


「こ〜ら…!凌牙、トーマス…どうしてお前達はいつも喧嘩ばっかりするんだ…」

 

「…だって、凌牙が…」

 

『トーマスが…』 

 

 

「兄様、また怒られてる…」

 

「これだから男の子は…」

 

 

「はぁ……反りが合わないって奴か…?まったく…喧嘩するんだったらデュエルで決着をつけろ!わかったな?」

 

「『はーい…』」

 

「素直でよろしい!」

 

《フォウ!》

 

「みんな〜おやつよ〜!今日はクリス君が買ってくれたシュークリームよ〜!」

 

「「『「わ〜い!!」』」」

 

「ほらほら…ちゃんと手を洗ってからだぞ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()、僅かな時間を稼ぐ為に…死にに来たのか?】

 

「遊馬が言っていた…デュエルでてめぇとオレ達の絆を蘇らせるってな…それをオレがやってやる…!!」

遊馬の乗る車を見送ったナッシュとⅣは睨み合う…Ⅳは最後の『希望』である遊馬とアストラルを守り、「神代凌牙」を連れ戻す為に…ナッシュはバリアン世界を守る為に……2人は互いに譲れない思いを背負っていた。

 

 

 

【Ⅳ、お前と俺はもう住む世界が違うんだ…例え、何万回デュエルしたって…分かり合う事はねぇ…!!】

 

「オレも、少し前まではそう思っていたさ…一度壊れた関係はもう二度と戻らないってな……けどよ、思い出せよ()()!!オレとお前はそうじゃなかっただろ?壊れたら()()()()()()()()()()!!…待ってろ、オレのデュエルで風穴開けて…向こう側(バリアン)に行っちまったお前の心に熱いファンサービスを届けてやる!!」

…復讐を乗り越えたⅣは…トーマスは変わった、そこに人々を虐げ、汚れ役を担った男はいない……その魂を燃やすのは「絆」…断ち切られてしまった絆を再び紡ぐ為、Ⅳは戦いに挑む!

 

 

 

 

 

Sideベクター

 

 

 

『おいおい…!面白い事になってきたじゃねぇか、ナッシュ…!』

Ⅳとナッシュが火花を散らす様子を愉快げに見物するベクター…彼は復活したナッシュを見極める為に潜んでいたのだ…。

 

 

『厄介な白波はネームレスに掛かりっきり……さぁ、見させてもらうぜ?今の貴様の力を…!!』

遠くで崩落するビル群を見ながら…ベクターはナッシュとⅣのデュエルに注目した…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

 

デュエルダイジェスト Ⅳ対ナッシュ

 

 

 

 

15

 

 

「現われろ!『No.15』!『ギミック・パペット─ジャイアント・キラー』!」

 

【来たな…ナンバーズ!!】

先攻を取ったⅣは初手から漆黒の人形を呼び出す!

 

 

「そしてオレは装備魔法『ギミック・シールド』を『ジャイアントキラー』に装備!このカードは『ギミックパペット』エクシーズモンスターの装備カードとなり、その攻撃力と守備力を入れ替える!さらに装備モンスターのORU1つにつき300ダメージ…つまり!600ダメージを喰らってもらうぜ!!」

 

【っ…!!】

ジャイアントキラーのORUから放たれた電撃がナッシュのライフを削る!

 

 

「どうだ…少しは効いただろ?オレは…これでターンエンドだ!」

先制ダメージを決めたⅣ…そしてナッシュはバリアンとしての力を見せつける…!

 

 

 

 

101

 

 

 

【Ⅳ…俺の本当のエースを見せてやる…!現われろ!「No.101」!満たされぬ魂を乗せた方舟よ…光届かぬ深淵より浮上せよ!!「S・H・Ark Knight(サイレント・オナーズ・アークナイト)」!!】

 

「あれが…奴の『オーバーハンドレット・ナンバーズ』…!!」

ナッシュはついにバリアンの真髄「オーバーハンドレット・ナンバーズ」を開放…紅い輝きを放つコアを持った、白き巨大な方舟が現れる…!

 

 

【「Ark Knight」の効果発動!ORUを1つ使い、相手のモンスター1体をORUに変える!!エターナル・ソウル・アサイラム!!】

 

「なんだと!?」

Ark KnightがORUを取り込み、漆黒の人形に向けて碇を放つ…そして貫かれた人形はArk Knightに取り込まれ、光の玉へと変わってしまった…!

 

 

【バトル!「Ark Knight」でⅣにダイレクトアタック!ミリオン・ファントム・フラッド─!!】

 

「ぐっ…!?がああああっ!!!」

Ark Knightから無数の光線が放たれる…それは絨毯爆撃となってⅣを吹き飛ばした…!

 

 

 

【…わかったか?これがバリアンの力だ…!!】

 

「ぐっ…なるほど…お前の決意は本物みたいだな…!!けどよ…オレの決意も本物だ!!お前を…こっちの世界に引き戻す!!」

満身創痍のⅣ…しかし、その闘志は…魂はさらに燃え上がる!

 

 

 

「オレのターン…ドロー!!来たぜ…!オレは魔法カード『オーバーレイ・ダーク・リンカーネーション』を発動!」

Ⅳの強き決意が逆転のカードを引き寄せる!

 

「このカードは相手のORUを1つ、()()()()に選択し墓地に送る…そしてそのモンスターが闇属性モンスターだった時、そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する!!…ただし、闇属性ではなかった場合…オレのライフは半分になる…!」

それは二分の一の賭け…Ark KnightのORUになっている「ジャイアントキラー」を当てられなければ…Ⅳは敗北してしまう…!

 

 

 

「オレは…左側を選ぶ!!」

Ⅳは運命を選択する…そして…ジャイアントキラーが復活する!!

 

 

「ビンゴ!!さらにオレは『オーバーレイダークリンカーネーション』の効果で1ドロー!!…来たぜ、バリアンになっちまったてめぇを連れ戻す為に…そっちの世界に行ってやる!!オレは『RUM-アージェント・カオス・フォース』を発動─!!」

 

【なっ…!?人間の貴様が…ランクアップマジックだと!?】

Ⅳの発動した『RUM』を見たナッシュは驚愕する!

 

 

「コイツは…兄貴が対バリアン用に開発した『人類の切り札』だ!!このカードは自分のエクシーズモンスターをランクアップさせ、カオス化させる!オレはランク8の『ジャイアントキラー』でオーバーレイネットワークを構築…カオスエクシーズチェンジ!!」

人類の叡智の結晶…人間の持つ「カオス」の可能性が光の爆発と共に現れる!

 

ギィン─!!

 

「ぐっ…!?」

…しかし、それは『諸刃の剣』…膨大なカオスの力が紋章による制御を外れ、Ⅳの肉体を蝕んでいく…!

 

 

15

 

 

「現われろぉ!『CNo.15』!人類の叡智の結晶が…運命の糸を断ち切る使者を喚ぶ!『ギミック・パペット─シリアル・キラー』!!」

Ⅳの苦痛と共に『連続殺人者』の名を持つ地獄人形が顕現する!

 

 

 

「『シリアルキラー』の効果発動!ORUを1つ使い、貴様のモンスターを破壊し…その攻撃力分のダメージを与える!!エクスターミネーション・スラッシャ─!!」

 

【くっ─!──!!】

シリアルキラーの胸から飛び出した歯車型のエネルギーがArk Knightに直撃…フィールドが爆煙に包まれる!

 

 

 

「よしっ………なにっ!?確かに破壊したはず!?」

確かな手応えを感じたⅣ…だが、白き方舟は変わらずに佇んでいた…!!

 

 

【「Ark Knight」のもう1つの効果を使ったのさ…!「Ark Knight」が破壊される時、ORUを1つ使って破壊を無効にできる!つまり…貴様の効果は不発だ!】

 

「チッ…!そんな効果を!」

その姿はまさに『不沈艦』…満たされぬ魂を掬う深淵の『方舟』…それがナッシュのエースの能力だった。

 

 

「だが…これで『Ark Knight』のORUは無くなった!次は…オレのファンサービスを喰らいやがれ!『シリアルキラー』で『Ark Knight』を攻撃!ジェノサイド・ガトリング・バースト─!!」

 

【ぐううっ…!!】

シリアルキラーの口から巨大なガトリング砲が出現…無数の銃弾で方舟を大破させた!

 

 

「どうだ凌牙!オレはターンエンドだ!」

 

【ハッ…この程度で俺の『決意』が変わると思ったのか…!真のカオスの力はこんな()()()なモンじゃねぇ…バリアンでなければ到達できない『カオスの深淵』をたっぷり見せてやる!!…俺の…ターンだ!!】

 

 

キン─!

 

 

「なにっ…!?」

揺らがぬ決意を持つナッシュ…その右腕にカオスの力が集う…!

 

【Ⅳ…覚悟しろ、これが…俺の本気だ!!バリアンズ・カオスドロー!!

その時、ハートランドの6ヶ所でカオスの閃光が弾ける…それは勝利を導く『シャイニングドロー』の対を成す…勝利を掴むカオスの力…『バリアンズ・カオス・ドロー』の輝きだった…!

 

 

【Ⅳ…これがカオスの『深淵』!七皇の真の力だ!!「RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)」発動!!】

 

「あ、新たなランクアップマジックだと!?」

ナッシュがカオスの力で生み出したのは新たな『RUM』…七皇の力を束ねる最強の力…!

 

 

【このカードは自分の『オーバーハンドレットナンバーズ』をランクアップさせ、カオス化させる!】

 

「だが…お前のナンバーズは既に墓地にいる!!」

 

【そうだ…だが、このカードはエクストラデッキ、または墓地の『オーバーハンドレットナンバーズ』を効果を無効にして特殊召喚する!!】

 

「なんだと!?」

それは規格外のダイレクトランクアップ…除外されていなければ、何処からでもカオスナンバーズを呼び出す事ができる禁断の力…!

 

 

【俺は!墓地の「Ark Knight」を特殊召喚!そして1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!】

深淵から浮上した白き方舟が…カオスの力によって再誕する!

 

 

101 

 

 

 

【現われろ!「CNo.101」!満たされぬ魂の守護者よ…暗黒の騎士となって、光を砕け!!「S・H・Dark Knight(サイレント・オナーズ・ダークナイト)」!!】

Ark Knightのコアから人型が飛び出し、方舟から飛び出した黒き装甲と紅い槍を纏う…このモンスターこそ、ナッシュの切り札たる「漆黒の槍術士」だった…!

 

 

 

【どうだ…これこそ人間には到達できない、カオスの深淵だ!!】

 

「っ…!!見てるだけで、鳥肌が立ってきやがる…!!」

Dark Knightの姿を見たⅣは後ずさる…槍術士の纏うカオスの力は凄まじい威圧感を放っていた…!

 

【さぁ、Ⅳ…これからが本当のデュエルだ!!】

ナッシュはDark Knightの力を開放する…!

 

 

【「Dark Knight」の効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体を自分のカオスORUにできる!!ダーク・ソウル・ローバー!!】

 

「今度はORUも使わずにか─!?」

カオス化によって強化されたDark Knightは問答無用にシリアルキラーを吸収する!

 

 

【これで…お前を守るものはない!「Dark Knight」でダイレクトアタック!!これで、終わりだ!!】

 

「くっ…!オレは墓地の『ギミック・パペット─シャドー・フィーラー』の効果発動!このカードが墓地に存在する時にダイレクトアタックを受ける時!このカードを攻撃表示で特殊召喚し、相手の攻撃対象をこのカードに変更する!さらにこのカードは戦闘破壊されないっ…!ぐあああっ…!!」

 

【くっ…そんなカードを…!】

Ⅳは墓地からモンスターを召喚し、攻撃を受け止める…残りライフは…100…!

 

 

【やるじゃねぇか…!俺はこれでターンエンドだ!】

 

「っ…思い出すよな、凌牙……オレ達兄弟と、お前達兄妹が遊海さんと一緒に暮らしてた時…あん時も…喧嘩の代わりにデュエルでぶつかってよ…!」

 

【…忘れたぜ、そんな昔の話は……】

揺らがぬ決意を見せるナッシュ…そんな彼にⅣは話しかける。

 

「オレははっきり覚えてるぜ…遊海もオレ達に呆れて拳骨してよ……ミハエルや璃緒も呆れてた……あの時からオレ達は()()()の絆が繋がってた…!」

 

【俺は…お前との『絆』なんて…感じた事はねぇ!!】

 

「…そうかよ…!なら、もう一度…思い出させてやる!オレ達の……お前と遊海との『絆』を!!」

 

 

 

【(…俺を()()()()()よ…()()()()…!人間としての『俺』を捨てる為に…!!)】

 

ナッシュは…凌牙は苦悩していた、自分の中にある『神代凌牙』としての自分を捨てきれない事を……バリアンの王『ナッシュ』として非情に徹しきれない事を…。

 

故に、ナッシュは決めていた…このデュエルを『神代凌牙』を捨てる為の『儀式』にするのだと…倒すべき遊馬とアストラル…そして『決闘王』との戦いを前に、甘えを捨てる為に…!

 

 

 

40

 

 

「現われろ!『No.40』!『ギミック・パペット─ヘヴンズ・ストリングス』!!」

 

【現れたか…2体目のナンバーズ…!】

Ⅳは次なる一手として天使の演奏人形を呼び出す!

 

 

【だが…そのモンスターは装備魔法『オーバーレイ・サテライト』を使ってエクシーズ召喚している…よって攻撃はできない!】

 

「それでも…できる事はある!『ヘヴンズストリングス』の効果発動!ORUを1つ使い、フィールドのモンスター全てに『ストリングカウンター』を乗せ…次のターンのエンドフェイズにそのモンスターを破壊する事でその攻撃力分のダメージを与える!」

天から赤い操り糸が伸び、Dark Knightを拘束する!

 

 

【無駄だ!次のターン「Dark Knight」の効果で「ヘヴンズストリングス」をORUに吸収すれば…効果は不発だ!!】

 

「それはどうかな…!!ORUになっていた『シャドーフィーラー』は墓地に送られた時、除外される…その瞬間!速攻魔法『バニッシュ・リアクター』を発動!!自分のカードが除外された時、墓地のカード1枚を手札に戻す!オレが選ぶのは『アージェントカオスフォース』!!」

 

【なにっ…!?まさか!!】

 

「このカードは兄貴がオレに託してくれた希望…オレはその力を信じる!!『RUM-アージェントカオスフォース』発動!!『ヘヴンズストリングス』1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズ、チェンジィィ!!」

人類の叡智がⅣの力を糧として再び希望を繋ぐ!

 

 

40 

 

 

「現われろ!『CNo.40』!人類の叡智の結晶で…悪魔よ、蘇れ!!『ギミック・パペット─デビルズ・ストリングス』!」

 

【2体目の、カオスナンバーズ…!!】

天使は堕天し悪魔となる…破滅の音を奏でる演奏の悪魔が現れた!

 

 

「いくぜ、凌牙!!『デビルズストリングス』の効果!ORUを1つ使い、ストリングカウンターの乗ったモンスターを破壊し…その攻撃力分のダメージを与える!!メロディ・オブ・マサカ!!」

 

【な、なにっ!!】

 

「さぁ…オレの想いを喰らって…目を覚ませ!凌牙─!!」

 

【がああああっ!!】

それはⅣの渾身の一撃…砕かれたDark Knightの破片がナッシュを吹き飛ばした…!

 

 

【ぐっ…(Ⅳ…これが、お前の…思いか…!)】

 

「凌牙…!」

渾身の一撃を受け、ライフを200まで削られたナッシュは堪らず人間体の姿に戻ってしまう…。

 

「っ…『デビルズストリングス』のさらなる効果!相手モンスターを破壊した事で1枚ドローできる!(姿が戻ったって事は…オレの攻撃は()()()()…!あと少しで奴の心も取り戻せる!!)」

人間体に戻ったナッシュを見たⅣは確信を強める…だが、バリアンの王は止まらない…!

 

 

 

【破壊、された「Dark Knight」の効果発動…!ORUを持ったこのモンスターが破壊された時…墓地からこのモンスターを特殊召喚する!リターン・フロム・リンボ!!】

 

「なにっ!?」

ナッシュのフィールドに漆黒の槍術士が深淵より舞い戻る!

 

【さらに!俺は『Dark Knight』の攻撃力分、ライフを回復する!】

槍術士の祝福によりナッシュのライフが3000まで回復する…その姿はまさに『不死身の騎士』だった…!

 

 

「くっ…しつこく復活しやがって…!!だが、ORUはもう無い!!『デビルズストリングス』で『Dark Knight』を攻撃!!」

 

【罠発動!「オーバーレイ・コネクト」!ORUを持っていない自分エクシーズモンスターがフィールドにいる時、このカードはそのモンスターのORUになる!!】

 

「しまった…!!」

悪魔の演奏人形がDark Knightを切り裂き、破壊する…だが…!

 

 

【ぐっ…!再び「Dark Knight」の効果発動!リターン・フロム・リンボ!!】

再び舞い戻る槍術士…その祝福によりナッシュのライフは5300まで回復する!

 

 

「まだ、オレの声は届かないのか…!モンスターを破壊した事で『デビルズストリングス』の効果により1ドロー!…カードを伏せ、ターンエンドだ!!」

 

【…俺がバリアンの『守護者』である限り、数多の満たされぬ魂が、俺に力を貸してくれる…!Ⅳ…諦めろ、俺の決意は揺らがない!!】

 

「っ…いいや、オレは諦めない!例え、ライフがどれだけ回復しようが…今のお前はオレの知る『神代凌牙』だ!!」

ナッシュの背後にバリアンの民の姿を幻視するⅣ…それでも、彼の思いは揺らがない…!

 

 

 

 

【俺のターン…!「Dark Knight」の効果発動!「デビルズストリングス」を吸収する!ダーク・ソウル・ローバー!!】

 

「くっ…!!」

再びカオスの力によってⅣのモンスターが奪われる…!

 

 

【お前の儚い希望も、これで終わりだ!】

 

「まだだ…!罠発動!『パニック・シャッフル』!自分のエクシーズモンスターが相手の効果対象になった時!フィールドの全てのモンスターを守備表示にする!」

 

【くっ…!】

Ⅳの罠によりDark Knightが膝をつく…!

 

 

「さらに、互いのプレイヤーは墓地の魔法・罠カードをデッキに戻し、シャッフルする!」

 

【凌ぎやがった…!俺はカード1枚を伏せ、ターンエンド…!】

ナッシュの墓地から2枚、Ⅳの墓地から6枚のカードがデッキに戻り、ナッシュの攻撃は阻止された…。

 

 

 

【……(仕方がねぇ…最後の、手段だ…!人間の心を捨てた俺に熱い心をぶつけてくるお前を…()()()()()()())を抱かせる為に…!!】

諦めず、自身を連れ戻そうとするⅣ…その姿を見たナッシュは最悪・最後の手段に出る…!

 

 

【Ⅳ…これから、()()()モンを見せてやる…!これが、俺からの()()()()()()()だ!!】

 

「なに…?」

ナッシュが腕を掲げる…すると虚空に5つの映像が映し出される…その映像は……───

 

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

107

 

 

『喰らうがいい…!アルティメット・タキオン・スパイラル!!』

 

「「うわああああ!!!」」

 

 

それはバリアンに挑んだデュエリスト達の顛末…

 

 

『…さらばだ』

 

「遊馬…すまねぇ…おれ、もっと『献身』する、つもりだった、のに──」

 

「まさか…正義のヒーローが、負けるなんて……メタル、ナイト……あとは──」

 

 

 

106

 

 

 

『何をしようと無駄だ…!俺が全てを握り潰す!!』

 

「む、無念──」

 

「遊馬…弟子の行く末を見守れぬ師匠を許して、くれ……あとは、頼む──」

 

 

 

105

 

 

 

『暑苦しいンだよ!てめぇは!!そんなに熱いのが良いなら…細胞1つまでオレの拳で焼き尽くしてやるぜ!!』

 

「ひでぇ、ノリだぜ…バリアンへの借りも返せず…遊馬への、借りも……返せねぇ、なんて──」

 

 

 

102

 

 

 

『女…貴様は良く戦った…眠るがいい…』

 

「時間稼ぎも、できない…なんて──」

 

 

 

103

 

 

 

『貴方の気持ち…デュエルを通じて伝わってきた…けれど、それは今の私にとって…それは迷惑でしかないわ!!』

 

「ちくしょう…このデュエル…遊馬の…遊海さんの為にも、負けちゃダメだったのに……璃緒さんと一緒に、帰るはず…だったのに──」

 

 

『ごめんなさい…鉄男くん……ごめんなさい…!!』

 

 

 

ナッシュの覚醒と共に『七皇の剣』を手にしたバリアン達は応戦したデュエリスト達を蹂躪……彼らは光の粒子となって消えていった…。

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

【どうだ?Ⅳ…自分の仲間が一人一人やられていくザマを見るのは?圧倒的力で捻り潰されていく姿を見ているのは…!!】

 

「……そこまで…そこまで外道に堕ちてやがったのか、凌牙…!お前が、言ったんだよな…遊海さんが嫌がってるってよぉ!!」

静寂の中にⅣの怒号が木霊する…ナッシュの行いはⅣの逆鱗に触れた…!!

 

 

「お前は、取り戻す『心』のない怪人に成り果てた…!オレは…凌牙……いや、()()()()!!てめぇを許さねぇ─!!」

 

【ハッ…(それでいい…仲間の死を糧として…憎しみの炎を燃やせ!Ⅳ!!)】

天を衝くⅣの怒り…その姿を見たナッシュは小さく笑う…。

 

 

【そうさ…オレはナッシュ!!バリアンの王…!!来いよⅣ!地獄で仲間が待ってるぜ…!!】

 

「地獄に逝くのは…てめぇだあああ!!オレを本気で怒らせた事…後悔させてやる!!」

バリアン体に戻りながら挑発するナッシュを見て怒りを爆発させるⅣ…長きデュエルはついに最終局面を迎える…!

 

 

 

 

 

「オレのターン!!…オレのツキは…まだ、尽きちゃいねぇ!!魔法カード『トライアングル・ギミック・ボックス』発動!!自分の墓地のエクシーズモンスター『ジャイアントキラー』『ヘヴンズストリングス』『シリアルキラー』を除外する事で…新たなエクシーズモンスターを効果を無効にして特殊召喚できる!!」

墓地から飛び出す三体のナンバーズ…その力が呼び水となり、Ⅳの切り札が降臨する!

 

 

 

88

 

 

「現われろ!『No.88』!『ギミック・パペット─デステニー・レオ』!!」

 

【現れたか…『デステニーレオ』…!】

地獄人形の王たる獅子王人形が降臨する!

 

 

【確かに『デステニーレオ』は特殊勝利効果を持つ強力なモンスターだ…だが、その効果は無効!いわば…貴様のモンスターは牙を抜かれたライオンだ!!】

 

「そうだ…だから、オレは()()()()()を使う!『RUM-アージェント・カオス・フォース』!!」

 

【3回目の、ランクアップだと!?】

それはまさに『運命』が導いた1枚…驚天動地の3度目のランクアップ…!

 

 

「オレは『デステニーレオ』1体でオーバーレイネットワークを構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

88 

 

 

「現われろ!『CNo.88』!吼えろ!!荒ぶる魂…全てを滅ぼす、怒りを…呼び覚ませ!!『ギミック・パペット─ディザスター・レオ』!!」

大地を揺るがす威圧感と共にⅣの怒りの化身…『災厄』の名を背負う破滅の獅子が降臨する!

 

 

 

 

「これこそが…オレの最強にして最期の切り札だ!!」

 

【忘れたのか?「Dark Knight」はORUがある限り、破壊されても復活し…オレのライフを回復する!「ディザスターレオ」ではオレは倒せない!】

 

「確かに、お前のモンスターは倒せない…だが、今度はどうかな!!『ディザスターレオ』の効果発動!ORUを1つ使い、相手に4()0()0()0()ダメージを与える!マキシマム・カラミティ!!」

 

【なにっ!?ぐああああっ!!】

それはⅣの…トーマスの魂の咆哮…災厄の力がナッシュを吹き飛ばす!

 

 

【なる、ほど…!強力なモンスターだ…だが、俺のライフは残っている!】

 

「……いいや、この瞬間…オレの勝利は()()した!『ディザスターレオ』は…『デステニーレオ』の効果を受け継いでいる!!」

 

【っ!?まさか…特殊勝利条件!?】

立ち上がったナッシュはディザスターレオを見る…破滅の獅子は赤い光の脈動を起こしていた…!

 

 

「『ディザスターレオ』のORUが無くなったターンの終わり…オレはデュエルに勝利する!『ディザスターレオ』のORUは既にゼロ…!オレはバトルをせず、ターンエンド!!これで、終わりだ!ファイナル・クラック・ダウン!!」

Ⅳの叫びと共に光の獅子が牙を剥く…その力はナッシュに迫り…!

 

 

 

【まだだ…永続罠カード…発動!「オーバーレイ・アワード」を発動!自分のモンスターのORU1つを相手エクシーズモンスターに与える!よって「ディザスターレオ」の効果は不発だ!!】

 

「なにっ!?」

Dark KnightのカオスORUがディザスターレオのORUに変わる!

 

「…だが…!これで『Dark Knight』のORUは無くなった!さらに『ディザスターレオ』はモンスター効果を受けない!!次のオレのターンで決着だ!!」

 

 

【(トーマス…感謝するぜ、お前の憎しみが俺を追い込んでくれる……引き返せない、()()()()()に…!)】

迫る決着を前に…ナッシュはその1枚に全てを賭ける…!

 

 

 

 

【俺のターン…ドロー!!俺は…魔法カード「運命のクロス・ドロー」を発動!!互いのプレイヤーがカードを1枚ドローし…そしてそれがモンスターカードなら、相手フィールドに守備表示で特殊召喚し…その攻撃力分だけ、ライフを得る!!】

 

「これが…運命のドローか…!!」

ナッシュとⅣは互いにデッキに手を掛ける…そして…!

 

 

「【ドロー!!】」

 

紛れもない「運命の1枚」…その結果は…──

 

 

「くっ…!!」

 

【お前は、モンスターじゃなかったようだな…!オレが引いたのはモンスターカード!「サイレント・ウォビー」!!運命は…俺に()()と言った!!これが…人の心に別れを告げる1枚だ!!】

 

「お前…まさか…!!」

この時、Ⅳはナッシュの真意に気付く…彼が、どれだけ悲壮な覚悟を抱いていたのかを…。

 

 

【Ⅳの場に現われろ!「サイレントウォビー」!そして俺のライフは1000回復する!】

Ⅳの場に深海の鮫が現れ、ナッシュを回復する…!

 

【さらに「Dark Knight」の効果発動!ダークソウルローバー!!】

 

「くっ!!」

さらにDark KnightのORUが復活する!

 

 

【「Dark Knight」を攻撃表示に変更!バトルだ!『ディザスターレオ』を攻撃!!】

 

「なっ…!そういう事か!!」

槍術士が災厄の獅子に返り討ちになる…だが…

 

 

【「Dark Knight」の効果発動!リターン・フロム・リンボ!!これでライフ4400だ!!】

 

「自らモンスターを自爆させ、ライフを……!?」

辺獄の祝福がナッシュを癒やす…そしてその進撃は止まらない…!

 

 

【さらに俺は速攻魔法「パワー・ストリーム」を発動!このカードを「Dark Knight」のORUにする!】

 

「やるじゃねぇか…これで「オーバーレイアワード」の効果を再び使える…だが、俺も引いたンだよ…!運命の1枚を!!お前を縛る『運命』を打ち砕くカードを!!」

 

【なに…!?】

Ⅳはナッシュにダメ押しの一撃を仕掛ける!

 

 

「オレは手札から速攻魔法『ギミック・ヴェンジェンス』を発動!このカードは!相手モンスターのORUが増減した時、相手ターンでも手札から発動できる!『ディザスターレオ』の攻撃力分のダメージを相手に与える!!『ディザスターレオ』の攻撃力は3500…!戻って来いよ…!凌牙!!」

 

【Ⅳ…!!ぐうううっっ!!】

Ⅳの魂の咆哮がナッシュを燃やす…残りライフ、900…!

 

 

「もう、少し…もう少しで!!」

 

【……悪いな、Ⅳ…もう、次のターンは来ない…!】

 

「なにっ…!?」

吹き飛ばされたナッシュは…Ⅳに背中を見せながら立ち上がる…!

 

 

【魔法カード「パワーストリーム」をORUにしたモンスターは…バトルする時、攻撃力を1000アップする…!】

 

「な、に…!攻撃力3800…!?そうか、『運命のクロスドロー』…あの時、既に…!?」

運命のクロスドロー…その効果により、既に2人の明暗は決まっていた…!

 

 

【……さらばだ、Ⅳ…!「Dark Knight」で「ディザスターレオ」を…攻撃…!!】

 

 

「(分かってた…わかっていたさ……お前は、もう……)」

紅き槍が災厄の獅子を貫く…決別のデュエルはナッシュの勝利によって幕を閉じた…。

 

 

 

 

Ⅳ LP0

 

 

ナッシュ WIN…

 

 

 

 

 

 

 

「りょう、が…」

 

【トーマス…】

 

「くっ…相変わらず、いけ好かない野郎だ……後戻りできないように、自分を…追い込む為に…オレを、利用するなんて、よ…」

倒れ伏したⅣ…トーマスをナッシュは泣きそうな顔で見下ろす…トーマスは不完全なカオスの力の代償により、虫の息だった…。

 

 

「てめぇ…覚悟、しとけよ……遊海さん、怒るから、な…?」

 

【もう、怒られたさ……メラグ…璃緒と2人で戦って…呆気なく蹴散らされた…】

 

「ハッ…冥土の土産に…最高の、笑い話だな…」

そこに遺恨はない…あるのは戦いを終えた凌牙とトーマス、2人の穏やかな時間だった。

 

 

 

「…お前…遊海さんや、遊馬と…戦うん、だな?」

 

【…それが…俺の「運命」だからな…】

 

「やっぱり…そうなるのか…本当に、運命って、奴は……一足先に、地獄で待ってるぜ……最期に、お前とデュエルできて…よかっ、た……──」

 

【……安らかに眠れ、トーマス……お前達だけにはしねぇ…全てが終わったら、()()()()()()()…!】

穏やかな笑顔のまま、トーマスは霞と消えた……後に残されたのは、覚悟を決めた『王』の背中だった…。

 

 

 

 

『ナッシュ…ナンバーズを持っているのは九十九遊馬とアストラル、カイト…ⅢとⅤ…そして、白波遊海だ』

 

【……いいか、白波遊海には()()()()()…奴には何人もの『伝説の決闘者』がついている…七皇全員が揃った時に()()()()()!】

ナッシュの背後にベクターを除く七皇が集結…ナッシュは的確に指示を出す…!

 

 

【まずは遊馬達を草の根分けても探し出せ…!アリト、ギラグ…お前達はベクターを探せ!決着をつけるぞ……遊馬!!】

ナッシュは悲しみを振り払い…その場から姿を消した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナッシュの力…やはり侮れねぇ…七皇が一丸になられると厄介だ……さぁ、良からぬ事を始めようじゃねぇか……っと、ネームレスめ………もう()()()()()……良い感じに潰し合ってくれよ…?』

 

ベクターはハートランドの海を眺める…紅い光に照らされ、()()に輝く海を……。



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決戦!名無しの怪物・ネームレス!〜急転直下〜

『とある英雄の話をするとしよう…』

『遊馬と別れ、1人で怪人・ネームレスと対峙する遊海君…彼に待ち受けるものとは…?』


『それでは…物語のはじまりはじまり〜……』

《ドッフォーウ!!(いつまで前書きを乗っ取るつもりだ!馬鹿ナイトメア─!!)》

『アイター!?』


あはは…!あははははは!!

 

「ネームレス─!!」

 

時は少し巻き戻る…ハートランドの一角、そこに怪物の笑い声と怒号…そして耳障りな金属音が響く…。

その原因はベクターによってけしかけられた怪人・ネームレスと鋼の鎧を纏いし遊海のリアルファイトだった…!

 

 

 

《マスター!あの鎌が「不死殺し」です!気を付けてください!!》

 

「わかったぁ!!」

大剣『決闘の守護者』を構えた遊海はネームレスへと突撃する!

 

 

『あはは…きゃはははは!力が…力が溢れてくる!!ありがとうベクターサマ─!!』

 

「ぐぅ…!!がああっ─!?(この怪力は…あの時、以上の…!?)」

 

ガキィン!! 

 

《マスター!?》

 

衝突する黒き鎌と大剣…だが、ネームレスの膂力は遊海の記憶以上に上昇……鍔迫り合いに押し負けた遊海は弾き飛ばされ、数棟のビルを突き抜けて地面に叩きつけられる…!

 

 

 

「っ、ぐっ…!!くそっ、俺の力が、弱ってる…からか…!!」

大剣を杖代わりに立ち上がる遊海は追い付いてきたネームレスを睨む…遊海は全盛に比べ力が落ちている…それがネームレスに押し負けた一因だった…。

 

 

「それでも、負ける訳には…いかない……コイツだけは、俺が…倒す!!」

 

『あなたの血…美味しかった…もう一度、味あわせて…?』

 

「断る!!転身!モード影霊衣(ネクロス)・ヴァルキュルス!氷結混沌魔術(コールド・カオス・マジック)!!」

舌舐めずりするネームレスに対し、遊海は無数の氷の魔力弾を放つ!

 

『きゃはははは─!!』

魔力弾を切り飛ばし、薙ぎ払いながらネームレスは遊海に肉薄する!

 

 

『獲った…!っ!?』

 

バサッ…

 

「影霊衣・クラウソラス…幻惑の羽…!」

大鎌で遊海の首を狙うネームレス…しかし、遊海は羽となって消え、ネームレスの背後を取る!

 

「影霊衣…ディサイシブ!!ディメンション・ブラスター!!」

 

『っ─!?』

それは星を喰い尽くす侵略生物を絶滅させた決戦兵器の再現…破壊の極光がネームレスを呑み込み、空の彼方へと吹き飛ばす!!

 

 

「はっ…はっ……!久々の、連続転身は、堪えるな…!!」

連撃を仕掛けた遊海は息を荒げながら膝をつく…精霊アーマーの連続転身で大幅に体力を消費していたのだ…。

 

 

「(今ので倒せたとは思ってない…!次は、どう出る…!)」

油断なく周囲を見渡す遊海…その時…!

 

 

ボゴッ!!

 

 

「っ!?モード岩窟…!?」

 

『その指は鉄…その髪は檻…その囁きは甘き毒…!』

 

「があああっ!?」

アスファルトを割って遊海の足元から飛び出したネームレスは手にした不死殺しの鎌で岩の鎧を纏った遊海を斬りつける!!

 

 

『混沌に沈め…名無しの抱擁(カレス・オブ・ジェーンドゥ)…!!』

 

「ガッ──!?」

 

ガン!!

 

放たれるのは怪魔の眼光…ネームレスの眼から放たれた光線が遊海を飲み込み、ビルに叩きつける!!

 

 

 

「か、は…!?(う、動けない…!この、能力…まさか、奴の、正体は…()()()()()…か…!?)」

壁に叩き付けられた遊海は自身の状態から怪人の正体に気付く。

 

 

……その正体はギリシャ神話に伝わる古き大地の神であり、貶された「怪物」……その名はメドゥーサ…人を石に変える魔眼を持ち、英雄ペルセウスに倒された世界有数の怪物である…!

 

 

「(メドゥーサの神話を考えれば…バリアンに堕ちていても不思議じゃない…!だけど、それどころじゃ…!!)」

抵抗力によって石化は免れた遊海…しかし、魔力とダメージによって身動きが取れない…ネームレスは鎌を撫でながら近付いてくる…!

 

『ふふふ…!いただきま───』

 

 

《ゴッド・フェニックス!!》

 

「影糸乱舞!!」

 

 

『ぎゃっ!?』

遊海の首筋に手を伸ばすネームレス…それを阻んだのは神の炎と無数の糸だった!

 

 

「みど、り…!」

 

「ごめんなさい…!子供を避難させてました…!!」

 

《浄化の炎よ!!》

遊海を庇うように立つ翠…それと同時にフレアの優しい炎が遊海を包み、呪縛を燃やす!

 

 

「助かった…!翠、気をつけろ…!奴はギリシャ神話の女怪『メドゥーサ』の力を持ってる!」

 

「メドゥーサ…!?じゃあ、あの血の結界は『鮮血神殿』…!わかりました…!!」

遊海の言葉でネームレスの正体を知った翠は病院を包んだ『結界』の正体を察する。

 

 

「とにかく、俺達にとって『不死殺し(ハルペー)』は危険だ…!奴から引き離す!!」

 

「わかりました!!」

遊海は再び鋼の鎧を纏い、大剣を構え…翠も戦闘衣装を纏う!

 

 

『女…邪魔…!あああああ!!!』

2人の様子を見たネームレスは発狂…凄まじいカオスを纏いながら遊海と翠に襲い掛かった…!

 

 

 

………

 

 

 

「くっ…光の柱…!七皇が『七皇の剣(セブンス・ワン)』を使った、か!!」

 

「遊海さん!上です!!」

 

『あああああ!!』

遊海と翠…そしてネームレスのリアルファイトはハートランドの一角を更地に変えながら続き、海浜地区に到達…それと同じくしてハートランドの街に6本の光の柱が立ち上がる、それは七皇が真の力を開放した事を意味していた…。

 

 

 

「あまり、時間はかけられない…!!いくぞ…!!」

 

『あああああ!!』

大剣を構えた遊海はネームレスへと突撃する!

 

「見様見真似…!巻き上げだああっ!!」

 

『なっ…!!』

それは剣道における『技』の物真似…鎌の刃の側面を叩き、力に任せて空中に巻き上げる!!

 

 

「翠!!」

 

「合わせて!ウィンダ!ウェン!!」

 

《任せて!!》

空中に飛ばされた鎌に風の魔力が集中する!

 

 

《「《合体必殺!エレメンタル・ハリケーン!!》」》

 

翠の持つ精霊の力、ウィンダの持つシャドールの力、そしてウェンの持つセフィラの力が合わさった竜巻が…不死殺しの鎌を遥か彼方に吹き飛ばした!!

 

 

 

「観念しろ、ネームレス……お前が曲りなりにもデュエリストならば…この決闘でお前を倒す!」

 

『お遊びはここまで……ベクターサマの為に、殺してあげる…!』

追い詰められたネームレスは漆黒のデュエルディスクを呼び出す!

 

 

「遊海さん…!」

 

「翠…大丈夫、この因縁…俺が断ち切る!!」

長い因縁となった遊海とネームレス…ついに最終決戦が始まる…!!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

遊海LP4000

ネームレスLP4000

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『リアクター・スライム』を召喚!」

背中にスライム増殖炉を背負った人型のスライムが現れる! ATK500

 

「『リアクタースライム』の効果発動!自身をリリースする事でデッキから永続罠『メタル・リフレクト・スライム』をデッキからセット!そしてこのカードはすぐに発動できる!モンスターとして現れろ!永続罠『メタル・リフレクト・スライム』!」

無数のトゲの生えた鉄のスライムが現れる! DEF3000

 

 

「そして!フィールドの水族・レベル10・攻撃力0の『メタルリフレクトスライム』をリリースする事で…エクストラデッキからこのモンスターを特殊召喚する!現れろ!『(ゴッド)・スライム』!!」

鋼のスライムが変形…大地の神を写した巨大スライムが現れる! ATK3000

 

 

「先攻は攻撃できない…カードを1枚伏せ、ターンエンド!!」

遊海LP4000

神スライム 伏せ1 手札4

 

 

 

 

 

『私のターン…!ドロー!!』

『ふふっ…!私は魔法カード「スネーク・レイン」2枚を発動…!手札の「毒蛇神ヴェノミナーガ」と「ヴェノム・ボア」を墓地に送ってデッキから8枚の爬虫類族モンスターを墓地に送る…!』

 

 

墓地送り

ヴェノムサーペント

ヴェノムスネーク

ヴェノムボア

ヴェノムボア

レプティレスゴルゴーン

レプティレスメデューサ

レプティレスヒュドラ

レプティレスヴァースキ

 

 

 

『そして私は墓地の爬虫類族10体全てを除外…!現れて!「邪龍アナンタ」!!』

7つの頭を持つ巨大な蛇龍が顕現する!ATK?→6000

 

 

「攻撃力、6000…!!」

 

『「アナンタ」の攻撃力・守備力は召喚した時に除外した爬虫類族1体につき600アップする…!バトル!「アナンタ」で「神スライム」を攻撃!』

 

「『神スライム』は戦闘では破壊されない…!!さらに手札から『ジュラゲド』の効果!バトル時に手札から特殊召喚してライフを1000回復、ぐあああっ!!」

 

「遊海さん!!」

咄嗟に回復の悪魔を呼び出すが…邪龍が神スライムに襲いかかる…だが、破壊できないと分かると首の1つが遊海を弾き飛ばした…! ATK1700

 

遊海LP4000→5000→2000

 

 

ごふっ…!自分が、ダメージを受けた時、手札の『ガーディアン・スライム』を、特殊召喚!」

ジャッカルの頭を持つ巨大なスライムが現れる! DEF0

 

 

『あはは…!私はカードを1枚伏せてターンエンド…そして「アナンタ」の効果発動!『神スライム』を破壊!!』

 

「くっ…!」

邪龍の呪詛が神の写し身を溶解させた…。

 

ネームレスLP4000

アナンタ 伏せ1 手札1

 

 

 

「なんて、『運』だ…!それでも…それでも!!俺は…俺は!負ける訳には、いかない!!俺に力を貸してくれ……俺達の守護神よ!!」

遊海は太陽神の鎧を身に纏う!

 

 

「俺のターン!!大いなる光…全てを遍く照らす太陽よ!闇を祓う力を我が手に…!!ドロー!!」

それは勝利を創造する力に非ず…全ての希望を導く光が闇を祓う!

 

 

「魔法カード『古の呪文』発動!デッキから『ラーの翼神竜』を手札に加える…!さらに『ガーディアンスライ厶』をリリースする事で2体目の『神スライム』を特殊召喚!」

再び大地の神の写し身が現れる! ATK3000

 

「さらにフィールドから墓地に送られた『ガーディアンスライム』の効果で速攻魔法『ゴッド・ブレイズ・キャノン』を手札に加える!そして…『神スライム』は3体分のリリースとして扱える!!今こそ混沌を祓う為に天を舞え!我が守護神!『ラーの翼神竜』!!」

《キュアアア─!!》

 

厚い混沌の雲を切り裂き、黄金の太陽神が顕現する! ATK?→3000

 

 

『っ…!?』

 

「『ラーの翼神竜』の攻撃力は、リリースしたモンスターの元々の攻撃力分アップする…!さらに効果発動!!俺のライフ1000を糧として…相手フィールドのモンスター全てを墓地に送る!!」

 

《ネームレス…バリアンに堕ちし哀れな魂の末路よ…!我が炎を受けてみよ!!ゴッド・フェニックス─!!》

 

『ぎっ…あああああ!?』

全てを燃やす不死鳥が邪龍を燃やし尽くす!

 

遊海LP2000→1000

 

 

「悪いが…お前に対して加減はしない!!永続罠『メタル・リフレクト・スライ厶』発動!モンスターとして特殊召喚!」

再び鋼のスライムが現れる! DEF3000

 

「『メタルリフレクトスライム』をリリース!現れろ!三体目の『神スライム』!!」

三度、大地の神の写し身が現れる! ATK3000

 

 

「バトルだ!『ラーの翼神竜』でネームレスにダイレクトアタック!!」

 

『させない…!リバース罠「砂塵のバリア─ダスト・フォース」発動!相手の攻撃表示モンスターを裏守備に───』

 

「無駄だ!我が守護神たる『ラーの翼神竜』は相手の効果を受けない!そして…ダメ押しだ!!速攻魔法『ゴッド・ブレイズ・キャノン』!その効果により攻撃宣言をしていない『神スライム』と『ジュラゲド』を生贄に捧げ…その攻撃力分、攻撃力をアップする!!」

 

《砂嵐など何するもの…我が身は砂の国たるエジプトの神なれば!!》

 

『な、に…!?』

砂嵐を振り払ったフレアの嘴に太陽の力が集中する!

 

ラーの翼神竜 ATK3000→7700

 

 

「これで、終わりだ!!ゴッド・ブレイズ・キャノン─!!」

 

『あ、ああ…ぎゃあああああああ!!!?』

 

神聖なる炎が堕ちた魂を焼き尽くす…正体不明の怪物は此処に滅ぼされた…。

 

 

ネームレスLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

『あ……あ……あ……────

 

 

 

「……やっ、たか……ゴフッ…!?」

 

「遊海さん!!」

ネームレスは黒い粒子となって消滅する…その様子を見届けた遊海は血を吐きながら膝をついてしまう…。

 

 

「……流石に、バリアンフィールドでの…デュエルは……効くな…」

バリアン世界と融合しつつある人間界…その状況でのデュエルとリアルファイトは遊海に想像以上のダメージを与えていた…。

 

 

 

「っ…アヤカ、街の状況は……」

 

《……トーマスの、生命反応……消失……七皇は一か所に集まっているようです…!!》

 

「………そう、か…」

 

「遊海さん…」

アヤカの報告を聞いた遊海は血が流れる程、拳を強く握り締める……その体は怒りと悲しみで震えていた…。

 

 

「すぐに、七皇が…ナッシュが此処を嗅ぎつける…!行かな、きゃ……ぐっ!?」

 

「無茶はダメです…!ただでさえ、体が…!」

 

「……それでも、闘わなきゃ…ならない……それが俺の()()だから…」

遊海は満身創痍の体に喝を入れて立ち上がる……それが自身に課せられた責任だからと…。

 

 

 

『先生!無事か!?』

 

「十代…避難、状況は…」

 

『こっちは大丈夫だ!みんなハートの塔とか郊外の体育館とかに避難してもらった!瀬人さんもこっちに向かってる!』

 

「そうか…」

十代の報告を聞いた遊海は胸を撫で下ろす…遊海・翠・十代・瀬人は分かれてハートランド中心部の人々を避難させていたのだ…。

 

 

「俺達も……ネームレスを、倒した…あとは、バリアン七皇だけだ…!」

 

『流石だぜ、先生……後は任せてくれ…って言っても、聞いちゃくれないよな?』

 

「当然だ……とにかく、移動して……」

バリアンを前に次の策を話し合う遊海と十代…その時だった!

 

 

《っ…!?ハートランド沖に正体不明の高エネルギー反応が出現!!》

 

 

「「『えっ…!?』」」

アヤカの突然の報告に遊海達は海を見る…海に立ち上がる赤い光の柱…その近くから正体不明の物体が浮上する…!

 

 

「あ、あれは……『偽ナンバーズ製造機』!?なんで此処に!?」

遊海はその物体の正体を記憶の底から引っ張り出す…それはドン・サウザンドの居城にあるはずの偽ナンバーズを大量生産する為の装置だった…!

 

 

《スキャン完了……マスター、不味いです…!超高エネルギー反応があの装置の中に…!!》

 

「ま、まさか…!?」

 

《十代、ボク…物凄く嫌な予感がするんだけど…!》

 

「ユベル、奇遇だな…オレもだ…!!」

遊海と十代は共に嫌な予感を感じる…それはすぐに現実となった…!

 

 

 

ドクン…ドクン!!

 

 

 

不気味に脈動する「偽ナンバーズ製造機」…その中から無数の光が溢れ出し…!

 

 

 

 

 

『『『『『オオオオッ──!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

「アヤカ、遊馬達は…?」

 

《……遊馬とアストラルの反応…ロスト、バリアン世界に向かったようです…!》

 

「……あいつらの帰って来る場所…守らないとな……!!翠!十代!気を引き締めろ…来るぞ!!」

 

「はい…!」

 

『……昔、先生がたくさんのミスターTと戦った時の気持ち……良くわかったぜ…!』

 

遊海達はそれぞれの武器を構える…目の前に現れたのは空を覆い尽くす程の『偽ナンバーズ』の大群……遊馬の帰って来る場所を守る為…遊海達は決死の戦いに挑む…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ギャハハハハ!!始まりやがったか!オレ様の計算通りだ!!】

 

海浜地区を見下ろすビルの上…そこにベクターはいた、眼下では無数のモンスターを相手に奮戦する遊海達の姿がある…。

 

 

【ネームレスが殺られるのは()()()…倒されたアイツのエネルギーを隠しておいた『偽ナンバーズ製造機』に注ぎ込んで、そのカオスで偽ナンバーズの大群を呼び出す!これで奴らは終わりだ!ギャハハハハ!!】

遊海を嘲笑うベクター…ベクターは1番厄介な存在である遊海を封殺する為の綿密な計画を立てていたのだ…。

 

 

キィン─!

 

 

『見つけたぞ!ベクター!』

 

『ナッシュがお前の事を探してる…一度集まるぞ!』

 

【おお、アリトにギラグか…ちょうど良いタイミングだ…!】

ベクターの背後にアリトとギラグが現れる…ナッシュの命でベクターを探していたのだ…。

 

 

【ギラグ、ナッシュを連れてバリアン世界に戻れ】

 

『はぁ…!?いきなり何を言いやがる!?』

 

【そうだ…アリトはそのまま遊馬を探せ…これは()()だ、今…ナッシュと遊馬を戦わせる訳にはいかねぇからなぁ…】

 

『ふ、ふざけんな!!何故、オレ達がお前の命令に!』

ベクターの突然の言葉にアリトとギラグは怒りを露わにする…だが…。

 

 

【おいおい…誰が、お前達を目覚めさせてやったと思ってるんだ…?やれやれ…こりゃ、もう一度()()()()()()()()の力をやらなきゃダメらしいな!!】

 

『ドン・サウザンドだと!?』

 

『ベクター!まさかお前が─!?』

 

その通り…!

 

『『がっ!?』』

ベクターの思わぬ言葉に驚愕するギラグとアリト…その隙を突くようにベクターの影から実体化したドン・サウザンドが2人の頭を鷲掴む…!

 

 

我のさらなる力を与えてやろう…ふははははは!!

 

『『や、やめ──!?』』

 

 

混沌のハートランドにドン・サウザンドの笑い声と2人の絶叫が響いた…。



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顕現せし『龍王』〜希望を繋げ!〜

お久しぶりです!S,Kです!

ようやく…執筆できました…お待たせしてすいません!

バリアンの追手から逃げる遊馬達…そして知らされる残酷な現実…遊馬は新たな希望を見つけられるのか…。


それでは、最新話をどうぞ!


「うっ……お、オレは…?」

 

《あっ、トンマが起きた!》

 

「遊馬…!」

バリアンの追手から逃げる車中…気を失っていた遊馬がようやく目を覚ました…!

 

 

「ここは…?オレは、いったい…?」

 

(ここはⅤの運転する車の中だ…君は連戦の疲れで七皇が現れた後に気を失っていたんだ)

 

「そうだ…!?あの時、シャークの意識と記憶が流れ込んできて…!」

アストラルの言葉で遊馬はそれまでの出来事を思い出す、ハートランドとのデュエル…七皇の出現…バリアンとして覚醒した凌牙と璃緒…そして凌牙の抱く悲壮な決意…そこまで思い出した所で遊馬は飛び起きる!

 

 

「っ…!?七皇は!?みんなは無事なのか!?鉄男は…Ⅳは…!?遊海は!?」

飛び起きた遊馬は車内を見回す…そこにいたのはⅤとⅢ、キャッシーにオービタルとカイト、そして徳之助に小鳥……気を失う前まで一緒だった鉄男とⅣ、そして遊海の姿は見えなかった…。

 

(…鉄男とⅣの2人は私達を逃す為に残ってくれた……)

 

「遊海さんは……私達に襲い掛かって来たネームレスを弾き飛ばして…」

 

「なんだって!?」

アストラルと小鳥から状況を伝えられる遊馬…その時…。

 

 

ピコーン…ピコーン…ピッ──

 

 

「っ…!?兄様!Ⅳ兄様の信号が!!」

 

「っ…!!」

 

「えっ…!?」

車内で鳴り続いていたⅢの紋章ブレスレットの信号音が停止する…それは、Ⅳが……トーマスの生命反応が消えた事を意味していた。

 

 

 

 

「トーマスッ…!!」

 

「お、おい!?Ⅳの信号が消えたって、いったい…!?」

 

「遊馬……実は……」

車を急停車させたⅤは逃げてきた方向を見つめる…そして小鳥は遊馬が失神した後に起きた事を語り始めた…。

 

 

 

………

 

 

 

「そんな…!?嘘、だろ?鉄男が…Ⅳが…!みんなが!?……そんな、そんな事あってたまるかよぉぉ…!!」

 

(遊馬…)

小鳥達から聞かされた事実…それは遊馬を守る為にアンナや風也、六十郎に闇川、ゴーシュにドロワ…そして鉄男とⅣが七皇の足止めの為に闘い、おそらく消えてしまったという事…それを聞いた遊馬の慟哭がハートランドに響く…。

 

 

「オレの…オレのせいだ…!オレのせいで、みんなが…!!」

 

「違うぞ、遊馬…()()()()()()()…!!」

 

「カイト…!」

涙を溢す遊馬…そんな彼に声をかけたのは遅れて目覚めたカイトだった。

 

 

「今更『事実』を誤魔化してどうする…!辛いのは、お前だけじゃない…!」

 

「あっ…」

カイトの言葉を聞いた遊馬は顔を上げる…そこには涙を堪えたⅤの姿があった…。

 

「カイトの言う通りだ…遊馬、君がここで弱気になったらトーマスは…みんなは犬死だ…!!」

悲しみを堪えるⅤの言葉が遊馬達の胸に突き刺さった…。

 

 

 

「でも…なんで、なんでシャークはオイラ達の敵になったウラ!?ずっと遊馬と一緒に戦ってきたウラ!!」

 

「わからん…だが、奴はバリアンだ……もう、戦いは回避できない…!」

 

「そんな…」

 

「っ…たとえアイツがバリアンでも!オレ達は『仲間』だ!!それなのに…戦えっていうのかよ!?」

遊馬は未だに凌牙が…ナッシュが敵である事を受け入れられないでいた…だが、そんな遊馬を見たカイトは声を荒らげる…!

 

 

「忘れたのか!奴は親である白波さんに剣を向け…仲間であるⅣを倒した!!奴が本気だという事がわからないのか!?」

 

「それでも…それでも!!シャークの気持ちが本気でも!やっぱりシャークは仲間なんだ!…上手く言えないけど……『分かり合おう』って気持ちを捨てちゃダメなんだ!!諦めなきゃ…きっと()()()が見つかる!シャークや七皇との戦いを避ける方法が!!」

 

((戦いを避ける道……?))

遊馬はナッシュや七皇に対する想いを吐露する…その言葉を聞いた時、アストラルは1つの可能性を導き出した…!

 

 

(……あるかもしれない…バリアン七皇と戦わない『道』が…それは『ドン・サウザンド』を私達の手で倒す事だ…!)

 

「ドンサウザンド…?」

 

「それは…何者だ…?」

アストラルの突然の言葉に仲間達は戸惑う…その様子を見たアストラルは続きを語り始める…。

 

 

(ドン・サウザンド…それは『バリアンの神』、彼の力は遥か昔に封印された…だが、地上の状況を見る限りその封印が解けてしまったようだ……おそらく、奴は七皇を操り…その力を蘇らせた…!)

 

「なら…!ドン・サウザンドが『黒幕』!そいつを倒せば!!」

 

(バリアン七皇との戦いを回避できる…可能性はあるはずだ)

それは闇に差す僅かな『光明』、バリアンの神を倒す…それは困難な事かもしれない…だが、遊馬にとっては『0が1』なっただけでも充分だった…!

 

 

「いよっしゃ!!ドン・サウザンドはバリアン世界にいるんだろ!?だったらオレ達も…!!」

 

「……悪いが、オレは行けない……()()()()()()()()()()()がある」

 

「カイト!?」

士気を高める遊馬…だが、その様子を見たカイトは背中を見せる…。

 

「遊馬…これはオレが為さなければならない使()()だ……お前達の為にな……行くぞ、オービタル!」

 

《か、カシコマリ!!》

 

「待てよカイト!?おいっ─!?」

遊馬が止めるのも聞かず…カイトはオービタルバイクで何処かへと走り去った…。

 

 

 

「………遊馬、我々も君とは行けない…私とⅢはバリアン七皇と決着をつける…!!」

 

「Ⅴ!?どういう事だよ!!」

カイトが去ったのを見届けたⅤとⅢ…2人も遊馬へと別れを告げる…その瞳に『怒り』を宿して…。

 

 

 

「肉親を倒された我らが怒り…君には分からないだろう…!」

 

「ま、待てよ!それって七皇に『復讐』するって事か!?復讐の虚しさは…お前達が一番分かってるはずだろ!?」

 

「遊馬、これは『復讐』じゃない……正当な『怒り』だ…!!兄様の仇は…必ず討つ…!!」

 

「Ⅲ…!?」

かつてと同じ強い「怒り」を見せるアークライト兄弟…遊馬はその様子を見て戸惑いを見せる…。

 

 

「……遊馬、僕は君のような『意気地なし』じゃない…!さよならだっ!!…悔しかったら…()()()()()()を証明してみせろ!!」

 

「Ⅲ!Ⅴ─!!」

遊馬へと厳しい言葉を叩きつけたⅢとⅤ…2人は遊馬達を置き去りに車でハートランド中心部へと戻って行った…。

 

 

 

(…何故、彼らは急に……?)

 

「わからねぇ…でも、こんな憎しみや怒りばっかりでデュエルするなんて間違ってる…!!オレがそんな事…絶対に変えてやる!!」

アークライト兄弟の様子に疑問を抱くアストラル…遊馬は2人の背中を見送りながら決意を固めた…。

 

 

 

 

(さぁ、行くぞ…ここからは私と遊馬だけだ…!)

アストラルは現実世界へと異次元飛行船・かっとビ遊馬号を呼び出す…!

 

 

(小鳥達は家に帰れ…ここから先はあまりにも危険すぎる)

 

「えっ…?」

 

「へへっ…!みんな!ばあちゃんや姉ちゃんに伝えてくれよ!『オレは心配いらない』って!」

 

「ゆ、遊馬…?私…わたし─!」

アストラルと2人でバリアン世界へと向かおうとする遊馬…その様子を見て言葉を言い淀む小鳥…そんな時だった。

 

 

「にゃ〜にしてるのよ!小鳥!一緒に行くんでしょっ!!」

 

「えっ!?きゃっ!?」

 

「おおっとぉ!?」

突然、キャッシーが小鳥を遊馬に向けて突き飛ばす…よろけた小鳥は遊馬の胸に飛び込むように受け止められた…。

 

「小鳥!遊馬のコト、任せたからね!!絶対に離れちゃダメよ!離れたら…ホントに食べちゃうゾ☆」

 

「キャットちゃん…!うん!!」

キャッシーからエールを受けた小鳥…彼女は遊馬と共にバリアン世界へと旅立った…!

 

 

 

 

「キャットちゃん…なんであんな事したウラ?」

 

「トドのつまり…貴女は遊馬君の事が……」

 

「私だって…私だって遊馬と一緒に行きたい…でも、私がしてあげられる事は…なにもにゃいもん……」

飛行船を見送るキャッシーに等々力と徳之助が問いかける…キャッシーは遊馬の事が好きだと公言していたからだ…。

 

だが、キャッシーは分かっていた…これから先の戦いで自分にできる事はないと……遊馬の隣にいるべきなのは小鳥なのだと…。

 

 

「キャットビングよ…!小鳥!遊馬!!」

涙を溜めながらキャッシーは2人の無事を祈った…。

 

 

 

 

 

 

 

Sideアークライト兄弟

 

 

 

 

「小鳥が用意してくれたこれは…『寿司』というものか?」

 

「違いますよ、これが『デュエル飯』です!」

 

「そうか…いい味だな」

ハートランドを流れる川…その水門の上でⅢとⅤは小鳥が差し入れてくれたデュエル飯を頬張っていた、その表情は先程と違い穏やかだった…。

 

 

「…すまなかったな、ミハエル…遊馬との別れをあんな形に…」

 

「仕方がありません…バリアンの追手が近付いていたから…」

ⅢとⅤの真意…それはバリアンの追手が近付いた事を知り、遊馬やカイトを逃がす為の行動だったのだ。

 

 

「それを知れば遊馬は『戦う』と言うだろう…だが、いま遊馬達は新しい『希望』を見つけた…この戦いを終わらせられるのは、彼らだけだ…彼らが無事に旅立てるまで…七皇を引き付ける…!」

 

「はい…でも、気になるのが……」

 

()()か…」

2人は水門の上からハートランドの海浜地区を見る…そこは()()染まっていた…無数のモンスターがイナゴの大群の如く、その場所に集中していたのだ…その『黒』の中では時折、赤い炎や光の斬撃、光線の光が瞬いては再び『黒』に飲み込まれていく…。

 

 

「…遊海さん……!」

 

「信じるしかない…!あの人の…『伝説の決闘者』の力を…!」

離れ過ぎていて状況は分からない…しかし、死地で戦っているであろう遊海を心配する兄弟…その時だった。

 

 

 

『貴様ら…!遊馬とカイトは何処だ!!』

 

「現れたか、ミザエル…!」

Ⅴ達の前に『銀河眼使い』の七皇・ミザエルが現れる!

 

 

「2人の居場所を知りたくば…我らを倒して行くんだな!!」

 

『ハッ…私のネオタキオンの相手になるのかな…?』

 

「やってみなければ分からないさ…!!」

七皇において最高攻撃力を誇る『超銀河眼の時空龍』…兄弟達はそれに臆する事なく立ち向かう…!

 

 

 

『面白い…お前達の『No.』を私のネオタキオンで打ち砕いてやろう!』

 

「カイトから聞いていた『もう1人の銀河眼使い』と戦う事になるとは…奇妙な巡り合わせだな」

 

『どういう意味だ?』

 

「フッ…カイトにイチからデュエルを教え、鍛えたのは私だ」

 

『ほう…!』

Ⅴが因縁あるカイトの師匠と知ったミザエルは獰猛な笑みを浮かべる…!

 

 

「ミザエル、相手にとって不足は無い…!」

 

『良いだろう…2人まとめて相手になってやる!』

 

「ずいぶんと甘く見られたものですね、兄様…!」

 

「私達2人を同時に相手とは…我ら兄弟を甘く見ては痛い目を見るぞ!!」

高まる闘志…ついに兄弟は七皇へと立ち向かう…!

 

 

 

Sideout

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「………」

 

(遊馬、ⅢとⅤの事を考えていたのか?)

 

「ああ…あんな、喧嘩別れみたいになっちまって…」

飛行船に乗り異次元空間に踏み込んだ遊馬は甲板で別れたⅢとⅤの事を考えていた…。

 

「オレ…Ⅳの仇を討ちたいっていう2人の気持ちも分かるんだ…けど、『怒りに任せたデュエルは何も生まない』…そう伝えたかったんだ」

 

「遊馬…」

 

(君がそう考えたように、彼らには彼らの考えがあるのだろう…それを正しいと信じ、自分達の進む道を選んだんだ…)

 

「なら…私達も、自分達で考えて…『正しい』と思う道を進むしかないわ!遊馬はいつだってそうやって進んで来たじゃない!」

 

「アストラル…小鳥……ああ、そうだな!!」

アストラルと小鳥の言葉で遊馬は闘志を取り戻す!

 

 

(遊海も言っていた…『お前はお前のままでいい』と…かっとビングを信じろと!!)

 

「遊海…!分かってる…!かっとビングで…ドン・サウザンドを倒すんだ!!」

遊海の伝言を受け取った遊馬は次元トンネルの先を睨んだ…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「「『デュエル!!』」」

 

 

デュエルダイジェスト Ⅲ&Ⅴ対ミザエル

 

 

ハンデルール

 

ⅢとⅤは4000ライフ共有 

 

 

 

 

 

09 

 

 

「現われろ!『No.9』!『天蓋星ダイソン・スフィア』!!」

 

「これがお前のナンバーズか…!!」

先攻を取ったⅤは自身の切り札たる巨大衛星・ダイソンスフィアを呼び出した…!

 

 

「そして私は魔法カード『魔法召喚分解(マジック・サモン・ブレイクダウン)』を発動!相手は次のターン、魔法カードによる特殊召喚を行えない!」

 

『なにっ…!?』

 

「…お前達、七皇のデュエルデータは我が弟・トーマスのデュエルを通じて分析させてもらった…!お前達のキーカードは『RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)』…!!」

 

『ほう…なるほど、それで「超時空龍」の召喚を封じたつもりか?面白い…!!』

Ⅳの遺したデュエルログによってⅤ達は七皇の手の内を知る事が出来ていた…それにより先手を打つ事ができたのだ…。

 

 

「私はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

 

キィン─!

 

「っ…!兄様!!」

 

『ミザエル、これは…』

 

『…クリスとミハエル…手練のナンバーズ使いが2人とはね…』

 

「璃緒にドルベか…!」

『ダイソンスフィア』の姿を見つけたドルベとメラグが駆け付けた!

 

 

 

「(これで、()()()3()()…!)」

 

『ここはいい…お前達は遊馬とカイトを探せ!』

 

「っ…!兄様!!」

 

「七皇全員が揃うまで待ちたかったが…仕方があるまい!!」

 

 

キィン─!!

 

 

『な、なんだ!?』

 

『これは…人間界製の「スフィアフィールド」か!』

 

『閉じ込められた…!?』

 

「お前達には…しばらくの間此処に留まってもらう!」

ⅤとⅢは紋章ブレスレットを輝かせる…それによってスフィアフィールドが発生、ミザエル・ドルベ・メラグを閉じ込めたのだ…!

 

 

『ドルベ、メラグ…手出しは無用だ……くだらん小細工など、お前達を倒して粉砕してくれる!!』

ミザエルは細工を巡らせるⅤ達へと攻勢を仕掛ける…!

 

 

 

 

107 

 

 

『現れろ!「No.107」!「銀河眼の時空竜」!!』

 

「これが、もう1体のギャラクシーアイズ…!!」

ミザエルのデッキは『時空竜』の召喚に特化している…それによって黒き銀河眼が降臨する!

 

 

『バトルだ!「時空竜」で「ダイソンスフィア」を攻撃!!』

 

「その攻撃は届かない!『ダイソンスフィア』の効果発動!ORUを1つ使い、攻撃を無効にする!」

ダイソンスフィアに攻撃を仕掛ける時空竜…しかし、その攻撃はダイソンスフィアに届く前に霧散する…!

 

 

『この瞬間!「時空竜」の効果発動!1ターンに1度、バトルが終了した時にORUを1つ使い、フィールド上のこのカード以外のモンスター効果を無効にする!タキオン・トランス・ミグレイション!!』

 

「っ…!?」

ニュートラル体である赤と青の宝石が填められた三角柱に戻った時空竜が時を遡る…それにより煌々と輝いていたダイソンスフィアはその機能を停止する!

 

『さらに!「時空竜」はバトル中に使われたカード1枚につき攻撃力が1000アップし、もう一度攻撃できる!「時空竜」よ!「ダイソンスフィア」を粉砕しろ!殲滅のタキオン・スパイラル!!』

 

「「ぐあああっ─!!?」」

再び放たれる殲滅の光…それはダイソンスフィアの動力部を打ち抜き、粉砕する!!

 

 

『フン…貴様ら如きに「超時空龍」を使うまでもない…カードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

「これが、『時空竜』の力…!面白い…倒しがいがある!!」

 

『倒すだと?』

 

「そう…必ず、貴方を倒します!!」

一見、追い詰められたように見えるⅤとⅢ…だが、2人には策が残っている!

 

 

 

 

06 

 

 

「現れろ!『No.6』!『先史遺産(オーパーツ)─アトランタル』!!」

Ⅲは切り札たる大地の巨人を顕現させる!

 

 

「『アトランタル』は召喚に成功した時、墓地のナンバーズを装備でき、その攻撃力分自身の攻撃力をアップできる!そして僕らの墓地には攻撃力2800の『ダイソンスフィア』がいる!」

 

『させるか!!永続罠「時空陽炎翼(タキオン・フレア・ウィング)」を発動!このカードは相手がエクシーズ召喚した時に発動できる!このカードを「時空竜」に装備し、相手のエクシーズモンスターの効果を封じる!』

時空竜に灼熱の翼が装備され、アトランタルの効果を封じる…だが、それは…。

 

 

『これで『アトランタル』は「時空竜」を倒せない!!』

 

()()()()!」

 

「だが…これぐらいは予測の範囲内だ!ミハエル!私の伏せたカードを使え!」

 

「言われずとも!!」

 

『なに…!?』

ここまではⅤの想定内…そしてⅢは人類の切り札を解き放つ!

 

 

「『RUM-アージェント・カオス・フォース』発動─!!」

 

『なっ…人間がランクアップマジックを─!!?』

ⅤとⅢの思わぬ行動に驚愕するミザエル…しかし…。

 

ドクン…!

 

「(ぐっ…!!遊馬…僕に、力を貸してくれ─!!)」

それは命を削る切り札…激痛に耐えながら、Ⅲはカオスを解き放つ!

 

 

「このカードはエクシーズモンスターをランクアップさせ、カオス化させる!僕はランク6の『アトランタル』でオーバーレイ!カオスエクシーズチェンジ─!!」

暗黒の爆発と共に大地の巨人が再誕する!

 

 

06 

 

「降臨せよ!『CNo.6』!!有限なる時空を破り!今、その存在を天地に刻め!『先史遺産─カオス・アトランタル』!!」

それはカオスの力を宿せし『灼熱の巨神』…大地の怒りがミザエルへと牙を突き立てる!

 

 

「ここからが、本番です!『カオスアトランタル』!『時空竜』を攻撃!!カオス・パニッシュメント!!」

 

『させるか!!「時空陽炎翼」のさらなる効果発動!このカードを破壊する事で「時空竜」を破壊から守る!!ぐうううっっ…!!』

放たれる火山の噴火…しかし、それは灼熱のバリアに阻まれ、時空竜は破壊を免れる…!

 

 

 

『なんとしても「時空竜」を破壊したかったのだろうが…残念だったな…!』

 

「ふふっ…そう来ると思っていた!!『時空陽炎翼』が破壊された事で『カオスアトランタル』の効果が復活する!このカードはバトルを行なったモンスター1体を()()()()()にして、攻撃力を1000アップできる!」

 

『装備だと!?』

 

「『カオスアトランタル』!『時空竜』を奪い取れ!」

 

『た、タキオンドラゴン!!』

カオスアトランタルが灼熱のマグマを放つ…星の血潮たるマグマは時空竜を飲み込み……アトランタルの体に石像となった時空竜を封印する!

 

 

『そうか…全ては「時空竜」を奪う為の布石…奴らは最初からこの状況を狙っていたのだ!!』

デュエルを見ていたドルベが2人の狙いに気付く…!

 

 

『ぐっ…!!おのれ…!小賢しい真似を…!私はこれ程の屈辱を味わった事は……ない!!』

 

「お褒めに預かり光栄です…ってね!僕はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

『だが…これで私を封じ込めたと思うなよ!!』

時空竜を奪われ、怒りを滲ませるミザエル…彼は激情のままに七皇の力を開放する!

 

 

 

『私の、ターン!バリアンズカオスドロォォ!!

ミザエルの右手にカオスが集中…七皇の切り札を引き寄せる!

 

『私が引いたのは「RUM-七皇の剣」!これでいつでも「超銀河眼の時空龍」を呼び出す事………ハッ!?』

 

『まさか…!』

七皇の剣を引いたミザエルは超時空龍を呼び出そうとして気付いた……超時空龍を呼び出す為には…──

 

 

『お前達の、本当の狙いは…!?』

 

「「七皇の剣」は墓地からでも、エクストラデッキからでもオーバーハンドレットナンバーズを呼び出せる……だが、今の『時空竜』は()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「カオス化する前に装備カードとして奪い取る…!『七皇の剣』の僅かな隙を狙ったんだ!!」

 

『お前達の狙いは…最初から「超時空龍」の召喚を阻止する事だったのか…!!』

ⅤとⅢは最初から相手の『カオスナンバーズ』を封じる事を前提として作戦を組んでいた…それが実を結んだのだ…!

 

 

「これで…お前は翼をもがれたも同然……どうする!」

 

『くっ…お前達の力をみくびっていたようだ…!!だが、私もバリアン七皇の1人…このままでは終わらん!!』

切り札を封じられたミザエル…しかし、その闘志は未だ燃えている!

 

 

 

 

『私は「防覇龍ヘリオスフィア」を召喚!』

 

「攻撃力0のモンスターを、攻撃表示!?」

ミザエルは巨大な翼を持つ翼竜を呼び出す…!

 

 

『私のフィールドにいるのが「ヘリオスフィア」のみの時、相手は攻撃できない…!』

 

「なるほど…『時空竜』が自分のもとに戻るまで耐えるつもりか…!」

 

『私はカードを1枚伏せ、ターンエンド!』

Ⅴはミザエルの思惑を見抜く…だが、その策が通じる程…この兄弟は甘くない…!

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

Sideナッシュ

 

 

 

【(遊馬め…いきなり本丸に乗り込むとは…!!相変わらず型破りな奴だ…!!)】

その頃、ナッシュはギラグと共に異次元空間を駆けていた…ギラグから『遊馬がバリアン世界に向かった』という報告を聞き、バリアン世界へと急行していたのだ…。

 

 

ギュルン!!

 

 

『うわッ…!?な、ナッシュ!助けてくれ…!!』

 

【ギラグ!?】

その時、ギラグの助けを求める声が響く…ギラグの背後から不気味な腕が伸び、ギラグを掴んでいたのだ!

 

 

【ギラグ!今助け──!】

 

『はは…()()()()()()()…!』

 

【なっ…!?ぐあああっ!?】

ギラグに手を伸ばすナッシュ…その瞬間、影から伸びた無数の触手がナッシュを拘束する!

 

 

『お前に遊馬と戦われたら困るんだよ…全ては…ドン・サウザンド様の為に…!!』

 

【ドン・サウザンド…!?ガッ──(背中に、気を付けろって……とう、さ───)】

遊海の忠告の意味に気付いたナッシュ…しかし、それは既に遅く…その意識は闇へと飲み込まれた…。

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

「私は『RUM-アージェントカオスフォース』を発動!『ダイソンスフィア』をカオス化させ、ランクアップさせる!カオスエクシーズチェンジ!!」

コンボによって「ダイソンスフィア」を呼び戻し、人類の切り札を再び手にしたⅤはカオスの力を開放する!

 

 

09 

 

 

「現われろ!『CNo.9』!天空を覆う星よ!森羅万象をその内に宿し、今此処に降臨せよ!『天蓋妖星カオス・ダイソン・スフィア』!」

それは地球を飲み込むほどの超巨大衛星…カオスを宿す人類の叡智がミザエルを追い詰める!

 

 

「ミザエル…このモンスターはバトルした相手モンスターを自身のORUにできる!さらに、このカードは1ターンに一度、ORU1つにつき500ダメージを相手に与える!」

 

『なにっ…!?だが、「ヘリオスフィア」がフィールドにいる限り、お前達は攻撃できない!今の「カオスダイソン」にORUは1つ、何ターン掛けて私を倒すつもりだ?』

 

「もちろん…()()()()()でだ!!」

 

『なんだと!?』

ⅤとⅢ…2人の兄弟がミザエルを追い詰める!

 

 

 

「私は『カオス・アトランタル』の効果発動!バトルを放棄し、ORU3つ全てを使い!相手のライフを『1』にする!!」

 

『なんっ…!?(効果ダメージではなく、1にする効果─!?)』

 

『ミザエル!!』

カオスアトランタルの放った灼熱のマグマがミザエルを飲み込む!

 

 

「そして『カオスダイソン』の効果発動!相手に500ダメージを与える!これで終わりだ…バリアンの誇り高き戦士よ─!!」

 

「これが…僕達兄弟3人の、力だァァ!!」

Ⅳが命懸けで遺したデュエルデータ…それを最大限に活用した兄弟の魂の一撃…破壊の極光がミザエルを飲み込んだ…。

 

 

 

 

「やった…これで…!七皇の1人を!!」

 

「ああ……っ!?馬鹿な!!」

 

『………!』

爆煙に覆われていたフィールドの視界が開けていく…そこにはライフを残したミザエルが立っていた…!

 

 

『待っていた…効果ダメージを、受けなければ…このカードは、発動できなかった…!!』

 

「なにっ…!?」

ミザエルは伏せカードに全てを賭けていた…兄弟の考えを読み、その1枚に…!

 

 

『カウンター罠…「ダメージ・リバウンド」…!このカードは、効果ダメージを無効にする…!』

 

「そんなカードを…!」

 

『まだだ!この効果を発動した時、相手はフィールドの表側表示なカードを1枚、デッキに戻さなければならない…そして!選んだカードがモンスターカードだった時、相手はその攻撃力分のダメージを受ける!!』

 

「なんだと…!?」

 

「っ…僕達のフィールドにいる『カオスダイソン』も『カオスアトランタル』も僕達の残りライフ2800を上回っている……この状況で、戻せるのは…!?」

 

『…そう、装備カード扱いでモンスターとして扱わない「銀河眼の時空竜」だけだ!!お前達なら…必ず「ヘリオスフィア」を突破して、効果ダメージで決着をつけると思っていた…!!』

ミザエルは人間を見下していた…しかし、カイトと出会い…Ⅴ達兄弟の力を目の当たりにした事で…その考えを変えていた…それが窮地を脱する一手に繋がったのだ…!

 

 

「まさに…『肉を切らせて骨を断つ』戦法……見事だ…!私は『時空竜』を…ミザエルのエクストラデッキに戻す!」

ミザエルの策を讃えたⅤは時空竜を開放…時空竜は主のもとに舞い戻る…!

 

 

「だが…まだ、終わってはいない!!『カオスダイソン』のさらなる効果!1ターンに1度、ORUを1つ使い!相手に800ダメージを与える!」

 

『くどい!!永続罠「ダメージ・オルトレーション」を発動!再び効果ダメージを無効にする!』

再び放たれる極光はバリアに阻まれる!

 

『そして私は無効にした効果ダメージと同じ攻撃力を持つモンスター…「星間竜パーセク」をデッキから特殊召喚!!』

 

「くっ…!!私は、カードを1枚伏せ…ターンエンドだ…!!」

兄弟の猛攻を凌ぎきったミザエル…彼はついに切り札を開放する…!

 

 

 

 

『私のターン…ドロー!!』

『私は「RUM-七皇の剣」を発動!さぁ…行くぞ!私はランク8の「銀河眼の時空竜」でオーバーレイネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!』

闇の爆発と共に時を統べる「龍王」が現れる!!

 

 

107 

 

 

『顕現せよ!「CNo.107」!逆巻く銀河を貫いて…時の生ずる前より蘇れ!永遠を超える龍の星!!「超銀河眼の時空龍」!!』

周囲にカオスの光が溢れ出す…黄金色の体に3つの頭を持つ、神々しいドラゴン…それがミザエルの切り札、「超時空龍」の姿だった…!

 

 

 

「これ程のモンスター…見た事がない…!!」

 

『さぁ…貴様達が散る時が来たようだ…!』

 

「…最後の最後まで…私達は諦めるつもりはない!!」

巨龍に圧倒されるⅤとⅢ…2人は最後の作戦を発動する!

 

 

 

「永続罠『モノポール・チェーン』発動!このカードは、自分フィールドに『カオスダイソン』が存在する時に発動できる!相手モンスターの攻撃を封じる!!」

Ⅴの発動した罠から強固な鎖が放たれ、超時空龍を縛る…!

 

「さらに!私はⅢの永続罠『アトランティック・インビテーション』を発動!『カオスアトランタル』が存在する時!このターン相手モンスターが攻撃しなかった時、そのモンスターは破壊され、相手プレイヤーはその攻撃力分のダメージを受ける!」

 

「つまり…攻撃を封じられたそいつは…このターンの終了と共に破壊される!」

 

『そして私は攻撃力分のダメージを受けて敗北、か……だが、そうはいかない!!「超時空龍」の効果発動!!カオスORUを1つ使い、このカード以外の全ての効果を無効にし…フィールドを()()()()()()()()()()()()()()!!タイム・タイラント!!』

 

「っ…!?こ、これは─!」

 

「時間が…逆流する…!?」

超時空龍の咆哮が轟く…それと共に発動されたカードが伏せられ、ミザエルが発動した『七皇の剣』が手札に戻り…全てがターン開始の状態に戻ってしまった…!

 

 

『これにより、フィールドの全てのモンスター効果は封じられるが…「超時空龍」はその影響を受けない!』

 

「全てが戻ったというのなら…私はもう一度『モノポールチェーン』を…!」

 

『無駄だ…タイムタイラントを発動したターン、私が許可しないフィールドのカードは発動できない!…このモンスターこそ、絶対なる「時の支配者」だ!!私は「超時空龍」のさらなる効果発動!自分フィールドの攻撃していない「パーセク」と「ヘリオスフィア」をリリースし…このカードは3回の攻撃を可能にする!!』

 

「「っ─!?」」

圧倒的戦闘力を持つ「超時空龍」の効果に戦慄するⅤとⅢ…その時だった!

 

 

ゴオオオ─!!

 

 

『なんだ…!?』

 

『あれは…ロケット…!?』

ハートランドの街に凄まじい轟音が響く…それは宙へと向かう宇宙船の発射音……飛び立ったその宇宙船は瞬く間に雲の中へ消えていった…。

 

 

 

「…兄様…」

 

「ああ、充分に()()()()()

 

『時間を稼ぐ…?まさか、貴様ら!!』

 

「そうだ…先程の宇宙船にはカイトが乗っている!」

 

「彼は『月』へと向かっています」

 

『「月」だと!?』

 

「そして…遊馬とアストラルはバリアン世界へと向かった!」

 

『『『なんだって!?』』』

 

『なんだと!?!?』

Ⅴ達の思わぬ言葉にミザエル達3人、そして高みの見物をしていたベクターは驚愕する…!

 

 

「僕達のやるべき事は終わりましたね…」

 

「いいや、まだだ…まだできる事はある!」

 

「えっ…?」

Ⅴは指を鳴らし、とある場所に通信を繋ぐ…その場所は……。

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

キィン─!

 

 

「な、なんだ!?」

 

(あれは…ミザエル!!Ⅴ達のデュエルが始まっていたのか!?)

次元トンネルを進む遊馬達…その目の前にミザエルとアークライト兄弟のデュエルが映し出される!

 

 

「彼らは無事に旅立った…あとは、七皇のデュエルをその目に刻む事だ…!ミザエル、遊馬!私の話す事をよく聞いて欲しい!」

 

「Ⅴ…!?」

Ⅴは遊馬、そしてミザエルに向けて声を張り上げる!

 

「カイトは月へと向かった!それは、ある目的を果たす為だ…!カイトはドラゴンの伝説を解明するうちに…1つの説を導き出した…!」

 

時は遡る…それは遊馬がアストラルを失う少し前の事…。

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

「なんだと?ナンバーズを揃えただけでは…『ヌメロンコード』は起動しない!?」

 

「そうだ…オレはあの後、再びジンロンの遺跡を訪れた…そして調査の中でドラゴンが描かれた石碑を見つけた…そこにはこう記されていた…」

 

 

………

 

 

光と時の『龍』、生まれし地ににて相まみえる時…銀河の瞳、真に見開きて…新たな世界の扉を開く…

 

 

………

 

 

 

「光と時の龍…つまり、『光子竜』と『時空竜』…だか、生まれし『地』とは…?」

 

「『月』だ…」

 

「行くつもり、なのか?」

 

「ああ…2体の銀河眼…その戦いの勝者が新たな世界の扉を開く…それが『ヌメロンコード』を起動する鍵ならば……オレは知りたい…真のドラゴン使いとして『銀河眼』の持つ真実を……」

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

「ドラゴンの、伝説…」

 

『なるほどな…それでお前達は時間を稼いだ訳か…!』

Ⅴから語られるドラゴンの伝説…それを聞いたミザエルは兄弟の真意を知った…。

 

 

「待って…それじゃあⅣの仇を討つって言ったのは!?」

 

「くっ…!待ってろ2人共!すぐに─!」

 

遊馬!!…愚かな真似はするな!!これが…我々の敵、バリアン七皇の力だ!しっかりと目に焼き付け…()()()()()!!」

 

「っ…!!」

それはⅤからの最後の激励…優しさを捨てられない遊馬への忠告だった…。

 

 

「小鳥…デュエル飯、ごちそうさま…明里さんや春さんにも…よろしく…ご飯、美味しかったって……遊馬、酷い事言ってゴメン…あれは本心じゃない…遊馬…アストラル…君達に出逢えて良かった…!本当に、ありがとう…さようなら…!」

 

「Ⅲ…Ⅲィィ!!」

それは別れの言葉…掛け替えのない友に贈る、最後の………

 

 

 

『別れの言葉は済んだか…?行くぞ!!「超銀河眼の時空龍」!「カオスアストラル」を攻撃!!アルティメット・タキオン・スパイラル!!』

 

「「うわあああああ!!」」

別れの言葉を見届けたミザエルがデュエルを再開…破壊の閃光が灼熱の巨神を穿つ…。

 

 

『続いて「カオスダイソンスフィア」を攻撃!!』

 

「「がああああ!!?」」

 

「やめろ…やめろぉぉ!!」

遊馬の絶叫が響く…しかし、攻撃は止まらず…妖星は藻屑と消える…。

 

 

「遊馬、あとは、頼んだぞ…」

 

「僕達は…いつも、君の『かっとビング魂』と…共に、ある…!」

 

 

『「超時空龍」…2人に、ダイレクトアタック!アルティメット・タキオン・スパイラル!!』

破壊の閃光がⅢとⅤを飲み込む…2人は地に背中をつける事も許されず、紅き塵となって……消滅した…。

 

 

 

 

「あ、ああ…うわあ"あ"あ"あ"あ"あ"─!!」

 

 

通信が断絶した異次元に…遊馬の絶叫が木霊した…。

 

 

 

 

Ⅲ&V LP0

 

 

 

ミザエル WIN…

 

 

 

 

 

 

『さらばだ…()()()()()()()…!』

兄弟の敗北と共にスフィアフィールドは消滅…その魂は赤き柱に飲み込まれる…ミザエルは2人に最大の敬意を評した…。

 

 

キィン─…

 

 

『往くのか?月へ…』

 

『ああ…私の…()()の敵が待っている…!』

ドルベの言葉にミザエルは赤く輝く月を見上げた…。

 

 

『…メラグ、私達も行こう…バリアン世界へ!!』

 

『ええ…!』

破滅への運命は…ついに動き出した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がッ…あ"あ"あ"あ"っ!!?」

 

「ぐ、ううっ……ゆ、みさん…!!」

 

 

「先生!!退けお前らあああ!!」

 

『十代!っ…おのれ、遊海を離っ…ガハッ…!!』

 

 

《ゴッド・ブレイズ・キャノン!…ゴッド・フェニックス─!!》

 

《この、ままでは…!》

 

《ま、マス、ター………》

 

《助けて…!誰か!!遊海兄と翠を助けて─!!》

 

 

 

 

 

遊海達は…絶望の中にいた…。

 



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決闘防衛戦線〜英雄蝕む百鬼夜行〜

こんにちは!S,Kです!筆が乗ったので…連続投稿!


ハートランド沖に突然現れた「偽ナンバーズ製造機」…そこから溢れ出す『偽りのナンバーズの大群』…遊海はハートランドを守る事ができるのか…?


それでは…最新話をどうぞ!


『『『ウオオオオオ─!!』』』

 

 

 

「これが…俺達にとっての最終決戦だ!気を引き締めろ!!」

 

「はい…!!」

 

「先生達がたくさんのミスターTと戦った時の気持ち……よくわかったぜ…!!」

 

因縁の怪人・ネームレスを倒した遊海…しかし、それに呼応するようにハートランド沖から『偽ナンバーズ製造機』が浮上…そこから無数の『偽りのナンバーズ』の大群が解き放たれた…!

 

 

 

「現われろ…!我らを守る精霊達よ!『アポクリフォート・キラー』!『聖刻龍─トフェニ・ドラゴン』!『メガロック・ドラゴン』!『ラーの翼神竜』!そして…力を貸してくれ!眠りし三幻魔達よ!『神炎皇ウリア』!『降雷皇ハモン』!『幻魔皇ラビエル』!!」

 

 

《標的、偽りのナンバーズ…!人間界を守る為に殲滅します!》

 

《主殿には…指一本触れさせん!》

 

《偽物のナンバーズなぞ…我らの敵ではない!》

 

《太陽神の威光…その身に焼き付けるがいい!!》

 

《ウリア…ハモン…我ラヘト安寧ヲクレタ、主ヘノ恩義…今コソ報イル時ダ…!!》

 

遊海の号令に応えるように機械要塞・神官文字の白龍・岩の巨龍・太陽神…そして幻魔達が降臨する!

 

 

 

「遊海さんに…これ以上無理はさせられない!力を貸して!『エルシャドール・ミドラーシュ』!『エルシャドール・ウェンディゴ』!そして世界を照らす、希望の龍!『智天の神星龍(セフィラ・トーラ・グラマトン)』─!!」

 

 

《まかせて!》

 

《力は強くないけど…私達にしかできない事があるから!》

 

《グオオオン!!》

 

翠の呼び掛けに応え、神の巫女・風に愛された霊獣使い、そして世界を希望で照らした巨龍が顕現する!

 

 

 

「オレが力を鍛えてきたのは…この時の為だ!いくぜ!『E・HEROネオス』!『ユベル』!」

 

 

《あれが偽りのナンバーズ…!破滅の光…いや、それ以上の悪意を感じる…!》

 

《フン…数が多いけど…ボクと十代の敵じゃあない!!》

 

精霊に愛された男の隣に白きHEROと愛を抱く精霊が並び立つ!

 

 

 

『イリアステル・ソリッドビジョン…全力展開!有象無象を蹴散らせ!「真青眼の究極竜」!「ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン」─!!』

 

 

《ギュアアアアン!!》

 

《ガアアアアッ!!》

 

 

「瀬人!!」

 

『すまぬ、遅くなった!……一気に押し返すぞ!!』

 

「おう!!」

 

生ける究極の伝説、そしてカオスを宿す龍と共に瀬人が駆け付ける!

 

 

 

《偽りのナンバーズ総数…100…300…500……増え続けています!!一気に殲滅を!!》

 

「みんな!盛大にいくぞ!!俺達が…この街を守るんだ!!行け!カタストロフ・イレイザー!聖刻抹殺陣!鳴動富嶽!ゴッド・ブレイズ・キャノン!ハイパー・ブレイズ!青天の霹靂!天界蹂躪拳!!」

 

「ストライク・エア!創星のビックバン・バースト!!」

 

「ラス・オブ・ネオス!ファントム・ペイン!」

 

『ハイパー・アルティメット・バースト!混沌のマキシマム・バースト!!』

 

それはまさに戦争の開幕を告げる号砲…最強の精霊達の攻撃がナンバーズの大群に炸裂、周囲は爆煙に包まれた…!

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…!アヤカ!!今ので、どれくらい減った…!」

 

《サーチ…っ!?な、ナンバーズ総数…700…1000…!?増え続けています!?》

 

「なん、だと…!?」

アヤカの報告を聞いた遊海は驚愕する…おそらく、彼のオレイカルコスの神にも通用する一撃…だが、その攻撃を受けてなお…大群は数を増やしている…!

 

 

「も、もう一度だ!!全体一斉攻撃!そして…喰らえ!勝利へ導く決着の剣(デュエル・カリバー)─!!」

 

「ビックバン・バースト!!」

 

「ラス・オブ・ネオス!!」

 

『ハイパー・アルティメット・バースト!!』

再び放たれる精霊達の攻撃…さらにそれに上乗せして『決闘の守護者』の斬撃が放たれる!

 

 

《敵総数…800…750…900…!?ダメです!僅かに減りましたが、増えるペースが上回っています!!》

 

「…まさか…!?十代!ネオスでナンバーズを攻撃してくれ!!」

 

「わかった!!ネオス!あの黒い騎士みたいなナンバーズを攻撃!ラス・オブ・ネオス!!」

 

《ハアッ!!》

遊海は十代に攻撃の指示を出す…そして十代は「No.10黒輝士イルミネーター」を攻撃した…だが…!

 

 

《この、手応えは…!?十代!「ゲノムヘリター」の時と同じだ!私達では、()()()()!!》

 

「そんな…!?」

 

「やっぱりか…!!」

ネオスの言葉を聞いた遊海は確信する…ナンバーズの大群には「『No.』との戦闘でなければ破壊されない」効果が適用されている─!!

 

 

「十代!瀬人!効果破壊や手札に戻す効果を持つモンスターで攻めろ!でないと、倒せない!!デュエル・カリバー!!」

 

「っ…!そういう、事かよ!!フィールド魔法『ネオスペース』を発動!『N・グランモール』とコンタクト融合!来い!『E・HEROグラン・ネオス』!!」

 

『チィ…!厄介な効果を…ならば…!三体の『青眼の亜白龍』を融合!現われよ!「青眼の究極亜竜」!!ナンバーズを殲滅せよ!アルティメット・オルタナティブ・バースト!!』

 

「融合召喚!『エルシャドール・ネフィリム』!!影糸乱舞!!」

遊海の叫びを聞いた翠達は効果破壊やバウンスに特化したモンスターを召喚、ナンバーズに立ち向かう…しかし……

 

 

《敵総数…1500…2000…!接敵します!!》

 

「くっ…!?みんな!自分の身を守れ!来るぞ!!」

増え続けていくナンバーズを倒しきれず…遊海達はついにナンバーズ本隊と衝突した…!

 

 

 

 

「デュエル・カリバー!!…デュエルカリバァァァ!!」

 

「『ネフィリム』『神星龍』!耐えて…頑張って!!」

もはや空すらも見えなくなった闇の中…遊海と翠は背中合わせで戦い続けていた…。

 

 

 

《この数は…不味っ…ガアアアアッ!?》

 

「トフェニ!!」

最初に脱落したのはトフェニ…『No.61ヴォルカサウルス』と『No.19コールドン』の連携に翻弄され、灼熱のマグマに消え去った…。

 

 

 

《ヨモヤ…!我ラがチカラを上回ル、精霊ガ…『神』以外ニ存在スルトハ…!?グオオッ…!!》

 

「ラビエル!!この野郎ォォ!!」

次に消えたのは三幻魔…圧倒的攻撃力でナンバーズ達を攻撃し続けたが…『No.22腐乱拳』に真正面から圧倒され、弱った所に他のナンバーズの集中攻撃が炸裂…地に伏せた…。

 

 

 

《っ!!遊海!翠!危ない!!きゃああああ!!》

 

「ウィンダ!!」

次に倒れたのはウィンダ…空から現れた「No.42スペース・シップ・カオス・トマホーク」の爆撃から遊海達を庇い…爆発に吹き飛ばされた…。

 

 

 

《敵、総数…10000……最後まで、諦めない!!『神星龍』!私に合わせて!創星神の分け身たる我らならっ…!?蜘蛛糸…!?》

 

《グオオオン!?》

 

「アヤカ!!」

 

「神星龍!!」

再び攻撃を仕掛けようとするアヤカと神星龍…その身体を縛ったのは無数の蜘蛛ナンバーズ『No.35ラベノス・スパイダー』『No.84ペイン・タランチュラ』『No.77ザ・セブンス・シン』だった…無数の蜘蛛糸が要塞と星の龍を拘束…地面に叩き付けた…。

 

 

「く、そ…!!デュエル・カリバー!カリバー!!カリバァァァ!!!」

遊海は唯一の対抗手段である『No.∞』を振り回す…無数の光の斬撃はナンバーズを斬り裂くが…すぐに新たなナンバーズ達が出現する…!

 

 

 

「っ!遊海さん!ダメ…それ以上は!!」

 

「カリバー!カリバー!!カリッ…!?技が、出ない…!?ガフッ…!?

 

「遊海さん!!」

倒れていく仲間達…その怒りを糧に大剣を振り回す遊海…だが、その肉体は既に限界を超えていた…遊海は夥しい量の血を吐きながら地面に膝をつく…。

 

 

「遊海さんっ…!いま、回復……あっ…?」

 

「みど…っ…!?なん、だ…!?しかい、が、ゆが…む…」

遊海に回復魔法を掛けようとする翠…だが、彼女も倒れ込んでしまう…そして立ち上がろうとした遊海はバランスを崩し大剣に寄りかかる…。

 

 

《ばぁぁぐぅぅ〜!》

 

「『バクースカ』の、にせ、ナンバーズ…!?」

遊海達を戦闘不能に追い込んだのは『No.41泥酔魔獣バクースカ』…かつて遊海を昏倒させたモノより強力な酒気が遊海達の自由を奪っていたのだ…!

 

 

「こん、のぉぉ…!うが、て…!『決闘の守護者』─!!」

 

《ばく─!?》

遊海は渾身の力で大剣を投擲…バクースカの頭を貫いて破壊する…しかし…それは悪手だった…!

 

 

ズン─!!

 

 

「があああっ…!?」

 

《ユウミ!!》

突然、遊海に凄まじい重圧が襲いかかる…否、()()()()()()…『No.30絶滅のアシッド・ゴーレム』が倒れ込んだ遊海を踏みつけていたのだ…!

 

 

《ユウミを、離せ!!ゴッド・フェニッ…どけぇぇ!!》

遊海を救う為に炎の不死鳥へ変じようとするフレア…しかし、無数のナンバーズが壁となりその行く手を阻む…!

 

 

「先生!!退けお前らああああ!!」

 

《十代!!くっ…手が足りない…!このままでは…!》

遊海の叫びを聞いた十代が向かおうとするがラビエルを倒した『腐乱拳』が立ち塞がる…!

 

 

「ゆ、みさ…!ウェン…!」

 

《ごめん…!私の力じゃ、遊海兄まで、届かない!!》

泥酔状態から立ち直れない翠…ウェンもまた倒れた翠を風の結界で護るのが精一杯だった…。

 

 

『おのれ…!『究極亜竜』!道を切り開け!アルティメット…!ガッ!?しシステム目travel…!?お、オノレ!?!?』

究極亜竜で道を開こうとする瀬人を『No.34電算鬼獣テラ・バイト』がハッキング…その動きを封じる…!

 

 

 

メリメリメリ…!

 

 

「があ"あ"あ"あ"っ…!!?(ま、ずい…いしき、が……おれ、が、たおれた、ら…翠…が……みんな…が…!)」

骨が砕ける音を聞きながら遊海は絶叫する…今の遊海を救える者は…いない…!

 

 

 

「(諦め、ない…あきらめて、たまるか…!遊馬が……凌牙が……璃緒が………………ちく、しょう…────)」

 

 

遊海の意識は漆黒の闇へと塗り潰された……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔法カード『アースクエイク』発動!!今だ!()()()()!!」

 

「おおお!!!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』で遊海を捕らえているモンスターを攻撃!アブソリュート・パワー・フォース!!そして、守備モンスターを攻撃した時、相手の守備モンスターを全て破壊する!デモン・メテオ!」

 

「えっ─!?」

漆黒の闇の中に赤き炎が奔る…それはアシッドゴーレムを含む周囲のナンバーズを滅殺する…!

 

 

 

 

「ひゅっ…ゲホッ…ゴホッ!!……い、まのは…!?」

踏みつけから開放された遊海が咳き込みながら辺りを見回す…。

 

 

「遊海さん!回復薬を!!」

 

「る、か…?」

 

「遅くなってごめんなさい…!でも、私だけじゃないわ!」

致命傷を負った遊海に駆け寄ったのは龍可だった…しかし、それだけではない…!

 

 

 

 

「『ブラック・ローズ・ドラゴン』!ブラックローズ・ガイル!」

 

「夏菜!その調子よ!」

 

《アキ…!カナ!》

フレアの周りを飛ぶナンバーズが薔薇吹雪に蹴散らされる…それはブラックローズドラゴンを操る夏菜とそれを補佐するアキのおかげだった…!

 

 

 

「『スターダスト・ドラゴン』!シューティング・ソニック!」

 

「『ジャンク・デストロイヤー』!タイダル・エナジー!」

 

「おおっ!遊星!流星!!助かったぜ!!」

 

「遅くなってすいません!十代さん!」

 

「救援に来ました!!」

スターダストドラゴンの息吹とジャンクデストロイヤーの波動がナンバーズを蹴散らす!

 

 

 

「なんだか知らないけど…遊海を助ける!『ライフ・ストリーム・ドラゴン』!ライフ・イズ・ビューティー・ホール!」

 

「本当にアンタはいつもボロボロだよな…!さぁ、オレの最後の大仕事だ!『ブラック・フェザー・ドラゴン』!ノーブル・ストリーム!!」

 

《龍亞…!クロウ…!感謝します!!》

アヤカと神星龍を縛っていた蜘蛛糸が生命竜と黒羽竜の炎で焼き尽くされる!

 

 

 

「喰らえ!灼熱のクリムゾン・ヘルフレア」

 

「『クリムゾン・ブレーダー』!レッド・マーダー!」

 

『フン…!ジャック・アトラスにその孫娘か!』

 

「オマケみたいに言わないでよ!」

 

「ハハッ、事実だろうが!これで昔の借りは返せたな!」

灼熱の炎と剣の演武がナンバーズを蹴散らす…かつての仲間達『チーム5D's』が集結した!

 

 

 

 

 

「みんな、どうして…!長距離通信は、繋がらないはず…!?」

集結した5D'sの仲間達を見た遊海は驚く…バリアン世界の融合の影響で世界的なネットワーク障害が発生…長距離の通信は繋がらなくなっていた。

さらに遊海は遊星達にネオ童実野シティの防衛を任せていた為、此方に間に合うとは思えなかったのだ…。

 

 

「遊海さん…()()()が僕達を導いてくれたんです!」

 

《フォウ!キュ〜!(遊海!大丈夫!?)》

 

「フォウ…お前…姿が見えないと、おもったら…」

流星のライダースーツからフォウが飛び出してくる、フォウはバリアン世界融合の直前から姿が見えなかった…どうやってかは分からないが、ネオ童実野に向かっていたのだ…。

 

 

「フォウが必死に何かを訴えてきて……それで遊海さんが危ないと気づいたんです!!」

 

「そう、だったのか…ありがとう、フォウ…」

 

《フォウ!キュウ…》

優しくフォウの頭を撫でる遊海…フォウは血に濡れた遊海の頬を舐めた…。

 

 

《マスター…!敵総数…5000まで増加…!再び来ます!!》

 

「っ…!アレを…どうにか、しないと…!!」

遊海は無限に偽ナンバーズを産み出す『製造機』を睨む…元を断たなければ…戦いは終わらない…!

 

 

「遊海さん…大丈夫…!強力な助っ人が来てくれます!!」

 

「なに…!」

 

キィン─!

 

遊星が遊海に声を掛けると同時に次元の扉が開く…そして…!

 

 

 

『遅くなってすまない!次元の狭間が不安定だったんだ!』

 

『ようやく…お前達に恩を返す事ができる…!』

 

『我らイリアステル…この世界の未来の為に力を貸そう!!』

 

「ブルーノ…!アポリア!パラドックス!!」

次元の扉から現れたのは世界を見守る秘密結社『イリアステル』…滅四星の3人だった…!

 

 

「(パワーは十分…でも、あと()()()が必要だ…!」

ハートランドに集った伝説の決闘者達…そして…ダメ押しとなるのは…。

 

 

《…マスター、全バリアンが人間界からロスト…!反応が消えました!!》

 

「っ…!?そう、か…!!」

アヤカから全てのバリアンが人間界から去った事を聞いた遊海は……()()()()()()を使う事を決めた…!

 

 

「お前達!!これから、偽ナンバーズ製造機に攻撃を仕掛ける!!俺に…合わせてくれ!!」

 

 

「「『『おう!!』』」」

 

 

遊海は全員に号令を掛ける…!!

 

 

 

「黒き疾風よ!秘めたる思いをその翼に現出せよ!!シンクロ召喚!舞い上がれ!『ブラックフェザードラゴン』!!」

 

 

『現われろ!機皇を統べる皇帝!「機皇神マシニクル∞」!』

 

 

「聖なる守護の光…今、交わりて永久の命となる!シンクロ召喚!降誕せよ!『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』!!」

 

 

「世界の平和を守るため!勇気と力がレボリューション!!シンクロ召喚!進化せよ!『ライフ・ストリーム・ドラゴン』!」」

 

 

『リミッター開放!レベルMAX!!レギュレーターオープン!オールクリア!!…無限の力よ!次元の壁を突き破り…未知なる世界を開け!!GO!デルタアクセル!「TG-ハルバード・キャノン」!!』

 

 

「冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の花よ!咲き誇れ!シンクロ召喚!「ブラック・ローズ・ドラゴン」!!」

 

 

『未来への希望よ!新たな視点をその身で示せ!「Sin パラダイム・ドラゴン」!!』

 

 

「清廉なる花園に芽吹きし孤高の薔薇よ…蒼き月の雫を得て、ここに開花せよ!『月華竜 ブラック・ローズ』!」

 

 

「集いし絆が仲間の魂と重なり合う!照らし出せ!オレ達の未来のその先を!アクセルシンクロ!カモン!『シューティング・スター・ドラゴン・TG-EX』!!」

 

 

「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く!希望を示す道となれ!!アクセルシンクロ─!招来せよ!『シューティング・スター・ドラゴン』!」

 

 

王者と悪魔!今ここに交わる!荒ぶる魂よ…天地創造の叫びをあげよ!シンクロ召喚!!いでよ…『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』!!

 

 

「漆黒の闇を裂き、天地を焼き尽くす孤高なる王者よ!万物を見定め、その力を振るえ!シンクロ召喚!現われて!『琰魔竜 レッド・デーモン』!!」

 

 

「いくぜ…!究極コンタクト融合!来い!『E・HEROゴッド・ネオス』!!」

 

 

「現れて!聖選士の絆の結晶!!『智天の神星龍』!!」

 

 

『キサラ…我が友の為に力を貸してくれ…!無窮の時…その始原に秘められし白い力よ!鳴り交わす魂の響きに震う羽を広げ、蒼の深淵より出でよ!!「ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン」!』

 

それぞれの切り札モンスターを呼び出す伝説の決闘者達…そして、最後に遊海が呼び出すのは…!

 

 

 

 

 

「俺は…レベル4のモンスター2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

39

 

 

「勇士の戦いはここから始まる…!白き翼に希望を託せ!現れろ…!「A(アナザー) No.39」!「希望皇ホープ」!!」

 

「そのモンスターは、遊馬の!?」

遊海が呼び出したのは希望の写し身…その姿を見た流星が驚くが…希望の進化は止まらない!

 

 

「俺は『希望皇ホープ』1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築…!シャイニング・エクシーズチェンジ!!」

 

 

39

 

 

「現われろ!『SNo.39』!宇宙の秩序、乱されし時!混沌を照らす一筋の希望が降臨する!見参!!『希望皇ホープONE』!!」

ナンバーズの大群を打ち払うように落雷が落ちる…その爆雷地より現われるのはパンドラの箱に残った『最後の希望』…異世界の遊馬とアストラルが手に入れた『光』…その者の名は…『希望皇ホープONE』!!

 

 

「いくぞ…!!『ホープONE』の効果発動!ORUを3つ使い、相手の特殊召喚されたモンスター全てを破壊し、除外!そして1体につき、300ダメージを相手に与える!闇を照らせ!パンドラーズ・フォース!!」

 

キィン─!!

 

それは絶望を祓う、希望の光…聖なる光が無数のナンバーズを全て消滅させ、ナンバーズ製造機の突起が罅割れていく…!

 

 

 

「今だ!!

 

 

「「『「「いっけぇぇ─!!」」』」」

 

 

それは決闘者の全身全霊を掛けた一撃…人々の希望を背負った一撃がナンバーズ製造機を飲み込み、大爆発を起こした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《残存敵影…0……エネルギー値、減衰…装置の破壊……確認…!…私達の、勝利です…!!》

 

 

「勝てた、か……ざまぁみろ、ベクター…ドン・サウザンド……人間は、よわく、な───」

 

「遊海さん!!」

 

『遊海!!』

アヤカが装置の破壊完了を伝える…それを聞いた遊海は前のめりに倒れ込んだ…。

 

 

 

《ユウミ…!なんて無茶を!!そのカードの効果は!!》

 

「……『ホープONE』の効果は、俺のライフを…『10』に、する………もう、何にも…感じない……」

 

「馬鹿…遊海さん…!ゆうみさんの、ばかぁ…!!」

…遊海は全ての力を出し尽くした…その命の灯火は…尽きかけていた…。

 

 

「……心配するな、翠……『NEXUS』は、温存できた………ヌメロンコードで、蘇れる………別れは、少しだ…」

 

「それでも…!それでも…やだ…!!死なないで…!」

 

「みどり……ごめんな、俺が…もっと上手く、立ち回れたら…良かった、のに……」

遊海に縋りつき涙を流す翠…遊海はその頭を優しく撫でる…。

 

 

「……遊星…すぐに、ハートの塔に……避難しろ……このあと、人間かいは……バリアンと、融合する………彼処なら、安全だ……」

 

「遊海さん…もう、オレ達にできる事は……ないんですか…?」

遊星は今にも意識を失いそうな遊海に問いかける…。

 

「信じて、待ってやって…くれ……カイトを……()()を……遊馬とアストラルを………それが、あのこたちの、ちからに………」

徐々に言葉が弱弱しくなっていく遊海…5D'sの仲間達も…イリアステルも…十代も瀬人も…悲しみに包まれていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン……

 

 

 

 

 

 

《ッ…!?フォウ!ガルルル…!!》

 

「ふぉう…どう、した…?」

 

 

最初に異変に気付いたのはフォウだった…何かの気配を感じ取ったフォウは凪いでいるハートランドの海に向けて全身の毛を逆立てる…!

 

 

《っ…!?エネルギーの減衰…停止…エネルギーの、再収束を確認!!海中から…何かが出現します!!》

 

 

「なん、だって…!?」

アヤカのレーダーが異常な数値を示す…そして…!

 

 

 

 

ドン!!

 

 

『っ…!?いったい、何が…!?』

ナンバーズ製造機の存在した辺りの水面が爆発する、そして凄まじい水煙の奥から…ナニカが現れる…!!

 

 

「なんだよ、アレ…」

 

「……嘘、だろ…!?」

 

現れたモノを見た十代は唖然とし…遊海は目を疑った…。

 

 

 

 

 

それは…女性の形をしていた。

 

 

それは…赤紫の髪を持ち、その末端は蛇のようだった。

 

 

それは…常人なら見惚れる豊満な身体を持ち、それを黒い軽鎧が覆っていた。

 

 

 

それは…下半身が『蛇』であり…背中には黒い翼が生えていた。

 

 

 

 

 

 

 

その()()は……あまりにも巨大だった。

 

 

 

 

 

 

「……魔獣、女神……ゴルゴーン……()()()()()、なのか…!?」

遊海は記憶の底からその存在の名を引きずり出す…。

 

 

その名は『ゴルゴーン』…ギリシャ神話の女怪・メドゥーサの成れの果て…バリアン世界を蹂躪した『名無しの怪物』の正体だった…!

 

 

 

 

 

 

【Aaaaa……AAAAA───!!!】

 

 

 

 

 

ハートランドに嘆くような…怒りを叫ぶような…歌うような声が轟く、その眼は憎しみを宿し…矮小な人間達を睨みつけていた…。

 

 

 

 

 

 

     魔獣女神 出現

 

 

 

 

 

 

 

「…あいつには……勝てない……」

 

 

 

 

 

この時、遊海は転生人生において…初めて『絶望』した…。

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

『これは…かなり不味い事になったぞ…!?』

 

世界の何処かにある『夢幻の花園』…その中心にある塔から人間界を視ていたマーリンは冷や汗を浮かべる…。

 

 

 

『あの状態になって…ようやく()()が視えた…!遊海君…君は…君だけは……傍観者を決め込んでいる場合ではなさそうだ…!!』

マーリンは白いローブを翻し、花園の塔から飛び出した…。

 

 




マテリアルの一部が開放されました。

 

・繭


遊海に倒されたネームレスが『偽ナンバーズ製造機』に取り込まれた状態。
ネームレスの膨大なカオスを利用して「偽ナンバーズ」の大群を発生させていた。




怪物態 『魔獣女神ゴルゴーン』


大きさ 全長200m以上、身長40m(人間部分のみ、直立時の蛇体を含め50m)


姿 頭部 赤紫色のロングヘアー 紅い瞳 髪の末端は数十匹の蛇に変化し、獲物に襲いかかる。

体 背中に黒い翼 豊満な女体に黒の軽鎧
下半身は禍々しい金色の鱗を持つ蛇に変わっている。


ネームレスの真の姿…バリアン七皇侵攻時、『繭』を破壊しようとした遊海を含めた決闘者達のエナジーを吸収する事でバリアン世界を滅ぼしかけた怪物としての力を取り戻し、ベクターの想定外の復活を遂げた。

人格は失われ、怒りと嘆きのままに人々を蹂躪せんとする『モンスター』に成り果てた。


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魔獣女神ネームレス

【Aaaaa──AAAAAAaaaa───!!】

 

 

《フォッ…!?》

 

「嘘、だろ…」

 

「デカ過ぎる…!?あんなの、どうすればいいんだ…!?」

 

ナンバーズの大群を命を懸けて倒した遊海達…だが、遊海に倒されたはずのネームレスが凶悪な怪物となって復活した…!

 

 

『っ…!!呆けるなお前達!オレイカルコスの神に比べれば、子蛇のようなモノだ!!』

 

「瀬人、さん…!!」

瀬人の声が響く…その声で固まっていた者達は正気を取り戻す…。

 

 

『遊海!もう一度攻撃を仕掛ける!まだ、死ぬな!!』

 

「………わか、た…!」

 

「遊海さん…!!」

一瞬、瞳が揺れていた遊海…だが、瀬人の声で無理矢理に立ち上がる…!

 

 

「みんな、もう一度……力を、かして、くれ……!!」

 

《ユウミ…それが、貴方の選択ならば…!!》

 

《私達は…全力でそれに応えるまで…!!》

遊海の命を掛けた言葉にアヤカとフレアは最大限のエネルギーを集中させる…!

 

 

「お前達!!ここが正念場だ!もう一度行くぞ!!」

 

「オレ達の『絆』で…あの怪物を倒すんだ!!」

 

「『「「『おう!!』」」』」

 

遊星とジャックの叫びによって…デュエリストの魂は1つとなる!!

 

 

 

「いっけぇぇ!!シューティング・ミラージュ!」

 

「粉砕しろ!バーニング・ソウル!」

 

『ハルバード・スナイプ…ファイア─!!』

 

「シューティング・アクセル・ストライク!!」

 

極獄の絶対独断(アブソリュート・ヘルジャッジ)!!」

 

「ブラック・ローズ・フレア!!」

 

薔薇の鎮魂歌(ローズ・レクイエム)!!」

 

「ライフ・イズ・ビューティー・ホール!!」

 

「エターナル・サンシャイン!!」

 

『ザ・キューブ・オブ・ディスペアー!!』

 

「ノーブル・ストリーム!!」

 

『パラダイム・ストリーム!!』

 

「レジェンダリー・ストライク!!」

 

『粉砕しろ!ハイパー・オルタナティブ・バースト!!』

 

「創星のビックバン・バースト!!」

 

「カタストロフ・イレイザー…ゴッド・ブレイズ・キャノン…!」

 

 

【AAAAA──!!!】

 

 

 

 

ドオオオン──!!!

 

 

 

 

 

 

シグナーのドラゴン達が…未来を守るロボットが…伝説の戦士が…生ける伝説が…希望の龍が…そして機械要塞と太陽神が再びの同時攻撃を仕掛ける…凄まじいエネルギーが再びネームレスを飲み込み、大爆発を起こした…!

 

 

 

 

 

 

 

「これで……な、に…!?」

 

『そんな、馬鹿な…!?』

 

()()()()()()……!!」

 

 

【…………AAA……!】

 

渾身の一撃を放ち、肩で息をする決闘者達……それを嘲笑うかのように、怪物は()()で佇んでいた…!

 

 

《ま、マスター…まさか…!?》

 

「アイツは………()()()だ…!!」

 

「不死…!?」

ギリシャ神話において怪物ゴルゴーン(メドゥーサ)は神々から「鏡の盾」「ハデスの隠れ兜」「空を駆ける靴」「キビシスの袋」…そして「不死殺しの鎌」を与えられた英雄ペルセウスによって、その頸を斬って退治されたとされている…。

だが…それ以前にも英雄・勇者と呼ばれた強者が何人もゴルゴーンに挑み…敗れ、石像と化した……それ故にゴルゴーンの異名は畏怖を込めてこう呼ばれた……「英雄殺し」と…。

 

 

『っ…奴は「不死殺しの鎌」を持っていた…それを奪わなければ、奴は倒せんという事か!?』

 

「あ、あああああ…!?」

 

「翠さん…!?どうしたんだ…!?」

ゴルゴーンの神話を思い出した瀬人が対処法を思い付く…だが、その言葉を聞いた翠が顔を青褪めさせる…。

 

 

「『不死殺しの鎌』……何処かに吹き飛ばしちゃった…!!」

 

 

「『『「「なんだって!?」」』』」

ネームレスは当初「不死殺しの鎌」を構えて襲撃してきた…その脅威を知っていた遊海達は鎌を弾き飛ばしてしまっていたのだ…!

 

 

『何処に飛ばした!?』

 

「わ、分からない…!たぶんカードになってハートランドの何処かに…!?」

 

「っ…!探してる場合じゃない!!あいつが動く!!生き残る事だけ考えろ─!!」

 

「『っ!?』」

血を吐くような遊海の叫びに瀬人と翠がネームレスを見る…ネームレスは先程の攻撃で此方を『敵』と認識したのか、海から凄まじい速度で迫ってくる!!

 

 

 

【AAAAAaaaaAAAA──!!】

 

《シャアアアアア!!》

 

『髪が、蛇に!?』

接近したネームレスが凄まじい咆哮を上げる…それと共に長い髪の末端が大蛇となり、遊海達に向けて襲いかかる!

 

 

「くっ…!迎え撃て!『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』!!」

 

「『ゴッド・ネオス』!!」

 

《ゴッド・ブレイズ・キャノン!!》

 

『ハイパー・アルティメット・バースト!!』

 

咄嗟に動いたのは場慣れしているジャック・十代・瀬人、そしてフレアだった…大蛇を千切り飛ばし、吹き飛ばし、燃やし尽くす…だが…。

 

ニュルン…!

 

 

《シャアアアアア!!》

 

「ちぃ…!再生するか!!」

吹き飛ばされ、燃やされた髪の断面が即座に再生…再び襲いかかる!!

 

ガシャン!!

 

【AAAAA──!?】

 

《くっ…!!このっ…大人しく、しなさい!!》

 

「アヤカ!!」

再び蛇が襲いかかる直前、アヤカがその巨体を使いネームレスを押さえ込む…!!

 

 

《わ、私が…時間を稼ぎます…!!早く、『鎌』を─!!》

 

「アヤカ…!()()()!そいつは!!」

暴れるネームレスを押さえ込むアヤカに遊海が叫ぶ…その時だった…!

 

 

【Aaa…AAAAAAAAAA!!!】

 

 

─────!!

 

 

《なっ─!?》

 

それは一瞬の出来事だった、ネームレスの紅い瞳と大蛇の口に凄まじいエネルギーが集中……無数の赤黒い光線となってアヤカに直撃…その機体を貫いた…。

 

 

《そん、な……マス、ター………ごめ、な…さ……──》

 

 

ドオオオン!!

 

 

「彩華…アヤカァァァ!!!」

 

「そん、な…!?」

大破したアヤカは海へ墜落…遊海の叫びが響く中、爆発し…消え去った…。

 

 

 

《っ─!!!よくも、よくもアヤカを!!受けてみなさい!我が身は不死鳥となり、天を舞う!!ゴッド・フェニックス!!!》

 

【AAAA──!!】

 

アヤカが倒されたのを見たフレアは激昂…炎の不死鳥となりネームレスに突撃する─!!

 

 

《いくら()()()であろうとも…痛みを感じ、消耗するはず…!貴様の再生に限界が来るまで…その身を燃やし尽くす!!我が身が纏う太陽の炎…とくと味わうがいい─!!》

 

【AAAAA…AAAAA─!?!?!?】

フレアがネームレスに掴みかかり、身体が瞬く間に全てを灰と化す太陽の炎に包まれる…あまりの熱量に周囲の海が蒸発、近くの岩やアスファルトが溶解する…!!

 

 

 

「す、すごい…!!これが『ラーの翼神竜』の本気…!!」

 

「頑張って!フレア─!!」

太陽神の本気を目の当たりにした流星が声を震わせ、龍可が声援を送る…!

 

 

 

『お前達!フレアを援護するのだ!ありったけの攻撃を─!!』

 

「待て!様子が変だ!!」

フレアの奮戦に瀬人が攻撃の指示を出す…だが、遊星が様子の変化に気付いた…!

 

 

【Aaaaa…AAAAAAAAAA!!】

 

ガブリ…!

 

《な、に…!?》

突然、禍々しい叫びを上げたネームレスが不死鳥(ゴッド・フェニックス)状態のフレアに喰らいつく…!!

 

 

《こ、これは…力……吸わ、れ…!?》

 

「フレア!!」

身体を焼き焦がされながらネームレスはフレアのエネルギーを吸い尽くす…そして徐々に神炎は弱まっていき……。

 

 

《………ネームレス……きさまは……なに、もの────》

 

【AAAAA─!!】

 

「そ、んな……フレア…お前、まで……」

力を吸い尽くされたフレアは石と化す……ネームレスはその怪力で抜け殻となったフレアを投げ飛ばし、全てを照らす太陽は海に没した…。

 

 

 

「うそ、だろ…!?遊海の、最強の精霊が……!」

 

「あり得ない…!?三幻神は最上位の存在だ!それを、こんな一方的に…!」

瞬く間に倒されてしまったフレアとアヤカを見て龍亞は戦慄する…十代は目の前で起きた事を信じられずにいた…。

 

 

「あや、か……ふれあ……そん、な……」

 

「っ…!?遊海さん!?しっかりして!!」

 

《フォウ!?》

倒された相棒を…守護神を見て遊海が崩れ落ちる…遊海の精神は…既に限界を迎えていた…。

 

 

「俺の、せいか…?俺が…装置を、こわした、から……そのせいで、アヤカが……フレアが…!!」

 

「ダメ…!諦めないで!!まだ、まだネームレスを倒す手段が…方法があるはずです!!」

茫然自失となる遊海…心の支えである精霊達を失い、死に行く身体を前に…遊海は『絶望』した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ククク…ようやく、()()()()()ようだな…白波遊海よ……!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ─!?この、声は!?」

ハートランドに不気味な声が響き渡る…その声に十代は耳を疑う…!

 

 

 

【かつての約定を果たす時だ…世界は水が高きから低きに流れるように……我と1つになるのだ…!】

 

 

 

バリアン世界との融合の影響で赤紫色に染まる曇り空…その中から()()()()()が顕現する…その中から漆黒のローブを纏い、青い瞳を覗かせる悪魔が現れた…!

 

 

【我が名はダークネス…12次元の闇を統べる者…】

 

その名はダークネス…世界の裏側、闇であり『虚無』そのものである神がハートランドに現れた……。

 

 

 

「まさか…!?ダークネスが、復活した!?」

 

「ダーク、ネス…!?そんな、アーククレイドルの戦いで、倒した、はず…」

 

【倒した…?我は倒されてなどおらぬ……そうか…それは愚かな()が連れ込んだ別の『我』だ…そう言えば伝わるだろう?】

 

「まさか、あのダークネスは…未来世界の…!?」

70年近く前に倒したはずのダークネスの出現に動揺する遊海…そして気付いた、遊海が倒したダークネスは『未来』のダークネスであり、『この時代』のダークネスは虎視眈々と機会を窺っていたのではと…!

 

 

「くそっ…!?前門の『ネームレス』に後門の『ダークネス』かよ!?ふざけんな─!!」

思わぬ敵の出現に十代は思わず悪態をつく…フレアのエネルギーを喰らったネームレスは火傷の再生を終えつつあった。

 

 

【Aaaa…?】

 

【名無し……フン、()()()()()()()よ…汝は邪魔だ、先にダークネスに堕ちるがいい…!】

 

【A…AAAaaaa…!?!?】

 

「ネームレスが!?」

 

「あんな、簡単に…!?」

自身を見つめる怪物に気付いたダークネスは漆黒の太陽をネームレスに撃ち当てる…漆黒の太陽はネームレスを侵食…その巨体を虚無世界に飲み込んだ…。

 

 

 

 

【これで邪魔者はいなくなった…あとは白波遊海、遊城十代…汝らを倒せば…後は容易い事だ…もっとも……汝はもう黄泉へと落ちるだろうがな…救えぬ「英雄」よ…もう、立ち上がる事もできまい】

 

「……俺は、もう、動けない……死の運命は、変わらない……それでも、俺が居なくても……この世界は、渡さない…!俺が、絶望しても…今を生きる…決闘者は…輝く『希望』を抱いてる…!」

遊海を見下すダークネス…遊海の心は…体はもう崩壊寸前だった…それでも、遊海は信じている…決闘者の『光』を…人が『光』になれるという事を…!

 

 

「むしろ…感謝するよ、ダークネス…一番厄介な『敵』を倒してくれてありがとよ…!あとは、お前をデュエルで倒せば…遊馬の帰ってくる場所を守れる…!!」

 

【貴様…!死にかけの身で…折れた心でまだ希望を語るか…!!】

 

「その通りだぜ、先生…!!言ったはずだ、ダークネス!オレ達デュエリストがいる限り…お前の出番はずっと先だってな!!」

 

「デュエルで倒せる相手なら…僕達の出番だ!!」

 

「爺ちゃんから聞いた事があるぜ?お前の弱点は『希望』なんだろ!だったら未来への希望をいっぱい持ってるアタシと流星の出番だ!!」

期せずして消え去ったネームレス…それによって希望が生まれた、遊海を守るように十代、そして流星と海亜が立ち上がる!!

 

 

【良いだろう…汝達を斃し、我は人間達を虚無の世界へ───】

 

 

 

 

 

 

 

ビキ…ビキ…ビキビキビキ!バキャン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

【Aaaa…!AAAAAAAAA─!!】

 

【なにっ…!?ガアアアッ!?】

 

 

「なんだと!?」

 

『ネームレスの腕が…虚無世界から、飛び出して来た!?』

 

「そんな、馬鹿な…!?」

それは突然だった、漆黒の太陽に紫色の罅が入り…そこから巨大な腕が飛び出し、ダークネスを掴んだのだ…!

 

 

 

【馬鹿な…!虚無世界(ダークネス)を、抜け出す…だと?汝は…汝の絶望を抱く魂では…!おのれ…我を舐めるな!!】

虚無世界から脱出しつつあるネームレス…ダークネスは波動を放つが…ネームレスは意に介していない、そして…。

 

 

 

グシャ…バリ…バリ…バリ…!!

 

 

 

【グオオオッ…!?貴様、貴様!!虚無の神たる我を!!】

 

「ネームレスが……ダークネスを……()()()()!?」

おもむろに口を開いたネームレスは虚無の神に喰らいつき、砕いていく…。

 

 

【貴様、何処で…それほどの───】

 

 

バクン…!!

 

 

「………おい、そんなの…ありかよ…!?」

抵抗も虚しく…虚無の神はネームレスに完全に捕食された…。

 

 

 

ドクン…!!

 

 

 

【■■■■■■──!!!】

 

 

「おいおい…今度は、何だよ…!?いい加減にしてくれ!!」

禍々しい咆哮を轟かせたネームレスがその身を闇に包む…それはまるで繭のようで……。

 

 

 

「っ…!龍可!龍亞!!流星と夏菜、海亜を連れてこの場を離れろ!俺達が飛ばしてしまった『鎌』を探すんだ!!」

 

「遊海さん!?」

 

「なんでだよ!アタシと流星だって戦える!!」

 

「お前達が、()()()()()だ…!遊馬が帰って来るまで、生き延びろ…!頼む…!!俺の()()()()()だ!!」

 

「っ…」

もはや『勝つ事はできない』と悟った遊海は未来への『希望』を繋ぐ為に流星達を逃がす決断をする…!

 

「悔しいが…もう俺達の力じゃ、ネームレスは倒せない…!!でも…諦めた訳じゃない…!!これが…最後の、手段だ!!」

 

 

ビキビキ…バキン!!

 

 

 

【■■■…■■■■■!!!】

 

 

 

 

遊海が最後の手段を使おうとした時、ついに怪物は…『破滅の魔獣』が羽化を遂げる…。

 

 

それはあまりにも…あまりにも巨大だった。

 

 

『女神』としての全てを捨てたその表情はもう、伺い知れない。

 

 

振り乱された髪の全てが本物の『蛇』と化し、蠢く蛇の隙間からは単眼となった『魔眼』が赤く輝いている。

 

 

名付けるとするならば…『虚無の魔獣神ゴルゴン』…カオスを手に、虚無を喰い尽くし…人類を破滅に導く『獣』である。

 

 

 

 

 

「……ハハッ…もう、笑うしかねぇ……本当に…こんなに絶望したのは、初めてだ…」

 

『遊海、笑っている場合ではないぞ……何を、するつもりだ』

覆しようのない絶望を前に思わず笑ってしまう遊海…瀬人はそんな遊海に『最後の手段』を問う…。

 

 

「…ダークネスのおかげで、気付いたんだ……奴には『魂』がある……なら、直接『魂』を壊すしかない……そうすれば倒せるかも、しれない……死にかけてる、俺のように」

そう言うと遊海はふらつきながら立ち上がり、千年アイテム・千年玉を呼び出す…玉は既に崩れる寸前だった…。

 

 

【■■■■■──!!】

もはや形容できない咆哮を上げる怪物…その魔眼に凄まじい魔力が集中する…! 

 

 

「……翠、お前と出逢う事ができて…本当に良かった……例え、輪廻の輪から外れても…俺は……お前を………」

 

「遊海さん!嫌…!いやぁぁぁ!!!」

 

「ダメだ!翠さん!!」

 

「行ってはダメだ!!」

静かに怪物の前に立ち、穏やかに翠へと別れの言葉を告げる遊海…翠は駆け寄ろうとするが、十代と遊星の二人がかりで抑え込まれる…。

 

 

 

 

 

 

─俺は、お前を愛している─

 

 

 

 

 

 

───────!!!

 

 

 

放たれるのはアヤカを貫いたモノとは比べ物にならない『破滅の極光』…その光は呆気なく、遊海を飲み込んだ…。



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Badend Blossom

意識が朧げになっていく。

 

 

 

 

 

体を灼く痛みも、血が流れ出ていく喪失感も感じない。

 

 

 

 

 

 

壊れかけの肉体を離れた白波遊海の『魂』は…ただ堕ちていく…。

 

 

 

 

 

1秒が1000秒に

 

 

 

 

 

1000秒は1日に

 

 

 

 

 

 

死の足音が迫る中、引き伸ばされていく時間…

 

 

 

 

 

 

白波遊海は怪物の『裡』へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『■■■……すまない、オレのせいだ……!オレのせいで、この世界は…!!』

 

 

 

【貴方のせいじゃない!!私達が、私達みんなが、世界の『破滅』を呼び寄せてしまったんです…!!】

 

 

 

『…探そう、世界の運命を変えられる…もう1人の「不動遊星」を…!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ようやく、見つける事ができた、未来を救う英雄を…!』

 

 

『長い旅でしたね…●●さん』

 

 

「…まさか、貴方は…!」

 

 

『はじめまして…いや、久しぶりだな()()()()、俺は●●●●…お前を助けにきた…決闘者だ』

 

 

「ああ…ああ…!!これで、世界は…!!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『結局…未来は変えられなかった…!オレのしてきた事はいったい…いったいなんだったんだ!?』

 

 

 

【…●●さん…大丈夫…まだ私がいます…子供を作りましょう…そうすればきっと…】

 

 

 

『新世界のアダムとイヴになる…か、それが、最後の手段だなぁ…』

 

 

 

 

【●●さん…実は内緒にしてた事があるんです…】

 

 

 

『うん…?』

 

 

 

【実は…私…──】

 

 

 

『えっ…?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─熱い─

 

 

 

──熱い…熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──…なんで…?──

 

 

 

 

 

 

──なんで、貴方は……──

 

 

 

 

 

 

──私を1人にしたの?──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──なんで、()()()()()()()()()()()()()…?──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──許さない……許さない…!!──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AAAaaaa……AAAAA──!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『な、なんだ!この怪物は!?』

 

 

 

『チィ…!良からぬ事態にも程がある!!』

 

 

 

【七皇達よ!お前達の命、俺が預かる!現われろ!!『CX冀望皇バリアン』!!】

 

 

 

──なんで…?なんで邪魔するの?私は…帰りたい…アノヒトの所に…アノヒトと、一緒に……──

 

 

 

 

 

 

 

【ぐっ…!これで、終わりだ!お前を…封印する!!ランド・チャリオッツ・スラッシュ!!】

 

 

 

 

 

A…AAAAAAAAAA──!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──暗い……やだ……やだ…!──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──わたしを…ひとりに……しないで──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは1人の『怪物()』の記憶

 

 

 

 

救いのない「悲劇(死後)」の末路

 

 

 

 

全ては『終焉(オワリ)』へと向かう…。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

「っ、いま、のは……!?」

ネームレスの極光が直撃する直前、遊海は「千年玉」の力によってネームレスの精神世界へと飛び込んだ。

そして深層意識…『心の中心』に到達する刹那、遊海は怪物の記憶の断片を垣間見た……それは、遊海にとって予想だにしない……受け入れ難い『真実』だった。

 

 

 

 

【誰ですかぁ…?私の心に土足で入ってくる()は……】

 

「っ…!?」

遊海が辿り着いたのは『漆黒の玉座』…全てが『黒』で埋め尽くされた城に気怠げな…しかし、威圧を感じさせる声が響く。

 

 

【まぁ、いいや……この世界に来た時点で貴方は私の()()に過ぎないのだから…!】

玉座のある上段から声が響く…しかし、そこにあったのは玉座ではなく、『漆黒の蕾』…それが徐々に開いていく…。

 

 

 

それは女だった。

 

透き通るような白く、長い髪を持ち…妖艶な身体に影が纏わりついたような黒いドレスを纏っている。

 

 

その死人のように白い顔には赤黒い血管が罅割れのように浮かび上がり、紅い瞳で遊海を見下している…。

 

 

 

そしてその顔は……あまりにも遊海の愛する女にそっくりだった。

 

 

 

 

「お前…まさか…!!」

 

【あれ…?何処かで会った事、ありましたっけ?私はあなたみたいなフツメンは知らないんだけど…】

 

「翠…お前は、『ミドリ』なのか!?」

 

遊海は即座にその正体に気付いた…。

 

怪物・ネームレスの正体……それは『破滅の未来』で死亡した『シラナミ ミドリ』が転生……魔物へと変じた姿だったのだ…!

 

 

 

 

 

【ミドリ…?誰ですか?私は……う〜ん……BB…!今思い付いたわ!BBと呼びなさい、適当だけど】

 

「っ…!!」

ミドリ…否、BBは遊海を小馬鹿にする態度でそう名乗る…。

 

 

【ちょうど良かった…ずっと退屈してたんだぁ…!身体は勝手に動くし、玩具(オモチャ)はすぐに壊れちゃうし……でも、アナタも壊れかけ?……なら、すぐに壊してあげる…!】

 

「……『何故』、とは聞かない……どうして、そこまで堕ちたんだ…!」

 

【堕ちた…?違うわ…私は()()()()()…!よく覚えてないけど、裏切られ…殺されて…気づいたらこんなバケモノになっていた……だから復讐するの!全ての人間に…全ての世界に!!】

気怠げに復讐を…全ての破壊を望むBB…そこに本来の彼女の持つ「優しさ」は残っていなかった…。

 

 

「っ…!?違う!それは違う!!お前は()()()()()()!!お前を救おうとした『男』がいた!お前の為に世界の敵になった()鹿()がいた!!お前は…!!」

 

【うるさいなぁ…私はそんな奴知らない…なんだかアナタの話を聞いてると虫唾が走る…!】

 

「くっ…!!」

遊海はBBに彼の伴侶たる男の話を聴かせる…しかし、彼女は聞く耳を持たない…!

 

 

「堕ちて…狂って…ドン・サウザンドに操られているのか…!!ラプラス……お前の想い…お前の力を……貸してくれ…!!」

失意の中で命を落としたラプラス…その想いを糧に、遊海はデュエルディスクを呼び出す!

 

 

【あら…?私とデュエルするの?貴方の命…そこまで保つかしら…?】

 

「ミドリ…いや、BB!俺は…お前を救う!復讐に囚われたお前を…救い出す!!」

 

【救う…?勝手な事言わないで…お前が…お前達人間が…!私をこんな姿にした癖に─!!】

 

BBは怒りを…遊海は悲しさと希望を抱き、対峙する…人間界の命運を賭けた決闘が始まった…!!

 

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

 

 

遊海LP4000

BB LP4000

 

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

「手札からレフトペンデュラムスケールにスケール1の『クリフォート・ツール』を、ライトペンデュラムスケールにスケール9の『クリフォート・アセンブラ』をセッティング!!」

遊海の背後に光の柱が現れ、黄色と紫色の核石を持つ機械が現れる!

 

 

「『ツール』のペンデュラム効果発動!800ライフを払い、デッキから『クリフォート・ゲノム』を手札に加える!」

 

遊海LP4000→3200

 

 

「スケール1の『アセンブラ』とスケール9の『ツール』でペンデュラムスケールをセッティング!!我が魂を守りし大いなる力よ、今こそその力を示せ!ペンデュラム召喚!手札から現れろ!レベル6『クリフォート・ゲノム』『クリフォート・アーカイブ』!!」

遊海の頭上に時空の穴が開き、緑色とオレンジ色の核石を持つ機械達が現れる!

 

ゲノムATK2400→1800 ☆6→4

 

アーカイブATK2400→1800 ☆6→4

 

 

「特殊召喚されたクリフォートモンスターは攻撃力1800、レベル4になる!!さらに装備魔法『機殻の生贄』を『ゲノム』に装備!装備モンスターは2体分のリリースとして扱える!私は2体分のリリースとなった『ゲノム』と『アーカイブ』をリリース!力を貸してくれ…相棒!!いでよ!我が魂!『アポクリフォート・キラー』!!」

2つの核石が天に昇る…そしてクリフォートの王たる巨大要塞が顕現する! ATK3000

 

 

─いきましょう、マスター…あの魂を救う為に…─

 

「彩華……ありがとう」

その『キラー』に『彩華』の心は無い…それでも、その魂は遊海と共にある…!

 

「墓地に送られた『機殻の生贄』の効果発動!デッキから『クリフォート・シェル』を手札に加える!さらに『キラー』の効果発動!1ターンに1度、相手は手札・フィールドからモンスターを墓地に送らなければならない!」

 

【ふふっ…私は手札の『ヴェルズ・ヘリオロープ』を墓地へ…!】

 

墓地送り 

 

ヴェルズヘリオロープ

 

 

 

「『キラー』は相手のレベル・ランク10より低いモンスター効果、魔法・罠の効果を受けず…フィールドの特殊召喚されたモンスターの攻守は500下がる…!俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!さらに『アセンブラ』のペンデュラム効果発動!このターンリリースしたクリフォートモンスター1体につき1ドローできる!2ドローだ!!」

 

 

遊海LP3200

キラー (ツール・アセンブラ)伏せ1 手札3

 

 

 

 

【なんだろう…()()…アナタの手が……アナタの動きが…!】

 

「っ…!?」

BBの右手に闇が集う…!

 

 

 

 

【私のターン…ドロー…!】

【魔法カード『大嵐』を発動!フィールドの魔法・罠を全て破壊する!】

 

「っ…!!」

フィールドに嵐が吹き荒れ、ペンデュラムスケールと伏せられた『一回休み』が破壊される!

 

 

【ああ…魔法扱いなんだ、ペンデュラムカード…まぁ、いいや!相手フィールドのモンスターが私の場のモンスターの数より多い時、手札の『ヴェルズ・マンドラゴ』は特殊召喚できる!】

闇に侵された植物が現れる! ATK1550→1050

 

 

【そして『ヴェルズ・アザトホース』を召喚!】

『ワーム』の死骸が集まった異形のモンスターが現れる! ATK750

 

 

【私はレベル4の『マンドラゴ』『アザトホース』でオーバーレイ、エクシーズ召喚!闇に飲まれし哀れな龍よ…生者を凍てつかせよ!『ヴェルズ・オピオン』!】

闇に飲まれし『グングニール』の成れの果てが現れる! DEF1650→1150

 

 

【『オピオン』の効果発動!ORUを1つ使い、デッキから魔法カード『侵略の汎発感染』を手札に加える!そして『オピオン』がいる限り、相手はレベル5以上のモンスターを特殊召喚できない…カードを2枚伏せて、ターンエンド!】

 

BB LP4000

オピオン 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

「『キラー』の効果発動!相手は手札・フィールドのモンスターを墓地へ!」

 

【じゃあ…フィールドの『オピオン』を墓地へ!】

 

「っ…?(エクシーズモンスターを墓地へ…?何を狙ってる…?)なら、魔法カード『召喚師のスキル』発動!デッキからレベル5の通常モンスター『クリフォート・ツール』を手札に加える!」

躊躇なくオピオンを墓地に送ったBBを警戒しながら、遊海はターンを進める…!

 

 

「レフトペンデュラムスケールに『ツール』をセッティング!さらにライトスケールにスケール1の『アーカイブ』をセッティング!」

再び光の柱が立ち上がる!

 

 

「ペンデュラム召喚!エクストラデッキから現れろ!『ツール』!『アセンブラ』!『ゲノム』!『アーカイブ』!」

 

【罠発動!『奈落の落とし穴』!攻撃力1500以上のモンスターが召喚・特殊召喚された時、そのモンスターを破壊し、除外する!】

 

「し、しまった!!」

異次元の扉が開きクリフォート達が現れる…しかし、地面から伸びた手に全て引き込まれてしまった…。

 

 

 

【あはは!大漁だ!ぜ〜んぶ除外しちゃった!】

 

「くっ…バトルだ!『キラー』でダイレクトアタック!」

 

【あっはははははは!!】

キラーの攻撃が直撃するが…BBは狂ったように笑う…!

 

BB LP4000→1000

 

 

「俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンドだ…!」

 

遊海LP3200

キラー (ツール・アーカイブ)伏せ1 手札1

 

 

 

 

【ああ…痛いなぁ…!でも、この痛みが…私の怒りを思い出させてくれる…!私を裏切った人への、怒りを!!】

 

「違う…違うんだ!!ぐっ…!?(不味い…身体、魂が…!!)」

完全に正気を失っているBB…必死に遊海は叫ぶが……魂に傷が入り、身体に亀裂が走る…!

 

 

 

 

【私のターン…ドロー!】

【あはは!プレゼントをあげる…!魔法カード『大欲な壺』を発動…!さっき私が除外したアナタの『ツール』『アセンブラ』『ゲノ厶』をデッキに戻して…私は1枚ドローする…!】

除外されたクリフォート達が遊海のデッキに戻る…!

 

【そして私は『レスキュー・ラビット』を召喚!】

ヘルメットを被ったウサギが現れる! ATK300

 

 

 

【ふふっ…カワイイウサギさん、私の為に飛び跳ねてね?『レスキューラビット』の効果発動!このカードを除外してデッキから2体の『ヴェルズ・ヘリオロープ』を特殊召喚!】

ウサギが異次元に消え、代わりに血に染まったエメラルドの戦士達が現れる! ATK1950→1450 ATK1950→1450

 

 

【そして私はレベル4の『ヘリオロープ』2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!闇に飲まれし神よ…生者を刈り取る魔神となれ!「ヴェルズ・タナトス」!】

神話の死神の名前を持つ、魔轟神の成れの果てが現れる ATK2350→1850

 

 

「無駄だ…!『キラー』の効果はプレイヤーに対する効果、『タナトス』では避けられない!」

 

【焦らな〜い、焦らなーい!私はさらに『死者蘇生』を発動!墓地の『オピオン』を特殊召喚!さらに魔法カード『エクシーズ・トレジャー』を発動!私の場にエクシーズモンスターが2体いるから2ドロー!】

堕ちた氷龍が復活する! DEF1650→1150

 

 

 

「2体の、エクシーズモンスター………まさか!?」

フィールドに並んだ2体のエクシーズモンスター…その様子を見た遊海に嫌な予感がよぎった…!

 

 

【ふふふ…あははは!!私はランク4の『タナトス』と『オピオン』でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!】

 

「なんっ…!!?」

それは掟破りの『エクシーズモンスター同士のエクシーズ召喚』…!フィールドに闇の大爆発が起きる…!

 

 

001

 

 

【現れて…『i(イマジナリー)No.0』!光の失われた魂の末路、落ちて堕ちた哀れな魂の化身よ、今こそ光の世界に牙を剥け!『蛇身女神ゴルゴーン』!!】

 

《AAA…AAAA─!!》

それは現実世界で猛威を振るうBBの肉体…その腹部には終焉を意味する『0』が刻まれている…! ATK4000→3500

 

 

「『No.0』…!?ドン・サウザンドか…!!」 

遊海は直感した…このカードがBBを縛る『ドン・サウザンドの呪い』なのだと…!

 

 

【ふふふ…『ゴルゴーン』がエクシーズ召喚に成功したターン、相手はフィールドで発動する効果を発動できない…!バトルよ!『ゴルゴーン』で『アポクリフォートキラー』を攻撃!さらに効果発動!ORUを1つ使い、墓地の『ヘリオロープ』を除外!そしてその攻撃力分、自身の攻撃力をアップする!よって、1950アップするわ!】

 

「なにっ…!?」

ゴルゴーンがエメラルドの戦士を喰らい尽くす…!

 

ゴルゴーンATK3500→5450

 

 

【撃ち落とせ…!他者封印/万魔神殿(パンデモニウム・ケトゥス)!!】

 

「ガッ…!?があ"あ"あ"あ"あ"!!」

赤黒い光線が再びキラーを貫く…爆発に巻き込まれた遊海は城の壁に叩きつけられた…。

 

遊海LP3200→750

 

 

【ああ…その悲鳴、心地良いわ…!効果を使った『ゴルゴーン』が相手モンスターを戦闘破壊した時、私はそのモンスターの攻撃力分のライフを回復する…!】

キラーの破片がBBに吸収される…。

 

BB LP1000→4000

 

 

【私はカードを2枚伏せて、ターンエンド…!】

 

BB LP4000

ゴルゴーン 伏せ3 手札0

 

 

 

「ぐ……お……(うごけ、ない……一撃、で……くそ……)」

 

【あれ〜?もう終わりですかぁ〜?情けないですねぇ〜!アハハハハ!!】

ゴルゴーンの一撃を受けた遊海は立ち上がる事ができない…精神世界故に血は出ない……しかし、遊海が存在する為のエネルギーのほとんどを今の一撃が奪い去っていた…。

 

 

【なんでしたっけ?私を『救う』?…私は救いなんて求めてない…!暴れて暴れて…私を裏切った人を…この世界を滅ぼせれば…それでいいの!】

 

「……くっ…!!やらせ、ない…!それだけは、絶対にやらせない!!この世界はZ-ONEが…ラプラスが…あいつらが、命を賭けて…護った世界、なんだ…!!」

遊海は壁を支えに立ち上がる…全ては彼らが繋いでくれた『希望』を繋ぐ為に…!

 

【ゾーン?ラプラス?…知らないわ、私には関係ない話よ!さぁ、デュエルは続けられるのかしら…?】

 

「はぁ…はぁ…!翠…凌牙…璃緒…フォウ……俺に、最後の力を…貸してくれ…!!」

復讐の狂気に囚われるBB…その闇を祓う為、遊海は『最後の奇跡』を解き放つ!!

 

 

 

 

俺は…俺自身でオーバーレイ!!

 

【ん…?何をするのかしらぁ…?】

 

遊海は魂の炎を燃やす…その身体から紅蓮の炎が溢れ出す!

 

 

我が魂の焔よ!希望の光で闇を照らせ!!ファイナルエクシーズチェンジ!

 

紅蓮の炎が遊海を覆い…再誕する!

 

 

闇を抱き、希望を照らす!絆の戦士!NEXUS!!

 

それは赤い髪を逆立て、炎の刺繍が刻まれたコートを纏う『紅蓮の戦士』…遊海は変身不可能と思われた『NEXUSⅡ』へと進化したのだ…!

 

 

【変身した…?わーカッコイー!】パチパチ

 

 

 

『俺の、ターン!決闘者は、絆を繋ぐ!受け継がれし希望が…未来を変える!!シャイニング・ドロー!!』

光の軌跡と共に勝利を導くカードが創造される!

 

 

『スケール1「ツール」とスケール9「アーカイブ」でペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!手札から「クリフォート・シェル」を!エクストラデッキから「アーカイブ」を特殊召喚!』

3度開かれた次元の扉から黒と緑の核石を持つ機械が現れる!

 

シェルATK2800→1800 ☆8→4

 

アーカイブATK2400→1800 ☆6→4

 

 

『さらに速攻魔法「揺れる眼差し」を発動!ペンデュラムゾーンの「ツール」と「アーカイブ」を破壊し、効果発動!相手に500ダメージを与え、デッキからペンデュラムモンスター「クリフォート・ツール」を手札に加える!』

 

【何がしたいのぉ…?】

ペンデュラムの柱から放たれた稲妻がBBに直撃するが、彼女は意に介していない…!

 

BB LP4000→3500

 

 

『俺は、レベル4の「シェル」と「アーカイブ」の2体でオーバーレイネットワークを構築…!エクシーズ召喚!!』

 

 

 

 

『現れろ!「No.∞」!俺が歩みし戦いのロード…今こそ未来を切り拓け!!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!!』

時空を超え、魂の大剣が遊海の手元に現れる! ATK2500

 

【ああ…なんて綺麗な剣なのかしら…でも、その剣は痛いから嫌いなの…!永続罠『デモンズ・チェーン』を発動!『決闘の守護者』の効果の発動と攻撃を封印するわ!】

 

「っ…!!」

魂の大剣が鎖によって地面に縛り付けられる…!

 

 

『まだだ!!リバース魔法発動!「RUM-ネクサス・フォース」を発動!このカードはモンスター1体をランクアップさせ、カオス化させる!俺は「決闘の守護者」でオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズチェンジ!!』

 

【そんなカードを!!】

 

魂の大剣が戒めを破り、再誕する!

 

 

 

 

『顕現せよ!『CNo.∞』!俺の踏みしめた戦いの路よ!絆よ!!悪しき呪縛を打ち砕け!!「決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)(かがやき)」!!』

希望の輝きが遊海の右手に集中…白銀の手甲が装着される! ATK2800

 

 

『「輝」が特殊召喚に成功した時、カードを1枚ドローできる!シャイニングドロー!!っぐ…!?』

 

バキバキ……バキン!!

 

再び軌跡を紡ぐ遊海…しかし、その1枚で限界を迎え…NEXUSは解除されてしまった…。

 

 

 

【あら…ヒーローごっこはもう終わり…?その消えかけた身体で何ができるの?】

 

「はぁ…はぁ…!勝利の、方程式は……完成してる…!!」

ダメージを受けたアストラルのように身体が明滅する遊海…だが、彼は限界のその先へ突き進む…!

 

 

「『輝』の効果、発動!ORUを1つ、使い…!相手モンスターの効果を無効にして攻撃力を0にし…その数値分、攻撃力をアップする!シャイニング・インパクト!!」

 

【なんですって!?】

遊海の希望の光がゴルゴーンの力を奪い去る!

 

 

ゴルゴーン ATK4000→0

 

守護者・輝 ATK2800→6800

 

 

「お前を蝕む、復讐の狂気…そして…ドン・サウザンドの呪いを打ち砕く!!『輝』で『ゴルゴーン』を攻撃!!」

遊海が希望の光を宿した拳を掲げて跳躍…ゴルゴーンに肉薄する!

 

【させない…まだ、終わらせない…!速攻魔法発動!「ハーフ・シャット」!『決闘の守護者・輝』の攻撃力を半分にして、このターン戦闘では破壊されなくする!!】

 

「なにっ…!?」

それは本来、自分のモンスターを守る為のカード…それを遊海に使う事で攻撃力を半減させる!

 

守護者・輝 ATK6800→3400

 

 

「それでも、呪いを…打ち砕く!!闇祓う光の拳(シャイニング・バスター)─!!」

 

【っあああああ…!!!】

光の拳はゴルゴーンの顔に直撃…頸から上を消し飛ばした…!!

 

BB LP3500→100

 

 

 

「思い出してくれ!BB…ミドリ!!お前を愛する男がいた事を!!お前は裏切られてなんかない…お前達は…!!」

 

【うるさい…うるさい!うるさい!!うるさい!!!私は愛されてなんかない……私は捨てられた…!私を裏切った奴を…世界を…私は許さない!!】

 

「っ…!!」

吹き飛ばされたBBに必死に叫ぶ遊海……だが、BBはさらに濃密な『闇』を宿す…!

 

 

【破壊された『ゴルゴーン』の効果発動!フィールドから離れたこのカードを素材として…新たなエクシーズモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する!エクスターミネーション・エクシーズチェンジ!!】

 

「なんだって!?」

首を失ったゴルゴーンの躯が闇の渦に呑み込まれ…さらなる闇を呼び覚ます…!

 

 

001

 

 

【現われろ…『CiNo.0』!!闇へと堕ちた魂の末路…今こそ怨嗟の咆哮と共に世界を終焉に導け!『滅亡蛇神ゴルゴン』!!】

 

「嘘、だろ…!!」

BBのフィールドに紅き単眼と蛇の髪を持つ人類を滅亡に導く神が顕現する! ATK5000

 

 

「くっ…!!俺は、モンスターをセット…ターンエンド、だ…!!」

 

遊海LP750

決闘の守護者輝 セットモンスター 伏せ0 手札1

 

 

 

 

【私のターン…ドロー!】

【これで、終わりにしてあげる…『ゴルゴン』の効果発動!ORUを1つ使い、相手の手札とフィールドのカードを全て墓地に送り、ライフを1にする!!石化の魔眼!!】

 

「なん、だと!?ぐ、ぐああああ─!!!?」

紅き魔眼から石化の光が放たれる…それは遊海の全てのカードを石化させ、続けざまに襲いかかった無数の蛇が遊海諸共カードを粉砕した…。

 

遊海LP750→1

 

 

 

「っ……破壊、された『輝』の、効果…墓地のエクシーズモンスター『決闘の守護者』を、特殊、召喚…」

 

【しぶといですねぇ…いくら私でも呆れちゃいます】

遊海を守るように魂の大剣が突き刺さる! DEF2000

 

 

【とりあえず…その剣を壊しちゃいましょうか…!『ゴルゴン』で『決闘の守護者』を攻撃!デス・オブ・キュベレイ!!】

 

「まだ、だ…!墓地の『超電磁タートル』の、効果…!バトルフェイズを、終了…する!!」

遊海に放たれる魔眼の閃光がバリアに阻まれる!

 

 

【本当〜にしぶとい!しつこい!!私はターンエンド!】

 

BB LP100

ゴルゴン 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

「う、ぐ…(ダメだ…消える……存在が、保てない………死ぬ、のか……これで、終わり、なのか…?)」 

既に遊海の魂は崩壊し始めている…既に実体はなく、幽体も足先から空気に溶け始めていた…。

 

 

「(このターンで……勝たないと、みんな…死ぬ……みんな……遊戯………アテム……克也……海馬社長……俺は…託されたんだ、世界の、未来を……だから……だから……!!)」

 

 

キィン─!!

 

 

【なに…?】

既に腹部まで消えた遊海の姿……しかし、その右手が再び光を纏う…!

 

 

 

「おれの、ターン…シャイニング…どろー……!」

「おれは……『決闘の守護者』で…おーば……れ、い──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【……なんだ、つまらないの……デュエルが終わる前に壊れちゃった】

城が静寂に包まれる……遊海はデュエルディスクを遺し、消滅した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタカタカタ……キィン─!

 

 

 

 

【なにっ!?】

 

それは突然の事だった、魂の大剣が震え始め…突き刺さった地面を中心に銀河が生まれる!

 

 

 

─1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築…シャイニング・エクシーズチェンジ─

 

 

 

 

─顕現せよ、『SNo.∞』……英雄の魂、枷より解き放たれ…今こそ、世界を…想いを繋ぐ『絆』とならん……『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)NEXUS(ネクサス)』─

光の大爆発と共にフィールドに人影が現れる、それは遊海の希望の極致『NEXUS』…消滅したはずの遊海の『魂』がモンスターとなって復活する! ATK4000

 

 

【お前…いま、確かに消滅したはず!?】

 

─…王への忠義の為、命を捨て『精霊』となった男がいた……仲間へ『希望』を託す為、死してなおその『魂』をカードに宿らせる勇士がいる……俺は、彼らに倣っただけだ─

動揺するBBにNEXUS…遊海は穏やかに告げる、遊海は全ての力を…1枚のカードに託した、BBを救い…仲間達を守る為に…。

 

 

【それでも…お前は『ゴルゴン』には勝てない!このカードは相手のカード効果の対象にならず、カード効果で破壊されない!】

 

─『NEXUS』の効果、発動…ORUを1つ使い、自身の攻撃力を倍にして…相手に与える戦闘ダメージを倍にする─

 

【なんですって!?】

NEXUSの背中に黄金の光を纏う翼が出現する!

 

NEXUS ATK4000→8000

 

 

─バトル、『俺自身』で悲しき魔獣『ゴルゴン』を攻撃、光の翼、空を駆け…希望の一撃は闇を祓う……NEXUSノヴァ─

 

それは『魂』の一撃…遊海は全ての光を解き放つ、それは黒の城を…魔神を…BBを包み込む、そして全てが光の中に消え去った…。

 

 

 

BB LP0

 

 

NEXUS WiN

 

 

 

 

 

 

─終わっ、た……これで、遊馬の帰って来る場所を…守れた……よかっ、た……─

デュエルを終え、地面に倒れ伏したBBを見た遊海は胸を撫で下ろす、その姿は足元から消え始めていた…。

 

 

 

─BB…お前は、お前達は()()()()()()()()…ちょっとした行き違いが、お前達の絆を断ち切ってしまった…世界を、滅ぼしてしまった…─

遊海は静かに涙を溢す…。

 

 

─ブルーノ…アンチノミーから聞いた、お前はラプラスとの新たな『生命』を宿していたんだと……無念だったはずだ、その命と共にお前は死んでしまった……そしてラプラスだけが、生き残った……奴は闇に落ちた、何十年も…百年近く苦しんで…奴は全てを踏みにじる道を選んだ……お前を蘇らせる為に…アイツは『悪魔』になった─

 

それは偶然、生前のアンチノミーだけが知っていたラプラスとミドリの真実…それを聞いた遊海は納得した…もし、自分がラプラスの立場だったら……自分も躊躇なく『悪魔』になっただろうと…。

 

 

 

─…安らかに、眠ってくれ…ゾーンも、ラプラスも……きっと、お前を……─

 

 

 

【待っている、と?…冗談が好きなんですねぇ…!】

 

─がはっ…!?─

消えかけた遊海の体に無数の『影』が突き刺さる、その全てが遊海の急所を貫いていた…。

 

 

【ありがとうございます、()()()さん…貴方のおかげで久しぶりに頭がスッキリしました…感謝です!】

 

─そん、な……何故…なぜ、たしかに、ライフを…0に……─

 

BBがゆっくりと起き上がる…そして傷付いた体が再生していく…!

 

 

【何か、勘違いしてません?まさか…()()()()()()()()()()()()()()()()…とか、思ってませんか?】

 

─ま、さか…─

 

【その通り!BBちゃんはバケモノになった代わりに()()()なのです!…だから、言ったでしょう?この世界に来た時点で貴方は『玩具(オモチャ)』なんだって…私の退屈を解消する為の暇潰しだったんだって!】

 

─そん、な……!?─

 

遊海の表情が絶望に歪む…遊海は決闘で怪物の『魂』を…BBを倒せば、全てを解決できると思っていた……しかし、それは間違いだった。

 

『神』の領域に足を踏み入れていたBBは既に…この世界の『理』を超越していたのだ…。

 

 

【ああ…その表情、本当に素敵…!安心してユウミさん…私達はずっと一緒…私の中で、今度こそ…永遠に…!私は貴方を愛してあげる…】

 

─…………(ダメだ…BBは、俺と…ラプラスを…)─

ハイライトを失ったBBの眼を見て遊海は気付いた…確かに『NEXUS』の一撃はドンサウザンドの『呪い』を砕いた。

しかし、それ以前に…BBは既に狂っていたのだ…遊海と『ユウミ』の見分けがつかないほどの『愛憎』に囚われていたのだと…。

 

 

【なにか言い残す言葉はある?ユウミさん】

 

─……すまない、みどり…─

 

 

グシャ!!……グチャ……ボキ……ゴクン……

 

 

 

【その言葉は()に対して?それとも『私』に対して…?まぁ…もう関係ないか!あはは…アハハハはハハハ─!!アハハハハハハハハハ!!!

 

 

 

 

 

遊海は影に貪り喰われ、怪物の贄となる……BBの笑い声が精神世界に響き渡った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【さぁ…復讐を始めましょう…!私を裏切った…忌まわしい世界へ─!!】




登場オリカ紹介



iNo.0(イマジナリーナンバーズ) 蛇身女神ゴルゴーン

闇 悪魔 ランク0 ATK4000 DEF4000

見た目 名無しの怪物『魔獣体』と同じ姿

同じランクのエクシーズモンスター×2

このカードは『No.』モンスター以外との戦闘では破壊されない。
このカードはランク1としても扱う。

①このカードがエクシーズ召喚に成功した時発動できる。相手はこのターンのエンドフェイズまでフィールド上で発動する効果を発動できない。

②1ターンに一度エクシーズ素材を一つ取り除いて発動できる。自分の墓地のモンスター1体を除外し、その攻撃力分自身の攻撃力をアップする。この効果は相手ターンでも発動できる。この効果の発動後にこのモンスターが相手モンスターを破壊した時、その攻撃力分のライフを回復する。

③このカードがフィールドから離れた時に発動できる。エクストラデッキから「CiNo.0滅亡蛇神ゴルゴン」をエクシーズ召喚扱いで特殊召喚し、このカードをエクシーズ素材とする。





CiNo.0 (カオス・イマジナリーナンバーズ)滅亡蛇神ゴルゴーン

闇 悪魔族 ランク0 ATK5000 DEF5000

レベル12×5

このカードは「FNo.0蛇身女神ゴルゴーン」の効果でのみEXデッキから特殊召喚できる。
このカードは『No.』モンスター以外との戦闘では破壊されない。このカードはランク12として扱う。

①このカードは相手のカード効果の対象にならず、効果では破壊されない。

②1ターンに1度、ORUを1つ使い発動できる。相手のライフを1にし、手札・フィールドのカードを全て墓地に送る。

③このカードがフィールドを離れた時に発動できる。自分のライフを半分払う事でこのカードの元々の攻撃力を倍にして墓地または除外されたこのカードを特殊召喚する。

デザインイメージ

人類へ破滅を齎す『怪物』

カオスに飲まれた魂の『成れの果て』

愛憎の果てに狂った『復讐者』






SNo.∞ 決闘の守護者─NEXUS─

光 戦士 ランク0 ATK4000 DEF4000

見た目 遊海の究極体『NEXUS』と同じ姿

同じランクのエクシーズモンスター×3

このモンスターは自分フィールドの「No.∞」エクシーズモンスターの上に重ねる事でもエクシーズ召喚できる。
このカードは『No.』モンスター以外との戦闘では破壊されない。このカードはランク1として扱う。
①このカードのエクシーズ召喚は無効にならない。
②このカードが戦闘を行う時に発動できる。ORUを1つ使い、このカードの攻撃力は倍になり、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。この効果は相手ターンでも発動できる。
③エクシーズ素材を持たないこのカードがフィールドを離れた場合に発動する。相手フィールドのモンスター1体を選んで墓地に送り、お互いにその攻撃力分のダメージを受ける。


デザインイメージ



白波遊海の覚悟の証

一瞬の奇跡

『俺自身がモンスターになる事だ』

どんな事をしても、翠を救う…例え…この身が滅びようとも…


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旅路の終わり

ドオオオオン!!

 

 

『『『ぐあああっ─!?』』』

 

「「「うわああああ!?」」」

 

「遊海さん…遊海さぁぁん─!!」

 

『ぬぅ…!!遊海…お前は…!!』

 

ハートランドの海辺が爆風に吹き飛ばされ、翠の絶叫が木霊する、仲間達を…人間界を守る為、遊海は魔獣神の極光に飲み込まれた…。

 

 

「…どうなった、んだ…!遊海さんは…怪物は…!!」

爆煙に埋め尽くされた中で遊星は煙の奥を睨む…そして…。

 

 

「─────」

 

「あ、ああ……そんな…そんなぁ…!!」

 

「遊海……遊海ィィ!!」

 

「嫌…いやあああ!!」

 

最初に見えたのは…物言わぬ『石像』と化した遊海の背中だった…その手に握られていた『千年玉』は壊れ、地面へと散らばっている…その姿を見た翠やジャック…夏菜の叫びが響く…。

 

 

 

『っ…!!お前達!悲しむのは…泣き叫ぶのは後だ!!まだ怪物が残っている!!』

 

「っ…!」

瀬人が叫ぶ中…煙が完全に晴れていく…そして…。

 

 

【……………】

 

「怪物が……止まった…!?」

 

「先生…アンタ、命を捨てて…!」

煙が晴れた先でネームレスは沈黙していた…髪の蛇も全て垂れ下がり、瞳も輝きを失っている…。

そして十代は確信した…自分の命を犠牲に遊海はネームレスを倒したのだと…!

 

 

 

『遊海…よく、やった…!!お前達!最後の攻撃だ!怪物の肉体を消し──なにっ…!?』

 

 

ドクン…! ギィン─!!

 

瀬人が悲しみを堪え、ネームレスに攻撃を仕掛けようとした瞬間、その魔眼に光が戻る…!!

 

 

 

AAA…■■■■■■─!!

 

 

 

「嘘…!?」

 

《…不味い、力が増してる…!遊海の奴……()()()()みたいだ…!!》

 

「ユベル、そんな…!?」

再び禍々しい咆哮を上げるネームレス……ユベルは気付いた、精神世界に飛び込んだ遊海は目的を果たす事なく…逆に状況を悪化させたのだと…。

 

 

彼らは知らない…遊海は命を賭けて怪物の精神体を倒す為に戦った事を。

戦いの果てに…この世の『理』を超越していたBBに喰われ、失意の中で死んだ事を…。

 

 

 

そして…遊海は知らない、自身が現実世界で稼いだ時間が……たった1()0()()だった事を…。

 

 

 

 

「龍亞!龍可!流星!夏菜!海亜!!逃げろ!!遊海さんの死を……覚悟を無駄にするな─!!」

 

「じいちゃん!じいちゃん達は!?」

動き出した怪物を見た遊星が流星達に叫ぶ!

 

 

「オレ達の事はいい…!お前達さえ、生き残ってくれれば…未来への『希望』が繋がれば……オレ達は命を懸けられる!!」

 

「その通りだ、遊星…老兵はただ去るのみ……その去り際に、未来を守れれば…これ程嬉しい事はない!!」

 

「ヘッ…生き急ぐなよ…!そういうのは『鉄砲玉』のクロウの仕事だぜ…!!」

未来への希望を繋ぐ為、遊星・ジャック・クロウが並び立つ…!

 

 

 

■■■■■■──!!

 

「っ…!また光線が来る!!」

 

『させるか…!!人間達が命を懸けるなら……まずは我らを乗り越えて行け!!アルティメット・バースト!!』

 

「瀬人さん!!」

再び光線を放とうとするネームレス…その射線に「青眼の究極竜」を従えた瀬人が割り込む!!

 

 

─────!!!

 

《ギュアアア…アアン…!!》

 

 

『くっ……すまぬ、究極竜…最後の戦いが、負けに終わる、とは──』

 

 

ドゴン!!

 

 

『『『瀬人!!』』』

 

アルティメット・バーストと光線は僅かに拮抗した後、アルティメットバーストが押し負け…究極竜は石化…瀬人は余波で彼方まで吹き飛ばされた…!!

 

 

 

『くっ…!遊城十代!我らが殿(しんがり)を引き受ける!!翠を連れて退け!!』

 

『彼の1番大事にしていた彼女を守るんだ!!』

 

『我らは…この時の為に、生き延びていたのだ!!』

 

「ブルーノ!!」

 

「アポリア!パラドックス!!」

 

「あ、ああ……」

 

アポリア達イリアステルがそれぞれのエースと共に怪物に立ち塞がり、十代へと叫ぶ…翠は既に正気を失っていた…。

 

 

 

■■■■……■■■■■■──!!

 

「なっ──!?」

 

 

──────!!!

 

 

咆哮を上げた怪物は単眼……そして無数の蛇から破滅の極光を放つ……そして全員の視界が黒い光に塗り潰された…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ、う……なにが、どうなって……?」

最初に意識を取り戻したのは十代だった、周囲は乱射された光線によって荒れ地と化している…。

 

 

《じゅう、だい…無事で…良かった…》

 

「っ…ユベル!!」

倒れ込んだ十代の正面にはユベルがいた…しかし、その体は半ば石へと変わっている…。

 

《咄嗟に跳ね返そうと、したけど……無理だった……すま、ない…》

 

「ユベル…ユベル─!!」

十代へと言葉を残し…ユベルは完全に石像へと変わってしまった…。

 

 

 

 

「ブルーノ…!しっかりしろ!ブルーノ!!」

 

「私達を、庇って…!!」

 

『遊星…アキ……2人が、無事で…よかった…』

遊星とアキは大破したブルーノを抱きしめていた…機械の体だった事で石化する事はなかったが…その体は甚大なダメージを受けていた…。

 

 

 

「爺ちゃん…!!爺ちゃん!!」

 

「ジャックさん!!」

 

「ジャックおじさん!!」

 

 

「アポリア…!そんな!!」

 

「アポリア!しっかりしてくれ!」

 

『龍亞…龍可…キボウを…繋ぐ、のだ…!』

 

悲痛な叫びが響く…流星・夏菜・海亜を庇ったジャックが石化……さらに龍亞と龍可を庇ったアポリアが致命的なダメージを負っていた…。

 

 

 

「くそ…守るつもりが、守られちまうなんて…!」

 

「パラドックス…さ、ん…」

 

『これは、私の「償い」だ……私が、犯した「罪」の……!』

 

《フォウ…》

翠を抱きしめたクロウ…それを庇ったのはパラドックスだった…彼も深いダメージを負っていた…。

 

 

 

AAAAAA…■■■■■■──!!

 

 

「もう、ここまで…なのか…?」

凄惨な状況の中で嗤うような咆哮をあげる怪物……その魔眼に再び絶望の光が灯る…。

 

 

「……ごめん、なさい…遊海さん…!希望を……守れなかった…!!」

絶望の中、翠は涙を溢す…そして再び、絶望の光が放たれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ…?」

絶望の光に身構える翠…しかし、その身は痛みを感じる事も…石に変わる事もなかった…その『理由』は…。

 

 

 

 

 

「なんなんだ、この『樹』は…!?」

 

「で、デカい…!?」

 

■■■■……?

流星と海亜が声を上げ、怪物が怪訝そうに唸る…彼らを守るように巨大な『光の樹』が聳え立っていたのだ…!

 

 

「これは……この樹は、まさか!!」

そして…遊星はこの樹に見覚えがあった、かつてネオ童実野シティを守る為に戦った時…遊星は…『5D's』はその『樹』を見ている!

 

 

 

 

 

『どうにか、間に合ったようですね…いや…遅かったと、いうべきか…』

 

『まだ、大丈夫だ……あと1()0()()遅かったら…全てが終わっていた…!!』

 

 

 

 

 

『この、声は…!?』

そして…彼らの前に新たな人影…否、人型の『光』が現れる…ブルーノはその声をよく覚えていた…!

 

 

 

『…アポリア…アンチノミー…パラドックス……よく、遊星達を守ってくれました……そのおかげで()()は今度こそ、間に合いました……!』

人影の1人が振り返る…それはモノクルを掛けた青年だった…そして、会った事もないはずの青年にイリアステル滅四星は掛け替えのない『友』の姿を幻視する…!

 

 

『Z-ONE…!?我が友よ…!!お前、なのか!?』

 

『アポリア…あの時はすまなかった…私も、貴方達と共に…遊星達の導く未来を…見届けたかった…!』

 

『『Z-ONE!!』』

モノクルの青年…それはアストラル世界人アクル…その正体は滅四星の1人…『無限界帝』Z-ONEの転生した姿だった…!

 

 

そして…もう1人が座り込む翠へと歩み寄る…。

 

 

 

『…オレが来るまで、よく耐えてくれた……あとは、任せてくれ』

 

「ラプラス…貴方、なの……?」

 

『ああ…まさか、アストラル世界に転生するなんて…自分でも思っていなかった……許してくれ、とは言わない……だが、ケジメはオレがつける…!』

 

もう1人の男が翠へと語りかける…その名はアストラル世界人シーカー……否、もう1人の『転生者』…ラプラスの再転生した姿だった…!

 

 

『……遊海、ありがとう……お前のおかげで、俺は記憶を……「あの子」の事を思い出す事ができた…!お前が守り…繋いでくれた「未来への希望」…無駄にはしない!!』

石像となってしまった遊海に感謝を伝えるラプラス…彼は怪物へと向かい合う!!

 

 

 

「っ…!!Z-ONE!!ラプラス!!ネームレスは『不死身』だ!!『不死殺しの鎌』というカードがないと、倒せない!!」

遊星は言いたい事を飲み込み、怪物を打倒する為の情報を叫ぶ!

 

 

『遊星……不死、か……すまない、すまなかった…!お前を、もう…1人にはしない!!』

 

【■■■■■■■■■──!!】

遊星の言葉を聞いたラプラスは拳を握り締める…そしてラプラスを視認した怪物は禍々しい叫びを上げる!!

 

 

『行きましょう、ラプラス…!私達が、彼女を救い…止めるのです!!』

 

『ああ……付き合ってくれるか?ゾーン』

 

『もちろん…それが()というものでしょう?』

お互いに頷いたゾーンとラプラスが怪物に立ち向かう!!

 

 

『無は無限となり…無限の光から究極の『時械神』が降臨する!現れろ!「究極時械神セフィロン」─!!』

ハートランドに現れた『樹』…『生命の樹』が強い光を放つ、神々しい光の中から…鏡を依り代とした『神』…セフィロンが現れる!!

 

 

『我がカオスの源よ……かつて、星を破壊せし「神」よ…!今こそ、未来を救う為にその力を振るえ!!「創星神tierra」─!!』

ラプラスの体が闇に…強いカオスに包まれる、そしてその中より…遊海を追い詰めた『破壊神』tierraが降臨する!!

 

 

「セフィロンに…創星神tierra…!?」

 

「マジかよ…!?」

ハートランドの海で睨み合う3体の巨大モンスターに翠達は目を奪われる…ついに、最終決戦が始まった…!

 

 

 

 

 

 

【■■■■■───!!】

 

 

『「セフィロン」!アカシック・ストーム!!』

 

【破壊の力よ!!】

最初に仕掛けたのは怪物…再び放たれた赤黒い破滅の光をセフィロンの光とtierraの『破壊の力』が相殺する!!

 

 

 

【今度は…オレの番だ!破壊の力…WorldEND!!】

 

【■■■■─!?!?】

tierraが破壊の力を宿した拳を怪物に叩き込む…その拳は蛇髪の一部を消し飛ばす!

 

 

『「セフィロン」!「tierra」を…ラプラスを援護するのです!!』

ゾーンの声に応えたセフィロンが無数の光弾を怪物に撃ち放つ!!

 

 

■■■■……AAAAAA!!

 

ゴボゴボ…ボコン!!

 

セフィロンとtierraの攻撃で体を抉られる怪物…しかし、その傷を即座に再生…さらに胎から無数の『偽ナンバーズの大群』を生み出す!!

 

【創造の力よ…!現われろ!我が下僕たる『ANo.』!!】

それを見たラプラスは『創造の力』を発動…怪物が生み出した偽ナンバーズの本物の『写し身』を大量に呼び出し、衝突させ…相殺する!!

 

 

AAAAAA……■■■■■──!!

 

【マズイっ!?】

それに業を煮やした怪物は再び四方八方へと石化光線を放った!!

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

「これが、『神々の戦い』…!生きている間に、まさかもう一度起きるなんて…!!」

 

「ラプラス達が時間を稼いでくれている間に、鎌を探さないと!!」

海でぶつかりあう神々…それを前に遊星達は思わず足を止めてしまう…その時だった…!

 

 

 

■■■■■──!!

 

─────!!!

 

 

「やばい!流れ弾が─!!」

その時、破滅の極光の流れ弾が翠達に迫り──!

 

 

 

 

 

 

 

『星の内海(うちうみ)、物見の(うてな)…楽園の端から君達に聞かせよう…君達の物語は祝福に満ちていると!─罪無き者のみ通るがいい!「永久に閉ざされた理想郷」(ガーデン・オブ・アヴァロン)──!』

 

 

 

「えっ…!?」

 

 

《フォッ─!?》

翠達に迫った破滅の光は無数の()()()に変わる…それだけでなく、翠達の足元に無数のピンクの花が咲き誇る…!

 

 

『…間に合っては…ないね、ごめん…遊海君…君の物語…見届ける事ができなかった…!』

 

「ま、マーリン!どうして!?」

 

「「「誰!?」」」

 

《ドフォーウ!?》

息を切らせて現れたのは白いローブを纏う、大きな杖を構えた青年…マーリンだった、翠はその登場に…流星達は会った事のない人物の登場に驚く…。

 

 

「マーリン…貴方は『理想郷』から出られないはずじゃ…!?」

 

『うん、道理を曲げて飛び出してきてしまったんだ……まぁ、人間世界は「バリアン世界」と融合している…つまり此処はバリアン世界…つまり「ボクは存在していない」…「つまり死んでいる」と世界を騙して走ってきた!細かい事は気にしないでおくれ!!それより…これを!』

 

「これ…『不死殺しの鎌─ハルペー』のカード!?」

 

『走ってくる途中に拾っておいた!それが無ければ、()()は救えない…!』

マーリンは翠へと『不死殺しの鎌』を託す…!

 

 

『翠…君が、この悲しい戦いを終わらせるんだ…!その為に、ボクは飛び出して来たのだから!』

 

キィン─!!

 

「これは…!?」

マーリンが杖を振るう…そしてマーリンの持つ魔術『夢幻のカリスマ』『英雄作成』が発動…翠の姿が戦闘衣装・Sophiaに変化する…その手には漆黒から薄紫色の刃に変わった『不死殺しの鎌』が握られていた…。

 

 

 

キィン─!

 

 

「痛っ…!?この、光は…!」

 

「赤き竜の…痣…!?」

 

「赤き竜…遊海さん…オレ達に、力を貸してくれるのか…!」

さらに、翠の力に呼応するように石となった遊海の腕から「ドラゴン・フレイム」の痣が分離…流星と海亜の右腕に宿る…!

 

 

『どうやら…この星の「意思」が君達に力を貸してくれるようだ…さぁ、カードを引くんだ!それが君達の「希望」となる!!』

 

 

「なんだか分からないけど…ジャックじいちゃん…アタシに、力を貸してくれ…希望を守る為の…真っ赤に燃え盛る魂を!!

海亜の胸から荒ぶる魂…『バーニング・ソウル』が溢れ出す!!

 

 

 

王を迎えるのは三賢人!紅き星は滅びず、ただ愚者を滅するのみ!荒ぶる魂よ!天地開闢の時を刻め!シンクロ召喚!現れろ『スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン』!!

 

《ゴオオオァァァッ!!》

 

海亜の叫びに応え現れるのは『紅蓮の龍神』…この一時だけ、海亜は偉大な祖父に並び立つ!!

 

 

 

「おじいちゃん…おばあちゃん…」

 

「頑張れ、流星…お前なら…『赤き竜』が応えてくれる…!」

 

「力を恐れないで…貴方の心なら、その力を正しく使えるわ!」

 

「頑張って!お兄ちゃん!!」

 

「夏菜…うん…!!」

初めての力に戸惑う流星…遊星達は静かにその背中を押した…!

 

 

「僕のターン!ドロー!!」

「来い…!『救世竜─セイヴァー・ドラゴン』!!」

光の軌跡と共に桃色の小さなドラゴンが飛翔する!

 

「僕…オレ!はレベル10の『シューティング・スター・ドラゴン』に、レベル1『救世竜─セイヴァードラゴン』をチューニング!!」

 

「なっ…!?」

それは遊星と流星の『進化の結晶』…そして赤き竜の『奇跡』の融合…全てを救う『光』が現れる!

 

 

「集いし想いが輝く奇跡を呼び起こす!希望を示す道となれ!!シンクロ召喚!光来せよ!『シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン』!!」

 

《キィィィッ─!!》

顕れたのは『シューティングスタードラゴン』と『セイヴァー・スター・ドラゴン』が合わさった新たな赤き竜の『化身』…希望の龍が咆哮する!

 

 

「……いこう、流星君…海亜ちゃん……私達が、最後の希望よ!!」

 

「「はい!!」」

 

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

【今の、光は…!】

戦いの最中、ラプラスはハートランドで新たな『希望』が誕生した事を感じ取る…!

 

 

「ラプラス!!ゾーン!」

 

【翠…その姿は『創星神Sophia』の力…そのドラゴン達は…『スターダスト・ドラゴン』と『レッド・デーモンズ・ドラゴン』の進化体か…!】

そして魔獣神と睨み合うラプラス達の元へ飛来する『希望』…ラプラスはその正体を感じ取る…。

 

 

「『不死殺しの鎌』を手に入れたの!私がこれでネームレスの不死性を無効化する!だから…貴方がトドメを!!」

 

【……感謝する、お前の道はオレ達が切り拓こう!!】

翠の掲げる鎌を見たラプラスは静かに頷いた…!

 

 

■■■…!?■■■■■■■──!!

 

『ゴルゴンが動きます!!翠、貴女はただ真っ直ぐ進みなさい!!』

 

「はい!!」

不死殺しの鎌を見た魔獣神は明らかに動揺…無数の蛇を差し向ける…しかし、その蛇をセフィロンの光弾が撃ち落とす!

 

 

■■■■■■───!!

 

『『『ウオオオ─!!』』』

 

【創造の力よ!!】

続いて放たれる無数の『偽りのナンバーズ』…しかし、ラプラスの創造の力により生み出された『写し身』がそれを撃ち落とす!!

 

 

「ネームレス──!!!」

 

■■■■────!!?

 

──────!!

 

空中を駆け、眼前に迫る翠…ネームレスは再び石化光線を放つ!!

 

 

「させるかぁ!!『スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン』!!道を切り拓け!バーニング・ビックバン!!

 

《ゴオオオァァッ─!!》

 

■■■■──!!?!

 

しかし、翠は光線に飲まれる事は無い…紅蓮の隕石と化した『スーパーノヴァドラゴン』が光線を引き裂きながらネームレスに肉薄…魔眼を一時的に失明させる!!

 

 

「いっけぇぇ!翠さん──!」

 

「ありがとう海亜ちゃん…!!これで、終わりよ…!『不死殺しの』──!!」

 

AAAA──!!

 

 

ガブッ!!

 

 

「がッ─!?あ"あ"あ"あ"あ"─!?!?」

 

【翠っ!!】

 

「翠さん─!!?」

 

ついにネームレスの胸元に飛び込んだ翠…しかし、死角から飛び出した大蛇が翠へと喰らい付き、その体を巨大な牙で貫いた…。

 

 

「(まだ…まだ、終われない…!遊海さんも、最期まで…たたかっ──)」

激痛と失血で意識を手放しかける翠……その時!

 

 

「翠さんを…離せぇぇっ!!『シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン』─!!」

 

《キィィィィッ─!!》

 

「ごふっ…流星…くん…!」

渾身の叫びと共に「シューティング・セイヴァー」が大蛇の首を千切り飛ばし、翠を救出する!!

 

 

「流星君…力を、貸して…!!」

 

「っ…!!『シューティングセイヴァースタードラゴン』!!絶望を、貫け!!セイヴァー・ミラージュ!!」

 

《キィィィッ─!!》

シューティングセイヴァーが3体に分身…ネームレスへと突撃する!!

 

 

■■■■■──!!

 

シューティングセイヴァーを撃ち落とす為に蛇から光線を乱射するネームレス…その光線は2体の分身を撃ち落とすが、本体が翠と共にネームレスの胸元に飛び込む!!

 

 

「…これで、終わりよ…!()()()()()()!!『不死殺しの鎌(ハルペー)』!!」

 

AAAAA──!?!?

 

シューティングセイヴァーから飛び降りた翠が『不死殺しの鎌』をネームレスの首元に突き刺す…その時、翠は気付いていた…悲しき『怪物』の正体に……。

 

 

 

あ、ああ…アアアアアアアアア!!!

 

「終わらせて…彼女を、止めてあげて!!ラプラス─!!

不死殺しの鎌により『不死性』が剥奪され、体が罅割れていくネームレス…全ての力を使いきった翠は墜落しながら最後の力を振り絞り、声を張り上げた…!

 

 

 

【……ありがとう、そして…すまなかった……これが、オレの()()()()……オレ()の物語の…最後だ…!!】

ラプラスは両手に持った『創造の力』と『破壊の力』の宝玉を輝かせる…!

 

 

【創造の後に破壊があり……破壊の後に創造がある……その先に…『希望』は輝く!!……共に逝こう…()()()…】

ラプラス(tierra)は苦しみ暴れるネームレス…ミドリを優しく抱きしめる。

 

 

 

 

 

【──創壊の輪廻──】

 

 

 

静かな呟きと共に周囲は眩い光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

【アナタは誰…?私を殺しに来たの?それとも……さっきのユウミさんみたいに食べられに来たの?】

 

『………ミドリ…』

 

気付いた時、ラプラスは崩壊寸前の黒い城の中にいた…その場所には段差に座ったネームレスの精神体、そしてボロボロになった赤い帽子が落ちていた…。

 

 

 

【私を殺しても無駄よ…私はバケモノ…肉体が死んでも、必ず蘇る……アナタもおやつにしてあげる】

 

グサッ…グサグサ!!

 

『うぐっ…!?』

瞬く間にラプラスの体は無数の『影』によって串刺しになる…。

 

 

【私は許さない…私を裏切った世界を……私を捨てた人を…何度生まれ変わっても…私は復讐してみせる…】

 

 

『……ミドリ…オレは、お前を…捨ててなんか、ない…!』

 

 

【っ…!?】

ラプラスは体に突き刺さった影を引き千切り、ゆっくりとミドリに歩み寄る…。

 

 

 

『オレ達は…()()()()()()……進む道を、間違えたんだ……あの時、オレがマリクに負けて、いなければ……もっと、オレが…強かったら……オレ達の未来は…きっと、変わっていた…!!』

ラプラスは遊馬に渡された『遊海のカルトゥーシュ』を通して、遊海の歩んだ道を垣間見た…自分とは違う『未来』へと進んだ遊海…その道は希望に満ち溢れていた…。

 

 

【来るな…来るな!!】

 

『ぐっ…!?……ミドリ…オレは、あの時…死ぬべき、だった……そうすれば、お前は…怪物になんて、ならなかった…!』

 

【来るな!!】

ミドリはラプラスを拒絶…無数の影の刃を放ち、ラプラスを斬り裂くが…彼はそのままミドリに歩み寄る…。

 

 

 

『……遅くなって、ごめんなぁ…ミドリ……遠い…遠いまわり道をしちゃったんだ……お前を、迎えに来た…』

 

【あ……】

ラプラスは優しく…強く、死人のように冷えたミドリの体を抱きしめる…。

 

 

 

『いっしょに、帰ろう……()()の、いるべき場所に…』

 

【……遅い…おそすぎるよ…ばか…!!遊海さんの、ばか…!!】

 

『あぁ、俺は…大バカ野郎だ…』

ラプラス…ユウミの抱擁と涙が…狂気に堕ちたミドリの『魂』を浄化する…ミドリは細い腕でユウミの胸を叩く…。

 

 

 

 

『ミドリ…もう、お前を1人にしない……ずっと…ずっと一緒だ…』

 

 

【うん…もう、離さない……ずっと、一緒だよ……】

 

 

 

 

 

 

 

 

それは長い永い旅路の終わり……悲劇ですれ違い続けた2人はようやく安息を得る…そして全ては光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、れ……わた、し……」

 

『おっと…目が覚めたかい?動かない方がいい…体に大穴が開いているからね…不死とはいえ、体に障るよ』

 

「マー、リン…さ…」

翠は静かに目を覚ました…その近くには肩にフォウを乗せたマーリンが座り込んでいた……その右頬には肉球の形に痣がついており、フォウは左頬をテシテシと叩き続けている。

 

 

 

『君が知りたい事を順番に話そう……まずはネームレス、彼女は完全に消滅した…ラプラス……もう1人の遊海君と共に、光の中に消えていった…』

そう言ってマーリンはハートランドの海を示す…海は赤紫色だが…普段通りの様相を取り戻していた。

 

 

『次に…海に落下した君は……復活した「ラーの翼神竜」…フレア、だったかな?に助けられた…いまはもう消えてしまったけど…大破してしまったアヤカも生きてはいる、安心してほしい…それから、被害の状況だ』

そこでマーリンは一端、言葉を切る…。

 

 

『石化してしまった精霊のユベルとジャック・アトラスはネームレスが消えた後に息を吹き返した…まだ、気を失っているけどね…イリアステルの3人と瀬人は遊星とアストラル世界から来た…ゾーンが応急修理中だ、そして…遊海君なんだけど………すまない、もう…』

 

「っ…遊海、さん…」

翠はかろうじて動く首を動かす…彼女の隣に未だ石像となったままの遊海が寝かされていた…。

 

 

 

『もう、手の施しようがない……「奇跡」でも起きない限り……彼は……』

 

「……()()なら、起きますよ……遊馬くんが、アストラルが……きっ、と……」

 

『翠…』

翠は涙を流しながら石となった遊海の顔に優しく触れる…。

 

 

「いっぱい…疲れたよね?遊海さん……私も、疲れちゃった……だから、すこし…休みましょう…?……おやすみ、なさい……ゆうみ、さ──」

 

 

キィン─……

 

 

《フォッ…!?フォウ─!?》

優しく遊海を労う翠…その身体は()()()()となって、空気に融けた…。

 

 

 

『…………おやすみ、翠……せめて、良い夢を……』

翠の消滅を見届けたマーリンは静かに立ち上がる…。

 

 

 

 

 

 

 

『……とある勇士達の話をしよう、彼らの名は九十九遊馬…アストラル…ナッシュ(神代凌牙)…天城カイト……彼らは「希望」を抱いて、大いなる「混沌」へと挑む……その先に彼らが手にするのは「希望」か…それとも「絶望」か──』

 

《……フォウ……》

 

 

 

フォウと自身、そして機能を停止したデュエルロイド達以外が消え去った…()()()()が咲き乱れるハートランドにマーリンの語りが消えていった…。

 

 




オリキャラマテリアル


●シーカー(探索者)

数十年前にアストラル世界へと流れ着いた魂、仲間にアクル・ガクル・パリダ・デクルからなる「アストラル世界の五命星」がいる。

記憶を失った状態でアストラル世界に流れ着き、エナに介抱される…その後、アストラル世界の人々を苦しめているエリファスの事を知り、集めた仲間達と共にエリファスに挑むが…返り討ちになってしまった。


その後、エリファスに拘束され数十年の月日を牢獄の中で過ごしていた。

何故、カオスを持つ彼をエリファスは追放しなかったかと言うと、シーカーはその身に大量のカオスを内包しており、下手に追放・消滅させればドン・サウザンドの二の舞となる可能性があった為、それを恐れたエリファスによって徐々にカオスを強制放出させられ、自然消滅するのを待っていたから。
それにより遊馬が来た時には消滅寸前だった。


ZEXALⅡ終盤、アストラルを取り戻す為にアストラル世界を訪れた遊馬がエリファス戦後にエリファスに頼み、開放される。




正体
イリアステル滅四星としてネオドミノシティを破壊し、遊海を抹殺しようとしたラプラス…平行未来世界の「シラナミ ユウミ」

ゾーンに敗れ死亡し…ダークネスから開放された後に、なんの因果かアストラル世界に流れ着いた…知らない内に魂のランクアップを果たしていたようだ(本人は冥界・地獄に落ちると思っていた)

その身に内包する強大なカオスの源は「妻に会いたい」…ただその想いだけである。
例え記憶を失い、顔を忘れても…彼女がいた事は忘れない、それが彼の存在意義である。




●アストラル世界人 アクル/ガクル/パリダ/デクル

アストラル世界におけるシーカーの同志達、アストラル世界の人々からは「アストラル世界の五命星」と呼ばれている。


その正体はかつて「破滅の未来」において死亡したイリアステルの「滅四星」Z-ONE・アポリア・アンチノミー・パラドックスの魂がアストラル世界に転生した存在。
生前の記憶は失われていたが…彼らはすぐに仲良くなったらしい。

アストラル世界の戦い後、記憶を取り戻したラプラスが彼らの正体に気付き、それに連鎖するように生前の記憶を取り戻した。




●名無しの怪物ネームレス


ZEXAL本編開始数十年前(ナッシュ&メラグ再転生前)にバリアン世界に迷い込んだ謎の怪物。
七皇が協力しても倒す事ができず、ナッシュが七皇の力の結晶『冀望皇バリアン』と自身全てのデュエルエナジーを使い、ようやくバリアン世界の辺境「失意の山」へと封印した規格外の存在。
 
ZEXALⅡ中盤、遊海を目障りに思っていたベクターによりドン・サウザンドの力を注ぎ込まれ復活、ドン・サウザンドの作った呪具と洗脳によりベクターの部下として使役される事になる。




人間態 

容姿 幼女、白の長髪で瞳は赤、服装はゴシックドレス 言語は話せない(ラフム語)
 
復活直後の姿、七皇の王・ナッシュによる封印によって弱体化した姿。
人間界に放たれる前にベクターによる隠匿の術が使われており、遊海やフレアでも正体を見抜けなかった。

相手を容姿で油断させ吸血・デュエルエナジーを吸い取る。
また、牙に蛇毒に似た劇毒を持つ。



怪人体

容姿 赤紫のロングヘアー 襤褸の黒いローブ 紅い瞳 

人間体で遊海のエナジーを吸収し、ある程度の力を取り戻した姿。
手にしている不死殺しの鎌「ハルペー」によって遊海を傷付け、昏倒させた。

最初は言葉を喋る事はなかったが…ベクターによってさらに力を与えられた事で理性が戻り、喋れるようになった。

モデルは『Fate』のランサー・メドゥーサ・オルタ
魔眼を持ち、見つめた相手を呪い、動きを封じる事ができる。





遊海に倒されたネームレスが『偽ナンバーズ製造機』に取り込まれた状態。
ネームレスのカオスを利用して「偽ナンバーズ」の大群を発生させる。




怪物態 『魔獣女神ゴルゴーン』

大きさ 全長200m以上、体長50m

姿 頭部 赤紫色のロングヘアー、髪の末端は十数匹の蛇に変化し、獲物に襲いかかる。

体 背中に黒い翼 豊満な女体に黒の軽鎧
下半身は禍々しい金色の鱗を持つ蛇体に変わっている。モデルは『Fate』のアヴェンジャー・ゴルゴーン


ネームレスの真の姿…バリアン七皇侵攻時に『繭』を破壊しようとした遊海を含む決闘者達のエナジーを吸収する事でバリアン世界を滅ぼしかけた怪物としての力を取り戻し、ベクターの想定外の復活を遂げた。
もはや決闘を介する事なく、人々を蹂躪せんとする『モンスター』に成り果てた。

石化光線やその巨体を活かし、蹂躪する。




魔獣体 『虚無の魔獣神ゴルゴン』

大きさ 測定不能 少なくとも『光の巨人』の数倍

容姿 無数の蛇の集合体のような姿、蛇の隙間からは赤き魔眼となっている単眼が覗いている。


人間界で発生した負の心に引き寄せられた虚無の神・ダークネスを捕食した事で『人』を捨て、正真正銘『魔獣神』と化した怪物。

全てを石化させる赤い単眼を持ち、体は無数の蛇が絡みあったまさに「怪獣」…光の巨人呼んでこい。



精神体 BB
白いロングヘアー 赤い瞳 影を纏ったような黒いドレス 赤黒い血管の見える病的に白い肌


ネームレスの精神世界へと飛び込んだ遊海が出会った妖艶な少女。
気怠げだが…人間・世界に対して強い復讐心を抱いている。
また、強い狂気に汚染されていて話が通じるようで、通じていない。





正体

イリアステル滅四星となったラプラスことシラナミユウミの妻…つまり平行世界の「シラナミ ミドリ」の成れの果て

世界破滅の際のエラーで身体を再生する事ができず『ユウミを残して死んでしまった無念』と『なんでユウミも死んでくれなかったのか?』という恨みによりその魂は次元・時代を超えてバリアン世界に流れ着いていた。

バリアン世界に流れついたミドリの魂は強すぎるカオスとミドリの元となった『間桐桜』のもつ怪物性で変性…記憶に残っていたギリシャ神話の怪物『ゴルゴーン』をベースとした全てを破壊し喰らう怪物に変化してしまう。
その身に溢れる憎しみと悲しみのままにバリアン七皇を相手に圧倒したが七皇の死力により封印されていた。


長い間封印された後、ベクターとドン・サウザンドに開放されたが、ナッシュのかけた『弱体化の呪い』により幼い姿で復活する。

その後、遊海を襲い怪人体へと変化、遊海を瀕死に追い込み、翠と幾度となくデュエル・リアルファイトを繰り広げた。

最終決戦時、決闘者のデュエルエナジーを取り込む事で怪物体へと変化…遊海や翠、決闘者達を相手に決戦を繰り広げ…さらに同タイミングで復活した虚無の神・ダークネスを捕食し魔神へと変化…遊海を殺害した。 


と思われたが…遊海は魂のみで精神世界へ侵入…翠と世界を守る為にネームレスの精神体・BBとデュエルを繰り広げる…。

しかし、ダークネスを喰らい『神の領域』に踏み込んでいたネームレスはデュエルに敗北するも『不死身』の魂で復活…消滅寸前の遊海の魂をも喰らった。


最終的にアストラル世界から駆け付けたZ-ONEとラプラス、さらに『理想郷』から走ってきたマーリンの助力を得た翠と流星・海亜の奮闘で不死性を剥奪され、精神世界内でラプラスと再会……正気を取り戻し、彼と共に悲劇の幕を降ろした…。

その身に内包するカオスは「悲哀と愛憎」
カオスの量のみで言えばドン・サウザンドを遥かに凌駕する。


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闇に飲まれた拳闘士〜呪縛を砕け!〜

こんにちは!S,Kです!遅くなってすいません!

ⅢとⅤの必死の足止めによって無事に旅立つ事ができた遊馬とカイト…。

しかし、遊馬の前に混沌に侵された拳闘士が立ちふさがる!


それでは最新話をどうぞ!




※7/17追記

アンケートの結果、リクエストのある方が一定数おられたので、活動報告にて『第4回リクエストアンケート』を開催いたします!皆様のリクエストをお待ちしています!

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=264294&uid=206572


「Ⅲ…Ⅴ…!ああ…うああああ"あ"あ"…!!」

 

「遊馬…!グスッ…」

 

(遊馬……)

人間界における哀しき決着から時は戻る…異次元を飛ぶ飛行船は悲しみに包まれていた、自身とカイトに希望を託し、散っていったⅤとⅢ…その死は、遊馬達にとってあまりにも重すぎた…。

 

だが、遊馬には悲しみに暮れる時間はない……何故なら──

 

 

ギィン─!!

 

 

(っ…何か来る!!)

アストラルが禍々しい力の波動を感じ取る…それと共に赤い閃光が飛行船の前に立ち塞がった!

 

 

「な、なんだ!?」

 

『おおおォォォ!!遊馬ァァァ!!』

 

《オオオオオオ!!》

 

「あ、アリっ─!!?」

赤い閃光…その正体は『彗星のカエストス』を従えた七皇の1人・アリトだった…!

 

 

《オオオオオオッ!!》

 

 

 

ガッシャーーーン!!

 

 

 

「う、うわあああああ!?」

 

「きゃああああ─!?」

 

(遊馬!小鳥─!!)

 

カエストスは雄叫びと共に飛行船を殴りつける、凄まじい衝撃によって遊馬と小鳥は異次元に投げ出された…。

 

 

 

 

………

 

 

 

 

「う、うぅ…ここは…?」

 

「何が…起きたの…?」

 

(遊馬、小鳥…気が付いたか…!)

遊馬と小鳥が目を覚ます…そこは夕日に照らされた砂漠、そして無数の道路の残骸が散らばる廃墟だった…。

 

 

「ここは、いったい…!?」

 

(おそらく、異次元の狭間……っ、来るぞ!!)

 

キィン─!

 

突然の事態に戸惑う遊馬…その前に赤い光が轟音と共に落下する…。

 

 

 

 

『オレを放っておいて…何処に行くつもりだ?遊馬ァ…!お前との決着はまだ着いてねぇ!!』

 

「アリトっ…!!」

赤い光の中から現れたのは邪悪な笑みを浮かべたアリトだった…!

 

 

「っ……アリト!オレは、お前と戦うつもりはねぇ!!」

遊馬との戦いを望むアリト…だが、遊馬は戦うつもりはないと伝える…。

七皇の真実を知った今、遊馬が戦うべき相手はドン・サウザンドただ1人なのだ。

 

 

『ヘッ…いつから仲間の仇も討てない腰抜けになったんだぁ?あの()()()()も…これじゃあ浮かばれないぜ…』

 

「…それじゃあ…ゴーシュを倒したのは…!!」

 

『ははっ…なかなか熱い奴だったが、今のオレの敵じゃねぇ…』

 

「アリト!!あいつは…ゴーシュは!子ども達の『希望の星』だったんだぞ!!」

 

「希望…?ああ…そんな戯言、言ってたなぁ…まぁ、その希望諸共…オレが潰してやったけどよぉ!!」

 

「あ、アリト…!てめぇぇ!!」

アリトはハートランドでゴーシュと戦った、子ども達の希望を背負って最後まで熱く戦ったゴーシュ…だが、アリトはその覚悟を…希望を踏みにじる…!

 

 

 

「アリト!お前、どうしちまったんだよ!!オレと熱いデュエルをしたお前は…そんな奴じゃなかったはずだ!!」

 

『寝言を言うなよ…!オレはオレだ!!』

遊馬はアリトへと叫ぶ…その脳裏に蘇るのは互いの魂を賭けた『熱き決闘』の記憶…しかし、今のアリトにその面影を重ねる事はできなかった。

 

 

(アリト…君はゴーシュと()()だ、かつての君は子ども達に希望を与える存在だったはずだ!)

 

『…あの()()の記憶を言ってるのか?』

 

(そうだ)

 

『あの遺跡に描かれた記憶……』

 

(あの遺跡の記憶こそ…君の本当の記憶のはずだ…!)

アストラルの言葉にアリトは朧げに思い出した記憶を思い返す。

 

 

拳闘士としてコロッセウムで勝利を飾る姿…

 

コロッセウムに響く子ども達の声援…

 

それに応える自分…

 

 

その光景はアリトの『魂』に刻まれていた…。

 

 

(君が与えた希望は…ゴーシュと同じだったはず!!)

 

『(オレがみんなに、希望を……?)』

アストラルの言葉で思い出すかつての『希望』…だが、それは…

 

 

ドクン

 

 

【惑わされるな…お前にあるのは『呪いの過去』だ…!思い出せ…お前が殺された憎しみを!!】

アリトに宿る『呪い(ドン・サウザンド)』が輝く希望を黒く塗り潰す…!

 

 

 

『…そうさ…あの忌まわしい過去があるから、オレはバリアンへと生まれ変わった!!これが…オレの本当の姿だ!!』

憎しみに駆られたアリトはカオスの力を纏い、バリアン体へと変身する!

 

 

『さぁ…デュエルだ!!』

 

「止めろ!アリト!オレは…オレはお前と戦いたくない!!」

 

『まだそんな事を言ってやがるのか!!だったら…これでどうだ─!!』

 

ギィン─!!

 

「えっ!?きゃあああああ!!」

 

(「小鳥!!」)

戦う様子を見せない遊馬、その態度に業を煮やしたアリトはバリアンの力で地面から飛び出した茨の塔へ小鳥を閉じ込める…それは以前のアリトならば考えられない行動だった!

 

 

 

『どうだ?これで少しはやる気になったかい…?』

 

「アリト…!お前、そこまで心が荒んじまったのかよ!?」

 

(……遊馬、デュエルだ!今のアリトには…何を言っても無駄だ…!)

 

「仕方がねぇ…デュエルだ!アリト!!」

憎しみの呪縛に囚われたアリト…彼を止め、人質となった小鳥を救う為…遊馬は剣を取る!!

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬&アストラル対アリト

 

 

 

 

 

39

 

 

「現れろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

先攻を取った遊馬は白き希望の戦士を呼び出す!

 

「オレはカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!!」

 

 

『さっそく現れたか「ホープ」…!だが、今日のオレは…ひと味違うぜ!!』

 

────!!

 

(これは…!?)

希望皇ホープを前に闘志を…否、憎悪を燃え上がらせるアリト…アストラルはその姿に『邪悪な何か』を感じ取る…!

 

 

「な、なんだ…!?この感じ…?」

 

(遊馬…!?君も感じるのか?)

 

「ああ、何か『魔物』でも取り憑いてるみたいな…なんだか、ヤバい気配が…!」

 

(魔物…)

決闘者として成長した遊馬も邪悪な気配を感じ取る…そしてアリトはバリアンの力を見せつける…!

 

 

 

『呪われし過去が、オレの拳を漆黒に染める!!オレの拳が切り開くのは…悲しみの闇地獄!!オレのターン!ドロー!!』

アリトの拳に闇が集い、混沌をもたらす1枚を引き寄せる!

 

 

『きたぜ…!お前達をぶっ潰す1枚が!!「RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)」発動!!』

 

 

(な、なんだ…!?あのカードは!?)

アリトが引き当てたのはナッシュが目覚めさせた『七皇の新たな力』……遊馬とアストラルは人間界で暴威を振るったその力を初めて目の当たりにする…!

 

 

 

『このカードが七皇の力だ!このカードはオーバーハンドレットナンバーズをエクストラデッキ・墓地から召喚条件を無視して特殊召喚し、さらにカオス化させる!!』

 

「なんだって!?」

それはまさに「最強の1枚」…アリトのフィールドで闇の大爆発が起きる!

 

 

105

 

 

『現れろ!「CNo.105」!!その姿、まさに「BK(バーニング・ナックラー)」の絶対王者!「BK-彗星のカエストス」!!』

混沌の炎を纏い、最強の拳闘士が現れる!

 

 

 

(馬鹿な…!?一気にカオス化だと!?……この、感覚は……まさか、そういう事か!?)

 

「ど、どうしたんだ!?」

一気にカオス・オーバーハンドレット・ナンバーズを呼び出したアリト…その姿を見たアストラルの中で今までの疑問が1つに繋がった…!

 

 

(今までは感じ取れなかったが…バリアン世界との融合が始まり、今ならばハッキリと感じる……!オーバーハンドレットナンバーズは、()()()()()()()()()()で作り出されたカードだ!!)

 

「ど、ドン・サウザンドの!?」

以前、アストラルはアリトのオーバーハンドレットナンバーズの回収に失敗した事があった…それは『No.96』の力が無かったせいでも、特殊な力に邪魔された訳でもない。

…そもそも「オーバーハンドレットナンバーズ」は『アストラルの記憶』ではない…むしろその逆、バリアンの神が創り出したカードだったのだ…!

 

 

 

(そこにいるのか…!姿を現せ!ドン・サウザンド!!)

 

「えっ…!?」

 

【『フフフ…!やっと気づいたか、久しぶりだなぁアストラル…!そして九十九遊馬よ…!』】

 

「あれが、ドン・サウザンド…!?」

ドン・サウザンドの気配を感じたアストラルはアリトへと叫ぶ…その時、アリトの体から漆黒の炎が燃え上がり、巨大な魔神の影を映し出す…!

 

 

「そうか…!お前がアリトを操って!!」

 

【此奴は我が力を取り戻す為に蘇らせた「魂」の1つ…】

 

「なんだって…!?」

ドン・サウザンドは不気味な声でアリトを…七皇を操っている事を認める…!

 

 

【九十九遊馬、恨むならアストラルを恨むがいい…この戦いの全ての発端は『理想』より『混沌』を引き剥がしたアストラル世界の愚かな決断にあるのだからなぁ…!】

 

(アストラル世界は、より高次な世界を追求したに過ぎない!!)

 

【それが()()だと言うのだ、理想と混沌…コスモとカオスは表裏一体なのだ…!】

 

(それでも!アストラル世界はカオスを乗り越える道を選んだ!!)

 

【フン…まぁ良い…貴様達には感謝している、我のカオスはアストラル世界という『閉じた世界』では窮屈だった……その我を自由な世界に解き放ってくれたのだからなぁ…!!】

 

(なにっ…!?)

遥かな昔、さらなるランクアップを目指す為にカオスを切り捨てたアストラル世界…そこからドン・サウザンドが生まれ、アストラル世界へと牙を剥いた。

かつてのアストラルは長い戦いの末にドン・サウザンドを倒し、封印した……しかし、そこからドン・サウザンドは暗躍を続けていた…!

 

 

 

 

 

【教えてやろう、お前達が集めていた『遺跡のナンバーズ』は強力な力を持っていただろう?…それは()()()()()()()()()()()()()!ナンバーズが手に入らずとも、その封印が解かれた事で我の力は復活したのだ!!】

 

「嘘、だろ…!?それじゃあオレ達はお前の復活の手助けをしちまったって事か!?」

 

【その通り、お前達は自ら『パンドラの箱』を開け…カオスを解き放ったのだ…!そして全ての世界はカオスに飲み込まれる!】

意図せずしてドン・サウザンドの復活を許してしまった遊馬達…そしてドン・サウザンドは彼らに言葉を告げる…!

 

【アストラル!そして九十九遊馬!!それを阻止したくば…我を超えてみるがいい…!ふはははははは─!!】

そう宣戦布告を叩き付けるとドン・サウザンドは再びアリトの中へと高笑いと共に消えていった…!

 

 

「くっ…!?こんなに早くドン・サウザンドと戦う事になるなんて…!?」

 

(いいや…アリトに宿っているのは奴の『分身』だろう…本体のエネルギーはこんなモノではない…!!)

 

「…まじ、かよ…!?」

突然の黒幕との会敵に生唾を飲み込む遊馬…だが、アストラルはそれを否定する……この場に存在するのは「分身」に過ぎないからだ……そして、デュエルが動き出す!!

 

 

 

『いくぜ遊馬!アストラル!「彗星のカエストス」の効果発動!1ターンに1度、カオスORUを1つ使い!相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!砕けろ!「希望皇ホープ」!!』

 

「うわあああ!!?」

 

「遊馬!アストラル─!!」

ドン・サウザンドが消えた事で意識を取り戻したアリトが混沌の拳闘士の効果を発動…カオスの奔流がホープを粉砕し、遊馬達を吹き飛ばす…!

 

 

『まだだ!「カエストス」で遊馬にダイレクトアタック!!これで、トドメだ!コメット・エクスプロージョン!!』

 

(っ…遊馬!!)

 

「おう!!アリト…お前との決着が、こんなあっさり決まってたまるか!!ダイレクトアタックを受ける時!手札の『ガガガガードナー』の効果発動!このカードを攻撃表示で特殊召喚!!さらに手札の罠カード『ディメンション・Uターン』を墓地に送り、戦闘破壊を無効にする─!!ぐあああっ…!!」

 

『チッ…上手く避けやがった…!』

「彗星のカエストス」には戦闘破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージがある…遊馬達はその効果をギリギリで避けたが……その残りライフは……僅か200…!

 

 

 

『オレはカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

「ぐっ…大丈夫か、アストラル…!」

 

(ああ…!まさか、1ターンキルを、狙ってくるとは…!)

デュエル開始2ターン目にして満身創痍となった遊馬とアストラルはなんとか立ち上がる…。

 

 

「まぁ…アリトなら、これぐらいするって…思ってたけどよ!」

 

(……遊馬、なにを、()()()()()()…?!)

体を明滅させながらアストラルは遊馬に問いかける、アリトと向かい合う遊馬は…無意識に笑みを浮かべていたからだ。

 

「えっ…?楽しんでなんかねぇよ…でも、()()()()!今のアリトはドン・サウザンドに操られてる…つまり、()()()()()()じゃねぇんだ!だから…オレがアリトを正気に戻す!!」

 

(……このデュエルでするべき事が見つかったという事か……)

 

「そういう事さ!あの分身をぶっ倒せば…アリトはきっと元に戻る!!」

遊馬は窮地の中で「希望」を見つけていた…ドン・サウザンドに操られたアリトを救う、小さな光を……それ故に、遊馬は笑っていたのだ。

 

 

(…だが、ドン・サウザンドの「呪い」がそう簡単に解けるだろうか…?)

 

「そんなのわかってる!それでも……()()()()()()!!」

 

(フッ…相変わらずの答えだな…(しかし、以前なら不安を覚えたが……今ならば…()()()()()()…!君の『人を信じる力』を!!))

それはいつも通りの遊馬の『根拠のない自信』…しかし、アストラルは不思議と冷静だった…遊馬の抱く力なら、不可能な事でも成し遂げる事ができる…そう確信していたからだ…。

 

 

「(そうだ…必ず、なんとかする…!でなきゃ、オレ達の為に戦ってくれたみんなの想いが無駄になる!オレは…絶対にアリトを救ける!!……あっ…?)ゴーシュ…翠さん…」

 

(遊馬、どうしたんだ?)

仲間達の想いを背負い、必死にアリトを救う方法を考える遊馬…その脳裏に熱き漢・ゴーシュと翠の姿がよぎった…!

 

 

「そうだ…!アリトの遺跡でのゴーシュとのデュエル…あの時、ドロワは本気で戦って洗脳されたゴーシュを取り戻そうとした…!翠さんは子どもになっちまった遊海に全力を叩き付けて元の姿に戻した…!そして、その想いは届いたんだ!!だったら、オレ達もそれを……いいや、それ以上の想いでぶつかればいいんだ!!」

 

遊馬が思い出したのはコロッセウムでのゴーシュとのデュエルと子供化してしまった遊海と翠のデュエル…2つのデュエルに共通するのは「強い思い」と「デュエル」…遊馬は全力でアリトと戦う事を決意する!

 

 

(どうやら、私がいない間にとんでもない事があったようだが……たしかに、デュエルなら私達の想いを届けられる!)

 

「いくぜ…アストラル!!」

 

(ああ、かっとビングだ!!)

ついに見つけた小さな「光」…遊馬とアストラルはアリトを救う為に全力を尽くす!

 

 

 

 

 

「オレはレベル4の『ガガガガードナー』と『タスケナイト』の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!光纏いて現れろ!闇を斬り裂く、眩き王者!『H-Cエクスカリバー』!!」

遊馬はゴーシュから受け継いだ『魂のカード』…赤き剣士・エクスカリバーを呼び出した!

 

 

「アリト!オレ達の友情を思い出せ!!オレ達は一緒にデュエルを愛した仲間なんだ!!」

 

『オレが仲間だとぉ…?世迷い言を…!』

 

「いくぜ、『エクスカリバー』は自分のライフが500以下の時だけ攻撃できる!『エクスカリバー』で『カエストス』を攻撃!そして、この瞬間!『エクスカリバー』の効果発動!ORUを全て使ってバトルの間、攻撃力を2倍にする!」

 

『攻撃力4000!!』

赤き勇者が輝くオーラを纏う!

 

「受けてみろ!アリト!!一刀両断・必殺神剣!!」

 

『くっ──!!』

遊馬の願いを乗せた一撃がカエストスを両断する!

 

 

 

「どうだアリト!!熱い魂を…思い出せ!!」

 

『ハハハ…残念だったなぁ…!』

 

「なにっ…!?」

巻き上がった爆煙が晴れていく…アリトの前には巨大な盾を構えた戦士が立ち塞がっていた…!

 

 

『自分が戦闘ダメージを受ける時、手札から「BK ベイル」を特殊召喚する事でダメージを0にする…さらに!ナンバーズである「カエストス」は戦闘では破壊されない!お前の攻撃は無駄だったのさ!!』

 

「くっ…!!今の攻撃じゃ、アリトの魂には届かないのか…!!オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!!」

 

『さぁ…このターンで決着だ!!』

遊馬の一撃はアリトには届かなかった…そして再びアリトは猛攻を仕掛ける…!

 

 

 

80 

 

 

『現われろ!「No.80」!猛りし魂に取り憑く、呪縛の鎧…!!「狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク」!!』

アリトは新たなナンバーズ…赤いマントを纏う、狂気の王を呼び出した!

 

 

「新しいナンバーズ!?しかも…攻撃力、ゼロ…!?」

 

(このナンバーズは…!?)

禍々しい力を纏う狂装覇王…アリトはその強力な効果を発動する!

 

 

『「ラプソディ・イン・バーサーク」の効果発動!ORUを1つ使い!相手の墓地にあるモンスター・魔法・罠カードのいずれかを選び、その種類のカード全てを除外する!!』

 

「なんだって!?」

 

『わかってるんだよぉ…お前の墓地に攻撃を防ぐ「タスケナイト」がいるのは!!オレが除外するのは、モンスターカードだ!!』

 

(っ…読まれていたか…!!)

覇王がその剛腕で遊馬の墓地に眠るモンスター達を引きずり出し、粉砕する…それによって防御カードである「タスケナイト」だけでなく、「希望皇ホープ」も除外されてしまう…!

 

『これで、お前達を守るモノはない……さらに「ラプソディ・イン・バーサーク」の効果発動!1ターンに1度、自分モンスターの装備カードになり、攻撃力を1200アップする!!』

 

(感じる…あのナンバーズは、ドン・サウザンドの力を宿している…!!)

 

「なんだって!?それじゃあ「カエストス」がさらにパワーアップしちまったって事か!?」

「狂想」の鎧を纏う混沌の拳闘士…アストラルは感じていた、そのナンバーズにはドン・サウザンドの力が宿っている事を…!

 

 

【ハハハ…!見るがよい、我の力を!!】

 

『バトルだ!「カエストス」で「エクスカリバー」に攻撃!!』

 

「まだだ!!罠カード発動!『エクシーズ・ピース』!!自分のエクシーズモンスターへの攻撃を無効にする!!」

 

『なにっ…!?』

遊馬に迫る混沌の拳がバリアによって阻まれる!

 

 

「そして!そのエクシーズモンスターをリリースし、デッキからレベル1のモンスター2体を効果を無効にして、特殊召喚する!来い!『ダークロン』!『クリボルト』!!」

赤き剣士が静かに消え去り、ロン毛の栗の妖精と基盤の模様のクリボーが現れる!

 

『チッ…しぶとい奴だ…!オレはこれでターンエンドだ!』

 

 

 

(……ナンバーズによって、アリトの『呪縛』がさらに強まったように感じる…!)

 

「そうだとしても、オレ達は自分の道を行くしかねぇ…!!ドン・サウザンドの呪いが強いか…オレ達の友情が強いか!!」

ドン・サウザンドの力を宿すナンバーズによって負の感情を…カオスを増大させるアリト…しかし、遊馬はまだ諦めてはいない…!

 

 

(…だが、アリトの記憶を呼び覚ませるカードとなると…)

 

「…あるさ、オレ達にはあのカードが……『ライオン・ハート』が残ってる!!」

 

(『No.54反骨の闘士ライオン・ハート』…!だが、あのカードは…使う我々も危険だ!)

遊馬が思い出したのはアリトの遺跡で回収した『遺跡のナンバーズ』…誇り高き獅子の闘士の姿だった。

 

…だが、その効果にはデメリットもある…モンスター同士がバトルした時にお互いにバトルダメージを受け、さらに自分のライフが0になってもORUを使う事でライフが100になる……だが、それはリアルダメージを受けるデュエルにおいて、凄まじい激痛を伴ってしまうのだ…!

 

「そんな事わかってる!!けど…あのナンバーズはアリトの()()()()()()なんだ!だから…!!」

 

((「遺跡のナンバーズ」はアリトの記憶…そして「カオス・オーバーハンドレット・ナンバーズ」はドン・サウザンドの「呪い」…まて、まさか…!?)遊馬!分かったぞ!アリトの呪いを解く方法が!!)

 

「えっ…!?本当か!?」

アリトを救う為に今までの状況を振り返るアストラル…そして天才デュエリストである彼の頭脳が1つの答えを導き出した!

 

 

(ドン・サウザンドが言ったように「遺跡のナンバーズ」を開放する事により、奴の封印された力が開放され…復活していく…我々のしてきた事はドン・サウザンドの復活に手を貸していたも同じ事だ)

 

「そうだよな…父ちゃんの奴、とんだ間抜けな事を〜!?」

アストラルの言葉を聞いた遊馬は鼻息を荒くする…そもそも、遊馬達が「遺跡のナンバーズ」を探し始めたのは異次元飛行船に残された父・一馬のメッセージを聞いたからだった。

 

(だが、私はそう思わない…彼は我々に起きる事を幾つも()()()()()()…そんな人が、あえて私達が不利になるような状況を作るとは思えない……)

 

「あっ…」

遊馬とアストラルは知っている、一馬が「先見の明」とも言える予測でアストラルとの出会いやナンバーズの事、アストラル世界の事……様々な事を知っており、遊馬達を導くように道しるべを残していた事を…。

 

 

(もしかしたら、彼は君が「バリアン七皇を救う為に戦う」事を予測していたのかもしれない…だとすれば、「遺跡のナンバーズ」には「ドン・サウザンドの呪縛」を解く()()がある……私はそう考えた)

 

「遺跡のナンバーズに…?」

 

(オーバーハンドレットナンバーズはドン・サウザンドの「呪い」のカード……そして遺跡のナンバーズは七皇の「記憶そのもの」…この2つは相反する存在のはずだ…!)

 

「そ、そうか!!なら『カエストス』を『ライオンハート』で破壊すれば、アリトの呪いは…解けるって事か!!」

それがアストラルの出した結論…アリトを救う為の一手だった…!

 

 

「いよっしゃ…!やってやる!!」

 

(待て、遊馬……今の私達は手札が0、そしてレベル1のモンスターが2体しかいない……つまり)

 

「ああ…オレはこのドローに全てが懸かってる!!それに……待ってろよ!小鳥!今助けるからな!!」

 

「遊馬…!」

絶体絶命の遊馬…その肩には茨の塔に囚われた小鳥の命運も懸かっている…!

 

 

「勝って遊馬!…私と…アリトをこんな呪縛から開放して!!」

 

「おう!!任せとけ…!かっとビングだ!オレ─!!」

小鳥の声援を背に受けて…遊馬は運命の1枚に手を掛ける!

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!……オレの思いは届いたぜ、アリト!!」

 

『なに…?』

 

「オレは『虹クリボー』を召喚!!」

 

《クリクリー!!》

遊馬が引き当てたのはレベル1の虹クリボー…逆転への布石は整った!

 

「オレはレベル1の『虹クリボー』『クリボルト』『ダークロン』の3体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

 

54 

 

 

「現われろ!『No.54』!『反骨の闘士ライオン・ハート』!!」

ついに現れた誇り高き獅子王…その時、異変が起きる…!

 

 

キィン─!

 

ギィン─!

 

 

「うおおっ…!?」

 

「きゃあ!?」

 

『この、ナンバーズは…!?』

『ライオンハート』と『カエストス』の共鳴…否、反発作用が発生…周囲に暴風が吹き荒れる…その時、アリトは記憶を垣間見る。

 

 

 

 

コロッセウムに響く子ども達の歓声…

 

 

子ども達の『英雄』だった自身の姿…

 

 

怪しい『黒いローブを纏った男』の言葉を…

 

 

【アリト様、お気をつけください…貴方の命が狙われています…】

 

 

そして…無辜の罪で捕らえられる自身の姿を…

 

 

 

………

 

 

「「「殺せ!殺せ!!殺せ!!!」」」

 

「「「悪人に断罪を!!」」」

 

 

『オレはやってない…やってない!!』

本来ならば歓声に包まれるコロッセウム…しかし、その場を支配していたのは罵声だった…。

殺人の濡衣を着せられたアリトは万人の目の前で処刑されようとしていた…。

 

 

 

「嘘つき…嘘つき─!!!」

 

「「「嘘をつくなぁぁ!!!」」」

 

「「「卑怯者─!!」」」

 

 

『そんな、あいつら…まで……』

コロッセウムに響く子ども達の叫びと泣き声……アリトの心は絶望に堕ちた…。

 

 

 

【これが貴方の『呪われた人生』…貴方は親友に裏切られ、人を怨み…怨念と妄執に囚われ死んでいく…!】

 

『そうだ…誰一人、オレを信じない……親友だと思っていた皇帝で、さえも…』

脳裏に響くローブの男の声…その声がアリトの負の感情を膨れ上がらせる…!

 

 

 

呪ってやる…呪ってやる!!そして、いつの日か蘇り…この世界に…災いを──!!

 

 

ザン!

 

 

 

 

………

 

 

 

 

『い、今のは…!?』

 

「今のが、アリトの…記憶…!?」

ナンバーズの共鳴によって遊馬はアリトの記憶を垣間見る…その死は絶望と怨嗟の思いに満ちていた…。

 

 

 

(ナンバーズの共鳴…やはり、この2体が戦う時…何かが起きる!!)

 

「アリト…!今、その呪いを解いてやる!バトルだ!『ライオンハート』で『カエストス』を攻撃!!この瞬間、『ライオンハート』の効果発動!攻撃表示のこのカードは戦闘では破壊されず、オレが受けるバトルダメージは相手も受ける!!『カエストス』の攻撃力は4000!つまり3900ダメージだ!!」

 

『させるか!「ラプソディ・イン・バーサーク」の効果発動!オレが1000以上のダメージを受ける時、そのダメージを半分にしてこのカードを破壊する!!ぐおおおっ!?』

 

「ぐあああああ─!!」

ぶつかりあう2つの拳…アリトは覇王の鎧を盾にダメージを軽減したが、お互いに吹き飛ばされる!

 

 

 

(ぐっ…「ライオンハート」の効果発動!ライフが0になる時、ORUを1つ使い!ライフを100にする!レスキュー・ショック!!)

 

ドクン!!

 

「かはっ…!?」

アストラルが遊馬の代わりに効果を発動…遊馬は電撃によって死の淵から舞い戻る…!

 

 

「ごほっ…ライフ、ゼロって…すごい、インパクト、だぜ…遊海は…いつもこんな思いを………」

蘇生効果によってなんとか起き上がる遊馬…そして、アリトにも変化が起きる…!

 

 

 

ば、馬鹿な…!?我の呪いをォォォ─!?

 

「ドン・サウザンド!?」

ナンバーズの衝突に耐えられなかったのか…アリトの体から黒い炎…ドン・サウザンドの分身が分離…消滅した…!

 

 

 

『ぐ、うぅ……オレは、何を…?そうだ…ドン・サウザンドに…!!』

 

「アリト…!お前はドン・サウザンドに操られてたんだ!!」

 

『……遊馬…?小鳥…?そうか、お前達が、奴の呪いを……ハッ!!』

 

「きゃ!……あっ…?」

 

「アリト!正気に戻ったのか!!」

遊馬の奮闘によってアリトは正気を取り戻す、朧げな記憶から自身の犯した事を理解したアリトは小鳥を茨の塔から開放…優しく地面に着地させた…。

 

 

「アリト!呪いが解けたんだ──」

 

『…来るな!遊馬!!』

 

「アリト…!?」

アリトの呪いが解けたと思い、駆け寄ろうとする遊馬…それを制したのは、アリト自身だった。

 

 

『まだ、オレ達の戦いは終わってない…オレはバリアン七皇のアリト!!…確かに、オレはドン・サウザンドに操られていた……だが、見たはずだ!オレの過去を!!』

 

「アリト…」

 

『あの憎しみを胸に…オレはバリアンに生まれ変わった!オレの居場所はバリアン世界にしかねぇ!!それを無くそうとするお前達とは…決着をつけなきゃならない!!』

アリトの体を憎しみのオーラが包み込む…解けたのはベクターの掛けた呪いのみ、まだ…アリトには「憎しみ」という名の根深い「呪縛」が残っている…!

 

 

『遊馬、アストラル…お前達とのデュエルは、激しく…熱く!最高だった!!…だが!そんなデュエル…もう、できそうに、ねえ……!!』

 

「アリト…!!」

それはアリトの慟哭…転生前の記憶を思い出したが故に…アリトの瞳は憎しみに染まる!!

 

 

 

 

80

 

 

『現われろ…「CNo.80」!魂を鎮める旋律が、十全たる神の世界を修復する!…我に縋れ…!「葬装覇王レクイエム・イン・バーサーク」!!』

 

「か、カオスナンバーズ…!?」

アリトは「ラプソディ・イン・バーサーク」を自身の効果で蘇生…さらに「RUM-バリアンズ・フォース」によりカオス化させ…哀しき魂を葬送する、鎮魂の狂王を呼び出した…!

 

 

『「RUM-バリアンズフォース」のさらなる効果発動!カオスエクシーズのエクシーズ召喚に成功した時、相手のエクシーズモンスターのORUを自分のエクシーズモンスターに吸収!さらに奪ったORU1つにつき、攻撃力を300ダウンさせる!カオス・ドレイン!』

 

「『ライオンハート』のORUが!!」

 

(これではレスキュー・ショックが発動できない…!)

「バリアンズフォース」の効果によりライオンハートのORUが全て葬装覇王に奪われ、攻撃力が0になる…。

これによりライフを戻す効果が発動できず、攻撃を受ければ相討ちになってしまう…だが、アリトは勝利を狙い…さらなる効果を発動する!

 

 

『いくぞ!「レクイエムインバーサーク」の効果発動!1ターンに1度、カオスORUを1つ使い!相手フィールドの魔法・罠カードを全て除外する!』

 

「っ…!?」

レクイエムインバーサークの拳から放たれた稲妻が遊馬の伏せカードを異次元に消し去る!

 

『さらに「レクイエムインバーサーク」の効果!このカードを「彗星のカエストス」の装備カードにし、攻撃力を2000アップする!』

 

「攻撃力、4800…!!」

混沌の拳闘士が鎮魂の鎧を纏い、咆哮する!

 

 

(っ…!?なぜ、「カエストス」の攻撃力を上げる…!?「ライオンハート」の効果でお互いにダメージを受け、相討ちに…!?)

 

『……いいや、倒れるのは()()()()()()!「レクイエムインバーサーク」を装備したモンスターがバトルする時、相手モンスターの効果は無効になる!』

 

「なにっ!?」

 

『これで、終わりだ!「カエストス」で「ライオンハート」を攻撃!!』

カエストスがライオンハートに肉薄する!

 

 

(遊馬!()()()()だ!!)

 

『なっ…!?何を寝ぼけた事を!!お前達のフィールドに罠カードは──』

 

「それが…()()()()()!!墓地の罠カード『ディメンションUターン』の効果発動!!」

 

『なに!?』

それはガガガガードナーのコストで墓地に送られたカード…それが真価を発揮する!

 

 

「このカードを墓地から除外する事で、自分のモンスター1体を除外する!!」

 

『そんな効果になんの意味がある!だったらダイレクトアタックを決めるだけだ─!!』

ライオンハートが異次元に消えた事で混沌の一撃は空を切る…しかし、再び拳が迫る!!

 

 

「まだだ!墓地の『虹クリボー』の効果!自分がダイレクトアタックを受ける時、墓地から特殊召喚できる!!」

墓地から現れた虹クリボーが混沌の拳を受け止め、粉砕された…。

 

「助かったぜ、虹クリボー…!」

 

『くっ…オレはこれでターンエンドだ…!』

 

「この瞬間!除外された『ライオンハート』がオレのフィールドに帰ってくる!!」

遊馬を仕留め損ねたアリト…そしてフィールドに獅子王が帰還した!

 

 

 

「ふ、ふぅ〜…何とか、このターンは持ち堪えたぜ…だけど、どうすりゃいいんだよ…!?ドン・サウザンドの呪いが解けても…アリトは「過去の憎しみ」に囚われてる…まるで()()()()()に掛かっちまったみたいだ!!」

 

(新しい、呪い…?)

ギリギリでアリトの猛攻を凌いだ遊馬…だが、憎しみに囚われたアリトを解放する事はできていない……その時、アストラルはある事に気が付いた。

 

 

 

((遺跡にあった七皇の伝説…その中で彼らの魂は『』『純粋』にして『崇高』…バリアン世界ではなく、むしろアストラル世界に行くのに相応しいはずだ……その彼らが何故、憎悪と怨念に囚われて……?))

遊馬達は七皇の伝説が残された遺跡を巡り、彼らの過去を知った。

 

 

 

国への反乱を忠義と友情で収めようとした騎士がいた。

 

 

身分は違くとも、拳で友情を築いた拳闘士がいた。

 

 

相棒のドラゴンと共に民を護り続けた英雄がいた。

 

 

民の事を1番に考え、国を治めた武将がいた。

 

 

暴虐の進軍から国を護った王と巫女がいた。

 

 

 

その伝説に共通するのは…「悲劇」と「裏切り」…その時、アストラルは1つの答えに行き着いた。

 

 

(……もし、その悲劇がドン・サウザンドの策謀によるものなら…!!遊馬!!『ライオンハート』で『カエストス』を破壊するんだ!!)

 

「は、はぁ!?アストラル、お前なんて無茶な!?」

 

(無茶でもやるんだ!!そうすれば…何か掴めるかもしれない!!)

アストラルは今までにない強い言葉で遊馬へカエストスを倒す事を訴える…遊馬は驚きながらポツリと言葉を洩らす…。

 

「アストラル、お前……オレに似てきた…?」

 

(……それはない)

 

「だあっ!?…でも、お前がそこまで言うんなら…意味があるって事だよな…!いくぜ!!」

 

(ああ、次のターンが勝負だ!!)

遊馬とアストラル…2人の絆は奇跡を起こす!

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!……来たぜ!!装備魔法『王者の聖外套』を『ライオンハート』に装備だ!!このカードを装備したモンスターは、相手モンスターと同じ攻撃力になる!!」

獅子王が金と赤に彩られた衣装を纏う…その姿、まさに紅蓮の獅子王!!

 

 

(そう…ドン・サウザンドは私達のナンバーズからオーバーハンドレットナンバーズを()()()!自ら呪いを掛けたナンバーズを使ってまで……だとすれば、必ず!!)

 

「いくぜ!『ライオンハート』で『カエストス』を攻撃!!『レクイエムインバーサーク』はモンスター効果を無効にできても、装備カードは無効にできない!!王者の拳を叩き込め!!」

 

『相討ち狙いだと!?』

殴り合う2体のナンバーズ…その拳はクロスカウンターとなってお互いに直撃、大爆発を起こす!

 

 

『させるか!!装備カードとなっている「レクイエムインバーサーク」を破壊し、「カエストス」は破壊されない!!』

 

「『王者の聖外套』の効果発動!このカードを墓地に送る事で破壊を無効にできる!」

お互いの装備カードが破壊され吹き飛ばされる2体の拳闘士…しかし、この一瞬で明暗が別れた!

 

 

「『聖外套』のさらなる効果発動!破壊無効効果を自分のターンに発動した時、装備モンスターとバトルした相手モンスターの攻撃力を入れ替えて…もう一度攻撃できる!!」

 

『なんだと!?』

 

(「『ライオンハート』!『彗星のカエストス』を再び攻撃!!バーニング・アッパー!!」)

遊馬とアストラルの声が重なる、体勢を立て直した獅子王が混沌の拳闘士に肉薄…紅蓮のアッパーで拳闘士を吹き飛ばし、粉砕する!!

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

『こ、これは─!?』

カエストスが爆散する刹那……ナンバーズに封じられていた「真の記憶」が解き放たれた…。

 

 

 

アリト LP0

 

 

遊馬&アストラル WIN!

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

『アリトがそんな事をするはずがないだろう!!アリトと私は兄弟同然、私亡き後の皇帝…国を治める勇者は彼だ!すぐにアリトを解放せよ!』

 

『こ、皇帝…!』

 

 

殺人の濡衣を着せられたアリトは親友でもある皇帝の前に引き出される…しかし、アリトと拳で語らい、人となりを知る皇帝はアリトの冤罪を見抜き、アリトの解放を命令する…。

 

…しかし、2人は気付かなかった…兵士達の目に怪しい光が宿っている事を……。

 

 

 

【余計な事を…】

 

『何奴…!?』

 

【我が名は……ドン・サウザンド…!!】

 

『皇帝!?』

皇帝の玉座の背後から現れたのはアリトの前に現れた黒ローブの男…その正体は『ドン・サウザンドの分身』…魔力で皇帝を洗脳したドン・サウザンドは正体である魔神の姿になりながらアリトに歩み寄る…!

 

 

【我はバリアンの神…我にはお前の力が必要なのだ…!お前の折れぬ魂と底しれぬ闘志…!それが我の糧となる!お前の魂を…アストラル世界に奪われてなるものか!!】

 

ギィン!

 

『ガアッ!?』

ドン・サウザンドは自らの力で生み出した『No.105』をアリトの胸に突き刺した…!

 

 

【これで…お前の記憶は書き換えられた、お前は信じる者に裏切られ抹殺された『無念の戦士』…その怒りと憎悪を胸に…バリアンとなって蘇るのだ…!!】

 

 

『アリト、お前に死罪を申し付ける…!』

 

 

これがアリトの真実…全てはドン・サウザンドによる暗躍が原因だったのだ…。

 

 

 

…………

 

 

 

 

「アリト!大丈夫か!!」

 

『遊馬…アストラル……オレの、記憶は……』

 

(今、君が見たのが…本当の記憶だ…だが、その記憶は書き換えられ、憎しみを植え付けられつていたのだ…君の魂が、バリアン世界に向かうように…)

 

『カエストス』を破壊されたアリトは人間体に戻りながら地面に倒れ込む…アリトはバリアンの力と引き換えに『本当の記憶』を取り戻したのだ。

 

 

『オレは、ずっと…嘘で操られて…!遊馬の仲間達に、取り返しのつかない事を…!!』

 

「アリト…」

 

(いや、君は利用されただけだ…ドン・サウザンドは自らが力尽き、自分の力が7枚のナンバーズに封印された時、既に最後の力を野に放っていた…奴は恐るべき用意周到さで自らを蘇らせる計画を練っていたのだ…!)

自分のしてきた事を思い出して罪悪感を募らせるアリト…そんな彼をアストラルは慰める…。

 

真に恐ろしいのは数百…数千年前から暗躍を続けていたドン・サウザンドの執念だった…!

 

 

 

「アリト、力を貸してくれ!ドン・サウザンドをぶっ倒す為に!」

 

『遊馬……ドン・サウザンドの罠に嵌まったとは言え、

 オレは『バリアン七皇』の戦士だ!オレは、お前達を倒さなければならない…!』

 

「アリト…!七皇とオレ達は、必ずわかり合える!!」

遊馬はドン・サウザンドを倒す為にアリトに共闘を申し込む…アリトはバリアンとしてではなく、『七皇の戦士』として遊馬を睨むが……彼の心は既に決まっていた。

 

 

『……だが、お前達の前にぶっ倒さなきゃらない奴ができた!!…協力するぜ、ドン・サウザンドを倒す為に!!』

 

「アリト…!ありがとう!!」

アリトは決意した、自身の誇りを汚し…仲間達の運命を弄んだドン・サウザンドを倒す事を…此処に遊馬とアリトの同盟が結ばれた!

 

 

(これは大きな一歩だ…!他の七皇も過去を改竄されているのなら…一刻も早く、彼らを解放せねば…!!)

 

『奴はベクターの中にいる…!バリアン世界に行けば、きっと手がかりがある!!』

 

「ベクターの中に、ドン・サウザンドが…!?」

 

(やはり、ベクターか…!行こう、バリアン世界へ!!)

 

「『「おう!!」』」

 

ベクターがドン・サウザンドの依代になっている事を知った遊馬達は手がかりを掴む為、バリアン世界への道を急いだ…。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

───────!!

 

 

【ふむ……ベクター、良い話と悪い話がある…どちらから聞きたい?】

 

『っ…なんだよ?藪から棒に…』

そこはバリアン世界の七皇の城、消滅間際のⅤから語られた「遊馬はバリアン世界へと向かった」という事を聞いたベクターは急いでバリアン世界へと引き返して来た…。

そんな中、ベクターの内に宿るドン・サウザンドが語りかける。

 

 

『じゃあ、良い話って奴から聞かせろよ』

 

【良い話は…どうやら名無しの怪物が『怪物』としての力を取り戻したようだ】

 

『はあっ!?ネームレスは死んだはず…!?』

 

【気付いていなかったのか?奴は死んでなどおらん…どうやら、人間共の力を吸収し、復活したようだな】

 

『チッ…全然()()()じゃねぇ!!あの怪物が目覚めたら()()()()()()じゃねぇか!…』

「怪物」の想定外の復活に動揺するベクター…無理もない話だが、ベクターも以前の戦いで痛い目に遭っており、今回の作戦はネームレスの厄介払いも兼ねていたのだ。

 

 

『じゃあ『悪い話』はなんなんだよ!』

 

【アリトが九十九遊馬に負け、奴らに寝返ったようだ】

 

『アリトが寝返った!?』

 

【そうだ…事を急げ、他の七皇の力を奪い去れ…!】

 

 

『チッ…もちろん、そのつもりだぜ…!早く来いよ…メラグ!ドルベ!!』

バリアン世界に向かっているであろう2人の姿を想像しながら、ベクターは玉座に腰掛ける。

 

 

混沌の計画はついに最終段階を迎えようとしていた…!




〜S,Kの独り言〜

本編で生前のアリトに向かって「嘘つき」「卑怯者」と叫んでいた子供達……もしかして、あの子達はアリトではなく…アリトを捕まえた兵士達や死罪を言い渡した皇帝に向かって叫んでいたのかも…。

その言葉が本当の意味でアリトに届いていれば……許すまじ、ドン・サウザンド…!


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狂気暗躍─七皇崩壊─

こんにちは!S,Kです!大変お待たせいたしました…。


ベクターとドン・サウザンドの悪意が七皇に迫る…その戦いの行方は…。


それから!活動報告にてリクエストアンケートを開催中です!皆様のリクエストをお待ちしています!


https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=264294&uid=206572


それでは、最新話をどうぞ!


『バリアン世界に戻って来たが…遊馬とアストラルはまだ到着していないようだ』

 

「飛行船の鍵になっている「No.66」がバリアン世界の座標を記録しているはず…彼らは必ずこの世界にたどり着くわ…」

 

バリアン世界・悪意の海の畔に異次元の扉が開く…そこから現れたのはドルベとメラグだった、カイトとの決着をつけるべく月へ向かったミザエルを見送り、彼らはバリアン世界に戻って来たのだ。

 

 

『ナッシュやギラグとも連絡が取れない…とりあえず、城で様子を見よう』

 

「分かったわ」

遊馬との決戦に備えるべく、ドルベ達は城へと転移した…。

 

 

 

Sideナッシュ

 

 

 

『ぐっ…うぅ……俺、は…?』

同じ頃、気を失っていたナッシュは見知らぬ場所…異次元の狭間で目を覚ました、しかし…四肢と胴体に頑丈な黒い触手が巻き付き、空中に磔にされてしまっていた…。

 

 

『そうか…俺は、ギラグに……この呪縛…ドン・サウザンドの力か…!?くそっ…とう……遊海の最後のアドバイス、無駄にしちまった…!!』

ナッシュは意識を失う前の事を思い出す…それは『ドン・サウザンド様の為に』とナッシュを捕らえたギラグの事…そして「背中に気を付けろ」と仲間からの裏切りを忠告した遊海の最後のアドバイスの事だった…。

 

『しかし…何故、ギラグがドン・サウザンドの力を……っ!?』

 

ブブゥン…

 

ギラグとドン・サウザンドの繋がる理由を考えるナッシュ…その目の前にある映像が投影される、そこには戸惑うメラグとドルベ…そして不敵な笑みを浮かべる人間体のベクターの姿が映し出されていた…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

【ヒヒヒ…待ってたぜぇ?メラグ…ドルベ…!】

 

「っ!?ベクター…?何故此処に!?」

 

『人間界で単独行動をしていたと思ったが…!』

七皇の城に転移したメラグ達を出迎えたのは…ナッシュだけが座る事を許された玉座に座っていたベクターだった…!

 

 

【どうやら…俺達の力を1つにする時が来たって訳さ…!】

 

『我々の力はナッシュの下に1つになっているはずだが?』

 

【分かってないなぁ、俺が言ってンのは……此処でお前らをぶっ飛ばして!その魂ごと全部の力を貰うって事だよぉ!!】

 

『「なにっ…!?」』

七皇の力を1つにすると宣言するベクター…その言葉は、七皇を裏切る事を意味していた…!

 

 

『ベクター!貴様…!そんな事ができると思っているのか!!』

 

【それができるのサァ…なんたって、ドン・サウザンドを俺の中に蘇らせたんだからなぁ!!】

 

『なんだと!?』

ベクターはゲスな笑みを浮かべながら言い放つ…それと同じくしてベクターの背後から黒い炎が噴き出し、巨大な悪魔…ドン・サウザンドへと姿を変えた…!

 

 

 

【ハハハハハハ…!我が名はドン・サウザンド…バリアン世界の創造主…!】

 

「あれが、ドン・サウザンド…!?」

ドン・サウザンドの発する圧倒的な覇気とカオスの力にドルベとメラグ、そして映像越しに姿を見せられているナッシュは圧倒される…。

 

 

 

【我の下僕よ、時は来た…今こそ我が糧となり、我の力となるが良い…!!】

 

『ぐっ…!何故だ!!貴方がバリアンの神ならば…何故我らを裏切るような事を!!』

ドン・サウザンドの宣告…命令を聞いたドルベがドン・サウザンドに叫ぶ…しかし、ドン・サウザンドは思いもよらぬ事を口にする。

 

 

【それがそなたらの()()だからだ、我が復活する為の力となる為に選ばれた『魂』…それが七皇の役目だ…!】

 

『そんな、我ら…七皇が…!』

 

「じゃあ…私達は…!?」

 

【そうさぁ…!お前らは最初からドン・サウザンドの生贄(エサ)なんだよォ!!ぎゃはははは!!】

ベクターは七皇をあざ笑う…七皇の役目はドン・サウザンド不在のバリアン世界の守り手であり、復活したドン・サウザンドの力を取り戻す為の生贄だったのだ…!

 

 

「ベクター!お前も七皇の1人!我々同様の─!」

 

【俺は違うんだよぉ!俺はドン・サウザンドと一体になった!!つまり、オレは…神だぁぁ!!!

 

「『ぐああああっ!?』」

ベクターはそれまで封じていたカオスを解き放つ…それは凄まじい衝撃波となってドルベ達を吹き飛ばした!

 

 

【ヒヒヒ…ヒャハハハハハ!!チカラが…力が漲ってくるぜぇぇ!!】

 

「ベクター…奴は、本当にドン・サウザンドの力を…!?」

 

『くっ…メラグ!此処は私に任せて逃げるんだ!!七皇達に、この状況を知らせるんだ!!』

異常事態を前にドルベはメラグを逃がそうとする…他の七皇達に状況を知らせる為に……だが…!

 

【他の仲間ァ?気付いてなかったのか?アリトもギラグも…復活してからずっとオレの()()だったんだよぉ!!】

 

『なんだって!?』

 

【もっとも…アリトの奴は遊馬にやられて寝返ったみたいだけどな、遊馬と手をたずさえてバリアン世界に向かってるぜ?】

 

「っ…!!」

ベクターによって手駒となっていたギラグとアリト…残るは月に向かったミザエル、そして…

 

 

『だが、私達にはナッシュが残っている!!』

 

【だと良いがな?ヒヒヒ…!】

リーダーたるナッシュを信じるドルベ…だが、ベクターは意味深に笑っていた…。

 

 

【と・に・か・く!お前らは此処でオレに喰われるんだよぉ!逃しはしねぇ!!】

 

ギィン─!

 

ベクターは特殊なエネルギー波で空間転移を封じ、ドルベ達の退路を断つ…!

 

 

「ドルベ…今のベクターに勝つには、力を合わせるしかないわ!!」

 

『どうやら…それしかないらしい!!喰われない為には…奴を倒すしかない!!』

ドン・サウザンドと共に七皇を喰らうつもりのベクターを倒す為、ドルベとメラグは覚悟を決めた…!

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「………」

 

(…遊馬、どうした?……遊海の事か?)

 

「……ああ、大丈夫かな…って…」

同じ頃、アリトをドン・サウザンドの呪縛から解放した遊馬は飛行船で異次元空間を進んでいた…そんな中、遊馬は遊海から託されたカルトゥーシュを握り締め、不安げな表情を見せていた…。

 

 

(心配する事はない、遊海は人間界最強のデュエリスト……そして様々な苦難を乗り越えてきた戦士だ、きっと遊馬を笑顔で迎えてくれるはずだ)

 

「そうだよな!遊海は強いんだ!!だから…大丈夫…!オレが心配してたら怒られちまうぜ!早く七皇のみんなを呪いから解放して、ドン・サウザンドを倒して…遊海にカルトゥーシュを返すんだ!やってやる!!」

アストラルの言葉で元気を取り戻す遊馬…だが、アストラルは遊馬に気付かれないように表情を曇らせる…。

 

 

((人間界から出発する直前、異常な数のナンバーズの気配を感じた……遊海…私達は必ずドン・サウザンドを倒して人間界に戻る…だから、どうか無事でいてくれ…!))

 

アストラルは気付いていた…ハートランドに数多の偽ナンバーズが出現した事を…そして、別れる寸前の遊海の生命力が極端に弱くなっていた事を。

それでも…アストラルは人間界の事を遊海に託した、彼も信じていたからだ…長きに渡って世界の平和を守り続けた、伝説の決闘者の力を…。

 

 

キィン─!

 

『見えて来たぜ…バリアン世界に繋がる次元の裂け目だ…!』

 

「あの先に、バリアン世界が…!」

トンネルの先を見続けていたアリトが声を上げる、その視線の先では紫色の光が輝いていた…その時だった!

 

 

ガッシャーン!!

 

 

「きゃあああああ!?」

 

『っ…!?あれは!!』

 

「『ジャイアントハンド』!?」

飛行船の前にに巨大な掌…「No.106巨岩掌ジャイアント・ハンド」が立ち塞がる、それを操るのは当然…!

 

 

『てめぇら…裏切り者アリトと手を取ってお出ましか……ドン・サウザンド様に楯突く愚か者共が!!』

 

「ギラグ!!」

ジャイアントハンドの上に仁王立ちし、遊馬達を見下ろす男…ギラグ、ドン・サウザンドの呪いによって彼は正気を失っていた…。

 

 

「ギラグ!お前は騙されてるんだ!!」

 

「そうよ!!ドン・サウザンドに記憶を書き換えられて、利用されてるの!!」

 

『この俺が騙されてる?利用されてるだと…!?ふざけた事を…!!その腐った魂、纏めて俺様が喰らってやる!!』

 

「ギラグ…!!」

 

『無駄だ、奴をドン・サウザンドの呪いから解放するには…オレの時と同じように、奴の「ジャイアントハンド」を遺跡のナンバーズで破壊するしかない!!』

ギラグを説得しようとする遊馬と小鳥…しかし、ギラグは耳を貸す事はない。

ドン・サウザンドの呪縛の強さを知るアリトは…戦う事でしかギラグを救えないと理解していた…。

 

 

「じゃあ…ギラグとデュエルするしかないって事か…!!」

 

『なら……オレがやる!』

 

「アリト…!?でも、()()()()は…!?」

 

『分かってる、オレはバリアンの力を失って「オーバーハンドレットナンバーズ」は使えない…だが、これはオレがやらなきゃダメなんだ…!アイツの一番のダチだった…このオレが!!』

アリトはギラグを解放する為のデュエルに志願する…しかし、ドン・サウザンドの「呪い」が解けてしまった事でバリアン体になる事はできず、エースである「オーバーハンドレットナンバーズ」は使えない。

 

…それでも、アリトは覚悟を決める。

 

アリトとギラグは一番の友人だった、互いに腕を高め合い…悩みを語り合い…修行した…そんな親友が闇に囚われているのなら、救うのは自分の役目だと…アリトはギラグの前に立つ…!

 

 

「アリト……わかった!なら、これを使ってくれ!!」

 

『このカードは…!?』

 

「『No.64古狸三太夫』…ギラグの遺跡のナンバーズだ!そのカードで、ギラグの呪縛を!!」

 

(遊馬…)

遊馬はバリアンであるアリトにナンバーズを託す…その瞳に宿る、友情の光を信じて…!

 

『サンキュー、遊馬!!』

 

(アリト…頼んだぞ)

 

「絶対に…絶対に勝って!アリト!!」

 

『アストラル…小鳥…!おう!!…ギラグ!デュエルだ!!』

 

『面白え…!裏切り者が!!お前から魂を喰らってやる─!!』

遊馬とアストラル、そして小鳥…3人の願いを背負ったアリトがギラグと対峙する、その姿はかつての『英雄』そのもの…。

掛け替えのない友を救う為、拳闘士は再び拳を振るう!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

Sideバリアン世界

 

 

 

【『「デュエル!!」』】

 

 

 

 

デュエルダイジェスト ドルベ&メラグ対ベクター

 

 

 

 

【オレのターン!…ギャハハハ!!来ちまったぜ?お楽しみのカードが!!永続魔法『ドン・サウザンドの玉座』を発動!!】

バトルロイヤルルールで始まったベクターとドルベ&メラグのデュエル…先攻を取ったベクターはドン・サウザンドの意匠を持つ玉座に腰掛ける…。

 

 

【本当なら、この玉座に座ったままデュエルしたいところだが…それじゃあ流石に失礼だ……だから、俺は『ドン・サウザンドの玉座』をオレ自身に装備する!!】

 

『っ!?』

ベクターの宣言と共に玉座が変形…ドン・サウザンドの似姿のような鎧となってベクターを強化した。

 

 

『奴め…何を狙っている…!?』

ベクターの行動に戸惑うドルベ…しかし、ベクターは手を止める事なく、新たな一手を打つ!

 

 

96

 

 

【現われろ!『No.96』!漆黒の闇からの使者!『ブラック・ミスト』!…そして…見せてやれ!お前の()()()姿()を!!】

ベクターの場に現れたのは遊馬とアストラルを幾度となく苦しめた黒の悪魔…しかし、その姿はベクターの声に応じて変身…『黒いアストラル』を模した操り人形の姿へと変化した…!

 

 

『あれは…!?』

 

【ドルベ…お前は初対面だったなぁ?コイツが1度はアストラルを葬った『No.96』の姿さぁ…!】

 

「だけど…お前は96と手を組んでいたはずよ!」

96を下僕としたベクターにメラグは問う…メラグが知るのは第2の遺跡『悲鳴の迷宮』でベクターと手を組んでいた黒アストラルの姿…その後、遊馬とアストラルの決戦により討ち果されたとナッシュから聞かされただけだった。

 

【ああ、そうさ…けどな!96がアストラルと刺し違えた後…奴の残した力は俺が手に入れたのさ…!それで今は俺の『操り人形』って訳…!お前らもいずれこうなるのさ…!!俺はカードを1枚伏せターンエンド!】

獲物を前に品定めするベクター…しかし、彼らはただ狩られる獲物ではない…!

 

 

 

103 

 

 

「現われろ!『No.103』!『神葬零嬢ラグナ・ゼロ』!!」

メラグは自身のエース、二振りの剣を持つ神をも凍らせる巫女を呼び出す、さらに…!

 

 

 

102 

 

 

『現われろ!「No.102」!「光天使(ホーリー・ライトニング)グローリアス・ヘイロー」!』

続くドルベのターン、ドルベはエースたる天使の騎士を呼び出す!

 

 

『「グローリアス・ヘイロー」の効果!!ORUを1つ使い、相手モンスターの効果を無効にし、攻撃力を半分にする!』

続けざまにドルベは効果を発動、光の矢に貫かれた96が弱体化する…しかし、これは布石に過ぎない!

 

 

『今だ!メラグ!』

 

「ええ!!『ラグナゼロ』の効果発動!相手モンスターの攻撃力が元々の攻撃力から下がった時、ORUを1つ使い!そのモンスターを破壊!ガイダンス・トゥ・フューネラル!!」

 

【なに!?】

混沌の巫女が氷結の演武で操り人形の96を粉砕する!

 

『今だ!速攻魔法「ラス・オブ・ホーリー・ライトニング」を発動!自分フィールドに「光天使」モンスターが存在する時に相手モンスターが破壊された時!相手に1000ダメージを与える!!』

 

【ぐおおぁぁ…!?!】

追い撃ちに放たれたエネルギーがベクターを壁に叩き付ける、戦闘では無類の強さを誇る96も効果破壊の前には無力…そして…

 

 

『どうだ、ベクター!』

 

「これが我ら2人の連携よ!『ラグナゼロ』の効果でモンスターを破壊した事で1ドロー!」

 

【フハッ…ふざけやがって…!】

十数年離れていたとは思えないドルベとメラグの連携…しかし、ベクターは余裕を崩さない…!

 

 

 

『私はカードを1枚伏せ、ターンエ【その瞬間!罠カード発動!『屍の合星(ネクロ・エクシーズ)』!!】っ!?』

ターンを終えようとするドルベ…しかし、ベクターもただでは終わらない…!

 

【このカードは俺のナンバーズが破壊されたターンのエンドフェイズに発動できる!ランク4・悪魔族のエクシーズモンスターを墓地の闇属性モンスターを素材にエクシーズ召喚できる!その時、墓地のモンスターのレベルは召喚条件と同じレベルになる!!俺は墓地の『アンブラル・ゴースト』2体と『アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!】

墓地から飛び出したモンスター達が銀河へと飛び込む!

 

 

43

 

 

【現われろ!『No.43』!死者の眠りを妨げる、冒涜の化身!!『魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター』!】

現れたのは新たなナンバーズ…死者の安寧を冒涜する鬼の傀儡師が現れる!

 

 

【『ソウルマリオネッター』は召喚された時、俺の墓地のナンバーズを1体装備できる!俺は墓地の『ブラックミスト』を装備だ!!】

ソウルマリオネッターの操り糸が墓地へ伸ばされ、96がベクターの傀儡として呼び戻される…!

 

 

「ベクター…!いったい何を…!?」

 

【ヒヒヒ…!お楽しみはこれからさァ…!永続魔法『ドン・サウザンドの玉座』の効果発動!自分がダメージを受けたターンのエンドフェイズに、そのターンに受けたダメージ分ライフが回復する!!みなぎる…漲るぜぇぇ!!】

 

『なっ…!?』

赤紫のエネルギーに包まれたベクターにエネルギーが流れ込み、ライフを回復する…しかし、その効果はそれだけではなかった…!

 

 

【キヒヒ…()()()()ゥ…!ごちそうさまァ…!!】

 

 

 

 

Sideナッシュ

 

 

ギィン─! バチバチバチ!!

 

 

『がっ!?うぐああああああ!!?!(な、なんだっ

!?力が、吸われっ…!!)』

 

異次元の狭間に囚われているナッシュ…彼を拘束していた触手が怪しく輝き、激痛と共にナッシュの生命力を吸い上げる…ベクターの『ドン・サウザンドの玉座』がナッシュの生命力を奪っていたのだ…!

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

【ここでさらに『ソウルマリオネッター』の効果発動!!俺のライフが回復した時、その数値分自身の攻撃力をアップ!さらにその数値分のダメージを相手プレイヤーに与える!俺が喰らった1000ダメージを…メラグにお返しするぜぇ!!リザルト・コンバート!!】

 

「きゃあああああ!?」

 

『メラグ!!』

ソウルマリオネッターの口から長い舌が伸び、メラグを容赦なく吹き飛ばす!

 

 

「っ…大丈夫、よ…!これくらい…!!」

 

【そうそう…!これぐらい耐えてくれないとなぁ…!】

メラグは闘志を奮い立たせて立ち上がる…そしてベクターは嗜虐の笑みを浮かべていた…。

 

 

『受けたダメージをそのまま回復し、自身をパワーアップ…さらに…』

 

「我々のいずれかに、その数値分のダメージを与える効果…!」

 

【(ヒヒヒ…そしてナッシュのエネルギーを吸い取って、奴を弱らせてるんだよぉ…!!)】

強力な効果を持つ「ソウル・マリオネッター」と「ドン・サウザンドの玉座」のコンボ…これを乗り越えるには「1ターン」でベクターのライフを削りきらなくてはならない…。

…そうしなければ、ベクターは無制限に強化され……ナッシュの命も危険に曝されてしまう…!

 

 

 

【俺のターン!!バトルだ…!「ソウルマリオネッター」で「グローリアスヘイロー」を攻撃!!】

 

『馬鹿な!?』

続くベクターのターン、ベクターは攻撃力の劣る傀儡師でドルベの天使の騎士を攻撃…怪光線は弾かれ、ベクターは余波で吹き飛ばされる!!

 

 

『何故、自らのモンスターを…!』

 

【ぐうううっ…!ナンバーズを装備した「ソウルマリオネッター」は破壊されない…!さらに速攻魔法「自虐の宝札」を発動!自分がダメージを受けた時、そのダメージを1000増やし、俺はカードを1枚ドローする!アバババ!?】

自爆とも言える手段で2500のダメージを受けるベクター…その目的は当然──

 

 

【そして…俺はカードを2枚伏せターンエンド!ひひっ…そして「ドン・サウザンドの玉座」の効果発動!このターン受けたダメージ分ライフを回復する!!】

 

「『っ!!』」

再びエネルギーをナッシュから吸収するベクター…異次元に囚われたナッシュは再びの激痛に絶叫する…。

 

 

【そして自分のライフが回復した事で「ソウルマリオネッター」の効果発動!その数値分、自身の攻撃力をアップし!さらに相手にダメージを与える!!さぁ…2500のダメージを受けてもらうぜ…メラグ─!!リザルト・コンバート!!】

 

「っあああああぁぁ…!!」

再び放たれる報復の一撃…メラグの残りライフは、僅か500となった…!

 

 

【ハハ…ギャハハハハ!!いいザマだァ!いつもお高くとまってるお前がズタボロだァぁ!!】

満身創痍のメラグを見たベクターは狂喜の声を響かせる、その様子は常軌を逸していた…。

 

 

 

『ベクター…!何故メラグばかりを狙う!!』

 

【ふひひひ…!】

ボロボロのメラグに駆け寄ったドルベは執拗にメラグばかりを狙うベクターを問い詰める…だが、ベクターは不気味に笑うだけだった…。

 

「大、丈夫…!まだ、戦える…!」

 

『メラグ…』

メラグはドルベの肩を借りて立ち上がる…その目に闘志を燃やしながら…。

 

【ハハッ…その目だよ!甚振り甲斐があるぜぇ…!お前のライフは500…()()()()、地獄に落としてやるよぉ…!!】

 

「今度、こそ…!?」

メラグはベクターの言葉に違和感を覚える、その口振りは…まるでメラグを殺した事があるような口振りだったからだ…!

 

 

【あ?まだ思い出してないのかァ…?なら教えてやるよぉ!!いま明かされる衝撃の真実ゥゥ─!

呆れた様子を見せたベクター…彼はついに真実を口にする…!

 

【ジャンジャジャ〜ン!!メラグ〜?バリアン世界でお前達を()()()のは……この俺だァ!!

 

『な、に…!?』

 

【あれは〜忘れもしない『ネームレス戦役』から60年後だったなぁ…!ネームレスの封印で弱ったナッシュになら勝てると思って…俺はアイツとお前に攻撃を仕掛けた!!】

 

「あっ…!?」

それはナッシュ達が人間界へと再転生する原因となった真実…ベクターの言葉をキッカケにメラグの脳裏に記憶が蘇った…!

 

 

 

10年前…

 

 

 

【もう止せ、ベクター!貴様の負けだ!!さぁ…メラグを離せ…!そうすれば命だけは助けてやる!】

 

「ナッシュ!私に構わずベクターを!!」

 

『ぐぅ…!!ふざけやがって!!ムカつく…ムカつくぜてめぇらァァ!!』

 

その時、ベクターは追い詰められていた…他の七皇の不在の隙を突いて最凶の怪物・ネームレスの封印によって弱体化したナッシュに反旗を翻したが、それでもバリアンの王たるナッシュは強く…ヤケになったベクターはメラグを人質にバリアン世界の崖っぷちまで逃げてきたのだ…!

 

 

『こうなったら…お前の妹を地獄に送ってやるよぉ!!罠発動!「天空の大剣」─!!』

 

【なっ!?】

 

ギィン─!

 

ベクターは除外効果を持つ罠カードを発動…暗雲の空から巨大な剣が崖下に落下、異次元への渦が開く…!

 

 

『こいつは吸い込まれたが最後…抜け出す事はできない暗黒の渦!!』

 

【やめろ…止めるんだ!ベクター!!】

ナッシュは思いとどまるようにベクターを説得する…だが、ベクターは耳を貸す事はなかった…!

 

 

『うるせぇ!!消えちまえ─!!』

 

「あっ…!?」

 

【メラグゥゥ──!!】

ベクターはメラグを異次元の渦へ突き落とす…そしてナッシュは躊躇なくその後を追い、メラグと共に異次元に飲み込まれてしまった…。

 

 

 

 

【ぐっ…このまま、では…!!】

 

「ナッシュ…!!」

凄まじい引力に引かれるまま、ナッシュ達は異次元に落ち続ける…徐々に存在が消え始め、死を覚悟した時……

 

キン─

 

【あれは…!?】

ナッシュ達は優しい光に包まれた…。

 

 

 

 

「ここは…!?」

 

【水の、中…?】

気付いた時、ナッシュとメラグは深い水の中にいた…そして彼らの前にある人物が現れる…。

 

 

─お迎えにあがりました…我らが王よ─

 

【お前は…?】

 

─私はアビス…貴方に仕え、貴方を助ける者─

 

【俺を…助ける?】

彼らの前に現れたのは第6の遺跡の番人…『No.73』に宿る精霊・アビスだった…彼はそのまま言葉を続ける…。

 

 

 

─貴方達の魂は人間世界で新たな『器』を見出す事でしょう─

 

【俺達が……人間に…?】

 

─ただし、これまで全ての記憶を失われます…そして、王が再び私めと相まみえた時、その記憶は戻り…我らを再び導くのです…──

 

【……わかった、頼んだぞ!アビス!!】

そしてナッシュは全てをアビスに託した、ナッシュとメラグ…2人の魂は人間世界へと向かい…。

 

 

 

 

トクン

 

 

 

「こ、子どもが生き返ったぞ!?」

 

「き、奇跡だ!!すぐに薬を─!!」

 

 

2人の魂は奇しくも同じ刻に命を落とした、自分達の末裔…神代凌牙と璃緒の体に宿り、人間として生まれ変わったのだ…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

「……思い出した、何もかも…私と…ナッシュは…!!」

 

『ベクター!!何故、こんな事を!!前世の因縁はあれど、我らは仲間だったはずだ!!』

洪水のように蘇る記憶に動揺するメラグ…その様子を見たドルベはベクターへと叫ぶ…ドルベは信じていた、七皇の結束を…だが、ベクターの答えは…。

 

 

気に入らなかったからだよ…!俺は初めてナッシュと出会った時から…奴の事が気に入らなかった!!奴のする事成す事全てが!!俺とアイツは決して()()()()()運命なんだよ!!】

それはベクターの『魂』に刻まれた記憶、生前の記憶は無くとも…ベクターはナッシュへの嫌悪を抱き続けていたのだ…。

 

 

【けどよぉ…最初は俺も我慢したんだぜ?いくら気に入らないからって、いきなり殺すのは良くない…だから()()()()()にしたのさ…!】

 

『ポイント制…!?』

 

【ああ、ナッシュが俺をムカつかせるたびに1ポイント!それが1億ポイント溜まったら……ぶっ殺す!!それまでは我慢だ…奴が俺に何か言うたびに1ポイント!何かするたびに1ポイント!!…そしたら……あらまびっくり☆…とうとう溜まったんだよ!1億ポイントが〜!】

 

『ベクター…キサマ…!!』

あまりにも身勝手なベクターの言葉にドルベは怒りを滲ませる…!

 

【だけどよぉ…始末したハズの2人が生きてるとはなぁ…】

メラグを前にしみじみと語るベクター…そんな様子を見たメラグは静かに語り始める…。

 

 

「人間の体を借りて転生した私達は、神代璃緒と凌牙として…遊海さんや、遊馬達と出会い…絆を深めていった…!バリアンとしての記憶が戻り…その使命を知った時!!ナッシュがどれほど苦しんだと思っているの!?」

 

メラグの脳裏に過ぎるのは『凌牙と璃緒』として過ごした人間界での記憶、大切なもう一つの家族を得て…掛け替えのない友と絆を深め…それを自らの手で断ち切ったナッシュ、その悲しさを…苦しさを知るメラグの内から激情が血涙と共に溢れ出す…!

 

 

【ああ…!見ていて愉快だったぜぇ?ナッシュの苦しむ姿はよぉ…!!】

 

 

ベクタァァァ"ァ"!!

 

ベクターの言葉はメラグの逆鱗を引き剥がした…メラグは凄まじい殺気を放ち、怒りを解放する!

 

 

 

「(ナッシュ…貴方の力、私に貸して!!)私のターン!ドロー!!」

ナッシュの悲しみ、そしてベクターのへの怒りを燃やし、メラグはその1枚を発動する!

 

 

 

「『RUM─七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)』発動!フィールドの『ラグナゼロ』をカオス化し、ランクアップさせる!!カオスエクシーズチェンジ─!!」

悲哀と怒りの叫びと共に、暗黒の爆発がフィールドを包み込む!

 

 

103 紫

 

 

「現れなさい!『CNo.103』!時をも凍らせる無限の力…いま蘇る!!『神葬零嬢ラグナ・インフィニティ』!!」

月光を浴びながら黒衣の巫女が漆黒の鎌を手に舞い踊る…神を葬る巫女が降臨した!

 

 

「ベクター、今度は私が…お前を二度と生きて帰れぬよう…氷漬けにしてやる!!覚悟なさい…このターンでお前のライフを全て削り取ってやるわ!!」

 

【やれるもんならやってみな…!!ただし!1ポイントでもライフが残ったら、同じ分のダメージでお前が地獄逝きだ!!】

 

『黙れベクター!我らを裏切ったキサマの行い…断じて許す事はできん!!』

ベクターへの怒りを燃やすドルベ…その時、メラグは覚悟を決めてドルベに話しかける。

 

 

「ドルベ、ベクターはこの私が必ず、地獄に送るわ…()()()()()()()()()…!」

 

『メラグ…!?まさか、君は…!』

ドルベはメラグの言葉から彼女の捨て身の覚悟を悟った…!

 

 

 

「私は魔法カード『魔水晶(ディストーション・クリスタル)』を発動!自分フィールドに水属性モンスターが存在する時、相手モンスターの攻撃力の変化は()になる!さらに魔法カード『氷結の刃(ゼロ・ブレード)』を『ラグナインフィニティ』を対象に発動!その効果によって『ソウルマリオネッター』の攻撃力を1000ダウンさせる!」

 

【なんだと!?それじゃあ…!】

 

「そうよ…『魔水晶』と『氷結の刃』のコンボによって『ソウルマリオネッター』の攻撃力は2000ダウンする!」

それは驚異のマジックコンボ…それによって傀儡師は大幅に弱体化する、しかし…まだ終わりではない!

 

 

「まだよ!『ラグナインフィニティ』の効果発動!カオスORUを1つ使い!相手の攻撃力が変化した時、その数値分のダメージを相手に与える!!ガイダンス・トゥ・パーガトリー!!」

 

【なっ…!ぐうううっ!?】

氷結の鎌から放たれた光の刃がベクターに大ダメージを与える!

 

 

【やって、くれるじゃないか…!だが!攻撃しても、俺のライフは残る!!】

 

「それはどうかしら…?私は『氷結の刃』のさらなる効果発動!『ラグナインフィニティ』はこのターン2回攻撃できる!!」

 

【なんだと!?】

 

「ベクター…お前が私とナッシュにした事を償ってもらう!!まずは私の分!『ラグナインフィニティ』で『ソウルマリオネッター』に攻撃!」

 

【っああああ…!?】

黒衣の巫女は手にした大鎌を傀儡師に投擲…破壊こそできないが、その余波がベクターに襲いかかる!

 

「これでお前は終わりよ!!ナッシュの分の苦しみ…受けてみなさい!!『ラグナインフィニティ』で『ソウルマリオネッター』を攻撃!!」

 

【ぐっ…!?させるかよォォ!!永続罠『ダメージポット』発動!バトルでのダメージを…無効にする!!】

 

「っ!?」

再び襲いかかる大鎌…しかし、そのダメージは悪魔の顔が刻まれた壺に吸い込まれてしまった…!

 

 

 

【残念だったなぁ…!俺のライフを全部削りきれなくて!!】

 

「私はこれでターンエンドよ」

 

【ハッハァ!!「ドン・サウザンドの玉座」の効果発動!!このターンに受けた3300ダメージ分、ライフを回復する!】

再びライフを回復するベクター…そして再び、傀儡師が牙を剥く…!

 

 

【そして『ソウルマリオネッター』は俺のライフが回復した時、その数値分攻撃力をアップする!さらにその数値分のダメージを相手に与える!!これでお前は終わりだ!メラグ!!「ソウルマリオネッター」の───!!】

 

 

 

【(待てィ!ベクター!!)】

 

 

【(あァん!?何故止める!ドン・サウザンド!?)】

ベクターが効果を発動する刹那、デュエルを静観していたドン・サウザンドがベクターを制止する!

 

 

【(今効果を発動すれば『ラグナインフィニティ』の効果により我らもダメージを受ける!)】

 

【(分かってる、だが今のライフは4000…()()()()()の1枚もある、3300のダメージくらい…)】

 

【(メラグの魔法カード『魔水晶』の効果を忘れたか!?)】

 

【(っ─!!()()()()()()()()()()()…!?つまり6600のダメージを…俺が…!?)】

 

「どうしたの?効果を使わないのかしら?」

 

【て、テメェ…!!】

 

「…どうやら、自分が地獄に落ちかかっていた事に気付いたみたいね?」

それはメラグの仕込んでいた二の矢…ドン・サウザンドの制止がなく、ベクターが嗜虐心のままに効果を発動していれば……このデュエルは2人の相討ちで決着がついていたのだ…。

 

 

【だが…俺が効果を発動すれば、テメェもダメージを受けるんだぞ?】

 

()()()()()()()()()…お前を地獄に送れるのならば!!」

 

【ぐっ…!?】

メラグの覚悟は決まっていた…前世においてもメラグは自分の命を捨て、ナッシュを守っている…彼女に躊躇はない…!

 

 

【だったら、俺は効果を使わねぇ!!】

 

「無敵と思われたお前のコンボは破られた…いくら『神』を気取っても、お前の力はその程度なのよ!」

 

【う、うるせぇ!!虫ケラの分際で…俺の事を馬鹿にするんじゃねぇぇ!!】

ついに破られたベクターのコンボ…しかし、自尊心を傷付けられたベクターは最後の仕込みを明かす…!

 

 

 

【見せてやるよぉ…!またまた明かされるぅ〜!衝撃の真実ゥゥゥ!!】

 

 

ブブゥン─

 

 

『なっ…!?ナッシュ!!』

 

「こ、これは…!?」

メラグ達の背後にとある映像が映される…それは囚われ、消耗したナッシュの姿だった…!

 

 

【ヒヒッ…ギラグを使って罠に嵌めたのさぁ!】

 

『き、貴様ァ!!何の為にこんな事を!!』

 

【よ〜く見ろよ、ナッシュの姿を…何処かで見た事がないかァ?】

 

『っ…ま、まさか!?』

囚われたナッシュは黒い触手に縛られていた…その触手はベクターが「ドン・サウザンドの玉座」でライフを回復する際のモノと同じだった…!

 

 

【アイツはボロボロ…そして俺はピンピンしてる!俺が「ドン・サウザンドの玉座」で回復したライフは…ナッシュから奪った生命力だったのさぁ!!ギャハハハハ!!つ・ま・り☆お前達はナッシュの命を削ってたんだよぉ!!】

 

「そ、そんな…私のせいで、ナッシュが…!?」

 

『メラグ!!』

ベクターから明かされた残酷な真実…それを聞いたメラグは呆然として膝をついてしまう…。

ベクターを倒す為にメラグ達はベクターの自爆も含め7000近くのダメージを与えていた…それにより、ナッシュはとてつもない激痛に襲われていたのだ。

 

 

『なんという、卑劣な!!魂までも腐りきったか!ベクタァァァ!!』

 

【ギャハハハハ!!テメェらの苦しむその姿を見たかったんだょおお!!】

あまりに卑劣なベクターの行いにドルベはついに激昂…自身の切り札を解き放つ!

 

 

102

 

 

『来るがいい!「CNo.102」!光の使いよ…今、久遠の時を超え、漆黒の衣を纏いて我を彼の地に導け!!「光堕天使(アンホーリー・ライトニング)ノーブル・デーモン」!!』

ドルベは『RUM─七皇の剣』を発動…遊海を追い詰めた堕天の騎士を呼び出した!

 

 

『ベクター!今の貴様を倒す術は()()()()()()()!…それがナッシュを救い、我らを勝利へと導く!私は墓地の魔法カード「ホーリー・レイジ」の効果発動!墓地のこのカードを除外し、「ノーブル・デーモン」の攻撃力を2000アップする!!』

堕天の騎士を強化するドルベ…全ては卑劣なベクターを倒し、ナッシュを救う為に…!

 

【攻撃力をアップしても、それじゃあ俺を一撃で倒す事は無理だぜぇ…!】

 

『まだだ!「ノーブルデーモン」の効果発動!カオスORUを1つ使い『ソウルマリオネッター』の攻撃力を0にし、効果を無効にする!!』

 

【なんだと!?】

赤き槍から放たれた紫電が傀儡師の力を奪い去る!

 

 

『これで貴様が受けるダメージは4900…一撃でライフを削り切れる…!だが、安心しろ…貴様が途中で逃げ出さぬように…私が地獄まで付き合ってやる!!「ホーリーレイジ」の攻撃力アップ効果を受けたモンスターがバトルする時、相手に与えたダメージは自分も受ける!!』

 

【貴様も相討ち狙いだと!?】

メラグと同じように、ドルベも覚悟を決めていた…悪鬼を逃さぬ為に、ドルベはその命を懸ける!

 

 

『「ノーブルデーモン」で「ソウルマリオネッター」を攻撃!!私と共に地獄に行ってもらうぞ…!ベクタぁぁァ!!』

 

【っ─!?】

ドルベの覚悟と共に、赤き槍が傀儡師に突き刺さる!!

 

 

今だベクター!!

 

【ぐっ…!!永続罠発動!「イービル1」!!バトルダメージが発生した時!モンスターの破壊を無効にし、そのダメージに関係なく、ライフは1残るッ!ぐあああっ!?】

 

『そんなカードを…!?ぐおおおっ!!』

 

「ドルベ─!!」

それはベクターの残していた虎の子の1枚…ベクターとドルベのライフは1残る…否、残ってしまった…!

 

 

【あ、危ねえ危ねえ…もう少しでお前とお手手繋いで、地獄行きだァ……残念だったなぁ…!!】

 

『くっ…ターンエンド、だ…!!』

 

【ヒヒッ…!その瞬間「ドン・サウザンドの玉座」の効果発動!俺のライフを4000に戻す!】

 

っ…ぐうううああぁぁっ…!?

 

「『ナッシュ!!』」

再び発動するドン・サウザンドの玉座…ほとんどの力を奪われたナッシュの呻き声とドルベとメラグの悲痛な叫びが城に響く…。

 

 

【これがテメェらの頑張りの結果さぁ…!ギャハハハハ!!】

 

【(まさかの時の為に伏せておいた『イービル1』を使う事になるとはな…)】

 

【(だが…これで奴らは終わりだ…!)】

とっておきを使う事になったベクター…しかし、彼の勝利の方程式は完成しようとしていた…。

 

 

 

 

【俺のターン!俺は『イービル1』の効果発動!このカードを墓地に送り、フィールドのカード1枚をどれでも破壊できる!】

 

『「っ…!?」』

 

【ケド〜…コイツの効果を使うとバトルできないんだよな〜…さ〜て、何を破壊しますかねぇ〜…ハハハハハハ…!!】

フィールドを見渡すベクター…彼が選んだのは…。

 

 

【俺が破壊するのは〜…俺の永続罠『ダメージポット』だ!!】

 

「自分のカードを!?」

思わぬ選択にメラグは動揺する…その真意は…!

 

【フヒヒ…「ダメージポット」は破壊された時、さっき無効にしたダメージを()()に与える!!無効にしたのは1300…つまり〜!それでお前らジゴク行き☆俺ブジ☆…あばよぉ!虫ケラ共──!!】

ベクターの嘲笑と共に悪魔の壺が点滅し始める…!

 

 

 

『(このままでは……此処が、私の…!!)カウンター罠発動!!「白き盾(セイント・シールド)」!このカードは罠カードによって発動する全ての効果ダメージを無効にする!よって我ら全員が受けるはずのダメージの合計、3900を無効にする!!』

 

【なにっ!?】

悪魔の壺が爆発する刹那、ドルベは自分の二つ名と同じ名前のカードを発動…爆発を一点に抑え込む!

 

 

 

『さらに!無効にしたダメージの数値分、フィールドの天使族モンスター「ラグナインフィニティ」の攻撃力をアップする!』

 

「これで攻撃力6700…!これで次のターンでベクターを倒せる!!」

 

『ああ……だが、これで()()()()、メラグ…』

 

「ドルベ…!?」

次のターンでの勝利を繋いだドルベは静かにデュエルディスクを下ろす…。

 

 

『このターンのエンドフェイズ…「白き盾」の効果によって無効にしたダメージの数値分、3900のダメージを我が身に受ける…』

 

「ドルベ…!?そんな!!」

白き盾は『諸刃の盾』…仲間を護る為に、ドルベは自身を盾にしたのだ…。

 

 

『すまない、メラグ…私には奴を倒す事ができなかった、非力な私を許してくれ……君とナッシュは私にとって掛け替えのない存在…人間として、バリアンとして…2つの世界で出逢えた事を、幸せに思う…!勝ってくれ!メラグ!!』

 

【フン…俺はこれでターンエンドだ、あばよ!!】

 

「ドルベ─!!」

それは無情の終了宣告…圧縮されていた大爆発がドルベを飲み込んだ…。

 

 

『メラグ…ナッシュ…!君達と出会えて、本当に良かった…!!』

 

 

『ドルベ……ドルベェェ!!』

 

柔らかな笑みと共に…忠義の騎士は力尽きる、城にナッシュとメラグの絶叫が木霊した…。

 

 

 

ドルベLP0

 

 

 

 

「…ドルベ…貴方の思い、確かに受け取ったわ…!!貴方の命と引き換えにくれた力、無駄にはしない!!」

ライフが尽きたドルベは消滅…その魂はメラグに取り込まれる。

そして彼の想いと共に、メラグはベクターを睨みつける!!

 

「覚悟なさい…ベクタァァ!!」

 

 

 

 

「私のターン!!ドルベの『白き盾』の効果によって『ラグナインフィニティ』の攻撃力は6700…さらに!『ソウルマリオネッター』の効果は無効になり、攻撃力は0!!」

 

【ひ、ヒィ!?】

鬼気迫るメラグの威圧にベクターは後ずさる…!

 

 

「バトルよ!!『ラグナインフィニティ』で『ソウルマリオネッター』を攻撃!!この一撃で、お前のライフを砕く─!!」

 

【っ─!!】

黒衣の巫女は全力で鎌を投擲…その刃は傀儡師に突き刺さり、フィールドは爆煙に包まれた…。

 

 

 

 

 

「ドルベ…仇は討ったわ…この勝利、貴方のおかげよ…!」

ベクターを討ち、胸を撫で下ろすメラグ…だが…!

 

 

ハハハハ…ぎゃははははは!!

 

「っ!?」

爆煙の奥からベクターの笑い声が木霊する…!

 

 

 

【そうはいかないんだな〜これが…!】

 

「馬鹿な…!なぜ!?」

煙の奥から姿を現したベクター…表示されたライフはまったく変動していない…!

 

 

【俺は攻撃された時『ドン・サウザンドの玉座』のもう一つの効果を発動していた!自分のライフを上回る攻撃力のモンスターに自分のエクシーズモンスターが攻撃された時、このカードを墓地に送りバトルを無効にし、お前のターンを終了させていたのさぁ…!!】

 

「そんな効果を…!!【まだだ!まだ効果は終わってないぜ?】っ…!?」

 

【最後に残された効果…それは!攻撃を受けたモンスターをカオス化させ!ランクアップさせる!!】

 

「な、なんですって!?」

それは永続魔法の「RUM」とも言える効果…それがベクターの奥の手だった!

 

 

【俺は「ソウルマリオネッター」でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!】

 

 

43

 

 

【現われろ!「CNo.43」!「魂魄傀儡鬼神カオス・マリオネッター」!!】

ベクターの場に禍々しさを増した地獄の傀儡師が降臨した…!

 

 

 

【さぁ…いくぜ!俺のターン!!俺は永続魔法「カースド・カオス」発動!相手モンスターの効果が発動する時、相手はライフを500払わなければ効果を発動できない!!お前のライフは残り500…『ラグナインフィニティ』の効果は発動できない!!】

 

「っ…!?」

メラグの行動を封じたベクターは傀儡鬼神の効果を解き放つ…!

 

 

【そして「カオスマリオネッター」の効果発動!カオスORUを1つ使い、相手フィールドに相手のライフを上回る攻撃力を持つモンスターがいる時!俺の場に『魂魄トークン』1体を特殊召喚する!!】

 

「なっ…!?これは!?あぐっ!?」

 

ドクン…

 

傀儡鬼神から放たれた無数の糸がメラグの体に突き刺さる…そして激痛と共に魂の一部を奪われた!

 

【「魂魄トークン」の攻撃力は相手のライフと同じになり、さらに!カオスマリオネッターのORUの数だけ攻撃できる!!】

奪われた魂はメラグの髪型の木偶人形となって鬼神に操られる…!

 

 

「う、ぐっ…でも、その攻撃力では『ラグナインフィニティ』を倒す事はできない!!」

魂の一部を奪われ、脱力感に苦しめられながらもメラグはベクターを睨む…!

 

【キヒッ…なら、試してみるか?「魂魄トークン」で「ラグナインフィニティ」を攻撃!!】

 

「なっ?!」

ベクターの支持で襲いかかる木偶人形…しかし、黒衣の巫女が鎌で返り討ちにする!

 

 

【ヒヒヒ…!「魂魄トークン」はバトルでは破壊されず、自分へのダメージも無効にする!さらにさらにィ!無効にしたダメージ分「カオスマリオネッター」の攻撃力をアップする!!まずは6200アップ!!】

 

「そんな…!?」

威圧感を増す傀儡鬼神…そして、魂魄トークンの攻撃はあと2回残されている…!

 

【さぁ…!2回目だ!!『ラグナインフィニティ』を攻撃!そして続けて3回目!!】

 

「あ、あぁ…!?」

メラグをその様子を見ている事しかできない、カオスマリオネッターの攻撃力は……186000まで上昇する…!

 

 

 

『やめろ…止めるんだベクター!!俺の命はくれてやる!だから…やめろぉぉぉ!!』

異次元の狭間にナッシュの絶叫が響く…しかし、卑劣なる悪魔は…止まらない。

 

 

 

【さぁ…覚悟はできたかなぁ?メラグちゃ〜ん!……あばよ!!『ソウルマリオネッター』で『ラグナインフィニティ』を攻撃ィ!!】

 

「あっ……アアアアアアア─!!」

 

『メラグ…メラグゥゥ!!』

鬼神から放たれた怪光線が黒衣の巫女を飲み込む……そしてメラグ…そしてナッシュの視界は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

「……凌牙」

 

『璃緒…!』

 

それは絆の奇跡か、それとも神の気まぐれか…ナッシュとメラグ……否、凌牙と璃緒は時と空間を越えた場所で向かい合う。

 

 

 

「凌牙…貴方と共に2つの運命を歩めて幸せだった…でも、もうお別れ……生きて…貴方はこれからも強く生きて…!そして忘れないで、貴方は決して独りじゃない…!」

 

『璃緒!!』

 

「…さようなら、凌牙…」

 

『璃緒ぉぉぉ!!』

 

 

それは刹那の別れ、2人の兄妹は…永遠に引き裂かれた…。

 

 

 

 

 

メラグLP0

 

 

ベクター WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これが、わたしの運命の、終焉……凌牙…父さん…母さん……もっと、一緒にいたかったなぁ…───」

 

 

 

今際の際、璃緒の脳裏に浮かんだのは…暖かな、家族団欒の光景だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【これで…ドルベとメラグの力は俺のモンだ…!力が漲る…残り4匹…!!】

ドルベとメラグの魂を取り込むベクター…その力がさらに上昇、禍々しいオーラに包まれる!

 

 

ベクター、ギラグのもとへ急げ!良からぬ事が起こったぞ…!

 

【なにぃ…?】

それと同じくして…もう一つの戦いにも決着がつこうとしていた…!

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト アリト対ギラグ

 

 

 

『チッ…しぶとい奴だぜ…!』

 

『はぁ…はぁ…!』

 

「アリト…!!」

 

ギラグを救う為に異次元でデュエルを繰り広げていたアリトは追い詰められていた。

ギラグは『七皇の剣』で切り札たる『CNo.106溶岩掌ジャイアント・ハンドレット』を召喚…さらにドン・サウザンドの力の込められたナンバーズ『No.58炎圧鬼バーナー・バイザー』を召喚・装備する事でダイレクトアタックとバーンダメージによって、アリトの残りライフは僅か200となっていた…。

 

しかし、それでも…アリトの闘志は揺らがない、掛け替えのない友の為にアリトは魂を燃やす…!

 

 

 

『さぁ…何を企んでるのかは知らないが…バリアンの力を失ったお前に何ができる!!』

 

『…いくぜ、ギラグ…オレは!獣族となった「BKビック・バンテージ」2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚…!!』

それは友を解放する為の一手…アリトのフィールドで光が爆発する!

 

 

64

 

 

『現われろ!「No.64」!「古狸三太夫」!!』

 

『それは…!?俺の遺跡のナンバーズ!?』

アリトはついに遺跡のナンバーズ、赤の鎧を纏う狸武者を呼び出す…そして…!

 

 

キィン─!

 

 

《ポンポンポ〜ン!おいらの出番だポン!!》

 

「ポン太!!」

 

『な、なんだ?この狸は?』

ナンバーズの召喚に合わせ、ナンバーズの精霊にして生前の喜楽の相棒・ポン太が姿を現す!

 

 

《ナンバーズの精霊ポン太だポン!》

 

『そうか、お前が…!ギラグを正気に戻す!力を貸してくれ!!』

 

《任せるだポン!!》

即席の異種族タッグがギラグを解放する為に立ち向かう!

 

 

 

 

『いくぜ!「古狸三太夫」の効果発動!ORUを1つ使い「影武者狸トークン」を特殊召喚!コイツの攻撃力はフィールド上の一番攻撃力の高いモンスターと同じになる!よって!攻撃力2600となる!』

三太夫が印を結んで狸トークンを召喚…そのトークンはジャイアントハンドレットへと変化する!

 

 

『バトルだ!「影武者狸」で「ジャイアントハンドレット」を攻撃!!』

 

『血迷ったか!?攻撃力は同じでも、ナンバーズはナンバーズでしか破壊されねぇ!!』

ぶつかり合う2体の巨腕…しかし、当然のように影武者変化は砕け散る…だが、それがアリトの狙いだった…!

 

 

 

『その瞬間!カウンター罠「ラスト・カウンター」発動!自分のモンスターが戦闘で破壊された時、破壊した相手モンスターの攻撃力を0にして、さらに「古狸三太夫」な攻撃力をその数値分アップする!!攻撃力3600だぁぁ!!』

 

『なんだと?!』

 

「や、やった…遺跡のナンバーズでオーバーハンドレットナンバーズを破壊すれば…ギラグの呪いは解ける!!」

アリトのコンボを見た遊馬が声を上げる…アリトはこの瞬間を狙っていたのだ!

 

 

『いっけぇぇ!「古狸三太夫」!「ジャイアントハンドレット」を攻撃!!』

 

《さぁ、喜楽の殿様…行くだポン─!!》

アリトの熱い魂とポン太の思いを乗せた灼熱の薙刀が巨腕を両断する!!

 

 

『思い出せ!ギラグ!お前の本当の記憶を─!!』

 

『ぐ、ぐああああああ─!?(この、記憶は…!?)』

攻撃の余波で吹き飛ばされるギラグ…その刹那、彼の本当の記憶が蘇った…。

 

 

 

 

………

 

 

 

『お、お前達…どうして…!?』

 

そこは火に包まれた城内…戦国武将だった喜楽は謀反を起こされ、追い詰められていた…その原因は…。

 

 

【お前の運命は…我が書き換えられる…仲間に裏切られ、無残な最後を遂げ…怒りと悲しみを抱えてバリアン世界へ堕ちるのだ…喜楽荘八…!】

 

『なんだと…!?』

喜楽の目の前に現れたのは黒衣のローブを纏うドン・サウザンドの分身…この謀反はドン・サウザンドが引き起こしたのだ…!

 

 

【我が復活する為の…チカラとなれ!!】

 

『ガッ…!?ぐああああああ…!?』

ドン・サウザンドの分身は喜楽に『No.106』を突き刺す…そして彼の運命は書き換えられた…。

 

 

 

………

 

 

 

『うぅ…俺は…?』

 

「ギラグ!!」

僅かな間失神していたギラグは人間体となって目を覚ます、アリトの奮闘によってドン・サウザンドの呪いが解けたのだ…!

 

 

『そ、そうだ…!俺はベクターとドン・サウザンドに…っ…!?アリト!?』

 

『…ハァ…ドン・サウザンドの呪いから、お前を開放できたみたいだな…手間掛けさせやがって…!』

ギラグが呪縛から開放されたのを見たアリトはため息を吐きながら膝をつく…その身体は満身創痍だった…。

 

 

『す、すまねぇアリト!俺のせいで─!!』

 

『来るなギラグ!!…まだ()()()()()()()()()()()!!』

 

『「「えっ!?」」』

満身創痍の友を見て駆け寄ろうとするギラグ…それを制止したのはアリト自身だった。

 

 

『「ラストカウンター」の効果には続きがある、攻撃力を0にしたモンスターを破壊したバトルの終わりに……俺は、その攻撃力分のダメージを受ける』

 

『ば、馬鹿な!?それじゃあお前─!?』

アリトはギラグを救う為に命を賭けた…その結果、自分が命を落とす事になろうとも…。

 

 

『ギラグ…お前はオレの1番のダチだからよ…やっと友達らしい事ができたぜ……遊馬、アストラル…そして小鳥…すまねぇ!オレの勝利を信じてくれたのによぉ…だが、お前達にはドン・サウザンドを倒す役目が残ってる…!余計な手傷を負わせる訳にはいかねぇんだ……!』

 

「あ、アリト!!」

…アリトは決して器用な男ではない、それでも彼は解っていた…ドン・サウザンドを倒すのは遊馬達なのだと…彼が世界に残された『最後の希望』なのだと…!

 

 

『遊馬、お前と会えて…アツかったぜ!!』

 

世界の命運を遊馬へと託し、熱き拳闘士はその命を散らす…。

 

 

『「アリトォォォォ!!」』

 

 

次元の狭間に遊馬とギラグの絶叫が木霊した…。

 

 

 

 

アリト LP0

 

ギラグ WIN…

 

 

 

 

 

「…なんで、だよ…アリト…!やっと仲間になれたと、思ったのに…!」

 

『俺が…俺が…アリトを…!すまねぇ…すまねぇアリト!!』

悲しみに包まれる次元の狭間…ギラグは涙を溢しながらアリトの魂を抱え込む…。

 

 

『ゆ、許さねぇ…許さねぇ!!ドン・サウザンド!!ベクタァァァ!!』

自分達の運命を弄んだドン・サウザンドへと怒りの咆哮を上げるギラグ…その時だった…!

 

 

 

【ふはははは…ぎゃははははハハハ!!!】

 

 

「っ!?」

突然、次元の狭間に聞き覚えのある笑い声が響く!

 

 

【ギラグ!遊馬ァァァ!!】

 

 

ギィン─!!

 

 

『っ!?危ねぇ!遊馬!!』

 

「だっ!?」

 

 

グサッ…!

 

それは一瞬の出来事だった、次元に開いた黒い穴から飛び出した無数の糸…自分達に向かって襲い掛かる危険を見たギラグは…咄嗟に遊馬を突き飛ばし、彼を庇ったのだ…!

 

 

 

「ぎ、ギラグ!!」

 

【チッ…邪魔しやがって…今のうちに纏めて魂をぶん取っちまうつもりだったのによぉ…!!】

 

(ベクター!!)

ギラグの急所に突き刺さる無数の糸…それは「ソウルマリオネッター」を従えたベクターの仕業だった…!

 

 

「ぎ、ギラグ!なんでオレを…!?」

 

『う、ぐ…俺の1番のダチが…命懸けで、お前らを守った…!だったら、その意志は…俺が…!!あとは、頼む…!』

致命傷を負ったギラグは遊馬に全てを託した…自分の親友が選んだように、希望を託して…。 

 

 

《喜楽の殿様…!!》

 

『ポン太…』

 

《もう離れないポン!殿様を1人にはしないポン!!》

 

『……すまねぇ、ポン太…』

ナンバーズから飛び出したポン太がギラグの胸に飛び込む…ドン・サウザンドの呪いが解けた事で、2人の絆は再び結ばれたのだ…。

 

 

【お涙頂戴はいらねぇ…!さっさと来いやァ!!】

 

ギィン─!!

 

「ギラグ!!」

 

「アリト!ポン太!!」

ベクターはギラグとアリト、そしてポン太の魂を喰らう…高潔なる主従の物語は終幕を迎えた…。

 

 

 

「て、テメェ…!ベクタァァァァ!!」

 

【ぎゃははは…!力が漲るぜ…なんせ、メラグとドルベの魂も頂いたからなぁ!!】

 

「そんな…!?そんなの嘘だ!!」

ベクターへ怒りを叫ぶ遊馬…しかし、ベクターの思わぬ言葉に動揺する…!

 

 

【ああ、メラ…璃緒チャンとは昔のお仲間だったなぁ!】

 

「ひどい…!!」

 

「ベクター…!!」

メラグの事を嘲笑うベクター…小鳥は思わず顔を覆い、遊馬とアストラルはベクターを睨みつける…!!

 

 

【ふふふ…七皇の力を全て取り込み、お前達を倒して『ヌメロンコード』の力で俺は全能の神に……】

 

 

───!!

 

 

【…チッ、テメェらの相手はナッシュを始末してからだ…!楽しみに待ってやがれ!!】

 

「ま、待ちやがれ!ベクター!!」

ベクターは何かを感じ取り、バリアン世界へと舞い戻る…その理由は……

 

 

 

 

 

 

ベクター…許さねぇ…!許さねぇぇ!!うおおァ"ァ"ァ"─!!

 

怒りによって力を増幅させたナッシュが呪縛を破り、バリアン世界へと向かい始めたからだった…!

 

 

 

 

 

 

 

「待ちやがれ、ベクター!!ちくしょう…ちくしょおおおおお!!」

 

異次元の狭間に遊馬の慟哭が響く…そして、遥かなる場所で最後の決戦が始まろうとしていた…。



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銀河眼(ギャラクシーアイズ)超決戦!─月に眠る希望の鍵─

こんにちは!S,Kです!

ついに月面で対峙する二人のドラゴン使い、決戦を制し…全能の力の「鍵」を手に入れるのは…!


それでは、最新話をどうぞ!


《機内気圧異常ナシ…月面まで1フォトンマイルでアリマス!》

 

「あれが…『銀河眼(ギャラクシー・アイズ)』誕生の地か…!」

 

異次元でアリトやメラグが激闘を繰り広げているのと同じ時、アークライト兄弟の時間稼ぎによって地球から飛び出したカイトはギャラクシーアイズ誕生の地にして『ヌメロン・コード』の鍵が眠る場所…月へと辿り着こうとしていた。

 

 

キィン─!

 

 

「っ…!?ギャラクシーアイズ…!これは…!?」

月面まで残り僅かに迫った時、カイトの持つ『銀河眼の光子竜』が光を放つ…まるで、何かを伝えるかのように…。

 

 

ズン! ビビーッ!ビビーッ!

 

 

「な、なんだ!?」

 

《い、異常なエネルギー波を確認!?計器が─!?》

突然、カイトの乗るスペースシャトルが突然コントロールを失い暴走、月面へと引き寄せられるように墜落する!

 

 

ゴゴゴ…ズズーン!!

 

 

「なっ─!?」

さらに月面のクレーターから巨大な石版が出現…しかもその場所はスペースシャトルの墜落軌道にあり…!

 

 

 

ズドオォォン!!

 

 

スペースシャトルは石版に衝突し、爆発……宇宙の藻屑と消えた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《オービタル・宇宙服(アストロ・スーツ)モード!》

 

「間一髪か…!」

しかし、カイトは無事だった。

オービタルが宇宙服となる事で脱出していたのだ。

 

 

「何なんだ…これは…!?」

ジェットパックの推進によって月面を踏みしめるカイト…彼が目にしたのは、クレーターを囲むように出現した無数の石版だった。

そこにはドラゴンの絵や様々な紋様が描かれている…。

 

 

 

 

《ッ…カイト様!地球より高エネルギー物体を確認…!この場所へ向かって来ます!!》

 

キィン─!

 

オービタルの警告の直後、カイトの目の前に閃光が落下する!

 

 

「…来たか、ミザエル」

 

『ああ、聞こえたのさ…お前のギャラクシーアイズの咆哮が…!』

光の中から1人の青年が現れる…それは人間体のミザエルだった、バリアン世界の人間である彼は宇宙服を必要とせず、月面に立っていた。

 

 

『此処が…トロンの息子達の言っていた「ドラゴン伝説」の地か』

 

「…ⅤとⅢの事か?」

 

『誇り高き兄弟だった、奴らは貴様と遊馬が旅立つ時間を稼ぐ為…自ら犠牲となった』

 

「…そうか」

ミザエルはⅤとⅢの最期をカイトに伝える…希望を繋ぐ為に命を懸けた誇り高き最期を…。

 

…この戦いの中でもっとも成長したバリアンはミザエルだろう。

最初は人間を傲慢に見下し、その強さを認めようとしなかったミザエル…しかし、カイトやⅤ達との戦いの中で…彼は人間の強さを知り、敬意を表せるようになっていた…。

 

 

 

「……ミザエル、此処こそが『ヌメロン・コード』の()が眠る場所だ」

 

『「ヌメロンコード」の鍵…!』

ⅤとⅢの死を悼むように瞑目していたカイトがミザエルへと語りかける…『ヌメロン・コード』の()()を…。

 

 

「神のカード『ヌメロンコード』はその()()だけでは機能しない、それを機能させるには特殊な『鍵』が必要なのだ…その元となるのが、2体の『銀河眼』…オレはジンロンと戦った遺跡で『ヌメロンコード』誕生の伝説が記された石碑を見つけた…!」

 

 

 

………

 

 

 

《カイト、やはり此処に辿り着いたか…》

 

「ジンロン…!」

そこはジンロンと戦った遺跡のほど近くの洞窟の中…ドラゴンの姿が記された石碑を見つけたカイトの前にナンバーズから飛び出したジンロンが現れた…!

 

 

《此処に描かれておるのはドラゴンによる『ヌメロンコード』誕生の秘密…ドラゴンとは、人間より遥かに長い寿命を持ち、万物の知恵を持った存在…それ故に、人間達はドラゴンを敬い…時には畏怖し、共に生きてきた…》

ジンロンは語り始める、この世界の…宇宙創世の神話を…。

 

 

 

 

──世界の始まりには1体のドラゴンがいた…しかし、自分しか存在しない孤独から、ドラゴンは全ての力を使い、この世界を創造した──

 

 

 

──しかし、力を使い果たしたドラゴンはその命を終えようとしていた…ドラゴンは自身の死を憂いた…自身が創り上げた世界の行く末を見守る事ができない事を…──

 

 

 

──そして、ドラゴンは最後の力を使い、一粒の『涙』を零した…ドラゴンの『想い』と『真実』が込められたその涙は、果てしない宇宙を彷徨い…やがてある星に辿り着いた、その星が「地球」…その衝突によって地球は水の星になり、衝撃で「月」が生まれた──

 

 

 

 

─そして『ヌメロンコード』は自身を地球に、そして『鍵』となる部分を月に置いた…さらに、今の危機を見越し、ドラゴンは『No.』の力を借り、その存在を秘めたるものにした…全ての過去・未来を変える力に『ドラゴンの呪い』をかけて…─

 

 

 

それは余りにも壮大な創世神話…世界の始まりの真実だった。

 

 

 

………

 

 

 

「『光と時の龍、生まれし地にて相見える刻…銀河の瞳、真に見開きて…新たな世界の扉を開く』…石碑にはそう書かれていた」

 

『光と時の龍…「光子竜(フォトン・ドラゴン)」そして「時空竜(タキオン・ドラゴン)」の事か』

 

「その2体がこの場所で戦い、その勝利者こそが『ヌメロンコード』の呪いを解き…鍵を手に入れる事ができる」

 

『その伝説が真実だと言うのなら、2体のドラゴンはバリアンの力で創られたカード…!つまり、バリアンこそが『ヌメロンコード』の真の所有者だ!!』

『ヌメロンコード』の伝説を聞いたミザエルはカイトへ語勢を強める…。

カイトの使う「銀河眼の光子竜」やゴーシュやドロワも使った「フォトン」カードはDr.フェイカーがバリアンとの契約によって得た科学力によって作り出したカード…つまり、ミザエルの言葉は正論と言える…だが。

 

 

「…確かに、()()()()()()()な…!!」

 

『なに?どういう意味だ…?』

 

「(そうだ…石碑に示されていた()()1()()()()()()()…あれが…)」

 

カイトは石碑に描かれていた絵を思い出す、石碑には『ヌメロンコード』を生み出した「ドラゴン」、そして「No.46神影龍ドラッグ・ルーオン」「No.107銀河眼の時空竜」に似た2体のドラゴン…そして「銀河眼の光子竜」に似た、()()()()()()「ドラゴン」の絵が描かれていたのだ…。

 

 

 

「ミザエル、それは戦ってみれば分かる事だ!!」

 

『面白い…!ならば、今こそどちらが「最強のドラゴン使い」なのか決める時だ…!バリアルフォーゼ!!

 

「ああ…その通りだ!ミザエル!!フォトンチェンジ!!

月面にて2人のドラゴン使いが対峙する、ドラゴン使いとしての誇り…そして『ヌメロンコード』の鍵を賭けた決闘が幕を開ける!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

デュエルダイジェスト カイト対ミザエル

 

 

 

 

「闇に輝く銀河よ!希望の光になりて…我が下僕に宿れ!光の化身、此処に降臨!!現れろ!『銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)』!!」

 

『現れたな…!』

先攻を取ったカイトは速攻で光子竜を召喚する!

 

「オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

『天城カイト…この地にして、この宿敵…!相手にとって不足なし!ゆくぞ!!』

最大・最強の好敵手を前に…ミザエルは闘志を開放する!

 

 

107

 

 

『顕現せよ!「CNo.107」!我が魂に宿りし粒子…いま光を超えた力となりて、時を逆巻け!!「|超銀河眼の時空龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン》」─!!』

 

「いきなり『超時空龍』だと!?」

続くミザエルのターン、『RUM-七皇の剣』を引き当てたミザエルの場に黄金の巨龍が顕現する!

 

 

「(『超時空龍』…どんな効果があろうが、オレの伏せカードは速攻魔法『銀河衝撃(ギャラクシー・ショック)』…自分のギャラクシーアイズの攻撃力が相手より低い時、攻撃力を1500アップさせる…これがあれば…!)」

 

『いくぞカイト!!「超時空龍」の効果発動!!カオスORUを1つ使い、フィールドに存在する自身以外のカード効果を無効にし、全てをこのターン最初の状態に戻す!!タイム・タイラント!!』

 

「っ!?」

超時空龍が咆哮を轟かせる…それと共にフィールドの時間が逆行…光子竜は輝きを失い、ミザエルの使った「七皇の剣」が手札に舞い戻る!

 

 

『そして…このターン、フィールド上で発動する効果は私が許可したモノ以外発動できない!!』

 

「くっ…あのモンスターは、フィールドの時空を支配すると言うのか…!?」

カイトは恐るべき効果を持つ超時空龍に戦慄する…!

 

 

 

『バトルだ!「超時空龍」で「光子竜」を攻撃!!』

 

《カイト様!!》

 

「分かっている!オレは手札の『銀河暴竜(ギャラクシー・ティラノ)』の効果発動!!このカードは自分のギャラクシーアイズが攻撃される時に特殊召喚でき、さらに!このカードを2体分のエクシーズ素材としてフィールドの『光子竜』とエクシーズ召喚できる!!」

 

『こ、このタイミングでエクシーズ召喚だと!?』

 

「『超時空龍』の効果はオレの手札までは及ばぬはず!オレはレベル8の『光子竜』と2体分となった『銀河暴竜』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

超時空龍の効果の僅かな隙を突いて現れた白き恐竜が光子竜と共にカイトの切り札を呼び覚ます!

 

 

逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりて、その姿を現すがいい!!降臨せよ!我が魂!!『|超銀河眼の光子龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》』!!

光の大爆発と共にカイトとハルトの魂の切り札、紅き巨龍が咆哮を轟かせる!

 

 

『現れたな…「超光子龍」…!』

 

「…オービタル、ここから先…このデュエルをアイツに見せるぞ!」

 

《か、カシコマリ!》

切り札を呼び出したカイト…彼はオービタルに命じて通信を開く、その相手は……。

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「……誰も、誰も救えないじゃねぇかよ…!せっかくあいつらと、仲間になれるって…信じてたのに…!!」

 

「遊馬…」

 

(………)

 

同じ頃、遊馬は次元の狭間で悲しみに暮れていた…アリトが命を懸けてギラグをドン・サウザンドの呪いから開放した矢先、ドルベとメラグを降し、その魂を吸収したベクターが遊馬達を急襲…ギラグが殺され、アリトの魂と共にベクターに取り込まれてしまったのだ…。

 

『デュエルをすればみんな仲間』と言う信条を持つ遊馬…目の前での仲間の死は、彼にとってあまりにも辛すぎた…。

 

 

「アリト…ギラグ…メラグ…ドルベ……誰も、誰も助けられなかった!!誰も!!うああ…ああ"あ"あ"あ"!!」

次元の狭間に遊馬の慟哭が木霊する、遊馬の心は折れかけていた…。

 

 

「もう、ダメだ……ちくしょう……!!遊海…父ちゃん…オレが戦う意味って……何だったんだよ…!!」

 

(遊馬……っ?これは…!遊馬、見るんだ…!)

 

「えっ…?」

友の命を救えず、泣き続ける遊馬…そんな時、アストラルがある異変に気付く…。

 

 

(君が諦めようとしているこの時、まだ…新たな光を探し求める者がいる!!)

 

「これ…月、か?あの光は…!」

遊馬達の前に一方的に映し出される映像、それは月を映した映像…その中で月面に強い光が輝いていた…!

 

(月面のあの光、ギャラクシーアイズ同士の光だ…!)

 

「カイト…!?」

少しずつズームしていく映像…そこに月面で繰り広げられている決戦の様子が映し出された…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

「『銀河暴竜』の効果でエクシーズ召喚された『超光子龍』の効果はこのターンの間、無効になる…だが!バトルでは破壊されない!!さらに『超光子龍』と『超時空龍』の攻撃力は互角だ!!」

 

『笑わせるな!「超光子龍」など敵ではない!!「超時空龍」!アルティメット・タキオン・スパイラル!!』

 

「迎え撃て!アルティメット・フォトン・ストリーム!!」

互いのエースを呼び出したミザエルとカイト…2体のギャラクシーアイズの金色と真紅の光線が月面で衝突する!

 

 

『この瞬間!私は速攻魔法「銀河衝撃(ギャラクシー・ショック)」を発動!!このカードは「超時空龍」の攻撃力を1500アップさせる!さらに!「超光子龍」の受けている効果は全て無効になる!!』

 

「なにっ!?ぐああああっ…!?」

それは奇しくもカイトが使おうとしたカードと同じもの…勢いを増した金色の光線によって超光子龍は粉砕される!!

 

『私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

 

「ぐっ…うぅ…!?(視界、が…!)」

超時空龍に吹き飛ばされたカイトは何とか立ち上がる…しかし、その視界は僅かにブレ…焦点が合わなくなっていた…。

 

 

《……カイト様、大丈夫でアリマスカ?》

 

「何がだ…」

カイトのデータをモニターしているオービタル…彼はカイトの異変に気付き、話し掛ける。

 

 

 

《カイト様、覚えているでアリマスか?オイラとカイト様はもうかれこれ6年と151日5時間30秒の付き合いになるでアリマス…ハルト様の子守りロボットとして造られたオイラは…昼も夜も、一睡もする事なくハルト様の子守りを申し付けられ…壊れても壊れても、不死鳥の如く蘇り…そして挙げ句の果てには『ナンバーズハンター』仕様に改造されて……楽しくも苦しい事ばっかりでアリマシた!》

 

「……貴様、何が言いたい?こんな時に愚痴を溢すのか?!」

 

《あぁ、いや、そうではなく……》

それは一見すればオービタルからカイトへの愚痴だった…カイトに造られ、その姿を見続けたオービタル…彼だからこそ、解る事もある!

 

 

《オイラはカイト様とハルト様の事ならば、何でも分かるって事でアリマス!!…カイト様、オイラが()()()に気付いていないとでも?……ハートランドとデュエルした時にカイト様の眼は…!》

 

「っ…!?気付いていたのか…」

カイトはMr.ハートランドとのデュエルの際、「バリアンズフィールド」による過酷なデュエルを強いられた…その時に眼にダメージを受けていたのだ。

 

 

《白波様の治癒魔法で影響は少ないとはいえ…水臭いでアリマス!オイラはカイト様の相棒…少しは頼りにしてください!カイト様の為ならば…命は惜しくないでアリマス!!》

 

「……当たり前だ、オレとハルトの為ならば命を投げ出す…それがお前の『存在意義』だ」

 

《ヒドい〜!でも、それでこそカイト様!オイラも尽くし甲斐があるでアリマス!》

冷たく…しかし暖かい信頼の言葉をオービタルに伝えるカイト…オービタルは張り切ってその言葉に応える!

 

 

《ではでは…!小型モーメント全力稼動!アヤカ殿から頂いた「精霊使い」「イリアステル・ライフ・サポート・システム」のデータを擬似再現…魔法カード『治療の神 ディアン・ケト』の効果発動でアリマス!!》

 

キィン─!

 

「…これは…」

宇宙服の内部に癒やしの力が満ちていく…第3の遺跡捜索の際、異次元飛行船で待機していたオービタルとアヤカ…その際にオービタルはアヤカから人体回復システムの強化を受けていた…その効果によってカイトの身体が治癒…視界が回復する!

 

 

「よくやった…だが、これ以上の手出しは不要だ!」

 

《カシコマリでアリマス!カイト様…存分に戦って欲しいでアリマス!!》

 

「お前に言われずとも…わかっている!」

万全状態に戻ったカイトは今の状況を整理する…。

 

 

 

「(ミザエルが使った「銀河衝撃」…奴もオレと同じカードを…いいや、同じ『銀河眼』使いとしてオレと奴のデッキに入っている魔法・罠カードは()()()()…奴を倒すには、やはり『伝説のドラゴン』を…)」

ギャラクシーアイズ使いとして使う魔法・罠カードが似通っていると予想するカイト…。

そして…この状況を打破するには石碑に刻まれた4体目のドラゴン…おそらく、新たな進化を遂げた『光子竜』を手に入れるしかないと直感する…!

 

 

「(オレの信じている事が本当なら、きっと……オレを信じて散っていったⅤ、そしてⅢ…そして、オレが未来を託した遊馬とアストラルの為に…!!)」

カイトは思い返す…倒れてしまった自分と遊馬を守る為に戦ったデュエリスト達の姿を…希望を託し、旅立つ時間を稼いだⅤとⅢを…そして七皇を救う為にバリアン世界へと向かった遊馬の姿を…。

希望を抱き戦い続けるデュエリスト達…その希望の力は奇跡を起こす!

 

 

「此処には必ず…オレ達の『希望』があるはず!!」

 

 

キィィン──!!

 

『な、なんだ?!』

それはカイトの魂の叫び、宇宙に響くその声に…希望を抱く『魂』に呼応するようにカイト達を囲む石碑が共鳴する、そして…。

 

キィィン!!

 

突き上げられたカイトの右腕に希望の光が宿った!

 

 

「オレのターン…!ドロー!!速攻魔法『銀河再誕(リ・ギャラクシー)』を発動!このカードは墓地の『光子竜』の装備カードとなり、攻撃力を半分にする事で特殊召喚できる!」

カイトの願いに応えるように光子竜が復活する!

 

 

『血迷ったか?攻撃力の下がった「光子竜」など敵ではない!!』

 

「まだだ!『銀河再誕』は『光子竜』と同じレベルのエクシーズ素材にする事ができる!!オレはレベル8の『銀河眼の光子竜』と『銀河再誕』でオーバーレイ!!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」

光子竜がその身を光に変えて、希望の銀河へと飛び込む…そしてカイトの手元に青き聖剣が顕現する!

 

 

これこそがオレの希望!これこそが…オレ達の最後の希望!!現われろ!!銀河究極竜!『No.62』─!!

 

 

『な、ナンバーズだと!?!?』

カイトは無重力の中を跳躍…月面に聖剣を突き立て、そこから希望の光が溢れ出す!

 

62

 

『宇宙に彷徨う光と闇…その狭間に眠りし、哀しきドラゴン達よ!その力を集わせ、真実の扉を開け!!「|銀河眼の光子竜皇《ギャラクシーアイズ・プライム・フォトン・ドラゴン》」!!』

希望の光に照らされた光子竜の身体が罅割れ、装甲が砕け散る…そして希望の光をその身に宿す青き竜が降臨する。

 

…その名は「銀河眼の光子竜皇」…カイトの希望の力により再誕した、伝説の『光の竜』である!

 

 

 

 

『な、なんだ!?このドラゴンは…!!』

 

「ナンバーズは人の希望を写す『鏡』…今ここに『銀河眼の光子竜』はオレの手によってアストラル世界の力を得た『No.』となって生まれ変わった!!」

 

『カイトのギャラクシーアイズが、ナンバーズだと!?』

 

「これが、オレのナンバーズ!!『|銀河眼の光子竜皇《ギャラクシーアイズ・プライム・フォトン・ドラゴン》』だ!!」

新たなナンバーズの誕生に驚愕するミザエルに新たな希望を従えるカイト…二人は知らない事だが、バリアン世界とバリアンの神ドン・サウザンドは、大昔にアストラル世界から追放されたカオスから生まれた存在である…つまり、元を辿ればバリアンの力の『原点』はアストラル世界にある…。

 

ギャラクシーアイズが希望の力によって、バリアン世界の力からアストラル世界の力に覚醒するのは…自然な事だったのだ。

 

 

「ミザエル!ここでオレ達の因縁に決着をつける!!どちらが『最強のドラゴン使い』か……いくぞ!!『光子竜皇』の効果発動!1ターンに1度、フィールドに存在する全てのモンスターのランクを1つ上げる!」

 

『なんだと…!?「超時空龍」をランクアップさせてなんの意味が…!?』

光子竜皇から放たれた波動が自身と超時空龍をランクアップさせる…!

 

 

「バトルだ!!『光子竜皇』で『超時空龍』を攻撃!!」

 

『なっ!?攻撃力の高い「超時空龍」を!?』

光子龍皇の攻撃力は4000、超時空龍の4500には僅かに届かない…しかし、希望の竜にはさらなる効果があった!

 

 

「この瞬間、『光子竜皇』の効果発動!このカードがバトルする時!このカードの攻撃力はフィールドに存在するモンスターのランクの合計×200アップする!フィールド上のランクの合計は19…攻撃力は3800アップし、7800となる!!」

 

『なんだと!?』

 

受けてみろ!エタニティ・フォトン・ストリィィム!!

 

『ぐっ…!?うおおぁぁぁ!!』

それはまさに希望の一撃…光子竜皇のエネルギーコアがスパーク、青の閃光が絶望の巨龍を粉砕する!!

 

 

《やった…!やったでアリマスよ!カイト様!!オボミさん…!オイラ、月で立派に戦っているでアリマスよ─!!》

初めてミザエルに大ダメージを与えたカイト…その様子に感極まったオービタルは赤紫色に染まった地球で待つ、想い人の事を考えた…。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「あ〜もう!!どうしたらいいのよ!?ネットは繋がらないし!爆発音もするし!?世界で何が起こってるのよ─!?」

ハートランドシティの九十九家…そこで明里は砂嵐のモニターとコンソールの前で頭を抱えていた…。

人間界に残ったナンバーズクラブの子ども達から、遊馬が異次元に旅立った事を聞いた明里は少しでも情報を集めようとしていた…しかし、世界的なネット障害によって何も出来ずにいたのだった。

 

 

キュピーン♡

 

 

《ピピッ…ムクっ!!貴方の声、聞こえた!!》

 

「ちょっ!?オボミ!!いきなり何するのよぉ!?」

 

そんな中、明里が苛立ち紛れに蹴り飛ばしてシャットダウンしていた九十九家付きのオボット・オボミが再起動…コンソールを凄まじい勢いで叩き始めた!

 

 

《オボミ、感じた!》

 

「何を?」

 

《愛!!》

 

「はぁっ!?!?」

 

《彼、戦ってる!だから…見せてあげたい!!》

 

「ちょっ…彼って誰!?というかネットは繋がらないわよ─!?」

オボミはフェイスディスプレイの目をハートマークにしながら、ひたすらにコンソールを叩き続ける…忘れてはならないが、オボミは強盗団によって改造された事で凄まじいスペックを持つオボットである。

さらに遊海とオービタルの事件以降、自我を持つロボットであるオービタルと何回かデートしていたりする…そこに強い衝撃を受けた事で、彼女は今『自我』を獲得する奇跡を起こしたのだ!

 

 

《愛の力、偉大!!》

 

ピピッ…キィン!

 

嘘ぉっ!?

オボミは自身の製造元であるハートランドの工場から、その大元であるDr.フェイカーの管理する衛星にハッキング……システムを再起動する事に成功する、それはまさに『愛の奇跡』に他ならない…!

 

 

「えっ…!?何これ!?」

 

《貴方…♡》

そして明里のモニターに月面で戦うカイトとミザエルの姿を映し出された…!

 

 

 

 

「父さん!!兄さんが…兄さんが戦ってるの!?」

 

「ハルト…」

同じ頃、ハートランドシティ・ハートの塔のDr.フェイカーのラボ…そこにカイトが戦っている知らせを聞いたハルトが駆け込んでくる…。

 

「大丈夫だ、ハルト……きっと…!」

 

「兄さん…」

フェイカーとハルトは…遥かな場所で戦うカイトを祈る思いで見つめた…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

『ぐっ…カイト…!確かに、お前は新たなナンバーズを呼び出したかも、しれんが…勝負はこれからだ!!』

カイトの希望の一撃によって残りライフ700まで追い詰められたミザエル…しかし、その闘志はまだ燃え尽きてはいなかった!

 

『罠カード「時空混沌渦(タキオン・カオス・ホール)」発動!このカードは自分フィールドの「タキオン・ドラゴン」が戦闘破壊された時、相手フィールドのカードを全て除外する!!』

 

「なんだと…!?『光子竜皇』─!!」

ミザエルのフィールドに次元の裂け目が発生…光子竜皇は次元の狭間に吸い込まれてしまった…。

 

 

「くっ…オレはカードを1枚伏せ、ターンエンドだ…!」

 

《カイト様…!貴方はなんとしてでも、お守りするでアリマス…!!》

希望のドラゴンを失ったカイト…再び、ミザエルの猛攻が迫る!

 

 

 

 

『私のターン!この瞬間、墓地の「時空混沌渦」のさらなる効果発動!自分のドローをスキップし、このカードを除外する事で墓地の「タキオン・ドラゴン」を特殊召喚できる!蘇れ!「超時空龍」!!』

 

「っ!!」

ミザエルは超時空龍を復活させる…カイトの残りライフは2500、この攻撃が通れば…カイトの敗北が決まってしまう!

 

 

『貴様のフィールドはガラ空き…これで勝負を決める!!「超時空龍」でダイレクトアタック!!アルティメット・タキオン・スパイラル!!』

 

《か、カイト様!!》

 

「狼狽えるなオービタル!!罠カード発動!『双龍降臨(ダブル・ドラゴン・ディセント)』!相手のドラゴン族エクシーズモンスターがダイレクトアタックしてきた時、エクストラデッキからドラゴン族エクシーズモンスター1体を特殊召喚する!!」

それはカイトの起死回生の一手…その時、カイトの脳裏に声が響く!

 

 

《カイト、此処は儂に任せろ…奴にはどうしても伝えねばならぬ事がある!!》

 

「ジンロン…よかろう、お前を信じる!現れろ!『No.46』!『神影龍ドラッグ・ルーオン』!!」

 

46

 

『なっ…そのドラゴンは、私の遺跡の…!?』

脳裏に響くナンバーズの精霊・ジンロンの声…カイトはその言葉に従い、ミザエルの遺跡のナンバーズ…白き龍神を呼び出した!

 

 

《久しぶりじゃなぁ、ミザエル…儂はまだ、お主に()()を伝えておらん!…見るのじゃ、お前に起きた真実を─!》

 

「『双龍降臨』のさらなる効果発動!このカードの効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効になり、バトルする相手モンスターと同じ攻撃力になる!!」

 

『なにぃ!?』

 

「迎え撃て!『ドラッグルーオン』!火炎神撃!!」

超時空龍と同等の力を得たドラッグルーオンの神炎と金色の破壊光線が衝突…そして互いに砕け散る…。

 

 

…「オーバーハンドレットナンバーズ」を「遺跡のナンバーズ」で破壊する事で、ドン・サウザンドの『呪い』は解ける…ナンバーズの共鳴によってカイトはミザエルの真実を垣間見る!

 

 

 

 

Sideミザエル

 

 

 

《あの時…天変地異に対する人々の恨みが「呪い」となってドラゴンに向いた時、お前は儂を守ろうとした…自分の命を懸けてまで……その気高い精神に、儂は咽び泣いた…!》

ミザエルの精神世界、そこにジンロンの語りが響く…。

 

ドラゴンと共に国を守り続けていた英雄ミザエル…しかしある時、国に天変地異が起き…その災いがドラゴンによるものと濡衣を着せられた。

 

ミザエルはドラゴンを守る為に人々を説得するが、人々は耳を貸さなかった…そしてミザエルは自分の命を賭けて人々の心に訴えようとした……だが、それは叶わなかった…噂を流したのは隣国のまわし者の祈祷師…その隙を突いた隣国がミザエルの国に攻め込み…国は滅び、ミザエル達も命を落としたのだ…。

 

 

《じゃが、お主の気高き最期は…あの恐ろしき者に穢されたのじゃ…!》

 

『恐ろしき、者…?』

 

 

 

………

 

 

『う、うぅ……』

 

【ふはははは…!】

矢の雨によって致命傷を受けたミザエルはドラゴンと共にその命を終えようとしていた…そのミザエルに近づく人影…それは赤い目をした祈祷師だった…!

 

 

『おまえ、は……』

 

【我が名は…ドン・サウザンド…!】

祈祷師は正体を明かす…それはドン・サウザンドの変装した姿だった!

 

 

【ミザエル、ドラゴンに魂を捧げし誇り高き戦士よ…お前の魂はアストラル世界に転生するだろう、だが…そうはさせん!貴様は我、ドン・サウザンド復活の糧になる為にバリアンとなって蘇るのだ!!】

 

『うっ!?ぐああああああ!??!』

正体を現したドン・サウザンドはミザエルに『No.107』を突き刺す…そして憎しみを植え付けられたミザエルはバリアンへと転生したのだ…。

 

 

 

………

 

 

《全てはドン・サウザンドの企み…奴の掛けた『呪い』じゃ…お前はドン・サウザンドに利用されたのじゃ!》

 

『なっ…』

 

《ミザエル、このデュエルで見つけるのじゃ…お前の進むべき道を…!》

それは共に歩んだ相棒からの最後のアドバイスだった…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

『ぐっ…今のが、私の本当の記憶だと…言うのか…!?』

 

《心拍数上昇!身体ダメージ50%!》

 

「っ…今のが、ミザエルの…!」

超時空龍とドラッグルーオンの相討ちによって吹き飛ばされるカイト達…カイトは体に深いダメージを負い、ミザエルは人間体の状態で月面に倒れ込む…ドン・サウザンドの呪いは解けた…だが…!

 

 

『馬鹿な…!この私がドン・サウザンドに…!?ならば…私の信じてきた「時空竜」が、呪いのカードだというのか!?信じぬ……私は信じない!!「銀河眼の時空竜」が私を裏切るなど!!』

 

「ミザエル…!」

悲壮な叫びを上げながらミザエルは再びバリアン体に変身する…それはアリトのように生前の怒りを思い出したからではない。

 

ミザエルのドラゴン使いとしての『誇り』が…「時空竜」が呪縛だという事実を認められなかったのだ…!

 

 

 

『速攻魔法!「銀河再誕(リ・ギャラクシー)」発動!このカードを装備カードとする事で攻撃力を半分にして墓地の「ギャラクシー」モンスターを特殊召喚できる!!蘇れ!「超時空龍」─!!』

ミザエルの叫びと共に黄金の巨龍が2度目の復活を遂げる!

 

「…それでいい…!それでこそ真の『ドラゴン使い』!お前はいつでもドラゴンを信じてきた…今度こそ、自分の運命を諦めるな!!」

 

『カイト…最強のドラゴン使いはこの私だぁぁ!!』

ミザエルにあえて激励を送るカイト…彼は知っている、ミザエルはドラゴンを愛し、信頼する『戦士』なのだと。

そしてミザエルは再び攻撃を仕掛ける!!

 

 

『受けてみろカイト!「超時空龍」でダイレクトアタック─!!』

 

《この攻撃は、マズイでアリマス!!バリアライト開放!!シールド展開─!!》

再び放たれる殲滅の息吹…その危険性に気付いたオービタルはバリアライトエネルギーによる障壁を展開する…!

 

 

《か、カイト様…!もしもオイラがスクラップに、なったら…オボミさんに、立派に戦ったと、伝えて欲しいでアリマス…!!》

 

「断る!!…そんな事、自分で伝えろ!!」

 

《カイト様…!》

歯を食い縛りながら息吹を耐え続けるカイトとオービタル…だが…!

 

 

ビシ…バリーン!!

 

 

「ぐああああっ!!」

バリアライトの盾が砕け散り…カイトは吹き飛ばされてしまった…。

 

 

『私は…これでターンエンドだ!…何とか耐えたようだな…!』

 

「ぐっ…」

 

《か、カイト様!大丈夫でアリマスか!?》

 

「あぁ…お前の、方は…!」

 

《損傷率50%…まだまだいけるで、アリマス…!》

何とか超時空龍の攻撃を耐えたカイト…残りライフは250、さらに宇宙服になっているオービタルは全身から火花を散らしていた…。

 

 

 

『カイト…!貴様のフィールドにはモンスターも無く、手札もゼロ…その状態でまだ戦うというのか?』

 

「これが…オレの、運命のドロー、だ…!ぐっ…!?」

 

《カイト様!?…微力ながらこのオービタルが力添えを!!》

絶望的な状況でもデュエルを続けようとするカイト…しかし、その体は痛みに蝕まれる…それを見たオービタルはパワードスーツ機能を使い、カイトをアシストする!

 

 

 

「これが、オレの…!」

 

《オイラの!!》

 

「《運命のドロー!!》」

力を合わせ、運命の一枚を引くカイトとオービタル…その結果は…。

 

 

「…来た…!これがあれば、戦える!オレはモンスターを裏守備表示で()()()!…ターンエンドだ!」

 

『…ふん、苦し紛れに雑魚モンスターを伏せたか…だが、無駄だ!!』

壁となるモンスターを伏せ、凌ごうとするカイト…だが、ミザエルは追撃を仕掛ける!

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!!私は魔法カード「銀河の施し」を発動!自分フィールドに「ギャラクシー」モンスターが存在する時、手札を1枚捨て2ドロー!…さらに速攻魔法「時空浄化(タキオン・リフレッシュ)」を発動!フィールドの「超時空龍」を除外し、フィールドに戻す…!!』

 

「っ…フィールドから離す事で『銀河再誕』の効果を外したか!!」

再び攻撃力4500に戻る超時空龍…そしてミザエルは恐るべき一枚を発動する!

 

 

『そして私は装備魔法「時空殲滅砲(タキオン・ダウンフォール・キャノン)」を「超時空龍」に装備!これにより攻撃力が500下がるが…「超時空龍」の攻撃力が500以下になるまで、その攻撃力を半分にして連続攻撃できる!!』

 

「なんだと!?」

超時空龍に巨大な電磁砲が装備される、この時点で超時空龍の攻撃力は4000…5回の連続攻撃がカイトに襲い掛かる!

 

 

『行け!「超時空龍」!奴の守備カードを攻撃!!』

 

「セットモンスターは…『銀河魔鏡師(ギャラクシー・ミラー・セージ)』だ!!」

全てを殲滅するレーザーを鏡の杖を持つ魔導師が受け止める!

 

「『銀河魔鏡師』のリバース効果発動!オレのライフを800回復する!さらに破壊されたこのカードをもう1度セットする!…ただし、この効果で特殊召喚されたこのモンスターは、フィールドを離れた時除外される!」

攻撃を受け止めた魔導師は粉砕されるが、カイトのライフを回復し…再び壁となる!

 

 

『無駄な抵抗を…!「時空殲滅砲」の効果発動!「超時空龍」の攻撃力を半分にして再び攻撃!!』

 

「『銀河魔鏡師』の効果!800回復!!」

再び放たれる殲滅のレーザー…だが、魔導師が攻撃を受け止め、異次元に消え去る!

 

 

『だが、これでお前を守るものはない!!私は「時空殲滅砲」の効果発動!攻撃力を半分にして再びダイレクトアタック!!』

 

「ぐううっ…!!」

 

《カイト様は、オイラが…守る!!》

放たれる3度目の攻撃…オービタルはシールドを展開し、必死にカイトを守るが…。

 

 

『「時空殲滅砲」の効果発動!攻撃を半分にし、4回目の攻撃!!ダイレクトアタック!!』

 

「ぐああああっ!!」

無情に放たれる4度目の攻撃はシールドを粉砕し、カイトを吹き飛ばす…そして…!

 

 

『これで、最後だ…「時空殲滅砲」の効果発動!攻撃力を半分にしてダイレクトアタック!!』

 

「がああああっ…!!?」

放たれる最後の一撃…それはカイトに直撃、石碑にカイトの体を叩き付けた…。

 

 

『私はカードを一枚ふせ……ターンエンドだ』

 

《し、システム損傷率…90%…エネルギー残量、10%…か、イトさ、ま──》

ミザエルは静かにターンを終えるが、カイトは立つ事ができない…宇宙服のガラスは罅割れ、オービタルは生命維持に集中する為に沈黙した…。

 

 

 

ジジッ…ジジッ…

 

 

「カイト!!聞こえるか?!カイト!!」

 

「ゆう、ま…か」

 

「そうだ!オレだ!しっかりするんだ!!」

静寂が支配する月面にノイズ混じりの声が響く、それは次元の狭間から必死に叫ぶ遊馬の声…飛行船の能力をフルに使って月面に通信を届かせたのだ…カイトはその通信を月面に投影する。

 

 

『九十九遊馬か…!』

 

「ミザエル!聞いてくれ!!こんな戦いに意味は無いんだ!!」

 

「貴方も見たはずよ!自分の本当の記憶を!」

デュエルの一部始終を見ていた遊馬と小鳥は必死にミザエルに呼び掛ける…。

 

 

(君の高尚な魂はドン・サウザンドによって穢され、偽りの記憶と憎しみと悲しみを埋め込まれてバリアン世界に堕ちたのだ…!この戦いの全ての原因はドン・サウザンドにある!)

 

『違う…そんな事は関係ない!私はバリアンの為に戦う!バリアン七皇として!!』

 

(だが、ミザエル…君が守ろうとするモノはもうない…!)

 

『なんだと…?』

ミザエルはドン・サウザンドの呪いに関係なく、七皇の戦士として戦いを続けようとする…だが、衝撃の事実が伝えられる。

 

 

「ドン・サウザンドはベクターと組んでアリトもギラグも…それだけじゃねぇ…メラグもドルベも…みんな喰っちまった!!」

 

『ば、馬鹿な!?』

 

(本当だミザエル…君が守ろうとするバリアンは、もうナッシュしか残っていない…!君が『銀河眼の時空竜』を使い続ける限り、呪縛からは抜け出せない!!)

 

『そ、そんな…!?私の「超時空龍」が…本当に、呪いの…!?そんな、そんな馬鹿な!!』

衝撃の事実に動揺するミザエル…七皇は崩壊し、残るのはナッシュと裏切り者のベクターのみ…守るべき者を失ったミザエル…だが、戦いはまだ終わってはいない。

 

 

「アストラル…こいつを『超時空龍』から開放するのは、オレの役目だ…!!」

 

「カイト…!?」

動揺するミザエルを前に満身創痍…瀕死のカイトは立ち上がる、その眼に強い信念の炎を燃やして…!

 

 

「この戦いは、オレ達の未来を決める()()…お前達の、手出しは無用だ」

 

「カイト…!でも、そんなボロボロの身体で…!!それ以上続けたら!!」

 

「……遊馬、覚えておけ…誰にでも、必ず別れは来る、いつか…突然に……それは、お前とアストラルにもだ…!だから……()()()()()()()()…!」

 

『カイト…!!』

カイトは解っていた、もう自分は助からないと…それでもなお、カイトはその魂を燃やす…長き因縁に決着をつける為に…!

 

 

「これがおそらく、()()()()()()…決着の刻だ!いくぞ、ミザエル!!」

 

『まだデュエルを続けるというのか!?「銀河眼」をもがれ、全ての力を失った貴様が!!』

 

「いいや…()()だ!オレ達の未来の光は、まだ消えていない─!!オレのターン!!」

ミザエルは死にかけのカイトの気迫に圧倒される、全ての力を失ったかに思われたカイト…だが、彼は既に繋げていたのだ…未来への『希望』を!!

 

 

62

 

「今こそ蘇れ!未来を操る光の化身!!『No.62』!『銀河眼の光子竜皇』─!!」

 

「『「(なっ!?)」』」

月面に光の柱が立ち上がる…その内より最後の希望、光子竜皇が復活する!!

 

『ば、馬鹿な!?何故この場に「光子竜皇」が!?』

 

「既に…『光子竜皇』の最後の効果が()()()()()()…このカードがフィールドを離れた時、ORUの数分のターンが経過した時に蘇る…『時空混沌渦』に飲み込まれた時のORUは2つ…よって2ターンが経過した()、その姿を現した!!」

 

『なっ…!?』

それは希望を未来へと運ぶ効果…カイトが死にものぐるいで1ターンを耐えた事で、希望が繋がったのだ!

 

 

(今の『超時空龍』の攻撃力は250…この攻撃で決着がつく!)

 

『これが「銀河眼の光子竜皇」の力…だが!最強のドラゴンは私の「超時空龍」!そして最強のドラゴン使いはこの私だ!!罠カード「オーバー・タキオン・ユニット」発動!フィールドにいる「超時空龍」のカオスORUを使って発動する効果を、私のライフ500を糧として発動する!!』

 

「なんだと!?」

それはミザエルのダメ押しの一手…ミザエルの魂を糧に、再び超時空龍は時空を掌握する!

 

 

『「超時空龍」の効果発動!フィールドに存在するこのカード以外のカード効果を無効にし、フィールドをこのターンの開始状態に戻す!タイム・タイラント!!消え去れ!「光子竜皇」─!!』

フィールドの時間が逆転する、それにより「時空殲滅砲」は力を失い…光子竜皇は闇に包まれる…だが。

 

 

《ギャオオオン─!!》

 

『なにっ!?』

光子竜皇が咆哮…それと共にタイム・タイラントの効果が振り払われる!!

 

 

「確かに『超時空龍』は全ての時を巻き戻した…だが、巻き戻せるのは()()()()()()()()()()()()()()!『光子竜皇』の効果は2ターン前に発動していた…時を遡る事はできても、オレの『未来』を支配する事はできない!!」

 

『なっ…!?「超時空龍」の効果を上回るというのか!?』

超時空龍は時間を巻き戻し、自分に有利な『現在』を掴み取る事ができる……だが、その効果が通用するのはフィールドのみ…除外ゾーンから発動された光子竜皇の『未来』へと繋ぐ効果を巻き戻す事はできなかったのだ…!

 

 

『だが、攻撃力は「超時空龍」が上、貴様は攻撃できまい!』

 

「それはどうかな…!『光子竜皇』で「超時空龍」を攻撃!エタニティ・フォトン・ストリーム!!」

 

『なっ…!?迎え撃て!「超時空龍」!アルティメット・タキオン・スパイラル─!!』

不敵な笑みを見せたカイトは攻撃を仕掛ける…再び月面で青と金の破壊光線が衝突する!!1350

 

 

 

「ミザエル!!何故、お前はドラゴン使いになった?」

 

『なに…?』

2体のドラゴンの光線が月面を照らす中、カイトはミザエルに問いかける。

 

 

「お前に何があったかは知らぬ…だが、お前は人を信じる事なく、ドラゴンを信じた…貴様のその荒涼とした『眼』…その眼は石碑に記されていた『伝説のドラゴン』の眼によく似ている」

 

『……私を哀れむのは、よせ…!!』

カイトの問いかけにミザエルは過去を思い出した。

 

 

幼少期に住んでいた村が戦火に飲まれ、両親を失った事。

 

戦火から逃れる為に一昼夜も砂漠を彷徨い、ついに力尽きた事…。

 

そして死の間際に手元にナンバーズが現れ、その精霊たるドラゴンに命を救われた事を…。

 

人間の醜さを知ってしまったミザエルは…ドラゴンだけを心の拠り所として生きてきたのだ…。

 

 

 

「ミザエル、オレは哀れんでなどいない……最強のドラゴン使いは…()()だ」

 

『えっ…!?』

カイトの思わぬ言葉にミザエルは動揺する…。

 

「オレは弟と親父を救う為に、ドラゴンを利用しただけだ…ギャラクシーアイズの力を……だが、たった1枚のそのカードが、オレをここまで導き…強くしてくれた」

カイトの戦う理由…それは『家族を守る』事、彼はその為にギャラクシーアイズの力を使ってきただけ…その時点でカイトはミザエルに負けていた。

 

 

「オレはギャラクシーアイズに導かれ、遊馬やアストラルに出会い…凌牙や白波さん…たくさんの仲間に出会い…そしてお前に出会う事ができた…そいつらは孤独で誰も信じる事ができなかったこのオレに『人を信じる力』を教えてくれた…」

 

カイトは今までに出会ってきた仲間達の顔を思い返す…ハルトを救う為に仮面を被り、ナンバーズを狩り続けたカイト…しかし、遊馬と出会った事を契機にその仮面は崩れ去り、家族との絆を…人を信じる事を思い出していった…全てはギャラクシーアイズと出会ったおかげ…。

 

故にカイトはミザエルに語り掛ける…。

 

 

「なぁ、ミザエル…もし次に出会える事があったなら、お前に何があったのか…聞かせてくれないか?」

 

『…カイト…』

今までで一番の穏やかな表情でカイトはミザエルに話し掛ける…()()()()()として、彼を救う為に…。

 

 

「『銀河眼の光子竜皇』の最後の効果!このカードの効果で自身を特殊召喚したターン、バトルする時…その攻撃力は取り除かれたORUの数を掛けた数字になる…ORUの数は2つ!」

 

『攻撃力、8000だと!?』

 

「いけ!『光子竜皇』!絶望を…焼き尽くせ─!!」

それは全ての絶望を消し去る希望の一撃…威力を増したフォトン・ストリームが超時空龍を貫く。

 

 

そして…今度こそ、ミザエルの呪縛は完全に消え去った…。

 

 

 

 

ミザエルLP0

 

 

カイトWIN

 

 

キィン─!

 

キィン─!

 

キィン─!

 

 

 

「これは…」

長い戦いに終止符を打ったカイト…その直後、ミザエルの『銀河眼の時空竜』…そしてカイトの持つ『神影龍ドラッグ・ルーオン』『銀河眼の光子竜皇』がそれぞれの手を離れ、空に舞い上がる…。

 

 

キィィン─!

 

 

『いったい、何が…?』

変化は続く、『過去』『現在』『未来』を象徴する3体のドラゴンから光が放たれる…それは『ドラゴンの呪い』の楔である石碑を砕いていく…。

 

そして、3体のドラゴンから放たれた光は月面へと突き刺さり…封印されし『鍵』が目を覚ます!

 

 

100

 

 

《キュオオォォオオン─!!》

 

 

『あれが…ギャラクシーアイズの、真の姿…!』

 

「ヌメロン・ドラゴン…」

 

《カイト、様…!》

月面から現れた青緑色の角と金色の身体を持つドラゴンが咆哮する…『100』の数字を背負うそのドラゴンの名は「ヌメロン・ドラゴン」…遥かな昔、宇宙を創造したドラゴンの分け御霊である…!

 

 

《キュオオォォオオン─!!》

 

そして…カイトの勝利を祝福するように金色の光が舞い散る中、ヌメロン・ドラゴンはその身をカードとしてカイトの手に収まった…。

 

 

《やりマシたネ、カイト、サマ…》

 

「オービタル…お前も()()()()()

 

《や、やっト…ホメられたデアリマ、ス…だいスキな…カイト……さ…ま……───》

カイトは限界まで稼働したオービタルを労う…その言葉と共にオービタルは機能を停止する、それは…──

 

 

「ありがとう、オー…ビタ、ル……」

 

『っ…!?カイト!!』

 

「カイト!!」

カイトの死を意味していた…。

 

 

 

「カイト!しっかりしろ!おい!?オレとまたデュエルするんだろ!!まだ決着はついてねぇ!!」

 

「そう、だったな…だが、それは…()()にお預けだ……」

カイトは()()()人間である、真空の宇宙の中で宇宙服の機能が停止し、深いダメージを受けたカイトの命の灯火は…燃え尽きようとしていた…。

 

「ふざけんな…!起きろよ!オレと…オレとデュエル、しろよぉ!!」

 

「泣くな、遊馬…お前は…最後の希望だ…」

 

「か、カイッ────」

少しずつ、機能が停止していくシステム…遊馬との通信が途切れ、残ったのは…… 

 

 

「カイト…!死ぬな!死ぬんじゃない!!」

 

「とうさん…」

通信越しに聞こえるのは父であるDr.フェイカーの悲痛な声だった…。

 

 

「オレは、後悔なんてしてない……ハルト、ありがとう………父さんを、頼む…」

 

「兄さん!!兄さん─!!」

フェイカーとハルトの泣き声が聞こえる中…最後の力を使い、カイトは…ミザエルへと手を伸ばす。

 

 

「ミザエル…往け…」

 

『カイト…』

ミザエルは伸ばされた手を掴む…その手には『ヌメロンドラゴン』が握られていた…。

 

 

「いくんだ…お前の、信じる道を……────」

 

 

カイトはミザエルへと『希望』を託し、力尽きた…。

 

 

 

 

 

 

『ドン・サウザンドッ…キサマ…許さん!!!』

涙を流しながら…ミザエルは『最高のドラゴン使い』の死を悼み、バリアンの神への怒りを燃やした…!

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

「カイト…そんな…!?」

砂嵐に変わってしまった通信画面を見つめたまま、遊馬は呆然とする…その脳裏に過ぎるのはカイトとの思い出。

 

敵同士として出会い、背負うモノを知り…ハルトの為に共闘し和解した…決して馴れ合う事はなく、自分の生き方を貫き通した孤高の男…その命は未来へと希望を託し、燃え尽きた…。

 

 

「カイト…カイトォォぉぉ!!」

 

遊馬の慟哭が次元の狭間に響き渡った…。

 

 

 

 

 

「っ……カイト…!オレは、もう泣かねぇ…!小鳥、アストラル…行こう…!!この戦いが終わるまで…オレは泣かねぇ!!それが…オレのかっとビングだ!!」

 

(遊馬…)

 

「遊馬…!」

遊馬は悲しみを振り切って立ち上がる、命を懸けて希望を繋いだカイト…その想いに応えなければならない…故に遊馬は立ち上がる!!

 

 

「いくぜベクター!!ドン・サウザンドォォ!!」

 

遊馬の決意の叫びが次元の狭間に轟いた…。

 



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幕間─とある夜─

こんにちは!S,Kです!

投稿間隔が空いてしまいすいません…FGOの新章をやってたり、ベクター対ナッシュの構想がなかなかうまくいかなかったり…ちょいとスランプ気味です…。

とりあえず…リハビリも兼ねて投稿してみたり…短くてすいません…。


『父さん…起きて…父さん…!』

 

「んむ……凌牙?どうしたんだ?」

 

とある夜、眠っていた遊海は小さな手に揺さぶり起こされる…遊海を起こしたのは毛布を抱きしめた幼い凌牙だった。

 

 

 

『…怖い夢を見たんだ…だから、一緒に寝てもいい…?』

 

「そうか…おいで、一緒に寝よう」

 

『うん…』

怖い夢を見たらしい凌牙…彼は少し震えながら遊海の布団に潜り込んだ…。

 

 

 

「(確か…子どもが怖い夢を見た時は…ゆっくり話すのがベストだって育児本に書いてあったな…)凌牙、どんな夢を見たんだ?」

凌牙達兄妹を引き取る前に参考書を読みこんでいた遊海は凌牙に優しく問いかける。

 

 

『……()()()の夢……』

 

「っ……そうか…」

凌牙の言葉を聞いた遊海は察した…それは凌牙達の心に刻み込まれてしまった悲劇の記憶だった。

 

 

『白野父さんや翠母さんと一緒に車に乗ってたら……またトラックが飛び出して来て……気付いたら、璃緖も…だれも、いなくて……!』

 

「大丈夫、大丈夫……俺も、翠も…お前達とずっと一緒にいる…」

声を震わせて遊海に縋り付く凌牙…遊海は優しく頭を撫でながら凌牙を宥める…。

 

 

『父さん…人は、死んだらどうなるの…?本当の父さんと母さんは…僕達の事、守ってくれてるの…?』

 

「……それは…ちょっと難しい質問だなぁ…」

遊海は体を起こし、凌牙に語り掛ける…。

 

 

 

「人は死んだら…その『魂』…その人の心?…大切な部分は冥界……死んだ人達の国に行くんだ」

 

『死んだ人達の国…?天国とか地獄じゃないの…?』

 

「ああ、もしかしたら天国とかもあるかもしれない…その場所で、死んだ人達は俺達や、生きていた時に大切だった人達の事を見守ってくれてる……だから、凌牙のお父さん達も…きっと凌牙達を見守ってくれてるさ」

そう語りながら遊海は月明かりが差す窓から夜空を見上げる…その様子から凌牙も子どもながらに気付いた、遊海も…大切な()()を失ったのだと…。

 

 

 

『……父さんの事も…誰か見守ってくれてるの?』

 

「うん?……ああ、俺の父さんや母さん……それに、一番の親友達がな……」

 

『友達…』

 

「ああ…本当に大切な人達なんだ」

遊海は静かに目を閉じる、その脳裏に浮かぶのは…かけがえのない友の声だった。

 

 

 

 

 

─ヘッ…別に今さら死ぬのなんて怖くねーよ…お前のおかげで「後」があるって分かったからな…でも、お前らの事が心配だなぁ……あんまり無茶すんなよな…?─

 

 

 

 

─後の事は分身(デュエルロイド)に託した……そう暗い顔をするな…ようやく、俺は()と決着をつける事ができる……来るのであればゆっくり来い、その時に……結果を聞かせてやる…─

 

 

 

 

─遊海…今までありがとう……僕はもう戦う事はできない…でも、この世界はきっと大丈夫…君がいる…十代も…遊星もいる…そして…新しい時代を背負う決闘者達がいる…だから、君は……自分が願う通りに、世界を……─

 

 

 

 

「死ぬ事は決して『終わり』じゃない…俺達は託された願いや想いを背負って生きていくんだ……いつか、その人達と再会できた時に…胸を張って会いにいけるように……ん?」

 

『すぅ…すぅ…』

 

「寝ちゃったか…おやすみ、凌牙」

気付けば凌牙は再び夢の中……遊海は凌牙を起こさないように布団を掛ける。

 

 

「凌牙、約束だ…()()()が来るまで、お前達は俺が護る……どんな時でも、俺が助ける……だから、お前は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─……凌牙…お前は……自分の、満足できる……未来を……生きろ……─

 

 

 

 

 

 

それは…今際の際の走馬灯……魂を砕かれながら……遊海は想いを口にする…。

 

 

 

 

 

 

─…遊戯…ごめん……世界を、守りきれなかった……克也……海馬社長……翠………ごめん……おれが……もっと…つよかった、ら……─

 

 

 

 

 

─凌牙…生きろ……お前と遊馬、なら……あの子を……ミドリを……─

 

 

 

 

 

後悔を抱きながら…遊海の魂は引き裂かれ……虚無の中に消え去った…。



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凶気の魔神VS憤怒の皇─長き因縁の果てに─

こんにちは!S,Kです!

本当に…大変長らくお待たせしてしまいました、ようやく…執筆の神様が降りて来てくれました…。


ついに衝突するナッシュとベクター…長き因縁の行方は…!


それでは、最新話をどうぞ!


『はぁ…はぁ…はぁ…!来るな…来るなァァァ!!?』

 

 

ベクター…ベクター…ベクター…ベクター…

 ベクターベクターベクターベクターベクター

ベクターベクターベクターベクターベクター

 ベクターベクターベクターベクターベクター

ベクターベクターベクターベクターベクター

 

 

 

何処とも知れぬ暗闇の中、ベクターは逃げ続けていた…その背後にはベクターへの怨みを抱えた無数の怨霊が迫る…。

 

 

 

 

『やめろ…!オレは悪くない!!オレじゃない!!や、やめっ…!』

 

 

 

ユ ル サ ナ イ 

 

 

 

 

『ぎ……ぎゃあああああああああ!!?』

 

 

足が縺れ、倒れ込むベクター…彼に無数の怨霊が襲いかかり、そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ハッ…!?】

 

どうした?ベクター

 

【な、なんでも…ねぇよ…!】

ベクターはバリアン世界の玉座で目を覚ました。

 

ドルベ・メラグ・アリト・ギラグの魂を吸収したベクターはナッシュの進撃を前に人間時代の居城だった『悲鳴の迷宮』をバリアン世界へと召喚、そしてナッシュを待ち受けながら居眠りしていたのだ。

 

 

 

お前が眠っていた間にナッシュが近付いているぞ?怒りで爆発しそうになりながらな…!

 

【わかってる…】

ベクターにナッシュの接近を知らせるドン・サウザンド…彼は計画の成就を前に不敵な笑みを浮かべていた…。

 

 

大詰めのようだな…ナッシュは直々にこの我が──

 

【…必要ない】

 

ギュル!

 

ッ…!?ベクター!キサマ、何を…!?

ナッシュを降す為に顕現しようとするドン・サウザンド…しかし、その身体をベクターの力が拘束する!

 

 

【アンタが出るまでもねぇ…ナッシュとは、オレが決着をつける…アンタは引っ込んでろ】

 

ぬぐぁぁぁ…!?

 

【……ヒヒッ…!メラグ達の力を手に入れた事で、オレ自身の力も相当上がったようだなぁ…!】

無理矢理にドン・サウザンドを抑え込んだベクターは強化された自分の力に酔いしれる…その時だった。

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

『ベクタァァァァァ──!!』

 

 

 

【キヒッ…!】

凄まじい怒気と殺気の込められた叫びと共に閃光がベクターの前に落下する、その正体は…怒りに燃えるバリアンの王・ナッシュだった…!

 

 

 

『ベクター…!!』

 

【ヒヒッ…会いたかったぜぇ?ナッシュ…!】 

バリアン世界へと帰還したナッシュは人間体で玉座に座すベクターを睨みつける…!

 

 

『貴様…よくも…メラグとドルベを!!』

 

【ああ!頂いちゃいましたよぉ…でも、それだけじゃねぇ…既にギラグとアリトの力も頂戴した!】

 

『なんだと!?』

ナッシュに告げられる残酷な真実…だが、ベクターが隠していたのは…それだけではなかった。

 

 

【そしてそしてぇ…()()を見ろよぉ…!】

 

キィン─

 

『っ…!?これは!?』

玉座の近くに浮かぶ水晶に映像が投影される、それはバリアン世界と融合しつつある人間世界の映像、そこには…赤い魔眼を覗かせる()()()()()()()が映し出されていた…!

 

 

『あれは、名無しの怪物だと(ネームレス)…!?しかも、なんだ!?あの姿は…!!』

その時、欠けたナッシュの記憶の一部が蘇る…それは数十年前、自身と七皇達が死力を尽くして戦った怪物との戦いの記憶だった…。

 

 

 

【ヒヒヒ…!オレはドン・サウザンドの力を得てあの怪物を蘇らせた!それはなんの為だと思う?……一番の()()()を消す為さぁ!じゃじゃ~ん!目ン玉見開いて!よ〜く見ろよぉナッシュ…お前の大切なモノの最期をよぉ!!】

 

『っ……!!とう、さん…!?』

ベクターが指を鳴らし映像が切り替わる、そこに映し出されたのは……ネームレスに向けて右腕を突き出した状態で石像と化した遊海、そして必死の抵抗を試みる翠を始めとした伝説の決闘者達の姿だった…。

 

 

【ハハ……ぎゃはははは!!世界最強の男も…最狂の怪物には手も足も出なかったようだなぁ!】

 

『き、貴様…!ベクタァァァ!!

 

【おっと、危ない】

ネームレスに倒された遊海を見たナッシュは激昂、玉座に座るベクターに向けてカオスの光弾を放つが…それを瞬間移動で避けたベクターはナッシュの立つ広間に着地する。

 

 

【どうしたぁ?ナッシュ…お前は『神代凌牙(人間のお前)』を捨てたんだろぉ?なら感謝してくれよぉ!厄介な奴を仕留めてやったんだからさぁ!!】

 

『……俺は……これ程までに、誰かを憎いと思った事は…ない!!

おどけるベクターを射殺せるほど鋭い眼光で睨むナッシュ、その脳裏に浮かぶのは……捨てたはずの思い出、厳しくも優しかった…かけがえのない父の背中だった。

 

 

【ヒヒヒ…!いいネェ!そのツラ…!安心しろよぉ…これからお前もぶっ倒して…情けねぇ白波遊海(バカな男)と同じ所に送ってやるよぉ……さぁ!グチグチと喋っててもしょうがねぇ!オレ達の戦いに決着をつけられるのは決闘だけ!!そうだよなぁ…ナッシュ!!】

 

『覚悟しやがれ…ベクタァァァ!!』

 

怒りに燃えるナッシュ…仲間を裏切り、全能感に酔いしれるベクター…前世から続く因縁、その決着をつける決闘がついに始まる!!

 

 

 

 

【『デュエル!!』】

 

 

 

デュエルダイジェスト ナッシュ対ベクター

 

 

 

 

 

【ヒヒッ…先攻はオレだぁ!オレのターン!ドロー!!…キヒッ…!】

先攻を取ったベクターはドローカードを見て不敵な笑みを浮かべる…!

 

【オレは永続魔法『ドン・サウザンドの契約』を発動!このカードは…()()()()()()()()ライフを2000払う事で発動する!】

 

ゴウッ!

 

『なにっ!?…ぐああっ!?』

ベクターベクターが永続魔法を発動した瞬間、カードから禍々しい闇…ドン・サウザンドの幻影が現れ、ナッシュを包み込む…!

 

『俺が、ライフを払うだと…!』

 

【当然だろぉ〜?ここはオレの『城』だ…ここでデュエルするんなら、()()()を払ってくれなきゃな〜?ヒヒヒッ…】

それはナッシュにとってのデメリットにしかならない効果…しかし、救いなのはこの効果が『強制効果』ではない事。

ナッシュが『ライフを払わない』と言えば、効果は無効となり破壊される…だが…。

 

 

『(これもベクターの策略か……だが、俺は()()()()、ベクターが策を弄するなら……それを()()()()()()()()!!)』

ナッシュの出した答え、それはあまりにもシンプルな答えだった…それは激情に飲まれ、冷静さを欠いているからではない。

 

 

ベクターは様々な策略によって前世からナッシュを苦しめ、バリアンとなってからも何人もの人々を傷付けてきた…つまり、策を巡らせる事においてはベクターはナッシュを上回っている…。

 

故に…ナッシュはベクターの策略に()()、その上で…ベクターを完膚なきまでに叩き潰し、仲間達の…大切な人の仇を討つ為に…!

 

 

 

『好きにしろ、ベクター…俺は…必ず貴様を、ぶっ倒す!!』

 

【チッ…!ざけんなよテメェ…!!()()()()だぁ!!】

 

ギィン─! バリバリバリ!!

 

『ぐっ…!?ぐああああっ!!!』

 

【キヒッ…ザマァねぇなぁ─!!】

ベクターの言葉と共にナッシュのエネルギーが激痛と共に奪われる…!

 

 

【『ドンサウザンドの契約』成立後!プレイヤーはお互いにカードを1枚ドローし、開示する!さらにこのターン以降のドローカードも開示しなきゃならない!そしてそのカードが『魔法カード』なら、そのプレイヤーはターン終了時まで通常召喚できない!!】

 

『っ…!』

これが『ドン・サウザンドの契約』の効果…ナッシュはモンスターと魔法を使ったコンボによる展開を得意とする…故に、それを封じる…それがベクターの1つ目の『策』だった。

 

 

【さぁ…カードを引きな!!】

 

『くっ……ドロー!!』

 

【ドローだ!!】

お互いにカードを引くナッシュとベクター…その結果は…。

 

 

 

『俺が引いたのは…「スプリット・ディフェンダー」…魔法カードだ…!』

 

【おっとぉ…?オレのターンでラッキーだったなぁ?…そしてオレが引いたのは…モンスターカード!!来い!『アンブラル・ゴーレム』!】

ナッシュが引いたのは魔法カード…しかし、ベクターはモンスターを引き当て、ボロボロのコートを纏った大柄な悪魔を呼び出した!

 

 

【『アンブラルゴーレム』は攻撃表示の時、相手の攻撃を1度だけ無効にできる!!さらにオレはカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!】

カードを伏せ、順当に守りを固めるベクター…ナッシュは静かに目を閉じる…。

 

 

 

『(メラグ…ドルベ……お前達の無念、必ず俺が…晴らしてみせる!!)』

ナッシュの脳裏に目の前で散ったかけがえのない仲間の最期が甦る…そして、仲間達の無念を背負うナッシュの右腕にカオスの力が宿る!!

 

 

 

『俺のターン!!バリアンズ・カオス・ドロー!!

カオスの軌跡と共に、ナッシュが力を開放する!

 

【さぁ…『ドン・サウザンドの契約』の効果でプレイヤーはドローカードを公開しなきゃならない…見せな!!】

 

『俺がドローしたのは……()()()()()だ』

 

【ヒヒッ…ザンネ〜ン!このターンは通常召喚できn『引いたのは…「RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)」だ!!』なにぃ!?】

 

『このカードの効果はよ〜く知ってるはずだ!「七皇の剣」発動!!』

「ドン・サウザンドの契約」によって封じられるのは通常召喚のみ……特殊召喚を封じる事は、できない!

 

 

101 

 

 

『現れろ!「CNo.101」!満たされぬ魂の守護者よ…暗黒の騎士となって、光を砕け!!「S・H・Dark Knight(サイレント・オナーズ・ダークナイト)」!!』

 

【これが…お前のオーバーハンドレットナンバーズ…!】

ナッシュのエースモンスター…暗黒の槍術士が顕現する!

 

 

『お前がどんな守りを敷いていようと…打ち砕くのみ!「ダークナイト」の効果発動!1ターンに1度!相手フィールドのモンスター1体をこのカードのカオスORUにする!ダーク・ソウル・ローバー!』

 

【なんだと!?】

アークナイトの持つ槍から放たれた紫電がアンブラルゴーレムに直撃、そしてORUとして吸収する!

 

『これで…貴様を守るモンスターはいなくなった!!「ダークナイト」でダイレクトアタック!!砕けろ…!ベクタァァァ!!』

 

【ぐっ…ぐおああぁぁぁ!?】

ナッシュの怒りの一撃がベクターに炸裂…ベクターは激しく吹き飛ばされた!!

 

 

『立て…勝負はこれからだ!!貴様は…跡形もなく、消し去ってやる!!』

 

【ぐ、お……2800の、ダメージ……─】

ベクターの残りライフは1200…ナッシュの一撃はベクターの身体にも深いダメージを与え───

 

 

 

 

 

 

 

【ダメージ……ありがとさ〜ん!!

 

『っ…!?』

…与えてはいなかった。

 

ベクターは確かに大ダメージを受けた、しかし…それは計算内だったのだ…!

 

 

 

【ばーか!オレはテメェとⅣのデュエルを見てたんだよぉ…!お前のオーバーハンドレットナンバーズの強さはよく分かってる…そして…お前は怒りに任せ、オレに大ダメージを与えに来ると読んでたのさぁ!!罠カード発動!『カオス・ライジング』!!】

ベクターはやはり、ナッシュの行動を読んでいた…次なる策が発動する!

 

【このカードは相手のカオスナンバーズによって、自分が2000以上の戦闘ダメージを受けた時に発動できる!オレはエクストラデッキからランダムにカオスナンバーズを特殊召喚できる!!】

ベクターの手にカオスナンバーズが収まる…そのカードは…。

 

 

65

 

 

【ヒヒッ…現われろ!『CNo.65』!裁断魔王ジャッジ・デビル!!】

それはベクターの遺跡のナンバーズ…紫の衣を纏う魔王が降臨する!

 

 

『……フン、2800のダメージを受けてまで貴様が狙ったのは、カオスナンバーズ1体を召喚する事か?俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

【さぁて、オレのターンだ…このドローがお前の運命を決める事になる…!】

カオスナンバーズの出現に一瞬の動揺を見せたナッシュだったが…すぐに持ち直し、ターンを終える。

…だが、ベクターの卑劣な作戦はここからが本番だった…!

 

 

 

【いくぜぇ…オレのターン!ドロー!!】

カオスの軌跡と共にベクターがカードを引く…ベクターが引いたのは…──

 

 

 

【おっとぉ…魔法カード引いちまった!これじゃあ通常召喚できねぇ……まぁ、関係ないんだけどな!!オレは魔法カード『カオス狂宴』を発動!!このカードは自分フィールドにカオスナンバーズが1体存在する時!『ドン・サウザンドの契約』を墓地に送って発動できる!!エクストラデッキからカオスオーバーハンドレットナンバーズ3体を…効果を無効にして特殊召喚できる!!】

 

『なんだと!?』

それはカオスの根源たるドン・サウザンドの力を宿す規格外のカード…ベクターはその力を開放する!

 

 

104

 

 

【まずは…現われろ!『CNo.104』!『仮面魔踏師(マスカレード・マジシャン)アンブラル』!!】

最初に現れたのはベクターのエースたる仮面の悪魔…そして、次に現れるのは…。

 

 

102

 

 

【さぁ…オレの新しいオトモダチを紹介するぜぇ!現われろ!『CNo.102』!『光堕天使(アンホーリー・ライトニング)ノーブル・デーモン』!!】

 

『そのナンバーズは、ドルベの!!』

続いて現れたのはナッシュの腹心にしてかけがえのない友…ドルベの切り札、ノーブルデーモン…そして…!

 

 

103

 

 

【そしてそしてぇ!最後はとっておきだぁ……さぁ!盛大な拍手で迎えてくれよぉ!!『CNo.103』!『神葬零嬢ラグナ・インフィニティ』!!】

 

『メラグ、の…!!』

最後に現れたのは……最愛の妹メラグのナンバーズ…。

 

【以上!元はドルベとメラグの……今はオ・レ・の!カオスナンバーズだ!!】

 

『メラグ…ドルベ……!!』

ナッシュの前に立ち塞がるのは妹と友の分身とも言えるモンスター…ナッシュは言い表せない怒りと悲しみに表情を歪める…。

 

 

【フヒヒ…!どうだぁ?ナッシュ…大切な仲間のナンバーズが、オレのフィールドにいる心境は〜?】

明らかに動揺するナッシュに向けてベクターはさらに煽り立てる…。

 

 

【メラグもドルベも…ギラグもアリトもいねぇ…ミザエルは月に行ったらしいが…どちらにせよ、お前は一人っきりだ…!仲間を失い…そしてそしてぇ…()()()()()をも失うお前はなぁ!!】

 

『っ!?』

ベクターは人間界の様子を映している水晶を手元に呼び寄せる…その中には怪我を負った翠、そして破滅の極光を再び放たんとする怪物の姿が映し出されていた…!

 

 

「母さん…!?やめろ…やめろぉぉ!!」

 

【バーカ、止まるわけないだろぉ?オレだって制御できねぇんだ・か・ら!】

バリアン世界に木霊するナッシュの絶叫…それも虚しく、翠達は破滅の光に飲み込まれ…映像は途絶した…。

 

 

【ヒヒヒ…これでぇ!お前は正真正銘!本当の独りぼっちだ!!ぎゃはははは!!】

 

『ひと、り……俺は、誰も……』

次々に叩きつけられる非情な現実……仲間は奪われ、家族を失ったナッシュの心は……限界だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャーク─!!」

 

 

 

 

『っ!?』

 

【ほう…こいつは…!】

絶望に落ちかけたナッシュの心を繋ぎ止めたのは…バリアン世界へとたどり着いた()の声だった…!

 

 

キィン─!

 

 

「シャーク!大丈夫か!?」

 

『……遊馬…』

王宮の上空に現れた飛行船から緑の光線と共に遊馬・アストラル・小鳥の3人が現れる…先程のダークナイトの攻撃の光を道標にこの場所に辿り着いたのだ…!

 

 

 

【ハッハァー!!良かったなぁ?ナッシュ…一人ぼっちのお前に懐かしの()の到着だ〜!】

 

『……()()…!俺と奴は…今や()()()だ!!』

 

「シャーク…!」

遊馬が到着した事で再びナッシュを煽るベクター…だが、それは絶望に堕ちかけたナッシュを再起動させた。

 

……それは仲間を奪ったベクターへの怒り…そして遊馬が来た事で一瞬でも()()()()()()()()自分への怒り……折れかけた心は怒りの炎で再び燃え上がる…!

 

 

【あはは〜!フラれたね!遊馬クン!可哀想に…でも安心しなよ!コイツを倒したらゆっ〜くりた〜っぷり相手をしてやるからヨ!】

 

「ベクター…!!」

 

『お前に…次などない!!』

 

【はっ…メラグやドルベの無念を晴らす…ってか?】

真月の声色を使って遊馬をおちょくるベクター…だが、ナッシュの言葉に気怠げに向き直る。

 

 

【心を折ってやったと思ったんだがなあ…なら、見せてやるよ…!オレの本気を!!ハアアアアア!!】

 

ドクン!!

 

『っ…!!』

いまだにナッシュの目から闘志が消えていないのを見たベクターは全力を出す事を決めた…ベクターから凄まじいカオスの力が溢れ出す!

 

キィン─!

 

「あれはっ!?」

 

『メラグ…ドルベ…!?みんな…!?』

溢れ出すカオスが赤・緑・水・白の光と共に開放される…それはベクターへ取り込まれてしまった七皇の魂だった…!

 

【さぁ…来いやァ!!】

 

「『っ─!?』」

ベクターが4人の魂を引き寄せる、そしてカオスの大爆発がベクターを包み込む!!

 

 

 

【どうだ…これが、オレの新たな姿だ!!】

 

(あれが、バリアン七皇の…4人を吸収したベクターの姿か…!!)

光が収まった時、ベクターは新たな姿へと進化していた。

黒紫色の鎧が全身を覆い、白目が赤紫色に染まり…腹部にはカオスが凝縮された宝玉が暗い輝きを放つ。

 

彼の者の名は…ランパント・ベクター…裏切りと暴虐の果てに魔神の領域へと至った悪魔の姿だった…。

 

 

 

【キヒッ…この姿になれたのも、ぜ〜んぶ!あの()()()共のおかげさぁ…!】

 

『貴様…ベクタァァァ!!』

七皇の仲間達を蔑むベクター、その言葉を聞いたナッシュは怒りを爆発させる…だが、ベクターはナッシュの姿を見て嗤う…!

 

 

【そうだ…!怒れナッシュ!()()()()()()()怒ってみせろ!!】

 

『あの時…!?』

 

【忘れたとは言わせねぇ…この場所はオレとお前の因縁の場所…!迷宮の『闇の決闘』でぶっ飛ばされたオレは、命からがら自分の国へ戻った…!だが、しつこいテメェは!しつこくオレを追ってこの場所に乗り込んできた!!】

 

『……そうだ…思い出したぜ…全てを…!』

 

それはナッシュがまばらに覚えていた生前の記憶の最後の1ページ、闇のゲームで全てを失ったナッシュはしぶとく逃げたベクターを追い、彼の国へと乗り込んだ…。

 

 

『オレは…お前との戦いが原因でかけがえのない仲間の命を奪われた…オレはそれが許せず、お前を追った…!だが、オレがこの場所で見たのは…全ての家臣や民を処刑し、たった一人で立つお前の姿だった…!!』

 

【ああ、あれなァ……()()()()()()()()、どいつもこいつも!「もう戦はやめろ!」とか「すぐに和平を!」とか…腰抜けばっかりだったからなぁ!だから…始末したんだよ…!】

 

「そんな、ひどい…!」

 

(…「呪われた王宮」の伝説…やはり、この遺跡の伝説は…ベクターが人間だった時のものだったか…!)

 

 

 

──かつて1人の王子がいた…幼い頃から人心を信じず、全ての人間に疑惑の目を向け…それを裁いた。

 

そして全ての命を奪いし後、王子は1人残りて命を断つ…──

 

 

 

それは悲鳴の迷宮に残された凄惨なる伝説、アストラルはベクターの言葉から遺跡の伝説がベクターの伝説である事に確信を持った…。

 

 

 

『…下衆の極みだな、ベクター…!』

 

【フッ…このくらいでゲスだと?甘え…甘いんだよォ…!】

自身の残虐な行ないを喜々として語るベクターをナッシュは蔑む…だが、ベクターの悪行はそれだけではない…。

 

 

【ひひっ…なんせよぉ、オレが最初に手を下したのは…自分の()()()()()()()()なんだからなぁ!!】

 

「自分の、親を…!?」

 

【そうさ…オレは邪魔な奴を排除してきた…()()だったンだよ!!…あの日、テメェに負けるまではな…!!】

親殺しを語るベクターにさしもの遊馬も言葉を失う…だが、ベクターは復讐の炎を燃やしながらナッシュを睨む…!

 

 

【オレはあの日、再びお前に負けた…しかも!自分の王宮でなぁ…!惨めだった…悔しかった!!だからよぉ、同じ場所で今度こそ!お前をぶっ潰す!!お前の大切な仲間達の力を使ってなぁ…!!】

 

『貴様…!』

それは数千年を掛けた『復讐計画』…ナッシュに与えられた屈辱を何倍にもして返す…それがベクターの目的だった…!

 

 

 

 

【さぁ…いくぜ、ナッシュ!!まずは『アンブラル』で『ダークナイト』を攻撃!!】

 

『ぐっ…!だが「ダークナイト」の効果発動!このカードがORUを持った状態で破壊された時!このカードを墓地から特殊召喚し、その攻撃力分ライフを回復する!リターン・フロム・リンボ!!』

魔踏士の魔力弾が槍術士を粉砕する、しかし…ダークナイトは自身の力で現世へと舞い戻る!

 

【フッ…だが!オレの攻撃は終わってねぇ!!『ノーブルデーモン』で『ダークナイト』を攻撃!!】

 

『ぐああっ…!』

続いて放たれた堕天の槍が槍術士を貫く…そして、ベクターはナッシュとⅣのデュエルを見て『ダークナイト』の弱点…ORUが無いと復活効果が発動できない事を知っていた…! 

 

【これで『ダークナイト』は復活できねぇ!続いて『ラグナインフィニティ』でダイレクトアタック!!】

 

【っ…!があああっ!!!】

 

「シャーク!!」

神殺しの大鎌がナッシュに直撃…ナッシュは吹き飛ばされる!

 

 

【どうだ…?メラグのモンスターに打ちのめされた気分は…!続いて『ジャッジデビル』でナッシュにダイレクトアタックだぁ!!】

 

『ぐああああっ!!』

さらに裁きの魔王の一撃がナッシュに直撃…残りライフは僅か100…!

 

 

 

【ふはっ…いいザマだぜ…!簡単には殺らねぇ…たっぷり甚振って、地獄に送ってやる…!オレはカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!】

満身創痍のナッシュを嗤うベクター…だが、ナッシュの心の炎は尽きる事はない……仇敵を打ち倒すまでは…!!

 

 

 

『いくぜ…俺のターン、ドロー!!』

『よし…!魔法カード「スプリット・ディフェンダー」を発動!!自分の場にエクシーズモンスターがいない時、相手フィールドのもっとも守備力の高いモンスターのコントロールを得る!ただし、守備力が同じモンスターが複数存在する時、コントロールを得るモンスターは相手が選ぶ!今のお前のフィールドで守備力が高いのは「ラグナインフィニティ」か「ノーブルデーモン」!どちらかのモンスターをいただくぜ!』

それは逆転を賭けた1枚…だが、ベクターも甘くはない…!

 

 

【馬鹿め…!最初にお前が引いたそのカード…この場面で使うのはお見通しだ!罠カード『ガード・オフ』!フィールドの全てのモンスターの守備力を0にし、その数1体につき400ダメージ…つまり、1600ダメージを貴様に与える!!】

 

(っ…読まれていたのか!!)

それはベクターの読みの一手…ナッシュに赤雷が襲い掛かる!

 

【あばよ!ナッシュ─!!】

 

『永続罠「エクシーズ・チャージ・アップ」発動!このカードは効果ダメージを無効にする!!…オレの手札に『スプリットディフェンダー』があるのを知ってて、何も仕掛けて来ないと思うほど…俺は甘ちゃんじゃねぇ…!!』

 

【チッ…!】

すんでの所でナッシュは効果ダメージを回避する…!

 

 

『さぁ…「スプリットディフェンダー」の効果は生きてる!貴様のフィールドのモンスターの守備力は全て0…さぁ、選べ!俺に差し出す1体を!!』

 

【クッ…なら『ジャッジデビル』をくれてやる!たかだか攻撃力1600に何ができる!!】

 

『フッ…()()()()()()!!』

 

【なにっ…!?】

ベクターはセオリー通り、もっとも攻撃力の低いジャッジデビルをナッシュに渡す…だが、ナッシュにはそれで事足りる…!

 

 

『「エクシーズチャージアップ」の効果発動!このカードを墓地に送り、自分フィールドのエクシーズモンスターの攻撃力を無効にしたダメージ分アップする!攻撃力3200だ!!』

それは報復の一撃、裁きの魔王が暴虐の魔神に裁きを下す!

 

『バトルだ!「ジャッジデビル」で「アンブラル」を攻撃!!』

 

【ぐっ…!?ぐおおおっ!?!?】

それは僅か200ダメージの攻撃…だが、ベクターはバリアン体が解除されるほどの勢いで吹き飛ばされた!!

 

 

 

「あっ…!?」

 

(遺跡のナンバーズによって、オーバーハンドレットナンバーズが破壊された時……その遺跡の主の()()()()が蘇る…!)

それは()()の一撃…ナッシュの攻撃によってベクターに掛けられたドン・サウザンドの呪いが解かれ、真の記憶が開放される…。

 

 

そして悲鳴の迷宮は光に包まれた…。

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

「王子ベクター様は『運命の日』にお生まれになった!!平和の象徴…神の生まれ変わりである─!!」

 

「「「「うおおぉぉ!!」」」」

 

ベクターの生誕…それは全ての国民に祝福されていた。

屈強な体を持つ父たる国王、そしてたおやかで優しい王妃たる母の腕の中でベクターは可愛らしい笑顔を浮かべていた…。

 

 

『フン…()()か…くだらん…!!』

 

 

 

『富と権力は力で奪い取るモノ…!進め!敵国を滅ぼせ─!!』

国王は強欲で残酷な男だった、戦いに狂い…無辜の民を容赦なく蹂躪する事に歓びを感じる最悪の王だった。

 

 

しかし、その治世は長くは続かない…激戦に次ぐ激戦により、国王は病に倒れたのだ。

 

 

 

『…王はもう、起き上がる事はできません……いま、この国を救えるのは…貴方だけなのです…!頼みましたよ…ベクター…!』

 

「はい…!母上!!」

 

 

 

「みなさん!私は争いを好みません!!この国の人々が幸福に暮らせるように…私は心から願っています!!みなさん…共に、未来を築いていきましょう!!」

 

 

「「「ベクター王子バンザーイ!バンザーイ!!」」」

 

成長したベクターは心優しき青年になった…父王の進めた侵略政策を撤廃し、他の国々と手を取る道を選んだ。

 

 

しかし…

 

 

 

『ふざけるなベクター!!っぐ……敵国と和議を結んだだと!?』

 

「はい…!」

 

『ふざけるな…もう少しで攻め落とせたものを…!!』

 

「父上!私はもう、国民が傷つく姿を見たくはないのです!!」

病床の王はベクターの政策を許さなかった、病身を押して王はベクターに掴みかかる!

 

 

『黙れベクター…!何故、何故この俺から平和の象徴などと言う()()()()()が生まれた!!貴様は我が栄光を地に貶した…()()()()だ!!死ね…死んでしまえ─!!』

 

「父上っ!?」

王はベクターの差していた剣を奪い、我が子へと斬りかかる!!

 

 

 

ザン!!

 

 

 

『あっ…』

 

「母上!!」

 

『王、よ…我が子を手にかける、など…なりま、せぬ…!』

凶刃が切り裂いたのはベクターを庇った王妃だった…崩れ落ちる王妃をベクターが抱きかかえるが…。

 

 

ドクン!!

 

 

『っぐ!?ご、は……──』

 

「父上!?は、母上!?」

心労が祟り、王は斃れ…母も失意のうちに命を落とした…ベクターは一度に両親を失ったのだ…。

 

 

 

【ベクターよ…】

 

「だ、誰だ!?」

両親を失い動揺するベクター…その背後に黒衣を纏う男が現れる…!

 

 

【お前は悲劇の王子ではない…『狂気の王子』となる…!】

 

「う、あ…!?」

黒衣の男は姿を変え、巨大な悪魔…ドン・サウザンドの影を映し出す…!

 

 

貴様にもこの王と同じ()()()()()が流れている…それを呼び覚まし、我が野望の力となるのだ!!

 

「ああ…!?うわああああああ!!」

ドン・サウザンドはベクターの胸にオーバーハンドレットナンバーズを押し込む、そして…記憶を書き換えられ、血に宿る『暴虐の王』の血が…ベクターを新たな悪魔へと変えた…。

 

 

 

「オレは、父と母を殺した残虐の王子…この世界を、血の海に変える為に──」

 

 

それが卑劣にして残虐なる王・ベクターの誕生の瞬間だった…。

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

「これが、ベクターの…本当の記憶…!?」

 

(彼もまた、他の七皇と同じくドン・サウザンドに操られていた…)

 

『………』

ナンバーズの共鳴によってベクターの記憶を垣間見た遊馬達は言葉を失う、ドン・サウザンドによって歪められたベクターの過去は…あまりにも救いがないものだった…。

 

『馬鹿な、今のが…オレが人間だった時の…!?それじゃあ、嘘だったのか!?オレが両親を手にかけた事は!?』

開放された記憶を見たベクターは今までにない動揺を見せる…。

 

 

『オレは…オレは!!出て来い!ドン・サウザンド!!』

 

どうやら…お前も真実に気が付いたようだな?

 

『貴様…貴様!オレを騙していたのか!!』

ベクターの声に応えるようにドン・サウザンドが現れる…彼は真実を知ったベクターをあざ笑う…!

 

 

『ああ…あああ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!』

 

「ベクター…っ…ドン・サウザンド!!テメェの、テメェのせいで!ベクターの心は壊れちまったんだ!!あんな思いをしたら…あたりまえじゃねぇかぁ!!」

過去を思い出し後悔と悲しみで絶叫するベクター…その様子をみた遊馬がドン・サウザンドへと怒りを露わにする…。

 

もし、ドン・サウザンドによる洗脳がなければ…きっとベクターは両親の死を乗り越え『善い王』になっただろう。

…だが、その未来は存在しない…全てはドン・サウザンドの陰謀により、悲劇へと変わってしまったのだ…。

 

「ベクター!!お前は元々は心の優しい奴だったんだよ!…オレの前に現れた『真月零』…あれが、お前の本当の姿なんだ!!」

 

『真月…真月としてのオレが、本当の姿…?』

遊馬はベクターに叫ぶ…お節介焼きで底抜けに明るかった『真月零』…それは、ドン・サウザンドに洗脳される前のベクターの性格にそっくりだった。

ベクターが真月としての演技をしていた時は…当然、ドン・サウザンドの干渉があった事は知る由もない…邪悪なるベクターの奥底に、『真月零』(生前の善性)は僅かに残っていたのだ…。

 

 

九十九遊馬、ベクターはまさに()()()だったのだ…!純粋であればあるほど、その反動で生まれる()は深い…強きバリアンとして生まれ変わる為にな…!!

 

「お前が記憶を捻じ曲げなきゃ、ベクターは優しい王子だったんだ!!」

 

だが、この男の残虐非道な行ないは事実…それは消せるものではない!!

 

『………』

 

『そうだ…オレがやった罪は、消えない…』

強きバリアンへと転生させる為に、ベクターの運命を捻じ曲げたドン・サウザンドに遊馬は叫ぶ…だが、ドン・サウザンドの言葉通り…犯した罪は消える事はない。

 

 

「ベクター!そんなの、()()()()()()()

!!」

 

「そうよ…!過去は消せなくても、()()()()()()()()()()のよ!!」

しかし、遊馬と小鳥は知っている…過去は変えられずとも、人間は未来を変える事ができるのだと…罪を背負い、それを償う為に生きていけるのだと…!

 

 

『……ありがとう、遊馬…小鳥…でも、オレに…未来なんて有ってはいけない…!キミ達やナッシュを…ここまで苦しめてしまった…オレに…!!』

 

『………』

遊馬と小鳥の言葉を聞いたベクターはナッシュに向き直る…その瞳に、強い覚悟を宿して…。

 

『罠カード発動!「エクシーズ・ディスチャージ」!このカードは、相手が手札を1枚捨てる事で…自分のフィールドにいる、全てのエクシーズモンスターのコントロールを相手に渡す事ができる!!』

 

『なんだと…?』

 

なっ…!?どういうつもりだベクター!!

ベクターが発動したのは、自滅をもたらすカード…その様子を見たナッシュとドン・サウザンドは困惑する…。

 

 

『…ナッシュ、これはオレの償いだ…!そのモンスターを使って、オレにトドメを刺せ!オレに宿るドン・サウザンド諸共に!!』

 

べ、ベクター!!貴様─!?

 

「『っ…!』」

 

(ベクター!キミは…共に消えるつもりか!?)

 

「よ、よせ!ベクター!!」

ベクターはその身を差し出す…全ては、全てのバリアンの運命を狂わせたドン・サウザンドを葬り…罪を償う為に…!

 

 

「頼む、ナッシュ…オレの汚れきった過去と共に…消し去ってくれ!!」

 

させぬ…させぬぞ─!!

遊馬達は知らぬ事だが、ドン・サウザンドはベクターの心臓を依代として復活している…つまり、今のベクターが命を落とせば…それはドン・サウザンドの「死」にも繋がる。

ドン・サウザンドは妨害する為にベクターに巨大な手を伸ばすが…!

 

 

『ハッ!!』

 

ぬっ…小癪な真似を!?

ベクターは自身の体をカオスの結界で囲み、干渉を阻む!

 

『早く…オレが、コイツを押さえ込んで、いるうちに!!ナッシュ!頼む!!』

 

『……わかった!』

 

「シャーク!?」

ベクターの命を賭けた請願…ナッシュはバリアンの王として、その願いに応える…!

 

 

『「エクシーズディスチャージ」の効果により、手札の「ドリーム・シャーク」を墓地に送り!「ラグナインフィニティ」と「ノーブルデーモン」のコントロールを得る!!』

ナッシュのフィールドに3体のナンバーズが並び立つ!

 

 

「待ってくれ!シャーク!!ベクターは、真月は!!」

 

『遊馬、もう…コレしかないんだ!!やれぇ!!ナッシュ─!!

 

『「ラグナインフィニティ」で…ベクターへ!ダイレクトアタック!!』

それは決着の一撃、遊馬の制止を聞かず…ナッシュは神殺しの鎌を振り上げる─!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【罠発動!!『トリック・バスター』!このカードは相手フィールドにだけモンスターがいる時に相手がダイレクトアタックしてきた時!その攻撃を無効にし、相手フィールドのモンスターを全て破壊する!!】

 

 

 

 

『っ…!』

 

「えっ…!?」

 

【消えろ!!】

…それは一瞬の事だった、無抵抗の姿勢だったベクターが罠カードを発動…ナッシュの場のモンスターが全て破壊される。

 

その時、ベクターの表情は…狂喜に歪んでいた…!

 

 

 

ギャヒャハハハはははハハハ!!引っ掛かった!引っ掛かったな!!アヒャはははハハハ!!

 

「どういう、事だ…!?ベクター、まさか!?」

 

【キヒッ…どうもこうもあるかよ!!見た通りさ!みんな!オレ様の()()()に引っ掛かったのさ!!馬鹿な奴らめ!お前らはどうしようもない甘ちゃんばっかりだ!!あははははは!!】

 

「べ、ベクタァァァァ!!」

ベクターは改心した訳ではなかった…むしろ、その逆…自分の真実の記憶すらも利用して、再び遊馬達を…この場の全員を騙したのだ…

 

 

【ナッシュ、今からお仲間の所に送ってやるよ…だぁが、その前に……邪魔な()とやらを始末するか!!】

 

どういう意味だ、ベクター…!

ナッシュを罠に嵌めたベクターはドン・サウザンドへと向き直る。

 

 

【オレはと〜っくに()()()()()のさ、お前が!オレの過去を改竄した事に!!】

 

「それじゃあ、私達にしてきた事は…あなたが望んで…!!」

 

ああ…!オレは、お前らが苦しむ姿を見るのが…たまらなく楽しいンだよぉぉ!!

 

「そん、な…!」

小鳥の言葉にベクターは狂気の笑顔で答える…自身の真実を知った上で、ベクターは血に宿る「残虐」の宿命に従い…悪行を為してきたのだ…!

 

 

【ただなぁ…オレの記憶をイジってたテメェには…ムカついてんだよ…!!】

 

ベクター…!貴様は我には刃向かえないはず…!?

 

【うるせぇ…!!今じゃ、七皇の力を奪ったオレ様の方が!テメェより力は上なんだよぉぉ!!】

 

 

ギィン─! ゴウッ!!

 

 

ぐっ…!?ぐあああ!!オノレ、ベクター!!これ程までの力をぉおぉおぉおぉお!?

再びランパントバリアン体になったベクターはカオスの黒炎でドン・サウザンドを包み込む…!

 

 

べ、ベクタァァァぁぁぁ…!!

 

 

(ドン・サウザンドを、葬った…のか…!?)

怨嗟の断末魔と共にドン・サウザンドは焼失…アストラルは規格外の力を得たベクターに戦慄する…!

 

 

 

【さぁて、ナッシュ…次はテメェだ!『トリックバスター』のさらなる効果!破壊したモンスター1体につき300ダメージ…つまり、900ダメージを相手に与える!!あばよぉ!ナッシュ─!!】

 

「っ!シャーク!!」

ドン・サウザンドを始末したベクターはナッシュに引導を渡す一撃を放つ!

 

 

『「ドリームシャーク」の効果発動!効果ダメージを無効にし、墓地のこのカードを守備表示で特殊召喚する!!』

 

 

【なにっ!?】

墓地から現れた虹色の光を纏う鮫が効果ダメージを打ち消した!

 

 

【テメェ…オレを信じたんじゃなかったのか!?】

 

『信じる?…そんな感情、既に捨てたさ……あの人と決別した時に…!!』

 

「シャーク…」

ナッシュは既に『信頼』という感情を捨てていた…もとより、ナッシュから全てを奪ったベクターに対し…ナッシュが抱くのは『滅殺』の二文字だけだった…!

 

『俺は、カードを2枚伏せターンエンド!!』

 

 

【ぐっ…テメェ…!許さねェ…見せてやるぜ!!オレの本当の力を!!】

渾身の策を回避されたベクターは最後の作戦を…全ての力を解き放つ!!

 

 

 

 

【オレのターン!ドロー!】

【いくぜぇ…!!『RUM-千死蛮巧(アドマイヤー・デス・サウザンド)』発動!!】

ベクターの奥の手…それは新たな『RUM』の発動だった!

 

 

【このカードはお互いの墓地から同じランクのカオスナンバーズを必要な数だけ選び、そのモンスターが持つランクより1つ上のレベルを得て蘇る!!蘇れ!『ダークナイト』!『ノーブルデーモン』!『ラグナインフィニティ』!『アンブラル』!】

 

『っ…!?』

ベクターのフィールドに4体のカオスオーバーハンドレットナンバーズが並び立つ!

 

 

【さらに!この4体を使って、エクシーズ召喚できる!!オレはレベル6となった4体のカオスオーバーハンドレットナンバーズでオーバーレイ!ダイレクト・カオスエクシーズチェンジ!!】

 

「「『なんだって!?』」」

それは規格外の4体のエクシーズモンスターを使ったエクシーズ召喚…数多のナンバーズを駆使してきたベクターは切り札を解き放つ!

 

 

05 

 

 

【現われろ!『CNo.5』!混沌なる世界の亡者ども!今その魂を1つに融かし、混濁とした世界に降臨せよ!『亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン』!】

現れたのは赤紫色の鱗を持ち、胸部に4色の宝玉を持つ巨大なドラゴン……否、亡者の力を秘めたドラゴンゾンビだった…! 

 

 

 

【見ろよぉ…!ナッシュ!コイツはお前の大切なお仲間をカオスの力で1つにさせた姿だ!!】

 

『くっ…!!』

ベクターの言葉にナッシュは禍々しいドラゴンの姿に失った仲間達の姿を重ね見る…。

 

 

【さぁ、いくぜぇ!!『カオスキマイラドラゴン』の攻撃力は自身のカオスORU1つにつき1000アップする!つまり、攻撃力4000!だが…このモンスターは通常攻撃ができねぇが…カオスORUを1つ使い、さらに相手のデッキのカード1枚をランダムに除外する事で攻撃できる!!攻撃力は下がるが…お前のライフはたった100!これで事足りる!!まずは『ドリームシャーク』を攻撃!!】

 

『「ドリームシャーク」の効果発動!1ターンに1度、2600の守備力を1000下げる事でバトルによる破壊を無効にする!!』

虹色の鮫が破壊の息吹を受け止める!

 

 

【くっ…!まだまだぁ!『カオスキマイラドラゴン』の効果発動!カオスORUを使い、再び攻撃!!】

 

『くっ…!戦闘破壊された『ドリームシャーク』は除外される!』

2度の攻防の末、ドリームシャークは粉砕される…だが、カオスキマイラドラゴンにはまだORUが2つ残っている!!

 

 

【これでお前のモンスターはいなくなった…!再び『カオスキマイラドラゴン』の効果発動!カオスORUを1つ使い、相手のデッキをランダムに除外して攻撃!だが…相手にダイレクトアタックする時、攻撃力は半分になる!だが…500あれば充分だ!!楽しませてくれてありがとよ…!お前は最高のオモチャだったが…もう目障りなだけだ!!じゃあな…!ナッシュ!!】

 

「シャーク!!」

カオスキマイラドラゴンが破滅の光を放つ!!

 

 

『目障り…ああ、俺もだよ…!!罠発動!「デプス・ガードナー」!自分がダイレクトアタックを受ける時、戦闘ダメージを0にし!さらにその数値と同じ攻撃力を持つレベル5のモンスターとして、このカードを特殊召喚する!』

それは最後の一手、巨大なアンモナイトがダメージを受け止める!

 

 

【ぐぅう…!!ナッシュ、しつこいんだよ!!しつけぇ!しつけぇ!!しつけぇ!!!『カオスキマイラドラゴン』のさらなる効果!バトル終了時!除外した相手のカードを全てデッキトップに戻す!!除外したカードは3枚だ!】

カオスキマイラドラゴンが除外したカードを異次元からナッシュの手元へと送還する…。

 

 

【キヒッ…オレはカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!!】

 

『(何故、除外したカードを戻した…?そしてベクターの笑み……気になるが、やるしかねぇ…!)』

不敵な笑みを浮かべるベクター…ナッシュはそれを気にかけながら、最後の攻勢を仕掛ける!

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!…よし…!』

ナッシュがドローしたのはデッキに戻された魔法カード『アクアジェット』…手札のモンスターと組み合わせれば、ベクターの残りライフ1000を削りきる事ができる…!

 

 

『ベクター、貴様自身が戻したこのカードで…お前の息の根を止めてやる!!』

 

【悪いナァ…!それは()()だ!『カオスキマイラドラゴン』の効果で除外されたカードは…このデュエル中は使用できない!】

 

『なんだと!?』

冥界の冷気によって手札の『アクアジェット』、さらにデッキトップから2枚が凍りつく…!

 

 

(不味いぞ…!?これでシャークのドローは3回封じられた事になる!!)

 

【さらに!『カオスキマイラドラゴン』の最後の効果発動!オレのライフを半分にする事で、前のターンに墓地へ送ったORUを全て復活させる!これで攻撃力は再び4000だ!!】

それはダメ押しの一手…ドローを封じられ、切り札の『ダークナイト』も奪われた…ナッシュに残された手段は…。

 

 

【今度こそ…本当の終わりだぁぁ!!】

 

 

 

 

 

『どうやら…皮肉にも、()()()俺を助けてくれたようだぜ!』

 

 

【なにっ…!?】

勝ち誇るベクター…だが、ナッシュはまだ終わってはいなかった…!

 

 

『魔法カード「インフィニティ・トゥース」を発動!相手モンスターの持つORUの数だけ、デッキトップからカードを墓地へ送り!さらに1枚ドローする!!』

 

【使えないカードを、処理しやがった!?】

 

 

『いくぞ…!バリアンズ・カオス・ドロー!!

それは勝利を掴み取る混沌の1枚…ナッシュの『勝利の方程式』は…ここに完成した。

 

 

『手札の「デプス・バイター」は相手の場にエクシーズモンスターがいる時、リリース無しで召喚できる!…俺はレベル5の「デプスバイター」と「デプスガードナー」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!』

全てを奪われたかに見えたナッシュ…しかし、彼には最強・最後の守護神が残されていた!

 

 

73

 

 

『いでよ!「No.73」!「激瀧神アビス・スプラッシュ」!!』

ナッシュを守護せし、大海の神がベクターの前に現れる!!

 

 

『「アビススプラッシュ」の効果発動!ORUを1つ使い、バトルが終わるまで、自身の攻撃力を倍にする!!』

ORUを取り込んだアビススプラッシュの攻撃力は4800、ベクターのライフを削りきる事ができる!

 

 

『バトルだ!「アビススプラッシュ」で「カオスキマイラドラゴン」を攻撃!!』

 

【甘え…甘いんだよ!!お前は!!罠発動!『オーバーレイ・バーグラリ』!自分のエクシーズモンスターが相手エクシーズモンスターてバトルする時、そのモンスターのORU1つを自分のものにする!これで『カオスキマイラドラゴン』の攻撃力は5000!!ORUを全て使っていればオメェの勝ちだったのになぁ!!あばよ!ナッシュ!!】

ナッシュの最後の勝ち目を潰し、勝利を確信するベクター…だが…。

 

 

『終わるのは…貴様だ!!』

 

【なにっ…!】

 

『速攻魔法「RUM-クイック・カオス」発動!!』

 

【速攻魔法の『RUM』だとぉぉ!?!?】

ナッシュは決めていた…ベクターの策を全て潰し、真正面から打ち破る事を…バリアンズ・カオス・ドローで創造されたこのカードが…その答えだった…!

 

 

『このカードは自分フィールドのエクシーズモンスターをカオス化し、ランクアップさせる!カオスエクシーズチェンジィィ!!』

混沌を浄化する神は…混沌をその身に宿し、罪人に裁きを下す荒ぶる神となる!!

 

 

73

 

 

現れろ…!「CNo.73」!渦巻く混沌の水流を突き破り、いま!彼の地へ浮上せよ!!「激瀧瀑神アビス・スープラ」!!

全てを飲み込む荒ぶる海の中より混沌を宿す海神が轟臨する!

 

 

『コイツが、お前を闇へと葬る…!『アビススープラ』で『カオスキマイラドラゴン』を攻撃!!』

 

【攻撃力3000程度…返り討ちだァァァ!】

 

『「アビススープラ」の効果発動!このモンスターがバトルする時!カオスORUを1つ使い!相手モンスターの攻撃力を、自身に加える!!』

 

【攻撃力、8000だと…!?】

荒ぶる海は全てを飲み込む…大いなる大自然の力を前には、全ての策略は…無意味となる…!

 

 

 

『ベクター…今こそ、光なき闇へと…その悪しき魂を抱えて落ちるがいい!!』

 

 

て、テメェェ!!ナッシュゥゥ!!!

 

 

砕け散れ!!ベクタァァァ─!!』

 

 

 

 

それは大自然の裁き

 

 

 

 

その赤雷は決別の一撃

 

 

 

 

三叉槍に込められたナッシュの怒りが亡朧龍の胸を貫く

 

 

 

 

数千年に渡るナッシュとベクターの因縁は…此処に決着した。

 

 

 

 

 

【馬鹿な、オレが…オレが…負ける、だと…!?】

 

 

 

 

 

ベクター LP0

 

 

 

 

 

 

「(ギラグ…アリト…ドルベ…メラグ…父さん、母さん……仇は、取ったぜ)」

 

 

 

 

 

ナッシュ WIN

 

 

 

 



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混沌の淵源─邪神復活─

こんにちは!S,Kです!

ついにベクターを打倒し、長年の因縁を精算したナッシュ…だが、本当の戦いはこれからだった…!


それでは、最新話をどうぞ!


バリアン世界でのナッシュとベクターの決着と同じ頃、人間界では……。

 

 

……… 

 

 

『あちらは決着がついたようだけど……ああ、やっぱり……()があれくらいで斃れるはずはないよねぇ…キミの方がよっぽどの()()だよ』

 

 

ハートランドシティの海浜地区…名無しの怪物(ネームレス)を迎撃する為に遊海と翠、十代と瀬人、さらにチーム5D'sとイリアステル連合、そしてアストラル世界から駆け付けたシラナミユウミ(ラプラス)とZ-ONEが激戦を繰り広げたその場所は…束の間の穏やかな時間が流れていた。

 

 

ネームレス…破滅の未来の『シラナミミドリ』は翠と流星・海亜の援護を受けたラプラスにより浄化され、アキや十代を始めとした精霊使いが負傷した者や精霊達の治療を…そして遊星とZ-ONEが大破したデュエルロイド達の応急修理を行なっている。

 

 

そんな中、理想郷から駆け付けた花の魔術師・マーリンは寝かされた2()()を前に座り込んでいた。

 

一人はネームレスの弱点である『不死殺しの鎌』を振るう際に髪蛇の奇襲を受け…手の施しようのない傷を負った翠。

 

そして、もう一人は…物言わぬ石像へ変えられてしまった遊海、たび重なる負傷や魂へのダメージにより、本来の力を発揮できなくなっていた遊海はネームレスを倒す為に精神世界で捨て身の決闘を仕掛けた末に……。

 

 

おそらくは…もう目を覚まさないであろう2人を見守りながら、マーリンはその身に宿す『世界全ての「現在」を見通す』千里眼の力を使い、バリアン世界でのナッシュとベクターの戦いの決着を視た…そして、これから()()()()()()()戦いをも予見していた…。

 

 

 

《フォウ、フォーウ!》

 

『ん…何が視えたのかって?……哀れな悪党の最期と…邪神の復活さ…もうじき、バリアン世界と人間世界が完全に融合して、この場にいる人間は…融合の負荷に耐えられず()()するだろう』

 

《フォッ…!?》

マーリンの能力を知るフォウが状況を尋ねるが…これから起きる事態を知り驚愕してしまう。

 

 

《フォウ!フォウ!?》

 

『どうにもならないよ、バリアンの科学を使うDr.フェイカーのいる塔まで行けば助かるだろうけど…そんな時間はない、心配しなくとも痛みは無い…突然眠りに落ちるようなものさ…その方が彼らの為でもある』

これから起きる最悪の事態をマーリンは他人事のように語る…否、()()()()()()…彼は感情を持つ『人』ではないのだから…。

 

 

《ッ〜!!マーリンシスベシフォーウ!!》

 

『ブハァっ!?キャスパリーグ!前より力強くなってないかい!?』

あまりにも薄情な態度のマーリンに対し、コンテナに駆け上がったフォウがスピンダイレクトアタックをお見舞いする…マーリンは頬に肉球の形に痣を付けながら倒れ込む…。

 

 

 

『アタタ…もう私達が出来る事はないよ、これで人間界とアストラル世界が滅ぼされるのか…それとも、遊馬君とアストラル…そして凌牙君が絶望を希望に変えるのか…全ては彼らに託された、私はそれを見守るだけさ』

 

《……フォウ、フォウ!!》

 

『戦いを見届けたい?…キャスパリーグ、それがどういう意味か()()()()()のかい?あの邪神はキミがもっとも嫌うタイプの相手だろう?』

 

《…フォウ、フォーウ》

 

『……なら、好きにするといい…座標は教えてあげよう、キミは見極めたいんだね…「人」というものを…』

 

「……う、ん……」

 

『おや…翠が目を覚ましそうだ、行くのは…彼女達が『眠る』のを見届けてからにしなさい、キャスパリーグ』

 

《…フォウ》

小さな獣は…静かに紅い空を見上げた…。

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

ナッシュ WIN!

 

 

 

『ば、馬鹿な…この、オレが、負けた…だと…?』

 

 

「や、やった…!!シャークが勝った!!」

バリアン世界にナッシュの勝利を知らせるブザーが鳴り響く…仲間である七皇をも欺き、悪行を為し続けたベクターは三度…因縁の相手であるナッシュに敗れたのだ…。

 

 

 

『…あの時と同じだ、ベクター』

 

『なんだ、とぉ…!』

 

『かつて、この場所で対決した時も…』

ナッシュは哀れみを込めた目で倒れ伏したベクターに言葉を告げる…それは『前世』におけるベクターの最期についてだった。

 

 

『あの時、お前は再びデュエルで負けた…そして、お前が殺め…怨みと憎しみを持ってこの世を彷徨う亡者達と共に…地獄に堕ちた』

それは残虐なる王の末路、遺跡の伝説では自ら命を断ったと記されていたが…真実は違う。

 

自分の国へと乗り込んで来たナッシュとベクターは再び闇の決闘を繰り広げた…そして再びベクターはナッシュに敗北、闇の決闘の代償と自身の犯した罪により自らが殺めた人々の亡霊に取り殺されていたのだ…。

 

 

 

『ふ、ふざけるな…オレは…っ!?』

 

 

ベクター…ベクター…ベクター…!!

 

 

「な、なんだぁ!?」

 

「ひっ…!?」

負けを認めないベクター…その体に纏わりつくように、無数の亡霊が現れる。

この場所はベクターの居城・悲鳴の迷宮…その場所は今もなお璃緒をして「やばい」と言わしめた危険地帯……数百、数千年を経てもなお…亡者達はベクターへの恨みを抱き、復讐の時を待っていたのだ…!

 

 

『ヒッ…!?やめ、やめろぉぉ!?』

 

『いつの世も悪は…己の力に溺れ、身を滅ぼす』

現世へ蘇ったベクターを再び冥府へと堕とさんとする亡霊達…ナッシュは鋭い目でベクターの歩む末路を見届ける…。

 

 

『っ…!!あの時と、一緒にするんじゃねぇよ!!ナッシュゥゥ!!』

 

ギィン!!

 

 

ウオアアアア…!?

 

 

「っ…!亡霊が!!」

 

(ベクターめ…!負けてなお、これ程の力を…!)

しかし、ベクターはまだ終わらない…デュエルで致命的なダメージを負ってなお、その身に宿る七皇4人分のカオスの力は凄まじく、亡霊達の思念が消し飛ばされる…!

 

 

『今のオレは七皇とドン・サウザンドすらも超えた存在…!オレが消えるなら、お前達も道連れだァァァ!!』

 

ゴゴゴゴゴゴ!!

 

『まだ、こんな力を!?』

ベクターはさらにカオスを開放…悲鳴の迷宮をバリアン世界の空へ浮上させる…遊馬達を道連れにするつもりなのだ…!

 

 

『これがオレの力だ!!神となったオレ様の─!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

勘違いするな、ベクター…これは…()()()()ではない…!

 

 

 

ドン!!

 

 

『ど、ドン・サウザンド!?』

狂喜の高笑いを上げるベクター…その声を遮るように、地の底から響くような声が響く…そしてバリアン世界の大地から死んだと思われたドン・サウザンドが数十メートルの巨人となって現れた!!

 

 

『き、貴様…オレに焼き殺されたはず…!?』

 

愚かなベクター…我があの程度でやられると思っていたのか?全ては…この期が来るのを待っていたのだ…!

ベクターによって焼き尽くされたかに思われたドン・サウザンド…だが、それは彼の演技…全てはベクターの敗北を見越したものだったのだ。

 

時は満ちた…ベクター、お前はもう用済みだ…その力…全て、我が貰うぞ!!

 

 

ギィン! 

 

 

『くっ!!吸い込まれる!?』

 

「うあっ!?」

 

「な、なんなの─!?」

ドン・サウザンドの腹部の瞳が妖しい輝きを放ち、バキュームのような凄まじい吸引を行ない始める…ナッシュや遊馬達は咄嗟にしゃがみ込む事で強風に耐える…だが…。

 

 

『ひ、ひぃぃ!?やめろ、やめろぉぉ!!やだ…やだやだやだぁぁ!!』

 

「ベクター!!」

立ち位置的にもっともドン・サウザンドに近く、さらに大ダメージを受けていたベクターは吸引に抗う事ができない…咄嗟に床の割れ目に指を掛けたが…少しずつずり落ちていく…!

 

 

『やだ!オレは…オレはこんなとこで死にたくねぇぇ!!!

情けない悲鳴を上げながら必死にしがみつくベクター…それは散々悪事を重ねてきたベクターに相応しい末路なのだろう。

 

 

…だが、それを認めない男が…此処にいた…!0500

 

 

 

ズリッ…!

 

 

『う、うわあああああ!!?』

ついに握力の限界を迎えたベクターが空中に浮き上がる、そしてドン・サウザンドに向かって引き寄せられ……。

 

 

 

 

「かっとビングだ!オレぇぇーっ!!」

 

 

ガシッ!!

 

 

「大丈夫か!?しっかりしろ!手を、離すな─!!」

 

『ゆ、遊馬…!?』

 

『遊馬!?お前!何してやがる─!?』

吸い込まれかけたベクターを救ったのは…遊馬だった、あまりに突然の行動にアストラルや小鳥も止める間もなく、遊馬はベクターを助けに向かっていたのだ…。

 

 

フッフッフッ…敵であるベクターを助けるか?九十九遊馬…!

 

「だ、ダメよ!遊馬!!」

 

(キミまで吸い込まれてしまうぞ─!!)

 

「だ、だからって…見殺しになんて、できるかよぉぉ!!」

敵にも救いの手を伸ばす遊馬をドン・サウザンドはあざ笑う…『デュエルをすれば、みんな仲間になれる』…遊馬のその思いはベクターに対しても変わっていなかった…。

 

 

『っ…!!やめろ!遊馬!!そいつに…ベクターに()()()()!!助けても、また裏切るだけだ─!!』

遊馬の無謀な行動にナッシュは…凌牙は思わず叫ぶ。

 

ベクターはドン・サウザンドの洗脳を受けていたとはいえ、前世で悪逆を為し…バリアンに転生してからもナッシュやメラグを害し、Dr.フェイカーやトロンを操り…さらに、偽名を名乗って遊馬の仲間をフリをして裏切り…ついには七皇を崩壊させた。

 

ベクターに()()()は無い…存在した善性は…彼方へと消え去った…。

 

 

 

「だったら…だったら!()()1()()()()()!!」

 

(「『っ!?』」)

 

「心が無いんだったら、心ができるまで!オレは、信じる!!それがオレの…かっとビングだ─!!

だが…遊馬は未だにベクターを信じていた…それは悲劇の前世を見たからではない。

 

遊馬は…()()()()()()()を信じていた。

 

 

「ベクター!お前にだって、良い心はある…!お前が『真月』だった時だ!!いつも陽気で…いらないお節介して…でも、オレもみんなも!お前が大好きだった!!仲間だったんだ!!」

 

『っ…!?』

ベクターは遊馬を騙し、信頼を得る為に『真月零』を名乗ってハートランドへと潜入した。

 

そこで遊馬に取り入る為に『正義感を持っていて、お節介焼きで世話好きだが空回りしてしまう』性格を演じていた、ベクターはそれによって遊馬やナンバーズクラブの面々から信頼を得た…それこそ、真月が拐われた際にナンバーズクラブ全員が助けに向かう程に…。

 

しかし…存外、演技を()()()()というのは難しい、それこそ仲間であるバリアン七皇や部下であったアゴールを見てしまえば危うく本性を出してしまう時もあった。

それでも…ベクターは『真月零』を裏切りの時まで演じ続ける事が出来た、それは何故か?

 

 

それは…例え、下心があったとしても…ベクターが『真月零』を演じる事が心地良かったからに他ならない。

 

 

そうでなければ、いくら我慢強い人物でもボロを出さずに遊馬達を騙す事はできない…それはベクターが『善性』を持っている証左でもある…!

 

 

「お前の本当の姿は、()()()なんだ…!!」

 

『オレは…真月…?』

 

「そうだ…お前は真月だ!!だから…オレとやり直そう!遊海だって、お前の事をきっと許してくれる!シャークとも話し合う!!だから…一緒に行こうぜ、真月!!」

遊馬はベクターの中の善性…『真月零』を信じた、故に…遊馬は手を伸ばしたのだ…。

 

 

 

 

『…遊馬、クン…なら、ならさぁ……オレと道連れになってくれよぉぉ!!オレと一緒に逝ってくれよ!遊馬ぁぁ!!

 

(遊馬!!)

しかし、ベクターはブレなかった…遊馬を道連れにしようと遊馬の腕をしっかり掴んだのだ…!

 

 

ぎゃひゃははははは!!さぁ、コッチに来いよぉ!!ハハハハハ!!はは、は…?』

遊馬をあざ笑い、狂気に顔を歪ませるベクター…しかし、()()()()を見たベクターは自身の目を疑った。

 

 

「……()()()()()()…!真月…お前を一人になんてしない…!」

 

『はっ…?』

遊馬は()()()()()、その目に恐怖の涙を溜めながらも…ベクターを安心させるように笑っていたのだ。

 

 

「お前は、オレが…守ってやる…!!」

 

 

ピチョン…

 

 

『……ゆう、ま…』

風に飛ばされた遊馬の涙がベクターの頬に触れる、その時…ベクターは思い出した。

 

 

初対面の自分を『仲間』だと言った遊馬の顔を

 

 

ギラグに追い詰められながらも、真月の為を守るデュエルをした姿を

 

 

わざと犬に襲われたり、怪我をしやすいルートを通って学園に向かった後に『次はなんとかなる!』と笑った顔を…。

 

 

 

『はぁ……本当に、嫌になる…』

 

「真月…!?」

ベクターは遊馬を掴んでいた片手を静かに離す。

 

 

『とんだお人好しだ…バカバカしい……キミなんて、道連れにできないよ…』

 

「お、おい!?」

ベクターは穏やかな口調で遊馬を貶す…そこに先程までの狂気は無かった。

 

 

『さよならだ…遊馬()

ベクター…否、遊馬の友・真月は静かに手を離す…そして穏やかな笑みを浮かべたまま、ドン・サウザンドの中に消えていく…。

 

 

「真月…!真月ぅぅ─!!」

 

悪逆非道を為し、全てを欺き続けたベクター…混沌と狂気に歪められたその魂は…ようやく()()を得たのだ。

 

 

「うああっ…!!あ"あ"あ"あ"あ"!!」

だが、真月を救えなかった遊馬は…悲しみのままに叫ぶしかなかった…。

 

 

 

 

ククク…これで、ベクターの力は我のモノ…!

ベクターを吸収し、七皇5人分のカオスを得たドン・サウザンド…その悪魔のような体が少しずつひび割れていく…!

 

 

「っ…!!許さねぇ…!絶対に許さねぇ!!ドン・サウザンドォォ!!」

 

愚かな…!!

 

ズン!!

 

「ぐっ…!?うわあああっ!!」

ドン・サウザンドへと憤怒の叫びを上げる遊馬…だが、ドン・サウザンドは凄まじいエネルギーの開放で遊馬を吹き飛ばした!

 

 

我は力を取り戻した…!見るがよい…新たな世界の夜明けを─!!

 

「っ!?」

 

「こ、今度はなんなの!?」

ドン・サウザンドが眩い光に包まれる、それと共にバリアン世界を覆うように紅い光の洪水…否、蔦のようなモノが広がっていく…さらに変化は終わらない…!

 

ズズズ…ズンズン

 

 

『これは…!?』

大地から蓮の花に似た巨大な異形の花が出現…それと共に の蔦は加速度的に世界を覆い…!

 

 

 

我は既に…1()()()()()となった!!今まさに、地上世界とバリアン世界は完全に融合したのだ!!

光が収まった時、そこにドン・サウザンドは存在しなかった…そこに存在したのは一際巨大な異形の花の蕾、その中からドン・サウザンドの声が響く…!

 

 

さぁ、後ろを振り返るがいい…九十九遊馬…!

 

「つ…!?あれは…!」

 

『ハートランドシティ…!?』

ドン・サウザンドに言われるまま振り返った遊馬達が見たもの…それはバリアン世界と同じように異形の花に侵食されたハートランド…人間界の姿だった。

 

 

そうだ…お前達の住む地上世界だ、言ったはずだ…我は1つの世界になったのだと…!ふはははは…!

 

「くっ…!?あんなの、どうすれば…!」

蕾を明滅させながら邪悪な笑い声を響かせるドン・サウザンド…その時だった。

 

 

キィン─! ドーン!!

 

 

(この光は…!?)

遊馬達の前に落雷の如く光が落ちる、一瞬ドン・サウザンドの攻撃かと思ったが…それは違った。

 

 

「お前は…!」

 

『ミザエル!!』

 

『ナッシュ…九十九遊馬…』

光の正体…それは月面での死闘を終え、カイトに託されたヌメロン・コードの『鍵』を手に帰還したミザエルだった…!

 

 

 

「み、ミザエル…!カイトは!?カイトは、本当に…!」

 

『……ああ、カイトは私に勝利した後、力尽きた…「銀河眼」誕生の地で…!』

 

「そんなっ…!!」

遊馬はカイトの安否をミザエルに尋ねる…ミザエルから語られたのは、誇り高きドラゴン使いの死に様だった…。

 

 

『そしてカイトは…私に、このカードを託した…!』

 

「これは…『ヌメロン・ドラゴン』…?」

ミザエルは光輝く1枚のカードを遊馬に託す、そのカードの名は「No.100ヌメロン・ドラゴン」…しかし、読み取れるのは名前だけだった。

 

 

『カイトの形見、お前に託す…!』

 

「カイトの……でも、どうしてオレに…?」

ヌメロンドラゴンを自身に託したミザエルに遊馬は問いかける、ミザエルはバリアンの一人…託すのなら、ナッシュに渡すべきだろうと…。

 

 

『…カイトが託し、信じた未来…それがお前だった』

 

「ミザエル…」

ミザエルは七皇の使命よりも、誇り高き好敵手の遺志を尊重する事を選んだ…それがカイトに報いる事だと信じて。

 

 

『…ナッシュ、我ら七皇は人間であった時の記憶をドン・サウザンドに改竄され、バリアン世界に堕ちた…奴が復活する為の力となる為に…!ドン・サウザンドの作る未来に、()()()()()()()は…無い!!』

 

『っ…!?ミザエル!!』

ナッシュに自身が知った真実を伝えたミザエルは…ドン・サウザンドが変じた花の前に瞬間移動する…その目に強い覚悟を宿して…!

 

 

『手出しは無用!!…よく見ておくんだ…!私のデュエルを!!』

ミザエルはドン・サウザンドへと立ち向かう、自身の…七皇の運命を歪めた黒幕を倒す為に…!

 

 

 

ミザエル…バリアンの力を失いし身で、我に戦いを挑むか…神の力を取り戻した…この我に!!

 

「っ!?あれが、ドン・サウザンド!?」

 

『あれが…ドン・サウザンドの、真の姿…!?』

ミザエルを前にした蕾が脈動…光を放ちながら開花する。

 

その中から現れたのは彼らの知る悪魔のようなドン・サウザンドではない…そこにいたのは、アストラル世界人のように全身から光を放ち、額にカオスの宝玉が輝く偉丈夫の男…しかし、その長髪は体の輝きとは正反対に漆黒に染まり、二房の紅い前髪が妖しく靡いている…そして瞳は紅と青のオッドアイであり…胸にはドン・サウザンドを示す『紋章』が昏い輝きを放つ…。

 

さらに驚くべきなのは『声』…老獪な老人を思わせた声は、張りのある威厳を感じる声へと変化している…。

 

 

その威容は…まさに『神』そのものだった…!

 

 

『ドン・サウザンド…!いざ尋常に、勝負!!』

 

良かろう…お前も、我の糧としてやる

一瞬、ドン・サウザンドの覇気に圧倒されるミザエル…だが、僅かな恐怖を押し殺しドン・サウザンドに剣を向ける。

 

対してドン・サウザンドは余裕を感じさせる優雅な態度で邪悪な瞳のあしらわれたデュエルディスクを出現させる…!

 

復活したドン・サウザンド…ミザエルは友から託された想いを胸に立ち向かう!!

 

 

 

【『デュエル!』】

 

 

 

 

デュエルダイジェスト ミザエル対ドン・サウザンド

 

 

 

 

 

先攻は我が貰う…我のターン、ドロー!

先攻を得たのはドン・サウザンド…混沌の神の最初の一手は…。

 

 

我は…これで()()()()()()

 

『何もせず、ターンエンドだと!?』

ドン・サウザンドはドローのみでターンを終える…そのフィールドには伏せカードもモンスターも存在しない…!

 

 

さぁ、お前のターンだ…かかってくるがよい

  

『くっ…!!私の全身全霊を賭けたデュエル、受けて貰おう─!!』

予想外の一手に動揺するミザエル…しかし、彼の闘志は揺らがない!!

 

 

 

 

『私はレベル4の「防覇龍ヘリオスフィア」と半月龍ラディウスの2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!顕現せよ!「銀河影竜(ギャラクシー・ステルス・ドラゴン)」!』

切り札だった『銀河眼の時空竜』を失ったミザエルは新たなエクシーズモンスターを呼び出す…さらに展開はつづく!

 

『私は「銀河影竜」の効果発動!ORUを1つ使う事で手札からドラゴン族モンスターを特殊召喚できる!私は全てのORUを使い!「限界竜シュバルツシルト」「星間竜パーセク」を特殊召喚!』

 

 

「す、すごい!あっという間にドラゴンが3体も…!!」

 

「だけど、魔法カード『銀河逆鱗』の効果でこのターンの攻撃は封じられてる…!」

即座に3体のドラゴンを並べるミザエル…その攻撃力の合計は4800、十分にドン・サウザンドのライフを削りきる事ができるが…攻撃はできない…だが…!

 

 

(いいや…!)

 

『ミザエル…まさか…!』

アストラルとナッシュだけは…ミザエルの覚悟の意味に気付いていた…!

 

 

『ドン・サウザンド…見るがいい、これがドラゴン使い…最期の切り札!!魔法カード発動!「竜皇の崩御」!!このカードはフィールドのモンスターを全てリリースする事で発動する!そして…リリースしたモンスターの攻撃力分の合計分のダメージを…()()()()受ける!』

 

「ミザエル!お前…!?」

 

(ドン・サウザンドと刺し違えるつもりか!?)

それは全てを賭けた特攻…ドン・サウザンドが何かをする前にカタをつける、それがミザエルの選んだ手段だった!

 

 

『ミ、ミザエル!!やめろ!!』

 

『私の命と引き換えに…ドラゴン達の絆が!お前を地獄に送り返す!!4800のダメージを喰らえ─!!』

ミザエルの覚悟が…ドラゴンの絆が光の龍となってドン・サウザンドに牙を突き立てる!!

 

 

 

 

 

 

「えっ…!?」

 

『なに…!?』

 

『なんだと…!?』

次の瞬間、遊馬は…否、全員が困惑した…ドン・サウザンドとミザエルに牙を突き立てた光の龍が…()()したのだ。

 

 

 

ミザエルよ、お前のフィールドをよく見るがいい

 

『なっ…!?馬鹿な…!魔法カード「竜皇の宝札」…!?カードが、()()()()()()!?私が発動したのは「竜皇の崩御」のはず!?』

フィールドに目を落としたミザエルが見たのは…自身が発動したものとはまったくの()()()()が発動される瞬間だった。

 

 

だが、お前のフィールドで発動したのは『竜皇の宝札』、自分フィールドのドラゴン族モンスターを全てリリースしてその数だけドローできる

 

『…ただし、リリースしたモンスターの攻撃力分のダメージを、()()()()()()()…!?』

 

お前の…負けだ、ミザエル…4800のダメージを受け、果てるがいい!

 

『っ…!!がああああああ!!』

 

 

それは一瞬の出来事、何が起きたのかも解らぬまま…ミザエルは敗北した。

 

 

ミザエル LP0

 

 

ドン・サウザンド WIN 

 

 

 

 

 

『「ミザエル!!」』

不可解なデュエルが終わる…そして遊馬達はミザエルのもとへ駆け寄った…。

 

 

「ミザエル…!バカ野郎!どうして…!!」

 

『私も、信じてみたかったのだ…カイトや、お前達が信じた…人を信じる、ちからを…』

無謀な策を仕掛け、敗北したミザエル…彼は遊馬やカイトと出会い、人を信じる力の強さを知った。

 

だから…応えたかったのだ、自分を信じたカイトの思いに…。

 

 

『ナッシュ…遊馬…アストラル……あとは、たのんだ、ぞ──』

孤高なるドラゴン使いは…希望を仲間へと繋ぎ、力尽きた…。

 

 

 

 

これで…残る七皇はお前だけだ、ナッシュ…さぁ、お前も我の下に来るがいい…

ミザエルの魂を取り込んだドン・サウザンドは静かに浮遊しながら遊馬達の前に降り立つ…!

 

 

『世界』となった我の中には…既に何十億ものバリアンの魂が有る…その中にはこの戦いで散っていったお前の仲間達もいるのだ…そして九十九遊馬、アストラル…お前達の魂も、我が貰う…これにて…我は全ての力を手に入れ、真の神となるのだ…!

 

「っ…!!」

遊馬達の前に降り立ったドン・サウザンドが再び姿を変える…光輝いていた身体から光が消え、漆黒へと染まる…その身体からは凄まじいカオスの力が放たれている…!

 

 

ここからは誰も逃げる事はできん…貴様達はまとめて、我の糧になってもらう……さぁ、生贄の決闘だ

 

「オレ達と、まとめて…!」

 

『デュエルしようと言うのか…!』

ドン・サウザンドは不遜に遊馬とナッシュを同時に相手すると告げる…かたやバリアンの王、かたや奇跡の力『ZEXAL』を持つ勇士…その力など恐れるに足りないと…!

 

 

 

(ミザエルは…彼は、我々に命を賭けて伝えてくれた…!人を信じ、敵味方の垣根を超え…今こそ、強大な敵に立ち向かう時だと!!)

アストラルはミザエルからの最期のメッセージをしっかりと受け取っていた…この戦いは遊馬だけでも、ナッシュだけでも勝つ事はできない…。

 

2人が力を合わせる事が勝利の『鍵』なのだと…!

 

 

(シャーク…そして、遊馬…共に、戦おう!!)

 

『「……!」』

アストラルの言葉に分かたれた遊馬と凌牙の心は…再び重なり合う!

 

 

「シャーク!一緒にいくぜ!!」

 

『ああ、仲間の仇…討たせてもらうぜ!!』

 

(ドン・サウザンド!最後の決着をつけるぞ!!)

 

「あっ…」

遊馬、アストラル・ナッシュ…人間界・アストラル世界・バリアン世界の勇士が並び立つ、その様子を見守る小鳥は…その背中に希望を見た…!

 

 

 

「(私は、遊馬やシャークみたいに戦えない…でも、私にだって…できる事はある!!)」

 

 

「いっけぇ!みんなぁぁぁ!」

小鳥は自分にできる事をしようと決めた…それは()()()()()、世界を背負って戦う3人を励ます…それが自分の役割だと気付いたのだ…。

 

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

「えっ…!?フォウくん!?なんで此処に!?」

その時、小鳥は聞き覚えのある鳴き声が足元から聞こえる事に気付く…それは遊海の飼い猫であるフォウだった。

 

 

「もしかして…遊馬達を応援する為に来てくれたの…?」

 

《フォウ…!》

 

「…そっか…!一緒に応援しよう!フォウくん!」

 

《フォウ!!》

小鳥は静かにフォウを抱き上げる…何故、フォウがこの場所に来る事ができたのかは分からない…それでも、遊馬達の為に来たのだと感じたのだ。

 

 

【(あの獣は……ふん、花の魔術師め…しっかりと二の矢を用意したか、貴様の()()()()()を殺した事…相当に怒ったようだな)】

視界の端に白い獣を見たドン・サウザンドは…僅かに不愉快げな表情を見せた…。

 

 

「デュエルディスク・セット!Dゲイザーセット!!」

 

『はあああっ!!』

 

遊馬はDゲイザー・デュエルディスクを装着、ナッシュはデュエルディスクを呼び出しドン・サウザンドに立ち向かう!

 

アストラル、我はこの時を待っていた…貴様を我の前に跪かせ、粉々に打ち砕くこの時を!!

ドン・サウザンドはアストラルに凄まじい敵意を向ける…彼は太古の戦いでアストラルに負けた事を根に持ち…復讐の時を待ち続けていたのだ…。

 

 

人間界・アストラル世界・バリアン世界…全ての世界を賭けた決闘がついに幕を上げる!!

 

 

 

【『「デュエル!!」』】

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬&アストラル&ナッシュ対混沌の邪神 ドン・サウザンド 

 

 

 

@ドン・サウザンド

 

 

我のターン!ドロー!

我はこれでターンエンドだ

 

「また、何もしないで…!?」

 

「っ…!」

先攻を取ったドン・サウザンド…彼は再び何もせずにターンを終える…!

 

 

(気をつけろ…!ドン・サウザンドはこれまで戦ってきたなかで()()()()…それに、このデュエル…必ず何かがある…!)

アストラルは2人に警戒を促す、ドン・サウザンドは不可解な手段でミザエルを手玉にとった…だが、これがデュエルである以上…ドン・サウザンドは()()をした…それを見極めなければならない…!

 

 

「分かってる…!いくぜ、アストラル!」

アストラルの忠告を聞きながら…遊馬は慎重にターンを進める…!

 

 

 

@遊馬

 

 

39

 

 

「現われろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

遊馬はエースモンスターたる希望の戦士を呼び出す!

 

 

「見せてやるぜ、ドン・サウザンド!これがオレ達の希望だ!!」

 

()()だと?貴様達に…そんなモノがあると思っているのか?

 

キィン──!

希望の象徴を呼び出す遊馬…だが、その時!

 

 

ボン!!

 

《オオオッ!?》

 

「っ!?『ホープ』!?」

ドン・サウザンドの額の宝玉が妖しく輝いた瞬間、希望(ホープ)が砕け散る…そして…!

 

 

《ガ…!?ガガっ!?!?》

 

「えっ…!?な、なんで『ガンバラナイト』が!?」

 

《フォッ…!?》

爆煙の中から現れたのは…状況が把握できていない『ガンバラナイト』だった…。

 

 

(いったい、何が起きた…!?)

 

『テメェ…!何をしやがった!?』

遊馬達が動揺する中、ナッシュがドン・サウザンドへと叫ぶ…!

 

 

ククク…我は()()()()()カウンター罠『ヌメロン・リライティング・エクシーズ』を発動したのだ…!

 

『デッキから、罠カードだと!?』

 

「しかも、オレのターンに!?」

それは…まさに反則級の一手…デッキから発動したカウンター罠にホープは破壊されていたのだ…!

 

このカウンター罠は自分フィールドにカードが無い時、相手のエクシーズ召喚を無効にして破壊…そして相手デッキからモンスターを選び、効果を無効にして特殊召喚する!その効果で…我は『ホープ』召喚の事実を()()()()()()()

 

(書き換える……ヌメロン……まさか…まさか!この力は『ヌメロン・コード』の力か!?)

 

「そ、そんな…!?なんでアイツが!?」

アストラルは僅かな手掛かりからドン・サウザンドの不可解な力の源が『神のカード』…『ヌメロン・コード』の力である事を見抜いた…!

 

 

 

そうだ…これは『ヌメロンコード』の力だ!既にこの世界はフィールド魔法『ヌメロン・ネットワーク』が発動している!

アストラルが真実を見抜いた事でドン・サウザンドは種を明かす…デュエルが始まる前から既に世界を覆うフィールド魔法が発動していたのだ…!

 

 

このカードは1ターンに1度、自分の場にカードがない時…デッキから『ヌメロン』の力を得たカードを発動できる

 

(そうか…!ミザエルとのデュエルの時も!!)

 

その通り、我は『ヌメロン・ネットワーク』の力を使い、カウンター罠『ヌメロン・リライティング・マジック』を発動し、発動条件を満たす別の魔法へと書き換えたのだ…!

 

「そ、そんな…!?カードをなんでも書き換えられたら…遊馬達は…!?」

相手のカードを書き換える…それはあまりにも理不尽極まりない効果だが、まだ疑問が残る…。

 

 

 

「でも、なんで…アイツが『ヌメロンコード』の力を…!」

 

(ありえない事だ…ナンバーズは、まだ誰も揃えてはいない…地上世界の何処かに隠されて………ま、まさか?!そんな事が!?)

地上世界に隠されたヌメロンコードは未だに誰の手にも渡ってはいない…渡るはずがない……だが、アストラルは気付いた…気付いてしまった。

 

 

隠されたヌメロンコードの力を使う為の…()()を…!

 

 

(まさか…()()()()()()()()()()()()()の力を!?)

 

ようやく気付いたか、アストラル…確かに、ヌメロンコードの所在は分からぬ…そこで!我は地上世界をバリアン化させ、()()()()()()ヌメロンコードの力を取り込んだのだ…!

それはあまりにも乱暴で…あまりにも規模が大きすぎる話…『宝物の場所が分からないのなら、それが隠された場所ごと手に入れれば良い』…ドン・サウザンドは強大なカオスを使ってそれを成し遂げ、擬似的にヌメロンコードを手中に収めてしまったのだ…!

 

 

 

今の私は…ヌメロンコードの力を取り込み『神』となった…!故に、このような事もできる!!

 

 

キィン─!

 

「あれは!?」

力のタネを明かしたドン・サウザンドはヌメロンコードの力を開放…その頭上に青い空間ゲート…アストラル世界への扉が開く!

 

 

これで我は…アストラル世界へと直接攻撃ができる!

 

(アストラル世界と、この場所を…繋げた、のか…!?)

 

そうだ…そして、このデュエルでお前達が受けたダメージは…()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!このデュエルで…貴様ら諸共にアストラル世界を滅ぼしてやる!我が『ヌメロン』デッキの力…その身を滅ぼしながら、とくと味わうがいい─!!

 

 

 

動揺する遊馬達を嘲笑うドン・サウザンド…恐るべき『ヌメロン』の力が…牙を剥こうとしていた…!

 




〜次回予告〜


《ついに、世界の命運を賭けた戦いが始まった…ドン・サウザンドは反則技で手にした『ヌメロン・コード』の力で遊馬達を追い詰める…!》

《さらに現れる強力な4体の「神のナンバーズ」…そしてアストラルは1人で死地へと向かう…!?》


《次回、「転生して決闘の観測者になった話」!
『偽りの全知全能─ヌメロン・ネットワークを破壊せよ!─』》


《…負けないで、遊馬…アストラル…凌牙…!ボクは信じてる、キミ達が持つ『希望』の輝きを…!》


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偽りの全知全能─ヌメロン・ネットワークを破壊せよ!─

こんにちは!S,Kです!

『ヌメロン・コード』を掌握し、全能の力の一端を振るうドン・サウザンド…遊馬達は必死のデュエルを繰り広げる…!


もしかしたら…『アニメと同じ話でつまらない!』『早く遊海がどうなるのか書いて!』…という読者の方もいるかもしれません…ですが、やはりZEXALの物語を書くうえで…ラスト3戦は外せないのです。

ですので、もうしばらくのお付き合いをお願いいたします…!


それでは、最新話をどうぞ!


ついに始まった混沌の邪神ドン・サウザンドと遊馬&ナッシュの世界を賭けた決闘…だが、ドン・サウザンドは世界に張り巡らせたフィールド魔法『ヌメロン・ネットワーク』により、擬似的に『ヌメロン・コード』の全能の力を手中に収めていた…!

 

 

遊馬&ナッシュLP4000

 

ドン・サウザンドLP4000

 

 

さぁ…このデュエルで貴様らを倒し、我は『ヌメロン・コード』の全てを手に入れる…!そして!過去も未来も!全て我のモノになるのだ…!

 

「させるかよ!ドン・サウザンド…!お前はオレ達がぶっ飛ばす!!」

『ヌメロン・コード』の一端を手に入れ、全能感に酔いしれるドン・サウザンド…しかし、『全能の神』が相手であっても…遊馬は止まらない!

 

 

「オレは…カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

愚かな…『ヌメロンコード』の力を手に入れた我の前には、全てが無力だ…!

しかし、『希望皇ホープ』の召喚を妨害された遊馬に打てる手は少ない…。

 

((確かに、張り巡らされた『ヌメロン・ネットワーク』はデュエルの全てを書き換える力を持っている…何か、手を打たなければ…!))

そんな中、アストラルは勝利の方程式を導く為に思考する。

 

『ヌメロン・コード』の全てを書き換える力の一端を持つフィールド魔法『ヌメロン・ネットワーク』…最善なのは『破壊する事』…しかし、世界と一体化した『ヌメロンネットワーク』のカードはドン・サウザンドのフィールドには()()()()()

 

つまり、破壊効果を届かせる事ができないのだ…!

 

 

 

 

我のターン!ドロー!

アストラルが思考する間にもデュエルは進む…そしてドン・サウザンドは強力な『ヌメロン』の力を開放する!

 

 

我は魔法カード『ヌメロン・ダイレクト』を発動!このカードは『ヌメロンネットワーク』が発動している時、エクストラデッキから攻撃力1000以下の『ヌメロン』と名のつくエクシーズモンスター4体を特殊召喚する!

 

キィン─!

 

(っ…?)

『ヌメロン』の力を使い、規格外の召喚を行おうとするドン・サウザンド…その時、アストラルは『ヌメロンネットワーク』に走った光を見た…。

 

 

 

そして…我が召喚するのは4()()()()()()()()だ!

 

「4体の、ナンバーズだって!?」

 

そしてこの4体は…()()()地上に降りたナンバーズ…この地上を監視し続けた地上の番人だ!!

ドン・サウザンドの宣言と共に背後にあった異形の花が光に包まれる…この植物自体がナンバーズの()()()()()()()だったのだ!

 

 

04 

 

現われろ!『No.4』!『ゲート・オブ・ヌメロン─チャトヴァーリ』!!

 

「あれが、本物の『No.4』…!?」

天地が鳴動する中、光の柱から巨大な構造物が出現する、以前『闇デュエル界の四悪人』が使用した偽物ではない…真の『ナンバーズ』が次々と現れる!

 

 

03 02

 

 

続いて現われよ!『No.3』そして『No.2』!『ゲート・オブ・ヌメロン─トゥリーニ』!『ゲート・オブ・ヌメロン─ドゥヴェー』!

続いて現れるのは『No.2』と『No.3』…そして…始まりのナンバーズが降臨する!

 

 

01 

 

 

そしてこれがヌメロンの極致…現われろ!『No.1』!天を摩する地獄の門、堅牢なる扉開きし時…一抹の希望を捨てよ!!『ゲート・オブ・ヌメロン─エーカム』!

 

「あれが、『No.1』!!」

 

『っ…!!』

最後に現れたナンバーズこそ、始まりの1枚…悪魔の意匠を持つ『全能への扉』、三幻神に匹敵する圧力に遊馬達は圧倒されるが…まだ終わりではなかった。

 

 

ゴゴゴ…ガキンガキンガキン

 

 

『なっ…!?ナンバーズが合体した!?』

 

このカードこそ、神が使うに相応しいナンバーズ『ゲート・オブ・ヌメロン』だ!

4体の『ゲート・オブ・ヌメロン』が『エーカム』を中心に合体…地獄の門が完成する…!

 

 

 

「で、でも!攻撃力はたった1000よ!遊馬!やっつけちゃえぇぇ!!」

 

《…フォウ…ファーウ…(小鳥、応援したい気持ちは分かるけど…状況は考えてね…?)》

 

「の、のんきな事言うなよな〜!?オレ達のフィールドには効果を無効にされた『ガンバラナイト』しかいないんだぞ…!?」

 

『それにあのナンバーズ…()()()()…!』

現在、遊馬達のフィールドには効果を無効にされた攻撃表示・攻撃力0の『ガンバラナイト』と伏せカードが1枚のみ…そして、ドン・サウザンドが攻撃力1000のモンスターを出しただけで終わるはずがない…!

 

(遊馬、相手のフィールドにカードがある限り『ヌメロン・ネットワーク』の効果で我々のカードを書き換える事はできない…!なんとしても耐えるんだ!)

 

「そうか!!」

『ヌメロンネットワーク』はドン・サウザンドのフィールドにカードが存在する時は『書き換え』を発動できない…それが唯一の突破口だった。

 

 

 

バトルだ、我は『ヌメロン─エーカム』で『ガンバラナイト』を攻撃!

 

「罠カード発動!『ハーフ・アンブレイク』!このターン『ガンバラナイト』はバトルでは破壊されず、バトルダメージも半分になる!!ぐううっ…!!」

悪魔の首から稲妻が放たれる…しかし、虹色の泡がガンバラナイトを包み込み、ダメージを半減する!

 

フン…だが、受けた()()()()はアストラル世界にも降りそそぐ!!

 

バリバリバリ!!

 

(っ…!!アストラル世界が!!)

だが、ドン・サウザンドの攻撃はそれだけでは終わらない、遊馬達の受けたダメージの一部がアストラル世界への扉に吸い込まれ…アストラル世界を傷付ける…!

 

 

どうだ?アストラル…その身と共にアストラル世界が滅びゆく姿を見るのは…!

 

「き、汚ぇぞ!ドン・サウザンド!!」

 

『落ち着け…!とにかく今は、この攻撃を耐えるんだ…!!』

アストラル世界を攻撃され動揺する遊馬とアストラルをナッシュが諌める…動揺を見せれば付け込まれ、さらなる被害を生む…ナッシュはそれが嫌というほど分かっていた…。

 

 

耐えるだと?愚かな…!『エーカム』の効果発動!バトルの後、ORUを1つ使いフィールドの『ヌメロン』モンスターの攻撃力を倍にする!

 

『っ…!?だが、「ヌメロン・ダイレクト」で召喚された『ゲート・オブ・ヌメロン』はORUを持っていない!効果は不発だ!』

 

ふっ…!我に『ヌメロンネットワーク』がある限り、『ヌメロン』モンスターの効果をORU無しに発動できる!!

 

「な、なんだって!?」

今までも「超銀河眼の光子龍」や「紋章神コート・オブ・アームズ」のように効果発動にORUを必要としないエクシーズモンスターは存在した…だが、『ヌメロンコード』の力を手にしたドン・サウザンドはその常識を破壊する…!

 

 

この効果により我の『ゲート・オブ・ヌメロン』の攻撃力は全て2000となる…そして…他の『ゲート・オブ・ヌメロン』も全て()()()()を持っている!!

 

『バトルの度に、攻撃力が倍になるだと!?』

それはまさに倍々ゲーム…1000は2000に、2000は4000…4000は8000…そして、8000は16000に……それは遊馬だけでは防ぎきる事はできない…!!

 

 

「っ…いったい、どうすれば…!?」

 

(遊馬、我々が勝つには…やはり『ヌメロンネットワーク』を破壊するしかない…!)

 

「分かってる…!だけど、奴のフィールドに『ヌメロンネットワーク』のカードが無いんじゃ…!」

 

(…『ヌメロンネットワーク』の効果が発動する時、この世界に張り巡らされたネットワークに光が走った…おそらく、地上世界の何処かにある『ヌメロン・コード』から力を吸い上げているんだ…ならば、その先に『ヌメロン・ネットワーク』の()…カードそのものがあるはずだ…!)

 

「あっ…!?」

アストラルは気付いていた、ドン・サウザンドが『ヌメロンネットワーク』を使う度に光が走る事を…ならば、その『光』を辿れば…『カード』の在り処を見つけられるのではないかと…!

 

 

(ここは任せたぞ…遊馬!シャーク!)

 

「アストラル!?」

遊馬達にデュエルを託したアストラルはその身を光に変え、ヌメロンネットワークに飛び込んだ…!

 

 

愚かな…『ヌメロンネットワーク』そのものを壊しに行ったのだろうが…見つけだした所で、お前達の敗北は変わらない…さぁ!『ゲートオブヌメロン』の真の姿を見るがいい!!

 

『っ…!?』

アストラルの目的に気付いたドン・サウザンドはバトルを再開する…その宣言と共に地獄の扉が音を立てて開いていく…!

 

 

バトルだ!『ドゥヴェー』で『ガンバラナイト』を攻撃!

 

「な…!?あれが『ゲートオブヌメロン』の真の姿…!?」

ドン・サウザンドの言葉と共に扉が開く、その中から鰐のような口を持つ怪物…『扉の番人』が出現、破壊光線を放つ!!

 

「『ハーフ・アンブレイク』で『ガンバラナイト』は破壊されず、ダメージも半分にっ…うわああああっ!!」

 

『があああっ!?』

虹の泡が辛うじて威力を下げるが…遊馬達は吹き飛ばされる!

 

 

そして我は『ドゥヴェー』の効果発動!全ての『ヌメロン』モンスターの攻撃力を倍にする!さらに『トゥリーニ』で『ガンバラナイト』を攻撃!

 

『遊馬!アストラルが「ヌメロンネットワーク」を見つけるまで、耐えきるんだ!!』

 

「シャーク…!ああ!!『ハーフアンブレイク』発動!っぐぅぅ!!?」

再び放たれる破壊光線…虹色の泡がダメージを半減するが、2人の残りライフは…僅か500、そして…!

 

 

『トゥリーニ』の効果発動!全ての『ヌメロン』モンスターの攻撃力を倍にする!

再び発動する倍化効果…その攻撃力8000、この攻撃は受け切る事ができない…!!

 

遊馬、ナッシュ…これで終わりだ、消え去るがいい!我は『チャトヴァーリ』で『ガンバラナイト』を攻撃!

 

『やらせるか!!この瞬間、手札の「カット・イン・シャーク」の効果発動!モンスターが攻撃を受ける時、そのモンスターをリリースし、このカードを特殊召喚する!!』

 

フン…終わりの時を僅かに伸ばしたか…

3度目の光線を受ける直前、ナッシュの呼び出した堅牢な鮫が割り込み攻撃を防ぎきる!

 

 

「助かったぜ、シャーク…!」

 

だが…我は『チャトヴァーリ』の効果発動!『ヌメロン』モンスターの攻撃力を倍にする!

 

「攻撃力16000のモンスターが、4体…!?」

 

『「くっ…!」』

ドン・サウザンドのフィールドに並び立つ4体の超攻撃力モンスター…だが、ドン・サウザンドはダメ押しの一手を打つ!

 

 

まだだ!『ヌメロンネットワーク』が発動している時、我は『ヌメロン─エーカム』をカオス化させ、ランクアップさせる!!我は『ヌメロン─エーカム』でオーバーレイネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!

 

「なんだって!?」

それはさらなる絶望…分離したエーカムが銀河へと飛び込み、進化を遂げる!

 

 

01

 

 

現われろ!『CNo.1』!全ての秩序を破壊し、混沌なる闇へ…!世界を真なる世界へ導け!!『ゲート・オブ・カオス・ヌメロン─シニューニャ』!

全能への扉が混沌の扉となり、再び降臨する!

 

 

…ただし、このカードは『ヌメロンネットワーク』が存在しない時、破壊される…さらに!『シニューニャ』の効果発動!このモンスターを召喚した時、フィールドの全てのモンスターを除外する!そして次のターンのスタンバイフェイズに『シニューニャ』はフィールドに帰還する!

 

「えっ…?!」

 

『いったい、何を…!?』

シニューニャの輝きと共に3体のヌメロンが異次元に消え去る…。

 

 

 

そして…『シニューニャ』が帰還した時、この効果で除外したモンスターの攻撃力の合計分のダメージを…相手に与える…!

 

「なんだって!?」

 

『除外されたのは攻撃力2000の「シニューニャ」と攻撃力16000の「ゲートオブヌメロン」3体…合計50000のダメージ…!次の奴のターンがくれば、確実に…俺達の負けだ…!!』

まさにダメ押し…遊馬達が勝つには、このターンでドン・サウザンドを倒すか…『ヌメロンネットワーク』を破壊する、その2つしか残されていない…!!

 

 

 

@ナッシュ

 

『俺のターン!ドロー!!』

絶望的な状況の中…ナッシュは勝利への最善を尽くす!

 

『俺は「ボム・シャーク」を召喚!このモンスターはバトル終了後に破壊されるが…その時、その攻撃力分のダメージを相手に与える!さらに魔法カード「アクアジェット」発動!水属性モンスター1体の攻撃力を1000アップする!』

 

「よっしゃ…!これならドン・サウザンドへのダイレクトアタックと効果でライフを削りきれる!!」

爆弾を背負った鮫が加速装置を背負う…これにより攻撃力は2000となり、ドン・サウザンドのライフを0にできる…だが、それは──

 

 

『…()()()

 

「えっ…!?」

発動する事が()()()()の話である…!

 

 

我は『ヌメロンネットワーク』の効果発動!1ターンに1度、デッキの『ヌメロン』カードを墓地に送り…その効果を発動させる!我はカウンター罠『ヌメロン リライティング・マジック』を発動!相手の魔法カードが発動した時、発動と効果を無効にし…相手のデッキから発動条件を満たす魔法カードを発動させる!

 

『これは…!魔法カード「浮上」だと!?』

フィールドにカードが存在しない事で『書き換え』が発動…ナッシュのカードが書き換えられる!

 

 

そう…貴様が発動したのは『アクアジェット』ではなく『浮上』!その効果は自分の墓地の水属性モンスター1体を守備表示で特殊召喚する…

 

『……俺は「カット・イン・シャーク」を守備表示で特殊召喚…そしてフィールドにモンスターが召喚された事で「ボムシャーク」は…破壊される…!』

 

「そんなっ…!?」

ボムシャークが砕け散り…フィールドに残されたのは守備表示モンスター1体だけとなってしまう…!

 

 

 

「やっぱり、ダメだ…!『ヌメロンネットワーク』があるかぎり、オレ達のカードは書き換えられちまう…!!」  

 

『諦めるな!!まだ…デュエルは終わってねぇ!!』

 

「シャーク…!」

カードを書き換えられてなお、シャークは揺らがない…否、ここまではナッシュの()()()()……バリアンの王は本領を発揮する!

 

 

 

『俺は速攻魔法『サーフェース・ランクアップ』を発動!自分の水属性モンスターが破壊され、墓地に送られた時!デッキから『RUM』1枚を手札に加える!…いくぜ、ドン・サウザンド!!「RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)」を発動!!エクストラデッキからオーバー・ハンドレット・ナンバーズを特殊召喚し、カオス化させる!!』

それは逆転を賭けた一手…ナッシュのエースモンスターが降臨する!

 

 

101 

 

 

『現われろ!「CNo.101」!「S・H・Dark Knight(サイレント・オナーズ・ダークナイト)」!!』

逆境を切り開く漆黒の槍術士が降臨する!

 

 

『「ヌメロンネットワーク」の効果は1ターンに1度…もうカードは書き換える事はできねぇ!!さらに俺は「ダークナイト」の効果発動!カオスORUを全て墓地に送る事で、墓地の「No.101S・H・Ark Knight(サイレント・オナーズ・アークナイト)」を特殊召喚する!』

それは『全能の力』の僅かな隙…ナッシュはそれを見抜き、エースを呼び出したのだ!

 

 

ナッシュ…貴様、最初からこれを狙っていたのか

 

『そうさ…お前に「ヌメロンネットワーク」の効果を使わせ、この状況を作り出したのさ!』

 

我は…お前の狙った書き換えをさせられていた訳か…

 

『そういう事だ…!これで終わりだ!ドン・サウザンド!!』

ナッシュの見事な戦略に感心するドン・サウザンド…その代償は高く付く!

 

 

『バトルだ!「アークナイト」でダイレクトアタック!ミリオン・ファントム・フラッド!!』

 

ぬうぅぅ…!!

白き方舟の爆撃がドン・サウザンドに初めての手傷を負わせる!

 

 

『いけ!「ダークナイト」!!ダイレクトアタック─!!』

 

「この攻撃が通れば─!」

 

甘いわ…!我は手札から『ヌメロン・ウォール』を守備表示で特殊召喚!このモンスターはバトルダメージを受けた時に特殊召喚でき、バトルを終了させる!

 

『なにっ…!?』

ドン・サウザンドを守るように巨大な番兵が出現…朱槍の一撃を受け止める!

 

 

残念だったな、ナッシュ…あと少しだったものを…

 

『ドン・サウザンド…!!』

攻撃を止められたナッシュは思わず拳を握り締める…その時だった。

 

 

む…?どうやら見つけたか…

 

キィン─

 

何かを感じたドン・サウザンドが地面へと手を翳す…そして『全能の力』によって空間を越えてとある場所が繋がった…そこには…。

 

 

「あ、アストラル!!」

禍々しい球体の前に辿り着いたアストラルの姿があった…!

 

 

 

 

Sideアストラル

 

 

(はぁ…はぁ…!もう少しだ…!!)

ヌメロンネットワークの中を急ぐアストラル…アストラル世界人には『毒』になりかねない強力なカオスの中を進み、さらに防衛機構を突破しながら進み続けたアストラルはボロボロだった…だが、その行動はついに報われる…!

 

 

 

(あった…!これだ、見つけたぞ…!「ヌメロンネットワーク」のカードを!!)

そこは禍々しいエネルギーに覆われた場所…そこに、凄まじいエネルギーを宿す球体の中に安置された『ヌメロンネットワーク』のカードを発見した!

 

 

よくぞ辿り着いたな、アストラル

 

(ドン・サウザンド…!これで『ヌメロンネットワーク』もお終いだ!!)

核へと辿り着いたアストラルにドン・サウザンドの幻影が語りかける…。

 

 

貴様にそのカードが破壊できるのか?

 

(そのつもりだ!ここから取り出し、デュエルフィールドに持ち込めば…!)

 

なるほど…だが、そのカードを破壊すれば…その場所に蓄積された膨大なエネルギーが行き場を失い()()する…そして地上世界もただでは済まないだろうなぁ…?

 

「そ、そんなっ!?オレ達の世界が…!?」

それは最後の護り…ドン・サウザンドは人間世界をも人質にしていたのだ…!

 

 

さぁ、どうする?アストラル世界を救う為に…人間世界を犠牲にするか?しかも…『ヌメロンネットワーク』を破壊せねば、次の我のターンにお前達は50000のダメージを受けて敗北するのだ…!

 

(っ…!!)

それは二者択一の選択、デュエルに勝つ為に守るべき人間世界を犠牲にするのか…それとも、人間世界を守る為に敗北するのか……どちらにしても最悪の選択には変わりはない。

 

 

(何かを犠牲にしなくては…世界は救えない、ならば…犠牲にすべきなのは──)

 

 

 

そこに、()()()()()()がなければ…。

 

 

ジジッ…バリバリ!!

 

 

「あ、アストラル!?何を!!」

事態を見守っていた遊馬が声を上げる…アストラルが「ヌメロンネットワーク」を包むエネルギー球に手を突っ込んだのだ…!

 

 

(……遊馬、シャーク……私を信じて、このカードを…破壊するんだ─!!

そのままエネルギー球に飛び込んだアストラルは「ヌメロンネットワーク」のカードを投げ飛ばした!

 

 

 

Side OUT

 

 

 

ギィン─!

 

 

「『ヌメロンネットワーク』のカードが!?」

 

『奴のフィールドに…!』

地面に開かれた扉から飛び出した閃光がドン・サウザンドの場に落下…『ヌメロンネットワーク』が実体化する!

 

『(アストラル…まさか…!)』

 

(……!)

その時、扉越しにナッシュはアストラルと目が合った…覚悟を宿したその瞳と…!

 

 

 

『……俺は「ダークナイト」の効果発動!相手フィールドのモンスターをカオスORUにする!ダーク・ソウル・ローバー!』

ナッシュはヌメロンウォールをORUに変換し、奪い取る!!

 

 

『俺はさらに魔法カード「海底噴火(デプス・エラプション)」を発動!自分の場に水属性エクシーズモンスターがいる時、フィールドにある全てのカードを破壊する!!』

 

「シャーク!?」

それは海の怒り、海底火山の噴火…灼熱のマグマがナッシュのモンスターを、ヌメロンネットワーク諸共に燃やし尽くす!!

 

 

「ぬ、ヌメロン・ネットワークが!?」

 

《フォウッ!?》

 

「これじゃっ、人間世界が!!」

ヌメロンネットワークは破壊された…そして『全能の力』は逆流し……

 

 

(遊馬…聞こえているな?()()()()()()()…このエネルギーは…私が()()()()()

 

「アストラル!?」

動揺する遊馬にアストラルが穏やかに声をかける、第三の選択肢…それは行き場を失ったエネルギーをアストラルが人柱として受け止め、被害を最小限に抑える事だった…。

 

 

 

「おい…!?何言ってるんだよ!!…お前、まさか…最初から…!」

 

(遊馬、きみに全てのナンバーズを託す…後は、頼んだぞ)

 

「ふざけんな…!!お前が…お前だけが犠牲になるなんて!そんな事、許さねぇぇ─!!」

遊馬の叫びが響く…だが、臨界状態になったエネルギーは止まらない…!

 

 

 

(さようなら…遊馬)

 

 

 

 

 

 

トン…

 

 

 

 

(なっ…!?)

全てを覚悟したアストラルは目を閉じる、その瞬間…大きな優しい手がアストラルを突き飛ばした。

 

 

 

(そんな…!?貴方は…エリファス!?)

 

『…アストラル』

アストラルを押し出した者…それはアストラル世界の神・エリファスだった。

ドン・サウザンドとの戦いが始まった事を知ったエリファスは、その慧眼で事態を見抜き、アストラルを…遊馬を助ける為に駆け付けたのだ…。

 

 

『…間違った道を進んだアストラル世界に「希望」と「絆」という新たな力が生まれた…君と遊馬によって…君はまだ消えてはいけない…君達に、未来を託す!行け!アストラル!彼のもとへ!!』

 

(エリファス!?う、うわあああ!?)

エリファスはアストラルに1枚のカードを託し、吹き飛ばす…全ては希望を未来へ繋ぐ為に…。

 

 

 

キィン─! ドオォォン!!

 

 

「え、エリファス!!」

 

エリファス…!余計な真似を!!

デュエルフィールド上空で光の大爆発が起きる…エリファスはその身を犠牲にアストラル世界を…遊馬とアストラルを守ったのだ…。

 

 

「エリファス、なんで…!?」

 

(…エリファスは言った…未来を、私達に託すと…!!)

 

「アストラル…!」

アストラルが遊馬のもとへ帰還する…エリファスに託された『希望』を抱いて…!

 

 

(だから、泣いてなど…いられないのだな…!!多くの仲間達の想いを受け継いだ我々は…!!)

アストラルの頬に涙が零れる…しかし、アストラルはそれを拭い前を向く…託された『希望』を『未来』を守る為に!!

 

 

遊馬!シャーク!…必ず、勝つぞ!このデュエル!!

悲しみを乗り越え、アストラルは声を上げる!

 

 

『当然だ!いくぜ、ドン・サウザンド!!墓地に送られた「ダークナイト」の効果発動!カオスORUを持つこのカードが破壊された時、このカードを墓地から特殊召喚し!その攻撃力分ライフを回復する!リターン・フロム・リンボ!!』

煉獄から槍術士が帰還…その祝福がライフを回復する!

 

 

『俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

「シャーク……オレ達は負けない、絶対に負けねぇぞ!!ドン・サウザンド!!」

ライフを回復した遊馬はドン・サウザンドへ叫ぶ!!

 

 

 

フン…『ヌメロンネットワーク』を壊し、ライフを回復した程度で…我に勝つつもりか?ふっ…

ドン・サウザンドは遊馬達を嘲笑う…戦術の要を破壊されてなお、その余裕は失われていない…!

 

 

 

@ドン・サウザンド

 

我のターン!ドロー!

我はこの瞬間、除外された『カオスヌメロン─シニューニャ』を蘇らせる!

 

『だが、既にフィールドに「ヌメロンネットワーク」はねぇ!「シニューニャ」は破壊される!』

復活した地獄の門が砕け散る…だが、それは…。

 

 

愚かな…これは()()()()()()…いずれにしても、お前達には絶望しかないのだ!!我は魔法カード『ヌメロン・カオス・リチューアル』を発動!

さらなる絶望を目覚めさせるトリガーだった!!

 

 

このカードは『シニューニャ』が破壊された時に発動し、墓地または除外された『ヌメロンネットワーク』と4体のナンバーズをレベル12のエクシーズ素材とし、エクシーズ召喚を行なう!!

 

『(「なんだと!?」)』

それは『混沌の儀式』…『ゲート・オブ・ヌメロン』は前座に過ぎず、大いなる混沌は此処に目覚める…!

 

 

我はレベル12になった『No.1』から『No.4』そして『ヌメロンネットワーク』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!現われよ…『CNo.1000』!!

 

『ナンバーズ1000、だと!?』

規格外の『1000』…その登場に遊馬達の表情が凍りつく…!

 

 

1000 

 

 

混沌の憂いは浅ましき人の業…天壌の夢は無窮の幻、虚ろの神よ!闇を持て!光に鉄鎚を!!『夢幻虚神ヌメロニアス』!

混沌を封じる扉を破戒し、混沌の神が現世へと顕現する。

白き骨格に反する巨大な紫紺の翼…混沌の化身たる神の攻撃力は…。

 

 

「これが、『CNo.1000』…!?」

 

『また…攻撃力1()0()0()0()0()、だと…!?』

 

「あ、あぁ…!?」

 

《グルル…!フォーウ!!》

その攻撃力は人間界における最高攻撃力『F・G・D』や『究極竜騎士』を遥かに上回る、10000…その威容に小鳥は座り込み、フォウは彼女を守るように全身の毛を逆立てる…。

 

 

【貴様らは、この力に屈するのだ…!】

 

 

顕現せし『絶望』…遊馬は、ナッシュは…この窮地を乗り越えられるのか…!

 

 




〜次回予告〜


《4体のナンバーズを乗り越えた先に待っていたのは…攻撃力10000の絶望と混沌の化身だった…》

《次々と勝ち筋を潰されていく遊馬と凌牙…その時、仲間との絆が奇跡を起こす!》


《次回!「転生して決闘の観測者になった話」!「絶望を裂く、希望の一閃」!》



《…これが…キミの選択なんだね、凌牙》


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絶望を裂く、希望の一閃

こんにちは!S,Kです!

筆が乗るうちに久しぶりの連続投稿!

保ってくれよ…私のインスピレーション…!


それでは、最新話をどうぞ!


遊馬とナッシュの必死の抗戦、そしてエリファスの犠牲によって『ヌメロン・ネットワーク』を破壊し『ゲート・オブ・ヌメロン』を打ち倒した遊馬達。

だが、ドン・サウザンドは真の切り札…攻撃力10000を誇る、混沌の化身「CNo.1000夢幻虚神ヌメロニアス」を解き放った…!

 

 

 

遊馬&ナッシュ LP3300

 

ドン・サウザンド LP1900

 

 

 

 

@ドン・サウザンド

 

 

貴様らはこの力の前に屈するのだ…!さぁ、『ヌメロニアス』よ!『ダークナイト』を攻撃!10000の攻撃力で跡形もなく消え去るがいい!!

 

「ま、まずい!!」

凄まじいカオスのエネルギーがヌメロニアスに収束する…!

 

『させるかよ…!!罠発動!「潮の利(アドバンテージ・ロケーション)」!水属性モンスターとバトルする相手モンスターの攻撃力をバトルの間半分にし、俺のモンスターを破壊から守る!!』

 

諦めの悪い…!だが、ダメージは受けて貰うぞ!!

 

「『ぐああああっ!!?』」

 

「遊馬!シャーク─!!」

放たれたカオスの雷鎚はダークナイトを守る渦潮によって威力が半減する…だがナッシュ達は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた…。

 

 

そして、そのダメージはアストラル世界も受ける!!

 

(っ…!!)

攻勢を強め、アストラル世界に降りそそぐカオスの稲妻…それはアストラル世界を破壊する…!

 

 

ふん、耐えたか…だが、『ヌメロニアス』の力はここからだ!我は『ヌメロニアス』の効果発動!互いのターンのバトル終了時、相手モンスターを全て破壊する!

 

『なにっ!?「ダークナイト」!!』

それは万物を破壊する混沌の波動、黒き槍術士は神の力に粉砕される…。

 

さらに!そのターン墓地へ送られた全てのモンスターを我のフィールドに守備表示で特殊召喚する!…我はこれでターンエンドだ

 

 

 

『「ダークナイト」が、奪われた…!なんて力だ、このままでは…!!』

再び現れた『絶望』に一瞬、弱気を見せるナッシュ…だが…!

 

 

「まだだぁ!まだ、負けて…たまるかよぉ!!」

 

 

『遊馬…!』

満身創痍の体に鞭を打ちながら…遊馬が立ち上がる!

 

 

「オレ達には、みんなから託された思いが…未来が!この胸の中に詰まってるんだ!!…いくぜ、アストラル!」

 

(ああ!!)

仲間達から託された『願い』…それを力に変えて、遊馬とアストラルは奇跡を解き放つ!

 

 

「オレは!オレ自身と!」

 

(私で!)

 

オーバーレイ!!

 

赤と青の閃光が、混沌渦巻く空へと飛び上がる!

 

 

強き絆が光を導く!エクシーズチェンジ!!ZEXAL!!

 

「あれは…!初めて遊馬とアストラルが合体したゼアル!!」

閃光が弾ける…その中より赤と白の鎧を纏う「友情の勇士」ZEXALが現われる!

 

 

「ドン・サウザンド!お前は()()()()()()を使って、ぶっ倒してやるぜ!!」

 

現れたか、ZEXAL…だが、それで我に勝てるとでも…?

 

「ああ、勝つさ…必ず!!」

奇跡の力を前にしても余裕を崩さないドン・サウザンド…ZEXALは全てを賭けて立ち向かう! 

 

 

 

@遊馬

 

 

オレのターン!全ての光よ、力よ!我が右腕に宿り…希望の道筋を照らせ!シャイニング・ドロー!!

希望の光が軌跡と共に奇跡を紡ぐ! 

 

「オレは魔法カード『リ・エクシーズ』を発動!墓地のエクシーズモンスターを選び、さらにその召喚に必要なモンスター2体を選び!エクシーズ召喚を行なう!!オレは墓地の『トイナイト』と『ガガガマジシャン』の2体でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!」

光の奇跡が再び希望を呼び覚ます!

 

 

39

 

 

「現われろ『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

希望の戦士が雄叫びと共に復活する!

 

 

悪足掻きを…!我は『ヌメロニアス』のさらなる効果発動!カオスORUを1つ使い、相手フィールドのモンスター1体を破壊する!!

 

「なっ…!?『ホープ』!?」

復活した希望は…混沌の神の撃ち出した無数の羽弾によって再び粉砕されてしまう…!

 

そして!相手のエクストラデッキから…ランダムに『CNo.』1体を召喚条件を無視して特殊召喚する!現れるがいい!『CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』!

 

 

39

 

 

「っ…!?なんで『ホープ』を破壊してまで、『ヴィクトリー』を…!?」

無理矢理に呼び出された勝利の戦士に困惑する遊馬…ドン・サウザンドの目的は…。

 

 

フン…『ヌメロニアス』がフィールドに存在する限り、相手のカオスナンバーズはモンスター効果を無効にされ、攻撃も封じられる!貴様らの持つカオスナンバーズは…我の前では無力となる…!!

 

「『っ…!!』」

ヴィクトリーはカオスの結晶に閉じ込められる…混沌を統べ、敵対者の反抗を粛正する…それが『ヌメロニアス』の能力だった…!

 

 

 

「まだだ!!オレ達は…諦めねぇぇ!!」

 

キィン─!

 

「言ったはずだ、オレ達の全ての力を使って!お前を倒すと!!うおおぉぉ!!」

 

なにっ…!?

気合いの咆哮と共にZEXALが光に包まれ、さらなる進化を遂げる!

 

 

熱き情熱が勝利を導く!エクシーズ・セカンドチェンジ!ZEXAL!!

 

 

「あれは…!2番目のゼアル!!」

閃光の爆発と共にZEXALは重厚さを増した白き鎧を纏う…その姿こそ、サルガッソにて覚醒せし『絆の勇士』ZEXALⅡ!!

 

 

「オレは魔法カード『エクシーズ・トレジャー』を発動!このカードはフィールドのエクシーズモンスターの数だけ、カードをドローできる!フィールドにいるエクシーズモンスターは3体!!」

ZEXALⅡへと転身した遊馬の右手に光が集う!!

 

最強デュエリストのデュエルは全て必然、ドローカードさえデュエリストが創造する!!トリプル・シャイニング・ドロー!!

再び紡がれる奇跡の軌跡…それは勝利への一手を生み出す!

 

「来たぜ…!オレは『ZS-双頭龍賢者(ウロボロス・セージ)』を召喚!!」

背中に『無限』を背負う賢者が現れる!

 

(このカードが召喚に成功した時、墓地の光属性以外のモンスター1体を特殊召喚する─!!)

光の竜が墓地から新たな希望を導く、その1枚は…!

 

 

101

 

 

「現われろ!『No.101』!『S・H・Ark Knight(サイレント・オナーズ・アークナイト)』!!」

それはナッシュのエースたる白き方舟…敵と味方を超越した『絆』の力が絶望を打ち倒す!

 

 

「そして『双頭龍賢者』のさらなる効果発動!このカードとフィールドの『ホープ』と名のつくモンスターをこのカードの効果で特殊召喚したモンスターに装備し、その2体分の攻撃力分の攻撃力を得る!」

結晶から開放されたヴィクトリーと賢者が白き方舟に力を与える!

 

「いくぜ!オレは『アークナイト』で『ヌメロニアス』を攻撃!!」

 

《フォウ!?》

 

「どうして!?『アークナイト』の攻撃力は5500!『ヌメロニアス』には勝てないわ!?」

 

「まだだ!この瞬間『双頭龍賢者』の効果!装備モンスターがバトルする時、攻撃力を2倍にする!!」

 

攻撃力11000…!?

 

「これが…オレ達の力だ─!!」

遊馬の希望の力が絶望の神を凌駕する!

 

 

「いっけぇぇ!!『アークナイト』!『ホープレイ・ヴィクトリー』!『ヌメロニアス』をぶった斬れ!ホープ剣アークナイト・スラッシュ!!」

 

ぐうぅぅ─!!

アークナイトがヴィクトリーを射出、必殺のヴィクトリー・スラッシュが絶望の神を両断した!

 

 

「よっしゃ!!」

 

(いや、まだだ!!)

ヌメロニアスの破壊を確信する遊馬…だが、爆煙の奥から五体満足の神が現れる…!

 

 

「『ヌメロニアス』が、破壊されてない…!?」

 

『っ…「ダークナイト」が、いねぇ…!?』

そしてナッシュは気付いた、ドン・サウザンドに奪われたはずの『ダークナイト』が消えていたのだ…!

 

我は攻撃を受けた瞬間、『ヌメロニアス』の効果を発動していた…自分のモンスターを墓地に送る事で戦闘破壊を無効にしたのだ

 

「そんな効果が、まだ…!?」

ダークナイトを身代わりにしたヌメロニアス…そして、バトルは()()()()()()()()…!

 

 

そして『ヌメロニアス』の効果発動!バトル終了時、相手モンスター全てを破壊し!このターン墓地に送られたモンスター全てを特殊召喚する!

混沌の神に砕かれた『ホープ』『ヴィクトリー』『アークナイト』…そして身代わりにされた『ダークナイト』がドン・サウザンドに奪われる…!

 

 

「くっ…ZEXALの力でも、ダメなのか…!どうすれば、いいんだよ…!?」

消耗したZEXALが分離し遊馬とアストラルに分かれてしまう…あまりにも、絶望の壁は高すぎた…。

 

 

 

九十九遊馬、カオスの力には決して抗えぬ…なぜならば、人間こそがカオスの()()なのだから…!

 

「オレ達が…!」

勝利を目前としたドン・サウザンドは遊馬達に全ての真実を語る…。

 

 

そうだ、そしてそのカオスが我を復活せしめたのだ…

 

(バリアン七皇の「記憶」を改竄した事か!)

 

アストラル…あの古の戦いで、我は確かに敗れた…だが、貴様の力も「50枚のナンバーズ」となり…さらにそのナンバーズに『ヌメロン・コード』の在り処を刻み、人間界にばら撒かれた…!

それは古の戦いの真相、ドローでビッグバンが起きる程の激戦の末にドン・サウザンドを倒したアストラル…その際に50枚のナンバーズが誕生、そしてその中には…ドン・サウザンドの力を封じた『遺跡のナンバーズ』も含まれていた…!

 

 

そして…我の力を封じた7枚のナンバーズを選ばれた地上の勇士・賢者達に預けた…!

 

『だから、7枚のナンバーズを託された人間に「呪い」を…!!』

 

その通り…我が復活する『糧』とする為にカオスを与えた…!貴様ら人間は弱い、その弱さ故にカオスにやすやすと取り込まれる…それはお前がもっとも信頼するドルベも、己の命より大切なメラグも例外ではない…!

 

『テメェ…!』

力を失ったドン・サウザンドは分身を放ち、ナンバーズを託された勇士達の記憶を…運命を改竄した…怒りや嘆き、恨みを抱いた勇士達の魂はカオスに呑まれ、バリアンへと堕ちてしまったのだ…!

 

 

ナッシュ、貴様もまた我の『()()』に導かれてきた…何故、貴様がバリアンへと生まれ変わったのか…()()()()()()()()

 

『なんだと…?』

ナッシュがバリアンに堕ちた理由に含みを持たせるドン・サウザンド…その様子にナッシュは疑問を抱くが…。

 

「ドン・サウザンド!確かに、人間は弱いかも知れねぇ!でも…オレはカオスをお前みたいには使わない!!オレ達のカオスは誰かを守る為に使う力だ!誰かと一緒に生きる為に使う力だ!!…だから、オレ達は負けねぇ─!!」

遊馬はドン・サウザンドに叫ぶ…カオスとは混沌と破壊を齎す力であり、誰かを守る事のできる力…カオスはその使い手により、正しい力となる…!

故に、カオスを正しく使う遊馬は…ドン・サウザンドに負ける訳にはいかないのだ…!

 

 

「オレはカードを4枚伏せ、ターンエンド!」

 

 

フン…かすかな希望とやらに縋るか…!

次のターンへと希望を繋ぐ遊馬…その『希望』をドン・サウザンドは踏み潰す…!

 

 

 

@ドン・サウザンド

 

我のターン、ドロー!

我は魔法カード『ヌメロン・ストーム』を発動!フィールドに『ヌメロニアス』が存在する時、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!

 

『「あっ…!?」』

希望を吹き飛ばす嵐が吹き荒れる、そして…!

 

さらに!相手プレイヤーに1000ダメージを与える!!】  

 

『っああああ…!!』

 

「うわあああ!!」

 

「そんな…!遊馬!!」

 

《フォーウ!!?》

稲妻に撃ち抜かれる遊馬とナッシュ…その残りライフは、僅か100…そして伏せカードを失った遊馬達は…攻撃を防ぐ事ができない!!

     

 

さぁ、滅びの時だ…!『ヌメロニアス』!ダイレクトアタック!!

 

 

「……すまねぇ、みんな…!!」

絶望の光がヌメロニアスに収束する、この攻撃から逃れる術は…ない…。

 

 

 

 

 

 

キィン─!

 

 

 

 

 

 

─遊馬、この程度で諦めるのか?─

 

 

 

「えっ…?」

絶望の光が放たれる刹那、フィールドに光が生まれる…そして…既に失われたはずの男の声が響く…!

 

 

馬鹿な、お前は…!

 

 

─いつものかっとビングはどうした?愚図が…!─

 

 

「カイト…!?」

光の中から現れた人影…それは、ミザエルとの戦いで命を落としたはずのカイトだった…。

 

 

─オレは、お前に全てを託した…勝て、遊馬!─

 

 

確かに、カイトは力尽きた…しかし、彼が託した『希望』は…既に、遊馬の手の中にある!

 

 

キィン─!

 

 

「これは、カイトから預かった『ヌメロン・ドラゴン』の効果が…!?」

エクストラデッキから飛び出した『ヌメロン・ドラゴン』のカードが遊馬の手に収まる…そして読み取れなかったイラストと効果が覚醒する!

 

 

「カイトが、オレ達に…!!いくぜ、アストラル!シャーク!!」

その効果を見た遊馬の心に、再び希望の炎が燃え上がる…絶望を祓う希望の光が今、解き放たれる!!  

 

 

「オレは『No.100ヌメロン・ドラゴン』の効果を発動!!このカードは自分の手札・フィールドにカードが無く、ダイレクトアタックを受けた時!エクストラデッキから守備表示で特殊召喚できる─!」

 

なにっ─!?

それはドン・サウザンドが使ってきた「全能の力」の一端…世界を創造せしドラゴンが、ついに目覚める!!

 

 

100

 

 

宇宙創造の鍵、今こそ闇の扉を開き!未来を!その咆哮と共に導け!!降臨せよ!『No.100』!『ヌメロン・ドラゴン』!!

このカードこそ、ナンバーズの終焉…宇宙創造の鍵たる黄金のドラゴン…ヌメロン・ドラゴンが降臨する!

 

 

 

【……馬鹿な、貴様らが…『ヌメロン・ドラゴン』を覚醒させた、だと!?…ならば、そいつから吹き飛ばしてくれる!!

ヌメロン・ドラゴンの覚醒に思わず取り乱すドン・サウザンド…だが、それも僅かな事…冷静さを取り戻したドン・サウザンドは攻撃を仕掛ける!

 

 

『ヌメロニアス』で『ヌメロンドラゴン』を攻撃!!

 

「オレは『ヌメロン・ドラゴン』の効果、発動!このカードとバトルするモンスターの攻撃力は0となる!!」

 

ぐうっ!?そのような効果を!!

ヌメロンドラゴンの咆哮が混沌の神の力を一時的に奪い去る!

 

 

だが!『ヌメロニアス』の効果発動!バトル終了時、相手フィールドのモンスターを全て破壊する!砕けよ!!

混沌の波動がヌメロンドラゴンを粉砕する…だが、遊馬のフィールドには黄金の粒子が残っていた!

 

 

(今だ!遊馬!!)

 

「おう!『ヌメロン・ドラゴン』の新たな効果、発動!このカードが破壊された時、フィールドの全てのモンスターが、破壊される!!」

 

ぬっ!?

それは裁きの炎…粒子から復活したヌメロンドラゴンの火炎が囚われたモンスターを…混沌の化身を燃やし尽くす!!

 

 

「これで、お前のモンスターはいなくなった!そして『ヌメロンドラゴン』のさらなる効果!このターン破壊された魔法・罠カードは全て復活する!」

ヌメロンドラゴンは再び消滅する…だが、その祝福が消え去った希望を蘇らせる!

 

 

「まだ、オレ達の希望の光は消えてねぇ!ドン・サウザンド!!」

 

 

…愚かな…まだ、わからぬようだな…!自らがさらなる絶望の扉を開いた事を!!

 

「『っ…!?』」

ヌメロニアスを失ってなお、ドン・サウザンドは余裕の笑みを浮かべる……遊馬達は『パンドラの箱』の蓋を開けてしまったのだ…!

 

 

【『ヌメロニアス』が破壊された時、墓地のこのカードをエクシーズ素材としてオーバーレイ!!エクスターミネーション─!!カオスエクシーズチェンジ!!

 

「なに!?」

それは絶望の…否、全てを絶滅させる禁断の力…!

 

 

降臨せよ…!『CiNo.1000』!!

 

 

1000 

 

 

我が天は長し、地は久し…人の縋る夢は一場の幻に過ぎず…!虚無の大神よ!闇をもて、光に鉄鎚を!!『夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア』!!

それは異形の魔神、本来ならば現実に現れてはならぬ『虚数(イマジナリー)』…黒紫の翼を広げ、希望を駆逐する者…それが『夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア』…!

 

 

(ランク13の、カオスナンバーズ…!?)

 

『攻撃力、100000だとっ!?』

その攻撃力は1()0()()、無限を誇る『蛇神ゲー』や『合神竜ティマイオス』を除き…デュエルモンスターズ史上、最高値の攻撃力を持っていた!!

 

 

このカードは自ら攻撃する事はできぬ…だが、このカードがフィールドにある時…相手は必ずモンスターで攻撃しなければならない!攻撃しなければ…そのターンが終わる時、敗北となる

 

『攻撃力100000のバケモノに、必ず攻撃だと…!?』

 

「そんな…!?絶対、勝てるはずがない!!」

 

ククク…分かったか?貴様らに残された希望など、残ってはいないのだ…!ふはははは!!

理不尽、ここに極まれり…攻撃力10万を倒す手段など、限りなく少ない…勝利を確信したドン・サウザンドの笑い声が世界に木霊する…。

 

 

 

「…諦めるかよ」

 

 

【むっ…?】

 

「オレは、絶対に諦めない!!最後の最後まで!!」

理不尽なる絶望を前に…遊馬は顔を上げる!

 

 

 

「オレ達に想いを託して散っていった…仲間達の為に!!諦めてたまるかぁぁ!!」

遊馬の背後にたくさんの仲間達の幻影が現れる…。

 

 

遊馬が撤退する為の時間を稼いだ鉄男・アンナ・風也・六十郎・闇川・ゴーシュ・ドロワ・Ⅳ

 

遊馬とカイトが無事に旅立つ為の時間を稼ぎ、七皇の力を測ったⅢとⅤ

 

月で誇り高きドラゴン決戦を繰り広げ、希望を託したカイト

 

狂気の怪物を倒す為に人間界に残った遊海と翠

 

 

そして…ドン・サウザンドによって戦う道しか残されていなかった七皇、ドルベ・メラグ・アリト・ギラグ・ミザエル…そして、ベクター…

 

 

たくさんの仲間達がその命を燃やし、希望を繋いできた…その願いを、想いを無駄にはできない!

 

 

 

「いくぜ!シャーク!!アストラル!!」

 

『当たり前だ!!遊馬!』

 

(共にいくぞ、遊馬!!)

 

「おう!!」

遊馬の叫びは2人の魂を燃え上がらせ…最後の切り札を開放する!

 

 

オレと!

 

私で!

 

オーバーレイ!!

 

 

眩き希望の光が未来を導く!アルティメット・エクシーズチェンジ!ZEXAL!! 

 

 

っ…!?3回目のZEXALだと!?

それは悲しき離別を経験した遊馬とアストラルが生み出した絆の極致、希望の光を纏いし『奇跡の勇者』…ZEXALⅢが光臨する!

 

 

 

「いくぞ!!罠カード発動!『セッション・ドロー』!次のターン、通常のドローとは別にオレはカードを1枚ドローする!」

 

(この時、遊馬とシャークのドローカードが同じレベルのモンスターならば、2枚のカードでエクシーズ召喚できる!)

 

ふん、まだ僅かな希望に縋るか…!我はこれでターンエンドだ!

遊馬が発動したのは『絆』の1枚…絶望の闇を超える為に、希望は再び強く輝く!!

 

 

 

『いくぞ!遊馬!アストラル!』

 

「ああ、これがオレ達の…運命のドロー!!」

遠く離れし2人の絆は…再び重なる!

 

 

 

 

@ナッシュ

 

 

バリアンズ・カオス・ドロー!!

 

デスティニー・シャイニング・ドロー!!

 

2人のデスティニー・ドローの軌跡が重なり合う!

 

 

「…来たぜ!オレがドローしたのは…レベル5!『ZW-風神雲龍剣(ストーム・ブリンガー)』!!」

 

『オレのドローカードは!レベル5!「パンサー・シャーク」!!』

 

「『俺達は!2枚のカードでオーバーレイ!エクシーズ召喚!!』」

2人の希望が重なり、光の大爆発が起きる!

 

 

73

 

 

『現われろ!「No.73」!「激瀧神アビス・スプラッシュ」!』

混沌の魔神を前に混沌を浄化する海神が降臨する!

 

 

「そしてオレは罠カード『ライジング・ホープ』を発動!墓地の『希望皇ホープ』を特殊召喚し、このカードを装備する!」

さらに遊馬が罠を発動…三度、希望が蘇る!

 

 

『さらに罠発動!「希望の絆」!!自分フィールドにエクシーズモンスターが特殊召喚された時、墓地のエクシーズモンスターを特殊召喚する!現われろ!「ヌメロン・ドラゴン」!!』

ナッシュの叫びと共にカイトに託されし、黄金のドラゴンが復活する!

 

 

『さらに「希望の絆」は自分フィールドのエクシーズモンスターのORU全てと、このカードを別のエクシーズモンスターのORUにする!俺は「ホープ」を選択!…遊馬、俺達の希望…お前に託すぜ!!』

 

「シャーク…わかった!!オレは『ライジングホープ』のさらなる効果発動!」

 

(『ヌメロンドラゴン』と『アビススプラッシュ』のORUを使う効果を得る!!)

 

なっ…!?『ホープ』に、全てのORUと、モンスター効果を集約させただと!?

希望に集約する全ての力…ホープは虹色の光を纏う!

 

 

「あれは…!3体のモンスターが、遊馬・シャーク・カイトの力が、1つになって…!すごい、すごいよ!!」

 

《フォーウ!!》

その時、小鳥には見えていた…遊馬とナッシュと共に並び立つカイトの姿が…!

 

 

「ドン・サウザンド!オレ達の希望を、想いを!今こそお前に受けてもらうぜ!!」

まさに『希望の化身』となったホープと共に、遊馬とナッシュは最後の攻撃を仕掛ける!!

 

 

「オレは『ホープ』のORUを1つ使い『ヌメロンドラゴン』の効果発動!カイト…力を貸してくれ!!」

 

「「1ターンに1度、自身の攻撃力をフィールドに存在する全てのエクシーズモンスターのランクの合計×1000アップする!フィールドのランクの合計は23!よって『ホープ』の攻撃力は25500にアップする!!」」

カイトの幻影…否、魂と共に遊馬は効果を発動…ヌメロンドラゴンの祝福を得る!

 

 

攻撃力を上げたところで『ヌメロニアス・ヌメロニア』の攻撃力には遠く及ばん!

 

「まだだ!まだ『ホープ』のORUは残っている!!」

 

『俺達は「ホープ」のORU2つ全てを使い「アビススプラッシュ」の効果発動!「ORUを1つ使い、攻撃力を倍にする!その効果を2回使い、攻撃力を4倍にする!!」』

さらに、海神の加護がホープを後押しする!

 

「これで攻撃力102000だぁぁ!!」

 

ぬうぅぅ…!?

 

「や、やった!攻撃力が上回った!!」

遊馬とナッシュ…否、三勇士の希望が絶望の神を凌駕する!!

 

 

「バトルだ!『ホープ』で『ヌメロニアス・ヌメロニア』を攻撃!!」

 

愚かな…!!『ヌメロニアス・ヌメロニア』の効果発動!カオスORUを1つ使い、相手モンスターの攻撃を無効にする!!さらに、攻撃してきたモンスターの攻撃力分ライフを回復する!

 

『なにっ!?』

混沌の障壁がホープの攻撃を阻み、ドン・サウザンドのライフを回復させる…そのライフ、102900…!

 

 

分かったか?貴様らが何をしようと…神の力には及ばないのだ!ふはははは!!

今度こそ、勝利を確信するドン・サウザンド…だが、彼は()()()()()…攻撃を無効にする、その選択は…!

 

 

「それはどうかな!!」

 

【なにっ!?】

遊馬が最も得意とする状況なのだから!!

 

 

 

「オレ達の希望の光は、まだ消えちゃいない!!」

 

『これが、俺達の絆の力!!』

 

(仲間を信じる…力の強さだ!!)

 

ま、まさか─!?

 

「これがオレ達の最後の希望だ!速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』発動!!」

それは伏せカード最後の1枚、遊馬がもっとも信頼する1枚が…絶望の底に残されていた!

 

 

(このカードはモンスター1体の攻撃が無効になった時、そのモンスターの攻撃力を2倍にして、もう一度攻撃を可能とする!)

 

ば、馬鹿な…!?攻撃力204000だとぉ!?

『希望皇ホープ』に『希望皇ホープレイ』『希望皇ホープレイV』『希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』『希望皇ホープ・ルーツ』の幻影が重なる、これが…混沌の決闘を終わらせる最終攻撃(ラストアタック)

 

 

 

『(「「いっけぇ!『希望皇ホープ』!!『ヌメロニアス・ヌメロニア』を攻撃!!」」)』

 

「『ホープ』と共に戦ってきたオレ達の絆!『希望皇』の力!!今こそ見せてやる!!必殺のファイナル・ホープ剣スラッシュ!!

それはまさに絶望を裂く、希望の一閃…『希望皇』5体の連続攻撃を受けた『絶望の神』は…大爆発と共に砕け散った。

 

 

 

ぐおおぁあぁ!!!

 

 

ドン・サウザンド LP0

 

 

遊馬&アストラル&ナッシュ&カイト WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

「や、やったぁぁ!!遊馬達が勝ったあああああ!!」

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

遊馬達の勝利を示すブザーが鳴り響く、瞳に涙を溜めた小鳥が歓声を上げ、フォウはその周りを跳び回っている。

 

 

 

「か、勝った…ドン・サウザンドに……あっ、カイト…!」

 

─……!─

 

「……ありがとう、カイト…」

ドン・サウザンドに勝利した遊馬は共に戦ってくれていたカイトを見る…カイトは柔らかな笑顔を浮かべながら、光となって消えていった…。

 

 

ゴゴゴ…

 

 

「あっ…!アストラル世界への扉が、閉じていく…!」

 

「み、見て!遊馬!人間界が!?」

 

「人間界が離れていく!!」

 

(どうやら、人間界とバリアン世界の融合が止まったようだ…!)

ドン・サウザンドが倒れた事でカオスの力が弱まり、アストラル世界への扉が閉じ…人間界もバリアン世界から離れていく、遊馬達は…世界を救ったのだ。

 

 

 

【馬鹿な…我が、我が敗北する…だと…?】

 

「ドン・サウザンド!!…お前の野望は、完全に崩れ去ったぜ!!」

遊馬はドン・サウザンドに野望の崩壊を突きつける…だが、ドン・サウザンドは()()な敗北を受け入れてはいなかった…。

 

 

 

ふっ…ふはは…ふはははははは!…

 

「『っ…!?』」

突然笑い始めるドン・サウザンドのその体から赤黒い炎が溢れ出す…!

 

 

我が滅びようと、()()()()()は解けていない…!お前達は、すぐに…それを知る事になる…!

 

『っ…!?』

 

カオスこそ、命の源…カオスは()()なのだ…!ナッシュ、()()()()()()()()()?ふはは…ふははははは!!!

 

「な、なに!?何が起きるの!?」

意味深な言葉と共にドン・サウザンドは黒い太陽と化す…そして…!

 

 

ギィン─! ─────!!

 

 

『っ─!!?』

 

「し、シャーク!!?」

太陽から飛び出した無数のカード…バリアンの集めたナンバーズやオーバーハンドレットナンバーズがナッシュへと吸い込まれていく!!

 

 

…遊馬、アストラル…このナンバーズ、渡す訳にはいかねぇ…!!

 

「シャーク、お前…!?」

 

《フォウ─!!》

瞳に暗い光を宿したナッシュは遊馬を睨みつける…そして…。

 

 

ギィン!!

 

 

「へっ…!?うわああああ!?!」

 

「きゃあああああ!?」

 

(遊馬!小鳥!)

 

《フォーウ─!!》

 

ナッシュの眼が妖しく輝いた直後、ZEXALが解けた遊馬は次元の狭間に投げ出された…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──混沌の神は確かに息絶えた…だが、彼は最凶にして最悪の呪いを世界へと遺していった…──

 

 

 

──彼らに待ち受けるのは「世界」を賭けた戦い……ではない──

 

 

──これは「ゆずれない願い」と…人としての『意地』と『誇り』を賭けた…決闘だ──

 

 

 

 

──しっかり見届けるんだよ、キャスパリーグ…彼らの選ぶ道を…──

 




〜次回予告〜


《ついに、ドン・サウザンドを倒した遊馬とナッシュ…だけど、最後に立ち塞がるのは…他でもない、ナッシュだった…》

《自分が守るべきものの為にぶつかり合う、遊馬とナッシュ…その戦いの行方は…!》


《次回『転生して決闘の観測者になった話』!『希望と冀望』!》



《教えて、遊馬…キミの選ぶ未来を…》


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希望と冀望

こんにちは!S,Kです!

ついにドン・サウザンドを撃破した遊馬……だが、彼の前に最後の敵が立ち塞がる…!


それでは…最新話をどうぞ!


《フォウ…フォウ!!》

 

「ん、あ…?あれ…フォウ…?」

 

「う、うぅん…」

 

(ここは…?)

気を失っていた遊馬はフォウに頬を舐められて目を覚ました、どのくらい意識を失っていたのかは分からないが…同じタイミングで目を覚ました小鳥とアストラルの姿を見て胸を撫で下ろす…。

 

 

「たしか、ドン・サウザンドを倒して…シャークが……っ…!?あれは…!アストラル!あれって…!?」

 

(アストラル世界…!?何故、あんな場所に!?)

目を覚ました遊馬達は辺りを見回す、遊馬達がいる場所は赤や青、紫など様々な色の水晶が浮かぶ石造りの島だった…そして周囲を包む宇宙のような空間の先にはアストラル世界が見えていた…!

 

 

(っ…!遊馬、後ろを見るんだ…!)

 

「こっちにはオレ達の世界が…!?しかも、バリアン世界と融合しちまってる!?どうして…!」

アストラルが示した先、そこには人間界が見えていた…だが、ヌメロン・ネットワークの影響で飛び出した異形の花が消えた代わりに、バリアン世界で見た赤い水晶の山が突き出していた…!

 

 

「世界は、救われたんじゃ…!?」

 

『いいや、地上は()()()バリアン世界と融合した…此処は、その世界とアストラル世界を繋ぐ場所だ…』

 

「シャーク…!?」

 

《フォーウ…!》

動揺する遊馬達の前に人間体のナッシュが姿を現す…その表情は強い覚悟を宿していた…。

 

 

『今、2つの世界は引き合っている…このまま放っておけば、やがて2つの世界はぶつかり……アストラル世界は滅ぶだろう』

 

「っ!?な、なんでだよ!!ドン・サウザンドは倒したのに!?それに、お前…!」

 

(シャーク…まさか、キミは…!)

 

『…ああ、俺がドン・サウザンドの力を()()()()()からだ』

 

「そ、そんな…!?どうして!!」

それはナッシュの告白…遊馬達に倒され、黒い太陽と化したドン・サウザンドから放たれた無数のカード…それを受け取ったナッシュは、ドン・サウザンドと同等…それ以上の力を持つ『混沌の皇』になっていたのだ…!

 

 

「ドン・サウザンドは私達の敵だったはずよ!?それなのに、なんで!?」

 

『忘れたのか!!俺はバリアンの戦士!お前らの敵だ!!』

小鳥の問いかけにナッシュは事実を突きつける…共通の敵を前に共闘こそしたが、ナッシュは『バリアンの戦士』…敵対関係は変わってはいなかったのだ。

 

 

 

 

『全ての宇宙の魂がランクアップを目指して生まれたのが「アストラル世界」…だが、その過程で出来の悪いモノが切り捨てられていく…それがカオスであり、その力が「バリアン世界」を大きくしていった……いわば、俺達の世界は()()()()()の集まりさ…』

それはドン・サウザンドから受け継いだ知識、アストラル世界から切り捨てられた『余分なモノ』…それがバリアン世界となったのだとナッシュは語る。

 

 

『…だがよ、俺はバリアン世界を見捨てる事はできねぇ…!あの世界にも俺の仲間がいる…かけがえのない仲間が…!!』

 

「シャーク…!だからってオレ達が、戦う事は──」

 

『遊馬!!…アストラルの使命…それは「ヌメロン・コード」を使い、バリアン世界を消滅させる事だ…!!』

 

「だけど!!バリアン世界とアストラル世界が一緒に生き残る道もきっと!!」

 

『それはありえねぇ…!そうだな、アストラル』

 

(……2つの世界が一緒になれば…力の弱くなったアストラル世界は…消滅してしまうだろう…)

それはエリファスの続けた無謀なカオス排斥の影響…弱体化したアストラル世界では、カオスに溢れたバリアン世界の強度に耐えられないのだ…。

 

 

『俺達には、どちらかが生き残る道しか残されてねぇんだ…!!』

 

「なぁ、シャーク…!オレ達は、こんな決着の為に戦ってきたのかよ!?」

 

『これが、俺達の宿命だ!』

 

「オレは、こんな事認めねぇ!!オレは…オレとお前と七皇のみんな…きっと、いつか分かりあえると信じてたから!!」

強い言葉で遊馬へと戦いの運命を告げるナッシュ…だが、遊馬はその戦いを否定する…遊馬は七皇とも理解しあえる事を信じ続けながら、戦ってきたのだ…。

 

 

 

「…そうだよ!お前はドン・サウザンドの『呪い』が解けてないだけなんだ!!」

 

『……確かに、これは奴の()()かもしれない…だが、この呪いは…()()()()()()()…!!』

遊馬はナッシュも他の七皇のようにナッシュもドン・サウザンドによる記憶の改竄を受けたのだと考えた……だが、それは当たりであり、ハズレでもある…今のナッシュはドン・サウザンドが自分に掛けた『呪い』の正体に気付いていた。

 

 

 

『ドン・サウザンドは七皇の人生に干渉し、その記憶を改竄した…だが、俺には()()()()()()()…それは俺に関わる人間を操作して、俺を()()()()()()()バリアンの道を歩むように仕向けたからだ…!』

 

「自分の、意思で…!?」

 

『俺が自分の意思で進むと決めた道なら、俺はその道を突き進む…!例え、お前達との友情が立ち塞がろうと…決してバリアンを見捨てない!……奴が言った「本当の呪い」…それは、()()()()そのものなんだよ…!!』

 

「シャーク…そんな…!!」

それは『ナッシュ』という存在の真実、ベクターを始めとした他の七皇達は『呪い』によってバリアン世界に堕ちるように操作された…だが、ナッシュは違う。

 

ドン・サウザンドはナッシュ自身には『呪い』を掛けなかった、その代わり…ナッシュの人生に強い悲しみや怒り、嘆き…憎しみを与えるように周りの人間を動かした……その結果、魂に強く純粋なカオスを宿したナッシュは自らバリアンに成った。

 

ナッシュはドン・サウザンドにとって復活の為の『糧』であり…自身が倒されたとしても、仲間のいるバリアン世界を守る為にアストラル世界を滅ぼすように仕向けた予備装置…『混沌の後継者』だったのだ。

 

 

 

「ふざけんな…!ふざけんなよ!シャーク!!お前が

『呪い』そのものだってんなら…!人間界でオレ達と一緒に過ごしたお前はなんだったんだよ!!お前と一緒に笑いあってた遊海や翠さんとの『絆』はどうなっちまうんだよ!!」

静かに自分に科せられた運命を受け入れたナッシュに遊馬は叫ぶ…例え、呪われた存在なのだろうと…家族として仲良く過ごしていた凌牙達と遊海の絆は本物だと信じていたからだ…だが…。

 

 

『…遊馬、もう…俺には……人間界に帰る場所はねぇんだ………遊海も、翠も……もう()()()()()

 

「「えっ…!?」」

ナッシュの思わぬ言葉に遊馬と小鳥は言葉を失う。

 

 

「お、おい!?それって、どういう事だよ!?」

 

『ベクターが差し向けた「名無しの怪物(ネームレス)」…奴はかつて俺が封印した、バリアン世界を破壊しかけたバケモノだ…ドン・サウザンドによって力を取り戻した奴は、遊海と翠を…俺の目の前で殺した…!!お前達が来る直前に、ベクターに見せられたんだ…!!』

 

「そ、そんな…!?」

それはここまで伏せられていた事実……だが、ナッシュは知らない…あの時点では翠は生き残り、アストラル世界から駆け付けたラプラスと共に戦いを終わらせた事を…その魂はバリアン世界融合の際に、バリアン世界に取り込まれている事を…。

 

 

『「自分らしく生きろ」…俺は、そう言われて遊海に育てられた……俺が()()()()()決別した時、お前の知る「神代凌牙」は死んだ…だが、あの人の言葉通り!俺はバリアンとしての「俺」を貫く!!さぁ、決着の刻だ!遊馬!アストラル!!』

 

「シャーク…!!」

それは血を吐くような悲壮な叫び…七皇の仲間を失い、家族すらも失ったナッシュの悲しみは…嘆きは遊馬が押し測れるものではない…。

 

 

(……遊馬、デュエルだ)

 

「アストラル…!?」

強い覇気を纏うナッシュを前に、アストラルは遊馬に戦うように促す。

 

 

()()()()()()()!デュエルの中で…キミが求めている『答え』を!!……我々は、いつでもそうしてきたはずだ…)

 

「…わかった…!!やってやる!!」

これは誰かを傷付ける為のデュエルではない、譲れぬ願い…守るべきものを賭けた決闘。

 

最善の「答え」を手にする為に…遊馬は剣を取る!

 

 

 

『いくぞ…!遊馬!アストラル─!!』

 

「相手になるぜ…シャーク!!」

 

ナッシュはバリアン体へと変身、遊馬はDゲイザーを装着…此処に運命に導かれた2人の最後の戦いが始まった!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対ナッシュ

 

 

 

 

101

 

 

『現われろ!「CNo.101」!「S・H・Dark Knight(サイレント・オナーズ・ダークナイト)」』

 

「いきなり来たか…!」

先攻を取ったのはナッシュ、そのフィールドに『RUM-七皇の剣』で呼び出された黒き槍術士が現れる!

 

 

『さらに俺は「ドッペル・シャーク」を召喚!このカードを召喚した時、自分の水属性モンスター1体を選ぶ事で「ドッペルシャーク」はそのモンスターと同じ名前とステータスを持つモンスターとなる!そして、この効果で選ばれたモンスターはダイレクトアタックが可能になる!俺は「ダークナイト」を選択する!』

ナッシュの場に現れた不気味な鮫が槍術士に変化、さらにダークナイトが禍々しいオーラを纏う!

 

『さらに!俺は魔法カード「カオス・クロス・バリア」を発動!自分の場に同じ「カオス」モンスターがいる時、そのモンスターは攻撃対象にならず、カード効果によって破壊も除外もされない!』

 

(マズイぞ、遊馬…このままでは、毎ターン2800のダイレクトアタックを受ける事になる…!)

 

「っ…!」

 

『俺はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ』

それは手札を全て使い切った鉄壁の布陣…攻撃を封じ、カード効果による除去も不可能…さらに伏せカード2枚…次のターンで突破できなければ、遊馬達は大ダメージを受けてしまう…! 

 

 

 

 

「アストラル…オレ達は、本当にこのデュエルで答えを出せるのかな…本当に、みんなを救う未来を見つける事が…できるのかな…」

 

(遊馬…)

遊馬は自分のターンを前に少し弱気をみせる、バリアン世界の運命を背負うナッシュ…そして、アストラル世界と人間界の運命を背負う遊馬…そこにあるのは『自分の世界を守りたい』という()()()()…散っていった仲間達の願いに応える為のデュエル…だが、遊馬は未だに迷っていた…。

 

 

(……遊馬、全ての問題を解決する方法がある…『ヌメロン・コード』だ…!)

 

「『ヌメロン・コード』…!」

 

(このデュエルの勝者は…過去も未来も全てを書き換える事ができる『ヌメロン・コード』の所有者となる)

 

「まさか、それで全部の歴史を書き換えるってのか!?」

 

(そうだ…今まで起きた事を()()()()()()()、今までの戦いを無かった事にするんだ)

アストラルが提示した選択…それは「全能の力」『ヌメロン・コード』による歴史の書き換え…それにより今までに起きた戦いを()()()()()()()()…そうすれば、命を落とした者達を蘇らせ…アストラル世界とバリアン世界の問題も解決する事ができるだろうと…。

 

 

「……たしかに、ヌメロン・コードの力を使えば…この戦いで散っていった仲間達を救えるかもしれない…でも…それでいいのかよ、アストラル…それって、オレ達の()()()()()なのかな…?」

 

(……)

 

「どんなに辛くても、苦しくても…逃げ出さずに必死に戦ってきた…その一瞬一瞬の積み重ねに、オレ達の未来があるんじゃないのか…?……そうだよ、そんなの…オレ達の掴んできた未来じゃねぇ!!」

だが、遊馬は「ヌメロン・コード」のその使い方を否定する…全てを無に戻してしまったら、遊馬達が歩んで来た「今」を…掴み取った「未来」を否定する事になると気付いたのだ…。

 

 

 

(そうだな…その通りだ、遊馬!そんなモノにはなんの価値もない!)

 

「アストラル…!」

 

(以前の私なら、躊躇なく『ヌメロンコード』を使うだろう…だが、今の私は…私には()()()()()のだ…!だからこそ、デュエルをしている!このデュエルは…私の()()()()()()なのだ!)

 

「かっとビング…?」

 

(そうだ…シャークとのデュエルなら、きっと何かを導き出せるはず!)

遊馬と出会う前のアストラルならば、目的を果たす為に迷いなく「ヌメロン・コード」を使うだろう。

 

しかし、今のアストラルは違う…遊馬と出会い、カオスに触れ…絆の強さを知った彼は「最善」の結末を求め、足掻いているのだ…!

 

 

「…アストラル……お前が、かっとビングで見つけるってんなら…オレだってやってやる!!」

『かっとビング』…それは困難に立ち向かい、窮地でも諦めず、一歩を踏み出す勇気の言葉…遊馬は最善の結末を見つける為に剣を取る!

 

 

 

11 

 

 

「現われろ!『No.11』!『ビックアイ』!!」

遊馬が窮地を切り抜ける為に打った一手…それは「カード効果で破壊も除外もせず」なおかつ「ダークナイト」の効果を使わせない一手……すなわち、コントロール奪取だった!

 

 

「『ビックアイ』の効果発動!ORUを1つ使い、相手モンスター1体のコントロールを得る!オレは『ダークナイト』のコントロールを奪う!…ただし、このターン『ビックアイ』は攻撃できない!」

単眼から放たれた不思議な波動が槍術士のコントロールを奪い取る!

 

 

「そしてオレは『ダークナイト』の効果発動!シャークの『ドッペルシャーク』をカオスORUに変換する!バトルだ!『ダークナイト』でダイレクトアタック!!」

 

『っおおお…!!』

フィールドをガラ空きにされたナッシュにカオスの槍が直撃する!

 

 

『お前達が、こう来るのはわかってたぜ…これは七皇のナンバーズを()()()()の痛み…!』

 

「えっ…!?」

大ダメージを受けたナッシュ…だが、それは承知の上…全ては七皇の『夢』の為に…!

 

 

『罠カード発動!「七皇の双璧」!このカードは「CNo.」に攻撃され、戦闘ダメージを受けた時!エクストラデッキからこの2体を召喚条件を無視して特殊召喚する!』

それはナッシュの新たな…否、真なる力…混沌の王がその力を解き放つ!

 

 

102 103

 

 

『来い!「CNo.102」「光堕天使ノーブル・デーモン」!そして「CNo.103」「神葬零嬢ラグナ・インフィニティ」!!』

 

(これは…!オーバー・ハンドレット・ナンバーズ専用カードか…!?)

 

「あいつ、ここまで先を読んでたのか…!?」

ナッシュを守るようにドルベの堕天の騎士、そしてメラグの神をも葬る女死神が現れる!

 

『ただし、特殊召喚されたモンスターの効果は無効となる!』

 

「くっ…カードを1枚伏せ、ターンエンドだ…!」

ナッシュにさらなる展開を許してしまった遊馬…カオスの脅威が襲いかかる!

 

 

 

『俺のターン!…いくぜ、ドルベ…メラグ…!!バトルだ!「ラグナインフィニティ」で「ビックアイ」を攻撃!』

 

「ぐああっ…!!」

ナッシュはメラグとドルベの思いを背負い、攻撃を仕掛けていく…!

 

 

『さらに「ノーブルデーモン」で「ダークナイト」を攻撃!そしてカオスORUを持つ「ダークナイト」が破壊された事で効果発動!このカードを特殊召喚し、攻撃力分のライフを回復する!リターン・フロム・リンボ!』

 

「しまった…!!」

堕天の騎士がダークナイトを貫き、破壊…さらに不死の槍術士は復活し、ナッシュのライフを回復する!

 

 

『「ダークナイト」でダイレクトアタックだ!!』

 

(遊馬!!)

 

「おう!手札の『ガガガガードナー』の効果発動!ダイレクトアタックを受ける時、自身を手札から攻撃表示で特殊召喚する!っぐうぅぅ…!!」

 

「遊馬!アストラル!!」

 

《フォウ…!!》

ナッシュによる怒涛の三連撃…遊馬はその攻撃を最小限のダメージで耐えきった…!

 

『…俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ』

 

「やってくれるじゃねぇか…だけど、オレ達の答えは…まだ出てねぇぜ─!!」

ナッシュの攻撃を受けきった遊馬は反撃に転じる!

 

 

 

39

 

 

「現われろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

遊馬はエースたる希望の戦士・ホープを召喚する!

 

 

「いくぜ…!さらに装備魔法『アルティメット・ホープ剣』を『ホープ』に装備!攻撃力を800アップする!」

ホープが身の丈程もある大太刀を構える!

 

「いっけぇ!『ホープ』で『ダークナイト』を攻撃!アルティメット・ホープ剣スラッシュ!!」

 

『ぐうっ…!!』

究極の名を冠する一撃が不死の槍術士を両断する!

 

 

(この瞬間!「アルティメットホープ剣」のさらなる効果発動!装備モンスターが相手を破壊した時、このカードを墓地に送り!装備モンスター以外のモンスター全てを破壊する!)

さらに光を増したアルティメットホープ剣がノーブルデーモン、ラグナインフィニティを粉砕…その代償に砕け散る…!

 

 

 

「どうだシャーク!!」

 

『全ては…想定内だ!罠カード発動!「オーバー・ハンドレット・カオス・ユニバース」!!』

 

「なにっ…!?」

再びナッシュのフィールドをガラ空きにした遊馬…だが、ナッシュは知っている…アストラルの圧倒的タクティクスを…遊馬のかっとビングを…故に、それを利用する!

 

 

『このカードはこのターン、自分フィールドで破壊されたカオスオーバーハンドレットナンバーズを効果を無効にして全て特殊召喚する!!』

ナッシュのフィールドにダークナイト・ノーブルデーモン・ラグナインフィニティが並び立つ!

 

 

『さらに!このカードが復活させたのと同じ数のカオスオーバーハンドレットナンバーズを効果を無効にして、()()()()()()()()守備表示で特殊召喚する!』

 

「えっ…!?」

 

(我々のフィールドに、だと!?)

それは予想外の一手…ナッシュは新たなナンバーズを呼び出す!

 

 

   104

 

 105  106   

 

 

『現われろ!「CNo.104」!「仮面魔踏師アンブラル」!「CNo.105」「BK-彗星のカエストス」!「CNo.106」!「溶岩掌ジャイアント・ハンドレッド」!』

 

(何故、我々の場にナンバーズを…!)

それは遊馬と『絆』を結んだアリト・ギラグ…そしてベクターのナンバーズ達…フィールドで6体のナンバーズは向かい合う…!

 

 

 

『俺のターン、ドロー…!』

『リバース魔法「オーバー・ハンドレット・コール」発動!自分フィールドにオーバーハンドレットナンバーズが3体以上いる時、もう1体カオスオーバーハンドレットナンバーズを召喚条件を無視して特殊召喚する!』

 

 

107 

 

 

『現われろ!「CNo.107」!「超銀河眼の時空龍」!!』

ナッシュのフィールドに黄金の三つ首龍が降臨…フィールドに全てのオーバーハンドレットナンバーズが集結する!

 

 

「これで…全てのオーバーハンドレットカオスナンバーズがフィールドに…!?」

 

(シャーク…いや、ナッシュ…キミは、何を…!?)

 

『見るがいい…これが俺の…いいや、バリアン七皇の真の力だ!!』

ナッシュの予想外の行動に困惑する遊馬とアストラル…そしてナッシュは…『七皇』の力を束ねる!

 

 

 

『俺はエクストラデッキの「冀望皇バリアン」の効果発動!』

 

「エクストラデッキから、モンスター効果!?」

 

『フィールドにカオス・オーバー・ハンドレット・ナンバーズが3体以上存在する時、それら全てをレベル7のエクシーズ素材として扱い、このカードをエクシーズ召喚する!!』

 

(7体のモンスターでのエクシーズ召喚だと!?)

それは驚天動地の7体のエクシーズモンスターによるエクシーズ召喚…混沌の力が王の名の下に結集する!

 

 

『オレはレベル7となった「ダーク・ナイト」「ラグナ・インフィニティ」「ノーブル・デーモン」「超時空龍」そして「ジャイアント・ハンドレッド」「カエストス」「アンブラル」でオーバーレイ!!7体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!』

 

 

 

        106

 

  107   

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             102

 

 

        101

 

 

  

        冀望 

 

 

 

混沌の具現たる軍神よ!切なる願いを我が元へ!集え…七皇の力!!「CX-冀望皇バリアン」!!

 

暗黒の爆発の中からバリアンの「冀望」を背負う者が顕現する、その者はナンバーズに非ず…赤き鎧を纏い、巨大な戦槍と赤き盾を持つ「CX(カオス・エクシーズ)

 

 

その名は「冀望皇バリアン」…世界の名を背負いし軍神である…!

 

 

 

(これが真の七皇の力…!)

 

「『冀望皇バリアン』…!?」

遊馬とアストラルは軍神の放つ圧倒的オーラに気圧される、その威圧感は…遊海との最後のデュエルで目にした三幻神を上回っていた…!

 

 

 

『(俺は結局、誰一人守る事ができなかった…ドルベ・ミザエル・ギラグ…メラグ・アリト…そしてベクター……七皇の力を合わせ、バリアンの未来を導く…その夢を果たす事はできなかった…!!)』

 

「な、なにあれ…!?」

 

《フォ…!?》

 

「『冀望皇バリアン』のカオスORUに、七皇達の姿が…!?」

 

(あのモンスターは…『バリアン七皇』()()()()だと言うのか…!?)

遊馬達はナッシュの後ろに並ぶORUに七皇達の姿を幻視する…『冀望皇』はその名の示す通り、バリアン七皇の願いの化身なのだ…!

 

 

『(だから…この決闘は俺達の…その夢を果たすデュエル!!)』

 

━━━━━━━!!

 

「っ…!感じるぜ…シャークの闘志を!!」

 

(これが、彼の『カオス』…!)

 

『俺達の力で必ず…バリアンの未来を切り拓く!!』

ナッシュは自身の全ての力を解き放つ…全てはバリアンの未来を救う為に…!

 

 

 

『いくぞ!遊馬!アストラル!!「冀望皇バリアン」の攻撃力はカオスORUの数×1000アップする!』

 

「攻撃力、7000…!」

 

(っ…!遊馬、罠カードだ!)

 

「おう!!」

冀望皇バリアンの攻撃力にたじろぐ遊馬…だが、その窮地はチャンスに繋がる!

 

 

「罠カード発動!『オーバーレイ・ブレッシング』!このカードは手札がゼロで、相手がエクシーズモンスターを特殊召喚した時!そのORU1つにつき1枚ドローできる!7枚ドローだ!!」

一気に手札を補充する遊馬…だが、ナッシュは猛攻を仕掛ける!

 

 

『「冀望皇バリアン」のさらなる効果発動!カオスORUを1つ使う、または400ライフを払う事でカオスORUとなっているカオスナンバーズの効果を使用できる!…ただし、同じ効果はそのターン1度しか選択できない!』

 

「そんな…!?七皇全てのカオスオーバーハンドレットナンバーズの効果を…!?」

 

(このターン受け切らなければならないのか!?)

バリアンの軍神…その効果は全てのカオスオーバーハンドレットナンバーズの力を自在に操る、カオスの力が遊馬達に襲いかかる!!

 

 

『これが…俺達「七皇」の絆だ!!俺は400ライフを払い!「超時空龍」の効果発動!!『1ターンに1度、このカード以外の全ての効果を無効にし!ターン開始時の状態に戻す!そしてこのターン、フィールド上で発動する効果は俺の許可したもの以外発動できない!タイム・タイラント!!』』

それは時間を統べる龍皇の力…全ての時が巻き戻る!

 

 

 

『これで「ホープ」の効果は無効…!さらに俺は400ライフを払い!「ノーブル・デーモン」の効果発動!『1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力をゼロにする!!貴様らのしがみつく希望…今こそ意を決し、花と散れ!!』』

 

「『ホープ』!!」

戦槍から放たれた堕天の騎士の力がホープの力を奪い去る…!

 

 

『さらに俺は400ライフを払い!「ラグナ・インフィニティ」の効果、発動!『相手モンスターの攻撃力が変動した時、その数値分のダメージを与える!』「ホープ」の攻撃力の変動は2500…これで終わりだ!!』

 

「そうは、いくかよ!!手札の永続罠『アリバリア』の効果発動!相手モンスターの効果によってダメージを受ける時、このカードは手札から発動できる!そのダメージを無効にし、自分フィールドのモンスターは全て守備表示になり!さらに1ターンに1度、相手モンスターの攻撃を無効にできる!!」

 

『手札からの効果…!「超時空龍」の唯一の弱点を突いてきたか…!』

ダメージを受ける寸前、遊馬の罠によってホープは守備表示になり…冀望皇バリアンは鎖によって縛り上げられる!

 

 

『だが、まだだ!400ライフを払い!「ジャイアント・ハンドレッド」の効果発動!『フィールドに表側表示でいる、このカード以外全てのカード効果を無効にする!』これで「アリバリア」の効果は無効だ!』

 

「なにっ!?」

 

(なんという猛攻…!!)

全てを掌握する巨腕の力が鎖を引きちぎる!

 

 

『さらに俺は、ライフを400払い!「彗星のカエストス」の効果、発動!『1ターンに1度、相手モンスターを破壊する!喰らえ!「希望皇ホープ」!!

 

「ホープ!!」

神をも打ち砕く戦士の力を宿した戦槍がホープを打ち据え、粉砕する!

 

 

『これで、お前達の最期だ!!いけ!「冀望皇バリアン」!ダイレクトアタック─!!』

 

「っ…!このまま、終われるか!!手札の『ガガガガーディアン』の効果発動!ダイレクトアタックを受ける時、守備表示で特殊召喚できる!!」

 

『無駄だ!ライフを400払い「アンブラル」の効果発動!『相手のモンスター効果を無効にし、相手の手札をランダムに墓地に送り!ライフを半分にする!!』』

 

「しまっ…!ぐああああ!?」

 

「遊馬!アストラル─!!」

遊馬は壁となるガガガの番長を呼び出すが…全てを嘲笑う魔踏師の力がそれを許さず、遊馬を追い詰める!

 

 

 

『これで、本当の最後だ!「冀望皇バリアン」でダイレクトアタック!!さらばだ!遊馬!アストラル!!』

 

(くっ…!遊馬─!)

 

「ふざけんな…!!俺は()()()『虹クリボー』の効果発動!ダイレクトアタックを受ける時、守備表示で特殊召喚できる!!」

 

《クリクリー─!!》

 

『なにっ…!?』

墓地から飛び出した虹クリボーが遊馬を守る為に軍神に立ち向かう…『アンブラル』の効果で墓地に送られたカードが()()()()虹クリボーだったのだ…!

 

 

 

「た、助かったぜ『虹クリボー』…!」

 

(ここまで、七皇のカオスナンバーズを使いこなすとは…!)

 

「ああ…シャークの本気…とてつもなく強えぇ…!」

奇跡的にナッシュの猛攻を防ぎきった遊馬はナッシュの強さに戦慄する…!

 

 

『我ら七皇の攻撃を防ぎきるとは…流石だな、俺は魔法カード「カオス・テンペスト・ドロー」を発動!自分フィールドにカオスエクシーズと伏せカードが1枚以上存在する時、フィールドの魔法・罠を全て破壊し、その枚数分ドローできる!俺は自分の伏せカード1枚とお前の場の伏せられた「エクシーズ・ブレッシング」「アリバリア」を破壊し3ドロー!…俺はカードを3枚伏せ、ターンエンド!』

ナッシュはさらに守りを固め…猛攻のターンを終えた…。

 

 

 

「ふ、ふぅ…!ヤバかったぜ…!!」

 

(その通りだ…彼の攻撃を耐えきれたのは、奇跡に近い…だが、何故だ…?何故、彼はカオスORUを使わず…自らのライフを削る…?『冀望皇バリアン』の攻撃力を下げたくないという戦略は分かるが…今では、我々とのライフ差は僅かだ…)

 

「あっ…」

ナッシュの猛攻を受けきり、思わずため息をつく遊馬…アストラルはその横でナッシュの戦略に疑問を抱いていた…。

 

 

「…オレ、なんとなく分かる気がする…きっと、あのカオスORUにはまだ七皇のみんなの『魂』が居るんだ…感じたんだ、アイツの攻撃を受けながら……シャークはみんなと一緒にこのデュエルを戦っているんだ…!」

 

(みんなと…)

遊馬は気付いていた…否、見えていた…ナッシュと共に戦う七皇の姿を…。

 

 

「あのモンスターは『バリアン七皇そのもの』…アイツは必死に()()()()()()、みんなとの『絆』を……『カオス』の力を強力に使う奴は何処かでその力に取り込まれちまってた…けど、シャークのカオスは違う…エナが言ってたんだ『誰かを守りたい』『誰かの為に生きていきたい』…それは生きる力()()()()なんだ…!」

 

(その思いが…これ程までに、カオスの力を制御させているのか…むしろ、今の彼の姿こそが…カオスの持つ最大限の『可能性』…)

 

「へへっ…無茶苦茶カッケェじゃんか…!シャークの奴!」

『カオス』とは決して『悪』ではない…アストラル世界はランクアップを目指し『カオス』を切り捨てたが、それは違う。

誰かの為に生きる…誰かを守る…その『思い』『願い』が人の魂を進化させる…ナッシュはその『可能性』を体現しているのだ…!

 

 

(遊馬…やはり、私には分からない…!私はアストラル世界の生き残りを懸けて戦ってきた…しかし、だからといってバリアン世界を滅ぼしていいのか…!?)

 

「……ありえねぇ!どっちか1つなんてありえねぇ!!…そんな事させない為にオレは…()()()は戦ってきたんだ!!…そうだろ?アストラル!」

 

(そうだったな、遊馬…!)

バリアン世界を滅ぼす事に迷いをみせるアストラル…遊馬はその言葉を肯定する、アストラル世界とバリアン世界…2つの世界の最善の未来を見つける為…2人は奇跡を解き放つ!

 

「いくぜ!アストラル!」

 

(ああ!!)

 

 

オレと!

 

私で!

 

かっとビングだ!!

 

 

オレはオレ自身とお前でオーバーレイ!

 

赤と青の閃光と化した遊馬とアストラル…その願いが1つとなる!!

 

 

絆結ばれし時!力と心が1つになり、光の奇跡と伝説が生まれる!エクシーズチェンジ!ZEXAL!!

 

それは2人が手にした究極の力、奇跡の象徴…ZEXALⅢが降臨する!

 

 

 

『現れたか、ZEXAL!!』

 

「っ…!!」

 

 

────!

 

────!

 

 

「な、なに!?今度は何が起きるの!?」

 

《フォーウ!?》

ZEXALの降臨を見たナッシュは凄まじい闘志を開放…2人の凄まじい闘志が衝突し、天地を揺るがす…!

 

 

 

「えっ…ああ!?遊馬!!」

 

「っ!?なんだ!?」

ナッシュとZEXALの衝突に圧倒されていた小鳥が異変を伝える、背後を振り返った遊馬が見たのは…明らかに速度を早めて接近するバリアン世界の光景だった!

 

 

(我々のデュエルの力…デュエルエナジーが増大した事で人間界と融合したバリアン世界とアストラル世界が引き寄せられる力が強まったのか!?)

それはアストラルの仮説…星の引力に物が強く引き寄せられるように、ナッシュとZEXALの膨大なデュエルエナジーが共鳴し…3つの世界を引き寄せてしまったのだ…!

 

「そんな…!?このまま3つの世界が重なったら…人間界も、アストラル世界も…デュエルが終わるまで保たねぇ!!」

それは想定外の出来事…3つの世界が衝突してしまえば、遊馬達の戦いの意味は無くなってしまう…。

 

 

 

 

 

 

【遊馬!聞こえているか…!!】

 

 

「っ…!?父ちゃん!?」

その時、次元の狭間に声が響いた…。

 

 

 

 

Side???

 

 

『あれが、アストラル世界か…』

バリアン世界と融合した地上…ハートの塔の屋上に人影が現れる、それはトロンだった。

彼は海の向こうから迫りくるアストラル世界を見つめていた…。

 

 

『…()()、聞こえるかい?』

 

【その声は…バイロンか?】

トロンは紋章の力を使ったテレパシーにより…アストラル世界で事態の成り行きを見守っていた遊馬の父・一馬へと声を届かせる…!

 

 

『久しぶりだね、一馬』

 

【ああ、アンタには礼を言う…君達家族が遊馬を成長させてくれた…】

 

『それはこっちのセリフさ、遊馬のおかげでボクは家族を取り戻せた』

短い挨拶を交わしたトロンは本題を切り出す。

 

 

『時間がない…要点だけ伝える、ボクの息子達…そして君の()が希望を託した遊馬に、危機が迫っている…!』

 

【わかっている】

 

『3つの世界は同化しつつある…しかし、()()()()()()…!最後の力…遊馬の為に使いたい…!』

 

【バイロン…分かった…!】

 

キィン─!

 

キィン─!

 

それは2人の父親の『覚悟』…世界を懸けて戦う子供達の為に、2人は光となって飛び立った…!

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

【遊馬!聞こえているな!!】

 

「父ちゃん!?」

次元の狭間に響く一馬の声に遊馬は驚愕する…!

 

 

【此処はオレ達が食い止める!】

 

『見届けさせてもらうよ…君達の運命を!!』

 

『…トロン…!?』

アストラル世界から飛び出した青の閃光、そして人間界から飛び出した青の閃光は遊馬とナッシュの戦いを見つめるように旋回…そして…!

 

 

キィン─!

 

キィン─!

 

 

「これは…!」

トロンは地上へ…一馬はアストラル世界へ向けて紋章の力とアストラル世界の力を発動…3つの世界の接近を押さえ込んだ…!

 

 

『さぁ…!デュエルを続けるんだ!』

 

【お前達の未来を賭けた決闘を!!】

 

 

(遊馬!今だ!!)

 

「ああ…!!」

2人が作ってくれた僅かな猶予…遊馬は願いを背負い、ナッシュに立ち向かう!

 

 

 

 

オレのターン!全ての光よ!力よ!我が右腕に宿り、希望の道筋を照らせ!!シャイニング・ドロー!!

 

それは希望を導く光の奇跡…奇跡の光が混沌を照らす!

 

 

「オレは魔法カード『オーバーレイ・ドロップ・リボーン』を発動!手札からレベル4以下のモンスターを墓地に送り、墓地からランク4以下のエクシーズモンスターを特殊召喚する!蘇れ!『希望皇ホープ』!」

墓地から希望の戦士が復活する!

 

 

「さらに!復活した『ホープ』のランク分『冀望皇バリアン』のORU取り除く事ができる!」

 

『させるか!!罠カード「オーバーレイ・メナス」発動!自分のエクシーズモンスターのORUが効果対象になった時、その効果を無効にする!そして俺は1枚ドローし、ORU1つにつき500ライフ回復する!』

 

「くっ…!ORUを取り除けなかった時、『ホープ』の攻撃力は0になる…!」

起死回生の一手はナッシュによって防がれ…そのライフは4600まで回復する…!

 

 

(ORU対策までしていたとは…!)

 

「だが、本番はこれからだ!!オレは…『RUM-アストラル・フォース』発動!」

 

(エリファス…貴方から貰ったこのカード…!その思いが今、此処に結実する!!)

遊馬が発動するのはエリファスから託された『希望』…それは新たな進化の光─!

 

 

「このカードは自分フィールドの1番ランクの高いエクシーズモンスターをランクが1つ、または2つ上のエクシーズモンスターを特殊召喚する!これが…オレ達の全力!!ランクアップ・エクシーズチェンジ!!限界突破だ!『希望皇ホープ』!!」

それは遥か高みを目指し続けたアストラル世界の到達点…希望はさらに強く、光輝く!

 

 

現われろ!『No.39』!人が希望を超え、夢を抱く時…遥かなる彼方から!新たな未来が現れる!

 

それは進化の儀式…『希望皇ホープ』を中心に『希望皇ホープレイ』『希望皇ホープレイV』『希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』『希望皇ホープ・ルーツ』が集い、剣を掲げ…『希望皇』を限界の彼方へと押し上げる!

 

 

 

 

          39

 

 

   39             39

 

 

          39

 

 

    39           39

 

 

 

 

 

         希望 

 

 

 

 

限界を越え…その手に掴め!『希望皇ビヨンド・ザ・ホープ』!!

 

光の大爆発の中から世界の「希望」を背負う戦士が光臨する、それは白き希望の鎧を纏いし『皇帝』…希望を超えた希望…!

 

 

その名は『希望皇ビヨンド・ザ・ホープ』…『希望皇』の辿り着いた究極の姿である!

 

 

 

『「ビヨンド・ザ・ホープ」…だと!?』

 

「わああ…!!」

 

《フォウ…!》

新たに現れた希望の化身にナッシュも小鳥も目を奪われる…!

 

 

「いくぜ!『ビヨンド・ザ・ホープ』!攻撃だ!!このモンスターは相手の効果を受け付けない!!」

 

『どんな効果があろうと…攻撃力は「冀望皇バリアン」が数段上だ!!』

ビヨンドザホープが翼を変形させた双剣を振るい、冀望皇バリアンの盾と鍔迫り合う!

 

 

「『ビヨンドザホープ』のさらなる効果!オレのターンのバトル中、相手モンスターの攻撃力は0になる!」

 

『なにっ!?』

それは希望を束ねし閃光…希望の光が混沌の力を打ち払う!

 

 

「今だ!『ビヨンドザホープ』!ホープ剣ビヨンド・スラッシュ!」

 

『っ…!罠カード発動!「エクシーズ・トリップ」!自分のエクシーズモンスターが攻撃されたバトルを終了させる!』

 

「なんだって!?」

ナッシュは防御カードを発動…冀望皇バリアンは希望の一撃を跳ね返す!

 

 

『……ただし、俺はこの効果の代償として「ビヨンドザホープ」の攻撃力分のダメージを受けるっ!ぐああああっ!!』

 

「シャーク…そうまでして『冀望皇バリアン』を…」

ナッシュは文字通り『我が身を盾に』して冀望皇バリアンを…仲間を守る…!

 

 

「オレは…カードを3枚伏せ、ターンエンドだ」

 

『ぐっ…遊馬、アストラル…!俺は…負けん…!』

回復したライフを失い、満身創痍になりながらも…ナッシュは再び攻勢に出る…!

 

 

 

 

『俺のターン!!「冀望皇バリアン」!「ビヨンド・ザ・ホープ」を攻撃!!ランド・チャリオッツ・スラッシュ!!』

軍神の戦槍にカオスの光が集う!

 

 

「罠カード発動!『オーバーレイ・ウィーカー』!このカードはエクシーズモンスター同士がバトルする時、ORUが少ない方の攻撃力を上げる!その数値は相手のORU1つにつき600!攻撃力7200だっ!!」

 

「『ビヨンド・ザ・ホープ』の攻撃力が…『冀望皇バリアン』を上回った!!」

それは渾身の一手…希望が冀望を上回る…だが!

 

 

『まだだ!400ライフを払い…!「ラグナインフィニティ」の効果発動!相手の攻撃力が変動した時、その数値分のダメージを与える!4200のダメージを受けて…消え去れ!!』

 

「そうはさせねぇ!!罠発動!『ダメージ・リアクター』!効果ダメージが発生した時、そのダメージを無効にして『ビヨンド・ザ・ホープ』の攻撃力を800アップする!」

 

『攻撃力、8000…!?』

ナッシュはラグナインフィニティの効果を発動…だが、遊馬達はそれを一手上回る!

 

 

「いっけぇ!『ビヨンド・ザ・ホープ』!『冀望皇バリアン』を攻撃!天地神明にオレは誓う!未来を掴む為に、戦い抜くと!!輝け!希望の光!ホープ剣ビヨンド・スラッシュ!!

それは混沌を裂く、希望の一撃…翼が変形した光の大剣が冀望皇バリアンを両断した…!

 

 

『どこまでも…俺の…俺達の夢を打ち砕く気か!!遊馬ァ!!アストラルゥゥ─!!』

 

「シャーク…」

バリアンの冀望が爆散する中にナッシュの悲壮な叫びが響く…ナッシュが守り続けた絆の化身は、光の希望に打ち砕かれた…。

 

 

 

『だが、まだだ…!まだ終わらない!!』

冀望を打ち砕かれたナッシュ…だが、その闘志は…尽きる事なく燃え上がる!

 

 

『罠発動!「七皇転生(セブンス・アラウンド)」!「冀望皇バリアン」が破壊された時、そのカオスORUごと除外し、バトルダメージを0にする!』

 

「そんなカードを…!?」

 

『まだだ!さらにバトルが終わる時、エクストラデッキからランク3以下のエクシーズモンスターを特殊召喚し!その攻撃力分のダメージを相手に与える!』

 

(なっ…!?ここからの反撃だと!?)

それは冀望を繋ぐ一手…かつて死した自身が人間に転生したように、バリアンの冀望も転生する!

 

 

『来い!「ブラック・レイ・ランサー」!2100のダメージ!これで終わりだぁ!!ブラック・スピア!!』

現れたのはナンバーズを手にする前の凌牙の切り札…しかし、遊馬もまた希望を繋ぐ!

 

 

「まだだ!『ビヨンド・ザ・ホープ』の効果発動!ORUを1つ使い、自分のエクシーズモンスターを除外し!墓地から『希望皇ホープ』を特殊召喚!さらにその攻撃力の半分、1250のライフを回復する!ぐあああっ…!!」

ビヨンド・ザ・ホープが鎧をパージし、希望の戦士の姿に戻り、次ターンへの希望を繋ぐ…遊馬の残りライフは350…!

 

 

『俺は、カードを1枚伏せ…ターン、エンド…っぐ…!?』

遊馬へと大ダメージを与えたナッシュ…その残りライフは1200…そして体力の限界を迎えたナッシュは人間体に戻ってしまい、膝をついた…。

 

 

『遊馬…!!』

 

「シャーク…!」

遊馬とアストラルもダメージによってZEXALが解けていた…フィールドで睨み合う2人は…言葉を交わす。

 

 

「フィールドには『ホープ』と『ブラック・レイ・ランサー』…思い出すぜ、お前とのデュエルを……そうさ、何度も何度もぶつかって…協力して…デュエルしながら、オレ達は語り合ってきたんだ…!」

 

『はっ…あの頃から、お前は面倒くさい奴だった…!人の心に勝手に入り込んで…お節介してさ……お前のせいで、遊海に拳骨されたり…とんでもない醜態みせたり…散々だったなぁ…』

 

「ははっ…マジかよ、それ…!」

世界を賭けたデュエルの最中とは思えない、穏やかな会話…2人の脳裏には同じように思い出のデュエルが浮かんでいた…。

 

 

 

「…なぁ、シャーク…お前はオレの仲間だ!今だって…もうオレ達は昔みたいになれねぇのか…!?」

 

『……そいつは無理ってもんだ…今の俺達はあの時ては違う…』

 

「オレ達はもう、わかり合えねぇのかよ…!!」

 

『はぁ…遊馬、お前は大事な事を()()()してるぜ?』

 

「えっ…?」

 

『俺達はとっくに()()()()()()()んだよ』

 

「シャーク…」

ナッシュは遊馬の思い違いを指摘する、遊馬達は分かり合えないから…理解しあえないから戦っているのではないと…。

 

 

『お前の気持ちなんて、とっくに分かってるさ…お前がどんな気持ちで戦ってきたのかも……だが、人には分かり合ってても()()()()()()()時がある…俺には、俺を信じてくれた仲間がいて…そいつらは今も一緒に戦ってる!俺は…俺を信じてくれたあいつらを裏切る訳には…失う訳にはいかないんだ…!』

 

「シャーク……失う…」

それはナッシュの覚悟…仲間達の想いに応える為にナッシュは遊馬達と戦う、その背に冀望を背負って…。

 

その時、遊馬の脳裏にある言葉が過る。

 

 

【扉を開けろ…さすれば、お前は新たな力を手に入れる…だが、その代償として1番大事なモノを失う…

 

それは遊馬とアストラルを導いた『扉』の言葉…遊馬の大切なモノ、それは…。

 

 

「(オレが失うモノ…アストラル…?シャーク…?いや、オレは絶対…どっちも失わねぇ!!)」

 

『さぁ…!来い!遊馬!!』

言葉を思い出した遊馬は動揺するが…それを抑え込み、最善の結末の為にターンを進める!

 

 

 

「オレのターン!いくぜ…!『希望皇ホープ』で『ブラックレイランサー』を攻撃!」

 

『させるか!墓地の「キラー・ラブカ」の効果発動!墓地のこのカードを除外し、攻撃を無効!さらに「ホープ」の攻撃力を500下げる!』

 

「くっ…!カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

ホープの一撃は躱され…ターンは再びナッシュに移る!

 

 

 

『遊馬…アストラル、シャークとしてお前達と出会った事…忘れねぇ…!だが、今の俺はシャークじゃねぇ…!俺はバリアンのナッシュ!バリアン世界の未来を導く為、このデュエルの勝者となり!「ヌメロン・コード」を手にする!』

再びバリアン体となったナッシュは遊馬に襲いかかる!

 

 

 

 

『エクシーズ召喚!現われろ!「潜航母艦エアロ・シャーク」!』

ドローカード「エクシーズトレジャー」で手札を増やしたナッシュは自身の愛用する鮫母艦を呼び出す!

 

『「エアロシャーク」の効果発動!ORUを1つ使い、手札1枚につき400ダメージを与える!俺の手札は1枚…これで終わりだ!エアー・トルピード!!』

 

「まだだ!罠カード『テイク・オーバー・ダメージ』!自分がダメージを受ける時、そのダメージを無効にし!このカードを『ホープ』のORUにする!その後、無効にした数値分『ホープ』の攻撃力は下がる!!っぐああああ!!」

なんとかダメージを回避する遊馬…だが、反動で吹き飛ばされてしまう!

 

 

『ならば…!「ブラックレイランサー」!「希望皇ホープ」を攻撃!!』

 

「させるか!『ホープ』の効果発動!ムーン・バリアだ!!」

刺突の一撃を鉄壁の盾が受け止める!

 

 

『だが、これで「ホープ」のORUは無くなった!!「エアロシャーク」で「ホープ」を攻撃!ナンバーズはナンバーズの攻撃でなければ破壊されない…だが、ダメージは受けてもらう!!』

 

「っ…!!ぐああああ!!」

 

「遊馬!!」

鮫の突進がホープを直撃し、遊馬達は吹き飛ばされる…遊馬の残りライフは…50…!

 

『俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンドだ』

 

 

 

「(シャーク…お前の決意は、少しも揺らがない…のかよ…!)」

遊馬は痛む身体に鞭を打ちながら起き上がる…だが、中学生とは思えない程の精神力を持つ彼の心は…折れかけていた…。

 

 

「強えぇぜ…アイツといい、カイトといい…ほんっとに…笑っちまう…!笑っちまうぐらい強えなぁ…!」

 

(遊馬…?)

アストラルは遊馬の異変に気付く、今までのデュエルで遊馬がデュエル中に弱音を吐いたのは…数えられる程しかなかったからだ。

 

 

「オレ、ずっとみんなと一緒にいられると思ってた…ずっと、あいつらと仲間でいられるって…!でもよ…今度ばっかりは……今度ばっかりは、答えが見つかりそうにねぇ…!!」

遊馬はナッシュとの戦いの中で戦いを終わらせる「答え」を見つける為に全力を尽くしてきた…だが、全てにおいて()()を決めてしまったナッシュの強さを見た遊馬は…その『答え』を見失ってしまったのだ…。

 

 

 

「何やってんだろうな、オレ…やっと、ドン・サウザンドを倒したってのに…最高の仲間と、こんなにボロボロになってデュエルして…オレは…オレはッ…!!」

 

「遊馬……っ!!」

弱りきった遊馬の姿を見て…小鳥は思わず涙を零す……だが、小鳥はその涙を拭いた…!

 

 

「遊馬!…諦めちゃだめ!!」

 

「小鳥…!?」

 

「自分で自分の()()を決めるなんて…遊馬らしくない!!あなたにはみんなの…みんなの希望が託されてる!!だから…だから!最後までしゃんとしなさい!!」

 

それは遊馬の戦いを見守り続けた小鳥の魂の叫び…遊馬のかっとビングを1番近くで見続けた彼女は知っている、九十九遊馬という男は…こんな所で立ち止まる男ではないと…!

 

 

「小鳥…お前…!」

 

(怒られたぞ、遊馬…明里に少し似てきたな?)

 

「……ああ、まったくだ…!そうだったな、小鳥…オレはまだ、答えを見つけてねぇ!!」

遊馬は思い出す、仲間に託された希望を…自分が目指す答えを…彼女の言葉が、新たな未来を目指す遊馬の道標となる!!

 

 

「いくぜ!アストラル!!」

 

(ああ!!)

 

オレと!私で!オーバーレイ!!

 

希望を取り戻した遊馬は…再びアストラルと共にその身を閃光に変え、飛び上がる!

 

 

希望に輝く心と心!真の絆で結ばれし魂!その2つの魂が交わる時、語り継がれし奇跡の力が現れる!!エクシーズチェンジ!ZEXAL!!

 

光の爆発と共に「奇跡の勇者」ZEXALⅢが再び顕現する!

 

 

 

『ふっ…来い!ZEXAL!お前達の全力、俺にぶつけてみろ!!』

 

「おう!!」

力を取り戻した遊馬…否、ZEXALにナッシュが叫ぶ…最後の攻防が始まった!

 

 

 

オレのターン!最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!シャイニング・ドロー!!

 

光の軌跡が…再び希望を導く!!

 

 

「来たぜ…シャーク!オレは『ZW-天風精霊翼(シルフィード・ウィング)』を召喚!!」

 

(このカードは『希望皇ホープ』の装備カードとなり、攻撃力を800アップする!!シルフィードチェンジ!!)

それは風の精霊の名を持つ翠風の翼…大いなる風の力が希望の戦士を加速する!

 

 

「オレは『シルフィードホープ』で『エアロシャーク』を攻撃!」

 

『罠発動!「七皇再生(セブンス・アライバル)」!自分フィールドのエクシーズモンスターを全てリリースし!「七皇転生」の効果で除外したモンスターを特殊召喚する!蘇れ!「CX-冀望皇バリアン」!!』

 

「なにっ!?」

しかし、ナッシュもまたバリアンの冀望を蘇らせる!

 

 

『さらに!リリースしたエクシーズモンスターの数に1つ足した分、除外されたエクシーズモンスターをカオスORUにする!リリースしたのは2体、よってカオスORUは3つとなり!「冀望皇バリアン」の攻撃力は3000となる!…ただし、この効果で特殊召喚した「冀望皇バリアン」はカオスORUを使う効果は使用できない!』

 

「だが…まだだ!!この瞬間『天風精霊翼』のさらなる効果発動!」 

 

(相手がエクシーズモンスターを特殊召喚した時、装備モンスターの攻撃力をさらに1600アップする!攻撃力4000だ!!)

冀望皇バリアンの出現に怯まず…希望の戦士はさらに加速する!!

 

 

「『希望皇ホープ』!『冀望皇バリアン』を攻撃!!ホープ剣シルフィード・スラッ─!!」

 

『させるか!!罠発動!「ドロー・リセット・バトル」!モンスターがバトルする時、その攻撃を無効にし!お互いのプレイヤーはカードを1枚ドローする!!』

 

「くっ…!?この攻撃もダメなのか…!」

疾風の斬撃が稲妻に弾かれてしまう…!

 

 

『まだだ!「ドロー・リセット・バトル」の効果は終わらない!この効果でドローしたカードをこのターン中に使わなければ…そのプレイヤーは()()()()!!』

 

「なにっ…!?」

 

『そう…これが、俺達の運命のドロー…勝敗を決する、ラストドローだ!』

 

「オレ達の、最後のドロー…!!」

それは決着の1枚…遊馬達は既に通常召喚を行っている…つまり、勝利の為には()()()()()を引く必要がある…!

 

 

「っ…」

 

《……!》

張り詰める空気の中で…小鳥とフォウは固唾を飲んで行方を見守る…!

 

 

 

『いくぞ、遊馬!アストラル!!バリアンズ・カオス・ドロー!!

 

「いくぜ、シャーク!!シャイニング・ドロー!!

それは一瞬の勝負…その結果は…!

 

 

 

 

「…これが、オレ達の運命のカード…!」

 

(遊馬…勝つのは我々か、それともナッシュか……このカードに全て懸かっている!)

 

「ああ…!かっとビングだ!!オレは速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』発動!!」

 

『っ…!!』

先に動いたのは遊馬…引いたのは、九十九遊馬を象徴する1枚だった!

 

 

「このカードは攻撃が無効になった時、そのモンスターの攻撃力を倍にして、もう1度攻撃できる!!」

 

(これが、このデュエルの中で初めて巡ってきた勝利のチャンス!この攻撃が通れば…!)

 

「そうだ!シャーク!これで、オレ達のか───!」

 

 

【1番大事なモノを失う】

 

 

「そうか…あの『扉』が言ったのは……!」

勝利を確信した遊馬…しかし、その瞬間…遊馬の脳裏に再び言葉が過る、此処にきて遊馬は…その意味を理解した…。

 

 

 

キィン─

 

キィン─

 

 

『なに…?』

 

(遊馬!?何故ZEXALを解いた!?)

光と共にZEXALが分離する…突然の事にアストラルは遊馬に問い掛ける。

 

 

「アストラル…ようやく、分かったんだ…『扉』の言葉…『1番大事なモノを失う』……オレが失う大事なモノ…それは、()()()()の事なんだ…!!このままじゃ、オレが…オレでなくなっちまうんだ!!」

 

(あ…?)

それは遊馬の辿り着いた答え…『1番大事なモノ』、それは『九十九遊馬』という男の矜持の事だった。

 

 

「オレは、いつか分かり合える…敵も味方もない、一緒に笑ってデュエルできる!…そう信じて戦ってきた…だけど、このシャークとのデュエルに勝ち、『ヌメロン・コード』の奇跡の力を使うには…シャークの命を()()()()()()()()()…!オレにとっては、今も!アイツは大事な『仲間』なんだ!その仲間を犠牲にして手に入れる未来でいいのかよ…?そんな未来が、オレ達の未来でいいのかよ!!」

『デュエルをすればみんな仲間』…それが『かっとビング』と並ぶ遊馬の大事な信念…だが、この勝利は…その信念を()()勝利になってしまう…。

 

 

「…みんながオレに希望を託してくれたのはわかってる!でも、オレは…!!」

 

(……わかっていたよ、遊馬…きみは人を信じる力で未来を切り拓いてきた…それがどんな答えになろうと…私は、いつもきみと共にある!!)

 

「アストラル…!!」

遊馬の言葉を聞いたアストラルは遊馬の「答え」に頷く…2人は共に「答え」をナッシュに示す!

 

 

 

「オレは『天風精霊翼』の最後の効果、発動!装備モンスターが攻撃する時、このカードをORUにする!」

 

『遊馬!?いったい、何を!?』

 

「『希望皇ホープ』!『冀望皇バリアン』を攻撃!!」

それは予想外の一手…ホープは風の翼を捨て、斬りかかる!

 

 

「この瞬間!『希望皇ホープ』の効果発動!自分の攻撃を無効にする!ムーン・バリア!!」

 

「自分の攻撃を…無効にしちゃった…!?」

 

《フォウ…!?》

それは『希望皇』の本来の力…全てを守る『盾』は『冀望』を守ったのだ…!

 

 

 

『どういう、つもりだ?遊馬…』

 

「どうもこうもねぇよ!シャーク、オレは…お前を犠牲にする未来なんていらねぇ!!」

 

『テメェ…!自分が、何を言ってるのか分かってるのか!?』

 

「ああ、オレ達のライフはたった50だけど、それでも!お前の攻撃を耐え続ける!新しい未来が見つかるまで、ずっとずっと!どこまでも!!」

 

『……!?』

これが、遊馬の見つけた答え…新しい道が見つかるまで、ナッシュと戦い…耐え続ける…それが『最善の未来』を目指す、遊馬の決断だった!

 

 

 

『はぁ……それが、お前達の「答え」なんだな?』

 

(ああ、その通りだ!)

 

「後悔はしねぇ!オレが…オレである為に…仲間は誰も見捨てねぇ!!それがオレのかっとビングだ!!」

ナッシュの問いに遊馬もアストラルもまっすぐと応える…その目に迷いは微塵も無かった…!

 

 

 

『はぁ……相変わらずの大バカだな…ならば、俺は速攻魔法「栄光の七皇(グローリアス・セブン)」を発動!このカードはカオスエクシーズが存在する時でも相手バトルフェイズに手札から発動できる!』

ため息をついたナッシュはドローしたカードを発動する、その効果は…。

 

 

『除外されたカオスナンバーズを全て「冀望皇バリアン」のORUにする!よって攻撃力は7000となる!さらに…このターン「冀望皇バリアン」はバトルでは破壊されず、ダメージも無効にする…そして、俺が受けるはずのダメージは…()()()()()()

 

(なっ!?あのまま攻撃していたら…負けたのは…!?)

 

「オレ達の方、だったのか…!?」

それは『ダブル・アップ・チャンス』へのカウンターとなるカード…攻撃を止めた事が遊馬達のライフを繋いだのだ…!

 

 

「でも…バトルは終わった…これでこのターンのバトルは引き分けだ…!」

 

()()()……()()()()()()()

 

「なにっ…!?」

安堵する遊馬達にナッシュが告げたのは…思わぬ言葉だった…。

 

 

『「栄光の七皇」はターン終了時、俺のライフを相手のライフが変動した数値にする…お前達のライフの変化は0……よって…俺のライフは0になる』

 

《フォ!?!?》

 

「シャーク!?」

 

それは栄光の七皇の代償…ナッシュは静かにデュエルディスクを下ろし、その敗北を受け入れた。

 

 

 

「シャークゥゥ!!」

それは、遊馬が望まぬ勝利を手に入れた瞬間だった…。

 

 

 

 

 

『(まったく……お前って奴は…だが、これで──)』

 

 

 

 

 

ナッシュ LP0

 

 

遊馬 WIN

 

 

 

 

 

 

 

《フォウ…!フォォウ!!?》

 

「シャーク…シャーク!!」

代償によって吹き飛ばされたナッシュに遊馬達が駆け寄る…。

 

 

『分かってたよ…お前が「ダブル・アップ・チャンス」を使う事は…あそこで攻撃して来ねぇなんて…本当に、お人好しだぜ…だが、お前達の言葉…心に染みたぜ…』

 

「シャーク…!!」

ナッシュ…凌牙は静かに敗北を受け入れ、立ち上がる…その表情は見た事がないほど晴れ晴れとしていた…。

 

 

(シャーク…君は、まさか最初から…)

 

『馬鹿言うな、俺は本気だった!…悔いは無いさ』

アストラルにこの結末を望んだのかと問われた凌牙はその言葉を否定する…このデュエルは正真正銘、全力を尽くした「決闘」だったのだと…。

 

 

『…遊馬、たいてい…人は成長する中で大事なモノを失っちまう…だが、お前は絶対捨てるなよ、人を信じる力…諦めない心…絶対に捨てるなよ…!』

 

「シャーク…」

それは凌牙から遊馬への最後のアドバイス…戦い抜いた友への…別れの言葉…。

 

 

《フォウ…フォーウ!》

 

『……フォウ、悪りぃな…もう、遊んでやれねぇんだ……あっちで、みんなが待ってる…』

足元で凌牙に縋りつくフォウに凌牙は静かに語りかける…それと共に周囲の空間が揺らぎ、世界が閉じていく…。

 

 

 

「遊馬、お前達の導く未来も見てみたかったが…そうもいかねぇようだ…」

 

キィン─!

 

「あっ!?おい!!」

凌牙の肉体が粒子となって消えていく…そしてバリアンの回収したナンバーズの全てがアストラルに渡される。

 

 

『小鳥、この馬鹿から目を離すなよ?…ありがとよ、遊馬…アストラル……俺の生涯の友…お前らと最期に…最高のデュエルができて…良かったぜ!』

 

「シャークゥゥゥ!!」

穏やかな顔のまま…凌牙は光の彼方へ消えていく、全ての未来を遊馬へと託して…。

 

 

 

─じゃあな─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャーク…そんな…そんな!!」

光が治まった時、遊馬達はハートランドの海浜地区に佇んでいた…その視線の先にあったシャークの姿は消え、衝突しかけていたアストラル世界が遠ざかっていく光景があるだけだった…。

 

 

 

「あ、ああ…!うあああ"あ"あ"あ"あ"あ"──!!」

 

 

赤い雲が晴れ始めた港に…遊馬の悲しみの絶叫が木霊した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







《凌牙…遊馬…キミ達の選択、選んだ道…見せてもらったよ…》

《……あとは、キミ達が『奇跡』をどう使うのか……そして…『奇跡』は…()にも届くのか、全てはそれ次第さ…》


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第6章 希望と混沌の果てに
戦禍が過ぎて…


こんばんは!S,Kです!

ナッシュとの戦いを終え、地上に帰ってきた遊馬…彼は最後の戦いを前に、何を思うのか…。


Side???

 

 

『地上世界が遠ざかっていく…!』

 

『ああ…世界の危機は救われた…だが、きっと遊馬は…』

世界の狭間に安堵の声が響く…それはアストラル世界とバリアン世界と融合した人間界の接近を抑えていたトロンと一馬の声だった。

 

 

『なんにせよ…力を貸してくれてありがとう、バイロン』

 

『ふふっ…これで、あの時の借りは少しは返せたかな?』

 

『バイロン…』

 

『さらばだ、一馬…ボクの────』

 

『……ありがとう』

限界以上の力を使ったトロンの身体は粒子となって融けていく…だが、その顔は…最期まで笑っていた…。

 

 

『……遊海…これで、良かったんだよな…?』

一馬は遠ざかっていく地上世界を見送った…。

 

 

 

 

Side out

 

 

 

 

「シャーク…!グスッ…」

 

「うっ…うぅ…!」

 

《フォーーウ……》

 

(…遊馬…)

地上世界・ハートランドの海浜地区…そこで遊海達は泣きじゃくっていた。

 

バリアンの王ナッシュとの激戦の末、望まぬ形で勝利を手にした遊馬…心を通じ合わせた友との離別は…遊馬達にとって、あまりにも重い…しかし、全ては後の祭り。

地上世界から遠ざかるアストラル世界を見ながら、遊馬達は泣き続けていた…。

 

 

キィン─!

 

 

「っ…?あれ、僕は…?」

 

「あれ、アタシ…?紅い光に……」

 

「えっ…!?流星君!?海亜さん!?」

 

「えっ…!?」

泣き続けていた遊馬達、その背後で光の粒子が集い、流星と海亜が現れる!

 

 

(これは…!?)

 

キィン─!

 

 

『イテテ…何だか分からないけど、戦いは終わったみたいだな…?』

 

《…そうみたいだね、十代…あそこに九十九遊馬がいるのがその証さ》

さらに変化は続く、地上に突き出していた結晶の山が消滅…さらに光の粒子と共に港に集っていた十代やチーム5D'sのメンバー達が復活したのだ!

 

 

 

「な、何が起きてるんだ!?」

 

(…我々がシャークを倒した事で、バリアン世界と人間界の融合が解消され…奪われた多くの魂がこの世界に戻ってきたのか…!)

 

「それじゃあ…!」

 

「鉄男君やみんなも…!!」

ドン・サウザンドが企んだバリアン世界と人間界を巻き込んだアストラル世界殲滅計画は無に帰した…それにより、バリアン世界に取り込まれてしまっていた人々が帰ってきた…それは遊馬の仲間達もまた蘇った事を意味していた。

 

 

「遊馬!やってくれたみたいだね!」

 

「流星!あれ…?なんでハートランドに…!?」

 

「……君達がバリアンと戦っている間に、人間界でも…大きな戦いがあったんだ…僕達はその援軍に来たんだよ…」

 

「大きな、戦い…?」

 

(……)

流星が驚きで涙が止まった遊馬に話しかける…そしてアストラルは気付いた、海浜地区が更地になっている事…さらに集まっているメンバーの数から相当な『何か』があったのだろうと…だが、それを遊馬に伝える前に…。

 

 

 

「「「遊馬ー!!」」」

 

「あっ…!委員長!キャットちゃん!徳之助!ハルト!!」

 

「遊馬!大丈夫か!!?」

 

「鉄男君!!」

 

「「遊馬〜!!」」

 

(アンナにロビン…みんな、無事に戻ってこれたようだ…)

雲が晴れ、朝日の照らす港に遊馬の仲間達が集まって来る…遊馬の戦いは決して、無駄ではなかったのだ…!

 

 

「みんな…みんな無事で良かった─!!」

遊馬は笑顔で仲間達と再会を喜びあった…。

 

 

 

 

「遊馬!お前ならやってくれるって信じてたぜ!」

 

「おれも!」

 

「ああ…!これも、みんなのおかげだ…!!」

再会を喜びあった遊馬は仲間達にバリアン世界での戦い、そしてその顛末を伝える…この戦いに勝つ為には、誰が欠けていても勝てなかっただろうと…。

 

 

「遊馬…ぼく達、本当に勝てたんだよね…!」

 

「ハルト…っ…!!すまねぇ、ハルト…!オレは…カイトも、シャークも璃緒も…誰も…誰も、救えなかった…!!」

 

「遊馬…」

ハルトの顔を見た遊馬は再び悲しみに顔を歪ませる…この勝利は決して『無傷の勝利』ではない。

 

カイトは戦いの末に月面で力尽き…璃緒はベクターによって倒れ…凌牙は望まぬ戦いの末に、散っていった…勝利の代償…それはあまりにも、大きなものだった…。

 

 

……そして……

 

 

 

『九十九遊馬…よく帰ってきた』

 

「っ…瀬人さん!?その身体は…!」

失意に項垂れる遊馬に声を掛けたのは…全身から火花を散らし、左腕が千切れた瀬人だった…。

 

 

『心配するな…所詮機械の身体だ、替えはある…それよりも、だ……遊海が、()()()()()

 

「っ…!!」

 

《……フォウ》

瀬人の言葉に遊馬の心臓が跳ねる…ナッシュから遊海の『死』を聞かされていたからだ…。

 

 

『……九十九遊馬、アストラル…そして観月小鳥は付いて来い…不動流星、海亜・アトラス…お前達はこの場で何があったのか、その仲間達に教えろ…我らが伝えるより、同じ世代のお前達の話が分かりやすいだろう…』

 

「…わかりました、遊馬…行ってあげて……あの人の所に…」

 

「流星……分かった」

遊馬とアストラル、小鳥は瀬人と共に歩き出した…。

 

 

 

 

 

『……この場所で何があったか、聞いているか?』

 

「…ベクターが操ってたネームレスが、遊海と戦ったって…」

遊海のもとに着く前に…瀬人が何が起きたのかを語る…。

 

 

『ネームレスは、一度遊海にデュエルで敗れた…だが、それで終わらず…数多の偽ナンバーズを召喚し、遊海や我らを追い詰めた…だが、壊滅寸前にチーム5D'sとイリアステルが駆けつけ挽回した……かに思われた、が…』

 

『ネームレスは…本性を隠してやがった』

 

(遊城十代…)

瀬人の言葉を継いで十代がその先を語る。

 

 

『ネームレス…その正体は巨大な蛇の化……モンスターだった、あまりの強さにオレ達の攻撃も効かず、アヤカも…フレアもやられちまった…そして最悪な事に……ネームレスは「ダークネス」を取り込んだ…!』

 

「ダークネス…!?それって!!」

 

(遊海がかつて話してくれた「虚無の邪神」…!?何故!?)

 

『たぶん、先生が弱ったのと…人間世界がバリアン世界融合のせいで「絶望」してたから復活したんだ、それでバリアン世界融合前に、人間界を掌握しようとしたんだと思うけど……読みが甘かった、あっけなくネームレスに喰われたんだ』

 

『そしてネームレスは「虚無の魔獣神」となり…我らに襲い掛かった……遊海は、尽きかけた命で精一杯の反抗を試みた……しかし……』

 

『…遊海さんは…負けてしまった』

 

(貴方は…!)

 

「伝説のDホイーラー…不動、遊星…」

仲間達の下から少し歩いた先、かろうじて形を保つコンテナの前に1人の老人が待っていた…それは遊星だった。

 

 

『…目を、背けないでくれ……最期まで、諦めず戦った…遊海さんの姿を…!』

 

 

 

 

「………!」

 

「ああっ…!!」

 

《フォウ…》

遊星に導かれた遊馬達はコンテナの裏へ回り込む…そして言葉を失った。

 

 

 

最初に目にしたのはボロボロの服を着たまま寝かされ、胸元に一輪の桃色の花が添えられた遊海だった、眠っているだけのように見えたが…血の通わなくなった白い肌がそれを否定する…そして…。

 

 

「『死者蘇生』……『リビングデッドの呼び声』……『竜魂の源泉』……『死者転生』…………」

その横でずっと蘇生系カードを発動していたのは、ボロボロに傷付いた翠だった…遊馬達はその姿を見て言葉を失っていた。

 

 

座り込んだ翠の足元には『月の書』『太陽の書』『禁じられた聖槍』『禁じられた聖杯』などのモンスターに掛けられた効果を無効・リセットするカードや…『死者蘇生』『死者転生』『生者の書─禁断の呪術─』『戦士の生還』のような蘇生系カードが大量に散らばっていたのだ…。

 

 

『翠さん…もう、やめよう…遊海さんを、休ませてあげよう…?』

 

「まだよ…まだ…!!戻ってきて…!戻ってきてよ!!やだ…!やだぁ!!!」

ひたすらにカードを発動し続ける翠…それに寄り添っていたのはアキだった…そのアキも涙を零している…。

 

 

 

『遊海さんは、最後の手段……怪物の「魂」を直接攻撃する為に、怪物の中に飛び込んだ…でも…ダメだったんだ…』

 

『…遊星、そこから先は…私が伝えましょう』

 

(貴方は…)

 

「アクル…!?なんで、アンタが…!」

遊海の最期を聞く遊馬の前に光が集う…そしてアストラル世界の「五命星」の1人、アクルが現れた…。

 

 

『改めて自己紹介を…私の名はアクル……そして、人間だった時の名前は…Z-ONE、秘密結社イリアステルの滅四星の1人です』

 

「えっ…!?イリアステルって…」

 

(かつて、ネオドミノシティを狙った未来人…貴方はその転生体だったのか…!)

 

『その通りです』

アクル…ゾーンは自身の真名を遊馬に伝え、話を続ける。

 

 

『遊海がネームレスに斃され、翠達に襲いかかる寸前、()()がギリギリでその攻撃を防ぎ、ネームレスに戦いを挑んだのです』

 

「私達…?誰か、一緒に…?」

 

『ええ…我が友、シーカー……いいえ、この呼び名の方が分かりやすい…イリアステル滅四星、「善知の悪魔」ラプラス…それが真名です、彼もまた…アストラル世界へと導かれていた…』

 

「シーカーが、ラプラス…!?イリアステルで最強って龍可ばあちゃんが言ってた…!?」

 

(遊海を追い詰めたデュエリストが、アストラル世界に来ていたとは…!)

続いて語られる事実に遊馬達は驚く事しかできない…。

 

 

『私とラプラス…そして「花の魔術師」の助力を得た翠、そして赤き竜に力を与えられた流星と海亜の5人でネームレスを追い詰め……ラプラスがその命を賭け、ネームレスを浄化し…救ったのです、それが人間界の戦いの全て……そして、私達はその直後にバリアン世界融合の影響で意識を失っていたのです……』

 

「オレ達が戦ってる間に、そんな事になってたなんて…!?」

 

(しかし、何故だ…!何故、遊海は…!バリアン世界に奪われた魂はみんな…!)

 

《…マスターの、魂が……砕けてしまった、からです…》

 

(アヤカ…!)

遊海が戻って来ない事に動揺するアストラルにアヤカが語りかける…その機体はボロボロで、虹色の核石にはヒビが入っていた…。

 

 

《WDCでの無茶なNEXUS化から…マスターの魂は、ボロボロでした…そして異次元での戦い、ネームレスの襲撃…そして今回の決戦……マスターは、あまりにも…無理をして…もう魂そのものが、限界に…》

 

「そんな…!?」

それは遊海が遊馬達に隠していた不調、英雄の魂は既に…失われてしまった後だった…。

 

 

キィン─…

 

 

「あっ…!?やだ!やだやだやだ!!神様!連れていかないで!!遊海さんを連れていかないでぇ!!」

 

「っ…!遊海…!?」

その時、翠の悲鳴が響く…遊海の体が金色の粒子になりながら解けていく……空気に融ける紫煙のように、波に消える砂の城のように…。

 

 

「そんな…そんなぁ…!!あぁ…あああああ!!!」

 

「翠さん…」

泣きながら縋りつく翠の手から零れ落ちるように、遊海の肉体は空気に融けていく、遺されたのは…凌牙から送られた赤いペンデュラムだけ、港に翠の悲しみの絶叫が木霊した…。

 

 

 

 

(……遊馬、カルトゥーシュを翠に……それだけは、彼女に返さなくてはならない…)

 

「……うん」

 

「遊馬…」

遊海の消滅を見届けたアストラルが遊馬に語りかける、それは託された遊海の「形見」…遊馬は首から外したカルトゥーシュを手に翠へと歩み寄る。

 

 

 

「……ただいま、翠さん…」

 

「ぐすっ……あ…?遊馬、くん…?」

遊馬は静かに泣き続ける翠へと話しかける、そして翠は焦点の合わない目で遊馬を見て…()()()

 

 

「……世界を、救ってくれて…ありがとう…!遊海さんも、ずっと…信じてた、から…!!」

 

「翠さんっ…!」

涙を流しながら、翠は笑っていた…遊馬の辛い戦いを知っているからこそ…叫びたくなるような悲しみを押さえて、笑顔で遊馬を迎えたのだ…。

 

 

「遊海が…オレにカルトゥーシュを貸してくれたから、人間界を守ってくれたから…オレは戦えた…!ありがとう…!」

遊馬も涙を零しながら、カルトゥーシュを翠に手渡す…翠は大事にカルトゥーシュを抱きしめる…。

 

 

「遊海さんもね、最後まで…笑ってたの……『例え、輪廻の輪から外れても…お前を愛してる』って……ネームレスの攻撃に呑まれる直前まで……本当に、馬鹿で…強い人……1人で、全部背負いこんで……」

 

(………)

ポツリ、ポツリと遊海の最期を語る翠…遊馬達は泣きながら、その言葉を聞いていた…。

 

 

「ねぇ、遊馬君…ナッシュは…()()()は…どうだった…?あの子は…笑えて、いたかしら…?」

 

「「っ…!!」」

翠のその言葉を聞いた時、遊馬達は気付いた…翠が失ったのは遊海だけではない、凌牙と璃緒…2人の子供達も失っていた…翠は1()()になってしまったのだと…。

 

 

「えっ、あ……」

 

「……笑って、ました…!」

 

(小鳥…)

 

「シャークも…最後まで、笑ってました!『遊馬と最高のデュエルができて良かった』って…『遊馬とアストラルは生涯の友達』だって…!!」

言い淀んだ遊馬の代わりに小鳥が凌牙の最期を伝える…光の中に消えていった、誇り高き『王』の最後を…。

 

 

「…ありがとう、遊馬君…小鳥ちゃん…アストラル…!あの子達を()()()()()()、ありがとう…!!ああ、あああ──!!」

 

「翠さん…」

 

《フォウ、フォーウ…》

その言葉と共に翠は泣き崩れる…その傍らには遊馬達と共に付いてきたフォウが寄り添っていた…。

 

 

 

 

 

 

「遊馬…」

 

「話は…流星から、聞いたにゃん…」

 

「………」

翠と別れた遊馬達が仲間達のもとに戻ってくる…仲間達も事情を察し、沈痛な表情だった…。

 

 

「…オレ…なんの為に、戦ったんだろう……オレのしてきたデュエルって…!なんだったのかなぁ…!!」

 

「遊馬…」

 

(………)

朝日の照らすハートランドの海を見ながら、遊馬はポツリと言葉を零す…あまりにも多くのモノを失った遊馬の心は、弱りきっていた…。

 

 

(……遊馬……!)

 

キィン─!

 

「あっ…?」

その時、アストラルが無言で浮かび上がり、その身から無数のカード…100枚のナンバーズを解き放った…!

 

 

《キュオオォォン─!!》

 

 

キィン─!

 

「これは…!?」

遊馬とアストラル、2人だけとなった空間にヌメロン・ドラゴンの咆哮が轟く…そしてヌメロン・ドラゴンは遊馬とアストラルの頭上に完成したナンバーズの集合体に飛び込んだ…!

 

 

 

(遊馬、100枚のナンバーズが全て揃い…今、我々の前に出現した……これが全宇宙の過去と未来が記された『神』のカード…)

 

「『ヌメロン・コード』…!」

遊馬の目の前に青白い輝きを放つ、パズルのようなカード…全能の力『ヌメロン・コード』が姿を現した…!

 

 

(…どうやら、()()()使()()を果たす時が来たようだ…この『ヌメロン・コード』を書き換える事が、私の使命…)

 

「全ての過去も、未来も書き換える……アストラル…?」

 

(…バリアン世界はまだ()()()()()()、私は…バリアン世界を()()()()()…!)

 

「アストラル!?」

それは思わぬ言葉…アストラルは自分の『使命』を果たすと遊馬に告げる、その眼は…初めて出会った頃のように冷たく、鋭いものだった…!

 

 

「そんな…!?本気なのかよ!?」

 

(バリアン世界はカオスの『根源』…それを残しておくことはできない)

 

「アストラル世界は変わったんじゃねぇのかよ!?何かの犠牲の先に、未来はねぇ!!お前…分かってくれたんじゃないのかよ!!

遊馬とアストラルの奮闘によってアストラル世界は変わった、カオスを排斥し続けたエリファスもその考えを改めた…そのはずだった。

 

 

「……戦い続ければ、いつか未来は切り開ける…その可能性を捨てちまうのかよ!?…だったら、何の為にお前とオレは戦い続けてきたんだよ!?この戦いはなんだったんだよ!!」

 

(……私の()()は変わらない、バリアン世界を消滅させる…()()()私の使命だ)

ナッシュとの戦いを乗り越え、目指すべき新たな未来を見つけたはずのアストラル…だが、その表情は揺らがない。

 

 

 

「そんな事…そんな事、絶対させねぇ!!」

 

(では、どうする?)

 

「…だったら…だったら……決闘(デュエル)だ…!!」

 

(きみが、私と?…『ヌメロン・コード』に書き記す未来を…そのデュエルに賭けるというのか?)

 

「そうだ!!」

見つけた出した答えを…未来を守る為に、遊馬はアストラルにデュエルを挑む…!

 

 

(私には()()()()()()()()が揃っている…この世界の誰も、私には勝てない……それでも戦うのだな?)

しかし、それはあまりにも無謀な挑戦…100枚のナンバーズを揃え、全ての力と記憶を取り戻したアストラルは…遊海亡き今…文字通り『最強の決闘者』になっていた…!

 

「オレが勝ったら…オレに従え…!」

それでも、遊馬の闘志は揺らがない、自分が見つけ出した『答え』を守る…例え、最強の男が敵になろうとも…。

 

 

(…良かろう、ならば…私が勝った時はバリアン世界を消滅させ…そして、私に関するきみの()()も…全て消去する)

 

「っ…!!」

 

(…良いな?)

 

「…ああ…!」

アストラルはバリアン世界の未来と遊馬の『記憶』を賭けにデュエルを受け入れる…!

 

 

(…では、夕刻…場所は…『駅前広場』だ…)

そう言い残し、アストラルは皇の鍵へ消えていった…。

 

 

 

 

「あれ…アストラルは…?」

 

「何が起きてたウラ?」

アストラルが消え、周囲の景色が港に戻る…仲間達は何が起きていたのか分からないようだった…。

 

 

「……」

 

「遊馬…?」

その中で…小鳥だけは気付いていた、海を見つめる遊馬の瞳に…強い覚悟の光が宿っている事に…。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

─遊馬君……九十九遊馬君…聞こえるかい?─

 

「あ、れ…ここは…?」

 

遊馬は気づくと黒い世界に佇んでいた…そこに優しげな青年の声が響く…。

 

 

 

─こうして会うのは初めてだね、君達の戦い…ずっと見ていたよ─

 

「アンタ…まさか、『キング・オブ・デュエリスト』…武藤遊戯、さん…!?」

 

─そう硬くならなくていいよ、遊馬君─

君の世界に光が集う…そして星のような特徴的な髪型で青いジャケットを羽織る優しい顔の青年が現れる…それは伝説の決闘者が1人、武藤遊戯だった。

 

 

 

─…遊馬君、君は混沌の邪神を倒し、混沌の王を乗り越えて世界を救った……でも、君は戦いの中で()()()()()がある─

 

「失ったモノ…?」

 

─かつて、十代も()()を忘れてしまって大変だったんだ……それを思い出さないと、君は……アストラルには勝てないよ…?─

 

「あっ…!?遊戯さん!?遊戯さん─!?」

黒の世界が光に包まれる…遊戯はその光の中に消えていった…。

 

 

 

………

 

 

 

「うっ…?寝ちまってた、のか…」

遊馬は机に突っ伏した状態で目を覚ました。仲間達と別れ家に戻った後、連戦の疲れから対アストラル戦のデッキを考えながら眠ってしまっていたのだ…。

 

 

「…アストラル、あいつに勝つ為のデッキ…これが、あいつとの最初で最後のデュエルなのに…オレはあいつの事、あいつはオレの事…全然分かってなかったなんて……!」

遊馬は再びデッキ構築に集中する…一方、その頃…。

 

 

 

 

 

Sideアストラル

 

 

 

『…アストラル』

 

(…一馬)

皇の鍵の世界、飛行船の上から彼方を見つめていたアストラルの背後に人影が現れる…それは遊馬の父・一馬だった。

 

 

『オレは君を遊馬のもとに送り込んだ…そして、君達は見事にやり遂げてくれた…』

 

(いいえ…まだです、まだ私には…『ヌメロン・コード』を使う役割が残っています)

アストラルは珍しく敬語で一馬の言葉に答える…。

 

 

『そうか…君がどんな決断をしようと…それは()()()()()だ』

 

(全て…貴方()の計算通り、では?)

 

『さぁ…?どうなんだろうな…』

アストラルの問いに一馬は帽子で顔を覆う、その目からは僅かに涙が溢れていた…。

 

(貴方達は、気付いていたのですね…遊馬は……)

 

『……戦うのか?アイツと』

 

(はい、全力で…!!)

記憶を取り戻したアストラルは『九十九遊馬』という存在の()()に気が付いていた…その上で、彼は全力を尽くす…全ては『新たな未来』の為に…。

 

 

Side out

 

 

 

 

 

「くそっ…!しっかりしろ、オレ…!!」

遊馬は涙を拭きながら頭を抱える、カードを手にする度に浮かんでくる思い出…それによって集中力が続かなかったのだ…。

 

「アストラルとのデュエル…あいつのデッキには全てのナンバーズと『希望皇ホープ』が揃ってる…!あいつなら、きっと…!!」

最強のデュエリスト・アストラルと戦う為に必死に頭を捻る遊馬…そんな時だった。

 

 

「わ、わぁぁ〜!?」

 

ドッゴーン!!

 

 

「どおおっ!?な、なんだなんだぁ!?!?」

それまでの静寂を物理的に貫いて…何かが屋根裏部屋へと突っ込んできた!!

 

 

「わ、ワリィワリィ…ブレーキが効かなくてさ…(汗)」

 

「あ、アンナ!?なんで!?」

部屋にやってきたのは飛行砲台のコントロールを誤ったアンナだった…だが、彼女だけではない。

 

 

「トドのつまり!」

 

「アストラルとデュエルするんでしょう?」

 

「大盤振る舞いでね!」

 

「ウラ!」

 

「心配で見に来たのよ!」

 

「ありがたく思えよ!」

 

「お、お前ら〜!?」

窓からは等々力、キャットちゃん、徳之助、ロビン…階下からは小鳥と鉄男が顔を出す…。

ナンバーズが100枚揃った事でアストラルと遊馬が「お別れデュエル」をするんじゃないか?という風に考え、遊馬を応援する為にやって来たのだった。

 

 

………

 

 

「なんだよお前ら〜!オレ、デッキ作りで忙しいんだぞ!?」

アンナが壁に空けた大穴を塞いだ遊馬達は屋根の上で語り合う…突然やってきた仲間達に遊馬は困惑していたが…。

 

 

「だからこそ…君にカードの()()()()()()をしにきたのさ!」

 

「えっ…??」

ロビンの言葉に遊馬は首を傾げる…。

 

 

「トドのつまり、アストラルのデッキには全てのナンバーズが揃っています!」

 

「つまり、それに対抗する為には!」

 

「強力なカードが必要ウラ!」

 

「良かったら、おれ達のカード使ってくれよ!」

 

「みんな…一緒にアストラルと戦いたいのよ!」

 

「小鳥…みんな…」

仲間達は強敵に挑む遊馬を応援する為…そして、デッキのカードを提供する為にやってきたのだ…。

 

 

「ん?どうしたんだよ、遊馬」

 

「オイラ達のカード、使ってほしいウラ!」

 

「……ありがとな、でも…今度のデュエルは…()()1()()の力で戦いたいんだ…!オレ自身の力で……戦わなきゃ、意味がないんだ…!」

 

「遊馬…?」

だが、遊馬は仲間達の申し出を辞退する…()()のデュエルは、遊馬が1人で戦わなければならない()()なのだ。

その時、小鳥だけは遊馬の異変に気付いていた…遊馬が抱く、強い覚悟と迷いに…。

 

 

 

「……そうだよな、お前にとってはアストラルとの最初で最後のデュエルだもんな!わかった…お前なりに、精一杯ぶつかってみろよ!」

 

「鉄男……ああ!!オレは、みんなの『気持ち』と一緒に戦うぜ!!かっとビングだ!オレ─!!」

しかし、仲間達の応援は遊馬の力となる…戦いを前に、遊馬は気合いを入れ直したのだった。

 

 

 

………

 

 

 

「なんだか、不思議な感じね…こうして歩いてると、アストラルがいつも一緒だったのに…」

 

「…ああ」

時は流れ、約束の夕暮れ時…遊馬は小鳥と共に約束の駅前広場へと向かっていた。

他の仲間達は先に広場へと向かっている…。

 

 

「遊馬…?」

 

「……なぁ、小鳥…お前はずっと、オレ達のデュエルを見ててくれた…だから、お前にだけは話しておきてぇ……このデュエルの…儀式の目的を…!!」

 

「えっ…?」

夕暮れの川辺で遊馬はデュエルの真実を語る、戦いの刻はそこまで迫っていた…。

 



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戦いの儀─最強の決闘者対希望の勇者─

「……ゆうみ、さん……どうして…私を、置いていっちゃうの…?どうして…!!」

 

《ミドリ…》

 

《キャウ…》

 

「……翠さん…」

夕日の照らすハートランドの海辺にすすり泣く声が消えていく…それは遊海を失った翠の嘆きの声だった。

カルトゥーシュとペンデュラムだけを遺し、遊海は消滅した…翠は遊海のいた場所から離れようとせず、ずっと泣き続けていた…。

 

その翠を守っていたのはフォウと動けるだけの力を取り戻したアヤカやフレア、ウィンダを始めとした精霊達…そして十代と遊星、アキ、ジャック、ブルーノが少し離れた場所から翠を見守り続けていた。

 

他の5D'sの仲間達は家族の無事を確認する為に一旦ネオ童実野シティに戻り…イリアステルはアーククレイドルへ、アクルもアストラルからエリファスが死んだ事を聞き、混乱を収める為にアストラル世界へと戻っていた。

 

 

「……かける言葉が見つからないって、こういう時の事だよな…」

 

「…遊海さんも、翠さんも…お互いに愛しあっていた……その最後が、こんな終わりだなんて……」

 

「……遊星、とにかく翠さんを家に連れて帰りましょう…あのままじゃ…翠さんも……」

 

『…僕も賛成だよ、あのままじゃ……ラプラスの二の舞になってしまうかもしれない…遊海も、彼も…絶対にそんな事は望んでないよ…』

遊星達はとにかく翠を安全な自宅へと連れて帰ろうと話し合っていた…その時…。

 

 

 

『………立て、翠』

 

「せと、さん…」

 

《フォウ…!?》

泣き続ける翠に冷たく声を掛けたのは、新たなボディに乗り替えた瀬人だった…その目は翠の虚ろな目をしっかり見据えていた。

 

 

『ハートランドの駅前広場で九十九遊馬とアストラルのデュエルが始まる……最後まで、希望を捨てるな…!遊海は、必ず帰ってくる…!!』

 

「……うん…そうだよね、まだ…『ヌメロン・コード』が………」

翠は弱々しく瀬人の手を取り、立ち上がった…。

 

 

 

 

 

(デッキの準備は済んだのか?)

 

「…ああ、完璧だぜ…!」

夕暮れのハートランド駅前…バリアン世界融合の影響で瓦礫が散乱する「始まりの場所」で遊馬とアストラルはついに対峙する。

そして…その戦いを見届けようと仲間達が集まっていた…。

 

 

『ついに、あの2人が戦うのか…どんな風に戦うのだろうな?』

 

『アイツの事だ!ただ全力でぶつかるだけさ!』

同じ広場でデュエルを見守るのはゴーシュとドロワ、そしてナンバーズクラブの仲間達。

 

 

「遊馬〜!頑張れよ〜!」

 

「2人の検討を祈ります!」

 

「アストラルも頑張るニャン!」

 

「(みんな、知らないんだ…このデュエルの()()()()()()……)」

無邪気に声援を送る仲間達を見ながら…遊馬から「真実」を告げられた小鳥は、心配そうにその背中を見つめていた…。

 

 

 

『……本当かよ、それ…!?』

 

『ああ、この街の上空に異常な重力場が発生している…「ヌメロン・コード」が出現していると見て間違いない…』

 

『じゃあ、このデュエルはもしかして…!?』

 

『……そうか、()()()のデュエルか…!』

広場を見下ろすビルの上ではアークライト兄弟が遊馬達のデュエルを待っている…そして、ヌメロンコードの存在からこのデュエルの『意味』に気付いていた。

 

 

『「ヌメロン・コード」…過去と未来を書き換える、究極のカード…!』

 

『(願わくば…その力で、未だ帰らぬ魂を……カイト…遊海さん…!!)』

Ⅴは姿を見せた月を見つめながら『奇跡』を願う…力尽きてしまった教え子と、かけがえのない恩人の帰還を…。

 

 

『遊馬達は…「ヌメロン・コード」の力を使うつもりなのか…?』

 

『わからん、だが…このデュエルにその答えがありそうだ…!』

Ⅳの言葉に答えたⅤは視線を落とし、デュエルの始まりを待った…。

 

 

 

 

「この闘志の高まり…懐かしいな、遊星」

 

「ああ、ジャック…オレ達の運命を切り開いたあのデュエル……遊馬達も、また…デュエルで未来を決めようとしている…!」

遊馬達から少し離れたハートランドの駅舎の入口…瓦礫に腰掛けた遊星とジャックは闘志を高める遊馬とアストラルを見据えている…。

 

 

「……翠さん、涙を拭いて…あの子達なら、きっと奇跡を起こしてくれるわ…」

 

「そうだよ!泣いていたら…遊海が帰ってきた時に心配しちゃうよ!」

 

「アキちゃん…ブルーノ……うん…」

憔悴した翠を支えるのはアキとブルーノ…そして…。

 

 

「…瀬人さん、遊海先生からこの『先』の事は聞いてるのか?」

 

『聞いておらん……だが、「奇跡」は起きると奴は言った……見せてもらうぞ、遊馬…アストラル……お前達の望む未来を…!』

 

《フォーウ》

十代と瀬人が遊馬とアストラルの考える「未来」を見極める為に行方を見守っていた…。

 

 

 

 

((遊馬、ついにこの時が来たのだな…きみと出会った時から、いつかこの日が来る事を…私は……これが、きみとの…最初で最後のデュエル…!))

 

「(アストラル、あの時から…いつか、別れが来るのはわかってた……それが、こんな形になるなんてな…)」

 

 

戦いを前に、遊馬とアストラルは同じような事を考えていた…。

 

アストラルは初めて出会った「あの日」からの思い出を…。

 

遊馬はエリファスに告げられた「言葉」を…。

 

 

2人は心を合わせて苦難を乗り越えて来た…そしてその果てに…2人は今、激突する!

 

 

 

 

 

 

(始めるぞ、遊馬!)

 

「ああ、いくぜ!かっとビングだ!オレ!!」

時は満ち…2人の決闘者は最後の準備を整える!

 

 

「デュエルディスク、セット!D・ゲイザー、セット!!」

 

(ハッ!!)

遊馬は赤いデュエルディスクとDゲイザーを装着、アストラルは青いデュエルディスクを呼び出し、左眼を輝かせる!

 

 

「デュエルターゲット、ロックオン!!」

 

 

─ARビジョン…リンク、完了!─

 

世界が無数の数字に覆われる…聞き慣れた機械音声を聞きながら、拡張現実の中で最後のデュエルが幕を上げる!

 

 

 

 

「(デュエル!!)」

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対アストラル

 

 

 

 

「先攻は貰った!オレのターン、ドロー!!」

「『ゴゴゴゴーレム』を召喚!さらに、カードを3枚伏せ、ターンエンドだ!!」 

 

((破壊耐性を持つ『ゴゴゴゴーレム』をあえて攻撃表示で…何かあるな…!))

運命の戦いの先攻を取ったのは遊馬、攻防に優れた青きゴーレムと伏せカードで守りを固める。

…今の遊馬のデッキにナンバーズはない、あるのは戦いの中で手に入れた『音楽魔人』と新たな『オノマト』の仲間だけ……そして、対するアストラルの取る戦術は…。

 

 

 

(いくぞ…私のターン!ドロー!)

(私は永続魔法『パラレル・ユニット』を発動!このカードは相手フィールドのモンスターと同じレベルのモンスターとなる!さらに永続魔法『ソリッド・オーバーレイ』を発動!このカードはランク4のエクシーズモンスターのエクシーズ素材にできる!!)

 

「来るか…!!」

それはエリファスと同じ、モンスターカードを用いないエクシーズ召喚…!

 

(私はレベル4の『パラレルユニット』と『ソリッドオーバーレイ』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!)

 

 

39

 

 

(現れろ!『No.39』!我が戦いはここより始まる…白き翼に望みを託せ!!光の使者!『希望皇ホープ』!!)

光の爆発と共に希望の戦士が出現…雄叫びを上げる!

 

 

「『ホープ』…!オレが、コイツと戦うなんて…!」

現れた光の使者を前に遊馬は一瞬たじろぐ…遊馬とアストラルの希望の象徴…相棒とも言えるナンバーズと戦う事を…。

 

だが、アストラルはまだ止まらない!

 

(さらに私は『WRUM-ホープ・フォース』を発動!このカードはORUを2つ持つ『ホープ』に対して発動できる!『ホープ』のORUを1つ、または2つ分け与える事で!ランクが1つまたは2つ高いエクシーズモンスター2体を特殊召喚する!ダブル・ランクアップ・エクシーズチェンジ!!)

 

「なにっ─!?」

それは新たな「RUM」…アストラルの頭上で2つの光が弾ける!

 

 

39 

 

 

(現われろ!『CNo.39』!『希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』!)

 

 

39 

 

 

 

(さらに現われろ!『No.39』!『希望皇ビヨンド・ザ・ホープ』!!)

 

「ホープが、一気に3体!?」

それは予想外の一手、遊馬との『真の絆』で覚醒した『ヴィクトリー』、そしてエリファスの想いを受けた希望を超えた希望『ビヨンド』…3体のホープが並び立つ!!

 

 

 

(いくぞ、遊馬!!『ビヨンド』の効果発動!自分のターンのバトルの間、相手モンスターの攻撃力を0にする!)

希望の閃光がゴーレムの力を奪い去り…3体のホープの連撃が迫る!

 

「させるかよ!!罠カード発動!『ガードロー』!自分フィールドのモンスターを守備表示にして、カードを1枚ドロー!!」

 

 

『上手い…!「ゴゴゴゴーレム」を守備表示にして、手札を1枚増やした!』

 

『これで遊馬は2回、攻撃に耐えれるが…』

 

『だが、アストラルは恐らく…!』

罠を絡めたコンボで守りを固める遊馬にⅢとⅣは感心する…だが、Ⅴは…アストラルがその守りを超える事を予測していた…!

 

 

(ならば…私は『ヴィクトリー』で『ゴゴゴゴーレム』を攻撃!さらにORUを使い、相手モンスターの攻撃を無効にする!さらにこのバトルが終わるまで魔法・罠の発動を封じる!ホープ剣ダブル・ヴィクトリー・スラッシュ!!)

 

「っ…!!」

勝利の皇帝の二刀流がゴーレムを両断する…だが、遊馬はまだ終わらない!

 

 

「罠発動『ガードゴー』!!自分フィールドの『ガガガ』『ゴゴゴ』『ドドド』モンスターが戦闘・効果で破壊された時、そのモンスターを特殊召喚できる!さらに手札から『ガガガ』『ゴゴゴ』『ドドド』モンスターを2体まで守備表示で特殊召喚できる!!来い!『ドドドウォーリアー』『ガガガマジシャン』!!」

 

(やるな…!二段構えの守備か…!)

ゴゴゴゴーレムが復活、さらにガガガマジシャン、ドドドウォーリアー…遊馬が愛用するモンスターが並び立つ!

 

 

(ならば…!『ビヨンド』で『ガガガマジシャン』を攻撃!続けて『ホープ』で『ドドドウォーリアー』を攻撃!!)

 

「ぐっ…何とか、防いだぜ…!」

ホープの連撃が遊馬のモンスターを粉砕…遊馬は攻撃を耐えた事に安堵する、だが…!

 

 

(それはどうかな…?私は速攻魔法『RUM-ダーク・フォース』を発動!)

 

「なっ…2枚目の『RUM』!?」

アストラルはさらに畳み掛ける!

 

(このカードは自分のエクシーズモンスターが相手モンスターを破壊した時、そのエクシーズモンスターを除外し!そのランクより1つ上と、2つ上のエクシーズモンスター2体を効果を無効にしてエクシーズ召喚召喚する!私は『希望皇ホープ』を墓地に送る!)

ホープが墓地へ消えで新たなモンスターが姿を現す!

 

 

39 

 

 

(現われろ!ランク5『CNo.39』!『希望皇ホープレイV』!)

 

 

25 

 

 

(そしてランク6!『No.25』!『重装光学撮影機(フルメタル・フォトグライド)フォーカス・フォース』!)

 

「『ホープレイV』に『フォーカスフォース』…!?」

アストラルのフィールドに希望の鬼神と未来を写すカメラのナンバーズが現れる!

 

(いいや、まだだ!速攻魔法『ネクロ・カオス』を発動!!自分のエクシーズモンスターが墓地に送られた時、同じランクのカオスエクシーズを効果を無効にして特殊召喚する!!)

 

 

39 

 

 

(現われろ!『CNo.39』!『希望皇ホープレイ』!)

続けて遊馬とアストラルの友情の証、黒き希望皇が現れる…そしてアストラルは最後の一手を打つ!

 

 

(さらに私は『ビヨンド』の効果発動!ORUを1つ使い、『フォーカスフォース』を除外し!墓地の『希望皇ホープ』を特殊召喚!そして私は『ホープ』の攻撃力の半分、1250のライフを回復する!!)

 

「5体の『ホープ』が、揃った…!?」

アストラルのフィールドに5体の『希望』が集結する…!

 

 

 

「これが、アストラルの本気…!!」

 

「で、でも…やり過ぎじゃねぇのか…!?」

 

「にゃんだか、怖い…!!」

遊馬の仲間達が異変に気が付き始める…ただの『お別れデュエル』にしては鬼気迫り過ぎると…!

 

 

「遊馬…!」

 

─アストラルがどう『ヌメロン・コード』を使うかは分からねぇ…でも、アストラルはこのデュエルを最後に行っちまう…でも、みんなの心の中じゃ…『いい奴』のままにしておきたいんだ…!─

 

それは遊馬から小鳥に託された『真実』…仲間達には伏せられた真実を知る小鳥は胸を痛めていた…。

 

 

 

(いくぞ!!『希望皇ホープ』!『ゴゴゴゴーレム』を攻撃!)

 

「守備表示の『ゴゴゴゴーレム』は1ターンに1度、バトルでは破壊されない!!」

頑強な身体がホープ剣を弾き返す…だが…!

 

(わかっているさ!だが…私の攻撃はまだ残っている!!『ホープレイ』で『ゴゴゴゴーレム』を攻撃!ホープ剣カオス・スラッシュ!!)

 

「っう…!!」

混沌の一撃がゴーレムを両断する!

 

 

(続いていくぞ!『ホープレイV』で遊馬にダイレクトアタック!!ホープ剣Vの字斬り!!)

 

「っあああああ…!!!」

トドメに襲いかかるのはホープレイV…Vの一撃が遊馬を吹き飛ばした!!

 

 

「やり過ぎ、じゃねぇのか…!?」

 

「遊馬…!!」

仲間達の疑念は確信に変わる…アストラルは、遊馬を潰すつもりで戦っているのだと…!!

 

 

「ぐっ……」

 

(………)

倒れ伏す遊馬を見下ろすアストラル…その瞳は揺らがず、氷のように冷たかった…。

 

 

 

(どうした?遊馬、もう戦う気力を失ったか?…やはり、私にデュエルを挑むなど…100年早いようだ!!私は魔法カード『エクシーズ・トレジャー』を発動!フィールドのエクシーズモンスター1体につき1枚…よって5枚ドローする!!)

 

「っ…!!」

アストラルは『エクシーズ・トレジャー』で使った分の手札を補充する…そのタクティクス・天運は『最強』の名乗るに相応しいモノだった…!

 

 

(私は…カードを3枚伏せ、ターンエンド!!さぁ、きみのターンだぞ?それとも…本当に心が折れたのか?)

ターンを終えたアストラルは膝をついたままの遊馬に問い掛ける…その時、遊馬は──

 

 

 

「ははっ……ハハハハ!あははは!!」

 

 

 

遊馬は、笑っていた…!

 

 

 

 

「すっげぇカッコいいぜ!『ホープ』!!いつも、後ろ姿しか見れねぇからな!それが…5体のホープが並ぶのを、こんな特等席で見れるなんて!!まったく()()()()のカッコよさだぜ!!ただ、残念なのは…おれがホープを使えねぇ事だけだ!!」

 

(遊馬…)

遊馬は夕陽に照らされる5体のホープを見て喜びを露わにする、それはデュエリストとしての「ジレンマ」…プレイヤーが見れるのは自分のモンスターの背中だけという事、遊馬と希望皇ホープは肩を並べて戦ってきた…故に、遊馬が見ていたのは頼もしい「背中」だけ…だが、ホープと戦う事で男心をくすぐる、カッコいい姿をようやく目にする事ができたのだ…!

 

 

「お前の事だから言うまでもねぇが…キッチリ使()()()()よ!アストラル!!こっからが勝負だ!手を抜くなよな──!!」

 

(フッ…!)

遊馬の心は折れない…何故ならば…今の遊馬もまた『最強』を背負うデュエリストなのだから…!!

 

 

「そうよ…遊馬…!頑張れ!!遊馬の全部、アストラルにぶつけなさーい!!」

 

「おう!!」

小鳥の声援が遊馬の背中を押す…相手は5体の『ホープ』、そして『ナンバーズはナンバーズでなければ戦闘破壊できない』という最強の耐性…遊馬はその理不尽に立ち向かう!

 

 

((そうだ、遊馬…もっと…もっと本気で向かって来い!でなければ…きみの失ったモノは…取り戻せない!!))

自身に立ち向かう遊馬を見て、アストラルは僅かに口角を上げていた…。

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!いくぜ…魔法カード『エクシーズ・トレジャー』発動!オレも5枚ドローだ!!」

遊馬は引き当てたドローソースで手札を補充…頼れる仲間を呼び出す!

 

 

「オレは永続罠『ガガガミラージュ』の効果で2体分となったレベル4の『ガガガマンサー』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現われろ!『ガガガガンマン』」

ゴーシュ戦で活躍した早撃ちガンマンが現れる!

 

 

「さらにレベル4の『ガガガマジシャン』2体分でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!来い!『ガガガザムライ』!!」

続いて現れるのは遊馬の新たな仲間、ガガガ学園の剣豪が現れる!

 

 

「いくぜ!!『ガガガザムライ』の効果発動!1ターンに1度、ORUを1つ使い!ガガガモンスターを2回攻撃できるようにする!!」

ORUを斬り捨てた剣豪からオーラが溢れ出し、ガンマンにも伝播する!

 

「さらに『ガガガガンマン』の効果発動!ORUを1つ使い、攻撃力を1000アップさせる!」

 

(フッ…そしてバトルする時、相手モンスターの攻撃力を500下げる、か…!だが!『ビヨンド』の効果で自分の『ホープ』は効果対象にならない!『ガンマン』では私のモンスターは倒せない!!)

 

「いいや、そうでもないさ!!墓地の『ガガガマンサー』の効果発動!墓地のこのカードを除外し、『ガンマン』の攻撃力を500アップさせる!これで攻撃力3000だ!!」

アストラルの裏をかく一手でガンマンは『ビヨンド』を除くホープの攻撃力を上回る! 

 

 

「バトルだ!『ガンマン』で『ホープレイ』を攻撃!!『ネクロ・カオス』で召喚された『ホープレイ』の効果は無効…つまり、バトルで破壊できる!!」

 

(ぬっ…!)

無数の銃弾がホープレイを撃ち抜き、破壊する!

 

 

「『ガンマン』は2度攻撃できる!効果が無効になっている『ホープレイV』を攻撃!!」

さらに銃弾がホープレイVを粉砕する!!

 

(ナンバーズを破壊し、私のライフを削った事は褒めるが…これで『ガガガガンマン』の攻撃は終わり、私の場には3体のモンスターが残っている…手詰まりのようだな!)

 

 

「いいや…!手詰まりなのは、お前の方だぜ!!」

 

(なにっ…!)

 

「オレは速攻魔法『ガガガ流明鏡死斬』を発動!!」

残る3体のホープを前に、遊馬はさらなる攻勢を仕掛ける!

 

「このカードは自分フィールドのガガガモンスター1体を選択して発動できる!そのモンスターがバトルする時、バトルする相手モンスターの『名前』と『攻撃力』を得る!さらに選択したモンスターはバトルで破壊されず、相手モンスターを破壊した時!その攻撃力分のダメージを与える!オレは『ガガガザムライ』を選択!!」

 

(なんだと!?)

それは起死回生の一手…剣豪が刀を構え、跳躍する!!

 

 

「『ガガガザムライ』で『ビヨンド』を攻撃!この瞬間『ガガガザムライ』は『ビヨンド』の名前と攻撃力を得る!!ホープ剣ビヨンド・ザ・スラッシュ!!」

 

(ぐああああっ!?)

ビヨンドの姿を写したガガガザムライがビヨンドを両断、3000のダメージと共にアストラルを吹き飛ばす!

 

 

「まだだ!『ガガガザムライ』はもう一度攻撃できる!『ホープレイヴィクトリー』を攻撃!!ホープ剣ダブルヴィクトリー・スラッシュ!!」

 

(っ…!私は速攻魔法『ヒート&ヒール』を発動!!私のフィールドでもっともランクが低い『希望皇ホープ』の攻撃力分、私はライフを回復する!!っううう…!!)

攻撃を受ける寸前、アストラルはライフを回復し、攻撃に耐える…残りライフ、1050…!

 

 

「っ…!アストラル!!」

攻撃を終えた遊馬はアストラルの名を呼ぶ…大ダメージを受けたアストラルの体が明滅していたからだ…だが、アストラルは『ヒート&ヒール』の効果を発動する!

 

(『ヒート&ヒール』の、さらなる効果!このカードが効果を発動した後、このカードは『希望皇ホープ』のORUになる…!)

 

 

「おい!大丈夫なのか…!?」

 

(フッ…私と、した事が迂闊だったよ……きみが5体のホープを見た時に気付くべきだった……()()()()、つまり…きみは、5体のホープが並ぶ事を想定していたのだな…!)

 

「ひひひっ…!バレたかぁ!!」

アストラルはゆっくり立ち上がりながら、遊馬のタクティクスを分析し気付いた…遊馬はこの状況を()()()()()()のだと、その指摘を聞いた遊馬はイタズラが成功したこどものように笑っていた!

 

 

(まさか、ホープの登場に驚く芝居までするとは…)

 

「ああ、このデッキを作る時間…今までの人生で1番頭を使ったぜ!そして…その間、ずっと思い出してたんだ…お前と一緒に戦ってきた事を……オレをこんなに強くしてくれたのは、アストラル!お前だ!!お前と一緒に乗り越えてきた『困難』がオレに自信をくれたんだ!オレのかっとビングに…人を信じる力に!」

 

アストラルと出会う前は、デュエルを禁止されていた事もあり、ハートランド「最弱」のデュエリストだった遊馬…だが、アストラルと出会い、様々なデュエリストと戦い、困難を乗り越えた遊馬は…アストラルが育て上げた人間界「最強」レベルのデュエリストまで成長していた…!

 

 

「オレとお前は一心同体…だから、オレに人を信じる力があるのなら…お前にもきっとある!!だから、オレは…もう一度お前に、人を信じる力を…誰にでも、未来を切り開く力があるって思って欲しいんだ!!…だから、オレは諦めない!!お前が世界一強いデュエリストでも、例えこれが1万回に1回しか勝てないデュエルでも!!このデュエルで、その奇跡を起こしてみせる!!」

 

(フッ…そうこなくてはな…!やってみろ、遊馬!私はアストラル世界の代表として全力で戦う!!きみの全力を、私に見せてみろ!!)

遊馬はアストラルに対し勝利を誓う…アストラルは世界を背負う代表として、その覚悟に応えようとしていた…!

 

「よっしゃあ…!!オレはカードを3枚伏せ、ターンエンドだ!!」

 

 

 

 

「ん…?んん〜??なんだか、遊馬とアストラルの態度…すれ違ってないか?」

 

『うむ、九十九遊馬はアストラルに対し、必死な想いを向け…かたやアストラルは…九十九遊馬から()()を引き出そうとしているように見えるな…』

 

デュエルを見ていた十代はデュエルの違和感に気付く…確かに、アストラルは凄まじい猛攻を仕掛けていた…だが、そこに強い闘志はあっても殺気は無い。

だが…遊馬は笑ってこそいるが、何かに()()()()()()()()()()()()焦っているように見えた…それは瀬人も感じた事だった…。

 

 

《十代、これは…アレだ、アカデミア卒業前の十代と同じだよ……》

 

「……もしかして、()()()()()()?!いや、それにしたって…」

 

《前から思ってたけど……アストラルは堅物だねぇ…どんな世界で育ったのやら…》

アストラルの真意を理解したユベルは呆れたように溜息をついた…。

 

 

 

 

(私のターン!ドロー!)

(私は『希望皇ホープ』で『ガガガガンマン』を攻撃!!)

 

「罠発動!『ハーフ・アンブレイク』!!戦闘破壊を無効にし、バトルダメージを半分にする!!」

剣を振り上げるホープに対し、遊馬は泡の障壁を発動するが…!

 

 

(ならば!罠発動!『アブソリュート・バスター』!このカードはモンスターを破壊から守る効果のみを無効にする!ホープ剣スラッシュ!!)

 

「読まれてたかっ…!ぐううっ!!」

アストラルの伏せカードによってガンマンは斬り裂かれ、遊馬はダメージを受ける…残りライフ、900…!

 

(遊馬、きみが私を知り尽くしているように…私もきみを知り尽くしている!だから…このデュエル、手加減はしない!!私はカードを3枚伏せ、ターンエンド!)

 

 

 

 

 

「(アストラル…そして『希望皇ホープ』…オレがアストラルと出会った時、初めて手にしたエクシーズモンスター…『No.39希望皇ホープ』…!)」

再び追い詰められる遊馬は…アストラルの場に佇む、希望の戦士を見上げる…。

 

 

「(初めてエクシーズ召喚した感激は忘れねぇ…お前と戦い続けた事、ホープ…お前はオレの『希望』だった…!だけど、今は…お前を、乗り越えなきゃならねぇ!!)かっとビングだ!!オレェェッ!!」

 

((そうだ、向かって来い…!諦めず、向かって来るんだ!!))

雄叫びを上げ、自分を奮い立たせる遊馬…アストラルはその様子を静かに見守っていた…!

 

 

 

「オレのターン!!ドロー!」

「装備魔法『ガガガリベンジ』発動!墓地から蘇れ!『ガガガガンマン』!」

遊馬の場に再びガンマンが復活する!

 

 

「さぁ…いくぜ、アストラル!これがオレの全力!!『ガガガガンマン』で『希望皇ホープ』を攻撃!」

 

(なんだと…!?)

遊馬の思わず一手にアストラルは動揺する、ホープとガンマンの攻撃力差は1000…遊馬は捨て身の攻撃を仕掛ける!!

 

 

((この攻撃、何かある!!)私は『ホープ』の効果発動!ムーンバリア!!)

遊馬の態度、伏せカードを見たアストラルはガンマンの攻撃を無効にする!

 

 

『掛かったな!!アストラル!罠カード発動!「ムーン・バンパー」!!モンスターの攻撃が無効になった時、相手モンスターの効果を無効にして!さらに攻撃力を80下げる!!』

 

(なにっ!?私が攻撃を無効にする事を読んで……ならば、今の攻撃は─!?)

 

「ああ、少しビビったけど…お前が攻撃を無効にするのは分かってた─!!」

それは遊馬一世一代の大勝負、遊馬はアストラルとの駆け引きを成功させたのだ!

 

 

「いっけぇ!『ガガガザムライ』!『希望皇ホープ』を攻撃!!」

 

(っ…!!)

遊馬の覚悟の一撃が…ついに希望を乗り越えた…!

 

 

(やってくれたな、遊馬…!デュエルの勝敗さえもブラフに使うとは…だが、これこそ()()()()()()()()()()()()()だ!)

 

「ヘヘっ…どんなもんだい!」

5体のホープを乗り越えた遊馬…アストラルはそのタクティクスを称賛する…。

 

 

 

「やっぱ…お前とのデュエルは想像以上に燃えるぜ!…もしも、このデュエルに()()()()が無かったら……」

アストラルに褒められ、得意げになっていた遊馬は顔を曇らせる…このデュエルには『バリアン世界の消滅』が懸かっている、それさえなければと……故に、遊馬はもう一度アストラルに問い掛ける。

 

 

「アストラル!お前、忘れちまったのかよ!エリファスとオレとのデュエルを!……あのデュエルで世界はランクアップだけじゃねえ……気に入らない奴らを切り捨てるだけ、なんて…そんなのはオレ達の目指す未来じゃない!!ランクアップだけが未来じゃねえって事を見つけたはずだ!!だから、エリファスはオレ達に未来を託したんじゃないのか!?」

 

(………)

それは遊馬の心からの言葉…アストラルはそれを静かに聞いている。

 

「どんな事だってやり直せる!誰とだって理解り合える!!答えてくれよ、アストラル!!」

 

 

(忘れない……忘れられる訳が無い…!きみの言葉……きみと過ごした時間…!…例え、一瞬でも…!!)

 

「アストラル…?」

遊馬の言葉を聞いたアストラルは表情を緩める…その顔は、いつものアストラルの表情だった。

 

 

(きみには、いつか交わした私との()()を果たしてもらう!!)

 

「……やく、そく…?お前との…!?」

だが、それも僅かな事…遊馬へとメッセージを送ったアストラルは再び闘志を高める!!

 

 

(遊馬、答えは常にデュエルの中にある!!いくぞ!私は速攻魔法『RDM-ホープ・フォール』を発動!!)

 

「ランクダウンマジック!?」

 

(このカードは自分のナンバーズが破壊された時、それよりランクが低いエクシーズモンスターを、破壊されたナンバーズを素材としてエクシーズ召喚する!ランクダウン・エクシーズチェンジ!!)

それは遊馬が生み出した『理想』の力の再現…フィールドで再び光が弾ける!

 

 

39  

 

 

(現われろ!ランク1『No.39』!『希望皇ホープ・ルーツ』!!)

それは希望皇が抱いた原初の理想…最弱最優の戦士が現れる!

 

 

「『ホープルーツ』…!?お前が、ランクダウンを…!?」

それは遊馬が予期せぬ召喚…アストラルは『バリアン世界を滅ぼす』と言った…つまりそれは『ランクアップを目指し続ける為』だと遊馬は考えていた…。

……だが、ランクダウンによって現れた『ホープルーツ』を見た遊馬は…アストラルの考えている事が分からなくなってきていた…。

 

「っ…オレは、カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!!」

 

 

 

(遊馬、取り戻すんだ…)

 

「えっ…?」

それはアストラルのちいさな呟き…アストラルが求めるモノの答えだった。

 

 

 

(私のターン、ドロー!!)

(私は装備魔法『ナンバーズ・フレーム』を『ホープルーツ』に装備!攻撃力を1500アップさせる!!さらに、エクストラデッキのナンバーズ2体をORUにする!私は『No.32海咬龍シャーク・ドレイク』と『No.62銀河眼の光子竜皇』をORUにする!!)

 

「シャークと、カイトのカードを…!?」

アストラルが選んだのはカイト、そして凌牙のナンバーズ…三勇士の魂のカードが原初の希望の力となる!

 

 

((遊馬、私は決して忘れはしない…きみと共に…シャークやカイトと、仲間と共に戦った事を……だが、運命は君に過酷な苦難を与えた…きみは身も心もボロボロになりながらそれを耐え、乗り越え…私達に勝利をもたらしてくれた…!))

アストラルは思い返す…何処にでもいる普通の少年だった遊馬、だが…ナンバーズを巡る戦いに巻き込まれ…身も心も擦り減らしていった…。

 

 

((そして、それはきみ自身も気づかないうちに、きみから、()()()()()()()()()()()()()()()…だから、私は──)バトルだ!『ホープルーツ』で『ガガガガンマン』を攻撃─!!)

 

「させるか!!『ガガガザムライ』の効果発動!ガガガモンスターが攻撃される時、攻撃対象を自身に移し替える!」

 

(永続罠『ランク・レボリューション』発動!!自分の場にエクシーズモンスターが1体だけの時、そのランク以上のエクシーズモンスターの効果を無効にする!ホープ剣ルーツ・スラッシュ!!)

 

「っ…!!うああああ!!」

遊馬の策を抜けた原初の希望がガンマンを両断する!!

 

 

(そしてこの瞬間、永続罠『オーバーレイ・アクセル』を発動!自分のエクシーズモンスターが相手モンスターを破壊した時、ORUを1つ使い!もう一度攻撃を可能にする!!)

 

「なにっ…!?」

ホープルーツのORUは3つ…全ての攻撃が通れば、遊馬は敗北してしまう!

 

 

(私はORUを1つ使い!『ホープルーツ』で『ガガガザムライ』を攻撃!!)

 

「っ…がああああっ!!?」

 

「遊馬!!」

ORUから飛び出したシャーク・ドレイクの牙が、ガガガザムライを噛み砕き…遊馬を吹き飛ばす─!

 

 

 

(取り戻すんだ!!きみが失ってしまった…1()()()()()()()を─!!)

 

 

「オレが失った…1番、大事なもの──?」

吹き飛ばされる刹那、アストラルの叫びが響く…その声は、遊馬の脳裏にとある記憶を呼び起こした…。

 

 

 

 

Side???

 

 

「アストラル、オレ…デュエルやってて本当に良かった!住む世界や言葉が違っても、誰とでも一緒に遊べて、仲間になれちまう!本気になればなるほど分かり合えて、心がワクワクして…!ヘヘっ!」

 

それはアストラルと出会い、「CNo.39」を手に入れWDCに挑む少し前の事…満天の夜空の下、遊馬とアストラルは語り合っていた…。

 

 

 

「……なぁ、アストラル…ナンバーズが全部集まったら、その先…どうすんだよ?」

 

(使命を果たし、アストラル世界に戻るだけだ)

 

「そ、そっか…だよな……それで、『その先』は?」

 

(それから?…その先の未来など考えた事が無い)

 

「なんだよ!?張り合いがねぇなぁ…」

その当時のアストラルはまだ性格が堅く、ナンバーズの回収と使命を果たす事だけを考えていた…そんなアストラルに遊馬は語る…。

 

 

 

「オレはいっつも考えているぜ!オレ達の未来を!すっげえ眩しくて、キラキラしてスカッとする未来を……いつか、お前にもオレの未来を見せてやるからな!

 

(キミの、未来…)

 

「……あっ、でもその時はお前……いねえかも知れねえんだな…」

 

(遊馬…そうだな)

遊馬の未来設計を聞いたアストラルは苦笑する…。

 

 

 

「……あ!お前、オレの事、『寂しそう』だとか!別れる時に泣くだろうとか思っただろ!?」

 

(フッ…否定はしない)

 

「このやろー!だったら、オレは絶対泣かねえからな!別れの時、お前と本気でデュエルして!そして勝って、笑ってやる!!()()()()()、アストラル!!」

 

それは、激しい戦いに巻き込まれる前の穏やかな一時…遊馬とアストラルのかけがえのない約束だった…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

「アストラルの言ってた、約束って……うぐっ!?」

刹那の間に記憶を思い出した遊馬は派手に背中を打ち付ける、残りライフ…300…。

 

 

 

「あいつ、さっき言ってた…約束を果たすって……あの時の…?」

 

(いくぞ!遊馬!私は『オーバーレイ・アクセル』の効果発動!『ホープルーツ』のORUを1つ使い、再び攻撃できる!)

 

 

「(お前との別れの時…本気デュエルで()()って…!)」

 

(『ホープルーツ』で遊馬にダイレクトアタック─!!)

 

「(デュエルで、笑う…デュエルって、もっと楽しくて…ワクワクして、ドキドキして…楽しいものなのに…いつの間にかおれ、泣いてばっかで──)」

ホープルーツと光子竜皇の幻影が攻撃を仕掛ける刹那…ようやく、遊馬は自分が失ったモノに気付いた。

 

 

それは『デュエルを楽しむ心』

 

 

数多の戦いの中で遊馬は命懸け、そして世界を背負って戦い続けた…そして遊馬は『かっとビング』『デュエルをすれば、みんな仲間』という信条と同じくらい大切な『デュエルを楽しむ心』を失っていたのだ…。

 

 

「(オレ、失ってたのか?心の底から笑うって…あいつ、それを思い出させようと──)…あいつ!!罠カード発動!!『マストダイ・ドロー』!自分のライフより高い攻撃力のモンスターに攻撃される時!カードをドローして、それが罠カードなら!バトルを無効にして発動できる!……アストラル、思い出したぜ!お前との約束!!」

 

(そうか…!)

攻撃を受ける寸前、遊馬は運命の1枚を発動する…その顔は笑っていた!

 

 

「それにしてもお前、それを気付かせる為に……どんだけクソ真面目で不器用なんだよ─!?」

 

(フッ…遊馬…)

遊馬が『答え』に気付いた事でアストラルは表情を崩す…普段通りの優しい表情へ…今までの事は全て、アストラルの()()だったのだ。

 

 

あまりにも多くのモノを失い、デュエルを楽しむ事すらも忘れてしまった遊馬…その時、アストラルはかつての『約束』を思い出した。

 

だが、ただ『全力のデュエルをしよう』と言っても、遊馬の心は埋まらない……故に、世界の未来を賭ける事で遊馬の心に発破をかけ…全力を出せるように仕向けていたのだ…!

 

 

「わかったぜ、アストラル!約束だ!!笑ってやる!!お前に勝って…心の底から笑ってやる─!!見せてやるよ!オレの未来を─!!」

 

キィン─!!

 

『デュエルを楽しむ心』を取り戻した遊馬の右腕に眩い希望の光が宿る…それは未来を導く奇跡の光!

 

 

最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえも、デュエリストが創造する!シャイニング・ドロー!!

 

 

(遊馬、やはり…きみは…!古の戦いで分かれた私の分身…!もう1人の私…!!)

フィールドを照らす奇跡の光…それを見たアストラルは確信した、九十九遊馬…その大本は古の戦いでアストラルと分かれてしまったアストラルの半身、その魂が九十九遊馬へと転生した紛れもない、もう1人の自分なのだと…!

 

 

「オレがドローしたのは、罠カード!よってバトルは無効となる!そしてオレは罠カード『マスター・ピース』を発動!!」

それは遊馬が導いた未来を示す、奇跡の力…!

 

「このターン、墓地に送られたモンスター2体でエクシーズ召喚できる!!オレはランク4の『ガガガガンマン』『ガガガザムライ』の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

遊馬のフィールドで光の大爆発が起きる!!

 

 

「現われろ!『FNo.0』!! 」

 

 

00 

 

 

天馬、此処に解き放たれ!縦横無尽に未来へ駆ける!!これがオレの天地開闢!オレの未来!!かっとビングだ!オレ!!『未来皇ホープ』!!

 

それは紛れもない『遊馬自身』のナンバーズ、赤き体に純白の翼を広げし未来の皇…その名は『未来皇ホープ』!!

 

 

 

『ランク0の、ナンバーズ…!?』

 

「遊馬の新しいナンバーズ…!」

 

「未来皇ホープ…」

 

「なんだか、遊馬に似てる!」

虹色の光を纏い現れた未来皇に全員が目を奪われる…その中で小鳥はその姿に遊馬を重ね見ていた…!

 

 

(これが、きみの未来──)

 

「オレの未来はまだ()()()()()()()()!それが!ランク0の可能性だ!!」

 

(実に、きみらしいナンバーズだ!!)

 

「おう!アストラル!お前とのこのデュエル!楽しんで楽しんで楽しみぬいて!最後に絶対笑ってやる─!」

 

(ああ、来い!遊馬!私はこれでターンエンドだ!)

アストラルと遊馬はお互いに笑い合う…ここからが本当の戦いの始まりだった!

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「いくぜ!『未来皇ホープ』で『ホープルーツ』を攻撃!」

 

(攻撃力0で攻撃…!?何か仕掛ける気だな?)

 

「さぁ、どうだろうな─!」

再び無謀な攻撃を仕掛ける遊馬…アストラルの選択は…!

 

 

 

(私は『ホープルーツ』の効果発動!エクシーズモンスターとバトルする時、ORUを1つ相手に与える事で!このターンの間、攻撃力は相手モンスターとのランク差にORUを掛けた数値になる!攻撃力は300となる!)

あえてホープルーツの攻撃力を下げるアストラル、その選択は─!

 

 

 

「『未来皇ホープ』の効果発動!相手モンスターとバトルする時、バトルでは破壊されず!バトルダメージも0になる!さらに!バトルした相手モンスターのコントロールをバトルの間だけ得る!!」

 

(なにっ!?)

それは『九十九遊馬』という男を象徴する効果…誰も傷付けず、戦って相手を仲間とする…最善を目指す『優しい』効果だった!

 

 

「『未来皇ホープ』!ホープ剣フューチャー・スラッシュ!」

それは未来を切り拓く最優の一撃、攻撃を受けたホープルーツは白い羽に包まれ、遊馬のフィールドに現れる!

 

 

「これで『ホープルーツ』のコントロールは貰ったぜ!!」

 

(それが『未来皇』の力か…!)

 

「いけ!『ホープルーツ』!アストラルにダイレクトアタック!ホープ剣ルーツ・スラッシュ!」

 

(やるな…!遊馬!!)

アストラルの残りライフ…550、予想を超えた一手にアストラルは声を上げた…。

 

「ヘヘっ…!オレはカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

 

 

 

(きみの攻撃はブラフではなかったようだな?)

 

「流石だぜ、アストラル!よく『ホープルーツ』の攻撃力を下げたな!」

 

(きみが新たな可能性を見つけたなら、それがブラフな訳はないと思ったのさ)

 

「ヘヘっ…お前とのデュエル、最高にワクワクするぜ!!さぁ、来い!アストラル!お前の本当の全力、オレに見せてくれ!!」

 

(遊馬、ランク0…無限の可能性があるのなら!私はさらに、上へ往こう!!)

今までで1番の笑顔を見せる遊馬とアストラル…無限の可能性を見せた遊馬に応えるように、アストラルの右腕に光が宿る!!

 

 

 

全ての光よ!力よ!我が右腕に宿り、希望の道筋を照らせ!シャイニング・ドロー!!

それは奇跡の光、アストラルもまた…さらなる未来を導く!!

 

 

(来たぞ、遊馬!私は『HRUM-アルティメット・フォース』を発動!!自分フィールドの『ホープ』をランク10のナンバーズにランクアップさせ、このカードをORUにする!ランクアップ・ハイパーエクシーズチェンジ!!)

 

「なっ…!?」

それはホープが辿り着く、究極の可能性…光の大爆発がフィールドを埋め尽くす!

 

 

(現われろ!『No.99』!)

 

 

99 

 

 

砕け散り我が魂の記憶!今、1つの星となりて!天命を貫く霹靂となれ!これがナンバーズの終焉にして頂点!!『希望皇龍ホープ・ドラグーン』!!

それはナンバーズの頂点に君臨する最強の1枚…希望を宿せし龍神…その名は『希望皇龍ホープ・ドラグーン』!

 

 

 

「これが、ランク10…『No.99』…!」

 

(いくぞ!『ホープドラグーン』の効果発動!1ターンに1度、墓地に眠るナンバーズを効果を無効にして特殊召喚する!来い!『ビヨンド・ザ・ホープ』!!)

 

「『ビヨンド』が蘇った!!」

遊馬が目を奪われる間にビヨンドが墓地から蘇る!

 

 

「だが…『未来皇ホープ』の効果で─!」

 

(それはどうかな!!私は『ホープドラグーン』で『未来皇ホープ』を攻撃!)

 

「させるか!!『未来皇ホープ』の効果発動!バトルでは破壊されず、バトルダメージを0にして!バトルした相手モンスターのコントロールを得る!」

 

(そうはいかない!『ホープドラグーン』のさらなる効果!このカードが自分フィールドを離れる時、ORUを1つ使い!その効果を無効にし!自身以外の全モンスターを破壊する!!)

 

「なんだって!?」

未来皇の羽を振り払った希望皇龍が咆哮…フィールドに稲妻が降りそそぐ!!

 

 

「させるかよ!『未来皇ホープ』のさらなる効果発動!ORUを1つ使い、このカードの効果破壊を無効にする!」

 

(残念だが、私の狙いはそこではない!)

 

「っ…!?」

稲妻を切り裂く未来皇だが、アストラルの狙いは別にあった! 

 

 

(破壊するのは『ビヨンド・ザ・ホープ』!!)

稲妻がビヨンドを打ち砕き、さらなる効果を発動する!

 

 

(そして!破壊したモンスターの攻撃力の合計分、相手にダメージを与える!!)

 

「っ─!!」

それはまさに、神すらも滅する一撃…希望の炎が遊馬に迫り─!!

 

「まだだ!『未来皇ホープ』のもう一つの効果、発動!ORUを1つ使い!効果ダメージを0にする!うわああああっ!!」

 

「遊馬!!」

ぎりぎりで炎のダメージを受け止める遊馬…だが、余波で吹き飛ばされる…!

 

 

(ふっ…私はこれで、ターンエンドだ!やるな…遊馬!)

 

「ヘヘっ…こんなモンでお前との最高のデュエル、終わらせてたまるかよ!!」

アストラルの一撃を避けた遊馬は立ち上がる…その顔に笑顔を浮かべながら…。

 

 

 

 

 

「…このデュエルに、言葉は必要ない…遊馬とアストラル、誇り高き2つの魂がぶつかりあい…語り合う……遊海、奴は取り戻したぞ…失ったモノを…!」

 

「ああ、遊海さんもきっと…このデュエルを楽しみにしていたんだろうな…2人の最高のデュエルを…!」

遊星とジャック…年老いた2人の魂に再び熱が戻る、見る者すらも楽しませる遊馬とアストラルのデュエル…それは本当に最高の戦いだった…!

 

 

「見て…遊海さん…遊馬くん、笑ってるよ…!いつもの遊馬くんに、戻ったよ…?」

 

『翠…』

翠は握り締めていたカルトゥーシュに遊馬達の様子を見せる…その顔は笑いながら、泣いていた…。

 

 

 

「(おそらく、これが最後のターン…オレは……アストラル…!)いくぜ!!アストラル!!オレのぉぉ…!ターン!!」

最後のターンを確信した遊馬はバク転で距離を取り、最後の1枚に手をかける!

 

 

「かっとビングだ!オレ─!ドロォォォ!!」

気合いを込めたかっとビングドロー…その1枚が運命を決める─!

 

 

 

「アストラル!オレの全力、受け止めてみろ─!!」

 

(来い!遊馬!!)

ドローカードを確認した遊馬は最後の攻勢を仕掛ける!

 

 

 

「オレは『未来皇ホープ』で『ホープドラグーン』を攻撃!!お前のモンスターのコントロールを貰うぜ!」

 

(無駄だ!『ホープドラグーン』が自分フィールドを離れる時、ORUを1つ使い!その効果を無効にし、自身以外のモンスターを破壊する!)

 

「まだだ!『未来皇ホープ』の効果発動!ORUを1つ使い、効果破壊を無効にする!」

それは前のターンの焼き直し、未来皇の羽を振り払った希望皇龍が稲妻を放ち、未来皇が切り払う…だが、これでお互いのORUはなくなった!

 

 

「勝負はこっからだ!!罠カード発動!『かっとビング・チャレンジ』!自分のターンのバトル中に攻撃したエクシーズモンスターの効果を無効にして、もう1度攻撃できる!!」

 

「馬鹿!!『未来皇』の効果を無効にしたら!バトルで破壊されて大ダメージだぁ!!」

遊馬の思わぬ行動に鉄男が叫ぶ…だが、遊馬はさらなる一手を打つ!

 

 

「さらにオレは罠カード『ブレイビング・メモリー』を発動!ナンバーズ同士がバトルする時、互いの墓地にあるナンバーズ1枚につき500ポイント!『未来皇』の攻撃力をアップする!墓地のナンバーズは6体の『ホープ』と『シャークドレイク』!『光子竜皇』!攻撃力4000だぁぁ!!」

未来皇の背後に全てのホープとカイト、凌牙のナンバーズが並び立つ!!

 

 

「そして『ブレイビングメモリー』のさらなる効果!自分のモンスターはこのターンバトルでは破壊されず、相手モンスターをバトルで破壊して、ダメージを与えられなかった時!もう1度、攻撃できる!!」

 

(フッ…)

仲間達の願いを背負った未来皇が龍皇を両断…爆発する!

 

 

「バトルだ!『未来皇ホープ』で…!アストラルにダイレクト─!」

 

 

(まだ終わらない…!永続罠『運命の扉』!発動!!)

 

「運命の、扉…!?そのカードは─!?」

最後の攻撃がアストラルに迫る直前、遊馬の意識は一瞬の闇に包まれた…。

 

 

 

 

「ここは…!?」

遊馬が気づけば…そこは何度も夢に見た断崖絶壁、細い道の先にはアストラル、そして鎖で縛られた異形の扉が佇んでいた…。

 

 

(永続罠『運命の扉』…ダイレクトアタックを()()にして、このカードをモンスターとして特殊召喚する……さらに、次のターン…墓地のナンバーズを除外し、1枚につき500ダメージを与える……この扉を破壊せねば、きみの負けだ)

 

「この扉は…お前と出会った……オレ達は、ここから始まった…!オレはここで、あの扉と!」

淡々と効果を読み上げるアストラル…そして気付いた、遊馬とアストラルが初めて出会ったのは…この場所なのだと…!

 

 

【この扉を開く者は新たなる力を得る…しかし、その者は代償として、1番大切なモノを失う…】

 

 

「アストラル…そうだ、オレにとって1番大事なモノ……それは、お前しかいねぇ…!!だけど…オレは…!!」

あの時と同じように遊馬へ語りかける扉…この扉を開けば(壊せば)、遊馬はアストラルを失うのだろう。

 

 

(恐れるな!きみの手に残る最後の1枚…何かは()()()()()()…その手で切り開くんだ!未来を!!……未来を恐れるな、遊馬!)

 

 

「アストラル…お前、まさか……オレに、別れる勇気をくれる為に…!?」

 

(ふっ……きみが私にデュエルを挑むなど…100年早い!!)

立ち止まった遊馬の背を押すのは…他ならぬアストラルの声、最後の最後で…遊馬を新たな未来へ導く為に…!

 

 

(アストラル…!!いくぜ、オレは速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』を発動!モンスターの攻撃が無効になった時、攻撃力を2倍にして!もう1度攻撃できる!!)

それは未来を切り拓く、最後の1枚…遊馬は皇の鍵を掲げ、最後の攻撃を宣言する!!

 

     

「来い…!『未来皇ホープ』!!」

 

キィン─!!

 

遊馬の叫びと共に未来皇が遊馬と1つになる…その胸には『皇の鍵』が輝きを放っていた!

 

 

《これが、本当の…最後の一撃!!》

 

(さぁ、来い!遊馬!!)

 

《いくぜ!アストラル─!!》

未来皇は白き翼を広げ、空に羽ばたく!!

 

 

 

 

 

──アストラル、オレは忘れない…──

 

 

 

──お前と共に戦い、泣いたり笑ったり…喧嘩したり、仲直りしたり…いつも……いつもオレの傍には、お前がいた…──

 

 

 

──でも、これからは……!!──

 

 

 

それは手向けの一撃…新たな未来を切り開く、希望の一撃!

 

 

《かっとビングだ!オレ!!オレは…未来を切り開く!!》

 

 

 

ホープ剣!フューチャー・スラッシュ─!!

 

 

 

 

 

未来を切り開く一撃が未来への『扉』を両断…閉ざされた未来を解き放つ、アストラルは…ただ、満足そうに笑っていた。

 

 

 

アストラル LP0

 

 

遊馬 WIN!

 

 

 

 

 

 

デュエルエリアが解除される中、フィールドは静寂に包まれていた…勝利を祝う歓声もなく…ただ、2人の時間を邪魔しないように…。

 

 

 

「……アストラル、ほら…」

 

(遊馬…ああ…!)

倒れ込んだアストラルに遊馬が手を伸ばす…アストラルはしっかりと手を取り、立ち上がる。

 

 

(見事だったよ、遊馬…)

 

「ああ…!あっ…?」

 

キィン─!

 

お互いを称え合う遊馬とアストラル…その頭上で眩い光…ヌメロン・コードが輝きを放つ…。

 

 

「あれが、『ヌメロン・コード』……」

 

(どうやら、別れの時が来たようだ…)

 

「アストラル…」

 

(……遊馬)

別れを前にアストラルは遊馬に眼で語りかける…。

 

 

「分かってる!絶対泣かねぇ!」

 

(ああ…私は、きみの笑顔が大好きだった…忘れないでほしい、その笑顔を──かっとビングを…!)

絶対に泣かない…そう約束した遊馬を見たアストラルの身体が浮き上がっていく…。

 

 

 

「…アストラル!!」

遊馬は旅立つアストラルへ…別れの言葉を送る!

 

 

「かっとビング!それは、勇気を持って一歩を踏み出す事!」

 

 

「かっとビング!!それは、どんなピンチでも!諦めないこと!!」

 

 

「かっとビング!!!それは、決して諦めない事!!そしてあらゆる困難に、チャレンジする事!!」

 

 

それはかっとビングの言葉…泣き笑いの笑顔で、遊馬はアストラルへと叫ぶ!!

 

 

「くぅっ…忘れねぇ!!絶対に、お前の事!絶対に忘れねぇぇ─!!」

 

(私も、決して忘れない!!遊馬─!!) 

 

 

「アストラル…アストラル─!!」

 

 

 

ヌメロン・コードの光が地上を照らす…そして全ては光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行っちまったな、アストラル…」

 

「遊馬…」

光が収まった時、そこは普段通りのハートランドだった…ヌメロン・コードも消え、穏やかに夕陽が辺りを照らしている…。

 

 

 

キィン─…

 

 

 

「あっ…?」

最初に声を上げたのは誰だったのか…空から10本の光の粒子が降りそそぐ、それは遊馬達の近くで形となり…。

 

 

 

「っ……オレは…?」

 

《ビビッ……システム再起動……ここは、ハートランド…??》

 

「ああっ…!カイト!オービタル!!」

最初に姿を現したのは月で力尽きた、カイトとオービタル7…そして……。

 

 

『オレは…』

 

『……俺は、遊馬を庇って…』

 

『ここは、何処だ…私は…』

 

『ここは…地上か…?』

 

「アリト!ギラグ!ドルベ!ミザエル!!」

次に目覚めたのは元七皇の4人…状況が分からず、辺りを見回している…、

 

 

 

『凌牙…?』

 

『璃緖…!そうか、お前達が「ヌメロンコード」を…』

 

「シャーク!璃緖!!」

手を繋いで目を覚ましたのは凌牙と璃緖…そして…。

 

 

 

『………なんだよ、生き返っちまった……合わせる顔がなさ過ぎだ…』

 

「真月!!」

悪態を吐きながらベクターが目を覚ます…七皇の魂が普通の「人間」として蘇ったのだ。

 

 

 

 

『…おかえりなさい、父様』

 

『ああ、ただいま…クリス、トーマス、ミハエル……心配かけたね』

 

『まったくだぜ、父さん!』

 

『アストラルに感謝しなければ…』

アークライト兄弟のもとにトロンが帰還する…これで戦いで散っていった仲間達が全員────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待って…!?どうして…!なんで、()()()()()()()()()…!?」

 

『全能の力……ヌメロン・コードでも、遊海を生き返らせる事が、できなかった…のか…!?』

 

「そんな…!!」

全員、ではない……少し離れた所から様子を見ていた翠が気付く…遊海が、戻ってきていない…。

 

 

 

 

「アストラル…そんなのって、そんなのってないよぉ…神様…!!ああ、ああああ…!!」

 

《ミドリ…》

翠が再び泣き崩れる…事態を知らぬ遊馬達の横で悲しみが広がっていく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ…?」

 

 

 

その時、虹色の光が空から降りそそいだ…。




『さぁ…始めよう、世界の書き換えを…!』
遊馬と別れたアストラル…彼は涙を拭き、光輝く神のカード…『ヌメロン・コード』を前にする。




『まずは、私の使命…「バリアン世界の消滅」……だが、アストラル世界は…エリファスは、カオスを受け入れる事を認めてくれた…故に、バリアン世界とアストラル世界をゆっくり…静かに統合する…!』
アストラルは『ヌメロン・コード』を書き換え、アストラル世界とバリアン世界を融合させる…その使い方は本能で分かっていた。


『次に…エリファスの復活…そして……これは…!シーカー…いいえ、ラプラス…やはり、貴方は…もう1人の…!』
アストラルは次に戦いの中で命を落とした者の復活に取り掛かる。
その中で…アストラルはようやく『闇の英雄』の正体を知った…。


『…という事は、ネームレスは………こんな、数奇な運命があるのか………よし、これでいい』
そしてアストラルはネームレスの正体と顛末を知り…()()()書き換えを行う。



『ドン・サウザンドに運命を狂わされた七皇達………ベクターは…少し、不安だが……遊馬なら、きっと大丈夫だ』
次にアストラルはバリアン七皇達の来歴を確認、そして…その魂を人間界へと蘇らせる。



『カイト…オービタル、キミ達がいなければ、私達はドン・サウザンドに勝てなかった…ありがとう』
次に月面へと取り残されたカイトとオービタル…アストラルは速やかにその身柄をハートランドへと移動させ、蘇生する。


『そして…貴方だ、遊海……翠が貴方を待っている………そんな…!?遊海の未来が、()()()()()()()!?』
そしてハートランド防衛の最大の功労者…遊海を蘇らせようとするアストラル……だが、『ヌメロン・コード』は…遊海の『死』を書き換える事ができなかった…!


『…………異界からの、転生者…!?まさか…()()()()で生まれた者ではないから、書き換えができないのか…!?』
『ヌメロン・コード』から歴史を読み取ったアストラルは遊海と翠の正体を知る…そしてある仮説に辿り着いた。

『ヌメロン・コード』にはあらゆる過去・現在・未来が記されている…だが、その運命が記されているのは『ドラゴン』が生み出した宇宙で生まれた者だけ……別の世界からやって来た遊海と翠の場合、歩んだ過去と現在の事は記されていても…未来は記されていないのではないか?と…。



しかし、アストラルの仮説は僅かに外れている。

『ヌメロン・コード』とは…言ってしまえば遊海のいる『遊戯王世界』の人々の『記録簿』を神ならざる者でも書き換える事ができる『端末』である。

…しかし、遊海と翠に関してはその『記録簿』を2人を転生させたデウス神が直接管理している為に…『端末』であるヌメロン・コードでは書き換えが出来なかったのだ。

……なお、遊海の『消滅』を知ったデウス神達も状況を見守る事しか出来ない、遊海が神の『お気に入り』となっても…その生死を神本人が捻じ曲げる事はできないのだ…。





『まさか…こんな事が……すまない、遊馬…シャーク…翠…!!『全能』の力でも、出来ない事があった…!!』
遊海を蘇生できない事を知ったアストラルは、思わず拳を握りしめる…。





《大丈夫、遊海の事は任せて…アストラル》




『えっ…』
アストラルと『ヌメロン・コード』しか存在しないはずの世界に穏やかな声が響く…それは虹色の光を纏う、小さな猫の声だった…。


《驚かせてごめん、遊海の事は大丈夫…だから、他の事をなんとかしてあげて……ありがとうアストラル、キミ達の選んだ道は…本当に綺麗だった!》

『キミは、いったい…?』

《世界の嫌われ者、そして…あり得た『災厄』…それがボクさ…じゃあね!》
虹色の光は空を駆け…何処かへ消え去った…。



『……遊海、貴方の未来はヌメロン・コードに記されていなくとも…貴方は運命に恵まれた…』
アストラルは虹色の軌跡を静かに見送った…。


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幕間─「獣」の祝福─

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─ああ、よかった…ようやく見つけた…本当に消えちゃったかと思ったよ…─

 

 

 

 

「───」

 

 

 

 

─キミは…キミの魂は怪物に喰われ…消滅した、長い時を経て命の終わりに辿り着いた……それでも、揺るぎない『意思』は虚無の世界に残っていた……それでも…キミが成すべき事は、まだ残ってる─

 

 

 

─……だから、「お疲れ様」とは言わないよ……()()()()って、お別れは言うんだけど…─

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

─…懐かしいね、()()…キミ達とボクが出会って、もう30年近くも経つんだ……覚えているかい?ボクが家の庭で眠っていた時、キミが話しかけてくれたのがボク達の出会いだった…─

 

 

 

 

 

─……ボクは人間にとって、すこし困った性質を持っていた…人間同士の競争や成長…妬みや悔しさを「糧」として…相手より「強くなる」…「災厄の獣」キャスパリーグ……違う世界では『霊長の殺人者』や『(ビースト)』とも呼ばれていたんだ─

 

 

 

 

 

─ボクは人間社会にいなければ『無害な動物』でいられる…だから、()のいない孤島…「理想郷(アヴァロン)」に閉じこもっていた…けれど、ボクの世話をしていた同居人が『美しいものに触れてきなさい』と幽閉塔からボクを放り出してしまったんだ……酷い話だよね?─

 

 

 

 

─そうしたら…驚いたよ、世界は『魔術の札』…デュエルモンスターズが広がって人間達の『競争や成長』に満ち溢れていた……ボクは困った…このままでは『災厄』になってしまうと…─

 

 

 

 

 

─そんな時、ボクはキミ達と…遊海と翠に出会った……「大丈夫か?何処から来たんだ?」って…そう声を掛けて、ボクを優しく抱き上げてくれたね─

 

 

 

「……」

 

 

 

─でも、ボクは申し訳ない気持ちでいっぱいだった…きっと、この2人がボクの最初の()()()になってしまうと思ったから…─

 

 

 

 

─でも、そうはならなかった……君達は純粋に『楽しむ為』にデュエルモンスターズを使っていた……例え負けても相手を妬む事なく、感じた悔しさも自分達の糧としていたから…ボクはそれ以上、成長しないで済んだんだ─

 

 

 

「………」

 

 

 

─君達との暮らしは本当に楽しかった…遊海のデュエルを見たり…翠と美味しいご飯を食べたり、凌牙と一緒に寝たり、璃緒におめかししてもらったり…精霊のみんなと遊んで、笑って………なんて事のない『普通の日常』……でも、ボクにとっては…本当に「美しいもの」だった!─

 

 

 

「……ふぉ…う……?」

 

 

 

─…君は迷惑に思うかな…でも、「善意は基本、押し売りするものだ」とあの夢魔も言っていたし…君も結構お節介が好きだから…それに倣うとしよう─

 

 

 

 

 

─ボクが数百年溜め込んだ魔力を使って…魔法やアストラルが使おうとしている「ヌメロンコード」ですら到達し得ない「奇蹟」をこれから起こす、それは『消滅した魂の復活』…─

 

 

 

 

─「ヌメロンコード」は事象を書き換えて、その人の未来を変える奇跡の力…でも、ボクはそうじゃない…チカラを使って「世界の外側」に弾き出され、消えかけた遊海の「魂」を現実世界に呼び戻す…そうすれば、キミ自身の力で蘇る事ができる…─

 

 

 

 

─…その代わり、ボクはただの「獣」になる…知性も特性も無くなってしまうだろう…もしかしたら…君との「会話」もできなくなるかな……キャットちゃんは……よく分からないや!─

 

 

 

 

─寂しい気持ちもあるけど…最後にお礼を言わせて欲しい─

 

 

 

 

 

─ありがとう、遊海…そして翠…君達との暮らしは本当に楽しかった、たいてい醜悪な姿に変わっていたボクが『この姿』でいられたほどに─

 

 

 

「…フォウ…くん…」

 

 

 

─きみ達と遊馬の旅路が教えてくれた…刃を交えずとも、倒せる悪はあり…血を流さなかったからこそ、辿り着けた答えがあった…─

 

 

 

 

 

─おめでとう、善き決闘者達……『あり得た災厄』はきみ達によって倒された─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界の外側…「無」の世界に虹色の光が広がっていく。

 

 

 

 

それは祝福の光

 

 

 

光は世界の「壁」を無理矢理に押し開き──

 

 

 

 

『英雄』の魂をあるべき場所へと導いた。

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

「…ここ、は……」

 

 

遊海はゆっくりと目を覚ました、最初に目にしたのは夕日が照らす穏やかな夕焼けの空…そして、涙を溜めた紫髪の少女の逆さまの顔だった。

 

 

 

「遊海さん…良かった…!戻って、もどって…きてくれた…!!」

 

「翠……俺は、どうなって…?……俺は、ネームレスに……」

 

「アストラルが…ヌメロン・コードで生き返らせてくれたんです…!良かった…よかったぁぁ…!!」

 

「……そうか、戦いは…終わったのか…」

遊海は泣き崩れる翠の膝枕から起き上がる、そこは始まりの場所、ハートランドの駅前広場…そこでは泣き笑いの笑顔の遊馬が蘇った元『バリアン七皇』やカイトとの再会を喜び合っていた。

 

 

 

「…なんだか、とても悲しい夢を見ていた気がする………寂しくて…でも、祝福に満ちた夢を…」

遊海はネームレスと対峙した後の事は覚えていない…しかし、その魂には…何か暖かな「余韻」が残っていた…。

 

 

 

《フォウ!フォーウ!》ピョン!

 

「…おはよう、フォウ………()()()()()…?」

 

《フォーウ?》

遊海が起き上がったのを見たフォウが軽やかに遊海の肩に跳び乗る、そして…遊海はフォウを優しく撫でながら感謝を伝えた、何故か分からないが…言わなければならないような気がしたのだ…。

 

 

 

「翠……ごめん、今回はだいぶ無茶をした…」

 

「ぐすっ……いつも、いつも遊海さんは無茶をし過ぎなんです!!今回は…今回は本当に許さないんだから──!!」

 

「本当にごめん……無事で、よかった…!」

そして…遊海と翠はお互いに涙を流しながら抱き締め合う、お互いの無事を…愛を確かめ合うように…。

 

 

 

 

 

 

 

『遊海さん……翠さん……』

 

 

「……凌牙…璃緒…」

しばらく泣き続けた遊海達に声を掛ける人影があった、それは…申し訳なさそうな顔をした凌牙と璃緒だった。

 

その後ろでは遊馬やドルベ達が固唾を呑んで様子を伺っている…。

 

 

 

 

『俺達……遊海さんや、翠さんを…遊馬を……みんなを、傷つけて……俺──』

 

 

「……それ以上は言うな、凌牙……だが、これだけは言わせてくれ」

 

「私からも…」

遊海と翠は凌牙と璃緒と向かい合う、そして……

 

 

 

「おかえり、よく帰ってきた…!」

 

「心配したんだから…!!」

 

『『あ…』』

 

遊海は凌牙を…翠は璃緒を強く抱きしめ、そう語りかけた……言葉はそれだけで充分だった…。

 

 

 

『ただいま……ただいま!父さん!母さん!!』

 

『ごめんなさい…本当にごめんなさい─!!』

 

 

凌牙と璃緒は大粒の涙を溢しながら遊海達に抱きつく…断たれてしまった4人の絆は…いま再び結ばれた…。

 

 

 

 

「へへっ……よかったな…シャーク…遊海……サンキューな、アストラル」

 

泣き崩れる遊海親子の再会を見届けた遊馬は静かに空を見上げる…ハートランドの空には輝く一番星が瞬いていた…。

 

 




『うんうん…最高のハッピーエンドだ!良かったね…遊海君!』
それは何処かにある『理想郷』…その中心部に立つ塔の中、千里眼で地上の様子を見ていた花の魔術師・マーリンは嬉しそうな顔で笑っていた…。



『こんなハッピーエンドを見れたのなら、ボクも幽閉塔を抜け出した甲斐があったよ…キャスパリーグも「美しいモノ」に触れて無害化できたし、いやぁ〜良かった良かった!さぁ、遊海君!次はどんな物語を見せてくれるのかな?楽しみにしているよ〜!』
 




「…マーリン、また何かしていると思えば…余程、善い人間を見つけたのですね…」
穏やかな風が吹き抜ける理想郷に明るい声と小さく苦笑する人物の声が融けていった…。


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エピローグ〜絆は永遠に、希望は未来へ〜

こんにちは!S,Kです!

ZEXAL編エピローグとなります…ここまで無事に執筆できて良かった…!


読者の皆様…応援ありがとうございます!!


「うおおぉぉ!?やっべえ遅刻だぁぁ!!」

 

 

とある朝、朝8時を過ぎたハートランドに絶叫が響く…それはハートランドの朝の風物詩と化した少年の叫びだった。

 

 

 

「遊馬〜!今日は風紀委員が立ってる日だぞ〜!」

 

「わかってるよ遊海!!今日は遅刻しねぇぞおおぉぉぉぉ……!

 

《フォウ…フォーウ?》

花壇に水やりをしていた黒髪の青年の忠告を聞きながら、少年…九十九遊馬は挨拶もそこそこに駆け抜けていく…。

 

 

 

「ああ、平和だなぁ〜…」

 

《フォウ!》

黒髪の青年…白波遊海は晴れ渡る空を見上げ、穏やかに呟いた…。

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

アストラルとの別れから1ヶ月、戦いが終わっていつもの日常が帰ってきた…だけど、変わった事もあって…。

 

 

………

 

 

キーンコーンカーンコ〜ン…

 

 

「そ、そんな〜!勘弁してくれよぉ〜…」

 

『残念ながら1分アウトよ!罰として…トイレ掃除1週間!かしら?』

 

「ちょ…!?妹シ…璃緒!そこをなんとか〜!」

 

『アダ名で呼びかけたので2週間に決定!!』

 

そんな〜!?」

 

 

 

 

『相変わらず…バカやってるな、遊馬…』

 

…………

 

 

アストラルはヌメロン・コードを使って七皇を人間界に戻してくれた、今はⅢ…ミハエルも一緒にハートランド学園に通ってるんだ!……真月だけは、あんまり姿を見ないんだけど…。

 

それだけじゃない、アストラル世界にいた父ちゃんと母ちゃんも人間界に呼び戻してくれた…。

 

そして月に取り残されたカイトとオービタルも帰ってきたんだ!

 

 

………

 

 

「オービタル、このデータをすぐに解析しろ」

 

《カシコマリ!!》

 

《カシコマリ!》

 

((かしこまり!!))

 

 

………

 

今はトロンやフェイカーと一緒に異世界の研究を再開したんだって!オービタルはオボミとケッコンして、カイトに子供タイプのオボットを作ってもらったんだ!

 

それから…トロンはなんだか身長が伸びて、少しずつ『成長』してるらしい…前みたいに家族で過ごせるかもしれないな!

 

 

そして…激しい戦いの末に消えちまった遊海も…。

 

 

 

………

 

 

《ふぁ〜…やはり、日光浴は気持ち良いのぉ…》

 

《フォ〜ウ……》

 

「スゥ…スゥ…」

 

「むにゃ…遊海さん…」

 

 

《まったく…戦いが終わってから、マスター達はのんびりし過ぎでは?》

 

《いいではないですか…久しぶりの休暇と思ってのんびりしましょう!アヤカも人間体で寝てみたらどうです?》

 

 

《主達の安眠は拙者が守る…!》

 

《トフェニ〜、力みすぎじゃない?》

 

《ふふっ…翠達の為に夕ご飯の準備しておこう!》

 

 

 

…………

 

 

 

……少し、気が抜け過ぎな気もするけど…遊海も精霊達やシャーク達と平和に過ごしてる、七皇のみんなも遊海を頼りにしてるんだ!

 

 

 

 

 

 

こうして…みんなとワイワイ騒いだり、デュエルしたり、遊んだり…勉強する日々が戻ってきた!……ただ1つ、()()()がいない事を除けば…すべて、いつも通りの…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

カランカラン…

 

 

『やぁ、遊海!』

 

「あぁ、一馬…少し待たせたかな?」

 

『ふっ…オレも少し前に来た所さ』

 

ハートランドのとあるカフェ…そこで2人の男が再会する、それは遊海、そして一馬の2人…2人は固く握手を交わした…。

 

 

 

『…遊海、貴方には感謝してもしきれない…オレ達のいない間、遊馬達を守ってくれてありがとう…!』

 

「礼を言うのは俺の方さ、遊馬が頑張ってくれた……いいや、かっとビングしてくれたから…俺も生き返れたからな…」

席に座った2人はお互いに感謝を伝え合う…遊海が復活した後に九十九家で再会したものの、遊馬の前で話せない事があり、カフェで待ち合わせをしていたのだ。

 

 

 

『…貴方の教えてくれた()()は、本当にありがたかった…()()()()()()()聞いた情報と合わせて…遊馬を導く事ができた…』

 

「ああ…遊馬達には、辛い思いをさせたけど…最善の未来を掴む事ができた……」

 

『しかし…今でも、あの日の事は忘れられないな…貴方が真実を伝えてくれた日の事は……』

それは数年前、一馬がクレバス滑落事故から生還した頃に遡る…。

 

 

 

………

 

 

 

「クレバスの中で異次元の人間に会った?」

 

『…ああ、眉唾だと笑うかもしれないが……本当の事なんだ、こんな事を話せるのはお前しかいなくてな…』

クレバスから生還した一馬はある事を相談する為に遊海のもとを訪れていた。

 

 

「……人間界に散らばった50枚のナンバーズ、そのうちの7枚は邪神・ドン・サウザンドの力が封じられたもの…それは人間界の英雄達に託されている、その行方を調べてほしい…そして遊馬は自分がドン・サウザンドと戦った時に別れてしまった『魂』の生まれ変わり……『アストラル』を名乗った異次元人はそう言ったんだな?」

 

『ああ、ナンバーズはハートランド博物館で『No.7ラッキー・ストライプ』を見た事がある、実在はしてると思うんだが…』

それはクレバスの中でアストラルが『魂の縁』が繋がる一馬に話した内容…地上に散らばってしまった『封印のナンバーズ』の調査を依頼するものだった。

 

 

 

『オレも冒険家だから…何度も不思議な体験はしてきた、でも…今回は……』

 

「……一馬、俺達がこうして友達になって何年経つ?」

 

『なんだ、藪から棒に……たぶん30年くらいか?アンタが引越して来てからだからな…あの頃はオレも若かったなぁ…』

 

「…()()()()()…一馬、俺もお前に真実を話そう…俺の本当の名は……白波遊海って言うんだ」

 

『は…!?冗談だろ?白野…!?』

 

「お前には話しておこう、これからお前が巻き込まれる運命を……遊馬や、俺の息子達が立ち向かう試練を──」

そして遊海はこれから起こりうる事件を一馬へと語ったのだった…。

 

 

 

………

 

 

 

『ハハハ…本当にあの時は驚いたさ!まさか、友人が伝説の決闘者で不死身で未来の事を知ってるなんてカミングアウトされたんだから…』

 

「俺なりの『最善の未来』を目指す為には、お前の力を借りなきゃいけなかったからな…あの時は混乱させて悪かった!」

遊海と一馬は昔を懐かしむように笑い合う…。

 

 

 

『これで…貴方の知る未来の通りになったのか?』

 

「ああ、概ねな……だが、死ぬ事になるとは思わなかったなぁ…」

 

『…翠は大変だったんじゃないか?』

 

「ああ…ショックのせいか、しばらく幼児退行しちゃってな…24時間べったりが数日続いたよ…今度、旅行にでも連れて行かなきゃなぁ…というか、大変だったのはお前もだろ?春さんから聞いたぞ?遊馬と3日3晩ずっと話しっぱなしで明里ちゃんも呆れてたってな!」

 

『あれは完全にオレが悪いからなぁ…まぁ、今までの罪滅ぼしと考えれば軽いもんさ』

数年前離れていたにも関わらず、遊海と一馬は昨日あったばかりという様子で話し続けていた…。

 

 

 

『……それで、だ…次は何が起きるんだ?少しは知ってるんだろう?』

 

「ああ、次は……アストラル世界だ」

 

『そうか、アストラル世界はカオスを……それが新たな火種か…』

 

「大丈夫さ、遊馬と仲間達ならな……さて、時間か」

時計を見た遊海は席を立つ…

 

 

『何処に行くんだ?』

 

「決まってるだろ?…遊馬は任せておけ、今回の失態は挽回するよ」

 

『……ああ、頼むよ…遊海』

それは、新たな冒険の始まりを告げる言葉だった。

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

「はぁ…」

 

「……遊馬…」

夕暮れの川辺で遊馬は物思いに耽っていた、アストラルが『ヌメロン・コード』を書き換えた事で七皇やカイトそして遊海も蘇り、普段通りの日常が戻ってきた…。

 

ただ1つ、アストラル自身がいない事を除けば…その寂しさから遊馬は小鳥と共に川辺でアストラルの事を考えていた。

 

 

 

キィン─!

 

 

「っ…!?皇の鍵が…!?」

その時、皇の鍵が輝きながら明滅し始める…まるで、何かを遊馬に知らせるように…!

 

 

『遊馬!!』

 

「えっ…!?シャーク!カイト!?みんな!?」

突然の事に戸惑う遊馬に呼び掛ける声…それは凌牙の声だった。

さらに…その場にはカイトにオービタル、璃緒、トロン達アークライト一家、そしてベクターを除く七皇達が勢揃いしていた…!

 

 

『いつまでしょぼくれてやがる!さぁ…行くぞ!』

 

「アストラル世界に…新たな危機が迫っている!」

 

「なんだって…!?アストラルが!?」

それは新たな戦いの兆し…異世界の研究をしていたカイト達はその異変をいち早く感じ取ったのだ…!

 

 

 

……

 

 

 

『…彼の地にカオスの力が集まっています…!』

 

【『ヌメロン・コード』の力により、アストラル世界はカオスを受け入れ、バリアン世界と1つになった…】

 

『ですが…それが、新たな戦いを…!』

アストラル世界は暗雲に包まれ、雷鳴が鳴り響いていた…カオスを受け入れ、バリアン世界と1つになったアストラル世界…だが、そこに新たな戦いが迫っていた…!

 

 

【行くのか?……アストラル】

 

(はい…!)

 

『此方は任せておけ…オレ達、五命星が守りを固めよう』

 

『私も…頑張ります!』

 

(ええ、頼りにさせてもらいます…ラプラス、エメル)

エリファスの言葉に頷き、頼れる決闘者に後を託した青年はカオスの地…バリアン大陸へと飛び立った!

 

 

 

…………

 

 

「いよっしゃああ!!」

 

「えっ、ちょっ…!?と、飛んでる〜!?」

皇の鍵の導きのままに遊馬達は空へと飛び上がる…目指すはアストラルが待つ、アストラル世界!!

 

 

『アイツには…大きな借りがある!』

 

『今こそ、私達の力を合わせる時!』

凌牙と璃緒はアストラルに受けた恩を返す為に…

 

 

「フッ…異世界へ向かう準備はできている!」

 

《かっとビングでアリマス!カイト様!!》

カイトはまだ見ぬ世界への想いを抱き…

 

 

「今こそ、我々が動く時!」

 

「オレのファンサービスをたっぷり見せてやる!」

 

「僕達は遊馬と共に、戦い続ける!ですよね?父様!」

 

『ああ…!我らの絆の力に敵う者はいない!』

アークライト一家は遊馬と家族の絆を胸に…

 

 

 

『蘇った七皇の力!アストラルの為に使おう!!』

 

『真のドラゴン使いのデュエル…味あわせてやろう!』

 

『ヘヘッ…久々に暴れてやるぜぇ!!』

 

『おうよ!熱くなってきたぜ!!』

 

《ポンポーン!》

七皇はバリアン世界を救ってくれたアストラルの為に力を振るう!

 

 

「みんな…!」

 

じゃんじゃじゃ〜ん!良かれと思って、オレ様も力を貸してやるぜぇ?』

 

「あっ!お前〜!?」

仲間達の協力に感動する遊馬の前にベクターが現れる…なお、飛びながら腕枕で寝転んでいる。

 

 

「あら?ベクター…今度は大人しくしててね?」

 

『さぁね?…だが、お前達と暴れるのも悪くはなさそうだ!』

璃緖の問い掛けにおちゃらけて答えるベクター…しかし、その表情に悪意はない…彼は本当に『生まれ変わって』いたからだ…。

 

 

 

「よっしゃ!これで全員揃っ──《キュオオン!!》うわっと!?」

 

「きゃっ!?」

仲間達が揃ったと声を上げようとした遊馬と小鳥の近くを白き流星が通り抜ける!

 

 

「おいおい!俺達を忘れるなって!」

 

「お弁当たくさん作って来たわよ〜!」

 

《フォーウ!!》

 

「遊海!翠さん!!フォウ!」 

閃珖竜の背に乗った遊海と翠が遊馬へと手を振る!

 

 

「今回はあんまり良いトコ無しだったからな!」

 

「遊海さん!あんまり無茶はダメですよ〜!」

 

「よっしゃ!今度こそ、全員揃ったぜ!!」

人間界を救いし勇者達が集結し、アストラル世界を救う冒険へと旅立つ!

 

 

………

 

 

 

(誰の心でも、良い心と悪い心が戦っている…だが、そこから逃げ出さなければ、誰とでも分かり合える…!誰とでも分かり合える日が来るまで……遊馬、私は戦い続ける!これが、私のかっとビングだ!!)

 

遊馬から得た希望を胸に、アストラルは新たな戦いへ向かう…2人の再会は思わぬ程に近いとも知らずに…。

 

 

 

 

…………

 

 

 

「ふふっ…遊馬♪」

 

「ん?」

アストラル世界へ向かう次元の扉を前に…小鳥は遊馬に話しかける。

 

 

「私ね…遊馬のその笑顔…だ〜い好き♡」

 

「えっ…!?えぇ!?!?」

それは小鳥から遊馬への思わぬ告白…さしもの遊馬も火を吹くように赤面する…!

 

「えへっ♪…さぁ、行くんでしょ?1()()()()()()()を取り戻しに!」

無邪気に笑い、遊馬との手をしっかり繋ぎ直した小鳥は遊馬に問い掛ける。

 

「おう!!…待ってろよ!アストラル!!いくぜぇ!みんな!!」

遊馬は勇気の合言葉を仲間達と共に叫ぶ!!

 

 

 

かっとビングだ!!オレ達─!!

 

 

 

 

 

 

これは異なる世界に生きる者達が手を取り合い、新たな未来を掴み取った物語。

 

 

誰の心にも善性があり、誰の心にも悪は潜む…。

 

 

それでも、人は輝く未来へ向かう為に茨の道から光へと手を伸ばす…その先に最善の未来が待つ事を信じて…。

 

 

 

 

 

 

 

第4部 ZEXAL編 完

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

【ふぅ〜…まったく、ヒヤヒヤさせおって…!寿命が縮むわい…】

 

【まぁまぁ、そう言わずに…あの子達も精一杯頑張ったんですから…】

 

【そうじゃのう…まさか『ヌメロン・コード』ではなく、厄災の力を借りて蘇るとは…遊海の『絆』の奇跡じゃなぁ…】

そこは一面の白の世界…遊海達を転生させた神様達の世界、遊海の復活を見て安心した髭を蓄えた神・デウスは額の汗を拭いながら遊海の世界の『管理簿』を閉じた。

 

 

 

【これで…しばらくは遊海達も平和に暮らせるじゃろう、さて…他の世界の様子はと…】

 

【あなた、あまり根を詰め過ぎないようにね?前みたいな事が無いように…】

 

【そうじゃのう…一息いれるとするかのう】

新たな仕事を始めようとするデウス神に妻である金髪美人の女神・アマト神が休憩を取るように伝え、お茶を淹れたのだった…。

 

 

 

【ふぅ…やっぱりお茶は美味しいのう…アストラル世界の1件が片付いたら遊海達とお茶会でもしようかの?】

 

【良い考えですね!久しぶりにのんびりしてもらいましょう!】

穏やかに遊海達について語り合う神様夫婦…その時だった。

 

 

 

『で、デウス神様!!』

 

【おおっ、伝令神ではないか?神対抗のデュエル大会はまだ先のはずじゃが…?】

白の世界に白い衣と羽の生えた靴を履いた神…神々の連絡役・伝令神が転移してくる、その様子は尋常ではない程慌てていた…。

 

 

『大変です!新米の神が、不手際によって自分が管理する「世界」の住人を逃してしまいました!!』

 

【なんじゃと!?】

それは神界において、神によるミスでの『転生者』と同じレベルの大事件…『世界』からの脱走事件の知らせだった…!

 

 

【し、しかし…何故ワシの所………まさか…!?】

 

『はい…!新米神の世界から抜け出した者は…デウス神の世界に…!』

 

 

【なんっ!?そりゃ一大事じゃ!世界のバランスが─!?】

世界とは絶妙なバランスの上で成り立っている…今回の事件はそれを崩しかねない事態……デウス神は慌てて自分の世界を確かめようとし────

 

 

─────!!!

 

 

【ぬっ!?よりによって…!!】

 

 

一冊の管理簿から闇が噴き出した…。

 

 

【伝令神!逃げ出した者の素性は!?】

 

『それが……───』

 

 

 

【…………最悪の、タイミングじゃ…!!】

伝令神から情報を聞いたデウス神は思わず頭を抱えた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─アハハ…アハハハハハハ…!!─

 

 

 

 

To be continued……




Next Fragment…












混沌の戦いを終え、平和な日常を取り戻した白波遊海…だが、アストラル世界の異変を察知した九十九遊馬と仲間達と共に…新たな戦いへ飛び込む──






……はずだった。





「っ…!?なんだ、この闇は…!?」



バリアン大陸を蝕む、『謎の闇』



「アストラル!!」

(遊馬…!来てくれたのか…!)



『……久しぶりだな、遊海』

「…お前は…!!」



再会を果たす決闘者達、そして…







『そんな…!?』

「嘘、だろ…!?」



【ククク…希望など、全て喰ろうてやろう…!】



遊馬と遊海の前に現れる…『最凶の敵』







(いくぞ、遊馬!!)

「ああ!オレ達2人で…かっとビングだ!!」

『バリアン世界を…これ以上好き勝手にはさせねぇ!!』


勇者達は闇を祓い、新たなアストラル世界の未来を照らせるのか…!




劇場版 遊戯王ZEXAL〜アストラル世界の大決戦!〜



近日執筆開始予定…





「限界を超えろ!ZEXAL!!」

『いくぞ!遊馬!アストラル!!』

「ああ…!オレ達の全力のかっとビングを見せてやる!!」


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断章 聖魔融合領域 アストラル世界  
アストラル世界再び!〜変わり始めた世界〜


こんにちは!S,Kです!

ドン・サウザンドとの戦いを乗り越え、平和を手にした遊海は新たな危機が迫るアストラル世界へ遊馬達と共に旅立つ…新たな脅威、その正体とは……!


オリジナルストーリー、スタートです!


九十九遊馬とアストラル、そして仲間達との「絆」により、混沌の邪神ドン・サウザンドの野望は無に帰した…。

 

しかし、戦いはまだ終わらない…全知全能の力『ヌメロン・コード』により融合したアストラル世界とバリアン世界、そこで…新たな戦いが始まろうとしていた…。

 

 

 

………

 

 

 

「これが皇の鍵の飛行船…かっとび遊馬号か!中々カッコいいなぁ!」

 

「へへっ!そうだろ!遊海!まさかオレ達を迎えに来てくれるとは思わなかったぜ!」

 

「遊馬…まずは、その名前からどうにかならねぇか?」

「皇の鍵」の導きのままに異次元への扉へ飛び込んだ遊馬・小鳥・遊海・翠・凌牙・璃緖・アークライト一家、そして元バリアン七皇のメンバー達…そこへ皇の鍵の飛行船が現れ、遊馬達はそれに乗り込んだのだった。

 

 

 

《システム、オールグリーン!アストラル世界への座標設定完了でアリマス!》

 

「よーし!待ってろ!アストラル!!かっとび遊馬号!発進─!!」

 

「「『『おおー!!』』」」

オービタル7やアヤカによって準備が整った遊馬号はアストラル世界へ向けて動き出した!

 

 

 

 

 

「アストラル世界に到着するには少し時間がかかる…それまでに、オレ達が観測した異常について話しておこう」

 

「ああ!頼むぜ!カイト!トロン!」

アストラル世界へ向かう道中、異世界の研究をしているカイト、そしてトロンが遊馬達へ説明を始める。

 

 

 

「まずはこれを見てほしい…融合する前のアストラル世界、そしてバリアン世界の様子だ」

立体プロジェクターに青い銀河・アストラル世界と赤い銀河・バリアン世界のモデルが映し出される…。

 

 

『分かたれていた2つの世界はアストラルが「ヌメロン・コード」を使った事によって融合し、1つの世界になった…だが、そのアストラル世界から異常な数値のエネルギーが観測されたんだ』

トロンの説明と共に青と赤の銀河が重なり、1つの世界となる。

 

 

「……おそらく、バリアン世界に残る過激派がアストラル世界との融合に反対して、力を集めているのだろう」

 

「過激派…?」

トロンの説明を聞いたドルベがおそらくの『原因』を語り始める。

 

 

「バリアン世界にいるのはナッシュ…凌牙の民達のように穏やかな人々だけではない、アストラル世界を憎む者達や人間界からやって来た、ならず者もいる………その大半は、元ベクター軍の者達なのだがな…?」

 

「……悪かったなぁ、余計な火種を蒔いちまってよーー」

 

「ベクター…!!」

 

「2人とも!喧嘩はダメだって〜!」

ドルベの睨みにベクターは視線を逸らす…一触即発の2人を慌てて遊馬が宥めた…。

 

「……とにかく、遊馬の「皇の鍵」が反応を示した事からも、アストラル世界は再び助けを求めている…オレ達はその救援に向かう!」

カイトが説明を終え、一旦場を締めた…。

 

 

 

 

「遊海!」

 

「ん?どうした、遊馬」

アストラル世界が近づく中…弁当を配っていた遊海に遊馬が話しかける。

 

 

「いや…体は大丈夫なのかなって……」

 

「ああ、そういう事か……心配するな!俺は絶好調さ!アストラルが体も魂も治してくれたからな…切り札のNEXUSも使える…元決闘王として、今度は役目を果たすさ!」

 

「そ、そっか…!なら安心だぜ!!」

遊馬は内心、遊海の事を心配していた…無茶苦茶な戦いで1度は命を落とした遊海、再びそんな事にならないかどうか心配だったのだ。

 

 

「……遊馬、アストラル世界に何が待ち受けてるのかは分からない…だが、心配するな!今のお前には仲間がいる!今度はお前1人で背負わなくていいんだ…あんまり力むなよ?」

 

「…ああ!オレ達の絆で、アストラル世界を守るぜ!かっとビングだ!」

 

「その通り、かっとビングだ!」

戦いを前に遊海と遊馬は拳を突き合わせた…。

 

 

 

 

「……あれが、アストラル世界か…」

 

「少し、楽しみですね!遊海さん!」

 

「ああ……大きなトラブルが起きなきゃいいが…」

 

遊海と翠は飛行船の甲板から遠くに見え始めたアストラル世界の光を眺めていた…。

 

 

「ここから先は、俺にとっても()()の物語だ…それに……」

遊海の知る限り、原作においてこの先の戦いは描写されていない…アストラル世界に迫るカオス、そして1人で新たな戦いへ挑むアストラル…断片的に知るのはその程度…そして、遊海には危惧している事があった…。

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「なに…!?ゾークが逃げた!?」

 

『ああ…すまない、遊海…オレ達も気を付けてはいたんだが……』

遊海が復活してしばらく…夢見の中に現れたアテムが最悪の知らせを遊海に伝えていた…。

 

 

『アストラル世界とバリアン世界の戦い…それは冥界や精霊界にも影響を与えたんだ、オレ達がその対応をしている隙を狙い、脱走したらしい…』

 

「マジかよ…!?」

 

破滅の大邪神ゾーク・ネクロファデス…アテムの因縁の相手であり、世界を破壊せんとした邪神…一度は記憶の世界で倒されたものの、ダークシグナー事変の際にイレギュラーのダークシグナー・バクラ=ゾークとして復活…遊海と翠の奮闘によって再び冥界に封印されていたはずなのだ…。

 

 

『幸い、「三邪神」はオレ達が保管している…力を取り戻したお前なら、心配はいらないだろうが……十分に気を付けてくれ…!』

 

「ありがとう、アテム…俺も警戒しておくよ」

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

「今までのイレギュラーの事考えると…出てきそうだな……はぁ……」

 

「どうしたんだよ?父さん、溜息ついてさ」

 

「凌牙か…いや、なんでもない」

溜息をつく遊海の前に凌牙がやって来る…本当の名前は『ナッシュ』なのだが…

 

「今の俺は…生まれ変わった父さんと母さんの子供だから…」

 

…と、いう理由で以前通りに「凌牙」と名乗っている…だだ、トーマスと七皇以外は基本的に『シャーク』呼びなので…そんなに変わっていなかったりする。

 

 

 

「父さん…俺、少し怖いんだ……バリアンのみんなに会うのが…」

 

「…そうか、バリアン世界にはお前の仲間達が……バリアンを裏切った、と思われるのが怖いんだな?」

 

「ああ…」

バリアン七皇は『ヌメロン・コード』の力によって記憶をそのままに「人間」として人間界に転生させた…バリアンの人々から見れば「裏切り」と見られてもおかしくないからだ…。

 

 

 

「…凌牙、心配する事はないさ…バリアンの人々も今回の顛末は知ってるだろう…それに、お前の部下達は十数年も行方不明だったお前を再び『王』として迎え入れてくれた人達だ…きっと分かってくれる」

 

「父さん…」

 

「まっ……お前達に危害を加えようとする奴がいたら…容赦はしないがな…?」

 

「……ほどほどに、してくれよ…?」

 

「まったくもう…」

凌牙の頭を撫でながら…遊海は僅かな闘志を垣間見せた…。

 

 

 

《まもなく、アストラル世界に突入するでアリマス!》

 

「よっしゃ!アストラル!すぐに──」

 

「待て待て…まずはアストラル世界の管理者…エリファスに状況を確認するのが先だろ?アストラルとすれ違いになったらどうする?」

  

「あ、そっか…!?」

 

「まったくもう…焦りすぎよ!」

すぐにアストラルのもとへ向かう事を考える遊馬を遊海が制止する…その様子を見て小鳥は呆れていた。

 

 

「改めて…アストラル世界に突入だ!」

 

 

 

………

 

 

 

『ここが、アストラル世界…!』

 

「綺麗…!」

 

『私達は、こんなに美しい世界を…』

次元の扉を抜けた先に見えたのは美しい青の世界…その光景に遊馬以外の仲間達は目を奪われている…。

 

 

「なんだか前よりも活気があるなぁ…あっ!あの1番デカイ塔がエリファスの王宮なんだ!」

 

《了解です!オービタル!》

 

《面舵一杯でアリマス!》

オービタルは遊馬の誘導に従い、舵を切った…。

 

 

 

「(そして…あれが、バリアン世界……なんだ…?悪寒が…?)」

 

「遊海さん…?」

そして遊海はアストラル世界の海の向こうに見える元バリアン世界を見据える…カオスが集うその場所に遊海は珍しく悪寒を感じた…。

 

 

 

………

 

 

 

【九十九遊馬…お前ならば、来てくれると思っていた】

  

「エリファス!」

王宮方面に舵を向けた飛行船…その後、現れた光のハヤブサから誘導を受けて王宮へと接岸…アストラル世界の神・エリファスの出迎えを受けた。

 

 

【アストラルから話は聞いている、遊馬のもう一人の相棒、観月小鳥…『ヌメロン・コード』の鍵を目覚めさせたドラゴン使い、天城カイト…バリアンの「紋章」の力を使い熟す家族、アークライト一家…そして…ドン・サウザンドの被害者、誇り高き英雄達、七皇……そしてお前が…人間界最強のデュエリスト…もう一人の『ZEXAL』…!】

遊馬と共に現れた仲間達を確かめたエリファスは遊海へと目を向ける。

 

 

「初めてお目にかかる、俺は白波遊海…何処にでもいる決闘者さ」

 

【フッ…何処にでも?お前ほど強く、強靭なデュエリストはそういないだろう】

 

「…流石、父さんだな…エリファスにまったく物怖じしてないぜ…」

遊海とエリファスは握手を交わす…それだけでエリファスは遊海の『強さ』を見抜いたのだった…。

 

 

「エリファス!教えてくれ、アストラル世界で何が起きてるんだ?」

挨拶が終わったのを見た遊馬がエリファスに問い掛ける…。

 

 

【うむ、知っての通り…アストラル世界は「カオス」を受け入れ、ヌメロン・コードの力によって1つの世界へと戻った…だが、バリアン世界…バリアン大陸と呼称しよう、その場所にカオスの力が集結しつつある……おそらく、アストラル世界との融合を拒む者達の仕業だろう…】

 

「やっぱりか…」

 

「凌牙…」

エリファスの語る状況はドルベの危惧した状況そのものだった…凌牙は肩を落とした…。

 

 

 

【アストラルは既にバリアン側との交渉、並びに敵対する者の制圧に向かっている…お前達にも、その交渉に手を貸してほしい】

 

「アストラルが…!」

 

『殲滅…ではなく制圧か、敵対する者でも受け入れる…という事でいいのかい?』

 

【ああ、それがアストラルと遊馬の変えた…新しきアストラル世界のルールだ、私としても無闇な事はしたくないと考えている】

トロンの言葉にエリファスは頷く、以前のエリファスならば問答無用で攻撃を仕掛けただろうが…今の彼は考えを改めた良い統治者へとなっていた…。

 

 

『…発言を許してほしい、バリアン側から攻撃はあったのか?』

 

【小規模な攻撃が幾度か行われている、その際は私と──】

 

『我ら、アストラル世界の五命星が街の防衛を担っている』

 

「…お前は…」

ドルベの問いに答えるようにエリファスの隣に光が集い、モノクルを掛けたアストラル世界人の青年が現れる。

 

 

『久しい……いいえ、はじめましてと言うべきか……私の名はアクル……いえ、ゾーンと名乗りましょうか、白波遊海』

 

「…翠と遊星達から話は聞いていたが……こんな形で会う事になるとは…他の滅四星もか?」

 

『本当に運命とは分からぬものです…死した我々に、こんな未来が待ち受けていようとは…』

遊海はゾーンの登場に静かに驚く…なお、翠と遊馬以外は状況が分からず首を傾げている。

 

 

 

【アクル、どうしたのだ?何か報告でも?】

 

『遊馬達が来るのが見えたもので…それに……()()()()、そこにいるのは分かっています!出てきなさい!』

 

「なにっ…?!」

 

『…馬鹿…!タイミングを測ってるのに声をかけるなよ!?』

ゾーンが壁際に向けて声をかける…すると白髪に白いコートを纏ったアストラル人の青年が姿を現した…!

 

 

『いつまで逃げているのです、貴方にはケジメをつける義務があるのですよ?……ラプラス』

ゾーンが少し呆れたように呟く、次の瞬間──

 

 

 

「てめぇ…!!ラプラァァァス!!!」 

 

 

ゴシャ!!

 

 

『どっはあああ──!?』

 

 

「『「『『えええぇぇぇ!?!?』』」』」

 

「遊海さーん!?」

 

《ドフォーウ!?》

瞬時に右腕に鋼の鎧を纏った遊海はシーカー…否、ラプラスへと肉薄、渾身の力で殴り飛ばした!!

 

…なお、突然の事態に子供達は驚愕の叫びを上げている…。

 

 

 

 

「ラプラスてめぇ!!ここで会ったが100年目だ!!よくも、よくもやってくれやがったなぁ!?」

 

『この…!?いきなり全力で殴り飛ばす馬鹿がいるか!?オレが普通の人間だったら死んでたぞ!?』

 

「何回でもブン殴るぞお前!!アーククレイドルで翠や精霊達を傷つけた事を許した訳じゃねぇぞ!?しかも死に逃げした挙げ句、ダークネスなんかに呑まれやがって!!その後始末で2回は死にかけたわ!!」

 

『言わせておけば…!!お前だって危うく今回の戦いで翠や5D's諸共に全滅寸前だっただろうが!?オレとゾーンが駆けつけるのが少しでも遅かったら、どうなってた事か!人間界は滅亡してたぞ!?』

 

 

「あわわわ!遊海さんもラプラスもやめて〜!?」

 

 

 

「え、え〜っと……?」

 

『こりゃあ…犬猿の仲って奴、か?あの白波があんだけ取り乱して……』

 

「……兄弟喧嘩みたい…」

 

【………アストラルが言っていたのは、こういう事か…】

人目を気にせず掴み合いの喧嘩を繰り広げる遊海とラプラス…普段あまり見せた事のない遊海の姿に子供達は目が点になり、璃緖は兄弟喧嘩のようだと思った…。

 

 

 

《いい加減にせい!この大馬鹿共!!子供達の前だろうが!拳骨岩!》

 

 

ゴッチ〜ン!!

 

「『ぐっはぁ!?』」

 

 

《フォーウ…(特別意訳:大人げないなぁ…)》

最後にはメガロックの怒りの鉄拳(大岩)によって、2人とも仲良く地面に叩きつけられたのだった…。

 

 

 

………

 

 

【落ち着いたか?ラプラス、白波遊海…】

 

「『申し訳ない』」

少し時間が経ち、遊海とラプラスは落ち着きを取り戻す…なお、2人の頭にはタンコブが出来ていた。

 

 

『…遊海、悪かったな……あいつをひとりにしちまったのは、オレの「罪」だ……そのせいで、お前は…』

 

「……その事はいいさ、俺にも責任がある……アーククレイドルの件も含めて許してやるよ」

 

 

「…2人とも、何の話してるんだろう??」

 

「う〜ん…?」

遊海とラプラスの会話を理解できない遊馬達…だが、2人はなんとか仲直りしたらしいと納得した。

 

 

 

 

『ラプラス、連れて来ましたよ』

 

『エナ…すまない、手間をかけた』

 

「あっ…エナ!」

 

『遊馬…アストラル世界を守ってくれてありがとう、貴方とアストラルはこの世界のヒーローです!』

話が一段落した所でラプラスの背後にエナが現れる、遊馬に声を掛けられたエナは笑顔を見せた。

 

 

『さて……()()()、お前も謝るんだ…遊海や遊馬達に大迷惑掛けたんだからな?』

 

「えっ?エメル…?」

聞き覚えのない名前に首を傾げる遊馬…すると、エナの背後から薄紫色の髪をもつアストラル人の少女が顔を出す。

 

 

「…ラプラス、もしかして…その子は…!?」

 

『アストラルがバリアン世界からアストラル世界に転生させてくれたんだ……ネームレスを…』

 

 

「「「「「『えっ!?ネームレス!?!?』」」」」」

 

ラプラスの言葉を聞いた瞬間、遺跡巡りチームとベクターが驚愕の叫びを上げる…彼らの中でネームレスはボロボロの黒いローブを纏う『怪人』というイメージだった…だが、目の前の少女は…可憐で美しく…そのイメージとイコールにならなかったのだ…。

 

 

『……遊海さん、翠………ごめんなさい…私のせいで、大変な事に…』

 

「……エメル…」

 

『…怪物になってからの記憶も、()の事も…全部覚えてる……オレは、こいつと一緒に『罪』を償っていく…だから、許してやってくれ…!』

申し訳なさそうに遊海と翠に頭を下げるエメル…その隣でラプラスも頭を下げている…。

 

 

「……エメル、繋ぎ直した手…今度は絶対に離しちゃダメよ…?」

 

『翠…』

2人の前に出た翠がラプラスとエメルの手を繋ぐ…その顔は優しく笑っていた…。

 

「私は2人を許します…遊海さんも、それでいいよね?」

 

「ああ……ラプラス、こっちで頑張れよ?」

 

『遊海……ああ、オレは…この世界を守り続ける!!』

翠の言葉に頷いた遊海はラプラスと拳を突き合わせる…長き4人の因縁は精算された…。

 

 

 

 

 

 

【2人の話が纏まったところで……遊馬、バリアン大陸の交渉…頼めるか?】

 

「もちろんだぜ!それがアストラルの力になるのなら!!」

エリファスの言葉に遊馬は強く頷く!

 

 

『なら…私とクリスはアストラル大陸側に残ろう、アストラルがバリアン大陸へ向かった事で何か動きを見せるかもしれない…護りは多い方がいい』

 

「七皇は全員行くぜ…バリアン世界は俺達の世界だ、俺達の話なら聞いてくれるかもしれねぇ…」

 

「わかった!それじゃあ…バリアン大陸へ、出発だぁ!!」

トロンとVはアストラル大陸へと残る事を決め…その他は再び飛行船へと乗り込む!

 

 

『……遊海!』

 

「どうした、ラプラス」

飛行船へ向かう遊海の背中にラプラスが声をかける…。

 

 

『……今のバリアン大陸からは()()()()がする…気をつけろ』

 

「わかってる…お前も気をつけろよ、()()が起きるかもしれない」

それは転生者の直感…一抹の不安を感じながら、遊海は飛行船に乗り込んだ…。

 

 

 

 

 

 

「アストラル…待ってろよ、遊馬と俺達がすぐに行くからな…!」

バリアン大陸へと針路を取る飛行船の中で遊海は気を引き締める…その時。

 

 

 

ズキン!!

 

 

「っぐ!?」

 

《マスター?!》

 

「遊海さん!?」

突然、遊海を凄まじい頭痛が襲う…遊海は思わず体勢を崩し──

 

 

 

 

 

──気を……ゆ………神………希……じゃ…………e…………にげ………!!──

 

 

 

「(神、さま…!?)」

それは頭に響くようなノイズ混じりの声……僅かな特徴から遊海はデウス神の声である事には気付いたが……その意味は分からなかった…。

 

 

「父さん!?大丈夫か!?」

 

「お父さん…!」

 

「凌牙、璃緖……大丈夫…大丈夫だ…!」

冷や汗をびっしょり流した遊海は汗を拭う…遊海の本能は警鐘を鳴らし続けていた…。

 

 

「いったい、何が起きようとしてる…!?」

遊海は暗雲が渦巻くバリアン大陸を睨んだ…。

 




キャラクターマテリアル

●エメル

見た目 薄紫色の髪 白いワンピースを着たアストラル人


ZEXAL本編の事件解決後、アストラル世界に現れた少女。

…その正体は、怪人・ネームレス……未来世界のシラナミミドリの転生体、ヌメロン・コードを通じてラプラスとネームレスの関係を知ったアストラルが彼女をバリアンからアストラル世界へと転生させた。

生前の記憶と怪物になってからの記憶を両方覚えており、アストラル世界に転生してラプラスと改めて再会してからはしばらく情緒不安定の状態だった。


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世界を覆う闇〜凶気侵食〜

こんにちは!S,Kです!

エリファスからバリアン大陸の状況を聞いて、アストラルを追う遊馬達…。

だが…遊海は言いしれぬ不安を感じていた…。


『バリアン世界…!良かった、アストラル世界と融合はしたが……そこまで大きく変わってはいないようだ』

 

『いつも通りのバリアン世界だな…いや、大陸か……灼熱の「悪意の海」は無くなったらしいが…』

飛行船で進む事しばらく…遊馬達はバリアン大陸上空へと差し掛かる、七皇達は変わらない様子のバリアン大陸の様子を見て安堵していた…。

 

 

 

 

「とにかく、まずは情報収集が必要だな…ミザエル、人々の住む町などはあるのか?」

 

『ああ、我ら七皇の城……王城の城下町がある、そこで情報を集めよう、目印は正面に見える岩山のような城だ』

 

「わかった!」

遊馬一行は七皇の城の城下町を目指して進み始めた…。

 

 

 

『僅か1ヶ月くらいの事だが…やっぱり懐かしいな!』

 

『相変わらず、なんもねぇなぁ…』

 

「アストラル世界とは…また別の意味で綺麗な場所ね!」

 

「水晶の山自体が住居なのか…」

城下町の近くに遊馬号は着陸する、そこに広がっていたのは無数の赤い水晶の山…その1つ1つが住居となっていて、さながらRPGの魔界のような雰囲気である。

七皇のメンバー達は慣れた様子だが…他の者は興味深そうに辺りを見回している…。

 

 

 

「…父さん、大丈夫か…!?殺気が漏れ出してるぞ!?」

 

「っ…すまん、俺の本能が…ずっと危険を知らせてるんだ…!!」

 

《フォーウ…?》

 

「遊海さん…?私は、何も感じないんだけど……」

 

《……サーチ完了…付近には敵意を持つ者、またモンスター・精霊の反応はありません……いったい、何が…?》

 

 

「(なんだ?この感覚は…!?不安感が収まらない…虫の知らせ……いや、『恐怖』か…?ダークネスやネームレス、オレイカルコスの神と戦った俺が、今更何を恐れる…!?)」

飛行船から降りた凌牙が遊海に声を掛ける…遊海は全身から殺気を放ち、周囲を警戒し続けている…だが、翠は何も感じず…アヤカのサーチにも異常は感知されなかった。

 

 

《ユウミにしか感じられない『何か』があるみたいですね……ユウミ、私の精霊アーマーを纏いなさい…今のユウミなら問題ないはずです》

 

「わかった…精霊変身、モード太陽神!!」

フレアの助言に従い、遊海は太陽神の鎧を纏う…暖かな太陽の加護によって僅かに不安感が薄らいだ…。

 

 

「すまん、取り乱した…もう、大丈夫だ」

 

「父さん…」

先程から普段見せない姿を見せる遊海を心配する凌牙…そこへ…。

 

 

 

『我が王!よくぞ…よくぞご無事で!!』

 

『他の七皇の方々もいらっしゃるぞ!!』

 

『おかえりなさい!王様!』

 

「お前達…!」

 

「彼らが…お前の臣下達か…」

凌牙…そして七皇の帰還を知ったバリアン人達が集まってくる、アストラル人は精霊のような雰囲気の者が多かったが…バリアン人は普通の人間のような人々が多かった。

 

 

「…お前の言葉で伝えて来い、凌牙」

 

「……ああ、やってみる」

遊海に背中を押された凌牙が人々の前に歩み出る。

 

 

 

「お前達!聞いてくれ!!我らバリアンは混沌の邪神、ドン・サウザンドの陰謀によってこの世界に招かれてしまった!!そして───」

 

凌牙は王としてバリアンの人々に今までの事を伝える、ドン・サウザンドの暗躍…七皇の生前への干渉…アストラル世界と戦っていた目的、そして…その戦いの顛末…凌牙はそれを自分の言葉で伝えた…。

 

 

 

 

「………以上が、今まで起きていた事だ…我ら七皇は魂を賭けて戦い、敗れ……ヌメロン・コードによって再び人間界に生を受けた……お前達を裏切る形になって、すまない!!」

 

「シャーク…」

凌牙は人々に頭を下げる…そして人々の反応は…。

 

 

『…例え、貴方がただの人間になってしまったとしても、我らが忠誠は我が王に捧げたもの……それは決して揺らぎません!!』

 

『我々の王として、王が選んだ道は間違っておりません…!』

 

「みんな…!」

バリアンの民は七皇の敗北…そして人間としての復活を受け入れた、その程度の事で彼らの忠誠は揺らがなかったのだった…。

 

「へっ…良い部下を持ったじゃねぇか?オウサマ?」

 

「……うるせーんだよ、トーマス…!」

人々の声を聞いた凌牙は涙を溢していた…。

 

 

 

『ナッ…凌牙が落ち着いた所で、こちらの状況を聞きたい!何か変わった事はあったか?』

凌牙に代わり、ドルベが人々に問い掛ける。

 

 

『ドルベ様、旧ベクター軍…並びにならず者達を中心としたアストラル世界との融合反対派が王城へと集まっています!』

 

『やはり、そうか…ベクター、説得はできそうか?』

 

『あん…?…単純な説得は無理だな、なんだかんだ血の気の多い奴が多かったし……デュエルでぶっ飛ばせば従うだろうさ!』

 

「やっぱり、そうなるよな…」

ナッシュ軍の参謀がドルベに状況を伝える…説得はベクター曰く、力押ししかないようだ…。

 

 

『……ただ、ここ数日…反対派の姿を見かけないのです…それと同じくして空が暗雲に覆われはじめて…』

 

『それから、王達が到着する少し前にアストラル世界の使者・アストラルを名乗る者が王城へと向かいました!』

 

「アストラル…!」

 

『とにかく、王城へ行くべきだろうな…アストラルなら問題はねぇと思うがよ…』

そしてさらなる異変を伝える人々、遊馬達は王城へと向かう事を決め──

 

 

 

 

ドオォン!!!

 

 

 

「っ!?なんだ!?」

 

「城が!?」

その時、王城から爆煙が立ち昇った…!

 

 

 

「アストラル…!きっと何かあったんだ!!行こう!!」

 

「あっ…!待って遊馬!!」

 

「あいつは…!!王城へ行くぞ!!」

 

「オービタル!飛行船を守っていろ!」

 

《カシコマリ!!って…また留守番でアリマスか〜!?》

爆発を見た遊馬は城へと駆け出し、小鳥が後を追う…そして仲間達も慌てて走り出した…。

 

 

 

「(嫌な予感が、強まった…!このカード達を使う事になるかもしれない…!)」

走りながら遊海は1つのカードケースを確認した…。

 

 

 

 

………

 

 

 

 

「もうすぐ玉座の間だ!気を引き締めろ!!」

 

「待ってろよ!アストラル──!!」

凌牙の案内で無人の王城を駆ける遊馬達…廊下の先からは戦闘音が聞こえてくる…!

 

 

 

 

■■■■■!!

 

 

(『希望皇ホープ』!ホープ剣スラッシュ!!)

 

《オオオッ!!》

 

「これは…!!」

 

「あ、アストラル!!」

辿り着いた玉座の間…そこにいたのは闇色の『霞』…そして『希望皇ホープ』を従えたアストラルがそれを相手にリアルファイトを繰り広げていた…!!

 

 

 

「アストラル!!大丈夫か!?」

 

(遊馬!みんな…!来てくれたのか!思いのほか、早い再会だな!)

 

「お前が助けを求めてるんなら、来ない訳ないだろ!」

一時的に「闇」を押し返したアストラルに遊馬が叫ぶ…その声を聞いたアストラルの表情はすぐに明るいものになった!

 

 

「っ…!!アストラル!遊馬達に状況を説明しろ!その間は俺が引き受ける!!翠は子供達を頼む!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!」

 

(遊海…!ありがたい!!)

アストラルを守るように大剣を構えた遊海が闇へと飛び出した…!

 

 

 

Sideアストラル

 

 

 

「アストラル…!!」

 

(泣くな、遊馬…再会を喜ぶのは、この状況を解決した後だ…)

遊馬達のもとへ引くアストラル…思わず涙を浮かべるが、アストラルがそれを制する…。

 

 

「アストラル、あの闇はなんだ…!?バリアン世界で、あんなのは見た事ねぇ…!」

 

(シャーク、私も分からない…突然襲いかかって来たんだ)

凌牙に状況を聞かれたアストラルは簡潔に情報を伝える。

 

 

(エリファスからの指令で異常が起きたバリアン大陸に来た…そこで王城にアストラル世界との融合に反対する者達が集まっていると聞いて来たら…城は無人、その代わり…玉座の間にあの闇の何かが現れていたんだ…!)

アストラルが知る情報も僅かな事…アストラルでも「闇」の正体は分からなかった…。

 

 

「とにかく、あれが『敵』で間違いないな…!」

 

『リアルファイトでぶっ飛ばすしかないか…!!』

闇を前に警戒するカイト、そしてアリト…その時だった!

 

 

 

「お前達!避けろ!!」

遊海の怒号が響いた…!

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

()()()()()、コイツだ…!俺の本能が危険を知らせていたのは…!!」

遊海は謎の闇と対峙する…その姿は形容できない、強いて言うならば…闇の瘴気を纏った靄のようなモンスターだった。

そして…遊海の本能は「コイツはヤバい」と訴え続けている!!

 

 

「時間稼ぎなんかじゃない……全力で破壊する!フレア!メガロック!」

 

《キュアアアア!!》

 

《任せろ!!》

短期決戦が最適と考えた遊海はフレアとメガロックを呼び出す!

 

 

「メガロック!」

 

《おおさ!岩石封印!!》

 

■■■■■!?

 

メガロックの足踏みによって闇が岩の檻に封じ込められる!

 

 

「フレア!!」

 

《はい!!我が身は太陽の化身…全てを浄化する神の裁き!!》

 

「束ねるは星の息吹…輝ける魂の奔流!!受けてみろ!!」

フレアは炎の不死鳥と化し、魂の大剣が光を束ねる!!

 

 

絶望祓う希望の剣(デュエル・カリバー・ホープ)!!」

 

《ゴッド・フェニックス!!》

 

 

それは遊海の今出せる最高火力…光の剣と炎の不死鳥が闇を焼き尽くし…───

 

 

 

 

 

 

 

キ……ボ……ウ……!!

 

 

 

《効いてない!?》

 

「っ──!?!」

焼き尽くせない…閃光と炎は闇の瘴気に無効化されてしまう!!

 

 

■■■■──!!

 

 

「まずっ…!!お前達!避けろぉぉ!!」

さらに闇は無数の触手を遊海や遊馬達に解き放った!!

 

 

 

Side Out

 

 

 

(希望皇ホープ!ムーンバリアだ!!)

 

「精霊正装シャドール!影糸縛り!!」

 

「銀河眼の光子竜!破滅のフォトン・ストリーム!!」

 

「ブラック・レイ・ランサー!!」

 

遊海の声に即座に反応できたのはアストラル・翠・カイト・凌牙の4人、月の盾と影糸が触手を弾き…破壊の奔流と槍の演舞が触手を消し飛ばす!

 

 

「俺の仲間に、手を出すな!!デュエルカリバー・オーバーロード!!」

さらに取って返した遊海が過剰魔力を込めた大剣で触手を切り飛ばす!

 

 

「お前達!気をつけろ!この『闇』は何かヤバい!!」

 

「『紋章』の力で抑え込みます!」

 

「やってやる!!」

 

キィン─!!

 

ⅢとⅣが強化・改修されたブレスレットから障壁を開放、闇を押さえ込む!!

 

 

「アストラル!行くぜ!!来い!『FNo.0未来皇ホープ』!!」

 

(ああ!ランクアップエクシーズチェンジ!『No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ』!!)

その隙を狙い、遊馬は赤き未来の皇を…アストラルは限界を超えた希望の化身を呼び出す!!

 

 

(ホープ剣ビヨンド・スラッシュ!!)

 

「かっとビングだ!ホープ剣フューチャー・スラッシュ!!」

希望を超えた光の一閃、そして未来を導く一撃が闇に直撃、大爆発を起こす!!

 

 

「やった…!」

 

「っ…まだよ!気を抜かないで!!」

小鳥が歓声を上げるが…翠が警戒を促す、煙が晴れた先で闇は漂い続けていた…!

 

 

(攻撃が、効いてないのか…!?)

 

「アストラル!遊馬!一旦退くぞ!このまま戦い続けても消耗するだけだ!」

異常な状況を感じた凌牙が撤退を促す…攻撃は効かず、さらに室内では逃げ場が少な過ぎる…!

 

 

■■…キボウ…!!

 

 

「っ…!!お前達!しゃがめ!!」

 

「うわっ!?」

 

『城が!!』

次の瞬間、霞は剣山のような形に変化…無数の闇の針が王城に突き刺さり、崩壊した…。

 

 

………

 

 

《お前達、怪我はないか…!》

 

「イテテ…メガロック!オレ達を守ってくれたのか…!」

 

『すまねぇ、助かった…!』

気付いた時、遊馬達は本来のサイズとなったメガロックに守られていた…広間は完全に崩れ去り、瓦礫が散乱している…。

 

 

「っ…!?父さんは!?」

砂煙の中を凌牙が見渡す…崩壊の直前、遊海は遊馬達から少し離れていた…そして、砂煙が晴れ…。

 

 

 

 

 

 

「っ…ぐっ…!!」

 

 

「遊海!!」

 

「遊海さん!!」

 

《ユウミ!!》

砂煙が晴れた先…そこには闇によって胸を串刺しにされた遊海がいた…遊馬達に伸びた針を壊す事に集中した隙を突かれたのだ…!

 

 

「大、丈夫…!俺は不死だ…この程度の、傷…!!」

蘇生後の遊海は全盛の力を取り戻した…つまり「不死身」も万全に機能している、遊海は突き刺さった針を抜こうとし…。

 

 

 

──ああ、よい「キボウ」を抱いているなぁ?…妾の依代にちょうどよい……!──

 

 

 

 

「な、に…!?まさか、お前は…!!」

 

 

─────!!

 

遊海の身体から膨大な闇が吹き出した…!

 

 

 

「っ…!?があっ…!?ああああっ!!

 

「父さん!?」

 

《マスターの精神に深刻な精神汚染を確認…!?レジストできていません!!》

 

(遊海!!)

 

「く、来るなっ!!こいつは、ドン、サウザン、クラスのッ!!ぐううっ…!?」 

吹き出す闇に必死に抵抗する遊海…だが、特典として持つ『洗脳耐性』も意味を成さず、その身体は闇に覆われていく…!!

 

 

「これ、ヤば…!?…みど、り…!!こレを──!!」

 

「っつ…!?遊海さん!!」

遊海は最後の力を振り絞り、カードケースの1つを翠に投げ渡す!

 

 

「あと、頼むッっ…!りょう、が……ゆうまっ…!ぐあああっ!!?

 

 

「父さん!!」

 

《マスター!!》

凌牙達の悲鳴が響く中…遊海を中心とした闇の大爆発が広間を覆い尽くした…。

 

 

 

 

 

 

 

「今の、爆発は…!」

 

『おい、すげぇ嫌な予感しかしないんだが…!!』

 

『奇遇だな、ベクター…私もだ…!!』

 

《キャウ…!》

闇の爆発に顔を覆う遊馬達…そして広間に禍々しいオーラが広がっていく…!

 

 

 

【……ああ、良い気分だ…この依代は、我と相性が良いらしい…】

そして…闇の中から遊海が姿を現す、しかし…その姿は闇に染まっていた。

 

 

一見すれば、遊海の究極体「NEXUSⅡ」にも見える…だが、その髪は赤黒く染まり、希望の赤コートは邪悪なる黒のコートに変化し…白目は黒く、瞳は妖しく、紅く輝いていた…!

 

 

 

「テメェ…!遊海に何をしやがった!!」

 

【ん…?ククク……そうか、()()()()()()アストラル世界があるのか…面白い…!】

遊馬が遊海を乗っ取った何者かに叫ぶ…だが、何者かは遊馬に目もくれず、アストラルを見つめている…!

 

 

(お前は、何者だ…!)

 

【我は絶望…希望を喰らうもの……貴様、美味そうな希望を抱いているなぁ…?我の知るアストラル世界よりも…芳醇な香りだ…!】

 

「………まさか…!」

話が通じているのかいないのか…闇遊海は怪しくアストラルを見つめる、そして翠は()()()()()()に思い至っていた…!

 

 

【他にも希望に溢れた魂がゴロゴロと…前菜として纏めて喰ろうてやろう…!】

 

「っ…!?」

闇遊海の身体から闇が溢れ出す…そして溢れ出した闇は4体のローブを纏った人型となり、遊馬達の前に現れる!

 

 

【さぁ…闇のデュエリスト共よ、希望を砕き!我に供物を捧げるのだ!!】

 

 

(遊馬、シャーク、カイト…いけるか!!)

 

「当たり前だ!これ以上遊海を好きにさせてたまるかよ!!」

 

「奴をぶっ倒して、父さんを助ける!」

 

「気をつけろ、奴から感じる圧力はこれまでの敵以上だ!!」

アストラルの言葉と共に、再び三勇士が並び立つ!

 

 

『私達は露払いだ!闇のデュエリストを倒すぞ!!』

 

『ああ!オレ達の世界で、これ以上好き勝手はやらせねぇ!』

ドルベの号令で七皇を始めとした仲間達もデュエルディスクを構える…!

 

 

 

【ククク…ん…?】

 

キィン─!

 

『今度はなんだ!?』

2つの勢力が衝突する刹那、暗雲の中から光球が飛び出し…闇遊海の正面に滞空する…。

 

 

 

──一足遅かったか…!!厄介な状況に…!──

 

 

 

「えっ…カッ…!?(神様!?なんで!?)」

光から聞こえてきた声に思わず口を覆う…光球から聞こえてきた声は、遊海達を転生させたデウス神のものだった…!

 

 

──翠、この声はお主にしか聞こえておらぬ!この場所で戦えば被害が広がり過ぎる!ワシが此奴をドン・サウザンドの城に引き止める、九十九遊馬達を連れて来るのじゃ!!頼んだぞ!!──

 

【おのれ!?貴様ァァァ!!】

 

「遊海!!」

光球…デウス神のアバターは闇遊海に向けて突進、空の彼方へ飛んでいった…!

 

 

 

「あの光球は…!?父さんは何処に!?」

 

「光の玉は味方よ!遊海さん……奴をドン・サウザンドの城に封じ込めるって!誰か、場所は分かる!?」

 

『ドン・サウザンドの城…!?たしか、バリアン世界の聖域の何処かにあると聞いたが…!?』

光球と闇遊海の行方を話した翠は七皇達に問い掛ける…肝心のドン・サウザンドの城の場所が分からなかったのだ…。

 

 

『……城の場所なら、知ってる……ドン・サウザンドとつるんでた時にアジトにしてたぁ!!』

 

『…ナイスよ、ベクター…後は…奴らをどうするかね…!』

投げやり気味にベクターが場所を知っている事を告白する…問題は残された闇のデュエリスト達だった…。

 

 

「遊馬、アストラル、小鳥、凌牙、翠さん…ベクターを連れて後を追え!そうすれば此処にいるのは8人…2対1で奴らを倒す!」

 

「カイト…!」

カイトが闇のデュエリスト達の討伐を引き受ける!

 

「みんな…任せて良いか…!」

 

『当たり前だ、凌牙…遊海は我々にとっても恩人だ…行くんだ!』

 

『凌牙!お父さんをお願い!!』

 

「遊馬!ここは僕達に任せて!」

 

「しゃあねえ…闇だがなんだか知らねぇが、オレのファンサービスの虜にしてやるよ!!」

 

「Ⅲ…Ⅳ…!」

七皇達もアークライト兄弟も役目を引き受ける!

 

 

(話は決まったな…!みんな、これを!!)

 

「これは…!」

 

「ナンバーズか!ありがてぇ!」

アストラルが光を解き放つ…それは翠以外の者の手に収まり実体化…それぞれの持っていた「No.」となった!

 

 

『私達は遺跡のナンバーズか…!ありがたい!』

 

『しまった…召喚できねぇ』

 

《ポン!?》

七皇達は遺跡のナンバーズを受け取ったが…約2名はデッキの関係で冷や汗を流している。

 

 

「……七皇のみんな、これを!!」

 

『母さん!?これって……!』

 

『オーバーハンドレット、ナンバーズ…!?』

 

「えぇっ!?」

 

(………!)

翠は遊海から渡されたカードケースの中身を七皇全員に託す、それはそれぞれのオーバー・ハンドレット・ナンバーズの『ANo.』、そして人数分の『バリアンズ・フォース』『七皇の剣』だった…遊海が万が一の事態に備え、カード庫から取り出しておいたのだ。

……なお、遊海達の事情をある程度知っているアストラルは状況を見守っている。

 

 

「遊海さんが海馬コーポレーションに依頼して複製してもらったカードよ、人間界の力で再現したものだから…特別な力もナンバーズの耐性もないし、効果も変わってる……でも、みんなの力になってくれるはずよ…!」

 

 

『……ちょいと因縁深いカードだが、使わなきゃヤバそうだ…!ありがたく使わせてもらうぜ!』

 

『ありがとう、母さん…父さんをお願い!!』

 

『「銀河眼の時空竜」…今一度、私に力を貸してくれ!!』

七皇達は少し躊躇しながらカードを手にする…元はドン・サウザンドの「呪いのカード」……しかし、彼らはその力を新たな未来の為に使う!

 

 

 

「行け!遊馬!」

 

「みんな…!頼んだぜ!!」

カイトの声に背中を押され、遊馬達は城から飛び出した!

 

 

 

「遊海!待っててくれ…!今助けに行くからな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(遊馬…頼む、俺の意識が…あるうちに…!)」



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深淵の闇

こんにちは!S,Kです!

闇に魅入られてしまった遊海を救う為に急ぐ遊馬達…その時、カイト達は生み出された闇のデュエリスト達と戦いを繰り広げていた…!


「白波さんの事は頼んだぞ、遊馬…!」

謎の闇に取り憑かれてしまった遊海を救うべく駆け出した遊馬達、その背中を見送ったカイト、Ⅲ・Ⅳ、そしてドルベ・璃緖・アリト・ギラグ・ミザエルは4人の闇のデュエリスト達と対峙する!

 

 

 

『カイト、奴らから感じる力はいずれも強い…特に…右の奴だ』

ミザエルが闇のデュエリストを見定め、一際強いオーラを感じ取る…!

 

 

「そうか…ならば、オレ達2人で蹴散らすとするか?」

 

『……フッ、2人のギャラクシーアイズ使いが手を組めば、一瞬でケリがつきそうだな…いいだろう!』

ミザエルはカイトの提案を受ける…此処に最強のドラゴンタッグが誕生した!

 

 

 

 

「なら…いこうぜ!ギラグ!遊馬への借りを返す時だ!」

 

『おうよ!暴れるぜ!!』

 

《ポン!》

アリトと子タヌキを肩に乗せたギラグが拳を突き合わせる!

 

 

 

『トーマス、エスコートしてくれる?』

 

「はっ…どういう風の吹き回しだ?璃緖」

 

『久しぶりに思いっきり暴れたい気分なの…付き合って』

 

「遊海さんがやられて頭にきてるってか…いいぜぇ、やってやる!」

因縁深い璃緖とⅣ…氷結の人形劇が幕を上げる!

 

 

 

 

「という事は……よろしく、ドルベ!」

 

『ああ、あの戦いでのキミ達兄弟のデュエルは素晴らしいものだった…その力を貸してくれ!』

 

「もちろん!」

七皇の白き盾、そして純真のデュエリストが頷きあう!

 

 

 

 

「いくぞ!闇のデュエリスト!デュエルだ!!」

散開したデュエリスト達が闇のデュエリストと対峙する…バリアン大陸を護る為の戦いが始まった!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

闇のデュエリスト LP4000

カイト&ミザエル LP4000

 

 

 

変則タッグデュエル

 

ライフ共有

 

闇→カイト→ミザエル→闇……

 

 

 

 

 

 

 

【私のターン、ドロー】

【フィールド魔法『オレイカルコスの結界』発動、その効果により私のフィールドのモンスターの攻撃力は500アップし、魔法・罠ゾーンを後衛としてモンスターを召喚できる】

 

「なにっ…!?」

フィールドを緑色の不気味な結界が覆い尽くす…!

 

 

【儀式魔法『オレイカルコス・ミラー』を発動、手札のレベル6『タイム・イーター』をリリース、『ミラーナイト・コーリング』を前衛に儀式召喚】

闇のデュエリストのフィールドに鏡の六角柱が現れる! ATK0→500

 

【『ミラーナイトコーリング』の効果発動、『ミラーナイト・トークン』4体を前衛に特殊召喚、トークンは『ミラーナイトコーリング』が存在する限り破壊されず、バトルする時相手モンスターと同じ攻撃力になる】

鏡のように輝く鎧を纏った騎士達が現れる ATK0→500 ×4

 

【そしてライフを500払い、後衛に『オレイカルコス・キュトラー』を特殊召喚】

一つ目の不気味な悪魔が現れる! ATK0→500

 

 

「相手は前衛のモンスターを破壊しなければ、後衛のモンスターに攻撃できない…カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

闇のデュエリスト LP3500

前衛 ミラーナイトコーリング ミラーナイトトークン×4

後衛 キュトラー  

オレイカルコスの結界 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

『なんだ、このモンスター達は…!?』

 

「『オレイカルコス』……聞いた事がある、かつて白波さんや伝説のデュエリスト達が戦った秘密結社…そのメンバーが使っていたカードのはずだ」

 

『もしや、この闇のデュエリスト共は…白波遊海の記憶から再現された『強敵』達か…!?』

カイト達は最悪の可能性に思い至る…召喚された闇のデュエリスト達は過去に遊海が戦った者達ではないのかと…!

 

「…そうであろうと関係ない、あの人が乗り越えられたんだ…オレ達にもやれるはず!先に行くぞ!!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「相手フィールドにのみモンスターが存在する時!手札から『フォトン・スラッシャー』は特殊召喚できる!」

単眼の光の剣士が現れる! ATK2100

 

「さらに!手札の『銀河眼の雲篭(ギャラクシー・アイズ・クラウドラゴン)』を墓地に送り!『銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)』を特殊召喚!」

小柄な機械戦士が現れる! ATK2000

 

 

「さらに特殊召喚した『銀河戦士』の効果発動!デッキから『銀河眼の光子竜』を手札に加える!そしてオレは『フォトン・スラッシャー』と『銀河戦士』をリリース!闇に輝く銀河よ!今こそ怒涛の光となりて我が下僕に宿れ!光の化身、此処に降臨!いでよ!『銀河眼の光子竜』!!」

カイトのエースモンスター、光の竜が咆哮する! ATK3000

 

 

「バトルだ!『光子竜』で『ミラーナイトコーリング』を攻撃!破滅のフォトン・ストリーム!!」

銀河の光を宿した破壊の極光が鏡の柱を粉砕する!

 

【『キュトラー』の効果発動、このモンスターがフィールドに存在する限り、私はダメージを受けない】

一つ目の魔物が全てのダメージを吸収する! 《2500吸収》

 

『厄介な効果を…!』

 

「オレはカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

カイトLP4000

光子竜 伏せ2 手札1

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『まずはミラーナイトを破壊するしかないようだな!自分の場にレベル8のドラゴン族モンスターがいる時!手札の「星間竜パーセク」は特殊召喚できる!』

細身のドラゴンが現れる! ATK800

 

 

『さらに「防覇龍ヘリオスフィア」を召喚!このモンスターは自分のフィールドにレベル8のモンスターが存在する時!レベル8となる!』

堅き翼を持つドラゴンが現れる! ATK0 ☆4→8

 

 

『私はレベル8の「パーセク」「ヘリオスフィア」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!』

 

 

46

 

 

『現れろ!「No.46」!雷鳴よ轟け!稲光よ煌めけ!顕現せよ!我が相棒たる金色の龍!「神影龍ドラッグ・ルーオン」!!』

遺跡のナンバーズの1体、金色の龍が咆哮する! ATK3000

 

 

《ミザエル、お前とまたこうして肩を並べて戦える日が来るとはな…》

 

『フッ…カイトと遊馬のおかげだ…「ドラッグルーオン」は自分フィールドにドラゴン族モンスターが存在する時、攻撃対象にならない!』

ミザエルは語りかけるジンロンの声に応え、肩を並べる!

 

『「ドラッグルーオン」で「ミラーナイト」を攻撃!火炎神撃!!』

 

【『キュトラー』の効果、ダメージは0になる】

神龍の一撃が鏡の騎士を消し飛ばす! 《2500吸収》

 

 

『私はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

ミザエルLP4000

ドラッグルーオン 伏せ2 手札2

 

 

 

 

【私のターン、ドロー】

【フィールド魔法『オレイカルコス・デウテロス』を発動、『オレイカルコスの結界』の上にこのカードを重ねる】

 

『フィールド魔法を重ねるだと?』

魔法陣が二重に展開される!

 

 

【『デウテロス』の効果発動、自分フィールドに存在するモンスター1体につき500ライフ回復する、フィールドのモンスターは4体】

 

闇のデュエリスト LP3500→5500

 

 

【私はこれでターンエンド】

 

闇のデュエリスト LP5500

前衛 ミラーナイト ×3

後衛 キュトラー

オレイカルコスの結界(デウテロス)伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

『攻撃力500のトークンを攻撃表示のまま…何かあるな』

 

「おそらくは『オレイカルコスキュトラー』が相手のキーカード…一気に畳み掛ける!」

相手の狙いを察したカイトは攻勢をかける!

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「自分フィールドに『フォトン』『ギャラクシー』モンスターが存在する時!手札の『銀河騎士(ギャラクシー・ナイト)』は攻撃力を1000下げる事で特殊召喚できる!」

細身の機械騎士が現れる! ATK2800→1800

 

「さらに『銀河魔導師(ギャラクシー・ウィザード)』を召喚!このモンスターは1ターンに1度、自身のレベルを4つ上げる事ができる!」

白いローブを纏う魔法使いが現れる! ATK0 ☆4→8 

 

 

「オレはレベル8の『フォトンドラゴン』『銀河騎士』『銀河の魔導師』の3体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!」

カイトが手にした赤い槍を天空へと投げ放ち、銀河が爆発する!

 

 

逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりて…その姿を現すがいい!!降臨せよ!我が魂!!『超銀河眼の光子龍』!!

カイトの家族の絆を象徴する赤き銀河の龍が咆哮する! ATK4500

 

 

「『超光子龍』の効果発動!フィールド上のモンスター効果を全て無効にする!フォトン・ハウリング!」

銀河の龍の咆哮が全ての効果を封じる!

 

「そして『超光子龍』のさらなる効果発動!ORUを一つ使い、フィールド上全てのORUを全て吸収!その数1つにつき攻撃力が500アップし、攻撃できる!フィールドにあるのは『ドラッグルーオン』の2つ!攻撃力5500の2回攻撃だ!」

ドラッグルーオンのORUを吸収した超光子龍が咆哮する!

 

ドラッグルーオンORU2→0

 

超光子龍 ATK4500→5500

 

 

「バトルだ!『超光子龍』で『ミラーナイトトークン』を攻撃!アルティメット・フォトン──!」

 

【『デウテロス』のさらなる効果発動、『ミラーナイトトークン』1体をリリースする事で攻撃を無効にし、そして攻撃モンスターを破壊する】

 

「なにっ!?」

結界から妖しい魔力が走り、超光子龍が砕け散る!

 

 

「くっ…!オレはこれでターンエンドだ…!」

 

カイトLP4000

伏せ2 手札0

 

 

 

『リカバリーは任せておけ!』

 

「すまぬ…!」

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「半月竜ラディウス」を召喚!』

半月型の腕を持つドラゴンが現れる! ATK1400

 

「さらに罠カード『バースト・ブレス』を発動!ドラゴン族の「ラディウス」をリリースし、その攻撃力以下の守備力を持つ相手モンスターを全て破壊する!吹きとばせ!」

ラディウスが鋭い腕を振り回し、鏡の騎士とキュトラーを破壊する!

 

 

【破壊された『キュトラー』の効果発動、デッキから『オレイカルコス・シュノロス』を後衛に特殊召喚】

 

『「なにっ…!?」』

キュトラーがスパークしながら砕け散る…その残骸の中から巨大な緑色の遮光器土偶型のモンスターが現れる! ATK0→500

 

 

【さらに効果発動、『オレイカルコス・デクシア』『オレイカルコス・アリステロス』を前衛に特殊召喚】

土偶の腕が分離し、前衛に現れる! 

 

 

『チィッ…!次々とモンスターを…!バトルだ!「ドラッグ・ルーオン」で「デクシア」を攻撃!』

 

【罠カード発動『ドレイン・シールド』攻撃を無効にし、その攻撃力分ライフを回復する】

障壁が攻撃を受け止める!

 

闇のデュエリストLP5500→8500

 

 

『くっ…しぶとい…!私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

ミザエル LP4000

ドラッグルーオン 伏せ2 手札0

 

 

 

【私のターン、ドロー】

【フィールド魔法『オレイカルコス・トリトス』を発動、このカードを『デウテロス』の上に重ねる】

 

「っ…三重の結界…!」

カイト達を囲む魔法陣が三重となり、重圧がのしかかる!

 

 

【『デウテロス』の効果発動、ライフを1500回復する】

 

闇のデュエリスト LP8500→10000

 

 

【さらに魔法カード『双弓のケンタウロス』を発動】

フィールドに首の無い、背中合わせになった2体のケンタウロスの石像が出現する。

 

 

【効果発動、このターンのバトルを放棄し、2分の1の確率で自分または相手モンスター1体を除外し、その攻撃力分のダメージを与える】

 

『なにっ…!』

ケンタウロスの像が弓の弦を引き絞り、放つ…その矢は…ドラッグルーオンへ向かう!

 

 

『すまない…!!カウンター罠「ダメージ・リバウンド」を発動!効果ダメージが発生する時!そのダメージを無効にし、相手のカード1枚をデッキに戻す!私は『オレイカルコスシュノロス』を─!』

 

【『トリトス』の効果により私の場のモンスターは相手の魔法・罠カードの効果を受けず、『オレイカルコスの結界』はカード効果では破壊されず、デッキ・手札に戻らない】

 

『っ…「双弓のケンタウロス」をデッキに戻す!』

ドラッグルーオンが矢に貫かれ消滅、しかし石像も消え去った!

 

 

【私はこれでターンエンド】

 

闇のデュエリスト LP10000

前衛 デクシア アリステロス

後衛 シュノロス

オレイカルコスの結界(デウテロス・トリトス) 手札1

 

 

 

『なんだ、このデッキは…!?』

 

「あまりにも異質…そして、堅すぎる…!」

オレイカルコスデッキに翻弄されるカイトとミザエル…彼らは知る由もない、このデッキはアテムと海馬…当代最強の決闘者をライフ0()まで追い込んだデッキなのだから…!

 

 

「だが、立ち止まる訳にはいかない!!いくぞ!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「装備魔法『銀河再誕(リ・ギャラクシー)』を発動!墓地の『銀河眼の光子竜』の攻撃力を半分にして特殊召喚し、このカードを装備する!」

青き銀河のドラゴンが復活する! ATK3000→1500

 

 

「そして『銀河再誕』はレベル8のエクシーズ素材にできる!オレはレベル8の『光子竜』と『銀河再誕』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

光子竜が光となって銀河へと飛び込み、カイトは手元に現れた聖剣を地面に突き刺す!

 

 

62

 

 

現れろ!銀河究極竜『No.62』!今こそ真実の扉を開き、現れよ!『銀河眼の光子竜皇』!!

カイトの切り札、新たな未来を切り開いた光の竜皇が現れる! ATK4000

 

 

「『光子竜皇』が存在する限り、エクシーズモンスター以外のモンスターはそのレベルと同じ数値のランクを得る!さらに1ターンに1度、フィールドのモンスター全てのランクを1つ上げる!」

 

シュノロス☆10★10→11

 

デクシア☆4★4→5

 

アリステロス☆4★4→5

 

光子竜皇★8→9

 

 

「バトルだ!『光子竜皇』で『デクシア』を攻撃!さらにこの瞬間に効果発動!『光子竜皇』の攻撃力はフィールドのランクの合計×200アップする!ランクの合計は30、よって6000アップだ!」

光子竜皇が光を吸収する!

 

 光子竜皇ATK4000→10000

 

 

「エタニティ・フォトン・ストリーム!!」

 

【『アリステロス』の効果発動、相手モンスターが攻撃してきた時、その攻撃対象を自身に変更する、そしてこのモンスターの攻撃力は相手の攻撃力に300を足した攻撃力になる】

 

「なんだと!?っああああ…!!」

アリステロスがエネルギーを充填…放たれた光線が光子竜皇を吹き飛ばした!

 

アリステロスATK500→10300

 

カイトLP4000→3700

 

 

【バトル終了後、「シュノロス」の攻撃力は「アリステロス」「デクシア」が戦闘を行った相手モンスターの攻撃力分ダウンする】

 

シュノロス ATK500→0

 

「くっ…ナンバーズは、ナンバーズとの戦闘でなければ、破壊されない…ターンエンドだ…!」

 

カイト LP3700

光子竜皇 伏せ2 手札0

 

 

 

『「光子竜皇」の攻撃を返して来るとは…!!』

 

「他の奴らなら、不味かったかもしれないな…!」

現れたシュノロス、そしてアリステロスの効果にカイト達は戦慄する…!

 

 

『私のターン!ドロー!』

『くっ…私はこれでターンエンドだ…!』

 

ミザエルLP3700

伏せ2 手札1

 

 

 

【私のターン、ドロー】

【魔法カード『サンダー・クラッシュ』を発動、自分フィールドの全てのモンスターを破壊し、相手に1体につき300ダメージを与える】

 

『なにっ…!?ぐうっ…!!』

稲妻がシュノロス達を破壊し、カイト達にダメージを与える!

 

 

カイト&ミザエル LP3700→2800

 

「自分のモンスターを破壊して、いったい何を…!?」

 

 

【攻撃力0の『シュノロス』が破壊された時、私のライフ10000以上を全て払い、さらに手札を全て捨て…デッキから『蛇神ゲー』を特殊召喚】

 

『なにっ…!!』

砕け散ったシュノロスの破片から闇が吹き出す、その闇は闇の空間の扉を開き…途轍もなく巨大な蛇を現世へと呼び出した…! 攻撃力∞

 

闇のデュエリストLP10000→0

 

 

 

『「攻撃力∞だと!?」』

それは規格外の数値…ドン・サウザンドの呼び出した「夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア」ですら攻撃力10万という「数値」があった…だが、蛇神はその数値すら存在しない…!

 

 

【『ゲー』は相手の効果の対象にはならない、私はライフが0になってもこのモンスターが存在する限り敗北にならない…バトル、私はデッキトップ10枚を墓地に送り『光子竜皇』を攻撃】

 

「させるか!罠カード発動!『和睦の使者』!このターンオレ達の受けるダメージは0になる!ぐああああっ!!」

 

『うわああああ!!』

カイトの罠が闇の中から飛び出した炎からカイト達を守る…だが、あまりにも強力な攻撃がカイトとミザエルを吹き飛ばした!

 

 

【私はこれでターンエンド】

 

闇のデュエリスト LP0

邪神ゲー オレイカルコスの結界(デウテロス・トリトス) 手札0

 

 

 

 

『ぐうっ…攻撃力、無限大…!?そんなもの、どうやって倒せば…!』

 

「効果の対象にならず、さらに『トリトス』で魔法・罠の効果も効かない…理不尽にも程がある…!過去のデュエリストはどうやって、この怪物を打ち倒した…!?」

カイトとミザエルはなんとか立ち上がりながら蛇神を睨む…!

 

「だが、弱音を吐いている時ではない…!!こんな所で負けていては、遊馬に笑われる!!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「(『クリフォトン』…これで一撃は耐えられるが…打つ手がない…!!)オレはこれで、ターンエンドだ…!」

 

カイトLP2800

光子竜皇 伏せ1 手札1

 

 

 

『……そうか、その方法があった…!』

ミザエルは勝利の方程式を思い付く…それはデッキに眠る1枚のカード、それを引く事ができれば…勝利へと手が届く…!

 

 

『(だが、今の私にできるのか?その一枚を引く事が……いいや、引くのだ…!この絶望を希望に変える為に!!)』

 

 

 

『私のターン…ドロー!!』

全てを懸けカードをドローするミザエル…その願いは───

 

 

『私が引いたのは…「RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)」!!』

 

「そうか!!」

ミザエルは確かに、希望の一枚を引き当てた!

 

 

『ドローフェイズに通常のドローで引いたこのカードを公開し続ける事で効果発動!エクストラデッキ・墓地からオーバーハンドレットナンバーズを特殊召喚する!』

 

 

107

 

 

『現われろ!『ANo.107』!『銀河眼の時空竜』!!』

ミザエルのエース…失われし時を司る黒竜が現れる! ATK3000

 

 

『そしてそのモンスターを素材として!カオスオーバーハンドレットナンバーズをエクストラデッキからエクシーズ召喚扱いで特殊召喚する!カオスエクシーズチェンジ!!』

 

 

107

 

 

『顕現せよ!「ACNo.107」!逆巻く銀河を貫いて…時の生ずる前より蘇れ!永遠を超える龍の星!!「超銀河眼の時空龍」!!』

闇の爆発と共に黄金の三つの首を持つドラゴン…時空を支配する龍王が顕現する! ATK4500

 

 

 

『「超時空龍」の効果発動!ORUを一つ使い、このカード以外全てのフィールド上のカード効果を無効にする!タイム・タイラント!!』

全ての時間が逆行…オレイカルコスの結界が効力を失い灰色になる、そして…!

 

 

『これにより「蛇神ゲー」の効果、『フィールドに存在する限りライフ0でも敗北しない』効果が消失する!』

 

「時空の狭間に闇よ!消え去れ!!」

 

《■■■■■■─!?》

断末魔と共に闇の扉が収縮し、爆発…大爆発と共に闇のデュエリストは吹き飛ばされた…。

 

 

 

闇のデュエリスト LP0

 

 

 

カイト&ミザエル WIN!

 

 

 

 

 

 

『はぁ…はぁ…!やったぞ、カイト…!』

 

「ああ…ギリギリの、勝利だ…!相手が本当の使()()()でなくて、助かったな…!」

 

カイトとミザエルはデュエル終了と共に膝から崩れ落ちた…。



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虚無

こんにちは!S,Kです!

闇のデュエリストと戦う仲間達…アリトとギラグの相手は…?


『いくぜぇ!アリト!』

 

「ああ、こんな奴はさっさと倒して遊馬を追いかけようぜ!!」

 

バリアン一の仲良し武闘派コンビ、アリトとギラグが闇のデュエリストに立ち向かう!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

闇のデュエリスト LP4000

アリト&ギラグ LP4000

 

変則タッグデュエル

 

 

 

 

 

 

【我のターン、ドロー】

【フィールド魔法『ダークネス』を発動…手札から1枚、デッキから4枚のカードをランダムにセットする、このカードは自分では確認できない】

 

「いきなり5枚のカードをセットだぁ!?」

周囲が闇に覆われ、闇のデュエリストの背後に黒い太陽が現れる。

 

 

【『ダークネス・アイ』を召喚】

不気味な目玉だけの悪魔が現れる ATK0

 

 

【我はこれでターンエンド】

 

闇のデュエリスト LP4000

ダークネスアイ 伏せ5枚 ダークネス 手札3

 

 

 

 

「いくぜ、オレのターン!ドロー!」

「『BK-グラスジョー』を召喚!!」

緑色の肌を持つ大柄なボクサーが現れる! ATK2000

 

 

「まずは打ってみなけりゃ始まらねぇ!『グラスジョー』で『ダークネス・アイ』を攻撃!」

 

【永続罠『虚無』発動、この次に発動したカードが永続罠『無限』だった時、その2枚の間にあるカードを発動する…『無限』を発動、さらにその2枚の間に伏せられた3枚の永続罠『ダークネス2』『ダークネス3』『ダークネス1』を発動、最初に発動された『ダークネス2』の効果により『ダークネスアイ』の攻撃力は3000アップする】

 

「なにっ…!?ぐあっ!?」

目玉から放たれたビームがグラスジョーを撃ち抜く!

 

ダークネスアイATK0→3000

 

 

アリト&ギラグ LP4000→3000

 

 

 

「いきなり先制パンチを貰っちまった…!カードを3枚伏せて、ターンエンド!」

 

【フィールド魔法『ダークネス』の効果発動、自分フィールドの表側表示の罠カードをランダムにセットし直す…】

 

アリトLP3000

伏せ3 手札2

 

 

「悪い、ギラグ…!」

 

『気にすんな!こっから巻き返すぜ!』

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『「ファイヤー・ハンド」を召喚!』

燃え盛るマジックハンドがギラグの肩に装着される! ATK1600

 

『そしてフィールドに「ファイヤーハンド」がいる時、『プロミネンス・ハンド』は特殊召喚できる!』

灼熱のマジックハンドが現れる! DEF2000

 

 

【永続罠発動『無限』、そして『虚無』…さらにその間の『ダークネス1』『ダークネス3』…その効果により『ファイヤーハンド』と伏せカード1枚を破壊する】

 

『なにっ…!?』

放たれた稲妻が燃えるマジックハンドとアリトの『エクシーズ・ブロック』を撃ち抜いた!

 

『くっ…!カードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

【『ダークネス』の効果によりカードをランダムにセットする】

 

ギラグLP3000

プロミネンスハンド 伏せ2 手札2

 

 

 

『いったいどうなってやがる?奴の伏せカードはランダムに伏せられているはず…なのに、なんで当たる…!?』

闇のデュエリストのタクティクスに疑問を抱くギラグ…確認できない伏せカードを順番通りに当てるのはほぼ不可能、つまり…なにかタネがあるはずだと…!

 

「……わかったぜ、『ダークネスアイ』だ…!奴が効果を発動する瞬間、奴の眼が動いた!モンスター効果で伏せカードを確認してやがった!!」

 

『なんだと!?』

アリトは高い観察能力と動体視力でカラクリを見抜いた…!

 

「意外とセコい手だが、やりやがる…でも、カラクリが分かれば攻めようもあるぜ…!!」

 

 

 

 

【我のターン、ドロー】

【『ダークネスアイ』の効果によって、我は手札の『ダークネス・ブランブル』をリリースなしで召喚できる】

無数の目玉が枝に生った不気味な木が現れる! ATK2000

 

 

【そして永続罠『虚無』そして『無限』を発動、さらに間に伏せられていた『ダークネス2』『ダークネス1』発動、最初に発動した『ダークネス2』の効果により、相手に2000ダメージを与える】

 

「なにっ!?ぐあああっ…!?」

 

『ぐううっ…!嫌がらせ効果のデパートかよ!!』

放たれた稲妻がアリトとギラグを撃ち抜く!

 

アリト&ギラグ LP3000→1000

 

 

【バトル、『ダークネス・ブランブル』で『プロミネンスハンド』を攻撃】

 

『させるか!罠発動!「デフューズ・ハンド」!自分の場に『ハンド』モンスターが存在する時、相手モンスターの攻撃を無効にし、その攻撃力分のダメージを与える!』

 

【………!】

樹から放たれた無数の光線が闇のデュエリストに反射される!

 

闇のデュエリスト LP4000→2000

 

 

【『ダークネスアイ』を守備表示に変更、ターンエンド…『ダークネス』の効果発動、魔法罠をランダムに伏せる、さらに『ブランブル』の効果発動、自分のライフが4000以下の時、ライフを4000にする】

 

「『はあっ!?』」

ダークネスLP2000→4000

アイ ブランブル 伏せ5 ダークネス 手札3

 

 

 

『効果破壊に攻撃力アップ、そして効果ダメージにライフ回復?ふざけてんのか!?どうやって倒すんだよ!?』

あまりの理不尽さに取り乱すギラグ…だが、アリトは落ち着いていた…!

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「よしっ!魔法カード『選手入場アナウンス』を発動!『BK-ヘッドギア』を手札から特殊召喚!」

ヘッドギアを被ったボクサーが現れる! ATK1000

 

「さらに!手札から『BK-スパー』を召喚!」

パンチミットを構えたボクサーが現れる! ATK1200

 

 

「オレはレベル4の『スパー』『ヘッドギア』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現われろ!『拘束番兵リードブロー』!!」

ガチガチに拘束された戦士が現れる! ATK2200

 

 

「バトルだ!『リードブロー』で『ブランブル』を攻撃!!」

 

『待てアリト!そんな事したら!』

 

【永続罠『虚無』発動、『無限』発動…さらにその間に伏せられた『ダークネス2』『ダークネス3』を発動、『ダークネス2』の効果により攻撃力2000アップ…】

 

「この瞬間を待ってたぜ!!カウンター罠『アクセル・フットワーク』発動!バトルフェイズ中に罠カードが発動した時!その効果を無効にし、破壊する!オレお得意のカウンターだぁぁ!!」

 

『よ、よっしゃあああ!!』

アリトの得意技、カウンター殺法が炸裂…邪悪な樹を殴り飛ばす!

 

闇のデュエリスト LP4000→3800

 

 

 

【「ダークネス」の効果、自分の魔法・罠が破壊された時、自分フィールド全ての魔法・罠が破壊される】

 

「っし!あれだけ強力な効果だ、デメリットがあると思ったぜ!」

そして『ダークネス』のデメリット効果が発動、フィールドはダークネスアイのみとなった!

 

 

「オレはこれでターンエンド!頼んだぜ、ギラグ!」

 

アリトLP1000

リードブロー 伏せ1 手札0

 

 

 

『おうよ!!俺のターン!ドロー!』

『「アイス・ハンド」を召喚!』

氷結するマジックハンドが現れる! ATK1400

 

 

『俺はレベル4の「アイスハンド」「プロミネンスハンド」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!』

 

 

106

 

 

『現われろ!「ANo.106」!「巨岩掌ジャイアント・ハンド」!!』

全てを握り潰す巨腕が現れる! ATK2000

 

 

『バトルだ!「ジャイアントハンド」で「ダークネスアイ」を粉砕!』

巨腕の回転突進がダークネスアイを粉砕する!

 

『俺はこれでターンエンドだ!』

 

ギラグLP1000

ジャイアントハンド 伏せ1 手札2

 

 

 

『七皇の武闘派、舐めんじゃねぇぜ!!』

 

【…………】

 

『なんか言えやぁ!!』

ギラグの挑発に闇のデュエリストは反応を見せなかった…。

 

 

 

【我のターン、ドロー】

【『ダークネス・ネクロスライム』を召喚】

不定形の黒いスライムが現れる! ATK0

 

【このカードを墓地に送り、墓地の『ダークネスブランブル』を特殊召喚】

ネクロスライムが墓地から目玉の樹を蘇らせる…! ATK2000

 

【我はターンエンド、『ブランブル』の効果でライフは4000になる】

闇のデュエリスト LP3800→4000

ブランブル 手札3

 

 

 

「畳み掛けるぜ!ドロー!」

「バトルだ!『リードブロー』で『ブランブル』を攻撃!」

 

【手札の『ダークネス・レインクロー』の効果発動、相手が攻撃してきた時、手札のこのカードと『ブランブル』を墓地に送り、『ダークネス・ネオスフィア』を手札から特殊召喚】

 

『なにっ!?』

目玉の樹が消え去り、異形の悪魔が現れる! ATK4000

 

 

「攻撃力4000!?バトルは『アリト!止まるな!!』ギラグ!?」

高攻撃力のモンスターの登場に攻撃を中止しようとするアリト…だが、ギラグがその背中を押す!

 

 

『俺を信じろ!

 

「わかったぁ!『リードブロー』で『ネオスフィア』を攻撃!」

 

『この瞬間、罠発動!「ハンド・パワー」!俺の墓地の「ファイヤーハンド」を除外し、「リードブロー」の攻撃力を倍にする!!いっけ─!!』

巨腕の加護を受けた闘士が異形の悪魔を打ち砕く!!

 

リードブロー ATK2200→4400

 

闇のデュエリスト LP4000→3600

 

 

「っしゃあ!!最後の一撃、派手に決めろ!ギラグ!!」

 

アリトLP1000

リードブロー 伏せ1 手札1

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

「来たぜ…!『RUM-バリアンズ・フォース』発動!『ジャイアントハンド』1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!」

 

 

106

 

 

『現われろ!「ACNo.106」!「溶岩掌ジャイアント・ハンドレッド」!!』

ギラグの切り札、溶岩纏う巨腕が現れる! ATK2600

 

『そして「サンダー・ハンド」を召喚!』

雷光を纏うマジックハンドが現れる! ATK1600

 

 

『バトルだ!2体のモンスターでダイレクトアタック!万死雷鳴紅掌!!』

2体の巨腕が闇のデュエリストを殴り飛ばし、決着をつけた!

 

 

 

闇のデュエリスト LP0

 

 

アリト&ギラグ WIN!

 

 

 

 

 

「ヘッ!派手に決着だぜ!」

 

『おう!久々の大勝利だ!』

 

《ポンポーン!》

拳を突き合わせるアリトとギラグ…その周りを子タヌキが嬉しそうに跳ねていた…。



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煉獄の魔王

こんにちは!S,Kです!

闇のデュエリストと戦う子供達…Ⅳと璃緖が立ち向かうのは…?


「いくわよ!トーマス!」

 

『ああ、悪夢の舞踏会と洒落込もうか!』

 

バリアンの王城で始まった闇のデュエリストとのデュエル…璃緖とⅣがタッグを組み、デュエルを挑む!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

闇のデュエリスト LP4000

 

Ⅳ&璃緖 LP4000

 

 

変則タッグデュエル

 

ライフ共有

 

 

 

 

 

【俺のターン、ドロー】

【魔法カード『名推理』を発動、相手がレベルを宣言し、俺のデッキから通常召喚できるモンスターが出るまでデッキをめくる、そのモンスターが相手の宣言したレベルのモンスターでなければ特殊召喚し、当たっていればそのモンスターを墓地に送る…そしてめくったカードも墓地へ送る】

 

『オレが宣言させてもらうぜ……4だ!!』

 

【デッキをめくる…】

 

 

墓地送り

 

インフェルノイドヴァエル

インフェルノイドルキフグス

モンスターゲート3

左腕の代償

インフェルノイドアスタロス

インフェルノイドベルフェゴル

遡光する煉獄2

インフェルノイドアシュメダイ

インフェルノイド・リリス

殻醒する煉獄

煉獄の死徒2

インフェルノイドベルゼブル

インフェルノイドネヘモス

 

計17枚

 

 

【レベル1、『インフェルノイド・デカトロン』を特殊召喚】

10本の真空管が光る、ボロボロの悪魔が現れる DEF200

 

 

【さらにフィールド魔法『煉獄の氾爛』を発動】

フィールド全体が燃え盛る蒼い炎に覆われる…!

 

【永続魔法『煉獄の消華』を発動、手札の『インフェルノイド・シャイターン』を墓地に送り、デッキから『煉獄の虚夢』を手札に加える、そして永続魔法『煉獄の虚夢』を発動、自分フィールドのレベル2以上の『インフェルノイド』のレベルは全て2になり、相手に与えるダメージは半分になる……さらに墓地の『アスタロス』『ルキフグス』『ヴァエル』を除外し、墓地から『インフェルノイド・リリス』を特殊召喚】

紫の真空管が輝く蛇体の悪魔が現れる! ATK2900 ☆9→2

 

 

「墓地から上級モンスターを特殊召喚ですって…!?」

 

【さらに、墓地の『シャイターン』『ベルゼブル』『アシュメダイ』を除外し、『インフェルノイド・ネヘモス』を墓地から特殊召喚】

虹色の真空管が輝く、赤い翼を持つ巨大な悪魔が現れる! ATK3000 ☆10→2

 

 

【俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド】

 

闇のデュエリストLP4000

ネヘモス リリス デカトロン 虚夢 消華 氾爛 伏せ2 手札0

 

 

『高攻撃力のモンスターが2体ねぇ…だが、煉獄なんて生温い!地獄のファンサービス…味わってもらうぜ!!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『手札の「ギミック・パペット─ハンプティ・ダンプティ」を墓地に送り!「ギミック・パペット─ビスク・ドール」を特殊召喚!』

黒いゴシックドレスを着た愛玩人形が現れる! ATK1000

 

『さらに「ギミック・パペット─ギア・チェンジャー」を召喚!』

黒いレバーとギアを持つ人形が現れる! ATK100

 

 

『「ギア・チェンジャー」の効果発動!自身のレベルを他の「ギミックパペット」と同じレベルにする!オレは「ビスク・ドール」を選択!レベル8にギアアップだ!』

ギアチェンジャーがレバーを操作し、レベルを上昇させる! ☆1→8

 

 

『オレはレベル8の「ギアチェンジャー」と「ビスクドール」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!』

 

 

40

 

 

『現われろ!「No.40」!「ギミック・パペット─ヘブンズ・ストリングス」!!』

破滅の旋律を奏でる地獄の演奏人形が現れる! ATK3000

 

 

『まずはバトルだ!「ヘブンズストリングス」で「リリス」を攻撃!』

 

【墓地の『煉獄の死徒』の効果発動、墓地のこのカードを除外する事で破壊されるインフェルノイドの身代わりとなる】

演奏人形が弦剣でリリスに斬り掛かるが、破壊は免れる!

 

闇のデュエリストLP4000→3900

 

 

『チィッ…なら!「ヘブンズストリングス」の効果発動!ORUを1つ使い!自身以外のフィールドのモンスターにストリング・カウンターを置く!そして次のターンのエンドフェイズにストリングカウンターの乗ったモンスターを全て破壊し、その攻撃力の合計分のダメージを与える!』

 

【速攻魔法『煉獄の死徒』発動、『ネヘモス』はこのターン、相手の効果を受けない】

 

『なにっ…!?』

天から伸びた赤い操り糸が悪魔達に巻き付くが…ネヘモスに巻き付いた糸は蒼炎に焼き尽くされる!

 

 

リリス ストリングカウンター0→1

 

デカトロン ストリングカウンター0→1

 

 

『チィッ…!なかなかやるじゃねぇか…!カードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

ⅣLP4000

ヘブンズストリングス 伏せ1 手札2

 

 

 

「あら?お得意のファンサービスはどうしたの?」

 

『悪いな、相手が1枚上手だったんだよ!』

 

「しょうがないわね…私が凍らせてあげる!」

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「『ブリザード・ファルコン』を召喚!」

凍りついた翼を持つハヤブサが現れる! ATK1500

 

「そして!自分フィールドに鳥獣族・魚族のモンスターが存在する時!手札の『霊水鳥シレーヌ・オルカ』は特殊召喚できる!」

半鳥半魚の精霊が現れる! ATK2200

 

 

「『シレーヌオルカ』の効果発動!自身の効果で特殊召喚に成功した時、3〜5の好きなレベルを宣言する事で自分フィールドのモンスターをそのレベルにする!私はレベル5を選択!」

 

ブリザードファルコン ☆4→5

 

 

「私はレベル5の『シレーヌオルカ』と『ブリザードファルコン』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!」

 

 

94 

 

 

「現れなさい!『No.94』!氷の心を纏いし、霊界の巫女…今こそ、その聡明なる魂を顕せ!『極氷姫クリスタル・ゼロ』!」

全てを凍らせる冷気と共に神を浄化する巫女…璃緖の遺跡のナンバーズが現れる! ATK2200

 

 

「『クリスタルゼロ』の効果発動!ORUを1つ使い!『ネヘモス』の攻撃力を半分にする!クリスタル・イレイザー!」

 

【『リリス』の効果発動、自身以外のモンスター効果が発動した時、フィールドの『デカトロン』をリリースする事でその発動を無効にし、除外する】

 

「なんですって!?」

浄化の祈りを捧げる巫女…だが、リリスの纏う蒼炎がその身を焼き尽くしてしまった…!

 

 

「っ…一筋縄ではいかないみたいね…!カードを2枚伏せて、ターンエンドよ!」

 

『そしてこの瞬間!「ヘブンズストリングス」の効果発動!ストリングカウンターの乗ったモンスターを全て破壊する!2900のダメージだ!』

 

【墓地の『煉獄の死徒』の効果発動、このカードを除外し、破壊される『リリス』の身代わりになる…よって効果は不発となる】

再び破滅の旋律を奏でるヘブンズストリングス…だが、音色が糸から伝わる前に、蒼炎に焼き尽くされる!

 

『くっ…!』

璃緖LP4000

伏せ3 手札1

 

 

 

『強いな…!だが、他の奴らもなんだかヤバそうな奴と戦ってやがる…こりゃ、ハズレを引いたか…?』

 

「当たりハズレは関係ないわ…!こんな奴、早く倒して父さんを追わないと…!」

 

 

 

 

【俺のターン、ドロー】

【スタンバイフェイズに『煉獄の氾爛』の効果発動、『インフェルノイド・トークン』を特殊召喚】

無色の真空管が現れる DEF0

 

 

【魔法カード『大欲な壺』を発動、除外されている『ルキフグス』『シャイターン』『ベルゼブル』をデッキに戻し、1ドロー……さらに『煉獄の虚夢』の効果発動、このカードを墓地へ送り…自分の手札・フィールドから『インフェルノイド』融合モンスターによって決められたモンスターを墓地へ送り、融合召喚を行う…さらに、相手フィールド上にのみ、エクストラデッキから特殊召喚したモンスターが存在する時…デッキのモンスターを6体まで融合素材にできる】

 

「なんですって!?」

それは規格外の10体融合…フィールドに蒼炎が逆巻く!

 

【俺はフィールドの『ネヘモス』『リリス』『インフェルノイド・トークン』そして手札の『ルキフグス』、デッキの『デカトロン』『ベルゼブル』『アスタロス』『アシュメダイ』『アドラメレク』『ベルフェゴル』を融合…『インフェルノイド・ティエラ』を融合召喚】

フィールドに逆巻いた炎の中から右手に「破壊の宝玉」を、左手に「創造の宝玉」を持つ破壊の悪魔…ティエラが降臨する! ATK3400

 

 

『攻撃力3400…!』

 

「大き過ぎる…!!」

『地縛神』並みの巨体で璃緖達を見下ろすティエラ…そしてその権能を発動する!

 

 

【『ティエラ』の融合召喚に成功した時、融合素材としたモンスターの種類によって効果を適用する…3種類以上の時、お互いのエクストラデッキからモンスターを3体選んで墓地へ送る…私のエクストラデッキは0枚】

 

『なにっ…!?』

 

「っ…!」

それは普通のデュエリストにとっての致命の効果…この世界ではエクストラデッキの上限はないが…必要なモンスターしか入れていないデュエリストが多いのだ…!

 

 

 

Ⅳ 墓地送り

 

ギミックパペット─ギガンテスドール

No.15ギミックパペット─ジャイアント・キラー

CNo.15ギミックパペット─シリアル・キラー

 

 

璃緖 墓地送り

 

No.103神葬零嬢ラグナゼロ

零鳥獣シルフィーネ

零鳥姫リオートハルピュイア

 

 

 

【5種類以上の時、お互いのデッキの上から3枚を墓地へ送る】 

 

 

Ⅳ 墓地送り  

 

ギミックパペット─ネクロドール

ギミックボックス

ギミックパペット─死の木馬

 

 

璃緖 墓地送り

 

バリアンズフォース

ブリザードジェット

浮上

 

 

闇のデュエリスト

 

激流葬

ネヘモス

煉獄の氾爛

 

 

【8種類以上の時、お互いに除外されているカードを3枚まで選んで墓地へ戻す】

 

 

璃緖

 

クリスタルゼロ

 

 

闇のデュエリスト

 

煉獄の死徒

煉獄の死徒

ヴァエル

 

 

【10種類以上の時、お互いの手札を全て墓地へ送る】

 

 

Ⅳ墓地送り

 

ギミックパペット─ナイトメア

エクシーズサテライト

ギミックパペット─ネクロドール

 

 

璃緖

 

沈黙の翼

 

 

 

『くっ…なんだ、この効果は…!!』

 

【罠カード『煉獄の狂宴』を発動、フィールドの『煉獄の消華』を墓地に送り、デッキからレベルの合計が8になるように3体のインフェルノイドをデッキから召喚条件を無視して特殊召喚する…現れろ、レベル1『インフェルノイド・シャイターン』レベル3『インフェルノイド・ルキフグス』レベル4『インフェルノイド・アスタロス』】

 

「ここでモンスターの同時召喚!?」

白・黒・青の真空管が輝く、3体の悪魔が現れる! DEF0  ATK1600  ATK1800

 

 

 

【『ルキフグス』の効果発動…1ターンに1度、このカードの攻撃を封じる代わり、相手モンスターを破壊する…『ヘブンズストリングス』を破壊】

 

『っ…!!やらせるかよぉ!墓地の「ビスクドール」の効果発動!このカードを除外する事で、このターンの間、「ギミックパペット」は相手の効果対象にならない!』

黒の真空管の悪魔から放たれた蒼炎が漆黒の人形に襲い掛かるが、ビスクドールの幻影が炎を弾き返す!

 

 

【バトル、『ティエラ』で『ヘブンズストリングス』を攻撃】

 

「くうっ…!!だが、ナンバーズはナンバーズとの戦闘でなければ破壊されない…!!」

蒼炎の洪水がヘブンズストリングスに襲い掛かるが、耐性によって破壊を免れる…!

 

Ⅳ&璃緖LP3900→3500

 

 

【俺は、これでターンエンド】

 

闇のデュエリスト LP3900

ティエラ アスタロス ルキフグス シャイターン 氾爛 手札0

 

 

 

「トーマス、立て直せる…!?」

 

『ヘッ…やるだけ、やってやらぁ!!』

圧倒的不利な状況に追い込まれた璃緖達…だが、彼女達は諦める事なく立ち向かう!

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『来たぜ…!「RUM─アージェント・カオス・フォース」を発動!自分のエクシーズモンスター1体をランクアップし、カオス化させる!オレは「ヘブンズストリングス」1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!』

 

 

40

 

 

『現われろ…!「CNo.40」!人類の叡智の結晶で…悪魔よ、蘇れ!『ギミック・パペット─デビルズ・ストリングス』!!」

闇の爆発と共に堕天せし演奏人形が顕現する! ATK3300

 

 

『多少のダメージは覚悟の上だ…!確実にライフを削る!「デビルズストリングス」で「ルキフグス」を攻撃!』

 

【フィールド魔法「煉獄の氾爛」の効果、相手は自分フィールドで1番レベルの高いインフェルノイドモンスターしか攻撃・効果の対象にできない…よって、攻撃は『ティエラ』に向かう】

 

『なにっ!?』

デビルズストリングスが再び剣で斬り掛かる…だが、その攻撃は蒼炎の洪水に呑まれ、そのままの勢いでⅣ達に襲いかかった!

 

『ぐああっ…!?』

 

「くうっ…!!」

 

ⅣLP3500→3400

 

 

『くそっ…!オレはこれで、ターンエンドだ…!』

 

ⅣLP3400

デビルズストリングス 伏せ2 手札0

 

 

 

『…すまねぇ』

 

「気にしないで…これぐらいの炎、()()()程ではないわ…いくわよ!!」

ダメージを受けてしまったⅣは璃緖に謝る…だが、璃緖は意に介さず、闇のデュエリストに立ち向かう!

 

 

 

「私のターン!ドロー!!」

「父さん…凌牙…私に力を貸して!!私がドローしたのは『RUM-七皇の剣』!ドローしたこのカードを公開し続けて効果発動!墓地の『No.103神葬零嬢ラグナ・ゼロ』を特殊──」

 

【『インフェルノイド・シャイターン』の効果発動、相手ターンに1度、自分フィールドのモンスターをリリースする事で相手の墓地のカード1枚を除外する、『シャイターン』を除外し、『神葬零嬢ラグナゼロ』を除外する】

 

「そんな…!!」

遊海から託された「七皇の剣」はその力を発動する事なく、蒼炎の中に燃え尽きた…。

 

 

「…ターンエンドよ」

璃緖LP3400

伏せ3 手札0

 

 

 

【俺のターン、ドロー】

【スタンバイフェイズに『氾爛』の効果発動、『インフェルノイドトークン』を特殊召喚】

再び無色の真空管が現れる DEF0

 

 

【永続魔法『煉獄の虚夢』を発動、フィールド上のレベル2以上のインフェルノイドモンスターのレベルは2となり、相手に与えるダメージは半分になる…俺はフィールドの『インフェルノイドトークン』と墓地の『シャイターン』『ベルフェゴル』を除外…墓地から『インフェルノイド・リリス』を特殊召喚】

再び紫の蛇体の悪魔が現れる! ATK2900 ☆9→2

 

 

ティエラ☆11→2

 

アスタロス☆4→2

 

ルキフグス☆3→2

 

 

 

【『リリス』の効果発動、特殊召喚に成功した時、フィールドの『煉獄』カード以外の全ての魔法・罠を破壊する】

 

『なんだと!?』

 

「っ…!!罠カード発動!『ダメージ・ダイエット』!このターンの間、私達が受けるダメージは半分になる!」

リリスの翼が凄まじい強風を巻き起こし、全てのカードが蒼炎の嵐に焼き尽くされる!

 

『なら、オレもだ…!フィールドで破壊された『マーシャリング・フィールド』の効果発動!墓地の「RUM-アージェント・カオス・フォース」を手札に加える!』

 

 

【そして『ルキフグス』の効果発動、このターンの攻撃を封じる代わり、『デビルズストリングス』を破壊する】

蒼炎が演奏人形を焼き尽くす…!

 

 

【バトル、『アスタロス』でダイレクトアタック】

 

「『ダメージダイエット』と『煉獄の虚夢』の効果で私達が受けるダメージは、半分の半分になる!くううっ…!!」

蒼炎が璃緖達に襲いかかる…!

 

Ⅳ&璃緖LP3400→2950

 

 

【『リリス』でダイレクトアタック】

 

『ぐおおっ…!!』

蒼炎の竜巻が2人に襲いかかる!

 

Ⅳ&璃緖 LP2950→2225

 

 

【『ティエラ』でダイレクトアタック】

 

「きゃあああ!!」

 

『があああっ…!!』

トドメとして放たれた蒼炎の洪水がⅣと璃緖を容赦なく吹き飛ばした…。

 

Ⅳ&璃緖 LP2225→1375

 

 

【俺はこれでターンエンド】

 

闇のデュエリストLP3900

ティエラ リリス アスタロス ルキフグス 虚夢 氾爛 手札0

 

 

 

「っ…うう…!」

 

『璃緒…!!』

ギリギリで闇のデュエリストの猛攻を凌いだⅣと璃緖…だが、お互いに満身創痍…璃緖は必死に立ち上がろうとしているが、体が言う事を聞いていない…!

 

『(なに、やってんだよ、オレ……また繰り返すのか?また、璃緖を傷付けるのか…!!)』

Ⅳは無意識に頬の十字傷を撫でる、かつてⅣ…トーマスは復讐に囚われた父・トロンの策略で璃緖を傷付けてしまった……蒼炎に包まれたこの場所は、まるであの時の場所のようで…──

 

 

『(こんな所で負けてたら…璃緖をまた守れなかったら………遊海に合わせる顔がねぇ!!)負けて…たまるかぁぁ!!!』

 

「トーマス…!?」

Ⅳは咆哮を上げながら立ち上がる…かつて守れなかったものを守る為に、恩人を闇から救い出す為に…!

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『墓地の「ギミック・パペット─ネクロ・ドール」の効果、発動!墓地の同名モンスターを除外し、このカードを特殊召か…!』

 

【『アスタロス』の効果発動、相手ターンに1度、自身を除外して相手の墓地の『ネクロドール』を除外する】

 

 

『まだだ!魔法カード「貪欲な壺」発動!墓地の「ギミックパペット─死の木馬」「ギミックパペット─ネクロドール」「ギミックパペット─ギアチェンジャー」「ギミックパペットナイトメア」そして「極氷姫クリスタル・ゼロ」をデッキに戻し、2ドロ…』

 

【『ルキフグス』の効果、相手ターンに1度、自身をリリースして相手の墓地の『極氷姫クリスタルゼロ』を除外】

 

『なら「ギミックパペット─ヘブンズストリングス」をデッキに戻す!!これが、オレの運命……いいや、希望のドローだぁぁっ!!』

空中に走るドローの軌跡…その結果は…!

 

 

『………来たぜ、闇野郎…見せてやる!人類の叡智を!!魔法カード「トライアングル・ギミック・ボックス」を発動!墓地のエクシーズモンスター「ジャイアントキラー」「シリアルキラー」「デビルズストリングス」を除外し、エクストラデッキから効果を無効にしたエクシーズモンスターを特殊召喚する!』

 

 

88

 

 

『現われろ!「No.88」!「ギミック・パペット─デステニー・レオ」!!』

ギミックパペットの切り札、堂々たる獅子王が降臨する! ATK3200

 

 

『そして!「RUM─アージェント・カオス・フォース」を発動!オレは「デステニー・レオ」1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!』

 

 

88

 

 

『現われろ!「CNo.88」!吼えろ!!荒ぶる魂よ!全てを滅ぼす怒りを…呼び覚ませ!!「ギミック・パペット─ディザスター・レオ」!!」

大地を揺るがす咆哮を轟かせ…『災厄』の名を背負う破滅の獅子が降臨する! ATK3500

 

 

『これが、オレの全力だ!!「ディザスターレオ」の効果発動!ORUを1つ使い、相手に4000ダメージを与える!!』

 

【『リリス』の効果発動、1ターンに1度、自分以外のモンスターが効果を発動した時、フィールドのモンスターをリリースする事でその発動を無効──】

 

無駄だ!「ディザスターレオ」は相手のモンスター効果を受け付けない!!吹き飛べ!煉獄の破壊神!!マキシマム・カラミティィ!!』

それは全てを破壊する「災厄の咆哮」…破壊の神は断末魔を上げる間もなく、消え去った…。

 

 

 

闇のデュエリスト LP3900→0

 

 

 

Ⅳ&璃緖 WIN!

 

 

 

 

 

『……立てるか?璃緖…』

 

「ええ…肩を貸してくれる?」

 

『……ああ』

デュエルが終わり、Ⅳは璃緖に手を差し出す…璃緖は手を借りて立ち上がる…。

 

 

 

「…ありがとう、トーマス……2()()も助けてくれて…」

 

『……凌牙か?』

 

「ううん……うっすらと覚えてたの、火の海の中…私を必死に救い出してくれた、あの時の事……」

 

『……あの時は、悪かった』

 

「ふふっ…いいのよ、私達も貴方達を傷付けちゃったから……これで()()()よ?だから……もう蒸し返すのはナシね?」

 

『ああ、わかったよ』

 

それは、デュエルの終結と共に…トーマスの背負う『罪』の十字架が軽くなった瞬間だった。

 

 

 

キィン─



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神の抑止力

こんにちは!S,Kです!

闇のデュエリストと戦う子供達…Ⅲとドルベが立ち向かうのは…!


「いくよ、ドルベ!!」

 

『ああ、これ以上…平和を取り戻しつつあるバリアン世界を荒らす事は許さない!!』

Ⅲとドルベ…それぞれに仲間達を支える2人が闇のデュエリストに立ち向かう!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

闇のデュエリスト LP4000

Ⅲ&ドルベ LP4000

 

 

変則タッグデュエル

 

 

 

 

【オレのターン、ドロー】

【永続魔法『冥界の宝札』発動、さらに魔法カード『デビルズ・サンクチュアリ』を3枚発動、『メタル・デビル・トークン』3体を特殊召喚】

 

「いきなり3体のモンスターを…!?」

闇のデュエリストの場に3体の光沢のある悪魔が現れる! ATK 0 0 0

 

 

【オレは3体の『メタルデビルトークン』をリリース、『邪神ドレッド・ルート』をアドバンス召喚】

周囲に禍々しい闇が満ちる…その闇の中から異形の右腕を持つ邪神が顕現する! ATK4000

 

 

『邪神だと…!?』

 

「すごい威圧感だ…!!」

禍々しいオーラを放つ邪神にⅢとドルベは圧倒される…!

 

 

【『冥界の宝札』の効果、2体以上のモンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した事で、カードを2枚ドロー……カードを2枚伏せ、ターンエンド】

 

闇のデュエリスト LP4000

ドレッドルート 伏せ2 手札1

 

 

 

「最初のターンから攻撃力4000…!気を引き締めないと…!!」

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「相手フィールドにカードが存在し、自分のフィールドにモンスターが存在しない時!『先史遺産(オーパーツ)─モアイキャリア』は特殊召喚できる!」

巨大な石像を運ぶ為の輸送機が現れる! ATK900→450

 

 

「っ…!?攻撃力が半分に!?」

 

【『邪神ドレッド・ルート』が存在する限り、自身以外のモンスターの攻撃力・守備力は半分になる】

 

「…なるほどね、なら…!自分のフィールドに先史遺産モンスターがいる時!『先史遺産─モアイ』は守備表示で特殊召喚できる!」

巨大な顔を持つ石像が現れる! DEF1600→800

 

 

「僕はレベル5の『モアイ』と『モアイキャリア』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!」

 

 

33

 

 

「現われろ!『No.33』!『先史遺産─マシュ=マック』!!」

空に浮かぶ巨大都市が現れる! DEF1500→750

 

 

「僕はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

ⅢLP4000

マシュマック 伏せ2 手札2

 

 

 

「ドルベ!」

 

『そういう事か…任せてくれ!』

Ⅲの考えを読み取ったドルベは動き始める!

 

 

 

『私のターン、ドロー!』

『「光天使(ホーリー・ライトニング)ウィングス」を召喚!』

光の翼を持つ天使が現れる! ATK1200→600

 

『「ウィングス」の効果発動!手札の「光天使スケール」を特殊召喚!』

天秤のような姿の天使が現れる! ATK1500→750

 

『さらに「スケール」の効果発動!特殊召喚に成功した時!手札の「光天使ソード」を特殊召喚!』

剣のような天使が現れる! ATK1700→850

 

 

『遊海、貴方に与えられたこのカード…使わせてもらう!!私はレベル4の「ソード」「スケール」「ウィングス」の3体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!』

 

 

102

 

 

『現れよ!「ANo.102」!「光天使グローリアス・ヘイロー」!!』

光を纏いし、天使の騎士が現れる! ATK2500→1250

 

 

『いくぞ!「グローリアス・ヘイロー」の効果発動!1ターンに1度、ORUを1つ使い!「ドレッドルート」の攻撃力を半分にし、効果を無効にする!』

 

「そして『マシュ=マック』はフィールドのモンスターの攻撃力が下がった時!ORUを1つ使ってその数値分のダメージを与える!」

それは即席コンボ…天使の騎士が光の槍を投げ放つ!

 

 

【罠カード『スキル・プリズナー』を『ドレッドルート』を対象に発動、対象のカードを対象としたモンスター効果を無効にする】

 

『っ…!!』

ドレッドルートの前に障壁が展開、光の槍が弾かれる!

 

『くっ…私はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ…!』

 

ドルベLP4000

グローリアスヘイロー 伏せ2 手札1

 

 

 

【オレのターン、ドロー】

【オレは相手フィールドの『マシュ=マック』『グローリアスヘイロー』をリリース、『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』を相手フィールドに特殊召喚】

 

『「なんだって!?」』

2体のナンバーズが溶岩の中に消え去る…その溶岩が巨大な魔物に変化、さらにⅢとドルベは魔物の胸の檻に囚われる! ATK3000→1500

 

 

【『ラヴァ・ゴーレム』を特殊召喚したターン、オレは通常召喚できない…バトル、『ドレッドルート』で『ラヴァゴーレム』を攻撃】

 

「『うわあああっ!!』」

異形の剛腕の一撃が溶岩の魔物を粉砕…Ⅲ達は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる!

 

Ⅲ&ドルベ LP4000→1500

 

 

【オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド】

闇のデュエリスト LP4000

ドレッドルート 冥界の宝札 伏せ2 手札0

 

 

 

『ぐっ…なんという、力だ…!?』

 

「全てのモンスターを畏怖させ、全てを砕く邪神…強敵ですね…!」

吹き飛ばされた2人はなんとか立ち上がる…その闘志はまだ燃えている…!

 

 

 

 

「僕の、ターン!ドロー!」

「よし…!フィールド魔法『古代遺産都市(オーパーツ・シティ)バビロン』を発動!」

フィールドが巨大な空中庭園に変化する!

 

「『古代遺産都市バビロン』の効果発動!墓地のレベル5『モアイキャリア』を除外し、墓地の同じレベルの『モアイ』を特殊召喚!」

再び巨大な石像が現れる! DEF1600→800

 

「さらに!手札から『先史遺産─トゥーラ・ガーディアン』を特殊召喚!このカードは自分がフィールド魔法を発動したターンに特殊召喚できる!」

古代の戦士の石像が現れる! ATK1800→900

 

 

「僕達の新たな力、見せてあげるよ!永続罠『マーシャリング・フィールド』を発動!自分フィールドのレベル5以上のモンスターのレベルを5から9の任意のレベルにできる!僕は『トゥーラガーディアン』『モアイ』のレベルを6にする!」

 

『これは…バリアンの紋章の力か…!』

空中庭園の床に不可思議な紋章が刻まれる!

 

トゥーラ・ガーディアン☆5→6

 

モアイ☆5→6

 

 

「僕はレベル6の『トゥーラガーディアン』『モアイ』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

 

06

 

 

「現われろ!『No.6』!『先史遺産─アトランタル』!!」

大陸の名前を冠する大地の巨人が現れる! ATK2600→1300

 

「『アトランタル』の効果発動!墓地の『マシュ=マック』を装備し、攻撃力をその数値分アップする!」

アトランタルの胸の窪みにマシュ=マックが装填される! ATK1300→3700→2800

 

 

「『アトランタル』の効果発動!ORUを1つ使い!相手のライフを半分にする!」

大地の怒り…火山の噴火が闇のデュエリストのライフを削る!

 

闇のデュエリスト LP4000→2000

 

 

「さらに僕は魔法カード『パレンケの石棺』を発動!フィールドに先史遺産モンスターが存在する時に2ドロー!…カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

ⅢLP1500

アトランタル(マシュマック装備) マーシャリングフィールド バビロン 伏せ2 手札1

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『よし…!私がドローしたのは「RUM-七皇の剣」!通常のドローで引いたこのカードをメインフェイズまで公開し、効果発動!墓地の「グローリアスヘイロー」を特殊召喚し、カオス化させる!カオスエクシーズチェンジ!!』

 

 

102

 

 

『現われろ!「CNo.102」!「光堕天使(アンホーリー・ライトニング)ノーブル・デーモン」!!』

闇の爆発の中から堕天の騎士が現れる! ATK2900→1450

 

 

『いくぞ!「ノーブルデーモン」の効果発動!このモンスターが「グローリアスヘイロー」をORUとしている時!ORUを1つ使い!「ドレッドルート」の攻撃力を0にし、効果を無効にする!』

 

【墓地の『スキルプリズナー』の効果発動、このカードを除外し、自分フィールドのカードを対象とした効果を無効にする】

 

『なにっ!?』

再び現れた障壁が紫電の稲妻を弾き返す!

 

 

『だが、まだだ!「ノーブルデーモン」のORUが全て失われた時!相手に1500ダメージを与える!!』

 

【速攻魔法『痛魂の呪術』発動、相手が効果ダメージを与える効果を発動した時、そのダメージは相手が受ける】

 

「なんだって!?」

堕天の騎士が投げ放った槍が反転、ドルベ達に向かう!!

 

 

『っ…!!罠発動!「デストラクト・ポーション」!自分フィールドのモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを回復する!!ぐああああっ!!』

 

「うわああああっ!!」

ドルベは咄嗟にライフ回復を発動…だが、槍の暴発によって吹き飛ばされる!

 

 

Ⅲ&ドルベ LP1500→2950→1450

 

 

『ぐっ……!強い…!!私はこれで、ターンエンドだ…!』

 

ドルベLP1450

伏せ1 手札1

 

 

【オレのターン、ドロー】

【バトル、『ドレッドルート』で『アトランタル』を攻撃】

 

「させない!罠カード『雷雲の壺(サンダーポット)』!自分の先史遺産モンスターへの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する!」

壺から飛び出した雷雲が剛腕を受け止める!

 

 

【ターンエンド】

 

闇のデュエリストLP2000

ドレッドルート 伏せ1 手札1

 

 

 

『強すぎる…!』

 

「でも、負けられない…!遊馬も、遊海さんも必死に戦ってるはず…!だから、負けちゃダメなんだ!!」

絶望を前にしてもⅢは闇のデュエリストを睨みつける…戦っている友の力となる為に…!

 

 

 

「僕のターン、ドロー!!」

「この一枚に…賭ける!魔法カード『先史遺産技術(オーパーツ・テクノロジー)』を発動!墓地の『モアイ』を除外し、2枚ドロー!そして一枚を墓地に送る!……よし!僕は『先史遺産─ネブラディスク』を墓地へ送る!そして魔法カード『死者蘇生』を発動!墓地の『ネブラディスク』を特殊召喚!」

不可思議な紋様が描かれた円盤が現れる! ATK1800→900

 

「さらに!『先史遺産─ゴールデンシャトル』を召喚!」

黄金のロケットが現れる! ATK1300→650

 

 

「僕はレベル4の『ゴールデンシャトル』と『ネブラディスク』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!」

 

 

36

 

 

「現われろ!『No.36』!『先史遺産─超機関フォーク=ヒューク』!!」

世界最古の都市の力を持つ要塞が現れる! ATK2000→1000

 

 

「『フォーク=ヒューク』の効果発動!ORUを1つ使い!相手フィールドのモンスターの攻撃力を0にする!!」

フォーク=ヒュークの展開した結界が邪神の力を奪い去る!

 

ドレッド・ルート ATK4000→0

 

 

「これで、どうだ!!『アトランタル』で『邪神ドレッド・ルート』を攻撃!!大地の化身よ!邪悪な神を打ち倒せ!ディヴァイン・パニッシュメント─!!」

 

アトランタルが巨大な拳を振るう、その拳は巨大な邪神を穿ち…闇のデュエリストを吹き飛ばした…!

 

 

 

闇のデュエリストLP0

 

 

 

Ⅲ&ドルベ WIN!

 

 

 

 

『はぁ…はぁ…やったな、ミハエル…足を引っ張って、すまない…』

 

「仕方が、ないよ…あいつ、強かったし……倒せて、よかった…!」

肩で息をしながらⅢとドルベは座り込んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「Ⅲ…!大丈夫か…!」

 

「Ⅳ兄様…璃緖…!2人とも、ボロボロだね…」

 

「ああ…マジで、やばい相手だったぜ…」

璃緖に肩を貸しながら、ボロボロのⅣがやってくる…。

 

 

『メラグ、大丈夫か…!?』

 

『貴方こそ…もう、身体中痛くて……母さんから、回復術を習っておくんだったなぁ…』

ドルベはボロボロの璃緖に歩み寄る…だが、その表情は明るかった…。

 

 

『お〜い!大丈夫か!?』

 

『俺達はなんとか勝ったぜ!』

 

『アリト、ギラグ…元気そうで何よりだ…』

続いてやって来たのはアリトとギラグ、足止めメンバーの中でも2人のダメージは比較的軽く済んでいた…。

 

 

「あとは…」

 

「オレ達も、勝ったぞ…」

 

『くっ…危ない、ところだった…!』

 

「カイト!?お前大丈夫か!?」

 

『お前達が1番ボロボロじゃねぇか!?』

最後にやって来たのは満身創痍のカイトとミザエル…攻撃力∞の『蛇神ゲー』と戦った2人が1番ダメージが大きかった…。

 

 

「これくらいは、問題ない…はやく、白波さんを…追わなければ…っ…!」

 

「無理すんな!そんなボロボロじゃ戦える訳ねぇだろ!?休んでろ!」

遊馬達を追おうとするカイトにⅣが思わず声を荒らげ、無理矢理に座らせる…。

 

 

『遊馬達の事は任せろ!オレとギラグで追っかける!』

 

『何かあったらDゲイザーで知らせ──』

 

ドクン!!

 

『「「『っ!?』」」』

比較的ダメージの軽いアリト達が遊馬を追おうとした時、広間に重圧がのしかかる…それは倒れた闇のデュエリストから放たれていた…!

 

 

────!!

 

 

『っ!?なんっ─!?』

 

「これは─!!」

闇のデュエリスト達の肉体が闇となって崩壊…その闇は一瞬、広間を覆い尽くし…天井の穴から何処かへと飛び去って行った…。

 

 

 

 

「っ…からだ、が…おも、く……」

 

「力が、はいらねぇ……」

 

『これは、我らの…体力が、奪われ……』

そして広間にいたメンバーに異変が起きる…闇が消えた直後、全員が体に力が入らなくなり、倒れ込んでしまったのだ…!

 

 

「まさか、最初から…これが、目的…!?」

 

『っ…ナッシュ…すまない…!』

 

「凌牙…父さん…!」

 

「…遊馬、凌牙…あとは、まかせる、ぞ…!!」

意識を失う寸前、カイト達は遊馬達に希望を託した…。

 

 

………

 

 

 

『これは…!?いったいなにがあった!?』

 

『これは…みんな、デュエルエナジーを抜かれてる…!?』

全員が意識を失った直後、2つの閃光が王城に現れる…それはラプラスとエメルだった、バリアン大陸で異様な闇を感じ取り、駆け付けて来たのだ…。

 

 

『エリファス!こちらラプラスだ!子供達が重症で意識を失ってる!応援を寄越してくれ!!』

 

【っ!わかった、すぐに五命星を向かわせる!】

通信でエリファスへ応援を頼んだラプラスは暗雲が渦巻くバリアンの聖域に目を向ける…。

 

 

『いったい、なにがあったんだ…!?』

 

『遊海さん…翠…どうか、無事で…!』

 

ラプラスとエメルは傷だらけの子供達を介抱しながら祈るしかなかった…。



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駆ける勇者達〜光を導く者〜

こんにちは!S,Kです!

仲間達に後を託し、闇に囚われた遊海を追う遊馬達…そこへさらなる『闇』が立ち塞がる…!

それでは、最新話をどうぞ!


「オービタル!アヤカ!急いでくれ!!」

 

《カシコマリ!!まさか、遊海様が闇に呑まれてしまうとは…!》

 

《ベクター!方向はこちらで合っていますね!?》

 

『ああ、あと5分もすれば到着だ…!』

 

「遊海さん…!!」

 

《キュウ…》

カイト達に闇のデュエリストの対処を任せた遊馬・アストラル・小鳥・凌牙・翠・ベクターの6人とフォウ、そして遊海の精霊は飛行船に飛び乗り、ドン・サウザンドの城へと急いでいた…。

 

 

 

(だが、遊海が取り込まれてしまう程の闇……彼の言葉通りなら、ドン・サウザンドと同等の脅威…いったい、何処から現れたんだ…?)

 

『少なくとも、バリアン世界のモンじゃねぇ…詳しくは知らねぇが、何処かの『精霊界』って奴から来たんじゃねぇのか?』

 

《…いいえ、あの『闇』は精霊ではありません…ダークネスやゾークと同じ『邪神』の気配を強く感じました…!》

『闇』の正体を考察するアストラル…ベクターは『精霊』の仲間ではないかと考えたが、フレアが否定する。

遊海を乗っ取った『闇』からは虚無の邪神・ダークネスや大邪神ゾーク・ネクロファデスと同じ…それ以上の邪悪な力を感じたのだ…。

 

 

「(遊海さんの話だと、神様は私達の世界にあまり干渉できないって言ってたはず…なのに、私達の前に現れたって事は……神様達の世界で何かあったの…!?そのせいで遊海さんが…!)」

その中で翠はさらなる異常を感じ取っていた、本来ならあまり世界には干渉しないはずのデウス神…その彼が姿を見せた事から、『何か』が起きたのだと思ったのだ…。

 

 

 

 

 

《ッ…!周囲のエネルギー値が急速上昇!な、何かに掴まるでアリマス!!》

 

 

ズズーン!!

 

 

「どわああっ!?」

 

「いったい何が…!!」

 

《っ…周囲の天候が不安定に…!オービタル!緊急着陸を!これ以上空を行くのは危険です!》

 

《か、カシコマリ!!》

ドン・サウザンドの城に近づく飛行船を大きな揺れが襲う…闇とカオスの力が吹き荒れ、周囲に稲妻が降りそそいでいたのだ…。

アヤカはオービタルに指示を飛ばし、バリアンの聖域に不時着した。

 

 

 

 

「イテテ…みんな、大丈夫か?」

 

「うん、なんとか…」

 

「ベクター、城の方向は…!」

 

『運がよかったぜ…もう目の前だ…!』

 

(あれが、ドン・サウザンドの王宮…!)

不時着した飛行船から脱出したベクターが空を見上げる…そこにあったのは天に突き刺さるように聳え立つ、巨大な紅い水晶の城の姿だった…!

 

 

「あそこに遊海が…!待っててくれよ!!」

遊馬達は城に向かって駆け出した…。

 

 

 

 

 

 

 

「ウィンダ!ウェン!急いで!」

 

《全速力─!》

 

《このお城、無駄に広すぎるよ〜!!》

 

なんとか城に辿り着いた遊馬達…だが、王宮は予想以上に広く、さらにベクターによって玉座の間は地上30階近くの場所にある事が分かった為、ウィンダの「聖霊獣騎キムンファルコス」とウェンの「影霊獣使い─セフィラウェンディ」の力を借り、王宮の階段を飛び続けていた…!

 

 

『玉座まであと半分ぐらいだ!…バリアン体なら、瞬間移動できんだがなぁ…!』

 

「ないモノねだりしても仕方ねぇだろ!」

 

《っ…!!ウィンダ!ウェン!ストップです!!何かがいます!!》

 

《えっ…!?》

アヤカのレーダーが階段の先に敵らしき反応を感じ取る…!

 

 

 

 

【あ〜あ、気付かれちまったか?せっかく不意討ちしてやろうと思ったのによぉ?】

 

「っ…!闇のデュエリスト…!!」

階段の踊り場に闇が集う…そして黒いローブを纏う、闇のデュエリストが現れた…!

 

 

【悪いがよぉ、この先に進ませる訳にはいかねぇなぁ…!】

 

(このデュエリスト…先程の者達とは何か違うぞ…!)

 

「あなた、まさか…!!」

アストラルが闇のデュエリストから異変を感じ取る、王城に現れた『闇のデュエリスト』は闇が強かったが、自我が薄かった…だが、この男は…強い自我を宿していた…。

そして翠は()調()から、その正体に気付いた…!

 

 

 

『……おい、遊馬、アストラル、ナッシュ…ここはオレに任せて、先に行け!』

 

「真月!?」

 

《ドフォーウ!?》

闇のデュエリストを前にベクターが前に出る…!

 

 

『オレの経験から言うと、時間が掛かればかかっただけ、白波はやばい事になる……だから、先に行け!』

 

「任せて良いんだな?ベクター」

 

『へっ…心配すんな、こんな奴はパパッと片付けて追いかけるからよぉ…!さっさと行きやがれ!』

 

「……わかった!任せたぜ!真月!!」

 

「……みんな、しっかり掴まってて!!」

ベクターにこの場を任せた遊馬達は再び飛び上がり、上を目指した!

 

 

 

 

 

【へぇ…お仲間を先に行かせる為に犠牲になるってかぁ?お前、そんな奴には見えねぇけどなぁ…?】

 

『ハッ…テメェからはオレと同じ匂いがしたからなぁ…人の不幸が好きで、全てを壊したいとか思ってるような…()()な奴の匂いが…!』

 

【ふははは!!言うじゃねぇか、三下が…!】

闇のデュエリストがフードを脱ぐ…それは白い髪と褐色の肌を持つ邪悪な目付きの青年だった…!

 

 

【テメェ、()()だろ?策士タイプで真っ向勝負は大の苦手…散々虎の威を借りてきた狐……いや、蝙蝠か?…そんなテメェが俺様に勝てると思ってんのか?】

 

『っ…!』

闇のデュエリストの言葉は当たっていた、ベクターは正面からの戦いは得意ではない…何重にも策を巡らせ、相手を翻弄して勝利する…それがベクターのプレイスタイル……だが、それ以上に目の前の男は『格上』だとベクター自身も分かっていた…。

 

 

【良い提案をしてやるよ…俺様の軍門に降れ、そうすれば…命は助けてやる】

 

『…嫌なこった!オレはもう誰にも従うつもりはない!!』

 

【ほう…?】

闇のデュエリストの提案をベクターは跳ね除ける!

 

 

『オレは確かに味方を裏切り、色んな奴らを苦しめてきた……だがよぉ…そんなオレにも、ようやく()()が出来たんだ……オレは…もう、仲間を裏切らねぇ!!』

それはベクターの…『真月零』の決意…遊馬によって救いを得た男の新たな誇りだった…!

 

 

【そうかい……じゃあ、死ね】

 

『ぐっ…!?』

闇のデュエリストが殺気を解き放つ…それはドン・サウザンドに迫る程のものだった…!

 

 

『(オレ一人じゃ、万に1つも勝ち目がねぇ…!!だが、少しでも時間を稼ぐ…!!それがオレの……!!)』

真月は悲壮な覚悟で闇のデュエリストに向かい合う…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真月零、お前の覚悟…確かに見せてもらったぜ!!」

 

 

 

 

 

 

『っ…!?』

 

【この光は…!!】

真月の前で閃光が弾ける…その光の中か薄茶色のローブを纏った男が姿を現した!

 

 

 

「見つけたぞ、ゾーク!」

 

【テメェ…!!】

 

『アンタは…?』

 

「オレは……()()、ゾークを追ってこの世界にやって来た者だ」

ローブの男を見た闇のデュエリスト…冥界からの脱獄者バクラ=ゾークは憎しみの眼差しを見せる…!

 

 

「奴がこの世界に現れたのはオレ達の不始末だ…奴を倒す為に、力を貸して欲しい」

 

『ああ、願ったり叶ったりだ…!力を貸すぜ、遊戯!!』

光を手にした男、そして光を導く者がタッグを組み…大邪神へと挑む!

 

 

 

 

 

【「『デュエル!!』」】

 

 

 

バクラ=ゾーク LP4000

ベクター&遊戯(仮)LP4000

 

 

変則タッグデュエル

 

 

 

【俺様のターン!ドロー!】

【フィールド魔法『ダーク・サンクチュアリ』発動!】

フィールドが不気味な異形の世界に覆われる!

 

【さらに俺様は永続魔法『暗黒の扉』を発動!お互いのプレイヤーはバトルフェイズにモンスター1体でしか攻撃できなくなる!カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!】

 

バクラLP4000

暗黒の扉  ダークサンクチュアリ 伏せ1 手札3

 

 

 

 

「真月、頼みがある」

 

『なんだ?』

 

「奴とは早めに決着をつけたい、モンスターを3体…頼めるか?」

 

『3体ねぇ…できる限りやってやる!』

 

 

 

『オレのターン、ドロー!』

『幸先が良いぜ!オレがドローしたのは「RUM─七皇の剣」!ドローしたこのカードをメインフェイズまで公開する事で、エクストラデッキからオーバーハンドレットナンバーズを特殊召喚し、さらにカオス化させる!オレは「ANo.104仮面魔踏師シャイニング」でオーバーレイ!カオス・エクシーズチェンジ!!』

 

 

104

 

 

『現われろ!「ACNo.104」!「仮面魔踏師(マスカレード・マジシャン)アンブラル」!』

道化の仮面を被る魔導師が現れる! ATK3000

 

 

『「アンブラル」の効果発動!エクシーズ召喚に成功した時、相手フィールドの魔法・罠を1枚破壊する!「暗黒の扉」を破壊!!』

アンブラルの巨大な鎌が暗黒の扉を両断する!

 

 

『そしてオレは「アンブラル・グール」を召喚!』

闇の瘴気を纏う屍人が現れる! ATK1800

 

『「アンブラル・グール」の効果発動!自分の攻撃力を0にする事で!手札から2体目の「アンブラル・グール」を特殊召喚!』

2体目の屍人が現れる! ATK1800

 

アンブラルグール ATK1800→0

 

 

『そして2体目の「アンブラルグール」の効果発動!自身の攻撃力を0にして、手札から「アンブラル・アンフォーム」を特殊召喚!』

闇を瘴気を纏う単眼の魔物が現れる! DEF0

 

 

『流石に、任せっぱなしな訳にはいかねぇからなぁ!バトルだ!「アンブラル」でプレイヤーにダイレクトアタック!』

 

【ハッ…甘いんだよ!フィールド魔法『ダークサンクチュアリ』の効果発動!相手が攻撃してきた時!コイントスを行ない、表だった時!相手の攻撃してきたモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える!】

 

『なにっ!?』

 

【さぁ、運命のカミサマに祈りなぁ!!】

コインのARビジョンが回転……表を弾き出した!

 

【喰らいやがれ!スピリット・バーン!!】

 

『っおおおっ!?』

無数の死霊の群れが真月達のライフを削る…!

 

真月&遊戯 LP4000→2500

 

 

『っ…しくじった…!カードを2枚伏せ、ターンエン──』

 

【その瞬間!永続罠『ウィジャ盤』を発動!相手のエンドフェイズごとに永続魔法『死のメッセージ』『E』『A』『T』『H』をフィールドに1枚ずつ発動する!そして俺様のフィールドに『DEATH』の5文字が揃った時、俺様はデュエルに勝利する!】

 

『なんだと!?』

バクラの背後に死を示す降霊盤が現れる!

 

 

【さらに!フィールド魔法『ダーク・サンクチュアリ』の効果発動!自分が『ウィジャ盤』の効果で『死のメッセージ』を発動する時!そのカードをレベル1、攻守0の通常モンスターとして特殊召喚する!現われろ!『死のメッセージ─E』!】

バクラのフィールドに『E』の文字が滞空する…! ATK0

 

【そして『死のメッセージ』は攻撃対象にならず、『ウィジャ盤』以外の効果を受けない!!】

 

『つまり、あと4ターンで勝たなきゃ、オレ達の負けって事か!?』

ベクターLP2500

アンブラル グール グール アンフォーム 伏せ2 手札0

 

 

 

『す、すまねぇ…余計な事をしちまった…!!』

 

「気にするな、奴の手の内は知っている…()()()()()で決着をつける!」

 

【やれるなら、やってみやがれ!名もなきファラオ!!】

冷や汗を流すベクターをフォローし…『決闘王』はその全力を開放する!

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「魔法カード『古の呪文』を発動!デッキから『ラーの翼神竜』を手札に加え、このターンオレは通常召喚に加え、アドバンス召喚ができる!」

 

『はっ…!?そのカードは、まさか…!!』

遊戯(仮)の示した1枚にベクターは驚く、それは遊海の切り札の1枚だったからだ…!

 

「そしてオレは魔法カード『手札抹殺』を発動!お互いのプレイヤーは手札を全て捨て、同じ枚数ドローする!」

 

【ちいっ…!】

 

 

 

遊戯(仮) 墓地送り

 

ラーの翼神竜

暗黒騎士ガイア

融合

カースオブドラゴン

魔法の筒

 

 

 

バクラ 墓地送り

 

カースネクロフィア

抹殺の邪悪霊

心変わり

 

 

 

「そしてオレは…真月の場の『アンブラルグール』2体と『アンブラルアンフォーム』を生け贄に捧げ……現われろ!天空の神!『オシリスの天空竜』!!」

 

《ギュアアアン!!》

不気味な空間を突き破るように…赤き龍神が顕現する! ATK0→4000

 

 

【馬鹿な…!?いきなり神を!?】

 

『そういう事かよ…なら、ダメ押しだ!罠カード発動!『罪鍵の法─シン・キー・ロウ』!フィールドのエクシーズモンスター「アンブラル」と同じ攻撃力の「アンブラル・ミラージュ・トークン」3体を特殊召喚!このトークンはダイレクトアタックはできず、アドバンス召喚以外の為にはリリースできない!!』

ベクターの場に小さな水晶の結晶が現れ、小さな魔踏師に変化する! ATK3000 3000 3000

 

 

「ナイスアシストだ!オレはベクターの『アンブラルミラージュトークン』3体を生け贄に…現れよ!大地の神!『オベリスクの巨神兵』!!」

 

《オオオオッ─!!》

大地を砕き、青き大地の神が現れる! ATK4000

 

 

「さらに魔法カード『死者蘇生』を発動!墓地から蘇り、天を舞え!!太陽の神!『ラーの翼神竜』!!」

 

『………マジかよ』

 

《キュアアアアア!!》

フィールドが太陽の光に包まれる…そして、黄金の輝きを放つ不死鳥…ラーの翼神竜が降臨する! ATK0

 

 

【テメェ…ま、まさか!!】

 

「ゾーク、オレとお前との因縁…此処で終わりにしよう…!オレはファラオの名の下に『神』を束ねる!!」

遊戯……否、名もなきファラオ・アテムの宣言と共に、フィールドに降臨せし『三幻神』が光に包まれる!

 

 

『この、光は……あったけえ…』

フィールドに集う暖かな光…それが形を成していく…!

 

 

 

「この『神』はフィールドの『オシリスの天空竜』『オベリスクの巨神兵』『ラーの翼神竜』を生け贄に捧げる事で降臨する…!現われよ!『光の創造神ホルアクティ』─!!」

その姿は光の化身、黄金の輝きを放つ慈愛の女神…闇を祓う大地母神……その名は『ホルアクティ』

 

 

 

─ゾーク、終わりにしましょう…─

 

 

「闇よ…!消え失せよ!!」

 

 

 

光創世(ジェセル)

 

 

 

おのれ、おのれ!!アテム!ホルアクティィ──!!

 

 

 

それは全ての闇を祓う祝福の言葉…全ての闇が光の中に消えていった…。

 

 

 

 

ベクター&アテム 特殊勝利 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゾーク…何故、お前はバリアン世界に来た?何が目的だ?」

 

【はは、は……なんでも、いいだろう…?】

アテムは倒れ伏したバクラ=ゾークに問い掛ける…ゾークはその身を粒子に変えながらも笑っていた…。

 

 

【……アストラル世界とバリアン世界の戦いの隙を突いて逃げ出して、あの()に出会った……アレは良い女だ…希望を踏みにじり、絶望を好む者……】

 

「……女、だと?」

 

【覚えておけ、アテム…我が滅びようと、再び世界に混乱と破滅を齎す者が現れる…!せいぜい、足掻く事だ…!はは、はははは───】

意味深な言葉を呟きながら、大邪神は光の粒子となって消えていった…。

 

 

 

『おい、アンタ…体が…!』

 

「…気にするな、オレは冥界の死者、役目を果たした今…冥界に還るだけだ」

ゾークの消滅を見届けたアテム…その体も空気に解けていく…。

 

 

 

「ベクター……いいや、真月零…お前が手にした『光』…それは決して手放してはならない、その光があれば…お前は再び『闇』に堕ちる事はないだろう」

 

『名もなき、ファラオ…』

アテムは場合によってはベクターも罰するつもりでいた…だが、今の彼が『真月零』として生まれ変わった姿を見て…その思いは消えていた。

 

 

「あとは…遊海、遊馬…お前達が『闇』を倒すんだ……頼んだぜ…!」

時代に選ばれた決闘者に後を託し、アテムは冥界へと戻っていった…。

 

 

 

………

 

 

 

《今の気配……まさか…?》

 

《間もなく玉座の間です!遊馬!凌牙!気を引き締めなさい!》

 

「わかってる!」

 

「父さん…!!」

玉座の間を前にフレアは懐かしい神威を感じ取る…だが、それを頭の隅にやり…玉座へと目を向ける…!

 

 

《(先程の闇のデュエリストの正体はゾーク…奴は誰かに従う事はない……しかし、この先にはゾークを従わせ、ユウミを取り込むほどの何者かがいる…気を付けねば…!)》

 

戦いの時はそこまで迫っていた…!



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英雄反転〜闇を祓う『絆』〜

こんにちは!S,Kです!

遊馬達はついに玉座に辿り着く…遊馬は…凌牙は、翠は…闇に侵された遊海を救う事ができるのか!


それでは…最新話をどうぞ!


《マスターの現在地まであと僅かです…!!》

 

「遊海さんっ…!」

ひたすらにドン・サウザンドの城を登り続ける遊馬達…その追跡が間もなく終わろうとしていた…!

 

 

『っ…!出口だ!』

 

《このまま突っ込むよ!!》

遊馬達は玉座の間にたどり着く…そして、部屋へと飛び込んだ…!

 

 

 

 

 

(ここが、ドン・サウザンドの玉座…!)

 

「空気が、重い…!」

遊馬達が辿り着いたのは紅い水晶に彩られた玉座の間…主である『混沌の邪神』が没した後も、その空間には異様な空気が満ちている…そして、そこに2つの影があった…。

 

 

──ぐっ…!遊海、そんな闇に負けるでない!!意識を取り戻せ!!──

 

 

【ククク…!無駄だ、上位神の分身よ…この男の心は封じた…!貴様の言葉では、少しも響かぬさ…!】

 

 

「遊海さん!!」

 

『父さん…!!』

 

《フォウ…!》

1人は聖なる結界に閉じ込められてなお、余裕の笑みを浮かべる闇遊海。

 

もう1人は結界の中に闇遊海を封じ、必死に声を掛け続ける光球…デウス神の分体だった…。

 

 

 

【ようやく力が馴染んで来た…さぁ、退くがいい!!】

 

────!!

 

──ぐぬっ…!?干渉は、これが精一杯か…!!──

闇遊海が闇の力を開放…吹き荒れた闇の嵐が聖なる結界を砕き、光球を吹き飛ばす!

 

 

「デウス様!!」

 

──翠、ワシが干渉できるのは、ここまでじゃ…!デュエルで奴を倒せ!そうすれば─!!──

翠へと希望を託したデウス神の分体は闇に散らされ、消えてしまった…。

 

 

 

【ほう…供物が自ら出向いて来たか…丁度よい、力を使って空腹だったのだ…!お前達の魂、我に捧げるがいい…!】

 

「っ…!遊海…!」

 

「遊馬…!」

闇遊海は邪悪な笑みを浮かべながら遊馬達を見て舌舐めずりする…その殺気はドン・サウザンドと同等…小鳥は思わず遊馬に縋り付く…。

 

 

『遊馬、アストラル…ここは、俺に行かせてくれ…!』

 

(シャーク…!)

突き刺さるような殺気が向けられる中、凌牙が前に出る…!

 

 

『きっと、父さんは闇の中で戦ってる…!俺が父さんを闇の中から救い出す!!』

 

「だったら、私も戦うわ…!私達の……家族の『絆』で遊海さんを助けるのよ!!」

 

「翠さん!!」

 

《フォウ!》

凌牙に並び立つのは翠…闇に囚われた愛する者を救う為、彼女は勇気を持って立ち向かう!

 

 

 

【ククク…!最初の供物は決まったようだなぁ…!】

 

『テメェの供物になんかになってたまるかよ!』

 

「遊海さんを返してもらうわ!!」

 

【やれるなら、やって見るがいい!!】

不敵な笑みを浮かべる闇遊海に翠と凌牙が大切な『家族』を救う為に挑む!!

 

 

 

 

『「【デュエル!】」』

 

 

Dark NEXUS LP4000

 

翠&凌牙 LP4000

 

 

変則タッグデュエル

 

 

 

 

 

 

【我のターン、ドロー!】

【フィールド魔法『失楽園』を発動!】

 

「っつ!?」

フィールドが荒廃した大地に変化する!

 

 

【そして『混沌の召喚神』を召喚!】

上半身が悪魔、下半身が蛇のようになった魔物が現れる! ATK0

 

【『混沌の召喚神』の効果発動!自身をリリースする事で、このモンスターを特殊召喚できる!現われよ!『神炎皇ウリア』!】

フィールドに炎が渦巻く…その炎の中から赤い龍体の炎の幻魔、ウリアが現れる! ATK0

 

 

「な、なんだ!?あのモンスターは…!」

 

(遊海が前に見せてくれた三幻神『オシリスの天空竜』に似ている…!)

 

《あのモンスターは、『三幻魔』の1体『神炎皇ウリア』…!かつて邪な人間が我ら『三幻神』の力をコピーしようとして生み出した魔物です…!!》

ウリアの出現に戸惑う遊馬達にフレアがその正体を伝える…!

 

 

《ウリア!!貴女も遊海の精霊です!闇に呑まれてはなりません!!》

 

《ギッ…キシャアアアア…!!》

 

「ウリアが、苦しんでる…!」

敵となり立ち塞がるウリアに叫ぶフレア…だが、ウリアは苦しげな咆哮をあげる…。

 

 

【無駄だ、このデッキに宿る精霊は我の支配下にある…お前達の言葉は届かぬ…!我は『失楽園』の効果発動!『ウリア』が存在する事で2ドロー!…クク…さらに永続魔法『七精の解門』を発動!その効果により、デッキから『降雷皇ハモン』を手札に加える!さらに『七精の解門』の効果発動!手札の『闇次元の開放』を墓地に送り、墓地の攻撃力か守備力が0の悪魔族モンスター…『混沌の召喚神』を特殊召喚!】

再び蛇体の魔物が現れる! DEF0

 

 

【我はカードを2枚伏せ、ターンエンド】

 

Dark NEXUS LP4000

ウリア 召喚神 失楽園 七精 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「凌牙君、気を付けて…!三幻魔は1度、遊海さんを倒しているわ…決して油断しないで!」

 

『っ…!わかった…!!』

翠が語る『三幻魔』の危険性に凌牙は気を引き締める…!

 

 

「遊海さん…待ってて…!必ず助けてみせる!!」

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「魔法カード『影依融合(シャドール・フュージョン)』発動!手札の『超電磁タートル』と『シャドール・ビースト』で融合!影の獅子よ!光の力を得て、影の巨人を呼び出さん!融合召喚!来て!『エルシャドール・ネフィリム』!」

シャドールの母たる巨人が現れる! ATK2800

 

 

【その瞬間、永続罠『覚醒の三幻魔』を発動!フィールドに『ウリア』が存在する事で効果が起動する!我は相手が召喚・特殊召喚したモンスターの攻撃力分、ライフを回復する!】

闇遊海の体を闇が覆い、ライフを回復する…!

 

Dark NEXUS LP4000→6800

 

 

「っ…!カード効果で墓地に送られた『ビースト』の効果!1ドロー!さらに『ネフィリム』の効果!デッキから『シャドール・ドラゴン』を墓地に送る!さらにカード効果で墓地に送られた『ドラゴン』の効果!『覚醒の三幻魔』を破壊!」

 

【ぬっ…!】

翠の墓地から飛び出した竜巻が闇遊海の罠を破壊する!

 

 

「そして私は速攻魔法『神の写し身との接触(エルシャドール・フュージョン)』を発動!手札の『シャドール・ファルコン』と『影霊の翼(リーシャドール)ウェンディ』を融合!影の翼よ!新たなる風と交わりて、深淵の影を呼び出さん!融合召喚!『エルシャドール・アプカローネ』!」

2つの影が巨大な魚と合体した巫女を呼び出す! ATK2500

 

 

「カード効果で墓地に送られた『ファルコン』の効果!自身を裏守備で特殊召喚!さらに『ウェンディ』の効果!デッキから『シャドール・リザード』を裏守備で特殊召喚!」

 

『……すげぇ…』

翠はシャドールの展開力によって確実に布陣を整える…!

 

 

「『アプカローネ』の効果発動!『失楽園』の効果を無効にする!」

荒野が魔術によって凍りつく!

 

「バトルよ!『ネフィリム』で『ウリア』を攻撃!」

 

【無駄だ!永続罠『ハイパー・ブレイズ』を発動!自分の『ウリア』がバトルする時、デッキから罠カード『光の護封霊剣』を墓地に送り効果発動!『ウリア』の攻撃力はお互いの墓地の罠カードの数1枚につき1000アップする!これで…!】

 

「まだよ!『ネフィリム』の効果発動!特殊召喚されたモンスターとバトルする時!そのモンスターを破壊する!!」

 

【なにっ!?】

ネフィリムの影糸がウリアを粉砕する!

 

 

「そして『アプカローネ』で『混沌の召喚神』を攻撃!」

魔物が青色の糸に貫かれる!

 

 

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

翠LP4000

ネフィリム アプカローネ 裏ファルコン 裏リザード 伏せ1 手札0

 

 

 

「凌牙君!今よ!!」

 

『わかった…!母さんのくれたチャンス、無駄にはしねぇ!!』

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『俺が引いたのは「RUM-七皇の剣」!墓地・エクストラデッキから「ANo.101S・H・Ark Knights」を特殊召喚し、カオス化させる!カオスエクシーズチェンジ!』

 

 

《font:405》101

 

 

『現われろ!「ACNo.101」!「S・H・Dark Knights(サイレント・オナーズ・ダークナイト)」!!』

朱槍を構える黒き槍術士が現れる! ATK2800

 

 

『さらに!手札から「ハンマーシャーク」を召喚!』

頭が金槌になった鮫が現れる! ATK1700

 

『「ハンマーシャーク」の効果発動!自身のレベルを1つ下げ、手札から「ビッグ・ジョーズ」を特殊召喚!』

巨大な口を持つ鮫が現れる! ATK1800

 

ハンマーシャーク ☆4→3

 

 

『俺はレベル3の「ハンマーシャーク」「ビッグジョーズ」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現われろ!「潜航母艦エアロシャーク」!!』

2匹の鮫が連結した潜水艦が現れる! ATK1900

 

 

『「エアロシャーク」の効果発動!ORUを1つ使い!手札の枚数1枚につき400ダメージ、つまり1200ダメージを与える!喰らいやがれ!エアー・トルピード!!』

 

【ぬううっ!?】

無数の魚雷が闇遊海のライフを削る!

 

闇遊海 LP6800→5600

 

 

『バトルだ!「ダークナイト」で、ダイレクトアタック!!』

 

【させぬわ!墓地の『光の護封霊剣』を除外して効果発動!このターン、我に対するダイレクトアタックを封じる!】

 

『チッ…!』

光剣の壁が朱槍を弾き返す!

 

 

『俺はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

凌牙LP4000

ダークナイト エアロシャーク 伏せ2 手札1

 

 

 

「ああっ…!惜しい!!」

 

「流石、シャークと翠さんだな…!いきなり悪遊海を追い詰めたぜ!」

1ターンで闇遊海を追い詰めた翠と凌牙に遊馬が歓声を上げる!

 

 

(だが、あのデッキは()()()()()()だ…まだ何が起きるかわからないぞ…!)

 

《その通りです…!》

だが、アストラルは分かっていた…仮にも遊海のデッキがこの程度で止まるはずがないと…!

 

 

 

 

【我のターン、ドロー!】

【『七精の解門』の効果発動!手札の『暗黒の召喚神』を墓地に送り!墓地の『混沌の召喚神』を特殊召喚!】

再び蛇体の悪魔が現れる! ATK0

 

 

『っ…さっき手札に加えた奴が出てくるのか…!?』

 

「違うわ…!気を付けて!!」

 

【我は墓地の『暗黒の召喚神』を除外して効果発動!デッキから『幻魔皇ラビエル』を手札に加える!そして『暗黒の召喚神』の効果発動!手札より現れよ!『幻魔皇ラビエル』!!】

フィールドに稲妻が降りそそぐ…そして幻魔を統べる青き皇、ラビエルが降臨する! ATK4000

 

 

《グッ、ガッ…!!ミドリ、ウマク、避ケロ…!カラダ、ジユウ、キカナイ…!!》

 

「ラビエル…!!」

ギリギリで意識を残していたラビエルが翠に警戒を促す…!

 

 

【フッ…我は墓地の『混沌の召喚神』の効果発動!このカードを除外し、デッキから『失楽園』を手札に加える…そしてフィールド魔法『失楽園』を発動!】

凍りついた荒野が再び闇に包まれる!

 

【『失楽園』の効果発動!『ラビエル』が存在する事で2ドロー!ククッ……!バトルだ!『ラビエル』で『エルシャドールネフィリム』を攻撃!】

 

「っ…!?『ネフィリム』には特殊召喚したモンスターを破壊する効果がある!返り討ちに──!」

 

 

【無駄だ、我の場に『失楽園』がある限り、『ラビエル』は相手の効果対象にならず、効果では破壊されない!さらに我は手札から『幻魔皇ラビエル─天界蹂躪拳』の効果発動!このカードを墓地に送り!『ラビエル』は相手モンスター全てに攻撃でき、さらに攻撃力は倍となる!!】

 

『「なんだって!?」』

 

《■■■■■─!!》

狂気に侵されたラビエルの拳に破滅の光が宿る! ATK4000→8000

 

 

【これで滅せよ!天界蹂躪拳!!】

 

「させない!墓地の『超電磁タートル』の効果発動!墓地のこのカードを除外して、バトルフェイズを終了する!!」

絶滅の一撃を電磁バリアが弾き返す!

 

 

【フン…命拾いしたか、我は永続魔法『失楽の霹靂』を発動、ターンエンドだ!】

 

Dark NEXUS LP5600

ラビエル 失楽園 七精 霹靂 ハイパーブレイズ 手札2

 

 

 

「あ、危ねえ…!!」

 

(一撃、一撃が致命傷になりかねない…!翠…頼むぞ…!!)

緊急の連続に遊馬は溜息をつく…敗北と隣り合わせの戦い…だが、遊馬達は見守る事しかできない…!

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「(っ…今の手札じゃ、挽回できない…!!)『ネフィリム』と『アプカローネ』を守備表示に変更!ターンエンドよ!」

 

ネフィリムATK2800→DEF2500

 

アプカローネATK2500→DEF2000

 

翠LP4000

ネフィリム アプカローネ 裏ファルコン 裏リザード 伏せ1 手札1

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『これなら…!「エアロシャーク」の効果発動!ORUを1つ使い!相手に手札の枚数のダメージを与える!俺の手札は2枚!800ダメージだ!』

 

【くっ…!うっとおしい!!】

再び魚雷が闇遊海にダメージを与える!

 

 

Dark NEXUS LP5600→4200

 

 

『そして俺は「エアロシャーク」をリリース!「イーグル・シャーク」をアドバンス召喚!』

鷲のようなクチバシを持つ鮫が現れる! ATK1000

 

 

【その瞬間『ラビエル』の効果発動!相手がモンスターを召喚した時!『幻魔トークン』1体を特殊召喚!】

ラビエルに似た小さな悪魔が現れる! DEF1000

 

 

『まだだ!「イーグルシャーク」がいる時、手札の「パンサー・シャーク」は特殊召喚できる!』

豹柄の鮫が現れる! ATK1100

 

 

『俺はレベル5「イーグルシャーク」と「パンサーシャーク」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!』

 

 

73

 

 

『現われろ!「No.73」!カオスに落ちた聖なる滴よ!その力を示し、混沌を……闇を押し流せ!!『激瀧神アビス・スプラッシュ』!!」』

凌牙の遺跡のナンバーズ、大海を支配する神が現れる! ATK2400

 

 

『「アビススプラッシュ」の効果発動!ORUを1つ使う事で攻撃力を倍にできる!俺はORUを2つ使い、その効果を2回使う!!攻撃力9600だ!!』

 

【なんだと…?】

海神の鉾にエネルギーが集う!!

 

アビススプラッシュ ATK2400→4800→9600

 

 

『バトルだ!「アビススプラッシュ」で「ラビエル」を攻撃!!正気に戻ってくれ…!父さん!!喰らえ!ファイナル・フォール!!』

それは海神の怒り、凌牙の渾身の一撃…フィールドが爆煙に包まれる!

 

 

 

 

 

「やったか…!?」

 

【ハッ…永続魔法『失楽の霹靂』の効果発動!『ラビエル』がフィールドを離れる時、このカードを墓地に送る事でこのターン、自分が受けるダメージは全て0になる!】

 

『っつ…!』

爆煙が晴れた中で闇遊海は嗤っていた…!

 

 

 

『これでも、届かないのか…!!「ダークナイト」で「幻魔トークン」を攻撃!!』

悔しさを滲ませながら、槍術士の朱槍がトークンを砕く…!

 

 

『……ターン、エンドだ…!』

 

凌牙LP4000

ダークナイト アビススプラッシュ 伏せ2 手札0

 

 

 

 

【小童に女、中々に粘るではないか?この身体がそんなに大切か?】

 

「当たり前よ…!!貴女が使うその身体は私の夫のモノ…絶対に返してもらうわ!!」

 

【ククク…ハハハハ…!愛する者の為に命を賭けるか…!良いだろう、その魂ごと喰らい、永遠に閉じ込めてやろう…!】

遊海を取り戻す為に必死の戦いを続ける翠と凌牙…その姿を闇遊海は嘲笑う…!

 

 

 

【我のターン、ドロー!】

【ククク…永続罠『ハイパーブレイズ』の効果発動!1ターンに1度、手札を1枚捨てる事で墓地の『ウリア』か『ラビエル』を手札に加えられる…我は『降雷皇ハモン』を墓地へ送り、『ラビエル』を手札に戻す!そして『暗黒の招来神』を召喚!】

大きな翼を持つ単眼の魔物が現れる! ATK0

 

 

【『暗黒の招来神』の効果発動!召喚に成功した事でデッキから2体目の『混沌の召喚神』を手札に加える!そして通常召喚された『招来神』が存在する時、我は1度だけ攻撃力・守備力が0の悪魔族モンスターを召喚できる!現われよ!『混沌の召喚神』!】

再び蛇体の魔物が現れる! ATK0

 

【そして『混沌の召喚神』をリリース!再び現われよ!『幻魔皇ラビエル』!】

 

『また…!?』

再び青き幻魔皇が顕現する! ATK4000

 

 

【さらに!墓地の『幻魔皇ラビエル─天界蹂躪拳』はフィールドのモンスターをリリースする事で手札にもどる!我は『暗黒の招来神』をリリース!バトルだ、『ラビエル』で『ダークナイト』を攻撃!さらに『天界蹂躪拳』の効果発動!攻撃力を倍にし、全てのモンスターを攻撃できる!さぁ…死ぬがいい!!】

 

 

ラビエル ATK4000→8000

 

 

「シャーク!!」

 

「翠さん!!」

 

《フォーウ!!》

それは全てを滅ぼす絶滅の一撃…それが凌牙に迫り…!

 

 

 

『罠カード「潮の利(アドバンテージ・ロケーション)」発動!自分の水属性モンスターとバトルする相手モンスターの攻撃力は半分になり、さらに水属性モンスターはバトルでは破壊されない!!』

 

【無駄な足掻きを…!だが、ダメージを受けよ!】

 

『ぐううっ…!!』

ダークナイトの周りに現れた渦潮がダメージを軽減する…!

 

ラビエルATK8000→4000

 

翠&凌牙 LP4000→2800

 

 

【続けて『アビススプラッシュ』を攻撃!】

 

『「潮の利」で相手の攻撃力は半分になる!!ぐあああ!!?』

 

「きゃあああ!!」

ラビエルが破壊の拳を海神に叩き込み、凌牙と翠は余波で吹き飛ばされる…!

 

 

ラビエルATK8000→4000

 

翠&凌牙LP2800→1200

 

 

 

【そして女の『アプカローネ』を攻撃!】

 

「う、ぐ…!『アプカローネ』は、バトルでは、破壊されない…!!」

アプカローネが影糸の結界で拳を防ぐ!

 

【『ネフィリム』を攻撃!】

 

「っうう…!『ネフィリム』が破壊された時、墓地の『影依融合』を手札に、加える…!」

 

【セットモンスターを攻撃!】

 

「破壊されたのは『シャドール・ファルコン』…!リバース効果、発動!墓地の『シャドール・ビースト』を裏守備で、特殊召喚!」

 

【ならば2体目のセットモンスターを攻撃!】

 

「セットモンスターは、『シャドール・リザード』…!」

影の蜥蜴が粉砕される!

 

 

【3体目のセットモンスターを攻撃!】

 

「リバースしたのは『シャドール・ビースト』!リバース効果で2枚ドローして、1枚捨てる…!手札の『禁忌の壺』を、墓地へ…!」

 

【往生際が悪いぞ、人間!!】

なんとか全ての攻撃を躱した翠と凌牙…だが、闇遊海はさらなる1手を打つ!

 

 

 

【我は速攻魔法『次元融合殺』を発動!フィールドの『ラビエル』と墓地の『ウリア』『ハモン』を除外し、融合モンスターをエクストラデッキから召喚条件を無視して特殊召喚する!現れいでよ!『混沌幻魔アーミタイル─虚無幻影羅生悶』!!】

 

「そんなっ…!!」

フィールドで闇が爆発する…その中から巨大な混沌の魔物…3体の幻魔の融合体、アーミタイルが姿を現す! ATK0

 

 

 

(この、モンスターは…!?)

 

「幻魔が、融合しちゃった…!?」

 

「嘘、だろ…!?」

フィールドに現れた融合幻魔に圧倒される遊馬達…その威圧感は…『夢幻虚光神』に迫る…!

 

 

 

【これで、貴様らは終わりだ…『虚無幻影羅生悶』の効果発動!このカードのコントロールを相手に移す!】

 

『なにっ…!?』

 

「融合幻魔を相手に渡した!?」

翠達のフィールドにアーミタイルが移動する…そして、それは()()()()()()()だった…!

 

 

【我はこれでターンエンド…そして、この瞬間!『虚無幻影羅生悶』の効果発動!コントロールが移ったターンのエンドフェイズ、()()()()()()()のカードを全て除外する!】

 

「えっ、自分フィールドって……まさか!!」

 

(『虚無幻影羅生悶』をコントロールしているのは…シャーク達だ!!)

 

『そんなっ!?』

 

【希望よ、闇に消え去るがいい…!!】

アーミタイルが闇を吐き出す…その闇に包まれた翠と凌牙のカードは…全て闇の中に消え去った…。

 

 

(シャークと翠のカードが全滅…!?)

 

「だ、だけど!悪遊海のフィールドにもモンスターはいない!翠さんがモンスターを引けば…!!」

 

 

【ククク…効果はまだ終わっておらん…!この効果が発動した後、元々の持ち主である我は…エクストラデッキから『混沌幻魔アーミタイル』を召喚条件を無視して特殊召喚する!!】

 

「そんな…!!」

闇遊海のフィールドに闇が集い、巨大な混沌幻魔が復活する…! DEF0

 

Dark NEXUS LP4200

アーミタイル 失楽園 解門 ハイパーブレイズ 手札0

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…!」

 

『っ…母さん、大丈夫か…!』

 

「りょうが君、わたしは…だ、大丈夫…」

満身創痍の凌牙は翠を心配する…ダメージは0だったとはいえ、5回の連続攻撃を受けた翠は…凌牙以上にボロボロだった…。

 

 

「『アーミタイル』は、バトルでは破壊されず…自分のターンのあいだ、攻撃力がいちまんになる、の…」

 

『っ…!!』

それは絶望的な効果…十代や遊海をも追い詰めた最強の魔物の力だった。

 

 

【そして…『アーミタイル』も『失楽園』の効果により、効果対象にならず…効果では破壊されない…さぁ、絶望の中で死ぬが良い…!】

 

『っ…』

遊海の顔で邪悪に嗤う闇遊海…その姿を見た凌牙は唇を噛み締める…。

 

 

『なぁ、父さん…!いつまで寝てんだよ…!!いつまでそんな野郎に好き勝手やらせてんだよ!!』

 

【無駄だ、お前の声は…『父さん!!アンタは最強のデュエリストなんだろ!!世界を守り続けた男なんだろ!?こんな時に、こんな時に動けないで!何が英雄だよ!!』無駄だと言っているだろう!】

凌牙は闇遊海の中に眠る遊海に…父に必死に叫ぶ…!

 

 

『せっかく、ようやく…家族に戻れたのにさ…!!こんなのって、ないぜ…!戻って来てくれよ!父さん─!!』

 

「シャーク…!」

凌牙はポロポロと涙を零しながら叫ぶ…例え、それが無意味なのだとしても…。

 

 

「遊海さん、ごめんね……遊海さんが、嫌な予感がするって言った事…ちゃんと聞いてあげればよかった…!」

翠はボロボロの体で無理矢理立ち上がる…。

 

「待ってて、遊海さん…いま、助けるから…!!」

 

【助ける?そんなボロボロの身体で?僅か3枚の手札と1200のライフで我を倒すと?ククク…ハハハハ…!笑い話にも程が……】

 

「諦め、ない…!ライフが尽きない限り!私達は、デュエリストは戦えるんだから─!!」

それは翠の魂の咆哮…遊海を想う心からの言葉、その願いは……奇跡を起こす!

 

 

 

 

 

キィン─!

 

キィン─!

 

キィン─!

 

キィン─!

 

 

 

【な、なんだ…!この光は…!】

 

『これは、あの時と同じ…!』

 

「共鳴してる…私達の『絆』が…!」

遊海の赤水晶のペンデュラム、翠の紫水晶のブレスレット、そして凌牙と璃緖の指輪が共鳴し…光を放つ…!

 

 

キィン─!

 

 

「この光、まさか…!」

 

(ああ、間違いない…!この光は─!)

 

《フォウ…!フォーウ!!》

4つの光が翠の右腕に集う、それは『決闘者』の境地…希望を導く奇跡の光─!

 

 

 

【なんだ、なんだ!その光は!?】

 

「これは…私達家族の…絆の光よ!!」

 

 

 

 

「私のターン!家族の絆は光を導く!希望に輝く勝利をこの手に!!シャイニング・ドロー!!」

 

【クッ…そんな光のドローで何ができる!!】

それは奇跡を導く光の軌跡…家族の絆が勝利への1枚を呼び込む!

 

 

「私は『シャドール・ヘッジホッグ』を召喚!」

ハリネズミの影人形が現れる! ATK800

 

【ハッ…たかが攻撃力800、それで何ができる!】

 

「私は手札の『影依融合』を墓地に送り!速攻魔法『超融合』発動!!」

 

【超融合、だと?】

翠の背後で融合の渦が渦巻く!!

 

 

「このカードは、自分と相手フィールドのモンスターを融合素材として!融合召喚できる!!私は『ヘッジホッグ』と『アーミタイル』で超融合!!」

 

【なんだと!?】

融合の渦に2体のモンスターが引き込まれる!

 

 

「融合、召喚!現われて!『エルシャドール・ミドラーシュ』!」

 

《準備は出来てる!!》

影の竜に乗る巫女が現れる! ATK2200

 

 

「さらに魔法カード『死者蘇生』を発動!力を貸して!『ダークナイト』!!」

黒き槍術士が翠のフィールドに現れる! ATK2800

 

 

「バトルよ!『ミドラーシュ』でダイレクトアタック!」

 

《風王鉄鎚!!》

 

【ぐぬっ…!?】

風の魔力弾が闇遊海を直撃する!

 

 

DarkNEXUS LP4200→2000

 

 

 

「凌牙君!!」

 

『ああ、いくぜ!母さん!!「ダークナイト」で父さんに…「闇」に!ダイレクトアタック!!』

2人の声に応え、槍術士が朱槍に力を溜める!!

 

 

「『遊海さん(父さん)を返せ!!』」

 

 

【馬鹿な…!馬鹿なぁぁっ…!!】

 

朱槍の一撃が闇遊海の胸に突き刺さる…それは『絆』の一撃。

 

魂の守護者の一撃が『闇』を貫いた…!

 

 

 

Dark NEXUS LP0

 

 

 

翠&凌牙 WIN!

 

 

 

 

 

 

オオオ…おのれ、おのれぇぇ…!!

 

王宮の壁に叩き付けられた闇遊海の身体から瘴気が抜けていく……残されたのは、致命傷を負った遊海の身体だけだった…。

 

 

 

 

 

「っ…遊海さん!!」

 

『父さん…!!』

 

《マスター!!》

倒れ込んだ遊海に満身創痍の翠と凌牙、そして精霊達が駆け寄る…。

 

 

「遊海さん…!しっかりして!遊海さん!!」

 

『目を開けてくれ!父さん!!』

必死に遊海を揺り起こす翠達…そして…。

 

 

「う、ぐ…みど、り……りょうが…」

 

『父さん…!』

うっすらと開いた目…それはいつも通りの遊海の目だった…。

 

 

「『声』はずっと、聞こえて、たんだ……すまない、父親としても……決闘王と、しても…失格だ……」

 

『馬鹿…!父さんは悪くねぇよ…!』

 

「ああ…よかった…!よかった〜!!」

遊海の無事を確認した翠と凌牙は泣きながらへたり込んだ…。

 

 

 

「は、はあぁぁ〜!よかった〜!!」

 

「これで、事件解決──」

 

(……いや、そう甘くはないようだ…!)

 

「「えっ…!?」」

遊海の無事を確認した遊馬と小鳥は胸を撫で下ろす…だが、戦いはまだ終わっていなかった…!

 

 

ドクン!!

 

 

『っ…!なんだ!?』

 

「闇が…!!」

広間に闇が集う…さらに、窓から飛び込んできた『闇』が広間の闇に吸収されていく…!

 

 

 

 

 

【少し戯れが過ぎたか…次は、本気で相手をしてやろう…!】

闇が再び形を成していく…それは巨大な人影…!

 

 

 

 

「嘘…!?」

 

『この、気配は…!』

 

「ドン・サウザンド…!?」

 

「……違う…」

増していく威圧感に遊馬達はドン・サウザンドの復活を錯覚する…だが、遊海がそれを否定する…!

 

「やつは、数多の世界を渡り…希望を壊し……絶望を齎す者…!」

 

 

 

 

【我が名はe・ラー…お前達の希望の光を消し去る、絶望の神…!】

 

闇の中から…希望を喰らう、絶望の女邪神が顕現した…!



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希望を喰らう神─絶望砕く希望の光─

こんにちは!S,Kです!

ついに姿を現した黒幕、絶望の邪神e・ラー…遊馬達は絶望を乗り越え、希望を掴む事ができるのか…!


それでは最新話をどうぞ!


【我が名はe・ラー…お前達の希望の光を消し去る、絶望の神…!】

 

 

(エラーだと…!?だが、この気配は…!)

 

「ドン・サウザンドに似ている…!!」

謎の闇から遊海を救い出す事に成功した遊馬達…だが、彼らの前に全ての元凶が姿を現した…!

 

 

 

その者は美しい女だった。

 

 

その女は常人の数倍の体躯であり…肩当ての付いた黒いドレスを纏い、美しい肢体を晒している。

 

 

そして…その女は、全てを壊さんばかりに覇気を発していた…!

 

 

 

「ぐっ…奴は、e・ラー…!世界を超えて移動し、その世界で見つけた希望を世界ごと破壊し、また別の世界を破壊しに行く……最悪の邪神だ…!!」

 

「世界を超える、邪神…!?」

遊海は痛みを堪えながら敵の性質を語る…それは別世界の「九十九遊馬」(漫画ZEXAL)の物語の黒幕、別世界の遊馬・アストラル・凌牙・カイト、そして凌牙の友・八雲の運命を狂わせた元凶、それがe・ラーである。

 

 

 

【ほう…人間、妾の事を知るか…よくもその傷で意識を保てるものだ…】

 

「お前を前に、寝てなんっ、ごふっ…!?」

 

「父さん!?無理するな!!」

遊海は立ち上がろうとして崩れ落ちる…凌牙と翠とのデュエルでe・ラーの依代にされていた遊海は重傷を負ってしまっている…。

 

 

 

(エラー!お前の目的はなんだ!)

 

【クク…その男が言ったではないか?妾は希望を喰らうモノ…この世界の希望を破壊する為に来たのだ】

 

「だとしても、世界は無数にある…どうして俺達の世界に…………まさか…!」

 

「……『ヌメロン・コード』…!?」

e・ラーがこの世界に来た理由を考える遊馬達…そして思い当たったモノ、それは世界を書き換えた『奇跡』の力…ヌメロン・コードの存在だった…!

 

 

【『ヌメロン・コード』などというモノは知らぬ…だが、前の世界を滅ぼした直後…我は得も言われぬ『希望』の匂いを感じ取った…!少々距離はあったが、我は世界を渡れる故な…その匂いを辿り、この世界を見つけ出したのだ…!】

 

「…『ヌメロン・コード』の書き換えで俺達の世界は『希望』に溢れていた…それが、e・ラーを引き寄せたのか…!!」

『ヌメロン・コード』の書き換えで新たな未来と希望を手にした人間界・アストラル世界・バリアン世界の3つの世界…書き換え後の『ヌメロン・コード』はアストラル世界で保管されていた為、その『残り香』に誘われ…e・ラーはこの世界を見つけたのだ…!

 

 

 

【だが、この世界に来る為に少々力を使い過ぎてなぁ…城にいた者の魂を喰らったが物足りぬ…だが、そこへその男が現れた…!強い『希望』を宿すお前がなぁ…!】

 

「っ…!!」

e・ラーの瞳が弱りきった遊海を射抜く…。

 

 

 

【あとは簡単な話…貴様を我が依代とし、貴様の『記憶』から貴様が『恐怖』を抱いたデュエリストの影法師を作り、あの場にいたデュエリスト共にけしかける……幸運にも、貴様はなかなかの強者のようだったからなぁ……あのデュエリスト共も恐怖し、絶望し……そして希望を抱いて勝利した…その希望と絶望が我の力になるとも知らずになぁ…!】

 

「っ…!!それじゃあ、カイト達は!?」

 

【クハハ…!さぁ?どうなったのだろうなぁ…?】

 

「テメェ…!許さねぇ!!ぐっ!?」

 

「凌牙君!」

 

《フォウ!!》

e・ラーに立ち向かおうとした凌牙は膝をついてしまう…デュエルによって受けたダメージは凌牙と翠も深い…この場で戦えるのは…!

 

 

 

(遊馬、いけるな…!)

 

「ああ…!お前は、絶対に許さねぇ!!」

凌牙達を庇うように遊馬とアストラルが前に出る…!

 

 

【ククク…貴様ら2人で我を倒すと言うのか…?思い上がるな、小童が…!!】

 

 

ズン!!

 

 

「きゃっ…!?」

 

「この、殺気は…!!」

e・ラーは殺気を解き放つ…その圧力はドン・サウザンドに匹敵する…!

 

 

【我は数多の世界を砕き、希望を喰らう神…!お前達も打ち砕き、我の糧としてやろう…!】

 

 

「……させるかよ、e・ラー…!これ以上、お前の勝手にはさせない!!」

 

「遊海…!?大丈夫なのかよ!?」

最凶の殺気を前に…満身創痍の遊海が遊馬の横に並び立つ…!

 

「この危機は、俺が被害を広げてしまったものだ……ならば、俺がケリをつけなきゃ、倒れてなんか、いられるか…!!」

満身創痍の中で遊海は気合いだけで立ち上がる…自分の為に傷ついてしまった子供達、そして家族の仇を討つ為に…死力を振り絞る…!

 

 

【良かろう…!3人まとめて喰ろうてやろうぞ!!】

 

「いくぞ、遊馬、アストラル!此処で、邪神e・ラーを打ち倒す!!」

 

「ああ…!これが、最後の戦いだ!!」

 

(我々の力を合わせるぞ!!)

遊海と遊馬がデュエルディスクを構える!

 

 

 

「っ…!頑張れ…!頑張って!遊馬!アストラル!!」

 

「邪神なんて、ぶっ飛ばせ!!」

 

「負けないで!遊海さん!!」

小鳥・凌牙・翠が3人の背中に声援を送る…アストラル世界の…全ての世界の運命は3人に託された!!

 

 

 

 

 

 

「『【デュエル!!】』」

 

 

 

遊馬&アストラル・遊海 LP4000

絶望の邪神e・ラー LP4000

 

 

変則タッグデュエル

 

ライフ共有

 

 

 

 

『いくぜ!オレのターン!ドロー!』

『「ガガガマジシャン」を召喚!』

『我』の文字を背負う不良魔術師が現れる! ATK1500

 

『そして!レベル4のモンスターの召喚に成功した時!手札の「カゲトカゲ」は特殊召喚できる!』

魔術師の影から影のように薄いトカゲが現れる! ATK1100

 

 

『いくぜ、アストラル!』

 

(ああ!!)

 

『オレはレベル4の「ガガガマジシャン」と「カゲトカゲ」でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!』

 

 

39

 

 

『現れろ!!「No.39」!オレ達の戦いは此処から始まる!白き翼に希望を託せ!「希望皇ホープ」!!』

銀河から現れた白い塔のオブジェが変形、遊馬とアストラルのエース…希望の戦士が現れる! ATK2500

 

『オレはカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

遊馬LP4000

希望皇ホープ 伏せ2 手札2

 

 

 

「ホープ!また、お前と一緒に戦えるなんてな…!頼むぜ!!」

 

《……!!》

遊馬の言葉にホープが頷く!

 

 

 

「っ……俺のターン、ドロー!」

「『聖騎士の三兄弟』を、召喚!」

3人組の騎士達が現れる! ATK1200

 

「『三兄弟』の効果、発動!手札から2体まで『聖騎士』モンスターを特殊召喚、できる!現われろ!『聖騎士ボールス』『聖騎士アルトリウス』!」

聖杯探索を成し遂げた騎士と茶髪の若騎士が現れる! DEF900 ATK1800

 

 

「手札の『聖剣EX-カリバーン』を、『ボールス』に装備…『ボールス』は自身に『聖剣』が装備された事で、闇属性となり、レベルが1上がる…!」

 

ボールス光→闇 ☆4→5

 

「俺は、『ボールス』の、効果発動…!デッキから『聖剣カリバーン』『天命の聖剣』『聖剣アロンダイト』を相手に、公開する…そして、相手はランダムに1枚を選ぶ…!」

 

【フン…ならば、左側のカードを選ぼうか】

遊海の背後に現れた3枚のカードのARビジョンからe・ラーは1枚を選ぶ!

 

 

「俺は、選ばれたカードを手札に、加え…残りを墓地へ送る…!」

 

 

 

遊海 墓地送り

 

天命

アロンダイト

 

 

 

「っ…うぅ…!」

 

『っ!!遊海!大丈夫か!?』

 

(先程のデュエルのダメージか…!!)

そこまでプレイした遊海は膝をついてしまう…翠と凌牙がe・ラーから遊海を助ける為に放った攻撃が、遊海を追い詰めてしまっていた…。

 

 

《マスター…!私が貴方の杖に…力になります!!》

 

「彩華……頼む…!精霊、変身…!!」

遊海は力を振り絞り、鋼の鎧を纏う…しかし、それは『守る』為の鎧ではない。

 

鎧の胸元には虹色の核石…彩華のコアが一体化し、鎧を『パワードスーツ』とする事で瀕死の遊海を無理矢理に『戦わせる』為の鎧…名付けるならば…精霊アーマー・キラーフォームへと変身したのだ…。

 

 

「…ありがとう、アヤカ…だいぶ、楽になった…!」

 

《……自動回復機能作動……ですが、無理は禁物ですよ、マスター…あんな邪神なんて早く倒して休みましょう!》

 

「ああ、そうしたいね…!!」

アヤカの補助により遊海は立ち上がった…!

 

 

 

「俺は、レベル4の『アルトリウス』と『三兄弟』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!聖騎士を率いる常勝の王よ!今こそ王道を突き進め…!『聖騎士王アルトリウス』!!」

重厚な鎧を纏いし最優の騎士王が現れる! ATK2000

 

 

「『アルトリウス』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した時、墓地の『聖剣』を3種類まで装備できる!墓地の『天命』『アロンダイト』を装備!さらに、手札の『聖剣カリバーン』を装備し、攻撃力を500アップさせる!」

騎士王が3本の聖剣を携える!

 

騎士王アルトリウス ATK2000→2500

 

 

「『カリバーン』の効果!1ターンに1度、ライフを500回復する!」

聖剣の奇跡がライフを回復させる!

 

 

遊馬&遊海 LP4000→4500

 

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊海LP4500

アルトリウス(カリバーン・天命・アロンダイト) ボールス(EXカリバーン) 伏せ1 手札1

 

 

 

 

【ククク…感じるぞ、貴様らの『希望』を…!良いだろう…貴様らの希望も破壊し、我のコレクションとしてやろう…!】

 

 

──────!!

 

 

(っ…!?なんだ…!?)

 

『シャーク!小鳥!』

 

「翠!バリアを!!」

 

「っ─!!『千年指輪』よ!私達を護って!!」

強い『希望』を感じ取ったe・ラーの身体から闇が溢れ出し、王宮を覆っていく…遊海の声を聞いた翠は咄嗟に凌牙と小鳥を庇ったが…遊馬とアストラル、遊海は闇に飲み込まれた…。

 

 

 

(ここは…!?)

 

『お墓……墓地…!?』

 

「……e・ラーの世界…!あの墓標は、奴が破壊した『希望』の墓だっ…!!」

 

(「っつ!?」)

視界が開けた時、周囲の景色は一変していた…遊馬達は空中に浮かんでいる、その足元には白い大地に無数…数え切れない程の黒い棒(墓標)が突き刺さった景色が広がっている…。

 

この世界こそ「e・ラーの世界」…終焉の場所、希望の墓場とも呼べる空間だった。

 

 

 

【貴様らは我に敗北し…この世界の墓標となるのだ…!】

 

 

 

 

【我のターン、ドロー!】

【我は永続魔法『常闇の空』を発動!さらに、装備魔法『ストレイン・エレメント』を『希望皇ホープ』に装備!】

 

『オレのモンスターに装備魔法を!?』

 

【そして装備モンスターと同じ名前と攻撃力が500ポイント上回るe・ラーモンスター…『No.39希望皇ホープ・e・ラー』を特殊召喚!】

ホープの身体から闇が溢れ出し、e・ラーのフィールドに白と黒の体色を持つ闇のホープが現れる! ATK3000

 

 

(『ホープ』の、コピーモンスターだと…!?)

 

 

【バトルだ!『希望皇ホープe・ラー』で『ホープ』を攻撃!】

 

『させるか!「ホープ」の効果発動!ORUを1つ使う事で攻撃を無効にする!ムーンバリア!』

闇の剣撃を無敵のバリアが受け止める!

 

 

【チィッ…!ならば、我は永続魔法『輪廻の海』を発動!】

 

「っ…!?これは…!?」

 

「世界が…!!」

攻撃を防がれたe・ラーは新たなカードを発動…フィールドが海水に覆われ、全てが凍りつく…!

 

【我はカードを3枚伏せ、ターンエンド!】

 

e・ラー LP4000

ホープeラー 常闇の空 輪廻の海 ストレイン・エレメント(希望皇ホープ) 伏せ3 手札0

 

 

 

 

『コピーモンスターに2枚の永続魔法…!まったく戦術が読めねぇ…!』

 

「臆するな遊馬、お前とアストラルは…()()()()()()()()()だ!ラスボスの1人や2人、敵じゃない!」

 

『遊海…!ああ!!』

あまりに異質なe・ラーの戦術に動揺する遊馬…だが、遊海の言葉に背中を押され…e・ラーに立ち向かう!

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『よし…!魔法カード「死者蘇生」を発動!墓地の「ガガガマジシャン」を特殊召喚する!』

墓地から不良魔術師が復活する! ATK1500

 

【この瞬間!永続魔法「輪廻の海」の効果発動!相手がモンスターを特殊召喚した時、我はデッキからモンスターを特殊召喚できる!現われよ!『ストレイン・スポア』!】

不気味なアメーバのようなモンスターが現れる! DEF0

 

 

『特殊召喚する度にモンスターが増えるのか…でも、やるしかねぇ!オレは「ガガガガール」を召喚!』

「我」の文字を背負うギャル魔術師が現れる! ATK1000

 

 

『「ガガガガール」の効果発動!フィールドの「ガガガマジシャン」と同じレベルになる!オレはレベル4になった「ガガガマジシャン」と「ガガガガール」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!来い!オレの新しい仲間!「ガガガガマジシャン」!!』

光の爆発と共に成長し、立派な魔導師となったガガガマジシャンが現れる! ATK2000

 

 

【再び永続魔法『輪廻の海』の効果発動!デッキから『ストレイン・ボム』を特殊召喚!】

岩の棘が付いた雷球が現れる! DEF0

 

 

『エクシーズ素材となった「ガガガガール」の効果発動!ガガガモンスターと共にエクシーズモンスターとなった時!相手モンスターの攻撃力を0にする!「ホープeラー」の攻撃力を0にするぜ!ゼロゼロコール!!』

 

【なにっ…!?】

ガガガガールの幻影が携帯から電波を放ち、e・ラーモンスターを弱体化させる!

 

ホープeラー ATK3000→0

 

 

『バトルだ!「ホープ」で「ホープeラー」を攻撃!偽者をぶった斬れ!ホープ剣スラッシュ!!』

 

【フン…!罠カード発動!『ディメンション・ウォール』!このバトルによって発生するバトルダメージは相手が受ける!】

 

『「なにっ!?」』

希望の一撃がe・ラーモンスターを両断…だが、ホープ剣の切っ先が異次元に呑まれ…遊馬達を斬り裂いた…!

 

『うわあああああ…!!』

 

「ぐうっ…!?」

 

遊馬&遊海 LP4500→2000

 

 

『ぐっ…だけど、オレのモンスターはまだ残ってる…!!「ガガガガマジシャン」で「ストレインスポア」を攻撃!ガガガガマジック!』

魔力弾が異形のアメーバを粉砕する!

 

 

【この瞬間!永続魔法『常闇の空』の効果発動!破壊された我のモンスターは墓地へは行かず、相手エクシーズモンスターのORUとする事ができる!『スポア』を『ガガガガマジシャン』のORUに!】

 

(なにっ!?)

破壊されたスポアがガガガガマジシャンに取り憑く!

 

ガガガガマジシャンORU2→3

 

 

【さらにORUとなった『スポア』の効果発動!我の場にこのモンスターをORUとしたエクシーズモンスターのe・ラーモンスターを特殊召喚する!そしてそのe・ラーモンスターの攻撃力は元のモンスターより攻撃力が100アップする!】

 

『またコピーか…!!』

闇に染まったガガガガマジシャンが現れる! ATK2100

 

 

『オレはこれでターンエンド!』

 

「この時、俺は罠カード『聖剣の導く未来』を発動!自分のフィールドにある『聖剣』装備魔法の数だけデッキをめくり、その中の1枚を手札に加え!それ以外は好きな順番でデッキ上に戻す!フィールドの聖剣は4枚!」

 

 

遊海 めくったカード

 

聖剣ガラティーン

聖騎士伝説の終幕

アヴァロンの魔女モルガン

聖騎士ベディヴィエール

 

 

 

「『アヴァロンの魔女モルガン』を手札に加える!」

 

遊馬LP2000

希望皇ホープ ガガガガマジシャン 伏せ2 手札1

 

 

 

『いきなりダメージを受けてすまねぇ…頼むぜ、遊海!』

 

「気にするな、遊馬…やられた分は取り返す!!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「まずは『聖剣カリバーン』の効果発動!ライフを500回復する!」

 

遊馬&遊海 LP2000→2500

 

 

「そして『聖騎士ベディヴィエール』を召喚!」

赤いマントを羽織る銀髪の騎士が現れる! ATK1600

 

「『ベディヴィエール』の効果発動!召喚に成功した時!デッキから『聖剣ガラティーン』を墓地に送る!さらに効果発動!フィールドの聖剣を他のモンスターに装備し直す!『聖剣EX-カリバーン』を自身に装備!これにより『聖騎士ボールス』はレベル4、光属性に戻る!」

EX-カリバーンがベディヴィエールに手渡される!

 

ボールス 闇→光 ☆5→4

 

 

「俺はレベル4の『ベディヴィエール』と『ボールス』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

 

 

 

「現われろ!『No.∞』!俺の歩みし戦いのロード…今こそ新たな未来を切り開け!!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!!」

光の爆発と共に遊海のナンバーズ…魂の大剣が地面に突き刺さる! ATK2500

 

 

【この瞬間!永続魔法『輪廻の海』の効果により『ストレイン・ヒュージ』を特殊召喚!】

不気味な肉塊が現れる! DEF0

 

 

「増えたか…『決闘の守護者』のエクシーズ召喚に成功した事で1ドロー!さらに『聖騎士王アルトリウス』の効果発動!ORUを1つ使い、自分フィールドの『聖剣』の数まで相手フィールドの魔法・罠を破壊する!フィールドの聖剣は3枚!『輪廻の海』『常闇の空』と伏せカード1枚を破壊する!風王鉄鎚(ストライク・エア)!!」

 

【させるか!罠カード発動!『身代わりの闇』!フィールドのカードを破壊する効果が発動した時、その効果を無効にし!デッキから闇属性モンスターレベル1の『ストレイン・フィラメント』を墓地へ送る!】

e・ラーの場に現れた不気味な細菌型のモンスターが嵐の剣撃を受け止める!

 

「そう上手くはいかないか…!だが、まだだ!『聖剣アロンダイト』の効果発動!装備モンスターの攻撃力を500下げ、セットカードを破壊する!不毀なる湖光!!」

 

【っ…!!】

騎士王の構えた湖の聖剣がセットされていた『天地葬造』を両断する!

 

騎士王アルトリウス ATK2500→2000

 

 

「そして魔法カード『RUM-ネクサス・フォース』を発動!フィールドの『聖騎士王アルトリウス』を同じ種族・属性でランクが1つ上のエクシーズモンスターにランクアップさせる!ランクアップエクシーズチェンジ!!現われろ!王道を進む騎士王!『神聖騎士王アルトリウス』!!」

神聖なる衣を纏う最高の騎士王が現れる! ATK2200

 

 

【っう…!永続魔法『輪廻の海』の効果!デッキから『ストレイン・エンド』を特殊召喚!】

不気味な触手の生えた肉塊が現れる! DEF0

 

 

「『神聖騎士王アルトリウス』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した時!墓地の『聖剣』3種類を装備する!俺は墓地の『カリバーン』『天命』『聖剣EX-カリバーン』を装備!その効果により『アルトリウス』の攻撃力は500アップする!」

騎士王の腰に3本の聖剣が現れる! ATK2200→2700

 

「さらに『聖剣カリバーン』の効果発動!ライフを500回復する!」

聖剣の奇跡が再びライフを回復する! 

 

遊馬&遊海 LP2500→3000

 

 

「バトルだ!『神聖騎士王アルトリウス』で『ガガガガマジシャンe・ラー』を攻撃!約束されし勝利の剣!!」

 

【ぬううっ…!!】

光の斬撃が魔術師の影を消し飛ばす!

 

e・ラー LP4000→3400

 

 

「さらに『決闘の守護者』で『ストレイン・ヒュージ』を攻撃!さらに効果発動!バトルする時、ORUを1つ使う事でこのモンスターの攻撃力は相手モンスターの攻撃力分アップし、さらに攻撃力が守備力を超えた時!その数値分のダメージを与える!!」

 

【なんだと!?】

遊海が魂の大剣を握り締め、跳躍する!!

 

勝利を導く決着の剣(デュエル・カリバー)!!」

 

【ぐあああああ…!!!】

光を纏う斬撃が不気味な細胞を両断し、e・ラーを吹き飛ばす!

 

e・ラーLP3400→900

 

 

『よっしゃあ!流石遊海だぜ!!』

 

(相手のライフを一気に削り、我々のライフを回復するとは…!)

 

「みんなに迷惑かけたからな…これぐらい頑張らないと申し訳なくてな…!俺はこれでターンエンド!」

 

遊海LP3000

神聖騎士王(カリバーン・天命・EXカリバーン) 決闘の守護者 手札2

 

 

 

 

【な、何故だ…!何故、人間如きに我が追い詰められる!?脆弱な人間にィィ!!】

 

「e・ラー…お前は人間を舐め過ぎだ、お前が思う程…()()()()()()()!!」

 

【っ…!?】

追い詰められ、取り乱すe・ラーに遊海が言葉を叩き付ける!

 

 

「お前がどれだけの世界を滅ぼし、どれだけの希望を破壊してきたかはわからない…だが!どの世界にもお前に立ち向かった者達がいたはずだ!例え破れてしまったのだとしても…その希望は、俺達に受け継がれる!!此処で、俺達がお前を滅ぼす!!」

 

「遊海さん…!」

遊海は眼下に広がる墓標を見て叫ぶ…世界を滅ぼされ、死んでしまった人々の無念を背負い…その希望の為に戦うのだと…!

 

 

【舐めるな…!全てのモノはどう足掻こうといつかは滅び去る!我は…絶望の神なのだ!!】

 

『オレ達は絶望なんてしねぇ!かかって来やがれ!e・ラー!!』

 

(私達の希望が…お前の絶望を超えていく!!)

再び殺気を放つe・ラー…だが、遊海達は屈しない!

 

 

 

 

【我のターン…!ドロー!!】

【クハハ…!来たぞ、貴様らを絶望に叩き落とすカードが!我は魔法カード『ビザール・サクリファイス』を発動!我のフィールドのモンスターを全て破壊する!!】

 

(自分のモンスターを…!?)

 

「しまった…!!」

e・ラーのフィールドモンスターが薙ぎ払われる…!

 

 

【我は破壊された『ストレイン・エンド』の効果発動!自分のライフが相手のライフ以下で破壊された時!自分フィールドの全てのカードを破壊し!我のデッキから『アンチ』と名のつくモンスターを可能な限り特殊召喚する!現われよ!『アンチ・ザ・レイ』『アンチ・ザ・スカイ』『アンチ・ザ・アビス』!『アンチ・ザ・アース』!!】

e・ラーのフィールドがリセットされ、鎖に縛られた4つの紋章が現れる! ATK100 100 100 100

 

 

『またモンスターが増えた!?』

 

(あの文字は…アストラル世界の文字だ…!!)

 

【ククク…まだだ…!破壊された『ストレイン・ボム』の効果発動!相手に2000ダメージを与える!!】

 

「なにっ!?ぐあああ!!」

 

『うわああああ!!』

 

「遊馬!アストラル!」

 

「遊海さん!!」

フィールドに現れた『ストレイン・ボム』の幻影が破裂…遊馬と遊海は岩の破片に吹き飛ばされる!

 

 

遊馬&遊海LP3000→1000

 

 

【そして我は『アンチ・ザ・レイ』の効果発動!このカードはフィールドの『アンチ』モンスターを重ねる事で…デッキからさらなる『アンチ』モンスターを特殊召喚できる!!現われよ…全ての闇と混沌を統べる絶望の化身!!『絶望神アンチホープ』!!】

 

(なにっ…!?)

4枚の『アンチ』…別世界のアストラル世界のエレメントを封じる4枚のカードが重なる、そして現れるのは漆黒の神…全ての希望を否定する絶望の化身が現れた! ATK5000

 

 

『絶望神…!?なんだ、コイツは…!?』

 

(これが、e・ラーの切り札か…!!)

 

【ククク…我が『絶望神』は全ての希望を奪い去る…!この神がフィールドに存在する時相手のエクシーズ召喚は無効となり、破壊される!】

 

(なんだと!?)

それはまさに遊馬達にとっての『絶望』…エクシーズ召喚に特化した遊馬のデッキは…絶対的に不利になる…!!

 

 

【受けてみよ…!我が絶望の一撃を!!『希望皇ホープ』を攻撃!アンチホープ・ディスペア・スラッシュ!!】

 

『させるか!!「希望皇ホープ」!ムーンバリア!!っううう…!!』

放たれる闇の一撃を無敵のバリアが受け止める…だが、あまりの闇の覇気に遊馬と遊海は吹き飛ばされてしまう…!

 

【これで、お前達の守りは砕いた…!我はこれでターンエンドだ!】

 

e・ラー LP900

アンチホープ【レイ・アビス・アース・スカイ】 手札0

 

 

 

『っ…攻撃力5000…!ドン・サウザンドのモンスターに比べれば低いけど…!』

 

(我々はエクシーズ召喚を封じられてしまった…戦術は限られてくる…だが、()()()()()()()()!!)

 

【戯言を…!貴様らは我には勝てぬ!!】

絶望神を前にアストラルは不敵な笑みを浮かべる!

 

 

「見せてやれ!遊馬!アストラル!お前達の絶望を超える『絆』の力を!!」

 

『おう!!いくぜ、アストラル!!』

 

(ああ、私達2人で…!!)

 

 

『(かっとビングだ!!)』

 

【なにっ…!】

絶望を前に、遊馬とアストラルの体が光に包まれる!

 

 

オレは!オレとお前でオーバーレイ!!

 

私達2人でオーバーレイネットワークを構築!

 

遊馬とアストラルがその身を赤と青の閃光と化して飛び上がる!!

 

 

希望に輝く心と心!真の絆で結ばれし魂!その2つの魂が交わる時、語り継がれし奇跡の力が現れる!!アルティメット・エクシーズチェンジ!ZEXAL!!

光の爆発と共に究極の戦士が誕生する…黄金の光を纏いしその者の名はZEXALⅢ…!遊馬とアストラルの『絆』の極致である!

 

 

【その、姿は…!ゼアル、だと!?】

遊馬とアストラルの融合体……否、真の姿を前にe・ラーは動揺する…!

 

「やった…!!やっちゃえ!遊馬!アストラル─!!」

 

『ああ、オレ達の『絆』が!絶望を打ち砕く!!』

小鳥の声援と共にZEXALの右腕に光が集う!!

 

 

 

 

オレのターン!最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえも、デュエリストが創造する!シャイニング・ドロー!!

 

【その光は…!?カードを創造する、だと!?】

ゼアルが描く光の軌跡を見たe・ラーは気付く、先程翠が依代を打ち倒した一枚は…希望の力で『創造』されたカードなのだと…!

 

 

『来たぜ、アストラル!』

 

(ああ、いくぞ!遊馬!)

 

『ヘヘッ…ああ!オレは手札から魔法カード『エクシーズ・トレジャー』を発動!フィールドにいるエクシーズモンスター1体につき1枚、カードをドローできる!フィールドのエクシーズモンスターは4体!よって4枚ドローできる!』

再びZEXALの右腕に光が集う! 

 

 

全ての光よ!力よ!我が右腕に宿り、希望の道筋を照らせ!シャイニング・ドロー!!

 

再び奇跡の軌跡がフィールドを照らす!

 

 

 

『オレは手札の『ZW-風神雲龍剣(ストーム・ブリンガー)』と『ZW-雷神猛虎剣(ライトニング・ブレード)』を『希望皇ホープ』に装備する!』

 

(『風神雲龍剣』と『雷神猛虎剣』は手札から自分の『希望皇ホープ』に装備でき、それぞれ攻撃力を1300と1200アップさせる!!)

 

【なにっ…!?】

手札から飛び出した龍と虎が変形…二振りの刀となってホープに装備される!

 

希望皇ホープATK2500→3800→5000

 

 

『これで攻撃力は互角!バトルだ!『希望皇ホープ』で『絶望神アンチホープ』を攻撃!!』

 

【相討ち狙いか…だが、我にそのような攻撃は通じぬ!我が『アンチホープ』は全ての希望を打ち砕く!!我は『アンチホープ』に重ねられた『アンチ・ザ・アビス』の効果発動!相手が攻撃して来た時、このカードを墓地へ送る事で『アンチホープ』の攻撃力は攻撃モンスターと同じになり、そのバトルでは破壊されない!!】

 

(なんだと!?)

 

「っ…!『希望皇ホープ』はナンバーズとの戦闘でなければ戦闘破壊されない!!」

絶望神とホープの攻撃が衝突…互いに弾かれる!

 

 

(だが、同じ効果は2度は使えないようだ…遊馬!!)

 

「おう!罠カード発動!『かっとビング・チャレンジ』!バトルフェイズに攻撃したエクシーズモンスター1体は効果を無効にする事でもう1度だけ攻撃できる!『希望皇ホープ』でもう一度『アンチホープ』を攻撃!」

 

【そのような効果を…!だが、無駄だ!『アンチ・ザ・スカイ』の効果発動!重ねられたこのカードを墓地に送る事で、相手の攻撃して来たモンスターを破壊する!】

 

『っ─!!』

 

「させるか…!手札の『アヴァロンの魔女モルガン』の効果発動!自分フィールドに『聖騎士』と『聖剣』装備魔法が存在し、相手がモンスター・魔法・罠の効果を発動した時!手札のこのカードを墓地に送り!フィールドの『聖剣EX-カリバーン』を破壊する事でその効果を無効にする!」

 

【なにっ!?】

ホープの前に現れた妖艶な魔女が障壁を張り、ホープを守る!

 

「やれ!!ZEXAL!!」

 

『喰らえ!e・ラー!ホープ剣ダブル・テンペスト・スラッシュ!!』

 

【ぬぐあああああ…!?】

強力な風と雷を纏いし嵐の一撃が絶望の神を両断する!!

 

 

「やった!『アンチホープ』を倒したわ!!」

 

【ぐっ…!まだだ!『アンチ・ザ・アース』の効果、発動!このカードが墓地に送られた時!墓地の『アンチホープ』を特殊召喚する!我が絶望神こそ…不滅なのだ─!!】

絶望神が墓地から復活する! ATK5000

 

 

『倒しきれなかった…!!…オレはこれでターンエンドだ!』

ZEXALⅢ LP3000

希望皇ホープ(風神雲龍剣・雷神猛虎剣) ガガガガマジシャン 伏せ1 手札2

 

 

 

『決めてくれ!遊海!!』

 

「ああ、悪いな遊馬…e・ラー、俺は俺の仲間を…家族を傷付けたお前を絶対に許さない!!」

遊馬に最後を託された遊海は全力を解き放つ!

 

 

俺は俺自身でオーバーレイ!!

 

遊海の体が眩い光と優しき闇に包まれる!

 

 

我が身に宿りし光と闇よ…希望の力となりて世界を照らせ!カオス・エクシーズ・チェンジ!!

 

光と闇が混ざりあい、世界を照らす希望の炎が再誕する!

 

 

我が絆の極致!闇を抱き希望を照らす光!NEXUS!!

 

光の大爆発と共に奇跡の戦士…燃えるような赤い髪を逆立て、鋼の鎧に赤いコートを纏う男が現れる…その名はNEXUSⅡ…白波遊海の『絆』の極致である!

 

 

【貴様も、変身しただと!?何なのだ…貴様は何者なのだ!?】

 

「俺は…この世界を護る者、世界の行く末を見届ける決闘者だ!!」

 

 

 

 

「俺のターン!!」

 

決闘者は絆を繋ぐ!受け継がれし希望が未来を変える!!シャイニング・ドロー!!

 

遊海が紡ぐ光の軌跡…それはただ一度の奇跡を、再び呼び起こす!!

 

 

「俺は『決闘の守護者』でオーバーレイ・ネットワークを再構築!シャイニング・エクシーズチェンジ!!」

 

【なに!?】

遊海が魂の大剣を天に掲げ、光に包まれる!

 

 

 

「顕現せよ!『SNo.∞』!!英雄の魂、枷より解き放たれ…世界を希望で繋ぐ『絆』となる!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)─NEXUS』!!」

 

光の大爆発と共に遊海の身体が再構築され赤いロングコートを纏いし戦士となる…これこそ、遊海の切り札…その身を精霊と化した遊海の究極の姿だった…! ATK4000

 

 

「遊海が、遊海自身が…モンスターになっちまった…!」

 

「マジかよ、父さん…!」

 

(凄まじい力を感じる…!!)

遊馬達はモンスターと化した遊海の姿に目を奪われる、その身に宿す光は全てを照らし…放たれるオーラは遊馬達の心に希望を灯す!

 

 

【貴様自身がモンスターになるだと?ふざけた真似を…!だが、『アンチホープ』の効果により!貴様のエクシーズ召喚は無効となり!破壊される!砕け散れ!!】

 

「無駄だ、『NEXUS』のエクシーズ召喚は無効とならない!」

 

【なんだと!?】

希望を砕くべく闇を放つ絶望神…だが、その闇はNEXUSによって振り払われる!

 

 

「バトルだ!『NEXUS()』で『絶望神アンチホープ』を攻撃!!」

 

【攻撃力4000で、攻撃力5000の『アンチホープ』に攻撃だと!?】

 

「この瞬間!『NEXUS』の効果発動!相手とバトルする時、ORUを1つ使い!攻撃力を倍にして、相手に与える戦闘ダメージを2倍にする!!」

 

【なにぃぃ!?】

遊海の右腕に希望の光が集い、背中に黄金の翼が現れる!!

 

NEXUS ATK4000→8000

 

 

「受けてみろ!これが『希望』の力!俺が目指す未来の光!!」

右腕の光が邪悪を断つ巨大な光の剣となる!!

 

 

NEXUSスプリーム・カリバー!!

 

 

黄金の翼で絶望神に肉薄したNEXUSは一閃…絶望の神を真っ二つに斬り裂いた…!

 

 

 

 

【馬鹿な…我が、負ける、だと…!?あ、あ、ああああああ─!!!?

 

数多の希望を破壊し、世界を滅ぼし続けた絶望の神は…『絆』の光に敗れ、消えていった…。

 

 

e・ラー LP0

 

 

ZEXAL&NEXUS WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「勝った…!遊馬と遊海さんが勝ったあああ!!」

 

「やりやがった…!流石だな、遊馬…父さん…!」

 

「よ、良かったぁ…!」

 

《フォーウ!!》

デュエルが終わり、e・ラーの世界が消え、周囲の景色元の王宮に戻る…そこに小鳥達の歓声が響く!

 

 

「…やったな、遊馬…アストラル!」

 

「ああ!オレ達の勝ちだ!」

それぞれに変身を解いた遊海と遊馬が拳を突き合わせる!

 

(まさか、貴方自身がモンスターになるとは……流石に驚きだ)

 

「ははっ…まぁ、似たような事を知ってた、から………あ、やば──」

 

「ちょっ!?遊海─!?」

 

「遊海さん!?」

アストラルの言葉に応えようとした遊海は仰向けに倒れ込んだ…。

 

 

「……あー……だめだ、もう、うごけねぇ………おれの、復活して、最初のデュエルが、これ、か……キツ、過ぎだろ……」

 

《……マスター、デュエルに集中し過ぎて忘れてるかもしれませんが…本当に瀕死状態なので…しばらく寝ててください》

 

「いや、本当に……アドレナリンって、怖ごふっ!?」

 

「遊海さん!しっかりして─!?」

 

「無理し過ぎなんだよ父さん─!!」

遊海は派手に吐血しながら愚痴を零す…デュエルに集中するあまり、自分の身体の状態を忘れていたのだ…。

 

 

 

「ああ…みんなに、謝らないと……遊馬、凌牙…先に、行け……カイト達を…うぐっ……」

 

『心配すんな、怪我はしてるが全員無事だ』

 

(シーカー!)

カイト達を心配する遊海の近くに光が現れる、それはかろうじて意識を取り戻したアリトから状況を聞いて駆け付けたラプラスだった。

 

 

『たくっ…テメェ!オレの二の舞になってるじゃねぇか!?このバカ遊海!』

 

「うっせぇな…大声、だすなよ…あたまに、ひびく……だめだ、ねむ……い……」

 

『……はぁ、寝てろよ…状況は翠とアストラルから聞くから…』

 

 

「ラプラス…こども、たち…みどり……たの、む───」

 

『まったく…まずは自分を大切にしやがれ、バカ野郎が…』

ラプラスに後を託した遊海の意識は深い闇に落ちていった…。

 

 

………

 

 

『さーて……とりあえず飛行船に戻るぞー、カイト達もバリアンの王城で寝てるから、迎えに行かないとな』

 

「おい、父さんをもう少し丁寧に扱ってくれよ…」

 

『ん?平気さ、コイツはこれぐらいじゃ死なねぇよ』

 

「翠さんを抱えて、遊海を担ぐって…どんだけ力持ちなんだよシーカー…」

 

《フォウ、フォーウ!?(特別意訳:いや、いくらなんでも怪我人の扱いが雑過ぎでしょ!?)》

 

凌牙や翠の応急処置を済ませたラプラスは遊海を肩に担ぎ、緊張の糸が切れて眠ってしまった翠を横抱きにして立ち上がる。

なお、遊海をぞんざいに扱うシーカーに凌牙はジト目である。

 

 

 

『さっ、バリアン大陸の闇を祓った勇者と()()の凱旋だ!先に行ってるぞーー』

 

「「「えっ!?バルコニーから─!?」」」

 

(……本当に、遊海に関しては怪我人の扱いではないな…だが、あれがシーカーの『素』なのだろうな…)

遊海達を抱えたままバルコニーから地上へと飛び降りるシーカーを見て驚く遊馬達…その姿を見たアストラルは苦笑するのだった。




決闘コソコソこぼれ話



・遊馬達はウィンダ達に乗せてもらって地上に降りたが、凌牙が真月をおいてけぼりにしてしまった事を思い出し、2週目をする羽目になったそうな。


「…そういえば、ベクターの奴はどうした?」

「「あっ…(汗)」」

『遊馬!ナッシュ!お前ら何処に行ったんだよ─!?白波はどうなった─!?』←少し遅れて玉座の間に辿り着いた真月



・ラプラスがやけに遊海をぞんざいに扱ってるのは、出合い頭に殴られた意趣返しだったりする、対して翠はものすごく丁寧に運んだ為にエメルから後で怒られたらしい。


「ダメじゃないですか!やられたからってやり返したら!!遊海さん本当に死にかけてるじゃないですか─!!」

『翠を安全に運ぶのを優先した、他意は無い』

「ありまくりですよね!?」

『……決闘以外では死なないから問題な──』

「………泣きますよ…!」

『すまん…ついムカッとした…先に殴ってきたコイツが悪い』 

「もう…子どもじゃないんだからぁ……」

((……やはり、シーカーもエメルには頭が上がらないようだ…やはり、彼も『白波遊海』なんだな…))

※このあと滅茶苦茶回復魔法を使った。


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エピローグ〜希望は消えず、絆は共に〜

こんにちは!S,Kです!

『劇場版』エピローグとなります!アストラル世界を救った遊馬と遊海…2人の迎える結末は…。


「う……ん……?ここは…?」

 

【目が覚めたようじゃの…】

 

「…かみさま……」

ぼんやりとした意識の中、遊海が目を覚ます…そこは見慣れた『白の世界』…神のいる空間だった…。

 

 

【神界でトラブルがあっての…ドン・サウザンドの城で意識を失ったお主と疲れで眠ってしまった翠の魂を此方に呼んだのじゃ、体はアストラル世界の王宮に寝かされておるから安心しなさい】

 

「……みどり……そうだ、遊馬と一緒に、e・ラーと戦って…」

 

「うう…ん…遊海、さん…?」

 

「みどり……」

 

【……意識がはっきりするまで、少し掛かりそうだの……】

遊海に続いて意識を取り戻した翠を見たデウス神は少し時間を置く事にした…。

 

 

 

………

 

 

 

【………と、言う事が神界で起きていたのじゃ】

 

「新人の神様のミスで『漫画ZEXAL』世界のe・ラーが俺達の世界に紛れ込むって………そんなのどーしろと……」

 

「あはは…ミスは誰にでもありますから……」

状況を把握した遊海と翠は一連の事件の原因を聞かされる…なお、遊海は頭を抱え、翠は苦笑している…。

 

 

【お主達の倒したe・ラーは元の世界に送還済みじゃ、お主達の世界で再び現れる事はないじゃろう】

 

「よかった…」

e・ラーはダークネスと同じく、時間を掛ければ復活する「不滅」の存在…それを知っていた遊海は胸を撫で下ろした…。

 

 

 

 

「……そういえば…神様、どんな『ミス』でこんな事に…?」

 

【それが、のう…】

 

「……?」

翠の問いにデウス神は口籠る…そして…。

 

 

【その、な……ゴニョゴニョ…じゃ…】

 

「へっ…?」

 

【はあ……世界の管理簿に…()()()()()()()()()()()!!】

 

「「ええぇぇ〜……」」

それはあまりにもしょうもない理由…それを聞いた遊海達も思わず呆れてしまう…。

 

 

【書類を手元に持っている時は飲食物には気を付けるようにと注意したんじゃが……新米神は見習いに降格して修行のし直しじゃて……本当にすまなかった!あの馬鹿に変わって謝罪する…】

 

「か、神様!大丈夫ですって…!なんとか事件は解決しましたし……」

 

【……お主が心の広い男でよかったわい…】

完全に神界側が原因で起きた事件だった事で遊海達に謝罪するデウス神だったが…遊海の言葉に安堵の溜息をつくのだった…。

 

 

 

 

 

【さて…謝罪と此度の問題を解決した礼として教えよう……ズァークは既に()()()()()()

 

「「っ!?」」

デウス神が謝罪の為に伝えた言葉に遊海と翠は息を呑む…。

 

 

「ズァーク」…それは『遊戯王ARC-V』の元凶、戦闘狂ならぬデュエル狂に堕ちた…哀しき怪物の名である。

 

 

 

【流石に何処に、いつ生まれたのかまでは教えられぬが……遊海、翠…ワシはそこまで心配はしておらぬのじゃ】

 

「と、言うと…?」

 

【お主達がDMの時代からZEXALの時代まで存在した事で…その存在が『抑止力』となり、お主達の世界の治安も、人々の民度も他の遊戯王世界よりも格段に良い世界となっている…決してお主達が知るような『破滅の未来』にはならぬはずじゃ!】

 

「神様…」

それはデウス神からの朗報…遊海が仲間達とともに『最善』を掴む為に歩んだ旅路、それは確かに実を結んでいたのだ。

 

 

【それに、しばらくは世界も平和じゃろう…凌牙と璃緒……いんや、子供達と共に穏やかに過ごしなさい……そろそろ時間じゃの…今回は本当にご苦労じゃった!】

 

「……ありがとうございます、神様!」

 

「手助けありがとうございました!」

 

【ほほっ…お主達の歩む旅路、これからも楽しみにしているぞ〜!】

 

遊海と翠の身体が金色の粒子となって融けていく…デウス神は柔らかな笑顔で2人を見送った…。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

「………あガッ…!?からだ、痛え…!!」

アストラル世界の王宮で遊海は目を覚ました…だが、その瞬間に遊海は激痛に顔を歪める。

……無理もない話だが、e・ラーに乗っ取られた状態で翠と凌牙の全力攻撃を喰らい、その直後に元凶であるe・ラーと戦い…さらにNEXUSへの変身……常人なら即入院コースの瀕死状態である。

 

 

 

「あっ…父さん!?」

 

「大丈夫か!?」

 

「凌牙…璃緖…ごめん、心配掛け……っ〜〜!?」

 

「「無理して起きるなって!/起きないで!!」」

遊海が意識を取り戻した事に気付いた凌牙と璃緖が遊海に呼びかける…そして起き上がろうとした遊海は激痛で悶絶し、無理矢理寝かされる…。

 

 

『馬鹿野郎が、不死身とはいえ無茶しやがって…』

 

「ラプラス…お前には言われたく、ごふっ!?」

 

『はいはい、回復してやっから大人しくしてろ…お前で最後だ、他の子供達は治したから安心しとけ』

 

「(……やっぱり兄弟みたい…)」

ラプラスに回復を受ける遊海…その様子を見た璃緒はそんな事を思った…。

 

 

………

 

 

【白波遊海、事件のあらましはアストラルと遊馬から聞いた……災難だったな】

 

「ええ、まさか子供達の敵になってしまうとは…恥ずかしい限りです…」

 

【いいや…仮にアストラルや遊馬が邪神に呑まれていれば、さらに事態は悪化していただろう…お前が身を挺して彼らを守ったからこそ、最悪の事態は避けられたのだ】

 

「そう言ってもらえるなら、幸いです…」

なんとか動けるまでに回復した遊海はアストラル、そしてエリファスと面会し、慰労を受ける…。

 

 

「バリアン大陸の様子は…?」

 

【うむ、融合反対派は邪神e・ラーに取り込まれていたようでな…邪神を倒した直後に開放されたようだ】

 

(そしてe・ラーの中で我々の戦いを見ていたらしい…我々を『命の恩人だ』と言って、アストラル世界との融合を受け入れてくれたんだ)

 

「そうか…良かった…」

七皇の王城に集まっていたアストラル世界との融合反対派はe・ラーによって取り込まれてしまっていた…しかし、e・ラーの中から奮闘する遊馬や遊海の姿を見た事で考えを改めてくれたらしい。

 

 

【これからバリアン大陸はアストラル大陸側と少しずつ近付き、共に平和を目指していく事になる…今回はお前達に助けられた…感謝する】

 

「頑張ったのは遊馬達さ、俺は……」

 

(貴方のアシストがなければ、我々はe・ラーを倒せなかった…それ以上自分を卑下するのはやめてくれ、遊海)

 

「ありがとう、アストラル」

 

 

 

 

 

【さて……これで、アストラル世界の危機は過ぎ去った…改めて感謝する、勇敢な人間の勇者達よ】

 

「へへっ…なんか照れるなぁ…」

エリファスは改めて遊馬と仲間達に感謝を伝える…。

 

 

【できるならば…我らが用意できるだけの褒賞を与えたいのだが…】

 

「七皇は特に褒美はいらねぇよ、俺達はバリアンの仲間達を守れた…それだけで充分さ」

エリファスの言葉に凌牙は首を振る…なお、真月は『勿体無い』と言いたげな表情である。

 

 

「ならば…オレ達は異世界に関する研究をしている、それにアストラル世界の知恵を貸して貰いたい」

 

【なるほど…ならば、アクル達五命星を頼ると良い…彼らは前世から科学者だと聞いている、お前達の力になってくれるだろう】

 

「感謝する」

カイトとアークライト一家はアストラル世界からの技術協力を受ける事になった。

 

 

「オレは…特にはいらねぇや!アストラルに会えて、もう一度一緒にデュエルできた!それがオレの1番のご褒美だぜ!」

 

(ふっ…遊馬、きみらしいな)

遊馬はエリファスにそう伝える…だが、アストラルは分かっていた…2人は再び別れる運命なのだと…。

 

 

 

【ふむ……アストラル、お前に新たなる『任務』を与える】

 

(任務…?)

遊馬とアストラルの表情を見たエリファスはアストラルに新しい『任務』を与える。

 

 

【任務内容は…ドン・サウザンド消滅による()()()()()()影響の調査、期限は()()()とする】

 

 

(エリファス!?それは…!)

 

「それって…!!」

 

「ふっ…喜べ、遊馬…アストラルとまた一緒に過ごせるって事だぞ?」

 

「あ、アストラル…!!」

 

(…また世話になるぞ、遊馬)

 

アストラルぅぅ〜!!」

それは遠回しなアストラルと遊馬への「褒美」…2人はまた一緒に過ごす事ができるのだ…!

 

 

 

『良いのか?エリファス』

 

【もちろん、何の制限も無くと言う訳にはいかない…『ヌメロン・コード』管理の為に数枚のナンバーズをアストラル世界へ残す事、それから月に1度の報告を義務付けます】

 

『実質無制限じゃないか?それ…』

思わぬ事に喜び合う遊馬とアストラルを前にラプラスがエリファスに話しかける…エリファスはほぼ無制限にアストラルが人間界に行く事を許したのだ。

 

『アンタも、ずいぶん融通が効くようになったなぁ…』

 

【私もまた成長したという事だ、シーカー】

 

『ははっ…違いない!』

 

 

 

 

 

(では…エリファス、人間界の調査に出発する!)

 

「エリファス!また何か手助けが必要だったら呼んでくれ!」

 

【うむ、頼りにしているぞ、遊馬!】

飛行船に乗り込んだ遊馬はエリファスへと大きく手を振る!

 

 

『遊海!翠!また遊びに来るといい!』

 

『いつでも歓迎するわ!』

 

「ああ!達者でなラプラス!エメル!」

 

「次はお土産持ってくるね〜!」

遊海と翠もラプラスとエメルに別れを告げる…再びの再会を約束して…。

 

 

「それじゃあ…帰ろうぜ、オレ達の世界に!!」

 

「『「『おう!』」』」

 

 

飛行船は人間界に向けて舵をきる…遊馬達のアストラル世界を守る大冒険は最高の結末を迎えたのだった…。

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

『それでよお!そこでアリトのカウンターが決まったんだ!あれは凄かったぜ!』

 

「へぇ…オレの方は蒼炎の悪魔に追い詰められてなぁ…アストラルにナンバーズを預けられてなかったら、マジでやばかったぜ…」

 

『私もだ…ミハエルの機転とナンバーズがなければ、勝つ事はできなかっただろう…』

 

「ドルベが相手の防御策を使わせてくれたおかげさ!2人の勝利だよ!」

人間界に帰還する飛行船の中、七皇を始めとした仲間達はそれぞれのデュエルについて語り合っていた…。

 

 

 

『おい!ベクター、お前はどんな奴と戦ったんだ?階段で遊馬達を進ませる為に1人で戦ったんだろ?漢気あるじゃねぇか!』

 

「……悪いけど、オレのデュエルについては()()()()()()だ、勝つには勝ったんだが……詳しくは話せねぇ」

 

『ベクター…まさか、また何かやらかしたのではないだろうな?』

 

「違げぇよ!!…一緒に戦った奴との『約束』なのさ」

 

『『??』』

アリトとドルベの問いに真月は答えない…話してはならない、となんとなく思った故だった。

 

 

 

 

 

『攻撃力∞…攻撃力10万ですらデュエルモンスターズで見ない数字だというのに…君達はよく勝つ事ができたね…』

 

「ああ、ミザエルがプレイヤーを倒す戦術に気付いてくれたおかげだ…」

 

『それも、遊海がこの「ANo.」を私に託してくれたおかげだ…流石は地上の英雄だな』

カイトとミザエルはトロンとクリスに規格外の相手とのデュエルについて語っていた…。

 

 

「遊馬によると「闇のデュエリスト」達は遊海さんの記憶から生み出されたらしいが……あの人はいったいどれだけの死線を潜ってきたのだろうか…」

 

『彼は100年以上の時を生きて来た…つまり、それだけの戦いがあったという事さ……彼が背負ってきたモノを理解できるのは……翠と彼の精霊達以外にはいないだろうね』

クリスの言葉にトロンが答える…英雄の背負ってきた重責の重さを…。

 

 

『そういえば…ナッシュとメラグ、遊馬達はどうした?飛行船が出てから姿を見ないが…?』

 

「そういえば……オービタル、遊馬達はどうした?」

 

《カイト様、それが……》

 

「……ああ、そういう事か」

ミザエルの言葉を聞いたカイトが操縦桿を握るオービタルに問い掛ける…そしてオービタルは少し困ったようにある場所に視線を向け…それだけでカイトは状況を理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

「むにゃ…」

 

「………」

 

「くぅ…すぅ…」

 

《キュウ…キュウ…》

 

 

 

「かぁ〜……かぁ〜……」

 

「ふにゅ……」

 

(………)

 

飛行船内の隅…そこでは6人が寝息を立てていた。

 

 

壁に寄りかかって眠る遊海…その膝ではフォウが、右肩には翠が…左肩には凌牙が寄りかかり、凌牙の肩には璃緖が寄りかかって寝息を立てている。

 

 

そして…少し離れた場所で遊馬と小鳥が同じように壁に凭れ、寄り添いながら眠っている、近くにはアストラルが浮かんでいるが…遊馬達の邪魔をしないよう、静かに目を閉じていた…。

 

 

 

《起こしマスか?》

 

「いや、いいだろう……ギリギリまで寝かせておこう」

 

《カシコマリ!》

カイトはオービタルの問いに応えると騒いでいる仲間達のもとへ向かう…彼らの安息を邪魔しないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

遊海も遊馬も…今までで1番幸せそうな顔で眠っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

断章 聖魔融合領域アストラル世界 完



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幕間〜ハートランドの日々〜
望まれたデュエル〜勇者と英雄〜


こんにちは!S,Kです!

今回から幕間の物語編!戦いを終えた遊馬や遊海の日常をお楽しみください!


それでは、最新話をどうぞ!


《主ヨ、此度ハ本当ニスマナカッタ…》

 

《我らが主を止めなければならなかった…》

 

《不甲斐ない…》

 

「謝るのは俺の方だよ、ラビエル、ハモン、ウリア…お前達にも辛い思いをさせた…本当にごめんな…」

 

 

アストラル世界での大決戦から数日が過ぎ、傷の癒えた遊海はリビングで小さな姿で現れた三幻魔達と言葉を交わし……否、謝り合っていた。

 

 

神界のミスによって別世界から紛れ込んだ邪神e・ラー…その邪神に取り憑かれてしまった遊海は遊馬達の敵となり、大騒動を引き起こしてしまった。

 

その最たるものが…翠と凌牙を相手に繰り広げた『三幻魔』デッキを使ってしまったデュエルだった…。

人間界に戻ってから自分の醜態を聞かされた遊海は精神的に大ダメージを受け、傷が癒えるのを待って三幻魔達を喚び出したのだ…。

 

 

 

《マスター、全てはe・ラーの行いです…あの邪神は『人を操る』事に特化していました、それもマスターの耐性までも無効化して……》

 

「それでも、俺が油断したのが一番の原因だ…もっと遠距離から攻撃するか、撤退すればこんな事には……」

 

《ユウミ…あの時、貴方が退いていたら…e・ラーは他の者達…遊馬や凌牙、アストラルに取り憑いていたかもしれません……そうなれば、さらなる混乱を生んでいました…エリファスが言った通り、貴方は彼らを確かに()()()んです、もう落ち込むのは止めなさい》

 

「彩華、フレア……ああ、そうする……本当に、俺は精霊に恵まれたなぁ…」

落ち込んでいた遊海はアヤカとフレアの言葉で少し元気を取り戻す…。

 

 

《主ヨ、我ラモ不覚ヲトッテシマッタ…》

 

《しかし、我らも強くなり…力もある程度なら制御できるようになってきた》

 

《我らはこれからも主の力になる…だから、頼ってほしい》

 

「……ありがとう、みんな……こんな俺だけど、これからもよろしくな」

三幻魔達も遊海に声をかける…優しい精霊達の言葉に遊海は目を潤ませたのだった…。

 

 

 

 

 

《しかし…お前がいきなり闇に呑まれた時は肝を冷やした…アヤカに十代達を呼んで貰うか迷ったぞ》

 

「ごめん、本当に心配を掛けた」

 

《フォウ、フォ〜ウ》

三幻魔の対話を終えた遊海はメガロックとフォウと一緒に中庭で日向ぼっこをしていた…傷は治ったが、体力が戻らず安静にしているのだ。

 

 

《だが、これで世界は平和を取り戻したのだ…しばらくはのんびり過ごせるな》

 

「ああ、ちょっと頑張り過ぎたから…しばらくは充電期間だな…う〜ん、今日は太陽の光が気持ちいいなぁ…」

遊海は伸びをしながら芝生に横になる…戦いの後の安息の時、それは遊海が一番大切にしているものだった。

 

 

《フォウ!…ファ〜…》

 

「………やっぱり、フォウの話してる事が分からないや……1回死んだせいかなぁ…?」

 

《う〜む…そもそも動物と話せる事が人間としてはすごい事らしいが…フォウはあまり以前とは変わらぬしなぁ…》

寝転がった遊海の腹にフォウが静かに乗り、体を丸める…そんなフォウを撫でながら遊海が呟いたのは、戦いの後の唯一の変化……フォウの『言葉』が分からなくなってしまった事だった。

 

 

ヌメロン・コードによる『奇跡』の復活を遂げた遊海…だが、それ以来フォウの言葉が分からなくなってしまっていた。

猫会話の専門家であるキャットちゃんに尋ねたところ……

 

『前とはフォウくんの話し方…意思の伝わり方のニュアンスが違う気がするニャン、戦いの時に何かあったのかも?』という事らしい。

 

遊海は変わらず元気なフォウを見て安心しているが…少し寂しさも感じていたのだった。

 

 

 

………

 

 

 

ピンポーン!

 

 

「は〜い!あら、遊馬君!小鳥ちゃん!いらっしゃい!」

 

「こんにちは!翠さん!」

 

「オッス!遊海に会いに来たんだ!」

 

「ふふっ、遊海さんも喜ぶわ!さぁ入って!」

少し時間が経ち下校時刻になる頃、遊馬と小鳥が白波家へとやって来た、戦いが終わり平和な時間を過ごす遊馬…だが、1つだけ変わった事があり……。

 

 

「アストラル!出て来いよ!」

 

(ふぅ…やはり、なかなか慣れないな…)

 

「仕方ねぇよ、他の奴らにも姿()()()()()()()んだから…」

遊馬が『皇の鍵』に声を掛けるとアストラルが現れる、エリファスの『指令』によって人間界に戻って来た彼だったが…大きな変化が起きていた。それは…本来、姿が見えなかったアストラルが()()()()()姿が視えるようになってしまった事だ。

 

 

おそらく全てのナンバーズを回収し、記憶と力を取り戻した事で「存在力」が強まった事が原因なのだが…アストラルは精霊達のような『霊体化』をした事がなかった為、練習中で…九十九家や白波家などの関わりがある場所以外では『皇の鍵』での缶詰め生活なのである。

 

なお、余談だが…アストラル世界から帰還した遊馬が家に帰った際、アストラルと明里が鉢合わせしてしまい、幽霊と勘違いされて失神してしまったとか…。

 

 

 

 

「遊海さ〜ん!遊馬君達が遊びに来ましたよ〜!」

 

「オッス!」

 

「んむ…?おぉ、遊馬、小鳥ちゃん、アストラルよく来たなぁ…ふぁ…」

 

(完全に気が抜けているな、遊海…)

中庭でウトウトと微睡んでいた遊海は翠の声で目を覚ました、その穏やかな表情はアストラルが思わず苦笑してしまうほどだった。

 

 

「傷はもう大丈夫なのか?」

 

「ああ!もう少し休めば全快できるさ、心配掛けたな!」

 

「良かった〜!」

元気を取り戻した遊海を見た遊馬は安堵の声を漏らした。

 

 

 

「今日はさ!遊海に頼みたい事があって来たんだ!」

 

「俺に頼み事?珍しいじゃないか?」

トリシューラプリンを食べながら遊馬が今日来た目的を口にする。

 

 

「オレとアストラルとさ、()()でデュエルして欲しいんだ!」

 

「おぉっ!?いきなりどうした?」

 

「ほら、e・ラーとのデュエルの時にオレ達が『最強のデュエリストだ!』って言ってくれただろ?」

 

「ああ、言ったなぁ…」

e・ラーとの最終決戦の時、遊馬は久々の『悪意』にたじろいでしまった…遊海はそんな遊馬の背中を押す為に遊馬とアストラルを『最強のデュエリスト』と呼んだのだ。

 

 

「オレにとっての目標はアストラルとカイト…そして『最強』は遊海の事だったんだ!でも…オレは遊海に1回も勝ててねぇ、だから!オレが強くなったのを確かめて欲しいんだ!」

 

「なるほどな…いいだろう、相手になる!」

 

「よっしゃ!!」

遊馬の強い眼差しを受け、遊海は遊馬の挑戦を受ける!

 

 

「その代わり…ルールを決めよう」

 

「ルール?」

 

「簡単なルールだ、お互いに『ZEXAL』『NEXUS』そしてシャイニングドローは禁止…『決闘者』としての真っ向勝負だ!」

 

「わかった!!」

 

(遊馬、私達2人で英雄を乗り越えるぞ!)

 

「おう!」

 

 

 

 

 

「遊馬!アストラル!頑張れ〜!!」

 

「遊海さん!やりすぎないようにね〜!」

 

《フォーウ!》

小鳥と翠の声援を受けながら、白波家の中庭で遊海と遊馬、アストラルが対峙する!

 

 

「準備はいいか!」

 

『おう!!いくぜぇ!!デュエルディスク、セット!D・ゲイザー、セット!』

 

「デュエルターゲット・ロックオン!」

 

 

─ARビジョン、リンク完了!─

 

拡張現実の中で、英雄と勇者の戦いが始まった!

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

遊海LP4000

遊馬LP4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「遊馬、アストラル!このデュエル…()()()の戦い方をさせてもらうぞ!俺はレフトペンデュラムスケールにスケール1の『クリフォート・アセンブラ』を!ライトペンデュラムスケールにスケール9『クリフォート・ツール』をセッティング!」

 

『あのカードは…!遊海の本気デッキ!?』

 

(なんだと…!?)

遊海の背後に光の柱が出現し、その中に紫と黄色の核石(コア)を持つ巨大な機械達が現れる…そのデッキは遊海のエースデッキ『クリフォート』…。

 

遊馬は記憶を失った子供遊海と翠の本気決闘でその強さを目の当たりにしていた…!

 

 

「ペンデュラムカードはペンデュラムゾーンにある時、魔法カードとして扱う…俺は『ツール』のペンデュラム効果発動!800ライフを払い!デッキから『クリフォート』カード、『クリフォート・ゲノム』を手札に加える!」

 

遊海LP4000→3200

 

 

「俺はスケール1の『アセンブラ』とスケール9の『ツール』でペンデュラムスケールをセッティング!これによりレベル2〜8の『クリフォート』モンスターを手札から特殊召喚できる!!」

 

(モンスターの、同時召喚…!)

 

「我が魂を守りし大いなる力よ…今こそ、その力を示せ!ペンデュラム召喚!手札から現れろ!レベル6『クリフォート・アーカイブ』!レベル6!『クリフォート・ゲノム』!レベル7!『クリフォート・ディスク』!!」

遊海の頭上に異次元の扉が開き、緑・橙・青色の核石を持つ巨大な機械が現れる! ATK2400 ATK2400 ATK2800

 

 

(ペンデュラム、召喚…!一気に上級モンスターが3体も…!)

 

「ただし、特殊召喚された『クリフォート』モンスターはレベル4、元々の攻撃力は1800になる」

 

 

アーカイブATK2400→1800

 

ゲノムATK2400→1800

 

ディスクATK2800→1800

 

 

『それでも、レベル4のモンスターが3体…!』

 

「残念な事に『クリフォート』共通のペンデュラム効果で、俺はクリフォートモンスター以外のモンスターを特殊召喚できない…そして、『クリフォート』のエクシーズモンスターはいない……だが、これで俺の()()を呼び出せる!俺は3体の『クリフォート』をリリース!現われろ!我が相棒!我が魂!!『アポクリフォート・キラー』!!」

3体のクリフォートの核石が異次元に吸い込まれる…そして異次元の彼方から、虹色の核石が輝く巨大な要塞が現れる! ATK3000

 

 

《遊馬!アストラル!マスターは正真正銘の本気です!気を抜けばすぐに終わりですよ!》

 

『アヤカ…!』

 

「『キラー』の効果発動!1ターンに1度、相手は手札・フィールドのモンスターカードを墓地に送らなければならない!」

 

『来たか…!オレは手札の「タスケルトン」を墓地に送るぜ!』

 

「上手く防御カードを引いてたか…カードを1枚伏せ、ターンエンド!さらに『アセンブラ』のペンデュラム効果発動!このターンにリリースした『クリフォート』の数1体につき1枚ドローできる、3枚ドロー!!」

 

遊海LP3200

キラー (Pスケール アセンブラ ツール) 伏せ1 手札0→3

 

 

 

 

(あれが遊海の切り札…アヤカの本当の姿か…!)

 

『ああ、「アポクリフォートキラー」はレベル・ランク10より低いモンスターの効果を受けず、魔法・罠カードの効果も受けない…それに、特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力を500下げちまうんだ…!』

 

(つまり、正面突破するには攻撃力3500以上のモンスターか、ランク10以上のモンスター効果が必要になるのか…!強敵だな…!!)

 

「あれ?なんで『キラー』の効果知ってるんだ??」

アストラルに『キラー』の効果を説明する遊馬を見た遊海は首を傾げる…遊海の記憶では遊馬の前でクリフォートを使った覚えがなかったからだ。

 

 

「遊海さーん!前に遊海さんが子供になった時に使ったんですー!!」

 

「…あ、そういう事ね(汗)……こほん、さぁ!かかってこい!遊馬!」

翠の言葉に遊海は納得し、遊馬へと声をかける!

 

 

 

 

『いくぜ、遊海!オレのターン!ドロー!』

『「ゴブリンドバーグ」を召喚!』

赤いプロペラ飛行機に乗るゴブリンが現れる! ATK1400

 

『「ゴブリンドバーグ」の効果発動!自身を守備表示にする事で、手札の「ゴゴゴジャイアント」を特殊召喚!』

青い巨大なゴーレムが現れる! ATK1800→1300

 

 

「その瞬間!永続罠発動!『一回休み』!このカードは自分の場に特殊召喚されたモンスターが存在しない時に発動できる!特殊召喚された効果モンスターは守備表示になる!」

 

『なんだって!?』

ゴゴゴゴーレムの足元に『一回休み』と書かれたマスが現れ、守備表示になってしまう…。 

 

ゴゴゴゴーレム ATK1300→DEF1200

 

 

『でも、やるしかねぇ…!オレはレベル4の「ゴブリンドバーグ」と「ゴゴゴゴーレム」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!』

 

 

39

 

 

『現われろ!「No.39」!「希望皇ホープ」!!』

遊馬とアストラルのエース、白き希望の戦士が現れる! DEF2000→1500

 

『オレはカードを2枚伏せて、ターンエンドだ!』

 

遊馬LP4000

希望皇ホープ 伏せ2 手札1

 

 

 

「ふむ、堅実な1手だな…さぁ…耐えてみせろ!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『キラー』の効果発動!相手は手札・フィールドのモンスターを墓地に送らなければならない!」

 

『手札の「タスケナイト」を墓地へ送る!』

 

「ならば…俺はスケール1の『アセンブラ』とスケール9の『ツール』でペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから現われろ!『アーカイブ』!『ディスク』!そして永続罠『一回休み』の効果で守備表示になる!」

再び緑と青の核石を持つ機械達が現れる!

 

アーカイブ☆6→4 ATK2400→1800→DEF1000

 

ディスク☆7→4 ATK2800→1800→DEF1000

 

 

(エクストラデッキからモンスターだと!?)

 

『ペンデュラムモンスターは破壊されたり、リリースされるとエクストラデッキに表側で加わるんだ!』

 

(これが、世界を守り続けた『英雄』の本気か…!!)

アストラルは本気の遊海の実力に戦慄する…もしかしたら、『混沌の邪神』すらも一人で倒してしまうのではないかと…!

 

 

「そして2体のモンスターをリリース!『クリフォート・シェル』をアドバンス召喚!」

紫色の核石を持つ、巻き貝型の機械が現れる! ATK2800

 

 

『新しいクリフォート…!』

 

「そしてアドバンス召喚の為にリリースされた『アーカイブ』の効果発動!相手モンスター1体を手札に戻す!エクストラデッキに戻れ!『希望皇ホープ』!!」

 

(遊馬!!)

 

『させるかよ!カウンター罠『ナンバーズ・プロテクト』発動!自分の場に「No.」が存在し、相手がモンスター・魔法・罠の効果を発動した時!その効果を無効にし、破壊する!』

 

「上手いな!」

アーカイブの幻影が放った光線をアストラル数字の描かれたシールドが跳ね返す!

 

 

「バトルだ!『シェル』で『希望皇ホープ』を攻撃!」

 

『やらせねぇ!「希望皇ホープ」の効果発動!ORUを1つ使い!相手モンスターの攻撃を無効に─!』

 

「無駄だ!『シェル』は自身のレベル、8よりレベル・ランクの低いモンスター効果を受けない!さらに!守備モンスターを攻撃した時!攻撃力が上回った分だけ貫通ダメージを与える!!」

 

『っ!?うわああああ!?』

ホープのムーンバリアを突き破ったシェルの回転突撃が遊馬にダメージを与える!

 

遊馬LP4000→2700

 

 

「さらに通常召喚した『シェル』は2回攻撃ができる!再び『ホープ』に攻撃!!」

 

(遊馬!『タスケルトン』だ!!)

 

『墓地の「タスケルトン」の効果発動!墓地のこのカードを除外する事で!モンスターの戦闘破壊を無効にし、バトルダメージを0にする!!』

 

《た〜す〜け〜るトーン!!》

遊馬の墓地から黒い子豚が飛び出し、自身の吐き出した骨を使って突進を受け止める!

 

「いい判断だ!俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!さらに『アセンブラ』のペンデュラム効果により2ドロー!」

 

遊海LP3200

キラー シェル 一回休み 伏せ2 手札1→3

 

 

 

『あ、あぶね〜!?』

 

(貫通効果を持つ『シェル』に、モンスターを強制的に墓地に送る『キラー』…あまりにも硬い…!)

なんとか遊海の猛攻を凌いだ遊馬とアストラル…だが、英雄の壁は2人が考えていたよりも高かった…!

 

 

『でも、デュエルはここからだ!いくぜ、アストラル!!』

 

「頑張れ〜!遊馬─!!」

小鳥の声援を受けながら、遊馬は英雄に立ち向かう!

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『よし…!「カードカー・D」を召喚!』

カードのように薄い青い車が現れる! ATK800→DEF400→0

 

 

『「カードカーD」の効果発動!自身をリリースして2枚ドロー!!そして速攻魔法「サイコロン」発動!サイコロを振ってその出た目で効果が発動する!』

 

「勝敗を運命に託すか…!やってみろ!」

 

『いくぜ…!ダイスロール!!』

遊馬が手元に現れたサイコロのARビジョンを投げる、その出目は……5!!

 

 

 

『しゃあ!!『サイコロン』の効果発動!相手の魔法・罠を2枚破壊する!『一回休み』と伏せカード1枚を破壊!』

 

「流石の運命力だ…!」

サイコロのARビジョンが高速回転…「一回休み」と伏せられていた「スキルドレイン」を破壊する!

 

 

『そして…もう1枚はこれだ!!「RUM-ヌメロン・フォース」を発動!』

 

(このカードは自分のエクシーズモンスターをカオス化し、1つランクアップさせる!)

 

『オレは「希望皇ホープ」1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!』

 

 

39

 

 

『現われろ!「CNo.39」!希望に輝く魂よ!森羅万象を網羅し、未来を導く力となれ!「希望皇ホープレイ・ヴィクトリー」!!」

光の爆発がフィールドを照らす、そしてヒロイックな赤と白のアーマーを纏う勝利の皇帝が現れる! ATK2800→2300

 

 

「現れたか『ホープレイ・ヴィクトリー』!」

 

(そして『ヌメロンフォース』の効果により『ヴィクトリー』以外の全てのカード効果が無効となる!)

フィールドを照らす『全能の力』のカケラの光が「キラー」を除く、全てのクリフォートの効果を無効化する!

 

 

『バトルだ!「ヴィクトリー」で「キラー」を攻撃!そして効果発動!ORUを1つ使い!バトル終了時まで相手モンスターの効果を無効にし!さらにその攻撃力分、自身の攻撃力をエンドフェイズまでアップする!』

 

(当然、『キラー』の効果は無効にならない!だが…攻撃力をアップする効果は無効にできない!ビクトリー・チャージ!!)

 

「流石だ…!」

ヴィクトリーの体からさらに1対の腕が出現、4本のホープ剣を構える!

 

ヴィクトリー ATK2300→5300

 

 

『いっけぇ!ホープ剣ダブル・ヴィクトリースラッシュ!!』

 

《っ─!!?》

 

「すまん、アヤカ…!ぐううぅっっ…!!」

ホープ剣による4連撃が機械要塞を両断…爆砕する!!

 

 

遊海LP3200→900

 

 

『よっしゃあ!!』

 

(アヤカ…『キラー』が倒れた事でフィールドの『ヴィクトリー』の攻撃力は元に戻る!)

 

ヴィクトリーATK5300→5800

 

 

『オレはこれでターンエンドだ!』

 

遊馬LP2700

ヴィクトリー 伏せ1 手札0

 

 

 

 

「遊馬!アストラル!すごい!遊海さんを追い詰めたわ!!」

 

『へへっ…やってやったぜ!!』

 

((伏せカードは『ハーフ・アンブレイク』、仮に『ヴィクトリー』が破壊されても『タスケナイト』で耐える事ができる……問題は…!))

遊海を天運とタクティクスで追い詰めた遊馬達、追い詰められた状況の中で遊海は…

 

 

「はは…ははははは!!流石だ、遊馬!アストラル!ドン・サウザンドを倒して世界を救っただけはある!お前達は本当に強くなった!!」

遊海はただ笑っていた…!

 

 

「だが、遊馬…俺はさらに!その上へ行こう─!!」

 

『っう…!すごい覇気だ…!!』

遊海は闘志を開放し、デッキトップに手をかける!

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

「速攻魔法『揺れる眼差し』発動!お互いのペンデュラムゾーンのカードを全て破壊!そして破壊したペンデュラムカードの数によりさらなる効果を発動する!まず、1枚破壊した事で相手に500ダメージを与える!」

 

『うわっ!?』

遊海の背後の光の柱が砕け散り、遊馬にダメージを与える!

 

遊馬LP2700→2200

 

 

「さらに!2枚破壊した事でデッキからペンデュラムモンスター『クリフォート・アセンブラ』を手札に加える!そして俺は再びスケール1の『アセンブラ』とスケール9の『ツール』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

遊海の背後に再び光の柱が現れる!

 

 

「揺れろ!魂のペンデュラム!我が魂に宿る大いなる力を解き放て!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから現われろ!レベル5『クリフォート・ツール』!レベル5『クリフォート・アセンブラ』!レベル6『ゲノム』レベル6『アーカイブ』!」

 

『4体のモンスターの同時召喚!?』

フィールドに黄・紫・橙・緑の核石を持つ機械達が並び立つ! DEF2800 ATK2400 ATK2400→1800 ATK2400→1800

 

 

「『ツール』のペンデュラム効果発動!800ライフを払い!デッキから2体目の『アポクリフォート・キラー』を手札に加える!そして装備魔法『機殻の生贄(サクリフォート)』を『ツール』に装備!装備モンスターは2体分のリリースにできる!俺は2体分となった『ツール』と『アセンブラ』をリリース!現われろ!『アポクリフォート・キラー』!!」

 

『2体目!?』

再び虹色の核石が輝く要塞が顕現する! ATK3000

 

遊海LP900→100

 

 

「さらに『機殻の生贄』の効果発動!このカードがフィールドから墓地に送られた時!デッキからクリフォートカード『機殻の要塞』を手札に加える!そしてフィールド魔法『機殻の要塞(クリフォートレス)』を発動!!」

キラーから放たれたエネルギーフィールドがデュエルフィールドを覆っていく…!

 

「『機殻の要塞』が存在する時、クリフォートモンスターの召喚は無効にならず!さらに通常召喚に加え、クリフォートモンスターを召喚できる!俺は『シェル』『ゲノム』『アーカイブ』をリリース!手札から現われろ!3体目の『アポクリフォートキラー』!!」

 

『うっそだろぉ!?』

フィールドに2体の巨大要塞が並び立つ! ATK3000

 

 

「リリースされた『アーカイブ』の効果!『ホープレイヴィクトリー』を手札…エクストラデッキに戻す!さらに『ゲノム』の効果!伏せカードを破壊!」

 

(これが、遊海の全力か…!!)

遊馬のフィールドのカードが全て消え去る!

 

 

 

「バトルだ!『キラー』で遊馬にダイレクトアタック!デストロイ・キャノン!!」

 

『まだだ!墓地の「タスケナイト」の効果発動!墓地のこのカードを──!!』

 

「ダメ押しだ!永続罠『虚無空間(ヴァニティー・スペース)』発動!その効果により、お互いに特殊召喚を封じる!」

 

『しまっ─!?』

 

「放て!フルバースト─!!」

ダメ押しを受けた遊馬は攻撃を避ける事ができず、キラーの主砲に飲み込まれた…。

 

 

 

遊馬LP0

 

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜…まさか、クリフォートでここまで追い詰められるとは思わなかった…!成長したな、遊馬!」

 

『だああっ!負けたぁぁ〜!!流石に強すぎだってぇ!?』

 

(完敗だな…まさか『アポクリフォート・キラー』が3体も出てくるとは……一瞬でフィールドを掌握された…)

 

「まぁ、俺の『魂のデッキ』だからな!このデッキを倒せた奴は数えるほどしかいないさ!」

デュエルが終わり、遊海は吹っ飛ばされた遊馬を助け起こす…遊馬は悔しげだが、笑顔だった…。

 

 

 

「今の俺のデッキの7割はお前達に勝てないと思ってな…まぁ、良い経験だっただろ?」

 

(逆に聞きたいのだが…我々が勝てない残り3割とは…?)

 

「ん?…1ターンで相手に4000ダメージ与えるバーンデッキとか、相手の効果を全て封殺するデッキ、それから……」

 

(……我々もまだまだ修行の余地があるな、遊馬……)

 

『くっそ〜!いつかクリフォートとか遊海のデッキ全部に勝てるようになってやるからな─!!』

 

「ははっ…気を長く待ってるぞ、遊馬!」

 

《フォーウ?(特別意訳:そんな日…来るのかなぁ?)》

 

 

夕暮れのハートランドに遊馬の気合いの叫びと遊海達の楽しげな笑い声が響いたのだった…。



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最後の呪縛─混沌の願い─

こんにちは!S,Kです!


……これは、とある男の物語…その最後の1ページである。


ピピッ…ピピッ…ピピッ……

 

 

「36.3℃……普通に平熱だなぁ…?気分はどうだ?凌牙…」

 

「……なんだか、ぼんやりする…」

 

《………特に体の異常は見つかりません、先日の戦いの疲労が出たのかもしれませんね…》

 

「珍しいなぁ…」

とある日、寝込んでしまった凌牙を遊海が看病していた。

昨日、気分が悪いと言って学校を早退して帰ってきた凌牙…発熱は無いものの、ぼんやりしてしまって授業に集中できなかったそうなのだ…。

 

 

 

「ごめん、父さん…」

 

「気にするな、学校には連絡してあるから……食欲はあるか?」

 

「あんまりない…」

 

「そうか…翠に栄養たっぷりのおじやを作って貰おう、少し寝てるといい」

 

「ああ……」

遊海に優しく頭を撫でられながら…凌牙は静かに眠りに落ちた…。

 

 

 

「お父さん…凌牙は…?」

 

「心配するな璃緒、少し疲れが出ただけさ」

部屋の前で待っていた璃緒に遊海が凌牙の容体を伝える。

 

 

「もう…きっと他の七皇のみんなのせいよ!いつも凌牙に迷惑掛けて…!」

 

「ははは…」

ぷんぷんと怒る璃緒に遊海は乾いた笑いを洩らす…「ヌメロン・コード」によって人間に転生した七皇達、凌牙と璃緒以外の5人はDr.フェイカーに保護され、ハートの塔近くのアパートで生活している。

 

だが…なかなか現代社会のルールに馴染めず、大小の問題を起こしていた…凌牙はその解決に走り回っていたのだ。

なお、主な問題はギラグとアリトの無茶な修行によるものやミザエルの不遜な言動が原因である。

 

 

「まぁ2、3日様子を見よう…何かあれば瀬人に頼むさ」

 

「なら、良いんだけど…あっ、そろそろ学校行かなきゃ!!いってきます!」

 

「ああ、いってらっしゃい!璃緒」

凌牙を心配しながら、璃緒は学校へと向かったのだった…。

 

 

《フォウ…フォーウ…》

 

「心配するな、フォウ…凌牙もすぐ良くなるからな…」

 

《フォウ!》

言葉は分からないが…心配そうなフォウを遊海は優しく撫でたのだった…。

 

 

 

 

 

ピンポーン!

 

 

「はーい…ドルベじゃないか、どうしたんだ?」

 

『ナッシュ…凌牙が体調を崩したと聞いて見舞いに来たのだ、それから提出物を渡しに…』

 

「そうか…ありがとうな、入ってくれ」

下校時刻になり、白波家のチャイムが来客を知らせる…それは宿題を渡すついでに見舞いに訪れたドルベだった、凌牙とドルベ、ミザエルは同じクラスなのである。

 

 

『凌牙の体調は…?』

 

「特にどこが悪いとかじゃないんだ、少し遅れてこの前の『決戦』の疲れが出たんだろう……本当にお前達にも迷惑を掛けたな…」

 

『事の顛末はアストラルから聞かせてもらった…貴方は悪くない、肝が冷えたのは事実だが…良い経験になった』

遊海の謝罪にドルベは穏やかに応えたのだった。

 

 

 

「凌牙、ドルベが宿題を持ってきてくれたぞ〜」

 

『凌牙、大丈夫か?』

 

「ドルベ…すまねぇ…」

部屋に入ると凌牙は僅かに起き上がったが…またベットに倒れてしまう…。

 

 

『どうしたのだ?君らしくないぞ…?』

 

「わかんねぇ…こんなにぼんやりして、体調が悪いのは初めて、なんだ…」

 

『「ヌメロン・コード」による転生で不具合があったのか…?アストラルに訊ねて……寝てしまったか…』

 

「……早めに瀬人に連絡した方がいいか…」

ドルベと話しながら、凌牙は再び眠りに落ちてしまった…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

『はぁ…はぁ…!今日も良い汗かいたな!ギラグ!』

 

『ぜぇ…ぜぇ…!お前は、いつも、全力過ぎんだよ…!!』

 

《ポーン!》

 

陽が沈んだハートランドの川辺…そこでは大汗をタオルで拭うアリト、そして草むらに倒れ込んだギラグが息を切らせていた…学校が終わった後にランニング10Kmを走り込み、アパートに戻る前に息を整えていたのだ。

 

 

『そういえば、聞いたか?ナッシュの奴…調子悪いんだってよ?』

 

『らしいなぁ…この前、オレ達のトレーニングに付き合わせたせいか…?明日見舞いに行こうぜ!』

 

『そうだな!俺秘蔵のさなぎちゃんデビューライブでも見せてやるか!』

 

『それは…メラグにぶっ飛ばされる奴じゃねぇか?やっぱり栄養の付くモンだろ!』

ドルベから凌牙の体調不良を聞いた2人は見舞いの相談をしていた…そんな時…。

 

 

 

『………ギラグ』

 

『…ああ、ポン太…隠れてろ…!』

 

《ポン…!?》

突然、アリト達は周囲を警戒し始める…何者かの()()を感じ取ったのだ…!!

 

 

 

『誰かは知らねぇが…漢なら出て来やがれ!!真正面から相手になってやる!!』

 

『俺達七皇に喧嘩を売ろうなんて…百年早いぜ!!』

 

 

 

 

 

 

SideOUT

 

 

 

 

 

 

ピーッ!ピーッ!

 

 

「この着信音は…?もしもし!どうした?カイト」

 

『白波さん!大変な事が起きた…!!』

夕食後の穏やかな時間、そこに遊海のDゲイザーが着信を知らせる…それはカイトからの連絡、そしてカイトの表情は険しいものだった…。

 

 

『アリトとギラグが…何者かに襲われた…!!』

 

「なんだと!?」

 

それは思わぬ悪い知らせだった…!

 

 

 

 

「フェイカー!カイト!!」

 

「白波さん…!よく来てくれた…!!」

 

「川辺の清掃をしていたオボットが倒れた2人を見つけて緊急通報したのだ…!」

数分後、遊海はハートの塔内の医務室にいた…そこにはDr.フェイカーとカイト、そして…ベットに傷だらけのギラグとアリトが寝かされていた…。ギラグにはポン太が心配そうに寄り添っている…。

 

 

 

「襲われた証拠は…!」

 

「…これだ」

カイトはあるモノを差し出す…それは破損した2人のデュエルディスクだった。

 

「おそらく、デュエルログから正体を知られるのを恐れたんだろう…周到な犯人だ」

 

「そして()()…七皇には俺のコピーナンバーズを渡したままだ…ギラグとアリトが敗れたなら、相当な手練だ…!」

遊海は有事に備え、七皇達に「ANo.」を託したままにしてあった…ナンバーズ耐性はないが、それでも強力な「オーバーハンドレッドナンバーズ」…それを破ったならば、相手の実力は…!

 

 

「2人の容態は?」

 

「傷は深くない、だが…目覚める気配を見せない…昏睡状態です……遊馬とアストラルに知らせますか?」

 

「……いいや、久々に俺が頑張る時が来たらしい…!!」

鋼の鎧を纏った遊海は拳を握り締めた…。

 

 

 

 

 

『なにっ!?ギラグとアリトが!?』

 

『我ら七皇に喧嘩を売るとは……よほど命知らずらしいな…!』

 

「落ち着けミザエル…まだ七皇を狙った事件とは限らないんだ…」

少し後、遊海は七皇の暮らすアパートを訪れていた…ドルベとミザエル、真月にアリト達が襲われたと伝えに来たのだ。

 

 

『だが、目的はなんだ?なんであいつらを狙う?仮にバリアンに恨みがある奴だとしても…オレ達が元「バリアン」だって知ってるのは遊馬やその仲間達くらいのモンだぜ?』

 

「それも含めて調査中だ、バイロン達やハートランドの警察にも協力を仰いでる…そしてお前達にはコレを渡しておく…特性の信号弾だ、紐を引けば花火と特殊な電磁波が出て、アヤカに位置が分かるようになってる……念の為に気を付けてくれ」

 

『フン…そんな不埒者、「銀河眼の時空竜」で返り討ちにしてやる…!』

 

『ミザエル、相手の正体も分からない…逃げるのも1つの策だ』

特性信号弾を受け取りながら、ミザエルは仲間を傷付けられた怒りに燃えるが…ドルベが諌める…。

 

 

『……おい、白波…この事は遊馬や凌牙には伝えるのか?』

 

「…凌牙は体調を崩してるから翠に頼んで守りを固めてもらう…遊馬にはまだ伝えるつもりはない、まだ不確かな事だからな…これ以上の事があったら協力を頼むつもりだ」

 

『…そうかい、じゃあ遊馬を言いくるめるのは任せとけ、2人は修行で無茶したとでも言っとくさ』

 

「すまん…頼んだぞ、真月」

遊海は真月に遊馬への対応を任せた…。

 

 

 

 

《…………特に強い力の反応はありませんね…この街以外に拠点がある可能性もあります》

 

「そうか…」

ハートの塔の天辺からハートランドを見下ろす遊海…だが、危険な反応を捉える事はできなかった…。

 

 

「(俺のせいでまた『イレギュラー』が起きたのか…?いったい、何が起きてる…!)」

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「う……朝か……ダメだ…体が重い…」

カーテンの隙間から差し込む光で凌牙は目を覚ました…だが、気分は優れないままだった。

 

「……?なんだ、これ…?」

凌牙はふと自分の右手を見る……小指のつけ根辺り…そこには見覚えのない、小さな噛み跡が付いていた。

 

 

「……フォウが噛みついたのか?いや、フォウが噛むなんてないよなぁ…?」

 

「おはよう凌牙!気分はどうだ?」

 

「っ…!おはよう、父さん…」

凌牙は咄嗟に右手を隠しながら部屋に入って来た遊海に朝の挨拶をする…これ以上、心配をかけたくなかったのだ。

 

「ダメだ…まだ頭ン中ぐるぐるして……父さん、寝てないのか?」

 

「んあ?クマが出来てたか…ちょっと事件があってな!昨日は徹夜だったんだ……だけど、まだ調子が戻らないか…朝ごはん食べたら、KC病院に行こうな」

 

「ああ…」

少し眠たげな遊海の様子を見た凌牙は静かに頷いた…。

 

 

 

SideOUT

 

 

 

 

 

「…瀬人、どうだった?」

 

「ふむ…精密検査の結果に異常は見られない、過労か心因性の症状かもしれんな…」

昼過ぎ…遊海は瀬人に検査結果を訊ねていた、だが…異常は見られなかった…。

 

 

「ひとまず、今晩は観察入院だ…凌牙の着替えを持ってきてやれ……それから、フェイカーから連絡があったぞ、元七皇の2人が襲われたらしいな?」

 

「ああ、これからまたパトロールするつもりだ……杞憂で済めば良いんだが……」

 

「ふん…オレもネットワークを監視しておく、頼んだぞ遊海……無茶はするな」

 

「わかってる、ありがとう瀬人」

小さな事件がハートランドに影を落としていた…。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

『……どうして私が買い物当番なのだ…ベクターにでも任せれば良いものを…!』

学校が終わり、七皇の買い物当番に当たっていたミザエルは食料品を買い込み、アパートを目指していた…。

 

 

『……(()()がいる…!)』

夕日の差す住宅街…そこでミザエルは何者かの気配を感じ取る…!

 

 

『やはり、七皇を狙う者の仕業か…!出てくるがいい!七皇が1人、ミザエルが相手だ!!』

 

 

 

 

SideOUT

 

 

 

パン!!

 

 

 

《っ…!マスター!!》

 

「信号弾!!誰かが襲われたのか!?」

夕暮れのハートランドに特徴的な波動が広がる…それに気付いた遊海は『紋章』で開いたゲートに飛び込んだ…!

 

 

 

「っ…!ミザエル!!」

 

『ぐ、う……しら、なみ……』

夕暮れのハートランドの住宅街…その路地裏でミザエルは倒れ込んでいた、周りには買い物の品物が散らばり…デュエルディスクは破壊されている…。

 

 

「誰にやられた!!」

 

『ろーぶ、おとこ……一撃、かえしたが……まさ、か……ナっ……───』

 

「っ…!ミザエル!しっかりしろ!ミザエル!!」

遊海の腕の中でミザエルの意識は闇の中に落ちていった…。

 

 

 

 

 

 

「えっ…!?アリトにギラグ、ミザエルが誰かに襲われた!?!?」

 

(どうして私達に教えてくれなかったのだ…!遊海!)

 

「七皇を狙った事件とは限らなかったからな……だが、3人が襲われて確信を持った……ハートランドで何かが起きようとしてる…!」

夜、ハートの塔…遊海とカイトに呼び出された遊馬は仲間達が襲われた事を聞いて怒りを露わにしていた…。

 

 

「真月とドルベには1人で行動しないように伝えた……遊馬、学校で璃緒の事を守ってほしい…璃緒にも、この事件の事は伝えてある…!」

 

「シャークは…!シャークは大丈夫なのか!?」

 

「凌牙は…体調不良で入院中なんだ、KC病院なら侵入者は絶対に大丈夫…トフェニにも付いてもらってる…!」

遊海は目を伏せながら拳を握り締める…自分の中で渦巻く感情を抑え込むように…。

 

 

(だが…犯人の目的はなんだ…?なぜ、七皇を狙う…!)

 

「それは分からない…だが、ミザエルが『ローブの男』と手がかりを残してくれた……頼むぞ、遊馬…アストラル…!」

 

「オレの仲間を…友達を傷つける奴は、絶対に許さねぇ…!!絶対に捕まえてやる!!」

まだ見ぬ犯人に遊馬は怒りを燃やした…!

 

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

「う、ぐ…?!ここは…そうだ、検査入院したんだった……少し、調子が良くなった気がするぜ…」

凌牙は見慣れぬ部屋…KC病院の病室で目を覚ました、その表情は少し明るかった…。

 

 

「………?腹が…?」

不意に腹部に違和感を感じた凌牙は起き上がって入院着を捲る…そこには大きな青痣が付いていた

 

「痣…?なんで、こんな場所に……」

凌牙は鈍い痛みを発する痣を撫でた…。

 

 

 

 

 

時は満ちたり…!

 

 

 

SideOUT

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

『にしても、本当に奴さんの目的はなんだ?命を取る訳でもなく、デュエルディスクだけ壊して…不審者が出たってんで午前授業なのはありがたいけどよ…』

 

『確かに…我らを恨んでいるなら、不自然だな…』

昼過ぎ、不審者の情報により学校は午前授業となり真月とドルベは帰路に着いていた…。

 

 

『にしても、メラグ…璃緖と遊馬はツイてないよなぁ…璃緒は風紀委員で学校の見回り、遊馬は白波に頼まれてその護衛だろ?いくらナンバーズを持ってるアストラルが一緒とはいえ……とんだ事に巻き込まれちまって……』

 

『………ナンバーズ……璃緒……遊馬………っ!?まさか!!ベクター!学園に戻るぞ!!』

 

『おいっ!?どうしたんだよ!ドルベ!?』

真月の話を聞いていたドルベは1つの可能性に気付き、学校に向けて走り出した!

 

 

『犯人の狙いは我々ではなかったんだ!!犯人の狙いは──!!』

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

「遊馬、小鳥さん、アストラル待たせてごめんなさい!」

 

「良いって!遊海の頼みだしな!」

 

「璃緒さん!私達も早く帰りましょう!右京先生に宿題いっぱい出されちゃって……」

 

「あら、それは大変!早く帰らないとね!」

 

風紀委員として学校の見回りを終えた璃緒と遊馬達が合流する…本来なら、真っ先に璃緒は帰るべきなのだが…任された仕事をほっぽり出せなかったのだ…。

 

 

「あっ…いけない!教室の鍵を返さないと!2人とも先に玄関で待ってて!」

 

「あ、璃緒さん!一緒にいきます!遊馬は待ってて!何かあったら呼ぶから!」

 

「お、おう!…職員室は苦手なんだよなぁ…」

小鳥と璃緒は小走りで職員室へと向かった…。

 

 

(……遊馬、誰もいない学校とは……こんなに静かなのだな)

 

「ん…ああ、あんまりアストラルは知らないよなぁ…」

最近、ようやく霊体化を体得したアストラルが遊馬に語り掛ける…彼にとって、人の声がしない学び舎は新鮮なものだった。

 

 

「最近はいつもⅢとか、真月達と一緒に帰ってたから…こんなに静かなのは久しぶりだぜ……アリトもギラグも大丈夫かなぁ…」

 

(………静か過ぎる……まさか…!)

遊馬との何気ない会話…アストラルはそこで違和感に気付く、最近の遊馬の周りにはいつも人がいた…だが、今の遊馬の周りには……()()()()()事に…!

 

 

 

(遊馬!急いで外に出るぞ!!)

 

「へっ!?いきなりどうしたんだよ!狙われてるのは七皇の──」

 

(違う!!七皇を襲ったのはカモフラージュだ!犯人の本当の狙いは!!)

 

 

その通りだ、九十九遊馬…そしてアストラル…!!

 

ギィン─!!

 

(「ぐああっ!?」)

突然、遊馬の目の前で闇が湧き出す…そして闇から飛び出した触手がアストラルと遊馬を捕まえてしまう…!!

 

 

【貴様らの周りには人間が多い…だが、騒動を起こせば貴様らの目は騒動に向き…本当の目的の目くらましとなる…!】

 

「ぐ、う…!ローブの、男…!?」

 

(コイツが、事件の犯人か…!!)

 

闇が晴れた先、そこには闇色のローブを纏う男がいた…その袖口からは黒い触手が伸び、遊馬とアストラルを締め上げている…!

 

 

「っ…!?遊馬!アストラル!?」

 

「ローブの男!?」

 

「っ…!小鳥!璃緒!来るなぁっ!!!」

騒動を聞いた小鳥と璃緒が駆け付ける…だが、遊馬は2人へと叫んだ…!

 

 

(お前の、目的は、なんだ…!!)

 

【ははは…返してもらいに来たのだ、()()()()()()()()…!】

 

(返す…!?まさか、お前は─!)

くぐもった声でアストラルを睨むローブの男…そしてアストラルはその正体に気付き…!

 

 

キィン─!!

 

 

「俺の弟子に手を出すなぁ!!」

 

【ぐぬっ─!?】

 

「遊海─!?」

次の瞬間、次元ゲートから飛び出した遊海にローブの男は殴り飛ばされ、壁と窓ガラスを貫いて校庭へと吹き飛ばされた…!

 

 

 

 

「ゲホっ…遊海、どうして…!?」

 

「ドルベが連絡をくれたんだ…『狙われてるのは我々ではない、遊馬とアストラルだ!』ってな…それで大急ぎでサーチしたら…強い『カオス』の反応を感知して、ワープして来たのさ…!」

遊馬を介抱しながら、遊海は倒れたローブの男を睨む…視界の端に走り寄るドルベと真月の姿を捉えながら…。

 

 

『おい!遊馬!アストラル!大丈夫か!?』

 

「真月…オレは、大丈夫…!アストラルは…!」

 

(すまない…何枚か、ナンバーズを奪われたようだ…!!)

 

「なんだって…!?」

アストラルは動揺した目でローブの男を見る…オリジナルであるアストラルからナンバーズを奪える存在は限られている…!

 

 

 

「貴様…!何者だ…!!」

 

【………?】

遊海はローブの男に問いかける、そして男は立ち上がり……

 

 

 

 

 

 

 

「……いってぇ……いきなり、何が………あ、れ?父さん…璃緒…?遊馬…?」

 

「えっ……()()()()!?」

 

「っつ!?まさか…」

ローブの下の素顔…それは凌牙だった…だが、本人も何が起きているのか理解出来ていない様子である。

 

 

 

(遊海、シャークは…!)

 

「そういう、事かよ……()()は、まだ!凌牙を苦しめるのか!!!」

 

「待ってくれよ、父さん…!?俺は…!?」

 

 

「姿を現せ!!ドン・サウザンド!!

 

「『『「「っ!?」」』』」

 

 

 

ククク…存外、気付くのが早かったなぁ…アストラル、白波遊海…!!

 

 

──────!!

 

 

「っ!?ああ、がああああっ!?!?」

 

「シャーク!!」

 

「凌牙!?」

遊海がその真名を呼んだ瞬間、凌牙の体から闇が溢れ出す…その闇は形を為し、巨大な魔神の姿となる…。

 

 

『混沌の邪神』ドン・サウザンドが現世へと復活した瞬間だった…!

 

 

 

「そんな…!?ドン・サウザンドはあの時、オレとシャークがぶっ倒して…!?」

 

【そう…確かに、我は貴様らに倒された…だが、言ったであろう?カオスは命の源…カオスは無限なのだと…!】

 

(…あの時、シャークはドン・サウザンドの力を受け継いだと言った……だが奴は、シャークの内に潜み…復活の時を狙っていたのか…!!)

 

【その通り!ナッシュの魂を隠れ蓑とし、この時を待っていたのだ…!】

ドン・サウザンドはアストラルの言葉を肯定する…遊馬達に敗れ、凌牙に全ての力を与えて消滅したかに見えたドン・サウザンド…だが、その魂は凌牙の中で復活を狙っていたのだ…!

 

 

「あ、ぐ…?!とう、さん…!!に、げ…───!!」

 

「凌牙!!」

 

【ククク…ナッシュ、貴様は今度こそ…我の力となるのだ…アストラル世界を破壊する為の力に!!】

凌牙を取り込んだドン・サウザンドは凄まじい覇気を放つ…それは暗雲を呼び、周囲の空間を軋ませる…!

 

 

「テメェ…!シャークを返っ……遊海!?」

 

「………遊馬、これは…俺と奴の問題だ………手を出すな」

 

「ゆう、み…?」

ドン・サウザンドに立ち向かおうとする遊馬を遊海が制する…その体からは空間を軋ませ、地面が割れる程の怒りが溢れていた…!

 

 

 

 

「ドン・サウザンド…俺が、相手だ」

 

【フハハハ…!貴様1人で我に挑もうというのか?混沌の神たるこの我に!!】

 

「神殺しなら何回もしてきたさ……俺の息子を、返してもらう」

 

【よかろう…貴様から消し飛ばしてくれる!】

 

復活せし邪神…かけがえのない息子を…凌牙を救う為に、遊海は1人で立ち向かう!!

 

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

 

混沌の邪神ドン・サウザンドLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

【我のターン!ドロー!】

【フィールド魔法『ヌメロン・ネットワーク』を発動!】

ドン・サウザンドを中心に紅い光の網…ネットワークが広がっていく…!

 

 

【……フン、『ヌメロン・コード』は人間界には無いか…そして我は魔法カード『ヌメロン・ダイレクト』を発動!エクストラデッキより攻撃力1000以下の『ヌメロン』と名のつくエクシーズモンスター4体を特殊召喚する!現れるがいい…地上の番人たるナンバーズ達よ!!】

 

(遊海!気を付けろ!!)

ドン・サウザンドの背後に巨大な異形の花が咲く…そして異形の花は本来の姿に回帰する!

 

 

04

 

 

【現われよ!『No.4』!『ゲート・オブ・ヌメロン─チャトヴァーリ』!】

巨大な機械のパーツが現れる! ATK1000

 

 

03 02

 

 

【続いて現われよ!『No.3』!そして『No.2』!『ゲート・オブ・ヌメロン─トゥリーニ』!『ゲート・オブ・ヌメロン─ドゥヴェー』!】

ATK1000 ATK1000

 

 

01

 

 

【そしてこれがヌメロンの極致!現われよ!『No.1』!天を摩する地獄の門、堅牢なる扉開きし時…一抹の希望を捨てよ!!『ゲート・オブ・ヌメロン─エーカム』!】

そして巨大な門が現れ、他の『ゲート・オブ・ヌメロン』と合体…その真の姿を現した! ATK1000

 

 

 

「………」

 

『あれが、本来の「No.1」だと…!なんて威圧感だよ…!?』

偽の『No.1』を知る真月は本物のナンバーズの威圧感に後ずさる…!

 

(1ターン目から『ゲート・オブ・ヌメロン』を…まさか…!?)

 

【その通り…!我は『ヌメロン─エーカム』でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!】

 

 

01

 

 

【現われよ!『CNo.1』!全ての秩序を破壊し、混沌なる闇へ!世界を真なる世界へ導け!!『ゲート・オブ・カオス・ヌメロン─シニューニャ』!】

全能への扉が混沌の扉となり、再誕する! ATK1000

 

 

 

(『シニューニャ』は自分フィールドの全てのモンスターを除外し、次のターンにその攻撃力分のダメージを与えるモンスター…!遊海は次のターンに6000のダメージを受けてしまう!!)

 

「………」

 

【ククク…その通り…!『カオスヌメロン─シニューニャ』がエクシーズ召喚に成功した時、フィールドの全てのモンスターを除外する!そして、次の我のターンのスタンバイフェイズに『シニューニャ』は帰還し、貴様は除外されたモンスターの攻撃力の合計分のダメージを受ける!】

シニューニャが自身諸共に全てのモンスターを除外する!

 

 

【我はこれでターンエンドだ…!】

 

ドン・サウザンドLP4000

ヌメロン・ネットワーク 手札4

 

 

 

 

「遊海…!」

 

「心配するな、遊馬…この程度…壁にもならん」

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー」

「自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札の『リンクスレイヤー』は特殊召喚できる」

光剣を構える獅子の鎧を纏う戦士が現れる! ATK2000

 

 

「『リンクスレイヤー』の効果発動、手札の『ブラック・ホール』を捨て『ヌメロン・ネットワーク』を破壊する」

 

【チィッ…!】

リンクスレイヤーが光剣で紅のネットワークを切り裂いて破壊する!

 

「『リンクスレイヤー』でダイレクトアタック」

 

【おのれ…!】

光剣がドン・サウザンドを切り裂く!

 

 

ドン・サウザンドLP4000→2000

 

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

遊海LP4000

リンクスレイヤー 伏せ2 手札2

 

 

 

『お、おい!このままじゃ白波の奴負けちまうぞ!?』

 

(……いや、『シニューニャ』はフィールドの『ヌメロンネットワーク』が存在しない時、破壊される…遊海はダメージを受ける事はない…)

 

『そ、そうなのか…!?』

真月の問いにアストラルが応える…だが、アストラルは冷や汗を流していた…!

 

 

「でも…もし、オレ達と戦った時と同じなら…奴が出てきちまう!!」

 

 

 

【我のターン!ドロー!】

 

「その瞬間、手札から『増殖するG』の効果発動!このターン、相手が特殊召喚するたびに1枚ドローする」

 

【フン…!スタンバイフェイズに『カオスヌメロン─シニューニャ』がフィールドに帰還する!】

再び摩天の門が現れる! ATK2000

 

 

【そして『ヌメロンネットワーク』が存在しない事で、『シニューニャ』は破壊される!】

現れた摩天の門は墓地へと消え去る…!

 

 

【白波遊海…貴様は、自ら絶望への扉を開いたのだ…!魔法カード『ヌメロン・カオス・リチューアル』を発動!自分フィールドの『シニューニャ』が破壊された時!墓地または除外された『ヌメロン・ネットワーク』と4体のナンバーズをレベル12のエクシーズ素材としてエクシーズ召喚を行なう!!】

ドン・サウザンドの背後に5枚のカードが浮遊する!

 

【我はレベル12となった『ヌメロンネットワーク』と『No.1』から『No.4』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!】

 

 

1000

 

 

【現われよ!『CNo.1000』!混沌の憂いは浅ましき人の業…天壌の夢は無窮の幻、虚ろの神よ!闇を持て!光に鉄鎚を!!『夢幻虚神ヌメロニアス』!

混沌を封じる扉を打ち壊し、白き神体と紫紺の翼を持つ混沌の神が現世へと蘇る! ATK10000

 

 

『あれが、混沌の化身…!「CNo.1000」…!!』

 

「そ、そんな…!?」 

 

「気を付けろ!遊海!!」

 

「…………」

混沌の神の顕現に遊海を()()()子供達…特にあの場にいた遊馬と小鳥は動揺する!!

 

 

【フン…大いなる絶望を前に言葉も出ないか…ならば、そのまま殺してやろう!!『ヌメロニアス』の効果発動!1ターンに1度!カオスORUを1つ使い!相手モンスターを破壊する!】

 

「手札から『幽鬼うさぎ』の効果発動、相手モンスターが効果を発動した時、手札のこのカードを墓地に送り…そのカードを破壊する」

 

(っ!?ダメだ!遊海!?そのモンスターは!!)

日本刀を構えた白髪の少女の幻影が混沌の神を斬り捨てる…だが、それは…!

 

 

【ククク…はははははは!!白波遊海!貴様はよほどの死にたがりのようだ…!自らさらなる絶望の中に飛び込むとは!!『ヌメロニアス』が破壊された時!墓地のこのカードを素材としてオーバーレイ!エクスターミネーション!カオスエクシーズチェンジ!!】

ドン・サウザンドの頭上で混沌が…闇が大爆発を起こし、フィールドを包み込む!!

 

 

1000

 

 

【降臨せよ!『CiNo.1000』!!我が天は長し、地は久し…人の縋る夢は一場の幻に過ぎず!虚無の大神よ!闇をもて!光に鉄鎚を!!『夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア』!!

それは異形の魔神、本来ならば現実に現れてはならぬ『邪神』…黒紫の翼を広げ、希望を駆逐する者……絶望の化身がフィールドに降臨する! ATK100000

 

 

「『ヌメロニアス・ヌメロニア』…!!」

 

『攻撃力、10万…!?これが、奴の…!!』

 

「お、お父さん!!」

フィールドに顕現せし『ヌメロニアス・ヌメロニア』…初めてその威容を目の当たりにする子供達は…恐怖に震える…!

 

 

 

【このカードは自ら攻撃する事はできぬ…だが!このカードがフィールドに存在する時…相手は必ずモンスターで攻撃しなければならない!攻撃しなければ…そのターンが終わる時、敗北となる……そしてこのモンスターはカード効果では破壊されない…!白波遊海、貴様は我が絶望の前に跪き、その命を失うのだ…!我はこれでターンエンド!】

 

ドン・サウザンドLP2000

ヌメロニアスヌメロニア 手札4

 

 

 

 

「ドン・サウザンド……今回ばかりは、お前の周到さに()()()()

 

【なに…?】

大いなる『絶望』を前に遊海は獰猛な笑みを浮かべる…。

 

「先の戦いで、俺はお前と相まみえる前に力尽き…遊馬に凌牙…子供達に世界の命運を託す事になっちまった………だが、今は違う…!!俺の倒すべき『元凶』が俺の前にいる!!ならば、今こそ!俺は俺の役目を全うする!!」

絶望を前に…遊海は全身全霊、情けも容赦も無く…全力を開放する!

 

 

 

俺は!俺自身でオーバーレイ!!

 

遊海から溢れ出した希望の光と漆黒の闇が螺旋を描き、爆発を起こす!!

 

 

我が身に宿る戦いの宿命…救世の願い!今こそ!邪悪を断つ力となれ!!シャイニング・カオス・エクシーズチェンジ!!

 

それは遊海の宿す『絆の光』…そして、邪悪への憤怒を宿す『闇の闘志』の極致、闇を飲み込む光…正しき『混沌』の具現!

 

 

闇を祓う、絆の輝き!!NEXUS!!

 

 

それは遊海の新たな『NEXUS』…邪悪への怒り、囚われた家族を救う為の光がトリガーとなり覚醒せし、至高の戦士……NEXUSⅢ!!

 

 

「新しい、NEXUS…!!」

 

「…黄金の、嵐…!」

全身に黄金の光を纏うNEXUSの姿に子供達は目を奪われる…逆立った金髪に金色の肩当ての付いた赤と黒の鎧に黒金に輝く機械的な翼、そして瞳は金色に輝く…それが新たなNEXUSの姿だった…。

 

 

【馬鹿な、ただの人間が…ZEXALの力を手にするだと!?】

 

「ドン・サウザンド…息子を返してもらうぞ!!」

 

 

 

 

「我のターン!真の決闘者の決闘は全て必然!勝利を求める魂は!数多の光を束ね、ドローカードすら創造する!シャイニング・ドロー!!

黒金の軌跡が奇跡を導く…既に「勝利の方程式」は完成している!!

 

 

「貴様を倒すなら…『ヌメロニアス・ヌメロニア』を超えなければ…意味はない!!『天穹のパラディオン』を召喚!!」

機械的な鎧を纏う歴戦の戦士が現れる! ATK1600

 

 

【はっ…大口を叩いたかと思えば…そんなモンスターで何ができる!】

 

「見せてやる…繋がる絆の奇跡を!新たなる未来の先に人が手にする光を!!現われろ!希望を導くサーキット!!」

暗雲渦巻く空に手を掲げる遊海…その手から放たれた光が空中に巨大な魔法陣を創り出す!

 

 

【な、なんだ!その光は…!】

 

「アローヘッド確認!召喚条件は『パラディオン』モンスター1体!俺は『天穹のパラディオン』をリンクマーカーにセット!サーキット・コンバイン!!リンク召喚!現われろ!リンク1!『マギアス・パラディオン』!」

魔法陣の中の矢印に戦士が飛び込み…赤い鎧を纏う魔術師が現れる! ATK100↓

 

 

「リンク、召喚…!?」

 

『聞いた事がないぞ、そのような召喚法…!?』

 

((異界からの『転生者』の力……新たなる召喚法か!))

新たなる召喚法に驚く子供達…その中で遊海の『真実』を知るアストラルだけは静かに動向を見守っていた…!

 

 

□□□□□

□□神□□

 □ マ

□□□□□

□■■□□

 

 

【未来のモンスターだと?たかが攻撃力100で何ができる!】

 

「そう慌てるなよ…!さらに我は罠カード『クローラー・パラディオン』を発動!モンスターとして守備表示で特殊召喚!」

戦士と心を通わせた機械生命体が現れる! DEF2100

 

 

□□□□□

□□神□□

 □ マ

□□□ク□

□■■□□

 

 

「『マギアス』のリンク先にモンスターが特殊召喚された事で効果発動!デッキから『神樹のパラディオン』を手札に加える!さらに『クローラー・パラディオン』の効果発動!リンクモンスターのリンク先に特殊召喚された事で効果発動!デッキから『星遺物─星冠』を手札に加える!」

 

(リンク……モンスター同士の『繋がり』が、新たな戦術を繋いでいくのか…!!)

アストラルはリンクモンスターの持つ強みに気付く…!

 

 

「いくぞ!アローヘッド確認!召喚条件は『パラディオン』モンスターを含む効果モンスター2体!!『マギアス』『クローラー』をリンクマーカーにセット!リンク召喚!!リンク2!『ヴェルスパーダ・パラディオン』!!」

聖なる衣を纏う翼を持ったエルフの剣士が現れる! ATK500←↓

 

 

□□□□□

□□神□□

 □ ヴェ

□□□□□

□□■□□

 

 

「そして我は手札の『星辰のパラディオン』を『ヴェルスパーダ』のリンク先に守備表示で特殊召喚!」

鎧を纏う青竜が現れる! DEF2000

 

 

「リンク先にモンスターが特殊召喚された事で『ヴェルスパーダ』の効果発動!『ヌメロニアス・ヌメロニア』の位置を1つ隣のメインモンスターゾーンに移動する!!」

 

【なに…?】

フィールドの精霊の起こした強風が吹き荒れ、ヌメロニアスヌメロニアが吹き飛ばされる!

 

 

□□□□□

□□□神□

 □ ヴェ

□□□星□

□□■□□

 

 

「さらに『星辰』の効果発動!墓地の『天穹』を手札に加える!これで最後だ!アローヘッド確認!召喚条件はリンクモンスターを含む効果モンスター2体以上!!『ヴェルスパーダ』と『天穹』でリンクマーカーをセット!サーキット・コンバイン!!リンク召喚!!現われろ!戦いを乗り越えし絆の勇者!!リンク3!『アークロード・パラディオン』!!」

光の剣を携えし、人馬一体の聖剣士が現れる! ATK2000↙↑↘

 

 

「絆の勇者…!!」

 

「すごい…!」

 

(これが…遊海の真の実力か…!?)

 

『(三幻神とは違う、希望の光……これが『英雄』の力…!!)』

ナンバーズや『神』とは違う希望の光が暗雲渦巻くフィールドを照らす…!

 

 

【無駄だ、どのように絆を繋ぎ、希望を束ねようと!我が絶望を超える事は叶わぬ!!】

 

「いいや!闇が強く、深く世界を支配するのなら…人の抱く希望が…『光』が!闇よりもさらに強く!暖かく未来を照らし出す!!手札の『天穹のパラディオン』、そして『星遺物─星冠』はリンクモンスターのリンク先に特殊召喚できる!」

機械鎧の戦士と巨大な王冠が現れる! DEF1000  DEF2000

 

 

□□□□□

□□□神□

 □ ア

□□天□星

□□■□□

 

 

「『アークロード』の効果発動!このモンスターの攻撃力はリンク先のモンスターの攻撃力の合計分アップする!」

アークロードが希望の光を束ねる! ATK2000→105600

 

 

【攻撃力105600だと!?】

 

「さらに!『天穹』の効果発動!このターン『アークロード』でしか攻撃できなくなる代わりに相手に与える戦闘ダメージを2倍にする!」

 

『つまり…11200のダメージをドン・サウザンドに与えられるのか…!?凄まじい効果だ!!』

 

「バトルだ!『アークロード』で『ヌメロニアス・ヌメロニア』を攻撃!!」

希望の騎士が強靭な脚力で邪神に向けて跳躍する!!

 

 

「邪神を倒して!お父さん─!!」

 

『いっけぇ!白波─!!』

 

(っ…まだだ…!油断するな遊海─!!)

声援を送る子供達…だが、絶望の邪神には…まだ効果が残されている…!!

 

 

【愚かな…!!貴様の縋る希望など打ち砕いてやろう!『ヌメロニアス・ヌメロニア』の効果発動!カオスORUを1つ使い、相手モンスターの攻撃を無効にする!!さらに、攻撃してきたモンスターの攻撃力分ライフを回復する!】

 

「『「そんな!?」』」

邪神の放った紅い稲妻が希望の騎士を吹き飛ばし、ドン・サウザンドのライフを回復させる…!

 

ドン・サウザンドLP2000→107600

 

 

『ライフ、10万7600だと…!?』

 

【貴様がどんなに希望の力に縋ろうとも…我を超える事は敵わぬのだ!!ふはは…ふははははは!!】

攻撃を無効にし、勝利を確信したドン・サウザンドは高笑いを響かせる…!

 

 

()()()()()()()!!」

 

【なにっ…?】

だが、遊海もまた…不敵に笑っていた…!

 

 

 

「ドン・サウザンド…我もまた『最強』の名を背負う決闘者だ……『決闘王』の名に懸けて…俺に希望の未来を託した仲間達の為に!!…俺は!負ける訳にはいかない!!」

遊海は手にした希望…『シャイニングドロー』で創造した1枚を発動する!!

 

 

「速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』発動!このカードは自分のモンスターの攻撃が無効になった時!そのモンスターの攻撃力を2倍にして、もう一度攻撃できる!!」

 

「ああっ!?」

 

(…流石だな、貴方は…!!)

アークロードに世界を照らす希望の光が集い、影が重なる…それは『黒衣の魔術師』『宇宙のHERO』『白銀の竜』そして…『希望の戦士』…!

 

 

アークロードATK105600→211200

 

 

【攻撃力、21万、だとぉ!?】

 

 

「『アークロード・パラディオン』で『ヌメロニアス・ヌメロニア』を攻撃!これが俺の希望!!世界を照らす絆の光!!アルティメット・パラディオン・スラッシュ!!」

 

それは邪神を断つ巨大な光の刃…当然、『No.』である邪神は破壊されない……だが、光の刃は確かに邪神を一刀の下に斬り伏せた…!

 

 

馬鹿な…馬鹿な!!我が、我が希望如きにぃぃ!!!

 

 

 

 

ドン・サウザンド LP0

 

 

 

NEXUSⅢ WIN!

 

 

 

 

キィン─!

 

 

 

「っ…凌牙ぁ!!」

爆発で吹き飛ばされたドン・サウザンドの闇から赤い光に包まれた凌牙が分離する…背中の翼で飛翔した遊海はその体を空中で受け止めた…。

 

 

「とう、さ……」

 

「凌牙…気づいてやれなくて、すまなかった…!!間抜けな俺を許してくれ…!!」

地面に降り立った遊海は凌牙を抱きしめながら謝罪する…凌牙は攻撃の余波でボロボロだった…。

 

 

「父さんは、悪くない……全部、俺の背負ったモノだから………ありがとう…」

 

「凌牙…!」

遊海は涙を流しながら、さらに強く凌牙を抱きしめた…。

 

 

 

 

「ドン・サウザンドをやっつけた…しかも、()()()()()()で…すっげぇ……」

 

『……あれが現代の「英雄」…』

 

『チートも大概にしやがれ…』

ドン・サウザンドを倒した遊海に遊馬は呆気に取られ、ドルベと真月はその『強さ』に戦慄していた…。

 

 

(………はっ!?呆けている場合ではない…!奪われたナンバーズを取り返さなくては!)

 

「お父さん!凌牙!!」

遊海の凄まじい勝利に固まっていたアストラルが再起動しナンバーズを回収しようとし…璃緒が兄と父に駆け寄ろうとする……その時だった!

 

 

 

 

──まだだ…!まだ、我は終わらん─!!──

 

 

 

(っ…!!シャーク!遊海!!)

 

「っ!凌牙!!」

 

「ぐあっ…!?」

 

『『危ない!!』』

 

グサッ…!!

 

 

それは、一瞬の出来事だった。

 

消滅しかけていた闇…ドン・サウザンドの思念が2枚のカードに凝縮され、凌牙に向かう。

 

アストラルの叫びでそれを察知した遊海は咄嗟に凌牙を子供達に向けて投げ…真月とドルベが受け止める…。

 

そして凌牙を庇った遊海の背中に2枚のカードが突き刺さった…!!

 

 

「ぐっ…!?うぐあああああっ!!?」

 

「ゆ、遊海ぃぃ!!」

 

《マスター!?》

カードが遊海の体に突き刺ささり、吸収される…そして遊海の体から全てを燃やし尽くす地獄の黒炎が溢れ出した…!!

 

 

──ナッシュの記憶を読んだぞ…!貴様は不老不死らしいなぁ…?そしてその強さ……貴様を我の依代とすれば…我の敵はいなくなる…!!──

 

「っああああ…!!!お前は、そこまでして…アストラル世界を、滅ぼしたい、のか……!!」

 

──そうだ…!我は…アストラル世界を滅ぼす…それが我が目的!我が悲願!!──

その身を…魂を焦がされながら、遊海はドン・サウザンドに問いかける。

 

 

帰ってきた答えは…『肯定』

 

 

 

遊戯王世界には様々な思惑を持った『悪』がいた。

 

 

世界を破壊しようとした『魔人』がいた。

 

 

世界を闇に包もうとした『大邪神』がいた。

 

 

人間を『負の心』に取り込み、虚無の世界に閉じ込めようとした『虚無の神』がいた。

 

 

世界を救う為に破壊を求めた『超越者』がいた。

 

 

未来を救う為に絶望に抗い続けた『英雄』がいた。

 

 

 

誰もが譲れぬ望み、揺るがぬ目的を持つ中で…ドン・サウザンドの望みは『アストラル世界の破壊』…ただ1つである。

 

ランクアップを目指したアストラル世界から放逐された不要な『カオス』…それがドン・サウザンドを…バリアン世界を形作った。

そしてドン・サウザンドは自身を排斥したアストラル世界へ怒り…憎悪し…復讐のみを目的に暗躍を続けてきたのだ…!

 

 

「ううう…!!ドン・サウザンド…!アストラル世界から追放された、お前が…どれだけ辛い目に遭ったのか…どれほどアストラル世界を憎んだのか…!それは、俺には推し量る事はでき、ない…!!」

 

──当たり前だ…!たった100年しか存在できぬ人間に我が神意が理解できるはずがない!!──

 

「それでも…お前は、()()べきだった…追放されたなら、新しい自分の『居場所』を…仲間を作れば良かったんだ…!!」

 

──世迷い言を!!アストラル世界への復讐…!それが、それだけが我の存在理由…我が為すべき事だ!!──

 

「……でもさ…もう、()()()だろ…?」

 

なに…?

 

「遊海…!?」

地獄の苦しみを味わいながら…遊海は自分を飲み込もうとするドン・サウザンドに問いかける。

 

 

「確かに…怒りや、憎しみは…凄まじい力を生み出す…!そんな奴らを、俺は、たくさん見てきた…!!でもさ、怒り続けるのは…()()んだよ…!俺だって、憎しみを…怒りを抱いた事も、ある…!復讐したいと考えた事さえ、あった…!!でもさ…お前はアストラル世界への復讐を成し遂げたら……どうする、つもり…なんだ…?」

 

───復讐の、先……アストラル世界を滅ぼし……滅ぼして……我は……?

 

遊海の言葉に初めて…ドン・サウザンドの言葉が揺らぐ……『カオスは命の源、カオスは無限』と言ったドン・サウザンド…だが…彼は復讐の「先」を考えていなかった。

 

 

「ドン・サウザンド……お前は、アストラル世界を滅ぼしたいんじゃない……()()()()()()んじゃ、ないのか…?自分が、生まれた場所に……」

 

──………われ、は………──

 

遊海はドン・サウザンドの隠されていた……忘れていた『原初』を突き付ける。

 

 

『愛憎は表裏一体』……憎しみの果てに愛を得る事もあれば、無償の愛が深い憎しみに変わる事もある……言葉でこそ「アストラル世界は窮屈だった」「我を追放した事に感謝している」と言ったドン・サウザンド…だが、それでも……忘却の彼方で、彼は故郷に戻りたかったのではないかと…。

 

 

「……終わりに、しよう…!怒りと、憎しみに支配された…お前の物語を…!!だあああああっ!!!

 

──なにっ…!?貴様!!──

 

地獄の黒炎を飲み込むように…遊海の身体が光を放つ、それは希望…遊海が紡ぎ、繋いだ絆の『光』…!

 

 

「父さん!?」

 

──貴様っ!?何を─!?──

 

「安心しろよ…ドン・サウザンド…!冥界の入口ぐらいまでは…付き合ってやる!!」

 

(遊海!?まさか、貴方は──!!!)

光と化した遊海は自身に取り憑くドン・サウザンド諸共、暗雲の広がる空に飛翔する!!

 

 

受けてみろ!ドン・サウザンド!これが…人間の…!俺の!希望の光だぁぁぁ!!

 

 

──や、やめろおぉおぉ!!?──

 

 

 

NEXUSダイナマイト!!

 

 

 

暗雲の中で閃光が弾ける…それは遊海がとある「光」の大技を模して放った()()()、その大爆発はハートランドを覆い尽くしていた暗雲を吹き飛ばし……混沌の邪神との因縁に終止符を打った。

 

 

 

 

「と……父さぁぁん!!!」

 

 

 

 

 

遊海自身の命と引き換えにして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…!?凌牙君!?遊馬君!?いったい何があったの!?」

 

「み、翠さん…!」

爆発の直後、ウィンダと共に翠が駆け付ける…そこで目にしたのは荒れ果てたハートランド学園の校庭と遊馬に小鳥、ドルベと真月…そして病院にいるはずの凌牙がボロボロの状態で璃緒に介抱される姿だった…。

 

 

「誰か、教えて!この場所で何があったの!?」

 

(………ドン・サウザンドが、復活した…)

 

「っ!!?」

アストラルは翠にこの場で起きた事件の一部始終を伝える。

 

 

 

凌牙の中に潜んでいたドン・サウザンドがナンバーズを奪う為に凌牙を操り、遊馬とアストラルに襲いかかった事。

 

 

その直後にドルベからの緊急連絡で駆け付けた遊海が、ドン・サウザンドに取り込まれた凌牙を救う為にデュエルを挑み、勝利した事。

 

 

負けたドン・サウザンドが遊海に取り憑く為に襲いかかった事……そして、遊海の捨て身の自爆により、ドン・サウザンドが倒された事を……。

 

 

 

「ま、待ってアストラル……遊海さんは、()()()()()()に、自爆したの…!?」

 

(……ああ、実体を持たず…遊海を乗っ取ろうとしたドン・サウザンドを倒すには……その方法しかなかった…!)

 

「あ、ああ……」

 

『っ…翠!』

戦いの顛末を聞いた翠は地面にへたり込むが…ドルベが慌ててその身を支える…。

 

 

「俺を庇ったせいで、父さんは……父さんは!!」

 

「凌牙…!!」

 

 

「遊海…なんでだよ…!せっかく、世界が平和になったのに…!!どうして死んじまうんだよ──!!」

 

「遊馬…!」

校庭に凌牙の嘆きと遊馬の叫びが響く…英雄の「死」に、遊馬達は悲しみに包まれ……。

 

 

 

 

「ああ……良かった〜……」

 

 

『えっ…?』

直後、翠の口から飛び出したのは()()()()()だった、その言葉の意味を理解できないドルベは思わず聞き返してしまう。

 

 

「あっ…ごめんなさい!元七皇のみんなは知らないわよね!?遊海さんと私は命の懸ったデュエルに関わらなければ()()()()()!だから、安心したら…力が抜けちゃって……」

 

「「「「あっ……」」」」

翠の言葉に遊馬達の声が重なる…翠が座り込んだのは、遊海を失った悲しみ……ではなく、遊海が一応は()()である事を確信し、安堵したからだったのだ。

 

 

 

『……おい、それって……つまり…?』

 

『遊海は…』

 

 

キィン─

 

思わぬ言葉に動揺する真月とドルベの言葉と共に、校庭に光の粒子が集まっていく…そしてそれは人型となり……。

 

 

 

「──ふはぁ……さ、流石に、自爆技と、『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』の合わせ技は、無理があったか……再生に、時間が掛かっちまった…」

 

 

「「遊海!!」」

 

「「父さん!!」」

それは特典の効果で再生した遊海だった…消耗が激しいのか髪は白くなり、満身創痍どころか瀕死状態だが…なんとか凌牙達のもとに帰って来たのだった…。

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

吹き飛んだ意識が回復する…俺にとっての一世一代の大勝負は…どうやら、俺が勝つ事ができたらしい…。

 

凌牙の代わりに俺の事を『依代』にしようとしたドン・サウザンド…実体を保たない『カオス』の塊であるドン・サウザンドを本当の意味で倒すには、俺自身の光を増幅し闇を打ち払う、端的に言えば『自爆』しか方法が無かった。

 

……それに加え、俺の『力の結晶』…新たな『NEXUS』に過剰に力を回して爆発させる…そこまでしてようやく、ドン・サウザンドを倒す事ができた。

 

 

……いや、倒せたのかは分からない。

 

 

ダークネスやe・ラーと同じく、時間を掛けたら奴も復活するのかもしれない……そして、再び世界に牙を剥くのだろう。

 

……それでも、俺は信じたい……爆発の刹那に聞こえた『声』を…。

 

 

 

 

──これが『人』の……希望の力とやらか………存外に、暖かいものだ………──

 

 

 

 

 

アストラル世界への復讐の為に、全てを費やしてきた混沌の神、ドン・サウザンド……奴のしてきた事は許される事ではない、許してはならない。俺だって許していない。

 

 

……それでも、奴に少しでも救いがあればと考えてしまう俺は…甘すぎるのだろうか…。

 

 

 

「うぐっ…」

 

視界が歪む…再生したとはいえ、ちょっとやばいらしい……俺はふらりと倒れ込み……。

 

 

「「父さん!!」」

 

 

聞き慣れた…聞きたかった声と共に、身体が受け止められる……凌牙と璃緒が、倒れかけた俺を受け止めてくれたらしい…。

 

 

「なに、何やってんだよ!バカ()()!!無茶してんじゃねぇよ!?」

 

「ははっ…バカ親父か……そうだなぁ…でも、心配するな…ドン・サウザンドは、倒した…」

 

「そういう問題じゃないわよ!?お父さんが死んじゃたと思って、私…!!」

 

「こりゃ、弱った…お前達に、怒られる、なんて……流石に、言い訳できねぇなあ……すまん」

凌牙と璃緒に怒られて俺の良心にクリティカルダメージが入る…流石に、説明無しの自爆はダメだったようだ…反省、しない、と……。

 

 

「凌牙…璃緒……無事で、よかった…」

 

「父さん!」

涙を溢す凌牙達を見ながら、意識が落ちていく……その時、俺は…不思議なものを見た。

 

 

 

「………?」

 

俺に駆け寄ってくる翠や遊馬達の後ろ…そこに紫色の髪で小さな髭を生やした紳士、そして穏やかな表情の、青みがかった白い髪の女性が立っていた……俺の記憶が間違っていなければ、あの2人は……。

 

 

《…………!》

 

2人は静かに頭を下げる…これは俺の見ている都合のいい幻…幻想なのかもしれない、それでも……『ありがとう』と、言ってくれたような気がしたんだ…。




●NEXUSⅢ

ドン・サウザンドと対峙した遊海の囚われた家族を救いたいという強い『願い』と邪悪を滅するという『漆黒の闘志(殺意)』を抱いた事で誕生した、新たな姿。
NEXUS・NEXUSⅡがどちらかといえば『光寄り』だったのに対し、NEXUSⅢは『混沌・闇』に近い姿となっている。

また、決闘者の闘争心が最大まで高められている為、一人称が『我』に変化…普段に比べて尊大な態度になる。

イメージとしては色が反転した『ZEXALⅢ』
『奇跡の勇者』に対する『守護(討滅)の英雄』である。

頭部 逆立った金髪に変化、瞳は両目とも金色

上半身 金色の肩当てが付いた赤と黒の鎧、背中には黒と金色で彩られた推進翼

下半身 赤い鎧、カオスの力が張り巡らされている。


……と、仰々しく書いたが…ドン・サウザンドを倒す為に『壊れた幻想』もどきの自爆を行なった為、この姿への変身能力は永遠に失われた。


・NEXUSダイナマイト

ドン・サウザンドに取り憑かれかけた遊海がe・ラー事件の二の舞を避ける為、咄嗟に放った『自爆技』

技のイメージは光の超人No.6の『ウルトラダイナマイト』とFateシリーズにおける『壊れた幻想』の合わせ技。

遊海の内包する『光』…精霊の力、シグナーの力を最大開放すると共に遊海の希望の極致『NEXUSⅢ』の鎧に過剰な力を注ぎ込み、ドン・サウザンド諸共に大爆発を起こした。

『不老不死』の特典を最大に活かした大技だが…『もう2度とやりたくない』と本人は語ったそうな。


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璃緒の憂鬱〜秘めたる願い〜

こんにちは!S,Kです!

命を懸けてドン・サウザンドを倒した遊海……だが、その傷は思ったよりも深く…。


「みんな…本当にすまなかった……」

 

『気にすんなよナッシュ!』

 

『そうだぜ!悪いのは全部ドン・サウザンドの奴だ!』

 

『まさか、まだ奴が生きていたとはな…』

復活したドン・サウザンドが倒されて1週間…KC病院の個室で凌牙は見舞いに来たドルベ・真月・アリト・ギラグ・ミザエルに頭を下げていた…。

 

 

凌牙の中に潜み、復活の時を狙っていたドン・サウザンド…彼はアストラルのナンバーズを奪う為に、凌牙の体を操り七皇を襲撃した…襲撃を受けたアリト・ギラグ・ミザエルは襲撃者の正体が凌牙である事に動揺し、倒されてしまったのだ…。

 

そして『七皇が狙われている』と思わせ、遊海が遊馬に璃緒の護衛を頼むように仕向け…周りに人間が少なくなった瞬間を狙い、遊馬とアストラルに襲いかかり、ナンバーズを奪おうと考えたのだ。

この間、遊海に殴り飛ばされるまでの記憶は凌牙には残っておらず…ドン・サウザンドは暗躍し続けていたのだ。

 

 

そしてドン・サウザンドは遊海によって倒され、事件は収束したのだが…それで万事解決とはならなかった。

 

 

 

『それより…ナッシュ、怪我は大丈夫なのか?遊海に全力で殴り飛ばされたと聞いたが……』

 

「正直、全身痛てぇ…野郎め…最悪の置き土産、残していきやがって……ぐうっ…」

まずは凌牙、ドン・サウザンドに操られた状態で遊海の全力で殴り飛ばされた事で壁やガラスに叩きつけられ…さらに、ある程度の加減と遊海のコントロールがあったとはいえ、()()()()()()2()2()()()()のダメージを受けた凌牙は遊海と共に昏倒…一時は命も危なかったが、翠の回復魔法と懸命な治療によって一命を取り留めていた…そして…。

 

 

『メラグ…璃緒は白波ントコか?』

 

「ああ……俺よりも、父さんの方が重傷だ…」

 

 

 

 

 

 

「遊海さん、頑張って…!!」

凌牙とは別の病室…そこでは翠が遊海に回復魔法を掛け続けていた。

遊海の放った大技『NEXUSダイナマイト』…遊海の全てを懸けた一撃により、ドン・サウザンドは倒された、しかし…その代償に遊海は生命力・精霊力が枯渇……昏睡状態で眠り続けていた…。

 

 

「お父さん……」

 

「璃緒ちゃん、大丈夫…!きっと目を覚ましてくれるわ…」

翠が回復魔法を行使する横で、璃緒は遊海の冷えきった手を握り続けていた…。

 

 

「母さん、私にもやらせて!やり方を習えば私だって…!」

 

「……私と同じ事はさせられないわ…!私はいま、自分の生命力も乗せて遊海さんに使っているの…同じ事を璃緒ちゃんがやったら、すぐに倒れちゃうわ…」

 

「そんな…!?」

遊海の容態は「ゼロ・リバース」の直後と同じレベルで悪かった…翠は少しでも遊海を回復させる為、『治療の神ディアン・ケト』や『ギフトカード』のような通常の回復手段だけではなく、その効果に自分の生命力・精霊力を上乗せして注ぎ込み続けていた…『不老不死』である翠だからできる無茶だが…当然…。

 

 

「っ…」

 

「母さん!!」

倒れかけた翠を璃緒が慌てて支える…不死とは言っても疲労は蓄積する、それも遊海と凌牙が倒れてから不眠不休で力を使い続ければ…限界を迎えるのは道理である。

 

 

「母さん!1回休もう!?」

 

「…ダメよ…!せめて…せめて遊海さんが目覚めるまでは…!」

璃緒の説得に首を振った翠は再び回復魔法を行使しようとする…その時だった。

 

 

「みど、り……りお……」

 

 

「遊海さん!!」

 

「お父さん!!」

か細い声が2人の耳を打つ…遊海がようやく意識を取り戻したのだ…。

 

 

「ああ……3日くらいは、経ったか…?」

 

「もう…!1週間経ちましたよ!!どんな無茶したらこうなるんですか!?」

 

「……無闇な、じばくはするもんじゃ…ないなぁ…───」

 

「お父さん!……また、眠っちゃった……」

僅かに目を覚ました遊海は再び眠りに落ちる…その表情は先程までと違い、穏やかだった…。

 

 

 

 

 

 

 

「母さん、お願いがあるの…!」

 

「璃緒ちゃん?どうしたの…?」

 

翌朝、遊海が目覚めた事を聞いた瀬人によって無理矢理家へ帰された翠と璃緒…普段より人数が少ない朝の食卓を囲む中で、璃緒が翠に話しかける。

 

 

「私を、鍛えてほしいの…!!」

 

「……今回の事件で何もできなかったから?」

 

「それだけじゃ、ないの……私は……いつも()()()()()()()だったから…」

璃緒は翠に自分を鍛えてほしいと頼む……自分の人生を振り返った時、璃緒は守られるばかりだった。

 

 

 

ベクターに拐われ、ナッシュと共に命を落とした時も…。

 

トーマスとのデュエルの後に昏睡する中でバリアンの刺客に襲われた時も…。

 

ネームレスに襲われた時も…。

 

ドルベと共にベクターと戦った時も…。

 

アストラル世界での決戦でトーマスと共闘した時も…。

 

 

璃緒は自分の身を守る事ができず、凌牙や遊海、翠、トーマス…ドルベ…家族や仲間達に迷惑をかけ続けた事を……自分の『弱さ』について悩んでいたのだ。

 

 

 

 

「無理に強くなる必要はないのよ?人には人の『役割』がある……自分のできる事を精一杯やる、それが一番大事な事よ?」

 

「でも…私は凌牙の…七皇の王の()だもの…!私があまりにも弱かったら、凌牙が舐められるわ…!」

 

「璃緒ちゃん…」

翠の言葉に璃緒はまっすぐ応える…忘れてはならないが…元々、璃緒はなかなかに負けん気が強い性格である。

養子である事で何かと辛い思いをしてきた神代兄妹…凌牙の為に、璃緒は少しでも強く在ろうと努力してきたのだ。

 

 

「わかったわ……それじゃあ…デュエルしかないわね!!強くなりたいなら、実戦が一番よ!」

翠は最も単純で簡単な方法を提案する、デュエリストにとって実戦は何よりの経験になる…かつて、アキを鍛えた時のように…翠は璃緒にデュエルを提案する!

 

「ありがとう母さん…受けて立つわ!!」

 

 

 

 

《フォウ、フォーウ!!》

 

《えっと…それじゃあ!翠と璃緒のデュエルを始めるよ!準備はいい?》

 

「「OKよ!!」」

 

朝食の片付けが終わった後、翠と璃緒は中庭で向かい合う…観客は家に残っているウィンダを始めとした精霊達である。

 

 

《それじゃあ…デュエル!スタート!!》

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

翠LP4000

璃緒LP4000

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「私はフィールド魔法『不知火(しらぬい)流 転生の陣』を発動!」

フィールドに青い炎が燃える魔法陣が展開する!

 

「そして『転生の陣』の効果発動!自分のフィールドにモンスターが存在しない時、手札を1枚墓地に送って効果を発動できる!私は手札の『逢魔ノ妖刀─不知火』を墓地に送って効果発動!墓地から守備力0のアンデット族モンスター『逢魔ノ妖刀─不知火』を特殊召喚!」

刃紋が黄色の輝きを放つ日本刀がフィールドに現れる! DEF0

 

 

「そして『不知火の物部(もののべ)』を召喚!」

薙刀を構えた巫女の少女が現れる! ATK1500

 

「『物部』の効果発動!召喚に成功した時、デッキから『妖刀─不知火』を特殊召喚!」

蒼炎を纏い、刃紋が青く輝く妖刀が現れる! DEF800

 

 

「私はレベル4の『物部』にレベル3の『逢魔ノ妖刀』をチューニング!」

妖刀から蒼白い肌の青年の霊体が現われ、物部に憑依する!

 

4+3=7

 

 

「受け継がれし退魔の業よ…刀に宿りし神を目覚めさせよ!シンクロ召喚!『妖神(あやかしがみ)─不知火』!」

薙刀を背負い、妖刀を手にした巫女が現れる! ATK2100

 

 

「私はカードを2枚伏せ、ターンエンドよ!」

 

翠LP4000

妖神 妖刀 転生の陣 伏せ2 手札1

 

   

 

『見た事のないデッキ…でも、この手札なら…!』

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「ブリザード・ファルコン」を召喚!』

翼が凍りついたハヤブサが現れる! ATK1500

 

『さらに魔法カード「ブリザードジェット」を発動!「ブリザードファルコン」の攻撃力を1500アップさせる!さらに、「ブリザードファルコン」の効果発動!自身の攻撃力がアップした時、その数値分のダメージを相手に与えるわ!』

 

「っ…!流石ね!」

強力な吹雪が翠に襲いかかる!

 

 

ブリザードファルコンATK1500→3000

 

翠LP4000→2500

 

 

『まだよ!永続魔法『幻影の吹雪(ブリザード・ヴィジョン)』を発動!このカードを自分フィールドの水属性モンスターと同じ種族・レベルのモンスターとして特殊召喚!』

フィールドに吹雪が吹き荒れ、幻影の『ブリザードファルコン』が現れる! ATK0

 

 

『私はレベル4の「ブリザードファルコン」と「幻影の吹雪」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!舞い降りろ!「零鳥獣シルフィーネ」!』

氷を纏う風の精霊が現れる! ATK2000

 

 

『「シルフィーネ」の効果発動!ORUを1つ使い、相手フィールドで表側表示のカード効果を全て無効にし、無効にしたカードの枚数1枚につき攻撃力を300アップする!パーフェクト・フリーズ!!』

フィールドに全てを凍らせる吹雪が吹き荒れ、翠のフィールドが凍りつく!

 

 

シルフィーネATK2000→2900

 

 

『バトルよ!『シルフィーネ』で『妖神─不知火』を攻撃!』

 

「っ─!!」

無数の氷の礫が薙刀の巫女を打ち据え、破壊する!

 

翠LP2500→1700

 

 

『よしっ…!私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!』

 

璃緒LP4000

シルフィーネ 伏せ1 手札2

 

 

 

「良い攻撃ね!璃緒ちゃん!普通のデュエリストだったら、なかなか立て直しが効かないと思うわ!」

 

『ううん…凌牙はここから巻き返して来たわ、これくらいじゃダメなのよ!』

 

「う〜ん…もう少し、自分に自身を持って良いと思うけどなぁ…」

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「『不知火の宮司(みやつかさ)』を召喚!」

祭主装束を纏う神官が現れる! ATK1500

 

 

「『宮司』の効果発動!召喚に成功した時、墓地の不知火モンスター『妖神─不知火』を特殊召喚!」

再び妖刀の巫女が復活する! ATK2100

 

「そして私はレベル4の『宮司』とレベル2『妖刀─不知火』でチューニング!!」

 

 

4+2=6

 

 

「受け継がれし秘伝の技!今こそ現世へ蘇れ!シンクロ召喚!『刀神(かたながみ)─不知火』!」

頑強なる武士が妖刀を構えて出陣する! ATK2500

 

 

『2体目のシンクロモンスター…!』

 

「私は『妖神─不知火』の効果発動!1ターンに1度、自分のフィールド・墓地のモンスター1体を除外し、その種類によって効果を使用できる!私は『刀神─不知火』を除外して、効果発動!シンクロモンスターを除外した事で1つ目の効果発動!相手フィールドのモンスター1体を破壊する!不知火流・電華一閃!」

 

『シルフィーネ!?』

仲間から力を得た巫女の抜刀術がシルフィーネを両断する!

 

「さらに炎属性モンスターをリリースした事で2つ目の効果!相手の魔法・罠カードを1枚破壊!不知火流・華災旋風!」

妖刀から薙刀に持ち換えた巫女が薙刀を高速回転、炎の竜巻が伏せられていた「魔水晶(ディストーション・クリスタル)」を燃やし尽くす!

 

「そしてアンデット族モンスターをリリースした事でフィールドのモンスターの攻撃力を300アップする!不知火流・明鏡止水!」

巫女が心を研ぎ澄まし、集中する!

 

 

妖神 ATK2100→2400

 

 

「バトルよ!『妖神』で璃緒ちゃんにダイレクトアタック!不知火流・不知火の舞!」

 

「くううっ…!!」

その身に焔の神を降ろした巫女が激しい薙刀の演舞で璃緒のライフを削る!

 

璃緒LP4000→1600

 

 

「私はこれでターンエンド!」

 

翠LP1700

妖神 転生の陣(効果無効) 伏せ2 手札1

 

 

 

『やっぱり母さんはすごいわ…巻き返されちゃった…!でも…ここからよ!!』

 

 

 

『私のターン!ドロー!……来たわ!私がドローしたのは「RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)」!』

 

「っ…!でも、この瞬間『シルフィーネ』の効果が消えるわ!」

フィールドの氷が解け、再び焔の魔法陣が燃え盛る!

 

 

『そして私は「七皇の剣」の効果発動!エクストラデッキから「ANo.103神葬零嬢ラグナ・ゼロ」を特殊召喚し、さらにカオスナンバーズにランクアップさせる!カオスエクシーズチェンジ!』

 

 

103

 

 

『現れて!「ACNo.103」!時をも凍らせる無限の力!今こそ蘇る!「神葬零嬢ラグナ・インフィニティ」!!』

巨大な鎌を手にした神すら葬る黒衣の巫女が現れる!ATK2800

 

 

『まだよ!「オーロラ・ウィング」を召喚!』

煌めく翼を持つ鳥が現れる! ATK1400

 

『さらにフィールドに鳥獣族・魚族のモンスターが存在する時!手札から「霊水鳥シレーヌ・オルカ」は特殊召喚できる!』

半鳥人半魚の精霊が現れる! ATK2200

 

『「シレーヌオルカ」の効果発動!自身の効果で特殊召喚に成功した時、フィールドのモンスターのレベルを3〜5変更させる!私はレベル5を選択!』

 

オーロラウィング☆4→5

 

 

『私はレベル5の「シレーヌオルカ」と「オーロラウィング」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!舞い踊れ!「零鳥姫リオート・ハルピュイア」!』

氷を司る鳥人の姫が現れる! ATK2500

 

 

『いくわよ!!「リオートハルピュイア」の効果発動!ORUを1つ使い!相手モンスターの攻撃力を0にする!「妖神─不知火」の攻撃力を0に!アームフリージング!!』

 

「この効果を受けたら『ラグナインフィニティ』の効果で私はダメージ受けて負けちゃう…でも、そうはいかないわ!罠カード発動!『不知火流 (つばくらめ)の太刀』!『妖神─不知火』をリリースする事で相手フィールドのカード2枚を破壊する!」

 

『なんですって!?』

巫女の身体から『炎の神』が分離…空を飛ぶツバメすら落とす必殺の太刀で黒衣の巫女と鳥人の姫を斬り裂いた!

 

 

「そして『宮司』の効果で特殊召喚された『妖神─不知火』は除外され、『燕の太刀』の効果でデッキから『不知火の武士』を除外するわ!」

 

『私だって!!墓地の「ラグナインフィニティ」の効果発動!ORUを持ったこのカードが破壊され、墓地に「ラグナゼロ」が存在する時、このモンスターを特殊召喚できる!リターン・フロム・コキュートス!』

氷の結晶が集い、黒衣の巫女が復活する! ATK2800

 

 

「なら、私は除外された『不知火の武士(もののふ)』の効果発動!このカードが除外された場合、墓地の不知火モンスターを手札に加える事ができる!『逢魔ノ妖刀─不知火』を手札に!」

 

『それでも、母さんのフィールドはガラ空きよ!「ラグナインフィニティ」でダイレクトアタック!』

 

「甘いわ!リバース罠『不知火流 才華の陣』を発動!手札から『不知火の師範(いくさのり)』を特殊召喚!」

顎髭を生やした不知火流の師範が現れ、黒衣の巫女の一撃を受け止め、破壊される! DEF0

 

 

「『才華の陣』の効果で特殊召喚されたモンスターはフィールドを離れる時、除外されるわ」

 

『止められた…!!私はこれで、ターンエンド!』

 

璃緒LP1600

ラグナインフィニティ 手札0

 

 

 

『でも、これで母さんの手札は1枚…フィールドにカードはないわ…次のターンで…!』

 

「ふふっ…『墓地は第2の手札、除外は第2の墓地』…いくわよ!!」

翠を追い詰めたかに見えた璃緒…だが、翠は最後の攻撃を仕掛ける!

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「『逢魔ノ妖刀─不知火』を召喚!」

再び刃紋が輝く妖刀が現れる! ATK800

 

 

「『逢魔ノ妖刀』の効果発動!このターン、アンデット族モンスターしか特殊召喚できなくなる代わりに、除外された不知火モンスター2体を効果を無効にして、守備表示で特殊召喚できる!現れて!『不知火の武士』!『妖神─不知火』!」

不知火流の剣士、神を降ろした巫女が蘇る! DEF0

 DEF0

 

 

「そして…私はレベル7の『妖神─不知火』にレベル3の『逢魔ノ妖刀』をチューニング!!」

 

7+3=10

 

「受け継がれし秘伝と退魔の御技、今こそ魔を断つ神を呼び覚ませ!シンクロ召喚!!出陣せよ!『炎神(ほむらがみ)─不知火』!!」

フィールドに冥界からの孔が開く…その孔の彼方から、炎を纏う馬を駆る炎の神が現れる! ATK3500

 

 

『レベル10、攻撃力3500のシンクロモンスター!?』

 

「バトルよ!『炎神─不知火』で璃緒ちゃんにダイレクトアタック!退魔の太刀・不知火!!」

 

『っ…!きゃあああ…!』

炎の神の退魔の一閃が璃緒のライフを削りきった…。

 

 

 

璃緒LP0

 

 

翠WIN!

 

 

 

 

 

 

「うぅ…あと少しだったのに〜!!」

 

「ふふっ…惜しかったわね、璃緒ちゃん!」

デュエルが決着し、悔しがる璃緒を翠が助け起こす。

 

 

「う〜ん…璃緒ちゃん、もう少しエクシーズモンスターを守るカードを入れたら良いんじゃないかしら?カウンター罠の『エクシーズ・リフレクト』とか『エクシーズ・ブロック』とか…あとは『ラグナインフィニティ』の効果を活かせて攻撃にも防御にも使える『収縮』とか『ハーフ・シャット』とかも良いかしら!」

 

「母さんって、意外に厳しい事言うよね…」

 

「あら?そう?」

翠のアドバイスに璃緒はげんなりとした表情になる…なかなかに実戦的なアドバイスだったからである。

 

 

「……璃緒ちゃん、知ってる?『氷』ってね、ゆっくり時間を掛けて作ると…透明で溶けにくくて…固い氷ができるの、それは私達も同じ!焦らず、ゆっくり自分のできる事を増やして…しっかり固めていけば、きっと強くなれる!100年色んなデュエリストを見てきた私が保証するわ!」

 

「焦らず、ゆっくり固めていく……うん!わかったわ!なんだか元気出た!」

 

「よかった!やっぱり璃緒ちゃんは笑顔が可愛いいもの!」

 

「むぅ!?母さんくすぐったいよ〜!」

デュエルで自分の「答え」を見つけ、笑顔を見せた璃緒を翠が抱きしめる…璃緒は少し恥しそうである。

 

 

 

ピロロン!ピロロン!

 

 

「あら?もしもし?」

 

『あっ!璃緒さん!こんにちは!鉄男です!!』

璃緒のDゲイザーが着信を知らせる…電話の相手はガチガチに緊張した鉄男だった。

 

 

『あの、その、遊海さんが、入院したって聞いて……お見舞いに、行きたいんです、けど…!』

 

「あら…ありがとう!きっと、お父さんも喜ぶと思うわ!KC病院の前で待ってて!」

 

『わ、わかりました!いつまでも待ってます!!』

鉄男は笑顔で通話を切った…。

 

 

 

「璃緒ちゃん?鉄男君とはどんな仲なのかしら〜?」

 

「えっ……!?そ、それは…普通の、お友達で……」

 

「ふ〜ん?鉄男君、前より少しカッコよくなったんじゃない?少し痩せたって聞いたわよ〜?」

 

「そうなの!お父さんから何か言われ……あ…」

 

「(≧▽≦)」

 

「で、出掛けてきまーす!!」

 

「璃緒ちゃん!誰にも言わないから〜!!」

 

「な、なんでも無いったら〜!?」

 

《フォウ…!?フォーウ!?(特別意訳:えっ!?もしかして本当に!?…うっそだぁ!?)》

穏やかな青空に母子の微笑ましいやり取りが融けていった…。

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

「遊馬…凌牙…心配、掛けたな…」

 

「目が覚めてよかったぜ!」

 

「父さん…本当に良かった…!」

翠と璃緒が微笑ましいやり取りをしている頃、病室で遊海と凌牙が再会する…凌牙は車椅子に乗り、遊馬が押して来たのだ。

 

 

「…父さん、相談したい事があるんだ」

 

「どうした…?」

遊海に声を掛けた凌牙は手にしていたデッキケースから数枚のカードを取り出す、それは…。

 

 

「………()()()()()の、『オーバーハンドレット・ナンバーズ』……」

凌牙が手にしていたのは…バリアンとして使っていた「本物」の「オーバーハンドレットナンバーズ」…既に失われたはずのカード達だった。

 

 

「アリトやミザエルに話を聞いたら、俺が『彗星のカエストス』や『超銀河眼の時空龍』を使ってきたって言うんだ…それでデッキを見たら、入ってやがった…」

 

「……アストラル、そこにいるか?…今の俺じゃ、姿が見えないんだ…」

 

(……ああ、ここにいる)

凌牙の思い詰めた表情を見た遊海はアストラルを呼び出す。

 

 

「…お前の意見を聞きたい」

 

(私もそのナンバーズを見せてもらった…とりあえずはドン・サウザンドの意思や呪いは残っていない…以前の「No.96」のような事はないだろう)

 

「そうか……凌牙、お前はそのカードをどうしたい?手放したいか?それとも…破壊するか?」

アストラルの言葉を聞いた遊海は凌牙に問いかける…自分達を苦しめた「呪いのナンバーズ」をどうしたいのかを。

 

 

「これは俺達の……七皇の王でもある俺の『罪』の象徴だ……でも、俺は逃げない…俺はこのカードを使って…みんなを守りたい…!!」

 

「シャーク…」

凌牙はナンバーズを握り締める…ドン・サウザンドの呪いによって人間界の仲間を裏切り、戦いを繰り広げた凌牙…オーバーハンドレットナンバーズはその象徴と言ってもいい……だが、強力な力を持つ事もまた事実…凌牙はそのカードで贖罪をしたいと考えていたのだ。

 

 

「そうか……凌牙、カードを使うのは()()()だ、カード自体に罪はない…そのカードをどう使い、何を為すのか…それは……お前次第だ」

 

「わかった…!俺は、このカードをみんなの希望を守る為に使う!!」

「呪いのカード」を正義と守護に使う…凌牙はそう心に決めたのだった。

 

 

 

 

 

「さて……アストラル、遊馬……次は俺から相談なんだが……」

 

「どうしたんだ?遊海が相談なんて…?」

遊海の珍しい言葉に遊馬は首を傾げる。

 

 

「……ぐうっ…!!この、カードの事、なんだが……」

 

ギィン!!

 

 

「へっ…!?」

 

「父さん!?そのカードは…!!」

 

(『CiNo.1000』…!!)

一瞬、苦しげな表情を浮かべた遊海の胸から禍々しい光と共に2枚のカードが飛び出す、それはドン・サウザンドの分身とも言える『混沌』のカード…『夢幻虚神ヌメロニアス』『夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア』だった。

 

 

 

「………どうやら、ドン・サウザンドの置き土産らしい……」

 

なんて事しやがったあの野郎!?あがっ…!?」

 

「シャーク!大丈夫か!?」

思わず叫んでしまう凌牙だが、それが傷に響き悶絶する…。

遊海に負けた後、自身の力と意思をカードに込めて遊海に取り憑こうとしたドン・サウザンド…だが、その足掻きも遊海の『NEXUSダイナマイト』によって失敗…邪神の意思は消滅したが……あろうことか、カードだけが残ってしまったのだ。

 

 

「さっきの言葉の手前、破壊するのはどうかと思うんだが…」

 

(「「いや!捨ててくれよ!?」」)

『オーバーハンドレットナンバーズ』以上の厄ネタに遊馬達の声が重なる…。

 

 

「…このカードは膨大な『カオス』を内包してる……これが一気に開放されたら、また問題が起きかねない……しばらくは俺が浄化しつつ、管理していくつもりなんだが…」

 

(………遊海、アヤカ曰く『ドン・サウザンドの意思は感じられず、当面の危険性はなさそう』との事だ……私としても、当面の管理をお願いしたい…アストラル世界もまだ不安定だ、そこに新たなカオスが流れ込んだら……本当に新たな戦いが起きてしまう)

 

「やっぱり、そうだよなぁ…」

精霊が見えない遊海に代わり、アストラルがアヤカの言葉を代弁…さらに、アストラルとしての依頼を伝える…遊海は仕方なく、その依頼を受け入れた。

 

 

 

「まぁ、俺1人の犠牲で世界が守れるなら……俺は喜んで人柱になるさ…」

 

「…そんな事言うんじゃねぇよ、父さん…父さんを1人にはしねぇよ!」

 

「そうだぜ!オレ達にも任せてくれよ!」

 

「──ああ、頼りにしてるぜ…遊馬、凌牙………ああ、ホッとしたら、また……ねむ、く……──」

 

「おやすみ、父さん……遊馬、頼む」

 

「ああ、静かにな…!」

悩み事が解決した遊海は再び眠りに落ちる…凌牙達はその様子に安心しながら病室を後にする…。

 

 

 

 

凌牙達と璃緒&鉄男がばったり出会うまで…あと1分。

 

 

 

 

 

遊海は『混沌の置き土産』を手に入れてしまった ▼



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真月零の暗躍?〜正体を暴け!〜

「はぁ〜…今日もハートランドは平和だな〜っと……今日はオレが買い物当番〜……あー、メンドクセ……」

ドン・サウザンド復活事件からしばらくが過ぎ、今度こそ平和を取り戻したハートランド…その道を大量の買い物を手にしたベクター…こと、真月零が歩いていた。

 

 

悪逆非道を為し…七皇を裏切り、遊海の死の一因となったベクター…しかし、そんな男も遊馬の優しい涙とかっとビングによって改心し、全能の力『ヌメロン・コード』によって新たな人生を手に入れた。

 

もちろん、贖罪の為に璃緒と凌牙を除く七皇からタコ殴りに遭ったり、迷惑を掛けた相手への謝罪行脚などなど…たくさんの苦労があったものの、彼は『真月零』として新たな人生を歩んでいる……だが、改心したとはいえ、過去の悪逆も中々抜けぬモノ……ヤンキーで面倒くさがりだが、心は優しいというよく分からない状態でとりあえず落ち着いていた…。

 

 

 

「え〜っと、あとは台所の洗剤と……プロテイン?タヌキのエサ用のドッグフード(ウェット)??…アリトにギラグ!!そんなのは自分で買いやがれ!?」

買い物メモを見ながら仲間2人への悪態を吐く真月…真月が買い物当番の日は()()()()()()買い物が多くなるのである。

 

 

 

………

 

 

 

「はぁ…すっかり夕方だぜ…まっ、これであいつらも文句言わねぇだろ…」

黄昏刻…買い物を全て終えた真月は夕日の差すハートランドをアパートに向けて歩いていた…。

 

 

「……このままバカ正直に家に向かうと遠いな……そうだ、通学路メモをっと……」

真月は懐からメモ帳を取り出す、そこにはハートランドの抜け道がメモしてあり……ベクターはそのメモからわざと危険なルートを遊馬と通る嫌がらせをしていたのだ。

 

「ここからなら…不良の溜まり場コースを通れば近いな、デュエルを挑まれても…白波からもらったカードがあれば平気だろ、ああ…瞬間移動が恋しいぜ……」

大荷物を手に真月は抜け道に足を踏み入れた…。

 

 

 

 

「やべっ…暗くなってきやがった…」

少しずつ夜の帳が落ちる中、真月は裏路地を進んでいく…その時だった。

 

 

「「「ぎゃあああ!?」」」

 

 

「っ!?なんだァ!?」

不良が根城にしている廃ビルから数人の男が吹き飛ばされ、地面に転がったのだ…!

 

 

「この感じ、白波か…?」

それと同時に真月は理解した、ハートランドにおける最強のヒーロー「メタルナイト」…遊海の扮するヒーローが暴れているのだろうと…。

 

 

 

『ひ、ひぃ!?く、来るなぁ!!?』

 

「あ〜あ、ご愁傷さまだなァ…アイツに狙われたら逃げられないだろうに…」

その直後に廃ビルから大柄な男が飛び出してくる…おそらく、メタルナイトから逃げ出したのだと思った真月…だが、それは違っていた…!

 

 

 

【まだ、懲りないらしいなぁ…風魔…!】

 

 

「ッ─!?(メタルナイト、じゃねぇ!?)」

瞬間、真月は咄嗟に建物の隙間に飛び込んでいた、廃ビルから出てきたのはメタルナイトに似ていたが、メタルナイトではない…。

 

 

その男は夜闇に溶け込むような黒い鎧を纏っていた。

 

背中には漆黒の翼があった。

 

鎧の隙間から覗く目は赤々と輝き、不良を睨んでいる。

 

そして…その男は絶対的な『殺意』を撒き散らしていた…!

 

 

【メタルナイトがいなかったからってよぉ…お前達が蔓延って良いわけないよなぁ?とりあえず…死んどけ、マインド・クラッシュ】

 

バキーン!!

 

『ぎゃあああ!?!?』

 

「っ─!?!?」

何かが割れる音と共に不良の断末魔が響く…そして周囲は静寂に包まれた…。

 

 

 

【さて…悪は滅びた、が……おい、隠れてる()()()…出てこいよ…?】

 

「っ…!!」

不良を始末した黒い男は物陰に隠れる真月へと目を向ける…!

 

【出てこねぇなら、(オレ)からいくぞ?】

 

「っ…!テメェ、何モンだ!!」

真月は覚悟を決めて黒い男の前に飛び出す…だが、その全身に殺気が突き刺さる…!

 

 

【ああ、テメェか…()()()()…よくもまぁ、(オレ)の前に顔を出せたなぁ?この街を襲った悪人が…!!】

 

「なっ…!?(オレのバリアンとしての名前を知ってる…!?)」

黒い男の言葉に真月は警戒する…ベクターはこの街では『真月零』で通っている…ベクターとしての名を知るのは遊馬達だけのはずだからだ。

 

 

 

【一応は改心したらしいが…(オレ)は信用してねぇからなぁ…覚えておけ、ハートランドの闇には…我がいる…!!】

 

「……消えた…!?」

真月へと釘を刺した黒い男は夜の闇へと消えた…真月は殺気から開放され、地面にへたりこんだ…。

 

 

 

 

 

『おっ!?ベクター!遅かったじゃ……どうした?顔が真っ青だぜ?』

 

『何かあったのか?』

 

「ちょっと、やべぇ奴に会っちまった…」

少し時間が経ち、ベクターがアパートへと帰宅する…だが、その顔色は真っ青…出迎えたアリトとドルベも心配するほどだった。

 

 

「なあ……『黒いメタルナイト』に会ったって言ったら、信じるか…?」

 

『メタルナイト?それって遊海のヒーロー名だよな?たしか、銀色の……』

 

『夜闇を駆けていたのを見間違えたのではないか?』

 

「いや、まったくの()()だ…奴の殺気以上にやべぇ奴だった…!!」

 

『くだらん、そもそも…白波は我らの味方だ…そんな殺気を我らに向けるはずがないだろう』

未知の存在に出会った真月…だが、アリトもドルベも…あとからやって来たミザエルも…真月の言葉を信じなかった…。

 

 

 

……………

 

 

 

「黒いメタルナイト…ウラ?」

 

「ああ、そうだ…お前なら知ってんじゃねぇかと思ってよぉ…」

翌日、登校した真月はとある人物の所へやって来ていた…その人物はハートランドのウラを知る情報通、表裏徳之助である

 

 

「噂話で聞いた事があるウラ!ハートランドに『鋼の騎士』…メタルナイトが現れ始めた頃、夜闇に紛れる『黒い鋼の騎士』…ブラックメタルナイトが現れたそうウラ!」

 

「ブラック、メタルナイト…」

 

「そうウラ、メタルナイトは昼間の間の事件や事故、火災からハートランドを守り……ブラックメタルナイトは夜闇に紛れ、ハートランドの悪人達を完膚なきまでに叩き潰していったらしいウラ!……でも、この数年は出没してなかったらしいウラよ?」

 

「そうなのか…」

ハートランドの悪を滅ぼすダークヒーロー・ブラックメタルナイト…その存在を知った真月は身を震わせる…。

 

 

「……というより、メタルナイトの事ならシャークとか遊馬に聞いた方が良いんじゃないかウラ?」

 

「……あんまり、あいつらには心配掛けたくねぇんだよ…」

 

「ウラウラ…(人って変わるもんウラ…)」

少し表情を落とした真月に徳之助は感心したのだった。

 

 

 

『父さんの様子?』

 

「ああ、ほら…ドン・サウザンド事件からしばらく経ったけどよ、メタルナイトの話をあんまり聞かねぇから…少し心配でよ」

昼休み、凌牙のもとを訪れた真月は遊海の様子を訊ねる…。

 

 

『父さんは家で寝込んでる…ドン・サウザンドを倒す為の自爆でのダメージが治りきってねぇんだ……しばらくはメタルナイトとしては動いてないはずだぜ?』

 

「そうか…(じゃあ、あの黒いヤツは……偽者なのか…?)」

 

『ベクター、何かあったのか?』

 

「……いいや、別に?ちょっと気になっただけさ、邪魔したな」

 

『……?』

いつもと違う真月の様子に凌牙は首を傾げたのだった。

 

 

 

 

 

「遊海の……メタルナイトの偽者…確かにヒーローはヒーローなんだろうが、ありゃあやり過ぎだ…」

屋上に上がった真月は昨夜の事を思い出す…ブラックメタルナイトに襲われた不良達は正気を失い、廃人のようになっていた…。

 

 

「遊海の奴はまだ動けねぇ、遊馬にも迷惑はかけられねぇ……やるしかねぇか…!」

ヒーローであろうとも、行き過ぎた制裁は『悪』になる…遊馬によって真月が取り戻した『優しさ』が、ブラックメタルナイトの行ないを見過ごせなかったのだ…!

 

 

「待ってやがれ、ブラックメタルナイト…!お前はオレが止めてやる…!」

真月は…覚悟を決めた…!

 

 

 

 

…………

 

 

 

【ほう、よく(オレ)の現れる場所が分かったなぁ?】

 

「七皇の情報網、舐めるんじゃねぇよ…!」

逢魔ヶ刻…ハートランドの海浜地区の廃工事現場

少し前まで暴走族が根城にしていたその場所で…赤い目を輝かせたブラックメタルナイト…そして、黒の革ジャンを纏った真月が対峙する…!

 

 

 

「ブラックメタルナイト…アンタはすげぇよ、1人で数十人の暴走族を壊滅させちまうなんてな…!」

真月の周りでは正気を失った暴走族達が倒れ込んでいる…竦みかける足に力を込め、真月はブラックメタルナイトを睨みつける…!

 

 

「でもよぉ…アンタは()()()()だ!確かに、こいつらはワルだが…ここまでする事はねぇだろうが…!」

 

【ほう…悪事を重ねたお前が『正義』を語るとはな…?どんな風の吹き回しだ?】

 

()()()メタルナイトは、悪人を捕まえても最小限の制裁に留めてるって聞いた…だが、お前はワル共の精神まで壊してやがる…!やり過ぎだろうが!」

 

【……?何か、勘違いしてねぇか?】

 

「うっせぇ!とにかくテメェのやり方は気に障るんでな…!止めさせてもらうぜ!!」

真月はデュエルディスクを構える!

 

 

【まぁ、いいや…アイツがお前を許しても……(オレ)はテメェを許さねぇ……制裁のデュエルといこうか、ベクター!!】

 

「今のオレはベクターじゃねぇ…遊馬の友、真月だ!!」

殺気を解き放つブラックメタルナイトに真月が挑む!!

 

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

 

 

■■■■LP4000

真月LP4000

 

 

 

(オレ)のターン、ドロー!】

【ハッ…いい手札だ!魔法カード『おろかな埋葬』発動!デッキから『インフェルニティ・ミラージュ』を墓地に送る!さらに魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動!手札の『インフェルニティ・ジェネラル』を墓地へ送り、デッキからレベル1の『インフェルニティ・リベンジャー』を特殊召喚!】

二丁拳銃を構えた小柄なガンマンが現れる! DEF0

 

 

【さらに永続魔法『インフェルニティ・ガン』を発動!その効果で手札の『インフェルニティ・デーモン』を墓地に送る!そして『インフェルニティ・ネクロマンサー』を召喚!自身の効果で守備表示になる!】

紫色のローブを纏う屍術師が現れる! ATK0→DEF2000

 

 

「あっと言う間に、手札が0枚になりやがった…!」

 

【これが…インフェルニティ名物、ハンドレス・コンボだ!!『ネクロマンサー』の効果発動!手札が0の時!墓地からインフェルニティモンスター…『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚!】

墓地から額に緑色の宝石を嵌めた悪魔が現れる! ATK1800

 

【『デーモン』の効果発動!手札0の時に特殊召喚された時!デッキからインフェルニティカード、『インフェルニティ・バリア』を手札に加える!そしてセット!さらに我はレベル4の『デーモン』とレベル3の『ネクロマンサー』にレベル1の『リベンジャー』をチューニング!!】

 

4+3+1=8

 

【闇の眼を見開き…冥府への扉を開け!シンクロ召喚!『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』!】

全身に無数の目を持つ、異形のドラゴンが現れる! ATK3000

 

 

『いきなり攻撃力3000だぁっ!?』

 

【まだだ!我は『ワンハンドレッド・アイ』の効果発動!墓地のレベル6以下の悪魔族モンスター『インフェルニティ・ミラージュ』を除外し、その名と効果を得る!『インフェルニティ・ミラージュ』の効果発動!手札が0の時、自身をリリースし!墓地のインフェルニティモンスター2体を特殊召喚できる!復活しろ!『ネクロマンサー』!『リベンジャー』!】

百の眼が幻影の悪魔の姿を写し出し…そして再び屍術師とガンマンが現れる! DEF2000 DEF0

 

 

【『ネクロマンサー』の効果発動!手札が0の時!墓地の『デーモン』を特殊召喚!】

再び悪魔が復活する! ATK1800

 

 

【手札が0枚の時に特殊召喚された『デーモン』の効果発動!デッキから『インフェルニティ・ブレイク』を手札に加え、セット!そして我はレベル4の『デーモン』とレベル3『ネクロマンサー』にレベル1の『リベンジャー』をチューニング!】

 

4+3+1=8

 

【死者と生者、零にて交わる刻!永劫の檻より魔の竜は放たれる!シンクロ召喚!!現れろ!『インフェルニティ・デス・ドラゴン』!!】

剥き出しの脳を覗かせた不気味な魔竜が現れる! ATK3000

 

 

「おい、待てよ…!これって…!?」

 

【そう、これは…ループコンボ…さぁ、もう一回りいくぜぇ!!永続魔法『インフェルニティガン』のさらなる効果発動!手札0の時、このカードを墓地に送り墓地の『ネクロマンサー』と『リベンジャー』を特殊召喚!】

フィールドに現れた異形の銃から屍術師とガンマンが飛び出す! DEF2000 DEF0

 

【『ネクロマンサー』の効果で墓地の『デーモン』を特殊召喚!】

三度、悪魔が蘇る! ATK1800

 

 

【『デーモン』の効果でデッキから『インフェルニティ・バリア』を手札に加え、セット!そして『デーモン』『ネクロマンサー』に『リベンジャー』をチューニング!】

 

4+3+1=8

 

【天国と地獄の狭間…煉獄より現れろ!シンクロ召喚!!『煉獄龍オーガ・ドラグーン』!!】

煉獄の炎を纏いし巨大な爪を持つドラゴンが現れる! ATK3000

 

 

【我は…これでターンエンドだ】

 

■■■■LP4000

煉獄龍 インフェルニティデスドラゴン 伏せ3 手札0

 

 

 

「攻撃力3000が2体に、明らかにヤベー伏せカードが3枚だぁ!?」

 

【さっきまで威勢はどうした?この程度で怖気づいたのか?】

 

「っ…!負けて…たまるかよぉ!!」

抜き身の刀を突きつけられるような殺気と相手のモンスターにたじろぐ真月…だが、彼は仲間の為に勇気を奮う!

 

 

 

「オレのターン!ドロー!来たぜ…!オレが引いたのは『RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)』!!」

 

【ほう…?】

 

「ドローフェイズに引いたこのカードをメインフェイズまで効果して、効果発動!エクストラデッキから『ANo.104仮面魔踏士シャイニング』を特殊──」

 

【通してやってもいいが…徹底的にやらせてもらうぜ…『煉獄龍』の効果発動!1ターンに1度、自分の手札が0で相手が魔法・罠の効果を発動した時!その発動を無効にし、破壊する!】

 

「なにっ!?」

煉獄龍が咆哮…七皇の剣が砕け散る!!

 

 

「っ…まだだ!手札の『アンブラル・グール』を召喚!」

闇の瘴気を纏う屍人が現れる! ATK1800

 

「『グール』の効果発動!自身の攻撃力を0にして…!」

 

【カウンター罠『インフェルニティ・バリア』を発動!自分フィールドにインフェルニティモンスターが存在し、手札が0枚の時、相手が発動したモンスター・魔法・罠の効果を無効にし、破壊する!】

 

「はっ…!?」

魔竜が咆哮…屍人が砕け散る…!!

 

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ…」

 

真月LP4000

伏せ1 手札3

 

 

 

【我のターン!ドロー!】

【カードをセット、バトルだ!『インフェルニティ・デス・ドラゴン』でダイレクトアタック!】

 

「ま、まだだ…!『リビングデッドの呼び声』発動!」

 

【『煉獄龍』の効果発動!魔法・罠の発動は無効だ!デス・ファイア・ブラスト!】

「ぐああっ…!!」

魔竜の火炎弾が真月のライフを削る…!

 

 

【煉獄の炎で燃え尽きろ…『煉獄龍オーガ・ドラグーン』でベクターにダイレクトアタック!煉獄の混沌却火(インフェルニティ・カオス・バースト)!!】

 

「あ、ああっ……うわああああっ!?」

 

煉獄の炎…罪を焼き尽くす一撃が真月を飲み込んだ…。

 

 

 

真月LP0

 

 

■■■■WIN!

 

 

 

 

 

「かはっ……ダメージが、実体化して…!!」

デュエルに敗北した真月は煉獄の一撃に吹き飛ばされ、廃材置き場に叩きつけられる…!

 

 

【少しは思い知ったか、お前に虐げられ…傷付いた奴らの痛みを…!】

ブラックメタルナイトは赤い瞳をギラつかせながら、真月を睨みつける…!

 

【さぁ…()()()()の時間だ…!!】

 

「(殺られる…!!)」

殺気を放つ黒の戦士に真月は目を閉じ…

 

 

 

 

 

 

 

「何やってんだ!!この大馬鹿ぁぁぁ!!」

 

 

ゴシャ!!

 

 

【ぎゃん!?】

 

 

「へっ…?」

地面を震わせるほどの打撃音と、カエルが潰れたような声に真月は目を開く…そこには頭が地面にめり込んだブラックメタルナイト、そして拳を振り下ろした姿勢で着地した鋼の騎士…メタルナイトの姿があった。

 

 

 

「し、白波…!?どうして…?」

 

「凌牙からお前の様子が変だったって聞いてな…変な事に巻き込まれてるんじゃないかと心配して警戒してたのさ」

 

「ナッシュが…」

遊海は鎧を解きながら真月に回復魔法を使う…。

 

 

【て、テメェ…!いきなり何しやがる!殺す気かぁ!?】

 

「白波!!」

 

「はぁ…殴ったぐらいじゃ死なねぇだろ、お前は…」

首をゴキゴキ鳴らしながらブラックメタルナイトが起き上がる、真月は警戒するが…遊海はどこか呆れた様子である。

 

 

「俺の代わりに街を守ってくれとは頼んだけど…ここまでしろとは言ってないだろ?()()()()…お前はいつもやり過ぎなんだって」

 

【お前がしばらく出なかったせいで不良共が調子に乗るんだろうが!】

 

「へっ…?」

遊海とブラックメタルナイトの会話に真月は違和感を抱く…まるで()()()()のようではないかと…?

 

「白波、偽者と知り合いなのか?」

 

「ん…?………ああ、そういう事か!ユウスケ、変身解け…余計な勘違いをさせたらしいぞ?」

 

【チッ…仕方ねぇ…アーマー・オフ!】

ブラックメタルナイトの姿が一瞬、闇に包まれる…そして現れたのは遊海に瓜二つな黒い服を着た男だった…。

 

 

「はっ??白波が2人??」

真月はその光景を見て混乱する、アストラル世界のシーカーも遊海に似た雰囲気だったが、遊海とユウスケは同一人物にしか見えなかったからだ。

 

 

「こいつはユウスケ、俺のもう一つの()()が実体化した…もう一人の()なのさ」

 

「は!?」

 

【アゴール…ディヴァインからは何も聞いてないらしいなぁ…】

 

「え〜っと、実は……」

遊海の言葉に真月は再び驚愕の声を上げる…遊海にもう1つの人格があるとは知らなかったのだ。

 

 

 

遊海曰く…とある秘密結社との戦いの際、敵の首魁によって遊海の『負の面』に魂が与えられた存在…それがユウスケである事。

 

さらに、とある事件と力の強化を経て…別存在として実体化できるようになった事。

 

そして…ドン・サウザンドの事件で疲労してしまった遊海に代わり、ユウスケにハートランドのパトロールを任せていた事を…。

 

 

 

 

「おい…それじゃあ……」

 

「こいつは俺以上に容赦が無い奴でなぁ…小悪党にもマインド・クラッシュとかの罰ゲームをしちまうんだよ…」

 

【フン…2、3日すれば悪意が抜けるんだ、文句はないだろ?】

 

「だから、マインドクラッシュがやり過ぎなんだって…普通に倒して警察に任せろよ…そのせいでブラックメタルナイトなんて都市伝説になるんだぞ?」

 

【知るか!懲りない悪党共が悪い!それにアイツら手応えなくてつまんないンだよ!】

遊海とユウスケ、異なる正義を持つ同一人物の2人は口喧嘩を繰り広げていたが…。

 

 

「……オレの……」

 

【「ん?」】

うつむいていた真月の言葉に2人は振り返り──

 

 

 

「オレの気苦労を返せぇぇぇ─!!」

 

 

 

真月の渾身の叫びが一番星の輝くハートランドに虚しく木霊した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

『………で、ベクターが家にいる訳か…』

 

「流石に今回のベクターは被害者ね…」

 

「フン!!」

 

「ほら、機嫌直せって……ユウスケの奴も謝ってるから…」

 

【(我は悪くないもん!!)】

 

少し時が過ぎ…真月は白波家にいた、色々勘違いをさせてしまったお詫びに夕食に招いたのである。

 

…なお、事件(?)の顛末を聞いた凌牙と璃緒も流石に同情していたのだった。

 

 

 

「は〜い!麻婆豆腐出来たわよ〜!」

 

「『母さん!?!?』」

 

「(しまった(汗))」

 

【(あ、察し)】

 

「マーボードーフ?」

 

 

………

 

 

《フォウフォウ…フォーウ!(特別意訳:この後の事はみんなの想像に任せるよ!まぁ…答えは1つなんだけど…)》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(遊海の家の夕食は…麻婆豆腐か?)

 

「ああ、聞こえたぜ……何をやらかしたんだろうなぁ…というか、真月の声がしたような…」

 

(……気のせいだろう)



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ドラゴン使い×ドラゴン使い=大激戦

こんにちは!S,Kです!久々の投稿…お待たせしてすいません!


そして本編の前に…1つ宣伝をさせて頂きます!


古参の読者の方ならご存知かもしれませんが…なんと!拙作『決闘の観測者』とのコラボ小説を書いてくださった方がいらっしゃいます!

その物語の題名は『時空大戦 札の章 断章』…pixivにてユーザーネーム『十六夜月』さんが執筆してくださった、前・中・後編の3部構成の作品です!


時空大戦 札の章 断章(前編)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9976606

中編
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10075449

後編
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10124104


長編作品ですが…読み進めると本編に繋がる要素があったりして?というより、遊海のもう一人の相棒である『メガロック』は十六夜月さんのアイデアから誕生したキャラクターだったり!あとは…他のハーメルン作品の決闘者が出演していたりもします!



そして、なんと!再び遊海が十六夜月さんの作品世界に登場します!

時空大戦 歴史の章 第3.5話A セブンスターズ編
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16492870


こちらは『断章』の事件の後、遊海が別世界への救援の為にゲスト参戦!本編とは違う、もう1つの遊海の物語をお楽しみください!




それでは改めて…久々の本編をどうぞ!


「ふぁぁ…平和だなぁ…」

 

《フォーウ…》

 

《ZZZ…》

 

日常を取り戻したハートランドにて…遊海はフォウやメガロックと共に日光浴をしながら微睡んでいた。

 

ドン・サウザンドとの戦いの傷も癒え、ユウスケが不良・悪党を牽制したおかげでハートランドも平和になり…遊海達は穏やかに過ごす事ができている。

 

 

 

 

ピロロン!ピロロン!

 

 

「んむ…?はい、もしもし?」

 

『白波さん、お久しぶりです』

 

「おお、カイト!どうしたんだ?」

遊海のDゲイザーが着信を知らせる、連絡の相手はカイトだった。

 

 

『頼みたい事があって…お会いできませんか?』

 

「頼み事…?分かった!少し待っててくれ!」

 

『ありがとうございます』

カイトからの頼み事…それを確かめる為に身支度を整えた遊海はハートの塔へと向かった…。

 

 

………

 

 

「海馬コーポレーションに技術協力を頼みたい?」

 

「ええ…その為に白波さんの力を借りたいんです」

Dr.フェイカーの研究所、遊海はそこでしばらく振りにカイトやトロンと再会…頼み事の内容を聞かされていた。

 

 

『今、僕達はアストラル世界の協力を得て異次元の研究をしている…それは知っているよね?』

 

「ああ、ゾーンやラプラス…アストラル世界の五命星が中心だったよな?」

 

『そこで…1つの壁に突き当たってしまってね…』

 

「壁?」

トロンの言葉に遊海は問い返す。

 

 

「素材を調達できないんです…」

 

「素材…」

カイト曰く、次元を行き来する為のゲート(遊馬をアストラル世界に送り出した奴の改良版)と荷物を運ぶ為の『船』を造りたいらしいのだが…次元の行き来を何回もできるような頑丈な素材が足りないらしいのだ。

 

 

『現状ではアストラルと遊馬の飛行船を借りて、少しのアストライトやバリアライトを運んで来るしかなくてね……でも、将来的にはアストラル世界に頼らない、人間世界の素材で強靭な『船』を造る素材とノウハウがほしいのさ』

 

「確かに…それなら海馬コーポレーションに頼るのは道理だな…」

世界一の大企業となった海馬コーポレーション、その主力商品はデュエルモンスターズ系の商品…そして、永久機関『モーメント』の製造である。

凄まじいエネルギーを発するモーメント…かつての大事故【ゼロ・リバース】を再び起こさないようにKCは遊星・イリアステルの協力を得てモーメントの強化・改修を続け…今では文字通り『永久』に動き、暴走しないモーメントの開発に成功しているのである。

 

 

『それに…過去の文献の中に「次元領域エミュレーター」なる次元を移動する装置を開発したという記述を見つけてね…遊海は知ってるんじゃないか?』

 

「ああ…あれか〜…」

トロンの言葉に遊海は遥か昔…GXの物語の前の事を思い出す。

 

藍神ことディーヴァとトラゴエディアの事件からしばらく…海馬社長が『千年キューブ』を解析し、造ったのが『次元領域エミュレーター』…劇場版遊戯王のラストに登場したアレである。

 

海馬社長は理論上、その装置でアテムのいる『冥界』に行ける事に気付き、自身で実験を強行……結果は一応成功した…だが海馬社長自身がその実験を凍結し、そのノウハウはGXの物語で精霊界と人間界を繋いだゲートに生かされたらしい。

 

なお、凍結の真実としては海馬社長に無闇に冥界への干渉をしないように頼んだのだと、アテムから聞かされている。

 

 

 

「海馬瀬人……今は瀬人さんか、彼を通じて協力を依頼したい…遊海さん、頼めますか…?」

 

「う〜ん……瀬人なら受けてくれるとは思うけど…」

瀬人…それは、今は亡き海馬社長の記憶と精神を受け継ぐデュエルロイド…表だってはその存在は秘匿されている。(カイバーマンとしては例外)

 

だが、その影響力は未だ絶大…現社長も相談役として瀬人を頼りにしているのだ。

 

 

 

 

 

【フン…話は聞かせてもらったぞ、遊海、天城カイト、バイロン・アークライト!】

 

 

 

 

『「っつ!?」』

 

「瀬人!?」

突然、研究所のモニターに瀬人の姿が映し出される!

 

 

《イイっ!?ハッキングされたでアリマス!?》

 

【ふん、セキュリティが脆弱過ぎる!オレのハッキングを防ぎたくば…これの3倍強固な防壁を作るのだな!!】

 

「瀬人…電子生命体のお前のハッキングを防ぐのは無理だって(汗)」

こともなげにハッキングを成功させた瀬人…彼はデュエルロイドであり、ネットワーク上に本体が存在する生きたAI…電子生命体でもある、どんな防壁であろうと…ネットワーク世界に召喚された『青眼の白龍』の攻撃を受けたらひとたまりもないだろう。

 

 

【ハートランド…Dr.フェイカーとの技術協力、オレとしても吝かでない…だが、条件がある!】

 

『条件…?』

 

【天城カイト…オレと()()()()だ!その結果如何で協力してやろう!】

 

「おーい!?」

 

「瀬人さん…伝説のドラゴン使いと…デュエル!?」

瀬人の思わぬ条件に遊海を含めた全員が唖然となる…。

 

 

【天城カイト…お前は()()()()()()()使()()らしいな?月面での戦いの記録、見させてもらったぞ…!】

 

「あっ…」

 

「(ああ、完全に闘志に火がついてらっしゃる…)」

それは月面でのミザエルとの戦いの記録…その中でカイトはミザエルを『最強のドラゴン使い』と表した、だが…デュエルに勝利したのはカイトである、瀬人は『最強のドラゴン』という言葉に反応したのだ。

 

 

【戦いは明日!ハートランドスタジアムで待つ!全力でオレに挑んでくるがいい!!ふはははははは!!】

高笑いと共に瀬人は研究所のネットワークから去っていった…。

 

 

 

《か、カイト様…!》

 

「あ〜……ドンマイだ、カイト…知っての通り、瀬人は言い出したら聞かない・止まらないから……付き合ってやってくれ」 

 

「光栄な事だが……とんでもない事になってしまったな…」

 

『遊海、よく彼の友人でいられたね…?』

 

「あれでも…だいぶ丸くなったんだぞ?ちゃんと猶予もくれてるし……」

思わぬ事で瀬人とデュエルする事になってしまったカイト…彼は急いで準備を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

『よく来たな、天城カイト!こうして会うのはお前達を海馬ランドに招待して以来か?』

 

「ええ、まさか…貴方とこんな形でデュエルする事になるとは…!」

 

翌日、正午…貸し切られたハートランドスタジアムで瀬人とカイトが対峙する…なお、遊海とオービタル7が見届け役として付いて来ている。

 

 

『フン…オレに対して敬語は不要だ、貴様のデュエリストとして…そしてドラゴン使いとしてのプライドを懸け、オレに挑んで来るがいい!!』

 

「そうですか……なら!オレの魂!ギャラクシーアイズと共に…全力で貴方を乗り越える!!」

 

『フッ、良い顔だ…!』

瀬人の言葉に応え、カイトは闘志を開放…伝説へと挑む!

 

 

『遊海!デュエル開始の合図をしろぉ!』

 

「りょ〜かい…!デュエル、開始ィィ!!」

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

瀬人LP4000

カイトLP4000

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『俺は手札の「青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)」を相手に見せ、永続魔法「青き眼の幻出」を発動!このカードの発動時に「青眼の白龍」を見せた事で1つ目の効果が発動する!手札から現われよ!「青眼の白龍」!』

 

「いきなりか…!!」

瀬人のフィールドに光が集い、伝説の白き龍が現れる! ATK3000

 

 

『さらに俺は「青き眼の乙女」を召喚!』

美しい白い髪と青い瞳を持つ美しい少女が現れる! ATK0

 

『そして永続魔法「青き眼の幻出」の2つ目の効果発動!自分フィールドのモンスターを対象として、手札に戻す!俺は「青き眼の乙女」を選択、そして効果発動!「青き眼の乙女」が効果の対象になった時!デッキ・手札・墓地から新たなモンスターを特殊召喚できる!デッキより現われよ!2体目の「青眼の白龍」!』

乙女の祈りによって2体目の白龍が現れる! ATK3000

 

 

『さらに「青き眼の幻出」の効果!自分のモンスターを手札に戻す事により!手札から「ブルーアイズ」モンスターを特殊召喚する!手札から現われろ!「深淵の青眼龍(ディープ・オブ・ブルーアイズ)」!!』

4枚の翼を持つ神々しい白龍が現れる! DEF2500

 

 

『「深淵の青眼龍」の効果発動!特殊召喚に成功した時、デッキから儀式魔法「カオス・フォーム」を手札に加える!そしてカードを1枚伏せ、ターンエンド!さらに「深淵の青眼龍」のもう一つの効果発動!自分エンドフェイズにデッキからレベル8のドラゴン族モンスター「ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン」を手札に加える!』

 

瀬人LP4000

青眼の白龍 青眼の白龍 深淵の青眼龍 青き眼の幻出 伏せ1 手札3→4

 

 

 

 

「これが、『伝説のドラゴン使い』の実力か…!!」

 

「(うへ…容赦なさ過ぎだって…)」

 

《カイト様…!!》

フィールドに並び立つ伝説のドラゴン達にカイトは一瞬たじろぐ…だが、自身の魂たるギャラクシーアイズと共に…伝説に立ち向かう!

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「オレは魔法カード『逆境の宝札』を発動!自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在する時、カードを2枚ドローする!そして、手札の『銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)』を相手に見せ!手札の『銀河剣聖(ギャラクシー・ブレイバー)』を特殊召喚!このモンスターのレベルは特殊召喚時に見せたフォトンモンスターのレベルと同じになる!」

巨大な大剣を構えた剣士が現れる! ATK0 ☆8→8

 

「さらに『銀河眼の雲篭(ギャラクシーアイズ・クラウドラゴン)』を召喚!」

小さな銀河を巣にした可愛らしいドラゴンが現れる! ATK300

 

 

「『雲篭』の効果発動!このカードをリリースする事で…オレのエースモンスターを手札から呼び出す!闇に輝く銀河よ!希望の光となりて我が下僕に宿れ!光の化身、ここに降臨!現れろ!!『銀河眼の光子竜』!!」

カイトが手にした槍を雲篭に投擲…宇宙の力を得た小竜は成長し、瞳に銀河を宿すドラゴンが現れる! ATK3000

 

『ほぅ…!これが「ギャラクシーアイズ」か…間近で見るのは初めてだが……ふつくしい輝きだ…!』

 

「ふっ…美しさだけじゃない…オレ達の持つ希望の強さを見せてやる!!オレはレベル8の『銀河剣聖』と『銀河眼の光子竜』の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

カイトは手にした希望の聖剣を地面へと突き立てる!!

 

現れろ!銀河究極竜『No.62』!!

 

 

62

 

 

宇宙に彷徨う光と闇…その狭間に眠りし哀しきドラゴン達よ!その力を集わせ、真実の扉を開け!!|『銀河眼の光子竜皇』《ギャラクシーアイズ・プライム・フォトン・ドラゴン》!!

光子竜が光に包まれ、カイトの希望を示す姿へと進化を遂げる…この姿こそ、伝説の『光のドラゴン』…希望を繋ぎしドラゴンの真の姿である! ATK4000

 

 

『早速現れたか!希望のドラゴンよ!!』

 

「これがオレの希望の化身!『光子竜皇』がフィールドに存在する限り、フィールドのランクを持たないモンスターに、そのレベルと同じランクを与える!」

 

 

青眼の白龍★8

 

青眼の白龍★8

 

深淵の青眼龍★8

 

 

「いくぞ…!瀬人!!『光子竜皇』の効果発動!フィールドのモンスターの全てのランクを1つ上げる!!」

 

『なんだと?』

光子竜皇の咆哮がフィールドのモンスターをランクアップさせる!

 

 

光子竜皇★8→9

 

青眼の白龍★8→9

 

青眼の白龍★8→9

 

深淵の青眼龍★8→9

 

 

「そして『光子竜皇』はさらなる効果を持っている!このモンスターの攻撃力は相手とバトルする時、フィールドのランクの合計×200アップする!現在のフィールドのランクの合計は36…よって7200アップする!!」

 

『ククク…確かに希望の化身と名乗るだけはある…!その一撃を受ければ俺の敗北……ならば、見せてやろう!原初の「究極」を!!速攻魔法発動!「究極融合(アルティメット・フュージョン)」!!自分の手札・フィールドの3体の「青眼の白龍」をデッキに戻し、融合召喚を行なう!!』

 

「なにっ!?このタイミングで融合だと!?」

瀬人の背後に現れた光の渦に3体のブルーアイズが飛び込む!!

 

『これが原初の究極…史上最強のドラゴン!現れろ!!「青眼の究極竜」(ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン)!!』

 

「っ─!!」

それは原初の究極…3つの首を持つ、最強の兵器…海馬瀬人の誇りを示すドラゴンが現れる! ATK4500

 

 

「これが伝説のドラゴンか…!!」

カイトは降臨した究極竜に目を奪われる、それは神とも違う神々しさ…そしてギャラクシーアイズとは違う美しさを放っていた…!

 

『「究極融合」のさらなる効果発動!融合召喚に成功した時、融合素材としたモンスターの数まで相手の表側表示のカードを破壊する!砕けるがいい!「光子竜皇」!アルティメット・フュージョン・バースト!!』

 

「『光子竜皇』…!!」

 

《か、カイト様─!!》

究極竜から放たれた破壊の極光が希望のドラゴンを粉砕する!!

 

 

 

『どうだ?カイト!これが我がブルーアイズの力だ!!』

 

「っ…だが、まだだ!装備魔法『銀河零式(ギャラクシー・ゼロ)』を発動!墓地の『銀河眼の光子竜』を効果を発動できず、攻撃を封じた状態で特殊召喚する!」

再び光のドラゴンが復活する! ATK3000

 

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

カイトLP4000

光子竜(銀河零式) 伏せ1 手札2

 

 

 

 

《これが伝説のデュエリストの手腕…!恐ろしく強いでアリマス…!》

 

「だが、カイトはまだ諦めてはなさそうだ…瀬人の攻撃を耐えられるか…?」

切り札を破壊されたカイト…だが、その闘志はまだ揺らいではいない…!

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『ふぅん……儀式魔法「カオス・フォーム」を発動!フィールドの「深淵の青眼龍」をリリース!光と闇の支配する混沌の青き宇宙より…光来せよ!儀式召喚!「ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン」!!』

異次元ゲートから混沌の力を宿せしブルーアイズが顕現する! ATK4000

 

 

「このモンスターは…!!」

 

『ゆくぞ!「カオスMAX」で「光子竜」を攻撃!混沌のマキシマム・バースト!!』

 

「この瞬間!手札の『銀河暴竜(ギャラクシー・ティラノ)』の効果発動!自分フィールドの『銀河眼の光子竜』が攻撃される時、レベル8のこのモンスターを特殊召喚し、さらに!2体分のエクシーズ素材として『光子竜』と共にエクシーズ召喚を行なう!!」

白い装甲を纏う機械の恐竜が現れる! DEF0

 

 

『俺のターンにエクシーズ召喚だと!?』

 

「いくぞ!!オレはレベル8の『銀河眼の光子竜』と2体分となった『銀河暴竜』でオーバーレイ!!」

モンスターが銀河に飲まれ、赤い光を纏うカイトの手に紅き槍が現れる!

 

 

逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりて、その姿を現すがいい!!降臨せよ!我が魂!!|『超銀河眼の光子龍』《ネオ・ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》!!

カイトが紅き槍を銀河へと投擲…光の大爆発中から赤い光を纏う3つ首のドラゴン、カイトとハルトの絆の化身が現れる! ATK4500

 

 

『赤き龍か…!攻撃を中断!だが、攻撃力は「究極竜」と互角だ…!受けるがいい!!アルティメット・バースト!!』

 

「まだだ!速攻魔法『銀河衝撃(ギャラクシー・ショック)』発動!自分のギャラクシーモンスターが同じ攻撃力を持つモンスターとバトルする時!『超光子龍』の攻撃力を1500アップする!!迎え撃て!アルティメット・フォトン・ストリーム!!」

 

『なにっ…!!ぬぅぅ!!』

破壊の極光と紅き螺旋の光が衝突…だが、勢いを増した紅き光が究極竜を飲み込み、粉砕する!!

 

超光子竜ATK4500→6000

 

瀬人LP4000→2500

 

 

 

《流石でアリマス!カイト様─!!》

 

『「究極竜」を乗り越えたか…だが、これで俺は…『海馬瀬人』の魂のカードを呼び出す事ができる…!!手札から「ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン」の効果発動!自分のブルーアイズが破壊された時、このモンスターを特殊召喚できる!!』

 

「破壊をトリガーにしたモンスター効果…!!」

 

『無窮の時…その始原に秘められし白き力よ!鳴り交わす魂の響きに震う羽を広げ…蒼の深淵より出でよ!『ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン』!!』

神に近しい力を得て覚醒した、光輪を背負うブルーアイズが現れる! ATK0

 

「すごい…!!」

現れたのは瀬人の…海馬瀬人の切り札、究極竜とは違う、静かな闘気にカイトは圧倒される…!

 

 

『「ディープアイズ」の効果発動!このカードが特殊召喚に成功した時、相手に墓地のドラゴン族1種類につき600ダメージを与える!墓地のドラゴン族は2体!墓地のドラゴンの怒りを受けよ!リベンジ・ドラゴニック・フォース!!』

 

「ぐうううっ!!」

瀬人の背後に現れた『究極竜』と『青眼龍』の幻影がカイトを吹き飛ばす!

 

カイトLP4000→2800

 

『さらに「ディープアイズ」は墓地のドラゴン族モンスターの力を受け継ぎ、その攻撃力を得る!俺は墓地の「究極竜」を選択!攻撃力は4500となる!』

 

ディープアイズATK0→4500

 

『俺はこれでターンエンドだ』

 

瀬人LP2500

ディープアイズ カオスMAX 幻出 手札1

 

 

 

「強い…!!」

 

『フハハ!思ったよりも強いな!カイトよ!久しぶりに血が騒ぐぞ…比喩的にだがな!』

 

「パワー対パワー…どんな決着になるか…!」

瀬人はカイトとのデュエルの中で初めて笑みを見せる、機械の体であろうとも…その身に宿る「海馬瀬人」の精神が強力なドラゴンを前に昂ぶっている…!

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

「よし…!魔法カード『銀河の施し』を発動!自分フィールドにギャラクシーエクシーズモンスターが存在する時、手札の『光子竜降臨』を捨て、2枚ドローする!そして…魔法カード『地砕き』を発動!相手フィールドの守備力が一番高いモンスターを破壊する!!」

 

『フン…!「カオスMAX」と「ディープアイズ」の守備力は共にゼロだ!さぁ…どちらを選ぶ?』

 

「オレが選ぶのは…『ディープアイズ』だ!!」

カイトの宣言と共に地面が隆起、ディープアイズに牙を剥く!

 

『ふっ…手を誤ったな…!「ディープアイズ」の最後の効果発動!このモンスターがカード効果で破壊される時、相手フィールドのモンスターを全て破壊する!!お前も道連れだ!「超銀河眼の光子龍」─!!』

 

「なにっ─!?」

隆起した地面がディープアイズに突き刺さる…だが、ディープアイズが最後に放った光線が超光子龍を貫き、粉砕する!!

 

 

「くっ…!オレはモンスターをセットし、ターンエンド!!」

 

カイトLP2800

セットモンスター 手札0

 

 

 

「カイトが追い詰められたか…!」

 

《カイト様…!》

カイトの場には伏せモンスターが1体、そして手札は0…絶体絶命である…!

 

『カイト、お前はよく戦った…ドラゴン使いの先達として…お前に敬意を表し、全身全霊でお前にトドメを刺す!』

 

「っ…!!」

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『「青き眼の乙女」を召喚!』

再び白い髪の少女が現れる! ATK0

 

 

『そして永続魔法「青き眼の幻出」の効果発動!「青き眼の乙女」を手札に戻す…が、この瞬間!「青き眼の乙女」の効果発動!デッキから再び現れろ!「青眼の白龍」!!』

乙女の祈りにより再び伝説の龍が降臨する! ATK3000

 

 

『「青き眼の幻出」の効果!手札より現れろ!2体目の「青眼の白龍」!!』

フィールドに2体目の白龍が並び立つ! ATK3000

 

 

『そして…!フィールドの「青眼の白龍」2体を墓地に送る事で…このモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する!!現れろ…!「青眼の双爆裂龍」(ブルーアイズ・ツインバースト・ドラゴン)!!』

フィールドの白龍が閃光に包まれる…そして双頭の白龍が降臨する! ATK3000

 

 

「っ…!『融合』を使わずに融合モンスターを…!」

 

『フン…!「双爆裂龍」は戦闘では破壊されず、モンスターに2回攻撃できる!バトルだ!「双爆裂龍」でセットモンスターを攻撃!ツイン・バースト・ストリーム!!』

破壊の極光がセットモンスターに迫る!!

 

「セットモンスターは『銀河魔鏡師(ギャラクシー・ミラー・セージ)』!!リバース効果発動!ライフを800回復する!」

鏡を持つ魔道師が極光を受け止め、砕け散る! DEF800

 

カイトLP2800→3600

 

 

「さらに、戦闘破壊された『魔鏡師』は再びフィールドにセットされる!…ただし、この効果で特殊召喚されたこのモンスターはフィールドを離れた時、除外される!」

 

『ならばもう一度だ!「双爆裂龍」でセットされた「銀河魔鏡師」を粉砕!!』

 

「ライフを800回復する!ぐううっ…!!」

再び現れた魔道師が極光を受け止め、破壊される!

 

カイトLP3600→4400

 

 

『ライフを回復し耐えるつもりか…ならば、受けてみよ!「カオスMAX」でダイレクトアタック!混沌のマキシマム・バースト!!』

 

「ぐうっ…!!がああああっ!!?」

 

《か、カイト様─!!》

全てを灰燼に帰す混沌の極光がカイトを吹き飛ばす─!

 

カイトLP4400→400

 

 

『俺はこれでターンエンドだ!』

 

瀬人LP2500

カオスMAX 双爆裂龍 幻出 手札1

 

 

 

「ぐうっ…!」

 

『カイト、貴様に問う…お前達は何故、異世界を目指す?』

瀬人は倒れ込んだカイトに問いかける。

 

『確かに、異世界の技術は人類に新たな可能性をもたらすだろう…だが、それにより新たな争いが生まれるかもしれん、もしくは…この世界を破滅に導く可能性もある…それはお前もよく分かっているはずだ』

 

「………」

瀬人の言葉にカイトは思い返す…まだハルトの為に『ナンバーズハンター』として戦っていた時、強すぎる異世界の力に体が耐え切れず、カイトは満身創痍となっていた…。

それは今の『異世界研究』にも言える事…この研究がもたらすのは…人類への利益だけとは限らないのだ。

 

 

『故に問う、お前達は何を求める?』

 

「…()()()()()!」

 

『ほう…?』

 

《カイト様…》

瀬人はカイトの答えに眉を上げる。

 

 

「アストラル世界も、バリアン世界も…オレ達人類にとってはまったくの『未知』の世界だ……だから、その力がオレ達に何をもたらすのか…オレはそれが知りたい!その結果で争いが起きるなら…オレ達がそれを止める!!」

 

『フッ…未知故に調べる、か…未知を探求するのは人類の性…良いだろう、及第点をくれてやる!だが、デュエルは別だ!』

 

「ああ…!そうだな瀬人…オレは…オレの勝利への方程式は、既に出来ている!!」

 

『ほう…ならば、見せてみろ!貴様の勝利への1手を!!』

 

「いくぞ!!これが、オレの全力だ─!!」

問答を終えたカイトは最後の攻撃を仕掛ける!

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

「この瞬間!墓地の『銀河眼の光子竜皇』の効果起動!!今こそ舞い戻れ!未来を操る光の化身よ─!!」

 

 

62

 

 

『なにっ─!?』

フィールドを閃光が埋め尽くす…そして光の彼方から、希望の光が舞い戻る! ATK4000

 

 

『何故、「光子竜皇」が…!』

 

「『光子竜皇』が破壊された時、既に最後の効果が発動していた…!ORUを持つこのカードがフィールドを離れた時、そのORUの数のターンのスタンバイフェイズにオレのフィールドに特殊召喚される…破壊された時のORUは2つ、よって2ターン後の今、その姿を現した!!」

 

『なるほど…!お前は既に希望を未来へと託していたという事か…見事だ!さぁ、お前の希望の一撃を見せてみろ─!』

 

「ああ!!『光子竜皇』が自身の効果で特殊召喚されたターン、相手モンスターとバトルする時!その攻撃力はフィールドを離れた時のORUの数を掛けた数値になる!ORUの数は2つ、つまり攻撃力は2倍になる!『光子竜皇』で『ブルーアイズカオスMAXドラゴン』を攻撃─!!」

光子竜皇に希望の光が集う! ATK4000→8000

 

 

「さらに!『光子竜皇』の攻撃力はフィールドのモンスターのランクの合計×200アップする!ランクの合計は26!よって攻撃力は…!」

 

『13200…凄まじいものだ──』

 

光子竜皇ATK8000→13200

 

 

「これが、オレの全力!!エタニティ・フォトン・ストリィィィム!!

 

 

光子竜皇の希望の閃光が混沌の龍を飲み込む…世紀のドラゴン対決はカイトの勝利で幕を下ろした…!

 

 

瀬人LP0

 

カイトWIN!

 

 

 

 

 

《カイト様!大丈夫でアリマスカ!?》

 

「問題ない…久々の実戦で少し疲れただけ、だ」

 

「無理すんなって…回復してやるから座ってろ…」

 

「…すいません、白波さん…」

デュエルが終わり、全力を使い果たしたカイトは座り込んでしまうが…遊海がすぐさま回復魔法で回復させた。

 

 

『カイトよ、見事だった!技術協力の件は俺から社長に話を通してやる!』

 

「瀬人さん…!感謝します!」

軽く埃を払った瀬人はカイトに技術協力の承諾を伝える。

 

『そして…遊海!お前を目付役とする!もし、バイロンやフェイカーが再び道を誤りそうになった時には……お前が疾く止めろ…わかったな?』

 

「了解!…と、言っても…正直、科学系の知識は専門外なんだが……まぁ、なんとかするさ!」

さらに瀬人は遊海をカイト達の監視役に(強制的に)任命したのだった。

 

 

 

 

 

『フン…そして、今回のデュエルは俺の負けだが……次はこうはいかん!また相手をしてもらうぞ?希望のドラゴン使いよ!!』

 

「望む所です…!また戦いましょう、瀬人さん!」

伝説と希望…2人のドラゴン使いは固く握手を交わしたのだった。



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ワクワクのデュエル!〜希望の勇者と友情のHERO〜

お久しぶりです!S,Kです!

いや〜気付けば2021年も残り2日…ようやく執筆時間が取れました…お待たせして本当にすいません!


それでは、最新話をどうぞ!


「十代、面倒な事を任せて悪かったな…」

 

『気にしないでくれよ先生!精霊界の事なら任せてくれって!』

とある日、白波家に十代がやって来ていた…遊海に頼まれていた依頼の報告に来たのだ。

 

 

『とりあえず…オレ達が見て回った11個の精霊界にドン・サウザンドの痕跡は無かったぜ!』

 

《まぁ、元の世界に戻った『暗黒界』と『ライトロード』が小競り合いをしてたり…次元の揺らぎから現れたモンスターが暴れてたりしてたけど…精霊界ではいつもの事さ》

 

「そうか…とりあえず、これで一安心だな…」

遊海が十代に頼んだ仕事…それは精霊界における『ドン・サウザンド』の痕跡の調査だった。

 

 

凌牙を隠れ蓑として再びの復活を狙っていたドン・サウザンド…だが、その野望は遊海の怒りのデュエル、そして捨て身の抵抗によって再び無に帰した。

 

だが、ドン・サウザンドは長きに渡って暗躍し続けた策士…遊海は『万が一の可能性』を潰す為に十代へ精霊界の調査を依頼していたのだった。

 

 

 

『それより…先生は大丈夫なのか?ドン・サウザンドの遺した厄介な「No.」を取り込んじまったんだろ…?』

 

「ああ…幸いな事に今の所カードに『意思』は無いし…精霊も宿ってない……込められていた凄まじい『混沌』の力を除けばな」

 

《まったく、本当にお前は…厄介な事に巻き込まれ過ぎじゃないかい?》

 

「はは…まったくだ…もし『NEXUS』に覚醒してなかったら…この力に呑まれてたかもな…」

ユベルの言葉に遊海は苦笑しながら胸に手を当てる。

 

ドン・サウザンドの置き土産…混沌の遺産である『CNo.1000』…膨大なカオスの力を宿したそのカードは遊海に…その『魂』に融け込んでいてしまっていた。

そして、遊海は常人ならば耐えられないようなその力を少しずつ浄化・発散し続けていた…ユウスケを開放したのもその発散の一環なのである。

 

 

 

「………十代、もしも…もしも、俺がこの力のせいで暴走するような事があったら……頼んだぜ」

 

『先生、流石にそれは厳しいって…いや、何回か理性がトンでる先生を止めた事はあるけどさ…』

 

《まったく…お前をそこまで弱気にさせるなんて…本当に厄介だねぇ…らしくないよ?》

 

「はは…まぁ、そんな事になる前に自分でどうにかできればいいんだけど……ああ、俺も────」

 

 

遊海ぃ!デュエルだあ!!

 

 

「『わっ!?』」

不安を口にしていた遊海の言葉を遮るように快活な声が響く…その声の主は遊馬だった。突然の乱入に流石の遊海と十代も驚いている…。

 

 

「びっくりしたぁ…驚かせるなよ遊馬…」

 

(すまない遊海、そして十代…遊馬はテストが終わった後でだいぶテンションが上がっているんだ…)

 

「そういう事か…」

 

『ああ…その気持ちわかるなぁ…』

びっくりした遊海達にアストラルが謝罪する…なお、その横では…

 

 

「遊馬!鍵が開いてるからっていきなり入っちゃダメでしょ!?遊海さん達も驚いてるじゃないの!!」

 

「うっ…すいませんでした…」

あとからやって来た小鳥に叱られる遊馬がいたのだった。

 

 

 

………

 

 

「っという訳で…遊海!デュエルだ!!」

 

「お前なぁ…いい加減30戦30敗だぞ?我が弟子ながら…よくこれだけ向かって来れるなぁ…」

 

デュエルを挑む遊馬に対して遊海はため息をつく…ドン・サウザンド事件解決後、遊馬は度々遊海に挑んでいるが…結果は全戦全敗なのである。

なお、遊海は『クリフォート』を始め、『ブラックマジシャン』『真紅眼』『ジャンクドッペル』『ライトロード』『メガロックドラゴン』などなど…多彩なデッキで手を抜かずに戦っている。

 

 

『へぇ〜ガッツがあるじゃないか遊馬!実はオレも…本気の先生には一度も勝てた事がないんだぜ?』

 

「そうなの!?」

 

『ヘヘっ…まぁ、勝った事自体は何回かあるんだけど…そんときは先生が弱ってたり、破壊神に憑依されてたり…万全じゃなかったからなぁ……』

 

(………遊海は、やはり険しい人生を歩んで来たのだな…)

昔を懐かしむ十代を見たアストラルはその苦労を感じ取った…。

 

 

「…そうだ!遊馬、今日は十代に相手をしてもらえばいいんじゃないか?なんだかんだで一度もデュエルした事ないだろ?」

 

「あ、そう言えば…」

 

『確かにそうだな!いつもそれどころじゃなかったし…』

遊海の言葉に遊馬と十代は顔を見合わせる、WDCで初めて出会った2人だが…トラブル続きでデュエルをする間がなかったのだ。

 

『そうと決まれば…デュエルしようぜ!遊馬!』

 

「よっしゃ!受けて立つぜ!十代さん!!」

頷きあった2人は中庭へと飛び出して行った…。

 

 

「も〜…遊馬は本当にデュエル馬鹿なんだから…」

 

「ははっ…それは十代も一緒さ!アイツほどデュエルを楽しむ奴は中々いないぞ?」

呆れた様子の小鳥に2人のフォローをしながら遊海達も中庭へと向かう…そして正史ならばあり得ぬ希望の勇者と友情のヒーローのデュエルが始まった!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊馬LP4000

十代LP4000

 

 

 

 

「いくぜ!オレのターン!ドロー!!」

「よーし…!『タスケナイト』を召喚!」

赤い装甲の力士が現れる! ATK1700

 

「さらに!自分がレベル4モンスターの召喚に成功した時!手札から『カゲトカゲ』を特殊召喚!」

タスケナイトの影から影のようなトカゲが現れる! ATK1100

 

「いくぜ!オレはレベル4の『カゲトカゲ』と『タスケナイト』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ!「ガガガガンマン」!!」

カウボーイハットを被ったガンマンが現れる! DEF2400

 

 

「『ガガガガンマン』の効果発動!1ターンに1度、守備表示の時!ORUを1つ使い、相手に800ダメージを与える!いっけぇ!!」

 

『おっとぉ!?』

ガンマンのリボルバーが火を吹き、十代にダメージを与える! 

 

十代LP4000→3200

 

 

「よし!オレはカードを2枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

遊馬LP4000

ガンマン 伏せ2 手札2

 

 

 

《おや?お得意の「希望皇ホープ」じゃないのかい?》

 

(ナンバーズは私達にとっての切り札であり、同じナンバーズとの戦闘でなければ破壊できない特別なモンスターだ…故に、遊馬はカイトや遊海といった規格外の相手以外とのデュエルではナンバーズの使用をセーブしているのだ)

 

《なるほどねぇ…》

ユベルの問いにアストラルが答える、ナンバーズを持つのは遊馬とアストラル、『オーバーハンドレット・ナンバーズ』を持つ凌牙…そしてイレギュラーの『No∞』を持つ遊海のみ…故に、通常のデュエルにおいて遊馬はナンバーズを使わないようにしているのである。

 

 

『そーなのか…だったら!遊馬がナンバーズを出せるように本気でいくぜ!』

ナンバーズとの戦いを望む十代は攻勢を仕掛ける!

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『まずは魔法カード「コンバート・コンタクト」を発動!自分フィールドにモンスターがいない時!手札の「N・フレア・スカラベ」とデッキの「N・エア・ハミングバード」を墓地に送って2枚ドロー!!…よし!そして魔法カード「融合」を発動!手札の「E・HEROフェザーマン」と「E・HEROバーストレディ」を融合!現れろ!マイフェイバリット!「E・HEROフレイム・ウィングマン」!!』

融合の渦に翼を持つ緑のHEROと炎を纏う女性HEROが吸い込まれ…右腕に竜の頭を持つ十代お気に入りのHEROが現れる! ATK2100

 

 

「おおっ…!!決闘庵の木像になってたモンスターだ─!!」

 

『ヘヘっ…まだまだいくぜ!オレは「ネオスペース・コネクター」を召喚!』

小柄な白い肌と水色の瞳を持つ宇宙人が現れる! ATK800

 

『この時!「コネクター」の1つ目の効果発動!召喚に成功した時、デッキから「N」か…このモンスターを守備表示で特殊召喚できる!来い!「E・HEROネオス」!!』

宇宙の優しい闇の力を宿す光のHEROが現れる! DEF2000

 

 

「すげぇ…!伝説のモンスターが2体も…!」

 

『ここからだ!「コネクター」の2つ目の効果発動!自身をリリースする事で墓地の「N」を守備表示で特殊召喚できる!墓地から蘇れ!「N・フレア・スカラベ」!!』

コネクターの導きにより黒い甲殻を持つ甲虫型のエイリアンが現れる! DEF500

 

 

『いくぜ!オレはフィールドの「ネオス」と「フレアスカラベ」をデッキに戻し、コンタクト融合!!現れろ!「E・HEROフレア・ネオス」!!』

白きHEROと甲虫が共に飛び立ち、宇宙の力と炎のエレメントを得た漆黒の戦士へと融合する! ATK2500

 

 

「『融合』を使わない融合召喚…コンタクト融合…!!」

 

『これがオレのHEROの力だ!「フレアネオス」の効果!このカードの攻撃力はフィールドの魔法・罠カード1枚につき400アップする!オレはカードを1枚セット!これでフィールドの魔法・罠カードは3枚!1200アップだ!』

 

(攻撃力を上げてきたか!)

フィールドのカードの力を吸収したフレアネオスが炎のオーラを纏う! ATK2500→3700

 

『バトルだ!「フレアネオス」で「ガガガガンマン」を攻撃!バーン・トゥ・アッシュ!!』

 

「やらせないぜ!リバース罠『ハーフ・アンブレイク』発動!このターンの間、『ガガガガンマン』はバトルでは破壊されず、オレが受けるダメージは半分になる!」

フレアネオスが灼熱の一撃を放つが、泡のバリアがガンマンを包み攻撃を受け止める!

 

 

(さらに!フィールドの魔法・罠が無くなった事で『フレア・ネオス』の攻撃力がダウンする!)

 

フレアネオスATK3700→3300

 

『やるな…!オレは装備魔法『インスタント・ネオスペース』を『フレアネオス』に装備!コンタクト融合モンスターはエンドフェイズにデッキに戻る効果があるけど…このカードを装備している時はその効果を発動しなくて良くなるぜ!ターンエンドだ!』

 

フレアネオスATK3300→3700

 

十代LP3200

フレイムウィングマン フレアネオス(インスタント・ネオスペース) 伏せ1 手札0

 

 

 

(ライフは我々が有利…だが、十代の『フレイムウィングマン』は破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える強力なモンスターだ…下手にモンスターを出したら一気にダメージを受けてしまうぞ)

 

「わかった…なら、この1枚に賭けるぜ!!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

「いくぜ…!『ガガガマジシャン』を召喚!」

不良の学生魔術師が現れる! ATK1500

 

「さらに!魔法カード『ガガガウィンド』を発動!手札の『ガガガガール』をレベル4にして特殊召喚!」

可愛らしいギャル魔術師が現れる! ATK1000 ☆3→4

 

 

「オレはレベル4の『ガガガマジシャン』と『ガガガガール』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!来い!『ガガガザムライ』!!」

二刀流のガガガの剣豪が現れる! ATK1900

 

「いくぜ!『ガガガ』モンスターと共にエクシーズ素材になった『ガガガガール』の効果発動!『フレアネオス』の攻撃力を0にする!ゼロゼロ・コール!」

 

『なにっ!?』

ガガガガールの幻影がスマホを操作し怪電波を放ち、フレアネオスを脱力させる!

 

フレアネオス ATK3700→0

 

「そして『ガガガガンマン』を攻撃表示に変更!そして効果発動!自身が攻撃表示の時、ORUを1つ使い!このターンの間自身がバトルする時、自身の攻撃力は1000アップし、相手モンスターの攻撃力を500下げる!」

ORUを取り込んだガンマンが強いオーラを纏う! DEF2400→1500

 

「さらに『ガガガザムライ』の効果発動!1ターンに1度、ORUを1つ使う事で…『ガガガガンマン』はこのターン2回攻撃できる!バトルだ!『ガガガザムライ』で『フレアネオス』を攻撃!」

 

『くぅ…!!』

二刀流の連撃がフレアネオスを粉砕する!

 

十代LP3200→1300

 

『でも、この瞬間!装備魔法「インスタント・ネオスペース」の効果発動!装備モンスターがフィールドを離れた時、デッキから「ネオス」を特殊召喚する!!』

銀河の彼方から白きHEROが再び現れる! DEF2000

 

 

「だけど…オレにはまだ攻撃が残ってる!『ガガガガンマン』で『フレイムウィングマン』を攻撃!」

 

(そしてこの時!『ガガガガンマン』の攻撃力は1000アップし…『フレイムウィングマン』の攻撃力は500ダウンする!)

 

『っ…すまねぇ!「フレイムウィングマン」…!!』

跳躍したガンマンが拳によるラッシュでフレイムウィングマンを粉砕する!

 

ガンマンATK1500→2500

 

フレイムウィングマンATK2100→1600

 

十代LP1300→400

 

 

「このまま押し切る!『ガガガガンマン』で『ネオス』を攻撃!!」

 

『まだだ!罠カード発動!「ヒーロー・バリア」!!自分フィールドにE・HEROが存在する時!一度だけ相手の攻撃を無効にする!!』

ネオスの前に展開されたバリアが攻撃を受け止める!!

 

 

(ダメージを最小限に抑えられたか…これが遊海の教えを受けた伝説の決闘者の実力…!)

 

「それでも、オレ達が有利なのは変わらないぜ!油断せずにこのままいく!オレはこれでターンエンドだ!」

 

遊馬LP4000

ガガガガンマン ガガガザムライ 伏せ1 手札0

 

 

 

『ははっ…!すげぇな遊馬!アストラル!流石に世界を救ったデュエリストだぜ…久しぶりにワクワクしてきたぁ!!』

 

《まったく、本当に十代は変わらないねぇ…》

実力を見せる遊馬とアストラルを前に十代は楽しそうに笑う…その表情はアカデミア時代と少しも変わらない…輝くような笑顔だった…。

 

 

《で、策はあるのかい?ジリ貧なのは変わらないよ?》

 

『ヘヘっ…出たとこ勝負さ!遊馬が引き当てたように…オレもこのドローに賭けるぜ!!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『キター!!オレは魔法カード「HEROの遺産」を発動!!オレの墓地のHEROを融合素材にするモンスター2体をエクストラデッキに戻してカードを3枚ドローする!いっくぜぇ…!ドロー!!』

 

キィン─!

 

(今の光は…!)

アストラルは十代のドローに光の力を感じ取る…精霊と共に歩み、世界を護る為に戦い続けてきた十代…そのドローは奇跡を呼び寄せる!

 

 

《へぇ…良いカードを引いたじゃないか?》

 

『ああ…!遊馬!アストラル!オレと仲間の絆の力…見せてやる!!魔法カード「ネオス・フュージョン」発動!このカードは「ネオス」を融合素材とする2体融合の融合モンスターをデッキ・手札・フィールドから融合素材を墓地に送り、召喚条件を無視して特殊召喚する!!』

 

(デッキから融合素材を…!)

 

「いったい何が出てくるんだ…!?」

十代の頭上に虹色の銀河が広がっていく…!

 

 

『オレはフィールドの「ネオス」…そして!デッキの「究極宝玉神レインボー・ドラゴン」を融合!!』

 

「「はっ!?」」

十代の宣言を聞いた瞬間、遊馬とデュエルを見守っていた遊海の驚愕の声が重なる─!!

 

『これが、オレの友情のモンスター!現れろ!「レインボー・ネオス」!!』

フィールドに眩い光が満ちる…そして光の中から白い翼を持ち、7色の宝玉が輝く白き鎧を纏うネオスが現れる…その名はレインボーネオス…HERO使いと宝玉獣使いの友情の証である! ATK4500

 

 

「じ、十代!?なんでお前が『レインボードラゴン』を持ってるんだ!?そのカードは…」

 

『ヨハンから託されたんだ…次の「宝玉獣」の担い手が育つまで預かって欲しいって…担い手と宝玉獣達が絆を結べた時に改めて渡して欲しいってさ…』

 

「十代さん…」

それは十代とヨハンの最期の約束…彼が探し求めた『虹』は十代の手に託されていた。

 

 

『おっと、湿っぽいのはらしくないな!いくぜ遊馬!「レインボーネオス」の効果発動!オレのデッキトップを1枚墓地に送る事で…相手の墓地のカード全てをデッキに戻す!』

 

「なにっ!?」

 

(『タスケナイト』を戻されたか…!)

レインボーネオスの光が遊馬の墓地のカードをデッキへと還していく!

 

十代墓地送り

 

E・HEROクレイマン

 

 

『さぁ、オレ達の一撃を受けてみろ!!「レインボーネオス」で「ガガガガンマン」を攻撃!レインボー・フレア・ストリーム!!』

 

(遊馬!)

 

「っ…!『ガガガザムライ』の効果発動!攻撃対象をこのカードに変更する!さらに罠カード『ダメージ・ダイエット』を発動!このターンに受けるダメージを半分にする!ぐううっ…!!」

虹色の光がガガガザムライを消し飛ばす!

 

遊馬LP4000→2700

 

 

《惜しかったね、ダメージを与えてくる『ガガガガンマン』を先に倒しておきたかったけど…》

 

『ああ、これで遊馬がORUを回復するカードを引いたらやばいかもな…まぁ、どうにかなるさ!オレはカードを1枚伏せてターンエンド!』

 

十代LP400

レインボーネオス 伏せ1 手札1

 

 

 

「これが十代さんの全力…!」

 

(『レインボーネオス』…凄まじいカードだ…!)

遊馬とアストラルは十代の強さに舌を巻く…そして十代の隣に青い髪を持つ青年の姿が見えたような気がした…。

 

 

(今、我々の手札は0…フィールドにはガガガガンマンのみ…次のドローに全てが懸かっているな…!)

 

「ああ…!十代さんの全力に答えるぜ!!かっとビングだ─!」

十代の強さと熱意に応える為に…遊馬はデッキトップに手をかける!!

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

 

(これは……遊馬、見せてやれ!きみの全力を!)

 

「あぁ!!オレは魔法カード『死者蘇生』を発動!墓地の『ガガガザムライ』を特殊召喚!」

剣豪が復活する! ATK1900

 

 

《この状況…そうきたか…!!》

 

「いくぜ、十代さん!オレは!ランク4の『ガガガガンマン』と『ガガガザムライ』の2体でオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」

 

「来るか…遊馬の『未来』を示す化身が…!!」

2体のエクシーズモンスターが銀河へと飛び込み…光の大爆発がフィールドを埋め尽くす!!

 

 

00

 

 

「現れろ!『FNo.0』!!天馬、此処に解き放たれ!縦横無尽に未来へ駆ける!!これがオレの天地開闢!オレの未来!!現れろ!『未来皇ホープ』!!

希望の翼をはためかせ、赤き希望の戦士が舞い降りる…その名は『未来皇ホープ』…遊馬の前に広がる無限の未来を示すナンバーズである! ATK0

 

 

「(『未来皇ホープ』…まさか、ここで見る事になるとはな…)」

遊海は感慨深げに『未来皇ホープ』を見つめる…アストラルではなく、完全に遊馬由来…否、遊馬の魂のナンバーズ…その力は優しく、そして強い…!

 

 

「バトルだ!『未来皇ホープ』で『レインボーネオス』を攻撃!!ホープ剣フューチャー・スラッシュ!!」

 

(この瞬間、『未来皇ホープ』の効果発動!このバトルによって発生するダメージは全て0になる!さらにバトルした相手モンスターのコントロールをバトルフェイズ終了時まで得る!)

 

『っ…!「レインボーネオス」!!』

ホープ剣を振り抜いた未来皇から無数の羽が放たれ、レインボーネオスを優しく包み込む…そしてそのコントロールが遊馬に渡る。

「デュエルをすればみんな友達」…遊馬の信念を受け継ぐ強力な効果である!

 

 

「これで、どうだ!『レインボーネオス』で十代さんにダイレクトアタック─!」

 

『まだだ!速攻魔法「クリボーを呼ぶ笛」発動!デッキから「ハネクリボー」を守備表示で特殊召喚!!』

 

《クリクリー!!クリ!?》

レインボーネオスの一撃を十代の相棒である白い羽を持つクリボーが受け止める! DEF200

 

 

「防がれた!?」

 

『助かったぜ!相棒!!』

 

《クリ〜…(@_@)》

攻撃を受け止めたハネクリボーは目を回しながら消えていった。

 

「オレは…これでターンエンドだ!」

 

(そして『レインボーネオス』のコントロールは十代に戻る)

 

遊馬LP2700

未来皇 手札0

 

 

 

『あぶねー…!これが遊馬の真のエースか…!』

 

《相手にダメージを与えず、その代わりに絆を紡ぐ…さらにORUを使う事で効果破壊を防ぐ事ができる…本当にナンバーズは規格外のカードだねぇ…勝てる手段は限られてくるよ?》

 

『ヘヘっ、本当にワクワクするな…!いくぜ、遊馬!これが…オレのラストドローだ!!』

遊馬の本気を見た十代…ワクワクのデュエルを前に、最後の攻勢を仕掛ける─!!

 

 

 

 

『オレのターン…ドロー!!』

『来たぜ…逆転のカード!!装備魔法「レインボー・ヴェール」を「レインボー・ネオス」に装備!!』

 

「……『レインボー・ヴェール』?」

 

「あぁ…その手があったかー…」

レインボーネオスが虹色のオーラを纏う…その時、遊海はデュエルの結末に気が付いた…。

 

 

『バトルだ!「レインボーネオス」で「未来皇ホープ」を攻撃!』

 

「でも『未来皇ホープ』はバトルダメージを無効にできる!」

 

《それはどうかな?》

 

『ヘヘっ…!「レインボーヴェール」を装備したモンスターがバトルする時!バトルフェイズの間だけ、バトルする相手モンスターの効果は無効になる!!』

 

「なんだって!?」

レインボーネオスに虹色の光が集う!

 

『いっけぇ!「レインボーネオス」!レインボー・フレア・ストリーム!!』

それは希望の光…友情の結晶…光の奔流が遊馬達の視界を埋め尽くした…。

 

 

 

遊馬&アストラルLP0

 

 

十代WIN!

 

 

 

 

『ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!遊馬!』

 

「ああ!オレもめっちゃワクワクして…楽しいデュエルだった!!まさか『未来皇』が倒されるなんて思わなかったぜ…」

 

(ああ、次のデュエルの課題だな)

デュエルが終わり、遊馬と十代は互いに健闘を称え合う…それと同時に遊馬は世界の広さを知ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「十代さん!今度は全力でデュエルするからな!今度こそ勝ってやるぜ─!」

 

『ああ!楽しみにしてるぜ!遊馬!アストラル!』

時は夕暮れ…遊馬達を見送った十代は遊海に向き直る。

 

 

「このまま行くのか?」

 

『ああ、「レインボードラゴン」がアイツの所に行きたがってる…ヨハンとの約束を果たさないとな!』

十代も再びハートランドを旅立とうとしていた…掛け替えのない親友との約束を果たす為に…。

 

 

「なら、これを持っていけ!翠特製のお弁当だ!」

 

『おっ…!やった!久しぶりの弁当だ!ありがとう先生!』

遊海は餞別代わりの弁当を手渡す、そして十代は目的地に向かおうとしたが…()()()を思い出して遊海に問いかける。

 

 

 

『なぁ、先生…さっき遊馬が来る前…なんて言おうとしたんだ?』

 

「ん…?……忘れちまった!まぁ、大した事じゃないさ…気にすんな!道中気を付けて行けよ?」

 

『ああ!じゃあ、行ってくるぜ!!またな!先生ー!』

 

「ああ!いつでも待ってるからなー!」

十代はいつもと変わらずに…明るく夕焼けの中へと旅立っていった…。



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里帰り〜英雄の生まれた場所〜

こんばんは!S,Kです!

な、なんとか間に合った(汗)…これが年内最後の投稿となります!

年越しそばは食べましたか?大掃除は終わりましたか?…できていない方も新たな気持ちで新たな年を迎えましょう!

改めまして…本年も本当にありがとうございました!よいお年をお過ごしください!


「お父さん!あの街がそうなの?」

 

「ああ、俺達の()()さ!」

 

《フォウ、フォーウ!》

 

ある晴れた日、ハイウェイに嬉しそうな璃緒の声が響く…今、白波一家はハートランドシティを離れ、とある街を目指していた…その場所は──

 

 

「あれが父さん達の故郷…ネオ童実野シティ…!」

 

太陽の光を反射して輝く高層ビル郡…そして融和の象徴たるネオダイダロス・ブリッジ…そう、遊海達の故郷にしてデュエルの聖地…ネオ童実野シティである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうして童実野町に来るのも、久しぶりだなぁ…」

懐かしき故郷を前に遊海は穏やかに呟く…遊海、翠、凌牙、璃緒の四人は休日を利用してDホイールとバイクによるツーリングでネオ童実野シティへとやって来ていた。(璃緒は遊海と二人乗り、フォウは翠のDホイールの専用席)

ドン・サウザンド復活未遂による騒ぎも落ち着き…遊海は()()()()()の為に里帰りにやって来たのだ。

 

 

 

【ライディングデュエルが開始されます!一般車両は退避してください!ライディングデュエルが開始されます──】

 

 

「うおっ…!?これが噂のライディングデュエル専用システムかよ…!本当に海から道路が…!」

 

「凌牙君ー!早く退避レーンに!」

ネオ童実野シティ名物・ライディングレーンシステムの展開に驚く凌牙…そこへ…。

 

 

『あれ…?凌牙?遊海さん!?』

 

『なんでアンタ達が!?』

 

「おおっ?流星!海亜!久しぶりだな─!」

ライディングデュエルをしようと現れたDホイール…それに乗っていたのは偶然にも流星と海亜だった!

 

 

「丁度いいや!凌牙達にライディングデュエルを見せてやってくれるか?」

 

『わかりましたー!』

 

「わぁ…!私、ライディングデュエル見るの初めてよ!!」

 

「ああ、良かったな璃緒!さぁ、少しスピードを上げるぞ─!!」

 

 

『『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』』

 

 

 

そして遊海達は流星と海亜の熱いライディングデュエルを見届けたのだった…。

 

 

 

 

………

 

 

 

『今日はどうしてネオ童実野に?』

 

「ああ、ちょっとやりたい事があってな…久しぶりに里帰りに来たのさ」

 

ライディングデュエルが終わり、近くの公園で流星達に飲み物を奢りながら遊海は問いに答える。

 

 

『そうなんですか…そうだ!良かったら後で家に来てください!じいちゃんもジャックさん達もきっと喜びますよ!』

 

「そうか?…なら、帰りに寄らせてもらうよ!これから街を少し観光して、目的地に行ってから行くから…夕方になるかな?」

 

『わかりました!それじゃあまた後で!飲み物ありがとうございました!』

 

『アタシもみんなに知らせてくるぜ!』

流星と海亜は嬉しそうに去って行った…。

 

 

「さーて…それじゃあ!ネオ童実野シティ観光と行こうか!」

 

「「「はーい!!」」」

久しぶりの休暇を楽しむ為に遊海達もまた走り出した!

 

 

 

 

………

 

 

 

「ここが…WRGPが開かれるスタジアムか…!」

 

「見て!チーム5D'sのモニュメントがあるわ!」

 

《懐かしいですね!マスター!》

 

「ああ、あの戦いは本当に激戦続きだったからなぁ…」

 

最初にやって来たのはライディングスタジアム、WRGPや数々の名デュエルが繰り広げられたこの場所はライディングデュエルの聖地として世界で有名なのである。

 

 

《マスター、家族写真を撮ったらどうですか?》

 

「そうだな!それじゃあ…やっぱり5D'sのシンボルの前だな!」

 

《フォウ、フォーウ!》

 

「大丈夫、お前も家族だからな!フォウ!」

 

 

カシャ!

 

 

 

………

 

 

 

「ここが荒れてしまったネオ童実野シティが変わるキッカケになった場所さ!」

 

「ダイダロスブリッジ…これを人の手だけで作ったのね…」

 

《ええ、この橋の存在がサテライトの人々の希望だった野です》

 

次に訪れたのは旧サテライト地区…現ネオ童実野副都心と呼ばれるようになった場所…その整備された公園に伝説のDホイーラー達が築いた未完の「希望の架け橋」、ダイダロス・ブリッジが聳えていた…。

 

 

「俺達はこの場所からアーククレイドルに乗り込んで…イリアステルとの決着をつけたんだ…」

 

「空へと伸びる虹の架け橋…か…私も見てみたかったなー…」

 

「えっ?母さんは虹の架け橋を見てないの?」

 

「私は…ラプラスに連れ去られちゃってたから…あっ!?」

 

「…もう、昔の話さ…」

 

「「(父さんがなんでラプラスに殴りかかったのか分かった気がする…)」」

 

《フォーウ…》

 

遊海達の思わぬ歴史を知った凌牙達だった…。

 

 

 

………

 

 

「ここが…海馬コーポレーション本社ビル…」

 

「……首が痛くなっちゃう…」

 

「まぁ、なんたって()()()のビルだからなぁ…」

次に訪れたのは青眼の白龍の像が目印の海馬コーポレーション本社ビル…アーククレイドル衝突後に建て替えられ、その高さは世界一を誇っているのである。

 

 

「さて…そろそろ行こうか」

 

 

 

………

 

 

 

「私、こんな感じのお寺、初めて来たわ…」

 

「お前達のご両親のお墓も都会にあるからなぁ…これが日本本来のお寺なんだよ」

ネオ童実野シティ郊外…遊海達はそこにある寺院へとやって来ていた、遊海は売店で買った花束を抱えている…。

 

 

 

「さて……久しぶりに来たよ、()()()()…みんな…」

歩みを進めた遊海はとある墓地の前で足を止める…そこに並んだ墓、それは遊海の掛け替えのない親友達の墓だった。

 

「…フレアの力を借りれば、冥界にいるみんなに直接会いに行けるけどさ……たまにはこっちにも来ないとな…」

 

「遊海さん…」

遊海がネオ童実野を訪れた目的…それは親友達の墓参りの為だったのだ。

 

「凌牙、璃緒…悪いけど手伝ってくれるか?」

 

「当たり前さ、父さん!」

 

「しっかり綺麗にするわ!」

 

「ふふっ、ありがとう2人とも!」

遊海達は一家総出で掃除を始めた…。

 

 

「なぁ、父さんにとって遊戯さん達ってどんな存在なんだ?」

 

「ん?……本当に大切な仲間…いいや、親友さ…俺の戦いは遊戯達と出会って始まり…そして俺は…みんなとの約束を守る為に戦ってるんだ…」

 

「約束…」

掃除をしながら凌牙は遊海に問いかける…遊海は穏やかに応える。

 

「俺達の世界を守る…最善のハッピーエンドを掴む…それが…俺の誓いさ……まぁ、今回は危うくバッドエンドだったからな!はっはっは…」

 

「笑い事じゃないって…」

 

「ああ、笑い事じゃない……だから、謝りに来たかったのさ…遊戯達にも心配かけただろうから……」

 

「そっか…」

遊海の想いを聞いた凌牙は遊海にとって遊戯達との『絆』はいまだに繋がっているのだと理解した…。

 

 

 

 

「よし、掃除が終わったら線香を焚いて……それじゃあ、お参りだ」

掃除を終えた一家は静かに手を合わせる…。

 

 

「(遊戯、杏子、克也、舞さん、ヒロト、海馬さん…心配かけてごめん……俺は大丈夫、例えどんな事があっても…この世界を守ってみせる……だから、見ていてくれ──)」

遊海は祈りと共に決意を新たにする…仲間達と共に、この世界を守り続けると…。

 

 

 

 

 

「さて…それじゃあ、遊星達に会いにいく前に…ネオ童実野シティで一番の場所に行こう!」

 

 

 

………

 

 

「わぁ…!すごい!ネオ童実野シティが見渡せるのね!」

 

「上から見ると…本当にすごい街なんだな…!」

遊海達がやって来たのはネオ童実野シティを見渡せる見晴らし台…夕焼けに照らされたネオ童実野シティは本当に綺麗だった…。

 

 

「この街が俺の原初…久しぶりに来て、改めて自分がやるべき事を見つめ直せた…付き合ってくれてありがとうな凌牙、璃緒」

 

「いいんだよ、父さん…俺達も父さん達の故郷が見れて良かった!」

 

「また来たいわ!」

 

「ああ、そう言って貰えるなら…俺も嬉しいよ」

凌牙達の言葉に遊海は穏やかに笑う…その表情は本当に嬉しそうだった。

 

 

「……なぁ、父さん…頼みがある!」

 

「ん?どうした?」

ネオ童実野の夕暮れを見つめる遊海に凌牙が話しかける。

 

 

「俺と…デュエルしてくれ…!今の俺がどれだけ強くなれたのか、父さんに確かめて欲しい!!」

凌牙の頼み…それは遊海とのデュエル、バリアンとしての戦いを乗り越え、新たな希望を手にした凌牙…自身の成長を遊海に見せる為に、デュエルを挑む!

 

「ふっ…良いだろう!このデュエルの聖地で…父として…決闘王の名を背負った男として!全力で相手になろう!!」

 

「ありがとう…父さん!!」

 

「凌牙!頑張って!」

 

「遊海さんも頑張ってー!」

 

《フォウ!フォーウ!!》

夕暮れのデュエルの聖地…そこで遊海と凌牙、2人の親子デュエルが始まった!!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

凌牙LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『「セイバー・シャーク」を召喚!』

頭部が刀のようになった鮫が現れる! ATK1600

 

『さらに!自分が魚族モンスターの召喚に成功した時、手札の「シャーク・サッカー」は特殊召喚できる!』

セイバーシャークにくっ付くコバンザメが現れる! ATK200

 

 

『そして「セイバーシャーク」の効果発動!1ターンに2度まで、フィールドの魚族モンスターのレベルを1つ上げるか、下げる事ができる!俺は「シャークサッカー」のレベルを1つ上げる!』

 

シャークサッカー☆3→4

 

 

『俺はレベル4の「セイバーシャーク」と「シャークサッカー」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!』

 

 

101

 

 

『現れろ!「No.101」!「S・H・Ark Knight(サイレント・オナーズ・アークナイト)」!!』

凌牙の持つオーバーハンドレットナンバーズ…白き方舟が現れる! ATK2100

 

 

「いきなり『アークナイト』を出して来たか」

 

『俺の持てる全力で…父さんに挑む!カードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

凌牙LP4000

アークナイト 伏せ2 手札1

 

 

 

「全力か…なら、このデッキで正解だったな…いくそ!!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「魔法カード『召喚士のスキル』発動!デッキからレベル5以上の通常モンスター…『クリフォート・ツール』を手札に加える!」

 

『父さんの、本気デッキ…!』

 

「さぁ…行くぞ!!俺はスケール1の『クリフォート・アセンブラ』とスケール9の『クリフォート・ツール』でペンデュラムスケールをセッティング!」

遊海の背後に光の柱が発生、その中に紫と黄色の核石を持つ機械が現れる!

 

「そして『ツール』のペンデュラム効果発動!800ライフを払い!デッキから『クリフォート・シェル』を手札に加える!さぁ…我が魂を守りし大いなる力よ!今こそ、その力を示せ!!ペンデュラム召喚!レベル6『クリフォート・ゲノム』!レベル8!『クリフォート・エイリアス』!そして特殊召喚されたクリフォートモンスターはレベル4、攻撃力1800になる!」

異次元への穴から橙と灰色の核石を持つ機械達が現れる! 

 

遊海LP4000→3200

 

ゲノムATK2400→1800 ☆6→4

 

エイリアスATK2800→1800 ☆8→4

 

 

「そして俺は『ゲノム』と『エイリアス』をリリース!『クリフォート・シェル』をアドバンス召喚!!」

2体の機械が消え、黒色の核石を持つ巻き貝型の機械が現れる! ATK2800

 

 

『攻撃力2800…!』

 

「さぁ、乗り越えてみせろ!リリースされた『ゲノム』の効果発動!凌牙の左側の伏せカードを破壊!!」

 

『っ…!「ゼウス・ブレス」が…!』

凌牙のフィールドで竜巻が発生し、伏せカードを吹き飛ばす!

 

 

「バトルだ!『シェル』で『アークナイト』を攻撃!」

 

『くっ…!ナンバーズはナンバーズと戦闘でなければ破壊されない!っうう…!!』

シェルが方舟へと突進、弾き飛ばす!

 

凌牙LP4000→3300

 

「そして!『シェル』は2回の攻撃ができる!再び『シェル』で『アークナイト』を攻撃!」

 

『ぐううっ…!!』

再びの突進が凌牙にダメージを与える!

 

凌牙LP3300→2600

 

「俺はカードを1枚伏せターンエンド!そして『アセンブラ』のペンデュラム効果発動!このターンにリリースされたクリフォートモンスター1体につき1枚、つまり2枚ドロー!」

 

遊海LP3200

シェル (アセンブラ・ツール) 伏せ1 手札1→3

 

 

 

「父さんの最強デッキ…本当に強いわね…」

 

「もう…遊海さんも大人げないんだから…」

 

《フォーウー…》

凌牙に対して本気で戦う遊海…翠はそんな遊海に少し呆れたのだった。

 

 

『(父さんのクリフォートは通常召喚されると自身のレベルより低いモンスターの効果を受けない…なら、引き当てる!!)』

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『来たぜ…!俺がドローしたのは「RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)」!!』

 

「おっ…?何を出すんだ?」

 

『力を借りるぜ…!ミザエル!!』

 

 

107

 

 

『現れろ!「CNo.107」!「超銀河眼の時空龍」─!!』

黄金の身体を持つ、3つの首を持つ巨龍が現れる! ATK4500

 

 

「ああ、確かにクリフォートにそれは最適解だな…だが、そうはいかない!永続罠『デモンズ・チェーン』を発動!『超時空龍』の攻撃・効果の発動を封じる!」

 

『なにっ!?』

無数の鎖が超時空龍を縛り上げる!

 

 

『っ…なら…!!魔法カード「RUM-バリアンズ・フォース」を発動!俺は「アークナイト」1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!』

 

 

101

 

 

『現れろ!「CNo.101」!「S・H・Dark Knights(サイレント・オナーズ・ダークナイト)」!!』

凌牙のエースたる黒き槍使いが現れる! ATK2800

 

 

『「ダークナイト」で「シェル」を攻撃!攻撃力は同じだが、ナンバーズである「ダークナイト」は破壊されない!!』

 

「流石だな!」

シェルが朱槍に貫かれ爆散する!

 

 

『俺は…これでターンエンド!』

 

凌牙LP2600

ダークナイト 超時空龍 伏せ1 手札0

 

 

 

「高攻撃力の『超時空龍』に…相手モンスターをORUにでき、破壊されたらライフを回復できる『ダークナイト』…いい布陣だ!ならば…俺はそれを正面から乗り越えよう!!」

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「良い引きだ!『ツール』のペンデュラム効果発動!800ライフを払い!『クリフォート・アーカイブ』を手札に加える!」

 

遊海LP3200→2400

 

 

「そして…ペンデュラム召喚!手札から現れろ!レベル6『クリフォート・アーカイブ』!レベル7『クリフォート・アクセス』!さらにエクストラデッキから現れろ!『シェル』!『エイリアス』!『ゲノム』!」

 

「モンスター5体の、同時召喚…!!」

フィールドに5体のクリフォートが降臨する!

 

アーカイブATK2400→1800 ☆6→4

 

アクセスATK2800→1800 ☆7→4

 

シェルATK2800→1800 ☆8→4

 

ゲノムATK2400→1800 ☆6→4

 

エイリアスATK2800→1800 ☆8→4

 

 

 

「そして…俺は『アーカイブ』『ゲノム』『アクセス』の3体をリリース!現れろ!我が魂!我が相棒!『アポクリフォート・キラー』!!」

 

《マスター…流石に容赦なさ過ぎですって…》

3体のクリフォートの核石が消え…遊海の相棒たる巨大要塞が顕現する! ATK3000

 

 

「リリースされた『ゲノム』の効果発動!凌牙の伏せカードを破壊!さらに『アーカイブ』の効果!『ダークナイト』を手札…エクストラデッキに戻す!」

 

『っ─!!』

フィールドに嵐が吹き荒れ、伏せられていた『七皇転生』が破壊され、ダークナイトがエクストラデッキに戻される!

 

 

「そして…フィールドには攻撃力4500の『超時空龍』…クリフォートでは戦闘破壊はできない…しかし!『キラー』の効果発動!相手は自身の手札・フィールドのモンスターを墓地に送らなければならない!」

 

『っ…!「超時空龍」を、墓地に送る…』

アヤカの開いたワームホールに超時空龍が吸い込まれる!

 

 

「『キラー』で凌牙にダイレクトアタック…決着だな?」

 

『ああ、本当に容赦ねぇ──』

 

 

 

凌牙LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

「強くなったな、凌牙…並の決闘者では相手にならないさ…俺が強いだけだ」

 

「まだまだ足元にも及ばないな…本当に強すぎるぜ、父さん…」

遊海は倒れ込んだ凌牙に手を差し伸べる…呆気なく負けてしまった凌牙だが、その表情は晴れやかだった。

 

 

「本気の父さんがいれば…この先にどんな戦いがあっても、負ける気がしないぜ…」

 

「ははっ…俺一人じゃ全部は対処しきれないさ!お前や遊馬…流星達…新たな世代の決闘者と一緒に俺は未来を切り拓いていく…それが俺の役目さ!だから…もっと強くなってくれよ?凌牙!」

 

「ああ!前にも言ったけど…俺は父さんを一人にはしない!父さんと一緒にこの世界を守る!!」

 

「──ああ…頼りにしてるからな、凌牙…」

凌牙の頼もしい言葉を聞いた遊海は優しく凌牙の頭を撫でる。

 

 

「さーて!遊星達が待ってるな!行こうか!」

 

「はい!」

夕焼けのネオ童実野シティに笑い声が響く、ようやく手に入れた平和な時間を白波一家は噛み締めたのだった。



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おわりのはじまり

『………これは………やはり()()というものは変えられないか…』

 

『マーリン、地上で何か起きたのですか?』

世界の何処かにある理想郷、その中心部にある塔で花の魔術師・マーリンが呟く…そして、落ち込んだ様子のマーリンに白いワンピースを着た金髪の女性が声を掛けた…。

 

 

『いや…世界()平和だとも…人々は穏やかに暮らしているよ』

 

『その言い方……貴方の「お気に入り」の彼に…何か…?』

 

『……ああ、彼には元々大きな()()が待ち受けていた……それと対峙した結果さ…私の()では、もう彼を捉える事ができない…』

 

『!?』

マーリンの言葉を聞いた女性は静かに驚く、マーリンの『眼』…それは『現在』全てを見通す千里眼。

…その眼を以てしても、『彼』の行方を捉える事ができなくなってしまったのだ。

 

 

『「あらゆる未来を視る」英雄の王や「過去と未来全てを視る」魔術の王なら見つける事ができるだろうけど……私にはどうする事もできない…お手上げさ』

 

『…らしくないですよ、マーリン…貴方は最善の結末を見るのが好きなのでしょう?…貴方の知る彼はそんなに弱い人間なのですか?』

 

『……そうだね、そうだった!彼は幾度もの災厄を乗り越えた戦士さ!きっと無事だとも!!』

女性の励ましを聞いたマーリンは顔を上げる…『彼』の無事を信じて…。

 

 

 

『ならば…彼の話をするとしよう!』

彼は理想郷へと声を響かせる!

 

 

──その男は幾度となく、世界を救い!仲間と共に運命を切り拓いてきた、現代の『英雄』!──

 

 

──だが、此度の物語において世界を救うのは、彼『だけ』ではない…──

 

 

──彼が共に歩み!導き!示し!繋いだ、数多の()!──

 

 

──彼が紡いだ()が…彼と共に、闇を祓う光となる事を──私は信じよう!──

 

 

花吹雪の舞う理想郷に花の魔術師の願いが融けていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──……本当に行くのか?──

 

──うん、僕達は彼に助けられてばっかりだった…だから、今度は僕達が彼を助けたいんだ!──

 

──しばらくは此方へ還ってくる事はできない…それでもか?──

 

──わかってる…それは覚悟の上さ、心残りなのは…きみを一人にしてしまう事だけど…──

 

──……心配するな、オレは孤独ではない…お前達との友情…絆は決して途切れる事はない!…任せたぜ、相棒──

 

──任せて、アテム…行ってくる─!──

 

 

 

 

 

 

 

絆は決して断ち切れない。

 

 

 

 

例え、遙か遠く離れていようとも。

 

 

 

 

英雄達が紡いだ絆は運命の糸車を廻す。

 

 

 

 

善因善果、悪因悪果

 

 

 

自分の信じる道を歩んだ英雄に…光の未来があらん事を────

 




明けましておめでとうございます、S,Kです!

新年を迎え…白波遊海の物語はついに『終章』へと向かいます。
いったい、遊海の身に何が起きたのか?彼が守り続けた世界はどうなってしまったのか?

全てはこの先に紡がれる物語の中に…。


改めまして…よろしくお願いいたします!


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第5部 ARC-V編 第1章 躍動決闘都市 スタンダード・舞網
Ep.1 記憶喪失の少年と少年道化師〜運命のペンデュラム〜


カン…カン…カンカンカンカン……カカン!!

 

 

「さぁ、時は満ちた…征くぞ!!」

 

 

そこは桜吹雪が舞い散る和風の都、その場所で白い学ランを纏い、鉄下駄を履いた益荒男がデュエルを行っていた!

 

「俺は『超重武者ワカ─02』と『超重武者ソード─999』をリリース!『超重武者ビック・ベン─K』をアドバンス召喚!!」

薙刀を構えた機械武者と青い鎧の機械武者がリリースされ…大薙刀を持つ機械僧兵が現れる!

 

 

「さぁ…()()よ!この男、権現坂と尋常に勝負しろ─!!」

学ランの男…否、少年である権現坂は名乗りを上げる…その正面には対戦相手はいない。

 

だが、その相手は巨大な門の上で、満月を背負い立っていた─!

 

 

 

 

 

 

「レディース&ジェントルメーン!!」

 

《ヒポ!》

 

 

 

………小柄なピンクのカバに跨り、風情も何もない名乗りを上げながら…。

 

 

「オレは速攻魔法『カバー・カーニバル』を発動!イッツ!ショータイム!!」

 

《ヒポ〜!ヒポヒポ〜!!》

 

「はっ─!?」

速攻魔法を発動した少年…榊遊矢の前にサンバの衣装を纏った雌カバ達が現れ、踊り始める…桜舞い散る古都に響くサンバと踊るカバ……なんともシュールな光景である。

 

「ば、馬鹿者!!俺をおちょくっているのか!?()()と違うではないか─!!」

踊るカバを見た権現坂は怒りと困惑の叫びを上げるが…彼以上に腹を立てている人物もいて──

 

 

 

 

「あの…馬鹿─!!」

モニターでデュエルを見守っていた赤毛の少女が怒りの声を上げる!

 

「遊勝塾の未来が懸かってるのに…!マジメにやりなさい遊矢─!!」

幼馴染の醜態に怒った少女はその手を叩き付ける……デュエルを制御するコンピューターのキーボードに。

 

 

ガン!!…ピシッ…バリバリ!!ドーン!!

 

 

「あっ…!?きゃあああ!?!?」

 

「柚子ちゃん!?どうしっ…うわ!リアルソリッドビジョン発生器が─!?」

エラーを起こしたシステムが暴走、スパークすると共に爆発…異常を感じてやって来た白髪の青年を吹き飛ばした!

 

 

 

「柚子!遊希!何をやって…!?うおぉい!?」

 

「ご、ごめんなさい!お父さん─!!」

続いてやって来た赤とオレンジ色のジャージを着た男、柊修造は暴走するシステムを見て頭を抱える…!

 

 

「こ、コイツが壊れちまったら…オレの熱血指導が!?ソリッドビジョンが消えちまうぞぉぉ!?」

修造の叫びも虚しく…投影機の出力が不安定となる、そして…。

 

 

 

 

 

「これが!遊勝塾が誇る、エンターテインメント・デュエルでございま──うわっ!?」

 

『あっ…』

 

ゴッチーン!!

 

カバ達と踊りながら、見学者の少年に説明していた遊矢は…ソリッドビジョンが消えてしまった事で呆気なく床に叩きつけられた…。

 

 

 

『だ、大丈夫、ですか…?』

 

「イタタ……へ、ヘヘっ…ダイジョウブだよ〜ん!」

叩きつけられた遊矢を心配する少年に遊矢はおどけるしかなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

此処は『舞網市』、デュエルモンスターズに関する技術が大きく進んだ街。

 

その特色は『質量』を持ち、触る事のできるソリッド・ヴィジョン…『リアル・ソリッド・ヴィジョン』を利用したモンスターとデュエリストが地を駆け、空を舞うデュエルの進化系…『アクション・デュエル』発祥の地である事。

 

世界を熱狂に包むアクション・デュエル…その世界へと新たなデュエリストが飛び込もうとしていた…!

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

カチャカチャカチャ…ピッピッピッ…

 

 

 

「ど、どうだ?遊希…?直りそうか…?」

 

「……き、厳しいですね…システムが古くてジャンクパーツでの修理も限界です…残念ながら、買い換えるしかないかと…」

 

「我が塾には…そんな予算はないぞぉ……」

機械室に修造の悲嘆の声が響く…その声に青いジャケットを着た白髪の青年、榊遊希は静かに頭を下げる…。

 

「すいません、修造さん…!僕に、もう少し技術があれば…!!」

 

「謝る事はないぞ…お前はよくやってくれた……はぁ…とにかく、見学者に謝罪しないとなぁ…」

遊希を労った修造はこれからの事を考えて頭を抱えてしまった…。

 

 

………

 

 

「うううっ…オレの熱血指導がぁぁ〜!!ソリッド・ヴィジョン・システムが壊れて入塾希望者も帰ってしまった!!これでは我が『遊勝塾』の経営が〜!!」

しばらく後、デュエル塾・遊勝塾の事務室に修造の嘆き声が響いていた…。

 

舞網市にはデュエルモンスターズの戦略や扱い方を習う塾…『デュエル塾』が無数に存在している、デュエリスト達は自分に合った塾を選び立派な『プロデュエリスト』を目指している。

 

また、それぞれの塾には特色があり…『女性モンスター専門塾』『スポーツデュエル塾』『デッキ破壊専門塾』などなど…様々なものがある、そしてこの『遊勝塾』の特色はアクションデュエルの中でも演劇やマジックショーのように『人を楽しませる』事に特化したデュエルスタイル…『エンターテインメント・デュエル』を教える塾なのである。

 

だが、その遊勝塾は…創立以来、最大の窮地に立たされていた…。

 

 

「あ〜あ!柚子が機械を壊さなかったら…もっと笑わせてやれたのにな〜!」

 

「もう!遊矢がふざけるからでしょ!?」

修造が悲嘆に暮れる中、今回の事態の原因①である遊矢はゴーグルをしながら機械を壊した柚子をなじる…だが、柚子もまた遊矢の態度に怒っていたが…。

 

 

「この馬鹿遊矢!って…目を見て話しなさい!!」

 

「うわっと!ってふげ!?」

ゴーグルをしてふざける遊矢に対して柚子の張り手が飛ぶ…それを間一髪で避けた遊矢だが、避けた拍子に顔をゴーグルごと何かに打ち付けて悶絶する。

 

 

「痛て〜…まだいたのかよ!権現坂…」

 

「………」

遊矢がぶつかったのは先程までデュエルしていた相手、怖い顔で仁王立ちしていた権現坂昇の厚い胸板だった…なお、権現坂は遊勝塾の所属ではなく…その名も『権現坂道場』という塾の跡取り息子である、入塾者不足にあえぐ遊勝塾の応援の為にやって来たのだが…彼もまた怒っていた。

 

 

「……遊矢、あの少年は…()()()()()()()()()()ぞ」

 

「えっ?いやいや…結構笑って──」

 

「っ〜!!『笑わせる』のと『笑われる』のとでは天と地程も違うと言っているのだ!!」

 

「っ…」

それは権現坂からの…友からの忠言、見学していた少年は笑っていた…が、それは遊矢のドタバタを見ての失笑や苦笑……心の底から『面白い』と思った笑顔ではなかったのだ。

 

「遊矢、お前の()…榊遊勝はデュエルでみんなを笑顔にしていた…!あの時の心の底からの笑顔を忘れたのか!?」

権現坂は事務室に貼られたポスターを指し示す、そこに写っていたのは赤いスーツに身を包み、シルクハットを被った紳士…遊矢の父であり、アクションデュエル()チャンピオン…榊遊勝だった。

 

 

「……ま、ウチの親父も最後はみんなに笑われたけどね〜?」

 

「「「遊矢!!」」」

おちゃらけた態度を取り続ける遊矢に柚子達の声が重なる…その時だった。

 

 

 

「遊矢、遊勝さんの事を悪く言うんじゃない……あの人がいなくなったのには、きっと理由があるんだ…」

 

「……遊希兄…」

 

「遊希さん…」

遊矢の肩に手を置いてそう語り掛けたのは先程までソリッドヴィジョンの修理をしていた遊希だった。

オイルで汚れた顔のまま、遊希は穏やかに語り掛ける。

 

「遊矢、今のお前は顔で笑って…()では泣いている…まるで道化師のようにな……そんなんじゃ遊勝さんが戻ってきた時に呆れられちゃうぞ?」

 

「えっ……そ、そんな事ないさ!オレは……」

 

()()()()()()……一流のエンターティナーを目指すなら、力を抜ける時は抜くといい…柚子も権現坂もお前を笑ったりはしないさ…な?」 

 

「遊矢…お前も、お前なりに考えていたのだな…すまん」

 

「権現坂…」

遊希の言葉で遊矢の思いを知った権現坂は謝罪する…それは柚子も修造も同じ気持ちだった。

 

 

………

 

 

「それはそれとして…壊れたソリッドヴィジョンシステムはどうしようか…?」

 

「レンタルデュエルスペースを使うのも費用がかかる…かと言って『アクション・フィールド』が無ければアクションデュエルの指導ができん!弱ったなぁ……」

遊希の言葉に修造は再び頭を抱える…。

 

 

『これはこれは…お困りのご様子ですねぇ…?』

 

「っ…あの、どちら様で…?」

そんな時、事務室に赤縁のサングラスを掛け、黄色と黒色のスーツを着た何処と無く胡散臭い男性が現れた!

 

 

『ああ!申し遅れました!私、アクションデュエルの現役日本チャンピオン・ストロング石島のマネージャー兼プロモーターをしておりますニコ・スマイリーと申します!』

 

「ストロング、石島…!?」

仰々しく礼をしたニコ・スマイリーは修造に名刺を手渡す…そして『ストロング石島』という名を聞いた遊矢は表情を強張らせた…。

 

 

ストロング石島…それは舞網市…否、()()()()の大企業『レオ・コーポレーション』が運営するデュエル塾『レオ・デュエル・スクール(LDS)』のイメージキャラクターを務める、現アクションデュエルのチャンピオンである。

 

 

『LDSのイメージキャラクターを務めるストロング石島…そのファン感謝デーイベントに、是非!榊遊矢をお招きしたいのです!!』

 

「そこで、オレが…ストロング石島とデュエルを…!?」

 

『そのとーりです!あの3()()()()()()が現実となるのです!!』

 

「………3年前、か…」

ニコが持ってきた企画…それは遊矢にとって待ち侘びた機会であり──辛い思い出を呼び起こすものだった。

 

 

………

 

 

 

三年前…当時、アクションデュエルチャンピオンだった榊遊勝…その彼に新進気鋭の挑戦者としてストロング石島が王座に挑む…はずだった。

 

だが、その会場に遊勝は()()()()()()

 

当然、会場は非難の嵐に包まれた…

 

『ストロング石島に負けるのが怖くて逃げ出した!』『榊遊勝は臆病者だ!』『卑怯者だ!』

 

謂れもない罵詈雑言が飛び交う……その日以来、遊勝は行方不明となった…大切な家族に何も告げぬままに…。

 

 

 

………

 

 

 

『ほら!この通り…宣伝チラシも用意して!準備は万端なのです!』

ニコはファン感謝デーの宣伝チラシを取り出す…それを見た遊矢は生唾を飲み込むが…。

 

 

「ダメだ!!遊矢を、そんな場所に行かせる訳にはいかない!」

 

『えっ…何故ですか!?あの榊遊勝の息子が登場するとなれば!会場はおおいに盛り上が──』

 

「黙れ!遊矢を…()()()にはできん!!」

 

「あっ……」

遊勝塾の塾長として…修造はニコにNOの言葉を叩き付ける…それは遊矢の心情を思っての言葉だった…。

 

 

「この三年間、遊矢や遊希がどんな思いで過ごしてきたか…!いいから、帰ってくれ!!」

毅然とした態度でニコを追い返そうとする修造…だが、ニコはさらなる一手を指す…。

 

『それは残念ですねぇ…ご承諾戴けたら、お礼としてレオ・コーポレーション製の最新型リアル・ソリッド・ビジョンシステムをお納めさせていただこうと思っていたのですが…?もちろん()()で!!』

 

「マジすか!?」

 

「お父さんの馬鹿!!」

 

「ぎゃふん!?」

ニコの提案…それは数百万円もするリアルソリッドビジョンシステムの無償提供…その言葉を聞いた修造は鼻息荒くなるが…娘である柚子が即座に大ハリセンで修造にツッコミを入れる!

 

 

「たった今!遊矢を見せ物にはしないって言ったばかりでしょ!?」

 

「うぐ…」

 

「塾も大事だけど…!」

 

「大事なのは遊矢の気持ちだ!って………ん?遊矢は…?」

遊矢の気持ちを最優先で考える柚子と権現坂…だが、いつの間にか遊矢は姿を消していた…。

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

「…………」

 

遊勝塾から抜け出した遊矢…彼は舞網スタジアムが見える大橋の上で物思いに耽っていた、その手に父から送られた水色のペンデュラムの首飾りを見つめながら…。

 

 

 

「『大きく振れば、大きく戻る…怖がって縮こまっていたら何もできない、勝ちたいなら…前に出ろ!』……遊勝さんもそう言ってたな」

 

「あっ…遊希兄…どうして…」

 

「ははっ…()…かな?遊矢なら此処に来てそうな気がしたんだ」

いつの間にか遊希が遊矢の隣に腰掛けていた…その手に遊矢のものに似た赤いペンデュラムを手にしながら…。

 

 

「ペンデュラムは…『何か』を探し出す道具でもある……父さんのペンデュラムがオレの進むべき道を示してくれる……」

 

「……遊矢、お前はどうしたいんだ?」

 

「オレは……戦う!柚子達に止められようと……父さんのエンタメデュエルは強いんだって、証明するんだ!」

 

「そっか…僕は止めないよ、これは遊矢が乗り越えるべき事だから…」

 

「ああ、揺れろ…揺れろ!ペンデュラム!オレの進む道を示してくれ…!!」

遊矢はペンデュラムに誓う…父の雪辱を晴らし、前に進むのだと…。

 

 

 

 

 

 

 

Side遊希

 

 

 

「遊矢は…直接ニコさんの所へ行ったか…口止めもされちゃったし…柚子ちゃん達には内緒にしないとな」

 

 

僕の名前は榊遊希……と言っても、()()じゃない…僕は記憶喪失で倒れていた所を遊勝さんと遊矢に助けられた…居候だ。

 

それまでの僕が何処に住み、何をしていたのかはまったく覚えていない…覚えているのは基本的なデュエルの知識に機械整備の技術…そして少しだけ高い身体能力を持っている事だけだ。

 

 

「いい加減、何か思い出したいよ……もう5()()だぞ…」

遊矢と同じようにスタジアムを見つめながら、僕はため息をつく……記憶の手掛かりになりそうなのは主に3つ。

 

赤いペンデュラムのネックレス

 

錆びついた鉄の板のネックレス

 

金色の鍵のような首飾り

 

他には壊れたデュエルディスクと()()()()デッキケースしか持っていなかったらしい……そして、僕には人にはない()()()がある、それは──

 

 

 

『ようやく見つけたぜい!榊遊希!』

 

「あっ…モクバ君、どうしたんだい?」

僕が考えていると黒スーツの男2人を従えた黒い地縮れた長髪の小学生が現れた、彼の名前は海馬モクバ…こう見えて世界一の大企業・海馬コーポレーションの副社長である。

 

 

『兄様からの伝言だ!来週の日曜日、海馬コーポレーションのイベントでデュエルをしてもらう…ってさ!』

 

「えっ?来週の日曜って…遊矢が……いや、そもそも僕は……」

 

『これは兄様からの正式な依頼だ!「遊勝塾の窮状を見過ごす事はできん、お前が活躍し…新たな活路を開くのだ!」…だってさ!イベントが成功したら正式に遊勝塾のスポンサーになっても良いって言ってたぜ!』

 

「はぁ…社長も無茶苦茶言うなぁ……でも、これなら…遊勝さんや修造さんに少しでも恩を返せる……やるしか、ないか…!」

 

モクバの言葉に遊希は少し悩んだが…覚悟を決める、素性も分からない自分を育ててくれた遊勝や友人達の為に戦う事を…!

 

 

『話は決まったな!戦う相手はデュエルの()()()()()()()()だから…気を引き締めろよ!遊希!』

 

「えっ…!?それって──!?」

 

思わぬ対戦相手に遊希は驚くしかなかった…。

 

 

 

…………

 

 

 

パン!パンパーン!!

 

 

「はぁ、はぁ…おい、遊矢…嘘だろぉ…!?」

 

「遊矢…!!」

 

数日後の舞網スタジアム…そこへ修造・柚子・権現坂は息を切らせながらやって来ていた…遊矢が自分達には内緒でストロング石島と戦う事を知ったからである。

 

スタジアムは超満員…花火が鳴り響き、チアガール達が声援を響かせる…それは、1人の男に向けられていた…!

 

 

『さぁ…!いよいよ、本日のメインイベントのお時間です!チャンピオン・ストロング石島に挑戦しますのは!あの伝説のデュエル・スター!榊遊勝の1人息子…!榊遊矢君でありまーす!!』

司会を務めるニコのコールがスタジアムに響く…!

 

『今回のデュエルはアクションデュエルの公式ルールに則って行われます…では、フィールド魔法「辺境の牙王城」を発動─!』

ニコの宣言と共にリアルソリッドヴィジョンが展開…スタジアムの景色がRPGに出てきそうな城や森へと変化する!

 

 

『おーっと!あの城の上に現れたのが!この3年間、アクションデュエルの頂点に君臨し続ける最強王者!ストロング石島だ─!!』

 

【うおおおーっ!!】

そしてスタジアムに姿を現したのは重厚な鎧を纏い、何処か世紀末的な化粧をした大男…ストロング石島が雄叫びを上げる!

 

 

『そして対する挑戦者…若きチャレンジャー!榊遊矢!!………あれ?遊矢君??』

続いて遊矢を呼び出すニコ…だが、入場口から遊矢は現れない…会場は騒然となる…!

 

 

──なんだよ、逃げたのかよ?──

 

 

──三年前の遊勝と一緒じゃないか──

 

 

──親子揃って卑怯者だ!──

 

 

「ちょっと…!」

 

「やめろ、柚子!耐えるんだ…!」

口々に不満を口にする…その光景はまるで3年前のようだった…。

 

 

【息子を引っ張り出せば、遊勝も姿を現すかと思ったが……期待ハズレだったか…くそ!アイツを倒さねば、オレは最強王者を名乗れんのに…!!】

姿を見せない遊矢、そして遊勝に対して怒りを露わにする石島…だが、彼は気付いていなかった…背後でパントマイムを行う()()の存在に…!

 

 

─な、何あれ…?ピエロ??─

 

─チャンピオン!後ろ後ろ!!─

 

【ん?なんだぁ?】

 

「ベロベロぶー!!」

 

【どわぁっ!?!?】

観客達の声で異常に気付いた石島が後ろを振り向く…そこには仮面を被ったピエロ……仮装した遊矢が立っていた!

 

 

 

【お前、榊遊勝の倅か…!それがチャンピオンに対する態度か!?】

 

「おおっと!これは失礼を致しました!」

虚を突かれ、動揺する石島…だが、すぐに立て直し遊矢に詰め寄る……だが、遊矢は道化の仮面を外し、チャンピオンへと向かい合う!

 

「では改めまして…お願いいたします、どうか私めとデュエルして頂けますか?チャンピオン─!」

 

【フン…!良いだろう!!】

遊矢と石島はデュエルディスクを展開、デュエルの準備を整える!

 

「さぁ…チャンピオン様のお手並み拝見!!」

 

 

『おっと!いきなり意外な展開となりましたが…役者は揃いました!!さぁ、手札を5枚用意して頂いて…さぁ、いきますよ─!!』

ニコがアクションデュエルに欠かせぬ口上を叫ぶ!

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!これぞ…デュエルの最強進化系!アクショーン!!』

 

 

【『デュエル!!』】

2人の掛け声と共に無数のカードがフィールド内に散らばっていく…アクションデュエルがついに始まった!

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対ストロング石島

 

 

 

【先攻はくれてやる…念の為に教えてやるが、先攻は最初のターンはドローはできないぜ】

 

 

「これはお気遣いどうも…!さて…レディース&ジェントルマン!これより皆様に、本家本元のアクションデュエルをご覧いただきます──!!」

 

【なにっ─!?】

先攻を譲られた遊矢は城のバルコニーから縄のリフトを使い、地上に飛び降りる─!

 

 

「最初の出し物は…『EMディスカバー・ヒッポ』を召喚!!」

 

《ヒッポ!!》

地上へ向かった遊矢はシルクハットを被ったピンク色のカバを呼び出し、騎乗…フィールドへと走り出す!

 

遊矢のデッキは『EM』(エンタメイト)…派手な衣装を纏った動物達が主体のテーマである。

 

 

「さぁ、捕まえてご覧なさいな─!」

 

【フン…!すぐにとっ捕まえてやる!!】

石島は王城から動かない…だが、チャンピオンの力を見せつける!

 

 

 

 

【俺は『バーバリアン1号』と『バーバリアン2号』をリリース!アドバンス召喚!密林の奥地から…古木を薙ぎ倒し、現れるがいい!異界の王国に君臨する蛮族の王!!『バーバリアン・キング』!!】

石島は自身の切り札…攻撃力3000を誇る蛮族王を呼び出す!!

 

「おっと!?」

 

【親父には逃げられたが…お前は逃さない!!『バーバリアンキング』で『ディスカバーヒッポ』を攻撃──!!】

巨大な棍棒が遊矢とヒッポに振り下ろされる…圧倒的ピンチ、だが…アクションデュエルではそれを覆す一手がある!

 

 

「おっ…ラッキー!()()()()()()()()ゲット!アクションマジック『回避』を発動!相手モンスターの攻撃を無効にする!ローリング・ヒッポだ!」

 

《ヒッポ─!!》

振り下ろされた棍棒…だが、ヒッポは見事な宙返りで回避する!

 

 

 

………

 

 

「見事…だが、逃げてばかりでは勝てないぞ、遊矢…!」

遊矢の逃げながらのデュエルを心配する権現坂…だが、それは違っていた…!

 

「ちゃ〜んと戦ってるよ、アイツは…!」

 

「洋子さん!」

権現坂達の背後から凛々しい金髪の女性が現れる、彼女は榊洋子…遊矢の母親である。

 

 

「遊矢はいま、戦いながら生まれ変わろうとしてるんだ…気張りなさい!遊矢!!」

彼女は信じていた…三年間、仮面をかぶり続けた息子の成長を…!

 

 

 

………

 

 

【避けられたか…だが…!プロはその先を往く!バーバリアンをリリースした『バーバリアンキング』は2回攻撃できる!!】

 

「えっ!?2度の攻撃!?」

再び振り下ろされる棍棒…フィールドが砂煙に覆われる、ヒッポの攻撃力は800…遊矢は大ダメージを…

 

 

「ま、間に合った〜!アクションマジック『奇跡』!モンスターの破壊を無効にして、ダメージを半分にしたのさ!」

ダメージを最小限に抑えた遊矢…そのハラハラドキドキのエンタメデュエルは少しずつ、観客達を引き込んでいく…!

 

 

 

………

 

 

「遊矢はこの三年、道化の仮面を被って生きてきた…逃げたチャンピオンの息子だと笑われる前に、自分で自分を()()()()()()()()…だけど、遊矢が本当になりたいのは…榊遊勝、幼い頃に夢見たデュエルスターになりたいのさ…!」

洋子は知っていた、遊矢の願いを…夢を…ならば彼女はその背中を押すだけだった…!

 

 

 

…………

 

 

「私のターン!ドロー!!…来たぁ!さぁ、皆様!いよいよクライマックスでございます!」

ドローカードを確認した遊矢は高台へと駆け上がる!

 

 

「『ディスカバーヒッポ』はアドバンス召喚の為にリリースされる時、2体分のリリース素材となる事ができます!私は『ディスカバーヒッポ』をリリース!アドバンス召喚!さぁ、拍手でお迎えください!本日の主役!世にも珍しい二色の眼を持つ竜!『オッドアイズ・ドラゴン』!!」

ついに現れたのは遊矢のエース、赤と緑の二色の眼を持つ赤いドラゴン…オッドアイズドラゴンだった!

 

「さぁ…お楽しみは、これからだ!!」

道化の服を脱ぎ捨てた遊矢は父と同じ決めゼリフを叫び、攻勢に出る!

 

 

【フン…!腰抜けの親父と同じ事を…!】

 

「父さんは腰抜けなんかじゃない!!父さんに習ったデュエルでアンタを超えて…父さんが誰よりも強いって証明してやる─!」

盛り上がる会場にイラつく石島に遊矢が通信越しに叫ぶ…!

 

 

【ふん、だが…出てきたドラゴンの攻撃力は2500…『バーバリアンキング』には及ばない!】

 

「それはどうかな…!永続魔法『ワンダー・バルーン』を発動!」

遊矢の場に?マークの付いた箱が現れる!

 

 

「そして…このカードは手札1枚を墓地に送って、バルーンカウンターを乗せる事ができる!いくぞ〜!!」

 

『おおっと!?遊矢君がフィールドに散らばったアクションカードを次々と墓地へ送っていくぞ〜!?』

アクションカードは手札に1枚しか加えられない…だが、それは墓地に送ってしまえば関係ない…!遊矢は次々に3枚のアクションカードを墓地におくる!

 

「飛べ!ワンダーバルーン!!」

遊矢の言葉共に箱から風船が飛び出し、バーバリアンキングに襲いかかる!

 

「『ワンダーバルーン』は手札のカードを墓地に送る事でバルーンを増やし、このカードを墓地に送る事でバルーンは破裂!バルーン1つにつき1000ポイント!相手モンスターの攻撃力をエンドフェイズまでダウンさせる!どかーん!!」

 

【なに!?】

バーバリアンキングにバルーンが炸裂…バーバリアンキングは風船に包まれ、身動きが封じられる!

 

【チッ…逃げているように見せて、アクションカードの位置を把握していたのか…!】

 

「ヘヘっ…昔から捜し物は得意なんでね!」

石島はようやく遊矢の戦い方の意図に気づいた…!

 

 

 

「いくぞオッドアイズ!この観客達をもっともっと沸かせるんだ!!」

父と同じ声援・拍手を背負い…遊矢は最後の効果を使う!

 

 

「『オッドアイズドラゴン』はレベル5以上のモンスターを破壊した時、その元々の攻撃力の半分のダメージを与える!これで…ワンショット・キルが成立する!!」

オッドアイズが胸の水晶に力を貯める!!

 

 

「バトルだ!『オッドアイズドラゴン』!『バーバリアンキング』を攻撃!スパイラル・フレイム!!」

灼熱の息吹が蛮族の王に襲いかかり…爆発に包まれる!

 

 

 

 

【はっ…はっ…甘かったな…!】

 

「なに…!?」

爆炎が晴れた先…そこではバーバリアンキングが忌々しげな咆哮を上げていた…! 

 

 

【アクションマジック『奇跡』を発動、させたのさ…!】

汗を流した石島の姿がモニターに映し出される…攻撃が直撃する寸前、アクションマジックによって難を逃れていたのだ…!

 

 

【所詮、榊遊勝のデュエルなぞ、この程度!次は俺の番だ!】

石島はついに牙城から飛び降りる─!

 

【永続罠『バーバリアン・レイジ』を発動!自分が戦闘ダメージを受けた時、バーバリアンの攻撃力を2000アップさせる!!】

 

「っ…!ターン、エンドだ…!」

遊矢がターンエンドを宣言、それと共にバーバリアンキングは風船から脱出…攻撃力が5000まで跳ね上がる!

 

 

【さぁ…引導を渡してやる…!!俺のターン!!】

 

「っ─!!」

石島のターンを前に遊矢は反転、アクションカードを取りに走る!!

 

 

【逃がすかァ!バトルだ!『バーバリアンキング』で『オッドアイズドラゴン』を攻撃!!】

 

「くっ…!?うわあああ!!」

だが、石島は遊矢を追撃…オッドアイズドラゴンを粉砕し遊矢に大ダメージを与える、遊矢の残りライフは400…!

 

【さらに!『バーバリアンレイジ』の効果により、破壊されたモンスターは相手の手札に戻る…さらに!速攻魔法『バーバリアンの奇術』を発動!相手モンスターが手札に戻った時、その攻撃力の半分のライフを回復させてもらう!!】

さらに石島が回復魔法を発動…ライフが4000まで回復する!

 

 

【……『バーバリアンキング』が連続攻撃できるのはモンスターにのみ、命拾いしたな…!俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド…さぁ、お前のターンだ!ドローしろ、それとも…サレンダーするか?親父のように尻尾を巻いてなぁ…!】

 

「っ…!!嫌だ!!オレは逃げない…!サレンダーなんて、してたまるか…!!」

追い詰められた遊矢はなんとか立ち上がり、手札を確認する…だが、手札にはモンスターカードのみ…逆転のカードはない…!

 

 

「(どうすればいい…!?どうすれば…!!やっぱり、無理だったのか…?オレに、父さんの代わりなんて───)」

 

 

──泣きたい時は笑え…振り子は大きく振れば、大きく戻る…怖がって縮こまっていては──何もできない──

 

 

「……勝ちたいなら、勇気をもって……前に、出ろ!!

諦めかけた遊矢の脳裏に父の言葉が甦る…勇気をもって前に出る、勝利の力は己の中に!!

 

 

 

「揺れろ!ペンデュラム!!大きく…!もっと大きく!!ドロォォー──!!」

それは遊矢渾身のデスティニードロー…勝利を目指す軌跡は光の翼を形取り、思わぬ奇跡を呼び起こす!

 

 

キィン─!!

 

 

「な、なんだ!?」

遊矢のペンデュラムが光を放つ、それは手札の…否、遊矢のデッキと共鳴し…カードを書き換える!!

 

 

「この、カードは……ペン、デュラム…?」

手札の『星読みの魔術師』『時読みの魔術師』『オッドアイズ・ドラゴン』が光を放ち、新たなカードに生まれ変わる。

 

2体の魔術師のカードは上半分が『モンスターカード』、下半分が『魔法カード』の意匠のペンデュラムカードに。

 

『オッドアイズ・ドラゴン』は新たなエース『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』へと生まれ変わった!!

 

 

「……これなら、いける…!」

使い方も分からない謎のカード…だが、遊矢は本能で理解した…このカードならば、勝利を掴む事ができると!!

 

 

 

「オレはスケール1の『星読みの魔術師』とスケール8の『時読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 

PENDULUM!!

 

 

【な、なんだ!?】

遊矢の背後に光の柱が立ち上がる…その中に白衣の魔術師と黒衣の魔術師が浮かび上がり…それぞれに『1』と『8』の数字が浮かぶ!

 

「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能!」

 

【な、何が起きている─!?】

異常事態に動揺する石島…だが、その様子を無視して…遊矢は言葉を紡ぐ!

 

 

「揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け…光のアーク!!ペンデュラム召喚!!いでよ!我が下僕のモンスター達よ!!」

 

遊矢の頭上でペンデュラムが軌跡を描く…そして開いた扉から3つの光が飛び出した! 

 

「現れろ!レベル4『EMヴィップ・ヴァイパー』!レベル2『EMソード・フィッシュ』!レベル7『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』─!!」

 

光の玉がそれぞれにモンスターへと変化する、1つはシルクハットを被った紫色の蛇に…1つはリーゼントの鋭い魚に、そして最後の光は先程よりもひと回り大きくなった、二色の眼を持つドラゴンへ……これが新たな召喚法──『ペンデュラム召喚』誕生の瞬間だった!

 

 

 

 

Side???

 

 

ビビーッ!ビビーッ!

 

『市内臨海地区にて高レベルの召喚反応を確認!!』

 

『解析を急げ─!!』

 

『解析結果……召喚形式、ペンデュラム…!?ペンデュラム召喚です!?』

 

『ペンデュラム、召喚…!?聞いた事がないぞ!?』

 

舞網市某所…舞網市全体をモニターする施設は混乱に包まれていた…突然の高レベルの召喚反応の検知、さらには未知の召喚法…それは彼らの想定外の事態だった。

 

 

…だが、混乱はまだ終わらない…!

 

 

ビビーッ!!ビビーッ!!

 

 

『今度はなんだ!?』

 

『し、市内海浜地区でさらなる高レベルの召喚反応を確認!!』

 

『まさか、そんな…!!』

 

『どうした!?』

 

 

『解析、結果───』

 

 

『なん、だと…!?この街で…世界で、何が起きようとしているのだ…!?』

 

管理者らしき初老の男は愕然とする…世界の歯車は少しずつ、動き出そうとしていた…!

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

【モンスターを同時に3体…!?しかも上級モンスターをリリース無しで召喚だと!?そんな事、できるはずがない!!】

 

『石島様!ですが、システム上は…エラーは出ていません!?』

 

【ならば…召喚は、有効という事か…!?】

 

石島は異常事態…融合・儀式・シンクロ・エクシーズ以外の未知なる召喚法に動揺する…!

 

 

 

「いくぞ!『ウィップヴァイパー』の効果発動!相手モンスター1体の攻撃力を入れ替える!」

 

【なにっ!?】

オッドアイズに跳び乗った遊矢は効果を発動、紫色の蛇が尾の先を催眠術の振り子のように揺らし…バーバリアンキングの攻守を逆転させる!

 

「さらに!『ソードフィッシュ』の効果発動!相手モンスターの攻撃力を600ダウンさせる!」

 

【っ…!?】

バーバリアンキングの周りに無数の剣が突き刺さり、身動きを封じる…攻撃力は500まで弱体化する!

 

 

「バトルだ!『オッドアイズペンデュラムドラゴン』で『バーバリアンキング』を攻撃!!今こそ、真の力を見せよ!!」

オッドアイズの身体の宝石が光輝き、凄まじい力を放つ!

 

【そうはさせん!!罠カード『バーバリアン・ハウリング』を発動!自分のモンスターが攻撃対象になった時、その攻撃モンスターを手札に戻し!その攻撃力分のダメージを与える!】

しかし、それを許す石島ではない…罠カードの効果を受けたバーバリアンキングが咆哮する!

 

 

「まだだ!時空を見定める『時読みの魔術師』よ!その精緻なる力で我を守護せよ!『時読みの魔術師』のペンデュラム効果、発動!1ターンに1度!ペンデュラムモンスターに対する罠カードの効果を無効にする!インバース・ギアウィス!!」

 

【なに!?】

黒衣の魔術師が時計のエフェクトと共に罠カードを封じる!

 

 

【ならばっ!!アクションマジック『回避』発動だ!!】

石島は即座にアクションマジックを手に取り、発動する!

 

「天空を見定める『星読みの魔術師』よ!その深淵なる力で仇成す敵を封じよ!!『星読みの魔術師』のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、ペンデュラムモンスターの戦闘時に魔法カードの発動と効果を無効にする!ホロスコープ・ディビネィション!!」

 

【アクションマジックも無効だと!?】

星読みの魔術師の能力でアクションマジックも封じられた石島…そこへ逆転の一撃が迫る!

 

「今だ!オッドアイズよ!!その二色の眼で…捉えた全てを焼き払え!螺旋のストライク・バースト!!」

それは闇色の炎が混じった破壊の焔…バーバリアンキングは棍棒でその炎を受け止める!!

 

【くそ…!?だが、まだライフは残る…!!次のターンで!!】

 

「『オッドアイズペンデュラムドラゴン』の効果!レベル5以上のモンスターとバトルする時、戦闘ダメージを2倍にする!リアクション・フォース!!」

 

【に、2倍だと!?馬鹿な…バカなぁぁ!?】

勢いを増した螺旋の焔がバーバリアンキングを消し飛ばす…その一撃は容赦なく、石島を飲み込んだ…。

 

 

 

「これで…ジ・エンドだ」

 

 

 

ストロング石島LP0

 

 

遊矢WIN!

 

 

 

 

 

 

「「「…………────」」」

 

 

デュエルの決着がつき、リアルソリッドヴィジョンが解除される中…スタジアムは静まり返っていた。

未知の召喚法の登場、さらに現チャンピオンが少年に負けたという事実が…観客達の思考を停止させていたのだ。

 

 

 

「勝った、の?」

 

「あ、ああ…!遊矢が、石島に…!」

 

う…うおおっ!!やったぞ遊矢!!熱血だぁぁ〜!!

 

静まり返っていた会場に修造の叫びが木霊する!

 

 

ドクン…

 

 

「へっ……あ、あれ?オレは何を…!?」

その瞬間、遊矢は()()()()()……遊矢は途中から一種の高揚状態……トランス状態になり、自分が()()()()()のか覚えていなかったのだ。

 

 

「勝ったんだよ!アンタは!ストロング石島に勝った!父さんの代わりに!やったんだよアンタは──!!」

「母、さん……オレ、勝てたのか…!?」

困惑していた遊矢は母や柚子達の祝福で状況を理解する…自分は父の雪辱を晴らしたのだと…!

 

 

 

「「「「おおおおっ─!!」」」」

 

そしてスタジアムは割れんばかりの歓声と拍手に包まれた……「臆病者」と呼ばれ続けた榊遊勝の汚名はこれで雪がれたのだった…。

 

 

 

────

 

 

 

「これは大変な事になったぞ…!?」

 

『緊急速報だ!!』

 

「早く取材の用意だ─!」

 

戸惑う遊矢を余所に取材に訪れていた記者達は思わぬジャイアント・キリングに色めき立っていた…だが、その時…!

 

 

「お、おい!大変だ!別のスタジアムでも未知の召喚法を使う奴が現れたらしいぞ!?」

 

「『『「なんだって!?」』』」

 

 

世界は…確実に変わろうとしていた…!



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Ep.2 ペンデュラムの示す奇跡─目覚め─

「はぁ…ついに、この日が来ちゃったか…」

 

舞網市海浜地区・KCスタジアムの控え室…そこで榊遊希は緊張しながら出番を待っていた。

保護者である榊洋子は遊矢の応援の為に舞網スタジアムへと向かってもらった…当然、遊勝塾の中で遊希がデュエルをするのを知っている者はいない…それは遊矢も含めてだ。

 

「これで失敗して、がっかりさせたら恥ずかしいからな……せめて、このデッキケースさえ開けばなぁ…」

遊希は手にしていた「開かないデッキケース」を握り締める、遊希の記憶のカケラであるはずのそれ…だが、それは何をしても開かず…無理矢理開く事ができない謎のケースだった。

 

「さて…遊矢のデュエルも始まった頃かな……頑張れよ、遊矢…」

控え室にはテレビは無い…遊希は遊矢の健闘を、勝利を祈るしかなかった…。

 

 

 

コンコンコン!

 

 

「あ、はーい!どうぞ!」

そんな中、遊希の控え室の扉がノックされる…試合開始には少し早い、そこに現れたのは…。

 

 

『邪魔するぞ、遊希』

 

「か、海馬社長!?どうしてこちらに!?」

 

『ふん…お前の事だ、余計な緊張をしているだろうと思ってな』

 

姿を現したのはイベントの主催者…シルバーのコートを纏う男……海馬コーポレーション社長、海馬瀬人その人だった。

弱冠14歳でワンマン経営者だった実父を追放して社長に就任、同じくワンマン経営ながらも社員から慕われる程のカリスマを持つ現役高校生社長なのだ。

 

 

『遊希、俺はお前には返しきれぬ()がある…だが、それだけで手を差し伸べる程のお人好しではない……機会は用意した!存分にお前の力を振るうがいい!それが、お前の新たな未来を切り拓くロードとなるのだ!』

海馬は社員達には見せない穏やかな表情で遊希を激励する…だが、遊希の表情は暗かった。

 

「海馬社長…ですが、僕は……」

 

『…わかっている、お前の()()()の事だな?』

 

「……はい…」

遊希は備え付けられた鏡を見る、そこに映った白髪の少年…その顔は無数の()に覆われていたのだ。

顔立ち自体は整い、優しい顔をしているのだが──無数に刻まれた傷のせいで相手に恐怖感を与えてしまう…。

 

 

『5年前、榊遊勝に保護されたお前は記憶を失い…瀕死の重傷を負っていたと聞いた……だが、()()()()()()?デュエルに見た目など関係ない!デュエルにおいて…いいや、人を人足らしめるのはその精神だ!見た目だけでお前を貶す者など放っておけ!…お前にはそれだけの()()がある!!』

 

「海馬社長…ありがとうございます」

 

『フッ…礼を言うのは早すぎるぞ、全てはこのデュエル次第だ!』

海馬社長の言葉で遊希は自身を取り戻す…戦いの時は、すぐそこまで迫っていた…!

 

 

 

…………

 

 

 

 

『レディース&ジェントルマン!!さぁ、会場のテンションも最高潮!!今日のメインイベント…エキシビションデュエルの開幕だぁぁ!!』

 

「「「「わああああ──!!」」」」

 

KCスタジアムにピンクのスーツを着た大きなリーゼントを持つ司会・MCの声が響き渡る…会場は既に熱狂に包まれていた!

 

 

『さぁ、まずはこの方から紹介させて頂こう!最年少で世界一へと登り詰めた、最強の男!キング・オブ・デュエリスト!!武藤遊戯だぁぁ!!』

 

「「「うおおお!!」」」

 

『ははっ…なんだか、すごい事になっちゃったなぁ…』

MCのコールと共に入場口からスモークが吹き出す…その中から現れたのは青い学ランを纏い、特徴的な星の形の髪型をした柔和な笑顔の青年…武藤遊戯だった。

 

 

『遊戯は高校1年生にしてアクション・デュエル世界大会で優勝したデュエルの天才!日本プロデュエル界の希望のホープだ!さぁ、その彼に挑むのは…!遊勝塾所属のデュエリスト!榊遊希だぁ!!』

 

「……すごい人だなぁ…流石、海馬コーポレーション…」

同じく、入場口からスモークが吹き出す…その中から青いジャケットを着た、白髪の青年…遊希が現れる。

 

 

…だが、観客の反応は冷たいものだった。

 

 

 

 

──遊勝塾…?あの逃げた人の教え子…?──

 

 

──榊って…ああ!いま、ストロング石島と戦ってる奴の関係者か?──

 

 

──顔が傷だらけ…怖いわ…!不良なのかしら…!?──

 

 

──引っ込め!!なんでお前が……──

 

 

「うぐ……分かってはいたけど、世間の風は冷たいなぁ…」

心無い観客の言葉が遊希の心を抉る…しかし、それに負けずに遊希は遊戯へと歩み寄る。

 

 

「……久しぶりだな、遊戯…半年振りか?」

 

『そうだね、遊希君!久しぶりに会えて嬉しいよ!』

スタジアムの中央で遊戯と遊希は固い握手を交わす…2人は旧知の仲……否、友人なのだ…!

 

 

『実は遊戯と遊希は同じ童実野高校に在席する友人同士!この戦いは熱くなるぞぉぉ!?』

 

 

『ふふっ…遊希君、MCさんはあんな事言ってるけど…僕達は僕達のデュエルをしよう!』

 

「ああ、世界大会で優勝したお前の力…見せてくれよ!」

頷き合った2人はデュエルディスクを展開する!

 

『それでは!戦いの舞台…アクション・フィールド「噴水広場」を発動!!』

MCがフィールドを展開…中央に時計台と噴水がある街中の公園が現れる!

 

 

『さぁ…いくぞ!!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!これぞ!デュエルの最強進化系!アクショォォン!!』

 

 

「『デュエル!!』」

スタジアムにアクションカードが散らばる…2人のデュエルが始まった!

 

 

 

 

遊戯LP4000

遊希LP4000

 

 

特別ルール アクション・デュエル

 

・アクション・フィールド常時展開

・アクション・カードは手札に1枚しか確保できない。

・フィールド魔法使用可能

 

 

 

 

『先攻は貰うよ!僕のターン!』

『魔法カード「融合」を発動!手札の「幻獣王ガゼル」と「バフォメット」を融合!「有翼幻獣キマイラ」を融合召喚!!』

二つの獰猛な獣の頭と白い翼を持つ幻獣が現れる! ATK2100

 

 

『おーっと!チャンピオン遊戯!いきなりの融合召喚だぁ!!』

 

『僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド!』

遊戯LP4000

キマイラ 伏せ1 手札1

 

 

 

『さぁ…君のターンだよ!』

 

「ああ、いくぜ!!」

 

 

 

「僕のターン!ドロー!!」

「『龍脈の魔術師』を召喚!」

長い髪を三編みにして杖剣を構えた少年魔術師が現れる! ATK1800

 

「さらに装備魔法『ワンショット・ワンド』を装備!攻撃力が800ポイントアップ!」

魔術師が三日月の意匠の杖を手にする! ATK1800→2600

 

 

「バトルだ!『龍脈の魔術師』で『キマイラ』を攻撃!」

 

『っ…!やるね!』

月の魔力が込められた魔力弾がキマイラを打ち砕く!

 

遊戯LP4000→3500

 

 

『でも、これじゃあ終わらないよ!「キマイラ」の効果発動!破壊された時、墓地の「バフォメット」を特殊召喚!』

白い翼を持つ魔獣が現れる! DEF1800

 

「なら、僕だって!『ワンショットワンド』の効果発動!装備モンスターがバトルした後、このカードを破壊して1枚ドロー!……よし!さらに装備魔法『バウンド・ワンド』を装備!装備モンスターの攻撃力はレベル×100ポイントアップする!」

魔術師が三日月の杖を赤い宝石と髑髏の付いた杖に持ち替える! ATK2600→1800→2200

 

 

「僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊希LP4000

龍脈の魔術師(バウンドワンド) 伏せ1 手札4

 

 

 

『おーっと!遊希がチャンピオンに対して先制!これは分からなくなってきたぞぉ!?』

 

『やるね!なら、僕もドンドンいくよ!!』

 

 

 

『僕のターン!ドロー!』

『僕は「バフォメット」をリリース…アドバンス召喚!現れろ!黒き魔術師の弟子!「ブラック・マジシャン・ガール」!!』

 

「来たか…!」

遊戯のフィールドに可愛らしい少女魔術師が現れる! ATK2000

 

「だけど、『マジシャンガール』では『龍脈の魔術師』の攻撃力には及ばない!」

 

「それはどうかな…!リバースカードオープン!魔法カード『賢者の宝石』!このカードは手札・デッキから新たなモンスターを呼び出せる!師弟の絆によりて、デッキから現われよ!最上級魔術師!『ブラック・マジシャン』!!」

マジシャンガールが宝石を手に祈りを捧げる…その祈りが魔法陣に吸い込まれ、黒き鎧を纏う最強の魔術師を呼び出した! ATK2500

 

 

『でっ…出たぁぁ!チャンピオン遊戯のエースモンスター!「ブラック・マジシャン」だぁぁ!』

MCの実況で観客達が沸き立つ!

 

『いくよ!「ブラックマジシャン」で「龍脈の魔術師」を攻撃!黒・魔・導(ブラック・マジック)!!』

 

「まずっ…!?うわあああ!?」

強力な魔力弾が龍脈の魔術師に炸裂、遊希は吹き飛ばされる!

 

遊希LP4000→3700

 

 

「装備魔法『バウンドワンド』の効果発動!装備モンスターが相手によって破壊された時!装備モンスターを墓地から特殊召喚する!蘇れ!『龍脈の魔術師』!!」

バウンドワンドの宝石が輝き、少年魔術師が復活する! ATK1800

 

『なら!「マジシャンガール」で「龍脈の魔術師」を攻撃!黒・魔・導・爆・裂・波(ブラック・バーニング)!!』

 

「まだだ!アクションマジック『回避』!!」

 

「流石…!」

続いて放たれる爆裂魔力弾…だが、それはベンチの上に落ちていたアクションカードによって防がれる!

 

『僕はこれでターンエンド!』

 

遊戯LP3500

ブラックマジシャン マジシャンガール 手札1→2

 

 

 

『遊戯と遊希は一進一退の攻防を繰り広げる!これは熱いデュエルだぁ!!』

 

「危なかった…!やっぱり強いな!遊戯!」

 

『遊希君こそ!やっぱり君とのデュエルは楽しいよ!!』

攻防を繰り広げる2人のデュエリスト…その表情は共に笑顔だった…!

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「装備魔法『ワンダー・ワンド』を『龍脈の魔術師』に装備!攻撃力は500ポイントアップ!」

龍脈の魔術師が緑色の宝石の付いた杖を手にする! ATK1800→2300

 

「さらに!『EMペンデュラム・マジシャン』を召喚!」

振り子を手にした赤いスーツの魔術師が現れる! ATK1500

 

「そして!自分の『EM』モンスターをリリースする事で…現れろ!『EMスライハンド・マジシャン』!!」

 

『来たね!遊希君のエースモンスター!』

赤い衣装を纏った道化魔術師が現れる! ATK2500

 

 

「バトルだ!『スライハンド・マジシャン』で『ブラックマジシャン』を攻撃!」

 

『相打ち狙いかい!?』

 

「いいや!アクションマジック『ハイ・ダイブ』を発動!『スライハンドマジシャン』の攻撃力はエンドフェイズまで1000アップする─!」

攻撃の刹那、遊希は枝に引っかかっていたアクションマジックを発動する! ATK2500→3500

 

『ふふっ…君ならそうくると思ったよ!アクションマジック「バイアタック」発動!「ブラックマジシャン」の攻撃力が2倍になる!』

 

「しまった…!さっきのエンドフェイズに回収してたのか!?っああああ…!!」

遊戯が隠し持っていたアクションマジックを発動…スライハンドマジシャンは魔力弾に吹き飛ばされる!

 

ブラックマジシャンATK2500→5000

 

遊希LP3700→2200

 

 

「イテテ…でも、タダでは終わらない!『龍脈の魔術師』で『マジシャンガール』を攻撃!」

 

『ごめんね…!「マジシャンガール」…!!』

龍脈の魔術師の魔力弾がマジシャンガールを打ち砕く!

 

遊戯LP3500→3200

 

「僕は、これでターンエンド…!」

 

遊希LP2200

龍脈の魔術師(ワンダーワンド) 伏せ1 手札2

 

 

 

『おぉ〜っと!チャンピオンがついに遊希を追い詰める!!これが王手となるのか〜!?』

 

 

 

『僕のターン!ドロー!』

『来た…!魔法カード「黒・魔・導・連・弾(ブラック・ツイン・バースト)」を発動!その効果によって「ブラックマジシャン」は墓地の「ブラックマジシャンガール」の力を得て、攻撃力を2000アップさせる!!』

 

「なんだって!?」

ブラックマジシャンにマジシャンガールの幻影が寄り添い、魔力を与える!! ATK2500→4500

 

『バトル!「ブラックマジシャン」で「龍脈の魔術師」を攻撃!黒・魔・導・連・弾!!』

2人の魔力が合わさった魔力弾の雨が降りそそぐ─!!

 

「まだだ…!罠カード発動!『攻撃の無敵化』!このカードは攻撃を受けた時、2つの効果から1つを選んで発動できる!1つはフィールドのモンスターを戦闘・効果破壊から守る効果、もう1つはプレイヤーへのダメージを0にする効果!!」

 

『遊希君…!君はどちらを選ぶ…!』

 

「僕は……『龍脈の魔術師』を破壊から守る!!ぐああああっ…!!」

降りそそぐ魔力弾の雨…龍脈の魔術師は破壊を免れる、だが…遊希は大ダメージを受け、地面に叩きつけられた…!

 

 

遊希LP2200→100

 

 

『僕は…これでターンエンド、「ブラックマジシャン」の攻撃力は元に戻るよ…!』

 

遊戯LP3200

ブラックマジシャン 手札1

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…ああ、ライフ100か……本当に、ぎりぎりだ…!」

 

『……「ワンダーワンド」には装備モンスターをリリースして、カードを2枚ドローできる…それに賭けるつもりなんだね?』

 

「ヘヘっ…分かってるじゃん、遊戯…」

リアルソリッドヴィジョンにより満身創痍の遊希…だが、その顔は笑っていた…。

 

 

「遊戯…僕のデッキには、もう『ブラックマジシャン』に勝てるカードはない……それでも、僕はお前に応えたい!僕を友だと言ってくれた…お前の思いに応えたい!!」

 

『遊希君…』

遊希は既に勝ち負けに拘らなくなっていた…親友との最高の舞台、人々の歓声を受けながらの熱いデュエル…それだけで、遊希は満足だったのだ。

 

「遊戯!いくぜ、これが僕の…ラストターンだ!!」

 

 

 

「僕のターン!ドロー!!」

「『ワンダーワンド』の効果発動!装備モンスターと共にリリースする事で2枚ドロー!!」

龍脈の魔術師が粒子に変わる…そしてその光は遊希の手へと収まった…。

 

「そして…魔法カード『リロード』を発動!僕の手札4枚を手札に戻し、同じ枚数ドローする!」

遊希は手札をデッキへと戻し…デッキトップに手を掛ける…。

 

 

「(これが、僕のラストドロー…最後は…遊勝さんスタイルでやってみるか…!)」

ラストドローを前に過ぎったのは…華やかな恩人の顔、ドローを前に遊希は声を張り上げる!

 

 

「真のデュエリストの戦いは常に必然!勝利のキーカードは我が腕に!」

 

キィン─!!

 

『えっ…?』

それは戯れの口上…感情が赴くままに口にした言葉……しかし、遊希は気付いていない…自身の右手が()()()()()()()

 

 

「シャイニング・ドロー!!って…なんだ──!?」

 

キィン─!!

 

『な、なんだこの光は─!?』

スタジアムを眩い光が埋め尽くす、それは朝日のように希望に溢れた光だった…!

 

 

 

『ゆ、遊希君!?大丈夫かい!?』

 

「び、びっくりしたぁ…!ソリッドヴィジョンの不具合かなぁ…?」

光が収まり、遊戯は思わず遊希へと声を掛ける…遊希は無事だったが───変化は確実に起きていた…!

 

 

 

「な、なんだ…?このカード…?ペンデュラム……?」

ふと遊希はドローした4枚に目を落とす…そこには見慣れぬ3枚のカード、そして絵柄が変化してしまった見慣れたEMのカードがあった…!

 

「………なんでだろう、使い方が…()()…!!」

初めて目にするはずの不思議なカード…だが、遊希は本能でその使い方を理解してしまった!

 

 

「僕は…スケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 

PENDULUM!!

 

 

『遊希君…!?そのカードは…!?』

 

『な、なんだぁ!?フィールドで何が起きているんだ〜!?』

デュエルディスクに表示される『PENDULUM』の文字、そして遊希の背後に赤と緑のドラゴン達が浮かぶ光の柱が現れる!

 

 

「これで僕はレベル2から7のモンスターを同時に召喚できる…!」

 

『遊希君…!?君は、いったい…!』

不思議な平常心のまま…遊希は言葉を紡ぐ!

 

「揺れろ!希望のペンデュラム!全能の軌跡よ…歴史を刻め!ペンデュラム召喚!!レベル3!『EMファイア・マフライオ』!レベル7!二色の眼を持つ幻影の竜…『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

遊希の頭上で赤いペンデュラムの軌跡が揺れ動く…その中に開いた扉から鬣が火の輪になったライオン、そして赤と青色の眼を持ち、堅い外骨格を纏うドラゴンが現れる! ATK800 2500

 

 

『い、いったい何が起きているのだろうか…!突然、2体のモンスターが現れたぞぉぉ!?』

突然の事態の中でMCが困惑の叫びを上げる…!

 

 

「『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』……力を貸してくれるのか?」

 

《グルル…》

無意識に問いかける遊希…幻影の竜はその頭を遊希に擦り付ける事で意思を示した…!

 

「いくぞ…!遊戯!『オッドアイズファントムドラゴン』で『ブラックマジシャン』を攻撃!」

 

『っ…!だけど、2体の攻撃力は互角だ!』

オッドアイズに騎乗した遊希はブラックマジシャンに突撃する!

 

 

「まだだ!アクションマジック『突撃』!モンスターとバトルする時、僕のモンスターの攻撃力は600ポイントアップする!」

 

『なにっ…!』

遊希は噴水の中に隠れていたアクションマジックを回収、攻撃を放つ! ATK2500→3100

 

 

「夢幻のスパイラル・フレイム!!」

 

『くっ…!手札の「クリボー」の効果発動!このカードを墓地に送る事で、このバトルでのダメージを0にする!!』

 

《クリクリクリー─!!》

遊戯の前に小さな毛玉が現れ、爆風を防ぎきる!!

 

『この瞬間!「ファイアマフライオ」の効果発動!自分のペンデュラムモンスターが相手モンスターを破壊した時!そのモンスターは攻撃力を200アップし、もう一度攻撃できる!!』

 

「なんだって!?」

マフライオの生み出した火の輪をオッドアイズがくぐり抜ける! ATK2500→2700

 

 

 

「遊戯にダイレクトアタック!夢幻のスパイラル・フレイム!!」

 

『くうううっっ…!』

希望の光を宿す螺旋の炎が遊戯に大ダメージを与える!

 

遊戯LP3200→500

 

 

『すごい力だ…!でも、ライフは残っているよ!!』

 

「まだだ!『オッドアイズファントムドラゴン』の効果発動!ペンデュラム召喚に成功したこのモンスターが相手にダメージを与えた時、自分のペンデュラムゾーンのオッドアイズカード1枚につき1200ダメージを与える!幻視の力─アトミック・フレイム!!」

 

「しまっ…!うわああああ!!」

光の柱の中から2体のドラゴンがブレスを放つ…それは、遊戯のライフを削りきった…!

 

 

 

遊戯LP0

 

遊希WIN!

 

 

 

 

 

 

『デ……デュエルエーンド!!エキシビションデュエルを、制したのは!榊遊希!!チャンピオン遊戯を打ち倒したぁぁ!?』

 

「「『『わ、わああああああ!!?』』」」

 

一瞬の静寂の後、スタジアムが揺れる…思わぬ遊希の勝利に観客が大歓声を上げる!!

 

 

 

「はぁ…はぁ……勝っちゃった…僕が、遊戯に…?」

 

『びっくりしたのは僕の方だよ…!?遊希君、今の召喚法はなんなんだい!?世界でも見た事がないよ!?』

勝利に呆然となる遊希、知らない召喚法に驚く遊戯の2人は思わず顔を見合わせる…その時だった。

 

 

 

ズキン!!

 

 

「がっ…!?ああ、ぐっ─!?」

 

『遊希君!?』

突然、遊希は殴られたような頭痛に襲われる…遊希はその痛みに悶絶し、地面に崩れ落ちる…!

 

 

い、痛い…!あた、割れ…!!があああっ───!!?

 

『遊希君!遊希君!!遊希君─!!』

強まる痛みに意識が遠のく遊希…その刹那────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かの哀しい…泣き叫ぶ声が聞こえた気がした…。

 




『社長、ペンデュラム召喚を使用した者達の身元が判明しました』

「……聞こう」

舞網市中心部…レオ・コーポレーションの最上階にて…赤い眼鏡を掛け、赤く長いマフラーを巻いた青年が黒服の男から説明を受けていた…。



『1人目は…榊遊矢、14歳…舞網市立第二中学校の2年生です…デュエルクラスは「ジュニアユース」、デュエル戦績は…38戦20勝18敗です』

「勝率…5割といったところか…デュエル塾は?」

『市内の…()()()というデュエル塾に通っています』

「遊勝塾……榊……遊矢?まさか…」

『はい、お気付きの通り…彼はあの榊遊勝の1人息子です』
社長と呼ばれた青年は遊矢の名字から、彼が元チャンピオンの息子である事に気付く。


「3年前に行方不明になったチャンピオンの息子が…未知なる召喚法を…?………気になるな…」
遊矢の資料映像を見た青年は眼鏡を押し上げる…。


「もう1人の方は?」

『はい…もう1人は…榊遊希、()()()()16歳…市立童実野高校の1年生、遊勝塾所属──デュエルクラスは同じく「ジュニアユース」…戦績は47戦35勝12敗です』

「………榊?遊勝の息子は遊矢だけ…しかも、推定年齢とはどういう事だ?」
青年は黒服の説明に問いかける…あまりにも分からない点が多かったからだ。

『はい…榊遊希は5年前、遊勝に保護された身元不明の少年です…記憶喪失で素性も不明…ですが、遊勝の行方不明後は彼の代わりに他の塾との交流戦などに参加し、遊勝塾を支えているようです…』

「……すぐに2人の身辺を洗い直せ…ペンデュラム召喚に関する情報があれば、すぐに報告するように」

『はっ…!』
青年は黒服に調査の指示を降す…だが、黒服は新たな情報を付け加えた。


『社長、榊遊希は……海馬コーポレーションと繋がりがあるようです』

「海馬と?…………ならば、私が出るしかないか…」
青年は映像の遊矢と遊希を静かに見つめた…。


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幕間〜榊遊希という男〜

干渉開始………失敗


干渉開始………失敗


干渉開始……失敗


開始…失敗


開始、失敗…開始、失敗…開始、失敗…開始、失敗…開始、失敗…開始、失敗…開始、失敗、開始、失敗、開始失敗、開始失敗開始失敗開始失敗開始失敗開始失敗開始失敗開始失敗開始失敗開始失敗開始失敗開始────


──────

────

──




かいし……!!……限定的干渉に成功…!
 

《っ…!!繋がったのか!?状況は…!!》


世界時間の経過状況…不明、精神状態からデュエル中と推測……身体状態……著しい衰弱状態・全能力封印状態……遠隔支援…『決闘創造』能力を一部解放……っ…干渉可能時間、終了……───


《ぬぅ…!!外はどうなっている!!我らはいつになったら出られるのだ…!》

《………現時点では、なんとも……どうやら、記憶喪失状態のようです……》

《主殿……》

《……待つしかありません…次のチャンスを…》






それは限りなく近く、遥かに遠い何処か……彼らは待ち続ける──






Side???

 

「うわ〜…!すっごく積もったね!父さん!」

 

『そうだな〜!この街でこんなに雪が降るなんて珍しいぞ!』

 

それは5年前の事……温暖な舞網市に十数年振りの大雪が降った日、幼い遊矢とたまたま休みが取れた遊勝は防寒着に身を包み、遊勝塾へと向かっていた。

 

 

『あっ!遊勝さん!おはようございます!いや〜!寒いっすね〜!』

 

『ああ、おはよう柊!雪かきを手伝いにきたぞ!』

 

「おはよう!柚子!」

 

「おはよう!遊矢!」

遊勝塾に着くと既に修造と娘の柚子が雪かきをしていた、既に半分程終わったようだ。

 

 

『遊勝さんは見ててくださいよ!俺の熱血雪かきですぐに終わらせますから!』

 

『いやいや…それで体を壊したら元も子もないだろう?それに、この塾は私達2人の「城」じゃないか!』

 

『ははっ…そうですね!』

遊勝と修造は建物を見上げる…そこは人々に『エンタメデュエル』を広める為の大事な場所だった。

 

 

「父さん!柚子と遊んできてもいい?」

 

「おっきな雪ダルマを作るの!!」

 

『ああ!川辺の方なら綺麗な雪だろうから…気を付けて遊びなさい』

 

『滑らないように気をつけるんだぞ〜!』

 

「「はーい!!」」

雪かきをする父親達に声を掛け、遊矢達は近くの川辺へと向かった…。

 

 

 

………

 

 

 

「と、父さん!大変だ〜!!」

 

『遊矢!?どうした!?』

雪かきが終わる頃、血相を変えた遊矢が遊勝達のもとへ走ってきた…!

 

「ひ、人が倒れてるんだ!!雪の中で!!」

 

『『なんだって!?』』

遊矢が叫びを聞いた2人は急いで川辺へと向かった…。

 

 

 

「お、お父さん…!!」

 

『柚子!大丈夫か!?』

遊矢の案内で川辺へとやって来た修造達…最初に見えたのは尻もちをついて涙を浮かべた柚子だった。

 

「ゆ、雪だるまを、作ってたら、赤い雪があって…雪だるまのお帽子にしようとしたら…!」

 

『そうか…怖かったな…!よしよし…』

修造は必死に説明する柚子を優しく抱きしめた…。

 

 

『っ…これは、ひどい…!』

遊勝は()()へと駆け寄る…そこには、周囲の雪を紅く染めるほどの血を流した少年が倒れ込んでいたのだ…。

 

『柊!遊矢と柚子を遊勝塾に帰して毛布を!それから救急車!!』

 

「わ、わかりました!!」

遊勝の指示で修造は遊矢達と共に塾へと戻っていく…遊勝は手にしたスコップで少年の周りの雪を必死に掘り起こす…。

 

 

『いったい、誰がこんな事を…!』

遊勝は掘り起こした少年に自分の防寒着を纏わせる…血の気が引いた白い肌、全身を覆う無数の生々しい傷…そして見慣れない、壊れたデュエルディスク……遊勝にはその少年に何があったのかはわからない…だが、彼は必死にその命の灯火を守った…。

 

 

 

…………

 

 

 

 

「…………ここ、は……?」

 

『良かった…目を覚ましたようだね』

数日後、病院で死の淵を彷徨っていた少年が目を覚ます…たまたま見舞いに来ていた遊勝は少年へと声をかける。

 

『ここは舞網市の病院だ…きみは雪の中で倒れていたんだ、名前は分かるかい?』

 

「ぼくの、なまえ…?………わからない……ぼくは、だれ……?」

 

『……まさか、記憶が…!?』

遊勝は少年の様子から彼が記憶を失っているらしい事に気づいた…!

 

 

『(きっと…これも何かの縁なのだろうな…)少年、身体が良くなったら…おじさんの家に来るといい…きみの力になろう…!』

 

「………?」

ぼんやりとした様子の少年に遊勝は優しく告げる…陽の光を浴びて輝く、赤いペンデュラムを見ながら…。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

「ううっ…ここは…?」

 

『気づいたか、遊希…まったく、心配掛けおって…!』

 

「海馬社長…?」

遊希は見知らぬ部屋で目を覚ました…少しぼんやりとして、どうやら医務室か病室らしいと気が付いた。

 

 

『何があったか覚えているか?』

 

「……たしか、遊戯とデュエルして……勝って……頭が、痛くなって……」

 

『うむ、概ねは合っているな…だが、1つ抜けている……お前は我々にとって未知なる召喚法───ペンデュラム召喚を使ったのだ』

 

「ペンデュラム……召喚……」

海馬の言葉を聞いた遊希は断片的に記憶を思い出す…手の中に現れた見知らぬカード、熱くなった体…そして遊矢のエースと同じ『オッドアイズ』の名を持つドラゴンの事を…。

 

 

「『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』……」

遊希は起き上がり、普段使いのデッキケースから新たなエースを取り出す…。

 

『そしてもう1つ、お前に伝える事がある……お前の家族、榊遊矢が…お前と同じペンデュラム召喚を使い、ストロング石島を打ち倒した…!』

 

「ゆ、遊矢が…!?」

海馬の思わぬ言葉に遊希は驚きを露わにする…!

 

 

『タイミング的には遊矢が先にペンデュラム召喚を披露したそうだが………外は大騒ぎだぞ?遊戯も石島も…もちろん遊矢も、取材が殺到している…遊勝塾への入塾希望も増えるだろう』

 

「な、なんだか大変な事になってる…!?」

 

『たわけ、大変どころの話ではない!!人に無いモノを手にした者は───()()()()()()

 

「っ…!!」

海馬の鋭い睨みに遊希は息を呑む…。

 

 

『……外に磯野と車を待たせてある、体調が回復したらそれで帰れ、俺は仕事が残っている……先に行くぞ』

 

「海馬社長……すいません」

 

『謝るな……お前は何も悪くない』

そう言うと海馬は部屋を後にした…。

 

 

 

 

Side海馬

 

 

 

『………榊遊希…か……本当に、不思議な奴だ…』

 

病室を後にした海馬は遊希の名を呟く…そして、彼との出会いを思い返した…。

 

 

 

………

 

 

 

トゥルルル!トゥルルル!

 

 

「はい、海馬コーポレーション社長室です……なんですと!?」

 

『どうした?磯野』

 

それは1年前の事…前社長追放後、僅か2年で海馬コーポレーションを世界1位の企業にした海馬瀬人…その仕事中に一本の電話が鳴り響いた。

 

 

 

「し、社長!紗良様が暴漢に襲われたと連絡が!!」

 

『な、なんだと!?』

腹心の磯野の思わぬ知らせに海馬は書類の山を崩しながら立ち上がる、紗良とは海馬の許嫁の名前である…。

 

「幸い、怪我はしていないとの事ですが……紗良様を庇ってくださった方が病院に運ばれたと…!」

 

『っ…!速やかに犯人の素性を調べ上げろ!おおかた愚父の手の者の仕業だろう!…俺は病院へ向かう!』

 

「はっ、すぐに!!」

磯野に指示を出した海馬は社長室を飛び出した…。

 

 

 

 

 

 

『紗良!無事か!?』

 

『瀬人様…!』

海馬がKC系列の病院に駆け付ける…その待合室に白く長い髪と青い目を持つ少女、紗良の姿があった…。

 

 

『通りがかった方が襲われた私を庇ってくれたんです…!』

 

『そうか…その者は…!』

 

『幸い、傷は浅かったみたいで…今、包帯を…』

 

『そうか…』

海馬は紗良の無事を確認して胸を撫で下ろす…。

 

 

「イテテ…ありがとうございました…」

 

『瀬人様!あの方です!』

 

『ああ、礼を言わねば──』

処置室から右腕を吊った、自身と同じくらいの少年が現れる……ただし、その顔は無数の傷に覆われていた…。

 

 

『………何処が軽傷なのだ!?』

 

「あ、この傷は元々なので…気にしないでください…」

 

 

 

………

 

 

 

『ククッ…本当に変な奴だとは思ったが…まさか、ここまでとは思わなかった』

第一印象は驚愕で始まった…そして話すうちに記憶喪失である事、さらに失踪した榊遊勝の関係者である事を知り…その窮状を知った。

そしてKCの伝手を使い、遠回りながらも少しずつ遊勝塾を支援していたのだ。

 

 

『だが…本当に不思議なのは……奴への()()()か……俺の知人には、あんな愉快な男はいなかったはずだが……まぁいい、いずれ思い出すだろう』

遊希への不思議な感覚を頭の隅に置き、瀬人は夕焼け空を見つめる。

 

 

『さて…当面の不安要素は───赤馬か、奴め…いったい何を考えているのやら……』

海馬は不穏な動きをするレオ・コーポレーションを気に掛けていた…。

 

 

『安心しろ、遊希……お前には俺が付いている』

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

「た、ただいま〜……」

「遊希!アンタ体は!?大丈夫なのかい!?」

 

「あっ…洋子さん…はい、体は大丈夫です!」

KCの車に送られ、家へと帰ってきた遊希…最初に出迎えてくれたのは洋子だった。

 

「海馬コーポレーションからアンタが倒れたって聞いて心配してたんだよ…!遊矢もストロング石島に勝ったもんだから取材が凄くて…それに、アンタも…遊戯に勝ったって…!」

 

「はい…それになんでだか、僕もペンデュラム召喚が使えちゃって…何がなんだか…」

遊希の身体を心配する洋子…遊希は遊戯への勝利を報告する…そして、ペンデュラム召喚が使えた事も…。

 

 

「遊矢は…?」

 

「自分の部屋だよ…ずっと記者に囲まれてたから、もう寝ちゃったかもね」

 

 

 

………

 

 

「遊矢…入るぞ?」

 

「か〜……か〜……」

 

「寝ちゃってたか……」

遊希は声を掛けながら遊矢の部屋に入る…よほど疲れていたのか、遊矢は普段着のままでベッドに突っ伏して眠っていた。

 

 

「……まったく、風邪ひいちゃうぞ?……ん…?これは…」

遊矢に優しく掛け布団を掛ける遊希…そして彼は枕元に置いてあったカードに目が止まった。

 

 

「『星読みの魔術師』…『時読みの魔術師』……『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』……これが遊矢のペンデュラム……」

それは遊矢の新たな力、ペンデュラムカード…それを遊希は遊矢のデッキケースに静かに戻す…。

 

 

「『人に無いモノを手にした者は狙われる』……遊矢、お前は必ず守る……遊勝さんの分まで……!」

海馬の言葉を思い出した遊希は決意を固めた…。



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Ep.3 謎の刺客〜ペンデュラムの軌跡〜

「………つ、疲れた〜………」

 

『おいおい…大丈夫かよ?遊希…まだ授業は始まってすらないぜ?』

 

「この、1週間は……マジで、やばかった……」

ペンデュラム召喚が誕生して1週間が経った…そして遊希は童実野高校の机でへたばっていた…。

 

 

「取材の嵐に…入塾希望者への対応…新型リアルソリッドヴィジョンシステムの扱い方の勉強に遊矢とペンデュラム召喚の特訓、デッキ構築に学校の宿題・課題、さらに今日からの居残り授業………忙し過ぎるって……」

 

『ははは……マジですごいな……』

遊矢と遊希が目覚めた新たな召喚法・ペンデュラム召喚…その影響は凄まじく、遊勝塾への入塾希望・見学者が殺到……遊希は1週間学校を休み、修造と共に対応に追われていたのである。

 

 

『でもよ!これで遊勝塾への入塾者も増え───』

 

「……1()()

 

『えっ…?』

 

「新しい入塾者…ジュニアコースの1人だけ……」

 

『えぇ〜…あれだけ大騒ぎしたのに〜?』

 

「うん……」

たくさんの入塾希望者が殺到した遊勝塾……しかし、本当に入塾したのは僅か1人──それ以外の人々はペンデュラム召喚自体が目当てであり……ペンデュラムカードを持っているのが遊矢と遊希だけと知ると去ってしまったのである。

 

 

「まぁ、入ってくれた子が…遊矢のファン1号になってくれたから良かったけど……」

 

『ははっ……まぁ、遊勝塾じゃそんだけの大人数は教えきれないだろうしさ!丁度良かったんじゃねえか?』

 

「うん…正直それは助かった……亀の決闘塾に応援頼もうか迷ったんだよ…」

 

『そこまでかよ…でも、双六塾長もトシだしなぁ…って、授業始まるな!また後でな!遊希!』

 

「うん…お互いに頑張ろう、克也」

友人との話を終えた遊希は頬を叩く…長い1日が始まった…。

 

 

 

 

…………

 

 

 

「つ、疲れたぁ……今日は、塾は休ませてもらおう…」

 

夕方…居残り授業を終えた遊希は修造へとメッセージを送り、凝った肩を解しながら家路に着いていた……。

 

 

 

『失礼、君が…榊遊希で間違いないかな?』

 

「っ…?ええ……貴方は?」

しばらく歩いていると遊希は声を掛けられる…それは目深にフードを被った、自分と同じくらいの歳の青年だった。

 

 

『私は…レイジ、不躾な頼みなのだが…私とデュエルしてもらいたい』

 

「おっと…!?本当にいきなりですね!もしかして…ペンデュラム召喚に興味がある方ですか?」

 

『ええ、そうなんです…それに、あの武藤遊戯に勝った貴方に興味がありまして…』

レイジと名乗った青年は遊希に対してデュエルを申し込む…!

 

「……では、遊勝塾にどうぞ…人目についてしまって、周りの人達の迷惑になるので…」

遊希はレイジを遊勝塾に案内しようとする…ペンデュラム召喚はどうしても人目につく召喚法であり、その性質から慣れるまでは室内でデュエルしようという事になっていたのだ。

 

 

『その必要はありません…時間は取らせませんから…!』

 

《アクションフィールド『プロト・クロスオーバー』発動!》

 

「っ…!!」

レイジがデュエルディスクを展開し、フィールド魔法を発動…周囲の景色が夕焼けの街から無骨なコンクリートの部屋に変化する。

 

 

『これは…アクションフィールド…!?外では大型の投影機が必要なのに!?』

 

『新たに研究中の新型投影機付きのデュエルディスクは上手く作動したようだ……アクションカードの実装は間に合わなかったか…』

 

「……逃げ場はないって訳か…!」

リアルソリッドヴィジョンによって逃げ場を封じられた遊希はデュエルディスクを展開する!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」    

 

 

遊希LP4000

レイジLP4000

 

 

 

アクションデュエル アクションフィールド発動中

 

Error……アクションカード使用不可

 

 

 

 

「僕のターン!」

「よし…!僕はスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!これで僕はレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!」

 

『ほう…』

 

PENDULUM

 

遊希の背後の光の柱の中に2体のドラゴン達が現れる!

 

 

「お望み通り、ご覧いただきましょう!揺れろ!希望のペンデュラム!全能の軌跡よ、歴史を刻め!ペンデュラム召喚!!レベル4『EMユニ』!レベル3『EMコン』!そしてレベル7『法眼の魔術師』!」

遊希の頭上で赤のペンデュラムが軌跡を描く…そして白を基調としたドレスを着て馬の尾を生やした少女、青を基調とした服を着て額からユニコーンの角を生やした少女、そして巨大な摩尼車型の棍棒を持った魔術師が現れる! ATK800 600 2000

 

 

「そして『コン』の効果発動!フィールドの攻撃力1000以下の『EM』である『ユニ』と共に守備表示にする事で、デッキから『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』を手札に加える!」

 

ユニ ATK800→DEF1500

 

コンATK600→DEF1000

 

 

「僕は…これでターンエンド!」

遊希LP4000

ユニ コン 法眼 (Pスケール ミラージュ ペルソナ) 手札1

 

 

 

『ふむ、的確な布陣だな…流石は勝率7割の実力……では、見極めさせてもらおう…!』

 

 

 

『私のターン、ドロー!』

『「マッド・デーモン」を召喚!』

赤い髪の骨の装飾が特徴的な悪魔が現れる! ATK1800

 

『バトルだ!「マッド・デーモン」で「EMコン」を攻撃!そして「マッドデーモン」は守備モンスターを攻撃した時、攻撃力が上回った分のダメージを与える!』

 

「くっ…!」

マッドデーモンが腹部の骨を噛み砕き、コンを粉砕…さらに一部が遊希に襲いかかる!

 

遊希LP4000→3200

 

『私は…カードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

レイジLP4000

マッドデーモン 伏せ2 手札3

 

 

「っ…いきなりダメージ受けちゃった…だけど、まだ立て直せる!」

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「良いぞ!装備魔法『ワンダー・ワンド』を『法眼の魔術師』に装備!攻撃力が500アップ!」

魔術師が緑の宝石が付いた杖を装備する! ATK2000→2500

 

「そして『ワンダーワンド』の効果発動!装備モンスターと一緒にリリースする事で2ドロー!」

魔術師がその身と共にカードを導く!

 

 

「そして僕は再びスケール1の『ペルソナドラゴン』と、スケール8の『ミラージュドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!再び揺れろ!希望のペンデュラム!希望の道を示せ!ペンデュラム召喚!()()()()()()()()から再び現れろ!『法眼の魔術師』!そして、手札から現れろ!レベル7!二色の眼を持つ幻影の竜!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

 

『むっ─!?』

赤のペンデュラムが再び軌跡を描く…その中から二色の眼の竜…そしてリリースされたはずの棍棒を持つ魔術師が現れた! ATK2000 2500

 

 

『リリースされたはずのモンスターを…エクストラデッキから召喚だと?』

 

「そう!ペンデュラムモンスターは破壊されると…何故かエクストラデッキに表側の状態で加えられ、再びペンデュラム召喚でフィールドに舞い戻るのです!」

それは遊矢との特訓の際に気付いた事…破壊されたペンデュラムモンスターは墓地には送られず、エクストラデッキに加えられる…という特性があったのだ。

 

『なるほど…面白い…!』

 

「僕もペンデュラムモンスターに関して、全てが解った訳じゃない…それでも、僕のする事は変わらない!バトルだ!『法眼の魔術師』で『マッドデーモン』を攻撃!」

 

『「マッドデーモン」は攻撃された時、守備表示になる!』

魔術師が摩尼車を回転させた状態で棍棒を振るい、悪魔を打ち倒す!

 

「さらに『オッドアイズファントムドラゴン』でレイジにダイレクトアタック!夢幻のスパイラル・フレイム!!」

 

『その攻撃を受ける訳にはいかないな…罠カード「魔法の筒」発動!その攻撃を無効にし、さらに!攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!』

 

「なにっ…!?うああああっ!!」

レイジの前に現れた不思議な筒が攻撃を吸収、遊希へと跳ね返した!

 

遊希LP3200→700

 

「っ…この人、強いなぁ…!僕は、カードを1枚伏せてターンエンド…!」

 

遊希LP700

ユニ 法眼 ファントム (Pスケール ミラージュ ペルソナ) 伏せ1 手札1

 

 

 

『(ふむ…ペンデュラムモンスターの特性を利用し、手札を補充…さらにはカードを引き寄せる『天運』…この男、まさか……()か…?)』

遊希を睨むレイジ…その脳裏では、遊希の正体に疑いを抱いていた…。

 

 

 

 

『私のターン、ドロー!』

『魔法カード「死者蘇生」を発動!墓地の『マッドデーモン』を特殊召喚!』

再び骨の悪魔が復活する! ATK1800

 

 

「くっ…!また貫通ダメージを…!」

 

『いいや…さらに一歩先を行かせてもらう!私は手札のドラゴン族モンスター「アックス・ドラゴニュート」とフィールドの悪魔族モンスター「マッドデーモン」をリリース!手札から現れるがいい!全てを破壊する龍王!「DDD覇龍王ペンドラゴン」!』

レイジの場に巨大な黒き龍王が現れる! ATK2600

 

 

「このモンスターは…!?」

現れた黒い龍の威容に遊希の背中に冷や汗が流れる…このモンスターが放つ威圧感は…遊希の知る『()()()』と同レベルの強さだったからだ…!

 

 

『「ペンドラゴン」の効果発動!手札の「タルワール・デーモン」を墓地に送り、ターン終了時まで攻撃力を500アップさせる!』

 

「っ…!!」

龍王の威圧感が強くなる…! ATK2600→3100

 

『さらに、相手フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊できる…私が破壊するのは──ペンデュラムスケールの「オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン」だ!』

 

「っ!?ペンデュラムカードが!?」

龍王の爪が光の柱を引裂き、緑色のドラゴンを破壊する!

 

『やはりそうか…ペンデュラムカードはモンスターと魔法カード、2つの特性を合わせ持つ……興味深いが──今日はここまでか、バトル!「ペンドラゴン」で「法眼の魔術師」を攻撃!』

 

「まだだ!罠カード発動!『ハーフ・アンブレイク』!『法眼の魔術師』を戦闘破壊から守り、受けるダメージを半分に…ぐああああっ!?かはっ…」

 

『ふむ、守りのカードを伏せていたか…』

黒龍の炎が泡のバリアによって受け流される…だが、その炎は遊希に襲いかかり、遊希をリアルソリッドビジョンの壁に叩き付けた!

 

遊希LP700→150

 

 

「私は…これでターンエンドだ」

 

レイジLP4000

ペンドラゴン 伏せ1 手札1

 

 

 

「うぐっ…(強い…!下手をしたら、遊戯以上に…!)」

デュエルを挑んで来た謎の青年…遊希はその強さから、相手のレベルが遥かに格上である事に気付く…!

 

 

『ペンデュラムを生み出した者の1人…そして榊遊勝の教えを受けた男…この程度か?』

 

「ぐっ……まだだ!ライフが、残っている限り……僕は戦える…!!最後まで、諦めない!!」

痛みを堪えながら…遊希は立ち上がる!

 

 

 

「僕のターン!ドロー!!」

「僕は…フィールドの『EMユニ』1体をリリース!『EMスライハンド・マジシャン』を特殊召喚!!」

遊希のもう一体のエース、道化魔術師が現れる! ATK2500

 

「攻撃力で敵わなくても…倒し方はある!『スライハンドマジシャン』の効果発動!手札の『EMロングホーン・ブル』を墓地に送り!『覇龍王ペンドラゴン』を破壊する!」

 

『むっ…』

スライハンドマジシャンが右手の4つの水晶玉を投げつけ、黒龍を打ち砕く!

 

「これで、どうだ!『オッドアイズファントムドラゴン』でダイレクトアタック!!」

 

『諦めずに向かって来るか…だが、甘い!罠カード発動「聖なるバリア─ミラー・フォース」!相手の攻撃表示モンスターを全て破壊する!』

 

「し、しまった!!」

全ての攻撃を跳ね返す鉄壁が遊希のフィールドをガラ空きにする!

 

 

「ターン、エンド…」

 

遊希LP150

(Pスケール ペルソナ)手札0

 

 

 

『私のターン、ドロー』

『「デーモン・ソルジャー」を召喚!』

魔界のエリート騎士が現れる! ATK1900

 

『君はよく戦った…しかし、今回は私の勝ちのようだ!「デーモンソルジャー」でダイレクトアタック!!』

 

「まだ…まだだ!墓地の『ユニ』の効果発動!墓地の「EMロングホーンブル」と共に除外する事で、1度だけダメージを0にする!!」

 

『ほう…!そんな効果を…』

悪魔騎士の一撃が巨大な角を持つ牛に受け止められる!!

 

『しかし、君のペンデュラムスケールは不完全…次のターンで決着だ…ターンエンド』

 

レイジLP4000

デーモンソルジャー 手札1

 

 

「はぁ…はぁ……負けない…!負けて、たまるかぁぁ!!」

 

『っ……!(この気迫は…!!)』

ボロボロの状態でなお、諦める様子を見せない遊希…その姿にレイジは圧倒される!

 

「遊勝さん…お力、お借りします!!」

 

 

「真のデュエリストのデュエルは、全て必然!勝利のキーカードはっ(ズキン!!)……あ、がッ…!?」

 

『っ…!?おい!!』

遊戯戦と同じく、遊勝仕込みの口上と共にカードを引こうとする遊希…だが、再びの頭痛が襲いかかり、膝をついてしまう…!

 

 

「こんな、いた、み…!!ドロー…!!」

 

『(勝利へ対する、この覚悟の強さ…彼は──本物だ…!!)』

ふらつきながらもデュエルを続ける遊希…その姿にレイジは畏怖を抱く…!

 

「ペンデュラムスケールに…スケール2…『EMペンデュラム・マジシャン』をセッティング…これにより、レベル3から7のモンスターを同時に召喚可能…!!」

光の柱の中に振り子を持つ煌めくマジシャンが現れる!

 

 

「ペンデュラム、召喚!!エクストラデッキから、舞い戻れ!『オッドアイズミラージュドラゴン』!『法眼の魔術師』!『オッドアイズファントムドラゴン』!!」

再び軌跡の中からモンスター達が復活する!ATK1200 2000 2500

 

 

「振り子は、止まらない…!大きく動かせば…大きく戻る…勇気を持って、前へ…!!『法眼の魔術師』で『デーモンソルジャー』を攻撃…!」

 

『くっ─!』

棍棒が悪魔騎士を粉砕、初めての手傷を与える!

 

レイジLP4000→3900

 

 

「『ミラージュドラゴン』で、ダイレクトアタック!ミラージュ・テイル!」

続けざまに緑のドラゴンの尾が直撃する!

 

レイジLP3900→2700

 

「そして…『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』でダイレクトアタック!夢幻のスパイラル・フレイム!さらに、ペンデュラム召喚に成功したこのモンスターが、相手にダメージを与えた時!Pスケールの『オッドアイズ』1枚につき1200ダメージを、与える!!幻視の力──アトミック・フォース!!」

 

『ぐっ──!?(この窮地での()()()…!この男─!!)』

レイジは幻影竜の炎に飲み込まれる…だが、その表情は何事かを考えていた…。

 

レイジLP2700→200→0

 

 

遊希 WIN?

 

 

 

 

「っ……あ…はぁ…はぁ……」

 

『……見事、と言っておこう…榊遊希』

ソリッドビジョンが崩れていく…その中で上手く攻撃を受けて着地したレイジは遊希を称賛する──だが、当の遊希はそれどころではなかった…。

 

 

「(痛い……熱い……古傷が…からだ、あたま…灼ける…!)」

遊希の全身に刻まれた古傷が疼き、凄まじい頭痛が襲う……ただでさえ疲労している所にアクションデュエルは負担が大き過ぎたのだ……

 

 

『俺の()に何をしている…!赤馬零児!!』

 

『………早い到着だな、海馬瀬人』

 

「社、長……」

夕焼けの道に怒号が響く…その声の主は──いつになく鋭い目をした海馬瀬人、その人だった…!

 

 

『万が一に備え、遊希に監視を付けていたが…貴様自ら仕掛けてくるとはな…!そんなに俺の逆鱗に触れたいか!!』

 

『滅相もない…私はただ、ペンデュラム召喚について知りたい──それだけだ』

 

『フン…腹の中を見せない奴だな、貴様は…!』

凄まじい覇気を放つ海馬に対し、レイジ──レオ・コーポレーション社長、赤馬零児は静かに答える。

 

 

『零児、貴様…何を()()()いる?デュエリストとリアルソリッドビジョンを使って…何処かの国と()()でもするつもりか?』

 

『貴方に答える義務はない……だが、当たらずとも遠からずだ』

 

『ならば、覚えておけ……貴様がこれ以上、遊希に関わるならば──俺は全力でレオ・コーポレーションを潰すぞ』

 

『ふっ…ワンマン社長もずいぶんと丸くなったな……いいだろう、()()()()()これ以上手出しはしないと約束しよう……さらばだ』

そう言うと零児は踵を返し、迎えに来た車と共に去って行った…。

 

 

『……遊希、無事か?』

 

「なん、とか……落ち着いて、きました」

零児を見送った海馬は息を整える遊希に歩み寄る。

 

「今の、相手…は……」

 

『赤馬零児…世界大会にはあまり出ていないが……俺や遊戯に比肩する実力派のプロデュエリストであり、LDSの運営──レオ・コーポレーションの社長だ……今のデッキは()()ではなかったようだが』

 

「あれで、本気じゃ、ないのか……世界は、広いなぁ…」

 

『遊希、気をつけろ…LDSは優秀な決闘者をその所属塾ごと買収を仕掛けてくる事がある……弱みを見せるな』

 

「わかり、ました…!」

海馬の警告に遊希は頷く…そしてこの後、遊希は遊矢がLDS所属の生徒に「ペンデュラムカード」を盗まれかけたのを知るのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

『榊遊希…もし、彼が()でないのならば……相応しいかもしれないな──』

 



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Ep.4 亀の決闘塾〜かけがえのない友〜

──待って…!私も戦います!!──だけに任せられません!!──

 

 

──行ってくれ…!この先、どうなるかわからない…!──

 

 

──でも…!──

 

 

 

──…すまない、後で必ず償いはする─!──

 

 

 

──っ…!?──!!──!!?──

 

 

──……──、みんなを頼む…奴を食い止めるのは……俺の役目だ…!!──

 

 

──嫌だ!嫌だ!!───!!──

 

 

 

……誰かが、泣いていた…。

 

 

 

──…必ず、戻る……だから、待っていてくれ…!全ては『□□□□・□□□』に懸かってる…!もし、俺がしくじったら…後は、頼む…!!──

 

 

 

……誰かが、戦おうとしていた…。

 

 

 

 

■■■■■■─!!

 

 

 

……悪魔が、咆哮を轟かせる…。

 

 

 

 

──お前の好きにはさせない…!お前を───、新たな未来を切り拓く!!いくぞ、■■■■!お前の欲望が満たされるまで、とことんまで付き合ってやる──!!──

 

 

 

■■■■■■───!!

 

 

 

 

悪魔と戦士が激突する──そして……───

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

ジリリリリリリ!!

 

 

「っ…!!………夢、か……」

遊希は目覚まし時計の音で目を覚ました……どうやら、夢を見ていたようだ。

 

 

「寝汗がすごいな……着替えなきゃ…」

遊希は寝間着を脱ぐ、その体には痛ましい無数の傷痕が刻まれている…今でも、痛みで眠れない事もあるのだ…。

 

「記憶を失う前の僕………お前、何をやらかしたんだよ…?」

遊希は姿見に映った傷だらけの自身へと問いかけた…。

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、洋子さ───どちら様?」

 

『あっ!()()のお兄さん!おはようございます!』

 

「おはよう遊希!この子、遊矢の()()らしいのさ!」

 

「ああ、昨日の……」

身支度を整えた遊希はダイニングへと向かう…そこでは朝食を作る洋子、そして見知らぬ水色の髪を束ねた少年がパンケーキを頬張っていた…。

 

 

「ふぁ〜…おはよう母さん、遊希に……って、お前〜!?」

 

『あ、師匠〜!おはようございまーす!』

 

「な、なんで、お前がいるんだよ〜!?」

続いてやって来た遊矢がパンケーキを食べる少年を見て驚く…どうやら、遊矢が連れてきたのではなさそうだ。

 

 

「えっと…素良くん…でいいのかな?」

 

『うん!ボクの名前は紫雲院素良!よろしく!』

少年…素良は無邪気な笑顔でそう答えた。

 

 

「母さん!なんでコイツが家に!?」

 

「いや〜!なんか、家の周りをウロウロしててね!お腹が減ってそうだから…連れて来ちゃった♡」

 

「ああ、洋子さんのセンサーに引っかかったのか…それじゃあしょうがないな…」

 

「いや、人を拾っちゃダメだって(汗)」

遊希は洋子の言葉を聞いて納得する、洋子は困っている人や動物が放っておけない性格で…時々迷い犬・猫などを保護してくるのだ…なお、人は初めてである。

 

 

「けどさ〜この子、アンタの()()なんだろ?」

 

「違うって!!」

 

『えぇ〜?』

 

「あはは…まぁ、助けられたのは事実なんだしさ」

弟子を名乗る素良と遊矢の出会いは前日まで遡る。

 

遊矢の通う中学に通うLDSの生徒、沢渡シンゴ…彼は遊矢を騙し、ペンデュラムカードを奪おうとした…しかも、柚子や遊勝塾のジュニアコースの子供達まで人質にして……しかし、遊矢は機転を生かして卑劣なデュエルに勝利して柚子達とペンデュラムカードを取り返した。

 

しかし、沢渡は汚かった…手下の学生達を使って無理矢理に遊矢からカードを奪おうとした…だが、そこへデュエルを見学していた素良が乱入、素早い身のこなしで年上の学生達を伸してしまったのだそうだ。

 

そして…面白いデュエルをする遊矢を気に入り、弟子入りを志願したらしい…。

 

 

『ねぇねぇ!お兄さんも師匠と同じ『ペンデュラム召喚』を使うんでしょ!?どんなアクションデュエルをするの?』

 

「ん?僕は…いたって普通のデュエリストさ、というより…普段は裏方でね、他の塾の助っ人以外はあんまりデュエルはしてないんだ」

 

『そうなんだ〜?』

素良は遊希に問いかける…おそらく、テレビか会場で活躍を見たのだろう。

 

『それより…お兄さん、なんでそんなに傷だらけなの?』

 

「ああ…昔、()()に遭ってね、怖い顔だろ?小さな子にはすぐに泣かれちゃうんだよ…あはは…はぁ……」

 

『へぇ〜…そんなに優しい目をしてるのに…』

 

「ははっ、ありがとうな!僕のパンケーキ食べるかい?」

 

『あ!ありがとう〜!』

 

「お〜い!遊希兄〜!?」

遊希は優しく素良の頭を撫でる…そんな遊希の優しさに遊矢は呆れていたのだった。

 

 

 

 

…………

 

 

 

『……で、遊矢はその素良って奴に付き纏われてんのか?』

 

「ああ、周りの人達も素良君に()()されちゃったみたいでね」

昼休み、高校の教室で遊希は友人…金髪の青年、城之内克也と共に昼食を摂っていた。

先程、遊矢から素良に付き纏われて困っていると連絡があったのだ…。

 

 

『ははっ…でも、中学生で師匠呼びはそりゃあ戸惑うよなぁ…』

 

「まぁ、遊矢の事だから…そのうち根負けして弟子入りを受け入れるか、デュエルで決めそうな気がするなぁ…」

 

『確かにな〜』

厄介事に巻き込まれる遊矢について話す2人…そんな時、城之内が思い出したように遊希に問いかける。

 

 

『そういや遊希、今日の()()は忘れてないだろうな〜?』

 

「もちろん!僕が休んでいる間のノートを取ってもらう代わりに、デュエルする…放課後に亀の決闘塾で良かった?」

 

『ああ!双六じいさんにもOKは貰ってるからな!……ペンデュラム召喚、たっぷり見せてもらうぜ!遊希!』

 

「もちろん!期待に応えられるように頑張るよ!」

遊希と城之内は楽しそうに笑いあった…。

 

 

 

 

 

カランカラン!

 

 

「こんにちは!双六さん!」

 

『おお!遊希君、よく来たのぉ!』

放課後、遊希は遊勝塾…ではなく、別の場所にいた…そこは舞網市のとある場所にある小さな塾…その名は『亀の決闘塾』、デュエル塾とデュエルモンスターズを含めたゲームを扱うゲーム屋でもある。

 

『ニュースで見たぞぉ?遊矢君と一緒ペンデュラム召喚という召喚法を編み出したんじゃろう?すごいのう!』

 

「いえいえ…自分でも、まだ使いこなせてなくて…まだ悩んでるんですよ…」

遊希に話しかけたのはこの塾の塾長兼店長、『双』の文字が刺繍されたバンダナが目印の老人・武藤双六さんである。

若い頃はトレジャーハンター兼デュエリストとして世界を飛び回っていたらしい…。

 

 

『あっ!遊希!久しぶり〜!』

 

『城之内とデュエルしに来たんだろ?俺達も楽しみにしてたんだぜ?』

 

「待たせてごめん!杏子!ヒロト!」

次に話しかけて来たのはピンクの童実野高校制服を着た少女・真崎杏子、そして角刈りの青年・本田ヒロトだった。

 

『城之内ったら、待ちきれなくてデュエルスペースに先に行っちゃったわよ?』

 

「あはは…本当に楽しみなんだなぁ…」

遊希は2人と共にデュエルスペースへと向かった…。

 

 

 

 

『おせ〜ぞ!遊希!』

 

『もう…遊希君も疲れてるんだから、急かしちゃダメだよ!城之内君!』

 

「ごめんごめんって…遊戯!?帰って来てたのか!」

 

『うん!たまにはみんなにも会いたかったしね!』

 

デュエルスペース…といっても、ストリートバスケのフィールドのように金網で仕切られた小さな青空デュエル場…そこで城之内、そして遊希と激戦を繰り広げた武藤遊戯が待っていた…遊戯はこの塾が実家であり、所属塾でもあるのだ。

 

 

『さぁ…!話題のペンデュラム召喚、見せてもらうぜ!!』

 

『うん!行くよ!!』

 

『それじゃあ…!アクションフィールド「フォレスト・エリア」発動!!』

杏子の声と共に旧型のリアルソリッドビジョンシステムが唸りを上げる…そして周囲の景色が森の中の広場へと変化した!

 

 

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!』

 

『モンスターと共に地を駆け、宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!』

 

『これがデュエルの最強進化系!』

 

『『『アクショ〜ン!!』』』

 

 

『「デュエル!!」』

 

遊戯達の口上と共に、城之内と遊希のデュエルが始まった!

 

  

 

 

城之内LP4000

遊希LP4000

 

 

 

アクションデュエル アクションフィールド発動中

 

・アクションカードは1枚しか手札に確保できない。

・フィールド魔法使用可能

 

 

 

 

 

『よーし!先攻は貰うぜ!オレのターン!』

『「ワイバーンの戦士」を召喚!』

緑の鱗を持つトカゲの戦士が現れる! ATK1500

 

『そしてカードを2枚伏せてターンエンド!』

 

城之内 LP4000

ワイバーンの戦士 伏せ2 手札3

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「この手札なら…行くよ!僕は手札のスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

『おおっ!?いきなりか!』

遊希の背後に光の柱が立ち上がり、赤と緑のドラゴンがその中に現れる!

 

PENDULUM!!

 

『これで僕はレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ!希望のペンデュラム!全能の軌跡よ!歴史を刻め!ペンデュラム召喚!!レベル4「龍脈の魔術師」!レベル4!「EMラ・パンダ」!そしてレベル7!揺れ動く幻惑の魔術師「EMスライハンド・マジシャン」!』

赤のペンデュラムが軌跡を紡ぎ、その軌跡の中から見習いの少年魔術師、金管楽器を持ったパンダ、そして赤い道化魔術師が現れる! ATK1800 DEF800 ATK2500

 

 

「そして…アクションマジックゲット!!さらに『スライハンドマジシャン』の効果発動!1ターンに1度、手札を1枚捨てる事でフィールドの表側表示のカードを破壊できる!手札のアクションマジック『オーバー・ソード』を墓地に送って『ワイバーンの戦士』を破壊!」

スライハンドマジシャンの放った水晶玉がワイバーンの戦士に向かう!

 

『させるかよ!どりゃぁ!!』

それを見た城之内はソリッドビジョンの木を蹴り付ける、その衝撃でアクションカードが落ちて来た!

 

『アクションマジック「透明」!このターン「ワイバーンの戦士」は相手の効果の対象にならず、効果では破壊されない!』

 

「おっと!?」

ワイバーンの戦士の鱗が変色、森の中に紛れる事で水晶玉を避ける!

 

 

「なら、バトル!『スライハンドマジシャン』で『ワイバーンの戦士』を攻撃!」

 

『もういっちょ!アクションマジック「回避」!攻撃を無効にするぜ!』

木のウロに手を突っ込んだ城之内がアクションマジックを獲得、攻撃を回避する!

 

「でも、まだモンスターは残ってる!『龍脈の魔術師』で『ワイバーンの戦士』を攻撃!」

 

『ぐぅ…!やるな!』

龍脈の魔術師が双刃の魔杖でワイバーンの戦士を切り裂く!

 

城之内LP4000→3700

 

 

「メイン2!僕は装備魔法『ワンダー・ワンド』を『龍脈の魔術師』に装備!攻撃力を500アップ!」

魔術師が緑の宝石の付いた杖を手にする! ATK1800→2300

 

 

「さらに装備魔法『ワンダー・ワンド』の効果発動!装備モンスターをリリースして2枚ドロー!…カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

『その時、速攻魔法発動!「スケープ・ゴート」!「羊トークン」4体をオレのフィールドに特殊召喚だ!』

城之内のフィールドに可愛らしいピンク・青・オレンジ・黄色の羊達が現れる! DEF 0 0 0 0

 

遊希LP4000

スライハンドマジシャン ラ・パンダ (Pスケール ペルソナ ミラージュ) 伏せ2 手札1

 

 

 

『やるなぁ遊希!本当に一気にモンスターを呼び出しやがった!なら、オレもいくぜ!』

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『来い!「漆黒の豹戦士パンサー・ウォーリアー」』

黒紫の毛並みの剣を持つ豹戦士が現れる! ATK2000

 

『さらに装備魔法「一角獣のホーン」を装備!攻撃力700アップだ!』

 

「やべっ…!」

豹戦士の額から輝きを放つ角が生える! ATK2000→2700

 

 

『バトルだ!「パンサーウォリアー」の効果で『羊トークン』1体をリリース!そして「スライハンドマジシャン」を攻撃!』

 

「っ…とぉ!アクションマジック『ナナナ』!『スライハンドマジシャン』の攻撃力を700アップ!これで返り討ちだ!」

遊希は木の実に張り付いていたアクションマジックを発動、スライハンドマジシャンを強化する! ATK2500→3200

 

 

『そうくると思ったぜ!リバース罠発動!「悪魔のサイコロ」!サイコロを振って、その出目の数×100ポイント!相手の攻撃力を下げる!』

 

「克也お得意のギャンブルカード!!」

城之内のフィールドにサイコロを持った小悪魔が現れる!

 

『いくぜ〜!ダイスロール!!』

小悪魔がサイコロを放り投げる、出目は……6!

 

「まさかの大成功!?ぐあっ…!!」

豹戦士がスライハンドマジシャンを両断する!

 

スライハンドマジシャン ATK3200→2600

 

遊希LP4000→3900

 

 

『しっ!オレはカードを1枚伏せてターンエンド!』

 

城之内LP3700

パンサー 羊 羊 羊 伏せ1 手札1

 

 

 

「いたた…克也は本当にギャンブルカードが好きだよなぁ…地味に成功する事が多いし…」

 

『ヘヘっ!ギャンブルは男のロマン、ってな!』

ギャンブルカードを多彩に使う城之内…2人は本当に楽しそうにデュエルをしている…!

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「よし!来てくれ!『EMドクロバット・ジョーカー』!」

デフォルメされたドクロ型のシルクハットを被った黒いタキシードを着た道化師が現れる! ATK1800

 

「『ドクロバットジョーカー』の効果発動!召喚に成功した時、デッキから『EM』『オッドアイズ』『魔術師』のペンデュラムモンスター1体を手札に加えられる!僕が加えるのは…『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!」

 

『おっ…!来るのか!お前の新しいエース!』

 

「その通り!再び揺れろ…希望のペンデュラム!ペンデュラム召喚!手札から現れろ!二色の眼を持つ幻影の竜!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!さらにエクストラデッキからレベル4!『龍脈の魔術師』!」

赤のペンデュラムの軌跡から鎧を纏う幻影竜、そして少年魔術師が現れる! ATK2500 ATK1800

 

『んな!?モンスターが4体も…だけど、攻撃力は「パンサーウォリアー」が上回ってる!』

 

「それは…どうかな!リバースカードオープン!『スタンピング・クラッシュ』発動!自分の場にドラゴン族モンスターが存在する時、相手の場の魔法・罠カードを破壊して、500ダメージを与える!いっけぇ!『オッドアイズファントムドラゴン』!スタンピング・ファントム!」

 

『な、なにぃ!?』

跳躍した幻影竜の飛び蹴りがパンサーウォリアーに直撃…『一角獣のホーン』を蹴り壊し、風圧で城之内にダメージを与える!

 

城之内LP3700→3200

 

パンサーウォリアーATK2700→2000

 

 

『くっ…!破壊された『一角獣のホーン』はデッキの一番上に戻る…!』

 

「これで『オッドアイズファントムドラゴン』の攻撃が通る!『ラ・パンダ』を攻撃表示に変更!バトル!『オッドアイズファントムドラゴン』で『パンサーウォリアー』を攻撃!」

幻影竜がその身に力を溜める!!

 

ラ・パンダDEF800→ATK800

 

『諦めっかよ!!速攻魔法「天使のサイコロ」!サイコロを振って、出目×100ポイント!自分のモンスターの攻撃力・守備力がアップする!ダイスロール!!』

城之内の場に現れた小天使がサイコロを放り投げる、出目は……4!!

 

パンサーウォリアーATK2000→2400

 

羊トークンDEF 0→400

 

羊トークンDEF 0→400

 

羊トークンDEF 0→400

 

 

『これでダメージを減らせたぜ!!』

 

「まだだ!焼き尽くせ!夢幻のスパイラル・フレイム!」

 

『ぐうううっ!!』

幻影の息吹が豹戦士を吹き飛ばす!

 

城之内LP3200→3100

 

 

「この瞬間!『オッドアイズファントムドラゴン』の効果発動!ペンデュラム召喚されたこのモンスターが相手にダメージを与えた時!ペンデュラムゾーンの『オッドアイズ』の数×1200…つまり、2400ダメージを相手に与える!幻視の力─アトミック・フォース!!」

 

『なっ!?ウッソだろぉぉ!?』

ペンデュラムゾーンの『ペルソナドラゴン』『ミラージュドラゴン』のブレスが城之内に直撃、大ダメージを与える!

 

城之内LP3100→700

 

 

「そして!『ラ・パンダ』『ドクロバットジョーカー』『龍脈の魔術師』で『羊トークン』3体を攻撃!!」

 

『くっ─!!』

パンダの大演奏、ジョーカーの巨大クラッカー、少年魔術師の剣杖の一撃が羊達を粉砕する!

 

「僕はこれでターンエンド!」

 

遊希LP3900

ファントム ラ・パンダ ドクロバットジョーカー 龍脈 (ペルソナ ミラージュ) 伏せ1 手札1

 

 

 

「どうだ!克也!これが僕のペンデュラムだ!」

 

『ヘヘっ…すごいぜ遊希!本当にペンデュラム召喚を使いこなしてるじゃねぇか!』

一気に城之内を追い詰めた遊希…だが、城之内はまだ笑っていた!

 

『だけど…切り札は最後まで取っとくもんだ!いくぜ!!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『いくぜ!「時の魔術師」を召喚!!』

時計をそのまま擬人化したような魔術師が現れる! ATK500

 

 

「えっ…!?それって超レアカードじゃなかったっけ!?」

 

『そうさ!そしてこれは…オレと遊戯の友情のカード!コイツは2分の1の確率で効果が発動する!当たりなら相手フィールドのモンスターを全て破壊!ハズレなら…オレのフィールドのモンスターを破壊して、その攻撃力の合計分のダメージを自分が受ける!これがオレの奥の手だ!タイム・ルーレット!』

時の魔術師が時計型の杖を掲げる、そして針が高速回転…その結果は…!

 

 

『当たりだ!!受けてみろ!タイム・マジック!!』

 

《タ〜イム…マジック!!》

 

「なっ─!?」

その結果は当たり…!遊希のフィールドの時間が加速し、モンスター達が劣化…砕け散る!

 

 

『よっしゃあ!さらに装備魔法「一角獣のホーン」を「時の魔術師」に装備!』

魔術師の杖に白い角が加えられる! ATK500→1200

 

 

『バトル!「時の魔術師」で遊希にダイレクトアタック!』

 

「っ…ぐああああっ…!!」

時の魔術師が杖を投擲、遊希にダメージを与える!

 

遊希LP3900→2700

 

 

『どうだぁ!オレはこれでターンエンド!』

 

城之内LP700

時の魔術師(一角獣のホーン)手札0

 

 

 

「イテテ…モンスターが全滅…すごいや…!」

 

『これがオレの底力だ!お前がどんなに強くなろうが…必ず追いついてやるぜ!』

モンスターが全滅してしまった遊希に城之内が決意を示す…その時だった。

 

 

トクン…

 

 

 

──オレや遊戯は…今1番強い奴はお前だと思ってる、だからオレはお前がいるべきところを温めてるだけだ、だから…戻ってこいよ?──

 

 

 

「っ──?」

突然、遊希の胸に…心に小さな痛みが走る、まるで…何かを思い起こさせるように…。

 

 

『お、おい!?なんで泣いてんだよ遊希!?』

 

「えっ…?」

城之内の心配そうな声に遊希は目元に手を当てる…その左目から、一筋の涙が零れていた…。

 

 

「あっ…な、何でもないよ!目にゴミが入っただけだから…!」

 

『そ、そうかぁ…?なら、デュエルを続けようぜ!オレは最後まで諦めねぇ!!』

 

「僕だって!この軌跡がある限り…戦い続ける!」

涙を拭う遊希…その背後で光の柱が輝く!

 

 

「僕のターン、ドロー!」

「三度揺れろ!希望のペンデュラム!!ペンデュラム召喚!手札からレベル2『EMリターンタンタン』!そしてエクストラデッキから舞い戻れ!『オッドアイズファントムドラゴン』!『ドクロバットジョーカー』!」

三度揺れる赤き軌跡からコマを履いた逆立ちタヌキと幻影竜、タキシードの道化師が現れる! ATK400 2500 1800

 

 

『いいっ!?さっきも思ったけど、破壊されてももう一度出てくるのかよ!?』

 

「ペンデュラムモンスターは破壊されても表側表示でエクストラデッキに送られ、ペンデュラム召喚でフィールドに舞い戻る!バトル!『オッドアイズファントムドラゴン』で『時の魔術師』を攻撃!」

 

『させるか!アクションマジック「回避」だ!』

城之内は枝に引っかかっていたアクションカードを回収、攻撃を避ける!

 

 

「なら…『リターンタンタン』で『時の魔術師』を攻撃!」

 

『なっ!?攻撃力の低いモンスターで!?』

逆立ちタヌキが手足をコマに引っ込め、時の魔術師に回転体当たりを仕掛けるが…杖の一撃で跳ね返される!

 

遊希LP2700→1900

 

 

「この瞬間!『リターンタンタン』の効果発動!このカードが戦闘で破壊された時、フィールドのカード1枚を相手の手札に戻す!手札に戻れ!『時の魔術師』!!」

 

『し、しまった!!』

跳ね返されたリターンタンタンの独楽が高速回転…時の魔術師をふっ飛ばした!

 

「『ドクロバットジョーカー』でダイレクトアタック─!!」

 

『ち、ちくしょ─!?』

道化師の飛び蹴りが城之内のライフを削りきり、デュエルに決着となった!

 

 

城之内LP0

 

 

遊希WIN!

 

 

 

 

『いって〜…「骨を切らせて肉を断つ」だっけ?完敗だ!』

 

「いやいや…『肉を切らせて骨を断つ』だって…骨を切られたら意味ないよ…」

リアルソリッドビジョンが解除され…遊希は城之内を助け起こす、久々のデュエルに勝ち負けは関係なく…2人は笑っていた…。

 

 

 

『遊希君!さっきの涙……もしかして()()を思い出したのかい?』

 

『えっ…そうなのか!?』

 

「思い出した…っていうより……何か、何かが…今のデュエルに重なった気がしたんだ…具体的には言えないんだけど……」

遊戯の問いかけに遊希は胸に手を当てる…デュエル中に感じた『何か』…その正体は今の遊希にはわからなかった…。

 

 

『ねぇ!私、図書館の本で読んだんだけど…記憶喪失って、ちょっとした事がキッカケで記憶が戻る事があるんだって!頭を打ったり…歌を聞いたり、匂いを嗅いだり!失われた記憶がそれに反応する事があるんだって!』

 

『なら…遊希にとっての「キッカケ」は……デュエルって事か?』

 

「そう、なのかな…?」

杏子と本田の言葉を聞いた遊希はデッキから『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』を取り出す…。

 

 

「(今までは、こんな事は感じた事は無かった……ペンデュラム召喚……この召喚法は……僕に関係があるのか…?)」

失われた記憶、そして新たな召喚法…遊希はその繋がりを考える…だが、その答えが出る事はなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

『……ここが「スタンダード次元」か……他の2人とははぐれちまったみたいだな……まずはLDSの調査と……協力関係を結ぶ事、か……あんまり気難しい相手じゃなけりゃいいが……待ってろよ、みんな…!』

 

 

 

『瑠璃…!お前を、必ず見つけ出す!!』

 

 

 

『ここが、スタンダード……平和な世界、か……』

 

 

 

 

運命の歯車は静かに回り始めた────



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Ep.5 謎の黒き竜〜不穏の足音〜

「よーし!今日はデュエルモンスターズの様々な召喚法についてのお勉強だ!」

 

「「「は〜い!」」」

とある日の遊勝塾…今日はジュニアコースの3人に向けた召喚方法の授業が行われていた。

 

 

「えー…まずは『通常召喚』!これがデュエルの基本、レベル4以下のモンスターを表側攻撃表示で出す方法だ!そして次に…『アドバンス召喚』!これは…タツヤに説明して貰おうかな?」

 

「はい!アドバンス召喚も手札からの召喚法だけど…レベル5から6のモンスターを出す時は1体…レベル7以上の時は2体の自分のモンスターをリリースする必要があります!」

 

「おっ!よく勉強しているな!」

修造の問いに答えたのは、ジュニアコースの新入生である青みがかった髪の少年・タツヤだった…だが、その隣では──

 

 

「コウギつまんなーい!」

 

「そんなの知ってるよ〜!」

同じジュニアコースの生徒、小太りの少年・フトシと赤い髪の少女・アユが頬杖をつき…

 

「ヘヘっ…!バニラアイスとカスタードプリンで融合〜…食べられろ!スイーツ王子バニラ・プリンス〜!あむっ!」

さらに遊勝塾に入学した素良が隠れてオヤツを食べていたりする…なお、遊矢への弟子入りの件はなくなり、友人として遊矢と過ごす事に落ち着いていた。

 

 

「お〜い、素良マズいって…怒られるぞ〜…」

 

「え〜?不味くないよ?美味しいって!」

 

「いや、そのマズいじゃなくって…(汗)」

オヤツを頬張る素良に声を掛けたのは遊矢…彼が気にしていたのは…

 

 

「講義中にそんな事してたら、柚子のハリセンが飛んで───あれ…?」

 

「はぁ……」

 

「飛んで、こない…?そういえば、昨日からな〜んかうわの空なんだよな…?」

普段なら、講義中に居眠りしようものなら…柚子の制裁ハリセンが炸裂するのだが…今日はその気配はない…柚子はどこか落ち着きがなく、うわの空だったのだ。

 

 

「それじゃあ…次は『儀式召喚』!これは手札に揃った『儀式魔法』と青枠のモンスターカード『儀式モンスター』が必要だ!儀式召喚するには『儀式魔法』を発動してフィールド・手札から召喚したい『儀式モンスター』のレベル以上のモンスターをリリースする必要があるから、覚えておくように!次の『融合召喚』は…素良に説明して貰おう──」

 

「ドーナツ効果発動!これでバニラプリンスがさらに美味しくなーる!あむ〜!」

 

「こらぁ!!講義中にオヤツを食べるな〜!!」

儀式召喚の説明を終えた修造は素良に声を掛けるが…素良がオヤツを食べていた事に気付き、怒鳴り声を上げた…その時…。

 

 

「お、お父さん!!エクシーズ…エクシーズ召喚って、ウチの塾で教えた事…ないよね?」

 

「おっ!?いきなりどうした柚子!?」

意を決したように柚子が声を上げる…突然の事に修造は驚くが…バツが悪そうに頭を掻く…。

 

「そりゃないなぁ…俺がやった事の無い召喚法は教えられんし……そもそも、LDSが教え始めたのも最近で………そうだ!ちょっと待ってろ!」

 

「えっ…?」

使った事の無い召喚法は教えられないと言った修造は何かを思い出し、教室から駆け出し…すぐに戻って来た……少し戸惑った様子の遊希を連れて…。

 

 

「ちょ!?修造さん!?いきなりなんですか!?」

 

「遊希!お前、LDSのソリッドビジョンシステムを勉強する為に召喚法の資料を読み込んでいただろ?みんなに説明してくれるか?」

 

「えっ…あ、はい……じゃあ、ホワイトボードをお借りします…聞き辛かったら、ごめんね?」

いきなりの要請に動揺した遊希だったが…キラキラしたジュニアの子供達の目を見て、説明を始めた…。

 

 

 

「まずは…エクストラデッキから…エクストラデッキには『融合モンスター』『シンクロモンスター』『エクシーズモンスター』がデュエル開始時に入っているデッキなんだ…『儀式モンスター』は入らないから勘違いしないように!そして…まずは『融合モンスター』について!」

エクストラデッキの基本を説明した遊希は順番通りに説明を続ける。

 

「融合モンスターは紫色のカード枠のモンスターで…魔法カード『融合』の効果で手札・フィールドの融合素材になるモンスターを墓地に送って、エクストラデッキから召喚される…この召喚は特殊召喚と同じ、表示形式は自分で選べる…これはシンクロとエクシーズも同じだね」

 

「次に『シンクロモンスター』…白いカード枠のカードで、フィールド上の『チューナー』モンスター1体とそれ以外のモンスター1体を召喚したいシンクロモンスターと同じレベルになるように『足し算』して墓地に送ってエクストラデッキから召喚する……ここで問題!レベル7のシンクロモンスターを召喚したい時、どんな組み合わせならシンクロ召喚できるでしょうか?……はい、遊矢!」

 

「ふぇ!?え……えっと…?レベル2のチューナーと…レベル5のモンスター?」

 

「正解!場合によってはレベル4のチューナーとレベル3のチューナー以外のモンスター…それか、レベル1のチューナーとレベル3のモンスター2体でも召喚できるよ」  

 

「遊希の兄ちゃん本当の先生みた〜い!」

 

「わかりやす〜い!」

 

「ははっ…ありがとうなアユちゃん、フトシ君…さて、本題の『エクシーズモンスター』だ」

子供達の声援を受けながら、遊希は最後の説明に取り掛かる。

 

 

「エクシーズ召喚には特別な魔法やモンスターカードは必要ない、フィールド上で同じレベルのモンスターを2体揃える事で…そのレベルに対応した『ランク』を持つ黒い枠のモンスターをエクストラデッキから呼び出せる!」

 

「『ランク』って…なんですか?」

 

「『ランク』はエクシーズモンスターのレベルみたいなもの…普通なら赤丸の中に黄色の星で書かれるんだけど…ランクは黒い丸の中に黄色の星で書かれる…また、ランクはレベルに関する効果を受けない…つまり、ランク3のモンスターはレベル3以下のモンスターを破壊する罠カード『ふるい落し』の効果を受けないし、ランク5のモンスターはレベル4以上のモンスターを守備表示にする『レベル制限B地区』の効果を受けないんだ」

 

「レベルに関する効果を受けない…」

 

「そして…もう1つ大事なのはエクシーズ素材、通称『オーバーレイ・ユニット』の存在だ…エクシーズモンスターはこれが無いと効果が発動できない…けど、エクシーズモンスターは強力な効果を持っている事が多いから…無駄にしないように…」

 

「オーバーレイ・ユニット………」

遊希による説明を聞きながら…柚子は前日に遭遇した不可解な出来事を思い出した…。

 

 

 

 

 

Side柚子

 

 

「も〜う!!アイスが食べたいなら自分達で買いに行けってのよ…」

 

「ふふっ、文句言いながら…そんなに買ってあげて、柚子お姉ちゃん優しい〜!」

 

「ふふっ…ありがとうアユちゃん!」

前日の夕方…柚子とアユは大量のアイスを買い込み、川辺の道を遊勝塾へ向かっていた…男子陣(事務作業中だった遊希を除く)からアイスが食べたいとせがまれ、買いに行っていたのだ。

 

 

 

 

「あっ…!?アユちゃん隠れて!」

 

「えっ!?わっ…!」

もう少しで遊勝塾に着く…そんな時、何かを見つけた柚子は川の土手に身を隠す…その目線の先には……。

 

 

 

『沢渡さん…気合い入りまくりじゃね?』

 

()()()()()使()()()()、榊遊矢を倒すってなぁ…!』

 

 

「あいつら…また…!」

柚子が見つけたのは遊矢からペンデュラムカードを奪おうとしたLDS生徒・沢渡シンゴの取り巻きの2人だった…そして、聞こえてきた会話は…不穏な言葉だった…!

 

 

『あの人…相当酷い事しそうだよなぁ…弱点を徹底的に狙うって…』

 

『言うなって…それより、早く行こうぜ!沢渡さんは腹が減ると余計に機嫌が悪くなる!』

 

「沢渡…!!」

 

「あっ…柚子お姉ちゃん待って!?」

 

それは遊矢を狙う沢渡の作戦…それを聞いてしまった柚子は思わず取り巻きを追いかけた…!

 

 

 

………

 

 

「ゆ、柚子お姉ちゃん…!遊矢お兄ちゃんと遊希お兄ちゃんに伝えようよ…危ないよ…!!」

 

「(この前のデュエル…遊矢は必死に私達を守ってくれた…今度は、私が遊矢を…!)」

取り巻き達を追い掛けて辿り着いたのは舞網埠頭の倉庫…沢渡グループのアジトだった。

柚子は前回のデュエルで必死に戦ってくれた遊矢を守りたかったのだ…。

 

「…アユちゃんは先に塾に戻ってて!!」

 

「あ、お姉ちゃん!!」

柚子は勇気を振り絞って倉庫に突撃する…。

 

 

 

【っ…瑠璃…!?】

その様子を目にした人影に気付かないまま…。

 

 

 

バン!!

 

 

「この卑怯者!!」

 

『おごっ!?むぐっ!?……なんだっ!?』

柚子は渾身の力で倉庫の扉を開き、声を響かせる…そこには緩みきった表情でアップルパイ(激甘)を頬張る沢渡の姿があった…なお、柚子の突撃に驚いてパイを喉に詰まらせている…。

 

 

「どんな手を使っても遊矢を倒すなんて、絶対にさせない!!」

 

『ひいら、ぎ、柚子…!?何故ここに!?』

 

「アンタに説明する必要ないわ!」

柚子は戸惑う沢渡の様子を気にせずに言葉を続ける…。

 

 

『フッフッフッ…いや〜柊柚子、キミは自ら「私とデュエルしなさい!!」!?いや、飛んで火に入る夏の「アンタなんかボコボコにしてやるんだから!!」いや、そこはオレの言葉を聞「聞く必要ないわ!!この卑怯者!!負け犬!二流デュエリスト─!!」っな!?二流だと!?』

沢渡のカッコつけ口上(遊矢かぶれ)を言わせる間もなく、畳み掛ける柚子…流石の沢渡もタジタジである。

 

 

「アンタなんか…それ以下よ!三流!四流!百流デュエリスト!!」

 

『言わせておけば…!!さっきの言葉、取り消すなら…今のうちだぞ!!』

柚子のあまりの暴言に沢渡も怒りを露わにする、柚子は頭に血が昇って忘れているが…ここは沢渡のアジト、退路は沢渡の取り巻きに断たれてしまう…!

 

 

「取り消すつもりはこれっぽっちもないわ!!卑劣な負け犬の百流デュエリスト!!」

 

『っ〜!身の程知らずのその態度、後悔させてやる!』

 

「望むところよ─!!」

一触即発の沢渡と柚子…2人は共にデュエルディスクを構える…その時。

 

 

ガン!!

 

 

『ぶはっ!?』

 

『っ!?誰だ!!』

 

【………】

扉を閉めた取り巻きの悲鳴が響く…こじ開けられた扉、そこには黒いローブに身を包み、ゴーグルとマスクで顔を隠した黒と紫の髪の少年が佇んでいた…!

 

 

【……下がっていろ】

 

「えっ…誰よ、アナタ…!?」

謎の少年は柚子を庇うように前に出る…その目は沢渡が身に付ける、LDSの校章を睨んでいた…。

 

 

『いきなり現れて…プリンセスを助けに来たナイト気取りか?』

 

【フン…】

沢渡の言葉に少年は無言でデュエルディスクを展開する…そのデザインは舞網では見ないモノだった。

 

 

『変わったデザインだな…?オレの言葉に答えるつもりはないってか?』

 

「ちょっと!?いきなり割り込まないでよ!?」

 

【……もう、きみを傷付けたくない】

 

「えっ…?」

柚子は乱入した少年を押しのけてデュエルをしようとするが…少年に制止される、ゴーグルから覗いた瞳は…優しく、強い覚悟を宿していた…!

 

 

『かっこいいねぇ、ナイト君…だけど君は恥をかくだけさ!新しいデッキの肩慣らしに丁度いい…!ぶっ潰してやるよ!このネオ沢渡様がな!!』

火花を散らす沢渡に静かに構える少年…2人の戦いが始まった…!

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

デュエルダイジェスト 黒の少年対沢渡

 

 

 

【オレのターン…オレは手札5枚を()()()()、ターンエンド】

 

『はっ!?……ははは…それだけかよ!?笑えるぜぇ!!』

黒の少年は手札を全て伏せただけでターンを終える…それは沢渡…否、全てのデュエリストが常識を疑ってしまう一手だった。

 

 

『モンスターが1枚も入って無かったのかい?気の毒だけど…()()()()()()()!デュエルの運を!!』

 

【聞こえなかったのか?ターンエンドだ】

 

『あ〜ん…!?なら、オレの完璧なデュエルで…ぶっ潰す!』

沢渡の嘲笑に動じず、黒の少年はターンエンドを宣言する…それにカチンときた沢渡は新たなデッキを披露する!

 

 

 

『アドバンス召喚!現れろ!「氷帝メビウス」!!』

沢渡の新たなデッキ…それは黒の少年に対して……否、遊矢を倒す為に手に入れた『魔法・罠』を封殺する為のデッキだった!

 

『「メビウス」の効果発動!アドバンス召喚に成功した時、フィールド上の魔法・罠2枚を破壊できる!お前の伏せカードを2枚破壊だ!フリーズ・バースト!!』

メビウスの吹雪が伏せカードを破壊する…だが、ネオ沢渡は止まらない!

 

『さらに魔法カード「アドバンス・カーニバル」を発動!このカードは自分がアドバンス召喚に成功した時、もう一度アドバンス召喚を可能にする!!オレはアドバンス召喚した「メビウス」をリリース!アドバンス召喚!!いでよ!「凍氷帝メビウス」─!!』

メビウスがさらに重厚な鎧を纏い、再臨する…!

 

『本来なら、レベル7以上のモンスターは2体のリリースが必要だが…「凍氷帝」はアドバンス召喚したモンスターをリリースする事で、リリース1体でアドバンス召喚できる!効果発動!アドバンス召喚に成功した時、相手フィールドの魔法・罠を3枚まで破壊できる!!ブリザード・デストラクション!!』

威力を増した吹雪が黒の少年の伏せカードを吹き飛ばす…少年のフィールドはがら空きになってしまった!!

 

「あ、れ…?なんで、アクションフィールドじゃないのに…風が…!?」

その時、柚子が違和感に気付く…このデュエルはリアルソリッドビジョンを用いた「アクションデュエル」ではなく…通常のソリッドビジョンを用いた「スタンディングデュエル」…ならば、デュエル中に風が吹き…寒さを感じるのはありえないのだ…!

 

 

 

『これでお前の伏せカードは全滅…手札もゼロ!つまり、オレの攻撃を防ぐ手はない!!バトルだ!「メビウス」でダイレクトアタック!!』

全身に氷柱を纏うメビウスの攻撃が迫る…その時だった!

 

【この瞬間、墓地の魔法カード『幻影騎士団(ファントム・ナイツ)シャドー・ベイル』の効果発動!!】

 

『墓地から魔法カードだと!?』

 

【ダイレクトアタックの宣言時、このカードをモンスターカードとして可能な限り特殊召喚する!現れろ!3体の『シャドーベイル』!!】

黒の少年の言葉と共に蒼炎を纏う幽霊騎士達が現れる…それは、沢渡も知らない魔法カードの使い方だった…!

 

 

【……ただし、このカードは再び墓地に送られた時、除外される】

 

『チッ…所詮は壁モンスターを慌てて召喚しただけだ!「メビウス」で「シャドーベイル」を攻撃!インペリアル・チャージ!!』

氷柱を纏った帝王の一撃が幽霊騎士を粉砕する…だが、少年は動揺を見せない…!

 

『首の皮1枚繋がったか…オレはカードを1枚ふせ、ターンエンド!次のターンまで生かしてやる!』

 

【貴様に次のターンはない…】

 

『なに?』

少年を追い詰めたかに見えた沢渡…その傲慢を裁くのは…反逆の牙…!

 

 

 

【オレのターン、ドロー!】

【少しは歯応えがあると思ったが…貴様のデュエルには刃の如き鋭さも…弾丸の如き威力も感じない…!欠片もな…!!】

 

『なにっ…!?』

 

【条件は整った…同レベルのモンスターがフィールドに2体…この瞬間、オレのデッキは真価を発揮する!!オレはレベル4の『シャドーベイル』2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!!】

 

『なっ!?こ、これは─!!』

沢渡の弱さを見極めた少年は力を開放…目の前に光の銀河が渦を巻く!

 

 

【愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!!いま、降臨せよ!エクシーズ召喚!!ランク4『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』─!!】

光の銀河が爆発し、新たなモンスターが生まれる…それは夜の帳が落ちた中でも分かる漆黒の身体を持ち、顎に鋭い牙を持つドラゴンだった…!

 

 

「エクシーズ、召喚…!」

 

『え、エクストラデッキからの、モンスター召喚…!初めて見た…!!』

エクシーズ召喚…エクシーズモンスターの登場に取り巻きも柚子も言葉を失う…エクシーズ召喚はLDSでも導入されたばかりの新たな召喚法……まだ、使い手すらも少ないのだ…!

 

 

『ははっ…エクシーズ使いとはね…!だけど、攻撃力は「メビウス」が上回ってる!』

 

【エクシーズモンスターの真の力は、己の魂たるオーバーレイ・ユニットを使って…相手を滅する事にある!身を以て知るがいい!『ダークリベリオン』の効果発動!ORUを1つ使い、相手フィールドのレベル5以上のモンスターの攻撃力を半分にし!その数値分、自身の攻撃力をアップする!トリーズン・ディスチャージ!】

 

『なにっ!?』

ダークリベリオンの翼にある紫の宝玉から紫電が走り…メビウスを弱体化させる!

 

【まだだ!もう一度『ダークリベリオン』の効果を発動!トリーズン・ディスチャージ!!】

再び放たれる紫電…それにより、メビウスの攻撃力は700に…ダークリベリオンは4600まで攻撃力をアップする!

 

『ウソウソーン!?』

 

【バトルだ!『ダークリベリオン』で『メビウス』を攻撃!!その牙で氷河を砕け!反逆のライトニング・ディスオベイ!!】

 

『ぐわあああ!?』

 

「きゃあああ!?」

紫電の一撃が帝王を砕き、大爆発を引き起こす…その余波が柚子にも襲いかかるが…少年が身を挺して庇う…!

 

 

『ぐっ…なんだ、この衝撃は…!?アクションデュエルじゃ、ないんだぞ…!?』

 

【おい、一度しか聞かん……このバッジは、LDSのモノだな?貴様らと()()()()()の関係は…なんだ!!】

 

『あ、アカデミア??なんだよ、それ…?』

衝撃に戸惑う沢渡に少年は強い言葉で詰め寄る…その手にはLDSの校章が握られている。

 

『そのバッジはLDSなら誰でも持ってる!アカデミアなんて知るかよ!?』

 

【そうか…()()()の言う通りか……ならば、用は無い】

沢渡の答えに興味を失ったのか…少年は沢渡に背を向ける…。

 

 

『バカめ!デュエルはまだ終わってない!!罠カード『アイスレイジ・ショット』!自分の水族モンスターが破壊された時、そのモンスターを戦闘破壊した相手モンスターを破壊し、その攻撃力のダメージを与える─!!』

沢渡は卑怯にも少年の背中に攻撃を仕掛ける…だが…。

 

 

【易い戦略は…児戯に等しい…!墓地の魔法カード『幻影死槍(ファントム・デススピア)』の効果発動!相手が罠カードを発動した時、その効果を無効にし破壊…そして100ダメージを与える!】

 

『嘘だろ!?』

沢渡の罠カードが消え去り、少年の場に魔法陣と鋭い槍が現れる!

 

『ま、待て待て待て!!リアルソリッドビジョンでそんなの喰らったら─!!』

 

【悪いが…外道には容赦しなくて良いと言われている…その身に受けろ!戦場の悲しみと怒りを!!】

 

『ぎ、ぎゃあああ!?』

死の槍が放たれる…だが、その槍は沢渡の頬を掠め…壁に突き刺さる……見事なジャストキルであった。

 

 

 

沢渡LP0

 

 

黒の少年 WIN!

 

 

 

 

 

『あ、ああ……!?』

 

【はぁ…】

外道…沢渡へのささやかな制裁を終えた少年は静かにゴーグルとマスクを外す、その顔は……。

 

「えっ…遊、矢?」

 

『榊、遊矢…!?お前、だったのか…!?』

僅かな明かりが照らし出した少年の顔……それは榊遊矢に瓜二つの顔をしていた…!

 

 

 

『や、やべぇ!!コイツやべえよ!!』

 

『に、逃げろぉ!!』

黒の少年、そして『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』の威圧を受けた取り巻き達は腰が砕けてしまった沢渡を担ぎ、逃げ出して行った…。

 

 

 

「ゆ、遊矢!?どうしてそんな格好してるの…?」

 

【ユウ、ヤ…?】

沢渡達が去ったあと、柚子は黒の少年…黒遊矢に問いかける…その時…!

 

 

キィン─!!

 

「えっ、この光は……きゃっ!」

突然、柚子の持つブレスレットが強い光を放つ…その光は倉庫を埋め尽くし、消えた時には黒遊矢の姿は消えていた…。

 

 

「あ、れ?遊矢…!?」

消えてしまった黒遊矢の姿を探す柚子…そして…。

 

 

「柚子!!大丈夫か!?」

 

「ゆ、遊矢!?」

 

「柚子ちゃん!!…良かった、無事だったか…」

倉庫の扉から遊矢、そして遊希が息を切らせて駆け込んで来た…!

 

「えっ…いま、私…遊矢と一緒にいて…」

 

「僕と、遊矢は…アユちゃんから、柚子ちゃんか沢渡の所に乗り込んだって聞いて……一緒に走って来たんだ、よ…?」

 

「そんな…?じゃあ、今の遊矢は…?」

嘘をつかない遊希の言葉に戸惑う…自分が出会った「遊矢」は…誰だったのかと…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

「いったい、あの遊矢は…?」

黒遊矢の正体が分からず、ますます悩む柚子…その時だった。

 

 

「た、大変だ!!遊矢!修造塾長!!」

 

「権現坂!?いきなりどうした!?」

講義室の扉がすごい勢いで開き、大汗をかいた権現坂が飛び込んで来た!

 

 

「LDSが…LDSが乗り込んできたぞ!?」

 

「「「「なんだって!?」」」」

 

 

それは…新たな波乱の幕開けだった…。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

『おかえりなさいませ…母さま』

 

『ええ、ただいま戻りました…零児さん』

LDSの社長室…そこには2人の人影があった、1人は社長である赤馬零児…そしてもう1人は零児の母親であり、LDSの理事長を務める赤い髪の貴婦人、赤馬日美香だった。

彼女は海外のデュエルスクールを買収する為に、1ヶ月程日本を離れていたのだ。

 

 

『それで零児さん…新しい召喚法と言うのは…?』

 

『その召喚法の名は…ペンデュラム召喚、融合・シンクロ・エクシーズ…どの召喚法とも違う、未知の召喚法です、母さま』

ペンデュラム召喚の登場を知らなかった母親に零児はストロング石島戦の様子を見せながら説明した…。

 

 

 

『この召喚法を…ジュニアユースの子達が……まさか、()()()が…!』

 

『それも含めて調査中です…しかし、ペンデュラム召喚・ペンデュラムカードについてはデータ収集によってその全貌を掴む事ができました』

 

『流石だわ、零児さん』

不穏な言葉を交えながら言葉を交わす赤馬親子…そして零児は気になっている事を口にする。

 

 

『問題はそれを最初に使ったデュエリスト…その名は榊遊矢、そして榊遊希……失踪した榊遊勝の息子、そして教えを受けた記憶喪失の青年です』

 

『榊遊勝…!?まさか、失踪した彼が私達の()と手を組み、息子達を尖兵に!?』

 

『可能性は否定できません…ですが、その()()ありえると思うのです』

 

『逆…?』

敵の存在を恐れる母に零児はとある事件について知らせる。

 

 

『実は昨日…市会議員の沢渡先生の息子が暴漢に襲われました、襲ったのは()()()()()()()を使うデュエリスト…その顔は……榊遊矢に瓜二つ、だったそうです』

 

『それは…良い機会、ですわね…!』

零児の言葉に妖しい笑みを浮かべる日美香…おそらく、遊勝塾を手にする為の作戦を思いついたのだろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな、それは俺の仲間の仕業だ」

 

 

 

 

 

 

『っ!?』

 

『誰だ!!』

その時、2人しかいないはずの社長室に第三者の声が響く、そして…扉の前には見慣れぬ少年が立っていた…!

 

 

『貴方、ここはレオ・コーポレーションの社長室よ!?警備は…』

 

「まどろっこしい事は嫌いでな、真正面から会いに来た……あんたらの言う『敵』…融合次元のアカデミアではないさ」

 

『っ…!?』

 

『もう一度、問おう…何者だ?』

零児は再び紺色のスーツを纏う、鋭い目つきの少年に問いかける。

 

 

 

「俺は…エクシーズ次元・レジスタンスの使者……凌牙だ、次元間戦争を仕掛けてきた融合次元に対抗する為…同盟を結ぶ為に来た!」

 

『エクシーズ次元の使者…!?』

 

『次元戦争…!?()()()は、そこまで…!!』

エクシーズ次元の使者を名乗った少年・凌牙…その言葉に零児と日美香は言葉を詰まらせる…。

 

 

「すぐに…とは言わないが、なるべく早く答えが欲しい……俺の仲間達がアカデミアの奴らを押し留めてはいるが…いつまで保つかは分からないからな」

 

『そうか……ならば、君の実力を確かめさせて貰いたい』

 

「へぇ…俺とデュエルして決めようってか?」

 

『いや…おそらく、今の私では……この世界の人間では君には勝てないだろう……君からはそれほどの力と覚悟を感じる』

零児は凌牙の言葉に首を振る…零児は凌牙の放つ『強者』の気配を感じ取っていた…。

 

 

「なら、どうする?」

 

『今、この世界には「武器」がない…今のままでは融合次元には勝てない……だが、新たな武器が生まれようとしている……それを、ペンデュラム召喚と言う』

 

「っ…ペンデュラム召喚…!?」

 

『我らはその武器を手に入れる為、ある塾へデュエルを挑む……君には、ペンデュラム使いと戦い…その力を示して貰う』

 

「……良いだろう、その代わり……卑怯な真似はしないと約束しろ、人を貶めるのは俺の流儀に反する」

 

『……交渉成立、だな』

凌牙と零児は静かに…強く、握手を交わした…。



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Ep.6 LDS襲来!〜塾を賭けた4番勝負〜

『初めまして柊塾長、私はLDSの理事長…赤馬日美香と申します』

 

「こ、これはご丁寧に…」

 

「(これは…大変な事になったぞ…!?)」

遊希は突然、遊勝塾に訪問してきたLDSの理事長・赤馬日美香を前に動揺を隠せないでいた…事の始まりは数分前に遡る。

 

足腰のトレーニングの為、日課のランニングをしていた権現坂が偶然、遊勝塾の前を通り掛かると…そこへ白く長いリムジンが乗り込んで来た、その中から現れたのはLDSの理事長である日美香…その顔を知っていた権現坂は慌てて裏口から講義室へと駆け込み、事態を知らせてくれたのだ。

その後、日美香を出迎えた修造は応接間に彼女を案内したのである。その場には遊矢・柚子を始めとした塾生達や権現坂も修造の後ろに控えている。

 

 

「(海馬社長から気をつけろとは言われてたけど…なんでこのタイミングで…!)」

日美香と修造へお茶を淹れた遊希が下がる…そして日美香が話を切り出した…。

 

 

 

 

『まずはお詫びを…先日、我が塾の生徒の1人がご息女に無理矢理のデュエルを仕掛けた事、お詫びしますわ』

 

「へっ…!?ゆ、柚子!それは本当なのか!?」

 

「う、うん…」

開口一番、静かに頭を下げた日美香…それに驚いた修造が柚子に真偽を確かめる、そして柚子は昨夜のデュエルについて…黒遊矢の事は隠して修造へと説明した。

 

 

『その生徒、沢渡君はすぐに病院に入院……したのですが、すぐに仮病である事が分かって…父親にこってり叱られているそうです』

 

「仮病…ですか?なぜ、そんな事を…?」

 

『彼の証言によると…自分を襲ったのが『榊遊矢』君であるというのです、それで彼を貶めたかったようですわ』

 

「オレぇ!?いやいや!やってないって!!」

日美香の思わぬ言葉に遊矢は全力で否定する…。

 

 

「赤馬理事長、待ってください!遊矢のアリバイは僕が証明します!塾生の鮎川アユちゃんから柚子ちゃんと沢渡君のトラブルを聞いた僕達は、一緒に塾を飛び出して倉庫に向かいました!入口の防犯カメラの記録で証明もできます!」

 

『心配はいりませんわ、榊遊希君…LDSは遊矢君を罪に問うつもりはありません…既に()()()から謝罪を受けましたから…』

 

「えっ…?(あの遊矢は……遊矢じゃ、なかったの…?)」

遊希の弁明に対し、既に事件は解決したと伝える…それに驚いたのは柚子だった…黒遊矢は彼女の知る遊矢とは本当に別人だったのだ。

 

 

『私はその相手から事件の顛末を確認し、まずはその謝罪を…と思い、訪ねさせて頂いたのです』

 

「そ、そうだったんですか……よ、良かった〜!」

ひとまずの目的を聞いて修造は胸を撫で下ろす…だが、そこで日美香の目付きが変わった。

 

 

『では…ここからは()()()()の話をいたしましょうか』

 

「ビジネス…?」

 

『ええ、単刀直入に言いますわ…LDSは遊勝塾を買収させて貰いたいと考えています!』

 

「「「なんだって!?」」」

日美香の言葉に遊勝塾の全員の驚きが重なる…!

 

 

「ど、どうして…ウチを…!?」

 

『決まっていますわ…遊矢君、そして遊希が生み出した新たな召喚法「ペンデュラム召喚」…それを我が塾のカリキュラムに加えたいからです…無論、お金は言い値で払いますわ』

 

「赤馬理事長…LDSは海外も含めた数多のデュエルスクールを買収していると聞きました…我が塾もその標的になったという事ですか…!」

 

『その通りです、私はペンデュラム召喚の事を知り…「融合」「シンクロ」「エクシーズ」に続く、我が塾の4本目の柱を打ち立てたいと考えています』

 

「待ってください、ペンデュラムカードを持っているのは僕と遊矢だけ……それを大手であるLDSのモノにするのは無理がありませんか?」

 

「遊希兄…!」

遊勝塾の買収を提案する日美香に遊希が待ったをかける…ペンデュラムカードはどうやって生まれたのかも分からない『未知のカード』、それを全ての生徒に教えるのは不可能だと。

 

 

『問題はありません、LDSなら世界トップクラスの技術を誇るレオ・コーポレーションの力を使い、必ずペンデュラムカードを量産し…カリキュラムに組み込む事ができます…遊矢君や遊希君に憧れてペンデュラム召喚を使いたい子供達はたくさんいるのですから…!』

日美香は妖しい笑みを浮かべる…ペンデュラム召喚を手に入れる事はLDSの規模の拡大、そして…来るべき「敵」に対する強力な武器になるのだから…!

 

 

 

「……デュエルは、喧嘩の道具じゃない!見る人みんなを楽しませるデュエルを教える塾を…お金や力で思い通りにしようとするアンタに…渡したくない!!」

 

『ほう…!』

 

「遊矢……よく言った!」

だが、その言葉に遊矢がNOを叩き付ける…遊勝塾は「勝利」を追求する塾ではない、デュエルを見た人々を楽しませ、笑わせる…そんな明るいデュエルを伝える為の場所なのだ…!

 

 

「赤馬理事長、遊勝塾はLDSとは方向性も教え方も違う塾です…それに、この場所は遊勝さんが帰ってくる為の場所だ!それを奪おうというのなら……僕にも考えがあります…!」

 

「遊希兄ちゃん…怒ってる…!」

 

「静かに怒る…本当にできる人いるんだ…」

遊矢の言葉を聞いた遊希が静かに日美香を睨む…普段、まったくと言っていい程怒りを見せない彼が…凄まじい怒りを宿しながら…!

 

 

『遊希君…貴方には海馬コーポレーションの後ろ盾があるそうね…わかりました、ではこうしましょう…我がLDSの誇るジュニアユースクラスのエース4人と遊勝塾の塾生4人でデュエルを行ない、先に3勝したチームの勝利…私達が負けたら……遊勝塾は諦めますわ』

 

「……いいでしょう、その勝負乗った!!」

 

「「「遊勝塾は渡さない!!」」」

日美香の提案を修造が受け入れる…此処に、遊勝塾生の心は1つとなる!!

 

 

 

「見事な結束…!この男、権現坂!義を以て加勢する!共に遊勝塾を守るのだ!!」

 

「いや、でもキミ…部外者だよね?4番勝負なら遊矢に柚子とボク、遊希の4人で足りてるし…ボクもLDSのデュエリストと戦ってみたいし!!」

 

「んが!?ワシは除外か〜!?」

素良のツッコミに権現坂は真っ白に燃え尽きたのだった……哀れである。

 

 

 

 

 

『チッ…LDSめ、やはり仕掛けて来たか…!そしてデュエルで決着だと?お前達が不利ではないか!!』

 

「すいません、海馬社長…おそらく…最初からこのデュエルに持ち込むのが目的だったのかもしれません…!」

無人の選手控え室で遊希は海馬へと連絡を取る…電話口の海馬も怒りを露わにしていた…。

 

『遊希、勝敗は問わん!デュエルを長引かせろ!雑務を終わらせてすぐに向かう!!』

 

「わかりました…頼みます、海馬社長…!」

万が一の保険を掛けた遊希は塾のアクションフィールドへと向かった…。

 

 

 

 

『準備はできたようね』

 

「ええ、おまたせしました…!」

デュエルフィールドでにらみ合うのは遊希を中心とした遊矢、柚子、素良の遊勝塾チーム…対するのは日美香が率いるLDSチーム、彼女の背後には紫色の髪のキザな印象の少年、褐色の肌を持つ黒のロングヘアーの少女、竹刀を持った茶髪の快活そうな少年…そして、紺色のスーツを着た何処か不良のような雰囲気を纏う少年が控えていた…!

 

 

 

『それでは、誰から?』

 

「ボク〜!」

 

「いや、オレから行かせてくれ!遊希兄!」

 

「ああ、行ってこい!遊矢!」

 

「ありゃ!?」

勢いよく手を上げた素良だったが…遊希は初戦に遊矢を選択する!

 

『ふふっ…当然の選び方ね、貴方以外の残り2人は頼りなさそうだし…なんとしても1勝を取りたいところだもの』

 

「頼りない!?ボクの強さを知らないクセに〜!」

 

「落ち着いて、素良君…君が強いのは遊矢から聞いてるから…ね?」

 

「……は〜い」

日美香の言葉に拗ねる素良を遊希は優しく宥める。

 

 

『でも、そう簡単に勝てると思わない事ね?彼ら3人はLDSにおける『融合』『シンクロ』『エクシーズ』コースにおける、ジュニアユースのエースデュエリスト…その中で遊矢君の相手をするのは──』

 

『LDSエクシーズコース所属!志島北斗だ!』

日美香の言葉と共に、紫の髪の少年が歩み出る…!

 

 

「志島北斗…LDSのエクシーズコースのエースで、今季の勝率は9割以上…次の舞網チャンピオンシップスの優勝候補か……強敵だな」

 

「えっ!?遊希兄知ってたの!?」

 

「ああ、さっきLDSの生徒紹介に目を通しておいたんだ…残りの少女は融合コースの光津真澄、竹刀を持っているのはシンクロコースの刀堂刃……だけど、残り1人は生徒紹介には乗っていなかった…」

 

「さ…流石、遊希兄…」

遊希は軽く暗記していた情報を遊矢に伝える…。

 

 

「(あの…紺色のスーツ少年は……()()()、アイツは僕が相手をしなきゃヤバそうだ…!)」

 

『(あの傷だらけの男…榊遊希……この気配、何処かで…いや、まさかな……)』

紺色のスーツの少年…凌牙と遊希は無意識に視線をぶつけ合った…。

 

 

 

 

 

そして…ついに、遊勝塾を賭けたアクションデュエルが始まった!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対北斗

 

 

2人の戦いの舞台は修造が選んだアクションフィールド『星の聖域』…ただし、それは十二星座モチーフの『セイクリッド』デッキを扱う北斗に有利なフィールドだった。

 

北斗は相手モンスターを手札へと戻してしまう強力なエクシーズモンスター『セイクリッド・プレアデス』…さらに、ORUを失ったプレアデスを高い攻撃力を持つ『セイクリッド・トレミスM7』へとエクシーズチェンジする事で遊矢を追い詰める…。

 

先手を取られてしまい、得意のエンタメデュエルすらもままならなくなる遊矢…だが、窮地で手に入れたアクションカードから形勢が逆転、『星読みの魔術師』の隠された効果を発動する事で壁を乗り越え、北斗の41連勝目を阻止して見事な逆転勝利を決めた…!

 

 

 

遊矢WIN!

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 柚子対真澄

 

 

遊矢の勝利に沸くなか…続く戦いは融合コースのエースであり、輝石の戦士『ジェムナイト』の使い手・光津真澄と華麗なる歌姫デッキ『幻奏』を使う柚子のデュエル…だが、その戦いは一方的な戦いだった。

 

黒遊矢の事件から落ち着きを失い、迷い続けていた柚子の動揺を見抜いた真澄は切り札である『ジェムナイト・マスターダイヤ』を融合召喚、さらに2回攻撃と破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える『ジェムナイト・パーズ』の効果を与える事で柚子を追い詰める…柚子は逆転を狙ってアクションカードに手を伸ばしたが…それはクリスタルの輝きを持つアクションフィールド『クリスタル・コリドー』の柱に映った『虚像』……真澄に呆れられながら、デュエルは決着した…。

 

 

柚子 LOST

 

 

 

デュエルダイジェスト 素良→権現坂対刃

 

 

そして負けられない3戦目、本来ならば素良の出番なのだが…シンクロ召喚との相性が悪いと見た素良が権現坂へと相手を譲り、アクションフィールド『剣の墓場』で衝突する事になった。

 

刃が使うのは連続シンクロ召喚を得意とする戦士『X-セイバー』…対して、権現坂が使うのは守備力を攻撃力として扱い、守備表示での攻撃を可能にする機械武者『超重武者』…そして、そのデュエルスタイルもまた対照的だった。

 

小柄な体躯を活かしてフィールドを駆け回り、次々とアクションカードを発動する刃…対して、権現坂は動かない…何が出るか分からない『アクションカード』に頼るのではなく、自らの信念とデッキを信じて戦う『不動のデュエル』…それが権現坂の男としての戦い方だった。

 

だが、デュエルが進むに連れて追い詰められてしまった権現坂のライフは…残り100、その時…彼が選んだのは希望を託す為の『自爆』

 

「超重武者装留ビッグバン」によってフィールドのモンスターを全て破壊し、お互いに破壊されたモンスターのレベルの合計✕100のダメージ…3300を受け、この戦いは相討ちとなった…。

 

 

DUELDraw…

 

 

 

 

「大丈夫か!権現坂!!」

 

「っ…すまぬ、遊矢…権現坂流『不動のデュエル』を以てしても…奴に勝つ事はできなかった…!!」

 

「引き分けに持ち込めたのはお前だからさ!お前の信じるデッキの力、しっかり見せてもらったよ!」

遊矢はリアルソリッドビジョンのダメージで疲労困憊の権現坂を助け起こす、これで結果は1勝1敗1分…そして、次の戦いは…。

 

 

 

「これで…僕が相手に勝てば延長戦に持ち込める、そして次のデュエルを遊矢に任せれば…遊勝塾を守れる…!」

この戦いは4番勝負、2勝1敗1分に持ち込み…遊勝塾を守る為、遊希はその闘志を燃え上がらせる…!

 

 

 

 

『おい…あいつが俺の相手か?』

 

『ああ、私は…彼に一度、敗れている…無論、本気ではなかったがな』

戦いを前に凌牙は気配を消して戦いを見守っていたフードの男…零児に標的を確かめる。

 

 

『あの時、榊遊希から感じた気迫は…準備を進めている「対融合次元防衛組織」に相応しいと思っている、彼の全力を引き出して欲しい』

 

『分かった…善処するさ』

零児は眼鏡の奥から静かに遊希を睨んでいた…。



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Ep.7 LDS襲来!〜幻影と鮫牙〜

「さて…初めまして!僕は榊遊希、よろしくね!」

 

『俺は凌牙だ、悪いが…勝たせて貰うぜ』

 

遊勝塾を賭けたLDSとの4番勝負…権現坂の奮闘によって延長戦が発生する事が確定した4戦目、遊希は紺色のスーツを着た少年…凌牙と対峙する…!

 

 

「頑張れ〜!遊希兄ちゃーん!!」

 

「頑張って─!!」

 

「ああ!遊勝塾は…僕が守る!!」

見学室から応援する子供達に遊希は手を上げて応える!

 

 

『……ずいぶんと慕われてるんだな、アンタ…その傷なのに…』

 

「はは…最初は怖がられたんだけど、あの子達が慣れてくれたのさ!」

凌牙の言葉に遊希は笑って答える…その体に刻まれた無数の傷、それは遊希のハンデであり…トレードマークにもなっていた。

 

 

 

『赤馬理事長、彼…凌牙でしたか?私は彼の事をLDSで見かけた事がないのですが…?』

 

『それは当然です、彼は私がスカウトしてきた特待生なのですから』

 

『特待生?』

真澄に凌牙の事を問われた日美香は凌牙が『特待生』であると嘘をつく…。

 

『(…彼の瞳、深い輝きを持っていた……深い海のように、揺らがない信念を持ってる…)』

実家が宝石商である真澄は、その人物の瞳を見ればある程度の精神状態が分かる力を持っていた…彼女が彼から感じたのは……強い信念だった。

 

 

「さーて、今回のアクションフィールドは…凌牙と遊希……う〜ん………よし!アクションフィールド『海底王国』を発動!!遊希!お前のプレイングで相手を凌駕するんだ!!」

リアルソリッドビジョン投影機が虚構の世界を作り出す…そこは海底に沈んだ古の王国だった…!

 

 

 

『…これがアクションフィールドか…なるほど、本物の海底みたいだな…』

 

「(アクションフィールドを知らない…?だけど、動揺もしていない……油断しないようにしないと…!)」

海底の王国で遊希と凌牙のアクションデュエルが始まる!

 

 

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!モンスターと共に地を駆け!宙を舞い!フィールドを駆け巡る!」

 

「これがデュエルの最強進化系!アクショ〜ン!」

 

「デュエル!!」

 

『デュエル!!……なぁ、この口上は毎回なのか?』

 

「うん!お決まりだからね!」

 

 

 

 

凌牙LP4000

遊希LP4000

 

 

アクションデュエル 『海底王国』

 

・アクションカードは手札に1枚しか加えられない。

 

 

 

 

『俺のターン!ど……違った…「キラー・ラブカ」を召喚!』

深海に潜む細長い古代鮫が現れる! ATK700

 

『さらに!自分が魚・海竜・水族のモンスターの召喚に成功した時!手札の「シャーク・サッカー」は特殊召喚できる!』

ラブカに張り付くように小判鮫が現れる! DEF1000

 

 

 

「さ、鮫デッキだと〜!?また相手に有利なフィールドを選んでしまった〜!?」

 

「いや、名前に牙って入ってるし、服も青っぽいし…気付こうよ…」

鮫主体のモンスターを展開する凌牙を見た修造は再びの間違いに気付いたのだった。

 

 

『俺はレベル3の「キラーラブカ」と「シャークサッカー」でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!現れろ!ランク3!「潜航母艦エアロ・シャーク」!!』

凌牙のフィールドで光の銀河が爆発…2匹の鮫が連結した潜水艦が現れる! ATK1900

 

 

「エクシーズ使い…!最近のLDSはエクシーズ推しなのか!?」

 

『「エアロシャーク」の効果発動!1ターンに1度、ORUを1つ使い!俺の手札1枚につき400ダメージを与える!俺の手札は3枚!1200のダメージだ!喰らえ!エアー・トルピード!!』

 

「なにっ…!?うわあああ!!」

 

「遊希さん!!」

潜水艦から放たれた魚雷が遊希を直撃、激しく吹き飛ばす!

 

遊希LP4000→2800

 

 

『俺はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

凌牙LP4000

エアロシャーク 伏せ2 手札1

 

 

 

「っ…いきなりの効果ダメージとは、やるね…!なら…次は僕の番だ!!」

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「僕は『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

髑髏のシルクハットを被ったタキシードの道化師が現れる! ATK1800

 

 

「『ドクロバットジョーカー』の効果発動!デッキからペンデュラムモンスター『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』を手札に加える!そして僕は僕はスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!これで僕はレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!」

 

 

PENDULUM!!

 

 

 

『来るか、もう1人のペンデュラム使い…!』

遊希の背後に光の柱が立ちあがる!

 

「揺れろ!希望のペンデュラム!全能の軌跡よ!歴史を刻め!ペンデュラム召喚!レベル4『EMシルバー・クロウ』!そしてレベル7!二色の眼を持つ幻影の竜!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!」

遊希の頭上で赤のペンデュラムが軌跡を描く、そして鋭い爪を持つ銀色の狼、そして幻影の名を持つドラゴンが現れる! ATK1800 2500

 

 

 

『っ…!?その、ペンデュラムは…!!』

 

「えっ…?」

その時、凌牙の態度が豹変する…ペンデュラム召喚時に現れた『赤のペンデュラム』…それを見て、遊希が首に掛けていた『赤水晶のペンデュラム』の存在に気付いたのだ。

 

 

『てめぇ…!そのペンデュラムを何処で手に入れた!!』

 

「い、いきなりどうし─『答えろ!!』…この首飾りは僕が最初から持っていた物だよ、僕は『記憶喪失』でね…いつから持っていたのかも、何処で手に入れたのかも覚えていないんだ!」

 

『っ…!!まさ、か…!』

遊希を問い詰める凌牙…その答えを聞いた時、凌牙の表情が…悲しみに歪んだように見えた…。

 

 

「もう良いかな…!僕は遊勝塾の為に、負けられない!『オッドアイズファントムドラゴン』で『エアロシャーク』を攻撃!夢幻のスパイラル・フレイム!」

 

『っ…!!墓地の「キラーラブカ」の効果発動!相手モンスターが自分の魚族モンスターを攻撃してきた時、その攻撃を無効にし!次の自分エンドフェイズまで攻撃力を500ダウンさせる!!』

 

「っ…!止められた…!」

攻撃を仕掛けたオッドアイズの前にラブカの幻影が現れ、オッドアイズを弱体化させる!

 

オッドアイズファントム ATK2500→2000

 

「でも、モンスターはまだ残ってる!『シルバークロウ』で『エアロシャーク』を攻撃!その瞬間、効果発動!攻撃宣言をした時、エンドフェイズまで自分の『EM』モンスターの攻撃力を300アップさせる!」

シルバークロウの遠吠えが仲間に力を与える!

 

シルバークロウATK1800→2100

 

ドクロバットジョーカー ATK1800→2100

 

 

『その瞬間!リバース罠発動!「ポセイドン・ウェーブ」!相手モンスター1体の攻撃を無効にし、自分フィールドの魚・海竜・水族モンスター1体につき800ダメージを相手に与える!』

 

「なにっ…うわああ!!」

飛び掛かったシルバークロウに強烈な水流が襲いかかり、遊希もろともに押し流された!

 

遊希LP2800→2000

 

 

「なら、『ドクロバットジョーカー』で『エアロシャーク』を攻撃!」

 

『くっ…!』

ドクロバットジョーカーの踵落としがエアロシャークを粉砕する!

 

凌牙LP4000→3800

 

 

『はぁ…はぁ…!僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド!』

 

遊希LP2000

オッドアイズ ドクロバットジョーカー シルバークロウ (Pスケール ペルソナ ミラージュ) 伏せ1 手札1

 

 

 

「遊希兄のライフが…あっという間に半分に…!?」

 

「あの凌牙という男…戦い慣れしているな…!あのエリート達が模範的な戦い方だとすれば…まるで喧嘩殺法のようだ…!」

遊矢と権現坂がデュエルを見ながら呟く…凌牙のデュエルは明らかに他の3人とは違うと気付いたのだ…!

 

 

『……悪いな、零児…もう1つ、目的ができちまった……』

 

「零児、だと…!?」

凌牙の纏う雰囲気が変わる…明らかに纏う闘志の強さが膨れ上がる!

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『罠カード「エクシーズ・リバイブ・スプラッシュ」を発動!自分の墓地のランク4以下のエクシーズモンスター「エアロシャーク」を特殊召喚!』

凌牙のフィールドに水が噴き出し、エアロシャークが復活する! ATK1900

 

『さらに!手札から魔法カード「エクシーズの宝札」を発動!自分フィールドのランク4以下のエクシーズモンスターを選択し、そのランクと同じ枚数ドローする!「エアロシャーク」のランクは3!3枚ドロー!!』

 

「っ…!手札が増えた…!」

 

『さらに速攻魔法「プレート・サルベージ」を発動!相手ターンで数えて2ターンの間、フィールド魔法の効果を無効にする!!』

 

「なっ…!?アクションカードが!!」

凌牙が魔法を発動した瞬間、海底のアクションフィールドが海面へと急浮上…アクションカードが全て海の中へ流されてしまう!

 

『そして!相手フィールドにモンスターが2体以上存在する時!手札からレベル5の「イーグル・シャーク」はリリース無しで召喚できる!』

6枚の胸鰭と鷲のような嘴を持つ鮫が現れる! ATK1000

 

『さらに!フィールドに「イーグル・シャーク」が存在する時!手札からレベル5の「パンサー・シャーク」を特殊召喚!』

豹柄の模様を持つ鮫が現れる! DEF2000

 

 

「レベル5のモンスターが2体…!!」

 

『俺はレベル5の「パンサーシャーク」と「イーグルシャーク」でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!』

 

 

73

 

 

『現れろ…!「No.73」!!カオスに落ちた聖なる滴よ!その力を示し、混沌を浄化せよ!「激瀧神アビス・スプラッシュ」!!』

銀河の大爆発と共に凪いでいた海が荒れ狂う、そして海の中から現れた装甲に包まれた宝玉が変形…巨大な鉾を持つ海の神が現れる!! ATK2400

 

 

「な、なんだ…!あのモンスターは…!?」

 

「空気が、震えてる…!!」

 

『(この威圧感…!あのカードは、()()()()()()()()()()()()()()力だ…!!)』

見学室でデュエルを見守っていた全員の背筋が凍りつく…明らかに今までのモンスターとはレベルが違いすぎる!!

 

「さらに魔法カード『アクアジェット』を発動!『エアロシャーク』の攻撃力をエンドフェイズまで1000アップさせる!」

エアロシャークに強化推進装置が装備される! ATK1900→2900

 

 

『バトルだ!「アビススプラッシュ」で「オッドアイズファントムドラゴン」を攻撃!その瞬間、効果発動!ORUを1つ使い!自身の攻撃力をバトルフェイズの間、2倍にする!!』

 

「なっ…!?攻撃力4800だって!?」

海神の鉾に母なる海の力が集中する! ATK2400→4800

 

 

『受けてみろ…!ファイナル・フォール!!』

 

「遊希兄─!!」

 

「この攻撃を受けたら…!遊希さんの負けだわ!!」

海神の怒りの赤雷が遊希に襲いかかる!

 

 

「罠カード発動!『ガード・ブロック』!戦闘ダメージを0にして、1枚ドローす……がああああっ!?」

 

「「「遊希!!」」」

間一髪でダメージを回避する遊希…だが、凄まじい攻撃の余波が彼を吹き飛ばし、海底王国の瓦礫に叩き付けた!

 

 

『攻撃は…まだ終わってねぇ!!「エアロシャーク」で「ドクロバットジョーカー」を攻撃!!ビック・イーター!!』

 

「っ…!?ガッ──!!」

 

ガン!!

 

「遊希兄!!」

エアロシャークの巨大な口が道化師を噛み砕き、粉砕…その爆発で遊希は岩の地面に強く頭を打ち付けた…!

 

遊希LP2000→900

 

 

『俺は…これでターンエンドだ…!』

 

凌牙LP3800

アビススプラッシュ エアロシャーク 手札0 (『プレートサルベージ』適用中)

 

 

 

「遊希兄…!遊希!しっかりしろ!!」

 

「ねぇ、今の頭の打ち方…ヤバいんじゃないの…!」

 

「遊希!立て!!遊勝塾の為に立つのだぁ!!」

頭を打ったまま起き上がらない遊希…その姿を見た遊矢達が必死に声を上げる…!

 

 

『(今、俺ができる限りの全力を叩き込んだ……どうだ…!?)』

凌牙も倒れた遊希を見つめる…もし、凌牙の推測が正しいのならば、遊希は───

 

 

 

 

Side???

 

 

 

頭が、いたい…目の前が暗くなる…

 

 

 

 

……守らなきゃ

 

 

 

 

みんなの居場所を……

 

 

 

 

遊勝さんの、帰ってくる場所を……

 

 

 

 

 

僕を、受け入れてくれたみんなを……

 

 

 

 

 

奪わせない(守らなきゃ)

 

 

 

 

 

許さない(守るんだ)!!

 

 

 

 

ドクン!!

 

 

 

 

 

 

「………!」

 

 

「遊希…!!」

遊希が静かに立ちあがる…そして……

 

 

 

【「オオ…うおおぁぁぁ!!!」】

 

 

「「『っ──!?』」」

空気が震える程の咆哮を轟かせた!!

 

 

 

 

 

【ドロォ!!】

 

【我が魂に宿る、大いなる力よ!再び運命の振り子を揺らせ!ペンデュラム召喚!!『ドクロバットジョーカー』!『オッドアイズファントムドラゴン』!!】

赤のペンデュラムが激しく揺れ動き、再び道化師と幻影竜が現れる! ATK1800 2500

 

 

【■はレベル4の『ドクロバットジョーカー』と『シルバークロウ』の2体でオーバーレイ!!】

 

「えっ…!?遊希兄が、エクシーズ召喚!?」

遊希の言葉とともに2体のモンスターが銀河に飛び込み…ビックバンを起こす!!

 

 

ムゲン

 

 

【現れろ…『No.ムゲン』!『デュエルガアディアン』!!】

 

『っ…!!』

その時、誰も召喚されたモンスターの名前を聞き取れなかった…そして銀河の中から巨大な水晶の斧剣が現れる! ATK2500

 

 

【バトル…!『オッドアイズファントムドラゴン』で『エアロシャーク』を攻撃!!夢幻のスパイラル・フレイム!!】

 

『くっ─!!』

螺旋の炎が鮫潜水艦を撃ち抜き、破壊する!

 

凌牙LP3800→3200

 

【『オッドアイズ』の効果発動!!ペンデュラム召喚されたこのモンスターが相手にダメージを与えた時、ペンデュラムゾーンの『オッドアイズ』1枚につき1200ダメージを与える!!幻視の力!アトミック・フォース!!】

 

『なにっ…!?があああっ…!!』

ペンデュラムゾーンからの援護射撃が凌牙のライフを大きく削り、吹き飛ばす!!

 

凌牙LP3200→800

 

 

「や、やったあ!大ダメージだ!!」

 

「ま、待って!?なんか変だよ!?」

遊希の反撃に歓声を上げる遊矢達…だが、アユが異変に気付く…アトミックフォースが直撃した地面に黒い穴が穿たれ…デュエルフィールドの床自体が砕けていたのだ…!

 

「待て…!いくら質量を持つリアルソリッドビジョンとはいえ、影響があるのはアクションフィールドにのみ……デュエルフィールドの地面が砕けるなど、聞いた事がないぞ!?」

 

『くっ…やり方を、間違えたか…!!』

権現坂の言葉を聞きながら、凌牙は頬の血を拭う…!

 

 

【バトル…!『デュエルガアディアン』で『アビス・スプラッシュ』を攻撃!!】

 

『っ…!「アビススプラッシュ」の効果発動!ORUを1つ使い、攻撃力を2倍にする!!』

 

【『デュエルガアディアン』の効果発動…!ORUを1つ使い、バトルする相手モンスターの攻撃力または守備力のどちらか高い数値分、自身の攻撃力をアップする─!!】

海神の鉾にエネルギーが集中する、さらに呼応するように水晶の剣に禍々しい光が集中する!!

 

アビススプラッシュ ATK2400→4800

 

デュエルガアディアン ATK2500→7300

 

 

『っ…マズい!!アビス!あの人を上にかち上げろ─!!』

 

《オオオッ!!》

嫌な予感を感じた凌牙は水晶の剣を手にした遊希を鉾で空中に弾き飛ばす!!

 

 

 

【カオススラッシュ!!】

 

 

『迎え撃て!!ファイナル・フォール!!

 

 

 

水晶の剣から放たれた混沌の斬撃と海神の怒りが衝突する、その瞬間…色彩が消え、音が消え、最後に凄まじい衝撃波が舞網市へと襲いかかった…。

 

 

 

 

 

──DUEL ERROR──

 

 

 

 

 

 

「何が、起きたんだ…?」

 

「いたた…デュエルは、どうなったの…?」

 

最初に正気に戻ったのは遊矢と柚子だった。衝突の瞬間、咄嗟に子供達を守った2人は周囲を見回す…。

 

辺りは照明が落ちたのか暗い…少し離れた所では尻もちをついていたLDSチームが辺りを見回している、そして見学室の窓は割れてこそいないが…大きな亀裂が入っている…。

 

 

 

『母さま、大丈夫ですか?』

 

『零児さん、来ていたのね…何が、起きたの…?』

 

『……超高エネルギーの衝突にデュエルシステムが耐えられず、システムエラーを起こしたようです…!』

零児は咄嗟に日美香を庇っていた…その視線の先では…。

 

 

『ぐっ…かはっ…流石に、やばかった、か……』

ソリッドビジョンが消えたデュエルフィールドの壁にクレーターを作ってめり込む凌牙…そして…デュエルフィールドの天井の金網には()()()()が空いていた…。

 

 

 

「む、う……遊希は…遊希は、どうなった…!?」

修造がデュエルフィールドの惨状を目の当たりにして、遊希の姿を探す──

 

 

 

ガッシャァァァン!!

 

 

 

「「『『!?』』」」

 

その時、遊勝塾の外で何かが壊れる音が響き渡った…。

 

 

 

 

 

「遊希!!遊希!!しっかりするのだ!!」

 

「海馬社ちっ…遊希ィィ!?」

 

「遊希兄─!!?」

 

「う…あ…」

 

外に飛び出した遊矢達が目にしたもの…それはKCの黒リムジンの上に落下した満身創痍の遊希の姿だった。

 

巨大な力の衝突によって遊希は吹き飛ばされ…建物から放り出されていたのだ…。

 

 

「な、なんで…!?なんでただのデュエルでこんな事になるんだよ!?遊希兄!!しっかり!!」

 

「……りょ……が………ご、め……──」

急いで遊希を助け出した遊矢が遊希に呼び掛ける…だが、遊希は言葉にならない何かを呟き…意識を失ってしまった…。

 

 

 

 

「………赤馬、貴様ら…我が友に何をしている…」

 

『これは…海馬社長、偶然ですわ──「貴様には話しておらん赤馬日美香!!顔を見せろ零児ィ!!」っ…!』

救急への通報を終えた海馬が憤怒の形相で遊勝塾の入口にいた男…赤馬零児へと吼える…! 

 

 

「我が庇護下にある遊勝塾に手を出したばかりか、我が友を傷付けるとは何事だァ!!」

 

『海馬、この事態は…流石に私の想定外だ』

 

「想定外で済むものか!!貴様…海馬コーポレーションを敵に回すか!!俺はそれでも構わんのだぞ!!」

怒り心頭で零児へと詰め寄る海馬…その時…。

 

 

『待って、くれ…!赤馬零児は悪くない…悪いのは、俺だ…!』

 

「貴様…?」

海馬へと声を掛けたのは…同じく満身創痍の凌牙だった…その様子に流石の海馬も冷静さを取り戻す…。

 

 

『…瀬人、さん…あの人を、治せるのは…俺だけ、だ……俺に、やらせて、くれ…』

 

「……フン…!何処の馬の骨とも判らぬ者に遊希を任せられるか!!まずはおのれの身体の心配をしろ!!」

 

『……俺は、あの人の……あのひと、の───』

 

『おい!!』

何かを言いかけた凌牙…だが、身体が保たず…そのまま気を失ってしまった…。

 

 

………

 

 

「赤馬理事長、今日はどうぞお引取りを…1勝1敗1分、無効試合1……引き分けにしませんか…!!」

 

『……いいえ、対決は続行します…!そちらにはまだ戦える者が──』

 

『そこまでにしましょう、母さま……決着は私がつけます』

遊希と凌牙の両名がそれぞれに病院に搬送され、海馬も遊希に付き添って去った…残された修造は日美香に引き分けを提案するが、彼女はそれを跳ね除ける。

 

だが…それに待ったを掛けたのは、他ならぬ零児だった。

 

 

  

『榊遊矢…君にデュエルを申し込む、私に勝つ事ができれば…遊勝塾からは手を引こう』

 

『……望む、ところだ!遊希兄があんなに頑張ったんだ…オレが、遊勝塾を守る!!』

遊矢は零児との決闘を受け入れる…遊勝塾を守る為の最後の戦いが始まろうとしていた…。

 

 



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Ep.8 赤馬零児〜異次元の悪魔〜

Side???

 

 

 

「っ……ここは……病院か…」

凌牙が目を覚ますとそこは病院だった…窓の外では夜の帳が落ち始めている…。

 

 

「……ようやく、見つけられたのに…なんでだよ………()()()…!!」

意識を失う前の最後の記憶を思い出した凌牙は悔しげに拳を握りしめる…。

 

 

最初はあまりに傷だらけで…姿が変わり過ぎて気付けなかった…しかし、彼が持っていた『赤水晶のペンデュラム』…そして、世界で1枚しか存在しない『No.』を使った事で確信した…。

 

 

榊遊希と名乗った少年、その正体は……自分達を守り、1人で戦い続け──行方知れずとなった『英雄』の成れの果てなのだと…。

 

 

「あの様子じゃ、本当に全部忘れちまってる…それに力も……ちくしょう…!!」

凌牙の流した涙がシーツを濡らす…本来の彼なら、あの程度の怪我は問題にならないだろう……だが、力が…彼を『英雄』足らしめていた全てが失われているのなら……凌牙はさらに彼を追い詰めてしまったという事になるのだ…。

 

 

「待っててくれ…必ず、記憶を呼び覚ましてやるからな…父さん…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──『No.∞』の強制励起、並びに暴走を確認…『魂の回廊』接続開始……失敗──

 

 

 

 

──代替措置を適用…『カード庫』と『NEXUSホルダー』をリンク……失敗……再設定……──

 

 

 

 

──………マスター……早く…目を覚まして…!──

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

「うっ……ここは…?」

遊希は全身にのしかかる倦怠感と共に目を覚ました、少し辺りを見回して…どうやら病院らしいと理解した。

 

 

「……遊矢…」

 

「すぅ…すぅ…」

そうして、次に気付いたのは自分のベッドに突っ伏している遊矢の姿だった…なお、遊矢が落ち込んでいる事を示すゴーグルを掛けたままである。

 

 

「……僕は、なんで病院に……そうだ、LDSと遊勝塾を賭けたデュエルをして…」

無意識に遊矢の頭を撫でながら、遊希は記憶を呼び起こす……最後の記憶は凌牙という少年とのデュエルの中で頭を打った所までだった。

 

 

「遊矢!飲み物買っ……遊希さん!?目が覚めたのね!!良かった〜…」

 

「ふがっ…!?遊希兄!!し、心配掛けないでくれよぉ…丸1日、目を覚まさなかったんだぜ!?」

 

「柚子ちゃん…遊矢…心配させてごめんな…」

そんな時、遊矢の飲み物を買いに行っていた柚子が遊希の目覚めに気付き…遊矢も驚いて目を覚ましたのだった。

 

 

………

 

 

「えっ…それじゃあ、何も覚えてないの…?」

 

「……ああ、頭を打った後の事はまったく…僕が、そんな事を…?」

 

「うん…壊れたデュエルフィールドは海馬さん……海馬コーポレーションが直してくれるって…」

目を覚ました遊希は何が起きたのかを遊矢達に確かめる…そして、聞かされた出来事に動揺した…。

 

 

頭を打った後、まるで『獣』のように戦い始めた事。

 

自身が持っていないはずの『エクシーズモンスター』を召喚した事。

 

リアルソリッドビジョンでは考えられない程の威力で攻撃し、デュエルフィールドを破壊した事。

 

そして…自身を止めようとしてくれた凌牙との衝突でデュエルフィールドが半壊、さらに遊勝塾から吹き飛ばされて怪我を負った事……それは俄には信じられない出来事だった。

 

 

「……でも、こんな怪我をしてるって事は……本当なんだよな…」

遊希は改めて自分の身体を見る…全身に巻きつけられた包帯、思うように力が入らない右手……そして()()()()()()視界…

 

 

「……左目失明……アクションデュエリストとしては致命的、か……」

 

「遊希兄…」

柚子の手鏡に写った遊希の顔…以前にも増して傷だらけになった顔に加え、その左目は光を失ってしまっていた……フィールド内を駆け回り、アクションカードを探すアクションデュエリストにとって、それは致命傷だった。

 

 

 

「遊矢、そんな悲しそうな顔するなって…左目が見えなくたってデュエルはできる、デッキをアクションカードに頼らない構成に変えて…権現坂君の『不動のデュエル』に近い形にすればまだ戦えるさ!大丈夫!」

 

「遊希兄…なんで、そんな笑ってられるんだよ…」

遊矢の頭を撫でながら笑う遊希…その様子を見た遊矢は問いかける…。

 

 

「…遊矢、僕は全てを失った『0』の状態から始まった…なら、今さら何が起きたって『それ以下』にはならない…今の僕には遊矢が、柚子ちゃんが…みんながいて、ペンデュラム召喚っていう武器もある……()()()()()()で頑張って、できる事を精一杯すれば良いだけさ!」

 

「かっとビング…?なんですか?その言葉…?」

 

「………あれ?勢いで言ったんだけど……なんだろ?」

 

「「えぇ〜…?」」

柚子に『かっとビング』なる言葉の意味を問われた遊希は思わず首を傾げる…自分でも()()()()()()()()()()のだ。

 

 

「まぁ、僕の事は置いといて…そのあと、何が起きたのか教えてくれる?」

 

「ああ、遊希兄と相手の凌牙が病院に運ばれて……それでも、赤馬理事長は対決を続けようとしたんだ…そこで、アイツが出てきた…!」

 

「レオ・コーポレーションの社長、そしてプロデュエリストの…赤馬零児」

 

そして遊矢と柚子は語り始めた…遊勝塾を賭けた最後の戦い、遥か格上のプロデュエリスト…赤馬零児とのデュエルについて…。

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

「(赤馬零児…その名前、何処かで……あった!!最年少プロデュエリストになった、レオ・コーポレーションの社長…!彼が…!!)」

戦いを前に修造はタブレットで赤馬理事長の呟いた名前について検索する…その答えは遊勝塾にとって最悪の情報だった…!

 

「(遊矢は次の『アクションフィールド』も俺に任せると言ってくれた…だが、相手はプロデュエリスト……卑怯と言われようと…遊矢の得意なフィールドを!!)」

プロデュエリストに挑む遊矢の為…修造は初めて()()を加える事を決めた…!

 

 

 

 

 

「(負けられない…このデュエルだけは、絶対に…!)」

 

『………』

遊希と凌牙の激戦の応急処置が終わったデュエルフィールドで遊矢、そして赤いマフラーを靡かせた銀髪の眼鏡の青年…赤馬零児が対峙する。

 

零児は自然体で遊矢を見つめている…一方、遊矢はゴーグルを降ろし…そのゴーグル越しに零児を睨んでいた…。 

 

 

「(柚子も…権現坂も…遊希兄も全力で遊勝塾を守ろうと戦ってくれた…オレは、その思いを無駄にしちゃダメなんだ…!)」

その脳裏に浮かぶのは共に戦ってくれた仲間達、そして遊希の姿…だが、その強すぎる思いは遊矢を追い詰めていた…。

 

 

「っ…遊矢!!」

 

「柚子…?」

そんな遊矢に見学室の柚子が声をかける…!

 

 

「遊矢!()()()!!遊勝塾は明るく楽しい()()()()()()()()を教える塾よ!笑顔を…笑顔を忘れないで!!」

 

「柚子…そうか、そうだった…楽しくエンタメるのがオレのモットー!その笑顔を忘れちゃダメだった!」

柚子の言葉で遊矢の張り詰めていた気持ちが緩む、遊矢のモットーは人々を沸かせ、楽しませる『エンタメデュエル』…それにはまず、自分が笑顔でなければ意味はない…!

 

「よ〜し、見せてやる!最高の笑顔と最高のデュエルを!!」

ゴーグルを上げた遊矢は本来の調子を取り戻す!

 

 

「よ〜し!準備はできたな!では…アクションフィールドオン!!フィールド魔法『アスレチック・サーカス』発動!!」

 

『ほう…』

遊矢の様子を見た修造がアクションフィールドを展開する、そこは色とりどりのボールやブランコ、回し車などが散らばるサーカス劇場…遊矢が得意とするアクションフィールドだった!

 

 

「期待に応えるのがエンターティナー!さぁ、みんなに最高のデュエルを見せてやる!!」

 

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「「「これぞ!デュエルの最強進化系!アクショーン!!」」」

 

 

『「デュエル!!」』

 

子供達の口上と共に…遊勝塾の運命を賭けたデュエルが始まった!

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対零児

 

 

 

 

「フィールドを選ばせてもらったお礼だ!先攻は譲るよ!」

 

『お礼……譲る、か…君はそういう思考をするのか』

 

「えっ…?」

先攻を譲ると言った遊矢に興味深いといった態度を取る零児…先攻はドローこそできないが、伏せカードなどの対処ができる重要な要素…合理的な考え方をする零児はその有利を手放す事を理解できなかったのだ。

 

 

『まぁいい…申し出は受け取っておこう、私のターン!私は3枚の魔法カードを発動する…まずは1枚目!永続魔法「地獄門の契約書」!このカードは自分スタンバイフェイズに()()()1()0()0()0()()()()()()()()()

 

「自分のターンに1000ダメージだと!?」

零児が発動したのは『契約書』と名のつく永続魔法…1000ダメージを受けるデメリットがあるが…強力な効果を秘めている…!

 

 

『「地獄門の契約書」の効果により1ターンに1度、私はデッキからレベル4以下の「DD」と名のつくモンスターを手札に加える事ができる…私は「DDケルベロス」を手札に加える』

 

「DD…?」

 

「なんて意味だろう?」

 

「たぶん…ディファレント・ディメンション…『異次元』って意味だと思うよ?」

フトシとアユの疑問に素良が答える…そして零児は文字通り『異次元』のプレイングを展開する!

 

 

『さらに2枚目、同じく永続魔法「地獄門の契約書」を発動!デッキから「DDリリス」を手札に加える…そして、3枚目…永続魔法「魔神王の契約書」を発動!このカードも自分スタンバイフェイズに自分が1000ダメージを受ける、そして1ターンに1度…自分の手札・フィールドから融合素材モンスターを墓地に送る事で「融合」無しで悪魔族の融合モンスターを融合召喚できる!』

 

「なっ…『融合』無しの融合召喚だって!?」

3000ダメージものリスクを背負った零児、その一手は融合召喚…!

 

 

『私は手札の「DDケルベロス」と「DDリリス」で融合!牙剥く地獄の番犬よ…闇より誘う妖婦よ!冥府に渦巻く光の中で…今ひとつとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!!生誕せよ!「DDD烈火王テムジン」!!』

3つの頭を持つ番犬と半人半蛇の悪魔が融合の渦に飛び込み…燃え盛る剣を持つ炎の王を喚び出す!

 

 

「ゆ、融合召喚だと!?赤馬零児が公式戦で融合召喚を使った記録は無い……融合召喚を使わずとも勝ち抜いて来た彼が…さらなる力を…!?」

修造は予想外の融合召喚に戦慄する…赤馬零児はその『全力』を人前で見せた事がないのだ…!

 

『私はカードを2枚伏せ、ターンエンド』

全ての手札を伏せた零児、だが…その表情はまったく変わっていなかった…ただ、その瞳だけは…遊矢を見定めるかのように鋭かった…。

 

 

「いきなり驚かされちゃったな…なら、今度はオレのエンタメデュエルで驚かせる番だ─!」

余裕を崩さない零児に対し、遊矢は果敢に挑みかかった…!

 

 

…だが、零児は強かった。

 

 

相手モンスターの攻守を入れ替える「EMウィップ・バイパー」で『テムジン』に挑む遊矢…だが、零児は永続罠『戦乙女の契約書』を発動、スタンバイフェイズに1000ダメージを受ける代わりに1ターンに1度、モンスターの攻撃力を1000アップする効果で迎え撃つ。

 

しかし、遊矢は攻撃力を1000アップするアクションマジック『ハイダイブ』で攻撃を続行…だが、零児は不利を悟ると新たな罠カード『契約洗浄』、さらにアクションマジック『回避』で遊矢の攻撃を避ける……そして、この時点で零児は計4000ダメージを受ける事が確定していたが…『契約洗浄』の効果で全ての『契約書』を墓地に送り、ダメージを4枚のドローへと変えて踏み倒してしまった…!

 

 

『遊矢、君はとても心根の優しい人間だ…だが、その優しさは戦いの場では通用しない!ターンを終えれば私に勝てる状況で…君はそれを躊躇した、その甘さがこの状況を生み出した…!』

 

「甘い…か、でも…もしそれで勝てたとしても!オレは嬉しくないな…みんなが期待するオレの『エンタメデュエル』の見せ場がなくなっちゃうから!…アンタから見れば、これも甘ったれた考えなんだろうけど…オレは!父さんから受け継いだエンタメデュエルで…勝ってみせる!!」

遊矢の甘さを指摘する零児…だが、遊矢はそれでいいと笑っていた…父から受け継いだデュエルで零児に勝ってみせると…。

 

 

 

『榊遊勝のデュエルで、か…』

 

「…父さんを、知ってるのか?」

遊矢の言葉を聞いた零児は眼鏡を直しながら遊勝の名前を口にする…その様子はまるで…遊勝に()()()()()()()ような様子だった。

 

 

「ははっ!そりゃ知ってるさ!お前の父ちゃんは逃げ出した『元チャンピオン』として──」

 

 

『黙れ!!』

 

 

「「っ─!?」」

遊勝の事を貶す刀堂刃と志島北斗…その言葉を聞いた零児の殺気の込められた一喝が炸裂する…!

 

 

 

「……アンタ…」

 

『失礼、もちろん…君の父上の事は存じ上げている……現在のアクションデュエルの隆盛を築き上げたパイオニアとして…()()()()()()()()()

遊勝に対して敬意を見せた零児は…初めて小さな笑みを見せる。

 

『今日は見せてもらうよ…君が父上から継承したデュエルを……であるなら、私も君に本気を見せねばなるまい…!』

 

「本気だって…!?」

エンタメデュエルを見せると言った遊矢を前に零児の闘志が膨れ上がる…先の凌牙の闘志が荒々しき荒海だとするのなら、零児の闘志は…全てを飲み込む業火の如く…!

 

 

 

 

『闇を切り裂く咆哮よ…疾風の速さを得て、新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ!「DDD疾風王アレクサンダー」!!』

 

 

『私はレベル4の「DDリリス」と「DDケルベロス」でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!この世の全てを統べる為、今!世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚!生誕せよ!「DDD怒濤王シーザー」!!』

本気を出すと宣言した零児…その場に緑のマントを翻し、大剣を構えるシンクロモンスター…さらに青いマントを翻し、棍棒を持つエクシーズモンスターが並び立つ!

 

 

『DDD…それはすなわち、ディファレント・ディメンション・デーモン…異次元を制する王の力…とくと味わうがいい!!』

3つの召喚法を操る零児…その攻勢が遊矢に迫る!

 

 

 

─────────────────────

 

 

「融合・シンクロ・エクシーズ…3つの召喚法を同時に…!?それが彼の本気か…」

 

「ああ…あの時はびっくりしたぜ…」

遊矢の話を聞いていた遊希が息を呑む…遊矢の言葉からも当時の驚きが分かるようだった。

 

 

「……僕とデュエルした時は…本当に様子見だった訳か…」

 

「オレも聞いたよ…遊希兄のデュエルは凄かったって…先に戦ってたんなら教えてくれたら良いのに…」

 

「ごめんごめん…それで、その先はどうなったんだ?聞いた限り、大ピンチだけど…?」

 

「まぁ、そこはなんとかしたのさ!」

遊矢はその先について語り始めた…。

 

 

──────────────────────

 

 

 

『バトルだ!「烈火王テムジン」で「ウィップバイパー」を攻撃!』

 

「させるか!速攻魔法『カバーカーニバル』発動!3体の『カバー・トークン』を守備表示で特殊召喚!」

斬りかかる炎の王…だが、その前にサンバ衣装を纏ったカバ達が現れる!

 

「その効果により、相手は『カバートークン』以外のモンスターを攻撃できない!」

 

『ならば…そのトークンから倒すまでだ!!』

炎の王、風の王、水の王がカバートークン達を粉砕する…ライフとモンスターを守る事には成功したかに思われたが…風の王『疾風王アレクサンダー』は2回攻撃の効果を持っていた為、『ウィップバイパー』は『怒濤王シーザー』に倒されてしまう…!

 

 

「すごいな…!これがアンタの本気か…!!3つの召喚法を操るなんて驚いたよ…!今度はオレのターンだ!オレは融合もシンクロも、エクシーズもできないけど…オレと遊希兄だけに与えられた力がある!!お楽しみはこれからだ─!」

零児のプレイングに圧倒される遊矢…だが、彼にも手にした『力』がある…!

 

 

PENDULUM!!

 

 

「オレはスケール1の『星読みの魔術師』とスケール8の『時読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!!手札から現れろ!『EMファイヤ・マフライオ』!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

揺れ動くペンデュラムの軌跡…そ鬣が炎になったライオン、そして二色の眼の竜が現れる!

 

 

「さぁ、みなさまご注目!我が一座のスーパースター『オッドアイズペンデュラムドラゴン』による()()()()を御覧頂きます!!いくぞ、オッドアイズ!!」

遊矢はオッドアイズに跳び乗り、零児に突進する!

 

 

「バトルだ!『オッドアイズ』で『烈火王テムジン』を攻撃!螺旋のストライク・バースト!」

黒き螺旋の炎が炎の王に直撃する!

 

「さらに!レベル5以上のモンスターとバトルする時、与える戦闘ダメージを2倍にする!リアクション・フォース!!」

 

『ぬぅっ…!?』

勢いを増した螺旋の息吹が炎の王を粉砕…1000ダメージを与える!

 

「さらに!『マフライオ』の効果発動!相手モンスターを破壊したペンデュラムモンスターはバトル終了時まで攻撃力を200アップし、もう一度攻撃できる!火の輪を潜って攻撃だ!オッドアイズ!!」

その姿はまさにドラゴン使い…マフライオの火の輪を通り抜けたオッドアイズが再び攻撃を仕掛ける!

 

 

「『オッドアイズ』で『疾風王アレクサンダー』を攻撃!螺旋のストライクバースト!さらに戦闘ダメージは2倍になる!リアクション・フォース!」

螺旋の一撃が風の王を粉砕…さらにダメージを与える!

 

「そして…!アクションマジック『ワンダー・チャンス』を発動!モンスター1体の攻撃を一回増やす事ができる!!『オッドアイズ』で『怒濤王シーザー』を攻撃!!」

 

『……フッ…!』

それは驚きの3連撃、螺旋の息吹が水の王を粉砕する…大ダメージを受けた零児…だが、彼はまだ揺らがない…!

 

 

『「怒濤王シーザー」のモンスター効果発動、1ターンに1度!ORUを1つ使い、このターンバトルで破壊されたモンスターをバトルフェイズ終了時に特殊召喚する!甦れ!「烈火王テムジン」!「疾風王アレクサンダー」!「怒濤王シーザー」!』

 

「なにっ!?」

破壊されたはずの3体の王が墓地から蘇る!

 

 

『ただし、それ相応の()()()もある…私は次の自分のターンにこの効果で特殊召喚したモンスターがフィールドに存在する時、1体につき1000ダメージを受ける……だが、こうすれば関係ない!罠カード発動!「DDDの人事権」!自分フィールドの「DDD」モンスター3体をデッキに戻し…デッキから「DD」モンスター2体を手札に加える…私は「DD魔導賢者ガリレイ」「DD魔導賢者ケプラー」を手札に加える』

再びコストを踏み倒し、新たなモンスターを呼び込んだ零児…それは…彼の新たな力…!

 

 

 

「オレはカードを1枚伏せて、ターンエンド!!……アンタ、本当にすごいな!やる事為す事…全部、オレの想像を超えてる!この先…アンタがどうオレを驚かせてくれるのか楽しみだよ!」

 

『フッ…君こそ、見事だった!ペンデュラム召喚がどのようなものか、身をもって味あわせてもらったよ…』

お互いにプレイングを称え合う遊矢と零児、しかし…零児は鋭く遊矢を見据える…!

 

 

『次は…()()の番だ』

 

「えっ…?」

 

『榊遊矢…そして榊遊希…ペンデュラムが本当に()()2()()()()()()かどうか…その目で確かめるといい!!』

零児の言葉…その真意は──

 

 

 

 

 

『私はスケール1の「DD魔導賢者ガリレイ」とスケール10の「DD魔導賢者ケプラー」でペンデュラムスケールをセッティング!!』

 

 

PENDULUM!!

 

 

「「『『なんだって!?』』」」

その場にいた全員の声が重なる…遊矢と遊希しか持たぬはずの『ペンデュラム』…その力を零児は科学の力で手にしていた!!

 

 

『我が魂を揺らす大いなる力!この身に宿りて闇を切り裂く、新たな光となれ!!ペンデュラム召喚!!出現せよ!私のモンスター達!!全ての王をも統べる3体の超越神…「DDD死偉王ヘル・アーマゲドン」!』

光の中に現れた扉の中から闇の光が飛び出す…それは攻撃力3000を誇る零児の新たなエース、3体の王だった!

 

 

 

──────────────────────

 

 

「零児が、ペンデュラム召喚を…!?」

 

「うん…レオ・コーポレーションの力で作り上げた『プロトタイプ』のペンデュラムモンスターだって言ってた……本当にびっくりして、動揺したんだ…」

 

「……そうか…」

零児のペンデュラム召喚について聞いた遊希は遊矢を見る…その表情は何処か追い詰められたようだった。

 

 

「それで…どうなったんだ?」

 

「そこから零児が猛攻を仕掛けて来て…遊矢はアクションマジックを使ってなんとか凌いだんです…それで反撃しようとしたら…」

 

「『ヘル・アーマゲドン』は仲間が破壊されたら攻撃力が2倍になるって効果を持ってたんだ…それで、もうダメだ〜!って思ったら……」

そして柚子と遊矢はデュエルの顛末を語る…。

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

『いくぞ…私のターン!ドロー!』

圧倒的な力で遊矢を追い詰めた零児がカードを引く、その時だった!

 

 

バリ…バリバリバリ…ドォォン!!

 

 

『な、なにっ─!?』

 

「な、なんだ!?」

突然、零児のペンデュラムスケールにノイズか走る…そして不規則に数字が流れ、「ガリレイ」のスケールが2に、「ケプラー」のスケールが5に変化した瞬間…フィールドに残っていた『ヘルアーマゲドン』2体が崩壊してしまったのだ…!

 

 

『所詮プロトタイプ…まだ安定しないか……だが、この状況は…そうか……はは、ははは…!!』

一転して追い詰められた零児…だが、自分のフィールドを確認し…何かに気づいたのか笑い始めた…!

 

 

『何故、今まで気付かなかったのだ…?ペンデュラムも()()()ではない…()()()()()()ように、まだ先がある!!私にも見えたぞ!ペンデュラム召喚のさらなる進化を!!いま、それを実証して見せよう─!!』

 

「なっ…!?」

ペンデュラムの新たな可能性に気付いたらしい零児…彼はその先を見せようとした…だが…!

 

 

 

『な、なんですって!?』

 

「マルコ先生が!?」

 

『「っ…!?」』

突然、LDSチームの様子が慌ただしくなる…何かトラブルが起きたらしい…!

 

 

『どうした?………なんだと?…榊遊矢、この勝負…()()()!!』

 

「お、おい!?」

秘書から何かを聞いた零児は足早にアクションフィールドから離れようとする!

 

 

「待て!…アンタ、名前は…!」

 

『赤馬零児だ…覚えておくといい』

 

「赤馬…零児…」

遊矢に改めて自分の名を告げた零児は遊勝塾を去って行った……波乱はあったものの、遊勝塾は守られたのだった…。

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

「不慮のトラブルでLDSが撤退…か、確か…マルコという人は融合コースのカリスマ講師だったな…いったい何が…?」

 

「さっき、また沢渡に会ってさ…その人、誰かに襲われたらしいんだ、そのせいか分からないけど…LDSの大人がウロウロしてるし……」

 

「………」

 

「そうか…」

とりあえず、遊勝塾の無事を聞いて安堵する遊希…しかし、謎は深まるばかりだった…。

 

 

 

「とりあえず…目以外は軽症だから明日、明後日には退院させてくれるだろう…遊矢、洋子さんにも伝えておいてくれるか?」

 

「わかった!しっかり休んでくれよ遊希兄!」

遊勝塾の無事を伝えた遊矢は席を立つ…だが、その一方で柚子は少し表情が暗かった。

 

 

「……柚子ちゃん、1人で抱え込むのはきみの悪い癖だよ?……整理できたらいつでも話を聞いてあげるからね?」

 

「ありがとう、遊希さん……また来ます!」

遊希の言葉に笑って応えた柚子は遊矢と共に帰って行った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ちくしょう…人の事、気にしてる場合じゃ…ないよなぁ……」

遊矢達が帰った後…窓から見える夕陽を見ながら…遊希は泣いていた…。

 

 

「どうして…どうして、僕ばっかり…こんな目に遭うんだよ……僕が、何をしたっていうんだ…!!」

自身にばかり降り掛かる災厄に弱音を吐く遊希…その小さな嘆きは一人きりの病室に消えていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォーウ……》



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幕間〜反逆の牙と反逆の翼〜

『おかえりなさいませ!社長!理事長!』

 

「うむ…マルコ襲撃事件の詳細を聞かせろ」

 

『はい…』

遊勝塾から撤退し、LDS内の『司令室』へ戻って来た零児は発生したトラブル…LDSの講師・マルコへの襲撃事件について説明を求める。

 

 

『はい、事件が発生したのは舞網市のNLD-38地区…午後17時54分の事です、強力な()()()()()()()の反応を検知しました…!』

 

「エクシーズ…」

現場責任者の言葉を聞いた零児は眉間に皺を寄せる…これ程強力なエクシーズ召喚を使える者はエクシーズ次元の人間のみ…その時、凌牙は気を失っていたはずであると…。

 

 

「……マルコの()()は?」

 

「かなりの重傷です…レオ・コーポレーションの系列病院で治療中との事です……また『黒い翼』と言葉を残したと……」

 

「黒い翼……凌牙もその病院にいるはずだな?話を聞きに行くぞ」

 

『社長、お待ちください!…もう1つ、ご報告が…』

秘書である中島の言葉を聞いた零児は踵を返す…だが、それを止めたのは司令室の責任者だった。

 

「どうした?」

 

『襲撃事件の前、午後16時30分…市内のある場所で()()()()な程強力なエクシーズ召喚の反応…並びに舞網市で()()()()()()()4()相当の揺れを確認しました…その発生元はRIS-40…社長達もその場所にいたとお聞きしました……いったい何が…?』

 

「計測不能……か……」

責任者の言葉を聞いた零児はその時に行われていたデュエルを思い出す…荒ぶる海神と水晶の斧剣の衝突を…。

 

 

 

「その件は私に預けろ…私が直接、話を聞く……システムのアップグレードを急げ」

 

『……承知しました』

責任者にそう伝えた零児は病院へと向かった…。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

コンコンコン

 

 

『……開いてるぜ』

 

「失礼する…目が覚めたようで何よりだ、凌牙」

凌牙が目を覚ましてしばらくした頃、零児が病室にやって来た…。

 

 

『……遊勝塾はどうなった?』

 

「トラブルが起きてね、恥ずかしながら撤退したよ…もう少しで勝てたのだが…」

 

『ハッ、そうかよ……それで、俺は失格か?デュエルには勝てなかったしな』

 

「いいや、合格だとも…あれ程のデュエルを見せられてはな」

 

『そりゃどーも』

遊勝塾の顛末と試験の結果を訊ねる凌牙…零児は彼に合格を告げると、眼鏡を掛け直す。

 

 

「それより、君に聞きたい事がある…君がエクシーズ次元から連れて来た仲間に『黒い翼』を連想する者はいるか?」

 

『黒い翼………ああ、いるぜ……何かやらかしたか?』

 

「LDSの融合コースの講師を襲撃し、重傷を負わせた」

 

『……マジか……あの馬鹿…やっぱり、あの()()を渡さなくて正解だったぜ』

零児の言葉を聞いた凌牙は思わず頭を抱える…。

 

 

『俺はエクシーズ次元から2人の仲間と一緒に来た…1人は沢渡って奴と戦ったユート、そしてもう一人が…黒咲隼、鳥獣族モンスターの使い手だ』

 

「黒咲隼……君達は融合次元の侵攻に対するレジスタンスだと聞いた、何故LDSの講師を襲った?」

襲撃犯の正体を聞いた零児は凌牙に問いかける。

 

 

『……知っての通り、融合次元の奴らは「融合モンスター」をリアルソリッドビジョンで実体化させ、エクシーズ次元に攻め込んできた……そのせいでエクシーズ次元の人間は「融合召喚」そのものを嫌ってる……そして黒咲は……アカデミアに()()()()()()

 

「っ…!!」

凌牙の証言に零児は息を呑む、リアルソリッドビジョンを使った『戦争』…その様子がすぐに想像できてしまったからだ…。

 

 

『俺達がこのスタンダードに来たのは…「アカデミアとスタンダードが繋がっているらしい」って情報を得たからだ……そして捕らえたアカデミア兵のデュエルディスクを鹵獲・解析して…片道切符の次元転移装置でスタンダードに来た……まぁ、帰ろうと思えば()()()()()なるんだが……話が逸れたな……とにかく、黒咲は妹を奪ったアカデミア、そして「融合召喚」に強い敵意を持ってる…一応は説得しておいたんだが……悪かった』

 

「君が謝る必要はない……それは私の()の犯した罪によるものだ……すまない」

 

『……謝るのは俺も同じだ…すまねぇ、黒咲の奴は俺が止める』

 

「…そうしてくれるとありがたい、その黒咲という男もなかなかの実力のようだからな…」

お互いに謝罪しあう零児と凌牙…2人は黒咲の凶行を止める事を合意した…。

 

 

 

「……ところで、君にもう1つ確認したい事がある」

 

『なんだ?』

 

「君は……()()()エクシーズ次元の人間なのか?」

 

『ふっ…なんだよ?いきなり…』

零児は一転、鋭い目を凌牙に向ける…!

 

 

「先程の榊遊希とのデュエルで君が召喚したモンスター…その召喚エネルギーはレオ・コーポレーション最新鋭の機械でも計測しきれなかった……明らかにあのカードはこの次元…いいや、おそらくはどの次元にも存在しない程の力を持っている……君は()()だ?」

 

『……悪いな、それは()()話せねぇ……お前達には融合次元の対処に集中して欲しいからな』

 

「……融合次元以上の()の存在が…?」

 

『敵……いいや、そうじゃねぇ…とにかく融合次元を止めれば()()()()()は避けられるってだけだ……()()は世界を救う為にこの世界に来た…それは嘘じゃねぇ』

 

「……その言葉、信じるぞ」

零児の問いに意味深な事を伝える凌牙…その瞳は揺らがず…零児はその言葉を信じるしかなかった…。

 

 

 

 

『それから…頼みがある』

 

「なんだ?」

 

『榊遊希…あの人を、これ以上傷付けるような事はしないでくれ』

 

「……まさか、知り合いなのか?彼は記憶喪失だ…エクシーズ次元からやって来た、と?」

 

「あの人は俺の……俺達()()にとって1番大切な人……かも、しれねぇんだ」

 

『……?』

初めて穏やかな表情を見せた凌牙…零児はその瞳に『希望』を見たような気がした…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

『さて…と、とりあえず協力関係は締結できた……一旦、合流だな』

遊勝塾の戦いの翌日、退院した凌牙はとあるビルの屋上でデュエルディスクの通信機能を起動する。

 

 

『こちら凌牙!ユート、黒咲、聞こえるか?』

 

『聞こえるぞ』

 

『…なんだ』

通信に2人の少年が応える…だが、明らかに片方は機嫌が悪かった。

 

 

『LDSに関する情報を共有したい…埠頭の倉庫に集合してくれ』

 

『了解した』

 

『…わかった』

凌牙の呼び掛けに2人の少年は頷いた。

 

 

 

………

 

 

 

『なんだと…!?LDSと同盟を!?』

 

『ああ、あいつらは()()だ…融合次元とアカデミアとはまったく関係ない……むしろ、融合次元と戦う為の部隊を組織しているそうだ』

 

『信じられるか…!!融合召喚を使う奴らだぞ!?』

 

『落ち着け!隼!』

舞網市の倉庫街…そこで3人の少年達が話し合っていた…1人は凌牙、もう1人は紫色のメッシュが入った黒髪の少年、ユート…もう1人は長身のでフードを被ったような髪型をして、赤いスカーフで口元を隠した男…黒咲隼だった。

 

 

『黒咲、融合召喚を使うからって必ずしも「悪」ってわけじゃない…この次元に来る前に伝えたはずだ、そして…この次元の人々はまだ「戦争」を知らないと…』

 

『ああ、そうだろうな…!昨日、蹴散らした融合使いからは鉄の意思も、鋼の強さも感じなかった…!!この次元の奴らは腑抜けばかりだ!!』

 

『……それで良いんだ、本当の意味の「戦争」なんて知らないほうが良い……知るのは戦う()()がある奴だけで十分だ』

 

『…貴方が言うと説得力が違うな、凌牙……流石はレジスタンスの()()のリーダーだ』

『融合召喚』を使うと言うだけでLDSを敵視する黒咲を凌牙が宥め…ユートはその言葉に頷く…。

 

 

『そして…LDSの科学力はなかなかのモンだ…力を借りれば()()()()されちまった人達を助ける近道になるはずだ……分かってるだろ?』

 

『くっ…』

 

『隼…』

凌牙の言葉に黒咲は顔を歪める。

 

 

『人間のカード化』…それが融合次元の齎した1番の災厄なのだ…。

 

 

『カイ……天城に研究を任せるのも限界がある……これより、俺達レジスタンス代表はLDSの「対融合次元部隊」に合流、来るべき戦いに備える!』

 

『くっ…分かった…!』

 

『了解だ』

凌牙の言葉に黒咲は渋々…ユートは静かに頷いた…。

 

 

 

 

 

「お願い!!私に融合召喚を教えて!!」

 

「えぇっ!?ここで!?」

 

「お願い…!強くなりたいの!!」

 

 

 

 

『『っ…この声は…!?』』

話が纏まったその時、倉庫街に少女の声が響く…その声を聞いた黒咲とユートは顔色を変える…!

 

 

『瑠璃…!瑠璃─!!』

 

『っ…!待て!黒咲!!』

 

『この声…しまった、柊柚子か…!!』

血相を変えて飛び出して行く黒咲…その行動を見た凌牙はその()()に気が付いた…。

 

 

 

 

Side柚子

 

 

 

「お願い…!私も、遊勝塾を守る為の力になりたいの…!!あの光津真澄に勝ちたい!」

 

「だから…同じ融合使いのボクから融合召喚を習いたいの…?」

 

「そうなの…!お願い!!」

 

同じ頃、とある倉庫で柚子が年下である素良に頭を下げていた…遊勝塾防衛戦で役に立てなかった柚子、彼女は真澄へのリベンジ…そして遊勝塾を守る力を手にする為、融合使いである素良に修行を頼んでいた…。

 

 

「ど、どうしようかな…ボクが教えたら()()()()()()()()()()…」

 

「それなら良いじゃない!お願い!!」

柚子に頼まれるも、何故か渋る素良…その時だった!

 

 

ガラガラガラ!! 

 

 

『瑠璃!!』

 

「「えっ?!」」

倉庫の扉が勢いよく開き…明らかに不審者と思われる男が姿を現した!

 

 

『瑠璃…!なぜ、ここに…!逃げたのか?自力で脱出を…!?』

 

「えっ…?だ、誰…!?」

不審者…黒咲はスカーフとゴーグルを取って柚子に歩み寄る…その様子は探していた大切な人を見つけたようだった…だが、柚子は()()()()()()…事態に戸惑っていたその時───

 

 

ゴスッ!

 

 

『かはっ…!?』

 

『落ち着け、黒咲…その子は()()()()じゃない…!』

 

「あ、あなた…LDSの…!?」

 

「(今の動き…()()()()()()()…!?)」

 

その時、柚子を庇うように現れた人影が黒咲の腹に拳を叩き込む……その人物は遊勝塾とLDSの戦いの際に遊希と戦った人物……凌牙だった。

 

 

『悪かったな、コイツの()()()だ……コイツの妹が…お前とよく似た顔をしてるんだ』

 

「あ…そうなん、ですか…?」

失神した黒咲を支えた凌牙が柚子に理由を告げる…その表情はデュエルの時と違い、穏やかなものだった。

 

 

『凌牙!隼!大丈……きみは…!』

 

「あっ…!?あの時のエクシーズ使い!?」

続いてやって来たのは沢渡と戦ったエクシーズ使い、ユート…2人は思わぬ再会を果たした…。

 

『……ユート、黒咲を連れてBポイントへ行け…お前がいると話がややこしくなる』

 

『……わかった、説明は任せる』

凌牙から黒咲の身柄を受け取ったユートはすぐにその場を離れた…。

 

 

『……柊柚子、それに…紫雲院素良…だったな、見ての通り、2人は俺の仲間だ……この前は危ない目に遭わせて悪かったな……あの人は……榊遊希はどうしてる?』

 

「……遊希さんは……まだ、病院で眠ってるわ」

 

『……そうか……俺達はLDSに所属する事になった…そのうち、また会う事もあるだろう……()()()()()

 

「えっ…?」

凌牙はそう語りかけて踵を返す…。

 

 

『もし、困った事があれば……あの人を頼れ、あの人はきっとお前達を助けてくれる──』

そう言うと凌牙は姿を消してしまった…。

 

 

「いったい、なんだったの…?」

 

「(あの3人、明らかにこの世界の人じゃないね……気を付けようか……)」

突然の事に戸惑う柚子…そして素良は彼らへの警戒を強めていた…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

『凌牙、聞きたい事がある……少し嬉しそうに見えるが…気の所為か?』

 

『ん……ああ、ちょっとな…』

少し時間が経ち…黒咲を看病していたユートが凌牙に訊ねる。

 

 

『前に少し話しただろ?「1人で融合次元を相手にできるデュエリスト」がいるってさ……』

 

『まさか、見つけたのか!?』

 

『ああ……でも、記憶も力も…全部失っちまってた……でも、きっとあの人は戻ってくる…!俺のデュエルで、きっと…!』

ユートに『希望』を見つけた事を伝えた凌牙は拳を握る…。

 

 

 

『(父さんが目指した『最善』…俺が少しでも助けになる…!次は舞網チャンピオンシップスの融合次元襲来…それまでに、なんとか…!)』

『1つ目』の運命を変えた凌牙…最善を目指す()()の戦いは始まったばかりである…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン─

 

 

《フォウ、フォーウ!》

 

『おっ…来てたのか、フォウ……あの人は病院にいる……頼んだぜ』

 

《フォウ!》

 

そして…『英雄』の愛猫がこの次元へと足を踏み入れた…。



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Ep.9 誇り高きドラゴン使い〜記憶の欠片〜

『遊希…!なんだ、その怪我は…』

 

「海馬社長、これは…」

 

『なんだと聞いている!!』

KCの社長室に怒号が響く…それは退院した遊希を呼び出した海馬のものだった…。

 

 

 

『赤馬め…!遊勝塾を狙ったばかりか…遊希の視力を奪っただと…!?この所業…許してはおけん!!』

 

「か、海馬社長!落ち着いてください!!生活が少し不便になっただけですから…!」

LDSとの戦いによって左目の光を失った遊希が海馬を宥める…なお、左目は眼帯代わりの黒いバンダナで覆って隠している…。

 

 

「あの()()は僕の弱さが招いた事です…LDSも、戦った凌牙も悪くありません…!」

 

『……フン……柊塾長から記録映像は見せて貰った……確かに、お前の弱さも一因なのだろう……だが、あまりにも()()()な事が多すぎる!!』

海馬は修造がたまたま録画していた記録を見た…そこには遊希が頭を打った直後からの異常もしっかり記録されていた…。

 

 

 

『まずは、お前が持たぬはずのエクシーズモンスターの召喚……そしてそのカードはお前の手元から()()()だと?』

 

「はい…デッキやデュエルディスクにも、デュエルフィールドにもありませんでした……デュエル記録もノイズ混じりで…」

遊希が召喚した正体不明の『エクシーズモンスター』…それは遊希の手元から失われていた、まるで…遊希の窮地を救う為だけに現れたように…。

 

 

『そして…相手が使用した「No.」なるカード…あれは()()だ…!貴様のエクシーズモンスターと衝突した同時刻に舞網市で地震を観測した…しかも、召喚エネルギーも()()()()だと?レオ・コーポレーションの新カードにしても不可解だ!さらに、プレイヤーへの想定以上のダメージ?……危険にも程がある!!』

通常、リアルソリッドビジョンにはリミッターがある…どんなデュエルでも大きな怪我をしないシステムになっているはずなのだ…それが実際に大怪我を負わせたばかりか、地震すら起こす…それはありえない事態だった。

 

『…モクバ!調査班にレオ・コーポレーションを探らせろ!奴らが何を考えているのか掴むのだ!』

 

『わかったよ!兄さま!』

海馬はモクバへ調査班への任務を伝えに行かせた…。

 

 

 

『そして…次はお前だ、遊希……次の舞網チャンピオンシップスまで約1ヶ月……現在の戦績は?』

 

「えっと…48戦36勝12敗、だったと…」

 

『舞網チャンピオンシップスの出場条件は『ジュニアユース相手の公式戦50戦以上で勝率6割以上』または『公式戦6連勝』…仮に、残り2戦負けたとしてもお前は出場資格を得る事ができる…それは分かっているな?』

 

「……はい」

舞網チャンピオンシップス…それはプロデュエリストになる為の『登竜門』の1つである。

 

日本でプロデュエリストになる為には舞網チャンピオンシップスを始めとした大会でまず『ジュニアユース』部門で優勝、そして『ユース』部門に昇格し…最後にプロテストに合格する事で、正式にプロとして認められるのだ。

 

 

 

『遊希、舞網チャンピオンシップスにおけるデュエルは「アクションデュエル」…視覚の半分を失ったお前にとってはかなりの不利を強いられる…それは分かっているな?』

 

「はい…!それでも、僕は舞網チャンピオンシップスに挑むつもりです…それが、遊勝塾の為になると思うんです…!」

片眼を失ってなお、遊希は舞網チャンピオンシップスに挑もうとしていた…遊矢と共に『ペンデュラム召喚』を得た今こそ…遊勝塾を盛り立てる事ができると思ったからだ。

 

 

『フン…榊遊矢も舞網デュエル協会からの推薦出場を蹴って、自力で出場しようとしているという話は聞いている……良いだろう、残り2戦…お前の戦う相手はKCで都合してやる』

 

「ありがとうございます!」

 

『ただし、その前に……俺に力を見せてもらうぞ!!』

海馬は机のスイッチを起動…すると社長室の壁が開き、デュエルフィールドが現れる!

 

 

 

『プロデュエリストの資格を持つ俺に勝てとは言わん…お前が操るペンデュラム召喚、そして片眼を失ってなお戦い続けるという覚悟…それをこの俺に示してみろ!!』

 

「……分かりました…!胸を借ります、海馬社長!!」

遊希は右腕にデュエルディスクを装着…海馬と対峙する!!

 

 

『磯野!デュエル開始の宣言をしろ!』

 

『はっ…!…デュエル、開始ィィ!!』

社長秘書たる磯野の宣言の下、2人のデュエルが始まった…!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

海馬LP4000

遊希LP4000

 

 

 

『先攻は貰うぞ!俺のターン!』

『「ロード・オブ・ドラゴン─ドラゴンの統制者」を召喚!』

白き龍を模したギターを持つ魔人が現れる! ATK1200

 

 

『「ドラゴンの統制者」の効果発動!召喚に成功した時、手札の魔法カード「クロス・ソウル」を墓地に送る事でデッキから魔法カード「ドラゴンを呼ぶ笛」を手札に加える!そしてそのまま魔法カード「ドラゴンを呼ぶ笛」を発動!このカードは自分フィールドに「ロード・オブ・ドラゴン─ドラゴンの支配者」が存在する時にのみ、発動できるが…「ドラゴンの統制者」はフィールドに存在する限り「ドラゴンの支配者」として扱う効果を持つ!手札から現れろ!俺の魂…!俺のプライド!!2体の「青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)」─!!』

 

「いきなりですか!?」

統制者が手にした角笛を吹き鳴らす…その音色に導かれ、世界に4枚しか存在せぬ「最強のドラゴン」…2体の白き龍が咆哮と共に降臨する! ATK3000 3000

 

 

『まだだ!俺の新たな力を見せてやろう!チューナーモンスター「太古の白石(ホワイト・オブ・エンシェント)」を召喚!』

 

「チューナー…!?」

卵にも見える巨大な白い石が現れる! ATK600

 

 

『俺はレベル8の「青眼の白龍」にレベル1の「太古の白石」をチューニング!!』

 

 

8+1=9

 

『我が魂よ…聖なる光と共に守護の力を手にせよ!シンクロ召喚!レベル9「蒼眼の銀龍」!!』

青眼の白龍がシンクロの輪に飛び込み新生…鮮やかな蒼い瞳を持つドラゴンへ進化する! DEF3000

 

「シンクロ召喚…!」

 

『零児は複数の召喚法を操る…だが、それは奴だけのものではないわ!!俺はこれでターンエンド…だが、この瞬間!墓地の「太古の白石」の効果発動!このカードが墓地に送られたエンドフェイズ、デッキからブルーアイズと名のつくモンスターを特殊召喚する!デッキから現れろ!3体目の「青眼の白龍」!!』

 

「っ─!?」

海馬のフィールドに3体目の白龍が降臨する! ATK3000

 

 

海馬LP4000

統制者 青眼の白龍 青眼の白龍 蒼眼の銀龍 手札0

 

 

 

『さぁ…!全力で掛かってこい!!』

 

「うぅっ…病み上がりでも容赦ないなぁ!!」

腕を組んでブルーアイズと共に遊希を待ち構える海馬…容赦のない彼に遊希は挑む!

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「よし…!僕はスケール1の『龍脈の魔術師』とスケール8の『龍穴の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

PENDULUM!!

 

遊希の背後に光の柱が立ち上がり、その中に少年魔術師と若き天才魔術師が浮遊する!

 

 

「これで僕はレベル2から8のモンスターが同時に召喚可能!!揺れろ!希望のペンデュラム!全能の軌跡よ、歴史を刻め!ペンデュラム召喚!手札から現れろ!レベル3『EMウィム・ウィッチ』!レベル7『EMスライハンド・マジシャン』!」

赤のペンデュラムの軌跡の中からネコじゃらしの杖を持つネコ魔法使い、そして水晶玉を持つ道化魔術師が現れる! ATK800 2500

 

 

「更に装備魔法『ワンダー・ワンド』を『ウィムウィッチ』に装備!さらに効果発動!装備モンスターをリリースする事で2ドロー!」

 

『フン…フィールドから墓地に送られたペンデュラムモンスターはエクストラデッキへ行く、悪くないコンボだ』

桃色のネコが杖を振るい、遊希の手札を補充する!

 

 

「そして『スライハンドマジシャン』の効果発動!手札の『EMスプリングース』を捨て、相手フィールドの表側表示のカード1枚を破壊する!『青眼の白龍』を破壊!」

 

『無駄だ!「蒼眼の銀龍」の効果により、フィールドのドラゴン族モンスターは効果対象にならず、破壊もされん!!』

 

「なら、『ドラゴンの統制者』を破壊!!」

スライハンドマジシャンの水晶玉がドラゴンの統制者を粉砕する!

 

「さらに装備魔法『バウンド・ワンド』を『スライハンドマジシャン』に装備!攻撃力をレベル×100ポイントアップする!700アップだ!」

赤い宝玉の付いた杖がスライハンドマジシャンを強化する!

 

スライハンドマジシャンATK2500→3200

 

「バトル!『スライハンドマジシャン』で『青眼の白龍』を攻撃!!」

 

『チィ…!我が魂を砕くか…!!』

魔力弾がブルーアイズを粉砕する!

 

海馬LP4000→3800

 

 

「僕は…これでターンエンド!」

 

遊希LP4000

スライハンドマジシャン(バウンドワンド) (Pスケール 龍脈 龍穴) 手札1

 

 

 

『相変わらずだな遊希…魔法使いに様々な装備魔法を装備・強化し相手を攻める…遊戯戦での応酬は見事だった…だが!圧倒的力の前には通じぬ!!』

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『スタンバイフェイズに「蒼眼の銀龍」の効果発動!墓地より甦れ…!「青眼の白龍」!!』

 

「ブルーアイズが復活した!?」

銀龍の咆哮が轟き、墓地から白き龍が復活する! ATK3000

 

 

『さらに魔法カード「アドバンスドロー」を発動!フィールドのレベル8以上のモンスター1体をリリースし、カードを2枚ドローする!俺は「蒼眼の銀龍」をリリースし、2ドロー!』

銀龍が粒子に変わり…新たな手札を導く!

 

 

『フン…運命は俺に味方しているようだ!墓地の「太古の白石」の第二の効果発動!自身を除外する事で墓地の「青眼の白龍」を手札に戻す!…そして、手札の「青眼の白龍」を相手に見せる事でこのモンスターは特殊召喚できる!我が魂よ…新たな下僕を導くがいい!|「青眼の亜白龍」《ブルーアイズ・オルタナティブ・ホワイト・ドラゴン》!!』

 

「新しい、ブルーアイズ…!」

海馬の頭上に異次元への扉が開き、新たなる白き龍が現れる! ATK3000

 

 

『俺は「亜白龍」の効果発動!このターンの攻撃を封じる代わりに相手モンスター1体を破壊する!「スライハンドマジシャン」を粉砕せよ!!』

 

「っ…!装備魔法『バウンドワンド』の効果発動!装備モンスターが相手によって破壊され、このカードが墓地に送られた時、装備モンスターを特殊召喚する!」

破壊の奔流に呑まれた道化魔術師が杖の魔力で復活する! DEF2000

 

『バトルだ!1体目の「青眼の白龍」で「スライハンドマジシャン」を攻撃!滅びのバースト・ストリーム!!』

 

「くっ─!!」

破壊の奔流がスライハンドマジシャンを滅却する!

 

 

『その身で受け止めてみせろ!2体目の「青眼の白龍」でダイレクトアタック!!』

 

「まだだ!手札の『EMクリボーダー』の効果発動!ダイレクトアタックを受ける時、手札のこのカードを特殊召喚し、攻撃対象をこのカードに変更する!」

横縞模様の帽子を被った毛玉が現れる! ATK300

 

 

『そのモンスターごと蹴散らしてくれる!滅びのバーストストリィィム!!』

 

「『クリボーダー』のさらなる効果発動!戦闘でダメージを受ける時、その代わりにその数値分ダメージを回復する!!」

 

『むっ─!?』

攻撃を受け止めたクリボーダーがくす玉のように破裂…飛び出した紙吹雪が遊希のライフを回復させる!

 

遊希LP4000→6700

 

 

『よく防いだな…俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!』

 

海馬LP3800

青眼の白龍 青眼の白龍 亜白龍 伏せ1 手札1

 

 

 

「っ…(ブルーアイズ達の攻撃力は合計9000…なんとか、活路を…!!)」

 

『ふん…(窮地を前にしても遊希の瞳に諦めの色は無い……貴様が記憶を失う前は…どんな男だったのだ?)』

立ちはだかる3体のドラゴンを前に冷や汗を流す遊希…その様子を観察しながら、海馬は記憶を失う前の彼の事を考えた…。

 

 

 

「僕のターン、ドロー!」

「っ…僕は再び『龍脈の魔術師』と『龍穴の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから来い!『EMウィム・ウィッチ』!」

ペンデュラムの軌跡と共に、再び桃色のネコ魔法使いが現れる! DEF800

 

 

「僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド…!」

 

遊希LP6700

ウィムウィッチ (Pスケール 龍脈 龍穴) 伏せ1 手札0

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『その程度の守りで俺を止められると思うな!!魔法カード発動!「スタンピング・クラッシュ」!自分のフィールドにドラゴン族が存在する時!お前の伏せカードを破壊し、500ダメージを与える!』

 

「ぐうっ…!?『ガード・ブロック』が…!」

 

『「亜白龍」の効果発動!「ウィムウィッチ」を粉砕せよ!!』

 

「くっ…!!」

海馬の怒濤の連撃が遊希の場をガラ空きにする!

 

遊希LP6700→6200

 

 

『2体の「青眼の白龍」でダイレクトアタック!滅びのバースト・ストリィィム!!』

 

「っ…!がああああっ…!!」

破壊の奔流が容赦なく遊希のライフを削り取る!!

 

遊希LP6200→3200→200

 

 

『俺はこれでターンエンドだ』

 

海馬LP3800

青眼の白龍 青眼の白龍 亜白龍 伏せ1 手札0

 

 

 

『どうした遊希!息が上がっているぞ?これは通常のソリッドビジョン…この程度で息が上がっているのなら、リアルソリッドビジョンで行われるアクションデュエルで勝利を掴む事などできんぞ!!』

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!」

海馬は息を切らせる遊希を叱咤する…さらなる傷を負い、視力を奪われ…利き腕の自由も効かなくなっている遊希は…体力も精神力も限界だった…。

 

 

「(海馬社長は…僕に期待してくれてる……応えなきゃ……これ以上、心配させないように……これ以上…負けない為、に……)」

 

 

ドクン!!

 

意識が朦朧とする遊希…その時、何かが遊希の中から溢れ出した…!

 

 

 

 

「おれのターン…ドロー…」

「ペンデュラム、召喚……手札からレベル4『虹彩の魔術師』…エクストラデッキから『EMウィムウィッチ』…」

 

『っ…!?遊希…!?』

赤のペンデュラムが不規則に揺れ動き、赤いローブを纏う魔法剣士と桃色のネコが現れる! ATK1500 800

 

 

『遊希!!返事をしろ!!正気に戻れ!!』

 

「おれは、レベル4の『虹彩の魔術師』『ウィムウィッチ』で、オーバーレイ…エクシーズ…召喚…」

遊希の異変に気付いた海馬社長が叫ぶ…だが、その言葉は届かず…遊希は胸の中から飛び出したカードをデュエルディスクに叩き付けた…!!

 

 

むげん

 

 

「『No.むげん』『■■■■■■(デュエル・ガーディアン)』」

 

『このモンスターは…!映像に現れた…!?』

光の大爆発と共に正体不明のエクシーズモンスター…水晶の斧剣が遊希の手に握られる! ATK2500

 

 

ビビーッ!ビビーッ!

 

『し、社長!!エネルギー値が急上昇…あのモンスターは実体化しています!!』

 

『っ…!!(確かに凄まじい威圧感だ…これは不味い!!)』

磯野が緊急事態を海馬に伝える、それと共に海馬は剣から放たれる圧力に恐怖を抱く…!

 

『この手は使いたくはなかったが…!速攻魔法「究極融合(アルティメット・フュージョン)」を発動!フィールドの「青眼の白龍」2体と「青眼の白龍」として扱う「亜白龍」をデッキに戻し、融合!!現われよ!我が最終兵器!「青眼の究極竜」!!』

映像から危険を感じ取った海馬は最強の下僕…3つの頭を持つ最強のドラゴンを呼び出す! ATK4500

 

『「究極融合」の融合素材にフィールドの「青眼の白龍」を使ったとき、その数まで相手の表側表示のカードを破壊する!破壊するのは『デュエル・ガーディアン』とPスケールのカード2枚!正気に戻れ!!アルティメット・バーストォ!!』

 

「っ──!?」

究極の破壊の奔流が遊希のフィールドのカード全てを消し飛ばした…!!

 

 

 

 

「………あ、れ…?僕は…?」

 

『……どうやら、正気に戻ったようだな…』

水晶の剣を失った遊希の目に光が戻る……その様子を見た海馬は冷や汗を拭う…。

 

 

「海馬社長……えっ…?『青眼の究極竜』……なんで…?」

 

『フン…試験開発中の融合カードを使い、お前の場のカードを粉砕したのだ!早くターンを進めろ!!』

 

「えっ…あ……ターン、エンド…?」

状況がよく分からないまま…遊希はターンを終えた…。

 

遊希LP200

手札0

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『「究極竜」でダイレクトアタック!アルティメット・バースト!!』

 

「う、うわあああああっ!?」

 

 

 

遊希LP0

 

海馬WIN!

 

 

 

 

 

『この大馬鹿者が!デュエルに熱くなるあまりに自分を見失うな!!』

 

「……えっと…すいません、でした…」

デュエルが終わり、遊希は海馬にお叱りを受ける…デュエル終盤の記憶はごっそり抜け落ちていた…。

 

 

『まぁ…お前の覚悟は確かに見せて貰った、身体を休めつつ戦いに備えよ!……立てるか?』

 

「あ…すいません…ありがとうございます」

究極竜の迫力に尻もちをついていた遊希は海馬の手を借りて立ち上がる────

 

 

バチッ…!

 

 

 

 

 

 

 

──海馬さん…すいません…失敗しました…まさか…こんな事になる、なんて…──

 

──今はいい!さっさと体を治せ!…遊戯!こうなればお前に頼るしかあるまい!邪神の奪還を──

 

 

 

 

──こやつは俺の認めた決闘者だ!ルール違反をする筈が無いだろう愚か者!──

 

 

 

 

──フン……禍々しい姿だが、意識はあるようだな遊海!街の住民は避難させてある!存分に戦え!童実野町を守るのは俺達の役目だ!!若造にばかり任せられるか!──

 

 

 

 

 

 

──見せてくれ、遊海…お前の中で燃えつづける「決闘者魂」を…!──

 

 

 

 

 

 

 

「──社長…?海馬社長!大丈夫ですか…?」

 

『むっ…いかんな、久々のデュエルで少し疲れたらしい』

遊希の手に触れた瞬間、海馬の『魂』を何かが駆け巡った…僅かな間、固まっていたらしく遊希が心配そうな顔で覗き込んでいる…。

 

 

『……遊希、確か…貴様の所持品に壊れたデュエルディスクがあったらしいな?』

 

「あっ…はい…舞網の規格じゃないタイプで、まったく動かないんです…」

遊希はショルダーバッグからボロボロのデュエルディスクを取り出す。

 

 

『KCで修理してやる…少し預けろ、記憶の手がかりがあるやもしれん』

 

「あ、ありがとうございます!助かります!」

海馬の言葉に遊希はデュエルディスクを手渡した。

 

『対戦相手の連絡は追ってする、今日は休め』

 

「はい!海馬社長の期待に応えられるよう、しっかり休んで頑張ります!!」

 

『ああ、当たり前だ……()()

海馬社長の言葉に遊希は気合いを入れ直したのだった…。

 

 

 

 

 

Side遊希

 

 

「はぁ…疲れた……少し海馬社長の事怒らせちゃったかな…?最後、少し怒ってた感じがしたし…」

海馬と別れた遊希はKCを後にする…身体は凄まじいだるさに襲われている…。

 

「でも、本当にどうしよう…こんな身体で、戦えるのか…?………いや、頑張らなきゃ!遊勝さんに笑われちゃうからな!!」

ボロボロの身体を省みて不安を口にする遊希…そんな時…。

 

 

《フォウ…フォ〜ウ》

 

「ん…?」

聞き慣れない声を聞いた遊希は辺りを見回す…そして、その獣の姿を見つけた。

 

 

白くふわふわの尻尾を持ち、全身がふわふわ…そして小さなスカーフを首に巻いた白い子猫……その子が遊希の足元にじゃれていたのだ。

 

 

「きみ、見かけない子だね?どこから来たの?」

 

《フォ〜ウ…》

しゃがみこんだ遊希は小さな猫を優しく撫でる…その薄紫色の瞳は悲しげに遊希を見つめている…。

 

 

「よかったらウチに来るかい?ウチのママさん…洋子さんは困ってる子が放っておけない人でね…もう5匹も犬や猫を引き取ってるんだ……きっと寂しくないよ?」

 

《フォウ、フォウ!》

 

「わぷっ!?いきなり頭か〜…誰かの飼い猫だったのかなぁ…?」

遊希の言葉を聞いた子猫は遊希の白い頭に飛び乗る…遊希は苦笑しながら新しい家族と歩き始めた…。

 

 

「よろしくね!え〜っと……鳴き声が珍しいから……フォウくん!……ちゃんかな?」

 

《キャウ!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ああ…そうだった……そうだったな…!我らはこの為に…新たな(ロード)を歩き始めたのだ』

 

 

 

『……()()()のは俺だけ……いいや、凌牙……お前の息子もか……いずれ、他の奴らも……』

 

 

 

『……安心しろ、俺達はお前に守られてばかりだった……ならば、今のお前を守るのは…俺の役目だ』

 

 

 

『…早く戻って来い』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………遊海』



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Ep.10 美しきデュエル〜華麗なるハーピィ使い〜

「よーし、これで完ぺきだ…明日からの4連戦、このデッキで必ず勝ち抜く…!そして、プロへの第一歩を踏み出すんだ!」

 

とある夜、遊矢は自室でデッキ構築に勤しんでいた…元チャンピオン・ストロング石島の付き人ニコ・スマイリーのお膳立てで舞網チャンピオンシップスへの出場資格を得る為のデュエルを出来る事になった遊矢は万全の体制で戦いに備えていた…。

 

 

──私にも見えたぞ…!ペンデュラム召喚の新たな進化の可能性が…!!──

 

 

「……()()()にも、絶対負けない…!」

その時、遊矢が思い出したのは…三人目のペンデュラム使い、赤馬零児の顔…『ペンデュラム召喚の進化』……その意味はまだ分からないままだった…。

 

 

 

………

 

 

 

「ふぅ…スッキリした!しっかり寝れたから…次は腹ごしらえだな」

翌朝、しっかりと睡眠を取り、身支度を整えた遊矢はダイニングへと向かう、そこへ…。

 

 

《アン!アンアン!!》

 

《ブニャ〜》

 

「あ、おはようアン!コール!」

榊家のペット…コーギー犬のアン、少し太めな白猫のコールを始めとした彼らがやって来た。

 

「うんうんワットもキロも……あれっ?()()増えてる!?……母さん、また拾ってきたな…?(汗)」

マルチーズのワット、ブルドッグのキロ…さらに見慣れない三毛猫とチョビ髭の模様のあるブチ猫…そして白いふわふわとした毛並みの白い子猫がやって来る…その3匹は遊矢の知らない猫達だった。

 

 

「お前…なんだか珍しい毛並みだなぁ…?おいで!」

 

《………フォウ》プィッ

 

「あれれ?嫌われてるのかなぁ…オレ、動物には好かれる方なのに…」

ふわふわの子猫を抱き上げようとした遊矢だが…そっぽを向いた子猫はダイニングへと向かってしまった。

 

 

 

 

 

『あっ、おはよう遊矢!』

 

「おはよう素良…って、すっかりウチに馴染んでるな…」

 

『まぁまぁ、ボクと遊矢は友達なんだから〜』

ダイニングにやって来た遊矢を迎えたのは半分居候になっている素良だった、その横では…。

 

 

「おはよう遊矢!よく寝れたか?」

 

「おはよう遊希兄!ぐっすり眠れた!」

 

「よかった…その顔なら大丈夫そうだな」

 

《フォウ》

以前にも増して強面になり、黒いバンダナで左眼を隠した遊希が朝食の準備をしていた…その頭には先程の白い子猫が乗っている…。

 

 

 

「遊矢は4連戦で4連勝、素良君は6連勝…2人とも、厳しい戦いだけど頑張るんだぞ?」

 

『そんな心配しないでよ遊希!全然余裕だからさ!』

 

「えっと遊希兄は…勝ち負け関係なく2連戦で良いんだっけ?」

 

「ああ…ただ、対戦相手を用意してくれるのが海馬社長だから…どんな人と戦うのかなぁ?なっ?フォウくん」

 

《フォウ、フォ〜ウ!》

遊希は厳しい戦いを前にする遊矢と素良を激励するが…自分の相手に対しては少し不安なのか、子猫…フォウくんへと問い掛けている…。

 

 

「その猫、遊希兄には懐いてるんだ?」

 

『そうなんだよ!ボクも撫でようとしたら逃げ出すし…気難しい子みたいだよ?』

 

「う〜ん?洋子さんには懐くんだけどなぁ?」

 

《フォウ…フォウ、フォーウ……》

遊希や洋子にだけ懐くフォウくんに3人は首を傾げたのだった。

  

 

 

「それより…母さん!朝ごはんまだ〜?」

 

「ちょっと待って〜!いま、ミッチーのミルフィーユトンカツとスペシャルサラダを作ってるから〜!」

 

「うへっ…そんな手間の掛かる奴じゃなくて、いつものパンケーキが良いのに…」

 

「最近話題の少年シェフ、茂古田未知夫の新メニューなんだってさ…さっきから失敗ばっかりみたいで…」

 

「えぇ〜!?集合時間9時なのに〜!?」

 

『……ボクは練乳舐〜めよ』

少し慌ただしく…それでも平和な朝は穏やかに過ぎていった…。

 

 

 

………

 

 

 

「ふぅ、洋子さんのミルフィーユトンカツ美味しかった!遊矢も食べていけばよかったのに…」

少し後、遊希は海馬社長に指定された住所へと向かっていた。

結局、遊矢は朝ごはんを食べずに家を飛び出してしまい…洋子がちょい足しした「ミルフィーユトンカツのパンケーキサンド」を持って対戦相手のいる『霧隠料理スクール』へと向かっていった…。

 

 

 

 

「おう!待ってたぜ、遊希!」

 

「おはよう!モクバ君、海馬社長の代理かな?」

 

「その通り!兄さまは忙しいからな、オレが見届け人さ!」

しばらくして遊希は集合場所に到着…そこではモクバが見届け人として遊希を待っていた。

 

 

「それよりさ…なんで頭にネコ乗せてんだ?」

 

「えっ…フォウくん!?付いて来ちゃったの!?」

 

《フォウ!フォーウ!!》

モクバの指摘に遊希が頭に手を乗せる…そこには家に置いて来たはずのフォウが乗っていたのだ。

 

 

「やけにいつもより視線を感じると思ったら……まったく、迷惑かけちゃダメだぞ?」

 

《フォウ!》

遊希の言葉に元気よく鳴くフォウなのだった…。

 

 

 

「まぁ、最近はペットと一緒のアクションデュエルもあるって言うし…良いんじゃね?それより…今日の対戦相手は…この『美しきデュエル塾』の奴だぜぃ!」

 

「美しきデュエル塾…確か、女性モンスター主力のデュエリストが多いデュエル塾だったね」

モクバの指差す方向…そこには美容院にも見えるお洒落なデュエル塾があった。

 

「じゃあ…さっそく乗り込むぜ!」

 

「うん!よろしくね!」

モクバと共に遊希は塾へと乗り込んだ…!

 

 

 

 

 

『誰かと思えば…アンタがあたしの対戦相手かい?』

 

「あっ…孔雀先輩!?」

美容院のような内装の教室を抜けた先、そこで待っていたのは胸元の開いた紫の服を着たウェーブのかかった金髪の美人、孔雀舞だった…遊希達の2学年上の先輩である。

 

 

『アンタの話は城之内から聞いてる、傷だらけでも戦い続ける漢だってね……それより、その左眼はどうしたんだい?』

 

「ああ…ちょっとアクションデュエルの事故で……支障はほとんどないので気にしないでください…」

 

『アンタも難儀な運命だね……でも、手は抜かないよ!全力で挑んできな!』

 

「はい…!全力で戦います!!」

デュエルフィールドで2人は向かい合う!

 

 

『アクションフィールド「鳥人の狩場」発動!』

そしてリアルソリッドビジョンが起動…周囲の景色が青空の広がる山岳地帯へと変化する!

 

 

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

『モンスターと共に地を駆け、宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!』

 

「これぞ、デュエルの最強進化系!アクショーン!!」

 

 

「『デュエル!!』」

遊希と舞の言葉と共にアクションカードが散らばる…2人のデュエルが始まった!

 

 

 

 

遊希LP4000

舞LP4000

 

 

アクションデュエル アクションフィールド『鳥人の狩場』発動中

 

・アクションカードは1枚しか手札に加えられない。

 

 

 

 

「先攻は僕か…!僕のターン!」

「『EMユニ』を召喚!」

ウマの尻尾を持つ少女が現れる! ATK800

 

「そして『ユニ』の効果発動!召喚・特殊召喚に成功した時、手札からレベル3以下の『EM』を攻撃表示で特殊召喚できる!来い!『EMコン』!」

青い髪のユニコーンの角を生やした少女が現れる! ATK600

 

 

「『コン』の効果発動!フィールドの攻撃力1000以下の『EM』と一緒に守備表示にする事でデッキから『オッドアイズ』モンスター…『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』を手札に加える!」

ユニとコンがしゃがみこみ、遊希の手札にカードを導く!

 

ユニATK800→DEF1500

 

コンATK600→DEF1000

 

 

「いくぞ…!手札からスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 

PENDULUM!!

 

 

遊希の背後に光の柱が立ち上がり、その中に赤と緑のドラゴンが浮かび上がる!

 

 

「揺れろ…!希望のペンデュラム!全能の軌跡よ、歴史を刻め!ペンデュラム召喚!!二色の眼を持つ幻影のドラゴン!レベル7!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!」

赤のペンデュラムの軌跡の中から白い鎧を纏い、赤と青の眼を輝かせるドラゴンが現れる! ATK2500

 

 

『へぇ…!これがペンデュラム召喚って奴かい?なかなかに派手な召喚法じゃないか!』

 

「褒めてくれてありがとうございます!…先攻は攻撃できないので…カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊希LP4000

ユニ コン ファントムドラゴン (Pスケール ペルソナ ミラージュ) 伏せ1 手札0

 

 

 

『最初から飛ばしてくるねぇ…でも、ここはあたしの得意なフィールド!さぁ、美しき狩りを見せてあげる!』

 

 

 

『あたしのターン、ドロー!』

『「ハーピィ・チャネラー」を召喚!』

猛禽類の鉤爪を手足に持ち、さらに黒い翼を腕から生やした羽の杖を持つオレンジ色の髪の女鳥人が現れる! ATK1400

 

 

「聞いた事がある…!孔雀先輩の『ハーピィ・レディ』デッキ…蝶のように舞い、隼のような速さで相手を圧倒するデッキ…!」

 

『その通り!今、あんたのモンスターはハーピィの獲物なのさ!『ハーピィ・チャネラー』の効果発動!手札の「ハーピィズ・ペット竜」を墓地に送り!デッキから「ハーピィ・レディ」を守備表示で特殊召喚!』

チャネラーが羽の杖を振るい、マゼンタ色の髪と緑の翼を持つ鳥人を呼び出した! DEF1400

 

『そして…美しく、恐ろしいハーレムを見せてあげる!魔法カード「万華鏡─華麗なる分身」を発動!自分のフィールドに「ハーピィ・レディ」が存在する時!デッキから「ハーピィ・レディ三姉妹」を特殊召喚!!』

はハーピィ・レディを挟むように合わせ鏡が現れ…その鏡像が鏡から飛び出し、三身一体の鳥人達が現れる! ATK1950

 

 

「一気にモンスターが3体も…でも、攻撃力は僕の『オッドアイズ』には及ばない!」

 

『ふふっ…美しい薔薇には棘がある、そして美しきハーピィ達にも武器があるのさ!魔法カード「トライアングル・X・スパーク」を発動!このターンの間、「ハーピィレディ三姉妹」の攻撃力は2700となり、相手は罠カードを発動できない!』

 

「なんだって!?」

ハーピィレディ三姉妹の腕にエネルギーが集中する! ATK1950→2700

 

『バトルだよ!「ハーピィレディ三姉妹」で「オッドアイズファントムドラゴン」を攻撃!トライアングル・エクスタシー・スパーク!!』

 

「くっ…!オッドアイズ─!!」

三姉妹が力を合わせ『X』を象った雷撃を放つ、その威力は凄まじく…オッドアイズは消し炭になってしまった…。

 

遊希LP4000→3800

 

 

『さらに「チャネラー」で「ユニ」を攻撃!』

 

「くっ…!?」

チャネラーが手にした杖から稲妻を放ち、ユニを撃ち抜いた!

 

『あたしはカードを1枚伏せ、ターンエンドだよ!』

 

舞LP4000

ハーピィレディ チャネラー 三姉妹 伏せ1 手札1

 

 

 

「これがハーピィレディデッキ…でも、負けられない!」

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「僕はスケール1の『ペルソナ』とスケール8の『ミラージュ』でもう一度ペンデュラムスケールをセッティング!再び揺れろ!希望のペンデュラム!ペンデュラム召喚!手札から『EMリザードロー』!そしてエクストラデッキから舞い戻れ!『オッドアイズファントムドラゴン』!」

再び赤のペンデュラムが軌跡を描く…そして襟巻き、付いたスーツを着たトカゲと二色の眼を持つドラゴンが現れる! DEF600 ATK2500

 

 

『なんだって…?そのドラゴンは破壊したはず!』

 

「『オッドアイズファントムドラゴン』はペンデュラムモンスター…ペンデュラムモンスターはフィールドから墓地に送られる代わりにエクストラデッキに表側で加えられ、ペンデュラム召喚によって舞い戻る!バトルだ!『オッドアイズ』で『ハーピィレディ三姉妹』を攻撃!夢幻のスパイラル・フレイム!」

 

『そうはいかないよ!ハーピィ!!』

 

《ヤァッ!!》

 

「飛んだ!?」

螺旋の炎が迫る中、舞は三姉妹の1人に捕まって空へと舞い上がる!

 

 

『アクションマジック「奇跡」!「三姉妹」はこのバトルでは破壊されず、あたしが受けるダメージも半分になる!』

舞は崖から飛び出した枯れ木に引っかかっていたアクションマジックを発動…螺旋の炎を回避する!

 

舞LP4000→3725

 

「まだだ!『オッドアイズ』の効果発動!ペンデュラム召喚されたこのモンスターが相手にダメージを与えた時、ペンデュラムゾーンの『オッドアイズ』カード1枚につき1200ダメージを与える!幻視の力─アトミック…」

 

『まだよ!手札から罠カード「ハーピィの羽根吹雪」を発動!自分の場に風属性・鳥獣族のモンスターが存在する時!このカードは手札から発動できる!相手が発動したモンスター効果はターン終了時まで無効になる!』

 

「っ!?手札から罠を!?」

ペンデュラムゾーンからの援護射撃が巻き上げられた羽根の嵐に防がれる!

 

「ダメージを抑えられたか…!僕はこれでターンエンド!」

 

遊希LP3800

コン リザードロー オッドアイズ (Pスケール ペルソナ ミラージュ) 伏せ1 手札0

 

 

 

『どんなに強力な攻撃も、効果も当たらなきゃ仕方ないのさ!さぁ、どんどんいくよ!』

 

「っ…!」

 

 

『あたしのターン!ドロー!』

『あはっ…!良いカードを引いたわ!魔法カード「ハーピィの羽根箒」を発動!相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊するわ!』

 

「っ…!罠カード『ハーフ・アンブレイク』を発動!このターン、自分のモンスター1体はバトルで破壊されず、僕が受けるダメージも半分になる!僕は…『オッドアイズファントムドラゴン』を選択!!」

舞の場に巨大な羽根箒が出現…遊希の場の魔法・罠を全て吹き飛ばす!!

 

 

『なるほどね…ペンデュラムカードは魔法カードとしても扱うの…間一髪でモンスターを守ったつもりかもしれないケド…甘いわ!』

遊希のペンデュラムカードを一掃した舞は岩に張り付いていたアクションカードを手にする!

 

『アクションマジック「急降下」!このターン、自分フィールドの風属性モンスターの攻撃力は1000アップする!』

ハーピィ達が遊希の頭上高く舞い上がる!

 

ハーピィチャネラーATK1400→2400

 

三姉妹ATK1950→2950

 

 

『バトルよ!「三姉妹」で「オッドアイズファントムドラゴン」を攻撃!トリプル・スクラッチ・クラッシュ!!』

 

「『ハーフ・アンブレイク』の効果でダメージは半分になる!ぐうっ…!」

急降下した三姉妹が鋭い鉤爪で泡に守られたオッドアイズを切りつける!

 

遊希LP3800→3575

 

 

『さらに「チャネラー」で「コン」を攻撃!』

 

「っ…!!『リザードロー』の効果発動!自分のモンスターが相手との戦闘・効果で破壊された時!自分の場の『EM』1体につき1枚ドローできる!1ドロー!」

稲妻が少女を撃ち抜く…だが、リザードローが遊希の手札に新たなカードを導く!

 

 

『あたしはこれでターンエンド!』

 

舞LP3725

ハーピィレディ チャネラー 三姉妹 伏せ1 手札0

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

 

「(さっきの攻撃の時、先輩は伏せカードを使わなかった…つまり、あれは攻撃を防ぐカードじゃない…ここは攻める!!)バトルだ!『オッドアイズ』で『ハーピィチャネラー』を攻撃!夢幻のスパイラル・フレイム!」

 

『くっ…!』

螺旋の炎がハーピィの魔法使いを吹き飛ばす!

 

舞LP3725→2625

 

 

「僕は…これでターンエンド…!」

 

遊希LP3575

オッドアイズ リザードロー 手札1

 

 

 

『なかなか足掻くじゃないか…でも、アンタの得手は潰した!決めさせて貰うよ!!』

 

 

 

『あたしのターン!ドロー!』

『見せてあげるわ…ハーピィの本当の力を!リバース罠「華麗なるハーピィ・レディ」を発動!あたしのフィールドの「ハーピィレディ三姉妹」をデッキに戻す事でデッキ・手札・墓地から名前の違う「ハーピィ」モンスター3体を特殊召喚できる!手札から現れなさい!「ハーピィ・ハーピスト」!!』

緑の翼を持つハーピィの竪琴使いが現れる! ATK1700

 

『続いてデッキから「ハーピィ・レディ1」!』

「ハーピィレディ」に似たマゼンタの髪の鳥人が現れる! ATK1300

 

『そして墓地から…ハーピィレディ最強のしもべ!現れなさい!「ハーピィズ・ペット(ドラゴン)」!!』

そして墓地から鎖に繋がれた赤いドラゴンが現れる! ATK2000

 

 

「モンスターがまた…!」

 

『「ハーピィズペット竜」はあたしのフィールドの「ハーピィレディ」の数、1体につき攻撃力を300アップする!あたしのフィールドには「ハーピィレディ」とフィールド上で「ハーピィレディ」として扱う「ハーピィレディ1」と「ハーピスト」の合計3体!よって900ポイントアップ!さらに「ハーピィレディ1」がフィールドにいる時、自分フィールドの風属性モンスターの攻撃力は300アップする!』

 

「攻撃力…3200…!?」

ハーピィ達が風の力を纏い、強化される!

 

 

ハーピィペット竜 ATK2000→3200

 

ハーピィレディ ATK1300→1600

 

ハーピィレディ1 ATK1300→1600

 

ハーピスト ATK1700→2000

 

 

『「ハーピィレディ」を攻撃表示に変更!…まずはドラゴン対決といこうか!バトルよ「ハーピィズペット竜」で「オッドアイズファントムドラゴン」を攻撃!セイント・ファイヤー・ギガ!!』

 

「っ…!?があああっ…!!」

極大の火炎が幻影の竜を灼き尽くす!

 

遊希LP3575→2875

 

 

「っ…『リザードロー』の効果、1枚ドロー!」

 

『続いて「ハーピィレディ」で「リザードロー」を攻撃!爪牙砕断(スクラッチ・クロー)!!』

鋭い鉤爪がリザードローを斬り裂く!

 

『さらに「ハーピィレディ1」でダイレクトアタック!スクラッチ・クロー!!』

 

「があっ…!!」

急降下したハーピィが遊希を蹴り飛ばす!

 

遊希LP2875→1275

 

 

『これでトドメよ!「ハーピィハーピスト」でダイレクトアタック!!』

 

「まだ、だ!墓地の『EMユニ』の効果、発動!墓地の『EMコン』と共に除外する事て、1度だけ戦闘ダメージを0にする…!」

蹴り飛ばされた痛みを堪えながら遊希は効果を発動、ユニとコンの幻影がハーピストの攻撃から遊希を庇う!

 

『へぇ、そんな効果を隠してたのかい…あたしはこれでターンエンドさ』

 

舞LP2625

ハーピィレディ ハーピィ1 ハーピスト ペット竜 手札0

 

 

 

「ふぅ…ふぅ…はぁ…!」

 

『……アンタ、本調子じゃないね?息が上がってるじゃないか…それに、アクションカードを取りに行こうともしない…その傷、見た目だけじゃないね?』

 

「っ…」

舞の言葉に遊希の表情が曇る…海馬社長とのデュエルから1週間、自分なりに体力を上げる努力はしてきたが…未だに本調子には程遠いのだ…。

 

 

『遊希、サレンダーしな!今のアンタじゃあたしには勝てないよ!……アンタは負けても舞網チャンピオンシップスの出場権を得られる…本番の前に身体を壊してどうするんだい?』

 

「……確かに、このデュエルは負けても大丈夫かもしれない……それでも、僕はサレンダーはしない!ライフが残ってて、手札があるのなら…まだ!僕は戦える!!」

 

『そうかい…それがアンタの覚悟なら、かかってきな!すぐに終わらせてあげる!』

サレンダーを拒否した遊希を舞は睨み付ける…!

 

 

 

「(今の手札は『EMドクロバットジョーカー』、そして…『黒牙の魔術師』…次のターンでカードを引けなきゃ、僕の負けだ…!諦めるな……最後まで、諦めるな!!)」

手札のカードを確認し、デッキトップに手を掛ける遊希…その時…。

 

《フォウ…フォーウ》

 

「っ…フォウくん!ダメだよ、出てきたら…!」

遊希の胸ポケットに隠れていたフォウが姿を現し、遊希の肩に登る…そして遊希の頬を優しく舐める…。

 

 

「……落ち着いて…かな?……確かに、少し力が入りすぎ、かな…」

 

《フォウ!》

フォウの様子から遊希は彼の伝えたい事を察する…それは当たっていたらしく、フォウは頷く…。

 

 

「僕は全てを失った…なら、僕は…もう失うものはない!このドローが、僕を新たな未来に導く!!」

心を落ち着かせた遊希はデッキトップに手を掛ける!

 

 

 

「僕のターン…ドロー!」

「『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

シルクハットを被った道化師が現れる! ATK1800

 

「『ドクロバットジョーカー』の効果発動!召喚に成功した時、デッキから魔術師Pモンスター『紫毒の魔術師』を手札に加える!さらに魔法カード『ペンデュラム・ホルト』を発動!自分のエクストラデッキに表側表示のペンデュラムモンスターが存在する時!効果の発動後、デッキからカードを手札に加えられなくなる代わりに2ドローできる!これが、僕の希望だ─!!」

光の軌跡と共にカードがドローされる!

 

 

「来た……これで、勝利への方程式は全て揃った!」

 

『なに…?』

 

「僕はスケール1の『紫毒の魔術師』とスケール8の『黒牙の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

光の柱の中に毒々しい紫のローブの魔術師と屈強な身体を持つ黒いローブの魔術師が浮かび上がる!

 

 

『再び揺れろ、希望のペンデュラム!勝利への軌跡を紡げ!ペンデュラム召喚!!手札から「降竜の魔術師」!エクストラデッキから「オッドアイズファントムドラゴン」!「オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン」!「オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン」!』

赤のペンデュラムの軌跡と共にドラゴンの意匠のローブを纏った女性魔術師と3体のオッドアイズが並び立つ! ATK2400 2500 DEF2400 ATK1200

 

 

『一気に5体のモンスターを並べるとはね…!でも、攻撃力が上回ってるのは「オッドアイズファントムドラゴン」「降竜の魔術師」「ドクロバットジョーカー」だけ、あたしの「ハーピィズペット竜」を上回ってるモンスターはいない!』

 

「まだだ!僕は…魔法カード『融合』を発動!!」

 

『「融合」だって!?』

遊希の発動した「融合」を見た舞は驚きを露わにする!

 

 

「(赤馬零児が示したペンデュラムの『進化』…その答えは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!これが、僕の答えだ!!)」

赤馬零児が示した『進化の可能性』…その時、彼は()()()()()()()()()と言った…そこから遊希は答えを導き出したのだ!

 

 

「僕はフィールドの『オッドアイズファントムドラゴン』とペンデュラムモンスター『降竜の魔術師』を融合!!」

遊希の背後に現れた融合の渦に2体のモンスターが飛び込む!

 

「大いなる風の力よ!二色の眼持つ幻影に力を与え、嵐を巻き起こせ!!融合召喚!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!!」

 

『風が…!アイツに味方を…!!』

『鳥人の狩場』の風が遊希に向かって吹き込み、旋風を起こす…そして稲妻を纏いし二色の眼のドラゴンが現れる! ATK2500

 

 

「『ボルテックスドラゴン』の効果発動!特殊召喚に成功した時、相手フィールドの攻撃表示のモンスター1体を手札に戻す!僕が選ぶのは「ハーピィレディ1」!これによりハーピィ達の攻撃力は300、『ハーピィズペット竜』は600ダウンする!」

 

『なんだって!?』

ボルテックスドラゴンの起こした旋風がハーピィを吹き飛ばし、舞のモンスターを弱体化させる!

 

 

ハーピィペット竜 ATK3200→2600

 

ハーピィレディ ATK1600→1300

 

ハーピスト ATK2000→1700

 

 

「バトルだ!『ボルテックスドラゴン』で『ハーピィズペット竜』を攻撃!!」

 

『血迷ったのかい!?攻撃力はまだ「ハーピィズペット竜」の方が上よ!!』

 

「僕はフィールドから融合素材となった『降竜の魔術師』の効果発動!フィールドのこのカードを融合素材とした融合モンスターはドラゴン族モンスターとバトルするダメージステップに元々の攻撃力を2倍にする効果を得る!」

 

『なっ─!?』

紫電を纏ったボルテックスドラゴンがエネルギーを集中する!

 

ボルテックスドラゴン ATK2500→5000

 

 

『させないわ!アクションマジック「回避」!!攻撃を無効に─!』

 

「この瞬間、『ボルテックスドラゴン』の2つ目の効果発動!自身以外のモンスター効果・魔法・罠カードの効果が発動した時、エクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスター『リザードロー』をデッキに戻し、その発動を無効にし、破壊する!ボルテック・リフレクター!!」

 

『なんですって!?きゃあ!?』

舞の発動したアクションマジックが稲妻に撃ち抜かれる!

 

「『オッドアイズボルテックスドラゴン』の攻撃!!迅雷のスパイラル・バースト!!」

 

『っ…!!きゃああああ…!!』

螺旋を描いた炎と雷の息吹が赤きドラゴンを吹き飛ばす!

 

舞LP2625→225

 

 

「『ドクロバットジョーカー』で『ハーピィレディ』を…攻撃!!」

 

 

『ああ…良い覚悟を持ってるじゃないか…』

 

ハーピィレディの前に跳躍したドクロバットジョーカーがシルクハットから取り出した巨大クラッカーでハーピィレディを気絶させ…舞のライフを削り切った!

 

 

 

舞LP0

 

遊希 WIN!

 

 

 

 

 

《フォウ…フォーウ!!》

 

「ははっ…ありがとう、フォウくん!きみの応援のおかげで勝てたよ…本当にありがとう」

ソリッドビジョンが消えていくなか、フォウが嬉しそうに遊希の周りを跳ね回る…遊希はそんな彼を呼び寄せて優しく撫でた…。

 

 

『アンタもなかなか無茶苦茶なデュエルをするねぇ…城之内とデュエルしてるみたいだったよ!…次の試合も頑張りな!』

 

「はい!頑張ります!!」

舞が遊希へと激励を贈る…遊希はその言葉にまっすぐ応えた!

 

 

 

『それはそれとして……ちょっと来な!!』

 

「へっ─!?」

 

《フォーウ!?》

 

 

 

………

 

 

 

『……これでよし!傷を隠せば…なかなかのイケメンじゃないか!』

 

「うわ……これが、僕…?」

 

「へぇ…!化粧ってすごいんだなぁ!」

 

《フォーウ…》

デュエル直後、舞によって塾の実習室に連れ込まれた遊希は舞のメイクアップを受け…初めて、傷のない自身の顔を見ていた…あまりの変わり様にモクバも驚いている。

 

 

『でも、本当に惜しいねぇ…見た目はともかく、アンタほど優しい男はなかなかいないよ!少しはオンナに好かれてるとかはないのかい?』

 

「残念ながら!……柚子ちゃんとかジュニアコースのアユちゃんはよく声を掛けてくれるけど…学校では───っ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──す、少し恥ずかしいな……──

 

 

 

──そんな事言わないでくださいよ〜!私、こういう事するのが憧れだったんですから!はい、あ~ん!──

 

 

──あ、あーん……美味しい!──

 

 

 

──ヒューヒュー!ラブラブだねぇ!お二人さーん!!──

 

 

 

──本当にお似合いのカップルだね!──

 

 

 

──(ぽっ///)──

 

 

 

──ちょっと!?城之内さんも遊戯もからかわないでくれよ!?■の顔が真っ赤になって…──

 

 

 

──そういう■■も湯気が出てるわよ〜?──

 

 

 

──みゃっ…あ、杏子〜!!──

 

 

 

 

 

 

───あははははは!!──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『遊希…遊希!!大丈夫かい!?急に泣き出して…』

 

「えっ……あ……?」

舞の声に正気に戻った遊希は鏡を見る…そこには右目から大粒の涙を溢す自身が映っていた…。

 

 

『もしかして、何か思い出したのかい…!?』

 

「……大切な人が、いた気がするんです……僕の、命より、大切な人が……ああっ……あああっ…!!」

 

《フォウ…フォーウ…!》

それは記憶の断片…小さな小さな欠片、思い出せないその子の顔…その名前……その時、遊希はただ泣き崩れた……心を埋め尽くした喪失感のままに…。

 

 

 

「遊希…」

 

『今はいっぱい泣きな…大丈夫さ、アンタはきっと思い出せる……そうじゃなきゃ、あたしが神様を殴り飛ばしてやるよ』

遊希が落ち着くまで、舞はその背中を静かに擦り続けたのだった…。

 



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Ep.11 聖なる刻印〜兆し〜

「……そうか…遊希の『記憶』が戻る兆しがあったか…」

 

「うん…孔雀舞とのデュエルが、何かの刺激になったみたいだぜ」

 

「…そうか」

夕暮れの海馬コーポレーション社長室…そこで海馬瀬人はモクバから遊希のデュエルについて報告を受けていた。

 

 

 

「ねぇ、兄さま…遊希は、すごく辛そうだった……あいつ、記憶を失くす前はどんな奴だったんだろう…?」

 

「フン…今のあいつとはそこまで変わらんだろう、お人好しで…自分の身を顧みずに人々を救う為に戦う……奴はそういう()()()だ」

 

「兄さま…?」

夕日を眺めながら海馬は遊希……否、記憶を失った『英雄』について語る…モクバはそんな兄の様子に首を傾げた。

 

 

「……まだ()()()()()()()()()気にするな……次だ!LDSとレオ・コーポレーションに関する情報は入っているか?」

 

「うん!LDSに凄腕のエクシーズ使いが加入、赤馬零児の肝いりで舞網チャンピオンシップスの出場資格を得る為にデュエルをさせてるらしいぜ!」

 

「凄腕のエクシーズ使い、か……(翠、お前達はエクシーズ次元とやらにいるのだな?お前達がいるのなら、融合次元とやらの尖兵は問題ないだろう……いま、オレの為すべき事は……)」

モクバの報告を聞いた海馬はうろ覚えの『物語』を思い返しながら、次の行動を考える。

 

 

「モクバ、遊希の最後の相手はこの塾だ…その後は奴の療養・リハビリに充てるように伝えろ」

 

「わかったよ!兄さま!!」

海馬からメモを渡されたモクバは社長室を後にした…。

 

 

 

「……下手に動けば「イレギュラー」が起きる……動けるのは……舞網チャンピオンシップス…そこからだ」

海馬は修復中の遊希の決闘盤へと目を向け、そう呟いた…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

『やはりお前達の実力はこの程度か…!!お前達からは鉄の意志も鋼の強さも感じない…!!「RR-ライズ・ファルコン」で攻撃!!ブレイブ・クロー・レボリューション!!』

 

 

「「「う、うわああああ!!?」」」

 

 

光津LP0 刀堂LP0 志島LP0

 

 

黒咲 WIN!

 

 

 

 

「つ、強すぎる…!」

 

「あ、アンタ…なんなのよ…!?」

 

「オレ達が、こんな負け方を…!」

 

『フン…』

LDSのデュエルコート…そこでは遊矢達の戦った光津真澄・刀堂刃・志島北斗の3人が倒れ込んでいた…赤いスカーフを巻いた黒コートの少年にワンターン・スリーキルを決められてしまったのだ。

 

 

「…見事だ黒咲隼、これで公式戦6連勝…舞網チャンピオンシップスの出場権を得た」

 

『フン…この程度、()()に比べれば数段劣る……部屋へ戻る』

 

「ああ、疲れを取るといい」

黒咲は自身に声を掛けてきた眼鏡の青年…赤馬零児と視線を合わせる事なく、充てがわれた部屋へと戻って行った…。

 

 

 

『悪いな零児、黒咲はまだお前を信用しきれてないらしい……仲間思いで、悪い奴じゃないんだが…』

 

「分かっているさ……それほど、我が父の罪は重い…」

黒咲の背中を見送った零児に声を掛けたのは凌牙だった、黒咲は本来ならば仲間を大事にする男である……だが、アカデミアの手で妹を奪われた事で怒りを抑えきれず…性格が荒んでしまっているのだ…。

 

 

「……君から提供された融合次元の『人間をカード化する』技術…あれは本当に恐ろしいモノだ…現在、レオ・コーポレーションの技術部で解析を進めている……カード化されてしまった人々を元に戻す為に全力を尽くそう」

 

『ああ…カード化さえなんとかできれば、エクシーズ次元を救う事ができる…頼むぜ』

零児と同盟を結んだ凌牙は改めてエクシーズ次元の状況を話した…平和なエクシーズ次元への融合次元の強襲、リアルソリッドビジョンによるモンスター実体化・破壊活動…そして、無差別の『人間のカード化』…それは一歩間違えればスタンダード次元にも及ぶ可能性があるのだ。

 

 

 

『ペンデュラムカードの方は?』

 

「七割…といった所か……選手権までには汎用型のペンデュラムカードを作成…LDS生に配布し、様子を見るつもりだ」

『ペンデュラムカード』…それは融合次元に対する強力な『武器』になる、今回の舞網チャンピオンシップスはその適性を確かめる為の大会になろうとしていた…。

 

『ペンデュラム召喚…あれは強力だ…複数体のモンスターを召喚、そこから融合・シンクロ・エクシーズ…色々な召喚に繋げられるからな…』

 

「っ…!?気づいていたのか?」

 

『当たり前だ…少なくとも、今のお前らよりも…俺の方がペンデュラム召喚を知ってる』

 

「それは……どういう意味だ?」

ペンデュラムの『進化』を見抜き、さらにペンデュラム召喚を知っていると言う凌牙の言葉に驚きを露わにした零児は問いかける…。

 

 

『……少しなら良いか、俺は…ペンデュラム召喚を使う決闘者を知ってる……あの2人以外にな』

 

「まさか…榊遊矢はペンデュラム召喚の始祖ではないと言うのか?」

 

『いや…ペンデュラム召喚を()()()()()生み出したのは、榊遊矢だ……俺の知ってる決闘者は───俺達の常識の外にいるからな』

そう言った凌牙は夜の帳が落ちた空を見上げた…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

聖目(ヒジリメ) (サトル) LP4000

遊希 LP4000

 

 

 

アクションデュエル 『砂漠の葬祭殿』

・アクションカードは手札に1枚しか加えられない。

 

 

 

 

『私のターン!』

『魔法カード「龍の霊廟」を発動!その効果によりデッキのドラゴン族モンスター「龍王の聖刻印」を墓地に送る!さらにこのモンスターは墓地・フィールドで通常モンスターとして扱うデュアルモンスター!「龍の霊廟」のさらなる効果でデッキからドラゴン族モンスター「神龍の聖刻印」を墓地に送る!』

 

 

墓地送り

 

龍王の聖刻印

神龍の聖刻印

 

 

『さらに「聖刻龍─ドラゴンゲイヴ」を召喚!』

胸元にエジプトに伝わる聖なる印『ウジャト眼』を刻んだオレンジ色の竜人が現れる! ATK1800

 

『私はカードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

聖目LP4000

ドラゴンゲイヴ 伏せ2 手札1

 

 

ここはデュエル塾『舞網アドベンチャー・スクール』、探検家や歴史研究家を目指す子供達がデュエルを学ぶ塾…『美しきデュエル塾』でのデュエルから数日、遊希はそこに所属する探検家の服を来た青年・聖目悟とエジプトの神殿のようなアクションフィールドでデュエルを繰り広げていた!

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「僕は手札のスケール1の『龍脈の魔術師』とスケール8の『龍穴の魔術師』でペンデュラムスケールを──」

 

『聞いた事があるよ、ペンデュラムカードは魔法カードの特徴を併せ持つ…なら、これはどうかな!カウンター罠「反射の聖刻印」!フィールドの「ドラゴンゲイヴ」をリリースする事でモンスター効果の発動、魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する!私は…「龍穴の魔術師」の発動を無効にして、破壊!!』

 

「なんだって!?」

遊希の背後に立ち昇る光の柱…だが、ウジャト眼の描かれた魔法陣が龍穴の魔術師を包み込み、粉砕する!

 

 

『BINGO!そしてリリースされた「ドラゴンゲイヴ」の効果発動!デッキ・墓地からドラゴン族通常モンスターを攻守を0にして特殊召喚する!デッキから現れろ!2体目の「神龍の聖刻印」!』

聖目の場に赤いウジャト眼を刻んだ巨大な球体が現れる! DEF0

 

 

「くっ…なら!『紫毒の魔術師』を召喚!」

毒々しい紫のローブを纏い、鞭を手にした魔術師が現れる! ATK1200

 

「さらに装備魔法『ワンショット・ワンド』を装備!攻撃力が800アップ!」

三日月を象った杖が魔力を増幅する! ATK1200→2000

 

 

「バトルだ!『紫毒の魔術師』で『神龍の聖刻印』を攻撃!!」

 

『くっ…!』

紫毒の魔術師の鞭の一撃が巨大な太陽石を粉砕する!

 

 

「『ワンショットワンド』の効果発動!装備モンスターがバトルを行なった後、このカードを破壊して1ドロー!」

三日月の杖が粒子に変わり、新たな手札を導く! ATK2000→1200

 

 

「僕は…カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

『その時、私は永続罠「復活の聖刻印」を発動!そして効果発動!相手ターンに1度、デッキから聖刻モンスターを墓地に送る!私は2体目の「龍王の聖刻印」を墓地へ送る!』

 

 

遊希LP4000

紫毒 (P 龍脈)伏せ1 手札2

 

 

 

「自分のドラゴン族を墓地へ…?何を狙ってるんだ…?」

 

《フォーウ…!》

自身のデッキを減らす戦術を取る聖目に遊希は警戒する…!

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『よし!魔法カード「トレード・イン」を発動!手札のレベル8「神龍の聖刻印」を墓地に送り、2ドロー!来たぞ…!私は墓地の「神龍の聖刻印」3体を除外!現れろ!「聖刻龍─セテク・ドラゴン」!!』

3体の太陽石が消滅、ウジャト眼を刻んだ黄金の巨竜が現れる! ATK2800

 

 

「攻撃力2800…!」

 

『このモンスターは墓地のドラゴン族通常モンスター3体を除外する事で特殊召喚できる!さらに効果発動!1ターンに1度、墓地のドラゴン族モンスター「龍王の聖刻印」を除外し、相手フィールドのカード1枚を破壊する!「紫毒の魔術師」を破壊!!』

 

「『紫毒の魔術師』の効果発動!このカードが戦闘・効果で破壊される時、相手フィールドのカード1枚を破壊する!『セテクドラゴン』を破壊!!」

 

『そうはいかないな!アクションマジック「ミラー・バリア」!「セテクドラゴン」は効果では破壊されない!!』

 

「くっ…!!」

セテクドラゴンの炎に焼き尽くされる紫毒の魔術師は最後の力で茨をセテクドラゴンに差し向けるが…鏡のバリアに阻まれる!

 

『さらに「聖刻龍─ドラゴンヌート」を召喚!』

ウジャト眼を刻んだ水色の龍人が現れる! ATK1700

 

 

『バトルだ!「セテクドラゴン」でダイレクトアタック!』

 

「罠カード発動!『ハーフ・アンブレイク』!!『セテクドラゴン』はこのターン、バトルでは破壊されない代わりに、僕が受ける戦闘ダメージは半分になるっ…がああっ…!!」

黄金の龍から放たれた炎が遊希に襲いかかるが…泡のバリアが緩衝材となり、威力を半減する!

 

遊希LP4000→2600

 

 

『続けて「ドラゴンヌート」でダイレクトアタック!!』

 

「っ…かはっ…!!」

一瞬、アクションカードを探した遊希…だが、一気に間合いを詰めた龍人に殴り飛ばされる!

 

遊希LP2600→900

 

 

『そして私は永続罠「復活の聖刻印」の効果発動!自分のターンに一度、除外された『聖刻』モンスター「神龍の聖刻印」を墓地に戻す!これでターンエンドだ!』

 

聖目LP4000

セテクドラゴン ドラゴンヌート 復活印 手札1

 

 

 

「(墓地のモンスターを除外して、効果を撃ち…『復活の聖刻印』で弾を補給する…長期戦は不利…!!)」

強力なドラゴンと罠カードのコンボ…遊希は僅かな可能性を信じ、デッキトップに手をかける!

 

 

 

「僕のターン!ドロー!!」

「これなら…!魔法カード『大欲な壺』を発動!除外されている自分・相手のモンスター合計3体をデッキに戻し、僕は1枚ドローする!デッキに戻すのは『神龍の聖刻印』2体と『龍王の聖刻印』だ!!」

 

『しまった…!!』

除外されていた3体が聖目のデッキに戻り、遊希が新たな手札を手にする!

 

「僕はスケール5の『慧眼の魔術師』をペンデュラムスケールにセッティング!」

遊希の背後に全てを見極める眼を持つ魔術師が浮遊する!

 

 

『だけど、スケールの数字は2と5!君は3か4のモンスターしかペンデュラム召喚できない!』

 

「まだだ!『慧眼の魔術師』のペンデュラム効果発動!もう片方のペンデュラムスケールが『魔術師』カードの時、このカードを破壊してデッキから新たな魔術師カードをペンデュラムスケールに置く!僕が選ぶのはスケール8の『黒牙の魔術師』!!」

遊希の言葉と共に屈強な黒いローブの魔術師が浮かび上がる!

 

 

PENDULUM!!

 

 

「揺れろ!希望のペンデュラム!全能の軌跡よ、歴史を刻め!ペンデュラム召喚!手札からレベル6『EMキング・ベアー』!レベル7『EMスライハンド・マジシャン』!エクストラデッキからレベル4『慧眼の魔術師』!同じくレベル4『紫毒の魔術師』!!」

赤のペンデュラムが軌跡を描き、王冠を被った熊、水晶玉を持つ道化魔術師、全てを見抜く眼を持つ魔術師、鞭を持つ魔術師が現れる! ATK2200 2500 1500 1200

 

 

 

ドクン!!

 

 

「っ…!?(胸、が…!この感覚、あの、時、の…!!)」

 

《フォウ!?》

ペンデュラム召喚を完了した直後、遊希の心臓が強く脈打つ…それは海馬とのデュエルで我を失った時と同じ状況……遊海は思わず胸を押さえ…肩の上のフォウが心配そうに顔色を覗う…。

 

 

「(闘争心に、呑まれるな…!身体は熱く、心は冷たく…!僕は、僕の力で、勝つんだ!!)『黒牙の魔術師』のペンデュラム効果発動!『セテクドラゴン』の攻撃力をターン終了時まで半分にし、自身を破壊する!トリーズン・マジック!」

 

『なんだって!?』

黒牙の魔術師が全霊の紫電を放ち、セテクドラゴンを弱体化させる!

 

セテクドラゴンATK2800→1400

 

「バトルだ!『慧眼の魔術師』で『セテクドラゴン』を攻撃!」

 

『くっ…!』

慧眼の魔術師の魔力弾がセテクドラゴンを粉砕する!

 

聖目LP4000→3900

 

「続けて『スライハンドマジシャン』で『ドラゴンヌート』を攻撃!クリスタル・ジャグリング!」

スライハンドマジシャンの操る水晶玉がドラゴンヌートを粉砕する!

 

聖目LP3900→3100

 

 

「そして『キングベアー』でダイレクトアタック!この瞬間、効果発動!バトルフェイズの間、このモンスターの攻撃力はフィールドの『EM』カード1枚につき100アップする!フィールドに存在するのは自身と『スライハンドマジシャン』の2枚!200ポイントアップ!キング・ベアー・クエイク!!」

 

『うおっ!?』

キングベアーが床を叩き、その衝撃で聖目が転倒する!

 

キングベアーATK2200→2400

 

聖目LP3100→700

 

 

「『紫毒の魔術師』でダイレクトアタック!」

 

『させるか!うおおっ!!アクションカード!!』

ラストアタックの直前、聖目はアクションカードに手を伸ばす!

 

 

「取らせない!!『紫毒の魔術師』!スターヴ・ウィップ!!」

 

『なにぃ!?うあああ─!?』

 

アクションカードに手を伸ばした聖目の行く手を柱に絡んだ鞭が阻み、ボクシングのリングロープの如くバウンド…聖目を吹き飛ばして決着をつけた!

 

 

 

聖目LP0

 

遊希WIN!

 

 

 

『くっそ〜…まさかこんな遺跡の罠に引っかかったみたいな負け方するなんて……完敗だ!モンスターの扱い方が上手いなぁ!』

 

「はぁ…はぁ…たまたまさ、上手くモンスターが応えてくれたから…」

デュエルが終了し、遊希と聖目は握手を交わす…遊希はこれで舞網チャンピオンシップスの出場権を手にしたのだ。

 

『ん…?よく見たら…君の掛けてるペンダント……エジプトの「カルトゥーシュ」じゃないか?錆びてるけど…』

 

「カル、トゥーシュ…?」

聖目は遊希の胸元の錆びついた鉄の板に目が留まる…その形に見覚えがあったからだ。

 

『カルトゥーシュは古代エジプトのお守りの一種でね、「永遠」を意味するロープの象形文字でファラオを始めとした高貴な人々の名前を囲って守る為のモノ……今ではエジプトのお土産屋で自分の名前を刻んだ「お守り」として売っているんだ……ん?何か刻んであるね…!』

 

「解読できるの!?」

 

『これでも探検家見習いだからね!エジプト象形文字…ヒエログリフの解読技術は必須条件さ!』

遊希は聖目にカルトゥーシュを渡す…。

 

 

『えっと、これは…2本の葦……ウズラ……ハゲワシ……いや、フクロウか!!これをローマ字に置き換えると…「Y」「U」「M」…だね!お土産屋では下の名前の子音か母音をカルトゥーシュに刻むらしいから…ユウ、と…ま行のどれかを組み合わせたどれかじゃないかな?でも…君の名前はユウキだから……合わないか……?』

 

「これが…僕の、本当の()()……」

思わぬ程近くにあった名前の手掛かり…遊希は聖目からカルトゥーシュを受け取り──

 

 

 

 

 

 

 

《──繋がった!?マスター!マスター!?聞こえますか!?》

 

 

《遊海!思い出せ!!お前は──》

 

 

《主殿!!正気を、取り戻し──》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォウ!フォーウ!?》

 

「はっ…!?いまの、声は…?」

 

『声…?何も聞こえなかったけど…?』

受け取った瞬間、遊希の脳裏に不明瞭な声が響く、それは何処か聞き覚えのある懐かしい声…だが、その声はすぐに聞こえなくなってしまった…。

 

 

 

 

 

「とりあえず…出場権獲得だぜ!遊希!やったな!」

 

「ああ、ありがとうモクバ君!でも…ここからだ、僕と遊矢がどれだけ活躍できるかに掛かってる…!」

アドベンチャースクールを後にした遊希はモクバに祝福の言葉を掛けられるが…来たる本戦に向けて気を引き締める…。

 

 

「そういえば…遊矢の方はどうなんだ?けっこうギリギリなんだろ?」

 

「うん…霧隠料理スクールの茂古田君、明晰塾の九庵堂君、それで今日は海野占い塾の方中さん……あと2戦か…どうなったかなぁ…?」

 

「心配性だなぁ遊希は!ペンデュラム召喚を使えるならそうそう負けないって!」

 

《フォウ!》

 

「そうかな…そうだね!」

 

「それより…兄さまからの伝言だ!舞網チャンピオンシップスに備えてしっかり休息とリハビリをする事!だってさ!」

 

「分かった!しっかり休むよ…今日はありがとう!」

 

「良いって事よ!じゃあまたな〜!」

KCの車で帰るモクバを見送った遊希は空を見上げる…。

 

 

 

「……さっきの声は、なんだったんだろう……僕の事を知ってる人の声、だったのかなぁ…?」

 

《フォウ、フォウフォウ…フォーウ!》

 

「……フォウくん…お腹空いたの?オヤツ食べるかい?」

 

《キャーウ…》

 

「…違ったかな?」

先程の声について考える遊希…そこにフォウが何事かを伝えるが、その真意は伝わらなかった…。

 

 

 

 

「……本当の『僕』……君は、どんな奴だったんだ?」



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Ep.12 一騎打ち〜友を越えていけ!〜

「……き……遊希…!ちょっと起きて…!」

 

「むにゃ……洋子さん…?まだ、朝5時じゃないですか…」

 

《ファ〜……フォーウ…?》

舞網アドベンチャースクールでのデュエルの翌日、遊希は洋子に静かに起こされる…時間は普段起きる時間よりだいぶ早い時刻であり…一緒に寝ていたフォウも首を傾げている…。

 

 

「ニコからのお願いでね…遊矢が目覚める前に家から出なくちゃならないんだよ…ちょっと協力してくれるかい?」

 

「ニコさんから……分かり、まひた…ふぁ……」

 

「疲れてるところ、本当にごめんね〜…」

 

《キュウ…フォーウ?》

遊希は生あくびをしながら身支度を整え、アンやコールを始めとした榊家のペット達と共に、とある場所へと向かった…。

 

 

 

………

 

 

 

「おはようございます!権現坂師範!」

 

『うむ、おはよう!遊希君、洋子さん…よく来てくださった!』

遊勝塾から少し離れた小高い山の上…そこにあるのがデュエル塾『権現坂道場』…権現坂昇の実家である。

遊希達はそこで権現坂の父に出迎えを受けた。

 

 

『今日は遊矢君の50戦目…そして我が息子の舞網チャンピオンシップス出場を賭けた試合でもある』

 

「……聞きました…権現坂君は自分の進退を賭けて、遊矢と戦ってくれるんだって……すごい覚悟だと思います…」

 

『うむ、我が息子ながら…良い覚悟をしておる』

遊希はここに来るまでに洋子から事の顛末を聞かされていた…。

 

 

父・遊勝が行方不明となってから気落ちした遊矢を友として支えてきた権現坂…しかし、遊勝塾防衛戦で刀堂刃との引き分けを経験した事で自分の『弱さ』と『甘さ』を痛感した…。

 

そこで自分の甘さにケジメをつけ、遊矢との『真剣勝負』をする為…舞網チャンピオンシップスに出る為の最後の試合を遊矢とする事を望んだのだ…。

 

 

 

『……例え、親友同士であろうとも…戦場では敵同士、この一戦が息子を試す「試金石」となる……そして、遊矢君はエンタメデュエリストとして、観客や応援してくれる人々の声援を力に変えて戦ってきた……しかし、プロデュエリストになるのならば…敵陣での孤独な戦いに挑まなければならん時もある……故に、此度は遊希君や柊塾長を始めとした『応援団』を排除させてもらった……しかし、それでは君達には悪い……道場内に観戦室を用意した故、そこで2人の戦いを見守って貰いたい』

 

「……わかりました、遊矢と権現坂君の決闘…しっかり見させて貰います…!行こう、フォウくん」

 

《フォウ》

権現坂師範から今回の戦いの趣旨を聞いた遊希は納得し、観戦室へと向かった。

 

 

 

『……洋子さん、遊希君だが……()()()()()()?』

 

「えっ…?最近は舞網チャンピオンシップス出場の為のデュエルをしたくらいですけど…」

 

『そうか…いや、前とは少し雰囲気が変わったように見えての……まるで、錆刀が研磨され……名刀が現れようとしているような…』

 

「はぁ…?」

数多の弟子を見てきた権現坂師範は遊希に起こり始めている変化に気づいていた…。

 

 

 

………

 

 

 

「「「おはよう!遊希兄ちゃん!!」」」

 

「オーッス!ようやく来たか!」

 

「おはよう!皆の方が早かったんだ!」

遊希が観戦室に入ると柊塾長に柚子、素良…そしてフトシ、アユ、タツヤの三人組…遊勝塾メンバーが集合していた。

 

 

「遊矢兄ちゃんの最後の試合は応援に来たかったの!」

 

「権現坂の兄ちゃんとのデュエル…痺れる〜!待ちきれないぜ!」

 

「ほらほら…遊矢にバレないように静かにしなきゃダメよ?」

 

「「「は〜い!」」」

遊矢と権現坂の対決を待ちきれない様子の子供達…柚子がそんな彼らに優しく声を掛ける…。

 

 

「っていうか…遊希、ちょっと顔色悪くない?疲れてる?」

 

「ん…ちょっと早起きだったからね…それに、アンやコールを連れて階段を上がって来たから疲れちゃって…ふぁ…」

 

「「「あぁ……」」」

素良の言葉に柚子達は改めて遊希の姿を見る、両手にアンとキロ、コールとワットの入ったケースを持ち…背中にはペットフードの入ったリュックを背負い、肩にはフォウが乗っている。(ケースに入ってくれなかった)

…明らかに過積載である。

 

 

「ゆ、遊希さん…少し休んだら…?」

 

「うん、そうするよ……遊矢が来たら教えてね……すぅ……」

 

「……一瞬で寝ちゃった…」

 

「よっぽど疲れてたんだなぁ…」

 

《キュウ、フォーウ…》

遊希は壁際にペット達のケースを降ろし、壁に凭れるとすぐに寝息を立ててしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴオオァァァ!!

 

 

『はぁ…はぁ……はぁ……!』

 

 

そこは徹底的に破壊し尽くされた何処かの街、その瓦礫の中で2つの存在が対峙する。

 

 

かたや、天を覆うように巨大な『悪魔』

 

かたや、全身に傷を負った戦士…しかし、その眼は強く『悪魔』を睨みつけている…。

 

 

 

『俺は、「決闘の守護者」1体でオーバーレイネットワークを再構築…シャイニングエクシーズチェンジ─!!いくぞ…「NEXUS」!!』

銀河の光が戦士を包む…その光の中から眩き光の戦士が悪魔へと向かう!!

 

 

 

NEXUS…スプリーム・カリバァァッッ!!』

 

 

 

グギャオオオオン!?

 

 

戦士の振りぬいた光の剣が悪魔を両断、大爆発を起こす…だが、光の戦士はその爆風に耐えられず、瓦礫の山に叩きつけられた…。

 

 

 

『っ……はぁ…はぁ……う、ぐ…累計…999戦……499勝……498敗、目………まだ、だめか……』

 

 

オオオ……グオオオァァァ!!

 

 

爆煙の中から両断されたはずの悪魔が現れる…その咆哮は怒り、悲しみ、喜び…嗤っているようにも聞こえた…。

 

 

 

『■■■■……まだ、逃さないぞ……お前達の、憎しみを…怒りを…哀しみを……世界に向かわせて……たまる、か…──』

満身創痍の戦士は悪魔に再び立ち向かおうとする…だが、身体はついに限界を迎え…膝から崩れ落ちる。

 

 

『まだだ……約束、したんだ…時間を、稼ぐって……必ず、帰るって……!!』

だが…もはや、見えているのか分からない瞳で悪魔を睨みながら、戦士は落ちていた鉄の棒を支えに立ち上がる…。

 

『もう、一度…デュエルだ……次で、白黒…決めようぜ……』

戦士は戦いに耐え切れず、火花を散らすデュエルディスクを構える……その目には周囲を覆う青い光の結界が見えていた…。

 

 

『しょうぶだ、■■■■……おまえたちの、いかりも…にくしみも……よくぼうも……おれが、うけとめ、つづけ──』

息を切らせ、身体をふらつかせながら……戦士は戦いに挑む──

 

 

 

 

 

 

グシャ

 

 

 

 

 

 

『ぁ──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

  

 

 

 

「遊希兄ちゃん!デュエル始まるよー!」

 

「起きてー!」

 

「はっ…!?はぁ…はぁ………ああ、夢か……ありがとう、アユちゃん、タツヤくん…」

 

「遊希、だいぶ魘されてたよ?大丈夫?」

 

「ああ……大丈夫、少し…怖い夢を見ただけだから…」

子供達に揺さぶられ、遊希は目を覚ます…時間は1時間程過ぎ、設置されたモニターの中ではアクションフィールド『剣の墓場』で対峙する遊矢と権現坂の姿があった…。

 

 

「(今の夢は、なんだ…?夢にしては…やけにリアルだった………)」

遊希は無意識に胸に手を当てる…心臓は早鐘を打つように脈打ち、冷や汗をびっしょりと流していた…。

 

 

「……そんな事より、2人を…遊矢を応援しないと……頑張れよ…遊矢…!」

 

《フォウ…》

遊希は荷物から取り出したタオルで汗を拭きながら遊矢を応援する…フォウはそんな遊希を心配そうに見つめていた…。

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

「権現坂…!」

 

『いくぞ…!遊矢!!』

 

権現坂道場の稽古場…もとい、無数の剣が地面に突き刺さった荒野のアクションフィールド『剣の墓場』で遊矢と権現坂が対峙する。

お互いに『1勝』で勝率6割を達成し、舞網チャンピオンシップスの出場権を獲得できるこのデュエル…親友と戦う事を躊躇する遊矢と、親友との真剣勝負を望む権現坂…2人の戦いがついに始まる…!

 

 

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!』

 

「これぞ!デュエルの最強進化形!アクショーン!!」

 

「『デュエル!!』」

2人の口上の掛け合いと共に…真剣勝負が始まった…!!

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対権現坂

 

 

 

アクションフィールド『剣の墓場』

 

 

 

 

『先攻はもらったァ!!俺は「超重武者カゲボウ-C」を召喚!そしてこのカードを召喚したターン、このモンスターをリリースする事で「超重武者」を特殊召喚できる!現れろ!「超重武者ビックベン-K」!!』

 

「いきなり『ビックベン-K』か…!」

先攻を取った権現坂は虚無僧型の機械武者をリリース…エースたる僧兵型機械武者を呼び出した!

 

 

『俺はこれでターンエンドだ!』

 

「(……なんで、一番大事な4戦目に権現坂と…オレがここまで来れたのは…アイツのおかげ…この1年間、50戦近く戦えたのも……)恩人を蹴落として…オレだけ進むなんて…!!」

遊矢は本気で戦おうとする権現坂を前に、覚悟を決められずにいた…だが、その様子を察した権現坂は声を荒らげる…!

 

 

『遊矢!過ぎたる情けは…相手への()()に等しい!!言ったはずだぞ、親友だからこそ…俺は全力でお前を倒すと!!お前も…要らぬ情など捨て去り!全力で挑んでこんかぁ!!』

 

「っ…!!!」

それは権現坂の覚悟…親友としての諌言、それを聞いた遊矢は覚悟を決めた…!

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!『EMシルバー・クロウ』を召喚!!…いくぞ!!」

遊矢は鋭い爪を持つ銀狼に跳び乗り、アクションフィールドを駆け抜ける!

 

「いくぞ!アクションマジック『エクストリーム・ソード』!!バトル中、モンスターの攻撃力を1000アップさせる!!さらに、アクションマジック『オーバー・ソード』!バトル中、モンスターの攻撃力を500アップさせ!攻撃は無効にならなくなる!!」

遊矢は先のデュエルで活躍したアクションカードで銀狼を強化する!

 

「バトルだ!『シルバークロウ』で『ビックベン-K』を攻撃!!」 

 

『だが、守備力は「ビックベン-K」が上回る!!』

 

「さらに『シルバークロウ』の効果発動!バトル終了まで、攻撃力を300アップさせる!!」

 

『むっ…!』

銀色の流星と化した銀狼が僧兵に飛びかかる!

 

 

『俺は手札から「超重武者装留ファイヤー・アーマー」を墓地に送り、効果発動!戦闘破壊を無効にする!!だが、この効果を発動した時!「ビックベン-K」の守備力は800ダウンする』

 

「防がれたか…!」

権現坂は動揺する事なく効果を発動…炎の鎧が攻撃を弾き返す!

 

「この勝負、生半可な気持ちじゃダメか…!オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

遊矢の素早い一撃を動揺せず、どっしりと山の如く受け止める…どんな状況でも、惑わされずに戦い抜く…それが権現坂の『不動のデュエル』…。

 

 

 

『見事じゃ!昇!相手がどんなに動き回ろうとも、決して惑わされぬ不動の構え…!権現坂道場の王道の戦い方じゃ!!それでこそ儂の跡取りに相応しい!!』

 

『気が早すぎるぞ親父殿!まだ、勝負は始まったばかり…俺はまだ全力を出した訳ではない!』

父の声援にまだ『全力』を出していないと答える権現坂…その真意は…。

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!……来たか…!』

凄まじい風圧と共にドローした権現坂はそのカードを引き当てる…!

 

『この漢、権現坂…友を倒す為!自分の殻を破る決心をした!!見ていてくれ、親父殿!!これが俺の目指す新たな不動のデュエルだ!!俺は()()()()()()()()()()「超重武者ホラガ-E」を召喚!!』

 

「チューナーだって!?」

権現坂の気合と共に法螺貝を持つ足軽が現れる!

 

 

『俺はレベル8の「ビックベン-K」にレベル2の「ホラガ-E」をチューニング!!』

法螺貝を吹き鳴らした足軽が緑の輪に変化し、僧兵を包み込む!!

 

 

8+2=10

 

 

『荒ぶる神よ!千の刃の咆哮と共に砂塵渦巻く戦場に現われよ!!シンクロ召喚!!いざ、出陣!レベル10「超重荒神スサノ-O」!!』

 

「権現坂が、シンクロ召喚…レベル10、守備力3800…!?」

現れたのは日本神話最強の暴れん坊…『須佐之男』の名を持つ巨大な機人…権現坂の新たな力だった!!

 

 

 

『いくぞ、遊矢!ここからが本当の真剣勝負だ!覚悟しろ!!』

戸惑う遊矢へ宣戦布告する権現坂…だったが…。

 

 

 

 

『あいやそこまで!!この勝負、我が息子…昇の()()()()()!!』

 

「「『『「ええっ!?」』』」」

 

道場に権現坂師範の待ったの声が響き渡る…それは権現坂の負けを告げる言葉だった。

 

 

『……「不動のデュエル」とは、何事にも動じぬ()が肝要…勝つ為に他流派の技を()()()時点で…お前は負けていたっ!!』

 

『親父殿…』

権現坂道場は他のデュエル塾に比べ、規律が厳しい事で有名である…鉄下駄を履き、何事にも動じない『心』を重んじる「不動のデュエル」……その厳しさから退塾・破門になった者も多い…。

権現坂師範は『掟』を破り、シンクロ召喚を使った息子を許せなかったのだ。

 

 

『親父殿、盗んだのではない……教えを()()()のだ!!LDSの刀堂刃殿に!!』

 

 

「えっ…!?あのLDSのシンクロ使いに!?」

 

『なんと…』

だが…権現坂は技を盗んだのではない…自分の弱さを克服する為、権現坂はLDSへと出向き…仇敵である刃に()()()をしてまで、シンクロ召喚を学んだのだ…!

 

 

『例え、敵であっても…必要とあれば礼を尽くして教えを乞う、当然の事だ……そして、俺がシンクロ召喚を習得したのは勝つ為だけではない……新たな『不動のデュエル』の地平を拓く為!!』

 

『新たな地平、だと?』

 

『デュエルは進化するモノ…!「不動のデュエル」とて、その場に()()()()()()()()()置いて行かれるのみ…時代と共に取り残されてしまう!!親父殿!全てはこの決闘を見て判断してもらいたい!!』

 

『昇…』

デュエルとは日進月歩の早さで進化を遂げていく、権現坂は道場の後継者として…一人のデュエリストとして、自分の信じる『不動のデュエル』の新たな戦い方を模索していたのだ…!

 

 

 

『いくぞ!!「スサノ-O」は守備表示で守備力を攻撃力として扱い、攻撃できる!!「スサノオ-O」で「シルバークロウ」を攻撃!!』

 

「攻撃力3800はやばい!!アクションマジック『回避』!その攻撃を無効にする!!」

 

『させんわ!!「スサノ-O」の効果発動!!自身が守備表示で、墓地に魔法・罠カードが存在しない時!1ターンに1度、500LPを払う事で相手の墓地の魔法カードを発動する!!俺が発動するのは遊矢の墓地のアクションマジック「オーバー・ソード」!!このカードは攻撃力を500アップさせ、その攻撃を無効にできなくする!!喰らえぃ!!クサナギ・ソード斬!!』

 

「っ─!!うわあああ!?」

大薙刀から放たれた斬撃が銀狼を両断…遊矢諸共に吹き飛ばした!!

 

 

『俺はこれでターンエンドだ!!』

 

「すごいな、権現坂…!お前がここまでシンクロ召喚を使いこなしてたなんて…そんなの見せられたら、オレも負けてられないよな…!いくぜ!!」

新たな不動のデュエルを示した権現坂…その思いに応える為、遊矢はデッキトップに手を掛けた…!

 

 

 

 

Side観戦室

 

 

 

 

「遊矢…権現坂君…すごいデュエルだ…!」

 

《フォウ…!》

画面の中で息をつかせぬ戦いを繰り広げる遊矢と権現坂…そのデュエルを見た遊希は拳を握り締める…。

 

 

「実質、攻撃力3800の『スサノ-O』…遊矢のデッキには単体でそれを超えられるモンスターはいない……可能性があるのは、遊矢が目覚めたペンデュラム召喚から融合召喚か…」

遊希が見出した勝ち筋…それは『ペンデュラム融合』…方中ミエルとのデュエルで融合召喚したらしい「ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」なるモンスターだった…。

 

「でも…今の遊矢は……『融合』のカードを持ってないんです…「自分の力でペンデュラムの先を見つけたいんだ」って…!」

それは偶然の出来事…柚子が落とした『融合』が遊矢のデッキに紛れ込み…遊矢はそれをヒントにペンデュラム融合の可能性に気付いたのだ…だが、遊矢は『融合』を柚子に返してしまった……今回は自分の手で活路を見出さなければならないのだ…!

 

 

「(………でも、変だ…遊矢はエクストラデッキから召喚するモンスターを持ってなかったよな………あれ…?僕の『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』って………()()()()()()()()()()()()()()…?)」

遊矢の勝ち筋を考えていた遊希はふと、違和感に気付いた……舞とのデュエルの中で『召喚できる』と確信して呼び出した『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』……遊希はそれを()()()()()()()を覚えていなかったのだ。

 

 

「(ああ…()()()()……僕は、遊矢は……そもそも……ペンデュラム召喚って…なんなんだ…?)」

それは誰も気付いていない、小さな小さな違和感…遊希は頭を抱えた…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

「本当に強いな…権現坂」

 

『……負けを認めたか…ここでサレンダーするのか?』

 

「いや…負けるとしても、その時はお前にトドメをさして貰うよ…でもそれは……オレが全力を出しきってからだ!!」

遊矢は全力の権現坂に追い詰められていた、アクションマジックとペンデュラム召喚による守りで凌いできたが…その残りライフは450…次のターンに挽回できなければ、遊矢に勝ち目はない…!!

 

 

 

「いくぞ…!オレのターン!ドロー!!いくぞ…スケール2の『EMラクダウン』とスケール6の『EMリザードロー』で再びペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!!手札から現われろ!『EMディスカバー・ヒッポ』!!」

遊矢は手札からマスコットモンスターである桃色のカバを呼び出す…これでエースを呼び出す準備が整った!!

 

 

「『ディスカバーヒッポ』は1体で2体分のリリース素材にできる!現われろ!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

『現れたか…!!』

遊矢のエース、二色の眼を持つドラゴンが咆哮する!

 

 

「今やれる事を全力で…!オレは『リザードロー』のペンデュラム効果発動!カードを1枚ドローし、このカードをデッキに戻す!!これが…今のオレの全力だぁぁ!!」

光の軌跡と共に、遊矢はカードをドローする!!

 

「これは…!!オレはスケール4の『EMトランプ・ウィッチ』をセッティング!!」

光の柱の中に小柄な魔女が現れる…!

 

 

『無駄だ!そんな事をしてもペンデュラム召喚できるのは1ターンに1度のみ、しかも召喚できるのは3か4だけだ!』

 

「いくぞ!!オレは『トランプウィッチ』のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、フィールドのモンスターを素材とした融合召喚ができる!!オレは『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と『星読みの魔術師』で融合!!」

 

『なっ…!?「融合」を使わない融合召喚だと!?』

それは遊矢の想いが生んだ奇跡…フィールドに融合の渦が現れ、2体のモンスターが飛び込む!!

 

 

「神秘の力操りし者、眩き光となりて…龍の眼にいま宿らん!!融合召喚!秘術振るいし魔天の龍…『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

現れるのは背中に円環を背負いし魔天の龍…遊矢は新たなペンデュラムの進化を実現した!!

 

 

「バトルだ!『ルーンアイズ』で『スサノ-O』を攻撃!その瞬間、『ラクダウン』のペンデュラム効果発動!自分のモンスターがバトルする時!相手モンスターの守備力を800ダウンさせ、貫通効果を与える!!放て!シャイニー・バースト!!」

 

『ぬぅぅ…!?』

ラクダウンのペンデュラム効果で弱体化したスサノ-Oに魔天の龍の破壊光線が直撃する、だが…攻撃力と守備力は共に3000の為、戦闘破壊はできない……しかしルーンアイズにはさらなる効果がある!

 

 

「レベル5以上の魔法使い族モンスターを融合素材にした『ルーンアイズ』は3回攻撃できる!!」

 

『なにっ!?』

 

「再びバトル!『ルーンアイズ』で『スサノ-O』を攻撃!さらにもう一度『ラクダウン』のペンデュラム効果発動!『スサノ-O』の守備力を800ダウンさせる!連撃のシャイニー・バースト!!」

 

『っ…!俺は500ライフを払い「スサノ-O」の効果発動!遊矢の墓地のアクションマジック「回避」を発動!攻撃を無効にする!!』

 

「まだだ!『ルーンアイズ』で3度目の攻撃!!連撃のシャイニー・バースト!!」

 

『っぐ…!!ぐああああっ!!?』

それは遊矢の魂の三連撃…破壊光線が荒神を消し去る…権現坂の残りライフ……2200…!

 

 

『くぅ…!なんのぉ!!手札から「超重武者装留マカルガエシ」の効果発動!自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない時!このカードを墓地に送り、破壊された「スサノ-O」を攻撃表示で特殊召喚!!』

 

「っ…!!」

しかし、権現坂もまだ終わらない…数珠型の超重武者装留の効果で荒神が蘇る…その攻撃力は2400、遊矢の場に残るのは守備表示の「シルバークロウ」のみ…次の攻撃を受ければ、敗北してしまう…!

 

 

 

「はぁ……まさに『壁』だな、権現坂…オレの前に立ちはだかる大きな『壁』だ!!お前に勝つには…限界を超えるしかない─!!いくぞ…『ルーンアイズ』!!」

 

『遊矢!?何を─!?』

ルーンアイズに騎乗した遊矢は残された最後の希望を掴む為に走り出す…その先には荒野の木に引っかかったアクションカード……だが、その前には巨大な谷がある…!!

 

 

「オレは…自分の限界を…超えるんだ──!!」

 

『遊矢!!』

 

ルーンアイズと共に遊矢は宙に跳び上がる…そしてその手は…

 

 

「うおおおっ!!アクションカード…ゲットォ!!」

その手は希望を掴み取った!!

 

 

「オレは!アクションマジック『オーバーソード』を墓地に送り!罠カード『デンジャラス・ドロー』を発動!!その効果でオレはカードを1枚ドローする…ただし、それがモンスターカードなら!オレはその攻撃力分のダメージを受ける!!」

 

『な、なにぃぃ!?』

それはまさにデスティニードロー…遊矢は攻撃力450以上のモンスターを引いた瞬間…敗北してしまう…!

 

 

 

「オレは信じる…オレのカードを!!ドロー!!」

遊矢のペンデュラムが光輝く…その光が導いたのは……新たなる力…!!

 

「来た…!オレは速攻魔法『ビック・リターン』発動!!自分フィールドの『1ターンに1度』と書かれた効果を再び発動できる!!オレが発動するのは…『トランプウィッチ』のペンデュラム効果!!フィールドの『ルーンアイズ』と獣族モンスター『シルバークロウ』を…融合!!」

 

『なっ…連続融合だと!?』

それは新たな奇跡…融合の渦に2体のモンスターが飛び込む!!

 

 

「誇り高き銀狼よ…魔天の龍と一つとなりて!新たな力を生み出さん!!融合召喚!いでよ!野獣の眼光りし、獰猛なる龍!!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

『遊矢の新たな融合モンスター…攻撃力3000…!!』

それは遊矢の新たな力…野獣の如き毛皮に覆われた二色の眼の龍が現れる!!

 

 

 

「『ビーストアイズ』で『スサノ-O』を攻撃!!ヘルダイブ・バースト!!」

 

『ぐっ…!?ぬわあああ!!』

野獣の火炎が荒神を吹き飛ばす…そして獰猛なる龍の力が発動する!!

 

「さらに!『ビーストアイズ』が相手モンスターを破壊した時!融合素材にした獣族モンスターの攻撃力分のダメージを与える!!いっけぇ!!」

 

『ぐっ…!!がああああっ…!!!』

ビーストアイズの吐き出した炎が銀狼の姿を写し、権現坂を飲み込む……勝利を手にしたのは遊矢だった…!

 

 

権現坂LP0

 

 

 

遊矢WIN!!

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

「「「遊矢兄ちゃん!!やったぁ〜!!」」」

 

「あっ…お前達…!来てくれてたのか!」

戦いを終え、安堵する遊矢にアユ達が駆け寄り祝福する…遊矢はデュエルに集中した事で、途中から応援していた家族や仲間達に気づいていなかったのだ。

 

 

「良いデュエルだったよ、遊矢!」

 

「これで、アウェーでも戦えるようになったね!よくやったよ!」

 

「うおおおっ!!燃えたぞ遊矢!!熱血だぁ!!」

 

「遊希兄!母さん!塾長…みんな…!(そうか…気付かなかったけど、ずっとオレを見守ってくれてたんだ…!)」

遊矢は仲間達にたくさんの祝福の言葉を掛けられる…そして遊矢はどれだけみんなに助けられてきたのか実感した…。

 

 

 

『見事だったぞ、遊矢』

 

「権現坂……オレが勝ったって事は……」

 

『気にするな!大会の締め切りまで1週間!チャンスはまだある!!お前とここまで死力を尽くして戦えた事…俺は誇りに思う!!』

 

「権現坂…ああ!!」

戦いを終えた遊矢と権現坂は固く握手を交わす…それは戦いを通じて2人の絆が深まった証だった…。

 

 

 

 

「遊矢…お前は本当に友達に恵まれたな…」

2人の健闘を讃えた柊塾長や意外と涙脆かった権現坂師範が涙を流すなか、遊希は遊矢が得た絆に感謝していた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──遊海君、僕達の絆は…決して断ち切れない!──

 

 

 

 

──お前の仲間達を…紡いできた絆を信じるんだ!さぁ…目覚めろ!オレの跡を継いだ決闘王よ!!』──

 

 

 

──遊海先生…オレはアンタを超える…超えてみせる!!──

 

 

 

──みんなが帰ってきた時!オレ達の故郷は…チーム5D'sが救った街は!こんなに素晴らしい街だったんだって!そう誇れるネオ童実野シティにしていくのがオレの役目だ!!──

 

 

 

 

──遊海…オレは…絶対に止まらねぇ!!かっとビングだぁ!!──

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……今のは……?)」

その時、遊希の脳裏に見覚えのない映像が流れる……しかし、理解した……今の映像に映っていたのは、掛け替えのない『友人』達なのだと…。

 

 

「(もしかして…記憶が、戻ろうとしてる……?ああ……でも、それは──)」

 

 

 

 

 

 

───少し、怖いなぁ……─

 

 

 

 

少しずつ開かれていく「記憶の扉」…その先に待ち受けるのは……希望か……絶望か───

 




「社長、榊遊矢…並びに榊遊希のジュニアユース選手権出場が確定したと連絡がありました」

『そうか…これで、私が見込んだデュエリストは…全て集まったな』
LDSの社長室…そこで零児は遊矢達の出場報告を聞いていた…。


『この中のデュエリストの何人が…我々の世界の為に戦える()となってくれるのか…』
零児は出場予定者の名簿を見つめながら…来たるべき敵の事を考えていた…。


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Ep.13 ペンデュラムデュエル〜エンタメと幻影〜

『それでは…!遊勝塾生全員の『舞網チャンピオンシップス』出場権獲得…おめでとう!!かんぱーい!!』

 

「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」

 

夕暮れの遊勝塾に賑やかな乾杯の声が響く…遊矢と権現坂のデュエルの翌日、遊勝塾では祝勝会兼決起パーティーが開かれていた。

 

 

 

「あむあむ…美味しい〜!頑張ってデュエルしてよかった〜!」

 

「このハンバーグ…おいしくてシビれる〜!!」

 

「美味しい〜!!」

 

『ふふっ…おかわりはたくさんあるから、いっぱい食べるんだよ!』

 

「「「は〜い!!」」」

パーティー料理を作ったのは洋子…ジュニアコースの子ども達は幸せそうな表情で食事を楽しんでいる。

 

 

 

「ヘヘへっ…!パンケーキにバニラアイスとイチゴジャムを融合〜…ジャムケーキアイスの完成〜!」

 

「こ〜ら!ちゃんと野菜とかお肉も食べなさいよー!!」

 

「まぁまぁ…今日はせっかくのお祝いなんだから好きに食べさせてあげなよ!」

いきなり3段重ねの特製バニラパンケーキを食べようとする素良に柚子が注意するが…遊矢がそれを宥めている。

 

 

 

『遊希〜!!苦節3年……ようやく、ようやくオレの指導が報われたぁぁ…オレは嬉しいぞぉぉ!!』

 

「しゅ、修造さん!お酒は不味いですって!!」

 

『遊勝先輩!見ていてくださーい!!』

 

《フォウ…フォーウ?(特別意訳:大丈夫なの?このへべれけ塾長…)》

大人席では久しぶりに酒を飲んで泣き上戸になっている修造に遊希が付き合っている…その横ではジト目のフォウが呆れた様子で騒ぎを見つめていた…。

 

 

 

………

 

 

 

「はぁ…食べた食べた…こんなにいっぱい食べられたのも久しぶりだ…」

楽しい時間は一瞬で過ぎていく…パーティーはお開きとなり、酔い潰れてしまった修造を家に送り届けた遊希は遊勝塾への道を歩いていた…。

 

 

「……こうして歩いてると…遊勝さんに特訓して貰った帰りを思い出すなぁ…」

 

《フォウ?》

 

「ん…?ああ、僕が遊勝さんに引き取られた時…本当に身体が弱くてね……リハビリを兼ねたアクションデュエルの特訓をして貰ってたんだ…その帰りにこうやって星を見ながら帰ったなぁ……」

首を傾げたフォウに遊希は遊勝との思い出を語り──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トクン…

 

 

 

 

 

 

 

 

─父さん、重くない…?──

 

 

 

──ん?はっはっはっ!俺は力持ちだからな!お前を肩車するなんて軽いもんさ!どうだ?星が近いだろう?──

 

 

 

──うん!星に手が届きそう!──

 

 

 

──も〜!凌牙ばっかりずるい〜!私も〜!!──

 

 

 

──ふふっ…璃緒ちゃん、順番こだからね!──

 

 

──う〜……──

 

 

───仕方ないなぁ…おいで璃緒凌牙と2人肩担ぎだ!──

 

 

 

──わ〜い!!──

 

 

 

──もう、白野さんは甘いんだから…落ちないように気をつけてね!──

 

 

 

──はーい!!──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………なんだ、この記憶………僕が……父親…?」

 

《……フォーウ…!》

遊希は突然、脳裏に流れたイメージ…記憶に戸惑う、あまりにもはっきりした映像……それは仲睦まじい家族の姿だった…。

 

 

 

 

「ねぇ…フォウくん……僕、()()()()……記憶を取り戻すのが……()()()()()に戻るのが…!」

 

《………》

川の土手に腰を下ろした遊希は抱き締めたフォウに弱音を吐く……それは他人に…誰にも相談できない、遊希の抱える『闇』だった…。

 

 

「僕が、記憶を失って5年……今までは、早く記憶が戻らないか、ずっと考えてたんだ……でも、ペンデュラム召喚に目覚めてから……怖いんだ…!!僕の知らない『僕』の記憶が流れ込んでくる…!僕を塗り潰そうとしてくる…!!」

 

《フォウ…》

 

「そもそも…僕は普通じゃない…!なんで、子どもが…こんな傷だらけなんだよ…!僕は…僕は…!!ああ、あああっ…!!」

遊希は…遊希の心は不安と恐怖に押し潰されかけていた、自身に流れ込む『記憶の欠片』…それに触れるごとに『自分』が自分でなくなるような感覚に襲われていたからだ…。

 

 

「フォウ…僕は…記憶を取り戻しても『僕』で、いられるのかな…!遊矢や、遊勝さんの事を…覚えてられるのかなぁ…!!」

 

《フォーウ…》

…記憶喪失には様々なパターンがある。

 

失った記憶がすぐに戻る事…長い時間を掛けて思い出す事……死ぬまでそのままの事。

 

そして、本来の記憶を取り戻した時……()()()()()()()()()()()()()事もある…。

 

 

 

遊希は怖かったのだ…恩人であり、大切な『家族』である遊矢達の事を忘れる事が…。

 

 

 

《フォウ…キューウ……》

 

「……慰めてくれるの?……優しいなぁ、フォウは……」

涙を流す遊希の頬をフォウが優しく舐める…流れた涙を拭うように…。

 

 

「……こんな事、遊矢やみんなには話せないからなぁ……ありがとう、フォウ…僕の弱音を聞いてくれて……泣いたらスッキリしたよ…」

 

《フォウ、フォーウ…キュウ…》

 

「そうだね、みんなが心配するから…帰ろうか!」

涙を拭いた遊希は立ち上がる、自分の事を支えてくれる家族のところへ…。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ…?まだ明かりが点いてる?」

 

《フォウ…?》

しばらく歩き、遊勝塾へ戻って来た遊希だったが…まだ遊勝塾に明かりが点いている事に気付く…事務所だけではなく、デュエルコートの照明も点灯していた…。

 

「……遊矢…?」

 

 

 

 

「「ドロー!…ドロー!!…ドロー!!!」」

 

「やっぱりか…」

中に入ると事務所は無人…机の上には『遊矢と柚子ちゃんが自主トレをしてるからお願いね♡』と記された洋子の書いたメモが置いてあった。

 

そしてデュエルコートでは遊矢と柚子が揃ってドロー力を高めるドロー素振りを行なっていた…。

 

 

「精が出るね、2人とも!今日くらいはのんびりすればいいのに…」

 

「あっ…おかえり!遊希兄!」

 

「遊希さん!お父さんは……」

 

「とりあえず、ソファに寝かせてきたから大丈夫!」

 

「……本当にごめんなさい…」

遊希はトレーニングに熱中する2人に声を掛ける…柚子は父親の世話をしてくれた遊希に謝罪する。

 

 

「いいんだよ、修造さんも本当に嬉しかったんだと思うし……2人は…アレかな?トレーニングデート?」

 

「「遊希さん!?!?」」

 

「ハハハ!冗談だよ!冗談!!」

 

「もう…!!冗談でも…言っていい事と悪い事があるでしょ─!!」

 

「あったぁ!?」

 

《フォウ!(特別意訳:だめだこりゃ!)》

藪蛇で柚子の大ハリセンの餌食になる遊希なのだった。

 

 

 

「いやさ…頑張ってる権現坂を見てたら、負けられないなって…」

 

「そっか…それでジッとしてられなくてトレーニングしてたのか」

遊矢と権現坂の魂のデュエル、その中でペンデュラムの「その先」を確かに掴んだ遊矢だったが……権現坂の頑張りを見た遊矢はそれに触発され、自分なりの努力をしていたのだ…。

 

 

「よーし…そういう事なら、僕とデュエルするか?」

 

「えっ…遊希兄と!?」

 

「ああ、同じペンデュラム使いなら新しい見方を見つけられるだろうし…遊矢もペンデュラム使いとのデュエルに慣れたいだろ?……LDSとの事もあるし」

 

「あっ……」

遊希の言葉に遊矢は思い出す…LDSとの対抗戦、赤馬零児はペンデュラム召喚を使い遊矢を追い詰めた……もしかしたら、舞網チャンピオンシップスの中で新たなペンデュラム使いが生まれるかもしれないのだ…!

 

 

「僕も海馬社長の組んでくれた試合でペンデュラム召喚の扱い方を学んだんだ……その成果発表といこうか!」

 

「……わかった!オレの成長を見せてやる!!」

 

「はぁ…それじゃあ私はアクションフィールドの準備をしてくるわ!」

高まっていく2人の闘志…そんな2人に溜息を漏らしながら柚子は機械室へと向かった…。

 

 

 

「アクションフィールド・ランダムセット!…アクションフィールド『ロック・フィールド』発動!!」

 

柚子の宣言と共に周囲の景色が特撮番組に出てきそうな岩のフィールドに変化する!

 

 

「デュエルの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

『モンスターと共に地を蹴り!宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!』

 

『「これぞ!デュエルの最強進化型!アクショ〜ン…デュエル!!」』

遊希と遊矢、2人の口上と共にアクションカードが弾ける…お互いをよく知る家族のデュエルが始まった!

 

 

 

遊希LP4000

遊矢LP4000

 

 

アクションフィールド『ロック・エリア』

 

・アクションカードは1枚しか手札に加えられない。

 

 

 

 

「先攻は僕か…僕のターン!」

「僕は『EMインコーラス』を召喚!」

3羽一体のインコ達が現れる! ATK500

 

「そして永続魔法『バリア・バブル』を発動!カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊希LP4000

インコーラス バリアバブル 伏せ1 手札2

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『「EMウィップ・バイパー」を召喚!』

シルクハットを被った紫色の蛇が現れる! ATK1700

 

『バトルだ!「ウィップバイパー」で「インコーラス」を攻撃!』

 

『永続魔法「バリアバブル」の効果!このカードが存在する限り自分の「EM」は1ターンに1度だけ戦闘・効果では破壊されず!自分へのバトルダメージは0になる!』

 

「えぇっ!?ズルい〜!」

インコーラスを泡のバリアが包み込み、ウィップバイパーを弾き返す!

 

 

「くっそ〜…カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊矢LP4000

ウィップバイパー 伏せ2 手札3

 

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「よし!『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

シルクハットを被ったコウモリ道化師が現れる! ATK1800

 

「『ドクロバットジョーカー』の効果発動!召喚に成功した時、デッキから『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』を手札に加える!そして僕はスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!」

遊希の背後に光の柱が立ち上がり、赤と青のドラゴンが浮かび上がる!

 

 

PENDULUM!!

 

 

『来るか…!』

 

「これで僕はレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ!希望のペンデュラム!全能の軌跡よ、歴史を刻め!ペンデュラム召喚!現われろ!二色の眼を持つ幻影の龍!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

赤のペンデュラムが揺れ動き、白い鎧を纏う幻影のドラゴンが現れる! ATK2500

 

 

「バトルだ!『オッドアイズファントムドラゴン』で『ウィップバイパー』を攻撃!夢幻のスパイラル・フレイム!!」

 

『っ…!アクションマジック「奇跡」!「ウィップバイパー」の破壊を無効にして、バトルダメージを半分にする!ぐぅぅ…!!』

螺旋の炎を前に遊矢はアクションマジックでダメージを抑える!

 

遊矢LP4000→3600

 

「まだだ!『オッドアイズファントムドラゴン』の効果発動!ペンデュラム召喚されたこのモンスターが戦闘ダメージを与えた時!ペンデュラムゾーンの『オッドアイズ』カード1枚につき1200ダメージを与える!幻視の力─アトミック・フォース!!」

 

『まだ!アクションマジック「加速」!!効果ダメージを無効にする!!』

ペンデュラムゾーンから放たれる火炎を加速した遊矢が避ける!!

 

「なら『ドクロバットジョーカー』で『ウィップバイパー』を攻撃!!」

 

『っう…!!』

ドクロバットジョーカーの回し蹴りがウィップバイパーを蹴り倒す!

 

遊矢LP3600→3500

 

 

「やっぱり遊矢はアクションマジックの使い方が上手いなぁ!『インコーラス』を守備表示に変更!僕はこれでターンエンド!」

 

インコーラスATK500→DEF500

 

遊希LP4000

インコーラス ドクロバット オッドアイズファントム (P ペルソナ ミラージュ) バリアバブル 伏せ1 手札0

 

 

 

『遊希兄…前よりすごく強くなってないか!?全然隙がないんだけど!?』

 

「そりゃ…今の僕は遊矢みたいにはフィールドを走り回れないからね、守りは堅くしておくものさ!」

遊希の強さに驚く遊矢…凌牙戦での傷は癒えたが、左眼や体力低下のハンデがあるのは変わらない…遊希はそのハンデを乗り越える為にデッキを強化していた…!

 

 

『でも…オレだって強くなったんだ…!いくぞ!!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『いくぞ!オレは手札からスケール1の「星読みの魔術師」とスケール8の「時読みの魔術師」でペンデュラムスケールをセッティング!!』

遊矢の背後に光の柱が出現し、白と黒のローブを纏う魔術師が浮かび上がる!

 

PENDULUM!!

 

 

『これでオレはレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!現われろ!オレのモンスター達!手札から「EMトランプ・ガール」!そして二色の眼持つ龍!「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」!!』

青のペンデュラムが揺れ動き、光の扉が開かれる…その中から小柄なトランプ少女、そして赤と緑の眼が輝く赤きドラゴンが現れる! DEF200 ATK2500

 

 

 

ドクン!!

 

 

《グギャアアン!!》

 

《グルルルッ!!》

 

 

「っ…?ファントム?」

 

『オッドアイズ!?どうしたんだ?』

フィールドに2体のドラゴンが揃う…その時ドラゴン達はお互いに咆哮する…まるで、互いを威嚇しあうように…。

 

 

『なんなんだよ…家族のモンスターなんだから仲良くしてくれって…!しょうがない!「トランプガール」の効果発動!フィールドの自身を含めたペンデュラムモンスターで融合召喚する!あやかしの技を操りし者よ!眩き光となりて、龍の瞳にいま宿らん!融合召喚!!いでよ!魔術振るいし魔天の龍!「ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」!!』

荒ぶるオッドアイズが融合の渦に飛び込み、魔術の力を宿したドラゴンが現れる! ATK3000

 

 

「…収まった……」

 

『ああ、なんだったんだ…?前はこんな事なかったのに…?まぁ、リアルソリッドビジョンの不具合かな…?』

融合召喚によりフィールドは静けさを取り戻すが…遊矢と遊希は思わず顔を見合わせてしまう…。

 

 

 

「……とりあえず、デュエルを続けよう!遊矢の新しい力を見せてくれ!」

 

『ああ、いくぜ!遊希兄!バトルだ!「ルーンアイズ」で「オッドアイズファントムドラゴン」を攻撃!シャイニー・バースト!!』

 

「罠カード『ハーフ・アンブレイク』発動!このターン『ファントム』はバトルでは破壊されず、戦闘ダメージは半分になる!!っぐ…!!」

放たれる破壊の奔流を泡のバリアが軽減する!

 

遊希LP4000→3750

 

『まだだ!レベル4以下の魔法使い族モンスターを融合素材にした「ルーンアイズ」は2回攻撃できる!連撃のシャイニー・バースト!!』

 

「『ハーフアンブレイク』で戦闘ダメージは半分だ!!くうう…!!」

再び放たれた奔流を泡のバリアが受け止める!

 

遊希LP3750→3500

 

 

『オレは…これでターンエンド!!』

 

遊矢LP3500

ルーンアイズ (P星読み 時読み) 伏せ2 手札0

 

 

 

「ああ、びっくりした…やっぱり強くなったな遊矢!お前はペンデュラム召喚をしっかり使い熟してる…自身を持っていいぞ!」

 

『ありがとう!さぁ、次は遊希兄の番だぜ?遊希兄の力を見せてくれよ!』

 

「ああ、できる限りやってみようかな!!」

少しトラブルはあったものの…2人のデュエルは笑顔で進む!

 

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「よし…!装備魔法『ワンダー・ワンド』を『ドクロバットジョーカー』に装備!攻撃力を500アップ!」

赤い宝玉の付いた杖が道化師を強化する! ATK1800→2300

 

「そして『ワンダーワンド』の効果発動!装備モンスターをリリースして2枚ドローできる…さて、少し遊勝さん風にいきますか!!」

遊希はドクロバットジョーカーをリリースし、デッキトップに手を掛ける!

 

 

「真のデュエリストのデュエルは常に必然!勝利のキーカードは我が腕に───」

 

 

 

──この瞳は『星界の三極神』に選ばれた証「ルーンの瞳」…どうやら君達もあの「歴史を改変する波動」の影響を受けないらしい…──

 

 

 

キィン─!!

 

 

「──ドロー!っ"…!?」

デッキトップに掛けた左手を振り抜いた時、右腕に鋭い痛みが走った!

 

 

『……遊希兄?大丈夫か?』

 

「……だ、大丈夫!ちょっと古傷が痛んだだけだから!!いくぞ!」

遊希の顔色の変化を見た遊矢が心配するが…遊希は右腕を払ってデュエルを続ける!

 

 

「リバースカード『バースト・ブレス』を発動!『オッドアイズファントムドラゴン』をリリースし、フィールドのそれ以下の守備力を持つモンスターを全て破壊する!バーストブレス、ファイヤ!!」

 

『うえぇっ!?』

遊希の指示でファントムが最大火力の炎を放ち、ルーンアイズとインコーラスを破壊する!

 

 

「そして『ペルソナドラゴン』『ミラージュドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!!手札から『白翼の魔術師』!エクストラデッキから『インコーラス』!『ドクロバットジョーカー』!『オッドアイズファントムドラゴン』!」

再び赤のペンデュラムが揺れ動き、エクストラデッキからインコ達、道化師、幻影の龍が復活…そして緑色に輝く服を着た女性魔術師が現れる! ATK1600 DEF500 ATK1800 2500

 

 

 

『そっか…!ペンデュラムモンスターはフィールドから離れたらエクストラデッキに行く…それを利用して…!』

 

「いくぞ!手札から『融合』を発動!『オッドアイズファントムドラゴン』と『ドクロバットジョーカー』を融合!大いなる風の力よ!二色の眼持つ幻影に力を与え、嵐を巻き起こせ!!融合召喚!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!!」」

融合の渦から強い風が吹き荒ぶ…そして紫電を纏うドラゴンが現れた! ATK2500

 

 

『これが…遊希兄のペンデュラム融合!!』

 

「まだだ!僕はレベル3の『インコーラス』にレベル4のチューナーモンスター『白翼の魔術師』をチューニング!!」

 

『「えっ─!?」』

遊希の思わぬ宣言に遊矢と柚子の驚きの声が重なる!

 

 

3+4=7

 

 

「荒ぶる炎が全ての闇を灼き尽くす!光差す道となれ!シンクロ召喚!咆哮せよ…幻影の爆龍!!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』」」

 

《キュオオォォン!!》

岩のフィールドに熱風が吹き荒れる…そして荒ぶる炎を纏うドラゴンが現れる! ATK2500

 

 

『遊希兄が…ペンデュラム、シンクロを…すごい!!』

 

「(……まただ、やろうと思ったら()()()……でも、今のは自覚できた…このカードが出てきたのは───)」

遊矢達が驚く中、遊希は視線を落とす…そこには開かなかったはずの「デッキケース」があった…。

 

 

「いくぞ!『メテオバースト』で遊矢にダイレクトアタック!!メテオフレイム・バースト!!」

 

『っ…させない!!罠カード「EMピンチ・ヘルパー」発動!相手がダイレクトアタックを仕掛けてきた時、その攻撃を無効──』

 

「『ボルテックス』の効果発動!このカード以外のモンスター・魔法・罠カードの効果が発動した時、エクストラデッキの『インコーラス』をデッキに戻し、その発動を無効にし破壊する!ボルテック・リフレクター!!」

 

『なんだって!?うわああ!』

稲妻が「EMピンチヘルパー」を撃ち抜き、荒々しい炎が遊矢を吹き飛ばす!!

 

 

遊矢LP3500→1500

 

 

「『ボルテックス』でダイレクトアタック!迅雷のスパイラル・バースト!!」

 

『っ…!!うわあああ!?』

炎の稲妻の息吹が遊矢に直撃…久しぶりの家族対決は遊希に軍配が上がった…。

 

 

 

遊矢LP0

 

遊希WIN!

 

 

 

 

「痛って〜…!遊希兄!ペンデュラムシンクロなんて、いつの間に編み出したんだよ!?」

 

「ははっ…やろうと思ったらできたのさ!立てるか?」

 

「うん、よっと…」

アクションフィールドが解除され、遊希は倒れ込んだ遊矢に手を差し伸べる…。

 

 

「遊矢のペンデュラム融合もよかったぞ?しっかり対策してなかったら負けてたのは僕の方だった……遊矢、街でもペンデュラム召喚の対策を考えている人がいる……ペンデュラム召喚封じとかの対策もしておくんだよ?」

 

「わかった…!アドバイスありがとう!!」

遊矢にアドバイスを伝えた遊希は時計を確認する。

 

 

「もう9時か…洋子さんも心配するだろうし、そろそろ帰ろうか?」

 

「いや…もう少しトレーニングしてから帰る!遊希兄は先に帰っててよ!」

 

「ああ、そうするよ…ちょっと無理しすぎたかな……頭が痛いや…2人とも、あんまり遅くならないように!最後の戸締まりはしっかりとね!」

 

「「はーい!」」

遊希の言葉に2人は元気よく答えた…。

 

 

 

 

「………ふぅ……なんだったんだ…?さっきの痛みは……痣…?修造さんを運んだ時にぶつけたかな…?」

帰り支度をしながら遊希は右腕を確認する…そこには古傷に隠れるように赤い痣が出来ていた…。

 

 

「帰ったら湿布貼らなきゃ───」

 

 

ピリピリピリ!ピリピリピリ!

 

 

「ん?こんな時間に…って!?海馬社長!?もしもし!!遊希です!」

痣に首を傾げる遊希の携帯が着信を知らせる、それは海馬社長からの連絡…遊希は慌てて電話に出る。

 

 

『夜分に悪いな、遊希…今は大丈夫か?』

 

「あ、はい…何か…?」

 

『ああ…デュエルディスクの修理が終わった、明日取りに来い』

 

「あっ…ありがとうございます!明日なら……朝10時に取りに行きます!!」

 

『わかった……待っているぞ』

 

 

 

 

…………

 

 

 

「おはようございます!海馬社長!」

 

『よく来たな、遊希』

 

翌朝、遊希は海馬コーポレーションを訪れた…そこでは海馬が遊希の事を待ち受けていた。

 

 

『まずは…ジュニアユース選手権の出場権は無事に手に入れたようだな…よくやった』

 

「はい…!海馬社長が手配してくれたデュエリストとのデュエル、とても勉強になりました!」

 

『そうか……では、本題だな……これがお前のデュエルディスクだ』

 

「ああ…!こんなに綺麗に…ありがとうございます!」

遊希に祝福の言葉を伝えた海馬が指を鳴らす、すると磯野が遊希の本来のデュエルディスク……この街で元々使われていた旧型デュエルディスクを手渡した。

 

 

『そして……修理の過程でそれの持ち主──つまり、お前の()()()()()のデータを修復できた…!』

 

「僕の…本当の名前…!?」

海馬の思わぬ言葉に遊希は唾を飲み込む…!

 

 

『……心して聞け、お前の名はYuumi Siranami──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『───白波遊海だ』




NextEpisode…?




時は満ち、舞網市は年に一度のデュエルの祭典『舞網チャンピオンシップス』の開催に沸いていた。

プロへの夢を抱いてしのぎを削るデュエリスト達……だが、彼らは知らない…。



世界を覆う『悪意』の侵略を…!






『こんなデュエル…キャンディを舐めながらだって、ボクにはできるさ!』



現れる侵略者達…




『私がこの次元に来たのは…エクシーズ次元の奴らが来たからだ!!』




【さぁ、狩りの時間だ!】 


【ルール通りさ、敗者は消えるんだろう…?】


【あはは…!ははははは!!】



世界を蝕む悪意の侵食………その時、眠りし力が蘇る…!






【貴様らは……生かしておくかああああああ!!!】





転生して決闘の観測者になった話 ARC-V編第2章〜強者選抜大会・舞網チャンピオンシップス〜


近日執筆開始……









「戻って来てくれ…父さん!!」



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ARC-V編主要オリキャラ・マテリアル(スタンダード)

●榊 遊希(ユウキ)

 

所属 童実野高校1年 遊勝塾塾生兼事務員

 

見た目 白髪のメンズショート 優しい顔 顔を含めた全身に無数の傷 左眼失明により黒いバンダナで顔の左半分を覆っている。

 

遊矢と色違いの青いジャケットに黒いTシャツ ジーパン

 

 

16歳くらいの少年、整った優しい顔立ちをしているが…顔を含めた全身に無数の傷が刻まれている為、初見の人には怖がられてしまう。少し身体が弱い。

 

 

ARC-V本編開始5年前に瀕死の大怪我を負い、記憶喪失の状態で榊遊勝に保護された。

身分証の類いは持っておらず、ボロ布のような服以外には『赤水晶のペンデュラムの首飾り』『錆びついた鉄の板(カルトゥーシュ)』『鍵のようなネックレス』『破損したデュエルディスク』『開かないデッキケース』しか持っていなかった。

 

名前の由来は彼がどんな人物でも『勇気』と『希望』を持つデュエリストであって欲しいという願いから。

 

また、自身に関する記憶は失っているものの『デュエルモンスターズの基礎知識』『機械整備の技術・知識』『アスリート並みの身体能力』を持っている事から実力上位のデュエリストだったのではないかと榊遊勝は予測している。

 

性格は優しく、おとなしめ…物腰が柔らかく、身体の傷が無ければそれなりに人を惹きつける素質がある。

また、表には出さないが…ストレスを溜め込んでいる。

 

 

普段はあまり表舞台に立たず、遊勝塾の事務手伝いや他の塾の助っ人をしていたが…遊矢とほぼ同じタイミングで『ペンデュラム召喚』に覚醒、戦いに巻き込まれていく…。

 

 

 

 

 

 

●海馬瀬人 海馬モクバ

 

所属 海馬コーポレーション

 

スタンダード次元における世界一の大企業『海馬コーポレーション』の若き兄弟社長と副社長。

デュエルモンスターズ関連事業は『リアルソリッドビジョン』を開発したレオ・コーポレーションに譲るが…科学技術・食品開発・宇宙開発などの多岐に渡る事業を展開している。

 

とある事件を経て遊希と知り合い、彼と遊勝塾を気に掛けている。

 

 

 

●紗良

 

海馬瀬人の許嫁、長く白い髪と青い眼が特徴の美少女。

 

暴漢に襲われた際、たまたま通りがかった遊希に救われ、海馬社長と彼の繋がりを結んだ。

 

 

 

●武藤遊戯

 

所属 亀の決闘塾 童実野高校1年

 

 

スタンダード次元におけるアクションデュエルの最年少世界チャンピオン、ストロング石島はパワー系だが、遊戯はどちらかといえば技巧タイプである。

 

遊希とは中学からの同級生であり、親友…傷のせいで孤立していた遊希に最初に声を掛けたのが遊戯だった。

それ以後、遊戯達との繋がりを得た遊希は明るくなったらしい。

 

 

 

●城之内克也

 

所属 亀の決闘塾 童実野高校1年

 

 

遊海の学友であり親友の1人、遊戯・遊希とは中学時代からの同級生だが、元々は札付きの不良だった。

だが、ひょんな事から遊戯・遊希と友人になり…今では男気溢れる男になった。

 

勉強は苦手だが、デュエルは得意…持ち前の天運と相手の不意を突くプレイングで戦い抜く。

 

 

 

●真崎杏子 本田ヒロト 

 

所属 亀の決闘塾 童実野高校1年

 

 

遊希の学友達、他の仲間達からは遊戯と遊希を含めて『笑顔組』と呼ばれている。

 

 

 

●孔雀舞

 

所属 美しきデュエル塾 童実野高校3年

 

 

遊希達の先輩であり2年連続ミス童実野高校に選ばれた才女、海馬社長が遊希の舞網チャンピオンシップス出場条件を満たす為に紹介した。

 

城之内と交際しているという噂があるが…その真偽は定かではない。

 

 

 

 

 

●凌牙

 

所属 エクシーズ次元→??? 

 

 

スタンダード次元にユート・黒咲隼と共に現れた『エクシーズ次元の使者』を名乗った少年。

他2人に比べて冷静であり、LDSと対融合次元の協力を得る為にやって来た。

 

遊希の正体を知っているようだが…?

 

 

 

☆フォウ

 

アクションデュエルの事故で左眼を失った遊希の前に現れた小さな白い猫、または犬のような不思議な小動物。

 

洋子や柚子などには懐くが…遊矢や素良は露骨に嫌われている、アクションデュエルにおいては遊希の相棒として、デュエルをサポートする。



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第2章 強者選抜大会 舞網チャンピオンシップス
Ep.14 開幕!舞網チャンピオンシップ!


こんにちは!S,Kです!久しぶりの前書きです!


主人公・白波遊海が不在の中で始まった『ARC-V』の物語…。



遊海達に何が起きたのか?


翠は何処にいるのか?  


『運命の日』に何があったのか?


そして…遊海は戻って来るのか…?
 


全てはこの先の物語の中に…陰謀渦巻く第2章、開幕です!


「遊矢!柚子!遊希!素良!タツヤ!アユ!フトシ!ついに……ついにこの日が来た!!我が遊勝塾生全員が舞網チャンピオンシップスに出場できるとは……俺は…俺は!!お前達を誇りに思うぞぉぉ!!!」

 

「お、お父さん…テンション高すぎよ…(汗)」

 

「まだ会場にも行ってないよ?」

 

「ああ…そうだった!感動しすぎて忘れてた!!」

 

《フォウ…フォウ?(特別意訳:天然なのかな?)》

その日、修造は男泣きに泣いていた…今日は待ちに待った『舞網チャンピオンシップス』の初日、遊勝塾生全員の出場が決まり感動を我慢できなかったのだ…。

 

なお、あまりのテンションに塾生は苦笑いである。

 

 

 

「……コホン、改めて説明しておくぞ!舞網チャンピオンシップスは小学生以上の『ジュニア』!中学生以上の『ジュニアユース』!そしてユース昇格者の『ユース』の3クラスに分けられた戦いだ!タツヤ・アユ・フトシは『ジュニア』、遊矢・遊希・柚子・素良はジュニアユースでの出場だ!そして舞網チャンピオンシップスには舞網市だけではなく、世界中から出場資格を得たデュエリスト達が集まってくる……我が遊勝塾の『エンタメデュエル』をアピールする為に!全員、優勝するつもりで頑張ってくれ!!」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

「良い返事だ!それじゃあマイクロバスに乗り込んで…出発だ!!」

修造によって説明を受けた遊矢達は士気を高める…舞網チャンピオンシップスにおいては全員が仲間であり、ライバルとなるのだ。

 

 

 

「(舞網チャンピオンシップス……ついに、この日が来たか……遊勝さんと修造さんへの恩返し……そして、()()()()を取り戻す為の戦いが……)」

マイクロバスへと乗り込んだ遊希は静かに集中する…その脳裏には数日前の海馬との会話が浮かんでいた…。

 

 

 

 

Side遊希

 

 

 

『心して聞け、お前の本当の名は────白波遊海だ』

 

「しらなみ、ゆうみ……」

デュエルディスクからサルベージされた持ち主の名前…つまり、遊希の()()()()()が海馬から告げられる…それは遊希が探し求めたはずの手がかり…だが…。

 

 

 

「ゆうみ……遊海……ああ、なんだか()()()()()()…まるでパズルのピースがはまったみたいに……」

 

『何か、思い出したか?』

 

「……()()…これで『一気に全部の記憶が戻った!』……って、なったなら、すごいドラマティックなんですけどね……」

 

『はぁ……そうか……』

海馬の問いに遊海は…()()は静かに首を横に振る、本当の名前を知っても記憶が戻る事は無かった…それを聞いた海馬は深い溜息をつく…。

 

 

 

『………()()()()()()……()()()()()()……()()()()()……このどれかに聞き覚えはあるか?』

 

「えっ…?ない、ですけど…?」

少しの間思案した海馬はとある「言葉」について遊希に訊ねる…だが、遊希はその言葉について覚えがなかった。

 

 

『デュエルアカデミア…三幻魔……ダークネス……これはどうだ?』

 

「ダークネス……たしか、爬虫類族で『ダークネスソウル』ってモンスターがいましたよね?」

 

『っ……ネオ童実野シティ、チーム5D's、WRGP…これはどうだ!!』

 

「ネオ、童実野?なんですか…?その未来都市みたいな───」

 

『っつ〜…!!いい加減にしろ!白波遊海!!お前は…お前はこの程度で記憶を失う男ではないだろう!!!』

 

「か、海馬社長!?」

遊希にいくつもの『言葉』……白波遊海に関わるキーワードを投げ掛けた海馬…だが、遊希にはなんの事だか理解できない……苛立った海馬は思わず遊希に掴みかかる…。

 

 

 

『……すまぬ、取り乱した……今日は帰れ………舞網チャンピオンシップスでの活躍に期待する、大会でのデュエルの中で記憶が戻るやもしれん……全力で戦え』

 

「あ……はい…!遊勝塾の為に、海馬社長の為に…全力で戦います…!」

冷静さを取り戻した海馬に追い出されるように…決意を伝えた遊希は社長室を後にした…。

 

 

 

 

Side海馬

 

 

 

『………これでも、ダメなのか…アテムは名前を思い出せば「記憶」も戻ったではないか…!!お前の受けた「傷」は…それほどに深いと言うのか!!』

遊希を追い出した後、海馬は頭を抱える……掛け替えのない『友』であり、世界を幾度となく守って来た『英雄』…その記憶も人格も…未だ、固く閉ざされたままだった…。

 

 

 

『前世からの友である遊戯や凡骨、孔雀舞とのデュエル…さらにはお前が使っていたデッキの使い手でも……お前の息子とのデュエルでも戻らないだと…!?これ以上どうすればいい!?翠をエクシーズ次元から呼べとでも言うのか!?』

苛立ち任せに机に拳を叩き付ける海馬、彼が遊希の記憶を目覚めさせる為にできる事は……。

 

 

 

『……いや、まだチャンスはある……だが、下手をすれば………()()()()()()()な……』

海馬は記憶の中の遊海の戦いを振り返り…一つの可能性に気付いた…。

だが…それは遊海にとっても…この『世界』にとっても『諸刃の剣』……海馬は頭を抱える…。

 

 

『……遊海、さっさと戻って来い…!この大馬鹿者!!』

何もできない歯痒さに苛立ちながら海馬は未だに戻らぬ友へと叫んだ…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

「………海馬社長、怒ってたな………本当に申し訳ない……」

マイクロバスから外を眺めていた遊希は小さく呟く…あの時、遊希に詰め寄った海馬は……まるで白波遊海について知っているようだった…。

 

 

「………あれ…?遊矢は?」

 

「「「えっ!?今気付いたの!?」」」

そんな時、遊希はマイクロバスに遊矢が乗っていない事に気付く…なお、柚子達はその事に気付いていて…先に会場に向かったのかも?という話を数分前にしていたのだった。

 

 

 

 

 

Side遊希

 

 

 

「……そうですか…ありがとうございます…」

 

「遊希兄ちゃん!遊矢兄ちゃんは!?」

 

「まだ受付してないみたいだ…一度、素良の所に戻ろう…」

 

「もう!遊矢兄ちゃんは何処行ったの〜!?」

会場となる舞網スタジアムに到着した遊勝塾一行だったが…遊矢は会場に来ていなかった。

遊希達は散開して遊矢を探したのだが…まだ受付もしていない、開会式まで残り30分程である。

 

「(洋子さんは心当たりがあるみたいだった…それに賭けるしか……)うん…?なんだか騒がしいな…?」

一緒に行動していたアユと集合場所に戻る遊希…だが、そこでは小さな騒ぎが起きていた…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

「素良!遊矢は?!」

 

「ううん、まだ来てないよ?」

 

「遊希さんが家に掛けたけど戻ってないって言ってたし…遊矢ったら何処に行ったのよ…!」

遊矢を探していた柚子・タツヤ・フトシが素良の待つ集合場所に戻って来る…だが、遊矢はまだ来ていなかった。

 

 

 

『……なんですって?()()ダーリンが来てないって、本当なの?』

 

「あ、アンタは…方中ミエル!」

困り果てていた柚子達に声をかけたのは林檎型の水晶を持った、黒いリボンで髪を結んだ小柄な少女…遊矢が舞網チャンピオンシップス出場を賭けて戦った相手、方中ミエルだった。

儀式召喚の使い手であり、若いながらも高い『占い』の技術を持つミエルは遊矢を『運命の人』として…恋しているのである。

 

……なお、遊矢はあまりに熱烈なアプローチに苦笑いである。

 

 

 

「私の遊矢って…アンタねぇ…!!

 

「「わ〜っ!?柚子姉ちゃん!?」」

ミエルの『ダーリン』発言に嫉妬の炎を燃やす柚子…だが、ミエルはそんな柚子を無視して話を続ける。

 

 

『……もしかして…ダ〜リンったら、私のパパとママに挨拶に行ってたりして〜!いや〜ん♡』

 

はぁ"?そんな訳ないでしょう"…!!

 

「わ〜!?柚子姉ちゃん落ち着いて─!?」

甘い妄想を語るミエルに柚子は思わず大ハリセンを取り出すが、タツヤ達が慌てて制止する…そんな時…。

 

 

「みんな、どうしたんだ?」

 

「あっ!遊希兄ちゃん!!」

 

『あっ…ダーリンのお兄さ……きゃあっ!?』

 

「……まぁ、そうなるよね…(泣)」

 

「遊希兄ちゃん泣かないで〜…」

ミエルの背後から現れたのはアユと共に戻って来た遊希だった……ミエルは傷だらけ強面の遊希に驚いて、飛び退いてしまう……なお、遊希は涙目である。   

 

 

「遊矢から話は聞いてるよ、海野占い塾の方中ミエルさん…僕は……榊遊希、怖がらせてごめんね?」

 

『あ…こ、こちらこそ……いきなりだったからびっくりしちゃって、ごめんなさい…』

改めてミエルに名乗る遊希…その声色から穏やかな人物だと気付いたミエルは遊希に謝った。

 

 

「遊矢はまだ受付も通ってないみたいでね……よかったら、占ってみてくれないかな?」

 

『あっ…その手があったわ!任せてくださいな!私の手に掛かれば、すぐ分かっちゃうわ!』

遊希に「占い」を頼まれたミエルは水晶玉へと念を送り、その行方を占う…。

 

 

『ダーリンは……見えた!!あっち!!』

 

「あっちは…舞網大橋……そっか、まったく……行く場所が違うだろ?遊矢…」

ミエルは占いで舞網大橋の方角を指差す…そこは遊矢と遊勝の『思い出の場所』だった。

 

 

 

 

「ありがとうミエルさん、遊矢はすぐに来ると思うから…安心してくれ」

 

『お義兄さん…はい…!あっ、お義兄さんも占ってみますか?舞網チャンピオンシップスの事とか!』

 

「ん…?じゃあ、お願いしてみようかな?」

 

「(もう、ミエルったら…遊希さんに取り入って遊矢に近づくつもりね…!!)」

ミエルに家族としての()を伝える遊希…それを聞いて安心したミエルは遊希を占う事を申し出る、それは柚子が考えた通りの思惑もあった…。

 

 

『見える…見える…ミエルには見える……大いなる怒り……浄化の炎……黒い……なに、これ…?キャッ!?』

 

ピシッ…

 

「ミエルさん!?大丈夫!?」

 

『え、えぇ……水晶玉が…どうして…!?』

熱心に水晶玉を覗き込んでいたミエル…だが、突如として水晶玉に罅が入り、真っ二つに割れてしまった…!

 

 

『これ……遊希、さん……気をつけて…!貴方には…人生を左右する…とても大きな()()が迫っているわ…!』

 

「大きな、決断…?」

ミエルは怯えた表情で遊希に言葉を告げた…。

 

 

 

………

 

 

 

 

「あっ…いたいた!お〜い!!遅れてごめーん!!」

 

「「「遊矢兄ちゃん!!」」」

 

「遊矢!!こんなに心配させて…!何処をウロウロしてたのよ!?」

 

「ごめんごめん!ちょっと用事があってさ!」

 

開会式開始10分前、洋子の言葉に背中を押された遊矢がやって来る…が、速攻で柚子に叱られたのだった。

 

 

「まったく…心の整理はついたのか?」

 

「遊希兄……ああ、オレはオレらしく戦うだけさ!」

遊希の問いに遊矢は明るく答える…その眼にはもう迷いは無かった。

 

 

「そろそろ入場時間だろ?並びに行こうぜっ!?(ゴン!!)痛っ…!?」

 

「遊矢!?」

入場口に並びに行こうとした遊矢…だが、その先に立っていた人物にぶつかってしまう!

 

 

 

『ん……?ハッ!久しぶりだなぁ、弱虫…!』

 

「お前…!」

 

「お前は…!隣玉高校の暗黒寺…!」

遊矢がぶつかった人物を遊希は知っていた…その名は暗黒寺ゲン、札付きの不良であり…遊矢を侮辱した事で掟を破り、権現坂道場を破門になった男だった。

 

 

 

『へっ…てっきり、大事な大会だから逃げ出したと思ったぜ?お前の親父みたいによぉ…!』

 

「なにっ…!」

 

『お前みたいな奴がストロング石島を破ったなんて、俺は認めねぇ…なんなら、今ここで俺が叩き潰して──』

 

そこまでだ、暗黒寺ゲン!!

 

『っ…テメェ…!』

 

「権現坂!?」

遊矢に因縁をつける暗黒寺…それを止めたのは他ならぬ権現坂だった!

 

 

『兄弟子を呼び捨てかよ、偉くなったなぁ?権現坂…!』

 

「あんたはもう()()()ではない」

 

『ハッ…!テメェからぶっ飛ばされてぇか?』

火花を散らす権現坂と暗黒寺…一触即発の2人、その時──

 

 

『おいおい!年下相手にイキっても仕方ねぇだろ?アンコロ寺!見てて情けなくなってくるぜ?』

 

 

『っ…!城之内…!?』

 

「克也!!」

そんな2人に声を掛けたのは…呆れた様子の城之内だった。

 

 

『お前もデュエリスト名乗るなら、デュエルでハッキリさせろよ?ま、腕っぷしはオレの方が強いんだけどな!』

 

『……へっ…!権現坂!城之内!オレがぶっ潰すまでせいぜい頑張るこったな…!』

権現坂と城之内に挟まれた暗黒寺は捨て台詞と共に去って行った…。

 

 

「克也!舞網チャンピオンシップスに間に合ったんだ!?」

 

『へへっ!あたりまえだぜ!この城之内様を舐めるなってんだ!』

暗黒寺が去った後、遊希は城之内に話し掛ける…城之内は持ち前の運と実力で出場権を獲得していたのだ。

 

 

『遊希!オレは前までのオレじゃねぇ…決勝で待ってるぜ!』

 

「ああ…!望むところさ!」

遊希と城之内は拳を突き合わせ、再戦を誓った…!

 

 

 

 

 

 

【皆さま!大変長らくおまたせしました!!年に1度のデュエリストの祭典…舞網チャンピオンシップスの開幕です!!】

スタジアムに今年の司会に選ばれたニコ・スマイリーの声が響き渡り、会場は熱狂に包まれる!

 

 

【それでは選手の入場でーす!!】

ニコの紹介と共に選手達が入場し始める…最初に入場するのは当然、LDSの生徒達…その中には…彼らの姿もあった…。

 

 

 

『舞網チャンピオンシップス…か、デュエルカーニバルを思い出すな…』

 

『おい…俺達が出る必要はあるのか?』

 

『赤馬から説明は受けたはずだ隼…オレ達に赤馬零王と戦える者達を見極めて欲しいと…』

 

『そして…紛れ込んでいるアカデミアを炙り出す為にな』

 

『チッ…』

LDSの入場に紛れるのはエクシーズ次元・レジスタンスの凌牙・黒咲・ユートの3人……彼らは零児の要請で舞網チャンピオンシップスへと出場していた…。

 

 

 

『──続いてはエンタメデュエルで話題の遊勝塾!!この遊勝塾所属の榊遊矢くん、そして榊遊希くんは新たな召喚方ペンデュラム召喚で注目されています!─そして続くのは亀の決闘塾───』

 

「赤馬、零児…!」

 

『………』

入場アナウンスに従って入場する遊矢達…その時、遊矢は来賓席に座る零児と目が合った…。

 

 

 

キィン─!!

 

 

「あっ…ブレスレットが…?」

その時、柚子のブレスレットが淡い光を放った…。

 

 

 

………

 

 

 

【舞網市長、お祝いの言葉ありがとうございました!続いては選手宣誓です!】

式は厳かに進む…続くのは選手宣誓、それに選ばれたのは──

 

【選手代表…()()()君!お願い致します!】

 

 

「えっ…えぇっ!?オレぇぇ!?聞いてないよぉ!?

 

「……ニコさん、サプライズにしたって…(汗)」

ニコが指名したのはなんと遊矢…しかも、完全なるサプライズ……動揺する遊矢だったが、あれよあれよという間に壇上に上げられてしまった…。

 

 

 

【遊矢君、これもエンターティナーとしての一歩!さぁ、お願いします♪】

 

「む、無茶言うなぁ…」

ニコが小声で遊矢へと声を掛け…遊矢はガチガチに緊張した状態でマイクの前に立つ…!

 

 

「せ、せ……センセぇぇー!

 

 

「「『「「だあっ!?」」』」」

 

「だめだこりゃ」

 

「遊矢兄ちゃん、あがり過ぎ…(汗)」

遊矢は右手を挙げて宣誓しようとしたが、緊張から声が上ずり…選手達はズッコケてしまう…。

 

 

「え、あ、えっと〜!?!?」

 

「遊矢!しっかり!みんな見てるんだから〜!?」

 

「遊矢!焦るな!()()()()()やればいいんだ〜!!」

 

《フォーウ!》

 

「あっ…みんなが、見てる……みんなを、笑顔に…!」

緊張から頭が真っ白になる遊矢…だが、柚子と遊希の声で落ち着きを取り戻す…大観衆の前で思い出したのは──父の言葉だった。

 

 

 

「ふーー……レディース&ジェントルマン!先程は、大変失礼致しました!気を取り直して……これより選手宣誓をさせていただきます!……と、いきたいところですが…ちょっと、オレの話を聞いてください!」

息を整えた遊矢が声を張り上げる…だが、それはただの選手宣誓ではない……遊矢の目指すエンターティナーとしての決意表明だった。

 

 

 

「オレの父さんはデュエリストの榊遊勝です!世界最高のエンタメデュエリストです…でも、皆さんの知っての通り、三年前…デュエルが始まる前に突然、どこかに行っちゃいました!……みんなに『逃げたデュエリスト』と言われて、バカにされて…それでも、負けるもんかってエンタメデュエルを必死でやって……でも、どこかでデュエルから逃げていたんだと思います…」

 

「遊矢…」

それは遊矢の暗い時代…逃げて消えてしまった『臆病者』の息子と呼ばれた思い出……しかし、遊矢はもう臆病者ではない…何故ならば、彼は新たな力を手にしたからだ…。

 

 

 

「…けど、ペンデュラム召喚と出会って、すごく強いデュエリストと戦って、どんどんデュエルが楽しくなって…!もっとデュエルを好きになりたいと思いました!そしてオレは…榊遊勝みたいに誰かの誇りにされる、最高のプロデュエリストになりたいです!!自分も、みんなもデュエルが好きになる…そんなデュエリストになりたいです!!」

それは遊矢が踏み出したエンタメデュエリストとしての第一歩…ペンデュラム召喚と共に、遊勝のような最高のプロデュエリストを目指す──そんな遊矢の決意が込められた、心からの言葉だった。

 

 

パチパチパチパチ!!

 

 

「みんな…」

一瞬の静寂の後、スタジアムは拍手に包まれる…零児もLDSの生徒や他の塾の塾生達…そして観客達も遊矢へと拍手を送る。

 

そこには「臆病者の息子」と呼ばれた榊遊矢はいない…遊矢のエンタメデュエリストとしての戦いは此処から始まるのだ…!

 

 

「遊矢、お前は遊勝さんを()()()()()……あの人以上のデュエリストになれるよ…!」

拍手に包まれる会場の中で遊希は静かに呟いた…。

 

 

 

 

【エ〜クセレント!!榊遊矢君の選手宣誓、もとい!決意表明でした!!それでは……1回戦の組み合わせを発表したいと思います!】

拍手と歓声の中で遊矢が退壇し、ニコが1回戦の説明を始める!

 

 

【まずは選手の皆さん!受付で渡された『登録カード』をデュエルディスクにセットしてください!】

 

「これか…」

 

《フォウ?》

遊希はポケットから免許証にも見えるカードを取り出す…フォウは興味深げにその匂いを嗅いでいる。

 

 

【登録カードは大会運営からの特殊な電波を受信、()()()()にデュエリストを選んで対戦相手を決定します!また、2回戦以降も相手が更新されていくので…失くさないようにご注意ください!】

 

 

「よーし、オレの相手は……沢渡!?」

 

「私は……真澄!?」

遊矢と柚子が対戦相手を確認する…それは、お互いに因縁深い相手だった。

 

 

「俺は……明日、暗黒寺ゲン…これが、定めか…!」

 

「「えぇっ!?」」

さらに近くにいた権現坂もまた因縁深い相手……元兄弟子である暗黒寺が相手だった。

 

 

「素良と遊希兄は?」

 

「ん…ボクは…明日、LDSの……黒咲隼…?あの時の…!」

 

「えっ…!?」

遊矢が素良達の相手を訊ねる…素良の相手は柚子達の前に現れた不審者──黒咲だった。

 

 

「それで僕は……今日の午後最後……LDSの……ユート…?」

 

「えっ…その人は…!?」

 

《ドフォーウ!?》

 

「ん?知ってるのかい?柚子ちゃん」

 

「沢渡を倒した…エクシーズ使い、です」

 

「「えぇっ!?」」

遊希のデュエルディスクに映し出された相手、それは紫と黒の髪の少年…柚子を沢渡から守ったデュエリストだった…!

 

 

「コイツの顔…本当にオレにそっくりだ……」

 

「私、初めて会った時は本当に遊矢かと思った…」

 

「そうか?雰囲気は似てるけど…()()()()()()()と思うけどなぁ…?」

遊希のデュエルディスクを覗き込む遊矢と柚子、遊矢自身もユートに似ていると思ったが……遊希はあまり似てないと感じたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『………オレの相手は…榊遊希、か……』

 

スタジアムから離れたビルの屋上…いつも通り()()()()()ユートは対戦相手を確認する。

 

 

『凌牙の言う「最後の希望」…その力をオレが見極める…のはいいが………デュエル中に飛ばされたら、どうすればいいんだ…?……凌牙に相談するか……』

遠くに見える舞網スタジアムを見ながら、ユートはそんな事を考えた…。

 

 

 

 

 

 

運命の歯車は……静かに回り始める…。



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Ep.15 幻影と幻影〜反逆の牙と氷結の竜〜

Side???

 

 

『速攻魔法「禁じられた聖衣」…発動!』

 

キィン─!

 

『ぐっ…体が、少し重いな…!』

 

『我慢しろ…攻撃力を600下げる代わりに、対象を効果の対象・破壊から守る魔法カード…これでデュエルが終わるくらいまでは保つだろ』

 

『すまない、凌牙…感謝する』

 

『気にすんな、父さんや母さんなら……もう少し上手くやるだろうからな…』

 

デュエリスト達の激戦が繰り広げられている舞網スタジアム、そのLDS控え室…そこでは凌牙がユートに対して強制テレポートの対策を施していた…。

 

 

 

『ユート、あの人には手を抜かないで戦ってくれ……随分と弱ってるが……少しずつ()()()()()()

 

『いいのか?オレの相手……榊遊希は、お前の大切な人なんだろう?』

 

『……()()()()()()()だ……もしかしたら、お前とのデュエルで記憶が蘇るかもしれねぇ…』

 

『それは…どういう事だ?』

ユートが戦う相手は榊遊希…凌牙が『最後の希望』と呼ぶ少年……しかし、凌牙の言葉の意味が分からなかったユートは凌牙に真意を問う。

 

 

『……俺があの人と戦った時、俺は()()であの人と戦った……結局、あの人は暴走しちまったんだが………たぶん、()()()()()()()んだ……あの人の中に眠る「決闘者の魂」を目覚めさせるには……スタンダードのデュエリストじゃ()()()()……真の「決闘者」じゃねぇとな…』

 

「真の、決闘者…」

凌牙は遊希の中に眠る『英雄』を目覚めさせる方法を考えていた…そして行き着いたのが『強いデュエリストと戦う事で「決闘者の魂」を目覚めさせる』という方法だった。

 

『とにかく…お前はあの人と熱い戦いをしてくれればいいさ…少しの間でも、次元戦争の事は忘れてな…』

 

『……融合次元への怒りは忘れる事はできない…だが、できる限りやってみる……行ってくる…!』

 

『ああ、客席で見てるぜ』

黒いコートを羽織り、ユートはデュエルコートへと向かった…!

 

 

 

『………()()()()()()()……そのせいで父さんが暴走するような事があったら……その時は、俺が止める……!例え、俺の命に懸けても…!』

ユートの背中を見送った凌牙はデッキケースから1枚のカードを取り出し、決意を固めた…。

 

 

101

 

 

 

Side Out

 

 

 

Side遊希

 

 

 

「……なるほど、沢渡君の事件の時にそんな事が……だから上の空だったんだね」

 

「はい…あの時、遊矢を信じられなかった自分が情けなくて……それで強くなりたかったんです」

 

同じ頃、遊希は柚子から沢渡事件の真相を聞かされていた。

沢渡のアジトに突撃した柚子を守った、遊矢に似た少年…ユートの事を…。

 

 

「それより不思議なのは……柚子ちゃんのブレスレットが光るとユートが消えて、遊矢が現れる…か……」

 

「そうなんです…話してる途中に消えちゃったりして……」

 

「デュエル中に消えられちゃうと厄介だね…」

そして本題は対戦相手のユートが柚子のブレスレットの光と共に消えてしまうらしい事…実は事件の後、素良と共に特訓中に何度か、ユートが柚子の様子を見に来たのだが…ブレスレットの光と一緒に消えてしまうという事が多々あったらしいのだ。

 

 

「とりあえず、柚子ちゃんはスタジアム中心からなるべく離れた所にいて欲しいな…離れていれば効果が出ないかもしれないからね…あと、話したい事は?」

 

「……もう一つ、あるんですけど……それは大会が終わった後で!ユートから聞いたけど……本当かどうか分からないし……」

 

「分かった……さて、遊勝塾の最年長として、フトシや柚子ちゃんに続いて2回戦に行けるように頑張りますか!!」

 

「遊希さん!頑張って!」

 

《フォウ、フォーウ!》

柚子の話を聞いた遊希は左眼を覆うバンダナを締め直して立ち上がり、その肩にフォウが跳び乗る!

 

 

「あの…遊希さん?フォウ君預かってましょうか?」

 

「ああ、いや…大丈夫、ニコさんにも許可は取ったし……どちらにしても、いつの間にか肩に乗ってるんだもんなぁ……な、フォウ君?」

 

《フォウ!》

遊希は苦笑しながら肩のフォウを撫でる…その瞳には『遊希から離れない』という強い意志が宿っていた…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

【レディース&ジェントルマン!!それではジュニアユース選手権1回戦!本日最後のデュエルとなりまーす!!】

 

「「「わあああ!!」」」

夕暮れの舞網スタジアムにニコの声と観客の声援が木霊する!

 

 

【それでは、対戦選手の紹介と行きましょう!!まずは1人目!今大会最多の出場選手を誇るLDSから!黒きエクシーズ使い!ユート選手!そして2人目は遊勝塾所属!榊遊矢に続く、もう一人のペンデュラム使い!数多の傷を背負いし、ミステリーボーイ!榊遊希選手!相棒の白猫・フォウさんと共に入場でーす!】

 

 

「君がユート君か、柚子ちゃんを助けてくれてありがとうね」

 

『…彼女がオレの知り合いに似ていたから……そんな理由だ、礼を言われる程の事じゃない』

 

「そうか…」

ニコの紹介と共に入場した2人が短く言葉を交わす。

 

 

【さぁ!アクションフィールドの選択です!今回のアクションフィールドは〜……アクションフィールド『レクイエム・キャッスル』!!鎮魂の城で熱いデュエルが繰り広げられる!!】

リアルソリッドビジョンが起動、周囲の景色が静かな西洋の城…その玉座の間に変化する!

 

 

『すまない、アクションデュエルの口上を覚えられていなくてな…頼んでもいいか?』

 

「そうなのか?じゃあ、僕が言わせてもらうよ!」

 

「デュエルの殿堂に集いしデュエリスト達が!モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!これぞ、デュエルの最強進化系!アクショ〜ン!!」 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

《フォーウ!!》

 

 

遊希の口上と共に、2人のデュエルが始まった!!

 

 

 

ユートLP4000

遊希LP4000

 

 

アクションフィールド『レクイエム・キャッスル』

 

・アクションカードは1枚しか手札に加えられない。

 

 

 

 

 

 

『先攻はオレか…オレのターン!』

『「幻影騎士団(ファントムナイツ)ダスティ・ローブ」を召喚!』

紫のローブを纏った人魂の戦士が現れる! ATK800

 

『さらに!自分の場に「幻影騎士団」モンスターが存在する時、手札の「幻影騎士団サイレント・ブーツ」は特殊召喚できる!』

茶色のローブを纏い、布靴を履いた人魂の戦士が現れる! ATK200

 

 

「オレはレベル3の『ダスティローブ』と『サイレントブーツ』の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!戦場に倒れし騎士たちの魂よ!今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク3!「幻影騎士団ブレイクソード」!」

ユートのフィールドで光が弾ける…そして鎧を纏った馬に騎乗する首なし騎士が現れる! ATK2000

 

『オレはカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

ユートLP4000

ブレイクソード 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「『幻影騎士団』…奇遇だね、僕も『幻影』のモンスターを使うんだ!じゃあ、いくよ!!」

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「僕は手札からスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『龍穴の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

PENDULUM!!

 

遊希の背後に現れた光の柱の中に竜の魂を呼び起こす魔術師と仮面のような外殻を纏った赤いドラゴンが浮かび上がる…!

 

 

「いくぞ!揺れろ!希望のペンデュラム!全能の軌跡よ歴史を刻め!ペンデュラム召喚!手札からレベル4『虹彩の魔術師』!同じくレベル4『龍脈の魔術師』!そして二色の眼を持つ幻影のドラゴン!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

赤いペンデュラムの軌跡と共に赤いローブを纏った魔術剣士、そして赤と青の瞳を持ち、白い外殻を纏ったドラゴンが現れる! ATK1500 2500

 

 

 

「うおぉ!あれがペンデュラム召喚か!!」

 

「綺麗!初めて見た!!」

 

「最後まで残っててよかった〜!!」

そしてペンデュラム召喚を見た観客達から歓声が上がる…現状、ペンデュラム召喚を扱えるのは零児を除けば遊矢と遊希のみ…観客達の多くはペンデュラム召喚目当てに最後まで残っていたのだ。

 

 

『それがペンデュラム召喚か…最大5体のモンスターの同時召喚、確かに()()になるな…』

 

「ああ、これが僕達が手にした力だ!僕はさらに装備魔法『ワンダー・ワンド』を『虹彩の魔術師』に装備!攻撃力が500アップ!」

虹彩の魔術師が緑の宝玉が輝く杖を手にする! ATK1500→2000

 

 

「バトルだ!『オッドアイズ』で『ブレイクソード』を攻撃!夢幻のスパイラル・フレイム!」

 

『くうっ…!』

螺旋の炎が首なし騎士を焼き尽くす!

 

ユートLP4000→3500

 

「さらに『オッドアイズ』の効果発動!ペンデュラム召喚されたこのモンスターが相手にバトルダメージを与えた時!ペンデュラムゾーンの『オッドアイズ』カード1枚につき1200ダメージを与える!幻視の力─アトミック・フォース!!」

 

『っう…!?(これが凌牙の言っていた、彼の力か…!!)』

ペンデュラムゾーンから放たれた援護射撃がユートを吹き飛ばす!

 

ユートLP3500→2300

 

『凄まじい連撃だな…!だが、ORUを持った状態で破壊された「ブレイクソード」の効果発動!ORUとなっていたモンスター2体をレベル4にして特殊召喚!!』

ユートの場に戦士達が蘇る! DEF1200 1000

 

ダスティローブ☆3→4

 

サイレントブーツ☆3→4

 

 

「なら、『虹彩の魔術師』で『ダスティローブ』を攻撃!」

魔法剣で紫のローブを斬り裂く!

 

「そして『ワンダーワンド』の効果発動!装備モンスターとこのカードを墓地に送って2ドロー!!……カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊希LP4000

オッドアイズファントムドラゴン  (P ペルソナ 龍穴) 伏せ2 手札1

 

 

 

『…凌牙の言っていた通りだ、あなたは強いな…!だが、ここからだ!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『罠カード「幻影騎士団シェード・ブリガンダイン」を発動!このカードを闇属性・戦士族レベル4の通常モンスターとして特殊召喚!』

重厚な鎧を纏った人魂が現れる! DEF300

 

「レベル4のモンスターが2体…!」

 

『オレはレベル4の「シェードブリガンダイン」と「サイレントブーツ」の2体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!』

2体の戦士が銀河へと飛び込み大爆発が起きる!!

 

 

『愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!!いま、降臨せよ!エクシーズ召喚!!ランク4「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」─!!』

爆発の中から紫電を纏う黒き反逆龍が現れる! ATK2500

 

 

「これが、彼のエースモンスター…っ…オッドアイズ…?」

 

《グルルル…!》

 

エクシーズの名を背負うドラゴンを警戒する遊希…だが、その隣でオッドアイズはダークリベリオンを見て唸り声を漏らしていた…。

 

 

()()()…なぜ、あの()()()()()()と同じ反応を……「ダークリベリオン」の効果発動!ORUを一つ使い!相手フィールドのレベル5以上のモンスター1体の攻撃力を半分にし、その数値分自身の攻撃力をアップする!トリーズン・ディスチャージ!』

 

「オッドアイズ!!」

ダークリベリオンの翼から放たれた紫電がオッドアイズを拘束し、力を奪う!

 

 

オッドアイズファントム ATK2500→1250

 

ダークリベリオンATK2500→3750

 

 

『さらに!ORUを一つ使い「ダークリベリオン」の効果発動!さらに攻撃力を半分にし、その数値分の攻撃力を得る!トリーズン・ディスチャージ!!』

 

「っ…!!」

さらに放たれた紫電がオッドアイズを締め付ける!

 

 

オッドアイズファントムATK1250→625

 

ダークリベリオンATK3750→4375

 

 

『バトルだ!「ダークリベリオン」で「オッドアイズファントムドラゴン」を攻撃!!』

 

「っ!!罠カード「ハーフ・アンブレイク」を発動!!このターン「オッドアイズ」はバトルでは破壊されず、戦闘ダメージは半分になる!!」

飛翔する反逆のドラゴンを前に遊希は守りを固める…だが…!

 

 

『カウンター罠「闇の幻影」発動!闇属性モンスターを対象とするモンスター効果・魔法・罠の発動を無効にし、破壊する!よって闇属性の「オッドアイズファントムドラゴン」を対象とした「ハーフ・アンブレイク」は破壊される!受けてみろ!反逆のライトニング・ディスオベイ!!』

 

「なっ…!?ぐあああああ!!!…がはっ!?」

闇の瘴気が泡の守りを砕き、ダークリベリオンの鋭い一撃がオッドアイズを粉砕…吹き飛ばされた遊希は地面に叩きつけられる!

 

遊希LP4000→250

 

『オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!この瞬間、「ダークリベリオン」の攻撃力は元に戻る!』

 

ダークリベリオンATK4375→2500

 

ユートLP2300

ダークリベリオン 伏せ1 手札0

 

 

 

 

《フォウ!フォーウ!?》

 

「っ……大、丈夫……「ダークリベリオン」……すごい、モンスターだ…!」

フォウの心配そうな声を聞きながら遊希は立ち上がる…一撃でライフの9割を削られるダメージ…それは傷付いた遊希には重すぎる…!

 

 

『まだ、戦えるか?あなたの体は酷く傷付いている…サレンダーした方がいいんじゃないか?』

 

「ふふっ……そんな事したら、遊矢達に顔向けできないさ…それに、海馬社長に絶対怒られる…僕は絶対に諦めない!ライフが尽きるまで、僕は戦う!」

ユートにサレンダーを勧められた遊希は苦笑しながらそう答える…その瞳にはまだ光が宿っている!

 

「(この状況を打破できるのは……『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』の効果……『融合』が引けなきゃ、僕の負けだ…!)」

 

 

 

 

「僕のターン、ドロー!!……っ…」

光の軌跡と共にカードを引く遊希…だが、引いたのは望んだカードではなかった…!

 

「オレはスケール1の『オッドアイズペルソナドラゴン』とスケール8の『龍脈の魔術師』で再びペンデュラムスケールをセッティング!再び揺れろ!希望のペンデュラム!ペンデュラム召喚!手札からレベル7『法眼の魔術師』!レベル4『龍脈の魔術師』!エクストラデッキから『虹彩の魔術師』!『オッドアイズ・ファントムドラゴン』!!」

赤のペンデュラムが再び軌跡を描き、摩尼車を持つ魔術師、刃の付いた杖を構える少年魔術師、赤のローブの魔法剣士、幻影のドラゴンを呼び出す! ATK2000 DEF900 1000  ATK2500

 

 

 

『4体のモンスターの同時召喚…!』

 

「(状況を突破するには、『オッドアイズ』で相討ちに持ち込んで…『法眼』で追撃するしかない…だけど、あの伏せカードが攻撃力を上げるカードか……破壊系の罠だったら、僕の負けだ…!)」

モンスターを展開し、一か八かの攻撃を仕掛けようとする遊希…その時──

 

 

 

 

 

ドクン!!

 

 

「ぐうっ…!?」

 

《フォウ!?》

 

『おい、大丈夫か…?』

遊希の心臓が強く脈打つ…突然の痛みに遊希は思わず胸を押さえる…!

 

 

「(この、感じ…あの時の……ダメだ……呑まれちゃ、ダメだ…!)」

それは朧げに記憶に残る凌牙戦と同じ衝動…破壊衝動にも似た…勝利を欲する衝動に遊希は必死に抗う…!

 

「(あの時、遊矢達は()()()()()()()…僕は、それほど酷いデュエルをしてしまった…!僕は…僕は…!!)僕は…レベル7の『法眼の魔術師』と『オッドアイズファントムドラゴン』の2体で、オーバーレイ!!」

 

『なにっ!?』

衝動を振り切るように遊希は叫ぶ…ただの勝利ではなく、笑顔で…満足できる勝利を得る為に…!

 

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!絶対零度に眠りし龍よ…その静寂なる力を開放せよ!現われろ!ランク7!『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!!」

光の銀河が爆発し、周囲に凍りついた風が吹き荒ぶ…その中から氷を纏いし二色の眼のドラゴンが現れる! ATK2800

 

 

『ここでエクシーズ召喚だと!?』

 

「はっ…はっ…バトルだ!『アブソリュートドラゴン』で『ダークリベリオン』を攻撃!氷結のアイス・スパイラル!!」

 

『っ…だが…!罠カード「幻影翼」発動!このターンの間「ダークリベリオン」は攻撃力が500アップし、戦闘・効果による破壊を1度だけ無効にする!』

ダークリベリオンの翼に幻影の炎が燃え上がる!

 

ダークリベリオン ATK2500→3000

 

 

「まだだ…!『アブソリュートドラゴン』の効果発動!ORUを1つ使い、モンスターの攻撃を無効にする!静寂のアイス・シールド!」

 

『なにっ!?』

アブソリュートが攻撃を放つ寸前、巨大な氷壁が2体のモンスターを分断する!

 

 

『待て…この状況は、まさか…!』

 

「この瞬間!リバースカード発動!速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』!!モンスター1体の攻撃が無効になった時、そのモンスターはもう一度攻撃できる!!」

 

『そのカードは─!!』

遊希の発動したカードを見たユートは目を見開く…その時、彼の目には…遊希に重なるようにエクシーズ次元を救う為に戦う『希望の勇士』の姿が見えていた…!

 

 

「もう一度『アブソリュートドラゴン』で『ダークリベリオン』を攻撃!さらに!『ダブルアップチャンス』の効果で…その攻撃力を2倍にする!!」

 

『攻撃力、5600だと!?』

遊希の闘志に応え、氷結の龍が光を纏う!

 

オッドアイズアブソリュート ATK2800→5600

 

 

 

「いけ…!氷結のスパイラル・ブリザード!!」

 

『っ…ぬああああ…!!』

氷結の龍が全てを凍てつかせる吹雪を巻き起こす、その嵐は反逆の龍を凍てつかせ…ユートのライフを削りきった…。

 

 

 

 

ユートLP0

 

 

遊希WIN!

 

 

 

 

【デュエルエ〜ンド!!荒ぶるドラゴン対決を制し、2回戦進出を決めたのは…遊勝塾!榊遊希選手だ〜!!】

ソリッドビジョンが消えていく中、ニコの勝利宣言が響き渡り、スタジアムは歓声に包まれる!

 

 

 

『ふぅ……遊希、先程は失礼な事を言って悪かった…あなたはすごいデュエリストだ…まさか、オレのダークリベリオンがパワー負けするとは……大丈夫か…?』

 

「ふぅ…ふぅ……大丈、夫…少し、息が…切れただけ…だから…」

起き上がったユートが遊希の勝利を讃える…だが、遊希は息を荒げ、苦しげな様子だった…。

 

 

『……退場口まで肩を貸そう、歩けるか?』

 

「ああ……ありがとう、ユート君……君が優しい人でよかった…」

 

【おお…!これぞ、デュエリスト同士の熱い友情!戦いの後には敵も味方もありません!!皆さま!熱い戦いを終えた2人に今一度、大きな拍手を──!!】

遊希に肩を貸し、共に退場口へと向かうユート…その2人を讃える拍手がスタジアムに響いた…。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……はぁ……」

 

『酷い顔色だ…早く休んだ方が──』

 

「遊希さん!!」

 

「遊希兄!!」

なんとか退場口まで引っ込んだ遊希だが、その顔色は悪かった…そんな彼を心配するユートのもとへ柚子、そして遊矢が駆け寄り──

 

 

 

キィン─!

 

 

『しまっ、時間ぎ───』

 

「あっ、ユート!」

 

「本当に、消えちまった…」

柚子のブレスレットの輝きと共にユートの姿は消えてしまった…。

 

 

「遊希兄!大丈夫か!?」

 

「遊矢……大丈夫…少し、疲れただけ、だから……次はお前の番だ…お前のエンタメデュエル、みんなに見せてやれ…!」

 

「ああ!って…それよりも早く帰ろうぜ!柚子!塾長に車を回してもらってよ!」

 

「わかったわ!」

疲労困憊ながら遊矢を激励した遊希…彼らの戦いはまだ始まったばかりだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さっきのデュエル…父さんは力を抑え込んでた……きっと、この前みたいに暴れるのを防ぎたかったんだな…』

観客席の通路…そこで凌牙は先程の遊希の異変について考えていた…。

 

 

『あの時、フィールドにはレベル4のモンスター2体がいた……つまり「No.∞」も出せる状況だった……もしかして、父さんは……()()()()()()…?』

凌牙は1つの可能性に気付く…かつての自分のように、宿した『力』を制御できず…力を開放する事を恐れているのではないかと…。

 

『………まだ、時間が掛かりそうだな……父さん…』

凌牙は夜の帳が落ち始めた空を見上げた…。



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幕間─次元の彼方─

こんにちは、S,Kです…えっと、まずは一言。


約4ヶ月に渡り投稿する事ができず、申し訳ありませんでした!!


久々の大スランプに陥り、アイデアが頭の中には浮かぶものの、それを執筆する事ができませんでした…。

そして、書きたいけど書けない、もどかしい日々のなかで届いた…偉大なる高橋和希先生の訃報……それが、最新話を執筆するキッカケになりました。

先生が紡ぎ、世界へと広がっていった『遊戯王』……生と死、光と闇、そして勇気と友情の物語……その想いを糧に、少しずつでも執筆を続けていきたいと思っています。


まずはリハビリとして『幕間』を投稿します、もしかしたら前話以前と矛盾があったりするかもしれませんが…笑って流して貰えれば幸いです。


それでは…お待たせしました!最新話をどうぞ!


「……父さん……」

 

LDS内に設けられた宿泊室、そこで1人の少年がネオンに彩られた街を見つめながら考えに耽っていた…。

 

 

コンコン、コン

 

 

『凌牙、オレだ…入ってもいいか?』

 

「ユートか、構わないぜ」

 

『失礼する』

ノックと共に紫と黒色の髪に黒い服を着た少年が入ってくる、それは舞網チャンピオンシップスの戦いを終えたエクシーズ次元のレジスタンスのメンバー、ユートだった。

 

 

 

「どうだった?あの人とのデュエルは?」

 

『……使い始めて間もないはずのペンデュラム召喚を使い熟す応用力、攻撃に対する対策…窮地でも笑ってみせる胆力……そして、窮地での爆発力……凌牙が言っていた通り、彼は強い男だった』

凌牙に遊希について問われたユートはデュエルした感想を伝える。

 

 

「そうか……あれでも、あの人は全力じゃねぇんだぜ?……記憶と力が戻れば、あの数倍は強くなる……俺が手も足も出ないくらいにな?」

 

『それは、本当なのか?アカデミア兵を簡単にあしらった貴方が…!?』

 

「ああ、本当の事さ……俺はまだ、あの人の背中にも追いつけねぇ」

凌牙はユートに()()()遊希の実力について伝える…その冗談のような内容にユートは驚くが、凌牙はそんな彼の様子を見て笑っていた。

 

 

『……前から聞きたいと思っていたが……凌牙、貴方と榊遊希はどんな関係なんだ?エクシーズ次元にやって来たのも、彼を探す為だったんだろう?』

 

「………そろそろ、お前には話してもいいか……そのうちに分かる事だしな」

ユートは凌牙に遊希との関係について訊ねる、彼が知っているのは凌牙達が遊希を探す為に()()を渡ってきたという事だけだったからだ。

その問いを聞いた凌牙は少し考えて…ユートに新たな情報を教える事にした…。

 

 

 

 

「あの人は……榊遊希は、俺の…俺達兄妹の()()だ」

 

『は…!?!?』

凌牙の言葉を聞いたユートは目に見えて動揺する…それは普段の冷静な彼を知る人物が見たら、笑ってしまう程だった。

 

 

『いやいや!?さすがにそれは嘘だろ?年齢も明らかに若すぎる、それに凌牙や璃緒とはまったく似てないじゃないか!?』

 

「フッ、そんなに動揺するなよ?父親って言っても育ての親だ……あの人は俺達を守る為に()()に遭った……そのせいで記憶も力も失くして……身体もあんな状態になっちまってた……息子の俺が…にひと目見ても、分からなかったぐらいにな……」

 

『凌牙……』

ユートに遊希が育ての親である事を教えた凌牙…その悲しげな様子にユートはその話が事実なのだと悟った…。

 

 

「何がキッカケで、どうやったら記憶が戻るのかはわからねぇ……だけど、あの人が帰ってくればきっと()()()()()()……その時まで頼むぜ、ユート」

 

『……わかった、話してくれてありがとう凌牙……次のデュエル、頑張ってくれ』

 

「ああ、ありがとな……お前もゆっくり休めよ?というか……デュエルの後、どこまで飛ばされたんだ?」

 

『………舞網市の町外れの森まで……戻ってくるのに歩き通しでクタクタだ……』

 

「…お前も苦労してるなぁ……」

ユートに真実の()()を語った凌牙は彼の思わぬ苦労に苦笑したのだった。

 

 

 

 

 

「さて……俺は明後日、浪速デュエルスクールのダイナソー竜崎って奴が相手だったな………そして明日は…黒咲と紫雲院素良のデュエル、そして………」

ユートが部屋へと戻った後、凌牙は自身の予定を確認する……明日には世界の「運命」の分かれ道が迫っていた…。

 

 

 

「……母さんは決して触れない方がいい『分岐』かあるって言ってた……俺は、どう動けばいい?」

凌牙はスタンダード次元に来る前に世界の概要を聞かされている……その中には、世界の運命を左右してしまう『分岐』についての情報も含まれていた…。

目前に迫る分岐を前に考える凌牙…そんな時…。

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

 

「っ!?この音は!?」

部屋に通信を知らせる着信が鳴り響く、それはレジスタンスが使用するデュエルディスク越しの通信ではなく…上着の中にしまっていた小型端末──D・ゲイザーの着信を知らせるものだった。

 

 

 

 

『シャーク!聞こえるか!?』

 

「遊馬か!?次元間通信は厳しいんじゃなかったのか!?」

 

(一時的に時空嵐が治まったらしくてな、応急修理した飛行船でなんとか異空間に出てきたんだ…シャーク、無事そうで何よりだ)

小さな画面に映し出されたのは赤い前髪が跳ねているのが特徴の快活そうな少年、そして透き通るような青い体を持つ精霊だった。

 

 

(時空嵐がいつまた起きるかわからない…手短に話す、そちらの状況は?)

 

「LDSと協力関係を結ぶ事に成功した、いまは黒咲・ユートと一緒に対融合次元部隊…ランサーズに合流、舞網チャンピオンシップスって大会でさらなるメンバーを探してるところだ」

 

『おおっ!?やったじゃねぇか!流石シャークだぜ!』

凌牙の伝えた吉報に少年…遊馬は声を上げる。

 

 

(ズァークの欠片……ユートと榊遊矢の様子は?)

 

「今の所は問題ない、ただ……ズァークの欠片が2つ以上集まってる時に…()()()()()…正確にはブレスレットが近くにあると、防衛反応で何処かに転移されちまうみたいだ」

 

(翠の言っていた通りか…転移させる事で復活を妨害しているのだろうな……他には、何かあったか?)

 

「これが一番重要だ………父さんを、白波遊海を見つけた…!!」

 

(なに!?)

 

『ま、マジか!?遊海がスタンド次元に!?もう会えたのか!?』

凌牙の言葉に画面の向こうにいる2人が驚愕する…ついに、探し求めた英雄を見つける事ができたのだと…!

 

 

()()()()()()だ!……ただし、記憶喪失・精霊の力喪失、肉体年齢逆行………そして、傷だらけの満身創痍だ………前に記憶喪失になった時より、やばいかもしれねぇ…」

 

『っ…!?!?これが、遊海……なのか…?』

 

(………翠には、この写真は見せない方がいいな………ショックが大きすぎる…)

凌牙が記録した写真を遊馬達に見せる…そのあまりにも傷ついた姿に2人は言葉を失ってしまう…。

 

 

「…現状、父さんの記憶を戻す方法は分からねぇ…全力でデュエルもしたんだが……余計なダメージを父さんに与えただけだった…!!」

 

『シャーク……大丈夫だって!!遊海だったら笑って許してくれるさ!オレ達はやれる事をやって、遊海を助けるんだ!』

 

「……ああ、わかってる!落ち込んでる場合じゃねぇ…!」

遊海を傷付けてしまった事を未だに引きずっていた凌牙…だが、遊馬の励ましで自分を奮い立たせる…!

 

 

(融合次元は未だに戦力を送り込み続けている…この状況を打破するには榊遊矢…それか遊海の力が必要だ……こちらは我々で持ち堪える、遊海を頼んだぞ、シャーク)

 

「ああ、必ず…父さんを取り戻す…!!」

アストラルの言葉に凌牙は決意を新たにする…そして…。

 

 

ジジッ…ジジッ…

 

 

『くっそぉ!また嵐かよ!?これがなければすぐにでもスタミナ次元に行けるのに!!』

 

(仕方がない、これもズァークの齎した災厄の余波だ……シャーク、頑張っ───)

 

バチン

 

「ああ、待っててくれよ…みんな!!」

エクシーズ次元との通信が切れる…仲間達の声を受け、凌牙は夜空を見上げる。

 

 

 

「これ以上、融合次元や…『悪魔』の勝手にさせてたまるか…!!」

忍び寄る脅威…それはすぐそばまで迫っている…。



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Ep.16 最高のエンタメデュエル!〜妖仙ロスト・トルネード〜

こんにちは、S,Kです……や、やっと書けたぁ……。

前回の投稿から約一ヶ月…モンハンのアップデートやら、仕事やら…FGOの記念キャラの育成やらで時間が掛かってしまいました…。

それでは、最新話をどうぞ!


 

 

 

──しくじっ……た………まさか、こんな……こと……──

 

 

 

 

 

──体の自由が、効かない……意識、が……──

 

 

 

 

 

 

 

──このまま、じゃ……バイロンやカズマ、の………二の舞に………──

 

 

 

 

 

 

 

 

──………みどり……りょうが……りお……ぜったい、に……かえ………──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ……朝、か……」

 

遊希は朝日に照らされて目を覚ました、身体を起こそうとしたが……酷い倦怠感で起き上がれず、再びベッドに倒れ込んでしまう…。

 

 

「ううっ……体が、重い……昨日のデュエルのせいかな……」

遊希は前日の戦い……ユートとのデュエルを思い出す。 

戦いの中で感じた強い衝動…それをなんとか押さえ込んだものの、デュエル後から体調を崩していたのだ。

 

 

「ユート……彼の瞳……何処かで見た事がある気がする……強い覚悟と、哀しみを抱えている瞳を……」

静かにデュエルを思い出した遊希はユートの眼差しに既視感を覚える……彼の瞳は自分ではなく、他の()()を見ていたようだと感じたのだ…。

 

 

 

 

《フォウ……フォーウ…?(特別意訳:おはよう……大丈夫…?)》

 

「ん…おはよう、フォウ……大丈夫、疲れが取れないだけだから……」

考え事をしていた遊希の枕元に心配そうに鳴くフォウがやって来る、遊希はそんなフォウを優しく撫でる。

 

 

「今日は…遊矢と権現坂君、それから素良君のデュエルの日か…応援に行きたいけど……ちょっと、厳しいかなぁ……」

 

《フォウ、キュウ…(辛いなら、無理しないで…)》

 

「辛いなら無理しない方がいい?……そうだね、今日は大人しく休むよ………おやすみ……」

 

《フォウ……キュ?…フォウ!?(おやすみ、遊………あれ?いま、言葉通じてなかった!?ゆ、遊海!起きて〜!?)》

 

遊希は倦怠感に身を委ねて再び眠りに落ちる…だが、彼は気付いていなかった…自分がごく自然にネコであるフォウと()()していた事に。

…それに気付いたフォウは慌てて遊希を起こそうとしたが…夢の中に堕ちた遊希は目覚める事はなかった…。

 

 

 

………

 

 

 

「お〜い!遊希兄!朝ごはん……ありゃ、まだ寝てる…珍しいなぁ…あ、フォウも一緒だったんだ──」

 

《…ッ…フウゥゥ…!!》

 

「……やっぱりダメかぁ…」

少し後、遊矢が遊希を起こす為にやって来た…その姿を見たフォウは眠っている遊希を守るように遊矢を威嚇する…。

 

 

「昨日の遊希兄、すっごく疲れてたもんな……よし、遊希兄に戦勝報告ができるように頑張らなきゃ!フォウ、遊希兄を頼んだよ!」

 

《……フォウ(お前に言われなくても、分かってるよ)》

遊希の疲労具合を知っていた遊矢は決意を固め、静かに遊希の部屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

「ふぅ…一時はどうなるかと思ったけど、権現坂に負けないようなデュエルをしないとな!」

時は少し流れ、遊矢はスタジアムに立っていた。

 

 

 

今日の第一試合は権現坂、そして同門の元兄弟子・暗黒寺のデュエルだった。

遊矢は権現坂の応援の為に仲間達より早く会場に向かったのだが…権現坂に揺さぶりをかけようとした暗黒寺の作戦によって不良達に囲まれ、多対一のデュエルを強いられた。

 

一方の権現坂はスタジアムで暗黒寺と対峙したが…暗黒寺の手で遊矢が危機に陥っている事を知って動揺…ストロング石島をリスペクトしたバーバリアンデッキに追い詰められてしまう…。

 

しかし、父と遊矢の激励によって『不動の心』を思い出した権現坂は暗黒寺を圧倒、切り札たる『超重荒神スサノ-O』によって暗黒寺を吹き飛ばし、勝利を掴んだのだった。

 

 

 

 

『続きましては本日の第2試合!遊勝塾・榊遊矢選手対LDS・沢渡シンゴの一戦でございます!!』

 

「沢渡……!見ててくれ、みんな!行ってくる!!」

 

「頑張って!遊矢!!」

 

「「「頑張って!」」」

司会を務めるニコの声が響く…遊矢の相手は因縁浅からぬ沢渡、仲間達の声援を背に受けながら前に出る!

 

 

 

 

「あの子が噂のペンデュラム使いか!」

 

「昨日の傷だらけの子のペンデュラム召喚も凄かったから期待しちゃうわ…!」

 

「兄貴に負けないデュエルを見せてくれよ〜!」

観客達は前日の遊希とユートのデュエルもあり、遊矢のデュエルを楽しみにしていた…そんな時…。

 

 

〜〜〜♪

 

 

「なんだ?この音…草笛?」

ざわめくスタジアムに草笛の哀愁漂う音色が響く、その音色と共に藁の笠をかぶり、江戸時代風の旅装束を纏った人物が現れる…そして──

 

 

『カードがオレを呼んでいる…ドローしてよと呼んでいる!!天に瞬く星1つ!あれこそデュエルの一番星!』

 

 

 

「(ぽかーん)」

 

「「「(ぽかーん)」」」

 

「……いや、何やってんだよ沢渡…」

突然の口上に遊矢や観客達も唖然となる、そして遊矢は謎の人物…もとい、沢渡へと声をかけるが…。

 

 

 

()()!オレは──ネオ・ニュー・沢渡だ!!』

 

「いや、意味被ってるし…」

沢渡は衣装を脱ぎ捨て、普段通りのLDS制服姿となりながらポーズを決める…沢渡は遊矢戦の後、そのナルシストな性格も相まって『エンタメ色』に染まっていたのだった。

なお、『NEO』も『NEW』も言葉が違うだけで同じ意味である。

 

 

 

 

 

『榊遊矢…お前には数々の恨みがある…!』

 

「恨み?」

沢渡は遊矢を指差しながら、その内に秘めた恨みを語りだす。

 

 

 

『1つ、オレからペンデュラムカードを奪い!オレに敗北を味合わせた事!!屈辱だ!!』

 

「いや、元々…お前がカードを盗ったんだろ?」

 

『っ…その2!お前そっくりのエクシーズ使いに怪我を負わされた!!屈辱だ!』

 

「オレじゃないし!?しかも…かすり傷だったんだろ?」

 

『っ〜!!その3!!お前のせいでパパやママにめちゃくちゃに叱られた!!この上ない屈辱だ!!』

 

「いや、それって…お前がオレに襲われたって嘘を言ったからだろ?赤馬理事長が言ってたぞ?」

 

 

『………お前に受けた屈辱の数々……しっかりと返してやるぜ!!』

 

「いや、ほとんどお前の自業自得じゃん……(汗)」

沢渡の言う『屈辱』…それはほとんどが自身の行いが招いたもので…あまりに自分勝手な逆恨みに遊矢も呆れ顔である。

 

 

『う、うるさいうるさーい!!オレはここに宣言する!!榊遊矢、お前はこのデュエル…最ッ高の屈辱を受けて、負ける!!』

 

『お、おっと!?早くも沢渡選手から()()()()です!?』

いきなりの勝利宣言に司会のニコや観客達がどよめく…!

 

 

『今まで、お前を勝利に導いてきたペンデュラム召喚…それが、お前を敗北へと導くだろう!!』

 

「ペンデュラム召喚でオレが負ける…!?(まさか…!)」

自信満々の様子の沢渡の言葉を聞いた遊矢の脳裏に嫌な予感が過ぎる。

もしかしたらLDSは──新たなペンデュラムカードを生み出し、それを沢渡に渡したのではないのか?と…。

 

 

『さぁ、この勝負はいったいどうなるのか…!?それでは、アクションフィールド・オン!!選ばれたフィールドは──『夕陽の荒城』!!』

ニコの宣言と共に投影機が唸りを上げる…現れたフィールドは夕陽に照らされた戦場、荒れ果てた日本の山城だった…!

 

 

 

 

『いくぞ!!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!』

 

「モンスターと共に地を駆け、宙を舞い!」

 

『「フィールド内を駆け巡る!!」』

 

『見よ!これぞデュエルの最強進化系!!アクショーン!!』

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

遊矢と沢渡、ニコの口上と共にアクションカードが散らばる…此処に、因縁のデュエルが始まった!

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対沢渡

 

 

 

 

 

先攻を取った遊矢は自身のレベルを1つ下げる事で特殊召喚できる『EMドラミング・コング』を呼び出し、沢渡の出方を窺う…そして、沢渡は新たな力を披露する…!

 

 

 

『さぁ…!沢渡シンゴ、伝説のリベンジデュエルの開幕だ!!オレは永続魔法「修験の妖社」を発動!このカードがある時、自分が「妖仙獣」の召喚に成功した時!妖仙カウンターが1つ点灯する!』

 

「ようせんカウンター…?」

沢渡の背後に無数の蝋燭が奉られた社が現れる…このカードが沢渡の新たな力のキーカードだった。

 

 

『そしてオレは「妖仙獣 鎌壱太刀(カマイタチ)」を召喚!さらに、召喚に成功した時!手札から新たな「妖仙獣」…「妖仙獣 鎌弐太刀(カマニタチ)」を召喚!!さらに「鎌弐太刀」も同じ効果をもっている!現れろ!「妖仙獣 鎌参太刀(カマミタチ)」!!』

 

「モンスターの連続召喚!?」

つむじ風と共にタヌキやイタチの面影を持つ獣人達が現れる、その召喚速度はペンデュラム召喚に匹敵する…!

 

 

『そして「修験の妖社」の効果により妖仙カウンターが3つ点灯する!さらに「鎌壱太刀」の効果発動!自身以外の「妖仙獣」がフィールドに存在する時!相手のカード1枚を手札に戻す!手札に戻れ!「ドラミングコング」!!』

 

「なんだって!?」

さらに沢渡は効果を発動、投擲された鎖鎌に巻き付かれたドラミングコングが遊矢の手札に戻される!

 

 

『そしてバトルだ!「鎌壱太刀」でダイレクトアタック─!』

 

「っ…させるか!永続罠『EMピンチヘルパー』発動!相手モンスターからダイレクトアタックを受ける時、その攻撃を無効にして、デッキから攻撃力800以下の『EM』モンスターを効果を無効にして特殊召喚する!来てくれ!『EMカレイド・スコーピオン』!!」

 

『ふん、やるじゃないか』

ガラ空きの遊矢に攻撃が迫る…だが、防御カードによって両腕が盾となったサソリを呼び出す事で攻撃を回避する!

 

 

「『カレイドスコーピオン』の守備力は2300…『鎌弐太刀』と『鎌参太刀』の攻撃力を上回ってる!!これで攻撃は──」

 

『できない…()()ならなぁ!オレは「鎌弐太刀」の効果発動!自身の与えるダメージを半分にする事でダイレクトアタックできる!』

 

「っ─!」

 

『アクションカードは取らせねぇよ!!「鎌弐太刀」でダイレクトアタック!!』

 

「ぐっ!?うわああ!!」

ダイレクトアタックを受ける前にアクションカードを手にしようとする遊矢…だが、鎌弐太刀から放たれた疾風に吹き飛ばされてしまう!!

 

 

「くっそ…!」

 

『残念でした!…さらに「鎌参太刀」の効果発動!自身以外の「妖仙獣」がダメージを与えた時、デッキから同名モンスター以外の妖仙獣…「妖仙獣 大幽谷響」を手札に加える!さらに「修験の妖社」の効果!妖仙カウンターを3つ取り除き!デッキから「妖仙獣 大刃禍是」を手札に加える……ふっ、簡単に勝負が決まっちゃ面白くない!オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!そしてフィールドのカマイタチ三兄弟は召喚されたターン終了時に手札に戻る!』

 

「(自身の効果でモンスターを手札に戻してフィールドをガラ空きに…?何を考えて…?)」

先制ダメージを与えた沢渡は余裕の笑みを浮かべたままターンを終える…遊矢はその意図を計りかねていた…。

 

 

 

『さぁ、ショーを続けようぜ?「エンタメデュエリスト」榊遊矢!!』

 

「(例え、罠だったとしても……オレは──)オレのデュエルをするだけだ!!いくぞ!!」

罠があるのは確実…だが、遊矢は自分の戦い方を貫く!

 

 

 

PENDULUM!!

 

 

 

「揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!来い!オレのモンスター達!!『EMドラミングコング』!そして、輝く二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

「時読みの魔術師」を引き当てた遊矢の頭上でペンデュラムの軌跡が揺れ動く、そしてエースたるオッドアイズ達を呼び出した!

 

 

「今度は…こっちの番だ!『オッドアイズ』で沢渡にダイレクトアタック─!」

遊矢は臆する事なく、沢渡に攻撃を仕掛ける─!

 

 

『フッ…!オレは手札の「妖仙獣 大幽谷響(オオヤマビコ)」の効果発動!ダイレクトアタックを受ける時、手札の「妖仙獣 木魂(コダマ)」を墓地に送り!このカードを攻撃表示で特殊召喚できる!』

沢渡へと疾駆するオッドアイズの前に山のように巨大な妖怪が立ち塞がる!

 

『そして「大幽谷響」の攻撃力はバトルする相手モンスターの元々の攻撃力と同じ数値になる!さらに、「妖仙獣」が特殊召喚された事で「修験の妖社」にカウンターが1つ点灯する!』

 

「っ─!」

「大幽谷響」のモチーフは山から声を返す妖怪『山彦』…その名が示す通りに同じ力を持って遊矢へと襲いかかる─!

 

 

「まだだ!!『ドラミングコング』の効果発動!バトル中に1度、自分の場のモンスターの攻撃力を600アップさせる!いけ!『オッドアイズ』!!螺旋のストライク・バースト!!」

 

『チィッ─!!』

だが、遊矢も負けてはいない…ドラミングコングのドラミングに力を貰ったオッドアイズが大幽谷響を貫く!

 

「そして破壊したモンスターがレベル5以上の時!与えるダメージは2倍になる!リアクション・フォース!」

 

『くっ…ぬあああ!?』

そしてオッドアイズの効果が炸裂、沢渡は1200のダメージを受けて吹き飛ばされる!

 

 

 

『ぐっ…「大幽谷響」の効果発動…このカードが破壊された時、デッキから2体目の「大幽谷響」を手札に加える…!』

 

「くっ…!?(これじゃあ追撃は無理か…!ここは一旦待とう…!!)オレはこのままターンエンド!!」

しかし、沢渡もタダでは終わらない…2体目の『大幽谷響』を見た遊矢はそのままターンを終え、アクションカードを得る為に走り出す!

 

 

 

『……ここからが本番だ!沢渡シンゴ、伝説のリベンジデュエル…榊遊矢!お前はペンデュラム召喚の恐ろしさを知る─!!』

ダメージを受けてなお、沢渡は余裕を見せる…その内に秘める作戦とは……──?

 

 

 

 

 

『バトルだ!「鎌弐太刀」の攻撃力を半分にして、ダイレクトアタック!!』

 

「ぐっ…!?うわぁ!!」

再びカマイタチ三兄弟を召喚した沢渡は『鎌壱太刀』の効果を使わず、遊矢にダイレクトアタックを仕掛ける…そして、此処に全ての下準備は整った…!

 

 

『「鎌参太刀」の効果発動!デッキから「妖仙獣」モンスターを手札に加える…オレが手札に加えるのは──()()()()()()()()()()()!「妖仙獣 左鎌神柱(サレンシンチュウ)」!!』

 

「っ─!!(やっぱりか…!!)」

沢渡が遊矢に見せつけた1枚…それは、LDSの作り上げたペンデュラムカードだった!

 

 

 

『さらに「修験の妖社」の効果発動!妖仙カウンターを3つ取り除き!デッキからペンデュラムモンスター「妖仙獣 右鎌神柱(ウレンシンチュウ)」を手札に加える!』

 

「ペンデュラムカードが、2枚…!」

 

『榊遊矢…宣言通り!ペンデュラム召喚がお前を敗北に導く!!オレはスケール3の「左鎌神柱」とスケール5「右鎌神柱」でペンデュラムスケールをセッティング!!』

 

PENDULUM!!

 

沢渡のデュエルディスクにPENDULUMの文字が浮かび上がる、そして光の柱の中にそれぞれに赤と青の鬼の面を掲げた分割された鳥居が浮かび上がる!

 

 

「来たか…!だけど、召喚できるのはレベル4のモンスターだけ…」

 

『レベル4?違うな…!「右鎌神柱」のペンデュラム効果発動!エンドフェイズまで、自身のスケールが11に上がる!!これでレベル4から11のモンスターが同時に召喚可能─!!』

 

「なに!?」

沢渡は効果でペンデュラムスケールを増加…ついに、妖仙獣の切り札が現れる!

 

 

『ペンデュラム召喚!!烈風纏いしあやかしの長よ、荒ぶるその衣を解き放ち、大河を巻き上げ大地を抉れ!いでよ!「魔妖仙獣 大刃禍是(ダイバカゼ)」!!』

フィールドに暴風…否、黒き嵐が吹き荒れる…その中から恐ろしき「命を奪う風」を具象化した風の獣が現れる!!

 

 

『よし…!「大刃禍是」の特殊召喚に成功した事で「修験の妖社」にカウンターが点灯する!』

ペンデュラム召喚に成功した沢渡は笑みを浮かべながらプレイングを続ける…そして、観客達は遊矢や遊海以外の人物が繰り出したペンデュラム召喚を見てどよめいていた…!

 

 

『さぁ…さぁさぁさぁ!!お楽しみはこれからだ─!!オレこそ、選ばれた男!ネオ・ニュー沢渡だ!!そしてオレはペンデュラム召喚を扱えるようになっただけじゃない!その上をいく!!』

 

「その上だって…!?」

観客達のどよめきを聞きながら、テンションを上げた沢渡はその力を…『対ペンデュラム戦術』を発動する!

 

 

 

『「大刃禍是」の効果発動!召喚・特殊召喚に成功した時!フィールドのカード2枚を相手の手札に戻す!手札に戻れ!「星読みの魔術師」!「時読みの魔術師」!!』 

 

「っ!!」

大刃禍是の起こしたつむじ風が遊矢のペンデュラムスケールを手札へと吹き飛ばす!

 

『さらに!フィールドに「大刃禍是」が存在する事で、永続罠「妖仙郷の目眩風」を発動!これにより、「妖仙獣」と名のつくモンスター以外が手札に戻る時、そのカードはデッキに戻る!』

 

「なんだって…!?くっ…!」

遊矢は手札に加わった魔術師をデッキに戻す…だが、まだ沢渡は止まらない…!

 

 

『さらに、800ライフを払い!永続魔法「妖仙大旋風」を発動!!その効果により、自分の「妖仙獣」が手札に戻った時!相手フィールドのカード1枚を手札に戻す…だが、「目眩風」の効果により!手札に戻されるカードはデッキに戻る!!そして…カマイタチ三兄弟と特殊召喚された「大刃禍是」はエンドフェイズに手札に戻る!…この意味がわかるか?』

 

「っ…マズい…!!」

 

『オレはこれで()()()()()()!!喰らえ!これが沢渡レジェンドコンボ!妖仙ロストトルネードだ!!』

山城に風が吹き荒れる…その風は次々と遊矢のモンスターや伏せカードを攫い──フィールドを綺麗に吹き飛ばしてしまった…!

 

「これが、沢渡の狙いか…!!」

先ほど、沢渡は『鎌壱太刀』の効果を発動しなかった…それは『妖仙ロストトルネード』の効果を最大限に使う為の手段だった。

手札やエクストラデッキにいれば、即座に復活するペンデュラムモンスター…その弱点は『デッキに戻される』事だった…!

 

 

 

『オレはネオ・ニュー沢渡…!伝説を生む男!!次のターンでお前を終わりだ!!さぁ、最後に足掻いてみせな?お前の次は榊遊希…オレはペンデュラム使いを倒して伝説となる!!』

 

「ははっ…!」

絶体絶命の窮地、フィールドにカードは無く、手札も1枚のみ……そんな状況でも、遊矢は……()()()()()

 

 

「(オレ、完全に追い詰められてる……でも、なんでだろう──いま、すっごく!()()()()してる!!)」

 

『お前との因縁…ここで決着をつけてやる!』

 

「決着…いや、デュエルは始まったばかりだ!!オレのターン!ドロー!!カードを2枚セットして…ターンエンド!!」

 

『なに…?!』

笑顔の遊矢を見て沢渡は驚愕する、絶体絶命の中…遊矢はまだ、希望を捨ててはいない!

 

『へっ…デュエルはこれからとか言っといて、随分と地味じゃないか…?まっ、カードがないから仕方ない──』

 

「カードが無いなら、()()()()()!!お楽しみは、これからだ!」

沢渡を背を向けた遊矢は走り出す…逆転の一手を見つける為に!

 

『へっ…逃がすかよ!!』

 

 

 

フィールドを駆ける遊矢を前に沢渡は再びカマイタチ三兄弟を召喚、そして追い打ちを仕掛ける!

 

 

 

『お前の手の内はわかってるぞ…アクションカードを探す為に駆け回っているんじゃなく、その2枚の()()()()()から目を逸らさせようとしてるんだろ?だが、その手には乗らねぇ!!ペンデュラム召喚!現われろ!「大刃禍是」!!』

沢渡は遊矢の作戦を予想し、それを潰す為の一手を打つ!

 

 

『「大刃禍是」の効果発動!お前の伏せカード2枚を手札に…いや、『「目眩風」の効果でデッキに戻す!!これで終わりだ──!』

風の獣が伏せカードを吹き飛ばす、これで遊矢の勝利は──

 

 

 

「いや、()()()()()()()()()!!伏せられていた罠カード『ななし』がフィールドを離れた事で効果発動!!このターンの間、相手フィールドのモンスターは名前を失い!『ななし』になる!!」

 

『な、なんだと!?』

それは遊矢の奇策…除去される前提で、カードを仕込んでいたのだ!

 

 

「これで妖仙獣達は名前を失う…つまり!本来なら効果を受けないはずの『妖仙郷の目眩風』の効果をお前のモンスターは受けるようになる!!」

 

『これが狙いか…!このターンのエンドフェイズ、名前を失ったオレのモンスターはデッキに戻る…!!』

それは『妖仙ロストトルネード』を破る、逆転の一手…遊矢は沢渡の裏をかいたのだ!

 

 

『やるじゃねえか…だが、ターンの終わりまで!お前が無事で済むと思ったのか!!その前に、デュエルを終わらせてやる!妖仙獣達で総攻撃だ─!!』

 

「っ─!絶対に、終わらせるもんか─!!」

沢渡は勝負を決める為に山城に駆け上がっていた遊矢にダイレクトアタックを仕掛ける、カマイタチ三兄弟と風の獣が突撃…そして、凄まじい暴風が吹き荒れ──

 

 

ガッシャァァァン!!

 

 

「ゆ、遊矢ぁぁぁ!!?」

山城の天守が崩壊する、遊矢はその瓦礫に飲まれ姿が見えなくなる…。

リアルソリッドビジョンには『質量』がある、その崩壊に飲まれれば…無事では済まない、会場に柚子の悲鳴が木霊した…。

 

 

 

 

 

パッチーン☆

 

 

 

「えっ…?」

 

『なに!?』

崩壊した山城の爆煙の奥からフィンガースナップの音が響く、崩壊した山城近くの見張り台…そこに遊矢は無傷で立っていた…!

 

「この私が、なんの考えもなく走り回っていたと思いますか?私はアクションマジック『大脱出』を発動し、バトルフェイズを終了させていたのです!」

遊矢は『エンターティナー』としての口調で沢渡に告げる、遊矢は闇雲に走っていたのではなく…アクションカードの場所やイラストから効果を把握、もっとも映える場所に攻撃を誘導していたのである…さながら、マジックの脱出ショーのように!

 

 

 

『ふ、ふざけんなぁ!お前が客席を沸かせてんじゃねぇよ!?』

 

「これがオレのデュエルスタイルなの!!」

 

『ぬぬぬぅ〜!!だが、最後に歓声を受けるのはこのオレだぁ!!』

観客達を沸かせる遊矢に沢渡が嫉妬する…息をつかせぬ攻防に、観客達は大いに盛り上がっていた!

 

 

『「修験の妖社」の効果発動!妖仙カウンターを3つ使い!デッキから2体目の「鎌参太刀」を手札に加え……ターンエンド!!』

 

「そして…お前のモンスター達にはご退場願おうか!」

 

『っ…!』

名前を失った『妖仙獣』達が『目眩風』の効果を受けて沢渡のデッキに消えていく…そして、デメリット効果によって『妖仙大旋風』が消滅…妖仙ロストトルネードは破られた!

 

 

 

「お互い、フィールドが寂しくなったな?」

 

『ふん、次のオレのターンで…すぐに賑やかにしてやるぜ…!お前の敗北というメインイベントを祝う為にな!!』

 

「あいにく…オレも負けるつもりはないさ!!」

お互いにほぼリセットされたフィールドを前に軽口を言い合う遊矢と沢渡…そして、第2ラウンドが始まった…!

 

 

 

………

 

 

 

デュエルは進む…遊矢は再び「EMドラミングコング」を引き当て、沢渡の守りであった「大幽谷響」を撃破する。

返しのターン、沢渡は「鎌壱太刀」を引き当て…さらに『修験の妖社』によって『大刃禍是』を再び手にする、そしてペンデュラム召喚を介して現れた『鎌壱太刀』によって『ドラミングコング』を手札へ戻そうとしたが…アクションカード『透明』によって阻まれる。

だが、それを読んでいた沢渡は『大刃禍是』をアドバンス召喚…「ドラミングコング」を戦闘破壊し、遊矢へとダメージを与える…遊矢の残りライフは…1400…!

 

そして、一進一退の攻防の中、観客達は期待する…始祖の『ペンデュラム召喚』を…!

 

 

 

 

『さぁ、来いよ!()()()()()()()()()()!』

 

「えっ…?」

 

『沸いてるんだよ!会場が…!観客達が!期待してるんだよ、オレ達のデュエルに!!』

 

「沢渡…」

 

『さぁ!お前のターンだ!見事に応えて見せろよ!!』

 

「──ああ!!」

ペンデュラムコールに包まれるスタジアム…すでに沢渡と遊矢の因縁はない、観客達は待っている!彼のエンタメを!!

 

 

 

 

 

「レディース&ジェントルマン!!ご覧の通り、私のフィールドにはモンスターどころか、伏せカードもありません!正真正銘…次のドローが!このステージの全てを決めるデスティニードローとなります!!」

 

遊矢はエンターテイナーとして観客達に呼びかけながら、デッキトップに手をかける!

 

 

「見事、引き当てられたらご喝采!!───ドロー!!」

 

光の軌跡と共にカードがドローされる、その結果は──!

 

 

 

「来た…!これより、世にも珍しいマジックショーをご覧戴きます!!このカードは自分のフィールドにカードがなく、手札がこのカードのみの時に発動できる魔法カード!『マジシャンズ・カード』!その効果により、私は相手フィールドのカードと同じ枚数のカードをドローし、そのカードを公開します!Mr.沢渡のフィールドのカードは5枚!よって、5枚ドロー!!」

それは起死回生の1枚…それによってドローされたのは「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」「EMヒックリカエル」「時読みの魔術師」「EMトランプ・ウィッチ」「EMアメンボート」…

 

 

此処に、遊矢の勝利の方程式は導かれた!!

 

 

「オレはスケール4『トランプウィッチ』とスケール8『時読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから『ドラミングコング』!そして!雄々しくも美しき二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

青きペンデュラムの軌跡が遊矢のモンスター達を導く!

 

 

『さぁ…決着の時だ!!』

 

「ああ…!バトルだ!『オッドアイズ』で『大刃禍是』を攻撃!さらに、『ドラミングコング』の効果で攻撃力は600アップだ!」

 

『まだだ!「左鎌神柱」のペンデュラム効果発動!自分の妖仙獣が破壊される時、このカードを代わりに破壊する!!』

大刃禍是を攻撃する遊矢…だが、沢渡は大刃禍是を守りきり、ダメージを抑える…しかし、遊矢にも『二の矢』がある!

 

 

「お楽しみはこれからだ!『トランプウィッチ』のペンデュラム効果、発動!フィールドのモンスターで融合召喚を行う!!」

 

『バトルフェイズの融合召喚だと!?』

 

「胸を打ち鳴らす森の賢人よ!神秘の竜と1つとなりて、新たな力を生み出さん!!融合召喚!いでよ!魔獣の眼光し、獰猛なる竜!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

それは権現坂戦で覚醒した遊矢の新たな切り札…獰猛なる獣のドラゴンが咆哮する!

 

 

 

『攻撃力3000…相討ち狙い……いや…!』

 

「──バトルだ!『ビーストアイズ』で『大刃禍是』を攻撃!!」

 

『まだだ!!』

 

「そう来ると思った!!」

ビーストアイズが大刃禍是に突進する刹那、遊矢と沢渡はアクションカードを求めて飛び降りる…その結末は─!

 

 

ドオン!!

 

 

『アクションマジック!「大火筒」発動!!このカードは、バトルで破壊された相手モンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える!!喰らいやがれ─!!』

衝突の爆煙の中、先にアクションカードを手にしたのは沢渡…巨大な大砲が遊矢へと放たれ──

 

 

 

ヒュー……パン!パン!パーン!!

 

 

『んなっ!?』

 

「こ、攻撃が…花火に…?!」

遊矢に向かったはずの砲弾は跳ね返され、夕暮れの空に()()として打ち上がる…そのタネは──

 

 

「アクションマジック『奇跡』!これで『ビーストアイズ』は破壊されない!よってお前の『大火筒』は無効になった!」

 

『ち、チクショウ!派手過ぎんだよ──!!』

上手く大刃禍是を倒した遊矢…それにより、ダメ押しの効果が起動する!

 

 

「『ビーストアイズ』の効果発動!バトルで相手モンスターを破壊した時、融合素材となった獣族モンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!!いっけぇ!!」

 

『ぐわぁああっ!?』

 

森の賢人の魂を宿した火炎が沢渡を直撃…大盛りあがりを見せたステージの幕を下ろした…!

 

 

 

沢渡LP0

 

遊矢WIN!

 

 

 

 

『き、決まりました〜!!第2試合の勝者は…榊遊矢選手だ─!!』

ニコの勝者を称える実況が木霊する…そしてスタジアムは割れんばかりの拍手と歓声に包まれた…。

 

 

 

『いってて……ん?』

 

「いいデュエルだったな!沢渡!」

 

『〜〜!フン!?』

 

「沢渡…」

尻もちを着いていた沢渡は手を差し伸べた遊矢の手を借りず、自分で立ち上がる…そして…。

 

 

「盛り上がったデュエルだったな!」

 

『……ああ、またいつでも相手になってやるよ!だが今は─』

 

「ああ!!」

楽しげな笑みを浮かべた沢渡は拍手を続けていた観客達へと仰々しく頭を下げる…その姿を見た遊矢も観客達へと応えたのだった…!

 

 

 

「(そうだ…これが、オレの目指したデュエルなのかもしれない……父さん、オレ…少しは近付けた、かな?)」

 

このデュエルは遊矢の「理想のエンタメデュエル」として、その心に刻まれた……遊矢は「エンタメデュエリスト」としての一歩目をしっかりと踏み出したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

「沢渡のペンデュラムカードを回収しろ、分析と量産化を急げ…」

 

「はっ!」

そしてレオコーポレーションの司令室で零児は静かに指示を出す…全ては、来たるべき戦いに備えて…。



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Ep.17 ハートランドの悲劇〜反逆の翼と無邪気な悪意〜

そこは、砂漠だった…だが、その場所は──普通の人間が思い描く風景とは大きく違っていた。

 

 

今にも大雨が降り出しそうな暗雲が太陽を…空を覆い尽くし、体が吹き飛びそうな強風が吹き荒れている。

 

その空を舞うのは鳥ではなく、無数の悪霊…その中心には巨大な影が1つ。

 

天を衝く程の巨体に黒い肌、そして腰に巨大な龍を巻き付けた…邪悪なる『魔物』

その周りには石像と化した龍、巨人、巨鳥が倒れ伏している…。

 

 

その中で──怪我人を庇いながら戦う人影が2つ

 

 

かたや、砂漠には似つかわしくない巨大な機械を従えた、ターバンを巻いた青年

 

かたや、巨大な操り人形を従えた紫色の髪の誰か

 

 

巨大な『魔物』に必死に抵抗する2人…だが、徐々に押され…従えたモンスター達は沈み、2人は───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ───!?!!」

 

《フォウ!?》

 

「はぁっ……はぁっ…!?ゆ、夢か……」

眠っていた遊希がベッドから飛び起きる、びっしょりと冷や汗を流し、心臓は早鐘を打つように脈打っていた…。

 

 

《キュウ…?フォーウ…》

 

「大丈夫…ちょっと、怖い夢をみただけだから…」

飛び起きた遊希を心配するようにフォウが体を擦り寄せる…そんなフォウを安心させるように、遊希は穏やかに声をかける。

 

 

「(なんだ、今の夢…?本当に、映画みたいな……最近、寝るたびに変な夢ばっかり見てる気がする…)」

記憶に残る夢の残滓…それは巨大な『ナニカ』に挑み、命を落としたらしい…()()の夢だった。

 

 

「ふぅ……時間は、昼過ぎか……遊矢の試合は、終わったかな…?」

呼吸を整えた遊希は時間を見て遊矢の事を思い出す…彼のデュエルを心配しながら…。

 

 

………

 

 

「洋子さんにも心配掛けちゃったな…あとで謝らないと…」

着替えと身支度を整えた遊希は洋子が作り置きしてくれていたパンケーキを手にリビングのソファに腰掛ける…気分は朝よりもだいぶ良くなっていた。

 

「時間的には素良君がデュエルしてる頃だな…ちょっと不気味なモンスターを使うから、お客さんが怖がってなきゃいいけど…」

遊希はそんな事を呟きながらテレビのリモコンを手にする、舞網チャンピオンシップスはテレビでも放映されている…そして、電源を入れ────

 

 

 

 

「────はっ?」

 

《ッ…フォウ…!!》

 

 

 

遊希が目にしたのは、砲弾が降り注ぐ…破壊された街の姿だった…。

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

『続きまして!本日の第三試合!遊勝塾所属・紫雲院素良選手対LDS所属・黒咲隼!!皆さま、大きな拍手でお迎えください!!』

遊矢と沢渡のペンデュラムデュエルの興奮冷めやらないスタジアムにニコの実況が響く!

 

 

「うおおぉぉっ!!素良!熱血だぁぁっ!!」

 

「俺と遊矢に続けぇ!!」

 

「オッケー!任せといて〜!!ボクも遊矢みたいにお客さんを大満足させちゃうから─!」

観客席からの修造や権現坂の応援に素良はのんびりと応える、大観衆を前に緊張の様子は見えない…。

 

 

 

『………』

 

「黒咲…」

一方、黒咲は観客の声援に応える事なく…むしろ、不満げな表情で入場する…そんな彼の様子を凌牙は観客席の入場口から見守っていた…。

 

 

「……無理もないか…故郷が侵略され、妹も攫われて……そんな状態じゃ、スタンダードの奴らの様子も…ウザったく感じるよな…」

零児の要請で舞網チャンピオンシップスに参加している凌牙達レジスタンス…彼やユートは一応は切り替えていたが、黒咲はそんな状態ではなかった……凌牙はそんな黒咲に昔の自分を重ねていた…。

 

 

「……相手は融合次元の調()()()だ、調子を上げないと……やばいぜ…!」

凌牙だけが知る素良の『正体』…凌牙は鋭い目付きでフィールドを睨んだ…。

 

 

「黒咲…ユートや、凌牙の仲間……」

そしてもう1人、彼を心配する人物…それは柚子だった。

黒咲と柚子は一度しか会った事はない…だが、黒咲に何が起きたのかはユートから聞かされていた。

 

「あの目…世界の全てが敵に見えてるみたい…」

冷めきった黒咲の目を見た柚子はそんな事を思った…。

 

 

 

Side???

 

 

 

「黒咲…せっかく社長が用意してくださった『ペンデュラムカード』を…!」

 

「中島、まぁいい…ここはペンデュラムの新たな可能性より、彼の真の実力を確かめる機会としよう…」

レオ・コーポレーションの司令室、そこで零児の秘書である中島は苛つきを隠せないでいた…レジスタンスで一番ペンデュラムの適性があった黒咲に零児はペンデュラムカードを託そうとしたが…彼は受け取らなかったのだ。

しかし、零児はその事を気にしておらず…むしろ、未だ未知数の黒咲の実力を確かめようとしていた…。

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

『そぉれでは!フィールド魔法のセレクトだ!選ばれたフィールドは───「未来都市()()()()()()」だ!!これはまさに、デュエルの未来を担う2人に相応しいフィールドです!!』

 

『っ…!?』

 

「……!」

フィールド魔法がセレクトされ、ニコの解説が響く…そんな中、ハートランドという名前を聞いた黒咲は動揺し、素良は何かに気付いた様子を見せる。

 

 

『それでは!アクションフィールド・オン!「未来都市ハートランド」発動!!』

スタジアムの投影機が起動し周囲が光に包まれる、そして周囲の景色は街中にハートマークがあしらわれ、桃色の水晶が輝く塔に照らされた近未来都市へと変化した!

 

 

 

「ボクは『お菓子の町』の方が良かったんだけどなー…まっ、お客さんが喜んでるから、いっか!ね?……あれ?」

 

『っ…!!!』

無邪気に近未来都市を眺める素良…だが、黒咲は拳を震わせ──まるで、怒りを押さえ込んでいるような様子だった。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

「どうやら、気に入ってもらえたようだな…私からの()()()()()()()()()()は…」

 

『おい!零児!!テメェ、ふざけてんのか!?』

フィールド魔法が展開し、明らかに動揺する黒咲を見ながら零児は笑みを見せる、そこへ直通回線を通して連絡してきたのは……怒りを露わにした凌牙だった。

 

 

『俺達の状況は説明したはずだ!!故郷を破壊され、人々はカードにされちまった…!あいつにとってハートランドは取り戻すべき故郷であり、融合次元への怒りを思い出させる場所だ!!それをアクションフィールドにするなんて…何を考えてる!!』

 

「……そんな事は分かっている…私はただ、黒咲が()()を出せるような演出をしたまでだ……君も分かっているだろう?黒咲は明らかに闘志を失っている…ならば、彼が闘志を思い出す環境を整えるまでだ」

黒咲にとっての希望であり、トラウマの場所でもあるハートランド…零児はスタンダードに来て闘志を失っている黒咲の為にそのアクションフィールドを選んだのだ。

 

 

『零児、お前の考えは間違ってる…!黒咲は闘志を失った訳じゃない…!()()()()()んだ…奴が本当に戦うべき融合次元の戦士と戦う為に!!……どうなっても知らねぇぞ、黒咲のデュエルにおける苛烈さは…レジスタンスでも上位に入るからな…!』

 

「…望むところだ」

しかし、零児の考えは違うと凌牙は指摘する…黒咲はスタンダードにおけるデュエルに乗り気ではないだけで…その胸の内では融合や融合次元のデュエリストに対する怒りが渦巻いている。

…それが解き放たれたのなら…その実力は──

 

 

 

 

『だぁぁ!!これだから『天才』って奴は!!本ッ当にめんどくせぇ─!!』

通信を切った凌牙は零児に対しての怒りを爆発させる…その効率ばかりを追求する考えにかつての仲間の姿を重ねながら…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ?大丈夫?お腹でも痛いの?デュエルできる??」

 

『人の心配より、自分の心配をしろ…!貴様が()()()融合使いなら…オレは、容赦しない!!』

無邪気に黒咲の心配をする素良…しかし、黒咲は燃え上がる怒りのままにデュエルディスクを展開する!

 

「ふ〜ん、面白いじゃん…!みんな〜!いよいよ、ボクのエンタメデュエルが始まるよ〜!応援よろしく〜!!」

対して素良は観客達に応援を呼びかけながらデュエルディスクを展開、会場を盛り上げる!

 

 

「それじゃ、いかせてもらいまーす!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!!───あれ?」

 

『………──』

 

『なんだよぉ?ノリが悪いなぁ…ツーと言ったらカー、海と言ったら山でしょ?…仕方ない!観客のみんな!ヨロシク!!』

アクションデュエルの口上を無視する黒咲…素良は仕方なく、観客達へと呼びかけた!

 

 

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!』

 

「「「モンスターと共に地を駆け、宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!」」」

 

『見よ!これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

 

 

「『デュエル!!』」

素良や観客達のコールと共に不穏なる決闘が始まった…!

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 黒咲対素良

 

 

 

「先攻は貰った!ボクはとってもキュートなクマさんモンスター『ファーニマル・ベア』を召喚!そして、自分のフィールドに『ファーニマル』モンスターがいる時、手札の2体の『ファーニマル・シープ』は特殊召喚できる!」

先攻を取ったのは素良、彼は可愛らしい羽を生やしたぬいぐるみのようなクマとヒツジを呼び出す!

 

 

「ボクはカードを1枚伏せて、ターンエンド!さぁ、次はキミの番だよ?2人でお客さんに最高の()()()を見せてあげようよ!!」

 

『最高の…()()()、か……かつて、俺の故郷でも…デュエルは最高のショーだった…!大人も子ども…それを無邪気に楽しみ──デュエリストは、みんなの憧れだった…()()()が、来るまでは…!』

無邪気にデュエルを楽しもうとする素良…それに対し、黒咲は……今はもう戻らない「思い出」を……そして、悲劇を語る…!

 

 

『あの日、突如として襲い掛かってきた()によって…俺達の街は()()と化した…!!』

 

「敵?戦場…?何を言ってるのさ?」

盛り上がるはずのアクションデュエルに水を差す黒咲の言葉…それは静かにスタジアムに響き、観客達に動揺が広がっていった…。

 

 

 

『俺のターン、ドロー…「RR-バニシング・レイニアス」を召喚…!』

そして黒咲は会場の空気を気にする事なく、自身のモンスター…機械仕掛けの翼『レイド・ラプターズ』を呼び出す!

 

『突然の事態に、俺達は慌てふためき…仮初めの防衛体制を整えるのが精一杯だった…!バトルだ!「バニシングレイニアス」で「ファーニマルベア」を攻撃!!』

甲高い鳴き声と共に、鋭い鉤爪がクマを切り裂く!

 

 

「ふん…やるじゃん!でも…すぐに取り返すけどね!罠カード『ファーニマル・クレーン』を発動!バトルで破壊された『ファーニマル』モンスターを手札に戻して、1枚ドローする!」

モンスターを破壊された素良だが、取り乱す事なく準備を整える!

 

 

『自分の「RR」がバトルした事で魔法カード「RR-シンボル」を発動、デッキから2体目の「バニシングレイニアス」を手札に加える…そして1体目の「バニシングレイニアス」の効果により、2体目の「バニシングレイニアス」を特殊召喚!そして、カードを1枚伏せ…ターンエンドだ』

 

「すぐに反応したのは褒めてあげるけど…そんなにモンスターを並べて意味あるの〜?」

黒咲は淡々と自分のデュエルを進めていく…。

 

 

 

 

「それじゃあいくよ!ボクのターン!『エッジインプ・シザー』を召喚!」

素良のターン、彼は先程までのぬいぐるみとは違う…鋭い鋏に宿る悪魔を呼び出す!

 

「このカードが召喚に成功した時!フィールドの『ファーニマル』モンスター1体を手札に戻して、別のモンスターを特殊召喚できる!『シープ』を戻して『ベアー』を特殊召喚!」

鋏の悪魔がヒツジの毛を刈っていく…そして、その姿はクマのぬいぐるみへと変わってしまった!

 

 

「そして『シープ』が手札に戻った事で、ボクはデッキからこのカードを手札に加える──『融合』をネ!」

 

『っ…!!!』

素良が「融合」を手札に加えた瞬間…黒咲の表情は怒りに染まる…!

 

 

 

「レディース&ジェントルメーン!これより皆さまにご覧頂きますのは!()()()()の融合召喚でございまーす!!」

フィールド内の高台に駆け上がった素良は遊矢をリスペクトした口上をスタジアムに響かせる!

 

「それでは参りましょう!魔法カード『融合』発動!ボクが融合するのは『エッジインプシザー』と『ファーニマルベア』!悪魔の爪よ!野獣の牙よ!いま一つとなりて…新たな姿と力を見せよ!融合召喚!!現れ出ちゃえ!全てを切り裂く、戦慄のケダモノ!『デストーイ・シザー・ベアー』!!」

素良の口上と共に2体のモンスターが融合、「ファーニマルベア」の体から無数のハサミの刃が突き出し、ぬいぐるみの中からは恐ろしい赤い目が覗く…これが素良のエース、可愛くも恐ろしい『デストーイ』の姿だった!

 

 

「バトルだ!ボクは『シザーベアー』で『バニシングレイニアス』を攻撃!」

そして続く攻撃…鋭い爪と鋏がバニシングレイニアスが切り裂かれる…だが、まだ終わりではない…!

 

 

「『シザーベアー』の効果発動!破壊した相手モンスターを装備し、その攻撃力分攻撃力をアップする!」

 

『罠発動!「RR-リターン」!バトルで破壊された「RR」モンスターを手札に戻す!』

 

「ありゃ、戻されちゃった…まっ、これくらいやってくれなきゃね!」

破壊されたバニシングレイニアスを取り込もうとするシザーベアーだったが…罠カードによってそれは防がれる!

 

 

 

「ボクはカードを1枚伏せてターンエンド!ねぇ、容赦しないとか言ってたんだからさ…そろそろ本気を出してよ?それとも…守る事に精一杯で…自分から仕掛けるのは無理だったり?」

一進一退の攻防の中、素良は黒咲を挑発する…そして、黒咲は再び静かに語り始める…。

 

 

『始めはそうだった…圧倒的な敵に対して、俺達は自分の身を守るので精一杯だった…そして、仲間達は1人、また1人と失われていく……そんな絶望の中で、俺達は「希望」を見た…!誇り高き()()達が立ち上がった!!「諦めるな」「戦いはこれからだ」と俺達の背中を押してくれた…そして、俺達は「必ず勝つ」という鉄の意思を持って…戦場(地獄)を生き抜いてきた!!』

故郷を襲った絶望、その中で黒咲達は戦い続けた…その先に『希望』は残されていた…!

 

 

 

『俺はレベル4の「バニシングレイニアス」3体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!雌伏のハヤブサよ…逆境の中で研ぎ澄ませし爪を上げ…反逆の翼、翻せ!!現れろ!ランク4!「RR-ライズ・ファルコン」!!』

融合への怒りを胸に…反逆の翼が舞い上がる!

 

 

「これがキミの本気?冗談でしょ…?攻撃力たったの100なんて──」

 

『「ライズファルコン」はフィールドに特殊召喚されたモンスターに1度ずつ攻撃でき、さらに!ORUを一つ使う事で攻撃力は特殊召喚されたモンスターの攻撃力の合計分アップする!!』

 

「攻撃力2700だって!?」

反逆の翼が紅蓮の炎を纏う『不死鳥』と化す!

 

 

『バトルだ!「ライズファルコン」よ!全ての敵を引き裂け…!ブレイブ・クロー・レボリューション!!』

 

「っ…ああああ!?」

紅蓮の炎を纏った一撃が素良のモンスターに直撃、バラバラに引き裂かれ…素良は吹き飛ばされる…観客の中にはその容赦ない攻撃に悲鳴を上げる者もいた…。

 

 

『俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド』

 

「っ…なかなか、面白い事してくれるじゃん…それじゃ、ボクも……チョコっとだけ、本気出しちゃおうかな…!」

ターンを終える黒咲…その様子を見た素良は起き上がりながら、獰猛な笑みを浮かべていた…。

 

 

 

………

 

 

 

そして、デュエルは進んでいく…「デストーイ・シザー・ベア」を破壊された素良は新たな融合モンスター…ノコギリを持つ邪悪な獅子「デストーイ・ホイール・ソウ・ライオ」を召喚し、逆転を狙うが…黒咲のアクションマジックと罠カードによって阻まれる。

返しのターン、黒咲は攻撃力を底上げした「ライズ・ファルコン」によって策を潰しながらダメージを与え…少しずつ素良を追い詰めていく…それにつれ、激しい戦闘で街は少しずつ破壊されていく…!

 

 

 

「っ…たくもう…!本当に腹立っちゃうよね…これで何体目かな?ボクのモンスターを破壊してばっかり…!もうちょこっとなんて言ってらんない…!!マジで本気出しちゃうから…!!」

本来、素良は追い詰められても余裕を崩さないプレイスタイルなのだが…焦りが、黒咲には()()()()()()という執着が素良をさらなる破壊へと進ませる…!

 

 

 

 

「ボクは『ファーニマル・シープ』と『エッジインプ・チェーン』を融合!現れ出ちゃえ!!全てを牛耳る、鎖のケダモノ!『デストーイ・チェーン・シープ』!!」

素良は新たな融合モンスター…荒ぶる鎖の魔物を呼び出す!

 

「このモンスターが攻撃する時、相手は魔法・罠を発動できない!!バトルだ!『チェーンシープ』!『ライズファルコン』を攻撃ィ!!」

鎖の魔物は口から赤い破壊光線を放つ、そして空を飛び回っていたハヤブサを撃墜した…!

 

 

『これで、お前のモンスターの攻撃は終わった…ならば、このカードが発動できる!速攻魔法「RUM-ラプターズ・フォース」発動!!バトルで破壊された「ライズファルコン」を特殊召喚し、ランクが一つ高い「RR」にランクアップさせる!俺は「ライズファルコン」でオーバーレイネットワークを再構築…ランクアップ・エクシーズチェンジ!!』

 

「なっ…!?」

撃墜されたライズファルコンから飛び降りた黒咲は新たな力──『ランクアップマジック』を解き放つ!

 

 

『獰猛なるハヤブサよ…激戦を潜り抜けし翼翻し…寄せくる敵を撃ち返せ!!現われろ!「RR-ブレイズ・ファルコン」!!』

撃墜されたハヤブサが炎に包まれ、新生する…赤き翼を持つその名は…「ブレイズファルコン」!

 

 

「ランクアップ…いいねいいね!キミもすごいエンターテイナーだね!観客達も大喜びだ…!ボクもゾクゾクしてきた…!!さぁ、もっとボクを楽しませてよ!!」

 

『楽しむ?これから貴様が味わうのは──断末魔の苦しみだけだ!!』

新たなエクシーズモンスターを前に獰猛に笑う素良…そして黒咲は攻勢に出る!

 

 

 

『「ブレイズファルコン」の効果発動!ORUを1つ使い、相手の場に存在する特殊召喚されたモンスターを破壊し、1体につき500ダメージを与える!!』

 

「罠カード『デストーイ・バックアップ』発動!『デストーイ』モンスターの効果破壊を無効にし、攻撃力を800アップする─!」

ブレイズファルコンの翼から無数のレーザーピットが放たれ、チェーンシープを狙う…だが、現れたバリアが破壊を阻み、流れ弾が周囲を破壊し…火の海へと変えていく…!

 

 

『バトルだ!「ブレイズファルコン」は相手にダイレクトアタックできる!征け!!』

 

「っ!?うわあああ!!」

さらに強烈なダイレクトアタックが炸裂し、素良はクレーターを作りながら、壁に叩きつけられる…だが、まだ終わらない…!

 

 

ゴゴ…ズズン!!

 

 

『あ、危ない!建物が崩れるぞ〜!?』

 

「っ…!!だぁっ!!」

叩きつけられた衝撃で建物が崩壊、素良へと瓦礫が降りそそぐ…だが、素良は落ちてくる瓦礫を足場に跳躍して危機を脱する。

…しかし、その動きは……明らかに()()ではなかった…!

 

 

『「ブレイズファルコン」がダイレクトアタックに成功した時!相手モンスター1体を破壊する事ができる!!』

 

「させ、るかぁ!アクションマジック『ミラー・バリア』!破壊を無効にする!!」

 

『罠カード「ラプターズ・ガスト」!相手の魔法カードの発動を無効にし、破壊する!』

一息ついた素良にミサイルによる追撃を仕掛ける黒咲…だが、それはアクションマジック阻まれるかと思いきや…罠によってバリアは砕け、鎖の魔物は爆砕した…。

 

 

 

「これじゃ、まるで…戦争じゃないか…!?」

繰り広げられるデュエルを見た遊矢は動揺しながら呟く…破壊された街、飛び交う砲弾…火の海……その様相は本物の戦場のようだった…。

 

 

 

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド……薄ら笑いはどうした?少しは()()()()者の気持ちは分かったか?貴様達は、いつも笑いながら…俺の仲間達を、襲い続けた…!!だが、もはや俺達は狩られるばかりの獲物ではない!!俺達は『レジスタンス』!!希望と共に、融合へと反逆するデュエリストだ!!」

素良を追い詰めた黒咲は怒りを滲ませながら咆哮する…支配への反逆を唱えながら…!

 

 

「はぁ?余裕がない?冗談言うなよ……こんなデュエル、キャンディー舐めながらだって、ボクはできる!!」

黒咲の言葉を聞いた素良は懐から取り出したペロペロキャンディーを()()()()…そこに先程までの『エンターティナー』としての素良はいない、其処にいるのは……。

 

 

遊びさ…本気でヤル訳ないじゃん?ボクの仲間だってそう…みんな、遊びでキミたちを狩ってるんだ!!だってキミたちは…()()()()()()()()()の獲物なんだから─!!

邪悪な笑みを浮かべた非道にして醜悪な──『侵略者』だった。

 

 

 

 

【魔法カード『魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)』を発動!墓地の『シザーベアー』『ホイールソウライオ』『チェーンシープ』を除外し、その3体を素材とする融合モンスターを融合召喚する!!悪魔宿りし非情の玩具よ、歯向かう愚民を根こそぎ滅ぼせ!!現われよ!全ての玩具の結合魔獣!!『デストーイ・マッド・キマイラ』!!】

それは素良の切り札…子どもの持つ残虐性の具現たる魔獣、3つの頭を持つ魔獣のビックリ箱が子供達の悲鳴をBGMとして具現化する!

 

 

 

 

【バトルだ!『マッドキマイラ』で『ブレイズファルコン』を攻撃!!】

 

『本性を曝け出したかっ…!』

マッドキマイラから放たれた巨大ミサイルが赤き翼を撃ち落とす!

 

 

【これでオマエの残りライフは400…!そして『マッドキマイラ』の効果発動!破壊したモンスターをボクのフィールドに特殊召喚する!さらに、この効果でコントロールを得たモンスター1体につき攻撃力は300アップする!これで、オマエのモンスターもボクのモノだ!分かっただろ!キミにボクは狩れない…狩られるのは常にキミ達だ!これからもずっと!!】

狂気を宿した素良は黒咲を嘲笑う…その様子に観客席の遊矢達も困惑している。

 

 

【最後はキミのモンスターでトドメを刺してあげるよ…そうすればキミは──】

 

 

『笑止』

 

 

【なに…?】

しかし、黒咲は動じていなかった…その冷たい鷹の目が素良を射抜く…!

 

 

『俺達、レジスタンスは常に「最悪」を想定して戦ってきた…共に戦ってきた仲間を敵に連れ去られる事も考えながら…!だが、例え奪われたとしても!俺達は決して見捨てない!!仲間は、必ず取り戻す!!速攻魔法!「RUM-レボリューション・フォース」発動!!相手のエクシーズモンスターのコントロールを奪い、ランクの1つ高い「RR」にランクアップする!!』

それは黒咲の…レジスタンスの決意、奪われた故郷を…仲間を取り戻す為に、彼らはその命を燃やし戦い続けてきた!!

 

 

誇り高きハヤブサよ!英雄の血潮に染まる翼翻し、革命の道を突き進め!!ランクアップエクシーズチェンジ!!現われろ!!「RR-レボリューション・ファルコン」!!』

大地から吹き出す炎の中でハヤブサが進化を遂げる、侵略に抗う革命の翼…その名は『レボリューション・ファルコン』!!

 

 

 

【はっ…なんだよ?革命とかなんとか言って、攻撃力2000ぽっち?それじゃあ『マッドキマイラ』は倒せない!!】

 

『果たして…そうかな?』

 

【っ…!!どうせ、ハッタリだろ!?キミのフィールドには魔法・罠はないし!アクションカードだって…】

 

『「レボリューション・ファルコン」の効果発動!このカードが「RR」を素材としてランクアップした時!相手が特殊召喚したモンスター1体を破壊し、その攻撃力の半分のダメージを与える!!』

 

【なにっ!?】

 

『いけっ!!「レボリューション・ファルコン」!革命の火に灼かれて…散れっ!!

それは相手を殲滅する無情の火…大空に舞い上がった革命の翼は無数の砲弾を雨のように撒き散らす!!

 

 

 

「や、やめろぉぉ!!こんなの、『デュエル』じゃない!!オレの信じるデュエルは…みんなを幸せに──!!」

 

爆撃音が響く中、遊矢が絶叫する…だが、その願いは…希望は………爆音に掻き消されていく…。

 

 

 

【っ───あった!アクションカード!これさえ────あっ…?】

爆撃の中、必死にアクションカードを探す素良…そして、アクションカードを手にしたが……発動する間もなく、ハートランドのセントラルタワーに押し潰される…。

 

 

派手に破壊を行わなければ、発動する一瞬は稼げたかもしれない……それは素良の狂気が招いた敗北だった…。

 

 

 

 

素良LP0

 

 

黒咲WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ぐ……」

 

『お、おっと……か、勝ったのは!LDSの黒咲選手だ〜!!』

素良が完全に下敷きになる直前、ソリッドビジョンが消滅する…そして困惑しながらも、ニコの勝利宣言が…静寂に包まれたスタジアムに木霊した…。

 

 

 

『………!!』

 

『黒咲、それ以上は止めとけ……あとはLDSに任せるぞ』

 

『凌牙っ……わかった…!!』

デュエルが終わり、黒咲は素良に歩み寄る…だが、それを止めたのは通信越しの凌牙だった。

黒咲は融合次元から鹵獲した「カード化装置」を渡されていない…ならば怒りに囚われた彼が『何をするか』は明らかだったからだ。

 

 

『……フン』

 

「ま、て…!勝負はまだ、終わってない…!!ボクが負けるはず、ない!!」

 

『(………)』

凌牙の言葉を聞いた黒咲は踵を返す…その背中に起き上がろうとする素良が負け惜しみを叫ぶ……その時の黒咲の眼は……素良を哀れんでいるようだった…。

 

「ボクが…ボクが、エクシーズの、やつら…なんか、に…もう一度、もういちど………でゅえる、を───」

駄々をこねるようにデュエルを望んだ素良は…そのまま、地面へと倒れ込んだ…。

 

 

 

「そ、素良!!素良ぁぁ──!!」

凍りついたスタジアムに遊矢と柚子の悲鳴が響いた…。

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

ドクン!!

 

 

 

「っ……あ、が、ああっ…!!!」

 

《フォウ!!フォーウ!?》

黒咲と素良の決着を見せつけられた遊希…その時、胸の激痛が遊希へと襲いかかる…!

 

 

「(なんだ、この感覚…!!怖い……悲しい…!許せない!赦さない!!痛い!!)」

…それは体の痛みではない、遊希の心が──その奥に眠る『魂』が…激しい戦いを前に傷付き、悲しみ……憤怒した痛みだった。

 

 

「あ、あああ…!!許せない…デュエルを、戦いに…戦争の道具にするなんて、許さない…!!」

激しい怒りで視界が紅く明滅する…デュエルとは決して争う為のモノではない、遊勝の背中を…人々を沸かせるデュエリストの姿に憧れた遊希の心が、怒りに支配され───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

「おーい、遊希〜!飼い猫が逃げて──おいっ!?大丈夫か!?」

 

「かつ、や…」

もがき苦しむ遊希の前に現れたのは…腕にフォウを抱えた城之内だった。

偶然、見舞いの為に榊家の前を通りかかり…飛び出してきたフォウが彼に助けを求めたのだ…。

 

 

 

「遊希!大丈夫か!しっかりしろ!!お前、またなんか無茶したのか!?」

 

「あ、う……大丈夫、ちょっと…興奮しすぎた、だけ…だから……」

城之内に助け起こされる遊希…その胸から静かに痛みと「悪意」が引いていく……それは不思議な感覚だった…。

 

 

「昨日のデュエルの時に調子が悪そうだったから顔を見に来てみれば…お前、いったいどうしたんだよ!?」

 

「わからない…でも、僕の中の『何か』が…今のデュエルに……ううっ…」

 

「おい!遊希!遊希─!?」

痛みが引いた遊希はそのまま意識を失う…だが、その心に芽生えた『憤怒』が消える事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン…

 

 



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Ep.18 悪魔共鳴〜翡翠の翼〜

「素良…」

 

「……大丈夫だ、LDSには優秀な医療チームがあると聞いてる…」

 

「デュエルで、こんな事になるなんて…」

夕暮れの舞網市…LDS内にある保健室、黒咲とのデュエルに敗れた素良はそこに担ぎ込まれた…。

治療の為に面会謝絶状態であり、廊下では遊矢・柚子・権現坂・修造塾長、そしてジュニアコースの3人が心配そうな顔で待っていた…。

 

 

「遊矢…遊希さんは…?」

 

「さっき、母さんから連絡があったよ…とりあえず、大丈夫だって…」

 

「素良と黒咲のデュエルを見て、体調を崩したと言っていたが……確かに、あのデュエルは……」

そして、もう1つの心配の種…それは家で体調を崩した遊希の事だった。

素良のデュエルが終わった直後、洋子の端末に緊急連絡が入る…それは城之内から遊希が倒れた事を知らせる連絡で…洋子は飛ぶような早さで家に帰っていた…。

 

 

「……黒咲、隼…なんで、素良にあんな事を…!」

遊矢は何もできないまま、黒咲に対する怒りで拳を握り締めた…。

 

 

 

………

 

 

 

「じゃあ、俺は子供達を送ってくるから…素良の事、頼んだぞ?」

 

「うん…」

夜の帳が落ちた舞網市、修造はジュニアの子供達を送り届ける為に素良を遊矢達3人に任せ、LDSを離れていった…。

 

 

 

「……どう思う?黒咲が、素良をあれだけ痛めつけた事…」

 

「彼は…『融合』を憎んでいた……それは仲間を救う為だって、ユートが言っていたわ…」

 

「ユート…オレに似てる、黒い服の…」

修造が去った後、遊矢は今回の出来事について2人に問いかける…黒咲の「融合」に対する憎しみ、素良の豹変と「狩り」と言う言葉……遊矢達にはあまりにも情報が少なかった…。

 

 

 

「ユートに関しても、何か変だ…柚子のブレスレットが光ると消えるなんて」

 

「うん…私、最初は遊矢が変装してるのかと思ったもん……遊矢はエクシーズを使わないから()()って気付けたし……」

遊矢と柚子はまず、ユートについて考える…沢渡から柚子を守る為に姿を見せたユート…彼は柚子のブレスレットが光を放つと「消えてしまう」という特徴を持っていた。

 

 

「そして…次に起きたのは、LDSの融合コースの講師が襲われた事件…あの時、LDSは勝負を捨ててまで帰っていったな……」

 

「なぁ、もしかしてなんだけど…その講師を襲ったのって…黒咲だったんじゃないか?」

 

「えっ…どうしてそう思うの?」

権現坂の言葉に遊矢は突飛の事を言う遊矢に柚子が問いかける。

 

「ほら、LDSの理事長が言ってただろ『沢渡を襲った件は相手方から謝罪があった』ってさ…つまり、ユートはLDSを襲わない…それで、仲間らしい凌牙は遊希兄とデュエルしてダウンしてた……それで、黒咲は…何かで講師が『融合』使いだって知ったから襲いかかった……とか?」

 

「待て、それでは話が合わん!それでは仲間内の連絡が取れていないようではないか?仲間なら…」

 

「それは…黒咲は、怒りすぎてて…融合使いを見境なく襲おうとしてた……とか…?」

 

「あ…それ、あり得るかも…凌牙が黒咲の事を殴って止めてたし…」

 

「う〜む、そんなもんか…?」

遊矢の予想に柚子は頷く…黒咲は柚子を「妹」と見間違え、凌牙の拳で止められていたからだ。

そこから…黒咲は決めたら止まらない性格だと予想したのだ。

 

 

 

「それで…凌牙はユートや黒咲のリーダー格、だったのだな?」

 

「うん…ユートが彼の言葉を聞いてたから…間違いないと思う」

 

「それに、気になる事があるんだ……遊希兄とのデュエルの時、少しだけ凌牙の様子がおかしくなかったか?」

 

「あっ……たしか、ペンデュラム召喚が終わった時…何か詰め寄ってたような…」

 

「あの時、遊希は……胸元のペンデュラムを凌牙に見せていたな………まさか、凌牙は記憶を失う前の遊希を…知っていたのか?」

 

「でもそれじゃあ……あんな激しい攻撃をした理由が……」

 

「遊希さんに強いショックを与えて……記憶を戻そうとした、とか…?」

 

「「それだ…!」」

そして話題は凌牙の件に移る、遊勝塾を賭けた4番勝負でぶつかった凌牙と遊希…その時の凌牙の様子は明らかにおかしかった、そこから凌牙と遊希が知り合いだったのでは?という仮説が生まれる……『三人寄れば文殊の知恵』…その言葉通り、遊矢達は少しずつ真実に近付いていく…。

 

 

 

「とりあえず、遊希と凌牙の件は置いておく……素良と黒咲のデュエル中の話を総合すると…ユート・黒咲、そして凌牙は『エクシーズ塾』の所属で…素良達『融合塾』が彼らに危害を加えた…と言う話だったが…」

 

「融合とエクシーズ…でも、なんだろう?塾同士の争いにしては規模が大き過ぎる……もっと、大きな力が動いているような…」

 

「ぬああああ!わからん!!この権現坂、デュエル以外で頭を使うのは苦手なのだぁ!!」

 

「こんな時、遊希さんがいてくれたら…あの人なら、きっともっといい答えを見つけてくれるのに…。」

しかし、彼らはまだ中学生…真実を追求するにはまだ幼すぎた…。

 

 

「とにかく、素良が目を覚ましたらもう一度聞いてみよう…黒咲達との間に、何があったのか…」

 

「そうね…」

話し合いの末、遊矢達は素良に話を聞く事を決めた…その時──

 

 

 

 

『おい!彼らは何処に行った?!もう外に出てしまったのか!?』

 

『すぐに本社に連絡を!紫雲院素良が逃げ出した!!』

 

 

「「「なんだって!?」」」

にわかにLDSのエントランスが慌ただしくなる…それは、素良の脱走のせいだった…!

 

 

 

 

Side???

 

 

 

キィン──

 

 

「よし、こんなモンだな…痛みは取れたか?黒咲」

 

「ああ、元々かすり傷だ…治してもらう程ではない」

 

「そう言うなって…まだ大会は続くんだからよ…」

LDSに設けられた凌牙達の部屋、そこで黒咲は凌牙による治癒を受けていた…素良との激戦の中、上手く受け身はとっていたが黒咲も大小の傷を受けていた…。

 

 

「奴は……融合の手先はどうなった?」

 

「今は治療室で応急処置中らしい…幸いにも傷は浅いらしいから、すぐにレオ・コーポレーションに身柄を移すって零児が言ってたぜ」

 

「融合の手先め…必ず、瑠璃や仲間達の行方を…!!」

 

「……落ち着け、黒咲……アイツはおそらく潜入担当……あまり情報を知らされてねぇかもしれねぇ、とにかく零児の尋問待ちだな…」

 

「くっ…!」

凌牙は融合の手先…素良から情報を聞き出そうとする黒咲を宥める、潜入スパイはあまり情報を持っていない事が多いと知っていたからだ。

 

 

「……そういえば、ユートはどうした?さっきから姿を見ないが…」

 

「ん…?確かに、夕飯の時はいたが……ユート!聞こえるか?」

黒咲の言葉に凌牙はユートへと連絡を取ろうとする…。

 

 

『っ…凌牙、すまない!紫雲院素良を逃した!!』

 

「なっ…!?お前、何をやってんだよ!?」

通信の向こうでユートは息を切らせながら凌牙に謝罪する…!

 

 

『人気のない内に、融合次元と仲間達の行方を聞き出そうとしたんだが!黒咲に再戦を挑むと、LDSを飛び出して行った!!』

 

「っ─たくっ!お前も猪突猛進系だって忘れてたぜ!!」

LDSによる尋問より前に素良から情報を聞き出そうとしたユート…凌牙は普段、おとなしい故に忘れていた…ユートの抱く『怒り』もまた、大きい事を…!

 

 

「黒咲!お前はレオ・コーポレーションの司令室で待機!指示があるまで後方支援を頼む!!俺はユートと紫雲院を追う!!」

 

「っ…!?何を言っている凌牙!奴が望んでいるのは俺との!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()……ここで、俺達が全滅したら……誰が、エクシーズ次元を救える?誰がスタンダードとエクシーズ次元を繋ぐ?」

 

「っ…!!」

威圧が込められた凌牙の言葉に黒咲は押し黙る…その眼は歴戦の勇士の眼光を宿していた…。

 

 

「……黒咲、俺はお前を信頼しているから()()んだ…頼んだぜ!!」

凌牙はそう言い残すと部屋の窓から()()()()()…此処は地上数十メートルの高層階、無謀な飛び降りだが…。

 

 

101

 

 

「っ…凌牙、ユートを……友を頼む…!!」

夜闇に紛れるように現れた黒き槍術士と共に凌牙は空を駆け、ユートの信号を追い掛けた…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

『もう…!しつこいな!!ボクはアイツを倒さなきゃならないんだ!!黒咲隼を!!』

 

「そんな体で、隼と戦おうと言うのか?」

 

『そうだ!今度は、絶対に負けない!!エクシーズの奴は、みんなボク達に狩られる運命なんだ!キミも黒咲も!()()って奴も!!』

 

「っ…」

 

『本気でやれば、ボクの方が上だって証明してやる!!アイツを庇うつもりなら…容赦しない!!』

ユートは黒咲の姿を探して街を走り回っていた素良を舞網中央公園へと追い詰める…だが、エクシーズに負けた事で殺気立っている素良は…その矛先をユートに向ける…!

 

 

『キミ達が探してる奴が何処にいるかは知らない…たぶん、カード化されちゃってるんだろうけど…戻す方法は1つだけある…それは()()()()()()()事!弱々なエクシーズの奴らには無理だろうけどね…!』

 

「貴様…!」

故郷や奪われた人々を貶す素良…ユートはその考えを諌める為に、剣を取る!

 

 

 

『まずはキミから…そして黒咲も!凌牙も!!この世界のエクシーズ使いは、ボクが滅ぼしてやる!!』

 

「そうはいかない…!瑠璃を救う為、まずは貴様を止める!!」

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

融合とエクシーズ…2つの次元のデュエリストの衝突が始まった…。

 

 

 

 

 

「素良…それに、ユート…!!」

デュエルが始まってしばらく…素良を探していた遊矢がついに素良、そしてユートのいる場所へ辿り着く…そこで行われていたのは…。

 

 

 

 

デュエルダイジェスト ユート対素良

 

 

 

 

『バトルだ!「デストーイ・シザー・ベアー」で「幻影騎士団ブレイク・ソード」を攻撃!!』

 

「ぐあっ…!?だが、この瞬間『ブレイクソード』の効果発動!フィールドを離れたとき、このカードのエクシーズ素材となったモンスターをレベル4として特殊召喚する!蘇れ!『幻影騎士団サイレントブーツ』『幻影騎士団ダスティローブ』!幻影騎士団は斃れない…何度打倒されようと甦る!これが、オレ達レジスタンスの闘いだ!!」

 

『フン…!「シザーベアー」の効果発動!破壊した「ブレイクソード」を装備し、その攻撃力分強くなる!キミのエクシーズモンスターなんて、所詮ボクのモンスターの栄養にしかならないんだ!』

 

「素良…!」

目の前で繰り広げられるのは楽しい『デュエル』ではなく…互いの誇りを、怒りをぶつけ合う『決闘』…その鬼気迫る様子に遊矢は動揺する…。

 

そして、反逆の『牙』が目を覚ます!

 

 

 

 

「漆黒の闇より…愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!!いま、降臨せよ!エクシーズ召喚!!現れろ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

光の爆発と共に、エクシーズの名を背負う反逆の龍が現れる!!

 

 

「ダーク・リベリオン、エクシーズ・ドラゴン…!」

 

『フン…たかが攻撃力2500のモンスター出してどうなるの……まさか…!』

咆哮を轟かせる反逆の牙をあざ笑う素良…だが、思い出してしまった…面白半分で見ていた遊希とのデュエルで見せた力を!

 

 

『「ダークリベリオン」の効果発動!ORUを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を半分にし、自身の攻撃力をその数値分アップする!トリーズン・ディスチャージ!!』

翼から放たれた紫電がクマの魔物を拘束、その力を奪い去る!

 

 

『(ま、マズい!もう1つのORUを使われたら!?)』

 

()()()()!!『ダークリベリオン』で『シザーベアー』を攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 

『なにっ!?うわああああ!?』

ダークリベリオンはニ回目の効果を使わずに攻撃…素良は爆発に吹き飛ばされる!

 

 

 

「この、衝撃…!?リアルソリッドビジョンのフィールド内じゃないのに…!?」

 

「オレはカードを伏せ、ターンエンドだ」

攻撃の余波を受けた衝撃に遊矢は動揺する…そして、ユートはそのままターンを終える…。

 

 

 

「っ…素良!素良!!大丈夫か!?」

 

『っ…!あっちいけ!遊矢には関係ない!!』

 

「な、何を言ってるんだ!?病院で休んでなきゃいけないのに…!」

 

『うるさい!!』

そして遊矢は思わず、倒れ込んだ素良に駆け寄る…だが、返ってきた答えは──拒絶だった。

 

 

 

『あいつ、ボクに手加減なんか…!馬鹿にしやがって!!絶対に許さない!!』

 

「素良!もう止めるんだ!!」

 

『うるさい!!ボクはまだ本気じゃない!ボクの方が強いんだ!』

 

「そんな事…!次の大会で、いつだってできるだろ!?」

 

()()()()()()!!本当の戦いに、次なんて無いんだ!!』

必死に素良を説得しようとする遊矢…だが、素良は怒りに支配され…遊矢の言葉は届かない。

 

 

「……その通りだ、だが…敵とはいえ、これ以上傷付けるのは忍びない…おとなしくサレンダーするなら、身の安全は考慮しよう」

 

「お前…素良に、何をするつもりだ…!」

ユートの言葉に遊矢は素良を庇うように前に出る…黒咲も、ユートも…素良に対して危害を加えようとしていると感じたからだ…。

 

 

『……巨大な建物も、蟻の一穴から崩れると言う…キミには、融合と言う「壁」に穿つ小さな亀裂になってほしい』

 

「……これ以上、()()を傷付けるのは許さない!!やるなら、オレが相手だ!!」

遊矢はデュエルディスクを構える…かけがえのない、仲間を守る為に…!

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「榊遊矢…!」

レオ・コーポレーションの司令室…零児・中島・黒咲、そして零児の義弟、零羅は監視カメラを通じて、デュエルの行く末を見守っていた…。

 

 

「ここで乱入してくるとは…紫雲院素良はアカデミアの情報を持つ、貴重な存在…このまま続けさせては…!」

 

「…いや、既に()()()だろうな…」

中島のデュエルを止めるべきだと言う意見を聞いた零児はそう呟く…彼の知る()なら、このような事態も想定しているだろうと…。

 

 

ビビーッ!ビビーッ!

 

 

「何事だ!」

 

『っ…市内臨海地区、倉庫街で強力なペンデュラム召喚反応、さらにそれを上回る()()()()反応を確認!!』

 

「なに…!?」

その時、司令室に警報が鳴り響く…オペレーターが強力な召喚反応の出現を伝える…!

 

 

 

「中島、沢渡のペンデュラムデッキは?」

 

「既に回収しています……まさか…!」

 

「………この街で、ペンデュラム召喚を扱えるのは…………カメラを!」

 

『っ……ダメです!回線破損!映像が出ません!!』

司令室がにわかに慌ただしくなる…零児はその意味を理解していた…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

乱入デュエルダイジェスト ユート対素良対遊矢

 

 

PENDULUM!!

 

 

「ペンデュラム召喚!雄々しくも美しき二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

ユートと素良のデュエルに乱入した遊矢は『星読みの魔術師』『時読みの魔術師』によってペンデュラム召喚…エースたる二色の眼の龍を呼び出す…。

 

 

ドクン…

 

 

「っ…?(なんだ?体が、()()…!?」

 

「っ…!」

その時、遊矢は嫌な熱さを感じ取る…怒りで頭に血が昇るような感覚ではない───()()()、そう現せる熱さ…それはユートも同じだった。

 

 

《グギャオオン!!》

 

《グオオオ…!!》

 

キィン─!

 

 

そして、呼応するように2体のドラゴンが咆哮する…呼び合うように、歓ぶように…!

 

 

 

「っ…バトルだ!『オッドアイズ』で『ダークリベリオン』を攻撃!」

 

「やらせない!永続罠『幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)』を発動!『オッドアイズ』の攻撃を無効にし、攻撃を封じ続ける!」0450

遊矢はその「熱さ」を振り払うようにバトルを仕掛ける、それはペンデュラムモンスターであるオッドアイズの性質を利用した「相討ち」狙い…だが、それを霧の魔剣が阻む…!

 

 

「『時読みの魔術師』のペンデュラム効果!ペンデュラムモンスターを対象にした罠カードの発動を無効にする!インバース・ギアウィス!!」

 

「その瞬間、罠カード『ブービートラップE』を発動!セットされた『幻影霧剣』を相手に見せる事で、その効果を得る!」

 

「なっ…!?」

黒衣の魔術師の力で対処しようとした遊矢…だが、ユートは二の矢でそれを阻み、遊矢の攻撃を封じた…。

 

 

 

『っ…!!何もできないなら、あっちにいけ!!』

 

「素良っ…!?」

何もできずにターンを終えた遊矢を素良が突き飛ばす…そこにエンタメデュエルを楽しんでいた面影はない、今の彼は…怒りに囚われた駄駄っ子のようだった。

 

 

『奴はボクの獲物だ!ボクを馬鹿にして…手を抜いて!!遊矢は手を出さないで!!』

 

「獲物って…なんだよ、それ…!黒咲とのデュエルの時も…ハンティングゲームの獲物だって…!!柚子から聞いたんだ、お前の…『融合』の仲間が、黒咲の妹や仲間を連れ去ったって!!」

 

「っ…」

素良の異常な様子を見た遊矢は素良に問いかける…素良は、その仲間達は黒咲やユートに何をしたのかと…。

 

 

 

「柚子は、ユートから聞かされたと言った…!教えてくれ、ユート!!どうしてお前達はそんなに憎しみ合うんだ!!」

 

『ハッ…答えられる訳ないじゃん、自分達がいかに弱いか……そいつは()()()の残党!ボクの仲間達が制圧した「エクシーズ次元」から逃げてきた奴らなんだから!!』

 

「エクシーズ、次元…?」

ユートに対しても問いかける遊矢…それに答えたのは素良だった。

 

ユート達は、異世界からやって来た人間なのだと…!

 

 

「それは違う!我々はまだ、制圧などされていない!!誇り高き勇士達が抗う中、オレは!黒咲は!凌牙は!『融合次元』に対抗する為に、この世界に来たんだ!!」

 

「融合、次元…?次元って、どういう事だよ!?」

2人の間で飛び交う『次元』という言葉…それは、遊矢には理解する事ができなかった…。

 

 

 

『フン…ユートも黒咲も、遊希と戦った凌牙もこの世界の人間じゃない、エクシーズ次元という()()()からやって来たのさ』

 

「別の、世界…!?」

 

『ボクの仲間達は誇り高く戦い、エクシーズ次元に勝った!ボクが負けたら、その仲間達の『栄光』に泥を塗る事になる!なにより…ボク自身が許せない!!アカデミアの特進クラスでもっとも優秀と言われた!特別任務に抜擢された、このボクが!!』

 

「……情報統制や、情報操作も…ここまでやるのか…!」

融合次元の…アカデミアとしての『誇り』を叫ぶ素良…だが、その姿は遊矢やユートからみれば…()()としか思えなかった。

 

 

『ボクが…ボクがエクシーズの負け犬なんかに負けるなんて、あり得ない──!!』

激情のままにデュエルを続け、ユートを倒そうとする素良…だが──。

 

 

キィン─!

 

 

『な、そんな!!まだ!せめて、このエクシーズ使いを倒すまでは!アカデミアに帰りたくな──!!』

 

 

バシュン!!

 

 

「そ、素良─!?」

『切り札』を召喚しようとした素良のデュエルディスクが突如として発光…その意味を知っていた素良は取り乱し、戦おうとしたが…粒子となって遊矢達の前から消えてしまった…。

 

 

 

「お、おい…!?どうなってるんだよ!?素良は!?」

 

「心配するな…奴は次元を越えた、奴の世界…融合次元に強制送還されたんだろう、紫雲院素良も…この世界の人間ではなかったのだ」

 

「自分の、世界…!?でも、あいつは怪我を!」

 

「アカデミアにも医者はいる…あちらで治療を受けるのだろうさ」

 

「アカデミア…素良が言っていた……」

 

「……アカデミアは、侵略者・融合次元の()()()()()()を養成する為の施設だ…!」

 

「デュエル、戦士…!?」

素良が消失し、取り乱す遊矢…それを落ち着かせるように、臨戦態勢を解いたユートはアカデミアについて語った…。

 

 

 

 

「……ふぅ……紫雲院素良が消えた事で、今はオレのターンだが……戦う意義が無くなってしまったな…」

 

「えっ…」

ユートはそう言うと速攻魔法『非常食』を発動し、フィールドの『幻影霧剣』を消し去る…それは遊矢が攻撃できるようになったという事だが…。

 

 

「攻撃したいのなら…攻撃するがいい」

 

「っ…!!できる訳、ないだろ!?」

ユートの言葉に遊矢はデュエルを放棄…2人のデュエルは終了した。

 

 

 

 

デュエル終了

 

 

 

 

「ユート、お前は…素良を融合次元を滅ぼす為の、蟻の一穴にすると言った……だけど、素良が消えた事で…お前は()()してるんだろ…?お前は…本当は、優しい奴なんだと思うから……」

 

「榊遊矢…」

遊矢はデュエルの中でユートの事を少し知る事ができた…何度もあった素良を倒すチャンス、それを逃してまで…ユートは素良を気遣っていたからだ…。

 

 

「お前、本当は……戦いたくなかったんじゃ、ないのか?」

 

「……奴ら、融合次元は侵略者だ……エクシーズ次元、オレ達の故郷を蹂躙し、親友の妹を連れ去った…!オレ達の故郷は…奴らのせいで、戦場となった…!」

 

「エクシーズ次元が…!」

「戦うしかなかった」…そう暗に伝えるユート、彼はエクシーズ次元の現状について遊矢に語る。

 

 

 

平和だった故郷に突如として『アカデミア』のデュエル戦士が攻めて来た事。

 

 

突然の襲撃に抗う術を持たなかった人々は謎の力で「カード化」されてしまった事。

 

 

陥落する寸前、凄まじい強さを誇る1()3()()の勇士達が現れ、アカデミア兵を押し返し…『レジスタンス』という組織を固めてくれた事。

 

 

そして…一縷の望みに掛けて、エクシーズ次元からこの世界…遊矢達の世界に助けを求めに来た事を…。

 

 

 

 

「人がカードに…!?そんな…そんな事があるわけ…!?デュエルを使って、世界を侵略するなんて…!」

 

「遠い世界の自分には、関係ない事だ……と思うか?だが、キミの目に見える事だけが真実ではない…!見えない所では、様々な事が起きているんだ…!」

ユートの言葉を聞いてなお、遊矢は現実離れした「次元戦争」を受け入れる事ができない…しかし、ユートは現実を遊矢に突きつける。

 

 

「カード化にしても、そうだ…!オレ達の目の前で、何人もの人々がカードに変えられていった…!」

 

「っ…オレ達の知らない世界…融合…エクシーズ……本当に………はっ…!?」

自分の「知らない」世界で起きている戦争の痛ましさを知る遊矢…そして、1つ気付いた事があった。

 

 

「ユート、融合やエクシーズの名を持つ世界があるのなら…」

 

「確実に存在するだろうな…オレも知らない、()()()()()()を扱う人々が住む世界──シンクロ次元も…!なぜ、世界が『召喚法』の名前で分かれているかはわからない、だが…事実である事には変わりない」

遊矢の指摘…シンクロ次元の存在を認めるユート…だが、ここでもう1つの「疑問」が生まれる。

 

 

「なら…オレのいるこの『世界』は、なんて呼ばれているんだ…?」

 

「融合次元の奴らは…この世界を『スタンダード』と呼んでいた、全ての基礎となる『中心』の世界…という事だろう」

 

「融合…エクシーズ…シンクロ……そして、スタンダード……世界は4つに分かれていて、融合次元はエクシーズ次元を攻めていて…いったい、なんでそんな事に…!!」

『スタンダード』…自分の住む世界の名を知った遊矢は困惑する、なぜ…融合次元はエクシーズ次元を襲撃したのかと…。

 

 

「……次元がどうのってのは、オレにはさっぱりわからない……でも、これだけは解る!!デュエルは……デュエルは()()()()()()()()()!!デュエルは…人を笑顔にするための…人を幸せにする為のエンタメなんだ!」

 

「遊矢…」

平和な世界で暮らしてきた遊矢にはあまりにもスケールが大きい事はわからない…しかし、デュエルは争う為の手段ではない事だけは分かっていた。

 

その記憶を中に…人々の歓声と共に、人々の心を一つにした父・遊勝の姿を思い出しながら…。

 

 

「やっと、最近分かってきたんだ!!近付いてきたんだ!オレの信じるエンタメデュエルに……オレは、デュエルで人を傷付ける奴を、許さない!!」

 

「お前…もしかして…?」

沢渡戦で感じた一体感…エンタメデュエルの姿を思い出した遊矢はユートへと叫ぶ、そこでユートは何かに気付いた……遊矢に似た事を教えてくれた人物の事を…。

 

だが、それを遊矢に伝える前に──

 

 

 

キィン─! ドォン!!

 

「な、なんだ!?」

凄まじい閃光と突風が2人へと襲いかかった…!

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「どうした!?」

 

『わかりません!!回線が切断されました!!』

 

『周囲一帯のカメラも反応しません!?』

 

「なんだと…!?」

レオ・コーポレーション司令室、カメラで様子を窺っていた零児達だったが…突然の閃光によって状況を知る事ができなくなっていた…。

 

 

「中島、すぐに舞網中央公園へ向かえ…!」

 

「はっ!!」

零児はすぐに中島へと指示を出す…その時だった。

 

 

 

『っ…!?舞網市倉庫街で計測不能レベルのエクシーズ召喚反応を確にっ…うわあああ!?』

 

 

ボン!!

 

 

「っ…!?凌牙!!」

 

「待て、黒咲!…行く事は許さん…!」

倉庫街で計測不能の召喚反応を認識した瞬間、オーバーロードした計測機器が爆発する…黒咲はその反応は凌牙によるモノだと気付き、飛び出そうとしたが…零児が一喝する。

 

 

「我々は…報告を待つしか、ないのだ…!」

 

「っ…!」

黒咲も零児も…強く拳を握り締める、全ては…融合次元に対抗できる『槍』を得る為に…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

「な、なんだ…!?」

 

『いっ…テテッ…!なんで、こんなモンが突っ立ってやがんだよぉ…!』

閃光が収まり、遊矢は辺りを見回す…そして、街灯を薙ぎ倒し、頭を押さえる…バイクに乗った何者かの姿を見つけた…!

 

 

『たくっ…また()()()()()らしいなぁ…』

 

「っ!?!?(オレに、そっくり!?)」

ライダーがヘルメットを外す…その顔は、ユート…そして遊矢にそっくりの顔をした、青い髪に跳ねた金色の前髪の少年だった。

 

 

「お前は…!?」

 

『アン…?オメェは…!!ここで会ったが100年目!!探したぜ…!』

そしてバイク…Dホイーラーの少年とユートは互いを認識した途端、臨戦態勢に入る…!

 

 

 

「オレに似た奴が、3人…!?ユート、知り合いなのか…!?」

 

『この前は余計な邪魔が入ってうやむやになっちまったが…サシなら負けるはずがねぇ!!今度こそオメェをぶっ飛ばす!!』

 

「いいだろう、相手になってやる!!()()()()()め!!」

 

『何が融合だ!?俺の名前は()()()だ!!間違えてんじゃねぇよ!!』

 

「ゆ、ユーゴ…?融合の手先…!?!?」

いきなり火花を散らすユートと()()()()()…だが、その会話は…噛み合っているようで噛み合っていない…!

 

 

 

【デュエルモード、オン!デュエルモード、ステンバーイ!!】

 

『いくぜ、デュエルだ!!』

融合の手先(仮)のバイク…Dホイールのデュエルモードが起動、2人のデュエルが始まってしまった…!

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト ユート対融合の手先(ユーゴ)

 

 

 

 

 

 

デュエルが進む、ユーゴが使うのはけん玉やメンコなどの玩具をモチーフとした『スピード・ロイド』…シンクロ召喚による連続攻撃でユートを攻めたてるが…ユートは何度でも立ち上がる『幻影騎士団』によってライフを削っていく…。

その中でユートはユーゴが瑠璃を攫った『融合の手先』である事…そしてユーゴもまた、ユートに『大事なモノ』を奪われた事を突きつけ、その戦いは進んでいく…そして、ユーゴは切り札を切る!

 

 

 

『その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!!レベル7!「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」!!』

 

「クリアウィング、シンクロドラゴン…!?」

ユーゴのエース、「シンクロ」の名を背負う翡翠の翼が咆哮する!!

 

 

『バトルだ!「クリアウィング」で「幻影騎士団ブレイク・ソード」を攻撃!!旋風のヘルダイブ・スラッシャー!!』

 

「ぬあああっ!?」

急上昇したクリアウィングが烈風を纏いながら突進…首なし騎士を粉砕し、ユートを吹き飛ばす!!

 

 

 

「ぐっ…『ブレイクソード』の効果発動!エクシーズ素材となっていた『ラピッド・グローブ』と『サイレントブーツ』をレベル4にして特殊召喚!!」

 

『そいつらが戻って来たなら…邪魔者には消えてもらう!魔法カード「ヒドゥン・ショット」を発動!墓地の「SRダブルヨーヨー」を除外し、『幻影騎士団ダスティローブ』を破壊する!!』

ブレイクソードの効果で立て直しを図るユート…そしてユーゴはユートのモンスター…レベル3の『ダスティローブ』を破壊する、その意図は…。

 

 

『さぁ…お前のドラゴンを出して来やがれ!!俺がここに来たのは、ドラゴンに導かれたからに違いねぇ!今度こそ決着だ!!』

 

「決着…望むところだ!!」

 

「ユート!!」

ユーゴの挑発…ユートはそれに応えてしまう…!

 

 

 

 

「エクシーズ召喚!!愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

そして、黒き反逆の牙が現れる…その時…!

 

 

《グオオオ…!》

 

《ギシャアアア!》

 

 

ドクン!!

 

「なんだ、これ…さっきより、胸が…熱いッっ!!」

2体のドラゴンが揃った瞬間、遊矢は強い熱さに胸を押さえる…!

 

 

「ぐっ……うゥ…!!」

 

『おっ…おォ…!!』

 

「ユート…!?」

向い合うユートとユーゴの様子が明らかにおかしくなる…その瞳は狂気を宿していた…!

 

 

「よかろう…!決着だ!!『ダークリベリオン』で、貴様を…全てを破壊する!!」

明らかに暴走するユートは反逆の牙へと指示を出す!

 

 

「『ダークリベリオン』の効果発動!ORUを1つ使い!『クリアウィング』の攻撃力を半分にする!トリーズン・ディスチャージ!!」

 

『「クリアウィング」の効果発動!レベル5以上のモンスターが効果の対象になった時!その効果を無効にして破壊する!ダイクロイックミラー!!』

 

『罠発動!「幻影翼」!その破壊を無効にし、「ダークリベリオン」の攻撃力を500アップする!!』

 

「か、躱した!!」

2体のドラゴンの効果の応酬の末、ダークリベリオンがクリアウィングを上回る!

 

 

 

「滅ぼす…貴様を……全てを!!」

 

『全てを破壊し、全てを焼き尽くし…!』

 

「『全てを消滅させる!!』」

 

「ユート!!やめろ…!これ以上、デュエルで憎しみをぶつけ合うのは!!」

共鳴し、狂気に支配されるユートとユーゴ…その様子を見た遊矢は…ユートへと叫ぶ…!

 

 

「いけぇ!!『ダークリベリオン』!!『クリアウィング』を攻げ…!!」

 

「や、やめろ!ユート!デュエルは、人を笑顔にするモノだ!人を幸せにするもの…!デュエルは、人を傷付けるモノじゃない!!お前だって、わかってるはずだ─!!」

 

「はーと、ランド……笑顔……おれは……オレは………───誰も、傷つけたく、ない…!!」

 

「ユート…!!」

攻撃を仕掛けようとするユートの前に遊矢が立ち塞がる…デュエルの楽しさを、デュエルの持つ力を信じる遊矢の言葉が、ユートの正気を呼び戻す…!

 

 

「オレは、これで…ターン、エンドだ…!ぐうっ…」

 

「ユート!?」

正気を取り戻し、ターンを終えたユートは膝をつく…だが…まだ、終わってはいない…!

 

 

 

 

『俺の、ターン…!手札から「SRシェイブーメラン」を、召喚!』

ユーゴの場にブーメラン型のモンスターが現れる…!

 

 

「っ…!やめろ!!止めるんだ!!」

 

『「シェイブーメラン」の、効果発動…!1ターンに、1度…自身を守備表示にして、モンスターの攻撃力を300ダウンさせる…!俺は、「クリアウィング」の攻撃力を、下げる…!そして…「クリアウィング」の、効果発動…!ダイクロイックミラー!!そして、破壊したモンスターの攻撃力を自身に加える!!』

 

「なっ──!?」

ユーゴは未だに狂気に呑まれたまま…クリアウィングが咆哮する!

 

 

『バトル、だ!「クリアウィング」で「ダークリベリオン」を攻撃!!旋風のヘルダイブ・スマッシャー!!』

烈風を纏った突進が反逆の牙を粉砕…その勢いのまま、ユートの位置にいた遊矢に襲いかかり…!

 

 

 

 

「遊矢っ!!」

 

「ユートッ!?」

正気に戻ったユートが遊矢を突き飛ばし…爆発の中に消えていった…。

 

 

 

ユートLP0

 

ユーゴWIN…

 

 

 

「っ…ユート!!」

 

「う、ぐ……」

遊矢は吹き飛ばされたユートへと駆け寄る…その時…。

 

 

キィン─!

 

 

「えっ…?」

ユートが手にしていた「ダークリベリオン」、そして「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」のカードが発光…周囲は光に包まれた…。

 

 

 

Side???

 

 

 

「ユート…!しっかりしろ!」

 

「遊矢……デュエルで、笑顔を……」

 

「えっ…?」

 

「きみの、力で……世界に、みんなに…笑顔を……」

 

「オレの、力で…?」

穏やかな光の中…満身創痍のユートは遊矢に自身の願いを託す、そして……

 

 

 

キィン─

 

 

全ては、光に包まれた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

───やはり、こうなってしまうのですね……悪魔の()()()()()はそれほどに強い……─

 

 

 

 

──しかし、策が無い訳ではありません──

 

 

 

 

──今は眠りなさい、どうか…悪魔の「狂気」に負けないで……──

 

 

 

 

光の中に金色の羽が舞い上がった…。

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…ユート…ユートがいたの…!?」

光が収まった中央公園に柚子が駆け付ける…ブレスレットの光が、彼女をここに導いたのだ…。

 

 

「ゆ、遊矢…?」

 

「………───」

 

「遊矢─!?」

そして、立ち尽くす遊矢の姿を見つけた柚子…だが、遊矢は糸が切れたように、地面に倒れ込んでしまった…。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

【スタンダードの様子を探らせていた調査員の記憶を調べたところ…興味深い情報が得られた…】

そこは融合次元…その何処かにあるデュエル戦士養成所『アカデミア』、その玉座の間…。

肉体の一部を機械化した…壮年のスキンヘッドの男が、とある人物へと話しかける。

 

 

【おそらく、彼女が私が探し求めた『第4のピース』…名前は、柊柚子…】

玉座の間のモニターに1人の少女…素良の記憶から再現された柚子の姿が映し出される…。

 

 

 

【連れてきてくれるね?……ユーリ】

スキンヘッドの男…アカデミアの総帥、プロフェッサーは控えていた紫色の髪の少年に訊ねる…。

 

 

 

その少年は…ただ、静かに笑っていた…。

 



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Ep.19 悪意の戯れ〜飢えた毒龍〜

「ううっ…ここは…」

 

《フォウ!…キュウ〜…?》

 

「遊希!目が覚めたかい…良かった…」

 

「洋子さん…フォウくん……」

意識を失っていた遊希が目を覚ます、最初に目にしたのは心配そうな表情を浮かべた洋子、そしてフォウの姿だった…窓の外からは夕陽が射し込んでいる…。

 

 

「まったく、克也君から連絡を貰った時は驚いたよ…!いったいどうしたんだい?」

 

「…テレビで、素良君とLDSのデュエリストとのデュエルを見てたら…急に、胸が苦しくなって……」

 

「そっか…あの2人のデュエル、だいぶショッキングだったからね……会場のみんなも固まってたよ…」

遊希から当時の状況を聞いた洋子は納得する、黒咲と素良の『戦争』のようなデュエル…遊希はそのデュエルに強いショックを受け、体調を崩したのだろうと…。

 

 

「洋子さん…僕よりも、素良君は…?最後、リアルソリッドビジョンの瓦礫に…!」

 

「大丈夫、ちょっと頭を打っただけで済んでLDSの保健室で治療中だって遊矢から連絡があったよ……遊希は?痛い所とか、苦しさは無い?」

 

「はい…もう、大丈夫です……でも、ちょっとお腹が空いたかも…?」

 

「ふふっ…食べる元気があるんなら大丈夫だね!いま、お粥作ってあげるから!あっ!城之内君にちゃんと連絡するんだよ?すっごく心配してたからね!」

とりあえず、遊希が調子を取り戻した事で安心した洋子は食事を作る為に部屋を出ていった…。

 

 

………

 

 

 

『ったくよぉ!心配かけんじゃねぇって…本当に肝が冷えたぜ?』

 

「本当にごめん!自分でも驚いちゃって……もう大丈夫だから」

しばらくして、通話越しに城之内に謝る遊希…画面の城之内は呆れたような、安心したような表情だった…。

 

『舞網チャンピオンシップスだってまだ始まったばっかりだってのによ!オレと戦う前にリタイアってのは勘弁してくれよ?せっかく新し……いや、なんでもね!』

 

「克也の新しい切り札か…楽しみにしてる!」

 

『だあぁっ!?バッチリ聞かれてたぁ〜!!(良かった…いつも通りの遊希だ…)』

他愛のない話に花を咲かせる遊希と城之内…城之内も普段通りの遊希を見て安心していた…。

 

 

『それよりさ!大会ダイジェストで遊矢とLDSの沢渡って奴のデュエル見たけど…超凄かったな!ペンデュラム召喚とアクションカードの応酬…そして最後の大逆転!』

 

「ああ!あの時の遊矢は本当に遊勝さんみたいだった…きっと、遊矢も『理想のデュエル』だと思ってるはずだよ!帰ってきたらうんと褒めてあげなきゃ…でも……」

 

『ああ…その次の試合、素良って奴は大丈夫なのか?梁山泊塾の奴よりやべー感じだったぜ?』

 

「ああ…怪我は大した事ないって…でも、本当に…()()デュエルだったね…」

 

『それに…ダイジェストだとほとんどカットされてたけど、融合とエクシーズ……ハンティングゲーム……いったい、何の事なんだろうな?仕込みのデュエルにしたって…鬼気迫るって感じだったしよぉ…』

 

「…素良君が話せる状態になったら…話を聞いてみる、彼に何があったのか……どうして、あんな痛ましいデュエルをしたのか…」

そして、話題は今日の大会デュエル…人々を大いに沸かせた遊矢のデュエル、そして…その余韻を悪い意味で吹き飛ばしてしまった素良のデュエルに移っていく……画面を通して、最後しか見ていなかった遊希は…素良の気持ちがわからなかった…。

 

 

 

「とりあえず、今日はしっかり休んで…明日、話を聞くつもりだよ……克也のデュエルも明日だっけ?」

 

『おう!昆虫塾のインセクター羽蛾って奴が相手だ!お前に続いて1回戦突破してやるぜ!だから…待ってろよ?』

 

「ああ!がんばれ!克也!」

 

『おう!じゃあな〜!』

明日の試合に向けて気合いを入れる城之内…遊希は彼へとエールを送り、通話を終えた…。

 

 

「昆虫塾のインセクター羽蛾…たしか、トリッキーというか卑怯な戦い方をするって聞いたけど…大丈夫かな…?まぁ、克也の予想外の戦術と運があれば…きっと大丈夫だな」

対戦相手の嫌な噂を思い出した遊希だったが…城之内ならきっと乗り越えられると不安を振り払う…。

 

 

 

「さて…本当は遊矢が帰ってくるまで起きてたいけど、早めに休も──「なんだって!?素良が病室から逃げ出した!?」…えっ?」

そして、翌日の事を考えて早めに寝ようとした遊希…そこへ洋子の驚いた声が聞こえてきた…!

 

 

「洋子さん!?素良君が、どうしたんですか!?」

 

「遊希…遊矢からでね…素良が、LDSの病室から逃げ出したらしいんだよ…!怪我だってしてるのに…!」

 

「ええっ!?」

遊希は部屋から飛び出し、洋子に状況を聞く…それは素良が行方を晦ましてしまったというモノだった…。

 

 

「っ…僕も、探しに行きます!!」

 

「遊希!アンタは休んでな、本調子じゃないんだから…!」

 

「本調子じゃないのは素良君も一緒です…!リアルソリッドビジョンのデュエルであんな目に遭ったら…早く連れ戻さないと!」

 

「……わかった、アタシは遊矢と同じ中央公園の方に行くから…遊希は権現坂君の行った海の方!絶対に無茶しない事!!」

 

「わかりました!!」

遊希の身体を心配する洋子だったが…素良を心配する遊希の言葉に折れ、探しに行く事を許した…。

 

 

《ッ…フォウ!フォウ、フォーウ!》

 

「ごめん、フォウくん!今日はお留守番!!ついてきちゃダメだからね!」

 

《キュッ!?…フォーウ…》

肩に飛び乗ったフォウをキャットタワーに降ろした遊希は家から飛び出した…!

 

 

 

 

………

 

 

 

 

「権現坂君!!素良君は!?」

 

「ぬおっ!?遊希…!?体は大丈夫なのか?」

 

「本調子じゃないけど、大丈夫!」

素良の姿を探しながら街を駆けた遊希は海浜地区で素良の姿を探す権現坂と合流……権現坂は倒れたはずの遊希が現れた事に驚いている。

 

 

「権現坂君は、スタジアム方面をお願い!僕は倉庫街の方を見てみる!見つけたら教えて!」

 

「承知した!遊希、無茶はしないでくれ!」

 

「わかってる!」

そして2人は違う方向へと走り出した。

 

 

 

………

 

 

 

「素良く〜ん!いるんだったら返事してくれ─!…っ…はぁ…はぁ…!」

息を切らせながら遊希は倉庫街に呼びかける…柚子からこの場所を「特訓場所」として使っていた事を聞き、可能性が高いと思ったのだ。

 

 

「っ…素良君……なんで、逃げるなんて…海馬社長の力も借りなきゃダメかな…!」

汗を拭いながら素良の姿を探す遊希…KCの情報網に頼ろうかとも考え始めた時だった。

 

 

カラン

 

 

「っ…素良君!?」

おそらく、無人であるはずの倉庫街に空き缶の転がる音が響く…その音を聞いた遊希は思わず振り向き…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォウ…》

 

 

「あっ……フォウくん…?まったく……ついて来ちゃダメって言ったじゃないか?僕の事が心配だったの?」

 

《フォーウ》

その視線の先にいたのは…家に置いてきたはずのフォウだった、遊希の事が心配で抜け出して来てしまったのだ…。

 

 

 

 

「ごめん、僕も焦り過ぎたみたいだ…一度、家に帰ろうか?もしかしたら帰ってきてるかも──」

 

 

【おや…第一村人はっけ〜ん…!でも、なんだか傷だらけで気持ち悪いなぁ…】

 

 

「っ…!?」

 

《…!?》

フォウを連れて倉庫街を離れようとした遊希、その背中に声をかける者がいた、それは…黒いローブで正体を隠した少年だった。

 

 

 

《フォウ…フォウゥゥッ…!!》

 

「君…いったい何処から…いや、それより…僕に、何か用かな…?」

遊希は突然現れた少年に警戒しながら問いかける…その肩では、フォウが全身の毛を逆立てていた…。

 

【ん〜?用って程じゃないけどね〜…僕と()()()()()()()、キミ…デュエリストでしょ?】

 

「っ…?」

ローブの少年は遊希の腕のデュエルディスクを指差しながら、デュエルを申し込む…!

 

 

「申し訳ないんだけど…ちょっとデッキの調整ができてなくてね…よかったら、デュエルができる場所まで案内するけど──」

 

【勘違いされたら困るなぁ…キミに()()()はないんだよ】

 

シュピッ!

 

「うわっ…!?なんだこれ!?」

明らかな不審者を前にデュエルを断ろうとする遊希…だが、その腕にローブの少年のデュエルディスクから放たれた赤い光の縄が巻き付く!!

 

 

【それはデュエルアンカー、ボクとのデュエルが終わらないと外れないんだ…面白いだろ?】

 

「やるしか、ないか…!!フォウくん、離れて!!」

 

《フォウ!?》

赤い縄を巻き付けられた遊希は覚悟を決める…!

 

 

【さぁ、スタンダードのデュエリストの実力…見せてもらうよ…!】

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

遊希LP4000

ローブの少年 LP4000

 

 

 

 

 

「先攻は、僕か…僕のターン…!」

「『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

ドクロのシルクハットを被った道化師が現れる! ATK1800

 

「『ドクロバットジョーカー』の効果発動!召喚に成功した時、デッキから『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』を手札に加える!そして僕は、スケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 

PENDULUM!!

 

 

遊希の背後に仮面を着けた赤のドラゴンと一本角を持つ緑のドラゴンが浮かび上がる!

 

 

【ペンデュラム…?なんだい、ソレ…?】

 

「(ペンデュラムを知らない…?テレビでも放送されたはずなのに…?)…これで僕はレベル2から7のモンスターを手札から同時に特殊召喚できる!!揺れろ!魂のペンデュラム!全能の力よ、歴史を刻め!ペンデュラム召喚!手札から来い!レベル4『龍脈の魔術師』!そしてレベル7!二色の眼揺らめく幻影!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

遊希の頭上で赤のペンデュラムが揺れ動き、光が弾ける…そして若き天才魔術師とエースたる幻影のオッドアイズが現れる! ATK1800 ATK2500

 

 

【へぇ〜!モンスターの同時召喚とは驚いたなぁ!この次元のデュエルは特徴がないって聞いてたけど…新しく生み出したのかな?】

 

「僕は…カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

ペンデュラム召喚に驚くローブの少年を前に遊希は警戒しながらターンを終えた…。

 

遊希LP4000

ドクロバットジョーカー 龍脈 ファントム (P ペルソナ ミラージュ)伏せ1 手札0

 

 

 

【ふふっ…面白いモノを見せて貰ったお礼に…少しだけ、僕の力を見せてあげるよ…!】

 

 

 

【僕のターン…ドロー!】

【手札から永続魔法『プレデター・プランター』を発動!その効果により、手札から『捕食植物(プレデター・プランツ)スピノ・ディオネア』を効果を無効にして特殊召喚!】

少年の場に恐竜・スピノサウルスのような姿をした、背中にハエトリソウの捕食器を持ったモンスターが現れる! ATK1800

 

【さらに『捕食植物プテロ・ペンテス』を召喚!】

巨大な口を持つ、悪魔のような食虫植物が現れる! ATK300

 

 

【そして…僕は魔法カード『融合』を発動!フィールドの『スピノディオネア』と『プテロペンテス』を融合!】

 

「融合使い…!」

少年の背後に現れた渦に2体のモンスターが飛び込む!

 

 

 

【魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!今ひとつとなりて、その花弁の奥の地獄から…!新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れろ!飢えた牙持つ毒龍…!レベル8!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!】

融合の渦から光が弾ける…そして、倉庫街の暗闇の中に無数の赤い玉が暗い輝きを放つ『融合』の名を背負う、闇に覆われた異形の龍が現れる!! ATK2800

 

 

 

「っ…!?(な、なんだ…!?あのドラゴン…!!震えが…震えが止まらない!!)」

 

《グルル…!》

そのドラゴンが召喚された瞬間、遊希は言い表せない『恐怖』を感じる…それに呼応するように、オッドアイズも謎のドラゴンを威嚇している…!

 

 

【『スターヴヴェノム』の効果発動…!このカードがフィールドのモンスターのみを素材として融合召喚された時、エンドフェイズまでその攻撃力に相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力を加える!】

 

「な、なんだって…!?」

異形の龍の翼から禍々しいエネルギーが吹き出す!!

 

スターヴヴェノム ATK2800→7100

 

 

【バトルだ…!『スターヴヴェノム』で『オッドアイズファントムドラゴン』を攻撃!!】

 

「っ…!!がああああっ!?!?」

夜空へと飛び上がった異形の龍の背後に血管のような禍々しいエネルギーが浮かび上がる…そして放たれた暗緑の閃光がオッドアイズを直撃、遊希は爆発に吹き飛ばされ……

 

 

ドゴン!!

 

 

ごはっ…!?

轟音と共に、倉庫街のコンテナにめり込む勢いで叩き付けられた…。

 

 

 

遊希LP4000→

 

 

 

 

 

 

「あ、が……!?(なに、が…起きた…?なんで、()()()()()()()…?リアルソリッドビジョン、じゃ、ない、はず…な、のに……)」

 

《キュッ…!!フォウゥウ─!!!》

フォウの悲鳴のような鳴き声が響く…叩きつけられた激痛で明滅する視界の中、遊希は困惑していた…衝撃を伴わないはずのソリッドビジョンのデュエルで…息ができないほどの痛みに襲われている事に…。

 

 

【おやぁ…?キミのライフは尽きたはずなのに…なんでデュエルアンカーは切れないのかな…?】

そんな中、少年はコンテナに()状態になっている遊希に問いかける、赤い縄は…まだ、遊希の腕に巻き付いていた…。

 

 

「……とらっぷ、カード…『体力増強剤』…『すーぱーZ』…2000いじょう、バトルダメージを受ける、前…4000……ライフ、回復……する…」

息も絶え絶えの状態の中、遊希は罠カードが起動していた事を少年に告げる…。

 

 

遊希LP4000→8000→3400

 

 

【ふーん、面白いカードを伏せてたねぇ…僕はカードを2枚伏せ、ターンエンド!】

 

少年LP4000

スターヴヴェノム プレデタープランター 伏せ2 手札0

 

 

 

 

 

「あ…ぐっ…うぅ…」

少年がターンエンドを宣言し…遊希は磔になっていたコンテナの壁からずり落ち、顔から地面に倒れ込んだ…。

 

 

「(なんだ、あの…デュエリスト……なんで、()()()()…?)」

遊希はブレる視界の中、こちらを見下ろす少年を見る…ローブのから垣間見える口元は、この惨状を前にして……笑みを浮かべていた。

 

 

【おーい…?倒れてないで、デュエルを続けてよ?これくらいで終わったら、つまらないじゃないか?】

 

「ぐ、う…!?」

少年は嗤いながらデュエルアンカーを引っ張る…それだけで、遊希は呻き声を洩らすほどの痛みに襲われる…。

 

 

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

「ふぉう、にげ、ろ…!だれか…呼んで……うぐっ…」

 

《ッ…フォウ!!》

遊希は駆け寄って来たフォウに逃げるように伝える…「この少年を野放しにしてはならない」…そう直感したのだ、それを聞いたフォウは泣きそうな表情で駆け出すが…。

 

 

【行かせないよ?今日はまだ()()()なんだか…ら!!】

 

《ギャン!?》

 

「フォウ!!」

だが、少年はそれを許さなかった、フォウが走る方向に先回りし…あろう事かフォウを蹴り飛ばしたのだ…!

 

 

 

「うう…ああああ"あ"あ"!!」

 

《キャウ…》

 

【くふっ…!やればできるじゃないか!】

蹴り飛ばされたフォウの姿を見た遊希は、全身の痛みを無視して立ち上がる…()()()()が、今の遊希を奮い立たせる…!

 

 

 

「僕のターン…ドロー!!」

「揺れろ…!希望のペンデュラム!!ペンデュラム召喚!!エクストラデッキから現れろ!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

赤のペンデュラムの軌跡と共に幻影のオッドアイズが復活する! ATK2500

 

 

【エクストラデッキから?面白いモンスターだね…!】

 

「さらに、魔法カード『融合』を発動!フィールドの『オッドアイズ』とペンデュラムモンスター『龍脈の魔術師』を、融合!!」

融合の渦に2体のモンスターが飛び込む!

 

「大いなる風の力よ!二色の眼持つ幻影に力を与え、嵐を巻き起こせ…!!融合召喚!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!!」

倉庫街に嵐が吹き荒れる…そして稲妻を降らせながら白き身体を持つオッドアイズが現れる! ATK2500

 

 

【なんだ、融合モンスターか…つまらないなぁ…罠カード『奈落の落とし穴』発動、攻撃力1500以上のモンスターが召喚された時、そのモンスターを破壊して、除外─】

 

「『オッドアイズボルテックス』の効果発動!相手が魔法・罠・効果モンスターの効果を発動した時!エクストラデッキのペンデュラムモンスター『龍脈の魔術師』をデッキに戻し、その効果を無効にし、破壊する!ボルテック・リフレクター!!」

 

【むっ…!?】

稲妻が少年の発動した罠を撃ち抜く!

 

「そして『オッドアイズボルテックス』のもう一つの効果発動!特殊召喚に成功した時、相手フィールドのカード1枚を手札に戻す!エクストラデッキに戻れ!『スターヴヴェノムフュージョンドラゴン』!」

 

【なにっ!?】

フィールドに竜巻が発生…異形の龍を吹き飛ばす!

 

 

 

「バトルだ!!『オッドアイズボルテックス』でプレイヤーにダイレクトアタック!迅雷のスパイラル・バー──!!」

 

【う〜ん、なかなか良いデュエルだったけど…運が悪かったね…!罠カード『融合霧散』を発動!相手の融合モンスターがバトルを仕掛けてきた時、バトルフェイズを終了させて…その融合モンスターをデッキに戻す!】

 

「なっ…!?」

攻撃を仕掛けようとした疾風のオッドアイズの姿が幻のようにかき消える…。

 

 

【そして墓地に融合素材一組が墓地に揃ってれば、特殊召喚できるんだけど……いないみたいだね?】

 

「く、そ…!『ドクロバットジョーカー』を守備表示に、変更……ターン、エンド…!」

 

ドクロバットATK1800→DEF100

 

遊希LP3400

ドクロバットジョーカー (P ペルソナ ミラージュ) 手札0

 

 

 

「はぁ…はぁ…う、うぅ…」

 

《キャウ…フォ、ウ…!!》

 

【見た目からして歴戦のデュエリストかと思ったけど…買い被りすぎだったみたいだね、いま楽にしてあげるよ…】

ターンが終わり、麻痺していた痛みに遊希が膝をつく…そして少年は呆れた様子でデッキトップに手を掛けた…!

 

 

 

【僕のターン、ドロー!】

【このスタンバイフェイズ、僕は『プレデター・プランター』の効果で800のダメージを受ける】

 

少年LP4000→3200

 

【そして『プレデタープランター』の効果発動!墓地の『プテロペンテス』を効果を無効にして特殊召喚!】

再び食虫植物の悪魔が現れる! ATK300

 

【そして装備魔法『捕食接ぎ木(プレデター・クラフト)』を発動!墓地から『スピノディオネア』を特殊召喚して、このカードを装備する!】

食虫植物のスピノサウルスが復活する! ATK1800

 

 

【さて、バトルだ…!『スピノディオネア』で『ドクロバットジョーカー』を攻撃!】

 

「くうっ…!?」

スピノディオネアがドクロバットジョーカーを惨たらしく喰いちぎる…!

 

 

【そして『スピノディオネア』の効果発動!このモンスターが自身以下のレベルを持つモンスターとバトルした後、デッキから『捕食植物』モンスター…『捕食植物ダーリング・コブラ』を特殊召喚!】

少年の場にコブラのような食虫植物が現れる! ATK1000

 

 

【そして『捕食植物』モンスターの効果で特殊召喚された『ダーリングコブラ』の効果発動、デッキから『融合』または『フュージョン』と名のつく魔法カード『プレデター・プライム・フュージョン』を手札に加える…そして『プテロペンテス』でダイレクトアタック!】

 

「がああっ…!!」

食虫植物の悪魔が体当たりで遊希を突き飛ばす!

 

遊希LP3400→3100

 

 

【そして!()()()()『プレデター・プライム・フュージョン』を発動!フィールドの『ダーリングコブラ』と『プテロペンテス』を融合!融合召喚!!再び現れろ!飢えた牙持つ毒龍『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!】

 

「……そん、な……」

遊希の必死の思いを嘲笑うように…再び毒龍が現れる! ATK2800

 

 

【これはバトルフェイズ中の召喚…よってバトルは続く!!「スターヴヴェノム」でダイレクトアタック!!】

 

ごっ……!?

 

《フォーウッ!!!》

毒龍の尾による一撃が遊希を直撃…悲鳴を上げる事もできず、地面を転がった…。

 

 

遊希LP3100→300

 

 

【僕は…これでターンエンド】

 

少年LP3200

スターヴヴェノム スピノディオネア 手札0

 

 

 

 

【さぁ…!ライフはまだ残ってるよぉ?僕をもっと楽しませてよ!!ハハ…アハハハハハ!!】

少年は倒れ込む遊希を嘲笑う…彼は()()()()()()の為に、あえて遊希にトドメを刺さなかったのだ…!

 

 

「………(……なん、で…こ…んな…こと……)」

嬲るような攻撃を受け続けた遊希は…少年の笑い声が響く中、意識を失った…。

 

 

 

 

 

【あらら…失神しちゃった?しょうがないなぁ…もう少し()()()()()()()んだけど……】

 

《フォウ…!?フォーウ!!》

意識を失った遊希を見た少年は落胆した様子でデュエルディスクを操作する…その様子を見たフォウが()()()()()()()()()()()に気づいて叫ぶが…遊希はピクリとも動かない…。

 

 

 

【おやすみ、名もなきデュエリストクン…!少しは楽しめ──】

 

 

 

 

『やめろぉぉ!!!』

 

 

 

【っ…?】

少年が遊希に『何か』をしようとした瞬間、倉庫街を震わせる怒声が響く…!

 

 

『貴様…!!許さねぇぇ!!!

 

【おやおや…お仲間かな?】

 

《フォ、ウ…キュー……!》

そして傷ついた遊希とフォウを庇うように人影が空から現れる、それは…凄まじい殺気を纏う凌牙だった…!

 

 

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「待ってろ、ユート…!」

黒き槍術士の手で地上に降り立った凌牙は舞網市の夜闇を駆ける…デュエルディスクで追っていたユートの信号はLDSから離れた舞網中央公園で止まっていた…。

 

 

「(本来の流れなら、この後ユートはシンクロ次元のズァーク…ユーゴって奴に倒されて…榊遊矢に取り込まれちまう…でも、そうでなきゃ…遊矢は……いや、()()()()()()()()…!奴らの手から…!)」

走りながら凌牙は情報を思い出す…ユートと一体化する事で新たな力を手にする遊矢、しかしそれは『悪魔』の目覚めを早めてしまう…『英雄』が不在の今、凌牙はそれを阻止しようとしていた…。

 

 

キン─!

 

 

「っ…指輪、が…!?」

その時、不意に右手の小指に着けていた指輪が光を放つ…その指輪は、彼の家族との絆を示す証──それが意味するのは…。

 

 

「父さんに、何かあったのか…!?くそっ──!!」

その光に嫌な予感を感じた凌牙は公園への道を外れ、駆け出した…!

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

乱入デュエル

 

 

 

凌牙LP4000

 

少年LP3200

スターヴヴェノム スピノディオネア プレデタープランター 手札0

 

遊希LP300 

(P ペルソナ ミラージュ)手札0

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『俺は「ランタン・シャーク」を召喚!!』

全身に発光器を持つ鮫が現れる! ATK1500

 

『「ランタンシャーク」の効果発動!このターン、エクストラデッキからエクシーズ召喚しかできなくなる代わりに!手札からレベル4の「スピア・シャーク」を特殊召喚!』

さらに頭が槍のように尖った鮫が現れる! ATK1600

 

 

【…エクシーズ…】

 

 

『そして自分の場に水属性モンスターが存在する時!「サイレント・アングラー」は特殊召喚できる!』

チョウチンアンコウ型のモンスターが現れる! ATK800

 

 

『俺は…レベル4の「ランタンシャーク」「スピアシャーク」「サイレントアングラー」の3体でオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!』

凌牙の頭上に現れた光の銀河に3体のモンスターが飛び込み、光の爆発が起きる!!

 

 

104

 

 

『現れろ!「No.104」!聖なる光を纏いし舞踏師よ、愚者を欺け!「仮面魔踏師(マスカレード・マジシャン)シャイニング」!!』

光の爆発の中から不気味な腕が飛び出した円柱が現れ、変形…チャクラムを持つ光の魔踏師が現れる! ATK2700

 

 

【へぇ…!】

 

『「シャイニング」の効果発動!1ターンに1度、このモンスターが攻撃できなくなる代わりに、相手のデッキトップのカードを墓地に送り、デッキをシャッフルする!』

 

【おっと…】

スターヴヴェノムと同様の威圧感を持つモンスターに笑みを見せる少年…凌牙はそれを無視し、効果を発動する!

 

 

【ふっ…運がいいね、墓地に送られたのは『捕食植物ビブリスプ』!その効果により、僕はデッキから『捕食植物フライ・ヘル』を手札に加える!…残念だったねぇ?敵に塩を送った気分はどうだい?】

 

『塩?違うな…!それはお前の、地獄への片道切符だ!魔法カード「RUM-バリアンズ・フォース」発動!このカードは自分フィールドのエクシーズモンスターをカオス化し、ランクアップさせる!俺は「シャイニング」一体でオーバーレイ・ネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジッ!!』

 

【『ランクアップマジック』…!?まさか、お前──】

フィールドの魔踏師がニュートラル体に戻り、銀河に飛び込み…闇色の大爆発が倉庫街を包みこむ!!

 

 

104

 

 

『現れろっ!「CNo.104」!!混沌より生まれし力よ…闇を纏いて舞い踊れ!!「仮面魔踏師アンブラル」!!』

闇色の爆発の中から巨大なコウモリの翼のようなモニュメントが現れ、変形…赤い外套を纒い、悪魔の仮面を着けた魔戦士が現れる! ATK3000

 

 

『「アンブラル」の効果発動!特殊召喚に成功した時、相手の魔法・罠カード1枚を破壊する!デストロイ・ステップ!!』

 

【くっ…!やるじゃないか…!】

アンブラルの炎の舞踏がプレデタープランターを破壊する!

 

 

『バトルだ!「アンブラル」で「スターヴヴェノムフュージョンドラゴン」を攻撃!!』

 

【ふっ…残念だけど、タダじゃ破壊されないよ…!『スターヴヴェノム』が破壊された時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全てを破壊し、その攻撃力分のダメージを───】

 

 

『甘いのは…テメェだ!!『アンブラル』のさらなる効果発動!!相手がモンスター効果を発動した時!カオスORUを1つ使い、その発動を無効にする!!』

 

【なにっ!?】

魔踏師の杖から襲いかかった光線が毒龍を粉砕…さらに、その追撃を防いだ!

 

 

少年LP3200→3000

 

 

『さらに!相手の手札をランダムに墓地に送り!ライフを半分にする!!受けてみろ!ダーク・プランダー!!』

 

【ぐっ!?がああああっ!?】

そしてダメ押しの混沌の魔力が直撃…少年に初めての手傷を負わせる!!

 

 

少年LP3000→1500

 

『俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンドだ…!!』

 

凌牙LP4000

アンブラル 伏せ1 手札0

 

 

 

 

 

 

【ああ…聞いた事があるよ…!エクシーズ次元を守ろうと足掻く、レジスタンス…その上位の奴らは『No.』というエクシーズモンスターを使って、アカデミアの邪魔をする……お前、その幹部の1人だろ?】

少年はローブの砂埃を払いながら凌牙へと問いかける…。

 

『そうだ、と言ったら?』

 

【どうもしないさ!面白い獲物が増えただけ……さて、本気で行こうか…!!】

凌牙の答えを聞いた少年はさらなる殺気を放つ…!

 

 

 

 

ピコーン…ピコーン…

 

 

 

 

【ん…?残念、呼び出しが掛かっちゃった…今日はお忍びだったからね、怒られる前に行かなきゃな】

倉庫街に無機質なアラームが響く、それを聞いた少年はデュエルディスクを下げ…遊希に結ばれていたデュエルアンカーを消し去る。

 

『っ…!逃がすと思うか!!』

 

【逃げるんじゃない、()()()()()()()()()…次に会ったら……叩き潰してあげるよ…!!】

 

『っ…!「アンブラル」!!』

ローブの下から紫の瞳を覗かせる少年…凌牙はアンブラルによって追撃したが、謎の少年の姿は消え去っていた…。

 

 

 

 

デュエル中断……

 

 

 

 

 

『くそっ…逃げられた…!!』

 

《ふぉう…きゅう…!!》

 

『っ…!父さん!フォウ!!』

乱入者…おそらくは融合次元の『ズァーク』を逃してしまった凌牙は拳を握り締める…だが、そこへ弱々しいフォウの鳴き声が聞こえ…慌てて遊希へと駆け寄る…!

 

 

『父さ…遊希!!しっかりしろ!!』

 

「………」

 

『くそっ…!!奴め、どうして…どうしてこんなデュエルをして平気でいられるんだ!!』

全身をズタボロにされ、口の端から血を溢す遊希を前に凌牙は怒りを露わにする…それは、病院に運ばれても治しきれない重傷だった…。

 

 

『俺の力で、回復しきれるのか…!?いや、やるしかない!!』

凌牙は全身全霊…自身の中にある混沌(カオス)を、全ての力を回復魔法に注ぎ込む…淡い緑の光が遊希の身体を包み込み、少しずつ遊希の傷が癒えていく…。

 

バチッ…

 

『っ…!?この、感じ…回復の一部が、弾かれてるのか…!』

しかし、遊希の全身の『傷』から僅かに赤い光が奔る…凌牙はその光景に覚えがあった…。

 

『この傷…きっと、ズァークに……!!父さん、ごめん…!父さんだけに、世界を背負わせて…ごめん!!』

凌牙は涙を溢しながら、回復を続ける…その時だった。

 

 

 

 

 

「っ…!!遊希!!何が、何があったのだ!?」

 

 

『お前は…四番勝負の時の…』

デュエルの余波で荒れた倉庫街に鉄下駄の音と驚愕の声が響く…現れたのはスタジアム周辺を捜索中、倉庫街の異変に気づいて駆けつけた権現坂だった…。

 

 

「おぬし、凌牙…!!遊希をこんな目に遭わせたのは貴様か!!」

 

『違げぇよ…!と……遊希がヤバい奴と戦ってるのを助けたんだ…!集中を切らせないでくれ、手元が狂う…!』

 

「っ…すまん…!?」

その場にいた凌牙を疑う権現坂だったが…凌牙の必死な様子に謝罪、そして異変に気付いた…。

 

 

「おぬし、いったい何をしている…!?遊希の、怪我が…!?」

 

『………俺は、ちょっとしたサイコデュエリスト………超能力者だ、カードの力をデュエル外でも使える…!他の奴には、言うなよ…?余計な混乱を生みたくねぇ…』

 

「し、承知した……舞網にも『サイキック塾』やら、『エスパー塾』もあるが…初めて見たぞ、本物の超能力は…!」

遊希の傷を癒やす凌牙を見た権現坂は動揺するが…凌牙の真剣な眼差しに口を噤む決心をする…。

 

 

 

「……凌牙、おぬしに聞きたい事がある…いいか?」

 

『なんだ?』

遊希の粗方の治療を終えた凌牙は膝に抱いたフォウの治療へと移る…そんな汗だくの凌牙に権現坂が問いかける。

 

 

「遊希は……おぬしの、顔見知り……いいや、『大切な者』なのではないか?」

 

『………なんで、そう思う?』

 

「お前が()()()いた……そう思う理由はそれだけだ」

 

《フォウ…》

権現坂は凌牙にそう訊ねる…遊矢達と導き出した「答え」は、確かに当たっていた…。

 

 

 

『………それを知って、どうする…』

 

「えっ…?」

 

『この人の…片目を奪ったのは、()だ……記憶を失ったこの人がそれを聞いて………どんな事を思う…?』

 

「っ……」

凌牙の手に、表情に力が入る……それは遊希を傷つけてしまった罪悪感…権現坂は俯くしかなかった…。

 

 

 

ピピッ…ピピッ…

 

 

 

「むっ…柚子…!どうした!?」

 

『大変なの!!遊矢が…遊矢が公園で、倒れて!!』

 

「なにっ!?」

 

『っ…!!』

そして権現坂の端末が通話を知らせる、その相手は柚子…それが意味するのは…。

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

 

『凌牙!!何処にいる!?ユートが…ユートの反応が…!!』

 

『黒咲…!っ……すまねぇ…!!別の()()のせいで、間に合わなかった…!!すぐに、戻る…!』

 

《フォーウ…》

同じタイミングで凌牙のデュエルディスクが着信を知らせる…それはユートの消失を知った黒咲からの連絡だった…。

 

 

 

『……すまねぇ、フォウと遊希を頼む……しばらくすれば、目を覚ますはずだ………頼む』

 

「あ…待て!凌牙!!」

凌牙はフォウを優しく一撫でして、立ち上がる…権現坂は引き止めようとしたが、凌牙は常人離れした身体能力で舞網の夜闇に消えていった。

 

 

 

「……この街で、いったい何が起きようとしているのだ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──……ここは、何処だ…?我は……なぜ………──

 

 

 

 

 

 

 

──………ふん……どうやら、よからぬ事態になったようだな……なぁ?──

 

 

 

 

 

 

 

──英雄よ──

 



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Ep.20 不穏なる闘星

「……遊矢…あそこで……中央公園で、何があったの…?なんで……2日も、目覚めないの…?」

 

素良が行方を晦まして2日が過ぎた…舞網中央公園で意識を失った遊矢は未だに眠り続けていた、その傍らでは洋子と柚子が看病を続けていた…。

 

 

「素良も見つからないし……私、どうしたら…!このまま、遊矢が目を覚まさなかったら…!」

 

「……大丈夫、遊矢はそんなヤワじゃない…父親がいなくなってから3年、ずっと自分の『殻』に閉じ籠もってた…そんなこの子がストロング石島に勝ったように…きっと目を覚ます!前より強くなってね…!」

 

「洋子さん…」

眠り続ける遊矢を前に涙を溢す柚子…そんな彼女を励ますように、洋子が励ます…心配なのは彼女も同じ、だが…彼女は母親として息子を信じていた…。

 

 

 

 

いやぁぁ〜!?ダーリン!私を遺して逝かないでぇぇ!!

 

 

 

「わっ!?びっくりした!?」

 

「方中ミエル!?」

そんな湿っぽい空気を吹き飛ばしたのは、遊矢の部屋の窓に張り付いた少女の泣き声だった…。

 

 

 

『う〜!逝かせはしないわ!この私が来たからには〜!占いとまじないでダーリンを助けるんだから〜!!』

 

「ちょ…どうして貴女がここにいるのよ〜!?まさか占いで…?」

部屋の窓から入って来た異様なテンションのミエルに柚子が問いかける…遊矢が倒れた事を知っているのは、遊勝塾の関係者だけのはずだからだ…。

 

 

『占いで!と、言いたいんだけど…大会の会場で遊勝塾のジュニアの子たちが話してるのを聞いて……()()()()()()()()()()来ちゃたの!』

遊矢を助ける為の風水を施しながらミエルは語る…その様子に呆れていた柚子だったが、ある事に気が付いた。

 

 

「み、ミエル?何もかも放り出してって……大会を抜けて来ちゃったの!?」

 

「えぇっ!?」

 

『当然よ!今のミエルにはダーリンが1番大切なんだから!』

 

「「それは違うわ(よ)!!」」

大会の試合を放り投げてまでやって来たミエルに洋子と柚子は声を揃える…。

 

 

「遊矢はデュエリストよ!同じデュエリストとして、ミエルが勝つ事を望んでるはずよ!」

 

「勝利は何にも勝る()()!より良い運気をもたらしてくれるのは「勝利よ!!」」

 

『はっ…!?それは…そうかも!!ダーリンの為に、ミエル頑張る─!!』

 

「「(ほっ…)」」

2人でミエルに発破をかける柚子と洋子、2人の言葉を信じ込んだミエルは急いで会場に向かい……2人はほっと胸を撫で下ろしたのだった。(厄介払い的な意味で)

 

 

………なお、ミエルは試合には間に合ったものの…残念ながら、一回戦敗退であった。

 

 

 

………

 

 

 

 

「落ち着いたところで…柚子ちゃん、少しの間遊矢をお願いね?」

 

「あ、はい…」

ミエルの騒動を解決した洋子は一度、席を外す…彼女が向かったのは…。

 

 

 

 

「遊希、入るよ?」

 

「あっ、洋子さん…少し騒がしかったですね?ミエルさんの声が聞こえたような…?」

 

「ふふっ…そんだけわかってるなら大丈夫そうだね!」

安静にしながらデッキ調整をする遊希の部屋だった…。

 

 

 

 

時は少し遡る───

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

Side遊希

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──遊海君──

 

 

 

……誰かが、()の名前を読んでいる…

 

 

 

 

───遊海!デュエルだ!─

 

 

 

 

──遊海先生!──

 

 

 

 

──遊海さん──

 

 

 

 

───遊海!今度こそ勝ってやるぜ!──

 

 

 

 

……ああ、懐かしい……気がする…

 

 

 

 

──父さん!!──

 

 

 

──お父さん!──

 

 

 

 

──嫌だ…!遊海さん!遊海さん──!!──

 

 

 

 

 

………誰かが、泣いてる……オレのせいで…?

 

 

 

 

 

………ごめん…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……?あ、れ……?」

遊希はふと目を覚ました……ぼんやりとした視界に写ったのは、見慣れた自室の天井だった。

 

 

「僕、いつの間に…家に帰って…?う、ぐ…!?からだが、痛い…!」

自室で寝た記憶の無い遊希は戸惑いながら体を起こそうとしたが…倦怠感とは違う、全身の鈍い痛みで起き上がる事ができなかった…。

 

 

 

「っ…!?そうだ、僕は…!?」

段々と意識がはっきりとしてきた遊希の脳裏に記憶が蘇る。

 

 

 

舞網チャンピオンシップで怪我をした素良が、何故か行方を晦ました事。

 

 

 

素良を探す為に無茶を押して探しに行った事。

 

 

 

…そして、倉庫街で異様な雰囲気を纏うデュエリストに───

 

 

 

 

「そうだっ…僕は……!フォウ!!」

 

《……フォーウ……》

 

「フォウ…!!ああ、よかったぁ……」

 

《キュウ…フォウ…》

意識を失う寸前までの記憶を取り戻した遊希は思わずフォウの名を呼ぶ…それに応えたのは、遊希のベッドの横に用意された籠の中で休んでいたフォウだった。

少し辛そうな様子だったが…遊希が目覚めたと知るとベッドによじ登り、遊希の頬を舐めている…。

 

 

「……でも、どうしてだ…?僕は…もう()()()と思ったのに…?」

落ち着いた遊希は胸元でフォウを撫でながら考える、意識を失う前に受けた傷…その痛みは「再起不能」のダメージだと思っていたからだ…。

 

 

「……確実に両足も、腕も…肋骨も……内臓だって……なのに、鈍い痛みだけ…?う〜ん…?」

 

《フォウ…キャウ…フォーウ!》

 

「……凌牙が、助けてくれた…?本当なのか?フォウ」

 

《フォウ!》

謎の現象に悩む遊希…その答えを教えてくれたのはフォウだった。

 

 

 

「………なんで、凌牙が僕を…?」

 

 

ガチャ!

 

 

「……むっ!?遊希!目が覚めたのか!!」

 

「あっ…権現坂君…?」

 

「こうしちゃおれん!洋子さんと柚子に教えなければ─!」

 

「あっ、ちょっ─!?」

凌牙が何故、自分を助けてくれたのか…そもそも、どうやって怪我を治したのか考える遊希…そこへ見舞いに来た権現坂がやって来て、止める間もなく飛び出して行った…。

 

 

 

 

………

 

 

 

 

「丸一日も寝ちゃってたんですね……」

 

「そうなんだよ…もう、アンタも遊矢も…いったい何があったのさ…!?服もボロボロだったし…!」

その後、遊希は部屋に飛び込んで来た洋子達に、何が起きたのかを聞かされる。

 

 

まずは遊矢…遊矢は素良を探しに行った舞網中央公園で倒れたところを柚子に発見され、未だに眠り続けている事…。

 

 

そして、素良は未だに行方がわからない事…。

 

 

……最後に自分、フォウと一緒に倉庫街で倒れていた所を権現坂に発見され…丸一日眠っていた事、そして着ていた服は交通事故か爆発に巻き込まれたようにボロボロになっていたという事を…。

 

 

 

「それに関しては俺が話そう……故に、洋子さんと柚子には一度、席を外してほしい…!」

 

「えっ…?どうして?」

 

「漢の事情というモノがあるのだ…頼む!」

 

「……しょうがないね、柚子ちゃん!遊希におじやを作るから手伝ってくれるかい?」

 

「あっ……わかりました!」

権現坂の言葉に洋子は何かを感じたのか…2人で部屋を離れていった…。

 

 

 

 

「さて…2人には、あまり聞かれたくない事なんだよね?」

 

「うむ…少し眉唾な事でもあるし、約束もしているからな…」

2人とフォウだけになった部屋、そこで権現坂は語り始める…。

 

 

「実は、俺よりも前に…遊希を救ってくれた者がいたのだ、それは……」

 

「LDSの凌牙君、だよね?四番勝負の時に僕とデュエルした…」

 

「っ!?意識があったのか!?」

真実を話そうとした権現坂は遊希の思わぬ言葉に目を見開く…!

 

 

「さっき、フォウが教えてくれたんだ……ヤバいデュエリストに襲われた僕を、凌牙が必死に助けてくれたって……なっ?、フォウ」

 

《フォウ、キューウ…》

 

「遊希…?フォウの…動物の言葉が、解るのか?」

 

「ニュアンスだけね…目が覚めてから、なんとなく……うん?これって、結構すごい…?」

フォウを撫でながら、聞いた事を伝える遊希…そこでようやく違和感に気が付いた…。 

 

 

「まぁ…遊希の目覚めた特殊能力の事は今は置いておく……俺が駆け付けた時、遊希は見たことのない程の大怪我をしていた……それを、凌牙が超能力……サイコデュエリストの力を使って、必死に治療してくれていたのだ…」

 

「そうだったのか…今度会ったら、お礼をしなくちゃ……サイコデュエリスト…あの戦いの時から普通の人ではないと思ってたけど…彼に、そんな力があったなんて…」

権現坂の話を聞いた遊希は納得する…あの大怪我を治療できるのは、本当に『魔法』でもなければ無理だと思ったからだ。

 

「それから…これは、凌牙に口止めされていたのだが……」

 

「……権現坂君、教えてくれ……彼は、何を言ったのか…」

遊希は言い淀む権現坂に優しく訊ねる…。

 

 

「……凌牙は、記憶を失う前の遊希の事を…知っているようなのだ」

 

「えっ…」

 

《………キュウ…》

権現坂の言葉に遊希は思わず固まってしまう。

……思い返せば、思い当たるフシはあった。

 

 

初めて出会った時、自分の持っている赤水晶のペンデュラムを気にかけ…何処か、悲しそうな表情をしていた事。

 

頭を打ち、暴れまわる自身を必死に止めようとしてくれた事…そして、謎のデュエリストに襲われた自分を守ってくれた事…それだけでも、凌牙と自分に『関係』があったと推し量るには十分だった…。

 

 

 

「凌牙は、遊希の光を奪ってしまった事をひどく悔いていた……だが、遊希なら…」

 

「うん、気にしてないよ……あれは、僕の弱さのせいだ……凌牙が気にする事じゃないのに……直接、伝えなきゃな…」

 

「……うむ、そう言うと思っていたぞ」

権現坂の言葉を聞いた遊希は…()()()()()()()左目に手を当て、そう呟いた…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

「遊希、調子はどうだい?」

 

「体はまだ痛むけど…調子自体はここ数ヶ月で一番良いかもしれないです!」

 

「良かったねぇ…権現坂君の言ってた助けてくれた人に感謝しないと」

洋子の問いかけに遊希は明るく応える、凌牙による不思議な治療のおかげか…体調はここしばらくで一番のベストコンディションとなっていた。

なお、本人は気付いていないが…凌牙戦で負った傷も、失明してしまった左目以外は治っていたりする……あまりにも元々の『傷』が多すぎて気付けないのだ。

 

 

 

「……そういえば、良いのかい?遊矢に伝えなくて…?」

 

「はい…これ以上、遊矢に心配掛けたくないですし…」

そして、2つ目の問いかけに遊希は静かに応える、未だに目を覚まさない遊矢…素良が消えてしまった事で彼が心配するのは想像に難くない。

故に、これ以上遊矢の負担を増やさない為に洋子や柚子には遊矢に自分が倒れた事を伝えないで欲しいと頼んだのだ…。

 

 

「……わかった、それじゃあ遊矢の看病に戻るから…何かあったら呼ぶんだよ?」

 

「わかりました!ありがとうございます……()()()

 

「…!!……ふふっ、ありがとう、遊希」

遊希の一言に洋子は久しぶりの笑顔を見せた…。

 

 

 

「……『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』…」

洋子が去った後、遊希は倉庫街でのデュエルを思い出す…暗闇の中に現れた、正体不明のドラゴン…そして、謎の少年…その強さは今の遊希を大きく上回っていた。

 

 

「……なぁ、()()()()……お前なら、どうやって倒した…?」

 

《フォウ…》

遊希は胸元に手を当てて呟いた…。

 

 

 

 

 

 

「う、うぅ……あ、れ?母さん、柚子…?」

 

「あっ…!遊矢!」

 

「…おはよう、遊矢」

それから少しして…丸ニ日眠っていた遊矢は目を覚ました。

 

 

 

………

 

 

 

「えぇっ…!?丸二日も…?」

 

「ジュニアユース選手権に出るまでの4連戦からデュエルしっぱなしだったからねぇ…疲れが溜まってたのさ」

 

「そうだったんだ…あっ、大会は…?」

目を覚ました遊矢は自分が2日も眠っていた事に驚く、そして舞網チャンピオンシップスの状況を訊ねる。

 

 

「今日でジュニアユースの一回戦が終わるわ…いま、占い塾の方中ミエルが──あれ?もう終わってる!?…風魔デュエルスクールの月影って人に、1ターンキル!?」

 

「ミエルが…!?今回の大会、レベル高いなぁ…オレ達が知らない実力者がたくさん出てるんだ…」

大会の状況を調べた柚子はミエルの思わぬ結果に驚く…それを聞いた遊矢はまだ見ぬ強者達に警戒を強める…。

 

そして、他にもジュニアクラスの2回戦でフトシが零羅の「シンクロ召喚」に敗れた事や遊希の体調が戻った事を聞かされ…そして、「あの日」に起きた事を思い出した。

 

 

 

「融合……シンクロ……エクシーズ……あの夜、オレ…ユートに会ったんだ」

 

「ユートに…!?」

 

「あいつは言ったんだ…この世界は4つの次元に分かれてるって…!」

 

「4つの、次元…!?それって、どういう事なの…!?」

そして、遊矢はあの夜に起きた事を柚子に伝える…世界は「スタンダード」「融合」「シンクロ」「エクシーズ」の4つの次元に分かれている事。

 

素良は融合次元、ユート・黒咲・凌牙はエクシーズ次元の人間である事…そして、2つの次元は戦争中…ユートと素良が戦い、素良は融合次元に戻されてしまった事。

 

その直後、自分に似た2人目の男…バイクに乗ったシンクロ使い・ユーゴが現れ、ユートと戦い……ドラゴン対決の末に──

 

 

「……この、カード…!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』…!?なんで、遊矢が…!」

 

「あいつは…オレを庇って…!」

遊矢は異様な2人の戦いを仲裁しようとした…だが、それは叶わず…ユートは『デュエルで笑顔を』という言葉を残し、消えてしまった……それが遊矢が覚えている全てだった…。

 

 

「ユートが、どうなったのかはわからない…ユートは、なんでオレにこのカードを託したんだ…?わからない…!ユートだけじゃない、ユーゴの事も…!なんで、オレにそっくりなんだ…!?」

 

「遊矢…だけ、じゃないわ……私にも、そっくりな人がいる……黒咲が、私の事を「瑠璃」って子と間違ってたの……そうしたら、凌牙が…私と似た顔をしてるって…」

 

「えっ…!?」

自分に「そっくり」なユートやユーゴの事で思い悩む遊矢…そこへ柚子は凌牙から聞かされた自分に「そっくり」な少女について教える…それはますます謎を深めるものだった…。

 

 

「黒咲や、凌牙なら…何か知ってるかもしれない…!ユートの仲間で、瑠璃って子の兄さんなら……きっと次元の事も知ってるはずだ…!」

いくつもの「謎」…それを解き明かす為、遊矢は黒咲に会う事を決意…大会の会場の1つ、LDSのスタジアムに向かう事にした…。

 

 

 

 

「ん…?遊矢、出掛けて大丈夫なのか?」

 

「あっ、遊希兄…うん、もう大丈夫!」

身仕度を整えて玄関に向かおうとする遊矢…その時、たまたま開いていたドアからその姿が見えた遊希が声をかける。

 

 

 

「ティッシュにハンカチ、デュエルディスクにジュニアユースの参加カード…忘れ物は大丈夫か?」

 

「大丈夫だって!母さん以上に母親してるな〜…」

 

「ははっ…備えあれば憂いなしってね、今日の最終試合が終わったら、また組み合わせ抽選のはずだから…忘れないようにな!」

 

「わかった!いってきまーす!」

他愛のないやり取りをして遊矢は出掛けていった…。

 

 

 

「ずっと寝てるのも体に悪いな…リビングでジュニアユースの中継でも見ようか…」

 

《……フォーウ…》

 

 

 

 

………

 

 

「遊矢ぁぁ!!ようやく復活したかぁ!!この漢権現坂、こんなに嬉しい事はないぞ〜!!」

 

「あはは、暑苦しいなぁ…大袈裟だって…」

 

「いやいや、遊希の事も含めて…みんな、本当に心配してたんだぞ?」

少し時間は流れ、LDSのセンターコートで遊矢は修造塾長、そして権現坂と再会していた…権現坂に至っては遊矢をしっかりと抱きしめて嬉し涙を流している。

さすがの塾長と柚子も苦笑いである。

 

 

 

「「「遊矢兄ちゃーん!!」」」

 

「あっ…アユ!フトシ!タツヤ!」

 

「うん、これで療養中の遊希と…行方不明の素良以外は、全員揃ったな…」

連絡をもらって駆け付けたジュニアの3人と遊矢の再会を見ながら修造は呟く…伝手を使って探し続けているが、素良はまだ見つかっていなかった…。

 

 

 

 

『あっ…!!ダーリン!!目覚めたのね!私のお祈りが届いたのね〜!!』

 

「わっ!?ミエル…それに…」

 

『フン…』

再会を喜ぶ遊矢達だったが…そんな時、センターコートに黄色い悲鳴が響くと同時に遊矢に衝撃が襲いかかる、それは遊矢へとジャンピングダイブを決めたミエルのモノ…だが、遊矢の視線はその後ろにいた…LDSの3人組、北斗・真澄・刃に向けられていた…。

 

 

 

 

『榊遊矢…見に来てたのか?どうだい?僕の本当の力を──「黒咲か凌牙に、会いたい…話があるんだ」って、話を聞け!』

ミエルを軽くあしらった遊矢は自慢話をする北斗を無視して、要件を伝える…。

 

 

『話って…?』

 

「真澄…それは、私達から直接伝えたいの…」

 

『柚子…』

真澄が話の内容を訊くが…柚子がそれに答える…その表情から、真澄はその重大さを悟る…。

 

 

『う〜ん、無理だな…黒咲も凌牙も()()()()()で、オレ達も大会ノルマの戦い以来会ってねぇんだ』

 

「社長…零児の……!」

 

『会いたいのなら…遊希を頼ったらどうだ?海馬社長…KCの伝手があるんなら、コンタクトが取れるかもしれないぞ?まぁ、赤馬社長もなんだか忙しいみたいだけどさ…』

 

「そっか…」

遊矢の頼みに刃と北斗が答える…黒咲と凌牙はLDS内でも特別扱いされており、普通では会う事ができないのだ…。

 

 

『まっ、せっかく来たんだ!次の最終試合は見ていけよ!俺と去年の準優勝…梁山泊塾の勝鬨勇雄の戦いだ!損はさせないぜ!!』

沈んだ様子の遊矢に刃が明るく声を掛ける…一回戦の最後を飾るのは、彼の試合なのだ。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

『……ユート……くそっ…!』

 

『…すまねぇ、黒咲……俺が、間に合わなかったせいだ』

 

「………」

レオ・コーポレーションの社長室、そこで黒咲は拳を握り締めていた…。

映像が見れなくなった直後、零児はすぐに秘書の中島を派遣した…だが、確認できたのは気を失った榊遊矢とその介抱をする柊柚子、そして残されたユートのデュエルディスクだけだった…。

 

 

「それより…その話は本当なのか?凌牙」

 

『ああ、昨日の夜…融合次元の手練れが1人、この世界に来てやがった……俺も()()を出さなきゃならないレベルのな…』

そして、零児は凌牙に交戦したデュエリストについて問いかける…凄まじい融合召喚反応、そして計測不可レベルのエクシーズ召喚の原因を…。

 

 

『アカデミアから離反・保護した奴ら曰く、アカデミアの中でも()()、自分の快楽の為なら相手をどれだけ傷付けても構わない…仲間すらも仲間とは思わない……プロフェッサー直属のデュエル戦士……ユーリ』

 

「ユーリ…何故、そんな男がなぜ、この世界に…?」

 

『戦った感じからして…()()()()だったんだろうな、たまたま…スタンダードに来て、新しい()()()()を探してた……そんな感じだ』

凌牙はユーリと戦った感想を伝える、あの時に戦ったユーリからは…気迫を感じなかったからだ。

 

 

『それより!ユートは何処へ行ったんだ!デュエルディスクは回収できても…あいつの魂のカード…!「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」が見つかっていないではないか!!』

 

「落ち着け、黒咲…召喚反応は探している、調査の続報を待て…」

 

『っ〜!少し、1人にさせてくれ…!!』

 

『黒咲…』

凌牙と零児の話を遮るようにユートの行方を訊く黒咲…だが、その行方は分からず…彼は怒りのままに去っていった…。

 

 

 

 

『………悪いな、黒咲にとって、ユートは家族同然だ……家族が急にいなくなったら……取り乱すのは、当たり前だ』

 

「そうだな……凌牙、君は…大丈夫なのか?……榊遊希の事は…」

 

『……大丈夫だ、やれる事はやった……あとは、あの人次第だ』

取り乱す黒咲をフォローする凌牙…そんな彼に零児は今回の()()()、遊希について訊ねる。

 

「記録写真は見せてもらった……あの被害からして、リアルソリッドビジョンの出力はスタンダードの一般的なデュエルの5()()()()、車に轢かれたように……全身骨折していても、おかしくはないはずだが…」

ユーリと遊希、そして凌牙による戦場となった倉庫街…そこは黒咲対素良戦とは違う意味で『次元戦争』を零児に実感させる現場となっていた…。

 

 

『あんなのはまだ()()とは言えねぇよ、本当の()()は……大地を砕き、空を裂いて…()()()()()()()………俺は、そんな戦いを経験してきた』

 

「……凌牙…?何を言って……」

凌牙の語る『決闘』の様子に眉を顰める零児…それに気付いた凌牙はハッとした様子を見せる……。

 

 

『……悪い、忘れてくれ……とにかく、遊希は大丈夫だ…それより、次のデュエルの相手だが…』

 

「ん…ああ、黒咲は『ナイト・オブ・デュエルズ』のデュエリストと…君は…『明晰塾』という塾のデュエリストの予定だ」

露骨に話を変えた凌牙は大会のデュエルの相手について訊ねる。

 

 

 

『…あの人……遊希の、相手は…?』

 

「榊遊希の相手は────」

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

ガッ!! ドガッ!! グシャ!! ゴッ!!

 

 

 

『があああっ!?』 

 

 

「や、刃殿─!!!」

 

「この、デュエルは…!?」

 

デュエルが繰り広げられているスタジアムに鈍い()()()が響く、それはモンスター同士による衝突……()()()()

 

刃が得意なはずのアクションフィールド『剣の墓場』で…対戦相手によって()()()、痛めつけられている音だった…!

 

 

 

刃 LP0

 

勝鬨WIN…

 

 

 

 

「これが、梁山泊塾のデュエル…」

デュエルが終わり、担架で運ばれる刃の姿を見届けた遊矢が呟く…。

 

「梁山泊塾」…それは数あるデュエル塾の中でも異端中の異端、デュエルに勝つ為には()()()()()()()()()という考えの下、アクションカードの取り合いで相手を傷付ける事やフィールドギミックを最大限に悪用する事も厭わない……超武闘派のデュエル塾である。

 

 

 

『こ、これにて!ジュニアユース選手権の一回戦は全て終了しました!引き続き、二回戦の組み合わせを発表します!勝ち上がった選手の皆さまは登録カードをデュエルディスクにセットしてください!』

重い空気が漂うスタジアムにニコの声が木霊する…そして、デュエリスト達はその指示に従って登録カードを準備する…。

 

 

「俺は…明日の第一試合、ビックリ塾の種賀島有蔵…」

 

「私は…2日目の第ニ試合、デュエルっ子倶楽部の斜芽美伎代とね…」

権現坂と柚子の次の相手が判明する、そして…遊矢は──

 

 

 

「明日の第二試合…梁山泊塾、勝鬨、勇雄…!」

 

「「「えっ…!?」」」

遊矢の相手…それは、残酷なデュエルを見せた勝鬨だった…。

 

 

 

「ユートは、オレに『デュエルで笑顔を』と言った…あいつが本当に伝えたかった事はわからない……けど、オレはオレの信じるデュエルをする!それが、ユートの思いに応える事になると思うから…!」

 

「遊矢……うん!」

かつてない試練を前に、遊矢は決意を固める…ユートの願いに応える為に、自分のデュエルをするのだと…!

 

 

 

『……?』

 

「(勝鬨勇雄…オレはお前のデュエルを認めない、デュエルはみんなを笑顔にするモノ…オレのデュエルで、お前の心に笑顔を取り戻して見せる!)」

そしてフィールドに残る勝鬨と遊矢は睨み合う…遊矢は彼にデュエルの『楽しさ』を思い出させる為に、戦おうとしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

「……梁山泊塾、やっぱり…非道いデュエルだったな……」

 

「遊希…」

 

《フォウ…》

同じ頃、遊希は中継越しに見た勝鬨対刃の戦いを見て胸を痛めていた…そんな遊希を洋子は優しく肩を抱いて慰めている…。

 

 

「遊希、とりあえず…自分の対戦相手を確認したらどうだい?」

 

「……そうですね、さて…僕の相手は──」

洋子に促され、遊希は登録カードを読み込む…その対戦相手は……

 

 

 

 

 

 

 

 

【二回戦1日目 第三試合 梁山泊塾 松星炎司】

 

 



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Ep.21 覇王の片鱗

「この漢権現坂、こんなトリックには惑わされん…!そこだ!!『超重荒神スサノ-O』で攻撃!!」

 

『ぐわ〜!?何故、わかったぁ〜!?』

 

『変幻自在のトリックデュエル、此処に敗れる!アクションフィールド「エコール・ド・ゾーン」でのデュエルを制し、三回戦への出場を決めたのは権現坂道場、権現坂昇選手だ!!』

 

一夜が明けたスタジアム、そこでは権現坂が三回戦への出場を掴み取っていた…。

 

 

 

 

「次は…遊矢兄ちゃんの試合だね…!」

 

「うん…!」

 

『続きまして…第二試合!遊勝塾、榊遊矢選手対梁山泊塾、勝鬨勇雄選手の戦いです!!』

ニコのコールが響く中、遊矢が観客達の声援に応えながら入場する…!

 

 

「遊矢兄ちゃん、大丈夫かな…!?」

 

「対戦相手は、あの勝鬨…シンクロコースの刃をあんなにボコボコにして……」

 

「痺れるくらい、凄まじかったぜ…」

その時、観客席の仲間達の表情は険しかった…前日の凄まじい無法なデュエルを見た仲間達は遊矢の事を心配していた…。

 

「勝鬨は去年のジュニアユース選手権の準優勝…つまり、今大会の優勝候補ナンバー1と見て、間違いないだろうな…」

 

「権現坂…」

試合を終えた権現坂が遊勝塾に合流する…勝鬨はこの大会でエリートである北斗に並ぶ優勝候補なのだ。

 

 

『………』

遊矢の入場が終わったスタジアムに銅鑼の音が響き渡る…そして静かな闘志を漂わせながら、中華の任侠のような服を着た青年…勝鬨が入場する。

…前日の容赦のない戦いが記憶に新しい観客達は静まり返ってしまっている。

 

 

 

「『デュエルに笑顔は禁物』…それが梁山泊の流儀だからな……彼らにとっては、()()()()()()()…昨日、お前達が見た通り…勝つ為には何をしてもいいのか?というレベルで、手荒なデュエルを仕掛けてくる」

子ども達の様子を見た修造は梁山泊塾の()()を語り始める…。

 

「塾長の郷田川梁山は昔っから、強引で手荒なデュエルを批判されてきた…だが、それを跳ね除けるように、たくさんのプロタイトルを獲得してきた……奴は塾を開くと『全寮制』にして、学校に通う以外は外出や寄り道も禁止…プロになるまでは、両親にも会わせないらしい…」

 

「そんな…おれだったら逃げ出しちゃうよ…」

 

「それでも、梁山泊への入塾希望は跡を絶たない…プロ輩出者数はLDSに次ぐ勢いだ…」

塾生に過酷な修行生活を強いる梁山泊…故に、その実力も高い……それだけ、この世界では『デュエルモンスターズ』の重要度が高いのだ…。

 

 

「その中でも、メキメキと頭角を著してきたのが…勝鬨勇雄なのだ…!」

 

「でも、心配ないよ……遊矢には遊勝さんのエンタメデュエルがある、彼の冷え切ってしまった心を…きっと、デュエルの楽しさっていう『炎』で暖めてくれるはずさ…」

 

「遊希さん…」

高い実力を持つ勝鬨…それに挑む遊矢を前に遊希は穏やかに告げる、遊矢の持つ『エンタメ』の力が、彼を変える事を信じて…。

 

 

 

『それでは、両者向かいあったところで…フィールド魔法の選択です!選ばれたフィールドは…フィールド魔法「仙界竹林」!!』

ニコの宣言と共にリアルソリッドビジョン投影機が起動する…現れたフィールドは空中に浮かぶ竹林が点在する不思議な仙境だった!

 

 

 

 

「昨日、お前のデュエルを見せてもらったよ!」

 

『フッ!フッ!ハァ~…!!』

デュエルを前に勝鬨に語りかける遊矢…だが、勝鬨は会話は不要とばかりに拳法の演武を遊矢に繰り出す…!

 

 

「オレは…お前のデュエルを認めない、あんな戦い方は…デュエルじゃない!!」

 

『……戦いの殿堂に集いし、デュエリスト達が』

 

「っ…!モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!」

 

『見よ、これぞデュエルの最強進化系!!』

 

『アクショ〜ン!』

 

『「デュエル!!」』

一言も言葉を交わさぬまま…遊矢と勝鬨、相容れぬ2人のデュエルが始まった…!

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対勝鬨

 

 

 

 

『……!』

 

「っ…それじゃあ、オレのターン!」

勝鬨は手を前に突き出し、呼び寄せる動作で遊矢を挑発…先攻は遊矢となった…!

 

 

「『EMシルバー・クロウ』を召喚!いくぞ!!」

遊矢は銀狼を召喚、その背中に飛び乗りフィールドを駆け抜ける…それだけでスタジアムに歓声が巻き起こる!…の、だが…。

 

 

「ゆ、遊矢兄ちゃん!前見て前〜!!」

 

「突っ込むぞ!?」

 

「へっ…!?シルバークロウ!ストップ!スト──もがっ!?」

 

「あらら…いつも通りというか、なんというか(汗)」

観客達の声援に応えていた遊矢は前方不注意で竹林に衝突…パンダの如く、笹を食むハメになった…その少しおどけたデュエルスタイルはいつもと変わらないように見えた…。

 

 

 

「ぶるぶる…オレは、これでターンエンドだ!」

 

『自分のターン、ドロー!』

銀狼を召喚し、様子を窺う遊矢…そして、勝鬨の一手は…。

 

 

 

『相手フィールドにのみ、モンスターが存在する時!「地翔星ハヤテ」は特殊召喚できる!』

勝鬨が召喚したのは狼の皮を纏う中華風の戦士…その攻撃力は銀狼を上回っている!

 

 

「やべっ…見つけた!アクションカード…!」

 

『バトル、「ハヤテ」で「シルバークロウ」を攻撃!』

フィールドを駆けながら、遊矢は竹に引っかかったアクションカードを見つけて駆ける…その時だった。

 

グサッ!!グサッ!!

 

「うわっ!?」

銀狼の足元に竹槍が突き刺さる…それによって遊矢はその背中から投げ出されてしまう!

 

 

『フッ…遅いんだよ…!バトルは続行だ!!』

 

「くうっ…!!破壊された『シルバークロウ』はエクストラデッキへ…!」

竹槍を投げたのは勝鬨だった、その妨害によって遊矢を追い抜いてアクションカードを獲得、銀狼を撃破する……これが、梁山泊塾の戦い方である…。

 

 

 

『ターン、エンド!さぁ…かかってこい…!』

 

「お前はあくまで、そんなデュエルをするつもりか……なら、オレは…オレの信じるデュエルをする!!」

遊矢を挑発する勝鬨…彼にデュエルの楽しさを伝える為、遊矢は全力を尽くす!

 

 

PENDULUM!!

 

 

「スケール4の『EMトランプ・ウィッチ』とスケール8の『時読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!!ペンデュラム召喚!!現われろ!雄々しくも美しき二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

遊矢はペンデュラム召喚によってエースたるオッドアイズを呼び出す!

 

 

 

「お楽しみは…これからだ!!」

 

『お楽しみ?』

 

「ああ!デュエルは、楽しまなきゃ!」

 

『自分は()()()()()()…!』

 

「勝ちたいのは、オレも一緒さ!だけど…デュエルはそれだけじゃない!!」

 

『…フン』

ぶつかり合う遊矢と勝鬨の言葉…ただ勝利を求める勝鬨、お互いに気持ちの良い…楽しいデュエルを求める遊矢、その勝負の行方は…。

 

 

 

「さらにオレは『EMラクダウン』を召喚!バトルだ!『オッドアイズ』で『ハヤテ』を攻撃!」

 

『「ハヤテ」のモンスター効果!自分の場に自身以外のモンスターが存在しない時、1度だけ攻撃を無効にする!』

ハヤテの放った気功がオッドアイズを吹き飛ばす…だが、遊矢はまだ終わらない!

 

 

 

「灼熱の地より生還せし獣よ!神秘の龍と1つとなりて、新たな力を生み出さん!融合召喚!!野獣の眼光し、獰猛なる龍!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

遊矢はトランプウィッチの効果で融合…切り札たる野獣のオッドアイズを呼び出す!

 

 

「よしっ…!」

 

『っ……そうか、お前と自分が戦うのは…()()だったのかもしれん』

 

「えっ…?」

ペンデュラム融合を決め、笑みを見せる遊矢…その表情を見た時、勝鬨はとある記憶を思い出した…。

 

 

 

それは梁山泊塾に入塾する、まさにその日…郷田川塾長と共に梁山泊に向かう最中……勝鬨は遠目ながら、川辺で楽しくデュエルをする遊勝・遊矢親子の姿を見ていたのだ…。

そして…その時、塾長に言われた言葉が…今も彼の胸に残っている。

 

 

 

【デュエルが楽しいなどと思うな、お前の征く道はそんな甘いモノではない】

 

【そのデュエルディスクを買ってくれた親に会えるのは、お前がプロになった時だけだ】

 

【お前はそれまで──ひたすら暗い、闇の道を歩き続けるのだ】

 

 

 

それが、勝鬨の原初(オリジン)…デュエルの楽しさを忘れた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「バトルだ!『ビーストアイズ』で『ハヤテ』を攻撃!!」

 

『アクションマジック「回避」!攻撃は無効だ!』

勝鬨へ突っ込むビーストアイズ…だが、その攻撃はアクションマジックに防がれる!

 

 

『どうした?楽しい()()()デュエルは、もう終わりか?』

 

「なにっ!?」

 

『終わったなら…疾くターンエンドしろ、次は…自分のターンだ…!』

原初(オリジン)を思い出した勝鬨の目に殺意が宿る、今の彼のデュエルは…遊矢への逆恨みにも近い『憎しみ』に満たされていた…!

 

「っ…今度はそっちに楽しませてもらうよ…!ターンエンド!」

そして、憎しみに満ちた宿星が遊矢へと牙を剥く…!

 

 

 

『天駆ける星、地を飛び…今ひとつとなりて!悠久の覇者たる星と輝け!!融合召喚!来い!「覇将星イダテン」!!』

勝鬨は舞網チャンピオンシップスを制する為に会得した融合召喚を開放…覇者たる星が降臨する!

 

 

「攻撃力3000…アクションカードで、挽回する!」

 

『先に「イダテン」の効果を教えてやる…このカードのレベル、10以下のモンスターとバトルする時!そのモンスターの攻撃力は0となる!』

 

「なんだって…!」

勝鬨はイダテンの持つ効果を遊矢に伝える…そして、ダメ押しとなるカードを発動する!

 

 

『さらに自分は装備魔法「魔星剣」を装備!このカードは…手札の魔法カード1枚を墓地に送る事で「イダテン」の攻撃力を100アップする!……ダアッ!!』

 

「うわっ…!?」

それはアクションカードを墓地に送れば、攻撃力を強化できる装備魔法…さらに、竹林の竹を手刀で切断し遊矢に投げつける!

 

 

『まずは…1枚』

 

「いっ、て…!まずい、あと9枚拾われたら…!っ!!」

 

『させん!』

 

「ぐあっ…!?」

「魔星剣」の効果を使わせない為にアクションカードを探す遊矢…だが、見つけた瞬間に勝鬨が妨害を仕掛ける。

 

 

見つける…殴る…見つける…殴る、見つける、殴る、見つける、殴る…殴る…殴る…殴る…殴る…勝鬨は自身の憎しみと勝利の為に、遊矢を痛めつける…!

 

 

 

「遊矢…負けちゃ、ダメだ…!自分のデュエルを貫いてくれ!遊矢!!」

 

「遊希さん…!」

殴られ続ける遊矢…その様子を見ていた遊希は絞り出すように叫ぶ、その拳は固く握り締められていた…。

 

 

 

「あと、1枚を取られたら…マズイ!!」

 

『お前には、絶対にアクションカードは渡さない…!お前は今まで、影一つない()()()をぬくぬくと歩んできたのだろうな…!』

 

「なにっ…?」

 

『自分は、ひたすらに闇の道だけを歩んで来た……お前のような者には…負けない!!必ず、自分が勝利する!!』

最後のアクションカードを得る為に走る中、勝鬨は遊矢を罵倒する…明るいデュエルをする遊矢を貶す言葉を…だが、それは…。

 

 

 

ブチッ!!

 

 

「ふざけんな!勝鬨ぃぃ!!!」

 

 

『っ…!?』

 

「遊希に…!?」

遊矢を大切に思う男の逆鱗に触れた…!

 

 

 

 

「遊矢が光の道だけを歩んで来ただと?そんな訳ない…!!遊勝さんがストロング石島との戦いを前に姿を消して!そのせいで遊矢はたくさんの人々から蔑まれ、馬鹿にされ!イジメられて!!遊矢がどれだけの苦しみを、悲しみを飲み込んでエンタメデュエルに挑んでると思ってるんだ!!自分が…自分だけが茨の道を進んでると思うな──!!」

 

 

「ゆ、遊希さん!落ち着いて─!!」

その傷だらけの身体の何処から、それだけの大声が出るのか…遊希の叫びがスタジアムへと響く…。

……勝鬨はデュエル漬けの生活を過ごしてきたせいで知らなかったのだ、遊矢の父の失踪を…世間から遊矢に向けられていた「悪意」を……。

 

 

 

『っ…それでも、勝ちは譲らない!!「イダテン」で「ビーストアイズ」を攻撃─!!勝利の風は本当の「闇」を見た者だけに吹くのだ!!』

 

「諦めてたまるかァァ!!」

遊希の叫びに一瞬の動揺を見せる勝鬨…そして諦めず飛び出す遊矢、アクションカードの奪い合いの行方は──

 

 

 

ドン!!

 

 

 

「う、ぐ…!」

 

『…首の皮一枚、繋がったか』

 

「ぜぇ…ぜぇ…遊矢…!」

ビーストアイズが撃破され、砂煙が晴れていく……そこには勝鬨に腕を踏みつけられながらも、アクションカードを手にした遊矢がいた。

 

その残りライフは…僅か、100

 

 

 

 

『お前の敗北…真の闇はすぐそこだ……!ひたすら暗い闇の中に堕ちるがいい』

 

「っ…う…」

ターンを終えた勝鬨は遊矢に勝利宣言を突き付ける、最悪の言葉と共に…!

 

 

ドクン!!

 

 

「うぐっ!?」

 

「遊矢…!?」

その言葉が引き金となって…覇王の片鱗が目覚めるとも知らずに…!

 

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

「ここは…えっ…?」

気付けば遊矢は漆黒の闇の中にいた……そしてそこには、姿を消したユートが佇んでいる。

 

 

「あっ…」

そして遊矢は無意識にユートへと手を伸ばす、そしてお互いの手が…意識が重なり合い……。

 

 

 

悪魔の欠片が、目を覚ます。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

『っ…なん、だ?』

 

【……】

天気が急変し、雨雲に覆われるデュエルフィールド…その暗闇の奥で遊矢が静かに目を開ける、その雰囲気は…先ほどとは違っていた…!

 

 

(オレ)のターン、ドロー…アクションマジック『マッド・ハリケーン』発動…!このカードは自分フィールドのカード全てを、デッキに戻す】

 

「っ…遊矢っ!?」

 

《フォウ…グルル…!!》

遊矢のフィールドに吹き荒れる嵐…それを見た時、遊希は胸騒ぎを覚える…今の遊矢は、()()()()()()のではないかと。

 

 

 

(オレ)は『EMヒックリカエル』と『EMチアモール』で、ペンデュラムスケールをセッティング…これで(オレ)はレベル4のモンスターを同時に召喚可能…】

遊矢はただ淡々と…しかし、恐ろしい程低く、冷たい声でデュエルを続ける…!

 

【揺れろ、魂のペンデュラム…天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚…いでよ、我が下僕のモンスター達!『ラクダウン』!『シルバークロウ』!】

ペンデュラムが揺れ動き、銀狼とラクダが現れる…そのレベルは、4!

 

 

【我はレベル4の『シルバークロウ』と『ラクダウン』でオーバーレイ…エクシーズ召喚!漆黒の闇より…愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」!!】

光の銀河が弾け飛ぶ…そしてユートの魂たる反逆の牙が咆哮する!!

 

 

「ユートの、ダークリベリオン!?なんで、遊矢が…!?」

ペンデュラムエクシーズに成功した遊矢…だが、1番驚いたのは、1回戦でユートと戦っていた遊希だった…!

 

 

【「ダークリベリオン」の効果、発動…ORUを1つ使い、レベル5以上の相手モンスターの攻撃力を半分にし、その数値分自身の攻撃力をアップする…その効果を、(オレ)は2回使う!トリーズン・ディスチャージ!!】

 

『なにっ!?』

反逆の牙の紫電がイダテンの力を奪い去る…その攻撃力──5200!

 

 

 

【バトルだ、『ダークリベリオン』で『イダテン』を攻撃!】

 

『だ、だが無駄だ!「イダテン」の効果発動!このカードのレベル以下のモンスターの攻撃力は0になる!!』

 

【エクシーズモンスターはレベルを持たない、よって…効果は無効だ】

 

『なに…!?レベルを持たないなら()()()0()ではないのか!?』

攻撃を仕掛ける反逆の牙を前に勝鬨はイダテンの効果を使う…だが、勝鬨は知らなかった…エクシーズモンスターは『レベルに関係する効果』を受けない事を…。

 

 

反逆のライトニング・ディスオベイ!!

 

『がはっ…!!』

反逆の牙がイダテンの胸を貫く…それは、見事なまでの逆転ワンショットキルだった。

 

 

 

勝鬨 LP0

 

遊矢 WIN

 

 

 

 

 

『え、えっと……勝者は、榊遊矢選手…です』

 

雨が降りしきるスタジアムに勝者を知らせるブザーが静かに響く…だが、歓声はない……あまりにも恐ろしい遊矢の気迫に、観客達は、声を出せなくなっていたのだ…。

 

 

「っ…!遊矢!!」

 

「あっ…遊希さん!!」

その直後、遊希は柚子が止めるのも聞かず観客席から()()()()()…フィールドに立ち尽くす遊矢のもとへ駆け付けた…。

 

 

バチン!!

 

 

「遊矢!!お前は、何をしてるんだ!!」

 

「えっ、あ……遊希、にい…?」

遊希は遊矢の頬をはたく…そこで遊矢はようやく正気を取り戻した…。

 

 

「っ……遊矢、勝鬨に謝ってこい!今すぐに!!」

 

「えっ、あっ…勝鬨!?ごめん、大丈夫か!?」

遊希の言葉を聞いた遊矢は倒れ込んだ勝鬨の姿を見つける…慌てて遊矢は手を差し伸べようとしたが…。

 

バチン!!

 

「あっ…」

勝鬨は…強く、その手を払い除けた…。

 

 

 

『っ……』

勝鬨は1人で立ち上がると観客席に座る塾長へ頭を下げてスタジアムを去る…その顔は悔しさと、悲しみに歪んでいた…。

 

 

「なんだよ、この空気……オレ、何を、しちゃったんだ…?」

 

「遊矢、今のデュエルでお前がしたのは……()()()()()()()()として、一番やってはならない事だ!怒りに呑まれて、自分を見失うんじゃない!!」

 

「遊希兄…」

雨が降りしきるスタジアムに遊矢の肩を掴んだ遊希の言葉が消えていく、その時の遊希は──泣いていた…。

 

 

 

 

 

 

 

そして…悪魔の欠片は、さらなる悪意を呼び覚ます…。

 



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Ep.22 魔王の影

こんにちは!S,Kです!最近『書き溜め』というのを覚えたので…連続投稿!(執筆欲が全開とも言う…いつまで続いてくれるかな…?)


勝鬨とのデュエルの中で『覇王の片鱗』を見せた遊矢……そして、遊希はこの戦いの中で『何を』見せるのか…。


それでは、最新話をどうぞ!


「遊希兄…オレ、なんで…あんな事…!」

 

「……遊矢、確かに梁山泊塾の…勝鬨のデュエルは許されない戦い方だ、でも…暴力に暴力で応えてしまったら……それは、もう喧嘩と同じ……遊矢が目指す『エンタメデュエル』とは程遠いモノになってしまう……それは、分かってるな?」

 

「うん…」

勝鬨戦の終了後…第三試合は雨が止むまで開始が延期されていた、遊希はその時間を利用して怒りに身を任せてしまった遊矢を慰めていた…。

 

 

 

「一流のエンターテイナーは例え、自分がどれだけ辛い状況でも…お客さんの前では絶対にその姿は見せない、遊勝さんもそうだっただろ?風邪をひいていても、怪我をしていても…あの人はそんな姿を見せないで、みんなを笑顔にしていた……まだ、遊矢には難しいかもしれない……それでも、忘れないでくれ」

 

「遊希兄…」

遊勝の背中を見ていた1人として、遊希は優しく遊矢を諭す…一流のエンターテイナーとしての在り方を…。

 

 

「それより…なんで、遊矢がユートの『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』を持ってるんだ?いきなりエクシーズするからビックリしたぞ?」

 

「……それが……」

そして遊希はもう1つの疑問…遊矢が何故、ユートのドラゴンを持っているのかを訊ねる…そして遊矢は素良が行方不明になった後に何が起きたのかを初めて遊希へと伝えた…。

 

 

 

………

 

 

 

「4つの次元、次元同士の戦争、人間のカード化…遊矢と柚子に似た子ども達………そして、遊矢にカードを託して消えてしまったユート……ごめんな、遊矢…お前がそんな大変な事を背負い込んでるなんて知らなかった………すまなかった」

 

「遊希兄…信じてくれるのか…?こんな嘘みたいな話…」

 

「僕は遊矢がそんな嘘を吐く奴だとは思ってないよ、だから…僕は遊矢の事を信じる」

あまりにも荒唐無稽な話をする遊矢だったが、遊希はその話を信じる……それが、彼の…遊矢の家族としての答えだった。

 

 

 

『お知らせいたしま〜す!2回戦第三試合をただいまから15分後に開始いたします!出場する榊遊希選手と松星炎司選手は準備をよろしくお願いします!』

 

 

 

「ん……出番か、しっかし偶然にも程があるな…連続で梁山泊塾と当たるなんて…」

 

「遊希兄…大丈夫か…?勝鬨も、手加減ナシでアクションカードを取りにきた…きっと、他の奴も……」

ニコの放送がスタジアムに響く…それを聞いた遊希は立ち上がるが、遊矢は遊希の体を心配する…。

遊希は体が強い方ではない…その体で、梁山泊塾仕込みのデュエルに耐えられるのかと…。

 

「……心配するな、遊矢……()()はある、僕も僕なりの戦い方で…彼らに勝ってみせる」

心配する遊矢に対し、遊希は穏やかに告げる…そんな時だった。

 

 

 

 

「おっ…!いたいた!!遊希〜!探したんだぜ〜!?」

 

「あっ、克也と……舞さん!?どうしたんですか!?その怪我!?」

 

「…ちょっと、派手にやられちゃってね…イタタ…」

 

「あっ…遊希兄の友達の…!」

遊希達に声を掛けたのは親友の城之内、そして…所々に包帯を巻き、顔にも絆創膏を貼った孔雀舞だった。

 

 

「アタシの1回戦の相手が、アンタの戦う松星だったのさ…まったく、オンナにも容赦がないんだから……これだから、梁山泊塾はキライなのさ……」

 

「ひどい…!女性をここまで傷付けるなんて…!」

うんざりした様子で松星とのデュエルについて話す舞…いくらアクションデュエルとはいえ、ここまで女性に対して容赦がないとは遊希も思っていなかった…。

 

 

「本当ならオレが当たったら良かったんだけどよぉ…オレは次の試合でLDSの志島って奴が相手なんだ……だから…頼む、遊希……このデュエルで、舞の無念を晴らしてくれ…!」

 

「相手がラフプレーでくるなら、アタシ達は対策を取るしかない……これを使って、奴に一泡吹かせてやりな!」

 

「克也…舞さん……わかった、2人の思い……確かに受け取った!!」

遊希は舞が差し出した1枚のカードを受け取る…2人の思いを背負って…。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

『……父さん、大丈夫かな…』

スタジアムの観客席への入場口…そこで凌牙は心配そうな様子でフィールドを見つめていた。

 

『梁山泊塾…無理矢理に闇の道を歩ませる教え方…そして、反則ギリギリの暴力デュエル…そりゃ、遊矢の中にいる「悪魔」も反応する訳だ…』

遊矢と勝鬨のデュエルを見守っていた凌牙は静かに呟く、梁山泊塾のデュエルスタイルは…明らかに「悪魔」の琴線に触れてしまうモノだったからだ…。

 

 

『父さんの体調は万全じゃないはずだ…せめて最小限のダメージでデュエルを終わらせて欲しいが……どうにも、胸騒ぎがする…』

遊希のデュエルを前に胸騒ぎを覚える凌牙…そんな時。

 

 

《フォウ、フォーウ!》

 

『フォウ…怪我は大丈夫か?もう痛くないか?』

 

《フォーウ!キュ!》

凌牙のもとへフォウがやって来る…凌牙の問いかけに元気に応え、頬を舐めている。

 

 

『……フォウ、父さんを頼む…!大会中、俺は何かがあっても、直接手出しはできねぇ……お前が頼りなんだ…!』

 

《フォウ!!》

凌牙の言葉にフォウは『任せて!』と言うように鳴いて応えた…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

『大変お待たせいたしました!雨は過ぎ去り、再び快晴と相成りました!二回戦第三試合、遊勝塾、榊遊希選手対梁山泊塾、松星炎司選手の試合だ〜!!』

ニコの実況が響くスタジアム…そこへ歓声を受けながらフォウを肩に乗せた遊希が、そして銅鑼の音と共にリーゼント風の黒髪にオレンジ色のスカーフを巻いた中華の武人風の青年が入場する…。

 

 

 

『それでは、アクションフィールドのセレクトです!選ばれたフィールドは〜…アクションフィールド「仙界炎谷」発動!!』

ニコの宣言と共にリアルソリッドビジョン投影機が作動する…現れたのは飛び石のような岩の柱が屹立し、谷底から炎が吹き上がる仙境の修行場だった…!

 

 

「すぅ……松星、さっきは遊矢がすまなかった……だけど、この試合とはまた別の話だ!デュエルは決して、お互いの優劣を競うだけのモノじゃない!僕は…僕のやり方で戦い抜く!」

 

『……貴様は分かってない…あんな負け方をした()()()が、これからどんな目に遭うのかを……負けたら終わり、奴は終わってしまった……ならば、せめて…お前の首級を手向けにしてやろう…!』

フィールド中央の広場で向かい合う遊希と松星…遊希は遊矢の豹変してしまった戦いを詫びる…だが、松星は鋭い目で遊希を睨んでいた。

 

 

 

 

「いくぞ…!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

『モンスターと共に地を蹴り!宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!』

 

『「見よ!これぞ、デュエルの最強進化系!」』

 

『アクショ〜ン!!』《フォウ!フォ〜ウ!!》

 

『「デュエル!!」』

遊希と松星、ニコの口上と共にアクションカードが灼熱地帯に散らばる…アクションデュエルが始まった…!

 

 

 

 

 

松星炎司LP4000

遊希LP4000

 

 

 

『先攻はもらう、俺のターン!』

『「微炎星─リュウシシン」を召喚!』

先攻を取った松星の場に腹当てに『微』の文字を刻んだ中華の戦士が現れる! ATK1800

 

『さらに永続魔法「演舞─天璣」を発動!このカードが存在する限り、自分の場の獣戦士族モンスターの攻撃力は100アップする!さらに、このカードを発動した時!デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター…「暗炎星─ユウシ」を手札に加える!』

炎の谷から飛び出した炎が新たなカードを導き、松星のモンスターを強化する!

 

リュウシシンATK1800→1900

 

 

『そして「リュウシシン」の効果発動!自分が「炎舞」カードを発動した事で、デッキから罠カード「炎舞─天璇」をセットする!そしてカードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

松星LP4000

リュウシシン 天璣 伏せ3 手札2

 

 

 

『さぁ、かかってこい…()()()の教え子よ…!』

 

「っ……その挑発には、乗らないぞ…!」

言葉で遊希を挑発する松星…怒りを押え込んだ遊希はデッキトップに手を掛ける!

 

 

 

 

「僕のターン、ドロー!」

「よし…!僕は手札からスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『EMクラシックリボー』でペンデュラムスケールをセッティング!これで僕はレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!」

 

PENDULUM!!

 

遊希の背後に光の柱が出現、仮面を着けた赤いドラゴンと音符を付けた毛玉が浮かび上がる!

 

 

「揺れろ!希望のペンデュラム…全能の奇跡よ、歴史を刻め!ペンデュラム召喚!手札からレベル4『EMユニ』!レベル4『EMロングフォーン・ブル』!そしてレベル6!『EMキングベアー』!」

赤水晶のペンデュラムが揺れ動く、そしてウマの尻尾を持つ少女、角がラッパになったウシ、王冠を被ったクマが現れる! ATK800 ATK1600 ATK2200

 

 

「『ロングフォーンブル』の効果発動!特殊召喚に成功した時、デッキからレベル4以下の『EM』モンスター『EMコン』を手札に加える!そして『ユニ』の効果!召喚・特殊召喚に成功したターン!手札からレベル3以下の『EMユニ』を特殊召喚できる!」

額からユニコーンの角を生やした少女が現れる! ATK600

 

「そして『ユニ』の効果発動!召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズ!攻撃力1000以下の『コン』と共に守備表示にする事で、デッキから『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』を手札に加える!」

2人の少女がしゃがみ込み、新たなカードを導く!

 

ユニATK800→DEF1500

 

コンATK600→DEF1000

 

 

「バトルだ!『キングベアー』で『リュウシシン』を攻撃!この時『キングベアー』の効果起動!このモンスターの攻撃力はバトル中、フィールドの『EM』カード1枚につき100アップする!フィールドの『EM』は自身を含めて5枚!500アップだ!」

キングベアーが仲間達の応援を力に変える! ATK2200→2700

 

『甘い!永続罠「炎舞─天璇」を発動!その効果によって「リュウシシン」の攻撃力をエンドフェイズまで700アップ!さらにこのカードが存在する限り、獣戦士族モンスターの攻撃力は300アップする!返り討ちにしろ!「リュウシシン」!!』

 

「しまった!ぐうぅ…!!」

大地を隆起させて攻撃するキングベアー…だが、その攻撃は避けられ、リュウシシンから飛び出した蛇のような炎がキングベアーを焼き尽くした…!

 

リュウシシンATK1900→2600→2900

 

遊希LP4000→3800

 

 

『そして「リュウシシン」の効果発動!「炎舞」が発動した事で、デッキから罠カード「炎舞─開陽」をセットする!』

 

「流石に、一筋縄ではいかないか…!カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

リュウシシンATK2900→2200

 

 

遊希LP3800

ユニ コン ブル (P ペルソナ クラシック) 伏せ1 手札1

 

 

 

『その程度か…次は、俺の番だ』

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『「暗炎星─ユウシ」を召喚!』

胸元に「暗」の字を刻んだ戦士が現れる! ATK1600→1700→2000

 

 

『バトルだ!「ユウシ」で「コン」を攻撃!さらに永続罠「炎舞─開陽」を発動!このターン、獣戦士族モンスターが攻撃する時!攻撃力が守備力を上回った分だけダメージを与える!さらに、このカードが存在する限り!獣戦士族の攻撃力は300アップする!』

 

「いきなりマズい…!罠カード『ホーリーエルフの祝福』を発動!自分フィールドのモンスター1体につき300、つまり900回復する!ぐううっ…!!」

攻撃力を増した戦士が炎の熊を召喚、モンスターを切り裂く!

 

ユウシATK2000→2300

 

リュウシシンATK2200→2500

 

 

遊希LP3800→4700→3400

 

 

『むっ…?……「リュウシシン」で「ユニ」を攻撃!!』

 

「ぐうっっ…!!」

一瞬、怪訝な表情を見せた松星は攻撃を宣言、炎蛇が2人目の少女を焼き尽くす…!

 

遊希LP3400→2400

 

『俺は…これでターンエンドだ』

 

松星LP4000

ユウシ リュウシシン 天璣 天璇 開陽 伏せ1 手札1

 

 

 

 

『貴様、何故…()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

「決まってる、じゃないか…!お前への対策だよ…!」

 

『むっ…!』

ターンを終えた松星は遊希へと問いかける…その答えは予想外のモノだった。

 

 

「梁山泊塾は、勝つ為には何でもする……遊矢や舞さんにしたように、暴力も使う……だが、それは「アクションカード獲得の妨害をしてもいい」と言うルールのグレーゾーンを突いた、卑怯な作戦だ………なら、アクションカードに頼らなければいい…!!」

それは遊希が考えついた、至極単純な作戦…梁山泊塾のアクションカード獲得妨害は痛みによってデュエリストの思考を乱す作戦も兼ねている…逆に言えば、アクションカードに頼らなければ…梁山泊塾はラフプレーを行う事はできないのだ。

 

 

『フン…!だが、己の力のみで…俺に勝てると思っているのか?』

 

「やってやる…!それが、僕の戦いだ!!」

 

《フォウ!》

遊希を見下す松星…遊希は誇りを賭けて、戦いに挑む!

 

 

 

「僕のターン!ドロー!!」

「再び揺れろ…希望のペンデュラム!ペンデュラム召喚!!エクストラデッキから『EMキングベアー』!そして手札から『EMリザードロー』!そしてレベル7!二色の眼揺らめく幻影…『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

再び揺れ動くペンデュラム…その光に導かれ、王冠のクマ、紳士服を着たエリマキトカゲ、そして遊希のエースたるオッドアイズが現れる! ATK2200 DEF600 ATK2500

 

 

「バトルだ!『キングベアー』で『ユウシ』を攻撃!さらに効果発動!フィールドの『EM』は3枚!受けてみろ!キングベアー・クエイク!!」

 

『っ…!アクションマジック「回避」!!その攻撃を無効にする』

キングベアーが再び大地を隆起させるが…華麗なステップで回避される!

 

キングベアーATK2200→2500

 

 

「そこだ!『オッドアイズ』で『ユウシ』を攻撃!夢幻のスパイラル・フレイム!!」

 

『アクションマジック「奇跡」!バトルダメージを半分にし、「ユウシ」は破壊を免れる!くっ…!』

希望の光を宿した螺旋の炎がユウシに襲い掛かるが…炎のクマが威力を減衰する!

 

松星LP4000→3900

 

「今だ!『オッドアイズ』の効果発動!ペンデュラム召喚されたこのモンスターによって、相手に戦闘ダメージを与えた時!ペンデュラムスケールの『オッドアイズ』1枚につき1200ダメージを与える!幻視の力─アトミック・フォース!」

 

『なにっ!?ぬおおっ…!!』

ペンデュラムの柱からの援護射撃が松星を吹き飛ばす!

 

松星LP3900→2700

 

 

「これが、僕の戦い方だ!ターンエンド!!」

遊希LP2400

オッドアイズ リザードロー ブル キングベアー (P ペルソナ クラシック)手札0

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「遊希兄、すごい…!梁山泊塾の奴に一歩も引いてない…!」

 

「しかも…相手は既に()()()()()()…!」

 

「えっ…?お父さん、それってどういう事?」

観客席の遊矢は正面から梁山泊のデュエリストに立ち向かう遊希のプレイングに驚く…そして修造は既に遊希に盤面が傾いている事に気づく…。

 

 

「おそらく、相手のデッキは永続魔法・永続罠を中心に戦略を立てるタイプのデッキだ…しかし、相手の魔法・罠ゾーンの空きは残り一枚…でも、その枠を使ってしまえば()()()()()()()()()使()()()()()()、そして…遊希にはまだ融合・シンクロ・エクシーズのドラゴン達が残されている…また腕を上げたな…!」

追い詰められていたようで、実は相手を誘っていた遊希…そのプレイングに修造は思わず唸る…!

 

 

「しかし、デュエルとは最後まで分からんものだ……油断するなよ、遊希…!」

権現坂は静かに遊希を見つめていた…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

『っ…!!俺は…まだ、負ける訳には…いかんのだ!!』

 

「っ…!」

松星は闘志を高めながら立ち上がる…その眼には勝鬨と同じ、暗い炎が宿っていた…!

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『来たぞ…!装備魔法「魔星剣」を「リュウシシン」に装備!!』

 

「そのカードは…!」

リュウシシンがその手に剣を握る…そのカードは、前の試合で遊矢を追い詰めた1枚だった…!

 

 

『このカードは手札から魔法カードを捨てる度に、装備モンスターの攻撃力を100アップする!いくぞ!』

松星は風のような勢いでフィールドを駆け、アクションカードを回収していく…!

 

 

「(妨害するべきか…!?いや、墓地にはバトルダメージを無効にできる『ユニ』がいる……様子を見る…!)」

自身の状況を確認した遊希は、油断なく松星の動きを目で追う…!

 

 

『これで…10枚…!攻撃力は1000アップする!』

ターンの持ち時間ギリギリ…松星はモンスターを最大限に強化する…!

 

リュウシシンATK2500→3500

 

 

『っ……フッ…!』

 

「(笑った…?笑う事を禁じられた梁山泊のデュエリストが…?)」

そして…遊希は見た、自分の姿を見た松星が小さく嗤ったのを…!

 

 

『退け!!』

 

「えっ…!」

 

 

ゴッ!!

 

 

「遊希兄!!!」

それは一瞬の事だった、何を思ったのか松星が凄まじい速さで遊希に肉薄…鳩尾に助走をつけた重い拳を叩き込んだのだ…!

 

 

「コヒュッ…!?」

 

《フォウ!?》

それは手加減のない()()()()()、メキリと何かが割れる音と共に遊希は後ろに吹き飛び──

 

 

 

「あっ──」

 

「遊希兄─!!?」

 

《フォウ─!?》

 

 

 

 

肩から弾き飛ばされたフォウを残して…燃え盛る谷底へと落ちていった…。

 

 

 

 

 

『お、お〜っと!?遊希選手!松星選手のラフプレーによって炎の中に飲み込まれてしまったぁぁ!!!?これは、大丈夫なのかぁぁ!?』

 

『俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()奴を突き飛ばしただけだ…ルール違反ではない』

松星はニコに手にしていたアクションマジックを見せつける…!

 

リュウシシンATK3500→3600

 

 

『バトルだ!「リュウシシン」よ!!「オッドアイズファントムドラゴン」を攻撃!!』

 

「や、やめろぉぉ!!」

リュウシシンの剣が取り残され、谷底を窺っていたオッドアイズを切り裂く…遊矢の叫びが響くなか、フィールドは爆煙に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

『あのダメージを受ければ、奴はもはや動けまい……この勝負は俺の勝ちだ!』

 

「いいかげんにしろ!梁山泊!!それがお前らのやり方か!!」

 

「心は傷まないのか!?」

 

「スポーツマンシップはどうした!」

 

「やりすぎだ!」

爆煙が漂うフィールドに背を向けて勝利宣言をする松星…だが、流石の観客達からもブーイングが飛び交う…!

 

 

勝つ事だけが正義だ!俺はそう教わってきた!!これが、俺の戦い方だ!!』

松星は自分の正当性を叫ぶ…ルールには違反していない、これは正しいのだと…。

 

 

 

 

 

「「「「っ……!?」」」」

 

『フン……ようやく納得したか』

そして徐々に観客の声が消えていく…松星は自分の正当性が認められ──────

 

 

 

 

 

 

 

「い、いやああああ!!?」

 

 

 

 

 

『っ…!?なん、だ、…!?』

観客席から女性の悲鳴が響く…そして松星は思わず振り返り──

 

 

 

 

 

 

─────

 

『ひっ…!?』

 

《キャ、ウ…?》

自分を至近距離で見つめる()()()()と目が合った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊希

 

 

 

 

「(何が、起きた…?僕は…落ちて…?)」

殴り飛ばされた遊希は炎の中を墜ちながら、助かる方法を必死に考えていた…だが、みぞおちを殴られた事で呼吸が詰まり、意識が遠のいていく…。

 

 

「(何が『僕の戦い方』だ…?『様子を見よう』だ……結局、ラフプレーは防げなかったじゃないか…)」

永遠にも思える一瞬、遊希は自分の浅はかさを呪う。

 

 

「(この高さから落下したら、確実に動けなくなる……ごめん、遊矢…あんだけカッコつけたのに……ごめん、克也…舞さん……約束、果たせそうにないや───本当に、ごめん)」

燃え盛る地面が目の前に迫る…そんな中で遊希は、ただ謝っていた…。

 

 

 

「僕が、もっと……強かったら───あんな奴、()()()()()()()()───」

 

 

 

 

 

 

ドクン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、遊希が初めて抱いた……「悪意」だった。

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

『き、さま…!?どうやって…!?』

 

【墓地の『ユニ』の効果発動…墓地の『コン』と共に除外する事で、一度だけバトルダメージを0にする】

金色の瞳に睨まれた松星は思わず距離を取る…そこにいたのは落下したはず遊希だった。

 

 

…だが、姿()()()()

 

 

白髪は逆立ち、眼帯替わりのバンダナが取れてしまったのか…瞳孔の開いた金色の右眼と伽藍堂の左眼()が松星を冷たく見つめている。

 

そして、服は先ほどまでの青ジャケットとズボンではない、金色の肩当ての付いた赤と黒のパワードスーツのような機械鎧…そして背中の黒金に輝く推進翼から周囲に闇色の粒子を漂わせている。

 

 

その姿は、まるで───

 

 

 

【さらに『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』が破壊された事で、『リザードロー』の効果、発動…自分の場のモンスターが破壊された時、自分の場の『EM』モンスターの数だけドローできる……フィールドのEMは3枚、3枚ドロー】

 

『す、姿が変わったくらいで…!バトルは続いている!「ユウシ」で「ロングフォーンブル」を攻撃!!』

 

【………】

炎の熊が再びモンスターを焼き尽くす…だが、遊希は動じていない…!

 

遊希LP2400→1700

 

 

 

『俺は…ターンエンドだ!!』

松星LP2700

リュウシシン(魔星剣) ユウシ 天璣 天璇 開陽 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

『お〜っと!!谷底に落ちてしまった遊希選手!まるで炎の中で生まれ変わる「不死鳥」のように、衣装を変えて復活したぁぁ!!』

ニコの実況がスタジアムに響く…アクションデュエルにおいて、リアルソリッドビジョンを纏って衣装を変える事も度々ある…ニコはそれと同じだと思ったのだ。

 

 

 

『おいっ…!?なんで、なんであの姿に!?』

だが、それを見て凌牙は取り乱していた…今の遊希の姿は、失われたはずの───『英雄』の全力形態に酷似していたからだ…!

 

 

『零児!!デュエルを中止しろ!!今すぐに!!』

 

『凌牙?いきなり何を──』

 

『このままじゃ、()()()()()()!!』

凌牙は通信越しに零児へと叫んだ…。

 

 

 

 

 

「遊希、兄…!?どうしたんだよ…!」

 

「あんな服、見た事ないぞ…!?」

 

「し、痺れる…!まるで……()()()()()()()()()()みたい…!!」

 

「遊希兄ちゃん…怖い…!!」

一方、観客席の遊矢達も戸惑っていた…遊希のあんな姿を、一度も見た事がなかったからだ…!

 

 

「遊希さん……怒ってる……炎の中で……」

その時、柚子は遊希に対するミエルの占いを思い出していた…「決断を迫られる」という言葉を…。

 

 

 

 

 

『遊希の奴すげぇ!いつの間にあんな衣装用意してやがったんだ!?そのままやっちまえ─!』

 

『馬鹿!城之内!!今のアイツはそんな状態じゃないよ!?』

 

『えっ?』

そしてデュエルを見守っていた城之内と舞、城之内はテンション高く遊希の復活を喜んでいたが……舞はその異変に気が付いていた…。

 

 

『何か、嫌な予感がする……さっきの榊遊矢よりも、恐ろしい気配が…!』

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

最強デュエリストのデュエルは全て必然…ドローカードさえも、デュエリストが創造する──シャイニングドロー

 

遊希の右手に暗い光が宿る…そして、黒金の光の軌跡が新たな手札を導いた。

 

 

【魔法カード『ハーピィの羽根帚』を発動、相手フィールドの魔法・罠カードを…全て破壊する】

それは舞に託された一枚…遊希が手にした羽根箒を振るい、フィールドに風が吹き荒ぶ!

 

『ば、馬鹿め…!貴様はこれで終わりだ!罠カード「炎虎梁山爆」を発動!俺はフィールドの永続魔法・永続罠一枚につき、500ライフを回復する!』

炎の谷から飛び出した炎が松星のライフを回復する…!

 

松星LP2700→4700

 

『そして「炎虎梁山爆」が相手によって破壊された時!墓地の永続魔法・永続罠1枚につき500ダメージを与える!墓地の永続魔法・罠は4枚!これで終わりだ!!』

フィールドのリュウシシンとユウシが炎の蛇と熊を遊希へとけしかける…そして遊希は炎に飲み込まれ───

 

 

 

【速攻魔法『痛魂の呪術』…相手が効果ダメージを与える効果を発動した時、発生した効果ダメージは()()が受ける】

 

『なにっ!?ぐわああ!!』

炎が遊希に直撃する瞬間、遊希の目の前に障壁が現れ、炎を松星へと反射する!!

 

松星LP4700→2700

 

【そして、3枚の『炎舞』が消えた事で…お前のモンスターの攻撃力は下がる】

 

 

ユウシATK2300→1600

 

リュウシシンATK2500→1800

 

 

【我が魂に宿る、大いなる力よ……再び運命の振り子を揺らせ、ペンデュラム召喚──手札からレベル4『紫毒の魔術師』『虹彩の魔術師』】

赤水晶のペンデュラムが不規則に揺れ動く…そして紫の法衣と色眼鏡の魔術師、そして赤い法衣の魔法剣士が現れる! ATK1200 ATK1500

 

 

「えっ…!?なんで、『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』を復活させないんだ…?」

ペンデュラム召喚の直後、遊矢は首を傾げる…だが、その答えはすぐに判明する…!

 

 

【レベル4の『紫毒の魔術師』と『虹彩の魔術師』でオーバーレイネットワークを構築───エクシーズ召喚】

 

フィールドに現れた光の銀河にモンスターが飛び込み、光の爆発がスタジアムを埋め尽くす!

 

 

むげん

 

 

【『No.むげん』──『でゅえるがあでぃあん』】

光の爆発と共に巨大な水晶の斧剣が……炎の大地に突き刺さる! ATK2500

 

 

「あの時の、剣!?マズイよ!!今の遊希兄は─!!」

 

()()じゃ、ない─!?」

この時、遊矢達は初めて気付いた…遊希はすでに──狂気に呑まれている…!!

 

 

 

【バトルだ、『キングベアー』で『リュウシシン』を攻撃…攻撃力は200アップする】

 

『っ…!?あ、アクションカードを……あ、足が、動かな…!?ぐあああっ!?』

熊の爪撃が蛇の戦士を切り裂く、アクションカードで防ごうとした松星だったが…遊希の放つ()()に呑まれ、足が竦んでしまっている…!

 

キングベアーATK2200→2400

 

 

松星LP2700→2300

 

 

 

【『でゅえるがあでぃあん』で『ユウシ』を攻撃、さらに効果発動──ORUを1つ使い、このモンスターの攻撃力はバトルする相手モンスターの攻撃力か、守備力…どちらか高い数値分アップする…】

金色の眼を松星に向けたまま、遊希は大地に突き刺さった大剣を引き抜く…そして水晶の大剣は──闇に染まる…!

 

 

でゅえるがあでぃあん ATK2500→4300

 

 

 

【魔王鉄鎚──希望は反転する──】

 

 

『ひっ、あ…!?』

闇の大剣を下段に構えた遊希の周りに濃密な魔力と殺気が集中…闇が世界を浸食する…!

 

 

 

 

【絶望を刻め】

闇の大剣から巨大な魔力の刃が噴出…大地は鳴動し、岩の破片が空中に浮かび上がる…!

 

 

 

「遊希兄!!ダメだ!止まれぇぇ!!」

 

『普通の人間にそんなの撃ったら─!!』

スタジアムに遊矢、そして凌牙の叫びが響く…だが、断罪の刃は止まらない!!

 

 

 

 

世界を覇する闇黒の剣(ダークネスカリバー)

 

 

 

《ドッフォォウッッ!!》

 

 

闇の刃が振り抜かれる瞬間、虹色の光を纏ったフォウが岩を踏み台として遊希の背中へと突進…体勢を崩す事で闇色の斬撃の軌道を逸らす。

 

放たれた斬撃は凄まじい衝撃波と共にリアルソリッドビジョンの天蓋を貫き、スタジアムの屋根を掠めて空の彼方へと飛んでいき……

 

 

 

 

大爆発と共に空に……()()に黒い孔を穿った…。

 

 

 

 

 

松星LP0

 

遊希WIN

 

 

 

 

 

『ヒッ…は、ハは……』

リアルソリッドビジョンが解除されていく中、スタジアムは遊矢戦以上に凍りついていた…攻撃の直撃こそ避けられたものの、余波で吹き飛ばされた松星は恐怖からか()()になった状態で茫然自失としている…。

 

 

 

『っ………ごふっ…』

 

《っ…フォーウ!!?》

そして黒金の鎧が砕け、ボロボロの姿を晒した遊希は……血を吐き、デュエルフィールドへと倒れ伏し───

 

 

 

 

 

 

「ゆ、遊希兄ィィ!!!」

静まり返ったスタジアムに遊矢の悲痛な叫びが木霊した…

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

「………()()()、か……遊海」

海馬コーポレーション・社長室…そこで遊希と松星の戦いを見守り、虚空に黒い孔を穿った閃光を見届けた海馬は1人呟く…。

 

 

 

 

「本来のお前は、様々な悪と対峙し…それを乗り越えて世界を救い、決闘者達を導いてきた英雄だ………だが、今のお前は()()

 

 

 

「激しい戦いの果てに、力と記憶を失った…今のお前は、かつての異次元の使者(アストラル)と同じく──()()()()()

 

 

「純粋な者ほど、悪意に曝された時……生まれる『闇』は深い」

 

 

「俺の知る遊海なら、あの程度の悪意など軽く笑い飛ばし…優しく諭して済ますだろう」

 

 

「だが、()()は…悪意への耐性など無いはずだ……故に、暴走する…その心に芽生えた『怒り』のままに───」

 

 

 

「だが、今のお前にはその怒りこそが()()なのだ……お前の中に眠る()()()()を目覚めさせる為に……」

 

 

 

 

 

「しかし、あの程度の悪意でこの暴れよう……侵略者と出会ったなら───本当に世界を滅ぼしかねんぞ…!」

徐々に消えていく孔を見つめながら…海馬は頭を抱えた…。



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幕間─カウントダウン─




──目に見えるモノだけが真実とは限らない──






──貴方が見てきた者は……『本物』か?──





「……遊希兄……どうして…!なんで…!!」

 

「…遊矢…」

夕方のLDS,その治療室…その前で遊矢・柚子・権現坂と修造、そして駆け付けた洋子は立ち尽くしていた…梁山泊塾の松星との戦いで『暴走』した遊希はデュエル直後に昏倒……治療を受けていた。

 

 

「梁山泊塾の蛮行…それに遊希の堪忍袋の緒が切れた、といった所か……人は怒りに飲まれれば、何もかもを見失ってしまうからな…」

 

「あの時の遊希さん……怖かった…いつもと、全然違ってた…」

 

《フォーウ…》

フォウを胸に抱きながら、柚子がデュエルの様子を思い出す、松星によって高所から突き落とされた遊希…だが、黒き鎧を纏って復活…水晶の大剣によって松星を粉砕し、勝利を収めていた。

…だが、その様子はあまりにも()()……先の試合で同じような様子を見せた遊矢が『嵐』だとするのなら──遊希の暴走は『天変地異』……遊矢以上の迫力に観客達どころかスタッフすらも、しばらく身動きが取れなかった…。

 

 

 

「……遊希兄って…何者、なんだろうな」

 

「えっ…」

 

「オレ…5年も一緒にいて、遊希兄の事…何も知らないんだ…優しくて、オレ達の味方で…いつもみんなの事を気にかけてくれてる……そんな姿しか、知らないんだ…!!」

 

「……それでいいのさ、遊矢……遊希だって、自分が『何者』なのか、なんて分かってない……遊希がどんな子だって…アタシ達の()()だって事は変わらない…!!」

 

「母さん…うん、そうだよな…!遊希兄は、オレ達の家族なんだ…!!」

遊矢は知らなかった遊希の一面を知って涙を流す…それを宥めたのは母である洋子だった、例え遊希がどんな人物であろうと──榊家の大切な『家族』だという事は…絶対に揺らがないと…。

 

 

 

「早く、目を覚ましてよ…遊希兄…!」

 

 

 

 

 

 

 

『………父さん……あんた、いったい()()()()()なんだよ…!?』

扉を一枚隔てた治療室内…遊希の治療を引き受けた凌牙は傷付いた彼を前に動揺していた。

 

治療台に寝かされた遊希は…酷い怪我を負っていた。

落下時に打ち付けたのか、頭からは血を流し…剣を握っていた右腕は()()()()()()()()()()()ズタボロ、さらに松星に殴られた事で肋骨が数本折れ、肺に突き刺さっていた…。

 

 

だが……凌牙にはそれ以上に困惑していた事があった。

 

 

『……あの時の姿()……あれは「NEXUS」だった、しかもドン・サウザンドをぶっ倒した時の……記憶を失って、ユウスケ父さんも眠ってるなら…エクシーズチェンジもできないはずなのに…!しかも…普通の人間相手に使うなんて、考えられねぇ…!!』

遊希が試合で垣間見せた姿…それは英雄の絆の象徴、ランクアップした魂の姿…何故、遊希がその姿に変わったのか…凌牙には分からなかった…。

 

 

『とにかく…治さねぇと…!融合次元が攻めてくるのも、時間の問題なのに…!!』

凌牙は再び回復魔法を行使する…その脳裏には、零児との会話が蘇っていた…。

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

 

「凌牙、単刀直入に聞く……榊遊希とは、何者だ」

 

『………』

試合直後、レオ・コーポレーションの司令室…呼び出された凌牙と零児は1対1で向かい合っていた…。

 

 

「先ほどの榊遊希の『暴走』…あれは、リアルソリッドビジョンの範疇ではない……まるで、物語の中の『特殊能力』をそのまま現実世界に持ってきたような…理の外の力……あれは()()だ」

試合の様子を司令室で見守っていた零児…だが、映像越しであっても──空間を引き裂いた一撃の恐ろしさは、理解していた。

 

 

 

「今まで、君から聞いていた情報を総合すると…君にとって記憶を失う前の彼は大切な人物であり、次元戦争を解決する切り札になり得る存在だという……もう一度聞く、彼は…何者だ」

 

『…………榊遊希……その本当の名前は…「白波遊海」、俺達の世界で最強の決闘者(デュエリスト)であり英雄、デュエルモンスターズの精霊に愛された男………そして、俺の育ての()だ…!!』

 

「っ…!?」

凌牙の思わぬカミングアウトに零児は言葉を失う、凌牙の発した言葉…それはあまりにも情報量が多かった…。

 

 

 

『遊希は……父さんは、俺達の世界で「災厄」に立ち向かい、行方不明になった…!俺達は少ない手掛かりを集めて、この()()()に父さんがいる可能性を突き止めて……エクシーズ次元に不時着した……そして融合次元の侵攻に居合わせて…戦い続けてきたんだ…!』

 

「待て、その言い方は……凌牙、お前達は……いったい()()()()()()()()…!?」

 

()()()()()()…俺達は──俺達の世界を救う為に、戦いに来たんだ…!!』

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

『……つい、喋りすぎたかもしれねぇ…融合次元の事もあるのに…やっぱり()()()()()()()()()()()……くそっ、力が…足りねぇ…!』

零児との会話を回想していた凌牙は膝から崩れ落ち、苦しげに呼吸を整える……無尽蔵とも思える両親とは違い、凌牙の治療には限界があった…。

 

 

『せめて、璃緒を連れて来れれば……いや、融合次元の侵攻を考えたら…これが限界か……!』

中途半端な回復で力が尽きてしまった凌牙、その脳裏に妹の顔が浮かぶが…静かに首を振った。

 

 

ガラッ!

 

 

『邪魔するぞ……フン、酷い顔だな』

 

『っ…アンタ、は…!?』

その時、面会謝絶にしてあるはずの治療室の扉が開く……現れたのはシルバーのコートを纏い、鋭い目付きを持つ男──レオ・コーポレーションのライバルたる海馬コーポレーションの社長、海馬瀬人その人だった。

 

 

『そう警戒するな、()()()()……我が友の()()よ』

 

『なっ…!?なんで、俺の名前を…!?しかも、俺の事…!』

海馬の一言に凌牙は驚愕する…この次元に来て以降、凌牙は名字を名乗っていなかった…だが、驚くべきは───

 

 

 

『お前にだけ、話がある…お前の父を……『白波遊海』を──呼び戻す方法についてだ』

 

『……母さんの知る限り、この次元にはアンタはいないはずだ……その事も、教えてくれ』 

 

『いいだろう、お前ならば知る権利がある……()()が、何故()()()()に生きているのかを…!』

英雄の息子と英雄と共に歩んだ伝説の決闘者、決して交わらないはずの2人が……ついに邂逅した…!

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

「………どこだ、ここ…?僕は…デュエルをしてて……」

遊希はふと目を覚ました…だが、そこは見慣れない場所──廃墟となった石造りの教会のような場所だった。

 

 

「誰か……誰かいないのか!?」

遊希は声を張り上げる、返ってきたのは…反響した自分の声だけだった…。

 

「……探してみるしか、ないか…」

遊希は寝かされていた石段から起き上がり、歩き始めた…。

 

 

 

 

「なんだろう、この扉…?」

しばらく周囲を探していた遊希は教会の奥に続く、巨大な扉の前にいた…。

 

「……行ってみよう」

遊希は扉を力いっぱい押し開く…そしてギギギと重たい音と共に、扉は開いた…。

 

 

 

 

 

「……綺麗だな……」

扉の先…そこは祭壇のような場所だった、そこには時間を忘れさせる幻想的な光景が広がっている。

 

 

 

 

光に照らされた…巨大な神鳥、虹色の光、岩の竜、白き龍人が描かれたステンドグラス

 

そして…そのステンドグラスの光に照らされた祭壇の上には……巨大な水晶によって作られた──六角柱が鎮座していた。

 

 

 

 

 

「この水晶……何か、変だ」

幻想的な光景に圧倒されながらも遊希は水晶の柱の近くに辿り着く…そして、その異常さに気付いた。

 

 

透明だと思っていた水晶の中には封じ込められたように()()()()()が安置されている。

 

そして水晶には──黒色の棘のようなモノが突き刺さっていた。

 

 

「……誰が、こんな事──」

遊希は無意識に水晶へと右手を伸ばす、そして水晶に触れた瞬間……。

 

 

ゴウッ!!

 

 

「っぁ!?あ、あ…!があああっ!?!?」

右腕が炎に包まれた…!

 

 

 

「あ、アツイ熱いアツイ熱いィィ!?!?離れない!?なんで!?」

突如として燃え上がった右腕にパニックを起こす…咄嗟に地面を転がろうとしたが、()()()()()()()()()…少しずつ炎は燃え広がる…!!

 

「こ、このままじゃ、このままじゃ…っあああああ!!」

灼かれる痛みに苦しむ遊希…諦めかけたその時…!

 

 

 

ガッ!!

 

 

 

【愚かな…『好奇心は猫をも殺す』…そんな事も知らんのか?】

 

「ぐえっ…!?」

教会に響く低い男の声と共に、遊希へと衝撃が襲いかかる…転がった遊希が祭壇を見上げると…そこには遊希を蹴り飛ばしたらしい、ローブの男の姿があった…。

 

 

 

「貴方は、いったい…?」

 

【我か?我は……「番人」とでも名乗ろうか、榊遊希よ】

 

「番、人…?それよりも…僕の、名前…?」

遊希は『番人』と名乗った男に問いかける…遊希は男の声を知らなかったからだ。

 

 

【貴様は此処が何処かも解らぬようだな……此処はお前の精神の奥深く、俗に深層意識と呼ばれる場所だ……普通の人間ならば、認識する事もできぬだろうがな】

 

「深層意識…僕の……夢の、中…?」

 

【その認識でも良いだろう…大きくは変わらん、現実のお前は眠っているからな……】

番人の言葉から遊希はこの場所が『夢の中』だと認識する…番人は少し呆れているようだ…。

 

 

 

「番人……その水晶は、いったい…?」

 

【…此処はお前の無意識の中、理解しているはずだ……目を反らしている()()を】

 

「………僕の………白波遊海の、記憶…?」

 

【……()()()()、その通り…これは、お前がもっとも取り戻すべきモノであり───お前を()()()()()モノだ】

 

「なんだよ、それ……訳がわからない…」

 

【目覚めの時は近い、お前は決断を迫られる……()()()()()()()……精々、悔いのない選択をするがいい──】

 

「っ…まだ、はなし、は……」

意味深に遊希へと語りかける「番人」…少しずつその姿が、教会が薄れていく……否、遊希の体が目覚めようとしているのだ。

 

 

 

 

 

 

【さらばだ、()()()よ……お前の決断を…我は楽しませてもらおうか】

遊希が消えた教会で番人はフードを下ろす、そこには───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤と青の瞳が妖しく輝いていた…。



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Ep.23 融合次元からの闖入者

「遊希兄……オレ、どうしたらいいんだろう…」

 

「遊矢兄ちゃん!柚子お姉ちゃんのデュエル始まるよ!」

 

舞網チャンピオンシップス7日目…二回戦の2日目、遊矢達は柚子のデュエルの応援に来ていたが……遊矢だけは表情が暗かった、それは前日の勝鬨戦の影響もあったのだが…。

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

「うっ…う〜ん…あ、れ…?…遊矢…?柚子ちゃん…?」

 

「あっ…遊希兄!!」

 

「良かった…!」

遊矢と遊希のデュエルが終わった後の夜…遊希は目を覚ました、見慣れない部屋に戸惑っていたが…付き添っていてくれた2人の顔を見て安心したようだ…。

 

 

 

「遊矢…ごめん、デュエル…勝てなかったな……もう少し、僕が強かったら、よかったのに……」

 

「えっ、あ……遊希兄、覚えてない、のか…?」

 

「遊希さん……松星とのデュエル、勝ったんですよ…?」

 

「えっ…?」

窓の外を見てどれだけ時間が経ったのか悟った遊希は遊矢へと謝るが、遊矢と柚子の言葉に首を傾げる……遊希の記憶は地面に叩きつけられた所で途切れていたからだ。

 

 

「………もしかして、僕は…また……!?」

 

「……見た方が、早いかも……」

嫌な予感に顔を青褪めさせる遊希に柚子はデュエルダイジェストの様子を見せる……そこには恐れていた状況が映っていた…。

 

 

 

松星に強烈な拳を受け、谷底に落とされる自分

 

観客のブーイングを受けながらも反論する松星…その背後に現れた、鎧を纏った自分

 

そして…黒く染まった水晶の大剣を振るい、空に()を開けた…災厄のデュエルが……。

 

 

 

「…………()()………僕は、バケモノ…だったんだな……」

 

「ゆ、遊希さん…!?」

 

「遊希兄!そんな事…!」

 

「気休めはいいよ……僕は、()()()()()()()()()だ…相手を傷付けて…お客さん達を…こんなに怖がらせて…!!」

ダイジェストを見た遊希は顔を左手で覆い、涙を流す……デュエルに敗北した松星は正気を失い、映像に映り込んだ観客達の顔は恐怖に引き攣り…子ども達は泣いてしまっていた…。

 

 

「遊矢には、偉そうな事言ったのにな……僕が、それを実践できなきゃ…ダメじゃないか…!」

 

「遊希兄!まだ、取り返せるよ!3回戦で…今のデュエルをふっ飛ばすくらいの良いデュエルをすればいい!1回の失敗で落ち込むなんて…遊希兄らしくない!」

 

「遊矢…」

 

「そうよ!お客さん達も今回は梁山泊塾がやりすぎた!って雰囲気だったし……きっと大丈夫!」

 

「柚子ちゃん……2人とも、ありがとう」

落ち込む遊希に遊矢と柚子は精一杯元気付ける……そのおかげか、遊希の表情は少しだけ明るくなった…。

 

 

「そうだ…お医者さんは、なんて…?」

 

「頭を打ってるから、一晩泊まった方がいいって…母さんが着替え持ってきてくれた…フォウも一緒に連れて帰ってくれたよ」

 

「わかった……2人も、もう帰るんだ…柚子ちゃんは明日が試合だろ?体調を整えないと…遊矢、頼んだよ」

 

「ああ…行こう、柚子」

 

「うん…明日、頑張ります!」

 

「頑張れ、柚子ちゃん…テレビで応援してる」

医者からの言伝を伝えた遊矢と柚子は治療室を後にする、その背中を見届けた遊矢は左手で…()()()()()()()()()を触る…。

 

 

 

 

「……()()()()()()()()()()……」

遊希は枕元にあったデュエルディスクを手にして、とあるページを開く…そこには───

 

 

【ジュニアユース選手権 二回戦1日目 第4試合 亀の決闘塾 城之内克也対LDS 志島北斗  志島選手の欠場により城之内選手の不戦勝】

 

 

「……トーナメント……上手く、当たるといいなぁ……」

自分の()()を悟った遊希は一筋の涙を零した…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

「オレも、お客さんを怖がらせちゃったからな…遊希兄が言ったみたいにできればいいんだけど…」

柚子のデュエルを見ながら思い悩む遊矢…だが、彼らは知らなかった。

 

 

 

その裏でスタンダード次元を揺るがしかねない事件が起きていた事を…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「……榊遊矢が手にした『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』…そして、規格外の力を持つ榊遊希の『正体』……融合次元への問題の前に、また問題が増えたな…」

時は少し戻り…レオ・コーポレーションの司令室で零児は深いため息を吐いていた。

遊矢対勝鬨戦で『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』を目にした黒咲が遊矢に詰め寄りに行こうとするのを止め、現実離れした力を見せつけられた遊希対松星戦の後、凌牙にさらなる情報を聞かされ……零児は精神的に疲れていた。

 

 

「リアルソリッドビジョンではない『デュエルモンスターズの精霊』の力、だと?そんな非科学的な力が…本当にあるというのか…?それが榊遊希と凌牙の力の源………それがリアルソリッドビジョンで再現できればあるいは……」

遊希と凌牙の持つ力の正体を聞かされた零児は静かに考えに耽っていた…そんな時…。

 

 

 

『ここで試合予定の変更をお知らせします!この後予定されていた第4試合なのですが…LDS志島北斗選手の欠場により亀の決闘塾、城之内克也選手の不戦勝が決定しました!』

 

「……欠場だと?志島北斗はそんな男ではないはずだが…?」

ジュニアユースの実況をしていたニコの言葉に零児は怪訝な表情を見せる…エクシーズコースの主席である志島北斗は欠場するような人物ではないと知っていたからだ…。

 

 

「社長、今から3時間程前に…舞網市で高レベルの()()()()の反応を検知…発生時の監視カメラ映像も見つかりました…!」

 

「むっ…映せ!」

司令室長から報告を受けた零児は監視カメラの映像を確認する、そこには物陰に追い詰められた北斗がフードを被った人物に紫色の光を浴びせられ……カードと化してしまう瞬間が映されていた…!

 

 

「……巻き戻せ」

 

「はっ……これは…!?()()()!?」

 

「いや……()()ではない…」

零児の指示で映像を巻き戻す中島…そして、フードの人物の顔を確認する……そこに映っていたのは、柚子に似た顔の少女だった…!

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

「えっと……オレを呼び出したのは、あんたか?」

 

『ふっ…!』

 

「っ…!?」

舞網チャンピオンシップス・ユースクラスのメイン会場、舞網スタジアム…その地下駐車場に試合を終えた『魔導』使いの桜木ユウがやって来る。

その彼の前に現れたのはコートで姿を隠した大柄な男と、小柄な人物…そして小柄な人物はコートを脱ぎ去り、デュエルディスクを展開する…それは髪をポニーテールで纏め、赤い軍服を着た少女だった…!

 

 

 

「キミを呼んだのは()だ…すまなかったな」

 

「しゃ、社長さん…!?」

その時、静かな声が駐車場に響く…それは赤いマフラーをたなびかせた眼鏡の男──赤馬零児だった、彼は桜木と謎の少女の間に入る…。

 

 

「キミはもう行きたまえ…今日のデュエルは見事だった、今後も期待している」

 

「あ、ありがとうございます…?」

 

『待っ…!「行かせはしない」っ…離せ!!』

桜木にこの場を立ち去るように伝える零児…謎の少女は桜木に掴みかかろうとしたが…零児に腕を掴まれ、無理やりに止められる…。

 

 

零児はこの()()()()()()()、自ら出張って来たのだ…!

 

 

 

 

『邪魔立てするなら、お前から()()する!!』

 

『それは私が引き受けます…!』

 

『っ…!控えろ、バレット!!』

 

『貴女に降りかかる火の粉を払うのが、プロフェッサーから与えられた()()使()()…!』

 

『っ…!』

赤馬の腕から逃れた少女は勇猛に零児へと挑もうとする…しかし、それを止めたのはコートを脱ぎ捨てた大柄の男……左目の傷を黒い眼帯で隠し、胸元に大きな傷を持った青髪の男…バレットだった。

 

 

「プロフェッサーとは…()()()()の事で間違いないな?ならば、お前達は……()()()()()か」

 

『………!』

バレットは無言でデュエルディスクを構え…零児も同じくデュエルディスクを構える!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

デュエルダイジェスト 零児対バレット

 

 

 

 

バレットは『獣闘機(ビースト・ボーグ)』という獣戦士族と機械族のハイブリットデッキ、さらに『勲章』と付く魔法カードを使い、さながら絨毯爆撃のように零児を攻め立てる…だが、零児は動じない。

 

新たに開発した異次元の王…『DDD』、エクシーズモンスター・狙撃手の王『狙撃王テル』や融合モンスター・神託を受けし聖女『神託王ダルク』を使い、あっという間に戦況をひっくり返す。

 

そしてバレットは相討ちに持ち込むべく『名誉の獣闘機勲章』による効果ダメージを狙ったが『神託王ダルク』には効果ダメージを回復に変える効果があり失敗…零児はデュエル戦士に対する()()で初めての勝利を収めたのだった…。

 

 

バレットLP0

 

零児WIN!

 

 

 

 

 

『バレットを倒すとは…やるな、次は必ず──』

 

「待つんだ、()()()!!」

バレットの敗北を見届けた少女はその場を去ろうとする……だが、零児は()()()()()()()()()…!

 

 

 

「そう、キミはセレナ……柊柚子ではない」

 

『ヒイラギ・ユズ…?』

 

「この次元にいる、キミによく似た少女の事だ…が、キミと彼女が()()()()()()()()はわからない…一先ずは置いておこう……私の名は赤馬零児、赤馬零王の息子だ……覚えていないか?私は…以前、キミと会っている…融合次元の『アカデミア』で…」

 

『………』

少女…セレナへと名乗る零児、彼は一度だけ、融合次元へと跳んだ事があったのだ。

 

 

「キミは赤馬零王に1番、目を掛けられていたデュエリストだ…そのキミが私達の世界に現れた……何を目的に?赤馬零王にその腕を見込まれ、侵略の尖兵として送り込まれたか?それとも──」

 

『赤馬零王など()()()()!!私は自分の意思で此処に来た!誰の命令も受けずに……!お前の事は()()()()()()()()…次元を超えて我々の世界にやって来た…だが、そのせいで私は武勲を上げられずに!屋敷の中で息が詰まるような生活を強いられてきたんだ!!』

零児の問いかけを否定するセレナ…その因縁は3年前へと遡る。

 

 

 

当時、零児は行方を晦ませてしまった父の背中を追い、彼の研究データを調べていた…その中で見つけたのが『別次元』への転移装置だった。

零児はその装置を起動…辿り着いたのが融合次元だった、そして探索する中でアカデミアの教師に追われていたセレナを発見、助太刀して彼女を逃がそうとした。

 

しかし、そこに父である零王が現れ零児とセレナを捕縛…零児はスタンダードへと強制送還されてしまった…。

だが、その際…零王の口から『リアルソリッドビジョンを用いたエクシーズ次元やシンクロ次元への侵攻計画』『世界を1つにする計画』を聞かされた零児はレオ・コーポレーションの社長となり…父の野望を止め、スタンダード次元を守る為に強いデュエリストを育ててきたのだ…!

 

 

 

 

「私はこの3年間、赤馬零王の野望を止める為の準備を整えてきた……レオ・コーポレーションの社長に就任したのもその為、有力なデュエリストの育成にも力を入れてきた…セレナ、私と組む気はないか?」

 

『組む?』

 

「そうだ…共に赤馬零王から……アカデミアからこの世界を──」

 

『……()()()()

セレナに対融合次元の同盟を持ち掛ける零児…だが、セレナはそれを一言で切り捨てた。

 

 

『私がこの世界に来たのは「エクシーズの残党がいる」と聞いたからだ、アカデミアからの潜入者を倒すとは…相当の()()()、そいつらを倒せば…赤馬零王に()()()()()()()()()()()()()()…!』

セレナは融合次元に戻された素良が「エクシーズ次元の残党」に負けた事を知り…その残党を倒せば憧れた『武勲』を立てる事ができると思い、バレットと共にアカデミアから抜け出して来たのだ…。

 

なお、バレットは本来『監視役』としてセレナを諌める立場なのだが…功を焦るあまりにセレナの話に乗ってしまったのだ。

 

 

『この次元で最初に狙ったエクシーズ使いは弱すぎる…!期待ハズレだった…コイツではない!』

 

「志島北斗…」

セレナはカード化された北斗を零児へと投げ渡す…カードの中の彼の表情は恐怖に歪んでいた…。

 

 

「……先ほどキミが狙おうとしていた桜木ユウも()()、とだけ言っておこう……」

 

『では何処にいる!エクシーズ次元のデュエリストは!!』

 

「エクシーズ次元のデュエリスト……()()()()

 

『ならば、自分で探す…!』

エクシーズ次元のデュエリストの行方を問い質すセレナに対し、零児はとぼける…万が一の可能性を恐れたのだ。

 

 

 

「もし、キミがこの街で騒乱を起こそうと言うのなら……私は見逃す訳にはいかない…キミが、赤馬零王の命令で来たのではないとしても…!私の提案に乗らないなら、敵と見做す!」

 

『ぐっ…そうは、させんぞ…!!』

 

キィン…ビビーッ!!

 

「貴様、何をした…!?」

セレナを捕らえようとする零児…だが、その時…失神していたバレットが目覚め、デュエルディスクのプログラムを作動させる!

 

 

 

『これで、我々が何処にいるのか()()()()()()()()()()──!』

 

キン───

 

『くっ…アカデミアに強制送還されたか…!余計な事を!』

 

「強制送還だと?」

 

『これで…アカデミアから大挙して私を連れ戻す為の()()が来る……3年前、お前が見たように…!』

 

「っ─!!」

バレットが作動させたのはセレナの居場所をアカデミアに伝えるプログラム…それにより、アカデミアの()()()()()()がスタンダード次元へと攻めてくる事が確実となってしまったのだ…!

 

 

『そうなれば、()()などというレベルではなくなる……だが、私は捕まりはしない!!追手を倒し、エクシーズの残党を倒せば…私の力を認めざるを得まい!』

 

「くっ……私だ!大至急、幹部を招集しろ…!()()()が来てしまった…!」

歯を食い縛りながらセレナの背中を見送る零児…彼はすぐに対策に取り掛からねばならなかった…!

 

 

 

 

 

Side遊希

 

 

 

『デュエルニュースのお時間です!連日、熱戦が繰り広げられている「舞網チャンピオンシップス」のジュニアユースクラスでは、今日で2回戦の全ての試合が終わり()()()2()0()が出揃いました!』

 

「……ベスト20?ずいぶん中途半端な…確かに参加者は多かったけど……」

夕方、家へと戻ってきた遊希はデュエルニュースを見ていた…そこで3回戦出場者が発表されるのだ。

 

 

『それではその顔ぶれをご紹介します、まずは一人目は遊勝塾の柊柚子選手!二人目は同じく遊勝塾、エンタメデュエルでお馴染み、ペンデュラム召喚で名をはせた榊遊矢選手!そして同じく遊勝塾、もう1人のペンデュラム使い!白猫のフォウくんを連れて戦う榊遊希選手……』

 

「……相変わらず、写真写りが悪いなぁ……」

テレビに映った自身の姿に苦笑しながら遊希はテレビを見る…他には権現坂や梁山泊塾から2人、海外のデュエル塾ナイツ・オブ・デュエルズから3人、風魔デュエル塾からも2人…他にも遊矢と戦った茂古田未知夫や釣り人のようなデュエリスト…そして…

 

 

「あっ、聖目君……彼も3回戦に出るんだ、すごいなぁ」

テレビに映ったのは海馬社長に紹介された舞網アドベンチャースクールの探検家デュエリスト…見知った顔を見た遊希は静かに喜ぶ、そして……

 

『……そして亀の決闘塾所属の豪運デュエリスト、城之内克也選手…ここからは最多出場を誇るLDS──』

 

「克也……それに、凌牙……」

映し出されたのは親友、そして…自分の事を知るらしい凌牙……その顔を見た遊希は表情を曇らせる。

 

「……凌牙、きみとは…話さなきゃならない事がある……でも、今は……」

選手紹介を見終えた遊希は自室へと向かう…最後のデッキ調整、そして…()()()()をする為に…。

 

 

 

 

──お前は決断を迫られる……生きるか、死ぬか……精々、悔いのない選択をするがいい──

 

 

 

 

 

「………生きるか、死ぬか…か……」

現実と夢の狭間で言われた言葉が…遊希の耳に残っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよ…始まるのね」

 

「いえ、()()()()()()()……敵の侵入は、この街で食い止めて見せます…必ず…!」

レオ・コーポレーション社長室…そこで零児は妃美香を前に決意を固める、融合次元の侵攻による影響を最小限に抑える為に…。

 



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Ep.24 バトルロイヤル、スタート!

「おはよう遊矢!調子はどうだ?」

 

「おはよう遊希兄!オレは大丈夫!……でも……」

 

「……気にしないでいいさ、僕は…勝つにしても、負けるにしても…やれる事をやるだけだから…」

 

3回戦開始日の朝、リビングで遊希と遊矢は挨拶を交わす…遊矢は前日の柚子のデュエルを見て『デュエルは人を楽しませるモノ』という原初に立ち返って元気を取り戻していたが…遊希は()()()()だった。

遊希は松星とのデュエルから目覚めた後、脳や神経の異常は見られないのに…利き手である右腕全体に力が入らなくなってしまっていた、本来なら棄権レベルの状態だが…遊希は3回戦に臨むと決意していた。

 

 

「それより…見てよ!海馬社長に直して貰ったデュエルディスクをジャケットに付けられるようにしたんだ!これで左腕だけでも戦える!」

 

「あっ…すごいじゃん!でも…ペンデュラムゾーンはどうするんだ?」

心配そうな遊矢に遊希は新たな装備を見せる…それは青のジャケットを改造し、遊希本来のデュエルディスクを胸元に提げられるようにしたモノ……だが、デュエルディスクはフィールドゾーンをリアルソリッドビジョンで展開するモノではなく、機械式…遊矢はペンデュラム召喚の心配をするが…。

 

「それなら大丈夫!デュエルディスクの一番左端と右端のフィールドゾーンのスライド横からリアルソリッドビジョンのペンデュラムゾーンが出るように海馬社長が改造してくれたんだ!」

 

「へぇ〜!海馬コーポレーションすごいじゃん!!流石、世界一の大企業!」

展開されたペンデュラムゾーンを見て世界一の技術力に驚く遊矢なのだった。

 

 

………

 

 

「それじゃあ…いってきます!」

 

「いってきま〜す!」

 

《…フォウ!》

 

「いってらっしゃい!アタシ達も後で応援に行くからね〜!」

朝食を終えた遊矢と遊希、そしてフォウは洋子の見送りを受けて家を出る…3回戦の出場者は早めに会場入りするようにと連絡があったのだ。

 

 

「……遊矢、もし三回戦で当たっても恨みっこナシだからな?可能性は低いと思うけど…」

 

「もちろん!その時はすっごいエンタメデュエルで会場を盛り上げようよ!」

 

「そうだね!」

会場へ向かいながら他愛もない話をする遊希と遊矢…そんな時だった。

 

 

 

『おいおーい!オレとの約束を忘れんなっての!遊希と決勝で戦うのは…この城之内様だぜ?』

 

「あっ…おはよう克也!もちろんさ!」

 

「おはよう城之内さん!」

 

『おはようさん!2人とも!』

2人に声を掛けたのは城之内だった…初の三回戦出場でテンションMAXである。

 

 

「聞いたよ?一回戦もニ回戦もすごい運良く勝ち抜けたって…」

 

『そうなんだよ〜!一回戦のインセクター羽蛾の野郎、子供を使ってオレのデッキにカードを仕込みやがって…でも、たまたま入れてた「鉄の騎士ギアフリード」のおかげで逆転!二回戦は……優勝候補の志島の奴がオレから逃げ出しやがった!……なんだか不完全燃焼なんだよな〜……』

 

「北斗が…?なんで欠場なんて…この前は自信満々だったのに…」

 

『さぁな?腹でも壊したんじゃねぇか?……とにかく!遊希と戦うのはこのオレだぁ!』

 

「いいや、僕だって負けないさ…!お互いに頑張ろう!」

 

『おうよ!』

 

《フォーウ!》

他愛もない話で盛り上がりながら、LDSのスタジアムに向かう3人なのだった…。

 

 

 

 

 

 

『皆さま!お待たせ致しました…ジュニアユースクラスを勝ち上がった20名の勇者達が出揃いました!!』

 

大会8日目…晴天の舞網市の空に花火が打ち上がる、舞網チャンピオンシップスを勝ち抜いた20人はLDSのスタジアムに集められていた…!

 

 

「あれ…?黒咲が来てないわ…」

 

「凌牙もいない…なんで…?」

 

「何処に行ったんだ?」

デュエルコートを見回す柚子と遊矢、そして遊希…集められたデュエリストの中に黒咲と凌牙の姿が見えなかったのだ…。

 

 

 

『今大会では20名の勇者達が3回戦へと駒を進めました…しかし!例年通り、トーナメントで戦うとシード権などで有利不利が発生してしまいます…そこで!今回は趣向を変え…20名での()()()()()()()を行ないます!!』

 

 

「「『『バトルロイヤル!?』』」」

ニコの思わぬ宣言に選手と観客の驚愕の声が重なった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「街中でのバトルロイヤルとは…考えましたね、零児さん」

 

「いま、『他次元からの侵入者が現れる』と知れば…街はパニックになりかねない…そこで、ジュニアユースの20名を街に放ち──そのバトルロイヤルに乗じて敵を討つ、実際に迎撃するのはユースクラスの8名、そして凌牙…キミだ」

 

『……対融合次元の()()()()()()って訳か……』

レオ・コーポレーション、社長室…そこには零児と妃美香、そしてユースクラスでベスト8になったLDSのデュエリスト達…そして黒咲と凌牙が集められていた。

 

融合次元の侵入を前に零児は伝手を使って街を封鎖、さらに外出禁止令またはスタジアムに街の住民達を集める事で混乱なく、舞網の住民達を守ろうとしていた…この街に深く根付くレオ・コーポレーションだからできる荒業である。

 

 

「LDSの名誉の為、そして…私達の世界を守る為に、頼みましたよ…!」

 

「「「「はい!!」」」」

日美香や零児から事情を聞かされたユース達は強く頷く…!

 

 

 

『黒咲、お前はジュニアユースのデュエリストの中から「ランサーズ」に相応しい奴を見出してくれ…俺は迎撃しながらだから、上手く評価できるか不安だからな…もちろん、お前も……』

 

『分かっている…目の前に融合の奴らが現れたら………思い知らせるだけだ』

凌牙と黒咲は別働隊…参加者として戦いながら、融合次元に対する『槍』を探す任務を任されていた…無論、迎撃も熟しながらである。

 

『(この戦いでおそらく、()()()()()は左右される……頼む、()()()()()だけは起きないでくれ…!)』

 

 

 

 

「でも…意外でしたね、海馬コーポレーションがバトルロイヤルに()()()()するというのは……零児さん、融合次元の事を話したの?」

 

「いいえ……同じ街にある大企業として、筋を通す為に連絡したのですが………海馬瀬人、何を考えている…?」

そして零児達は意外な協力者について首を傾げていた…。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「海馬君、君が僕を呼び出すなんて珍しいね?しかも、舞網チャンピオンシップの三回戦の日に…」

 

『フン、()()()が来たから…お前に声を掛けたのだ』

同じ頃、海馬コーポレーション・社長室…そこには海馬、そして呼び出された遊戯の姿があった…モニターには遊希達のいるLDSセンターコートの様子が映されている。

 

 

「磯野さんから聞いたよ?レオ・コーポレーションの要請に応じて舞網市の封鎖に全面協力、そしてKCスタジアムを舞網チャンピオンシップのパブリックビューイングの会場として開放……いったい何があったの?」

 

『……いい加減、お前も()()()()……我らの使()()を…』

 

「海馬君…?」

本来ならば犬猿の仲であるレオ・コーポレーションとKCの協力体制に疑問を抱く遊戯…そして、海馬は社長椅子に座ったまま、遊戯を鋭く睨む…!

 

 

『思い出せ、俺達の……()()()との約束を!!』

 

「あて、む……っ──!!」

『アテム』……その名を聞いた時、遊戯は電流が走ったような感覚に頭を押さえる……そして、()()を思い出した…!

 

 

 

「っ……海馬君、()()は…見つかったの…?」

 

『ようやく思い出したようだな……状況は最悪だ、下手をすればズァークの復活前に──()()()()()()()全てが滅びる、それを止められるのは俺とお前……そして、遊海の息子だけだ…!』

記憶が混乱する中、海馬に状況を訊ねる()()()()()武藤遊戯……海馬はスタジアムの遊希を睨みながら、状況を伝えた…。

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

『それでは、バトルロイヤルのルールを説明いたします!!』

ニコの説明がスタジアムに響く、その内容は──

 

 

・開始時間は正午から明日の正午までの24時間

 

・舞網市そのものに火山・古代遺跡・氷山・ジャングルからなる4つのエリアを内包したアクションフィールド『ワンダー・カルテット』が展開される。

 

・さらに、アクションカードと共にレオ・コーポレーション製の量産型ペンデュラムカード『PS(ペンデュラムスタチュー)』カードがばら撒かれる…それをアンティルール等で取り合い、相手から奪った枚数が多い上位8人が準々決勝に進出(自分が拾ったものは含まない、拾ったペンデュラムカードはデッキに加える事ができる。)

 

・デュエルを行うのは2枚以上のペンデュラムカードを拾ってから、負けても再びペンデュラムカードを拾えば復帰可能。

 

 

 

 

『全員がペンデュラム使いかぁ!ずいぶんと太っ腹だな!なっ、遊希!』

 

「そうだね…!僕も、うかうかしてられないや…!」

『全員がペンデュラム使い』となる状況を前に、城之内と遊希は闘志を高める…!

 

 

『開始時間が間近に迫ってまいりました…!参加選手はデュエルディスクのご用意を!』

 

「よしっ…!」

 

「さぁ…いくぞ!」

ニコの宣言と共に全員がデュエルディスクを展開する!

 

 

『ゲートオープン!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ!これぞデュエルの最強進化系アクショ〜ン!デュエル!!』

ニコの宣言と共にデュエリスト達が舞網の街に飛び出していく……此処にバトルロイヤルが始まった…!

 

 

 

 

「柚子!気をつけろよ!」

 

「うん!遊矢と遊希さんも!」

 

「また後で会おう!」

遊矢達3人もペンデュラムカードを探す為に散らばっていく……そして、それぞれの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

@火山エリア

 

 

街全体に設置されたリアルソリッドビジョン投影機によって風景が塗り潰されていく…遊矢がいたオフィスエリアは火山と溶岩が支配する『火山』エリアへと変わっていた…。

 

 

 

『さぁ、来い…!すぐに引きずり込んでやる…!』

 

『敗北という闇になぁ…!』

 

「っ…!」

その火山エリアで遊矢は梁山泊塾の塾生、梅杉・竹田による2対1のデュエルを強いられていた。

そのデュエルの中で自身のトラウマとも言える勝鬨戦の事が過ぎり、全力を出せない遊矢は『PS』を使いこなし、グレーゾーン戦術を駆使する梁山泊塾に少しずつ追い詰められていく…そんな時──!

 

 

 

「独り占めはズルいなぁ!ボクも混ぜてよ!!『Emダメージ・ジャグラー』の効果発動!このカードを手札から捨てて『覇嵐星フウジン』の効果ダメージを発生させる効果を無効にする!」

 

 

【乱入ペナルティ!2000ポイント!!】

 

オゥノォォォォッ!?

 

「き、キミは…?」

 

「ボクはLDSブロードウェイ校のデニス!…ちょっと出オチ気味だけど、ヨロシク!」

遊矢の窮地を救う形で現れたのはアメリカからの留学生デニス・マックフィールド…彼は本場アメリカ仕込みのサーカスのようなエンタメデュエルで遊矢をアシストする…そして…!

 

 

「漆黒の闇より…愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!!いま、降臨せよ!エクシーズ召喚!!現れろ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」」

 

 

デニスの言葉によってトラウマを振り払った遊矢は反逆の牙を呼び出す、そしてデニスのエクシーズモンスター『Emトラピーズ・マジシャン』による2回攻撃を付与する援護を受け、梁山泊塾の2人を乗り越えたのだった…。

 

 

「やったな!遊矢!」

 

「ああ、最高のエンタメデュエルだった!まるで…父さんと一緒に戦ってるみたいだったよ!」

 

「ふふっ…ボクも一緒に戦えてよかったよ!尊敬する榊遊勝のJrと!」

遊勝を憧れの人と呼んだデニス…遊矢は再戦を約束して、彼と別れたのだった…。

 

 

 

 

 

 

@氷山エリア

 

 

海浜地区や倉庫街が変化し、冷たい風が吹きすさぶ『氷山』エリア…そこでは、2つの戦いが行われていた。

 

 

 

1つはLDSアナトリア校から融合コースへと留学してきた片言の日本語の天真爛漫なアラビア少年ハリルと柚子のデュエル、融合コースの主席である真澄を倒した柚子と寒い中、熱い戦いを繰り広げていた、のだが…。

 

 

『バトルデース!「パープルランプ」でダイレクトアタッーク!』

 

「アクションカード…!とっ……きゃあああ!?」

 

 

ゴッツーン!!

 

 

『きゃああ!?何事!?』

 

「柚子!?」

 

「いたた……って、権現坂!?」

アクションカードを取った拍子に氷山から投げ出され…その下で戦っていた権現坂、そしてLDSノルディック校からの留学生、北欧の防寒着を着た少女オルガとのデュエルに乱入する形になってしまい──期せずして権現坂とのタッグマッチとなってしまった。

 

 

そして、始まったタッグマッチ…オルガは既にライフが少ない柚子を集中的に狙うが…権現坂は「超重武者タイマ-2」を使い、柚子を庇う…。

そして善戦した権現坂だったが…ハリルの『ランプの炎精ファイヤー・ジーン』の効果ダメージを受けてリタイア…しかし、そのバトンはしっかりと柚子に繋がり…『幻奏の華歌聖プルームディーバ』と魔法カードの効果、そして『融合解除』によるコンボで勝利を掴んだのだった…。

 

 

 

 

 

 

@古代遺跡エリア

 

 

高速道路周辺が変化した『古代遺跡』エリア…そこでは仲間の仇討ちを狙うナイト・オブ・デュエルズと黒咲のデュエルが行われていたが……その一角では別のデュエルが行われていた。

 

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

遊希LP4000

聖目悟LP4000

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「僕はスケール1の『龍脈の魔術師』とスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

PENDULUM!!

 

遊希の背後の光の柱の中に少年魔術師と一本角を持つ緑のドラゴンが浮かび上がる!

 

 

「揺れろ!希望のペンデュラム…全能の軌跡よ、歴史を刻め!ペンデュラム召喚!手札からレベル7『降竜の魔術師』!そして二色の眼揺らめく幻影『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!」

赤色のペンデュラムが揺れ動く、そして竜の意匠のローブを纏った女性魔術師と幻影のオッドアイズが現れる! ATK2400 ATK2500

 

 

「そして僕はレベル7の『降竜の魔術師』と『オッドアイズファントムドラゴン』の2体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!絶対零度に眠りし龍よ…その静寂なる力を開放せよ!!来い!ランク7!幻影の氷龍…『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!!」

光の銀河が爆発し、周囲に凍りついた風が吹き荒ぶ…そして氷を纏いし二色の眼のドラゴンが現れる! ATK2800

 

 

「僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊希LP4000

オッドアイズアブソリュート (P 龍脈 ミラージュ)伏せ1 手札0

 

 

 

『ペンデュラム召喚からのエクシーズ召喚…流石だね…!でも、今回の私は一味違うぞ!』

 

 

 

『私のターン、ドロー!』

『よし!私は手札のスケール1の「PS-レッド・デビル」とスケール10の「PS-イエロー・スカラベ」でペンデュラムスケールをセッティング!!』

 

PENDULUM!!

 

探検家服の青年の背後に悪魔の石像と緑の宝玉が輝く虫の石像が浮かび上がる!

 

『いくぞ〜!ペンデュラム召喚!!手札から現われろ!レベル6「聖刻龍─トフェニドラゴン」!「聖刻龍─シユウドラゴン」!そして「龍王の聖刻印」!』

頭上に開いた光の扉の中からそれぞれ白と青のウジャト眼を刻んだドラゴン、そして紺色のウジャト眼を刻んだ月光石が現れる! 

ATK2100 ATK2200 DEF0

 

 

『ペンデュラム召喚成功!からのー!私はレベル6の「トフェニドラゴン」と「シユウドラゴン」の2体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!聖なる眼を刻みし龍王よ!今こそ龍を統べよ!ランク6!「聖刻龍王アトゥムス」!!』

光の銀河の爆発の中から紫のウジャト眼を刻んだ龍王が現われる! ATK2400

 

「ペンデュラムからのエクシーズ召喚…!しかも聖刻の新しいモンスターか!」

 

 

『そう!この前のデュエルの後、海馬社長から頂いたのさ!「アトゥムス」の効果発動!ORUを1つ使い!デッキからドラゴン族モンスター「神龍の聖刻印」を攻守0にして特殊召喚!』

龍王の導きによって赤いウジャト眼を刻む太陽石が現れる! DEF0

 

『そして…これが新しい力だ!魔法カード「融合」を発動!フィールドで通常モンスターとして扱う「龍王の聖刻印」と通常モンスター「神龍の聖刻印」を融合!夜を見守る月光石よ!昼を照らす太陽石よ!今こそ交わりて始祖の竜を呼び出さん!融合召喚!「始祖竜ワイアーム」!!』

融合の渦の中から灰色の巨大なワイバーンが現れる! ATK2700

 

 

「融合召喚まで…でも、攻撃力は『アブソリュート』の方が上だよ!それに……」

 

『それはどうかな…!バトルだ!「ワイアーム」で「オッドアイズアブソリュートドラゴン」を攻撃!さらにアクションマジック「バイアタック」を発動!このターンの間、「ワイアーム」の攻撃力は2倍になる!』

聖目は手にしていた鞭でアクションカードを獲得、遊希に攻撃を仕掛ける!

 

ワイアームATK2700→5400

 

 

「そこだ!『アブソリュート』の効果発動!モンスターが攻撃してきた時、ORUを1つ使い!その攻撃を無効にする!」

 

『無駄だ!「ワイアーム」は通常モンスター以外との戦闘では破壊されず、このカード以外のモンスター効果を受けない!吹っ飛ばせ!』

 

「なにっ!?」

氷の障壁を張るオッドアイズ…だが、ワイアームはそれを強引に突破する!

 

 

「でも…まだだ!『降竜の魔術師』をエクシーズ素材としたモンスターがドラゴン族モンスターとバトルする時!その攻撃力は2倍になる!」

 

『なんだって!?』

 

「受けてみろ!氷結のミラージュ・スパイラル!!」

 

『うおっ…!?』

氷の障壁を砕いてオッドアイズに襲いかかるワイアーム…しかし、それは氷に映った鏡像…背後から放たれた氷結の息吹がワイアームを撃ち落とす!

 

オッドアイズアブソリュート ATK2800→5600

 

聖目LP4000→3800

 

 

「さらに『アブソリュート』の効果発動!ORUを使う効果を発動した後!自分の手札または墓地から『オッドアイズ』モンスターを特殊召喚できる!復活せよ!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

さらに氷を割り砕き、幻影のオッドアイズが復活する! ATK2500

 

 

『くっ…ドラゴンが2体に…すごい効果だ…!効果を発動した「アトゥムス」は攻撃できない!私はこれでターンエンド!』

 

聖目LP3800

ワイアーム アトゥムス (P デビル スカラベ) 手札0

 

 

 

「(『ワイアーム』の効果モンスターに対する耐性はすごい…突破するには魔法・罠による突破か……上から、ねじ伏せる!)」

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「────よし!魔法カード『ペンデュラム・アライズ』を発動!フィールドの『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』を墓地に送り!デッキから同じレベルのペンデュラムモンスター『法眼の魔術師』を特殊召喚!」

 

『「オッドアイズ」を自分で!?』

オッドアイズが消え去り、摩尼車の杖を持つ魔術師が現れる! DEF2500

 

 

『そしてフィールドから墓地に送られたペンデュラムモンスターはエクストラデッキへ!再び揺れろ、希望のペンデュラム!ペンデュラム召喚!「オッドアイズ・ファントム・ドラゴン」!!』

ペンデュラムの導きによって再び幻影のオッドアイズが現れる! ATK2500

 

「バトルだ!『アブソリュート』で『ワイアーム』を攻撃!さらにドラゴン族とバトルする時、攻撃力は2倍になる!氷結のスパイラル・ブリザード!!」

 

『だが、「ワイアーム」は効果モンスターとの戦闘では破壊されない!ぐううっ!』

氷結の息吹が聖目にダメージを与える!

 

アブソリュートATK2800→5600

 

聖目LP3800→900

 

 

「続けて『オッドアイズファントムドラゴン』で『アトゥムス』を攻撃!夢幻のスパイラル・フレイム!!」

 

『させるかぁ!うおおっ!!』

聖目は遺跡の一部に鞭を巻き付け、ターザンのように移動…アクションカードを掴み取る!

 

「アクションマジック『奇跡』!モンスターの破壊を無効にして、バトルダメージを半分にする!」

アトゥムスの展開した魔法陣がダメージを半減する!

 

 

聖目LP900→850

 

 

「『オッドアイズファントムドラゴン』の効果発動!ペンデュラム召喚されたこのモンスターが戦闘ダメージを与えた時!ペンデュラムゾーンの『オッドアイズ』1枚につき1200ダメージを与える!幻視の力──アトミック・フォース!!」

 

『しまっ、その為にペンデュラム召喚を!うわあああ!?』

ペンデュラムスケールから放たれた火炎がライフを削りきった…!

 

 

聖目LP 0

 

遊希WIN!

 

 

 

 

『だああっ…また負けた!悔しいなぁ…はい!掛け金のペンデュラムカード2枚!』

 

「ありがとう、いいデュエルだった!」

デュエルを終え、遊希と聖目は晴れやかな顔で握手を交わす。

 

 

「……アドバイスなんだけどさ、無理にペンデュラムカードを使わなくてもいいんじゃないか?前に戦った罠との組み合わせの方が強くて嫌らしかったよ?」

 

『嫌らしいって……いや、そうか!ペンデュラムに頼らなくても、私は戦っていけるって事か!じゃあ、ベスト8でまた会おう!その時にリベンジだ!』

 

「……ああ!きっと、また!」

2人は再戦を約束し、再びペンデュラムカード探しへと向かった…。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…ふぅ…流石に、街全体がフィールドっていうのは…骨が折れるなぁ…あ、ペンデュラムカードみっけ……ふぅ」

 

《フォーウ…》

遊希は汗を流しながらペンデュラムカードを探し歩く…体力が落ちている事もあり、探すだけでも一苦労である。

 

 

「次は…火山エリアの方に行ってみようか?いや……凌牙を探すなら、彼が得意そうな氷山エリアか…ジャングルエリアにも川があったな……」

そして、遊希は探索しながら凌牙の事も探していた……彼と話をする為に…。

 

 

 

『おっ…遊希みーつけた!』

 

「あっ、克也!調子はどう?」

 

『まぁまぁだな!ペンデュラムカードは自分で拾った5枚だけ!忍者っぽい奴を見たんだけど…あんまり速くて追いつけなかったぜ…』

 

「あはは…流石は風魔デュエル塾…僕も自分で取った3枚とデュエルで手に入れた2枚の計5枚だね」

 

『そっちは幸先がいいな!』

そんな時、火山エリアと古代遺跡エリアの狭間で遊希と城之内が遭遇する…お互いに戦果は五分といった所である。

 

 

『遊希!せっかくなら一戦やらねぇか?賭けるのはお互い1枚で!だって…()()()()だぜ?』

 

「……ああ、ここは……」

遊希は辺りを見回す…ソリッドビジョンに覆われていたが、そこは時計台のある噴水広場……2人や遊戯達にとっての思い出の場所だったからだ。

 

 

「よし……やろう!」

 

『ヘヘっ…決勝で戦う前の腕慣らしだ!いくぜ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【へぇ〜ここがスタンダードねぇ……遺跡?】

 

【任務を忘れるな、我らの目的はセレナを連れ戻す事だ】

 

【そんな堅い事言うなって…交戦許可も出てるんだから…ちょっと余計に()()()っていいだろう…?ハハハハハハ!!】

 

 

災厄の目覚めは──すぐそこに───



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Ep.25 侵略の尖兵─怒りの覚醒─

こんにちは!S,Kです!久々に筆が乗っております!

ついに始まった混沌のバトルロイヤル…そして、忍び寄るオベリスクフォースの影……悪意の連鎖が抗えぬ災厄を呼び覚ます…。

急転直下の最新話を…どうぞ!!


※オベリスクフォースファンの方、ごめんなさい。


『「デュエル!!」』

 

古代遺跡と火山エリアの狭間…そこで遭遇した遊希と城之内は久しぶりのデュエルを行おうとしていた…。

 

 

城之内LP4000

遊希LP4000

 

 

『いくぜぇ!オレのターン!』

『来たぜ…ペンデュラムカード!!オレはスケール7の「PS-レッドエンジェル」とスケール12の「PS-ブラック・サン」でペンデュラムスケールをセッティング!!』

 

「え"っ…克也!そのスケールは──」

 

PENDULUM??

 

城之内の背後に天使の石像と黒い太陽のような石像が浮かび上がる!

 

 

 

『いくぜ!震えろペンデュラム!ここからが城之内タイムだ!ペンデュラムしょ──【ERROR】──へっ…?』

 

「………克也、そのペンデュラムスケールじゃ…レベル8から11のモンスターしかペンデュラム召喚できないよ……?」

 

『嘘だろ!?お〜い!今のナシ!ナ〜シ!!取り消し〜!!』

 

「……一度発動したペンデュラムカードは手札に戻すか、破壊しないと…(汗)」

 

『そ、そんなのってないぜぇ〜!?』

 

《フォウ……アフォウ?》

哀れ、城之内はペンデュラムカードの特性を理解しきれていなかった……心なしかフォウも呆れ顔である。

 

 

 

『こうなったら……「アックス・レイダー」を召喚!』

斧を構えた戦士が現れる! ATK1700

 

『カードを1枚伏せて、ターンエンドだぁ!!』

城之内LP4000

アックスレイダー (P エンジェル ブラックサン)伏せ1 手札1

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「この手札なら…『EMドクロバットジョーカー』を召喚!」

ドクロのシルクハットを被った道化師が現れる! ATK1800

 

「『ドクロバットジョーカー』の効果発動!召喚に成功した時、デッキから『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』を手札に加える!そして手札からスケール5の『慧眼の魔術師』とスケール8の『黒牙の魔術師』をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

PENDULUM!!

 

遊希の背後に全てを見通す魔術師と黒い屈強な魔術師が浮かび上がる!

 

 

「そして!『慧眼の魔術師』のペンデュラム効果!片方のペンデュラムゾーンに『EM』か『魔術師』が存在する時!自身を破壊して新たな魔術師ペンデュラムモンスターをスケールに置く!来い!スケール1、『紫毒の魔術師』!」

魔術師が杖を振るい、鞭を持つ魔術師と入れ替わる!

 

「揺れろ!希望のペンデュラム!全能の軌跡よ、歴史を刻め!ペンデュラム召喚!エクストラデッキからレベル4『慧眼の魔術師』!そして手札からレベル7『スライハンド・マジシャン』!」

赤のペンデュラムが揺れ動き、全てを見通す魔術師と下半身が水晶になった道化魔術師が現れる! ATK1500 ATK2500

 

 

『(伏せカードは「攻撃の無力化」…これで1ターンは……)』

 

「そして…これが、僕の新たな力だ!儀式魔法『オッドアイズ・アドベント』を発動!」

 

『儀式魔法!?』

 

「僕はレベル4の『ドクロバットジョーカー』と『慧眼の魔術師』をリリース!!雄大なる大地の力よ、我が手に宿り戦場を支配せよ!儀式召喚!大地の神秘、レベル7『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』!!」

フィールドに現れた赤の水晶に2体のモンスターが吸い込まれる、そして岩を身に纏う重厚なオッドアイズが現れる! ATK2800

 

 

『儀式召喚まで…すげぇじゃねぇか!』

 

「ヘヘっ…いくよ!『グラビティ』の効果発動!特殊召喚に成功した時!相手フィールドの魔法・罠を全て手札に戻す!グラビティ・チェンジ!」

 

『なにっ!?』

オッドアイズが大地を踏みしめる…それにより重力が反転、城之内の伏せカードやペンデュラムスケールが手札に戻される!

 

「バトルだ!『グラビティ』で『アックスレイダー』を攻撃!震撼のスパイラル・クエイク!」

 

『ぬあああっ!?』

重力操作によって集められた岩がアックスレイダーを押し潰す!

 

城之内LP4000→1900

 

 

「そして『スライハンドマジシャン』でダイレクトアタック!さらに『紫毒の魔術師』の効果発動!闇属性、魔法使い族のモンスターが攻撃する時!自身を破壊する代わりに攻撃力を1200アップする!」

 

『させるか!アクションカード……アクションカードがねぇ!?あだだだダダー!?』

スライハンドマジシャンの水晶玉にメッタ打ちにされ、城之内のライフは尽きたのだった…。

 

スライハンドATK2500→3700

 

 

城之内LP0

 

遊希WIN!

 

 

 

 

 

『だぁっ!?なんでアクションカードが無いんだよ〜!?』

 

「あー……もしかして、エリアとエリアの狭間だったから…アクションカードが届いてなかったんじゃ……」

 

『そんなのアリかよ〜!運営仕事しろぉ!!』

あっけなく遊希に負けてしまった城之内は悔しげに叫ぶ…アクションカードは基本的にそれぞれのフィールドの中心からばら撒かれる、故に端には落ちていない場合もあるのだ…。

 

 

 

「克也、今のは()()()()()でいいよ…全力出しきれなかったみたいだし……というか事故もあったし、ね?」

 

『いんや!約束は約束だ!ペンデュラムカード持ってけよ!』

 

「あ…ありがとう、克也」

無効試合を提案する遊希だったが…城之内は清々しくペンデュラムカードを手渡した。

 

 

『それよりさ!バトルロイヤル中は手を組んで回らねぇか?梁山泊塾とか忍者達はペア組んでたし…遠目だけど遊矢も誰かと一緒に戦ってたぜ?』

 

「そうなの?」

 

『ああ!……あ、いい事思いついた!とにかくペンデュラムカードを集めまくって、オレ達2人で交換し合えば………』

 

「克也、克也……カメラにバッチリ映ってるからね?」

 

『あ"っ……冗談デース……』

バトルロイヤルの抜け穴を探そうと悪知恵を働かせる城之内だが…カメラに映ってる事を知ってすぐに小さくなるのだった……まるでコントである。

 

 

 

「でも、一緒に行動するのは賛成だよ?……流石に24時間一人は寂しいし!」

 

『おっ!流石遊希!話がわかるぜ!次はどのエリアにいくんだ?』

 

「次は──」

 

 

 

『うわああああっ!?』

 

 

 

「っ…!今の悲鳴は…聖目君!?」

 

『デュエルでふっ飛ばされたって感じじゃなかったぞ…?』

一緒に行動する事を決め、行き先を決めようてした遊希と城之内だったが…聞こえてきた悲鳴に警戒する…!

 

 

「……行ってみよう、もしかしたら梁山泊塾に襲われてるのかもしれない…!」

 

『あいつらか…!行こうぜ!!』

 

《ッ…フォウ…フォーウ!!》

遊希と城之内は悲鳴の聞こえた方角に走り出す…その後ろを少し躊躇ったフォウは追いかけた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うっ…うう……』

 

「聖目君!どうしたっ……なんだ…!?」

 

『出場者に、あんな奴らいたか…?』

 

【ん…なんだ?また()()がきたのか?】

遊希達が辿り着いたのは火山エリアの一角…そこにはボロボロになった聖目が倒れ込んでいた、その相手は…青い軍服を纏い、鬼のような…悪魔のような仮面を被った3人組が剣のようなデュエルディスクを構えていた…!

 

 

 

「3人で1人を狙うなんて…許さない!」

 

『漢らしくねぇな…!大会のお邪魔キャラとかギミックかもしれねぇけど…ぶっ飛ばすぜ!遊希!!』

 

「ああ!!」

聖目を襲った謎の3人組に遊希と城之内は挑む!

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

乱入デュエル

 

 

聖目LP2200

聖刻龍王─アトゥムス 手札2

 

城之内LP4000 手札5

 

遊希LP4000 手札5

 

 

オベリスクフォース(赤)LP4000 古代の機械参頭猟犬 伏せ3 手札0

 

オベリスクフォース(黄)LP4000 古代の機械参頭猟犬 伏せ3 手札0

 

オベリスクフォース(緑)LP4000 古代の機械双頭猟犬  伏せ3 手札1

 

 

 

 

【乱入ペナルティ、2000ポイント!】

 

バッチィ!!

 

『ぐああっ…!?いったい、なんだぁ!?』

 

「うぐぅ…!?乱入に対する、ダメージ…!?」

デュエルに乱入した遊希達にペナルティの電撃が襲いかかる!

 

 

城之内LP4000→2000

 

遊希LP4000→2000

 

 

@城之内

 

 

『くっそ……いくぜ、オレのターン!!ドロー!』

『今度こそ、成功させてやる!オレはスケール2の「PS-ブルーホエール」とスケール12の「PS-ブラック・サン」でペンデュラムスケールをセッティング!』

 

PENDULUM!!

 

城之内の背後にクジラを模した石像と黒い太陽が浮かび上がる!

 

 

【なんだ?あのカードは?】

 

『これでオレはレベル3から11のモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!!手札からレベル3「ロケット戦士」!そしてレベル4!「漆黒の豹戦士パンサー・ウォリアー」!!』

光の扉の向こうから緑色のロケットが変形した戦士、黒豹の剣士が現れる! ATK1500 ATK2000 

 

 

『よし!ペンデュラム召喚成功っ!!おい!お前のモンスター借りるぞ!』

 

『わかった…!気をつけろ…!そいつら、何かおかしい…!!』

城之内は満身創痍の聖目に声を掛け、オベリスクフォースを睨む!

 

『見てやがれ遊希!これが、オレの新しい切り札だ!フィールドの「聖刻龍王─アトゥムス」「ロケット戦士」「パンサーウォリアー」をリリース!現われろ!稲妻を操る伝説の戦士!「ギルフォード・ザ・ライトニング」!!』

フィールドに稲妻が落ちる…その中から巨大な剣を構えた伝説の戦士が現れる! ATK2800

 

 

『すごい…!これが克也の切り札…!』

 

【フン、切り札だかなんだか知らねぇが…『|古代の機械双頭猟犬《アンティーク・ギア・ダブルバイト・ハウンドドッグ》』の効果発動!1ターンに1度、召喚・特殊召喚されたモンスターにギア・アシッドカウンターを乗せる!】

 

ギルフォード カウンター0→1

 

『何をしようが…最強の剣士は倒れねぇ!!「ギルフォード・ザ・ライトニング」の効果発動!モンスター3体をリリースしてこのモンスターをアドバンス召喚した時!相手フィールドのモンスター全てを破壊する!喰らいやがれ!ライトニング・サンダー!!』

振るわれた大剣が稲妻を纏い、相手を一掃する!

 

 

 

『しゃあっ!!どんなもんでぇ!』

 

【ククク…どんな御大層なもんかと思ったら、こんなもんか…拍子抜けだな…!】

 

『なにっ…?』

フィールドを一掃されたにも関わらず…オベリスクフォース達は下卑た笑みを浮かべていた…!

 

 

 

 

【永続罠『古代の機械蘇生(アンティーク・ギア・リボーン)』を発動!自分フィールドにモンスターが存在しない時、このターン破壊された『古代の機械』モンスターを攻撃力を200上げて特殊召喚する!蘇れ!『|古代の機械参頭猟犬《アンティーク・ギア・トリプル・バイト・ハウンド・ドッグ》』!】

オベリスクフォース(赤)の墓地から機械のケルベロスが蘇る! ATK1800→200

 

 

【さらに!罠カード『古代の機械閃光弾(アンティーク・ギアスパークショット)』を発動!自分フィールドにモンスターが存在しない状態から『古代の機械』モンスターが墓地から特殊召喚された時!その攻撃力の半分のダメージを相手に与える…が!さらに永続罠『古代の機械増幅器(アンティーク・ギアブースター)』の効果発動!1ターンに1度、『古代の機械』カードによる効果ダメージが発生した時!その数値を2()()にする!】

 

『なっ…!?』

 

【まずは消えとけよ!隻眼野郎!『古代の機械閃光弾』の効果で2000ダメージだ!!喰らえ!アンティーク・リバイブ・ハウリング!!】

 

『えっ…がああああっ!?』

 

『ゆ、遊希ィィ!!!』

 

《っ!?フォォウ──!?》

参頭猟犬から放たれた光線が遊希を飲み込む…凄まじい衝撃を伴った光線は遊希をリアルソリッドビジョンの岩を砕く勢いで叩き付けた…。

 

 

遊希LP2000→0

 

 

【乱入なんかしなけりゃよかったなぁ!!ハハハハハハ!!】

 

【次は俺の番だ!同じく『古代の機械蘇生』『古代の機械閃光弾』『古代の機械増幅器』を発動!『古代の機械参頭猟犬』を特殊召喚!そして…冒険野郎に2000ダメージだ!!】

 

『ぐあああっ!?』

 

『や、やめろ…!やめろぉぉ!』

オベリスクフォース(緑)が同じくコンボを発動…聖目にダメージを与え、吹き飛ばす!

 

古代の機械参頭猟犬ATK1800→2000

 

 

聖目LP2200→200

 

 

【俺の番だ!『古代の機械蘇生』『古代の機械閃光弾』『古代の機械増幅器』を発動!墓地の『古代の機械双頭猟犬』を特殊召喚!じゃあな!冒険野郎─!】

 

『うわあああああ!?』

そしてオベリスクフォース(黄)が聖目のライフを削りきった…。

 

聖目LP200→0

 

 

 

『てめぇら…絶対に許さねぇ!!「ギルフォード・ザ・ライトニング」で赤仮面の「古代の機械参頭猟犬」を攻撃──!!』

 

【ハハッ…残念だったなぁ?『古代の機械双頭猟犬』の効果!ギア・アシッドカウンターの乗ったモンスターがバトルする時、そのモンスターは破壊される!】

 

『な……!?』

ケルベロスに斬りかかろうとした剣士は弾き飛ばされた歯車に撃ち抜かれ、爆散した…。

 

 

『カードを1枚伏せ、ターンエンドだ……!』

 

城之内LP2000

(P ブルーホエール ブラックサン) 伏せ1 手札0

 

 

 

 

@オベリスクフォース(赤)

 

【俺のターン!ドロー!】

【これで終わりだ!!バトル!『古代の機械参頭猟犬』で金髪野郎を攻撃!さらに攻撃する時!相手は魔法・罠を発動できない!!】

 

『っ……!!すまねぇ、2人とも…!オレの、せいで…!!があああっ!!?』

参頭猟犬の光線が城之内を飲み込む……城之内は無力感を感じながら、吹き飛ばされた…。

 

城之内LP0

 

 

 

オベリスクフォース WIN……

 

 

 

 

 

【なんだなんだぁ!?スタンダードのデュエリストはこんなもんかよぉ!ハハハハハハ!!】

 

「うっ…あ……かつ、や……ひじり、め…く……」

 

『なん…だよ、この痛み……動け、ねぇ…!』

 

『う、ぐ……』

火山エリアにオベリスクフォースの笑い声が響く…倒された3人は通常のリアルソリッドビジョン以上の激痛に身動きもとれない…。

 

 

【じゃあな…!精々、俺達の勲章の為の()()になってくれよ…!】

 

《フォッ…!フォウゥ!!!》

 

「な、に…を…!」

オベリスクフォースはデュエルディスクを操作する……そして───

 

 

 

キィン─!

 

 

紫の光が遊希達の体を包み込んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いまの、光は……?」

 

【あン?……お前……なんで()()()()()()()()??】

 

『はっ──?』

光の眩しさに眼を閉じていた遊希が目を開ける、そこには困惑したような様子のオベリスクフォース…そして……

 

 

「克也…?聖目……どこ、に…?」

 

【チッ…他の2人は()()()になったのになぁ…?】

 

「あっ…?」

2人の姿は消え去り、オベリスクフォースの手には……倒れ伏した城之内と聖目の姿を写したカードが握られていた…!!

 

 

「っ──!?!!人間の、カード化…!?遊矢……融合、アカデミア…!?返、せ……2人を、返せぇ…!!」

その時、遊希の脳裏に遊矢の言葉が蘇る……エクシーズ次元を襲ったアカデミア…その相手が、スタンダードに攻めて来たのだと…。

 

 

【返す訳ねぇだろうが!せっかくの得点をよぉ!!】

 

「っ…があああっ……!?」

這いずってオベリスクフォースのズボンを掴む遊希…だが、オベリスクフォースはその手を振り払い、腹を蹴り飛ばし…左手を踏み付ける…!!

 

 

【おい!さっさとこのゾンビ野郎をカードにしちまえ!セレナを探す任務も残ってるんだ!】

 

【へいへい…!さっさとカードになれよ!ゾンビめ!】

 

 

『っ…!!』

 

《フォウ──!!》

 

キィン──!!

 

 

そして再び、紫色の光が遊希の視界を埋め尽くした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

【ククク……ずいぶんとボロボロになったではないか?榊遊希よ】

 

「番人……」

ボロボロの遊希はいつの間にか、以前訪れた石造りの教会……深層意識に引き込まれていた、祭壇の上では番人を名乗った男が水晶の柱の前に佇んでいる…。

 

 

 

 

【さぁ、今がお前の決断の時だ……その前に、お前に…お前自身の()()を教えてやろう】

 

「僕の、正体…?僕は……白波、遊海だ……記憶を失った……」

 

【クッハハハ……ハハハハハハハハハ!!滑稽だな!まだ()()()()()()()いるのか?】

 

「なに…?」

教会に番人の笑い声が響く、海馬によって自分の名を知ったはずの遊希……だが、番人はそれを否定したのだ。

 

 

 

【お前は白波遊海ではない…なぜなら、()()()白波遊海の魂は──この水晶に()()()()()()()からだ】

 

 

「はっ…?」

番人の言葉に遊希は愕然とする…水晶の中に封じられた「赤い光の玉」……それが、白波遊海だというのだ。

 

 

 

「なにを、言って…!なら、僕は…此処にいる僕は!僕は、誰なんだ!?」

 

【フン…お前は()()()()()、当世風に言うのなら……『自分を白波遊海と思い込んでいる名もなき魂』……とでも言えば伝わるか?】

 

「そんな…そんな事、ありえない!!あってたまるか!!」

 

【仕方あるまい……一からお前が白波遊海ではないという事を説明してやろう……】

衝撃の事実を聞いて取り乱す遊希…番人は気怠げな様子で語り始める。

 

 

 

【これは我の予想も入っているが、遠からずだろう……かつて、白波遊海は巨大な戦いに挑んだ…身を削り、血を流し、魂を削り……お前の肉体が示すように満身創痍となった……そこで、大きなトラブルが起きた──世界の外に投げ出されたのだ】

 

「世界の、外…?」

 

【世界の外側には異なる次元を繋ぐ異空間が広がっている…本来の白波遊海ならば問題にもならんだろうが……極限まで消耗していたのなら…話は別だ、異空間に生身の人間が飛び込めば…その存在は擦り切れ、摩耗していく………そんな状況に追い込まれた時、白波遊海は無意識に自分の『魂』を封印したのだ…摩耗する前に『自分』を守る為に……】

それは遊希にも理解しきれない話…番人は話を続ける。

 

 

 

【そして次元の狭間を彷徨った肉体は擦り切れ、肉体年齢は逆行し……この次元へと流れ着いた、その過程で封印し損ねた白波遊海の魂の欠片……それか、この次元にあった魂が空っぽの肉体に宿った……それが榊遊希、お前という存在の正体だ】

 

「そ、んな…!?」

番人の語る話は理解できない…だが、現実味を帯びていた…その話を聞いた遊希は崩れ落ちる…。

 

 

 

「でも、でも!!僕は記憶を見た!!何度も、自分の知らない戦いを!!知らない人達との記憶を!」

 

【それが『自分の記憶』だと…いつから錯覚している?それは封印の水晶から漏れ出していた白波遊海の記憶にお前が()()()()()()だけだ、その証拠に……()()()()()()()だろう?】

 

「っ…!?」

番人の答えに遊希の言葉が詰まる……何度も見た戦いの記憶や、友人との記憶………それに声はあっても、顔は見えなかった。

 

 

 

【そして…お前が窮地に陥る度に使った…()()()()、お前は──その名や効果が記されたアストラル文字を()()()はずだ、あれは白波遊海の「ナンバーズ」……その名を読めるのはナンバーズを開眼させた者か、ナンバーズに認められた者……それかナンバーズに魅入られた者のみ…お前は肉体の記憶で無理矢理に使っていただけ……故に、全ての効果は使えなかったはずだ】

 

「あ、ああ…!!ああああ……!?僕は…ぼく、はっ…!?」

番人の言葉に追い詰められていく遊希…自分が「偽物」だと突き付けられ、その心は……壊れてしまう寸前だった…。

 

 

 

 

 

【お前は2つ、自分の運命を選ぶ事ができる……1つ、何もせず、このままあの仮面の男共に嬲られ続け……助けが来るまで倒れている事…】

 

 

【そして…2つ、白波遊海を目覚めさせ…奴らを打倒する、その代わり──奴にとって()()たるお前が消え去る事………それが、お前に残された運命だ】

 

 

「ぼくの、運命……」

番人はローブの中から赤と青の瞳を覗かせながら、蹲った遊希へと選択肢を伝える…。

 

 

 

 

 

【我はどちらでも構わん、我は……ただ、お前の決断を楽しむだけだ】

 

「…………1つ、聞かせてくれ…」

 

【なんだ?】

 

「白波、遊海は───()()()…?」

 

【クッ…ハハハ…!!】

遊希の質問を聞いた番人は…右手で顔を覆い、笑った…。

 

 

 

【ああ…奴の強さは保証してやろう…!不老不死の肉体を持ち…精霊と心を通わせ、星を砕く力と数多のデッキを操る…少なくともこの次元において()()()()()!混沌の神たるこの()()()()()()()()をも打ち倒した英雄であるとな…!】

 

番人はローブを脱ぎ捨てる…その下から現れたのは黄金比の黒い肌の身体を持ち、赤と青の瞳に金色に輝く髪…そして赤い前髪をたなびかせ、胸元に青い光を灯す紋章を持つ者……かつて遊海に倒されたはずの混沌の神、ドン・サウザンドだった…!

 

 

 

【白波遊海は神たる我を倒してみせた…神殺しを成し遂げた者が…弱いはずなかろう?】

 

「そうか……そんなヒーローみたいな人が、僕の中で…眠ってたのか……すごいなぁ……」

ドン・サウザンドの言葉を聞いた遊希はふらふらと水晶に歩み寄る…。

 

 

 

「そんなに強いなら………僕の答えは、()()()()()……」

遊希はそのまま左手で水晶に触れる…!

 

 

ゴウッ!!

 

 

「なぁ…遊海……返すよ、お前の身体を………僕が奪ってしまった、きみの体を……!!」

紅蓮の炎に包まれる左手…燃え広がり、自分の魂を焦がしていく痛みを気に掛けず、遊希は水晶へと呼び掛ける───

 

 

「だから……だから──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

克也達を奪った…あの野郎共をぶっ飛ばす力を寄越せぇぇぇっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴウッ!!

 

 

 

 

【むっ…!?これは──!?】

それは榊遊希にとって最初で最後の魂の咆哮……その憎悪が、憤怒が…怨嗟の慟哭が、燃え上がる炎を黒く黒く染めていく…。

 

 

 

 

 

 

そして、目を覚ますのは『英雄』に非ず……それは───

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

【チッ…なんだよ?なんでカード化装置が効かねぇ?】

 

【カードにする代わりに指でも持ってくか?】

 

【やめろ気持ち悪い…アークエリアプロジェクトの為には()()()()()()意味がない……こんなハズレは放っておけ!戦って損したぜ……】

再び遊希へとカード化装置を使ったオベリスクフォース…だが、遊希はカードにはならず……その鬱憤を晴らす為に遊希を痛め付けた彼らは本来の任務へと戻ろうとしていた……だが、それは叶わない…何故なら……。

 

 

 

ドクン

 

 

 

【っ…?なんだ?】

 

【どうした?】

 

【いや、コイツ…動いた気が……】

 

【馬鹿言え!あんだけボコボコにしたのに意識があるわけ───】

 

 

 

「……許さない」

 

 

【はっ?】

襤褸雑巾のようになった遊希が幽鬼のように立ち上がる…その中で()()はギラギラと紅く揺らめいている…!

 

 

「貴様らは……生かしておくかぁぁぁ!!!!」

 

 

ゴウッ!!

 

【な、なんだぁ!?!?】

 

《フォ、ウ…!?》

怨嗟の咆哮と共に、遊希の……()()()()の肉体が大地から噴き上がるマグマに包まれ、黒焔が体を燃やしていく…。

 

 

そして…()()が目覚める。

 

 

 

 

髪は血を被ったような赤黒い色に

 

 

身体はひと回り大きく、青年と呼ばれる年齢に

 

 

身体中に刻まれた傷は塞がる事なく、血が滲む

 

 

そして、ボロボロの赤いジャケットにボロボロのジーンズを纏う…

 

 

 

 

 

そこに、優しく…仲間達と穏やかに暮らした「榊遊希」はいない。

 

 

それは、世界を救いし英雄…「白波遊海」ではない。

 

 

 

 

それは「災厄」……憎悪と憤怒のままにあらゆる「悪意」を駆逐する……怪物である。

 

 

 

 

【な、なんだ!?体がデカくなりやがった!?】

 

【こいつ、ビックリ人間かなんかかよ!?】

 

【言ってる場合か!リアルソリッドビジョンのダメージレベルを()()にしろ!!コイツを()()!!】

突然の事態に動揺するオベリスクフォース…だが、彼らも訓練を積んだ軍人……目の前の()を葬る為に、デュエルディスクを構える…!

 

 

 

 

【【【「デュエル!!」】】】

 

 

 

災厄LP4000

 

オベリスクフォース(赤)LP4000

 

オベリスクフォース(緑)LP4000

 

オベリスクフォース(黄)LP4000

 

 

 

 

「オレの、ターン……!」

「『リアクター・スライム』を召喚」

スライム増殖炉を背負った人型のスライムが現れる ATK500

 

「『リアクタースライム』の効果、発動…『スライムモンスタートークン』を2体、特殊召喚」

スライム増殖炉から小さなスライムが生み出される DEF500 ✕2

 

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

災厄LP4000

リアクタースライム スライムトークン スライムトークン 伏せ2 手札2

 

 

 

 

【な、なんだよ…驚かせやがって!スライムなんかで何ができる!】

オベリスクフォースは先ほどとは打って変わって静かなデュエルをする男を嘲笑う…

 

【さっきみたいにぶっ飛ばしてやる!】

 

 

 

 

@オベリスクフォース(赤)

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!!】

機械仕掛けの猟犬が現れる! ATK1000

 

【『古代の機械猟犬』の効果発動!相手フィールドにモンスターが存在する時!600ダメージを与える!ハウンド・フレイム!】

 

「………」

猟犬の火炎弾が災厄を直撃する…だが、災厄は動じない…微動だにしない…!

 

災厄LP4000→3400

 

「自分がダメージを受けた時…手札から『ガーディアン・スライム』は特殊召喚できる」

そして黒い犬の頭を持つスライムが現れる! DEF0

 

 

【チィッ…バトルだ!『ガーディアンスライム』を攻撃!】

 

「『ガーディアンスライム』が相手モンスターとバトルする時、その守備力は相手モンスターの攻撃力と同じ数値になる」

 

【なにっ…!?】

鉄壁のスライムが攻撃を跳ね返す! DEF0→1000

 

 

【めんどくせぇモンスターを……カードを2枚伏せてターンエンド!】

オベリスクフォース(赤)LP4000

古代の機械猟犬 伏せ2 手札3

 

 

 

@オベリスクフォース(緑)

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【俺も『古代の機械猟犬』を召喚!そして相手に600ダメージを与える!ハウンドフレイム!】

召喚された猟犬がダメージを与える!

 

災厄LP3400→2800

 

 

【とにかくダメージを与えりゃいいんだよ!!『リアクタースライム』を攻撃!】

 

「『リアクタースライム』の効果発動…自分・相手のバトルフェスティバルに自身をリリースし、デッキから罠カード『メタル・リフレクト・スライム』をセットする」

 

【なら、「スライムモンスタートークン」を攻撃!】

猟犬がスライムを噛み砕く!

 

 

【カードを1枚伏せて、ターンエンド!】

 

オベリスクフォース(緑) LP4000

古代の機械猟犬 伏せ1 手札4

 

 

 

@オベリスクフォース(黄)

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!600ダメージだ!ハウンドフレイム!】

さらに召喚された猟犬がダメージを与える! ATK1000

 

災厄LP2800→2200

 

 

【てめぇら!手札事故起こしてんじゃねえよ!!『古代の機械猟犬』の効果発動!フィールドのこのカードと手札の『古代の機械猟犬』2体を融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬たちよ!群れ成して混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!!融合召喚!現れろレベル7!『古代の機械参頭猟犬』!!】

3体の猟犬が融合…遊希達を蹴散らした機械のケルベロスが現れる! ATK1800

 

【さらに手札から魔法カード『融合』を発動!!フィールドの『古代の機械参頭猟犬』とオベリスクフォース(黄)の『古代の機械猟犬』を融合!!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬よ!三つ首の猟犬と混じり合い、究極の猟犬へと生まれ変わらん!!融合召喚!現われろ!レベル9!『古代の機械究極猟犬』!!】

融合の渦から禍々しい、究極の機械猟犬が現れる! ATK2800

 

 

【『古代の機械究極猟犬』の効果発動!融合召喚に成功した時!相手のライフを半分にする!喰らえ!アルティメット・ハウンド・フレイム!!】

放たれた火炎が災厄に直撃…その身を焼き焦がす!!

 

災厄LP2200→1100

 

 

【バトルだ!『古代の機械究極猟犬』で『スライムモンスタートークン』を攻撃!!】

猟犬がスライムを踏み潰す!

 

 

【俺はこれでターンエンドだ!!】

 

オベリスクフォース(黄)LP4000

古代の機械究極猟犬 手札2

 

 

 

 

【拍子抜けさせやがって……次のターンで貴様は終わりだ!!悔しかったら泣き叫んでみろよ!このハズレ野郎!今度こそオトモダチと同じ場所に送ってやるよ!!ハハハハハハ!!!】

無抵抗を続けていた災厄を侮辱し、嘲笑うオベリスクフォース…だが、彼らは勘違いしている……災厄は……彼らに最大限の痛みを与える為に、力を溜めていたのだから…!

 

 

 

 

 

「オレのターン……最強決闘者の決闘は全て必然、ドローカードさえも…決闘者が創造する──シャイニングドロー

災厄の右腕に暗い光が宿る…それは彼に残された最後の()

、それを使い切った災厄は……闇へと堕ちる…!

 

 

「永続罠『メタル・リフレクト・スライム』を発動…このカードをモンスターとして特殊召喚」

無数の茨が生えたメタリックなスライムが現れる! DEF3000

 

「さらに…レベル10水族の『ガーディアン・スライム』をリリースする事で…エクストラデッキから融合モンスター『神・スライム』を特殊召喚」

 

【なにっ!?融合なしで融合モンスターを!?】

黒いスライムが形を変え…巨人のスライムが現れる! ATK3000

 

 

 

【(だが、無駄だ…!伏せカードには『融合霧散』がある…!ダメージを受ける事は………)】

 

「神の名を貶め、穢す愚か者共よ……絶滅の時だ!!

 

【なにっ!?】

災厄の背後に大地から黒い炎が燃え上がる!!

 

 

「『神・スライム』は生贄召喚に使用する時、3体分の生贄にする事ができる…!!我が怒り我が憎悪……遥かなる時の彼方から…!万物を打ち砕く破壊の神を呼び覚ませ!!!

神スライムが熔解し、大地へと消えていく…そして神の怒りが大地を鳴動させる…!

 

 

 

「顕現せよ!『オベリスクの巨神兵』!!

 

 

■■■■■──!!

 

 

大地が鳴動し、黒炎が弾け…オフィスビルが崩れ落ちる…そして、大地の奥底から巨大な……巨大な影が現れる、それは青い体を持ち…赤い瞳を輝かせる『破壊の神』……遥かなる時の彼方から大地の神が雄叫びを轟かせる!! ATK4000

 

 

 

 

【はっ…!?『オベリスクの巨神兵』、だと!?】

 

【う、嘘だ!!存在すらしていないはずの御伽噺のはずだろ!?】

赤い双眸が神の名を騙る愚者を睨みつける…彼らにとっての『御伽噺』の中の存在の登場にオベリスクフォース達は尻餅をつく…。

 

 

「リバース魔法『死者蘇生』を発動…!墓地の『ガーディアンスライム』を特殊召喚…!」

再び犬頭のスライムが復活する! ATK0

 

 

 

「断罪の刻だ…罠カード『ソウル・エナジーMAX!!』を発動…!自分の『メタルリフレクトスライム』と『ガーディアンスライム』を生贄に、捧げ……相手フィールドのモンスター全てを破壊し、4000ダメージを与える!!」

 

【【【な、なんだって!?】】】

生贄の力を得たオベリスクの両拳に青き破壊の力が集中する!!

 

 

 

ゴッドハンド・インパクト!!

 

 

 

【【ぎゃああああ!?!?】】

破壊の波動が古代の機械を粉砕…オベリスクフォースの2人は岩山やビルを数棟突き抜けながら、彼方へと吹き飛んでいった…。

 

 

オベリスクフォース(赤)LP0

オベリスクフォース(黄)LP0

 

 

 

【ひっ、あ、ああ…!?】

 

「バトルだ…神の怒りをその身に受け……死に絶えよ

残された最後のオベリスクフォースに神の怒りが迫る…!

 

 

ゴッドハンド・クラッシャー!!

 

 

 

【ぴぎゃ…】

 

 

断末魔を上げる間もなく、オベリスクフォースは巨大な神の拳に殴り潰された…。

 

 

 

オベリスクフォース(緑)LP0

 

 

 

WIN

 

 

 

 

 

 

【……ひゅ………】

 

オベリスクがその姿を消していく、潰されたオベリスクフォースはかろうじて生きてはいるが……死んだ方がマシとも思える重傷を負っていた…。

 

 

「ううっ……ああ……カツ、ヤ……アあ……!!」

幽鬼のような足取りで災厄は落ちていた友のカードを拾い上げる……だが、それが限界だった。

 

 

 

アア……アアアアア!!!

 

カードにされた友の姿を見た災厄は狂気へと堕ちる……魂を燃やす復讐の炎が、その身を蝕んでいく……。

 

 

 

……ずあーく………ズあぁァぁくぅぅゥゥ!!

まだらに過ぎる記憶…その中から災厄は……()()()()()()()の事を思い出す…。

 

 

 

災厄はその身を闇に包み、歩き出す……()()のいる場所へ…。

 

 

 

 

 

《キャウ…ウ……フォ、ウ…フォーウ!!》

そして、オベリスクの攻撃の余波で気を失っていたフォウはなんとか起き上がり、厄災が取り落としたカードを咥えて跳ぶ……この事態を解決できる男の居場所へ…。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

【お前の言っていた通りだな、遊海よ…怒りや憎しみは凄まじい力を生み出す、本来ならばお前を目覚めさせ、消え去るはずの弱い魂が……一部とはいえ、お前の力を使うとはな】

黒炎が燃え盛る深層領域…そこでドン・サウザンドは目覚めぬまま、無秩序に力を放出する水晶へと目を向ける。

 

 

【さて、このような状態なら……この身体を依代とした我が復活も容易い、理性なき力など…我にはどうとでもなる…】

ドン・サウザンドは燃え盛る炎の中で玉座に腰掛ける。

 

 

【……だが、このままで終わる貴様ではなかろう?特等席で見届けてやろう…お前がカオスに呑まれたまま、修羅に落ちるのか──】

 

 

 

 

 

 

【再び、希望の光を掴むのかを──】

 

 




そして…災厄の目覚めは様々な影響を齎す…。




「しゃ、社長!火山エリアで強力な召喚反応を確認!!」

『どの召喚法だ!』

「っ……あ、()()()()()!通常のアドバンス召喚です!!」

『なにっ…!?……アドバンス召喚でここまで強力な反応など、聞いた事がないぞ…!』

「火山エリアのビル数棟が倒壊!!カメラも反応しません!!さらに、近くにあった融合次元のデュエル戦士の反応、消失!!」

『……榊遊矢といい…何が起きている…!?』








『海馬君、今の影……まさか…!!』

『遊希め、やらかしおったな…!!最悪の事態は確定だ…!上手く止めるのだぞ…!』

『僕達は…』

『我らは最後の壁だ…!奴が止められなければ……俺達が命を張る他あるまい…!!』










《か、カイト様!強力なエネルギー波を感知したでアリマス!発信源は……》

「っ……A()R()C()()()付近か…!ズァークが復活したのか……!?」

『いや、違うな……この波長は──三幻神、「オベリスクの巨神兵」のモノだ、間違いない』

「瀬人…それでは…!」

『行方不明になっていた遊海が復活したか…あるいは………暴走したか、だな』

「遊馬…凌牙…!お前達は何をしている…!!」







「っ…!?」

「母さん…?どうしたの!?」

「……強い、力の波動を感じたの…全てを、壊してしまいそうな……!」

「そんな…まさか…!」

《私も、感じました…次元を超えて伝わる破壊の波動……間違いなく『オベリスクの巨神兵』の力……怒りと憎しみに染まった、破壊の力を…!》

「遊海さん……やめて…!お願い…世界が、()()()()()…!!」

《……ユウミ…貴方に何が起きているのです…!?》


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Ep.26 反逆の覇王〜災厄の暴威〜

「っ…!黒咲!!」

 

『…きたか…榊遊矢』

 

「お前には…聞きたい事が山ほどある!!」

混沌が渦巻くバトルロイヤルの最中、古代遺跡エリアを探索していた遊矢はついに探していた黒咲と接触する事に成功していた…。

 

 

 

「素良との事や、アカデミアの事を教えてくれ!!」

 

『俺も貴様を待っていた……ユートを、何処へやった…!』

黒咲にアカデミアについて聞こうとする遊矢…だが、聞きたい事があったのは黒咲も同じだった。

 

 

『ユートが()()()、紫雲院素良と戦った事は知っている…そこに、お前が乱入した事も…!その後…ユートは忽然と姿を消した!いったい何があった!!ユートに何をした!貴様が…何かしたのだろう!?』

 

「それは…!」

 

『そうでなければ!なぜ、貴様がユートの「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」を持っている!!』

遊矢へと詰め寄り、問い詰める黒咲…監視カメラが壊れた後の事を彼は知らない…故に『ダークリベリオン』を持つ遊矢を疑うのは当然の事だった…。

 

 

「それは、オレも何が起きたのかはわからない…!あのカードはユートに()()()()()()!デュエルで笑顔をって!!」

 

『なに…!?』

ユートの行方を知らないのは遊矢も同じ…その時の状況を説明しようとする遊矢だったのだが…。

 

 

 

 

「このカードは…モンスター効果でダイレクトアタックできる!!」

 

 

「『っ!?』」

 

「俺は『アサルトナイト・スラッシュ』でダイレクトアタック!!」

 

「なんだ!?」

突然の宣言と共に銀色の騎士による斬撃が遊矢達へと襲いかかってくる!

 

 

「『アサルトナイトスラッシュ』はバトルによるダメージを0にできる!!」

 

「っ…!?ナイト・オブ・デュエルズ…!?」

 

『こいつら…性懲りもなく…!』

そしてその斬撃は遊矢達を掠めるように通り過ぎ、別のモンスターによって受け止められる……遊矢達はいつの間にか鎧を纏った三人組のデュエリスト…ナイト・オブ・デュエルズに囲まれていた…!

 

 

 

「俺はターンエンド…なんだか()()()が煩いなぁ?」

 

「煩い()()()はさっさと片付けようぜ!『アサルトナイトスラッシュ』でダイレクトアタック!」

 

『「くっ!?」』

 

「『アサルトナイトスラッシュ』の効果でダメージを0にする!」

 

『くっ…自分達のデュエルにかこつけて、俺を甚振るつもりか…!』

 

「そんな!?」

黒咲は2回戦でナイト・オブ・デュエルズのメンバーの1人を倒して3回戦へと出場した…そして仲間達が仇討ちに黒咲を狙ったのだが、あっけなく敗北……彼らはそれを根に持ち、黒咲をデュエル外で痛めつけようとしているのだ……騎士道精神は何処にいった。

 

 

 

「石ころが粉々になるまで…永遠に続けてやるよ!!」

 

「止めて欲しかったら()()して来いよ!2000ライフ払ってなぁ!!」

 

『ぐっ…!?こんな奴らに構っている場合では…!!があああっ!?』

 

「うわあああ!?」

執拗に黒咲と巻き込まれてしまった遊矢を狙う3人組…その猛攻に黒咲と遊矢は吹き飛ばされてしまう…その時だった…。

 

 

【【【………!】】】

 

「な、なんだ…あいつらは…?」

戦っていた神殿から少し離れた足場に飛ばされた遊矢は…仮面を被った謎のデュエリスト達の姿を見つけた…。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「や、奴らは…!!」

 

『至急古代遺跡エリアの中継を切れ!!』

 

「はっ!!」

そして零児達もその姿をカメラを通して見つけ、すぐにスタジアムへの中継を切断する……ついに、その時が訪れた…。

 

 

「社長!火山エリアにセレナの姿を確認!中継を切断します!」

 

『……現れたか』

オペレーターの1人か火山エリアに現れたセレナの姿を報告する…そこには柚子、そしてデュエルしていたデニスの姿もあった…。

 

 

 

『いよいよ、君たちの出番が来た……ランサーズの最有力候補として、持てる力の全てを発揮してもらいたい…!』

 

「「「はい!!」」」

そして零児は待機していたユースクラスへと指示を出す……融合次元との戦いが始まるのだ…!

 

 

 

『凌牙、火山エリアへ向かってくれ……セレナが姿を現した、彼女を保護したい…その補佐を頼む』

 

 

「わかった…!氷山エリアから向かう!」

そして零児はもう1人の戦士へと指示を出した…。

 

 

 

 

「ついに始まるのか………父さん…………何も起きないでくれよ…!!」

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

「あ、あれは!?」

その頃、謎のデュエリスト達を目撃した遊矢……そして、その背後にはとある人物の姿があった…!

 

 

 

『貴様は…!』

 

『待ち遠しかったよ…キミと決着をつける、この時を…黒咲隼!!』

ナイト・オブ・デュエルズと対峙する黒咲…そこに新たに3人組のデュエリストが現れる…それを率いていたのは、行方を晦ましていた…紫雲院素良だった…!

 

 

 

「素良!無事だったんだな!?」

 

『……キミ達はあいつらを押さえといてよ、ボクの邪魔をしないように……頼んだよ、オベリスクフォース』

 

【【はっ】】

 

「おい!?素良!!くっ…」

探していた素良へと叫ぶ遊矢…だが、素良はその声を無視して引き連れていたデュエリスト…融合次元のエリート部隊『オベリスクフォース』へと指示を出す、遊矢は素良を負うために足場から追いかけようとする……。

 

 

 

「なんだ?その言い草は…!そもそも何者だ!?貴様らは!」

 

【我らはオベリスクフォース…相手になってやろう】

 

 

 

 

 

「素良!待てって!もう、争うのはやめてくれ!!」

 

「「「うわあああっ!?」」」

 

「っ!?」

 

【ハッ…スタンダードのデュエリストはこんなものか…大した事ないな】

 

「っ!?ナイト・オブ・デュエルズ!!」

足場を飛び移りながら素良を追う遊矢…だが、そこに悲鳴が響く……遊矢が目にしたのはナイト・オブ・デュエルズが僅か数分でオベリスクフォースに敗れた姿、そして……

 

 

キィン─!!

 

 

「あっ…!?」

 

「うわあああっ!?」

負けた彼らの1人がカードにされてしまった瞬間だった。

 

 

ドクン

 

 

 

「こ、こんなのルール違反だぁ!!」

 

【ルール違反?ルール通りさ……()()()()()()のが当然だろ?】

 

「やめろ…やめろ…!やめろぉぉ!!」

残された2人を追い詰めるオベリスクフォース…そして遊矢の絶叫が響くが──

 

 

 

キィン!!

 

 

2人はカードに変えられてしまった…。

 

 

 

 

ドクン!!

 

 

 

 

 

【さ、任務に戻るぞ…セレナを探さなくては──】

 

待て…!!

 

【ん…?】

 

「オレは、許さない…!」

ナイト・オブ・デュエルズをカード化したオベリスクフォースは任務の為にその場を離れようとする…だが、その背中にドスの効いた声が待ったをかける……それは闇色のオーラを纏い、瞳を紅く輝かせた遊矢だった。

 

ナイト・オブ・デュエルズがカード化された刹那、遊矢の中で見た事のないはずの『融合次元に蹂躙されるエクシーズ次元』の光景が過ぎった…それと共に溢れ出した融合次元に対する怒りと憎しみによって、今の遊矢は勝鬨戦のように『暴走』状態に陥ろうとしていた…!

 

 

 

「オレは許さない…!融合次元を…!!アカデミアを!!」

 

【なんだ?お前は…?】

 

「お前達は…何をしにきた…!!」

 

【ふっ…それを、お前が知る必要はない…】

 

「お前達に、勝手な真似はさせない!!オレとデュエルしろ!!」

 

【ハハハ…そんなに身の程を知りたいのなら、分からせてやる!】

遊矢は沸き上がる怒りのままにオベリスクフォースにデュエルを挑む……そして、蹂躙のデュエルが始まった…!

 

 

 

 

デュエルダイジェスト

 

 

 

逆鱗遊矢対オベリスクフォース(赤・緑・黄)

 

 

 

 

【バトルだ!『古代の機械猟犬』でダイレクトアタック!!】

 

「ぐっ…!!」

先攻を取ったのはオベリスクフォース達、バトルロイヤルルールによってモンスターを召喚できていない遊矢を一方的に痛めつけていく…だが、それと共に遊矢の纏う『闇』が濃く、深くなっていく…!

 

 

【お前も…こいつらと同じ運命を辿るのさ…!】

 

「っ…ああ…!!があああああっ!!!

遊矢にカード化されたナイト・オブ・デュエルズの姿を見せつけるオベリスクフォース……そして、遊矢の怒りは…憎しみは頂点に達する!!

 

 

 

 

「オレのターン!!オレは手札のスケール3の『相克の魔術師』とスケール8『相生の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

獣のような咆哮と共に遊矢は新たな『魔術師』をデュエルディスクに叩き付ける…それは青髪の青年魔術師、そして桃色の髪の巫女のような魔術師だった…!

 

 

 

 

『漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙!!いま、降臨せよ!!「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」!!』

そしてペンデュラム召喚を介した遊矢は融合次元への反逆の牙を呼び出す!

 

 

「バトルだ!『ダークリベリオン』で『古代の機械猟犬』を攻撃!反逆のライトニングディスオベイ!!」

 

【ぐおあああっ!?】

機械猟犬の1体を粉砕する反逆の牙…だが、これは1対1のデュエルではない…!

 

 

【何者だ、コイツ…!?】

 

【さっさとケリをつけるぞ!!】

異様な雰囲気の遊矢にたじろぐオベリスクフォースはさらなる一手を打つ!

 

 

 

 

【『古代の機械猟犬』を召喚!そして効果発動!相手フィールドにモンスターが存在する時、相手に600ダメージを与える!!ハウンド・フレイム!!】

 

【俺のターン!『古代の機械猟犬』の効果発動!相手フィールドにモンスターが存在する時、相手に600ダメージを与える!!】

 

【俺のターン!『古代の機械猟犬』の効果発動!相手フィールドにモンスターが存在する時、相手に600ダメージを与える!!】

 

オオオッ…!!!

「ダークリベリオン」に敵わないと見たオベリスクフォースは効果ダメージによる連撃で遊矢の残りライフを200まで削る……だが、遊矢はダメージに反応せず……顔に浮かべた笑みは、恐ろしい形相へと変わっていく…!

 

 

 

 

『あっ…貴方は!ダーリンは何処!?』

 

「お主は!何故こんな所に!?」

そのタイミングでジャングルエリアを抜けて来た権現坂、そしてミエルが鉢合わせする。

ミエルは参加者ではないのだが…テレビ中継で遊矢の姿が見えなくなった事で、彼の姿を直接見ようとバトルロイヤル中の舞網中心部に入り込んでしまったのだ…。

 

 

「むっ…!?あれは…!」

 

『ダー、リン…!?』

そして彼は目にする事になる…古代遺跡のソリッドビジョンに覆われた高速道路の上で戦う、逆鱗のデュエルを…!

 

 

 

 

 

(オレ)のターン!!

そして遊矢のターン…その髪を逆立てた遊矢のドローは、凄まじい風圧と共に闇のオーラを纏う…!

 

 

「いま一度揺れろ、魂のペンデュラム!!天空に描け、光のアーク!!ペンデュラム召喚!!いでよ、我が下僕のモンスター!!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

再び軌跡を刻むペンデュラム…そして遊矢のエースたる二色の眼の龍が現れる!

 

 

「遊矢の場に、ドラゴンが2体…!?」

 

「対立を見定める『相克の魔術師』よ……その鋭利たる力で異なる星を一つにせよ!!ペンデュラム効果発動!1ターンに一度、選択したエクシーズモンスターのランクと同じレベルを、そのモンスターに与える!ランク4の『ダークリベリオン』をレベル4にする!」

 

「なっ!?エクシーズモンスターにレベルを!?」

相克の魔術師が描いた魔法陣から光が飛び出し、反逆の牙にレベルを与える…!

 

 

「和合を見定める『相生の魔術師』よ……その神秘の力で、天空高く星を掲げよ!!ペンデュラム効果発動!1ターンに1度、選択したモンスター1体のレベルを別のモンスターと同じにする!我は『ダークリベリオン』のレベルを『オッドアイズ』と同じにする!!」

 

「これで、レベル7のモンスターが…2体…!!」

相生の魔術師が矢を放つ、それはフィールドに着弾し…2体のドラゴンのレベルを揃える……それは常識外れのエクシーズ召喚…!

 

 

(オレ)はレベル7の『オッドアイズ』と『ダークリベリオン』の2体でオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」

2体のドラゴンが光の銀河へと飛び込み、混沌の光が弾ける!!

 

 

二色の眼の龍よ…その黒き逆鱗を震わせ!歯向かう敵を殲滅せよ!!いでよ…ランク7!怒りの眼輝けし竜!!覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』!!」

闇の彼方から咆哮が轟く…それは稲妻を纏いし、黒き体と赤と緑の眼を持つ『怒りの化身』…覇王の名を持つ殲滅の竜が現れる!!

 

 

 

【な、なんだこのパワーは…!?】

 

【これがスタンダードの衝撃だというのか!?】

暗雲を呼び寄せながら咆哮する覇王黒竜…その覇気はオベリスクフォースに恐怖を植え付ける…!

 

 

『だ、ダーリン!!きゃああ!?』

 

「のわああ!?」

強風が吹き荒れるなか、遊矢に近付こうとするミエル…だが、あまりの強風に権現坂諸共に吹き飛ばされてしまう…!

 

 

「『オッドアイズリベリオンドラゴン』の効果発動…!レベル7扱いの『ダークリベリオン』を素材とした事で、敵側のレベル7以下のモンスターを全て破壊し!その攻撃力分のダメージを与える!!オーバーロード・ハウリング」

 

【【【なっ!?】】】

黒龍の翼から放たれた紫電が猟犬達を粉砕する!

 

 

「さらに!ORUを1つ、使い!この効果で破壊したモンスターの数だけ、このモンスターは攻撃できる!!」

 

【さ、3回攻撃だとぉ!?】

ORUを取り込んだ黒竜の翼が展開…凄まじいエネルギーを纏う紫電の翼が放電する!!

 

 

「やれ!!『オッドアイズリベリオンドラゴン』!叛旗の逆鱗 ストライク・ディスオベイ!」

 

【【【う、うわあああああ!?!?】】】

顎に生えた鋭い牙が紫電を纏う…そして飛翔した黒竜は道路を削り取りながら突進、オベリスクフォースのライフを消し飛ばした…!

 

 

 

オベリスクフォースLP0

 

 

 

 

 

 

 

「ゆ、遊矢…!」

いつもの遊矢らしくない『殲滅のデュエル』に動揺する権現坂…その時だった。

 

 

 

 

ドン!!

 

 

 

『きゃあ!?』

 

「な、なんだ!?」

凄まじい衝撃と共に()()が権現坂達と遊矢の間に着弾する……それは───

 

 

 

 

 

 

【乱入ペナルティ、2000ポイント!】

 

 

 

ズ…ずッ…アぁァぁクゥゥぅ!!

 

 

「貴様は…!貴様は──!?

 

 

 

「『!?』」

獣のような咆哮を轟かせる、全身を闇に覆われた…赤い目をギラつかせる怪物だった…!

 

 

 

 

乱入デュエル

 

 

 

災厄LP2000 手札5

 

逆鱗の覇王LP200

オッドアイズリベリオン (P 相克 相生) 手札0

 

 

 

 

【オレのターン!ドロー!!】

【手札のスケール1『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!!】

 

PENDULUM

 

「あ、あのモンスターは…!?まさか、遊希なのか!?」

 

『え、えぇっ!?!?あれが、遊希、さん…!?』

突然の乱入者に動揺する権現坂…だが、ペンデュラムスケールに浮かび上がった赤と緑のドラゴンによって…その正体に気付く…!

 

 

【揺れろ…!怒りのペンデュラム…!我が魂を燃やす黒炎よ…全てを焼き尽くせ!!ペンデュラム召喚!『黒牙の魔術師』!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!】

赤の水晶が不規則に揺れ動き、フィールドに黒炎が逆巻く…そして屈強な黒衣の魔術師、そして幻影のオッドアイズが現れる…! ATK1800 ATK2500

 

 

ううっ…あア…!!オレは『黒牙の魔術師』と『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』をリリース…!!時空の狭間で止まりし大いなる力よ……我が魂を揺らせ!!『オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン』!!】

オッドアイズが闇に包まれる…そして、背中から巨大な骨組みが飛び出し……亡霊の力を宿せし二色の眼へと進化する!! ATK3000

 

 

 

「遊希の、オッドアイズが…進化した…!?」

 

【バトルだ!『オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン』で『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』を攻撃!!】

 

「相討ち狙いか…!」

進化した幻影が覇王黒竜に迫る、その攻撃力は共に3000だが……

 

 

【『オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン』がバトルする時、自分のエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスター1体につき、相手モンスターの攻撃力は1000ダウンする…エクストラデッキには2枚のペンデュラムモンスター!!】

 

「なにっ!?」

亡霊のドラゴンの翼から虹色のオーラが吹き出し、覇王黒竜を弱体化させる!

 

覇王黒竜ATK3000→1000

 

 

【粉砕せよ…!ビハインド・フォース!!】

 

ぐっ…ああああ!?

 

 

『だ、ダーリン!!』

 

「遊矢!!」

放たれた螺旋の息吹が覇王を貫く……怒りの竜はさらなる憤怒の前に敗れ去った…。

 

 

逆鱗の覇王 LP0

 

災厄WIN…

 

 

 

 

 

 

「ぐはっ………────」

 

 

『ダーリン!!』

凄まじい攻撃の余波によって遊矢は石柱に激突…逆立った髪は静かに元に戻り、そのまま失神してしまった…。

 

 

おおおっ…オオオ!!!

 

「遊矢!!」

だが、乱入者……災厄は止まらない、気を失った遊矢の首を右手で持ち上げ、そのまま空中で締め上げる!!

 

 

 

『やめて…!やめて!遊希さん!!ダーリンをこれ以上傷つけないで──!!』

 

「ミエル!!」

その様子を見たミエルは権現坂の制止を振り切って災厄の背中に飛びかかる……このままでは遊矢が()()()()()()と思ったのだ…!

 

 

『何回かしか会わなかったけど、私には分かるの!貴方はそんな事をする人じゃない!!だから…だから!優しい義兄さんに戻って……!!』

 

【ぐううっ……オオッ!!

必死に説得を試みるミエル…だが、災厄はそれを振り払う!

 

 

 

邪魔を、するなぁァ!!】

 

『あっ──』

 

「や、やめろぉぉ!!」

災厄は左手を振るう…その勢いは確実にミエルを吹き飛ばしかねない速さで振るわれ───

 

 

 

 

 

ガン!!

 

 

 

 

 

『はぁ…はぁ…!なんとか、間にあったな…!!』

 

『あっ…あなた、は…?』

その直前、何者かの手によって受け止められる……ミエルと災厄の間に割り込んだ者、その正体は……。

 

 

 

 

 

 

「り、凌牙…!」

 

 

『やめてくれよ、父さん…!アンタには…そんな姿、似合わねぇ…!!』

 

《フォウ!!》

肩にフォウを乗せた、傷だらけの凌牙だった…!

 



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Ep.27 闇を祓うは牙の勇士─途切れぬ絆─

こんにちは!S,Kです!

怒りと憎しみに呑まれた「災厄」に凌牙が立ち向かう…!彼は「英雄」を取り戻す事ができるのか…?

そして…戦いの果てに待つものは…?


それでは、最新話をどうぞ!!


「やめてくれ、父さん…!アンタに、その姿は似合わねぇ…!!」

 

『凌牙…!フォウ…!』

オベリスクフォースの蛮行によって怒りに呑まれた遊矢…逆鱗遊矢は新たな切り札、ペンデュラムエクシーズモンスター『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』によってオベリスクフォースを粉砕した。

……だが、そこへ同じく怒りに呑まれた災害…『災厄』が乱入、逆鱗遊矢を打ち倒してしまった…。

 

憤怒と憎悪のままに意識を失った遊矢へとトドメを刺そうとする災厄……そこへ、ついに凌牙が駆け付けた…!!

 

 

 

 

「榊遊矢、ちょっと痛いけど…我慢しろよ!!オラァっ!!」

 

ぐおっ─!?

 

『ダーリン!!』

ミエルへの拳を受け止めた凌牙はその腕を掴み、遊矢ごと投げ飛ばす…それによって災厄は思わず、遊矢の首から手を離した…!

 

 

『遊矢!!ぬガッ……!?』

 

「ナイスキャッチだ、権現坂…!お前達はそのまま下がってろ…!フォウ、お前もだ」

 

《フォウ…キャウ!》

そして投げ出された遊矢を権現坂が身を呈してキャッチする…そしてフォウを離れさせた凌牙は起き上がろうとする災厄を見据える…!

 

 

『凌牙!その男は…その人は、遊希なのだろう!?何故、なんでそんな姿に…!?』

権現坂は凌牙に問いかける…闇に覆われた災厄、それは権現坂が知る遊希の状態ではなかった…。

 

 

「俺も、何が起きたのかは分からねぇ……でも、原因は……コレだ…!」

 

『城之内殿…それに舞網アドベンチャースクールの…!!まさか、人間が…カードに…!?』

 

『そんな…!?』

そんな権現坂に凌牙は懐から取り出したカードを見せる…それはカードにされてしまった城之内と聖目だった。

 

 

「あの人は奴ら…オベリスクフォースに…()()に対する怒りや憎しみに囚われてる…!いま、それを止められるのは…俺だけだ…!!」

 

『俺も、戦うぞ…!遊希は俺の掛け替えのない仲間だ…!それを放っておけるか!!』

 

「来るんじゃねぇ……()()()

 

『っ…!?』

凌牙と共に戦おうとする権現坂…だが、凌牙はそれを凄まじい気迫で制止する…!

 

 

 

「いまのあの人と、お前達じゃレベルが違いすぎる…!死にたくなきゃ……そこにいろ…!」

 

オオ……うおおオオオオッ!!!

災厄が凄まじい殺気と共に咆哮……その体を覆っていた闇が晴れていく……その姿は……もはや、怪物だった。

 

 

 

 

 

赤かった髪は黒く染まり、前髪には白いメッシュが入っている。

 

 

露わになった肌は黒く染まり、身体に刻まれた無数の傷跡が紅く痛々しい光を放っている。

 

 

背中からは悪魔を思わせる大小2対の黒い翼…そして金色の瞳に、朱く染まった白目…。

 

 

その姿を知る者ならば、こう呼ぶだろう───

 

 

 

 

『破壊の悪魔』と

 

 

 

 

 

 

「っ…十代さんに、聞いた事があるぜ……絆の光(NEXUS)を掴む前に…一度だけ、父さんが闇に堕ちた事があるって………その闇は……今度こそ、俺が祓う!!」

凄まじい殺気を前に凌牙はデュエルディスクを構える!!

 

 

『っ……凌牙、お主は何者なのだ…!?なぜ、この殺気の中で平然としていられる…!?』

ミエルは殺気に当てられて失神している…その中で大量の冷や汗を流しながら、権現坂は真正面から殺気を受け止める凌牙に問いかける…!

 

 

 

「俺は…凌牙、()()()()!世界を救った、英雄の()()だ!!」

 

ウオオ……オオオッ!!

災厄の悪魔を前に名乗りを上げる凌牙……英雄を闇から救う為のデュエルが始まる!!

 

 

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

 

凌牙LP4000

災厄の悪魔LP4000

 

 

 

 

「俺のターン!」

「いくぜ…!俺は魔法カード『RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)』を発動!!このカードはエクストラデッキ・墓地から効果を無効にして、オーバーハンドレット・ナンバーズを特殊召喚する!」

 

101

 

「現われろ!『No.101』!満たされぬ魂を乗せた方舟よ…光届かぬ深淵より、希望の世界へ浮上せよ!!『S・H・Ark Knight(サイレント・オナーズ・アークナイト)』!!」

 

『え、エクシーズモンスターを、エクシーズ召喚せずに特殊召喚だと!?』

光の銀河から赤いコアを持つ、巨大な白い方舟が現れる! ATK2100

 

 

「まだだ!さらに特殊召喚したオーバーハンドレットナンバーズをランクアップさせ、カオス化する!俺は『サイレント・オナーズ・アークナイト』でオーバーレイネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!」

光の銀河に方舟が飛び込み、混沌の爆発と共に再誕する!!

 

101

 

「現われろ!『CNo.101』!満たされぬ魂の守護者よ…希望の騎士となって、闇を砕け!!『S・H・Dark Knight(サイレント・オナーズ・ダークナイト)』!!」

アークナイトのコアから人型が飛び出し、黒き鎧を纏い、朱き槍を握り締める…このモンスターこそ、凌牙のエース…黒き槍術士が現れる! ATK2800

 

『この、モンスターは…!!黒咲以上の…!』

権現坂は召喚された槍術士に圧倒される…その威圧感は以前見た黒咲のエクシーズモンスター以上だった…!

 

 

「まだだ!俺は『シャクトパス』を召喚!」

タコの足を持つ鮫が現れる! ATK1600

 

「さらに!自分フィールドに水属性モンスターが存在する時!『サイレント・アングラー』は特殊召喚できる!」

チョウチンアンコウ型のモンスターが現れる! ATK800

 

「俺はレベル4の『シャクトパス』と『サイレントアングラー』でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

103

 

「力を借りるぜ、璃緒!現われろ!『No.103』!『神葬零嬢ラグナ・ゼロ』!」

凌牙はさらに二振りの刀を持つ神をも凍らせる巫女を呼び出す! ATK2400

 

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

凌牙LP4000

ダークナイト ラグナゼロ 伏せ1 手札1

 

 

 

 

『エクシーズモンスターを一気に2体も…!これが、凌牙の本気か…!!』

フィールドに並ぶエクシーズモンスターを見た権現坂は冷や汗を拭う…凌牙のプレイングレベルは今の権現坂達を大きく上回る……だが、凌牙の表情は険しいままだった。

 

 

「(父さんは()()()()()()で来る…!?俺でも対応しきれるのか…!)」

 

《フォウ…!》

目の前の悪魔が「英雄」の全ての力を扱えるのかは分からない…だが、少しでも力を扱えるなら…並の決闘者を遥かに凌駕してしまう、それは凌牙本人が一番分かっていた…!

 

 

 

 

【オレのターン…暗き力はドローカードをも闇に染める…!ダークドロー!

 

「っ!?マジか!?」

暗き闇が悪魔の右腕に宿り、破滅の軌跡を刻む…!

 

 

【オレは魔法カード『エクシーズ・トレジャー』を発動…フィールドのエクシーズモンスター1体につき、1枚ドローする…!2枚ドロー!さらに手札の『紋章獣ツインヘッド・イーグル』を墓地に送り『紋章獣アンフィスバエナ』を特殊召喚!】

 

「おい…!?よりによってそれかよ…!!」

上下に2つの頭を持つドラゴンが現れる! ATK1800

 

 

【さらに『紋章獣レオ』を召喚!】

仮面を被った獅子が現れる! ATK2000

 

【さらに、フィールドに2体の紋章獣が存在する事で…手札から『紋章獣エアレー』を特殊召喚…!】

仮面を被った青い鹿のような獣が現れる! ATK1000

 

 

「レベル4のモンスターが、3体…!!」

 

【オレはレベル4の『アンフィスバエナ』『レオ』『エアレー』でオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!】

3体のモンスターが光の銀河に飛び込み、光の爆発を起こす!!

 

69

 

「現われろ…『ANo.69』…!憎しみを、怒りを開放せよ…!!ランク4!『紋章神(ゴッド・メダリオン)コート・オブ・アームズ』!!」

現れるのはかつて、復讐に呑まれた男に取り憑いた魔物……巨大な角を持つ、異形の悪魔が現れる! ATK2600

 

 

 

「トロン…バイロンのナンバーズ…!!いきなりか…!!」

凌牙はその恐ろしさをよく知っている…その力が牙を剥く!

 

【『コートオブアームズ』の効果…このモンスターが特殊召喚された時、このカード以外のエクシーズモンスターの効果は無効になる…!ゴッド・メダリオン・ハンド!!】

 

「くっ…!?」

 

『なっ…!?エクシーズモンスターの効果が!!』

異形の悪魔から飛び出した紫色の光の腕が槍術士と巫女に突き刺さり、色を奪い去る…!

 

 

【さらに、1ターンに1度!相手エクシーズモンスターの効果を使う事ができる…!『ダークナイト』の効果発動…『ダークナイト』をこのモンスターのORUにする……ダーク・ソウル・ローバー…!!】

 

『なんだと!?』

光の腕が槍術士を悪魔へと引きずり込む……そして槍術士は貪り喰われ、悪魔の糧となってしまった…!

 

コートオブアームズORU3→4

 

 

【バトルだ…『コートオブアームズ』で『ラグナゼロ』を攻撃…!ゴッド・レイジ!!】

暗雲に覆われた空に向かって異形の悪魔が紫の閃光を放つ、それは雲の中で増幅され…黒い神の怒りとなって凌牙に襲いかかる!

 

「罠カード『ゼウス・ブレス』発動!相手モンスターの攻撃を、無効にする!!」

その瞬間、湧き出した津波が神の怒りを受け止める…本来ならフィールド上の魚・水・海竜族1体につき800ダメージを与える効果があるが…フィールドには戦士族の『ラグナゼロ』しか存在しない為、ダメージは与えられない…。

 

 

【オレは、カードを2枚伏せ…ターンエンド…!】

 

災厄の悪魔LP4000

コートオブアームズ 伏せ2 手札1

 

 

 

 

【うう…オオオッ──!!!

 

「相性最悪にもほどがある…!だが、負ける訳にはいかねぇ!!」

荒ぶる決闘者の衝動のままに咆哮する悪魔…だが、凌牙は怯まない…大切な人を救う為に…!

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「くっ…!!魔法カード『氷結の刃(ゼロ・ブレード)』を発動!このターン『ラグナゼロ』は2回攻撃ができ、さらに『コートオブアームズ』の攻撃力は1000ポイントダウンする!!」

 

『よし!上手いぞ!!』

氷結の巫女が氷の刃を投擲…異形の悪魔の体を凍らせる!

 

コートオブアームズ ATK2600→1600

 

 

「バトルだ!『ラグナゼロ』で『コートオブアームズ』を攻撃!!」

 

【速攻魔法『RUM-クイック・カオス』を発動!自分フィールドのエクシーズモンスター1体をランクアップし、カオス化させる…!オレは『コートオブアームズ』1体でオーバーレイネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!】

 

「しまった!!」

 

《フォウ!?》

氷を砕いた悪魔が光の銀河へと飛び込み…闇の爆発が古代遺跡エリアを覆い尽くす!!

 

69

 

【現われろ…『A CNo.69』…!怒りを喰らう神よ…全ての世界を喰い尽くせ!ランク5!『紋章死神(デス・メダリオン)カオス・オブ・アームズ』!!】

闇の爆発の中から…カオスを宿せし、異形の死神が現れる! ATK4000

 

 

『こ、攻撃力4000だと!?』

 

「っ……攻撃は、中断だ…!カードを1枚伏せ……ターンエンド!!」

規格外の攻撃力を誇る死神を前に、凌牙はターンを終えるしかなかった…。

 

凌牙LP4000

ラグナゼロ 伏せ1 手札0

 

 

 

【オレのターン…ドロー…!】

【『カオスオブアームズ』の効果発動…カオスORUを1つ使い、『ラグナゼロ』の攻撃力を自身に加え…カード名、効果を得る…!カオス・メダリオン・ハンド!】

 

「っ…!!」

混沌の触手が巫女の力を奪い去る…!

 

カオスオブアームズ ATK4000→6400

 

 

【そしてエクシーズ素材から墓地に送られた『紋章獣レオ』の効果発動…デッキから『紋章獣バシリスク』を手札に加え、召喚…!】

蛇の尾を持つニワトリが現れる! ATK1000

 

【さらに手札から速攻魔法『サイクロン』を発動…!伏せカードを破壊する】

 

「っ…!!」

竜巻が凌牙の伏せカードを吹き飛ばす!

 

 

【バトル…『バシリスク』で『ラグナゼロ』を攻撃…!】

 

『っ!?何故、ダメージを受けてまで!?』

ニワトリが巫女に突撃…氷の刃で切り裂かれる…!

 

災厄の悪魔 LP4000→2600

 

 

【『バシリスク』の効果発動…バトルした相手モンスターを破壊する…!】

 

「っ…!!」

巫女がバジリスクの呪いで砕け散る…これで凌牙に抗う手段は…無くなった…。

 

 

 

『り、凌牙!!アクションカードを!!』

 

「っ……いや、このターンを耐えられても……俺じゃあ、あのモンスターは、倒せねぇ…!!」

徹底的に対抗手段を奪われた凌牙…しかも、周囲にはアクションカードが見当たらない……ナイト・オブ・デュエルズが黒咲への嫌がらせの為に使い切ってしまっていたのだ…!

 

 

「権現坂、榊遊矢を連れて逃げろ…!海馬コーポレーションに連絡して、保護して貰ってくれ…!!海馬さんと遊戯さんが……必ずあの人を止めてくれる…!!」

破滅を前に…凌牙は伝説の決闘者へと後を託す…!

 

 

 

【バトル…『カオスオブアームズ』でプレイヤーへダイレクトアタック…!!カオス・デス・ドゥーム!!】

 

『凌牙─!!』

カオスを宿した即死の光が…凌牙に迫る…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

『すまねぇ……父さん………母さん………璃緒……!!』

 

 

 

 

 

 

そして、破滅の光が凌牙を飲み込んだ…。

 

 

 

 

 

 

《フォーウ───!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ…?」

 

『これは…!?なにが、起きて…!?』

 

《フォウ…!》

古代遺跡エリアを穏やかな光が照らす……それは凌牙達を守るように破滅の光を完全に弾いている…!

 

「この、光……まさか……どうして…!?」

凌牙はその光が自身のエクストラデッキから放たれている事に気付く、そして飛び出したのは───

 

 

「……遊馬、アストラル……バカ野郎……このカードは、お前達が持ってなきゃ、ダメじゃねぇか……!」

凌牙はスタンダード次元に向かう前に、何枚かのナンバーズを託されていた……しかし、このカードを自分に託しているとは思っていなかったのだ。

 

 

 

 

 

──この程度で諦めるなんて、キミらしくないぞ?シャーク──

 

 

 

──ヘヘっ…!カットビングだ!シャーク!!──

 

 

 

──オレ達はお前達に全てを託している……さっさと解決してこい!凌牙!!──

 

 

 

 

「アストラル…遊馬…カイト………お前達の託してくれた力、無駄にはしねぇ!!」

それはナンバーズに宿る仲間達の思い……その声に答えるように、凌牙はその名を叫ぶ!!

 

 

 

 

「エクストラデッキの『No.100ヌメロン・ドラゴン』の効果、発動!自分フィールドにカードがなく、手札にカードが存在しない状態でダイレクトアタックを受けた時!このカードを守備表示で特殊召喚できる!」

 

なにっ…?

凌牙の背後から希望の光が溢れ出す!   

 

100

 

現われろ!『No.100』!!宇宙創造の鍵…今こそ!闇の扉を解き放ち、希望を!その咆哮と共に導け!!『ヌメロン・ドラゴン』!!

それはかつて、遊馬達の窮地を救いし『全知全能の鍵』…黄金の龍が咆哮と共に降臨する! DEF0

 

 

 

『……美しい……なんと、雄々しく美しいドラゴンなのだ…!』

 

 『うっ…あれ、私っ………って、何アレ─!?』

その現実離れした光景に権現坂は見惚れ、目を覚ましたミエルは驚愕している…。

 

 

【ううっ…オオオ!!『カオスオブアームズ』で『ヌメロンドラゴン』を攻撃!!】

 

「無駄だ!このモンスターがバトルする時、相手モンスターの攻撃力は0になる!!」

再び放たれる破滅の閃光…だが、それは全能の一端によって霧散する!

 

カオスオブアームズATK6400→0

 

 

【罠カード『リビングデッドの呼び声』発動…!墓地の『紋章獣バシリスク』を特殊召喚…!】

再びヘビの尾を持つニワトリが現れる! ATK1000

 

 

【バトル…!『バシリスク』で『ヌメロンドラゴン』を攻撃…!そしてバトルしたモンスターを破壊する!】

ヌメロンドラゴンに突貫するバシリスク…ダメージこそ発生しないが、自身の呪いで全能の鍵を無に還す…だが、奇跡の力は終わらない!

 

 

「今だ!!『ヌメロンドラゴン』のさらなる効果発動!このカードが破壊された時、フィールドのモンスター全てが破壊される!!」

 

!?

黄金の粒子が集結し、巨龍が復活…創世の火炎が全ての敵を焼き尽くす!

 

「そして、このターン中に破壊された魔法・罠カードを破壊される前の状態に戻す!!……助かったぜ、お前ら…!」

凌牙は希望を託してくれた仲間達に感謝を伝える…その言葉を聞いた3人の幻影達は頷いて消えていった。

 

 

オオオッ!!魔法カード『高等紋章術(ハイ・メダリオン・アーツ)』を発動!墓地から『紋章獣レオ』『紋章獣エアレー』を特殊召喚し、この2体でエクシーズ召喚を行なう!!】

 

『なっ…!?まだ、そんなカードを!!』

全てを失ったかに見えた悪魔…そのフィールドに2体のモンスターが復活し、銀河に飛び込む!!

 

むげん

 

【『No.むげん』『デュエルガアディアン』!!】

悪魔のフィールドに闇色に染まった水晶の大剣が突き刺さる! ATK2500

 

 

 

「そこだ!!リバース罠『スプラッシュ・キャプチャー』発動!!墓地の魚族モンスター『サイレントアングラー』と『シャクトパス』を除外する事でエクシーズ召喚に成功した、相手エクシーズモンスターのコントロールを得る!!」

 

【なにっ…!?】

大剣が突き刺さった道路から水が噴き出し、凌牙のフィールドに大剣を吹き飛ばす!

 

 

【ターン、エンド…!】

 

災厄の悪魔LP2600

手札0

 

 

 

 

「(次に引いたカードがモンスターでなきゃ、父さんにターンが回っちまう……そしてまだエクストラデッキには『No.8紋章王ゲノム・ヘリター』だってあるはず……このドローに、全てを賭ける…!)」

ライフ差は有利…しかし、実質のシャイニングドローである「ダークドロー」を使える災厄の悪魔を倒すには、このターンで決着をつけるしかない…!

 

 

「父さん…母さん……璃緒……みんな……俺にもう一度、力を貸してくれ─!!」

集中力を高める凌牙…その身に集うは「希望」……集いし希望は『奇跡』を起こす!!

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

『こ、この光は…!?』

 

『彼に、光が集まって…!暖かい…希望の光……!』

集中力を高める凌牙が静かな水面のような穏やかな光を纏う……そして、姿が変わっていく。 

 

 

 

青色の瞳は瞳は赤と青のオッドアイに。

 

身体には紫紺のボディスーツを纏い、胸や手足には金色の具足が現れ…胸元にはバリアンの──誇り高き七皇の紋章が輝く。

 

そして背中には王の威厳を示す赤きマントがたなびく…。

 

 

 

バリアン七皇はドン・サウザンドによる介入が無ければ、アストラル世界へと生まれ変わっていた()()()()()()()()()……故に、遊馬や遊海のように……彼には()()姿()に覚醒できる可能性があったのだ。

 

 

 

 

いくぜ、俺のターン…!!全ての光よ、カオスよ!我が右腕に宿り、勝利の道筋を照らせ!!バリアンズ・シャイニングドロー!!

凌牙は自身の変化に気付かないまま、奇跡の力を振るう!

 

 

「来たぜ…!『セイバー・シャーク』を召喚!!」

希望の力が頭部が鋭い刀になった鮫を呼び出す! ATK1600

 

 

「バトルだ!『セイバーシャーク』で、ダイレクトアタック!!」

 

【ぐおおっ…!!】

セイバーシャークが体当たりを仕掛け、ライフを削る!

 

災厄の悪魔LP2600→1000

 

「そして…これが、闇を祓う…最後の攻撃だ!!」

凌牙は道路に突き刺さった大剣に手を掛ける…!

 

 

「目覚めろ…英雄の魂のナンバーズ!お前の銘は──『No.∞』!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!!」

 

 

凌牙が大剣の名を叫ぶと同時に引き抜く…そして剣を覆っていた闇が浄化され、決闘盤をモチーフとした大剣が復活する!!

 

 

「これが、英雄の魂の咆哮…絆の光よ!英雄を蝕む闇を斬り祓え!!勝利を掴む勇気の剣(デュエルカリバー・ブレイブ)──!!」

 

オオッ…グオァァァ!!?

放たれた光の斬撃が災厄の悪魔を飲み込む……それは、凌牙が父の背中に少し近付いた瞬間だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…?」

気付いた時、凌牙は光の中にいた…そして、目の前に薄っすらと何者かが現れる…。

 

 

──……ごめんね、凌牙君……君の大切な人の……世界を救う為の力を、こんな事に使っちゃって………本当に、ごめん──

 

 

「榊、遊希……」

それは遊希だった…半透明の身体で、涙を溢しながら…凌牙へと頭を下げる…。

 

 

 

──……遊矢や権現坂君にも、謝らなきゃ……洋子さんや柚子ちゃん…修造塾長……海馬社長にも………でも、時間がないや……──

 

 

「………アンタの事は、海馬さんや遊戯さん……カードにされちまった城之内さんにも助けて、必ず伝える……だから、安心して眠ってくれ」

 

 

──……ありがとう、凌牙君……フォウくんを、よろしくね──

 

 

光の中に遊希は消えていく……スタンダード次元において、英雄を守り続けた『普通の少年』は……穏やかに、長い眠りに就いた…。

 

 

 

 

 

 

災厄の悪魔 榊遊希 LP0

 

 

凌牙WIN──

 

 

 

 

 

 

 

「っ……はぁ、はぁ…はぁ………体が、重い…」

 

『凌牙!大丈夫か!?』

デュエルが終わり、奇跡の姿が消えた凌牙は地面にへたりこむ…実質、ダメージは受けなかったとはいえ…一撃、一撃が命取りの決闘の緊張感は……確実に凌牙の体力を奪っていた…。

 

 

「あの人は、父さんは……!」

 

『遊希は…大丈夫だ、息はしている……しかも、傷が…!!』

 

『あんなにあった傷跡が、消えてる……嘘みたい…』

動けない凌牙に代わって権現坂達が倒れ込んだ遊希の様子を確かめる…今の決闘での傷は残っているが、その身を蝕んでいた無数の傷跡は綺麗に消え去っていた……それが意味するのは……。

 

 

「ああ…よかっ、た───」

 

『凌牙!?おい!しっかりしろ!!……なんとまぁ、穏やかな顔を……ミエル殿!ジャングルエリアに人がいる!呼んできてくれ!!』

 

『わ、わかったわ─!?』

スタンダード次元に来てからずっと気を張り続けていた凌牙は安堵感から気を失ってしまう…その様子に少し呆れながらも、権現坂達はジャングルエリアにいた大漁旗や茂古田達に手を借り、凌牙や遊矢…そして遊希を身を隠しやすいジャングルエリアへと運び込んだ…。

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

「うっ……寝ちまってた、のか……」

 

《フォウ!フォーウ…?》

 

『おお、凌牙!気が付いたようだな……あれだけのデュエルをしたのだ、無理もあるまい……』

 

「権現坂…フォウ……ぐっ……ここは……」

 

『ジャングルエリア…舞網公園の辺り、時間は…夜の9時を過ぎた所だ』

眠り続けていた凌牙が目を覚ます、そこは夜の帳が落ちたジャングルエリア…周囲を見渡すと焚き火の側で茂古田未知夫が料理を作り、大漁旗鉄平が釣り道具の手入れをしている。

少し離れた所ではミエルが遊矢に膝枕をし、その隣に遊希が寝かされていた…。

 

 

『あの仮面のデュエリスト……オベリスクフォースという者どもはこの辺りにはいないようだ、油断はできんがな…』

 

「こっちに来たのは…おそらく、12人前後…遊矢と父さんがそれぞれ3人ずつ倒したなら…残り3人くらいのはずだ……俺もユースの奴らと一緒に1チーム倒してきた……ぐっ…」

 

『無理するな…もう少し休んでいろ、何かあれば…俺が命を張る…!』

 

「……すまねぇ」

体を起こした凌牙だが、連戦の疲れに顔を歪める……ユースと共にオベリスクフォースと戦っていた凌牙だが、強力なオベリスクフォースによってチームは半壊……さらにフォウの知らせを受けた事で焦った凌牙は『時間を支配する龍王』を開放、残りのユースチームを逃し、災厄と化した英雄のもとへ駆け付けたのだ。

 

 

「……榊遊矢は?」

 

『まだ、あれから眠ったまま……いや、一度目を覚ましたのだが……また暴れ始めてな、すぐに気を失ったのだが……少し、気になってな……』

 

「何かあったのか?」

 

『ミエル殿の占いで遊矢の中には2つの心、そしてそれを飲み込むような恐ろしいモノがある……と、結果が出たのだ……それが、遊矢が豹変してしまった原因かもしれん』

 

「そうか…とにかく、敵に警戒しながら……目が覚めるのを待つしかねぇな…夜は下手に動くと何が起きるかわからねぇ」

 

『むぅ…凌牙はまるで戦場の将のようだな…周りが良く見えている』

 

「これでも…昔は王様やってたからな」

 

『えっ?』

 

「…冗談だ」

 

《フォ〜ウ〜?(それって冗談で通じるの?)》

冗談を言えるくらいの調子を取り戻した凌牙…そして、しばらくして遊矢も目を覚ますのだった。

 

 

 

………

 

 

 

「……遊希兄……オレが、そんな戦い方して…遊希兄と戦ったなんて……」

 

『遊矢…』

 

「ダーリン…」

目を覚ました遊矢は権現坂達から事情を聞かされる、いつもとは違う雰囲気でオベリスクフォースと戦っていた事…新たな『ドラゴン』をエクシーズ召喚して、オベリスクフォースを倒した事……そして、『災厄』と化した遊希によって気を失っていた事を…。

なお、遊矢本人の記憶はオベリスクフォースがナイト・オブ・デュエルズをカード化した辺りで途切れていた。

 

余談だが…食料調達等で遊矢達に恩を売り、ペンデュラムカードを要求した大漁旗には凌牙が数枚のペンデュラムカードを渡して黙らせている。

 

 

 

「榊遊矢……悪いが、次に目覚めた時……この人は『榊遊希』じゃなくなってるだろう……本来の『記憶』を取り戻してな」

 

「LDSの……エクシーズ次元の凌牙…!それって、どういう事だよ…!」

 

「言葉通りの意味だ……怒りに飲まれた榊遊希は俺が倒した、その衝撃で……今度こそ、記憶の()が外れたはずだ……その証拠に…傷が治ってるだろ?……目覚めたこの人がお前の事を覚えてるかは……俺にもわからねぇ」

 

「そんな…!」

そして凌牙は遊矢へと、残酷な真実を伝える……焚き火に照らされた遊希の姿は見慣れた傷だらけの姿ではなく、黒髪の青年──凌牙の知る白波遊海の姿になっていた…。

 

 

「それよりも、だ……お前はこれからどうしたい?何をしたい?」

 

「えっ…?」

 

「このバトルロイヤルにはいま、レオ・コーポレーション、エクシーズ次元、融合次元……様々な思惑が入り混じってる……その中で、お前は何を為す」

凌牙は鋭い目付きで遊矢を睨む……遊矢を確かめるように…。

 

 

「……オレは…素良と話がしたい」

 

『なに!?素良が帰ってきているのか!?』

 

「うん……融合次元の奴らと、一緒に……」

遊矢の思わぬ言葉に権現坂は驚く…彼は素良が帰ってきている事を知らなかったのだ。

 

 

「オレは……素良と話したい、なんでエクシーズ次元にあんな事をしたのか、直接確かめて…止めたいんだ!!」

 

「……そうか、ならお前のやりたいようにやってみろ……この人は俺が守る」

 

「凌牙…ありがとう…!!」

 

「(榊遊矢…ズァークの欠片……やっぱり、融合の欠片以外は良い奴なんだな……なぁ?ユート…)」

遊矢の真剣な眼差しを見た凌牙は…その姿にユートの姿を重ねていた…。

 

 

 

 

翌朝、遊矢・権現坂と未知夫・大漁旗の4人はバトルロイヤルに異変が起きている事を参加者達に伝える為に古代遺跡エリアを出発した…なお、ミエルは朝食後すぐにいなくなってしまった。(融合次元への妨害の為、レオ・コーポレーションが通信妨害をしている)

 

 

 

「……父さん、早く目を覚ましてくれ……俺1人じゃ、手が届かねぇ…!」

そんな中、まだ目覚めぬ遊海の横で凌牙は頭を抱えていた。

 

 

柊柚子とシンクロのズァーク…ユーゴの転移。

 

オベリスクフォースと参加者達の犠牲者を出しながらの戦い。

 

 

その2つを凌牙1人で解決するのは厳しいモノだった。

 

 

 

「柊柚子は無事だからまだ良いとして……やっぱり、同じ釜のメシを食った奴を見捨てるのは……男じゃねぇ…!」

 

《フォウ……フォウフォウ……》

 

「…ん?フォウ、何やってんだ?」

先の事を知っているが故に思い悩む凌牙…その横でフォウが木を登り始める…。

 

 

《フォウフォウ…フォウ!》

 

「……頭を下にして、身をよじって……って、おま──!?」

 

《フォウフォウフォーウ!サッサトオキルフォーウ!!》

 

「………!!?」

 

おわああ!?何やってんだフォウ──!?」

 

 

説明しよう、落ち込んでいる凌牙を見ていられなかったフォウが木によじ登り、高速回転しながら眠っている遊海の腹にダイレクトアタックをかましたのである。

 

突然の事に思わず変な声を出してしまう凌牙だったが……それは事態を()()させた。

 

 

 

「う……ぐぅ……りょう、が…?」

 

 

 

「っ!?父さん!!」

 

《フォウ!!》

フォウの与えた衝撃か…はたまた凌牙の声がきっかけか……眠り続けていた遊海が薄目を開けたのだ…!

 

 

「……お前…()()はどうした…?今日は……授業……」

 

「ああ…!!父さん…!父さん!!よかった…!よかった!!帰ってきた……!!」

 

「ん、あ……??」

だいぶ記憶の()()があるようだが……ついに、白波遊海が本当の意味で目を覚ました…!

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「ここは…俺は……?」

俺は見慣れない景色の中で目を覚ました…そこはまるでジャングルのような場所…だが、遠くには遺跡に覆われたビル群のようなモノも見える……まるで、()()()()()()後の世界のように…。

 

 

「馬鹿…!馬鹿親父!!どんだけ寝坊すりゃ気が済むんだよ!?」 

 

《フォウ…フォウ!!》

 

「凌牙…フォウ………凌牙?」  

そして、俺の胸に顔を埋めて泣いている凌牙…その肩にはフォウが乗っているのだが……()()()がある………それは──

 

 

「凌牙…お前、なんで()()()なってんだ…?成人式祝いで、一緒に飲んだ、よな?」

 

「ああ、飲んだよ!父さん、普段飲まないのにジョッキでビール飲んだせいで一週間寝込んでたよな!?どんだけ弱いんだよ!」

 

「記憶が…こんがらがってる………俺は、なんで、こんな──」

 

 

ズキン!!

 

 

「………あっ────」

状況が理解できず、混乱する遊海……その時、鋭い頭痛が襲いかかる…!

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■───!!

 

咆哮する黒い影

 

 

 

 

「くっそぉ…!タフにも、程があるぜ…!」

 

「なんで、倒れない…!」

 

「まだだ…!これ以上、奴に…罪を重ねさせるな…!!」

 

傷付いた仲間達

 

 

 

 

「やだ…!待って!遊海さん!遊海さん─!!」

 

「みんなを頼む…奴を食い止めるのは……俺の役目だ…!!」

 

そして…涙を流す、翠の顔

 

 

 

 

 

 

「………まさか、ここは……?」

 

《フォウ!?》

 

「父さん!?」

 

記憶の混乱が解けた遊海は軋む体を無視して立ち上がり、視界が開けた場所へとふらふらと歩き出す…そして…。

 

 

 

「L…D…S……レオ、デュエル、スクール…?」

海際から見えたのは、街の中心部に聳え立つLDSのビル…そして凍りついた海浜地区と、遠くに見える火山…その瞬間、遊海は自分が()()()()()()()…理解してしまった。

 

 

 

 

「あ、ああ……!?うあああああああ──!?!?

 

 

「父さん!!」

遊海は()()した…自分が()()()()()()()()()のだと、理解してしまったのだ…。

 

 

 

 

「守れなかった…!守れなかった!!!遊戯に!克也に!海馬社長に、みんなに託された世界を守れなかった!!俺は…俺は…!!うああああああ!!!!」

 

「っ…父さん!!落ち着け!!落ち着いてくれ!!」

発狂し、慟哭の叫びを上げる遊海…その理由を察した凌牙は遊海の肩を掴み、呼び掛ける…。

 

 

 

 

「父さんは確かに世界を()()()()()んだ!!俺達の人間界は…父さん達が生きてきた世界は無事だ!!」

 

 

「えっ……?」

凌牙は青い瞳で遊海を見つめながら、遊海が使命を成し遂げた事を伝えた…。

 

 



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Ep.28 悪魔が生まれた日

こんにちは!S,Kです!

ついに復活した遊海…そして遊海達に何が起きたのかがついに明かされる…!

それでは、最新話をどうぞ!


「………落ち着いたか?父さん…」

 

「ああ…すまん、凌牙…」

 

《フォウ…フォーウ(しょうがないよ、遊海は何も知らないままだったんだし…)》

 

ついに長い…長い眠りから目覚めた遊海…しかし、自分がスタンダード次元にいる事を知り『世界を守れなかった』と思って取り乱してしまう…。

だが…凌牙の『世界は無事』という言葉を聞いて、ようやく落ち着きを取り戻していた。

 

 

 

「そうだ…!父さん!アヤカ達はどうしたんだ?俺達の世界にもいなかったんだけど…」

 

「………あっ…そうだ…あの時…!彩華!トフェニ!メガロック!!」

凌牙の疑問に数瞬考えこんだ遊海は鍵のようなネックレス…特典の1つである『賢者の鍵』で空間を切り裂く、すると──

 

 

《ま、マスタァァァ!!!》

 

「がっ!?」

 

《主殿─!》

 

「ぎぐっ!?」

 

《こんの…馬鹿遊海──!!》

 

げごぉぉっ!?!?」

 

「(合掌)」

 

《フォーウ…キャウ…(鍵の世界に避難させたままだったんだね…)》

裂けた空間から精霊達…アヤカ、トフェニ、メガロックの3体が飛び出してくる……開いた位置のせいで遊海は3体の下敷きになったのだった。

 

 

………

 

 

《マスター!!酷いです!私達を鍵の中に避難させたまま忘れているなんて…しかも!何度も呼びかけたのに気付いてすらなかったなんて!!》

 

《然り…外界の様子も分からず、我らは待っている事しかできなかった…!》

 

《それも…アヤカによれば現実時間で5年以上も!お前は何をしておったのだ!!》

 

「5年…?………5年も!?」

 

「みんな…父さんを怒らないでやってくれよ…今の今まで、父さんは本当に記憶喪失……というより()()()()んだから……」

一瞬失神していた遊海は精霊達の前で正座させられていた…だが、その中で自分が5年も記憶を失っていた事に驚いている…。

 

 

「父さん…本当に、何も覚えてないのか?」

 

「榊、遊希……俺が、榊遊勝に拾われて…榊遊矢の家族に…?本当なのか…?」

 

「ああ、LDSに残ってる記録は持ってきた…一応確認してくれ」

 

「…わかった」

記憶喪失中(榊遊希)の記憶を()()()()()()()()遊海は凌牙に渡された端末を確認する、そこにはレオコーポレーションの調査力で集められた「榊遊希」の記録やデュエル記録が記されていた。

 

 

 

「遊勝塾所属…スタンダード次元における二人目のペンデュラム使い…『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』…海馬コーポレーション…?美しきデュエル塾、孔雀舞?童実野高校??舞網チャンピオンシップでユートとデュエル???梁山泊塾の相手を????……ま、待て待て待て!情報量が多すぎる!!これ、俺が知ってる()()()()()()()()()じゃないぞ!?」

 

「あ〜……海馬さんが絶対そんな反応をするって笑ってたな……」

 

「ち、ちょっと待て!?いま、聞き捨てならない名前が聞こえたんだが!?いったいどうなってんだ!?!?」

記された情報の多さに遊海は再び混乱状態に陥る…今の状況は遊海が覚えている「遊戯王ARC-V」の物語とは少し……いやだいぶ違っていたからだ。

 

 

《凌牙、これは…何が起きているのです?私も舞網市全体をサーチしましたが……明らかに()()()()()()()()の反応が……》

 

「アヤカ、それは俺も同じなんだ……俺達が()()()()()()()()()()()()()、父さん達に何が起きたんだ…?」

 

「……()()()()()()()()、か……」

遊海は記憶の糸を辿る……世界を崩壊寸前にしてしまった、事件までの記憶を───

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

「う〜ん……今日も平和だなぁ…ふわぁ…」

 

《もう…気を抜き過ぎですよ?マスター》

 

《良いではないですかアヤカ…最近はデュエルマフィアを壊滅させたり、精霊界から迷い込んだ『密林の黒竜王』や『スパイラル・ドラゴン』を保護して送り返したり…なんだかんだ忙しかったですし》

 

《まったく…遊海が『黒竜王』に飲み込まれた時は肝が冷えたぞ…》

 

「はは…あの時はびっくりしたなぁ……」

穏やかな時間が流れるハートランドシティ…その自宅で遊海達は穏やかに過ごしていた、時々舞い込む精霊絡みの事件や犯罪を解決したり…デュエルモンスターズに関する犯罪組織を摘発したり、危ない事もあるが…それまでの事件に比べれば遊海にとっては些細な事ばかりだった。

 

 

「遊海さん!ワールドチャンピオンシップスの特集が始まりますよ〜!」

 

「ん?もうそんな時間か…リモコン、リモコン……」

コーヒーを淹れた翠が遊海へと声を掛ける…ここで少しだけZEXAL組の現在について触れよう。 

 

 

 

 

ドン・サウザンド復活未遂事件の後、凌牙や遊馬は無事に高校に進学し、卒業…成人した今はプロデュエリストとして戦いの日々を送っている。

 

カイトは今のところはプロリーグには参加せず、父やバイロン達と共に異世界研究を続けている…その過程で様々な発明を生み出したカイトは『天才二世』として世間の注目を集めていたりする。

 

七皇達の進路は様々…プロデュエリストを目指す者、友の補佐をする者、新たな道を探す者……全員が夢を抱いて頑張っているのだ。

 

 

そして、今シーズンのプロリーグは…新たな時代の幕開けになろうとしていた。

 

 

 

 

「ついに新たな『決闘王』を決める時が来たか…なんだか、感慨深いなぁ…」

 

「そうですねぇ…遊海さんが前の『決闘王』を倒して……6年ですか」

 

「ああ、今回はちゃんとした決闘者…できれば凌牙か遊馬がなってくれれば嬉しいんだけどな〜?」

 

「ふふっ…それは完全に親バカですよ?」

ワールド・デュエル・カーニバルで遊海がナンバーズに呑まれてしまった、前『決闘王』を降してから早6年、その後も何人かの『チャンピオン』は誕生したが……そのいずれも『決闘王』の名を継ぐ事はできなかった。

 

それを重く見たKCを始めとしたデュエルリーグ主催者達は話し合い…各リーグ代表を選出した巨大トーナメント『ワールド・チャンピオン・シップス』の開催を決定した。

今シーズンの戦いはその出場権を賭けた戦いになっていたのだ。

 

 

 

「各リーグの代表は上位3人ずつ…KCリーグの代表は遊馬と凌牙、それから這い上がってきた飛龍司がなれるかどうか…他のリーグは…」

 

「ライディングリーグ・ライドAに所属してる海亜ちゃんと流星君…他にもたくさんの子達が『決闘王』を目指してるみたいです!……遊海さんも出たら良いんじゃないですか?」

 

「ははっ!俺はいいさ、それこそ凌牙達にジト目で見られちゃうよ!」

 

「それもそうですね!」

特集番組を見ながら遊海と翠は笑い合う、世界の守護者として戦う遊海は新たな決闘者達を楽しみにしていた。

 

 

 

『次に紹介するのは、今大会のダークホース…弱冠18歳で出場権を獲得した()()()()選手の────』

 

 

「ぶっ…!?ぶーーっ!?!?」

 

「きゃあ!?遊海さん!?大丈夫ですか!?」

 

《ドフォーウ!?》

 

「ゲホっ!ゴホッ…!?ズァークだと!??」

アナウンサーの一言に遊海は思わずコーヒーを噴き出す……それほどの衝撃だったのだ。

 

 

『ズァーク選手はこの半年で急激に戦績を伸ばし、アドバンス・融合・シンクロ・エクシーズのドラゴン達と共にリーグ戦を────』

 

「神様、いくらなんでも…早すぎるって…!?まだ、あれから6年しか経ってな…………」

e・ラー事件の際、遊海はデウス神から「遊戯王ARC-V」のラスボス……元凶である『ズァークの誕生』を知らされていた…だが、それは最近誕生したのだろうと考えていた──その考えは少し甘かったようだ。

 

 

 

「ゆ、遊海さん……大丈夫ですよ!神様は大丈夫だって言ってましたし!!」

 

「……うん……とりあえず、様子を見ようか……とにかく、ズァークによる()()()()()()()()、それによる観客達の熱狂がなければ『覇王龍』は生まれない……神様の言った通りになるはずだ……」

 

「一応、瀬人さんやカイト君にも連絡しておいた方がいいですね…」

 

「……ああ……なにも、起きなければいいけど……」

少しの不安を感じながら…遊海はデュエルニュースへと目を向けた…。

 

 

 

 

………

 

 

 

「えっ…ワールドチャンピオンシップスで、リアルソリッドビジョンシステムを使う…!?」

 

『うむ、リーグ主催者の会議で決まったようだ……気がかりか?』

 

「……少し、不安だな…」

ワールドチャンピオンシップス開催まで僅かに迫ったある日…遊海はデュエルロイドの瀬人によって思わぬ事を伝えられていた…。

 

現在、世界でのデュエルはスタンディングデュエルは臨場感溢れる『ARビジョン』、超スピードの中で行うライディングデュエルは安全面から『ソリッドビジョン』を用いて行われていた…それをワールドチャンピオンシップスでは海馬コーポレーションが開発した新技術…実体と質量を持つ『リアルソリッドビジョン』システムで統一しようという事になったのだ。

 

 

『……お前の懸念は理解している…だが、この世界には()()()()()…その時点でお前が知る「デュエルモンスターズ」世界ではないのだ、遊海…お前が導き、守ってきた者達を信じてみたらどうだ?』

 

「……そうだ、な……でも、リアルソリッドビジョンに『安全装置』を付けるように伝えてくれ……万が一の事故が起きないように…」

 

『分かった、技術者に伝えておこう』

一抹の不安を感じながらも、遊海は今を生きる人々を信じてみる事にした…。

 

 

 

…………

 

 

 

「一回戦突破したぜ!父さん!」

 

「ああ、おめでとう凌牙!直接見に行けなくてごめんな?」

 

「いいって…まだ一回戦だし、それにあんな()が残ってるんじゃ、な?」

 

「むむむ…まさか、俺がUMA扱いされる時が来るなんてなぁ……」

そしてワールドチャンピオンシップスが始まった…無事に代表に選ばれた凌牙はナンバーズを使用しない状態で難なく一回戦を突破、モニター越しに遊海達と喜びを分かち合っていた。

 

本来なら、遊海も会場に行きたかったのだが……ドン・サウザンド復活未遂事件の際、誰かに姿を見られていたらしく……『決闘黎明期から生き続ける不死のデュエリストが存在する!?』と中世ヨーロッパのサンジェルマン伯爵よろしく、物好き達の間で話題になってしまったのだ…。

もちろん、KCや伝説の決闘者、子孫達も火消しに協力してくれたのだが…下手な変装では見破る者が出てきた事で、遊海は表立っては動けなくなっていた。

 

 

「凌牙、そのままズァークのデュエルも見ててくれ……頼んだぞ」

 

「心配すんなって、さっき軽く話したけど…そんなに悪そうな奴じゃなかったぜ?」

 

「うむ……(気にし過ぎ、だったか…?)」 

 

 

 

 

…………

 

 

 

「ゆ、遊海さん!大変!!テレビ!テレビ見て!!」

 

「むっ…?どうしたんだ?」

大会が順調に進む中、ソファでうたた寝していた遊海は翠の悲鳴で目を覚ます…そこに映っていたのは…。

 

 

 

『これは…会場が騒然としています!ズァーク選手対猪爪選手の試合で、事故が発生した模様です!』

 

「っ…!!」

テレビの中で解説者が焦った様子で状況を伝える…後の『アクションフィールド』の原型になりそうな近未来のフィールドの中で青年が倒れ、ズァークが呆然と立ち尽くしている…。

 

状況を見るとズァークが攻撃を仕掛けた結果、モンスターの射線に入っていた相手に攻撃が当たり、怪我を負ってしまったようだ…。

 

 

「これは…!!」

そしてスタジアムは荒れていた、半数の人達はブーイングや悲鳴でズァークに抗議し──()()()()()は歓声でデュエルを讃えていたのだ…。

 

「……ちょっと、マズイか…!?」

 

 

 

…………

 

 

 

そしてワールドチャンピオンシップスは進んでいく…ズァークの事故以降、その熱狂が他の試合に飛び火するような事はなかったのだが……ズァークの試合()()、明らかに熱狂の度合いが加速度的に上がっていっていた…。

 

 

 

 

「……これは」

そして、ついに準決勝…ズァークは流星やミザエルなどの強者を下し、凌牙とのデュエルに臨もうとしている…変装した遊海はその試合を見守る為にスタジアムを訪れていた…そして…。

 

 

 

「バトルだ!『牙鮫帝シャーク・カイゼル』で『スターヴヴェノム・フュージョン・ドラゴン』を攻撃!!カイザー・バスター!!」

 

『破壊された「スターヴヴェノム・フュージョン・ドラゴン」の効果発動!このモンスターが破壊された時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、その攻撃力の合計のダメージを与える!!ヴェノム・ブレイク!』

 

「なにっ!?があああっ!?……かはっ!?」

 

「っ…凌牙!!!」

毒龍を破壊して決着をつけようとした凌牙…だが、反撃のダメージによって吹き飛ばされ……凄まじい勢いで壁に叩きつけられてしまった…。

 

 

 

神代凌牙LP0

 

ズァークWIN!

 

 

 

 

 

 

「凌牙…!しっかりしろ!」

 

「父、さん……あいつ、やべぇ……なんか、変だ…!攻撃に、()が、乗ってる…!!」

担架で運ばれる凌牙に駆け寄る遊海…そのダメージは普通のリアルソリッドビジョンでは考えられない、真の『決闘』に近いダメージだった…。

 

 

「スタジアムに直接来て分かった……ズァークは、サイコデュエリストと精霊使いのハイブリッド……突然変異のデュエリストだったんだ…!!」

そして、直にズァークを見た事で遊海はその力の特異性に気が付いた……先天的に肉体に宿る超能力『サイコデュエリスト』としての力、そして精霊に愛される事で魂に宿る『精霊使い』の力……その2つを通常のデュエリストよりも強く持つ者──それがズァークの正体だったのだ。

 

 

《それだけではありません…ズァークの試合を観戦する人々から通常の試合時よりも高い精神的興奮を計測しました……いわゆる彼の持つ『デュエリストとしてのカリスマ性』……それが観客達の熱狂に拍車をかけている、と思われます》

 

()()()()()()()デュエリスト、か…!」

それはまさにデュエリストになる為に生まれてきたような才能……生まれてきた時代が違えば、彼を主役にした『物語』も生まれていたかもしれない…。

 

 

「そして…ズァークはモンスター達の怒りや憎しみに共感……カオスに呑まれて、『覇王龍』に至るって訳か……この時点で、()()なのは───」

そして、遊海はズァークを救う為の決断を下した…。

 

 

 

………

 

 

 

「えっ…!?ナンバーズを使ってもいいから、ズァークに勝て!?本当にいいのか!?」

 

(遊海、理由を聞かせてくれ……貴方の事だ、理由があるのだろう?)

 

「ああ、ズァークを止める……いや、救う為に………お前達の力を借りたい…!」

ワールドチャンピオンシップス、決勝戦の前…遊海はもう1人のファイナリストとなった遊馬、そして補佐をしていたアストラルに世界の命運を託す事にした…。

 

 

 

(……なるほど、つまりズァークを救うには遊馬のかっとビングの精神を彼に伝え…彼に『本当のデュエル』の楽しさを思い出させれば良いという事だな?)

 

「そういう事だ…今の彼は観客の期待に応えようとするあまり、少しずつ追い詰められてる……その追い詰められた結果が『覇王龍』……そうなる前に、遊馬の持つ『正しいカオス』でズァークやドラゴン達を鎮めてほしいんだ……」

 

「……わかった!デュエルをすれば、みんなオレの友達だ!ズァークの心に響くようなデュエルにしてやるぜ!!」

 

「すまない、遊馬……頼む…!」

遊馬の持つ希望の力…それに望みを託した遊海は遊馬に頭を下げた…。

 

 

 

 

…………

 

 

 

そして、決勝戦は決闘の歴史に残る大激戦になった…次々と飛び出してくる4体のドラゴン達、遊馬は公式戦ではWDC以来となる「希望皇ホープ」を始めとしたナンバーズを開放…次々とドラゴン達を打ち倒し──

 

 

 

 

 

「バトルだ!「No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ」で「オッドアイズ・ドラゴン」を攻撃!!ホープ剣ビヨンドスラッシュ!!」

 

『う、うわあああ……!!』

希望を超えた希望の皇帝の剣が二色の眼のドラゴンを両断する…そして、長き戦いに終止符を打った…。

 

 

ズァークLP0

 

遊馬WIN!

 

 

 

 

 

『き、決まったぁぁぁ!第1回ワールド・チャンピオン・シップスを制し、新たな「決闘王」となったのは……九十九遊馬選手だ─!!』

 

「やった…!勝ったビングだぜ、オレ─!!」

 

(ナンバーズを使ってギリギリの勝負とは……凄まじい強さだった…!)

スタジアムに実況と割れんばかりの観客の歓声が轟く…遊馬はついに、自分の夢を成し遂げたのだ…!

 

 

 

『……負けた……オレが……』

 

「ズァーク!良いデュエルだったな!オレ、めっちゃ楽しかったぜ!すんげぇワクワクした!」

 

『遊馬さん…』

遊馬は倒れ込み、呆然としていたズァークに手を伸ばす…その顔は優しい、嬉しそうな笑顔だった。

 

 

「今回はオレの勝ちだったけど、次はどうなるかわからねぇ…また、楽しくて盛り上がるデュエルで戦おうぜ!」

 

『はい…!』

遊馬の手を取って、ズァークは立ち上がる…どんなにドラゴン達に追い詰められようと『かっとビング』で乗り越えて、ついには勝利を掴んだ遊馬…その魂は、確かにズァークの心に巣食っていたカオスを浄化した……したはずだった。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

「……遊馬のおかげで、世界は再び守られた……それで、終わってたら、よかったんだけどな……」

 

「まさか、あそこから……あんな事になるなんて…俺も思ってなかったぜ……だから、落ち込まないでくれよ…」

 

《フォーウ……》

そこまで思い出して頭を抱える遊海…悪魔が生まれた日は、ここから始まったのだ。

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

スコーン

 

 

『い"っ…!?』

 

「ズァーク!?誰だよ…!ゴミなんて投げたの!?」

握手を交わす遊馬とズァーク…その時、ズァークの後頭部に投げられたゴミが直撃した…!

 

 

 

「ふざけんなズァーク!!お前を応援してたのに!」

 

「もっと激しいデュエルが見られると思ってたのに!!」

 

「俺達は満足してねーぞ!!」

 

「や、やめろよ!!ズァークは一生懸命戦った!それでいいじゃねぇか!!」

ゴミを投げたのはズァークの熱狂的なファン達…カリスマに乗せられた彼らは、悪い意味でズァークのデュエルの虜になっていたのだ…。

 

 

ドクン!!

 

 

『……そうだ、オレは…()()()()()()……もっと強く…!もっと激しく!!』

 

「ズァーク…!?」

 

(っ…!離れるんだ!遊馬!!)

 

『お前達が望めば望んだだけ、()()()は強くなれる…!!オレ達は戦い続ける!!お前達が望むように──!!』

 

観客の悪意に触れたズァークが豹変する…強迫観念に支配されたような『勝利への渇望』、そして…『精霊使い』としての才能が……世界へと牙を剥いた…!!

 

 

 

 

「っ…ダメだったか…!!総員戦闘態勢!!ズァークを…あいつの精霊達の怒りを鎮めるんだ!!!」

 

「「「『『『了解!!』』』」」」

…だが、この世界には()()がいる…世界を救った英雄と勇士達が…!

 

 

「来い!『No.39希望皇ホープ』!!」

 

「今度は…好き勝手にはさせねぇ!!『No.73激瀧神アビス・スプラッシュ』!!

 

「お前の怒りは正しいのかもしれん…だが、それを世界に向けるな!!『超銀河眼の光子龍』!!」

 

最悪の事態に備え、遊海は戦える者達に招集を掛けていた…遊馬、凌牙、カイト達三勇士…璃緒を始めとした七皇のメンバー達、ライディングデュエリストとして成長した不動流星に海亜・アトラス…そして世界を巡る最強の精霊使いの一角、遊城十代……悪意に呑まれ、ドラゴン達と共に暴れ狂うズァークに遊海と彼らは立ち向かった…。

 

 

 

だが…ズァークは止まらない。

 

 

 

【そうか…世界にはまだ、これ程の強者達がいるのか……ならば、オレも!ドラゴン達と一心同体となり…最強の力を手に入れよう!!今こそ…1つに!!】

 

「マズい…!お前達!一度離れるんだ!!」

観客達を逃し、4体のドラゴン達に立ち向かう遊海達…そして、その時は訪れてしまった…。

 

 

 【時空を司る『アストログラフ・マジシャン』よ…その深遠なる力で…我らの望みを重ね合わせよ─!!】

空中に白衣の魔術師が浮かび上がり、万華鏡のような魔法陣を描く…そこに『オッドアイズ・ドラゴン』『スターヴヴェノム・フュージョン・ドラゴン』『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』……そして、ズァーク自身が飛び込む…。

 

 

 

そして…後に悪魔と呼ばれる龍──『覇王龍ズァーク』が誕生した…。

 

 

 

Side Out

 

 

 

「そこからが、大変だったんだよな……」

 

「ああ…俺達は戦い続けた……まだ()()()じゃない『覇王龍ズァーク』なら倒せると思って、戦い続けた………()()()も……」

 

「………十代さんが言ってたよな、4体の精霊と…その『魂』ごと融合したズァークの力は……今までの敵とは比べられないって……」

 

「………ああ、思い出してきた…!!そうだ、俺は……!」

そして、遊海は思い出した…自分が世界を救う為に、遊馬達に託した作戦を…。

 

 

 

Side遊海

 

 

 

『ぜぇ…ぜぇ……おい、どうなってやがんだ…!オレ達は、あいつを()()()()()、勝てるんだ…!!』

 

『くっ…無駄口を言う暇があったら、休んでいろベクター…!辛いのは、この場にいるもの、皆同じだ…!』

 

『それにしても、不可解だ…!何故、倒れない…!』

決闘者達は満身創痍だった、何度デュエルでズァークのライフを削りきり──逆に何度倒されたのか、もう数え切れない……倒されたズァークはしかし()()()、何度もデュエルを仕掛けてきていた。

まさに無尽蔵とも言える体力…だが、決闘者達の限界は近づいていく…。

 

 

ドーン!!

 

 

 

「ぐうううっ……ごはっ…………くそ……『帝王』にも、対応してきたか……」

 

「遊海さん!!大丈夫ですか!?」

ズァークに吹き飛ばされた遊海がビルの残骸に突き刺さる…戦い続ける者達のなかでも遊海自身の消耗が一番大きい……既に不死の身体の再生力は落ち、所持デッキの半分を使い切ろうとしていた…。

 

 

『遊海、まだ生きてるかい』

 

「バイロン…どうし…ゴフッ……」

 

『余裕はなさそうだね……強化型のスフィアフィールドが完成したよ、これで数時間はズァークの動きを封じる事ができるはずだ』

 

「ありが…たい…!子供たちは……そろそろ、限界だ…」

翠による治療を受ける遊海にハートランドで対ズァーク用のアイテムを開発していたトロンから連絡が入る…それはズァークを拘束する為のスフィアフィールド完成の連絡だった。

 

 

《マスター……ズァークの生命反応、弱まりません…!おそらく、彼は精霊と融合した事で体力は無尽……寿命尽きるまで、戦い続ける可能性があります…!》

 

「そうだ、よな……『物語』でも、封印するしか…なかった───封印………そうか…」

ボロボロの遊海はアヤカとの会話で事態の突破口を見つけた…。

 

 

 

 

 

「ズァークを、封印する!?いったいどうやって!?」

 

『生半可な封印じゃ…すぐに破られそうだぜ?』

 

「その為に──『ヌメロン・コード』を使う…それしかない…!」

 

「『『「『なんだって!?』」』』」

「光の護封剣」や『炎の護封剣』『闇の護封剣』の多重展開でズァークを足止めした遊海は集めた決闘者達に作戦を告げる…。

 

 

「みんなのおかげで、ズァークの被害はこの街だけで済んでる……まもなく、カイトやバイロンが開発した強化スフィアフィールドが…この街を覆う……その間に、ヌメロンコードを起動……()()()()()別次元にズァークを隔離する……そこで、ズァークの対処を続ける…!」

 

(なるほど…確かに、それが上手くいけば人間界への被害を最小限に抑えられる……だが、ヌメロンコードを使えるのはナンバーズを持つ私だけだ……私がナンバーズと共に離れれば、戦力は大きくダウンしてしまう)

 

「いや…アストラル、行くのはお前だけじゃない……()()()()()だ…!」

 

「っ…!?父さん!まさか、1人でズァークを足止めするって言うのか!?そんなにボロボロなのに!?」

 

「凌牙……今回の事態は、俺の油断が招いた事だ……俺に、責任を取らせてくれ…頼む…!」

 

「遊海…!」

それは封印という言葉から着想を得た『ズァーク隔離計画』……ズァークを無理矢理でも人間界から隔離し、被害を最小限に抑える為の作戦だった…。

 

……だが、その中に()()()()の無事は保証されていない……それが、この事態を招いてしまった1人としての遊海の責任の取り方だった。

 

 

 

「……ズァークを止めるには、奴やドラゴン達が抱いた憎しみや怒り、「勝ち続けたい」という奴の欲望を受け止め……それを浄化するしかない、まだ長い戦いになる……お前達には飛行船で少しでも体力を回復させてほしい……俺は不老不死だから、な…!まだ無茶が効く……それに、この作戦自体が()()()()()を避ける保険でもある」

 

『最悪の、事態…?』

 

「伝えていない者もいるから、改めて伝える……このあと、世界は4つに()()される可能性がある」

 

『「『「分断!?」』」』

遊海に詳細を知らされていなかった数人から驚きの声が上がる…。

 

 

 

「海馬コーポレーションの赤馬博士、という人が対ズァーク用のカードを作ってる………だが、そのカードが使用されたら……世界はズァークと共に4つに絶たれ、再構築されてしまう……それが()()()()()だ………」

 

「それって…世界が滅びるのと一緒じゃねぇか!?」

 

「……そうだ、ここでズァークを止められなきゃ……世界は終わる、それだけは避けなきゃならない…!でも、俺達には…それを覆せる力がある!お前達が、最後の希望なんだ…!」

 

「遊海…」

世界の終わり…その可能性を伝えられた決闘者達は拳を握り締める…。

 

 

 

「スフィアフィールドが張ってあれば、外からも侵入はできない…そうすれば、俺は周りを気にしないでズァークの対処に集中できる………頼む、お前達……俺の作戦に乗ってくれ…!」

 

(……遊馬)

 

「……アストラル、飛行船の準備を頼む!オレ達は……アストラル世界に向かう!!」

 

「頼んだぞ…!」

遊馬は仲間達を代表して決断を下した…。

 

 

 

 

………

 

 

 

「あと2分でスフィアフィールドが展開される!準備はいいか!!」

 

(飛行船の準備はできている……遊海、武運を…!)

 

「アストラル…頼んだぞ!」

そして戦い続けてさらに数時間…ついに、スフィア・フィールドの用意が整い…遊馬達はアストラル世界へ旅立とうとしていた…。

 

 

 

「遊海さん…私は一緒に残ります!遊海さん1人を残して行くなんて…私にはできません!!」

 

「翠…ここからは、どうなるかわからない…遊馬達と一緒に行ってくれ…!」

 

「でも…!」

肩で息をしながら一緒に戦うと言う翠を説得する遊海…そして──

 

 

「……すまない、あとで……必ず償いはする…!フレア!!翠と一緒に飛行船に乗ってくれ!!」

 

《ユウミ…!私が抜けたら…!》

 

「……たのむ、俺の分まで…みんなを護ってくれ…!お前だけは、対ズァークの()()()になり得るんだ……頼む!!」

 

《っ……わかりました…!ミドリ、ごめんなさい!!》

 

「嫌っ!!離して…!離して─!!」

フレアが翠を掴んで飛行船に飛び込む…メインデッキのモンスターかつ、攻撃力4000以上を確保しやすい「ラーの翼神竜」は切り札として()()()に巻き込む事は避けたかったのだ。

 

 

「翠、みんなを頼む…!もし、俺がしくじったら……お前がみんなを導くんだ!!」

 

「遊海さん!!遊海さん──!!!」

 

空がスフィアフィールドに閉じられていく…涙を流す翠を乗せた飛行船はそれを抜けてアストラル世界への道を飛んでいく…だが…。

 

 

 

まだだ…!まだ我は満足していない!!逃さぬぞデュエリスト共──!!

 

 

「行かせねぇよ、ズァーク!!お前の抱いた怒りや憎しみは…全部俺が受け止める…!思う存分戦ってやる──!!」

巨大な翼で飛行船を追おうとするズァーク…その翼を「NEXUS」となった遊海が切り落とし、墜落させる…。

 

 

 

 

…それが凌牙達の見た遊海の最後の姿だった…。

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

「それで俺達はアストラル世界に向かったんだけど……その後、何があったんだ…?」

 

「………()()()()()……」

 

「えっ…?」

 

「いや…その後、アヤカ達と数時間戦い続けて……確か、累計1000戦目のデュエルをしようとして……気付いたら、赤馬レイがズァークの前に居て……でも、その直前までの()()()()()()()んだ…」

 

《私達もです…気付いたら対ズァークのカード……『エン』シリーズの光に巻き込まれそうになっていて……その直前にマスターに強制退避させられて……》

 

「……どういう事だ…?」

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「────う、ぐ……?………なん…だ……なにが、おきた……?」

いつの間にか意識を失っていたらしい遊海が目を覚ます…全身血塗れで身体中に傷が無い場所はない、その状態で崩れたビルの瓦礫に埋まり、骨も砕けていたが……痛みすらも麻痺していた…。

 

 

「アストラル……遊馬……アストラル世界に、着いたんだな…?」

途切れそうな意識で遊海は空を見る、夜空にはスフィアフィールドの黄色のバリア……そのさらに向こうに『ヌメロン・コード』によるモノと思われる青いエネルギーが広がっていた…。

 

 

 

「間にあった、な……さて……どうした…もんかなぁ……」

現在のズァークの力はドン・サウザンドやオレイカルコスの神に匹敵する……倒し方の難易度的には「記憶の世界」のゾーク・ネクロファデス並に難しいかもしれない…遊海はぼんやりとそんな事を考えていた。

 

 

「やっぱり…封印しか、ない…か…………っ────」

安堵感から意識を手放しかける遊海…その時だった。

 

 

 

 

■■■■■───!!

 

 

悪魔が咆哮する…何かに怯えるように、怒りを露わにするように…。

 

 

周囲に花が咲き乱れる

 

 

太陽が沈んだにも関わらず、鳥達が飛び回る

 

 

穏やかな…しかし強い風が吹き荒れる

 

 

夜空に輝く月から雫が落ちる…。

 

 

 

 

 

 

『待て!待つんだ!()()!!』

 

 

 

 

「っ──!?そんな…なんで!!」

風に乗って聞こえてきた男性の声に途切れかけた遊海の意識が急速に覚醒する!

 

「うっ……あああ!!!我が身に宿りし光と闇よ!!NEXUS!!

 

動いた事で全身がバラバラになりそうな激痛に襲われながら、遊海はNEXUSⅡとなって空中に飛び上がる…そこで目にしたのは赤い水晶の大地の上で4枚のカードを掲げる少女、それを前に苦しむ『覇王龍』の姿だった…!

 

 

「どうやって『スフィアフィールド』を破った!?まずい…間に合わない!!」

 

 

少女の腕に4本のブレスレットが現れる、そしてそこから地球に息づく『大自然』の力を凝縮した光が放たれ──

 

 

 

よくも…よくも!一つになった我らをぉぉぉ!!!?

大自然の力が『覇王龍ズァーク』を4体のドラゴンへと分離させる、そして少女もまた4つの影となって分かたれ、世界が引き裂かれる!!

 

 

 

「や、やらせるかぁぁ!!」

 

遊海は残された全ての力を使い、繋がる「絆」の力を象徴するNEXUSの力を開放する!!

 

 

「守る…守るんだ!!凌牙達の帰ってくる場所を!遊戯達に託された世界を!!だあああっ!!」

引きちぎれようとする世界…それを遊海は自分の体を「楔」として繋ぎ止める…!

 

 

《っ…!?ま、マスター!いったいなにが!?》

 

「っ…マスター権限!!精霊達よ!『賢者の鍵』の中に退避せよ!!」

 

《マスター!?》

墜落していたアヤカが再起動する…だが、その瞬間に遊海は強制命令で精霊達を安全地帯へと引き込んだ…!

 

 

 

 

「俺は、帰るんだ…!翠の……家族の、いる場所に……ぜったい───」

 

 

 

 

バキッ!!

 

 

 

「あっ────」

 

NEXUSが力に耐えられず、砕け散る……そして、遊海は膨大なエネルギーの爆発によって世界から弾き飛ばされた…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

「……それ以降の事はなんにも……俺は分裂した世界のエネルギーにふっ飛ばされて……気付いたら、お前達がいたんだ…」

 

「『スフィア・フィールド』を破って、赤馬レイ達が中に…!?そんなの、どうやって…!」

遊海の最後の記憶を聞いた凌牙は…あまりの出来事に驚きを隠せないでいた…。

 

 

「あくまで、予想なんだが……赤馬レイの持っていた『エン』シリーズはズァーク対策の為に大自然の力を込めたカードだ…その膨大な力でスフィアフィールドに穴を開けた…としか考えられないな……今となっては確かめようがないが……」

 

「……でも、父さんが稼いでくれた時間が、俺達の世界の命運を分けたんだ……ありがとう、父さん…!」

 

「凌牙、教えてくれ…お前達がアストラル世界に向かった後、何が起きたのか…」

 

「ああ…と言っても、俺達もよく解ってないんだけどさ……」

 

 

遊海の話を聞き終えた凌牙は語り出す、遊海と別れた後の出来事を…。



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幕間 救世の勇士達─境界を越えて─

こんにちは!S,Kです!

今回は凌牙達視点…遊海に世界の命運を託された彼らの歩んだ軌跡とは…。

そして…『彼ら』の謎も明かされる!


それでは最新話をどうぞ


「っ…イテテ…!もう少し優しく巻いてくれよ…」

 

「悪いな!オレも腕が痛くて加減がわからねぇんだよ」

 

「遊馬、大丈夫?」

 

「おう……大丈夫、翠さんが治してくれたし……」

 

(……全員、満身創痍だな……遊海の判断は正しかったか……)

アストラル世界へ向かう飛行船『かっとび遊馬号』の船内…そこでは決闘者達が束の間の休息、そして怪我の治療をしていた。

乗り込んだのは遊馬とアストラル、付き添っていた小鳥…凌牙と璃緒を始めとした七皇達、流星と海亜、十代…そして翠とフレア、フォウ……全員が激しく消耗し、船内は静かだった。

 

 

 

「遊海さん……なんで…」

 

《ミドリ…ユウミは貴女を守る為に逃したのです、貴女になら万が一の事があっても任せられると……その信頼に応えないと!》

 

「フレア……」

 

《フォウフォウ…キューウ…》

飛行船のメインデッキ、そこで翠は座り込んで落ち込んでいた…それをフレアとフォウが慰めている…。

 

 

「大丈夫さ、母さん……父さんはきっと約束を守ってくれる!まぁ…合流したら、一発殴るけどよ」

 

「そうね!特性の麻婆豆腐でオシオキよ!そうでしょ?お母さん」

 

「凌牙君…璃緒ちゃん……そうね…遊海さんったら、また1人で背負い込んで……今度という今度は許さないんだから!」

 

《(ユウミ、ドンマイです…)》

落ち込む翠に凌牙と璃緒が冗談を交えて元気づける…子供達の暖かい心遣いに翠は少しだけ、笑顔を取り戻した…。

 

 

(総員に告ぐ!まもなくアストラル世界に到着!繰り返す、アストラル世界に到着する!)

 

飛行船にアストラルの言葉が響く…そして飛行船は懐かしき青と赤の世界に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

【アストラル、遊馬…よく戻ってきた……事態は把握している、早く『ヌメロン・コード』を起動するのだ】

 

(はい…!!)

 

「わかった!!」

飛行船は王宮へと接岸、待っていたエリファスへの挨拶もそこそこにアストラルと遊馬は『ヌメロン・コード』の安置された場所へ向かった…。

 

 

『おい、翠……あの馬鹿(遊海)はどこだ』

 

『ラプラス!ダメよ、そんな言い方したら……!』

 

「ラプラス…エメル…」

そして翠の前にはラプラスとエメルが現れる…ラプラスに関しては既に怒りのオーラが溢れ出している…。

 

 

「ズァークを足止めする為に、1人でスフィアフィールドの中に……」

 

『あの大馬鹿!!ゼロ・リバースからなんにも学習してねぇのか!?いくら不死身でも、()()()()()()()()って事がわからねぇのか…!!また翠を一人っきりにしやがって!』

 

「母さんは1人じゃねぇ!……俺達がいる、それに…父さんは絶対に無事だ!」

 

「凌牙君…」

遊海がスフィアフィールドに残った事を伝える翠…それを聞いたラプラスは遊海の無茶に怒るが…凌牙が割って入る。

 

『ったく……遊海の奴はいい息子を持ったな……とにかく、あとは時間との勝負だ、ズァークがスフィアフィールドを破るのが先か…アストラルが隔離するのが先か………待つしかねぇ…』

ラプラスは王宮の上空を見上げた…。

 

 

 

………

 

 

 

 

(『ヌメロン・コード』……起動…!)

 

「おおっ…!」

王宮の上空…ヌメロン・コードはそこには安置されていた、アストラルはその身からナンバーズを解き放ち…世界を書き換える為の空間を展開していく…!

 

 

 

(人間界の座標を設定……ズァークと遊海を含め、座標内を人間界から隔離…!)

 

「すげぇ…」

アストラルは音楽を奏でるように、デッキを構築するようにヌメロン・コードを操作していく…その鮮やかな手際を遊馬は食い入るように見つめている…。

 

 

(……よし、あとはこの隔離した空間を人間界から別の次元に──なにっ!?)

 

「どうしたんだ!?」

 

(スフィアフィールドの中で凄まじいエネルギーが…!!──赤馬零王とレイ!?いつの間に入り込んだ!?)

 

「ええっ!?」

ズァークを隔離した空間を移動しようとしたアストラル…だが、思わぬ乱入者に動揺する…!

 

 

(遊海は───っ!意識を失って…!?………すまない、遊海!!!)

 

「おい!?大丈夫なのか!アストラル!?」

 

(くっ──!!)

凄まじい速さでヌメロン・コードを操作するアストラル、そして──

 

(間に合え──!!)

 

 

ドン!!

 

 

「うわっ…?!」

アストラルが最後のピースを移動させると同時に……アストラル世界に衝撃が襲いかかった…。

 

 

 

 

「な、なんだ…!?今の揺れは…!」

 

「遊海さん……まさか…!」

 

(………)

 

「「「アストラル!」」」

突然の揺れに動揺する決闘者達…そこへ、ヌメロン・コードの書き換えを終えたアストラルと遊馬が降りてくる…。

 

 

【アストラル、人間界は…】

 

(……人間界は、無事です………ただ……)

 

【ただ……どうしたのだ?】

 

「………遊海の居場所が、分からなくなっちまった」

 

「「「なんだって!?」」」

エリファスに人間界は無事だと報告するアストラル…だが、その代わり……英雄の行方は分からなくなってしまった…。

 

 

「遊海さん…そんな……ああ───」

 

「っ!翠さん!!」

遊海の行方不明を知った翠が膝から崩れ落ち…十代が咄嗟に体を支える…。

 

 

 

「遊馬!アストラル!何があった!!」

 

(……私がズァークと遊海を人間界から隔離するのとほぼ同時に…()()が発生した……遊海はそれを阻止する為に力を振るい……分裂のエネルギーに巻き込まれ、『ヌメロン・コード』でも…居場所が追えなくなってしまった…)

 

「そんな…お父さん…嘘…嘘よ…!!」

アストラルに状況を確かめる凌牙…だが、その答えは絶望的なモノ…それを聞いた璃緒は泣き崩れてしまう…。

 

 

「璃緒……っ、アストラル!『ヌメロン・コード』の力で遊海の居場所を()()()()られないのか!?」

 

「そ、そうだぜ!『ヌメロン・コード』は死んだオレ達を蘇らせるぐらいの力があるんだ!それぐらい簡単に──」

 

(……すまない、ドルベ、アリト……遊海…そして翠には……『ヌメロン・コード』は機能しない……干渉できないのだ)

 

「そんな…なんでだよ!?」

 

「遊海の奴だって、一度は『ヌメロン・コード』で蘇って……!」

 

(……それは…()()()による干渉があったからだ……私は、何もできていない……)

 

《……フォウ》

全知全能であるはずの『ヌメロン・コード』による干渉不可に驚くギラグやアリト達…その中でアストラルは翠に寄り添うフォウに一瞬、目を向けた…。

 

 

『チッ……そういう事かよ、()()()のオレ達には……その力は届かねぇってか?』

 

【ラプラス、心当たりが?】

 

『……翠、良いな?代わりに話すぞ』

 

「……お願い…」

全能の力が及ばない原因に察しがついたラプラスが悪態をつく…その上で、翠に許可を取ったラプラスは自分達…そして遊海と翠の正体を決闘者達に伝えた…。

 

 

 

…………

 

 

 

「デュエルモンスターズが存在する別世界からの転生者…それが貴方達の正体だったとは…」

 

「どおりでデタラメに強い訳だ…」

 

「それより…『ゼロ・リバース』の原因がラプラスさんだって初めて聞いたんですけど!?」

 

『なんだ、遊星からは聞いてなかったのか?……悪かったな……』

遊海達の正体を聞いてざわめくZEXAL組と流星達…そして、アストラルは話を続ける…。

 

 

(とにかく…一度、人間界に戻ろう…最悪の事態は遊海のおかげで避けられたが…どんな影響があるかは、行ってみなければ……)

そして決闘者達は人間界へと大急ぎで戻る事になった…。

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「……そうか、俺の稼いだ時間は…無駄にはならなかったんだな…」

 

「でも…あん時の泣いてる母さんと璃緒は見てられなかったぜ……あとで絶対に謝ってくれよな」

 

「うん、絶対謝る……」

凌牙から「次元分裂」発生時の状況を聞く遊海…どうやら、次元が分かたれる前にズァークの隔離、人間界からの分断が間に合っていたようだ…。

 

 

「……待てよ、じゃあ……俺達がいる()()()()は……いったいなんなんだ…?」

 

「此処は…『ヌメロン・コード』で隔離された世界が基盤になった、()()()()()なんだ」

 

「マジか…」

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

「っ…街のあった場所が…!」

 

「巨大なクレーターに…!」

人間界へと帰還した凌牙達が見たもの…それはズァークが暴れていた街が数キロ四方の巨大なクレーターになっている、現実離れした光景だった…。

 

 

『お前達、無事だったか』

 

「あっ…カイト!!」

飛行船のモニターにハートランドに残っていたカイトの姿が映し出される。

 

『ズァークの隔離は成功したようだが……新たな問題が発生した、すぐにハートランドに戻って来い』

 

「っ…わかった!」

遊馬は舵を切り、故郷であるハートランドへと向かった…。

 

 

 

 

 

『これより…ズァークの隔離後に何が起きたのかを説明する!』

 

ハートランド・ハートの塔内にあるDr.フェイカーの研究所…そこには飛行船メンバーを加え、瀬人にカイトとオービタル、バイロンたちアークライト一家が集まっていた…。

 

 

『まずは街の被害…ズァークの隔離によって街は消滅、クレーターと化したが……避難が終わっていた事で死者は0人、ただし……行方不明者3()()だ』

 

「…遊海さんと、赤馬零王…そしてレイ……」

 

『その通りだ、世間的には死者・行方不明者0とは言ってあるがな』

説明をしていた瀬人は翠の言葉に頷く…それは本来の『次元分裂』に比べれば、被害を大幅に減らす事ができたという結果だった。

 

 

『だが、それに伴って新たな問題が発生した…これを見ろ』

瀬人の言葉を引き継ぐ形でカイトが投影機を作動…ホログラムが浮かび上がる…。

 

 

(これは…人間界周辺の次元の地図か?)

 

『そうだ、白波さんと遊城さんの力を借りて…人間界周辺の精霊界や分かっている別次元の位置を示したものだ』

そのホログラムは様々な世界の位置が示された『次元地図』…そこにはDM界や暗黒界の世界を含めた『12次元』の位置やアストラル・バリアン世界、他にも大小様々な次元の位置が記されている。

 

 

『そこに…ズァークが人間界から消えた後、変化があった…人間界のすぐ近くに──()()()()()が発生した』

 

「新しい、次元…?」

次元地図が人間界にズームする…その近く、月と地球くらいの位置関係の場所に紫色の点が浮かび上がる……それが発生した新たな次元の場所だった。

 

 

 

(この場所は……ズァークを隔離した座標に近い……まさか、隔離した世界が、()()()()()として成立してしまったのか?)

 

『そういう事だろうな、ズァークの膨大なエネルギーに…赤馬博士の研究していた大自然の力が込められたカード…そして『ヌメロン・コード』の干渉…それによって、新たな世界が誕生した…と考えられる』

 

『しかし、この世界は酷く不安定だ……すぐに崩壊してもおかしくない、まるで別々の4()()()()()を内包しているかのように、数値が安定しない……しかも、人間界に位置が近すぎる……この次元が崩壊すれば……人間界にも大きな影響が出るだろう』

 

「そんな…!」

偶発的要素が重なって生まれた『新世界』…それは人間界に新たな危機を齎そうとしていた…。

 

 

 

「ARC…次元……おそらく、ズァークはその次元で復活を狙っているわ……」

 

「母さん…分かるのか!?」

 

「……次元分裂の原因……それは赤馬レイがズァークを倒す為に大自然の力を使って、ズァークの持つ負のカオスを浄化しようとした時……ズァークがその場から逃げ出す為に、起こしたモノなの……そしてカイト君の言う通りなら、その次元は『スタンダード次元』『エクシーズ次元』『シンクロ次元』『融合次元』…その4つの世界を内包しているはずよ…」

 

「召喚法の名前を冠する4つの世界…!」

 

『………翠さんの言う通りだ、4つの数値に『融合』『シンクロ』『エクシーズ』『アドバンス』…それぞれの召喚法の波長が一致する』

翠は『遊戯王ARC-V』の物語から新世界の様子を想像する…その予想は当たっていた…。

 

 

 

「う〜ん……ズァークが世界を分裂させて、そのせいで不安定な分裂した世界が壊れそう…………そうだ!なら、ズァークを何とかして止めて…その不安定な4つの世界?を『ヌメロン・コード』で一つにすれば…次元全体の強度が上がって、安定するんじゃないか!?」

 

(遊馬、きみにしては冴えているな…!?おそらく、それが最適解だ)

 

「オレにしてはってなんだよー!?オレだってちゃんと勉強はしてるんだからな─!?」

そして、遊馬が至極単純な解決法を思いついた…その時。

 

 

 

──その通り、それがこの世界と新世界…2つを守る方法さ、私が口を出すまでもなかったね?──

 

 

『っ…誰だ!?』

 

──おっとごめん、姿を見せるよ──

研究室に何処か胡散臭い、若い声が響く…カイトがその声に警戒するが、それと同じくして花吹雪が吹き荒れ──

 

 

──初めての人は初めまして!流星君や海亜ちゃんは久しぶり、花の魔術師マーリンお兄さん、流行りのテレワークでの登場さ!──

白いローブを纏い、大きな杖を持った半透明の青年…マーリンが遊馬達の前に現れた…。

 

 

 

 

「ま、マーリンさん!?」

 

(マーリン…?アーサー王伝説に名高い王宮魔術師にして、予言者…!伝説の中では封印されているはず…!なぜ、この場所に!?)

 

──流石はアストラル、博識だね!…この『私』は超遠距離からのホログラムみたいなモノ……ちょっとボクの()()の遊海君がピンチみたいだからね、助言の為に顔を出させてもらったのさ──

 

「あっ…『現在』全てを見通す千里眼…!」

歴史に名を残す魔術師の登場に驚くアストラル…そして翠はマーリンの『眼』について思い出した。

 

 

 

──翠、大変だったね……遊海君は、最後まできみの所に帰ろうと死力を尽くしていたよ……さて、世界から弾き飛ばされた遊海君は十中八九、その『新世界』へと流れ着いているはずだ…彼は天性の『巻き込まれ体質(主人公)』だからね──

 

「父さんが、新世界に…!?」

 

──行くのなら急いだ方がいい…新世界の時間の流れはこの世界とは違う、遠見の魔術を限界まで使って割り出した事だ……早くしないとあちらで『覇王龍』が復活しかねない…そうなれば──

 

『ズァークの力で…次元のバランスが崩壊しかねない、という事か…!』

 

──そういう事、兵は神速を尊ぶと言う……遊海君を救い、世界を守りたいなら…急いだ方がいい──

 

『助言に感謝する、花の魔術師……どうする?アストラル』

 

(……決まっている、人間界を守る為…そして遊海を助ける為に、私は『新世界』……いや、特異点『ARC次元』に向かう!)

 

「ちょっと待てよカイト!?そこはオレに聞くところだろ──!?」

 

(きみは聞かなくても……行くと言うだろう?)

 

「あったりまえだ!!オレは…絶対に遊海を助ける!!」

マーリンの助言を聞いたアストラルと遊馬は遊海を救い、人間界を守る為にズァークの世界『ARC次元』へ向かう事を決意する!

 

 

 

「もちろん、俺も行くぜ…!みんなはどうだ!」

 

「私も行く…!お父さんを絶対に助ける!」

凌牙と璃緒は父を救う為に決意を固める…!

 

 

「遊海には迷惑かけたからなぁ…しょうがねぇから行ってやるよ!」

 

「凌牙と璃緒が行くなら私も行く…当然だ!」

 

「オレも行くぜ!向こうでズァークにリベンジだ!」

 

「俺もだ!」

 

「最強のドラゴンとなったズァーク…私がそれを越えてやる!」

真月・ドルベ・アリト・ギラグ・ミザエル…七皇達もそれぞれに決意する…!

 

 

「海亜、どうする?」

 

「行くに決まってるでしょ!遊海さんを助けられなかったら、ジャックじいちゃんになんて言われるか…!流星も……」

 

「うん、僕も行く……遊海さんはおじいちゃん達の恩人で、僕の師匠だから…!」

5D'sの魂を受け継ぐ流星と海亜…2人も遊海の為に決断する!

 

 

「小鳥、お前は来なくても──」

 

「私も、行くよ……遊馬だけじゃ、なんだか心配だもん!それに……遊海さんを助けたいのは、私も一緒よ!」

 

「……分かった!小鳥の事は……オレが守る!」

小鳥を置いていこうとする遊馬…だが、その前に彼女も決意を固めていた…。

 

 

 

「……やっぱり、先生は慕われてるよなぁ……もちろん、オレも行くぜ翠さん」

 

「十代君…みんな……ありがとう…!」

 

《フォウ!》

十代も遊海を救う為に行く事を決める…そして翠は感謝の涙を流した…。

 

 

──うんうん、友情は美しきかな……ってね、頼んだよ…若き決闘者諸君!──

 

《ドッフォーウ!(お前は言葉だけか─!!)》

 

──おっとあぶない、あぶない…ホログラムでよかった…──

 

 

 

 

………

 

 

 

 

「えっ…カイトは行かないのか!?」

 

『ああ…オレも行きたい、白波さんを助けたい……だが……』

 

「カイト君が『ARC次元』に行くのは…ちょっと危ないのよ…」

 

「翠さん?」

そして2日後、ARC次元への出発を控えた遊馬はカイトの思わぬ言葉に驚く…その理由を翠が説明する。

 

 

「私が知っている通りなら…ARC次元の中のエクシーズ次元に()()()()()()()()

 

「えっ…カイトがいるって……遊海とラプラスみたいに…!?」

 

「そうなの……ほら、アニメとか映画であるでしょ?同一人物が同じ場所にいると色々問題が起きるって…」

 

『流石に現実にどうなるかは分からないが……万が一という事もある、オレはクリス達と一緒にサポートに徹する……だが、異常があれば…新造した「次元移動装置」で駆けつける!』

 

「……わかった!人間界の…オレ達の世界の事は頼んだぜ、カイト!」

エクシーズ次元のカイトの存在からカイトは残留を決める…そして、ついにその時は訪れた…!

 

 

(これより『かっとび遊馬号』は次元特異点・ARC次元へと出発する!)

 

「ああ…!いまいくぜ!遊海!!かっとび遊馬号、発進─!!」

次元の扉を開き、飛行船がARC次元へと旅立つ……世界を救う為に…!

 

 

 

……

 

 

 

(もう少しで…ARC次元付近だ…!)

 

 

「なぁ…思ったんだけど、どうやって4つの世界から遊海を探すんだ?」

 

《それは任せてください!ユウミの魂の波長は覚えています…近くにいれば分かるはずです…!》

 

「さっすがフレア…ラーの翼神竜だな、頼りになるぜ!」

 

「父さん…待っててくれよ…!」

進む事数時間…飛行船はARC次元へと近づいていく、その時だった…!

 

 

ビビーッ!ビビーッ!!

 

 

ゴゴゴ!!

 

 

 

「な、なんだ!?この揺れは!」

 

(これは…時空嵐か!?ズァークの力の余波か…!全員何かに掴まれ─!!)

順調に進んでいた飛行船に衝撃が襲いかかり、警報が鳴り響く…それはズァークの力の余波が生み出した時空の乱れ──時空嵐だった!

 

 

《っ、これは……!!アストラル!引き返すのです!!》

 

(くっ…!ARC次元に、引き込まれる──!?)

 

「っ…小鳥!!」

 

「遊馬!!」

 

 

「「「「うわああああっ!?」」」」

 

 

 

飛行船は荒れ狂う時空嵐に飲み込まれ…遊馬達は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「うっ……どうなった、んだ…?」

頭の痛みで凌牙は意識を取り戻した…軽く辺りを見回すと飛行船の天地が逆転し、機械からは黒い煙が吹き出している……墜落した飛行船は大破状態だった…。

 

 

「おい……みんな、無事………なんだ?服が………は…!?」

他の仲間達の無事を確かめようとした凌牙は異常に気が付く……服が大きくなっている……否──

 

 

 

()()()()()()()()()()のだ。

 

 

 

「なん、だよ、これ…!?璃緒…璃緒!?」

 

「うっ…ううん………どうしたの、りょう………えっ…?凌牙?なんで小さく……えっ!?私も!?!?」

 

「っ…イッテテ〜…!いったい、何が………なんだこりゃあああ!?!?」

 

(遊馬!?)

璃緒の悲鳴で少しずつ仲間達が目覚め、パニックに陥る……全員が中学生くらいの肉体年齢まで逆行していたのだ…!

 

 

《これは…キミもずいぶんと若返ったねぇ?》

 

「………マジか」

ユベルが頭に手を当てながら十代に声をかける…十代も学生時代──デュエルアカデミア在席時レベルの年齢に若返っていたのだ…。

 

 

 

「そ、そうだ…!母さん!大丈夫か!?かあさ───え”っ…!?」

 

「う、ん……りょうがくん、どうしたの……えっ…なんで、ちいさくなって………あれ?なんか、へん…」

 

《フォ〜ウ……ドフォーウ!?》

 

《ミ、ミドリ…?その体は………》

 

 

 

 

「な、なにこれぇぇぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

 

「えっ、ちょっ……翠は大丈夫なのか!?」

 

「あ、ああ………大丈夫、元気は……元気だから………」

 

「その()はなんだ!?超気になるんじゃが!?」

 

《フォ……フォ〜ウ……(説明しずらいというか…衝撃的というか…)》

 

「フォウまで!?」

この世界の正体、そして凌牙達の姿が幼くなった理由を聞いた遊海は……濁された翠の状態を心配していた…。

 

 

「と、とにかく…時空嵐に巻き込まれた俺達は、半年前に融合次元の侵攻を受けてたエクシーズ次元に不時着…それから飛行船の修理をしながらレジスタンスを再編成して、スタンダード次元に行くチャンスを待ってたんだ…」

 

「……ごめんな、凌牙…お前達を危険な目に遇わせて……」

 

「気にすんなって!体は『ヌメロン・コード』で元に戻るってアストラルが言ってたから……それに父さんが戻ってきたなら…もう心配ない、そうだろ?」

 

「ああ…!お前達がこれだけ頑張ってくれたんだ……次は俺の番だ!!」

凌牙達の経緯を聞かされた遊海は立ち上がる…少々の疲労はあるが…戦うには十分だった。

 

 

 

 

 

「……そうだ、父さん…融合次元の武器……人間のカード化についてなんだが……父さん達なら、何とかできねぇか?」

 

「人間のカード化、か……アヤカ、どうだ?」

 

《それが純粋な『科学力』による産物なら、現物があれば何とかできるかと…》

凌牙は遊海に一番の問題…『人間のカード化』について訊ねる。

 

 

『人間のカード化』…それはアカデミアの──赤馬零王の『計画』に必要な『人間の生体エネルギー』を集める為の手段……詳細は不明ながら、カードにした人間は融合次元に転送されており…理論的にはカード化は解除できるものであるらしい。

 

 

 

「なら……この人のカードで、試してみてくれ」

 

「これは……か、克也…!?なんで、克也がスタンダード次元に!?」

凌牙は一枚のカードを遊海に手渡す…それは遊海の一番の親友──城之内克也に似た青年がカード化されたものだった。

 

 

「アヤカ!!」

 

《は、はい!!解析中…プログラム解析……カード化解除術式構築──アンチプログラム、発動!》

 

キィン─!

 

城之内のカードを解析したアヤカが核石から緑色の光を放つ…それは対『カード化』用の術式、その光がカードを照らし──

 

 

 

『うっ…うう……ここは…?』

カードが消失…消えてしまった城之内はスタンダード次元へと戻ってきた…!

 

 

 

 

 

「かつ………城之内さん、大丈夫ですか?」

 

『お前は……遊希、なのか?』

遊海は逸る気持ちを押さえ込み、()()()として城之内に接する…彼が遊海の知る『本人』であるはずはないのだから…。

 

 

 

「俺は…遊海、白波遊海──榊遊希は……記憶を取り戻したんだ」

 

『そうか…!でも、お前は……オレの事、覚えてないんだな……』

 

「ええ……残念ながら……怪我は大丈夫ですか?」

 

『ああ…たくっ…!あの仮面のヤロー共、めちゃくちゃしやがって…イタタ……』

 

「(ああ…俺の知ってる『克也』と似てる…)じっとしててください、今…治療しますから…」

遊海は大小の傷を負った城之内に回復魔法を使用する…その言動にかつての親友を重ねながら…。

 

 

『……あったけぇ…優しい光だ……お前、こんな事できるんだな』

 

「城之内さんが…仲間達が記憶を失っている間の()を守ってくれた…そのおかげで、俺は世界を救う為の力を取り戻せたんです……ありがとう」

治癒の光に驚く事なく、受け入れる城之内…おそらく、記憶が無い間も「友人」だったのであろう彼に遊海は感謝を伝えた…。

 

 

 

 

「あー………しんみりした空気の所、悪いんだけどさ……城之内さんに海馬さんからの伝言があるんだが……」

 

「ん…?お前は…LDSの?なんでお前が海馬の伝言なんか?」

 

「凌牙?」

そんな時、バツが悪そうな表情で凌牙が城之内に声をかける…その様子に首を傾げる遊海だったが、その原因はすぐに判明した。

 

 

「あの人に言われたまま言うから、怒らないでくれよ!!……『この凡骨!いの一番に貴様が記憶を取り戻さんでどうする!!貴様が遊海の一番の親友だろうが!!』

 

「はっ…!?!?」

それは海馬社長の幻影が見えるほどの凌牙渾身の物真似……その内容に遊海は呆気に取られ───

 

 

「んなっ…!?なんだと海馬この野郎!!誰が凡骨だ!!…………へっ?あれ………ゆ、遊海?……遊海…!!お前、このヤロー!!心配掛けやがって─!!」

 

「じょ、城之内さん!?イタタタ!?」

先程まで、少し他人行儀だった城之内の様子が変わる…呆気に取られていた遊海に飛び掛かって、ヘッドロックを極めたのだ。

 

 

 

「そんな他人行儀に呼ぶなって〜!オレとお前の仲だろ?ほら、いつかのプロリーグのデュエルのあと、居酒屋で2人とも酔い潰れて、そのせいで翠に大目玉を食らったりしたじゃねぇか!」

 

「えっ、はっ…?ふぇ…!?かつ、や?俺の()()()()、克也なのか?」

 

「たくっ…何言ったら信じてくれんだよ〜!ドーマの戦いの時にお前が遊戯とオレを助けてくれた事か?それか…あっ、そうだ!お前がデュエルアカデミアで働きながらプロリーグに参加してた時!まだエクシーズ召喚もない時なのにオレとのデュエルで『聖刻神龍─エネアード』使ってよ!オレは『時の魔術師』使って……」

 

「あっ…えっ………どうなって…?なんで……」

 

「あっ!?おいしっかり立てって!?」

 

「………こんな動揺の仕方してる父さん、初めて見た…」

 

《フォウ、フォーウ(死んじゃったはずの友達が現れたら…そりゃ驚くよね……)》

遊海は動揺のあまり、目を白黒させながらへたり込んでしまった…。

 

 

 

 

 

「驚かせて悪かったな遊海!正真正銘、オレはお前と一緒に戦った…城之内克也だぜ!」

 

「──────」

 

「ありゃ…驚き過ぎて固まってら……お〜い、戻ってこーい!」

 

《フリーズしてるマスターの代わりに私が……何故、貴方がこの世界に…?マスターの話では遊戯さんを含めて…みんな、アテムの冥界で暮らしていると…》

 

「そんなん決まってんだろ?…お前達を助ける為さ!」

驚きを通り越して固まってしまった遊海に代わり、アヤカが城之内に問いかける…そして語られたのは──『奇跡』のような話だった。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

『………遊海……』

 

「アテム!遊海君は……現世はどうなったの!?」

 

『……現世は、無事だ……遊海の絆の奇跡「NEXUS」の全力開放、そして…世界を書き換える全能のカード「ヌメロン・コード」によって「覇王龍ズァーク」は現世の別次元に隔離されたらしい』

現世にてズァークの事件が起きていた頃、冥界の王宮にアテム、そして遊戯・城之内・海馬・本田・杏子が集まっていた…。

 

 

「遊海はどうした…無事なのか…!」

 

『……わからない、隔離直後に起きた次元分裂の衝撃で……行方が見えない…!』

現世の様子を映す鏡で遊海の行方を探すアテム…だが、その行方を掴む事はできなかった…。

 

 

 

「くっそぉ…!オレ達は見てる事しかできねぇのかよ!!」

 

「落ち着け城之内!…俺達は死んじまってるんだから……何もしてやれねぇんだ…!」

 

「……我が分身よ…!遊海を守れねば、貴様を残した意味がないだろう!!」

 

「城之内君…本田君…海馬君……」

窮地に陥った遊海を見て…悔しさを滲ませる3人…「死者は現世に干渉してはならない」…それは冥界に共通する掟である。

 

 

 

キィン─!

 

 

 

「あっ……なんだろう、これ…?光の欠片…?」

その時、冥界に金色の光を纏う「何か」が降りそそぐ…それはふわふわと杏子の手に落ちて──

 

 

「赤い、切れ端…?」

 

「これ…!?遊海君の力を感じる!」

 

その正体は赤い布の切れ端…その小さな欠片からは遊海のモノと似た力が込められていた…。

 

 

《その通りです…それは遊海の残した『絆の欠片』とも呼べるでしょう》

 

『ラー…!これの正体が分かるのか?』

そこに冥界に眠る『ラーの翼神竜』のオリジナルが現れる…そして神の眼はその正体を見抜いていた…。

 

 

 

《遊海は分裂しようとする次元を繋ぎ止める為に、彼の『絆の象徴』とも言える『NEXUS』を使いました…その結果、NEXUSは分裂に耐えきれずに砕け散った……ですが、遊海の抱いた『繋げる』という想いが砕け、散らばった破片に宿り──次元や冥界の境界を超えて、『絆』を結んだ彼らのもとに『繋がった』のです》

 

「遊海君の…絆……僕達との…!」

 

「繋がる絆………待てよ?繋がってるなら、この光を辿れば…遊海の所に行けんじゃねぇか!?ほら、どっかの神話の糸玉みたいに!」

 

「…アリアドネの糸……ギリシャ神話の英雄テセウスが迷宮に住まう怪物ミノタウロスを倒した後、託された糸を辿って生還した逸話か……凡骨にしてはまともな例えだな」

 

「だから…凡骨呼びはいいかげんにしろっての!?」

ラーの言葉を聞いた城之内が可能性に気付く、砕けて散らばった「絆の欠片」…それを辿れば、行方が分からなくなってしまった遊海のもとへ辿り着けるのではないかと…。

 

 

 

『…城之内君、それが…どういう意味か分かってるのか?』

 

「へっ?」

 

「この『絆の欠片』を辿るという事……それはつまり、お前が再び()()()()()()()()、つまり『転生』する事になる…という事だぞ?」

アテムの言葉に戸惑う城之内に海馬が補足する…『絆の欠片』を辿る事、それは…長らく冥界にいた城之内達が転生する事を意味しているのだ。

 

 

「……当たり前だ、死者転生だろうが、死者蘇生だろうがしてやるよ!遊海を助けにいける手段があるのに──それを使わねぇ理由はねぇだろうが!!」

城之内は手にした「絆の欠片」を握り締めて叫ぶ…城之内はずっと見てきたからだ…自分を顧みず、世界を…仲間達を守る為に戦い続けてきた掛け替えのない友の姿を…。

 

 

「ハッ…アンタならそう言うと思ってたよ!アンタが往くなら…アタシも付き合う!」

 

「ま、舞…!?どうして…」

 

「アンタの声…王宮の外まで丸聞こえなんだって…」

その声に応えたのは同じく「絆の欠片」を手にした孔雀──城之内舞だった、城之内の叫びは王宮の外にいた彼女まで届いていたのだ。

 

 

 

「アテム……」

 

『……相棒、お前も行きたいんだな?』

 

「うん……遊海君は、僕達との約束を守り続けてくれた……遊海君が困っているのなら、僕も助けに行きたい!!」

 

「フン…ならば、俺も行くぞ……無茶ばかりする奴に灸を据えてやらねばな…!!」

 

「私も行く!デュエリストとしては力になれないかもしれないけど…少しでも、力になれるなら!」

 

「ここで行かなきゃ…男が廃るぜ!」

 

『相棒…海馬…杏子…本田君………転生したら、しばらくは此方へは還ってこられないぞ?それでもいいのか?』

 

「「「「ああ!!」」」」

 

「遊戯…オメェら…!」

城之内の覚悟に触発された仲間達が頷く、遊海を救ける…その為だけに、彼らは新たな『(ロード)』を進む決意を固める…!

 

 

 

「瀬人様、私を置いて行こうなんて…ひどいですよ?」

 

「オレもだ!」

 

「紗良…モクバ……」

聞こえてきた声に海馬が振り向く…そこにはかけがえのない弟、そして…彼が人生で唯一愛した女性の姿があった。

 

 

「私は…貴方に見初められたあの日から、添い遂げると決めていますから!」

 

「兄様いる所にモクバありってね……遊海を助けたいのはオレも一緒さ!」

 

「フッ…ならば、ついてこい!!」

 

 

 

『相棒…例え、離れていても…オレとお前達の友情は…絆は決して途切れる事はない!任せたぜ、みんな!!』

 

「うん!アテム…行ってくる!!」

アテムの見送りを受け、遊戯達は「絆の欠片」に身体を…魂を委ねる。

 

 

 

そして…彼らは「絆」に導かれ───ARC次元に『転生』した…。

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

「遊戯…アテム…克也……みんな…!!」

 

「おいおい…泣くなって…お前らしくねぇぞ?遊海…」

城之内から語られた話を聞いた遊海は泣き崩れてしまう…死んでもなお、遊戯達と自分を結んでいた「絆の糸」──それが、こんな形で──自分を助ける為に巡ってくるとは思っていなかったのだ…。

 

 

 

「なら……俺は、応えなきゃ…!みんなの願いに…俺を守ってくれた…仲間達の思いに!!」

遊海は涙を拭って立ち上がる…全てを失い、守られる時間(ターン)は終わった…次は自身が全てを守り、希望を与える時間(ターン)だと…!

 

 

 

「凌牙、状況は!」

 

「オベリスクフォース12人と紫雲院素良がスタンダード次元を襲撃、そのうち9人は撃退済み…おそらく、融合次元のセレナが黒咲と合流するくらいの時間!」

 

「火山エリアだな……克也、行ってくる!」

 

「ああ!復活したお前の力、オベリスクフォースに見せつけてやれよ!二代目『決闘王』!!」

 

「ああ!!ここからは……俺達のターンだ!!」

遊海の体からエネルギーが迸る、仲間達の思いを背負う英雄は…此処に復活する!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【クク…ハハハハ!!そうか、やはりお前は『光』を手にするか…!例え、絶望の底に沈みきろうと…お前は、お前が守ってきたモノに()()()()()()……それは…我にはなかったものだ】

 

 

【さぁ…絶望と混沌を越えし英雄よ、お前は…この世界で何を為す?お手並み拝見といこうか…!】



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Ep.29 希望は轟きと共に

「くそっ…しっかりしろ!」

 

「…なぜ、俺を助けた…?」

 

「お前には…確かめねばならない事があるのだ…!」

 

火山エリアのほど近く…満身創痍の少年を庇いながら、1人の少女が追っ手から逃げていた…それは素良とのデュエルに敗れてしまった黒咲、そして柚子と()()()()()()融合次元の少女、セレナだった。

 

 

 

 

「災厄」がオベリスクフォースを蹂躙していた頃、セレナはエクシーズ次元の残党を狩る為に柚子とのデュエルでエクシーズ召喚を披露したLDS生・デニスへとデュエルを仕掛けた…結局、デニスはエクシーズの残党ではなかったのだが、そこへセレナを連れ戻しに来たオベリスクフォースが登場……さらに参加者である日影・月影兄弟が乱入しセレナを守る為に柚子と共に氷山エリアへと撤退する事になってしまった。

 

そして柚子から黒咲の妹である『瑠璃』なのかと問われたが…それを否定、そして融合次元の()()()()デュエル戦士である事を明かしたセレナだったのだが…そこで柚子から「アカデミアのデュエリストがエクシーズ次元を侵略」しかも「人々をデュエリストであるか否かを問わずカード化した」という彼女にとっては信じられない話を聞いてしまう。

 

……それを信じきれないセレナは柚子の『同じ顔なら服を変えれば囮になれる』という提案を受けて服を交換、エクシーズ次元の現状を知る黒咲か凌牙を探してデュエルフィールドを探し回っていた。

 

 

そして、夜が明け…セレナは遺跡エリアで激しいデュエルを繰り広げていた素良と黒咲を発見…だが、素良によって黒咲は重傷を負ってしまった…セレナは黒咲を守る為に撹乱し、彼を庇いながら素良から逃げていたのだ。

 

 

 

「ぐっ…う…!!」

 

「大丈夫か!?」

脇腹を押えながら黒咲が膝を折る…素良との激しいデュエルは黒咲に無視できないダメージを与えていた…。

 

 

 

『ねぇ…大人しく、そいつを片付けさせてくれない?キミも怪我しちゃうよ?』

 

「くっ…!」

そして素良が彼らに追いつく…万事休すかと思われたが…!

 

 

シュン!!

 

 

『む?邪魔なんだけど…!』

 

「邪魔しに参った…!」

 

 

「今のうちに!」

 

「あ、ああ…!」

セレナ達と素良の間に赤い覆面の忍者・日影と青い覆面の忍者・月影が割り込む…日影は素良に立ち塞がり、月影はセレナと黒咲を連れて逃げ出した…!

 

 

 

「お前達…何故、私を助ける…?」

 

「一度、引き受けた任務は命を懸けて完遂する……それが我が『風魔一族』の掟…!」

セレナは自分を二度に渡って助けた忍者・月影に問いかける…彼らは零児からの依頼を受け、融合次元の情報を持ち…()()にも使えるセレナを護衛するように頼まれていたのだ。

 

 

 

……

 

 

 

「よし…!もう少しだ…!」

敵の影に注意しながら、月影とセレナはレオ・コーポレーションの用意した避難所に近づいていく…その時だった。

 

 

 

【セレナ様、どうか抵抗なさらずに…】

 

【貴女にお戻り頂きたいだけです】

 

「オベリスクフォース…!」

待ち伏せしていたのか、オベリスクフォースがセレナ達の前に立ち塞がる!

 

 

「連れ戻したいなら…力づくでやるがいい!!……お前ら…?」

丁寧な口調でセレナに投降を促すオベリスクフォース…だが、セレナはデュエルディスクを構える事で答える…だが、それを遮るように黒咲と月影が前に出る!

 

 

【こうなっては…仕方ありません!】

オベリスクフォースもデュエルディスクを構える…お互いに3対3のバトルロイヤルが始まる!

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト オベリスクフォース(赤・緑・黄)対月影・セレナ・黒咲

 

 

 

【俺は『古代の機械猟犬(アンティーク・ギア・ハウンド・ドッグ)』を召喚!そして1ターンに一度、相手フィールドにモンスターが存在する時!相手に600ダメージを与える!ハウンドフレイム!】  

 

「永続罠『結界忍法─朧滅却の術』!!800ポイント以下の効果ダメージを無効にする!」

効果ダメージを狙うオベリスクフォース…だが、月影は万全の態勢でそれを迎え撃つ…!

 

 

【ならば、魔法カード『融合』発動!フィールドの『機械猟犬』と手札の2体の『機械猟犬』を融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬たちよ!群れ成して混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!!融合召喚!現れろレベル7!『|古代の機械参頭猟犬《アンティーク・ギア・トリプルバイト・ハウンドドッグ》』!!バトルだ!!】

機械のケルベロスで攻撃を仕掛けようとするオベリスクフォース…だが、月影はそれを許さない!

 

「その前に…!拙者は永続罠『結界忍法─影寄せの術』を発動!相手ターンに一度、ライフを半分払ってバトルフェイズを終了させる!!」

 

【なにっ!?】

 

「お前…!」

 

「そなたの傷に比べれば…大した事ではない…!」

自分のライフを糧としてオベリスクフォースの攻撃を受け止める月影…彼ら風魔兄弟は兄・日影が攻めを、弟・月影が守りを担当する事で勝利を掴むデュエルスタイル…その力を発揮し、彼はオベリスクフォース3人分の『古代の機械猟犬』のダメージと『古代の機械参頭猟犬』の攻撃を阻む…!

 

 

 

「お前の作戦…無駄にはしない!!私のターン!」

 

「おいっ…!?」

月影によってオベリスクフォースのターンが一巡…セレナが攻勢に出る!

 

 

「蒼き闇を徘徊する猫よ!紫の毒持つ蝶よ!月の引力によりて渦巻きて…新たな力と生まれ変わらん!融合召喚!現れ出でよ!月明かりに舞い踊る美しき野獣!『月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)』!」

セレナはエースモンスター、仮面を被った猫の舞姫を呼び出す!

 

 

「さらに私は魔法カード『月光香』を発動!墓地の『月光蒼猫』を特殊召喚!さらに効果発動!『月光舞猫姫』の攻撃力を2倍にする!さらに『猫舞姫』の効果発動!『月光蒼猫(ムーンライト・ブルーキャット)』をリリースする事で相手モンスター全てに2回攻撃を可能にする!バトルだ─!!」

 

【無駄ですよ…!罠カード『融合霧散』発動!】

 

「し、しまった!『融合霧散』だと!?」

オベリスクフォースに速攻を仕掛けるセレナ…だが、彼らは()()()()()()()()()()()()──つまり、融合対策は万全という事になる…!

 

【相手の融合モンスターがバトルを仕掛けてきた時、そのモンスターをエクストラデッキに戻し!墓地の融合素材モンスター1組を特殊召喚!さらに戻された融合素材モンスターの高い攻撃力分のダメージを相手に与える!攻撃力が高いのは『月光蒼猫』!1600ダメージだ!】

 

「ぐうっ…!!?」

エースモンスターはエクストラに戻され、セレナは大ダメージを受けてしまう…!

 

 

 

【貴女のデッキは把握済みですよ…!】

 

「くっ…!」

セレナのデッキを把握していたオベリスクフォース…セレナは追い詰められるが…!

 

 

 

「っ…!いくよ!!」

 

「あっ!?アカーン─!!」

 

「君たち!ボク達も相手だ!!」

 

「あ〜あ…!もう、しゃあない!!」

そこに思わぬ乱入者が現れる…それは偶然、傍を通りかかった茂古田未知夫と大漁旗だった……氷山エリアで何故か気絶していたミエルを保護し、安全な場所を探す中…偶然オベリスクフォースのデュエルを目撃……未知夫は仲間達を守る為に、大漁旗はそれに仕方なく付き合う形で乱入する!

 

 

 

【乱入ペナルティ、2000ポイント!!】

 

 

「あばばば!?まだなんもしてへんのにぃ!?」

 

「っ…ボクのターン!!」

乱入ペナルティを受けながら…彼らは仲間の守る為に戦う!

 

 

乱入デュエル

 

 

 

オベリスクフォース対月影・セレナ・茂古田・大漁旗・黒咲

 

 

 

「ボクは魔法カード『インスタント・クッキング』を発動!相手フィールドのモンスターのレベルを合計し、その数値以下の『RCM』モンスターを手札から特殊召喚する!現れろ!『RCMナイト・ナポリタン』『RCMクイーン・オムレツ』『RCMキング・ハンバーグ』!」

フィールドにナポリタンの騎士、オムレツの女王、ハンバーグの王様が現れる!

 

 

 

「ボクはカードを1枚伏せて、仕込みは完了!キミの番だよ!鉄平くん!」

 

「どわ!?ドローしてもうた!!…こうなりゃヤケじゃああ!!」

未知夫に背中を(物理的に)押された大漁旗は前にでる!

 

 

 

「永続魔法『内海』を発動!これで自分の手札の水属性モンスターのレベルを1下げる…!わしは手札のレベル5の『伝説のフィッシャーマン』をレベル4として召喚!さらにリリースする合計で手札から『伝説のフィッシャーマン三世』を特殊召喚!!」

大漁旗の場に機械銛と投網を持つ、伝説の漁師が現れる!

 

 

「この効果で特殊召喚に成功した時!相手フィールドのモンスターを任意の枚数除外できる!『古代の機械参頭猟犬』3体…一網打尽や!!」

 

【なんだと!?】

フィッシャーマン3世が猟犬達を投網で捕らえる!

 

 

「いい調子だよ!鉄平くん!それじゃあボクは罠カード『モンスター・パイ』を発動!相手フィールドからモンスターが離れた時、相手フィールドに攻撃力1000の『モンスター・パイトークン』を特殊召喚!」

 

【な、なんだ?!】

さらに未知夫が罠を発動…オベリスクフォースのフィールドに3体の燃え盛るパイが現れる!

 

 

「さらに!フィールドの『ロイヤル・クックメイト』達の効果発動!相手フィールドにモンスターを召喚・特殊召喚された時、自身を手札に戻す事で1体につき、1体のモンスターを破壊できる!」

 

「そして…この効果を上乗せや!!『フィッシャーマン三世』の効果発動!除外した相手モンスターを墓地に戻す事で、このターンに相手に与えるダメージを2倍にするんや!!」

 

「『モンスターパイトークン』が破壊された時、相手プレイヤーに1000ダメージを与える!!つまり──」

 

「ダメージは2倍の2000ダメージや!!」

 

【【【ぐああああっ!?】】】

 

それは即席とは思えない強力コンボ…漁師と料理人コンビがオベリスクフォースのライフを大きく削る!

 

 

「ボク達…最高のコンビだね!」

 

「当たり前やがな!()()!」

互いの健闘を讃え、頷き合う2人……だが、デュエルはまだ終わっていない!

 

 

 

【く、ククク…!その最高のコンビとやらで…自ら()()()終わりを導いたな!!】

 

「なにっ…!?」

不敵な笑みを浮かべるオベリスクフォース(緑)…彼らはただのデュエリストではない……()()()()()()なのだ…!

 

 

 

【オレは伏せカードを全てオープン!永続罠『古代の機械蘇生(アンティーク・ギア・リボーン)』!永続罠『古代の機械閃光弾(アンティーク・ギア・スパークショット)』!永続罠『古代の機械増幅器(アンティーク・ギア・ブースター)』!まずは『機械蘇生』の効果で、このターンに墓地に送られた『参頭猟犬』を攻撃力を200アップして特殊召喚!】

機械のケルベロスが復活…それにより、恐怖のコンボが起動する!

 

【『機械閃光弾』の効果で墓地から『アンティークギア』モンスターが特殊召喚された事で、相手プレイヤーにその攻撃力の半分のダメージを与える…さらに!『増幅器』の効果!『アンティークギア』カードの効果でダメージが発生する時、そのダメージを2倍にする!!2000ダメージを喰らえ!アンティーク・リバイブ・ハウリング!!】

 

「なっ!?うわあああ!!?」

 

「ミ、ミッチィィィ!!!」

それは相手を倒す為の『必殺』コンボ…それによって未知夫はビルの壁を陥没させる勢いで吹き飛ばされてしまった…。

 

 

未知夫 LP0

 

 

 

 

【アハハハ!!乱入なんてしなけりゃよかったなぁ…!!】

未知夫を吹き飛ばしたオベリスクフォース(緑)がデュエルディスクに手をかける…!

 

 

「あっ……や、やめろぉぉぉ!!」

そこに火山エリアに辿り着いていた遊矢の悲鳴が響く…だが、その距離はあまりにも遠すぎた…!

 

 

 

キィン─!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

 

「すまない、少し出遅れた」

 

「えっ…?」

 

【なにっ!?】

カード化の光が放たれる刹那…赤い光の壁が未知夫の前に現れる…その壁はカード化の光を防いでしまった…!

 

 

 

「少年少女達、俺が来るまでよく耐えた…あとは任せろ!」

 

《フォウ、フォーウ!!》

 

「あ、アンタは…!目が覚めたんか!?」

それを為したのは…白猫を連れた赤い帽子を被り、赤いジャケットに黒いシャツを着た、ジーンズの男──白波遊海だった。

 

 

 

 

「ゆ、遊希兄!?」

 

【チッ…何者かは知らないが…!!オレもリバースカードオープン!『古代の機械蘇生』『古代の機械閃光弾』『古代の機械増幅器』!『参頭猟犬』を蘇生して釣り野郎に2000ダメージだ!!】

 

「ひぃっ!?」

正体不明の男に動揺したオベリスクフォース(黄)だったが…確実にトドメを刺すべく、コンボを発動させる!

 

 

「こうすればいいんだな?アクションマジック『フレイム・ガード』!効果ダメージを0にする!そして……」

 

 

【乱入ペナルティ2000ポイント!!】

 

 

「乱入によって、ターンが変わる……残念だったな」

 

【き、貴様ぁ!卑怯だぞ!!】

遊海は冷静にコンボに対処…オベリスクフォースを封じた!

 

 

【お前は何者だ!?】

 

「通りすがりの決闘者だ…覚えなくてもいいぞ?……精霊変身!」

オベリスクフォースをあしらった遊海はデュエルディスクを構える…そして姿が変わる。

 

赤いジャケットは騎士鎧を思わせるパワードスーツに覆われ、鋼の兜が顔を覆い…背中には赤いマントがはためく…

 

そして、旧型デュエルディスクの外装が弾け飛び…鳥の翼を思わせる新型ディスクへと換装される、その姿はまるで………

 

 

 

「な、なんや…!?ヒーローみたいやんか、遊矢の兄ちゃん…!!」

 

《フォウ!》

 

世界を救う英雄──その復活の時である!

 

 

 

 

乱入デュエル

 

 

オベリスクフォース(赤)LP2000 伏せ2 手札0

 

オベリスクフォース(緑)LP2000 参頭猟犬 蘇生 閃光弾 増幅器 手札0

 

オベリスクフォース(黄)LP2000 参頭猟犬 蘇生 閃光弾 増幅器 手札0

 

 

月影 LP500 黄昏の忍者─シンゲツ 結界忍法─影寄せの術 結界忍法─朧滅却

 

セレナLP2400 月光蒼猫 月光紫蝶

 

未知夫LP0 (気絶)

 

大漁旗LP2000 フィッシャーマン3世  内海

 

遊海LP4000→2000

 

黒咲LP4000

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「うん…忍者のキミ、月影君?カードを借りてもいいかな?」

 

「っ…あいつらを倒せるのならば…!!」

 

「ああ、その期待に応えよう!永続魔法『マジック・プランター』を発動!月影君の永続罠『結界忍法─朧滅却』を墓地に送り…2ドロー!さあ、いくぞ!俺は手札のスケール1『クリフォート・ツール』とスケール9『クリフォート・アセンブラ』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

「クリ、フォート…?新たなペンデュラムカード!?」

 

「遊希兄じゃ…ない…?」

遊海の背後に光の柱が現れる…その中に黄色の核石を持つ機械、そして紫の核石を持つ石板のような機械が浮かび上がる。

 

 

PENDULUM!!

 

 

「これで俺はレベル2から8の『クリフォート』モンスターをペンデュラム召喚可能!さらに『ツール』のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、800ライフを払う事でデッキから『機殻の生贄(サクリフォート)』を手札に加え…さらにフィールド魔法『機殻の要塞(クリフォートレス)』を発動!」

遊海を中心として、フィールドが紫のエネルギーに覆われる!

 

遊海LP2000→1200

 

 

 

「……榊遊矢、お前はこっちは気にせずに自分の為すべき事を為せ……()()がお待ちかねだぞ?」

 

「えっ…あ!?」

遊矢が遊海の言葉に我に帰る…そこには……

 

 

 

『ねぇ…なんで、みんなボクの邪魔ばっかりするの?本当にいらつくんだけど…!』

 

「悪いが…これ以上、アカデミアをのさばらせる訳にはいかねぇからな」

 

「り、凌牙殿…!?」

素良によってライフを削りきられてしまった日影…だが、素良がカード化を行なう寸前に()()()()が日影を守る…それは凌牙がデュエル外で呼び出した『No.106巨岩掌ジャイアント・ハンド』だった!

 

「榊遊矢、紫雲院素良の相手は…お前がするんだろ?」

 

「っ…ごめん!凌牙!!」

遊矢は遊海のデュエルから目を離し──友と対峙する!

 

 

 

 

「待たせたな!揺れろ…希望のペンデュラム!!我が魂に宿る大いなる力よ!いまこそ、その力を開放せよ!!ペンデュラム召喚!手札からレベル6『クリフォート・ゲノム』レベル6『クリフォート・アーカイブ』レベル8『クリフォート・アクセス』!」

遊矢が素良と対峙するのを見た遊海のフィールドで赤のペンデュラムが揺れ動く…そして時空の彼方から橙色の核石を持つコイル型の機械、緑色の核石を持つ船型の機械、赤色の核石を持つ束ねたコードのような機械が現れる!

 

 

ゲノムATK2400→1800 ☆6→4

 

アーカイブATK2400→1800 ☆6→4

 

アクセスATK2800→1800 ☆8→4

 

 

「特殊召喚された『クリフォート』は攻撃力1800、レベルは4になる!さらに装備魔法『機殻の生贄』を『ゲノム』に装備!これによって『ゲノム』は『クリフォート』モンスターのアドバンス召喚時、2体分のリリースとなる!俺は2体分となった『アーカイブ』をリリース!『クリフォート・ディスク』をアドバンス召喚!!」

橙色の核石の機械が消え…青色の核石を持つ、虹色の円盤型の機械が現れる! ATK2800

 

 

「そして墓地に送られた『機殻の生贄』の効果発動!このカードが墓地に送られた事でデッキから『アポクリフォート・キラー』を手札に加える!さらにリリースされた『ゲノム』の効果!オベリスクフォース(緑)の『古代の機械蘇生』を破壊!さらに『ディスク』がアドバンス召喚に成功した事で効果発動!デッキから『クリフォート・ゲノム』2体を特殊召喚!!」

 

【な、なんだぁ!?】

慣れた手付きで効果を使用する遊海、オベリスクフォースの罠を消し飛ばし…さらに橙色の核石の機械が2体現れる!

 

 

ゲノムATK2400→1800 ☆6→4

 

ゲノムATK2400→1800 ☆6→4

 

 

「さぁ…いくぜ、相棒!!フィールド魔法『機殻の要塞』の効果で俺は通常召喚に加え、『クリフォート』モンスターを召喚できる!俺は『クリフォート』モンスター『ゲノム』2体と『アーカイブ』をリリース!!我が魂、我が相棒たる機殻の王よ…今こそ顕現せよ!!レベル10!『アポクリフォート・キラー』!!」

3体の核石が空へと吸い込まれる…そして───

 

 

【な、なんだ…?何も出てこない───?】

 

《アポクリフォート・キラー…現界します、世界を蝕む侵略者達よ…覚悟はいいですか?》

 

【【【はっ…!?】】】

火山エリアに機械音声が響く…そして、火山の噴煙の奥に虹色の核石を持つ巨大な機械が現れる……それは街一つを軽々と覆う、巨大要塞だった…! ATK3000

 

 

 

「っ…!?!?」

 

「な、なんだ?このモンスターは…!?」

 

「で、でっかぁぁ…!?」

 

「この、圧倒的な覇気…まさか、お前は…!」

顕現した巨大要塞に圧倒される子供達…その中で黒咲は気付いた。

 

 

「絶望を覆す為の、最後のピース…行方が分からなくなっていた……凌牙の探していた、()()()()()()……白波遊海…!?」

 

「…そんな大層な者じゃないさ、俺は…お前達より()()()()強い、ただの決闘者(デュエリスト)だ!」

黒咲の言葉に答えた遊海はオベリスクフォースに向き直る!

 

 

「まずはリリースされた2体の『ゲノム』の効果!オベリスクフォース(赤)の右側の伏せカードとオベリスクフォース(黄)の『古代の機械蘇生』を破壊!さらに『アーカイブ』の効果!オベリスクフォース(緑)の『古代の機械参頭猟犬』を手札…エクストラデッキに戻す!」

 

【【【なんだと!?】】】

放たれた無数の光がオベリスクフォースのフィールドを蹂躙…オベリスクフォース(赤)の『古代の機械蘇生』や他のカードを破壊・バウンスする!

 

 

「そして『アポクリフォート・キラー』のモンスター効果発動!このモンスターが存在する限り、フィールドの特殊召喚された全てのモンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする!さらに1ターンに1度、相手は自分の手札・フィールドのモンスターを墓地に送らなければならない!オベリスクフォース(黄)は自分の『参頭猟犬』を墓地に送ってもらおうか!」

 

【くっ…!?】

フィールド全体を機殻の王の重圧が支配する…!

 

月光蒼猫ATK1600→1100

 

月光紫蝶ATK1000→500

 

アクセスATK1800→1300

 

 

 

「バトルだ!『ディスク』でオベリスクフォース(黄)にダイレクトアタック!」

 

【ぐおおおっ!?!】

円盤から放たれた光線がオベリスクフォースを吹き飛ばす!

 

オベリスクフォース(黄)LP2000→0

 

 

「続けて『アクセス』でオベリスクフォース(赤)にダイレクトアタック!」

 

【ぬあああっ!?】

アクセスの無数のコードによる打撃がオベリスクフォースを吹き飛ばす!

 

オベリスクフォース(赤)LP2000→700

 

 

「さぁ…彩華!!俺達の復活の号砲を世界に轟かせろ!『アポクリフォート・キラー』でオベリスク・フォース(緑)にダイレクトアタック!ネクサス・アーク・キャノン!!」

 

《新規コード認証!主砲展開…我らが思いよ、世界へ響け!!ネクサス・アーク・キャノン!!》

 

【う、うわあああ!?!?】

虹色の光の奔流がオベリスクフォースを吹き飛ばす…それは『英雄』の復活を知らせる号砲として次元に響き渡った…!

 

 

オベリスクフォース(緑)LP2000→0

 

 

「ちょっとミスったな…対多人数戦は配分が難しい……俺はこれでターンエンド!そして『クリフォート・アセンブラ』のペンデュラム効果!俺がこのターンリリースした『クリフォート』1体につき1枚ドローできる、4枚ドロー!」

 

 

遊海LP1200

キラー アクセス ディスク 機殻の要塞 (P ツール アセンブラ) 伏せ0 手札0→4

 

 

 

「な、なんだ…この男は…!?1人で、オベリスクフォースを半壊させた…!?」

 

「俺1人の力じゃない、お前達がしっかりと戦ってくれたから…俺は間にあった……黒咲君、すまないが仕上げは任せるよ!」

 

「……ああ、やらせてもらう……!」

遊海の特異な強さに戦慄するセレナ…遊海は最後を黒咲に任せる! 

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

「『RR- アベンジ・ヴァルチャー』を召喚!」

遊海に託された黒咲は復讐の名を背負うハゲタカを呼び出す! ATK1700

 

「融合次元への…アカデミアへの反逆はここから始まる!『アベンジ・ヴァルチャー』でオベリスクフォースにダイレクトアタック!!」

 

【ひっ!?ぐわああああ!?】

鋭い爪の一撃が腰砕けになっていた最後のオベリスクフォースを吹き飛ばした…!

 

 

オベリスクフォース(赤)LP0

 

 

月影・セレナ・大漁旗・遊海・黒咲WIN!

 

 

 

 

 

「ふぅ…復帰一戦目はこんなもんか…みんな、よく戦った!」

 

「(この男、()()()()している…いったい、こいつは…?)」

 

黒咲がオベリスクフォースを倒した事でリアルソリッドビジョンが消えていく…セレナは明らかに()()遊海を見て警戒している……そしてオベリスクフォースは「安全装置」によって撤退───

 

 

 

《一時的な転移封鎖を実行…どうぞ、マスター》

 

「ああ…ナイスだ、アヤカ」

 

【【【へっ?!】】】

「安全装置」は作動しない、規格外の精霊が転移を封じたからだ…そして倒れ込んだオベリスクフォースに遊海が歩み寄る……額に金色の()()()()()を浮かばせながら…!

 

 

 

「オベリスクフォース、アカデミアにおけるエリート部隊……つまり、それだけ人を()()()()()()()()…という事だな?」

 

【ひっ…!?】

 

「お前達にカードにされた人々の恐怖、悲しみ……その1割でも味わうがいい!!罰ゲーム!マインド・クラッシュ!!

 

 

バリーン!!

 

 

【【【ぎゃあああ!?】】】

冷たい目をした遊海が罰を下す…何かが割れる音と共にオベリスクフォース達は失神した…。

 

 

 

「さて……怪我人はそこの料理人の子と黒咲だけか?すぐに治療するからな」

 

「えっ…ああ…?(何をしたのかはわからない…だが、これだけは理解した……この人を怒らせたら──()()())」

罰ゲームを終え、オベリスクフォースのデュエルディスクを外した遊海は穏やかな様子で子供達に向き直る……黒咲は内心、遊海に対して恐怖を覚えていた…。

 

 

 

「(時間は──11時45分、大会は12時までだから…それまでに榊遊矢は決着がつくな)」

気を失った未知夫と肋骨に罅が入っていた黒咲に治癒を施す遊海は時間を確認する…問答の末に始まった2人の戦いは佳境に入っていた…。

 

 

 

「………何か、忘れているような…?」

 

《キャウ?》

そんな中、遊海は小さな違和感を覚える…自分が介入した戦いで何かを忘れているような────

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、助けてくれぇぇ!?!?」

 

 

 

 

「この声……アヤカ!!」

 

《マスター!デュエリスト7()()が此方へ近づいてきます!》

 

「なに…!?」

火山エリアに情けない声が響く…そう、この戦いには1()()足りなかったのだ…この男が…!

 

 

 

「話が違うじゃねぇか!?敵は4()()じゃねぇのかよぉぉ!?」

 

「お、おい…!?嘘やろ!?」

 

「こんな時に…!!」

 

《フォウ!?》

情けない叫びと共に転がるように駆けてきたのは赤馬零児から「敗者復活」という名目でバトルロイヤルに参加した沢渡シンゴ…その後ろには───

 

 

【おっ…セレナ様を発見!】

 

()()とやらの姿は見えない…セレナ様を確保して、アカデミアに戻るぞ】

モンスターを召喚した状態のオベリスクフォース6()()が迫っていた…!

 

 

 

「………記憶がない時の()、何かやらかしたな…!?仕方ない……お前達は手を出すな!」

 

 

 

 

それは『災厄』の残したイレギュラー…遊海は子供達を庇い、1人で立ち向かう!




そして、復活の号砲は世界を越えて広がっていく…。




「し、社長…!?」

『あれが、凌牙の言っていた…『切り札』か…!(私の見た事のないペンデュラムカード…あれが、別世界におけるペンデュラム召喚の『始祖』か…!)』






「フ…ハハハハハ!!そうか…ようやく戻ってきたか、遊海!!」

「よかった…でも、まだ戦いは始まったばかりだ…!」

「そうだ、我らにできる事はそう多くはないが……奴が心置きなく戦えるようにせねばな…」

『兄様!?外に「アポクリフォート・キラー」が……って、あれ…?もしかして記憶、先に戻ってた…?』

「ふん…遅いぞ、モクバ……お前が戻ったなら、他の奴らもか…」









《カイト様!再びARC次元から強力なエネルギーを……これは…!》

「どうした?」

《アヤカ殿からのメッセージでアリマス!!『マスター、ブジ、アンシンセヨ』と!!》

『フハハハ…!!そうか…!まったく、心配させおって!!』

「遊馬、凌牙…1つ目の目的、達成だな……よくやった…!」







《っ……アヤカ、ユウミ…!戻ってきたのですね…!!》

「フレア…!本当なの!?」

《ええ…!ユウミは無事です!!》

「よ、よかったぁぁ…!!」

(シャーク、無事に遊海の記憶を取り戻す事ができたようだな…)

「……アストラル、()()()()って…どういう事?」

(………しまった)









トクン


「………今…誰かの声が、聞こえたような…?」

『どうしたのかね?明日香君』

「いいえ、何でもないです遊勝先生(…もしかして………遊海先生…?)」







キィン─!



「むっ……気のせいか…さて、次の相手は俺にどこまで迫れるか……」



『………気のせいか』


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Ep.30 バトルロイヤル終結

「プロフェッサー…ご報告が……」

 

【どうした?】

融合次元・アカデミア…その総帥たるプロフェッサーは部下から報告を受けていた。

 

 

「オベリスクフォースが3名、スタンダード次元から強制送還されました」

 

【これで9人…次の部隊が送還され次第、作戦を一時停止する……零児、そこまで私の邪魔がしたいか…】

セレナを連れ戻す為に派遣した紫雲院素良とオベリスクフォース、そして柚子を確保する為に送り込んだユーリ…そのどちらとも成果は上がっていなかった…。

 

 

「それから……戻ってきたオベリスクフォース3名とも、瀕死の重傷を負っていました…1名は錯乱状態です」

 

【オベリスクフォースが重傷?】

プロフェッサーは続く報告に眉を顰める…オベリスクフォースはアカデミアの中でもエリート、生半可な事で怪我を負うことは少ないからだ…。

 

 

「その、錯乱している者によると……()()()()()、と……」

 

【悪魔、だと……!?】

部下の言葉にプロフェッサーは…世界を滅ぼさんとした『悪魔』の姿を思い出す…!

 

 

 

【オベリスクフォースを追加で6人、派遣しろ】

 

「はっ…?」

 

【オベリスクフォースを出せと言っている!!】

 

「は、はい!!」

プロフェッサーの怒号と共に部下は部屋を飛び出して行った…。

 

 

【悪魔…ズァーク…!お前を復活させる訳にはいかんのだ…!!】

プロフェッサーは光を放つ装置を見つめながら、歯を食いしばった…。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

「ひぃぃ…!?さっきの奴らが6人も!?」

 

「っ…アカデミアめ…!この次元まで火の海にするつもりか……ぐうっ…!?」

 

「まだ動くな!」

 

「(っ…セレナを連れて撤退すべきか…!?)」

増援として現れた6人のオベリスクフォース…それを見た大漁旗は気絶してしまった未知夫を庇いながら顔を青褪めさせ、黒咲は迎撃しようとして痛みに呻き、セレナがその身を支える…月影は撤退を視野に入れていたが…。

 

 

 

「奴らは俺が迎撃しよう…お前達は少し休んでいるといい」

 

「お前…!?状況が分かっているのか!?」

 

「分かってるさ……心配するな、セレナちゃん……デュエリストとしての誇りを持たない奴らなんて、敵じゃない」

 

「ちゃ…!?」

遊海だけは揺らがない…下卑た笑顔で沢渡を追い詰めるオベリスクフォースを迎撃する為に、前に出る!

 

 

 

「対多人数…モンスター召喚済、なら…デッキ換装!」

 

【ユウミ、アクセスグランテッド!】

遊海は迫りくるオベリスクフォースの姿を見てデッキケースに手を伸ばし、認証を行なう…それは遊希が開く事ができなかったデッキケース。

その名は【NEXUSコネクター】…『ZEXAL』の戦いの後、神様に与えられた新たなアイテム……それは遊海のカード庫に接続され、遊海の意思を読み取る事で最適のデッキを取り出す事ができるのである!

 

 

 

 

「た、助かった……って、アンタ……榊遊矢の兄貴か!?」

 

【なんだ?お前は…】

 

「沢渡君、彼ら相手によくここまで逃げきった……少し休んでいると良い」

這う這うの体で倒れ込む沢渡…彼を守るように遊海はオベリスクフォースと対峙する。

 

 

 

「よし…ここで一つ、質問だ…戦争を含めて、争いを速く終わらせる手段は?はい、セレナちゃん!」

オベリスクフォースを前に、穏やかな様子で遊海は後ろにいる子ども達に問いかける。

 

「はっ…!?こんな時に何を……一気に相手を攻める事だ!」

 

「うん、間違った方法じゃない…でもそれは相手と自分の戦力差が大きくないとできない事だ、今みたいな多数対一の時は?」

 

「……自分がどれほど()()()()を相手に示し、戦意を削ぐ…?」

 

「──月影君、正解だ……さて、実戦でそれを示すとしよう!」

遊海は再びデュエルディスクを構える!

 

 

 

【はっ…!テメェ1人に何ができるんだ?赤帽子!テメェもカードにしてやるよ!!】

オベリスクフォースはカードになってしまった梁山泊塾の竹田・梅杉を見せつけながら、遊海に対して醜悪な笑みを浮かべる…。

 

 

「……なら、俺はお前達に教えてやるよ、自分達がどれほど愚かな事をしているのかを……()の逆鱗に触れたのかを!!デュエルだ!!」

人を傷付けながら笑みを浮かべるオベリスクフォース達…その断罪のデュエルが始まる…!

 

 

 

 

【乱入ペナルティ!2000ポイント!】

 

 

 

 

乱入デュエル!

 

 

オベリスクフォース① LP4000 古代の機械双頭猟犬 伏せ1 手札3

 

オベリスクフォース② LP4000 古代の機械双頭猟犬 伏せ1 手札3

 

オベリスクフォース③ LP4000 古代の機械双頭猟犬 伏せ1

手札3

 

オベリスクフォース④ LP4000 古代の機械参頭猟犬 伏せ2

手札1

 

オベリスクフォース⑤ LP4000 古代の機械参頭猟犬 伏せ2 

手札1

 

オベリスクフォース⑥ LP4000 古代の機械参頭猟犬 伏せ2 

手札1

 

 

遊海LP4000→2000 手札5

 

沢渡LP400 魔界劇団─ビックスター (P デビルヒール ファンキーコメディアン) 手札3

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

《主、無事デナニヨリ…我ガ力デ、奴ラヲ薙ギ払オウ…!》

 

「頼むぜ、ラビエル!フィールド魔法『失楽園』を発動!」

 

《発動範囲を制限…監視カメラ遮断、疑似スフィアフィールド同時展開……思う存分やっちゃってください!マスター!》

 

「ありがとうアヤカ、これで…周りを気にする必要がなくなった…!」

遊海がフィールド魔法を発動した瞬間、周囲が世界から隔離される…火山は枯れ果て、ビルは消え…不毛の大地が広がっていく…!

 

 

【な、なんだ!?この場所は!?】

 

「お前達の罪を裁く…断罪の地だ!俺はさらに『混沌の召喚神』を召喚!」

下半身が蛇体になった異形の魔物が現れる! ATK0

 

 

【ははっ…!そんな低ステータスのモンスターで何ができる!!】

 

「はぁ…アカデミアでは『低ステータスのモンスターにこそ気を付けろ』とは習わないのか?『混沌の召喚神』の効果発動!自身をリリースする事で手札からこのモンスターを召喚条件を無視して特殊召喚する!長き眠りから目覚め…俺に力を貸してくれ!『幻魔皇ラビエル』!!」

荒れ果てた大地に稲妻が降りそそぎ…大地を砕く、その大地の割れ目から巨大な手が飛び出す──そして巨大な青き体を持つ幻魔の皇、ラビエルが降臨する!! ATK4000

 

 

 

【な、な、なんだぁ!?攻撃力4000だと!?】

 

【ば、バケモノ…!!】

ビルに匹敵する巨体を誇るラビエルにオベリスクフォースは後退る。

 

 

「化け物とは酷い言い方だな…お前らに比べれば、こいつの方がずいぶんと優しいんだが……」

 

【ひ、怯むな!我らオベリスクフォースはアカデミアの精鋭なのだ!『古代の機械双頭猟犬』の効果発動!召喚・特殊召喚された相手モンスターにギア・アシッドカウンターを1つ乗せる!!】

双頭の猟犬から歯車がラビエルに向かって放たれる、だが……

 

 

《邪魔ダ》

 

【はっ…?】

歯車はラビエルの指によって明後日の方向へ弾き飛ばされる!

 

 

「フィールド魔法『失楽園』の効果により『ラビエル』は相手の効果対象にならず、効果では破壊されない…そして俺は手札から『幻魔皇ラビエル─天界蹂躙拳』を捨てて効果発動、このターン『ラビエル』の攻撃力は2倍になり、相手モンスター全てに攻撃できる」

 

【【【【【【はっ─?】】】】】】

 

呆けるオベリスクフォース達…そして破壊の力を拳に宿した魔皇が咆哮する!

 

ラビエルATK4000→8000

 

 

 

「教えてやろう…本当の蹂躙とはこういう事だ!バトル!『幻魔皇ラビエル』で全体攻撃!世界の平和を乱す愚か者に裁きの鉄鎚を振り下ろせ!!天界蹂躙拳!!

 

《ウオオオ──!!》

 

 

【【【【【【ぎゃああああ!?!?】】】】】】

 

それは万物を破壊する『神』に比肩する、破壊の鉄鎚……それは大地を砕き、オベリスクフォース達を容赦なく粉砕した…。

 

 

 

オベリスクフォース①〜⑥ LP0

 

 

遊海WIN!

 

 

 

 

「お、オベリスクフォースが…あんなに呆気なく……」

 

「凄まじい…」

 

「……何者なんや、遊矢の兄ちゃん……」

 

「……モンスター以上にアンタの方がバケモンじゃんか……」

スフィアフィールドが解除され、周囲が火山へと戻っていく…その中で子ども達はオベリスクフォースを文字通り()()した遊海の背中を見ている事しかできなかった…。

 

 

 

《主ヨ…久シブリニ、良イカ…?》

 

「ん…?ああ、()()()()()()……降臨せよ!『神炎皇ウリア』!『降雷皇ハモン』!」

 

【あ、ぐ……なんだ…!?】

デュエルが終わったフィールドに炎が逆巻き、再び稲妻が降りそそぐ…その中から赤き魔龍、そして稲妻を従える黄の悪魔が現れる…。

 

 

「お前達はエクシーズ次元の人々を奪い、今もなお苦しみを味合わせている……ならば俺は…お前達の()()を奪わせて貰おう………存分に喰らえ、幻魔達!」

 

《アリガタイ、久々の食事ダ……イタダキマス》

遊海の言葉と共に幻魔達が吸息する…そして、変化はすぐに訪れた。

 

 

 

【ひっ…!?デッキが、オレのデッキがぁ!?】

 

【モンスターの絵が、カードが!?】

 

「な、何が起きてるんや!?」

 

『簡単な話だ……モンスターの力を()()()()()()

 

「凌牙…!?」

オベリスクフォースのデッキ…カードの絵柄の絵柄が崩れ、カードそのものが消えていく…突然の事に動揺するオベリスクフォース、子供達も驚いていたが…凌牙が状況を説明する。

 

 

『あの人が従える『三幻魔』…あのモンスター達はカードに宿る「精霊」の力を糧にしてる、本当なら世界全ての精霊の力を吸っちまうらしいんだが……幻魔達の努力と父さんのコントロールで、その力に()()()を持たせたんだ……それでオベリスクフォースのデッキは幻魔達に喰われ、俺達はなんともないのさ』

 

「三幻魔…?精霊?力を吸い取る??いったい、何を言ってんだ…!?」

 

『……まぁ、そんな反応になるよな』

凌牙の説明を聞いてもピンときていない様子の沢渡達…彼らにとって、目の前の出来事はまさに()()()()の出来事だった…。

 

 

 

 

 

 

「デッキは決闘者の魂…だが、お前達の魂は()()()()()()……0から反省しろ」

 

【な、何なんだ…!お前は何者だぁ!!】

デッキが完全に消滅してしまったオベリスクフォースは恐怖に歪んだ表情で遊海に問いかける…!

 

 

「俺の名は遊海……白波遊海!お前達のボス、プロフェッサーとやらに伝えろ!二代目『決闘王』がお前の愚かで、救いのない計画を止めに行くと!!」

そして遊海は名乗りを上げる…世界を救い続けてきた『英雄』の1人として、アカデミアの計画を潰すのだと…。

 

 

 

 

《ゴチソウサマ………ソンナニ、オイシクナカッタ……》

 

《やはり、デュエルアカデミアの子供達や……主の力の方が美味しく感じる》

 

《少し物足りなかった…》

 

「ふぅ…ごめんな、変なモン食べさせて……あとでまた力を分けるから……」

 

《ワカッタ……マタ、アトデ》

強制送還されたオベリスクフォースが消えた後、久しぶりの食事を終えた幻魔達が愚痴を零す…そんな彼らに口直しを約束した遊海、そして──

 

 

 

バトルロイヤル終了を知らせるブザーが鳴り響いた…。

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

「ユート…オレは、お前を信じる……『デュエルで笑顔を』と言ったお前を!!オレは…デュエルで素良の笑顔を取り戻す!オレはレベル7となった『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』と『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の2体でオーバーレイ!二色の眼の龍よ!その黒き逆鱗を震わせ、歯向かう敵を殲滅せよ!!怒りの眼輝けし『覇王黒竜』!『オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』!!」

 

『ははは…!面白い…面白いよ!遊矢!エクシーズのペンデュラムモンスターなんて……遊矢のデュエルは、これだからいつもワクワクするんだ!!』

 

「そうだ…!デュエルは()()()()()だ!だから…だから!争いになんて使わないでくれ!!」

 

 

 

同じ頃、素良と遊矢は火山エリアの一角でデュエルを繰り広げていた。

遊海に諭される形でアカデミアの戦士として戦う素良に『笑顔』を取り戻す為に戦いを挑んだ遊矢…だが、『本気』の素良は強く、次々と襲いかかる『デストーイ』モンスター達に追い詰められてしまう…。

そして遊矢は再び『暴走』する可能性を理解しながらも…素良を引き戻す為に『覇王黒竜』を呼び出した…!

 

 

 

「『オッドアイズリベリオン』の効果発動!エクシーズモンスターをエクシーズ素材にした時、相手フィールドのレベル7以下のモンスターを全て破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!!」

 

『罠カード「フュージョン・フロント・ベース」を発動!自分フィールドに融合モンスターが存在する時!効果ダメージを無効にする!』

覇王黒竜の翼から紫電が奔り、素良の『デストーイ・シザー・ベアー』と『デストーイ・シザー・タイガー』を破壊…だが、効果ダメージは回避されてしまう…!

 

 

「『オッドアイズリベリオン』のさらなる効果発動!ORUを一つ使い、自身の効果で破壊された相手モンスターの数だけ攻撃できる!『デストーイ・サーベル・タイガー』を攻撃!反旗の逆鱗─ストライク・ディスオベイ!!」

 

『アクションマジック「フレイム・チェーン」!相手モンスターの攻撃力を400ダウンさせる!これで返り討ちだ!』

 

「アクションマジック『フレイム・パワー』!自分のモンスターの攻撃力を400アップさせる!!」

火山を削りながら攻撃を仕掛ける覇王黒竜…素良はアクションマジックによる弱体化を狙うが、遊矢は即座にカバー…そして2人は最後のアクションカードを狙う!

 

 

 

「『届け─!!』」

 

火山の天井に張り付いたアクションマジックを狙う2人…その時!

 

 

 

 

ビビーッ!!

 

 

『バトルロイヤル終了時刻でぇぇす!!』

 

 

 

 

「『なっ…』」

ニコの実況が舞網市に響き渡る…それと共にアクションフィールドを構成していたリアルソリッドビジョンが消滅……2人のデュエルは時間切れという結末を迎えたのだった…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

「遊矢!!素良!!」

 

「権現坂…柚子!!」

リアルソリッドビジョンの消えた街に権現坂の声が響く…遊矢が頭上を見上げると凌牙に助けられた日影の介抱を終えた権現坂、そしてオベリスクフォースを撃退した月影・黒咲・沢渡…そして柚子(セレナ)、さらにいつから居たのか…気を失ったミエルを背負ったデニスの姿があった…。(大漁旗は失神した未知夫に付き添っている)

 

 

「ん……ん!?柊柚子!!ダーリンに色目を使っていながら…別の男にも近づいてたわね!?」

 

『私は…柚子ではない…』

 

「「「えっ!?」」」

ここで目を覚ましたミエルが声を上げるが…セレナがそれを否定し、権現坂と遊矢、ミエルが驚愕する…全員がセレナを柚子と誤認していたからだ…。

なお、ミエルは氷山エリアで本物の柚子とシンクロ次元のユーゴが出会う所を見ていたのだが…氷のソリッドビジョンですっ転び、頭を打って失神していたのである。

 

 

 

「じ、じゃあ…柚子は!?」

 

「ごめん、遊矢…探したんだけど…気を失った彼女以外は見つからなかったんだ…」

 

「デニス…そんな…!まさか!!」

 

『っ…!』キィン!

 

「素良!!」

デニスの言葉に思わず素良へと振り返る遊矢…だが、素良はデュエルディスクを操作してアカデミアへと戻ってしまった…。

 

 

 

 

 

 

【君達のデュエル…しっかりと見せてもらった】

 

「っ…赤馬、零児!?」

そして…それと入れ替わりに赤いマフラーをたなびかせた赤馬零児が姿を現した…!

 

 

『げっ…赤馬社長……一応、言われた通りアカデミアの連中は追っ払ったけど…オレのランサーズ入りはどうなるんだ?』

 

「ランサーズ?なんだ、それは…?」

一瞬、気まずげな表情を見せた沢渡の言葉に権現坂が問いかける…『ランサーズ』とは何なのかと…。

 

 

『このバトルロイヤルは…デュエル戦士選抜の為の()()だったのさ』

 

「「試験…!?」」

 

【私は…融合次元の侵攻が起きる事を()()()()()、だからこそ…ジュニアユース選手権3回戦をバトルロイヤルへと変更し、君達の力で敵を撃退しようと考えたのだ】

 

「オレ達の力で…!?」

沢渡の言葉を引き継ぐ形で零児が説明する…バトルロイヤルそのものが、アカデミアに対する迎撃戦だったのだと。

 

 

「なんで、ユースやプロじゃなくて…オレ達ジュニアユースに…!?」

 

『ユースの奴らも戦ってたらしいぜ?……全滅した上に半数はカード化、残りの半分もリタイアしたってさ…だから、オレが投入されたのさ』

 

「ユースが、全滅!?」

沢渡の言葉に遊矢と権現坂は驚く…ユースクラスはジュニアユースクラスより強い…その彼らでも、オベリスクフォースには敵わなかったのだと…。

 

 

 

【そして…私の見込み通り……いや、()()()もあったが……君達はアカデミアの撃退に成功した…まさに、対アカデミアの為の()()()()()()…『ランサーズ』としての力を示した、という訳だ】

 

「っ…ふざけるな!!何がランサーズだ!!」

バトルロイヤルで生き残った遊矢達を讃える零児…だが、その言葉を聞いた遊矢は怒りを露わにする…!

 

 

「そんな事の為に、ナイト・オブ・デュエルズや城之内さん…他のみんなもカードにされたのか!?未知夫は怪我をしたのか!?柚子だって…カードに……!!」

 

「ダーリン…」

遊矢の脳裏に過ぎるのは恐怖の表情でカードにされてしまったナイト・オブ・デュエルズや凌牙に見せられたカード化された城之内…そして行方知れずとなってしまった柚子の事……それは遊矢にとって許せない事だった…。

 

 

「お前のせいで…柚子は……みんなは!!」

 

 

『そうだ、それは悪手だったぞ…赤馬零児、戦う意思のない…覚悟の無い者ほど弱いモノはない……せめて、最低限の事情は説明すべきだったな』

 

 

【…海馬瀬人…!】

 

「か、海馬社長…遊希兄…凌牙…!」

遊矢の嘆きを遮るように凛とした声が響く…現れたのはレオ・コーポレーションのライバルたる海馬コーポレーションの社長・海馬瀬人、そして遊海と凌牙だった。

 

 

『訓練も無しに民間人を戦場に放り出す馬鹿がいるか?そんなもの、体のいい「肉壁」ではないか……緊急事態なら緊急事態と俺に泣きついてこい、最低限の備えはしていたのだぞ』

 

【くっ…あっさりと協力してくれたのはそういう事か……全て見通していた、と…】

海馬の鋭い視線に零児は僅かに表情を崩す…記憶を取り戻していた海馬は私設部隊やスポンサーとなっているプロデュエリストに声をかけ、事態に備えていたのだ。

 

 

 

「遊希兄…なんか…背が、伸びた…?それに、左目が治って…!?」

 

「……お前が榊遊矢か……()()()()()、だな」

 

「えっ…?」

 

「俺の名は白波遊海……決闘者(デュエリスト)だ」

駆け寄ってきた遊矢に対し、遊海は改めて自己紹介する…それは…遊矢に残酷な真実を突きつけた。

 

 

「赤馬零児……お前のせいで、1人()()()()……怒りに飲まれ、大暴れして……親しい者に別れさえ告げられずに」

 

【っ…】

遊海は自分の胸を指し示しながら零児を睨みつける…。

 

 

「ゆ、遊希…!死んだとは……まさか…!?」

 

「………俺にはこの次元で過ごし、榊遊矢と暮らした『記憶』は無い……それはお前達の知る『榊遊希』が死んだ……それと変わらないだろう」

 

「そんな…!そんな…!!」

遊海の言葉で権現坂達はそれを知る…榊遊希は…いなくなってしまったのだと…。

 

 

「赤馬零児、お前のやり方は間違ってる…情報を隠せば隠すほど、人は疑い…猜疑心を抱く………そのやり方は()()()()()()()()()()()!!」

 

【っ…!!】

遊海は零児に正論を叩きつける…侵略戦争を正当化するアカデミア、アカデミアの侵攻を隠して遊矢達を戦わせた零児……それは図らずとも、似た行ないだった。

 

 

 

『待ってくれ…全ては零児1人の責任ではない……柚子が倒されてしまったのも、オベリスクフォースが来たのも………私のせいだ…!』

 

「自分のせい、とは…どういう事だ?そもそも…お前は…?」

追い詰められる零児を庇うようにセレナが前に出る…彼女の事はこの場にいる半数は知らないのだ。

 

 

『私はセレナ…融合次元の、アカデミアのデュエリストだ…!』

 

「アカデミア!?敵じゃねぇか!?」

セレナの告白に沢渡が驚愕する…そして彼女は真実を語る。

アカデミアの悪行を知らず、デュエル戦士としての武勲を上げる為にスタンダードに来た事

 

付き人がセレナを連れ戻す為にアカデミアのエリートたるオベリスクフォースを呼び寄せてしまった事

 

…そして、バトルロイヤルの中で柚子からアカデミアの悪行を知り、その真実を確かめる為に服を交換し、囮になってもらった事を…。

 

 

 

 

『──柚子は…黒咲か凌牙という男にエクシーズ次元で起きた真実を聞けと……その為に、彼女は囮に…』

 

「そんな…!」

困った人がいたら見捨てられない…そんな柚子の事を知っている遊矢は拳を握り締める…。

 

 

 

「赤馬零児……お前が、お前がオレ達を戦わせなければ……!!みんなを…柚子を返せぇぇ!!」

 

【っ…】

バトルロイヤルの被害…悲劇を知った遊矢は拳を振り上げ、零児へと殴り掛かる……だが。

 

ガシッ

 

「榊遊矢…その手は、お前にとって()()為の手ではないだろう?」

 

「遊希、兄…」

甘んじて拳を受けようとした零児……だが、その直前に割り込んだ遊海がその拳を受け止めた…。

 

 

「確かに、アカデミア侵攻、バトルロイヤルという突然の争いを招いたのは零児とセレナだ……だが、柊柚子を守れなかったのは───お前の()()だ」

 

「っ…」

 

「赤馬零児も手段は間違ったとはいえ、この世界を守る為に戦った……お前に世界を守れ、とは言わない……だが、その手は…なんの為にある?」

 

「オレの手は……」

遊海に離された手を遊矢は見つめる…。

 

 

 

「オレは…デュエリストだ……だから…零児!お前にデュエルを申し込む!!柚子やカードにされたみんなの分まで…お前をぶっ倒す!!」

 

【……わかった……それで君の気が済むのなら…受けて立とう…!】

遊矢は怒りの籠もった眼差しで零児を睨む…そして動揺していた零児も、その提案を受け入れた…。

 



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Ep.31 嘆きの遊矢、冷徹なる零児〜再会〜

こんにちは!S,Kです!

前回の投稿の後、コメントを見て気が付いたんですが…「ARC-V」の物語でまともな大人少ないな!?遊矢Sideは洋子さんや修造さん、権現坂父を始めとして良い人が多いけど…赤馬Sideは頼れる大人が少なすぎ…というかいないし!?

シンクロ次元は融合の逃亡者のロジェと事なかれ主義の行政評議会…まともなのは改心後の徳松さんくらい?(ジャック・クロウは除く)
エクシーズ次元は大人がそんなに出てこなくて…融合次元は海賊もどきにバトルビーストを育てたらしいスパルタ教官に、マッドサイエンティストなドクトルに、元凶の赤馬零王……遊勝は比較的まともだけど、独断専行でどっか行ってるし……他のシリーズで例えるなら改心後のペガサス会長、クロノス先生とかマーサとか、春おばあちゃんとか六十郎ポジの人はいないのか!?いたらもう少し良くなったと思うよ!?

そして、そんな世界に現れた遊海を始めとした良識のある決闘者達…彼らはこの世界を変えられるのか…!


それでは、最新話をどうぞ!


「遊海……ようやく戻ってきたか、この大馬鹿者が!!」

 

「海馬社長…!!……ああ、俺は…本当に馬鹿だ……冥界のみんなにまで、心配かけて…!」

時は少しだけ巻き戻る…オベリスクフォースを撃退し、権現坂の声掛けで子供達が遊矢を探しに行った直後、遊海と海馬が再会を果たしていた…。

 

 

「ふん…積もる話や説教は多々あるが……どうする?」

 

「一度、遊矢達に合流しよう…誰かが()()()にならないと…禍根を残す事になる」

零れた涙を拭った遊海は海馬に伝える…何も知らされない状態で戦わされた遊矢達、そして1人でスタンダード次元防衛の全てを背負った零児……その禍根は後々まで影響を残す事になるからだ。

 

 

「……遊海、お前は……榊遊矢に()()()のか?」

 

「………今は、どう遊矢と……「榊遊希」を知る人達と向き合えばいいのかわからない……それでも、俺は……行かなきゃ」

海馬の言葉に遊海は顔を伏せる…今の遊海は遊矢とはほぼ()()()という状態……それは今までの「主人公」達との出会いにはなかった状況だった…。

 

 

 「父さん……大丈夫さ、父さんはいつもどおりでいい…その強さに…優しさにあいつらもついてきてくれるさ」

 

《フォウ、フォーウ!(ボク達もついてる!)》

 

「凌牙…フォウ……ああ、ありがとう……行こうか…!!」

凌牙とフォウに背中を押され…遊海は物語へと飛び込んだ…!

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

『だが…君達にも分かってほしい…君達に託された使命を…私が「ランサーズ」を結成した決意を……それは私達の故郷をエクシーズ次元を襲った悲劇から守る為なのだと…!アクションフィールド・オン!「未来都市ハートランド」発動!!』

そして、現在…リアルソリッドビジョンが舞網市にエクシーズ次元・ハートランドの街を映し出す…仲間達の怒りと悲しみを背負う遊矢、そしてスタンダード次元を守る重責を背負う零児のデュエルが始まろうとしていた…!

 

 

 

 

「ハートランド…!エクシーズ次元の…!?」

 

「そうだ…この場所は……俺の…俺達の、故郷だ…!」

映し出された未来都市…それを目にした黒咲は声を震わせる…今もなお、レジスタンス達はエクシーズ次元で戦い続けているのだ…。

 

 

「エクシーズ次元のハートランド……凌牙、戦況はどうなってる?」

 

「遊馬やドルベ達が遊園地を中心にして防衛してる…人海戦術で攻めてくるアカデミアに対しては守るので精一杯……十代さんが遊撃で引っ掻き回してくれてる」

 

「……できるだけ、早く向かった方がいいな…翠の事が心配だ…」

展開された未来都市を見ながら遊海は決意を固めていた…。

 

 

 

『君達に最初に伝えておく…バトルロイヤルに乱入したオベリスクフォースを始めとしたアカデミアは…この街に来る前に、黒咲達の故郷…エクシーズ次元を襲撃、壊滅状態に陥らせた……凌牙、黒咲、そしてユートはアカデミアに対するレジスタンスとして私達の世界、スタンダード次元に救援を求めに来たのだ』

 

「凌牙…やはり、お前達は別の世界の…」

 

「黙ってて悪かったな、権現坂……俺の仲間達はエクシーズ次元の人達を守る為に戦い続けてる…その戦況を打破する為に、この世界に『希望』を探しに来たんだ」

零児の言葉に続く形で凌牙が答える、正確には凌牙は『エクシーズ次元』の人間ではないのだが…そこはまだ、彼らには伏せていた。

 

 

「それが…それがどうしてオレ達を戦わせる話になったんだ!?オレ達より強いプロデュエリストを集めれば良かっただろ!?」

 

『以前は私もそう思っていた…だが、状況が変わった……榊遊矢、そして榊遊希…キミ達の…いや、()()()()()()()()の誕生だ』

 

「えっ…?」

 

『ペンデュラム召喚の誕生によってデュエルは新たなステージに入った…プロやユースよりも未熟で()()()のあるジュニアユース世代…キミ達の世代なら、ペンデュラム召喚を抵抗なく受け入れられる……その力こそが、融合次元に対する「武器」になる…私はそう考えたのだ』

零児は遊矢達の世代を戦わせた理由を語る…発展途上であり、新たなカードに対して柔軟に対応できるであろうジュニアユース…その強みが零児が求めた『デュエル戦士』にうってつけだったのだと…。

 

 

「ペンデュラム召喚は…デュエルは、人を傷つける為のモノじゃない…!!デュエルは楽しむ為のモノなんだ!オレは…デュエルで人を傷つけようとするお前を許さない!!」

 

『……そうか、ならば…あとはデュエルで語り合うとしよう…キミに譲れぬ思いがあるように、私にも譲れぬモノがあるのだ…!』

語り合うのはここまで…デュエルを楽しむモノとして考える遊矢、スタンダード次元を守る『武器』としたい零児…2人のデュエルが始まる!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対零児

 

 

 

 

 

「ペンデュラム召喚!現れろ!『星読みの魔術師』!『EMマンモスプラッシュ』!」

先攻を取ったのは遊矢…守備力の高い白衣の魔術師とシルクハットを被ったマンモスを呼び出した…。

 

 

 

 

『自在に形を変える神秘の渦よ!異形の神を包み込み、いま1つとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!!生誕せよ!「DDD烈火王テムジン」!』

 

『闇を切り裂く咆哮よ!疾風の速さを得て、新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!!生誕せよ!「DDD疾風王アレクサンダー」!』

 

『この世の全てを統べる為…いま、世界の頂点に君臨せよ!エクシーズ召喚!!生誕せよ!「DDD怒濤王シーザー」!!』

後攻となった零児は融合・シンクロ・エクシーズの三大王を呼び出す…スタンダード次元を守る為、零児もまた己の力を鍛え上げていた…!

 

 

『バトルだ!「アレクサンダー」で「星読みの魔術師」を、「シーザー」で「マンモスプラッシュ」を!そして「テムジン」でダイレクトアタック!!』

 

「くうう…!!」

それは怒涛の連続攻撃…遊矢の場はがら空きになり、ライフも半分になる……だが、それは遊矢も覚悟の上だった。

 

 

 

『……おそらく、ここまではキミの読み通りなのだろう?ここからが勝負だ、見せてみろ…ペンデュラムのその先を…!』

 

「なんでも、お見通しか……流石、天才って呼ばれるデュエリストだな……その頭脳でさ、バトルロイヤルの展開も読んでたのか?何人やられて、何人生き残って……予想通りの結末で満足したか…!?オレ達は……お前の人形じゃ、ないんだぞ…!」

吹き飛ばされた遊矢が零児を睨みつける…その瞳には怒りの炎が燃えていた…!

 

 

「柚子や遊希兄だって…カードにされた人達だって…みんな、心を持った人間だ…!!柚子はいつも、オレのそばにいてくれて励ましてくれた…!遊希兄は自分の記憶がないのに、いつも優しくて…いじめられていたオレを助けてくれた…!!オレがペンデュラムのその先を見つけられたのは……2人のおかげなんだ!!」

遊矢にとって柚子も遊希も…大切な仲間であり、家族だった…その家族を…バトルロイヤルに参加したデュエリスト達をアカデミアと戦う為の『駒』のように扱い、奪う原因となった零児…その怒りのままに、遊矢は力を解き放つ!

 

 

 

 

「二色の眼の竜よ!巨獣の飛沫をその身に浴びて…新たな力を生み出さん!融合召喚!!いでよ!野獣の眼光し獰猛なる竜!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

「神秘の力、操りし者!眩き光となりて…竜の眼に、いま宿らん!融合召喚!!いでよ!秘術振るいし魔天の竜!『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

それは権現坂とのデュエルで現れた野獣の竜、そしてミエルとのデュエルで現れた魔天の竜…遊矢はペンデュラムのその先の力を見せつける!

 

 

「『ビーストアイズ』も『ルーンアイズ』も…柚子からヒントをもらったから喚べたモンスター…LDSに勝ちたいって…素良から融合召喚を学んだから…!!」

 

『アカデミアのデュエリストから融合召喚を……その力が柚子からキミに流れ、新たな力の呼び水となったという事か…』

 

「オレは…柚子の思いを背負って…絶対にお前に勝つ!!レベル5以上のモンスターである『星読みの魔術師』を融合素材とした『ルーンアイズ』は3回の攻撃ができる!!『テムジン』『アレクサンダー』『シーザー』を攻撃!連撃のシャイニー・バースト!!」

 

『くっ…!』

魔天の竜の魔力の奔流が三大王を吹き飛ばす!!

 

 

「これでトドメだ!!『ビーストアイズ』でダイレクトアタック!ヘルダイブ・バースト!!」

 

『私は罠カード「DDDの契約変更」を発動!墓地の最も攻撃力の高い「DDD」モンスター「アレクサンダー」を除外し、バトルダメージを0にする!そしてデッキからレベル4以下の『DD』ペンデュラムモンスターを手札に加える!』

野獣の竜が火炎を放つ…だが、零児はそれを余裕をもって躱す!

 

 

 

『キミがペンデュラムから融合への道をみつける過程には柊柚子への想いが強く影響していたのだな…だが、思いの強さだけで進化しても…それだけではデュエルには勝てん!!』

 

「っ…!!」

 

『……私の目指すランサーズは対アカデミアの為の実戦部隊…実際の戦闘では、詰めの甘さが命取りになる…!覚えておけ!』

 

「……オレは、ランサーズになんかなるつもりはない!!オレは…デュエルで人を傷つけたくない!!」

零児は鋭く遊矢を一喝する…『戦場』においては思いだけでは勝てないのだと…しかし、遊矢はランサーズにならないと告げる……だが…零児は遊矢が戦うざるを得ない理由を掴んでいた…。

 

 

『柊柚子を、助けたくないのか?』

 

「っ!?柚子は…生きてるのか!?」

 

『真実を知りたければ、私を倒してからだ…次は、私の本気を見せよう…!アカデミアを倒し、柊柚子を助けたいのなら…私を乗り越えてみせろ!!』

 

舞網市に張り巡らせた監視網によって零児は掴んでいた…セレナと服を交換した柚子が紫色の髪の遊矢に似た少年・ユーリに追われていた事、ブレスレットの輝きによってユーリと入れ違いにバイクに乗ったシンクロ次元のデュエリストが現れた事…そして、彼と一緒に姿を消してしまった事を……それは柚子がアカデミアには捕まっていない事を示すモノだったのだが、零児はそれを遊矢にはまだ伝えない。

 

ペンデュラム召喚の「始祖」である遊矢の()()を見定める為に…。

 

 

 

 

『我が魂を揺らす大いなる力よ!この身に宿りて、闇を引き裂く新たな力となれ!ペンデュラム召喚!!現れいでよ!神々の黄昏に審判を下す最高神!「DDD壊薙王アビス・ラグナロク」!!』

返す零児のターン、零児は新たなペンデュラムモンスター…玉座に座す黄昏の王を呼び出す!

 

 

『「アビスラグナロク」が特殊召喚に成功した時!墓地の「シーザー」を特殊召喚する!』

 

「でも、『アビスラグナロク』も『シーザー』もオレのモンスターの攻撃力には届かない!」

 

『私は「DDネクロ・スライム」を召喚!そして「アビス・ラグナロク」の効果発動!「ネクロスライム」を墓地に送る事で「ルーンアイズ」を除外する!』

 

「なんだって!?」

さらに零児は黄昏の王の効果を発動…自身のモンスターを糧として魔天の竜は異次元に消し飛ばされる!

 

 

『さらに私は墓地の「ネクロスライム」の効果発動!墓地の自身を除外する事で融合召喚を行なう!』

 

「ペンデュラム融合!!」

遊矢がそうであったように…零児もペンデュラムのその先の力を見せつける!

 

 

『私は「アビスラグナロク」と「シーザー」を融合!!神々の黄昏を打ち破り、押し寄せる波の勢いで新たな世界を切り拓け!!融合召喚!出現せよ!極限の独裁神「DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク」!!』

 

「攻撃力、3200…!」

それは玉座に座す皇帝の名を冠する独裁者…その攻撃力は野獣の竜を上回る!

 

 

『そして私は融合素材として墓地に送られた「シーザー」の効果により、デッキから「再契約の契約書」を手札に加える…バトルだ!「ビーストアイズ」を攻撃!ジ・エンド・オブ・ジャッジメント!!』

それは王による裁きの一撃…波濤の如き閃光が野獣を吹き飛ばす!

 

 

『これが、キミの本気なのか?まだ全ては出し切っていないはず……私は本気だが、()()ではないぞ!』

遊矢の場をがら空きにした零児は遊矢を見据えながら発破をかける…!

 

「っ…柚子は、アカデミアに囚われているんだな!?」

 

『知りたければ、私を倒してみせろ…そう言ったはずだ……それとも、柊柚子さえ無事ならば…他のカードにされた者はどうでもいいのか?』

 

「っ──!」

柚子の行方を零児に問い質す遊矢…だが、零児の言葉に記憶がフラッシュバックする…カードにされたナイツ・オブ・デュエルズ…そして、エクシーズ次元の人々の姿が…!

 

 

ドクン

 

 

「ぐぅ…!?があ、あ…!!

 

「い、いかん!遊矢!零児の挑発に乗るな!!」

遊矢からドス黒いオーラが溢れだし、髪が逆立ちかける…その様子から権現坂は怒りに呑まれた…『逆鱗』の姿を思い出し、声を上げる…!

 

 

 

 

 

「あっ!いたいた!お〜い!遊海!海馬!!」

 

 

「「「えっ?」」」

 

『なに…?』

その時、ハートランドに少し間の抜けた明るい声が響く…それは、遺跡エリアからようやく追い付いた城之内の声だった。

 

 

「……城之内、せめて声をかけるタイミングを考えろ…空気を読め!この凡骨が!」

 

「だぁっ!?また凡骨って呼びやがったな!?というか伝言まで凡骨呼びしやがって!!」

 

「あ、れ…?城之内さん…たしか、カードにされて…!?」

 

『どうなっている…?』

到着早々、海馬と口喧嘩を繰り広げる城之内…その姿に遊矢は思わず正気に戻る…城之内はカード化されてしまったと凌牙に伝えられていたからだ…。

 

 

「場を乱してすまない!カード化に関しては()()()()()、だから……榊遊矢、お前は自分のデュエルをしろ!全てはそれからだ!!」

 

「遊希兄…っ……わかった!」

2人の口論に頭を押えながら、遊海が声を張り上げる…その言葉に、遊矢の顔に少しだけ希望が宿った…。

 

 

 

「あ〜……もしかして、オレ…やらかした?」

 

《フォウ、フォ〜ウ……(タイミング悪すぎだって……でも、逆に良かった、のかな…?)》

 

「猫にまで呆れられているぞ、凡骨」

 

「……まぁ、結果オーライという事で…」

 

「「「「(何なんだ、この3人…?)」」」」

シリアスな空気を一瞬で吹き飛ばしてしまった遊海達に子供達は少し引いていたのだった…。

 

 

 

 

 

「漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

気を取り直し、遊矢のターン…遊矢はペンデュラム召喚によってエースたるオッドアイズを復活、さらにユートの魂たる反逆の牙を呼び出した!

 

「『ダークリベリオン』の効果発動!ORUを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を半分にし、その数値分!自身の攻撃力をアップする!さらにその効果を2回使う!トリーズン・ディスチャージ!!」

反逆の牙の翼から放たれた紫電が独裁王の力を奪い去る!

 

 

「バトルだ!『ダークリベリオン』で『カエサルラグナロク』を攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 

『「カエサルラグナロク」の効果発動!ペンデュラムスケールの「DD魔導賢者ケプラー」を手札に戻す事で相手モンスター1体を自身に装備し、その攻撃力分自身を強化できる!「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」を装備!ぐうっ…!!』

 

「オッドアイズ!?」

反逆の牙が独裁者を貫く…だが、オッドアイズを道連れにされ…ダメージも軽減されてしまった…!

 

 

 

『…見事だった、また1つ…キミのペンデュラムのその先を見せてもらった……次は、私の番だ!』

 

「っ…!」

 

 

 

『2つの太陽が昇る時、新たな世界の地平が開かれる!エクシーズ召喚!!現れいでよ!ランク8「双暁王カリ・ユガ」!!』

 

「零児がペンデュラムエクシーズを…!?それに、攻撃力3500…!?」

零児のターン…ペンデュラム召喚によって『アビス・ラグナロク』、そしてエースである『DDD死偉王ヘル・アーマゲドン』を呼び出した零児…遊矢はカード効果を封じ、自分のモンスターを強化できる罠カード『ミスディレクションの翼』によって攻撃に備えたが…零児はさらにその上をいく…!

 

『このカードの特殊召喚に成功した時、ターン終了時まで!自身以外のカード効果は無効となる!!』

 

「なにっ!?」

カリ・ギュラの魔力がフィールドを支配し、カード効果を封じる!

 

 

『バトルだ!「カリユガ」で「ダークリベリオン」を攻撃!ツイン・ブレイク・ショット!!』

 

「ぐっ…!?うわあああ!?」

カリ・ユガの双角から黒き破壊の閃光が放たれる、それは反逆の牙を粉砕…遊矢を容赦なく吹き飛ばした…残りライフは800…!

 

 

 

『榊遊矢…お前の思いはそんなモノなのか?その程度の覚悟で私に挑んできたのか!!』

 

「……まだだ…!まだ、オレは…戦える…!」

吹き飛ばされ、満身創痍の遊矢は立ち上がる…!

 

 

「オレは…絶対に、柚子を助けるんだ…!そして…ユートとの約束を果たす!!オレのデュエルで…世界を笑顔にする為に!!だから…だから!!オレは負けられないんだ!オレ達を勝手に戦わせようとする奴に…デュエルで人を傷つける奴なんかに、負けちゃダメなんだ──!!」

それは遊矢の魂の咆哮…デュエルとは人を楽しませ、笑顔にする為のモノ…父とユート、2人の願いを背負い…遊矢は力を振り絞る!

 

 

 

 

「二色の眼の龍よ!その黒き逆鱗を震わせ、歯向かう敵を殲滅せよ!!エクシーズ召喚!!怒りの眼輝けし竜!!『覇王黒竜─オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』!!」

 

『現れたか…!』

そして…遊矢は現状最大の切り札、本当の意味での『ペンデュラム・エクシーズ』モンスター…覇王黒竜を呼び出す!

 

 

「オレは墓地の罠カード『ミスディレクションの翼』の効果発動!ペンデュラムゾーンの『相克の魔術師』『相生の魔術師』を除外し、『オッドアイズリベリオン』の攻撃力を800アップ!さらに相手のモンスターの効果と伏せカードの発動を封じる!!」

 

『だが!「カリ・ユガ」の効果は無効にはならない!』

輝く羽が舞い散り…零児の伏せカードを封じる!

 

 

「だけど…伏せカードの発動は封じた!!バトルだ!『オッドアイズリベリオン』で『カリ・ユガ』を攻撃!反旗の逆鱗!ストライク・ディスオベイ──!!」

紫電の翼を広げた反旗の翼がソリッドビジョンを抉りながら突進する!!

 

 

『「カリ・ユガ」の効果発動!ORUを1つ使い、自分フィールドの魔法・罠カードを全て破壊!さらに、再びORUを1つ使い!この効果で破壊したカードをフィールドに()()!』

それは一見、意味の無い効果…だが、それはこのデュエルを決める一手となる…!

 

 

『「ミスディレクションの翼」が効果を封じるのは発動時にフィールドに存在したカードのみ…これで伏せカードが発動できる!罠カード「誤封の契約書」発動!発動中の罠カードの効果を無効にする!!』

 

「なっ…!!」

零児の契約書によって輝く翼はその光を失う…。

 

 

『さらに罠カード「再契約の契約書」を発動!自分が魔法・罠カードの効果を無効にした時!私はその効果を発動できる!私は無効にした「ミスディレクションの翼」の効果発動!!「カリ・ユガ」の攻撃力は800アップする!!』

 

「そんな…!?」

輝く羽が零児へと力を与える…!

 

 

『バトルは続行中だ!「カリ・ユガ」よ!「オッドアイズリベリオンドラゴン」を返り討ちにしろ!ブレイク・ショット!!』

 

「っ…がああああっ…!!」

カリ・ユガの手から黒き閃光が放たれる…その光は反旗の牙を貫き、デュエルに終止符を打った…。

 

 

 

遊矢LP0

 

零児WIN!

 

 

 

 

『やはり…詰めが甘かったな、榊遊矢………これが、私の覚悟……私達の世界を守るという決意の証だ』

 

「……ああ、ビリビリと伝わってきたよ……お前の覚悟が……アカデミアの奴らに対する怒りが…」

ソリッドビジョンが解除され、景色が陽が傾き始めた舞網の街へと戻っていく、その中で遊矢は確かに感じ取っていた…冷たく、計算された零児のデュエル…その中で燃える、アカデミアへの強い思いが…。

 

 

『キミはまだ未熟だ…だが、見込みがある…それはバトルロイヤルを生き残った諸君にも言える事だ!ペンデュラム召喚を身につけた君達の実力はLDSのトップチームを凌ぐだろう!だから…私は君達と共に、ランサーズとして()()()()()()決意をした!』

 

「次元を、越える…!?」

零児の言葉にデュエルを見守っていた子供達は驚愕する…!

 

 

 

『………榊……いや、白波遊海と言ったな……お前にも話を聞きたい』

 

「……いいだろう、あとでLDSに顔を出す…まずは迷惑をかけたこの街の人々への説明責任を果たして来い、話はそれからだ」

 

『……感謝する』

そして零児は遊海に対して会談の約束を取り付けるとそのまま去っていった…。

 

 

 

 

「……榊遊矢、冷静になれ……今のデュエル、お前はお前の()()をまったく活かせていなかったんだぞ?」

 

「えっ…?」

遊海は涙を堪え、蹲る遊矢に優しく…しかし、毅然とした声をかける。

 

 

「せっかく、赤馬がアクションフィールドを発動してくれたのに…お前はアクションカードを使わなかった……いや、使う事を忘れるほどにお前は平常心ではなかった……それが、お前の目指すアクションデュエリストの姿か?」

 

「うっ…あ……」

 

「かけがえのない、大切な人を失ったお前には酷な言葉かもしれない……でも、そんな姿を柚子ちゃんに見せられるのか?」

 

「柚子……今のままじゃ、ダメだ…!オレは…もっと強くなって、柚子を助けるんだ…!!だから…だから…!!」

 

「………今は泣け、遊矢……大丈夫、俺がついている」

 

「ううっ……うああああ─!!!」

遊海の胸を借りて遊矢は慟哭する……権現坂達はその様子を見ている事しかできなかった…。

 

 

「フン…やはり、お前の優しく…甘い所は変わらないな、遊海」

 

「いいじゃねぇか、あれが…オレ達の知ってる遊海の良い所さ」

 

《フォウ、フォウ(やっぱり、遊海に慣れてるんだね…この2人)》

そして…「悪魔」の欠片に対しても変わらぬ優しさを見せる遊海に海馬は少し呆れ、城之内は笑っていたのだった。

 

 

 

…………

 

 

 

「落ち着いたか?遊矢」

 

「う、うん……ありがとう…」

しばらく泣き続けた遊矢はようやく落ち着きを取り戻す…そんな彼を見て遊海は優しく笑っていた…。

 

 

 

「さて…家族が心配してるはずだ、お前達は舞網チャンピオンシップの会場に戻るんだ…そろそろ、赤馬の説明が始まる頃だろう」

 

「ゆ、遊希兄…は…?」

 

「悪いな…俺には行く所がある……夜には、お前の家に顔を出そう……凌牙、克也…一度KCへ向かおう」

 

「……悪い、()()()…俺もセンターコートに行く、一応…俺はレジスタンスの使者だからな、レオ・コーポレーションの社長室で待ってる」

 

「そうか…わかった」

 

「えっ…凌牙の、父親…?!」

遊矢達にLDSに戻るように伝えた遊海は立ち上がる…その時、凌牙との会話に遊矢は耳を疑った。

 

 

「その件も後で話すよ……来い!『閃珖竜スターダスト』!!」

 

《キュオオン…!》

 

「ははっ…よしよし、お前にも心配かけたな…」

   

「えっ…?」

 

「デュエル外なのに、モンスターが…実体化している!?」

 

「しかも…デュエルディスクを使ってない!?」

遊海は右腕に刻まれた「炎の痣」を輝かせ、光を纏う白いドラゴンを呼び出す…そして、遊海にじゃれつく閃珖竜を見て、子供達は目を丸くしている…。

 

 

「ゆ、遊希………遊海、さん?貴方は…いったい…?」

 

「俺は白波遊海……何度か()()()()()()()()、ちょっと強い決闘者さ!克也、フォウしっかり掴まってて!」

 

「おう!じゃあな!お前ら!今日は災難だったな!」

 

《フォウ!》

ミエルの問いかけに答えた遊海は城之内、フォウと共に舞網の空に舞い上がる…そして街にそびえ立つ海馬コーポレーションのビルへと飛んでいった…。

 

 

 

 

 

【(何なんだ?あの男は…!?あれは…明確な()だ…!)】

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「………」

 

「おい遊海…こんな時に固まるなって……大丈夫、みんな…お前を待ってたんだからさ!」

 

「克也……ああ…!」

KCへと辿り着いた遊海は社長室の前で足踏みしていた…だが、そんな遊海の背中を城之内が優しく、力強く押して……───

 

 

 

「あっ……遊海…!!」

 

「まったく…本当に心配掛けやがって!」

 

「その通りさ、まったく…翠を泣かせんじゃないよ!!」

 

「ああ…!みんな…!!」

KCの社長室…そこには一足先に戻ってきた海馬にモクバ、遊戯に杏子、本田、舞そして海馬の妻である沙良……冥界から転生してきたかけがえのない『仲間』達が待っていた…!

 

 

「おかえり、遊海……記憶が戻って、本当に良かった…!!」

 

「遊戯…!ああ……あああっ…!!」

 

「ああもう!またかよ遊海!?本当にしょうがねぇなぁ!」

 

 

 

「ヘヘっ、遊海の奴泣いてやんの……って、しょうがないか」

 

「はぁ…時間は限られているというのに……まぁ、仕方あるまい」

 

「ふふっ…瀬人様?ちょっと目元が潤んでますよ?」

 

「むっ…!?……目にゴミが入っただけだ」

 

「もう…相変わらず素直じゃないんだから…」

現世では二度と逢えないはずの仲間達との再会に遊海は泣き崩れてしまう…遊戯達はそんな遊海に優しく声をかけ、海馬は冷静に撤しようとしながらも…改めて遊海の復活を喜んだのだった。



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Ep.32 ランサーズ結成!〜悪意射抜くは影の英雄〜

こんにちは!S,Kです!

バトルロイヤルは終わり、生き残った者達は仲間の下へと帰還する…だが、彼らには新たな戦いが待ち受けているのだった…。


それでは、最新話をどうぞ!


『舞網チャンピオンシップ・ジュニアユース選手権!24時間の激戦を勝ち抜いたバトルロイヤルの勝者達が今、LDSのセンターコートに戻って参りました!!どうぞ盛大な拍手でお迎えください!!』

夕暮れの舞網市、LDSのセンターコートスタジアム…ニコの実況が響く中、バトルロイヤルを()()()()()デュエリスト達が帰還する…だが、一様にその表情は暗かった…。

 

 

「あれ…?月影って人に負けたはずのミエルちゃんがいる…?」

 

「沢渡…?遊矢に負けたはずだろ?」

 

「遊希兄ちゃんがいない…柚子お姉ちゃんはいるのに…?」

入場してきたメンバーは遊矢・権現坂・黒咲・凌牙・月影・デニス・セレナ・沢渡・ミエルの計9人…だが、その中に本来ならばいないはずの者がいた事で遊勝塾のメンバー達や一部の観客達が首を傾げる…。

なお、セレナは柚子と服を交換しているせいで、完全に「柊柚子」として誤認され…遊海によってカード化を免れた未知夫・大漁旗・日影は辞退し、LDSにて治療を受けている。

 

 

 

「おい!沢渡!政治家の息子だからってなにやってんだよ!汚いぞ!!」

 

「っな!うるせぇぞテメェら!!オレはズルなんてしてねぇ!オレは赤馬零児から直々に敗者復活戦の権利を貰って勝ち残ったんだ!!そして『ランサーズ』として、この場に立っているんだ!!」

 

「「「ランサーズ??」」」

観客達のヤジに怒った沢渡がニコからマイクを奪い取り、自分は正当な理由でこの場にいるのだと告げる…観客達は『ランサーズ』なる言葉に困惑していたが…。

 

 

『突然ですが…大会主催者を代表して、重大な発表をさせて頂きます!』

その時、センターコートのモニター…そして舞網市中のモニターにLDSの理事長である赤馬日美香の姿が映し出される!

 

 

 

『舞網チャンピオンシップは本日の3回戦、バトルロイヤルをもちまして()()とさせていただきます…!』

 

「「「はぁ!?」」」

日美香の思わぬ言葉に観客や住人達は騒然となる…そして、混乱するスタジアムに向けて日美香が言葉を続ける。

 

 

『チャンピオンシップ中止の理由は…バトルロイヤルの最中、我々の世界に敵対する、敵対勢力が襲来してきた事にあります…それは想像を絶する()()()からの侵略者であり、彼らは我々が住むこの世界「スタンダード次元」への侵略を意図し、尖兵を送り込んできたのです……彼らは、デュエルモンスターズをリアルソリッドビジョンで実体化させ、武器として使用し…バトルロイヤルの参加者に襲い掛かってきました…!バトルロイヤルを中継できなかったのは、舞網市…そして世界にパニックを起こさない為の処置だったと…ご理解ください』

 

淡々と、しかし強い言葉で侵略者…アカデミアの脅威を訴える日美香…しかし、観客達はその事実を信じられずにいた…。

 

 

 

 

『信じられない方も多いかと思います…では、ほんの一部ですが…実際の映像をご覧ください…!』

そしてモニターに仮面を被ったデュエリスト…オベリスクフォースが参加者であるナイト・オブ・デュエルズ…そして、ユースのデュエリスト達を無慈悲にカード化する瞬間の映像が流される…その映像に観客達は思わず悲鳴を上げてどよめいてしまう…。

 

 

『……これが、彼ら…アカデミアの手口なのです…!デュエルで相手を倒し、戦う術を持たない人々をカードに変えてしまう…!しかし、ご安心ください!そんな残業な侵略者達はバトルロイヤルに参加した勇敢なデュエリスト達によって()退()されました!!』

映像が切り替わる…そこには黄金のドラゴンを従えた凌牙がオベリスクフォースを蹴散らす姿…そして、黒咲がオベリスクフォースにトドメを刺す姿…そして…遊矢が素良と戦う姿が映されていた…。

 

 

『彼らこそ、舞網市を守った()()!私は彼らにランス・ディフェンス・ソルジャーズ…すなわち「ランサーズ」の称号を贈り、彼らの栄誉を讃えたいと思います!!』

日美香の宣言と共に、スタジアムは瞬く間に「ランサーズ」コールに包まれる…だが、沢渡を除くメンバー達の表情は暗い。

……無理もないが…真実を知らされる事なく、無理矢理に戦わされた遊矢達が喜べるはずもなかった…。

 

『ランサーズ諸君の戦いにより、ひとまずの危機は去りました…しかし、敵はまた何時襲ってくるとも限りません…それに備える為にも、「自分の身は自分で守る」という気構えの下、より一層のデュエルの鍛錬に励んで頂きたい!!その為の場所は我がLDSが提供します!次のランサーズにはあなた方一人一人がなるのです!!』

 

 

 

………

 

 

 

「フン…くだらん事を……たかだか一企業に過ぎぬレオ・コーポレーション、レオ・デュエルスクールがスタンダード次元全てを守る事は不可能だ……赤馬はそれを理解できておらんらしいな……」

 

「まぁ…これ以上の混乱を広げない為には、ああ言うしかなかったんでしょう…赤馬零児にも釘を刺しておくよ」

一方、KCの社長室…日美香の芝居がかった演説を聞いていた海馬は呆れながら日美香の演説にダメ出ししていた…その横では再会の涙から復活した遊海が海馬を宥めている。

 

 

「遊海、これからどうするんだい?」

 

「とにかく…まずは赤馬零児と会って、俺の事情の説明と…カード化に関する解決策の提示、それから榊家に行って……ああ、いつ次元を越えるのかも確認しなきゃ………それから、できればエクシーズ次元に……」

 

「おい…大丈夫かよ?そんなに詰め込んで…?お前、まだ起きたばっかりなんだぞ?」

遊戯に今後の予定を聞かれた遊海は頭を抱えながら、計画を話す…そんな遊海を城之内が心配する…。

 

 

「…大丈夫、俺は今までずっと何もできなかったんだ……ここから挽回しなきゃ…!早く、翠に会いに行く為にも…!」

 

「遊海…」

遊海は静かに拳を握り締める…今も戦い続けているであろう、翠や遊馬達の事を思いながら…。

 

 

 

………

 

 

 

『諸君…世界は一変した、もう…昨日までの安穏とした平和は過去のモノとなった…!』

ランサーズへの期待でざわめくスタジアム…そのモニターに零児の姿が映し出される…!

 

 

『いまや、戦いの時代に生きている事を認識せよ…全世界のレオ・デュエル・スクール、LDSは…本日より「Lance・Defence・Soldiers」として、防衛の最前線に立つ!そして…この赤馬零児も此処にいるランサーズと共に打って出る!!()()()()とは馬を駆り、槍を構え…敵へと切り込む槍騎兵の事…我々は…必ず、敵を殲滅する事を此処に宣言する!!』

 

それは零児の決意を表す宣誓…此処に、ランサーズは結成された…!

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

「遊矢兄ちゃん!柚子お姉ちゃんは?一緒じゃないの…?」

 

「遊希兄ちゃんは…スタジアムにもいなかったし……」

大会の説明が終わった後…遊矢と権現坂、そしてミエルは遊勝塾のジュニア達、そして修造と洋子と合流する…しかし、その場に柚子と遊希の姿はなかった…。

 

 

「……塾長」

 

「これは、柚子の…!?遊矢…なんで、お前が柚子の服を…!?」

 

「ごめん……オレ、柚子を、守れなかった…!!」

遊矢は泣きそうな…悔しげな表情で、修造にセレナから返された柚子の服を差し出す…。

 

 

「さっきまで、一緒にいたのは…柚子じゃない…!」

 

「あの子は、セレナって言うの…本当に良く似てるんだけど……柚子とは別人なのよ…」

 

「「「別人!?」」」

遊矢とミエルの言葉に事情を知らない遊勝塾の仲間達は困惑する…。

 

 

「バトルロイヤルで、2人は服を取り替えて入れ替わったのだ……セレナに、時間を与える為に…!」

権現坂も悔しげに語る、柚子の行動によってセレナはアカデミアの『嘘』を知る事ができた…だが、その代わり…柚子は行方不明となってしまったのだ…。

 

 

「っ…俺も、俺もアカデミアとやらに行くぞ!!何処にあるんだ!!柚子を攫った奴をぶちのめしてやる…!!」

 

「む、無理だよ……アカデミアは、俺達の世界とは別の次元にあるらしいんだ……」

 

「なっ…くそ…!くそぉ!!柚子──!!」

修造は遊矢に渡された服を抱えて泣き崩れてしまう…大切な一人娘を失った彼の悲しみは推し量れるものではない…。

 

 

「柚子は、別次元にいる……だから、オレ達…ランサーズが行くんだ…!」

 

「何が…何がランサーズだよ…仲間を守れないで…なにが英雄だよぉ!」

 

「遊矢兄ちゃんが付いてたのに…なんで柚子お姉ちゃんを助けられなかったの…!?」

 

「っ…お前達…」

悔しさを滲ませる遊矢に子供達が涙を流しながら詰め寄る…その脳裏にはカード化されてしまったデュエリストの姿が浮かんでいた。

 

 

「遊希は…遊希はどうしたんだい!?まさか……!!」

 

「遊希兄は………記憶を、取り戻したんだ…アカデミアとの、戦いの中で………でも、オレ達の事……オレ達と一緒に暮らした事、覚えてないって…!!」

 

「……そうかい……元気、なんだね?」

 

「うん…今は、海馬コーポレーションにいるみたい……あとで、家に来るって…」

洋子が遊希について訊ねる…遊希…遊海について何も知らない遊矢は無事である事を伝える事しかできなかった…。

 

 

「遊希兄は、もう帰ってこない……でも、柚子はきっと助ける!!どんな事をしても…!その為に、オレは…次元を越える!!赤馬零児と一緒に、ランサーズとして戦って…今よりもずっと強くなって!敵をやっつけて!!絶対に柚子を取り戻す!!」

 

「遊矢…敵をやっつけるって……その中に()()も入っているのかい?」

 

「あっ…」

敵を倒し、柚子を救い出すと決意を伝える遊矢…だが、洋子が思わぬ言葉を告げる……遊矢は、その問いに答える事ができなかった…。

 

 

「ちょっと来な…!」

 

「あっ、ちょ!?母さん!?」

言い淀む遊矢を見た洋子は…遊矢を引きずって歩き出す……そして…。

 

 

《キュオオン!!》

 

 

 

「えっ…?モンスター…?」

 

その頭上を白きドラゴンが飛び去って行った…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

「改めて…俺は白波遊海、決闘者(デュエリスト)だ」

 

『レオ・コーポレーション社長、赤馬零児だ…時間を取ってもらい感謝する』

夜の帳が落ちた舞網市、レオ・コーポレーションの社長室…そこでは2人の男が向かい合っていた。

1人は復活せし『英雄』、白波遊海…そしてレオ・コーポレーションの社長、赤馬零児…部屋には2人と凌牙、そしてフォウしかいない状態で会談が始まろうとしていた…。

 

 

『……単刀直入に聞こう……お前は何者だ?お前から感じる気配は私が知る「榊遊希」とはまったく違う、さらに…全身を覆っていた傷もなく、体も成長している……常人ではありえない』

 

「俺としては『榊遊希』としての記憶がないから、なんとも言えないんだが…俺本来の姿はこっちの方でね、お前が知る姿は……ちょっとした()()の結果なんだ、具体的には…まぁ、ビッグバンに巻き込まれたと思って貰えればいい」

 

『お前は…ずいぶんとジョークが好きなようだな?』

 

「嘘は言ってないんだがなぁ…」

遊海の正体を問う零児…遊海は少しの嘘を交えながら、正体をはぐらかす。

 

 

『凌牙からお前の事は聞かされている…お前がいれば、融合次元との戦況をひっくり返す事ができると』

 

「ああ、なんなら……今から融合次元に行って、アカデミアを攻略してこようか?数日あれば制圧できると思うが……それとも、エクシーズ次元への救援が先か?」

 

『冗談は程々にしてくれ…いくらお前が強いといっても、それは不可能……』

 

「父さんの……遊海さんの言ってる事は本気だぜ?その気になれば本当に1人で融合次元を制圧できる……まぁ、()()()()()()()()()だろうけどさ」

 

「ははっ…流石に殲滅まではしないさ、アカデミアのある場所が()()になるぐらいだな!」

 

『(なんだ?この男は…!?話のスケールが違い過ぎる…!凌牙が嘘を言っている…いや、だが…)』

 

この時点で、零児はまだ白波遊海という男を()()()()()()()…監視カメラでそのデュエルを見ようとしたものの、カメラにノイズが走った事で見る事が出来ていなかった。

さらに、その場にいた月影から話を聞いたのだが…『規格外』の一言しか聞く事ができなかったのだ。

 

 

 

「アカデミアは強いデュエル戦士を育成し、エクシーズ次元に侵攻したらしいが…まだデュエリストの範囲内だ、俺や凌牙のような決闘者にとっては敵にならない……まぁ、人海戦術が厄介なぐらいか…本当の意味での命の取り合いをしてないなら、どうとでもなる、人間のカード化もな」

 

『……それは、どういう意味だ?』

 

「カード化は解除できるって事さ…彩華」

 

「はい、マスター…カード化は解除・対策が可能です」

 

『っ!?何処から現れた!?』

遊海が指を鳴らす…すると、遊海の背後の空間が揺らぎ…銀色の髪に、灰色のスーツを着た女性が現れる…零児は突然の登場に警戒する…!

 

 

「私は彩華、マスターの相棒…パートナーです、これがアカデミアのカード化……いえ、『強制転送装置』の解析結果です」

 

『これは…レオ・コーポレーションでも、まだ分析しきれていないのに…!』

彩華がリアルソリッドビジョンの応用で解析結果を投影…その結果に零児は目を丸くする。

 

 

「アカデミアは次元移動の技術を悪用…対象者を強制的に転移させ、その際に対象を粒子エネルギー化…その状態で人々をアカデミアにある装置内に捕らえているようです、そしてカードそのものは『個人』を識別する為の座標……逆に言えば、カードさえあれば装置にアクセスし、その人物を復活させる事が可能…既に実証済です」

 

『……お前は…お前達は本当に何なんだ…?私達が頭を悩ませていた事を、こうもあっさりと……』

一番の問題をあっさりと解決した遊海、そして彩華に零児は脱力してしまう…。

 

 

 

「まぁ、年季と経験と技術力の違いかな?それで…お前達はいつ、融合次元に向かうんだ?」

 

『……まだ、融合次元には向かわないつもりだ……アカデミアに対抗する為、次元戦争の影響が及んでいない4つ目の次元……シンクロ次元に向かい、同盟を結び…戦力を整えた上でエクシーズ次元を開放、融合次元に向かうつもりだ……私は、勝てる勝負しかしない主義だからな……予定では、明日にでもと思っていたが…』

 

「そうか…なら、俺もついて行こう…ああ、次元移動に関しては心配するな()()で行けるから…座標を教えてくれればいい」

 

『……それは、ランサーズに協力する、という事でいいのか?』

 

「ああ、単独行動をしてもいいんだが…世話になった榊遊矢達を放ってはおけないからな、それに……ちょっと確かめたい事がある」

 

『確かめたい事…?』

ランサーズに協力を申し出た遊海は少し前の遊戯達との会話を思い出した…。

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「俺のNEXUSの…力の欠片が散らばってる…?」

 

「うん、アテムとラーが散らばった欠片が他の冥界や()()()()自体に取り込まれて、遊海が知らないうちに影響を及ぼしてるんじゃないかって…」

KCの社長室、遊海は遊戯から自分達が『転生』する目印となった遊海の力の欠片…『絆の欠片』についての考えを聞かされていた…。

 

 

「確かになぁ…転生してきたのはオレ達8人だけのはずなのに、双六爺さんとか…羽蛾や竜崎、海馬のトコの磯野さんのそっくりさんがいるもんなぁ…」

 

「……もしかしたら、融合次元には天上院明日香や俺の生徒達が…シンクロ次元には…ジャックやそれ以外のそっくりさん……いや、並行存在がいるかもしれないって事か…」

城之内の言葉を聞いた遊海は「可能性」を考える……本来、「遊戯王ARC-V」には過去作からの所詮()()()()()()()()()が登場していた。

スタンダード次元にはいなかったが…シンクロ次元にはジャックにクロウ、イェーガー…エクシーズ次元にはカイト、そして融合次元にはエドに明日香、名前だけではあるが丸藤亮……それが、遊海の『絆の欠片』の影響を受けたのならば…。

 

 

「遊海、急いでエクシーズ次元に行きたいのは分かる……でも…」

 

「……分かってる、俺の力のせいで予期せぬ事が起きるなら……それを押さえるのも、俺の役目だ…!」

 

「そんなに力むなって…お前の絆の力に導かれたなら、そんな悪い事は起きねぇって!むしろ、お前や遊矢達を助けてくれるさ!」

 

 

 

Side Out

 

 

 

『……分かった、お前の分の座標カード「ディメンション・ムーバー」を用意しておく』

 

「ありがたい、さて…他に聞きたい事はあるか?」

 

『……いや、今は結構だ……全てを話してくれ、と言っても…私はお前からの信頼を得られていないようだからな』

 

「ん…別に、そういう訳じゃないんだが……まぁ、そのうち話すさ……それから、海馬社長から伝言だ…『次元防衛に関しては海馬コーポレーションも協力する、お前がいなくとも我らの世界は俺達が守る…気にせずに行ってこい』だってさ、それと…無闇に()()()()()()を育てようとするのは止めてくれ、本当の意味で()()のは……本当に()()がある人だけでいい」

 

『…………お前は優しいのだな……無辜の人々を守り、戦いの前線に立ち…人々の為に戦う……まるでヒーローのようだ』

 

「ははっ…まぁ、それが俺の生き方だからな!」

海馬社長からの伝言を伝え、LDSの在り方を諫める遊海…その在り方を見た零児はその姿に存在するはずのない、ヒーローの姿を重ねていた。

 

 

「それじゃあ…今日の所は戻らせてもらうよ、この後に榊家の人達に会いに行かない、と─────っ」

 

「っ…マスター!!」

 

「父さん!」

 

『おい!?』

椅子から立ち上がり、榊家へ向かおうとする遊海…だが、一歩踏み出したところでバランスを崩し、膝をついてしまった…。

 

 

「あー……ちょっと、起きぬけに頑張り過ぎたか…?そんなに無茶はしてないはずなんだが……」

 

「……マスター、疲労が溜まっているようです…少し休んでください」

彩華が遊海のバイタルを読み取って進言する、遊海が目を覚まして約半日…その間に2回のデュエルや城之内や遊戯達との再会などなど…様々な事があったせいで気付かぬうちに肉体的にも、精神的にも疲れが溜まっていたのだ。

 

 

「零児、仮眠室を借りるぞ…少し父さんを休ませてやりたい」

 

『ああ、使うといい』

 

「ありがとよ…父さん、立てるか?」

 

「すまん、凌牙…」

凌牙の肩を借りて、遊海は社長室を後にした…。

 

 

 

 

『………世界を救う()()()、か……一度、お前の力を見せてもらわなければな…』

遊海の背中を見送った零児は1人呟いた…。

 

 

 

 

「っ…やっぱり、信頼ないよなそりゃ…零児から見れば『急に現れためちゃ強い正体不明の男』だもんな、俺…融合次元のスパイとでも思われたかな…?」

 

「そこまでは思ってないとは思うけど……すごい警戒してたな」

仮眠室についた遊海は頭を抱えながら呟く…零児の警戒度が高いのは遊海も凌牙も分かっていた…。

 

 

「とりあえず、少し休んでなよ…なんか弁当買ってくるから…起きてから、なんも食べてないだろ?」

 

「ああ…ありがとう、凌牙」

そういうと凌牙は仮眠室を後にする…そして遊海は簡易ベッドに横たわった…。

 

 

「……遊矢は母親とデュエルしてる頃か?」

 

《…舞網市の臨海地区に反応有り、デュエル中のようです》

 

「そうか……アヤカ、デュエルが終わったら起こしてくれ」

 

《了解しました、マスター……良い夢を》

 

《フォウ、フォ〜ウ》

 

「ははっ…やっぱり、お前の毛並みは気持ちいいな、フォウ……すぅ…」

精霊体に戻ったアヤカに目覚ましを頼んだ遊海は…フォウを撫でながら、すぐに眠りに落ちてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【(ここだ…奴が油断している間に、カード化して…アカデミアへの脅威を排除する…!)】

そして、遊海達が眠りに落ちた直後…ローブで身を隠した人物が仮眠室に現れる、それはLDSに潜入していた…()()()()()()()()()だった。

バトルロイヤルでの遊海の力を目の当たりにした潜入者は、アカデミアを守る為に遊海に襲撃をかけるタイミングを狙っていたのだ…!

 

 

【(アカデミアの為に…お前には消えて貰う──!)】

ローブのスパイはデュエルディスクを操作する…そして…。

 

 

 

 

 

『止めとけよ?お前らの技術じゃ…(オレ)達はカードにはならねぇ』

 

 

 

【っ!?】

仮眠室に呆れたような声が響く…スパイは慌てて周囲を見回すが、部屋には無防備に眠る遊海と小動物の姿しか見えなかった。

 

 

『せっかく、相棒が束の間の休息を取ってるんだ…邪魔はさせねぇよ』

仮眠室に闇が噴き上がる…その中から遊海に瓜二つな、黒い服に黒い帽子を被った男が現れる…!

 

 

【なっ…!?どこから!?】

 

『デケェ声出すんじゃねぇ、我らの戦いの舞台は此処にあらず…展開せよ、我らが闘いの場尋常なる決闘の地(コロセウム・デュエルフィールド)】!』

黒い遊海…英雄の影たるユウスケの詠唱と共に世界が塗り替わる、そこは森の中に存在する…誇り高き学び舎、デュエルアカデミアの校舎前だった!

 

 

【アクションフィールド…!?この部屋には投影器は無いはず!?】

 

『さぁ、肩慣らしに付き合ってくれよ()()()クン…!』

 

【くっ…!!】

殺気を放ちながらスパイを睨むユウスケ…そしてスパイはデュエルディスクを構えた…!

 

 

 

 

『【デュエル!!】』

 

 

 

ユウスケLP4000

スパイLP4000

 

 

 

『我のターン!』

『まぁまぁの手札だな…我は手札の地属性モンスター「怒気土器」「リバイバル・ゴーレム」「キャッスル・ゲート」の3体を除外し、「ブロックドラゴン」を特殊召喚!』

色とりどりのブロックでできた玩具のドラゴンが現れる! ATK2500

 

 

『我はモンスターをセット、ターンエンドだ』

 

 

ユウスケLP4000

伏せモンスター ブロックドラゴン 手札0

 

 

 

【いきなり攻撃力2500のモンスターを…だが…!】

 

 

 

【ボクのターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!】

機械仕掛けの猟犬が現れる! ATK1000

 

【『機械猟犬』の効果発動!相手の場にモンスターが存在する時、600ダメージを与える!ハウンド・フレイム!】

 

『むっ…!』

猟犬の火球がユウスケに直撃する! 

 

ユウスケLP4000→3400

 

 

【さらに『機械猟犬』の効果発動!手札の『機械猟犬』と融合召喚を行なう!融合召喚!現れろ!『古代の機械双頭猟犬』!!】

2つの頭を持つ猟犬が現れる! ATK1400

 

【さらに装備魔法『古代の機械仮面(アンティークギア・マスク)』を『双頭猟犬』に装備!これによって『双頭猟犬』は1ターンに一度破壊されず、守備モンスターを攻撃した時!その守備力を攻撃力が上回れば貫通ダメージを与え!さらに、相手モンスターを破壊した時!戦闘ダメージは倍になる!バトルだ!『双頭猟犬』で裏守備モンスターを攻撃!!】

 

『セットモンスターは「魔導雑貨商人」!守備力は700だ!』

 

【ならば…1400の貫通ダメージを受けろ!!】

 

『ふっ…!!』

猟犬の火球がバックパックを背負った虫人を焼き尽くし、ユウスケにダメージを与える…だが、ユウスケは腕を組んでガードする事で攻撃を受け止める!

 

ユウスケLP3400→2000

 

『「魔導雑貨商人」のリバース効果発動!デッキを魔法・罠カードが出るまでめくり、そのカードを手札に加え!それ以外は墓地に送る!』

 

 

墓地送り

 

ロストガーディアン

ギガストーン・オメガ

フォッシルダイナ・パキケファロ

ゴゴゴギガース

スモールピースゴーレム

磁石の戦士γ

ブロックドラゴン

剣闘獣ホプロムス

ロックストーンウォリアー

伝説の柔術家

超電磁タートル

ゴゴゴゴーレム

ロックストーンウォリアー

カオスポッド

守護者スフィンクス

災いの像

磁石の戦士マグネット・バルキリオン

タックルセイダー

磁石の戦士β

 

☆ 封魔の矢

 

 

『我は「封魔の矢」を手札に加える、さらに墓地に送られた「タックルセイダー」の効果発動!相手フィールドに表側表示で存在する魔法・罠を1枚手札に戻す!さらに、そのカードはこのターン発動できない!「古代の機械仮面」を手札に戻す!』

 

【くっ…!】

双頭猟犬に装備されていた仮面が弾き飛ばされる!

 

【ボクはカードを2枚伏せ、ターンエンド!】

 

スパイLP4000

双頭猟犬 伏せ2 手札2

 

 

 

 

『なんだ、アカデミアのスパイといっても、こんなもんか…信念も誇りもない一撃など…我には響きもしない』

 

【くっ…!!(挑発に乗るな…伏せカードは『古代の機械蘇生』に『古代の機械閃光弾』……大ダメージを与えてやる…!)】

ユウスケの物言いにスパイは唇を噛みしめる…!

 

 

 

『我のターン、ドロー!』

『そうか、お前も久々に暴れたいか……我は墓地の岩石族モンスター18体を除外!現れろ!我らが魂を守りし、岩石竜!「メガロック・ドラゴン」!!』

 

《ウオオオオ!!》

雄叫びを轟かせながら、巨大なる岩石竜が顕現する! ATK?→13300

 

 

【ハッ…!?攻撃力、1万超えだって!?】

 

『「メガロック・ドラゴン」の攻撃力・守備力は特殊召喚時に除外した岩石族モンスター1体につき700アップする!』

 

【だが…!『古代の機械双頭猟犬』の効果!相手がモンスターを特殊召喚した時!相手モンスターにギアアシッドカウンターを乗せる!】

メガロックの頭上に歯車が浮かび上がる!

 

 

『どんな小細工をしようが…圧倒的力には敵わん!バトルフェイズ!速攻魔法「封魔の矢」を発動!このターンが終わるまで、お互いに魔法・罠カードの発動を封じる!「メガロック・ドラゴン」で「双頭猟犬」を攻撃!』

 

【無駄だ!「双頭猟犬」の効果発動!ギアアシッドカウンターの乗ったモンスターがバトルを行なう時、そのモンスターを破壊──】

 

『残念だったな…「ブロックドラゴン」がフィールドに存在する限り、自分の岩石族モンスターは戦闘以外では破壊されない』

 

『はっ…?』

伏せカードを封じられ、メガロックの破壊を狙ったスパイ…だが、その作戦は…雄々しき岩石竜には通じない…!

 

 

《お前如きが我らが主達に歯向かうなど…百年早い!吹き飛べ!鳴動富嶽!!》

 

【ぐっ…!?ぐああああっ!?】

大地が隆起し、地面から岩山が飛び出す…アカデミアのスパイはあっけなく吹き飛ばされた…。

 

 

スパイLP0

 

 

ユウスケWIN!

 

 

 

 

 

『フン…力不足も甚だしい!力を隠して我達を倒せるとは思わぬ事だな…!』

 

【くそ…!】

デュエルの終結と共に、周囲の景色が遊海の眠る仮眠室に戻る…そしてフードから僅かに()()()()()()()をのぞかせたスパイは脱兎の如く、部屋から飛び出して行った…。

 

 

《……追わんでよかったのか?ユウスケ》

 

『別にいい…あいつもランサーズの一人だ、これで余計な真似はしねぇだろ』

メガロックに問われたユウスケはつまらなさそうに応える…アカデミアのスパイとエンタメデュエリストの二足の草鞋を履く()()()…それは遊海達にとっては大きな脅威ではなかった。

 

『しっかし…よく寝てるなぁ、今のデュエルでもまったく起きねぇとは………嫌な予感がするな……メガロック、アヤカ…ちょっと頼むぞ』

 

《うむ、任された》

 

《ユウスケ…ええ、マスターを頼みます》

デュエルが終わっても目を覚まさない遊海…その眠りの深さに違和感を覚えたユウスケは実体化を解き、遊海の精神の奥底に還っていった…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「………ここは……俺の深層意識の…」

眠りに落ちた遊海は自分の深層意識……石造りの教会の中にいた、普段ならばユウスケが自分を呼び出したのかと思ったが…今日は違っていた…。

 

 

 

【ようやく目を覚ましたようだな…白波遊海よ】

 

 

 

「この声……まさか!?」

石造りの教会に威厳と畏怖を感じさせる声が響く…その声に聞き覚えのあった遊海は耳を疑うが、目の前で赤黒い炎が燃え上がる…!

 

 

 

【久しぶりだな…我を滅ぼした者よ…!】

 

「ドン・サウザンド…!?馬鹿な…!あの時、完全に倒したはず!!」

炎の中から現れたのは黒い肌に光輝く金色の髪、そして赤い前髪を持つ『混沌の神』……消滅したはずのドン・サウザンドが遊海の目の前に姿を現した…!

 

 

 

「っ…(どうする!?いくら俺でも…この状態で奴を相手にするのは…!?)どうやって、復活しやがった!!」

遊海は大量の冷や汗を流しながら、不敵な笑みを浮かべるドン・サウザンドに問いかける…。

 

【さてな…偶然が重なった結果、とでも言っておこうか……6年前、確かに我は貴様に倒され…我がナンバーズの力ごと、貴様に取り込まれた……だが、ほんの少し前…我は意識を取り戻した……貴様ではない貴様──榊遊希のおかげでな】

 

「っ……まさか、凌牙が…俺を治療した時…!?」

ドン・サウザンドの言葉に遊海は思い当たるフシがあった。

 

凌牙が語った出来事の中で榊遊希が融合次元のユーリによって瀕死の怪我を負い、凌牙が治療した事があったと聞いた……その際、「混沌の後継者」であった凌牙のカオスが遊希に流れ込み…封印していた「No.1000」に干渉……その結果、ドン・サウザンドの復活を許してしまったのではないかと…。

 

 

【フハハ…そう警戒するな、我は今の貴様達と()()()()()()()()()()

 

「なにっ…?」

ドン・サウザンドの思わぬ言葉に遊海は思わず聞き返す…。

 

 

【我と貴様には敵対する理由はない…何故なら、貴様らが()()()()()()()()()()()()()()()()のだからな……】

 

「……俺の記憶を読んだのか」

 

【そうだ、この世界には娯楽がないのでな…自己封印していたお前の記憶を読み取らせてもらった】

アストラル世界は…以前のアストラル世界ではない、アストラルとヌメロン・コードによって1つとなったアストラル・バリアン世界…e・ラー事件の後、融和はゆっくりと進み…2つの世界は和解した、それは…以前の「カオスを悪と断じ、排斥していたアストラル世界」が消え去ったという事になるからだ。

 

 

【一度は…正気を失ったお前の肉体を依代として現世に復活しようとも考えたが……()()()

 

「やめたんかい」

 

【お前が本当の意味で修羅に堕ちていたのなら簡単だったが、お前達は最後の最後で『光』を掴んだ……その過程が愉快だった故な】

 

「……(このドン千……なんか変だぞ?コイツ、こんなキャラだったか?)」

遊海は明らかに()()しているドン・サウザンドを注視する…そして気付いた、胸に輝く「ドン・サウザンドの紋章」…その中心は本来ならカオスを宿した「紅い光」が輝いているはずなのだが……穏やかな()()光が灯っていたのだ。

 

 

「(………一部のカオスが浄化されて…『混沌・悪』だったのが…『混沌・中庸』に傾いてる、のか…?)」

心当たりがあったのはドン・サウザンドの最期…遊海の決死の自爆によって吹き飛ばされたドン・サウザンド、その際に彼は『光』の暖かさを知った……それが影響して、性格が変わった…のではないかと…。

 

 

【しばらくは此処から…お前の活躍…いや、喜劇を見せてもらうとしよう…せいぜい我を楽しませてみせよ…!クハハハ…フハハハハ──!】

 

「なっ…!?ちょっと待て!さっさと出てけ……って、こんな奴開放したらダメだ!?これ以上の厄ネタは勘弁してくれ─!!」

笑い声を響かせながら消えていくドン・サウザンド……その身勝手さに遊海は思わず叫んでしまうのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

『おい!遊海なにがあった…って、この気配の残り香は…!?』

 

「………なんか、とんでもない事になっちゃった……どうすりゃいいんだ!?」

 

『我に聞くなよ!?』

 

そして、異変を感じて戻ってきたユウスケは遊海と共に頭を抱えるハメになったのだった。

 

 

 

 

【クハハハ…!ハハハハハハ!!】



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幕間〜家族〜

「父さん、少しは休めたか?」

 

「……ああ、ありがとう凌牙…だいぶ良くなったよ…」

 

「本当か?まだ疲れた顔してるぜ…?」

 

「だ、大丈夫さ…ちょっと()()が悪かっただけだから…」

 

《フォウ、フォーウ…(なんか、嫌な気配がする気がする…)》

 

30分程の仮眠を取った遊海は目を覚ました…のだが、その顔は疲れきっていた…。

自分の中で復活してしまった…かつてのラスボス『混沌の神』ドン・サウザンド……今の所は世界に牙を剥くつもりはないようだが、遊海にとっての頭痛の種である事には変わりなかった。

 

 

「(とにかく…ズァークの件を解決するまでは、みんなに…アヤカ達にもバレないようにしないと……次から次へと……勘弁してくれ……)」

遊海はドン・サウザンド復活の件を秘匿する事に決めた、そもそも…ドン・サウザンドはナンバーズと共に遊海の『魂』に取り込まれた状態でおいそれとは手が出せず、下手に討伐・開放すればカオスの影響で世界や不安定なARC次元にどんな影響を齎すか分からなかったからだ。

 

 

「(うぅ…転生してから初めて、胃痛を感じる……翠…璃緒…早く会いたい……)」

……久しぶりに強いストレスに苦しむ遊海なのだった。

 

 

 

………

 

 

 

《……マスター、榊遊矢と母親のデュエルが終わったようです》

 

「むぐ……そうか、ありがとうアヤカ」

凌牙の調達してきた牛丼弁当を食べていた遊海…そこへアヤカが遊矢のデュエルの終了を知らせる。

 

 

「座標は分かるか?」

 

《はい!》

 

「よし…凌牙、俺は……榊遊矢達に会いに行く、お前はどうする?」

 

「………俺は…残るよ、明日からの事もあるし……それとも、一緒に行ってほしいのか?」

 

「……いや、聞いてみただけだ……行ってくる!」

 

キィン─!

凌牙に一応の声掛けをした遊海は『紋章の力』でゲートを開く。

 

 

「……父さん、起きてから力を使いすぎじゃねぇか?」

 

「ああ…まぁ、今の俺が何をできて、何ができないのか把握しないといけないからな!順番に力を使ってるんだ……行ってくる!」

 

《フォウ!》

そう言うと遊海はフォウと一緒に次元ゲートに飛び込んだ…。

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

 

「ああ…久しぶりにやったけど、やっぱり最高だね…デュエルは…」

 

『母さん…!』

 

 

「ふふっ…良い顔になったね、遊矢……ほら!餞別代わりに持ってきな…」

 

『「スマイル・ワールド」…これって、父さんと母さんの思い出のカードなんじゃ…!』

 

「いつか渡してくれって、言ってたんだ…遊矢が本当にこのカードを必要とする時にってね…きっと、今が()()()なんだよ」

 

『母さん…』

 

 

舞網市のとある廃ゲームセンター、遊矢はそこで母である洋子……否、レディースチーム『舞網クイーンズ』元総長である流れ星ヨーコは激しいデュエルを繰り広げ、遊矢が勝利を収めていた。

アカデミアに拐われた柚子を取り戻す為に憎しみと怒りを燃やしていた遊矢…そんな彼を諫める為に洋子は『敵を倒す事』を楽しんでいたレディース時代の格好をして遊矢へとデュエルを挑んだ…。

 

その中で遊勝との馴れ初めと『デュエルは楽しむモノ』というオリジンを遊矢へと伝えた洋子は思い出のカード『スマイル・ワールド』を過酷な戦いに挑む遊矢へと託した…。

 

 

「いいかい、何処に行っても笑顔を忘れちゃダメだよ?もし忘れそうになったら、そのカードを見て…今日の事や父さんの言葉を思い出す事!そして…必ず、やり遂げるんだ!きっと遊矢なら…柚子ちゃんを助ける事も、争いを止める事もできる!アタシはそう信じてる…!」

 

「うむ…!オレも信じているぞ!遊矢!!」

 

「おれも!」

 

「わたしも!」

 

「ぼくも!!」

 

『塾長…フトシ、アユ、タツヤ……』

そして、デュエルを見守っていた遊勝塾の仲間達が遊矢を信じて声をかける…遊矢ならば、必ず願いを叶えてくれると信じて…。

 

「みんなの望みは叶えられる…私の占いにもそう出てる!だから…貴方は自分を信じて!榊遊矢というデュエリストを…!」

 

『ミエル…ああ!オレは信じる!父さんから受け継いだエンタメデュエルを信じる!みんなを笑顔にして、必ず柚子を助けて…みんなの所に帰ってくる!!』

同じく、デュエルを見守っていたミエルの占いを聞いた遊矢は決意を固めた…エンタメデュエルの精神で争いを止め、必ず柚子を助け出すのだと…!

 

 

 

「……あれ…?何これ……『頭上に注意せよ』…?」

そんなかっこいい遊矢の姿を見ていたミエルが水晶玉の異変に気付く…新しい占い結果が浮かび上がっていたのだ、その時──

 

 

ガッシャーン!!!

 

 

「うおおおっ!?」

 

「「「「うわああああ!?」」」」

 

『いきなりなんだ!?』

 

突然、廃ゲームセンターの天井が崩落…遊矢達から少し離れた所に悲鳴と共に何者かが落下してきたのだ…。

 

 

『う、お……短距離移動で、これか……こりゃ、遊馬号も墜落する訳だ…』

 

《フォ〜ウ〜…(ひ、酷い目にあった…)》

砂埃が少しずつ晴れていく…そこにいたの赤い帽子を被った青年とジト目の白い子猫だった…。

 

 

『……遊希、兄……!』

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「(っ〜…頭がクラクラする……流石に()()()から落ちたから、しょうがないか……)」

遊矢のもとへ向かおうと次元ゲートを潜った遊海…だが、その瞬間…遊馬達が遭遇したというズァークの力の余波による『時空嵐』に遭遇、乱気流のような環境から咄嗟に抜け出したものの……舞網市上空()()()()()()の場所に飛び出してしまい、フォウを庇いながらそのまま落下……遊矢達のいた廃ゲームセンターに墜落したのだ。

 

 

「(あの嵐じゃ次元間の通信も厳しい訳だ…しかも、嵐をどうにかしないと()()()()()にも帰れない……困ったな…)」

ズキズキと痛む頭を抱えながら遊海はそう予想した…ARC次元の不安定な状態を解決しなければ、嵐は治まらないだろうと…。

 

 

 

『遊希、兄…』

 

「ん……?そうか、座標自体は合ってたのか…」

その時、驚いたような声が遊海の耳を打つ…そこには驚いた様子の遊矢、そして柚子を除く遊勝塾メンバーとミエルがいた…。

 

 

「ゆ、遊希兄ちゃん…遊希兄ちゃんだ!!」

 

「傷がなくなってる!治ったの!?」

 

「帰ってきてくれて良かった──!!」

 

『あっ、みんな!その人は……』

 

「……どうやら、遊希は…子ども達に好かれていたみたいだな…」

そして一拍を置いてジュニアコースの子ども達が座り込んだ遊海に抱きついてくる…多少、姿が変わっても…彼らは遊海を『榊遊希』だと思ったのだ。

 

 

「……アンタ…貴方が、本当のお前なんだね…遊希」

 

「……ええ、初めまして…榊洋子さん、俺は…遊海、白波遊海といいます」

遊海の胸で泣く子ども達…そんな彼らの頭を撫でながら、遊海は改めて名乗った…。

 

 

 

………

 

 

 

「改めて……榊洋子さん、そして…遊矢、記憶を失っていた間の俺を守って頂き…ありがとうございました…!」

 

「頭を上げてくださいな…!アタシ達だって、貴方に支えてもらったんだから…!」

場所を移し、榊家のリビング…遊海はそこで遊矢と洋子に頭を下げていた…5年もの間、記憶を失っていた自分を守り育ててくれていた彼らに礼を伝えたかったのだ…。

 

 

『遊海、さん……本当に…本当に、オレ達の事、何も覚えてないのか…?』

 

「呼び捨てでいいよ、遊矢……俺の中には、この5年の記憶は残っていない……遊希とは完全に()()として、考えてほしい…俺がお前達の事を知ってるのは…海馬社長や凌牙に聞いたからなんだ」

 

『そんな…!』

遊海は遊矢の問いかけに優しく、静かに答える……悪意に呑まれ『災厄』として災いをもたらそうとした榊遊希、その人格…魂は遊海が目覚めるに当たって燃え尽きてしまった…。

 

 

「でも……この5年の記憶が無いなら、なんでフォウや海馬社長の事は分かるんだい…?フォウだって、この家に来て1ヶ月くらいなのに…?」

 

「フォウは…記憶を失う前から、俺の()()だったんだ……俺を探す為に、息子の凌牙と一緒に次元を渡って……」

 

『ち、ちょっと待って!?それが聞きたかったんだ!凌牙が、遊海の息子って…それに次元を渡って来たって…遊海も、別次元の…!?』

 

「……そうか、そこから話さないとダメか……実は──」

遊矢の言葉を聞いた遊海は自分の来歴の一部を伝える…。

 

 

自分が凌牙の育ての父であり、妻がいる事。

 

とある事故に巻き込まれたせいで次元の狭間に投げ出され、そのせいで記憶を失い…肉体年齢も逆行してしまった事。

   

凌牙が自分を助ける為に仲間と共に次元を渡り、ようやく記憶を失った自分を見つけ…フォウにその様子見を頼んでいた事。

 

バトルロイヤルの最中にオベリスクフォースや凌牙と戦った事で…本来の自分を取り戻せた事……少しの嘘を交えながらも、遊海はできる限りの真実を遊矢達に伝えた…。

 

 

 

「アンタも大変な目に遭ってきたんだね…」

 

「ええ…ですが、本当の戦いはここから……次元戦争を仕掛けてきた融合次元を止める為に、俺は遊矢達『ランサーズ』と共に次元を越えるつもりでいます……エクシーズ次元で戦ってくれている仲間を助ける為に…」

 

『遊海…』

粗方の話を伝えた遊海はまっすぐと洋子と遊矢を見つめながら決意を伝える…それは彼らの知る遊希ではなく……歴数のデュエリストとしての顔だった…。

 

 

「それで…1つ、お願いがあるんだ…」

 

「お願い…?」

 

「『榊遊希』の部屋を見せてほしいんだ」

 

 

………

 

 

「……此処が、俺が5年を過ごした部屋……」

洋子の許可を得た遊海は遊希の部屋を訪れていた、部屋の中は整頓され…学習机の上には数年前に遊勝達と撮った写真が飾られていた…。

 

 

「こうして見ると……本当に傷だらけだな……きっと、ずっと痛みに苦しんでいたはずだ…」

写真に写る遊希を見た遊海は呟く…ズァークによって刻まれた傷が残ったままスタンダード次元に流れついた遊希、その苦難は…()()である遊海には想像しきれない辛さだったろうと…。

 

 

《フォウ、フォーウ!(遊海!これ…)》

 

「ん…?これは……遊希のデュエルディスク、か…?」

そんな時、フォウがベッドの枕元を示す…そこには舞網チャンピオンシップの2回戦まで遊希が使っていたデュエルディスクが置かれていた…。

 

 

「これは……何かが録画されてる…?」

デュエルディスクを検めた遊海はデュエルディスクに映像が記録されている事に気付く…そして、再生すると…。

 

 

【コホン……初めまして、本当の僕…白波遊海……君が、この映像を見ているという事は……僕はきっと、記憶を取り戻したんだろう……】

 

「……榊、遊希…」

そこには…白髪にバンダナで左目を隠した傷だらけの少年の姿が映されていた…。

 

 

 

Side遊希

 

 

 

「よし…これでいいな」

舞網チャンピオンシップ、バトルロイヤル前日の夜…遊希は部屋で映像を撮る用意をしていた…限界を迎えつつある自分の体、そして…自分を浸食する「記憶」……遊希は自分が自分であるうちに、「本当の自分」へのメッセージを残そうと考えたのだ。

 

 

「初めまして、本当の僕…白波遊海……君が、この映像を見ているという事は……僕はきっと、記憶を取り戻したんだろう……なんだか、遺言みたいだな……ははっ……」

 

 

 

…………

 

 

【きっと、僕はこの先の戦いで記憶を取り戻す、と思う……その時の為に、僕は君にメッセージを残す事にする……僕は榊遊希、童実野高校の1年生で…五年前、有名なプロデュエリスト・榊遊勝に拾われた居候だ……遊勝さんは三年前、突然いなくなってしまった……それでも、僕はあの人が帰ってくる事を信じてる……次は榊洋子さん、彼女は遊勝さんの奥さんで…僕の大切な、もう1人の母さんなんだ───】

 

「……『榊遊希』としての記憶を失う前に、俺に宛てたメッセージを……」

デュエルディスクに記録された映像…それは遊希から遊海に宛てたメッセージ、自分の人間関係などを伝える為のものだった…。

 

 

 

 

 

【──うん、これでだいたいは伝えられたかな?君にとっては不要なメッセージかもしれない……それでも、()にとっては…本当に宝物のような五年間だった……それだけは、遺しておきたかったんだ】

30分程の時間が過ぎ、再生時間も僅かとなった頃…遊希は涙を溜めながら、遊海へと語りかける…。

 

 

【…白波遊海…もし…もしも、君がこの動画を見てくれたなら……僕の最後の()()を聞いてほしい】

 

「頼み…?」

画面の中の遊希は涙を拭い、遊海をまっすぐと見つめる…。

 

 

 

【もしも、君が───────────】

 

「………ああ、分かったよ…遊希、もう1人の『英雄』……お前の願いは、俺が果たす」

それは遊希の最後の『願い』…それを聞いた遊海はデュエルディスクを握り締めながら、その願いを果たす事を決めた…。

 

 

【……よし、これでいいや……明日からは大事な試合だから、早く休まないと……でも、できれば……この動画の出番が来ないといいなぁ……】

 

「………お前は良く戦ってくれた……だから、ゆっくり休んでくれ……」

動画を見終わった遊海は自分の胸へと手を当てながら、もう1人の自分を悼んだ。

 

 

 

 

「……もう、行っちゃうのかい?」

 

「ええ…まだやる事が残っているので」

遊希からの願いを託された遊海は榊家を後にしようとする……洋子はその背中を名残惜しそうに見つめていた…。

 

 

「榊遊矢…お前は、本当に次元を越えるのか?」

 

『……ああ!オレが信じるエンタメデュエルで争いを止めて、絶対にアカデミアから柚子を助け出すんだ!!』

そして遊海は改めて、遊矢へと覚悟を問う…その問いに遊矢はまっすぐに答える。

 

 

「これから俺達が向かうのは『スタンダード次元』とは違う価値観のある()()()……お前のデュエルは受け入れられないかもしれない、お前を叩き潰す程の強者がいるかもしれない……それでも、お前は『榊遊矢』を貫けるか?」

 

『っ…!!(なんだ、この圧力…!?零児や融合次元の奴ら以上の…!!)』

その答えを聞いた遊海はわずかに闘志を放ちながら、遊矢を睨みつける…その気迫に遊矢はたじろぐ…。

 

 

『オレは…オレを、貫いてみせる!!』

 

「ふっ……いい顔だ、本来の自分を取り戻せたみたいだな……お互いに頑張ろう、エンタメデュエリスト・榊遊矢!!」

 

『っ…ああ!!』

戸惑いながらも答えた遊矢…その様子を見た遊海は表情を和らげ、拳を突きだす……そして遊矢も拳を突き返した。

 

 

 

 

「……ズァークの欠片、エンタメデュエリスト…レジスタンス…D・ホイーラー…そして侵略者……対処はアカデミアとの戦いを終わらせてからだ……!」

鋼の鎧を纏い、夜闇を駆ける遊海…問題は山積み、それでも…遊海は止まる事はない……戦い続けている仲間達の──家族の為に…。

 

 

 

 

 

「翠…必ず、帰る……だから、もう少し待っててくれ…!」



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幕間 因果応報〜悪漢の末路〜

こんにちは!S,Kです!

読者のみなさまの許可が得られたので…初めての挿入投稿!

遊海のやり残した事とは…?

それでは、最新話をどうぞ!


「ふぅ…ようやく、一息だな…」

 

「お疲れ、父さん…」

 

《フォウ、フォーウ!》

 

榊家…遊矢と洋子との別れを済ませた遊海は一度、LDSの仮眠室へと戻ってきていた……今の遊海は実質の宿()()()状態な為、LDSかKCを頼るしかないのだ。

 

 

 

「あとは…明日の出発に備えて休むだけなんだが……凌牙、榊遊希の舞網チャンピオンシップのデュエル映像って残ってるか?」

 

「ん…?LDSのデータベースにあるはずだぜ、見たいのか?」

 

「ああ、記憶が無い間の俺…遊希がどんなデュエルをしてたのか気になってな」

目覚めた直後に遊希の記録を確認した遊海…だが、それはあくまでも「文面」としての記録…その人となりを知るなら、デュエルを見るのが一番だと思ったのだ。

 

 

「えっと……一応、1回戦・2回戦…それからバトルロイヤルの2戦は記録があるけど……正直、参考にはならないかもな…」

 

「どうしてだ?」

 

「いや…この頃の遊希はさ、父さんの記憶の影響なのか不安定で……特に2回戦は……」

 

「……ああ、そういう事か…」

凌牙の説明で遊海はなんとなく、状況を予想する…ペンデュラム召喚に覚醒し、デュエルを重ねる中で遊海の記憶を垣間見ていた遊希…その中で少しずつ遊海の持つ『決闘者の闘争心』に呑まれていたのではないかと…。

 

 

「とりあえず、見てみるか…」

仮眠室の端末から、遊海は遊希のデュエルを確認する事にした…。

 

 

 

………

 

 

 

「………予想以上に、酷いな……まさか、こんな事になってたとは…」

 

「父さん…」

デュエルを見終わった遊海は頭を抱えていた…ユート戦はまだ、見ていられたのだが…問題は2戦目……梁山泊塾との戦いだった。

 

「…遊矢と勝鬨との戦いは知ってたけど……ここまでやらせるのか…!」

梁山泊塾のラフプレーに対抗する為に「アクションカードを使わない」戦法を選んだ満身創痍の遊希…だが、それを嘲笑うかのように梁山泊のデュエリストは遊希へと暴力を振るい……その怒りは遊希を暴走させ、時空の壁に穴を開ける程の被害を齎していた…。

 

 

「俺も、今まで卑怯や強引と言われたデュエリストと何回か闘ってきたけど……ここまではしなかったぞ…!!」

通常のスタンディングデュエルとアクションデュエル…土俵は違うが、それでも…遊海は梁山泊塾のデュエルスタイルを認める事ができなかった…!

 

 

「凌牙、ちょっと出てくる……すぐに戻る」

 

「……あんまり、無茶はしないでくれよ?」

 

「ああ……大丈夫、少し…()()()()()だけだ…!」

凌牙にそう伝えると…遊海はとある人物へと連絡を取った…。

 

 

『海馬社長…ちょっと、頼みがあります…!』

 

 

 

…………

 

 

 

 

「頼もう!!!」

 

『な、何者だ!?』

数分後、遊海は舞網市の郊外にある梁山泊塾に乗り込んでいた…突然の来訪者に深夜にも関わらず、修行中だった塾生は驚いている…。

 

 

 

「道場……いいや、()()()()()()()に来た!!塾長・郷田川梁山を出してもらおうか…!!」

 

『な、なんだと…!?道場破りだ!出合え!出合えぇぇ!!』

遊海の思わぬ言葉に塾生は銅鑼を鳴らし、緊急事態を伝えた…!

 

 

 

 

【騒がしいな……何者………お前は…松田を降した、遊勝塾の……】

 

「俺の名は白波遊海…榊遊希が塾生の世話になったな」

塾生に取り囲まれる遊海…その前に中華の老師範を思わせる男、郷田川が現れた…!

 

 

【ふん…なんだ?敗者に情けでもかけに来たか?松田はお前とのデュエルで壊れてしまったぞ?】

 

「それは自業自得だ…遊希と戦った塾生は、自分から眠っていた虎の尾を踏んだんだからな……俺は、お前と戦いに来たんだよ…郷田川」

 

【っ…若造が、生意気な口を!!お前達!!】

遊海の挑発を聞いた郷田川は塾生や師範達をけしかけようとする…だが…。

 

 

 

邪魔だ

 

 

「「「っ───!?」」」

 

【なっ…!?(なんという殺気…!塾生達が、意識を刈り取られるとは…!?)】

遊海の発した一言で…その場にいた塾生や師範達の半数が失神する……耐えられたのは郷田川や離れた距離にいた塾生達、実力のある者だけだった。

 

 

 

「俺は…無闇な殺生や、暴力は嫌いでな……さぁ、三本勝負だ…お前が一度でも、俺に勝てたなら……俺は手を引こう」

 

【その勝負…受けてやろう!アクションフィールド、オン!フィールド魔法『仙界竹林』発動!!】

郷田川の宣言と共に周囲の景色が空に浮かぶ仙境の竹林へと変わっていく…。

 

 

 

【若造が…この私にデュエルを挑んだ事を後悔させてやる!!】

 

「掛かってこい…話はそれからだ」

火花が散る中…二人のデュエルが始まる…!

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

1/3

 

郷田川LP4000

遊海LP4000

 

 

 

【私のターン!】

【私は手札の魔法カード『融合』を発動!手札の『天昇星─テンマ』と『地翔星─ハヤテ』を融合!天翔ける星、地を飛び…今、1つとなって、悠久の覇者たる星と輝け!融合召喚!!『覇勝星イダテン』!!】

郷田川の中華の演舞と共に中華の鎧を纏う武将が現れる! ATK3000

 

 

【私はカードを一枚伏せ、ターンエンドだ!】

 

郷田川LP4000

イダテン 伏せ1 手札1

 

 

 

「なんだ、手札融合はできるのか……塾生にもしっかり教えてやれよ」

 

【ふん、自ら教えを乞わない者に…教える事などない】

 

「そうか…じゃあ、俺の番だ」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『王立魔法図書館』を召喚!!」

遊海の頭上に無数の魔導書を蔵める図書館が現れる! ATK0

 

 

【む?攻撃力0だと?口ほどにもない…】

 

「それは…俺のセリフだ!手札から魔法カード『成金ゴブリン』を発動!相手のライフを1000回復させる代わりに1枚ドローする!さらに自分が魔法カードを発動した事で『王立魔法図書館』に魔導カウンターを1つ乗せる!」

遊海の発動した魔法カードによって郷田川のライフが回復する。

 

 

郷田川LP4000→5000

 

図書館 カウンター0→1

 

 

【貴様…何が狙いだ?】

 

「さてな?さらに魔法カード『一時休戦』を発動!次の相手エンドフェイズまで、お互いにダメージを与えられなくなる代わりに、お互いに1枚ドロー!さらに、魔法カード『成金ゴブリン』を発動!1枚ドロー!さらに『魔法図書館』にカウンターが3つ乗った事で効果発動!カウンターを取り除いて1枚ドローする!」

 

郷田川LP5000→6000

 

図書館 カウンター 1→2→3→0

 

「さらに魔法カード『トゥーンのもくじ』を発動!デッキから2枚目の『トゥーンのもくじ』を手札に加え、発動!さらに3枚目を手札に加え、発動!デッキから『トゥーン・カオスソルジャー』を手札に加える!そして『魔法図書館』にカウンターが3つ乗った事で1ドロー!」

 

図書館 カウンター 0→1→2→3→0

 

「さらにフィールド魔法『チキンレース』を発動!その効果で俺のライフを1000払って1ドロー…さらに魔法カード『打ち出の小槌』を発動!手札3枚をデッキに戻して3枚ドロー…魔法カード『テラ・フォーミング』を発動!デッキから『チキンレース』を手札に加える…そして『魔法図書館』の効果発動、1ドロー…」

 

遊海LP4000→3000

 

魔法図書館 カウンター 0→1→2→3→0

 

 

「フィールド魔法『チキンレース』を発動、ライフを1000払って1ドロー…魔法カード『トレード・イン』を発動!手札のレベル8『トゥーン・カオスソルジャー』を捨てて2ドロー…終わりだ、俺の手札に5枚の『エグゾディア』パーツが揃った!」

 

【な、なにっ!?】

遊海が手札5枚を空中に掲げる…そして背後に鎖によって手足を縛られた…太古の守護者が顕現する!

 

 

「『封印されしエグゾディア』よ…その力を開放せよ!怒りの業火─魔神火炎砲(エグゾード・フレイム)!!」

 

【ぐっ…!!ぐおああああ!?】

解き放たれた魔神の怒りが郷田川を吹き飛ばした…。

 

 

 

遊海 特殊勝利達成!

 

 

 

 

 

【特殊勝利とは、卑怯な…!】

 

「卑怯とは…どの口が言うんだ?勝つ為には手段を選ばない……それは、お前達の流儀だろ?……さぁ、2戦目だ」

 

【ユウミ、アクセスグランテッド!】

 

【くっ…!!】

遊海を()()と罵る郷田川…それを意にも介さず、遊海はデッキを換装する!

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

2/3

 

 

遊海LP4000

郷田川LP4000

 

 

 

 

「俺のターン!」

「手札から魔法カード『真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)』を発動!その効果により、手札の『真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラック・ドラゴン)』とデッキの『真紅眼(レッドアイズ)の凶星竜─メテオ・ドラゴン』を融合!!可能性を秘めし黒き竜よ…宙から降りそそぐ凶星の力を得て、流星の化身となれ!融合召喚!!『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』!!」

可能性の竜と凶星の竜が融合…空を支配する劫火の竜が現れる! ATK3500

 

 

【攻撃力3500だと…!?だが、先攻は攻撃できん!】

 

「攻撃できなくとも、できる事はある…『流星竜』の効果発動!デッキから攻撃力2800の『レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン』を墓地に送り!その攻撃力の半分のダメージを与える!ダーク・メテオ・フレイム!!」

 

【くっ、させるか!アクションマジック『フルカウル』!一度だけ効果ダメージを半分にする!ぬおおっ!?】

大地を抉るように激突する流星竜…だが、その余波は郷田川を守るような空気の壁によって半減される。

 

郷田川LP4000→3300

 

 

「さらに魔法カード『黒炎弾』を発動!自分フィールドの『真紅眼の黒竜』の元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

【馬鹿め!フィールドには『真紅眼の黒竜』はおらぬ!】

 

「『真紅眼融合』で融合召喚された『流星竜』は…『真紅眼の黒竜』として扱う」

 

【………は?】

 

流星竜の口に黒炎が溢れる…そして激しい炎が郷田川を飲み込んだ…。

 

 

 

郷田川LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

『う、嘘だ…!塾長が、こんな一方的に…!?』

 

『奴は、何者なんだ…!?』

『仙界竹林』が燃え尽き、景色が中華の修練場へと戻っていく…そして、梁山泊塾の生徒達に動揺が広がっていく…!

 

 

 

「これで、後はなくなったな…?郷田川梁山」

 

【き、貴様…!!バーン戦術など…!】

 

「卑怯とは言わせないぞ?バトルロイヤルでも、梁山泊の塾生がやっていたからな」

 

【ぬっ…!?】

冷たい目で郷田川を睨む遊海…その瞳の冷たさに、郷田川は押し黙る…。

 

 

「さぁ…3本目だ……次は、お前の土俵で戦ってやる」

 

【な、舐めるな!!アクションフィールド!『仙界炎谷』発動!!】

周囲の景色が塗り替わる…現れたのは遊希が戦った、谷底から炎が噴き出す峡谷だった。

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

3/3

 

郷田川LP4000

遊海LP4000

 

 

 

【私のターン!】

【手札から魔法カード『融合』を発動!手札の『天雷星センコウ』と『地雷星トドロキ』を融合!天に閃け…!地に響け!!君臨せよ!雷の破壊神 !!融合召喚!いでよ!!『覇雷星ライジン』!」

融合の渦の中から雷神を思わせる戦士が現れる! ATK3000

 

 

【私はカードを2枚伏せ、ターンエンド!!】

 

郷田川LP4000

ライジン 伏せ2 手札0

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

「『聖騎士の三兄弟』を召喚!」

鎧を纏う3人の騎士が現れる! ATK1200

 

「『三兄弟』の効果発動!このターン、『聖騎士』モンスターしか特殊召喚できなくなる代わりに、手札から2体の『聖騎士』を特殊召喚できる!現れろ!『聖騎士ベディヴィエール』!『聖騎士ボールス』!」

白髪に赤いマントの騎士と聖杯に選ばれた騎士が現れる! ATK1600 ATK1700

 

 

「『ベディヴィエール』の効果発動!召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから『聖剣─EXカリバーン』を墓地に送る…そして俺は『ボールス』に装備魔法『天命の聖剣』を装備!それによって『ボールス』は闇属性・レベル5になる!」

 

ボールス☆4光→☆5闇

 

 

「そして装備魔法を装備した『ボールス』は新たな力を発動できる!俺はデッキから『聖剣カリバーン』『聖剣ガラティーン』『聖剣アロンダイト』を相手に見せ…相手は3枚からランダムに1枚を選び、そのカードを手札に加える!」

 

【ならば…真ん中のカードだ!】

 

「『聖剣カリバーン』を手札に加え、残りの2枚を墓地に送る!さらに『ベディヴィエール』の効果発動!『ボールス』に装備された『天命の聖剣』を自身に装備し直す!これによって『ボールス』は光属性・レベル4に戻る!」

遊海は淡々と展開を続ける…。

 

ボールス☆5闇→☆4光

 

 

「そして俺はレベル4の『三兄弟』と『ベディヴィエール』でオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!聖騎士を率いる常勝の王よ!今こそ王道を突き進め!!『聖騎士王アルトリウス』!!」

重厚な鎧を纏いし最優の騎士王が現れる! ATK2000

 

 

【エクシーズモンスターだと…!?】

 

「『アルトリウス』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した時、墓地の『聖剣』を3枚まで装備できる!俺は墓地の『天命の聖剣』『聖剣ガラティーン』さらに、手札の『聖剣カリバーン』を装備!『ガラティーン』の効果で『アルトリウス』の攻撃力は1000、さらに『カリバーン』の効果で500アップする!」

 

【攻撃力、3500だと…!!】

3本の聖剣がアルトリウスに力を与える!

 

アルトリウスATK2000→3000→3500

 

 

【(だが、伏せカードは『ドレイン・シールド』に『炸裂装甲(リアクティブ・アーマー)』…そう簡単には…)】

 

 

「『アルトリウス』の効果発動!ORUを1つ使い、自分の場の『聖剣』の数まで相手の魔法・罠カードを破壊できる!伏せカードを破壊!ストライク・エア!!」

 

【なっ!?】

暴風を纏った聖剣が伏せカードを吹き飛ばす!

 

 

「バトルだ!『アルトリウス』で『ライジン』を攻撃!約束されし勝利の剣(エクスカリバー)!!」

 

【させるか!アクションカード──!!】

 

「それは俺のセリフだ!」

 

【掛かったな…!喰らえ!!「甘い!!」ぐおっ!?】

岩に張り付いたアクションカードを狙う郷田川…それを阻止すべく動いた遊海に郷田川は鋭い手刀を繰り出す…だが、遊海は逆にその腕を絡み取り、投げ飛ばした!

 

「さらにアクションマジック『フレイム・ボール』!相手に200ダメージを与える!受けてみろ!模倣・転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)!!」

 

【ぐっ!?ぬおおおっ…!!】

アルトリウスの聖剣が炎を纏い、ライジンを燃やし尽くした…!

 

 

郷田川LP4000→3500→3300

 

 

「ふぅ…俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

【ぐう…!『ライジン』の、効果…!戦闘・効果で破壊されたターンのエンドフェイズに墓地のレベル7以下の戦士族モンスター2体を、特殊召喚する…!現れよ!『天雷星センコウ』!『地雷星トドロキ』!】

雷を纏う侠客と棍棒を持つ戦士が現れる! ATK2400 ATK2100

 

 

遊海LP4000

アルトリウス(天命・ガラティーン・カリバーン) ボールス 伏せ1 手札1

 

 

 

【梁山泊塾を…私を舐めるなぁ!!】

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【バトルだ!『センコウ』で『ボールス』を攻撃!】

センコウの槍がボールスを切り裂く!

 

遊海LP4000→3300

 

【さらに速攻魔法『覇道融合』を発動!『センコウ』と『トドロキ』を融合!!天に閃け!地に轟け!逆巻く破壊神 !!融合召喚!いでよ!!『覇嵐星フウジン』!】

融合の渦の中から風神を思わせる戦士が現れる! ATK3000

 

 

【バトル続行!!『フウジン』で『アルトウス』を攻撃!さらにアクションマジック『ハイダイブ』を発動!このバトルの間、

攻撃力を1000アップする!喰らえい!!】

フウジンの一撃かアルトリウスを直撃…フィールドは爆煙に包まれた…。

 

フウジンATK3000→4000

 

 

遊海LP3300→2800

 

 

 

 

 

【はぁ…はぁ…!どうだ、これが我が梁山泊のデュエル…!!】

 

「効かねぇよ…信念のない一撃なんてな…」

 

【なにっ…!?】

煙が晴れていく…そこには微動だにしていない遊海、そして頑強な盾を構えたアルトリウスの姿があった…。

 

 

「『天命の聖剣』を装備した『アルトリウス』は1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない……()()()、一撃受けてみたが……それでも、元トップデュエリストか?」

 

【な、舐めるな!私はこれでターンエンド!この瞬間に『フウジン』の効果発動!お互いのエンドフェイズにフィールド上の戦士族1体につき500ダメージを与える!吹き飛べ!!】

 

「だからさ…効かねぇし、響かないんだよ…お前の一撃は…!!」

 

【なっ!?】

激しい暴風が遊海を襲う…だが、遊海は腕の一振りで嵐を掻き消してしまった…。

 

 

遊海LP2800→1800

 

 

郷田川LP3300

フウジン 手札0

 

 

 

「なぁ、郷田川梁山…お前は子供達をこう言って育てるらしいな…「勝つ為になら何をしても構わない」「デュエルを楽しいと思うな」「プロになるまで闇の道を歩くのだ」と……ふざけるな!!

 

【ぐっ…!?】

遊海は押さえ込んでいた闘志と怒気を開放……郷田川は凄まじい重圧に膝をつく…!

 

 

「デュエルは楽しむモノだ…いいや、デュエルだけじゃない!勉学も趣味も!子供達は自分が「楽しい」「面白い」と思うモノに興味を抱き、少しずつ力を、技術を伸ばしていく!楽しむ事こそが、上達する一番の近道だ!!それを楽しむ事を悪だと?その考えは間違ってる!!」

 

梁山泊塾を震わせる遊海の怒号…遊海は()()()()()()のだ…勝鬨や塾生達を追い込む梁山泊塾の悪しき教えに…。

 

 

「そして…『闇の道』を歩けだと?確かに、物事を極めるのは並大抵の事じゃない…何度も壁に当たって、落ち込み…自分の無力さを嘆く夜もある……だけど、その壁の先には…新たな希望の光が待っている!子供達が歩くのは闇の道じゃない…茨の道であろうとも、未来へと続く()()()()だ!!」

 

「最後に『勝つ為には何をしても構わない』……ああ、決して間違いではないだろうさ!デュエルモンスターズには様々なデッキが、戦い方がある!バーンダメージで相手を追い詰め、特殊勝利で虚を突き…強化したモンスターで相手を殴り倒す……様々な勝ち筋があるのがデュエルモンスターズの持ち味だ!!だけどさ……デュエルに()()を持ち込むのは、違うだろうが!!親は、子供達に…強く、優しく育って欲しいと願いを託す………でも、決して!!人を傷つけても、何も思わない子供に育って欲しいと願う親はいないはずだ!!平気で人を傷つけて勝つ事を教えるお前は……デュエリストを名乗る資格はない!!」

 

それは英雄の魂の咆哮…様々な子供達を、英雄を…勇士を見守り続けた遊海の誇り…それが、梁山泊塾の教えを否定する!

 

 

【勝つ事が、全てだ!勝てば…何をしても許される!!】

 

「……そうか……なら、見せてやるよ……最高の敗北を!!」

自分の考えを曲げない郷田川…勝利へと固執した悪漢に、英雄が裁きを下す!

 

 

 

「俺のターン…ドロー!」

「スタンバイフェイズに『聖剣ガラティーン』の効果発動…装備モンスターの攻撃力は200ダウンする」

 

アルトリウスATK3500→3300

 

 

「そして墓地の『聖剣EX─カリバーン』の効果発動!墓地のこのカードを除外し、『アルトリウス』をランクの1つ高いエクシーズモンスターにランクアップさせる!俺は『アルトリウス』1体でオーバーレイネットワークを再構築…ランクアップエクシーズチェンジ!!王道を歩む常勝の王よ…聖なる光と共に邪悪を裂く英雄となれ!『神聖騎士王アルトリウス』!!」

邪悪を祓う神の力を宿した騎士王が堂々と降臨する!ATK2200

 

 

「『神聖騎士王アルトリウス』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した事で墓地の『天命の聖剣』『カリバーン』『ガラティーン』を装備!攻撃力が1500アップ!」

 

【攻撃力、3700だと!?】

聖剣がさらなる力を与える!

 

アルトリウスATK2200→2700→3700

 

 

「さらに俺は罠カード『リビングデッドの呼び声』を発動!墓地の『ボールス』を特殊召喚!」

再び聖杯の騎士が現れる! ATK1700

 

「そして手札から『聖騎士ガウェイン』を召喚!」

屈強なる太陽の騎士が現れる! ATK1900

 

 

「俺はレベル4の『ガウェイン』と『ボールス』でオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」

 

 

「現れろ!『No.∞』!俺が歩みし戦いのロード…今こそ、希望の未来を切り拓け!!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!」

それは英雄の『魂』…デュエルディスクを模した大剣が地面に突き刺さる! ATK2500

 

 

「『決闘の守護者』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した事で1枚ドローできる!そして『アルトリウス』の効果発動!ORUを1つ使い、相手モンスター1体を破壊する!カリバーン・スラッシュ!!」

 

【くっ…!アクションマジック『透明』!このターン、『フウジン』は効果対象にならず、効果も受けん!】

黄金の剣の一撃が回避される!

 

 

 

「なら、バトルだ!『アルトリウス』で『フウジン』を攻撃!約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

 

【アクションマジック『奇跡』!『フウジン』はバトルでは破壊されず、ダメージも半分になる!!】

黄金の斬撃がフウジンに受け止められる!

 

 

郷田川LP3300→2950

 

 

「『決闘の守護者』で『フウジン』を攻撃!」

 

【血迷ったか!攻撃力は『フウジン』が上だ!】

 

「『決闘の守護者』の効果発動!ORUを1つ使い、バトルする相手モンスターの攻撃力分、自身の攻撃力をアップする!願いを力に(ウィッシュトゥパワー)!!」

 

【なにぃ!?】

魂の大剣が虹色の光を纏う!

 

決闘の守護者ATK2500→5500

 

 

「受けてみろ…我が魂の一撃…勝利へ導く決着の剣(デュエルカリバー)!!」

 

【あ、アクションマジック『回避』!その攻撃は無効だ!!】

大剣を振りかぶって跳躍する遊海…だが、虹色の光が勢いを失っていく…。

 

 

【まだ、まだだ!この攻撃を凌げば…まだ勝機は!!】

 

「速攻魔法発動…『ダブル・アップ・チャンス』!モンスター1体の攻撃が無効になった時、そのモンスターは攻撃力を2倍にして…もう1度攻撃できる!!」

 

【な、なにぃぃ!?】

それは希望の発露…大地から、夜空に浮かぶ星から…そして…デュエルを見ていた子供達の胸から飛び出した『光』が魂の大剣に宿っていく…!

 

決闘の守護者ATK5500→11000

 

 

「これが未来を導く光!束ねられし希望の輝き!!この一撃、受けきれるか!!絶望祓う希望の剣(デュエルカリバー・ホープ)─!!」

 

【がっ!?ぐわああああ………!!】

 

希望の光を宿した大剣がフウジンと郷田川を両断……デュエルの幕を下ろした…。

 

 

 

郷田川LP0

 

 

遊海WIN!

 

 

 

 

【馬鹿な…馬鹿な…!私が、この郷田川梁山が…こんな負け方を…!?】

 

「それが、お前の教えの…戦い方の限界だ、デュエルに対する負の感情を束ねた所で……それは、脆く…弱い!!」

リアルソリッドビジョンが消えていく中…郷田川に対し、遊海は間違いを突き付ける…!

 

 

「そして…子供達を闇へと誘い、たくさんの人達が傷付く原因となったお前に……罰を与える!()()()()!マインド・オン・エア!!」

 

キィン─!

 

【ぐおっ…!?】

遊海の額に浮かび上がったウジャトの眼が…郷田川の真実を照らし出す…!

 

 

 

「1つ聞こう、郷田川……お前は…生徒達に向き合っているのか?」

 

【何を馬鹿な事を…!1人1人に向き合ってなんぞいられるか!!別に1人2人壊れようと対した事ではない!梁山泊塾には勝利を求める馬鹿共が集まってくる!厳しく教えれば100人中1人くらいは成功する……それで我が塾は潤………はっ!?私は!?】

 

「正体を現したな…下衆が……それがお前の本性か」

罰ゲーム「マインド・オン・エア」…それは隠された本性を白日の下に晒す、嘘を暴く罰ゲーム…それは醜い本性を暴き出した…。

 

 

『じゅ、塾長…!嘘、ですよね…!自分に言ってくれたはずだ!プロになる為に、親にも会わずにデュエルの腕を磨くのだと!!』

 

【親に会うと里心が起きて挫折しやすいからなぁ…それに、一々親に文句を言われるのが………もがっ…!?】

本性を吐き出す郷田川…慌てて口元を押さえるが、既に遅かった。

 

 

ゴゴゴ…

 

 

『な、なんだ!?この地響きは…!?』

突然、梁山泊塾が揺れ始める…その原因は…。

 

 

 

「隼人!!隼人!」

 

「炎司!!」

 

「剣!!けんちゃん!!」

 

「真!まことぉぉ!!」

 

 

『なっ…塾生の親達が!?』

地響きの原因…それは石段を駆け上がってきた塾生の親達の足音だったのだ!

 

 

 

「悪いが…今の一連の出来事は生徒のご両親達に生配信していたんだ……ライオンは子を強くする為に谷に突き落とす…というが、その谷の深さにも限度がある……傷付く子供達の姿を見たら、親だって黙ってられないさ」

 

【貴様…貴様ぁ!!】

 

梁山泊塾に乗り込む前、遊海はKCを通じて梁山泊塾生の親の連絡先を入手…さらに、アヤカの力でハッキングを仕掛け…梁山泊塾の内情を授業参観の如く、見えるようにしていたのだ…。

 

 

 

「勇雄…勇雄…!ごめんね…!!こんなつもりじゃなかったの…!!私達は、少し弱気だった貴方に、強い子になって欲しかった…!それだけなのよ…!!」

 

『かあ、さん…?』

その親の中には遊矢の相手…勝鬨勇雄の親も含まれていた…約8年振りの再会とあって、勝鬨も戸惑っていた…。

 

 

 

「勝鬨勇雄…お前は良かったな…お前には、帰りを待ってくれている父親も、母親もいる……でもな、榊遊矢には…本当に尊敬して、頼りにしていた父親がいないんだ……そのせいでいじめられて、馬鹿にされて……そんな暗い道を、遊矢は残された母親と、記憶喪失の兄と歩いていたんだ……決して、明るくない茨の道を…」

 

『榊…遊矢……』

戸惑っている勝鬨に、遊海は優しく語りかける…。

 

 

「勝鬨、お前は強い…でも、それ以上に遊矢はもっと強くなっていくだろうな…人を楽しませる、エンタメデュエリストとして──」

 

『っ……消えた…!?』

勝鬨に語りかけていた遊海は静かに姿を消す…勝鬨に新たな『光』への道しるべを示して…。

 

 

 

 

 

 

 

後日、梁山泊塾には舞網デュエル協会の監査が入り…行き過ぎた修練や体罰、イジメの存在が明るみになり、休校する事になる…それはランサーズが出発した数日後の出来事だった。



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Ep.33 次元を越える希望の『槍』

こんにちは!S,Kです!

いや、BGMアンケートの『ディケイド』票が多いな!?少しネタで使ったりはしてるけども!!……遊海は破壊者だった…?


復活した遊海はついに、新たな戦いの舞台へと向かう…遊海は待ち受ける悪意を希望に変える事ができるのか…!

それでは、最新話をどうぞ…


「行くのだな、遊海」

 

「ああ…ここが最初の山場だ…」

バトルロイヤルの翌日、遊海は海馬達と最後の打ち合わせをしていた…。

 

 

「スタンダード次元の事は任せておけ…融合次元の侵攻があろうとも、頼りないレオ・コーポレーションの代わりに我らが守りを固める」

 

「本当は僕達も一緒に行きたいけど…そういう訳にもいかないからね」

 

「ああ…脅しは掛けたけど、アカデミアがどう動くかわからないからな…」

遊戯達はアカデミアの侵攻に備え、スタンダード次元へと残る…昨夜の出来事から、正規手段での移動でなければ次元間の移動に危険が伴う事が判明したからだ…。

 

 

「遊海、この後は…何が起きるかは分かっているのだな?」

 

「シンクロ次元の物語……差別と革命の物語だな……」

『シンクロ次元』編…それが、遊海が飛び込む新たな戦いの舞台…。 

 

 

デュエルのできるバイク『D・ホイール』によるシンクロ召喚が中心となったライディングデュエルが行われるシンクロ次元…その様相はスタンダード次元から見れば()()とも思える実態が広がっている。

 

人口の約1%しかいない富裕層『トップス』が残り99%の貧困階級『コモンズ』を支配・搾取する…超差別階級社会、コモンズの人々は差別され…トップスの居住区に侵入しただけで治安維持組織『セキュリティ』に捕縛され、強制労働に駆り出されてしまう…。

 

そんな世界に自分の強さだけでコモンズから成り上がり、玉座を守り続ける男がいた……その男こそ、シンクロ次元の『キング』ジャック・アトラス…ランサーズはシンクロ次元の協力を取り付ける為に次元を渡るが、既にアカデミアの牙はシンクロ次元に食い込み始めていた。

 

 

「たくっ…シティとサテライトに分かれてた、一番最悪な時のネオドミノシティよりも胸糞悪い次元じゃねぇか!?そんな世界で仲間になってくれる奴なんて……本当にジャックとクロウのそっくりさんしかいないんじゃねぇのか!?」

 

「……克也、大正解……むしろ、セレナともう1人が抜けるから、プラマイゼロ……」

 

「なんだそりゃ!?」

城之内の言葉に遊海は頭を抱える、シンクロ次元の治安維持を担うセキュリティのトップ、ジャン・ミシェル・ロジェはアカデミアからの『逃亡者』…融合次元から盗み出したリアルソリッドビジョン等のノウハウを使って成り上がり…シンクロ次元の支配者になろうと画策している。

ランサーズ・トップス・コモンズ・ロジェ・融合次元…それぞれの思惑が複雑に絡み合い…事態は混迷を極める事になる…。

 

 

 

「だから……俺は、それを()()()()つもりでいる」

 

「遊海…今までの関わり方を変えるのかい?」

 

「お前のやり方は…なるべく物語の大筋には干渉せず、できる範囲の『最善』を掴む…そうだったな?」

 

「ああ、でもそれは…()()()()()での話だ……ここはARC次元、俺達の世界から分割されて生まれた『新世界』……なら、そこまで自重する必要はない…俺はそう思ったんだ」

 

今までの遊海は物語への過度な干渉はせず、主人公達の成長を見守りながら…物語を『最善』に導く為に戦ってきた…だが、逆に言えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という場面が多く、無闇に手を出せなかった…という側面もある。

 

しかし、此処は…遊海が守り続けてきた世界ではない『新世界』──そして滅びの要因は『アカデミアによる次元統合』『ズァークの復活による破壊』と既に判明している……つまり、遊海は()()()()()()()()()のだ。

 

 

 

「今回の物語は──本当の意味で()()を目指す、それがこの新たな次元の為になると信じて…!!」

それは遊海にとっても未知への挑戦……物語の道筋を変えるという選択だった。

 

 

 

「ちなみにさ、普通に物語が進んだ場合は…どうなるんだ?」

 

「……戦いの末にズァークが復活して、遊矢の仲間達と同じく復活したレイと意識が戻った遊矢がなんとかズァークを倒すけど…ズァークを倒しきれずに再封印、しかもズァークの欠片は遊矢に統合されたまま…さらにレイの欠片達はズァークの浄化後に復活するけど……柊柚子に統合されたまま終わり…」

 

「……滅茶苦茶ビターエンドじゃねぇか!?」

 

「アンタが物語を変えたいって言う意味が分かったよ……そりゃ、見過ごす訳にはいかないね」

遊海から物語の顛末を聞いた城之内と舞は遊海が言わんとする意味を理解した…。

 

 

「フン…骨は我らで拾ってやる、とにかく…シンクロ次元の問題を速やかに解決し、お前はさっさと翠に会いに行け!!」

 

「了解…!!」

海馬に発破を掛けられた遊海はKCから飛び出した…。

 

 

 

 

………

 

 

 

「なぁ、権現坂…その傷…」

 

「親父殿と真剣勝負のデュエルをしたのだ…俺の決意を示す為にな…」

 

「あ、なるほど…」

 

LDSを訪れた遊矢と権現坂は職員に案内され、ランサーズの集合場所へと向かっていた……なお、権現坂は父との激しいデュエルの末に顔面が絆創膏だらけだったりする。

 

 

 

「あっ、遅せぇぞ!榊遊矢!このオレを待たせるなんて10万年早いんだよ!!」

 

「その例え…遅いのか、早いのか分からないね?」

 

「茶々入れんじゃねぇ!」

 

「もう、みんな集まってたんだ…!」

そして、遊矢は待合室に足を踏み入れる…そこには沢渡やデニス、月影、セレナ…そして黒咲と凌牙…『ランサーズ』に選ばれたデュエリストが揃っていた…。

 

 

『揃ったか…よく集まってくれた』

 

「へっ、社長さんは最後にお出ましか…重役出勤って奴?」

待合室に静かに声が響く…そこへランサーズの1人であり、司令塔…赤馬零児が現れる。

 

 

「ランサーズ、8人全員揃っております!隊長殿?」

 

『いや、8人ではない──1()1()()だ』

 

「11人?」

戯けながらランサーズの集合を伝えるデニス…しかし、零児は人数が違う事を伝えた。

 

 

『零羅も連れて行く』

 

「なっ…!?馬鹿な!オレ達は遊びに行くのではないのだぞ!?足手まといだ!」

まずは1人、零児の義弟であるジュニア選手権優勝の零羅…だが、零児の後ろに現れた彼の姿を見た黒咲が声を上げる…戦場は子どもが遊ぶ場所ではないのだと…。

 

 

『零羅の能力は君達に匹敵する、足手まといにはならない』

 

「へぇ…社長にそこまで言わせるなんて、すごいじゃないか…まだ小学生なのに」

 

「………!」

零羅を擁護する零児…その言葉を聞いたデニスは零羅の顔を覗き込むが、人見知りをする零羅は隠れてしまった…。

 

 

「まだジュニアの奴に…ペンデュラムを極めた沢渡世代と同等の力があるなんて、信じられねぇなぁ…?」

 

「何が()()()()だ!ペンデュラムを見つけたのは遊矢だ!自分が見つけたような顔するな!」

 

「ご、権現坂…」

さらっとペンデュラム世代を沢渡世代と呼んだ沢渡に権現坂が突っ込む…遊矢は苦笑いである。

 

 

「とにかく…!俺は認めんぞ!子どものお守りをしながら、アカデミアと戦えるか!?」

 

「まだアカデミアへは行かない……私達が向かうのは……()()()()()()だ」

 

「「「「なっ!?」」」」

零羅の同行を認めようとしない黒咲…そこへ零児が伝えたのは、衝撃的な一言だった…。

 

 

「シンクロ次元…だと?融合次元に乗り込むのではないのか!?」

 

『シンクロ次元にはまだ、次元間の争いの波が及んでいないらしい…そこで、新たな仲間を募る…!』

 

「いくらペンデュラム召喚が強力とはいえ、アカデミアとは戦力差がある…それを補う為に、シンクロ次元を経由し…同盟を結ぶ、それが1つの目的だ、そして……」

 

『柊柚子は…シンクロ次元にいる、その救出が2つ目の目的だ』

 

「なっ…柚子は、融合次元にいるんじゃなかったのか!?」

零児、そして凌牙の言葉に遊矢は驚きを露わにする…柚子はアカデミアに拐われたものと思っていたからだ…。

 

 

 

『バトルロイヤルの映像に柊柚子がシンクロ次元のデュエリストと姿を消す様子が残されていた……それに、私は()()()()()しかしない…今の段階で我らのみでアカデミアに挑んでも、勝算は───』

 

 

「ほぼゼロ、だろうな…俺がいなければ」

 

 

「っ!?アンタは…バトルロイヤルの時の!」

 

「……遊海」

零児が勝算がない事を伝えようとした時、新たな声が部屋に響く…それは白猫を肩に乗せた青年、白波遊海の声だった。

 

 

「黒咲…お前の妹を救いたいという気持ち、そして…故郷の為にアカデミアを一刻も早く倒したい気持ちはよく分かる………だが、冷静になれ……妹は犬死にするお前の姿なんて、見たくないはずだ」

 

「っ…!!」

遊海の穏やかな、厳しい言葉に黒咲は拳を握り締める…その言葉は論破できない正論だったからだ…。

 

 

「セレナちゃん、君はアカデミアの内情を知っている…どう思う?」

 

「……アカデミアは融合次元全体からデュエリストを集め、実戦に耐えうるデュエル戦士を生み出し続けている…そこに私達が乗り込んでも……すぐに制圧されてしまうだろう、私達は戦力を整え……勝つ為の準備をするべきだ」

遊海の言葉を受けたセレナがアカデミアの内情を伝える…融合次元全体からデュエリストを集め、デュエル戦士を養成するアカデミア…その戦力は凄まじいものだと…。

 

 

「それに……大丈夫だ、プロフェッサーは瑠璃に手荒な事はしない…プロフェッサーの私への扱いを見れば分かる、私と瑠璃はそっくりなのだろう?それに柚子とも……プロフェッサーは何故か、私に似た者達を集めようとしていた…目的は分からない、だが…私達は、彼にとって大切なモノらしい………瑠璃も、きっと大事にされているはずだ…!」

 

「………!」

真摯なセレナの言葉を聞いた黒咲は落ち着きを取り戻す…その横ではデニスが驚いた表情をしていたが…。

 

 

 

『……流石だな、白波遊海…荒ぶった黒咲をこうも手早く落ち着かせるとは…』

 

「チームっていうのは仲良くないとな、ギスギスしたままじゃ…成功する作戦も失敗する……さぁ、彼らに渡すモノがあるんだろ?」

遊海の手際を称賛する零児…そして遊海は話を進めるように促した。

 

 

 

『君達にはこれを渡しておく…レオ・コーポレーションが新開発したデュエルディスクだ、これには凌牙から提供されたエクシーズ次元の技術…そして、オベリスクフォースから鹵獲した技術を元にした次元移動装置、そして小型化したリアルソリッドビジョン投影器が搭載されている……よって、別の次元でも私達は「アクションフィールド」を発動する事ができる…アクションカードとペンデュラム召喚、この2つが我々の「武器」となる!』

 

「新しい、デュエルディスク…!」

零児はランサーズのメンバー達に新たなデュエルディスク、そして『ディメンション・ムーバー』というカードを手渡す、それにはスタンダード次元の技術の粋が詰め込まれていた。

 

 

『しかし、いきなり新機能を実戦で使うには不安がある……そこで、沢渡…そして白波遊海…二人のデュエルによってデモンストレーションを行なう!』

 

「で、デモンストレーション!?聞いてないぞ!?」

 

「……そうきたか」

そして零児の言葉に遊海と沢渡はそれぞれに驚きを露わにする…!

 

 

『沢渡、君はペンデュラム召喚への対応力、そしてオベリスクフォース6人を前に逃げ切った生存能力の高さを見込んでランサーズにスカウトした……だが、肝心の強さはまだ見せてもらっていない……そして白波遊海、お前の実力は()()()だ……故に、直接その力を見せて貰いたい』

 

「いいだろう…俺の力の一端を見せよう…!」

 

 

 

…………

 

 

 

『よーし、いくぜ!アクションフィールド「クロスオーバー」発動!!』

場所をLDS内のデュエルコートに移したランサーズ…沢渡はアクションフィールドを発動、デュエルコート内にアクションゲームに出てきそうな半透明の足場とアクションカードが散らばっていく!

 

『さぁ…沢渡劇場の開幕だ!手加減はしないぜ、白波遊海!』

 

「ああ!かかってこい!」

 

 

「『デュエル!!』」

デュエルコートで沢渡と遊海の戦いが始まった…!

 

 

 

沢渡LP4000

遊海LP4000

 

アクションフィールド 「クロスオーバー」発動中

 

 

 

『いくぜ、オレのターン!』

『オレのは手札のスケール1の「魔界劇団─デビル・ヒール」とスケール8の「魔界劇団─ファンキー・コメディアン」でペンデュラムスケールをセッティング!』

 

 

PENDULUM!!

 

 

沢渡の背後に光の柱が現れ、浅黒い肌の悪役悪魔と戯けたポッチャリ悪魔が浮かび上がる!

 

『これでレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!手札から現れろ!レベル7!「魔界劇団─ビッグ・スター」!』

沢渡の頭上に扉が開き、魔界劇団の主役が現れる! ATK2500

 

『「ビッグスター」の効果発動!デッキから「魔界台本─ファンタジー・マジック」を手札に加える!カードを1枚伏せて、ターンエンド!』

 

沢渡LP4000

ビッグスター (P デビルヒール コメディアン)伏せ1 手札3

 

 

『さぁ…掛かってきやがれ!』

 

「じゃあ…遠慮なく!!」

遊海はデッキトップに手を掛ける!

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『トレード・イン』を発動!手札のレベル8のドラゴン族モンスター『神龍の聖刻印』を墓地に送り2ドロー!さらに、魔法カード『招集の聖刻印』を発動!デッキから『聖刻』モンスター『聖刻龍─ネフテドラゴン』を手札に加える!そして相手の場にモンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在しない時!手札の『聖刻龍─トフェニドラゴン』は特殊召喚できる!」

 

『そのデッキは…舞網アドベンチャー・スクールの聖目悟と同じデッキか…!』

遊海の場に白いウジャト眼を刻んだアストラル体のドラゴンが現れる…そして零児はそのデッキがスタンダードに存在するデッキであると気付いた…! ATK2100

 

 

 

「デッキが違う…?なあ凌牙…遊海は……」

 

「ああ、とう……遊海さんのデッキは1つじゃない、あらゆる状況に対応できるようにいくつものデッキを入れ替えて戦う…それが、あの人の戦い方だ!」

 

「複数のデッキを操るだと?そんなデュエリストがいるのか…!」

遊矢がバトルロイヤル時とは遊海のデッキが違う事に気付く…そして凌牙が遊海の戦い方を補足する。

 

 

《主殿、どうか無理はなさらぬように》

 

「ああ、分かってる!行くぞトフェニ!俺はフィールドの『トフェニドラゴン』をリリースする事で手札の『聖刻龍─ネフテドラゴン』を特殊召喚!」

展開の起点である白龍が粒子となり…薄紫のウジャト眼を刻む夜の龍が現れる! ATK2000

 

 

「そしてリリースされた『トフェニ』の効果!デッキからドラゴン族通常モンスター『エレキテル・ドラゴン』を攻守0で特殊召喚!」

さらに尻尾がスパークしているワイバーンが現れる! DEF0

 

 

「さらに!『ネフテ』をリリースする事で手札から『聖刻龍─シユウドラゴン』を特殊召喚!」

青いウジャト眼を刻むドラゴンが現れる! ATK2200

 

「そしてリリースされた『ネフテ』の効果!デッキから『神龍の聖刻印』を特殊召喚!」

赤いウジャト眼を刻んだ太陽石が現れる! DEF0

 

 

『レベル6のモンスターが2体…来るか…!』

 

「俺はレベル6の『シユウドラゴン』と『エレキテルドラゴン』の2体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現われろ!『聖刻龍王─アトゥムス』!」

光の銀河に2体のモンスターが飛び込み、爆発…紫色のウジャト眼を刻む、聖刻の王が現れる! ATK2400

 

 

「『アトゥムス』の効果発動!ORUを1つ使い、デッキからドラゴン族モンスター『レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン』を攻守0で特殊召喚!」

黒き鋼を纏うレッドアイズが現れる! DEF0

 

「『レダメ』の効果発動!墓地からドラゴン族モンスター『神龍の聖刻印』を特殊召喚!!」

フィールドに2体の太陽石が並び立つ! DEF0

 

 

『なっ…まさか!?』

 

「そのまさかだ!レベル8の『神龍印』2体でオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!太陽の写し身たる龍神!『聖刻神龍エネアード』!!」

赤いウジャト眼を刻みし太陽の化身が現れる ATK3000

 

 

「一気に2体のエクシーズモンスターを…!なんて運とタクティクスなんだ…!?」

 

「そして、動きに迷いもない…どれほどの戦いを乗り越えてきたんだ…!」

凄まじい速さで展開する遊海に対し、デニスと黒咲はその強さを悟る…。

 

 

「『エネアード』の効果発動!ORUを1つ使い、手札の『聖刻龍─ドラゴンゲイヴ』をリリース!そして『ビッグスター』を破壊する!ソーラー・フレア!」

 

『チィッ!やらせねぇ!アクションマジック「奇跡」!これで「ビッグスター」は戦闘・効果では破壊されな「アクションマジック『ノーアクション』!アクションマジックの効果を無効にする!」なっ、はや!?いつの間に!?うおおっ!?』

 

破壊効果を発動した遊海を見た沢渡は足場を飛び移り、アクションカードを発動する…だが、一瞬にしてアクションカードを獲得した遊海が効果を無効にし、劇団のスターは太陽の光に焼き尽くされる!

 

 

「………動きが、見切れなかった…!あの御仁は、拙者より速い…!」

 

『風魔忍者を上回る敏捷性に、反応速度だと…!?』

デュエルを見ていた月影が驚愕…その反応を見た零児も驚いている…。

 

 

「さらに俺はランク6の『アトゥムス』を素材としてオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップエクシーズチェンジ!戦場を駆け抜けろ!『迅雷の騎士ガイアドラグーン』!!」

 

「『RUM』を使わないランクアップ…!希望の勇士や凌牙と同じか…!」

銀河に飛び込んだ龍王が再誕…馬上槍を構える竜騎士が現れる! ATK2600

 

 

「バトルだ!「エネアード」でダイレクトアタック!シャイニング・フレイム!!」

 

『ぬあああっ!?』

太陽の炎が沢渡を吹き飛ばす!

 

沢渡LP4000→1000

 

 

「さらに『ガイアドラグーン』でダイレクトアタック!螺旋竜突槍!!」

 

『さ、させねぇ!アクションカード──「悪いな、デモンストレーションだが…少し本気を出させてもらう」はっ…!?』

アクションカードを取ろうとジャンプする沢渡…だが、彼は空中で()()()()られてしまう……その手足には仄かな光を放つ魔法陣が嵌められており、遊海の姿は聖刻龍の意匠の鎧を纏った姿に変わっていた。

 

精霊アーマー(メタルナイト)・モード聖刻…決着、だな?」

 

『くっ…ちくしょう!!』

喉元に馬上槍を突き付けられた沢渡は降参するしかなかった…。

 

 

沢渡LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

「な、なんだ…?遊海は何をしたんだ??」

 

「アクションカードではない…しかも、姿が変わっていたぞ…!」

 

「今のは遊海さんの戦闘形態…メタルナイトさ、デュエルモンスターズの精霊の力を纏って…色んな力を使えるのさ」

デュエルが終了し、リアルソリッドビジョンが消えていく中…遊矢と権現坂が沢渡を押さえ込んだ技に驚き…再び凌牙が補足する。

 

 

『デュエルモンスターズの精霊?そんなオカルトな事があってたまるかよ!?リアルソリッドビジョンの手品だろ!?』

 

「まぁ、それが本当なんだけどな!みんな!出てきてくれ!!」

 

《了解です、マスター!》

 

《まぁ、直接見なければ信じるのは難しいだろうて…》

 

《それでも…我らはこうして存在している、それが真実だ》

 

「「「「『なんか出てきた!?』」」」」

精霊の存在を信じない沢渡…それに対し遊海は控えていたアヤカ、メガロック、トフェニを呼び出す…リアルソリッドビジョンではない、そこに生きる『精霊』としての姿を見た遊矢達は目を丸くする…。

 

 

『それが、お前の力か…白波遊海』

 

「ああ、全力ではないけどな!満足したか?赤馬零児」

 

『……ああ、とにかく…お前が本当に()()()である、という事はよく分かった……お前が敵でなくてよかった、と言わせてもらおう』

零児は少し冷や汗を流しながら、遊海の実力を思い知ったのだった。

 

 

 

………

 

 

 

『これで、デモンストレーションは終わった…次は、私達が戦いの場で武器を生かす番となる』

デモンストレーションが終わり、零児はランサーズのメンバーへと向き直る…。

 

 

「……悪い、ちょっといいか?」

 

『どうした?白波遊海』

シンクロ次元への出発を前に…遊海は一度待ったをかける、その理由は──

 

 

 

「凌牙、お前は一度…エクシーズ次元に戻ってくれないか?」

 

「っ!?父さん!?いきなりなんで!?」

遊海の思わぬ言葉に凌牙は取り繕う事を忘れて声を上げる…。

 

「バトルロイヤルでオベリスクフォースと戦った時、少し挑発し過ぎたかもしれない……だから、エクシーズ次元に戻って防備を固め…みんなに俺の無事を知らせてほしい……シンクロ次元と同盟を結び次第、俺もエクシーズ次元に向かう」

それは遊海の知る物語の1つ…ユートや黒咲がスタンダード次元に向かった後からシンクロ次元後にかけて、アカデミアの攻勢がエクシーズ次元を襲うはずなのだ…!

 

 

『白波遊海、凌牙もランサーズの重要な戦力の1人だ…無闇な別行動は避けて貰いたい』

 

「その点は心配ない、俺だけでも2〜3人分の働きはできる…それに、憂いは断った方がいいだろう?」

 

「心配すんな、零児……エクシーズ次元が無事なら、すぐに俺か…俺の仲間をシンクロ次元に向かわせる」

 

『分かった…ならば、エクシーズ次元の事は任せたぞ、凌牙』

凌牙の一時離脱に眉を顰める零児…だが、遊海と凌牙の言葉に渋々、別行動を認めたのだった。

 

 

 

「……黒咲、心配すんな…アカデミアの好き勝手にはさせねぇ…だから、お前もランサーズとして…覚悟が足りない仲間達をサポートしてやってくれ」

 

「凌牙……分かった、お前がエクシーズ次元に『希望』の話を伝えれば…士気も上がるはずだ…!」

 

「そっちは任せたぜ!」キィン─!

黒咲にランサーズを任せた凌牙は一足先にエクシーズ次元へと転移して行った…。

 

 

『よし…次は、私達の番だ!先程渡した「ディメンション・ムーバー」をデュエルディスクにセットし、私の合図で発動せよ!それにより、シンクロ次元へと向かう!』

 

「アヤカ、いけるか?」

 

《ええ、マスター!既にデュエルディスクは次元移動に使用できるように調整済みです、私の移動よりはランダム性が高くなってしまいますが…》

 

「ふっ…移動できれば、なんとかなるさ…フォウ!一応、服の中に居てくれ!」

 

《フォウ!》

アヤカによって次元移動に対応したデュエルディスクに『ディメンション・ムーバー』をセットした遊海はフォウを抱き上げる。

 

 

 

『では…シンクロ次元に出発する!「ディメンション・ムーバー」…発動!!』

 

「「「発動!!」」」

 

 

キィン─!!

 

 

デュエルコートを光が包み込む、それが消えた時…10人のランサーズ達の姿は消えていた…。

 

 

世界を守る為の戦いは…次なる舞台へと進む!




NEXT Episode…?


D・ホイール……デュエルディスクを進化させたそのマシンを駆使し戦う『ライディングデュエル』は…スピードとスリルに溢れた最高のショーであり、自由の象徴だった…!



融合次元へと対抗する為にシンクロ次元へと渡ったランサーズ達…しかし、彼らを待ち受けていたのは…別次元の洗礼であった。

ただ生きる為にデュエルをするコモンズのデュエリスト達

デュエルは娯楽であり…新たな人手を得る手段としか考えないトップス達

そして…シンクロ次元を狙う邪悪な影…混沌とするシンクロ次元…しかし、その混沌を切り裂く…光が現れる!



「シンクロ次元の人々よ!お前達の考えは間違ってる!!思い出してくれ…本当の『デュエル』とは何なのかを!!」



希望の光によって導かれるデュエリスト達…



「この光…暖かい…」

「わたし…知ってる…!この光を!!」

「なんだ…?この胸のザワつきは…沸き上がる思いは!!」

「……WRGP…?ネオ、ドミノシティ…?」

「私…行かなきゃ…!みんなの所に!!」


「集いし願いが…新たに輝く星となる!!光差す道となれ!!」

  



そして…光を塗り潰す闇が目覚める…!


【おお…おおっ!!美しき終わりを世界に──!!】

「させるかよ、俺達がいる限り……邪悪なる闇は祓われる!!」



転生して決闘の観測者になった話 ARC-V編 第三章 近日執筆開始予定…。

 



『なんだ…!?お前は…お前はいったいなんなんだ!?』


「俺か?俺は…世界を守る、決闘者だ!!」









「まさか…私がお前と肩を並べて戦うなんてな……人生とはわからないモノだ」


「ははっ…きっと、5D'sのみんなが聞いたら…驚くだろうな!」


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スタンダード編主要オリキャラマテリアル(真)

 

●榊遊希

 

スタンダード次元編の「主人公」

その正体は…次元分裂に巻き込まれ、自身を無意識に封印した遊海の体に宿ってしまった別の『魂』…取り戻す『記憶』が存在しない存在だった。

 

 

・『白波遊海』では無い為、特典である『不老不死』やそれに付随する『超再生能力』が発動していなかった 

 

・『夢』の形で記憶を思い出していたのは、封印されていた『白波遊海』から漏れ出していた記憶の一部に『共感』していただけ……そもそも、思い出す『記憶』が存在しない。

 

・感情が昂ぶった時に『No.∞』を使う事ができたのは、肉体の危険に遊海の防衛本能が作働いた為で、アストラル文字は認識すらできていない。

 

・『シャイニングドロー』が行えていたのは『魂(精神)が純粋』だった事で肉体に残留していた『ランクアップ』の力を使用できた為。

 

仮に、スタンダード次元に来たのが遊馬&アストラルや十代だった場合、僅かな違和感から遊希の正体に辿り着いていた可能性が高い……凌牙は最初に『赤水晶のペンデュラム』を見た事で、完全に誤認してしまっていた。

 

 

『災厄の悪魔』

 

純粋な「普通の少年」であった榊遊希が日常では触れないはずの強い『悪意』に触れ、友人を失った悲しみ・怒り・憎しみに呑まれて誕生した『生きた災害』

 

憎しみのままに強い『悪意』を抱く者を破壊する…さらに、遊海の力の一部が扱える…その強さはオベリスクフォースを一蹴するほどである。

 

なお、凌牙の手によって倒されていなければ…『災厄の魔王』として覚醒──その力によってスタンダード次元そのものが崩壊、連鎖反応によってズァークが目覚める前にARC次元そのものが消滅していた可能性があった。

 

 

 

 

●白波遊海

 

所属 スタンダード次元防衛隊『ランサーズ』 レジスタンス・チームZEXAL

 

 

榊遊希の本当の姿、我らが『主人公』たる絆の英雄

 

『悪魔が生まれた日』にズァークによる次元分裂に巻き込まれ、重傷の状態で次元の狭間を漂流……その中で自分を守る為に無意識に『自己封印』を行ない、その過程で偶発的に『榊遊希』が誕生…目覚める事ができないまま、5年間眠り続けていた。

 

悪意に呑まれた遊希によって「災厄」として暴走状態に陥ったが、凌牙との魂のデュエルを経て復活する事ができた…だが、「榊遊希」としての記憶は一切覚えていない。

 

また、次元分裂の際に遊海の絆の極致である『NEXUS』の破片…『絆の欠片』が次元や境界を超えて散らばり、各次元に影響を及ぼしている。

 

 

 

●彩華 トフェニ メガロック

 

遊海が頼りにする精霊であり、大切な家族達…次元分裂を防ぐ為に足止めとして遊海と共に戦っていたのだが…詳細不明の事態で遊海と共に昏倒、気付いた時には次元分裂直前という状況だった。

 

次元分裂の寸前に遊海によって『賢者の鍵』の空間に逃され、傷を癒やしながら遊海が開放してくれるのを待ち続けていた。

 

稀にチャンネルが合うと遊希に声が届く事もあったのだが…遊希は精霊の存在を知らなかった為、その声が誰のモノなのかは分からなかった。

 

 

 

 

 

●海馬瀬人 

 

スタンダード次元におけるレオ・コーポレーションのライバル企業、海馬コーポレーションの社長

 

その正体は『次元分割』の際、次元の狭間に散らばった遊海の力の『欠片』──絆の欠片を頼りに『冥界』から『スタンダード次元』に転生してきた遊海の知る本人。

当初は転生前の記憶を忘れていたが、遊希とのデュエルによっていち早く記憶を取り戻していた。

 

当初は『榊遊希』=『白波遊海』だと思っていたが、デュエルディスク返却の際のやり取りから『遊海の魂』が目覚めていない可能性を考えていた。

 

 

 

●海馬モクバ 海馬沙良

 

海馬瀬人の弟であり、海馬コーポレーションの副社長であるモクバと海馬瀬人の前世からの妻である沙良…本来ならば、彼らは転生しなくてもよかったのだが…モクバは兄を支える為に、沙良は瀬人と再び添い遂げる為に冥界から転生してきた。

 

 

 

 

●武藤遊戯 城之内克也 真崎杏子 本田ヒロト 孔雀舞 

 

スタンダード次元における遊希の友人達、その正体は海馬達と同じ経緯で『冥界』から転生してきた本人達。

転生前の記憶は忘れていたが、運命に導かれるように遊希と友人関係となっていた。

特に、舞網チャンピオンシップ・バトルロイヤルにおいて城之内がカードにされてしまった際の『怒り』が遊海の覚醒を促す一因となった。

 

遊海の覚醒による精霊力の発露によって記憶を取り戻し、ランサーズの後詰めとしてスタンダード次元に待機する。

 

余談だが…遊戯達が『スタンダード次元』へ転生した際、彼らの記憶や遊海の『絆の欠片』が不安定な状態だったスタンダード次元に反映され、武藤双六やダイナソー竜崎など…関わりのある人物達の並行存在が誕生している。

 

 

 

●白波凌牙

 

ユート・黒咲と共にエクシーズ次元の使者としてスタンダード次元へとやって来た、白波遊海の『息子』…成人を期に『白波』姓を名乗り、本当の意味で遊海の息子となった。(デュエルネームは神代凌牙のまま)

 

『悪魔が生まれた日』に巻き込まれ、行方不明となった遊海を探す為に新世界『ARC次元』へと突入したが…時空の歪みによる影響で少年期まで肉体年齢が逆行してしまった。

 

 

事前に翠から『スタンダード次元』で起きる事態の概要(ズァークの欠片の存在、遊矢とユートの統合、バトルロイヤルのオベリスクフォース乱入etc)を聞かされていた。

 

遊勝塾とLDSの四番勝負の際、自身が贈った『赤水晶のペンデュラム』を身に着けていた遊希を『記憶と力を失った白波遊海』と思い込んでいたが…実際には僅かに外れてしまっていた……しかし、彼の家族を想う力が遊海の呪縛を解いた事に変わりはない。

 

ユーリとの戦いで傷付いた遊希を治療した事が、ある者の目覚めに繋がった。

 

 

凌牙ランクアップ体(仮)

 

遊海を闇から救う為に凌牙が覚醒した、彼だけの『ZEXAL』形態。

この姿に変化する事で遊海や遊馬と同じドローカードの創造『バリアンズ・シャイニングドロー』が発動できる。

 

……ただし、決闘の中の事であった為…凌牙はこの姿を自覚していない。

 

 

イメージ

頭、顔は普通の凌牙、ただし瞳は赤と青のオッドアイに変化している。

 

体はバリアン体のような深紫色のボディスーツに激瀧帝時代の鎧を纏い、七皇の紋章が輝く

 

デザインイメージはフェイスオフした戦隊ヒーロー

 

 

 

 

●フォウ

 

 

白波家のペットであり、マスコットの白いネコ……その正体は、とある世界では『霊長の殺人者』『災厄の獣』『比較の獣』と呼ばれたアーサー王伝説の怪猫・キャスパリーグ…の並行存在。

 

この世界でも『比較』の理を持つ災厄だったのだが…遊海達家族によって無自覚に浄化され、ZEXAL編終盤で消滅してしまった遊海を蘇らせ…普通の『獣』となった。

しかし、ゆっくりと『再学習』が進み…『悪魔が生まれた日』の頃にはほとんど以前と変わらない状態まで「知性」を取り戻しており、再び遊海と話せるようになっていた。

 

 

「悪魔が生まれた日」の次元分裂を防ぐ為に行方不明となった遊海を探す為にARC次元に突入、肉体年齢が逆行してしまった遊馬や凌牙達のささやかな癒やしとなっていたが…遊海の気配を感じ取り、凌牙のすぐあとにスタンダード次元へと転移した。

 

榊遊希に対しては悪い感情は抱いていない…むしろ、記憶を失い無垢な状態だった為、居心地は良かったらしい……ただし、融合次元の考えに染まっていた紫雲院素良や、ズァークの欠片である遊矢やユートの事は苦手…というより警戒していた。

 

 

今の目標は早く遊海と翠を再会させる事と、メガロックの背中でのんびり日向ぼっこする事。

 

 

 

 

 

●九十九遊馬 観月小鳥 アストラル 白波璃緒 ドルベ 真月 アリト ギラグ ミザエル 不動流星 海亜・アトラス

 

ARC次元に飛ばされたと思われる遊海の救出と不安定なARC次元をズァークの打倒によって安定させようと突入した勇士達。

 

……なのだが、時空嵐の影響で飛行船『遊馬号』が大破、さらにアストラルを除く全員の肉体年齢が少年・少女期の状態まで逆行した状態でアカデミア侵攻初期のエクシーズ次元に不時着してしまった。

翠から次元戦争の詳細を聞いた彼らはエクシーズ次元・レジスタンスに助力…飛行船の修理を行ないながらエクシーズ次元を守る為に戦い、物語が動き出すのを待っていた。

 

 

 

●遊城十代

 

遊馬達と共に遊海を救う為にARC次元に乗り込んだ『流浪のヒーロー使い』

 

…だが、遊馬達と同様に時空嵐の影響で肉体年齢が逆行…デュエルアカデミア在席時代レベルの肉体年齢になってしまう。

なお、ユベルは満更でもない様子である。

 

エクシーズ次元防衛では遊撃を担当しているが……?

 

 

 

●白波翠

 

遊海の妻である、我らがヒロイン。遊海から切り札として『ラーの翼神竜』のフレアを託されている。

遊海を救う為にARC次元に突入したのだが…凌牙曰く、想定外の事態に陥り、元気なものの戦線離脱状態らしい。

 

遊海の代わりにARC-Vの物語の記憶を頼りに、遊馬達やレジスタンスに指示を出している。

 

 

 

●天城カイト オービタル7 デュエルロイド・瀬人 バイロン クリストファー トーマス ミハエル

 

DM世界に残り、遊馬達の後方支援を担当する科学者チーム……だが、ARC次元突入後から遊馬達との連絡が途絶えている為、ARC次元の数値変化を確認する事しかできていない。

 

…しかし、遊海の復活を知らせる『号砲』は彼らにもしっかりと届いている。

 

 

 

 

 

 

 

☆新世界 『ARC次元』

 

ズァークによる暴走事件『悪魔が生まれた日』による次元分割を防ぐ為に遊海達が干渉した結果、ズァークの膨大なカオス・赤馬レイの使用した大自然の力の結晶『エン』シリーズ・アストラルによる『ヌメロン・コード』による次元隔離が干渉しあった事により隔離された世界が新たな『世界』として確立されてしまった次元。

遊海達の暮らす『DM世界』は街1つが更地になる程度の被害と遊海を含む行方不明者3人という被害で収まったが…ARC次元は不安定な状態であり、次元崩壊が起きればDM世界や周辺次元にも大きな被害が及ぶと考えられている。

 

また、ARC次元外周や4つの次元の周囲にはズァークの力の余波による『時空嵐』が発生しており、不用意に次元移動を行ってしまうと…何が起きるか分からない(例 肉体年齢の逆行 転移座標のズレetc…)

 

 

DM世界とは時間の流れが異なり…遊馬達が出発してから、DM世界ではまだ数日しか経っていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●ドン・サウザンド

 

所属 無所属(遊海の精神世界内)

 

 

遊戯王ZEXALの物語の黒幕、アストラル世界を滅ぼす為に暗躍し続けた『混沌の神』

 

ZEXAL編本編後、幕間において遊海に敗れ、全ての力を『CiNo.1000』に籠めて遊海に乗り移ろうとしたが、遊海の自爆によって消滅した…と思われていた。

……だが、次元分裂による遊海の自己封印によって残されていたカオスの浄化が止まり、ユーリ戦の傷を『混沌の後継者』であった凌牙が治療した事で……偶発的に精神世界内で復活してしまった。

 

 

しかし、遊海との最後の問答で何か思う事があったのか…それとも、一部のカオスが浄化されたからか…傲岸不遜な性格は変わらないが、以前までの悪辣さは鳴りを潜めており、『番人』を名乗って過酷な運命を背負った遊希へと道を示した。

 

姿は真ドン・サウザンドの姿だが…胸に輝く紋章は紅ではなく、穏やかな『青』の光が灯っている。

 

遊海の復活後は『観客』として遊海の精神世界に居座っている。

 

 

 

「…いや、さっさと出てけ…………いや、出ていくな!?余計にややこしい事に……!これ以上の厄ネタは勘弁してくれ!?」

 

【クックックッ……忙しない奴だ】



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第3章 疾走決闘次元 シンクロ・シティ
プロローグ〜新たなる戦いへ〜


 

 

キィン─!

 

 

「っ…やっぱり、この移動の仕方は慣れねぇな…」

 

エクシーズ次元・ハートランド…その一角が光に包まれる、その中から現れたのは遊海にエクシーズ次元を任され、一足先に戻ってきた凌牙だった。

 

 

 

「あっ…凌牙!帰ってきたのね!!」

 

「璃緒!そうか、遊園地の中だったのか…運が良かったな」

そこに駆け寄ってきたのは凌牙の妹、璃緒だった…凌牙は運良くレジスタンスの拠点近くに転移する事ができたのだ。

 

 

「そうだ…戦況は!」

 

「今の所は大丈夫!ギラグとドルベが防衛線を作ってアカデミアを押し留めてくれてて、遊馬達がアカデミアを追い払ってくれてる……それより…お父さんは…!!」

 

「ああ…!戻ってきた!!父さんはスタンダード次元にいたんだ!!」

 

「ああ…よかった…!よかったぁぁ!!」

エクシーズ次元の戦況と遊海の無事を報告しあった二人はお互いに抱き合う…これで、目的の1つは達成する事ができたのだ。

 

 

「早く母さんや遊馬達にも教えてあげないと……あれ…?父さんは、一緒じゃないの…?」

 

「ああ、()()が動き始めた…!父さんはランサーズと一緒にシンクロ次元に向かってる……とにかく、みんなを集めて……いや、まずは防衛の強化だ!融合次元が攻勢に出てくるかもしれねぇ!!ランサーズが…父さんが来るまで、耐えきるんだ!!」

 

「わかったわ!!」

凌牙の言葉を聞いた璃緒は慌ただしく駆けていく…融合次元の攻勢を伝える為に…。

 

 

「でも…まずは……」

璃緒に指示を託した凌牙はとある場所へと向かった…。

 

 

………

 

 

「……入るぜ、母さん」

 

「ああ…!凌牙くん!無事でよかった…!!」

そこは負傷したレジスタンスや住民達の治療を行なう野戦病院…()()()()()で前線に立てない翠は負傷者の手当や知識を使った指示出しを主な役目としている。

そこを訪れた凌牙は翠に抱きしめられていた。

 

 

「凌牙くん…!遊海さん、いたんだよね…!スタンダード次元で、戦ってたんだよね…!!」

 

「ああ、ちょっととんでもない状態だったけど……もう大丈夫!オベリスクフォースを一蹴して、ランサーズと一緒にシンクロ次元に向かってる…!」

 

「………一緒じゃ、ないんだ……」

抱きしめた凌牙から遊海の復活を聞かされた翠だったが…まだ、エクシーズ次元に来ないと知って俯いてしまう…。

 

 

「それが…少しややこしい事になっててさ……スタンダード次元に母さん達の知ってる……武藤遊戯さんや海馬社長がいたんだよ……冥界から、()()してきた…」

 

「え…えぇ!?!?それってどういうこと──!?」

 

《……本当に大変だったみたいですね、リョウガ…》

 

「とにかく、向こうであった事を話すよ…ちょっと長くなるけどさ……」

凌牙の思わぬ言葉に戸惑う翠…そんな彼女やフレアに凌牙はスタンダード次元で知った情報を伝える。

 

絶望と孤独の中で戦い続けた…もう1人のデュエリストの事も…。

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

『おい!……おい!しっかりしろって!』

 

「う、ううん……?………きゃあああ!?」

 

『どわぁぁ!?』

眠っていた柚子は誰かに揺さぶり起こされる……そして、目を覚ました柚子は至近距離にあった少年の顔に驚いて、思わず彼を突き飛ばしてしまった…。

 

 

 

 

「……まさか、次元を飛ばされちゃうなんて……」

 

『あー…初めてなら、そりゃビックリするよな…オレも初めて飛ばされた時は焦ったぜ…』

しばらくして柚子、そして少年…ユーゴはお互いの状況を把握する。

 

 

柚子は一晩に渡って遊矢に似た融合次元の少年、ユーリに追いかけ回され…ブレスレットの力でユーリを退けたものの、入れ代わりに現れたユーゴと共に次元を移動……シンクロ次元・シティへとやって来てしまった事。

 

ユーゴはエースモンスター「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」の力によってスタンダード次元に飛ばされ、自分の幼なじみであるリンと柚子を間違えていた事…さらに語感が近い『融合』と間違えられて、融合次元の協力者と思われていた事。

また、リンを攫った相手を融合次元のユーリではなく…エクシーズ次元のユートだと勘違いしていた事も、柚子によって明らかになった…。

 

 

だが、二人は気付いていなかった…そこが───

 

 

『きゃああ!あ、あそこにコモンズが!!』

 

 

『っ…やべぇ!乗れ!柚子!逃げるぞ!!』

 

「えっ…!?どうして!?」

 

『ここはシティの上層民…トップス専用の別荘地だったんだ!下層民…コモンズのオレがこんな所にいたら──セキュリティに捕まっちまう!!』

 

「トップス…?コモンズ……セキュリティ…?」

訳も分からぬままにユーゴのDホイールに乗せられ、逃げ出す柚子……シンクロ次元・シティはスタンダード次元では考えられないほどの『超格差社会』…力が無ければ生き残れない『超競争主義社会』

 

人口の1%に満たない成功者、トップスがシティの富の99%を独占し、スラム街に暮らすコモンズを差別し、蔑む…。

 

 

そして、その街に君臨する王者こそ…コモンズから成り上がった、最強のデュエリスト──『キング』ジャック・アトラス

 

 

 

【前方のDホイール!すぐに止まりなさい!!】

 

『やべっ…セキュリティ…デュエルチェイサーズだ!!』

 

「ちょっと…!?止まらなくていいの!?」

 

『捕まったら、問答無用で収容所送りだぞ!?』

 

「収容所!?」

シティで行われるデュエル大会『フレンドシップカップ』でジャックと戦う事を夢見るユーゴ…だが、その前に権力を振るう『絶対正義』…セキュリティが立ち塞がる!

 

 

 

 

【強制執行開始…お前達をデュエルで拘束する!フィールド魔法『スピード・ワールド─ネオ』セットオン!!】

 

『くそ…!ライディングデュエルの強制執行か…!おい、柚子!見せてやるぜ…この街の()()()()()()()()()()()がどんなモンか!!』

 

「ライディング、デュエル…?まさか…バイクに乗ったまま─!?」

 

 

【『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』】

 

 

 

シティに敷設されたライディングデュエル専用レーンが展開…そしてセキュリティとユーゴのライディングデュエルが始まる…。

 

 

 

 

これは、ランサーズがシンクロ次元に訪れる半日前の出来事である。




「こんにちは、読者のみんな!白波遊海だ!いつも、俺達の物語を応援してくれてありがとう!今日はちょっとお願いがあって、所謂『メタ時空』から話させて貰うよ」


「今、本編の俺達はシンクロ次元に向かってる最中なんだけど…実はS,Kが1つ、スタンダード次元でやり残した事があるらしいんだ……別に、その選択でこのあとの物語に大きく影響が出る…って訳じゃないんだけど……少し物語を遡ってもいいかな?具体的には『幕間〜家族〜』と『Ep.33』の間のお話になるみたいだ……って、また夜の話?俺、どんだけ飛び回ればいいんだ?……まぁ、いいか!」

「ヒントは『因果応報』『勝利』『罰ゲーム』……だってさ、アンケートでみんなの意見を聞かせてくれ!その結果でその物語を書くか、シンクロ次元に突入するか決めるってさ!」


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決闘格差世界・シティ〜遭遇〜

こんにちは!S,Kです!

ついにシンクロ次元へと足を踏み入れる遊海…彼を待つ出会いとは…?

それでは、最新話をどうぞ!


 

 

キィン─!!

 

 

「っ──着いたか…この感覚は、慣れそうにないな…アヤカや遊馬号で移動した方がずいぶんと楽だ…」

 

《もうしばらく我慢してくださいマスター、あの時空嵐は私でも骨が折れそうです……比喩的にですけど》

 

《フォ〜ウ〜…(よ、酔った…)》

 

シンクロ次元・シティ…その一角に粒子が集う、その粒子は人の形となり……少し移動に酔った様子の遊海、そして胸元からげんなりとした様子のフォウが現れた…。

 

 

「うん、雰囲気的にはサテライト……コモンズのエリアか……アヤカ、サーチ頼む」

 

《了解です……赤馬零児・月影、権現坂・デニスがトップスエリアと思われる場所に…黒咲、榊遊矢・沢渡・セレナ・赤馬零羅がコモンズエリアにいるようです》

アヤカが瞬時にシティ全体を検索…ランサーズ達の居場所を把握する。

 

 

「ありがとな、1人の方が動きやすいからちょうどいい……アヤカ、念の為に…識別可能な人物……俺達が()()()()()()()()人の反応を探してくれ」

 

《はい……ヒット、シティ全域に少なくとも9()()分の反応があります……トップス側に5名、コモンズ側に4名ですね……》

 

「やっぱりか…この世界にも、俺の()()の影響があるらしい」

続いての調査結果に遊海はため息を吐く…シンクロ次元、シティ…そのモデルとなっているのはDM世界の『ネオ童実野シティ』…ならば、この世界に存在するのは…。

 

 

「そのうちの6人は『チーム5D's』の()()()()だろう?」

 

《はい、やはりと言うべきか…ジャックとクロウ以外の彼らも…この世界に存在しているようです》

遊海の言葉をアヤカが肯定する…遊海達の世界で『チーム5D's』の仲間達はまだ生きている、流石に決闘者として前線に立つ事はもうできないが…彼らも遊海の無事を祈っている。

 

しかし、それとは別人として…遊星を始めとした彼らがこの次元に生きているようだ…。

 

 

「さて…まずはどうしようかな…?とりあえず、遊矢達がセキュリティに捕まったら助けに行くのは確定として……やっぱり、情報収集かな?」

 

《……マスター、近くに識別可能な人物の反応が2つ……デュエル中のようです》

 

「そうか、行ってみよう…アクセラレーション!!」

アヤカの報告を受けた遊海は喚び出したDホイールに乗り込み、誰かがデュエルしているという場所に向かった…。

 

 

 

………

 

 

 

 

『バトルだ!「メンタルスフィア・デーモン」で「モンタージュ・ドラゴン」を攻撃!!』

 

『ぐおおっ!?』

 

 

デュエルチェイサーズ LP0

 

赤髪のデュエリスト WIN!

 

 

 

『私を舐めるな…!私はこれでもトップレベルのデュエリストだ!もう一度…もう一度ジャック・アトラスと戦わせろぉ!!』

 

『くっそぉ…!おい!応援はまだか!?……別件で出払ってる!?こんな時に…!』

コモンズ区間の一角…そこで1人のセキュリティが暴れるデュエリストに手を焼いていた。

 

暴れる男は元々、シティでもトップレベルのライディング・デュエリストだった…だが、昨年のフレンドシップカップで『キング』ジャック・アトラスに敗れた事で苦渋を舐める事───シティ地下での()()()()をさせられる事になってしまった…。

そして、年季が明けてコモンズに放り出され……再びジャックとデュエルする為に無闇矢鱈なデュエルを人々に仕掛けていた。

 

それを見かねたセキュリティの1人が立ち向かったのだが…逆に返り討ちにあってしまったのだ。

 

 

 

『デュエルだ…!あと1人、あと1人とデュエルすれば!フレンドシップカップへの出場権を…!!』

 

『チィッ…!だから、話を聞きやがれ!?どんなに戦ったって、お前さんには今年の出場権はねぇんだよ!!』

 

『うるさい!うるさい!!うるさい!!!』

セキュリティの話に耳を貸さず、荒ぶる男…その時だった!

 

 

「……これも()()、か……本当に俺とお前には()があるらしい」

 

 

『お前…!早く逃げろ!』

1台のDホイールが倒れ込んだセキュリティと荒ぶる男の前に現れる…それは赤い帽子被った決闘者……遊海だった。

 

 

『そいつは、トップスでも上位レベルのデュエリストだった奴だ!危ねえぞ!!』

 

「心配しないでくれよ()()()()()…治安維持に手を貸そう!」

 

『お前を倒せば…お前を──!!』

ジャックへの復讐…リベンジの為に荒ぶる男、セキュリティに優しく声を掛けた遊海は男と向かい合う!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

遊海LP4000

ディヴァインLP4000

 

 

 

「俺のターン!」

「『闇竜星─ジョクト』を召喚!」

甲羅を背負い、闇を纏った竜が現れる! ATK0

 

「『ジョクト』の効果発動!自分の場にこのモンスター以外のモンスターが存在しない時!手札の『竜星』カード、『地竜星─ヘイカン』と『光竜星─リフン』を墓地に送り!デッキから攻撃力0の『水竜星─ビシキ』と守備力0の『炎竜星─シュンゲイ』を特殊召喚!」

獅子の鬣を持つ炎の竜と甲羅を背負う水の竜が現れる! ATK1900 DEF2000

 

 

「俺はレベル4の『シュンゲイ』とレベル2の『ビシキ』にレベル2の『ジョクト』をチューニング!」

ジョクトが緑色の輪へと変化し、2体の竜を包み込む!

 

4+2+2=8

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に響け!シンクロ召喚!飛翔せよ!!『閃珖竜スターダスト』!」

希望の光を纏う希望の竜が飛翔する! ATK2500→3000

 

 

『あの、ドラゴンは…?』

 

「シンクロ素材となった『シュンゲイ』の効果により『閃珖竜』の攻守は500アップする…先攻は攻撃できない、カードを2枚伏せてターンエンド!」

光の竜を見て何かを感じ取るデュエルチェイサー…そんな彼を気にする事なく、遊海はターンを終えた。

 

遊海LP4000

閃珖竜 伏せ2 手札0

 

 

 

『私のターン!ドロー!!』

『速攻魔法「緊急テレポート」を発動!デッキからレベル3のサイキック族モンスター「調星師ライズベルト」を特殊召喚!』

次元の歪みから2匹の黒犬を従えた異形のサイキッカーが現れる! ATK800

 

 

『「ライズベルト」の効果発動!このモンスターが特殊召喚された事で自身のレベルを3まで上げる事ができる!』

 

ライズベルト ☆3→6

 

『さらに手札から「クレボンス」を召喚!』

道化師のようなサイキッカーが現れる! ATK1200

 

 

『私はレベル6の「ライズベルト」にレベル2の「クレボンス」をチューニング!』

 

6+2=8

 

『逆巻け!我が復讐の黒炎よ!!シンクロ召喚!レベル8「メンタルスフィア・デーモン」!』

悪魔の骸骨のような異形のモンスターが現れる! ATK2700

 

 

『さらに私は墓地のレベル3『ライズベルト』を除外する事で永続魔法「フューチャー・グロウ」を発動!その効果により、除外した「ライズベルト」のレベル✕200、自分フィールドのサイキック族モンスターの攻撃力がアップする!』

ライズベルトの幻影が異形のサイキッカーに力を与える!

 

メンタルスフィア ATK2700→3200

 

 

『ドラゴンの攻撃力を上回りやがった…!』

 

『バトルだ!「メンタルスフィアデーモン」で「閃珖竜スターダスト」を攻撃!』

 

「『閃珖竜』の効果発動!1ターンに1度、戦闘・効果による破壊を無効にする!波動音壁(ソニック・バリア)!!くっ…!」

黒い炎を纏ったエネルギー弾が閃珖竜を直撃…だが、鉄壁の守りによって破壊は免れる!

 

遊海LP4000→3800

 

 

『私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

ディヴァインLP4000

メンタルスフィア フューチャーグロウ 伏せ1 手札2

 

 

 

『私は許さない…!私を見下したアイツを!冷たい目で私を見下したジャック・アトラスを!!』

 

「……お前がどれだけ悔しい思いをしたのかは、俺には分からない……だが、その怒りを他人に向けるのは違うぞ!ディヴァイン!」

 

『うるさい…!さっさと私に倒され、糧となれ!!』

荒ぶるディヴァインに声を掛ける遊海…だが、憎しみと怒りに囚われた彼はその言葉に耳を貸す事はなかった…。

 

 

「お前が()()道を踏み外す前に……俺が、お前を止める!!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「よし…!魔法カード『竜星の軌跡』を発動!墓地の『ジョクト』『シュンゲイ』『ビシキ』をデッキに戻し、2ドロー!!…さらに、『風竜星─ホロウ』を召喚!」

風を纏う細身の竜が現れる! ATK0

 

「そして永続罠『竜星の具象化』を発動!さらに、手札から魔法カード『ブラック・ホール』を発動!フィールドのモンスター全てを破壊するが…『閃珖竜』は自身の効果で破壊を免れる!波動音壁(ソニック・バリア)!」

 

『ちいっ!?』

フィールドに全てを飲み込む穴が出現…閃珖竜以外のモンスターは宇宙の塵と消えてしまう!

 

 

『だが、甘いんだよ!罠カード「リビングデッドの呼び声」発動!墓地の「メンタルスフィアデーモン」を特殊召喚!そして攻撃力は永続魔法「フューチャーグロウ」の効果で600アップする!』

異形のサイキッカーが蘇る! ATK2500→3200

 

 

『残念だったなぁ…!お前のモンスターでは、私のモンスターは倒せない!!』

 

「それはどうかな…!俺の勝利への方程式は、既に完成している!」

 

『なにっ…!?』

 

「永続罠『竜星の具象化』の効果!自分のフィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された時、デッキから新たな『竜星』モンスターを呼び出す事ができる!再び現れろ!『シュンゲイ』!」

再び鬣を持つ竜が現れる! ATK1900

 

 

「そして『ホロウ』が破壊された事で効果発動!デッキから新たな『竜星』を呼び出す!来い!『地竜星─ヘイカン』!」

虎の頭を持つ竜が現れる! ATK1600

 

「さらに!フィールドの『竜星』モンスターが戦闘・効果で破壊された時!墓地の『光竜星─リフン』は特殊召喚できる!ただし、このモンスターはフィールドを離れた時に除外される!」

天空から光輝く鯱鉾のような竜が現れる! ATK0

 

 

「俺はレベル4の『シュンゲイ』とレベル3の『ヘイカン』にレベル1の『リフン』をチューニング!!」

 

 

4+3+1=8

 

 

「星を流れる龍脈よ!その力を束ね、輝く星を具象化せよ!シンクロ召喚!『輝竜星ーショウフク』!」

輝きを纏い、鬣を生やした雄々しき虎の竜が現れる! ATK2300→2800

 

 

『シンクロ素材となった「シュンゲイ」の効果により、攻守は500アップする…さらに『ショウフク』の効果発動!このモンスターのシンクロ素材となった幻竜族の属性につき1枚、フィールドのカードをデッキに戻す!シンクロ素材としたのは炎の「シュンゲイ」!地の「ヘイカン」!光の「リフン」!よって、お前の場の「メンタルスフィアデーモン」「リビングデッドの呼び声」「フューチャーグロウ」をデッキに戻す!龍脈の氾濫!』

 

『なんだと!?』

ショウフクの咆哮と共に大地の龍脈から光が溢れ出し、ディヴァインの場を押し流す!

 

 

「バトルだ!『ショウフク』でダイレクトアタック!」

 

『ぐううっ!?』

ショウフクの火球がディヴァインに直撃する!

 

ディヴァインLP4000→1200

 

 

「『閃珖竜』でダイレクトアタック!!世界へ響け!流星閃撃(シューティング・ブラスト)!!」

 

『があああっ─!?』

閃光の一撃がディヴァインを直撃…シンクロ次元における初デュエルに終止符を打った…!

 

 

ディヴァインLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

『くそ…!くそぉ!!』

 

「落ち着けよ…そんなに行き急いだって良い事ないぞ?」

デュエルが終わり、倒れ込んだディヴァインに遊海は穏やかに声をかける…。

 

 

「お前は上位からコモンズに落とされて、悔しいんだろ?でもさ…逆に考えろよ…自分はこれ以上()()()()()()()んだってさ」

 

『落ちる事は、ない…?』

 

「そうそう、水が雨となって地面に落ちて…それが蒸発して空に戻るみたいにさ…落ちきったなら、あとは登るだけさ!そうだろ?地道に頑張ってれば…生きてればなんとかなるさ!」

 

『生きていれば…なんとでもなる、か………ああ、少し…胸が軽くなったような気がする…』

遊海の言葉を聞いたディヴァインから狂気が抜けていく…その表情は先程までとは違い、穏やかなモノになっていた。

 

 

『……すまなかった、私はどうかしていたらしい…』

 

「ふっ、気にすんなよ!また何処かでデュエルしよう!」

 

『ああ…!』

ディヴァインは遊海の手を借りて立ち上がり、自分を鍛え直す為に去っていった…。

 

 

 

『………あー……こちらデュエルチェイサー003、コモンズE5地区の問題は解決した!応援は不要!以上!』

 

「おっと…余計な事しちゃいました?」

 

『いや、別に構わねぇよ!俺だってやたらめったらに逮捕してぇ訳じゃねぇからな』

セキュリティへの無線報告を聞いた遊海はデュエルチェイサー003に問いかける…だが、彼は手をヒラヒラと振って応えた。

 

 

『にしても…お前さん、この辺りでは見ない顔だな?』

 

「別の街から旅行に来たんですよ!まぁ、手持ちがないのでトップス地区には泊まれないから…コモンズ地区ならと探してた所で…」

 

『なるほどなぁ…そんだけデュエルが強けれは、すぐに小金くらいは稼げると思うが…』

003の問いかけに嘘を交えながら答える遊海…どうやら、彼は比較的良心的なセキュリティであるらしい。

 

 

『よし…助けて貰った礼だ!泊めてくれそうな奴の所に連れてってやるよ!ちょいと()()だが…まぁ、気のいい奴さ!』

 

「ありがとうございます!助かります!(この感じ、もしかして…?)」

遊海に宿になり得る場所を紹介してくれる人物を紹介するという003…その言葉に遊海は予感を感じていた。

 

 

 

 

 

 

『お〜う、儲かってるか?』

 

「……なんだ、お前か」

 

『なんだよ!相変わらず付き合いわりぃなぁ…』

Dホイールで走る事数分、コモンズ地区の倉庫街へとやって来た遊海とデュエルチェイサー……彼が声を掛けたのは、顔をオイルまみれにした青いジャケットを着て、黄色のメッシュ混じりの黒い髪を逆立てた青年だった。

 

 

 

 

「今日は何の用だ?またDホイールを壊したのか?」

 

『違う違う!ちょっと世話になった奴の面倒を見て欲しいのさ!え〜っと……おい、赤帽子のあんちゃん!名前は?』

 

「……俺は…遊海、白波遊海っていいます」

 

『遊海か…いい名前だな!コイツは()()()()、この辺りで機械整備とかDホイールの修理やらをやってる…まぁ、俺の腐れ縁さ!』

 

「腐れ縁…というより、お前がオレを窃盗犯と間違えたんだろ?()()…オレは便利屋じゃないんだぞ」

 

『まぁいいじゃねぇかよ〜!遊海はなかなか腕が立つデュエリストでさ、泊めがてら用心棒でもやってもらえよ!この辺りも最近物騒だしよ……』

 

「多少なら機械いじりもできる…お前の邪魔はしないよ、少しの間、間借りさせてくれないか?」

 

「………分かった、よろしくな…遊海」

 

「ああ、こちらこそ!」

思わぬ形で出会った二人は握手を交わす、その出会いは何をもたらすのか…?



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この世界〜自由の象徴〜

こんにちは!S,Kです!

シンクロ次元に降り立った遊海…彼はこの世界で何を為す…?


それでは、最新話をどうぞ!


『遊海、プラスドライバーを取ってくれ』 

 

「ほいよ……よし、ラジオの修理終わったぞ〜」

 

『…ありがとう、こっちのデュエルディスクも…もう少しで終わる』

 

《すっかり馴染んでますね、マスター…》

 

《フォウ…(図太いというか…流石というか…)》

シンクロ次元に突入して数日、遊海は遊星と共に機械修理に精を出していた。

本来、遊海は機械修理などは馴染みが薄いのだが…瀬人の指令で度々、カイト達の研究に顔を出しているうちに最低限の修理ができるようになっていたのだ…。

なお、分からないモノはアヤカの知識に頼っている。

 

そんなこんなで遊星に協力しているうちに…この世界の遊星の事情も分かってきた…。

 

 

「(元はトップス出身…不動博士が権力争いに巻き込まれて収容所に……シンクロ次元らしいといえばらしい内容だな……ここまで再現する事はないだろうに……)」

トースターの修理をしながら遊海はこの世界の遊星の人生を振り返る…。

 

DM世界と同じく、シンクロ次元でも永久機関『モーメント』の開発者となった不動博士の息子として生まれた遊星…だが、不動博士が権力争いに巻き込まれて逮捕…遊星と母はコモンズ地区へと流れ着いた。

その中で母はトップス地区へ出稼ぎに…遊星は此処で修理屋をしながら父の帰りを待っているのだそうだ。

 

そして…意外な繋がりなのだが…。

 

 

「(こっちでも…3()()()()は変わらない、か…)」

遊星・ジャック・クロウの三人はこの次元でも経緯は違うが()()()()らしい、ジャックがトップスに成り上がってからは顔を合わせる事もないらしいが……その話を聞いて遊海は納得していた。

 

シンクロ次元の王者、ジャック・アトラスのエースたる『レッドデーモンズ・ドラゴン・スカーライト』の折れた右角と右腕の傷は過去の激しい戦いによるモノ…とされている、おそらく…フレンドシップカップに挑戦するジャックと遊星が…()()()のような激しい戦いを繰り広げたのだろう。

 

 

 

「遊星、頼まれた分の修理は終わったぞ〜」

 

『分かった…オレも一区切りつけよう』

考えに耽りながらも修理を終えた遊海は遊星へと声をかける…そして、2人はひと息入れる事にした…。

 

 

 

 

『……ありがとう、遊海…お前のおかげで仕事が捗るよ』

 

「いや…困った時はお互い様さ、俺も屋根のある場所を貸してもらってありがたいからな!」

 

《フォウ、フォーウ!》

 

『ははっ…フォウ、だったか?すっかり懐かれてしまったな…』

 

「それだけお前の事を信頼してるって事さ!」

コーヒーを飲みながら遊星と遊海はお互いに礼を言い合う…そんな遊星にフォウがじゃれつき、遊星も嬉しげな表情で笑っている。

 

 

『そう言えば旅人だと言っていたが…目的地は何処なんだ?』

 

「最終目的地は…ちょっと遠い所にあるんだが……今の目的地は……俺の奥さんの所、かな……長い間会えてなくてな…」

 

『……結婚していた、のか…!?てっきり、オレの1つか2つ年上くらいかと……』

 

「そんな驚く事か!?いや、()()()()()()方だけどさぁ!?」

遊海の目的地を聞いた遊星の驚き様に遊海がツッコむ…遊星は驚くあまりに目が点になっていた。

 

 

「ちょっと事情があって連絡が取れてなくてな…きっと怒ってるか……泣いてるかもなぁ……」

 

『オレも…父さんに早く会いたいな……面会もさせて貰えない……生きている事だけは、確かなんだ……』

 

「そっか……遊星、お前はこの街の在り方についてどう思う?」

遊海の惚気話を聞いた遊星の表情が沈む、それは未だに囚われている父を思うが故…そんな遊星に遊海が問いかける。

 

 

『1%の成功者が99%のコモンズを支配する……きっと、この形は()()()()()…それでも、オレにはそんな街を変えるだけの力は無い……今を生きるだけで精一杯だからな…』

格差社会を間違っていると言う遊星…しかし、彼は力なく笑っていた…。

 

 

『時々、思うんだ……何処かから、この街を変えてくれる()()()()が現れて……歪んでしまったこの街を変えてくれないか…って……そうすれば、トップスもコモンズもなく…きっと、みんなが笑顔で過ごせるのにって……』

 

「なら…お前がその『英雄(ヒーロー)』になればいいじゃないか?」

 

『えっ…?』

 

「この街には、誰もがヒーローになれる可能性を示す場が…フレンドシップカップがあるんだろ?そこで優勝して『キング』になればいい……コモンズの星と言われてるジャック・アトラスみたいに」

遊星の言葉を聞いた遊海はなんて事ないような口ぶりで遊星に語りかける…それは元の世界の遊星を知る、遊海だからこその言葉だった。

 

 

「俺の友人に、それを成し遂げた奴がいたんだ……スラム街から群雄割拠のデュエル大会に挑戦して…たくさんの陰謀やライバル達、苦難を乗り越えて『英雄』と呼ばれ……街を救った男がさ」

 

『そんな奴が本当にいるのか…世界は広いな…』

遊海の()()の話を聞いた遊星は驚きながら笑う、その話をする遊海は…本当に嬉しそうだったからだ…。

 

 

 

「さて…遊星、気分転換がてらにライディングデュエルでもしないか?あんまり籠もってばかりだと健康に悪いぞ?」

 

『ふっ…そうだな、久しぶりに受けて立とう!』

遊海の誘いに乗った遊星は倉庫の奥へと向かう、そこにはシートを掛けられた赤いDホイール──遊星号が走り出す時を待っていた…!

 

 

 

………

 

 

 

【ライディングデュエルが開始されます、一般車両は速やかに退避してください…繰り返します──】

 

シティのコモンズ専用デュエルレーン…そこを2台のDホイールが駆け抜けていく…!

 

 

 

『フィールド魔法「スピード・ワールド─ネオ」発動!』

 

「フォウ!しっかり見てろよ〜!」

 

《フォウ!キューウ〜!?(前から思ってたけど!走りながらデュエルする意味あるの─!?)》

フォウの真っ当なツッコミを受けながら…ライディングデュエルの準備が整った…!

 

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

 

 

遊海LP4000

遊星LP4000

 

 

フィールド魔法『スピード・ワールド─ネオ』発動中

 

 

 

「先攻は俺か…俺のターン!」

「俺はモンスターを伏せ、ターンエンド!」

 

遊海LP4000

セットモンスター 手札4

 

 

 

『まずは様子見か?ならば…オレは攻める!』

 

 

 

『オレのターン、ドロー!』

『魔法カード「調律」を発動!デッキから「ジャンク・シンクロン」を手札に加え、デッキの一番上のカードを墓地に送る!』

 

墓地送り

ドッペルウォリアー

 

 

『そして「ジャンク・シンクロン」を召喚!』

小型のエンジンを背負ったオレンジ色のロボットが現れる! ATK1300

 

『「ジャンクシンクロン」の効果発動!召喚に成功した時、墓地のレベル2以下のモンスターを守備表示で効果を無効にして特殊召喚する!蘇れ!「ドッペル・ウォリアー」!』

黒い軍服を着た兵士が現れる! DEF800

 

『オレはレベル2の「ドッペルウォリアー」にレベル3の「ジャンクシンクロン」をチューニング!』

 

2+3=5

 

『集いし星が新たな力を呼び起こす!光差す道となれ!シンクロ召喚!!いでよ!レベル5!「ジャンク・ウォリアー」!!』

星の力が重なり合い、白いマフラーを靡かせる青き戦士が現れる! ATK2300

 

 

 

『そして!シンクロ素材になった「ドッペルウォリアー」の効果発動!レベル1、攻撃力400の「ドッペルトークン」2体を攻撃表示で特殊召喚!!』

小柄な兵士達が現れる! ATK400 ATK400

 

『さらに!「ジャンクウォリアー」の効果発動!このカードがシンクロ召喚に成功した時、このモンスターの攻撃力に自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力を加える!パワー・オブ・フェローズ!』

仲間との絆を得て、青き戦士は力を増す!

 

ジャンクウォリアーATK2300→3100

 

 

「ほう…!攻撃力3100か…!!」

 

『バトルだ!「ジャンクウォリアー」で裏守備モンスターを攻撃!』

 

「セットモンスターは『ライトロード・ハンター ライコウ』!リバース効果発動!『ジャンクウォリアー』を破壊し、デッキトップ3枚を墓地に送る!」

 

『なにっ!?』

飛び出した光の猟犬がジャンクウォリアーに飛び掛かり、相討ちになる!

 

遊海 墓地送り

 

ライトロード・スピリット シャイア

プリースト ジェニス

黄昏ライコウ

 

 

『だが、バトルは続いている!2体の「ドッペルトークン」でダイレクトアタック!』

 

「流石にそう上手くはいかないか!うおおっ!?」

小さな兵士の銃撃が遊海のライフを削る!

 

遊海LP4000→3600→3200

 

 

『オレはカードを3枚伏せ、ターンエンド!』

 

遊星LP4000

ドッペルトークン ドッペルトークン 伏せ3 手札2

 

 

 

「いいリカバリーだ…!俺も本格的に動かせてもらうぞ!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『ソーラー・エクスチェンジ』を発動!手札の『ライトロード・ビースト ウォルフ』を墓地に送り!デッキから2枚ドローし、さらにデッキトップ2枚を墓地に送る!」

 

墓地送り

メイデン ミネルバ

アサシン ライデン

 

 

「墓地に送られた『ライトロード・メイデン ミネルバ』の効果発動!さらに1枚をデッキトップから墓地に送る!」

 

墓地送り

アーチャー フェリス

 

 

「よし!モンスター効果によってデッキから墓地に送られた『ライトロード・アーチャー フェリス』の効果発動!このモンスターを特殊召喚!」

 

『デッキから墓地へ送られる事での特殊召喚…!それがそのデッキの強みか!』

緑色の髪に猫耳を生やした狩人が現れる! DEF2000

 

「さらに『ライトロード・サモナー ルミナス』を召喚!」

踊り子のような衣装の召喚士が現れる! ATK1000

 

 

「『ルミナス』の効果発動!手札の『ライトロード・マジシャン ライラ』を墓地に送り、墓地の『ライトロード・アサシン ライデン』を特殊召喚!」

短刀を構えた暗殺者が現れる! ATK1700

 

 

「『ライデン』の効果発動!デッキトップ2枚を墓地に送り、その中に『ライトロード』モンスターがいた時、攻撃力が200アップする!」

 

墓地送り

隣の芝刈り

シーフ ライニャン

 

ライデン ATK1700→1900

 

 

「そして俺はレベル3の『ルミナス』にレベル4の『フェリス』をチューニング!!」

 

3+4=7

 

「平和の祈りが異界の勇者を呼び覚ます!悪を裁く光となれ!!シンクロ召喚!!光臨せよ!『ライトロード・アーク ミカエル』!」

天空の彼方から白い巨龍を操る天使長が現れる! ATK2600

 

 

「攻撃力2600…!」

 

「『ミカエル』の効果発動!ライフを1000払い、相手フィールドのカード1枚を除外する!右の伏せカードを除外!」

 

『くっ…!「緊急同調」が…!』

ミカエルの光の斬撃が遊星の罠を切り飛ばす!

 

遊海LP3200→2200

 

 

「バトルだ!『ミカエル』で『ドッペルトークン』を攻撃!ジャッジメント・ブレス!」

 

『やらせない!リバース罠「くず鉄のかかし」!その攻撃を無効にし、このカードは再びセットされる!』

 

「上手いな!」

裁きの炎が鉄のかかしに受け止められる!

 

 

「でも、まだ攻撃は残ってる!『ライデン』で『ドッペルトークン』を攻撃!」

 

『くっ…!』

ライデンの短刀の一閃が兵士を貫く!

 

遊星LP4000→2500

 

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!そして『ライデン』と『ミカエル』の効果が起動!デッキトップからそれぞれ2枚と3枚、カードを墓地に送る!」

 

墓地送り

裁きの龍

閃光のイリュージョン

 

ソーラーエクスチェンジ

妖精伝姫─シラユキ

ウォリアー ガロス

 

遊海LP2200

ミカエル ライデン 伏せ2 手札1

 

 

 

 

『強いな、遊海!以前のフレンドシップカップで同じ『ライトロード』使いのデュエルを見た事があるが…それよりもお前の方が強い!』

 

「ふっ…そうか?そう言ってくれるなら嬉しいな!」

 

『でも…このままでは終わらない……いくぞ!』

 

 

 

 

『オレのターン…ドロー!』

『行くぞ!「シンクロン・キャリアー」を召喚!』

背中にクレーンを背負ったロボットが現れる! ATK0

 

『「シンクロンキャリアー」が存在する時、オレは通常召喚に加えて「シンクロン」モンスターを召喚できる!現われろ!「シンクロン・エクスプローラー」!』

胸元に穴の開いた小さな赤いロボットが現れる! ATK0

 

 

『「シンクロンエクスプローラー」の効果発動!墓地の『シンクロン』モンスター、「ジャンクシンクロン」を効果を無効にして特殊召喚できる!』

赤いロボットの胸元からジャンクシンクロンが飛び出す! ATK1300

 

 

「むっ…!?この感じは……来るか…!」

 

『オレはレベル1の「ドッペルトークン」とレベル2の「シンクロンキャリアー」「シンクロンエクスプローラー」にレベル3の「ジャンクシンクロン」をチューニング!!』

 

1+2+2+3=8

 

『集いし闘志が怒号の魔神を呼び覚ます!光差す道となれ!!シンクロ召喚!!粉砕せよ…レベル8!「ジャンク・デストロイヤー」!!』

遊星の場に破壊者の名を持つ大型ロボットが現れる! ATK2600

 

 

「げっ……ちょっとやばいか…!?」

 

『「ジャンクデストロイヤー」の効果発動!シンクロ召喚に成功した時、シンクロ素材としたモンスターにつき一枚!フィールド上のカードを破壊する!破壊するのは「ミカエル」「ライデン」そして右側の伏せカード!タイダル・エナジー!!』

 

「うおおっ!?」

破壊の波動が遊海のモンスター、そして伏せられていた『黄昏の交衣(トワイライト・クロス)』を消し飛ばす!

 

 

「破壊された『ミカエル』の効果発動!このカードが破壊された時、自身以外の墓地の『ライトロード』モンスターを任意の枚数デッキに戻し、1体につき300ライフ回復する!戻すのは8枚!リターン・リカバリー!!」

遊海の墓地から光が溢れ、ライフを回復させる!

 

遊海LP2200→4600

 

 

『バトルだ!「ジャンク・デストロイヤー」でダイレクトアタック!デストロイ・ナックル!!』

 

「うああああっ…!!?」

強烈な拳が遊海に直撃、Dホイールを大きく揺らす…!

 

 

遊海LP4600→2000

 

 

「っと、危ねぇ〜!!こんな強烈な攻撃は()()()()だ…!」

遊海はなんとかDホイールを立て直してため息をつく…このデュエルは通常のソリッドビジョンではなく、リアルソリッドビジョンで行われている…久々のライディングデュエルという事もあって遊海は冷や汗をかいていた…。

 

『オレはこのままターンエンド!』

 

遊星LP2500

ジャンクデストロイヤー 伏せ2 手札1

 

 

 

「やっぱりいいもんだな、ライディングデュエルは!走ってる間はごちゃごちゃした事を忘れていられる!」

 

『ああ!このライディングデュエルが…オレ達、コモンズの自由の象徴なんだ!』

遊海の言葉に遊星は楽しそうに笑う…この次元における『ライディングデュエル』誕生の経緯はDM世界とは違う。

 

トップスに虐げられていたコモンズの若者達が日頃の鬱憤を晴らす為、バイクに乗ってデュエルをしながらトップスのハイウェイに乗り込んでいったのがその起源……最初こそ、突拍子もない行為にトップス達は目を丸くした…だが、すぐにその面白さに気付いた彼らは同じようにライディングデュエルを始め──そして、コモンズを牽制する為にセキュリティの新たな部隊、デュエルチェイサーズを誕生させたのだ…。

 

 

 

「ああ、やっぱり…デュエルは楽しく、楽しませるモノ…それが、俺の原点だ…」

スピードに体を委ねながら、遊海は目を閉じる…そこに浮かぶのは遊海の原点──仲間達と楽しくデュエルをする光景だった…。

 

「(だからこそ…俺は融合次元を許さない、デュエルを()()()()()にする奴らを……それを止める為に、俺は……全力を尽くす!!)」

 

 

 

「いくぜ、遊星!俺のターン!ドロー!!」

「罠カード『ライトロードの裁き』を発動!…このカードをデッキトップに戻す!」

 

『なに…?』

遊海は静かに発動したカードをデッキトップに戻す…それが、勝利への道に繋がる!

 

 

「さらに永続魔法『ライトロードの神域』を発動!その効果によって手札の『ライトロード・メイデン ミネルバ』を墓地に送り、墓地の『ライトロード・サモナー ルミナス』を手札に加える…さらに、墓地に送られた『ミネルバ』の効果でデッキトップを墓地に送る…墓地に送られたのは、先程デッキトップに置かれた『ライトロードの裁き』!」

墓地にカードが送られた瞬間、一筋の光が天へと伸びる!

 

 

「『ライトロードの裁き』はモンスター効果によって墓地に送られた時、真価を発揮する!デッキから『裁きの龍』を手札に加える……そして!自分の墓地に4種類の『ライトロード』が存在する時、このモンスターは特殊召喚できる!!現われろ!『裁きの龍(ジャッジメント・ドラグーン)』!!」

天空に伸びた光が異次元への扉を開く…そして、美しき純白の巨龍を現世へと呼び出した! ATK3000

 

 

『攻撃力、3000…!』

 

「『裁きの龍』の効果発動!自分のライフを1000払い、このカード以外のフィールドのカード全てを破壊する!カタストロフ・レイ!!」

 

『なんだと─!?』

それは正義を司るライトロードの最終兵器…裁きの光がフィールドを更地へと変えていく…!

 

 

遊海LP2000→1000

 

 

「『裁きの龍』で遊星にダイレクトアタック!裁きの息吹(ジャッジメント・ブレス)!」

 

「うおおっ…!?」

強力な裁きの火球が遊星の近くに着弾…久々のライディングデュエルは遊海の勝利で決着した…。

 

 

遊星LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

「いい気分転換になったな!遊星!」

 

『ああ!いいデュエルだった…遊海は強いんだな!』

 

「やっぱり旅をしていると荒事も多くてな…それに、人助けするには力がないとな!」

ライディングを終え、お互いに検討を讃える遊海と遊星…その中で遊星は遊海の実力の高さに気が付いていた…。

 

 

「さて…倉庫に戻って修理の続きといこうか!」

 

『ああ、新しい客も待っているかもしれないからな』

 

《キュウ…フォーウー……(遊海、運転荒すぎだよ〜…)》

 

「おっと…!?ごめんごめん…後でブラッシングしてあげるから許してくれな…」

激しいライディングで目を回してしまったフォウに謝りながら、2人は帰路についた。

 

 

 

…………

 

 

 

「ん……遊星、悪いな!ちょっと先に行っててくれ!すぐに行く」

 

『わかった』

何事もなく倉庫前に着いた遊海だったが…何かに気付いて遊星を先に行かせると、近くの路地に入り込んだ…。

 

 

 

 

「……いるんだろ?月影」

 

『…拙者の隠形に気付くとは…流石ですな、遊海殿』

路地に入り込んだ遊海が虚空に声をかける…すると音もなく、ランサーズの一人である忍者・月影が姿を現した。

 

 

「蟻の子一匹逃さないとは言わないが…常にレーダーは張ってるからな」

 

『なるほど……しかし、あまりにもコモンズに馴染み過ぎて拙者も見つけるのに苦労した……コホン、ランサーズの状況を伝える……現在、10人中6人がシティの収容所に囚われている』

 

「何をやってるんだ、何を……」

月影の言葉に事情を知っているとはいえ、遊海は頭を抱える…。

 

 

シンクロ次元にランサーズが突入する前、ユーゴと柚子が問題を起こしてしまい、2人は指名手配されてしまう…そこへほぼ同一人物である遊矢とセレナ、そして仲間である沢渡と零羅がコモンズエリアが現れた事で、セキュリティに襲われてしまう……それを助けたのがこの次元のクロウ・ホーガンと仲間達だった。

だが、セキュリティの捜査網を甘くみた結果…月影に連れ出された零羅以外は収容所に送られてしまう。

 

一方、トップスエリアの権現坂とデニスは大道芸のようなエンタメデュエルで注目を集めた結果、地下デュエルに誘われて黒咲と再会…その後、地下デュエル摘発に来たセキュリティに捕まって…同じく収容所送りにされてしまうのだ。

 

  

 

『零児殿がシティの最高意思決定機関、行政評議会との交渉中…近いうちに釈放されるはずだが……』

 

「……行政評議会とセキュリティ…治安維持局は一枚岩じゃない……そもそも、遊矢達も脱獄を狙うだろうな」

 

『……ですな……』

シティには2つの権力がある、1つは老人5人で構成される『行政評議会』…今の『平穏』を維持しようとする事無かれ主義者の集まりであり──治安維持局の上位組織。

 

そしてもう1つが『治安維持局』…本来ならば、普通の警察──治安維持部隊なのだが、長官ジャン・ミシェル・ロジェは行政評議会以上にコモンズを差別し、トップスとの確執を広げている原因になっている…。

 

 

 

「遊矢達が捕まって何日経った?」

 

『2日、だな』

 

「そうか…なら、俺が行こう……知り合いの親も、無辜の罪で捕らわれているそうだからな」

 

『っ…遊海殿!?それは──』

 

「無辜の罪で捕らわれている仲間がいるなら…俺はそれを助ける、それが…俺のやり方だ………止めたいなら零児に発破かけてこい…『俺はこの街の在り方に怒っている』とな」

 

『っ──!』

遊海の怒気の乗った言葉に、月影は急いで零児のもとへ向かった…。

 

 

 

「ちょっと、脅かし過ぎたかな…?」

 

《……マスター、少し悪者みたいでしたよ?》

 

「まぁ、トップスから見れば俺達は悪人だろうなぁ…なんせ、彼らの()()()()()を壊そうとしてるんだから」

夜の帳が落ち始めた空を見上げながら、遊海は呟く…。

 

「でも…見てられないんだよ、仲間の……遊星の悲しそうな顔は…!!」

この世界では他人であろうとも……遊海は仲間の笑顔を守る為に、力を振るう!



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塀の中の任侠道〜ドローを捨てた男〜

こんにちは!S,Kです!

再びのミニスランプ+忙しさ+FGOのBOXイベで執筆が遅れました!すいません!!
まだ12月始めまで慌ただしいので少し間が空いてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします!

それでは、最新話をどうぞ!


 

 

「離せ!このオレを誰だと思ってやがる!?」

 

「くそっ…!おい!!ガキ共には手を出すんじゃねぇぞ!!」

 

『うるさい!黙って入れ!!』

 

 

時は遊海と月影の再会から2日ほど遡る…シンクロ次元に転移した遊矢・セレナ・沢渡・零羅の4人は人違いによってシンクロ次元の警察『セキュリティ』に狙われてしまう…事態を把握できないままセキュリティに捕まりかけた遊矢達を救ったのはコモンズのDホイーラー、オレンジ色の髪を逆立てた青年、クロウ・ホーガンと紫色の髪に青いメッシュの入った青年、シンジ・ウェーバーを始めとした仲間達だった。

 

子供である零羅を守ろうとした遊矢の姿を見て、彼らを助けたクロウ…そして、遊矢達は彼が世話する孤児達、アマンダ・フランク・タナーによってシンクロ次元の現状を教えられる…。

 

そんな中、遊矢とクロウはお互いの『幸せ』に関する価値観…楽しい『笑顔』か、満たされた『空腹』か…という違いで衝突してしまう……のだが、そこへセキュリティが突入……遊矢達は捕縛され、護送車へと押し込まれてしまった…。

 

 

 

 

 

 

「どうしよう!零羅が…!?」

 

「……心配するな…零羅は無事だ、混乱に乗じて月影が連れ出した……おそらく、私達の……零羅の事を探していたんだろう」

 

「月影が…!?なら、良かった…」

零羅を心配して取り乱す遊矢だったが、セレナの言葉で落ち着きを取り戻す…セキュリティに捕まる直前、月影は密かに零羅を助け出していたのだ。

 

 

「月影ってのも、お前らと同じ()()()から来た奴か?」

 

「ああ、凄腕のニンジャだ…とにかく…零羅だけでも無事で良かった…」

 

「一先ずは安心って訳だ…良かったじゃねぇか」

 

「よくない!!これは明らかな()()()()だ!!弁護士を呼べぇ!!」

 

「はぁ…弁護士なんて、トップスしか相手にしねぇって…」

零羅の無事を知って遊矢とクロウは胸を撫で下ろす…だが、自分達のピンチが変わる訳ではなく…沢渡は荒ぶっていた。

 

 

「すまねぇな…シンジ、俺らに伝えにきたばっかりに…」

 

「良いって事よ…ガキ共三人がお咎めナシでよかったぜ……」

 

「……あいつら、万引きとかしなけりゃいいが……」

 

「……心配すんなよ、俺らが捕まったって聞けば…仲間達や……遊星が面倒みてくれるさ」

 

「ああ…ラリーの奴がすぐに遊星に知らせてくれりゃ良いが…」

 

「ユーセイ…?クロウ達の仲間か?」

残された孤児達を心配するクロウとシンジ…そんな中、遊矢は聞き慣れない名前に問い返す。

 

 

「ああ…不動遊星ってな、オレの友達さ…元はトップス出身だったんだが…訳あってコモンズで暮らしててよ………待てよ、これから行く場所って……」

 

「これから行く場所…?」

 

「ん…ああ、捕まったコモンズは……()()()に送られるのさ…」

シンジはうんざりした様子で自分達の辿る末路を伝えた…。

 

 

 

………

 

 

 

『ほら、出ろ!』

 

「うわっ…」

護送車に揺られる事、数十分…遊矢達はコモンズエリアの巨大で無骨な建物──収容所の前で車から降ろされた。

 

 

『囚人五名を連行した』

 

『確かに…引き継いだ』

 

「囚人だぁ!?まだ捕まっただけだぞ!?」

 

『黙ってろ!』

デュエルチェイサーズから看守へと遊矢達の身柄が引き渡される…普通なら、現行犯でなく警察に捕まった段階では『重要参考人』として扱われるのだが……コモンズに関しては容疑者を飛ばして、すぐに囚人として扱われてしまうのだ…。

 

 

『それから…そこの貴女!あなたは四人とは隔離するわ、私について来なさい』

 

「っ…セレナ!?」

 

「騒ぐな…心配ない、必ずなんとかなる…!」

女看守がセレナを連れて去っていく…心配そうな表情の遊矢にセレナは気丈な表情で応え、大人しくついて行った…。

 

 

『他の四人!お前らはコッチだ!』

 

「くっ…」

そして遊矢・沢渡・クロウ・シンジの四人は金髪の看守によってセレナとは別の棟へと連行された…。

 

 

 

『デュエルディスクは没収する、ここでの勝手なデュエルは禁止だ…デッキは自分で持っとけ』

 

「……デッキは没収しねぇのか?」

 

『そいつは…ここでは()()()()大事なモンだからなぁ…精々、大事にするんだな』

 

「「「…?」」」

巨大な扉の前で遊矢達はデュエルディスクを没収される…だが、デッキだけは返され、遊矢達は首を傾げる…。

 

 

 

『ようこそ…ろくでなし共の吹き溜まりへ…!』

 

「これは…!」

看守の操作で扉が開いていく…そこに広がっていたのは無数の牢屋に囚人達が詰め込まれた牢獄塔だった。

 

……余談だが、本来ならば遊矢達もセレナと同じように独居房に収監・監視する指示が出されていたのだが……金髪の看守の職務怠慢によって指示が守られず、雑居房に収監される事になったのだった。

 

 

 

 

「チッ…ふかふかのベッドと美味しい料理が期待できる環境じゃねぇな…」

 

「此処にいる奴らは()()を除いてほとんどが危険分子だの、何かと言い掛かりをつけられたコモンズだ…」

 

「無実の罪で捕まった奴も100や200じゃきかないだろうな…」

 

「無実の…!?オレ達と同じじゃないか…!」

沢渡の皮肉に応えてクロウとシンジが収容所の情報を伝える…この場所は本当の意味でシティの『闇』…差別が集まる場所なのだと…。

 

 

「…この場所には、()()()()()()がいる……目が死んじまってる奴と……目が死んでない奴らが…!」

 

 

 

………

 

 

『この雑居房がお前達の楽しい我が家だ…クズ同士、仲良くするんだな?』

 

「チッ…何が我が家だ、ふざけんな…!」

リアルソリッドビジョンで作られた手錠を外された遊矢達は雑居房の1つに押し込められる、そこはベッドが置かれた8人部屋のようだった…。

 

 

「おう…新入りか!挨拶はどうした!」

 

「へっ…?あ、こんにちは?」

 

「違げぇよ!挨拶ったら地べたに頭を着けた()()()だろうが!あぁん!?」

 

「え、えっと…?」

そして、戸惑う遊矢達にいかにもチンピラと思われる二人組の先輩囚人が言い掛かりをつける、それは収容所の洗礼…収容所は上下関係が厳しいのだが……。

 

 

 

「止めんか!下品な真似をするな!っと…おお!」

 

「ご、権現坂!?」

 

「ゆ、遊矢!!無事だったのか〜!!もう会えんかと思ったぞ〜!!」

 

「く、くるひい……」

雑居房の奥から響いた声がチンピラ達を諫める…その正体は、遊矢達とは別口で捕まってしまった権現坂だった。

…なお、遊矢と再会できた事がよほど嬉しかったのか…遊矢は権現坂の胸板に埋もれていた…。

 

 

 

「なっ、なんだ?この暑苦しい奴は?」

 

「もう、だから権ちゃんは心配し過ぎなんだって…そのうち会えるって言ったじゃん?ハロー遊矢!」

 

「デニス!?お前も一緒だったのか!」

 

「いや〜…黒咲と一緒に闇デュエル場でデュエルしてたら捕まっちゃって……あっ、黒咲は乱闘騒ぎを起こしたせいで独房にいるよ」

 

「なんだそりゃ…黒咲らしいけど……」

権現坂の暑苦しさにドン引くクロウ…そこに呆れたように明るい声が響く、それは同じ部屋に収容されていたデニスだった…これで偶然にもセレナと黒咲以外のランサーズ収容組が合流できたのだ。

 

 

「えっ…!?権のアニキのお知り合いで!?」

 

「うむ!!この男は榊遊矢!俺の親友だ!それから…もう一人は沢渡、まぁ…チームメイトの1人だな」

 

「「アニキの親友にチームメイト!?し、失礼いたしました〜!!」」

 

「い、いや…そんなに大袈裟にしなくても…(汗)」

権現坂に遊矢達を紹介されたチンピラ二人は五体投地レベルの土下座で平謝りする…どうやら、二人は権現坂に()があるようだった…。

 

 

 

「ところで…遊矢、赤馬零児や他の仲間達はどうした?」

 

「少なくとも…零羅は無事だ、たぶん…零児と月影と一緒にいる……遊海は分からない、それから…柚子が……」

 

「柚子に会ったのか!?」

 

「いや、まだだ……けど、柚子もシティに……近くにいるはずなんだ…!早く、こんな所を出て…柚子を探しに行かないと…!!」

権現坂は遊矢に状況を訊ねる、実は…遊矢達と柚子(とユーゴ)はニアミスしていた、クロウが世話する孤児達がトップスエリアで「融合次元」の脅威を宣伝する姿を目撃していたのだ。

そして…それを確かめる為に不用意に街へ出てしまった沢渡とセレナがセキュリティに尾行され、遊矢達は捕まってしまったのだ…。

 

 

 

「なぁ?お前、ここのボスなんだろ?なんとかならねぇのか?」

 

「残念ながら、俺はボスではない」

 

「監獄の()()は別にいる…10年以上、この場所に居座ってるんだってさ!」

 

「監獄のボス…」

沢渡がチンピラを押さえた権現坂に訊ねるが権現坂は首を横に振る…そして、デニスから監獄の()()が存在する事が語られた。

 

 

 

 

 

「ちょっ…!?なんだよコレ!少な過ぎだろ!?」

 

「後ろが足りなくなっちまうからなぁ〜」

 

「ふざけるなよ!そんなに()()()()あるじゃないか!?」

 

「後ろが閊えてるんだ!早く行け〜!」

 

「くっ…!?」

少し時間が経ち、昼食の時間…遊矢は給仕役の囚人に文句を言っていた……よそわれた食事が他の囚人達の()()()()だったのだ。

 

……典型的な()()()()()である。

 

 

 

「遊矢、あまり問題を起こすな…俺の分を分ける」

 

「権現坂……くっ……」

小声での権現坂の言葉を聞いた遊矢は悔しげに列から離れる…その時──

 

 

「(あれは……カード…?)」

遊矢の次の囚人が給仕役にカードを渡し、多い量をよそってもらっている場面を目撃した…。

 

 

 

 

「くっそ〜!結局、全員この量かよ〜!?」

 

「ちくしょう…舐めやがって…!」

結局、遊矢達4人は異常に少ない量しか盛られず、溜息を吐く…仕方なくそのまま席に歩き出し──

 

 

「…!!」

 

「うわっ!?」

 

「「遊矢!」」

突然、1人の囚人が遊矢に足を引っ掛ける…当然、遊矢はお盆ごと倒れ込み──

 

 

 

『おっと危ない』

 

「えっ…!?」

そのまま、何者かに抱き留められる…ギリギリで少ない食事も無事だった。

 

 

 

 

『こら、アドルフ!新人をイジメるのは止めろと言っただろう?それからアーノルド!彼らの量は間違ってるぞ?せめて普通の量を盛ってあげるんだ!……クラーク!バケツの水は排水孔に捨てなさい』

 

「「「うっ…はい、()()……」」」

遊矢を助けた人物が足を引っ掛けた囚人、給仕役の囚人、そして不自然にバケツを持っていた囚人に注意する…囚人達は注意を受けて縮こまった…。

 

 

 

『大丈夫だったかい?すまないね…彼らも無理矢理に収監されてストレスが溜まっているんだ』

 

「あ、貴方は…?」

遊矢は自分を守ってくれた人物を改めて見る…それは白髪混じりの黒髪を逆立て、囚人服の上から白衣を着た中年の男だった。

 

 

 

「!?あ、アンタ…!不動博士か!?遊星の親父さんの!?」

 

『ん…!?君は、息子の事を知ってるのかい!?』

 

「クロウ!この人を知ってるのか?」

 

「知ってるもなにも…さっき話したオレのダチ、不動遊星の親父さん…不動博士だ!Dホイールやなんかに搭載されてる永久機関『モーメント』と制御システム『フォーチュン』を開発したすげぇ人なんだ!」

 

「うええっ!?」

2人の間に割り込んだクロウが男性の正体を伝える…それはクロウの親友の父親だったのだ…!

 

 

『私はそんな大した者ではないよ、みんなの暮らしを良くしようと頑張ったんだが…ちょっとした僻みで捕まってしまってね、今は収容所で医者の真似事をしているんだ…クロウ君、と言ったね?遊星は…妻は元気にしているかい?』

 

「ああ、遊星はコモンズの町で機械の修理屋を…おふくろさんはトップスの町で働いてるって聞いたぜ」

 

『そうか…2人に苦労をさせてしまったな…』

クロウから家族の無事を聞かされた不動博士は一瞬、安堵の表情を見せたが…辛い生活を強いられている家族の事を思って表情曇らせる…。

 

 

『…ふぅ…何はともあれ、これも何かの()だ…困った事があったら話を聞こう、此処は…君達にとっては大変な場所だと思うから…』

 

「不動博士……」

 

『…………』

遊矢達に優しく声をかける不動博士…その様子を1人の男が睨んでいた…。

 

 

 

 

 

 

 

「つ〜!!どうなってるんだよ、この場所は…!?」

 

「言われなかったかい?ここでは『カードは命の次に大切』だって…」

しばらく時間が過ぎ、遊矢は雑居房で動揺していた…遊矢はこの収容所の異常性に気付いたのだ。

 

 

「この場所……いいや、世界ではカードは()()()()()()()がある…看守をカードで()()すれば、待遇も良くなるのさ」

 

「……だから、デッキは返したのか…!」

デニスからの説明を聞いた遊矢は自分のデッキを握り締める…。

 

 

本来、収容所や刑務所は看守達によって厳格なルールが敷かれ、犯罪者の更生を促す場所である……だが、シティの収容所は()()()()()いた。

囚人達は看守に賄賂としてカードを渡し、食事や義務労働などに便宜をはかってもらい…囚人達の()()に至っては看守よりも力を持つ、そんな異常が常識になっていたのだ…。

 

 

「あ〜あ!そうと分かってたら、最初からカードを渡しておくんだったぜ…」

 

「沢渡!カードはお金じゃない!自分の待遇を良くする為にカードを渡すなんて…間違ってる!」

カードへの執着が薄い沢渡の言葉に遊矢は声を荒らげる、デッキとはデュエリストの『魂』…それを手放す事を遊矢は信じられなかったのだ。

 

 

「あっ……まさか、2人も…カードを…!?」

 

「いいや、俺達も使わずに済んだ…不動博士のおかげでな……」

 

「あっ…待ってくだせぇ!権のアニキ!そこからはオレ達に話させてくれ!」

遊矢はデニスの言葉から権現坂とデニスも看守にカードを渡したと思い込む…だが、それは杞憂に終わった。

 

同室のチンピラ曰く、セキュリティに捕まる前にデッキを巻き上げられてしまった2人は他の囚人達から遊矢達以上のイジメを受けた…それを見かねた権現坂とデニスは賄賂を渡そうとしたのだが、そこへ不動博士が現れて四人を守ってくれたのだと…。

 

 

「不動博士は実質、この収容所の『No.2』なのさ…でも、彼はデュエリストじゃない…ここに捕まってからの八年間、その人柄と知識で囚人達に気に入られて…みんなに慕われているのさ、ただ…ボスとは仲が悪い…というより、嫌われてるらしいけどね」

 

「不動博士…そんなにすごい人だったんだ」

デュエリストでなく、囚人でありながらも…少しでも人の為になる事をしようとする…普通ではできない事をする不動博士を遊矢はすごい人だと思った…。

 

 

 

『ふふっ…だから、私はそう大した男ではないさ…榊遊矢君?』

 

「へっ…?不動博士!?」

少し照れたような声が遊矢の名前を呼ぶ、遊矢達が目を向けると…牢屋の外に不動博士が立っていた。

 

『急病人の治療帰りさ……私はカードを持ってないからね、こうしてポイントを稼いでいけば…早く此処から出られる……そういう打算もあって、こういう事をしているのさ……()の罪滅ぼしも兼ねてね…』

 

「罪…?不動博士も冤罪なんじゃ…?」

檻越しに自嘲する不動博士…遊矢は不思議に思って問いかける。

 

『…ずっと昔の事さ……っと、看守が来るね…君達、ボスには気を付けるんだよ!』

意味深な様子を見せた不動博士は足早に去っていく、そして…。

 

 

『お前ら、()()がお呼びだ…出ろ!』

金髪の看守によって遊矢達は牢屋から連れ出された…。

 

 

 

 

「ここは…本当に牢屋、なのか…?」

雑居房から連れ出された遊矢・沢渡・権現坂・デニス、そしてシンジとクロウは囚人達のボスがいる特別房に連れて来られていた…だが、そこは普通の牢屋ではない。

 

金色の屏風に刀掛けに置かれた刀剣、畳にソファ…遊矢達の雑居房より広い部屋…牢屋とも言えないその部屋の上座に2人の囚人を引き連れた着流しを着た、無精髭の男…収容所のボスが鎮座していた…!

 

 

「来たな…ボスの徳松さん直々のお呼びだ!」

 

「トクマツ…?その名前、何処かで…?」

子分らしい囚人からボスの名前が伝えられる…クロウはその名前に聞き覚えがあるようだった…。

 

 

「なぁにが直々のお呼びだ!偉そうに…!」

 

「沢渡…!ここで騒ぎを起こすのは不味いって!面倒な事になるから…!」

ボスが気に入らない様子の沢渡をデニスが小声で宥める…その時…。

 

 

『……出しな』

 

「えっ…!?」

 

「ドンくせぇな…!()()()を出せってんだよ!!」

何処か気怠げな様子の徳松が口を開く…それは遊矢達にカードを差し出せという()()だった。

 

 

「ここで楽しく生活したかったら、出しておきな!!」

 

「…断る!!」

 

「なにっ…?」

 

「俺も断る!!ボスのご機嫌取りの為に差し出すカードなど…この漢権現坂には、1枚たりとも無い!!」

 

「オレ達は…一日も早く、此処から出なきゃならないんだ!!楽しく生活しようなんて…思ってない!!」

徳松の命令を遊矢と権現坂は跳ね除ける…遊矢達にはランサーズとして、そして…柚子を助ける為に、足踏みしている時間はないのだと…!

 

 

『いいか、ここのボスは俺だ…つまりトップだ!故に、ルールは俺が作る!おめぇら下のモンは俺に従え…!それが…この世界の常識だ!』

 

「嫌だ!!カードはデュエルの為に使うモノだ!」

 

『聞き分けのない小僧だ…ならば、コレを見やがれ!!』

カードを渡さない遊矢達に対して徳松はあるモノを見せつける、それは徳松が座っていた上座の下に隠されていたモノ……数十万枚以上に及ぼうかという()()()()()だった…!

 

 

『これは俺が十年の間にデュエルで巻き上げたカードだ…!ここじゃ、カードはトップの証明…デュエルは力の証だ!』

 

「力の証……違う!デュエルは()()()()()だ!」

 

『なにぃ…!?』

カードの山を『力の証』として誇示する徳松…遊矢はそれを否定する……しかし、遊矢の『デュエルは楽しむモノ』という言葉は──徳松の琴線に触れた…!

 

 

『素直に出せば、勘弁してやろうと思ったが…気が変わった…!看守!!』

 

『はいはい!』

 

『俺とコイツ用のデュエルディスクを持って来い!!これからデュエルを行なう!』

 

『おっと…!こいつはレアカード!!ただいま持ってきます!!』

看守を呼び出した徳松は賄賂を渡し、収容所では御法度のはずのデュエルを行なうと言い出した…!

 

 

 

『ここじゃ、地獄の沙汰も()()()()()って奴だ…身をもって教えてやる…デュエルでもってブチのめしてやる!!』

 

「望むところだ!!」

徳松の誇りと遊矢の意地…2人の男の信念が激突する!

 

 

 

『おめぇは分かっちゃねぇ…トップに逆らう奴は、必ず潰される…!』

 

「潰れるかどうかは自分次第…でも、オレは絶対に潰れない!!」

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対徳松

 

 

 

徳松が操るのは日本独自の遊戯「花札」をモチーフとしたテーマ『花札衛(カーディアン)』…凄まじいドロー運やデッキトップを操作する魔法カード『花積み』を駆使した徳松はエースモンスターを呼び出す!

 

 

『涙雨!光となりて降り注げ…!シンクロ召喚!出でよ!レベル8!「花札衛-雨四光-」!!』

徳松の場に平安貴族のような装いのモンスターが現れる…このカードが彼の()()の要となるカードである。

 

 

『小僧、もう一度言う…カードはトップの証明!デュエルは力の証だ!!』

 

「何度言われようと…オレの信念は変わらない!デュエルは楽しむものだ!オレのターン、ドロー!」

「力」に固執する徳松を変えようとカードを引く遊矢…だが、徳松の作戦が発動する!

 

 

『甘ぇんだよ、小僧!「雨四光」の効果発動!相手がドローした時、1500ダメージを与える!!』

 

「なにっ…!?うわっ!?」

遊矢がドローした瞬間、『雨四光』が手にしていた和傘を頭上に放り投げる…そこから無数のカード型の光が放たれ、遊矢のライフを大きく削る。

ライフポイントは4000…つまり、3()()効果が決まれば遊矢は敗北してしまう…だが、遊矢は怯まない!

 

 

「揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現われろ!『EMギッタンバッタ』!『EMオオヤヤドカリ』!二色の眼輝く竜!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

シンクロ次元製でも問題なく発動したペンデュラム召喚によって遊矢はモンスター達を呼び出す…だが──

 

 

『ほう…!娑婆じゃあこんな召喚方法があるのかい……だが!永続罠発動!「イカサマ御法度」!!自分の場に『花札衛』シンクロモンスターがいて、手札から特殊召喚されたモンスターが相手の場にある時に発動できる!そのモンスターを手札に戻す!!』

 

「なにっ…!?」

徳松が発動した罠によってペンデュラム召喚は()()()()と見做され…モンスターは手札に戻されてしまう…。

 

これがもし、遊矢の得意な「アクションデュエル」なら挽回もできただろう…だが、状況は遊矢にとって圧倒的に不利だった…!

 

 

 

『残念だが…お得意のペンデュラム召喚は完全に封じた、もはや…オメェに何かを為す時間もチャンスもねぇぜ…』

 

「っ…変わっちまったな…こんなの、アンタのやり方じゃねぇよ!()()()()()()()()!!」

 

『っ…その名で呼ぶんじゃねぇ!!』

 

「エンジョイ、長次郎?」

遊矢を封殺した徳松を見て、デュエルを見守っていたクロウが声を上げる…クロウやシンジは彼の『本来の姿』を覚えていたのだ。

 

『今の俺は…秋雨の長次郎だ…!』

だが…徳松はその名を否定する、今の彼は収容所で10年間無敗を誇り…カードを奪い続けてきた非情な男なのだと…。

 

 

「っ…諦めて、たまるか!オレはモンスターを裏守備表示で召喚!ターンエンドだ!」

特殊召喚を封じられた遊矢はモンスターをセットし、チャンスを待つ…!

 

 

『ふん…俺のターン!ここで俺がドローすれば…オメェがドローした時に1500ダメージを与える「雨四光」の効果は失われる…だが、この瞬間!「雨四光」の効果によって俺はドローを()()する!自滅への坂道を転がっていくがいい…!』

 

「っ…!」

それはあまりにも強力なコンボ…ドローによるダメージに特殊召喚封じ、それはペンデュラム召喚を使う遊矢に突き刺さる…!

 

 

『俺の必勝コンボは完成してる…いまサレンダーすれば、カード半分で勘弁してやるぜ…?』

 

「いいや、決まったのはコンボだけだ!まだ、アンタの勝利が決まった訳じゃない!!まだ、チャンスはある!」

 

『はっ…巨大な力の前で何かを変えるなんて()()()だ!』

 

「諦めなければ…必ず変えられる!」

譲歩の姿勢を見せる徳松…だが、遊矢は諦めずに立ち向かう…!

 

 

 

 

 

「っ…あんなに変わっちまって…」

 

「昔とは…大違いだ…エンジョイ長次郎……」

 

「2人とも、さっきから言ってる『エンジョイ長次郎』ってなんなのさ?」

 

「あの人は…オレ達がガキの頃の、憧れのデュエリストだったんだ…」

追い詰められていく遊矢のデュエル…そんな中、デニスは事情を知っているらしいクロウ達にエンジョイ長次郎の事を訊ねた…。

 

 

徳松…エンジョイ長次郎は当時、コモンズにとっての「希望の星」…ライディングデュエルの隆盛前にプロデュエリストとして「奇跡のドロー」で人々を魅了し、デュエルを楽しむ男だった事。

 

さらにデュエル教室を開き、不良の喧嘩をデュエルによって仲裁する…「デュエルはただの勝負事ではなく、相手を知り、己を知り…絆を結ぶのがデュエル」というのが口癖の人格者だった事。

 

 

……だが、今は──

 

 

『諦めな、この勝負…オメェの敗北は決まってる』

 

「まだ、何も決まってないさ…この先、まだ何が起こるかは()()()()()()!だから…デュエルは楽しいんだ!!」

 

『っ…黙れ!!デュエルを楽しむ事になんざ意味はねぇ!』

 

「意味はある!みんなを笑顔にする!!オレはその事を父さんや、母さん…遊希兄……戦ってきたデュエリスト達から学んで来たんだ!!」

 

『ほざくな!この流れは変わらねぇ…どう逆らっても、()()って奴は変えられねぇんだ…!!無駄なんだよ!!』

盾となった『ギッタンバッタ』と『EMディスカバリーヒッポ』を破壊され、残されたライフも僅かな遊矢…だが、それでも諦めない彼に徳松は『運命』は変えられないのだと、徳松は諦めの表情で伝える…。

 

 

 

トップスとコモンズの間にある『壁』を壊し、人々を一つにしようとデュエルを続けていた徳松…だが、彼を待っていたのはトップスの人々からの非情な仕打ち…金にモノをいわせた強力なデッキによる集中攻撃だった…。

 

そして、何回も何回も倒され…ボロボロになっていく徳松への声援は嘲笑に変わる…そして徳松はイカサマに手を出し、表舞台から追放されてしまったのだ…。

 

 

『ブーイングや、嘲笑に変わるなら…声援も、笑顔も要らねぇ……そして、イカサマに手を出した時!俺は()()()()んだ…デュエルは未来を切り開かねぇ、何も変わらねぇ!!今の俺にとって、デュエルは生きる為の道具に過ぎねぇ!!』

それは徳松の魂の嘆きだった…この『世界』は、善人であればある程生きづらく…その流れは変えられないのだと…。

 

 

『俺はあれ以来、運を天に任せる…ドローに頼るデュエルは捨てた…!そして編み出したのがこの必勝コンボだ!何も変えられないと悟った俺が10年間かけて積み上げた力を…オメェが変えられる訳がねぇ!!』

 

「なら…変えられるか、変えられないか…勝負だ!!」

徳松の本心を聞いた遊矢…彼はゴーグルを着け、未来へと手を掛ける!

 

 

 

「オレのターン、ドロー!!」

 

『これで終いだ!「雨四光」の効果発動!!1500のダメージを──』

 

「オレが引いたのは─『EMレインゴート』!その効果によって、効果ダメージが発生した時!このカードを墓地に送って効果ダメージを無効にする!」

 

『なにぃ!?』

遊矢が引いたのは雨合羽を纏った羊…その雨合羽が涙雨を弾き、徳松のコンボを破る一手となる!

 

 

「そして手札から『EM』が墓地に送られた事で墓地の『ギッタンバッタ』を守備表示で特殊召喚!このカードは1ターンに

一度、バトルでは破壊されない…さらに、エンドフェイズにこのモンスターを墓地に送る事で墓地の『EM』を手札に加えられる!」

 

『なんだと…!?これは…無限ループ…!!』

遊矢の言葉に徳松の顔色が変わる…『ギッタンバッタ』が墓地に送られれば『レインゴート』が手札に加わる、そしてまた逆も然り…『雨四光』のコンボが封殺されたのだ!

 

 

「流れは…変えたよ!」

 

『くっ…ふざけた真似を…!?』

ゴーグルを外し、徳松に語りかける遊矢…状況はいわゆる『千日手』…だが、ドローする度に遊矢は逆転の『1枚』を引き当てる可能性が高くなる…………徳松が流れを()()()()()()の話だが。

 

 

 

「おっ…!やってる!徳松さんのデュエルだ!!」

 

「待ってました!!」

 

「間に合ったぜ!!」

 

『お前ら…』

その時、にわかに牢屋の外が騒がしくなる…徳松のデュエルを楽しみにしていた囚人達が看守に賄賂を渡して観戦に来たのだ。

 

 

 

「さぁ、オレのカードが無くなるまで時間はたっぷりあるよ!観客も増えてきた事だし、さぁ…デュエルを()()()()!!」

 

『そんな猶予、俺が与えると思うか…?その前に、()()()してやる!!俺の──ターン!!』

 

「あっ…ボスが…!」

 

「デッキに手を…!!」

観客が増えた事で調子を取り戻す遊矢…その無邪気な眼差しが、冷え切っていた徳松の心を動かした…!

 

 

 

『(考えてみりゃ…何年振りだ?己の運を…指2本にかけてドローするのは……思えば……イカサマで引いたあの日以来、俺は()()()()()をドローできなかった───)』

その時、徳松の脳裏に過ぎったのは…自分の十八番であった切り札の事…そして─

 

 

「「「長次郎!長次郎!!」」」

 

「さぁ、皆さん!盛り上げて参りましょ〜う!!」

 

 

『(あいつら…あんなガキにまんまと乗せられやがって…いや、それは───)』

遊矢に乗せられて名前を呼ぶ囚人達…その時、徳松は──笑っていた!

 

 

『俺のターン…!エンジョォォイ!!

 

 

「「「うおおおっ!!」」」

そのドローに歓声が沸き起こる…そこにドローを捨てた「秋雨の長次郎」はいない、今の彼は…デュエルを楽しむ「エンジョイ長次郎」だった!

 

 

『来た…!俺は魔法カード「超こいこい」を発動!!』

 

「来た!奇跡のカードだ!!」

それは長次郎が見放されていた奇跡のカード…デッキトップ3枚をドローし、「花札衛」以外のカードは墓地に送られ1枚につき1000ダメージを受けてしまうギャンブルカード…だが、今の彼に恐れはない!

 

 

『デュエルとはすなわち人生なり…人生は1度っきり!勝つ日もあれば負ける日もある…負けを恥じず、勝っても驕らず!すなわち…レッツ、エンジョイ!!』

 

「「「エンジョ〜イ!!」」」

 

長次郎の見事な口上と共に、収容所にエンジョイコールが木霊する…そして長次郎が引き当てたのは『萩に猪』『紅葉に鹿』『牡丹に蝶』──花札の役が新たに出揃う!

 

 

『その猛きこと猪の如く!その勇壮なること鹿の如く!その美しきこと蝶の如く!シンクロ召喚!!レベル6「花札衛-猪鹿蝶-」!!』

長次郎の新たなシンクロモンスター…鹿の角の兜を被る、猪武者が現れる!

 

 

 

『バトルだ!「雨四光」で「ギッタンバッタ」を攻撃!』

 

「『ギッタンバッタ』は1度だけ破壊されない!」

 

『だが、二度目は防げねぇ!「猪鹿蝶」で「ギッタンバッタ」を攻撃!さらに貫通ダメージだ!!』

 

「うおっと!?」

長次郎の連撃で遊矢は追い詰められる…残りライフは200…!

 

 

 

『オメェに勝ち目はねぇ…だが、諦めるつもりはねぇんだろう?』

 

「ああ…!お楽しみはこれからだ!!」

追い詰められた遊矢…だが、彼は諦めない…ここからが本当のエンタメデュエルの始まりなのだから…!

 

 

 

「私の…ターン!来た!私は魔法カード『ペンデュラム・ストーム』を発動!ペンデュラムスケールの『EMビッグバイト・タートル』と『時読みの魔術師』を破壊する事で『イカサマ御法度』を破壊します!一つの幕が降りれば、また新たな幕が上がるのです!」

遊矢は長次郎の最後の『呪縛』を断ち切る…そしてエンタメ劇場が幕を上げる!

 

 

「揺れろ…魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!レベル3『ビッグバイトタートル』!そして『時読みの魔術師』!」

 

『オオヤヤドカリ』と『オッドアイズ』でスケールを発動した遊矢はカラフルな亀と時を見定める魔術師を呼び出す!

 

 

「バトル!『ビッグバイトタートル』で『雨四光』を攻撃!」

 

『血迷ったか?攻撃力800で──』

 

「いいや、ここであっ!と驚くマジック発動!」

突撃した亀は雨四光に切り裂かれる…だが、それと同時に雨四光へと喰らいつき、相討ちに持ち込んだ!

 

 

『なに!?』

 

「これが『ビッグバイトタートル』の効果!このモンスターを破壊したモンスターは破壊されます!」

 

『だが、ダメージでオメェの負けだ!』

 

「いいえ!『オッドアイズ』のペンデュラム効果によって、1度だけ!ペンデュラムモンスターのバトルダメージを0にします!」

 

『そうきたか…やるじゃねぇか!』

ビッグバイトタートルのモチーフは獰猛な『カミツキガメ』…その効果と『オッドアイズ』の連携が希望を繋ぐ!

 

 

「続いて『オオヤヤドカリ』のペンデュラム効果発動!自分のペンデュラムモンスターが破壊された時!ペンデュラムゾーンのモンスターを特殊召喚する!来い!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

仲間が繋いだ希望が遊矢のエースを呼び覚ます!

 

 

「バトルだ!『オッドアイズ』で『猪鹿蝶』を攻撃!螺旋のストライク・バースト!!」

 

『そうはいくかい!罠カード「札改め」発動!「猪鹿蝶」は破壊されねぇ!!』

螺旋の炎を受け止める猪武者…だが、螺旋の炎は止まらない!

 

 

「『オッドアイズ』の効果発動!レベル5以上のモンスターとバトルする時、バトルダメージは2倍になる!リアクション・フォース!!」

 

『な、なんとぉ!?どわああああ!?』

勢いを増した炎が徳松を吹き飛ばす!

 

 

「さらに!私は速攻魔法『ペンデュラム・クライマックス』を発動!自分のモンスター1体をリリースする事で相手の墓地に存在する同じレベルのモンスターを『オッドアイズ』に装備します!私はレベル3の『時読みの魔術師』をリリースする事で墓地の『花札衛─桜に幕』を装備!その攻撃力の半分を自身の攻撃力に加え、もう一度バトルできる!」

 

『はっ…攻撃力3500か…!』

 

「これで大詰め!『オッドアイズ』で『猪鹿蝶』を攻撃!螺旋のストライク・バースト!!」

 

『ぐっ……ははっ…!』

再び螺旋の炎が放たれ、長次郎を飲み込む…だが、その表情は晴れやかだった。

 

これにて、収容所の悲しき『涙雨』は晴れたのであった。

 

 

長次郎LP0

 

遊矢WIN!

 

 

 

 

「と、徳松さん!!」

 

『ヘヘっ…負けちまったな…だが、楽しかったぜ…!こんなデュエルは久しぶりだ…』

デュエルが終わり、倒れ込んだ徳松に子分達が駆け寄る…しかし、徳松の顔は憑き物が落ちたように晴れやかだった…。

 

 

「「長次郎!長次郎!長次郎!!」」

 

『ん…?ははっ…ああ、久しぶりの歓声はいいモンだ…!』

デュエルが終わっても収まらない長次郎コール…その囚人達の姿に長次郎はコモンズの子供達の姿が重なった…。

 

 

『ふふっ…ははは!エンジョ〜イ!!

 

「「「エンジョ〜イ!!」」」

囚人達の歓声に完全復活を果たしたエンジョイ長次郎が応える…その日、収容所は久々に希望の歓声に包まれたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊星、世話になったな…俺はそろそろ自分の役目を果たすとしよう」

 

『遊海…?自分の役目…とは?』

 

「お前に受けた一宿一飯の恩義…それを返す為に、俺はお前達のヒーローになろうと思う」

 

『オレ達の、ヒーロー…?』

 

「デュエルによって歪み、停滞し…人々が差別に苦しみ、悲しむこの世界を変える為の()()を開ける…まぁ、上手くいくかは分からないが……なんとかなるだろう!」

 

『遊海……お前は、いったい…?』

 

「俺は世界の行く末を見守り…悪を裁き、希望を導く…そんな決闘者(デュエリスト)さ!」

鋼の鎧を纏い…『英雄』は動き出す!



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プリズンブレイク〜英雄進撃〜

こんにちは!S,Kです!

やっと書けたぁ…囚われたランサーズ、彼らはこの状況をどう抜け出すのか…。

そして、歯車はゆっくりと回り始める…。


それでは、最新話をどうぞ!


「もぐもぐ…!」

 

「わお…朝からすごい食欲だね、徳松さん…」

 

「あったりめぇよ!良いデュエルをするとメシがうめぇんだ!ほれ、オメェ達も食え食え!」

 

「「いただきます!!」」

 

エンジョイ長次郎と遊矢のデュエルから一夜が明けた…収容所の食堂では本来の性格に戻った長次郎が豪勢な食事にがっついており…遊矢や沢渡達も相伴に与っていた。

 

 

『本来の貴方を取り戻したみたいですね、長次郎さん』

 

「あっ…不動博士!」

 

「おう、先生じゃねぇか!……悪かったなぁ、アンタの言った通りだったぜ…」

そんな時、不動博士が長次郎へと話しかける…そんな彼に長次郎は謝っていた…。 

 

 

 

「あれ…?たしか、徳松さんと不動博士って仲が悪いんじゃ…?」

 

「違げぇんだ……先生はよぉ、オメェより先に俺を立ち直らせようとしてくれてたのさ……けど、俺は捻くれてたからよぉ……先生を邪険にしちまったのさ……」

 

『ふふっ、昔の貴方の矜持を……デュエルは人を繋ぐ絆であり、未来を切り拓くモノだという思いを取り戻してくれて…本当に良かった、私の息子も貴方のファンでね……やさぐれてしまった貴方を見ていられなかったんだ』

 

「そうだったのかい、いつか…ここから出られたら会ってみてぇな、先生の息子によ」

 

『ああ、きっと息子も喜ぶよ』

2人によって明かされた不仲の真相…だが、遊矢によってその不仲も解消されていた…。

 

 

 

「は、離せ!オレは関係ねぇ!!」

 

『いいからさっさと来い!!』

 

「嫌だ…!いやだぁぁ!?」

 

 

 

「っ…あれは…!」

そんな時、食堂に囚人の叫びが響く…遊矢が見たのは看守に連行されていく1人の囚人の姿だった…。

 

 

「……なにぃ?脱獄?」

 

「脱獄!?」

 

「……バカな事しやがって…」

その時、長次郎の子分の1人が情報を伝える…どうやら、脱獄を企てた囚人がいたのだと……それを聞いた遊矢は驚き、長次郎とクロウ・シンジは頭を抱えていた…。

 

 

「まったく…残された仲間の事を考えろってんだ…」

 

「どういう事…?」

 

『囚人が脱獄を企てたると…その仲間や話を知っていた者も()()()()で罰を受けてしまうんだ、噂では…ここよりキツい収容所に送られてしまうらしい…』

 

「連帯責任…」

それは腐りきった収容所においても守られている『掟』…脱獄を企てた囚人や仲間が収容所に戻されて来た事は一度もないのだ。

 

「まぁ、オメェらは初犯なんだろ?なんでもなけりゃ、半年くらいで出られるだろ…生き急ぐんじゃねぇぞ」

 

「徳松さん…」

長次郎は遊矢達に助言を送る…その眼には彼が見てきた脱獄未遂の末路が映っているようだった…。

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ、こんな感じかな……ん…?カード…?」

しばらく時間が過ぎ、遊矢は看守によって自分達の雑居房の清掃を命じられていた…そんな時、遊矢はベッドの下に落ちていたカードを見つけた…それは…。

 

 

「これ…クロウの…」

それはカード型のスリーブに入れられたクロウと孤児達の写真だった…写真の中ではクロウとアマンダ・フランク・タナーが笑っていた。

 

「あの子達…大丈夫かな…」

写真を見ながら残された孤児達を心配する遊矢…その時。

 

 

「お〜い!遊矢、明日も頼むぜ!」

 

「シンジ?…え〜っ…明日も掃除当番…?」

 

「違うって…そんな狡い事しねぇよ…」

雑居房に自分の掃除を終えたらしいシンジが戻ってくる、その表情は明るかった…その理由は…。

 

「ほら、また昨日みたいなデュエルが見てぇと思ってよ!徳松さんに相談してみたんだよ!」

 

「おう、どうせなら人を集めて、もっと盛り上がる『エンジョイ長次郎』のデュエルが見てぇっていうからよ!俺が所長に話をつけて…明日の夜は食堂で大エンタメデュエル大会っう訳よ!!」

 

「わお…!?」

シンジに続く形でやって来た長次郎が大エンタメデュエル大会の開催を告げる…その出場依頼を遊矢に持ってきたのだ。

 

 

「なら!当然、このネオ・ニュー・沢渡の出番だな!」

 

「おっ?兄ちゃんも自身ありげだなぁ!」

 

「当然だ!それに、『エンタメデュエル』ならオレ達のデュエルディスクが使えればもっと盛り上がるぜ!」

 

「そりゃいい事聞いたな!それも話つけてやる!」

そこに戻ってきた沢渡やクロウも割り込む…だが、長次郎が沢渡の話を聞いているうちにクロウは静かに部屋を離れようとしていた。

 

 

 

「あっ…クロウ!」

 

「ん…どうした?」

 

「これ、クロウのだろ?」

 

「おっ…サンキュー、助かったぜ」

遊矢は房から飛び出してクロウに写真を返す、写真を受け取ったクロウは笑顔を見せるが…すぐに表情を戻した…。

 

 

「……遊矢、シンジから()()()()?」

 

「えっ…デュエル大会の事?」

 

「……聞いてないならいい……お前はデュエルを()()()()()くれればな…」

 

「……クロウ、まさか……()()()、考えてないよな?」

意味深な態度を取るクロウ…遊矢は気付いた、クロウとシンジは脱獄を考えているのだと…!

 

「…今日からオレ達は仲間じゃねぇ、心配すんな……お前らには迷惑はかけねぇよ……オレはシンジに恩義がある、だから…一緒に行くんだ…!」

 

「クロウ…!」

クロウは遊矢を突き放す言葉を突きつける……()()である彼らを危険に晒さないように…。

 

 

 

「ん…おう!クロウ!俺もお前の()()に遊びに来てやったぜ?」

 

「デイモン!」

そんな時、クロウに紫色のモヒカンと福耳が特徴の黒人の少年が話しかける…デイモンというらしい彼はクロウの知り合いのようだが…ふと傍らにいた遊矢へと目を向けた。

 

「あっ…お前!やっぱり捕まったのか?」

 

「えっ…?」

 

「ほら!桃色の髪の女とポスター貼りしてたろ?『別次元が侵略してくる!』とか『融合次元に気をつけて!』とか……」

 

「あっ……柚子…!?」

デイモンの言葉に遊矢は気付く…彼はユーゴと柚子の姿を見たのだと…!

 

 

「女はどうした?一緒に捕まったか?まぁ…セキュリティに目をつけられてたもんなぁ…まっ、危ない事はすんなよ?じゃあな〜」

 

「ゆ、柚子…!!」

デイモンの言葉に遊矢の表情は青褪める…柚子もまたセキュリティに追われているのだから…。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

『おや、遊矢君…1人かい?珍しいじゃないか…隣良いかな?』

 

「不動博士…どうぞ!」

夕食の時間、少し悩んだ様子の遊矢は1人で食事を食べていた…そんな時、その隣に不動博士が腰掛けた…。

 

 

『何か…悩み事かい?』

 

「……柚子が…この世界にいる、オレの幼なじみが…セキュリティに追われているみたいなんです」

 

『権現坂君から君達の事情は聞いたよ、この世界の外から…別の次元から幼なじみの少女を助ける為に、この世界に来たんだって……心配なんだね』

 

「うん…!オレ、約束したんだ…また会おうって…!」

穏やかな不動博士の言葉に遊矢はポツリと悩みを打ち明ける、その脳裏には舞網チャンピオンシップで柚子と別れた時の言葉が過ぎっていた…。

 

 

『そこまで心配する事はないよ、セキュリティの彼らも人間だ…年若い少女に手荒な事はしないさ…』

 

「……でも、オレ…」

 

『急いては事を仕損じる…心配な事があって急ぎたいのはよく分かる…それでも、冷静でいないと…いざという時に失敗してしまうよ?私もそういう経験を何度もしてきた…』

 

「不動博士……そういえば、不動博士の『罪』って…?貴方みたいな人が犯罪をするようには見えないけど…?」

不動博士の言葉で遊矢は少し冷静さを取り戻す…そこで遊矢は気になった事を訊ねる、遊矢から見ても不動博士は()()には見えなかったからだ…。

 

 

『ん?……ああ、収容所に入れられたのは研究予算の着服とか、その他諸々の濡れ衣のせい…私は潔白さ………でも、私には償わなければならない『罪』があるんだ……遊矢君は()()って信じるかい?』

 

「前世…?自分が生まれる前の人生の事?」

 

『そう…私には、その前世の「記憶」が残っているんだ…朧げだけどね?』

 

「えっ…!?それって、すごい事なんじゃ…!?」

不動博士の突拍子のない言葉に遊矢は驚く…その様子を見た不動博士は苦笑していた。

 

 

 

『それがまぁ…なかなか辛い記憶でね……科学者だった「私」は前世でも、半永久動力機関であるモーメントを開発したんだ……でも、その影響なのか…様々な陰謀が重なって「大災害」が起きてね……「私」も妻も…その災害で命を落としてしまうんだ……たくさんの人々と一緒に……』

 

「そんな…!?」

不動博士が軽く語った『前世』の記憶…その話に遊矢は絶句する。

 

 

『でも、本番はここから…死んだはずの「私」は無念からか成仏できず、生と死の狭間……『繋ぐ』という働きを持つ『遊星粒子』のモーメントエネルギーにしがみついてしまった……そこから、19年…モーメントを通して復興する町や…成長する息子の姿を見守っていた……そして、息子が大災害の原因となった闇や、未来を変える為に戦った秘密結社と戦うのを見届けて───気付いたら、私はこの世界に再び生を受けていた』

 

「それじゃ…博士の罪って…前世の…!」

 

『ああ…今度こそ、家族を…人々を幸せにしようと頑張った……頑張ったん、だけどなぁ……』

自分の『罪』を語った不動博士は項垂れる…人々の為になる事をしたのに捕まってしまったのは、いまだにショックだったようだ。

 

『前世の時は厳しくとも研究を後押ししてくれる社長や…頼りになる仲間達、私を気にかけてくれた「決闘王」がいたんだが…今回は、少し間が悪かったな……この世界は前世とは価値観が違うから……競争性が強すぎるんだ、()()なくらいに……っと、これ以上は愚痴になってしまうね…明日のデュエル大会、楽しみにしているよ遊矢君!』

 

「あっ…はい…!」

空気が沈んでしまったのを感じた不動博士は話を切り上げる…その目には哀愁の色が浮かんでいた…。

 

 

 

 

………

 

 

 

「デュエルとはすなわち人生なり…人生は1度っきり!勝つ日もあれば負ける日もある…負けを恥じず、勝っても驕らず!すなわち…レッツ、エンジョイ!!」

 

「「「うおおおっ!!」」」

 

そして翌日の夜、ついに長次郎主催の大エンタメデュエル大会が開催されようとしていた…食堂の中心には見事な櫓が立てられ、長次郎は囚人達や看守からの声援を浴びていた…。

 

 

「エンジョイ長次郎が帰ってきた!!」

 

「おうよ!とある若造に焚きつけられちまってな!!さぁ、榊遊矢!楽しいデュエルといこうぜ!!」

 

「あ……は、はい!」

長次郎に指名されて特設舞台へと上がる遊矢…だが、その表情は固い…この瞬間にも脱獄にむけて動くクロウ、そしてセキュリティに追われる柚子…心配事が多すぎて上の空なのだ…。

 

 

「おう!徳松さん!約束通り、本家本元のエンタメデュエル…()()()()()()()()()を魅せてやるぜ!」

 

「アクションデュエル?なんじゃそりゃ?」

 

「ヘヘっ…リアルソリッドビジョンで『アクションフィールド』を展開、その中で散らばった『アクションカード』を使っていいっていう派手派手なデュエルさ!」

 

「ほう…!面白そうじゃねぇか!受けて立つぜ!」

 

「よ〜し!アクションフィールド『クロスオーバー』発動!!」

沢渡が徳松の言葉を受けてアクションフィールドを展開…遊矢・徳松・沢渡のバトルロイヤルデュエルが始まった…!

 

 

 

───────

 

 

 

『だ、脱獄だぁぁぁ!!』

 

『デュエルは中止だ!全員、その場を動くな!!』

 

「しまった…!!」

だが、そのデュエルはすぐに中止される事になる──不意な事故でクロウ達の脱獄がバレてしまったのだ。

最初、デュエルに身が入らなかった遊矢…だが、その様子からクロウ達の脱獄に勘づいた権現坂が事情を把握…遊矢達も脱獄を成功させる為に張り切る事になった…。

 

だが…アクションカードの取り合いで運悪く、クロウ達が脱出を狙っていた厨房に転がり込んでしまい…看守に気付かれてしまったのだ…!

 

 

 

『お前ら!脱獄は重罪だぁ〜!懲罰を─「うおりゃ!!」ごはっ!?』

 

「沢渡!?」

 

「こうなったら…逃げるしかねぇ!!」

クロウに殴りかかろうとする看守に沢渡が頭突きを喰らわせる…こうなったら逃げるしかないと思ったのだ…!

 

 

『お前ぇぇ…!!』

 

「………うそーん」

しかし、腐っても看守…即座に起き上がって沢渡達に襲いかかる……しかし、それを皮切りに囚人達もヒートアップ…大乱闘へと───

 

 

 

バッコーン!!

 

 

 

「「「『『『はっ…!?』』』」」」

 

その時、収容所に轟音が鳴り響く…呆気に取られた囚人や看守達が音の発生原を探る、それは収容所と外界を隔てる巨大な鉄扉──それがひしゃげて吹き飛んでいたのだ。

 

 

「………なんだ、ちょっとタイミングが悪かったか?まぁいいか…遊矢!沢渡!権現坂にデニス!黒咲にセレナ!迎えに来たぞ〜!」

 

「ゆ、遊海!?」

砂埃が晴れていく、その奥から現れたのは…白銀の鎧に赤いマントを羽織りし英雄──遊海だった。

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「ゆ、遊星!大変!大変なんだよ〜!!」

 

「ラリー?そんなに急いでどうしたんだ?」

時は遊海と月影の再会直後に戻る…デュエルを終え、調子の悪そうなフォウを撫でていた遊星…そこへ飛び込んできたのはニット帽を被った少年、ラリーだった。

 

 

「クロウが…クロウとシンジがセキュリティに捕まっちゃったんだ!!」

 

「クロウ達が…?また因縁でもつけられたのか?」

 

「なんだか指名手配の奴を匿っちゃったらしくて…って、そうじゃなくて!それでクロウやシンジの仲間が脱獄させようとしてるらしいんだ!!」

 

「なんだって!?」

ラリーの思わぬ言葉に遊星は驚く…収容所からの脱獄はリスクが高いと知っていたからだ…。

 

 

「どうしよう…!このままじゃみんな…」

 

「っ…ラリー、これ以上関わってはダメだ…巻き添えで捕まってしまう……だが、放ってはおけない…!」

 

《フォウ…?》

フォウを机の上に置いた遊星はDホイールへと駆け出す…!

 

 

「遊星!?どうするの!?」

 

「クロウの仲間を説得してくる…!いくらなんでも、無謀過ぎる!!」

脱獄を思い止まらせようとクロウの仲間のもとへ向かおうとする遊星だったが…。

 

 

「おう、そんなに慌てて何処に行くんだ?遊星」

 

「遊海…仲間が…クロウが収容所から脱獄しようとしてるらしいんだ…!止めないと!!」

その前に遊海が立ち塞がる…遊星は慌てて状況を説明する。

 

 

「遊星、1つ聞きたいんだが…その収容所にはどんな奴が行くんだ?」

 

「えっ…セキュリティに因縁をつけられたコモンズか、軽い罪を犯したコモンズが大多数だと……それもほとんど冤罪で……オレの父さんも……」

 

「そうか……なら、俺はそろそろ自分の役目を果たすとしようか」

 

「遊海…?自分の役目…とは?」

遊星は纏う空気が変わった遊海に訊ねる…その瞳はデュエルの時よりも鋭かった。

 

 

 

「お前に受けた一宿一飯の恩義…それを返す為に、俺はお前達のヒーローになろうと思う」

 

「オレ達の、ヒーロー…?」

 

「この数日、この街で暮らしてみて分かった…この世界はデュエルによって歪んでいる…少数のトップス達は豪華な暮らしを享受する一方で…大多数のコモンズの人々は差別に苦しみ、悲しんでいる……俺はこの世界を変える為に風穴を開ける…まぁ、上手くいくかは分からないが……なんとかなるだろう!」

夕陽を背に語る遊海…その言葉には僅かな怒りが乗っていた…。

 

 

『遊海……お前は、いったい…?』

 

「俺は世界の行く末を見守り…悪を裁き、希望を導く…そんな決闘者(デュエリスト)さ、どうやら俺の仲間も捕まってるらしいから…ついでに助けてくるよ」

その言葉と共に遊海は鋼の鎧を纏う…その名は──

 

 

 

『正義のヒーロー…鋼の騎士(メタルナイト)復活ってか?遊海』

 

「っ…牛尾!?」

 

「牛尾さん……やっぱり、()()()()()んですね」

遊海のヒーローとしての名を呼ぶ男…それはデュエルチェイサー003──牛尾哲だった、遊星はセキュリティが来た事に慌てるが…遊海は落ち着いていた。

 

 

『おう、「閃珖竜スターダスト」の姿を見てからぼんやりと思い出したのさ……俺のもう1つの人生を……お前達が変えた、ネオ童実野シティの事を…頼むぜ、遊海……この()()()()()の世直しをさ…!』

 

「ええ…!俺は、この世界を変える為に…次元を越えてきたんですから…!」

懐かしき仲間との再会は…再び遊海の胸に光を灯す!

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

「ゆ、遊海!?どうして…!?」

 

「月影からお前達が捕まってるって聞いたから助けにきたのさ…まったく、柚子ちゃんが心配なのは分かるが…もう少し落ち着いて動けって…まずはランサーズとして合流を目指すべきだったな」

突然の助っ人登場に驚く遊矢…そんな彼に遊海は少し呆れながら応える。

 

 

「お、おいおい…!?なんだよ、あの鎧の奴は…!アレもお前らの仲間なのか!?」

 

「あ、ああ…白波遊海、ランサーズでもトップレベルの凄腕さ……オレなんか一捻りされちまったし…つーか、どんだけ怪力なんだよ!?」

 

『……?ゆう、み…?……白波遊海!?』

遊海の登場に驚いたのはクロウも同じ…沢渡に事情を聞くが……その名前を聞いた不動博士は動揺していた。

 

 

 

『き…貴様!ここが何処だか分かっているのか!?』

 

「遊海!!」

そして、遊海は瞬く間に十数人の看守達に取り囲まれる…その異常な状況に囚人達は様子を窺っている…。

 

「ああ、自分の私腹を肥やす為に偽りの『正義』を掲げ、権力を乱用する…堕落しきった法の番人がいる場所だろう?…ここに捕まってる奴らよりも、お前達の方が悪人顔してるぜ?」

 

『貴様…!!奴を拘束せよ!!』

 

「あ、兄ちゃん!危ねぇ!!」

遊海の言葉が癇に障った看守達が警棒を構えて一斉に飛びかかる…!!

 

 

「はぁ…お前達とはデュエルする価値もない…自分達の欲深さに溺れるといい……」

迫る看守達を前に遊海はウジャト眼の刻まれた金色の卵を静かに掲げる。

 

 

罰ゲーム!!

 

 

──GREED〜欲望の幻想──

 

 

 

静かな言霊と共に、遊海は『何か』をばら撒いた!

 

 

 

 

『う、うおおおっ!?カードだ!!レアカードだ!』

 

『俺のだ!!』

 

『オレのモンだ!!』

 

『抜けがけするな!!』

 

「な、なんだぁ…??」

ばら撒かれた()()に群がり、奪いあう看守達…その様子を見て長次郎は呆れていた…、

 

 

「なんで…看守共は()()に群がってんだぁ…?」

 

「汚ね〜…」

……そう、遊海がばら撒いたのは手近にあったゴミ袋の中身、看守達はチリ紙や生ゴミを醜く取り合っていたのだ。

 

 

 

「看守達を武力で倒すのは簡単だが…それじゃ意味がない、欲に目が眩んだ彼らにはこの方が()になるだろうさ」

看守達に追加のゴミをばら撒いた遊海は呆気にとられた様子の遊矢と沢渡、クロウ達に歩み寄る。

 

「遅くなって悪かったな、迎えに来た!…権現坂とセレナ…デニスと黒咲はどうした?」

 

「あっ…えーと…?」

 

「な、なんだなんだ!?急に静かになったと思えば……遊海!?」

 

「これは…何があった?」

 

 

「わーお…なに?看守さん達は酔っ払ってるのかい?」

 

「なぜゴミ漁りをしているんだ…?」

 

「ん、いいタイミングだ」

遊矢に権現坂達の行方を聞く遊海…そこへ黒咲と権現坂、そしてデニスとセレナがそれぞれやって来た。

 

 

「これで零児と零羅、月影以外のランサーズは集合できたな!

さっさと合流するとしようか!」

 

『…遊海さん…?貴方は…チーム5D'sの…私の知っている…』

 

「不動博士…?」

一度、フェイスオフした遊海が遊矢達に明るく声を掛ける…その時、声を震わせ…目を潤ませた不動博士が遊海に歩み寄る…。

 

 

「……久しぶりです、不動博士…ゼロ・リバースの前に顔を合わせたのが最後だったか……やっぱり、貴方も……」

 

『っ……!!ありがとう…!!遊星を…息子の仲間達を…未来を守ってくれて………ありがとう…!!』

遊海の手を握り締め、涙は流す不動博士…遊海はその肩を優しく叩く。

 

「いいや、俺は遊星達の手助けをしただけ…未来を掴んだのは彼らの力さ……さぁ、行こう…()の息子が…遊星が貴方を待ってる!」

 

『はい…はい…!!』

優しく不動博士を宥める遊海、その言葉で…不動博士の背負う十字架は軽くなったのであった…。

 

 

 

 

 

「さて…他の囚人達よ!外への出口は開けてやったが……どうするかはお前達に任せる!逃げるなら逃げろ、犯した罪を償いたいなら牢屋に戻ると良い!……ただし、凶悪犯以外はな?」

 

「安心してくれよ、鋼の兄ちゃん…ここにはそんな凶悪犯はいねぇ…軽い盗みやら、ライディングデュエルをして捕まったやら…あとはセキュリティに難癖つけられたような奴ばっかりだ、このエンジョイ長次郎が保証する!」

 

「そうか…貴方の言葉を信じさせて貰おう」

不動博士との再会を果たした遊海は声を響かせる…なお、看守達は相変わらずゴミ漁りに一生懸命である。

 

「じゃあ…行こうか!」

 

「「「うおおお!!!」」」

遊海の号令で囚人──コモンズ達から歓声が上がる、その姿はまさにヒーローのようだった…。

 

 

「ねぇ、遊海…いいのかな?こんな事して…?」

 

「まぁ…普通の世界ならアウトだな、だけど…この世界は歪んでる、それを正すのも…俺の役目さ」

大脱獄の主犯となった遊海に心配そうに訊ねる遊矢…遊海はそんな遊矢に優しく笑いかけた…。

 

 

 

『と、止まれ!貴様ら!!』

 

『大人しく牢屋に戻れ!刃向かう者は容赦しない!!』

 

「いけねぇ…!脱獄取締り専門チーム『捕縛隊』だ…!さっきの看守みてぇにはいかねぇぞ…!」

遊海達ランサーズを先頭に牢獄塔から脱出するコモンズ達…その前に三人の特殊部隊が立ち塞がる…!

 

 

「へっ…!三人なら、数の暴力で押せば…」

 

「いいや、俺達はあくまで()()と収容所から出させてもらおう…お前達は手を出さないでくれ」

 

「遊海…?」

沢渡の提案を止めた遊海は静かに前に歩み出る。

 

 

「シティの秩序を守る者達よ…お前達に問う!お前達の()()とはなんだ?」

 

『我々の任務は脱獄を防ぐ事だ!それによってシティの治安を守る!それが我々の為すべき事!』

遊海の問いかけに捕縛隊の1人が答える…!

 

 

「その正義とはトップスに偏った…いいや、()()()()正義ではないのか?富を独占するトップスによってコモンズの人々はその日の食事にすら困っている…だから、コモンズの人々は『罪』を犯すまで追い詰められる…!罪を憎んで()()()()()…お前達が為すべきなのは、新たな罪を産んでしまう…今の社会の形を変え、弱き人々を助ける事ではないのか!!」

 

『詭弁を…!それはお前達の脱獄とは関係ない!!』

 

「いいや、関係はある!彼らが社会に戻れば…新たな仕事が生まれ、社会は回る…それによって少しでも笑顔になるコモンズの人々の為に…俺はお前達に立ち向かおう!!」

遊海は静かにデュエルディスクを構える!

 

『っ…お前達!奴が脱獄のリーダーだ!力づくで取り押さえろ!!』

 

『『了解!』』

遊海の迫力に気圧されながらも、捕縛隊は戦闘態勢を取る…!

 

 

『遊海さん…!大丈夫ですか…!?』

 

「不動博士…大丈夫、貴方は必ず…家族のいる場所に帰るんだ…その為ならば、俺はこの世界すら敵に回そう!!」

闘気を開放する遊海…お互いの『正義』を賭けたデュエルが始まる…!

 

 

 

 

 

『『『デュエル!!』』』

 

遊海LP4000

 

捕縛隊A LP4000

捕縛隊B LP4000

捕縛隊C LP4000

 

 

 

「俺のターン!」

「魔法カード『予想GUY』を発動!自分の場にモンスターが存在しない時、デッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚する!現われろ!『クィーンズ・ナイト』!」

遊海の場に閃光が弾け…女王の名を持つ絵札の騎士が現れる! ATK1500

 

「さらに『キングス・ナイト』を召喚!」

王の名を持つ絵札の騎士が現れる! ATK1600

 

「そして『キングス・ナイト』の効果発動!自分の場に『クィーンズナイト』が存在する時に通常召喚に成功した事で…デッキから『ジャックス・ナイト』を特殊召喚!!」

王と女王の導きによって未来を担う絵札の騎士が現れる! ATK1900

 

 

『一気にモンスターを三体も…!』

 

『だが、奴の場にチューナーはいない!すぐに制圧してやる…!』

 

「制圧、か……できるなら、やってみせろよ…俺は永続魔法『アドバンス・ゾーン』を発動…さらに!速攻魔法『神速召喚』を発動!!自分の場に『キングスナイト』『クィーンズナイト』『ジャックスナイト』が存在する時!デッキから闇属性以外のレベル10・攻撃力?のモンスターを手札に加え、召喚できる!!」

遊海がそのカードを発動した瞬間、収容所の上空が夜闇を塗り潰すほどの黒い雲に覆われていく…!

 

 

『な、なんだ…!?』

 

「空が…!」

 

「すぅ……てんくうにらいめいとどろくとき、つらなるくさりのなかに、いにしえのまどうしょをたばね…そのちから、むげんのかぎりをほこらん…」

雷鳴が轟き、稲光が走る中…遊海は神への祝詞を紡ぐ…。

 

 

「神なき世界に現れよ…!我が友の力の欠片!『オシリスの天空竜』──!!」

遊海は手にしたカードをデュエルディスクに叩きつける…そして遊海の場に稲妻が落ち───何も()()()()()()。 攻撃力?

 

 

「えっ…モンスターが……」

 

『……な、なんだ…?御大層な演出だけか…?』

 

「……はぁ、()()()()()()ならいいや……『オシリスの天空竜』の攻撃力・守備力は自分の手札1枚につき1000アップする…今の手札は1枚、よって攻撃力は1000になる」

 

オシリスATK?→1000 

 

 

「先攻は攻撃できない…俺は手札1枚を伏せてターンエンド、そして永続魔法『アドバンス・ゾーン』の効果発動!俺がアドバンス召喚したターンのエンドフェイズにリリースしたモンスターの数に応じた効果を発動できる!2体リリースした事で1ドロー!さらに3体リリースした事で墓地の『キングスナイト』を手札に加える!」

 

オシリスATK1000→0→2000

 

 

遊海LP4000

オシリス アドバンスゾーン 伏せ1 手札2

 

 

 

『な、なんだよ…びっくりさせやがって…!!すぐに確保してやる!!』

 

「ゆ、遊海!本当に大丈夫なの!?」

 

『ゆ、遊矢君…心配する必要は、ないよ…!私達はいま、()()()()()()デュエルに立ち会っているんだよ…!』

 

「えっ…?」

目に見えないモンスターを召喚した遊海に戸惑う遊矢…だが、その隣で不動博士の手は震えていた…!

 

 

 

@捕縛隊A

 

『私のターン!ドロー!』

『いくぞ!「ジュッテ・ナイト」を召喚!!』

江戸時代の岡っ引きのような小柄な戦士が現れる…だが── ATK700

 

 

「『オシリスの天空竜』の効果発動!相手が攻撃表示でモンスターを召喚・特殊召喚に成功した時!その攻撃力に2000ダメージを与え、0になったモンスターを破壊する!招雷弾!!」

 

『なっ─!?』

天空から巨大な雷球が飛来…ジュッテナイトは爆散した!!

 

 

『い、いったい…何処から…!?』

 

「その暗視ゴーグルを外して…周りを見てみろよ」

 

『なにっ…?』

捕縛隊は暗視ゴーグルを外す、その目に映るのはコモンズ達を背にした遊海の姿……そして、コモンズ達の背後にある()()()だった。

 

 

『壁が…赤い…?』

その風景に捕縛隊は違和感を覚える…囚人達の背後はコンクリート製の牢獄塔、ならば…その色は灰色でないとおかしいのだ。

 

 

「咆哮せよ!()()()()…オシリスの天空竜!!」

 

 

 

《ギュアアアアン!!!》

 

 

 

『『「「はっ…!?」」』』

遊海の言葉と共に鼓膜が破れるような大咆哮が響き渡る、その主は…牢獄塔に巻き付いた、2つの口を持つ巨大な赤き龍神だった…。

 

 

「で……でかっ!?なにあれ!?」

 

『…伝説の「三幻神」が一体、オシリスの天空竜…!その姿を生きて見れる時が来るとは…!!』

規格外の巨大さを誇る天空神に驚愕する捕縛隊に遊矢達…不動博士は『神』のカードの登場に声を震わせている。

 

 

「さっきまでの威勢はどうした?俺を制圧するんだろ?」

 

『わ、私は…これでターン、エンドだ…』

捕縛隊に問いかける遊海…捕縛隊は震えながらターンを終えた…。

 

 

捕縛隊A LP4000

手札5

 

 

@捕縛隊B

 

『お、オレのターン…!ドロー…』

『モンスターを裏守備表示で、召喚…ターン、エンド…!』

 

捕縛隊B

伏せモンスター 手札5

 

 

@捕縛隊C

 

『俺の、ターン…』

『モンスターを伏せて、ターンエンド…!』

 

捕縛隊C

伏せモンスター 手札5

 

 

 

「と、徳松さん…捕縛隊の奴ら、なにも動けないみたいだけど…?」

 

「うん…?ああ、シンクロ召喚はな…召喚できれば強力なんだが、いかんせんチューナーや他のモンスターは攻撃力が低い事が多い…俺の使う『花札衛(カーディアン)』も攻撃力は軒並み2000以下だ、そして鋼の兄ちゃんの召喚したとんでもねぇモンスターは相手の攻撃力を2000ダウンさせる…つまり、動こうにも動けねぇのさ…!」

まったく手を出せない捕縛隊について徳松に訊ねる遊矢…徳松は遊海の召喚したモンスターの恐ろしさをよく理解していた。

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「魔法カード『光の護封剣』を発動!このカードは相手ターンで数えて3ターン、フィールドに残って相手の攻撃を封じる…そして!発動時に相手の裏守備表示モンスターは表側守備表示になる!」

 

『『っ!?』』

捕縛隊のフィールドに光の剣が突き刺さり、伏せられていた2体の『ジュッテナイト』が現れる! DEF900 DEF900

 

オシリスATK2000→3000→2000

 

「そして!リバースカード発動!速攻魔法『超電導波サンダー・フォース』!自分の場に『オシリスの天空竜』が存在する時!相手の場の表側表示モンスターを全て破壊する!消し飛ばせ!『オシリス』!!」

 

《ギュアアアアン!!》

 

『『うわあ!?』』

咆哮と共にオシリスの巨大な口から凄まじい破壊光線が放たれ、2体のモンスターを飲み込む!

 

「さらに、自分のメインフェイズに効果を発動した事で追加効果発動!このターン、モンスター1体でしか攻撃できない代わりに…破壊したモンスター1体につき1枚ドローできる!2ドロー!」

遊海手札2→4

 

オシリスATK2000→4000

 

『攻撃力、4000…!?』

 

「バトルだ!『オシリス』で捕縛隊Aを攻撃!サンダー・フォース!!」

 

『ぐわああああ!?』

容赦ない一撃が捕縛隊を飲み込んだ…。

 

捕縛隊A LP4000→0

 

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

オシリスATK4000→3000

 

遊海LP4000

オシリス アドバンスゾーン 光の護封剣(3) 伏せ1 手札3

 

 

@捕縛隊B

 

 

『オレのターン…ドロー!』

『っ…モンスターを伏せ、ターンエンド…』

 

捕縛隊B LP4000

伏せモンスター 手札5

 

 

 

@捕縛隊C

 

 

『俺のターン…!ドロー!』

『モンスターをセット…カードを1枚伏せて、ターンエンドだ…!』

 

捕縛隊C LP4000

 

伏せモンスター 伏せ1 手札4

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「フィールド魔法『神縛りの塚』を発動!」

遊海の背後に神々を祀る塚が現れる。

 

オシリスATK3000→4000→3000

 

 

「さらに罠カード『メタル・リフレクト・スライム』を発動!このカードを水属性水族レベル10、守備力3000のモンスターとして特殊召喚!」

遊海の場に巨大な刺々しいスライムが現れる! DEF3000

 

「そして!水属性水族、レベル10のモンスターをリリースする事で…エクストラデッキから融合モンスター『(ゴッド)・スライム』を特殊召喚!!」

 

『なっ…!?』

銀色のスライムが変形…大地の神の姿を写した、攻撃形態に変身する! ATK3000

 

 

「バトルだ!『神・スライム』で捕縛隊Cの伏せモンスターを攻撃!」

 

『ここだぁ!!リバース罠「聖なるバリア─ミラー・フォース」を発動!相手の攻撃表示モンスターは全て破壊だ!!』

 

「それはどうかな?」

 

『へっ…?ぐわぁああ!?』

ミラーフォースで反撃を狙う捕縛隊…だが、そのバリアは呆気なく神のスライムに砕かれ…伏せられていた『キリビ・レディ』が粉砕される!

 

「『神縛りの塚』の効果でレベル10以上のモンスターは効果対象にならず、破壊されない…さらに!レベル10以上のモンスターが相手モンスターを戦闘破壊した時、相手に1000ダメージを与える!」

 

『ぎゃあああ!?』

暗雲から稲妻が捕縛隊に直撃する!

 

捕縛隊C LP4000→3000

 

「『オシリス』で捕縛隊Cにダイレクトアタック!サンダーフォース!」

 

 

『ひぎゃっ…!?』

2人目の捕縛隊も神の前に消し飛ばされた…。

 

捕縛隊C LP0

 

 

 

『ひっ……わ、うわあああああ!?!?』

 

「……これぐらいの威圧で使命と仲間を捨てて逃げるか……まだネオ童実野シティのセキュリティの方が強く、正義に燃えてたぞ……情けない」

 

《ギュアアアアン!!》

 

最後の捕縛隊はデュエルディスクを捨てて逃げ出す…その姿に遊海は呆れ、オシリスは勝利の咆哮を轟かせた…。

 

 

 

捕縛隊B 逃亡

 

遊海WIN!

 

 

 

 

「ああ、囚人達…一つ言い忘れたが……お前達がもし、悪事を働いたなら……俺が()を与えにいくから、そのつもりで」

 

「「「ひっ…!?」」」

デュエルを終えた遊海は穏やかにコモンズ達に声を掛ける…だが、その目はまったく笑っておらず……コモンズ達は壊れた首振り人形のように首を縦に振ったのだった…。

 

 

「(あの人、やべぇ……革命の前に…オレが潰される…!)」

特に、コモンズによる革命を計画していた一人の青年は…完全に心を折られたのだった。

 

 

 

 

ドッカァァァン!!

 

 

 

「よーし、これで外に出られるな!」

 

「(鋼鉄の門を拳一発で粉々に…!?前から思ってたけど、遊海って何者!?)」

収容所と外界を隔てている巨大門を粉砕した遊海…その規格外の力に遊矢は表情を引き攣らせる…その時だった!

 

 

 

【運動会はそこまでです】

拡声機による声が響くと同時に無数の巨大ライトが遊海達の一団を照らす!

 

 

「っ…!せ、セキュリティの本隊だ!!」

 

「そんな…!ようやく、家に帰れると思ったのに…!?」

収容所から橋を隔てた向こう岸…そこには数十人以上のセキュリティ達、そして…それを率いる一人の男が立っていた…!

 

 

【私はシティの治安を預かる責任者、治安維持局長官のジャン・ミシェル・ロジェと申します…脱獄犯諸君、奮闘ご苦労……しかし、それもここまでです】

金髪で落ち着いた雰囲気を纏う男…ロジェは遊海達を追い詰める。

 

 

 

「………なんだ、()()か…この世界にはレクスさんはいないみたいだな」

 

【っ…貴様、長官である私に向かって…!】

 

黙れ

 

【ひっ…!?】

現れたロジェを雑魚と言い捨てた遊海…それに反論しようとしたロジェだったが、遊海の殺気の篭められた言葉に思わず尻もちをつく…。

 

 

「お前には()()用はない、もっと上の人と話をさせてくれ」

 

【貴様…!!貴様ぁ!!この私を虚仮にして…タダで済むとでも…!】

呆れた様子でロジェに話す遊海…ロジェはなんとか立ち上がるが…。

 

 

 

『そこまでです、ロジェ長官…彼らの身柄は「行政評議会」の預かりとなります』

 

『これは評議会の総意であり、治安維持局はそれに従う義務があります』

 

【なっ…!?行政評議会だと!?】

その時、一機のオスプレイ型輸送機が着陸…その中から現れたのは白いタキシードを纏ったシティの最高機関『治安維持局』の使者だった。

 

 

【ま、待ちなさい!彼らはコモンズを扇動し、シティで騒乱を起こそうとする不穏分子!セキュリティの手で徹底的に…!】

 

──不穏分子かどうかは我々が判断します──

 

──今すぐ、彼らの…『ランサーズ』の身柄を渡してもらいます──

 

──これは命令です、ですな?議長──

 

──はい、そう言う事です──

 

【そんな…!?】

使者に反論するロジェ…だが、それを諌めたのはホログラムで現れた5人の男女…ホワイト・タキ議長を始めとした『行政評議会』の議員達だった。

 

 

 

──それから…連れてくるのは『ランサーズ』の者達、それに関わったクロウ・ホーガン、シンジ・ウェーバーとその仲間…そして徳松長次郎氏……それ以外の者には()()()()()()()()()()開催に伴って恩赦を与えます…ですな?議長──

 

──はい、そういう事です──

 

【なっ…!?そんな事が、まかり通ると…!】

突然の恩赦宣言に取り乱すロジェ…それは前代未聞の事だった。

 

 

──ロジェ長官、貴方が相対しているのはただのデュエリストではありません…気付いていないのですか?貴方はずっと()()()()()()()()()()──

 

【はっ…?】

その瞬間、ロジェは後ろを振り返る…ライトが照らす収容所…その背後には虹色の核石が輝く、巨大な()()()が佇んでいた…。

 

 

「話はついたな…ランサーズ、お前達は白タキシードの人達の指示に従ってシティの最高意思決定機関『行政評議会』に向かうんだ、そして長次郎さんと…クロウにシンジ君、それからデイモン君?…君達も指示に従ってほしい…危険はないから安心してくれ」

 

「遊海は…?」

 

「ちょっと人を送ってから行く…すぐに追いつくさ………行きましょう、不動博士」

 

『遊海さん…いいのかい?』

 

「ああ、遊星との()()だからな!飛翔せよ!『閃珖竜スターダスト』!!」

 

《キュオオン!!》

遊矢達に指示を出した遊海は不動博士と共に夜空へと飛び上がる…そして、光輝く竜の背に乗って夜空へと消えて行った…。

 

 

【(な、何なんだ?あの鎧の男は…!?力が、足りない…調()()を急がねば…!)】

渋々、行政評議会の指示に従うロジェ……だが、彼は諦めてはいなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、いま戻ったぜ遊星!」

 

「遊海!」

 

《フォウ!フォーウ!!(遊海!おかえりー!)》

 

「おっと!ただいまフォウ!乗り物酔いは治ったみたいだな!」

遊星の工場に遊海が帰還する、フォウは遊海へと飛び付き…遊星は作業を中断して遊海へと駆け寄った…。

 

 

「クロウ達は!?」

 

「大丈夫、収容所から助け出して…色々あって行政評議会預かりになった、もう大丈夫だ!」

 

「行政評議会の!?……でも、無事なら…良かった…」

クロウ達の無事を聞いた遊星は一先ず胸を撫で下ろす…。

 

 

「そして…俺から()()()()()だ!……博士!」

 

「えっ…?」

遊海は工場の外へ声を掛ける…そこには…。

 

 

『遊星…遊星…!』

 

「と、父さん…!?」

戸惑いながら、白衣を来た男が遊星に歩み寄る…それは、遊星の記憶から少し窶れてはしまったが……紛れもなく、遊星の父だった…!

 

「たまたま、俺の仲間と同じ収容所にいたみたいでな…交渉して恩赦にしてもらった……これ以上は野暮な話だな」

 

《フォーウ(2人だけにしてあげよう!)》

 

 

 

 

 

『遊星…寂しく、辛い思いをさせてすまない…!!明日になったら、母さんを迎えに行こう…!トップスの時のように贅沢はできないかもしれない……それでも…』

 

「…贅沢なんて、いらない…!父さんと、母さんと一緒にいられるなら…!!」

 

『遊星…ごめん、ごめんな…!!』

ついに果たされた親子の再会…遊星も不動博士も、涙を零しながら再会を喜びあった…。

 



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幕間〜行政評議会にて〜

【ホワイト議長…もう一度言わせていただきます、彼らはコモンズを扇動し!シティで騒乱を起こそうと計画していたのです!!これは脱獄を手助けしようとした仲間の証言からも明らか…!彼らを即刻、拘束すべきです!!】

 

収容所での脱獄事件から数時間、輸送機によって護送された遊矢達ランサーズと長次郎、そしてクロウ・シンジ・デイモンを含めたコモンズ組はシティの最高権力機関・行政評議会の議場へと連れてこられていた…彼らの前では遊矢達の身柄を確保しようとするロジェが行政評議会の5人へと訴えかけている…。

 

 

 

 

「っ…黙って聞いてれば…!ふざけんな!オレ達はコモンズがどうこうっていう計画は知らねぇし、そもそも…捕まるような悪い事はしてねぇ!オレ達が何をしたって言うんだよ!?」

ロジェの演説を聞いていた沢渡が声を上げる…だが、ロジェは表情を崩さない…。

 

 

【セキュリティに対して抵抗した…それだけでも、充分な罪です】

 

「待ってよ!先に手を出したのはそっちだろ!?この次元に着いた途端、右も左も分からないのにいきなりセキュリティに囲まれて…!」

 

()()…?皆様!お聞きになりましたか!!彼はいま、()()()()()()()()と言いました!これが何を意味しているのかお分かりか!!】

続いて反論する遊矢…ロジェはその言葉の揚げ足を取る…。

 

【彼の言葉をそのまま受け取れば…彼らは()()()から来た事になる!であれば…彼らがこの世界に存在しない融合やエクシーズ、そしてペンデュラムといった召喚法を操るのも道理……未知なる召喚法を使う者達がいかなる目的を以てシティに現れたのか……それを探る為に、私はセキュリティに命令を出したのです!】

……ロジェという男は口がうまく、弁が立つ…何も知らぬ者が彼の話を聞いたならば…例え、嘘であっても信じてしまうだろう…ただ、弱点があるとするならば───

 

 

「あんたなぁ…年端もいかない少年少女を追い詰めて恥ずかしくないのか?こいつらはまだ14やら17歳なんだぞ?」

 

【っ…貴様!!】

会議室に呆れたような声が響く、そこにやって来たのは肩に白猫を乗せた赤帽子の男…白波遊海だった。

 

 

 

「アンタ…脱獄の時の…!」

 

「おう、クロウ・ホーガン…さっき振りだな!さて…行政評議会の皆様、俺は白波遊海…スタンダード次元防衛隊、ランス・ディフェンス・ソルジャーズ…通称ランサーズのお目付け役…サポーターみたいな事をやらせてもらってる」

 

【ホワイト議長!この者こそ、今回の脱獄騒動の主犯!即刻逮捕すべき危険人物です!】

余裕を持った態度で評議会の議員達に挨拶をする遊海、その姿を見たロジェは遊海を危険人物と見做し、拘束するように進言する。

 

 

「危険人物とは失礼な…まぁ、否定はしないが……俺は無辜の罪で囚われた仲間を助けに行っただけだ、それより…他のコモンズの人々を含めて、逮捕状や取調べ、裁判も無しに収容所に連行するのもどうかと思うが…どう思う?」

 

【貴様…!セキュリティ!!この者を…!】

 

「ああ、お前の連れて来たセキュリティは()()()()?俺が()()()()犯罪者を任せたからな」

 

【はっ…?】

ロジェは遊海を捕らえようとするが…遊海の一言に思わず固まる。

 

 

「ここに来るまでにデュエルギャングを3つ壊滅、放火魔と宝石強盗犯、誘拐未遂犯とひったくりを確保…それから車両事故の救護と火災の消火…ああ、それからDホイール暴走族の抗争を止めて来た…その処理は居合わせたデュエルチェイサー003って人に任せてあるから、報告書を読んでくれ……コモンズ()()()をするのは楽しいかもしれないが…もう少し、治安維持の役目を果たしたらどうかな?治安維持局長官殿?」

 

「「「「何やってんの!?」」」」

遊海の言葉に思わずランサーズ達の声が重なる…遊星の家から行政評議会に向かうまでにいつもの()で人助けをしながら来たのだ。

 

 

 

「それから…()()はこれぐらいにしておけ、赤馬零児…こいつらが不安そうな顔をしているのは見てられないからな」

 

「お前は……つくづく規格外…手に負えないな、あまり騒ぎを起こさないで欲しかったのだが…」

 

「心配すんな、顔は隠してる」

 

「っ!?零児!」

 

「……やはり無事だったか」

最後に遊海は会議室の一角に目を向ける…そしてVIP用と思われる階段から月影・零羅と共にランサーズのリーダー、赤馬零児が現れた。

 

 

 

【お前は…!】

 

「私は赤馬零児、ランサーズのリーダーだ…我々の目的は騒乱ではない、いまだに融合次元・アカデミアの侵略の手が及んでいないこのシンクロ次元を守り、同盟を結び…次元戦争に勝ち抜く為にやって来たのだ」

 

【ふ、はははは!!何を言い出すかと思えば…!次元戦争だと?そんな雲を掴むような話など、信じられるか!】

 

『ロジェ長官、話はそこまでだ…話は全て赤馬零児から聞いている』

 

『3つの次元が関わる戦争の事も』

 

『デュエル戦士、ランサーズの事も』

 

『ですな?議長』

 

『はい、その話はそこまでに』

 

【っ!?評議会は…こんな戯言を信じたと言うのですか!?】

零児から語られた次元戦争の話を信じないロジェ…だが、評議会の議員達は既に現状を把握していた…。

 

 

 

 

『戯言かはわからん、現に…異世界から来たという人間がいるのだから』

 

『貴方も別次元の存在を信じたから、彼らを捕らえて目的を調べようとしたのでしょう?』

 

【っ…彼らの目的こそが、我々の次元への侵略ではないのでしょうか…!】

 

「はぁ…聞き分けろよ、ロジェ長官…貴方の上司が一応とはいえランサーズを受け入れた…ならば、それを受け入れるのも長官として度量じゃないのか?俺達は好意でこの次元を守りに来たんだが?」

 

【守るのは我々セキュリティの役目だ!お前達ではない…!お前達が何者であるかはセキュリティが…!】

 

『いいえ、決めるのは評議会です…その為に全員を行政評議会の管理下に置いた』

行政評議会の決定に反対するロジェ…だが、評議会の決定は簡単には動かない。

 

 

「ち、ちょっと待て!全員って俺も疑われてるのかい!?俺は遊矢達と会ったのは数日前で…10年も収容所にいたんだぞ!?」

 

『例外はない』

 

「嘘だろ!?」

そんな中、想像を超えた話に戸惑っていた長次郎が声を上げる…「全員」の中には長次郎やクロウ達も含まれているのだ。

 

 

『君達が我々の味方だと言うのなら、それを証明してもらいたい』

 

「証明…?どうやって…!」

 

()()()()()()()()()()に出場してもらう…それが行政評議会の意向だ」

 

「「「フレンドシップカップ?」」」

 

「シティで行われる大規模なデュエル大会だ」

零児によってフレンドシップカップへの出場を伝えられるランサーズ…だが、その内容に首を傾げる。

 

 

「ランサーズが大会に出場し、デュエリストとしての腕前を見せるようにと」

 

「…零児、俺は()()していいか?」

 

「むっ…?何故だ?遊海」

 

「俺が出たら…ランサーズの実力を見せるという目的が果たせなくなるからな!」

 

「「「あっ…(察し)」」」

 

「……遊矢、あの遊海って奴は強い…んだよな?この前も見たけど…」

 

「……うん、1人でアカデミアのエリート…オベリスク・フォースって奴らを12人倒してるんだ…」

 

「……やっぱりやべぇ奴なんだな、アイツ…」

零児の言葉を聞いた遊海はフレンドシップカップへの出場を辞退する、その理由にランサーズの声が重なる…なお、遊海の強さを把握していないクロウは遊矢に尋ねるが…その態度から察したのだった。

 

 

『白波遊海、貴方の事も赤馬零児から聞いています…貴方が規格外のデュエリストである事も、そうであればなおさらその実力を見せて欲しいのだが?』

 

「余所者が()()()になったら…困るのは貴方方じゃないのか?大会の趣旨的にも」

 

『『『『!!』』』』

遊海に出場を迫る評議会…だが、遊海の言葉に議長を除く4人の表情が固まる。

 

 

「……大会の、趣旨?」

 

「フレンドシップカップ…その大会が始まるキッカケになったのは、貴方なんですよ…徳松長次郎さん」

 

「キッカケが、俺?」

 

『ええ、その通り…わし個人としても、貴方に出てもらいたい』

遊海の言葉をホワイト議長が引き継ぐ…十年前、トップスの陰謀によって表舞台を去ってしまった長次郎…その影響がコモンズに及び、若者達の暴動が激増した…行政評議会は新たにデュエルチェイサーズを発足させたが、焼け石に水…混乱は収まらなかった。

 

そこでトップスとコモンズの融和を目的としたデュエル大会・フレンドシップカップを発案…優勝者を『キング』として讃え、融和の象徴にしたのだと…。

 

 

 

「っ…何が双方のキングだよ!!ジャックの野郎、キングになったからってコモンズに顔も出しゃしねぇ…アイツみたいにトップスの見世物になるのはごめんだ!」

 

「クロウ…」

その時、クロウが忌々しげにフレンドシップカップを非難する…「融和の祭典」とはなっているが、全てのコモンズに受け入れられた訳ではないのだ…。

 

 

「こうなったらしょうがねぇよクロウ…まぁ、出場すればフランク達に元気な姿を見せられるぜ?」

 

「っ…くそ…」

しかし、シンジの言葉にクロウは顔を歪める…子供達の事を言われるとクロウは弱いのだ…。

 

 

「よっしゃ…!この俺が、もう一度表舞台に…!子分達に晴れ姿見せてやれるぜ!!」

 

「よ〜し、遊矢!オレ達のエンタメデュエルでシンクロ次元の観客達を沸かせてやろうぜ!!」

 

「うん…」

その横で純粋に出場を喜ぶ長次郎と沢渡…だが、遊矢の表情は暗かった…その理由は…。

 

 

 

「そんな事よりも、早く柚子を探しに行かないと…!遊海!柚子は、柚子は見つかってないの!?」

 

「悪いな、遊矢…俺は人探しは得意なんだが…一度会ってないと追えないんだ…」

 

「そんな…!」

遊矢が暗い理由、それは柚子が見つからないから…遊海も会った事がない柚子の居場所は追う事ができず、まだ会えていないのだ。

 

 

【ほう…やはり、柊柚子は貴方達の仲間でしたか】

 

「っ…!?まさか…!!」

 

【ふっ…まだ、捕まえてなどいませんよ…彼女もまたフレンドシップカップに出場する大事なデュエリストなのですから…!】

 

「ゆ、柚子が大会に!?」

そんな時、自分の想定外の事態に歯噛みしていたロジェが声を上げる…それは柚子がフレンドシップカップに出場するという衝撃的な言葉だった。

……実は、指名手配されているにも関わらず…ユーゴが堂々と本名で自分と柚子の出場書類を出してしまったのだ…。

 

なお、ユーゴに悪気はなく…自分の夢を果たす為と大舞台の方が「次元戦争」の脅威を伝えやすいと自分なりに考えた為である。

 

  

 

【そんなに心配なら…キミも早く、彼女に元気な姿を見せてあげるといい!ホワイト議長、彼らをフレンドシップカップに出場させる事は認めましょう…しかし、一つ提案させて貰いたい!】

 

『提案?』

 

【毎年、フレンドシップカップの前夜祭ではキングがエキシビジョンマッチするのが恒例、その相手を…榊遊矢!彼につとめて貰うのです!】

 

「俺が!?」

 

『何故、彼なのです?』

ロジェの思わぬ提案に遊矢は驚愕する…!

 

 

【私の見立てでは…ペンデュラム召喚と言う奇想天外な召喚法に最も精通しているのは彼、その実力をキングに見極めて貰うのです!】

 

『なるほど…よろしいですな?議長』

 

『はい、それで結構…赤馬零児、あなたは?』

 

「もちろん、異論はありません」

ロジェの提案を承認するホワイト議長、零児も異論は出さない……だが、一瞬…ホワイト議長・ロジェ・零児の視線がぶつかり合った…。

 

 

 

 

 

『では、今日はここまで……移動を願います、ランサーズの諸君』

 

「えっ…!?みんなを何処に連れていくつもりだ!?」

議長の一言でこの場は解散となる…だが、ランサーズ達と遊矢は使者によって分断されてしまう…!

 

 

『心配はいらない、危害を加えるつもりはない』

 

『君達はフレンドシップカップの出場者…例え、脱獄犯でも()()です』

 

()()()()()()()()()()…ですな?議長』

 

『ええ、客人としてもてなしましょう…勝ち続ける限りは…』

意味深に『勝ち続ける限り』と言う評議会…その姿に遊矢は不安を覚える。

 

 

 

「とりあえず話は終わったな…なら、俺は戻らせてもらう」

 

『待ちなさい、白波遊海…例外はありません』

 

『出場者でなくとも…我々の命令には従ってもらいます』

 

「はぁ…悪いが、約束があるんだ」

 

「遊海!!」

そして同じく立ち去ろうとする遊海…だが、評議会の使者達に周りを囲まれる!

 

 

「遊矢、これが最初の試練だ、お前の信じる『エンタメ』を貫いてみせろ…後で会おう…それから零児、俺を縛れるのは……()()だけだ」

 

キィン!

 

『『『『『消えた!?』』』』』

指を鳴らした遊海の足元に不可思議な紋章が現れる…そして遊海はフォウと共に一瞬で姿を消してしまった…。

 

 

【(デュエルディスクを使わない単独転移だと!?何なんだ、奴は…!?)】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォウ、フォーウ?(……遊海、大丈夫…?)》

 

「………(…無駄にカッコつけるんじゃなかった…でも、感覚は分かってきたぞ…)」

 

《やれやれ、世話が焼けるわい……引っ張るぞ〜》

 

《主殿が不死身でなければアウトだったな…》

 

コモンズ地区の裏路地…アスファルトの地面に犬神家状態で転移してしまう遊海なのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(シティの価値観は()()()()に近い……なら、全てを好転させるには…)」

しかし、その中で遊海は世界を変える為の一手を考えていた…。

 



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孤高の王者〜洗礼、そして…〜

こんにちは!S,Kです!

ロジェの企みによってシティのデュエルキング、ジャック・アトラスとぶつかり合う事になった遊矢。
…そして、単独行動の遊海……彼は最短距離での『最善』を目指す…!

それでは、最新話をどうぞ!


「ふぅ…ようやく始まるか…」

 

行政評議会での一幕から2日…遊海はフレンドシップカップの会場となる大規模スタジアム『デュエルパレス』を訪れていた。

今日は前夜祭…今日を楽しみにしていた観客達でスタジアムはごった返している。

 

 

「遊海、良かったのか?本当はアンタも出場者なんだろ?」

 

「まぁな、だけど…出場者じゃないからできる事もある」

そして、遊海は一人ではない…家族との再会を果たした遊星と一緒にやって来ていた。

遊海は遊星に自分の正体…別次元からの来訪者であり、仲間達がフレンドシップカップに出場する事も話している。

 

なお、不動博士には()()を打ち明けていた。

 

 

 

 

「うわっ!?」

 

「おっと…!君、大丈……るっ!?」

空いている席を探して移動する遊海…その時、混雑する通路で一人の少年とぶつかってしまう…それは───緑色の髪をポニーテールにした少年だった。

 

 

「ご、ごめんなさい!妹とはぐれて探してて…」

 

「だ、大丈夫大丈夫……ん?あの子かな?」

 

「えっ?」

 

()()!もう…焦りすぎよ!そんなに急いだってジャックは逃げないって…!」

 

()()!ごめんごめん!!」

妹を探していたらしい少年は無事に妹と合流する…その顔は髪型を除けば瓜二つだった。

 

 

「……見つかって良かったな!今度ははぐれないようにするんだぞ?」

 

「「は〜い!」」

遊海が注意すると2人は元気に応えて走っていった。

 

 

 

「………アヤカ、サーチ頼む」

 

《はい………デュエルパレス周辺にブルーノを除くチーム5D's、その並行存在全員が集まっています》

 

「………『絆』は世界が違っても繋がっている、か…」

 

《フォーウ》

アヤカの言葉を聞いた遊海は炎の()が刻まれた右腕を静かに撫でた…。

 

 

 

………

 

 

 

『シティの中心部にそびえ立つデュエルパレスには実に20万人以上の大観衆が詰めかけ、フレンドシップカップ開幕を待つ熱気で盛り上がっております!!』

開始時間が迫り、スタジアムには実況を務めるカウガール衣装のアナウンサー、メリッサの声が響く…一方、その頃…。

 

 

 

「っ…みんな、何処に連れて行かれたんだろう…それに裏切り者って…」

スタジアム内の選手控え室…そこで赤いライダースーツを着た遊矢は浮かない表情で出番を待っていた。

行政評議会によって分断されてしまったランサーズ…行方が分からない柚子…そして、クロウが見せたシティのデュエルキング、ジャック・アトラスへの怒り…様々な思いが巡り、遊矢は追い詰められていた…。

 

 

「……ねぇ、()()…ジャック・アトラスって、どんな人なの?」

 

「っ…」

そんな時、遊矢は少しでも情報を得る為に自分に付いているホテルマンのような服装の少年に話しかける…だが、少年は遊矢の言葉に驚くような表情をしていた。

 

 

「あっ…もしかして、オレと話しちゃダメだったかな?」

 

「いえ…そんな事は、ないです……」

 

「キミも…ジャック・アトラスのファンなの?ジャックはトップス・コモンズ両方のキングで、ファンが多いって聞いたから…彼の事を教えて欲しいんだ」

 

「……ジャック・アトラスは3年前のフレンドシップカップでコモンズ出身として初めて優勝して…それからずっとキングの座に君臨する『絶対王者』なんです、その振る舞いや言動は全てにおいて史上最強に相応しい……と、みんなは言ってます…」

 

「……ごめん、少し言いづらい事だったかな…?」

遊矢の問いに付き人の少年は少し戸惑い…言葉を選びながら答える…遊矢はその様子から何かを察したようだ…。

 

 

 

「い、いえ…そろそろお時間です、ご案内します…」

 

「うん、ありがとう…よろしくね」

付き人の少年は遊矢に移動を促す…そして遊矢は戦いの場に向かった…。

 

 

 

 

《……マスター、シンクロ次元のズァークの反応を確認しました…!》

 

「ん…ありがとう、アヤカ……遊星、すまないが席を外すぞ?」

 

「ああ……遊海、あまり無茶な事はするなよ…?」

 

「ふっ…心配すんな、俺は……お前達が暮らすこの街を良くしたいだけさ」

 

 

 

 

 

 

「待ってよ!ユーゴ!」

 

「おお…!うおおお!!ついに来たぜ!デュエルパレス!!すげぇ!でっけぇ!!広すぎる!!」

デュエルパレスの一角に慌てた柚子の声が響く…その隣には白いライダースーツを着た少年、ユーゴの姿があった…。

 

 

「舞網市のデュエルスタジアムも大きかったけど…ライディングデュエルの会場ってこんなに広いんだ…!」

柚子は改めてスタジアムを見渡す…「アクションデュエル」を行なう関係上、スタンダード次元のデュエルスタジアムも広い場所が多かったが…デュエルパレスはその数倍の広さがあるようだった。

 

 

 

『それでは!いよいよ本日のメインイベント…シティが誇るデュエルキング!ジャック・アトラスによるスペシャルマッチの開幕です!!』

 

「「「うおおお!!」」」

 

「「「ジャック!ジャック!ジャック!!」」」

 

スタジアムにメリッサの宣言が響き渡る、そしてスタジアムは歓声とジャックコールに包まれる…!

 

 

『流石はフレンドシップカップの象徴!ジャック・アトラス!トップスもコモンズもなく、彼の名を呼んでいますが…ちょっとお待ちを!彼の登場の前に、今回のスペシャルマッチの対戦相手に選ばれた幸運なデュエリストをご紹介します!!その名は…()()()!!』

 

「えっ…!?」

メリッサによって今年のエキシビションマッチの対戦相手が発表される…そして、その名前を聞いた柚子は目を見開いた。

……そして、ライディングコースの入場口から赤色の量産型Dホイールに乗った赤いライディングスーツ、そして見覚えのあるゴーグルを着けた少年が飛び出した…!

 

 

 

「遊矢…!?本当に、遊矢なの…!?あっ…!」

 

キィン─!

 

危なっかしくDホイールを操るライダーが遊矢なのか分からず戸惑う柚子…だが、その時…柚子のブレスレットが淡い光を放つ…!

 

 

「ブレスレットが、光ってる…2人が、ここにいるから…?ああっ……ああ…!!」

 

「おい柚子!?大丈夫か!?」

その光を見た柚子は確信する、あのDホイールに乗っているのは…間違いなく遊矢なのだと…。

そしてその目からは安堵の涙が零れ…隣ではユーゴがあたふたと慌てている…。

 

 

 

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

「ふぇ…?フォウ、くん…?」

スタジアムを周回する遊矢を見て涙を流す柚子、その足元から聞き慣れた鳴き声がする事に気付く…それは不思議な白猫、フォウの声だった。

 

「なんで、フォウくんがシンクロ次元に…?」

 

「ようやく見つけたよ…柊柚子ちゃん、そして…ユーゴ君?」

 

「えっ…あ…!」

フォウとの思わぬ再会に驚く柚子…その時、観客席の出入り口に立つ2人に声をかける者がいた。

 

「な、なんだお前!セキュリテ「遊希さん!!」おわっ!?知り合いか!?」

突然現れた人物を警戒するユーゴだったが…柚子はその人物へと躊躇なく抱きついた…。

 

 

「遊希さん…!怖かった…寂しかった…!!」

 

「……ごめんな、柚子ちゃん……俺は違うんだ…」

 

「えっ…?」

飛び込んだ青年の胸元で再び涙を流す柚子…その背中を優しく叩きながら、青年は……遊海は柚子に()()()である事を伝える…。

 

 

「遊希、さん…?記憶が…戻ったの…?それに…左目が!!」

 

「俺は白波遊海、榊遊希が命を賭けて守ってくれた…本当の姿だ、そして…スタンダード次元防衛隊『ランサーズ』として、君を助けに来た……他にも遊矢や沢渡君、権現坂君もこの次元に来ている……1人でよく頑張った…!」

 

「おお!お前の仲間が迎えに来たのか!良かったじゃねぇか!!」

柚子の言葉に遊海は優しく、そして手短に情報を伝える…そして、心細かったであろう柚子を労った。

 

 

「遊希……遊海、さん…それじゃ、あのDホイールに乗ってるのは、本当に…!」

 

「ああ、これからジャック・アトラスと戦おうとしてるのは正真正銘、君の幼なじみの榊遊矢だ…行政評議会や治安維持局との交渉でランサーズはこの大会に出場する事になった……そして、このエキシビションでは遊矢に白羽の矢が立ったんだ」

 

「そりゃ…本当に()()()()だな…」

 

「えっ…?」

柚子は遊矢の無事を聞いて安堵していたが…ユーゴは苦々しい顔をしていた…。

 

 

「エキシビションマッチの対戦相手はジャックへの()()…フレンドシップカップはキングへの()()()を掴む為の大会だ……その代わり、本戦には出場しないキングの強さを見せつける為に…エキシビションマッチの相手は完膚なきまでに叩き潰される、出場者達の闘志を煽る為にな…それが前夜祭の()()さ」

 

「そんな…!」

ユーゴが語るエキシビションマッチの真実に柚子は顔を曇らせる…()()()()という言葉がその不安を煽っていた…。

 

 

「……柚子ちゃん、遊矢は今…()()()に戦おうとしているんだ」

 

「えっ…?」

 

「この会場の何処かで君が見ていてくれる…だから、自分の元気な姿を見せて安心させたい…そして、エンタメデュエルでシンクロ次元のお客さんを楽しませたい……他にも、様々な思いを抱えて遊矢はあそこに立っている……君がしなきゃならない事は分かるかな?」

 

「っ…はい!!頑張って!遊矢─!!」

遊海から遊矢の想いを聞いた柚子は声を張り上げる…彼女ができるのは、応援する事だけなのだから…。

 

 

 

「なぁ、アンタもランサーズなら大会に出るんだろ?こんなトコにいていいのか?」

 

「悪いけど…俺は()()して貰ったんだ、やりたい事があってね?」

 

「へぇ?何をするんだ?」

 

「………()()()()…かな?」

 

「………はぁ??」

遊矢を応援する柚子を見ながらユーゴが遊海へと問いかける…だが、その答えの意味が分からず首を傾げた…。

 

 

 

 

『さぁ!お待ちかね…!いよいよキングの登場です!!その強さ…その威厳の前にシティはひれ伏した…!コモンズ出身ながら、昇り竜の如くサクセスロードを駆け上がり!デュエリストの頂点に登りつめた生きる伝説!レジェンド!!我らがデュエルキング!!ジャック・アトラス!!』

スタジアムの照明が落とされ、メリッサの声が響く…そしてその輝かしい経歴の紹介と共に、一台のモノホイール型Dホイールが会場へと現れる…それを操る男こそ、シティの『王』…ジャック・アトラス!

 

 

「「「ジャック!ジャック!ジャック!!」」」

スタジアムに響き渡るジャックコールの中、キングはその声援に応える…!

 

 

『キングは1人、この俺だ!!』

 

 

「「「うおおおお!!」」」

Dホイール『ホイール・オブ・フォーチュン』で疾走しながら得意のポーズを披露するジャック…スタジアムはさらなる熱狂に包まれる。

 

 

「………ジャック…」

その姿を見つめながら…遊海は感じていた、自分の知る「ジャック」とも…漫画版の『ジャック』とも、そして時空の狭間から紛れ込んだ『シンクロ次元後ジャック』とも違う…現在のジャックが抱える空虚さを…そして、ジャックはスタート位置で待機する遊矢へと横付けする…!

 

 

 

『皆に尋ねる!今宵…俺は()()()()でコイツを倒す?』

 

「えっ…!?」

それは突然の勝利宣言…ジャックはデュエルが始まる前から遊矢に勝つつもりでいるのだ…!

 

 

「決まってるぜキング!そんなガキ1ターンで終いだ!!」

 

『フッ…キングのデュエルは()()()()()()()()()()でなければならない!』

 

「っ…エンタメ…?」

観客から飛び出す1ターンキル希望…だが、ジャックはそれを流す…その横で遊矢はジャックもまた『エンタメデュエリスト』であると知った…。

 

 

『ターン1!先攻を取るのはこの俺だ!その幕開けに続き…ターン2!相手にも充分な見せ場を与え──ターン3!最後はそれを上回る圧倒的な力の差を見せつける!!』

指で数えながら…ジャックは遊矢と観客達に対して予告勝利を宣言する…!

 

 

 

「(オレが3ターンで負けるなんてあるわけない……)」

 

 

──裏切り者のジャックをぶっ倒してやれ!──

 

──これが最初の試練だ、お前の『エンタメ』を貫いてみせろ──

 

 

「俺のエンタメを……見せてやる…!!」

ジャックの宣言を前に遊矢は自分なりのエンタメデュエルをすると決める…!

 

 

 

 

『さぁ!まずはフィールド魔法の発動です!…って、ルール変更?アクションフィールド??』

 

「えっ…アクションフィールド!?」

 

「ランサーズは次元戦争に対応する為にアクションフィールド投影技術をこの世界に持ち込んだ…まぁ、アクションライディングデュエルって所だね」

ルール変更のカンペを読んだメリッサが戸惑う…そして同じく戸惑った柚子に遊海が補足した…。

 

 

『よく分からないけど…アクションフィールド・オン!フィールド魔法「クロスオーバー・アクセル」!』

 

【フィールド魔法『スピードワールド・ネオ』『クロスオーバー・アクセル』発動、オートパイロット・スタンバーイ…】

メリッサの宣言と共にDホイールのデュエル機能が開放される!

 

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

 

シティのキングとエンタメの申し子…2人のデュエルが始まった…!

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対ジャック

 

 

 

 

「そんな…!!」

遊矢は動揺していた…あまりにも遠く、高みにいるジャックの力を前に…。

 

 

 

 

1ターン目、ジャックの先攻…レベル6の『レッド・ワイバーン』をシンクロ召喚し、カードを1枚伏せてターンを終える。

 

 

2ターン目、遊矢の後攻…『星読み』『時読み』2体の魔術師によるペンデュラム召喚によってエースである『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を呼び出し、さらにペンデュラム融合によって神秘の眼『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を…そしてペンデュラムエクシーズによって反逆の牙『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』を呼び出し、観客を圧倒する()()()を作る。

 

ジャックは格上のモンスターを破壊できる『レッド・ワイバーン』の効果を発動する…だが、遊矢はアクションマジック『ミラー・バリア』によって回避…『ダークリベリオン』の攻撃によってジャックのライフを残り300まで追い詰める。

 

しかし、ジャックは終わらない…即座にアクションデュエルに適応してアクションマジック『魔回避』、さらに罠カード『リジェクト・リボーン』によって残りの攻撃を回避した上で『レッドリゾネーター』『レッドワイバーン』を蘇生して布石を整える。

 

そしてジャックは遊矢を戒める…!

 

 

 

『榊遊矢…お前は口にしたな?エンタメデュエルと…だが、お前のデュエルは()()()()()に過ぎない!エンターテイメントには程遠い……お前には、俺が立つ頂まで登ってくる力はない!!』

 

「なにっ…!?」

シティのキングとして、ジャックは遊矢の弱点を叩き付ける…この時点で遊矢は冷静ではなかった。

突然の相手による勝利宣言…仲間や柚子の行方の不安…色々な悪条件が重なり、遊矢は本来の魅せるエンタメデュエルではなく…エンタメとは名ばかりの力押しのデュエルをしてしまった。

 

しかし、力押しならば……ジャック・アトラスはその二歩先を行く…!!

 

 

 

 

『王者の咆哮!今、天地を揺るがす…唯一無二たる覇者の力をその身に刻むがいい!シンクロ召喚!!荒ぶる魂…レベル8!「レッドデーモンズ・ドラゴン・スカーライト」!!』

3ターン目、ジャックのフィールドで炎が弾ける…それは右角が折れ、右腕にも大きな傷を負いし荒ぶる魔竜…予告通り、ジャックは圧倒的な力を見せつける!!

 

 

『「スカーライト」の効果発動!1ターンに1度、自身以下の攻撃力を持つ、特殊召喚されたモンスターを全て破壊し!1体につき500ダメージを与える!!アブソリュート・パワー・フレイム!!』

 

「そん、なっ…!?」

紅蓮の炎が神秘の眼と反逆の牙を吹き飛ばす…そして、アクションカードもない…!

 

 

『「レッドデーモンズ・ドラゴン・スカーライト」でダイレクトアタック!キングの前にひれ伏せ…!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!』

 

 

「う、うわあああああ!!」

 

「遊矢─!!」

それは敵を葬る灼熱の炎…その衝撃は高速走行中のDホイールから遊矢を放り出した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく…免許もなく、自転車にも乗らない子供をいきなりDホイールに乗せたら…こうなるのは当たり前だろうに…ちゃんとした安全装置を付けてやれよ」

 

 

『なにっ…!?』

 

 

 

 

遊矢LP0

 

 

ジャック WIN!

 

 

 

 

 

「えっ…?」

遊矢は襲いかかるはずの衝撃が来ない事を不思議に思って目を開ける…そして、最初に目にしたのは…光を反射する鋼の鎧だった。

 

 

『貴様…キングのデュエルに水を差すのか…!乱入者よ!!』

 

「勝負は決した…なら、余計な傷を子供に負わせる事もないだろう?…お疲れさん、遊矢……今回のデュエルは()()()だ、だから言っただろ?お前の『エンタメ』を貫いて見せろって…予告勝利はお前のペースを乱す為の()()だ、いつもの遊矢なら…もうちょっと食い下がれたんじゃないか?お前が3ターンキルを覆せれば…スタジアムは盛り上がったと思うぞ?」

 

「ゆ、遊海…?」

ジャックの怒声が響く中…遊矢はゆっくりと地面に立たされる、地面に叩き付けられる前に、鋼の鎧を纏った遊海が飛び出して遊矢を回収していたのだ。

 

 

 

『お、お〜っと!!あの銀色の鎧は…!!最近シティに現れ、犯罪を次々と鎮圧し、コモンズ・トップス問わずに人々を救うご当地ヒーロー!謎の戦士、メタルナイトだぁぁ!!』

ざわめくスタジアムにメリッサの実況が響く、遊星と暮らした数日と大会までの2日間、遊海は合間を縫って昼夜を問わずに『鋼の騎士』として人助けに奔走し、()()を作っていたのだ。

 

 

 

『貴様…行政評議会が言っていた「ランサーズ」とやらの仲間か?わざわざフレンドシップカップの出場権を蹴った変わり者らしいな』

 

「ああ、俺は()()()()だろうさ…正規でのお前への挑戦権を蹴ったんだからな……だからこそ、()()()()()ができる」

 

『なに…?』

行政評議会から遊海の事を聞いていたらしいジャックは遊海へと怪訝な目を向ける…。

 

 

 

「おい、デュエルしろよ……お前の燻った魂の炎をつけ直してやる」

 

『なんだと?』

仮面の下で不敵な笑みを浮かべた遊海は…ジャックへと宣戦布告を叩き付けた…!

 

 

 




「………遊海さん……流星……」

「そんなに心配する事はあるまい、我が魂を受け継いだ海亜に、世界を救った九十九遊馬も一緒に行っておるのだ…ズァークや次元の問題など一捻りして帰ってくるに決まっているだろう」

「ジャック…」
DM世界、ネオ童実野シティ…伝説の決闘者の1人、不動遊星は街の見晴らし台から心配そうに空を見上げていた…その隣には彼の終生のライバル、ジャック・アトラスの姿もある…。


「……歯痒いな…年老いたオレ達では、遊海さんの力になれないのは…」

「フン…それを言ったら、若く取り繕ってはいるが遊海は俺達以上の化け物ジジイだろうが……あまり心配し過ぎるのは体に毒だぞ?遊海が戻って来た時にお前がくたばっていたら…あの世にでも奴は乗り込んで来るに違いない」

「ははっ…ああ、絶対に乗り込んでくるだろうな……」
遊海の力になれない事を悔やむ遊星…ジャックはそんな遊星を気遣いながらも、他愛もないジョークで遊星を笑わせる。




「(遊海さん、次元を越えても…世界が違っても…オレ達、チーム5D'sの絆は繋がっている…!俺達の思いよ……どうか、届いてくれ…!)」
遊星は静かに祈る…掛け替えのない仲間の無事を信じて…。




キィン─!!




「………えっ…?」
その時、既に失われたはずの『光』が右腕で疼いたような気がした。


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王者と英雄─奇跡の導き─

こんにちは!S,Kです!

久々に筆が乗ったので、連続投稿!

シンクロ次元のキング、ジャック・アトラスへと宣戦布告した遊海…彼は、世界を変える事ができるのか…!

それでは最新話をどうぞ!


『なっ…白波遊海!?』

 

『あんな場所で何をしている…!』

 

「……はぁ…凌牙に聞いていた以上の行動力だな…20万人もの観客の前に躊躇なく飛び出すか…しかも、()()()()()()()()()()()()()で…」

同じ頃、行政評議会は動揺していた…ジャックが遊矢を倒すのは想定内、いつも通りの事だ……だが、そこへ姿を消した遊海が現れるとは考えていなかったのだ。

なお、その中で零児は珍しく溜息をついている…。

 

 

 

『赤馬零児、白波遊海は何をしようとしているのです!』

 

『仮にもお前の()()ならば、分かるはずだ』

 

「部下?ご冗談を…白波遊海は私の手に負える男ではない、彼は本当に()()で同行してくれた…1人で()()()()()()()()()()と豪語した男だ」

 

『『『『なっ…!?』』』』

行政評議会の問いかけに零児は眼鏡を押し上げながら答えるが…その答えに評議会の4人は絶句する…!

 

 

『赤馬零児、君は白波遊海が何をしようとしていると考えますか?』

ホワイト議長は変わらぬ穏やかな笑顔のまま、零児に問いかける。

 

 

「私の友人…彼の息子の言葉通りなら──彼はこの世界を()()()とするでしょう、差別や陰謀という名の『毒』に侵された、この世界を…」

 

『そうですか…では、お手並み拝見といきましょうか』

零児の言葉を聞いてなお、ホワイト議長は朗らかに笑っていた。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

「おい、デュエルしろよ」

 

『なっ…クッ、ふはははは!!何処の馬の骨とも知れぬ貴様が、この俺にデュエルを挑むというのか?』

スタジアム・デュエルパレス…遊海によって宣戦布告を叩きつけられたジャックは笑い声を響かせる…。

 

 

「ゆ、遊海!何を考えてるんだよ!?」

 

「おっと、その前にやる事があったな…彩華!」

 

《はい、マスター…柊柚子さんをお連れしました》

 

「えっ!?」

突然の事に慌てて遊海に声をかける遊矢、そして先に解決すべき事を思い出した遊海は人間体の彩華を呼び出す…その腕にはお姫様抱っこされた柚子の姿があった…。

 

 

「ゆ、遊矢…!!」

 

「柚子!!」

彩華に優しく降ろされた柚子は遊矢へと抱き着く…お互いの目には涙が浮かんでいた…。

なお、ユーゴは観客席で残念そうな嬉しそうな…微妙な表情をしている。

 

 

「柚子…柚子…!無事で、無事で良かった…!守りきれなくて、ごめん…!」

 

「いいの…!遊希…遊海さんから全部聞いた…!私の為に、次元を越えて助けに来てくれたって…!!」

 

 

 

『これは…どういう事だ?』

 

「遊矢は()調()()ではなかったって事だ、委細は行政評議会に聞いていると思うが…遊矢はこの子、柚子ちゃんを助ける為にこの街にやって来た…だけど、セキュリティに追われたり…収容所に捕まったり…ちょっと酷い目にあって精神的に追い詰められていたんだ」

 

『フン…それを負けた理由にするのか?』

 

「いやいや、負けたのは遊矢がまだ未熟だからさ…コモンズから茨の道を歩いて、叩き上げられたデュエルの強さと揺るがぬ信念を持ってるお前にいきなり勝てるとは思ってないよ」

遊矢と柚子が再会を喜ぶ横で遊海はジャックへと遊矢の来歴を伝える。

 

「それでも…遊矢は頑張り屋だからな、すぐにお前の眼鏡に適うデュエリストになるだろうさ…その王座へと迫るほどに…!」

 

『その()()()がか?…フン、ずいぶんと夢を語るではないか』

遊海のフォローを鼻で笑うジャック…その余裕は崩れていなかった。

 

 

 

「一つ解決した所で…答えを聞かせてくれよ、ジャック・アトラス…所詮、このエキシビションマッチは()()()だ…ちょっとぐらい付き合ってくれてもいいだろう?」

 

『フッ…生意気な事を…その口振り、まさか…俺に勝てると思っているのか?』

 

()()、今のデュエルに満足していない…燃え尽きてるお前にならな?」

 

『……貴様』

先ほどとは一転、鋭い言葉を突きつける遊海…だが、ジャックは分かっていた…この男は()()()、自分を焚き付ける為に挑発しているのだと…。

 

 

『……いいだろう、キングの誇りに賭けて…貴様の鼻っ柱を叩き折ってやる!』

 

「そう来なくっちゃな…!」

スタジアムで遊海とジャックが火花を散らす…!

 

 

『こ、これは大事件!ジャックが乱入者の挑戦を受けた!もう一度ジャックの…キングのデュエルが見られるようです!!』

 

「「「うおおおっ!?」」」

突然の事態に戸惑っていたメリッサが実況を再開する…それを聞いた観客達からは歓声が上がった…!

 

 

 

 

「(シンクロ次元は『勝者の言葉』が大きな意味を持つ…ならば、ここでジャックに勝つ事で足掛かりを作る……それに、別人とはいえ…()()ジャックが、こんなつまらなさそうな顔してるのは、見てられない!!)」

歓声が上がるスタジアムで遊海は目的を確認する…この後の()()の為に、そしてジャック自身の為に負ける訳にはいかないと…!

 

 

「遊海、まさか…エキシビションで戦績が反映されないのが分かってて…!」

 

「ああ、人々に…評議会に力を見せるのはお前の役目だ…ならば俺は、さらに大きなモノを背負って戦おう!彩華、二人を頼むぞ」

 

《了解です、マスター…ご武運を!》

 

「ああ…来い!ホイール・オブ・フォートレス!!」

遊海の背後の空間が割れる…その中から近未来的デザインの赤と白のDホイールが飛び出す!

 

 

『フン…良いデザインだ』

 

「ありがとよ…さぁ、ひとっ走り付き合えよ!」

 

【フィールド魔法『スピードワールド・ネオ』アクションフィールド『クロスオーバー・アクセル』発動!デュエルモード・スタンバーイ!!】

スタートラインについた二人…そしてシグナルが青に変わった…!!

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

孤高の王者と希望の英雄…二人のライディングデュエルが始まった…!

 

 

ジャックLP4000

遊海LP4000

 

 

アクションフィールド『クロスオーバー・アクセル』発動中

・アクションカード発動可能

 

 

 

 

 

『俺のターン!』

『お前には…キングの力を思い知らせてやろう!「レッド・リゾネーター」を召喚!!』

炎の衣を纏った音叉の悪魔が現れる! ATK600

 

『さらに「レッド」モンスターの召喚に成功した事で手札の「レッド・ウルフ」は特殊召喚できる!』

さらに炎を纏う獰猛な狼が現れる! ATK1400

 

『俺はレベル6の「レッド・ウルフ」にレベル2の「レッドリゾネーター」をチューニング!』

 

2+6=8

 

『王者の咆哮!今、天地を揺るがす…唯一無二たる覇者の力をその身に刻むがいい!シンクロ召喚!!荒ぶる魂!レベル8!「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト」!!』

歴戦の悪魔竜が咆哮する! ATK3000

 

 

『俺はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

ジャックLP4000

スカーライト 伏せ2 手札1

 

 

 

『ジャックはいきなりエースモンスター「レッドデーモンズドラゴン・スカーライト」を召喚!鋼の騎士はその期待に応えられるのか〜!?』

 

「ふぅ……力を貸してくれ、()()()()…お前の荒ぶる魂を…」

 

『……なに?』

メリッサの実況が響く中、遊海は静かにデッキに手を掛ける…その時、ジャックは遊海の呟きに耳を疑った。

 

 

 

「俺のターン…ドロー!!」

「俺のフィールドにモンスターが存在しない時!手札の『クリムゾン・リゾネーター』は特殊召喚できる!!」

 

『「リゾネーター」だと?』

遊海の場に紅蓮の炎を背負う音叉の悪魔が現れる! ATK800

 

 

『こ、これは…!?鋼の騎士がジャックの使うモンスターに似たモンスターを呼び出した〜!?えっ、どゆこと!?』

 

「さらに俺は手札から『スカーレッド・ファミリア』を召喚!!」

全身が炎に包まれた魔人が現れる! ATK1600

 

 

「俺はレベル4の『スカーレッド・ファミリア』にレベル2の『クリムゾン・リゾネーター』をチューニング!!」

 

4+2=6

 

「紅蓮の炎が眠りし魂を震わせる…シンクロ召喚!!王者の魂をその身に宿せ!レベル6!『レッド・ライジング・ドラゴン』!!」

紅蓮の炎に包まれた竜の幻影が現れる! ATK2100

 

 

「さらに!『レッドライジングドラゴン』の効果発動!シンクロ召喚に成功した時!このターンの間、闇属性ドラゴン族のシンクロモンスターしかエクストラデッキから召喚できなくなる代わりに、墓地の『クリムゾン・リゾネーター』を特殊召喚!」

音叉の悪魔が復活する! ATK800

 

「そして『クリムゾン・リゾネーター』の効果発動!自分の場に存在する、自身以外のモンスターが闇属性ドラゴン族のシンクロモンスターのみの時!手札・デッキから新たな『リゾネーター』を呼び出す!デッキから現われろ!!『ダーク・リゾネーター』!『シンクローン・リゾネーター』!」

音叉の響きが黒衣の悪魔とト音記号を背負う悪魔を呼び出す! ATK1300 ATK100

 

 

『貴様…!まさか…!』

 

「俺はレベル6の『レッドライジングドラゴン』にレベル2『クリムゾンリゾネーター』をチューニング!!」

 

 

6+2=8

 

 

「王者の鼓動…今ここに列をなす!天地鳴動の力を見るがいい!!シンクロ召喚!荒ぶる王者の魂!レベル8!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!!」

フィールドに炎が噴き上がる…その中から荒ぶる炎を纏いし、誇り高き悪魔竜が咆哮を轟かせる!! ATK3000

 

 

『馬鹿な…そのカードは…!!』

 

『えっ…!?フィールドに、「レッドデーモンズ・ドラゴン」が2体!?!?』

 

「嘘、だろ…!?」

 

「ジャックと、同じモンスター…!?」

遊海の召喚したモンスターの姿にスタジアム全体が騒然となる…フィールドでは鏡写しのような2体のドラゴンが睨み合っている…!

 

 

『そのカードは…「レッドデーモンズ・ドラゴン」は…傷付き、「スカーライト」へと変わったはず…!何故貴様がそのモンスターを!!』

 

「ああ、聞いてるよ…3年前のフレンドシップカップの前、お前はコモンズの()()()()と凄まじいデュエルをしたと…その戦いの後に、今の『スカーライト』へと姿が変わってしまったのだと……思い出せよ、ジャック・アトラス…あの時のように燃えていた…本当の荒ぶる魂を!!」

かつての相棒の登場に動揺するジャック…そのジャックを鼓舞するように、遊海は右手を胸に当てる…!

 

「燃え上がれ…荒ぶる決闘者(デュエリスト)魂!!バーニング・ソウル!!」

 

ゴウッ!!

 

『は、鋼の騎士が燃えたぁぁ!?』

遊海から溢れ出す荒ぶる魂の発露…それは新たな進化を呼び寄せる!!

 

 

「俺はレベル8『レッドデーモンズドラゴン』にレベル3『ダークリゾネーター』!レベル1『シンクローンリゾネーター』をダブルチューニング!!」

 

『『「「ダブルチューニングだって!?」」』』

音叉の悪魔達が炎の輪となって悪魔竜を包み込む!!

 

 

8+3+1=12

 

 

「うおおおっ!!王者と悪魔!今ここに交わる!!荒ぶる魂よ…天地創造の叫びを上げよ!シンクロ召喚!!現われろ!レベル12!『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』!!

 

《ガオァァァン!!》

スタジアムの周囲が真昼に変えるような炎が大地から噴き上がる…紅蓮の炎の彼方から、光と闇を超克した悪魔竜が咆哮する!! ATK3500

 

 

『「レッドデーモンズドラゴン」に…こんな姿が…!』

 

「はぁ…はぁ…!『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』は…俺の知る、荒ぶる王者の魂の発露…力を超えた、力を宿す!このモンスターの攻撃力は墓地のチューナー1体につき500アップする!墓地のチューナーは3体!」

 

 

スカーレッドノヴァ ATK3500→5000

 

 

『攻撃力、5000…!』

 

「受けてみろ!ジャック・アトラス!『スカーレッドノヴァドラゴン』で『スカーライト』を攻撃!バーニング・ソウル!!」

 

『っ…我が魂をそう簡単に破壊できると思うな!!罠カード「レッド・クリスタル」!このターンの終わりまで「レッド」モンスターの戦闘・効果による破壊を無効にする!ぐううぅぅっ!!』

手足を折りたたみ紅蓮の流星がスカーライトへと突撃する…だが、赤い宝玉が盾となり破壊は免れる!

 

ジャックLP4000→2000

 

 

「俺は…カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊海LP4000

スカーレッドノヴァ 伏せ2 手札2

 

 

 

『わ、我々はいったい…何を目にしているのでしょうか…!?謎のヒーローがレベル12のシンクロモンスターを操り、ジャックを追い詰めています!!』

 

 

「す、すごい…!?沢渡の時よりも、収容所の時よりも…強い…!!」

 

「これが…記憶を取り戻した遊希さんの、本当の力…!」

メリッサの震える実況を聞きながら、遊矢と柚子は喉を鳴らす…シンクロ次元の王を前に、遊海はそれを上回る…!

 

 

 

『今の一撃…榊遊矢の攻撃よりも効いたぞ…!力の乗り方が…魂の懸け方が違う…!』

 

「流石だな…さぁ、声援に応えて向かって来い!!」

遊海の圧倒的力を前に久しぶりの冷や汗を流すジャック、その様子を見た遊海はジャックへと声かける…スタジアムは再びのジャックコールに埋め尽くされていた…!

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『装備魔法「魂を刻む右(エングレイブ・ソウル・ライト)」を発動!このカードは自分の「レッド」モンスターに装備され、効果を発動する!相手フィールドに自身の攻撃力を上回るモンスターが存在する時!そのモンスターを装備モンスターである「スカーライト」と同じにする!』

スカーライトの右腕に浮かび上がった紋章がスカーレッドノヴァの力を抑え込む!

 

スカーレッドノヴァ ATK5000→3000

 

『そして「スカーライト」の効果発動!1ターンに1度!自身以下の攻撃力を持つ相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを破壊し、1体につき500ダメージを与える!アブソリュート・パワー・フレイム!!』

 

「無駄だ!『スカーレッドノヴァドラゴン』は効果では破壊されない!」

 

『くっ…!!』

遊矢のモンスターを一掃した一撃はスカーレッドノヴァの腕に振り払われる!

 

 

『ならば…バトルだ!「スカーライト」で「スカーレッドノヴァドラゴン」を攻撃!さらに、アクションマジック「起死回生」を発動!このダメージ計算時のみ、「スカーライト」の攻撃力は800アップし!さらに戦闘では破壊されなくなる!受けてみろ!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!』

 

「遊海!!」

強化された炎の息吹がスカーレッドノヴァに迫る!

 

スカーライト ATK3000→3800

 

 

「『スカーレッドノヴァドラゴン』の効果発動!1ターンに1度、このモンスターをエンドフェイズまで除外する事で攻撃を1度だけ無効にする!」

 

『むっ…!?そんな効果を!!ならば─!』

紅蓮の炎はスカーレッドノヴァの攻撃に弾かれる…だが、ジャックはさらにターンバック走行でさらなるアクションカードを手にする!

 

 

『アクションマジック「ワンダー・チャンス」!これによって「スカーライト」はもう一度バトルを行える!鋼の騎士にダイレクトアタック!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!』

 

「ぐううぅ!!」

 

「遊海!!」

再び放たれた火炎が遊海を飲み込む!!

 

遊海LP4000→1000

 

『これが…キングのデュエルだ!ターンエンド!』

 

「この瞬間、除外された『スカーレッドノヴァドラゴン』はフィールドに帰ってくる!!」

 

スカーレッドノヴァ ATK3500→5000

 

 

ジャックLP2000

スカーライト(魂を刻む右) 伏せ1 手札1

 

 

 

『じ、ジャックが逆転!鋼の騎士を押し返したー!!』

 

「「「うおおお!!」」」

息をつかせぬ攻防の末にジャックが逆転…スタジアムが歓声に包まれる!

 

 

 

「ははは…はははは!いいぞ、ジャック!ずいぶんと良い表情になったじゃないか!!」

 

『なに…?』

 

「自分の顔を見てみろよ…さっきよりも生き生きとしてるだろ!」

遊海が笑い始めた事に怪訝な顔をするジャック…その口角は自然と上がっていた…。

 

 

「さっき、お前は遊矢の事を半人前と言ったな?ならばさっきまでのお前は()()だ!一流のデュエリストなら…観客を楽しませ、()()()()()()()()()()()()()()意味がない!どうだ?燻ってた魂に火がついてきただろ?」

 

『貴様…何者だ?ただのヒーローではあるまい!その強さ、只者ではない!』

 

「俺は…希望を導く決闘者(デュエリスト)だ!いくぞ、ジャック・アトラス!!」

遊海の強さに少しずつ興奮するジャック…そんなジャックを見ながら、遊海は加速する!

 

 

「遊海…楽しそうだ…観客も、ジャックも楽しませてる…」

そんな中、遊矢は遊海のデュエルに引き込まれていた…遊海は決してエンタメデュエルをしている訳ではない、それでも…圧倒的な力の応酬がシンクロ次元の人々を引き込んでいる…。

 

 

《マスターは本当にデュエルが好きな方です、どんな窮地に陥ろうとも…最後まで希望を捨てずに戦いぬく…それがマスターなのです》

 

「希望を捨てずに戦い抜く…どんな時でも…」

遊矢達を守る彩華の言葉を繰り返す遊矢…そしてデュエルは佳境に突入する…!

 

 

 

「俺のターン…ドロー!!」

「来た…!『チェーン・リゾネーター』を召喚!」

鎖を背負った音叉の悪魔が現れる! ATK100

 

「『チェーンリゾネーター』の効果発動!シンクロモンスターが存在する時に召喚に成功した時!デッキから新たな『リゾネーター』を呼び出す!来い!『フォース・リゾネーター』!」

電気を操る音叉の悪魔が現れる! ATK500

 

「そして墓地の『スカーレッド・ファミリア』の効果発動!墓地の自身を除外する事で自分フィールドの闇属性ドラゴン族シンクロモンスターのレベルを1〜8の任意のレベルに変更できる!俺は『スカーレッドノヴァドラゴン』をレベル7に変更!」

紅蓮の下僕がレベルを操作する!

 

スカーレッドノヴァ☆12→7

 

「さらに!リバース罠『シンクロ・コール』発動!自分の墓地のモンスター1体を特殊召喚し、そのモンスターとフィールド上のモンスターを使って闇属性の悪魔族またはドラゴン族のシンクロモンスターをシンクロ召喚する!墓地から蘇れ!『クリムゾンリゾネーター』!!」

再び紅蓮の炎を背負う悪魔が現れる! ATK800

 

 

『フィールドのモンスターのレベルの合計は…12、だと!?』

 

「もっと燃え上がれ!我が魂の荒ぶる炎!!うおおお!!」

遊海の纏う鋼の鎧が燃え落ちる…遊海から溢れた熱気がフィールドを吹き荒れる…その時!

 

 

キィン──!!

 

 

「これは…赤き竜の痣が…!?」

遊海に刻まれた赤き竜の痣『ドラゴン・フレイム』…その真の形である竜の魂『ドラゴンズ・ソウル』が輝きを放つ!!

 

 

《キュオォォオン!!》

 

 

『な、なんだ!?あのドラゴンは…!』

 

「赤き竜…!?しかも…この感覚は……()()()()()の…!!」

その輝きと共に夜空の時空が歪む…そして時空の彼方から光輝く炎の竜、5D'sや遊海を導きし『赤き竜』が世界を超えて顕現する!

 

 

《キュオォォオン!!》

 

「赤き竜…力を貸してくれ!」

夜空に浮かぶ炎の竜…その声を聞いた遊海は魂の炎を開放する!

 

 

「俺はレベル7の『スカーレッド・ノヴァドラゴン』にレベル2『クリムゾンリゾネーター』!レベル2『フォースリゾネーター』!そしてレベル1『チェーンリゾネーター』をトリプルチューニング!!」

それは前代未聞、前人未到のトリプルチューニング…炎の輪に包まれた悪魔竜が赤き竜に飲み込まれる!

 

 

7+2+2+1=12

 

 

王を迎えるは三賢人!紅き星は滅びず、ただ邪悪を滅するのみ!荒ぶる魂よ…天地開闢の時を刻め!シンクロ召喚!!レベル12!「スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン」!!

 

《ゴオオオァァァ!!!》

スタジアムを光と炎のビックバンが包み込む…そして、荒ぶる炎を御する紅蓮の龍神が降臨する! ATK4000

 

 

 

『この、力の波動は…っ!!』

轟く咆哮と共に広がる、赤い光の波動…その力は時空を越え、選ばれし者を新たな力を目覚めさせる!

 

 

キィン─!

 

 

『なんだ、この痣は…!?』

最初はジャック、焼け付くような痛みと共に右腕に竜の翼『ドラゴン・ウィング』が浮かび上がる!

 

 

キィン─!

 

「えっ…なに、これ…!?」

 

「アキ!?突然どうしたの!?」

観客席で親子でデュエルを観戦していた赤い髪に学生服を着たトップスの少女、十六夜アキには竜の脚『ドラゴン・レッグ』が浮かび…。

 

 

キィン─!

 

「る、龍可!右腕に変なのが!?」

 

「これ、なんだろう…暖かい…!」

同じく、トップス暮らしの双子の兄妹、龍亞と龍可にはそれぞれ竜の心臓『ドラゴンズ・ハート』と竜の腕『ドラゴン・クロー』が宿り…。

 

 

キィン─!

 

 

「うおっ…!?いきなりなんだぁ!?こんなタトゥー入れた覚えねぇぞ!?」

デュエルパレス近くのゲストハウスに軟禁されていたクロウの腕には竜の尾『ドラゴン・テール』が現れ…。

 

 

キィン─!

 

 

「この光は…感じる…!太陽のように暖かい力を…!!」

最後…観客席で遊海とジャックによるデュエルを見守っていた遊星に()()()()のリーダーの証、竜の頭『ドラゴン・ヘッド』が浮かび上がる!!

 

 

 

 

「シグナーの共鳴…!?まさか…『遊星粒子』の力か…!?」

突然現れた「赤き竜」、そしてシンクロ次元のジャック達に現れたシグナーの痣を見た遊海は驚きながらも『仮説』を立てる。

 

 

「赤き竜」とは遥か昔から存在する()()()()()()()()「遊星粒子」が人々の「良い心」を取り込んだ事で生まれた存在…そして、遊星粒子には「繋ぐ」という働きがある。

その「繋ぐ」働きは死したはずの不動博士の「魂」を現世に繋ぎ止め…さらに、時を超えて決闘者を出会わせた。

 

 

……ならば、最後のシグナーである自分を基点として次元と次元を繋いでしまう事も可能なのではないかと…。

 

 

 

「──ああ…伝わってきたぜ、()()!みんな!…世界が離れていても、俺達の『絆』は繋がってる!!決して、途切れる事なく!!」

そして痣を通じて遊海は元の世界に残る遊星達の想いを感じ取る…自分や流星達の無事を祈る願いを!!

 

 

「『スカーレッド・スーパーノヴァドラゴン』の効果!このモンスターの攻撃力は墓地に存在するチューナー1体につき500アップする!墓地のチューナーは5体!」

昂ぶる遊海の魂に呼応するように、紅蓮の龍神は力を増していく!

 

スーパーノヴァ ATK4000→6500

 

 

『馬鹿な…!!』

 

「受け取れ…ジャック!荒ぶる王者の一撃を!!『スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン』で『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』を攻撃!!バーニング・ビッグバン!!

 

『っ─!迎え撃て!「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト」!!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!

 

《ゴオオオァァァ!!!》

 

《グオオオッ!!》

 

紅蓮の隕石と灼熱の息吹が衝突する、世界を揺らがす波動…そしてスタジアムは凄まじい閃光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「ここは…?」

気付いた時、遊星は暗闇の中にいた…その記憶は2体の悪魔竜の衝突直後に途切れていた…。

 

 

 

──オレ達の未来を受け取れ!Z-ONE!!オレ達の思いが…未来へと続く『光差す道』となる!!──

 

 

「これは…!?」

戸惑う遊星へと見知らぬ記憶が流れ込む…それは、自分ではない『自分』の記録。

 

両親と死別し、サテライトと呼ばれるスラム街で生まれ育ち、仲間との『絆』を紡ぎ…光と闇…そして、破滅の未来を変える為に命を賭けて戦った『英雄』の記録

 

 

 

………

 

 

 

──未来は変えられる!自分の可能性を信じて生きていれば…どんな未来にだって辿り着けるはずよ!!──

 

 

「これは…この記憶は…!」

 

忌まわしき力に悩み、闇の中へ飲み込まれ…しかし、掛け替えのない仲間達によって導かれ…優しき光を手にした『少女』の記録

 

 

 

………

 

 

 

 

──遊海の言葉でオレは気づいたんだ、人生は一度きり…過去を変えたって意味がない!だから今を…未来を信じて懸命に生きていくんだってよ!!──

 

 

「なんだよ、これ…?」

 

サテライトでの厳しい生活を送りながらも、朋友の願いを背負い…子供達の為に、仲間達と共に戦い続けた『黒き翼』の記録

 

 

 

………

 

 

 

──違う!絶望はしない!おれは…希望を繋げたんだ!!──

 

 

──龍亞はいつもわたしを守ってくれた、自分の事よりわたしの事を考えてくれた…ずっと変わらない…わたしのヒーローだから!!──

 

 

 

「この、子達は…」

 

「わたし達…?」

 

幼いながらも、かつての「約束」の為に勇気を振り絞って戦った妹……そして、力が無い事を嘆きながらも…絶望を乗り越え、妹を守る為に戦った兄…優しく強い「兄妹」の記録

 

 

 

…………

 

 

 

──龍亞が龍可の為に戦ったように…お前はZ-ONEの為に戦っていた!Z-ONEに繋いだ希望がある限り…お前は絶望しない!そして、俺達の希望は遊星にある!だから…俺達も絶望しない!──

 

 

 

『なんだ…?この胸のざわつきは…沸き上がる思いは!!』

 

それは『王者』の記録、陰謀の果てに飾りの『キング』となった男が過去の因縁を精算し、孤高に…されども掛け替えのない『絆』と共に、真の王座を目指した旅路

 

 

 

 

それは赤き竜の奇跡……異なる世界に生きた、世界を変えた『英雄』達の記録が…シンクロ次元の『決闘者』達に受け継がれる…!

 

 

 

 

 

 

──己の限界を超えた、さらにその先へ進むには自分一人の力だけではダメだ…!仲間の思いを…絆を繋がなければならない!!それを可能にするのがオレ達、『チーム5D's』の絆…!ブルーノ…見つけたぞ!新たな境地を!!!──

 

 

 

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

『っ…いま、のは…!!』

 

「はぁ…はぁ…ちょっと、優しすぎるんじゃないか?赤き竜……わざわざ、5D'sの『記憶』を運んでくるなんて……!」

 

スタジアムは静まり返っていた…ジャックも遊海も、コースの半ばでDホイールを停止させている。

 

 

 

 

ジャック LP0

 

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

 

『貴様…今のは、なんだ?』

ジャックは遊海へと問いかける、自身が垣間見た『記録』の正体を…。

 

 

「……俺の知る、()()()の『ジャック・アトラス』の歩んだ旅の記憶だ……お前と同じく、誇り高い王者のな」

 

『………そうか、ずいぶんと愉快な旅を乗り越えた()がいたものだ……()()()()

 

「望むところだ、ジャック・アトラス」

獰猛な笑みを浮かべながら、ジャックは遊海に再戦の約束を突きつける…そんなジャックに遊海は優しく笑いかけた。

 

 

 

 

『うそ…!?け、決着!!三年間無敗のキングが…謎のデュエリスト…鋼の騎士に対して星を落とした〜!!っていうか、なんかイケメンなんですけど〜!?』

 

「「「!!!?」」」

正気に戻ったメリッサの実況がスタジアムに響く…そしてスタジアムは悲鳴と驚愕の声に包まれた…!

 

 

 

 

 

「あのジャックに…オレが勝てなかったキングに、勝っちゃった…」

 

「すごい…」

本当に間近でデュエルを見守り続けていた遊矢が放心しながら呟く…圧倒的力と力の衝突は遊矢に凄まじい衝撃を与えていた。

 

 

《キュオォォオン!!》

 

「赤き竜…!」

そして、デュエルの決着を見届けた赤き竜が咆哮を響かせながらスタジアム上空を旋回…そして、スタジアムの中心を掠めるように飛び去り──

 

 

 

「ここは…コースの中…!?っ…クロウ!!」

 

「遊星!?オレ、さっきまで評議会の部屋にいたのに!?」

 

「わわっ…!?どうなってんの!?」

 

「赤い竜が…わたし達を導いた…?」

 

「あなた、達は…?」

 

『遊星、クロウ…それにお前達は…!?』

 

「まさか…こんな形で、再び7人のシグナーが集まるなんてな…」

 

「えっ…!?クロウ!?どうして…!」

赤き竜が居た場所にはシンクロ次元の遊星、十六夜アキ、龍亞・龍可、そして評議会に軟禁されていたクロウが集められていた…突然現れた人々に遊矢達は驚いている…。

 

 

 

 

「遊海、お前は…貴方は…オレ達の事を知っていたんだな…だから、父さんを助けてくれた…」

 

「ああ、そうだ…俺は知っている…人々が手を取り合い、身分なんて関係なく──希望の未来を掴み取った『世界』を……」

遊星の問いかけに遊海は頷く。

 

 

「赤い竜が見せてくれた世界…とっても楽しそうだった!」

 

「うん!トップスも、コモンズも仲が良くなって……みんなが笑顔だった…!」

 

「…私は…みんなとは会った事はないけど……向こうの『私』はあなた達と一緒に、とっても生き生きしていたわ…」

 

『……フン、この7()()は…切っても切れない「縁」で結ばれていたという事か……オカルトにも程があるが………悪くはなさそうだ』

 

「……あ〜あ、とんだ面倒事に巻き込まれちまった……でもよぉ、ガキ達の笑顔が輝いている世界は…悪くねぇ……とりあえず、お前との因縁は水に流してやるよ、ジャック」

 

『フン…水に流す程の因縁もないだろう?お前が勝手に因縁を吹っかけただけだ』

 

「なにを〜!?」

ほぼ初対面にも関わらず…シンクロ次元の龍亞・龍可、アキはすぐに打ち解ける…そしてジャックへ憎しみを抱いていたクロウもジャックと仲良く喧嘩している…。

 

 

『えっ、あの…キング?ジャック??いったい、何が──というより、負けて……』

 

『フン……心配するな、今のはあくまでも()()()()()()()()()()()、負けようとも記録に影響はない…だが、言わせて貰おう!俺は()()()()…しかし!盛り上がっただろう!皆の者!!』

 

「「「うおおお!!!」」」

急転する事態に戸惑うメリッサ…その問いかけにジャックは動揺を見せずに呼びかける、それに観客達は大歓声で応えた…力と力の衝突、そして攻防…それは今までにない盛り上がりだった。

 

 

 

『なればこそ…幻の勝者の言葉を聞くがいい!この街では勝者こそが「正義」なのだからな!!』

 

「ふっ…ありがとう、ジャック・アトラス…お前とのデュエルのおかげで──この世界を救う為の準備がしやすくなる」

ジャックから場を任された遊海は前に歩み出る…!

 

 

 

「改めて挨拶をさせて貰おう!俺は『鋼の騎士』こと白波遊海…このシティのある世界『シンクロ次元』の外───スタンダード次元と呼ばれる世界からやって来た異邦人だ!」

 

 

 

「「「「えっ…?!」」」」

 

「ちょ…遊海…!?いきなり!?」

遊海はいきなり、自分が別世界からやって来た事を打ち明ける…スタジアムはそれによって動揺に包まれた…。

 

 




「こ、これは…!?」

同じ頃、コモンズ地区の一角…遊星の工場、そこで不動博士はアヤカによって提供された遊海の世界の遊星が作り上げたモーメント制御フレーム『フォーチュン』のデータを解析し、シンクロ次元でも活かそうとしていた…だが…。


「し、しまった…!私の作った制御システム『フォーチュン』は()()じゃない…!!逆回転はしないだろうが……っ!?」


《キュオォォオン──!!》


「この声…赤き竜か…!?」
シティに響き渡る咆哮に不動博士は外に飛び出す…そこにはデュエルパレス上空を飛ぶ赤き竜の姿があった…。

「赤き竜…古の時代に生み出された、人間の『良い心』の化身……っ…不味い!?赤き竜がこの世界に現れたという事は…!?ゆ、遊星!遊海さん─!!」
赤き竜の姿を見た不動博士は()()()()()()に気付く…それを息子達に伝える為に、不動博士は修理中のDホイールに乗ってデュエルパレスへと飛び出した…。


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大立ち回り〜本当の平和の為に〜

こんにちは!S,Kです!

シンクロ次元の王であったジャックを倒し、さらに赤き竜の奇跡によって『希望の世界』の記録を得たシンクロ次元の5D's…そして遊海は世界を救う為の風穴を開ける!

それでは、最新話をどうぞ!


【な、な…なんなんだ!あの男は!?!?】

 

【─────】

 

治安維持局・長官室、映像越しでジャックと乱入した鋼の騎士──白波遊海のデュエルを見ていたロジェは発狂していた。

キングが負けるのはまだいい、いつか自身の()()の邪魔になった時に投獄すればいい………だが、白波遊海はダメだ。

その脳裏には自身の()()()()()()のイメージが浮かんでいた。

その背後では怪しげな屈強な男が無言で佇んでいる…。

 

 

 

【ジャックを倒しただけでは飽き足らず、異世界人である自分の正体を衆目の中で明かす…!?お前達の目的はシンクロ次元との同盟のはず…!セキュリティに通達!!デュエルパレスにいる男…白波遊海を拘束せよ!!】

 

『こちらデュエルチェイサー0()0()3()、対象の確保は()()()だ………首洗って待ってやがれ、この街で一番の()()()さんよ?』

 

【な、なんだと!?】

即座に白波遊海への拘束命令を出すロジェ…だが、返ってきた答えは──予想外のモノだった。

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

「俺は『鋼の騎士』こと白波遊海、このシティのある世界『シンクロ次元』の外───スタンダード次元と呼ばれる世界からやって来た異邦人だ!」

 

 

「「「えっ!?」」」

 

シティにおけるライディングデュエルの祭典、フレンドシップカップへと乱入し、荒ぶる魂のぶつかりあいの末にキング、ジャック・アトラスを打ち倒した遊海…その戦いの中で赤き竜が出現、さらにシンクロ次元の5D'sがシグナーとして覚醒した事で…遊海はシンクロ次元を変える為の作戦を始動させようとしていた…。

 

 

 

「心配せずとも、この事はこの街の最高機関、行政評議会…そして治安維持局も知っている!俺に…否、俺達にシンクロ次元に敵対する意思はない!!俺達は…この世界と手を取り合う為に、次元を越えてやって来た!」

 

『ち、ちょっと待って!?貴方は異世界人だって言うの!?』

 

「その通り…そして、この世界には『敵』の魔の手が忍び寄っている!その名は……融合次元、アカデミア!!」

メリッサの問いかけに応えるように、アヤカによるハッキングでオーロラビジョンに4つの地球が映し出される!

 

 

「この世界はアドバンス召喚やペンデュラム召喚を主軸とした『スタンダード次元』、シンクロ召喚を主軸としたこの世界『シンクロ次元』…そして、先ほど榊遊矢が見せてくれたエクシーズ召喚を主軸とした『エクシーズ次元』、そして融合召喚を主軸とした『融合次元』に分かれている!そのなかで…融合次元のアカデミアという組織がエクシーズ次元へと攻め入った!!」

それは歴戦の英雄としての経験を生かした魂の演説…海馬社長の力強さ、ペガサス会長の強かさ、遊馬の素直さ……自分の出会った英雄達との『絆』が遊海を後押しする…!

 

 

「融合次元はデュエルを戦争の道具として悪用…リアルソリッドビジョンで実体化させたモンスター達を兵器として…平和だったエクシーズ次元を破壊、さらには人々をカードに封じ込めて連れ去ってしまった!デュエリストであるかも、老若男女を問わず!!」

 

「「「っ…!?」」」

スタジアムの観客達は遊海の言葉に圧倒される…オーロラビジョンには凌牙から提供されたエクシーズ次元侵攻の惨状が映し出されている…。

 

 

「だが、エクシーズ次元の人々は諦めてはいない!対抗組織『レジスタンス』を組織し、融合次元から鹵獲した次元転移装置を使って…俺達の住むスタンダード次元へと救援を求めてきた!!それを受けたスタンダード次元は防衛組織ランス・ディフェンス・ソルジャース…通称『ランサーズ』を組織し、自分の身を守り、アカデミアの蛮行を止める為に動き出した!我々はその第一歩として、まだ次元戦争の波が及ばず…強力なシンクロ召喚に秀でているであろうシンクロ次元との同盟を結ぶ為、世界を越えてやって来た!………だが、この世界とは──同盟を結ぶ()()()()()!」

 

「遊海!?」

エクシーズ次元の現状とランサーズの成り立ちの概要をシンクロ次元の人々に伝える遊海…だが、続く言葉に遊矢は唖然とした、同盟を結びに来たはずなのに、その同盟を『不要』と言い出したからだ。

 

 

「俺はこの次元に来てから、仲間達とは別行動を取ってこの街の事を調べさせて貰った…1000万人いるシティの住民の1%に過ぎない富裕層、トップスが99%の富を独占し、残り99%の住民であるコモンズ達はその日の食事にも事欠いている『超差別社会』…そして、この大会にも()がある……この大会で敗北した者はトップスであろうとも権力を失い、地下深くにあるゴミ処理場での()()()()を強いられる……そうだな?」

 

「強制、労働…!?」

 

「ひどい…!?」

遊海の言葉に柚子は口元を覆い、遊矢は目を見開く…危うく、ランサーズ達はシンクロ次元の()()にされるところだったのだ。

 

 

『ええ、そうよ?それの何がいけないのかしら?負けた者が()()()のは当たり前!そのスリルが楽しいんじゃない!』

 

「えっ…?」

観客達を代表してメリッサが答える、シティでは常識では考えられないほどの…過剰すぎる『競争社会』の考え方が常識となっている……その考え方を知った遊矢は動揺している…。

 

 

「ああ、確かに人々が生きるのにおいて『競争』は必要なことだ…互いに切磋琢磨してより良いモノを目指し、進化する!それは決して『悪』ではない………だが、この世界におけるその考え方は()()にも程がある」

メリッサの答えを聞いた遊海は競争社会の考え方を認める…しかし、シンクロ次元の考え方は過剰すぎると戒める。

 

 

「その考え方が、俺が同盟を組む必要もないと言った根拠だ…同盟を組んだ所で、お前達は自分の保身の為にコモンズや()()()()を前線に出そうと考えるだろう!!特に、トップスにその考え方は顕著だろうさ!!誰も…戦争になんて行きたくないからな!だが、そんな軟弱者は願い下げだ!闘うのは…本当に()()がある奴だけでいい!!

 

「「「「っ──!!?」」」」

トップスや行政評議会の考えを見抜いた遊海は濃密な殺気を放ちながら否定の言葉を叩き付ける…その威圧に観客達の一部が失神した…。

 

 

 

「────さて、話は変わるが…この世界で『リアルソリッドビジョン』によるデュエルが始まったのはつい数年前からと聞いた…そして言わせてもらうが、リアルソリッドビジョンを最初に開発したのは俺達、スタンダード次元の()()()らしい!その技術が何らかの理由で融合次元へと流れ──侵攻を受けたエクシーズ次元はその技術を鹵獲して利用している!」

 

「えっ……あれ?そういえば…なんで、シンクロ次元にリアルソリッドビジョンがあるんだ??」

遊矢は遊海の言葉を聞いて首を傾げる、そもそも…スタンダード次元のリアルソリッドビジョンはアクションデュエルを前提に作られていた為、舞網チャンピオンシップ・バトルロイヤルまでは屋内や巨大投影器のあるスタジアムでの使用が基本だった。

 

しかし、融合次元と侵攻を受けたエクシーズ次元ではデュエルディスクだけで通常よりも強力なリアルソリッドビジョンを扱う事ができる、ランサーズのディスクも融合次元の理論を元に強化されている。

 

 

ならば、シンクロ次元は?

 

 

徳松が収容所送りになる前はリアルソリッドビジョンなんて存在しなかったらしい、そもそも…次元が違うとはいえリアルソリッドビジョンを知識なしで独自に開発しようと考える科学者がシンクロ次元にいたのだろうか?他の次元と同じタイミングで?

 

そんな事は……ほぼ、ありえない。

 

 

 

「断言しよう、既に…この次元には融合次元の毒牙が食い込み始めている!これから、その証拠をお見せしよう!」

それまでの雰囲気とは一転、少し明るい雰囲気に変わった遊海は何処からともなく大きな白い布をスタジアムの芝生に広げる…。

 

 

「さぁ、皆様ご注目!なんの変哲もない白い布、これを持って3つ数えますと…()()()()()()()()!」

遊矢風のエンタメスタイルで観客に呼びかけた遊海は布の端を手で掴む!

 

 

「それでは!ワン!

 

 

「「つ、ツー!!」」

 

 

「「「「「「スリー!!」」」」」」

遊海、遊矢と柚子、そして5D'sの掛け声と共に遊海は勢いよく布を引っ張る!!

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

 

【………はっ?】

 

【─────】

 

 

 

『えっ…治安維持局のロジェ長官??』

 

「ふぅ…転移成功……でも、おまけ付きか…」

布が取り払われたその場所には…状況が理解できておらず、呆然とするロジェと…下半身が地面に()()()()屈強な男が佇んでいた…。

 

 

 

 

【(な、なぜ…何故、私はスタジアムに立っている!?)】

強制転移させられたロジェは困惑していた、数秒前まで長官室にいた彼は突然、紫色の光に包まれ──気付けばスタジアムに立っていたのだ。

 

『こ、これはどういう事でしょう!?何もない場所から治安維持局長官のジャン・ミシェル・ロジェ氏が現れました!?』

 

「ロジェ!?」

驚いたのは観客や遊矢達も同じ…メリッサの実況がスタジアムに響く。

 

 

 

「改めてご紹介しましょう、彼はシティの治安維持を担うセキュリティ…治安維持局長官のジャン・ミシェル・ロジェ!そして…この街の支配を狙う、融合次元・アカデミアの人間です!」

 

【なっ…!?】

 

「ロジェが…アカデミア!?」

遊海の爆弾発言にスタジアムが騒然とする…シティの治安を守るはずの長官が「敵」だと知れば、トップスもコモンズも驚きは大きいだろう。

 

 

 

【貴様、とんだ戯言を…!私は治安維持局の長官だぞ!?】

 

「まずは、証拠その1!皆様、オーロラビジョンにご注目ください!」

遊海の言葉を聞いて激昂するロジェ、それを聞きながら遊海は新たな画像を映し出す…それは人間の頭部のレントゲン写真だった。

 

 

「このレントゲン写真は俺が仲良くなったとあるセキュリティ隊員を写したモノだ!その額に小さなチップがあるのは分かるかな?」

 

『それは当たり前よ!セキュリティは安否確認とか位置確認の為に生体チップが埋め込まれているもの!』

 

「そう、これがただのGPSならば問題はない……だが、これを取り出してプログラムを解析したら……物騒なプログラムが書き込まれていた!その名は『キングス・ギャンビット』!それがロジェの手で発動されると……セキュリティ隊員は自我を奪われ、ロジェの傀儡と化してしまう!」

 

「「「なんだって!?」」」

 

【貴様…!?なぜ、それを…!?】

 

「俺の仲間の解析能力を舐めるなよ?」

ロジェの非道な作戦の一端を明かす遊海…その言葉にスタジアムはざわめく…!

 

 

「証拠その2!シティにリアルソリッドビジョンを持ち込んだのはロジェだ…既に調べはついてるんだぜ?そして証拠3!ロジェは自分の意に沿わない者や反抗心を持つコモンズを収容所に閉じ込め、さらに!強いデュエリストを選別して自分の手駒にした!」

 

「お、おい…!?あの地面に埋まってるの、デュエリストクラッシャーのセルゲイじゃないか!?」

 

「なんであの暴れ者がセキュリティの長官と一緒にいるんだ!?」

次々と証拠を示す遊海…そして、コモンズ達が気付く、ロジェの傍らに埋まっているのが暴れ者で知られていた『デュエリスト・クラッシャー』セルゲイ・ヴォルコフである事を…。

 

 

「ロジェは何らかの『目的』を持って融合次元からシンクロ次元に来たんだろう…そして、行政評議会にリアルソリッドビジョンなどの技術提供する見返りに治安維持局の長官となった彼はその立場を利用してトップスとコモンズの対立が深くなるような秩序を強制し、シティの分断を図った…人々が弱った時を狙って、セキュリティを傀儡として…この街を自分の『王国』として支配する為に!!違うか?融合次元から逃げてきた半端者」

 

【き、貴様…この私を虚仮にして…!!起きろセルゲイ!!コイツを潰せ!!………セルゲイ!?】

 

【─────】

遊海の挑発めいた言葉を聞いたロジェは激昂、セルゲイをけしかけようとしたが………地面に埋まったセルゲイは俯いたまま、ピクリとも動かなかった…。

 

 

 

「頼りの懐刀はだんまりみたいだな、さぁ…革命の時だ!不動遊星!そして十六夜アキ!…お前達がロジェを倒すんだ!」

 

「「えっ…!?「」」

 

「トップスとコモンズ…立場が違う者でも、手を取り合い…助け合って前に進んでいける!!それを、お前達が証明するんだ!!」

狼狽するロジェを見た遊海は遊星とアキに声をかける。

 

……本来ならば、遊海がロジェかセルゲイとデュエルし…()()()()()()()()を使う事で世界を変えようと考えていた…。

 

…だが、状況が変わった。

 

格差や差別、破滅の未来を打ち破って希望の未来を掴んだ『チーム5D's』の記録とシグナーの痣を継承したシンクロ次元の5D's…そのデュエルこそが、シンクロ次元を変える一手になると考えたのだ。

 

 

「遊海さん……十六夜アキ、だったな?……力を、貸してくれないか?」

 

「ええ、改めて…初めまして、不動遊星さん……ちょっと複雑な関係だけど、力を貸すわ!私達の故郷を守る為に!!」

 

【貴様ら…!そうだ、初めからこうすれば良かったんだ……貴様らを倒し、ジャック・アトラスを倒し…!私がこの世界を支配する!その為に私は長官となり、この世界の競争社会を加速させたのだ…!!私の計画の邪魔はさせん!!】

ぎこちなく挨拶を交わす遊星とアキ…その間にロジェは平静を取り戻す…!

 

 

『えっ、ちょっと…!?この街はどうなっちゃうの〜!?』

メリッサの本音が木霊する中、遊星とアキ…コモンズとトップスが手を取り合う未来を掴む為の戦いが始まった…!

 

 

 

『「【デュエル!!】」』

 

 

 

ロジェLP4000

遊星&アキ LP4000

 

 

変則タッグデュエル

 

全員1ターン目は攻撃不可

 

ロジェ→遊星→アキ→ロジェ→遊星………

 

 

 

【先攻は貰う!私のターン!】

【私は魔法カード『融合』を発動!手札の『古代の機械兵士(アンティーク・ギア・ソルジャー)』2体を融合!!古の魂受け継がれし機械仕掛けの兵士達よ!今、隊列を組み混じり合い!新たな力と共に生まれ変わらん!融合召喚!!現れよ!レベル8!機械仕掛けの魔神『古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)』!!】

融合の渦の中から禍々しい機械の悪魔が現れる! DEF1800

 

 

「いきなり融合モンスターか…!」

 

【私の完璧なるコンボはここからだ!私は装備魔法『古代の機械魔盾(アンティーク・ギア・マジックシールド)』を『機械魔神』に装備!それにより守備力は1200アップし、戦闘では破壊されなくなる!】

モノアイのような装飾をされた盾が機械魔神を守るシールドを展開する!

 

機械魔神DEF1800→3000

 

 

【さらに!『機械魔神』の効果発動!1ターンに1度、自分フィールドの魔法カード1枚につき、相手に1000ダメージを与える!!喰らえ!!】

 

『きゃあ!?』

 

「くっ…!!」

魔神の砲撃が遊星達のライフを大きく削る…!

 

遊星&アキLP4000→3000

 

 

【『機械魔神』は相手のカードを受けず、さらに『機械魔盾』の効果でバトルでも破壊されぬ()()のモンスターだ!私はこれでターンエンド!!】

 

ロジェLP4000

機械魔神(機械魔盾) 手札2

 

 

 

『ほ、本当に融合モンスターを出してきた…!?白波遊海の言った事は本当なの…!?』

いきなり融合召喚を行い、遊星達へとダメージを与えるロジェ…そのデュエルを見たメリッサが動揺する…。

 

 

「大丈夫か、アキ…!」

 

『ええ…デュエルスクールのダメージより、だいぶ痛いけど…戦えるわ…!』

遊星が尻もちをついてしまったアキに手を差し伸べる…アキはその手を取って立ち上がる。

 

「無敵のモンスターなんて存在しない…必ず、突破孔は存在する!」

ロジェが無敵と謳う「機械魔神」…だが、遊星は識っている…もう一人の『自分』はこれ以上の絶望へと立ち向かったのだと…!

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

「魔法カード『調律』を発動!デッキから『シンクロン』チューナー『ジャンク・シンクロン』を手札に加え、デッキトップ1枚を墓地に送る!」

 

遊星墓地送り

 

ジャンク・アンカー

 

 

「そして、自分フィールドにモンスターが存在しない時!『ジャンク・フォワード』は特殊召喚できる!」

無機質な二足歩行ロボットが現れる! ATK900

 

 

「そして『ジャンク・シンクロン』を召喚!」

オレンジ色の帽子を被り、眼鏡を着けたオレンジ色のロボットが現れる! ATK1300

 

「『ジャンクシンクロン』の効果発動!自分の墓地からレベル2以下のモンスターを効果を無効にして特殊召喚できる!墓地から現れろ!『ジャンク・アンカー』!」

赤と白の塗装がされた人型ロボットが現れる! DEF0

 

 

「オレはレベル3の『ジャンクフォワード』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

3+3=6

 

「星雨を束ねし聖翼が…世界を巡る風となる!光差す道となれ!シンクロ召喚!レベル6!『スターダスト・チャージ・ウォリアー』!」

聖なる翼を背負う蒼き戦士が現れる! ATK2000

 

 

「『スターダスト・チャージ・ウォリアー』の効果発動!シンクロ召喚に成功した時、デッキから1枚ドローできる!さらにオレはレベル6の『スターダスト・チャージ・ウォリアー』にレベル2の『ジャンク・アンカー』をチューニング!」

 

6+2=8

 

「集いし願いが…新たに輝く星となる!光差す道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ!レベル8!『スターダスト・ドラゴン』!!」

 

《キュオオン!!》

夜空に煌めく星が降りそそぎ、白き希望の竜が現れる! ATK2500

 

「オレはカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊星LP3000

スターダストドラゴン 伏せ2 手札3

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『無敵と言っても…『痣』が見せてくれたモンスターに比べればマシよ!私は「ホワイト・ローズ・ドラゴン」を召喚!』

白薔薇を纏うドラゴンが現れる! ATK1200

 

 

『「ホワイトローズドラゴン」の効果発動!手札から「レッド・ローズ・ドラゴン」を特殊召喚!』

赤薔薇を纏うドラゴンが現れる! ATK1000

 

 

『私はレベル4の「ホワイトローズドラゴン」にレベル3の「レッドローズドラゴン」をチューニング!!』

 

4+3=7

 

「冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の花よ!開け!シンクロ召喚!現れて!レベル7!!『ブラック・ローズ・ドラゴン』!!」

スタジアムに薔薇の花吹雪が巻き起こる…その中から美しき黒薔薇が咲き乱れる! ATK2400

 

「シンクロ素材になった『レッドローズドラゴン』の効果!デッキから『ロクス・ローズ・ドラゴン』を特殊召喚!」

アキのフィールドに桃色の薔薇を纏うドラゴンが現れる! ATK1600

 

『私はカードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

アキLP3000

ブラックローズドラゴン ロクスローズドラゴン 伏せ2 手札2

 

 

 

【フン…!いくらモンスターを並べようと、私のコンボを破る事はできん!!】

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【『機械魔神』の効果発動!お前達に1000ダメージだ!】

 

『「くっ…!!」』

再び砲撃が遊星達のライフを削る!

 

遊星&アキLP3000→2000

 

『ここよ!永続罠!「ドッペル・ゲイナー」発動!相手モンスターの効果によるダメージを受けた時!そのダメージは相手も受ける!』

 

【なにっ…!ぐおっ!?】

砲撃の一部がロジェの周囲に落下する!

 

ロジェLP4000→3000

 

 

『これで無敵のコンボも方なしね?貴方が効果を使えば、そのダメージは貴方にも襲いかかる!』

 

【くっ…!?…だが、先にライフが尽きるのはお前達の方だ!だが、これだけでは終わらん!魔法カード「ライトニング・ボルテックス」を発動!手札の『古代の機械猟犬』を墓地に送り!相手フィールドの表側表示モンスター全てを破壊する!】

 

『遊星!』

 

「ああ、断ち切らせはしない!『スターダスト・ドラゴン』の効果発動!フィールド上のカードを破壊する効果が発動した時、このカードをリリースする事でその効果を無効にし、破壊する!ヴィクテム・サンクチュアリ!!」

 

【なにっ!?】

スターダストドラゴンがその身を粒子に変える…その星屑の聖域が破壊の稲妻を弾き返す!

 

 

 

【ちぃっ…!私はこれでターンエンドだ!】

 

「リリースされた『スターダストドラゴン』はエンドフェイズに復活する!」

星屑が集まり、希望の竜が復活する! ATK2500

 

ロジェLP3000

機械魔神(機械魔盾) 手札1

 

 

 

「ロジェ、どうしてお前はこんな秩序をシティに敷いた!苦しむコモンズの人々の姿を見て、何も思わなかったのか!」

 

【愚かな…!それがこのシンクロ次元という世界だろう?能無しの行政評議会が偽りの平穏をトップス共に提供し、邪魔なコモンズはトップスが勝手に排除する…私はそれをやりやすくしただけだ…!この世界ならば、私は『王』になれる!アカデミアやプロフェッサーすらも、私を従える事はできん!!】

遊星の問いにロジェは狂気と共に答える…。

 

 

ロジェという男は凄まじい野心を持つ男だった、だが…彼以上の天才であったプロフェッサーの前に心を折り…自分の居場所を探した結果、彼はシンクロ次元へと辿り着いた。

そして彼はアカデミアから盗んだ技術を行政評議会に献上する事で取り入り、治安維持局長官へと登りつめた……全ては、自分の支配する『王国』を作り上げる為に…!

 

 

「ロジェ…お前は王になんてなれない、お前は自分の運命を諦めた……その証拠にお前は前に進む為の『攻撃』を()()()!盾によって外の世界を拒絶し、自分の世界に閉じこもる『機械魔神』こそ、お前の今の姿だ!」

 

『そして…私達は諦めない!!どんな壁があっても、私達はそれを乗り越えて未来へ進む!コモンズもトップスも関係ない!その未来を、私達は掴んだんだから!!』

 

【黙れ黙れ黙れぇぇ!!コモンズのクズとトップスの箱入り女に何ができる!!】

 

「見せてやるよ、ロジェ!未来を掴んだ、希望の光を!!」

ロジェに対し希望を示すべく、遊星はデッキトップに手をかける!

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動!手札の『スピード・ウォリアー』を墓地に送り、デッキからレベル1の『スターダスト・シャオロン』を特殊召喚!」

西洋風の小さな星屑竜が現れる! DEF100

 

「そして『サテライト・シンクロン』を召喚!」

小さな人工衛星を模したロボットが現れる! ATK700

 

 

「オレはレベル8の『スターダストドラゴン』にレベル2の『サテライトシンクロン』をチューニング!!」

 

8+2=10

 

 

「集いし光が希望の地平を照らし出す!光差す道となれ!シンクロ召喚!!希望の観測者!レベル10!『サテライト・ウォリアー』!!」

遥かな星の彼方から…太陽光パネルの翼を持つ、希望を見守る戦士が着陸する! ATK2500

 

 

【フン…!レベル10のシンクロモンスターには驚かされたが……どんなモンスターでも───】

 

「デュエルモンスターズに無敵なんて存在しない!『サテライトウォリアー』の効果発動!シンクロ召喚に成功した時、自分の墓地のシンクロモンスター1体につき1枚!相手フィールドのカードを破壊できる!さらに破壊したカード1枚につき攻撃力を1000アップする!破壊するのは『古代の機械魔盾』!モーメント・リアクター!!」

 

【なにぃ!?】

太陽光パネルから周囲の光を取り込んだサテライトウォリアーが光線を放ち、鉄壁の盾を焼き尽くす!

 

サテライトウォリアーATK2500→3500

 

機械魔神DEF3000→1800

 

 

『遊星!私のモンスターを使って!!』

 

「わかった!オレはレベル1の『スターダストシャオロン』にレベル3の『ロクスローズドラゴン』をチューニング!!」

 

1+3=4

 

「シンクロ召喚!希望を掴む機械の腕!レベル4!「アームズ・エイド」!」

黒き強化装甲が現れる! ATK1800

 

 

「『アームズエイド』の効果発動!1ターンに1度、このモンスターを攻撃力1000アップの装備カードとして『サテライトウォリアー』に装備できる!」

サテライトウォリアーの右腕に強化パーツが接続される!

 

サテライトウォリアーATK3500→4500

 

 

「バトルだ!『サテライトウォリアー』で『古代の機械魔神』を攻撃!!」

 

【いくら攻撃力を上げようと無駄だ!私はダメージは受けん!!】

 

「それはどうかな!!罠カード『ストライク・ショット』発動!エンドフェイズまで『サテライトウォリアー』の攻撃力を700アップさせ、さらに!守備モンスターを攻撃してその攻撃力が守備力を上回った時!その数値分のダメージを与える!」

 

【なに!?】

 

『まだよ!罠カード『シンクロ・ストリーム』発動!「ブラックローズドラゴン」の攻撃力を「サテライトウォリアー」に加える!!』

赤い薔薇の花吹雪が希望の観測者に力を与える!

 

サテライトウォリアーATK4500→5200→7800

 

 

【こ、攻撃力7800だとぉ!?】

 

「受けてみろ、ロジェ!これが…手を取り合う人々の絆の力だ!『サテライトウォリアー』!ダイダロス・インパクト!!」

 

【ぐっ…!?ぐほぁぁぁ!?!?】

 

それは音速を超える衛星の拳…人々をいがみ合わせていた魔神は、希望の拳の前に砕け散った…。

 

 

 

ロジェLP0

 

遊星&アキ WIN!

 

 

 

 

 

「やったな、アキ!」

 

『ええ!遊星!初めてのタッグデュエルだったけど、上手く出来て良かったわ!』

デュエルが終わり、遊星とアキはハイタッチを交わす…そこに先ほどまでのぎこちなさはない…デュエルを通じて彼らは打ち解ける事ができたのだ。

 

 

【こんな…こんな、はずでは…!】

一方、ド派手に吹き飛ばされたロジェは地面を這っていた…本来ならば、彼はソリッドビジョンによる()()によって倒されても、倒されてもデュエルを続行する『永遠のデュエル』を行なうのが一番の作戦である。

…だが、それを厄介だと考えた遊海によって治安維持局から引き剥がされた事で…まさに『裸の王様』状態でデュエルを行なう事になったのだ。

 

 

『こ、これは…!ロジェ長官が…トップスとコモンズの連携によって敗れた〜!!』

 

「「「うおおおっ!!」」」

デュエルを見守っていたメリッサの実況が響く…それと共に、主にコモンズの観客達が歓声を響かせる!

 

 

「ザマァねぇな、長官殿?俺の知ってる長官の方が…ずいぶんとお前より潔かったぜ?」

 

【き、貴様…!デュエルチェイサー003…!】

 

「牛尾!」

這いずってでも逃げようとするロジェの前に1人のデュエルチェイサー…牛尾が立ち塞がる。

 

 

「良くやりやがったな!遊海!遊星!アキ!こっからは大人の時間だ……ジャン・ミシェル・ロジェ()治安維持局長官!アンタは行政評議会によって指揮権が停止され、さらに騒乱罪や人身売買、収賄罪などで逮捕状が出ている!………観念するんだな」

 

【くっ…!?この、私が…この私がこんな所で終わる訳が…ない!!起きろ…セルゲイ…!セルゲェェイ!!】

良識派のセキュリティによって逮捕されるロジェ…彼はみっともなく叫び続ける…。

 

 

 

「ゆ…遊海!これって…」

 

「遊矢……これで、シンクロ次元の問題が全て解決する訳じゃない……それでも、このデュエルが証明したんだ……生まれが違っても、どんな立場であっても…人々は手を取り合い、絆を繋いでいける……その架け橋になるのがデュエルなんだ」

 

「デュエルが…絆の架け橋に…」

連行されるロジェを見ながら、遊矢と柚子は遊海へと駆け寄る…不安そうな彼らに、遊海は優しく諭す…。

 

 

「ここからはお前達の番だ、シンクロ次元を変える為の風穴は空けた……次は、お前達のデュエルでみんなを笑顔にするんだ……お前達の()()()()()を胸に…」

 

「オレ達の…信じるモノ……」

シンクロ次元を変えるバトンを遊矢へと託す遊海…その時だった。

 

 

【私は…私は!この世界の支配者になる男だ!こんな所で終わってたまるかぁ!!私を助けろ!セルゲイ!!】

 

「あ〜あ…あんなに叫びまくって、男らしくねぇなあ……」

なりふり構わずセルゲイの名を呼ぶロジェ…その時──

 

 

ギィン─!

 

キィン!!

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

「シグナーの痣が………この痛み方は、まさか!!」

突然、シグナーの痣が疼き始める…その痛みに遊海は嫌な予感を感じ取った…!

 

 

 

ドン!!

 

 

 

【世界に…痛みを……美しき終焉を…!!】

 

「おい、嘘だろ…!!」

沈黙していたセルゲイの周囲の地面が弾ける…その白目は黒く染まり、身体には不可思議で…邪悪な紋様が浮かび上がっていた…。

 

 

「……ダーク、シグナー…!?」

 

 

シンクロ次元を変える為の戦いは…山場を迎える…!



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蘇る邪神〜集いし絆〜

こんにちは!S,Kです!

シンクロ次元で蘇ったダークシグナー…光と闇の五千年に及ぶ戦いに遊海は今度こそ、終止符を打てるのか…!


それでは、最新話をどうぞ!


『な、なに…!?いきなりセルゲイが…!?』

 

 

「ダークシグナーだと…!?そんな馬鹿な!!」

 

シンクロ次元における諸悪の根源の1人、融合次元からの離反者ロジェを打ち倒した遊海とシンクロ次元5D's…だが、沈黙を続けていたロジェの懐刀…セルゲイ・ヴォルコフが突然、ダークシグナーとして覚醒した…!

 

 

「ゆ、遊海さん!ダークシグナーって…!?あの人は何なの!?」

 

「っ……ダークシグナーは、冥府の力を操る死者のデュエリスト…世界を滅ぼす、冥界の邪神の手先だ…!」

 

「冥界…!?死者!?じゃあ、あのセルゲイって奴は…ゾンビ!?」

 

「似たようなモンだと思えばいい…!」

状況に追いつけず戸惑う柚子と遊矢へと遊海が苦々しい表情で答える…。

 

 

5D'sの物語における前半のラスボス『冥界の王』…生きたエネルギーである「遊星粒子」が人々の『悪い心』を読み取った事で現れた悪意の化身…『良い心』の化身である「赤き竜」と対を成す、相反する邪悪。

その権能によって無念や悪心を抱いて死んだ者を冥府の使者「ダークシグナー」として蘇らせ、世界を破滅させようとする邪神…赤き竜の使者であるシグナー達とは五千年周期で戦い続けていた…。

 

 

 

《マスター…ダークシグナー・セルゲイから感じるマイナスエネルギーは、この次元由来のモノではないようです…!》

 

「まさか、()()()倒した冥界の邪神が…その残留思念がシンクロ次元に取り込まれたのか…!?」

アヤカの報告を聞いた遊海は仮説を立てる、かつて…遊海は冥界から力を貸してくれたアテム、そして遊星の呼び出した赤き竜の奇跡『セイヴァー・スター・ドラゴン』と共に冥界の王を打ち倒した。

 

……しかし、その存在を完全に消滅させる事は叶わず…ARC次元創世の際に、その因子がシンクロ次元に取り込まれ、シンクロ次元の「悪意」を糧に復活したのだと…。

 

だが、遊海はもう一つの()()()()()を思い付いていた…。

 

 

 

「(俺のせい、か?俺が…赤き竜を呼び出してしまったから…!!)」

赤き竜と冥界の王は対を成す存在、遊海の絆が赤き竜を呼び出した事で…それに連鎖する形で冥界の王が復活してしまった……遊海はそうも考えていた…。

 

 

「ダークシグナー…!オレ達の見た記録にも残っている…つまり、あの『デュエリスト・クラッシャー』セルゲイは既に死んでいた…という事か…!?」

 

《…そのようです…ダークシグナーセルゲイはその肉体の8割以上が機械へと置き換えられています…!それはもはや、科学的な()()()()()と言ってもいいでしょう…!》

遊星の呟きにアヤカが答える…。

 

 

 

セルゲイ・ヴォルコフ…シンクロ次元における特級の危険人物、「破壊の美学」と称される独特な価値観を持ち、何人ものデュエリストやDホイーラーを再起不能へと追い込んだ。

 

しかし、その暴走を危険視され、セキュリティ数十人掛かりの大捕物の末についに捕縛・収監される…しかし、収容所や地下ゴミ処理場送りにされてもその蛮行は止まることを知らず、100人を越えるデュエリストを破壊し続けた…。

 

そして、ある時…その圧倒的な力に惚れ込んだロジェによって彼は引き取られる…その後は死亡説が流れていたらしいが、事実は異なる。

 

ロジェによって引き取られたセルゲイはロジェによって度重なる改造・調整を施され…改造人間───否、サイボーグにされてしまった。

しかし…それほど改造されたにも関わらず、彼の「破壊の美学」は収まるどころか狂気を増し…遊矢やジャックを苦しめる事になる…はずだったが…。

 

 

 

おお…おお…!力が溢れてくる…!この美しい世界を破壊する力が!!

 

 

「っ…なんて、殺気だ…!!」

 

「龍可…!大丈夫…!?」

 

「う、うん…!」

 

「狂ってやがる…!!」

スタジアムを凄まじい殺気が支配する、生と死の狭間にあったその魂は…シンクロ次元の人々の悪意によって復活した冥界の王に掌握され、ダークシグナーとして世界へと牙を剥こうとしていた…!

 

 

ゴゴゴ…

 

 

『えっ、あの…何が起きてるの…!?きゃあ!?』

 

「この揺れは!?」

 

《シティ近海でのマイナスエネルギー反応増大…来ます!!》

メリッサや観客達の動揺と共にデュエルパレスが…シティが揺れる…そして、漆黒の闇に覆われた海から…()()は現れた…!

 

 

ウオオオ…!!

 

 

「な、なんだよ…アレは…!?」

 

「ひっ…!?」

 

「冥界の王…!!既に復活を…!それだけシンクロ次元の『負の感情』が強かったという事か…!?」

海から現れたのは夜闇よりも暗く、黒い…コールタールのようなドロドロとした何かを纏ったヒトガタ……冥界の王だった。

デュエルパレスから離れているにも関わらず視認できる程の巨大さに遊矢や観客達はざわめき、動揺し始める…!

 

……だが、観客達の動揺は恐怖からではない…彼らの一部はまだこの状況を前夜祭の演出と勘違いしているのだ…。

 

 

 

 

 

ギャギャッ!!

 

「ぐうっ…!?冥界の王…!?遅かったか…!」

 

「と、父さん!!大丈夫か!?」

 

「不動博士!?」

その時、デュエルパレスに1台のDホイールが乱入、横滑りしながら遊星達の近くにライダーが投げ出される…それは不動博士だった。

 

 

「赤き竜が現れたという事は、対を成す冥界の王が現れる可能性があると伝えに来たんだが…遅かった…!遊海、あの時と同じだ…!冥界の王はマイナスエネルギーの塊…あれがシティのモーメント発電所に到達したら……()()()()()()()が発生する!私の作った制御システムではそれを抑えられない!!」

 

「っ─!?…させて、たまるかよ!!アヤカ!サーチ!!」

 

《サーチ実行…!ダークシグナーはセルゲイ1人のみ、冥界の王がモーメント発電所に到着するまで………推定10分!!》

不動博士の予測を聞いた遊海は即座にアヤカに指示を出す…そして、アヤカによって倒すべき敵が特定される…!

 

 

 

「ゆ、遊海!何が起きてるんだよ!?ゼロ・リバースってなに!?シグナーとかダークシグナーとかなんなんだよ!?」

 

「説明してる時間がない…!ダークシグナー・セルゲイ!俺が相手だ!!俺が…この世界を守る!!冥界の王の好きにはさせない!!」

状況が分からず、置いてけぼりになる遊矢…だが、遊海はその説明する時間すらも惜しんでセルゲイの前に歩み出る…!

 

 

【おお…シグナーよ…!光の者よ!我が仇敵よ…!冥界の闇が全てを塗り潰すのだ!!】

 

ゴウッ…!

 

「地上絵…!!レクスさんの時と同じか…!!」

セルゲイの言葉と共に夜空に紫色の──煉獄の炎で刻まれた()()の地上絵が燃え上がる…さらに、不動博士の乗って来たDホイールが冥府の力に侵食され…セルゲイのDホイールへと変化する…!

 

 

「っ…遊海!これを!!」

 

「遊星っ…『スターダスト・ドラゴン』…!」

セルゲイと対峙する遊海に遊星が1枚のカードを投げ渡す…それはシンクロ次元の『スターダスト・ドラゴン』…遊星の魂のカードだった。

 

 

「記憶を得ても、今のオレではシグナーの力を…()()の力を使い熟せない……シティを…オレ達の街を頼みます!!」

 

「貴方は強いって…貴方の知る私も言っていたわ…!」

 

「頑張って!!」

 

「戦えなくても…わたし達は繋がってる!」

 

「シグナー…ってのは実感がねぇが……頼むぜ、遊海!」

 

「心配するな…貴様が倒されたなら、俺が奴を蹴散らすまでだ…!」

 

「遊星、ジャック……お前達の願い、確かに受け取った…!!」

シグナーとして覚醒したばかりのシンクロ次元5D'sでは…いきなりのダークシグナーの相手は厳しい、この場で対抗できるのは…遊海のみ…。

 

それでも、遊海は一人ではない……シンクロ次元の5D's…そして、チーム5D'sとの絆が遊海と共に在る…!

 

 

「いくぞ…ダークシグナー!!」

Dホイールに乗った遊海は核石状態に戻ったアヤカと共にスタジアムから延びる炎の道を空へと駆け上がる…そしてセルゲイもそれを追う!

 

 

「クロウ!何なんだよ!?遊海はいったい何と戦おうとしてるんだよ!?って言うか、遊海と知り合いだったのか!?」

 

「黙って見てろ、遊矢……これは本来なら、オレ達が知らない世界の因縁だ………全部が終わったら、遊海に聞けばいい」

完全に置いてけぼりの遊矢…彼は空に向かって走る遊海を見送るしかなかった…。

 

 

 

 

【『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』】

 

 

 

 

遊海LP4000

セルゲイLP4000

 

フィールド魔法『クロスオーバー・アクセル』発動中

・アクションカード使用可

 

 

 

 

「俺のターン!」

「この手札なら…!『ジェット・シンクロン』を召喚!」

青と白のカラーリングのジェットエンジン型ロボットが現れる! ATK500

 

「そして!手札の『スターダスト・シンクロン』はフィールドのモンスターをリリースして、手札・墓地から特殊召喚できる!」

星屑の竜に似たロボットドラゴンが現れる! ATK1500

 

 

「『スターダストシンクロン』の効果発動!特殊召喚に成功した事でデッキから魔法カード『セイヴァー・アブソープション』を手札に加える!さらに、自分の場のモンスターがリリースされた事で手札の『スターダスト・トレイル』は特殊召喚できる!」

スターダストドラゴンのような鎧を纏った赤髪の少女が現れる! ATK500

 

 

「俺はレベル4の『スターダストトレイル』にレベル4の『スターダストシンクロン』をチューニング!!」

 

4+4=8

 

「集いし願いが新たに輝く星となる…!希望を示す道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ!我らの翼!『スターダスト・ドラゴン』!!」

シンクロ次元の希望を背負う星屑の竜が飛翔する! ATK2500

 

 

「自身の効果で特殊召喚された『スターダストトレイル』と『スターダストシンクロン』はフィールドを離れた時、除外される…だが、『スターダストトレイル』のさらなる効果発動!ウォリアー・スターダスト・シンクロンモンスターのシンクロ素材となった事でレベル1攻守0の『スターダスト・トークン』を特殊召喚!」

デフォルメされた可愛らしい星屑の竜が現れる! DEF0

 

 

「さらに!墓地の『ジェット・シンクロン』の効果発動!手札の『ジャンク・ジャイアント』を墓地に送り、墓地のこのカードを特殊召喚!」

再びジェットエンジン型ロボットが現れる! ATK500

 

 

「俺はレベル1の『スターダストトークン』にレベル1の『ジェットシンクロン』をチューニング!」

 

1+1=2

 

「デュエルを新たな地平に導け!シンクロ召喚!レベル2シンクロチューナー!『フォーミュラシンクロン』!」

新たな地平を拓くF1マシン型ロボットが現れる! DEF1500

 

 

「『フォーミュラシンクロン』の効果!シンクロ召喚に成功した事で1ドロー……いくぞ…遊星、そしてシンクロ次元の人々よ…これが、世界を救う無我の境地の到達点…!力を貸してくれ!Z-ONE!!」

それは世界を救いし希望の力の一端、研ぎ澄まされる感覚と共に、遊海は限界を超えて加速する…その境地の名は──

 

 

キン──

 

 

クリア・マインド!!俺はレベル8の『スターダストドラゴン』にレベル2シンクロチューナー『フォーミュラシンクロン』をチューニング!!」

その名は『クリア・マインド』…スピードの限界を越えた先で掴む、善悪の区別ない…無我の境地…!

 

 

8+2=10

 

 

「集いし夢の結晶が新たな進化の扉を開く!未来を照らせ!アクセルシンクロ──!!

炎の道を疾走した遊海がスターダストドラゴンと共にスピードの彼方へと消え去る!

 

 

「生来せよ!レベル10!進化の光…!『シューティング・スター・ドラゴン』!!」

 

《ギュアアアアン!!》

スピードの彼方から、夜闇と暗雲を切り裂きながら希望の竜が飛翔する…これこそがシンクロ次元を照らす希望の光…「シューティング・スター・ドラゴン」! ATK3300

 

 

 

『こ、この光は…?あまりに高い場所でデュエルの詳細はわかりませんが…暖かい光が私達を照らしています!!』

メリッサの実況がスタジアムに響く…「シューティング・スター・ドラゴン」の纏う光はマイナスエネルギーを浄化し、クリアマインドを周囲へと伝播させる事ができる…かつてのZ-ONEが試みたように、希望の光がスタジアムに降り注ぎ…()()に侵されていた人々の心を落ち着かせていく…。

 

 

「この光…暖かい……」

 

「あれが、オレが辿り着くべき境地…!」

 

「遊海って、本当になんなんだ…?こんなの…普通じゃない…!」

希望の光によって落ち着いていく人々、その中で遊星は「クリアマインド」の道標を手にし……遊矢は遊海の実力の底が見えずに困惑していた…。

 

 

「先攻は攻撃できない…俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊海LP4000

シューティングスター 伏せ1 手札2

 

 

 

「(『シューティング・スター・ドラゴン』は破壊効果を無効にし、攻撃も防げる…すぐに決着をつける…!)」

 

 

【ふ、くくく…!攻撃力3300…凄まじいモンスターだ…!だが、ああ…()()()だぁ…!勝ったと確信する表情をぶっ潰す!!それが最高に美しい!!】

油断なくセルゲイを見据える遊海…だが、セルゲイは狂気の笑みを浮かべていた…!

 

 

 

【俺のターン…ドロー!!】

【ふひはははは…!フィールド魔法『死皇帝の陵墓』…発動!!】

 

「なにっ…!?」

セルゲイはいきなりフィールド魔法を発動する…そのカードを見た遊海は目を見開く…!

 

 

「いきなり来るか!!」

 

【世界を美しき終焉に導く…究極の破壊を此処に!!『死皇帝の陵墓』の効果発動!俺のライフ2000を糧として…降臨せよ!『地縛神』!!】

 

「まずい!!」

炎のコースが鳴動する…そしてスタジアム上空に巨大な心臓のようなモニュメントが現れ、脈動する!!

 

セルゲイLP4000→2000

 

 

 

ドクン…! 

 

 

「うわああああ!?!?」

 

「きゃあああ!?」

 

『こ、これは!?人々が紫色の光にっ───』

 

「なっ…!?みんなが!!」

脈動の音が響く…それと共に、スタジアムの人々が…シティの人々が紫色の光──魂となって地縛神の贄に捧げられていく…!

 

 

ドクン…!

 

 

「うっ…!?からだ、引っ張られ…!!」

 

「柚子!!ダメだ!!ぐうっ!?」

脈動の音が響く…そして、柚子や遊矢の背中からも黒色の光が飛び出し───

 

 

キィン─!

 

 

「世話のかかる奴だ…大事な者ならば、自分で守らんか!!」

 

「っ…ジャッ、ク…?!」

赤い光が遊矢と柚子を包み込む…それはジャックの痣「ドラゴン・ウィング」が発した結界だった。

 

 

「無茶言わねぇでやれよ、地縛神の影響を受けねぇのはシグナーだけなんだから……心配すんな、地縛神を倒せば…取り込まれた奴らも帰ってくる」

 

「クロウ…」

同じく痣を輝かせたクロウが遊矢の背中をさする…しかし、その表情は険しかった…。

 

「よりによって…一番タチの悪い奴が出て来やがった…!」

 

 

 

「父さん、牛尾…大丈夫か…!」

 

「ああ、ありがとう遊星…それから十六夜さん…!」

 

「たくっ…危うく生贄にされる所だったぜ…」

シグナーの結界の中で溜息を吐く牛尾…地縛神の心臓が現れた瞬間に仲間と共に遊星達に近づく事で難を逃れていた……1人を除いて…。

 

 

【ハハハハ!みんな、みんな消えてしまえ!!私を認めてくれぬ世界など滅び───】

 

 

「ロジェ………」

 

「……悪党にゃ…相応しい末路、だな……」

自分の王国を求め続けた哀れな男は…大いなる闇に飲まれて消えていった…。

 

 

 

 

【現れよ…『地縛神Wiraqocha Rasca(ウィラコチャ・ラスカ)』!!】

数百…数千……数万人以上の魂を取り込んだ心臓が光を放つ…そして、巨大な黒い身体に紫色のラインが走るコンドルの地縛神が顕現する! ATK1

 

 

「攻撃力……1()…!?よりによって!!」

 

【「ウィラコチャ・ラスカ」の効果発動…!このターンのバトルフェイズを放棄する事で…相手のライフを1にする!絶望に沈め!光の使者よ!!ポーラスター・オベイ!!】

 

「やばい!!」

『ウィラコチャラスカ』それは「最強の地縛神」…希望を吹き消す紫炎が遊海に迫る!!

 

「まともに受けたら…やばい!!」

遊海は即座にDホイールを加速…クリアマインドを応用したワープで回避を狙う──

 

 

《マスター!前!!》

 

「えっ…しまっ!?」

 

ウオオ…!!

アヤカの声に遊海は前を向く、そこには闇に紛れていた冥界の王の顔が───

 

 

 

ゴウッ!!

 

ボウッ!!

 

 

 

「「「「「「遊海!!!」」」」」」

前門のコンドル、後門の邪神……2体の邪神から放たれた劫火が遊海を挟み撃ちにする…そして………

 

 

 

「がっ……─────」

 

 

 

《マス、ター…!!》

 

「ゆ、遊海──!!!」

コントロールを失ったDホイールはコースを外れ…黒焦げになった遊海と共に暗い海へと沈んでいった…。

 

 

【ハハハハ…ふひはははは!!ああ!美しいぞ!光の使者よ!絶望の中へ沈めぇぇ!!】

 

「そんな…遊海……遊希兄ィィ!!!」

闇が渦巻くシティに遊矢の悲鳴とセルゲイの狂気が木霊した…。

 

 

遊海LP4000→1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(くそ…流石に、いまの…卑怯だろ……ダメだ……意識が………)」

 

遊海は暗い海の底へと沈んでいく、マイナスエネルギーは遊海にとって数少ない弱点の1つ……冥界の力が身体を蝕んでいく…。

 

 

「(ダメだ…俺が、戦わなきゃ……俺が、勝たなきゃ……遊矢を……遊星を…シンクロ次元を、守るんだ………)」

 

キィン─

 

弱々しく光るシグナーの痣……本来ならば勇気と力を与えるはずの痣でさえ、遊海を再起させるには足りていない…。

 

 

「(シンクロ次元の『闇』が…強すぎる………もう、ひと押し……なのに………)」

ゴポリと音を立てて…肺から最後の酸素が抜けていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(………ごめん、翠……みんな………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──遊海さん…負けないで!!──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「み…ど…り………?」

 

それは幻聴だった、遊海の無事を祈る…翠の願い…

 

 

それでも──幻であったとしても、彼女の声は遊海の意識を覚醒させる…!

 

 

 

 

 

 

【やれやれ…世話の焼ける宿主だ、あの程度の闇にこうもやられるとは……ずいぶんと鈍ったのではないか?】

 

「ドン千…」

 

【略すな、たわけ】

そして遊海の戦いを見ていたドン・サウザンドが語りかける。

 

 

 

【お前は帰るのであろう?愛した女のもとへ……ならば、立ち上がれ……少しばかりなら手を貸してやる】

 

ギィン─!

 

気怠げな声と共に遊海の身体に強いカオスの力が巡っていく…それは肉体を蝕むマイナスエネルギーを押し流す!

 

 

 

【我を倒した貴様が…あの程度の闇に負けるのは我慢ならん、さっさと倒してこい】

 

「……ありがとう」

 

【───礼などいらん、気まぐれだ……早く終わらせろ】

混沌の神の気まぐれが遊海の背中を押す…そして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

【なにっ…!?】

 

「あの光は…!!」

遊海が消えた海中から……眩い光が空に向かって立ち昇る!

 

 

 

俺は…俺自身でオーバーレイ!!

 

【なんだ…!?】

続いて海中から飛び出した眩い光と漆黒の闇…希望と闘志が螺旋を描いて地上絵を突き抜けて空へと昇る!

 

 

 

我が身に宿る戦いの宿命…救世の願い!今こそ!邪悪を断つ力となれ!!シャイニング・カオス・エクシーズチェンジ!!

 

それは遊海の宿す、家族との『絆の光』…そして、邪悪への憤怒を宿す『闘志』の極致、闇を飲み込む光…正しき『混沌』の具現が復活する!!

 

 

闇を祓う、絆の輝き!!NEXUS!!

 

黄金の光の嵐が吹き荒れる、それはかつて失われたはずの英雄の至高の姿…金色の髪が逆立ち、金色の肩当ての付いた赤と黒の鎧、黒金に輝く推進翼、そして瞳は金色に輝く……NEXUSⅢが長き時の果てに復活する!

 

 

 

「遊海…!あの姿は、梁山泊塾と戦った時の…!?まさか、また…!」

 

「なんなんだ…!?あの姿は…!?記憶にあったNEXUSとは違う!」

 

「ねく、さす…?」

 

「そう、あれはNEXUS……白波遊海の絆の象徴、絶望を照らす光よ!」

遊海の暴走を危惧する遊矢…だが、それは杞憂に終わる…今の彼は力を取り戻した「英雄」なのだから!

 

 

「戻って来い!ホイール・オブ・フォートレス!!」

NEXUSⅢへと変身した遊海の声に応え、Dホイールが舞い戻る!

 

 

【貴様…美しく終われば良いものを…!】

 

「悪いが…我には帰らなきゃならない場所があるんだ、こんな所で終わってたまるかよ…!!」

 

【だが『ウィラコチャラスカ』は攻撃対象にされず、相手の魔法・罠カードの効果も受けない…!俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!!】

 

セルゲイLP2000

ウィラコチャラスカ 死皇帝の陵墓 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「いくぞ…みんな!そして遊星…流星…力を貸してくれ!!シンクロ次元を照らす…奇跡の光を!!」

 

 

キィン─!

 

 

「「赤き竜の痣が…!」」

 

「「お願い…勝って!」」

 

「「例え世界が違っても…」」

 

「「オレ達の『絆』は繋がっている!」」

 

「「そんなデカブツなど…貴様の敵ではない!!」」

 

「「頑張れ!遊海ぃぃ!!」」

シグナー達の痣が強く輝き…遊海の背中に集まり、完成する!

 

 

 

 

 

 

『この、感覚は……!?』

 

『どうしたの?流星…何かあったの?』

 

『遊海さんが、戦ってる…僕達の力を必要としてる…!!』

 

『それって大丈夫なの!?あの人、まだ本調子じゃないんじゃ…!』

 

『……わからない…でも、遊海さんならきっと…!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我のターン!!」

 

最強決闘者の決闘は全て必然!ドローカードさえも、決闘者が創造する!

紡がれし絆よ!次元を超えし竜の奇跡よ!我が身に宿り、勝利への軌跡を示せ!!

 

NEXUSシャイニングドロー!!

 

それは紡がれた希望の力…世界を越える『絆』と赤き竜の『奇跡』が光の軌跡と共にドローされる!

 

 

 

【ああ、いいぞ!その希望を潰してこそ、冥界の王もお喜びくださる!永続罠発動!『究極地縛神』!自分の場に通常召喚された『地縛神』が存在する時!フィールドのモンスター1体を破壊する!神の前に砕け散れ!『シューティングスタードラゴン』!!】

 

「無駄だ!『シューティング・スター・ドラゴン』の効果発動!1ターンに1度、フィールドのカードを破壊する効果を無効にし、破壊する!!吹き飛ばせ!」

 

《ギュアアアアン!!》

 

【むうっ!?】

再び冥府の炎を放つコンドル…しかし、光速を越える波動が炎を蹴散らす!

 

 

「来い!赤き竜の奇跡!『救世竜セイヴァー・ドラゴン』!!」

赤き竜の痣が輝き、赤き竜の──人々の『良い心』の化身である桃色の小さなドラゴンが現れる! ATK0

 

 

「いくぞ!俺はレベル10の『シューティング・スター・ドラゴン』にレベル1『救世竜セイヴァー・ドラゴン』をチューニング!!」

それは正史には存在しない新時代の『奇跡』…人々の願いと揺るがなき境地が合わさり、新たな希望が現れる!

 

 

10+1=11

 

 

「集いし想いの結晶が、新たに輝く奇跡となる!希望を繋ぐ道となれ!!シンクロ召喚!!光来せよ!絆の光!『シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン』!!」

 

《キィィィッ─!!》

夜闇を太陽の如く照らす希望の光、赤き竜の『奇跡』と仲間との『絆』が生み出した救世のドラゴン……その名は「シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン」!

 

 

「す、すごい…!」

 

「あれが…赤き竜の『奇跡』…!」

 

「綺麗…!」

希望の光が遊星や遊矢達を…スタジアムに残された人々を照らし、人々は奇跡の光景に目を奪われる…。

 

 

ウオオ…!?

 

【なんだ…!?なんだその『光』はぁぁ!?】

 

「シンクロ次元を照らす…人々を繋ぐ絆の光だ!『シューティングセイヴァースター』の効果発動!1ターンに1度、相手の効果モンスターの効果を無効にする!サブリメーション・バニッシュ!!」

 

【ぬうっ!?】

希望の光が地縛神に直撃…その身に囚われた人々の魂を開放し、効果を無力化する!

 

 

「これで『地縛神』の効果は失われた…!この一撃で決める!バトルだ!『シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン』で『地縛神Wiraqocha Rasca』を攻撃!!」

 

【させぬ…させぬぞぉ!!アクションマジック『回避』!このバトルは無効となる!】

 

「そんな!!」

それは炎の道に散らばっていたアクションカード…突撃した奇跡の竜の一撃は巨大な身体を翻して回避される!

 

 

【耐えた…耐えたぞ!!美しき世界の終焉を!!】

 

「まだだ!!『シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン』は…墓地に眠る『スターダスト・ドラゴン』、そしてそのカード名が記されたシンクロモンスターの数だけ…追加で攻撃できる!!」

 

【な、なにぃぃ!?】

攻撃を回避された救世の竜は2体に分裂する!

 

 

「悲しき魂を抱えるならず者よ…世界を破滅に導く冥界の王よ!この一撃を手向けとして……光に還れ!!」

遊海の魂の叫びと共に救世の竜が加速する!

 

 

シューティング・ミラージュ・ソニック!!

 

 

【う、うおおおっ──!!?】

巨大な地縛神を分裂した救世の竜が貫く…そして大爆発がセルゲイを飲み込んだ…。

 

 

セルゲイLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

「絶望を打ち砕け!『シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン』!!」

 

《キイイイッ──!!》

死力を振り絞り、遊海が最後の指示を出す…そして光の速さを超えた救世の竜は冥界の王へと突撃し───貫く!!

 

 

ウオオオ…!?グオオオァァァ……!!!

 

輝ける絆の光が冥界の王を…『悪い心』を読み取った遊星粒子を浄化する……こうして、シンクロ次元で起こったダークシグナー騒動は解決……救世の竜が勝利を祝福するように光を振り撒きながら、シティの上空を飛び回った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんとか…なった……良かった……」

 

「「「遊海!!」」」

地縛神に囚われた人々が元の場所に戻っていくなか、地上絵のコースが消えると共に遊海がデュエルパレスへと帰還する…そして帰りを待っていたシンクロ次元5D'sや遊矢達が駆け寄った…。

 

 

「ああ…遊星……『スターダスト・ドラゴン』、有難う……助かった…」

 

「いえ…!オレ達の街を守ってくれて…お礼を言わなきゃならないのはオレ達の方です!」

 

「いやいや……俺の無茶が、この事態を招いたからな……しっかり、解決しなきゃ…」

遊海は遊星へと『スターダスト・ドラゴン』を返却する…その表情には安堵が浮かんでいた…。

 

 

「遊海!アンタって…何者なんだよ……こんな力、アカデミアの奴らよりも……」

 

「遊矢……心配するな、この力はお前達を助ける為に使う力だ……俺は世界を救う決闘者だからな!」

 

「遊海…」

遊海の規格外の力を見た遊矢は戸惑いながら遊海に問いかける…不安そうな遊矢を安心させるように遊海は頭を撫でながら答える…。

 

 

「これで、シンクロ次元が少しでも良い方向に変わればいいんだが…」

 

「フン…そう簡単に変わるとは思えんがな」

 

「なら、あとはお前達に任せるとしよう、本来の意味でフレンドシップカップが『融和の祭典』になるように…負けを恥じず、勝って驕らず……この世界には良いデュエリストもいるじゃないか、お前達を含めてな?」

 

「記憶の通り…ずいぶんとお人好しな事だな」

この事件を期にシンクロ次元が変わる事を願う遊海…現キングであるジャックは微妙な表情だが、遊海はシンクロ次元の人々の善性を信じていた。

 

 

 

《フォウ、フォーウ!!(遊海!大丈夫!?)》

 

「ああ、フォウ……大丈夫、待た」

 



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幕間〜変わり始めた世界〜

こんにちは!S,Kです!

どうにか、シンクロ次元の危機を解決した遊海…英雄の必死な願いはシンクロ次元の人々に届くのか…。


それでは最新話をどうぞ!


「……あれ、オレは…」

遊矢は見慣れない豪華な部屋で目を覚ました、寝ぼけた頭で少し考えて……自分の状況を思い出した。

 

 

「そうだ…ジャックとデュエルして…それで、遊海が………」

 

それはあまりにも濃すぎる1日だった。

 

 

ロジェによってセッティングされたキング、ジャック・アトラスとのエキシビションマッチ…遊矢はその中で自分の「エンタメデュエル」を独り善がりだと否定され、圧倒的な力の前に敗北した…。

 

そこへ姿を消していた遊海が乱入…ジャックとの激しい魂のデュエルの末にジャックを圧倒して勝利を掴んだ。

そして…そこからは「現実」なのかを疑う程の出来事ばかりだった…。

 

 

夜空に現れた巨大な赤い竜…その光に導かれるように現れたジャックやクロウを含む6人のデュエリスト達。

 

シンクロ次元の人々へ向けた遊海の魂の演説。

 

明かされた治安維持局長官の正体と陰謀、そして歪んだ社会を変える為のトップスとコモンズが協力したデュエル。

 

そして現れたダークシグナーと呼ばれたセルゲイと遊海による世界の命運を賭けた、リアルソリッドビジョンのレベルを超えた決闘……その戦いの末にシティは平穏を取り戻した、のだが…。

 

「………遊海、大丈夫かな……」

遊矢はベッドから起き上がり、カーテンを開く…そこに広がるのは穏やかに太陽の光が照らすデュエルパレス……だが、遊矢はさらに遠くを見つめていた…。

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

《フォウ、フォーウ!!(遊海!大丈夫!?)》

 

「ああ、フォウ…大丈夫、待たせた……っ──」

 

「遊海!?」

 

《フォッ!?》

戦いを終え、肩に飛び乗ったフォウを優しく撫でる遊海…だが、突然、糸の切れた人形のように地面に倒れ込んでしまった…!

 

 

「ぁ……いや、大丈夫だ………これくらいの、ダメージ……すぐ……っ……」

 

「絶対大丈夫じゃないって!?立ててないじゃんか!!」

遊矢達を制して立ち上がろうとする遊海……しかし、表情は苦しそうに歪んでいる…。

 

 

「く、そ……たおれてる、ひまなんて……なぃ………────」

 

「「「遊海!!?」」」

体力の限界を超えていた遊海はブレーカーが落ちるように、意識を手放してしまった…。

 

 

 

SideOUT

 

 

 

「まだ、シンクロ次元の人達には任せられないって…アヤカ…彩華さん?が遊海を担いで何処かに行っちゃって……大丈夫なのか…?」

気絶してしまった遊海は人間体のアヤカによって安全な場所へと運ばれた…そして…

 

 

 

「気絶してた観客達が意識を取り戻して………」

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「聞いてくれ!みんな!!」

ダークシグナー…冥界の王の脅威が去り、囚われていた人々も開放された(ロジェだけは行方不明)

そして、戸惑う観客達へと不動遊星が呼び掛ける。

 

 

「この世界にやって来た1人の男によって、オレ達は助けられた…彼は危険を顧みず、自分を犠牲にしてオレ達を守ってくれた!オレ達は、その思いに応えなければならないんじゃないか!?」

 

「いきなりは無理かもしれない…それでも、私達は手を取り合える!!同じ人間なんだもの…!できないはずがない!!」

遊星とアキの言葉がスタジアムに響く…そこで観客達は気付いた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

それは奇跡の竜『シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン』と遊海の『クリア・マインド』が起こした『奇跡』…遊海のクリアマインドがシンクロ次元に伝播した事で人々の過剰な競争社会の考え方や、闘争心が落ち着き…()()を取り戻したのだ。

 

 

 

「フン…ここからは()()()という訳か……ならば遊星、お前がそれを示してみせろ!」

 

「ジャック…?」

遊星の演説を聞いたジャックが遊星へと話しかける…強い闘志を宿して…!

 

 

「白波遊海が倒したセルゲイはフレンドシップカップの()()()だ……つまり、()()()()()という事……上がって来い!我が()()()()よ!俺の王座まで!!」

 

「ジャック……オレは……」

 

「受けて立つんだ、遊星…それがお前の宿命だ」

 

「父さん…!」

遊星との戦いを望むジャックは遊星にフレンドシップカップに出るように告げる、その言葉を聞いて悩む遊星の背中を押したのは……不動博士だった。

 

 

「きっと、お前が()()するような事にはならない…お前がデュエルが好きなのは、私が一番分かってる……私と母さんに…遊星のカッコいい姿を見せてくれないか?」

 

「父さん……分かった…!お前からの挑戦状、確かに受け取ったぞ…ジャック!!」

 

「フン…決勝で待っているぞ、遊星!」

一瞬睨み合い、火花を散らす遊星とジャック…そしてジャックはコートを翻して去ろうとし…。

 

 

 

「………榊遊矢、お前もまた『エンターテイメント』を求める者ならば…鍛え直して来い、その度胸があるのならな…!」

 

「ジャック…!」

冷たい眼差しで遊矢に言葉を告げたジャックはそのまま去って行った…。

 

 

そして遊矢は柚子やクロウと共に評議会の使者達によってデュエルパレス近くにある行政評議会の用意したペントハウスに案内され、疲労からすぐに眠りに落ちてしまったのだ。

 

 

SideOUT

 

 

 

 

「…ジャックは…父さんのエンタメを馬鹿にした……でも、本当にそうなのか?ジャックは……オレに何を求めて…」

ジャックの言葉を思い出して悩む遊矢…そんな時だった。

 

 

『お目覚めかな?』

 

「うわっ!?行政評議会の!?」

 

『ほっほ…すまんすまん、驚かせるつもりはなかったんじゃがの…3Dビジョンでお邪魔させてもらうぞ?』

 

「3Dビジョン…!?」

窓の外を見ていた遊矢はいきなり声を掛けられて驚く…いつの間にか、ホワイト議長を始めとした行政評議会達が3Dビジョンで遊矢の部屋に現れたのだ。

 

 

『フレンドシップカップの参加者は我々の客人であると同時に()()()()になっている……ですな?議長』

 

『はい、そういう事です…榊遊矢君、昨日は大変だったのう……我々も肝が冷えた……我々との話し合いでは表情を変えなかった赤馬零児も…冷や汗を流しておったよ』

 

「零児が…」

遊矢の部屋に現れたホワイト議長は遊矢を労う…映像越しとはいえ、世界を滅ぼしかねない存在の登場に…評議会の面々達にも疲れが見える…。

 

 

『まったく…凄まじい男じゃの、白波遊海は……たった1人で融合次元の人間だったロジェ長官の陰謀を暴き、トップスとコモンズの手を取り合わせ……シティに現れた邪神を打ち倒す、まるで…空想のヒーローを見ているようじゃった』

 

「……違う、遊海は1人じゃなかった……友達との……仲間の絆と一緒に戦ってたんだ……初対面のはずのジャックや、不動博士の息子と一緒に…」

白波遊海の凄まじさを語るホワイト議長……だが、遊矢は気付いていた……あの時の遊海は一人ではなかった、仲間の絆と一緒に戦っていたのだと…。

 

 

『……昨日起きた事の詳細はキング、ジャック・アトラスから聞かせてもらった…あの場にいた者……ジャック・アトラス、クロウ・ホーガン、不動遊星、十六夜アキ、龍亞・龍可という兄妹……そして白波遊海はシグナーと呼ばれる善神の使者としての素質があったのだそうじゃ……その使者達が倒すべき者がダークシグナーに成ってしまったセルゲイ・ヴォルコフ、そしてあの冥界の王と呼ばれる邪神だったらしいの……何十年も生きてきたが、そんな話は初めて聞いたわい』

 

『そして、あの戦いはシティに変化をもたらした……トップスとコモンズの緊張状態が緩み、和解の道を歩み始めたのだ』

 

『あの戦いはそれほどのインパクトをシティに与えた…という事ですな?議長』

 

『はい、わしも驚いたよ』

 

「トップスとコモンズが…!」

行政評議会の言葉を聞いた遊矢は驚いた……コモンズを見下していたトップス…そして、トップスを憎んでいたコモンズ……両者の距離が縮まったと言うのだ。

 

 

『かくいうわしも…どうしてシティをこんな形で纏めようと思ったのかわからなくなってしまってのう……どうやら、白波遊海が召喚したドラゴンには人々の『心』を穏やかにする作用があったらしい……すぐにとは言わんが、この街は変わり始めるじゃろう』

 

「遊海…すごいな…」

ホワイト議長の言葉を聞いた遊矢は洋子から聞いた父・遊勝が不良達の抗争を収めた話を思い出す……遊海はそれを街単位で行なってしまったのだ。

 

 

 

『さて…話はこれくらいにして、連絡事項を伝えさせてもらおう……まずは1つ、今日からフレンドシップカップの本戦が始まる…お主が戦うのは二日目からじゃ、用意を怠らぬように』

 

『2つ、ペントハウス…この評議会ビルから出ない限りは()()()()してもらって構わない……お前達を騙し、フレンドシップカップにおける敗者の末路を黙っていた埋め合わせを兼ねてな』

 

『3つ、白波遊海以外の仲間達は全員このビル内に滞在している……以上でよろしいですな?議長』

 

『はい、榊遊矢君…本戦では素晴らしいデュエルを見せてもらう事を期待しているよ』

 

「は、はい…!」

遊矢へと連絡事項を伝えた評議会は部屋から去っていった…。

 

 

 

「………遊海がいなかったら、オレ達……どうなってたんだろう…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……ああ…ぐううっ……!!」

 

 

《遊海…無茶をしおって…》

 

《フォウ…》

シティ近海、ステルスモードで姿を隠した移動要塞『アポクリフォート・キラー』の中……その寝台とも言えない金属製の台の上で遊海は苦しんでいた。

その傍らには精霊達やフォウが心配そうに寄り添っている…。

 

 

《しばらくはまともに動けないでしょう……消耗が激し過ぎます……肉体的にも、精神的にも……》

 

《主殿……》

人間体の彩華が静かに告げる……今の遊海は満身創痍だった。

 

 

スタンダード次元で目覚め、LDSで仮眠を取ったあとからデュエルパレスで意識を失うまで()()()()()()()、遊星の機械修理手伝いの合間を縫ってシンクロ次元の人々の信頼を得る為に人助けに奔走…さらに収容所での『オシリスの天空竜』開放と転移失敗によるダメージ。

そこへジャック戦での荒ぶる魂、バーニング・ソウルの開放…さらに正反対の無我の境地、クリアマインドの使用……そしてDSセルゲイ戦における瀕死の大ダメージとマイナスエネルギーの侵食……NEXUSⅢの全力開放……常人なら何十回か死んでいてもおかしくない程の負荷が遊海を苦しめていた…。

 

 

 

「…ねてなんか、いられな……みどりが……りょうがが……まって……あかでみあ、が───」

 

 

ドッターン!!

 

 

《マスター!?今はダメです!安静にしないと…!》

無理矢理に起き上がろうとして寝台から転げ落ちた遊海をアヤカが抱き起こす……歴戦の英雄であっても、動けるような状態ではなかった…。

 

 

「うぅっ……みど、り……ごふっ…!?

 

《フォウ!?》

 

《これは……ずいぶんと追い詰められているな……無理もないが……》

高熱に魘され…血を吐き、耐え難い痛みと苦しみに襲われながら翠の名を呼ぶ遊海……遊矢達を導く、世界を守るという使命感で抑え込んではいたが、遊海は凄まじいストレスを抱え込んでいた。

 

 

 

ズァークを止められなかったという自責の念

 

自分1人の為に遊馬達や、冥界の遊戯達を危険に曝してしまった罪悪感

 

翠や凌牙、璃緒…家族を悲しませてしまったというやるせなさ

 

そして……多少は改心したらしいとはいえ、復活させてしまった特大の爆弾(ドン・サウザンド)

 

 

体を動かしていなければ…歩みを止めてしまったら、それだけで心が壊れてしまいそうな『嵐』が遊海の中で渦巻いていた…。

 

 

 

《フォウ、フォーウ…(遊海、背負い過ぎないで…頑張りすぎなんだよ…)》

 

「ふぉう……」

魘される遊海に寄り添うフォウは遊海にしかわからない言葉で話しかける…フォウはずっと見ていたのだ、スタンダード次元から…何かに追われるように動き続ける遊海の姿を…。

 

 

《マスター…私にも、フォウが何を伝えようとしたかはわかります……翠も言ってましたよね?マスターは1人で色んな事を背負い過ぎだって……今は休んでください、万全の状態でアカデミアの侵攻に備える為にも…》

フォウの様子から意思を読み取ったアヤカも優しく遊海を諭す、相棒(パートナー)として……遊海の家族として…。

 

 

「あやか………ふぅ……」

 

《……おやすみなさい、マスター…》

アヤカの言葉を聞いた遊海は静かに意識を手放す…その表情は久しぶりに穏やかだった…。

 

 

《かつて、遊海が毒に倒れた時もそうだったが……やはり、2人は似た者夫婦だなぁ……あの時の翠とそっくりだ…》

 

《依存…とは違いますが……人間にとって、信頼できる人が近くにいないというのは精神的に負荷が大きいようです……でも、冥界の王というイレギュラーがあった以上、マスターがシンクロ次元に来ていなければ……ダークシグナー化したセルゲイによって被害が拡大していたかも…》

遊海を寝台に寝かせながら、アヤカとメガロックが語り合う…もしも、遊海がスタンダード次元から直接エクシーズ次元に向かっていたら…その間にエクシーズ次元をアカデミアから開放する事はできただろう。

 

しかし、シンクロ次元では『冥界の王』がセルゲイ以外をもダークシグナーとして使役し…本来起きるはずだった『コモンズ革命』に呼応する形で侵略を開始……命懸けの『決闘』に慣れていないランサーズやシンクロ次元のデュエリスト達を倒し、シンクロ次元が破滅していた…という可能性もあったとアヤカは予想した。

 

幸運だったのは遊海の『痣』を通じて赤き竜が顕現した事…それによってシンクロ次元での最悪の事態を未然に防ぐ事ができたのだ。

 

 

 

《遊海よ、お前は…お前が思う以上に『絆』に守られておる……心配せずに休むのだ》

 

《フォウ…ファ〜……キュウ……》

 

《うむ、遊海の守り番は頼んだぞ?フォウ》

静かに寝息を立てる遊海に語りかけるメガロック…そして、フォウも遊海に寄り添って眠り始めたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【して……お前は休まぬのか?英雄の影よ】

 

『馬鹿野郎…お前を野放しにして休めるか』

 

遊海の精神世界の最奥、遊海は完全に意識を無くして休む中…ボロボロのユウスケはドン・サウザンドを見据えながら座り込んでいた。

 

 

『助けてくれた事は感謝してる…だが、それでお前を信用するほど…(オレ)は甘くねぇ』

 

【ふっ…そうであろうな、我はお前達にとっての仇敵……正しい判断だ】

 

『………なんか調子狂うなぁ……暖簾に腕押しかよ、これじゃあ(オレ)の一人相撲じゃねぇか』

ドン・サウザンドを信用せず、精神世界内での見張りを続けるユウスケ…だが、ドン・サウザンドは大きな動きは見せず……むしろ、遊海を助けた事でユウスケは溜息を吐いた…。

 

 

 

『……はぁ………少し寝る…我も休まなきゃ、遊海も全快できねぇ』

 

【そうか、休める時に休むのだな】

 

『(たくっ…ダークネス以上に考えが読めねぇ……)』

教会の長椅子に寝転び、ユウスケも休息を取る……そしてすぐに意識は深く落ちていった…。

 

 

 

 

 

 

 

【………絆、か……九十九遊馬…アストラル、ナッシュ、天城カイト……我は奴らの絆…希望の前に敗れた……我にも、仲間とやらがいれば………いや、ありえんな】

玉座に座りながら呟くドン・サウザンド…その時だった。

 

 

キィン─!

 

 

【むっ…?貴様は…】

 

《…………》

教会の中に静かに赤い光が満ちる…その中から現れたのは、シグナーを導く神…赤き竜だった。

 

 

 

【フン…人間の善意の化身、赤き竜とやらか……お前の使徒を穢す我を排除しに来たのか?今の我ならば…お前にも簡単に敗れるであろうな?】

自身を見つめる赤き竜に語りかけるドン・サウザンド…だが…。

 

 

《キュオォォオン…》

 

【………何をしに来たのだ?】

静かに一鳴きすると赤き竜は姿を消したのだった。

 

 

【我を排除する必要はないと?……ずいぶんとおおらかなのだな、赤き竜とは……】

赤き竜を見送ったドン・サウザンドは頬杖をつきながら、つまらなさそうに目を閉じた…。



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幕間 揺れるMind〜振り子を支えるモノ〜

こんにちは!S,Kです!

ちょっとスランプ気味の今日この頃…なんとか仕上がりました…。

そして25日にはメインゲームのFGOの二部7章が開幕……今年中にもう一話更新できたらいいなぁ…。


それでは、最新話をどうぞ!


「はぁ……」

行政評議会、ペントハウス…割り振られた部屋で遊矢は頭を抱えていた。

ジャックによって自分の「エンタメ」を否定されてしまった遊矢…それが遊矢に影を落としていた……だが、遊矢を落ち込ませていたのはそれだけが理由ではなかった…。

 

 

 

「……遊海とジャックのデュエル、みんな…盛り上がってたな……」

ジャックに完膚なきまでに叩き潰された自分を守るように現れた遊海…その後のデュエルはまさに『圧巻』の一言だった。

 

 

ジャックのエース『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』に似た…その起源と言えるモンスターを呼び出し、その進化体をも呼び出した。

 

そしてジャックの一撃を受け止め、それを上回るパワーで圧倒した。

 

遊海がしていたのは()()()()()デュエルだった、それでも観客達は舞い散る炎やジャックと『魂』のぶつかり合いに圧倒され…自分の『エンタメデュエル』よりも盛り上がっていた、遊矢はそれに落ち込んでいたのだ……そして…。

 

 

「遊海の演説…いがみ合っていたはずのトップスとコモンズを引き込んで、アカデミアだったロジェをそのトップスとコモンズの手で倒させる…まるで、革命家みたいなやり方だった…」

ジャックを倒した遊海は突然現れた『赤き竜』に選ばれたデュエリスト達──シグナーと言うらしい、と共に自分達の目的を明かした…それは赤馬零児の演説というよりも、海馬瀬人社長に近い人々に訴えかける…『魂』の込められた言葉だった。

 

それによってシンクロ次元における『闇』の存在を明かし…その考えを認めた上で諫めた……観客の一部が失神するほどの力強さで…。

 

そして遊海によって融合次元の人間であることがバレたロジェ…それを倒したのは遊海ではなく、シグナーのデュエリスト達…コモンズの代表である不動遊星、そしてトップスの代表である十六夜アキという少女だった。

…きっと、遊海ならばロジェですら簡単に一蹴できただろう……それでも、遊海は2人にロジェへの対処を任せた……トップスとコモンズが手を取り合う、そんな未来へとシンクロ次元を導く為に…。

 

 

 

「……でも、そんな遊海があんなに慌てるなんて……あのダークシグナーとか、冥界の邪神って何だったんだ…?」

 

遊星とアキによってロジェは倒され、全てが解決したかに思われた……だが、突然…ロジェの腹心、セルゲイが冥界の使者──ダークシグナーとして目覚め、さらに巨大な黒いナニカがシティへと現れた。

それまである程度の余裕を持っていた遊海が動揺するほどの緊急事態……そして、冥界の使者へと遊海は立ち向かう……その肩にシンクロ次元の未来を背負って…。

 

 

 

「……ネクサス……絆の奇跡、か……」

 

常識外れの空中でのライディングデュエル、遊海は遊星から託された『スターダスト・ドラゴン』を進化させ…『シューティング・スター・ドラゴン』を呼び出し、セルゲイの攻撃に備えた……そして現れたのは巨大なコンドルの姿の邪神『地縛神』だった。

スタジアムにいた人々や街の人々を取り込んだ邪神は『相手のライフを1にする』という回避不可能な効果を使って遊海へと襲いかかった……遊海にはそれを避ける算段があったようだが…冥界の邪神による『攻撃』によって叶わず、遊海は致命傷を負って海へと沈んでしまった。

 

 

だが…遊海は光と共に復活した。

 

 

それは…榊遊希が舞網チャンピオンシップにおいて梁山泊塾の松星戦で見せた「暴走形態」……だが、それは真実ではなかった。

仲間との絆を繋ぎ、勇気を力として世界を脅かす『闇』へと立ち向かう絆の奇跡──『NEXUS』

 

遊矢が知らない…遊海の仲間との『絆』、そして『赤き竜』の奇跡の力を借りた遊海は輝く希望の竜『シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン』を呼び出し──邪神を打ち倒した。

 

 

遠くからその戦いを見ていた遊矢には『地縛神』の脅威はよく分からなかった……ただ、分かったのは……もしも、自分が戦っていたら──負けていただろう、という事だった。

 

 

 

 

「遊海……本当に『正義の味方(ヒーロー)』みたいだった…オレよりも、ずっと…シンクロ次元のみんなを笑顔にしてた…!」

遊海の姿を思い出した遊矢は昔、父・遊勝が行方不明になる前にエンタメの勉強として一緒に行ったヒーローショーの事を思い出した。

 

悪を倒す為に力を振るい、ピンチになろうとも人々の声援から力を得て、必ず事件を解決する……現実にそんなヒーローが存在するとは遊矢は思ってもいなかった…。

 

 

「オレのデュエルって…エンタメって、なんなんだろう……遊希兄…父さん…!」

 

ジャックの圧倒的な力とあまりに大きすぎる遊海の背中、その2つを目の当たりにした遊矢の自信は……プライドは粉々だった…。

 

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

『榊遊矢様、お客様です』

 

「えっ…?」

そんな時、部屋付きのボーイがドアをノックする…そしてやって来たのは…。

 

 

「「遊矢!」」

 

「あっ…柚子!権現坂!」

 

「うおおっ!遊矢!無事で良かったぞぉぉ!!!」

 

「く、くるひい……」

 

「あはは…権現坂も相変わらずね…」

やって来たのは柚子と真新しいライダースーツを着た権現坂だった…そして、遊矢はまた権現坂の胸板に沈む事になり……柚子は苦笑いしたのだった。

 

 

 

………  

 

 

 

「権現坂…その服…?」

 

「おう、これか?行政評議会からフレンドシップカップのトップバッターに指名されたのだ!俺とデニスの興行が話題になったらしくてな!相手は…お前の知り合いのクロウとらしいな」

 

「クロウと…!」

 

「その戦いの前にお前の様子を見に来たのだが…そうしたら部屋の前で柚子と鉢合わせしてな…映像で知っていたとはいえ、無事な姿を見れて安心したぞ!」

 

「ごめんなさい……みんなに心配かけちゃって…!」

 

「柚子…気にすんなよ!柚子だって来たくてシンクロ次元に来た訳じゃないんだしさ」

 

「うん…ありがとう、遊矢」

フレンドシップカップの初戦を任された権現坂は試合の前に遊矢の顔を見る為に遊矢のもとへやって来た…そして柚子は遊矢に聞きたい事があって部屋を訪ね、ちょうど権現坂と合流できたのだ。

 

 

 

「遊矢、権現坂…教えて欲しいの、バトルロイヤルで何が起きたのか……遊希さんに、何があったのか…!」

 

「柚子…」

 

「……遊海さんから、遊矢達が『ランサーズ』として私を助けに来てくれたのは聞いたの……そこまでに何があったのか、教えて欲しいの…!」

柚子がやって来た目的…それは、舞網チャンピオンシップで何が起きたのかを聞く為だったのだ…。

 

 

「ならば…タイミングが良かったな、俺も含めればバトルロイヤルで起きた事をほぼ話せるだろう」

 

「ああ……実は……」

そして、遊矢と権現坂はバトルロイヤルで何が起きたのかを柚子へと伝える…。

 

 

まずは遊矢、柚子や遊希と別れた後に梁山泊塾からの報復デュエルを仕掛けられ、助けに入ったデニス・マックフィールドの助けを得てそれを退けた事。

 

そして…遺跡エリアで黒咲と出会ったものの、ナイト・オブ・デュエルズが黒咲に報復デュエルを仕掛け──そこへ融合次元の戦士、オベリスク・フォースを従えた素良が襲来…そこで記憶が途切れてしまった事。

 

 

次に権現坂、柚子と別れた後、デュエルフィールドを探索する中でオベリスク・フォースと勝鬨戦のように豹変した遊矢の恐ろしいデュエルを目撃…『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』をエクシーズ召喚した遊矢がオベリスク・フォースを吹っ飛ばし──そこへ、異形の怪物と化した遊希が乱入し…暴走した遊矢を叩き潰してしまった事を伝える…。

 

 

「遊希さんが…!?」

 

「うむ……このあとに出てくる凌牙によると、別のオベリスク・フォースに城之内殿と舞網アドベンチャー・スクールの聖目殿がカード化されてしまったらしくてな……そのショックで遊希に秘められていた『力』が暴走してしまったらしいのだ…」

 

「オレ…その時の事、まったく覚えてないんだよな…」

 

「話を続けるぞ…」

暴走遊矢を倒した遊希は本当の意味で遊矢へと『トドメ』を刺そうとした…そこへ現れたのはエクシーズ次元のレジスタンス、凌牙だった。

やはり、記憶喪失になる前の遊希を知っていた凌牙は狂戦士──『厄災』と化した遊希を救う為に立ち向かう……黒咲以上のタクティクスで立ち向かう凌牙だったが、遊希が呼び出したのは見た事もないエクシーズ封じのデッキ…その異常な力で凌牙は僅かなターンで追い詰められてしまう。

 

だが、凌牙が託されていた『奇跡』が活路を開き、渾身の一撃が遊希に直撃…暴走を鎮める事に成功したのだった。

 

 

 

 

「……オレが気を失ってる間に、そんな事が……」

 

「うむ…お前にもあの『金色の龍』の姿を見せたかったぞ……そうして俺達は茂古田殿と大漁旗の力を借り、気を失った遊希と遊矢をジャングルエリアへと匿ったのだ」

 

「柚子…お前は、その時どうしてたんだ…?」

 

「うん…」

次は柚子の番…タッグデュエルの後、権現坂と別れた柚子はデニスにデュエルを仕掛けられて敗北…その直後、自分によく似た少女・セレナと出会う事になる。

デニスをエクシーズ次元の人間と勘違いしてデュエルを仕掛けたセレナはデニスに圧勝……その直後、セレナを追ってオベリスク・フォースが出現……襲われる寸前で風魔塾の日影・月影の2人に助けられて窮地を脱する事ができた…。

 

そして…柚子はセレナと話し合い、セレナが融合次元の人間であり…アカデミアの戦士として誇り高く戦いに来た事を知る…。

だが…そのセレナは柚子がユートから知らされた事実──ハンティングゲーム感覚で人々を襲う『次元戦争』の現実を知って取り乱してしまう……そして柚子はセレナと服を交換し、セレナと黒咲か凌牙が出会えるように囮を買って出たのだ…。

 

 

「柚子…なんて無茶な事を…!」

 

「ごめんなさい…その時、私も狙われてるって知らなかったの…………それで、私…オベリスク・フォースから逃げたんだけど……襲われたの、遊矢に似た…紫色の奴に…!」

 

「オレに似た奴!?」

 

「ユートのように遊矢に似た男がいたのか…!!」

 

「うん…怖かった…!!」

オベリスクフォースに追いかけられていた柚子の前に現れたのは、融合次元の戦士・ユーリ……既にLDSのオルガとハリルをカード化していたユーリは柚子を捕らえるべくデュエルを仕掛ける………そして、一晩中追いかけられる事になってしまったのだ…。

 

 

 

「一晩中も…!?なんとしつこい奴なのだ…!!」

 

「許せない…!柚子をそんなに怖がらせるなんて!!」

 

「……私、もうダメだと思ったの……そしたら……」

 

朝方となり、ユーリに追い詰められる柚子…その時、ブレスレットが光を放ってユーリが消える……その代わりに現れたのがDホイールに乗ったシンクロ次元のデュエリスト、ユーゴだったのだ。

 

 

 

「そして柚子はそのユーゴと一緒にシンクロ次元に飛ばされてしまった、と……大変だったな…」

 

「うん…いきなりセキュリティに追いかけられたり、ユーゴは毎回私をリンって女の子と間違えたり……それで、遊矢達は…」

 

「うん、遊希兄より先に目が覚めたオレは権現坂達から話を聞いて…とにかく柚子や他の選手達と合流しようと思って、未知夫達とデュエルフィールドに散らばったんだ…」

遊矢達は融合次元の脅威を伝え、狙われている柚子を探してデュエルフィールドに散らばった……そして、未知夫達が素良とのデュエルで負傷した黒咲と合流したセレナ、そして月影とオベリスク・フォースが戦う姿を見つけて助けに入る…だが、オベリスク・フォースは強く…乱入ペナルティでライフを失っていた未知夫が一撃で倒され、カード化される直前──

 

 

「目覚めた遊希……いいや、『決闘者(デュエリスト)』白波遊海がヒーローのように俺達の前に現れたのだ…!」

 

「遊希さんの…本当の姿…」

カード化の光を防ぎながら、その男は現れた…傷だらけだった肌は綺麗に治り、失った左目を取り戻した…赤帽子のデュエリスト…白波遊海が…。

 

 

 

「遊海は強かった…三人組のオベリスク・フォースを一人で半壊させ、絶望的な状況を変えてしまった…そして……沢渡を追ってきた新たなオベリスク・フォース6人を1ターンキルで倒してしまったのだ!」

 

「あの仮面の奴らを!?強すぎよ!!」

権現坂の思わぬ言葉に柚子は叫ぶ…オベリスク・フォースの強さは身を以て知っているからだ…。

 

 

「オレはその時、素良とデュエルしてたから詳しくは知らないんだけど……遊海はオレや遊希兄とは違うペンデュラムカードの使い手らしいんだ……そして、戦いの度にデッキを変える…オレ達とは別次元の戦いをするデュエリストだったんだ」

 

「別次元の…デュエリスト…」

そして、遊海がオベリスク・フォースと戦っていた頃、遊矢は素良とデュエルをしていた…アカデミアの使命に殉じようとする素良に笑顔を取り戻す為に…だが、そのデュエルは無情なタイムアップによって終わってしまった…。

 

 

 

 

「それで、柚子が行方不明になった事を知って…素良も融合次元に戻っちゃって………そこへ、赤馬零児が現れたんだ」

 

「そして舞網チャンピオンシップが対融合次元を見据えた防衛隊『ランサーズ』を選抜する為の大会だった事…そして、セレナが舞網にオベリスク・フォースを呼び寄せてしまい…それを迎撃する為に、俺達が戦わされた事を知ったのだ…!」

 

「ひどい…舞網チャンピオンシップで、そんな事が…!」

遊矢達から舞網チャンピオンシップの真実を知らされた柚子は胸を痛める…、

結局、ジュニアユースとして参加した20人のうち重傷3人、カード化7人、行方不明1人…そしてオベリスクフォースの迎撃に当たったユース8人のうち4人がカード化されるという大きな被害で舞網チャンピオンシップは幕を閉じる事になったのだ…そして……。

 

 

 

「記憶を取り戻した遊希兄……遊海は、オレの…オレ達の事、なんにも覚えてなかったんだ…!!」

 

「そんな…!」

遊矢の言葉に柚子は悲しみの声を漏らす、そして思い出した……この次元で遊海を遊希と勘違いして抱きついた時、「俺は違うんだ」と悲しそうな表情で告げた遊海の事を…。

 

 

 

「それで、オレは…オレ達を利用した零児が許せなくて、デュエルして…負けたよ…ボコボコにされて……それで、柚子を助ける為にランサーズに入ったんだ…」

 

「そしてLDS…レオ・コーポレーションは融合次元の脅威を明かし、ランサーズの結成を舞網市……スタンダード次元全体へと発表したのだ」

 

「それが、私がシンクロ次元に来た後にあった事…」

 

「ああ、あとは…その夜に母さん……流れ星ヨーコとデュエルした事くらいかな」

 

「流れ星ヨーコ?なにそれ…?」

 

「母さん…舞網の女暴走族の総長だったんだって…」

 

「なにそれ!?というか…なんでデュエルしたの!?」

 

「あはは…」

零児に敗北し、柚子を助ける為に融合次元への怒りに燃える遊矢…だが、その姿を見た洋子が遊矢へとデュエルを仕掛ける……父の信念を…デュエルはなんの為にあるのかを伝える為に…。

 

 

 

 

「そして…母さんから父さんのカード、『スマイル・ワールド』を託されたオレは権現坂に沢渡、デニスに黒咲、月影と零児、セレナ…それから零羅と遊海…10人でシンクロ次元に来たんだ」

 

「あれ…?凌牙は?」

 

「凌牙は…遊海の指示でエクシーズ次元に戻ったんだ、融合次元に動きがあるかもしれないからって…」

 

「そうなんだ……そういえば…凌牙と遊希…遊海さんの関係って……?」

 

「うむ…驚かないで欲しいのだが………」

 

()()、なんだってさ…」

 

「えっ……ええぇぇ───!?」

 

遊矢達から思わぬ真実を知った柚子はこの日で一番驚いたのだった…。

 

 

 

………

 

 

 

「別次元で事故に遭って、私達の世界に…しかも身体も縮んで……」

 

「融合次元には人をカードにしてしまう技術もあるのだ…摩訶不思議な事があってもおかしくはない」

 

「オレと母さんも遊海から聞かされた時は驚いたよ…奥さんがいるって知ってさらに驚いたけど…」

 

「……奥さん、きっと心配してるんだろうなぁ…」

遊矢から遊海の来歴や経緯を伝えられた柚子はふとそんな事を思う…たった数日でも心細いのに…何年も離れていたら、絶対に心配しているだろうと…。

 

 

 

 

「……話を戻すぞ、シンクロ次元に着いた俺とデニスはアクションデュエルの興行をしながら柚子の情報を集めていたのだが…地下デュエルのプロモーターに目を付けられてな……その地下デュエル場で黒咲と合流できたのだが…セキュリティに捕まって収容所に送られてしまったのだ」

 

「オレは沢渡にセレナ、それから零羅とシンクロ次元に着いたんだけど…たぶん、柚子とユーゴに間違われたんだな…いきなりセキュリティに捕まりかけてさ…クロウ達に助けられたんだけど……結局、まとめて収容所送りさ…」

 

「ご、ごめんね?遊矢…」

 

「気にすんなって…収容所でも出会いがあったんだ」

紆余曲折を経て収容所送りとなったランサーズ…その収容所で遊矢は不動博士、そして収容所のボスだった徳松と出会う…そして遊矢のエンタメによって徳松へと笑顔を取り戻し…そして…。

 

 

「クロウやシンジ達が脱獄を考えてさ…失敗しかけた時、遊海が助けに来てくれたんだ…鉄の扉を吹っ飛ばして……みんな目が点になってたよ…」

 

「うむ…いや、いくら体を鍛えても…あそこまでになると……」

 

「……遊海さんって、何者なの…?(汗)」

 

「本人は『決闘者(デュエリスト)』だって言ってたけど……う〜ん…」

シンクロ次元で別行動を取っていた遊海が遊矢達を救う為に牢獄破りを実行…さらに、セキュリティ本隊が駆けつけるも…治安維持局と交渉していた零児によってランサーズがフレンドシップカップに出場する事が決まり、難を逃れたのだった…。

 

 

 

 

 

「改めて振り返ると……これが舞網チャンピオンシップから約一週間の出来事とは信じられんな…」

 

「でも、戦いはこれからだ…柚子は助けられたけど、シンクロ次元と同盟を結んで…融合次元を止めないと、世界は平和にならないんだ…」

 

「……遊矢、私…決めた!私もランサーズに入る!!」

 

「「柚子!?」」

今までの出来事の振り返りを終えた柚子が遊矢達に決意を伝える…その言葉に遊矢と権現坂の驚きが重なった。

 

 

「だって…舞網に戻っても、またアカデミアが来るかもしれない…なら、遊矢達と一緒にいた方が安全だもの…!それに私だって、戦える…デュエルを戦争に使うアカデミアを許せないのは私も同じよ!」

 

「柚子…」

遊矢は柚子の瞳を見て決意の強さを知る…人々をカードゲームしてしまうアカデミアを許せないという柚子の強い思いを…。

 

 

「………わかった、今度こそ…柚子はオレが守る!!」

 

「遊矢…うむ!それでこそ漢だ!」

 

「ふふっ…ありがとう、遊矢!……いつもどおりの遊矢で、良かった…」

 

「えっ…?」

柚子の思いを聞いた遊矢が決意を固める…その姿を見た柚子は

安堵の言葉を漏らした…。

 

 

 

「私ね、心配だったの…昨日のキングとのデュエル…それから、遊海さんのデュエルを見て…また遊矢が落ち込んでるんじゃないかって……私もびっくりしたもん!遊海さんってあんなに強いんだって!……それに、デュエルが終わった後の遊矢の表情が暗かったから…」

 

「あっ……」

昨日のデュエルの時、ずっと遊矢の隣にいた柚子は気付いていたのだ…遊矢が遊海のデュエルを見て落ち込んでいる事に…。

 

 

「遊矢、気に病む事はない!人にはそれぞれ得手不得手がある…それに昨日のデュエルは遊矢にとっての平常心ではなかった…いられない状況だったのは分かっている!またリベンジすれば良いのだ!」

 

「権現坂…」

 

「それに…遊海とお前を比べる必要はない!上手く言えんのだが…遊海と俺達では()()()()()()()()()()!遊海がヒーローなのならば、お前はエンターティナー…観客の盛り上げ方も違う!落ち込んでいる暇などないぞ!」

 

「2人とも…」

柚子も権現坂も遊矢の傷心を見抜いていた…2人は遊矢を励ます為に、その為だけにやって来たのだ。

 

 

 

「……ありがとう、柚子…権現坂…オレ、必ずジャックにリベンジする…オレのエンタメをジャックに見せつけるんだ!」

 

「うむ、その意気だ!」

柚子と権現坂の言葉で遊矢は奮起する…自身のエンタメを否定したジャックに、今度こそリベンジするのだと…!

 

 

 

コンコンコン!

 

 

 

『権現坂様、まもなく時間です…準備をお願いします』

 

「むっ…そんな時間か!往かなければ!」

 

「あっ…私も第三試合だって言われたから…そろそろ行かないと」

 

「柚子…権現坂……大丈夫か?」

 

「心配するな、遊矢!負けても部屋に戻って良い事になったのだ!……おそらく、行政評議会の者達も遊海の力に恐れをなしたのだろうな!」

 

「あの人の思いに応えられるようなデュエルにしないとね、遊矢!」

 

「……ああ!」

試合を控えた権現坂がボーイの青年に声を掛けられる…そして自分の試合を思い出した柚子も立ち上がった。

 

 

 

「あっ…そうだ……遊矢、もし…もしもユーゴに会っても、悪く言わないであげて…ユーゴも、大切な人をアカデミアに拐われたみたいなの…」

 

「えっ…!?そうなのか!?」

 

「うん…こっちに来てから聞いたの……たぶん、紫色の奴……ユーリって奴が私に似た瑠璃とユーゴの大切な人、リンを攫った犯人なのよ…!」

 

「……まさか、ユートも、ユーゴも…お互いに人違いしてたのか!?」

部屋を去る直前、柚子の言葉に遊矢は驚く…そして理解した、舞網中央公園で衝突した2人はお互いに相手を誘拐犯だと勘違いして戦ってしまったのだと…。

 

 

「ユーゴはちょっと能天気で、デリカシーのない奴だったけど…悪い人じゃなかった!」

 

「わかった…ありがとう、柚子…頑張れよ!!」

 

「うん!私…頑張る!」

遊矢の応援を受けた柚子は戦いへと向かった…。

 

 

「ユート……なんて、救いのない……」

柚子の背中を見送った遊矢はペンデュラムを握り締めて呟く…「デュエルで笑顔を」と言葉を託して消えてしまったユートは…どれほど悔しかったのだろうと…。

 

 

「ユート……今度こそ、オレのエンタメでシンクロ次元の人々を…ジャックを笑顔にしてみせる、父さんや遊海みたいに…!」

ユートへとジャックのリベンジを誓う遊矢…そんな時だった。

 

 

 

 

 

『あの……遊矢、様……少し良いですか…?』

 

「君は…昨日の…」

 

『サム、と言います』

決意を固めた遊矢に声をかけたのはデュエルパレスで遊矢を案内した付き人の少年、サムだった。

 

 

 

『遊矢様……このカードを、ジャックに返して欲しいのです…貴方が決勝まで勝ち上がって…ジャックにリベンジする時に…!』

 

「このカードは……『調律の魔術師』…?」

サムは頭を下げながら、遊矢に一枚のカードを差し出す…それはレベル1のモンスターカードだった…。

 

 

「……どうして、このカードをオレに?」

 

『ジャックは僕の…コモンズの希望の星でした……憧れだったんです…!』

サムはぽつりぽつりと語り出した…。

 

 

コモンズ出身でありながら、トップスを倒していくジャックに憧れていた事。

 

勝者が富を手にするシティで段々と傲慢になり、コモンズを見下し始めた事。

 

その中で応援の言葉を伝えた時…「お前に相応しいカード」だと言われ、低ステータスのこのカードを渡された事を…。

 

 

 

「ジャックがそんな事を…?」

 

『キングになってお金持ちになったジャックは…コモンズの裏切り者なんだ…!!』

 

「裏切り者…」

その言葉を聞いた遊矢はクロウが言っていた言葉の意味を理解した…だが、同時に思った…あのジャック・アトラスが…遊海と激戦を繰り広げて笑っていた男が…そんな事をするのか?と…。

 

 

「なぁ、サム……本当にジャックは()()だったのかな?」

 

『えっ…?』

悔しげな表情のサムに遊矢は視線を合わせて問いかける。

 

 

「確かに、ジャックは強かった…俺も()()()()()()悔しかった………でもさ、メタルナイト…遊海とデュエルしてる時、ジャックはどんな顔してたか覚えてるか?」

 

『……笑って、ました……鋼の鎧の人と戦いながら……』

 

「ああ、オレも近くで見てた……きっと、ジャックは本当のエンターティナーだ……そんな奴が考えなしに、カードを渡すとは思えないんだ…」

遊矢は自分の負けた悔しさを棚上げしてサムに伝える…人々の笑顔が好きなのはエンターティナーとしてジャックも同じのはず……だったら、このカードにも『意味』があるのではないかと…。

 

 

 

「懐かしいな、そのカードは…」

 

「えっ…あ、アンタは…!!不動博士の…」

 

「扉が開いていたから覗いて見たら…つい話が聞こえてな、改めて初めましてだな…オレは不動遊星、収容所では親父が世話になったな…榊遊矢」

開いていた部屋の扉から特徴的な髪型をした青年が現れる…それは不動博士の息子、不動遊星だった。

 

 

「サムと言ったな……君は何故、ジャックがキングを目指したか知っているか?」

 

『えっ…お金持ちになる…トップスになる為じゃ…?』

 

「いいや、ジャックはそのカード…『調律の魔術師』の為にキングを目指したんだ」

 

「『えっ…?』」

遊星の言葉にサムと遊矢の声が重なる…ジャックの原点が、この一枚から始まったというのだ。

 

 

「昔、ジャックから聞いた事がある……幼い頃のある日、トップスが捨てたのだろうこのカードがジャックの目の前に落ちてきた……そのカードを拾った時、ジャックは決めたんだ…そのカードを元の場所に返してあげよう、その為に強くなるんだと……」

 

『じゃあ、このカードは……』

 

「ジャックは君に期待していたんだ…『いつか、このカードと共に俺に向かって来い』と……ジャックは言葉が足りないからな……時々勘違いされるんだ」

 

「やっぱり…ジャックは考えがあって…」

ジャックと旧知の仲らしい遊星の言葉に遊矢は納得する…ジャックはサムの事をしっかり考えていたのだと…。

 

 

『でも…こんなカードで、どうすれば…!』

 

「『不必要なカードなんてない、全てのカードには役割がある』……それが、オレとジャックの合言葉だった……それは遊矢、お前にも言える事だ」

 

「オレにも…?」

 

「ジャックはきっと、お前に()()を伝えたかったんだ…同じエンターテイメントを目指す者として……」

 

「エンターティナーとして…伝えたい事…」

遊星の言葉を聞いた遊矢はジャックの言葉を思い返す…『鍛え直して来い』と言ったジャックの姿を…。

 

 

「……サム、このカード…預かってもいいかな?」

 

『えっ…?』

 

「ジャックがオレに何を求めてるのかは分からない……でも、見つけて見せる…オレに足りない『何か』を…!」

 

「ふっ…」

遊矢はサムに託されたカードを握りしめる…ジャックの思いに応える『何か』を見つける為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《……マスターに代わってフォローをしに来ましたが、杞憂だったみたいですね》

決意を固めた遊矢の姿を見ながら人間体のアヤカが呟く…戦闘不能の遊海に代わって遊矢のメンタルケアをしに来たのだが、期を逃してしまったのだ。

 

 

《…さて、手ぶらで戻るのもなんですし…ランサーズの乗るDホイールの安全装置を強化して……トリシューラプリンでも買って戻りましょうか》

僅かに微笑んでアヤカは空気に融けたのだった…。



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開幕!フレンドシップカップ!〜鎬を削るデュエリスト達

こんにちは、S,Kです……見事に三ヶ月も更新できずにすいませんでした!!
昨年末からの忙しさ+メインゲームの「FGO」の攻略を優先していた為に更新が遅れてしまいました……無事に水晶蜘蛛亜種は撃破できました。

……「勇者王」カマソッソがカッコ良かった…あと■-■■■■■■も救われて欲しいなぁ…。



またのんびり更新となってしまいますが、よろしくお願いします!



「すぅ…すぅ……」

 

《きゅう…くぅ……》

 

《ただいま戻りました…トフェニ、マスターの様子は?》

 

《変化はない…深く眠ったままだ》

 

シティ近海、ステルスモードの『アポクリフォート・キラー』内部…シティから戻ったアヤカがトフェニに遊海の容態を訊ねる…傷付いた遊海は枕元のフォウと共に深く眠っていた…。

 

 

《アヤカよ、榊遊矢の方は大丈夫だったのか?》

 

《ええ、どうやらマスターの行動の影響で軟禁状態が弛んだようで…柊柚子と権現坂昇、それから遊星のおかげで精神的には持ち直したようです、私がフォローする必要もない程に……あ、これはお土産のトリシューラプリンです、みんなで食べましょう》

 

《……人間体を得たからか、ずいぶんと人間味が増したなぁ……頂こう》

遊矢の安定をメガロックへと伝えたアヤカは買ってきたトリシューラプリンを広げる……イリアステル製のデュエルロイドは高性能、食べ物からもエネルギーを補給できるのだ。

 

 

 

《もぐもぐ……さて、遊海の活躍でフレンドシップカップはどう変わるのか……セルゲイが抜けた穴には遊星が入るのだろう?》

 

《もきゅ…ええ、それ以外のメンバー変更はないはずですが……ああ、セキュリティがロジェの悪事が関係する場所を一斉捜査するらしいですね、もしかするとデュエルチェイサー227も駆り出される可能性が…》

 

《それは…大丈夫なのか?本来の榊遊矢の相手がいなくなるのは……うん、シンクロ次元のトリシューラプリンも美味だな》

 

《大丈夫でしょう、今までの経験から予測すると……誰かがその穴埋めに入り、大会も問題なく進むはずです》

プリンを食べながら話し合う精霊達…その関心はフレンドシップカップ、そしてその先へと移っていた…。

 

 

《主殿がシンクロ次元を変える為の風穴を開いた……この先はランサーズの出番という事か…》

 

《……それより、次の問題はシンクロ次元に侵攻するオベリスク・フォースの事です……最重要人物である柊柚子とセレナは最悪、私達が保護すればいい話ですが……》

 

《……遊海が派手に啖呵を切ってしまったからなぁ…》

 

《とにかく…主殿の回復を待たなければ…》

精霊達は静かに眠り続ける遊海を見守るしかなかった…。

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

『さぁ、見えてまいりました!今日もデュエルパレスは20万人の観客で大盛況!本日からフレンドシップカップが開会いたします…!とーう!!』

同じ頃、大観衆に埋め尽くされたデュエルパレスに司会を務めるアナウンサー、メリッサの実況が響く…そして彼女はパラシュートを背負って上空からデュエルパレスへと飛び降りる─!

 

 

 

『シティは1つ!!』

 

「「「みんな友達─!!」」」

 

 

 

『We are Friends』…フレンドシップカップのスローガンが描かれたパラシュートを広げながら、メリッサは地上へと降り立つ……会場の盛り上がりは『原作』以上となっていた。

 

 

『よいしょ…掴みはOKね!波乱の前夜祭から一夜が明けてシティはトップス・コモンズ関係ない盛り上がりに包まれているわ!……私には、何が起きたのかさっぱりだったけど──みんなが楽しめているならオールOK!って感じ!』

地上に降りたメリッサが会場を見回しながら笑顔で実況する。

 

一夜にしてシティは変わり始めた、明かされた治安維持局長官の野望…突如として現れた邪神の脅威──そして、全ての闇を吹き飛ばした『絆の光』………それは差別によっていがみ合っていたトップスとコモンズ、シティの人々の心を氷解させ…新たな未来へ向かうキッカケとなろうとしていた…。

 

 

 

『さぁ!この勢いで今回出場する16名の選手達の紹介とまいりましょう!まずはこの人!昨夜のキングとのデュエルで「エンターティナー」失格の烙印を押されてしまった()()()のデュエリスト!榊遊矢!本戦ではそのイメージを払拭できるのか!?………あら?ずいぶん文章が柔らかいわね?続いては──』

そしてメリッサによって出場する選手達が紹介されていく、ランサーズからは遊矢・権現坂・沢渡・黒咲・セレナ・零羅・デニス、シティからは治安維持局代表のデュエルチェイサー227、コモンズからシンジ・クロウ・デイモン・トニー・遊星、さらに長次郎…そしてユーゴに柚子、それぞれのソリッドビジョンと共に紹介が終わったのだが…。

 

 

「おーい!メリッサ!昨日の()()()()()()デュエリストは本戦には出ないのか〜?」

 

「あの人のデュエルもう一度見たいぞ〜!」

 

『えっ……ああ!鋼の騎士、白波遊海ね!……それが、行方が分からないのよ〜!まぁ、あれだけの戦いの後だから厳しいんじゃないかな〜…ごめんなさいね!今度インタビューするから!』

観客の一部からシティを変えた決闘者──遊海の出場を望む声が上がる……だが、遊海はシティにはおらず、療養中の為にそれは叶わない事だった…。

 

 

 

『時間も押してるから先にいくわ!まずは今日のデュエル、栄えある開幕戦に登場するのは〜…!面白いストリートデュエルを魅せてくれた権現坂昇選手対クロウ・ホーガン選手!!それじゃあ準備をお願いするわ!!』

フレンドシップ開幕戦…その初戦を飾るのはランサーズの不動の漢、権現坂…そして、シグナーとしての記憶を得たコモンズの鉄砲玉、クロウだった…!

 

 

 

 

 

「遊矢の見せてしまった不甲斐ない姿…俺はそれを挽回してみせる…!この後に戦う遊矢の為にも…!」

 

 

『フレンドシップカップ、か……まぁ『記憶』のフォーチュンカップ──いや、WRGPよりはマシだな……さーて、ガキ共に元気な姿を見せてやらないとな!』

遊矢の不名誉を雪ぐ為に気合を入れる権現坂、そして『歴戦の記憶』を得た事で余裕があるクロウ…二人の戦いが始まろうとしていた…!

 

 

…………

 

 

 

『それでは!選手の入場です──!』

メリッサの声と共に茶色の量産型Dホイールに乗った権現坂、そしてブラックバード号に乗ったクロウがコースへと進入する…なお、権現坂は当然ながら運転に慣れておらず、車体がぐらついている。

 

 

 

「──フン(クロウ、貴様もシグナーの端くれならば──この程度の壁、乗り越えてみせろ)」

 

「ケッ、ジャックのヤロー…!待ってやがれよ─!」

そして玉座からコースを眺めるジャックとクロウの視線が交わる…友人の1人として、シグナーの仲間として…クロウはジャックの言わんとする事が解っていた。

 

 

「クロウ!収容所では世話になったが…ランサーズの力を示す為、全力で戦わせてもらうぞ!」

 

「おう!望む所だ!スタンダード仕込みのデュエル、見せてもらうぜ!」

スタート位置についた権現坂とクロウが言葉を交わす…本来なら、スタジアムはトップスとコモンズの衝突で混沌とした状況となるのだが──スタジアムはデュエルを前にした熱狂を除けば落ち着いていた。

 

 

『それじゃあ、アクションフィールドON!フィールド魔法「クロスオーバー・アクセル」!』

 

【【デュエルモード、オン!オートパイロットスタンバイ!】】

メリッサの宣言と共にデュエルモードが開放される!

 

 

 

 

「クロウ兄ちゃーん!!」

 

「頑張って─!!」

 

「あっ…お前ら…!」

その時、クロウは観客席から声援を送る子供達…アマンダ・フランク・タナーの姿を見つける──本来なら、無理矢理にクロウの応援に行こうとして係員に追われる羽目になるのだが……宿舎に入る前の遊星が気を利かせてチケットを渡していたのだ。

 

 

「(ああ、そうだ…オレにとっての原点──それはあいつらだ、あいつらの為に…オレは勝つ!)」

それはシンクロ次元におけるクロウの原点…それは子供達の笑顔、シティの未来を担う彼らに希望を示す為─クロウはハンドルを握り締める!

 

 

 

「「ライディングデュエル!アクセラレーション!!」」

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 権現坂対クロウ

 

 

 

 

 

それは大会の開幕戦に相応しい激戦となった、先攻を取ったクロウは黒き翼を持つ鳥人『BF』(ブラック・フェザー)さらにシンクロモンスター『A BF』(アサルト・ブラック・フェザー)によって万全の態勢を整える。

 

対する権現坂は慣れないDホイールを操りながらも攻撃誘導効果を持つ『超重武者ジシャ-Q』2体を展開する事によるロックで迎え撃つが…クロウはそれを上回る。

エースモンスターである『ABF-驟雨のライキリ』による破壊効果を駆使してロックを突破、権現坂へと大ダメージを与える…だが、不動のデュエルを信条とする権現坂は揺らがない。

 

レオ・コーポレーション製のペンデュラムカード『超重武者ヒス-E』『超重武者サン-5』によってペンデュラム召喚を介し─権現坂は新たな切り札を呼び覚ます!

 

 

「動かざる事連山の如し、大岩に宿りし魂よ…いま!聳え立つ砦となれ!シンクロ召喚!!いでよ!レベル9!『超重魔獣キュウ-B』!!」

それは権現坂のペンデュラムシンクロ…妖狐の力を宿すモンスターが現れ、スタジアムは熱狂に包まれる。

 

 

クロウが多用する特殊召喚を利用して守備力を上げる効果を持つ『キュウ-B』は『ライキリ』を一蹴、さらに『超重武者』に連続攻撃を与える『ヒス-E』によってクロウは追い詰められるが…アクションカード『回避』によって窮地を脱する!

 

 

「やるじゃねぇか!それがスタンダードの力か!アクションカードってのも面白え…!まるでコストなしの『Sp-』みてぇだ!」

 

「そうだ!アクションカードの応酬とタクティクスによるデュエルの盛り上がり…それがアクションデュエル!さぁ、お前の本当の力を見せてみろ!」

 

「おう!鉄砲玉のクロウ…シンクロ次元のオレの力を見せてやる!」

子供達の騒動がなかった事でプレイミスをしなかったクロウはその力を開放する!

 

 

 

「漆黒の翼、叢雲に翻し…天空を分かつ剣となれ!シンクロ召喚!降臨せよ!レベル9!『ABF-叢雲のクサナギ』!!」

クロウは新たなシンクロモンスター…日本神話の伝説の剣の名を持つ鳥人を呼び出す!

 

「いくぜ…権現坂!『クサナギ』の攻撃力はシンクロ素材とした『BF』モンスターの攻撃力の合計分アップする!!」

 

「なんだと!?」

それは仲間との連携を重視する「BF」の真骨頂…その攻撃力は6000となる!! 

 

 

「だが、守備表示の『キュウ-B』を破壊されたとてダメージは受けん!」

 

「いいや…『クサナギ』は貫通効果持ちだ─!」

 

「しまった─!?」

それはまさに神話の再現──不動の妖狐は神の力を宿す七支刀によって砕かれた…!

 

 

 

権現坂LP0

 

クロウWIN!

 

 

 

 

『決まった〜!開幕戦、劇的な勝利を飾ったのは…クロウ・ホーガン選手だ〜!!』

 

「ふぃ〜…守備表示で攻撃するなんて、とんだインチキ効果モンスターだったぜ…」

スタジアムにメリッサの勝利宣言が木霊する…その中でクロウは観客席で喜ぶ子供達に手を振り返した。

 

 

「クロウ!見せてもらったぞ、お前の本気のデュエル!俺もまだ精進が足りんな」

 

「いーや、まだ14歳なんだろ?なら充分さ、いつでもリベンジ受けてやるぜ?」

 

「うむ!次こそは乗り越えてみせよう!」

そしてクロウは権現坂とお互いの健闘を讃え合う…がっちりと握手を交わしながら…

 

 

「クロウ!いいデュエルだったぞ!」

 

「ブラボー!」

そんな二人を観客達は拍手で讃えたのだった…。

 

 

 

 

…………

 

 

 

『熱狂冷めやらぬデュエルパレス…うーん!いい感じね!さぁ、この調子で第二試合の組み合わせ発表よ!』

クロウと権現坂が退場し、再びスタジアムにメリッサの実況が響く!

 

『続いての組み合わせは〜…まずは1人目!コモンズ出身!シンジ・ウェーバー選手!二人目は……今大会最年少!赤馬零羅選手!!って……この子、Dホイールに乗れるのかしら??』

組み合わせを発表したメリッサだったが…あまりに幼い零羅の姿を見て思わず首を傾げた…。

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「権現坂、クロウ…すごいデュエルだったな…それに、観客達も…」

少しだけ時間が巻き戻る、遊矢はゲストハウスの部屋から権現坂とクロウのデュエルを観戦していたのだが…権現坂達のデュエル、そして観客達の変わり様に驚いていた。

 

「昨日はトップスとコモンズがいがみ合ってて、雰囲気が悪かったけど…今日は本当にデュエルを楽しんでた……この感じなら、オレのエンタメデュエルでも………だけど……」

ジャックに「独り善がり」と否定されてしまった遊矢のデュエル…遊矢はそれに対する「答え」を見つけられず、ため息を吐いた…。

 

 

コンコンコン

 

 

「あ…はーい…?」

 

「おーう!元気そうで何よりだな!遊矢」

 

「あ…徳松さん!」

そんな時、遊矢の部屋を訪れる者がいた…それはシンクロ次元におけるエンタメ──エンジョイデュエルの先駆者、徳松だった。

 

 

「今の権現坂達のデュエルは良いデュエルだったなぁ!俺が腐ってた10年でデュエルも進歩したもんだぜ」

 

「ああ!お客さん達も盛り上がってたね!オレの時よりも…」

 

「うん…?おいおい、そんなに悔しそうな顔すんなって…お前さんの戦いはこれからだろうが…」

権現坂とクロウのデュエルの熱さに盛り上がる徳松…そんな彼を前に遊矢は少し暗い表情をしていたが、徳松はそんな遊矢を元気づける。

 

 

「ありがとう、徳松さん…そういえば、なんでオレの部屋に…?」

 

「おおっ、そうだった…ほら、昨日の前夜祭の時に鋼の兄ちゃんが言ってただろ?ゴミ処理場がどうとか…お前さんも気になってると思って情報を仕入れてきたのさ」

 

「あっ…!そういえば…!?」

徳松の言葉に遊矢は遊海の演説の言葉を思い出す…それはフレンドシップカップの敗者に関する思わぬ末路だった。

 

「俺の部屋の前にいたボーイに聞いたんだが──」

徳松曰く、シティの地下にはトップスの捨てたゴミを処分する為の「ゴミ処理場」があり、フレンドシップカップの敗者や収容所や刑務所で問題を起こした者はそこに送り込まれ…奴隷同然に働かされていた…という話だった…。

 

「……待ってよ、それじゃあ権現坂は…!?」

 

「おおっと!心配すんな、それはもう無くなったらしい!」

 

「えっ…?」

徳松の話を聞いた遊矢はたったいま負けてしまった権現坂の事を案じるが…徳松は慌てた様子で腕を振る。

 

 

「ボーイ共の話によると評議会の奴らが心変わりしたみたいでな、犯罪者や負けた奴を送り込むのを止めて、コモンズから作業員を正当に()()って話になるそうだ……コモンズにやらせるってのは気に入らねぇけどな……しかし、本当にすげえ奴だな!鋼の兄ちゃん、白波遊海って奴は!1人で本当にシティの慣習を変えちまいやがった!」

 

「遊海…」

遊矢が思い出したのはシティを覆った闇を吹き飛ばした、奇跡の『光』……それは本当に人々を変える、希望となったのだと…。

 

 

 

 

 

『それでは!続いての組み合わせは〜…まずは1人目!コモンズ出身!シンジ・ウェーバー選手!二人目は……今大会最年少!赤馬零羅選手!』

 

 

 

「えっ…零羅!?」

 

「……おいおい、あんなちびっ子に戦わせるのか…?」

そんな時、モニターから第二試合の組み合わせが発表される…そこにあったのは幼い零羅の名前、それを見た徳松と遊矢は思わず顔を見合わせる…。

 

 

「俺はスタンダード次元って場所の事はわからねぇが…あんなちびっ子がライディングデュエルって…大丈夫なのか?」

 

「いや、大丈夫じゃないって!!零羅はまだ子供で、ジュニアクラスなんだ!本当ならリアルソリッドビジョンのデュエルも危ないのに!!」

徳松の疑問に遊矢は慌てて答える、零羅は小学校低学年レベル…ジュニアクラスのデュエリスト、本来ならば柔らかなソリッドビジョンで戦うはずの子供なのだ…。

 

 

「っ…零児もこの建物の何処かにいる…!止めないと────」

危険なライディングデュエルに零羅を出場させない為に兄である赤馬零児を探しに行こうとする遊矢…その時だった。

 

 

ガタン!!

 

 

「うわっ!?」

 

『っ───!!』

 

「れ、零羅─!?」

遊矢の部屋の前で待っていたボーイを押し退け、小さな影が部屋へと飛び込み、遊矢へと抱きつく…その影の正体は──零羅だった。

零羅は小さな手にぬいぐるみを握り締め…ひどく怯えていた…。

 

 

 

「零羅…!どうしたんだ…!?」

尋常ではない様子で震え、怯えた零羅を抱きしめる遊矢…そこへ…。

 

 

『失礼する』

 

「赤馬零児…!」

静かにやってきたのは零羅…兄、零児だった…そして遊矢は()()()()()()()を察した…。

 

 

『なに、考えてんだよ…!!どうして零羅を戦わせる!?まだ子供で、LDSでもジュニアクラスなのに!なんでデュエルキングのジャックがいるような大会に無理矢理引っ張り出そうとするんだ!!』

シンクロ次元に来て数日、遊矢は零羅の事を少しだけ知る事ができた…同じ世代である遊勝塾の子供達よりも控えめで引っ込み思案…自分の意見を言葉にしにくい──優しい子なのだと、そんな零羅を()()()()()とする零児に対し、遊矢は静かに怒りを露わにする。

 

 

「そもそも、どうして零羅をランサーズに入れたんだ…!オレは柚子を助ける為に自分の()()で次元を越えてきた…権現坂や沢渡、黒咲やセレナも遊海も…自分の目的があって次元を越えてきたはずだ……アカデミアと戦う危険性も分かってる……でも、零羅が…自分の意思で来たとは思えない!お前が無理矢理()()()()()んだろ…?どうして、こんなに幼い子を連れてきたんだ!答えろ、赤馬零児!!」

零羅を怖がらせないように静かに…しかし強い怒りを露わにした遊矢は零児を睨みつける…!

 

 

 

『………その質問に答えよう、まずは何故、零羅をフレンドシップカップに出場させるのか──それは零羅に実戦経験を積ませるためだ、零羅の実力は君たちにも匹敵する』

 

「実戦っ…!?力があっても零羅はまだジュニアクラス…!」

 

『次に何故、ランサーズに入れたか…確かに、それは零羅の意志ではない…私の()()に従ったからだ』

 

「命令…!?」

淡々と遊矢の疑問に答える零児…その言葉に感情は感じられなかった…。

 

 

『そして…何故、私が零羅の参加に固執するのか…それは、零羅がアカデミアとの戦いにおいて…零羅が必要な存在になり得るからだ』

 

「必要…!?零羅の力が…!?こんな子供が、戦いに必要だって言うのか!!その考えは…間違ってる!!」

戦いの中で零羅の力が必要になると言う零児…その言葉を遊矢は否定する…!

 

 

 

「バトルロイヤルの後に海馬社長が言ってたよな…!『戦う意思のない、覚悟の無い者ほど弱いモノはない』って…!シンクロ次元に来てから!零羅は怯えながら、ずっとお前の事を探して、心配してたんだぞ!?こんなにお前を求めて!慕ってるのに!お前は零羅の事を戦う為に必要だって言うのか!?こんなに怯えてる零羅が…戦えるわけないだろう!!本当の()()のお前が、()を守らないでどうするんだよ!!」

 

『……』

それは遊矢の精一杯の叫び…幾度となく『(遊希)』に守られてきた遊矢だからこそ分かる、零羅を守る為の言葉だった…。

 

 

『白波遊海にも釘を刺されたな…「覚悟のない者をデュエル戦士にするな」と、だが……零羅、答えろ……お前が出場を()()理由はなんだ?』

 

「っ…そんなの、戦いが怖いからに決まって──!」

 

『く、クロウの…ともだち、だから…………お菓子も、くれた…から……』

 

「零羅…?あの時……」

それは零羅の小さな答え…クロウの家に世話になっていた時、シンジは零羅にもお菓子を分け与えていた…優しくしてくれたシンジとは戦いたくなかったのだ…。

 

 

『なるほど、施しを受けた相手とは戦えない…という事か………月影、零羅の()()()に出場してもらう』

 

「──承知」

零羅から理由を聞いた零児は控えていた月影に指示を出す…そして、静かに零羅へと歩み寄る。

 

 

『───部屋に戻るぞ、零羅……今回は()()()()()()()

 

「『えっ…?』」

あっさりと、零児は零羅と月影の交代を認めた…思わぬ程早い決定に遊矢と零羅の声が重なる。

 

 

「意外…だな、お前なら無理矢理にでも…」

 

『………私も()()だ、血も涙もある…それにあんなモノを見せられてはな……』

動揺する遊矢に対して零児は昨夜の出来事を思い出した…。

 

 

 

 

Side零児

 

 

『これは…!デュエルパレスで何が起きている!?』

 

『セルゲイ・ヴォルコフ…ロジェの支配下にあるはずの奴が…!』

 

『…………』

 

『(あの白波遊海が動揺している…それほどの事態、という事か…!)』

 

『兄さま…』

前夜祭最中の行政評議会は動揺に包まれていた、遊海によって野望を暴かれたロジェとコモンズの遊星、そしてトップスのアキによるタッグデュエル…それによってスタジアムの空気が変わった矢先、沈黙していたセルゲイが暴走し始めた……そして零児は映像越しながらも遊海の動揺を見抜き、事態の重大さを悟っていた…。

 

 

………

 

 

『っ…白波遊海が、落ちていく…』

 

『捕縛隊を一蹴し、ジャック・アトラスを正面から打ち負かした彼が…!?あの巨大な影はなんなのだ!?』

 

『これは…少々、不味い事態のようですね』

 

『(少々どころではない…!あのコンドルのようなモンスター、そして『闇の巨人』…あれはリアルソリッドビジョンのレベルを超えている…!人を殺すほどのソリッドビジョンなど、アカデミア以上の…!!)』

そして行政評議会は絶望した、空中に現れた『炎の地上絵』の中で始まった遊海とセルゲイのライディングデュエル…だが、万全の態勢を整えたように見えた遊海は──炎に飲まれ、海へと沈んでしまった。

表面上はポーカーフェイスを保っていた零児も思わず冷や汗を流す状況…だが、希望は消えていなかった…!

 

 

 

──闇を祓う、絆の輝き!!NEXUS!!──

 

 

 

『白波遊海が、飛んでいる…!?』

 

『あの光は…まるで、太陽のような……』

 

『人々を照らす、暖かな光……』

 

『なるほど、あれが彼の──全力、という事ですね』

 

『(あの姿は榊遊希が見せた姿に似ている…いや、こちらが()()()姿()という事……人々に安心感を与える、この光は……)』

 

『きれい……』

海から光の柱が立ち昇る…その中から光の爆発と共に、金色の粒子を纏い、鎧に身を包んだ遊海が現れる…その光景に行政評議会は目を奪われ──零児は本当の意味で遊海が『人外』の存在である事を確信した。

 

 

 

…………

 

 

『一先ず、シティに迫った危機は去った……おや、これは…?』

 

『穏やかな、光…』

 

『まるで…シティの人々を祝福しているかのようですねぇ』

 

『………(評議員達から感じていた()()が抜けていく、白波遊海…お前は、本当にシティ…シンクロ次元の在り方を変えてしまったというのか…?まるで…空想のヒーローのように…)』

シティに迫った冥界の王の脅威は遊海の呼び出した『絆の奇跡』によって倒された、そしてシティには穏やかな光が舞い落ちる……零児はその光が起こした変化にいち早く気付いていた。

 

 

『覚悟のない者が戦う必要はない…覚悟のある者が、全身全霊で戦えばいい…これが、お前の在り方か…白波遊海』

それは舞網を離れる前に遊海が口にした言葉…覚悟を決めた『決闘者』である遊海の力を零児は実感した……映像の中で力を使い果たし、倒れ込む遊海の姿を見ながら…。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

『零羅、今回はお前の中に「自分」というモノが芽生え始めている事を確認できて良かった、お前の力はまた別の機会に発揮してもらう……いいな?』

 

『……はい、兄さま…』

 

「零羅……自分…?」

ほんの僅かに態度を緩めた零児の言葉を聞いた零羅は立ち上がる…その様子を見た遊矢は零羅の動揺が収まったのを感じ取る、そして小さな疑問も…。

 

『自我の発達…強さはデュエリストの成長に大きく寄与する、自ら戦略を考え…戦術を駆使する基礎となるからだ……零羅にはまだ伸びしろがある』

 

「零児…お前…」

 

『機会がくれば…君にも全てを話すとしよう、行くぞ零羅』

 

『はい…』

意味深な言葉を残して零児は零羅と手を繋いで去って行った…。

 

 

 

「零羅…」

 

「どうやら、零羅って子はオメェよりもあのメガネの兄貴の方が好きらしいな……少し歪んでるが、あれも兄弟のカタチなのかもしれねぇなぁ…」

 

「徳松さん…」

去っていく零児の背中を見送る遊矢…事態を静観していた徳松は遊矢を労るようにそう声をかけた…。

 

 

 

 

『(母様が今の零羅の事を知れば舌打ちするかもしれない…『人形が心を持ってはならない』と……それでも、私は…)』

零羅の小さな手を繋ぎながら、零児は柔らかな瞳で零羅を見る…遊海の『絆の光』は……確かに、彼の心にも届いていた…。

 

 

 

 

SideOUT

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト シンジ対月影

 

 

 

トラブルによって時間から少し遅れて始まったシンジ対零羅…もとい、代理の風魔月影のライディングデュエル…だが、状況は本来より少し変わっていた…。

 

 

 

 

「どうした?デュエルに身が入っておらぬようだが…?」

 

「くっ…」

デュエル中盤、月影がシンジへと声をかける…デュエルは月影が優勢、ヒットアンドアウェイに「忍者」による忍術を使った搦手を得意とする月影がシンジの蜂の軍隊「B・F(ビー・フォース)」を追い詰めていた。

だが…シンジには何処となく覇気がなく、デュエルに集中できていない様子だったのだ。

 

 

「戦う意味が分からなくなっちまった…オレのやろうとしてた革命なんて、意味があったのかよ…」

 

「むっ…?」

 

この時点でシンジの闘争心は折れていた、全ては遊海の介入による影響が大きい。

シンジは抑圧されてきたコモンズをトップスから開放する為の『革命』を計画していた…自分達を見下すトップスを引きずり降ろそうとしていた……のだが、計算外の事が起きる…遊海による介入である。

 

目の前で見せつけられた圧倒的な力、そして(シンジは知る由もないが)長きに渡って世界を守ってきた遊海の圧倒的な覇気を見せつけられた事で反骨心を砕かれ……さらに、前夜祭のデュエルによってトップスとコモンズに和解の兆しが見えた事で今のシンジは戦う意義を見失ってしまっていたのだ…。

 

 

 

 

「なんだよ…昨日までトップスもコモンズもいがみ合ってたじゃねぇか……なのに、なんでみんな楽しそうにデュエルを見てやがんだよ…なんで、そんなに楽しそうなんだよ…!」

本当なら、シンジはこのデュエルでコモンズの人々の反抗心を煽り、「革命」への火種にしようと考えていた…しかし、今のデュエルパレスにそんな雰囲気はない…そこに広がっていたのはトップスもコモンズもなく、純粋にデュエルを楽しむ人々の笑顔だったからだ…。

 

 

「これじゃ…オレだけが空回りしてるみてぇじゃねぇかよ……」

 

「シンジ殿…」

…本来の「物語」なら、シンジはデュエルの度にコモンズの人々の反抗心を煽り、ついには「コモンズ革命」を引き起こす…だが、彼の目指した理想は歪み暴走──暴徒としてシティに混乱を齎す事になるはずだった、しかし…今のシンジにはそれほどの力はないだろう…。

 

 

「……シンジ殿、()()()()()

 

「なんだよ…」

そんなシンジに声を掛けたのは月影だった、本来ならば口数は少ない彼なのだが…シンジの姿をただ見ている事ができなかったのだ。

 

 

「お主はなんの為にデュエルをしている?お主は…コモンズの子供達を守る為にデュエルをしていたのではなかったのか?拙者は見ていたぞ、子供達に優しい思いを向けるお前の姿を…!」

 

「お前…」

月影は静かに語りかける…月影は物陰から零羅を護衛しながら見ていたのだ、コモンズの子供達の為に働き…彼らを守ろうとしたシンジの姿を…。

 

「拙者はこの次元に来て日が浅い故、お主の境遇などは分からぬ…だが、お主がデュエリストであるのなら……デュエルの時に向き合うべき事は分かっているはずだ!!」

 

「っ──」

それは月影による一喝、それは周りが見えなくなっていたシンジの目を覚まさせる…!

 

 

「シンジ!頑張れよー!!」

 

「お前とクロウが俺達の代表なんだぞー!!」

 

「頑張れ〜!」

 

「みんな…!」

スタジアムに響くコモンズ達の声援…それは消えかけていたシンジの闘志に炎を灯す…!

 

 

「お前…後悔するなよ…!眠ってた蜂の巣を突いた事を─!」

 

「望むところ─!」

コモンズの声援を聞いたシンジは闘志を取り戻す………余談だが、忍者の技能には『人心掌握術』などのコミュニケーション能力も必要とされる、彼の任務にはそれが必要だったのだ。

 

 

………

 

 

「結集した絆の力にて傲岸たる壁を射抜け!シンクロ召喚!!現れろ!レベル12!『B・F─決戦のビッグ・バリスタ』!!」

 

「レベル12のシンクロモンスター…!」

月影によって追い詰められたシンジ…だが、彼は逆境から切り札を呼び出した…!

 

 

「『ビッグ・バリスタ』は墓地の『B・F』モンスターを除外し、1体につき相手モンスターの攻撃力・守備力を500ダウンさせる!これで『黄昏の忍者将軍─ゲツガ』の守備力は2500ダウンする!」

 

「だが、破壊されたところでダメージは…!」

 

「いいや、『ビッグバリスタ』は貫通効果を持っている!受けてみやがれ…蜂の一刺しを!」

 

「……見事…!」

蜂の決戦兵器が頑強なる将軍を貫く…月影はシンジの健闘を讃えながらDホイールから投げ出されたが……何事もなく着地する。

 

あえて、発動しなかったアクションマジック『回避』を手にしながら…。

 

 

月影LP0

 

シンジWIN!

 

 

 

「見事なデュエルだ、シンジ殿…次の試合でも健闘を祈る」

 

「ありがとよ、忍者…このままキングまで登り詰めてやるぜ!」

デュエルが終わり、二人は短く挨拶を交わす…その結末にデュエルパレスはお互いを讃える拍手に包まれた…。

 

 

 

「(シンジ殿は逆境に強く、カードの連携も見事…ランサーズに相応しい強さを持っているな…この先の戦いでどう転がるかが心配だが…)」

今回の月影の任務は「シンクロ次元のデュエリストの強さを見極める」事…その任務は無事に果たしたのだった。

 

 

 

………

 

 

 

『さぁ、どんどんいくわよ〜!続いては第三試合!まず登場するのはこの男!十年の沈黙を破り、あの男が帰ってきた!エンジョイ長次郎こと徳松長次郎選手──!!』

 

「待たせたなぁ諸君!エンジョイ長次郎…今戻って来たぜぇ!!」

 

「「「うおおっ!!」」」

メリッサの紹介と共にデュエルパレスが歓声に包まれる、10年の時を経ても…エンジョイ長次郎の記憶は人々の中に残っていた…!

 

「(ああ、やっぱりいいなぁ歓声は……これもデュエルをエンジョイする事を思い出させてくれた遊矢や、子分達のおかげだ…あいつらに恥じないデュエルで、勝ち抜いてやるぜ!)」

人々の歓声を聞いて昔を思い出す徳松…負けを恥じず、勝って驕らず…その精神でデュエルに挑もうとしていた。

 

 

『続いてはフレンドシップカップ初の女性参加者!昨日の抱擁はアツアツだったわね?柊柚子選手!!』

 

「ちょっ……そんな大きな声で言わないでよ──!!」

メリッサの冷やかしに頬を染めながら…桃色のライディングスーツを着た柚子が徳松の隣に並ぶ!

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

「ちょっ…柚子と、徳松さんのデュエル!?柚子、大丈夫かなぁ…」

同じ頃、ゲストハウスで遊矢は驚きの声を上げていた…この世界における元トップデュエリストである徳松、その強さは遊矢が身を以て知っている…アクションデュエルによる地の利があるとはいえ、柚子が敵うかどうか分からなかったからだ…。

 

「柚子…徳松さん…ああ、もう!なんでこんな組み合わせなんだよ──!?」

お互いの事を知っている遊矢は頭を抱えるしかなかった…。

 

 

SideOUT

 

 

 

「ユズ…って事は、お前さんが遊矢が探してた嬢ちゃんか?遊矢には世話になったんだが…悪いが手は抜けねぇぜ?」

 

「貴方が遊矢の言ってた徳松さん…手加減なんていりません!私も全力のエンタメデュエルで戦います!」

 

「おぉっ?威勢がいい嬢ちゃんだ!」

間接的にお互いの事を知る二人が挨拶を交わす…お互いにエンタメを知る者である二人のデュエルは──

 

 

『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』

 

 

「「きゃあああ!?/おわあああっ!?」」

 

 

……Dホイールに乗り慣れない、なさけない悲鳴と共に始まった(汗)

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 柚子対徳松

 

 

エンジョイデュエル対エンタメデュエルの激突、それは予想通りの盛り上がりを見せていく事となった。

最初こそ乗り慣れないDホイールに振り回された二人だったが、徐々に実力を発揮…徳松はエースモンスターである『花札衛(カーディアン)─雨四光』で柚子を攻め、柚子は『幻奏』の連携で立ち向かう…そしてお互いのエンタメとエンジョイの応酬の末、徳松は切り札を呼び出す!

 

 

 

「その神々しきは聖なる光!今、天と地と水と土と金となりて世界を照らせ!シンクロ召喚!!レベル10!『花札衛─五光』!!」

 

「攻撃力、5000…!」

それは花札における最高位の『大役』、雄々しき武人が降臨する!

 

 

 

「すまねぇな嬢ちゃん!『五光』で『幻奏の音女アリア』を攻撃すれば決着だ!」

 

「いいえ、まだよ!装備魔法『聖楽器(セイント・インスツルメント)』の効果で貴方は装備モンスターの『幻奏の音姫─プロディジー・モーツァルト』しか攻撃できない!」

 

「だが大ダメージは避けられねぇ!『五光』で『モーツァルト』を攻撃!」

 

「まだ…!アクションカード──!!」

柚子は攻撃力5000を誇る五光に臆せず立ち向かう!

 

 

「アクションマジック『立体交差』!バトルするお互いのモンスターの攻撃力を入れ替えるわ!」

 

「『五光』の効果発動!相手の発動した魔法カードの効果を無効にし、破壊する!」

 

「そんなっ!きゃあ!?」

五光の一太刀がアクションカードを両断…さらに背中の光輪から放たれた光が大ダメージを与える!

 

 

「既に発動している永続魔法『フォルテッシモ』の効果は無効にできないが…嬢ちゃんの魔法カードの発動は封じさせて貰った!」

 

「(これじゃ、『融合』も発動できない……でも、私は諦めない!!)」

実質的に切り札である融合召喚を封じられてしまった柚子…それでも柚子は諦めない、不安を抱える遊矢の自信を取り戻させる為に!

 

 

 

「このドローに、想いを乗せて───ドロー!……きた!!」

想いを乗せて柚子はカードを引く…それは起死回生の1枚!

 

「『幻奏の歌姫─ソプラノ』を召喚!このカードを融合素材にする時、『融合』なしで融合召喚できる!!」

 

「そうかい…!運命の1枚、見事に引き当てたみてぇだな…!魅せてみな!嬢ちゃん!」

 

 

「響き渡る歌声よ!天使のさえずりよ!タクトの導きにより、力重ねよ!融合召喚!!今こそ舞台に勝利の歌を!『幻奏の華歌聖─プルーム・ディーヴァ』!!」

それは柚子の切り札…咲き誇る歌聖がスピードの世界に舞い踊る!

 

 

「バトルよ!『プルームディーヴァ』で『五光』を攻撃!」

 

「んなっ…そんな事したら…!」

 

「『プルームディーヴァ』は戦闘では破壊されず、バトルしたモンスターを破壊!そして、私が受けるダメージは相手が受ける!」

 

「やるなぁ…!だが、『五光』はバトルする相手モンスターの効果をも無効にできる!」

 

「っ…!まだ!!」

柚子の渾身の一撃を上回る徳松…だが、柚子は諦めず…アクションカードに手を伸ばす!!

 

 

「アクションマジック『立体交差』!!」

 

「無駄だぜ、嬢ちゃん!『五光』でアクションマジックは無効だ!!」

 

「いいえ…ここからが本番よ!!手札の『幻奏の音女スコア』の効果発動!このカードを墓地に送り、墓地に存在する同名の魔法カード2枚を除外して、その効果を発動できる!『五光』は魔法カードとバトルするモンスターの効果を無効にできても──手札のモンスター効果は無効にできない!!」

 

「なんだと!?」

それは逆転の一手…歌姫と武人の攻撃力が入れ替わる!

 

 

「『プルームディーヴァ』!リフレクト・シャウト─!!」

 

「う、うおおっっ!?」

歌聖の絶唱がエンジョイデュエルの幕を降ろした。

 

 

 

徳松LP0

 

柚子WIN!

 

 

 

『決まった〜!手に汗握る激戦を制したのは、柊柚子ちゃん─!よくやったわ〜!』

 

「か、勝てた…!」

メリッサの実況がデュエルパレスに響く…その中で柚子は胸を撫で下ろした。

 

「ふぃ〜…楽しかったぜ嬢ちゃん!流石は遊矢のオンナだな!」

 

「ふぇ…!?ち、違いますって〜!?!?」

 

「ありゃ、違うのかい?そりゃ悪かった!」

 

「悪いじゃすみません─!!」

 

「あっだぁ!?ハリセンは勘弁してくれぃ!?」

デリカシーのない発言に徳松は柚子の大ハリセンの餌食になるのであった。

 

 

「さぁて…オチがついたところで…!デュエルとはすなわち人生なり!人生は1度っきり!勝つ日もあれば負ける日もある…負けを恥じず、勝っても驕らず!すなわち…レッツ、エンジョイ!!ってな!」

 

「「「うおおおっ!!」」」

徳松は自身の十八番の口上で場を締める…往年の名口上に観客達は惜しみない拍手を贈ったのだった。

 

 

 

…………

 

 

 

『さぁて!ついに第四試合!本日最後の対戦は〜!二人目の女性出場者!セレナ対コモンズ出身!トニー・シモンズ!』

第四試合はランサーズのセレナとクロウ達の仲間、トニーのデュエル…それは予想通り──

 

 

デュエルダイジェスト セレナ対トニー

 

 

…………

 

 

「『月光舞豹姫(ムーンライト・パンサー・ダンサー)』で2体目の『アンデット・スカル・デーモン』を攻撃!これで終わりだ!」

 

「うわああっ!?」

アカデミアでもエリートクラスの実力を誇るセレナが負けるはずもなく、華麗に勝利を掴んだのだった。

 

 

トニーLP0

 

セレナWIN!

 

 

 

 

 

『以上を持ちましてフレンドシップカップの一日目は全て終了!みんなは楽しんでくれたかな?最後はこの合言葉で締めましょう!シティは1つ!

 

『『「「みんな友達──!!」」』』

 

 

デュエルパレスに歓声が木霊する…本来の物語よりも平和的に、フレンドシップカップ1日目は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《……イレギュラーが無いようで良かった、これならばオベリスクフォース襲来までは大きなトラブルはなさそうです》

 

《そのようだ…それまでに主殿が目覚めてくれれば良いが…》

 

夕暮れのデュエルパレス上空で言葉を交わすコアモードのアヤカとトフェニ…念の為にスタジアムの様子を見に来ていたのだ。

 

 

《おや…?》

その時、アヤカは少し気になる光景を見つける…緑髪の兄妹が金髪の男──ジャックと話し込んでいたのだ。

 

 

 

 

《……なるほど、()()()()()()()…さて、どうなる事やら…》



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デュエリスト達の休息〜語らい〜

こんにちは!S,Kです!

久しぶりに執筆エンジンがかかりました!…どこまで続くか分からないけど、やれるだけやってみます!

それでは、最新話をどうぞ!


「お疲れ!権現坂!柚子!二人ともいいデュエルだった!」

 

「うむ…負けてしまったのは悔しいが……少しはランサーズとしての強さは見せられただろうか…?」

 

「大丈夫よ!権現坂と…クロウが一番にお客さん達を盛り上げてくれたから、私と徳松さんも気持ちのいいデュエルができたのよ?」

 

「……そう言ってくれるなら、俺も頑張った甲斐があるというものだ!」

 

フレンドシップカップ1日目の夜、部屋でそれぞれに夕食を終えた権現坂と柚子は遊矢の部屋に集まっていた…一応、評議会からは夜10時までに部屋に戻るようにと言い渡されている。

 

 

 

「ああ、みんなからのメッセージ…しっかりと伝わってきた…!これなら、明日の試合でオレもエンタメできそうだよ!」

 

「うむ!それでこそ遊矢だ…だが、気をつけるのだ…シティの人々は勝者には寛容だが、敗者には厳しい面がある…それを乗り越え、遊矢らしいエンタメを見せてくれ!」

 

「うん!」

 

「(遊矢が元気になって良かった…これなら安心ね)」

権現坂達からのエールを受け取った遊矢のやる気は充分…敗者の強制労働という「枷」もなく、力出し切る事が出来そうだった。

 

 

 

「そういえば…遊矢、柚子、前夜祭のデュエルパレスでは何が起きていたのだ…?俺達は映像や窓越しだった故、状況が分かっておらんのだ…特にセルゲイ某と遊海のデュエルは…」

 

「……オレも、よくわからないんだ…まるでジェットコースターみたいな勢いで物事が動いたから…」

 

「私も…遊希……遊海さんがすごい人だっていうのは分かったんだけど……」

 

「一度、状況を整理しなければならんな…それがシンクロ次元、そして遊海の事を知る手掛かりになるかもしれん」

権現坂の言葉で遊矢達は前夜祭で起きた出来事を振り返る事になった…。

 

 

 

………

 

 

 

「まずは…ジャックとの戦いだな、まさかDホイールから投げ出されたオレを空中で助けてくれるなんて…」

 

「そうなの!遊矢が投げ出された瞬間、隣にいた遊海さんが消えちゃって…一瞬で遊矢の所にいたのよ!私もユーゴも驚いたわ…」

 

「数百メートルを瞬間的に移動した…なんという身体能力なのだ…!?いくら鍛えていても限度があるぞ…」

ジャックとの戦いに敗れ、Dホイールから投げ出されてしまった遊矢…そして、それを救った遊海…そこから彼の舞台の幕が上がった。

 

 

「オレと柚子を再会させてくれて…そして遊海はジャックに宣戦布告を叩きつけた……」

 

「うん…ジャックを前にしても、すごい堂々としてたわ…」

 

「思い返せば…遊海が別行動をしていたのも、この為だったのだろうな…ジャックと本当に戦いたいのならばフレンドシップカップを勝ち抜かねばならん…だが、それでは時間が掛かると考えたのだろう…力があるが故の()()()()を選んだ、という訳か…」

 

「それで、遊海が呼び出したのは…」

 

「『レッド・デーモンズ・ドラゴン』…ジャックの『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』に瓜二つのモンスター…お客さん達もびっくりしてたわ」

 

「そして…その進化した姿、『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』に『スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン』…あの凄まじい熱気は窓越しでも伝わってきた……遊海はいったい、何処であのドラゴンを手にしたのだ…?」

 

「……わからない、母さんと話を聞いた時も『別次元』から来た…としか言ってなかったし……」

遊矢達が思い返したのはジャックとの紅蓮のライディングデュエル…息をつかせぬ、パワーの応酬の決闘だった…。

 

 

 

「それも気になるけど…あの赤いドラゴン…遊海さんは『赤き竜』って言ってたけど…あのドラゴンはなんだったのかしら…?」

 

「あっ…評議会の人達が言ってた、『赤き竜』は善い神様らしくて…遊海やジャック達が『シグナー』っていう使者の素質があったらしいんだって」

 

「そういえば…クロウの右腕に収容所の時には無かった痣があったな……しかし、おかしくはないか?百歩譲ってシンクロ次元の人間であるクロウやジャックにその適性があるのは分かるが……なぜ、別次元出身の遊海にその適性がある…?」

 

「あっ…それ、()なんじゃないかな…?遊海さんが闘志(?)みたいなのを開放して…それでドラゴンが現れたから……」

 

「遊海に宿ってたドラゴンが…ジャック達を見つけて、力を与えた…のかな…?」

 

「つくづく…遊海はスケールのデカい男だな…」

ジャックとのデュエル中に現れた『赤き竜』…そこから事態は加速していく…。

 

 

「そういえば…遊海がデュエルの決着をつけた後、二人とも少しの間、固まってた…よな…?」

 

「うん…ほんの僅かな時間だけど……その後からジャックの態度が少し変わったような…?」

 

「『赤き竜』とやらが『神様』だと言うなら──選ばれた者達に啓示のようなモノを与えたのかもしれんな…現に、評議会の会場ではジャックを憎んでいたクロウが…あの場に現れた時にはジャックと冗談を言い合っていたしな」

 

「いったい、何を言われたんだろう…?」

 

「それで…遊海さんが演説をし始めたのよね…」

デュエルの決着と共にスタジアムに現れたクロウ・遊星・赤髪の少女(十六夜アキ)緑髪の兄妹(龍亞 龍可)…それがキッカケとなり、遊海は一世一代の大演説を始める。

 

  

 

「まさか、いきなりランサーズや次元戦争の事を話し始めるとは思わなかったよなぁ」

 

「そして、シンクロ次元との同盟の否定……だが、シンクロ次元の事情が分かっているからこその言葉だったのだな…」

 

「…本当に一言、一言に魂が込められてるみたいだった…すごかった…」

遊海はシティの人々に次元戦争の脅威を明かし…そしてシティの闇へと切り込んだ…!

 

 

「それにしても…まさか、ロジェがアカデミアだったなんて…」

 

「うむ…遊海の言葉を借りるなら『逃亡者』…アカデミアから離反し、シンクロ次元を手中に収めんと暗躍していたのだな」

 

「それでシグナーの遊星さん?とアキさん?の二人をロジェと戦わせた……どうして、あの二人だったんだろう?」

 

「……きっと、こう思ってたんだよ…『シティの未来を切り拓くのは──シンクロ次元の人間じゃないと意味がない』って…トップスとコモンズは手を取り合えるんだって…!」

シティの闇…そして、アカデミアからの侵略者だったロジェの野望を暴いた遊海はトップスとコモンズのデュエリストにその対処を委ねた…そして激戦の末、二人は侵略者を撃ち破った…だが…!

 

 

 

「変貌したデュエリスト…セルゲイが暴れ出した、映像越しでも狂気が伝わってきたぞ…それに、海から現れた巨大な影……あれはなんだったのだ…?」

 

「あの巨人は『冥界の王』、そしてセルゲイは冥府の使徒、ダークシグナーって呼ばれてた……赤き竜と対になる悪い神様だって…遊海は本当に取り乱してたよ…」

 

「セルゲイはロジェのせいで半分ゾンビみたいな状態だったから、邪神に目をつけられたって彩華さんが言ってたわ」

ロジェによる度重なる人体改造によって「生きた死体」同然だった凶悪犯セルゲイ…その狂気はシンクロ次元を闇に染める為に牙を剥いた…。

 

 

「そして…遊海は1人でセルゲイと邪神に立ち向かった、遊星から託されたドラゴン…『スターダスト・ドラゴン』の進化体…『シューティング・スター・ドラゴン』と一緒に……だけど…」

 

「セルゲイは大きな鳥みたいなモンスター…『地縛神』を呼び出したの…」

 

「『地縛神』…それがあのモンスターの名前か…アレが現れる寸前、カメラの映像が乱れてな…いったい何が起きていたのだ?窓越しに無数の光が空に昇っていくのが見えたが…?」

 

「信じられない話、かもしれないけどさ…あのモンスター、観客達を、食べたんだ…!みんなを光に…魂に変えて…!!」

 

「たべっ…!?!?お前達は大丈夫だったのか!?いや、今大丈夫なのは分かるが!!」

 

「………大丈夫、じゃ…なかったね……」

 

「心臓を鷲掴みにされた、みたいな……急に足元に穴が開いたみたいな……すっごい嫌な感覚だった……ジャックやクロウが「シグナー」の力で守ってくれたから…」

 

「それは…想像するのも、恐ろしいな…」

夜闇の中で脈動する「地縛神」の心臓、それは数多の人々の魂を取り込み──コンドルの邪神として顕現した。

遊矢や柚子も取り込まれかけたが…シグナーの結界が彼らを守ってくれたのだ…。

 

 

「そして「地縛神」は遊海に襲いかかった…あんまり遠すぎて状況は分からなかったけど……遊海は「地縛神」と冥界の邪神の挟み撃ちを受けて…」

 

「攻撃の直後に小さな何かが海に沈むのが見えたが…遊海だったのか…待て、この評議会ビルより高い所から落ちた!?それでは…!!」

 

「…でも、遊海さんは帰って来たの…!希望の光を纏って!」

邪神の一撃によって致命傷を負い、海に沈む遊海…デュエルを見守っていたシグナーや遊矢達が絶望する中、海から光の柱が立ち昇る…その中から威風堂々たる希望の決闘者『NEXUS』が蘇ったのだ…!

 

 

 

「そして遊海は絆の力と『赤き竜』の奇跡で希望のドラゴン──『シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン』を呼び出して、セルゲイと邪神に勝ったんだ!」

 

「それがあの光り輝くドラゴンの正体か……ところで…遊海は大丈夫だったのか?」

 

「なんとか私達の所には戻ってきたんだけど……その直後に倒れて……」

 

「…彩華が連れて行っちゃったもんな…遊星は大丈夫だろうって言ったけど、それだけが心配だな…」

前夜祭の振り返りを終え、遊海の状況を心配する遊矢達…居場所がわからない以上、彼らにできる事はなかった…。

 

 

 

「とにかく、遊海のもたらした『光』がシンクロ次元を変え始めたのは事実……俺達も人々を変えるようなデュエルを目指さねばならんな」

 

「ああ…!オレの…()()()のエンタメをシンクロ次元に認めてもらおう!」

 

「二人とも…なんだか話がズレてない?(汗)」

 

デュエリスト達は英気を養う…次なる戦いに備えて…。

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

『ほう…では、キングは初日に登場したデュエリストの中では柊柚子が一番だったと…』

 

「ああ、技量はともかく──何かを訴えよう、誰かに伝えたいという意志の強さを感じた…おそらくはしっかりと()()()()はずだな」

 

『確かに…彼女のデュエルはとても生き生きとしていたわ』

 

『エンジョイ長次郎もしっかりとそれに応えた魅せるデュエルをしてくれた…年甲斐もなく楽しんでしまったよ!』

 

『議長は長次郎氏がお気に入りですからな…しっかりと()()の道を考えなくてはなりませんな』

 

一方その頃、零児と零羅は行政評議会の議員達、そして…キング、ジャック・アトラスとの夕食会に参加していた…ホワイト議長が零児達を誘ったのだ。

…なお、部屋の外では月影が控え、万が一に備えている…。

 

 

 

「赤馬零児…と言ったな?お前の横の少年も出場者だったはずだが?」

 

「ええ、申し訳ありません…事情で別の者に変更させていただきました」

 

『月影という忍者ですな?無口かと思いきや…相手への叱咤には驚いた、お主の指示かな?』

 

「いいえ…ですが、月影には『シンクロ次元のデュエリストの実力を確かめる』という任務を与えていました…彼はシンジ・ウェーバーの力を見極める為にデュエルに集中できていなかった彼に喝を入れたのでしょう」

ジャックやホワイト議長の問いに丁寧に答える零児…その横では零羅が心なしか暗い顔をしていた…。

 

 

 

「赤馬零児……俺は、その子のデュエルを見てみたかったと思っている」

 

「零羅のデュエルを?それはどうして…」

 

「俺も似たような目をしていたのだ…友や、()()()()()に出会う前は…何かに怯え、神経を張り詰め…何者も頼れない……そんな幼少期だった」

 

「──なるほど、失礼ながら…キングはコモンズの出身だとお聞きしましたが…」

 

「失礼な事ではない、コモンズに生まれ…どん底から這い上がったからこそ、今の『俺』がある…コモンズこそが俺の誇りであり、原点だ」

そしてジャックは語る…コモンズからキングを目指すに至った原点、1枚のカードのから得た天啓を…。

 

 

 

…………

 

 

「お前達は異世界…スタンダード次元という世界から来たらしいな?次元戦争については遊海から聞かせて貰った、お前達は普通ならばできない事を為そうとしている、それを成し遂げようと思うならば───()()()、目の前の困難を乗り越える事こそ()()()の本懐だ」

ジャックは戦いに臨もうとする零児へ…そして零羅へと激励を送る…シティの頂点に立つ決闘者として…。

 

「零羅、と言ったな?お前が何かを決意し、雄々しく戦う日が来る事を期待しているぞ?」

 

「あっ…!」

 

「…光栄ですキング、零羅もその言葉を誇りに思うでしょう」

ジャックの激励を聞いた零羅の瞳に小さな光が宿る…この言葉がとある人物の背中を押すのは…また、別の話である。

 

 

 

 

 

「そういえばキング、ついでながら…もう一つ、お尋ねしても?」

 

「む…?いいだろう、何を聞きたい?」

 

「昨晩の前夜祭、そこで出会った白波遊海…という男についてです」

 

「その事か……ふっ、エキシビションとはいえ…あれほど気持ちのいい負け方をしたのは──それこそ3年振りだったな」

ジャックに対して遊海の事を尋ねる零児…その問いを聞いたジャックは僅かだが表情を崩す…笑顔の中に荒ぶる炎を宿すかのように…。

 

 

「キングと白波遊海はこの次元では初対面だったはず…ですが、デュエルの後、まるで久方ぶりに会った友人同士のような関係に見えましたが……」

 

「フン…全てはこの『痣』──赤き竜の痣、ドラゴン・ウイングの導きだ」

キングは右袖を託し上げる…そこにはV字のような形の痣が刻まれていた…。

 

 

『キング、ワシも疑問に思っていたのだ…善神であるという「赤き竜」、その使者であるシグナーの証……ワシらもずいぶんと長く生きてきたが、そんな神話はとんと聞いた覚えがない』

 

「どこまで話したものか……元々、この世界には海から現れた闇の巨人、『冥界の王』の因子が強く含まれていたのだ……そのせいで人々の心は荒み、競争社会が加速する事になった…その原因たる『冥界の王』を再び倒す為、遊海に宿る痣を通じ…()()()()から赤き竜は現れたのだ」

 

「別の世界…!?それはいったい…!」

 

「俺達には到底届かぬ『世界の果て』…というしかあるまいな、お前も薄々は気付いているだろう?白波遊海は『この世界』の存在ではないのだと…奴のような英雄が最初からいれば『次元戦争』など起きるはずもない…大方、動けない状態だったか──記憶を失っていたかだな、違うか?」

 

「っ…その通りです、彼はつい最近まで記憶を失っていた」

僅かな情報から遊海の状態を当てたジャックの言葉に零児は静かに驚く…。

 

 

「はるかな世界の果て…そこで俺、いいやその世界の()()はシグナーとして遊海と共に『冥界の王』と8人のダークシグナー、7体の『地縛神』と戦いを繰り広げた…らしい、赤き竜はその時の『記録』を「痣」を通じて俺達に見せたのだ」

 

「あのレベルのモンスターが、7体…!?」

 

『なるほど…世界には似た顔が三人はいる、と言うが…キングはその『別の世界のジャック・アトラス』の歩みを知った、という事ですな』

 

「その通りだ、そしてその世界で倒されたはずの『冥界の王』がこの次元に紛れ込んでいた……遊海はそれを祓い、我らを含めたシンクロ次元の人々全員を救ったのだ……まぁ、本人がそれに気付いたのはセルゲイと戦う直前だったようだが」

 

「(…私は融合次元や父の野望を止める事に集中していたのに──彼は、()()()()()()()()を救おうとしていた…か…)」

ジャックから遊海の行動の真意を聞いた零児は脱帽した…遊海は──自身以上に広い視界で状況を見ていたのだと…。

 

 

「赤馬零児、お前の心労は察するが…考えるだけ無駄だ、奴は「記録」の中における()()──彼方の世界の『決闘王』の称号を受け継いだ男……人々の安寧を願う、優しき英雄なのだから」

 

「決闘、王…」

真剣な眼差しで遊海の一番重要な情報を零児に伝えるジャック。

 

『決闘王』…その言葉の意味は零児には図りきれない、それでも…それは『デュエルチャンピオン』や『キング』よりも重みのある称号である事は分かった…。

 

 

………

 

 

「……ホワイト議長、()()()は問題ないか?」

 

『ええ、キングから依頼であれば…多少の無茶は通しましょう』

 

「例の件…?」

宴もたけなわ…夕食会が終わりかけた頃、ジャックがホワイト議長に何事かを尋ねる…それは零児には知らされていない事だった。

 

「フッ…半人前のエンターティナーに与える()()の話だ」

 

「…榊遊矢に…?」

零児の問いにジャックは意味深な笑みを見せた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…これで明日は一回戦の残り四試合だから、私はお休みね!遊矢の事、しっかり応援しないと!」

遊矢や権現坂との語らいを終え、部屋へと向かう柚子…そんな時…

 

 

 

トンテンカン! カチャ…キィィィ…!

 

 

 

「あれ…これ、なんの音かしら…?」

廊下に響く小さな工作音…それは参加者の1人の部屋から聞こえていた。

 

『ああ、先程評議会の指示でとある参加者の方に機材をお渡ししたんです…なんでも、キング直々のご指名だとか…』

 

「そうなんですか…何を作ってるんだろう?」

柚子に付き添うボーイが音の原因を伝える…原因を知った柚子はなんとなく気になりながらも部屋に向かった…。

 

 

 

 

 

 

「まったく、相変わらずジャックは無茶な事を……だが、()()()事を考えたな……さて、もう一息だ…」



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エンタメを継ぐ者〜再出発〜

『シティは1つ!』

 

「『「『みんな友達─!!』」』」

 

「うんうん!いいわよみんな!フレンドシップカップ2日目…今日も元気よくいきましょう!」

 

快晴のシティ・デュエルパレスに人々の歓声が響く…フレンドシップカップ、その2日目が始まろうとしていた…!

 

 

 

『本日最初の対戦カードは〜…!榊遊矢選手対治安維持局代表デュエルチェイサー───え、また変更??えー……元治安維持局長官、ジャン・ミシェル・ロジェの不正に関する捜査に動員された為にメンバー変更……だって!代わりに出場する選手は榊遊矢選手の入場後に発表……中々のサプライズじゃない!楽しみ〜!』

メリッサが出場選手を呼び出そうとしたが…急遽、遊矢の対戦相手は「UNKNOWN」の表示に入れ替わったのだった…。

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

「遊矢様、会場にご案内します」

 

「うん、ありがとうサム」

ボーイのサムに促され、遊矢はデュエルパレスへと向かう為に歩き出す…。

 

「サム…君はこのカードをジャックに返して欲しいって言ったよな?本当にそれでいいのか?」

 

「遊矢様……僕は……まだ、わかりません…不動遊星様が言っていた事が本当だとしても──」

 

「……そっか……オレと()()だね」

 

「えっ…?」

会場に向かう中…サムは遊矢の言葉に振り返る…。

 

 

「オレもさ、まだわからないんだ…なんでジャックはオレの──父さんのエンタメデュエルを否定したのか……ジャックにとっての()()が何なのか…その答えを探しながら、オレは戦う……だから、サムも答えが見つかったら教えて欲しいんだ」

 

「遊矢様……はい!」

柚子達との語らいによって平常心を取り戻した遊矢はサムにそう伝える…遊矢がエンターテイナーとして成長する為の戦いが始まろうとしていた…!

 

 

Side OUT

 

 

 

 

『さぁ!まずは榊遊矢選手の入場です!前夜祭でキングに打ちのめされてしまった彼は──再びエンターテイナーを名乗れるのか──?』

メリッサの心なしか優しい実況と共に…赤いDホイールに乗る遊矢が入場する!

 

 

「………会場のみなさん!前夜祭のデュエルでは力不足のデュエルを見せてしまい、申し訳ありませんでした!!」

 

『おっと!?遊矢君いきなり謝罪!?』

スタートラインに着いた遊矢は観客達へと声を張り上げる…思わぬ行動にメリッサも驚いている…。

 

 

「私もエンターテイナーとして修行中の身…ですが!これからの戦いの中で答えを見つけ、必ずキングに()()()()します!!私のデュエルを、見ていてください!!」

 

『お…おーっとぉ!?謝罪からの宣戦布告!?遊矢君はその目標を達成できるのか─!?』

それは遊矢なりのリベンジ宣言、流石のメリッサも動揺する中…観客達は……笑っていた、もちろん()()()()()の意味である。

 

遊海の『光』によって人々の悪意は弱くなったが…()()()()()訳ではない、前夜祭の失敗…そしてフレンドシップカップの厳しさを知る観客達はそれが無謀だと分かっているのだ…。

 

 

「(笑われたって構うもんか…!オレはみんなを笑顔にするデュエルをする…この嘲笑を──()()()()()に変えてみせる!)」

しかし、遊矢は動じない…笑われるのは()()()()()、その笑いを本当の『笑顔』に変えると遊矢は決意したのだ。

 

 

 

そして、そんな遊矢の姿を見たジャックは───

 

 

『フッ──』

人々に気付かれないように…小さく口角を上げていた。

 

 

 

 

『遊矢君の宣言が済んだところで…対戦相手の入場です!実は私もまだ()()()()()!それでは…対戦相手、入場──!!』

遊矢の演説から仕切り直し、メリッサが正体不明の対戦者の入場を促す…現れたのは…!!

 

 

 

 

 

 

 

『いやっほー!!オレの…出番だ──!!』

 

 

 

「「『『えっ!?!?』』」」

 

「す、()()()()()()()!??…子供!?」

入場口から現れたのは…コースを疾走するスケートボード──D・ボードを乗りこなす、ヘルメットとプロテクターを着けた緑髪の少年だった…!

 

 

『───じ、情報が入りました!華麗にコースを駆けるスケートボードに乗る彼の名は──龍亞!トップス出身、弱冠9歳の……大会最年少デュエリストです!!』

メリッサがカンペを読み上げる…そして会場が騒然とする中、龍亞は遊矢と並び立つ!

 

 

 

 

「き、君は…前夜祭の時の…」

 

『うん!ドラゴンズ・ハートのシグナー…龍亞さ!……くぅ〜…決まった!』

遊矢はその少年に見覚えがあった…赤き竜が降臨した前夜祭、ジャックと遊海のデュエル直後に現れたデュエリスト…龍亞はその1人だった。

 

 

『へへっ…ジャックから直接オファーを貰ったんだ!フレンドシップカップに出てみないか?って!』

 

 

 

 

Side龍亞

 

 

 

「みんなすごいデュエルだったね!龍亞!」

 

『うん!『記憶』のWRGPのみんなみたいだった!オレも出たかったな〜!』

 

「もう、龍亞はDホイールに乗れないでしょ?」

 

『あ〜あ、フォーチュンカップみたいにスタンディングデュエルもOKだったら良かったのになー!』

1日目の終了後、妹の龍可と共に観戦を終えた龍亞は帰路を歩いていた…『シグナー』の記憶を得たとはいえ、彼らは子供…その夢が叶うのは早くても2〜3年後と思われたが…。

 

 

 

『ほう…やる気は十分のようだな、龍亞』

 

『あっ…じ、ジャック!?どうしてここに!?』

そんな彼らの前に1人の男が現れる、それはシティのキング…ジャック・アトラスだった。

 

 

『お前に頼みがあって探していたのだ…未熟な──しかし、ガッツは人一倍あるお前をな』

 

「えっ…龍亞に何をさせるつもり、なの…?」

 

『決まっているだろう、龍可……龍亞、榊遊矢とデュエルしてみないか?』

それは…ジャックなりの、遊矢への試練だった。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

「ジャックから…?でも、そんなスケートボードでDホイールとデュエルなんて…」

 

『心配ないって!これは『D・ボード』!デュエルディスクからのモーメントエネルギーを使ってDホイール並の速さで走れるんだ!スーパーメカニックの遊星のお墨付きさ!』

 

「うっそでしょ!?そんなに高性能なの!?」

スケートボードでライディングデュエルに臨もうとする龍亞を心配する遊矢だったが…思った以上のスペックにビックリする…。

 

 

『ま、まさかまさかのDホイール対スケボーの対決!私、龍亞君も応援しちゃう!それではアクションフィールドオン!アクションフィールド「クロスオーバー・アクセル」発動!!』

 

「えっ…本当にやるの!?」

遊矢が戸惑う中、メリッサの宣言でデュエルモードが起動する!

 

 

 

『遊矢!お互いに頑張ろう!ジャックと戦いたいなら…オレを倒してからだー!』

 

「あーもう!やってやる─!!」

初の大舞台にテンションの上がる龍亞、彼に振り回される遊矢…その戦いの行方は…!

 

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

 

『へへっ…おっ先ィィ!!』

 

「えっ、本当に速い!?!?」

一斉にスタートする遊矢と龍亞…しかし、Dボードを乗りこなす龍亞が加速…コーナーを取った!

 

 

 

龍亞LP4000

遊矢LP4000

 

 

 

『よーし、オレのターン!』

『「D・(ディフォーマー)チャッカン」をズババーンと召喚!』

オレンジ色のライターが変形し、人型のロボットになる! ATK1200

 

『そして装備魔法「D・レトロエンジン」をレベル3の「チャッカン」に装備!これで攻撃力は2倍になる!』

強力なエンジンがロボットを強化する! 

 

チャッカンATK1200→2400

 

『カードを2枚伏せて、ターンエンド!』

 

龍亞LP4000

チャッカン(レトロエンジン) 伏せ1 手札2

 

 

 

「子供だからって油断したらダメだ…いくぞ!!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「よし…!オレは手札からスケール3の『EMオッドアイズ・フェニックス』とスケール8の『EMオッドアイズ・ユニコーン』でペンデュラムスケールをセッティング!これでオレはレベル4から7のモンスターを同時に召喚できる!」

遊矢の背後に光の柱が現れ、シルクハットを被った不死鳥と可愛らしい一角獣が浮かび上がる!

 

PENDULUM

 

「揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け!光のアーク!ペンデュラム召喚!!手札からレベル4『EMボットアイズ・リザード』!同じくレベル4!『EMホタルクス』!」

遊矢の頭上で青のペンデュラムが揺れ動く…そして開いた扉から機械の義眼を着けたトカゲ紳士とお尻が電球になったホタルが現れる! ATK1600 1200

 

 

「さぁ、皆様お立ち会い!これからあっ!と驚く方法で『チャッカン』を打ち破りたいと思います!バトル!『ボットアイズリザード』で『チャッカン』を攻撃!」

 

『攻撃力の低いモンスターで!?』

 

「その瞬間、ペンデュラムスケールの『オッドアイズユニコーン』のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、自分フィールドの『EM』1体の攻撃力をバトルを行なう『()()()()()()』モンスターの攻撃力に加えます!」

 

『えっ?フィールドには「オッドアイズ」なんていないよ?…プレイング失敗?』

 

「いいえ…!ここで『ボットアイズリザード』の効果発動!1ターンに1度『オッドアイズ』モンスターの名前を宣言する事でそのモンスターとして扱える!私が宣言するのは──『オッドアイズ・ドラゴン』!!」

 

「わわっ!?モンスターの姿が変わった!?」

遊矢の宣言と共に義眼のトカゲ紳士の姿が遊矢の最初のエースモンスター…二色の眼のドラゴンに変化する!

 

 

ボットアイズ(オッドアイズ・ドラゴン) ATK1600→2800

 

 

『攻撃力2800…!でも、そうは行かないょ!罠カードオープン!「ディフォーム」!自分の「D」モンスターが攻撃された時!その攻撃を無効にして、そのモンスターを守備表示にする!』

チャッカンがロボットからライターに変形して火球を弾く!

 

チャッカンATK2400→DEF600

 

 

「おっと残念…ですが、まだ『ホタルクス』の攻撃が残ってる!守備表示の『チャッカン』を攻撃!」

 

『まだまだぁ!てぇい!』

龍亞はDボードでコースの壁を駆け上がり、アクションカードを手にする!

 

『やった!アクションマジック「ゼロ・ペナルティ」!「ホタルクス」の攻撃力を0にするよ!』

 

「おっとぉ!?」

ホタルクスがチャッカンに突撃したが、頭を打ち付けて目を回してしまった…。

 

ホタルクスATK1200→0

 

遊矢LP4000→3400

 

 

「ううっ、大失敗…!でも、勝負はこれからだ!カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊矢LP3400

ボットアイズ(オッドアイズ扱い) ホタルクス (P フェニックス ユニコーン) 伏せ1 手札1

 

 

 

『おーっと!先制ダメージを与えたのは龍亞君!見事なテクニックで遊矢に立ち向かう─!』

 

「強いな龍亞!躱されるとは思わなかったよ!」

 

『へへっ!ありがとう!さぁ、どんどんいくよ〜!』

先制ダメージを与えた龍亞は遊矢へと攻勢を仕掛ける!

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『来た!「D・モバホン」を召喚!』

二つ折り携帯がロボットに変形する! ATK100

 

『攻撃表示の「モバホン」の効果発動!1ターンに1度、サイコロを振って…出た目の枚数分、デッキをめくって…その中からレベル4以下の「D」モンスターを特殊召喚できる!ダイヤルオーン!』

モバホンのダイヤル部分が不規則に点滅する、点灯したのは──4 !

 

龍亞 デッキめくり

 

ガジェット・ドライバー

ツイスター

D・スコープン

緊急同調

 

 

『よっしゃあ!「D・スコープン」を特殊召喚!』

顕微鏡型のロボットが現れる! ATK800

 

 

『オレはレベル1の「モバホン」とレベル3の「チャッカン」にレベル3の「スコープン」をチューニング!』

 

1+3+3=7

 

『世界の平和を守る為!勇気と力をドッキング!シンクロ召喚!レベル7!愛と正義の使者!「パワーツール・ドラゴン」!!』

龍亞のエースモンスター、様々な工具を持つ機械のドラゴンが現れる! ATK2300

 

 

『「パワーツールドラゴン」の効果発動!パワーサーチ!オレはデッキから装備魔法「ダブルツールD&C」「命の奇跡」「ファイティング・スピリッツ」を相手に見せる!そして、相手がランダムに選んだ装備魔法を手札に加えるよ!』

遊矢の正面に3枚のカードのソリッドビジョンが現れる!

 

 

「なら…左側だ!」

 

『分かった!他のカードはデッキに戻して…装備魔法「命の奇跡(ライフ・エクストリーム)」を「パワーツール・ドラゴン」に装備!』

工具竜が不思議な光を纏う!

 

『バトルだ!「パワーツールドラゴン」で「ボットアイズリザード」を攻撃!そして「命の奇跡」の効果発動!装備モンスターがバトルする時、戦うモンスターの攻撃力が1500ダウンする!いっけぇ!クラフティ・ブレイク!』

 

「やっばい!アクションカード…うわあああ!?」

パワーツールの攻撃を防ごうとアクションカードを拾う遊矢…だが、拾ったのは防御系カードではなく──ボットアイズリザードを破壊され大ダメージを受ける!

 

ボットアイズリザード ATK1600→100

 

遊矢LP3400→1200

 

 

「痛って〜…でも、ダメージを受けただけでは終わらない!アクションマジック『ダメージ・ドロー』!自分が2000以上のバトルダメージを受けた事で2枚ドローできる!」

 

『よし!オレはこれでターンエンド!』

 

龍亞LP4000

パワーツール(命の奇跡) 手札1

 

 

 

『つ、強い!龍亞君強い!遊矢を僅かなターンで追い詰めた〜!!』

 

『いえ〜い!!どんなもんだい!』

 

「(本当に強い…これがシグナーの力…!でも、今のドローでチャンスが来た!)」

デュエルパレスに歓声が響く…思わぬ強さを見せる龍亞が会場の空気を味方につけている…!

 

 

『(………少し壁を高くし過ぎたか…?この次元の龍亞がここまで善戦するとは思っていなかったが……)』

一方、ジャックも思わぬ状況に少し驚いていた…「記録」の中の龍亞は遊矢と同じく、少し独り善がりな面もあり、それを遊矢の反面教師にしようと考えたのだが…「記録」を得た影響か、その強さは並のデュエリストならば蹴散らせるレベルになっていた。

 

『(しかし、「記録」の龍亞とデュエルしている龍亞は()()だ、記録を得たとしても…あの死線を潜った龍亞には───)』

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「いくぞ、龍亞!再び揺れろ!魂のペンデュラム!ペンデュラム召喚!!まずは手札からレベル4『EMアメンボート』!そして真打ち登場!雄々しくも美しく輝く二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

再びペンデュラムの軌跡が揺れ動き、髭を生やしたアメンボと遊矢のエースが現れる! ATK500 2500

 

「『パワーツールドラゴン』が攻撃力を下げてくるなら…それを上回る攻撃力で乗り越える!オレはレベル4の『ホタルクス』と『アメンボート』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!」

2体のモンスターが銀河に飛び込み、光の大爆発が新たな力を呼び覚ます!

 

「愚鈍なる力に抗う反逆の牙!ランク4!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

鋭い牙を持つ紫黒の竜が咆哮する! ATK2500

 

 

『「ダークリベリオン」…!カッコいい〜!でも、なんだかヤバそう!?』

 

「いくよ!『ダークリベリオン』の効果発動!ORUを1つ使い、『パワーツールドラゴン』の攻撃力を半分にして、その数値分の攻撃力を加える!オレはその効果を2回使う!トリーズン・ディスチャージ!」

放たれた紫電が工具竜を拘束し、力を奪う!

 

パワーツールATK2300→1150→575

 

ダークリベリオンATK2500→3650→4225

 

 

「バトルだ!『ダークリベリオン』で『パワーツールドラゴン』を攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!」

 

『まだだ!装備魔法「命の奇跡」の効果発動!「ダークリベリオン」の攻撃力を1500ダウン!さらに「パワーツールドラゴン」は装備魔法を墓地に送る事で戦闘破壊を無効にできる!パージ・アウト!』

紫電の一撃が工具竜を貫くが…鎧の一部が吹き飛ぶ事で破壊を免れる!

 

ダークリベリオンATK4225→2750

 

龍亞LP4000→1850

 

 

「これで装備魔法は無くなった!」

 

『ううん、まだだ!「命の軌跡」の最後の効果、発動!装備されていたこのカードが墓地に送られた時、「パワーツールドラゴン」をリリースして…新たなシンクロモンスターをシンクロ召喚扱いで特殊召喚できる!』

 

「なんだって!?」

パワーツールドラゴンの鎧の隙間から光が漏れていく─!

 

 

 

『世界の未来を守る為!勇気と力がレボリューション!進化せ──────あ、あれっ?「パワーツールドラゴン」?どうしたの!?』

 

「ど、どうしたんだ…?」

切り札を呼び出す口上を読み上げる龍亞……だが、鎧の隙間から溢れ出していた光が弱まっていく…。

 

 

『ほら!出てきてよ!赤き竜!キィーンって!ぐわーって!?』

慌てた様子で赤き竜の痣を叩く龍亞だったが…『ドラゴンズ・ハート』の痣はうんともすんとも言わずに沈黙している…。

  

 

 

「え、えーっと……『オッドアイズ』で、『パワーツールドラゴン』を攻撃…らせんのストライク・バースト…」

 

『ち、ちょっと待って!!すぐにピカッと進化するからってうわあああ!?』

 

「……『オッドアイズ』がレベル5以上のモンスターとバトルする時、与えるダメージは…2倍になるんだよね……」

心なしか弱火で放たれた螺旋の炎が工具竜を吹き飛ばす…あまりにもあっけない決着であった…。

 

 

 

 

龍亞LP0

 

遊矢WIN(?)

 

 

  

 

『えー……デュエル決着!遊矢選手をあと一歩まで追い詰めた龍亞君でしたが……ちょっと、詰めが甘かったかな…?残念!』

メリッサの気を遣った実況が微妙な空気が流れるスタジアムに響く……子供らしい龍亞の失敗に観客達も苦笑するしかなかった。

 

 

 

『(やはりそうか…俺が『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』を使えぬように、遊星が『シューティング・スター・ドラゴン』を持たぬように…龍亞の奇跡たる『ライフ・ストリーム・ドラゴン』はこの程度のピンチでは覚醒しなかった、という事か…)』

 

玉座でなんとかポーカーフェイスを保ちながら、ジャックは原因を考察する。

龍亞のシグナーの竜『ライフ・ストリーム・ドラゴン』は龍亞が命を賭けて龍可を守り、希望を繋いだ事で『パワーツール・ドラゴン』が覚醒した姿……だが、それを目覚めさせたのはイリアステルと戦った『龍亞』……故に、シンクロ次元の龍亞は使える素質はあるが……奇跡を目覚めさせるには至らなかったのだ。

 

 

 

『もう!なんでだよ〜!?「記録」のオレは格好良く召喚してたじゃん!?』

 

「あー…うん、ドンマイ龍亞…そういう事もあるって…『パワーツール・ドラゴン』カッコ良かったよ…?」

 

『ううっ…もっと活躍したかったのにぃぃ!!』

 

「わわっ…!?泣くなって…きっと、龍亞がもっと頑張ったら…必ずデッキは応えてくれるよ!そうしたら、またオレとデュエルしよう!な?約束だ!」

 

「遊矢…うん…ありがとう…次のデュエルも頑張って!」

 

「ああ!」

思わぬ失敗にショックを受けて泣きじゃくる龍亞、遊矢はそんな龍亞を宥めながら再戦を約束する…そんな彼らを観客達は微笑ましい表情で見守っていたのだった。

 

 

『あはは…思わぬトラブルがあったけど、二人とも良いデュエルだったわ!二人の健闘を讃えて拍手〜!』

メリッサの優しい締めでデュエルパレスは拍手に包まれた…。

 

 

 

『はぁ…(まだ、俺には届かんぞ…榊遊矢)』

そして、ジャックは小さくため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう!だから調子に乗ったらダメって言ったじゃない!違う世界の私達の事を知ったからって、急に強くなれる訳ないでしょ!?」

 

『そ、そんなに怒らないでくれよ龍可〜!?次はちゃんと頑張るからさぁ!!』

 

 

なお、その後…龍可に怒られる龍亞の姿があったとか、なんとか…。




こんにちは!S,Kです!今回はあとがきバージョン!

久しぶりに活動報告のアンケートを実施したいと思います。

お題はズバリ『「決闘の観測者になった話」のベストデュエルは?』です!

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=294259&uid=206572

この物語を書き始めて間もなく5年…不器用な自分なりに遊海達の物語を紡ぎ、様々なデュエルを書いてきました…その中で、読者の皆様の印象に残ったデュエルを教えてもらい、今後の執筆の参考にしたいと考えています!

特に期限なんかは設けないので、お暇な時に書いて貰えたら嬉しいです!


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激闘のフレンドシップカップ!〜お調子者達と道化の仮面〜

こんにちは!S,Kです!

フレンドシップカップ、1回戦も後半…ついに偽りの仮面が剥がれ落ちる…!

それでは、最新話をどうぞ!


《フォウ、キュー…》

 

《おや?フォウ、どうしました…ああ、お腹が空いたんですね?》

 

《フォウ!》

シティ近海、移動要塞『アポクリフォート・キラー』……遊海の看病・治療を続けていた人間体の彩華にフォウが切なげに声をかける…お腹が空いてしまったようだった。

 

 

《ちょっと待っていてくださいね…たしか、キャットフード───いえ、賢者の鍵のせいで消費期限が……ごめんなさい、あとで買ってくるので…もう少し待っててくださいね?》

 

《フォウ!?キュ〜ン……》

非常用に備蓄してあったキャットフードを取り出そうとする彩華だったが…期限が分からなくなっている事に気付いてフォウに謝る…それを聞いたフォウはガックリと項垂れてしまった…。

 

 

「………あや、か……」

 

《あっ──おはようございます、マスター…調子はどうですか?》

 

「うぅ…あたま、いたい……ぜんしん、いたい……きもち、わるい………のど、かわいた……」

 

《フォウ、フォーウ…(全身ボロボロだもん、しょうがないよ…)》

そんな時、丸一日意識を失っていた遊海が意識を取り戻す…だが、ダメージは回復しきっておらず…起きているのも辛そうな様子だった。

フォウは心配そうに遊海に寄り添っている…。

 

 

「ゆう、や…は…?」

 

《先程、一回戦の戦いが終わりました…デュエルチェイサー227の代わりにシンクロ次元の龍亞と戦って……ちょっと面白い勝ち方でしたよ?》

 

「…ははっ……そっ…か……───」

 

《……(思っていたよりもダメージが……このままではアカデミアの侵攻には──)》

 

《キュウ……(遊海、少しでも休んで…)》

遊矢の無事を確認した遊海は小さく笑みを浮かべ──再び深い眠りに落ちてしまった…。

 

 

 

 

───────────────────────────

 

 

 

『遊矢様、お疲れ様でした』

 

「うん、ありがとうサム」

試合を終えた遊矢は部屋へと戻ってきた、そして付き添ってくれたサムと別れると──ベッドへと倒れこんだ。

 

 

「うわあああ…!!デュエルには勝ったけど、なんだか微妙な感じになっちゃった──!!あんな宣言したのに──!」

枕に顔を埋めながら、遊矢は足でバタバタとベッドを叩く…エンターテイナーとしての出直しを賭けた1回戦、勝つ事には勝ったのだが──なんとも言えない()()なデュエルとなってしまったのだ。

 

 

「うーん…先が思いやられるなぁ……本当なら、何かでフォローできれば良かったんだけど…」

エンタメデュエルとは1人では成立しない…舞網チャンピオンシップでの沢渡戦や柚子対徳松戦のように、自分・相手・観客が1つになってこそ…エンターテイメント足り得るのだ…。

 

 

 

 

『さーて!フレンドシップカップ、続いての対戦は〜!沢渡シンゴ選手対ユーゴ選手!!』

 

「えっ…?沢渡と……ユーゴ!?」

モニターから続いての組み合わせが発表される…それはまた思わぬ組み合わせだった…!

 

 

 

…………

 

 

「よっしゃよっしゃ─!!ついに来たぜ、待ちに待ったこの時が!見てろよ…リン!オレ達の夢を叶える時が来たぜ!」

 

『っしゃぁ!!フレンドシップカップの主役はこのオレ様だ!!』

白いDホイールを操るユーゴ、そして緑色のDホイールに乗る沢渡が入場する…お互いに目立ちたがり屋であり、我の強い二人…そのデュエルの行方は…───

 

 

 

デュエルダイジェスト 沢渡対ユーゴ

 

 

 

「う、うおおおっ!?」

 

『どっわぁ!?あっぶねぇ!?』

コーナーを先取したのは沢渡…思わずアクセルを強くひねりすぎ、ユーゴに衝突するギリギリで追い抜かしたのだ。

 

 

「やってくれるなぁ!?」

 

『へ、へへっ…おれ様のライディングテクニックをみ、見たか…!だけど、本番はこれからだ!沢渡劇場の、開幕だ!』

スピードへの恐怖で声を震わせながらも、沢渡は己のデュエルを展開する。

 

沢渡が扱うのはLDS製のペンデュラムテーマ『魔界劇団』…イレギュラーなオベリスクフォースや、遊海のせいで実力を発揮しきれなかったが…魔法カード『魔界台本』の力を使い、トリッキーな戦い方をするデッキである。

先攻を取った沢渡はエースである『魔界劇団─ビッグ・スター』と『魔界劇団─サッシー・ルーキー』を召喚してユーゴに備える…そして、現れたのは──

 

 

「その美しくも雄々しき翼翻し…光の速さど敵を討て!シンクロ召喚!現われろ!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!!」

それはユーゴのエース、翡翠の翼を持つ白きドラゴン…「シンクロ」の名を持つドラゴンが咆哮を轟かせる…!

 

 

『へっ…仇役にはピッタリなドラゴンだな…!今回の演目は「ドラゴン征伐」だ!』

 

「やれるもんならやってみやがれ─!」

威圧感を放つ翡翠の竜にも怯まず、自分のペースを貫く沢渡…最初の攻撃は『サッシー・ルーキー』の持つ耐性で最小限のダメージに抑えたが…天才肌のDホイーラーは確実に沢渡を追い詰める…!

 

 

「『クリアウィング』を対象に永続罠『竜の束縛(ドラゴンズ・バインド)』、そして永続罠『追走の翼』を発動!それにより相手は『クリアウィング』の攻撃力、2500以下のモンスターを特殊召喚できず!さらに、戦闘では破壊されず!レベル5以上のモンスターに攻撃された時!そのモンスターを破壊し、その攻撃力を『クリアウィング』に加える!」

 

『なっ…ペンデュラム召喚封じしてきやがった!?』

それはユーゴによるロック戦術…沢渡はペンデュラム召喚によるモンスター追加を封じられてしまう…!

 

『でも、そのドラゴンを倒す方法はバトルだけじゃねぇ!『魔界台本─ファンタジー・マジック』を使えば、そのモンスターをデッキに戻せる!「ビッグスター」の効果発動!』

 

「させるかよ!『クリアウィング』の効果発動!レベル5以上のモンスターが効果を発動した時、その効果を無効にし破壊する!ダイクロイック・ミラー!」

 

『なにィィ!?』

それは効果モンスターに対してはまさに『天敵』とも言える効果…ビッグスターは破壊され、さらに『竜の束縛』によって再ペンデュラム召喚も封じられてしまう…!

 

『っ…このままじゃやべぇな…!三十六計逃げるに如かずだ!永続魔法「魔界大道具─ニゲ馬車」を発動─!!』

勝負の期を伺う為、沢渡は通常召喚した『魔界劇団─プリティ・ヒロイン』と『サッシールーキー』を馬車に乗せて逃げの一手を打つ…!

 

 

『「逃がすか!!」』

逃げる沢渡を追うユーゴ…だが、本人も気付かぬ変化が起きていた…。

 

 

Side遊矢

 

 

 

「っ…なんだ、これ……誰かの、声が…思いが、流れ込んで…!」

デッキを握りしめながら戸惑う遊矢…デュエルの観戦中、突然『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』のカードが輝き始め…それと共に誰かの声が…意思が流れ込んで来ていたのだ…。

 

「『逃げても無駄だ!諦めろ!』……っ?!なんだ、よ…これ…!?」

普通の状態とトランス状態を行き来しながら戸惑う遊矢…それが意味するのは…。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

デュエルは進んでいく、『竜の束縛』によって追い詰められたかに思えた沢渡…だが、『プリティ・ヒロイン』と『ニゲ馬車』のコンボによって『クリアウィング』の攻撃力をダウンさせる事で活路を開く…そして『ビッグスター』と『魔界劇団─ファンキー・コメディアン』のコンボによって『サッシールーキー』を大幅に強化してユーゴに迫るが…ユーゴはアクションマジック『奇跡』によって致命傷を回避、反撃に転じる…!

 

 

 

 

「双翼抱くきらめくボディー!その翼で天空に跳ね上がれ!シンクロ召喚!『HSR-マッハゴー・イータ』!!」

それは逆転の一手…1体のモンスターが活路を開く…!

 

 

「『マッハゴー・イータ』は自身をリリースする事でフィールドのモンスターに『自身のレベルが変動した時、その数値に+1する』効果を与える!」

 

『はっ…無駄な事を…お前はもう終わってる!攻撃力0の「クリアウィング」でどう勝つつもりだ?』

 

「終わってるのはお前だ…!『お楽しみはこれからだ!!』」

 

『アン…?そのセリフは──?』

状況を見て余裕の表情の沢渡…だが、ユーゴのセリフに既視感と…嫌な予感を感じ取った…!

 

 

「魔法カード『ハイ・スピード・リレベル』を発動!墓地の『マッハゴーイータ』を除外する事でフィールドのモンスターのレベルは『マッハゴーイータ』と同じ()()()5()になる!!」

 

『……レベル、5──しまったぁ!?』

 

「今頃気づいても遅せぇ!レベルが変動した事で『プリティヒロイン』と『サッシールーキー』のレベルは6になる…だが!『クリアウィング』の効果発動!レベル5以上のモンスターが発動した効果を無効にし、破壊する!ダイクロイックミラー!!さらに!破壊したモンスターの攻撃力分、自身の攻撃力をアップする!」

光の反射によって破壊される2体のモンスター…そして────

 

 

「『クリアウィング』でダイレクトアタック!旋風のヘルダイブ・スラッシャー!!」

 

『うおおおっ!?』

烈風を纏った突進が沢渡のライフを消し飛ばし…決着となった…。

 

 

 

沢渡LP0

 

ユーゴWIN!

 

 

 

『逆転に次ぐ逆転の壮絶なデュエルで勝利をもぎ取ったのはユーゴ選手だ─!!』

 

 

「───あれ、オレ勝ったのか……なんだか、途中からテンション上がっちまって…まっ、いいか!」

スタジアムにメリッサの実況が響く…そんな中でユーゴは自分の状態に違和感を覚えていたのだが、生来の楽観的性格ですぐに忘れてしまったのだった…。

 

 

「沢渡劇場良かったぞ〜!!」

 

「面白かった!!」

 

『おっ…沢渡劇場、今回も大成功…ってな!』

一方、沢渡は負けこそしたが観客達からたくさんの歓声を浴びて礼を以て応える…逆転に次ぐ逆転のどんでん返しの連続はしっかりと観客達の心を掴んだのだった。

 

 

 

『おーい!お前も歓声に応えろ……って、お前…近くで見ると遊矢にそっくりだな?それからユートにも…』

 

「ん?ああ、柚子から聞いたけど…なんかそうらしいな?」

 

『──いや、そっくり過ぎだろ!?瓜二つ、つうか三つ子か!?なんでそんなに似てんだよ!?』

 

「そんな事、オレに言われてもなぁ…?」

デュエルが終わり、ユーゴに歩み寄る沢渡…だが、遊矢やユートにそっくりなユーゴに驚く…だが、当のユーゴはそこまで気にしてはいないようだった。

 

 

『まぁ、世界にゃ3人は同じ顔がいるって言うしな!今度は負けねーぜ、ユーゴ』

 

「おう!また相手になってやるぜ!」

沢渡とユーゴは拳を突き合わせる…これにて奇妙なお調子者対決は終わったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊星対デイモン

 

 

 

「悪いなデイモン…今回のオレは──負ける訳にはいかない!!『ロード・ウォリアー』で『エイリアン・ソルジャー』を攻撃!ライトニング・クロー!!」

 

『どわあああ!?お前そんなに強かったのかよ──!?』

 

 

『け、決着!!遊星選手強い!!デイモン選手を一蹴だー!!』

メリッサの実況が夕暮れのスタジアムに響く…知り合いのデイモンすら驚愕する程の強さで遊星は一回戦を制したのだった…。

 

 

『フッ…(それでこそだ、遊星…我が()()()よ……上がってこい…!この頂まで…!)』

 

「(分かってる、待っていてくれジャック…でも、今は──)」

視線をぶつけ合う玉座のジャックとコースの遊星…だが、遊星はとある場所へと視線を向ける…そこには───

 

 

「遊星!かっこよかったぞ──!!」

 

「おめでとーう!!」

 

「ありがとう!父さん!母さん!」

観客席で喜ぶ父と母に向かって遊星は拳を突き上げた…。

 

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

「良かったね、不動博士…遊星」

ペントハウスでデュエルを見守っていた遊矢は嬉しそうに呟く…中継カメラにも嬉しそうな不動夫妻と遊星の様子が映っていたのだ。

 

「父さん…」

遊矢はその手に母から託された『スマイル・ワールド』を持ちながらポツリと呟く…行方知れずの父、遊矢の目標たる榊遊勝の事を思いながら…。

 

 

コンコンコン

 

「あっ…誰だろう?柚子かな…?」

そんな時、遊矢の部屋を誰かがノックする…遊矢が応対すると…。

 

 

『遊矢…いま、大丈夫…?』

 

「あっ…零羅!どうしたんだ?」

そこに立っていたのは月影に付き添われた零羅だった…いつも通りおどおどとしていたが、その瞳には強い光が宿っている。

 

 

 

『遊矢…さっきのデュエル、面白かった……「ホタルクス」が目を回したり、「オッドアイズ」が困った表情しながら攻撃したり…テレビのコメディ番組みたいだった…』

 

「──ありがとう、零羅…さっきのデュエルの感想を伝えに来てくれたのか?」

 

『えっと……』

遊矢はしゃがみ込み、零羅の目線に合わせて話す……そして、零羅はゆっくりと言葉を選んで口にする…。

 

 

『遊矢、僕の事をずっと守ってくれた…僕に優しくしてくれた……おかげで、勇気が出た……だから、僕も()()…フレンドシップカップには、出られないけど……僕は、もう逃げない…!』

 

「零羅…」

この数日で零羅は大きく成長した…零児が言ったように、「自分」をしっかりと持ち、意見を言えるようになったのだ。

 

 

『だから…遊矢も、戦って…!自分の為に…それで、ジャックともう1回戦ってほしい……シンクロ次元の人達は、まだランサーズの事や、次元戦争の事を信じきれてないから……遊矢が強い事を見せて…ジャックに勝って、認めさせてほしい…!』

 

『零羅……月影、いったい零羅はどうしたんだ?たった1日でこんなに強くなって…!』

 

『昨夜、零児殿と零羅殿は行政評議会とキング、ジャック・アトラスとの夕食会に招かれた…そこでジャックからこう言われたのだ──「何かを成し遂げようとするなら、怯むな」と…その言葉が零羅殿の強さを引き出したのだろう』

 

「ジャックが……やっぱり、遊星が言っていたように……」

零羅の急成長の理由を知った遊矢は遊星の言葉に納得する…彼はただ傲慢なのではなく、その中に熱い魂を宿しているのだと。

 

 

 

「…ありがとう零羅…オレ、絶対に優勝する…!ジャックともう一度戦う為に…!」

 

『……うん…!』

遊矢の決意を聞いた零羅は不器用な…嬉しそうな笑顔を見せた…。

 

 

 

『零羅殿、そろそろ行きましょう…評議会で零児殿がお待ちです』

 

『うん…付き合ってくれてありがとう、月影』

 

『いえ…零児殿からの指示ですからな』

 

「月影…そういえば、どうしてお前は赤馬零児に従ってるんだ…?セレナの保護とか、零羅をセキュリティから助けだしたり…危ない事ばかりさせられるのに…」

零羅と共に戻ろうとする月影に遊矢が声を掛ける…舞網チャンピオンシップの時から…どうして、赤馬零児の命令に従っているのかと…。

 

 

『……もしも、零児殿がアカデミアのように人の命を軽く見ている人間なら…拙者も兄者も見限っていただろう……だが、零児殿は違う…彼はアカデミアを憎み、戦う為に司令官であるのに危険を冒してまで、我らと共に次元を越えてきた……なかなか感情を読めぬ御仁であるが、零児殿は我らを信用してくれている…ならば、その思いに全力で応えるまでだ』

 

「月影…」

それは月影なりの信頼…アカデミアと戦う為に全てを賭けている零児への思いだった。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

『さぁ…それでは一回戦のラストデュエル!その組み合わせは──黒咲隼選手対デニス・マックフィールド選手です!!』

夜の帳が落ち、眩いライトが照らすスタジアムにメリッサの実況が響く…フレンドシップカップ一回戦、その最終試合が行われようとしていた…!

 

 

 

 

『黒咲!仲間同士でやる事になったけど…頑張ろうね!』

 

「ふん…()()か、本当の仲間なのか──このデュエルで確かめてやる」

 

『そんな〜!連れない事言わないでよ〜!』

スタジアムが歓声に包まれる中、スタートラインでデニスと黒咲が言葉を交わす…だが、黒咲は気付いていたのだ……デニスの秘密に…!

 

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 黒咲対デニス

 

 

 

スピードの世界で黒咲の反逆の翼『RR』(レイド・ラプターズ)、そしてデニスの操る奇術師達『em』(エンタメイジ)が衝突する。

先攻、『RR-デビル・イーグル』によってデニスへと大ダメージを黒咲…しかし、デニスはおどけながら黒咲の手の内を見抜き、観客達を沸かせる。

続くターン、デニスは『デビルイーグル』を弱体化させながらモンスターを展開、ペンデュラム召喚からエースモンスターである『em-トラピーズ・マジシャン』や『em影絵師シャドー・メイカー』を3体を特殊召喚し、黒咲を翻弄していく…しかし、黒咲は止まらない。

 

エクシーズモンスターが破壊された事で効果を発動する『RUM-デス・ダブル・フォース』によって『RR-レヴォリューション・ファルコン』を喚び出し、破壊とダメージを狙う…だが、デニスはモンスター効果を駆使してそれを回避してしまう。

 

だが、黒咲は怯まずに追撃──『レボリューションファルコン』による全体攻撃によってついにデニスを追い詰める─!

 

 

 

「『エヴォリューションファルコン』!奴の正体を暴き出せ!!『トラピーズマジシャン』を攻撃!エヴォリューション・エアレイド──!!」

 

『くっ─!!アクションマジック「ダメージ・バニッシュ」!戦闘ダメージは無効になる!!』

4度目の空襲がついにデニスのエースモンスターを直撃する、ダメージは与えられなかったが…黒咲の目的はダメージではない…!

 

 

「この瞬間、罠カード「RR-ターゲット・フラッグ」の効果発動!対象となっていた「トラピーズマジシャン」が破壊された事でお前は手札を公開し、オレが先程ドローしたカードの種類、つまりモンスターカードがあれば破壊する!さぁ、見せろ…貴様の()()を!!」

 

『あーあ、しょうがないなぁ…キミが見たかったのは──「融合(コレ)」だろ?』

 

「貴様──やはり!!」

デニスは1枚の手札を黒咲に見せつける──それは魔法カード『融合』

デニスが今まで使っていたのはエクシーズテーマの『em』…つまり、『融合』が入る理由はない…それが意味するのは────

 

 

 

『じゃあ…最高のエンターテインメントを見せてあげるよ…ボクのターン!──魔法カード「古代の機械混沌融合(アンティーク・ギア・カオス・フュージョン)」を発動…!手札の『融合』を墓地に送り、墓地のエクシーズモンスターを融合素材と同数除外、デッキ・エクストラデッキから融合素材モンスター1組を召喚条件を無視して特殊召喚する!現われろ!『「古代の機械猟犬」!「古代の機械双頭猟犬」!「古代の機械参頭猟犬」!「古代の機械究極猟犬」!』

デニスのデッキから飛び出したのは『em』とはシナジーがない──そして、融合次元・アカデミアが多用する『古代の機械(アンティーク・ギア)』モンスター達だった!

 

 

『そして!4体の「古代の機械」を融合!!古の魂受け継ぎし機械仕掛けの猟犬どもよ!その十の首混じり合わせ…混沌にして絶大なる力とならん!融合召喚!!現れろ!レベル10!「古代の機械混沌巨人」!』

4体の猟犬達が融合の渦へと飛び込む…そしてエクシーズ次元を襲いし災厄の巨人が現れる!!

 

 

『で、で、デカい!?なんなのよ!あのモンスター─!?』

 

「そのモンスターは…!!」

 

『見覚えがあるみたいだね…!』

超巨大モンスターの出現にどよめくスタジアム…その中でデニスは瞳に狂気を宿していた…!

 

「やはりアカデミアだったか、デニス!!」

 

『そういう事…さぁ、ハンティングゲームを始めようか…!』

デニスは道化の仮面の下に隠していた狂気を解き放った…!

 

 

 

Side???

 

 

 

『……赤馬零児、これはどういう事かな?デニスという男は融合次元に立ち向かうランサーズの一員のはず』

 

「……無論、ランサーズに敵の()()()が紛れている事も想定していました…これがアカデミアの強かさ、逃亡者であったロジェはともかくとして…各次元にスパイを潜ませていた」

デニスの真実が明らかになった時、行政評議会で零児は説明を求められていた…だが、彼は動揺を見せない…その可能性も織り込み済みだったからだ。

 

 

『赤馬零児…1つ聞きます、彼は──黒咲はデニスに勝てますか?』

 

「ええ、彼はランサーズであり──エクシーズ次元で戦い続けてきた、誇り高きレジスタンスなのだから…!」

ホワイト議長の問いに答えた零児はモニターへと目を向けた…。

 

 

 

 

「「遊矢!!」」

 

「柚子!権現坂!」

同じ頃、遊矢の部屋に権現坂と柚子が飛び込んでくる…デニスの真実を知ってじっとしていられなかったのだ。

 

 

「まさか、デニスがアカデミアとは…俺達をずっと欺いていたのか…!!」

 

「……信じられないよ…!デニスがアカデミアだったなんて…!!」

 

「二人とも…」

権現坂と遊矢は拳を握り締める、遊矢は舞網チャンピオンシップ・バトルロイヤルでデニスと絆を結び…権現坂はシンクロ次元に来てから協力して行動していた…そこに悪意を感じられなかったからだ…。

 

 

「黒咲は…大丈夫かな…!?」

 

「信じるしかあるまい…あいつのデュエルを…!」

 

 

Side OUT

 

 

 

 

「チィ…!この忌々しいデカブツを…二度とのさばらせはしない!!」

 

仇敵を前に黒咲は全力を解放…二枚の罠カード『RR-ロックチェーン』『RR-リアクター』による破壊と効果ダメージを狙うが、強力な魔法・罠耐性を持つ『混沌巨人』には効かず、さらに自分が攻撃する時限定のモンスター効果封印によって黒咲は窮地に陥る…。

しかも、正体を露わにしたデニスは『エヴォリューションファルコン』を弄ぶように攻撃し、デュエルパレスのコースがボロボロになっていく…だが、黒咲は諦めない…手札に残った『RR-ラスト・ストリクス』の効果によってライフを残す事に成功した…!

 

 

 

『アハハハ…!残りライフ200で、いつまで頑張るつもりかなぁ…?』

 

「俺はどれだけ追い詰められようと…諦めない!!そして…必ず貴様を叩きのめす!!鉄の意思と鋼の強さをもって!!」

黒咲を煽るデニス…だが、黒咲は鋭い眼差しでデニスを睨みつける──その胸に『希望』を宿して…

 

 

………

 

 

──モンスターを斬り裂け!「CNo.39希望皇ホープレイ」!!ホープ剣カオススラッシュ!!──

 

 

──デュエルモンスターズを…こんな事に使うんじゃねぇ!!穿て!『CNo.101S・H・Ark Knights』!!──

 

 

──遅くなって悪かった…!戦いはこれからだ!いくぜ!みんな─!!──

 

 

それは、絶望の中に差し込んだ一筋の光……黒咲の心を支える希望だった…!

 

 

………

 

 

『ふーん…その言葉、エクシーズ次元のプロデュエリスト養成校で学んだのかい?』

 

「貴様…何故知っている…!」

 

『実は…キミの事はよく知っているんだ…とっておきのネタを話してあげるよ、ボクがハートランドにいた時のね…!!』

そして、悪意を開放して饒舌になったデニスは衝撃の事実を語り始める。

 

 

アカデミアのエクシーズ次元への侵攻直前、プロフェッサーの密命によってハートランドを訪れていた事。

 

ハートランドで目的の人物──黒咲の妹、瑠璃を見つけて戦争のゴーサインを出した事…そして、瑠璃を誘拐した犯人の1人である事を…!

 

 

 

 

「貴様…!!アカデミアは瑠璃に何をするつもりだ!!」

 

『さぁね?それはボクも知らない事さ…そんな事より、瑠璃を助けたいなら…早くアカデミアに乗り込めば?元々、1人でも行くつもりだったんだろ?』

 

「ああ…そうだな……だが!それは…!瑠璃を攫い、俺の仲間達を地獄に突き落とし──ハートランドから笑顔を奪った貴様を倒してからだ!!」

瑠璃誘拐の事実を知った黒咲は激昂……そして革命の翼は舞い上がる!

 

 

 

 

「『RUM-ソウル・シェイブ・フォース』発動!ライフを半分払い、墓地の『エヴォリューションファルコン』を特殊召喚し、ランクが2つ高いエクシーズモンスターをエクシーズ召喚する!!」

革命の翼が再び大空へと飛び上がる!

 

 

「勇猛果敢なるハヤブサよ…!怒りの炎を巻き上げ、大地を灼き尽くす閃光となれ!!ランクアップ・エクシーズチェンジ!!飛翔しろ!『RR-サテライト・キャノン・ファルコン』!!」

それは黒咲の新たな力…宙を翔ぶハヤブサが咆哮する!

 

 

「仲間達を狩り…カードという墓地に封じ込めたアカデミアよ!お前を…叩き潰す!!『サテライトキャノンファルコン』の効果発動!ORUを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を800下げる…その効果は墓地の『RR』モンスターの数だけ発動できる!墓地のモンスターは5体だ!」

 

『なんだって…!?』

 

「その炎で…狩られし仲間の怒りを示せ!!」

サテライトキャノンファルコンの翼から業火が放たれる…黒咲やレジスタンスの怒りを宿すその炎は一撃ごとに『混沌巨人』を追い詰めていく…!

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

──分かるか…遊矢、この思いが…黒咲の…オレ達の怒りが…!──

 

「ユート…お前の思い、伝わってくる…でも、こんな怒りをぶつけ合うデュエルなんて…!!」

 

「っ…!いかん!!遊矢!正気に戻るのだ!!」

 

「遊矢!!」

 

「っ…?二人、とも…」

同じ時、遊矢は正気を失いかけていた…ユートの魂が遊矢へと語りかけていたのだ。

だが、『逆鱗』の気配を感じ取った権現坂が遊矢の肩を揺さぶる…それによって遊矢は正気に立ち返った…。

 

 

「怒りに…憎しみに飲まれるな!!そんな事をするのは榊遊矢ではない!!」

 

──…………その、言葉は……──

 

遊矢がデュエルを「争い」に使う事を嫌う事を知る権現坂は遊矢に呼びかける…その言葉は、ユートにも届いていた…。

 

 

Side OUT

 

 

 

 

『く…クソっ…!エンターテイナーである事を捨てたら…アクションカードにも見放された…!!』

そしてデニスはツキに見放されていた…『混沌巨人』による破壊、そして『サテライトキャノンファルコン』の攻撃の余波によってライディングフィールドは大荒れ…アクションカードを何回も取り損ねていた…!

 

 

「バトルだ!『サテライトキャノンファルコン』で『混沌巨人』を攻撃!!狩られし者達の全ての思いを受けて…砕け散れ!!エターナル・アベンジ─!!」

サテライトキャノンファルコンは空を飛び…成層圏まで上昇───その名を示す『衛星砲』を放つ…その破壊の光は混沌の巨人を跡形もなく消し飛ばした…。

 

 

 

デニスLP0

 

黒咲WIN!

 

 

 

 

『け……決着!!デュエルを制したのは黒咲選手……って…ライディングコースをこんなに荒らしてくれちゃって……どうするのよ─!?』

鬼気迫るデュエルが決着し、メリッサの戸惑う実況が響く…ライディングコースは荒れ果て、しばらくは使い物にならないだろう…。

 

『(これがアカデミア、か……俺達の「記録」にある秘密結社との戦いには無かった()()……シティに被害が及ばねばいいが…)』

玉座のジャックはコースの惨状に眉を顰める…そしてアカデミアの脅威を実感したのだった…。

 

 

 

「おう、黒咲って言ったな…ずいぶんと派手にやってくれたもんだ……治安維持局、そして行政評議会の命令でデニスは拘束させてもらうぜ」

 

「貴様は…前夜祭のセキュリティか………お前になら、任せる…好きにしろ」

倒れ込んだデニスを見下ろす黒咲…その黒咲を捕らえに現れたのはデュエルチェイサー003──牛尾だった。

前夜祭の様子から遊海が彼に信頼を置いている事を覚えていた黒咲は後を任せ、部屋に戻っていった…。

 

 

 

……………

 

 

「……ユートの思いが、伝わってきたんだ…アカデミアに怒って、憎んでいても──ユートは、デュエルでみんなを笑顔にしたかったんだって…」

 

「俺は…ユートの事は詳しくは知らん……だが、その思いは本物なのだろう……」

 

「……アカデミアは瑠璃だけじゃなくて、シンクロ次元にいたユーゴの幼なじみ…リンも攫った……いったい、なんの為に…?」

 

「アカデミア…お前達の目的は、なんなんだ…!」

デュエルが終わり、ユートの思いを感じ取る遊矢…そして自分とセレナがアカデミアに狙われている事を理解した柚子……悲劇を引き起こし続けるアカデミアへの謎が深まったのだった…。

 



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幕間〜アカデミアの影〜

『………ひとまずは決着がついたようですな……少し真面目な話をするとしましょうか、赤馬零児』

 

「ええ、伺いましょう」

黒咲対デニス戦直後の行政評議会…ホワイト議長は静かに零児へと声をかけた。

 

 

 

『キミも分かっていた通り、我々評議会は融合次元・アカデミアの存在は気付いておった……シンクロ次元にない技術──『リアルソリッドビジョン』を持ち込んだジャン・ミシェル・ロジェという存在を通じてな』

 

『10年前、エンジョイ長次郎が捕まってからトップスとコモンズの対立は激化…それを収めるには「融和」の象徴となるフレンドシップカップの開催…そして暴走を取り締まるセキュリティの強化が急務だった』

 

『そこへロジェの持ち込んだ技術はまさに渡りに船…我らはロジェを飼い慣らそうと考えた…例え、侵略に繋がる目的があったとしても──それがシティの社会秩序を守る為に必要だったのだ』

 

『そこへ…赤馬零児、貴方が率いるランサーズが現れ……そして「次元戦争」の脅威を訴えてきた』

 

「貴方方にとっては都合が悪かった、ロジェが『逃亡者』である事を知らなかった行政評議会から見れば……ロジェの報告でアカデミアの攻撃の矛先がシティに向くのではないかと…そうですね?」

 

『いかにも』

ロジェの存在から『侵略者』融合次元の存在に気付いていた行政評議会…彼らはシティの平穏を守る為にロジェとランサーズを天秤に掛けようと考えていた…。

 

 

 

『我らはロジェとキミ達を天秤に掛け、どちらに味方をするのか──どちらを取り込もうかと考えておった…だが、想定外の事が起きた』

 

「規格外の決闘者、白波遊海の干渉…」

 

『そう…まさに規格外、彼はシティの混乱を最小限に、次元戦争の脅威…ロジェの野望を白日の下に晒し、トップスとコモンズの手を取り合わせ、さらに大きな「脅威(冥界の王)」からシティを守ってくれた……であれば、我らが選ぶべき答えは1つしかない───赤馬零児、行政評議会はキミ達ランサーズを支持する』

 

「───それは…」

それは『行政評議会』の総意、シティに巣食った『闇』を打ち砕き、人々の心を繋ぎ、「脅威」を祓ったランサーズへの──遊海への感謝の対価だった。

 

 

 

「ホワイト議長…それは我々にとっても有り難い申し出です……ですが、まだ()()にして頂きたい」

 

『なんと…?』

───だが、零児はその申し出を保留にしてほしいと答えた…思わぬ反応にホワイト議長は驚いている。

 

 

『キミ達の目的は我々との同盟の締結のはず…何故、留保すると?』

 

「この同盟は──()()()()()ではないからです、これは白波遊海が()()()1()()()もたらした成果……こんな形で同盟を結んだとしても──我々はともかく、シティの人々は納得しないでしょう」

 

『むぅ…確かに、それも一理ある…』

零児はホワイト議長に告げる…シティを変えたのはランサーズではなく、遊海()()の力…ランサーズ自体の力を示せていない現状では、シティの人々を納得させる事はできないと…。

 

 

「私は…ランサーズのメンバー達を信じています、勝ち残った彼らの()()がフレンドシップカップを勝ち上がり──キングとのデュエルで同盟を結ぶに足り得る戦いを見せてくれると」

 

『そうか…それがランサーズの指揮官であるキミの判断ならば…それを尊重しよう』

零児の決意を聞いたホワイト議長は静かに頷く…その表情は穏やかなものだった。

 

 

『だが、同盟を結ぶ事とこれは別だ…ランサーズがシンクロ次元に滞在する間、行政評議会はキミ達をしっかりとサポートさせて貰おう、ですな?議長』

 

『はい、改めてよろしく…赤馬零児君』

 

「ありがとうございます」

同盟自体は先送りとなったものの…行政評議会とランサーズはしっかりとした協力体制を結ぶ事ができたのだった。

 

 

 

 

「では、ホワイト議長…先程拘束されたデニスとの面会許可を頂きたい…彼に確認したい事があります」

 

『分かりました、すぐに準備を──おや?デュエルチェイサー003、どうし──なんですと?』

 

「何か問題が?」

 

『────デニスが逃亡した、と…!』

 

「っ──!!」

協力体制を結んだ評議会に対し、零児はアカデミアのスパイであったデニスとの面会を求める…だが、それは一歩遅かった…!

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「まったく…なんで遊海はこういうトラブルとばっかり関わるんだろうなぁ……次元戦争なんて、「未来人(イリアステル)」との戦いレベルの眉唾だぜ…」

黒咲とのデュエルに敗北したデニスは気絶したまま牛尾や評議会の使者達に護送されていた…そんな中で次元戦争の事を愚痴っていた牛尾だったが…。

 

 

パン!パン! バシュー!!

 

 

「んなっ…煙幕─!?デニスを守れ!!」

突然、爆竹の音と共に周囲が煙に包まれる、咄嗟にデニスを守る牛尾達だったが──

 

 

「くそっ…!?なんつう手際だ!?」

煙が晴れた時…デニスは連れ去られた後だった…。

 

 

 

…………

 

 

 

『っ…ぐ……ここは…?』

 

「ようやくお目覚め?」

 

『キミは─?』

気付いた時、デニスはシティの裏路地にいた…そしてその傍にはキャンディーを持った青髪の少年の姿があった…。

 

 

「僕は紫雲院素良、アカデミアのデュエリストさ」

 

『っ…そうか、思い出したよ…キミもアカデミアだったんだね』

 

「それは僕のセリフさ、キミもアカデミアで…瑠璃の件にも関わってたなんてさ」

 

『ははっ…ボクは任務を遂行しただけさ…』

お互いにほぼ初対面の素良とデニスは挨拶を交わす…。

 

 

『さて…あとは柚子とセレナをユーリに引き渡さなきゃ……イタタ…』

 

「──それは僕が()()()()、君はアカデミアに戻るんだ…」

 

『ちょっ、何を言ってんの!?』

デニスは素良の思わぬ言葉に驚愕する…デニスの任務は『セレナの監視』と『柊柚子の拉致』…その為にデニスはランサーズに潜伏し続けたのだ。

 

 

『キミ1人じゃヤバイって!?この次元にはあのバケモノみたいなデュエリスト…白波遊海がいる!アレを倒すのは不可能だよ!?』

 

「僕はセレナを連れ戻すように()()、プロフェッサーから命令されてる…これは僕の仕事だ、それに…僕が助けなかったら、君はもう捕まってた…その体じゃ、任務遂行は無理だよ──だから、早く戻るんだ」

 

キィン─!

 

『まっ…!?』

素良はデニスの言葉を無視してデニスを強制送還する…!

 

「アカデミアに戻ったらプロフェッサーに伝えてほしい、必ず任務はやり遂げるから──()()はいらないって」

 

『ちょっ、素良──!』

何かを言う前にデニスはアカデミアへと転送された…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──紫雲院素良、お前がもしも…アカデミアの理念が間違っていると思うなら…ここから逃げろ、そして()()──

 

 

──頼れ?誰を…?──

 

 

──()()()──

 

 

──英雄…?というか、貴方がそんな事言っていいの?みんなから……──

 

 

──誰になんと言われようと関係ない、俺は……あの人が来るまで()()()()()、デュエルアカデミアの誇りを…!──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………頼れ、って言われてもなぁ……何処にいるんだよ、その()()って…」

シティの裏路地で素良は小さくため息を吐いた…。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

『フレンドシップカップ出場者達は!』

 

『移動中の黒咲以外は部屋に……彼らは無関係のようですな』

 

『赤馬零児、これは……』

 

「…別に潜伏していたアカデミアの人間に奪還されたと考えるのが妥当でしょう……じきに、オベリスクフォースがやって来る可能性があります…!」

 

『オベリスクフォース…アカデミアのエリート部隊、ですか…』

デニスの失踪を受けて行政評議会は周囲を捜索したが、デニスを見つける事ができない……そして零児は最悪の事態を予測した…。

 

 

『赤馬零児君、オベリスクフォースの戦力は……』

 

「基本は3人一組で行動し、デニスが見せた『古代の機械』モンスターによる連携、人海戦術を得意としています…能力的にはデュエルチェイサーズ3人以上、スタンダードでの経験を踏まえれば──2日以内に襲撃を仕掛けてくる可能性があると思われます」

 

『たった2日…!議長、どうします…!?フレンドシップカップを中止──』

 

「いえ、それは悪手かと……シティに大きな混乱を齎す可能性があります、それに『融和の祭典』が中断されれば──再びシティは()()()でしょう」

 

『ならば─キミはどうする?』

 

「予定通りに大会を続行…その上でデュエルパレス以外のスタジアムや学校をライブ中継会場として開放し、トップス・コモンズを問わない避難所を兼ねさせます……そして襲撃してきたオベリスクフォースを最大限の戦力で迎え撃つ…私はその方法でスタンダード次元を襲ったオベリスクフォースを撃退しました」

 

『なるほど、合理的な策…やはりキミは切れ者だ』

アカデミアの襲撃を前に慌てる行政評議会…だが、一度経験のある零児は最善の作戦を提示する。

 

 

『赤馬零児君、オベリスクフォースの目的は……』

 

「ランサーズのメンバー、セレナ…並びに柊柚子の確保、と思われます」

 

『わかった、二人のデュエルの際は近くにセキュリティを配置しよう…それから──白波遊海の行方は…?』

 

「……不明です、あのセルゲイ戦のダメージは無視できません……動ける状態かどうかも……ですが、彼がいなくとも──ランサーズは全力でオベリスクフォースに応戦します」

 

『……頼りにしています、シティを…必ず守りきるのです…!』

秘密裏に…行政評議会はアカデミアの迎撃準備を始める事となった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【帰還したデニスの報告により、シンクロ次元の街・シティにセレナと柊柚子がいる事が判明した……バレット、お前にはオベリスクフォースの準備が整い次第、シンクロ次元に向かってもらう】

 

『はっ…!汚名返上の機会を賜り、感謝いたします…!』

融合次元・アカデミア…玉座の間、プロフェッサー・赤馬零王はシンクロ次元への攻撃、セレナ奪還の指示をセレナの付き人であったバレットに下していた…。

 

 

【じきにユーリも合流する、彼と協力して──】

 

『いいえ、その前にセレナ様と柊柚子を捕らえてみせます…!』

アカデミアの切り札の1つ、ユーリを差し向けるプロフェッサー…だが、バレットはその前にセレナ達を確保すると豪語する。

 

 

【そうか…ならば、さらに1つ任務を追加する……場合によっては()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『はっ…!?その任務とは…?』

 

【それは────】

 

 

 

シティに混沌の影が伸びるまで…あと少し…。

 



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疾走する歌姫とくず鉄の戦士達〜2回戦開始!〜

こんにちは!S,Kです!

シンクロ次元へと迫るオベリスクフォースの影…その中でデュエリスト達は次なる戦いへと向かう…!


それでは、最新話をどうぞ!


『シティは1つ!みんな友達!フレンドシップカップも3日目!2回戦を迎えたわ!』

快晴のシティにメリッサの実況が響く…本来の『物語』よりも雰囲気は良く、DM世界のWRGPやWDCのようにトップスもコモンズもなく…人々はデュエル観戦を楽しんでいた。

 

 

 

……混沌の影が音もなく忍び寄っている事も知らずに…。

 

 

 

『ここで行政評議会・治安維持局からのお知らせです!今回のフレンドシップカップの盛り上がりを受けて海浜スタジアムやシティドームなどシティ内数カ所の会場をパブリックビューイング会場として無償開放します!盛り上がるデュエルをみんなで観戦しましょう!!………ずいぶんと太っ腹ね?どうしたのかしら??』

行政評議会からのお知らせを読み上げたメリッサは首を傾げた…。

 

 

 

…………

 

 

 

「パブリックビューイング…?なんで急に…たしかに盛り上がってるけど…?」

一方その頃、ペントハウスで中継を見ていた遊矢も傾げていた…こんな事がスタンダード次元でもあったからだ…。

 

 

『ランサーズ諸君、そして柊柚子、聞こえているか?聞こえているならば応答してほしい』

 

「零児…!?デュエルディスクから!?」

そんな時、シンクロ次元に来てから繋がる事のなかったランサーズのデュエルディスクの通信が開く…慌てて画面を見ると9分割された映像の中に零児に柚子、権現坂など…デニスを除いた全員の姿が映し出されていた。

なお、遊海に当たるであろう部分は砂嵐になっている…。

 

 

『行政評議会との協議の結果、我々の使う周波数のジャミングを解除してもらう事ができた…今回の通信はそのテストも兼ねている、通じているか?』

 

『おう!ばっちり聞こえてるぜ!』

 

『…テストにしてはずいぶんと急だな』

 

『聞こえてるよ、兄様』

 

『ああ、問題ない』

零児の問いかけに沢渡や黒咲、零羅やセレナが応える。

 

 

『全員に情報を共有する、昨夜のデュエルでアカデミアのスパイと判明し、拘束されていたデニス・マックフィールドが……何者かの手によって逃亡した───シンクロ次元にオベリスクフォースが侵入する可能性がある』

 

『なんだと!?』

 

「オベリスクフォースが!?」

 

『くっ…!』

零児による情報共有…それを聞いた遊矢や権現坂は驚き、黒咲は忌々しげな表情を見せる…。

 

 

『奴らの目的はおそらくセレナの奪還、並びに柊柚子の確保と思われる……だが、フレンドシップカップはこのまま()()する』

 

『舞網チャンピオンシップの時と同じか?デュエルパレスや他のスタジアムに人を集めて避難させるってヤツ?』

 

『その通り、被害と混乱を最小限に…我らランサーズ、そして治安維持局・デュエルチェイサーズによる連携でオベリスクフォースを撃退する』

沢渡の言葉を肯定した零児は舞網チャンピオンシップ・バトルロイヤル同様の撃退作戦をランサーズに伝える…!

 

 

 

『ただし…昨夜の黒咲とデニスのデュエルによってデュエルパレスのライディングコースは復旧中…よって、2回戦以降の試合はシティのデュエルレーンを使って行われる……柊柚子、セレナ…君達はオベリスクフォースの襲撃が確認され次第、デュエルを中断、直ちに評議会ビルに撤退するように…これは、()()()()()()()()()でもある』

 

『心配するな零児!オベリスクフォースになんて私は負けないぞ!』

 

『セレナ…危ない事はしないでね、みんな心配しちゃうから…』

 

『うぐっ…!?お前たち…なんで、そんな呆れた目で見るんだ!?私は強いんだぞ!』

 

『『「『(いや、前科があるからなぁ…)』」』』

オベリスクフォースになんて負けないと張り切るセレナだったが、前科(オベリスクフォースの罠にかかる、デュエルチェイサーズに無策で突っ込むetc…)を知っている月影や遊矢などは頭を抱えていたり、微妙な表情を見せるのであった。

 

 

『……ともかく、これはピンチであり、またとないチャンスでもある…セレナ達とシティをオベリスクフォースから守りきれば、人々が我々の事を認めてくれる事にも繋がる……各々、準備を怠らぬように』

 

『わかったぜ…!沢渡劇場、第二幕だ!』

 

『俺はまだオベリスクフォースとのデュエルは経験しておらんが…シティの人々を危険に晒さぬよう、全力で戦おう…!』

 

『承知…!』

零児の言葉に沢渡や月影が力強く頷く!

 

 

「あっ…零児、ちょっと待ってくれ!お客さん達はともかくとして…他のフレンドシップカップ出場者…徳松さんやクロウ達には伝えたのか?」

 

『……他の参加者達には行政評議会から「トラブルが発生する可能性がある」と伝えてもらっている、オベリスクフォース迎撃に関しては…彼らの意志を尊重したいと思っている……ひとまず、無闇には伝えないようにしてもらいたい』

 

「っ……わかった」

 

『遊矢…』

他のフレンドシップカップ参加者への対応を聞かされた遊矢は渋々了承する……その脳裏に蘇っていたのは────

 

 

 

『覚悟ができていない者を戦わせてしまったら───私は、()()()に合わせる顔がない』

 

 

 

「零児、お前……」

零児の言葉に遊矢は目を見開く……零児は、自分の()()を悔いていたのだと…。

 

『連絡は以上だ、2回戦に出場する榊遊矢、黒咲、セレナ、柊柚子…全員の健闘を祈る』

零児の激励の言葉と共に通信は終了した。

 

 

 

Side零児

 

 

 

『ランサーズへの連絡はできたかな?』

 

「ええ、お気遣い感謝します」

通信を終えた零児は行政評議会へと向き直る…ホワイト議長はいつも通りの朗らかな表情で笑っていた。

 

 

ピピッ

 

 

「むっ…メール…?」

そんな時、零児のデュエルディスクにメールが届く…その内容は───

 

 

 

『赤馬零児へ

 

情報共有に感謝します。

 

現在、白波遊海は戦闘不能の状態が続いている為、戦力の頭数には数えないように。

オベリスクフォースによる侵攻が激しい場合、幼い龍亞・龍可を除いたシグナー、不動遊星、クロウ・ホーガン、ジャック・アトラス、十六夜アキに助けを求めれば力になってくれるはずです。

 

最悪の場合、柊柚子・セレナの両名を保護する準備は整えてあるので、必要があれば連絡を。

 

 

          白波遊海 代理 レイン彩華』

 

 

 

 

「っ…やはり、厳しいか…」

それはアヤカからの現状連絡…最大戦力の不在を伝えるモノだった…。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

『───さぁ、1回戦を勝ち抜いた8名から準決勝に進むのは誰なのでしょうか!?注目の第一試合は──柊柚子選手対不動遊星選手です!』

メリッサの実況がデュエルパレスに響き渡る…そして第一試合の組み合わせが明かされた…!

 

 

 

『まずは人気急上昇!キュートで可憐なエンタメ天使!柊柚子選手、14歳!そして昨日、凄まじい強さを見せつけたメカニックデュエリスト!なんと、あのモーメントの開発者、不動博士の息子さん、不動遊星選手の入場です!』

デュエルパレスのスタート地点に桃色のDホイールの柚子、そして愛機、遊星号に乗った遊星が並び立つ!

 

 

『えっと…よろしくお願いします!遊星さん!』

 

「ああ、よろしく頼む……トラブルがあったら、臨機応変に対応しよう」

 

『えっと…はい!!』

お互いを挨拶を交わす遊星と柚子…二人に大きな気負いはなく、普段通りだった。

 

 

『知っての通り、昨日の黒咲対デニス戦でデュエルパレスのコースが破損してしまったので…2回戦以降の試合はシティのライディングレーンで行われるわ!それでは…アクションフィールドオン!フィールド魔法「クロス・オーバー・アクセル」!!』

メリッサの宣言と共にアクションフィールドが発動、デュエルレーンが展開していく!

 

 

『先攻・後攻はデュエルパレスのゲートを通過した順番となります!それでは……スタート!!』

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

メリッサの宣言と共に遊星と柚子が加速する、先攻は……遊星だった!

 

 

 

 

遊星LP4000

柚子LP4000

 

 

 

「オレのターン!」

「自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札の『ジャンク・フォアード』は特殊召喚できる!」

各部で赤い動力装置が輝くロボットが現れる! DEF1500

 

「さらに『スチーム・シンクロン』を召喚!」

機関車を模した小型ロボットが現れる! ATK600

 

 

「オレはレベル3の『ジャンクフォアード』にレベル3の『スチームシンクロン』をチューニング!」

 

3+3=6

 

「星雨を束ねし聖翼が…世界を巡る風となる!光差す道となれ!シンクロ召喚!レベル6!『スターダスト・チャージ・ウォリアー』!」

聖なる翼を背負う蒼き戦士が現れる! ATK2000

 

 

「『スターダスト・チャージ・ウォリアー』の効果発動!シンクロ召喚に成功した時、デッキから1枚ドローできる!…オレはカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊星LP4000

チャージウォリアー 伏せ2 手札2

 

 

 

 

『見ててね、遊矢…私も頑張る!私のターン、ドロー!』

『私は手札から魔法カード「融合」を発動!手札の「幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト」と「幻奏の音女カノン」「幻奏の歌姫ソロ」を融合!』

柚子の手札から3体の乙女達が融合の渦に飛び込む!

 

『至高の天才よ!気高き共鳴よ!天使の羽ばたきよ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚!!今こそ舞台に情熱の歌を!「幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ」!』

3体の乙女達が融合…快活なる歌聖が現れる! ATK1900

 

 

『「ブルームプリマ」の攻撃力は融合素材になったモンスター1体につき300アップする!攻撃力2800よ!』

 

「なるほど、なかなか良い効果だ…!」

歌姫達が情熱の歌聖に力を与える!

 

ブルームプリマ ATK1900→2800

 

 

『バトルよ!「ブルーム・プリマ」で「スターダストチャージウォリアー」を攻撃!』

 

「罠カード発動!『シンクロン・リフレクト』!自分のシンクロモンスターが攻撃された時、その攻撃を無効にし、攻撃してきたモンスターを破壊する!」

 

『やらせない!はぁっ!』

ブルームプリマの攻撃が跳ね返される寸前、柚子はアクションカードに手を伸ばす!

 

『アクション魔法「ミラー・バリア」!一度だけ、私のモンスターのカード効果による破壊を無効にするわ!』

プリマの前に透明な壁が展開され、破壊を免れる!

 

 

『そして「ブルームプリマ」は1ターンに2回攻撃できる!もう一度「スターダストチャージウォリアー」を攻撃!』

 

「ならば罠カード発動!『くず鉄のかかし』!相手モンスターの攻撃を無効にし、その後、このカードは再びセットされる!」

 

『っう…!?すごい…!』

プリマが歌声による攻撃を放つが、くず鉄のかかしが攻撃を受け止める!

 

『私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!』

 

柚子LP4000

ブルームプリマ 伏せ1 手札1

 

 

 

「いくぞ、オレのターン!ドロー!」

「魔法カード『調律』を発動!デッキから『クイック・シンクロン』を手札に加え、デッキトップのカードを墓地に送る!」

 

墓地送り

 

ドッペル・ウォリアー

 

 

「さらに、手札の『ボルト・ヘッジホッグ』を墓地に送り『クイック・シンクロン』を特殊召喚!」

西部のガンマン風のロボットが現れる! DEF1400

 

「そして!墓地の『ボルトヘッジホッグ』は自分のフィールドにチューナーが存在する時、特殊召喚できる!」

針の代わりに無数のネジを生やしたハリネズミが現れる! DEF800

 

「この効果で特殊召喚された『ボルトヘッジホッグ』はフィールドから離れた時、除外される…そして『クイックシンクロン』は他の『シンクロン』チューナーの代わりとなる!オレはレベル2の『ボルトヘッジホッグ』にレベル5の『クイックシンクロン』をチューニング!」

 

2+5=7

 

「集いし叫びが木霊の矢となり空を裂く!光差す道となれ!シンクロ召喚!いでよ!レベル7!『ジャンク・アーチャー』!!」

大きな弓矢を構えたくず鉄の弓兵が現れる! ATK2300

 

 

「『ジャンク・アーチャー』の効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体をエンドフェイズまで除外する!ディメンジョン・シュート!」

 

『速攻魔法「融合解除」!『プルームプリマ』をエクストラデッキに戻して、墓地から融合素材になった「プロディジーモーツァルト」「カノン」「ソロ」を特殊召喚!!』

次元を切り裂く矢が直撃する寸前、歌聖は3人の歌姫に分かれる! ATK2800 DEF2000 ATK1600

 

「上手く躱されたか…なら、バトルだ!『ジャンクアーチャー』で『カノン』を攻撃!スクラップ・アロー!」

強力な矢が歌姫を貫く!

 

「そして『スターダストチャージウォリアー』で『ソロ』を攻撃!シューティング・クラッシャー!!」

 

『くうっ…!?』

無数の兵装が歌姫を吹き飛ばす!

 

柚子LP4000→3600

 

 

「そして『スターダストチャージウォリアー』は特殊召喚された

モンスター全てに攻撃できる!『プロディジーモーツァルト』を攻撃!」

 

『攻撃力の低いモンスターで!?』

 

「そしてこの瞬間、手札の『ラッシュ・ウォリアー』の効果発動!このカードを墓地に送り、『スターダストチャージウォリアー』の攻撃力を2倍にする!シューティング・フルバレット!!」

金色のロボットが力を与える!

 

チャージウォリアーATK2000→4000

 

 

『っ…!アクションマジック「飛翔」!「プロディジーモーツァルト」の攻撃力を600アップするっ…きゃああ!?』

再び放たれた兵装の雨が音姫を粉砕する!

 

プロディジーモーツァルトATK2800→3400

 

柚子LP3600→3000

 

 

「アクションカード…やはり便利だな、オレはこれでターンエンドだ!」

 

遊星LP4000

チャージウォリアー ジャンクアーチャー 伏せ1(かかし) 手札0

 

 

 

『(すごく強い…!徳松さんも強かったけど、本当に隙がない…!!)』

柚子は遊星の強さに驚いていた…攻守共にバランスがよく、付け入る隙を見つけられなかったのだ…。

 

 

 

『私のターン…ドロー!!』

『これなら…!「幻奏の音姫オペラ」を召喚!』

桃色の髪の小柄な歌姫が現れる! ATK2300

 

『「オペラ」は召喚したターンは攻撃できない、私はカードを1枚伏せてターンエンド!』

 

柚子LP3000

オペラ 伏せ1 手札0

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「『ジャンクアーチャー』の効果発動!『オペラ』を除外する!」

 

『アクションマジック「透明」!このターンの間、「オペラ」は相手の効果対象にならず、効果は受けません!』

 

「なるほど…!ならばバトル!『ジャンク・アーチャー』で『オペラ』を攻撃!さらに、アクションマジック『突撃』!攻撃力を600アップする!」

遊星はターンバックでアクションカードを拾い、攻撃力を強化する!

 

アーチャー ATK2300→2900

 

 

『ここ!!罠カード「光子化(フォトナイズ)」!その攻撃を無効にして、次の私のターンのエンドフェイズまで「オペラ」の攻撃力を「ジャンクアーチャー」の攻撃力分アップします!』

アーチャーの矢が光の粒子に変わり、歌姫を彩る!

 

オペラATK2300→5200

 

「なかなかのコンボだ!オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊星LP4000

チャージウォリアー ジャンクアーチャー 伏せ2 手札1

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『一気に攻める!速攻魔法「サイクロン」発動!遊星さんの伏せカードを破壊!!』

吹き荒れる突風が「くず鉄のかかし」を吹き飛ばす!

 

 

『バトルよ!「オペラ」で「スターダストチャージウォリアー」を攻撃!!』

 

「罠カード発動!『ディメンション・ウォール』!このバトルのバトルダメージは…相手が受ける!」

 

『えっ!?嘘っきゃああ〜!?』

オペラの歌声の波動がスターダストチャージウォリアーを破壊する…だが、その反動は次元の扉を通って柚子に襲いかかり、デュエルは決着した!

 

 

 

柚子LP0

 

遊星WIN!

 

 

 

 

 

『決着!!遊星に果敢に挑んだ柚子ちゃんでしたが…遊星選手が強い!!ノーダメージで準決勝進出です!』

ヘリコプターでライディングに追走していたメリッサの実況が響く…結果として負けてしまったが、会場は温かい拍手に包まれていた。

 

 

 

『ああ〜…もう少しだったのに…』

 

「お前のコンボも、対応力も見事だった…だが、アクションカードに頼り過ぎたな…毎回、適したカードを拾える訳じゃないだろう?」

 

『そうですね…アドバイスありがとうございます!』

 

「ああ、いいデュエルをありがとう」

スタジアムに戻ってきた遊星と柚子は笑顔で握手を交わした…。

 

 

 

 

 

 

『柚子…』

一方その頃、物陰からその様子を見つめる者がいた…それは素良だった。

デニスを強制送還した彼はスタジアムから柚子のデュエルを見ていたのだ。

 

 

『スタンダードにいた頃よりも強くなってる…デュエルにも迷いがない、お客さん達もあんなに楽しそうで……』

素良がシンクロ次元に来たのは柚子を捕らえる為ではない──柚子を護る為に来たのだ。 

 

バトルロイヤルにおける遊矢とのデュエル後、融合次元に戻った素良はセレナと間違われて捕らわれたであろう柚子を探し回ったが…その姿を見つける事ができなかった。

さらに、その中でアカデミアのボス、プロフェッサーが柚子の身柄も狙っていた事を知った……そして素良の思いは揺らいだ。

 

 

幼少期からアカデミアで厳しい訓練を強いられていた素良には『友達』がいなかった…右も左もライバルだらけ……共に笑い合い、助け合う……そんな者はいなかった。

 

しかし、スタンダード次元に潜入して…遊矢や柚子、遊勝塾の子供達と出会った。

身元も分からない自分を仲間として、友達として認めてくれた掛け替えのない()()達───その触れ合いが、そして遊矢とのデュエルがアカデミアの洗脳に近い教育で冷めきっていた素良の心を融かしたのだ。

 

 

そんな中、素良はアカデミアでとある人物と出会った…その人物はアカデミアにおいて誰からも慕われ、尊敬される男──だが、その人物が素良に掛けたのは思わぬ言葉だった。

 

 

──アカデミアから逃げろ、英雄を頼れ──

 

 

その言葉に背中を押された素良は柚子の行方を探して次元を越えた、そしてスタンダード次元を経由してシンクロ次元へと辿り着いたのだ。

 

 

『僕は絶対に柚子を…友達を守るんだ…!』

決意を固めた素良はデュエルコースを見つめる…シンクロ次元の人々に笑顔を見せる柚子の力になる方法を考えながら…そして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……というか、本当に()()って誰なのさ!?せめて特徴を教えてよ帝王(カイザー)──!!』

 

………そして、本当に最低限の情報しか教えてくれなかった伝説のデュエリストへ愚痴を言いながら…。

 



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熱戦!フレンドシップカップ!〜覚醒するデュエリスト達〜

こんにちは!S,Kです!

いや、前回のアンケート結果は意外でしたね…見てくれる方の大半は決闘者経験のある方でしたが…まさか、デュエリストじゃない方も見てくれているとは…。

色々な方に見てもらえて嬉しい私なのでした!

それでは、最新話をどうぞ!


『それでは次の対戦に移ります!2回戦第二試合の組み合わせは──榊遊矢選手対シンジ・ウェーバー選手です!』

 

快晴のデュエルパレスにメリッサの実況が響く…次なる対戦は遊矢とシンジの対決だった。

 

 

 

『よぉ、遊矢…手加減はしないぜ!』

 

「シンジ…なんだか、雰囲気が変わった…?」

スタートラインにつき顔を合わせる二人…そんな中で遊矢はシンジの変化を感じ取っていた。

 

収容所までのシンジは常に怒っているような雰囲気があった…今にして思えば、コモンズを虐げるトップスへの不満、それを変えられないコモンズの仲間への不満がシンジを追い詰めていたのだろう…。

だが、今のシンジは穏やかな…しかし力強い闘志を纏う以外は自然体に見えたのだ。

 

 

 

『お前の仲間…月影って奴のおかげさ、目標を見失ってた俺に……何をするべきか、思い出させてくれた……俺はキングになる、シティを…本当の意味で暮らしやすい街にする為に!』

 

「そっか…なら、オレも負けられない!ジャックにリベンジする為に!!」

新たな決意を抱くシンジと遊矢…二人のデュエルが始まった!

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対シンジ

 

 

 

デュエルの流れを支配したのはシンジだった、革命への『狂気』から開放されたシンジは『B・F』の真価を発揮…モンスター達の絆を駆使して遊矢を追い詰めていく。

しかし、遊矢も負けてはいない…ペンデュラム召喚やアクションカードを駆使して必死にシンジへと食らいつく……だが、ついに残りライフ900まで追い詰められてしまう…!

 

 

「(オレは決めたんだ…みんなを笑顔にできるデュエルをする、ジャックにリベンジする…そして、全ての戦いを終わらせて…みんなで舞網に帰るんだ…!)オレのターン…ドロー!!」

様々な思いを胸にカードを引く遊矢…その1枚が新たな風を呼び込む!

 

 

「魔法カード『マッチポンプ』発動!デッキからカードを1枚ドローして、レベル4以下のモンスターなら特殊召喚し…それ以外のカードなら除外する!ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターがペンデュラムモンスターだった場合は破壊され、エクストラデッキに送られ、オレは特殊召喚を行えなくなる!───ドロー!」

希望を繋げる1枚…遊矢の引いたカードは────

 

 

 

「このカードは───『調律の魔術師』…!?守備表示で特殊召喚!!」

遊矢が引いたのはジャックがサムへと託した白き少女魔術師…その効果は────

 

「このカードが特殊召喚された時、相手は400ポイントライフを回復し、自分は400ダメージを受ける!っう!!」

 

『おい遊矢!?なんでそんなカードいれてんだ!?』

『調律の魔術師』の効果でダメージを受けた事に思わず驚くシンジ…観客やメリッサ達も呆れてしまっていた…。

 

 

『(あのカードは…コモンズのサムという子供に渡したはず───何故、榊遊矢が持っている…?)』

一方、玉座のジャックは静かに驚いていた…自分の『想い』を込めたカードを遊矢が持っている事に……ジャックがその理由を知るのは──少し先の話になるだろう。

 

 

………

 

 

『「B・F─降魔弓のハマ」の効果発動!俺の墓地の「B・F」モンスター1体につき300ダメージを与える!』

 

「まだだ!アクションマジック『アンコール』発動!オレの墓地のアクションマジック『加速』の効果を発動する!効果ダメージは0だ!」

デュエルは進んでいく…『調律の魔術師』は破壊されたものの、『EMドラネコ』のペンデュラム効果やアクションマジックで窮地を凌いだ遊矢…だが、ピンチは変わらない…!

 

 

『今回は勝負ありだな…!あんなカードを入れてるから……』

 

「いいや、オレは最後まで諦めない!どんなカードにだって、必ず役割がある!信じれば…必ずカードは応えてくれる!!」

自分の勝利を確信するシンジ…だが、遊矢は諦めずにデッキに手をかける!

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

 

『なら、ダメ押しだ!永続罠「蜂の陣」!相手が特殊召喚する度に「ハマ」の攻撃力は400アップする!』

それは特殊召喚を多用する遊矢へのメタカード…だが、窮地の中で遊矢は冷静だった。

 

 

「(引いたカードは魔法カード『死者蘇生』──墓地にあるカードは───)」

『死者蘇生』で蘇らせるべきモンスターを考える遊矢……その脳裏に浮かんだのは──『調律の魔術師』の姿だった。

 

 

「『調律の魔術師』───そうか、お前は()()()()()()()のか…!」

それは勝利を掴む為の方程式───繋がる絆が新たな力を目覚めさせる!

 

 

「ペンデュラム召喚!エクストラデッキから舞い戻れ!『EMシルバー・クロウ』!『刻剣の魔術師』!」

振り子の軌跡が銀狼と時計の針のような剣を持つ魔術師を呼び戻す!

 

『っ…ペンデュラム召喚なら1度で2体のモンスターを呼び出せる「蜂の陣」の効果で「ハマ」の攻撃力は400アップする!』

 

「そしてオレは『死者蘇生』を発動!力を貸してくれ…!『調律の魔術師』!!」

 

『んなっ…!?どうしてそのモンスターを!?』

そして、再び呼び出される『調律の魔術師』…その効果で遊矢のライフは残り100に、シンジのライフは3600となる…!

 

 

「いくぞ…!オレはレベル4の『シルバークロウ』とレベル3の『刻剣の魔術師』にレベル1の『調律の魔術師』をチューニング!!」

 

『なにっ─!?』

それは予想外の一手…シンクロ次元で得た『絆』が遊矢の新たな力を呼び起こす!

 

 

「剛毅の光を放つ勇者の剣──今ここに閃光と共に目覚めよ!!シンクロ召喚!レベル8!『覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)』!!」

それは白い衣と魔術師の鎧を纏いし双剣士──その名は『覚醒の魔導剣士』、遊矢が目覚めさせた新たな力である!

 

 

『ここでシンクロ召喚か…だが!「蜂の陣」の効果で「ハマ」の攻撃力は4000にアップする!攻撃力2500のモンスターに何ができる!』

 

「いくぞ!『エンライトメント・パラディン』の効果発動!魔術師モンスターをシンクロ素材とした事で墓地の魔法カード『ギャップパワー』を手札に加える!」

 

『なにっ!?』

それは時を操る奇跡の力…周囲の時間が反転し、遊矢は逆転の一手を手にする!

 

 

「『ギャップパワー』の効果発動!『エンライトメントパラディン』の攻撃力はお互いのライフポイントの差の半分アップする!オレとシンジのライフポイントの差は3500!」

 

『攻撃力4250だと!?』

 

「『調律の魔術師』のおかげだ!その効果でライフポイントの差が広がり、『エンライトメントパラディン』の攻撃力を上げる事ができた!!」

デュエルモンスターズには様々なカードが存在する…一見、デメリットしかないような効果を持つカードでも──組み合わせによって、思わぬ力を発揮する!!

 

 

「バトルだ!『エンライトメントパラディン』で『ハマ』を攻撃!!」

 

『ぐあああっ!?だが…俺のライフは残ってる─!』

双剣を連結させた魔導剣士が蜂の戦士を両断する!

 

「『エンライトメントパラディン』のさらなる効果発動!このモンスターが相手モンスターを破壊した時、その攻撃力分のダメージを与える!!」

 

『4000のダメージ、だと!?ち、チクショー!!?』

それはダメ押しの一撃…蜂の戦士は絆の魔導剣士によって敗れたのだった…。

 

 

シンジLP0

 

遊矢WIN!

 

 

 

『決まった─!絶体絶命の窮地から見事な逆転勝利を決めたのは榊遊矢選手だ─!!』

メリッサの実況がデュエルパレスに響く…見事な逆転勝利にスタジアムは大歓声に包まれた!

 

 

『あーー負けた負けた!!完敗だ!もうちょっとだったんだけどなぁ!』

 

「危なかったのはオレの方だよ…『調律の魔術師』がオレに力を貸してくれたから、勝つ事ができたんだ」

 

『へっ…「不必要なカードなんてない、全てのカードには必ず役割がある」…それ、遊星からの受け売りだろ?俺も聞いた事あったのにな……』

デュエルパレスに戻ってきた遊矢とシンジが言葉を交わす…シンジの顔は晴れやかだった…。

 

 

 

…………

 

 

 

『さぁ…続いての組み合わせは〜……クロウ・ホーガン選手対黒咲隼選手です!!お互いに鳥獣族を使う二人はどんなデュエルを見せるのか!!………あんまりコースを壊すのはやめてね!?』

再びメリッサの実況が響く…次なる戦いはランサーズの黒咲、そしてクロウの戦いだった。

 

 

「アカデミアはあらゆる所に入り込んでいる……貴様もそうなら容赦はしないぞ…!」

 

『おいおい…オレはお前らの──白波遊海の味方だっつーの……赤き竜の痣「ドラゴン・テール」に誓ってな』

スタートラインについた黒咲は殺気立っていた…ランサーズにアカデミアのスパイが入り込んでいて、なおかつ逃亡した事を知って疑心暗鬼に陥っていたのだ。

一方のクロウは遊海の名前と右腕の痣を示す事で黒咲を落ち着かせようとするが…。

 

 

「どうだか…!アカデミアは、必ず殲滅する…!」

 

『ったく!少し頭を冷やしてやる必要があるみたいだなぁ!?』

黒咲は『仲間』と認めた者には寛容だが……それ以外には辛辣な面もある……このデュエルの行方は────

 

 

 

デュエルダイジェスト 黒咲対クロウ

 

 

 

黒咲のデュエルの危険性を考慮してシティのライディングルートで最も大きく、シティへの被害が最小限で済む中央環状ルートで行われる事になった黒咲とクロウのデュエル。

シンクロとエクシーズの違いはあれども、モンスター同士の絆によって大量展開を得意とする『BF』と『RR』の戦いは白熱…最初は黒咲を宥めようとしていたクロウも闘志に火が点いてデュエルは激しさを増していく。

 

だが、その中で1つのトラブルが起きてしまった…!

 

 

 

「っ…!?クロウ!ストップだ!!」

 

『デュエルに待ったはねぇんだよ!「ABF-驟雨のライキリ」の効果発動!!フィールドの「BF」モンスター1体につき、相手フィールドのカード1枚を破壊する!「RR-ブレイズ・ファルコン」を破壊する!』

 

「っ─!罠カード発動!『RR-デスパレード』!フィールドに『RR』モンスターが存在する時!破壊効果を無効にして1枚ドローする!!」

デュエル終盤、「BF-朧影のボウフウ」によって墓地のエース「驟雨のライキリ」をファントムシンクロと称して復活させたクロウ…だが、その直後に先程まで荒ぶっていた黒咲の様子が変わる…だが、ヒートアップしていたクロウはその()()に気付く事ができず、黒咲を追い詰める…!

 

 

 

…………

 

 

 

「っ──!!貴様、何故わからん!!()()()()()()()()()()()!!!」

 

『えっ……ばっ、タナー!?!?』

 

「わっ…うわああああ!?たすけてぇぇ─!?」

しびれを切らしてクロウへと叫ぶ…そこでクロウはようやく気付いた、『ライキリ』の背中にクロウが世話する子供達の中の最年少、タナーがしがみついていたのだ。

 

実は、環状ルートには一か所だけデュエルレーンを跨ぐ廃工場の通路がある…クロウの勇姿を近くで見ようとアマンダ、フランク、タナーの3人はそこで応援していたのだが…高速のライディングデュエルに加え、鳥獣族モンスター達の巻き起こす旋風にタナーが巻き込まれ、飛ばされてしまっていたのだ…!

 

 

『っ!!やべぇ、オートパイロット中は停まれねぇ─!?』

追走していた黒咲はその異変にいち早く気付いて対処しようとしていた…だが、この次元のDホイールはそこまで融通が効かない─!

 

「わっ……うわああああ!?」

 

『タナー!!』

背中に掴まっていたタナーの握力がついに限界を迎えてしまう…そしてタナーは『ライキリ』の背中から滑り落ち───

 

 

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

 

 

 

 

《ガガァァッ!!》

 

 

「なにっ!?モンスターが──!?」

 

『ぶ、「ブラック・フェザー・ドラゴン」!?』

 

「わ、わ…とんでる〜!?」

クロウの赤き竜の痣が強い光を放つ、それに呼応するようにエクストラデッキから光が飛び出し、タナーを受け止める──その正体はクロウのシグナーのドラゴン──『ブラック・フェザー・ドラゴン』だった…!

 

 

 

《ガガァァ──!!》

 

『ブラックフェザードラゴン…っ…!』

タナーを背中に乗せた黒羽のドラゴンが咆哮する…その咆哮はまるでクロウに対して怒るように大きかった。

その咆哮を聞いたクロウは1つの「記録」を見る──

 

 

 

──守りてぇ…あいつらの笑顔を!あいつらに受け継がれる、ピアスンの遺志を!!──

 

 

『これは…』

それは別世界のクロウの『意志』──子供達を守る為に戦った『原点』の記憶───「クロウ・ホーガン」が忘れてはならない大切なモノだった…。

 

 

『っ…すまねぇ、ブラックフェザードラゴン……少し熱くなり過ぎた…』

 

《……カァ》

ヒートアップし過ぎた事を謝るクロウ…それを聞いたブラックフェザードラゴンは小さく鳴くとタナーをアマンダ達の待つ場所へと降ろし、静かに消えていった…。

 

 

 

『悪かったな、黒咲……』

 

「謝罪するのは俺の方だ……アカデミアのスパイと疑って悪かった…」

デュエルが仕切り直される前にクロウは黒咲へと謝る…だが、それは黒咲も同じ……クロウが子供達の心配をした事で黒咲はクロウがアカデミアではないと悟ったのだ。

 

 

「俺の故郷にも…俺に声援を送ってくれる子供達がいた……俺が戦うのは、アカデミアを殲滅し──その子供達を守る為……それを思い出す事ができた……」

 

『へっ…守るモノがあるのはみんな一緒だな……さて、仕切り直しだ!思いっきりかかってこい!』

 

「ああ…言われずとも!」

お互いに似た者同士だったクロウと黒咲…そこから二人のデュエルは白熱し────

 

 

 

『バトルだ!「ABF-神立のオニマル」で「RR-アルティメット・ファルコン」を攻撃!!サンダーボルト・フラップ!!』

 

「ふっ──」

黒咲の切り札「アルティメット・ファルコン」をクロウの切り札「神立のオニマル」が貫く…絆と絆の戦い──今回はクロウに軍配が上がった…!

 

 

 

黒咲LP0

 

 

クロウWIN!

 

 

「クロウ…シンクロ次元は変わり始めている……だが、まだ戦うべき相手もいるはずだ……頑張れよ」

 

『ああ、お前も故郷の…エクシーズ次元の為に頑張れ!オレ達も力になるぜ!』

デュエル開始時とは打って変わって打ち解けたクロウと黒咲…お互いを認めあった二人は拳を突き合わせた…。

 

 

 

…………

 

 

『さぁ、ついに2回戦最終試合!ユーゴ選手対セレナ選手だ─!!』

陽が傾き始めたデュエルパレスにメリッサの実況が響く…ついに2回戦最後の組み合わせが始まろうとしていた…。

 

 

 

「よっしゃあ!見てろよ、リン!柚子!このデュエルに勝って準決勝進出だ…!」

白いDホイールに乗るユーゴがコースへと飛び出す…いつも通りの自然体のユーゴは夢の実現に向けて夕日を見ながら気分を高めていた…。

 

 

『何をぼーっとしている、お前の相手はここにいるぞ!』

 

「あっ、すまねぇ──っ!!」

少しぼーっとしていたユーゴにスタートラインについたセレナが声を掛ける…そして、それに応えたユーゴは言葉を失った…!

 

 

「り、リーン!!『寄るな!!』がっはぁぁ!?」

ヘルメットから見えた顔がユーゴの幼なじみ、リンにそっくりだったセレナ…ユーゴは思わず抱き着こうとし──セレナの制裁アッパーでド派手にふっ飛ばされた…。

 

『(リン…もしかして柚子が言っていた私達に似ている女の事か…?よく見ればユーゴの顔も遊矢に瓜二つ……どういう事だ?)』

そしてセレナはユーゴの反応からエクシーズ次元にもいたという『自分達に似た少女』の話を思い出した…。

 

 

『私の名はセレナだ!リンではない、人違いだ!』

 

「えっ…いや、本当はリンなんだ『顔が近い!!』ぎゃふん!?」

ユーゴに改めて名乗るセレナだったが、ユーゴはやはりセレナをリンと間違い…数度に渡ってふっ飛ぶはめになった…。

 

 

 

『あ〜もう!漫才はそこまでにして頂戴!アクションフィールドオン!「クロス・オーバー・アクセル」!!』

二人の漫才にうんざりしたメリッサは時間が少し押している事もあってデュエルモードを起動する!

 

 

「あ、ちょっと待っ──」

 

『ライディングデュエル・アクセラレーション!!』

ユーゴらしいドタバタ劇と共にライディングデュエルが始まった…。

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト ユーゴ対セレナ

 

 

デュエルの流れを掴んだのはセレナ…アカデミア仕込みのテクニックとアクションカードを使い熟し、ユーゴを攻め立てていく。

対してはユーゴはセレナとリンの面影を重ねてしまった事で集中力を乱し、どんどんとライフ差が広がっていく…そんな時だった。

 

 

 

 

──諦めが悪い所があなたの強みなんだから!──

 

 

「───そうだ、オレの強みは──諦めが悪い事だ!」

脳裏に過ぎるリンの言葉…その一言がユーゴを覚醒させる!

 

 

『バトルだ!「月光舞豹姫(ムーンライト・パンサー・ダンサー)」で「SR─快刀乱破・ズール」を攻撃─!』

 

「ええい、アクションカードで躱したかったが…やるしかねえ!!罠カード発動!『リサイコロ』!エクストラデッキの『クリアウイング・シンクロ・ドラゴン』を選択、さらに墓地の『SR赤目のダイス』を効果を無効にして特殊召喚!そしてダイスを振って、『赤目のダイス』のレベルを変更、フィールドのモンスターを素材にシンクロ召喚する!ただし、シンクロ召喚できなければ…オレのフィールドのモンスターは全て破壊される!」

 

『運頼みだと…!?』

それはまさに賭け…現在、ユーゴの場にはレベル4の『快刀乱破ズール』のみ…つまりサイコロの『3』を出さなければならないのだ…!

 

 

『そんな運頼りのデュエルなど遊び同然だ!』

 

「へっ…それが楽しいんだよ!これがデュエルの醍醐味っうもんだ!!いくぜ…ダイスロール!!」

それはアカデミアで計算ずくのデュエルを教えられてきたセレナには理解できないデュエル…その結果は───

 

 

 

 「よっしゃ!!出目は──3だ!!」

 

『なにっ─!?』

賭けに勝ったユーゴ…そしてスピードの世界に新たなモンスターが現れる!

 

 

「その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を撃て!シンクロ召喚!!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!!」

それはユーゴのエース…シンクロの名を冠するドラゴンの登場で勝負は分からなくなった…!

 

 

……………

 

 

デュエルは進んでいく…『クリアウイング』の登場で調子を取り戻したユーゴはセレナと互角のデュエルを展開…会場も大きな盛り上がりに包まれる。

だが、セレナも負けてはいない…初めてデュエルの中で感じる高揚感──ワクワクに身を任せ、切り札である『月光舞獅子姫(ムーンライト・ライオ・ダンサー)』を喚び出し、ユーゴのライフを残り200まで追い詰めた…!

 

 

 

『なるほど…ただ運任せでやっている訳ではないようだな…なかなかやるじゃないか!』

 

「ああ!さぁ、いくぜ…『お楽しみはこれからだ!!』」

運と実力を兼ね備えたユーゴを称賛するセレナ…そしてユーゴはさらなる覚醒を果たす───同調している遊矢と共に…!

 

 

「神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を撃て!シンクロ召喚!!いでよ!レベル8!『クリスタルウイング・シンクロ・ドラゴン』!!」

それはユーゴの新たな力…夕日の照らすシティに水晶の輝きを放つドラゴンが飛翔する!

 

 

「バトルだ!『クリスタルウイング』で『月光舞獅子姫』を攻撃!さらに効果発動!このモンスターがレベル5以上のモンスターとバトルする時、その攻撃力を自身に加える─!」

 

『攻撃力、6500だと!?』

「クリアウイング」以上の力を纏い、ユーゴがラストアタックを宣言する!

 

 

「『烈風のクリスタロス・エッジ』!!」

それはまさに閃光の一撃…美しき舞姫は水晶の輝きに貫かれ、敗北した…!

 

 

セレナLP0

 

ユーゴWIN!

 

 

 

『す、すさまじい攻防、ついに決着!!ユーゴ選手の勝利だ─!!しかし、互いに死力を尽くした素晴らしいデュエルでした!!セレナ選手にも盛大な拍手を─!!』

会場を揺らすような歓声の中にメリッサの実況が響く…互いに死力を尽くした戦いに会場はトップスもコモンズもなく盛り上がっていた…。

 

 

 

『ふぅ…楽しかったな!』

 

「えっ?」

 

『デュエルをこんなに楽しいと思ったのは初めてだ…礼を言うぞ、ユーゴ』

陽が沈み、満月の光が照らすデュエルパレスへと戻ってきたセレナはユーゴへと感謝を伝えた…アカデミアのデュエル戦士として『戦いの道具』としてデュエルをしてきた彼女にとって、こんなに楽しいと思うデュエルは初めてだったのだ。

 

「負けた側からお礼を言われても困るんだが…へへっ、オレも楽しかったぜ!」

 

『ああ、準決勝の健闘を祈る!』

ユーゴとセレナは握手を交わす…これで終われば綺麗なのだが───

 

 

 

「ありがとよ、リン『私はリンではない!!』ぐっへぇ!?」

セレナに制裁アッパーを受けるユーゴなのであった。

 

 

『(デュエルでみんなを笑顔に──遊矢、お前の言っていた事が…少し分かった気がするよ)』

 

 

 

 

 

「イッテテ…なにも、本気で殴らなくても────っ!!」

セレナのアッパーで伸びていたユーゴが起き上がる…そして退場しようとして──デュエリストの超視力がある者を捉えた、それは──

 

 

【ふっ…!】

 

「みつけた…みつけたぞテメェ───!!」

それは満月を背にデュエルパレスの屋根に立つ少年───リンを攫った真犯人、ユーリだった…!

 

 

「待ちやがれ─!!」

 

『あっ、ちょっとユーゴ!何処に行くの─!?』

屋根から飛び降りて姿を消すユーリ、それをDホイールで追うユーゴ……突然の事に戸惑っていたメリッサだったが…。

 

 

『えっ…なに、あれ…?出し物の予定あったっけ…?』

思わず見上げた空に浮かんでいたのは…十数機のハングライダー……当然、それは大会の予定ではなく──

 

 

 

 

………………

 

 

 

「やはり来たか…オベリスクフォース!!」

 

『あれが…!』

行政評議会の議場…零児達もその襲来を知る…!

 

 

「ホワイト議長、手筈の通りに…!」

 

『うむ…!治安維持局・デュエルチェイサーズ・シティ全体に連絡!緊急事態宣言を発動する!!シティの住民達を守るのだ!』

 

「ランサーズに通達!アカデミア、オベリスクフォースを確認!柊柚子、セレナ以外のメンバーは出動せよ!!」

二人の指揮官が指令を飛ばす……シティの長い夜が始まろうとしていた…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ほう、どうやら戦いが始まるようだな…世界を覆う悪意の尖兵共……さぁ、お前達のデュエルで守るべき者は守れるのか?…せいぜい、楽しませてもらうとしようか…】



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オベリスクフォース襲来!〜痛恨の一撃〜

こんにちは!S,Kです!

ついにシンクロ次元へと襲来するオベリスクフォース……デュエリスト達は仲間を、シティを守れるのか…!


それでは、最新話をどうぞ!


『な、何が起きているのでしょうか…!?満月をバックに無数のハングライダーがシティへと降り立っていきます…!』

2回戦の試合が終わったデュエルパレスにメリッサの戸惑う声が響く…夜空から数十機のハングライダーに乗った人影がシティへと降り立っていくのだ…!

 

 

 

【シティのみなさん、行政評議会議長のホワイト・タキです、現時刻から──緊急事態宣言を発令いたします】

 

『ホワイト議長!?緊急事態って…』

そんな時、シティのオーロラビジョンや携帯端末、デュエルパレスの3Dビジョンを介してホワイト議長が現れる──それはシティの人々に『緊急事態』を告げる発表だった。

 

 

【理由は単純…鋼のデュエリスト、白波遊海がその存在を明かした別次元の存在、侵略者【アカデミア】の兵士達がシティで確認されたからです】

 

「「『『ええっ!!?』』」」

ホワイト議長の言葉に騒然となるシティの人々…ホワイト議長は淡々と説明を続ける…。

 

 

【現状、彼らの目的は()()、おそらく威力偵察が目的と思われます…デュエルパレスや各パブリックビューイング会場にいる方々はそこから動かず、セキュリティ・デュエルチェイサーズの指示に従うように…仕事先や自宅にいる方々は決して屋内から出ず隠れていてください、既に迎撃に屈強なデュエルチェイサーズ、そして協力関係を結んだランサーズのデュエリスト達が向かっています、決してパニックを起こさないように……トップス、コモンズに関係なく…住民のみなさんは──必ず守ります…!】

人々を安心させる為に普段通りの穏やかな口調でホワイト議長は説明を続ける……戦いの火蓋は切って落とされた…!

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

「ランサーズに通達!アカデミア、オベリスクフォースを確認!柊柚子、セレナ以外のメンバーは出動せよ!!」

 

「オベリスクフォースが!?」

ユーゴとの『同調』が解除され、戸惑っていた遊矢…そこへ零児からの緊急連絡が入る…!

 

 

「セレナは大丈夫なのか!?」

 

『心配するな、既に行政評議会の建物に入った……本当なら戦いたいが…!』

 

『キミの出撃は許可できない、自室で待機していてくれ…柊柚子もだ』

 

『は、はい…!』

 

「よ、良かった…!」

セレナを心配する遊矢だったが通信越しに無事を確認して安堵する…それは柚子も同じだった。

 

 

『おそらく、デニスからの情報でこちらの所在は割れているはずだ……相手はハングライダーを使い屋上からも来る可能性がある、月影、権現坂…キミ達は評議会ビル屋上に向かい、侵入に備えてくれ』

 

『承知!』

 

『了解した!』

迫りくるオベリスクフォースを前に零児は冷静に指示を出す…!

 

 

『黒咲、お前はデュエルチェイサーズと共に遊撃だ…街への被害は最小限に、オベリスクフォースを撃退してくれ』

 

『既に出ている!この街を──ハートランドの二の舞にはさせん!』

 

『沢渡、そして榊遊矢…お前達は評議会ビル前で待機、セキュリティと強力し、近づくオベリスクフォースから評議会ビルを…柊柚子とセレナを守ってくれ…私と零羅が最後の壁となる!』

 

『了解…!やってやる!』

 

「わかった…!!これ以上、アカデミアの好きにさせてたまるか!」

零児からの指示を聞いた遊矢は廊下へと飛び出した…

 

 

 

 

『ゆ、遊矢様…!』

 

「サム…!」

飛び出した遊矢は部屋の前で不安そうな表情のサムと鉢合わせた…。

 

「サム…これから、少し怖い事が起きる……オレの部屋に隠れてるんだ、怒られたら…オレも一緒に叱られるから!!」

 

「は、はい…!」

遊矢はサムを自分の部屋に匿うと柚子の部屋に向かう…!

 

 

「柚子!必ず、守る!だから待っててくれ!」

 

「遊矢…無理はしないで…!絶対に帰ってきて!」

 

「ああ…!行ってくる!」

柚子へ必ず守ると約束し…遊矢はオベリスクフォース迎撃へと飛び出した…!

 

 

 

…………

 

 

「セキュリティさん!」

 

『おう、来たか…お前の事は遊海から聞いてるぜ、榊遊矢』

 

「たしか…牛尾、さん?」

 

『おお!大した記憶力だな!』

厳戒態勢の行政評議会ビル・玄関前…遊矢を出迎えたのは十数人のデュエルチェイサーズ、そしてそれを率いる偉丈夫、牛尾だった。

 

「おせーぞ遊矢!すぐにでもオベリスクフォースが向かって来るぞ!」

 

「ごめん!沢渡!」

先に到着していた沢渡に謝る遊矢…回りのセキュリティ達は焦りと殺気を隠せないでいる…。

 

 

『榊遊矢、お前達は先にオベリスクフォースとやらと戦った事があるんだろ?相手の戦略かなんかは分かるか?』

 

「えっと…とにかく『古代の機械(アンティーク・ギア)』モンスターを使ってくる事と、効果ダメージ、効果破壊……とにかく、相手を倒す為ならなんでもしてくる奴らなんだ!……それから、デュエルに負けた相手を………っ……」

 

『……言わなくていい、悪かった───お前ら!こんなガキ共が命を張って戦ってんだ!俺達も負けてらんねぇぞ!!いつものコモンズ鎮圧とは訳が違う……気合いを入れ直せ!!』

 

『『『『応っ!!』』』』

遊矢から相手の情報を聞いた牛尾がセキュリティ達に激を飛ばす!

 

 

『牛尾班長!指令室から連絡、オベリスクフォースらしき反応が約10、こちらへ向かって来ます!!』

 

「10…っう事は3、4チームぐらいか……遊矢、組むか?」

 

「いいや、1人で戦う……!オベリスクフォースに負けてたら、ジャックには勝てない!沢渡はセキュリティの人達のサポート頼む!」

 

「そうかよ……先に音を上げるんじゃねぇぞ──!!」

オベリスクフォースとの接触直前、遊矢は決意を固める…柚子とセレナを守り、そして再びジャックと戦う為にこの襲撃を乗り切るのだと…!

 

 

 

【ポイントに到着、敵影多数!】

 

【各チーム散開!敵を排除し、セレナ様と柊柚子を確保せよ!信号弾、発射!!】

 

キィン─!!

 

 

オベリスクフォースの第一陣が姿を現し、赤色の信号弾を打ち上げる…それが開戦の合図となった…。

 

 

 

 

「「『デュエル!!』」」

 

【【【デュエル!!】】】

 

 

 

 

オベリスクフォース(赤)LP4000

オベリスクフォース(緑)LP4000

オベリスクフォース(黄)LP4000

遊矢LP4000

 

 

バトルロイヤルモード

 

フィールド魔法『クロス・オーバー』発動中

アクションカード使用可

 

 

 

@オベリスクフォース(赤)

 

【俺のターン!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!】

機械の猟犬が現れる! ATK1000

 

【カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!】

 

オベリスクフォース(赤)LP4000

機械猟犬 伏せ1 手札3

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「オレは手札のスケール3の『相克の魔術師』とスケール8の『相生の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!」

遊矢の背後に光の柱が立ち昇り、その中に青髪の青年魔術師と桃色の髪の巫女のような魔術師が浮かび上がる!

 

 

「揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け!光のアーク!ペンデュラム召喚!手札から『EMヘイタイガー』!『EMラクダウン』!そして『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

青のペンデュラムが軌跡を描き、兵隊服を着た虎、シルクハットを被ったラクダ、二色の眼の竜を呼び出す! ATK1700 ATK800 ATK2500

 

 

「そしてオレはレベル4の『ヘイタイガー』と『ラクダウン』でオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!愚鈍なる力に抗う反逆の牙!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!」

さらに、エクシーズの名を冠する反逆の牙が咆哮する! ATK2500

 

 

「バトルだ!『オッドアイズ』で『古代の機械猟犬』を攻撃!」

 

【その瞬間、永続罠発動!『融合塹壕─フュージョン・トレンチ』!このカードがフィールドに存在する限り、融合モンスター以外は攻撃できない!】

 

「くっ…!」

オベリスクフォースの前に現れた光の壁がオッドアイズの火炎を受け止める…!

 

「オレはカードを1枚伏せて、ターンエンド…!」

 

遊矢LP4000

オッドアイズ ダークリベリオン (P相克 相生)伏せ1 手札0

 

 

 

@オベリスクフォース(緑)

 

【俺のターン!ドロー!】

【手札から『融合』を発動!手札の『古代の機械猟犬』3体を融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬たちよ!群れ成して混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!!融合召喚!!現れろ!『古代の機械参頭猟犬』!!】

3体の猟犬が融合…禍々しい機械のケルベロスが現れる! ATK1800

 

 

【そして永続罠『融合塹壕』の効果によりこのターン、融合モンスターしか召喚・特殊召喚していないプレイヤーは直接攻撃できる!『参頭猟犬』でダイレクトアタック!】

 

「くうっ…!?」

猟犬の火球が遊矢に直撃する!

 

遊矢LP4000→2200

 

 

【俺はこれでターンエンド!】

 

オベリスクフォース(緑)

参頭猟犬 手札2

 

 

 

@オベリスクフォース(黄)

 

【俺のターン!ドロー!】

【俺も手札から『融合』を発動!手札の『古代の機械猟犬』3体を融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬たちよ!群れ成して混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!!融合召喚!!現れろ!『古代の機械参頭猟犬』!!】

再び3体の猟犬が融合…2体目のケルベロスが現れる! ATK1800

 

 

【永続罠『融合塹壕』の効果発動!『参頭猟犬』の効果でダイレクトアタック!】

 

「ぐっ…!」

再び火球が遊矢に直撃する!

 

遊矢LP2200→400

 

 

【俺はこれでターンエンド!】

 

オベリスクフォース(黄)

参頭猟犬 手札2

 

 

 

 

【そして俺の手札には2体目の『機械猟犬』がいる!次のターンで貴様は終わりだ!】

 

「くっ…!(やっぱり、強い…!!)」

 

「おい!?初っ端からピンチになってんじゃねぇよ!?」

オベリスクフォースのロック戦術に追い詰められる遊矢…周囲のセキュリティや沢渡は他のオベリスクフォースを足止めしているせいでサポートできない…!

 

 

「(このまま、やられるのか…!?いや…アクションカードでダメージを───)」

必死に活路を探す遊矢…その時だった!

 

 

 

 

()()()()()()()ドロー!!」

 

 

「えっ─!?」

 

【なにっ…!?】

1人の人影が遊矢達の前に現れた!

 

 

遊海LP4000

 

 

 

「速攻魔法『サイクロン』…!永続罠『融合塹壕』を破壊!」

 

【ちいっ!?】

乱入した人影──赤帽子の決闘者、白波遊海が『融合塹壕』を吹き飛ばす!

 

 

「さらに『EMドクロバット・ジョーカー』召喚!」

ドクロのシルクハットを被った道化師が現れる! ATK1800

 

「『ドクロバットジョーカー』の効果発動!デッキから『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』を手札に……っう………そして、スケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でペンデュラムスケール、セッティング……!!」

遊海の背後に光の柱が立ち上がり、幻覚と仮面のオッドアイズが浮かび上がる!

 

 

「揺れろ…希望のペンデュラム!我が魂に宿る大いなる力よ!邪悪を蹴散らす力を呼び覚ませ!ペンデュラム、召喚!幻影揺らめく二色の眼…『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

赤のペンデュラムが軌跡を描き、堅牢なるオッドアイズが咆哮する! ATK2500

 

 

「バトル…!『オッドアイズファントムドラゴン』で『古代の機械猟犬』を攻、撃!夢幻のスパイラル・フレイム!」

 

【ぐおっ!?】

螺旋の炎が猟犬を吹き飛ばす!

 

 

オベリスクフォース(赤)LP4000→2500

 

「さらに『ファントム』の効果発動!ペンデュラム召喚した、このモンスターが相手に戦闘ダメージを与えた時、ペンデュラムゾーンの『オッドアイズ』カード1枚につき1200ダメージを与える!アトミック・フォース!!」

 

【があああ!?】

ペンデュラムゾーンからの援護攻撃がオベリスクフォースを吹き飛ばす!

 

オベリスクフォース(赤)LP2500→100

 

 

「『ドクロバットジョーカー』で赤仮面のオベリスクフォースを攻撃!」

 

【ぎゃっ!?】

蝙蝠の道化師が倒れ込んだオベリスクフォースの脳天に踵落としを決め、ライフを削りきった…!

 

オベリスクフォース(赤)LP0

 

 

「俺は、カードを1枚伏せ、ターンエンド…!」

 

遊海LP4000

オッドアイズ ドクロバットジョーカー (P ペルソナ ミラージュ) 伏せ1 手札1

 

 

 

「ゆ、遊海!!」

 

「はぁ…はぁ…大丈夫か、遊矢…!」

 

『おう、ヒーローは遅れてくる………って、お前…!?』

オベリスクフォースの1人を撃破した遊海……だが、その様子に遊矢も牛尾も言葉を失った……大量の汗を流し、呼吸は荒く、足元も覚束ない……明らかに本調子ではない遊海がそこにいた…。

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

「…っ…うう……アヤカ……状況は…?」

 

《おはようございます、マスター……現在、フレンドシップカップ3日目、間もなく2回戦第4試合のユーゴ対セレナのデュエルが始まるところです》

 

「……少し、寝過ぎた…な……」

約三日間、深く眠り続けた遊海はようやく意識を取り戻した……だが、凄まじい脱力感と全身の痛みで戦えるような状態ではなかった…。

 

 

「イレギュラー……変わった事は…」

 

《……たくさんありますね、トップスとコモンズの緊張状態の解消、フレンドシップカップ敗者の地下ゴミ処理場送り廃止…フレンドシップカップへの遊星と龍亞の出場…特に、遊星はセルゲイと同じ組み合わせで柊柚子と対決、準決勝進出決定…柊柚子は無事に部屋に戻っています…それにランサーズと行政評議会の協力体制の構築……マスターのデュエルがシンクロ次元を良い意味で変えたんです》

 

「ははっ…まじか……変わりすぎだって……」

アヤカからの報告を受けた遊海は笑みをこぼす……本来ならロジェの陰謀や事なかれ主義の行政評議会、さらにトップスとコモンズの衝突によって殺伐とした戦いが繰り広げられるはずだったフレンドシップカップの戦い…。

だが、遊海や赤き竜、シグナー達の起こした奇跡によって、「物語」を知る者なら困惑するほど平和な時間が流れていた。

 

 

 

《それから…赤馬零児から連絡があり、デニスが逃亡、近日中にオベリスクフォース襲撃の可能性があると…》

 

「本来の流れなら…今夜、だな……俺も、戦わなきゃ……うぐっ…!?」

 

《無理をするな、遊海…アヤカの回復でも応急処置しかできておらん、それに…》

 

《現在、マスターはマイナスエネルギーによって受けたダメージとその荒療治で『CiNo.1000』の大量のカオスを使用した後遺症で著しく弱体化しています…おそらく、精霊アーマーも纏えないかと……》

 

「っう……全身痛いのは、そのせいか…」

オベリスクフォース襲撃の可能性を知った遊海は起き上がろうとするが、全身の痛みに再び倒れ込む…。

 

 

前夜祭の戦いにおいて『地縛神』と『冥界の王』による攻撃──弱点であるマイナスエネルギーによるダメージを受けた遊海は生死を彷徨った…だが、封印している(復活していた)『CiNo.1000』のカオス(ドン・サウザンドの手助け)で強引に影響を中和……そしてNEXUSⅢを開放して『冥界の王』を倒す事に成功した。

……だが、蓄積していた疲労と無茶な力の開放で遊海の身体はズタズタ……一時的にではあるが、ゼロ・リバース直後の状態まで弱体化していたのだ。

 

 

 

《赤馬零児には『万が一の時にはセレナと柊柚子を保護する用意がある』と連絡しています……マスターが無理に戦う必要は…》

 

「心配してくれてありがとうアヤカ、メガロック……だけど、これだけ状況が変わっていたら、()()()()()()分からない……準備だけはしておいてくれ…!」

 

《……了解です、マスター…》

ほとんどの力を失っていても、遊海の精神は揺らがない……最善を掴む為に…。

 

 

…………

 

 

《っ…次元転移の反応を確認……敵影…4()5()!?》

 

「やっぱり…!早い上に、数を増やしてきたか…!」

そして…ユーゴ対セレナのデュエル終了直後、アヤカのレーダーが多数の次元転移の反応を感じ取る、その数は遊海の記憶していた数の約2倍となっていた…!

 

 

「いくらデュエルチェイサーズとランサーズが協力しても、この人数は……俺も……ぐっ…くそっ、たれ…!!」

 

《フォウ!フォーウ!!(遊海!動いちゃダメだよ!!)》

 

「こうしてる、間にも…凌牙達は戦ってる…!それに、この街は…遊星や、不動博士の…この次元のシグナー達の大切な故郷なんだ…!!それを守れなかったら…俺は、みんなに合わせる顔がない…!!」

全身の痛みを堪え、足が震える中で遊海は立ち上がる…戦い続けている凌牙や遊馬達の為に、柚子やセレナ…そして、シグナーの仲間達が暮らすこの街を守る為に…!

 

 

 

「アヤカ、お前は人間体で柚子ちゃんに……トフェニはセレナに付いていてくれ…アカデミアに、奪われないように…!」

 

《……承知…!》

 

《マスター……無理だけは、しないでください…!》

 

「俺は……行政評議会ビルで迎撃、する…!」

 

《……お前がこうなったら、止めても聞かんからなぁ……アヤカ、心配するな…万が一には気絶させてでも離脱させる》

アヤカ達に指示を出した遊海は『アポクリフォート・キラー』から飛び出す…アカデミアの蛮行を止める為に…。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

「俺の事は、気にするな…目の前のオベリスクフォースに、集中しろ…!」

 

「遊希兄…わかった!」

明らかに辛そうな遊海…その言葉を聞いた遊矢はオベリスクフォースに向かい合う…!

 

 

 

「オレのターン…ドロー!」

「『相克の魔術師』のペンデュラム効果発動!『ダークリベリオン』にランクと同じ数値のレベルを与える!」

相克の魔術師の魔法陣が反逆の牙にレベルを与える!

 

ダークリベリオン★4=☆4

 

 

「『相生の魔術師』のペンデュラム効果!『ダークリベリオン』のレベルを『オッドアイズ』と同じにする!」

相生の魔術師の放った矢が光を放ち、奇跡を起こす!

 

 

ダークリベリオン ☆4→☆7

 

 

「オレはレベル7となった『ダークリベリオン』と『オッドアイズ』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!!エクシーズ召喚!」

2体のドラゴンが光の銀河へと飛び込み、混沌の光が弾ける!!

 

 

「二色の眼の龍よ!その黒き逆鱗を震わせ…歯向かう敵を殲滅せよ!!来い!ランク7!怒りの眼輝けし竜!!『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』!!」

それは遊矢が初めて目覚めさせたペンデュラムエクシーズ…稲妻を纏いし、殲滅の竜が咆哮する!

 

 

ドクン…!

 

 

「っう…!?(なん、だ…!?胸、が…!?)」

 

「っ…遊矢!どうした!?」

その時、遊矢は言い知れない…強い衝動に襲われる、それは遊矢のモノでも、融合を憎むユートのモノでもない─!!

 

 

「うっ、がああああ!!!───『オッドアイズリベリオンドラゴン』の効果発動…!エクシーズモンスターの『ダークリベリオン』をエクシーズ素材とした事で、相手フィールドのレベル7以下のモンスター全てを破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!!オーバーロード・ハウリング!!」

それは敵を殲滅する紫電の嵐、それは遊矢の叫びと共に2体の『参頭猟犬』、そして……()()()()()()()()()()()()()!!

 

 

【【うわあああっ!?】】

 

「なっ!?《フォーウ!!》フォウ!?っ…アクションマジック『加速』!!自分が効果ダメージを受ける時、そのダメージを0にする!」

荒れ狂う紫電の嵐に動揺する遊海…だが、その隙をカバーするようにフォウがアクションカードを叩きつけ、ギリギリでダメージを回避する!

 

 

オベリスクフォース(黄)LP4000→2200

オベリスクフォース(緑)LP4000→2200

 

 

『おいっ!?榊遊矢!遊海はオメーの仲間だろうが!?なにやってやがる─!』

 

「ぐっ…(不用意に前に出ない方が良かったか…!!)」

遊矢の突然の暴挙に思わず叫ぶ牛尾…そして、遊海は気付いた…遊矢の瞳が赤く輝いている事に…!

 

「『オッドアイズリベリオンドラゴン』のさらなる効果発動!ORUを1つ使い、このターンに破壊したモンスターの数まで攻撃できる…!さらに、装備魔法『覇王の翼』を装備…!!」

遊矢はドスの効いた声で殲滅の竜を強化する…!

 

 

「バトルだ!『オッドアイズリベリオンドラゴン』でオベリスクフォースを攻撃!反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ!!」

 

【【ぐあああっ!?】】

紫電を纏う翼で飛翔した殲滅の竜がオベリスクフォース二人を弾き飛ばす!

 

 

オベリスクフォース(黄)LP0

オベリスクフォース(緑)LP0

 

 

「さらに、シラナミユウミにダイレクトアタック!反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ!!」

 

「ぐっ…!リバース罠『ペンデュラム・リボーン』!!エクストラデッキに表側の『オッドアイズファントムドラゴン』を特殊召喚!ぐううっ!?」

遊海は再び幻影のオッドアイズを呼び出すが…即座に反旗の牙の餌食になる! DEF2000

 

 

「『覇王の翼』の効果発動…!バトルフェイズに一度、装備モンスターが相手モンスターを破壊した時!そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!!」

 

「なっ…があああっ──!!?」

 

『遊海!!!』

 

《フォウ!!!》

さらに装備魔法の効果が発動…遊海は暴風によって吹き飛ばされ、セキュリティの装甲車に叩きつけられる…!!

 

遊海LP4000→1000

 

 

「が、は…!?(やばい…肋骨を何本か、持ってかれた…)」

叩きつけられ、口の中に広がる鉄の味を飲み込む遊海…だが、攻撃はまだ残っている…!

 

 

「だああっ!邪魔だオベリスクフォース!!遊矢!正気に戻れ─!!」

 

『退きやがれテメェら──!!』

 

「『オッドアイズリベリオンドラゴン』でダイレクトアタック!反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ!!

オベリスクフォースを相手しながら必死に叫ぶ沢渡と牛尾…だが、攻撃は止まらない!!

 

 

「くっ……ああああっ!!」

 

 

《フォ…!!フォウ──!?》

覚悟を決めた遊海は空気を震わせる咆哮と共にその攻撃を受け止める…そして遊海の姿は爆煙の奥に消え去った…。

 

 

 

遊海LP0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゆ、遊海─!!』

なんとかオベリスクフォースを撃退した牛尾の叫びが響く…そして……

 

 

 

 

《グルル…!!》

 

「ぐっ…ぎ、ぃ…!!」

ライフポイントは0になったが…遊海は立っていた、紫電を纏う牙をなんとか受け止めていたからだ。

しかし…その代償に左腕は歪に折れ曲がり、原型を留めていなかった…。

 

 

 

「(伝わってくる…『オッドアイズリベリオン』の………『オッドアイズ』と、『ダークリベリオン』の()()の感情が……遊矢達とは違って、覚えて……)」

そして、遊海は感じ取っていた…『覇王龍ズァーク』の一部として遊海と終わりの見えない戦いを繰り広げた…哀しき龍達の悲鳴を…。

 

 

彼らは怖かったのだ……自分達の『敵』であった遊海の事が…。

 

 

「だい、じょうぶ、だ……怖がらなくて、いい……いまは、まだ……お前達の、味方だ…!」

 

《……グルル…》

遊矢達に聞こえない、小さな声で囁やきながら…遊海は無事な右手で『オッドアイズリベリオン』の顔を撫でる……そして、低い唸り声を上げていたドラゴンは静かに消えていった…。

 

 

 

「─────っ、あ、れ…?オレ、何を…」

 

「正気に、戻ったか……ゴボッ…!」

 

「ゆ、遊海!?えっ、えっ!?」

 

『大馬鹿野郎!!いきなり暴走するんじゃねえ─!!』

 

「そんな、オレ…また…!?」

そして遊矢は正気を取り戻した…だが、明らかな重傷を負った遊海の姿に動揺……そして牛尾の怒号で自分が再び『暴走』してしまった事を知る…。

 

 

そして、不運は続く…。

 

 

【赤帽子の男……シラナミユウミ…!()()()()()()()を発見!!信号弾発射!!】

 

キィン!!

 

 

 

「───なんて?」

シティの空に黄色の信号弾が放たれる……シティの長い夜は…始まったばかりだった。



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英雄〜繋がる奇跡〜

こんにちは!S,Kです!

暴走した遊矢によって無視できないダメージを受けてしまった遊海…そして遊海の排除を目論む猟犬達が迫る…!

遊海は…生き残る事ができるのか──
  

それでは、最新話をどうぞ!


「はぁ…はぁ…ぐっ…!」

 

 

【【【デュエル!!】】】

 

遊海LP4000

オベリスクフォース(赤)

オベリスクフォース(緑)

オベリスクフォース(黄)

 

 

バトルロイヤルモード

 

 

「俺のターン、ぐっ…」

「『天帝従騎イデア』を、召喚」

ATK800

 

「『イデア』の効果、発動…!デッキから『冥帝従騎エイドス』を特殊、召喚」

ATK800

 

「魔法カード『汎神の帝王』発動、手札の魔法カード、『開岩の帝王』を墓地に送って、2ドロー…フィールド魔法『真帝王領域』、永続魔法『進撃の帝王』発動……墓地の『汎神の帝王』の効果…このカードを除外、デッキから『帝王の深怨』3枚を相手に見せ、相手が選んだカードを手札に、加える…!」

 

【全部同じじゃねーか!!】

 

「他のカードは、デッキに戻す…!『イデア』『エイドス』をリリース…『冥帝エレボス』アドバンス召喚…!」

ATK2800

 

 

「『イデア』の効果、除外された『汎神の帝王』を、手札に戻す…『エレボス』効果、デッキから『帝王の凍気』『汎神の帝王』を墓地に送り、オベリスクフォースの手札……『古代の機械猟犬』をそれぞれデッキに戻して、もらう…!」

 

【くっ…!?】

 

オベリスクフォース(赤) 手札5→4

オベリスクフォース(緑) 手札5→4

オベリスクフォース(黄) 手札5→4

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド…!」

 

遊海LP4000

エレボス 真帝王領域 進撃の帝王 伏せ1 手札2

 

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!】

ATK1000

 

【『機械猟犬』の効果発動!1ターンに1度、相手フィールドにモンスターが存在する時、600ダメージを与える!】

 

『ぐっ…』

 

遊海LP4000→3400

 

 

 

【さらに魔法カード『融合』を発動ど───】

 

「フィールド魔法『真帝王領域』の効果、自分の場にのみ、アドバンス召喚したモンスターが存在する時、相手はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない…!」

 

【チッ…!ターンエンド!】

オベリスクフォース(赤)LP4000

機械猟犬 手札4

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!600ダメージだ!】

 

『がっ…!』

ATK1000

 

遊海LP3600→2800

 

 

【ターンエンド!】

 

オベリスクフォース(緑)LP4000

機械猟犬 手札4

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!600ダメージだ!】

 

『ごふっ…!!』

ATK1000

 

遊海LP2800→2200

 

 

【ターンエンド!】

 

オベリスクフォース(黄)LP4000

機械猟犬 手札4

 

 

 

「俺、ターン…!ドロー…!」

「魔法カード『汎神の帝王』、手札の『真源の帝王』を墓地に送り、2ドロー…速攻魔法『帝王の烈旋』発動…さらに、『真帝王領域』の、効果…!手札の『剛地帝グランマーグ』を見せる事で、そのレベルを2、下げる…」

 

剛地帝グランマーグ☆8→☆6

 

 

「『烈旋』の効果でオベリスクフォース(赤)の『機械猟犬』をリリース…『剛地帝グランマーグ』を、アドバンス、召喚…!」

 

【なっ!!俺のモンスターを!?】

ATK2800

 

 

「『グランマーグ』が地属性モンスターをリリースして召喚した事で1ドロー…バトル…!『グランマーグ』でオベリスクフォース(赤)にダイレクト、アタック!」

 

【ぐあああっ!?】

 

オベリスクフォース(赤)LP4000→1200

 

 

「『エレボス』で、ダイレクトアタック…」

 

【ぐへっ!?】

 

オベリスクフォース(赤)LP0

 

 

「ターン、エンド…!」

 

遊海LP2200

エレボス グランマーグ 真帝王領域 進撃の帝王 伏せ1 手札3

 

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【2体目の『古代の機械猟犬』を召喚!】

ATK1000

 

【2体の『機械猟犬』の効果発動!1200ダメージだ!くたばれ!!】

 

「う、がっ…」

 

遊海LP2200→1000

 

 

【ターンエンド!】

オベリスクフォース(緑) LP4000

機械猟犬 機械猟犬 手札4

 

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【2体目の『機械猟犬』を召喚!】

ATK1000

 

 

「ぐ、う…!罠カード『連撃の帝王』、発動…!相手、メイン・バトルフェイズに、アドバンス召喚…!アドバンス召喚した『エレボス』を、リリース…『怨邪帝ガイウス』を、アドバンス召喚…!」

 

【相手のターンにアドバンス召喚!?】

ATK2800

 

 

「闇属性をリリースして、アドバンス召喚した「ガイウス」の効果…!お前達の『機械猟犬』を1体ずつ除外、1000ダメージ…!」

 

【なにっ!?】

 

 

オベリスクフォース(緑) LP4000→3000

オベリスクフォース(黄) LP4000→3000

 

 

【だが、1体は残ってるんだよ!】

 

『ぎっ…!?』

 

遊海LP1000→400

 

 

【ターンエンド!】

 

オベリスクフォース(黄)LP3000

機械猟犬 手札4

 

 

「俺…ターン…!」

「墓地の『エイドス』効果、自身を除外して、墓地の『イデア』を特殊、召喚」

DEF1000

 

「『真帝王領域』の効果、「天帝アイテール」を公開……『イデア』をリリース、アドバンス召喚…」

 

天帝アイテール☆8→6 ATK2800

 

 

「『アイテール』、効果…デッキの、『帝王の溶撃』『連撃の帝王』を墓地に送り、デッキから『爆炎帝テスタロス』を、特殊召喚」

 

【なっ…攻撃力2800が、4体!?】

 

「『アイテール』と『ガイウス』で、『機械猟犬』を攻撃…」

 

【ぐっ!?】

 

オベリスクフォース(緑) LP3000→1200

オベリスクフォース(黄) LP3000→1200

 

 

「『テスタロス』『グランマーグ』でダイレクトアタック…」

 

 

【【ぐああああっ!?】】

 

オベリスクフォース(緑)LP0

オベリスクフォース(黄)LP0

 

遊海WIN…

 

 

 

 

【いたぞ!奴だ!】

 

【アイツを倒せば勲章だ!!】

 

「ぐ、う……!!」

 

 

 

【【【デュエル!!】】】

 

オベリスクフォース(赤)LP4000

オベリスクフォース(黄)LP4000

オベリスクフォース(緑)LP4000

遊海LP4000

 

バトルロイヤルモード

 

 

【俺のターン!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!】

ATK1000

 

【そして魔法カード『融合』!3体の『機械猟犬』を融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬たちよ!群れ成して混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!!融合召喚!現れろ!『古代の機械参頭猟犬』!!】

ATK1800

 

【ターンエンドだ!】

 

オベリスクフォース(赤)LP4000

参頭猟犬 手札1

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【『融合』発動!3体の『機械猟犬』を融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬たちよ!群れ成して混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!!融合召喚!現れろ!『古代の機械参頭猟犬』!!】

ATK1800

 

【バトルだ!『参頭猟犬』でダイレクトアタック!】

 

「がああっ…!!」

 

遊海LP4000→2200

 

 

【ターンエンドだ!】

オベリスクフォース(黄)

参頭猟犬 手札2

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【俺も『融合』発動!3体の『機械猟犬』を融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬たちよ!群れ成して混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!!融合召喚!現れろ!『古代の機械参頭猟犬』!!】

ATK1800

 

【バトルだ!『参頭猟犬』でダイレクトアタック!】

 

「………──────」

 

遊海LP2200→400

 

 

【カードを1枚伏せ、ターンエンド!】

 

オベリスクフォース(緑)LP4000

参頭猟犬 手札1

 

 

 

「俺、たーん……どろー…」

「凌牙…みざえる……力、かして、くれ……『RUM─七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)』発動…!」

 

107

 

「逆巻く銀河を貫いて…時の生ずる前より蘇れ…永遠を超える竜の星──『A CNo.107超銀河眼の時空龍』」

 

【な、なんだ!?攻撃力4500のエクシーズモンスターだと!?】

ATK4500

 

 

「『超時空龍』の効果…ORUを1つ使い、相手フィールドのカード効果を無効、する……タイム・たいらんと」

 

【な、なんだ!?「参頭猟犬」が灰色に…!?】

 

「手ふだの『銀河眼の光子竜』を公開…『銀河剣聖』をレベル8で、特殊召喚」

ATK0 ☆8

 

 

「手札の『銀河眼の光子竜』をぼちへ……『銀河戦士』を、とくしゅ召喚…」

ATK2000

 

 

「『超時空龍』の効果、モンスター2体をリリースして、モンスターに3回まで、攻撃できる……バトル…!『参頭猟犬』を、攻撃…!」

 

【無駄だ!罠カード『融合塹壕─フュージョン・トレンチ』──発動しない!?】

 

「たいむタイラントによって、相手は…効果、発動、できない……優介──頼む───『オネスト』の、こうか…!ターン終了、まて、攻撃りょくを…バトルするモンスター、攻撃ぶん、アップ…!アルティメット・タキオン・スパイラル───」

 

【【【ぎゃああああああ!?!?】】】

 

超時空龍ATK4500→6300

 

オベリスクフォースLP0

 

遊海WIN………

 

 

 

 

 

「うっ…げほっ…いき、が……できな……」

 

 

【見つけたぞ!】

 

【勲章は俺達のもんだ!!】

 

 

 

【【【デュエル!!】】】

 

オベリスクフォース(赤)LP4000 古代の機械参頭猟犬 伏せ1 手札0

オベリスクフォース(黄)LP4000 古代の機械参頭猟犬 手札2

オベリスクフォース(緑)LP4000 古代の機械参頭猟犬 手札2

遊海LP4000

 

バトルロイヤルモード

 

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【永続罠『古代の機械蘇生』発動!墓地の『機械猟犬』を特殊召喚!】

ATK1000

 

【そして『機械猟犬』の効果発動!フィールドに他の『古代の機械』モンスターが存在する時、そのモンスターを墓地に送って融合召喚を行なう!!『機械猟犬』と『参頭猟犬』を融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬よ!三つ首の猟犬と混じり合い、究極の猟犬へと生まれ変わらん!!融合召喚!現われろ!レベル9!『古代の機械究極猟犬』!!】

ATK2800

 

 

【『究極猟犬』の効果発動!融合召喚に成功した事で相手のライフを半分にする!アルティメット・ハウンド・フレイム!】

 

「──────」

 

【ぎゃはははは!!頭からコンテナに突っ込みやがった!】

 

遊海LP4000→2000

 

 

【これで死にやがれ!『究極猟犬』でダイレクトアタック!!】

 

「─────『バトル・フェーダー』ノ効果ハツドウ、手札カラ特殊召喚、バトルフェイズ、終了」

DEF0

 

【………なんだよ、あのバケモン……折れた右腕で…!ターンエンドだ!】

 

オベリスクフォース(赤)LP4000

究極猟犬 機械蘇生 手札1

 

 

 

「我ノターン、ドロー…」

「主、少シ、我慢シテクレ──フィールド魔法『失楽園』発動…永続魔法『七星の解門』発動、デッキカラ『幻魔皇ラビエル』ヲ手札二加エル……『混沌の召喚神』ヲ召喚」

ATK0

 

【そんな攻撃力のモンスターで何ができ───】

 

「『混沌の召喚神』ノ効果──現レロ…我、自身──『幻魔皇ラビエル』」

ATK4000

 

 

【な、なんだぁ!?】

 

《許サナイ…!我ラヲ守ッテクレタ…優シイ主ヲ、傷ツケル者共…!手札カラ『幻魔皇ラビエル─天界蹂躙拳』ヲ捨テテ、効果発動…我の攻撃力ハ8000ト、ナリ…全テノモンスター二攻撃デキル》

 

【攻撃力8000だと!?】

 

ラビエルATK4000→8000

 

 

《滅ビヨ!天界蹂躙拳!!》

 

 

【【【ギャアアアアアア!?!?】】】

 

 

オベリスクフォースLP0

 

遊海WIN

 

 

 

 

 

 

「らびえ、る…ごめ……」

 

《主、痛クシテ、ゴメン……今ナラ、逃ゲラレル》

 

「だめ、な…んだ……にげ、ら……ゆう、たち、が………」

 

 

 

一時的にオベリスクフォースを退けた遊海…何故、こんな目に遭っているのか…それを知るには時を遡る必要がある──。

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

【赤帽子の男……シラナミユウミ…!最優先排除対象を発見!!信号弾発射!!】

 

 

「───なんて?」

遊矢──暴走した四天の龍をなんとか落ち着かせた矢先、オベリスクフォースが信号弾を打ち上げる…その標的は柚子達ではなく、遊海自身だった。

 

 

『最優先に排除だぁ!?遊海お前何やらかしやがった!?』

 

「………オベリスクフォース6人を、『幻魔皇ラビエル』で、滅殺して、デッキ…白紙にした…」

 

『───そりゃ、目を付けられる訳だ…!お前、戦え……そもそも動けるのか!?』

 

「このくらいの、キズ……っ………くそっ…!」

遊海の心当たりを聞いた牛尾は頭を抱える…遊海は『覇王黒竜』に左腕を潰され、肋骨が数本折れている…いつ倒れてもおかしくない状態だった…。

 

 

「牛尾班長!指令室から入電!オベリスクフォース約20人がこちらに向かって来ます!!遊撃部隊も蹴散らされて…!」

 

「ぐっ……俺が、囮に、なる…!牛尾さん、頼みます…!」

 

「遊海…!?ダメだ!そんな体で戦ったら!!」

 

「っ…俺を甘く見るな…!!

 

「っ──!!?」

さらなるオベリスクフォースの接近を聞いた遊海が立ち上がる…遊矢はそれを引き留めようとしたが、遊海の放つ殺気に後ずさる…!

 

「自分が、守るべきモノを、見失うな……!」

 

「ゆう、み…」

遊矢の肩を強く掴み、睨みつける遊海…その迫力に遊矢は冷や汗を流す…。

 

 

「ふ、ぅ………オベリスクフォース!白波遊海はここにいるぞ!!武勇を示したいのなら、掛かって来い──!!」

壊れかけた体を酷使して遊海は自分の居場所を示す…そして、評議会ビルから離れていった…。

 

 

「遊海…!」

 

「ぼーっとしてんな!他の奴らが来るぞ!!」

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

「しかいが、かすむ……ねむい…だめ、だ……うご、け…!」

オベリスクフォース達を評議会ビルから離れたコンテナ街に誘い込んだ遊海…だが、限界は近づいていく。

服は襤褸切れ…右腕は折れ、右目も飛んできた瓦礫で潰れ、失血で意識も朦朧とし始めた……本来なら始まる再生もマイナスエネルギーの影響でまったく進んでいない…。

 

 

 

【いたぞ!!追い詰めろ!】

 

【仲間の仇だ!】

 

「つう……ぐっ、があ…!!」

 

《フォウ!フォウ!?(遊海…!ダメだよ…!死んじゃうよ!!)》

再び襲い来るオベリスクフォース…遊海は必死にデュエルディスクを構える…!

 

 

「俺が引き付ければ…遊矢達は、たすかる……やるしか、ない…!」

 

 

【【【デュエル!!】】】

 

 

遊海LP4000

オベリスクフォース(赤)LP4000

オベリスクフォース(黄)LP4000

オベリスクフォース(緑)LP4000

 

 

バトルロイヤルモード

 

 

 

「おれ、ターン…!」

「っ──『伝説の預言者マーリン』、召喚…!」

 

《──うおっと!?いきなり繋がっ……遊海くん!?》

花吹雪が舞い散り、白いローブを着た青年魔術師が現れる…だが、召喚した遊海の状況を見て驚いている…。 ATK1400

 

 

「まーりん……効果、発動……自身をリリース、デッキから『聖騎士アルトリウス』を、とくしゅ召喚…」

 

《……状況は分かった、さぁ…英雄の話をするとしよう、人々を救おうと我が身を削る英雄よ──きみを救うのは、きみが紡いだ『絆』に他ならない……ここが頑張り所だよ》

マーリンが予言と共に魔法陣を展開…金髪の騎士が現れる! ATK1800

 

「ありが、とう……手札の『聖騎士ガウェイン』は、フィールドに光属性、通常モンスターがいる時、守備表示で、特殊召喚できる…」

王に従う太陽の騎士が現れる! DEF500

 

 

「レベル4の『アルトリウス』『ガウェイン』で、オーバーレイ…エクシーズ、召喚……『聖騎士王アルトリウス』…!」

聖騎士達の王が堂々と現れる! ATK2000

 

 

「手札から装備魔法『聖剣カリバーン』『天命の聖剣』を装備、攻撃力500アップ…!」

二本の聖剣が聖騎士王の腰に提げられる!

 

アルトリウスATK2000→2500

 

「1枚伏せて、ターン、えんど…」

 

遊海LP4000

アルトリウス(カリバーン 天命) 伏せ1 手札0

 

 

 

《フォウ!キャーウ!!(遊海!効果使い忘れてる!!)》

 

「あ、しまっ…!」

 

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!】

機械の猟犬が現れる! ATK1000

 

 

【『機械猟犬』の効果発動!1ターンに1度、相手に600ダメージを与える!ハウンド・フレイム!】

 

「っあ…!」

猟犬の火炎弾が遊海に直撃…コンテナに叩きつけられる…!

 

遊海LP4000→3400

 

 

【俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!】

 

オベリスクフォース(赤)LP4000

機械猟犬 伏せ2 手札3

 

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!】

2体目の猟犬が現れる! ATK1000

 

【効果発動!ハウンド・フレイム!】

 

「がっ…!?」

火炎弾が遊海の足元に着弾、爆発で吹き飛ばされる!

 

遊海LP3400→2800

 

【『機械猟犬』のさらなる効果発動!フィールドに他の『古代の機械』モンスターが存在する事で、手札から融合素材を墓地に送る事で融合召喚できる!手札の『古代の機械猟犬』と融合!『古代の機械双頭猟犬』を融合召喚!】

双頭の猟犬が現れる! ATK1400

 

 

【カードを3枚伏せ、ターンエンドだ!】

 

オベリスクフォース(黄)

双頭猟犬 伏せ3 手札1

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!】

3体目の猟犬が現れる! ATK1000

 

【吹き飛べ!ハウンドフレイム!】

 

「ごぶっ…!」

倒れ込んだ遊海に火炎弾が直撃する!

 

遊海LP2800→2200

 

 

【さらに『機械猟犬』の効果発動!手札の『機械猟犬』2体と融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬たちよ!群れ成して混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!!融合召喚!現れろ!『古代の機械参頭猟犬』!!】

機械のケルベロスが現れる! ATK1800

 

【まだだ!魔法カード「融合」!(赤)の『機械猟犬』と『参頭猟犬』を融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬よ!三つ首の猟犬と混じり合い、究極の猟犬へと生まれ変わらん!!融合召喚!現われろ!『古代の機械究極猟犬』!!】

赤黒い色の破壊の猟犬が現れる! ATK2800

 

 

「うっ、が…!速攻魔法『栄光の聖騎士団』を、発動…!『聖騎士王アルトリウス』に装備できる、装備魔法──『最強の盾』をデッキから装備…攻撃力に、守備力の数値を、加える…!」

騎士王が重厚な盾を構える!

 

アルトリウスATK2500→4500

 

 

【チッ…攻撃力を上げて来やがったか…だが、関係ねぇ!『究極猟犬』が融合召喚に成功した時、相手のライフを半分にする!アルティメット・ハウンド・フレイム!!】

 

「っ…か───」

強力な火炎放射が遊海に直撃…遊海は再びコンテナに叩きつけられる!

 

遊海LP2200→1100

 

【俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!】

 

オベリスクフォース(緑)LP4000

究極猟犬 伏せ1 手札1

 

 

 

 

 

「あ───(前が、見えない……指が、うごかない……こんな、ところで…!)」

 

《フォウ…!?フォウ!!》

 

《遊海!しっかりするのだ!!こんな負け方、翠に叱られるぞ!!》

 

「(……くらい……なにも、聞こえない……ちくしょう────)」

遊海の肉体は限界を迎えていた。

 

失血によって視界を喪失、度重なる爆発でなにも聞こえず、手足の感覚はとうに消えた…メガロックやフォウの声も届いていない…。

…辛うじて意識だけはまだ、細く繋がっている…。

 

 

 

 

【………死んだか?いや、まだ生きてるな…どうすりゃいいんだっけ?】

 

【カード化しろってさ、無理ならアカデミアに強制転送しろって……たぶんドクトルの実験材料だろうさ】

 

【ああ、怖い怖い…とにかく、これで勲章は俺達のモンだ…!このままセレナも取り戻しにいくぞ…あのじゃじゃ馬め…】

ピクリとも動かない遊海を前に勲章について話すオベリスクフォース…そして1人がデュエルディスクに手を伸ばし───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や……やめろぉぉ!!」

 

 

【あん?なんだ…ガキ…?】

コンテナ街に震えを押し殺した叫びが響く…そこに立っていたのは──

 

 

 

 

 

 

 

「遊海を…お前らになんか、渡すもんか─!!」

 

 

 

 

 

《る、龍亞!?こんな所で何をしておる!?》

 

《ドフォウ!?》

震える足で遊海を庇うように立つ緑色の髪の少年──龍亞だった。

 

 

 

 

Side龍亞

 

 

 

「アカデミアが…この街に…!?」

 

「ど、どうなるの…!?」

ホワイト議長による緊急事態宣言で混乱するデュエルパレス…観戦に来ていた龍亞兄妹も不安から身を寄せ合っていた…。

 

 

キィン─…

 

 

「あ……赤き竜の痣が…!?」

 

「誰かが、戦ってる……でも、苦しんでる…!」

そんな時、二人の腕に刻まれた赤き竜の痣が弱々しく光を放つ……それは、シグナーの誰かの窮地を知らせていた…。

 

 

キィン─!

 

 

『っ…!?シティで再び信号弾が打ち上がりました…!いったい何が……えっ?ドローンが映像を?映して!』

シティに打ち上がる黄色の信号弾…それと共にメリッサの元に映像が届き、オーロラビジョンに映される…そこには──

 

 

「ゆ、遊海!!」

それは遠目から移された映像…多数のオベリスクフォースに追われながら戦う赤帽子の男──傷だらけの遊海が戦う姿が映されていた…!

 

『これは…鋼のデュエリスト、白波遊海が融合次元の兵士を迎え撃って……追われてる?もう少しズーム…あっ!?』

映像を注視するメリッサ…だが、ドローンは『古代の機械猟犬』の流れ弾で撃墜され、映像が途切れてしまった…。

 

 

「…………行かなきゃ…!遊海を助けるんだ!!」

 

「待ってよ龍亞!!私達は子供なのよ!きっと、デュエルチェイサーズが助けに──」

 

「デュエルチェイサーズなんか信じられるもんか!それに──困ってる()()を放っておけないよ!!」

 

「あっ…待って!!」

傷ついた遊海の姿を見ていられなかった龍亞は走り出す…龍可は慌ててその後を追いかけた…。

 

 

 

…………

 

 

「遊海さん…!!」

 

「龍可、静かに…!」

デュエルパレスを守っていたセキュリティをすり抜け、街で嵐のようなデュエルを繰り広げるコートの人物のデュエルを目撃しながら龍亞達は遊海が戦っていたコンテナ街に辿り着いた……その時、遊海はコンテナの壁に叩きつけられ、ピクリとも動かなくなっていた…。

 

 

【〜〜……!】

 

「あいつら…!なんで笑ってるんだよ…!」

瀕死の遊海を前に笑いながら何事かを話すオベリスクフォース…そして……

 

 

【───たぶんドクトルの実験材料だろうさ】

 

【ああ、怖い怖い…】

 

「実験…!?」

微かに聞こえてきた会話……それを聞いた龍亞の全身に鳥肌が立つ…!

 

「やらせない…遊海に、これ以上…辛い思いをさせたくない!!」

 

「待って!龍亞!」

 

「龍可はここに隠れてて……遊海は、オレが助ける!!」

龍可の制止を振り切って龍亞は飛び出す…それは仲間を──記録の中でも人々を守る為に戦っていた英雄を()()為に────

 

 

Side OUT

 

 

 

《龍亞!逃げろ!お前は子供だ!シグナーであった、別のお前の戦いを見ただけの……シグナーであっても、戦ってはならん!!》

 

「オレは、逃げない!!オレが逃げたら…誰が、誰が!傷ついたヒーローを助けてくれるんだよ!!」

 

《龍亞、おぬし…!》

龍亞へと逃げろと叫ぶメガロック…だが、龍亞は首を横に振る……傷付き、弱った英雄を守る為に…!

 

 

 

【ガキが…邪魔しやがって…!】

 

【子供でも容赦はしねぇぞ!!】

 

「負けるもんか…負けるもんかぁぁ!!」

飛び出してきた龍亞を嘲笑うオベリスクフォース…自分より強大な相手に龍亞は立ち向かう!

 

 

 

龍亞LP4000

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「よし…!『D・スコープン』を召喚!」

顕微鏡型のロボットが現れる! ATK1300

 

「攻撃表示の『スコープン』の効果発動!手札からレベル4の『D・ステープラン』を特殊召喚!」

ホッチキス型のロボットが現れる! ATK1400

 

 

「オレはレベル4の『ステープラン』にレベル3の『スコープン』をチューニング!」

 

4+3=7

 

「世界の平和を守る為、勇気と力をドッキング!シンクロ召喚!!愛と正義の使者!『パワーツール・ドラゴン』!!」

龍亞のエースモンスター、様々な工具を持つ機械のドラゴンが現れる! ATK2300

 

 

【そんなおもちゃのモンスターに何ができる!『双頭猟犬』の効果発動!1ターンに1度、召喚・特殊召喚されたモンスターにギア・アシッドカウンターを乗せる!】

 

パワーツール ギアアシッドカウンター0→1

 

「『パワーツールドラゴン』の効果発動!デッキから装備魔法『ダブルツールD&C』『命の奇跡』『月鏡の盾』を選んで、相手がランダムに選んだカードを手札に加える!」

龍亞の背後に3枚のカードが現れる!

 

【なら、真ん中を選んでやるよ!】

 

「残りのカードはデッキに戻す!装備魔法『命の奇跡(ライフ・エクストリーム)』を『パワーツールドラゴン』に装備!」

機械竜が不思議な光に包まれる…!

 

 

「バトルだ!『パワーツール』で『古代の機械双頭猟犬』を攻撃!クラフティ・ブレイク!!」

 

【そうはいくかよ!『双頭猟犬』の効果発動!相手のギアアシッドカウンターが乗ったモンスターが攻撃してきた時、そのモンスターを破壊する!砕けちまえ!】

 

「っ…!!『パワーツールドラゴン』の効果発動!このカードが破壊される時、装備魔法『命の奇跡』を墓地に送って破壊の身代わりにできる!」

 

【なにっ…!?】

双頭猟犬が凄まじい勢いで歯車を放つ…だが、装備魔法が身代わりとなって破壊される!

 

「『命の奇跡』の──効果発動!装備されていたこのカードが墓地に送られた時、『パワーツールドラゴン』をリリースして、新たなシンクロモンスターをシンクロ召喚扱いで特殊召喚できる!!」

効果の発動を宣言した龍亞は右腕──ドラゴンズ・ハートの痣に手を当てる…。

 

 

「(赤き竜…お願い、力を貸して…!オレはこの街を…龍可を…守りたい……!)」

それは苦い思い出、フレンドシップカップの遊矢とのデュエルでの失敗──自分の()()が足りなかった故の敗北……だが、今は状況が違う…。

 

それは「記録」の中に残るもう1人の自分の戦い、遊星やジャック、遊海に守られながら、その背中を追いかけ…「覚醒」した…強き男の希望の記録…それが龍亞に力を与える!

 

 

「オレは、遊海を…助けたいんだ─!!」

 

 

キィン─!!

 

 

《キュオオォォオン!!》

 

【な、なんだ!!?】

それは龍亞の魂の叫び…その強き思いが赤き竜の奇跡を再演する!

 

 

「世界の平和を守る為!勇気と力がレボリューション!!」

パワーツールドラゴンが赤き竜の中に飛び込み、その封印を打ち破る!

 

「進化せよ!レベル8!『ライフ・ストリーム・ドラゴン』!!」

赤き竜の中から飛び出したパワーツールの鎧が弾け飛ぶ──その中から『命の輝き』を司る、第6のシグナーの竜が現れる! ATK2900

 

 

《おお…これは…!?》

 

「……る、あ…?」

コンテナ街を照らす命の奇跡…その光は遊海の瞳に光を呼び戻す…!

 

「遊海、待ってて!『ライフストリームドラゴン』の効果発動!ライフが2000より下回っているプレイヤーのライフを2000にする!」

生命の輝きが傷付いた遊海を癒やしていく…。

 

遊海LP1100→2000

 

 

「バトルだ!『ライフストリームドラゴン』で『双頭猟犬』を攻撃!ライフイズ・ビューティー・ホール!!」

 

【うおおおっ!?】

生命の息吹が双頭猟犬を吹き飛ばす!

 

オベリスクフォース(黄)LP4000→2500

 

 

【チッ…餓鬼が…!トリプル罠オープン!『古代の機械蘇生』!『古代の機械閃光弾』!『古代の機械増幅器』!蘇れ!『双頭猟犬』!】

双頭猟犬が蘇る! ATK1400→1600

 

 

【さらに『閃光弾』の効果で『双頭猟犬』の攻撃力の半分のダメージを与え、さらに『増幅器』でそのダメージは2倍になる!3200のダメージを喰らえ!アンティーク・リバイブ・ハウリング!!】

 

『そんなの効くもんか!「ライフストリームドラゴン」がいる時、効果ダメージは受けない!ダメージ・シャッター!!』

 

【なにっ!?】

生命の竜の加護が効果ダメージを跳ね除ける!

 

 

「よっしゃ!カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

龍亞LP4000

ライフストリームドラゴン 伏せ2 手札2

 

 

 

 

「龍亞…なんで、来た……」

 

「決まってるじゃん、遊海の力になりたかったんだ…あっちの『オレ』みたいに」

 

「ああ……そんな事、言われたら…寝てられないじゃ、ないか…」

話せるだけの力を取り戻した遊海が体を起こし、デュエルディスクを構える…勇気を示した幼き戦士に応える為に…!

 

 

 

「俺のターン、ドロー…!」

「『聖剣カリバーン』の効果発動、ライフを500回復する…!」

聖剣が癒やしの光を放つ…。

 

遊海LP2000→2500

 

「『アルトリウス』の効果発動…ORUを一つ使い、装備された聖剣1種類につき1枚、相手の魔法・罠カードを破壊する…!オベリスクフォース(赤)の伏せカードを破壊…!ストライク・エア」

 

【くっ!?】

荒れ狂う風の一撃が伏せられていた『古代の機械蘇生』と『古代の機械閃光弾』を吹き飛ばす!

 

「さらに…『聖騎士トリスタン』を召喚!」

竪琴を持つ悲しみの騎士が現れる! ATK1800

 

 

「『双頭猟犬』を攻撃…!エクスカリバー…!!」

 

【がああっ!?】

光の奔流がオベリスクフォースを吹き飛ばした!

 

オベリスクフォース(黄) LP0

 

 

「『トリスタン』でオベリスクフォース(赤)にダイレクト、アタック…!フェイル・ノート…!」

 

【ぐううっ!?】

竪琴の音色が空気の刃となってオベリスクフォースを切り裂く!

 

オベリスクフォース(赤)LP4000→2200

 

 

「ターン、エンド…!ごふっ…」

 

遊海LP2500

アルトリウス(天命 カリバーン 最強の盾)トリスタン 手札1

 

 

 

【この…!死にかけと餓鬼が!!ぶっ潰してやる──!!】

遊海達の思わぬ抵抗に苛つくオベリスクフォース…その時だった。

 

 

 

 

 

「その死にかけを倒しきれてないんじゃ…お前達の実力も知れてるな?群れなきゃ、たった1人にも勝てないのか?」

 

 

 

 

 

「えっ…?」

 

【な、何者だ!!】

コンテナ街に響くオベリスクフォースへの皮肉…その声に遊海は聞き覚えがあった…。

 

 

【隠れてないで姿を見せろ!!】

 

「ああ、そうしなきゃ…お前達を倒せないからな!」

軽やかに1人の男が現れる…それは灰色のYシャツに白いネクタイ…そして特徴的な赤い髪の青年だった…。

 

 

 

「えっ、ディ、ディば…!?」

 

「……ディヴァイン……」

 

「ずいぶんと弱ったじゃないか…私が一度、()()()()()()時よりも酷いぞ?」

 

「お前、記憶…」

 

「ああ、思い出したよ…!ネオ童実野シティでの馬鹿げた野望も!復讐に狂ったバリアンの事もな!……ああ、本当に嫌になる」

赤い髪の男──ディヴァインは遊海へと皮肉交じりに声を掛ける…彼も牛尾や不動博士と同じく、「絆の欠片」に導かれていたのだ。

 

 

 

「………どうして───」

 

「ふっ…一度、こういう台詞を言って見たかったんだ───()()を助けるのに、理由なんていらないだろう?」

遊海にそう応えたディヴァインはデュエルディスクを構える!

 

「私が前世で犯した間違いは……罪は消えない………それでも、力にならせてくれよ……決闘王」

 

 

 

ディヴァインLP4000

 

 

「私のターン!ドロー!」

「速攻魔法『緊急テレポート』発動!デッキからレベル3の『メンタル・プロテクター』を特殊召喚!」

頭と左右の掌に紫の石をはめたロボットが現れる! DEF2200 

 

「さらに自分の場にレベル3のモンスターが存在する時、手札の『サイコトラッカー』『サイコウィールダー』は特殊召喚できる!」

ヨーヨーを操るロボットとモノホイールに乗るロボットが現れる! ATK1500  ATK1600

 

 

「私はレベル3の『メンタル』とレベル3『サイコトラッカー』にレベル3『サイコウィールダー』をチューニング!!」

 

3+3+3=9

 

「我が身に燻る断罪の炎よ…その力で我が敵を貫け!シンクロ召喚!レベル9『ハイパー・サイコ・ガンナー』!」

両腕にサイコガンを持つ戦士が現れる! ATK3000→3600

 

 

「シンクロ素材となった『サイコトラッカー』の効果で『サイコガンナー』の攻撃力は600アップする、さらに『サイコウィールダー』の効果で『サイコガンナー』の攻撃力以下のモンスター『究極猟犬』を破壊する!」

サイコガンが破壊の猟犬を撃ち抜く!

 

【罠カード発動!『古代の機械蘇生』!墓地の『究極猟犬』を攻撃力を200アップして特殊召喚!】

究極猟犬が強化復活する…! ATK2800→3000

 

 

「バトルだ!『ハイパーサイコガンナー』で赤い仮面の奴を攻撃!サイキック・ブレイク!!」

 

【ぐああああ!?】

サイコガンの一撃がオベリスクフォースを吹き飛ばした!

 

オベリスクフォース(赤)LP0

 

 

「そして速攻魔法『バスター・モード・ゼロ』を発動!『ハイパーサイコガンナー』をリリース…現われろ!『ハイパー・サイコ・ガンナー/バスター』!!」

強化装甲を纏ったサイコガンナーが現れる! ATK3500

 

 

「『サイコガンナー/バスター』で『究極猟犬』を攻撃!」

 

【くっ…たかが500のダメージ…!】

 

「まだだよ!罠カード『シンクロ・ビッグ・トルネード』を発動!『ライフストリームドラゴン』の守備力2400ポイント分、相手モンスターの攻撃力をダウンさせる!やっちゃえ──!!」

 

【なっ─!?ぐああああ!?】

命の奇跡が復讐から解き放たれた男の背中を押す!

 

究極猟犬ATK3000→600

 

オベリスクフォース(緑)LP4000→1100

 

 

【ぐっ…だが、まだライフは残って…!】

 

「いいや、これで終わりさ……『/バスター』が相手モンスターを破壊した時、その守備力分のダメージを相手に与え、その攻撃力分、自分は回復する」

 

【そんな…ぐわああああ!?】

ディヴァインは過去の自分と決別するように、その一撃でオベリスクフォースを吹き飛ばした!

 

 

オベリスクフォース(緑)LP0

 

ディヴァインLP4000→6800

 

 

 

 

 

「や、やった〜!オレ達の勝ちだ!!」

 

「……ありがとう、龍亞、ディヴァイン……たすかった…」

 

「はっ……お前に受けた恩の半分くらいは返せたか?」

 

「十分すぎる、くらいさ…」

オベリスクフォースを蹴散らして無邪気に喜ぶ龍亞…ディヴァインは少し恥ずかしげに遊海に声を掛け、遊海は思わぬ「奇跡」に感謝していた…。

 

 

「だが、そうのんびりはしてられないぞ…白波、動けるか?」

 

「………すまん、無理だ……全身…バラバラに、なりそ…ごふっ……」

 

「ったく…私はサイコパワーは持ってないし、回復なんてできないからな…どうしたもんか……」

「ライフストリームドラゴン」によって僅かに回復したとはいえ…遊海は動ける状態ではない…そして、油断は新たな危機を招いてしまう…!

 

 

 

 

【逃しはしねえよ、大人しくしやがれ】

 

「る、龍可!!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「っ…!!」

 

「私が言えた事ではないが──姑息な真似を……!!」

下卑た声がコンテナ街に響く…そこには隠れていた龍可を人質にした、新たなオベリスクフォースがいた…!

 

 

 

オベリスクフォース(赤)LP4000 古代の機械猟犬 手札4

オベリスクフォース(黄)LP4000 古代の機械猟犬 手札5

オベリスクフォース(緑)LP4000 古代の機械猟犬 手札5

 

 

【こいつが大事なら…そこのガキと男、サレンダーして這いつくばれよ…そうすりゃ返してやる】

 

「っ…くそっ…!」

 

「………ディヴァイン、龍亞……奴らに、従え……俺は、大丈夫…だから…」

 

「ゆ、遊海……ごめん…!!」

龍可にデュエルディスク──カード化装置を突き付けるオベリスクフォース…龍亞達はその要求を呑むしかなかった…。

 

 

 

遊海LP2500 聖騎士王アルトリウス(カリバーン 天命 最強の盾) トリスタン 手札0

 

龍亞 サレンダー

 

ディヴァイン サレンダー

 

 

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!】

機械の猟犬が現れる! ATK1000

 

【攻撃力4500なんて厄介なモンスター出しやがって…まぁ、関係ないけどな!『機械猟犬』2体の効果発動!ハウンド・フレイム!!】

 

「があっ…!!」

 

「遊海!!」

2体の猟犬の火炎弾が遊海に直撃する!

 

遊海LP2500→1300

 

【ターンエンドだ!】

オベリスクフォース(赤)LP4000

機械猟犬 機械猟犬 手札4

 

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!】

再び猟犬が現れる… ATK1000

 

【喰らいな!ハウンド・フレイム!】

 

「がっ───」

 

「やめて…!もうやめて─!!」

 

【うるせぇ!黙ってろ!!】

コンテナ街に龍可の悲鳴が響く…遊海のライフは……命は風前の灯火だった…。

 

遊海LP1300→100

 

 

【ターンエンドだ!】

オベリスクフォース(黄) LP4000

機械猟犬 機械猟犬 手札5

 

 

【散々手こずらせやがって……次のターンで終わりだ!】

 

「がっ……おれに、とどめを、さす前に……女の子を……龍可を……はなせ…!」

 

【あ?そんなの嘘に決まってるだろ?全員俺達の()()()()になるのさ…!】

 

「っ…卑怯者が…!!」

 

【卑怯でけっこう…戦争にルールなんていらないだろう?ぎゃはははは!!】

下卑た笑顔で約束を破るオベリスクフォース…その表情には悪意しかない…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ボクのターン!!ボクはレベル5の「TG(テック・ジーナス)ハイパー・ライブラリアン」とレベル2「TGレシプロ・ドラゴンフライ」にレベル5「TGワンダー・マジシャン」をチューニング!!』

 

 

 

【なにっ!?】

悪意が支配するコンテナ街に闇を斬り裂く声が響く!

 

 

 

 

 

『リミッター解放…レベルマックス!レギュレーターオープン・オールクリア!!無限の力よ!時空を突き破り、希望の世界を切り開け!GO!デルタアクセル──!!

 

 

【どわっ!?】

 

「きゃっ!?」

オベリスクフォースの前を掠める閃光…それと共に龍可が悪漢の手から開放される!

 

 

 

 

 

『───カモン!「TG ハルバード・キャノン」!!』

闇を切り裂き…巨大な戦斧を持つ戦士が遊海達を守るように現れる! ATK4000

 

 

 

『……大丈夫かい?お姫様』

 

「えっ…あ、貴方、は…!?」

龍可が優しくDホイールから降ろされる…龍可を救い出したのは、青い髪を逆立てた…赤いサングラスの男だった。

 

 

「………ブルー、ノ?」

 

『詳しい話は後!今はこいつらを!!』

 

 

 

ブルーノLP4000

 

 

 

『バトル!緑の仮面の「古代の機械猟犬」を攻撃!ハルバート・スナイプ!!』

 

【があああっ!?】

巨大なエネルギー砲が猟犬を飲み込んだ!

 

オベリスクフォース(緑)LP4000→1000

 

 

『ボクはこれでターンエンドだ!』

 

ブルーノLP4000

ハルバートキャノン 手札0

 

 

【い、いきなりなんだ!?】

 

【この野郎、何処から!?】

 

『僕に注目するのもいいけど──それは戦士としては失策だよ!今だ!!』

 

 

 

 

 

 

 

最強デュエリストのデュエルは全て必然──ドローカードさえもデュエリストが創造する!シャイニングドロー!!

 

 

 

 

 

「おま、え……」

 

 

『オレが来るまでよく耐えた……説教はこの馬鹿共に思い知らせてからだ────遊戯(ゲーム)ではない…現実(リアル)の痛みを…!!』

白いコートをはためかせ…淡い光を放つ青白い肌の人影が遊海達の前に現れる…それは───

 

 

 

 

ラプラスLP4000

 

 

 

 

『ああ、お誂え向きだ…手札の「方界胤ヴィジャム」「流星方界機デューザ」「方界(カルマ)」を公開する事で──手札の「暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ」3()()は特殊召喚できる!!』

無数のキューブが集い、箱型のバリアに守られた神が現れる! ATK3000 ATK3000 ATK3000

 

 

【攻撃力3000のモンスターを、いきなり特殊召喚だと!?】

 

『戦争にルールはいらん?ふざけた事を…ルールを決めなきゃ、戦争はどこまでもエスカレートする……世界を滅ぼすまで止まらない────バトルだ、1体目の「クリムゾンノヴァ」でオベリスクフォース(赤)の「機械猟犬」を、2体目でオベリスクフォース(黄)の「機械猟犬」を攻撃!』

 

【【ぐあああっ!!?】】

鋭い金色の腕が猟犬達を貫く!

 

 

オベリスクフォース(赤)LP4000→1000

オベリスクフォース(黄)LP4000→1000

 

 

『そして「クリムゾン・ノヴァ」は相手モンスターを破壊した時、もう一度攻撃できる…殺れ、「クリムゾンノヴァ」』

 

【【ぎゃああああ!?】】

再び金色の腕がオベリスクフォースを直撃、薙ぎ払い…吹き飛ばした!

 

オベリスクフォース(赤)LP0

オベリスクフォース(黄)LP0

 

 

【ひっ、あ、ああ…!?】

 

「オレは光の世界の人間だから、あまり強い言葉は使いたくないが…敢えて言おう、()()()()()()()

 

 

 

【あ、ああ…!?うわあああああああ!!?

 

 

 

 

 

オベリスクフォース(緑) LP0

 

 

遊海&ブルーノ&ラプラス WIN!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────で、これはどういう状況なのかな?遊海…!なんでシンクロ次元にディヴァインやら龍亞や龍可がいるんだ……!!

 

「ら、らぷらす……ぎ、ギブ……ギブ……ぎぶ……死ぬ、まじでしぬ…!!ギチギチギチ

 

《フォーウ…(なーんで、二人が会うとこうなるかなぁ…)》

 

オベリスクフォースを撃退し、周囲の安全を確保したラプラスは倒れ込んだ遊海の頭を渾身のアイアンクローで締め上げる…遊海はそれに抗う力すらないので頭蓋骨からは嫌な音が鳴っている…。

 

 

 

「ブルーノ…チーム5D'sの、向こうの世界の『オレ』達の仲間…まさか会えるなんて…!」

 

「それに、ゲイザー……ラプラスさんも一緒に…びっくりしちゃった…」

 

『…ボクも驚いたよ、まさか…もう一度若い龍亞や龍可に会えるなんてね?しかもシグナーか……ふふっ、遊海もずいぶん無茶をしたみたいだね』

その一方で龍亞達は『記録』で見たブルーノ、そしてラプラスとの出会いに喜び…ブルーノは懐かしい姿の兄妹の姿を見て喜んでいた。

 

 

 

「おい、そこまでにしてやってくれよ…顔色真っ青だぞ、白波の奴」

 

『フン…まさか、お前がいるとはな……どういう心変わりだ?』

 

「……別にいいだろ、私は──友人の力になりたかっただけさ」

 

『───良かったな、ディヴァイン』

遊海を〆続けるラプラスにディヴァインが声を掛ける…ラプラスは様変わりしたディヴァインの様子に戸惑っていたが……本当に改心したらしい事を確信し、優しい言葉で応えた…。

 

 

「らぷらす…おれのこと、いいから……遊矢、を……ランサーズ…達を、たすけて、くれ……たの、む…」

 

『たくっ…死にかけておきながらよく他人の心配ができるな…?心配すんな、シティのオベリスクフォースは撃退したらしい……キラー(アヤカ)にでも念話で聞いてみろ』

 

「わす、れてた………あやか────」

遊矢達の無事を確認する為、遊海は念話を試みる…その結果は─────



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四天共鳴〜混沌の前兆〜

こんにちは!S,Kです!

今回は遊矢達、ランサーズサイド…遊矢達は柚子達を守る事ができたのか…!


それでは、最新話をどうぞ!


「バトルだ!『覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)』でオベリスクフォースにダイレクトアタック!!」

 

【ぐあああ!?】  

 

「はぁ…はぁ…キリがない…!」

 

「くっ…!!しつけぇんだよ!!」

 

行政評議会ビル前広場…そこで遊矢と沢渡、そしてデュエルチェイサーズは激戦を繰り広げていた。

 

本来の『物語』ならば、柚子はセルゲイ戦で吹き飛ばされ行方不明に、セレナはユーゴ戦後にロジェの命令を受けた治安維持局に拉致されかけた所を月影・零羅に救われて逃亡…場所が分からなくなった…その分、オベリスクフォースは分散する事となり、各個撃破され大きな被害は防がれるはずだった。

 

だが、遊海の介入で状況は一変した、柚子もセレナも行政評議会のペントハウスにいる…つまりオベリスクフォースは()()()()()()()()()()()()()()

それは本来以上の攻勢となって遊矢達を襲っていた…!

 

 

 

 

「(遊海は大丈夫なのか…!?1人でオレ達と同じくらいのオベリスクフォースを……いや、きっと大丈夫だ…!オレは、柚子を守らなきゃ…!)」

時折、海側から凄まじい轟音が響く…それは遊海とオベリスクフォースと激しいデュエルを行なっている事を示していた…。

 

 

『ランサーズ各員、状況を報告してくれ!必要ならば増援を送る!』

 

『遊撃は問題ない!』

 

『こちら評議会ビル屋上、此方を撃退次第…ビル入口の増援に向かう!』

 

「うぉい!評議会入口がちょっとやべぇぞ!早く来てくれ!!」

零児の問いかけに黒咲・月影・沢渡が応える…既に5チームは撃退し、少なくとも5チームは遊海を追った…そして5チームが評議会ビル前で戦っている…だが、さらに…。

 

《こちら白波遊海のパートナー・彩華です!現在、新たにオベリスクフォースの反応を確認、合計16!評議会ビルに追加で5チームが向かっています!注意してください!》

 

「まだそんなに来るのかよ!?」

デュエルディスクから人間体の彩華の声が響く、最初に探知していた数は45人15チーム…そこからさらに15人5チームの増援が現れていた…!

 

 

 

「待たせたな!遊矢!手伝いに来てやったぜ!」

 

「行政評議会やセキュリティの良いように使われるのは癪だが…街の奴らの為に戦ってやる!」

 

「敵の実力は未知数…油断はしない!」

 

「おなご1人2人にこんな大勢寄こしやがって…アカデミアってのはそんな馬鹿げた奴らなのか?嬢ちゃん達には手は出させねぇ!」

 

「クロウ…シンジ…遊星…!それに徳松さんも…!」

だが増援があるのは遊矢達も同じ…行政評議会から説明を受けたクロウや遊星達が応援に駆けつける!

 

 

 

【ここか、セレナ様がいるのは…!】

 

「っ…新手か…!」

そして、オベリスクフォースを引き連れて新たな敵が現れる…それは青髪に左目を眼帯で隠した偉丈夫だった…!

 

 

『気をつけろ!そいつはバレット…アカデミアでセレナの付き人をしていた実力者だ…!』

 

「セレナの…!?」

 

【ほう…その声は赤馬零児か、今回は以前のようにはいかんぞ】

監視カメラでその姿を見た零児が注意を促す…バレットはそれほどの実力者だからだ…!

 

 

【我が名はバレット!セレナ様と柊柚子を渡してもらおうか!】

 

「そうはいかないぞ…!セレナも、柚子も…アカデミアには渡さない!」

 

【邪魔立てするなら…打ち倒すまで!オベリスクフォース!この小僧は私が引き受けた!お前達はビルを目指せ!!】

 

【【【了解!!】】】

 

『っ…デュエルチェイサーズ!ここが踏ん張りどころだ!!押し負けるな─!!』

 

『『『『応っ!!』』』』

 

 

「クロウ!いくぞ!」

 

「ああ…!鉄砲玉のクロウ、いくぜ!」

バレットの前に立ち塞がる遊矢、バレットは()()として遊矢を相手取る…そしてオベリスクフォースとランサーズ・セキュリティ連合が衝突した…!

 

 

 

 

 

【『デュエル!!』】

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対バレット

 

 

 

柚子とセレナの運命が懸かったバレットと遊矢のデュエル…先攻を取ったバレットはエースモンスター『獣闘機パンサー・プレデター』を喚び出す…相対する遊矢は『スマイル・ワールド』を引き…自分のデュエルに対する思いを──『デュエルは人を笑顔にする』モノという思いを再確認しながらターンを進める。

 

そしてペンデュラム召喚によってエースである『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を喚び出したのだが…。

 

 

【永続罠『鉄鎖の獣闘機勲章』を発動!自分の場に『獣闘機』モンスターが存在する時、特殊召喚されたモンスターの攻撃と表示形式の変更を封じる!】

 

「なんだって!?」

バレットの発動した罠カードによって『オッドアイズ』、そして喚び出された『EMヘイタイガー』と『EMシルバー・クロウ』は鎖によって雁字搦めに縛られてしまう…!

 

 

「なら…!レベル4の『ヘイタイガー』と『シルバークロウ』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現われろ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

縛られたオッドアイズを開放する為、反逆の牙が咆哮する…!

 

 

「バトルだ!『ダークリベリオン』で『パンサープレデター』を攻撃!」

 

【無駄だ…!罠カード『紅鎖の獣闘機勲章』を発動!自分フィールドに『獣闘機』モンスターが存在する時、エクストラデッキから特殊召喚された『ダークリベリオン』の攻撃を封じる!!】

 

「そんなっ…!」

バレットは二段構えの作戦を用意していた…それにより反逆の牙も鎖に捕らわれてしまう…だが、それだけではない…!

 

 

【さらに『紅鎖の獣闘機勲章』は相手プレイヤーも縛る!このカードが存在する限り、相手は魔法・罠の発動もできず、モンスターの特殊召喚も封じる!!】

 

「なにっ!?がっ…!」

 

「遊矢!!」

さらに罠カードから飛び出した赤い鎖のリアルソリッドビジョンが遊矢を締め上げる…そして『パンサープレデター』にはバーンダメージを与える効果がある…バレットはそれを使って遊矢を倒すつもりなのだ…。

 

 

そしてデュエルは進んでいく、バレットは新たな融合モンスター『獣戦闘ウルフ・ケンプファー』を喚び出し、僅か1ターンで遊矢のライフを追い詰めてしまう…。

 

 

「だぁっ…!遊矢の奴の手助けにいきたいのに…!厄介過ぎるんだよこいつら──!!」

 

「落ち着け、奴らはバーン戦術とロックを組み合わせてくる!それに一つずつ対象するんだ!『サテライト・ウォリアー』!モーメント・リアクター!!」

 

「『ABF-驟雨のライキリ』でダイレクトアタックだ!」

追い詰められていく遊矢する前に沢渡や遊星達はオベリスクフォースの相手に手一杯…セキュリティにも脱落者が出始める…その時!

 

 

 

「バトルだ!『デストーイ・サーベル・タイガー』『デストーイ・チェーン・シープ』『デストーイ・ホイールソウ・ライオ』でオベリスクフォースを攻撃!!」

 

【【【ぐわあああ!?】】】

 

 

 

「お、お前!紫雲院!!」

 

「素良!?」

オベリスクフォースの一角が蹴散らされる…それを為したのはアカデミアのデュエリスト───紫雲院素良だった。

 

 

【貴様、紫雲院素良!なんのつもりだ!?】

 

「なんのつもり?……僕はアカデミアを抜けさせてもらう、僕は──遊矢や柚子達の味方だ!!」

 

「素良…!」

オベリスクフォースを蹴散らした素良へ問いかけるバレット…その答えはアカデミアからの離反だった…!

 

 

「この前はごめん、遊矢……でも、あの時のデュエルで気付いたんだ…僕が本当にやりたいデュエルは──遊矢みたいな笑顔を作れるデュエルなんだって…!その為に、僕はアカデミアと戦う!」

 

「素良…ありがとう…!」

それは背中を押された素良の本心…人々を笑顔にするデュエルをしたいという決意だった…!

 

 

 

『──へぇ、それじゃあキミは──プロフェッサーを裏切った、という事でいいんだね?』

 

 

 

「っ…お前は…!!」

その時、乱戦の続く広場に冷たい声が響く…そこにいたのは紫色の髪、そして紫色のアカデミア制服を着た少年だった……そしてその顔は───

 

 

「っ…!?オレと、同じ顔…!?こいつが…!」

 

『凌牙からの情報にあった…アカデミア、プロフェッサーの切り札──ユーリ…!バトルロイヤルで柊柚子を追い詰めた男だ!』

 

「こいつが…柚子を…!?」

遊矢と瓜二つな男、ユーリ…その威圧……異様な雰囲気がデュエリスト達の手を止めさせる……!

 

 

【チッ…既に到着していたか…!】

 

『アカデミアの制服を着ていながらプロフェッサーを裏切るなんて…そんな事が許されると思ってる?脱走は重罪だ……悪いけど逮捕──いや、処刑させてもらおうか…連れて帰るの面倒だし』

 

「っ…!素良!!」

静かにデュエルディスクを構えるユーリ…その時…!

 

 

 

『見つけたぞニヤけ野郎──!!』

 

 

 

【ああ…しつこいなぁ、撒いたと思ったのに…】

 

「ユーゴ…!?」

 

「あっ…!遊矢に似てる奴!!」

混沌とする評議会ビルの前に1台のDホイールが乱入する…それはユーリを追跡していたユーゴだった…!

 

 

 

『今度こそ逃さねぇ!デュエルだ!!オレがこの時をどんだけ待ったか…!!リンを連れ去ったお前は許さねぇ!!』

 

【しつこいなぁ…あれは()()だったの!命令された事を恨まれてもなぁ…ボクはこれから裏切り者を処分して、柚子とセレナをアカデミアに連れて行かなきゃならないんだ…邪魔しないでよ】

 

『セレナと柚子を…?…やらせる訳ねぇだろ!柚子はそこにいるユーヤって奴に会えて本当に嬉しそうだった…!あいつにこれ以上、悲しい思いはさせねぇ!』

 

【へぇ、そう…じゃあ───キミを消してからにするとしようか…!!】

睨み合っていたユーゴとユーリが…ついにデュエルを始めた…!

 

 

 

 

『その美しくも雄々しき翼翻し!光の速さで敵を撃て!シンクロ召喚!「クリアウイング・シンクロ・ドラゴン」!!』

 

 

【魅惑の香りで虫を誘う二輪の花よ!今1つとなりて、その花弁の奥の地獄から…新たな脅威を生み出さん!融合召喚!現われろ!飢えた牙持つ毒龍…「スターヴヴェノム・フュージョン・ドラゴン」!!】

 

 

自身のエース、クリアウイングを喚び出すユーゴに対し…ユーリもまたエースを喚び出す。

それは禍々しいオーラを纏う『融合』の名を冠するドラゴン…。

 

 

 

それによって───『四天の龍』がこの場に揃ってしまった…!

 

 

 

ドクン!!

 

 

 

「ぐ、う…!?がああっ──!?」

 

 

「っおい!?どうした遊矢!またかよ!?」

突然、鎖で縛られた遊矢が苦しげな…獰猛な叫びを上げる……それと共にユーリ・ユーゴの瞳が妖しく輝き、共鳴するようにドラゴン達も唸り声を上げる…!

 

 

キィン─!

 

「赤き竜の痣が…!」

 

「この気配…!これが、遊海さんの言っていた…!」

それに呼応するように赤き竜の痣が光を放つ…そして遊星は遊海から聞かされていた『哀しき悪魔』の話を思い出す…!

 

 

 

 

「こ、この時を…「待っていた…!」」

 

今こそが…復活の時…!

 

今こそ、1つに──

 

今こそ、1つに……

 

 

【『「「今こそ、1つに……!!」」』】

 

 

 

【な、なんだ…!?何が起きている!!】

異口同音に同じ言葉を口にする遊矢・ユート・ユーリ・ユーゴ……それと共に夜空が妖しく輝き、ドラゴン達が歓喜の咆哮を轟かせる…!

 

 

「(まずい…!遊海さんがいないこの状況は──!!)」

広場を支配する異様な空気…その時だった!

 

 

 

《そうはさせません!!》

 

「遊矢!!」

 

「ばっ…柚子!?外に出てくんじゃねぇ!!」

凛とした女性の声、そして少女の叫びが響く…そこにいたのは──彩華に連れられた柚子だった…!

 

 

 

 

Side柚子

 

 

「遊矢…みんな…!」

零児から知らされたオベリスクフォース襲来、それによって臨戦態勢となったランサーズはセレナと柚子を残して迎撃に向かった。

その中で柚子はただ遊矢達の無事を祈る事しかできなかった…。

 

 

キィン─!

 

《失礼します、柊柚子さん》

 

「きゃ…!?あ、彩華さん!?」

 

《ええ、お久しぶりです……マスター、白波遊海の指示で貴方の護衛に来ました》

 

「遊海さんの…」

そんな時、部屋に瞬間移動によって銀髪の少女──デュエルパレスで出会ったレイン彩華が現れる、突然の事に柚子は驚いたが…見知った顔を見て安堵した…。

 

 

「あ、あの…遊海さんは、大丈夫ですか…?デュエルパレスで倒れて……」

 

《……マスターは現在、榊遊矢達と共に評議会ビルの防衛に参加しています──貴女達を守る事が、アカデミアの野望を阻止する事に繋がるのです》

 

「私達が…?それって…どういう…?」

 

《それは禁則事項──いいえ、時が来たらマスターから話すと思います、それまで待っていてくださ───マスター…!?》

 

「えっ…どうしたの!?」

柚子へ遊海の状態を伝え、柚子達の事を守る重要性を伝える彩華…その時、無表情であった彩華の表情が揺らいだ…。

 

 

《(マスターのバイタルが…!?いくら不調とはいえ、オベリスクフォースにこんなダメージを負うはずは…!)》

彩華は遊海の異変を感じ取る…それは遊海が大ダメージを受けた知らせだった…!

 

 

 

『ランサーズに通達!オベリスクフォースの新たな目的が分かった…白波遊海の最優先での排除を目的としている!彼はオベリスクフォースを引き付ける囮となって離脱した!それぞれ守りを固めてくれ!』

 

 

《っ…アカデミア、よりによって…!》

 

「あ、彩華さん…!?大丈夫なんですか!?」

 

《───大丈夫です、マスターは…強いですから…!》

零児から共有された情報に柚子は息を呑む…そして遊海の事を心配するが……彩華は柚子を安心させる為に大丈夫と応えた…だが…。

 

 

《(今のマスターの体力では連戦は……カード化装置はおそらく効かないはず、それでも……マスター、どうかご無事で…!)》

彩華はただ、遊海の無事を祈るしかなかった…。

 

 

 

…………

 

 

 

《(マスター…!?マスター!応答してください!!っ…声が届いてない……応えている余裕がない…!?)》

……ペントハウスは高層階にある故に、シティを見渡せる…そして彩華はランサーズのサポートをしながらも見えていた。

コンテナ街で煌めく黄金の龍や、大いなる幻魔皇の戦う姿が…そして、遊海の生命反応が弱まっている事も…。

 

 

キィン─

 

 

「あっ…ブレスレットが…!?」

 

《っ…このタイミングで…!》

そしてそんな時、柚子のブレスレットが光を放つ…それが意味している事は────

 

 

《柚子、そのブレスレットが光る意味は分かっていますか?》

 

「あ、えっと……遊矢と、遊矢に似た顔の誰かが…近くにいる時…だと思います…」

 

《それが分かっているなら大丈夫……おそらく、榊遊矢が窮地に陥っています》

 

「えっ!?」

彩華の思わぬ言葉に柚子は驚愕する…!

 

 

《その状況を変えられるのは貴女……いえ、貴女達の持つブレスレットの力だけ、しかし…貴女も危険に晒される可能性もあります……それでも、貴女は榊遊矢を助けたいですか?》

 

「彩華さん……お願い!私を遊矢の所に連れて行って!!守られてばっかりは…もう嫌なの!!」

彩華からリスクを聞かされた柚子は即答する…困っている遊矢を助けられるなら、多少の危険は承知の上と…!

 

 

《了解しました…では、失礼します!》

 

「えっ…なにを、きゃあ!?」

柚子の答えを聞いた彩華は柚子を横抱き…お姫様抱っこで抱え上げると部屋から飛び出し──

 

 

《しっかり掴まっていてください!》

 

「きゃあああああ!?!?」

廊下から吹き抜けへと飛び出し数十メートルを落下……柚子の悲鳴と共に入口近くへと着地する!

 

 

《走って!》

 

「ひゃ、はい!!」

そして柚子は遊矢を救う為に飛び出した…!

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

「遊矢!!」

 

「なっ…!?」

 

 

キィン─!!

 

 

柚子が遊矢達の前に躍り出た瞬間、ブレスレットが強い光を放つ、その光は暴走していたユーゴとユーリを何処かへと転移させ───

 

 

がああっ!?

 

「遊矢──!?」

鎖で縛られた遊矢は吹き飛ばされ、評議会ビルの壁に激突…ビル周りに設置されていた噴水に落下した…。

 

 

 

「遊矢!大丈夫!?」

 

「うっ…げほっ…!?柚子…!?どうして!?」

 

「遊矢が心配だったから…!」

柚子は噴水に落下した遊矢を助け起こす…正気に戻った遊矢は柚子が外に出てきた事に驚くが……柚子は遊矢を助ける事ができたのだ…。

 

 

【柊柚子…獲物が自ら飛び出してくるとは……オベリスクフォース!柊柚子を確保せよ!!】

 

【【【了解!!】】】

 

「くっ…!?柚子!逃げろ!!」

バレットの命令にオベリスクフォースの一部がデュエルを中断…遊矢と柚子に殺到する!

 

 

 

 

 

「冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の薔薇よ!開け!!現れて!『ブラック・ローズ・ドラゴン』!!」

 

【【【うわああああ!?】】】

 

 

 

「遅れてごめんなさい!パパとママを説得するのに手間取っちゃった…!女の子1人を狙うなんて…許さない!」

 

「アキ!」

オベリスクフォースが黒薔薇の鞭に弾き飛ばされる…黒薔薇のデュエリスト、十六夜アキが加勢に駆けつけたのだ!

 

 

「よし…!オベリスクフォースを押し返すぞ!!」

 

「「『『おおーっ!!』』」」

遊星の掛け声で防衛チームの士気が上昇…オベリスクフォースを次々と撃破していく…!

 

 

 

【くっ…だが、お前はモンスターの召喚も、攻撃も封じられた!できる事はない!!】

 

「オレは、諦めない…!柚子を守る為に、最後まで諦めない!!」

オベリスクフォースが足止めされ、歯噛みするバレットは遊矢へと向き直る…絶体絶命の遊矢はそれでも諦めずに逆転の一手を考える────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『集いし夢の結晶が!新たな進化の扉を開く!!希望を示す道となれ!!アクセルシンクロォォ──!!』

 

 

【なにっ!?】

その時、閃光と共に何者かが遊矢とバレットの間に割り込む!

 

 

 

「招来せよ!『シューティング・スター・ドラゴン』!!」

 

《ギュアアアアン!!》

鋭い咆哮がシティへと響く…それは光を纏う進化の奇跡…シューティング・スター・ドラゴンの咆哮だった。

 

 

 

『エクシーズ次元レジスタンス、()()()()!ランサーズに助太刀する!!』

 

「えっ…?不動?!」

遊矢達を守るように青いDホイールのライダーが名乗りを上げる…それはエクシーズ次元から駆けつけた流星だった!

 

 

不動流星LP4000

 

 

『「シューティング・スター・ドラゴン」の効果発動!1ターンに1度、デッキトップ5枚をめくり!その中のチューナーの数だけ攻撃できる!』

流星がデッキトップに手をかける!

 

 

『1枚目!チューナーモンスター「ハイパー・シンクロン」!』

 

『2枚目!チューナーモンスター「スターダスト・シンクロン」!』

 

『3枚目!チューナーモンスター「エフェクト・ヴェーラー」!』

 

『4枚目!「ドッペル・ウォリアー」!』

 

『5枚目!チューナーモンスター!「ジャンク・シンクロン」!!』

 

 

【よ、4回の連続攻撃だと!?】

 

『アカデミアを吹っ飛ばせ!シューティング・ミラージュ!!』

 

《ギュアアアン!!》

 

【お、おのれぇぇ!?ぐわああああ!!!】

分身したシューティングスターがバレットに殺到…そのライフを削りきった…!

 

 

 

バレットLP0

 

流星&遊矢WIN!

 

 

 

 

【む、無念…!申し訳ありません…プロフェッサー…!】

 

【バレット隊長!?】

遊矢と流星、バレットのデュエルが決着する…バレットはアカデミアに強制送還され、オベリスクフォースに動揺が広がる…!

 

 

「そこだ!『スターダスト・ドラゴン』!」

 

「『花札衛─五光』!!」

 

「『B・F─決戦のビッグ・バリスタ』!」

 

「『魔界劇団ビッグ・スター』!!」

 

『「デストーイ・マッド・キマイラ」!』

 

「『モンタージュ・ドラゴン』!『ゴヨウ・ガーディアン』!」

 

【【【ぐわあああ!?】】】

その隙をデュエリスト達は逃さない、一斉攻撃によってオベリスクフォースは全滅、シティへの侵攻はシンクロ次元・ランサーズ連合の勝利に終わった…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁ…間に合って良かった〜!シンクロ次元にアカデミアが侵攻するかもしれないって聞いたから、慌てて来たんだ…立てるかい?』

 

「あ、う…うん…」

デュエルが終わり、Dホイールから降りた流星が遊矢へと手を差し伸べる…突然の事に戸惑っていた遊矢だが、手を取って立ち上がる…。

 

 

《流星、助かりました…ナイスタイミングです》

 

『アヤカさん!無事で何よりです!遊海さんは?』

 

《マスターは別の場所で戦っています……とりあえず、ヘルメットは()()()()()くださいね…()()()()()()()()になるので…》

 

『えっ?』

そんな時、アヤカが珍しく頭を抱えながら流星へと話しかける…その理由は────

 

 

「おい、お前…そのDホイールは────」

 

『えっ!?()()()()()()!?若っ!?』

 

「「『『おじいちゃん?!』』」」

 

《ああ、遅かった……》

自分のDホイールに似たDホイールに気付いた遊星が流星に話しかける…それに思わず流星が反応してしまい、周りの異変に気付く。

 

 

『えっ…おばあちゃんに、クロウさんに…牛尾さん?!どうなってんの!?』

 

「えっ…!?」

 

「遊星と、同じ顔…!?」

思わずヘルメットを脱ぐ流星…そこには遊星と瓜二つの顔があった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──あやか、きこえる、か…?──

 

《(マスター!?ご無事ですか!?)》

オベリスクフォース襲来とは別の意味で混沌とし始める広場…そこへ遊海からアヤカへの念話が届く。

 

 

──死にかけだけど、だいじょうぶ……遊矢たちは、柚子とセレナは、ぶじか…?──

 

《オベリスクフォースは撃退、柚子達も無事なんですが………ちょっと、状況がカオスな事に……どうしましょう…?》

 

──カオス…?……わかった、今からラプラスと、ブルーノ達と一緒にもどる──

 

《──────はい?》

 

 

 

 

混沌の夜は…まだ、終わらない…。

 



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幕間〜襲撃後のカオス〜

こんにちは!S,Kです!

数年振りに重い風邪に苦しむ今日この頃……どこでもらって来たかなぁ…?

読者の皆様も風邪やコロナに気をつけて過ごしてくださいね…。


それでは、最新話をどうぞ!


【行政評議会よりシティの皆様にお知らせします…只今を以て緊急事態宣言を解除します、アカデミアの兵士達はセキュリティ、並びにランサーズ・有志のフレンドシップカップ参加者によって撃退されました……シティの皆様の協力に感謝します──繰り返します────】

 

 

『どうやら、アカデミアの撃退は済んだようだな…俺も準備はしていたが…』

 

行政評議会からの連絡に沸き立つデュエルパレスにて、玉座からジャックが立ち上がる。

ジャックはシティの『キング』として…敢えて迎撃に向かわず、玉座で待ち続けていた……シティにおいて最強であるジャックが()()()()()事でシティの人々を安心させる為である。

 

その使命を終えたジャックは行政評議会へと向かっていた…。

 

 

 

『(戦闘中、赤き竜の痣が2回光を放った…一度目は龍亞の覚醒を──2回目は異常な()()を知らせるもの……一度、状況と被害を把握しなければ…)』

本来のシンクロ次元のジャックならば…街の被害と言われても、そこまで気にする事はなかっただろう…だが、今の彼は…『チーム5D's』の記録を得た彼は違う。

 

様々な王の背中を見た彼は…本当の意味で『王』として、シティの事を考えていたのだ。

 

 

 

 

『あっ…ジャックさん!?』

 

『はっ──?』

 

そんな彼が行政評議会で目にしたのは…明らかに人数が増えたランサーズ達とシグナーの仲間に…自身のライバルにそっくりな、別人の少年の姿だった。

 

 

 

 

………

 

 

 

 

「えっ…?えっ!?遊星が2人いる!?!?」

 

「ど、どうなってるの…?」

 

《これはややこしい事に…どう説明すればいいでしょうか…》

 

 

最小限の被害でオベリスクフォースを撃退し、柚子とセレナを死守する事に成功したランサーズ・セキュリティ・フレンドシップカップ参加者・シグナーの連合チーム……だったが、新たな人物によって混乱の中にいた…。

 

 

 

「君の、名前は…」

 

『えっと…()()流星です…おじ………遊星さん…』

 

「『不動』って……お前…遊星の生き別れの兄弟かなんかかよ!?」

エクシーズ次元からレジスタンスとして救援に駆けつけた流星だったが…まさか、シンクロ次元に不動遊星やクロウ・ホーガンが存在するとは思わず…さらに、顔が遊星とそっくり(髪のメッシュの色が違う)な事で、混乱の元となっていた…。

 

 

『遊星とクロウ、お前達…流星の事を知らねぇのか?赤き竜にアッチの()()を貰ったんだろ??』

 

「オレ達が見せられたのはもう一人の『オレ』がネオ童実野シティで戦い、全ての戦いが終わって痣を赤き竜に()()()所まで、なんだ…だから、彼の事は知らないんだが……」

 

『あっちゃー……そういう事かよ…』

遊星に流星の事を聞いた牛尾が額に手を当てる…シグナー達はDM世界の『自分』の全てを知っている訳ではなかったのだ。

 

 

 

『流星…俺はお前が知ってる、「牛尾の爺ちゃん」だ……この遊星やアキ達はお前の祖父、不動遊星の()()()()()()って思えばいいのさ』

 

『あ、なるほど………って!?余計にどういう事ですか!?なんでシンクロ次元に!?いや、スタンダード次元には亡くなった武藤遊戯さんや海馬瀬人さんがいたとは聞きましたけど!?』

 

「……本当に混沌って奴だな、この状況は……ああ、もう!遊海!早く戻って来い─!!」

牛尾の説明でなおさら頭がこんがらがる流星…遊星譲りの頭の良さがあるとはいえ、この状況は彼の理解を超えていた…あまりの混沌とした状況に牛尾が遊海の名前を呼んでしまう程に…。

 

 

スタン!

 

 

『お望み通り、白波遊海を連れて来たぞ……死にかけだがな』

 

『お前…!?』

 

「なっ…あなた、は…!?」

 

『ラプラスさん!』

そして、混沌とした状況がさらにカオスになる───死に体の遊海を肩に担いだ、白いコートに黒いバイザーを着けた男──人間体に擬態したラプラスが現れたからだ。

その登場に牛尾と遊星は驚愕し…流星は親しげに駆け寄る、ただ…当のラプラス本人は────

 

 

『───おいテメェ、どうやったらこんな事が起きるんだ!この大馬鹿!!』

 

「ぶげっ……そんな事、おれに、いわれても………」

 

『ラプラスさん!?』

 

《マスター!?》

 

「ゆ、遊海ぃぃ!?」

混沌とした状況に気付いたラプラスが肩に担いでいた遊海を乱暴に地面に叩き落とす、遊海にとっても想定外のこの事態は説明のしようがないのだが……。

 

そして…遊海の()()が悪かった、服はボロボロ、両手は変色し、明らかに折れていると分かる状態…さらに右目は潰れ、叩き落とされた拍子に吐血……明らかに瀕死の状態だった。

遊海のそんな状態を目にした遊矢と柚子はパニックに、流星とアヤカは慌て…牛尾は頭を抱えてしまう、事情を知らないシンジや徳松は言葉を失っている…。

 

 

 

「あー……心配するな、遊矢、柚子ちゃん……こんな怪我、すぐに、治すから……」

 

「いや、治るわけないじゃん!?というか死なないでよ─!?」

 

「いや、遊海さんの言う通りだ……彼は『英雄』と呼ばれる決闘者──すぐに元気になるさ、そうだろ──ラプラス」

 

『遊星……ああ、一晩も休ませて回復させれば問題ねぇよ』

 

「えっ…?いやいやいや……」

遊矢達を不安にさせないように軽く応える遊海、遊矢は瀕死の遊海を前に慌てていたが…落ち着いている遊星とラプラスという男の言葉に戸惑っていた。

 

 

『(あっ……絶対、この人だ…カイザーが言ってた()()……僕のデュエリストの勘がそう言ってる…)』

そんなドタバタの中…素良はボロボロの遊海を見て、彼こそが『英雄』であると確信した……そう感じるだけの覇気が彼から漏れ出していたからだ。

  

 

キキーッ!

 

 

『相変わらずだね、ラプラス…Dホイールより速いなんて──流星!?どうしてきみが!?しかも縮んでる!?』

 

「えっ…遊星が2人いる!?」

 

「どうなってるの…?」

 

『あっ…ブルーノさん!……それに…龍亞さんと龍可さん!?小さっ!?』

 

『『「「ブルーノ!?」」』』

 

「…………ああ、もう…タイミングが悪いというか、なんというか………」

 

《カオス、ですね……》

 

《フォウ、フォウ…(どうするの、コレ?)》

死にかけの遊海は混沌とする状況に思わず天を仰いだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ずいぶんと人数が増えましたな…】

 

【まずは、それぞれの状況を確かめる必要がありますね…赤馬零児、進行を頼んでもいいかな?】

 

『ええ、構いません…私も状況を整理したいと思っていました』

少し時間が流れ…シティ防衛戦に参加した者達は行政評議会の議場に集められていた。

 

 

セキュリティの代表として牛尾

 

ランサーズの零児・零羅・月影・遊矢・沢渡・権現坂・黒咲・セレナ・柚子、そして遊海(応急処置・車イス・ミイラの姿)と人間体の彩華、協力者の素良

 

フレンドシップカップ参加者から徳松・遊星・クロウ・シンジ

 

シグナーとしてアキ・龍亞・龍可

 

レジスタンスの流星

 

そしてラプラスとブルーノ……合計21人となった。

 

 

………なお、ディヴァインは「アキや遊星に合わせる顔がない」と言ってコンテナ街から立ち去っていた。

 

 

 

 

『………なんだ、この状況は…』

 

『あっ…ジャックさん!?』

 

『はっ─?遊星が2人──?』

そんな時、シティのキング、ジャック・アトラスが行政評議会を訪れる……その状況にジャックは思わず目を見張る…。

 

 

「ジャック、とりあえず…それを含めて状況確認と説明の時間だ………少し大人しくしててくれ」

 

『遊海っ!?……分かった』

戸惑うジャックに遊海が声を掛ける…重傷の遊海の姿を見て言葉を失ったジャックだったが、言葉を飲み込んで評議会の自身の席に腰掛けた…。

 

 

 

 

【初めに…行政評議会を代表して、礼を言わせて貰おう……ランサーズの諸君、有志のデュエリスト諸君、そしてセキュリティの諸君…君達の戦いによってシティは守られた……感謝します】

 

『いえ、こうしてアカデミアに対抗するのがランサーズの役目…その責務を果たす事ができ、私も嬉しく思います』

話を始める前にホワイト議長がデュエリスト達に感謝を伝える…彼らの奮闘でシティへの被害は少なくなっていた…。

 

 

 

【まずはシティの被害から、報告が上がっている限りでは…評議会ビル前の損傷・デュエルによる道路の破壊が数カ所・コンテナの破損が数件…牛尾捜査官、セキュリティの被害は?】

 

『怪我人は多数出ましたが…カード化された者はゼロ、アカデミアが目的に集中し、移動を優先した為と思われます』

 

【なるほど…それは結構、モノは直せるが…失われた命は戻らんからな…】

行政評議会の問いに牛尾が答える…シティへの物的・人的被害は最小限で収まっていた。

 

 

【次は増えた人数についてだが…まずは水色の髪の君、名前を聞かせてもらえるかな?】

 

「僕は紫雲院素良……()アカデミアのデュエリスト……でも、今は遊矢や柚子の……ランサーズの味方だよ」

ホワイト議長の問いに素良が答える…一部の人間(黒咲や沢渡)は疑わしい目をしていたが…。

 

 

【君の事は監視カメラで確認させてもらった…セキュリティやランサーズと共にオベリスクフォースを倒す姿を……行政評議会は君の言葉を信じよう、赤馬零児…キミはどうかね?】

 

『紫雲院素良…キミがスタンダード次元にスパイとして侵入し、混乱を齎したのは事実…だが、今回の活躍で一先ずは不問としよう……その代わり、アカデミアの情報を提供してほしい』

 

「分かった、僕に話せる事は話すよ」

 

「素良、良かったな…」

評議会も零児も素良の事を受け入れる…それを聞いた遊矢や柚子、権現坂は嬉しそうな表情をしていた。

 

 

 

【次は……不動遊星によく似た君、君はエクシーズ次元レジスタンスの所属と聞いたが…】

 

「それは俺が保証する…彼は不動流星、エクシーズ次元を守る勇士の1人だ……シンクロ使いとは知らなかったが」

 

『あはは…隼とは一緒に戦う機会が少なかったもんね…』

次に問いかけられた流星の身元を同じレジスタンスの黒咲が保証する…流星は照れくさそうに笑っている…。

 

 

 

『流星、キミはシティのデュエリスト…不動遊星と同じ名字、顔も瓜二つ……キミは何者だ?』

 

『それを説明するには、オレ達の事を話さなきゃならない』

遊星とそっくりな流星について訊ねる零児…その時、ラプラスが前に歩み出る。

 

【君は……ラプラス、と呼ばれていたな…流星と関係があるのかな?】

 

『……遊海、()()()()話すぞ?構わないな?』

 

「代わりにたのむ…長い時間喋るのは、少しキツい……」

 

『軟弱な……仕方ない……オレ達とエクシーズ次元レジスタンスの一部、そしてここにいる白波遊海は───スタンダード・エクシーズ・シンクロ・融合……()()()()()()()()()()()

 

【『「『「なんだって!?」』」』】

ラプラスの言葉にランサーズやシンクロ次元組の驚愕の声が重なる…自分達の聞いた4つの次元とは違う、さらなる別次元があると言われれば仕方ないだろう…。

 

 

【それはキングの言っていた……違う自分がいた、という『世界の果て』という場所と同じ、と解釈してもいいかな?】

 

『その認識で構わない、次元と区別する為に「世界」と呼ばせてもらうが……このバカ………失礼、白波遊海が()()によって「世界」から投げ出されたのが、全ての始まりだ』

 

「酷いなおい…いや、違わないけどさ…」

そして、ラプラスは遊海やアヤカから確認した情報に少しの嘘を交えながら経緯を説明する。

 

 

「世界」で発生した事故で白波遊海がスタンダード次元に漂着した事。

 

遊海を救う為に救出隊が出発したが…次元を突破する際にトラブルに巻き込まれ…エクシーズ次元へと不時着、アカデミアへ対抗しながら遊海を探していた事。

 

自身とブルーノは「世界」で様子を見ていたが…抜け穴を見つけてこの次元にやって来た事を…。

 

 

 

「抜け穴…?次元間には『嵐』が吹き荒れてて、並大抵の力じゃ、移動は…」

 

『うん…また詳しく話すけど…赤き竜がボク達を導いてくれたんだ』

ブルーノが遊海へと耳打ちする…自分達がシンクロ次元に来た経緯を…。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「なに…?遊星達がシンクロ次元のビジョンを見た?」

 

『ああ…一瞬だったらしいけど、遊海とジャックじゃない『ジャック・アトラス』が戦うイメージが見えたらしいんだ』

遊馬達がARC次元に向かって()()()のアストラル世界…そこでラプラスとブルーノは遊星達が見たというシンクロ次元のビジョンについて話し合っていた…。

 

 

『それでアーククレイドルから観測してみたら…大量の遊星粒子がARC次元に流れ込んだ形跡が見つかった』

 

「大量の遊星粒子………まさか、遊海のシグナーの痣をビーコンにして、赤き竜がシンクロ次元に向かったのか…?ずいぶんと優しい事だな…」

ブルーノからの情報、そして前世の知識からラプラスは仮説を立てる…それは奇しくも遊海と似た考えだった。

 

 

『そして…ARC次元を覆う「嵐」、流星や翠さんが巻き込まれたその嵐の層の一部が薄くなっているのを確認できたんだ…!』

 

「まさに『抜け穴』だな…おそらく、繋げる働きを持つ遊星粒子が人間界とARC次元を結んだ…と考えるべきか……時間を遡る事も考えたら、不可能な話ではない……行くつもりか?アンチノミー」

 

『ああ、ボクのデルタイーグルとトップクリアマインド…アクセルシンクロの力を使えば、嵐の中を走れるはずだ……ボクも、遊海の力になりたい……チーム5D'sの1人、ブルーノとして!』

光の速さを超えるスピードの境地・トップクリアマインド…その速さはブラックホールからの脱出すらも可能とする……ブルーノはその力で嵐を突破しようと考えていた…。

 

 

「ならば──オレも同行しよう、アストラル人の体は精神生命体……光の速さで動けるからな、お前の補佐ができるだろう」

そしてラプラスはブルーノに同行する事を決める…それは無茶をしようとするブルーノを守る為でもあった。

 

 

『それはボクも嬉しいけど…ミドリ…エメルがなんて言うか……』

 

「心配しないで…私は止めないわ、遊海さんと翠の力になってあげて…あなた」

 

「──ああ、心配するな……すぐに帰ってくる、あの阿呆を一発ぶん殴ってな」

 

「もう、素直じゃないんだから…」

エメルに背中を押されたブルーノとラプラスはARC次元に突入…無事に遊海と合流する事ができたのだった。

 

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

『───という訳で、不動流星は「世界」における不動遊星の子孫、という事になる……まさかこんなタイミングで合流する事になるとは思っていなかったがな』

 

【それは…また眉唾な……我々の世界に近い、言わば『並行世界』が存在するとは…】

簡単に遊海と流星、そして自分達の関係を説明するラプラス…その話にホワイト議長は頭を抱えていた…。

ラプラスはDM世界の事を4つの次元の並行世界である、という形で説明した…その方が混乱し難いと考えたからだ。

 

 

『4つの次元とは別の「世界」……その世界は我々の味方、と考えてもいいのか?』

 

『味方…というよりは()()だな、こっちの次元みたいに簡単に次元移動はできないし、そもそも来られない…流星達レジスタンスの奴らが戦ってるのは──あいつらが本当にお人好しで、理不尽な悪を憎み…揺らがない正義を持つ決闘者だからだ、その点は信頼してもらっていい』

「世界」が新たな脅威になる事を危惧する零児…その問いにラプラスは静かに答える、DM世界からARC次元に向かえる力を持つ者は限られている…それ故に『中立』という形で…。

 

 

 

 

 

【とりあえず、この話はここまでにしよう…まずは目先の脅威、アカデミアの対処からじゃ……再びアカデミアが攻めてくる可能性は?】

 

『その可能性は低いだろう…柊柚子とセレナの拉致に失敗し、アカデミアのエリート部隊オベリスクフォースを70人近くを撃退された…それはアカデミアにとって紛れもない『敗北』、さらなる戦力を差し向けてもおかしくないが…シンクロ次元のデュエリスト達の強さと連携を知った状態でエクシーズ次元と同時に攻める、という選択肢は選ばないはずだ』

 

【確かに…我々を攻めている間にエクシーズ次元のレジスタンスが押し返す可能性もある……その推論は正しいな】

ホワイト議長の心配に零児が答える…融合次元がシンクロ次元とエクシーズ次元を同時に相手取る事はないと…。

 

 

 

「なら…エクシーズ次元を倒してから、シンクロ次元を攻める可能性が高い……流星、レジスタンスの状況は…」

 

『今の所は大丈夫です!一度、大規模攻勢があったけど…レジスタンスは防衛戦を展開、大きな被害もなくアカデミアを撤退させました!遊馬や凌牙、璃緒…翠さん…みんな無事です』

 

「そうか…安心、した──」

 

《あ、マスター……》

 

『馬鹿が…意識の糸を手放すんじゃねぇ』

零児の言葉を受けてエクシーズ次元へのさらなる侵攻を警戒する遊海だったが……流星の言葉を聞いて緊張が緩んだのか、意識を手放してしまった…。

 

 

 

【………あえて、触れないようにしていたが……白波遊海は大丈夫なのかな…?明らかに死にかけている状態に見えるが……】

 

『心配はいらない、この大馬鹿はこれくらいでは死なん……失礼、この程度で死んでいたら…こいつはオレ達の世界で「英雄」とは呼ばれてはいない───むしろ、こいつの怪我体質は()()()()だ…少しは反省しろ、阿呆』

 

「「『『(すごい辛辣…)』』」」

ホワイト議長の困った様子にラプラスが反応する…ただ、その辛辣さにランサーズ達は遊海に同情し…ある程度の事情を知っているシグナー組と牛尾は苦笑いしていた。

 

 

 

【さて…最後に明日のフレンドシップカップ、準決勝・決勝の事だが…】

 

【準決勝出場者の1人、ユーゴが姿を消してしまった……セキュリティ達に捜索はさせているが……】

 

【アカデミアの動きを考えると敗者復活を行なっている余裕はない…故に、不動遊星…キミは──】

 

『遊星──俺と戦え』

 

【キング?】

 

『『「「!?」」』』

フレンドシップカップの話となった時、沈黙していたジャックが遊星に話しかける…熱い魂を宿して…。

 

 

『準決勝が不戦勝で進んでは観客達も満足しないだろう…それに、お前には3年前の借りがある』

 

「ジャック……良いだろう、お前とのデュエル…受けて立つ!」

ジャックと遊星が静かに火花を散らす…それは例え、世界が違おうとも2人を結ぶ『宿命』だった。

 

 

 

【話は決まったの……フレンドシップカップ準決勝は予定通り、午前中に準決勝、午後に決勝を行なう!遊矢にクロウ、遊星にキング…それぞれの活躍を見せて貰おう】

 

「クロウ…!」

 

「へっ…容赦はしないぜ、遊矢!」

ホワイト議長の決定がランサーズや出場者達に伝えられる…それはシンクロ次元、最後の戦いの始まりを示していた…。

 

 

 

 

…………

 

 

『少し待ってくれないか?ラプラス』

 

『なんだ?赤馬零児…オレは遊海の治療をしなければならん、用があるのなら手短にな』

話し合いが解散した後、ランサーズや出場者達が部屋に戻り、シグナー組が帰宅した後…行政評議会を信頼できると判断したアヤカが遊海と流星の為の部屋を確保、その部屋に移動している時…零児がラプラス達へと声を掛けた。

 

 

 

『異世界の話やアカデミアの話で有耶無耶にされてしまったが……君達は()()()()()を何一つ話していない、遊海の味方という事は分かるが……君達は何者だ?』

 

『ラプラスさん…』

 

『赤馬零児、世界には1つや2つ…()()()()()()()()()がある、オレ達は遊海の…お前達の味方だ、それでいいだろう?』

 

『………いや、不安要素は減らしておきたい…教えてくれないか?貴方達の事を…!』

零児はまっすぐにラプラスを見つめる…彼らの真意を見極める為に…。

 

 

『はぁ、強情だな……アヤカ、赤馬零児は信頼できるか?』

 

《ええ、口の堅さも理解力も…この次元では信頼できます、既に監視カメラはハッキング済み、人避け結界も発動しているので…伝えるならばどうぞ》

 

『そうか』

アヤカから零児の評価を聞いたラプラスは擬態を解く…そこに現れたのは──光が擬人化されたような存在だった。

 

 

 

『っ─!?』

 

『改めて名乗ろう、オレはラプラス……高位次元、アストラル世界の決闘者だ』

 

『じゃあボクも…ボクはブルーノ、「世界」での遊星達シグナーの仲間…そしてデュエルロイド、アンドロイドの決闘者さ!』

 

『───人間、では…なかったのか』

 

『はは…そりゃ、驚くよね…』

明かされた真実に思わず硬直する零児…その横では流星が困ったように笑っている…。

 

 

 

 

『世界には知らない方がいい事もある……オレ達の存在もその1つだ、そして……お前達が本当に()()()()()の事もな』

 

『私達が本当に戦うべき敵……凌牙からアカデミア以上の「敵」になり得る存在──白波遊海を襲った「災厄」がいる、と聞いたが…』

 

『そうだ、この世界には()()が潜んでいる……だが、それについて話すのは遊海(馬鹿)の仕事だ……お前はアカデミアの目的の阻止を優先してくれればいい──それだけでも、遊海の負担は減るからな』

 

『遊海は全部一人で抱えちゃうからね…本当ならすぐにでもエクシーズ次元に行きたいはずのに……困ってるキミや遊矢、シンクロ次元の人達を放っておけなかった……それが白波遊海っていう男さ』

 

『……話は済んだな?エクシーズ次元に向かうタイミングが決まったら教えろ…それまでには遊海を治しておく』

 

『……ああ、真実を伝えてもらい感謝する』

零児へと真実の一端を明かしたラプラスは再び擬態し、部屋へと向かう…零児はその背中を見送るしかなかった…。

 

『(高位次元…災厄…魔物……そして、4つの次元以外の『世界』……いったい、何が起きようとしている…!?)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラプラス…あんまり、零児にストレスをかけるなよ……ただでさえ、重い責任を背負ってる、んだから……」

 

『起きてやがったか…テメェは人の心配より、自分の事をなんとかしやがれ……翠を1人にするんじゃねえよ!このドアホ!!』

 

「ぎゃん!?……きゅ〜……」

 

『ら、ラプラスさん…怪我人には優しくしないと……(汗)』

 

『あはは…この2人の関係だと、それは難しいかな〜…』

 

《(今回はマスターが全面的に悪いのでフォローできませんね…)》

 

《フォウ…(だからって本気で拳骨する事はないのに…)》

  

 

ほんの少しドタバタしたものの、混沌の夜は静かに更けていった。



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絆の黒羽とエンターテイナー〜真っ向勝負〜

こんにちは!S,Kです!ようやくの復活です!

まさか10日も寝込む事になるとは…久々にキツかったぁ……それから、今回の話を書くのも…。
遊矢対クロウ、2人のデュエルの行方は…?


それから、活動報告アンケートも受け付けていますので…良かったらお答えください

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=294259&uid=206572



おまたせしました!それでは、最新話をどうぞ!


『シティは1つ!』

 

「「「「みんな友達!!」」」」

 

『うんうんいい感じ〜!フレンドシップカップ4日目!今日はついに…準決勝・決勝が行われるわ!!』

快晴のシティ・デュエルパレスにメリッサと観客達の歓声が響く…。

……本来ならば、地下ゴミ処理場送りにされたコモンズのデュエリストや地下送りにされたセキュリティによる反乱…「革命」によって大混乱に包まれているはずのシティ……だが、それは遊海やシグナー達の起こした「希望の革命」、そしてランサーズの活躍によって発生する事なく…シティの人々は本当の意味で『1つ』になろうとしていた…。

 

 

『昨日は融合次元が攻めて来た!なんていうからビックリしちゃったけど…セキュリティや勇敢なデュエリスト達の活躍で大きな被害がなくてよかった〜……フレンドシップカップが中止になったらみんな残念だもんね!さぁ、勇敢なデュエリスト達の頑張りに応えられるように…盛り上がっていきましょう──!!』

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

「ありがとな、ラプラス…なんとか、大丈夫そうだ…」

 

『ったく…スタンダード次元を出てからロクに眠らずに「正義の味方」やって、収容所からの脱獄手伝って?前夜祭でシンクロ次元のジャックとデュエル……そしてなんやかんやで「冥界の王」が復活してデュエルして、致命傷状態でZEXAL化………無理し過ぎなんだよ大馬鹿!!』

 

「あいてッ!?いや、俺も想定外、だったんだって…」

行政評議会ビル・ペントハウスの一室、一晩をかけたラプラスの治療によって遊海は()()全快した……使い果たした体力を除けば、だが。

 

 

「遊海さん…せめて、今日一日は安静にしててください…エクシーズ次元は…翠さん達は大丈夫ですから…!」

 

『流星の言う通りだよ、万全な状態で行かないと翠も心配しちゃうだろうしさ』

 

「そう、だな……そもそも…まだ、指一本…動かせないし…」

 

『まずは飯を食え!お前のそれは完全な()()()()()()()だ!翠がいないからってちゃんと食べてないから余計に回復が遅いんだろうが!』

流星とブルーノの言葉に遊海が弱々しく応えるが…再びラプラスに雷を落とされる。

……そもそも、セルゲイ戦後からオベリスクフォース襲来まで遊海はろくに食事を摂っていなかった、それが回復遅れの原因の一つだったのだ…。

 

 

 

『(というより…なーんか()()()()がするなぁ…?遊海から感じるカオスが強すぎる……嫌な気配がする……気のせいか…?……「赤き竜の痣」が反応しないなら…悪いモンじゃねぇのか…?)』

そんな中、ラプラスは遊海の状態に小さな違和感を感じていた…一瞬、アストラル世界人としての感覚が打ち倒されたはずの『混沌の神(ドン・サウザンド)』の影を感じ取ったが……遊海に宿る「痣」が無反応である事から、彼はその可能性を否定した。

 

 

 

コンコンコン…

 

 

「あ、はーい?」

 

『失礼する』

 

『赤馬零児か、どうした?これからフレンドシップカップの戦いがあるだろう?』

 

『その前に…遊海に確かめたい事があってな』

遊海の部屋を何者かがノックする…それは零児だった。

 

 

「ん、赤馬零児…どうした?」

 

『(完全に回復している!?まだ一晩しか経っていないのに…!?いや、動揺を見せるな…彼らの特異性は分かっていたはずだ…!)……これから紫雲院素良にアカデミアの情報を聞く所なのだが、その前に貴方と話がしたいらしい…大丈夫か?』

 

「紫雲院素良が…?構わないけど…」

ほぼ全快している遊海の姿に驚愕する零児…だが、その動揺を隠して遊海に目的を告げる…それは素良との面会だった。

 

『ならば、オレ達は席を外そう…少し休憩したいからな(アヤカを通して聞いてるからな)』

 

「(無駄に器用な事するなぁ…)」

 

『…感謝する』

遊海へとテレパシーを送り、ラプラス・流星・ブルーノは席を外す…既に盗聴の用意はバッチリである。

 

 

 

………

 

 

 

「入るね、遊海」

 

「改めて初めまして…俺が白波遊海だ、こうして会うのは……初めて、かな?」

 

「えっ…うん、そうだと…思う」

ラプラス達と入れ違いに月影に付き添われた水色の髪の少年、素良が現れる…ほぼ()()()の2人だが、実際…会うのは初めてではない…。

 

 

 

「あっ───ゆ、遊希…?遊希なの!?」

 

『───説明していなかったな……彼、白波遊海は…遊勝塾の榊遊希、彼が本来の記憶とデュエリストとしての力を取り戻した姿だ』

 

「えっ…!?」

 

「……そうか、凌牙の見せてくれた資料にあったな…君は榊家に居候していた時期がある……俺と同じでね」

ベッドに体を横たえる遊海の姿に素良はスタンダード次元での掛け替えのない()()の姿を重ねる……その既視感は当たっていた。

 

 

『君がバトルロイヤルの時、スタンダード次元に連れ込んだオベリスクフォース…その衝突が、榊遊希本来の記憶を呼び覚ますキッカケとなった……その代わり、遊海はスタンダード次元で過ごした記憶を()()()()()()()……その意味が分かるか?』

 

「───そんな……それじゃ、遊矢の事や、柚子や権ちゃんの事も…!?」

 

「ああ…遊希が遺してくれた『ビデオレター』のおかげで、関係は分かってる……俺には、その実感はないんだけどな……」

零児と遊海の言葉を聞いた素良は目を見開く…バトルロイヤルでオベリスクフォースが何をしたのかは()()()()()……だが、その暴虐が大切な友人を失わせていた事を…素良は知らなかったのだ……。

 

 

 

「───ごめん、なさい…!遊希…ごめん…!!僕が…僕のせいで…!!」

 

「素良君…君は悪くない、悪いのは──君をそこまで追い詰めたアカデミアの馬鹿な大人達だ……君はその呪縛を自分で断ち切れた……しっかりと赤馬零児や遊矢達の力になってやってくれ、それが…きっと『(遊希)』が素良に望む事だと思うから…」

 

「──うん…!」

 

『(アカデミアの戦士である紫雲院素良の心を一瞬で……あの優しさが、彼本来の……)』

失われてしまった遊希の事を考えて涙ながらに謝罪する素良…その頭を遊海の手が優しく撫でる、そこには憎しみも怒りもなく…無茶をしたのであろう素良を労る優しさだけがあった。

そしてその姿を見た零児は遊海の本質が「強さ」なのではなく──『優しさ』である事にようやく気付いたのだった。

 

 

 

 

 

「……さて、素良君…俺に話したい事があるって聞いたけど…?」

 

「あ、はい……あの……『帝王(カイザー)』って言葉に、心当たりってある、かな…?」

 

「カイザー?……ああ、()()()?」

 

「あっ…やっぱり…!」

落ち着いた素良に本来の目的を聞く遊海…そして素良の伝えた言葉は──確かに遊海の知る言葉だった。

 

 

『カイザー…?それはアカデミア関係者の事か?』

 

「うん、アカデミアの伝説のデュエリスト…丸藤亮の二つ名だよ……僕は彼の言葉に背中を押されて、アカデミアから離反しようと思ったんだ…!『アカデミアから離れろ、英雄を頼れ』って…!」

 

「そうか…お前も()()()()()のか、亮…!ならば、ずいぶん動きやすくなるな」

 

『話が見えてこないのだが…遊海、貴方は融合次元に行った事はないはず…なのに、何故…アカデミアのデュエリストの名前を…?』

カイザー…丸藤亮の名前を聞いて小さく笑みを浮かべる遊海…流石の零児もその状況に戸惑っている。

 

 

 

「昨日、ラプラスが言っただろ?『次元』以外の『世界』がある…遊星やジャック、スタンダード次元の海馬社長や遊戯はそれぞれの理由からその『世界』の記憶を持っている──それと同じ事が融合次元でも起きている、という事さ」

 

『──アカデミアに、貴方に協力してくれる味方がいる…という事か!?』

 

「そういう事…例え、世界が違っても…俺の()()()達は人々を踏み躙る悪を許す決闘者じゃない…おそらく、反旗の時を狙って準備しているはずだ…!」

僅かな情報から遊海は融合次元の状況を予測する…『絆の欠片』に導かれた丸藤亮を始めとした『決闘者』達がアカデミアの改革を狙っていると…!

 

 

『……遊海、本当に貴方は()()なのだ…?あの気難しい海馬瀬人から信頼され、初めて足を踏み入れたシンクロ次元の無血革命を成し遂げ…未だ足を踏み入れていないエクシーズ次元や融合次元にも影響を与える……私には、貴方の事を理解できない』

あまりにも凄まじい影響力を持つ遊海に対し、零児は思わず本音を伝える…彼にとって、遊海はまさに『未知』の存在だったからだ…。

 

 

「俺は…決闘者(デュエリスト)だ、それ以上でもそれ以下でもない……ただ、人と違うとすれば──ほんの少し、お前達よりも()()()してて…みんなより強い『力』を持ってる…それが俺さ」

 

『それが答えになるとでも…!?』

零児に改めて『決闘者』であると伝える遊海…しかし、零児は食い下がる。

 

「……本当はもう少し話してやりたいんだが……すまん、今は…無理、だな…」

 

『っ…何故だ!』

 

「赤馬零児……ダメだよ、この人……()()()()()()

 

『っ!?』

素良の言葉に零児が目を見開く、つい一瞬前まで話していた遊海は……静かに眠りに落ちていたのだ。

 

 

《赤馬零児、今はお引取りを……マスターはまだ万全な状態ではありません、来たるべき時に…必ず真実を伝えるでしょう》

 

『レイン彩華……』

眠りに落ちた遊海の傍らにアヤカが姿を現す…その無機質な瞳はまっすぐ零児を見つめていた…。

 

 

『……取り乱してすまない、紫雲院素良…次は君の話を聞く番だ…アカデミアの事、プロフェッサーの事を教えて欲しい』

 

「うん、それが…僕の罪滅ぼしになるのなら…!」

眠ってしまった遊海とアヤカに謝罪した零児は素良と共に部屋を去る……アカデミアの事を少しでも知る為に…。

 

 

《マスター、お疲れ様でした……良い夢を…》

3人を見送ったアヤカは穏やかに眠っている遊海の頬に優しく触れながら、戦い続けた彼を労った…。

 

 

 

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

 

 

『さぁ、まずは準決勝第一試合!榊遊矢選手対クロウ・ホーガン選手の対決です!』

メリッサの実況がデュエルパレスへと響く、そして赤いDホイールの遊矢とブラックバードを操るクロウがスタートラインに並び立つ!

 

 

『遊矢…この前は悪かったな』

 

「えっ…?」

 

『ほら、ガキ共には笑顔が大事なのか…腹いっぱいなのが幸せなのかって喧嘩したじゃねぇか……結局、両方大事なんだよな…腹が減ったら笑えねぇ…けど、笑顔がない食事なんてつまらねぇ……あん時のオレには余裕がなかった…けど、今なら言える…お前の考えも()()()んだってな』

 

「クロウ…」

それは遊矢達がセキュリティに捕まる前の小さな諍いの事…別世界の「記録」を得たクロウは遊矢の言葉も正しい考えだったと気付いたのだ。

 

 

 

『さぁ、戦おうぜ…遊矢!オレはガキ共の為に…この街を新しい未来に導く為に……手加減はしねぇ!』

 

「オレだって…!みんなにデュエルの本当の楽しさを知ってもらう為に…それに…ジャックにリベンジする為に──負けられない!」

 

『へっ、いい顔になったな…!いくぜ!!』

お互いに闘志を高める遊矢とクロウ…2人の戦いがついに始まる!

 

 

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

 

スタートの合図によって同時に飛び出す2台のDホイール…先攻を取ったのはクロウだった!

 

 

 

 

クロウLP4000

遊矢LP4000

 

 

アクションフィールド『クロス・オーバー・アクセル』発動中

 

 

 

 

『先攻は貰った!オレのターン!!』

『「BF-東雲のコチ」を召喚!』

鷺に似た黒い羽を持つ鳥が現れる! ATK700

 

『さらに手札の「BF-白夜のグラディウス」は自分フィールドのモンスターが「BF」モンスター1体の時、特殊召喚できる!』

鋼の鎧を纏い、剣を携えた鳥人が現れる! ATK800

 

『オレはレベル3の「白夜のグラディウス」にレベル4の「東雲のコチ」をチューニング!!』

 

3+4=7

 

『漆黒の翼翻し、雷鳴と共に走れ!電光の斬撃!!シンクロ召喚!降り注げ!!「A BF-驟雨のライキリ」!』

クロウのエースモンスター…稲妻を纏う鳥人が現れる! ATK2600

 

 

『オレはカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

クロウLP4000

ライキリ 伏せ1 手札2

 

 

 

「オレのターン…ドロー!」

「この手札なら…!オレはスケール1の『星読みの魔術師』とスケール8の『時読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!」

遊矢の背後に光の柱が立ち上がり、白衣の魔術師と黒衣の魔術師が浮かび上がる!

 

 

PENDULUM!!

 

 

「揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!!手札から現われろ!レベル6『EMマンモ・スプラッシュ』!レベル4『EMシルバー・クロウ』!そして雄々しくも美しき二色の眼!レベル7!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

ペンデュラムの軌跡からシルクハットを被ったマンモス、白銀の毛並みの狼、そして遊矢のエースモンスターであるオッドアイズが飛び出す! DEF2300 ATK1800 ATK2500

 

 

『お得意のペンデュラム召喚か…!さぁ、どうする!』

 

「いくぞ!オレは『マンモスプラッシュ』の効果発動!このカードと自分フィールドのモンスターを使って融合召喚を行なう!『マンモスプラッシュ』と『オッドアイズ』の2体で融合!」

マンモスと二色の眼の龍が融合の渦に飛び込む!

 

 

「二色の眼の龍よ!巨獣のしぶきをその身に浴びて…新たな力を生み出さん!!融合召喚!出でよ!野獣の眼光りし獰猛なる龍!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

野獣の力を宿すオッドアイズが咆哮を轟かせる! ATK3000

 

 

『いきなり攻撃力3000とは派手じゃねぇか…!』

 

「この時、融合素材になった『マンモスプラッシュ』は除外される…いくぞ、クロウ!『ビーストアイズ』で『ライキリ』を攻撃!」

 

『おっと!そう簡単にいくかよ!アクションマジック「奇跡」!「ライキリ」はバトルでは破壊されず、バトルダメージも半分になる!』

ライキリが手にした剣で野獣の炎を受け止める!

 

クロウLP4000→3800

 

 

「流石…!オレはカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊矢LP4000

ビーストアイズ シルバークロウ (P 星読み 時読み) 伏せ1 手札0

 

 

 

『ふぃ〜…危ねえ…さぁ、次はオレの番だ!』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『自分のフィールドに「BF」モンスターが存在する時!手札の「BF-疾風のゲイル」は特殊召喚できる!』

黄色のクチバシが特徴的な鳥人が現れる! ATK1300

 

『さらに「BF-幻耀のスズリ」を召喚!』

骨の仮面を被った鳥人が現れる! ATK1000

 

 

『「幻耀のスズリ」の効果発動!召喚に成功した時、デッキから「ブラック・フェザー・ドラゴン」の名が記されたカード「BF-ツインシャドウ」を手札に加える!』

 

「ここだ!罠カード『EMショーダウン』を発動!自分フィールドの表側表示の魔法カード1枚につき1枚、相手フィールドのモンスターを裏側守備表示にする!フィールドの魔法カードはペンデュラムゾーンの『星読みの魔術師』と『時読みの魔術師』の2枚!『疾風のゲイル』と『幻耀のスズリ』を裏側守備表示に変更する!」

 

『なにぃ!?』

遊矢のフィールドから飛び出した銀狼がクロウのフィールドを黒い幕で覆う、それによって2体の鳥人は裏守備に変わってしまった!

 

 

ゲイルATK1300→DEF400

 

スズリATK1000→DEF1400

 

 

『やってくれるじゃねぇか…なら「ライキリ」の効果発動!「ビーストアイズ」を破壊させてもらうぜ!』

 

「やらせない!アクションマジック『ミラー・バリア』!『ビーストアイズ』の効果破壊を無効にする!」

ビーストアイズの前にバリアが現れライキリの斬撃を弾く!

 

 

『やるな…だが、攻撃は残ってる!「ライキリ」で「シルバークロウ」を攻撃!』

 

「くうっ…!」

銀狼がライキリによって斬り裂かれる!

 

 

遊矢LP4000→3200

 

『カードを1枚伏せてターンエンドだ!』

 

 

クロウLP3800

ライキリ ゲイル(裏) スズリ(裏) 伏せ2 手札1

 

 

 

『上手くやりやがったな…!だが、オレはまだ負けないぜ!』

 

「いくよ…クロウ!」

高速展開を得意とするクロウの得手を封じた遊矢は攻勢に出る!

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「オレはもう一度スケール1の『星読みの魔術師』とスケール8の『時読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから蘇れ!『シルバークロウ』!『オッドアイズペンデュラムドラゴン』!」

再びペンデュラムが揺れ動き、銀狼と二色の眼のドラゴンが現れる! ATK1800 2500

 

 

「バトルだ!『ビーストアイズ』で『ライキリ』を攻撃!ヘルダイブバースト!!」

 

『ぐおおっ…!?』

野獣の火炎がライキリを焼き尽くす!

 

クロウLP3800→3400

 

「そして『ビーストアイズ』の効果発動!相手モンスターを戦闘破壊した時、フィールドから融合素材になった『マンモスプラッシュ』の攻撃力分のダメージ…1900ダメージを与える!!」

 

『なっ…インチキ効果もいい加減にしやがれ!?うおおっ!?』

マンモスの力を象った火炎がクロウに大ダメージを与える!

 

 

クロウLP3400→1500

 

『だが…オレは転んでもタダでは起きないぜ!罠カード発動!「ブラック・サンダー」!自分の「BF」モンスターが戦闘破壊された時、相手フィールドに存在するカード1枚につき400ダメージを与える!遊矢のフィールドのカードは5枚!2000ダメージのお返しだ!』

 

「マジで!?うわあああ!?」

墓地から飛び出したライキリの幻影が遊矢を黒雷で打ち据える!

 

遊矢LP3200→1200

 

 

「くっ…キッツ……でも、オレには攻撃が残ってる!『オッドアイズ』で裏守備の『ゲイル』を攻撃!さらに『シルバークロウ』で裏守備の『スズリ』を攻撃!!」

 

『くうう…!!(流石に、運命に選ばれたデュエリストは強いな…!!)』

螺旋の炎と銀狼の爪がクロウのモンスターを一掃する!

 

「オレは…これでターンエンドだ!」

 

遊矢LP1200

ビーストアイズ シルバークロウ オッドアイズ (P 星読み 時読み) 手札1

 

 

 

『流石にここまで追い詰められたらやばいな……だけどな、ガキ共の為に…そして世界を救ったシグナーの力を受け継ぐ決闘者の1人として……諦める訳にはいかねぇ!!』

別世界の自分の『記録』を受け継いだクロウは気合いと共にデッキトップに手をかける!

 

 

 

『オレのターン…ドロー!!』

『いくぜ!罠カード「BF-ツインシャドウ」を発動!このカードは墓地または除外された「BF」のチューナーとそれ以外のモンスターをデッキに戻す事で、新たなシンクロモンスターをエクストラデッキからシンクロ召喚扱いで特殊召喚する!!』

 

「墓地からの、シンクロ召喚!?」

それは黒咲戦でもクロウが見せたシンクロ召喚…それが新たな力を導く!

 

 

『オレは墓地のレベル4「幻耀のスズリ」とレベル4のチューナー「東雲のコチ」をデッキに戻し、ファントムチューニング!!』

 

4+4=8

 

『黒き疾風よ!秘めたる思いをその翼に現出せよ!!シンクロ召喚!舞い上がれ!レベル8!「ブラックフェザー・ドラゴン」!!』

フィールドに黒い羽根吹雪が吹き荒れる…そしてシグナーのドラゴンの1体たる黒翼のドラゴンが咆哮する! ATK2800

 

 

「クロウが…ドラゴンを…!」

 

『これがオレのシグナーの力…ガキ共の笑顔を守る為の力だ!!いくぜ、オレは「BF-銀盾のミストラル」を召喚!』

顔が盾のようになった鳥が現れる! ATK100

 

『さらにフィールドに「BF」モンスターが存在する事で手札の「BF-黒槍のブラスト」は特殊召喚できる!』

巨大な槍を持つ鳥人が現れる! ATK1700

 

 

『オレはレベル4の「黒槍のブラスト」にレベル2の「銀盾のミストラル」をチューニング!』

 

4+2=6

 

『吹き荒れる魔風よ!全ての禍を呑み込み、舞い上がれ!シンクロ召喚!レベル6!「BF-魔風のボレアース」!』

鎧を纏い、二振りの鎌を持つ鳥人が現れる! ATK2400

 

 

『「魔風のボレアース」の効果発動!シンクロ召喚に成功した時、デッキから「BF」モンスターを墓地に送る事でこのカードはそのレベルとなる!オレはレベル2の「BF-逆風のガスト」を墓地に送る事でレベルを2にする!』

 

魔風のボレアース ☆6→2

 

 

「わざわざモンスターのレベルを…?」

 

『いくぜ、遊矢…これがシグナーとしてのオレの全力だ!オレはレベル8の「ブラックフェザードラゴン」にレベル2シンクロチューナー「魔風のボレアース」をチューニング!!』

 

8+2=10

 

『黒き旋風よ!気高き誇りを…その翼に顕現せよ!シンクロ召喚!!解き放て!レベル10!「ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン」!!』

再びフィールドに黒い羽根吹雪が吹き荒れる…その奥から進化した黒翼のドラゴン…全身の羽根を黒と臙脂色に染めた誇り高きドラゴンが咆哮する! ATK3200

 

 

「『ブラックフェザードラゴン』が、進化した…!!」

 

『受けてみやがれ…黒羽の絆の一撃を!バトルだ!「ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン」で「シルバークロウ」を攻撃!アサルト・ノーブル・ストリーム!!』

漆黒の火炎弾がシルバークロウに直撃する!!

 

「っ…!アクションマジック『ダメージ・バニッシュ』発動!!戦闘ダメージを0にする!ぐうううっ!!?」

辛うじて遊矢はダメージを回避する!

 

 

『耐えやがったか…オレはこれでターンエンドだ!』

 

クロウLP1500

ブラックフェザーアサルト 手札0

 

 

 

『先にこいつの効果を教えてやるよ…「ブラックフェザーアサルトドラゴン」は相手がモンスター効果を発動するたびに自身に黒羽カウンターを1つ乗せ、さらに相手に700のダメージを与える!』

 

「モンスター効果を発動するたびにダメージを…!」

現在、遊矢の残りライフは1200…つまり、モンスター効果は1度しか使えない…!

 

 

『さぁ、遊矢!この絶体絶命の状況を覆してみろ!お前の()()()()()()()で!!』

 

「クロウ…ああ、やってやる!オレは…絶対に勝つ!!」

クロウの言葉を聞いた遊矢はアクセルを捻る!!

 

 

 

「オレのターン…ドロー!!」

「このカードは…!オレは…お前を信じる!!『調律の魔術師』召喚!!」

 

『そのカードは…!』

遊矢はジャックのオリジン…音叉の杖を持つ魔術師を喚び出す! ATK0

 

「『調律の魔術師』の効果発動!このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、相手のライフを400回復し、自分は400ダメージを受ける!」

 

『そのカードに賭けるか…だが!「ブラックフェザーアサルトドラゴン」の効果発動!自身に黒羽カウンターを乗せ、相手に700ダメージを与える!!アサルト・バースト!!』

 

「っ…がああっ!!」

黒翼のドラゴンが雷を放ち、遊矢のライフを追い詰める!!

 

 

クロウLP1500→1900

 

遊矢LP1200→800→100

 

ブラックフェザーアサルト 黒羽カウンター 0→1

 

 

「いくぞ…!オレはレベル7の『オッドアイズペンデュラムドラゴン』にレベル1の『調律の魔術師』をチューニング!!」

 

7+1=8

 

「剛毅の光を放つ勇者の剣!今ここに閃光と共に目覚めよ!!シンクロ召喚!!『覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)』!!」

遊矢が覚醒したペンデュラムシンクロ…魔導剣士が降臨する! ATK2500

 

 

『現れやがったな…!だが、お前はもうモンスター効果は使えねぇ…どうするつもりだ?』

 

「どうするも何も…オレにできるのは()()だけさ…!アクションカード!!これで失敗だったら…笑ってくれ!!」

遊矢はアクションカードを掴み取る!!

 

 

「いくぞ…!バトルだ!『エンライトメント・パラディン』で『ブラックフェザーアサルトドラゴン』を攻撃!!」

 

『はっ…何か引きやがったな!!』

 

「その通り…!アクションマジック『起死回生』!!バトルするモンスターの攻撃力を800アップし、バトルでの破壊を無効にする!」

起死回生のカードが遊矢に力を与える!

 

エンライトメントパラディン ATK2500→3300

 

 

「いっけぇ!『エンライトメントパラディン』!!」

 

『そうはいくかよ!アクションマジック「飛翔」!「ブラックフェザーアサルトドラゴン」の攻撃力を600アップする!』

 

「っ─!!!」

空高く飛翔した黒翼のドラゴンが魔導剣士を迎え撃つ!

 

 

ブラックフェザーアサルトドラゴン ATK3200→3800

 

 

『これで決着だ!迎え撃て!アサルト・ノーブル・ストリーム!!』

先程よりも威力を増した黒い火炎が遊矢に迫る!!

 

 

「諦めて…たまるかぁああ!!」

魔導剣士の剣と火炎弾が衝突する…そしてフィールドは大爆発に飲み込まれた…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うわわわ…すっごい爆発…!デュエルはどうなったのかしら…!?』

ヘリコプターで遊矢達を追走していたメリッサの実況が響く…爆発による爆煙に包まれたコースでは勝敗が判断できない…!

 

『この煙を先に抜けて来た方が勝者と思われます…!さぁ、遊矢対クロウ…その勝敗は…!!』

 

 

 

 

キィィィン!

Dホイールのエンジン音が響く…そして煙の中から現れたのは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…!あぶな、かったぁ…!!」

 

『煙の中から飛び出して来たのは…榊遊矢選手だ──!!』

煙を引き裂き、魔導剣士と野獣のドラゴンと共に遊矢が煙の外へと飛び出した…!

 

 

『今回は遊矢の粘り勝ちか…本当に脱出マジックみたいだったぜ…』

続いてクロウが煙の中から飛び出す…だが、その傍らに黒翼のドラゴンの姿は無かった…その原因は────

 

 

「アクションマジック、『立体交差』…本当に、ギリギリの賭けだった…!」

それはバトルフェイズ中に自身と相手の攻撃力を入れ替えるアクションカード……ギリギリまで諦めなかった遊矢の粘り勝ちだった…。

 

 

 

エンライトメントパラディンATK3300→3800

 

ブラックフェザーアサルトドラゴンATK3800→3300

 

 

クロウLP1900→1400→0

 

 

遊矢WIN!

 

 

 

 

 

『はぁ…便利なもんだなぁ、アクションカードは…オレももう少し使えば良かったぜ…まぁ、それでも勝ちは勝ちだ!いいデュエルだったぜ、遊矢!』

 

「クロウ…ああ、本当に強かった…!ありがとう!」

デュエルパレスに戻ってきたクロウと遊矢が握手を交わす…2人の手に汗握るデュエルに観客達も大いに盛り上がっていた。

 

 

 

『さぁて、お前の決勝の相手は遊星になるのか…それともジャックか…しっかりデッキの調整しとけよ?』

 

「なぁ、クロウ…遊星とジャックって…」

 

『ああ、あの2人は正真正銘の好敵手(ライバル)さ…!最後に戦った時に勝ったのは──遊星らしいけどな、ジャックも強くなってるから…オレもどっちが勝つかわからねぇ…!』

 

「キングと遊星……」

 

退場口に向かいながら遊矢は次の試合についてクロウに訊ねる…デュエルパレスには強い闘志が渦巻き始めていた…。

 



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ぶつかり合う魂〜宿命の決闘〜

こんにちは!S,Kです!

ついにぶつかりあうシンクロ次元の遊星とジャック…その決闘の行方は…!

それでは、最新話をどうぞ!


『さぁ!遊矢とクロウの手に汗握るデュエルの興奮が冷めやらぬ中…大会本部からサプライズがあります!!』

遊矢とクロウのデュエルが決着したデュエルパレスにメリッサの声が響く、その知らせは…デュエルパレスをさらに興奮させる事となる。

 

 

『準決勝第二試合の組み合わせは本来なら、不動遊星選手対ユーゴ選手のデュエル…なのですが!トラブルによってユーゴ選手が()()()退()となりました!その代わり…なんと!キング、ジャック・アトラスが不動遊星選手と戦うようです!!』

 

「「「『『『うおおおっ!?』』』」」」

 

「ジャックのデュエルが見られるのか!?」

 

『すげぇ!!』

メリッサの言葉によってデュエルパレスが熱狂に包まれる…エキシビジョンデュエルで遊海に敗北したとはいえ、ジャックはシティのデュエリストの頂点…その思わぬデュエルに歓声が響いた…!

 

 

 

 

Sideジャック

 

 

 

『(遊星、お前と戦うのは…3年振りか──あの日以来、遊海と戦うまで…俺の魂は燻り続けていた……待っていろ、我が宿命の好敵手よ…!)』

ライダースーツに身を包んだジャックはガレージに向かうエレベーターの中で静かに闘志を高めていた…シティの頂点へと登り詰めたものの、不完全燃焼だったジャックの魂──その炎が静かに大きくなっていたのだ。

 

 

「あの…キング、僕を…()()()()()()()?」

 

『ん…お前は──もちろん覚えているぞ、「調律の魔術師」を()()()…お前の事はな』

 

「あっ…!」

その時、ジャックについていたボーイ…サムがジャックへと話しかける、ジャックは彼の事をしっかりと覚えていた。

 

 

「ごめんなさい…僕は、キングの託してくれた思いが分からなかった…あのカードを渡されて…ステータスも、効果も使い難くて…馬鹿にされたと思って……貴方を恨んでました」

 

『………』

静かに自分の犯した間違いを語るサム…ジャックは静かにその言葉に耳を傾ける…。

 

 

「それで、僕…遊矢さんに…貴方にカードを返して欲しいって、渡してしまったんです…でも、遊矢さんと……たまたま出会った不動遊星さんが教えてくれたんです…キングが、あのカードに託していた思いを……」

 

『そうか…そういう経緯で榊遊矢が「調律の魔術師」を手にしていたのか』

ジャックは遊矢が「調律の魔術師」を手にしていた経緯を知る…ジャックが託した思いがサムから遊矢へと受け継がれていたのだ。

 

 

『──不必要なカードなどない、全てのカードには役割がある…それは人も同じだ、お前にはお前の…榊遊矢には榊遊矢の…俺には俺の……担うべき役割があるのだ』

 

「あっ…」

それはあの日、遊星が遊矢やサムに伝えた言葉……ジャックは変わってなどいなかったのだ。

 

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

「それにしても…すっごいライディングスタジアムだな〜…ネオ童実野シティのスタジアムより広いかも……半分壊れちゃってるのが残念だなぁ…」

 

《フォウ、フォ〜ウ(特別意訳:相変わらず流星はのんびりしてるね〜)》

快晴のデュエルパレス、観客席の一角…そこにはキャップを被って顔を隠した流星、そしてその腕に抱かれたフォウの姿があった…遊星とジャックのライディングデュエルを間近で見ようと評議会ビルから抜け出してきたのだ。

 

 

「おじいちゃんとジャックさんのライディングデュエル…昔の録画とか、海馬ランドのアトラクションでしか見た事がないもんなぁ…いったいどんなデュエルになるんだろう…!楽しみだね!」

 

《フォウフォウ、フォーウ!》

本来ならば見る事は叶わない全盛期の遊星とジャック(シンクロ次元)のデュエルを前に流星は興奮していた…そんな時だった。

 

 

 

『失礼、隣の席は空いているかな?』

 

「あ、はい!空いてます!」

 

『ああ、よかった〜』

1人の男が流星へと声を掛ける…それは白いYシャツとベージュのズボンを履いた壮年の紳士、そして彼は同じような配色の服を着た女性を連れていた…。

 

 

《フォウ!?フォーウ!》

 

『おや、フォウくんじゃないか…という事は…君は遊海さんの関係者かな?』

 

「えっ?」

その時、流星の腕から抜け出したフォウが男性にすり寄る…そして流星は改めて男性達の顔を見た。

 

何処か見覚えのある逆立った黒髪の紳士…そして優しげなベージュ色の髪の女性……流星は一度だけ、その顔を見た覚えがあった。

 

遊星の持っていたアルバムの中で───

 

 

「ふ、不動博士…?」

 

『君、まさか……!』

 

『まぁ…!?』

何かに気付いた紳士…不動博士は震える手で流星のキャップを外す…そこにいたのは遊星と瓜二つの、赤いメッシュの少年だった。

 

 

 

『……ああ、遊海さんから聞いているよ…()()()()の遊星には、そっくりな顔の孫がいるって……はは、本当にそっくりだ…!』

 

「えっ…まさか、牛尾のおじちゃんみたいに……ひいじいちゃん、なの!?」

それは本来ならばありえない邂逅…遊星の孫と遊星の父が時空を越えて出会った瞬間だった…。

 

 

 

………

 

 

 

『さぁ!まずは不動遊星選手の入場です!先日の柊柚子ちゃんとの激しいデュエルをノーダメージで勝ち抜いた遊星選手はいったいどんなデュエルを魅せてくれるのか!』

デュエルパレスに響くメリッサの実況と共に遊星号に乗る遊星がコースを走り抜ける!

 

 

『対するはシティの希望の星!シティ最強のデュエリスト!キング、ジャック・アトラス─!!』

 

『フッ…キングは1人、この俺だ!!』

 

「「『『ジャック!ジャック!ジャック!!』』」」

そしてホイールオブフォーチュンを操り、キングポーズと共にジャックが入場、デュエルパレスは大歓声に包まれる!

 

 

 

 

『ついにこの時が来たな…遊星!三年前のリベンジを果たさせてもらう!』

 

「ジャック、オレも…再びお前と戦う日を楽しみにしていた……キングとなってさらに強さを増したお前の力、見せてもらうぞ!」

スタートラインについた2人の間に火花が散る…立場など関係なく、2人の好敵手が激突しようとしていた!

 

 

『──ん?…ふっ、遊星!観客席を見てみろ』

 

「えっ…あれは…」

そんな時、ジャックが小さく観客席のある場所を示す…そこには遊星に瓜二つの少年──『世界』における遊星の孫、流星が不動博士に抱きしめられる姿があった…。

 

 

「そうか、父さんは彼の事を知っていたのか……そういえば、流星から聞いたが…エクシーズ次元のレジスタンスには──ジャック、お前の孫娘がいるらしいぞ?」

 

『なんだと?…ハッ、面白い事もあるものだ』

不動博士と流星の姿を見た遊星は思い出した事をジャックに伝える…ジャックは一瞬呆気にとられていたが、すぐに表情を戻す。

 

 

『ならば…恥ずかしいデュエルはできんな!会った事もない孫とやらに…負けた話など聞かせられん!』

 

「ふっ…お前らしいな、ジャック…オレも…父さんや母さんの前では、負けられない!」

他愛もない話で笑いあった2人は闘志を高める!

 

 

 

 

『それじゃあ、いくわよ!アクションフィールドオン!フィールド魔法「クロスオーバー・アクセル」発動!!』

 

 

「『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』」

スタートの合図と共に飛び出す2台のD・ホイール…先攻を取ったのは、遊星だった!

 

 

 

 

 

遊星LP4000

ジャックLP4000

 

 

アクションフィールド『クロス・オーバー・アクセル』発動中

 

 

 

「オレのターン!!」

「魔法カード『調律』を発動!デッキから『ジャンク・シンクロン』を手札に加え、デッキトップ1枚を墓地に送る!」

 

 

遊星墓地送り

チューニング・サポーター

 

 

「これなら…!自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札の『ジャンク・フォアード』は特殊召喚できる!」

赤い動力装置が輝くロボットが現れる! ATK900

 

「さらに『デブリ・ドラゴン』を召喚!」

デフォルメされた星屑の竜が現れる! ATK1000

 

「『デブリ・ドラゴン』の効果発動!召喚に成功した時、墓地から攻撃力500以下のモンスター…『チューニング・サポーター』を効果を無効にして、攻撃表示で特殊召喚する!」

フライパンをかぶった小型のロボットが現れる! ATK100

 

 

「いくぞ…ジャック!オレはレベル1の『チューニングサポーター』とレベル3の『ジャンクフォアード』にレベル4の『デブリ・ドラゴン』をチューニング!!」

 

1+3+4=8

 

「集いし願いが新たに輝く星となる!光り差す道となれ!シンクロ召喚!!飛翔せよ!レベル8『スターダスト・ドラゴン』!!」

煌めく光と共に遊星のエース、希望を背負う白銀のドラゴンが飛翔する! ATK2500

 

 

『ふっ…現れたか…!』

 

「シンクロ素材となった『チューニングサポーター』の効果発動!デッキからカードを1枚ドローする!…オレはカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊星LP4000

スターダストドラゴン 伏せ2 手札2

 

 

 

『いくぞ…遊星!!』

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『相手フィールドにのみモンスターが存在する時、手札の「バイス・ドラゴン」は特殊召喚できる!ただし、攻撃力・守備力は半分となる!』

凶暴な紫色のドラゴンが現れる! ATK2000→1000

 

 

『さらに「ダーク・リゾネーター」を召喚!』

音叉を持つ悪魔が現れる! ATK1300

 

 

『いくぞ、遊星!俺はレベル5の「バイスドラゴン」にレベル3の「ダーク・リゾネーター」をチューニング!!』

 

5+3=8

 

『王者の咆哮!今、天地を揺るがす!!唯一無二たる覇者の力をその身に刻むがいい!シンクロ召喚!!荒ぶる魂!レベル8!「レッドデーモンズ・ドラゴン・スカーライト」!!』

フィールドに荒ぶる炎が燃え上がり、ジャックのエースたる荒ぶる悪魔竜が咆哮する! ATK3000

 

 

『俺はカードを1枚伏せる…バトルだ!「スカーライト」で「スターダストドラゴン」を攻撃!!灼熱のクリムゾン・ヘルバーニング!!』

荒ぶるドラゴンの息吹が遊星に迫る!

 

 

「罠カード発動!『スター・エクスカージョン』!自分のシンクロモンスターが相手のシンクロモンスターに攻撃された時、その2体を相手ターンで数えて3ターン後のバトルフェイズ終了後まで除外する!!」

 

『フン、「記録」のデュエルの焼き直しか…だが、そうはさせん!罠カード「レッド・バニッシュ」を発動!このカードは自分の場に「レッド」モンスターが存在する時、セットしたターンに発動できる!相手が魔法・罠カードの効果を発動した時、その効果を無効にし、破壊する!!』

 

「っ…!」

悪魔竜の咆哮が遊星の罠カードを打ち砕く!

 

 

『シティを…この街の未来を変えるのは、今日この時だ!やれ!「スカーライト」!!』

 

「フッ…お前なら、そう出てくると思っていた!罠カード『くず鉄のかかし』発動!相手モンスター1体の攻撃を無効にし、このカードは再びセットされる!」

 

『むうっ…!』

ジャンク品のかかしが紅蓮の炎を受け止める!

 

 

『やるな…!俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

ジャックLP4000

スカーライト 伏せ2 手札1

 

 

 

 

『す、すごい…2体のドラゴンの衝突です…!キングの圧倒的な力を難なく躱す遊星…本当にすごい!!』

 

 

『フッ…やはり、俺達のデュエルはこうでなくてはな…!』

 

「ああ、勝負はこれからだ!」

メリッサの実況が響く中、笑いあう2人…熱きデュエルは始まったばかりである…!

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「いくぞ…!『セカンド・ブースター』を召喚!」

遊星の場に黒い戦闘機が現れる! ATK1000

 

 

「『セカンドブースター』の効果発動!このカードをリリースする事で『スターダストドラゴン』の攻撃力をエンドフェイズまで1500ポイントアップする!」

戦闘機が希望の竜に力を与える!

 

スターダストドラゴン ATK2500→4000

 

 

「バトルだ!『スターダストドラゴン』で『レッドデーモンズドラゴンスカーライト』を攻撃!シューティング・ソニック!!」

 

『罠カード発動!「レッド・クリスタル」!このターンの終わりまで「スカーライト」は戦闘・効果では破壊されぬ!ぐううっ!!』

白銀の息吹が悪魔竜を撃ち抜くが、赤い水晶が攻撃を僅かに逸らす!

 

ジャックLP4000→3000

 

「オレはこれでターンエンド!」

 

遊星LP4000

スターダスト 伏せ1(かかし) 手札3

 

 

 

 

『(先制ダメージを食らったか…遊星の場には破壊効果を無効にする『スターダストドラゴン』、そして攻撃を無効にする『くず鉄のかかし』…この布陣を突破するには──躊躇などしていられん!)』

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『俺は「スカーライト」の効果発動!1ターンに1度、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、1体につき500ダメージを与える!アブソリュート・パワー・フレイム!!』

 

「っ…!?『スターダストドラゴン』の効果発動!相手が自分フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスターカードの効果を発動した時、このカードをリリースする事でその効果を無効にし、破壊する!ヴィクテム・サンクチュアリ!!」

 

『ぐうっ…!』

遊星のフィールドに迫る紅蓮の炎…だが、白銀の竜がその身を粒子に変えた事で逆に悪魔竜が焼き尽くされる…!

 

『そうだ、お前は「スターダストドラゴン」の効果を使わざるを得ない…いくぞ!魔法カード「三戦の才」を発動!自分のメインフェイズに相手がモンスターの効果を発動している時、3つの効果から1つの効果を選び、発動できる!俺は1つ目の効果を発動!デッキからカードを2枚ドローする!!』

ジャックの場に『天地人』と描かれた軍配が現れ、新たな手札を導く!

 

 

『……来たぞ!俺は「レッド・スプリンター」を召喚!』

炎を纏う健脚の悪魔が現れる! ATK1700

 

『「レッドスプリンター」の効果発動!自分フィールドのモンスターがこのカードのみの時、手札から「レッド・リゾネーター」を特殊召喚できる!』

炎の衣を纏う音叉の悪魔が現れる! ATK200

 

『さらに永続魔法「共鳴波」を発動!自分の「リゾネーター」がシンクロ素材となる度に相手フィールドのカード1枚を破壊できる!ただし、このカードは発動後2回目の自分エンドフェイズに破壊される…俺はレベル4の「レッド・スプリンター」にレベル2の「レッド・リゾネーター」をチューニング!!』

 

4+2=6

 

『赤き魂、ここに1つとなる!王者の雄叫びに震撼せよ!シンクロ召喚!!現れろ!レベル6「レッド・ワイバーン」!!』

炎を纏う飛竜が現れる! ATK2400

 

 

『そして永続魔法「共鳴波」の効果発動!伏せられた「くず鉄のかかし」を破壊する!!』

 

「くっ…!!」

音叉の共鳴が遊星の護りを破壊する! 

 

 

『バトルだ!「レッドワイバーン」で遊星にダイレクトアタック!!』

 

「ぐううっ!!?」

火炎弾が遊星のライフを大きく削る!

 

遊星LP4000→1600

 

 

『さらに!永続罠「リビングデッドの呼び声」を発動!蘇れ!「スカーライト」!!』

荒ぶる悪魔竜が復活する! ATK3000

 

 

『遊星、これで決着だ!「スカーライト」でダイレクトアタック!灼熱のクリムゾン・ヘルバーニング!!』

 

「まだ、断ち切らせはしない!手札から『速攻のかかし』の効果発動!ダイレクトアタックを無効にし、バトルフェイズを終了する!!」

 

「フン…!俺はこれでターンエンドだ!」

 

「この瞬間、『スターダストドラゴン』はフィールドに戻って来る!」

粒子が集い、白銀の竜が復活する! ATK2500

 

 

ジャックLP3000

スカーライト(リビングデッドの呼び声) レッドワイバーン 共鳴波(1) 手札0 

 

 

 

「まさか、『スカーライト』を……いや、肉を切らせて骨を断とうとしてくるとは思わなかったぞ…やるな、ジャック」

 

『フッ…さぁ、次はお前の番だ、遊星!』

 

「ああ、いくぞ…ジャック!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「オレは『シンクロン・キャリアー』を召喚!!」

背中にクレーンを背負ったロボットが現れる! ATK0

 

「『シンクロンキャリアー』の効果!このカードがフィールドに存在する時、通常召喚に加えて『シンクロン』モンスターを召喚できる!『ジャンク・シンクロン』を召喚!!」

メガネをかけたオレンジ色のロボットが現れる! ATK1300

 

 

「オレはレベル2の『シンクロンキャリアー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!!」

 

2+3=5

 

「集いし星が新たな道を指し示す!光差す道となれ!シンクロ召喚!!レベル5、シンクロチューナー!『アクセル・シンクロン』!!」

遊星の場に赤いバイクを模したロボットが現れる! DEF2100

 

 

「『アクセルシンクロン』の効果発動!デッキからレベル3の『スチーム・シンクロン』を墓地に送る事で、自身のレベルを3下げる!」

 

アクセルシンクロン ☆5→2

 

 

『シンクロチューナーだと…!?お前、まさか…!』

シンクロ次元において「シンクロチューナー」はさほど珍しいカードではない…だが、それを持つのが遊星ならば──話は変わってくる!

 

 

「ジャック、オレ達の強さはまだ『記録』のオレ達には及ばない…それでも、オレ達が彼らの力を受け継ぐ存在ならば──決して不可能な事はない!!」

遊星はDホイールのオートパイロットシステムを()()、Dホイールのスピードを上げていく!!

 

 

 

「(赤き竜…そして遊海さん、貴方達が伝えてくれた『絆の記憶』…そして、この街を救ってくれた『奇跡』に…オレは応えたい……オレ達は、新たな『絆』で…この街を守りたい!)」

遊星の意識がスピードの世界に融けていく、その中で遊星の心は穏やかだった…その心が、シンクロ次元の遊星を境地へ導く!

 

 

 

──ピチョン──

 

 

 

クリアマインド!!オレはレベル8のシンクロモンスター「スターダストドラゴン」にレベル2、シンクロチューナー「アクセルシンクロン」をチューニング!!』

それは「世界」の遊星が開眼したシンクロ召喚の新たな境地…超スピードの世界における善悪を越えた「無我の境地」…その名は──クリア・マインド!!

 

8+2=10

 

「集いし力が拳に宿り、鋼を砕く意志と化す!!光差す道となれ!」

遊星が手の中に現れた白紙のカードを掲げ…開眼する!

 

 

「アクセルシンクロォォッ!!」

 

 

『消えたっ…!!』

 

『ゆ、遊星選手が…消えた!?』

スピードの限界を超えた遊星の姿が掻き消える…だが、それは一瞬の事…彼は新たな力と共に現れる!

 

 

「現れろ!!レベル10!『スターダスト・ウォリアー』!!」

ソニックブームと共に…ジャックの背後から遊星が現れる、星屑の竜の面影を持つ…鋼の巨人と共に! ATK3000

 

 

『アクセルシンクロ…まさか、この土壇場で成功させるとは…!!』

それは「世界」の遊星とは異なる、シンクロ次元の遊星が目覚めさせた「境地」…その覚醒にジャックは目を見開く…!

 

 

「バトルだ!『スターダストウォリアー』で『スカーライト』を攻撃!!シューティング・フィスト!!」

 

『相討ち狙いだと…!?迎え撃て!「スカーライト」!灼熱のクリムゾン・ヘルバーニング!!』

そして遊星は躊躇なく相討ちを狙う…光速の拳と破壊の息吹が衝突、フィールドは大爆発に包まれる!

 

 

『ぐううっ…!!貴様、何を狙って──なにっ!?』

爆煙から抜け出したジャックは遊星へと振り返り…驚愕した、モンスターが消えたはずの遊星の場には威厳を感じさせる機械の巨人が佇んでいた…!

 

「『スターダストウォリアー』が戦闘、または相手の効果によってフィールドを離れた時、エクストラデッキからレベル8以下の『ウォリアー』シンクロモンスターをシンクロ召喚扱いで特殊召喚できる…それによってオレは『ロード・ウォリアー』を特殊召喚した!」

ATK3000

 

 

「バトルは続いている!『ロードウォリアー』で『レッドワイバーン』を攻撃!ライトニング・クロー!!」

 

『ぐおおっ…!!』

ロードウォリアーの一撃がワイバーンを粉砕する!

 

 

ジャックLP3000→2400

 

 

「オレはカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

遊星LP1600

ロードウォリアー 伏せ1 手札0

 

 

 

 

『き、キングが…キングが追い詰められています!!キングのフィールド・手札にはカードはありません…!キングは…ジャックはこの状況を覆せるのでしょうか!?』

 

 

『まさか「境地」の力すらも投げ出して勝利を狙うか…!やるではないか!』

 

「それはお互い様だろう?お前の魂を懸けた一撃に応えるなら…オレにはこの手しかなかった!」

 

『くっ…ハハハ…!そうか、やはりお前とのデュエルは…オレの魂を燃え上がらせる!!』

互いの誇りを懸けた魂のデュエル…その応酬にジャックと遊星は自然に笑みを浮かべる…!

 

 

『(状況は俺が不利…次のターンで決められなければ、遊星は「ロードウォリアー」の効果によって新たなモンスターを喚び出す……次の1枚に、全てを賭ける!)』

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『魔法カード「貪欲な壷」を発動!墓地の「バイスドラゴン」「ダークリゾネーター」「レッドスプリンター」「レッドリゾネーター」「レッドワイバーン」をデッキに戻し、カードを2枚ドローする!!ドロー!!』

それはジャックの誇りを賭けた1枚…その結果───

 

 

『来たぞ!!魔法カード「死者蘇生」!蘇れ!我が魂!「レッドデーモンズドラゴン・スカーライト」!!』

荒ぶる悪魔竜が復活する! ATK3000

 

 

『「スカーライト」の効果発動!特殊召喚された自身の攻撃力以下のモンスターを全て破壊し、相手に破壊したカード1枚につき500ダメージを与える!アブソリュート・パワー・フレイム!!』

 

「ぐううっ…!!」

破壊の炎がロードウォリアーを燃やし尽くす!

 

遊星LP1600→1100

 

 

『バトルだ!「スカーライト」で遊星にダイレクトアタック!!』

 

「まだだ!罠カード『星屑の残光(スターダスト・フラッシュ)』発動!墓地の『スターダスト・ウォリアー』を特殊召喚!!」

鋼の巨人が復活する! ATK3000

 

 

「これで、この攻撃は相討ちになり…オレは再び『ウォリアー』を特殊召喚できる!!」

 

『───もしも、お前が召喚したのが「シューティング・スター・ドラゴン」だったなら……オレに勝ち目は無かった………速攻魔法発動!「収縮」!相手モンスターの攻撃力を半分にする!!』

 

「なにっ!?」

鋼の巨人の攻撃力が半減する!

 

スターダストウォリアー ATK3000→1500

 

 

 

『「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト」!!アブソリュート・パワーフォース!!

 

「ふっ…迎え撃て!『スターダスト・ウォリアー』!シューティング・フィスト!!

 

 

 

紅蓮の掌底と光速の拳が衝突する、最初は拮抗していた2つの拳…だが、鋼の巨人の拳が徐々に押し負け──紅蓮の拳がその巨体を貫いた…!!

 

 

 

 

遊星LP0

 

ジャックWIN!

 

 

 

『け…決着!!激しいデュエルを制し、決勝戦に進んだのは!キング!ジャック・アトラス──!!』

 

「『『「うおおおっ!!!」』』」

メリッサの実況がシティに響く…フレンドシップカップで一番の激しいデュエルの決着にデュエルパレスは歓声で揺れていた…

 

 

 

 

 

 

 

「遊星、何故…アクションカードを使わなかった?」

 

『遊矢達には悪いが…オレ達の戦いには──アクションカードを持ち込みたくなかった…オレの我儘さ』

 

『フッ…お互いに考える事は同じ、という事か……次はアクションカードも使うぞ、遊星───本当の全力で…!』

 

「ああ、楽しみにしておこう…オレもまた強くなる…!」

デュエルパレスに戻り、お互いに再戦を誓ったジャックと遊星はハイタッチを交わす……その姿はまさに理想のライバルの姿だった。

 

 

 

 

 

『準決勝の決着により、決勝戦の組み合わせが確定しました…!フレンドシップカップ、決勝を戦うのはキング、ジャック・アトラス対榊遊矢選手!!前夜祭以来のこの対決…遊矢選手は雪辱を果たす事ができるのか──!!』

メリッサの実況がシティに響く…シンクロ次元最後のデュエルが始まろうとしていた…!



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フレンドシップカップ・決勝!〜己の信じるデュエル〜

こんにちは、S,Kです!

な、なんとか…4月中に、ここまで書けた……おまたせ、しました…。

たくさんのデュエリストの思いを背負い、遊矢とジャックが激突する…その勝負の行方は…!

それでは、最新話をどうぞ!!


「ん……うぅ…」

 

《おはようございます、マスター…気分はどうですか?》

 

「アヤカ……ああ、ずいぶんと良くなった……零児は…?」

 

《マスターが眠ってしまったので…紫雲院素良の事情聴取の為に退出しました》

 

「そうか…悪い事しちゃったな…」

しばらく眠っていた遊海が目を覚ます、酷い倦怠感以外には特に異常は無く…気分も落ち着いていた…。

 

 

 

「いまの、状況は…?」

 

《フレンドシップカップの準決勝2試合が終了、決勝は榊遊矢とジャックの対決になりました…クロウと榊遊矢のデュエルは本当の真剣勝負、最後まで諦めなかった遊矢の粘り勝ちでした》

 

《フォウ、フォウ…フォーウ!(遊星とジャック、すごいデュエルだったよ!流星も不動博士も楽しそうだった!)》

 

「ははっ…そうか、俺も見たかったなぁ…」

アヤカとフォウに状況を聞く遊海…フォウの楽しそうな様子から遊星対ジャックのデュエルは本当に盛り上がる決闘だったのだろうと察した。

 

 

《…マスター、先程のラプラスの言葉通り…今のマスターはエネルギー切れの状態です、何か食べられそうですか?》

 

「ああ…元気にならないと、翠に会いに行けないもんな…」

 

《では…ルームサービスに料理を頼みましょうか》

 

「ありがとう、アヤカ」

遊海の言葉を聞いたアヤカは人間体となって備え付けの電話に向かう…その表情は明るかった。

 

 

 

………

 

 

 

「ついに、決勝だ…!オレは…ジャックに勝つ!」

評議会ビル・ペントハウス…ライダースーツに身を包んだ遊矢は気合いを入れ直していた。

 

前夜祭で父・遊勝から受け継いだエンタメデュエルを否定され、手も足も出ずにジャックに敗北してしまった遊矢…しかし、遊矢は戦いの中で成長した…ジャックの原点のカード『調律の魔術師』の力を借りてペンデュラムシンクロを成功させ、シグナーである龍亞やクロウ、シンジとの戦いを乗り越えてきた。

 

遊矢はこのデュエルで自身の成長をジャックに示そうとしていた…!

 

 

コンコンコン!

 

 

「ん?…はーい!」

 

「遊矢!ついに決勝ね!!」

 

「ジャックにリベンジする時が来たな!」

 

「柚子!権現坂!」

来客を知らせるノック…やって来たのは柚子と権現坂だった、戦いを前に遊矢の応援にやってきたのだ。

 

 

 

「遊矢…笑って!遊勝塾のモットーはみんなを楽しませるエンタメデュエル!…きっと、アカデミアの襲撃でまだ不安に思ってる人もいると思うの…だから、遊矢のデュエルでみんなを笑顔にしてあげて!」

 

「遊海が俺達のデュエルが受け入れられるように下地を作ってくれた…観客達もデュエルは面白く、楽しむものだと気付き始めている……本家本元のエンタメデュエルでシティの人々を魅了するのだ!」

 

「ああ…!オレは、オレのデュエルをジャックに示してみせる!」

2人からの激励に遊矢は決意を込めた声で応える…だが…。

 

 

「ところで遊矢…ジャックに示す「答え」は見つかったのか?」

 

「………実は───見つかってなかったりして………」

 

「「ええー!?」」

そう、遊矢はまだ…ジャックに伝えるべき答えを見いだせていなかったのだ。

 

 

 

「ジャックの言いたい事は、伝えたい事は…なんとなくは分かるんだ、でも……」

 

「悩んでいても、仕方あるまい!俺達はデュエリストだ……見つからぬ答えならば、()()()()()()で見つけるしかない!」

 

「うん、遊矢はデュエルの中で成長して…たくさんのデュエリストを乗り越えてきた、だから今回も……!」

 

「権現坂…柚子…ありがとう!」

未だに不安を抱える遊矢の背中を押す2人の言葉…それは遊矢の道標となる…!

 

 

『遊矢さん、まもなくお時間です!準備はよろしいですか?』

 

「サム!いつもありがとう!」

そして、遊矢の戦いの時が迫る…サムが迎えにやって来たのだ。

 

 

『遊矢さん…僕、さっきジャックに会う事ができたんです!ジャックは変わっていませんでした…遊星さんの言葉も、僕に「調律の魔術師」を渡した事も覚えていてくれたんです!』

 

「そうか…!やっぱり、ジャックは…」

サムの言葉に遊矢の表情が明るくなる、ジャックは傲慢な男ではない…彼は何かを伝えようとしてくれていると確信できたからだ…。

 

 

『それで…ジャックから、遊矢さんに伝言を預かってきました!』

 

「伝言?」

 

『えっ…と…「クロウとのデュエル、絶体絶命の状況からの逆転は見事だった…今のお前ならば、王座を競うに値するだろう」「決勝の舞台で示してみせろ、お前が信じるデュエルを」「何かを成し遂げたいと思うのなら、怯むな!!」と…!』

 

「ジャック…!」

サムからジャックのメッセージを聞いた遊矢は気を引き締める、圧倒的な『王者』──ジャックの魂からの言葉に応える為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フレンドシップカップもついに決勝…楽しみですな、議長』

 

【そうですねぇ】

行政評議会・議場、ホワイト議長を始めとした議員達はフレンドシップカップの最後の試合を前に話し合っていた…なお、この場には零児達の姿はない…試合ギリギリまで素良の事情聴取をしているようだ。

 

 

 

【榊遊矢にキング、ジャック・アトラス…どちらが勝ってもこの街は大きく変わる事になるでしょう】

 

『人々が手を取り合い、新たな未来を目指す……今までの我らならば考えつかない事でした』

 

『我らの安泰がシティの安泰…ロジェを懐柔する事でシティの安泰を維持しようと考えていましたが……ランサーズ、赤き竜のシグナー達、そして…白波遊海がこの街を変えるキッカケとなった』

 

【潮時、なのでしょうね】

 

『『『『議長…』』』』

デュエルを前に評議会達は大きな『決断』をしようとしていた。

コモンズを虐げる事で成り立ってきたトップスの──シティの偽りの平穏…歪んだ世界を作ってしまった事への贖罪を…。

 

 

【この大会を以て我々、行政評議会は辞職…新たなリーダーの下にシティを再編する…よろしいかな?】

 

『『『『異議なし!』』』』

ホワイト議長の言葉に議員達が賛同する───

 

 

 

 

「大いに異議アリ!…なのです」

 

 

 

『『『『!?』』』』

その時、議場に異議を伝える声が響く…そこへ現れたのは──

 

 

 

【おや、イェーガー()()…もう出張からお戻りで?】

 

「あたり前です、ジャックと別次元から現れたデュエリスト…榊遊矢の決闘を見逃すはずないでしょう?」

評議会の決定に待ったをかけた人物、それは成人男性ながらも小柄な…ピエロのような化粧をした人物──シティの市長、イェーガーだった。

だが、市長とは言っても本当は行政評議会の用意した傀儡の市長……その言葉の上手さで抜擢された男だった。

 

 

 

……『英雄』がこの次元を訪れるまでは。

 

 

 

「確かに、貴方方…そして私の罪は重い、辞める事に異存はありません…ですが、()()()()()が悪い」

 

【タイミング…?】

 

「この街、いいえ…次元には融合次元による侵略の魔の手が迫っています…そんな状態でバトンを渡されても、困るのはシティの人々でしょう?そして…ランサーズや『決闘王』…白波遊海もまもなくこの街を離れてしまう………全ての罪を償うのは──この次元戦争を乗り切ってからです!それが為政者として、我々が果たすべき役目のはずですが?」

 

【イェーガー、市長…?もしや、あなたも…!?】

 

「ええ、私も()()()()()()とも……差別や偏見を乗り越えて、輝く未来を掴んだ世界の事を!」

 

 

最後の『転生者』がシティを希望の未来へと導く最後の鍵となった…。

 

 

 

 

 

 

『この空に太陽は1つ!輝く王座もまた1つ…数々の激闘が繰り広げられたフレンドシップカップも…ついに、決勝戦を迎えました!!』

 

「「「『『『うおおお──!!』』』」」」

快晴のデュエルパレスにメリッサの実況と観客達の歓声が響く、そこにはフレンドシップカップ前夜祭のようなピリピリとした緊張感はない…コモンズもトップスもなく、人々は戦いの始まりを待っていた…!

 

 

『さぁ!まず入場してくるのは…今大会の台風の目!前夜祭でジャックに未熟さを突き付けられながらも、数々のデュエリストを乗り越えて決勝の舞台へ駆け上がってきたデュエリスト──榊遊矢!!』

赤いDホイールと共に遊矢がデュエルパレスへと入場する!

 

 

「遊矢君!頑張れ!応援してるぞ─!」

 

「「「遊矢兄ちゃん!頑張れ─!」」」

 

「不動博士、みんな…!」

観客席から不動博士やアマンダ達の応援が響く…他観客達も声援で遊矢を迎える!

 

 

 

 

「ついに始まるか…シンクロ次元を希望の未来に導くデュエルが…」

 

「ラプラス…別にこんな場所で見なくてもいいんじゃない?遊海達と一緒に部屋で見ようよ〜」

 

「あんなドカ食いしてるアホの横で落ち着いてデュエルを見ていられるか」

 

「……もしかして、食事ができないから拗ねてる?」

 

「……………………それは言うな、エメルも気にしてるんだ…」

デュエルパレスの屋根の上…そこでは気の抜けた会話をしながらラプラスとブルーノがコースを見下ろしていた。

 

 

 

 

 

『続いて入場するのは…我らの希望の星!先程、不動遊星選手との熱い激闘を制した…我らがキング!ジャック・アトラス!!』

 

『キングは1人、この俺だ!!』

 

『『「「うおおおっ!!」」』』

ホイール・オブ・フォーチュンと共に、先程の疲れを見せないジャックが入場する!!

 

 

「「ジャック!頑張って─!!」」

 

『むっ…?ふっ、その()()()は俺達のモノではないだろうに…』

観客席で手作りの旗を振って応援する龍亞龍可兄妹とアキ…その旗に描かれていたのは──『チーム5D's』のマークだった。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

「もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐもぐもぐ……」

 

「ゆ、遊海さんって…意外と大食いだったんだ…(汗)」

 

《しばらくまともな食事をしていなかったからなぁ…ほら、そんなに焦って食べては喉に詰まらせるぞ?》

 

「もきゅ、もぐもぐもぐもぐもぐ……むぐっ!?」

 

《言わんこっちゃない…》

 

《フォーウ♪(ベーコンおいし〜!)》

一方その頃、遊海は凄まじい勢いで食事をしていた…既に机の上には十数枚の皿や器が重ねられている。

 

その横ではびっくりした様子の流星と呆れた様子のメガロックがその様子を見守り、フォウは久しぶりのベーコンを楽しんでいた。

 

 

 

「ごくごくごく……ふぅ………ん?そろそろデュエルが始まるか……頑張れよ、ジャック…遊矢……お前達のデュエルが、シティを変える最後のピースになるんだから…」

詰まらせた食べ物を飲み込みながら、遊海はモニターに目を向けた。

 

 

 

 

 

【(フン、お前の影響があるとはいえ…差別と欲望で歪みきったこの世界が──簡単に変わるとは思えんがな)】

 

「(いいや、変わるさ……正しく、強い信念を持っている決闘者達がいるからな)」

 

【(楽観的な事だ)】

精神世界から遊海へ声が届くようになっていた混沌の神の言葉に応えながら…。

 

 

 

 

【(ところで、そのオヤコドンとやら──美味そうだな)】

 

「(お前、食事に興味あったのか…!?)」

 

 

 

 

……………

 

 

 

『前夜祭よりはマシな顔になったようだな、榊遊矢』

 

「ああ、あの時のオレより…今のオレは強くなれた…!」

スタートラインについた遊矢とジャックは言葉を交わす…。

 

 

『だが…それは()()()()()()ではない、芽吹いたばかりのデュエリストがいた…コモンズの為に戦ったデュエリストがいた…子供達の笑顔の為に戦ったデュエリストがいた……そして、この世界の常識を破壊し──シティが変わり始めるキッカケを作った英雄がいた……お前は様々な役割を背負ったデュエリスト達に導かれ、この舞台に立っている!』

 

「龍亞…シンジ…クロウ…そして、遊海…」

ジャックの言葉に遊矢は戦ってきたデュエリスト達の顔を…そして、前夜祭で見た英雄の背中を思い出す…。

 

 

『特に、だ…白波遊海がいなければ──お前はこの舞台に上がるまでにさらなる苦難を強いられたはずだ、想像してみるがいい…トップスとコモンズの対立、ロジェの野望…そしてアカデミアの襲撃──このシンクロ次元を襲うはずだった数多の陰謀を…』

 

「っ…」

それは『もしも』の可能性──いがみ合うトップスとコモンズ、敗者に厳しいシティの構造…シティを我が物にしようとしたロジェの野望、静観する行政評議会、襲撃してきたアカデミア………様々な陰謀によって混沌に支配されたシンクロ次元の姿…それを想像した遊矢は冷や汗を流す。

 

 

 

『お前が依然()()()である事に変わりはない…だが、お前に貫くべき信念があるのなら!キングたるこの俺に示してみせろ!!』

 

「ジャック…オレは…!オレは…フレンドシップカップで負けていったみんなや、応援してくれた人達の思いを背負ってここにいる!!勝負だ、ジャック・アトラス!!仲間達の思いと一緒に…オレは戦う!!」

圧倒的な王気を纏うジャック…しかし、その覇気に怯む事なく…遊矢は戦いを挑む!

 

 

 

『スタジアムの盛り上がりも、2人の闘志も最高潮!!ついに決勝の幕が上がります!アクションフィールド・オン!フィールド魔法「クロス・オーバー・アクセル」発動!!』

メリッサの宣言と共にライディングコースがアクションフィールドに彩られていく…!

 

 

 

『「ライディングデュエル!アクセラレーション!!」』

スタートの合図と共に2台のDホイールが飛び出す…最後の決闘が始まった…!

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対ジャック

 

 

 

 

 

先攻を取ったのはジャック、彼は前夜祭のデュエルを再現するかのように『レッド・ワイバーン』を喚び出す。

 

ジャックの意図に気付いた遊矢は父から()()()()()本当のエンタメデュエルを見せるべく、エンタメスタイルのプレイングでペンデュラム召喚と共に母から託された魔法カード『スマイル・ワールド』を発動…強化された『刻剣の魔術師』と共にジャックに切り込むが──

 

 

『…だから、お前は独り善がりだと言っている!!』

 

 

 

遊矢を一喝したジャックは罠カード『王者の調和(キングス・シンクロ)』によってエースたる荒ぶる魔竜『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』を召喚、その攻撃を撥ね退けた…!

 

 

 

『半人前と言ったのは…俺の見込み違いだったか、お前は──前夜祭から成長などしていない!』

 

「っ…違う!『スマイル・ワールド』がオレの…父さんの!」

 

『そんなカードにいつまでもこだわっているからお前は気づけんのだ……()()()()()()に!!』

遊矢の攻撃を阻止したジャックが再び遊矢を一喝する…!

 

 

『借り物の夢で…()()()()()()で語るな!俺にお前のエンタメとやらを示したいのならば()()()()()()()で──デュエルで語ってみせろ!!』

 

「オレの、言葉…!?」

エンターテイナーとして、決闘者の先達として遊矢の欠点を叩きつけるジャック…そして、その意味を遊矢が理解する前に攻勢に出る!

 

 

 

『夢の中の父親の背中に縋り、憧れの()()に固執した榊遊矢…貴様は遊星や遊海の足元にも及ばん…!決闘の真髄を理解できぬ者と戦う意味はない!!消え去るがいい!「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト」の効果発動!アブソリュート・パワー・フレイム!!』

それは全てを薙ぎ払う破壊の炎…それが遊矢へと迫る─!

 

 

「うおおおっ!!アクションマジック『加速』!!効果ダメージは0になる!」

 

『効果は躱したか…だが、攻撃は残っている!道化を打ち砕け!灼熱のクリムゾン・ヘルバーニング!!』

 

「がああっ!!?」

効果ダメージは回避した遊矢だったが…紅蓮の息吹がそのライフを大きく削る…!

 

 

「っ…アクションマジック、『ダメージ・ドロー』発動…!2000以上のバトルダメージを受けた事で、2枚ドローできる…!」

大きくライフを削られた遊矢だが…さらなるドローで希望を繋いだ…。

 

 

 

 

「(オレは…ずっと父さんのデュエルをものにしようと思って頑張ってきた…父さんのエンタメデュエルが()()()()()()()だと信じて…)」

ジャックからの激を受けた遊矢は考え込む、遊矢にとっての『原点』…それは父・遊勝の魅せた、人々を笑顔にするエンタメデュエル……だが、シンクロ次元にやって来てから…遊矢はさらなるデュエルを目にしていた…。

 

 

「(遊希兄…遊星…)」

一つは前夜祭における遊海とジャックのデュエル、紅蓮の炎と熱き魂の衝突はデュエルパレスの観客全員を興奮させ…シンクロ次元を変える最初のキッカケとなった。

 

そして、もう一つは準決勝のジャックと遊星のデュエル、まさに宿命のデュエルというべきその戦いは…今までに見た事がないほどジャックを荒ぶらせ──その魂を燃え上がらせていた。

 

 

「(今、オレは…何をすればいいのかわからない………でも、やれる事を精一杯やるんだ!!)」

未だに見えぬ「答え」…その中で遊矢は全力を尽くす!

 

 

 

 

「剛毅の光を纏う勇者の剣!今、閃光と共に目覚めよ!シンクロ召喚!!『覚醒の魔導剣士』!エンライトメント・パラディン!!」

「調律の魔術師」を引き当てた遊矢はシンクロ次元における絆の象徴──『覚醒の魔導剣士』を喚び出す!

 

 

 

「オレは…オレにシンクロモンスターを与えてくれたアンタに感謝してる…でも、父さんのデュエルも否定しない!!」

魔導剣士の効果で墓地の「スマイル・ワールド」を回収した遊矢は「EMライフ・ソードマン」の効果で魔導剣士を強化し、攻撃を仕掛ける!

 

 

『甘い!罠カード「レッド・クリスタル」発動!「レッド」モンスターはこのターン破壊されん!』

しかし、ジャックは攻撃を一蹴…荒ぶる魔竜は倒れない…!

 

 

『フン…「覚醒」の名を持っているようだが、聞いて呆れる……真の()()とは、窮地を挽回するほどの力がなければならん!!その程度の覚悟で我が魂を砕けると思うな!!』

遊矢の一撃を一蹴したジャックは遊矢にトドメを刺すべく動き出す!

 

 

『砕けるがいい!アブソリュート・パワーフレイム!!』

 

「『EMバブルドッグ』のペンデュラム効果発動!ペンデュラムモンスター以外のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが破壊される時、このカードを代わりに破壊する!」

 

『ならば攻撃だ!アブソリュート・パワーフォース!!』

 

「『EMゴムゴムートン』のペンデュラム効果発動!!1ターンに1度、モンスターの戦闘破壊を無効にする!!」

迫りくるジャックの容赦ない連撃、遊矢はそれをペンデュラム効果を駆使してギリギリで回避する…だが、その残りライフは僅か100となってしまった…!

 

 

 

『フン…ペンデュラム効果でモンスターを守ったか、それがお前の()()()になればいいがな』

 

「ペンデュラムが…オレの突破口に────あっ」

追い詰められた遊矢を前にジャックが口にした言葉…それを聞いた遊矢は今までの事を思い返す。

ペンデュラム召喚の「始祖」として、もう1人のペンデュラム使いとなった遊希と共にスタンダード次元から戦い抜いてきた遊矢……ジャックに示すべき「答え」は───最初からその手の中にあったのだ。

 

 

 

「オレはペンデュラム召喚を最初にやったデュエリスト…ペンデュラムこそが、借り物じゃない…オレ自身の言葉!!」

答えを掴んだ遊矢の脳裏に新たなイメージが浮かぶ、それは…反撃の一手となる!

 

 

「────見えたぞ、ジャック!()()()()()()()が!!」

 

『ならば…その言葉で叫んでみろ!お前自身のデュエルを!!』

 

 

 

 

「オレは──レベル2『EMチアモール』にレベル8の『覚醒の魔導剣士』をチューニング!!」

 

『なにっ…!?「覚醒の魔導剣士」はチューナーモンスターではないはず!?』

 

「このシンクロモンスターは…ペンデュラム召喚されたモンスターとシンクロモンスターをリリースする事で、特殊召喚できる!!」

 

『なんだと!?』

『相克の魔術師』と『ゴムゴムートン』のペンデュラム召喚によって現れた『EMチアモール』…そして魔導剣士が真の覚醒の時を迎える!!

 

 

「平穏なる時の彼方から…遍く世界に光を放ち、蘇れ!シンクロ召喚!!現れろ!レベル10!『涅槃の超魔導剣士』!ニルヴァーナ・ハイパラディン!!」

 

『これが…お前の「言葉」か!!』

それはペンデュラムが導いた新たな奇跡…青き鎧を纏いし、ペンデュラム・シンクロモンスター…『涅槃の超魔導剣士』!!

 

 

 

『ふっ…ハハハハハ!!面白い!やはりお前は面白いぞ!榊遊矢!!ようやく自分の殻を破ったか!!』

新たな覚醒を遂げた遊矢を見たジャックは思わず笑い声を上げる。

 

……そもそも、ジャックは遊矢のエンタメデュエルそのものや榊遊勝のエンタメを否定していた訳ではない。

ペンデュラム召喚という未知の召喚法を使いながらも、それを生かしたデュエルをせず…固執するように見えぬ『誰か』のデュエルをなぞっていた遊矢の戦い方が気に食わなかっただけなのだ。

 

そして…ジャックの慧眼は──遊矢に秘められた可能性にいち早く気づいていたのだ。

 

 

「いくぞ…!『ニルヴァーナハイパラディン』で『スカーライト』を攻撃!トゥルース・スカーヴァティ!!」

涅槃の剣士の剣に螺旋の魔力が集中…スカーライトへと振り下ろされる!

 

『罠カード発動!「キング・スカーレット」!「スカーライト」の破壊を無効にし、このカードをチューナーとして特殊召喚!!』

ダメージこそ受けたが…ジャックは再び魂のカードを守りきる!!

 

 

 

 

 

『ようやく、自分の言葉で語り始めたな榊遊矢…ならば──俺も…俺のデュエルで応えてやろう!!』

 

「ジャック!?そっちは─!?」

遊矢の成長を目の当たりにしたジャックは遊矢との並走から外れ、コースの分岐に入り込む…だが、そこは───

 

 

 

『俺のターン!チューナーモンスター「ミラー・リゾネーター」を召喚!』

 

「チューナーが、2体…!?まさか!!」

 

『見せてやろう…我が魂の境地を!!荒ぶる魂……バーニング・ソウル!!』

 

キィン─!

 

右腕を心臓に当てるジャック…その胸から紅蓮の炎が燃え上がり、ジャックの全身を包んでいく!!

 

 

『じ、ジャックが燃えています!!これは、前夜祭の───あ、ま、待って!!ジャックの進む先に()()()()!?』

ジャックの変化を実況していたメリッサが異変に気付く…ジャックの進む先の道が途切れていたのだ!

 

 

「ジャック─!!」

 

『俺の行く道は俺が作る…聞くがいい!俺の荒ぶる魂の鼓動を!感じるがいい、俺の命の昂りを!!見るがいい!!これが俺のデュエル!!飽くなき挑戦を続ける王者の叫び!!

道がない事を知りつつも、ジャックは加速する…ジャックは識っている、宿命のライバルのその姿を!!

 

 

《キュオオォォオオン─!!》

 

『俺はレベル8の「スカーライト」にレベル1の「キングスカーレット」とレベル1の「ミラーリゾネーター」をダブルチューニング!!』

躊躇なくコースから跳び上がるジャック…その荒ぶる魂が赤き竜を呼び寄せ──新たな力を覚醒させる!

 

 

王者と悪魔!今ここに交わる!赤き竜の魂に触れ、天地創造の雄たけびをあげよ!シンクロ召喚!現れろ!レベル10!「レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント」!

それは、荒ぶる魂を覚醒させたジャックの新たな力…傷を癒し、さらなる力を手にした「紅蓮の暴君」が咆哮する!

 

 

 

 

「遊海と同じ…ダブルチューニングを…!?」

 

『否!あの力の源流は(ジャック)にある!!荒ぶる魂の力…その身に刻むがいい!!』

無事にコースに着地し、遊矢と再び合流したジャックは「境地」の力を解き放つ!

 

 

『「タイラント」の効果発動!1ターンに1度、自身以外のフィールドのカード全てを破壊する!!アブソリュート・パワー・インフェルノ!!』

 

「全部のカード…!?ペンデュラムカードもか!うわあああっ!?」

破壊力を増した破壊の炎があらゆるモノを吹き飛ばす!!

 

 

「でも、『ニルヴァーナハイパラディン』の効果発動!破壊されたこのカードをペンデュラムゾーンに置く!!」

 

『ならば…この攻撃で終わりだ!「タイラント」でダイレクトアタック!獄炎のクリムゾン・ヘルタイド!!』

 

「まだだ!アクションマジック『回避』──」

 

『「タイラント」が攻撃する時、相手が発動した魔法カードを無効にして破壊!さらに自身の攻撃力を500アップする!』

 

「なっ…!?」

フィールドをガラ空きにされた遊矢はアクションカードによる回避を狙うが…暴君はあらゆる障害を粉砕する!

 

 

「なら…!自分の魔法カードが破壊された事で『曲芸の魔術師』は特殊召喚できる!!ぐううっ!!?そして、破壊されたこのカードをペンデュラムゾーンへ!」

 

『首の皮1枚繋がったか…これも想定内か?』

 

「いいや、オレは…オレが今できる事を精一杯やってるだけだ!」

 

『そうか…ふっはははは!お前も運命を味方につけるか!面白い!!』

ギリギリでジャックの猛攻を凌いだ遊矢、その言葉を聞いたジャックは笑い声を上げる…その荒ぶる魂は遊海戦や遊星戦と同じレベルまで昂ぶっていた!

 

 

 

 

『榊遊矢…お前はようやく、自分の意思を伝える事ができるようになった…!』

 

「自分の、意思…?」

 

『デュエルとは…デュエリスト同士の「魂の対話」!そこで使う「言葉」は誰に習ってもいい…大事なのは、その「言葉」をどう使いこなし、相手に自分の意思を伝えるかだ…そこにデュエルの真髄がある!』

 

「デュエルの真髄…」

ジャックから求められていた「答え」を伝えられた遊矢は思い返す。

この舞台に上がるまでに戦ってきたデュエリスト達や舞網チャンピオンシップで戦ったデュエリスト達、そして…柚子や遊希、権現坂、修造塾長…たくさんの仲間達に支えられ、その思いを背負って遊矢は戦い続けてきたのだと…。

 

みんなとのデュエルがあったからこそ、遊矢のペンデュラム召喚は進化できたのだと…!

 

 

「わかったよ、ジャック…借り物じゃない…オレの独り善がりじゃないデュエルがどういうものか…!」

戦ってきたデュエリスト達の思いを背負い、遊矢は最後の攻撃を仕掛ける!

 

 

 

 

「ペンデュラム召喚!現われろ!レベル3!『刻剣の魔術師』!『レベル4!『ラディッシュホース』!レベル5!『ゴムゴムートン』!レベル6!『バブルドッグ』そして…レベル7!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

『5体のモンスターの同時召喚だと!?』

それはペンデュラム召喚の力を最大限に生かした『ストレートペンデュラム』…5体のモンスターが力を合わせ、暴君に立ち向かう。

 

父から受け継いだ『スマイル・ワールド』によってフィールド上のモンスター全体の攻撃力をアップ、さらに『ラディッシュホース』による『タイラント』の弱体化、そして『刻剣の魔術師』による『オッドアイズ』の強化を狙うが…ジャックは一筋縄ではいかない相手…最後の罠カード『オーバー・ザ・レッド』に『タイラント』攻撃力を倍化、さらに墓地の『スカーライト』を除外する事で『タイラント』の攻撃力を10000まで上昇させる。

 

しかし、遊矢は『涅槃の超魔導剣士』のペンデュラム効果を発動する…その効果は『このターンにペンデュラム召喚された、レベルの一番低いモンスターに破壊耐性と戦闘ダメージを0にする効果を与え、戦闘破壊されなかった相手モンスターの攻撃力を攻撃モンスターの攻撃力分ダウンさせる』効果、そして『最初の効果の対象をレベルが1つ高いモンスターに移す』効果。

 

…その効果には遊矢のメッセージが込められていた…『1つ1つの声は小さく、弱くても…必ずその声は成果を出す事ができる』と…!

 

それは遊矢から、シティの人々へのエール…人々が手を取り合い、助け合う世界を目指して欲しいという願いだった。

 

 

 

 

「バトル!『オッドアイズペンデュラムドラゴン』で『レッドデーモンズドラゴンタイラント』を攻撃!螺旋のストライク・バースト!!」

 

『ぐううっ…!だが、俺のライフを削り切る事はできんぞ()()!!』

 

「いいや…『オッドアイズ』がレベル5以上のモンスターとバトルする時!与えるダメージは2倍になる!!リアクション・フォース!!」

 

『────見事だ!!』

螺旋の炎が暴君を撃ち抜く…遊矢はついに成し遂げたのだ、ジャックへのリベンジを…そして本当の意味でシンクロ次元の人々を1つする事を…。

 

 

 

ジャックLP0

 

遊矢WIN!

 

 

 

 

 

『ふ、フレンドシップカップ…ついに決着!!その王座に輝いたのは……弱冠14歳!エンタメデュエルとペンデュラム召喚を使う、期待の超新星!榊遊矢選手──!!』

メリッサの実況がスタジアムに…シティ全体へと響く……そしてシティが()()()、人々の歓声が…新たな希望への喜びが大地を揺らしていた…!

 

そこにはトップスも、コモンズも関係ない…人々の理想の姿があった…!

 

 

 

 

 

 

「……ありがとう、キング」

 

『フン…もはや、俺はキングではない…フレンドシップカップを制し、新たなキングとなったのはお前だ、遊矢』

 

「ジャック…」

遊矢コールが響く中、デュエルパレスに帰ってきた遊矢は自分を成長させてくれたジャックへと感謝を伝える…その表情は清々しくもあり、次の戦いを見据えた獰猛さもあった…!

 

 

 

『デュエルで笑顔を……その考え方は遊海の思いにも似ているな、これがお前の…「スマイルワールド」の力か?』

 

「いいや…オレの力だけじゃない、ジャック・アトラスと戦えたから…シティの人々をこんなに笑顔に出来たんだ!」

 

『フッ…そうか』

遊矢の言葉を聞いたジャックは遊矢へと歩み寄り、勝者を示すようにその腕を突き上げさせる!

 

 

『シティ住民の諸君…俺は今、最高な幸せの境地にいる!この榊遊矢こそ、俺が探していたデュエルで語り合う事ができる本物の決闘者だ!!俺は今日、この男と戦えた事を誇りに思う!!』

 

 

『『『「「「うおおおっ!!」」」』』』

ジャックの宣言に再びシティが沸き立つ…遊矢のエンタメはシンクロ次元にも受け入れられたのだ!

 

 

 

「遊矢!!」

 

「遊矢!おめでとう─!!」

 

「へっ…派手に目立ちやがって、いいデュエルだったぜ?」

 

「権現坂!柚子!沢渡…みんな!」

そしてスタジアムに柚子を始めとしたランサーズの仲間達や徳松達が駆けつける……遊矢の勝利を祝福する為に!

 

 

 

 

「へっ…ずいぶんと潔いじゃねぇかよ?ジャック」

 

『フン…今回は負けたが……次は勝つ!』

 

「その立ち直りの早さは相変わらずだな…」

 

「ジャック〜!『タイラント』のカード見せて─!」

 

「龍亞!まだ終わってないんだから!」

 

「これで…シティもネオ童実野シティと同じ、希望の街に生まれ変われるのね…!」

そして、ジャックの周りにはシグナーの仲間達が集まる…その表情は一様に明るかった…。

 

 

『遊海も…このデュエルを見ていたはずだな』

 

「ああ、目は覚めてる…あとで会いに行こう」

評議会ビルを見つめながら遊海を気にするジャック…そんな時だった。

 

 

 

キィン─

 

 

 

【シティの住民の皆さん…少し、我々の言葉を聞いてもらいたい】

 

「行政評議会!?」

 

「お偉方がどうしたんだ?」

 

「あ、イェーガー市長もいる!」

熱狂のシティやデュエルパレスに行政評議会、そしてランサーズの見覚えのない小柄な人物、イェーガー市長の姿が3Dビジョンで投影される…人々は突然の事にどよめいている…。

 

 

 

 

【フレンドシップカップの全試合が終了した今、行政評議会はシティの皆さんに告白しなければならない事があります】

ホワイト議長の言葉を皮切りに、行政評議会はシティの人々に真実を明かす。

 

トップス・コモンズの融和の象徴として開かれて街のいたフレンドシップカップ、その頂点たるキングは行政評議会の地位を脅かさねば誰でも良い存在だった事。

 

しかし、白波遊海やランサーズの一件…ロジェの野望からその考え方が間違いだった事に気付き──ジャックと遊矢のデュエルが新しい街の姿を……人々が手を取り合い、助け合う…理想を見せてくれた事を…

 

 

【本来であれば、我らは責任を取って辞職する…と言いたい所ですが……状況が悪い】

 

【榊遊矢を始めとしたランサーズの…我々の敵、融合次元の脅威が迫っているからです…故に、我らは次元戦争解決後に辞職し、若い世代へとバトンを託す事を約束します】

 

【そして我ら…シンクロ次元はスタンダード次元、ランサーズと同盟を結び…融合次元の脅威へと立ち向かいます…!】

 

【この提案に賛同してくださる方は……拍手を以て認めてもらいたい…!!】

 

「「「『『『おおおお─!!』』』」」」

行政評議会の言葉と共にシティの各所で拍手が響き、地面が揺れる…この街は穏やかに、しかし確実に変わろうとしていた…。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…これでシンクロ次元の物語も一段落か………次はお前の番だぞ?遊海───さっさと翠を迎えに行きやがれ」

希望に沸くシティを見つめながら…ラプラスは静かに呟いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラプラス〜!アヤカから精霊用のご飯分けてもらってきたよ〜」

 

 

「……………空気を読んでくれ、アンチノミー」

 

「??」

 

 



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次なる戦いへ〜反撃の槍〜

こんにちは!S,Kです!

シンクロ次元編、ついに最終回…遊海達は次なる戦いに挑む…!


それでは、最新話をどうぞ!


『改めて…フレンドシップカップ優勝おめでとう!榊遊矢君…本当に見事なデュエルだった!キミとジャックのデュエルによってシティはより良い方向へ進み始めた…行政評議会を代表して感謝を伝えさせて欲しい…!!』

 

「え、あ…その……ありがとうございます!!」

 

 

フレンドシップカップ決勝戦後の夕方、行政評議会…そこにはフレンドシップカップを制した遊矢、そしてランサーズメンバーに柚子、素良…元キングとなったジャックを始めとしたシグナー達、徳松やシンジなど…大会に関わった者達が集まっていた。

 

 

 

『本来ならば、優勝を祝うパーティーを開くのだが…今の状況を考えて延期させてもらった…そこは申し訳ない』

 

「いいえ…その方がありがたい、気が緩んでしまったら…この後の()()にも影響が出てしまう、パーティーはまたの機会に」

ホワイト議長の好意に感謝を伝える零児…そして話は()()()の目的へと移っていく…。

 

 

 

「ランサーズ諸君、そして榊遊矢…フレンドシップカップでの戦いは見事だった、我々は当初の目的──柊柚子の救出を果たし、シンクロ次元との同盟を結ぶ事ができた、よって…作戦を次の段階へと進める」

 

「次の段階…!」

ランサーズの奮闘を労った零児はランサーズ達に次の行動を伝える…!

 

 

「準備が出来次第、我々は融合次元へと乗り込む…つまり、アカデミアとの決戦へ挑む…!」

 

「ついにか…!」

 

「アカデミア…!瑠璃、必ず助け出してみせる…!」

零児の言葉を聞いた権現坂はハチマキを締め直し、黒咲は拳を握り締める…!

 

 

「ちょっと待ってくれ、零児…エクシーズ次元には、行かないのか…?」

そこへ遊矢が待ったをかける…アカデミアに侵攻され、レジスタンスが抵抗を続けるエクシーズ次元…その救援には向かわないのかと…。

 

 

「……現状、我々は少数精鋭だ…凌牙によるとエクシーズ次元には100人以上のアカデミア兵が派遣され、攻撃を続けている……我々が勝利するには、アカデミアを強襲───その首魁たる男、プロフェッサーを止めるしかない」

 

「エクシーズ次元を…見捨てるのか…!?」

 

「見捨てる訳ではない、エクシーズ次元の侵攻を止める為のもっとも安全で効果的な作戦がこれなのだ…!」

ランサーズの人数は現在、二十人に満たない…その人数で大戦力を誇るアカデミアに勝利する為には、強襲を仕掛けるしかない…それが零児の判断だった。

…だが、遊矢はその作戦に賛成する事ができなかった……ユートの記憶を見て知っているからだ、アカデミアと戦い続けるレジスタンス達の姿を…。

 

 

 

「その作戦は…止めておいた方がいいと思うぞ?赤馬零児」

 

 

 

「っ…白波遊海…!」

 

「遊海!?嘘だろ…あれだけの怪我が、もう治って…!?」

 

「えっ…?嘘…右目も、潰れちゃってたのに…!?」

議場に穏やかな力強い声が響く…そこには流星、ラプラス、ブルーノと共にほぼ完全な状態まで回復した遊海の姿があった。

なお、昨夜のボロボロの姿を知っている遊矢や柚子、一部のランサーズ達は目を丸くして驚いている。

 

 

 

「おう、遊矢!ジャックとの決勝戦、なかなか良いデュエルだった…お前が貫くべき『自分のデュエル』を見つけられたみたいだな?最後のペンデュラム召喚からのコンボはすごかった!」

 

「わぶっ…頭を撫でるのは止めてよ!子供じゃないんだから…でも、ありがとう…」

遊矢の頭をがしがしと撫でる遊海…遊矢は戸惑っていたが、嬉しそうな表情だった。

 

 

「……白波遊海、私の作戦に不備があると?」

 

「不備…って訳じゃないが、少し心配な事がある」

普段よりも明るい様子の遊海に呆気にとられていた零児だったが…遊海に先程の言葉の真意を問う。

 

 

「1つ目、アカデミアには裏切り者だったデニスを通じて俺達の情報の一部が渡ってる…つまり、アカデミアは俺達がすぐにでも融合次元に乗り込む事に気付いている可能性が大きい…昨日の撃退戦でエリート部隊のオベリスクフォースを60人倒して戦力が落ちてるとはいえ、待ち伏せされたら…流石にやばいだろう?」

 

「…確かに……まだ、理由はあるのか?」

 

「2つ目は…仮に強襲が成功したとしよう、あと一歩で敵の首魁の首に手が届く───そんな状況で、エクシーズ次元の別働隊が帰ってきたら……?」

 

「………俺達は、挟み撃ちになるな…」

 

「「「っ!?」」」

遊海の言葉を聞いた黒咲の呟きにランサーズ達の表情が凍る、アカデミアの戦力は未知数…その中でさらなる戦力が投入されれば、ランサーズは退路を断たれ…全滅してしまうだろう。

 

 

「そこで、だ…俺が提案するのは…エクシーズ次元に行き、レジスタンスと合流…アカデミアの別働隊を撃破・懐柔し、エクシーズ次元を開放する!という作戦だ」

 

「「「『『懐柔!?』』」」」

 

「アカデミアの戦力を、寝返らせる…というのか?」

 

「その通りだ」

遊海の思わぬ作戦提案に零児やランサーズ達は驚愕する…!

 

 

「みんなも気付いていると思うが…オベリスクフォースやほとんどのアカデミア兵達はお前達とほぼ同世代──学生兵だ、いくら洗脳に近い教育をされてるとはいえ……好き好んで『戦争』をしたい者がいると思うか?どう思う?セレナちゃん、素良君」

 

『……アカデミアにいた時、戦場やアカデミアから脱走する者が多い…という話は聞いた事がある、次元戦争の真実を知った今なら分かる……アカデミアにも、戦いを望まぬ者達はいる!』

 

『僕もそう思う、噂だけど……アカデミア近くの街には脱走した生徒達のシェルターがあって、そこへ駆け込む人もいるって…』

遊海の問いかけにセレナと素良が答える、アカデミア兵達も『人間』…戦いを望まない者も多いのだと…。

 

 

「そこで…遊矢の力が……エンタメデュエルの力が必要になる」

 

「オレの…エンタメ…!?」

 

「そうだ…エクシーズ次元の別働隊を()()だけなら、()1()()でどうにかなる……でも、遊矢…お前はデュエルでみんなを笑わせて…笑顔にしたいんだよな?」

 

「ああ…!デュエルは争いの道具なんかじゃない…みんなを楽しませて、笑わせて…相手と()()()()為のモノなんだ…戦争に使うなんて、間違ってる!」

 

「フッ…」

遊海の言葉を聞いた遊矢の決意…それを聞いたジャックは笑みを浮かべる。

 

 

「俺はまぁ…()()のデュエルしかできない…餅は餅屋、エンタメはエンターテイナーに任せた方が良いと思ってな……どうだ?零児、俺の作戦は?」

 

「若干のリスクはあるが…悪くない策だ………ランサーズ諸君、お前達の意見も聞きたい、意見があるなら聞かせて欲しい」

遊海の提案を受けた零児はランサーズ達に問いかける…。

 

 

 

「俺は特に反対はせん!むしろ賛成だ!そもそも凌牙や黒咲達はエクシーズ次元を救う為にスタンダード次元に来た…今こそ、我らがエクシーズ次元を助ける時…俺はそう思う!」

 

「うん…!エクシーズ次元を助けて、戦争を強いられているアカデミアの人達を止める…それが一番よ!」

権現坂、柚子は遊海の作戦に賛成する!

 

 

「へっ…シンクロ次元ではあんまりいいカッコできなかったからな!エンタメで世界を救えるなら、やってやろうじゃん!」

 

「俺は、瑠璃を助ける為ならなんだってやる……判断はお前達に任せる」

沢渡はエンタメが活躍すると聞いて賛成し、黒咲は判断を仲間達に委ねる。

 

 

『……エクシーズ次元を襲い、人々を苦しめてしまったアカデミアの罪は重い……それを、少しでも償えるなら…私は戦う!』

 

「拙者は…零児殿の判断に委ねる」

セレナはシンクロ次元で知ったデュエルの楽しさとアカデミアの罪を背負い、賛成…月影は零児へと判断を委ねた。

 

 

「わかった…先程までの作戦は忘れてくれ、ランサーズはエクシーズ次元へと向かい…アカデミア別働隊を撃破、エクシーズ次元を開放する!」

ランサーズの意見を聞いた零児は遊海の作戦を採用…エクシーズ次元開放作戦を承認した…!

 

 

 

 

 

「新たな方針が決まった所で…黒咲、そして不動流星、今のエクシーズ次元ハートランドの状況…レジスタンスの状況を教えてほしい」

 

「わ、わかりました!」

方針が決定した事で零児はエクシーズ次元の状況を知る黒咲と流星に状況の説明を頼んだ。

 

 

 

「俺の故郷…エクシーズ次元、ハートランドは三方を山に囲まれ、海に面した場所にある街だ……その特徴は街の中心に位置する巨大な遊園地、一時はアカデミアに占拠されたが…凌牙達、勇士の力を借りて奪還…レジスタンスや避難民の安全地帯になっている」

 

「遊園地の周りには高い壁があって、それでアカデミアの侵攻を防ぐ事ができてるんだ…他にも精霊使いの力を使って護りを固めたりね」

流星が投影した地図を使い、ハートランドの状況を説明する…。

 

 

「アカデミアは湾岸地区に要塞を作って、そこを拠点に攻撃してきてる……なかなか数が多くてね、僕達も防衛で手一杯だったんだ……でも、遊海さんが来てくれるなら大丈夫!すぐに戦況をひっくり返せるはず…ですよね?遊海さん!」

 

「ああ…今の俺は全力を出せる、中途半端な覚悟しかない奴らが相手なら……俺は負けないさ」

流星の言葉に遊海は頷き、拳を握り締める…!

 

 

 

「お前も凌牙の奴も…遊海の事をずいぶん信頼してるんだな?強いのは今までの活躍で分かってるけどよ?」

 

「あれ…?遊海さん、今までの()()()はランサーズのみんなに教えてないんですか?」

 

「ん…別に教える程じゃないさ」

 

「武勇伝?」

遊海に強い信頼を寄せる流星を見た沢渡が問いかける、遊海は気にしていない様子だったが…遊矢が首を傾げる。

 

 

「僕が知ってる限りだと…巨大なモンスター『地縛神』のリアルダイレクトアタックを()()()()()()()()、とか…()()()のライディングデュエルロイドを1人で相手にした、とか……復活した()()()()()を倒したとか…敵対したギャングの拠点ビルを()()()()()()()()、とか───」

 

「「「『『『─────はい??』』』」」」

 

「おおっと!?ステイ!流星ステイ!!それはランサーズに関係ない話だから!!」

流星の語る遊海の武勇伝───否、「伝説」に思わずランサーズや行政評議会の目が点になる、それを見た遊海は慌ててストップをかける。

 

 

「あははは…まぁ、誇張し過ぎな話もあるが…俺1人で()()1()()ぐらいはギリギリ相手できると思ってくれればいいさ」

 

「「「「(遊海って、何者?)」」」」

 

「(まだ実力を隠していたのか……オベリスクフォース襲来も、本調子なら1人で何とかしてしまったのだろうな…)」

 

「兄さま、大丈夫…?」

 

「ああ…大丈夫だ、零羅……」

誤魔化すように笑う遊海を見たランサーズ達は全員同じ事を考える…そして零児はその実力を知り、思わず頭を抱えた…。

 

 

「あっちゃー…まぁ、赤馬零児が頭を抱えたくなる気持ちも分かるぜ…」

 

「…彼らには…あまり遊海さんの活躍を教えない方がいいな…」

 

「違いない…遊海と奴らでは、文字通り()()()()()からな…」

そんなランサーズの戸惑う姿を見た遊星達は苦笑するしかなかった。

 

 

 

…………

 

 

 

「では、エクシーズ次元に向かうメンバーだが…まず、私と零羅、月影は一旦シンクロ次元に残らせてもらう……シンクロ次元のデュエリスト数名がランサーズに力を貸してくれる事になった、彼らのデュエルディスクの調整・『ディメンション・ムーバー』への適応が済み次第、後続隊としてエクシーズ次元に向かう」

 

「その準備にはどれくらいかかる?」

 

「3日…いや、2日もあればできるはずだ」

 

「なら…遊星と不動博士にも手伝って貰おう、2人はシンクロ次元でもトップクラスのメカニックだからな…遊星、頼めるか?」

 

「はい!父さんにも連絡してみます!」

そして、話はエクシーズ次元に向かうメンバーについて移っていく…零児達は新たなランサーズメンバーの為に残留を決める。

 

 

「となると…エクシーズ次元に向かうのは俺、レジスタンスの流星、黒咲そして遊矢は確定だが…」

 

「遊矢が行くのならば、俺も行こう!」

 

「わ、私も!」

 

「オレもいくぜ!エンタメなら、オレもいないとな!」

 

「僕も行くよ…!アカデミアの強いデュエリストの事なら知ってるから…!」

 

「私も行くぞ!」

確定メンバーである遊矢・黒咲・流星に加え、権現坂・柚子・沢渡・素良・セレナ…ランサーズのほとんどがエクシーズ次元行きに立候補する。

 

 

「待て、柊柚子、セレナ…君達はアカデミアに狙われている…エクシーズ次元はアカデミアとの戦闘の最前線、リスクが大き過ぎる」

 

「心配するな、遊矢以外のランサーズ達が前線で戦う事はほぼない、前線に立つのは俺やレジスタンス──流星や凌牙と同じ『勇士』達が請け負う事になる…ランサーズにはそのバックアップを頼みたい…それに、主力がいないシンクロ次元に留まっていたら…逆に危険かもしれないからな」

 

『まぁ、そこは気にするな…次元戦争が終わるまではオレとブルーノがシンクロ次元に残って守りを固めておく……お前なら2日もあればなんとかできるだろ?遊海』

 

「ああ、元々そのつもりだ……俺達が露払いをして、遊矢がアカデミアの司令官、または有力なデュエリストをデュエルで撃破……停戦に持ち込む、それが最短ルートだ」

セレナや柚子をエクシーズ次元に向かわせる事に躊躇する零児…その不安に遊海とラプラスが答える…そして少しずつ作戦が形になっていく…。

 

〜〜〜〜

 

「………話は決まったな、エクシーズ次元開放チームは明朝一番に出発…後続隊は準備が整い次第、エクシーズ次元で合流する……これでいいな?」

 

「いいだろう、白波遊海…『決闘王』の名を背負う英雄よ、お前の手腕を見せて貰おう」

 

「──誰からその事を聞いたのかは知らないが……俺は最善を目指す、それだけさ!」

作戦の詳細が決まり、ランサーズは遊海を暫定のリーダーとしてエクシーズ次元開放作戦へと臨む事になった…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…夜風が気持ちいいな」

 

《フォウ…フォーウ(改めて見ると…シティも綺麗な街だね)》

 

「ああ…今はまだ、コモンズ地区の明かりは少ないけど……希望の光がこの街全てを照らしてくれる事を信じよう」

会議が終わり、遊海は評議会ビルの屋上で夜風に当たっていた…きらびやかな光が照らすシティの夜景を見ながら…。

 

 

 

「……遊海さん?」

 

「ん…遊星、まだ起きてたのか?」

 

「はい…流星に向こうのオレの話を聞いてたら、目が冴えてしまって…」

 

「そうか…中々面白い話だったろ?」

 

「はい…まさか、流星がオレと──アキの孫とは思ってませんでしたが……」

 

「ははは!まぁ、可能性の1つって事さ!」

そんな時、遊星が屋上にやって来る…孫である流星との話で目が冴えてしまったのだ。

 

 

「遊海さん…1つ、聞いてもいいですか?」

 

「どうした?」

遊星は遊海が体を預ける柵に凭れながら、遊海に問いかける…。

 

 

「遊海さんの奥さん──()()()は、エクシーズ次元にいるんですか?」

 

「ん───ああ、その通りだ……俺は『世界』を守った……その代わり、翠を泣かせた……もう、泣かせないって約束したのにな……」

 

「やっぱり…」

シグナーの痣の力で「記録」を得てから、遊星は疑問に思っていた事があった、それは…遊海に寄り添う紫髪の女性───妻である白波翠の姿が見えない事……その答えは遊海に何が起きたのかを察するのに充分だった。  

  

 

 

「遊海さん、早く翠さんに謝りにいきましょう……きっと、心配してます」

 

「ようやく…ようやく会いに行ける…!もうちょっとだけ、待っててくれ…。」

遊星の言葉に遊海はシティの夜景を見ながら涙を零していた…。

 

 

『不審者2名を発見〜!これより職務質問を開始するー…ってな!…おいおい、シティを変えるキッカケを作った英雄が泣いてんじゃねぇよ…』 

 

「あっ…牛尾さん…」

 

「牛尾…」

 

『へっ…戦いが終わったなら、お前達はここに来るだろうと思ってたのさ!』

しんみりした空気を変える明るい声、それはセキュリティの制服を着た牛尾だった…その手には2本のホットココアの缶を持っている。

 

 

『そんな泣き顔で会いに行ったら、翠は余計に心配するだろうが……笑顔で会いに行ってやれよ、遊海!』

 

「遊星、牛尾さん………ありがとう」

世界を越え、時間を隔てても繋がる遊海と仲間達の絆……遊海の感謝の言葉がシティの夜空に融けていった…。

 

 

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

 

 

「よーし、お前達!忘れ物はないな?評議会に貰ったサバイバルセットは持ったな?」

 

「「「「はい!」」」」

 

《フォウ、フォーウ!(トイレに行くなら今だよ〜!)》

明朝、身支度を整えた先発隊8人は評議会ビル前に集合していた…それぞれに最低限の食料やサバイバルセットが入ったポーチを持っている。

なお、遊海はアヤカ…「アポクリフォート・キラー」にシティから提供された大量の支援物資を積み込んでいる。

 

 

「諸君、我々の一番の目的はアカデミアを倒し、次元戦争を終わらせる事…この作戦がその『鍵』となる………健闘を祈る!」

 

「遊矢、みんな…ぼく達も、すぐに行くから…!」

 

「ありがとう、零羅…オレが先に行って…エクシーズ次元のみんなを助けてくるからな…!」

見送りに訪れた零児が激を飛ばし、零羅は遊矢達の無事を祈る。

 

 

 

『ホワイト議長達はシンクロ次元防衛の作戦会議と次代への引き継ぎの準備に忙しいので私が見送らせていただきます…未来を担うデュエリスト達よ!あなた達の無事を祈ります!』

 

「「「(誰?)」」」

一方、突然現れたピエロ風の人物──イェーガーの見送りを受けたランサーズ達は首を傾げていた。

 

 

「イェーガー…まさか、貴方も()()()へ来てたとは…どうして昨日の会議にいなかったんだ?」

 

『……ホワイト議長から治安維持局の臨時長官を兼任させられて忙しくて……』

 

「本当は…記憶が戻る前に悪い事をしてた後ろめたさで俺の前に顔を出せなかったとか?」

 

ギックウッ!?し、白波様お許しを〜!!』

 

「海馬社長に伝えておきますね?」

 

ぎゃ〜!?あの方もいらっしゃるのですかぁぁっ!?』

 

「ふっ…冗談だよ、冗談」

 

「「「「(?)」」」」

コントじみたやり取りをする遊海とイェーガーを見たランサーズ達は疑問を深めたのだった。

 

 

 

 

「遊矢」

 

「ジャック…」

そんなやり取りに苦笑していた遊矢にジャックが歩み寄る。

 

 

「デュエルとはデュエリストの魂の会話だ…だが、瞳が曇った者や…狂気に侵された者にはその()()が通じぬ事もある……その時は、覚悟を決めろ」

 

「…曇ってるなら、その曇りを流してやればいい…おかしくなってるなら、オレのデュエルで…その人を助けてみせる!」

 

「フッ…それでこそ榊遊矢だ」

遊矢にアドバイスを送るジャック…その答えを聞いたジャックは穏やかに笑った。

 

 

 

「おう、黒咲!絶対にお前の守りたいモンを取り返せよ!」

 

「クロウ…ああ、俺は…もう迷わない!」

そして、デュエルで絆を結んだ黒咲とクロウは拳を突き合わせ…。

 

 

「柚子、キミのデュエルは攻めよりも守りのデュエルだ…遊矢はなかなかに無茶な事をする、キミの安定したデュエルで彼を助けてやるといい」

 

「遊星さん…はい、ありがとうございます!」

遊星は遊矢の支えとなる柚子へとアドバイスを送った。

 

 

 

 

《……マスター、あちらのビルの上を》

 

「ん?」

そんな中、アヤカが遊海へと何かを示す…そこには──

 

 

『────』

 

「ディヴァイン…」

とあるビルの上…そこには赤い髪の青年、ディヴァインの姿があった…その手にはメタルナイト(モード・クリフォートα)をモチーフとした仮面を持っている…。

 

『………!』

 

「ありがとな…頑張れよ、ディヴァイン」

小さくサムズアップするディヴァイン…遊海をそれに応え、サムズアップで返した。

 

 

 

「遊海!気をつけてね!」

 

「無理したらダメだからね!!」

 

「龍亞、龍可…ありがとな!」

そして、遊海に駆け寄ってくるシグナー達…龍亞達は無茶を重ねる遊海を心配する。

 

 

「遊海さん、翠さんに会ったら…私達の事も伝えてね、翠さんも私達の仲間なんだから…!」

 

「ああ、翠のびっくりする顔が見えるよ」

 

「遊海、オレ達もすぐに追っかけるからな!」

 

「俺に遊星、クロウは助っ人として後続隊からランサーズに参加する!アカデミアなど、我が荒ぶる魂で打ち砕いてやろう!」

 

「そうか…お前達がいるなら百人力だ!」

アキはエクシーズ次元で待つ翠を心配し…クロウやジャックはアカデミアとの戦いを前に闘志を高めていた。

 

 

「遊海さん、赤き竜がオレ達の『記録』を繋いでくれたように…オレ達の『絆』は決して途切れない…オレ達決闘者の力で、次元戦争を終わらせましょう!」

 

「ああ…!!俺達は1人じゃない…俺は絆の力で戦い抜く!!」

遊星の言葉を聞いた遊海は『ドラゴンズ・ソウル』の痣が刻まれた右腕を掲げる…そしてシグナー達もそれに続いて痣の刻まれた右腕を掲げる!

 

 

キィン─!!

 

 

《キュオオォォオオン!!》

 

 

「わわっ!?前夜祭の時の!?」

 

「赤き竜…ありがとな…!」

その想いに呼応するように赤き竜が出現…シグナーやランサーズを激励するかのように咆哮を響かせた…。

 

 

 

「これが、世界を越えて繋がる、決闘者の絆の力…すごい…!」

 

『遊星粒子はモノだけではなく、人々の心をも繋ぐ奇跡の力…しっかりと見ておくんだ、流星…あるべき決闘者の姿を…!』

シグナー達の奇跡に目を輝かせる流星…その横では不動博士が感慨深げにその光景を見つめていた…。

 

 

 

 

『遊海!翠や海亜に会ったらボク達の事も伝えてね!シンクロ次元が大丈夫そうなら加勢に行くから!』

 

『……さっさと翠にぶん殴られてこい、馬鹿遊海』

 

「相変わらず辛辣だよな、お前は…シンクロ次元は頼んだぞ!」

ブルーノの優しい応援とラプラスの厳しい言葉を聞いた遊海はチームへと向き直る。

 

 

「それじゃあ…ランサーズは『ディメンション・ムーバー』を用意!流星は転移装置でエクシーズ次元に先行してくれ!」

 

「「「「了解!」」」」

 

「わかりました!先に行ってます!!」

遊海の言葉を聞いたランサーズ達は『ディメンション・ムーバー』を取り出す、そして流星はDホイール・流星号を加速させ、一足先にエクシーズ次元へと向かった…!

 

 

「………ああ、そうだ…遊矢!柚子ちゃん、2人は()()()()()いてくれ!」

 

「「はいっ!?」」

転移直前、遊海の思わぬ言葉に遊矢と柚子の顔が真っ赤に染まる!

 

 

「ああ、いや…変な意味じゃなくて!!『ディメンション・ムーバー』の移動はランダム性が強いからな!お前達がはぐれるのはマズい、そういう意味だから!」

 

「あ、なるほど…」

シンクロ次元到着時にバラバラになった事を思い出した遊矢は納得した…。

 

 

「………行こう、柚子…お前は、オレが絶対に守る…!」

 

「………うん!!」

遊矢はしっかりと柚子の手を握る…その様子を遊海達は微笑ましく眺めていた。

 

 

「さて…零児、合図を頼む!」

 

「ああ…ランサーズ、いくぞ!『ディメンション・ムーバー』発動!!」

 

「「「「発動!!」」」」

 

 

キィン─!!

 

 

広場が閃光に包まれる…その光が収まった時、遊海達の姿は消えていた…。





NEXT Episode…?



『アークエリア・プロジェクト』

融合次元・アカデミアが『理想郷』を作ると謳う計画により、エクシーズ次元・ハートランドは滅亡の危機に瀕していた…。





シンクロ次元の問題を解決し、同盟を結ぶ事に成功したランサーズ達…彼らは後顧の憂いを断つ為、そして同盟を結んだレジスタンスやエクシーズ次元の人々を助ける為にエクシーズ次元へと向かう…。

待ち受けていたのは壊滅した無残な街の姿…暴虐を尽くすアカデミアへの怒りに燃えながらランサーズ達はレジスタンスの拠点を目指すが…。



【榊遊勝は…間違ってる!!】

「父さんを、知ってるのか…!?」



待ち受けるのは狂気の狭間で揺れ動くアカデミアの戦士…遊矢はその闇を祓う事ができるのか…そして───








「ゆ、遊海ぃぃ!?」


「がはっ────」


「父さん!!」





英雄は、エクシーズ次元を蝕む闇を祓う事ができるのか。





転生して決闘の観測者になった話 第四章 近日執筆開始予定……











「遊海さんの馬鹿!!」





「ああ…嘘だろ…?なんで────」






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シンクロ次元編 主要オリキャラ・マテリアル

 

 

 

●牛尾哲(デュエルチェイサー003)

 

遊海がシンクロ次元に転移して初めて出会ったセキュリティの特別部隊『デュエルチェイサーズ』の1人

 

遊海の転移直後、ディヴァインに手を焼いていた所を遊海に助太刀される、その様子から悪人ではない事を確信し、顔見知りの遊星を紹介した。

 

性格は5D's後期の牛尾さん、面倒見のいい善良なお巡りさん…コモンズの住人達は基本的にセキュリティを毛嫌いしているが、彼だけは例外扱いだったりする。

 

 

実は彼もDM世界からの転生者、遊海の『絆の欠片』に導かれていた…記憶を取り戻した後はセキュリティとして遊海達をサポートし、オベリスクフォースの迎撃などに参加した。

 

 

 

 

●ディヴァイン

 

トップス出身のライディングデュエリスト、フレンドシップカップでジャックに敗れて地下労働をさせられていたが、年季が明けてコモンズに放り出された。

地下労働の中でジャックへの復讐心を燃やしており、再びフレンドシップカップに出る為に無差別なデュエルを仕掛けていた。

 

そんな時、偶然近くに転移していた遊海によって諌められ、正気へと立ち返った。

 

 

その正体は…遊海と因縁あるディヴァイン──バリアン、アゴールの転生体。

 

オベリスクフォース襲来時に記憶を取り戻し、英雄の()として……窮地に陥った遊海を助ける為にオベリスクフォースへと立ち向かった。

 

 

 

 

 

●不動博士

 

シンクロ次元の天才科学者、Dホイールなどの動力に使われている永久機関『モーメント』の開発者……なのだが、権力争いに巻き込まれてしまい、8年近く収容所に収監されていた。

収容所では古株ながらも、囚人達を気に掛け…様々な手当をし続けていた事で『先生』と呼ばれ、慕われている。

 

そんなある日、収容所に遊矢達が送られてきた事で彼の運命は動き出した。

 

 

その正体は『絆の欠片』に導かれたDM世界の不動博士の転生体…転生した事には戸惑ったものの、今度こそは間違えないように『モーメント』を開発したが…世界が悪かった。

 

 

 

 

●遊星の母

 

不動博士の妻であり、遊星の母…残念ながら彼女は『転生者』ではないが…この次元でも、惹かれ合うように不動博士と恋に落ちた。

 

不動博士は結婚前に彼女に『前世』の事を伝えており、彼女はそれを受け入れた上で夫婦となった。

 

 

 

 

 

☆シンクロ次元におけるシグナー達

 

DM世界における遊星達の並行存在…次元を超えて散らばった遊海の『絆の欠片』がシンクロ次元に取り込まれた事で誕生したらしい。

(DM世界のチーム5D'sは存命)

 

遊星・ジャック・クロウ以外は繋がりが無かったが……フレンドシップカップにおける遊海とジャックのデュエルの中で赤き竜の痣が覚醒…痣を通じて『世界』における自分の記録を得た。

 

ただし、彼らが知っているのは5D's初期〜赤き竜に痣を返すまでの物語であり、知らない事もある。

 

 

 

 

●不動遊星

 

遊海がシンクロ次元で出会ったメカニックであり、ライディングデュエリスト

 

この世界のジャック・アトラスとは旧知の仲であり、『レッドデーモンズドラゴン』が『スカーライト』になったのは彼とのデュエルがあったから。

言葉数は少ないが、その心には熱い思いを秘めている。

遊海に倒されたセルゲイの代わりにフレンドシップカップへと出場した。

 

 

 

 

●ジャック・アトラス

 

シンクロ次元の『キング』、コモンズ出身のライディングデュエリスト

フレンドシップカップ三連覇という偉業を成し遂げているが…自分のライバル足り得るデュエリストが現れず、不満足状態だった。(ライバルである遊星はフレンドシップカップに参加しようとしなかったため)

 

しかし、遊矢とのエキシビションマッチの直後、その表情に我慢ならなかった遊海が乱入…受けて立ったデュエルの中で別世界の『ジャック・アトラス』の切り札『スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン』に圧倒された事で世界の広さを実感、さらにシグナーの痣を介して別世界の記録を得た事で不満足状態から脱却した。

 

 

 

 

●クロウ・ホーガン

 

コモンズ出身のD・ホイーラー、遊星とジャックは幼なじみ。

基本的には『ARC-V』本編に登場するクロウと変わらないが…『記録』を得た事で少し気持ちに余裕がある。

 

 

 

 

●十六夜アキ

 

トップス出身のデュエリスト、名家のお嬢様。

こちらの世界ではサイコデュエリストではない。

 

 

 

 

●龍亞&龍可

 

トップス出身の子供達、わんぱくな兄とおしとやかな優しい妹の仲良し兄妹。

こちらの世界では両親と仲良く暮らしている。

 

龍亞はジャックの推薦によってデュエルチェイサー227の代役として遊矢の一回戦の相手となったが…『記録』の自分にできた『覚醒』ができず、遊矢に敗北する事になった。

 

だが、オベリスクフォース襲来時に瀕死の遊海を助ける為に『覚醒』…襲撃を解決する一因となった。

 

 

 

 

 

 

●セルゲイ・ヴォルコフ

 

シンクロ次元のライディングデュエリスト…凶暴な性格であり、『壊し屋』として恐れられていたのだが…デュエルチェイサーズに捕縛されて収容所に収容…その後、手駒を欲したロジェによって機械化・改造を施され……科学的な『生きた死体』状態になっていた。

 

しかし、赤き竜の出現によってそれに対応する『闇』…冥界の王の下僕たるダークシグナーとして覚醒してしまった。

 

 

 

 

☆赤き竜

 

5D'sの物語において遊星達を導いた伝説の神、人々の善意の化身。

 

5D'sの物語を終えた後に再び五千年の眠りに就いた…と思われていたが、遊海に残した痣と分霊である『ケッツアル・コアトル』のカードを通じて現世の様子を見守っていた。

 

その中で『悪魔が生まれた日』の顛末、そしてシンクロ次元に存在する『闇』の残滓を感じ取り、シグナーである遊海への支援としてシンクロ次元に干渉…シンクロ次元の5D'sへと記憶を伝えた。

 

 

 

 

★冥界の王(冥界の邪神)

 

5D'sの物語において遊星達と対峙した邪悪なる神、人々の悪意の化身。

 

ダークシグナー事変によって『光の創造神ホルアクティ』と『セイヴァー・スター・ドラゴン』によって消滅したと思われていたが…次元の狭間に在った残滓が新世界創世の際にシンクロ次元へと取り込まれていた。

 

遊海とジャックのデュエルによる赤き竜の出現により、対を成す存在として『存在力』が強化され半死人であったセルゲイをダークシグナーとして遊海達へと襲いかかった。

また、シンクロ次元においては仇敵たる『赤き竜』が存在しなかった事で悪影響が発生…シンクロ次元の民度悪化の一因となっていた。

 

遊海達によって倒されていなければ…『ゼロ・リバース』級の大破壊が発生……シンクロ次元は死の世界と化していた。

 

 

 

 

 

 

●ブルーノ(アンチノミー)

 

チーム5D'sのメンバーにして、秘密結社『イリアステル』の滅四星の1人たるデュエルロイド。

 

『悪魔が生まれた日』、そして遊馬達の遊海救出の為の『ARC次元突入作戦』を受けてアーククレイドルから状況を見守っていた…だが、遊海の力の発露による赤き竜──大量の遊星粒子の移動を観測、さらにARC次元を覆っていた時空嵐に『穴』が開いた事を受け、仲間である遊海を救う為にラプラスと共にARC次元へと突入した。

 

 

 

 

●ラプラス=シーカー

 

秘密結社『イリアステル』滅四星の1人であり、アストラル世界の五命星のリーダー…あり得たもう1人の『英雄』

 

ブルーノからARC次元へと突入を試みる事を伝えられ、彼を守る為に共に突入を決意した。

ラプラスがシンクロ次元を訪れていなければオベリスクフォースとの連戦で重傷を負ってしまった遊海は自力による回復をする事ができず、エクシーズ次元に行けなくなるところだった。

 

 

なお、ラプラスとブルーノがARC次元を覆う「時空嵐」による影響(転移失敗・身体年齢の逆行)を受けなかったのは、トップ・クリアマインドによる超加速によって短い時間で嵐の層を突破できた事、2人が生身の肉体ではなかった事が理由である。

(同じ理由でアストラルも「時空嵐」の影響を受けていない)

 

 

 

 

●不動流星

 

 

DM世界のD・ホイーラー、エクシーズ次元・レジスタンスの1人、他の遊海救出組と同じく15歳前後まで身体年齢が逆行している。

 

エクシーズ次元への融合次元侵攻の手が緩んだ事で凌牙によってシンクロ次元にいるランサーズの応援に向かう事になった。

……のだが、まさか自分の祖父である遊星やチーム5D'sのメンバーのそっくりさんがシンクロ次元にいるとは思わず、大混乱する事になる。

 

余談だが…海亜も共にシンクロ次元に向かう予定だったが…直前にシンクロ次元にジャックがいる事を思い出した翠によってストップが掛けられてしまった。

 

 

 

 

●イェーガー

 

シンクロ次元におけるシティの傀儡の市長

行政評議会の都合のいい者として口の上手い彼が市長へと据えられていた。

 

本編中は出張でシティから離れていたが…オベリスクフォース出現とテレビに一瞬映ったボロボロの遊海の姿を見て『前世』の記憶が覚醒、全ての予定を切り上げてシティへと帰ってきた。

 

シティの混乱と圧政の責任をとって辞職しようとする行政評議会達を押し留め、最善の『為政者』としての考えを示した。

 

 

余談だが、本人も行政評議会と共に辞職する事を考えていたが…思いのほか支持者が多く、本当の意味でシティの新たな『リーダー』に選ばれそうである。



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第4章 決闘防衛次元 エクシーズ・ハートランド
混沌侵攻世界・ハートランド〜銀河の怒り〜


こんにちは!S,Kです!

ついに…エクシーズ次元編開幕!少しずつ「敵」と「真実」に近付いていくランサーズ……そして、遊海は無事に翠と再会する事ができるのか…!


それでは、最新話をどうぞ!


 

キィン─!

 

 

「っ──着いた、みたいだな…」

 

「なんだか、不思議な感覚……」

 

とある場所に光が満ち、一瞬で消える…そこに突如として現れたのは4人の少年と1人の少女──シンクロ次元から転移してきた遊矢、柚子、権現坂、沢渡、黒咲の5人だった。

 

 

 

「……黒咲、ここが…」

 

「ああ、ここがエクシーズ次元、ハートランド…俺達の、故郷だ」

 

「…ひどい…」

権現坂の問いかけに黒咲が答える…。

 

空は鉛のように重たい雲に覆われ、街は文明の証である「光」を灯す事なく、瓦礫と化した───『灰色』の世界……それが、今のエクシーズ次元、ハートランドの姿だった。

 

 

 

「……そして、あの場所が…!」

 

「そうだ…絶望に包まれたハートランドに残された、最後の希望──レジスタンスの拠点だ」

無残な街の姿に言葉を失っていた遊矢達が()()()()に気付く。

 

ハートランドの中心部…瓦礫や大岩によって補修された巨大な壁に囲まれた『遊園地跡』───そこが絶望の底に残された最後の『希望』……レジスタンスの拠点だった…!

 

 

 

「そうだ、とりあえず……こちらネオ・ニュー沢渡!白波遊海!セレナ!紫雲院素良!誰か聞こえるか?」

 

「…………ダメみたい…」

 

「おそらくはアカデミアによるジャミングか…」

レジスタンスの拠点を見つけたところで沢渡がはぐれたらしい遊海達に通信を試みる…だが、連絡はつかなかった…。

 

 

「連絡できないのは想定内だ…とにかく、俺達はレジスタンス本隊との合流を目指す、まずはそれからだ…!」

 

「ああ…!」

黒咲の言葉に遊矢達は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

キィン──ガキン!!

 

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、到ちゃ────くうぅぅ!?!?」

 

《キュ?………フォォォッ!!?(お、落ちるぅぅぅ!!?)》

転移が成功してすぐに遊海が感じたのは一瞬の浮遊感…からの床が突然抜け落ちたかのような()()()──転移早々、遊海は墜落していた…!

 

 

 

《っ…!転移時に()()に弾かれて座標から外れた模様!!現在高度1000m!!》

 

「(1000m…!?時間の余裕が…!いや、慌てるな…『閃珖竜』を召喚して───)」

転移時に何かしらのトラブルによって転移に失敗したらしい遊海…だが、持ち前の経験から慌てずに対処しようとしたが───

 

 

「「うわああああ!??」」

 

「っ…!?素良!セレナ!!」

大空に響く悲鳴…それは同じ座標に転移してしまったらしい素良とセレナの声だった!

 

 

「まずい、セレナも素良も空を飛べるモンスターは…!!『閃珖竜スターダスト』!『琰魔竜レッド・デーモン』!!」

 

《キュオオン!》

 

《グオオン!》

遊海は即座の判断で2体の決闘竜をセレナ達の救助に向かわせる!!

 

 

 

「よしっ…なんだ、あれ…?」

その時、遊海は不思議なモノを見た──灰色の街、ハートランド…その街に刻まれた巨大な()のように抉れた地面を…。

 

 

「(『古代の機械混沌巨人』の攻撃跡か…?いや、それにしては範囲が広すぎる……まるで、()()で消し飛ばされたみたいな───)」

ハートランドに刻まれた謎の破壊痕について考える遊海…だが、思考に夢中になるあまり───

 

 

《フォウ!!?》

 

《マスター!!!》

 

「────えっ?あ、やば」

 

 

 

 

ドガン!!!

 

 

 

 

 

「「遊海!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

「俺達の…ハートランドの状況を確認するぞ」

転移場所…遊園地から約数km離れたビルの残骸から脱出した遊矢達はレジスタンスの拠点である遊園地を目指して瓦礫の街を進んでいく、その中で黒咲がハートランドの状況を再確認する。

 

 

「たしか…遊園地の外にはエクシーズ次元の人達はいないんだよな?」

 

「そうだ、半年前…エクシーズ次元にやって来た『勇士』達によってアカデミアは一時的に撃退された…その隙にハートランド中に散らばっていたレジスタンスや避難民達を見つけ出し、壁を補修した遊園地に集めて保護したんだ……今から思えば白波遊海のような特殊な力で見つけていたんだろうな」

遊矢の言葉に黒咲が頷く…ハートランドに残された人々はレジスタンスによって守られているのだ。

 

 

 

「それで…遊園地の外にいるのはアカデミアのデュエリスト達か…食料調達に出ているレジスタンスのデュエリストがほとんどなのよね…?」

 

「ああ、遊園地に保護されているのは約1()()()…それだけの人々の食料や医薬品を確保するには、危険を侵さなければならない」

 

「……たった、それだけなのか…助けられた人々は……」

 

「違う、()()()()()()()()()()…勇士達がいなければ、ハートランドは既に滅んでいただろう…それほど、アカデミアの襲撃は突然の事だった」

柚子からの問いに答え、権現坂の言葉を補足した黒咲は拳を握り締める……その脳裏には襲撃時の光景が蘇っていた…。

 

 

「それより、気になってたんだけどよ?そのレジスタンスの『勇士』って奴らはそんなに強いのか?いや、あのバレットって奴をぶっ飛ばした不動流星はすごかったけどよ?」

 

「それならば凌牙も凄まじい強さだった、そのタクティクスと操るモンスター…ジャックやクロウにも引けを取らんだろう」

 

「俺も全ての勇士と戦場を共にした訳ではないが…彼らは強い、特にレジスタンスの『七皇』のリーダーである凌牙、そして…『希望』の勇士、遊馬…彼らが全ての中心だ」

度々、黒咲が口にする勇士の達の強さを訊ねる沢渡、その問いに答えた黒咲の表情がわずかに緩む…それだけ勇士達を信頼しているのだろう。

 

 

 

「でもさ、それだけ強い勇士達がわざわざ助けに来るって…遊海の『世界』で何があったんだろうな…?」

 

「遊希……遊海さんが倒れてた時の傷、本当に酷かったもんね……」

 

「…凌牙をして『最強』と言わしめる白波遊海……それほどの()()が起きた、としか分からないな…」

話の中で遊矢と柚子は全身をボロボロにした遊海との出会いを思い出した…だが、遊海を襲った()()…その原因を知る者は誰もいなかった…。

 

 

 

………

 

 

 

「………少し待ってくれ」

 

「黒咲、どうしたんだ?」

出発してから約1時間、瓦礫の山やアカデミアのデュエリスト達を気にしながら進んできた遊矢達だったが、黒咲が足を止める。 

 

 

「ハートランド病院…食料や薬が残っているかもしれない、見てきてもかまわないか?…医薬品はレジスタンスでも貴重な物なんだ」

 

「ならば…俺も見に行こう、2人で動けば万が一があっても対応できる…遊矢、沢渡、柚子…周囲の警戒を頼む!」

 

「わかったわ!」

 

「アカデミアが来たら知らせるからな!」

 

「しょうがねぇな…早めに頼むぜ」

レジスタンスの仲間や避難民の為の物資を確保する為に黒咲と権現坂は足早に廃墟と化した病院へと向かった。

 

 

 

 

「にしても、まだ遠いな…黒咲の『RR』でひとっ飛びで行けりゃ良いのに…」

 

「だから…それはダメだって黒咲や流星が言ってただろ?アカデミアの奴らは空にも攻撃できるモンスターがいるから危険だって…」

 

「それに、強襲作戦を成功させる為になるべく目立たないようにって…もう少しだから頑張ろ!」

 

「ふぅ…言ってみただけだよ!分かってるって、そんな事…」

行軍に疲れた沢渡が愚痴を漏らす…だが、遊矢と柚子に正論を言われてしまい、思わず溜め息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

キィン─!

 

 

 

 

「ん…?なんだ?」

 

「えっ…何か落ちてくる!?」

 

「伏せろ!!」

その時、厚い雲に覆われた空を引き裂くように紅と青が混じりあったような光球が現れ──

 

 

 

ドン!!

 

 

重い衝撃音と共に遊矢達の近くに落下した…!

 

 

 

 

 

「ペッ、ペッ……いきなりなんだぁ!?」

 

「行ってみよう…!」

何かの落下による砂煙が晴れる…突然の事に驚いた遊矢達だったが、その落下地点へと向かった…!

 

 

 

 

「あっ…誰かいるわ…!」

 

「人…ロボット?いや、鎧か……?」

何かが落下した爆心地…そこには人らしき者が立っていた、その体は機械の鎧に覆われていて、顔の辺りは宇宙服のような鏡面のパーツに覆われており、表情は見えなかった…。

 

 

『………なんだ?この街は…?まるで戦場のようだ…』

 

《ビビッ…酸素濃度、正常…有害物質、許容範囲内……とりあえず呼吸は大丈夫そうでアリマス》

周囲の状況を見て困惑する謎の人物、その独り言に機械音声らしき声が答える…そして───

 

 

《……ややっ!10時の方向に生命反応を確認、3人分でアリマス!》

 

『そうか…そこに隠れている者達よ!姿を見せろ!』

 

「っ…気付かれた…!!」

落下地点近くの瓦礫に身を隠していた遊矢達だったが…気付かれてしまう…!

 

 

「遊矢…!」

 

「柚子、隠れてろ…あいつが敵なら、黒咲と権現坂の場所まで走れ…!沢渡、柚子を頼む…!」

 

「っ…分かったぜ…!」

柚子達を逃がす準備を整えた遊矢は呼吸を整え、謎の人物の前に飛び出す!

 

 

 

 

 

「や、やぁ!コンニチハ!俺は───」

 

『───貴様、既に()()していたか…!』

 

「えっ…?」

謎の人物を警戒させないように明るく現れた遊矢…だが、その姿を見た瞬間、謎の人物は凄まじい殺気を纏う!!

 

 

『貴様を倒し、オレは…あの人を助ける!デュエルモード・フォトンチェンジ!!』

激昂した謎の人物は鎧から溢れるような荒ぶる青い闘志を纏う!

 

 

「お、おい!?いきなり何なんだよ!オレはお前の事なんて知らな…!?」

 

『問答無用!さぁ、デュエルディスクを構えろ!!』

 

「っ…やるしか、ないか…!アクションフィールド『クロス・オーバー』発動!!」

見慣れない三日月型のデュエルディスクを構える男…その異常な敵意を感じた遊矢はデュエルモードを起動した…!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

???LP4000

遊矢LP4000

 

 

アクションフィールド『クロス・オーバー』発動中

 

 

 

『オレのターン!』

『魔法カード「フォトン・サンクチュアリ」を発動!!攻撃力2000、光属性・雷族の「フォトン・トークン」2体を守備表示で特殊召喚!』

男の場にスパークする光の玉が現れる! DEF0 0

 

 

『そして!このモンスターはフィールドの攻撃力2000以上のモンスター2体をリリースする事で特殊召喚できる!ハァッ!!』

 

「な、なんだ!?」

男は手元に現れた赤い十字架のような槍を頭上に投擲する!

 

 

『闇に輝く銀河よ!希望の光になりて我がしもべに宿れ!!光の化身、ここに降臨!現れろ!!「銀河眼の光子竜」!!』

投擲された槍が周囲の光を吸収しながら回転、そして眩い光と共に瞳に銀河を宿し、煌めく星々のように輝く体を持つ青きドラゴンが現れる!! ATK3000

 

 

「なんだ…!?このモンスターは…!?」

 

『先攻は攻撃できん、カードを2枚伏せてターンエンドだ』

 

???LP4000

光子竜 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「(なんだ…!?このビリビリする感覚は…!?ジャックや、バレットとも違う…オレを、()()と勘違いしてるのか…!?)」

凄まじい闘気を見せる男…何故、彼が怒っているのかは遊矢には分からない……だが、遊矢は()()を解く為にデュエルするしかない…!

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

「オレはスケール2の『刻剣の魔術師』とスケール4の『EMウィム・ウィッチ』をペンデュラムスケールにセッティング!そして『刻剣の魔術師』のペンデュラム効果発動!このターンの間、『ウィムウィッチ』のスケールを2倍にする!」

 

『ペンデュラムだと…!』

 

PENDULUM!!

 

遊矢の背後に光の柱が現れ、時計の針のような剣を持つ魔術師と桃色のネコの魔法使いが浮かび上がる!

 

ウィムウィッチ Pスケール4→8

 

 

 

「これでオレはレベル3から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!!現れろ!オレのモンスター達!『EMドラミング・コング』!そして、雄々しくも美しき二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

ペンデュラムが光の軌跡を描き、胸がドラムになったゴリラと二色の眼のドラゴンを呼び出す! ATK1600 2500

 

 

『(『オッドアイズ・()()()()()()・ドラゴン』だと?あの時よりも力を増したか…!)』

 

「バトルだ!『オッドアイズ』で『銀河眼の光子竜』を攻撃!その時、『ドラミングコング』の効果発動!バトルフェイズ終了まで『オッドアイズ』の攻撃力を600アップする!」

ゴリラの応援演奏がオッドアイズに力を与える!

 

オッドアイズATK2500→3100

 

 

「いけ!螺旋のストライク・バースト!!」

 

『「銀河眼の光子竜」の効果発動!このモンスターが相手モンスターとバトルする時、バトルフェイズ終了時までバトルする相手モンスターと自身を除外する!』

 

「なんだって!?」

螺旋の炎を放つオッドアイズ…だが、それを迎え撃った光子竜と共に時空の狭間に消えてしまった!

 

 

「でも、まだ『ドラミングコング』の攻撃が残ってる!プレイヤーにダイレクトアタック!」

 

『甘い!速攻魔法「フォトン・リード」発動!手札からレベル4以下の光属性モンスターを特殊召喚する!現れろ!「フォトン・オービタル」!』

 

《おお!我が分身よ!()()()()の力になるでアリマス!!》

男のフィールドにひょうきんな顔のロボットが現れ、守りを固める! DEF2000

 

 

「くっ…!オレは、これでターンエンドだ!」

 

『この瞬間、除外されていた2体のモンスターはフィールドに戻ってくる』

 

オッドアイズ ATK2500

 

光子竜 ATK3000

 

 

遊矢LP4000

オッドアイズ ドラミングコング (P 刻剣 ウィムウィッチ) 手札2

 

 

 

 

──カイト…?彼はカイトなのか…?──

 

「(ユート?アイツを知ってるのか?)」

その時、遊矢と共にいるユートの魂が目の前の人物に反応する…どうやら、知り合いのようだ。

 

 

──彼はレジスタンスの戦士の1人、カイト…『光波(サイファー)』というデッキと『銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)』というドラゴンがエースモンスターのハートランドにおいてトップクラスのデュエリストだ……だが、様子が違う…!あんな鎧の姿は見た事がないし、エースモンスターはエクシーズモンスターのはずだ……どういう事だ…?──

 

「そんなの、オレに聞かれても…!」

ユートの言葉に戸惑う遊矢…だが、男──カイトは手を緩めない…!

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『「フォトン・オービタル」の効果発動!このカードを「光子竜」の装備カードにする事で攻撃力を500アップし、バトルによる破壊を無効にする!』

オービタルがグライダーモードに変形、光子竜の背中に装着される事でエネルギーを供給する!

 

光子竜ATK3000→3500

 

 

『バトルだ!「光子竜」で「オッドアイズペンデュラムドラゴン」を攻撃!!破滅のフォトン・ストリィィム!!』

 

「くっ…!?アクションマジック『奇跡』!『オッドアイズ』の破壊を無効にし、バトルダメージは半分になる!うわあああっ!?」

銀河の息吹がオッドアイズに直撃する…だが、そのダメージはアクションマジックによって軽減される!

 

遊矢LP4000→3500

 

 

 

『凌いだか…オレは「フォトンオービタル」の2つ目の効果を発動!このカードを墓地に送り、デッキから「銀河暴竜」を手札に加える』

光子竜から分離したオービタルが新たなカードを導く。

 

 

光子竜ATK3500→3000

 

 

『オレはカードを1枚伏せ、ターンエンドだ』

 

カイト?LP4000

光子竜 伏せ2 手札1

 

 

 

 

『アクションマジック…オービタル7、解析しろ』

 

《カシコマリ!………どうやら、奴の発動しているフィールド魔法『クロス・オーバー』の効果によって「アクション・カード」という魔法・罠カードがリアルソリッドビジョンによってばら撒かれ、それを自分の手札に加えて効果を発動できるようでアリマス!》

 

『ライディングデュエルにおける「スピード・ワールド2」と「スピード・スペル」に似た関係という事か、厄介な…』

遊矢のアクションマジックに興味を示したカイト(?)は状況を解析、アクションデュエルのルールを把握する…。

 

 

 

──どうする?遊矢、先程の剣幕…どうやらカイトはオレ達を……お前を敵と判断しているが…──

 

「とにかく、相手がデュエリストなら…デュエルで語り合うしかない…!ジャックと分かり合う事ができたみたいに…!」

 

 

 

「オレのターン…ドロー!!」

 

『この瞬間、罠カード発動!「バトルマニア」!このカードは相手のスタンバイフェイズに発動する事ができる罠カード…その効果により、お前のモンスターは表示形式を変更できず、攻撃可能なモンスターは攻撃しなければならない!』

 

「攻撃強制カードか…だけど、この手札なら…!オレはペンデュラムゾーンの『ウィムウィッチ』のペンデュラム効果発動!このカードを自分フィールドに特殊召喚!」

桃色のネコ魔法使いがフィールドに移動する! ATK800

 

 

「そして『ウィムウィッチ』はペンデュラムモンスターをアドバンス召喚する時、2体分のリリース素材にできる!レベル7の『降竜の魔術師』をアドバンス召喚!!」

竜の意匠を持つ魔術師が現れる! ATK2400

 

 

「『降竜の魔術師』の効果発動!1ターンに1度、自身の種族を魔法使い族からドラゴン族に変更!!いくぞ…!オレはドラゴン族になったレベル7の『降竜の魔術師』と『オッドアイズペンデュラムドラゴン』の2体でオーバーレイ!!」

二色の眼のドラゴンと竜の魔術師が銀河に飛び込み、大爆発を起こす!

 

 

「二色の眼の龍よ!その黒き逆鱗を震わせ、歯向かう敵を殲滅せよ!エクシーズ召喚!!ランク7!怒りの眼輝けし竜!『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』!!」

遊矢の切り札の1体、二色の眼の反逆竜が咆哮する! ATK3000

 

 

《か、カイト様…!》

 

『この()の気配…!遊馬と凌牙は何をしていた…!!』

 

「さらにオレはアクションマジック『透明』を発動!その効果によってこのターン『オッドアイズリベリオン』は相手の効果の対象にならず、効果も受けない!!バトルだ!『オッドアイズリベリオン』で『銀河眼の光子竜』を攻撃!」

 

『「光子竜」と「オッドアイズリベリオン」の攻撃力は互角、相討ち狙いか!』

 

「いいや…!エクシーズ素材になった『降竜の魔術師』の効果発動!このカードを素材に融合・シンクロ・エクシーズ召喚されたモンスターがドラゴン族モンスターとバトルする時!攻撃力を2倍になる!」

反逆の紫電を纏った覇王黒竜が咆哮する…だが、カイトは落ち着いていた…!

 

 

『貴様が力を取り戻しきる前に…ここでお前を封じる!手札の「銀河暴竜(ギャラクシー・ティラノ)」の効果発動!自分の「ギャラクシー」モンスターに攻撃宣言がされた時、このモンスターを守備表示で特殊召喚する!』

白い装甲を纏うティラノサウルスが現れる! DEF0

 

 

『そして、このモンスターとフィールドのモンスター1体でエクシーズ召喚を行う!!オレはレベル8の「銀河暴竜」と「光子竜」でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!』

 

「なっ…オレのターンにエクシーズ召喚を!?」

光子竜が光の竜へと変わり、銀河へと飛び込む…そしてカイトは手元かな現れた青き聖剣を地面へと突き立てる!!

 

 

現れろ!銀河究極竜!「No.62」!!

 

62

 

宇宙に彷徨う光と闇、その狭間に眠りし哀しきドラゴン達よ…その力を集わせ、真実の扉を開け!「銀河眼の光子竜皇」!!

銀河の大爆発が地面を揺るがし、天を割る…そして最善の結末を導いた『光のドラゴン』──究極のギャラクシーアイズが咆哮する!! ATK4000

 

 

「なん、だ…!?この威圧感…!!」

 

──な、ナンバーズだと…!?カイトがナンバーズを使えるはずが…!?──

フィールドを支配する圧倒的強者の威圧…その強さに遊矢は思わず後ずさる…!

 

 

『「光子竜皇」の1つ目の効果!フィールドの全てのモンスターにレベルと同じ数値のランクを与える!』

 

「モンスターにランクを…!?」

 

ドラミングコング☆5→★5

 

 

『「バトルマニア」の効果は継続している!さぁ、来い!』

 

「くっ…!!『オッドアイズリベリオン』で『光子竜皇』を攻撃!『降竜の魔術師』の効果で攻撃力は2倍になる!反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ!!」

大地を削りながら反逆の牙が突撃する!

 

 

覇王黒竜 ATK3000→6000

 

 

『「光子竜皇」の効果発動!このモンスターがバトルする時、その攻撃力はフィールドのランクの合計✕200ポイントアップする!フィールドのランクの合計は20!よって…攻撃力は───』

 

「攻撃力、8000!?」

 

光子竜皇 ATK4000→8000

 

 

『さぁ…懺悔の用意はできているか!!放て!エタニティ・フォトン・ストリーム!!

 

「ぐっ!?があああああっ!?!?」

それは希望を束ねし一撃、青き閃光が覇王黒竜を消し飛ばす!!

 

 

遊矢LP3500→1500

 

 

「がっ…ぐ、うっ…!?(なんだ、今の攻撃…!?オベリスクフォースよりも…!?)」

攻撃の余波で瓦礫に叩きつけられる遊矢…その痛みは今までに経験した事がない激痛だった…。

 

 

 

『どうした?立て()()()()…!お前の攻撃はまだ残っているぞ…次の一撃で幕引きだ…!』

 

「ざー、く…?」

遊矢の事を()()と誤解し、苛烈な攻撃を仕掛けるカイト…遊矢には、その名前に聞き覚えがなかった…。

 

 

 

「やめろ!カイト!!そいつは、俺の仲間だ!!」

 

 

『っ…?』

 

「くろ、さき…」

その時、緊迫した空気を切り裂く叫びが響く…そこにいたのは柚子から助けを求められた黒咲、そして見慣れぬ少年少女の二人組だった。

 

 

「カイト…!何故、そんなデュエルをする!お前は遊馬とのデュエルで………」

 

『………お前達は()()?何故、オレの名前を知っている?まさか……ここは()()()()()()()か?』

 

「はっ…?」

カイト(?)は黒咲に問いかける、彼は仲間であるはずの黒咲達の事を知らない……それが意味するのは──

 

 

 

「遊矢!大丈夫!?」

 

「柚子…!来るな、まだ…終わってない…!!」

 

『あの少女は…!?(しまった…!余計な事をしてしまったか…!?)』

さらに、柚子が遊矢へと駆け寄る…その時、カイトは自分が大きな()()()をしていた事に気が付いた…。

 

 

 

《えーと…カイト様、相手の男を詳しくサーチした結果、相手の男には少なくとも3()()の魂が宿っていたり………》

 

『もういい、オービタル……状況は理解した……「次元適応鎧(アダプト・スーツ)」を解除しろ』

 

《了解でアリマス…オービタル、ロボットモード!》

 

「えっ…!?鎧が、ロボットになった!?」

オービタルからの報告を聞いたカイトはデュエルディスクを下ろし、武装を解除…その傍らにひょうきんな顔のロボットが現れる。

そして、鎧の中から現れたのは…黒咲達が知る『カイト』よりも一回り背が高く、白いコートに身を包んだ()()だった。

 

 

 

『悪かったな、遊矢とやら……オレは()()カイト、九十九遊馬と神代……いや、白波凌牙の仲間だ』

 

「凌牙の…!?」

申し訳なさそうな表情のカイトは遊矢へと自分の正体を明かした…。

 

 

 

Duel invalid………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(今の気配は…!)

 

「ん…?どうしたんだ?アストラル」

レジスタンスの拠点、遊園地跡…そこで半透明の青い肌の少年──アストラルが何かを感じ取っていた。 

 

 

(このナンバーズの気配…遊馬、どうやらカイトがこの次元にやって来たらしい!)

 

「カイトが!?そっか…!きっと遊海の復活が向こうの世界まで届いたんだ…!流石カイトだぜ!」

 

(だが、問題は…誰かと戦ってる可能性が高いという事だ…!)

 

「っ…!やべぇ!カイトの奴、アカデミアのカード化装置の事とか知らないんじゃ…!早く迎えに行かねぇと!!」

 

(…焦ってはダメだ、今のきみは遊園地防衛の要だ)

 

「でも…!」

 

『話は聞いてたぜ、遊馬!オレが行ってくる!』

 

「十代さん!」

カイトの到着に喜ぶ遊馬だったが、アストラルの言葉に顔が青褪める…だが、その不安を蹴散らす男が遊馬達に声を掛けた。

 

 

 

(十代、場所はこの街の中心…ハートランド病院の辺りだ、気をつけてくれ)

 

『ハートランド病院か…少し遠いな……確か、アレンとサヤカがその辺りに行くって言ってたっけ…?』

 

《アカデミアの馬鹿達の目はここに向いてるとはいえ、危なそうだ……早く迎えに行ったらいいんじゃないか?》

 

『そうだな…!遊馬、アストラル、行ってくる!』

 

「十代さん!カイト達を頼んだぜ!!」

 

『おう!』

そして準備を整えた十代は防壁の外へと飛び出す、カイトと合流する為に……そして、もう1つの()()を果たす為に…。

 

 

 

 

 

『(今日こそは、会えればいいんだけどな………)』

 

 



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父の足跡〜因縁〜

こんにちは!S,Kです!

エクシーズ次元を訪れて早々、DM世界の勇士・カイトと戦う事になってしまった遊矢…。

しかし、彼にはさらなる因縁が待ち受けていた…。


それでは、最新話をどうぞ!


「「「人違い!?」」」

 

『お前の顔をこちらの「世界」の事件の関係者と()()()()()……いきなりデュエルを仕掛けて悪かった』

 

「人違いで襲われるって…遊矢、お前何度目だよ……」

 

「3回目、くらいかなぁ…ユートにユーゴに融合次元のユーリ……顔が似てるって本当に困るよな…」

 

 

『(ズァークはARC次元と同じく4()()に分裂、それぞれにズァークの記憶はなく…別々の存在として各次元にいる、ズァークを分離した赤馬レイも同じ状況……お人好しの遊馬なら各個封印する、などと言う選択はできない訳だ……)』

 

エクシーズ次元に転移して早々、謎の人物にデュエルを仕掛けられた遊矢…その正体はエクシーズ次元で『勇士』として知られる凌牙達の仲間──天城カイトだった。

 

そしてカイトは遊矢達の僅かな会話、翠から断片的に聞かされていた『ARC-V』についての情報から現在の状況を予測した。

 

 

 

「とりあえず、1度この場から離れるぞ…近くに前に使っていたレジスタンスの拠点がある、そこで休息しよう…先程のデュエルは目立ち過ぎる」

 

「うむ…遊矢、立てるか?」

 

「ああ、大丈夫…イタタ…」

 

《…カイト様、どうするでアリマス?》

 

「彼らが味方なのならば、オレ達もついて行こう…オービタル、周囲の警戒を怠るな」

 

《カシコマリ!》

遊矢達は黒咲の提案で場所を移す事になった…。

 

 

 

………

 

 

 

「ここは…?」

 

「ハートランド・デュエルスクール・スペード校、俺とユートの母校…そして、俺達が初めて勇士達と出会った場所でもある」

ハートランド病院から歩いて数分…辿り着いたのは黒咲とユートの母校だった、周囲には壊れかけのバリケードがそのまま残されていた。

 

 

 

「じゃあ、改めて自己紹介だな!オレは神月アレン!クローバー校のレジスタンスだ!」

 

「私は笹山サヤカ…アレンと同じクローバー校出身です」

 

「クローバー?」

 

「ハートランドにはハート・スペード・ダイヤ・クラブ…4つのデュエルスクールがあった…勇士達が来るまで、戦える者達はそれぞれのデュエルスクールを『砦』としてアカデミアと戦っていたんだ」

とある教室で遊矢達ランサーズ、レジスタンスの2人組、アレンとサヤカ、そしてカイトとオービタルは休息がてらに自己紹介と情報共有をしていた…。

 

 

『オレは天城カイト、この世界にいるらしいレジスタンスの「カイト」とは別人、遊馬や凌牙と同じ「世界」からやって来た』

 

《同じく!カイト様の相棒のオービタル7でアリマス!》

 

「『世界』て事は…シンクロ次元で会ったラプラスやブルーノって人を知ってるか?」

 

『そうか…あの2人とは既に出会っていたのか、あの人達はどうした?』

 

「オレ達の仲間、ランサーズの赤馬零児とシンクロ次元に残って融合次元、アカデミアの侵攻に備えてる…オレ達は別行動なんだ」

 

『そういう事か…あの人らしい選択だ』

自己紹介をしたカイトとオービタルは沢渡の質問に答える…先に出発したラプラス達の状況を知って安堵しているように見えた。

 

 

「じゃあ、次はオレ達だな!オレは沢渡シンゴ!スタンダード次元防衛隊、ランサーズ最強の男だ!」

 

「初対面の者に嘘を教えるな!俺は権現坂昇、そして隣にいるのが柊柚子だ」

 

「よ、よろしくね!」

 

「オレは()遊矢!よろしく!」

 

「………榊?」

 

「えっ…?」

そして自分達の自己紹介をするランサーズ達…だがその時、静かに話を聞いていたサヤカ達が遊矢の名前に反応した…。

 

 

「もしかして、()()()という人と関係がある…?」

 

「!!榊遊勝を知ってるのか!?オレの()()()を!!」

 

「嘘っ…!?なんで…!」

 

「まさか、遊矢の親父殿を知っている者がエクシーズ次元にいるとは…!?」

 

「じゃあ…行方不明だった榊遊勝はどうやってかエクシーズ次元に来てたってのか!?」

サヤカの思わぬ言葉に遊矢が身を乗り出す、三年前に行方知れずとなっていた遊勝は…エクシーズ次元を訪れていたのだ…!

 

 

「榊遊勝は…私達のデュエルの()()だったの…」

 

「せ、先生…!?」

それは三年前の事、ハートランドに突如として現れたエンターテイナー・榊遊勝は大道芸やショーのような見事なデュエルでハートランドで話題の人となった…そしてデュエルの基本や技術、『どんな時でも笑顔を忘れない』という心構えをハートランドの人々に伝えた…。

 

 

まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのように…。

 

 

「そうか…!父さんは臆病者なんかじゃなかったんだ!アカデミアと戦う為に1人で戦って…!」

 

 

「いいや…!榊遊勝は()()()さ…!オレ達の事を置いて逃げたんだからな…!」

 

 

「えっ…!?」

サヤカの話を聞いた遊矢の表情が明るくなる…だが、それに水を差したのはアレンだった。

 

アカデミアの侵攻開始直後、遊勝はハートランドから姿を消してしまったのだいう……ハートランドでも、遊勝は「臆病者」のレッテルを貼られてしまっていたのだ…。

 

 

 

「そんな…!父さんが、戦いを前に逃げたなんて、ありえない!!」

 

「そうよ…!おじさんは困っている人を放っておけない人だった…きっと訳があるはずよ!」

 

『落ち着け、お前達…オレは榊遊勝という男の事は知らん……だが、姿を消したにしても()()があるはずだ』

 

「カイトさん…」

遊勝が逃げたという話を聞いて動揺する遊矢と柚子…だが、それを宥めたのはカイトだった。

……彼も知っているからだ、やむにやまれぬ理由で家族のもとに帰れなくなってしまった父親達の事を…。

 

 

『本人がいない所でオレ達が何を話しても仕方がない、まずは拠点にいる遊馬達と合流し、この状況…侵略を受けるエクシーズ次元の状況を解決してからだ』

 

「そうだな…先を急ごう、昼には拠点に到着したい…それに白波遊海やセレナ達とも合流しなければ…」

 

『───待て、白波さんもこの次元に来ているのか?』

 

「ああ、ランサーズ『最強のデュエリスト』として俺達のサポートをしてくれている……転移場所がランダム、というのも困った話だ」

 

「そうか…ならば、オレが来た意味もある」

年長者として話を締めたカイトが立ち上がり、黒咲もそれに続く…そして思わぬ事で遊海の無事を確認できたカイトは安堵したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

「(なぁ、ユート…お前は知ってたのか?父さん…榊遊勝がエクシーズ次元に来ていたって……『デュエルで笑顔を』……あの言葉は…)」

 

──いいや、オレは榊遊勝とは会った事はない……あの言葉は瑠璃が…アカデミアに連れ去られる前に言っていた言葉なんだ──

 

「(黒咲の妹が…)」

 

──今思えば…知り合いだったサヤカを通じて榊遊勝の教えに触れていたんだろう、彼はクローバー校にいたらしいからな…──

 

「(それで、父さんの言葉をユートが…)」

周囲に警戒しながらレジスタンスの拠点を目指す遊矢達…その中で遊矢はユートと遊勝について話していた…。

 

 

 

「(そういえば…なんで、いきなりユートと話せるようになったんだろうな…?オレ達がエクシーズ次元に来たからか?)」

 

──いや、オレはあの時…シティ防衛戦でアカデミアのバレットという男と戦った時、自分の心の底から湧き上がる声を聞いた……そこからオレの意識ははっきりとしだしたんだ──

 

「(オレも覚えてる、あの嫌な感覚を……自分の体も、心も何かに乗っ取られる、みたいな……)」

そして、ユートと遊矢はお互いの転換点となった出来事、シンクロ次元でのアカデミアとの戦いを思い出した…「オッドアイズ」「ダークリベリオン」「クリアウイング」「スターヴヴェノム」…4体のドラゴンの共鳴を…。

 

 

──あの時、オレは4体のドラゴン達が共鳴し、呼び合っているように感じた……もしかしたら、オレ達が話せるようになったのも、それが関係しているかもしれないな…──

 

「ドラゴンの共鳴、か…」

シンクロ次元で謎の共鳴現象を起こしたドラゴン達…その思いは使い手である遊矢達にも分からなかった…。

 

 

 

《カイト様、あの様子は…》

 

「遊馬とアストラルと同じだ…下手に刺激するな、何が起きるか分からん」

 

《カシコマリ》

カイトは前例の存在から遊矢の状況を察する…今のカイトができるのは『悪魔』が復活しない事を祈る事だけだった。

 

 

 

…………

 

 

 

「あっ…ちょっと待ってください!ショッピングモール…食料を探しに行ってもいいですか…?」

 

「薬とかは隼のおかげで集められたけど、やっぱり食べ物がないとな…」

少しずつ遊園地の防壁が大きく見えるようになってきた頃、廃墟のショッピングモールを見たサヤカが声を上げる。

 

 

「ならば…3手に別れよう、黒咲・サヤカ・アレンと俺・柚子・遊矢、そして見張りに沢渡と………」

 

「いや、権現坂!見張りはオレがやるよ!ちょっと、考え事もしたいし…」

 

「そうか…ならば、カイト殿、遊矢と一緒に見張りを頼んでもいいだろうか?」

 

『ああ、構わない……エクシーズ次元がこんな状況だと知っていれば、支援物資を持ってきたのだが…仕方ないな』

そして遊矢達は分かれて食料を探す事になった。

 

 

 

 

「…………」

 

『悩んでいるのか?自分の父の事を』

 

「カイト…」

沈んだ表情の遊矢にカイトが話しかける…悩んでいる遊矢へと道を示す為に…。

 

 

『先程も言ったが、オレは遊勝という男の事は知らない…だが、その男が父親だと言うのなら、彼が願ったのは()()()()()のはずだ…彼はお前達の為に戦い、その結果としてこの次元に来る事になった…ならば、姿を消したのにも理由がある……お前が父の強さを信じるならば、その思いを決して捨てるな』

 

「カイト……カイトも、父親なのか?」

 

『いや…だが、オレは尊敬すべき4()()の父の背中を知っている』

遊矢に信じる事の大切さを伝えるカイト、その脳裏には戦い続けた父親達の姿が蘇っていた。

 

 

『子供の命を救う為、全ての罪を背負い…全てを捨てて戦った父がいた……友に裏切られ、それでも家族の為に戦った父がいた……世界を隔てようと、息子の為に道を示し…戦いを見守り続けた父がいた………そして、命を失おうとも…闇に囚われた息子を助ける為に戦い、世界をも救った父がいた……子供を救う為なら、親は世界すらひっくり返す……いつかの時に、オレが尊敬する男が言っていた言葉だ…まだ、落胆するには早すぎるぞ?』

 

「世界にはいろんな父親がいるんだな……父さん…」

カイトの話を聞いた遊矢はデッキケースから遊勝のデュエルの象徴『スマイル・ワールド』を取り出す、洋子から伝えられた父の思いを思い出しながら…。

 

 

 

《カイト様、生命反応が近付いてくるでアリマス》

 

『むっ…あれか』

その時、オービタルが何者かの接近を確認する…カイト達の視線の先では灰色のローブで体を隠した何者か歩いてくる所だった…。

 

 

 

『止まれ、何者だ』

 

【……人を探している】

 

「人を…?探してるなら、レジスタンスの拠点に行ったらいいんじゃないか?」

 

【そこにもいないから…こうして街の中を探しているんだ】

遊矢達から少し離れた所で止まったローブの男…おそらく青年は、人を探し歩いていると伝える。

 

 

「誰を探しているんだ…?」

 

()()()を…!】

 

「父さんを!?」

 

【キミは……榊遊勝の息子か…!!ならば、ちょうどいい!】

 

「うわっ…!?」

 

『っ…!デュエルアンカーか!!』

遊勝の名前を聞いて驚く遊矢、そして遊矢が遊勝の息子だと知ったローブの男はデュエルディスクから飛ばした紫色のデュエルアンカーを遊矢の腕に巻き付けた!!

 

 

【榊遊勝を誘い出す為のエサになってもらう!!】

 

「そのデュエルディスク…!アカデミアか!!」

ローブの男はデュエルディスクを展開する…それはアカデミア兵達が使う剣型だった!

 

 

『オービタル!』

 

《信号弾、発射でアリマス!!》

そしてアカデミアの襲来を知ったカイトは信号弾をショッピングモールに向けて打ち上げ、敵襲を知らせる!

 

 

「っ…お前は父さんと戦ったのか…!?父さんと何があったんだ!!」

 

【問答無用!!デュエルだ!!】

遊矢と謎の人物…遊勝を知る2人のデュエルが始まった…!

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対???

 

 

 

突如として始まった遊矢とローブの青年のデュエル、先攻となった遊矢は『EMオールカバー・ヒッポ』『EMディスカバー・ヒッポ』の2体で守りを固める……だが、遊矢が『EM』使いと知ったローブの男はさらに怒気を強める。

そして現れたのは『D-HERO』という聞き慣れないテーマのモンスター『D-HEROドリルガイ』2体を召喚、貫通効果で遊矢に大ダメージを与える…!

 

 

 

──っ…遊矢、大丈夫か!?ヤツは、本気でお前を倒しにきているぞ…!──

 

「ぐうっ…大丈夫、だ…!あいつが父さんの事知っているのなら、オレは…あいつと語り合わなきゃ、ならない…!」

吹き飛ばされた遊矢を心配するユート…遊矢は父の手掛かりを知る謎の男とデュエルで語り合う為に立ち上がる…!

 

 

『「D-HERO」…?たしか、遊城さんのライバルの1人に同じテーマを使った決闘者がいたはず…まさか、彼は…!』

そしてカイトはある可能性に気付く、エクシーズ次元に自分とそっくりな人物がいるのならば…他の次元でも同じ事が起きている可能性があると。

 

 

 

そして返す遊矢のターン、遊矢が引き当てたのは『スマイル・ワールド』…さらに伏せていた罠カード『スマイル・ポーション』とのコンボで手札を増やしたが、ローブの男は何故か『スマイルワールド』を見て激昂…罠カードの融合『D-フュージョン』によってエースカードを呼び出す…!

 

 

【運命の岩盤を穿つ2人の英雄よ…今1つとなりて、暗黒の未来へ君臨せよ!融合召喚!!カモン!『D-HEROディストピアガイ』!!】

融合の渦から現れたのは紺色の体に『D』と刻まれた仮面を被る暗黒の戦士…アカデミアの理想を守る為の闇の英雄が現れる…!

 

 

【『ディストピアガイ』のエフェクト発動!融合素材となった『ドリルガイ』の攻撃力分のダメージを与える!スクイーズ・パーム!】

 

「うわあああ!?」

 

『遊矢!!』

そして暗黒の戦士はバーンダメージで遊矢を追撃…遊矢の残りライフは僅か800となってしまう…!

 

 

『これ以上はマズイか…!遊矢、手を貸すぞ!』

 

「待って、くれ…!あいつには、聞かなきゃならない事が、あるんだ…!」

遊矢の状況を見て助けに入ろうとするカイト…だが、遊矢はそれを拒否する…父の手掛かりを少しでも得る為に…!

 

 

──遊矢、奴はアカデミアの人間だ…それもセレナや紫雲院素良とは違う……奴は榊遊勝を()()()()()!それは、榊遊勝でも()()()()()()()()()()()という事だ!──

 

「あっ…」

その態度を見たユートが遊矢に事実を突きつける…人々を笑顔にするという榊遊勝のデュエル……だが、その彼でもアカデミアの戦士たる青年を変える事はできなかったのだと…。

 

 

 

──オレはハートランドに戻ってきて、この惨状を見て改めて思った…!『デュエルで笑顔を』…それは確かに理想だ……だが!その理想を実現できるのは!アカデミアを倒した後だ!!──

 

「ユートっ…ぐう!?」

 

ドクン!!

 

『遊矢の雰囲気が変わった…!?』

アカデミアの怒りを吐露したユート…その強い怒りが無理矢理に遊矢の肉体の主導権を奪い取った…!

 

 

「漆黒の闇より…愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

そしてペンデュラム召喚を駆使し…ユートはエースモンスターたる反逆の牙を喚び出す!!

 

 

「受けてみろ!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 

【だが、『D-フュージョン』のエフェクトによって『ディストピアガイ』は破壊されない!!】

 

「だが、ダメージは受けてもらう!!」

 

【ぐううっ!!?】

反逆の牙のトリーズン・ディスチャージによって弱体化した暗黒の戦士はその牙に貫かれるが、破壊はできず…青年のライフも100残ってしまう…!

 

 

【榊遊勝の息子がエクシーズ召喚を使うとは意外だったよ…だが、関係ない…!キミが榊遊勝の息子ならば、打ち倒すのみ!!】

 

残りライフが僅かになっても青年は攻撃の手を緩めない、暗黒の戦士による攻撃…さらには『EMチェーン・ジラフ』のペンデュラム効果で蘇生した反逆の牙を弱体化と連撃攻撃を可能にする罠カード『D−デビル・ダンス』の効果で追い詰め、さらにはバーンダメージを与える『D-デス・マッチ』によるトドメを狙うが…遊矢は効果ダメージを0にするアクションカード『加速』によって難を逃れる…しかし、その残りライフは僅か100となってしまった…!

 

 

 

 

──許せない…!!奴は今までも、ハートランドの人々やレジスタンス達をこうして倒してきたに違いない…!!オレは…アカデミアを許さない!!──

 

「よせ…!やめろ、ユート!!」

そしてアカデミアの強敵を前にユートの怒りが爆発する!

 

 

 

「オレは魔法カード『RUM─幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチ』を発動!このカードと『ダークリベリオンエクシーズドラゴン』を素材としてランクが1つ高いモンスターをエクシーズ召喚する!!」

 

【なんだと!?】

ユートの憤怒の声と共に…反逆の牙が深い闇に包まれる…!!

 

 

煉獄の底より…未だ鎮まらぬ魂に捧げる反逆の歌…!永久に響かせ現われよ!!ランクアップ・エクシーズチェンジ!いでよ!ランク5!『ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン』!!

闇の中から怒りと哀しみの込められた咆哮が響く、現れたのは反逆の牙の進化体…死者の怒りを背負う『鎮魂の牙』──『ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン』!

 

 

 

「『ダークレクイエム』の効果発動!1ターンに1度、ORUを1つ使い!レベル5以上のモンスターの攻撃力を0にして、下がった数値分自身の攻撃力をアップする!レクイエム・サルべージョン!」

 

【なっ…!!】

鎮魂の牙の翼の宝玉から飛び出した『闇』が暗黒の戦士を縛り上げ、その力を奪い去る!

 

 

【だが、無駄だ!『ディストピアガイ』のエフェクト発動!自身の攻撃力が変動した事でそのドラゴンを破壊する!】

 

「『ダークレクイエム』のもう1つ効果発動!ORUを1つ使い、墓地の『ダークリベリオン』を特殊召喚し、相手モンスターの発動した効果を無効にする!」

 

【なんだと!?】

暗黒の戦士の効果を反逆の牙が弾き飛ばす!

 

 

「バトルだ!『ダークレクイエム』で『ディストピアガイ』を攻撃!!」

遊矢の攻撃宣言と共に鎮魂の牙が飛翔…その翼にステンドガラスのような輝く光が浮かび上がる!

 

鎮魂のディザスター・ディスオベイ!!

それは死者の怒りを乗せた厄災の一撃…凄まじい速度で鎮魂の牙が暗黒の戦士に肉薄する!

 

 

【くっ…チッ…!?防ぎきれない!!】

その瞬間、青年は遊矢に倣ってアクションカードを手にする…だが、拾ったのはアクションマジック『奇跡』…攻撃を防ぐ事はできない!

 

【仕方あるまい!!手札から『D-HEROダイナマイトガイ』をセメタリーに送り、エフェクト発動!相手より自分のライフが下回っている時!そのバトルダメージを無効にして、お互いに1000ダメージを受ける!】

 

「『なにっ!?』」

エドの最後の手段…それは、デュエルを相討ちに持ち込む事…そして────

 

 

 

ドガン!!!

 

 

「ぐあああっ!?」

 

【ぐううっ!!】

 

『うおおおっ!?』

 

《カイト様─!!》

 

フィールドは凄まじい爆発に襲われる、その爆発は遊矢と青年、そしてカイト達をも吹き飛ばした!

 

 

 

 

Duel Draw………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がはっ!?……───」

 

『遊矢!ぐっ…!』

 

《カイト様!大丈夫でアリマスか!?》

カイトは咄嗟に受け身を取った事で最小限のダメージで済んだ、だが…爆心地に近かった遊矢は激しく吹き飛ばされ、廃墟の壁に激突、衝撃で崩れた瓦礫の下敷きになってしまった…。

 

 

 

()()()()殿()!ご無事ですか!?』

 

【ぐっ…!大事はない…!!】

 

『っ…新手か…!!』

そして、ダメージで膝をついた青年にジープから降りてきた青い制服のアカデミア兵達が駆け寄ってくる…青年の正体、それはエクシーズ次元の侵略を任された『総司令官』…銀髪に豪華な装飾が施されたマントを背負う青年、エド・フェニックスだったのだ。

 

 

『貴様ら…!よくも総司令官殿を!!』

 

『くっ…!(遊矢には先程のオレとの戦いのダメージが残ってしまっているはず…早く助けねば…!)』

エドを庇いながらデュエルディスクを構えるアカデミア兵達…一方、カイトは傷ついた遊矢を庇いながら戦わなくてはならない…!

 

 

「見つけたぞ!エド──!!!」

 

 

【キサマ…!】

その時、カイトとエドの間に何者かが乱入する…その男は赤いデュエルアカデミアの制服を着ていた、だが…アカデミアではない。

そしてカイトはその背中を知っている…!

 

 

『ゆ、遊城さん…!?』

 

「おっ…カイト!悪かったな、迎えが遅くなって…どっかですれ違ったみたいだ!」

カイトへと明るく声を掛ける少年…それは流浪のHERO使い、遊城十代だった!

 

 

「ようやく会えたな、エド…!思い出してくれ!お前が本当にやりたいデュエルは、こんな戦いの道具なんかじゃないはずだ!」

 

【…一時撤退だ!】

 

『『『了解!』』』

 

「エド!!」

エドへと必死に呼びかける十代…だが、苦々しい表情を見せたエドは煙玉と共に姿を消してしまった…。

 

 

 

 

 

「エド……」

 

『遊城さん、やはり…あの青年は…貴方のライバルの1人、エド・フェニックス…その並行存在だったんですね』

 

「ああ…半年前、偶然に出会ってさ……でも、今のあいつはオレの知ってるエドじゃねぇ…」

 

「遊城さん…」

エドに逃げられてしまい、拳を握り締める十代…その瞳は金色だった…。

 

 

 

《それよりも…遊城様、なんだか、若返ってるでアリマス…!?》

 

「おっ、オービタルか…いや〜…次元に乗り込む時に嵐に巻き込まれてさ…遊馬や凌牙…み〜んな子供の頃の姿になっちまったんだ…オレも少し力が落ちてるしさ…」

 

《まぁ、落ちてると言っても…そこらのアカデミア兵は敵にならないけどね…というより、なんでお前は縮んでないのさ?》

 

『オービタルにバリアライトに加えてアストライトを搭載して、バリアを展開しながら次元移動装置で時空嵐の薄い所を突っ切って来たんだ…ラプラスさんやブルーノさんも影響はなかったと黒咲隼達に聞いた』

 

「えっ!?あの人達も来てるのか!?」

 

『……?流星が先行してシンクロ次元からこちらに戻っている、と聞いたが…』

 

「まだ拠点には戻ってないな…フレアさんが対転移結界を張ってたから、弾かれたかな…?」

オービタルの疑問から情報交換をする十代、ユベルとカイト達…そこへ──

 

 

 

「カイトさん!遊矢!大丈──アカデミア!?」

 

「待て、彼は違う…勇士の1人、遊城十代だ」

 

「び、びっくりした…!」

 

「ん…おお!お前達がスタンダード次元のランサーズだな?凌牙から話は聞いてるぜ!」

黒咲達レジスタンスと柚子達ランサーズが合流する…デュエルアカデミア制服を着ていた十代に一瞬びっくりしたものの、凌牙の名前を出された事で味方だと信じる事ができた…。

 

 

「むっ…!?遊矢は何処だ!?」

 

『っ…そこの瓦礫の下だ!アカデミアの凄腕と相討ちになって吹き飛ばされた!!』

 

「「な、なんだって!?」」

 

「ゆ、遊矢─!?」

そして遊矢の不在に気付いた権現坂の言葉でカイトは状況を思い出す…それを聞いた仲間達は慌てて遊矢を掘り起こした…。

 

 

 

「イテ、テテ……ありがとう、みんな…」

 

「遊矢…!何があったのだ!お前が相討ちになるなど…!」

 

「アカデミアに、父さんの事を知ってる奴がいた…!話を聞こうとしたんだけど、耳を貸してくれなくてさ……」

 

「そりゃ当たり前だろ!?アカデミアは敵だぞ!?」

掘り起こされたボロボロの遊矢は助けてくれた仲間達に感謝を伝え、状況を話す…その内容を聞いた沢渡は思わずツッコんでいた。

 

 

「敵でも…最後まで、話し合う事を諦めちゃダメだと思ったんだ……うぐっ…」

 

「にしてもひどい怪我だな…もう10分も歩けば拠点だ、話はそれからだな…ほら、背中貸してやるよ」

 

「あ、ありがとうございます…」

カイト戦のダメージとエド戦の痛みに顔を歪める遊矢…十代は躊躇なく、彼を背負った…。

 

 

《(十代、こいつが何者かは当然分かってるよね?)》

 

「(ああ、こいつがズァークの欠片だって事も…ユートが一緒にいる事も分かってる)」

 

《(ならいいけどさ…)》

 

「(融合次元の奴じゃないなら、大丈夫さ)」

拠点に向かいながらバレないように念話で話し合うユベルと十代………その時だった。

 

 

 

 

 

ドッガァァァン!!

 

 

 

「っ!?なんだ!?」

 

『今のは、拠点の方から聞こえたぞ!!』

 

「悪い遊矢!少し急ぐぞ!!」

 

「は、はい!!」

ハートランドに耳をつんざく衝撃音が轟く…それは、今まさに向かっている遊園地近くからの音…遊矢達は先を急いだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ…そ、そんな…!なんで…!?」

 

「嘘、だろ…!?」

 

 

そして、衝撃音が聞こえた辺りに到着したランサーズ達は言葉を失った。

 

遊園地を守る堅牢な壁…そこには、大きなクレーターが刻まれていた………その中心には────

 

 

 

 

 

 

「ゆ、遊海ィィ!!!!」

 

 

 

 

 

「───────」

 

 

 

 

 

 

明らかな致命傷を負った遊海が、壁に叩き付けられていた。



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再会

こんにちは!S,Kです!

今回は題名通り、という事で…。


最新話をどうぞ!!


「う、ぐ………いってぇ………あたま、ガンガンする…」

 

《フォウ、フォーウ…!?(遊海!大丈夫…!?)》

 

「遊海!気がついた!?僕達を助けて、そのまま落ちちゃったからびっくりしたよ!!」

 

「……フォウ…素良君……ああ、そうだ…いきなり、たかいところから、おちて……」

しばらく気絶していた遊海が目を覚ます、凄まじい頭痛に襲われる中…フォウや素良が心配をそうに遊海を覗き込んでいた…。

 

 

 

《マスター…あの状況でよそ見をするのはやめてください、いくら()()()()と言っても限度があります》

 

「アヤカ……何が、あったんだっけ…?」

そして人間体のアヤカが声をかける…遊海が目を覚ますまで、膝枕をしていたのだ。

 

 

《はぁ…何かに気を取られたマスターは5階建てマンションの廃墟へ落下、その直前に精霊アーマーを纏い、フォウを庇うように背中から激突……マンションを屋上から地下一階の駐車場まで貫いて…頭を強く打って失神していたんです》

 

「ああ…どおりで、みごとに穴があいてるわけだ……」

仰向けに倒れていた遊海は改めて天井を見る…そこにはハートランドの曇り空がはっきりと見える大穴が開いていた…。

 

 

「……というか、どうして普通に目が覚めるのさ…普通なら死んでるって…」

 

「ははっ…まぁ、常人よりは耐久力と回復力はあるからな…よっと…イタタ…」

遊海の頑丈さに若干引いている素良に笑いかけながら起き上がる遊海…周囲にはアヤカが張ったのであろう『スフィアフィールド』が展開されており、その隅ではセレナが体育座りで落ち込んでいた…。

 

 

 

「……セレナちゃんはどうしたんだ?」

 

《うむ……自分が思っていたよりも被害の大きいハートランドの惨状を見て、ショックを受けておるようだ……子供なら、無理もあるまい…》

 

「……そうか」

メガロックの言葉に遊海はセレナの状況を理解する。

 

アカデミアにおいて文字通り『箱入り娘』として育てられていたセレナ…赤馬零王や教師達からも『アカデミアは正義である』『戦場で誇り高い戦いをしている』と教え込まれていた彼女……だが、それは事実ではない。

 

アカデミアは誇り高い『戦士』ではなく、悪行を為す『侵略者』だった、柚子や黒咲、他のランサーズの仲間達から真実を聞いた彼女はショックを受けただろう……そして、彼女は来てしまったのだ…アカデミアの『罪』の象徴とも言えるこの街に…。

 

 

 

「セレナちゃん、大丈夫かい?」

 

「あっ……遊海、目が覚めていたんだな……無事で良かった」

 

「ああ、ありがとう…びっくりさせてごめんな?」

遊海が目を覚ましていた事にも気付いていなかったセレナが目を見開く…思っていたよりもショックが大きいようだ。

 

 

「……辛いなら、シンクロ次元に戻るといい…赤馬零児も分かってくれるさ、シグナー達やラプラスなら…必ず君を守ってくれる」

 

「……いいや、私は…帰らない…!ここで目を逸らしてしまったら、私は…私は…!」

 

「──フォウくん」

 

《フォーウ!(まかせて〜!)》

 

「わぷっ!?」

自分で自分を追い詰めてしまうセレナ…その姿を見た遊海はフォウへと声をかける、その意図を察したフォウはセレナの肩に飛び乗り、涙目の彼女にじゃれついた。

 

 

「こら…!くすぐったい!やめ……あははは!」

 

「ふふっ…セレナちゃん、レジスタンスの拠点に着くまで…フォウのお世話を頼んでいいかな?………大丈夫、君達に降りかかる脅威は……全部、俺が薙ぎ払う」

 

「あはは…ははっ……ありがとう、遊海…フォウ」

 

《フォウ!》

じゃれつくフォウのくすぐったさに思わず笑ってしまうセレナ…遊海の優しさとフォウの無邪気さがセレナの心を少し軽くしたのだった。

 

 

 

 

 

 

「さて……アヤカ、サーチ頼むぞ!」

 

《了解……遊園地までは徒歩で約2時間、遊矢達は……ここから5km先……彼らも1時間半程で遊園地に到着しそうです……それから………どうやら、カイトが行動を共にしているようです》

 

「カイト…?俺の知ってる方か?」

 

《はい、オービタル7の識別信号も確認…間違いないかと》

 

「……流石だな、Dr.フェイカーとアストラル・バリアン世界の科学力…」

 

「……えっ、今の一瞬でそこまで分かるの!?」

 

「ふっ…俺の相棒の探索・解析能力は世界一さ!」

 

《もう…褒め過ぎですよ、マスター》

マンション地下から脱出した遊海はアヤカによるサーチで状況を把握する、その様子を見た素良は驚いている…。

 

 

「それから……()の居場所は…?」

 

《それが…どうやらフレアが遊園地に結界を張っているみたいで……遊園地周辺は上手くサーチできないのです、おそらくマスター達が上空に転移してしまったのもそれが原因かと……》

 

「そうか……よし、行こうか!」

 

「うん!」

 

《フォーウ!(しゅっぱーつ!)》

 

「ああ!……ふふっ…可愛いな、お前…」

大方の状況を把握した遊海達は遊園地跡へ向かって歩き出した…。

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

「素良君、セレナちゃん、体力は大丈夫か?休みたいなら言ってくれよ?」

 

「大丈夫!アカデミアの訓練よりは、全然楽だよ!」

 

「私も、大丈夫だ!先を急ごう…柚子や遊矢達が心配だ」

歩き始めて約1時間…予定よりも早く進み、少しずつ遊園地の防壁が大きくなってくる…。

 

 

《マスター…先程、マスターが気を取られたのは……》

 

「……ああ、()()だな」

 

「うわ…地面が抉れてる…!?」

 

「いったい、どんな攻撃をしたらこんなになるんだ…?」

そんな時、遊海はあるモノを見つける…それは幅10m、深さ3m近く…そして長さ数kmに渡って抉れた地面──遊海が空中で気を取られた場所だった。

 

 

《このエネルギーの残滓は……フレアの「ゴッド・ブレイズ・キャノン」…?それにしては威力が……》

 

「威力が()()()()……よっぽど怒ったんだろうな…」

アヤカのサーチがその原因を解き明かす、それはフレア…『ラーの翼神竜』の攻撃の跡だった……ただし、凄まじい威力で放たれている…。

 

 

「えっ…これ、味方の攻撃なの…?」

 

「ああ、俺の()()()()…最強の精霊を()に預けていたんだ…もしかしたら、噂で聞いた事があるんじゃないか?」

 

「そういえば…僕がスタンダード次元に向かう前、すごい人数の怪我人が運ばれてきた事があったっけ……詳しくは知らないけど、よっぽど怖い思いをしたみたいだよ?」

 

「……ああ、やっぱりか…」

攻撃の規模に驚く素良だったが、アカデミアの出来事を思い出して遊海に伝える…それを聞いた遊海は原因を特定して苦笑いするしかなかった…。

 

 

 

《……!?転移反応の兆候を確認、何かが来ます!》

 

「なにっ…!?」

その時、アヤカのセンサーが転移の反応を感じ取り…遊海達は警戒態勢を取る…!

 

 

キィン─!

 

 

『───お前達…アカデミアか?』

 

「……お前は…」

粒子が集い、遊海達の前に人影が現れる、それは紺色のコートを纏い…金色の逆立った髪と暗緑色の逆立った前髪が特徴的な鋭い目つきの少年───エクシーズ次元のカイトだった。

 

 

「ちょうど良かった……俺の名は白波遊海!スタンダード次元防衛隊、ランサーズとしてレジスタンスの助太刀に来た!俺の息子、白波凌牙から話は聞いているはずだ!」

 

『お前が…!遊馬達の言っていた「英雄」か!』

カイトを前に堂々と名乗る遊海…その名を聞いたカイトは驚き、目を見開く…。

 

 

「待たせてしまってすまない!シンクロ次元と同盟を結び、融合次元の侵略を解決する為に来た…レジスタンスの拠点への案内を頼む!」

 

『……待て、貴方の後ろにいる者達は誰だ?その服はアカデミアの制服のはずだ…しかも上位の!』

 

「おっと…女の子はセレナ、男の子の方は紫雲院素良…アカデミアから離反し、ランサーズに加入してくれた仲間だ!心配する事はない!」

カイトへレジスタンス拠点への案内を頼む遊海…だが、カイトはアカデミアの制服を着ている素良達を見て警戒している…!

 

 

『アカデミアはあらゆる手を使って俺達を欺き、狩ろうとする…悪いが、俺のデュエルで見極めさせてもらう!お前が本当に『英雄』だというのなら、俺に示してみせろ!!』

 

「ゆ、遊海…!ごめん、僕達のせいで…」

 

「心配するな2人とも……彼は…カイトは俺を試したいだけだ、すぐに分かってくれるさ」

アカデミアである素良とセレナを警戒し、デュエルディスクを構えるカイト…それを見た遊海は穏やかに声をかけ、前に出る!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

カイトLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『俺のターン!』

『「光波翼機(サイファー・ウィング)」を召喚!』

煌めく翼を持つ機械が現れる! ATK1400

 

『さらに!フィールドに「光波翼機」が存在する事で2体目の「光波翼機」は特殊召喚できる!』

翼を持つ機械が並び立つ!

 

『そして永続魔法「二重露光(ダブル・エクスポージャー)」を発動!フィールドの「光波翼機」のレベルを2倍にする!』

 

 

光波翼機☆4→8

 

光波翼機☆4→8

 

 

「これで…レベル8のモンスターが2体…!」

 

『俺はレベル8の「光波翼機」2体でオーバーレイネットワークを構築!闇に輝く銀河よ!復讐の鬼神に宿りて、我が下僕となれ!!エクシーズ召喚!降臨せよ…!ランク8!「銀河眼の光波竜」!』

フィールドの銀河から光が弾ける、そして…煌めく翼を広げ、怒りを瞳に宿すギャラクシーアイズが咆哮する! ATK3000

 

 

『俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

カイトLP4000

光波竜 二重露光 伏せ2 手札0

 

 

 

「それじゃ…いかせてもらう!」

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺はスケール2の『マジェスペクター・キャット』とスケール5の『マジェスペクター・フロッグ』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

『ペンデュラム召喚…!』

 

PENDULUM!!

 

遊海の背後に光の柱が立ち上がり、尻尾に小さな竜巻を纏うネコと法衣を纏ったカエルが浮かび上がる!

 

 

「これで俺はレベル3か4のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、希望のペンデュラム!我が魂に宿る大いなる力よ!世界を変える風を呼び覚ませ!ペンデュラム召喚!!手札かレベル3『マジェスペクター・ラクーン』!レベル4『マジェスペクター・フォックス』!レベル4『マジェスペクター・クロウ』!」

赤のペンデュラムが揺れ動く…その軌跡から背中に竜巻を背負うタヌキ、尻尾が竜巻に包まれたキツネ、足元に竜巻を纏う紫色のカラスが現れる! DEF900 ATK1500 DEF1500

 

 

『モンスターの同時召喚…!』

 

「そして『ラクーン』の効果発動!召喚・特殊召喚に成功した時!デッキから『マジェスペクター』モンスター、『マジェスペクター・ユニコーン』を手札に加える!さらに『フォックス』の効果!同じくデッキから罠カード『マジェスペクター・テンペスト』を手札に加える!さらに『クロウ』の効果!デッキから魔法カード『マジェスペクター・ソニック』を手札に加える!」

柔らかな風が遊海の手元に新たなカードを導く!

 

「そして俺は『ラクーン』をリリース!『マジェスペクター・ユニコーン』をアドバンス召喚!!」

額から生えた一本角に風を纏う一角獣が現れる! ATK2000

 

 

「『ユニコーン』の効果!モンスターゾーンの『フォックス』を手札に戻す事で相手のモンスター1体を手札に戻す!エクストラデッキに戻ってもらうぞ!『光波竜』!」

ユニコーンの角を中心に強い風が吹き荒れ。光波竜を吹き飛ばしにかかる!

 

『くっ…!そうはいくか!カウンター罠発動!「エクシーズ・ブロック」!「光波竜」のORUを1つ使い、相手モンスターが発動した効果を無効にし、破壊する!竜巻を蹴散らせ!』

 

《ギシャアアアン!!》

カイトは咄嗟にカウンター罠を発動、ORUを吸収した光波竜はブレスを放ち、ユニコーンの作り出した竜巻とユニコーンを撃ち抜く…だが───

 

 

光波竜 ORU2→1

 

 

 

『っ…!?何故、破壊されていない!?』

 

「『マジェスペクター』達は共通して『相手の効果対象にならず、相手の効果では破壊されない』効果を持っている!よって、『ユニコーン』の効果は無効になったが…破壊はされない!」

 

『っ…!(『光波竜』の効果も効かないという事か…!!)』

遊海の説明を聞いたカイトは内心で驚愕する。

 

『銀河眼の光波竜』はエクシーズ素材を1つ使う事で相手モンスター1体のコントロールを奪い、攻撃力3000の『銀河眼の光波竜』として扱う、という効果を持っている……そしてその効果は『対象を取る』効果……つまり、『マジェスペクター』にとって最悪の相性なのである。

 

 

『しかし!「光波竜」の方が攻撃力は上回っている!』

 

「それはどうかな?バトルだ!『ユニコーン』で『光波竜』を攻撃!」

 

『攻撃力の低いモンスターで攻撃だと!?』

 

「さらに速攻魔法『マジェスペクター・ソニック』発動!『マジェスペクター』1体の攻撃力・守備力を2倍にする!その代わり、与えるバトルダメージは半分になる!」

力強い風がユニコーンに力を与える!

 

ユニコーン ATK2000→4000

 

 

『っつ!?罠カード「光波防輪(サイファー・ビット)」発動!自分の「光波」エクシーズモンスターが戦闘・効果で破壊される場合!その破壊を無効にして、このカードをそのモンスターのORUにする!ぐううっ…!』

光波竜に向かって放たれた竜巻が障壁に阻まれる!

 

 

カイトLP4000→3500

 

光波竜 ORU1→2

 

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊海LP4000

ユニコーン クロウ (Pキャット フロッグ)伏せ2 手札0

 

 

 

 

 

「す、すごい…!相手のデュエリストも実力者のはずなのに…!」

 

「これが遊海のペンデュラム…!」

遊海の見事なプレイングにセレナも素良も驚く…遊矢のように『華』があるプレイングではないが、圧倒的な『運』と『実力』が見る者を惹き付ける…!

 

 

『流石は英雄と呼ばれるだけはある…だが、俺もアカデミアと戦い続けてきた…いくぞ!』

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『いくぞ!魔法カード「RUM─光波昇華(サイファー・アセンション)」を発動!「光波竜」を対象にそれよりランクが1つ高いエクシーズモンスターをエクシーズ召喚する!!』

光波竜が光の銀河に飛び込み、大爆発を起こす!

 

 

『闇に輝く銀河よ!永久(とこしえ)に変わらぬ光放ち、未来を照らす道しるべとなれ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!!降臨せよ…ランク9!!「超銀河眼の光波龍」!!』

光の大爆発の中からカイトの切り札…進化せし3つの首を持つギャラクシーアイズが咆哮する! ATK4500

 

 

『「超光波龍」の効果発動!ORUを全て使い!相手フィールド全てのモンスターのコントロールを得る!この効果は対象を取らない!!サイファー・スーパー・プロジェクション!!』

超光波龍が翼を広げ、虹色の光で遊海のフィールドを照らす!

 

 

「悪いな…今回は本気でやらせてもらう!カウンター罠『マジェスペクター・テンペスト』発動!『クロウ』をリリースする事でモンスターが発動した効果を無効にし、破壊する!嵐よ!吹き荒べ!!」

 

『なんだと!?』

クロウが凄まじい大竜巻を起こす、その竜巻は虹色の光を掻き消し、超光波龍をも吹き飛ばしてしまった!

 

 

『俺は…これでターンエンドだ』

 

カイトLP3500

二重露光 手札0

 

 

 

『まるで…俺の手が先読みされているようだ…!!』

 

「俺も知ってるからな…お前と同じ、家族を守る為に…そして仲間達の為に戦う──誇り高いドラゴン使いを」

 

『そうか…遊馬が言っていた「別」の俺の事か……納得した』

遊海の戦術によってフィールドががら空きになったカイト…彼はその身で遊海の『強さ』を感じ取っていた…。

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺はセッティング済みの『キャット』と『フロッグ』で再びペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから蘇れ!『フォックス』!『クロウ』!」

再び赤の軌跡が揺れ動き、竜巻を纏うキツネとカラスが現れる! ATK1500 DEF1500

 

 

「『フォックス』の効果!特殊召喚に成功した事で、デッキから罠カード『マジェスペクター・トルネード』を手札に加える!さらに『クロウ』の効果!魔法カード『マジェスペクター・サイクロン』を手札に加える!…カイト!お前の魂のカードに応え…俺の魂のカードを見せよう!!俺はレベル4の『フォックス』と『クロウ』の2体でオーバーレイネットワークを構築……エクシーズ召喚!!」

遊海の宣言と共にキツネとカラスが銀河へと飛び込み、ビッグバンか起きる!!

 

 

「現れろ!『No.∞』!俺の歩みし戦いのロード…今こそ未来を切り開け!!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!!」

光の爆発の中から旧式決闘盤を模した大剣が遊海の傍らに突き刺さる! ATK2500

 

 

『ナンバーズ…!遊馬と凌牙が言っていた…「魂の大剣」か…!!』

 

「その通り…これが俺の戦いの歴史の結晶!『決闘の守護者』がエクシーズ召喚に成功した事でデッキからカードを1枚ドローできる!バトルだ!『ユニコーン』でダイレクトアタック!」

 

『くうっ…!』

ユニコーンの起こした突風がカイトのライフを削る!

 

カイトLP3500→1500

 

 

「そして『決闘の守護者』でダイレクトアタック!……決着だな?」

 

『ああ…完敗だ』

遊海が魂の大剣をカイトに添える…見事な完封勝利だった。

 

 

カイトLP0

 

 

 

 

 

 

『疑って悪かった…貴方は紛れもない、「英雄」だ』

 

「ははっ…分かってくれたならいいさ!さぁ、レジスタンスと合流」

 

 

 

 

ドゴン!!!

 

 

 

 

「「『はっ?』」」

 

《フォウ!?》

 

 

 

それは一瞬の事だった。

 

カイトと共にレジスタンスの拠点に向かおうとした遊海の姿が消えた……否、()()()()()のだ。

 

 

 

がああっ!?なんだぁぁ──!?」

突然の衝撃に瓦礫を砕き、バウンドしながら数百メートルふっ飛ばされた遊海はクリフォートの鎧を纏い、無理矢理に体勢を立て直す!

 

 

「(何が起きた!?デュエル中とはいえ、警戒は緩めてない…気配を感じなかった!?)」

凄まじい衝撃を受けた左の脇腹を押さえながら遊海は襲撃者を確認する…そこには──

 

【…………】

紫色のローブで体を隠した小柄な人物が立っていた…!

 

 

 

 

「小さい…?素良みたいな少年兵か…!?」

襲撃者の正体、それは中学生にしては小柄な素良よりもさらに背の低い、遊勝塾のジュニア達と同じくらいの身長だった…!

 

 

《マスター!おかしいです…!目の前の人物のサーチができません!》

 

「っ…情報が分からなくても、関係ない…!いきなり襲撃して来たって事は『敵』に違いない!」

 

【……!!】

アヤカのサーチすら弾く謎の人物…彼は無言で通常型のデュエルディスクを構える!

 

 

 

 

乱入デュエル

 

 

遊海LP4000

UNKNOWN LP4000

 

 

 

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊海LP4000

決闘の守護者 ユニコーン (P キャット フロッグ)伏せ3 手札2

 

 

 

 

「(伏せカードはモンスターを破壊する『マジェスペクター・サイクロン』、さらに除外できる『マジェスペクター・トルネード』、そしてモンスターを手札に戻す『ユニコーン』とそれをサポートできる『マジェスペクター・スーパーセル』…どんな手でも対応してみせる…!待っててくれ、翠…!!)」

謎の襲撃者を油断なく見据える遊海…そして、謎の襲撃者が動き出す…!

 

 

 

 

【私のターン…ドロー!!】

【フィールド魔法『影牢の呪縛』発動!!】

 

「《─────────────えっ?》」

謎の襲撃者がフィールド魔法を発動する…その瞬間、遊海と彩華の思考は()()()()()()()

 

 

 

【魔法カード『影依融合(シャドール・フュージョン)』を発動!!エクストラデッキから特殊召喚された『決闘の守護者』が存在する事でデッキの『シャドール・ビースト』と『聖なる影(カドシャドール)ケイウス』を融合!!『エルシャドール・ネフィリ厶』を融合召喚!!】

影の人形達を支配する巨大な人形が現れる! ATK2800

 

 

【フィールド魔法『影牢の呪縛』の効果!!『シャドール』モンスターが墓地に送られた事で魔石カウンターを2つ乗せる!!『ビースト』がカード効果で墓地に送られた事で1枚ドロー!!『ケイウス』が墓地に送られた事で手札にある2枚目の『ビースト』を墓地に送り、フィールドの『ネフィリム』の攻撃力を500アップ!!さらに『ネフィリム』の効果発動!!融合召喚に成功した事でデッキから『シャドール・ファルコン』を墓地に送る!!そして『影牢の呪縛』に魔石カウンターが1つ乗る!!効果で墓地に送られた『ファルコン』を裏守備で特殊召喚!!】

凄まじい早さでカードが動き、瞬く間に展開が進んでいく…!

 

影牢の呪縛 魔石カウンター 0→1→2→3

 

ネフィリムATK2800→3300

 

 

【『シャドール・ドラゴン』を召喚!!】

竜星を模した影人形が現れる! ATK1900

 

【さらに装備魔法『魂写しの同化(ネフェシャドール・フュージョン)』を『闇属性』を宣言して『ドラゴン』に装備!!フィールド魔法『影牢の呪縛』の効果で魔石カウンターを3つ使い、相手のモンスター1体を融合素材にできる!!『魂写しの同化』の効果発動!!装備モンスターの『ビースト』と光属性の『決闘の守護者』を融合!!2体目の『エルシャドール・ネフィリム』を融合召喚!!】

フィールドに2体のネフィリムが並び立つ! ATK2800

 

影牢の呪縛 魔石カウンター3→0

 

 

 

 

「ゆ、遊海!大丈……融合モンスター…!?アカデミアか!?」

 

「で、でも…「シャドール」なんてテーマ聞いた事ないよ!?」

ここでようやくセレナ達が遊海達に追い付く…そして、見た事のない融合モンスターに驚いている…。

 

《………フォ、フォーウ……》

 

 

【バトル!!攻撃力2800の『ネフィリム』で『マジェスペクター・ユニコーン』を攻撃!!!!】

 

がっ…!?

 

「ゆ、遊海──!!?」

鋭く振るわれた影糸がユニコーン諸共に遊海を切り裂く…その一撃はクリフォートの鎧を一撃で粉砕し、遊海の身体を切り裂いた。

 

 

……だが、遊海は吹き飛ぶ事も許されない……遊海の足元に()が巻き付いて押さえつけられていたからだ。

 

 

遊海LP4000→2700

 

 

 

「ゆ、遊海!何やってるの!?伏せカードを使いなよ!!負けちゃうよ!!!」

 

『…………いや、彼は…()()()()()()、はずだ……()()には……』

 

「「えっ…?」」

 

《…………》

無防備に攻撃を喰らう遊海に叫ぶ素良……だが、カイトには分かっていた……ローブの人物の()()が…。

 

 

 

【2体目の『ネフィリム』で……ダイレクトアタック──!!!

 

 

「ガッ……!!あああああああああ──────!!!」

 

 

「「ゆ、遊海──!?」」

素良とセレナの悲鳴が重なる。

遊海に放たれた二撃目は糸ではなく、人間の数百倍の大きさを誇るネフィリムの()()……その直撃を受けた遊海は数キロメートル先の遊園地の方角にぶっ飛ばされていった…。

 

 

遊海LP0

 

 

UNKNOWN WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

「ゆ、遊海ィィ!!!!」

 

そして現在、ハートランドに遊矢の絶叫が響く…遊園地の防壁にめり込んでしまった遊海は瀕死の状態だった。

 

頭からは血を流し、胸元は鋭い何かで切り裂かれたような傷が刻まれ……その命の灯火は消えかけていた…。

 

 

『白波さん!!』

 

「っ…待て!カイト!!」

 

「遊城さん…!?何故、止めるんです!?白波さんを助けないと!!」

固まってしまったランサーズやレジスタンスチームを見たカイトは遊海を助ける為に飛び出そうとした……だが、それを止めたのは十代だった。

 

 

「今動いたら、()()()()()()…!」

 

『えっ…?』

遊海に起きた事について何かを知っている様子を見せる十代…そして…。

 

 

ガシャン!!

 

 

「っ…今度はなんだ!?」

 

【─────】

カイト達の近くで何かが爆ぜ、砂煙が舞い上がる…そこにいたのは紫色のローブを纏った何者かだった。

 

 

「まさか…アカデミア!?」

 

『っ…!こんな時に…!!』

 

「で、でも…なんだか…小さ過ぎる、ような…」

現れた謎の人物を警戒する遊矢とカイト…だが、柚子は疑問を抱く……謎の人物は小学生くらいの身長しかなかったのだ。

 

 

《…………十代、どうする?》

 

「遊馬と凌牙を呼んできてくれ…なる早で…」

 

《わかったよ………まぁ、今回は()()()()だね》

十代はユベルと小さく言葉を交わす…十代の言葉を聞いたユベルは防壁の奥に消えていった…。

 

 

 

 

「あ、が……────」

 

「遊海!!」

そして、身じろぎをしたのか…ローブの人物の着地の衝撃が伝わったのか……遊海が壁から剥がれ落ち、落下する…その高さは10メートル程、遊矢の叫びが響くが…。

 

 

 

【─────!】

 

「「えっ…!?」」

 

『白波さんを、助けた…?』

ローブの人物が遊矢達の横から飛び出す…そして、空中で呼び出した緑色の髪の影人形が遊海を抱き抱え、壁へと凭れかけさせた…。

 

 

『今のモンスター…精霊は………まさか、そんな事が…!?』

 

「………わかっただろ?今は()()()()()()()なんだよ」

 

「か、カイトさん!十代さん!あれ、アカデミアじゃないのか!?」

 

『………いいや、()()はアカデミアではない……むしろ()だ』

 

「えっ…」

カイトはようやくローブの人物の()()に気付く、そして戸惑っていた遊矢へと静かに語った…。

     

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「う、うぅ……」

 

【………】

意識を飛ばしてしまっていた遊海が目を覚ます…全身がバラバラになりそうな激痛の中、最初に見えたのは自分を叩き潰したローブの()の姿だった。

 

 

 

【─────!!】ぎゅっ

 

「……………待たせて、ごめん」

ローブの女……少女は無言で…しかし、強く…小さな体で遊海を抱きしめる……そして、遊海は静かに()()()

 

 

「もっと、早くに気付けばよかった……()として、失格だ…なぁ───()

遊海は右手で優しく少女のフードを上げる、ローブの下に隠されていたのは絹糸のように綺麗な紫色の髪…そして涙を堪えた紫の瞳……体の大きさは変わってしまっても………その泣き顔は変わっていなかった。

 

ローブの少女の正体…それは時空嵐に巻き込まれ、遊馬達よりも幼い姿になってしまった白波翠だったのだ。

 

 

 

 

「……ばか…!遊海さんの、馬鹿!!どうして…どうして1人で無茶ばっかりするのぉ…!!私…わたし…!ずっと…ずっと心配で…うえぇぇ…!!」

 

「ああ…泣かないでくれよ………可愛い顔が、台無しじゃないか……というか、本当に…かわいくなりすぎだ……」

遊海は優しく翠の小さな頭を撫でる、遊海の胸の中で泣きじゃくる小さな翠…その姿を見た遊海はこう思っていた。

 

 

「(凌牙や、フォウに感謝しないと……もし、スタンダード次元で混乱状態だった俺が翠の状態を聞いていたら───俺は全てを放り投げてエクシーズ次元に直行してた………例え、どんな犠牲を払っても………こんなに可愛いなんて聞いてない……)」

それは凌牙とフォウの英断への感謝だった…遊海が何よりも翠の事を大事にしている事が分かっていた凌牙達は、遊海が「英雄」として動けるように、あえて翠の状態を黙っていたのだ。

 

 

「翠……ああ、もう……なんで、お前だけそんなに小さくなったんだよぉ…?……大変だったろう…?」

 

「あぅぅ…大変なんて言葉で言えないです…!力の制御ができなくて、デュエルもできなくて…体が小さいから、すぐに眠くなっちゃうし…みんなが戦ってるのに、回復しかできなくて…!!」

 

「そうか…そういう事かぁ…」

そしてエクシーズ次元に来てからの謎が解決する、ハートランドに刻まれた謎の破壊痕…それは力の制御できなくなっていた事に気付いていなかった翠が超威力で撃ってしまったモノだったのだ。

 

 

 

「もう…大丈夫だ………今度こそ、お前を1人にはしない…!!」

 

「うわぁぁん!!遊海さんが無事でよかったああああ!!」

2人で抱き合いながら号泣する遊海と翠……そこにいたのは『英雄』ではない。

 

妻との再会を喜ぶ、1人の男の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よかったな、遊海先生…翠さんと再会できて……」

 

「えっ、あの……どういう事…?」

離れた所から2人の再会を見守っていた十代がぽつりと呟く…遊矢達はまだ状況が分からないでいた。

 

 

「遊海先生が抱き合ってる女の子……あの人は白波翠さん………遊海先生の()()()さ」

 

「「「「「はあっ!?」」」」」

十代の思わぬ言葉にスタンダード組の驚きが重なる…明らかに年齢が違い過ぎると…。

 

 

「凌牙から聞いたけど、遊海先生がスタンダード次元に流れ着いた時、小学生くらいの姿になってたんだろ?……それがオレ達にも起きたのさ」

 

『知っている者で言えば……凌牙や流星の実年齢は20歳だ』

 

「えっ…ええっ!!?なんでそんな事に!?」

 

「それが分かったら、オレ達も苦労しないんだよな…」

十代とカイトの思わぬカミングアウトに驚く遊矢達…そこへ…。

 

 

「柚子!遊矢!」

 

「あっ…!セレナ!素良!無事だったんだな!合流できてよかった!!」

 

《フォウ!》

「月光舞猫姫」と「月光舞豹姫」に抱えられたセレナと素良、フォウが合流する…目立つのを承知で遊海を追いかけてきたのだ。

 

 

キィン─!

 

『今度こそ遊園地に────なっ…!?()…!?』

 

『────そうか、お前がこの次元の()()か………どうやら、危惧していた事は大丈夫だったようだな』

 

《周囲の次元数値安定…問題なしでアリマス……懐かしい姿でアリマスねぇ…》

そして数回の転移の末にエクシーズ次元のカイトが合流、そして大人の姿のカイトに遭遇していた。

 

 

 

 

「おい!急げ!遊馬!璃緒!!」

 

「はぁ、はぁ…!待ってよ!」

 

「ああ、もう!アストラル!お前のせいだからな!?お前がいきなり『遊海のナンバーズの気配を感じた!』なんていうから!!」

 

(面目ない…つい、気持ちが昂ぶってしまった…!)

そして騒がしく騒ぎながら四人の人影がやってくる…それはユベルから連絡を受けた遊馬とアストラル(霊体化)、そして凌牙と璃緒だった。

 

 

 

 

「あっ…カイト!!」

 

『遊馬…ふっ、ずいぶんと小さいな?』

 

「だああっ!チビって言うなぁ!って…それより遊海は!?」

 

『あそこだ………ようやく、2つ目の目標達成だな』

 

「ああ…!遊海………って、ボロボロじゃねぇか─!?」

カイトと半年振りに再会し喜ぶ遊馬…だが、翠に抱きしめられた遊海の姿を見て叫び声を上げる…

 

 

 

「「父さん!!」」

 

「ぐすっ…凌牙君…璃緒ちゃん…!遊海さん、帰って来た……帰ってきてくれたよ…!!」

そしてボロボロの遊海を見た凌牙と璃緒が抱き合う2人に駆け寄る……翠もようやく落ち着きを取り戻し、これで家族全員が揃ったのだが…。

 

 

 

 

 

 

「────待って母さん…!お父さん()()()()()!!」

 

「「えっ?」」

遊海に駆け寄った璃緒が異変に気付く…翠と抱き合っていた遊海はぐったりして………身体からは()()()()()が漏れ出していた。

 

 

 

 

忘れてはならないが、遊海や翠の不死性は基本的には『闇のゲームに負けない限りは命を落とさない』という特典である。

 

遊海は今までに様々な闇のゲーム、闇のデュエルを経験してきたが…なんだかんだで生き残ってきた……しかし、今回はタイミングが悪かった。  

 

 

闇のゲーム+怒り心頭状態の翠+精霊の力暴走+『愛』

 

 

 

遊海の不死性を貫通する要因が全て揃っていたのだ。

 

 

 

 

 

「あー……この感じ、ちょっとヤバそう…?」

 

《うん、早く治療しないと…不味いね》

 

 

 

 

 

   「「「  ● ● ● ● ● ●  」」」

 

 

 

 

 

「遊海さんしっかりしてぇぇぇ───!!!?」

 

 

 

 

 

 




※このあと滅茶苦茶回復魔法使いまくった。


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発覚

こんにちは!S,Kです!

ついに再会を果たした遊海と翠、彼らの再会はエクシーズ次元に希望をもたらしていく…だが…。


それでは、最新話をどうぞ!


「……知らない天井だ……」

 

《フォウ!(あ、起きた!)》

 

生死の境を彷徨っていた遊海が目を覚ますと、そこは少し薄暗い室内だった…目が慣れてくるとランタンに照らされた、大きめのテントの中らしいと気が付く…寝かされていた枕元にはフォウが寄り添っていた。

 

 

 

「あっ…!お父さん!!」

 

「遊海さん!」

 

「───ああ、よかった………夢じゃない───ただいま…翠、璃緒…」

そして、ベッドの横で遊海の手を握っていた青色の髪の少女──璃緒と可愛らしい姿になってしまった翠が遊海が目を覚ました事に気付く…そして遊海は安堵した。

夢ではなく、本当に…大切な家族のもとに帰る事ができたのだと…。

 

 

 

「うわぁぁん!遊海さんごめんなさいぃぃ!!」

 

「ああ、もう泣かないで…翠は悪くないって………子供の体だから、感情の振れ幅が大きくなってるな?」

目を覚ました遊海に抱きついて大泣きする翠、遊海はその様子から翠の感情が不安定になっている事に気付く…普段の翠ならば、もう少し落ち着いている状況だからだ。

 

 

「うん、そうなの…そのせいで余計に力がコントロールできなくなってて……最初の頃にフレアと一緒に攻撃したら()1()()()()()()()()()()()の……巻き込まれたアカデミア達が可哀想になるぐらい…」

 

「………よく生きてたな、アカデミア生も俺も…(汗)」

取り乱す翠の姿を見て逆に落ち着いてしまった璃緒が翠の状態を話す、心の支柱である遊海を失い、さらに時空嵐の影響で子供の姿となってしまった翠……それによって心が不安定になり、子供遊海の時のように精霊の力の細かなコントロールができなくなってしまった。

 

その状態で攻撃をすればどうなるかは、火を見るよりも明らかである。

 

 

 

「えぐっ…ひぐっ……」

 

《遊海兄、翠…頑張ったんだよ?いなくなっちゃった遊海兄の代わりにみんなに指示を出して…体がちっちゃくなっても、エクシーズ次元の人達を助ける為に頑張ったの!》

 

《デュエルをすると被害が大きくなり過ぎちゃうから、回復役とか、レジスタンスのみんなが集めてくれた食料でご飯を作ったり…子ども達の遊び相手になってあげたり……》

 

「ウェン…ウィンダ……俺も()()あったけど、みんな程じゃないな……ありがとう、みんなを守ってくれて…」

泣きじゃくる翠に代わってウィンダとウェンが今までの事を伝える…翠は小さくなってしまった体でも、頑張り続けていた……その苦労を知った遊海は優しく翠の背中を撫でた。

 

 

「璃緒、ランサーズ達はどうしてる?」

 

「ランサーズの子達は他のテントで休んでもらってるわ、アヤカさんからシンクロ次元の支援物資も受け取ったし…ハートランドのみんなも嬉しそうだった!」

 

「そうか……それなら良かった」

 

《良くないですよマスター…さっきまで、冗談抜きで死にかけてたんですから》

 

「………愛、怖いなぁ……なんて」

そして璃緒にランサーズ達の様子を聞く遊海…彼らの無事を知って安堵したが、アヤカの鋭い言葉に思わず苦笑する。

 

 

 

「ほら、母さん!ちょうどお昼だし…父さんにご飯作りに行こう?次の戦いで全力を出せるように!」

 

「璃緒ちゃん…うん!遊海さん!少し待っててね!」

 

「ああ、手を切らないようにな?」

 

「むう…!小さくなっても技術は変わらないもん!」

 

《(完全に幼児退行してますね……)》

 

璃緒に促されて翠は遊海の食事を作る為にテントを離れる…そして、入れ違いでテントに入ってきた者達がいた。

 

 

 

 

「遊海!無事……無事?で良かったぜ!!」

 

「遊馬…アストラル…凌牙…カイト………お前達にも心配かけたな…危険な目に遭わせてすまん…!」

 

(遊海、気にするな…ARC次元に踏み込んだのは私達の総意だ、貴方と合流できて良かった)

テントに入って来たのは少年の姿に戻ってしまった遊馬アストラルに凌牙、そして次元移動装置で駆けつけたカイト……三勇士達だった、彼らは回復した遊海を見て安心していた。

 

 

「まったく、父さんの怪我体質は相変わらずだな……流星に聞いたらシンクロ次元でも無理したんだろ?『冥界の王』と戦ってボロボロなのに…そこからオベリスクフォースと連戦って…」

 

「ははは…流石にアレは予想外………ん…?流星も合流できたのか?」

 

「ああ…次元移動の座標を間違ったみたいでさ、変な場所に迷い込んだらしいんだ…今は疲れて仮眠してるぜ」

 

「そうか…いや、意識を失う時まで姿を見なかったから心配してたんだ」

 

(あの状況でそこまで覚えてるのは流石だな…)

凌牙の呆れたような言葉に苦笑いする遊海だったが、流星の合流を聞いて状況を訊ねる……少しトラブルがあったが、流星も無事にレジスタンスに合流できたようだ。

 

「(もしかして…昔のネオ童実野シティにでも迷い込んだか?前にもそんな事があったし…)」

遊海は過去の出来事から流星の行き先を予想するが…すぐにその思考を頭の隅に追いやった。

 

 

 

 

「それで…三人揃ってどうした?ただ様子を見に来た訳じゃないだろ?」

 

『ええ、ランサーズ達と状況を共有した後に…()()に集まるように言われたんです』

カイトが遊海のテントを訪れた理由を伝える…その瞬間、ベッドの上で座っていた遊海の前に光が集い──

 

 

《おかえりなさい、ユウミ》

 

「フレア…!ありがとうな…みんなを守ってくれて…!!」

現れたのは金色の小さな小鳥、遊海によってアストラル世界へと逃がされ、翠や遊馬達を守り続けていた遊海の最後の精霊…フレアだった。

 

 

 

《とりあえず………何をしているんですか貴方は──!!》

 

「ぎゃー!?」

 

「うわ!?絶対痛いヤツだ…!!」

苦労を掛けてしまったフレアを撫でようとした遊海……だが、突然飛び上がったフレアは急加速……遊海の額に鋭いクチバシが突き刺さった。

その様子を見た遊馬は咄嗟に自分のおでこを押さえている…。

 

 

「あだだだ……いや、本当にごめん……!時間稼ぎの為に、ズァークと戦ったのに……俺は……」

 

()()()()ではありません!!》

 

「えっ…?」

 

《フレア?》

フレアに『悪魔が生まれた日』の作戦失敗を謝る遊海……だが、フレアが怒っていたのはその事ではなかった……その怒り方にアヤカが疑問を抱く。

 

 

 

《フォウ、遊海から離れなさい…アヤカ、スフィアフィールドを……メガロック、トフェニ…遊馬達の前に…!早く!!》

 

《フォウ!?(ふ、フレア?どうしたの?怖いよ…!?)》

 

《フレア様、いったい何事が…?》

 

《その気配…何を怒っているのだ?》

 

《スフィアフィールド展開……何故、こんな事を…?》

 

フレアの異常な剣幕に遊海も遊馬達も…そして姿を現した精霊達やフォウも困惑している……フレアの眼は油断なく遊海を睨みつけていた…!

 

 

「お、おい?いきなりどうしたんだよ…!?」

 

《アヤカ、貴女が一番に気付かないでどうするのです…!私が気付かなければ、どうなっていたか…!!》

 

《えっ…?》

 

 

《他の精霊達は誤魔化せても…太陽神の分霊たる私の『眼』は欺けない!!姿を現せ!!()()()()()()()()!!》

 

 

「「「『『!?』』」」」

フレアの思わぬ言葉にテントの空気が凍りつく、フレアは遊海を睨みながら…最悪の名前を口にしたのだ…!

 

 

 

「ま、待ってくれ!!これにはわけが──(ドグン!!)っぐぅ!?」

 

「遊海!!」

 

「父さん!?」

 

《フォウ!?(遊海!?)》

 

ゴウッ!

 

フレアの言葉に事情を話そうとする遊海…その時、強い動悸が遊海を襲い…背中から赤黒い炎が燃え上がった…!!

 

 

【フハハハ…!やはり神は神、我の潜伏を見破るか…久しいな?九十九遊馬、ナッシュ、天城カイト……そしてアストラル!】

 

 

(ドン・サウザンド!!)

赤黒い炎が少しずつ形を成していく、そして倒されたはずの『混沌の神』──真ドン・サウザンドが遊馬達の前に姿を現した…!

 

 

《ま、マスター!?》

 

《フォッ…!?ガルルル─!!(オマエ…!?遊海から離れろ!!)》

 

「そんな…!?遊海が、あの時ぶっ倒したはずなのに!?」

 

『まさか…白波さんが取り込んでしまった「CiNo.1000」を核に復活したのか!?』

 

「貴様…!何度、俺の家族を傷付ければ気が済むんだ!!父さんから離れやがれ──!!!」

仇敵の出現に精霊達や遊馬達は臨戦態勢となる、凄まじい殺気を放つ三勇士達に睨まれながら、ドン・サウザンドは笑みを浮かべていた…。

 

 

「父さん待ってろ…!すぐにそいつをぶっ倒して助ける!!」

 

「待て…!大丈夫だ…!!今、ドン・サウザンドは()()()()()…!!信じられないと思うが……俺はこいつに、()()()()()んだ…!」

 

「「『はっ…?』」」

一触即発の空気の中、遊海が思わぬ事を伝える…それを聞いた遊馬達は思わず固まった。

 

 

《アヤカ!ユウミのバイタルとメンタルチェックは…!》

 

《……マスターのバイタル、安定しています……洗脳された形跡も、ありません……マスターは、本当の事を言っています…信じられませんが……》

遊海に対する洗脳を疑うフレア……だが、遊海にその形跡はなく、嘘を吐いてもいなかった…。

 

 

【白波遊海の言葉は真実だ、そもそも…スタンダード次元に流れ着き、『榊遊希』という男として生きていた白波遊海を呼び戻したのは我だ、我がキッカケを与えてやらねば……そうさなぁ、白波遊海は目覚める前にアカデミアとやらの実験体にでもされていただろう】

 

「っ…!遊希が…父さんが暴走したのはお前の仕業か!!」

 

【勘違いするな、ナッシュ──いや、()()よ…あの暴走は『榊遊希』が自ら望んだモノだ、仲間達を傷付けたオベリスクフォースとやらを潰す為になぁ?】

 

「っ…!」

遊海の言葉を肯定するドン・サウザンド…凌牙が遊希が暴走した原因ではないかと問い詰めるが、ドン・サウザンドは表情を変えない。

 

遊希の暴走──災厄は遊海の『力』と遊希の激しい怒りと憎しみが起こしたもの……ドン・サウザンドはそれを見ていただけである。

 

 

 

【あとは…シンクロ次元で『冥界の王』とやらと『地縛神』の挟み撃ちを受けて死にかけた遊海を気まぐれで助けてやったのは我だ、覚えがあるだろう?】

 

《マスターが汚染されたマイナスエネルギーを中和したカオス…それはお前の力だったと…!?》

 

【いかにも、我が気まぐれを起こさなければ…シンクロ次元で遊海の旅は終わっていたであろうな?】

 

(アヤカ、それは本当なのか?)

 

《……ええ、復活したダークシグナーの神『冥界の王』とダークシグナーの操っていた『地縛神Wiraqocha Rasca』の挟み撃ちを受け、命を落としかけています……マスターは『CiNo.1000』のカオスを無理に開放して使ったと言っていましたが……》

アストラルの問いかけにアヤカはドン・サウザンドが嘘を吐いていない事を認めるしかなかった。

ゼロ・リバースと同等のマイナスエネルギーを受けてしまった遊海は…ドン・サウザンドの助けがなければ復活できず、そのまま海の底で命を落としていただろうと…。

 

 

「っ…ドン・サウザンド!お前の目的はなんだ…!!まだアストラル世界を滅ぼそうってのか!?」

 

【さてな…そんな事、()()()()()()()()()

 

(なにっ…?)

遊馬の問いに思わぬ答えを返すドン・サウザンド…アストラルは思わず聞き返してしまった。

 

 

【我が破壊したかったのは我を…カオスを排斥し、徹底的なランクアップを望んだアストラル世界だ……だが、いまはどうだ?カオスを排斥し続けていたアストラル世界はカオスの塊であるバリアン世界と融合し、受け入れたというではないか?そんな()()()()()()を破壊しても…何も面白くない】

 

(お前は……本当にドン・サウザンドなのか…?)

心底呆れたような…面白くなさそうな表情でドン・サウザンドは語る、その様子にアストラルは違和感を覚えた。

 

 

遊馬やアストラルが知っているドン・サウザンドはアストラル世界に対して強い憎しみを向けていた。

七皇達の人生に介入したのも遥か未来での復活を見据え、その力を自分の糧とする為…そして、バリアン世界での決戦でもダメージがアストラル世界を破壊するように設定…さらには自分が倒されても凌牙を自分の『後継者』としてアストラル世界と戦うように仕向けていた……それだけ、ドン・サウザンドがアストラル世界に向けた憎しみは深いはずなのだ。

 

 

しかし、アストラルは目の前のドン・サウザンドから…その憎しみを感じなかった……まるで、何かに浄化されたように…。

 

 

 

【フン、我はドン・サウザンド…混沌の神だ、今は…お前達の喜劇を見物させてもらうとしよう──ではな】

 

「あっ…待て!!」

アストラルの問いに応えたドン・サウザンドは再び赤黒い炎となって遊海の中に消えていった…。

 

 

 

 

「っ…はぁ…はぁ……まさか、外に飛び出してくるとは、思わなかった…」

 

「父さん!?」

ドン・サウザンドが消え、遊海は大量の脂汗を流しながらベッドに倒れ込む…今のやり取りによる消耗が大きかったのだ…。

 

 

《マスター!どうしてすぐに教えてくれなかったのです!?》

 

「みんなを、これ以上心配させたくなかった……これは、俺自身の問題だ……ドン千は、俺の魂の中に封印されてるから、下手に手が出せない…それに、不安定なARC次元でアイツを倒して、カオスを解き放ってしまったら…どんな影響があるか……」

 

「そんな…!?くそっ、あの野郎…!!」

ズァークの存在と次元戦争という異常事態の中、仲間達や精霊達を心配させないようにドン・サウザンドの復活を隠し続けていた遊海……その影響を聞いた凌牙は拳を握り締めるしかなかった。

 

 

 

(いや、そこまで心配をする必要は…ないのかもしれない)

 

「アストラル…!?どうしてだよ!?ドン・サウザンドはお前の…オレ達の敵だ!それなのに……」

 

(今のドン・サウザンドの力はあの決戦の時の半分以下しかない……それに、感じるカオスの()が変わったように私は感じた)

 

『カオスの質?』

そんな中、アストラルが思わぬ事を口にする…アストラル自身も戸惑っている様子ではあるが…。

 

 

(私の知るバリアン世界での決戦や、ハートランドで復活した時のドン・サウザンドはアストラル世界を破壊しようという悪意を強く感じた……だが、先程のドン・サウザンドからは……悪意を()()()()()()、私が思うに…遊海、貴方がドン・サウザンドを倒そうと自爆した時の衝撃が…何かしらの影響を与えたのではないか?)

 

「たぶん、その通りだ……あの時の自爆──『NEXUSダイナマイト』は俺の持つ『光』、精霊の力やシグナーの力…そして『絆の結晶』であるNEXUSの力を最大限まで高めた技だ、それがドン千を少しだけ変えた………俺はそう考えてる」

アストラルの考察に遊海が答える、今までは話し合いの余地すらなかったドン・サウザンド…だが、彼は変わろうとしているのではないかと…。

 

 

「だけど…油断はしてない、精神世界ではユウスケに見張りをしてもらってる……万が一があったなら、俺の命に懸けて…今度こそ、滅してみせる」

 

「自分の命を懸けるなんて言わないでくれよ…!俺がいる、母さんや遊馬、アストラル、カイト…みんながいる!!絶対に父さんは死なせない!!」

 

「シャーク…」

 

「凌牙…ありがとう」

なんとか起き上がり、自分の覚悟を伝える遊海…そして凌牙の力強い言葉にようやく肩の力を抜く事ができたのだった。

 

 

 

《はふぅ………ユウミ、あまり心配させないでください……もう既にドン・サウザンドの洗脳下にあるのかと思って……》

 

「フレア…びっくりさせてごめんな……悪かった…」

目先の脅威が去り、緊張感から解き放たれたフレアが遊海の膝の上で溶けたようにへたり込む……『混沌の神』の復活にいち早く気付いた彼女はずっと気を張り続けていたのだ。

 

 

「俺は…もう二度とカオス……闇には呑まれない、だから安心してくれ」

 

《キュルル〜……♪》

不安にさせてしまった事を謝りながら優しくフレアを撫でる遊海…フレアは久しぶりに撫でられ、気持ち良さそうに声を漏らした…。

 

《フォ〜ウ…キュウ…(なんだか、疲れちゃった……おやすみなさい…)》

 

《むっ…?そうかそうか…フォウよ、安心して休むといい》

その様子を見て安心したのか…フォウもメガロックの背中で丸くなった。

 

 

 

 

 

 

《すぅ…すぅ…ZZZ》

 

『…白波さん、これからどうするつもりですか?』

 

「とりあえず、ドン・サウザンドの事は七皇のみんなや流星達には伏せておいてくれ……凌牙、璃緒への説明は任せる」

 

「……わかった、母さんには?」

 

「翠には、俺から話すよ」

 

「翠さん、また怒るだろうな〜…いくら偶然の事とはいえ…」

 

(ドン・サウザンドの恐ろしさは、彼女も分かっているだろうからな…)

疲れて眠ってしまったフレアを撫でている遊海にカイトがドン・サウザンドの対応について訊ねる…ひとまずは混乱を避ける為に伏せる事を決め、家族である璃緒には凌牙が…翠には遊海が自分で説明する事に決まった。

 

 

 

「それから、これからの動きだけど…どうするつもりなんだ?」

 

「ああ……明日、アカデミアがエクシーズ次元に作った拠点に襲撃を仕掛ける、そこで遊矢と相手方の司令官……エド・フェニックスを戦わせ、アカデミアを降伏させる……それが俺の考えた作戦だ」

凌牙にこれからの動きを聞かれた遊海は最善の作戦を伝える。

 

 

『エド・フェニックス…彼は本人ではないとはいえ、遊城さんのライバルの1人だ……なぜ、ズァークの欠片を?』

 

「榊遊矢の父、榊遊勝…彼はエドと因縁がある……そして、エドの心はアカデミアの理想と自分の理想とするデュエルの間で揺れている……その迷いを晴らす事ができるのが、遊矢のエンタメデュエルなんだ」

 

「エンタメデュエル、か…分裂しちまっても、ズァークのそういう所は変わらないんだな…」

遊海の作戦を聞いた遊馬が複雑な表情で呟く、狂気に堕ちる前のズァークは本当に良いデュエリストだった…それを知っている故の言葉だった。

 

 

 

 

 

「遊海さーん!お昼ご飯できましたー!」

 

「あっ…ありがとう、みど─────あっ……」

 

(「「『あっ』」」)

その時テントに翠の明るい声が響く、遊海の昼食を作ってきたのだが………その手には()()()()()の姿があった。

その威容に思わず凌牙やカイト、アストラルも言葉を失っている…。

 

 

 

 

「シンクロ次元からの支援物資にお豆腐があって良かった…いつも以上に腕によりをかけました!しっかり食べてくださいね?」

 

「…………凌牙、フレアを頼む」

 

「う、うん…」

ベッド脇の台の上に置かれた真紅の地獄───翠特製の泰山麻婆豆腐(大盛り・白米なし)を見た遊海は生唾を飲み込むと、眠っているフレアを優しく凌牙へと託す。

 

 

「………アヤカ、すまん………ちょっと、逝ってくる」

 

《………………ご武運を、マスター…》

アヤカに別れを告げると遊海は皿を手に持ち、レンゲを構える。

 

 

 

「いただきます──!!」

 

「召し上がれ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊海は再び、生死の境を彷徨う事になった…。

 

 

 

 

 

(遊馬…以前、私は翠の麻婆豆腐を食べてみたいと言った事があったな?)

 

「ああ、あったな…そんな事…」

 

(…………その言葉は撤回しよう……あの料理を食べるには、命が幾つあっても足りなさそうだ)

 

「絶対、その方がいいぜ…まずは普通のにチャレンジしてからな…」

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

「り、璃緒さん…?大丈夫ですか…?」

 

「ん?全然大丈夫!久しぶりの麻婆豆腐美味し〜!小鳥さんも食べる?」

 

「わ、私は遠慮しておきます!!」

 

 

「璃緒〜!何食べてるのって……麻婆豆腐?翠さんが作ったの?」

 

「そうなの!海亜さんも一口食べる?」

 

「食べる食べる!ネオ童実野シティの『泰山』ってお店の激辛麻婆豆腐が好きなんだ!いただきまー…!?!?!?

 

「海亜さーん!?」

 

「そんなに辛かったかしら?『泰山』の麻婆豆腐より()()辛いくらいだと思うけど…」

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

【フハハハ…九十九遊馬やアストラルの驚愕した表情は傑作だったな!我を倒そうにも倒せん勇士共の顔を見て胸が空く思いだ!】

 

『相変わらず趣味が悪いな、ドン千』

 

【略して呼ぶなと言っているだろうが】

遊海の精神世界、ドン・サウザンドの玉座…遊馬達へと復活を明かしたドン・サウザンドは愉快そうに笑っていた…その近くではユウスケが呆れた表情で見張りを続けている。

 

 

キィン─

 

 

【ん…?なんだ、これは…?】

 

『げっ…それは…!?』

そんな時、ドン・サウザンドの前に紅い光が現れる…その正体は白い皿に乗った紅い麻婆豆腐だった。

遊海が凌牙達を困らせたドン・サウザンドへせめてもの意趣返しとして味覚共有したのだ。

 

 

【ふむ…赤いな……どれ──】

 

『あ、止めた方がいいぞ──!?』

添えられたレンゲで真紅の麻婆豆腐を掬い、口に運ぶドン・サウザンド…ユウスケが思わず止めようとしたが、一瞬遅く───

 

 

 

【ほう…これが味覚、というモノか……ふむ……なかなかに美味いではないか?この辛味?と旨味?によって混沌とした味……我の好みだ】

 

 

 

『…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………デジマ?』

 



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反撃準備〜英雄演武〜

こんにちは!S,Kです!

アカデミアによって絶望に包まれたハートランド…だが、希望の光は再び世界を照らす!


それでは、最新話をどうぞ!


「遊海、大丈夫かな…」

 

「大丈夫よ……たぶん…」

 

「よもや、自分の奥方とのデュエルであんな大怪我をするとは……『世界』のデュエルのレベルはどれほど高いのだ…?」

 

「人間が……あんな勢いで吹っ飛んでいくのは初めて見たぞ…」

レジスタンスの拠点、ハートランドの遊園地跡、そのとあるテントの中でランサーズ達は体を休めていた。

目の前で遊海が死にかけるというハプニングがあったものの、無事に遊園地に辿り着いた遊矢達は治療中だという遊海の容態を心配していた…。

 

 

 

「それにしてもよ!アカデミアに侵略されてヤバいとは聞いてたけど…思ったよりレジスタンスとか他の人達も明るかったな?」

 

「それは当然だ、この場所を守る勇士達は文字通り『一騎当千』のデュエリスト達……この半年、ほとんど被害が出ていないのは彼らの活躍のおかげだ」

 

「そうか…守ってくれる、という安心感があるから…ハートランドの人々は安心して暮らせているのだな…」

沢渡の疑問に黒咲が答える、遊馬を始めとした勇士達はエクシーズ次元の最後の希望として人々を守り続けてきたのだ。

 

 

「そういえば…勇士達って何人ぐらいいるの?ここに来るまでに何人かそれらしい人を見かけたけど…」

 

「……ああ、まずはまとめ役の遊馬、そして凌牙とその妹、璃緒…シンクロ次元に加勢に来た流星、その幼なじみの海亜……遊矢を運んだ十代、そして武闘派のギラグとアリト、防衛戦に長けたドルベ、トリッキーな戦いをする真月、黄金のドラゴンを操るミザエル…そして治療役を担ってくれる小鳥と翠…その13人だな」

 

「たったそれだけの人数で、アカデミアを押し止めていたのか!?」

 

「無論、それだけではない…俺を含めたハートランドのレジスタンス達、約1000人…その戦力を防衛戦に充てる事でアカデミアの攻撃を凌いでいた」

素良の質問に答える黒咲…そして少ない人数でハートランドの人々を守っていたと聞いたセレナは目を丸くして驚いていた。

 

 

『だが、それも今日までだ……明日から事態は動くだろう』

 

「ドルベ、何か動きが?」

その時、銀髪に丸眼鏡の少年…ドルベがテントへと現れた。

 

 

『ランサーズの諸君、中央広場に来てくれないか?……集会を開くんだ』

 

「「「「集会?」」」」

ドルベの言葉に遊矢達は首を傾げた…。

 

 

 

………

 

 

 

「うわ、すごい…人がたくさん…!」

 

「もしかしたら…避難してる人のほとんどが集まってるのかな…?」

ドルベによって案内された遊矢達は遊園地の中央部…平時であればパレードやイベントが行なわれていたであろう広場へとやって来た。

周囲にはレジスタンスのデュエリストや、避難民達が集まっている。

 

 

 

「みんな!集まってくれて感謝する!」

 

「あっ…凌牙!」

そしてその中心にあった壊れた銅像の台座の上に紫のジャケットの青年─凌牙が現れ、声を張り上げる!

 

 

「エクシーズ次元が侵攻を受けて1年、俺達が助太刀に来て半年が経った……でも、ハートランドを襲った次元戦争の脅威も、まもなく解決する!!何故ならば……俺達が探し続けていた『英雄』が、ようやく帰って来てくれたからだ!!」

凌牙の言葉にハートランドの人々が大きくどよめく…!

 

「改めて紹介させてくれ…俺の父、『決闘王』!白波遊海の事を!!」

 

キィン─! ゴウッ!!

 

《キュアアアア!!!》

 

「わわっ!?なんだぁ!?」

 

「炎の鳥─!?」

凌牙の言葉と共に広場で光が弾ける…そして燃え盛る炎を纏う巨大な鳥が咆哮する!

 

 

 

「ハートランドのみんな…待たせてしまってすまない!!貴方達の恐怖に怯え、絶望する日々は今日までだ!『決闘王』の名に懸けて、ハートランドをアカデミアの脅威から開放する……その為に俺は…俺達は力を振るおう!!」

 

「ゆ、遊海─!?」

その咆哮と共に広場の中心に炎の竜巻が起きる…その炎を振り払いながら──赤帽子の決闘者、白波遊海は声を響かせた…!

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

「みんな…待たせたな!」

 

「「『遊海/遊海さん!!』」」

昼過ぎの遊園地、真紅の地獄からギリギリの生還を果たした遊海はテントから出る…そこには遊海を救出する為に次元を越えて来た仲間達が集まっていた…。

 

 

 

『先生〜!エクシーズ次元に来て早々にダウンするのはやめてくれよ〜!』

 

《まぁ、翠を心配させた罰だね》

 

「十代、ユベル…心配をかけた……遊矢を助けてくれてありがとな!」

 

『ああ、アイツ自身は悪い奴じゃないしな!』

最初に話しかけたのは十代とユベル、いつも通りの快活な様子で遊海との再会を喜ぶ。

 

 

「遊海、無事でなによりだ…貴方の代わりにエクシーズ次元を守らせてもらっていた、被害を0にする事はできなかったが…」

 

「ドルベ…気に病む事はない、今回に限っては…失ったものも取り戻す事ができる……ここから取り返せばいい!」

 

「そうだぜ!遊海が来たんなら、この戦いの終わりはもうすぐだ!」

 

「アカデミアの奴らも、だいぶ疲弊してるだろう!ここから逆転だ!」

 

「──そうだな…!」

そして街の防衛を担っていたドルベ、アリト、ギラグが話しかける…ドルベは落ち込み気味だったが、遊海の言葉に力を取り戻した。

 

 

 

「『ドラッグルーオン』と『超時空龍』の前に敵はいない!お前が復活したなら…私達の勝利は確実だ!」

 

「そんなに力入れすぎるなよーミザちゃ〜ん!本番前にへたばっちまうぜ?」

 

「だから…変な名前で呼ぶな!」

 

「お前達も相変わらずだな…ミザエル、真月」

強力なドラゴン達とトリッキーな戦い方でアカデミアを撹乱し続けたミザエルと真月はいつも通りの調子で遊海を迎える。

 

 

 

「遊海さん!流星に聞いたけど、シンクロ次元にじいちゃんとか若い遊星さんがいたって本当!?」

 

「おお!海亜…ああ、本当だ!この後にランサーズの助っ人として合流してくれるはずだ!」

 

「そうなの!?うわ〜…アタシ、どんな顔で会えばいいんだろ?帽子かぶってようかな…」

 

「大丈夫だよ、シンクロ次元のジャックさんも優しい人だから…」

流星から一足先にシンクロ次元の状況を聞いた海亜が興奮気味に遊海に話かける……別世界の祖父と孫、その出会いはどうなる事やら…。

 

 

「小鳥ちゃん、俺の為に遊馬達と来てくれてありがとう…怖い目には遭わなかったか?」

 

「はい!いつも遊馬が守ってくれましたから…私も炊き出しとか翠さんのお手伝いで頑張りました!」

そして勇士達で唯一の非戦闘員である小鳥を気に掛ける遊海…しかし、彼女の明るさは変わらない……その明るさはきっと遊馬達やエクシーズ次元の救いになっていただろうと遊海は思った…。

 

 

 

 

「それでよぉ…このあとはどうすんだ?このままアカデミアの拠点に突っ込むか?アンタがいればすぐに決着がつくだろ?」

 

「決戦は明日だ、ランサーズの…榊遊矢の回復を待って拠点を強襲し、一気に決着をつける!」

真月の問いに遊海が力強く答える…!

 

 

「榊遊矢、ズァークの欠片の一人か……任せて大丈夫なのか?」

 

「ああ、榊遊矢には…あの子にしかできない役割がある、俺達はその露払いをして……強敵がいたら、対処すればいい」

 

「この拠点の防衛は?」

 

「メガロックに拠点周りの防壁を強化してもらって…アヤカの結界を張る、万が一に備えてドルベとアリト、ギラグはそのまま防衛を頼む!」

 

「「応っ!!」」

ドルベの質問に遊海が答えていく、アカデミアとレジスタンスでは戦力の差が大きい…作戦は時間との勝負になるだろう。

 

 

「カイト、この設計図を渡しておく…アヤカが設計した『カード化解除装置』の設計図だ…オービタル7とこちらの次元のカイトと協力して作ってくれ」

 

《カシコマリ!》

 

「了解した…流星、あとで少し力を貸してくれ」

 

「わかった!」

そして、遊海はカイトへアヤカが分析した『カード化解除装置』の設計図を託す…凌牙からの報告でカードにされた一部の人々はレジスタンスが確保していると伝えられていたのだ。

 

 

 

「凌牙、エクシーズ次元の人々の様子は?」

 

「俺達がしっかり守ってるから、雰囲気は明るいと思う…それでも、融合召喚やデュエルそのものを怖がってる人もいるな…」

  

「そうか…」

エクシーズ次元においてデュエルは本当の意味で『娯楽』としての存在だった。

スタンダード次元のように強すぎる影響力を持つモノでも、シンクロ次元のような『力』の象徴でも、融合次元のような『争い』の道具でもない……デュエルモンスターズの在り方としては『DM世界』に一番近いと言えるだろう。

 

しかし、それは呆気なく崩れ去る…デュエルモンスターズを『兵器』としてエクシーズ次元へと侵攻したアカデミア…その侵略はエクシーズ次元の人々に大きな心の傷を残していた…。

 

 

 

「………デュエルモンスターズに罪はない、善悪を決めるのはデュエリスト次第だ……アカデミアとの決着の前に、その事もエクシーズ次元の人達に思い出してもらわないとな…」

 

「遊海さん…」

エクシーズ次元に来て初めて暗い表情を見せる遊海…本当の決闘の楽しさを知る者として、エクシーズ次元の状況は見過ごせるものではなかった…。

 

 

 

「────ん!?そういえば十代!お前は大丈夫なのか!?思いっきり融合使いだし、服もデュエルアカデミアの制服じゃないか!?」

 

『今更かよ先生!?』

そんな時、遊海が忘れていた事に気付く…救出チームの中で唯一の『融合使い』であり、デュエルアカデミア・オシリスレッドの制服を着ている十代の事を…

 

 

『いや、まぁ…大丈夫ではないかな…オレ自身の事は『仲間』として受け入れてくれてるんだけど……『HERO』達の事がな…だから、基本的には遊撃でレジスタンスのみんなから離れるようにしてたんだけど…』

 

《状況を考えれば仕方がない事だな…HEROは人々の声援を受けて戦う事が、一番の力になるのだが…》

 

《クリクリ〜》

 

《やっぱり気にしてるんだね、ネオス》

やはり、融合使いとして敬遠されてしまう十代、それは精霊たるネオスも同じ……落ち込む彼をハネクリボーとユベルが励ましている。

 

 

「こうなったら……やるべき事は1つだな」

落ち込む十代を前に、遊海は動き出そうとしていた…!

 

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

「俺の名は白波遊海!遊馬達と同じく、こことは違う『世界』から、事故によってスタンダード次元に流れ着いた者だ!そして俺はスタンダード次元防衛隊『ランサーズ』と共にエクシーズ次元を助ける為にやって来た!!」

 

 

「ゆ、遊海…!?もう傷が治ってる!?」

 

「あんな大怪我、すぐに治らないよね…!?」

 

「シンクロ次元の時もそうだったが…遊海は、本当に何なのだ…!?」

エクシーズ次元の人々を前に再びの演説をする遊海、その姿を見たランサーズ達は驚愕する…先程の瀕死状態からまだ数時間しか経っていないのに、あれほど動けるはずがないと…。

 

 

 

「ハートランドの状況は凌牙やレジスタンスの黒咲から聞かせてもらった…融合次元・アカデミアによる侵略戦争、人々を襲ったデュエルモンスターズ達…そして人々のカード化……あなた達の感じた恐怖や悲しみは…他の世界の人々には想像する事はできないだろう……助けに来るのが遅くなって申し訳ない!!」

ハートランドの人々を前に頭を下げる遊海、その姿にハートランドの人々は胸を押さえる…。

 

 

「しかし、その日々はまもなく終わる!俺達、ランサーズとレジスタンスがこの次元を覆う絶望を祓う!その為に、俺達はハートランドへとやって来た!……だが、その前にハートランドの人々に承知してほしい事がある!」

頭を上げた遊海は静かにハートランドの人々へと呼びかける。

 

 

「俺達はハートランドを侵略したアカデミアを『殲滅』するのではなく、『降伏』させ…和解したいと考えている!」

 

「「「和解だって!?」」」

 

「アカデミアを許せってのか!?」

 

「俺達の家族や仲間を奪ったアイツらを!?」

遊海の思わぬ言葉にレジスタンスの大半から否定的な言葉が上がる…。

 

 

 

「……反対意見があるのは分かっている…だが、聞いて欲しい!アカデミアの者達も好き好んで戦争をしている訳じゃない!彼らもアカデミアの教育…いや、()()による被害者でもある!」

そして、遊海は語る…融合次元における歪んだ教育の事を…。

 

 

融合次元全土から強制的に集められた子ども達が過酷な訓練を強いられ、アカデミアの教えを『正義』だと信じ込まされ…戦地へと送り込まれている事を…。

 

戦いの中で異常な状況に気付いて『正気』に戻ったとしても、それがバレてしまえば仲間達によって裏切り者とされて『カード化』されてしまう事を…。

 

 

 

「俺は…ハートランドのみんなだけではなく、戦う事を強いられているアカデミアの子ども達の事も助けたい!!デュエルモンスターズは決して『戦争の道具』じゃない…思い出して欲しい!デュエルモンスターズはデュエルによって相手と語り合い、魂をぶつけ合う…人々を笑顔にするモノなのだと!!」

 

「みんなを、笑顔に……父さん…ジャック…」

遊海の演説を聞きながらペンデュラムを握り締める遊矢…彼は遊海の強い思いを感じ取っていた…。

 

 

 

「言葉だけでは、きっと俺の思いは…願いは伝わらないだろう……だから、この()()を見ていてほしい!──十代!!」

 

『ああ!!』

遊海の言葉と共に…十代が前に出る、デュエルアカデミア制服を来た十代にハートランドの人々は一瞬、体を強張らせた…。

 

 

「レジスタンスのみんなは良く知っていると思うが…彼は遊城十代!融合次元のアカデミアではなく、俺達の『世界』におけるプロデュエリスト養成学校・デュエルアカデミアでの俺の()()()だ!制服も良く似てるが…デュエルの楽しさを知る、誇り高い決闘者の1人だ!」

 

 

 

「えっ…遊海の教え子?」

 

「たぶんあの人、『世界』から来たカイトって人より年上だよね…?」

 

「年齢が合わないな…?」

遊海による十代の説明を聞いた遊矢達は疑問を抱く、カイト(ZEXAL)は十代に対して敬語を使っていた…そしてそのカイトが遊海の息子である凌牙が2()0()()だという事実を伝えた。

 

しかし、遊矢から見ても遊海は2()0()()()()()()()()()()()()、その遊海が十代を()()()と言った事……それはまさにあべこべのように思えた。

 

 

「………遊海って、()()なんだ??」

 

 

 

 

 

 

「これから、俺と十代でデュエルをする…もちろん()()()()も使う!!だが…見ていて欲しい!本当のデュエルを!!───いくぞ、十代!!」

 

『ああ、遊海先生!久しぶりにデュエルだ──!』

お互いに闘志を高め合う遊海と十代…2人の英雄による『決闘劇場(ヒーローショー)』が始まる!

 

 

 

 

 

遊海LP4000

十代LP4000

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!」

「俺はスケール1の『白翼の魔術師』とスケール8の『虹彩の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

遊海の背後に光の柱が現れ、透き通るスカートを履いた白衣の魔術師と赤い法衣の魔法剣士の姿が浮かび上がる!

 

 

PENDULUM!!

 

 

「これで俺はレベル2から8のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ!希望のペンデュラム!我が魂に宿る大いなる力よ!その力を呼び醒ませ!ペンデュラム召喚!!現れろ!『紫毒の魔術師』!そして幻影揺らめく二色の眼!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

赤のペンデュラムが軌跡を描く…そして禍々しい紫のローブを纏った魔術師と白い外骨格を持つオッドアイズが現れる! DEF2100 ATK2500

 

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

遊海LP4000

オッドアイズファントム 紫毒の魔術師 (P 白翼 虹彩) 手札1

 

 

 

 

《クルルルル…》

 

「『ファントム』…?どうした?」

ターンを終えた遊海…その姿を「オッドアイズ・ファントム・ドラゴン」──榊遊希のエースモンスターが静かに見つめている…。

 

《……マスター、このモンスターはもしかして───》

 

「────ああ…()()、なのかもしれないな」

アヤカの意図を察して静かに頷く遊海…その想いは…。

 

 

 

 

『いくぜ!オレのターン!ドロー!!』

『「クロス・キーパー」を召喚!』

青い鎧を纏う戦士が現れる! ATK400

 

『「クロスキーパー」の効果発動!このカードを墓地に送る事で手札・墓地から「E・HERO」または「N」モンスターを効果を無効にして特殊召喚できる!手札から来い!ネオスペースからやって来たHERO!「E・HEROネオス」!!』

十代の呼びかけに応え、正しき闇の力を宿した宇宙のHEROが現れる! ATK2500

 

『そして装備魔法「アサルト・アーマー」を「ネオス」に装備!攻撃力を300アップ!』

宇宙のHEROが強い闘志を纏う!

 

ネオスATK2500→2800

 

 

『バトルだ!「ネオス」で「オッドアイズファントム」を攻撃!ラス・オブ・ネオス!!』

 

「くうっ…!」

白きHEROの手刀がオッドアイズを粉砕する!

 

遊海LP4000→3700

 

 

『オレはカードを1枚伏せて、ターンエンド!』

 

十代LP4000

ネオス(アサルトアーマー) 伏せ1  手札2

 

 

 

『ヘヘッ…先制ダメージはもらったぜ?遊海先生!』

 

「ふっ…顔見せはここまでだ!いくぞ!」

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「この手札なら…こうだな!再び揺れろ!希望のペンデュラム!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから復活せよ!『オッドアイズファントムドラゴン』!」

再び赤の軌跡が揺れ動き、幻影のオッドアイズが復活する! ATK2500

 

 

「そして魔法カード『ペンデュラム・フュージョン』を発動!自分フィールドのモンスターで融合召喚を行う!この時、自分のペンデュラムゾーンにカードが2枚ある時、ペンデュラムゾーンのカードも融合素材にできる!俺はフィールドの『ファントム』とペンデュラムゾーンの『白翼の魔術師』を融合!」

 

『ペンデュラムゾーンから融合!?』

2体のモンスターが融合の渦に飛び込む!

 

「幻影纏う二色の眼よ!透き通る翼と共に嵐を纏え!!融合召喚!来い!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!!」

旋風を纏い、白い身体に稲妻を纏うオッドアイズが現れる! ATK2500

 

 

「『ボルテックス』の効果発動!このカードが特殊召喚に成功した時!相手フィールドのカード1枚を手札に戻す!一度退場してもらおうか、『ネオス』!!」

 

『「ネオス」!?』

吹き荒れる旋風が白きHEROを吹き飛ばす!

 

 

 

「バトルだ!『ボルテックス』で十代にダイレクトアタック!迅雷のスパイラル・バースト!!」

 

『まだだ!罠カード「NEX T」(ネオスペーシア・エクステンション)発動!手札から「E・HEROネオス」を守備表示で特殊召喚する!』

 

「甘い!『ボルテックス』の効果発動!自身以外のモンスター効果・魔法・罠カードの効果が発動した時、エクストラデッキの『白翼の魔術師』をデッキに戻す事でその効果を無効にし、破壊する!ボルテック・リフレクター!!」

 

『マジか!?うわぁ!?』

稲妻のブレスが罠カードを突き破り、十代にダメージを与える!

 

十代LP4000→1500

 

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊海LP3700

ボルテックス 紫毒 (P 虹彩)伏せ1 手札0

 

 

 

 

「先制ダメージが…なんだって?」

 

『やっぱり強いな、先生…先生のプレイングはいつもオレ達の想像の上をいく…それでも、オレだって負けてないぜ!』

 

 

 

 

『オレのターン!ドロー!』

『「ネオスペース・コネクター」を召喚!』

小柄な白い肌の宇宙人が現れる! ATK800

 

 

『「コネクター」の効果発動!召喚に成功した事で手札から「ネオス」を特殊召喚!』

 

「おっと!それは通せないな!『ボルテックス』の効果発動!エクストラデッキの『ファントム』をデッキに戻して効果を無効にし、破壊する!ボルテック・リフレクター!」

 

『ヘヘッ…本命はこっちさ!魔法カード「ネオス・フュージョン」発動!手札の「ネオス」とデッキの「Nフレア・スカラベ」を融合!』

 

「おっと!?」

モンスター効果を囮として、十代はさらなるHEROを喚び出す!

 

 

『融合召喚!来い!「E・HEROフレア・ネオス」!』

炎のエレメントを宿す宇宙のHEROが現れる! ATK2500

 

『そしてオレは墓地の「クロス・キーパー」の効果発動!自分が「E・HERO」融合モンスターの融合召喚に成功した時、墓地のこのカードを除外してカードを2枚ドローして、1枚をデッキの一番下に戻す!さらに、オレはフィールド魔法「ネオスペース」を発動!ネオスペースの力を得た「ネオス」とその融合モンスターの攻撃力は500アップし、エンドフェイズにエクストラデッキに戻る効果を発動しなくてよくなる!』

周囲が優しき闇の宇宙に変化する!

 

フレアネオス ATK2500→3000

 

 

『オレはカードを1枚セットする!そして『フレアネオス』の攻撃力はフィールドの魔法・罠カード1枚につき400アップする!フィールドの魔法・罠カードはオレの場の2枚に、遊海先生の場のペンデュラムゾーンのカードを含めた2枚!よって1600アップだ!』

 

「攻撃力4600…!やるな!!」

フィールドのカードの力を得たフレアネオスの力が増していく!

 

フレアネオス ATK3000→4600

 

 

『バトルだ!「フレアネオス」で「オッドアイズボルテックス」を攻撃!バーン・トゥ・アッシュ!!』

 

「罠カード『攻撃の無敵化』を発動!このカードはバトルフェイズにのみ発動できる!その効果で『ボルテックス』はこのターン戦闘・効果で破壊されず、さらにフィールドの魔法・罠カードが減った事で『フレアネオス』の攻撃力は400ダウンする!くううっ!!」

フレアネオスの火球は強靭なバリアに阻まれるが、その余波が遊海に襲いかかる!

 

フレアネオスATK4600→4200

 

遊海LP3700→2000

 

 

「上手く決まったと思ったんだけどなぁ!オレはこれでターンエンド!」

 

十代LP1500

フレアネオス ネオスペース 伏せ1 手札0

 

 

 

「やるじゃないか!十代!相変わらずお前のドロー運はすごいな!」

 

『へへっ…先生だって!オレも結構本気だったぜ?』

 

 

 

「遊海と十代…2人とも楽しそうだ…まるで、オレとジャックのデュエルの時みたいに……」

 

「融合召喚と効果の応酬…ハートランドの人々もデュエルに夢中になっている…」

 

「2人とも、すごい…!」

久々のデュエルに思わず笑顔になる遊海と十代、そのデュエルは融合召喚に嫌悪感を抱いていたハートランドの人々をもデュエルに夢中にさせ…ランサーズや黒咲達も目が離せないでいた…!

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「よし…勝利への方程式は全て揃った…!いくぞ!『貴竜の魔術師』を召喚!」

白いローブを纏う、龍脈の力を借りる少女魔術師が現れる! ATK700

 

「チューナーモンスターの『貴竜の魔術師』はドラゴン族のシンクロモンスターのシンクロ召喚にのみ使用できる!俺はレベル4の『紫毒の魔術師』にレベル3の『貴竜の魔術師』をチューニング!」

 

4+3=7

 

「荒ぶる炎が灼熱の竜を呼び覚ます!希望を示す道となれ!シンクロ召喚!!荒ぶる炎燃える二色の眼!レベル7!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!!」

灼熱の炎を纏うオッドアイズが咆哮する! ATK2500

 

 

 

『シンクロのオッドアイズ…!』

 

「『オッドアイズ』モンスター以外をシンクロ召喚に使用した事で『貴竜の魔術師』はデッキの一番下に送られる…そして『メテオバースト』の効果!このターン、自身の攻撃を封印する代わりにペンデュラムゾーンの『虹彩の魔術師』を特殊召喚!」

ペンデュラムゾーンから赤の魔導剣士が現れる! ATK1500

 

 

「そしてペンデュラムゾーンのカードがなくなった事で『フレアネオス』の攻撃力は400ダウン!」

 

フレアネオスATK4200→3800

 

 

『それでも、先生のモンスターは「フレアネオス」には敵わない!』

 

「まだだ!俺はレベル7の『オッドアイズボルテックスドラゴン』と『オッドアイズメテオバーストドラゴン』の2体でオーバーレイ!」

 

『なにっ!?』

2体のオッドアイズが銀河へと飛び込み、大爆発を起こす!

 

 

「絶対零度に眠りし龍よ!その静寂なる力を開放せよ!エクシーズ召喚!!現われろ!ランク7!!『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!!」

周囲に凍りついた風が吹き荒び、氷を纏いしオッドアイズが咆哮する!! ATK2800

 

 

「融合・シンクロ・エクシーズ…全部の召喚法を…!?」

 

「まるで、赤馬零児のようだ…!」

全ての召喚法を活用する遊海に驚く遊矢達…デュエルは加速する!

 

 

「バトルだ!『アブソリュートドラゴン』で『フレアネオス』を攻撃!」

 

『攻撃力が低いモンスターで攻撃!?(遊海先生は無駄な事はしてこない……ここは──)罠カード発動!「ヒーロー・バリア」!自分のフィールドに『E・HERO』が存在する時、相手の攻撃を無効にできる!その攻撃は無効だ!』

 

「今だ!『アブソリュートドラゴン』の効果発動!ORUを1つ使う事でモンスターの攻撃を無効にする!静寂のアイス・シールド!!」

 

『なにっ!?』

遊海の攻撃を無効にする十代…だが、その直前で氷の壁がフレアネオスとオッドアイズを分断する!

 

 

「そしてこの効果には続きがある!自分の手札・墓地から『オッドアイズ』モンスターを特殊召喚できる!墓地から蘇れ!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!!」

氷結したフィールドに再び旋風が吹き荒れる! ATK2500

 

 

「そして()()()()()()()『ボルテックス』の効果発動!『フレアネオス』を手札…エクストラデッキに戻す!!」

 

『やべっ!?』

再びの旋風が宇宙のHEROを吹き飛ばす、十代の墓地には『ネオスフュージョン』があったが、エクストラデッキに戻す効果は融合モンスター自身の効果でないと、身代わりにはなれない!

 

 

「『ボルテックス』でダイレクトアタック!迅雷のスパイラルバースト!」

 

『だあああっ!?』

稲妻の一撃が十代のライフを削りきった!

 

 

 

十代LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

『しまった〜…読み間違えた〜!!』

 

「ふっ…読んでて『ボルテックス』の攻撃を防いでも、『虹彩の魔術師』の追撃が残ってたけどな?」

 

『まだまだ修業が足りないな…でも、楽しかったぜ!』

デュエルが終わり、悔しげな様子の十代…しかし、その顔は笑顔だった。

 

 

「ハートランドのみんな、今のデュエルはどうだった?ワクワクしてくれただろうか!」

 

「「「おおお─!!」」」

 

「ねおすがカッコよかった!」

 

「ドラゴンもすごかった〜!!」

 

「オッドアイズのコンボがすごかった!!」

 

「HEROが強くてカッコよかった!」

遊海の呼びかけにハートランドの人々から歓声が上がる、遊海と十代の魂のデュエル…それは久しくデュエルの楽しさを忘れていたハートランドの人々に、デュエルのワクワクを思い出させていた…!

 

 

 

「よかった……みんな!忘れないでくれ!デュエルモンスターズに罪はない!デュエルモンスターズを正しく使うのも、悪い事に使うのもデュエリスト次第……俺達は正しいデュエルの力で、世界の平和を取り戻してみせる!!」

 

「「「わあああ!!」」」

遊海の宣言に再び歓声が上がる…たった1戦のデュエル、それは確かにハートランドに希望の光を灯したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「……正しいデュエルの力……みんなを笑顔にできる力、か…」

 

「遊矢…?」

その中で……遊矢だけは少し表情が暗かった…。



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英雄の力〜重なる面影〜

こんにちは!S,Kです!

アカデミアへの反撃を準備する遊海達…しかし、もう1人の主人公の表情は何やら暗く…?


それでは、最新話をどうぞ!


「あっ…凌牙!」

 

「ん…遊矢か」

夕暮れのハートランド、とある理由で避難民キャンプを彷徨っていた遊矢は顔見知り──凌牙の姿を見つけて声を掛けた。

 

 

「流星と父さんからシンクロ次元での活躍は聞いたぜ?シンクロ次元のキングを倒して、シンクロ次元の悪い慣習をぶち壊したんだろ?頑張ったじゃねえか」

 

「あ、いや…シンクロ次元を変えたのは遊海とジャック…シグナー達だよ、オレは……オレのデュエルでの『言葉』を見つけただけだから…」

シンクロ次元での出来事を聞いたらしい凌牙に褒められる遊矢…その言葉に遊矢は謙遜して応える。

シンクロ次元を変える為のお膳立てをした遊海とシグナー達…その活躍があったからこそ、自分のするべき事が分かったのだと…。

 

 

「そうか…それで、どうしたんだ?明日の打ち合わせはもう終わっただろ?」

 

「あ……遊海と話がしたいんだけど、何処にいるか知らないか?」

 

「父さんと?」

そして遊矢は本題を切り出す…遊矢は遊海の姿を探していたのだ。

 

「父さんなら…遊園地の端にあるスタジアムだな、トレーニングしてるはずだぜ?」

 

「トレーニング?」

凌牙の言葉に遊矢は首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「頼むぜ、ネオス!!」

 

《ハアッ!!》

  

「モードクリフォートα!鉄拳聖裁!!」

 

 

ドガン!!

 

 

スフィアフィールドに覆われたスタジアムに重い打撃音が響く…スタジアムの中心、そこでは赤いマントがはためく鋼の鎧を纏った遊海が数人の決闘者に囲まれていた…!

 

 

 

「ぐぐぐ…だあっ!!」

 

《拳の威力は落ちていないな!遊海!》

 

「ありがと…よ!!」

空中で白きHERO…『E・HEROネオス』と拳を衝突させた遊海はそのままネオスを押し飛ばす!

 

 

《ラス・オブ・ネオス!!》

 

「ぜえい!!」

地面に着地したネオスは即座に遊海へと肉薄、渾身の手刀を叩き付けるが…腕をクロスした遊海のガードに防がれる!

 

「エア・ブラスター!!」

 

《ヌウゥゥッ!!?》

ガードを解いた遊海は凄まじい拳圧で空気を殴りつけ、強力な()()()でネオスをスタジアムの壁まで吹き飛ばす!

 

 

「次!!」

 

「はい…!お願い!『エルシャドール・ミドラーシュ』!!」

 

《全力で行くよ〜!風王鉄槌!!》

 

「モード岩窟王!!がああっ……!?」

遊海の指示と共に放たれるのは緑髪の影人形──ウィンダが放った暴風の鉄槌、風速にすれば50mを超えるであろう風の衝撃を重量級の岩の鎧で受け止める…!

 

 

「っ───!!モード、聖刻!反射の陣!!」

 

《えっ…きゃ〜!?》

暴風に耐えた遊海はウジャト眼を刻んだ鎧へと換装、展開した魔法陣で暴風をウィンダへと跳ね返し、吹き飛ばした!

 

 

39

 

 

「いくぜ!『希望皇ホープ』!遊海にホープ剣スラッシュ!!」

 

《ホープ!!》

 

 

 

 

「『決闘の守護者』!!!」

そして二振りの剣を構えて遊海へと突撃する希望の戦士──その一撃を魂の大剣で受け止める!

 

 

《オオオッ……!!》

 

「ぐ、ぐぐ、ぐ……!だあっ!!」

数十秒の鍔迫り合いの末、遊海は希望の剣を受け流し、ホープの体勢を崩す!

 

勝利へ導く決着の剣(デュエル・カリバー)!!」

 

「ホープ!ムーン・バリアだ!!」

 

《ハッ!!》

体勢を崩したホープに放たれる光の奔流…だが、無敵の盾がその攻撃を防ぎきる!!

 

 

「そこだ!ネクロス・トリシューラ!絶対零度!!」

 

《ガッ!?》

 

「ホープ!?」

攻撃を防いだ僅かな『隙』…遊海はそこへ氷龍の力を解き放ち、ホープを氷の棺へと閉じ込めた!!

 

 

69

 

 

(来い!『No.69紋章神コート・オブ・アームズ』!!)

そして巨大な角を持つ異形の悪魔が出現…赤黒いエネルギーが集中する!

 

「モード太陽神……燃え上がれ…!太陽神の神炎!!」

黄金の鎧…太陽神の力を纏った遊海の両腕に太陽のエネルギーが集中していく!

 

 

 

(放て!ゴッド・レイジ!!)

 

「ゴッド・ブレイズ!!」

 

 

ドオオン!!

 

 

 

神の怒りと太陽神の炎が衝突…スタジアムは爆煙に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ………ありがとう翠、十代、遊馬、アストラル……だいぶ勘を取り戻せた…!」

 

「お疲れ様です遊海さん!」

 

「精霊と生身で戦えるって……やっぱり、遊海はすごいよな!」

 

(遊馬、我々もゼアルになれば戦えると思うぞ?)

 

「ゼアルなら…生身の先生よりは強いんじゃねぇか?」

スタジアムの地面に大の字に寝転がりながら遊海は特訓に付き合ってくれた翠達に感謝を伝えていた。

万が一に備えて精霊アーマーによるリアルファイトの特訓をしていたのである。

 

 

 

《フォウ!フォーウ!(遊海!お疲れ様!すごかった!)》

 

「ははっ、ありがとな…これで俺は万全状態だ…!待ってろよ、アカデミア…そして───」

 

「おーい!父さーん!」

 

「ん?凌牙と──遊矢か……アストラル」

 

(ああ、一度姿を隠しておこう)

翠達と合流し、肉体的にも精神的にも万全の状態を取り戻せた遊海、そこへ遊矢を連れた凌牙がやってくる…その姿を見た遊海はアストラルに姿を隠すように促した。

 

 

 

「どうした?わざわざ遊矢まで連れて…」

 

「ああ、遊矢が父さんと話がしたいらしくてさ」

 

「わかった…遊馬、十代、付き合ってくれてありがとな!夕食まで休んでてくれ」

 

「おう!それじゃ…小鳥の手伝いでもしてくっかな!」

 

「オレは…念の為に防壁周りを見回ってくるぜ!また後で!」

 

「だから休めって…」

凌牙から用件を聞いた遊海は遊馬達に解散を伝え、その場を仕切った…。

 

 

………

 

 

 

「ふぃ〜…それで、俺に何を相談したいんだ?」

翠や凌牙も席を外し、2人きりとなった遊海と遊矢…そして遊矢は悩みを口にする…。

 

 

「……エクシーズ次元に来てすぐ、アカデミアのデュエリストと戦ったんだ…」

 

「カイトと十代から報告は受けてる、銀髪のデュエリスト…アカデミアのエクシーズ次元侵攻の総司令官、エド・フェニックスと戦ったらしいな?」

 

「うん、その時は名前も知らなかったんだけど……なんだか、父さんを目の敵にしてたんだ……オレを父さんを誘き出すエサにするって……父さんがそんな恨みを買うような事をするとは思えなくてさ…」

謎のアカデミアのデュエリスト──エドとのデュエルを思い出し、表情を沈ませる遊矢…自分の尊敬する父が誰かを傷付けた……遊矢はその事が信じられずにいたのだ。

 

 

「……これは俺が予想した話になるが…構わないか?」

 

「あ…うん」

少しの間考え込んだ遊海は「予想」と前置きした上で語り始める…。

 

 

 

「おそらく、榊遊勝はアカデミアが侵攻して来た時にアカデミアへと立ち向かったはずだ、混乱するハートランド…その中で遊勝はエドと戦った……スタンダード次元でもトップレベルだった彼はおそらく、エドをエンタメデュエルで追い詰めた……そして、エドにエクシーズ次元への侵攻を止めるように諭したんだろう…『デュエルは人々を笑顔にする為のものだ』と」

 

「───うん…想像できる気がする……父さんだったら、絶対にそう言う…!」

遊海の語る『遊勝の物語』…それを聞いた遊矢の脳裏にはその光景が浮かんでいた…。

 

 

「でも…エドはその考えを認められなかった、素良やセレナの事を思い出せば分かると思うが…アカデミアは子ども達に『洗脳』に近い教育をしていた、エドの心は揺れたはずだ……アカデミアの『理想』と榊遊勝の『言葉』…どちらが正しいのか?───おそらく、その決着がつく前に遊勝は姿を消してしまった…横槍があったのか、何かの巻き添えになったのか…それは分からないけどな」

 

「……それで、エドは…アカデミアの『理想』が正しいと父さんに認めさせる為に、探してた…?」

 

「あくまでも想像だけどな?」

想像した遊勝とエドの因縁を伝えた遊海…その考えは真に迫っていた…。

 

 

「……オレ、初めてだったんだ……あんなに憎まれてデュエルするの……」

 

「遊矢…」

遊矢は今までのデュエルを思い返す……デュエルスタイルの対立で衝突してしまった勝鬨を始めとした『梁山泊塾』とのデュエル、シンクロ次元の収容所で『笑顔』を忘れ、デュエルの楽しさを否定した『秋雨』の長次郎とのデュエル…今までにも負の感情を向けられたデュエルは幾度もあったが、エドほど強い感情を向けられた事はなかったのだ。

 

 

 

「遊希兄、さっき言ってたよね……『デュエルはワクワクするもの』だ…『正しいデュエル』は世界を平和にして…みんなを笑顔にできるものだって………オレのデュエルで、エドを…アカデミアを説得できるのかな…?」

 

「…残念だが、それに関しては……俺には遊矢を納得させる答えは出せないな」

 

「えっ…?」

エドとの因縁を聞いて思い悩む遊矢…だが、遊海の思わぬ言葉に思わず問い返す。

 

 

 

「そもそも…俺と遊矢じゃデュエルスタイルが違う、遊矢は榊遊勝仕込みのエンタメデュエル……デュエルで笑顔を作る、という戦い方だ……だが、俺は……上手く言えないが…デュエルは楽しむもの、戦う事で相手と通じ合うものだと思ってる……でも、通じ合えない『敵』と戦う事もある」

 

「通じ合えない『敵』?」

 

「例えば…世界を滅ぼそうとした悪党とか、洗脳されて自分の意思がない奴、怒りと復讐に呑まれた者……そして、譲れない『覚悟』を抱いて向かってくる決闘者とか……俺はそういう奴とのデュエルは手を抜かず、叩き潰す事にしてる」

 

「────遊海って、何者なの?」

 

「ふっ…世界を何回か救って、人々を守ってきた……なーんて言ったら、信じるか?」

 

「え〜っと……」

そもそものデュエルスタイルの違いから、遊矢を納得させる答えを出せない事を伝える遊海…その例えを聞いた遊矢は困ったように笑っている…。

 

 

「要するに……時と場合によるって事だ、お前のデュエルがエドの心を動かせる…かもしれない、動かせないかもしれない……そんな時、俺達ができるのは…諦めずに最善の可能性を目指す……それだけなんじゃないか?」

 

「諦めず、最善を目指す……なんだか、分かる気がする…」

遊海なりの「答え」は遊矢の胸にストンと落ちるモノがあった、シンクロ次元におけるジャックとの決勝戦…遊矢はそこで追い詰められたが、最善を目指して足掻いた結果…自分の「言葉」であるペンデュラム召喚の重要さに気付き、勝利を掴む事ができたのだ。

 

 

「ふっ…少しでも参考になったなら良かった……そろそろ夕食かな、みんなの所に行こうか」

 

「あっ…待って遊海!」

 

「ん、どうした?」

沈み始めた夕陽を見た遊海が立ち上がる…だが、その背中を見た遊矢は声を掛けた。

 

 

 

「オレと…デュエルしてくれないか?明日の予行練習も兼ねて…!」

 

「────いいだろう、なら……場所を変えようか、あまり目立つとアカデミアを刺激するからな」

 

「場所を変えるって…?」

明日の作戦に備えて遊海へとデュエルを挑む遊矢…その提案を受けた遊海はしゃがみ込み、地面へと手を当てる。

 

 

 

我が闘いの舞台は此処にあらず…我が力を振るうは怒りにあらず、我が力は未来を導く為に使うモノ…その前には何者の力も必要なし…!展開せよ、我が覚悟!『尋常なる決闘の地(コロセウム・デュエル・フィールド)』!!

 

「な、なんだ─!?」

遊海を中心として渦巻くエネルギーの奔流…そして遊海と遊矢の姿は世界から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここは……『未来都市ハートランド』…?』

 

──いや、違う…だが、オレの知っているハートランドでもない…!──

遊矢が気付いた時、周囲は見知らぬ場所……正確には自分が知るハートランドやアクションフィールド『未来都市ハートランド』に似ているが、違う街へと変わっていた…突然の事に遊矢と共にいるユートも驚いている…。

 

 

「ここは…まぁ、特殊なアクションフィールドと思ってくれればいい…ああ、アクションカードは無いから『クロス・オーバー』は自分で発動してくれ」

 

『遊海…!』

 

──なんという闘気…これが凌牙の父親か…!!──

遊矢と向かい合うように立っていた遊海が抑えていた闘志を開放…遊矢の体に重圧がのしかかる!

 

 

『っ…いくぞ、遊海!!アクションフィールド「クロス・オーバー」発動!!』

 

「かかってこい!榊遊矢!!」

虹色のエネルギーがフィールドを包み込む…そして遊海と遊矢、2人の初デュエルが始まった!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP4000

遊矢LP4000

 

 

アクションフィールド『クロス・オーバー』発動中

 

アクションカードは手札に1枚のみ確保可能

 

 

 

 

 

「先攻は俺か…俺のターン!」

「俺は魔法カード『召喚士のスキル』発動!デッキからレベル5以上の通常モンスター『クリフォート・アセンブラ』を手札に加える…そして!手札からスケール1の『アセンブラ』とスケール9の『クリフォート・ツール』をセッティング!」

 

『「クリフォート」…!オベリスクフォースを蹴散らした時の…!』

遊海の背後に紫色の核石を持つモノリスと黄色の核石を持つ機械の姿が浮かび上がる!

 

 

PENDULUM!!

 

 

『これで俺はレベル2から8の「クリフォート」モンスターを同時に召喚可能!揺れろ!希望のペンデュラム!我が魂に宿る大いなる力よ…いまこそ、その力を開放せよ!ペンデュラム召喚!!手札からレベル6「クリフォート・ゲノ厶」!レベル7「クリフォート・ディスク」!』

遊海の頭上で赤のペンデュラムが軌跡を刻む…そしてオレンジ色の核石を持つ捻れた機械と青色の核石を持つ光を反射する機械が現れる! 

 

ゲノムATK2400→1800 ☆6→4

 

ディスクATK2800→1800 ☆7→4

 

 

「特殊召喚された『クリフォート』モンスターはレベル4、攻撃力は1800になる…そして『ツール』のペンデュラム効果発動!800ライフを払い…デッキから『クリフォート』カード、『クリフォート・シェル』を手札に加える!」

 

遊海LP4000→3200

 

「そして『ゲノム』と『ディスク』をリリース!『クリフォート・シェル』をアドバンス召喚!」

2体の機械がリリースされ、黒色の核石を持つ巻貝型の機械が現れる! ATK2800

 

 

「先攻は攻撃できない、カードを1枚伏せターンエンド…そしてこの瞬間、『アセンブラ』のペンデュラム効果発動!このターンにアドバンス召喚の為にリリースした『クリフォート』モンスター1枚につき1枚ドローできる!2ドロー!」

 

遊海LP4000

シェル (Pアセンブラ ツール)伏せ1 手札0→2

 

 

 

 

『っ…!いきなり攻撃力2800、それに手札まで…!』

 

「さぁ…ジャックを乗り越えたデュエルを見せてみろ、遊矢!」

万全の態勢を整える遊海…冷や汗を流しながら、遊矢は立ち向かう!

 

 

 

 

『オレのターン、ドロー!』

『よし、これなら…!オレはスケール3の「EMラディッシュ・ホース」とスケール8の「EMオッドアイズ・ユニコーン」でペンデュラムスケールをセッティング!』

遊矢の背後にダイコンのウマと二色の眼を持つユニコーンが浮かび上がる!

 

 

PENDULUM!!

 

 

『これでオレはレベル4から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!手札からレベル4「EMアメンボート」!そして雄々しくも美しき二色の眼!レベル7!「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」!』

青のペンデュラムの軌跡が揺れ動き、シルクハットを被ったアメンボと遊矢のエースであるオッドアイズが現れる! ATK500 ATK2500

 

 

「この瞬間!永続罠『機殻の再星(リクリフォート)』を発動!特殊召喚されたレベル5以上のモンスターの効果は無効となる!」

 

『効果を無効に…でも、今回は大丈夫!「ラディッシュホース」のペンデュラム効果発動!「オッドアイズ」の攻撃力を500アップし、「アメンボート」の攻撃力を500ダウンさせる!』

 

オッドアイズATK2500→3000

 

アメンボートATK500→0

 

 

『バトルだ!「オッドアイズ」で「クリフォート・シェル」を攻撃!その瞬間、「オッドアイズ・ユニコーン」のペンデュラム効果発動!「オッドアイズ」モンスターが攻撃する時、そのモンスターの攻撃力をフィールドの「EM」モンスターの元々の攻撃力分アップする!「アメンボート」の攻撃力は500!受けてみろ!螺旋のストライク・バースト!!』

 

「おっと…!中々の一撃だ!」

威力を増した螺旋の炎が巻貝を消し飛ばす!

 

オッドアイズATK3000→3500

 

遊海LP3200→2500

 

 

『よし…!オレはカードを1枚伏せて、ターンエンド!』

 

遊矢LP4000

オッドアイズ アメンボート (Pラディッシュ ユニコーン) 伏せ1 手札1

 

 

 

「なかなかのコンボだ!俺が『オッドアイズ』の効果を無効にしてなかったらワンショットキルだったな!」

 

『ありがとう!()()()!あっ……』

 

「遊矢……」

見事なコンボを見せた遊矢を褒めた遊海、その言葉に嬉しそうに応えた遊矢だったが……思わず口から飛び出した名は────

 

 

「……ごめんな、遊矢……俺はお前の『兄』にはなれない、それでも……あいつの『願い』は、俺と共にある──いくぞ!!」

 

『っ…!』

一瞬、言葉を失ってしまう遊海…だが遊希から託された『想い』と共に力を振るう!

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「再び揺れろ!希望のペンデュラム!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから『シェル』『ゲノム』『ディスク』!さらに、手札から『クリフォート・アーカイブ』!『クリフォート・アクセス』!」

 

『5体同時に…!』

再び赤のペンデュラムが揺れ動き、エクストラデッキに送られていた青・オレンジ・黒色の核石の機械に加え、緑色の核石の機械と赤色の核石の機械が現れる!

 

シェルATK2800→1800 ☆8→4

 

ゲノムATK2400→1800 ☆6→4

 

ディスクATK2800→1800 ☆7→4

 

アーカイブATK2400→1800 ☆6→4

 

アクセスATK2800→1800 ☆7→4

 

 

「俺は『ゲノム』『アーカイブ』『アクセス』をリリース!我が魂、我が相棒たる機殻の王よ…今こそ顕現せよ!!レベル10!『アポクリフォート・キラー』!!」

 

『で、でかい…!!』

3つの核石が異次元へと消え去り、遊海のエースたる虹色の核石が輝く巨大要塞が現れる! ATK3000

 

 

《マスター……》

 

「手加減はするさ…リリースされた『アーカイブ』の効果発動!相手モンスター1体を手札に戻す!『オッドアイズ』を手札に戻してもらう!」

 

『ペンデュラムモンスターは手札に戻しても、ペンデュラム召喚で戻ってくる!』 

 

「それはどうかな?」

 

『なにっ…あっ!?「オッドアイズ」のカードが!?』

緑色の核石の幻影が二色の眼のドラゴンを吹き飛ばす、そのカードは遊矢の手札に戻る前に次元の狭間に消えてしまった!

 

 

「永続罠『機殻の再星』の効果だ、特殊召喚されたレベル5以上のモンスター効果はエンドフェイズまで無効になり──フィールドを離れた時、除外される…そしてリリースされた『ゲノム』の効果発動!フィールドの魔法・罠カード1枚を破壊する!遊矢の伏せカードを破壊!」

 

『「EMコール」まで!?』

オレンジ色の核石の幻影が遊矢の伏せカードを吹き飛ばす!

 

 

「そして『キラー』の効果起動!このカードがフィールド上に存在する限り、特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする!機殻の重圧(クリフォート・グラヴィティ)!」

さらにキラーの展開した重力場が周囲を支配する!

 

アメンボートATK500→0

 

シェルATK1800→1300

 

ディスクATK1800→1300

 

 

『(まだだ…!「アメンボート」は相手の攻撃を無効に──)』

 

「『キラー』の2つ目の効果発動!1ターンに1度、相手は自分の手札・フィールドのモンスター1体をリリースしなければならない!」

 

『そんな…!?』

遊矢の場のアメンボが粒子に変わって消え去ってしまう…!

 

 

「バトルだ!『シェル』と『ディスク』でダイレクトアタック!!」

 

『くっ…うわああっ!?』

必死にアクションカードに手を伸ばす遊矢だが…シェルの突進が遊矢を弾き飛ばし、さらにディスクの閃光に吹き飛ばされる!

 

 

遊矢LP4000→2700→1400

 

 

「『キラー』でダイレクトアタック!ネクサス・アーク・キャノン!」

 

《攻撃コード認証…主砲、発射!》

遊海の宣言と共に虹色の光の奔流が遊矢へと襲いかかる!

 

 

「っ…アクションマジック『回避』!その攻撃を無効にする!!」

ようやく手にしたアクションカードを発動する遊矢…だが──

 

 

バキッ

 

 

「えっ───?」

 

 

 

虹色の閃光は遊矢が頼りにする防御を貫通…虹色の閃光が遊矢を呑み込んだ…。

 

 

遊矢LP1400→0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

 

『なん、で…?』

 

「『アポクリフォート・キラー』は自身のレベルより低いレベル・ランクのモンスターが発動した効果を受けず、魔法・罠カードの効果も受けない…『回避』じゃなくてダメージを0にするとか、バトルフェイズを終わらせるアクションカードなら…もう1ターンは凌げただろうな」

 

──遊矢が手も足も出ないとは…これが『英雄』か…!──

デュエルが決着し、アクションフィールドと『尋常なる決闘の地』が解除されて夕暮れのハートランドへと戻っていく、最後の攻撃を受けて倒れ込んでいた遊矢へとエースモンスターの効果を明かす遊海…その圧倒的な力にユートは驚愕していた。

 

 

 

 

 

「遊矢、俺にお前の兄…榊遊希の面影を重ねるのは仕方がない事だ………でも、俺は白波遊海…お前との『思い出』を知らない()()だ……そこだけは間違えたら駄目だ、遊希の為にもな……」

 

「遊海……」

倒れ込んだ遊矢の隣に座って語り掛ける遊海……彼は気付いていた、遊矢が未だに遊海に「榊遊希」の面影を重ねている事を……名前を呼ぶ時、遊希と間違えて呼ぶ時がある事を…。

 

 

「………今なら、誰も見てないぞ……俺は、お前の兄にはなれないが……胸を貸してやるぐらいはできる」

 

『遊海…ああ…うああああ……!!遊希兄…!!あああ──!!』

 

「……(この次元の遊矢は……本来の遊矢以上に悲しみを背負ってるな………どうしたものか……)」

遊海の穏やかな、優しい言葉に涙が溢れる遊矢…スタンダード次元の戦いから約2週間、「柚子を救出する」という目標やシンクロ次元の騒動、フレンドシップカップによる慌ただしさによって忘れる事ができていた悲しみが遊矢へと押し寄せる。

 

 

遊海は遊矢が落ち着くまで、その背中を優しく擦り続けた…。



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幕間〜逢瀬〜

「ぐう…ぐう………」

 

「ふがっ……もうたべられな……くか〜…」

 

 

 

「…………」

 

深夜、ほとんどの人々が眠りについたハートランド…権現坂のいびきや、沢渡の寝言が小さく聞こえる中、遊矢はテントの外で焚き火を見つめていた。

スタジアムで泣き疲れて眠ってしまい、目が冴えてしまったのだ…。

 

 

 

「………遊希兄……」

焚き火にあたりながら遊矢が呟いたのは、今はもういない『兄』の名前だった。

 

「榊遊希」……何らかの事故でスタンダード次元に流れ着いてしまった白波遊海が記憶を失っていた時の姿。

遊矢達と共に5年の月日を過ごした彼は舞網チャンピオンシップに乱入したアカデミア・オベリスクフォースへの怒りによって『厄災』へと変貌……駆けつけた凌牙によって倒され、遊海が記憶を取り戻した事で…その存在は遊海の中から消えてしまった、という…。

 

 

──また後で会おう!──

 

 

「何が、「また後で」…だよ…!遊希兄の、馬鹿…!全部、自分だけで抱え込んで…!」

遊矢の脳裏に蘇るのは最後に見た遊希の姿…不運が重なり、ボロボロの身体を引きずりながら…それでも明るく振る舞っていた気丈な背中だった。

 

 

 

 

「遊矢…?」

 

「あっ…柚子、ごめん…起こしちゃったか?」

 

「違うの、ちょっと眠れなくって…セレナはフォウくんとぐっすり……フォウくん、女の子の方が好きなのかな?」

 

「本当だ…いつの間に仲良くなったんだろ…?」

そんな時、女子に割り振られたテントから柚子が出てくる…彼女も眠れない様子だった。

なお、テントの中ではセレナがフォウを胸に抱いて穏やかな寝息を立てている…。

 

 

 

「……遊矢も、眠れないの?」

 

「……遊希兄の事、思い出してたんだ…」

 

「あっ…」

遊矢と一緒に焚き火にあたる柚子は遊矢が眠れない理由を聞いて思わず声が漏れる…。

カード化されてしまった人々は元に戻せる方法がある、だが…遊海が記憶を取り戻してしまった事で…榊遊希はもう戻ってこないと気付いてしまったのだ。

 

 

 

「いや、さ…遊希兄も『いつかは記憶が戻るといいな』って、いつも言ってたんだ……でもさ…!お別れを言う間もなく、いなくなっちゃうなんて、思わないじゃん…!」

 

「遊矢…」

目に涙を溜めながら、遊矢が呟く……もしも、遊矢達の目の前で遊希が記憶を取り戻す、という事があれば…遊矢も踏ん切りをつける事ができただろう。

 

だが現実は…遊矢達の知らない所で、普通なら経験しないであろう絶望、そして怒りと憎しみの中で…遊希は『災厄』と化して暴れ回った。

その最期は……優しかった遊希にとって、どれほど辛く…悲しい終わりだったのだろう…。

 

 

「……泣いちゃダメよ、遊矢……遊希さんは、遊矢の笑ってる顔が好きだったじゃない!自分の為に遊矢が泣いてるって知ったら……遊希さん、きっと…もっと悲しむと思う…!」

 

「柚子…」

落ち込む遊矢に柚子が語り掛ける…遊矢と同じように、目には涙を溜めていたが…いつも、誰かの為に頑張っていた遊希の姿を思い出し、遊矢を励まそうと思ったのだ。

 

 

「そうだ…!たしかデュエルディスクのアルバムに遊矢と権現坂のデュエルの後に撮った写真があったよね?」

 

「あっ…そういえば撮ったな、そんな写真…でも…これ、別のデュエルディスクなんだよな…」

そして柚子はとある写真の事を思い出す、熱戦となった舞網チャンピオンシップ出場を賭けた遊矢と権現坂のデュエル…その後に撮った思い出の写真の事を…。

 

ただ、遊矢のデュエルディスクはシンクロ次元に渡る際にLDS製の最新型に置き換わっている…最低限のデータ移行はしていたが、写真まで移したかは覚えていなかった…そしてデュエルディスクのメニューを開いて────

 

 

 

 

「───あれ…?メールが来てる…?日付は……バトルロイヤルの翌朝?全然気付かなかった…あの時はバタバタしてたもんな…差出人は─────遊希兄!?」

 

 

「えっ…!?」

遊矢はデュエルディスクの受信BOXにメールが届いていた事に気付く、その差出人は…その時点で記憶を取り戻し、白波遊海に戻っていたはずの遊希からだった。

 

 

「ど、動画が添付してある!なんで気付かなかったんだ…!?」

 

「と、とにかく見てみましょう!」

文面の無いメールに添付された『動画』…遊矢は震える指で再生ボタンを押した…。

 

 

 

『おはよう、遊矢!……このメールは準決勝?の日の朝に送信するように設定して……あ、決勝の日の方が良かったかな…?また撮り直せばいいか……設定はまた変えられるし…ぐだぐだだな…あはは……』

 

「遊希、兄…!」

映し出されたのは榊家の遊希の自室…夜らしく、窓の外は暗い。

そして全身傷だらけで失明した左目をバンダナで隠した白髪の少年──榊遊希が学習机の椅子に座った状態で写っていた。

 

 

 

『昨日の梁山泊塾の松星とのデュエル以来、なんだか変な予感がするんだ……この先の戦いで…僕が記憶を取り戻す、そんな予感が……遊矢は知ってると思うけど、記憶喪失には何種類かのパターンがある……記憶を失ったままの事、ある日突然に記憶を取り戻す事、そして……記憶を取り戻した時、記憶喪失の時の記憶を失ってしまう事……。

僕がどのパターンなのかは分からない、でも…お別れが言えなかった時の為に、この動画を撮っておく事にする……あ、やばい…今さら恥ずかしくなってきたぞ…!?メールにするか…?ああ、でも撮るしかない!!残さないと絶対後悔する!』

 

 

「ぷっ…ふふ…遊希さんらしいね…緊張するとあたふたしちゃうの…!」

 

「うん…いつもはクールぶってるのに、突然の事だとすっごい慌てるんだよな…!」

動画の中の遊希を見て思わず噴き出して笑ってしまう遊矢と柚子…あたふたしながらも動画の中の遊希は話を続けている。

 

 

 

 

『こほん……遊矢、洋子さん、そして…今はいない、遊勝さん……この5年間、本当にありがとうございました!何処の馬の骨かも分からない、傷だらけの僕を助けてくれて……「家族」にしてくれて、本当にありがとう!記憶を取り戻した「僕」……僕のデュエルディスクのデータによるとシラナミ ユウミって言うらしいんだけど…彼?僕?がどんな人間かは分からない……でも、この5年間は僕にとって本当に「宝物」みたいな時間でした!』

 

「遊希兄…」

動画の中で照れ隠しに笑いながら、遊希は遊矢…榊家の家族に感謝を伝える…その表情は本当に嬉しそうだった。

 

 

 

『遊勝さん、僕にアクションデュエルを…()()()のエンタメデュエルを教えてくれてありがとう!僕は少し恥ずかしがり屋で、上手くエンタメはできなかったけど…父さんの教えは、「デュエルで笑顔」をという言葉は、絶対に忘れない!……本当は、直接言いたかったんだけど……本当に、何処にいるんだろうなぁ…』

 

「遊希さん…」

少し寂しそうな表情で遊勝に感謝を伝える遊希…そして次は──

 

 

『洋子さん、いつも美味しいご飯を作ってくれてありがとうございました!あと…怪我が治りきってない時に包帯を変えてもらったり、熱を出した時に看病してくれたり……僕を貴女の息子にしてくれてありがとう、()()()……この前、母さんって呼んだら笑ってくれた時の笑顔……僕も嬉しかった!』

優しく強かった洋子へと感謝を伝える遊希…そして、最後は──

 

 

『そして……遊矢、僕をお兄ちゃんとして慕ってくれて、ありがとう……本当は、僕の方が年下かもしれないけど……身長は僕の方が高いから、兄でいいよね?……なんか、不安になってきたぞ……これで本当は遊矢より年下だったらどうしよう!?』

 

「遊希兄…しっかりしてくれよ……」

 

『───遊矢、()()()()?いま、絶対に笑ったよな?』

 

「えっ?」

動画の中から遊希が遊矢に問いかける…まるで、遊矢の表情を見透かすように…。

 

 

『笑ってくれたなら、良かった!梁山泊塾の勝鬨君とのデュエルの後から、ずっと表情が暗かったもんな……僕は、遊矢の笑顔が好きだから……だから、もし…この動画でお別れ…なんて事になっても、泣かないでくれよ?僕は死ぬ訳じゃない、()()()()()に戻るだけなんだ……だから、笑ってくれ!』

 

「「───」」

動画の中の遊希の言葉に遊矢と柚子は言葉を失っていた…自分も不安なはずなのに、遊矢の事を一番に考える遊希の優しさに…。

 

 

『遊矢、僕は直接見られなかったけど…沢渡君とのペンデュラムデュエル、本当にすごかった!まるで新しい時代のエンタメデュエルを見てるみたいで…本当に楽しかった!あのデュエルはきっと、遊矢の理想とするエンタメデュエルになったと思う!だから…遊矢はそのまま、エンタメデュエリストとして…みんなを笑顔にしてほしい!』

 

「遊希兄…!」

沢渡とのデュエルを例に出してエンタメデュエリストとしての遊矢にエールを送る遊希…そして…。

 

 

『遊矢、行方不明の素良君やユートの事…融合次元や次元戦争の事、不安な事はたくさんあると思う……でも、きっとなんとかなる!僕達のデュエルはみんなを笑顔にして、幸せにする為のモノだから!………だから、遊矢は………ああ、ダメだ……言葉が出なくなってきた………撮っといてあれだけど、この動画の出番…来ないでほしいなぁ……!!遊矢、頑張れ!お前のデュエルなら、きっと色んな事を変えられる!!記憶を取り戻しても──僕は、ずっとお前の味方だからな…!遊矢!!』

 

「っ…遊希兄…!!」

 

「遊希さんっ…!!」

泣き笑いの笑顔で遊矢へと最後のメッセージを伝える遊希…最後の最後まで、そのメッセージは遊矢達への『愛』に溢れていた…。

 

 

 

「……柚子、オレ…決めた…!オレのデュエルで、エドと語り合って…エクシーズ次元を救ってみせる!オレの、エンタメデュエルで…!」

 

「遊矢……うん!」

涙を拭いながら、遊矢は決意を新たにする…最後まで自分を信じてくれた遊希の想いに応える為に、エンタメデュエルでこの戦いを…次元戦争を終わらせるのだと…その決意に柚子も強く頷いたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…やっと、落ち着いたな…翠」

 

「はい…ふふっ…今日はお疲れ様です!遊海さん!えへへっ…」

遊矢が再び決意を固めていた頃、遊園地の難民キャンプから離れた場所で遊海と翠は二人っきりになっていた……璃緒や海亜達が気を利かせて二人の時間を作ってくれたのだ。

 

 

「遊海さん……ぎゅ〜って、してください!」

 

「ん?こうか?」

 

「えへへっ…やっぱり落ち着く〜…」

 

「子どもみたいだぞ?翠」

 

「体は子どもだも〜ん!」

胡座をかいた遊海の足の上に座って抱っこをせがむ翠…普段の彼女なら恥ずかしがるだろうが……子どもの体に引っ張られているのか、満足気な表情である。

 

 

「遊海さん…スタンダード次元から今まで何があったの?」

 

「ん…凌牙から聞いてるだろ?俺が復活した時の事は…」

 

「遊海さんの言葉で聞きたいの…遊海さんが私に会いに来てくれるまでの旅路を…」

 

「そっか……少し長くなるよ?」

 

「うん!」

翠にせがまれて遊海はスタンダード次元で目覚めてからの事…翠に再会するまでの「旅路」を語り聞かせる…。

 

 

 

 

舞網チャンピオンシップのバトルロイヤルの中で目を覚まし、世界を救えなかったと取り乱してしまった事。

 

 

凌牙から状況を聞いて「新世界」ARC次元の状況を把握…そして死に別れてしまった親友…克也と思わぬ再会を果たした事。

 

 

黒咲やセレナ達を襲っていたオベリスクフォースを蹴散らし、追加で派遣されたオベリスクフォースも粉砕した事。

 

 

遊矢と零児のデュエルを見届けた後、冥界から転生してきた遊戯や海馬社長、杏子や本田、舞、モクバや沙良と再会を果たした事。

 

 

記憶を失った自分──『榊遊希』として世話になっていた遊矢や榊洋子に感謝を伝え…ビデオメッセージで遊希から『願い』を託された事。

 

 

そしてランサーズの1人としてシンクロ次元へと渡り…牛尾哲や、ディヴァインと再会し…遊星の並行存在に出会った事。

 

 

収容所に囚われた遊矢達を救う為に脱獄を先導した事。

 

 

フレンドシップカップの前夜祭に乱入してジャックとデュエルで魂をぶつけ合い……その果てにシンクロ次元にいた遊星達6人がシグナーとして覚醒した事。

 

 

シティを変える為に遊星とアキの手でアカデミアのロジェを倒させた事…そして、シンクロ次元で目覚めた『冥界の王』とダークシグナー化したセルゲイと戦う事になり…勝ったものの3日間昏睡してしまった事。

 

 

昏睡から目覚めた直後にオベリスクフォースの襲撃が発生し、満身創痍のままで立ち向かって倒されかけ…シグナーとして『覚醒』を果たした龍亞や記憶を取り戻し、友人となったディヴァインに助けられ……『世界』から駆けつけたラプラスとブルーノのおかげで窮地を脱した事。

 

 

そして…遊矢の手でシティはあるべき姿を取り戻し、遊海はようやくエクシーズ次元に向かう事ができたのだという事を…。

 

 

 

 

「遊海さん…無理し過ぎです──!!」

 

「あたたた………いや、平常心じゃないと…やっぱりダメだなぁ…」

遊海の語る旅路を時に驚き、時に笑顔で、時に泣き顔で、時に血の気が引いた表情で聞いていた翠は遊海の胸ををポカポカと叩く……特に冥界の王案件とオベリスクフォース連戦はダメージが大きかったからだ…。

 

 

「ちょっとダメージは大きかったけど…今回の旅路に後悔はしてない、遊戯や克也、海馬社長…それに牛尾さんやディヴァイン…もう1度、みんなに会う事ができた……それだけで、俺の今まで全ての戦いは報われた…」

 

「遊海さん…」

晴々とした表情で遊海は翠に笑いかける…本来ならあり得ない『奇跡』の再会、それだけで戦いの苦労は報われたのだと…。

 

 

 

「さて……これで次はエクシーズ次元の開放なんだが……その前に、解決できる事から解決しようか……翠」

 

「うん…!」

粗方の旅路を話し終えた遊海は翠を見つめる、時空嵐によって幼児化してしまった可愛らしい姿の翠を…。

 

 

 

「アストラルの言葉が正しいなら、『ヌメロン・コード』の力は俺達には効かない…つまり、翠は()()で元に戻る必要がある………方法は()()()()()よな?」

 

「本当は、遊海さんが来る前にやろうと思ってたの…でも、()()()()……」

 

「そうだよな……でも、この方法しかないんだ……俺達にしかできない()()は…」

実は、翠だけは即座に肉体年齢の逆行から回復できる手段があった…しかし、それは強い苦痛が伴う……故に、翠は遊海が来るまでその方法を実行できなかったのだ。

 

 

 

「………フレア、頼む」

 

《ええ…翠、覚悟はできましたか?》

 

「……うん、遊海さんも頑張ったんだもん…!次は、私の番…!!」

遊海の肩に金色の小鳥…フレアが現れる、そして翠へと覚悟を問い──翠を元に戻す為の『儀式』が始まる…!

 

 

キィン─!

 

 

《キュアアアア─!!》

黄金の輝きと共にフレアが本来の姿──太陽神『ラーの翼神竜』として顕現する!

 

 

《翠、遊海…いきますよ…!!》

 

「はい…!!」

 

「頼む!!」

 

 

《我が身は太陽の化身…死と再生を司る、浄化の炎!ゴッド・ブレイズ・キャノン!!》

 

 

ゴウッ!!

 

 

「あうっ…────!!!!!

 

「っ…耐えてくれ、翠!!!」

太陽神の神炎が翠に向かって放たれ、翠の肉体は激しい炎に包まれる。

 

翠を元に戻す為の「儀式」…それは転生特典による肉体の『急速再生』を利用し、幼児化してしまった肉体を焼き捨てる事だった。

 

 

しかし、リスクもある。

 

 

例えば、遊海は幾度も致命傷の状態から急速再生による『復活』をしている為、激痛に慣れている…故に問題はない。

…だが、遊海が守り続けた事で翠は『致命傷』レベルの傷を負う事が少なく…痛みへの耐性が低い…。

 

その痛みに耐えられなかった場合、もう一人の『ミドリ』のように───

 

しかし、翠と遊海はこの試練を乗り越えなければならない…!

 

 

 

「あっ、ぐっ…うううう──!!」

 

「翠…!」

炎の中で必死に激痛による絶叫を押し殺す翠…それを見ていた遊海は上着を脱ぎ捨てると燃え盛る炎に腕を突っ込み──炎に包まれた翠の手を握り締めた…!

 

「あっ…!?ダメ、遊海さんまで…!!」

 

「言っただろ?もうお前を1人にしないって…お前が、ちゃんと元の姿に戻れるように…!俺は、絶対にお前の手を離さない!!」

 

「遊海さん…!」

炎に焼かれるというのは、想像を絶する苦痛を伴うという…無論、遊海は何度も経験している…翠に襲いかかるその激痛が少しでも和らぐように──そして元の姿に戻る道標となるように……遊海は自分の手が燃える事を気に掛けず、翠の手を掴んだのだ…。

 

 

「(私は、戻るんだ…!エクシーズ次元に来てからの私は、凌牙君や遊馬君達に守られてばっかりだった……だけど、私は「決闘王」の妻だから…!遊海さんの奥さんだから…!!)」

炎の中で翠はこの半年の事を思い返す。

 

 

不慮の事態で肉体年齢が逆行した事で混乱する遊馬達、そして襲い来るアカデミア…子供たちを守る為に咄嗟に振るった力はコントロールできずに街を大きく破壊してしまった。

そこからはデュエルや闘いに加わる事ができず、傷を負った遊馬達やレジスタンス、ハートランドの人々をひたすらに癒やす事に集中する日々だった…。

 

しかし、そんな日々もこの夜で終わる…力を封じられた『決闘王の妻』は──ここに力を取り戻す…!

 

 

「私は……遊海さんの隣に立つ、決闘者なんだから──!!」

 

キィン─!

 

炎の中で希望の光が輝き、変化が起きる。

 

 

炎の中に消えた翠の肉体が再生していく……それは、今までの幼い姿ではない。

 

遊海の肩より少し低いくらいの身長に、腰まで伸びた絹糸のような紫色のロングヘアー…そして穏やかな優しい紫の瞳。

 

 

決闘王の妻、白波翠はここに本来の姿を取り戻した…!

 

 

 

 

 

 

「はふぅ……怖かったぁ……」

 

「おっと…お疲れ様、翠」

無事に試練を乗り越え、本来の姿を取り戻した翠…だが、炎に灼かれたダメージでふらついてバランスを崩す…それを抱き留めたのは両腕を大火傷した遊海だった。

 

 

 

「おかえり、翠…よく頑張った、な……」

 

「はい!ありがとうございます遊海さん!あれ…?顔赤いですよ…?」

腕の火傷を再生させながら翠を労る遊海…だが、何故かその顔は耳まで赤くなっていた。

 

 

「翠、これ羽織ってて…………上着を脱いどいて良かった…」

 

「えっ……あっ///」

少し恥ずかしげな遊海の態度に翠は自分の状態に気付く…肉体は元に戻ったものの、()()()()()姿()だったのだ。

 

 

「たしか、賢者の鍵の中に翠の服の予備が…(ぎゅ)────翠?」

 

「…………はじゅかしい……この姿に戻ったら、子どもの姿になってた時の事が恥ずかしくなっちゃった…!!」

 

「あのねぇ……」

賢者の鍵の空間に服の予備を置いていた事を思い出した遊海…だが、扉を開く前に翠に後ろから抱き締められる。

どうやら、大人の精神に戻った事で子どもだった時の恥ずかしさがぶり返してしまったようだった…。

 

 

「翠?俺的には翠の今の姿の方がちょっと、その…困るから…早く服を………」

 

「み、見ないで…!今見られちゃうと色々思い出しちゃう…///」

 

「翠?翠さ〜ん……?」

 

「あうう〜…///」

 

 

 

 

 

 

《…とりあえず、人払いの結界を張っておきましょうか…》 

 

《目隠しの結界も張っておくね〜》

 

《まったく…結婚して何年経っていると思っているのやら……いい加減慣れればよかろうに…》

 

《ふふっ…それがあの二人の良い所ですよ、メガロック》

微笑ましい夫婦漫才を見ながら、精霊達は邪魔が入らないように気を使う……雲の切れ間からは穏やかな月の光が二人を照らしていた…。

 



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反撃のレジスタンス〜エンタメの力〜

こんにちは!S,Kです!

エクシーズ次元での戦いも最終局面…遊海達は世界を覆う絶望を祓えるのか…!


それでは、最新話をどうぞ!


「おはようみんな!昨日はよく休めたか?体調が悪いなら今のうちに言ってくれよ?」

 

早朝のハートランド、遊園地の広場に遊海の声が響く…そこには身支度を整えた遊矢達ランサーズ、そして遊馬や凌牙を始めとした七皇達、十代に流星と海亜、二人のカイト…主要メンバーが集まっていた!

 

 

 

「おはよう遊海!オレは大丈夫、いつでも行けるよ!」

 

「おおっ?遊矢、ずいぶんと元気じゃないか!(遊希の事をもう少し引きずると思ったが……夜に何かあったのか?)」

遊海の挨拶に元気に応える遊矢、そこには昨日の落ち込んでいた面影はない…隣にいる柚子も覚悟が決まった表情をしている事から、二人の間で何かがあったのだろうと遊海は考えた。

 

 

「……ねぇ、遊海の隣にいるのって…もしかして……?」

 

「翠さん、ですか?」

そんな時、おそるおそるといった感じで素良と柚子が質問する…遊海の隣には見慣れない…しかし、面影のある白いワンピースドレスを着た紫の髪の綺麗な女性の姿があったからだ。

 

 

「あっ、驚かせてごめんね!私は白波翠、昨日までの小さい私と同一人物よ?昨日の夜に頑張って大きくなったの!」

 

「「「「どうやって!?!?」」」」

改めてランサーズ達に自己紹介する翠だったが、想像以上のビフォーアフターに遊矢達の驚愕の声が重なる…なお、事情を知っている凌牙達は苦笑いしていた…。

 

 

「ふふっ…それはヒ・ミ・ツ!私と遊海さんだけの裏技なの〜」

 

「(綺麗…それに優しそう…私もあんな大人になりたいなぁ…)」

少しお茶目に遊矢達の質問をはぐらかす翠…その姿を見た柚子は大人な翠に憧れを抱いていた…。

 

 

 

「翠の事はちょっと置いといて…Wカイト!カード化解除装置の進捗はどうだ?」

 

「白波さん、その呼び方は……装置はあと1日…いえ、半日で完成させます!」

 

『まさかアカデミアのカード化装置の解析を終わらせていたとは…しかし、これで仲間達を助ける事ができる…!』

 

「わかった…2人はそのまま組み立てを続けてくれ!無理はしないようにな?」

話を変える為にカイト達に状況を確認する遊海、二人のカイトはその頭脳で既に装置の開発を終わらせようとしていた。

 

 

「よし…作戦を確認する!アカデミアの拠点はここから3キロ先の湾岸地区にある!そこを強襲し、アカデミアを降伏させ…停戦させる!……この作戦の鍵は遊矢、お前だ……お前の因縁、しっかり解決してこい!」

 

「ああ!」

遊海の言葉に遊矢が強く頷く…!

 

 

「ランサーズと遊馬達は基本的に露払いだ!オベリスクフォースやアカデミア生を制圧してくれ、ドルベ、アリト、ギラグはハートランドのレジスタンスを指揮して防衛を頼む!」

 

「了解した!」

 

「おう!」

それぞれのメンバーの役割を確認する遊海…その言葉に遊馬達も静かに頷く…。

 

 

「それから…柚子ちゃんとセレナちゃん…君たちは本来、アカデミアに狙われている身だ…本当は戦場に出てほしくないが、止めても聞かないだろう…権現坂君と素良君、そして流星と海亜、お前たちは2人の護衛を頼む!全員でこの戦いを乗り越える!」

 

「「「はい!」」」

そしてアカデミアに狙われる柚子とセレナ…その護衛を任された流星達が応える!

 

 

 

「ところでよぉ白波、拠点まではどう向かうつもりだ?ハートランドの街は今までの攻撃でボロボロ…大きな道は潰れてるし、アカデミアがうろうろしてる…さらに空は見張りの『古代の機械飛竜』が飛び回ってる、どう動いてもすぐに見つかるぜ?」

 

「ああ、その事か…それは───」

 

『敵襲─!敵襲─!!アカデミアが攻めてきたぁぁ!!』

 

「「「!!!」」」

移動手段を真月に問われ、答えようとする遊海…その時、レジスタンスの1人・アレンが敵襲を伝える!

 

 

「そうか…強襲チームは俺について来い!エクシーズ次元の戦いは……今日で終わらせる!!」

 

「「『はい!!』」」

 

 

「遊馬!無茶しちゃダメよ!」

 

「分かってる!行ってくるぜ!」

遊海の号令を聞いた遊馬や遊矢達は防壁へと向かった…!

 

 

 

 

 

 

「アヤカ、スキャン頼む!」

 

《了解!…アカデミア勢力、200人…『古代の機械混沌巨人』30体、『古代の機械兵士』100体…『古代の機械飛竜』20体…『古代の機械猟犬』50体を確認!》

 

「なんて数だ…!?」

 

「奴らめ…!戦争を終わらせようとしているな…!?」

防壁の縁に立つ遊海達…その目の前には無数の「アンティーク・ギア」モンスター達の軍勢が迫っていた…!

 

 

「ゆ、遊海!こんな数、どうするの…!?」

 

「遊矢、そんな不安そうな顔するな…お前はまっすぐ前を見ていればいい……行くぞ、翠!」

 

「はい!」

 

「えっ、ちょ─!?」

 

「「「飛び降りた─!?」」」

 

「心配すんなって!すぐになんとかなるからさ!」

不安げな遊矢の肩を叩いた遊海は翠へと声をかけ、高さ30mを越える防壁から()()()()()…遊矢達は思わず叫んでしまうが、遊馬は明るく笑っていた。

 

 

 

「精霊変身!!」

 

「ドレスアップ!!」

 

ドン!!

 

空中で赤いマントがはためく鋼の鎧、精霊アーマー・モードクリフォートαと紫の精霊衣装(バトルドレス)・モデルシャドールを纏った2人は土煙と共に地上へと着地する!

 

 

 

【出てきた!……たった2人…!?】

 

【怯むな!アークエリアプロジェクトの為に、今日こそハートランドを攻略するのだ!】

遊海達の登場にアカデミア生達がどよめく…!

 

 

 

「融合次元、アカデミアの兵士…いや、学生達に告ぐ!戦闘を放棄して降伏しろ、お前達の為そうとしている事は『正しい事』ではない!」

 

【笑わせるな、降伏などするものか!アカデミアは全ての次元を統合して『理想郷』を創ろうというのだ!大人しく協力しろ!】

 

「『理想郷』か……子ども達や何も知らないハートランドの人々を巻き込んで、平和な世界を破壊しておいて何が理想か!!お前達が作ろうとしているのは…恐怖と悲しみしかない『暗黒郷(ディストピア)』だろう!!」

アカデミアへと投降を促す遊海…しかし、アカデミアの隊長らしきオベリスクフォースがその言葉を一笑に付し、歪んだ理想を語る…その言葉は遊海の琴線に触れた…!

 

 

【見慣れぬレジスタンスめ、我らの理想を否定するか…ん?紫色の髪の女…?身長は違うが…()()()()()()()の紫の悪魔か?ちょうどいい…!総司令に良い報告ができそうだ!!】

 

ブチッ

 

「俺の妻を……なんだって?」

 

「あっ…ゆ、遊海さん落ち着いて…!」

さらに、オベリスクフォースは遊海の逆鱗に触れた、アカデミア生()()()を病院送りにした事で抹殺命令が出されていた子供姿の翠…それを知った事で堪忍袋の緒が千切れたのだ。

 

 

「もう少し穏便に済ませてやろうと思ったが、気が変わった…アヤカ!拠点の方向は!」

 

《11時の方向です、マスター》

 

「OK…!メガロック!!ウィンダ!!」

 

《任せろ…!鳴動富嶽!!》

 

「え〜と……ウィンダ、お願い!」

 

《りょ〜かい!風よ…吹き荒れよ!!》

 

【な、なんだ─!?!?】

拠点の方向を確認した遊海は精霊達に指示を出す…その剣幕から遊海のやろうとしている事を理解したメガロックは大地を隆起させ、ウィンダは荒れ狂う風で空を飛ぶアンティークギア達を一か所に集中させる!

 

 

「本当の決闘者(デュエリスト)の力を見せてやろう…『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!!」

さらに遊海は魂の大剣を手元に呼び出す!

 

「装備魔法『団結の力』『聖剣カリバーン』『聖剣ガラティーン』同時展開!」

さらに魂の大剣の刀身に3枚の装備魔法を叩き付ける!

 

 

【くっ…そんな剣一本で何ができる!潰せ!『古代の機械混沌巨人』!!】

 

《◇◇◇◇◇…!!》

何かをしようとする遊海へ駆動音を響かせながら巨人が拳を振りかぶる!

 

 

 

 

「束ねるは命の輝き──平和を求める人々の祈り…!」

上段に構えた大剣に虹色の光の粒子が集まっていく…!

 

 

 

「この一撃は絶望を裂き、世界を照らす希望の光!!」

魂の大剣から虹色の光の刃が噴き出し、強風が吹き荒れる!

 

 

 

勝利を導く希望の剣(デュエルカリバー・グリッター)──!!」

 

 

 

【はっ─!?】

 

振り下ろされたのは巨大な光の刃、それは凄まじい衝撃波を伴いながら、遊海に迫っていた『混沌巨人』や他の「アンティーク・ギア」モンスターを()()させながら直進…厚い雲に覆われていたハートランドの空をも斬り裂き、射線には光の道が現れた…。

 

 

 

 

《デュエルモンスター反応ゼロ、戦闘不能デュエリスト200人、流石ですマスター》

 

「いいや、まだ()()()をしただけさ」

 

【ひ、ひいい…!?】

 

 

「これが…遊海の本気…!?」

 

「あれだけのモンスター達が、一撃で…!?」

 

「父さん…派手にやり過ぎだって……」

アヤカの報告を聞いた遊海は大剣を地面に突き立てる…威勢の良かったアカデミア生やオベリスクフォースは常識外れの威力の攻撃を目の当たりにしてへたり込み、呆然としている。

そして、遊海の攻撃を見た遊矢達は言葉を失い…凌牙は頭を抱えていた…。

 

 

 

 

「翠、()()()()!転身!モード影霊衣(ネクロス)・トリシューラ!!」

 

「わかりました!転身!モデル影霊衣・グングニール!!」

そして遊海はさらなる一手を打つ為に氷龍の鎧を纏う!

 

 

「この一撃は必中の槍…道を示せ!氷結投槍(グングニール)!!」

 

「大いなる龍の力よ!全てを凍てつかせ、道を作れ!!絶対零度!!」

翠は氷で作られた槍を光の斬撃の轍へと投げ放つ…さらに、遊海がその槍に絶対零度の冷気を付与…それによって轍が凍りつき、氷の道を作りだした!

 

 

「凌牙〜!頼むぞー!」

 

「なるほどな……現れろ!『No.101』!『S・H・Ark Knight』(サイレント・オナーズ・アークナイト)!!」

 

101

 

「うおっ…!?デカイな!?」

 

「かっこいい!」

壁の下から凌牙に呼びかける遊海…その意図を察した凌牙は巨大な白い方舟を喚び出した!

 

 

「みんな!『アークナイト』に乗り込め!氷の道で拠点まで最短距離で進むぞ!」

 

「いや、移動手段…スケールデカすぎだろ白波!?」

遊海の考えた即興の移動手段…それは『アークナイト』で氷の道を滑走するという方法だった!

 

 

「出発だ!『アークナイト』!ドルベ、アカデミアの奴らは任せた!」

 

「分かった!武運を祈る!」

ドルベにアカデミア生の拘束を任せ、白き方舟は動き出す!

 

 

「よっと!別にコソコソする必要はない!どちらにしても勝負は一瞬だ」

 

「でも…やり過ぎよ父さん!いくら元々壊れてたとはいえ…こんなに街を壊しちゃってどうするの!?」

 

「心配するな璃緒…あとで()()()()!」

 

「巻き戻……えっ?」

 

「まずはアカデミアを止めてからだ…行くぞ!!」

翠と共に方舟に飛び乗って汗を拭う遊海、そこで璃緒が街を壊してしまった父を咎めるが…遊海には何か考えがあるようだった。

 

 

 

 

………

 

 

 

 

《マスター!アカデミアの要塞まで残り500メートル、間もなく道も途切れます!》

 

「ああ、見えてる!お前達、ここからは走るぞ!」

 

「「「はい!!」」」

滑走する事数分、瓦礫の防壁に囲まれたアカデミアの要塞が目に見える距離まで滑走した遊海達は地上へと着地、要塞に向かって突き進む!

 

 

 

《敵影感知!総数30!》

 

「ランサーズ!遊馬!凌牙……いや、チームZEXAL!オベリスクフォースとアカデミア生を制圧せよ!」

 

「チームZEXAL…なんかカッケェ!いくぜみんな─!!」

 

「「「おー!!」」」

 

「(すごい…!遊海の指示にみんなが従って…!これが『英雄』…!)」

アヤカが敵影を察知する、そして遊海の指示でレジスタンス…遊馬達『チームZEXAL』が散開、即座にアカデミアへと立ち向かっていく…その見事な連携に素良は驚いていた…。

 

 

 

 

 

【【【「デュエル!!」】】】

 

 

遊海LP4000

 

オベリスクフォースLP4000

オベリスクフォースLP4000

オベリスクフォースLP4000

オベリスクフォースLP4000

オベリスクフォースLP4000

オベリスクフォースLP4000

 

 

バトルロイヤルモード

 

 

 

「俺のターン!」

「悪いが…お前達に割く時間はない!魔法カード『真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)』を発動!デッキの『真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラック・ドラゴン)』と『真紅眼の凶星竜メテオ・ドラゴン』を融合!可能性を秘めし黒き竜よ!宙から降りそそぐ凶星の力を得て、流星の化身となれ!融合召喚!!『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』!!」

可能性の竜と凶星の竜が融合、宙を支配する劫火の竜が現れる! ATK3500

 

 

「『流星竜』の効果発動!デッキから『真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラック・フレア・ドラゴン)』を墓地に送り、その攻撃力分のダメージを与える!ダーク・メテオ・フレイム!」

 

【【【ぐあああっ!?】】】

空中から流星竜が隕石のような勢いで地面に激突、オベリスクフォースを吹き飛ばす!

 

 

オベリスクフォース✕6 LP4000→1600

 

 

「さらに魔法カード『黒炎弾』発動!相手に『真紅眼の黒竜』として扱う『流星竜』の攻撃力分のダメージを与える!頭を冷やして来い!」

 

【【【ぎゃああああ!?】】】

凶星の放った炎がオベリスクフォースを吹き飛ばした!

 

 

 

オベリスクフォース✕6 LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

「いっけぇ!『ホープレイV』!Vサラマンダー・インフェルノ!!」

 

「シューティング・ミラージュ!!」

 

「アルティメット・タキオン・スパイラル!!」

 

「バーニング・ソウル!!」

 

「ファイナル・フォール!!」

 

「スーパー・ヒート・メテオ!!」

 

【【【うわああああ!?】】】

 

 

「螺旋のストライク・バースト!!………す、すごい…!あの数のアカデミアを一瞬で…!」

アカデミア生を倒した遊矢が周囲を見回す…そこでは鋭角的な赤き希望皇や白き希望の竜、巨大な黄金のドラゴンや燃え盛る紅蓮の竜、星の血潮を宿すHEROがオベリスクフォースやアカデミア生を撃退していた…。

 

 

《敵影さらに追加…新手です!》

 

「むっ…あれは…」

アヤカの報告に遊海が拠点の方角を確認する、そこには増援のアカデミア生と軍服のような制服を着た、金髪と銀髪の女性達が立っていた…!

 

 

「父さん!アカデミアの『タイラー姉妹』だ!」

 

「タイラー姉妹…!」

 

『あらぁ、久しぶりじゃない凌牙…!この前の決着、つける?』

 

『グレース、油断するな…奴は強敵よ、相棒だったドルベとやらはいないみたいだけど』

敵方である凌牙へ馴れ馴れしく話かける銀髪の少女・グレース…それを諌めたのは軍人然とした口調の金髪の少女・グロリア…アカデミアでも上位の実力者達である。

 

 

 

『ノロマちゃんが慌てて出撃指令を出してきたと思ったら…なに?レジスタンスの反撃?』

 

『そのようね、しかし…私達の敵ではない…さぁ、かかってくるがいい!』

デュエルに飢えた獰猛な笑みを浮かべながらタイラー姉妹はデュエルディスクを構える!

 

 

「俺が相手をしてやってもいいが……遊矢、いってこい!お前の『エンタメデュエル』がアカデミアのデュエリストに通用するか試す時だ!」

 

「遊海…ああ、やってやる!」

なかなかの殺気を放つタイラー姉妹を見た遊海はデュエル相手に遊矢を差し向ける!

 

 

「黒咲!遊矢のフォローを頼む!お前が戦いの中で成長した姿を見せてくれ!」

 

「凌牙…分かった!レジスタンスとして、ランサーズとして…俺はアカデミアと戦う!」

そして凌牙が増援として現れたオベリスクフォースを相手にしながら、黒咲へと声をかける!

 

 

「黒咲…」

 

「…いくぞ、遊矢…エクシーズ次元の悪夢を終わらせる為に…俺達は戦う!」

 

「──ああ!」

遊矢に並び立つ黒咲…スタンダード次元に来るまでの彼は融合次元・アカデミアへの復讐心で心を閉ざし、復讐の為に戦い続けていた。

 

…だが、今は違う…ランサーズの仲間達や遊海と戦いを共にした彼は…仲間達の為にその力を振るう!

 

 

──遊矢、気をつけろ…『アマゾネス』使いのタイラー姉妹はオレ達の仲間、スペード校のレジスタンスを壊滅させかけている…凌牙やドルベが救援に来てくれていなければどうなっていたか…!──

 

「ありがとうユート…!いくぞ、アカデミア!!アクションフィールド『クロス・オーバー』発動!」

 

『アクションフィールド…?ああ、たしか本部の資料にあったわね?ランサーズって奴らが使う、アクションカードとかいうカードをデュエルに使えるってフィールド魔法!』

 

『どんなフィールドであろうと関係ないわ…ルールはタッグデュエル!フィールドと墓地は共有よ!』

 

 

獰猛なる狩人達とランサーズ…そのデュエルがついに始まる!

 

 

 

『『「「デュエル!!」」』』

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢&黒咲対グロリア&グレース

 

 

 

 

先攻を取ったのはタイラー姉妹の姉・グロリア、彼女は通常召喚を行えば特殊召喚を…特殊召喚を行えば通常召喚を封じる永続魔法『スロー・ライフ』を発動…さらにアマゾネスの支配者『アマゾネス女帝』を融合召喚し態勢を整える。

 

対する遊矢のターン、攻撃力2800の『アマゾネス女帝(エンプレス)』を倒せるモンスターがいない事からペンデュラム召喚によって守りを固めようとする遊矢…そこでグロリアは『アマゾネス』モンスターが存在する時に相手が特殊召喚を行なった時、その攻撃力の合計分のライフを回復できる永続罠『アマゾネス拝謁の間』を発動…ライフを回復させる。

 

 

そして続くタイラー姉妹の妹・グレースのターン…姉を守るようにアマゾネスの従える猛獣『アマゾネスペット虎獅子(ライガー)』を融合召喚によって喚び出し、さらに『アマゾネス女帝』の効果で貫通効果を付与され、遊矢達へと襲いかかる。

 

当然、遊矢はアクションカードによる回避を狙うが───

 

 

 

「バトルだ!『月光舞豹姫(ムーンライト・パンサーダンサー)』で『古代の機械猟犬』を攻撃!!」

 

「っ!?セレナ…!ぐあっ…!!」

 

「ぐうっ…!」

周囲はアカデミア勢力とレジスタンス・ランサーズの乱戦状態…リアルソリッドビジョンによる攻撃の流れ弾を危惧した遊矢達はそのまま攻撃を受けてしまう…!

 

 

「お前達!遊矢達から距離を取れ!デュエルの邪魔になる!相手はフレンドリーファイアも気にしないタイプだ!」

 

『そうはいかないわ!「アマゾネス女帝」!「相生の魔術師」と赤い帽子のデュエリストを攻撃よ!』

 

「っ…遊海!!」

戦況を見て声を張り上げる遊海…その姿から『指令塔』である事を見抜いたグレースが攻撃と共にリアルダイレクトアタックを仕掛ける──!

 

 

ミシッ…!

 

 

「はぁ…もう少しお淑やかにデュエルはできないのか?せっかく綺麗な顔をしてるのに……そんなんじゃ男も逃げちゃうぞ?」

 

『『はっ…?』』

戦場に鳴り響く金属音…遊矢の『相生の魔術師』を斬り裂いた無骨な大剣で遊海へと襲いかかった『アマゾネス女帝』だったが…遊海の()2()()でその攻撃を受け止められてしまっていた…!

 

 

「バトルだ!『武神帝─スサノオ』で『古代の機械猟犬』6体を全体攻撃、さらに手札から『オネスト』を捨てて効果発動!自身の攻撃力に相手モンスターの攻撃力を加える!」

 

【【【うわああああ!?】】】

さらに片手間でアカデミア生を撃破…その間、アマゾネス女帝は空中で動きを止められていた…。

 

 

 

「遊矢、流れ弾は気にするな…俺達が全部弾くから、お前達はお前達のデュエルをしていればいい…ほら、お返しだ!」

 

『嘘っ…!?』

 

『モンスターの攻撃を生身で止めた、だと…!?』

 

「やっぱり…遊海はすごいなあ…」

女帝をタイラー姉妹の方へと放り投げながら遊海は遊矢達に語りかける…その尋常ではない『強さ』にタイラー姉妹は驚愕している…。

 

 

 

『(た、戦う相手を間違えたかしら…!?こいつらを倒して、早く赤帽子の男をなんとかしないと…!)』

 

「余所見をしている暇はないぞ…!お前達が思う以上に、俺達は…強くなった!!」

 

『っ…!』

遊海の持つ規格外の力の一部を見たグロリアは遊海を脅威として認識する…だが、強いのは遊海だけではない。

 

 

続く黒咲のターン、遊矢のペンデュラムカードを使い『RR-シンキング・レイニアス』3体を喚び出した黒咲はエースモンスターである、特殊召喚キラーの『RR-ライズ・ファルコン』をエクシーズ召喚、融合モンスターである『アマゾネス女帝』を攻撃、『アマゾネスペット虎獅子』の効果で破壊はできなかったものの、大ダメージを与える事に成功…したかに思われた。

 

だが、タイラー姉妹も強者の一角…1ターンに1度だけ、受けた戦闘ダメージを回復できる永続罠『アマゾネスの秘湯』でダメージはリセットされ…さらに、1度だけ戦闘ダメージを0にする事ができる永続罠『アマゾネスの呪鏡』を発動する事で完璧な盤面を構築する。

 

この状況を乗り越えるには、盤面を構築する罠カードを破壊するか…効果ダメージで攻めるしかないのだが、タイラー姉妹は甘くない。 

 

 

一巡したグロリアのターン、『女帝』と『虎獅子』の連続攻撃を攻撃を無効にする『RUM-エスケープ・フォース』や墓地のエクシーズモンスターを特殊召喚できる装備魔法『RR-アイアン・ハート』でなんとか凌いだ黒咲だが…そのライフは300まで追い詰められてしまっていた…!

 

 

 

 

『これで次のグレースのターンでお前達は終わりだ!お前達を倒し…次はあの赤帽子を倒してやるわ…!』

 

「確かにお前達は強い…でも、それは無理だと思うな…だって───」

 

 

 

「バトルだ!『幻魔皇ラビエル』で『古代の機械混沌巨人』を攻撃!さらに『幻魔皇ラビエル─天界蹂躙拳』を捨てて効果発動!『ラビエル』の攻撃力は2倍になり、相手モンスター全てに攻撃できる!粉砕せよ!天界蹂躙拳!!」

 

《ウオオオオオオッ!!》

 

【【【【【【ぎゃあああ!?】】】】】】

 

   

 

『『はっ…!?』』

 

「白波遊海は……俺達とは次元が違いすぎる」

追い詰められた遊矢達の背後で巨大な幻魔が混沌巨人を捻り潰す、この時点で遊海は50人近くのアカデミア生を1人で撃退していた…その様子に戦場慣れしているであろうタイラー姉妹も言葉を失っている。

 

遊矢や黒咲にとって遊海や凌牙達の存在は心の支えとなっていた…絶望が支配するハートランドに輝く「希望」…その「光」は本来であればアカデミアへの怒りに囚われていたであろう黒咲やユート達が冷静さを保てる程の余裕を持たせていた。

 

 

 

「黒咲、力を貸してくれ…このターンでオレは…アカデミアの呪縛を打ち破る!」

 

「やってみろ、遊矢!」

追い詰められた状況を前に遊矢は決意を固め…運命のカードをドローする!

 

 

 

 

「オレのターン、ドロー!!来た…!」

運命のカードをドローする遊矢…その一枚は遊矢の原点『スマイル・ワールド』だった!

 

 

「漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

 

『笑えないわ…何をしようって言うの?』

 

「(いけるはずなんだ…!オレとユートと黒咲、そして…父さんの力を合わせれば…!)」

ペンデュラム召喚と伏せていた『死者蘇生』を使い、反逆の牙を喚び出した遊矢…だが、タイラー姉妹のライフは『アマゾネス拝謁の間』の効果で10000を超えてしまった…普通ならば削りきる事など不可能なライフ…遊矢は乗り越える事ができるのか…!

 

 

 

「レディース&ジェントルメン!さぁ、皆さまご注目!!」

 

 

『な、なんだ?』

 

【いきなり声を張り上げたぞ…?】

 

「おっ…!?始まるのか?遊矢の『エンタメデュエル』って奴が!」

 

(なるほど、自分のデュエルをショーに見立てる…それが彼のデュエルか)

乱戦の続く戦場で声を張り上げる遊矢…その声に思わずアカデミア生達はデュエルの手を止めてしまう。

 

 

 

「今、オレ達のライフは僅か300!そして相手のタイラー姉妹のライフは1万を越えています…これを全て消し去る事ができましたらご喝采!!」

 

『私達のライフを消し去る…?そんな事は不可能よ!』

 

『私達のフィールドには「アマゾネスの呪鏡」がある、戦闘ダメージは無効にできるのよ?』

 

「それはもちろん覚えています!ですが…不可能を可能にしてこそ『エンタメ』…まずは舞台を整えましょう!」

呆れた様子のタイラー姉妹を前に仰々しく頭を下げた遊矢は逆転への準備を整える!

 

 

 

「オレは永続魔法『ミラクル・ロケット・ショー』を発動!」

 

『わぁ…!なかなか綺麗じゃないの!』

まずは永続魔法を発動…そのエフェクトで周囲が暗くなり、デフォルメされた星や銀河の景色が世界を彩っていく!

 

 

「このカードの効果によって相手モンスターは戦闘では破壊されなくなり、受ける戦闘ダメージも0になります!」

 

【ダメージを0にする?そんなんでどうやって勝つつもりだ?】

 

「それは見てのお楽しみ!そして…このカードこそ世紀のショーのキーカード!魔法カード『スマイル・ワールド』を発動!その効果によってフィールドの全てのモンスターの攻撃力はフィールドに存在するモンスター1体につき100アップします!フィールドには4体のモンスター!400アップ!」

 

『なっ…?私達のモンスターの攻撃力もアップさせるだと?』

続いて『スマイルワールド』が発動…星々の世界に笑顔のマークが彩りを加える!

 

「黒咲!力を借りるよ!『ライズ・ファルコン』の効果発動!ORUを1つ使い、相手の特殊召喚されたモンスターの攻撃力の合計分、自身の攻撃力をアップさせる!その攻撃力は6600!」

黒咲のエースがその力を発動、攻撃力を強化する!

 

 

 

──なるほど…そういう事か…!──

 

「ユート、なかなかいい感じだろ?続いて『ダークリベリオン』の効果発動!ORUを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を半分にして…その数値分、自身の攻撃力をアップする!オレはこの効果を『虎獅子』に2回使います!トリーズン・ディスチャージ!」

さらにユートのエースたる反逆の牙の紫電が虎獅子の力を奪い去る!

 

 

 

『モンスターの攻撃力を上げたところで…!お前の攻撃はお前自身の「ミラクルロケットショー」で無効になる!』

 

「いいや!お楽しみはこれからだ!

遊矢の無意味な行動に苛つくグロリア…しかし、遊矢は明るくお決まりのセリフを口にした!

 

 

 

「皆さま!攻撃力が6600になった『ライズ・ファルコン』と攻撃力5075となった『ダークリベリオン』の攻撃にご注目ください!狙うは攻撃力725となっている『アマゾネスペット虎獅子』!」

 

【な、なんだ?何が起きるんだ?】

 

【モンスターがロケットに乗り込んだぞ??】

 

(なるほど…)

 

「アストラル?もうタネが分かったのか?」

 

(ああ、榊遊矢達は戦闘によるダメージを封じられている…さらに攻撃は『虎獅子』にしかできない…ならば狙うのは──効果ダメージ、彼はそれを誰も()()()()()()()()()()()行おうとしている様だ)

遊矢の宣言にざわめくアカデミア生達…その中でアストラルはいち早く遊矢の意図を察していた。

 

 

「いきますよ〜!!3!

 

「「「2!!」」」

 

【【「「『1!!!』」」】】

 

 

「発射!!」

遊矢のカウントダウンに重なるアカデミア生やランサーズ達の声…そしてハヤブサとドラゴンを乗せたデフォルメロケットが虎獅子に向かって発射され───

 

 

ボッカーン!!

 

 

『『うわああ〜!?』』

 

【おおお!?】

 

【すっげー…】

衝撃を伴わない光の爆発がタイラー姉妹の目の前で炸裂、フィールドを眩い光が埋め尽くし…アカデミア生達は目を奪われる…。

 

 

 

『あは…アハハハ!面白〜い!!』

 

『でも、ダメージは0!何がしたかったの?』

遊矢の迫力あるショーを見て思わず笑ってしまうタイラー姉妹…そしてそのラストは───

 

 

「ここで『ミラクルロケットショー』のもう1つの効果発動!バトル終了後にこのターンに無効にした戦闘ダメージの合計分、つまり10225ダメージを相手に与えます!」

 

『な、なに─!?』

 

「ウッソー!?」

空にフィナーレを飾る大きな花火が打ち上がる…起死回生のミラクルショーデュエルは遊矢達の勝利で幕を閉じた…!

 

 

 

 

グロリア&グレース LP0

 

遊矢&黒咲 WIN!

 

 

 

 

 

「皆さま!お楽しみ頂けましたでしょうか?これが榊遊勝直伝のエンタメデュエルでございます!」

 

【【【おおお〜!!】】】

 

『すごかった…』

 

『こんなデュエルが、あるなんて…』

礼を以てデュエルを締めくくる遊矢、それと共にアカデミア生から歓声が上がる…そしてタイラー姉妹は初めての『エンタメ』の衝撃を受け過ぎて腰を抜かしてしまっていた…。

 

 

 

「アカデミアの奴らの敵意が薄れていく…」

 

「すっげーな!デュエルでアカデミア達を笑顔にしちまった!」

 

「あれは…私達にはできないデュエルね」

 

「遊矢君のエンタメデュエル…すごかったね!」

そして遊馬や凌牙達も遊矢のデュエルに感心していた…デュエルをショーに見立てるデュエルスタイルは真似できないデュエルだったからだ。

 

 

 

 

『な、なにをしているのです!?タイラー姉妹!レジスタンス如きに敗れるなど!ただでさえアークエリアプロジェクトは6ヶ月と18時間35分も遅れているというのに!!』

 

 

「なんだ?アイツ…?」 

 

「どうやら、アカデミアの上官らしいな」

その時、何処となく生真面目で小者っぽい…おかっぱ頭の中年が現れる…彼は野呂守(ノロ マモル)、エクシーズ次元侵攻の副指令官である。

 

 

『他の兵士達も気の抜けた表情を…!アカデミア本部からの援軍はまだか!!』

 

「その援軍とやらが来る前に…俺達がこの戦いを終わらせる!」

 

「遊海…!」

気の抜けてしまったアカデミア生達を見て苛立つ野呂…その前に臨戦態勢の遊海が立ち塞がる…!

 

 

 

「遊矢、よくやった…お前のエンタメはアカデミアにも通用する……次は俺達が力を見せる番だな」

 

「おう!任しとけ!」

 

「これ以上…アカデミアの好き勝手にはさせねぇ」

 

『ひいっ…!?』

魂の大剣を担ぐ遊海の隣に希望皇を従えた遊馬と黒き槍術士を従えた凌牙が並び立つ…その威圧感に野呂は思わず尻餅をつく…!

 

 

 

 

【誰も手出しするな!レジスタンスは…榊遊矢は!ボクが葬り去る!!】

 

「「「っ!?」」」

 

「「エド…!」」

その時、静まり返った戦場に凛とした声が響く…それはブルー制服のアカデミア生達を引き連れた総司令官、エド・フェニックスの声だった。

前線での『スマイル・ワールド』の発動反応を確認して飛び出してきたエド…その姿に遊矢と十代が思わず拳を握り締める。

 

 

 

エクシーズ次元の戦いもついに大詰めに差し掛かろうとしていた…!



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笑顔を取り戻す為に──運命の戦士と勇気の眼──

こんにちは!S,Kです!

一ヶ月振りの投稿…お待たせしてしまい、申し訳ありません!
6月が月初から異常に忙しく、さらにメインゲームのfgoの攻略などで時間がかかってしまいました…。


ついにぶつかりあう遊矢とエド、遊矢はエドに笑顔を取り戻す事ができるのか…!   

それでは、最新話をどうぞ!


【誰も手出しするな…!レジスタンスは…榊遊矢は、ボクが葬り去る!!】  

 

「エド…!」

エクシーズ次元を救う為に快進撃を続けていた遊海と遊矢を始めとしたレジスタンス・ランサーズ連合…彼らの前に侵攻軍の総司令官、エド・フェニックスが姿を現した…!

 

 

 

 

「お前が侵攻軍のリーダーか、俺の名は白波遊海…スタンダード次元防衛隊ランサーズのリーダー代理、そして──『()()()』だ」

 

【決闘王…?聞いた事のない称号だな、しかしランサーズか…まさか、自分からボク達に狩られに来るとは】

エドを前に名乗る遊海…だが、エドは大きな反応──何かを思い出したような様子は見せなかった…。

 

 

《マスター、エド・フェニックスから遊戯さんや牛尾と同じエネルギー反応……『絆の欠片』を確認しました、おそらく……榊遊勝への憎しみや成長環境による影響で覚醒していないものと思われます》

 

「そういう事か…アカデミアは子ども達に洗脳に近い教育をしている、それがエドの心を……本来のエドが持っているはずの『決闘者の魂』を封じ込めているのか…!」

アヤカの知らせた分析結果から遊海はエドの状態を考察する…。

 

融合次元のエドもスタンダード次元の遊戯達やシンクロ次元の牛尾・ディヴァイン達のように遊海との()に導かれた『転生者』ではある。

しかし、アカデミアによる『洗脳教育』によって…本来目覚めるべき決闘者の『魂』が封じられた状態にあるのだと…。

 

 

 

『そ、総司令官殿!?たかがレジスタンスやランサーズ如きに直々の出陣とは…いささか大げさでは…』

 

【野呂、お前は黙っていろ…オベリスクフォース以外の兵士達ではレジスタンスはともかく…ランサーズや、赤帽子の男──白波遊海に勝てはしない……そこまで分析力がないとは思っていなかった】

 

『あ、いや、それは…』

 

【キミにはあとで話がある…今の手出しは無用だ】

 

『ひっ…!?(しまった…!独断でプロフェッサーへ援軍を要請していた事がバレている…!!)』

指令官であるエドが戦場へ現れた事に動揺し、ゴマをする野呂…その言葉を切り捨て、エドはデュエルディスクを構える…!

 

 

 

「エド…!」

 

「今は我慢してくれ、十代……この因縁はこの次元に生きる遊矢とエドのモノだ……」

 

「遊海先生…」

自分の知るエドとは違う、冷酷な姿を見せるエド・フェニックスを前に十代は拳を握り締める…その肩を叩いた遊海は遊矢へと向き直る。

 

「行って来い、遊矢…お前のエンタメデュエルであいつの……エドの心を救ってやってくれ」

 

「遊海…ああ!!」

遊矢は遊海の言葉から今までにない「重さ」を感じていた…まるで、悪に堕ちてしまった()()を想うような……そして遊矢は歩み寄るエドと向かい合う…!

 

 

「頑張って!遊矢!!」

 

「遊矢!これがこの戦いの分水嶺だ!お前のデュエルで戦い抜け!!」

 

「柚子…権現坂…!オレは…デュエルでエドを笑顔にしてみせる!」

戦いを前に遊矢に声援を送る柚子と権現坂…ランサーズやレジスタンス、エクシーズ次元の人々の想いを背負い…遊矢の戦いが始まる─────

 

 

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

 

 

《次元間転移の反応を確認!パターン・アカデミア!》

 

「っ…!こんな時に援軍か…!」

その時、遊矢とエドの中間地点に光の粒子が集う…それはアカデミア製の次元転移装置独特の反応、そして現れたのは────

 

 

 

【───ほう、どうやら…一触即発、といった雰囲気のようだな】

 

 

【なっ、お前…貴方は…!?】

現れた人物が静かに目を開ける…深い青色の髪に鋭い目付き、そしてカスタムされたデュエルアカデミア・オベリスクブルー制服のコートを纏う男…その姿を見たエドは動揺を隠せなかった…!

 

 

「『帝王(カイザー)』…!?」

 

「カイザー…!?なんでカイザーが!!?」

 

『お、おおおー!!プロフェッサー!まさか、アカデミアの最高戦力たる()()()を派遣してくださるとは!!』

 

「……なるほどな、こちらでも…お前の強さは変わらない、か…」

その姿を見た素良は言葉を失い、十代ですら目を見張る……野呂がアカデミア本部へと要請していた援軍……それはアカデミアにおける伝説──『帝王』丸藤亮だった…!

 

 

 

 

【プロフェッサーの命でレジスタンス・ランサーズの殲滅の為に派遣された………あれがランサーズか】

 

「っ…!!(なんだ、このプレッシャー…!?ジャックと同じくらい、強い…!!)」

周囲を一瞥した丸藤亮──カイザーが遊矢に目を向ける、そして遊矢は肌で感じ取った…目の前の男がシンクロ次元の王であったジャック・アトラスと同等の強さを持っている事を…。

 

 

【プロフェッサーの命令といえど…このデュエルの邪魔はさせない!】

 

ビシッ!!

 

「っ…!またデュエルアンカーか!!」

 

[フィールド魔法『クロス・オーバー』発動!]

 

「遊矢!」

遊矢に狙いを定めたように見えたカイザー…それを遮るようにエドはデュエルアンカーを放ち、遊矢のデュエルディスクを強制的に起動する!

 

 

【早まるな、エド・フェニックス…俺の相手はその小僧ではない…】

頭に血が昇っている様子のエドに肩を竦めながら…カイザーはその目をある男に向ける…!

 

 

【お前が赤帽子の決闘者──白波遊海だな?】

 

「ああ、その通りだ……そういえば、アカデミアの最優先排除対象って奴にされてたか?」

 

【そうだ、俺の最優先指令は…あなたを排除する事だ】

鋭い目で遊海を睨むカイザー…その圧を受けながら、遊海は飄々としていた。

 

 

「そうか…ならば、ランサーズの1人として…そして『()()()()()()』として…()()で相手になろう!!」

 

【望む所だ…全力の貴方と戦い、()()()()()()()()()の誇りを示そう!!】

 

 

「なんという闘志のぶつかり合い…!気を抜けば持っていかれる…!!」

 

「あれがアカデミアの『伝説』のデュエリスト…!話には聞いていたが、これほどとは…!!」

お互いに口上を述べ、火花を散らす遊海とカイザー…その闘志のぶつけ合いにランサーズや遊馬達も冷や汗を流す、その威圧感に耐えられなかったアカデミア生の一部は膝をついてしまっている…。

 

 

「遊海待って!カイザーは…!!」

 

()()()()()、大丈夫だよ素良君……これは戦争じゃない………()()の決闘だ」

 

「やく、そく…?」

不安そうな表情で遊海に話かける素良…その不安を晴らすように軽く頭を撫でた遊海はカイザーに向き直る。

 

 

「ここでは遊矢のデュエルの邪魔になる…場所を変えよう」

 

【ああ、いいだろう】

 

『ほっ!?へ、兵士達よ!カイザーを援護するのです!!』

 

「遊馬、こっちは任せていいか?」

 

「ああ!遊海の応援に行っていいぜ!シャーク!璃緒!」

 

「遊矢の戦いは僕達が見届けるよ!」

 

「流星君、お願いね!」

遊矢とエドのデュエルを前に戦いの場を移す遊海とカイザー…それを見た野呂がアカデミア生の半分をカイザーの援護に向かわせる、それを見たレジスタンス・ランサーズも翠・凌牙・璃緒・素良が遊海の援護へと向かった…!

 

 

 

「ああ、そうだ…アヤカ!中継モードを起動!ハートランドの人々に、遊矢の戦いを届けてやってほしい!」

 

《了解ですマスター!「アポクリフォート・キラー」ステルスモードで現界…映像投影を開始します!》

静かに歩きながら遊海がアヤカへと指示を出す…そしてアヤカは真体である機械要塞をハートランド上空に展開、ネオ童実野シティでの遊星対Z-ONE戦のように映像をハートランドへと映し出した…。

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

【これ以上、邪魔はさせない…!フィールド魔法『金網チェーン・デスマッチ』発動!】

 

「っ…閉じ込められた…!」

遊海とカイザーが去るのを見届けたエドがフィールド魔法を発動…周囲が高い金網の壁に囲まれていく…!

 

 

【改めて名乗ろう…!ボクはアカデミア・エクシーズ次元派遣軍総司令官、エド・フェニックス!榊遊矢…今回こそ決着をつける!!】

 

「オレは…オレはランサーズの()()()()()()()()()()、榊遊矢!このデュエル…受けて立つ!!」

お互いに名乗りを上げる遊矢とエド…エクシーズ次元とエドの心を救う為のデュエルが始まった…!

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対エド

 

 

 

 

先攻を取ったエドは蜥蜴人のようなHERO『D・HEROディシジョンガイ』を喚び出し、ターンを終える。

 

対する遊矢はペンデュラム召喚を駆使して『EMダグ・ダガーマン』とエースである『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を喚び出し、速攻を狙う。

しかし、エドは甘い相手ではない…先のデュエルを引き分けに終わらせた『D・HEROダイナマイトガイ』と『ディシジョンガイ』によるバーン効果によってカウンターダメージを受けてしまう。

 

返しのターン、エドはエースである暗黒の戦士『D・HEROディストピアガイ』を融合召喚…その効果によるダメージ、さらに装備魔法『ディレイアーマー』によるコンボで遊矢のライフを600まで追い詰めてしまった…!

 

 

【榊遊矢…!ボクはキミに絶対に勝つ!そして、榊遊勝のデュエルが間違っている事を証明する!!】

 

「っ…!」

遊矢…否、榊遊勝への執着…憎しみに囚われているエド、その殺気に遊矢は思わずたじろいでしまう…。

 

 

「負けないで遊矢!エンタメデュエルはここからよ!!」

 

「柚子…ああ、オレのデュエルはここからだ!相手がその気なら、オレの『言葉』で語り合う!!」

しかし、遊矢は1人ではない──柚子や仲間の声援を力に変えて、新たな力を解き放つ!

 

 

 

 

「比類なき短剣使いよ!二色の眼輝く龍よ!今、1つとなりて新たな命目覚めさせよ!融合召喚!!気高き眼燃ゆる、勇猛なる

龍!『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

【融合召喚だと!?】

フィールドに紅蓮の炎が渦巻く…そして、新たなるオッドアイズ──鎧を纏いし勇気の龍が咆哮する!

 

 

「『ブレイブアイズ』の1つ目の効果!このカードが特殊召喚される時、このターンのエンドフェイズまでフィールドのモンスター全ての攻撃力は0になる!」

 

【なにっ!?】

ブレイブアイズの纏う勇気の炎がフィールドを覆い尽くし、暗黒の戦士の力を奪い去る!

 

 

「続いて2つ目の効果!1つ目の効果で攻撃力を0にしたモンスター1体につき、自身の攻撃力を100アップする!バトルだ!『ブレイブアイズ』で『ディストピアガイ』を攻撃!!灼熱のメガフレイムバースト!!」

力を増した勇気の龍が青き炎を解き放つ!

 

 

【無駄だ!装備魔法『ディレイアーマー』によって『ディストピアガイ』は戦闘では破壊されない!所詮、真似事の融合召喚などなど!】

 

「『ブレイブアイズ』の3つ目の効果!このカードがバトルする時!戦闘破壊無効効果を無効にする!」

 

【そう上手くはやらせない!永続罠『デマイズ・アーバイン』!1ターンに1度、自分の『D・HERO』の攻撃力を100アップさせる!それによって『ディストピアガイ』のエフェクト発動!攻撃力か守備力が変動した時、相手モンスターを破壊する!アカデミアの融合召喚こそが本物…偽物は消え去れ!ノーブル・ジャスティス!!】

 

「くっ…!?しまった…!!」

だが、エドのタクティクスは遊矢を上回る…勇気の龍は暗黒の戦士の波動に吹き飛ばされてしまった…。

 

だが、その一手は思わぬ事を引き起こした。

 

 

 

「っ…?あれは──『スマイル・ワールド』!?」

 

【っ…】

効果の余波でエドの懐からカードが舞い落ちる、それは…半分に破かれてしまった『スマイル・ワールド』だった。

 

 

 

「もしかして…!それは、父さんのカードなのか!?なんで、なんでお前が持ってるんだ!?」

 

【──いいだろう、答えてやる…!あれは、ボクがエクシーズ次元に来て間もない頃の事だ…!】

父の手掛かり…『スマイル・ワールド』を目にした遊矢は動揺する…そして、エドは榊遊勝との因縁を語り始めた。

 

 

…………

 

 

アカデミアによるエクシーズ次元侵略が始まって間もない頃、エドはアカデミアに抵抗する凄腕のデュエリストの話を耳にした。

しかも、それだけではなく…戦ったアカデミア兵に対して『デュエルは人々を笑顔にする為のもの』と説いて周っているという…。

 

その話を聞いたエドはそのデュエリストに苛立ちを覚えた…『アカデミアの教えこそが全て、アカデミアは正しい』と教えられていたエドはアカデミアの正しさを示す為に凄腕のデュエリスト──榊遊勝へとデュエルを挑んだ。

 

 

 

しかし、エドは遊勝に負けた。

 

アカデミアの融合召喚を駆使して遊勝を追い詰めたエドだったが…遊勝は『EM』モンスター、そして『スマイル・ワールド』を駆使してまさに奇跡の逆転を果たしたのだ。

 

アカデミアのデュエルで敗北したエドは動揺した…そんな彼に遊勝は優しく語り掛けた。

 

 

──アカデミアの教えは間違っている、デュエルで争うのは愚かな事だと分かったはずだ……それをキミからプロフェッサーに伝えて欲しい──

 

 

『スマイル・ワールド』を手にエドに手を差し伸べた遊勝…だが、エドはその手を取ることなく、払い除けた。

 

 

エドが教え込まれた「アカデミアの教え」という名の『呪縛(洗脳)』は根深かった…「笑顔のデュエル」と「アカデミアの正義」の間で揺れ動くエドの心…それを宥めようとした遊勝だったが…その姿は忽然と消えてしまった。

封印されたカードは無かった…立ち去ったのか、それとも──

 

 

そしてエドは遊勝の影を追い掛けてエクシーズ次元を彷徨った…アカデミアの正義を示す為に、半分に破かれた『スマイル・ワールド』を手にしながら…。

 

 

…………

 

 

【そんな時、キミが現れた…!榊遊勝の息子を名乗るお前が…!アカデミアの正義を証明する為に、キミに負ける訳にはいかないんだ…!!】

 

「エド…!」

遊勝への怒りと憎しみを露わにするエド、その様子を見ながら遊矢は驚いていた……エドの経験した話は遊海が語った『予想の話』とほとんど一致していたからだ。

 

 

──遊矢、以前のオレだったら…奴とはデュエルで分かり合う事などできない、そう断言しただろう……だが…今のお前の思いは分かる…!──

 

「ああ…!確かに、父さんはエドを助けられなかったのかもしれない…!でも、それでも!オレはオレなりのエンタメデュエルで最善を掴む!!」

ユートの問いかけに遊矢は拳を握りしめる…揺れ動くエドの心を救い、笑顔にする為に!

 

 

 

【覚悟しろ…!榊遊矢…!アカデミアの教えが正しいと証明する為に、榊遊勝の息子であるお前を叩き潰す!!『ディストピアガイ』でダイレクトアタック!これで終わりだ─!】

エドのターン、防ぐ術を持たない遊矢へと暗黒の戦士が拳を振りかぶる…だが、希望の一手は遊矢の目の前にある!

 

 

「オレは…最後まで諦めない─!」

 

【アクションカードを使うつもりか!やらせん!!】

 

「くっ─!」

攻撃を前に「クロス・オーバー」の足場を駆け上がる遊矢…エドはアクションカードの獲得を阻止する為にデュエルアンカーによる妨害を試みるが──遊矢は気合いで希望を掴み取る!

 

 

「アクションマジック『回避』!その攻撃を無効にする─!」

暗黒の戦士の拳圧が遊矢を逸れるようにねじ曲がる!

 

 

「おおっ!やるじゃんか遊矢の奴!」

 

(ああ、悲鳴の迷宮でのきみを思わせる身のこなし…決闘者としての身体能力もなかなかだ)

遊矢の見事な回避に遊馬が歓声を上げる、その横ではアストラルが過去の遊矢の戦いを思い出していた。

 

 

【くっ…!だが、いくら粘っても『ディストピアガイ』がいる限り、キミの運命は既に決定している!ボクはこれでターンエンドだ!】

アカデミアのデュエルを…暗黒の戦士である『ディストピアガイ』を信頼するエド…そんな彼を前に遊矢は自分のペンデュラムの首飾りを掲げる…!

 

 

 

 

「エド!今、お前の心は揺れている…このペンデュラムのように!」

 

【揺れている、だと?】

 

「そうさ!アカデミアが…プロフェッサーが正しいって信じたい気持ち、そしてそれとは正反対の…榊遊勝とデュエルした時に感じた気持ち!お前はその2つの間で迷ってる!」

 

【バカな、そんな事は…】

 

「それにさ…エド、お前…本当はオレの父さんとデュエルして()()になったんじゃないのか?」

 

【っ…!!戯言を言うな!!】

 

「そっか…なら、オレのデュエルで思い出させてみせる!デュエルの楽しさを!デュエルで生まれる笑顔を!」

ペンデュラムに揺れるエドの心情を投影する遊矢…正義と理想に揺れるエドの為、遊矢を戦い続ける…!

 

 

 

デュエルは白熱していく、遊矢は高い攻撃力の『ディストピアガイ』を倒す為に新たな『エンタメイト』、『EMラフメイカー』を繰り出して攻勢を仕掛ける。

エドは攻撃力をアップする永続罠カード『デマイズ・アーバン』とのコンボで効果破壊を狙うが、遊矢の罠カード『反撃のエンタメイト』によるコンボでダメージを受ける。

 

しかし、エドもただでは終わらない…返しのターンで遊矢のアクションカード獲得を妨害して『ラフメイカー』を撃破…遊矢のライフをついに残り100まで追い詰める。

 

それでも、遊矢は笑っていた…ギリギリの状況での駆け引き、カード効果の応酬…争いの道具としてではなく、笑顔を生む為のデュエルで少しずつ、冷え切り固まってしまったエドの魂に語り掛けていく…。

 

 

【どうだ…!お前のライフはたった100…!悔しかったらやり返せ!】

 

「やられたら、やり返すだけのデュエルなんてオレはしない!そんな事をしてたら争いはいつまでも終わらない!!」

 

【っ─!?】

倒れ込んだ遊矢へと煽るエド…だが、遊矢は揺らがない…そして1年前の榊遊勝と同じ言葉をエドへと返したのだ…!

 

 

 

 

【(っ…榊遊矢!お前も榊遊勝と同じ言葉を…!!だが、なんだ…この感覚は…!胸の中でざわつく、この思いは…!)】

諦めない遊矢を前に拳を握りしめるエド…その胸中にあったのは遊勝や遊矢への憤りや憎しみ…だけではなかった。

()()()のだ…目の前の遊矢に()()の影が…。

 

【(誰だ…!ボクの前に立ちはだかる()()は…!ボクを哀れむような目をした()()は!!)】

遊矢に重なる「影」…少しずつ、その曇りが晴れていく……そこにいたのは、赤い制服を着た快活そうな青年だった。

 

 

【(ユウキ、ジュウダイ……レジスタンスの奴の姿が、なんで榊遊矢に重なる?なんで、僕は…彼が気にかかる?)】

遊矢に重なる「影」の正体…それはレジスタンスの1人、アカデミア制服に似た服を着ている青年…遊城十代の姿だった。

 

半年前に突如としてレジスタンスに現れた援軍…その中でも十代はエドの姿を見つけるやいなやにデュエルを仕掛けてきた、幾度となく戦い…横槍や引き分けで決着がつく事はなかったが……十代は何かの思いを抱いてエドへと向かって来た。

 

 

 

──エド…!本当のお前を取り戻してくれ…!お前が信じた『HERO』は…デュエルは!こんな事の為に使っちゃダメなんだ!──

 

【(ジュウダイ…お前は…僕の何を知っていると言うんだ!!)】

 

 

 

《ズァークの欠片に頼るのは癪だけど…もう少しだよ、十代》

 

「ああ…エド…!お前のHEROへの…デュエルへの思いは変わっちまったのかもしれない……でも、思い出してくれ!お前が『D・HERO』達と歩んだ、本当のデュエルを…!」

 

「十代さん…」

遊矢とエドのデュエルを静かに見守る十代…そして、その時はついに訪れる…!

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!!来た…やっぱり、父さんもオレと同じ思いだったんだ!!」

運命のラストターン…遊矢はついに、エドを救い出す為の一枚を引き当てる!

 

 

「レディース&ジェントルマン!!大変おまたせいたしました!!」

 

 

【っ…!性懲りもなく、父と同じ茶番を始めるつもりか!】

 

「茶番かどうかは…このデュエルを見てご判断ください!いくぞ、エド─!」

ドラムロールの演出と共に遊矢が十八番の口上を叫ぶ…そしてエンタメデュエルが幕を開ける!

 

 

 

 

「まずはペンデュラムスケールの模様替え!魔法カード『スケール・アップ』によってペンデュラムスケールの『時読みの魔術師』のスケールを8から10へとアップ!そしてペンデュラム召喚!『ダグ・ダガーマン』!『オッドアイズペンデュラムドラゴン』!『ラフメイカー』!」

ペンデュラムスケールを変動させた遊矢は3体のモンスター達を呼び出す!

 

 

「さらにオレは魔法カード『エンタメ・エクスチェンジ』を発動!その効果で攻撃力2500の『ラフメイカー』以下の攻撃力を持つ『オッドアイズ』と『ダグ・ダガーマン』のコントロールを相手に渡します!」

 

【自分のモンスターはボクに…?何を考えている!】

 

「そうカリカリしないで!何が起きるかは見てからのお楽しみ!魔法カード!みんなが笑顔になれる魔法!『スマイル・ワールド』発動!」

 

【『スマイル・ワールド』!!】

モンスターのコントロールをエドへと渡した遊矢…そして笑顔のエフェクトがフィールドへと広がっていく!

 

 

「『スマイルワールド』は敵・味方関係なく、フィールドに存在するモンスター1体につき100ポイントアップさせます!」

 

【ボクは…ボクは笑顔になんか屈しない…!こんなモノには惑わされない!】

因縁のカードを前に怒りを露わにするエド…だが、遊矢は自分のデュエルを続けていく!

 

 

「おっかしいな〜?笑顔が溢れると元気になれるはずなんだけど…こんな風に!『ラフメイカー』の効果発動!このターン、攻撃力が上がったモンスター1体につき、攻撃力が1000ポイントアップする!4体分と『スマイルワールド』の効果で攻撃力6900にパワーアップ!」

ラフメイカーがその名の通りに笑顔を力に変える!

 

 

【っ…!だが、『ディストピアガイ』のエフェクト発動条件は整って──アクションカードか!】

 

「その通り─!」

暗黒の戦士の効果が発動する前に遊矢は足場へと飛び移る!

 

 

【やらせるものか──!】

 

「それはどうかな─!」

 

【なっ、足場でデュエルアンカーを絡めて!!】

アクションカード獲得を妨害する為にデュエルアンカーを引っ張るエド…だが、遊矢はリアルソリッドビジョンの足場にアンカーを絡め、妨害を阻止しようとする!

 

 

【こんなモノ邪魔だ!!フィールド魔法『金網チェーンデスマッチ』の効果!手札の『Dプレッシャー』をセメタリーに送り、このカードを破壊する!!】

 

「おおっとぉ!?」

だが、エドも黙ってそれを見過ごすはずはない…フィールド魔法を破壊しつつ、デュエルアンカーを切断…遊矢はアクションカードを獲得できず、「ラフメイカー」は暗黒の戦士の効果は破壊されてしまった…!

 

 

 

 

【そろそろ諦めたらどうだ?『ラフメイカー』を破壊されたお前には勝ち目はない…大人しく負けを認め、サレンダーしたまえ】

 

「ヘヘっ…それでは、()()()()()()()をお楽しみ頂いたところで…!()()へと移らせていただきます!」

 

【なっ…!?まだやる気なのか!?】

 

「それはもちろん!なんたって…ここは『スマイル・ワールド』!みんなが笑顔になれるまで、エンタメショーは終われない!」

遊矢を追い詰めたかに思えたエド…だが、遊矢は悪戯に成功したようなお茶目な笑顔を見せる…エンタメデュエルはここからが本番なのだ!

 

 

 

「『スマイルワールド』によって強化されていた『ラフメイカー』が破壊された事で効果発動!自分の墓地のモンスター1体を特殊召喚する!戻って来い!気高き眼燃ゆる、勇猛なる

龍!『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

逆巻く炎と共に勇気の龍が復活する!

 

 

「『ブレイブアイズ』が特殊召喚された事で効果発動!フィールドの全てのモンスターの攻撃力は0になる!」

 

【1度、セメタリーに沈めた融合モンスターを…!】

 

「融合次元の貴方と語り合うには…なくてはならない、私の融合モンスター!『ブレイブアイズ』の2つ目の効果!攻撃力を0にしたモンスター1体につき、攻撃力を100アップ!」

 

【語り合うだと?】

エドと語り合う為に融合モンスターであるブレイブアイズを呼び戻した遊矢…デュエルは最後の攻防に突入する!

 

 

 

「バトルだ!『ブレイブアイズ』で『ディストピアガイ』を攻撃!!」

 

【そうは、させない!永続罠『デマイズ・アーバン』のエフェクト!『ディストピアガイ』の攻撃力を100ポイントアップ!さらに罠カード『D─ソウル』を発動!セメタリーの『D・HEROドリルガイ』を除外し、その攻撃力を『ディストピアガイ』に加える!】

勇気の龍の攻撃を前に連続で罠カードを発動するエド…さらにその手にはアクションカードが握られていた!

 

【さらに、アクションマジック『バイ・アタック』!キミが融合モンスターで語るなら、ボクはランサーズの力で語らせてもらおう!そのエフェクトでバトルフェイズの間、『ディストピアガイ』の攻撃力は2倍になる!攻撃力は3400だ!!】

赤いオーラを纏った暗黒の戦士が勇気の龍へと突撃する!

 

 

「まだだ!うおおおっ──!!」

攻撃を前に駆け出す遊矢…だが───

 

 

ガッ!!

 

 

「うわっ!?」

 

「「「遊矢!?」」」

 

【ふっ…これで決着だ!!】

瓦礫に足を取られた遊矢はド派手にすっ転ぶ…エドは自分の勝利を確信したが───

 

 

「ちゃんと、掴んだ!アクションマジック!『ミラクル・ファイヤー』!このカードはこのターンに発動したアクションマジックの効果を得る!オレは──『バイ・アタック』の効果を得る!『ブレイブアイズ』の攻撃力は2倍の6600だ─!!」

 

【なにっ─!】

それはまさに『奇跡(ミラクル)』…諦めない遊矢の思いが勝利の一枚を掴み取った!

 

 

 

「これでフィナーレだ!盛大に打ち上がれ!灼熱のメガスマイルバースト!!」

 

 

【───────はっ……!】

勇気の龍の奇跡の炎が暗黒の戦士を撃ち抜く、その炎は空へと昇り、ハートランドの空に笑顔の花火を打ち上げた…!

 

 

 

エドLP0

 

遊矢WIN!

 

 

 

 

 

 

「やった…!遊矢が、遊矢が勝った─!!」

 

「うむ!見事な逆転!見事なエンタメだった!」

決着がつき、静まり返ったハートランドに柚子や権現坂の歓声が響く!

 

 

「あれが榊遊矢のエンタメデュエルか…アクションカードという不確定要素を見事に使いこなすとは…!」

 

「小難しく考えるなよミザちゃん!なかなか見応えのあるデュエルだったじゃねぇか!」

 

「流星!アタシ達もできるの!?アタシもやってみたい!」

 

「う〜ん…デュエルディスクが対応してないからなぁ…」

 

《ひとまず終わったね、十代》

 

「ああ、あとは…エドが思い出してくれるかどうか……」

遊矢の勝利に沸くランサーズとレジスタンス達…一方…。

 

 

『やった〜!やっぱり遊矢のエンタメは最高!』

 

『こら…!何を喜んでいるのだグレース!立て続けにランサーズに敗れたんだぞ!これがプロフェッサーの耳に入ったら…!?』

 

『あ、案ずるな!我らにはカイザーがいる!今頃、赤帽子のデュエリストを倒してこちらに………こちら、に───?』

総司令が倒された事で浮足立つアカデミア軍…そして、エドは──

 

 

 

【また、負けてしまったな…エンタメに………】

倒れ込んだエドは小さく笑っていた、遊矢に重なる遊勝の姿……親子2人のエンタメデュエルがアカデミアによって凍りついていたエドの心を「悪しき教え」から解き放ったのだ。

 

 

 

【…………空が……()()…?】

そして、倒れ込んだままふと空を見上げたエドは思わず呟いた…アカデミアによる戦闘の影響でどんよりとした雲に覆われているハートランド…だが、今の空はそれ以上の黒い雲に覆われていた…。

 

 

 

ゴゴゴ…ゴゴゴゴゴゴ!!

 

 

 

『な、ななな!?何事だ!?』

 

「じ、地震!?」

突然、ハートランドの大地が鳴動する…その衝撃にアカデミアやランサーズ達は思わず座り込む!!

 

 

 

「────あっ、先生…全力でやるって…そういう事か!!」

 

(遊馬、久々に見れるぞ──()()を!)

 

「ああ!!」

だが、十代や遊馬達…チームZEXALは気付いていた…この揺れの意味を!

 

 

 

 

 

 

《キュアアアアアアア───!!!》

 

 

 



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待ち続けた『英雄』──絶望を照らす光──

こんにちは!S,Kです!

長い時間と次元を越えて…帝王と英雄が対峙する…!その戦いの行方は…!

それでは、最新話をどうぞ!


「ここまでくれば…2人の邪魔にはならないかな?」

 

【ああ、ここなら…全力で戦う事ができる】

遊矢とエドの決着から時間は巻き戻る、激突する遊矢達の姿が小さく見えるくらいの距離を取った遊海とカイザーは静かに睨み合っていた…。

 

 

 

 

【アカデミアの戦士…生徒達よ!この戦いに手出しは無用!しかし、決して目を逸らすな!このデュエルを記憶に焼き付けろ!】

自分達を囲む数十人のアカデミア生達に亮が声を張り上げる、その身から発せられる闘志にアカデミア生達は冷や汗を流す…。

 

 

「そんなに力まなくていいさ、これは戦争でも…命の奪いあいでもない……俺とお前、決闘者の魂を賭けた決闘さ」

 

「遊海さん!頑張って─!!」

 

「父さん…少しは緊張感持ってくれよ…」

そんな亮を前に遊海は自然体だった、先程までのアカデミア生への無双が嘘のような穏やかさに凌牙はため息を吐いている…。

 

 

『遊海は大丈夫なの…!?相手はプロフェッサー直属のユーリに匹敵するアカデミアの「英雄」なんだよ…?それに、カイザーは…』

 

「心配しなくていいわ、カイザー亮という人がアカデミアの「英雄」なら……お父さんは世界を救ってきた『伝説の英雄』だもの!」

遊海と亮の衝突を心配そうに見守る素良…そんな不安を晴らすように、璃緒は優しく声を掛けた。

 

 

 

 

【戦いの前に言葉は不要…いきます、遊海()()!】

 

「ふっ…勝負だ!亮!!この決闘で…俺達は世界を変える!!」

ぶつかりあう闘志に空気が震える中…2人の決闘者の戦いが始まった!

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

遊海LP4000

カイザー亮LP4000

 

 

 

 

「先攻は俺か…俺のターン!」

「『賢瑞官カルダーン』を召喚!」

朱鷺の仮面を被った知恵の神の神官が現れる! ATK1400

 

「『カルダーン』の効果発動!自身が召喚に成功した時、手札から永続罠カード1枚をセットできる!俺は手札の『メタル・リフレクト・スライム』をセット!さらに、セットしたカードはこのターンに発動できる!『メタル・リフレクト・スライム』を発動!モンスターとして特殊召喚!」

金属性のスライムが現れ、刺々しい棍棒型へと変身する! DEF3000

 

 

「そして!このモンスターは攻撃力0のレベル10、水族のモンスターをリリースする事でエクストラデッキから特殊召喚できる!現れろ!『(ゴッド)・スライム』!!」

棍棒型だったスライムの形が崩れ…『大地の神』の姿を真似た巨人が現れる! ATK3000

 

 

『いきなり攻撃力3000のモンスター!?』

 

『何なんだよ…!?あの赤帽子…!?』

 

『しかも、融合なしで融合モンスターを喚び出して…!』

いきなりの大型モンスターの登場にアカデミア生達がざわめく…。

 

 

「『神・スライム』が存在する限り、相手は他のモンスターを攻撃できない…俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

遊海LP4000

神スライム カルダーン 伏せ1 手札2

 

 

 

「さぁ、亮…アカデミアの──()()()()()()()()()の『皇帝』としての力を見せてみろ!」

 

【俺は…全力の貴方に力を示す!!】

 

 

 

【オレのターン!ドロー!!】

【オレはこのカードを発動する!オレの信じる、究極の『融合』…!『パワー・ボンド』!!このカードは手札・フィールドの機械族モンスターを墓地に送り、融合召喚を行なう!!】

 

『あ、あのカードは!!』

 

「っ─!流石の運命力だ!!」

亮の発動したカードに遊海は冷や汗を流す…!

 

 

【オレは手札の『サイバー・ドラゴン』3体を融合…!現われろ!『サイバー・エンド・ドラゴン』!!】

3体の機械竜がスパークしながら融合…3つの首を持つ、巨大な機械龍が現れる! ATK4000→8000

 

 

 

「攻撃力8000…!?『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力は4000のはずじゃ!?」

 

「それが『パワー・ボンド』の効果よ、凌牙君…!『パワー・ボンド』で特殊召喚された機械族の融合モンスターは攻撃力が2倍になるの…!」

限界を超えた力を宿す機械龍に戦慄する凌牙…自身のエースを僅か1ターンで呼び寄せるその「運命力」は…まさに英雄に他ならない…!

 

『っ…!遊海の「神スライム」の攻撃力は3000…!このままじゃ1ターンキルされちゃうよ!?』

 

「大丈夫…!お父さんなら、きっと…!」

 

 

 

【バトルだ!『サイバー・エンド・ドラゴン』で『神スライム』を攻撃!!】

 

「その瞬間!手札の『ジュラゲド』の効果発動!このカードは自分・相手のバトルステップに特殊召喚でき、自分のライフを1000回復する!」

不気味な姿の回復の悪魔が現れ、遊海のライフを回復する! ATK1700

 

遊海LP4000→5000

 

 

【だが、それでもこの一撃は貴方を貫く!!】

 

「まだだ!『ジュラゲド』のさらなる効果!このカードをリリースし、次のターンのエンドフェイズまで『神スライム』の攻撃力を1000アップする!」

 

神スライムATK3000→4000

 

 

【なるほどな…!大地の神の似姿を消し飛ばせ!エターナル・エヴォリューション・バースト!!】

 

「っ…!!ぐああああっ!!!」

 

「遊海さん!!」

 

『遊海──!!』

三本の破壊光線が神スライムを貫通…遊海は攻撃の余波で激しく吹き飛ばされた!

 

遊海LP5000→1000

 

 

「ぐっ…流石に、効いたが……『神スライム』は戦闘では、破壊されない…さらに、自分が戦闘ダメージを受けた事で手札から『ガーディアン・スライム』を特殊召喚…!」

遊海が傷付いた体で立ち上がる、それと共に上半身が吹き飛んでいた『神スライム』が再生…さらに、黒いジャッカルの頭を持つスライムが現れる! DEF0

 

 

「そして…これで『パワー・ボンド』のデメリット効果が発動…お前はこのターンのエンドフェイズに『サイバーエンドドラゴン』の元々の攻撃力分のダメージ…4000ダメージを受ける…!」

さらに遊海は亮に対して『パワーボンド』のデメリット効果の発動を告げる…!

 

 

【そうだ、力あるカードにはリスクが伴う…だが!オレのデュエルはそのリスクを乗り越える!!メイン2、『サイバー・ジラフ』を召喚!】

麒麟型のロボットが現れる! ATK300

 

 

【『サイバージラフ』の効果発動!このカードをリリースする事で、このターンのエンドフェイズまで自分が受ける効果ダメージを0にする!オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド!この瞬間、『パワー・ボンド』のデメリット効果が発動するが、そのダメージは0になる!】

 

亮LP4000

サイバーエンドドラゴン 伏せ1 手札0

 

 

 

「見事だ…!攻撃力8000の『サイバーエンドドラゴン』…普通のデュエリストなら、もう為す術もない…流石だな、亮」

 

【これが、オレの全力…!オレはこの力で貴方を乗り越える!】

満身創痍の遊海に対して無傷の亮…その状況にデュエルを見守るアカデミア生達は勝利を確信していた…。

 

 

「ならば…俺もお前の成長に敬意を払おう…!それに──翠や子供達を…これ以上心配させたくないからなぁ!!」

絶体絶命の状況を前に…遊海は闘気を開放する!

 

 

 

俺は!俺自身でオーバーレイ!!

 

 

【っ…!?この光は──!!】

腕を掲げた遊海の体から螺旋を描き、希望の光と安寧の闇が螺旋を描く!

 

 

我が身に宿りし光と闇よ…希望の力となりて世界を照らせ!カオス・エクシーズ・チェンジ!!

 

螺旋の光と闇が遊海に直撃…世界を照らす炎が爆発する!!

 

 

 

我が絆の極致、闇を抱き世界を照らす光!NEXUS!!

 

 

光の中から新たな戦士が現れる、それは鋼の鎧に炎の紋章が刻まれた赤いロングコートを羽織る紅蓮の英雄…家族の絆が導きし『希望の光』──NEXUSⅡが現れる!!

 

 

 

【───その姿が、虚無を祓った英雄の姿か…!!】

 

『変身した…!?』

 

「やった…!やっちゃえ!お父さん─!!」

英雄としての力を開放した遊海の姿に驚く素良…その隣で璃緒は歓声を上げる!

 

 

 

 

俺のターン!最強決闘者のデュエルは全て必然!ドローカードすら、決闘者が創造する!シャイニング・ドロー!!

光の軌跡と共に勝利を導くカードが手札へと導かれる!!

 

 

「まずは攻撃力0、レベル10の水族である『ガーディアンスライ厶』をリリース!2体目の『神・スライム』を特殊召喚!」

2体目の大地の神の写し身が現れる! ATK3000

 

 

「そして『ガーディアンスライム』がフィールドから墓地に送られた事で効果発動!デッキから魔法カード『古の呪文』を手札に加え、発動!その効果によってデッキから…『ラーの翼神竜』を手札に加える!!」

 

【っ…!!『ラー』だと!?】

遊海が宣言したカードに亮の顔色が変わる…!

 

 

「いくぞ…!俺は2体の『神・スライム』と『賢瑞官カルダーン』を生け贄に捧げ…!遥かなる時を越えて現われよ!『ラーの翼神竜』!!」

 

『っ…!空が、暗く…!何が始まるの!?』

 

「心配しなくて大丈夫、これが遊海さんの本気の証よ!」

フィールドのモンスター達が粒子に変わる…それと共に元々曇天だったハートランドの空がさらなる黒い雲に覆われていく、そして…黒雲を切り裂く光と共に、黄金の太陽が現れた! ATK?

 

 

 

『な、なんだ…!?黄金の球…?しかも攻撃力は『?』だって?』

 

『どんなモンスターを出したって、攻撃力8000に敵うもんか!』

攻撃手段を持たないように見える『ラー』の球体形(スフィアモード)を見て嘲笑うアカデミア生…だが、彼らは知らない…その「神」本来の姿を…!

 

 

「ふぅ……イウ アーク イル フェスイ ウレル ペフティー イル ヘクア セトゥ ネプ ケティ……」

 

『なんだ…!?意味が分からない言葉を唱え始めたぞ!?』

 

古代神官文字(ヒエラティックテキスト)…まさか、オレがあの『神』に挑む日が来ようとは…!】

右手を胸に当て、呪文…古代神官文字を詠唱する遊海…それと共に神威が強まっていく…!

 

 

 

ネウ アンク ネウ プア ヘヌア ネフェリ トゥ エル ネウ クアトウ───我らが守護神よ!我が声に応え…世界を救う為に飛翔せよ!!『ラーの翼神竜』!!

 

 

《キュアアアアアアア───!!!》

 

 

球体形の黄金の光が大地を照らす…そしてその光の中から現れた黄金の神鳥───太陽神、ラーの翼神竜が咆哮する!!

 

ラーの翼神竜 ATK?→8400

 

 

 

『────すごい……』

神の放つ黄金の光と咆哮…神威に言葉を失う素良…それはアカデミア生達も同じだった…。

 

 

「『ラーの翼神竜』の攻撃力・守備力は生け贄に捧げたモンスターの攻撃力・守備力の合計となる…さらに!手札から魔法カード『神の進化』を発動!『ラーの翼神竜』の攻撃力はさらに1000アップする!」

 

《我が身は世界を照らす太陽…絶望を照らす光とならん!!》

遊海の魔法による強化により、太陽神は『本体』に近い神の力を開放する!

 

ラーの翼神竜 ATK8400→9400

 

 

【攻撃力、9400…!】

 

「バトルだ!『ラーの翼神竜』で『サイバーエンドドラゴン』を攻撃!さらに『神の進化』による効果が起動!このモンスターの攻撃宣言時に相手プレイヤーは自分フィールドのモンスターを墓地へ送らなければならない!」

 

【っ…!!オレは『サイバーエンドドラゴン』を墓地に送る…!!】

太陽神の神威が機械龍を消し飛ばし、その嘴に神の炎が集中する!!

 

 

「『ラーの翼神竜』でカイザー亮にダイレクトアタック!!ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」

あらゆる敵を滅する神の炎が亮へと放たれる!!

 

 

【まだだ!速攻魔法『サイバーロード・フュージョン』を発動!墓地の『サイバー・ドラゴン』3体をデッキに戻し、融合召喚を行なう!『サイバー・エタニティ・ドラゴン』を融合召喚!!うおおおっ!!?】

しかし、亮もただでは終わらない…鉄壁の機械龍を喚び出し、ダメージを0へと抑えた…! DEF4000

 

 

【さらに、『サイバーエタニティドラゴン』が破壊された事で、効果発動…!デッキから『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!】

機械竜が亮を守るように現れる! ATK2100

 

 

「フレアの…『ラー』の一撃を受けきったか、流石だ!俺はこれでターンエンド!」

 

遊海LP1000

ラーの翼神竜 伏せ1 手札0

 

 

 

 

【これが、遊海先生の本気…やはり、アカデミアに勝ち目はないな…】

攻撃に吹き飛ばされ、地面に轍を作った亮が辺りを見回す…攻撃の余波を受けたアカデミア生のほとんどは吹き飛ばされ、瓦礫や壁に叩きつけられていた…。

 

 

「ちょっとやり過ぎたかな……さて、どうするカイザー?」

 

【デュエルはライフが残っている限り…最後までどうなるか分からない……このドローが、オレ達の運命を決める!!】

ライフ差はあるものの…形勢を逆転された亮は闘志を保ったまま、デッキトップに手を掛ける!

 

 

【オレのターン!ドロー!】

【来たか…!オレはフィールドの『サイバードラゴン』、さらに墓地の『サイバーエンドドラゴン』『サイバーエタニティドラゴン』『サイバージラフ』を除外!!いでよ!『サイバー・エルタニン』!!】

亮の渾身の叫びと共に6台のピットを持つ、巨大な機械龍の顔が現れる! ATK?→2000

 

【『エルタニン』はフィールド・墓地の光属性・機械族のモンスターを全て除外して特殊召喚でき、その攻撃力は除外したモンスター1体につき500アップする!さらに!このモンスターが特殊召喚に成功した事で効果発動!このカード以外の表側表示のモンスター全てを墓地に送る!太陽神よ…星々の輝きに沈め!星座の包囲網(コンステレーション・シーシュ)!!】

機械龍の咆哮と共に6台のピットが太陽神へと殺到する!

 

 

《我が身は星を照らす光!この程度で…我が光を阻めると思うな!》

 

【なにっ…!?】

だが、太陽神は翼の羽撃きで全てのピットを打ち落とした…!

 

 

【何故だ…!『ラーの翼神竜』は、この効果を防ぐ効果は持たないはず!?】

 

「お前達に世界を託された後、再び大きな戦いがあった…その中で『ラー』は…俺達の守護神であるフレアは進化を遂げた!今のフレアは相手が発動した効果を受けない!!絆の力で…俺達は全ての困難を乗り越えていく!!」

 

【……オレは、これでターンエンド!】

 

亮LP4000

サイバーエルタニン 手札0

 

 

 

 

「俺のターン!『ラーの翼神竜』で攻撃!!」

 

《この一撃は…世界の平和を乱すアカデミアへの反撃の狼煙!》

遊海の声と共に神の炎が収束する!

 

 

「《ゴッド・ブレイズ・キャノン!!》」

 

 

【─────せっかく追い付いたと思ったのに……先生がさらに強くなってしまったら、追い付けないじゃないか……】

 

神の炎がりゅう座の機械龍を貫く…その爆発はハートランドを覆っていた暗雲全てを消し飛ばした…。

 

 

 

亮 LP0

 

 

遊海Win!

 

 

 

 

 

 

「やった!お父さんの勝ちよ─!!」

 

『あれが、遊海の本気……本当に、すごかった…』

デュエルが決着し、璃緒の歓声が響く…その横では素良が全力全開の遊海のデュエルを目の当たりにして声を震わせていた…。

 

 

「ああ…よかったぁ…!亮君が強くて、私もヒヤヒヤしちゃった…!」

 

「なぁ、母さん…もしかして、あのカイザー亮って人は……」

 

「うん、()()()()()()…遊海さんが一番分かってると思うわ」

そして決着を見届けて胸を撫で下ろす翠、そんな彼女に凌牙が疑問をぶつける…翠はそれに答える代わりにフィールドの遊海達へと目を向けた。

 

 

 

 

 

「ふぅ……やっと約束を……『全力で戦う』という約束を果たせたな、亮……ずいぶんと長い時間が掛かって悪かった……それに、よく我慢してくれた…」

 

【……こんな()()な状況なら、必ず…貴方か十代が駆けつけてくれると、信じていましたから……ああ、久しぶりに気持ちの良いデュエルができた……ありがとうございます、遊海先生】

 

「礼を言うのは俺の方さ……素良や、戦う事を嫌がったみんなを守ってくれてありがとな…カイザー亮」

NEXUSを解いた遊海が倒れ込んだ亮へと歩み寄り、手を差し伸べる…その言葉にアカデミアの『帝王』───否、誇り高きプロデュエリスト『皇帝』丸藤亮は安堵の笑みを見せた。

 

 

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

 

 

 

 

『ば、馬鹿な!!カイザー亮も敗れたですと!?』

 

『うわ〜…すっごい…』

 

『遊矢の花火もすごかったけど…今の金色の光と炎も綺麗だった〜…』

 

「……あれが、遊海の全力…!?凄すぎだよ…!」

遊矢とエドのデュエルの決着直後、ハートランドは黒く厚い雲に覆われた…その原因は少し離れた場所で行われていた遊海とカイザー亮の激突だった。

そして、間を置かずにハートランドを照らした金色の光…そして黄金に輝く太陽神が降臨…さらに、凄まじい大爆発…少し離れていた事で遊矢達に全貌は分からなかったが、その攻撃によってカイザー亮は敗れたのだと遊矢達は直感した…。

 

 

 

 

『こ、こうなれば!この野呂守が総司令官の代わりに全軍を指揮し!レジスタンスとランサーズを蹴散らすのみ!!兵士達よ!デュエルディスクを構えるのだ!!』

上官2人が敗れたのを見て副司令官である野呂が奮起、アカデミア生達に指示を出す…だが、デュエルディスクを構えた者は()()()()()

 

 

『お前達!?なぜ、何故指示に従わない!?』

 

「そりゃそうだぜ!あれだけ楽しくて、ワクワクするデュエルを目の前で見たら…人を傷付けるデュエルなんてしたくなくなるさ!それが本当のデュエリストってもんだろ!」

 

『き、貴様…!?』

狼狽する野呂に遊馬が事実を告げる…娯楽を知らず、アカデミアの『正義(野望)』の為に戦い続けてきたアカデミア生達…そんな彼らにとって、遊矢のエンタメデュエルは凄まじい効果を発揮したのだ。

 

 

 

『お、おのれ!!戦うのだ!アカデミア軍!戦わなければ懲罰だぞ!!』

 

【いいや…戦わなくていい!】

 

「エド…!?」

学生達を脅してでも戦わせようとする野呂…だが、それに待ったをかけたのは……立ち上がったエドだった。

 

 

 

『なんのつもりだ!?』

 

【今の榊遊矢とのデュエルでボクはハッキリと分かった…!榊遊勝の言葉も、今の少年の言葉も正しい!デュエルはみんなに笑顔をもたらすものだ…人を傷付ける道具でも、戦争の道具でも決してない!!】

 

「エド…!」

エドは自分の言葉でアカデミア生達へと呼び掛ける…遊矢と遊勝、親子2人のエンタメがエドの魂の呪縛を解き放ったのだ…!

 

 

『な、なにを馬鹿な事を!?そんな事がプロフェッサーに知られたら…!』

 

【野呂、それにタイラー姉妹…お前達も今のデュエルを通じて感じたはずだ!デュエルの持つ、本当の力を…!ボク達は『理想郷』を創ると謳いながら、平和に暮らしていたエクシーズ次元の人々に恐怖を与え、笑顔を奪い去ってしまった……それは明らかな間違いだった!!】

 

『っ…!エド・フェニックス!お前は総司令官という立場にありながら、プロフェッサーの思想を否定するのか!?それはアカデミアへの…プロフェッサーへの反逆だぞ!?』

 

【分かっている!だが、ボクは…1人のデュエリスト……いいや、()()()として!自分が正しいと信じた道を行く!その為なら、喜んで反逆者の汚名を受ける!!】

信じるべき正しい『道』を思い出したエドはプロフェッサーから与えられた総司令官の証たるマントを脱ぎ捨て、野呂へと啖呵を切る!

 

 

 

『エド司令官…なんだかカッコイイ!!私もイチ抜けた!』

 

『こ、コラ!?グレース!お前もプロフェッサーを裏切ると言うのか!?』

エドの言葉を聞いたグレースの思わぬ反応にグロリアが取り乱す!

 

 

『裏切る…というか、鞍替え?ランサーズというか遊矢のデュエルに惚れちゃった!グロリアも素直になりなよ〜?遊矢のデュエルに見惚れてたじゃない!』

 

『う、うぐ………………グレース!!』

 

『素直になりなよ!お姉ちゃん?』

 

『………えーい!私も抜けた!!』

 

『タイラー姉妹!?お前達まで!!』

グレースの押しに負けてグロリアもアカデミアを離反…野呂は悲鳴を上げる…。

 

 

 

 

『ぐぐうう…!?だが、これで私は正式にアカデミア軍エクシーズ次元派遣軍の総司令官に昇格────』

 

 

 

《キュアアアアアアア!!!》

 

 

『へっ…!?』

未だにアカデミアの理想を貫き通そうとする野呂…だが、その声を遮るように甲高い咆哮が響く…その頭上では黄金の神鳥が野呂を睨みつけていた。

 

 

 

『ひ、ひぃぃ!!?』

 

【黄金の…太陽神─────『ラーの翼神竜』…!?ああ、そうか…ボクは……!?】

そして、その咆哮の衝撃が…エドの封じられていた『記憶』を解き放つ、最後の鍵となった…!

 

 

 

「おーう!お前達の因縁も決着がついたみたいだな?遊矢、エド」

 

「遊海!それに…アカデミアのみんなも…!」

明るい声と共に遊海達が遊矢と合流する…その後ろには敵意が消えたアカデミア生達と丸藤亮の姿があった。

 

 

【亮…それに、遊海さん…】

 

【ふっ…ようやく記憶が()()()ようだな、エド…目を見れば分かる……少し寝坊だな、()()()の中では一番最後だぞ?】

 

【そうか、貴方も……ボクは…ボクは、今までなんて事を…!?】

 

「気に病むな、エド!お前達がやってしまった事は仕方がない……ここから償っていけばいい!その為に、俺達がいる!!」

『前世』の記憶を思い出し、強い罪悪感に涙を流すエド…遊海はその背中を強く叩き、野呂へと目を向ける!

 

 

 

「さて…アカデミア生のほとんどは戦意をなくした訳だが……お前はどうする?ノロマ(?)……今なら、俺達が全力で相手になってやるぞ?なっ、フレア?」

 

《ギュアアアア─!!》

()()で野呂へと話かける遊海…その頭上では不死鳥(ゴッドフェニックス)へと姿を変えた『ラーの翼神竜』が咆哮を響かせている…。

 

 

『ひ、ひぃぃ!?降参!降参です!わ、私は事務職なモノで、実戦経験はないのです?!申し訳ありませんでしたぁぁっ!!』

 

「……分かればよろしい」

 

《まったく、虎の威を借りる狐ではなく……鼠でしたか》

 

「「「(遊海、怖っ…!?)」」」

遊海達に軽く睨まれた野呂は見事なスライディング土下座を披露する…その見事な掌返しに小鳥の姿へと戻ったフレアも呆れていたのだった…なお、ランサーズ達は遊海の穏やかな威圧に戦慄していた…。

 

 

  

 

 

 

 

【みんな、聞いてくれ!我々は『アーク・エリア・プロジェクト』と称して…実際には『侵略戦争』を行なってきた!これは、我々の理想と反するモノである!よって、現時刻を以て作戦を破棄し、エクシーズ次元復興へと従事する事とする!!しかし、これは()()ではない…私の考えに賛同できない者はアカデミアへの帰還を許可する!………だが、どうか…我々が犯してしまった罪を償う為、みんなの力を貸して欲しい!!】

野呂の降参を以てエドはアカデミア生達へと呼び掛ける…その言葉を聞いて、首を横に振る者は………誰もいなかった。

 

 

 

 

 

「ふぅ…まずは、一段落だな…」

 

《フォウ、フォーウ!(遊海!お疲れ様!)》 

 

「おお、フォウ…そうか、巻き込まれないように隠れてたんだな?」

そんなエドの勇姿を見ていた遊海の肩にフォウが飛び乗る、戦闘に巻き込まれないように離れていたのだ。

 

 

「さて、次は……この街をなんとかしないとな、少し暴れ過ぎたし……」

 

《フォーウ…?(無理は、しないでね…?)》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エド!!」

 

【十代………迷惑を、掛けたな】

 

「良いって事さ!それより…デュエルしようぜ!せっかく再会できたんだからさ!」

 

【おっと…十代、オレの事を忘れていないか?】

 

「カイザー!忘れてないって!また2人に会えるなんて…思ってもみなかった!」

 

【オレだけではない、融合次元ではみんなが……翔や明日香がお前の事を待っているぞ】

 

「っ─!?明日香……そっか……そうか…!!」

 

《まったく…仕方ないけど、妬けちゃうねぇ…》



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希望の槍、集結

こんにちは!S,Kです!

ついに、アカデミアからエクシーズ次元を開放する事に成功した遊海達…そして、世界を救う為の『槍』が集う…!


それでは、最新話をどうぞ!


 

 

キィン─!!

 

エクシーズ次元、ハートランドの一角に光が満ち、一瞬で消える…その場所には眼鏡を掛けた銀髪の青年、忍者の少年、フードに帽子を被った幼子…そして特徴的な黒髪の青年、オレンジ色の髪を逆立て、バンダナで留めた青年、金髪の目付き鋭い青年がDホイールに乗った状態で出現していた。

 

 

 

「………到着だ、全員揃っているか?」

 

「うむ、次元転移とやらは初めてだが…慣れそうにはないな」

 

「零羅、大丈夫だったか?」

 

「うん…ありがとう、クロウ」

銀髪の青年…赤馬零児が周囲へと声を掛ける…現れた人影、それは予定よりも半日以上早くエクシーズ次元へと転移してきた零児・零羅・月影・遊星・ジャック・クロウ…シンクロ次元に残っていたランサーズの後発メンバー達だった。

 

 

 

「まさか『ディメンション・ムーバー』を最適化し、転移場所も一か所にまとめられるとは…凄まじい技術力だな、不動遊星」

 

「親父とブルーノ、ラプラスが力を貸してくれたからな…これぐらいならどうとでもなるさ」

 

「ヘヘっ…誰が言ったか、遊星はスーパーメ蟹ックだからな!」

 

「ん…?イントネーションがおかしくなかったか?」

見立てではデュエルディスクや次元転移装置の調整に2日は掛かるはずだったのだが、イリアステルやアストラル世界の超科学力や鹵獲したアカデミアのデュエルディスクを分析し直した事で、予定より早くに次元転移を可能としたのだ。

 

 

 

「しかし…これは、()()()()()()()…?」

メンバー達の無事を確認した零児は改めて周囲を見回す、そこに広がっていたのはアカデミアに破壊された無残なハートランドの廃墟…()()()()

 

 

零児達が目にしたのは…人の気配こそないものの、ほとんど()()のハートランドの姿だった。

 

 

 

「…月影、周囲の偵察を頼む」

 

「はっ!」

月影は零児の指示に従って跳躍、近くにあったビルへと駆け上がった。

 

 

「零児殿、目視できる範囲には戦闘の痕跡は()()()()()…強いて言うならば、14時の方角の山が()()()()()()()……アカデミアの姿も確認できません」

 

「おかしい…凌牙や流星の話では、ハートランドはアカデミアによる攻撃で戦場となっているはずだが…」

 

「座標とかを間違ったんじゃねぇのか?融合次元に来ちまったとか…」

 

「───いや、ここはエクシーズ次元のはずだ…赤き竜の痣を通じて、遊海さんの気配を感じる…!」

 

「どういう事だ…?」

事前の情報とは違う状況に困惑する零児達…そんな時だった。

 

 

ギュイーン!!

 

 

「あっ、見つけた!遊星さーん!零児さーん!」

 

「流星!」

ハートランドを疾走する一台の青いDホイール…それは零児達を探しに来た流星だった。

 

 

「良かった〜!アヤカさんに指定されたポイントぴったりだ、早かったですね!」

 

「流星、ハートランドの状況を教えて欲しい……この街で何があった?」

どうやら、感知能力に長けたアヤカの指示で零児達を迎えに来たらしい流星…そんな彼に零児が状況を訊ねる。

 

 

「えーっと…とりあえず、作戦は無事に完了!エクシーズ次元にいたアカデミア軍は降伏、和解しました!」

 

「なっ…!?まだ、シンクロ次元を離れて一夜しか経っていないぞ…!?そんな短時間でアカデミアを制圧したのか!?」

 

「まぁ、遊海が本気出せばそうなるよな……」

 

「フン…エクシーズ次元では、活躍の場はナシか」

流星の作戦完了報告に驚愕する零児…クロウやジャックは大して驚く事はなく、遊海ならやりかねないと思っていた…。

 

 

「流星、ハートランドは戦場となり()()()()の状態だと聞いたが……街に破壊された様子はない…………まさか、遊海さんが………」

 

「あ……あはは……遊星さんの想像の通りだと思います…」

 

「遊海さん……また無茶な事を…」

流星に戦場であったはずのハートランドが無傷の理由を訊く遊星…彼は流星の反応から1つの可能性を思い出した…。

 

 

「不動遊星…白波遊海が何かをしたのか?」

 

「おそらく、遊海さんは……時間を()()()()()んだ」

 

「「───はっ?」」

遊星の突飛な言葉に零児と月影は思わず目を丸くする…。

 

 

「とりあえず、話は拠点に向かいながら……本当に、遊海さんって凄すぎるよね……」

 

「……時間って、もどるものだっけ…?」  

驚いた様子の零児達の表情に苦笑いしながら…流星はつい数時間前の『奇跡』を思い出した…。

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

「さて…これでひとまずハートランドを救う事はできたんだが………やっぱり、被害が大き過ぎるよな…」

 

『……申し訳ありません、遊海さん…』

 

「エド…大丈夫だって!みんなでエクシーズ次元を復興させるんだ!」

遊矢とエド、遊海と亮によるアカデミア軍との決着から少し経ち…遊園地の外壁から遊海とエド、遊矢は廃墟と化したハートランドの街を見下ろしていた。

 

アカデミアによって無差別に破壊され、色を失ったハートランド…それは1度、街を更地にでもしないと復興はできない…そう思わせる程の被害だった。

 

 

「まぁ、街を壊した責任の一部は俺達にもある…融合次元に向かう前に、最低限の復興は済ませないとな…………イチかバチか、やってみるか」

 

「やってみるって…なにを?」

廃墟の街を見て少し考え込んだ遊海は静かに覚悟を決めた…!

 

 

「なに……ちょっと、()()を出すだけさ…!」

 

 

 

…………

 

 

「それで…父さん、何をするつもりなんだ?」

 

「エクシーズ次元のアカデミア軍とは停戦したが、いつまた融合次元からの増援が来るか分からないぞ」

 

『それは心配しなくていい、優秀なオペレーター達がアカデミア本部を欺いてくれている…時間は稼げるはずだ』

遊園地の中央広場…そこにはランサーズ・チームZEXAL、そしてレジスタンスのカイトらが集められていた。

その中でもドルベはアカデミア軍の増援を警戒していたが、元総司令であるエドが時間稼ぎをしている事を伝える。

 

 

「遅くとも明日、零児達が合流でき次第…俺達はアカデミアの制圧に向かう、だがその前に…ボロボロになってしまったハートランドを少しでも復興させたい…俺はそう思ってる」

 

「復興ってもなぁ…ギラグの『ジャイアント・ハンドレッド』とか、大型モンスターで瓦礫を一か所に集めるとか…それぐらいしかできねぇんじゃねぇか?」

 

「……いや、この街には人々が暮した『思い出』がある…ここにいる人々にも、カードにされて連れ去られてしまった人々にも……瓦礫の中の思い出の品を失くしてしまう事は避けたい」

 

「遊海さん…」

ハートランドの復興について考える遊海…そのイメージから瓦礫掃除を提案する真月だったが、遊海は街に残る人々の『思い出』を守る為に首を振る…。

 

 

「俺は最善を目指す………その為に、1つ賭けをしたい」

 

「賭け…?」

 

「その為に…凌牙、カイト、ミザエル…お前達の力を借りたい」

 

「俺達の?」

 

「白波さん、何をするつもりですか?」

最善の旅路を目指す遊海…その為に、遊海は凌牙、カイト、そしてミザエルに声を掛ける。

 

 

「もう()()()()()()の話になるが…俺は1度だけ、()()()()()()()()事がある」

 

「「「はっ!?」」」

 

「時間を巻き戻す……『超時空龍(ネオタキオン)』の力か!」

 

「鋭いなミザエル…その通りだ」

遊海の冗談のような言葉に驚くランサーズ達…その中でミザエルは遊海がやろうとしている事に気付いた。

 

 

「ある事故を防ぐ為にやったんだが…その当時の俺とカードでは()()()巻き戻すのが限界だった…だが……」

 

「そうか…この場にはオリジナルの『超時空龍』、そして同等の力を持つ『光子竜皇』『ドラッグルーオン』のカードがある……その力を集約すれば、より長い時間・広い範囲の『巻き戻し』が可能になる……そういう事か…?」

 

「その通りだ凌牙…まぁ、どれくらい増えるかはやってみないと分からないが……やってみる価値はあると思ってる」

それは遊海の精霊力を最大開放した『奇跡の御業』…戦わされていたエドやアカデミアの子供達を守る為、遊海はその力を使おうとしていた。

 

 

「デュエルモンスターズに…そんな事できるのか?」

 

「遊矢、デュエルモンスターズの可能性は無限大だ…争いの道具にされてしまう事もあれば、人々を癒やす力になる事もある…お前がエンタメデュエルでエドを変える事ができたように…俺はデュエルモンスターズの力で世界を救おう!」

半信半疑で遊海へと問いかける遊矢…そんな遊矢に遊海は優しく告げた…。

 

 

 

 

「よし…凌牙!カイト!ミザエル!頼んだぞ!!」

  

「ああ!まずは私からだ!!」

広場に散開する凌牙、カイト、ミザエル…そして中心に立った遊海が声を張り上げる!

 

46

 

『現れろ!「No.46」!雷鳴よ轟け…稲光よ煌めけ!顕現せよ!我が相棒たる金色の龍!「神影龍ドラッグ・ルーオン」!!』

 

《キュオォォン!!》

遺跡のナンバーズの1体、ミザエルの相棒である『過去』を司る金色の龍が咆哮する!

 

 

「次はオレだ…いくぞ!」

 

62

 

「現われろ!銀河究極竜!『No.62』!!宇宙に彷徨う光と闇、その狭間に眠りし哀しきドラゴン達よ!その力を集わせ、真実の扉を開け!!「銀河眼の光子竜皇」!!』

 

《ギュアアアン!!》

渾身の気合いと共にカイトの切り札…『未来』を象徴する希望の龍が咆哮する!

 

 

「最後は俺だ!」

 

107

 

「現われろ!「CNo.107」!!逆巻く銀河を貫いて、時の生ずる前より蘇れ!永遠を超える龍の星!!「超銀河眼の時空龍」!!』

 

《グオオオン!!》

そして凌牙がより良い『現在』を導く、3つ首を持つ黄金の龍を呼び出す!

 

 

「頼むぜ…父さん!!」

 

「ああ…!はあああっ!!」

凌牙にバトンを渡された遊海は光を解き放つ!

 

 

闇を祓う、絆の輝き!!NEXUS!!

 

遊海は光と闇…カオスの力を強く宿すNEXUSⅢへとランクアップする!

 

 

 

「未来への希望を象徴する『銀河眼の光子竜皇』よ!過去の記憶を守りし『神影龍ドラッグルーオン』よ!そして現在()、最善の選択をした人々を導く『超銀河眼の時空龍』よ!我が思いに応えよ!!」

 

《キュオォォン!!》

 

《ギュアアン!!》

 

《グオオオン!!》

遊海はドラゴン達に呼び掛けながら天へと右腕を掲げる、それに応えるようにドラゴン達が咆哮……『ドラッグルーオン』と『光子竜皇』の力が『超時空龍』へと集中していく…!

 

 

「奇跡を此処に…!オーバー・タイム・タイラント!!

 

 

《グオオオン!!》

 

2体のドラゴンに加え、遊海の精霊の力を受けた『超時空龍』が咆哮…周囲の色が反転し、時間が逆行する!!

 

 

 

「っ…時計の針が、逆に回ってる!?」

 

「あっ…壊れたアトラクションが直っていく!!」

 

「すごい…!」

そして遊矢達は広場にあった時計の逆転や、壊れた建物やアトラクションが巻き戻るように修復されていくのを見て時間の逆行を実感する…!

 

 

「ぐ、ううう…!!!」

油汗を滲ませながら力を開放し続ける遊海…その時だった。

 

 

 

キィン─!

 

 

 

「っ──?(この、光は────?)」

 

 

 

《グオオオ…!グオオオオオオン!!!》

 

『超時空龍』が一際大きく咆哮…世界は光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…いったい、どうなった…?」

眩しさに目を閉じていた凌牙が目を開ける、そこに広がっていたのは崩壊した遊園地…ではない、襲撃を受ける前……子供達の笑顔で溢れていた頃の遊園地の姿だった。

 

 

「す、すごい…!?本当に、時間を巻き戻しちゃった…!?」

 

「こんな事、あり得るのか…!?」

 

「さっすが遊海だぜ!本当に奇跡を起こしちまった!」

そしてランサーズや遊馬も周囲を見て驚く…そこには戦争の爪痕は残されていなかった…。

 

 

「はぁ…はぁ………ぐ、うっ───」

 

「っ!父さん!!」

 

「遊海さん!!」

その時、小さく呻き声が聞こえる…そこには髪の毛が真っ白になり、大量の汗を流した遊海が膝をついていた、その様子を見た凌牙と翠は慌てて駆け寄る…。

 

 

「父さん!大丈夫か!?」

 

「っ…大、丈夫……彩華、どこまで、戻った…?」

 

《スキャン開始……時間逆行の範囲は市街地のほぼ全域……街そのものが、侵略開始前の状態まで回復しています…!?》

 

「えっ…!?つまり……丸々1()()()、時間を巻き戻しちゃったの!?」

 

「………はっ…?」

 

「「「ええっ!?」」」

『超時空龍』による「オーバー・タイム・タイラント」の影響を確認する遊海達…その結果は、遊海自身も驚く程の効果をもたらしていた…!

 

 

 

「おいおい!?こんなのヌメ……『全能の力』を使ったようなもんじゃねぇか!?アンタ、そこまでやばくなってたのか!?」

 

「アストラル…!?」

 

(『ヌメロン・コード』はアストラル世界に安置されている、遊海がその力を使えるはずはない………だが…)

予想以上の出来事に驚愕する真月、遊馬は思わず霊体化しているアストラルに問いかける…アストラルは『ヌメロン・コード』の力のはずはないと告げるが…。

 

 

「(さっきの、光は…)」

途切れそうな意識の中、遊海は『時空龍』が咆哮する前に自分が発していた『光』について思い出していた…。

 

 

「(精霊の力でも、千年アイテムでも、赤き竜の力でもない……俺の()()()()力……そんなもの、あるはずが…)」

 

【(ほう…ずいぶんと面白い事になっているではないか?)】

 

「(ドン・サウザンド…!)」

自分の知らない力を前に困惑する遊海…そこへ沈黙していたドン・サウザンドが語り掛ける。

 

 

【(これは以前のお前ならば()()()()()()()()()だ……我には分かるぞ…この力の()()が…それに、アストラルの奴も気付いておるだろう)】

 

「(教えてくれ…この力は、何なんだ……)」

 

【(ヒントをくれてやろう…白波遊海、お前は…この世界において()()だ?どうやって…この次元は()()された?)】

 

「……まさ、か…?ぐっ───」

 

「ゆ、遊海さん!!」

ドン・サウザンドの意味深な言葉を聞きながら、遊海の視界は暗転する……その脳裏には光を放つ()()()()()()()()()()のイメージが浮かんでいた…。

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

「スタンダード次元防衛隊、ランサーズの司令官…赤馬零児だ」

 

『融合次元アカデミア、エクシーズ次元派遣軍の()総司令官、現エクシーズ次元復興部隊司令官のエド・フェニックスだ…よろしく頼む』

少し時間が経ち…拠点となっている遊園地に到着した零児は中央広場に設置された大型テントの中でアカデミア軍のリーダーであったエドと面会していた。

 

 

「まさか…アカデミア軍の総司令官とこんな形で会う事になるとは思っていなかった…驚きだ」

 

『ボクは…ボク達は榊遊矢のエンタメデュエルと…遊海さんの力に救われた、アカデミア本隊を裏切る事になっても悔いはないさ』

 

「榊遊矢か…まさか、本当に作戦を成功させるとはな…」

エドの穏やかな様子に驚く零児…そして、作戦を完璧に成功させた遊矢、そしてさらなる『最善』を掴んだ遊海の活躍にも…。

 

 

「…この次元の状況を聞かせてもらいたい」

 

『ああ、エクシーズ次元派遣軍はプロフェッサーの指示した作戦…「アーク・エリア・プロジェクト」を放棄、我々が破壊してしまったエクシーズ次元の復興に取り掛かろうとしたのだが……遊海さんが全力を出した結果、エクシーズ次元の時間が1年前の状態まで()()……アカデミアが連れ去ってしまった人々は戻らなかったが、街の被害はほとんど()()()()()()になってしまった……今は範囲から外れてしまった場所の片付けや、アカデミアの基地がある湾岸地区の現状復帰をしている所だ』

 

「時間が、逆行……不動流星からも聞かされていたが、本当にそんな事がありえるのか…!?」

 

『それが遊海さんさ…普通の人間ならありえない事でも、あの人なら…必ず成し遂げてくれる……ボクは、本当にあの人に助けられてばっかりだ…』

エドからエクシーズ次元の現状を聞かされ、再び驚く零児…そんな様子を見たエドは困ったように笑っていた。

 

 

「失礼を承知で聞くが……エド・フェニックス、もしや貴方も…不動遊星や海馬瀬人のように、白波遊海との『記憶』を持っているのか?」

 

『なんだ、そこまで聞いているのか…その通り、ボクは遊海さんの教え子として過ごした記憶がある……まぁ、榊遊矢にデュエルで敗れるまで忘れていたんだけどね………本当に、今回の件は申し訳ない…!謝って済む事ではないが、ボクのできる事は…全力でやらせてもらう…!』

零児の予想にエドは頷く…そして覚悟を宿した瞳で贖罪の気持ちを伝えた…。

 

「ならば…アカデミアについて教えてほしい、紫雲院素良からも聞いているが…さらに上官でもある貴方からなら、正確な情報が聞けるだろう」

 

『わかった…と言っても、ボクもこの1年はエクシーズ次元に滞在していたから……プロフェッサー直属だったデュエリスト、丸藤亮に聞こう…彼はプロフェッサーからの信頼も厚かった、君の知りたい情報も知っているはずだ』

 

「…感謝する」

そうして…零児はエド、そしてカイザー亮を交えて情報の擦り合わせをする事となった…。

 

 

 

 

……………

 

 

 

「は、ハジメマシテ…遊星サン、クロウサン、それにジャックおじ………ジャックさん、海亜・アトラスです…!」

 

「お前が…別の世界の俺の孫、か……実感が沸かんな…」

 

「そうかぁ?目付きなんか、お前にそっくりじゃねぇか!それにその髪の感じは…」

 

「カーリー渚、彼女にそっくりだな」

一方その頃、遊星達は流星の仲介のもとにジャックの孫娘、海亜と出会っていた…なお、海亜は緊張でガチガチであり…ジャックはジャックでなんとも言えない表情をしていた…。

 

 

 

「(わ、若いじいちゃん…威圧感ハンパないって!?何を話したらいいの!?)」

 

「(むむむ…記録でカーリー渚という女が大切な存在だったというのは知っているが……う〜む…)」

お互いに話す内容に困ってしまう海亜とジャック…そんな様子を見かねた遊星が助け舟を出す。

 

 

「海亜、きみのDホイールは?」

 

「あっ、えっと…ありますけど…」

 

「そうか…なら、ジャック…デュエルをすればいい、言葉で語れないなら、デュエルで語り合う…それがオレ達のやり方だろ?」

 

「!!…それもそうだな!海亜・アトラス、別の俺の魂を受け継ぐデュエリストよ…ライディングデュエルだ!ついて来い!!」

 

「は、はい…!う、受けて立ちます!!」

遊星の助け舟でジャックと海亜はデュエルをする事に…多少空回りしながら、2人はスタジアムへと向かっていった…。

 

 

 

「まったく…2人揃って手の掛かる家族…家族?だぜ……まぁ、デュエルをすればなんとかなるだろ!」

 

「ああ、ジャックも海亜も考えるよりは体を動かすタイプだろう…すぐに打ち解けるさ」

 

「流石、遊星さん…ジャックさんの事が分かってる…」

手の掛かる問題児2人を見送りながら苦笑いしてしまう遊星達なのだった。

 

 

「それよりも…流星、遊海さんは大丈夫なのか?俺の記憶が正しければ…たった数秒の時間の巻き戻しでも、遊海さんは酷く消耗してしまうはずだ…!」

 

「今は翠さんや凌牙…遊海さんの息子さんが看病してます…回復に少し時間が掛かるかもって…」

      

「そうか…とりあえず、遊海さんに会いに行こう…何か力になれるかもしれない」

流星に容態を聞いた遊星は遊海の休む場所に向かおうとする…その時だった。

 

 

 

 

バチッ…キィン!!

 

 

 

 

 

「「「っ!?」」」

 

「なっ…転移の兆候だと!?」

 

「そんな…!アヤカさんが結界を張ってるはずなのに!!」

突然、遊星達のすぐ近くに光が弾ける…それは次元転移の兆候だった!

 

 

 

「流星君!遊星君!クロウ君!!」

 

「っ…!翠さん!」

膨張する光…その時、紫の精霊衣装を纏った翠が駆けつける!

 

 

「早く私の後ろに!敵…アカデミアかもしれないわ!!」

 

「っ…!!」

警戒する翠…その言葉に急いで退避する遊星達、そして光が収まり─────

 

 

 

 

 

 

 

『フン…なんだ、ここは?遊園地……シンクロ次元、という雰囲気ではないな?』

 

『この場所…アクションフィールドで見た『未来都市ハートランド』にそっくりだ…エクシーズ次元じゃないかな?』

 

『あれ、でも…エクシーズ次元って…アカデミアのせいでボロボロなんじゃなかったか?なんでこんなに綺麗なんだよ?』

 

 

 

「あっ…!!」

光の中から3人の人影が現れる…それはシルバーのコートを纏った青年、星のような髪型の青年、そして茶髪の青年だった…その姿を見た翠は、思わず涙を溢した…。

 

 

 

「ゆ…遊戯さん…海馬さん…城之内さん…!!」

 

『むっ───翠か…久しぶりだな、スタンダード次元から援軍に来てやったぞ?遊海は…どうやら無茶をしたらしいな?』

 

「ああ…!まさか、また会えるなんて……」

 

『ああもう!?遊海と同じパターンかよ─!?』

 

『ああ…!?びっくりさせてごめんね翠さん…!』

遊海と同じく、思わぬ再会にへたり込んでしまう翠…そんな彼女を慌てて城之内が支えにいく…。

 

 

 

「……初代『決闘王』…武藤、遊戯さん…!?それに海馬瀬人さんに、城之内克也さん…!凌牙から話は聞いてたけど、まさか…本当に会えるなんて…!!」

 

「遊戯さん…海馬社長…!お二人も、この世界に!?」

 

『ん…!?遊星君!?なんでキミが!?それに…キミは遊星君の孫の……ちょっと、タイミングが悪かったかな……?』

 

『これは…本当に混沌めいてきたな…まるで伝説の決闘者の同窓会ではないか』

 

『ややこしい事になってんなぁ……』

 

「…ジャックがこの場にいなくて良かったぜ…」

そして、思わぬ再会を果たす遊戯と遊星…そしてさらに…駆け付けた遊馬達も大混乱する事になるのだった…。

 

 

 

 

「ちょっ…!?若い遊星さんに、武藤遊戯さん!?瀬人!?どうなってんだぁ!?!?」

 

(遊海の繋いだ『絆』が決闘者達を引き寄せる…流石は決闘世界を黎明期から見守り続けた英雄だな…)

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

「………うう…ここは……?」

 

《おはようございます、マスター……目が覚めて早々ですが、ちょっとすごい事になってます…》

 

「え…?」

しばらく気絶していた遊海はテントの中で目を覚ました…そして、呆れたような…疲れたようなアヤカの言葉に首を傾げる。

 

 

『まったく…無茶も大概にしろ遊海!俺達が来て早々に寝込んでいるとは…何をすればそうなる!』

  

「か、海馬社長!!?あれ、なんで!?えっ…遊戯!?克也!?遊星!?クロウ!?!」

寝ぼけていた遊海は懐かしい怒声で正気に戻る…遊海が休んでいたテントには海亜とデュエルしているジャックと話し合い中の零児達を除き、スタンダード次元・シンクロ次元からの増援組が集まっていたのだ。

 

 

 

「お疲れ様です、遊海さん…オレ達は親父やブルーノ達の協力で次元転移装置の調整が早く終わったんです……まさか、もうアカデミアとの問題が解決してるとは思わず…零児も驚いていました」

 

「ジャックは孫娘…でいいのか?の海亜とライディングデュエルしてるぜ」

 

「そうか…流石はブルーノとラプラス、それに不動博士だな…科学力なら敵なしだ」

遊星達のいる理由に納得する遊海…そして、遊戯達へと向き直る。

 

 

「遊戯達はどうやって…?」

 

『フン、LDSから次元転移装置「ディメンション・ムーバー」の技術提供を受けてな、それを海馬コーポレーションの技術で補強、そしてお前のデュエルディスクに仕込んだ発信機を座標として追い掛けて来たのだ…お前から聞いていた通りなら、最終決戦も近いだろうからな…!』

 

『アカデミアはスタンダード次元の事は無視してるみたいでよ!なんにも異常なかったぜ!』

 

『それなら、遊海やみんなの力になった方がいいと思ったんだ!』

 

「そういう事か…ありがとう、みんな…!」

LDSからの技術提供によって次元を越えて来た遊戯達…世界を救う為の『槍』は揃いつつあった…!

 

 

 

 

『しかし…エクシーズ次元の時間を侵攻前にまで巻き戻すとは…貴様、そこまでデタラメな存在だったか?お前はまだ辛うじて「人間」の範疇にいたと思っていたが…』

 

「…少し、()()()の事があったんだ……大丈夫、悪い方向の力ではないから…」

 

「予想外の力…?」

翠から遊海が時間の「巻き戻し」を行なった事を聞いてそのデタラメな力に疑問を抱く海馬…そして遊海はその()()()()の正体に気付き始めていた。

 

 

「とりあえず…まずは次元戦争解決が先だ……アヤカ、零児の話し合いが終わり次第、最後のミーティングをしよう……伝えて来てくれるか?」

 

《了解です!》

遊海の指示を受けたアヤカは零児達のいるテントへと向かっていった…。

 

 

『次元戦争を解決したその次は…「悪魔」との戦い、だね』

 

「ああ…だけど、一筋縄ではいかない相手だ……そもそも、倒しきれるかどうかも…まだ分からない…」

遊戯の言葉に頷く遊海…記憶に残る激戦を思い出し、表情を曇らせる…。

 

 

「大丈夫ですよ、遊海さん…貴方は1人じゃない…!貴方と絆を結んだオレ達が…決闘者達がいます!破滅の未来の運命を乗り越えた時のように…オレ達の力を合わせれば、きっと乗り越えられるはずです!」

 

「遊星……ああ、そうだな…!俺達は、最善を目指して戦うだけだ…!」

遊星の言葉に拳を握りしめる遊海…戦いの時は、すぐそこまで迫っていた…。

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

「海馬…まさか、お前が前線に出てくるとはな…」

 

『フン、俺が安全地帯で様子見を決め込むと思うか?アカデミアは俺の逆鱗に触れた…!デュエルアカデミアとは、俺の創設した「プロデュエリスト養成学校」の名前だ…それを戦争の道具に使うなど、言語道断だ!』

 

 

「すごい…色んな次元のデュエリスト達が、こんなに集まって…!」

 

「うむ…!これだけの戦力が揃っていれば、アカデミアを倒せるはずだ…!」

夕暮れのハートランド、中央広場…そこにはたくさんのデュエリスト達が集まっていた。

 

 

ランサーズの遊矢・柚子・権現坂・沢渡・黒咲・月影・零児・零羅・セレナ・素良・遊海

 

スタンダード次元から駆けつけた遊戯・海馬・城之内

 

シンクロ次元から駆けつけた遊星・ジャック・クロウ

 

チームZEXAL、遊馬(アストラル)、小鳥、凌牙、カイト、オービタル7、璃緒、ドルベ、真月、アリト、ギラグ、ミザエル、十代、流星、海亜、翠

 

エクシーズ次元、レジスタンスのカイト

 

アカデミアを離反したエド、そしてカイザー亮

 

総勢35(+1)名、ARC次元を救う為に集まった最高のデュエリスト達である…!

 

 

 

「…これより、融合次元、アカデミアの攻略・制圧の為の作戦会議を始める!」

全体を代表し、ランサーズのリーダーである零児が場を仕切って作戦会議を始める…。

 

 

「我々の目標は大きく2つ!1つはもちろん、次元戦争を引き起こしたアカデミアの首魁、プロフェッサーの打倒、制圧…そしてもう1つはアカデミアに連れ去られたエクシーズ次元の黒咲瑠璃、シンクロ次元のリン、そしてカード化されてしまったエクシーズ次元の人々の開放だ!その為に、アカデミアの状況を知る丸藤亮に説明をしてもらう!」

 

『ああ、話を引き継ごう』

零児から話を振られたカイザー亮はデュエルディスクを操作してアカデミアの地図を投影する!

 

 

『アカデミアは周囲を海に囲まれた絶海の孤島であり、要塞だ…基本的な移動手段は船による移動のみ、アカデミア生の持つデュエルディスクでも次元転移の拠点はアカデミアで固定されている』

 

「つまり…戦いが嫌になっても、アカデミアから逃げられないって事か…?」

 

『そういう事だ…榊遊矢、脱走が見つかれば、問答無用で生徒もカードにされる……そんな状況で無事に逃げ出しても、本土の大人達も敵ばかり……脱走した者達は隠れ潜んで、アカデミアと戦う準備をしている』

 

「ひどい…」

 

「おそらく、融合次元の大人達は自分の子供達が戦争の手駒にされている事を知らんのだろうな…!なんという卑劣な事を…!!」

遊矢の問いに亮が淡々と答える、融合次元の大人達はアカデミアの実態を知らされていない……それを聞いた柚子や権現坂は胸を痛める…。

 

 

『話を続けよう…プロフェッサーはアカデミアの中心、王座の間と呼ばれる場所にいる…そして、連れ去られた少女達は……アカデミアの2つの塔、「太陽の塔」「月の塔」と呼ばれる場所に幽閉されている……守護者という護衛付きでな』

 

「っ…瑠璃…!待っていろ、必ず助けだす!!」

瑠璃の居場所を知る事ができた黒咲は静かに拳を握りしめる…。

 

 

『そして…注意が必要なのがアカデミアの戦力だ、生徒・教員を含めて千人以上…さらに注意が必要な人物がいる…プロフェッサーの側近、ドクトルと呼ばれる男だ』

 

「うへっ…いかにも『悪者』って顔してるな…?」

説明をしながら亮が再びデュエルディスクを操作…怪しげな雰囲気の白髪の老人の姿を映し出す…。

 

 

『真偽は不明だが…彼は「人を操る力がある」、と噂になっている…彼は必ず制圧すべき者の1人だ』

 

「説明感謝する、丸藤亮…以上の事を踏まえ、制圧作戦を構築したい」

 

「赤馬零児…ちょっと待て」

 

「白波遊海、何か質問が?」

カイザー亮から話を引き継ぐ零児…その時、遊海が待ったをかける。

 

 

「赤馬零児、ここにいる奴らはこの世界を救おうと集まってくれた誇り高き決闘者達だ……そろそろ、()()()はナシにしよう」

 

「っ…!!」

 

「零児の、隠し事?」

遊海の言葉に目を見開く零児…その様子に遊矢達は首を傾げる。

 

「お前達…特に、ランサーズのメンバー達は気になっていたんじゃないか?なんで零児は事前に別次元の存在に気付いていたのか…何故、零児はセレナと顔見知りだったのか……そして…まだ16歳の零児がどうしてレオ・コーポレーションの社長になっているのか…」

 

「そ、そういえば…?」

 

「確か、赤馬零児がレオ・コーポレーションの社長になったのは前社長の赤馬零王が行方不明─────まさか」

遊海の言葉に戸惑う遊矢…そして、レオ・コーポレーションの来歴を口に出した権現坂が、ある『可能性』に気付いてしまった。

 

 

「零児、お前が遊矢達を仲間だと信じるなら……お前の言葉で話してやれ」

 

「………そうしよう………アカデミアの首魁、プロフェッサー……その正体は、我が父……赤馬零王、その人だ」

 

「「「なんだって!?」」」

 

『赤馬零児…お前も父親に苦労した男だったか…』

遊海の言葉に少し逡巡した零児は意を決して隠し事を伝える…その告白に特にスタンダード次元組は驚愕する!

 

 

「……全ては、3年前まで遡る…」

そして、零児は遊矢達へと語り始める…父との因縁、その全てを…。

 

三年前、零王が突如として姿を消してしまった事。

 

零王の研究記録を調べ、その中で次元転移装置を見つけて融合次元アカデミアへと飛ばされた事。

 

その先でセレナと出会ったが…零王に捕まり、スタンダード次元に送還される間際に別次元への侵略計画を知った事。

 

零王を止める為に旧知の中であり、当時のスタンダード次元において最強のデュエリストだった榊遊勝を頼った事。

 

その榊遊勝が先走ってしまい、行方不明になってしまった事。

 

零児はその穴を埋める為に零王の研究データから『融合』『シンクロ』『エクシーズ』の召喚法を再現し、来たるべき戦いに備えていた事を…。

 

 

 

 

「そ、それじゃ…3年前のあの日、父さんがストロング石島とのデュエルに来なかったのは!!」

 

「…次元転移装置を使って融合次元に向かおうとして失敗し、エクシーズ次元に来てしまっていたから、だな……すまなかった、榊遊矢…当時の私の軽率な判断で…きみ達には辛い思いをさせてしまった…」

零児は遊矢に対して頭を下げた…遊勝が行方不明なってからの3年間、遊矢達家族は辛い生活を強いられていた……それは決して、謝罪だけで許される事ではないだろう…。

 

 

「でも、よかった…!父さんは臆病者なんかじゃなかった…!父さんはデュエルでみんなを笑顔にする為に戦ってたんだ!!」

 

「遊矢…」

 

「うむ、それはそれとして…書き置きの1つも残していけばよかったのだがな!まったくあの人は…」

しかし、遊矢にとっては喜びの方が大きかった…『臆病者』として蔑まれていた榊遊勝…その真意を知る事ができて嬉しかったのだ。

 

 

「どうだ?話してみてよかっただろ?零児…ここにいる奴らはお前の親が悪者だって知っても…その息子まで蔑むような奴らじゃないからな!」

 

「……ああ、これで私は…正面から赤馬零王に向き合う事ができる…!」

遊海の問いかけに少しだけ肩の荷が降りた様子の零児…その目には今までにない力が宿っていた…。

 

「さて、隠し事がなくなった所で…作戦会議を続けようか!」

 

 

 

……………

 

 

 

「よし…それでは、作戦内容を纏める!」

日が沈み、月が昇り始める頃…零児が作戦を総括する。

 

 

「まず融合次元に移動でき次第、現地にいるアカデミアからの脱走した協力者と合流、移動手段を確保する!そしてアカデミア本島に電撃作戦を仕掛ける!目標は瑠璃・リン両名の保護、そしてプロフェッサーの打倒!瑠璃の救出は黒咲と凌牙に、リンの救出は遊星とエドに任せる!異存はないな?」

 

「「「おう!/はい!」」」

零児の確認に全員が頷く。

 

 

「決戦は明日…各々、今日は英気を養ってくれ…これで解散とする!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊矢、柚子ちゃん…ちょっといいか?」

 

「遊海…?どうしたの?」

零児の号令で作戦会議は解散…それぞれに夕食や休息に向かう中、遊海が遊矢達に話かける。

 

 

「疲れてる時に悪いが…夕食が終わったら、スタジアムに来てほしい…お前達に話したい事がある」

 

「オレ達に?」

 

「ああ、あとは…黒咲、セレナ…それに…零児、零羅は…どちらでもいいか」

 

「むっ…?私もか?」

 

「ああ、俺達が本当に戦うべき()について…話したい事がある…!」

 

「戦うべき、敵…?」

 

覚悟を決めた様子の遊海に遊矢は首を傾げた…。

 




・【オーバー・タイム・タイラント】

「超銀河眼の時空龍」の力である『時間の逆行・最善の現在の選択』を発揮した「タイム・タイラント」の最大開放。
そこへ『過去』と『未来』を司る「神影龍ドラッグ・ルーオン」「銀河眼の光子竜皇」の力と遊海の精霊力を集中させる事でハートランドの時間を巻き戻し、実質的な被害を回復しようとした。

また、遊海の力の制約によって失われた命を戻す事はできない。


本来の遊海の力だと巻き戻せるのは数日〜数ヶ月の範囲内なのだが、謎の力の発露によって1年分の時間を巻き戻す事ができてしまった。


元ネタはゼロ師匠の『シャイニング・スター・ドライヴ』
そちらは四次元空間から脱出し、失われた命すら戻せるチート性能である。


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明かされる真実〜最後の戦いへ〜

こんにちは!S,Kです!

アカデミアとの決戦を前に…遊海は遊矢達に真実を伝える…。

その時、遊矢達は…。


それでは、最新話をどうぞ!


「遊矢…遊海さんが話したい事って、なんだろう…?」

 

「うん…なんだか、アカデミアに対して…って雰囲気じゃなかったよな」

夕食を終えた遊矢と柚子は遊園地の外れにあるスタジアムへと向かっていた…それは黒咲や零児と共に遊海に呼び出された為だった。

 

 

「来たか…榊遊矢、柊柚子、きみ達で最後だ」

 

「零児、零羅…黒咲、セレナ…」

歩く事数分、遊矢達はスタジアムの入口に到着…そこでは既に黒咲や零児達が待っていた。

 

 

「零児、お前は遊海が話そうとしてる事を聞いてるのか?」

 

「いいや…だが、遊海や凌牙から…私達がアカデミア以外に戦わなければならない『敵』がいる、という話は聞いていた」

 

「アカデミア以外の、敵…!」

自分達よりも情報を持つであろう零児に問いかける遊矢…だが、この件に関しては零児も情報は持っていなかった…。

 

 

「…とにかく、中へ行こう…フィールドで待っていると言っていた」

 

「……ああ…!」

零児に促され、遊矢達はスタジアムのデュエルフィールドへと向かった。

 

 

 

 

 

「よく来てくれたな、お前達」

 

「遊海…それに…!」

スタジアムのデュエルフィールド…電気はまだ回復していない為、松明で照らされたその場所で遊海は遊矢達を待っていた…だが、それだけではない。

待っていたのは遊海の妻である翠、そして凌牙、璃緒、さらに遊戯、十代、遊星、遊馬…「遊」の名を持つ者達が集まっていたのだ。

 

 

「まず、話を始める前に…やらなきゃならない事がある……フレア、力を貸してくれ」

 

《ええ、太陽神の加護をユウミに!》

 

キィン──ゴウッ!

 

「っ!?遊海!腕が!!」

遊海の肩の上に金色の小鳥が現れる、その小鳥が放った炎が遊海の右腕に燃え移る!!

 

 

「心配するな、すぐに終わる……()()()()、遊矢」

 

「えっ───」

 

 

ドン!!

 

 

「ガハッ!?」

 

「「遊矢!?」」

 

「遊矢!!遊海、何をする!?」

右腕に炎を纏った遊海の姿が掻き消える、そして次に姿が見えた時には…燃え盛る腕が遊矢の胸に突き刺さっていた…!

 

 

ドクン!

 

 

「ほら…目を覚ます時間だぞ、()()()!」

 

《がっ…!?いきなり、何が…!?》

 

「ユート…!?」

 

《黒咲…?オレの姿が、見えているのか!?》

遊海に貫かれた遊矢の背中から光が飛び出す…それは遊矢に統合されてしまったと思われていたユートの姿へと変わった…!

 

 

「ど、どうしてユートが…!?」

 

「フレアの…太陽神の加護さ、エクシーズ次元を離れる前に翠から『金色の羽』を渡されていただろ?その羽がユートの『魂』を守っていたんだ…完全に遊矢と融合…統合しないようにな」

 

「うっ、げほ…ごほっ…!とう、ごう…?」

 

「ゆ、遊矢!大丈夫…!?」

ユートとの思わぬ再会に驚く黒咲、その横では胸を貫くような衝撃を受けた遊矢が咳き込んでいる…なお、その体に傷はない。

 

 

「ユート…やはり、お前は…遊矢の中にいたんだな…」

 

《ああ…スタンダードで紫雲院素良と戦い、その後にシンクロ次元のユーゴとのデュエルに敗れ……気付けば、オレの意識は遊矢と共にあった……隼、心配を掛けてすまなかった…》

触れる事はできない…だが、久しぶりに親友との再会を果たすユートと黒咲…それはありえない奇跡だった。

 

 

 

 

「白波、遊海…!お前は、知っていたのか?榊遊矢とユートがこんな状態であった事を…!?いや、それ以前に…何故、この状態になると知っていた!?」

 

「これで、役者は揃った…話を始めよう」

遊海達の異常な先読み…そして行動に戸惑う零児、遊海はその問いに答える事なく、改めて零児達に向かい合う…。

 

 

 

「これから話す事は別に、秘密にする事じゃない…お前達の判断でランサーズの仲間達に話しても構わない、お前達を呼んだのは……先に覚悟を決めてもらう為だ」

 

「覚悟を決める…どういう事だ?」

いつもとは違う…否、いつも以上に真剣な様子の遊海にセレナが問いかける。

 

 

「お前達がアカデミア、プロフェッサーと雌雄を決した先に…この事態の()()がいる…全ての話は…オレの体感時間で数年、この次元なら最低でも10年以上前、俺達の世界なら数日…いや、数週間前に遡る…全てはそこから始まった」

 

「時間がバラけている…?元凶とは、なんの事なんだ?」

穏やかに、しかし真剣に…遊海は話を始める…その背後では翠や凌牙達が静かに状況を見守っていた。

 

 

 

 

「俺達の世界では、半年前から世界最強の決闘者の称号…『決闘王』、その七代目を決める為の戦い、『ワールド・チャンピオン・シップス』が開かれていた……そこに、1人のデュエリストが現れた」

 

「1人のデュエリスト?」

 

「大会前はほとんどノーマークだったそのデュエリストは大会の中で頭角を現していった…融合・シンクロ・エクシーズ、そしてアドバンス…4つの召喚法を駆使して大会を勝ち上がっていった……だが、悲劇が起きた」

 

「悲劇…?」

静かに話を続ける遊海…その話に変化が起き始める…。

 

 

「悲劇…それは、とある対戦の最中、そのデュエリストの攻撃が…対戦相手に大怪我を負わせてしまったんだ……その大会では新開発されたソリッドビジョン、質量を持つ『リアルソリッドビジョン』が使われていた……その攻撃が対戦相手を襲ったんだ」

 

「リアルソリッドビジョン…!?そちらの『世界』にもリアルソリッドビジョンが存在したのか?」

 

「そうだ、そして観客達は思わぬ事故に動揺する者や、選手を非難する者……そして、派手な演出を喜び、歓声を上げる者に分かれた……そして、そのデュエリストのデュエルはだんだんと派手に、激しくなっていった……相手がボロボロになってしまうほどに……幸いにも、他のデュエリスト達がその流れに乗ってしまう事はなかった…だが、デュエルを重ねる事に…彼の心は限界に近付いていった…」

 

「っ、う…!?」

 

「遊矢…?」

突然、遊矢が胸を押さえる…

 

 

「彼は元来、人を喜ばせよう…人の期待に応えようとする優しい性格だったらしい……彼は、人々の期待に応えようとしすぎて…心が壊れてしまう寸前だったんだ………そして、その日はやって来た」

 

「その日…?」

 

《っ、ぐ…!》

 

「ユート…!?」

「その日」…その言葉を聞いたユートも苦しげな表情を見せる…!

 

 

 

「ワールドチャンピオンシップス、決勝…彼は希望の勇士…九十九遊馬と戦う事になった……希望の戦士と融合・シンクロ・エクシーズ・アドバンス…4つの召喚法の名を冠したドラゴン達は激しく激突した……そのデュエルの末に、彼は遊馬に負けた…そして、遊馬は彼に言ったんだ『楽しいデュエルができてよかった、ワクワクできるデュエルだった!次はどうなるか分からない…また熱くて盛り上がるデュエルをしよう!』その言葉は期待に押し潰されそうだった彼の心を救う事ができた……俺達は、そう思った………だが、俺達は少し遅かった…!!」

遊海は静かに拳を握りしめる…。

 

 

「新たな決闘王の誕生に歓声に包まれる会場……そこへ1つの()()が投げ込まれ、彼に直撃した……それは、彼の派手なデュエルに期待していた観客の1人が投げつけたモノだった……それが、彼の中で張り詰めていた糸を、切ってしまった…!!」

 

「《ぐう、ううっ…!!?》」

 

「遊矢!?大丈夫!?」

 

「ユート!しっかりしろ!?」

 

「遊海!何なんだ、その話は…!!その話が、私達になんの関係がある!?」

 

「う、あ…ああっ…!?」

油汗を流す遊矢とユート…零児は異常な様子に思わず取り乱す…その足元には、零羅がしがみついていた…。

 

 

「彼には、特殊な才能があった…先天的に肉体に宿る、デュエルモンスターズに関係する超能力者『サイコデュエリスト』の力…そしてその心…魂をデュエルモンスターズの精霊に愛される事で宿る『精霊の力』…彼は、両方を強く宿した特殊体質だった。

その力が強すぎるあまり、彼は自分のモンスター達の心と共鳴してしまった…デュエルを通じて人間の負の面を見過ぎた彼のモンスター達は…怒っていたんだ……そして、彼らは暴走した…!制御を失ったリアルソリッドビジョン…いや、実体化した精霊達が会場を破壊し始めた…!その果てに、その男は『悪魔』になった…4体のモンスターと魂ごと一体化し、彼は文字通りの「モンスター」と化した…」

遊海はそこで呼吸を整える…。

 

 

「そのデュエリストの名は……ズァーク、そしてその身をモンスターに変えた奴の名は──『覇王龍ズァーク』…俺達、デュエリストが生み出してしまった…哀しき悪魔だ」

 

 

「「ズァーク…」」

『ズァーク』…その名を聞いた途端、柚子とセレナは言い表せない感情に襲われる…。

 

 

「ズァーク…!?それが、この次元になんの関係がある…!?それはそちらの世界の話なのだろう!?」

 

「………俺達は、悪魔と化したズァークを止め…救う為に戦い続けた、だが…精霊4体と融合したズァークは凄まじいタフネスで戦い続けた……被害は街1つで押さえ込んでいたが、俺達の体力は限界へと近付いていった………そんな時、俺はズァークを別次元に封印する作戦を思い付いた、世界に被害が及ばない…別の次元で怒りや悲しみに狂ってしまったズァークを止めようとした………俺は翠や、遊馬達にその作戦の要となる力の発動を託し、囮となってズァークと戦い続けた……だが、俺は失敗してしまった」

 

「っ…!?」

あまりに救いがなく、スケールの大きな話に取り乱す零児…だが、遊海の態度から話が続いている事を悟る。

 

 

「俺が、戦いのダメージで失神している間に…とある2人が戦場に現れた……1人はあるリーグで活躍していたプロデュエリストの少女、もう1人はその少女の父親…リアルソリッドビジョンを開発した科学者だった……彼らは、ズァークを止める為に戦場に乱入してきたんだ…その手に、ズァークの負の感情を中和できる要素…大自然の力を宿した4枚のカードを手にして…」

 

「大自然の力を宿した…」

 

「4枚のカード…」

 

「ただ1つ、科学者の誤算だったのは…娘が父を守る為に、たった1人でズァークに挑んだ事だ………少女はその身を犠牲にして、ズァークを打ち倒した…4枚のカードの力を使って、統合していたズァークを4つに分離させた………だが、想定外の事が起きた」

 

「想定外…?」

 

「倒されたズァークは分離する直前に逃げようとした…その結果、ズァークの宿した凄まじいエネルギーと4枚のカードのエネルギーが衝突……爆発と共に、世界を引き裂いた」

 

「世界を引き裂くほどの戦い…!?そんな事があり得るのか…!?」

 

「本当にあった事だ……そして、俺はその分断に()()()()()()……その中で力を失い、記憶も失くし……分断され、4つの次元へと再構築された…新たな世界に流れ着いた」

 

「待て…まさか、新たな世界とは…!!」

 

「そうだ…それが、スタンダード次元……いいや、4つの世界を内包したこの世界……『ARC次元』の正体だ」

遊海の口から語られていたのはスタンダード・エクシーズ・シンクロ・融合…4つの世界を内包する次元世界、ARC次元創世の真実だった。

 

 

 

「待て…理解が、追いつかない…!この世界は別の世界が裂けて生まれた、というのか!?」

 

「そういう事だ…幸いにも、大元である俺達の世界は無事だったらしい…街1つが巨大なクレーターに変わった以外はな……次元分断が発生する前にズァークの隔離が終わっていたのが、不幸中の幸いだった……だが、話には続きがある」

 

「……まだ、あるのか…!?」

 

「ズァークはまだ、生きている……4つに分断されたズァークはその分かれた魂の欠片ごとに1つの次元に新たに生を受け、別人として過ごしていた……それぞれに召喚法の名を冠したドラゴン達を手にして」

 

「召喚法の名を冠した4体……それは、まさか!?」

零児は話の流れから、最悪の可能性に辿り着く…。

 

 

 

「『オッドアイズ・ドラゴン』…『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』…『クリアウイング・シンクロ・ドラゴン』…『スターヴヴェノム・フュージョン・ドラゴン』……遊矢、ユート、そしてユーゴ、ユーリ……その4人は『覇王龍ズァーク』、その魂を宿す欠片達だ」

 

「っ─!?ゆ、遊矢が…ズァークのカケラ…!?」

それは衝撃のカミングアウト…思わぬ事実に柚子は思わず、胸を押さえていた遊矢の顔を覗き込む…。

 

 

「う、ぐ…オレが…悪魔?…ズァーク…?そんな、事…言われたって…!?」

発作が収まったのか、正気に戻った遊矢は戸惑っていた…。

 

《オレには、少し心当たりがある……遊矢がなにか、強い負の感情を抱いた時、溢れ出しそうな()()()があった…オレは必死にそれを押さえ込んでいたが…それが、『悪魔』だと言うのか?》

 

「その通りだ、ユート…ズァークは復活を狙って、それぞれの欠片を引き合わせる……例えば、似た顔の存在がいると…異常に闘争心が強くなる、とかな…心当たりはあるはずだ」

 

「《っ…》」

遊海の言葉に思い当たるフシのあった遊矢とユートは唇を噛み締める…。

 

 

 

「それじゃあ、私達は…遊矢やユーゴと、戦わなゃならないの…!?」

 

「それは…まだ、不確定だ……でも、そうなる可能性が大きい……ズァークが復活を狙う以上は…」

 

「そんな…!」

柚子の悲痛な言葉に遊海は辛そうな表情を見せる…その表情だけで、柚子達は遊海が本当に「榊遊矢」自身を心配しているのだと気付いた…。

 

 

「遊矢やユーゴが敵になる可能性があるのは驚きだ…しかし、それなら、なんで私達も呼んだんだ…?遊矢自身の問題なら、遊矢とリーダーである零児に話をすれば済む話だろう?」

 

「ここからは…セレナちゃん、柚子ちゃん…そして零児、黒咲…お前達にも関係ある話だ」

 

「俺に…?」

セレナの疑問に静かに応えた遊海は話を続ける。

 

 

 

「ズァークが分裂すると同時に、ズァークに挑んだ少女の魂も4つに引き裂かれた……そしてズァークを追うように、分かれていった……その少女の名は、()()()()

 

「あか、ば…?!それって…!?」

 

「その父親であり、俺達の世界の海馬コーポレーションでリアルソリッドビジョンを開発した科学者の名は──赤馬零王」

 

「っ───父さんが、別世界の人間…!?」

それは零児にとっては信じられない事実…そして、遊海は最後の告白をする。

 

 

「そして、4つに分かれた赤馬レイの魂は…大自然の力を宿したカードが変化した4つのブレスレットと共に生まれ変わった……彼女達の名は…柊柚子、黒咲瑠璃、セレナ、リン……君達は、赤馬レイの魂の欠片なんだ」

 

「「っ──」」

 

「馬鹿な…!?」

遊海の思わぬ言葉に柚子とセレナがへたり込む…黒咲は信じられない、といった様子だった。

 

 

「……私は、遊矢の敵…って事、ですか…!?」

 

「違う、それは…絶対に違う…!それだけは、俺が断言する!君達はズァークの復活を阻み、救う為の存在…俺はそう思ってる」

 

「ズァークを…遊矢を、救う…?」

涙目で遊海に問いかける柚子…その涙を見た遊海は優しく、しかし強い言葉で柚子の言葉を否定する。

 

 

「君達は、言わばズァークの復活を阻む為の『安全装置』だ…ズァークの欠片達が近付いた時、君達のブレスレットが彼らが接触しないように、彼らを()()させる…!それによってズァークの復活を阻み、ズァークではなく榊遊矢やユートという存在として守る為の『運命の人』…それが君達なんだ」

 

「遊矢達を守る為に……」

遊海の言葉に柚子は思い当たる事があった…遊矢が現れると消えてしまうユート、ユーリに追い詰められた時に現れたユーゴ…ブレスレットが輝いた時に起きた転移は柚子や遊矢を守る為の動きをしていたのだ。

 

 

「本来なら、別の次元に存在して出会わないはずの欠片達…だが、そのバランスは崩されてしまった…赤馬零王の企みによって…」

 

「……まさか、父は……消えてしまったレイを取り戻そうと…!?」

 

「その通りだ……世界統一は方便……本当の目的は各次元に散らばってしまったレイの欠片達を集め、消えてしまった自分の娘……『赤馬レイ』を蘇らせる事……それが、零王の真の目的だろう」

 

「「「「…………」」」」

敵の首魁、零王の真の目的を聞いた零児達は言葉を失う…それはあまりにも身勝手で、あまりにも悲しい理由だったからだ…。

 

 

 

 

「俺も父親だから、な…零王の気持ちはよく分かる……俺も、凌牙や璃緒が死にかけていて、それを救う手段があるのなら……絶対に手を伸ばす…!だけど、それとこれは別だ…!」

 

「遊海…」

悲しげな表情で拳を握りしめる遊海…その表情は零王の嘆きに共感し、その所業に怒りを抱いていた…。

 

 

 

「少し、話がズレてしまったが…遊矢、お前はユーゴ、ユーリとできるだけ接触しないでくれ…お前達が出会えば、それだけでズァークの復活が近付いてしまう…現状、それは避けたい」

 

「……わかった」

落ち着きを取り戻した遊海は静かに遊矢に語り掛ける…最悪のタイミングでの『悪魔』の復活を避ける為に…。

 

 

「柚子ちゃん、セレナちゃん…君達は……絶対に、アカデミアに捕まってはダメだ…!本来なら、前線に出て欲しくはないが……君達なら、自分で自分の身を守れると信じている」

 

「は、はい…!」

 

「わかった…!」

遊海の真剣な忠告に柚子達は静かに頷く。

 

 

「黒咲、お前は…必ず妹を助け出してアカデミアから守るんだ……その為に、このカードを渡しておく」

 

「このカードは…『力の集約』?ずいぶん古いカードだな…」

 

「お守りの代わりだ…最悪の事態にはならないはずだ」

 

「支援に感謝する…俺は必ず瑠璃を助ける…!」

遊海からの激励を受けた黒咲は決意を固める…!

 

 

「零児、暴走している赤馬零王を止められるのは…息子であるお前の真っ直ぐな想いだけだ……俺達も全力で支援する、馬鹿親父を一発殴ってやれ」

 

「遊海……感謝する」

そして零児に対しては少し冗談を交え、父との対峙を促す…。

 

 

「それから…零羅、怖い話を聞かせてごめんな?ほら、チョコレート…寝る前には歯を磨くんだぞ?」

 

「……ありがと……」

そして零羅には優しく笑い掛けた遊海はチョコレート菓子を渡す…零羅は小さく笑っていた。

 

 

「俺からの話は以上だ……全ての戦いは、明日で終わらせよう…!」

 

「ああ…!」

翌日の戦いを見据え、遊矢達を激励する遊海…そして、その場は解散となった…。

 

 

 

 

 

「………遊海!1つだけ、聞きたい事があるんだ」

 

「どうした?遊矢」

 

「遊矢…?」

零児達がスタジアムを去る中…遊矢が遊海に問いかける。

 

 

「さっきの話…この次元が出来た時、遊海は爆発に巻き込まれたって…それじゃあ、遊希兄を見つけた時…ボロボロだったのって…!?」

 

「あの傷は…俺がズァークと戦った時に受けた傷だ……だけど、お前は無関係だぞ?遊矢……お前は悪くない」

 

「っ…!!」

遊矢の脳裏に浮かんだのは、瀕死の遊希を見つけた時の事だった……遊矢は、間接的にとはいえ…遊海を傷付けていたのだ。

 

 

 

「遊海…なんで、なんで…俺に優しくしてくれるんだよ…!俺の中のズァークのせいで、ボロボロになって、死にかけて…家族と離れ離れになって!それなのに…!」

 

「はぁ……()()()()()()()()()()…ていっ」

 

あだっ!?」

自分の中に悪魔がいると知り、遊海を傷付けてしまった事で取り乱す遊矢…遊海はそんな遊矢の額にデコピンを喰らわせる。

 

 

「俺の前にいるのはズァークじゃない、お前は榊遊矢!エンタメデュエリスト榊遊勝の息子で…みんなをデュエルで笑顔にしたいって思ってる半熟のエンターテイナーの卵だ!お前はお前、奴は奴!お前はズァークだが、ズァークじゃない!自分を強く持て!」

 

「遊海…」

先ほどとは変わって明るく語り掛ける遊海…その優しさに遊矢の表情は少し明るくなる。

 

 

「俺だって、ズァークを倒したい訳じゃない…アイツも被害者だ…救えるなら、救ってやりたい!きっと、全てを解決できる方法があるはず…!だから…お前はお前の為に、みんなを笑顔にするデュエルをしてくれればいい!わかったな?」

 

「遊海…うん!」

ズァークと遊矢達、双方を救う方法を考える遊海…それを聞いた遊矢は憂いをなくす事が出来たのだった。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

「ふ、ぅ……みんな、ありがとな…()()()があったら、今の俺は瞬殺だからな……うぐっ…」

 

「遊海さん!!」

遊矢達の背中を見送った遊海が崩れるように倒れ込む…まだ「オーバー・タイム・タイラント」のダメージが抜けきっていなかったのだ。

 

控えていた遊戯達は…万が一、遊海の説明によるショックで遊矢が「逆鱗化」した時に備えた制止要員だったのだ…。

 

 

「遊海…大丈夫なのか…?」

 

「遊馬…大丈夫、一晩寝れば…なんとかなるさ……お前達も、もう休んでくれ」

 

「遊海、1人で背負い過ぎないで…今のきみには、僕達がついてるんだから…!」

 

「ああ!ズァークを助けたいのは、オレ達も一緒だ!」

 

「遊戯…十代……ありがとう、みんな…明日は、頼む…!」

遊海を支える仲間達との「絆」…それが、遊海の力となるのだった…。

 

 

 

 

 

 

「それから………翠、話しておかなきゃならない事がある」

 

「えっ…なんですか?」

遊戯達を見送り、凌牙達を先に行かせ…スタジアムで翠と2人っきりになった遊海…そのタイミングで遊海は…自分が抱えてしまった()()について打ち明けた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さんの…馬鹿ぁぁぁっ!!!」

 

 

「ぐっはああああ──!?」

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォーウ…(そりゃ、そうなるよね…)》

 

 

 

 

 

 

【………愛とは、恐ろしいな】

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

「ランサーズ各員、準備は済ませたな?我々は…融合次元へと突入する!!」

翌朝、早朝…身支度を整えた新生ランサーズ35名は中央広場へと集まっていた…ついに、出陣の時がやって来たのだ…!

 

 

「あれ…?遊矢、その靴どうしたの?」

 

「ああ、アレンがくれたんだ…アクションデュエルの力にして欲しい…父さんの事を悪く言ってごめんって」

広場に集合した遊矢、その靴は見慣れないモノに変わっていた…それはレジスタンスのアレンが手作りした変形するスケートシューズだった。

 

アヤカが中継した遊矢とエドのデュエル…その中で遊勝の思いを知ったアレンが遊矢へと託したのだ。

 

 

「融合次元に到着次第、丸藤亮が指定したポイント…アカデミアの離反者が集まる場所へ向かう事、それを第一目標とする!アカデミアが事態に気付く前に、一気に打って出る!」

 

「そうか…また『ディメンション・ムーバー』での移動になるのか…少し不安だな…」

零児の確認の言葉を聞きながら、ようやく黒髪に戻った遊海が呟く…遊星や海馬による改良で安定したとはいえ、『ディメンション・ムーバー』の移動は座標のランダム性が高いのだ…。

 

 

《マスター!お待たせしました!次元飛行船、かっとび遊馬号の修理完了です!》

 

「アヤカ?しばらく姿を見ないと思ったら…アストラルを手伝ってたのか……でも、時空嵐のせいで遊馬号は飛べないだろう?」

そんな時、昨夜から姿を見せていなかったアヤカが現れる…どうやら、アストラルと飛行船の修理をしていたらしい。

 

 

《確かに、未だに各次元間は不安定…ですが、フレアが解決する方法を見つけてくれたのです!》

 

「なんだって?」

飛行船を修理したとしても…ARC次元の外周、そして各次元の間にはズァークの力の余波…『時空嵐』が吹き荒れている、その強さは遊海単体による『紋章』の力を使った短距離転移にも影響を及ぼす程…だが、その解決法が見つかったと言うのだ。

 

 

《確かに、この次元を覆う嵐は凄まじいモノです…私単身では突破は難しい…ですが、三幻神が揃っているのなら話は別です!》

 

「そうか…!三幻神の力で一時的にでも『時空嵐』を散らせれば、遊馬号で融合次元まで突っ切れる…!流石だな!フレア!」

 

《ふふっ…ようやく、遊海の力になる事が出来そうです!》

それは遊海だからこそ使える手段…英雄が世界を救う決闘者達の道を切り開く!

 

 

 

 

「それでは…各自、『ディメンション・ムーバー』を───」

 

「待ってくれ、零児…瞬間移動とはいかないが……もっと良い移動法が使えるようになった!これならバラけないで済む!」

 

「何?」

 

「遊海?」

次元移動の用意に入るランサーズ達に遊海が待ったをかける!

 

 

 

「デュエルモンスターズの歴史に輝く、原初の神々よ…その力を開放せよ!現われろ!大地の神!『オベリスクの巨神兵』!!」

 

《グオオオ…!!》

 

「で、でかっ…!?」

 

「うおおおっ!?オベリスクだ─!!」

遊園地近くの海から青き体を持つ巨神、大地の神・オベリスクが現れる!

 

 

「続いて現われろ!天空の神!『オシリスの天空竜』!!」  

 

《ギュアアアアン!!》

 

「あのモンスターは…シンクロ次元の収容所で現れた…!」

 

「オシリスの天空竜…!」

さらに水平線の彼方から…巨大な赤き龍神・オシリスが現れる!

 

 

 

「そして…降臨せよ!太陽の神!『ラーの翼神竜』!!」

 

《キュアアアアア!!》

 

「綺麗…!」

 

「すごい…!三幻神が揃い踏みだ!」

そして遊海の腕から飛び立った金色の鳥が輝き…黄金の光を纏う神鳥・ラーが現れる!

 

 

 

「我が友の下僕たる大いなる神々よ…その力を解き放ち、世界を救う決闘者達へ道を開け!超電導波─サンダー・フォース!ゴッドハンド・クラッシャー!ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」

 

遊海の叫びに応え、三幻神に力が集中していく…!

 

 

 

「三神一体…放て!!」

 

《オオオオ!!》

 

《ギュアアアアン!!》

 

《キュアアアアアアア!!》

 

三幻神がそれぞれに攻撃を放つ…3つの力は交わり、螺旋を描き…時空の壁を突き破った!!

 

 

 

 

「そ、空に穴が…!?」

 

「なんという力だ…!」

 

「よし…!遊馬!かっとび遊馬号だ!三幻神の力が時空嵐を一時的に蹴散らした…今なら、使えるはずだ!」

 

「なるほどな…!来い!かっとび遊馬号!!」

 

キィン!!

桁外れの力に驚くランサーズ達…そして遊馬は遊海の言葉に従って「皇の鍵」を掲げる…そして、別次元から無数の歯車が組み合わさったような次元飛行船、かっとび遊馬号が出現する!

 

 

「なっ…!?この船は…!?」

 

「飛行船、なのか…!?どこから出てきた!?」

 

「おおきい…!」

 

「飛行船の修理が終わったのか…!流石だなアストラル!」

 

「そうか、飛行船が飛べるなら…移動手段も確保できる!」

突如として現れた巨大飛行船に驚くランサーズ、一方で凌牙やカイトを始めとしたチームZEXALは飛行船の復活を喜んでいた。

 

「よし!乗り込もうぜ─!」

 

キィン!

 

遊馬の声で乗り込み装置、フラッシュ・トランサーが起動…遊矢達は光となって飛行船に導かれた…。

 

 

 

 

 

 

 

「っ…ここが、飛行船の中なのか…!?私達の次元の技術ではない…それ以上の…!」

 

「すっげぇ…メカメカしてる…」

 

「人間の力でこんなモノが作れるのか…!?」

飛行船に乗り込んだランサーズ達は超技術で作られたコックピットを見て呆気に取られている。

 

 

 

(ようこそ、ランサーズの諸君…この船は次元飛行船、かっとびユーマ号…我々はこの飛行船で世界を渡り、ARC次元へとやって来たのだ)

 

「「ひっ…幽霊!?」」

 

「う、浮いてる…!?だ、誰だよオマエ!?」

その時、ランサーズを歓迎する声が響く…そして現れたのは青白い光を纏い、宙に浮いた少年らしき人物…その姿を見た柚子とセレナは思わず抱き合い、沢渡が足をガクガクと震えさせながら強がっている…。

 

 

(私の名はアストラル…決してユーレイではない、キミ達とは別の次元…高位次元、アストラル世界の使者…そして遊馬の相棒だ)

 

「アストラル世界…?シンクロ次元にいるラプラスと同郷か…!」

 

(そうだ、私の姿はみんなをびっくりさせてしまうからな…普段は姿を隠して、レジスタンスやキミ達の事を支援していたんだ)

 

「怖がって、ごめんなさい…」

 

「(あっ…意外と優しそうだな、あの人…)」

改めてランサーズへと自己紹介をするレジスタンス…チームZEXAL、14人目の勇士アストラル…零児はその姿と出身世界から以前に出会ったラプラスと同郷の存在と知る。

なお、遊矢はアストラルの様子から彼の事をすぐに信じたのだった。

 

 

 

「お、おいおい…!?本当に何なんだよ、お前ら…めっちゃ強い上に別世界の人間までいるって…お前ら、白波遊海を助けに来た救助隊じゃなかったのか!?」

 

「流石に理解しきれないのも無理ないな…なら、改めて名乗らせてもらおうか!」

あまりに理解できない事の連続に思わず取り乱す沢渡…そんな姿に苦笑した遊海は改めて前に出る!

 

 

「俺の名前は白波遊海!此処とは別の世界の最強の称号…『二代目決闘王』の名を背負い、武藤遊戯と共に地球の闇や大邪神と戦い!遊城十代と共に虚無の邪神を倒し!不動遊星と共に冥界の王と破滅の未来を乗り越え!九十九遊馬と共に混沌の神と戦った……世界を何回か守ってきた決闘者(デュエリスト)だ!」

赤い帽子を被り直しながら…遊海は改めて、自分の事をランサーズへと伝える…その経歴は、常人ならば経験できない程の戦いの歴史…。

 

 

 

「さぁ…行こう!全ての戦いを終わらせて、帰るべき場所に帰る為に!」

 

「ああ!かっとび遊馬号…発進!!」

 

遊海と遊馬の号令で飛行船が起動する…そして飛行船は三幻神の開いた異次元の扉を潜り、融合次元へと飛び出す。

 

 

 

最後の戦いが、ついに始まろうとしていた…!





Next Episode…?


4つの次元に分かれた世界、そこには…4人の同じ顔を持つ少年達が存在し、彼らが持つドラゴン達は呼び合う。

まるで…お互いを求め合うかのように…。

 



エクシーズ次元を襲ったアカデミア軍を改心させた遊海と遊矢はついに敵の拠点、融合次元へと突入する。

そこで待っていたのは…英雄と勇者の訪れを待っていた、懐かしき仲間達…。


「十代…」

「待たせて悪かったな!助けに来たぜ!」




そして、最凶のデュエリスト…。



『なに?邪魔しないでくれる?』

「悪いが…お前のお楽しみはここまでだ」



再会する親子



「遊矢…!遊矢なんだな…!?」

「父さん!!」



狂気に落ちた王


【私は…レイを取り戻す…その為ならば…!】

「父さん…!私は…僕は!!」






そして…悪魔は蘇る。


「終わらせよう、ズァーク!お前の哀しい戦いを!俺達が…お前を止める!!」


遊海は…そして、時代や次元を超えて集いし決闘者達は、世界を救う事ができるのか…!




転生して決闘の観測者になった話 第五章 近日執筆開始予定……









「これが…最後の戦いだ!!」


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エクシーズ次元編 主要オリキャラ・マテリアル

 

エクシーズ次元・レジスタンス 

 

 

カイト

 

エクシーズ次元における『天城カイト』の並行存在、原作にも登場するが来歴が違う。

 

本来ならば融合次元の侵攻によって家族をカード化され、奪われた事で怒りと憎しみに囚われてしまうが…DM次元から駆けつけた遊馬達の介入によって事なきを得る。

また、原作のカイトよりも人の話を聞く余裕がある。

 

なお、翠の危惧によってDM世界のカイトは遊海救出組には同行していなかったのだが…?

 

 

 

天城カイト

 

ZEXALの物語を乗り越えた『龍の勇士』、翠の危惧によってDM世界で状況を見守りながら待機していたが…ブルーノとラプラスがARC次元に向かった事を聞き、遊馬や遊海の力となる為に自身もARC次元に向かう事を決意した。

 

そして、新造した『次元移動装置』によって無事にエクシーズ次元に到着したものの…その先でいきなり遊矢───ズァークの欠片と遭遇、ズァークの面影を持つ遊矢を『敵』と判断してデュエルを仕掛けた。

……なお、翠には事前に話を聞いていたが…遊海の行方不明で動揺していた翠は十分な情報を伝える事ができていなかった。(ズァークの欠片の存在、各次元の状況など)

 

遊馬達との合流後はエクシーズ次元のカイトと共に『カード化開放装置』の作成を担った。

 

 

 

オービタル7

 

カイトの相棒たる万能ロボット、遊馬達が『時空嵐』の影響で連絡できなくなった事を受け、カイト達によってさらなる改造を施され、バリアライトに加えてアストライトを搭載、カイトへの異次元の影響を防ぐ『次元適応鎧』モードを獲得した。

 

 

 

 

ユート

 

スタンダード次元でユーゴに倒され、遊矢に統合されてしまったと思われた彼だが…実はフレアによる守護によって遊矢との完全な「統合」を免れており、遊海がフレアと合流した事で霊体の状態で黒咲と再会する事ができた。

 

 

 

九十九遊馬&アストラル

 

希望と絆の物語を乗り越え、最善の未来を掴み取った『希望の勇士』にして暫定の『七代目決闘王』

 

『悪魔が生まれた日』事件で行方不明になった遊海を助ける為に仲間達と共にARC次元へと突入したが、次元嵐の影響で肉体年齢がZEXAL編当時まで逆行している。(アストラル体のアストラルには影響なし)

 

持ち前のかっとビング精神でハートランドの人々の精神的支えとなっていたり、戦ったアカデミア生を離反させたりと相変わらずのカウンセラーぶりを発揮している。

 

 

 

 

観月小鳥 白波凌牙 璃緒 アリト ギラグ ミザエル 真月(ベクター) ドルベ 海亜・アトラス

 

ZEXALの物語を乗り越え、新たな未来を掴んだ勇士達。

遊海を救出し、不安定なARC次元を安定させる為に突入してきたのだが…次元の歪みに巻き込まれた影響で全員がZEXAL編当時の肉体年齢まで逆行してしまっている。

次元侵攻半年後のエクシーズ次元に不時着、その後はエクシーズ次元を守る為の『レジスタンス』を再編成し、融合次元と戦っていた。 

 

 

 

遊城十代

 

世界を何度も救った伝説の決闘者、流浪のHERO使い。

『悪魔が生まれた日』事件を受けて翠達と共に融合次元に突入したが、肉体年齢がデュエルアカデミア時代まで逆行してしまっている。

 

エクシーズ次元到着直後に融合次元のエド・フェニックスと遭遇、アカデミアの呪縛から開放する為にデュエルを挑んだが…エドは榊遊勝への憎悪に囚われていた為に話が噛み合わず、デュエルもアカデミア兵の横槍で流れてしまった。

 

その後は遊撃ごとにエドの姿を探していたが、なかなか遭遇する事ができないでいた。

 

 

 

 

白波翠

 

説明不要の我らがヒロイン、優しき『紫の魔女』

 

遊海の失踪後、前世からの記憶を頼りに遊海の行方を推測、遊馬達と共にARC次元へと突入した。

 

 

……のだが、『時空嵐』に巻き込まれた影響で1人だけ幼児レベル(幼稚園児〜小学校低学年)に肉体年齢が逆行してしまっていた。

 

その後は不時着したハートランドの状況を即時に把握、遊馬達と共にアカデミアを一時撃退、遊園地での防衛戦を選択して遊海の行方を探していた。

 

 

なお、幼児化しているとはいえ、精霊の力やデュエルタクティクスは健在な為…舐めていると怪我では済まなくなる……それどころか、暴虐を尽くしていたアカデミア生に対して『ラーの翼神竜』を開放した結果、力が暴走…数百人のアカデミア生を瀕死にしてしまい『最優先抹殺指令』の対象になっていた。

 

ただし、肉体が能力に追いついていない為、長時間は戦えず、すぐに眠くなってしまう。

幼児化した事で普段よりわがままになっている。

 

遊海と合流後、転生特典による再生で本来の姿に戻る事ができた。

 

 

 

 

フレア(ラーの翼神竜)

 

遊海の家族たる精霊の1人にして、アテムの持つ『ラーの翼神竜』の分霊。

対ズァーク戦における『切り札』として翠と共にアストラル世界へと逃され、遊海を救う為にARC次元へと突入した……幸いにも『時空嵐』の影響は受けなかったが、仮マスターである翠が幼児化してしまった事で全力が出せず、デュエル外での戦闘形態は3分しか維持できなくなっていた。

 

エクシーズ次元では遊園地を中心として結界による『安全圏』を構築し、エクシーズ次元の人々と翠を守る事に集中していた。

 

遊海との合流時、誰よりも早い段階で復活したドン・サウザンドの存在を見抜き、遊馬達へと伝えた。

 

 

 

 

 

アカデミア軍

 

エド・フェニックス

 

ARC次元におけるエド・フェニックスの並行存在……ではなく、遊海の知るエドの転生体。

 

遊海がエクシーズ次元にやって来るまでは記憶を失っていたが…遊矢とのエンタメデュエルと『ラーの翼神竜』の姿を見た事で記憶が覚醒、アカデミアへと反旗を翻した。

 

 

丸藤亮

 

融合次元・アカデミアにおける『伝説のデュエリスト』、「帝王」の二つ名を持ち、アカデミア生の憧れとなっている。

 

その正体は遊海の知る丸藤亮の転生体、他次元の転生者よりも早くに記憶を取り戻した彼は『獅子身中の虫』となり、この異常事態を解決しに来るであろう『英雄』の到着を待っていた。

その一方でアカデミアからの離反を考える生徒達に道を示し、アカデミアの…プロフェッサーの『暴走』を止める為の「その時」を待っていた。

 

そして遊馬達レジスタンスの抵抗によって侵攻を防がれていたエクシーズ次元に派遣され…ついに遊海と再会、前世では叶わなかった『全力』の決闘によってアカデミア生達を感化し、エクシーズ次元侵攻を終わらせた。



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第5章 狂念融合次元 フュージョン・アカデミア/覇王決闘次元  Z-ARC
抗う戦士達〜凶戦士襲来〜


こんにちは!S,Kです!

ついに拙作の感想数が1000件を突破、さらに通算UAもまもなく50万!
他の作者様の作品に比べればまだまだなのかもしれませんが…本当に嬉しいです!この作品はハーメルンの皆様の応援で続ける事ができています!本当にありがとうございます!



そして…新章開幕、遊海達はついに融合次元・アカデミアへと踏み込む。

さらに、融合次元にも戦い続けた者達がいた…英雄の到来を信じて…。



それでは、最新話をどうぞ!


 

『融合次元』

 

そこは中世ヨーロッパ風の街並みのある次元…赤馬零王はその次元を事実上征服し、子供達を『立派なデュエリストにする』という名目で絶海の孤島にあるデュエリスト養成施設『アカデミア』へと集めていた。

 

その実態は──4つの次元全てを『1つ』にし、新たな『理想郷』を創ると謳う『アーク・エリア・プロジェクト』…それを実行する為に子供達を『兵士』へと育て上げる為の軍事学校だった…。

 

 

しかし、当然ながら『脱走者』も出る…人を傷付けたり、カードに封じる事を嫌がった者達は必死にアカデミアから逃げ出した……だが、アカデミアの関係者に見つかれば、脱走者は問答無用でカードに封じられてしまう。

 

それでも…脱走者達は後を絶たない…彼らは自然と集まり、互いに手を取り合い…脱走者達の受け皿となる団体を組織した。

 

 

その名は…『遊勝塾 融合次元分校』と言った。

 

 

 

…そして…この日、彼らは壊滅の危機に瀕していた…!

 

 

 

 

 

 

 

【ようやく見つけたよ、アカデミアから逃げ出した脱走者君達?】

 

「くっ…!よりによって()か…!」

 

「どうするッス…!?保護した子と仲間達はアジトに逃がせたけど…!」

 

「プロフェッサー直属のデュエル戦士、ユーリ…!やばい人なんだな…!」

この日、遊勝塾のメンバー達は新たにアカデミアから逃げ出した学生を保護しようとしていた…だが、そこへアカデミアのボス・プロフェッサー直属のデュエル戦士、ユーリが裏切り者を粛清する為に現れたのだ…! 

 

 

「っ…このまま逃げたら、アジトのみんなが危ないザウルス…!ここでユーリを倒すドン!!」

 

「それしかないな…!もう少し…()()()()()()()なんだ!」

黄色い恐竜柄のバンダナの少年の言葉に黒コートの少年が頷き、デュエルディスクを展開する!

 

 

【へぇ…?ボクを倒すつもりかい?】

 

「僕達は…みんなを次元戦争で戦わせるプロフェッサーを許せない!デュエルは…そんな事をする為に使うものじゃない!」

 

「キミ1人に4人掛かりは卑怯かもしれない…けど、俺達にも譲れない思いがあるんだな…!」

笑みを浮かべるユーリに対し、水色の髪に丸メガネの少年と大柄な体のコアラに似た顔の青年がデュエルディスクを向ける!

 

 

【まぁいいよ…アカデミアに盾突く奴はカードにしていいって命令だし……どうせ暇潰し、せいぜい楽しませてよね…?】

 

 

 

「「「「【デュエル!!】」」」」

 

ユーリLP4000

 

丸藤翔LP4000

前田隼人LP4000

ティラノ剣山LP4000

万丈目準LP4000

 

 

バトルロイヤルルール

・1ターン目は全員攻撃不可

 

 

 

【ボクのターン!】

【『捕食植物(プレデター・プランツ)スキッド・ドロセーラ』を召喚!】

幹から無数の瞳が覗くモウセンゴケ型のモンスターが現れる! ATK800

 

【さらに手札から永続魔法『プレデター・プランター』を発動!その効果で手札の『捕食植物モーレイ・ネペンテス』を特殊召喚!】

ウツボのように細い捕虫器を持つウツボカズラが現れる! ATK1600

 

 

【ボクは…これでターンエンドだ】

 

ユーリLP4000

ドロセーラ ネペンテス プレデタープランター 手札2

 

 

 

@翔

 

 

「僕から行くッス!ドロー!!」

「この手札なら…!魔法カード『融合』発動!手札の『スチール・ロイド』『ドリル・ロイド』『サブマリン・ロイド』を融合!頼むッス!『スーパービークロイド─ジャンボ・ドリル』!」

機関車・ドリル・潜水艦型のロボット達が融合…巨大な掘削ドリルロボが現れる! ATK3000

 

「僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

翔LP4000

ジャンボドリル 伏せ1 手札1

 

 

 

@隼人

 

 

「おれのターン!ドロー!」

「翔に続くんだな…!魔法カード『融合』発動!手札の『ビッグ・コアラ』と『デス・カンガルー』を融合!来い!『マスター・オブ・OZ』!!」

コアラとカンガルー型のモンスターが融合…オーストラリアの魂を示す、自然の化身が現れる! ATK4200

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドなんだな…!!」

 

隼人LP4000

マスターオブOZ 伏せ1 手札2

 

 

 

@ティラノ剣山

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「恐竜さんパワーを見せてやるドン…!『ダイナ・ベース』を召喚!」

赤い機体のキャタピラが現れる! ATK0

 

「そして『ダイナベース』の効果発ドン!このカードと手札の『究極恐獣』を墓地に送り融合召喚するザウルス!来い!『ダイナ・タンク』!!」

恐竜とキャタピラが融合…無双の恐竜戦車が現れる! ATK?→3000

 

「『ダイナ・タンク』の攻撃力は融合素材にした恐竜族モンスターの攻撃力分アップするドン!俺はこれでターンエンドザウルス!」

 

ティラノ剣山LP4000

ダイナタンク 手札4

 

 

 

@万丈目

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「いくぞ!魔法カード『ライトニング・ボルテックス』を発動!手札の『ドラゴン・フライ』を墓地に送り、相手の場のモンスター全てを破壊する!」

 

【おっと、少しはやるじゃないか】

フィールドに稲妻が降りそそぎ、ユーリの捕食植物を焼き尽くす!

 

 

【ここでボクは『スキッド・ドロセーラ』の効果発動!このカードがフィールドを離れた時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全てに捕食カウンターを置く!】

 

「なにっ…!」

焼き尽くされた捕食植物の破片が小さな牙を持つ口に変化し、モンスターに食らいつく!

 

ジャンボドリル 捕食1

マスターオブOZ 捕食1

ダイナタンク 捕食1

 

 

「だが、お前の好きにはさせん!魔法カード『融合』発動!手札の『おジャマ・イエロー』『おジャマ・グリーン』『おジャマ・ブラック』を融合!出てこい!『おジャマ・キング』!」

 

【うげ…!?なんか変なの出てきた…】

ユーリが初めて表情を崩す中、筋肉モリモリのおジャマの王が現れる! DEF3000

 

 

「フン…おジャマの力を見せてやる!『おジャマキング』が存在する限り、相手のモンスターゾーン3つを使用不可能にする!」

 

【不愉快な効果だね…!】

ユーリの前に気色の悪い黄・緑・黒のモンスターの幻影が現れる…その様子に思わずユーリはげんなりとしている…。

 

「オレはこれでターンエンドだ!」

 

万丈目 LP4000

おジャマキング 手札0

 

 

 

 

「(ボクの伏せカードは『レッド・ロイド・コール』、ユーリが『融合』を使った瞬間、それを無効にするッス!)」

 

「(おれは『聖なるバリア─ミラー・フォース』を伏せたんだな…!これでみんなを守る…!)」

油断なくユーリを見据える翔達…彼らもまた歴戦の決闘の記憶を持つデュエリスト、アカデミアでも上位の実力を持つユーリに対して油断はない…しかし、貪欲なる悪魔は…それを嘲笑う…。

 

 

 

 

@ユーリ

 

 

【ボクのターン…ドロー!そして永続魔法『プレデタープランター』の効果が発動、ボクは800ライフを払う】

 

ユーリLP4000→3200

 

【ふふっ…いいカードを引いた…!魔法カード『ハーピィの羽箒』を発動、キミ達の魔法・罠カードを全て破壊するよ!】

 

「っ…させないッス!カウンター罠『レッド・ロイド・コール』を発動!自分の場に『ロイド』融合モンスターが存在する時、相手が発動したモンスター・魔法・罠カードの効果を無効にして、同名カードをデッキから全部墓地に送ってもらうッス!」

 

【おっと…そんなカードを伏せてたんだ、まぁ…このカードは1枚しか入れてないけどね?】

全てを吹き飛ばす羽箒がドリルの回転で吹き飛ばされる!

 

 

 

【じゃあ、改めて…!『プレデタープランター』の効果発動!墓地の『モーレイネペンテス』を効果を無効にして特殊召喚!】

不気味なウツボカズラが復活する! ATK1600

 

【そして『捕食植物フライ・ヘル』を召喚!】

不気味なハエトリソウが現れる! ATK400

 

 

【そして…ボクは魔法カード『融合』を発動!フィールドの闇属性モンスター『モーレイネペンテス』と『フライヘル』を融合!】

2体の食虫植物が融合の渦に飲み込まれる…!

 

 

【魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!今ひとつとなりて、その花弁の奥の地獄から新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れろ!飢えた牙持つ毒龍…!レベル8!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!】

融合の渦から禍々しい光が弾ける…そして紫の体を持ち、全身の宝玉から禍々しい光を放つ獰猛なるドラゴンが現れる! ATK2800

 

 

「っ…こいつがユーリのエース…だが、攻撃力はオレの『おジャマキング』の守備力や『ジャンボドリル』の攻撃力より低い!」

 

【それはどうだろうね…?『スターヴヴェノム』の効果!このターンの終わりまで、自身の攻撃力に相手の特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力を加える!】

 

「「「「なんだって!?」」」」

スターヴヴェノムの背中の翼──捕食器が展開、フィールドのモンスターのエネルギーを吸い上げる…!

 

 

スターヴヴェノムATK2800→13000

 

 

「攻撃力、13000…!?」

 

【そしてボクは『スターヴヴェノム』のさらなる効果発動!相手のレベル5以上のモンスターの効果を無効にし、その効果を得る…ボクが選ぶのは…貫通効果を持つ『ジャンボドリル』!】

 

「しまったッス!?」

貪欲なるドラゴンが効果を喰らう…!

 

 

【さぁ、バトルだ…!まずは気色悪い『おジャマキング』を攻撃!!】

 

「くっ─!?」

 

「させないんだな!!罠カード『聖なるバリア─ミラー・フォース』発動!相手が攻撃してきた時、相手の攻撃表示モンスターを破壊するんだな!!」

万丈目に迫る捕食の触手…だが、隼人の罠カードがバリアとなり、獰猛なるドラゴンは吹き飛ばされた!!

 

 

 

「やった…!前田先輩!ナイスアシストザウルス!」

 

「やったんだな…!!」

 

【あ〜あ、残念…もう少し楽しめると思ったのに…】

 

「なにっ…!?」

エースモンスターを倒されたユーリ…だが、彼は…嗤っていた…!

 

 

【『スターヴヴェノム』が破壊された時、最後の効果が発動…相手の特殊召喚されたモンスター全てを破壊し、その攻撃力の合計分のダメージを与える…残念だったね】

 

「そんな…」

ユーリの場に吹き飛ばされた獰猛なるドラゴンが這い出す…そして無差別に破壊光線を放ち、全てを吹き飛ばしてしまった…!!

 

 

「「「「うわああああっ!?」」」」

 

翔&隼人&剣山&万丈目 LP4000→0

 

ユーリ WIN…

 

 

 

 

 

「ぐっ…くそっ…!オレ達では、実力が足りなかったか…!!」

 

「おにい、さん…ごめん…!」

効果の余波で建物に叩きつけられた翔達…あまりのダメージに体を動かす事ができない状態だった…!

 

 

【あっけなかったねぇ…っておや?よく見れば、キミはアカデミアの英雄、丸藤亮の弟じゃないか…まさか、キミも裏切ってたとはね…キミをカードにしたら、亮はどんな顔するのかなぁ…!】

 

「っ…!」

敗者達に歩み寄るユーリ…そこで彼は顔見知りの関係者を見つけ、歪んだ笑みを見せる…!

 

 

「カードにするなら、早くやれッス…!僕がやられても…必ず、()()が…お兄さんが、お前達を倒してくれるッス…!!」

 

【気に入らない目だ…ボクはもっとこう…怖がってる奴をカードにするのが好きなんだけど……お望み通りにしてあげるよ!】

負けてもなお、諦めた様子を見せない翔に苛つくユーリ…そしてその手をデュエルディスクに伸ばし────

 

 

 

 

ビシュン!!

 

 

 

 

【ん…?デュエルアンカー?】

カード化のスイッチが押される寸前、ユーリの腕に赤いデュエルアンカーが巻き付く!

 

 

 

『やらせない…!!みんなをカードにしたいなら、私を倒してからよ!!』

 

「あ、明日香さん!?」

 

「っ…!!ダメだ!天上院君、逃げるんだ…!」

デュエルアンカーの先に立っていた人物…それは遊勝塾、そして前世からの仲間…天上院明日香だった。

アジトに逃げ込んだ仲間からの連絡を受けて駆けつけたのだ…!

 

 

 

【キミ、何処かで見たなぁ……ああ、思い出した!アカデミアの優等生だった、天上院明日香!まさか、こんな所で会えるなんてね?わざわざカードにされに来たのかい?】

 

『私は負けない!アカデミアで戦わされているみんなを助ける為に、必ず来てくれるはずの()()の力になる為に!』

明日香は静かにデュエルディスクを構える…!

 

 

【へぇ、噂に聞いていた通りのお固い人なんだねぇ…あっ、そうだ…!このデッキ、見た事あるよね?】

 

「そのデッキは…!」

 

【そう!エリートのキミがエクシーズ次元に行く時に支給されるはずだった優等生デッキさ!キミなら、その中身も知ってるよね?】

闘志を見せる明日香を前に、ユーリは懐からあるデッキを取り出す、それは明日香に渡されるはずだった特別製の『古代の機械(アンティーク・ギア)』デッキだった…ユーリも優等生だった為、渡されていたのだ。

 

 

【そしてもう1つはボク本来のデッキ…どっちと戦いたい?】

 

『馬鹿にしないで、自分のデッキで正々堂々掛かってきなさい!!』

 

【そう言うと思った…じゃあ、優等生デッキでいきまーす!はははは!!】

戯けながら明日香を挑発するユーリ…彼は扱い慣れないはずの『古代の機械』デッキをディスクにセットした…!

 

 

「明日香先輩、気を付けるザウルス…!そいつはやばいドン…!」

 

『…大丈夫…!待ってて、こいつを倒して…すぐに治療するから…!』

動けない仲間達を守る為、明日香は凶敵へと立ち向かう…!

 

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

デュエルダイジェスト 明日香対ユーリ

 

 

仲間を守る為に始まった明日香、そしてユーリのデュエル…先攻となった明日香は攻撃を無効にする効果を持つ儀式モンスター『サイバー・エンジェル─那沙帝弥(ナーサテイヤ)』2体を揃え、ライフを回復してユーリの攻撃へと備える。

 

対するユーリは扱い慣れない『古代の機械』モンスターの効果を読み上げるように説明しながら最上級モンスター『古代の機械熱核竜』を呼び出し、攻撃を仕掛ける…当然、明日香は『那沙帝弥』で攻撃を無効にしようとするが…『熱核竜』は攻撃時に魔法・罠の効果に加え…モンスター効果の発動を封印する効果、さらに『古代の機械』モンスターをリリースしてアドバンス召喚した事で発動する貫通効果、そして『ガジェット』モンスターをリリースした時に2回攻撃できる効果を持ち、明日香は僅か1ターンで残りライフ1000まで追い詰められてしまう…!

 

 

 

 

『くっ…うう…!』

 

「明日香さん!!」

 

【ほらほら…!早くしなよ?キミのターンだよ!早く早く〜♪】

 

『私は、諦めない…!このぐらいのピンチでくじけてたら…十代に合わせる顔がないわ!!』

容赦ないユーリの攻撃に追い詰められてしまった明日香…だが、彼女の闘志はまだ消えていない!

 

 

 

 

『私のターン!私は墓地の「那沙帝弥」の効果発動!墓地のもう1体の「那沙帝弥」を除外してこのモンスターを特殊召喚!さらに、貴方の「古代の機械熱核竜」のコントロールを奪うわ!』

 

【なっ…!酷いなぁ…キミはアカデミアから生徒を奪うだけじゃなく、ボクのモンスターまで奪うのかい?】

それは起死回生の一手…機械の竜が明日香のフィールドに移り、ユーリは大袈裟に残念そうな様子を見せる…。

 

 

『どの口が言うのかしらね…!貴方こそ私の仲間を傷付け、そして奪ってきた…大切なモノを失う辛さ、少しは分かった?』

 

【大切なモノ…?】

ユーリへと怒りを露わにする明日香…彼女は知っている、大切な家族を失う辛さを…目の前で奪われてしまった仲間の悲しみを…。

 

 

『「那沙帝弥」の効果で私は「熱核竜」の攻撃力の半分のライフを回復!バトルよ!「熱核竜」でダイレクトアタック!』

 

【させないよ…!罠カード『未完の古代の機械(アンフィニッシュド・アンティーク・ギア)』を発動!手札の『古代の機械巨人』を攻撃力・守備力を半分にして、召喚条件を無視して特殊召喚する!】

 

『悪あがきを…!「熱核竜」は2回攻撃と貫通効果を持っているわ!「古代の機械巨人」を攻撃!!』

 

【『未完の古代の機械』で特殊召喚されたモンスターは戦闘では破壊されない…くううっ!!】

怒涛の攻撃を仕掛ける明日香…その攻撃はユーリを一気に追い詰める…!

 

 

『そして…融合召喚を封じさせてもらうわ!私は手札の魔法カード「融合」を墓地に送り、永続魔法「融合破壊」を発動!その効果で相手のデッキを確認し、「融合」魔法・罠カードを3枚まで除外!そして1枚につき300ダメージを与える!私は貴方のデッキの「融合」3枚を除外させてもらうわ!!』

 

【なっ…!!ぐううっ!?】

そして明日香は最強クラスの融合メタカードを発動…ユーリの融合召喚を封じる、その残りライフは僅か100となった…!

 

 

 

【イタ、たた…!酷いなぁ…モンスターを奪うだけじゃなく、「融合」まで奪うなんて…!】

 

『私達もそうだった…私もアカデミアの正義は正しいと信じてた……でも、それは間違いだった……私達はアカデミアの侵略戦争の片棒を担いでしまっていた…それは、絶対に許されない事…!私達の侵略のせいでエクシーズ次元のなんの罪もない人をカードにして、傷付けてしまっていた…!こんな事をする()()のアカデミアは無くならなきゃならない!』

 

 

ユーリの言葉に静かに感情を露わにする明日香…彼女が「前世」の記憶を取り戻したのは最近の事、エクシーズ次元侵攻の第一陣から帰ってきた友人から真実を聞かされ、アカデミアから脱走…だが、待ち伏せしていた捕縛隊に襲われる寸前、エクシーズ次元から不慮の次元転移をして来たデュエリスト、榊遊勝に窮地を救われた…。

 

そして、アカデミアからの脱走者の拠り所『遊勝塾』の1人として活動しているうちに『前世』の記憶を思い出し……そして、微かに聞こえた『英雄』の声を信じて…同じく記憶を取り戻した級友達と共に『その時』を待っていたのだ…。

 

 

 

『ユーリ、貴方にも大切なモノはあるはずよ…!少しはそれを奪われる気持ちは分かったかしら…!』

 

【大切なモノ…ボクには…大切なモノなんて、()()()()…】

 

『えっ…?』

ユーリの改心を願う明日香…だが、ユーリはユラリと立ち上がりながら呟いた。

 

 

 

【ボクは気付いた時からアカデミアの生徒だった…家族も、友達もいない…】

ユーリは気付いた時から孤独だった、いつの間にかアカデミアの生徒として過ごし…その強さによって他のアカデミアの生徒達からも一歩引かれてしまう程強かった。

そんな中、プロフェッサーがユーリに目を付けた…プロフェッサーはユーリの強さを利用する為、ユーリにどんどんデュエルをし、人々をカードにするように促した…己の野望の為に…。

 

しかし、その考えが…ユーリの心を歪ませた…!

 

 

【ありがとう…明日香…!キミの言葉で、ボクが本当にやりたい事が分かったよ…!】

 

『っ…!!』

 

【ボクは人をカードにしたい…!プロフェッサーが喜ぶとか、関係ない!!ボクは()()()()()()()()()()()()()()()()!これからもずっと!!】

ユーリはその瞳に狂気を宿す…!

 

 

 

『待ちなさい…!そんな事をしたら、貴方は本当に一人ぼっちになる…世界に誰もいなくなってしまうわ!』

 

【世界にボク1人…いいねぇ…!!それって、ボクが()()って事じゃん!!】

 

「………狂ってやがる…!」

初めて自分の『願望』を自覚したユーリ…その考えは狂気としか言いようがない…!

 

 

 

【ボクのターン!魔法カード『古代の整備場』を発動!墓地の『古代の機械飛竜』を手札に加え、召喚!その効果でデッキから『古代の機械箱』を手札に加える!】

先ほどまでのプレイングが嘘のように『古代の機械』デッキを回すユーリ…そして彼は切り札を切る…!

 

 

【そしてボクは『古代の機械箱』を墓地に送り…!速攻魔法『超融合』発動!】

 

『『超融合』ですって!?』

 

「よりによって…不味い!二人の場のモンスターは…!?」

『超融合』…それは、明日香達にとって縁のある一枚…最強の融合がその力を解き放つ…!

 

 

【ボクは『古代の機械巨人』と『古代の機械飛竜』、そしてキミの場の『古代の機械熱核竜』を融合!古の巨人よ!天翔ける竜よ!深淵に輝く竜よ!今、1つとなりて絶大なる力を示せ!融合召喚!!いでよ!レベル10…『古代の機械究極巨人』!!】

禍々しい融合の渦に3体のモンスターが飲み込まれ…究極の巨人が現れる!

 

 

『っ…「究極巨人」は、貫通効果を持ってる…』

 

【その通り…これで終わりさ…!バトル!『究極巨人』で『那沙帝弥』を攻撃!!】

 

『きゃあああ─!?』

 

「天上院君!!」

 

「明日香先輩─!」

巨大な拳が那沙帝弥を殴り潰す…その攻撃の余波は明日香を容赦なく吹き飛ばした…。

 

 

 

明日香LP0

 

ユーリWIN…

 

 

 

 

「あ、うう…!」

 

【フフ…あはは…!ボクは人をカードにしないとダメなんだぁ…呼吸をするようにね…!】

吹き飛ばされ、壁に体を打ち付けた明日香へとユーリが歩み寄る…その顔に狂気の笑みを貼り付けながら…!

 

 

【キミのおかげで夢ができたよ…!ボクは全ての次元、全ての人間をカードにするんだぁ…!まずはエクシーズ、次にシンクロ…そしてスタンダードに融合…!!ふふっ…あはははははは!!!ああ、ゾクゾクするなぁ!!】

 

「はぁ…はぁ…無理よ、そんな事は、絶対に…!必ず、貴方を倒す決闘者(デュエリスト)が現れる…!貴方の夢は、叶わない!!」

狂気を解き放つユーリ…その背後に禍々しい悪魔の影が揺らめく……だが、明日香は言い放つ…何度も見てきたからだ。

 

 

自分勝手な『悪』が倒される瞬間を……!

 

 

【負けたのに強情だねぇ…じゃあ、ボクの夢の糧になってよ…!】

ユーリはデュエルディスクに手をかける…!

 

 

「(ごめんなさい、先生…私達じゃ、アカデミアを止められなかった…………でも……私は、信じてる………きっと───)」

 

【じゃあね───】

 

「きっと、来てくれるって……」

 

 

「明日香さん─!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドン!!

 

 

 

【っう!?】

 

「えっ…?」

カード化の光が放たれる刹那、飛んできた光弾によってユーリの足元が爆ぜ、吹き飛ばされる!

 

 

【今日は次から次に邪魔が入るなぁ…!誰だ!】

至福の瞬間を邪魔され、激昂するユーリ…そして、その男は軽い着地音と共に明日香達を守るように現れる!

 

 

 

「悪い、みんな……遅くなった!まぁ…ヒーローは遅れてやって来る、ってな」

 

 

「あ、ああ…!?」

 

「お前、なんで…!?」

彼らはその背中を知っている…その赤い背中を知っている。

 

融合次元を探しても、アカデミアにも彼の姿はなかった……だが、信じる声に導かれるように、彼は融合次元へと現れた!

 

 

「「アニキ!!」」

 

『十代!』

 

「へへっ…久しぶりだな、明日香!」

明日香達を安心させるように彼は明るく笑う…その少年の名は、遊城十代!

 

 

 

【キミ…覚えがな………いいや、見た事がある……レジスタンスのヒーロー使いか!どうやって融合次元に来たんだい?】

 

「そんなの決まってるだろ?お前達を止める為に、次元を越えてきたのさ!()()()()!!」

 

【──()()()?】

記憶の片隅にあった手配書の事を思い出すユーリ…そして、真打ちが現れる!

 

 

 

 

《認識阻害結界を起動!さらにスフィア・フィールド展開!!》

 

【なにっ…?】

突然響いた機械音声…それと共に空にノイズが走り、半円の結界がユーリを取り囲む…!

 

 

 

 

「来たのは十代だけじゃない……お前達、よく持ち堪えてくれた…そのおかげで、俺は間に合った!」

 

 

「あっ…来た…!来てくれた…!!オレ達の希望が!!」

 

「やったんだな…!」

 

「よ、よかったッス…!」

凛と響く声…その声を聞いた万丈目達は思わず涙を零す…彼らが待ち続けた「希望」、その名は…!

 

 

『遊海、先生…!』

 

「ああ、俺だ!久しぶりだな!万丈目!隼人!剣山!翔!明日香!」

赤いジャケットを翻し、赤い帽子を被った青年が現れる…それが最後の希望──白波遊海だった!

 

 

【誰?キミ?】

 

「さぁ…反撃といこうか、アカデミア!!」

 

 



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悪意の欠片〜闇を祓う英雄〜

こんにちは!先日、出掛けた先で食虫植物(ウツボカズラ)を衝動買いしてしまったS,Kです!(笑)

ついに融合次元へと突入した遊海達…ユーリと対峙する遊海は悪意の欠片を倒す事ができるのか…!


それでは、最新話をどうぞ!


《間もなく融合次元に突入するでアリマス!》

 

「フン…俺が死んでいる間にロボットの技術も進歩したものだ…まさか、ここまでのロボットを独学で作り上げるとは…」

 

《お褒めに預かり光栄でアリマス!デュエルロイド瀬人様にも目を掛けてもらってるのでアリマス!》

 

「我が分身が…そうか、この事件が終わったらアップデートをせねばならんな」

次元間の異空間…三幻神が切り拓いた航路をかっとび遊馬号が進んでいく…。

 

 

 

「亮、確認だ…アカデミア…融合次元には何人の転生者がいる?」

 

「オレが把握しているのは…自分とエドを入れて8人、明日香に万丈目、ティラノ剣山に前田隼人…そして翔です、その5人はアカデミアを離れ、反アカデミアの団体を組織して潜伏しています」

融合次元を前に、遊海が亮へと『記憶』持ちのメンバーを確かめていた…。

 

 

「ん…?もう1人は?」

 

「もう1人は…会ってからのお楽しみ、という事で……アカデミアで脱走者の安全確保の為の工作や、内部から革命を狙う者達の纏め役をしてくれています」

 

「──そうか、()()()か…なら、早くアカデミアに行かないとな」

亮の話から8人目の転生者の正体に気付いた遊海は静かに笑っていた。

 

 

(融合次元に突入するぞ!)

 

「いよいよか…!待ってろよ、アカデミア!」

船内にアストラルの声が響く、次元飛行船は次元トンネルを抜け…融合次元へと突入した…!

 

 

 

…………

 

 

 

「ここが…融合次元…」

 

「まるで中世の街のようだな…」

 

「オレ達のイメージとは…ずいぶん違うな」

モニターに映し出されたのはレンガや石造りの建物が並び、水路が巡らせられた中世風の街…他の次元に比べれば、融合次元の技術力は他の次元に劣るように見えたが…。

 

 

「フン…融合次元の技術力自体はそこまで高くない……全ての科学力がアカデミアに集中している、独裁者のよくやる手だ……おそらく、融合次元の住民のほとんどは『次元戦争』の事自体を知らされておらんのだろうな」

 

「っ…アカデミア、そこまでして…!」

海馬社長の考察に遊矢は拳を握り締める…事情を知らない人々もまた被害者だからだ……その時。

 

 

 

──

 

 

 

「っ……十代」

 

「………ああ…()()()()、先生……嫌な気配だ…!」

 

《…本当に、しつこい奴だね…》

遊海と十代が同時に()()()()を感じ取る…それは覚えのある感覚だった…!

 

 

《デュエルの反応を確認!映像を出します!》

 

「っ…誰かが戦ってる…あれは!」

 

「ユーリ…!?」

そして、アヤカの索敵がデュエルの反応を感じ取る、その方向に飛行船のカメラを向けると…そこでは何故か『古代の機械(アンティーク・ギア)』デッキを使うユーリ…そして、金髪をなびかせた少女が戦っていた…!

 

 

「っ…明日香!!」

 

「少しタイミングが()()()か…!ランサーズ、特に遊矢と柚子とセレナは飛行船で待機!十代!いくぞ!!」

 

「ああ!!」

 

「私も行きます!」

その光景を見た瞬間、遊海は即座に指示を出す…そして十代、翠と共に出撃する!

 

 

「ゆ、遊海!」

 

「ちょっと待ってろ遊矢……すぐに終わらせてくる」

遊矢へと笑い掛けた遊海は空中に飛び出し、デュエルの現場へと向かった…!

 

 

(オービタル、ステルスモードを起動してくれ、私達は遊海の指示があるまで空中で待機する)

 

《了解でアリマス!》

 

「遊海…」

アストラルが対応の指示を出す中…遊矢は心配そうにその背中を見送った…。

 

 

 

 

……………

 

 

 

「みんな!大丈夫!?」

 

「あっ…翠さん…本物だ…本当に、来てくれたんだ…!」

睨み合うユーリと遊海、その一方で翠が倒れ込んだ翔達に駆け寄る…待ち続けていた英雄達の登場に翔は涙を零している…。

 

 

「もう大丈夫…!すぐに治療するからね!」

 

「翠さん、オレ達は大丈夫です…先に天上院君を…!」

 

「ふふっ、そっちは大丈夫!十代君が見てくれてるわ」

ボロボロの万丈目が明日香の治療を優先するように伝えるが…翠は静かに微笑んでいた…。

 

 

 

「十代…?私の知ってる、十代なのよね…?」

 

《当たり前だろ?ボクが一緒にいるのは…この遊城十代だけさ、ずいぶんと無茶をしたじゃないか?明日香》

 

「ああ…でも、その無茶のおかげでオレ達が間に合ったんだ…流石だぜ!」

 

「うん…!」

十代に助け起こされる明日香、その傍らにユベルが現れた事で…彼女は本当に十代と再会できたのだと実感する事ができた…。

 

 

「というより…なんで、私達と同じ年格好なの…?最期に会った時は……」

 

「その話はまた後で……今は、アイツがどうなるかだ…!」

十代は鋭く、その背中を見つめる…英雄と凶気のデュエリストの戦いの行く末を…。

 

 

 

 

 

 

【誰?キミ?】

 

「スタンダード次元ランサーズ…白波遊海、お前を倒す男だ」

睨み合う遊海とユーリ…二人は静かに闘志と狂気をぶつけ合う…!

 

 

【………ああ!アカデミアの最優先排除対象になってる奴か!とんでもない大物じゃないか…!こういうのってなんて言うんだっけ?海老で鯛を釣る?】

 

「それは成功したらの話だ、俺の仲間を傷付け…多くの人々を悲しませた罪、ここで償ってもらう!」

 

【やってみなよ…!お前もカードにしてあげるからさ…!】

 

「いくぞ!」

睨み合う遊海とユーリがデュエルディスクを構える…狂気の戦士と英雄、二人の決闘が始まる!

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

 

遊海LP4000

ユーリLP4000

 

 

 

「俺のターン!」

「俺はスケール1の『クリフォート・アセンブラ』とスケール9の『クリフォート・ツール』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

PENDULUM!!

 

遊海の背後に光の柱が現れ、紫の核石を持つ基盤と黄の核石を持つ機械が浮かび上がる!

 

 

【ペンデュラム…ああ、スタンダードで1度だけ戦ったね、あいつは弱くて、脆くて、情けない…かっこ悪いデュエリストだったけど…キミはどうなの?】

 

「──お前には分からないだろうな、()()()がどんな思いで戦っていたかなんて……!俺は『ツール』のペンデュラム効果発動!800ライフを払い、デッキから罠カード『機殻の再星』を手札に加える!そして『クリフォート・ゲノム』を妥協召喚!このモンスターはレベル6だが、特殊召喚またはリリース無しでステータスをレベル4、攻撃力1800にする事で召喚できる!」

オレンジ色の核石を持つ渦を巻いた機械が現れる! ATK2400→1800 ☆6→4

 

遊海LP4000→3200

 

 

「カードを3枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

遊海LP3200

ゲノム (Pアセンブラ ツール)伏せ3 手札0

 

 

 

 

 

「…先生のあの戦い方、見た事がないッス…!」

 

「いつもの遊海先生とは雰囲気が違う…!本当の()()なんだ…!!」

 

「そう…今の遊海さんには、慢心も油断も……手加減もないわ…!」

デュエルの様子を見ていた翔や万丈目が遊海の様子の変化に気付く…今の遊海は、正真正銘の()()である…!

 

 

 

【ボクのターン、ドロー!】

【全力だかなんだか知らないけど…叩き潰してあげるよ…!ボクは魔法カード『ヴァイオレット・フラッシュ』を発動!このターン、お前はボクの『融合』『フュージョン』カードの発動に対して魔法・罠カードを発動できない!そして『捕食植物(プレデター・プランツ)オフリス・スコーピオ』を召喚!】

尾が蜂のようになったサソリ型の植物が現れる! ATK1200

 

 

【『オフリス・スコーピオ』の効果発動!召喚・特殊召喚に成功した場合、手札の『捕食植物ダーリング・コブラ』を墓地に送る事でデッキからレベル3の『捕食植物セラセニアント』を特殊召喚!】

蟻型のサラセニアを背負ったモンスターが現れる! ATK100

 

「そこだ!罠カード『連鎖除外(チェーン・ロスト)』発動!相手が攻撃力1000以下のモンスターの召喚・特殊召喚・反転召喚に成功した時、そのモンスターと手札・デッキの同名カード全てを除外する!」

 

【なにっ!?】

遊海の罠から飛び出した鎖が3枚の『セラセニアント』をユーリのデッキから貫き、除外する!

 

 

「さぁ、どうする?」

 

【っ…!ふざけた真似を…!装備魔法『捕食接ぎ木(プレデター・クラフト)』を発動!墓地の『捕食植物ダーリング・コブラ』を特殊召喚し、このカードを装備する!!】

コブラプラントの名を持つ食虫植物が現れる! ATK1000

 

 

「その瞬間、永続罠『機殻の再星(リクリフォート)』を発動!」

 

【そんなものを発動しても無駄だ!魔法カード『融合』を発動!フィールドの闇属性モンスター『オフリススコーピオ』と『ダーリングコブラ』を融合!!魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!今ひとつとなりて、その花弁の奥の地獄から!新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れろ!飢えた牙持つ毒龍…!レベル8!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!】

禍々しき飢えた毒龍が咆哮する! ATK2800

 

 

「やばいザウルス!また毒龍が…!」

 

『「機殻の再星」の効果起動!レベル5以上のモンスターが特殊召喚された時、その効果はエンドフェイズまで無効になる!』

 

【そんな事関係ない…!『ヴァイオレット・フラッシュ』の効果!融合召喚に成功した時、カードを1枚ドローする!バトルだ!『スターヴヴェノム』で『クリフォートゲノム』を攻撃!!】

 

「ぐうっ…!」

 

「遊海先生!!」

毒龍が翼を開き、力を溜め…禍々しい色の息吹がゲノムを貫く!

 

遊海LP3200→2200

 

 

【く、あははは…!ボクを舐めるからこうなるのさ…!ボクはカードを2枚伏せ、ターンエンド!】

 

ユーリLP4000

スターヴヴェノム 伏せ2 手札0

 

 

 

 

「ふぅ…なぁ、楽しいか?ユーリ…人を傷付けるデュエルは……敵も味方もなく、自分の楽しみを優先するデュエルは…」

 

【楽しいに決まってるじゃん…!お前みたいな奴を倒してカードにするのが一番楽しいんだ…カードにされる寸前まで命乞いをしてさ…!その恐怖に歪む顔をみるのが楽しいのさ!!】

遊海の問いにユーリは狂気を露わにする…遊矢が『対戦相手や皆を楽しませたい』というデュエルスタイルならば…ユーリはその対極、【自分だけが楽しければいい】というスタイル…そのスタイルは…誰にも理解されないだろう…。

 

 

 

「そうか、なら悪いが…お前の()()()()()()()()()()

 

【は?】

 

「今までの報いを受けてもらおう…!お前のせいで傷付き、悲しみ…カードにされた人々の怒りを思い知れ!!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『ツール』のペンデュラム効果発動!800ライフを払い、デッキから『クリフォート・アーカイブ』を手札に加える!」

 

遊海LP2200→1400

 

「俺はセッティング済みのスケール1の『アセンブラ』とスケール9の『ツール』でペンデュラムスケールをセッティング!揺れろ!希望のペンデュラム!我が魂に宿る大いなる力よ…いまこそ、その力を開放せよ!ペンデュラム召喚!!手札からレベル6『クリフォート・アーカイブ』!エクストラデッキから『ゲノム』!」

赤のペンデュラムの軌跡が揺れ動き、緑の核石とオレンジ色の核石を持つ機械が現れる! ATK1800 ATK1800

 

「さらに罠カード『機殻の凍結(クリフォート・ダウン)』を発動!このカードを地属性機械族、レベル4、攻撃力1800のモンスターとして特殊召喚!」

虹色の核石を持つ、凍りついた機械が現れる! ATK1800

 

 

「そして俺は『アーカイブ』『ゲノム』『機殻の凍結』をリリース…!我が魂、我が相棒たる機殻の王よ!今こそ顕現せよ!!レベル10!『アポクリフォート・キラー』!!」

 

《やっぱり、ここ一番は私ですよね…!マスター!》

3つの核石の輝きが遊海のエース、虹色の核石が輝く巨大要塞を呼び覚ます! ATK3000

 

 

 

【デカっ…!?『古代の機械混沌巨人』の何倍ある…!?】

 

「アドバンス召喚の為にリリースされた『ゲノム』の効果!左側の伏せカードを破壊!」

 

【『夜爆花(ダークシードプランター)』が…!】

キラーの大きさに後ずさるユーリ…その間に伏せカードの一枚が吹き飛ばされる!

 

 

「同じく、リリースされた『アーカイブ』の効果発動!『スターヴヴェノムフュージョンドラゴン』を手札に戻……いいや、()()してもらう!」

 

【─────はっ?】

アーカイブの光線が毒龍を貫く、その光は毒龍の背後に次元の穴を開き…毒龍を異次元へと追放した!

 

 

【そんな、なんで…!?】

 

「永続罠『機殻の再星』のもう1つの効果…特殊召喚されたレベル5以上のモンスターの効果はエンドフェイズまで無効になり、フィールドを離れた時──除外される」

 

「………容赦なさ過ぎだぜ、先生…」

自分のエースモンスターが一瞬にして消滅して放心するユーリ…その様子は彼に痛めつけられた万丈目ですら同情してしまう程だった。

 

 

「バトルだ!『キラー』でダイレクトアタック!ネクサス・アーク・キャノン!!」

 

【まだだ!罠カード『嘲りの世界(リディキュル・ワールド)』を発動!フィールド全てのモンスターの攻撃力を100アップさせる!そしてこのターン、攻撃力が元々の攻撃力よりアップしているモンスターは攻撃できr《攻撃コード認証、主砲発射!》はっ…!?うわああああっ!?!?】

罠カードを発動したユーリ…だが、それは意味を為さず…虹色の破壊光線がユーリを吹き飛ばす!!

 

ユーリLP4000→1000

 

 

「『アポクリフォート・キラー』は自分のレベルより低いレベル・ランクのモンスターの効果を受けず、魔法・罠カードの効果も受けない……相変わらず強すぎだな…」

 

「遊海先生の本気の決闘…私、初めて見たかも…!?」

派手に地面を転がるユーリ…その様子を見ながら十代、そして明日香も冷や汗を流す…。

 

 

「俺はこれでターンエンド…そして『アセンブラ』のペンデュラム効果発動!このターンにリリースされた『クリフォート』モンスター1体につき1枚ドローできる!」

 

遊海LP1400

キラー (Pアセンブラ ツール)再星 手札0→3

 

 

 

 

【馬鹿な…!このボク、が…こんな奴に…!】

 

「少しは感じたか?お前達、アカデミアに追い詰められ…カードにされてしまった人々の恐怖が…悲しみが…!」

 

【っっつ!?!?】

生まれて初めてデュエルで追い詰められたユーリを追い込む遊海…その背後には巨大な魔神の影が浮かんでいるように見えた…。

 

 

【(ククク…お前にしては、ずいぶんと容赦がないではないか?)】

 

「悪い事をしたら叱る…それは当たり前の事だろ?それに…奴には()()()()()

囁く混沌の神へと静かに答える遊海…その殺気はユーリを追い詰める…!

 

 

【ボクが負けるはずない…負けるわけがないんだぁぁぁ!!】

 

 

 

【ボクのターン!ドロー!!】

【っ…!!カードを一枚伏せて、ターンエンド!】

 

ユーリLP1000

伏せ1 手札0

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

【その瞬間!罠カード『死魂融合(ネクロ・フュージョン)』を発動!このカードは墓地の融合素材モンスターを裏側表示で除外し、融合召喚を行なう!!】

 

「まだそんなカードを!?」

起死回生を狙うユーリは新たな融合モンスターを呼び出す!

 

 

【ボクは墓地の『オフリススコーピオ』と『ダーリングコブラ』を融合!魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!今ひとつとなりて、おぞましき大花となれ!融合召喚!!レベル7!『捕食植物キメラフレシア』!!】

無数の触手を振るう巨大なラフレシアが現れる! ATK2500→2000

 

 

【『機殻の再星』で効果が無効になってもこれで1ターンは耐え……待て、なんで攻撃力が下がって!?】

 

「『アポクリフォートキラー』第二の効果、特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする…そして第三の効果!1ターンに1度、相手は自分の手札・フィールドのモンスターを墓地に送らなければならない!」

 

【─────えっ?】

キラーの放った光がラフレシアを消し去る!

 

 

 

「どちらにしても…お前はもう詰んでるんだよ──さぁ、お前の罪を数えろ!」

 

【あ、ああ…!?】

帽子の下から鋭くユーリを睨む遊海…その眼光にユーリは後ずさる…!

 

 

「バトル!『アポクリフォート・キラー』でユーリにダイレクトアタック!ネクサス・アーク・キャノン!!」

 

《悪魔のカケラよ…沈みなさい!》

 

【うっ…があああっ!?!?】

虹色の光の奔流が悪魔の欠片を容赦なく飲み込んだ…!

 

 

 

 

ユーリLP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

「やった…!遊海先生の勝ちッス─!!いたた…」

 

「すごい…!流石、ペガサス会長の認めた決闘者なんだなぁ!!」

 

「やっぱり、遊海先生は最強ザウルス!」

ユーリが倒され、翔達が歓声を上げる…アカデミア最凶のデュエリストは遊海の手によって倒されたのだ…!

 

 

 

【馬鹿な…ボクが、ランサーズなんかに、負けるなんて…!】

 

「少しは分かったか?お前に傷付けられた人々の感じた痛みが…」

 

【こんなのは、マグレだ…!ボクが、負けるはずない…!】

吹き飛ばされ、慢心創痍で地面に転がるユーリに遊海が語り掛ける…だが、ユーリは反省の色を見せない…。

 

 

 

【カードにするなら、さっさとしなよ…!()は上手くやってやる…!(レジスタンスが使うカード化装置はアカデミアのコピー品、アカデミアに繋がってる…!ボクはプロフェッサーのお気に入りだ…カードにされたって、すぐに元に戻れる…!次は、負けない…!!)】

遊海に向けてドス黒い感情を向けるユーリ…だが───

 

 

「『自分はプロフェッサーのお気に入り、だからカードにされてもすぐに復活できる』……そう思ってるな?」

 

 

【っ!?!?】

ユーリの考えを見透かす遊海…その言葉を聞いたユーリは目を見開く。

 

 

 

「心配するな、命を奪いはしない……ただし、()()()()を受けてもらう…!」

 

キィン─!

 

邪悪な思いを抱くユーリを戒める為、遊海の額にウジャト眼が輝き…右手の中にウジャト眼の刻まれた金色の卵が現れる!

 

 

 

【な、何をするつもりだ!?】

 

「罪なき人々を傷付け、自由を奪い…仲間すらも仲間と思わぬ悪しき者よ!己が罪を暗闇の中で悔いるがいい!!罰ゲーム!!

 

 

 

        Mind Card─魂の牢獄─

 

 

【あっ───】

金色の光がユーリを照らす…その光を見たユーリはそのまま脱力し、意識を失った…。

 

 

 

 

 

「ゆ、遊海先生…!?今の、まさか!?」

 

「………まさか、俺が人に対して…この『罰ゲーム』を執行するとは、思ってなかったよ」

光が収まり、罰ゲームの執行を見た十代が遊海へと駆け寄る…その手の中には驚愕の表情を浮かべたユーリの姿が写されたカードがあった…。

 

 

《……ユウミ、彼の改心は…今は望めません、最善の判断でしょう》

 

「ありがとう、フレア……仇は取ったぜ、()()

初めて『封印』の罰ゲームを選んだ遊海へとフレアが声を掛ける、その言葉に頷いた遊海は…深く眠る『もう1人の英雄』へと声を掛けた…。

 

 

 

 

 

「アヤカ、認識阻害とスフィアフィールドを解除…ランサーズに合図を出してくれ」

 

《了解です!》

ユーリの『魂』を封印し、ユーリの体に最低限の治癒と『紋章の力』による拘束を施した遊海がアヤカへと声をかける…そして静かに各種結界が解除されていく…。

 

 

「久しぶりだな!明日香…積もる話はあるが…確認したい事がある、お前達が作った反アカデミア組織のリーダーは…スタンダード次元のデュエリスト、榊遊勝で間違いないな?」

 

「えっ…!?どうして知ってるんですか!?亮にも伝えてないのに!?」

そして遊海は明日香へと反アカデミア組織のリーダーについて訊ねる…その答えは当たっていた…!

 

 

「ランサーズのメンバーとして榊遊勝の息子と、スタンダード次元の『遊勝塾』関係者が来てる…彼らを遊勝に合わせてやりたい」

 

「遊勝先生の息子さんが…!?遊勝先生も息子さん…遊矢君の事を心配してたんです…!きっと喜ぶわ!」

遊勝の息子が来ていると聞いて驚く明日香…その時だった。

 

 

キィン!!

 

 

『っ─今度は何処だ…!?ニヤけ野郎め…逃げ回りやがって…!』

 

「っ…ユーゴ!」

 

『うおっ!?たしか…白波遊海!?』

一瞬の閃光と共に白いDホイールに乗った少年が現れる、それはシンクロ次元防衛戦後に行方不明となっていたユーゴだった…おそらく『クリアウイング・シンクロ・ドラゴン』の導きで転移してきたのだろう。

 

 

『って…足元に転がってるの、ニヤけ野郎じゃねぇか!?アンタが倒したのか!?』

 

「ああ、そうだ…お前の獲物を奪う形になって悪かっ……マズい、()()()()()…ユーゴ、このカードを!」

 

『うおっと!?』

遊海の足元で拘束されたユーリに驚くユーゴ…その姿を見た遊海は自分の出した()()を思い出し、ユーゴに一枚のカードを投げ渡した!

 

 

『これ…「トゲトゲ神の殺虫剤」??なんに使うんだ?』

 

「ユーゴ、ランサーズはアカデミアに乗り込み、リンと瑠璃…柚子達に似た少女を救出する作戦を始める!そのカードが助けになるはずだ!」

 

『えっ…それってどういう───』

 

「「遊海さん!!」」

 

キィン─!!

 

「ああ…ダメか…」

ユーゴに最低限の情報を伝える遊海…だが、遊馬号から真っ先に遊矢と柚子が降りてきた事でブレスレットによる『強制転移』が発動…ユーゴの姿はかき消えてしまった…。

 

 

「遊海さん!今、ユーゴが…」

 

「柚子ちゃん……大丈夫、ユーゴにも最低限の情報は伝えられたはずだ…」

駆け寄って来た柚子が判断を間違えた事に気付く…しかし、遊海は優しくそれをフォローした…。

 

 

「遊海!今のデュエル、すごかっ…あれ…?オレとユーリが近くにいるのに、ブレスレットが光らない…?」

 

「えっ…あ…本当だ…!?」

そして同じく遊海に話しかけた遊矢が異変に気付く…至近距離に遊矢とユーリが存在するのに、柚子のブレスレットが反応を示さないのだ。

 

 

「大丈夫、ユーリには()()()()()()仕掛けをした…とりあえず、飛行船で拘束する………とにかく、1つ目の障害は乗り越えたな」

1つ目の山場を乗り越え、遊海は静かに溜息を吐く…。

 

 

 

 

 

「さぁ…次は会いに行こうか、お前の父親───榊遊勝に」

 

「「えっ…!?」」

そして、次なる遊海の言葉に遊矢達は目を見開いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ようやく…約束を果たす時が来たな───遊希)」

 

 



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親子の再会〜託された願い〜

こんにちは!S,Kです!

融合次元へと辿り着き、最初の障害であるユーリを乗り越えた遊海達…彼らはついにあの人物と出会う…。


それでは、最新話をどうぞ!


「遊勝先生!」

 

『明日香君!それに万丈目君達も…!無事で良かった…アカデミアの襲撃を受けたと聞いて心配していたんだ…!』

 

融合次元の郊外、某所……反アカデミア組織、デュエルスクール『遊勝塾』の拠点…廃教会、そこでは1人の男性が椅子に腰掛けて学生達の帰りを待っていた。

赤い派手なスーツを纏い、ゴーグル付きのシルクハットを被り、杖を持ち顎髭を生やした男…その男こそ、遊勝塾のリーダー…スタンダード次元における元アクションデュエルチャンピオン──榊遊勝その人だった。

 

 

 

「はい…!アカデミアのプロフェッサー直属のデュエリスト、ユーリの襲撃を受けました…でも、思わぬ援軍のおかげで大きな被害はありませんでした!」

 

『援軍…?アカデミア内にいるという「仲間」が動き出したのかい?』

明日香の報告に問い返す遊勝…現状、遊勝塾はほぼ孤立無援…その状態で援軍は望めなかったからだ。

 

 

 

「いいえ…!さらに頼りになる人達なんです…入って!」

 

「───お久しぶりです、遊勝さん」

 

『キミは…赤馬零児…!?次元を越えてきたのか!?』

明日香に促されて教会へと足を踏み入れたのは、長いマフラーと赤眼鏡が特徴的な青年──赤馬零児だった。

 

 

「貴方が行方知れずとなって3年…まさか、融合次元に来ているとは思わなかった……私もようやく、アカデミアと戦う覚悟と準備をする事ができた……紹介しましょう、アカデミアと戦う為に集いし『槍』──ランサーズのデュエリスト達を!」

零児の号令と共に新たな人影が現れる、それはランサーズの主要メンバー…月影、零羅、沢渡、黒咲、セレナ、素良…さらに、権現坂、柚子……そして遊矢だった…!

 

「っ…父さん!!」

 

「おじさん!!」

 

「遊勝殿!!」

 

『───遊矢…!それに柚子、権現坂君!お前達も次元を越えてきたのか!!』

そして…遊矢が遊勝に抱きつく……離れ離れになった家族、その3年振りの再会だった…。

 

 

 

「父さん…!なんで、なんでいきなりいなくなるんだよ…!!オレ達がどれだけ心配したと思ってるんだよ!?なんで、何も言わないで…!!」

 

『……すまなかった……知っているとは思うが、私はアカデミアのプロフェッサー…赤馬零王とは旧知の仲だ……私ならば、矛を交える事なく、馬鹿な事を止めさせられる…そう思っていたんだが……アクシデントが重なってな…』

3年振りの再会に涙を流す遊矢…その頭を優しく撫でながら遊勝は申し訳なさそうな表情を見せる。

 

 

3年前、零児から対アカデミア部隊の司令官を依頼された遊勝だったが…旧知の仲の零王ならば自分1人で止められると開発途中の転移装置を強引に使用…結果としてエクシーズ次元に辿り着いてしまった。

そして戻る術がないまま…エクシーズ次元で二年間を過ごした所で「次元戦争」が勃発…総司令官だったエドを倒したものの、エドの次元転移装置の暴発で融合次元に飛ばされてしまい、現在に至る…。

 

 

 

 

『遊矢…柚子、権現坂君も元気そうで良かった……母さんは元気か…?遊希は?また、体を壊していないか…?』

 

「っ…母さんも修造さんも元気だよ……だけど、さ……」

 

『…遊希に、何かあったのか!?』

遊矢に家族の近況を訊ねる遊勝…だが、遊矢達は表情を曇らせる…。

 

 

 

 

「───はじめまして、榊遊勝さん」

 

《フォウ》

 

『キミは…?』

その時、新たな人物が現れる…それは赤いジャケットに赤い帽子を被り、肩に白猫を乗せた青年…そして紫髪の女性だった。

 

 

 

『いや…そのペンデュラムは…!?遊希、遊希なんだな…!?いや、でも…雰囲気が違う…それに、体の傷が…!?』

 

「俺の名は…白波遊海、貴方の()()…榊遊希は記憶を取り戻し、元の居場所に戻る事ができた」

 

「私は…遊海さんの妻の白波翠です!」

 

『つ、妻!?遊希はまだ16歳の……いや、キミの纏うオーラは………次元戦争のように、私の理解が及ばない事があったようだね』

遊海が首に掛けた『赤のペンデュラム』によってその正体に気付く遊勝…さらに、()である翠の登場で少し取り乱したが…すぐに平静を取り戻した…。

 

 

 

「榊遊希は彼、白波遊海が記憶を失った姿…彼はスタンダード、エクシーズ、シンクロ、融合…4つの次元の外、完全なる『別世界』から訪れた『英雄』だった…彼を助ける為にその『別世界』から奥方を含めた14人のデュエリストが貴方と入れ違いにエクシーズ次元に漂着…アカデミアと戦う『勇士』として知られていたはずです」

 

『別世界の英雄…それに勇士、アカデミアから逃げてきた学生達から聞いていたよ…エクシーズ次元には白き「希望の戦士」を操る少年や、赤い槍を操る「黒き槍術士」を従えたレジスタンスがいると』

零児の簡潔な説明で遊勝は状況を理解する…学生達から聞いていたレジスタンスの勇士達、そのまとめ役が遊海なのだと。

 

 

 

「スタンダード次元出発当初は10人だったランサーズも…シンクロ次元と同盟を結び、エクシーズ次元をアカデミアの手から解き放ち、総勢35…いや、36名のデュエリスト集団になった……これから、アカデミア本島へ突入するつもりです」

 

『エクシーズ次元を…!!そうか…流石はキミの作った組織だな、零児……ならば、私もようやく動く事が出来そうだ……私も、アカデミアに同行する…!ぐっ……』

 

「父さん!?足が…!」

零児の言葉を聞いて座っていた椅子から立ち上がる遊勝…だが、すぐに膝をついてしまった……右足を負傷していたのだ…。

 

 

「っ…大丈夫だ…エクシーズ次元でエド・フェニックスというデュエリストと戦った時に、足を痛めてしまってな……スタンダードに帰れても、アクションデュエリストは引退だな…」

 

「父さん…」

自嘲気味に笑う遊勝を心配する遊矢…そんな時だった。

 

 

 

「榊遊勝…貴方には、アカデミアに向かう前にやってもらわなくてならない事がある」

 

「えっ…遊海さん?」

遊矢に助けられて立ち上がる遊勝…その前に遊海が立ち塞がる、その様子に柚子が思わず問いかける。

 

 

 

俺とデュエルしろ

 

 

 

「「「っつ!?!?」」」

遊海が言葉を発した瞬間、遊矢や零児達は冷や水を浴びたような感覚に襲われる…。

 

その正体は遊海の()()…オベリスクフォースやセルゲイ、ユーリに向けたモノよりも、はるかに強い殺気を遊勝に叩きつけたのだ…!!

 

 

 

『(な、なんだ、この殺気は…!?これは、本当に人間が出せるものなのか!?)』

 

「や、やばいッス!なんでか分からないけど…遊海先生がガチギレしてるッス!?」

 

「あんな状態の先生を見たのは…ミスターTが変身した偽ダーツの時以来だぞ…!?」

初めて叩き付けられた殺気に冷や汗を流す遊勝…その近くで翔や万丈目達も戦慄している…!

 

 

「ゆ、遊海!?なんでいきなりデュエルなんて…!」

 

『……いいだろう、求められたら応えるのがエンターテイナーの本分!アクションデュエルはできないが…応じさせてもらう!』

取り乱している遊矢を手で制した遊勝は杖を傍らに置き、デュエルディスクを展開する!

 

 

「いくぞ、榊遊勝…デュエルだ!」

エンタメデュエルの創始者と英雄が衝突する!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

遊海LP4000

遊勝LP4000

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『聖騎士アルトリウス』を召喚!」

鎧を着た茶髪の青年騎士が現れる! ATK1800 

 

「さらに!自分の場に光属性の通常モンスターが存在する事で手札の『聖騎士ガウェイン』は守備表示で特殊召喚できる!」

屈強なる太陽の騎士が現れる! DEF500

 

 

「俺はレベル4の『アルトリウス』と『ガウェイン』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

2体の聖騎士が銀河へと飛び込み、大爆発を起こす!

 

 

「現れろ!『No.∞』!俺が歩みし戦いのロード…今こそ未来を切り拓け!!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!!」

 

「えっ…!?ちょっ、遊海さん!?」

大爆発と共に遊海のナンバーズ、初代デュエルディスクを模した魂の大剣が地面に突き刺さる…だが、その召喚に翠は顔色を変える…!

 

 

『見た事のないエクシーズモンスターだ…キミはエクシーズ次元の出身だったのかい?』

 

「俺は…この世界の人間じゃない、遥か遠い場所から来たんだ…だが、今は関係ない…!『決闘の守護者』がエクシーズ召喚に成功した時、カードを1枚ドローできる…さらに、装備魔法『聖剣アロンダイト』を『決闘の守護者』に装備し、ターンエンド!」

見た事のないエクシーズモンスターの存在から遊海の出自を訊ねる遊勝…だが、遊海を言葉数少なくターンを終えた…。

 

遊海LP4000

決闘の守護者(聖剣アロンダイト) 手札3

 

 

 

 

 

「ゆ、遊海さん…!?なんで遊勝さんに対してナンバーズを!?」

 

「翠…今は、何も言わないでくれ……()()()()()()なんだ」

 

「えっ…?」

今までにない様子の遊海に翠は心配そうに声を掛ける…だが、遊海の表情は緩まず、遊勝を睨みつけている。

 

 

『おお怖い…!しかし、デュエルはみんなを笑顔にする為のモノ!キミが何に()()()いるのかは分からないが…私のデュエルで笑顔にしてみせよう!』

遊海の殺気…怒りに戸惑っていた遊勝だったが、プロのエンターテイナーとして遊海に向かい合う!

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『自分の場にモンスターが存在せず、相手の場にモンスターが存在する時!手札の「EMレビュー・ダンサー」は特殊召喚できる!』

靭やかな鞭を持つ踊り子が現れる! ATK800

 

 

『そして「レビューダンサー」は「EM」をアドバンス召喚する時、2体分のリリースにできる!私は「レビューダンサー」をリリース…「EMスカイ・マジシャン」をアドバンス召喚!!』

そして…榊遊勝のエース、白い翼のようなマントを持つ天空の奇術士が現れる! ATK2500

 

 

 

「スカイマジシャン…!父さんも全力だ!」

遊矢は久しぶりに見た憧れのモンスターの姿に目を輝かせている…。

 

『そして…私は永続魔法「魔術師の右手」を発動!このカードは自分の場に魔法使い族モンスターが存在する時、相手の魔法カードの発動を無効にし、破壊できる…さらに!永続魔法が発動した事で「スカイマジシャン」の攻撃力は300アップする!』

スカイマジシャンが魔力によって強化される!

 

スカイマジシャンATK2500→2800

 

 

『さぁ…バトルだ!「スカイマジシャン」で「決闘の守護者」を攻撃!』

 

「『決闘の守護者』の効果発動!このモンスターがバトルする時!ORUを1つ使い、バトルする相手モンスターの攻撃力または守備力、どちらか高い数値分、自身の攻撃力をアップし、貫通効果を得る!ウィッシュ・トゥ・パワー!!」

 

『なにっ…!』

魂の大剣に光が集中する!

 

決闘の守護者 ATK2500→4800

 

 

「薙ぎ払え!勝利を導く決着の剣(デュエルカリバー)!!」

 

『くううっ…!?』

 

「父さん!?」

拡散するように…手加減して振るわれた光の斬撃が天空の奇術師を両断する!

 

遊勝LP4000→1500

 

 

『相手ターンに効果が発動するタイプだったか…私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!』

 

遊勝LP1500

魔術師の右手 伏せ1 手札2

 

 

 

 

『いや、驚いた…!遊希のプレイングスタイルとはまったく違うね!一手でここまで追い詰められるとは…』

 

「俺とあいつは()()だ…歯を食いしばれ、榊遊勝!」

遊海の強さに驚く遊勝…だが、遊海はそれを意に介さず…さらに闘志を高める!

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「装備魔法『聖剣アロンダイト』の効果発動!1ターン1度、『決闘の守護者』の攻撃力を500下げ、相手のセットカード1枚を破壊する!模倣・不毀なる湖光!」

 

『「ミラクル・シルクハット」が…』

アロンダイトの力を宿した魂の大剣が遊勝の伏せカードを両断する!

 

決闘の守護者ATK2500→2000

 

「そして俺は魔法カード『RUM-ネクサス・フォース』を発動!自分フィールドのエクシーズモンスターをランクアップし、カオス化させる!俺は『決闘の守護者』1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

遊海は魂の大剣を銀河へと投擲…光の爆発がフィールドを包み込む!

 

 

「顕現せよ!『CNo.∞』!彼の踏みしめた戦いの路よ!その怒りを我が拳に宿せ…!ランク5!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)(かがやき)』!!」

無数の光が右手に集中…白銀に輝く決闘盤を模した手甲となって遊海に装備される! ATK2800

 

「ランクアップマジックに、カオスナンバーズまで…!?遊海は何を考えて…!?」

勇士達と共に戦った事で「RUM」とナンバーズについて知る黒咲が冷や汗を流す…!

 

 

「バトルだ…!『輝』で榊遊勝にダイレクトアタック!シャイニング…バスタァァァッー!!」

 

『なっ──がっはあああああ!?!』

 

「と…父さぁぁぁん!?!」

白銀の手甲に大地を砕くエネルギーが集中…遊海はあろうことかその拳を遊勝に直接叩き付け、殴り飛ばした…!!

 

 

遊勝LP0

 

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

ドゴン!!

 

 

 

『がっ…!?』

 

「父さん!!」

 

「おじさん!!」

廃教会が揺れる、遊海による全力の拳を受けた遊勝はボールのように吹き飛び…廃教会の壁に叩きつけられ、クレーターを作った。

あまりの出来事にフリーズしていた遊矢と柚子は慌てて遊勝へと駆け寄る…。

 

 

 

「き…貴様…!何を考えているのだ遊海!!何故遊勝殿にこんな事を!!」

 

「やめなよ!権ちゃん!!遊海に敵うわけないって!?」

そして、権現坂が遊海へと掴みかかる…それはあまりにも無謀な事…素良が慌てて制止する…。

 

 

「遊海先生!いくらなんでもやり過ぎです!?遊勝先生は怪我人なんですよ!?」

 

「怪我人であろうがなかろうが関係ない……これは彼……榊遊勝のもう1人の()()との約束だったんだ」

 

「「えっ…?」」

さらに、遊海の思わぬ暴力に声を上げる明日香…だが、その答えは予想外のものだった…。

 

  

 

 

 

『ぐっ…体が、バラバラになるかと、思った…』

 

「痛いか?榊遊勝」

 

「遊海…!!」

痛みに呻く遊勝に歩み寄る遊海…その冷たい眼差しに遊矢は思わず敵意を向ける…。

 

 

「だけどな、お前がいなくなって3年…遊矢達はそれ以上の痛みを…苦しみを味わってきたんだぞ…!!それが、お前に想像できるのか!!」

 

『っ…!?どういう、事だ…?』

 

「遊海…!?」

初めて感情を露わにする遊海…その怒りは、遊矢達を顧みなかった遊勝へと向けられていた…!

 

 

「お前がストロング石島とのデュエルに現れなかった事で、スタンダード…舞網でのアンタは勝負から逃げた「臆病者」の烙印を押された…!その誹謗中傷はアンタだけじゃない!遊矢や洋子さん!アンタのエンタメの教えを受けていた柊塾長の「遊勝塾」にも及んだ!知っているか?今の遊勝塾の塾生は遊矢や柚子ちゃんを含めて6人…5人しかいなくなったんだぞ!!」

 

『────遊矢、柚子…それは本当の事、なのか…?』

 

「………うん…」

 

「お父さん、いつも大変そうでした…事務の人を雇う事もできなくなって…遊希さんがずっとサポートしてて…」

 

『そんな…』

それは遊勝が知る事ができなかった事実…遊勝の行方不明によって、遊矢達は茨の道を歩んできたのだ…。

 

 

「一番大変だったのは遊矢だ…!それまで、チャンピオンの息子として扱われていたのが…『臆病者の息子』と言われるようになったんだぞ…!どれだけ嗤われ、嘲笑され…イジメられてきたのか…!アンタにその辛さが分かるのか!!そのイジメを遊希や洋子さん、柚子や権現坂君がどうやってフォローしたのか…!」

 

『零児…』

 

『別次元の存在は三年前の時点では極秘扱い……伝えてしまえば、人々がパニックに陥る可能性があった……故に、レオ・コーポレーションは貴方のフォローをする事ができなかった』

遊矢の経験した暗黒の3年間を聞いた遊勝は零児へと目を向けるが…零児は目を伏せる……舞網の平穏を守る為、零児はその選択をせざる得なかったのだ。

 

 

 

「遊海…それじゃあ、今のは…オレ達の為に…?」

 

「これは…遊希の最後の願いだ」

 

「遊希兄の…!?」

遊海の怒りの原因が自分達だったと知った遊矢が涙目で遊海に問いかける…そして遊海は「約束」について語った。

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

『白波遊海…もし…もしも、君がこの動画を見てくれたなら……僕の最後の頼みを聞いてほしい…』

 

「頼み…?」

時はスタンダード次元からシンクロ次元への出発前夜、遊海が遊希によって残されていたビデオメッセージを見ていた時まで遡る…。

動画の最後、遊希は遊海へと願いを託していたのだ。

 

 

 

『もしも、君が…これから先、遊勝さんに会う事があったら……思いっきり()()()ほしい…!』

 

 

《フォーウ!?(えっ?遊希!?本当に!?)》

 

「フォウ?そんなに驚く事なのか…いや、遊希の人となりからすれば…意外なんだろうな…」

暴力を嫌う遊希の思わぬ言葉に短い時間とはいえ、一緒に過ごしていたフォウは驚いている…。

 

 

『遊勝さんが…()()()が、急にいなくなって…洋子さんや修造塾長がどれだけ困ったか…いや、それ以上に…遊矢がどれだけイジメられて!周りの大人達に蔑まれて…どれだけ辛い思いをしたか!!本当は僕が自分で問い質したい…殴ってやりたい!!でも、それは叶わないと思う………だから、君に…僕の思いを託したい…頼んだよ…白波遊海』

 

 

「………ああ、分かったよ…遊希、もう1人の『英雄』……お前の願いは、俺が果たす」

 

それは遊希の最後の願い、行方を晦ましてしまった自分勝手な父への…せめてもの制裁だった…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

『遊希…すまない……すまなかった…!!』

遊希の最後の願いを聞いた遊勝はその場で泣き崩れる…人を傷つける事を嫌い、傷付いた体で必死に家族の為に頑張っていた遊希…その遊希にそこまでの思いを抱かせてしまった自分の罪深さに気付いたのだ…。

 

 

「それに、アンタは前提からして()()()()()…自分は赤馬零王と旧知の仲だから説得できる…?違うだろ!仕事があって、家族がいて、親友がいる…その状況を捨ててでも、奴には()()()()()()()()()()()()があった…その強い覚悟をアンタ1人で変える事ができるなら、赤馬零児はお前を頼らないはずだ…!息子である彼でも、父親の心を()()()()()()()!だから、お前を頼ったんだろうが!大馬鹿者!!」

 

「遊海…」

あまり激情した所を見せない遊海…だが、久々に怒りを爆発させる。

 

遊海は許せなかったのだ、同じ()()()()()()()()()()として…榊遊勝の身勝手さを…。

 

 

「1人で全てを変えられるなら、俺達は苦労しなかった…世界を救い、変えられるのは人々の()()()の力だ!自分1人で全てを救えると思い上がるな!!」

 

『……遊海、キミはいったい、何者なんだ…?』

遊海による渾身の説教…それを聞いた遊勝が遊海へと問いかける、見た目の年齢に合わない…そう思える程の経験をしているであろう遊海へと…。

 

 

「俺の名は白波遊海、百年を超える時を重ね…選ばれし決闘者達と共に世界を救ってきた『決闘王』だ」

遊勝の問いに遊海は改めて答える…その背に背負った称号と共に…。

 

 

 

「もう…遊海さん、やり過ぎですよ〜…」

 

「遊希の最後の願いだからな……手は抜けなかったんだ、心配させてごめん」

 

《フォーウ…(自分の親が殴られてる遊矢の気持ちも考えなよ…)》

 

「……それは失念してた……頭に血が昇ってたな…」

臨戦態勢を解いた遊海に翠とフォウが話しかける…遊希の事を考えるあまり、遊海は冷静さを欠いてしまっていた…。

 

 

「さて…積もる話もあるだろうが、話は移動しながらだ…アカデミアに状況を把握される前に…上陸作戦を仕掛ける!」

 

「ゆ、遊海ちょっと待って!父さんは今のデュエルで怪我し………あれ…?怪我してない!?」

 

「あ、あんな勢いで殴られたのに!?」

 

『ああ…不思議な事に、全身痛いんだが…怪我は、していないらしい…』

そしてアカデミアへの突入作戦に移ろうとする遊海、遊矢達は殴り飛ばされた遊勝を心配する……だが、遊勝は埃だらけだが…()()()()()()()()()()()

 

 

「殴り飛ばす時、拳に回復の力を込めた…足の怪我や他の不調も全快しているはずだ……痛みはしばらく残るだろうけどな」

 

『足が…!いや、この程度の痛みは構わない……私には、あまりに軽すぎるくらいの戒めだよ』

 

「父さん…良かった…!」

遊海の言葉を聞いた遊勝は1人で立ち上がる…痛めていた足の痛みは気にならなくなっていた。

 

 

 

「もはや、なんでもアリか、あいつは…」

 

「フッ…これくらいで驚いてたらキリがないぞ?あの人が本気なら、アカデミアのある島ぐらい1人で沈めるからな?」

 

「マジか」

 

「マジッス」

相変わらずの規格外さを見せつける遊海に驚く沢渡…そんな彼に万丈目と翔が上がある事を伝える…。

 

 

「……もう遊海1人でいいんじゃないか…?」

 

「そんな事言わないで?貴女達の力も、きっと必要になるわ」

そして同じく遊海の規格外さに驚くセレナだったが…明日香が苦笑しながら応えたのだった。

 

 

 

「遊海先生、たぶん遊勝塾全員での移動は厳しいんだな…俺は仲間達の為に残るんだな」

 

「隼人…ありがとう、戦いはすぐに終わらせる…少しだけ待っててくれ」

 

「その分、オレ達が頑張るザウルス!」

 

「やってやるッス!」

遊勝塾のアカデミア生は数十人以上…全員の移動は厳しい為、隼人が残る事を進言…遊勝塾からは遊勝・明日香・翔・万丈目・剣山がアカデミアへと向かう事になった。

 

 

 

「よし、話は纏まったな…ランサーズは次元飛行船へ帰投、そのままアカデミアへと向かう!」

 

「「「おーっ!!」」」

リーダーである零児の言葉にランサーズ達が応える…その時だった。

 

 

 

 

 

《……マスター》

 

「ああ…どうやら、()()()()()()が来たらしいな」

 

「えっ…!」

アヤカが異変を知らせる…それと同時に遊海は廃教会の入口へと目を向けた!

 

 

『あらら…もう気付かれちゃった…って、当たり前か』

 

 

「『デニス!』」

入口に現れた人影に榊親子の声が重なる…それはシンクロ次元から姿を消してしまった元ランサーズであり、アカデミアのスパイ…デニス・マックフィールドだった…!

 

 

 

『ハロー♪遊矢、お久しぶりです遊勝センセ…柚子とセレナを渡してもらおうか…!』

 

「アカデミア…お前達には…もう、何も奪わせない!」



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裏切りの道化〜真実の光〜

こんにちは!S,Kです!

融合次元でついに遊勝と再会した遊矢…そして、遊希に託された願いを果たした遊海…彼らの前に現れたのは、デニスだった…!

裏切り者を前にした遊矢は何を思うのか…。


それでは、最新話をどうぞ!


『ハロー♪遊矢!そして…お久しぶりです、遊勝先生…!』

 

 

「「デニス!?」」

 

「貴様…!よくも俺達の前に姿を見せられたものだな…!!」

融合次元で三年振りの再会を果たした遊矢と遊勝親子…そして、遊海が遊希の最後の約束を果たした矢先…ランサーズの裏切り者、デニスが姿を現した…!

 

 

 

「っ…父さん、デニスを知ってるのか?」

 

「ああ、私がエクシーズ次元にいた時の教え子の1人だ…アカデミアの侵攻直後に行方が分からなくなってしまったが…遊矢はエクシーズ次元で彼と会ったのか?」

 

「ううん…スタンダード次元で…!デニスはランサーズの仲間だった…でも、本当は…」

 

「奴はアカデミアのスパイ…!俺達の敵だったのだ…!」

 

「なんだと…!?」

お互いにデニスと面識がある事に驚く榊親子、遊勝はエクシーズ次元での教え子として…遊矢達はランサーズの仲間…そしてアカデミアのスパイとして…その認識の差に遊勝は目を見開いている…。

 

 

『酷いなぁ権ちゃん、一緒にヒーローショーを演った仲じゃないか…』

 

「それはそれ、これはこれだ…!アカデミアとしてのお前の所業、許す事はできん!」

 

『あらら…ツレないねぇ』

悲しげなフリをして権現坂へと話しかけるデニス…だが、権現坂は毅然とデニスを睨みつける…!

 

 

「しかし…柚子を渡せ、とはどういう事だ…?」

 

「おじさん、詳しい事はまた後で話します…アカデミア…赤馬零王は私やエクシーズ次元の黒咲瑠璃や、セレナみたいに私に似た顔の4人の女の子を集めているんです…!」

 

「っ…そうか…!瑠璃の顔を見た事があると感じたのは、そういう事か…!零王…キミはいったい何を考えている…!?」

デニスが柚子を狙う理由が分からない遊勝に柚子が事情を伝える…だが、遊勝は零王の思惑がわからず困惑していた…。

 

 

 

『さぁて…お話はこれぐらいにして…!ギャラリーも連れて来たんだ!遊勝先生、久しぶりにお手合わせをお願いしますよ…!あの時から成長したボクを見てください…!』

 

「アカデミア生が…!」

 

「クソっ…!バレてたのか…!!」

デニスの言葉と共に30人を超えるアカデミア生達が現れる…「遊勝塾」の拠点はアカデミアに暴かれていたのだ…!

 

 

「デニス…お前のデュエルは派手さばかりに気を取られていたな…その華やかさの中にどれだけ人の心を揺さぶるメッセージを込められるか…!それがエンタメデュエルの極意!それが分からないキミは、まだ本当の意味のエンタメデュエルをできていない……っく…!」

 

「父さん!まだダメージが…!」

デニスにエンタメデュエルの極意を伝える遊勝…だが、彼は膝をついてしまう…遊海の渾身の一撃によるダメージがまだ回復しきっていなかったのだ。

 

 

『能書きは結構…ボクは講義より実習が好きなんだ…!』

デニスはデュエルディスクを構える…だが、遊勝は戦える状況ではない…!

 

 

 

 

 

「あのなぁ…デニス、遊勝に夢中になるのはいいが…お前の相手は俺達だけじゃないぞ」

 

 

 

 

 

ドガーン!!

 

 

「「「「うわあああ!?」」」」

 

 

『なっ!?』

遊海が呆れたように呟いた瞬間、デニスの背後で光が弾け…アカデミア生達が吹き飛ばされる!

 

 

「その通り、シンクロ次元以降の私達の動きを知らないキミでは無理もないが……ランサーズは力を増し、仲間を増やした……アカデミアであろうと恐れるに足りん!!」

 

「父さん!教会を包囲してたアカデミアは蹴散らしたぜ!他の奴らはカイト達に任せた!」

 

『なん、だって!?』

 

「流石だ、凌牙」

零児の言葉と共に姿を現したのは凌牙、ジャック、海馬…遊馬号に待機していたメンバー達がアカデミア生達を制圧していたのだ。

 

 

「デニス、喧嘩を売るタイミングが悪かったな……今の俺達を止められるのは…神様か悪魔だけだ」

 

『っ!?(1度撤退して態勢を立て直………転移できない!?)』

 

《スフィアフィールド展開…退路は断たせてもらいました》

一瞬の形勢逆転…分が悪いと見たデニスは転移で逃げようとするが、アヤカによって妨害される…!

 

 

『くっ…!?馬鹿な…!』

 

「どうする?零児…俺が相手してやってもいい「ちょっと待った──!!」ん?」

退路を絶たれ、狼狽するしかないデニス…彼を無力化しようと歩み出る遊海だったが、教会に快活な声が響く。

 

 

「お前がデニスか!ようやく会えたな!」

 

『なんだ、キミは…?』

 

「オレは九十九遊馬!アレンやサヤカの友達だ!」

快活な声の正体…それは霊体化したアストラルを連れた遊馬だった…どうやら、レジスタンスのアレンやサヤカからデニスの話を聞いていたらしい。

 

 

 

「遊馬…そいつはアカデミアのスパイだぞ、アレンやサヤカは騙されてたんだ」

 

「そうみたいだな…でもさ、二人ともデニスを心配してたんだ!デュエルが上手かったお前がアカデミアに負けるはずないってさ!」

 

『二人が…まだ、生き残ってたんだ…』

凌牙の指摘を聞いた上でデニスと向かい合う遊馬…そしてデニスは二人の無事を聞いて安堵しているように見えた…。

 

 

 

「なぁ!今からでも…もう1度、オレ達の仲間にならないか?シャークから舞網チャンピオンシップスの記録を見せてもらってさ!お前、すごいワクワクするデュエルをするじゃん!きっとお前はアカデミアのデュエルよりも、人を助けて()()()()()デュエルが向いてるんじゃないか?」

 

『っ…!?(なんだ、彼は…!?人の心に踏み入って…!)』

デニスの心の核心を突く遊馬…人の機微を見て、本心を見抜く事が得意な彼は…デニスの抱える悩みに本能で気付いていたのだ。

 

 

 

『う、うるさい…!ボクはアカデミアの戦士だ!アカデミアの理想の為に戦うしかないんだ!!』

遊馬の言葉に動揺したデニスは遊馬へとデュエルディスクを向ける!

 

「なら、お前をアカデミアの呪縛から開放してやる!思い出せよ…デュエルの本当の楽しさを!」

 

(遊馬、油断はするな…彼はアカデミアでも上位のデュエリストだ)

 

「分かってる!いくぜ、デニス!」

アカデミアの呪縛に囚われたデニスを救う為、遊馬は立ち向かう!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

遊馬LP4000

デニスLP4000

 

 

「オレのターン!」

「『ゴブリンドバーグ』を召喚!」

赤いプロペラ飛行機に乗ったゴブリンが現れる! ATK1400

 

「『ゴブリンドバーグ』の効果発動!コイツが召喚に成功した時、自分を守備表示にする事で手札からレベル4のモンスターを特殊召喚できる!来い!『希望皇アストラル・ホープ』!」

現れた3機のゴブリンドバーグがコンテナを投下…その中から光輝く希望の戦士が現れる! ATK0

 

ゴブリンドバーグ ATK1400→DEF0

 

 

「そしてオレは『アストラル・ホープ』の効果発動!1ターンに1度、手札・フィールドのカードを1枚墓地に送る事でデッキから『エクシーズ』『オノマト』『ゼアル』『ナンバーズ』の名を持つ魔法・罠カード1枚を手札に加えられる!オレは手札の『タスケルトン』を墓地に送って『エクシーズ・トライバル』を手札に加えるぜ!そしてオレはレベル4の『ゴブリンドバーグ』と『アストラルホープ』の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

2体のモンスターが銀河へと飛び込み、爆発を起こす!

 

 

39

 

 

「現れろ!『No.39』!白き翼に希望を託せ!『希望皇ホープ』!!」

銀河から巨大な白い塔のモニュメントが現れ、変形…遊馬とアストラルのエース、白き希望の戦士が雄叫びを上げる! ATK2500

 

「先攻は攻撃できないからな!オレはカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊馬LP4000

希望皇ホープ 伏せ2 手札1

 

 

 

 

『白い戦士のエクシーズモンスター…アカデミアでも噂になっていたよ…!その力を見せてもらおうか!』

 

「へへっ…かかってこいよ!デニス!」

万全の状況でデニスを迎え撃つ遊馬…彼は楽しそうに笑っていた。

 

 

 

『ボクのターン、ドロー!』

『ボクはスケール2の「Emウォーター・ダンサー」とスケール6「Emファイヤー・ダンサー」でペンデュラムスケールをセッティング!』

 

PENDULUM

 

 

デニスの背後に青色の衣装の踊り子と赤色の衣装の踊り子が浮かび上がる!

 

『これでボクはレベル3から5のモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!現れろ!ボクのモンスター達!手札からレベル4「Emフレイム・イーター」!「Emハット・トリッカー」!』

ペンデュラムの光が扉を開き、炎を食べる爆弾と実体がない眼鏡と帽子を被った魔法使いが現れる! ATK1200 ATK1100

 

 

『そしてボクはレベル4の「フレイムイーター」と「ハットトリッカー」でオーバーレイ!ショー・マスト・ゴーオン!天空の奇術師よ!華やかに舞台を駆け巡れ!エクシーズ召喚!ランク4!「Emトラピーズ・マジシャン」!!』

2体のモンスターが銀河へと飛び込み、爆発…陽気な笑い声と共に空中ブランコで舞台を駆ける奇術師ピエロが現れる! ATK2500

 

 

「エクシーズモンスター…でも、攻撃力は『希望皇ホープ』と互角だぜ?」

 

『ははっ…!お楽しみはこれからさ…!「ウォーター・ダンサー」のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、相手の攻撃表示モンスターを守備表示にする!』

 

「『ホープ』!」

ペンデュラムスケールの青の踊り子が手にしていた杖を振るう、そして放たれた泡によってホープは膝をついてしまう!

 

希望皇ホープ ATK2500→DEF2000

 

 

『さらにボクは装備魔法「ワンショット・ワンド」を「トラピーズ・マジシャン」に装備!攻撃力が800アップ!さらに「ファイヤーダンサー」のペンデュラム効果発動!「トラピーズマジシャン」に貫通効果を与える!』

奇術師が三日月の杖を手にし、さらに炎を纏う!

 

トラピーズマジシャン ATK2500→3300

 

 

『そして「トラピーズマジシャン」の効果発動!ORUを1つ使い、自身に2回攻撃をしなければならない効果を与える!一撃目で「希望皇ホープ」を倒し、二撃目でフィナーレだ!』

 

「おおっ…!なかなかのコンボだな!」

 

『何か、作戦でもあるのかな…!バトルだ!「トラピーズマジシャン」で「希望皇ホープ」を攻撃!』

 

「遊馬!!」

空中ブランコで勢いをつけた奇術師が希望の戦士へと飛び蹴りを放つ!

 

 

(どうする?遊馬)

 

「オレは…永続罠『エクシーズ・トライバル』を発動!このカードがある限り、ORUを2つ以上持つエクシーズモンスターは効果では破壊されない!さらに『希望皇ホープ』は『No.』の名を持つモンスターとのバトルでなければ戦闘破壊されない!」

 

『なにっ…!?だけど、ダメージは受けてもらう!!』

 

「くっ…!」

希望の戦士の防御と奇術師の蹴りが衝突…希望の戦士は僅かに押し負け、余波が遊馬に襲い掛かる!

 

遊馬LP4000→2700

 

 

『なかなか厄介な効果を持ってるじゃないか…でも、もう一撃受けてもらうよ!』

 

「それはどうかな…!『エクシーズトライバル』の効果発動!自分のORUを2つ以上持つエクシーズモンスターが相手モンスターとバトルした後、その相手モンスターを破壊する!」

 

『なんだって!?』

遊馬の罠カードから光弾が放たれ、二撃目を放とうとしていた奇術師を打ち砕いた!

 

 

『くっ…!?ボクはカードを1枚伏せて、ターンエンド!』

 

デニスLP4000

(Pウォーターダンサー ファイヤーダンサー)伏せ1 手札0

 

 

 

 

「す、すごい…!デニスをたった1ターンで…!」

 

「当たり前だ、遊馬はお人好しで…少し抜けた所もあるが、俺達の世界の新たな『決闘王』の名前を背負う奴だからな」

たった1ターンでデニスを追い詰めた遊馬のタクティクスに驚く遊矢…その横で凌牙はまっすぐそのデュエルを見つめていた。

 

 

 

 

 

「なぁ、デニス…お前はなんでデュエルをするんだ?」

 

『ボクがデュエルをするのは、アカデミアの理想の為に…』

 

「違うって!アカデミアの為とかじゃなくて!えーっと……そうだ!お前はこんなデュエルをしてて()()()のか?」

 

『っつ…!?』

デュエルをしながら遊馬はデニスへと問いかける…「デュエルは楽しいのか」…その言葉はデニスの胸に突き刺さる。

 

 

「オレ、エクシーズ次元で戦ったアカデミアの奴らとか、オベリスクフォースにも同じ事を聞いたんだ…色んな事を言う奴らがいた…顔は笑ってる奴もいた…でもさ、心の中では…みんな苦しんでたんだ…!アカデミアに脅されて、洗脳されて、逃げたくても逃げれなくて…!デュエルってさ!そんな苦しいモンじゃないはずなんだ!本当のデュエルは楽しくて、ワクワクして…心の底から笑えるモンだって、オレは思ってる!」

『デュエルは楽しむモノ』…それは遊馬の譲れない信条、デュエルとは魂のコミュニケーション…戦い、ぶつかり合う事でお互いを理解する手段なのだ。

 

 

「お前の攻撃を受けてみて感じたんだ…お前は『トラピーズマジシャン』みたいに()()を被ってる、デュエルを楽しみたいって心を隠して…無理してアカデミアの為に戦おうとしてる!なぁ…!アカデミアの理想って、本当に良い事なのか?本当は間違ってるって、お前も分かってるんじゃないか…?」

 

『う、うるさい…うるさい!!間違ってるって()()()()()()、やらなきゃならないんだ!』

 

「デニス…」

遊馬の言葉にデニスは感情を露わにする…アカデミアの尖兵としてエクシーズ次元に潜入し、セレナに似た少女を探していたデニス…そこで彼は榊遊勝に…彼のエンタメデュエルに出会った。

 

それはアカデミアで娯楽のない生活をしていたデニスに大きな衝撃を与えた……その思いは、歪んだ形とはいえ…彼の中に残っていた…。

 

 

「オレが戦ってきたアカデミアの奴らは融合召喚以外は使わなかった…でも、お前は違う…融合よりも()()()()()()()()()()使()()()…!お前の中の本当の思い、思い出してくれ!」

 

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

「いくぜ!オレは『RUM-ヌメロン・フォース』を発動!このカードはフィールドのエクシーズモンスターをランクアップさせ、カオスエクシーズに進化させる!オレは『希望皇ホープ』1体でオーバーレイネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!」

遊馬が手にしたのは希望の1枚…正しきカオスがフィールドを埋め尽くす!

 

 

39

 

 

「現れろ!『CNo.39』!未来に輝く勝利を掴む!重なる思い、繋がる絆が未来を変える!「希望皇ホープレイ・ヴィクトリー」!!」

白き希望が赤と白のヒロイックな鎧を纏う…この姿こそ、遊馬とアストラルの絆の象徴…ホープレイ・ヴィクトリー! ATK2800

 

 

『カオスエクシーズ!?なんだ、そのモンスターは!?』

 

「これが、オレ達の未来を切り拓く力だ!『ホープレイヴィクトリー』でデニスにダイレクトアタック!」

 

『っ…無駄だ!罠カード「魔法の筒(マジック・シリンダー)」発…!?発動しない!?』

 

「『ホープレイヴィクトリー』が攻撃する時、相手は魔法・罠カードを発動できない!ホープ剣ビクトリー・スラッシュ!」

 

『うわあああ!!?』

2本のホープ剣がデニスを弾き飛ばす!

 

デニスLP4000→1200

 

 

 

『ぐううっ…!すごい、一撃だ…だけど…まだライフは残ってる…!次のターンで…!』

 

「まだだ!オレは罠カード『かっとビング・チャレンジ』を発動!このターンバトルしたエクシーズモンスター『ホープレイヴィクトリー』はもう1度攻撃できる!」

 

『なにっ!?』

次のターンの逆転を狙うデニス…だが、遊馬のタクティクスはその上をいく!

 

 

「受けてみろ!『ホープレイヴィクトリー』でダイレクトアタック!ホープ剣ダブル・ビクトリー・スラッシュ!!」

 

『ぐっ…!?うわああああ…!!』

ホープレイヴィクトリーの第三・第四の腕が展開…4本のホープ剣の剣圧がデニスを吹き飛ばし、デュエルの決着をつけた…!

 

 

デニスLP0

 

遊馬WIN!

 

 

 

 

 

《フォウ!(遊馬の勝ちだ!)》

 

「遊馬…少し見ないうちにまた強くなったな、次に戦ったら負けるかもな…負けるつもりはないけど」

 

「もう…こんな時に意地張らないでください!」

 

「あいてっ…」

遊馬の危なげない勝利に歓声が上がる、そんな中で遊海は強くなった遊馬の実力を褒めていたが…余計な事を言った事で翠に小突かれていた。

 

 

 

「九十九遊馬…彼のデュエルはすごいな…」

 

「えっ…?」

遊馬とデニスの決着を見届けた遊勝が静かに呟く…。

 

 

「デュエルの中でデニスの抱える悩みを見抜き、自分の本心を隠さない…素直な言葉で相手に訴える…そして、彼は心の底からデュエルを楽しみ、向かい合っている……遊希のデュエルと似ているな」

 

「───記憶がなくても…仲間との『絆』が、遊海を……遊希兄を守ってたんだよ…きっと…!」

遊勝の言葉に遊矢が応える…記憶がない間の遊希のプレイングスタイルは…仲間達の『絆』に影響されていたのだと…。

 

 

 

 

『そんな…ボクが、こんな負け方を……ああ、でも…なんだか…清々しい気持ちだ…』

 

「そうだぜ、デュエルってのは楽しくて…スカッとして…でも、たまに悔しくて…そういうのを全部ひっくるめてデュエルなんだ!戦争や、人を傷つける為に使うのは…絶対に間違ってる!」

 

『遊馬…』

倒れ込んだデニスに遊馬が話しかける…その表情は穏やかで、敵だった者に向ける表情ではなかった…。

 

 

「──デニス、キミがアカデミアの者としてエクシーズ次元を混沌に陥れ、遊矢達を裏切ったのは真実なのだろう……しかし、エクシーズ次元でキミが私から必死にエンタメデュエルを学んでいたのもまた()()!…キミならば、本当の意味で人々を笑顔にするデュエルがきっとできるはずだ」

 

『遊勝先生…』

 

「これからキミが歩むのは()()()になるかもしれない…それでも、もう一度…手を取り合えないだろうか?」

そして…同じく遊勝もデニスに話しかける、エンタメデュエルを教えた師匠として…道を違えた弟子を救う為に…。

 

 

『それは、できない相談です…!』

 

「「「デニス!」」」

倒れ込んだデニスに手を差し伸べる遊勝…だが、一瞬俯いたデニスはその腕を払い除け、バク転で遊馬達から距離を取る…!

 

 

『ボクは、黒咲や遊矢を…ランサーズを裏切った人間だ…!今さら、どんな顔をして…()()に戻れって言うんですか…!』

 

「デニス…」

遊馬達から距離を取ったデニスの目元から涙が溢れる…彼も後悔していたのだ、エクシーズ次元を戦場にした事を…遊矢達を裏切った事を…。

 

 

『……瑠璃とリンは、アカデミアの東の塔と西の塔…太陽と月の塔に分かれて閉じ込められてる…これは、プロフェッサーの最高機密……これでボクは、アカデミアへも帰れなくなった…』

 

「っ…デニス!やめろ!!」

 

「遊矢…ランサーズとして一緒に過ごした日々や、舞網チャンピオンシップスで一緒にデュエルできた事……本当に楽しかった…!きみ達が二人を助けられる事を祈ってる!』

アカデミアの最高機密を遊矢達へと明かしたデニスは吹っ切れたように笑いながら、デュエルディスクのカード化装置を自分へと向ける…!

 

 

 

『ボクが見せる、最後のエンタメ…!この身が見事カードに変わりましたらご喝采──!!』

 

 

 

「はぁ…させるかよ!バーカ!

 

 

『うぐっ…!?』

 

「あっ…!!」

カード化装置のスイッチを入れようとしたデニス…だが、その腕をどこからか飛んできた金属の輪が弾き飛ばし、さらに現れた人影がデニスを押さえつけるように押し倒した!

 

 

「真月!」

 

「ずいぶんとタイミングがいいじゃねぇか、ベクター…()()()()()?」

 

「へっ…行き場をなくしたスパイがやる事なんて決まってるからなぁ…まっ、()()()は知るってな」

現れたのは黒い皮ジャケットを着た、オレンジ色の髪の少年…ベクターだった。

 

 

 

 

『う、ぐ…!離せ…!ボクには、これぐらいしか、罪を償う方法が…!』

 

「まぁまぁ…そんなに生き急ぐなよデニスちゃ〜ん!オレ達はもうカード化を解除する装置を持ってたりするんだよねー……カードになっても、次の瞬間には元通り!ってな?」

 

『はっ…?そんな、事…できるはずが…!?』

 

「それができちゃうんだなぁ、これが!オレ達の仲間には優秀な人工知能とか、メカニックとか博士がいてなぁ…決死の覚悟が無駄になって…どんな気持ち?」

 

『ははっ…すごいね、ランサーズは……最初から、勝ち目なんてない訳だ…』

押さえ込まれたデニスに真月が語り掛ける…カード化が無駄に終わった事を知ったデニスは力なく笑うしかなかった…。

 

 

「で、ここから相談…というか、提案なんだけどよ?死んだつもりなら…いっその事、もう一度ランサーズに入るってのはどうよ?今なら〜…なんと!エクシーズ次元総司令官だったエド・フェニックスと伝説のデュエリスト!カイザー亮と一緒に戦えるぜ?」

 

『はっ…??』

真月の口から語られたビッグネームにデニスの目が点になる。

 

 

 

「デニス、我々ランサーズはレジスタンスと共にアカデミアのエクシーズ次元軍を制圧し、和解した……ランサーズにはセレナと素良に加え、エドと丸藤亮…彼らも加わっている……エクシーズ次元に残っているアカデミアはエクシーズ次元の復興作業中だ」

 

「……お前達が置かれていた状況は聞いた……お前が瑠璃を誘拐した犯人の1人である事は変わらない……だが、心を入れ替えると言うなら……遊矢の手を取れ」

 

『零児…黒咲…』

零児の言葉と黒咲の赦しを聞いたデニスは目を丸くする…ランサーズはアカデミア軍と和解し、融合憎しだった黒咲も歩み寄る姿勢を見せている…それは俄かには信じられない事だった…。

 

 

「実を言うとよぉ…オレも昔は仲間を裏切った事があってなぁ…まぁ、切った張ったの大立ち回りして……最後には見事にやられたんだが…なんだかんだで許してもらってよ!今は正義の決闘者の一員さ………お前、仮面を被るのが得意なんだろ?なら…もう一枚仮面を被ってた事にすりゃいい!アカデミアを正す為の『正義』の仮面をよ…」

 

『………』

 

「真月…」

かつて、遊馬や凌牙を苦しめた()としての経験を語る真月…その言葉にデニスは考え込む…。

 

 

 

「デニス、オレもさ…舞網チャンピオンシップでお前と出会えて…一緒にエンタメデュエルができる()()に出会えて嬉しかったんだ…!確かに、お前はアカデミアとして悪い事をした…だったらさ、逃げないで…()()()()()()()()!アカデミアで苦しんでる、他の仲間を助ける為に…!それが一番の償いになると思うんだ!」

 

『遊矢…』

デニスの背中を押すように、遊矢が自分の思いを伝える…。

 

 

 

「デニス!かっとビングだ!」

 

『かっとびんぐ…?なんだい?それ…?』

そんな時、遊馬が自身の信条…かっとビングをデニスへと伝える、それは…どんな苦難にも負けなかった遊馬の支えとなっている言葉…。

 

 

「かっとビングってさ、オレの一番大事な言葉なんだ!どんな時でも諦めないで、勇気を持って一歩を踏み出す!それで失敗して挫けても…何度でも困難に立ち向かう!それがかっとビングだ!」

 

『かっとビング…諦めない心……まさに、今のボクの為にあるような言葉だね…』

遊馬のかっとビング…諦めない心を伝えられたデニスは静かに立ち上がる…。

 

 

 

『……遊矢、ボクはアカデミアの人間として…許されない事をした……こんなボクでも、もう一度…()()って、呼んでくれるかい?』

 

「っ…!もちろんさ!アカデミアと一緒に戦おう!デニス!!」

 

『───ありがとう、遊矢…!』

遊矢と涙目のデニスは静かに握手を交わす…一度は断たれてしまった絆は再び結ばれたのだ…。

 

 

 

 

「ありがとな!真月!お前がデニスを止めてくれて助かったぜ!」

 

「へっ…これからアカデミア本隊とかズ……()との対決も控えてんのに、榊遊矢に余計な心労かけたくなかったからなぁ…まっ、気まぐれって奴よ」

真月の見事な活躍に礼を伝える遊馬…素直ではないが、真月は照れくさそうに笑っていた。

 

 

 

「流石の遊馬だな、デニスの説得を成功させるとは…かっとビング・カウンセリング恐るべし…それに、真月も丸くなったなぁ…」

遊馬達によるデニスの説得・カウンセリングを見ていた遊海は感心していた、ほぼ初対面のデニスの悩みを解決した遊馬も流石だが……真月が助けに入った事も意外だったのだ。

 

 

「さて…次はアカデミアに乗り込むだけなんだが……何か忘れてるような…?」

そんな時、遊海は記憶に引っ掛かりを覚える…()()を忘れている気がすると…。

 

 

 

 

「バトル!『覇道星シュラ』で『古代の機械猟犬』を攻撃!!」

 

 

 

【【【ぐわあああ!?】】】

 

「なんだ!?」

 

「オベリスクフォース!?」

 

『あっ…しまった、()の事を忘れてた…(汗)』

その時、教会の中に人影が吹き飛んでくる…それは何者かに倒されたオベリスクフォースの3人組だった、突然の事に遊矢達は驚いていたが…デニスは冷や汗を流している…。

 

 

 

「自分を呼ぶのが遅いぞ、デニス・マックフィールド……カタはついてしまったようだがな」

 

「お前は…勝鬨!?なんで融合次元に!?」

オベリスクフォースが強制転送される中、新たな人影が現れる…それは遊矢にとって因縁あるデュエリスト──スタンダード次元にいるはずの梁山泊塾の武闘派、勝鬨勇雄だった。

 

 

 

『あ、あはは……いや、遊矢対策にスタンダードでスカウトしたんだよね……彼なら、遊矢が融合次元に来た時の相手になるなって………』

 

「デニス!?」

 

『ソーリー!ごめんね!!』

困ったように笑うデニスの言葉に遊矢は驚愕する…デニスはアカデミアの人間としてやる事はやっていたのだ。

 

 

 

「榊遊矢…!」

 

「勝鬨…!」

真剣な表情で遊矢に詰め寄る勝鬨…思わず戦闘態勢を取る遊矢だったが──

 

 

 

 

 

「すまなかった!!!」

 

 

 

 

「えっ…!?」

 

「なっ…勝鬨が、頭を下げた…?」

 

「ど、どういう事…?」

教会に響いたのは打撃音ではなく…勝鬨の()()()()()だった、突然の事に遊矢や権現坂、柚子も戸惑っている…。

 

 

「自分は…一方的に、何も知らないお前の事を逆恨みして…八つ当たりのようなデュエルをしてしまった…!自分の愚行を、許して欲しい…!!」

 

「えっ…えっ…??」

勝鬨による謝罪に戸惑う遊矢…それは周りの人間達も同じだった。

 

 

 

「いったい何があった…?梁山泊塾のスタンスであれば、所属デュエリストが相手に頭を下げるなど…」

 

「フン、遊海は報告をしていなかったようだな……零児、梁山泊塾は休校中だ……塾長、郷田川梁山による行き過ぎた修行による体罰やイジメ、授業料の横領…諸々の問題が判明してな」

 

「なっ…!?白波遊海、お前は何をした!?」

 

「何って…郷田川梁山を相手に特殊勝利・バーン、そして真正面のバトルでボコボコに倒して…『隠し事を暴く』罰ゲームをしただけ………ああ、忘れてたのはこれか…スッキリした」

 

「そこまでやってたんですか!?」

梁山泊塾の生徒である勝鬨の謝罪に驚く零児に海馬が梁山泊塾休校の事実を伝える…そして遊海の未報告の行動に唖然としていた…。

なお、翠も遊海からは軽く『梁山泊塾の塾長を倒した』程度しか聞いていなかった為、驚愕している…。

 

 

 

「……白波遊海によって塾長が倒され、闇の道を歩く必要はないと知った…そして、8年振りに再会した両親に泣かれたのだ…『人を傷つけるデュエリストにはなってほしくなかった』と……どうやら、前から塾長にも話し、手紙も送られていたが……握り潰されていたらしい…」

 

「勝鬨…」

それは遊海のもたらした『光』…子ども達の希望を束ねた『決闘の守護者』の一撃が勝鬨の心に良心の心を取り戻していたのだ。

 

 

「それじゃ…なんで、融合次元に…?」

 

「カードにされた仲間の仇討ち…そして、ランサーズの力になる為だ……自分は次元を行き来する手段はなかったからな…デニスの提案は渡りに船だった」

 

『あっ…ボク、結局裏切られる予定だったのね……しょんぼり』

 

「ハハハ!落ち込むなって!スパイあるあるさ…オレも裏切った後に味方に殺られたからなぁ!」

勝鬨の裏切り宣言にがっくりと肩を落とすデニス…その肩を叩かれながら真月に慰められている…。

 

 

 

「白波遊海…改めて、貴方に感謝を……貴方のデュエルと言葉のおかげで自分を含めた梁山泊塾の生徒達は救われ、正道に戻る事ができた……感謝する」

 

「俺はキッカケを作っただけさ…仁義を重んじる、良い意味の武闘派デュエリストなってくれよ?」

 

「精進させてもらう…!」

改めて遊海へと感謝を伝える勝鬨…彼に遊海は優しく応えたのだった…。

 

 

 

「榊遊矢…次元戦争が片付いたら、もう一度…自分とアクションデュエルをして欲しい……今度こそ、真正面からお前に勝ってみせる!」

 

「勝鬨…望む所だ!」

遊矢へと拳を突き出す勝鬨…遊矢は笑いながらその言葉に応えたのだった…。

 

 

 

「梁山泊塾の生徒とこんな関係になるとは…遊矢、お前も自分なりのエンタメを磨いていたんだな…」

 

「──元はと言えば、お前が失踪したせいだから…な!!」

 

「ぐはっ!?」

 

「おじさん!?」

遊矢と勝鬨の姿を見て訳知り顔で頷いていた遊勝だったが…遊海に容赦なく拳骨を落とされるのだった…。

 

 

 

…………

 

 

 

「さぁ、後顧の憂いはなくなった…ランサーズはアカデミア本島に急襲を仕掛ける!!」

 

「「「おう!!」」」

 

「みんな…!頑張って…無事に帰ってきて欲しいんだな…!!」

 

「大丈夫ッス!僕達には十代の兄貴や遊海先生が付いてるッス!」

 

「ああ…!待ってろよ!プロフェッサー!!」

隼人や遊勝塾の見送りを受けながら、ランサーズはアカデミア本島へと出立する…次元戦争の最終決戦は間近へと迫っていた…!



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アカデミア制圧戦・序〜それぞれの誇り〜

こんにちは!S,Kです!

ついに、戦いの舞台はアカデミアへ…ランサーズによる反撃が始まる!

それでは、最新話をどうぞ!


「───ねぇ、遊矢…ランサーズはいつの間に、こんな大所帯になったのさ…!?」

 

「あはは…シンクロ次元とエクシーズ次元の助っ人が合流したら、すごい事になったんだ……このメンバーなら、きっとアカデミアに対抗できる!」

遊矢達と共に飛行船・かっとび遊馬号に乗り込んだデニスは呆然としていた…新生ランサーズの戦力があまりにも大きかったからだ。

 

 

 

初期メンバーの遊矢・柚子・権現坂・沢渡・黒咲・月影・零児・零羅・セレナ・遊海

 

スタンダード次元からの助っ人、遊戯・海馬・城之内、勝鬨

 

シンクロ次元からの助っ人、遊星・ジャック・クロウ

 

チームZEXALの遊馬・アストラル・小鳥・凌牙・カイト・オービタル7・璃緒・ドルベ・真月・アリト・ギラグ・ミザエル・十代・流星・海亜・翠

 

エクシーズ次元からの助っ人、カイト(レジスタンス)

 

アカデミアを離反した素良・エド・カイザー亮・デニス

 

融合次元で英雄の到来を待っていた、遊勝・明日香・翔・ティラノ剣山・万丈目

 

 

総勢43名───世界を救う為に集まった、決闘者のドリームチームである!

 

 

 

 

 

「お兄さん!!」

 

「翔!無事で良かった……ユーリに襲撃されていたと聞いた時はどうなるかと…!!」

 

 

「か、海馬社長!?遊戯さん!?貴方達までこの世界に!?」

 

「フン、万丈目の三男か…お前も遊海との『縁』に導かれたようだな……つくづく、デュエルモンスターズとは不思議なモノだ」

 

「お〜い!オレを忘れるな〜!」

 

 

「すごい…!人の科学力でこんな飛行船が作れるものなの…!?」

 

「ああ、半分は異世界…アストラル世界の技術らしいけど、半分は遊馬の親父さんがオレ達の世界の技術を教えたらしいぜ?」

 

 

「お、同じ顔の人が2人いるザウルス!?双子!?」

 

「いや、オレは貴方達が元々生きていた『世界』から来たんだ」

 

「俺はエクシーズ次元のレジスタンスだ……身長で見分けてくれ」

 

「???」

 

 

「遊馬!大丈夫だった!?」

 

「おう!しっかり仲間を増やして来たぜ!」

 

《まさか、飛行船がこんなにギュウギュウになる日が来るとは…定員は大丈夫でアリマスか?》

 

(心配ない、飛行船の動力はアストライト…100人乗っても大丈夫、という奴だ)

 

《フォーウ…?(なんだか、聞いた事があるような……?)》

 

飛行船に集った決闘者達はそれぞれに談笑していた…再会を喜ぶ丸藤兄弟、遊戯を初めとした『伝説の決闘者』がいる事に驚く万丈目、次元飛行船を明日香に紹介する十代、2人のカイトを見て困惑する剣山、遊馬の事を心配していた小鳥、飛行船が手狭に感じるようになったオービタル7と気にしていないアストラル、その隣で首を傾げるフォウ……決戦を控えているとは思えない程、彼らはリラックスしていた。

 

 

 

「やあ、こうして顔を合わせるのは初めてだね、デニス」

 

「っ…!エド・フェニックス…!まさか、総司令官のキミが本当にアカデミアへ反旗を翻すなんて…!プロフェッサーはまだレジスタンスと戦っていると思い込んでいたよ!?」

 

「優秀なオペレーターと、取り繕うのが上手い副官のおかげさ…キミと素良がいるなら、道案内も大丈夫だろう」

そして、グレーのスーツを着た青年──エドがデニスへと声をかける…総司令官だった彼がランサーズに手を貸している事に半信半疑だったデニスは静かに驚いていた。

 

 

 

 

「ランサーズ、そして協力者の諸君!少しだけ耳を貸して欲しい!」

そんな時、飛行船内に零児の声が響く。

 

 

 

 

「この次元飛行船は一時間程でアカデミア本島へと到着する!今回の作戦はスピードが命となる……アカデミアが状況を把握し、対応してくる前に…アカデミアを制圧する!」

 

「次元トンネルを使えればすぐだが…次元嵐があるから仕方ないな…」

零児の言葉にドルベが呟く…本来なら、飛行船がアカデミアに着くには数分も掛からないのだが…次元嵐の影響でショートカットが使えないのだ。

 

 

「待て、零児…さっきの戦いでアカデミアの奴らが何人かアカデミアに送還されてる…俺達の動きは読まれてる可能性があるぞ」

 

「心配するな凌牙、それは折り込み済だ…俺と遊馬でなんとかする」

 

「オレ?遊海!何すればいいんだ?」

 

「ああ、少し打ち合わせしとこう」

そしてアカデミアに状況が知られている可能性に気付いた凌牙だったが…遊海はどうやら対処するアイデアがあるようだった…。

 

 

「これが、ランサーズ最大の戦いとなる…各々、準備を頼む!」

 

「「「おう!!」」」

零児の号令を以て、ランサーズは戦闘態勢へと移行した…!

 

 

 

 

 

 

 

「っ…そうか、赤馬零王はそんな事を考えて…」

 

「うん…オレも零児も、初めて知った時は驚いたんだ…」

飛行船の甲板…そこには遊矢と遊勝、そして柚子と権現坂の姿があった…遊勝達と大切な話をする為に…。

 

 

 

「零王は4つの次元の統一を目指している…その鍵になるのが柚子や黒咲瑠璃君に似た4人の少女達……しかし、何故…柚子達なんだ…?」

 

「うむ…考えればおかしい話だ、次元の統一の為に柚子やセレナが必要など…顔が似ている以上の何かがあるのか?」

 

「「………」」

遊矢から零王の目的を伝えられた遊勝と権現坂…だが、2人はその話の違和感に気付く…。

 

 

「……ここから話すことは、遊海から聞いた事なんだ……なんで、遊海が記憶を失ってたのか……それは、大きな戦いに巻き込まれたせいだったんだ」

 

「大きな戦い…?だが、遊海…遊希を見つけた頃、零王はまだ舞網にいた……戦争や争いは起きていなかったはずだが…?」

 

「……遊海さんは、私達のいるこの世界とは()()()から迷い込んだんです……その世界の戦いが、今の状況を作ってしまったって…」

 

「どういう事だ…!?スタンダード、エクシーズ、シンクロ、融合…その4つ以外の世界が存在するというのか!?」

 

「……実は───」

遊矢と柚子から4つの次元以外の「世界」の存在を聞いて動揺する遊勝……そして、彼らは知る事になる───

 

 

 

世界を引き裂いてしまった『悪魔』と『決闘者達』の戦いの顛末を…。

 

 

 

…………

 

 

 

「───なんという話なのだ…!?遊矢やユートが遊海や凌牙達と死合った『悪魔』の転生体…そして、柚子やセレナはそれを止めようとした赤馬零王の『娘』の転生体…!?そしてこの世界は遊海のいた『世界』が切り裂かれて生まれた…!?そんな事が現実に起こり得るのか…!?そもそも!その事を黒咲や零児は知っているのか!?」

 

「うん…昨日の夜、遊海に呼び出されて知ってる……秘密にしなくていい、とは言われてるけど……最初に話すなら、父さんと権現坂にしようって柚子と決めたんだ…」

 

「遊矢…」

一連の事件の『元凶』について伝えられた遊勝も権現坂も動揺を隠せなかった、あまりに現実感がなく…しかし、揺るぎない真実でもあるARC次元の『創世記』…だが、遊矢達の真剣な眼差しを見た遊勝達はその言葉を信じるしかなかった。

 

 

「赤馬零王は世界を一つにして、そして娘さんの…『赤馬レイ』の欠片を宿す私達を集めて、彼女を甦らせようとしている…それが零王の目的だろうって、遊海さんが言っていました…」

 

「我が子の為に世界を敵に回すとは……どれほどの…」

そして、柚子から語られる零王の真の目的…それを聞いた権現坂は言葉を失う……14年しか生きていない彼では、零王の覚悟を計り知る事はできなかった…。

 

 

「………遊矢、お前は…私には想像できない程の重荷を背負っていたんだな…!」

 

「父さん…」

そして、それまで沈黙していた遊勝が静かに遊矢を抱きしめる…。

 

 

「お前は『悪魔』なんかじゃない…!お前は榊遊矢、私の息子だ…!!」

 

「……ありがとう、父さん…!!」

 

「おじさん…遊矢……私も、お父さんに会いたくなっちゃった…」

 

「大丈夫だ…!俺達は戦いを終わらせて舞網に帰るのだ…全員で!!」

 

「…うん…!」

遊矢を抱きしめながら大事な息子である事を伝える遊勝…その様子を見ながら柚子もスタンダードに残る父の事を思い出し…権現坂は必ず会えると励ますのだった…。

 

 

 

 

(総員に知らせる!まもなくこの船はアカデミアに最接近する、全員ブリッジに集まってくれ!)

 

「っ…いよいよか…!」

飛行船にアストラルによる放送が響く…それはアカデミアが間近に迫っている事を知らせるものだった…!

 

 

「お、おい…!?あれは…!!」

 

「凌牙が気にしてた事が本当になってる…!とにかく、一度集合しよう!」

そして遠目にアカデミアのある島を視認した権現坂が異変に気付く…それを見た遊矢は集合を優先した…。

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

「アヤカ、サーチ結果は?」

 

《はい…アカデミア本島を守るように50体の『古代の機械混沌巨人』を確認、上空には『古代の機械飛竜』や『古代の機械巨竜』、『古代の機械熱核竜』が複数体飛び回っています…!》

 

「やはり、読まれていたか…!」

 

「すげぇ数だ…!」

全員がモニターに映されたアカデミア本島に釘付けになる…アカデミアを守るように無数の『古代の機械』モンスターが展開し、港ではアカデミア生やオベリスクフォースが待ち受けていた…!

 

 

 

「アカデミアもこちらを脅威として認めたという事だな…どうする?」

 

「遊海先生、アヤカ…『アポクリフォート・キラー』を喚び出してください、それがアカデミアに残る『仲間』への合図になります!」

 

「なるほどな…!よし、初撃で道を切り拓く!その後に速やかに上陸し、瑠璃とリンの救出、プロフェッサーを制圧する……それでいいな?零児」

 

「ああ…だが、あの数をどうやって切り抜ける?」

 

「遊馬!いくぞ!」

 

「おう!」

アカデミアがランサーズを脅威として見ている事に気付く海馬…そして、カイザー亮は遊海へとアカデミアにいる仲間への合図の方法を伝える…そして零児へと声を掛けた遊海は遊馬と共に甲板へと向かった…!

 

 

 

 

 

「よし…現れろ!『アポクリフォート・キラー』!!」

 

《了解!アポクリフォート・キラー、現界します!》

アカデミアから数百メートル程離れた海上…そこへ超巨大要塞が現界する!

 

《マスター、マイクを》

 

「ありがとうアヤカ…いくぞ…!」

アヤカから特製のマイクを渡された遊海は大きく息を吸い込む…!

 

 

「アカデミアへと告げる!俺の名は白波遊海!ランサーズの一員としてお前達の愚かな計画『アーク・エリア・プロジェクト』を止めに、次元を越えてやってきた!!抵抗せず、武装を解除せよ!俺達は無益な戦いは望まない!!」

 

それは遊海の名乗りであり、降伏勧告…アヤカによって拡声された声がアカデミアへと響く…!

 

 

 

『っ…!!!来た…!来てくれたノーネ!革命の時は今なノーネ!!』

そしてその声はアカデミアで耐えていた『仲間』達へと決起の時を知らせる!

 

 

 

《◆◆◆◆◆◆!!》

 

 

「っ…!『希望皇ホープ』!ムーンバリアだ!」

 

《ホープ!!》

だが、アカデミアは止まらない…『混沌巨人』のレーザーが飛行船に向けて放たれる……が、無敵のバリアがレーザーを弾く!

 

「当然ながら、交渉は決裂だな……遊馬、頼むぞ!」

 

「おっしゃ…!いくぜ!」

交渉決裂を悟った遊海は遊馬へと声をかける!

 

 

 

「来い!『弦魔人ムズムズリズ厶』!『太鼓魔人テンテンテンポ』!『管魔人メロメロメロディ』!『鍵魔人ハミハミハミング』!!」

遊馬は4枚のカードを掲げる…そこからギター・ドラム・ラッパ・ピアノを構えた4体の可愛らしい悪魔達が現れた!

 

 

 

《ゲッ…!?音楽魔人!?ま、まさか!?》

 

「遊海さん嘘でしょ!?み、みんな!()()()()()─!!」

 

「「「えっ?」」」

その4体が召喚されたのを見たオービタル7と小鳥が顔色を変え、耳を塞ぐように叫んだ!

 

 

「う、ウィンダ!ウェン!!」

 

《ふ、風王結界発動──!!》

 

 

 

 

 

「遠慮はいらない!思いっきり聞かせてやれ!」

 

「よっしゃあ!いくぜ!魔法カード『魔人オーケストラ』発動だ─!!」

遊馬が一枚の魔法カードを発動する…その瞬間、4体の魔人達が数十体ずつに分身していく!!

 

 

「奏でろ!魔人オーケストラ!!」

遊馬の号令と共に『ムズムズリズム』が軽快な音を鳴らし、『テンテンテンポ』がリズムを刻む、さらに『メロメロメロディ』が管楽器を吹き鳴らし、『ハミハミハミング』が鍵盤を叩く。

 

 

一つ一つを聞けば素晴らしい音色…だが、無数に分身した音楽魔人が()()()()に演奏した結果────

 

 

 

#@#$@%!@#!$%$!@#!$%@%@!$%#@%──!!

 

 

 

『『『『『ぎゃあああああ!?!』』』』』

 

 

「「「「「うるさーい!!?」」」」」

凄まじい()()となってアカデミア(と飛行船)へと襲いかかった!

 

 

 

《キュウゥゥッ!?(み、耳があああ!?)》

 

「な、なんだこの騒音は─!?」

 

「う、うるせえぇぇ!!?」

 

「これは、凄まじいな…!!」

 

「月影、耳栓ありがとう…」

 

「(無言のサムズアップ)」

 

(『魔人オーケストラ』はフィールドに存在する『魔人』エクシーズモンスターの攻撃力の合計分、相手モンスターの攻撃力をダウンさせる魔法カード…だが、指揮者である『音響魔人マエストローク』がいない状態で魔人達がそれぞれに演奏しているから、凄まじい騒音になっているんだ)

 

「ごめんアストラル!何か言ったかい!?」

 

「うーん…」

 

「うわあああ!?剣山君しっかりするッス─!?」

 

「恐竜の聴力にこれは厳しかったか!?」

 

「あっ…『混沌巨人』が海に沈んでいく!?」

 

「空を飛んでたモンスターも墜落してるわ…」

 

「機械にも効く騒音ってやばいだろ……」

精霊達の結界を貫通して響く大演奏に阿鼻叫喚となる飛行船内…だが、アカデミアの被害はそれ以上…『混沌巨人』は火花を散らしながら沈没し、無数の機械竜達は墜落……無防備だったアカデミアのデュエリスト達は軒並み失神していた…。

 

 

 

《サーチ…アカデミア戦力の6割の無力化に成功しました……恐るべし『魔人オーケストラ』…》

 

「よし!アカデミアの戦力ダウン成功!」

 

「よし!…ではないわ!この馬鹿者!!

 

「「あいたっ!?」」

アカデミアの戦力を削り喜ぶ遊海と遊馬だったが、背後から現れた海馬社長に2人纏めて拳骨を落とされた…。

 

 

 

「せめて何をするかぐらい事前に伝えんか!!」

 

「いや、飛行船なら大丈夫かと…ダメでした?」

 

「野生の聴力を持つティラノ剣山と耳を塞ぎ損ねたベクターと凡骨が失神したぞ…」

 

「あ、やべ…(汗)」

 

「ち、ちょっとやり過ぎたかな…?」

 

「──だが、相手や建物を壊さずに制圧する手段としては最適解だろう……奴らの統制が乱れているうちに乗り込むぞ!」

 

「ああ!遊馬号前進!」

 

「目標は中庭だ!あそこが一番防御が薄い!!」

『魔人オーケストラ』という名の()()()()によってアカデミアの出鼻を挫いたランサーズはアカデミア校舎中庭に接岸、フラッシュ・トランサーによってアカデミアへと降り立つ!

 

 

《カイト様!アストラル!飛行船の守りは任せるでアリマス!》

 

(ああ、頼んだぞ!オービタル7!)

ランサーズを降ろした飛行船は安全高度まで離脱していった。

 

 

 

「うう…いきなりヒドい目に遭った…本当に遊海は無茶苦茶過ぎるって…」

 

「イタタ…気にしたら負けだぜ、遊矢…遊海の無茶にしては軽い方だぜ…」

耳の調子を確かめる遊矢に城之内が苦笑しながら話しかける…遊海と一番付き合いが長い彼からすれば、この程度は日常茶飯事である。

 

 

 

「凌牙!黒咲!遊星!エド!手筈通りに頼む!リンの方はユーゴが向かってるかもしれない、そうだったらサポートを頼む!」

 

「分かった!」

 

「待っていろ、瑠璃!!」

 

「遊海さん!ドクトルは任せます!」

 

「遊星、リンがいるのは太陽の塔だ!行こう!!」

遊海の号令で凌牙と黒咲、遊星とエドが囚われた瑠璃・リンの救出に向かった…!

 

 

「私達は二手に分かれてプロフェッサーの制圧と要注意人物のドクトルの無力化だ!襲撃してくるアカデミア兵は無力化せよ!」

 

「翠!遊矢と零児のサポートを頼む!」

 

「わかりました!遊海さんも気をつけて!!」

さらに、ランサーズは二手に分かれる…最終目的がプロフェッサーの制圧である事は変わらないが、万が一に備えて二手に分かれる事にしていたのだ。

 

 

プロフェッサー制圧は零児・遊矢・柚子・翠・璃緒・十代・ジャック・デニスを初めとしたランサーズ本隊が。

 

ドクトル制圧は遊海・遊戯・素良・セレナ・遊馬・カイザー亮を初めとしたチームZEXAL中心のメンバーが向かう事になっている。

 

 

《反応感知!約40名がこちらに向かっています!》

 

「っ…いきなりか!零児!遊矢!先に──」

 

「いえ、違います…!()()です!」

アヤカが近づくアカデミアの反応を感知する、遊海は戦闘態勢を取るが…カイザー亮がそれを制止する。

 

 

『お…!おお!セニョール遊海!セニョーラ翠!きっと来てくれると思っていたノーネ!!』

 

 

「「クロノス校長!!」」

 

「クロノス先生!?」

 

「セニョール十代!?アナタも来てくれたノーネ!?」

姿を現したのは40名程のアカデミア生を引き連れた特徴的な金髪ポニーテールの男…デュエルアカデミア最高の教師、クロノス・デ・メディチだった!

 

 

 

「校長…?アカデミアのリーダーは赤馬零王のはずだが…」

 

『ノンノン、今の私は平教員なノーネ!校長だったのは、セニョール遊海やセニョール十代と共に生きていた時でスーノ!』

 

「「「(特徴的な喋り方だなこの人!?)」」」

校長と呼ばれたクロノスに首を傾げる零児…だが、この…世界においてはクロノスは平教員なのである。

なお、クロノスを知らないメンバー達は特徴的な喋り方と風貌に少し驚いている。

 

 

『アナターがランサーズのリーダーなノーネ?ワタシはクロノス・デ・メディチ!プロフェッサーの身勝手な計画を阻止しようとするアナタ達を待っていたノーネ!アカデミア革命隊、ランサーズに加勢するノーネ!!』

 

「カイザー亮の言っていた仲間か…!私は赤馬零児、我が父の過ちは…私の手で正す!」

 

『良い目をしているノーネ…!指示が欲しいノーネ!』

零児と自己紹介を交わしたクロノスは指示を求める。

 

 

「我々はプロフェッサーの制圧を最優先にしたい…アカデミア兵の撹乱・陽動を頼みたい!」

 

『承知したノーネ…!ワタシの…デュエルアカデミアの誇りである「古代の機械」達を侵略の道具にしてしまった罪、償わせてもらうノーネ!覚悟を決めるノーネ!生徒達!!』

 

「「「おお─!!」」」

クロノスの声を聞いた学生達が勝鬨を上げる!

 

 

 

【やはり乗り込んで来たか、ランサーズ!!】

 

「っ…!バレット!!」

その時、中庭に新たな人影が現れる…それはブルー生やオベリスクフォースを引き連れた眼帯の男、バレットだった!

 

 

【シンクロ次元では不覚を取ったが…今回はそうはいかん…!クロノス!私達でランサーズを挟み撃ちにするのだ!】

 

『その()()はお断りなノーネ、バレット隊長…ワターシはアカデミアの教師としてではなーく、誇り高き決闘者として…お前達と戦うノーネ!』

 

【クロノス、貴様…!お前もプロフェッサーを裏切ると言うのか!!】

 

『先に裏切ったのはプロフェッサーなノーネ…!デュエルとは、希望と光に満ち溢れたモノ…決して!人々の心を闇に包み、苦痛を与える戦争の道具にしてはならないノーネ!!』

バレットによる命令を拒否するクロノス…今までのアカデミア、そしてプロフェッサーの行いはクロノスの誇りを裏切り続けていたのだ…!

 

 

 

【貴様…世迷い言を…!】

 

「世迷い言を言っているのはどっちだ…アカデミアの戦士、バレット!お前達の戦いは正しいモノでも、誇り高い戦いでもない!平和な世界を踏みにじる()()()()()だ!」

 

『セニョール遊海…!』

 

【貴様…赤帽子…!最優先排除対象か…!!貴様を倒せば勲章だ!!】

 

「やれるなら、やってみろ!遊矢!零児!翠!先に行け!バレット達は俺達とクロノス校長で引き受けた!!」

 

「了解した!いくぞ!遊矢!零羅!」

 

「わかった!」

 

「遊海さん!無茶はしないで…!!」

 

「心配するな、翠…今の俺は──()()だ!!」

クロノスとバレットの間に割り込む遊海…アカデミアの誇りを汚され、さらに最優先排除対象である遊海を前にしたバレットはデュエルディスクを構える!

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

バレットLP4000

遊海LP4000

 

 

【先攻はもらう!私のターン!!】

【私は永続魔法『獣闘機融合装置(ビーストボーグ・フュージョナー)』を発動!1ターンに1度、手札・フィールドのモンスターを素材として『獣闘機(ビーストボーグ)』融合モンスターを融合召喚できる!私は手札の『漆黒の豹戦士パンサー・ウォリアー』と『ダーク・センチネル』を融合!】

2体のモンスターが融合の渦に飲み込まれる…!

 

【獰猛なる黒豹よ!聖なる闇の番人と混じり合いて…新たな雄叫びを上げよ!融合召喚!!現れいでよ!『獣闘機パンサー・プレデター』!!】

半獣半機のサイボーグ戦士が現れる! ATK1600

 

 

【『パンサープレデター』の効果発動!1ターンに1度、自身の攻撃力の半分のダメージを与える!】

 

「はっ!!」

胸元の装置からレーザーを放つパンサープレデター…だが、そのレーザーは遊海の右腕に弾かれる!

 

遊海LP4000→3200

 

 

「こんなものか?」

 

【フン…!いつまで余裕でいられるかな…?私はカードを2枚伏せ、ターンエンド!】

 

バレットLP4000

パンサープレデター 獣闘機融合装置 伏せ2 手札0

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「『聖騎士アルトリウス』を召喚!」

茶髪の青年騎士が現れる! ATK1800

 

「さらに自分フィールドに光属性の通常モンスターが存在する事で手札の『聖騎士ガウェイン』は守備表示で特殊召喚できる!」

屈強なる太陽の騎士が現れる! DEF500

 

 

「俺はレベル4の『アルトリウス』と『ガウェイン』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

 

「「現れろ!『No.∞』!俺が歩みし戦いのロード…今こそ未来を切り拓け!!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)』!!」

銀河が爆発し、魂の大剣が地面に突き刺さる! ATK2500

 

 

【ナンバーズ…!貴様には幾度もエクシーズ次元で辛酸を舐めさせられたが、今回はそうはいかない…!永続罠『紅鎖の獣闘機勲章』発動!自分の場に『獣闘機』モンスターが存在し、相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚した時!そのモンスターの表示形式の変更と攻撃を封じ!さらに、そのモンスターが存在する限り!相手プレイヤーの特殊召喚と魔法・罠カードの発動を封じる!】

バレットの発動した罠カードから赤い鎖が飛び出す!

 

 

「速攻魔法『RUM-クイック・カオス』発動!自分の『No.』1体をランクアップさせ、カオス化する!俺は『決闘の守護者』1体でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!」

 

【なにっ…!?】

赤い鎖が光の爆発に吹き飛ばされる!

 

 

「現れろ!『CNo.∞』!俺の踏みしめた戦いの路よ!絆よ!閉ざされた未来を打ち砕け!!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)(かがやき)』」

白銀の光が遊海の右手に集中、決闘盤を模した手甲となって装着される! ATK2800

 

 

「これで『紅鎖の獣闘機勲章』は対象を失い、効果は不発になる…残念だったな?」

 

【フン…!『RUM』によって効果を避けるか…だが、甘い!永続罠発動『鉄鎖の獣闘機勲章』!相手がモンスターを特殊召喚した時!そのモンスターの攻撃と表示形式の変更を封じる!!】

 

「二の矢があったか…」

遊海の右腕が鎖で拘束されてしまう…!

 

 

【これで機先は制した…!このまま押し切ってやる!】

 

「それはどうかな…!俺は『守護者・輝』を素材にオーバーレイネットワークを再構築!シャイニング・エクシーズチェンジ!!」

 

【はっ…!?】

遊海を縛る鎖が弾け飛び、中庭が閃光に包まれる!

 

 

「顕現せよ!『SNo.∞』!英雄の魂、枷より解き放たれ…世界を希望で繋ぐ『絆』となる!『決闘の守護者(デュエル・ガーディアン)─NEXUS』!!」

光の大爆発の中からウジャト眼の刻まれた赤帽子を被り、赤いロングコートを翻す男が現れる…その姿こそ、現時点における遊海の究極体──NEXUSが混沌渦巻くアカデミアに降臨する! ATK4000

 

 

 

【れ、連続のエクシーズ召喚だと…!?だが、モンスターは何処に…!?】

 

「バトルだ!俺自身『NEXUS』で『パンサープレデター』を攻撃!その瞬間、効果発動!相手とバトルする時、ORUを1つ使い!自分の攻撃力を2倍にし、与えるダメージを2倍にする!!」

 

【なっ!?】

遊海の…NEXUSの背中に黄金の翼が展開し、右腕が光を纏う!

 

守護者NEXUS ATK4000→8000

 

 

「これは邪悪を祓う希望の光!NEXUSスプリーム・カリバー!!

 

【ぐわああああ!!!】

光を纏った右腕が巨大な剣となり、サイボーグ戦士ごとバレットを斬り裂いた!

 

 

 

バレットLP0

 

遊海 WIN!

 

 

 

 

【なんだ…!?貴様は何者なのだ!()()()!!】

 

「化け物か…俺はただの決闘者さ……ただし、お前達とは覚悟が違う」

満身創痍のバレットは怯えた表情で遊海を見る…そんな中で遊海は冷たくバレットを見つめていた。

 

 

「バレット、愚かなるアカデミアの戦士よ……お前は忠義を捧げる者と目指すべき目標を間違えた…よって、罰ゲームを下す!罰ゲーム!マインド・クラッシュ!!

 

ビギ…バリーン!

 

【ガッ】

額にウジャト眼を輝かせた遊海がバレットの精神を砕く…そのまま、バレットは白目を剥いて仰向けに倒れ込んだ…。

 

 

【バレット隊長!?】

 

「そこだ!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!エヴォリューション・レザルト・バースト!!」

 

「『拡散する波動』の効果を受けた『ブラック・マジシャン』で攻撃!黒・魔・導・炸・裂・波(ブラック・エクスプロージョン・マジック)!!」

 

「『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!デモン・メテオ!!」

 

『「古代の機械巨人」!アルティメット・パウンド!!』

 

【【【うわああああ!?】】】

さらに、残されたアカデミア生達もランサーズやレジェンド達によって無力化されたのだった…。

 

 

 

『セニョール遊海の罰ゲーム…久しぶりに見たノーネ…』

 

「目覚めた時に彼が改心してくれればいいけど……とにかく、俺達はこのままドクトルという男を無力化しに行きます」

 

『ドクトル…あの人はちょっとヤバイノーネ…!プロフェッサー・コブラとか、光の結社だった時の斎王琢磨と似た気配がするノーネ…気をつけるノーネ!』

 

「ありがとうございます、クロノス校長…いくぞ!みんな!!」

 

「「「はい!!」」」

アカデミアの撹乱をクロノス達に任せた遊海達はドクトルが潜む研究室へと向かった…!



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アカデミア制圧戦・破〜野獣の慟哭〜

こんにちは!S,Kです!

アカデミアとプロフェッサーを制圧する為に戦うランサーズ達…彼らは全ての障害を乗り越えられるのか…!


それでは、最新話をどうぞ!


「『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』の効果発動!相手の特殊召喚されたモンスター全てを破壊し、1体につき500ダメージを与える!アブソリュート・パワー・フレイム!!」

 

「『DDD双暁王カリ・ユガ』で攻撃!ツイン・ジャッジメント!」

 

「『EMスカイ・マジシャン』で攻撃!」

 

「「『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』で攻撃!反旗の逆鱗!ストライク・ディスオベイ!!」」

 

「『エルシャドール・ネフィリム』!影糸乱舞!」

 

「『E・HEROカオス・ネオス』!ライト・アンド・ダークスパイラル!!」

 

「『銀河眼の光波竜』で攻撃!撃滅のサイファー・ストリーム!!」

 

【【【【うわああっ!?】】】】

遊海率いる別働隊と別れたランサーズ本隊は襲い掛かるアカデミア生やオベリスクフォース、教師達を蹴散らしながら赤馬零王の待ち受ける場所へと向かっていた…!

 

 

 

 

 

「ふぅ…!流石に敵の本拠地だぜ…!」

 

「それでも、遊馬と遊海が戦力の6割をダウンさせている…真正面の戦いであれば、こうはいかなかっただろう」

 

「フン…流石に耳には効いたがな…」

 

「あと階段を2つ上がれば、プロフェッサーの王座の間までもう少しだ!」

連戦に次ぐ連戦にため息を吐く沢渡、遊海と遊馬による制圧の効果を実感する権現坂、未だに耳が痛むジャック…戦いの合間の僅かな息抜きをする中、デニスが王座の間が近付いた事を知らせる!

 

 

「零王…!」

 

「……力を入れ過ぎたらダメよ?零児君、リラックスは無理だと思うけど…()()()を意識してね!力が入ってると思わぬミスをしちゃう事があるから…」

 

「っ…忠告に感謝する、白波翠……少し、頭に血が昇っていたようだ」

 

「ふふっ、大丈夫よ!あなたは1人じゃない、あなたに付いてきてくれたランサーズの仲間がいる……頭は冷たく、心は熱く…それが指揮官の基本よ?」

 

「(白波遊海もそうだったが、彼女も()()()な……張りつめた空気を和らがせる言葉……これが「決闘王」の妻か…)」

父との因縁を前に無意識に表情が固くなる零児に翠が優しく声をかける…その穏やかな言葉に零児は平常心を取り戻した…。

 

 

 

【ランサーズ!貴様らの進撃もここまでだ!】

 

「っ…新手か…!!」

 

「あれは…!サンダース教官!アカデミアの鬼教官だ!」

階段を前にしたランサーズの前に30人ほどの生徒達を引き連れた、短い鞭を持ち黒いスーツのような軍服を着た壮年の男が立ち塞がる…デニス曰く、アカデミアの鬼教官と言われる男のようだ…。

 

 

【神聖なるアカデミアの教官として貴様らを打ち倒し、アーク・エリア・プロジェクトの糧としてやる…!さぁ、いくぞ…!我が最高傑作()()()()()()()よ!!】

 

「バトルビースト…?」

 

うう"う"…!!

 

「っ…!!」

サンダースが鞭で地面を叩く…その音に反応するように1人の男が前に歩み出る…それは他のアカデミア生とは違い、狩猟民族のような衣装を纏い…()()()()()()、唸り声を洩らす者…バトルビーストと呼ばれた男だった…。

 

 

【くっくっく…!コイツには手を焼かされたが、ようやく調()()する事ができた…!バトルビーストの前にランサーズなど恐れるに足りん!!】

 

「っ…なんだ、あいつ…!?」

 

「バトルビースト…!!噂で聞いた事があるよ…!戦場に解き放たれると敵も味方も問わずに襲いかかってカード化してしまうという狂戦士だ…!でも、様子がおかしいぞ…!?」

バトルビーストの名を聞いたデニスが噂を思い出す…だが、目の前にいるバトルビーストの様子に違和感を抱く…。

 

 

「零児君、遊矢君…バトルビーストとサンダースは私に任せて……璃緒ちゃん、サポートをお願い…!!」

 

「っ…!!──分かった…ランサーズ!アカデミア生を無力化せよ!」

そして、ランサーズを守るように翠が前に出る…そこに先程までの柔らかな雰囲気はない、その身に纏うのは遊海に迫るような()()…その異変に気付いた零児は周りの仲間達に指示を出す!

 

 

『──どうしたの、母さん』

 

「バトルビースト…あの子、()()じゃない…!()()されてる可能性があるわ…!!」

 

『洗脳…!()()()()()()なのね?』

 

「うん…!」

翠は記憶の底からバトルビーストに関する情報を思い出す…バトルビーストは争いを嫌っていた…だが、サンダースによる拷問に近い教育や傷つけられる事を嫌がった故に「やられる前に殺る」苛烈なデュエルをするようになってしまった。

 

本来ならば、戦いの末に遊矢やジャックの言葉とデュエルによってデュエルを楽しむ心を思い出し、救われる人物なのだが……目の前にいるバトルビーストは、目を血走らせ闘争本能に支配されている……その様子から翠は洗脳に気付いたのだ。

 

 

 

「あの子を救けたいの…力を貸して…!」

 

『もちろんよ…!あの教官は任せて!』

 

【フン…女子供であっても容赦はせんぞ!いくぞ、バトルビースト!!】

 

う…がああああっ!!

サンダースとバトルビーストがデュエルディスクに構える…闇に囚われた者を救う為の戦いが始まる!

 

 

 

 

【【「『デュエル!!』」】】

 

 

翠LP4000

璃緒LP4000

 

バトルビーストLP4000

サンダースLP4000

 

バトルロイヤルモード

 

先攻は攻撃不可 

 

ターン進行

 

バトルビースト→翠→サンダース→璃緒

 

 

 

 

おれのターン…!

剣闘獣(グラディアルビースト)ラクエル』を、召喚…!

炎を纏う虎の剣闘士が現れる! ATK1800

 

 

カードを3まい伏せテ、ターンエンド…!!

 

バトルビーストLP4000

ラクエル 伏せ3 手札1

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「待っててね…すぐに助けるから…!!魔法カード『影依融合(シャドール・フュージョン)』を発動!手札の『シャドール・ビースト』と『星なる影(ネフシャドール)ゲニウス』を融合!影の獅子よ!星の精霊と共に玉座の女王を呼び覚ませ!融合召喚!来て!『エルシャドール・シェキナーガ』!!」

影人形の獅子と星の精霊が融合…機械の玉座に座す女王が現れる! ATK2600

 

 

「そして融合素材になった『ビースト』の効果!カード効果によって墓地に送られた時!デッキから1枚ドローできる!続けてバトルよ!「シェキナーガ」で「ラクエル」を攻撃!』

縛られた女王の影糸がラクエルを突き刺す!

 

う"う"…!永続罠『剣闘獣の勲傷』(メダリオン・オブ・グラディアルビースト)を、はつ動…!自分フィールドの、『剣闘獣』はバトルでは、破壊されナい代わりに、自分が受けるダメージが、2倍になる…!!

 

「っ…!!」

 

バトルビーストLP4000→2400

 

 

『ラクエル』の、効果、発動…!バトルした自身をデッキに戻すこと、で…デッキから『剣闘獣セクトル』を特殊、召喚…!

鎧を纏ったカエルの獣人が現れる! DEF300

 

 

「私は…カードを3枚伏せて、ターンエンド!」

 

う"う"…!その、時…永続罠『指し降ろされた親指』を、発動…!

 

翠LP4000

シェキナーガ 伏せ2 手札2

 

 

 

【俺のターン!ドロー!】

【ランサーズが融合を使うとはな…だが、本物の融合に勝てると思うな!俺は魔法カード『スレイブ・フュージョン』を発動!手札の『スレイブ・エイプ』と『スレイブ・タイガー』を素材としてエクストラデッキから『剣闘獣』融合モンスターを召喚条件を無視して融合召喚する!囚われの猿人よ!同じ定めの猛虎と共に鞭打つ主人を招き入れよ!融合召喚!現れろ!『剣闘獣総監(グラディアルビースト・テイマー)エーディトル』!!】

2体のモンスターが融合…鹿の角と鞭を持つ獣人が現れる! ATK2400

 

 

【『エーディトル』の効果発動!1ターンに1度、エクストラデッキの『剣闘獣』モンスターをそのコントローラーのフィールドに特殊召喚する!バトルビーストのエクストラデッキから現れろ!『剣闘獣ガイザレス』!!】

 

『他のプレイヤーのエクストラデッキからモンスターを!?』

 

「させないわ!『シェキナーガ』の効果発動!特殊召喚されたモンスターが効果を発動した時!その発動を無効にし、破壊する!」

 

ぐううっ…カウンター罠『剣闘獣の戦車(チャリオッツ)』を発動…!フィールドに『剣闘獣』が存在するとき、発動したモンスター効果を無効にし、破壊する…!!ざらに、永続罠『指し降ろされた親指』の効果…!自分フィールドに『剣闘獣』が存在、カードが戦闘・効果で破壊されたどき、コントローラーは、1枚につき、500ダメージを、受ける…!

 

「っ…シェキナーガ!!くううっ…!?」

エーディトルの効果を無効にしようとする翠…だが、蛙の獣人が操る戦車が突貫…シェキナーガは砕かれてしまい、翠はダメージを受ける…さらに、バトルビーストのフィールドに重厚な鎧を纏った鳥人が現れる…! ATK2400

 

翠LP4000→3500

 

 

「墓地に送られた『シェキナーガ』の効果発動…!墓地の『影依融合』を手札に加えるわ…!」

 

う、が…!特殊召喚された『ガイザレス』の、効果発動…!紫色の髪のオンナの伏せカード2枚を、破壊する…!

 

「っ…!リバース罠『影光の聖選士(レーシャドール・インカーネーション)』を発動!墓地の『シャドール・ビースト』を裏守備表示で特殊召っ…きゃあああ!!」

 

『母さん!!』

強力な除去効果を持つガイザレスの効果が発動…翠は咄嗟に罠カードを発動するが、伏せられていた『神の写し身との接触』と共に破壊され、ダメージを受ける…!

 

翠LP3500→2500

 

 

【ふははは…!どうだ!これがバトルビーストの力だ!ゆけい!『エーディトル』!女の裏守備モンスターを攻撃!!】

 

「セットモンスターは、『シャドール・ビースト』!リバース効果発動!デッキからカードを2枚ドローして、1枚を墓地へ!」

 

永続罠『指し降ろされた親指』の効果、発動…!500ダメージ…!

 

「くううっ…!?」

エーディトルの鞭が獅子の影人形を砕く…そして罠カードによるダメージが翠に襲い掛かる…!

 

墓地送り

超電磁タートル

 

翠LP2500→2000

 

 

【俺はこれでターンエンドだ!】

 

サンダースLP4000

エーディトル 手札3

 

 

 

『母さん大丈夫!?』

 

「このくらいなら、大丈夫…!心配しないで…!」

 

『母さん…!』

連続してダメージを受けた母を心配する璃緒、翠は生来のタフさもあってダメージは軽そうだが……目の前で母親を傷つけられて黙っていられるはずがない…!

 

 

『───許さない』

 

【フン…小娘に何ができる!】

 

『凍らせてあげる!!』

サンダースを睨みつける璃緒…しかし、歴戦の教官である彼は怯まない。

 

だが、彼は知らない…璃緒は神をも凍てつかせる力の使い手である事を───

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!!私はドローした魔法カード「RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)」を相手に見せる!』

 

【ドローしたカードを見せるだと?血迷ったか?】

 

『そして「RUM-七皇の剣」の効果!ドローしたこのカードをメインフェイズまで公開し続ける事で効果発動!エクストラデッキからオーバーハンドレットナンバーズ1体を特殊召喚する!!』

 

103

 

『現れて!「ANo.103」!「神葬零嬢ラグナ・ゼロ」!』

七皇の光が氷の刃を持つ巫女を呼び覚ます! ATK2400

 

 

【エクストラデッキから直接エクシーズモンスターを…だが!エクシーズモンスターはオーバーレイ・ユニットがなければただの()()()()だ!】

 

『それはどうかしら…!『七皇の剣』の効果には続きがある!特殊召喚したオーバーハンドレットナンバーズをランクアップさせ、カオス化する!私は「ラグナゼロ」でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!』

 

【なにっ…!?】

ORUを持たないラグナゼロを侮るサンダース…だが、璃緒の声と共に混沌の光が弾ける!!

 

103 

 

『現れて!『ACNo.103』!時をも凍らせる無限の力…いま蘇る!!『神葬零嬢ラグナ・インフィニティ』!!」

月光を浴びながら黒衣の巫女が漆黒の鎌を手に舞い踊る…これが璃緒の切り札、神をも葬る巫女が降臨する! ATK2800

 

 

 

『そして私は魔法カード「魔水晶(ディストーション・クリスタル)」を発動!自分のフィールドに水属性モンスターが存在する時!このターンのエンドフェイズまで相手モンスターの攻撃力の変化は2倍になる!さらに!魔法カード「氷結の刃(ゼロ・ブレード)」を「ラグナインフィニティ」を対象に発動!!その効果で「エーディトル」の攻撃力を1000ダウンさせるけど…』

 

【『魔水晶』の効果で、変化は倍になる…!?】

氷結の力がエーディトルを氷漬けにする!

 

エーディトルATK2400→400

 

 

『さらに「ラグナインフィニティ」の効果発動!1ターンに1度!カオスORUを1つ使い、元々の攻撃力と異なる相手モンスター1体を除外し、元々の攻撃力との差分のダメージを与える!ガイダンス・トゥ・パーガトリー!!』

 

【ぬわあああ!?】

氷結したエーディトルを巫女の大鎌が粉砕する!

 

サンダースLP4000→2000

 

 

「バトルよ!『ラグナインフィニティ』で鬼教官にダイレクトアタック!凍てつき、自分の愚かさを恥じなさい!!」

 

【ぐ、ぐわっ───

巫女の一撃がサンダースを両断…サンダースは断末魔を上げる事もできず、物言わぬ氷像と化した…。

 

 

サンダースLP2000→0

 

 

 

『私流罰ゲーム「アイス・エイジ」……氷の中で反省なさい!』

 

「り、璃緒ちゃん!?やり過ぎよ!?」

 

『フン…!母さんを傷つけた罰よ!』

物言わぬ氷像となったサンダースを見た翠は慌てて璃緒を宥めるが…当の本人は満足げな表情なのであった…。

 

 

 

戦場に、弱い奴は、いらナイ…!敗者は、カードに…カードになりたク、ナケルバ……う、うがああ!!

 

『っ…!?』

 

「っ…!止めなさい!!」

 

キィン─!

 

その時、バトルビーストが呻きながらデュエルディスクに手を掛ける…そして、翠が止める間もなくサンダースをカードにしてしまった…。

 

 

「アイツ…!本当に味方をカードにしやがった…!?」

 

『大変な事になる前に止めないと…!私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!』

 

璃緒LP4000

ラグナインフィニティ 伏せ1 手札2

 

 

 

おれのダーン!

魔法カード「再起する剣闘獣」を発動…!自分フィールドに存在じない種族の「剣闘獣」…海竜族の「剣闘獣ウェスパシアス」を手札から特殊召喚…!!

巨大な竜人の剣闘士が現れる! ATK2700

 

 

そしておれは『ウェスパシアス』と『ガイザレス』『セクトル』をデッキに戻シ、融合…!!彷徨える剣闘士の亡霊共よ…!偉大なる皇帝の名のもとに集い、その力を捧ゲよ!融合召喚!「剣闘獣ドミティアノス」!!

3体の剣闘獣が融合…海の覇者たる皇帝が現れる! ATK3500

 

 

「攻撃力3500…!?」

 

バドル"だ…!「ドミティアノス」でオンナにダイレクトアタック!!

 

「っ…させないわ!墓地の『超電磁タートル』の効果発動!このカードを除外してバトルフェイズを終了させる!」

 

『ドミティアノス』のこうか、発動…!1ターンに1度相手がモンスタの効果を発どウした時!その効果を無効にし、破壊する"!!喰ラエ!!

 

「なっ…!?」

 

『母さん!!速攻魔法「ハーフ・シャット」発動!「ドミティアノス」の攻撃力を半分にして、バトルでは破壊されなくする!!』

 

ぐうっ!?

 

「っ…!白波翠!!」

 

「翠さん!!」

電磁バリアを突き破る海の皇帝…璃緒によってその威力は半減したが、三叉槍が翠の腹に深々と突き刺さった…!!

 

翠LP2000→250

 

 

 

『ドミティアノス』の効果発動…!バトるした自分をデッキに戻す事デ、デッキから『剣闘獣ムルミロ』を特殊召喚…!

海の帝王が消え、魚人の剣闘士が現れる! DEF400

 

『ムルミロ』の効果、発動…!このカードが、『剣闘獣』の効果で特殊召喚された、とき…青いオンナの『ラグナインフィニティ』を破壊する…さらに『指し降ろされた親指』の効果…500ダメージ、だ…!

 

『っ…きゃああ…!!』

 

「りお、ちゃん…!」

ムルミロが肩に背負っていた大砲から水流を放って巫女を吹き飛ばす…さらに、罠カードによってダメージを受けてしまう…!

 

璃緒LP4000→3500

 

 

おれは、これデ…ターン、エンド…!

 

バトルビーストLP2400

ムルミロ 剣闘獣の勲傷 指し降ろされた親指 手札0

 

 

 

 

「っ…!!か、ふっ……」

 

「翠さん!!」

 

「来ないで、十代君…!大丈夫、だから…!!」

バトルビーストのターンが終わり、翠は膝から崩れ落ちる…その腹には血が滲んでいた…。

その様子を見た十代が駆け寄ろうとしたが…翠がそれを制した…。

 

 

「(相手の場には特殊召喚された『ムルミロ』が1体、『剣闘獣の勲傷』で戦闘破壊は無理、余計にモンスターを増やすだけ…シャドールには、貫通効果持ちはいない…!)」

激痛を堪えながら、翠は冷静に打開策を考える…。

 

 

う、が、ああ…!!

 

「バトルビースト…」

 

『苦しんでる…』

その時、バトルビーストが苦しみ始める…何かに抗うように…苦しむように…涙を流しながら…。

 

「助けなきゃ…!これ以上、あの子が苦しむ前に…!」

翠は傷を庇いながら立ち上がる、バトルビーストを救う為に…これ以上、傷付く子供を増やさない為に…!

 

 

 

 

「私の、ターン!ドロー!!」

「これなら…!!私はモンスターをセット!そして墓地の『影光の聖選士』の効果発動!墓地のこのカードと『星なる影ゲニウス』を除外する事で、自分フィールドのセットモンスターの表示形式を表側守備表示に変化する!セットされていたのは、『シャドール・ドラゴン』!」

影糸が伏せられていた影人形のドラゴンを目覚めさせる! DEF0

 

 

「『シャドールドラゴン』のリバース効果…!『ムルミロ』をデッキに戻す…!」

 

っ!?

影人形のドラゴンの起こした炎の竜巻が魚人を吹き飛ばす!

 

「そして私は『影依融合』を発動…!手札の『影依の巫女(ノェルシャドール)エリアル』とフィールドの『シャドールドラゴン』を融合!解き放たれし巫女よ!影の竜と共に影の賢者となれ!融合召喚!『エルシャドール・アプカローネ』!!」

2体のシャドールが融合…半人半魚の魔法使いが現れる! ATK2500

 

 

「バトルよ!『アプカローネ』でバト……ううん、プレイヤーにダイレクトアタック!清らかな水の力よ!闇を祓え!ウォーター・パルス!」

 

うがっ…が、ああ──】

翠の声と共にアプカローネが杖を振るう、その杖から放たれた水の波動がバトルビーストを直撃…優しき水の力に包まれたバトルビーストは静かに膝をついた…。

 

バトルビーストLP2400→0

 

翠&璃緒 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「速攻魔法『サイクロン』!!」

膝をついたバトルビーストに向けて翠が強風を放つ、その風はバトルビーストに取り憑いていた()を粉々にして吹き飛ばした!

 

 

『っ…!母さん、今の…!』

 

「やっぱり、ドクトルの仕業だったのね…!」

粉砕された蟲を見た璃緒が翠に声をかける…翠は卑劣なる科学者の所業に怒りを隠せなかった…。

 

 

 

【う、うう…!?くる、な…!お前達の戦いに…オレを、巻き込むな…!!】

 

「バトルビースト…」

そして、正気を取り戻したバトルビーストは()()()()()…戦いを強いるアカデミアも、戦う相手も…彼にとって恐怖を感じる存在だったのだ…。

 

 

 

「───大丈夫、あなたはもう戦わなくていいの……悪い奴らは、みんな…私達がやっつける…だから、安心して…」

 

【うう…】

翠は優しくバトルビーストと呼ばれた青年を抱きしめる…逃れようとした彼だったが…優しい翠の抱擁に力が抜けていき、疲れからか静かに意識を手放した…。

 

 

 

 

 

 

「翠さん!璃緒!大丈夫か!?」

 

『私は大丈夫…母さんは!?』

 

「──()()()!さぁ、先に進みましょう…!」

 

「み、翠さん!?えっ…思いっきり攻撃受けてませんでしたか!?」

 

「っ…!?(何故動ける!?先程の一撃は確実に致命…いや、重傷だったはず…!?)」

アカデミア生を制圧した十代と柚子がバトルビーストを壁に凭れさせた翠と璃緒に駆け寄る…翠と璃緒は慣れた様子だったが、零児は目を見開く……明らかな重傷を負っていたはずの翠が普通に動いている事に…。

 

 

 

「赤馬零児、お前が驚くのも無理はないが…()()()、遊海や翠は俺達とは()()()()だ」

 

「ジャック・アトラス…それは、どういう事だ?」

驚く零児にジャックが声をかける…遊海達の事情を知るらしいジャックに零児は訊ねるが…。

 

 

「これは遊海や翠が話すべき事だ…ヒントをやるならば……多少のダメージや怪我ならば、遊海達の歩みは止まらん…世界の誰よりもタフで理不尽なデュエリスト…それが遊海と翠だ」

 

「タフで、理不尽…?」

ジャックに遊海達に関するヒントを与えられた零児だったが…余計に謎が深まるのだった…。

 

 

「遊矢!零児!先を急ごう!もう少しだ!」

 

「……ああ、すまない!いくぞ!!」

デニスが零児に声をかける…疑問を頭の隅に追いやった零児は父のもとへと走り出した…。

 

 

 

「(遊海さん、凌牙君…そっちはお願いね…!)」

受けた傷を治しながら、翠はそれぞれに戦う遊海と凌牙を案じた…。

 



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アカデミア制圧戦・急〜囚われた少女達を救い出せ!〜

こんにちは!S,Kです!

進撃を続けるランサーズ達…その時、彼らも目的を果たす為に動いていた…。

それでは、最新話をどうぞ…!


「黒咲、焦らないでいい…必ずお前の妹は助け出す」

 

『ああ…!待っていろ、瑠璃!!』

遊海達がドクトルの研究室に向かい、翠達がバトルビーストと遭遇する少し前…凌牙と黒咲は『RR-ライズ・ファルコン』に乗って瑠璃が囚われる西の塔へと向かっていた…!

 

 

 

 

《ギシャアアア!!》

 

「っ…!父さんと遊馬が叩き落としたモンスターが復活したか…!道を切り開け!『S・H・Dark Knights(サイレント・オナーズ・ダークナイト)』!!」

 

『振り切れ!「ライズ・ファルコン」!!』

その時、遊海と遊馬が『魔人オーケストラ』で叩き落としたモンスターの一部が復活し、凌牙達に襲い掛かる…!

 

 

「黒咲!もうすぐ西の塔だ!」

 

『中腹で降りて昇った方が戦いやすいか…!ライズファルコン!!』

モンスターを大多数を打ち倒した凌牙達は西の塔の中腹に降り立ち、外階段を頂上へと駆け上がった…!

 

 

 

 

【待っていたぞ、ランサーズ】

 

「貴様がこの塔の番人とやらか?」

 

【その通り…私の名はディアナ、この先に進みたくば私を倒すしかない…!】

頂上に着く間近…幽閉場所であろう場所の入口の前に月の意匠の洋服を纏った女性が番人として待ち受けていた…!

 

 

『ならば、貴様を叩き潰し…瑠璃を助け出す!!』

 

「気をつけろよ!黒咲!」

瑠璃を助け出す為…黒咲は試練に挑む!

 

 

 

 

【『デュエル!!』】

 

ディアナLP4000

黒咲LP4000

 

 

【私のターン!】

【魔法カード『融合』を発動!手札の『月の女戦士』と『ガーディアン・バオウ』を融合!破邪の大剣に月輪の光輝く時、2人の戦士は1つとなれり!融合召喚!降臨せよ!『月の守護者』!!】

月の槍と盾を構えた戦士が現れる! ATK2100

 

 

【『月の守護者』の効果発動!1ターンに1度、『守護者の盾』トークン1体を特殊召喚できる!】

フィールドに土で出来た盾が現れる! DEF0

 

 

【『守護者の盾』トークンが存在する限り、相手は『月の守護者』を攻撃対象にする事はできない…カードを1枚伏せ、ターンエンド!】

 

ディアナLP4000

月の守護者 守護者の盾 伏せ1 手札1

 

 

 

『貴様らがどんな策を考えようと…俺を阻む事はできん!!』

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『「RR-(レイド・ラプターズ)バニシング・レイニアス」を召喚!』

黒咲の切り込み隊長であるモンスターが現れる! ATK1300

 

『「バニシング・レイニアス」の効果発動!手札から2体目の「バニシングレイニアス」を特殊召喚!さらに2体目の効果で3体目を特殊召喚!!』

さらに2体のバニシングレイニアスが並び立つ! ATK1300 1300

 

 

『俺は3体の「バニシングレイニアス」でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!雌伏のハヤブサよ!逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!「RR-ライズ・ファルコン」!!』

黒咲のエース、反逆のハヤブサが飛翔する! ATK100

 

 

【ふっ…早く決着をつけたいようだが、もう少し楽しもうじゃないか…!罠カード発動!『守護者礼賛』!『ライズ・ファルコン』の効果を無効化し、『守護者の盾』トークン2体を特殊召喚する!】

ライズファルコンの効果が月光によって封じられ、2体の盾が現れる! DEF0 0

 

 

【『守護者礼賛』の効果対象になったモンスターは全て『守護者の盾』に攻撃できる…ただし、全てのモンスターに攻撃できなかった時、そのモンスターは破壊される…さぁ!どうする!!】

 

『──笑止、守護者が聞いて呆れる…その程度の盾など俺の敵ではない!魔法カード「RUM-レイド・フォース」発動!自分のエクシーズモンスター1体をランクが1つ高いエクシーズモンスターへとランクアップさせる!俺は「ライズファルコン」でオーバーレイ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!!』

 

【なにっ!?】

ライズファルコンが銀河へと飛び込み、再誕する!

 

 

『獰猛なるハヤブサよ!激戦を切り抜けしその翼翻し、寄せ来る敵を打ち破れ!現れろ!ランク5!「RR-ブレイズ・ファルコン」!!』

赤き翼を翻し、紅蓮のハヤブサが飛翔する! ATK1000

 

 

 

『「ブレイズファルコン」の効果発動!1ターンに1度、ORUを1つ使い!相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全てを破壊し、1体につき500ダメージを与える!』

 

【なっ…ぐううっ!?】

赤き翼から放たれたレーザーピットがディアナのフィールドを蹂躙する!

 

ディアナLP4000→2000

 

 

『バトルだ!「ブレイズファルコン」でダイレクトアタック!』

 

【あああっ!?】

さらに、ブレイズファルコンの突進がディアナを弾き飛ばす!

 

 

ディアナLP2000→1000

 

 

【く、う…!だが、ライフは残って…!】

 

『まだだ!速攻魔法「RUM─レヴォリューション・フォース」を発動!「RR」エクシーズモンスターをランクが1つ高いエクシーズモンスターにランクアップさせる!!』

 

【────はっ?】

それは黒咲の追撃…革命の翼が舞い上がる!

 

 

『誇り高きハヤブサよ!英雄の血潮に染まる翼翻し、革命の道を突き進め!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!ランク6!「RR-レヴォリューション・ファルコン」!!』

赤き翼が燃え上がり、侵略に抗う革命のハヤブサが現れる! ATK2000

 

 

『散るがいい!アカデミアの偽りの守護者よ!レヴォリューショナル・エアレイド─!!』

 

【きゃあああ!?】

革命の翼による爆撃がディアナのライフを容赦なく消し飛ばした…。

 

 

 

ディアナLP0

 

黒咲WIN!

 

 

 

 

カチリ

 

 

『鍵は開いたようだな…俺の鉄の意思を甘く見たな、アカデミア』

 

「流石だぜ、黒咲…あとは瑠璃を助け出すだけだ」

ディアナのデュエルディスクと連動していたらしい幽閉塔の扉が開いた音が響く…2人は扉を開き、幽閉塔へと突入した…。

 

 

 

………

 

 

 

『瑠璃!!』

 

「あっ…兄さん…!助けに来てくれたのね…!?」

幽閉塔の頂上、最低限の生活用品が揃えられた部屋にその少女はいた…全体的に紫色の髪と二房の薄紫色の前髪に紫色の瞳の少女…彼女が黒咲隼の探していた妹、黒咲瑠璃だった。

 

 

『待たせてすまなかった…帰ろう、ハートランドに…アレンやサヤカも心配していたんだ』

 

「うん…!迷惑かけてごめん…!!」

黒咲に抱き着く瑠璃…半年以上会えなかった兄妹の再会、それは本当に感動する瞬間である。

 

……だが、黒咲は気付いていなかった…抱き着いた瑠璃が少しずつ黒咲を窓際に()()()()()()()事に…。

 

 

 

 

 

「────やっぱりな、父さんの推測は正しかった」

 

「っ…誰!?」

2人しかいないはずの部屋に第三者の声が響く…それは様子を伺っていた凌牙だった!

 

 

 

 

「黒咲!父さんに渡されたカードを使え!!」

 

『っ…すまない、瑠璃…!少し我慢してくれ…!!』

 

「えっ、あ、兄さん!?何をする──」

黒咲に叫ぶ凌牙…その言葉を聞いた黒咲は瑠璃を()()()()()()()しっかりと抱き締め、手にしたカードを発動する!

 

 

『誇り高き英雄よ…妹を救う為の力を、貸してくれ!「力の集約」発動!!』

 

ドクン!!

 

「うっ、あああ…!!頭、頭が、痛い!!痛い!?ああああ!!」

黒咲が罠カードを発動した瞬間、瑠璃が頭を抱える…突然の痛みに苦しむ瑠璃、そして──!

 

 

《キィ─!!》

 

「出やがったな、寄生虫!!」

瑠璃の耳から数匹の奇怪な蟲…『パラサイト・フュージョナー』が飛び出し、凌牙へと向かう!!

 

 

106

 

 

「ぶっ潰れろ!!『CNo.106溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド』!万死紅掌!!」

    

《ギッ》

そして凌牙の肩に巨大な燃え盛る拳『ジャイアント・ハンド・レッド』が出現…寄生虫全てを叩き潰し、滅却した!

 

 

 

「うっ…うう…?」

 

『瑠璃…!しっかりしろ!黒咲瑠璃!!』

 

「あっ…兄さん…?……兄さん…!!怖かった─!!」

 

「瑠璃…!よかった…!!」

痛みで失神していた瑠璃に黒咲が呼びかける…そして、瑠璃は正気に戻り…涙を流しながら黒咲に抱き着いた…。

 

 

 

「ふぅ…何もかもテメェの思い通りになると思うなよ、アカデミア」

 

バキッ 

 

額の汗を拭った凌牙はそう言いながら部屋に隠されていた監視カメラを握り潰した…。

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

「エド!目指す塔はあれで間違いないな?」

 

「ああ!シンクロ次元の少女、リンはあの塔に囚われているはずだ!!」

同じ頃、遊星とエドはDホイールに2人乗りでリンの囚われる塔へと向かっていた…その時!

 

 

ドカーン!!

 

 

「っ…誰かが戦っているのか!?」

 

「おそらく、ユーゴだ…!急ごう!」

塔の頂上近くで大爆発が起きる、その様子を見た遊星はアクセルを握る手に力を込めた…!

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト ユーゴ対アポロ

 

 

東の塔、頂上付近…そこでは柚子のブレスレットによる転移と『クリアウイング・シンクロ・ドラゴン』の導きによって()()で東の塔に到達、塔の守護者アポロとデュエルを繰り広げていた。

 

 

 

【私は『太陽の戦士』と『ガーディアン・トライス』を融合!閃光の双剣に日輪の光輝く時!2人の戦士は1つとなれり!融合召喚!!『太陽の守護者』降臨!!】

先攻を取ったアポロは太陽の意匠を持つ騎士を呼び出す…。

 

 

「その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を撃て!シンクロ召喚!!『クリアウイング・シンクロ・ドラゴン』!!」

対するユーゴはエースであるクリアウイングを喚び出したのだが…──

 

 

【ふっ…早速、エースモンスターの召喚か…早く決着をつけたいようだが…そうはいかない!永続罠『守護者礼賛』を発動!『クリアウイング』の効果を無効にし、『守護者の盾』トークン2体を特殊召喚する!】

 

アポロは罠を発動、クリアウイングの効果を封じる…!

 

 

【そして『守護者礼賛』の対象になったモンスターは私の場の『守護者の盾』トークン全てに攻撃できる…だが、攻撃しなかった時!そのモンスターはエンドフェイズに破壊される…】

 

「ケッ…!面倒な事しやがって…!なら、遠慮なくやってやるよ!!『クリアウイング』で1体目の『守護者の盾』トークンを攻撃!」

太陽の守護者を守る3枚の盾…ユーゴは臆する事なく、攻撃を仕掛ける!

 

 

【ふっ…!この瞬間、『太陽の守護者』の効果発動!『守護者の盾』トークンが破壊された時!破壊したモンスターの攻撃力を800下げ、さらに!相手に800ダメージを与える!!】

 

「なにっ…ぐああっ…!?」

だが、太陽の守護者の効果が発動…ユーゴはダメージを受けてしまう…!

 

 

【私のトークンを倒せば倒すほど、お前のモンスターの攻撃力は減り、ダメージを受ける…それでも続けるかね?】

 

「くっ…!そういう事かよ…!!」

アポロの守護者の盾は合計3体…つまり、クリアウイングの攻撃力は2400ダウンし、ユーゴは2400のダメージを受ける事になる…!

 

【だけどよぉ…このオレがこれぐらいで止まってられっかよ!!】

だが、ユーゴは攻めの手を止めない…クリアウイングと共に傷付きながら、全ての盾を打ち砕く…!!

 

 

 

【フフフ…!自らライフポイントを削ってでもエースモンスターを残したか…!だが、その攻撃力は僅か100…残した意味はあったのかね?】

 

()()に決まってんだろ…!これで『守護者の盾』はなくなった!!」

 

【なにっ…!】

満身創痍のユーゴ…だが、彼には勝利へのルートが見えていた!

 

 

 

「バトルフェイズ中にダメージを受けた事で手札の『SR(スピード・ロイド) OMKガム』を特殊召喚!その特殊召喚に成功した事で…オレはレベル7の『クリアウイング』にレベル1の『OMKガ厶』をチューニング!!」

 

【なんだと!?】

掛け替えのない想い人を救う為、アカデミアに水晶の翼が舞い上がる!

 

「神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を撃て!シンクロ召喚!!いでよ!レベル8!『クリスタルウイング・シンクロ・ドラゴン』!!」

ユーゴの切り札、水晶の翼持つドラゴンが咆哮する!

 

 

【あの状況からさらなる上級モンスターを…!だが、その程度で私に勝てるとでも…!】

 

「何言ってやがる…オレのバトルフェイズはまだ終わってねぇ!!シンクロ素材となった『OMKガム』の効果!デッキからカードを1枚ドローし、そのカードが『SR』モンスターなら!そのカードを墓地に送り、『クリスタルウイング』にその攻撃力を加える!すぐそこにリンがいるんだ…こんな所で時間を潰してる暇はねぇんだよ──!!」

リンを救う為…ユーゴは渾身の気合いと共にカードをドローする、引いたのは───攻撃力1000の『SR オハジキッド』!

 

 

 

「っしゃあ!!『クリスタルウイング』の攻撃力は1000アップする!バトルだ!『クリスタルウイング』で『太陽の守護者』を攻撃!」

 

【ぐっ…!『太陽の守護者』は破壊されるが、次のターンで──】

 

「次のターンなんかあるか!!『クリスタルウイング』の効果発動!自身がレベル5以上のモンスターとバトルする時、その攻撃力を自分の攻撃力にプラスする!」

 

【攻撃力6400だと!?】

 

「いけ!烈風のクリスタロス・エッジ──!!」

 

【ぐわああああ!?】

烈風の突進が太陽の守護者を粉砕…デュエルの決着となった…!

 

 

アポロ

 

ユーゴWIN!

 

 

 

 

カチリ

 

 

「リン!!」

アポロのデュエルディスクと連動していた幽閉塔の扉が開く…そしてユーゴはDホイールを降り、幽閉塔へと乗り込んだ…。

 

 

 

 

 

「リン!!」

 

『あっ…ユーゴ…』

幽閉塔の頂上、最低限の生活用品が揃えられた部屋にその少女はいた…龍亞兄妹のような緑色の髪に若草色の二房の前髪にオレンジ色の瞳を持つ少女…彼女こそ、ユーゴが探し続けていた幼なじみ、リンだった。

 

 

 

「り、リーンッッ!!

ようやく再会する事が出来たリンとユーゴ…感極まったユーゴは思わずリンへと抱き着こうとして───

 

 

フン!!

 

ぐほっ!?

 

リンによる渾身の膝蹴りが鳩尾に突き刺さり、ユーゴは悶絶する羽目になった…。

 

 

 

 

「がっふ…!?」

 

『もう…遅い!!なによ、今ごろ…!ずっと待ってたんだから…!すごく不安で、心細くって…!』

 

「リン…」

 

『ユーゴの、馬鹿…!!』

 

「リン…守ってやれなくて、悪かった…!」

思わぬ痛みに()()()()()()()()ユーゴ…そんな彼を見ながら、リンは涙を溢しながら抱き着く…泣きじゃくるリンをユーゴは優しく抱きしめた…。

 

 

 

キィン─!

 

 

 

「───ん?なんだ?」

 

『えっ?』

その時、ユーゴの目に光るモノが映る…それは膝蹴りを受けた時にポケットから落ちてしまった1枚のカードだった。

 

 

『ユーゴ?なにそれ…?』

 

「ああ、いやさ!ランサーズっていうアカデミアと戦ってる奴らの白波遊海って奴がくれたカードだ…なんで『トゲトゲ神の殺虫剤』なんかくれたんだ?黒くてすばしっこい奴がいる訳ねぇしなぁ…?」

それは遊海が渡した『トゲトゲ神の殺虫剤』…ユーゴは何故、遊海がこんなカードを渡したのか聞かないまま転移してしまった…そしてカードを拾おうと触れた瞬間!

 

 

 

バシュウウ──!!

 

 

 

『きゃあああ!?』

 

「どわあああ!?なんで出てくるんだよぉ!?」

カードのイラスト部分から大量の煙が噴き出す…その勢いは凄まじく、部屋は一瞬で真っ白になってしまった!

 

 

 

「げほっげほっ…!り、リン!大丈夫か!?」

 

『う、ぐぅ…!?あたま、頭が、痛い…!?痛い!!』

 

「リン!?白波の野郎!なんてカードを渡しやがった!?」

突然の出来事に咳き込むユーゴ…彼はリンに声を掛けるが、そのリンは頭を抱えてうずくまっていた…!

 

 

『うっ…ああああ!?』

 

《キィィ──!!》

 

「っ!?リンの耳からなんか出てきやがった!?」

痛みに絶叫するリン…その耳から数匹の奇怪な蟲──『パラサイト・フュージョナー』が飛び出した!

 

 

「『ジャンク・ウォリアー』!スクラップ・フィスト!」

 

「『D・HEROディストピアガイ』!ディストピア・ブロー!」

 

《ギッ!?》

 

「お前…!?修理屋の遊星と……誰だ??」

その時、部屋にマフラーを靡かせる機械の戦士と「D」の仮面をつけた戦士が飛び込み、全ての蟲を叩き潰す…それはユーゴの後を追ってきた遊星とエドのモンスター達だった!

 

 

 

「彼はエド・フェニックス、ランサーズの協力者だ……危なかったなユーゴ、今の気味の悪いモンスター…それがリアルソリッドビジョンでリンに取り憑き、洗脳していたんだ…!」

 

「洗脳!?お、おい!リン!大丈夫か!?」

 

『う、うーん…あ、れ?ユーゴ…?───助けに来るのが遅い!!』

 

がはっ!?

 

「………大丈夫そう、だな…」

 

「そうみたいだね…(汗)」

エドの事を紹介した遊星がユーゴへ手短に洗脳について伝える…それを聞いたユーゴは慌てて失神していたリンを揺すり起こすが……目覚めた彼女のアッパーが顎にクリーンヒット、ノックアウトされ、意識を手放してしまうのだった…。

 

 

 

『ゆ、ユーゴ!?ごめんしっかりして─!?』

 

「う〜ん……」

 

「……プロフェッサー…いいや、赤馬零王!貴方の企みもここまでだ!これから貴方の息子とランサーズ達が貴方を止めにいく…!!これ以上、悲劇は起こさせない!」

 

気絶してしまったユーゴを介抱するリン…その横で隠しカメラを見つけたエドはその向こうにいるであろう元凶へと言い放った…。

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

【──ドクトル、これはいったいどういう事だ?】

 

『これは…まったく想定外の事態です…まさか「パラサイト・フュージョナー」が除去されるとは…!?』

アカデミア某所、中枢たる『王座の間』…そこで玉座に座したスキンヘッドの男…アカデミアの総帥、プロフェッサーこと赤馬零王が白髪の側近の男──ドクトルへと問いかけていた。

 

 

 

『「パラサイト・フュージョナー」は宿主の脳に寄生し、自分にも相手にも「洗脳された」という事を悟らせないパラサイト・モンスター…それが、こんな簡単に除去されるなど…!!』

 

【──()()()()()()()

 

『はっ…?』

自分の研究成果であるパラサイトモンスターが除去された事に動揺しているドクトル…だが、零王が望んだのはパラサイトモンスターが除去された事についてではない。

 

 

【何故、『アーク・エリア・プロジェクト』の()となる彼女達にそんなモノを仕込んでいる?…ドクトル、キミの研究成果は認めるが──彼女達に手荒な事はさせるな、するなと厳命していたはずだが…!!】

零王は静かに怒っていたのだ…自分の()()()()()である少女達に洗脳を施していたドクトルに対して…!

 

 

 

『め、滅相もない!大切な存在だからこそ、自衛手段を与えていたのです!彼女達を取り返しに来るであろう敵を彼女達自身に撃退してもらう為に!』

 

【………これ以上、ランサーズの進撃を許すな…そして、()()()()を此処に来させるな…!!】

 

『はっ…!!』

プロフェッサーによる指示を受けたドクトルは下がっていった…。

 

 

【……邪魔をしないでくれ…!()()…お前も分かっているはずだ…この世界は()()()なのだ…!私はただ…レイを取り戻したいだけなんだ…!!】

孤高なる王座の間に零王の独白が消えていった…。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こうなれば仕方ない…調整は不完全……だが…ランサーズなど恐れる必要はない!』

薄暗い研究室で狂いし科学者は不気味な笑みを浮かべた…。



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狂気の科学者─狂おしき研究─

こんにちは!S,Kです!

進撃を続ける遊海達…彼らはついにアカデミアにおける最低最悪の「邪悪」…ドクトルと対峙する!

それでは、最新話をどうぞ…!


「『月光舞獅子姫』で攻撃!!」

 

「愚か者共を粉砕しろ!!『真青眼の究極竜』!!ハイパー・アルティメット・バースト!!」

 

「いけ!『超銀河眼の光子龍』!アルティメット・フォトン・ストリーム!!」

 

「『BK 彗星のカエストス』!コメット・エクスプロージョン!!」

 

「『希望皇ホープレイV』!Vブレード・シュート!!」

 

「『シューティング・スター・ドラゴン』!スターダスト・ミラージュ!!」

 

「『裁きの龍』!『戒めの龍』!神滅のカオス・バースト!!」

 

【【【【【ぎゃああああ!?】】】】】

 

 

「……僕、アカデミアのみんなが可哀想になってきたよ…(汗)」

襲い来るアカデミア生達を蹴散らしながら突き進む遊海率いる別働隊…その様子を見ていた素良は容赦なくふっ飛ばされていくアカデミア生達に同情していた…。

 

 

 

 

「だああっ!本物のデュエルアカデミア本校よりは小さいはずなのに…広すぎだろアカデミア!!」

 

「さ、流石に戦い過ぎて疲れてきたぜ…!」

 

「まだへたばるのは早いぜギラグ!こっからが正念場だ!」

 

「でも、敵が少しずつ増えてる気がする…!早くドクトルを制圧しないと…!」

 

「みたいだな…でも、アタシはまだ戦えるぜ!!」

アカデミアの予想以上の広さに悪態をつく城之内、連戦に疲弊したギラグを励ますアリト、敵の数が増えている事に気付く流星と海亜…歴戦の決闘者達にも疲労の色が見え始めていた…。

 

 

「亮、ドクトルの研究室までどれくらいだ…!」

 

「本来ならそう時間は掛かりません…!ですが、障害が多すぎる…!」

 

「いっその事、建物ごと吹っ飛ばすか?アンタなら余裕だろ?」

 

「やれるけど、それは避けたいな…!アカデミアの何処かにはエクシーズ次元の人々が囚われた『装置』がある、それを壊したら不味い…!」

カイザー亮に目的地までの距離を訊ねる遊海…本来なら、そう遠い場所ではないが…襲い来るアカデミア生によって距離がなかなか進まない。

業を煮やした真月が建物をぶち抜いて進む事を提案するが…囚われたエクシーズ次元の人々の被害を考え、作戦は却下された…。

 

 

《マスター!凌牙と黒咲チーム、遊星とエドチームがそれぞれ幽閉塔に到達しました!東の塔ではユーゴがデュエルしているようです!》

 

「ふうっ…!流石に早いな…これで、心配事の1つは大丈夫そうだ…!」

その時、アヤカが救出チームの幽閉塔到着を伝える、遊海はため息を吐きながら汗を拭う…遊海は黒咲や遊星を信頼し、一番大切な任務を任せた…4人ならば、絶対に成功させると信じていたからだ。

 

 

 

「…ふう…セレナちゃん、大丈夫か?」

 

「ああ…!私だって戦いを乗り越えて強くなった…これ以上の悲劇を生まない為に、私は戦う!」

 

《フォウ、フォ〜ウ〜!(セレナ!力を入れ過ぎたら空回りしちゃうよ!リラックス〜!)》

 

「ははっ…セレナちゃん、フォウが頑張り過ぎだってさ!」

 

「──えっ?フォウの言葉が分かるのか…?羨ましい…」

戦いが続く中、遊海はセレナを気にかける…彼女はプロフェッサーの計画の『鍵』の1つ…遊矢や翠と共にいる柚子と同じく、絶対に奪われてはならない存在だからだ…。

 

 

カララン…バシュー!!

 

 

「っ…煙幕!?」

 

「みんな!吸うな!アヤカ!」

 

《解析…有毒成分はありません!通常のスモークです!》

その時、突如として幾つもの煙幕が遊海達へと投げ込まれた!

 

 

 

っ!?誰だ!何をする!離せ!?

 

「っ…!セレナ!!ゲホッゴホッ…吹き飛ばせ!『ハーピィの羽箒』!!」

さらに、自分の鼻先すら見えない煙幕の中からセレナの悲鳴が響く…それを聞いた瞬間、遊海は咳き込みながら巨大な羽箒で煙を吹き飛ばしたが…!

  

 

 

「っ…!セレナがいない!!」

 

《フォウ!?》

 

「しまった…!?」

 

《転移装置を使われたようです!反応は追えています!!》

一瞬の隙を突かれた別働隊…アヤカのサーチがセレナの行方を捕捉した…だが…!

 

 

【【【【【……!!】】】】】

 

「っ…!アカデミア生が…!!」

その行手を遮るように再びアカデミア生達が立ち塞がる…!

 

 

 

「遊海!セレナを助けてくれ!遊海だけなら突っ切れるはずだ!!」

 

「先に行け!我らもすぐに追い付く!!」

 

「遊海!ここは任せて!!」

 

「遊馬…海馬社長…遊戯…!任された!!飛翔せよ!『閃珖竜』!!」

 

《キュオオオン!!》

遊馬達にセレナの救出を託された遊海は『閃珖竜』に飛び乗り、セレナのもとへと急いだ…!

 

 

 

 

ゴゴゴ…ガシャン!ガシャン!ガシャン

 

 

 

「っ…!隔壁!?」

 

「遊海と完全に分断されたか…!!」

遊海がその場を離れた直後、遊海の進んだ道が隔壁によって封じられる…別働隊は完全に遊海と分断されてしまった…!

 

 

「っ…!素良!お前も先に行け!お前の身軽さなら、遊海先生に追いつけるはずだ!!」

 

「カイザー…分かった!!」

それを見た亮は素良へと指示を出す…それを聞いた素良は塞がれた道とは別ルートで遊海を追いかけた…。

 

 

「(こういう時は大抵、()()()が起きる…遊海先生…!待っていてください…!!)」

一抹の不安を覚える亮…彼は道を切り開く為に黒衣を纏った…。

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

《次の角を右です!!》

 

「くそっ…!俺の前でふざけた真似しやがって─!!」

無駄に広いアカデミアの廊下を翔け抜ける遊海…そして、ついに…!

 

《正面の扉!》

 

「突き破れ!流星突撃(シューティング・アサルト)!!」

 

《キュオン!!》

轟音と共に閃珖竜が巨大な扉を粉砕した…!

 

 

 

「………間違いなさそうだな…!!」

 

《フォウ…!(気味が悪いね…嫌な匂いがする…!)》

扉を突き破った先…そこは薄暗い研究室だった、用途の分からない研究機械や何かを()()している巨大な装置が並ぶ、アカデミアの『闇』が凝視されたような場所だった…。

 

 

 

【これはこれは…!ランサーズの最大戦力、白波遊海…!お前自らが乗り込んで来るとは…】

 

「………貴様」

その時、研究室の暗闇から不気味な声が響く…姿を現したのは不気味な風貌の白髪の老人だった。

 

 

【私の名前はドクトル!アカデミアで一番の天才科学者だ!!】

 

「貴様がドクトルか…セレナは何処だ」

 

【ククク…彼女はここにいる…!】

 

「っ…セレナ!!」

 

『………』

遊海を前に名乗りを上げるドクトル…遊海がセレナの居場所を問い詰める……そして、ドクトルの背後から拐われたセレナが姿を現す…だが、彼女は()()()()()()()()

 

能面のように無表情の顔、瞳孔が開いた瞳、そして…目元に残る()()()…それが意味するのは…。

 

 

 

「ドクトル…貴様…どれだけ、俺の逆鱗を逆撫ですれば気が済む…!!」

 

【はて…?なんの事かな?セレナ様はアカデミアの姫…元々、お前達の敵のはず…そうでしょう?セレナ様】

 

『その通り…私はプロフェッサーに忠誠を誓う、アカデミアの戦士…プロフェッサーの敵を殲滅する…』

ドクトルに問いかけられたセレナは抑揚のない声でアカデミアに忠誠を誓うと口にする。

 

 

その耳からは()()()()()が姿を見せていた…!

 

 

「貴様…!子どもになんて事を…!!」

誘拐されてから今までの短い時間にセレナはドクトルによる洗脳を受け──寄生虫『パラサイト・フュージョナー』に寄生されてしまっていたのだ…!

 

 

【ククク…!これが、私の研究の集大成…!リアルソリッドビジョンのモンスターによる()()()()…!この技術があれば、アカデミアの戦力はさらに飛躍する…!】

 

「薄汚い手でセレナに触れるな!外道!!」

 

《マスター、落ち着いて…!セレナを救うには、ドクトルを無力化するしかありません…!!》

いやらしい手付きでセレナの髪を触り、頬を撫でるドクトルに激昂する遊海をアヤカが制止する…。

 

 

『パラサイト・フュージョナー』による洗脳は()()()()()()()()()()()()

解除するには遊海達のようにリアルソリッドビジョンを上回る『精霊の力』による介入…それか『パラサイト・フュージョナー』を操る者──ドクトルを無力化するしかない…!

 

 

 

「デュエルだ、ドクトル…!貴様を──叩き潰す!!」

 

【ククク…!良いでしょう!さぁ、いきましょうセレナ様!アカデミアの脅威を貴女の手で排除するのです!】

 

『ああ…全てはプロフェッサーの為に…!』

 

《フォウ!フォウ!!(遊海…お願い!セレナを助けて…!!)》

 

「大丈夫だ、フォウ…!俺は、必ずセレナを救い出す!!」

ドクトルへの怒りを燃やしながら、遊海はデュエルディスクを展開する!

 

 

 

 

 

「『【デュエル!!】』」

 

 

 

遊海LP4000

 

ドクトルLP4000

セレナLP4000

 

 

 

 

「俺のターン!」

「スケール9の『クリフォート・ツール』をペンデュラムゾーンにセッティング!さらにペンデュラム効果発動!1ターンに1度、800ライフを払い、デッキから『クリフォート・アセンブラ』を手札に加え…さらに!スケール1の『アセンブラ』をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

PENDULUM!!

 

サーチを介して黄色の核石を持つ機械と紫色の核石を持つモノリスが遊海の背後に浮かび上がる!

 

遊海LP4000→3200

 

 

「これで俺はレベル2から8の『クリフォート』モンスターを同時に召喚可能!!揺れろ!希望のペンデュラム!我が魂に宿る大いなる力よ…いまこそ、その力を開放せよ!ペンデュラム召喚!!手札から現れろ!『クリフォート・シェル』!『クリフォート・ゲノム』!」

赤色のペンデュラムが揺れ動き、ペンデュラムの軌跡が異次元への扉を開く…そしてオレンジ色の核石を持つ機械と黒色の核石を持つ巻き貝型の機械が現れる!

 

 

シェル ATK2800→1800 ☆8→4

 

ゲノム ATK2400→1800 ☆6→4

 

 

【ほう…!これがペンデュラム召喚!デニスのモノとは違うのか…!】

 

「勝手に言ってろ…!特殊召喚された『クリフォート』モンスターは攻撃力1800、レベル4になる…そして俺は2体のモンスターをリリース!『クリフォート・ディスク』をアドバンス召喚!!」

2つの核石が消え、虹色の機体の青色の核石を持つ機械が現れる! ATK2800

 

 

「『ディスク』の効果発動!アドバンス召喚に成功した時!デッキから『クリフォート』モンスター2体を特殊召喚できる!現れろ!2体の『クリフォート・アーカイブ』!!」

虹色の煌めきが緑色の核石を持つ機械を呼び寄せる!

 

アーカイブ ATK2400→1800 ☆6→4

 

アーカイブ ATK2400→1800 ☆6→4

 

 

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!この瞬間、『アセンブラ』のペンデュラム効果が発動!このターンにリリースした『クリフォート』1体につき1枚ドローできる!2ドロー!さらに、『ディスク』の効果によって特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズに破壊される!」

 

遊海LP3200

ディスク (P アセンブラ ツール)伏せ1 手札0→2

 

 

 

【ほう…!ペンデュラムモンスターは破壊されればエクストラデッキに行く…それを利用し、次のターンで大量展開を狙うと…!】

 

「御託はいい…さっさとターンを進めろ…!」

 

【ええ…それでは、遠慮なく…!】

圧倒的実力を持つ遊海を前にしても、余裕の態度を崩さないドクトル…その意図は…。

 

 

 

 

【私のターン!ドロー!】

【私は魔法カード『パラサイト・ディスチャージ』を発動…!デッキから『パラサイト・フュージョナー』を特殊召喚!】

ドクトルのデッキから気味の悪い蟲型のモンスターが現れる…! ATK0

 

 

【そして『パラサイトフュージョナー』の効果発動!このカードが特殊召喚に成功した時!このカードと手札・フィールドのモンスターを素材として融合召喚を行なう!私は手札の『堕天使マリー』と『パラサイトフュージョナー』を融合!!神に背きし堕天使よ…内なる声に導かれ、麗しき聖処女となれ!融合召喚!!現れよ!『聖女ジャンヌ』!!】

堕天使と寄生虫が融合…ドクトルに似つかわしくない、白い鎧を纏う聖女が現れる! ATK2800

 

 

【そして融合素材となった『パラサイトフュージョナー』は装備カードとして『聖女ジャンヌ』に装備され、戦闘・効果によって破壊される時の身代わりとなる!】

 

「……趣味が悪い…!」

聖女ジャンヌの胸に寄生虫が取り憑く…。

 

 

【クク…!私はカードを2枚伏せ、ターンエンド!】

 

ドクトルLP4000

聖女ジャンヌ(パラサイトフュージョナー) 伏せ2 手札2

 

 

 

【さぁ、セレナ様…!貴女の実力を奴に見せつけてやるのです!】

 

『ああ…貴様を倒して、私はプロフェッサーの力となるのだ!』

 

「っ…!!セレナ…!」

 

《フォウ…!》

 

《マスター…どうか落ち着いて…!》

ドクトルに促されるままにディスクを構えるセレナを見た遊海は血が滲む程の力で拳を握り締める。

 

見ていたからだ…仲間達と笑い合い、フォウと戯れて笑顔を見せる彼女の姿を……そして、知っているからだ…アカデミアの真実を知って泣いていた彼女の顔を…!

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『私は「パラサイト・フュージョナー」を召喚!』

セレナの場に寄生虫が現れる! ATK0

 

『さらに私は永続魔法「寄生工場(パラサイト・プラント)」を発動!その効果で私は自分フィールドの「パラサイトフュージョナー」とドクトルの「パラサイトフュージョナー」を装備した「聖女ジャンヌ」を墓地に送る事で融合召喚できる!』

 

「来るか…!」

周囲が禍々しい光に包まれ、2体のモンスターが融合の渦に吸い込まれる…!

 

 

『神の使いたる聖女よ…内なる声と1つとなりて、新たな力と生まれ変わらん!融合召喚!!君臨せよ!理性に巣食う女王…レベル8!「パラサイト女王(クイーン)」!!』

禍々しく、気色悪いパラサイトフュージョナーの女王が現れる! ATK1800

 

 

【おお…おお!成功だ!流石はセレナ様!天才たる私が作り上げた究極のパラサイトモンスターをいきなり召喚するとは!!】

 

『そう褒めるな…このくらい当然の事だ…「寄生工場」によって墓地に送られた「パラサイトフュージョナー」は「パラサイト女王」に装備される…さらに!フィールドに存在する「パラサイトフュージョナー」1枚につき、「パラサイト女王」の攻撃力は300アップする!』

パラサイトフュージョナーが女王に取り付き、その力となる…!

 

パラサイト女王ATK1800→2400

 

『さらに私は魔法カード「パラサイト・ディスチャージ」を発動!デッキから2体目の「パラサイト・フュージョナー」を特殊召喚!』

2体目の寄生虫が現れる! DEF0

 

 

【ならば、私もお力添えを…!永続罠『寄生吻孔(パラサイト・ジェネレーター)』を発動!このカードは『パラサイト』モンスターが特殊召喚されたターンに発動でき、自分の『パラサイト』モンスターは効果で破壊されず、モンスターゾーンに存在する『パラサイトフュージョナー』は1体につき2体分として扱う!さらに!1ターンに1度、私は『パラサイトフュージョナー』をデッキから特殊召喚できる!】

ドクトルの2体目の寄生虫が現れる! DEF0

 

『いいぞ、ドクトル…これでフィールドの「パラサイトフュージョナー」は合計6体…攻撃力は1800アップする!』

 

「くっ…!」

 

パラサイト女王 ATK1800→3600

 

 

『バトルだ!「パラサイト女王」で「クリフォート・ディスク」を攻撃!』

 

「ぐっ…がああっ!?」

女王の吐き出した禍々しい体液がディスクの機体を溶解させ、遊海を吹き飛ばした!

 

遊海LP3200→2400

 

 

『私はカードを2枚伏せてターンエンド!』

 

【そしてエンドフェイズに『寄生吻孔』で特殊召喚された『パラサイトフュージョナー』はデッキに戻り、『パラサイト女王』の攻撃力は600ダウンします…ああ、残念…】

 

パラサイト女王ATK3600→3000

 

セレナLP4000

パラサイト女王(パラサイトフュージョナー✕2)パラサイトフュージョナー(2体分) 寄生工場 伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

「ぐうっ…ダメージレベル、最大にしやがって…なかなか、効いたぞ…セレナ…!」

 

『あはは…!これが、ドクトル()の力だ!』

吹き飛ばされた遊海が立ち上がる…ダメージレベルが上がっていた事で少なくないダメージを受けていた…。

 

 

 

「(『寄生工場』は『パラサイト女王』にモンスター効果による耐性を与え、『寄生吻孔』は『パラサイト』モンスター全てに破壊耐性を与える…まずは、あの2枚を処理しないと…)」

 

【おやおや?あまりの劣勢に声も出ませんかな?】

 

「付け焼き刃の力に負ける程、俺は甘くない…!」

勝利への方程式を見定める遊海対してドクトルは皮肉を口にする…しかし、その言葉は遊海の闘志を燃え上がらせる!!

 

 

「ドクトル…!俺は、貴様を許さない!!離れてろ!フォウ!」

 

《フォウ!!(遊海、やるんだね!)》

 

「ああ…いくぞ!!俺は俺自身でオーバーレイ!!

 

【なにっ…!?】

ドクトルを倒し、セレナを救う為…遊海は全力を解き放つ!

 

 

我が身に宿る戦いの宿命、救世の願い!今こそ!邪悪を断つ力となれ!!シャイニング・カオス・エクシーズチェンジ!!

 

遊海の体から飛び出した希望の光と漆黒の闇が螺旋を描き、絆の英雄を呼び覚ます!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドグン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?ぎッ…ガああアアあ"あ"っ!?!?

 

 

《マスター!?》

 

その時…突然、苦しみ出した遊海が絶叫する…それによってNEXUSは霧散、遊海は頭を押さえながら地面をのた打ち回る…!!

 

 

 

【ふっ…ははははは!!ようやく…ようやく()()したか!焦らせおって!!】

 

《まさか…!『パラサイト・フュージョナー』!?》

 

《フォウ…!?(そんな…嘘でしょ!?)》

そして、のたうちまわる遊海の姿を見たドクトルが笑い声を上げる…遊海は『パラサイト・フュージョナー』に寄生されていたのだ…!

 

 

 

 

が、あっ…!?いつ、しこん、で…!?

 

【ククク…!セレナ様をお連れした時の煙幕に『パラサイトフュージョナー』の()を仕込んでいたのだよ…!他の者達は吸わなかったようだが…セレナ様の悲鳴を聞いたお前は焦って()を吸った…!それが血管を通じてお前の脳に辿り着き、『寄生工場』の発動をキッカケに孵化したのだよ!どうだ…?思考が塗り替えられていく感覚は…!!】

 

ひきょう、な、真似…を、ぐう!!がああっ!?

 

《マスター!気を確かに!!》

煙幕の中に仕込まれていた寄生虫の卵…それに寄生されていた遊海は頭が割れるような激痛と不快な異物感に襲われる…!

 

 

《マスター!今、摘出を………っ…!?(マスターの脳全体に、10体以上!?これを駆除するのは…!?)》

遊海を救う為にサーチするアヤカ…だが、遊海の脳内には多数の『パラサイトフュージョナー』が取り憑いていた…!

 

 

【貴様に寄生させたのは()()()調()()を施した『パラサイト・フュージョナー』…!ランサーズがいくら現れようとも…最高戦力の貴様がアカデミアの手に堕ちれば関係ない!さぁ…アカデミアの栄光の為に戦うのだ!白波遊海!!】

 

う、があ"あ"あ"あ"あ"!?!

苦しむ遊海を見ながらドクトルは下品な笑い声を響かせた…。

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

【貴様…ユウスケ!遊海に何が起こっている…!此奴は我の洗脳すら効かない程の精神力…魂の力がある!それが何故、あの程度の小物の力に苦しんでいる!】

 

ぐっ、が…!!

遊海の精神の最奥…玉座から立ち上がったドン・サウザンドは困惑していた…歴戦の英雄であるはずの遊海が精霊使いや特異能力者でもない『人間』の力に苦しめられている事に…。

 

 

『「パラサイトフュージョナー」は、人間の「脳」…肉体に寄生、する…!(オレ)達は、魂とか精神系の洗脳は効き難いが、デュエルモンスターズで、肉体を弄られたら…がああっ……!!

 

【っ…そういう事か…!デュエルモンスターズを介して肉体を弄られる事が()()という事か…!?】

遊海と同じ苦痛と異物感に襲われながら、ユウスケが状況を伝える…遊海達は転生特典による強力な『洗脳耐性』を持っている、それは催眠術や破滅の光、ドン・サウザンドの力による洗脳すら跳ね除ける…。

 

……だが、カードやデュエルモンスターズの力を介した洗脳は効いてしまうのだ…!

 

 

 

【っ…貴様は最善を掴む英雄であろう…!この程度の力に負ける事は許さんぞ!白波遊海!!】

精神世界にドン・サウザンドの怒声が響いた…。

 

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

「(まずい、意識が、侵食、される(アカデミアに栄光を)……どうすれば、いい?どうすれば(グローリー・オン・ジ・アカデミア!)……()()()()()()()()()()()r()……呑まれるな…諦めるな…!!(アカデミアに栄光を))」

激痛と何かが()()()()()感覚で意識が朦朧とする遊海…その思考が少しずつ『パラサイトフュージョナー』に汚染されていく…! 

 

 

 

「(俺は、最善を掴むんだ(プロフェッサーに忠誠を)…!セレナを、助けるんだ(アカデミアに栄光を)…!ズァークを…遊矢を(忠誠を)───く、そ──)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グシャ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side素良

 

 

 

「はぁ…はぁ…!次の角を、左…!!」

亮から遊海の援護を頼まれた素良はドクトルの研究室へと急いでいた…ランサーズが敵を引き付けているおかげで接敵する事もなく、素良はついにドクトルの研究室近くへと辿り着く…!

 

 

「がああっ……ぐあ"あ"あ"あ"っ─!!?」

 

「この声…!?遊海!!」

その時、アカデミアの廊下に響く絶叫…それは遊海の声…素良は走る足に力を込める…!

 

 

バタン!!

 

 

「遊海!!───えっ…?」

遊海が入ったのとは別の扉からドクトルの研究室に飛び込んだ素良、彼が見たのは…。

 

 

 

 

血溜まりに沈む、()()()()()()遊海の姿だった…。

 

 

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

ぐう…がああっ!?あ"あ"あ"あ"!!

 

 

《マスター…!どうすれば…!!》

 

《どけ!アヤカ!我がやる!》

 

《メガロック!?何を!!》

体をのけ反らせながら寄生虫の侵食に苦しむ遊海…その時、メガロックが現れる!

 

 

《頭を寄生虫に侵されているなら()()()()()しかあるまい…!特典の力で再生させるのだ!!》

 

《っ…しかし、マスターの体内にはまだ()が残っている可能性があります…!そして『寄生工場』は発動中…寄生虫が現れる度に頭を潰せというのですか!?》

 

《っ…!!》

寄生虫に侵されているなら、それごと潰せばいい…確かに、メガロックの言葉は正しい……だが、卵の孵化を防ぐ特効薬や治療をできる者がいない状態でその対処をするのは、リスクが高すぎる…!

 

 

 

があ、ああ────俺の力は、アカデミアの、為…に…」

 

《マスター!!》

 

【ククク…ははははは!!流石は私の作り上げたパラサイトモンスター!!】

絶叫を上げていた遊海が急に静かになり、立ち上がる…その瞳は虚ろに世界を映していた…。

 

 

 

【さぁ…!サレンダーし、ランサーズを迎撃しろ!!そして黒咲瑠璃とリン、柊柚子を取り返すのだ!!】

 

「は、い…」

 

《マスター…!ダメです!洗脳に負けないで!!》

 

《フォウ!!(遊海!負けちゃダメだ!!)》

 

【っ!?貴様、何処から現れた!?】

ドクトルの指示に従い、デッキトップに右手を置こうとする遊海…その腕をレイン彩華が掴み、制止する…!

 

 

「はな、せ、あや、か…俺、は……」

 

《マスター…!!》

少しずつ右腕をデュエルディスクに近づける遊海…その動きを阻みながら、彩華は()()()()()

 

 

 

《マスター……ごめんなさい!!》

彩華は拳を振りかぶる、遊海の誇りを……信念を守る為に────

 

 

 

 

 

 

 

 

『何やってやがる、大馬鹿野郎!!』

 

 

 

 

グシャ!!

 

 

 

 

《えっ…》

 

【なっ…】

 

《キュッ…!?》

 

「────…………」

 

 

その時、ドクトルの研究室に怒声が響き、それと同時に鈍い衝撃音と何かが潰れる水音が響く…そこにいたのは、返り血に身を染めた白いコートの男だった。

 

 

 

 

 

『洗脳なんかに負けてんじゃねぇ、馬鹿遊海…!なんで1人で突っ込むんだテメェは!!』

 

《ラプ、ラス…》

現れた白コートの男…それはシンクロ次元から駆けつけたラプラスだった、壁をぶち壊して研究室に乱入した彼は正気を失った遊海の頭を殴り潰したのだ…!

 

 

 

『ひ、ひどい…』

 

【な、何者だ!貴様は?!白波遊海の仲間ではないのか!?】

 

『───状況はだいたい分かった……さぁ、()ろうぜ…!!』

目の前の惨状に取り乱すドクトルとセレナ…その姿を見たラプラスは状況を把握、デュエルディスクを構える…!

 

 

《ラプラス…どうして…!》

 

『レイン……いいや、アヤカか……見てろ、お膳立てはしてやる』

涙目のアヤカに笑いかけたラプラスは擬態を解き、ドクトル達と向かい合う!

 

 

 

 

ラプラスLP4000

 

 

 

『オレのターン!ドロー!!』

『魔法カード「名推理」を発動!相手プレイヤーは1から12までの任意のレベルを宣言し、オレは通常召喚できるモンスターが出るまでデッキを捲る…そして、引き当てた通常召喚できるモンスターが相手の宣言したレベルなら、そのモンスターはそのまま墓地に送られる…さぁ、ドクトルとやら…レベルを宣言しろ』

 

【な、ならば…私は6を選ぶ!】

 

『はっ…ありがとさん』

 

墓地送り

 

殻醒する煉獄

インフェルノイド・ヴァエル

ネヘモス

異次元からの埋葬

リリス

シャイターン

アドラメレク

ベルフェゴル

モンスターゲート

煉獄の死徒

ベルゼブル

アスタロス

 

☆インフェルノイド・デカトロン

 

 

 

『オレはレベル1の「インフェルノイド・デカトロン」を特殊召喚!』

10本の真空管を付けたボロボロの悪魔が現れる! DEF200

 

 

『モンスターをわざわざ墓地に送って、何をするつもりだ…!?』

 

『さあな?オレは永続魔法「煉獄の虚夢」を発動!このカードがある限り、オレのフィールドのレベル2以上の「インフェルノイド」モンスターのレベルは1になり、相手に与えるダメージは半分になる……そしてオレは墓地の「インフェルノイド・ベルゼブル」「インフェルノイド・アスタロス」「インフェルノイド・ベルフェゴル」を除外する事で墓地から「インフェルノイド・リリス」を特殊召喚!』

フィールドに蒼炎が渦巻く…そして紫色の翼と蛇体、紫色の真空管を持つ悪魔が現れる! ATK2900 ☆9→1

 

 

『リリス」の効果発動!特殊召喚に成功した時!フィールドの「煉獄」と名のつく魔法・罠カード以外全てを破壊する!蒼炎の竜巻!』

 

『なっ…「パラサイトフュージョナー」が!?』

リリスの起こした煉獄の竜巻がフィールドを蹂躙し始める!

 

 

 

『───おい、とっとと()()()、馬鹿遊海!お前のペンデュラムスケールまでぶっ飛ばすぞ!!』

 

「ぐ…う……?──トラップ、カード、『機殻の凍結(クリフォート・ダウン)』、発、動…」

 

【『なっ…!?』】

その時、頭部を失ったはずの遊海が()()()()()()()()()()()()…罠カードを発動する!

 

 

 

『よう、マヌケ…少しは眠れたか?』

 

「ああ…目覚めは最悪、だけどな…!『機殻の凍結』発動後、攻撃力1800のモンスターとして特殊召喚、され…このターン、自分の『クリフォート』魔法・罠カードは、カードの効果では破壊されない…!」

煉獄の炎の中に凍りついた虹色の核石が飛び出し、障壁を張る! ATK1800

 

 

 

【き、貴様…!?死んだはず?!】

 

()でも、見たんじゃないか?自分に都合のいい夢を…俺は、不死身だ…!!」

自分の血で服を汚しながら、遊海がドクトルを睨みつける…ドクトルの表情は恐怖に歪んでいる…!

 

『凄むのは後にしろよ…っと、装備されてた「パラサイトフュージョナー」2体が消えたから「パラサイト女王」の攻撃力は600下がる…さらにオレは墓地の「インフェルノイド・ヴァエル」「インフェルノイド・シャイターン」そして手札の「インフェルノイド・アシュメダイ」を除外する事で墓地から「インフェルノイド・ネヘモス」を特殊召喚!』

再び蒼炎が燃え上がり、巨大な赤い翼と虹色の真空管を輝かせる巨大な悪魔が現れる! ATK3000 ☆10→1

 

パラサイト女王ATK3000→2400

 

 

『「ネヘモス」の効果発動!特殊召喚に成功した時!フィールド上のモンスター全てを破壊する!蒼炎の氾濫!さらに、墓地の「煉獄の死徒」の効果発動!墓地のこのカードを除外する事で、効果破壊される「リリス」の身代わりになる!』

 

『そんな!?きゃあああ!?』

 

【く、クイーンが!私の究極のパラサイトモンスターが!!】

煉獄の炎の洪水が全ての寄生虫を燃やし尽くす!!

 

 

『バトルだ!「リリス」でセレナを攻撃!』

 

「きゃう…!?」

リリスの長い尾がセレナを打ち据える!

 

セレナLP4000→2550

 

 

『「ネヘモス」でドクトルにダイレクトアタック!煉獄のヘル・バーニング!』

 

【ぎゃあああ!?!?】

煉獄の炎がドクトルを炙り燃やす!

 

ドクトルLP4000→2500

 

 

『オレはこれでターンエンドだ』

 

ラプラスLP4000

ネヘモス リリス 虚夢 手札4

 

 

 

 

『遊海、お前はこんなとこで足踏みしてる暇ねぇだろ…さっさと決めろ』

 

「すまん…これで決める!」

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

「再び揺れろ!希望のペンデュラム!ペンデュラム召喚!!エクストラデッキから現れろ!2体の『クリフォート・アーカイブ』!『シェル』!『ゲノム』!『ディスク』!」

赤のペンデュラムが揺れ動き、5体のクリフォートが並び立つ!

 

アーカイブATK2400→1800

 

アーカイブATK2400→1800

 

シェルATK2800→1800

 

ゲノムATK2400→1800

 

ディスクATK2800→1800

 

 

【も、モンスターを5体同時に!?】

 

「あ〜…くらくらする……『ツール』のペンデュラム効果、発動…!800ライフを払い、デッキからフィールド魔法『機殻の要塞(クリフォートレス)』を手札に加え、発動…!それによって俺は『クリフォート』モンスターを通常召喚に加えて1度だけ通常召喚できる…!」

周囲をクリフォートの絶対制圧圏が支配する!

 

遊海LP2400→1600

 

 

「俺は2体の『アーカイブ』と『ゲノム』をリリース…!我が魂、我が相棒たる機殻の王よ!今こそ顕現せよ!!レベル10!『アポクリフォート・キラー』!!」

 

《まったくもう…!心配させないでくださいマスター!!》

 

「ごめんな、彩華…」

3つの核石が消え、虹色の核石を輝かせる巨大要塞が遊海への文句を言いながら顕現する! ATK3000

 

ネヘモスATK3000→2500

 

リリスATK2900→2400

 

 

「さらに俺は装備魔法『機殻の生贄(サクリフォート)』を『シェル』に装備!装備モンスターは2体分のリリースになる!俺は2体分の『シェル』と『ディスク』をリリース!現れろ!王を補佐する頭脳!『アポクリフォート・カーネル』!!」

さらに、2つの核石が消え…白色の核石を持つ、クリフォートにおけるもう1体の切り札…カーネルが顕現する!ATK2900

 

 

「バトルだ!『カーネル』でセレナを攻撃!バチカル・ニードル!」

 

『っ…きゃあああ…!』

数発のミサイルがセレナの足元に着弾、そのライフを削りきる!

 

 

セレナLP2550→0

 

 

「さぁ…ドクトル…!『お前の罪を数えろ!!』」

 

【ひ、ひぃぃ…!?】

遊海とラプラス、2人の声が重なり、アヤカの核石にエネルギーが集中する!!

 

 

「ネクサス・アーク・キャノン!!」

 

ぎゃああああああ!?

虹色の破壊光線がドクトルを飲み込み…研究室に断末魔が響き渡った…。

 

 

ドクトルLP2500→0

 

 

 

 

『これで…今までの貸し借りはチャラだからな?遊海』

 

「ああ、ありがとよラプラス…助かった」

 

『へっ…素直じゃねぇか』

アカデミアにおける最大の邪悪を倒した2人は拳を突き合わせた…。

 

 

 

 

 

遊海&ラプラス WIN!

 

 

 

 

 

 

「あ、れ…?わたし、は…」

 

「セレナちゃん…守れなくてごめん、怖い思いをさせたな…すまなかった」

 

「ゆう、み…?」

ドクトルが倒され、正気に戻ったセレナが目を覚ます…彼女が最初に見たのは…全身傷だらけの遊海だった…。

 

 

「そうだ…私は、ドクトルに…ドクトルに、蟲を…!?」

 

「思い出さなくていい…今までのは()()()だ……少し休んでいるといい」

 

「…あっ……ごめんなさい…ゆう、み…」

 

「……きみが謝る必要はない、謝らなきゃならないのは…俺の方だよ、セレナ」

ドクトルに拐われた事を思い出すセレナ…だが、遊海はそれを止めさせる…そして、彼女は暖かな感覚の中で眠りに落ちた…。

 

 

 

 

 

【私が…このアカデミア一番の天才が、負けるだと…!?ありえない…こんな事は悪い夢だ…!?夢に違いない…!】

 

『いいや、現実さ…テメェの気色悪い夢はここまでだ』

 

【ぐげっ…】

遊海の全力攻撃によって半殺し状態のドクトルをラプラスが踏みつける…。

 

 

「世間一般では、人生の先輩たる老人には敬意を払い、大切にしようってのが常識だが…お前にはその必要はないな…!!よくも子供に寄生虫なんか仕込みやがったな…!覚悟はできてるんだろうなぁ!!」

 

【ひっ…!?】

そして、セレナを眠らせた遊海が現れる…その形相は今までに見せた事がない程、恐ろしい顔だった。

 

 

 

『なぁ、遊海…こういうタイプの科学者が一番やって欲しくない事は分かるか?』

 

「ん?」

 

『自分の功績が()()()()()、研究の結果を()()()()()()()()…こういうタイプには一番の罰だぜ?』

 

「そういう事か…なら、()()()()は決まったな…!」

 

【な、なんの話だ…!?】

遊海とラプラスがあまり見せない()()()でドクトルを睨みつける…!

 

 

 

『ドクトル、科学ってのはな…人間を幸福にする為にあるもんだ…だが、行き過ぎた科学ってのは逆に()()()()()()事もある…オレ達はそんな世界を見届けてきた…』

 

「お前の頭脳を正しい事に使えば、不治の病の治療や人々を幸せにする事もできただろう……だが、それ以前に──お前の心は邪悪に染まり過ぎた…よって、罰を与える…!」

遊海の額に金色のウジャト眼が浮かび上がる!

 

 

「『罰ゲーム!!』」

 

 

 

      記憶破壊──Memory Break──

 

 

 

【ひっ…!?あ、ああ…!?消えていく!私の理論が!方程式が!私の記憶が消えていく…!やめろ!やめろぉぉ!?

ウジャト眼の光を浴びたドクトル…その記憶──否、魂そのものから彼の築き上げていた『成果』が消えていき、理解すらできなくなっていく…。

 

 

「そのうち、()()()()()()すら分からなくなる……お前は反省する必要はない、今までの悪行のツケは…自分の記憶で償え」

 

『提案したオレが言うのもアレだけどよ………容赦ねぇな、遊海』

 

「出会い頭に不意打ちでリアルハートキャッチしてきたお前には言われたくないな、ラプラス」

 

『何十年前の事言ってんだよ!?』

 

「ふっ…冗談だよ」

全てを奪われる感覚で狂乱するドクトルを見ながら、遊海とラプラスは軽口を言いあっていた…。

 

 

 

 

「ああ…くそ……NEXUSが中途半端に解けたせいで、余計に体力使っちまった……しばらく、動けなさそうだ…」

 

『はぁ…というか、お前バカか!なんで呆気なく寄生されてんだよ!?自分で「洗脳解除」打つとか、自分で頭を潰すとか!解決方法あっただろうが!?』

 

「……一度、頭の中で何かが爆発したみたいな激痛と頭の中で『パラサイト・フュージョナー』に這い回られる感覚を味わってみろよ…身体の自由も効かなくなって……今までで、一番最悪の気分だ……うぶっ…吐き気が…」

 

《フォウ…キャウ…(そんなの想像したくないよ…(泣))》

ドクトルへの罰ゲームを終え、体の力が抜けて倒れ込む遊海…中途半端なNEXUS化と寄生洗脳によるダメージで体力を使い切ってしまったのだ…。

なお、フォウは倒れ込んだ遊海に心配そうに寄り添っている。

 

 

 

『たくっ…遊馬や流星のチームにはアンチノミーが助っ人に行ってる、もう5分もすればこの部屋に着くだろうよ………その前に()()()()()、そんな()()()()じゃあいつらが心配するだろ』

 

「っ…そう、だな…」

ラプラスに着替えを促された遊海は自分の体を改めて確認する、傷は既に癒えていたが…赤のジャケットや帽子、ジーンズまで赤黒く染まっていた…。

 

 

《…あの、マスター…1つご報告が……》

 

「っ…アヤカ、どうした…まさか、翠や凌牙に何かあったのか…!?」

 

《あ、いえ…そうではなくて…》

そんな時、コアモードに戻ったアヤカが遊海へと話しかける…少しバツが悪そうに…。

 

 

《紫雲院素良が、腰を抜かしてしまっているのですが…どうしましょう…?》

 

「『はっ?』」

アヤカの思わぬ報告に遊海とラプラスの声が重なる…アヤカの示す先──そこで素良が腰を抜かしてしまっていたのだった。

 

 

 

 

 

Side素良

 

 

 

「……くん──素良君」

 

「う、あ…?……遊海…!?」

遊海に声を掛けられた素良が正気を取り戻す…あまりに衝撃的な事が重なり、呆けてしまっていたのだ。

 

 

「……いつから見てた?」

 

「遊海が、血溜まりの中に倒れてて…起き上がる、ところから…」

遊海の穏やかな口調に素良は思わず真実を話す…素良は見ていたのだ、潰された遊海の頭が逆再生のように治っていく瞬間を…。

 

 

「そうか…驚かせ──いいや、気持ち悪いモンを見せてごめんな?どっかの馬鹿が本気で殴ってきたからなぁ…」

 

『お前が洗脳されてサレンダーしようとするのが悪いんだろうが!せめて十代か遊馬ぐらい連れて来い!』

 

「遊海…さっきのは、どういう事、なの?何が…どうなって…?」

子供には衝撃的すぎる場面を見せてしまった事を謝る遊海…そして、素良は思わず問いかけてしまう…。

 

 

 

「はは…この事をランサーズで話すのは、きみが初めてだ……俺は()()()なんだよ…だから、どんな怪我をしてもすぐに傷は治る…闇のデュエルで致命傷を受けなければな?」

 

「不死身…!?」

 

『そうさ…ついでに、ずいぶんと若作りしてるが…遊海も翠も1()0()0()()を超えてるからな?とんだ若作り野郎だ』

 

「茶化すなよ…お前だって前世入れれば400歳超えてるだろうが…」

 

『失礼な!340くらいだ!』

 

「誤差だろ」

 

「え、えぇ〜…?」

素良に明かされた遊海達の秘密…だが、特に重大でもなさそうな様子に素良は戸惑ってしまう…。

 

 

「この事はランサーズ以外の仲間達…レジスタンスのチームZEXALやスタンダード次元の遊戯達、シンクロ次元のシグナー達、融合次元の亮や明日香達も知ってる…だから、みんなは俺を『英雄』って呼んで、慕ってくれてるんだ」

 

「あっ…」

その言葉を聞いた素良の中で今までの疑問が1つに繋がる…明らかに世代が違うデュエリスト達が遊海を頼りにしていた理由を……そして、遊海が規格外の強さを持つ理由を…。

 

 

ドタバタ…

 

 

「遊海!セレナ!大丈……遊海─!?」

 

「っ…嫌な予感が当たってしまったか!!」

 

「ラプラス!大丈夫かい!?」

 

「お〜、遊馬、亮、ブルーノ…まぁ、大丈夫だ…ドクトルは、倒したぞー…」

 

『倒したぞー…じゃねぇよ!まったく…紫雲院素良、心配するな、遊海はお人好しでお節介で…そしてみんなを救う為に戦う奴だ、お前達の信頼を裏切りはしねぇよ』

 

「……うん!」

 

 

そして、遅れて来た遊馬達が研究室に駆け込んでくる…そんな彼らに目的を達成した事を伝える遊海。

…その様子を見ながら…ラプラスは素良の頭を優しく撫で、遊海の性根を伝える…それを聞いた素良は遊海を信じ、明るく頷いたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

《っ…マスター!ランサーズ本隊がプロフェッサーと接敵します!》

 

「そうか…なら、早く行かなきゃな……赤馬零王を──()()為に…!」

 

アカデミアにおける戦いは…ついに最終局面を迎える…!

 



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嘆きの魔王─共闘─

こんにちは!S,Kです!

戦いを乗り越え先…そこで遊矢達はついにプロフェッサーと対峙する、その先に待つ結末は…!

それでは、最新話をどうぞ!


「っ…襲撃が…止まった…?」

 

『気をつけろ…罠がある可能性もある…!』

 

アカデミア生の襲撃を切り抜けながらプロフェッサーのもとを目指していたランサーズ本隊…だが、とあるフロアに差し掛かった所でアカデミア生の姿が消え、静寂が支配していた…。

 

 

「正面の扉が、プロフェッサーのいる王座の間だよ…!」

 

『各自、警戒を怠るな…突入する!!』

 

「わかった!」

デニスが目的地が近い事を伝える、その言葉を聞いた零児は警戒しながら王座の間へと飛び込んだ…!

 

 

 

 

 

 

 

【───来たか、零児、遊勝…そしてランサーズ、そして…来てしまったか、榊遊矢…!】

 

『赤馬零王…』

王座の間へと踏み入るランサーズ達…そこで待ち受けていたのは玉座に座った紫色のコートを纏い、スキンヘッドの頭に機械装置を着けた壮年の男───アカデミアの総帥、赤馬零王だった。

 

 

「あの人が、赤馬零王…!」

 

「兄様、あの人が…()()()()()、なの…?」

 

『下がっていろ、零羅…奴は私の父だが…今は()だ』

 

【……レイラ…?】

初めて見た零王の姿に警戒を強めるランサーズ、その中で零羅は義父である零王の事を気にしていたが…零王は零羅の事を知らない為、困惑した表情を見せている。

 

 

「零児、遊矢、ランサーズのみんな……少しだけ、私に彼と話す時間をくれ……私は、彼の真意を知りたい…!」

 

「父さん…」

 

『…構いません、遊勝さん』

そして、遊勝がランサーズ達の前に出る…親友として、零王の気持ちを知る為に…。

 

 

 

 

「零王、キミほどの天才が…何故、こんな()()()事を始めた?」

 

【愚かな事?】

 

「『理想郷』を創るという美名のもとに4つの次元を侵略しようなど…愚か以外のなんだと言うんだ…!キミは『無』から『有』を生み出せるほどの()()()…この世界でリアルソリッドビジョンを生み出したのはキミの功績だ!」

デュエルディスクを展開した遊勝は小鳥型のモンスター『EMインコーラス』を喚び出し、可愛らしく唄わせる…。

 

 

「リアルソリッドビジョンがなければ…アクションデュエルは生まれず、私のエンタメデュエルをも生まれる事はなかった…あの町工場での出会いが私の運命を変えた…キミはまさにリアルソリッドビジョンの創造主であり、エンタメデュエリスト・榊遊勝の生みの親だ!私はキミとの出会いを今でも感謝している!」

零王との出会いに感謝を伝える遊勝…彼は零王の事を『親友』だと信じていた…。

 

 

【遊勝…私は()()などではない、リアルソリッドビジョンも…既に存在した技術を再現しただけだ】

 

「既に存在した、か…やはり()()()()()()───話してくれ、零王…こことは違う『世界』で何があった…!きみは何を経験した!」

 

【───そうか、白波遊海に聞かされたか…『()()()()()』の事を】

 

「1つの世界?なんだいそれ…?」

遊勝の言葉を聞いた零王は静かに首を振る…自分は『天才』ではないのだと。

 

遊勝はその反応から遊矢達の話が真実だと確信し、遊勝に語りかける…だが、デニス達数人は事情が分からない様子だった。

 

 

『他の者達にも情報を共有しよう…我が父、赤馬零王は…白波遊海と同じ「世界」の出身だ』

 

「遊海と同じ世界!?」

 

「フン…どおりで遊海を集中的に排除しようとする訳だ…元々の強さを知っているのだからな」

零児の言葉に沢渡が驚き、ジャックはシンクロ次元における遊海への執拗な攻撃の理由を理解した。

 

 

 

【そうだ…!不思議に思った事はなかったか?4つに分かれた次元がデュエルの召喚法で分かれている事を…()()()()()()「1つの世界」には全ての召喚法が存在した…!それだけではない!デュエルモンスターズの基礎たる「ソリッド・ビジョン」システム!不動博士が完成させた永久機関「モーメント」!拡張現実空間でのデュエルを可能とする『ARビジョン』!今の4つの次元よりも進んだ科学力を持った世界が存在した…!!】

零王は拳を握り締めながら『1つの世界』の事を語り始める…。

 

 

【1つの世界は平和な世界だった…デュエルモンスターズは最大の娯楽であり、人々を楽しませる希望だった…そして科学者であった私は人々を楽しませるデュエリスト達に応えたいとソリッドビジョンをさらに発展させ、モンスターの生命力をもっと生き生きと表現できる投影技術──質量を持つソリッドビジョン…『リアルソリッドビジョン』を開発した…!だが、私は気付いていなかった…自分がパンドラの箱を開けようとしていた事に…!】

 

『………』

懐かしき世界について語る零王…その様子を零児は静かに見つめている…。

 

 

【そして私の開発したリアルソリッドビジョンは新たな時代におけるデュエリストの()()──『決闘王』を決める為の大規模大会、ワールド・チャンピオン・シップスで使われる事になった…そこに()がいたのだ…!あの男が!!】

 

「あの男…?」

 

 

()()()()…だよね」

 

 

「っ…遊矢!」

 

【貴様…榊遊矢…!なぜ、お前がその名を知っている!?】

零王があるデュエリストの存在を話そうとした時、遊矢が前に歩み出る…零王が語ろうとしたデュエリストの名前を口にしながら…。

 

 

 

「オレと柚子、零児と零羅、黒咲…この場にはいないけどセレナも…遊海に全部聞かされたよ……この世界の『創世記』を…」

 

【っ…余計な事を…!白波遊海!お前は悲劇を繰り返そうというのか…!!】

 

「おい遊矢!創世記ってどういう事だよ?まーたオレを除け者にしたのか?!」

 

「ごめん沢渡、話すタイミングがなくてさ…」

 

「さぁ、聞かせてもらおうではないか、赤馬零王…貴様が愚かな侵攻を選んだ理由──その原点を…!」

遊海が()()である遊矢達に真実を話していた事に驚く零王…その様子を見た沢渡が除け者にされていた事を知って遊矢へと詰め寄る。

 

そんな中、ジャックが零王に話を続けるように促す…その言い分を聞く為に…。

  

 

 

 

【ズァーク…その男は目立たないデュエリストだった…だが、世界大会の前に実力を伸ばし、融合・シンクロ・エクシーズ・アドバンス…4つの召喚法を操りながら勝ち続けた…『カードの精霊の声』が聞こえる…そう言った彼はモンスターと心を通じ合わせたかのように、フィールドを走り、跳び…観客を熱狂させた…!だが、ある試合で事故が起きた…想定の出力よりも強く投影されたリアルソリッドビジョンによって対戦相手が重傷を負った…!その時、観客達は批判する者…そして、その派手なデュエルを喜ぶ者とに分かれた…そして、ズァークは変わっていった…!】

対戦相手の負傷…それによってズァークの運命は歪んでいく…。

 

 

【ズァークのデュエルは今まで以上に派手に、荒々しくなっていった…そして不動博士の曾孫の不動流星や神代凌牙…当時の強豪デュエリストを下しながら、決勝戦へと勝ち上がった…!】

 

「っ…凌牙を…!?」

 

「………」

 

「凌牙は本気を出してなかっただけよ」

知る名前が出てきた事で驚く権現坂やランサーズ…その中で翠達は静かに状況を見守っている…。

 

 

 

【そして決勝戦…それは激しいデュエルとなった…!次々と飛び出すドラゴン達…それに対峙したのは若手デュエリストのホープ、デュエルチャンピオンの称号を手にしていた九十九遊馬が操る希望の戦士達…!激しいデュエルの末にズァークは九十九遊馬に倒された…そして、世界の崩壊は始まってしまった…!他ならぬ私達の手によって…!】

 

「…デュエルで負けたズァークに、ゴミを投げた奴がいた…」

 

【そうだ…!人々の悪意…それがズァークを『悪魔』として目覚めさせた…!人々の欲望に応え、激しいデュエルを続けていた奴の精神は限界を迎えていたのだ…!そして奴は己のエースであった融合・シンクロ・エクシーズ・アドバンス…それぞれを象徴するドラゴン達と1つとなり──その身を『覇王龍ズァーク』へと変えたのだ…!】

 

「っ…モンスターと1つに…!?そんな事があり得るのか…!?」

 

【それがあり得てしまったのだよ、デニス……私の作り上げたリアルソリッドビジョンはカードに宿るモンスター──カードに宿る『精霊』の感情をも形にしてしまった……その怒りが我々へと牙を剥いたのだ…!】

ズァークが悪魔と化してしまった経緯を語る零王…彼は天才過ぎた…その飽くなき研究心が悪魔を誕生させてしまったのだ。

 

 

 

【……私は『悪魔が生まれた日』に立ち会った…その身に宿した怒りと闘争本能で暴れ回るズァーク…だが、人々は指を咥えて見ているだけではなかった……私は見たのだ…赤い背中を…人々を守る為に戦う、白波遊海の率いるデュエリスト達の背中を…!】

 

「……遊海は世界を守る為にズァークに戦いを挑んだ…でも、その戦いは終わらなかった…」

 

【そうだ…!ズァークを鎮圧する為に集まったデュエリスト達…その戦いは長引き、街1つが更地に変わっていった……それを見た私は()()を取らねばならないと思った…!】

 

『責任だと?』

 

【そうだ…!悪魔を生み出してしまった責任を取る…その為に私はズァークへ対抗する為のカードの作成に取り掛かった、人々のドス黒い悪意によって誕生してしまったズァーク…それに対抗できるのは──生命に溢れた『大自然』の力…それしかないと思った…!私は世界を回り、様々なデータを集めた…遥かな宇宙から潮の満ち引きを左右する『月』の力、何度踏み倒され、燃やされても芽吹く『植物』の力、時に荒々しく全てを吹き飛ばし、時に優しく我々を包む『風』の力…そして、長い冬を乗り越え耐え忍び、春には躍動する『動物』の力…そこには浅ましい執着や欲望もない…何千何万年も繰り返されてきた大自然の営み…その強靭な力をカードに込める事ができれば、悪意の化身であるズァークなど軽々と凌駕できる…私はそう考えた…!そして私は、ついに4枚のカードを作り上げた…!だが…!】

 

 

 

 

Side零王

 

 

 

『できた…!できたぞ!ズァークに対抗する為のカードが!!』

赤馬零王は苦心を重ねながら…ついにズァークへの対抗策となるカード…大自然の化身『エン』シリーズのカードを完成させた…!

 

 

『デュエリスト達の戦いは今も続いている…早くこのカードを届け、ズァークを倒さなければ!!』

カードを手に戦いの場へと向かおうとする零王…その時──

 

 

「私にやらせて、父様!!」

 

『っ!!レイ!何をするんだ!!』

零王の手からカードを奪う人影…それは世界における零王の娘であり、プロデュエリスト、赤馬レイだった…彼女は父からカードを奪って戦いの場へと向かってしまったのだ…!

 

 

『待て!待つんだ!レイ!』

 

「来ないで父様!父様の技術は…きっと戦いが終わった後の世界に…未来に必要よ!」

 

『何を言ってるんだ!未来に必要なのは、お前達…()()の力だ!私は、お前達が安心して暮らせるように…ズァークを倒さなければならないんだ!』

 

「違うのよ…!ズァークを生み出してしまったのは私達、デュエリストなの…!だから、私がズァークを倒さなきゃならない!それに…父様を危険な目に遭わせたくない!!」

 

『レイ!!』

必死にレイを追いかける零王…自分が生み出してしまった『悪魔』を倒す為に必死な父、そしてデュエリストのせいで『悪魔』が生まれてしまったという考えを持っていた娘…2人の想いはすれ違ってしまったのだ。

 

 

………

 

 

『っ…デュエリスト達がいない…!?ズァークにやられてしまったのか…!?』

そして…レイの妨害をくぐり抜け、街を覆っていたスフィアフィールドをなんとか突破して戦場へと踏み入った零王…だが、戦場にデュエリスト達の姿はなかった…。

 

 

【■■■■■──!!】

 

『っ…!?』

その時、戦場に咆哮が響く…それは紛れもなく『覇王龍』の咆哮だった…。

 

 

 

そして、周囲に花が咲き乱れる

 

 

太陽が沈んだにも関わらず、鳥達が飛び回る

 

 

穏やかな…しかし強い風が吹き荒れる

 

 

夜空に輝く月から雫が落ちる…。

 

 

 

『レイ!お前は…やめろ!やめるんだ!!』

1人でズァークと対峙するレイ、彼女は4枚のカードから溢れる大自然の力をその身に取り込もうとしていたのだ…!

 

 

 

【貴様…貴様!許さんぞ…!よくも一つになった我らを──!!】

そして、ズァークの断末魔が響く…その体に大自然の力を取り込んだレイはその力を開放、ズァークを元のドラゴン達へと分離させる…だが、それと共に世界は引き裂かれてしまった…!

 

 

 

 

Side out

 

 

 

【気付いた時、私は見知らぬ街にいた…そこは今でいう舞網市……そこでは開発されたばかりのソリッドビジョンが使われたスタンダードなデュエルが行われていた……その時点で記憶を失っていた私は、何かに導かれるようにリアルソリッドビジョンの開発を始めた……私の脳に染み付いていた技術者としての知識に導かれて…そして、私はキミと出会ったのだ、遊勝】

 

「…そうか、それがきみの原点か…零王」

 

「これが4つの次元が創世された真実…だが…何か()()()()ぞ……?」

『世界』で発生した「悪魔が生まれた日」、そして世界分裂による4つの次元創世の事実を語る零王…遊勝は零王の悲劇に俯く…だが、そんな中…レジスタンスのカイトは小さな違和感を覚えていた。

 

 

 

【記憶を失っていた私がこの事を知っているのは…()()()()()()()()からだ…舞網で過ごす中で積み重なった小さな違和感、それを解明しようとした結果、私は『1つの世界』の記憶を思い出した……そして、私はある想いに取りつかれた…!私がこうして生きているのなら、あの場にいたレイも4つの次元の何処かで生きているのではないかと…!】

 

『そうだ…!ある時から()()()()や母さんも顧みずに研究に没頭するようになった…!そして、母さんは変わってしまった…!!僕は母さんを悲しませるアンタが許せなくて、アンタが何をしているのか確かめて、懲らしめるつもりだった…!!』

 

「零児…」

1つの「世界」の記憶を取り戻した事で娘、レイを探す事に囚われた零王…その姿を見た零児は感情を露わにする。

その姿はLDSの社長としてではなく、ランサーズのリーダーとしての顔でもない…父への怒りを露わにする『息子』としての…彼の本心だった。

 

 

【そうだったな…そして、お前はこの融合次元のアカデミアへとやって来た…】

 

『ああ、そして知ったんだ…!アンタがアカデミアを拠点にした次元侵略を企んでいる事を!』

 

【違う…次元侵略ではない…!私がアカデミアを拠点に置いたのは、レイの痕跡を見つけたからだ…!!】

 

「セレナの事か…!」

 

【そうだ…くまなく次元を巡り、レイの痕跡を探し続けた私は彼女に出会った…幼い頃のレイに瓜二つの、そして()()()()()()を着けた彼女を…!】

娘の痕跡を追い求めた零王…彼はついに、その痕跡を融合次元で見つけた…世界分裂の影響で4つに分かたれたレイの『欠片』たる彼女を…!

 

 

『しかし、セレナはレイとしての記憶を持っていなかった…だから、アンタはこう思ったんだろう?「他の次元にもレイの面影を持つ少女達がいるはず、彼女達を集めなければならない」と…!』

 

【その通りだ…!私の望みは、分かたれてしまったレイの欠片達を1つに結びつけ、レイを復活させる事…!アークエリアプロジェクトはその為の手段に過ぎない!!】

これまでの零王の言葉からその考えを先読みする零児、そして零王はその目的を明かす…!

 

 

【アカデミアで鍛え上げたデュエリスト達を各次元に派遣し、人々をカード化して集める事で散らばった生命エネルギーを再び凝結させ、4つに絶たれた次元を1()()()()()()()()!それによってレイを取り戻す…!その為に、私はこの装置を創り上げた!!】

 

ゴゴン…!

 

「っ…!?なんだ!?」

 

「壁が開いていく…!」

零王の言葉と共に玉座の背後の壁が開き、緑色の光を放つ巨大な塔のような装置が現れる…!

 

 

 

【これは、私が世界再生の為に開発した装置…!あの中には()5()()()()『アークファイブ』が生まれつつある!】

 

「「「『第5の次元!?』」」」

零王の予想外の言葉…科学力における新たな次元の創造という言葉にランサーズ達は驚きを露わにする!

 

 

【生命エネルギーが必要量に達した時、アークファイブは起動する…!そして4つの次元は()()()()()()()な分割された状態を解消して、本来の姿を取り戻す!その世界にレイの欠片達を取り込む事で、レイは蘇る!!これが新たな世界の始まり!即ち──『リバイバル・ゼロ』なのだ!!

 

「っ…!」

 

「柚子、下がってろ…!」

その瞳に狂気を宿した零王はレイを復活させ、分割された世界を1つにする計画──『リバイバル・ゼロ』について明かす。

その異様な迫力に柚子は顔を青褪めさせ…遊矢や権現坂が彼女を守るように零王を睨みつける!

 

 

 

 

「フン…()()()()()()()()()()、という奴だな赤馬零王…自らの娘の為に世界を引っ掻き回すとは、呆れてものも言えん」

 

【なに…!?】

 

「ジャック!?」

赤馬零王の壮大な計画を前にジャックがため息を吐く……赤馬零王の愚かさに呆れていたのだ。

 

 

「俺は知っているぞ…かつて、自分の想い人を救う為に世界1つを敵に回し、悪を為した『英雄』を……その経験を踏まえて言おう、()()()()()()()()()──ただし、()()を除けばな」

 

【レイは、レイは死んでなどいない!姿形は違っても、この世界に生きている!!】

 

「現実を見るがいい!赤馬零王!柊柚子も、リンも、黒咲瑠璃も、セレナも!()()()()()()()()!!それぞれの次元でそれぞれの家族や友を得て、平和に暮らしていた()()だ!例え、貴様の娘の欠片を宿していたとしても!貴様の()()()ではないだろう!!愚か者!!」

 

【っつ!?】

ジャックは零王に正論を叩きつける。

ズァークの分断と共に分かたれ、それぞれに転生したレイの欠片たる少女達…彼女達は確かにレイの一部ではあるのだろう…だが、彼女達にも自意識があり…家族との暮らしがあった。

 

それを無視した赤馬零王の計画は『暴走』以外の何者でもない…!

 

 

「他にも言いたい事はあるが…この場ではこれ以上は語るまい…お前に譲るぞ、赤馬零児」

 

『感謝するジャック・アトラス…赤馬零王、私はアンタを許さない…自分の欲望の為に世界の平穏を乱し、そこに生きる人々の思いを無視して次元を統合しようとする…それは『悪』以外の何者でもない!!』

零王の計画に否定の言葉を叩きつけるジャック…その言葉と共に零児も父の蛮行を非難する…。

 

 

 

【零児…!お前は白波遊海から()()を聞いたのだろう?ならば、知っているはずだ!「1つの世界」を滅ぼした元凶たる悪魔『覇王龍ズァーク』…!お前の姉、レイの自己犠牲によって倒された奴もまた()()()()()!お前の隣に立つ()()()やアカデミアの戦士ユーリとして!それを知ってなおも私の敵となると言うのか!!】

 

「遊矢が、ズァークの欠片…!?お前、知ってたのかよ!?」

 

「うん、昨日の夜…遊海から全部聞いてる…オレやユーリ、ユーゴ…そして…」

 

《オレが『悪魔のデュエリスト』の欠片だと言う事はな…》

 

「うおあっ!?……ユート!?ユーレイ!?」

遊矢がズァークの欠片である事を明かす零王…その言葉を聞いた沢渡は遊矢に問いかける、当然遊矢はその事を理解していた…そして霊体の状態で現れたユートに沢渡はびっくりしている。

 

 

 

「赤馬零王…確かに、オレ達は悪魔の欠片なのかもしれない…でも、オレはデュエルで笑顔を届ける為に…お前と戦う!」

 

《その装置にハートランドの人々が囚われているなら…必ず救い出す!!》

 

【貴様ら…!】

赤馬零王を倒す為に遊矢とユートの心が重なる…自分勝手な目的の為にエクシーズ次元を侵略し、悲劇を起こし続けた彼を諌める為に…!

 

 

『その通りだ…榊遊矢は榊遊勝の教えを受け継ぐエンタメデュエリスト!彼は数々の戦いを乗り越え、人々を笑顔にしてきた!その思いはエクシーズ次元に侵攻したアカデミア軍の心をも動かした…彼なくして4つの次元の平和はない!!赤馬零王!僕は…私はランサーズを率いる者として、私の信念を貫く!!』

 

「零児…!」

 

【ぐ、ぬ…!!】

そして零児はランサーズのリーダーとして、遊矢と並び立つ…世界の平和を乱す零王を倒す為に!

 

 

【愚かな…!その信念が再び世界を破滅に向かわせる事になぜ気づかん!!】

 

『世界は滅びない!滅ぼさせない!私達、デュエリストがいる限り!!』

 

【ならば、もう話し合いの余地はない…世界を1つに戻す為、レイを蘇らせる為…この手で榊遊矢を葬り去る!邪魔はさせんぞ…零児!】

話し合いは決裂した…ここからは、決闘で語り合うのみ…零王、零児、遊矢がデュエルディスクを展開する!

 

 

『榊遊矢…我が父を止める為、力を貸してくれ!』

 

「ああ…いこう!零児!」

 

[アクションフィールド『クロス・オーバー』アクティブ!!]

アクションフィールドが発動…周囲の景色が移り変わる!

 

「遊矢…!負けないで!」

 

「ここが分水嶺だ!気合いを入れろ!」

 

「遊矢…零王を止めてやってくれ…!」

 

「柚子…権現坂…父さん…!ああ!!」

仲間達の声援を受け、対アカデミアにおける最終決戦が始まる!

 

 

 

 

「『【デュエル!!】』」

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢&零児対零王

 

 

 

 

世界の命運を賭けたデュエル、先攻を取ったのは遊矢…彼はあらゆる状況に対応できるように、魔法・罠カードへの対抗手段を持つ『星読みの魔術師』『時読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティングし、エースである『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を喚び出す。

 

続く零児は得意とする展開力によってペンデュラム召喚を絡めて『DDD烈火王テムジン』『DDD疾風王アレクサンダー』『DDD怒涛王シーザー』…融合・シンクロ・エクシーズの三王を召喚、さらに永続魔法『独占封印の契約書』によって零王の融合・シンクロ・エクシーズ召喚を封印した…融合次元にいた零王ならば、融合で攻めてくると想定していたからだ。

 

しかし、零王は生粋のデュエリストではないが()()の頭脳を持つ…その力が遊矢達へと牙を剥く…!

 

 

 

【私は手札のスケール1『精霊炉(スピリット・リアクター)』2体でペンデュラムスケールをセッティング!!】

 

「『なんだと!?』」

零王が選んだ手段…それはまさかの『ペンデュラム召喚』──デニスが持ち帰ったペンデュラムカードやオベリスクフォースのデュエルデータを解析する事で零王はペンデュラムカードを創り出していたのだ…!

 

 

「だけど、ペンデュラムスケール1同士ではペンデュラム召喚はできない!」

 

【フッ…!私はレフトペンデュラムスケールの『精霊炉』のペンデュラム効果発動!自身のペンデュラムスケールを相手のペンデュラムカードと同じにする!私が選択するのはスケール8の『時読みの魔術師』!これによりレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能!!】

 

「そんな…!まさか!!」

 

【天地に宿りし精霊よ!罪に穢れし我が手を清め、世界再生の礎となれ!ペンデュラム召喚!!現れろ!『精霊機巧軍(スピリット・テック・フォース)ペンデュラム・ガバナー』!『精霊結晶(スピリット・クリスタル)─サラマンダー・コア』!!】

零王の叫びと共に時空の扉が開き、天使のような石像と燃え盛る炎の炉が現れる…これが零王のランサーズ対策──ランサーズの得手を逆手に取る戦術だった…!

 

 

 

【覚悟はいいな…!私は『ペンデュラムガバナー』の効果発動!フィールドの『精霊結晶』モンスターをリリースする事でその効果を2回発動できる!私は『サラマンダー・コア』をリリースし、その効果を発動!フィールドのモンスター1体を破壊し、そのプレイヤーに800ダメージを与える!まずは忌まわしき悪魔の下僕、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』だ!】

 

「ぐううっ!?」

 

「遊矢!」

炎の力を取り込んだペンデュラムガバナーがオッドアイズを粉砕する!

 

 

【2回目の効果発動!零児の『烈火王テムジン』を破壊!これによって『独占封印の契約書』で封じられた融合召喚が可能になる!】

 

『ぐっ…!!』

さらに、テムジンが破壊され零児がダメージを受ける!

 

 

【早くもお前が敷いた鉄壁の布陣に綻びができたな?零児】

 

『くっ…しかし、私には「アレクサンダー」と「シーザー」が残っている!お前の思い通りにはならない!』

 

【その言葉をそっくり返そう…お前の思い通りにはならんのだよ…!『ペンデュラムガバナー』は私がセッティングしたペンデュラムスケール内…つまりレベル2から7のモンスターの攻撃を封じ、さらに!自身はペンデュラムモンスター以外のモンスターに攻撃されない!】

 

「なっ…!?」

 

「つまりオレ達は、レベル8以上のペンデュラムモンスターで攻撃しなきゃ『ペンデュラムガバナー』を倒せないって事か…!?」

それは零王による実質的な『特殊召喚メタ』…遊矢達は大幅にプレイングを制限されてしまったのだ…!

 

 

 

 

 

 

《これはえげつないねぇ…無策に十代が突っ込んだら勝ち目は薄い…やりようはあるけどね……翠、榊遊矢達は勝てるのかい?》

 

「勝てるには勝てるはずよ…でも…」

零王のプレイングを見たユベルが翠へと話しかける…その問いを聞いた翠は歯切れ悪く頷く…。

 

 

「……十代君、いつでも動けるようにしておいて」

 

「分かってる……ちょっと、()()()()もするしな」

 

「(囚われているはずの瑠璃とリンがこの場にいないって事は、凌牙君と遊星君の作戦は成功したはず…遊矢君の心には多少の()()がある……でも、彼の中のズァークがどう動くか…!)」

状況を確かめながら翠は思考する…本来の物語に比べれば、状況は()()…覇王の目覚めを促した『パラサイト・フュージョナー』は遊矢に寄生せず、柚子シリーズは全員ランサーズが取り返した…残るは次元統合装置を止めるだけ、なのだが…。

 

 

「(場合によっては、遊海さんが来るまで私が遊矢君を押さえないと…)────っ…!?」

 

「母さん?どうしたの…?」

 

「っ…大丈夫、ちょっと…(いま、遊海さんの苦しむ声が、聞こえた、ような…!?大丈夫ですよね…?遊海さん…!?)」

あらゆる状況を想定する翠…その時、不意に嫌な感覚が翠に襲いかかった…。

 

 

 

 

【零児、今ならばまだ間に合うぞ…!私の下で分裂した世界の再生に力を尽くすと誓うならば、お前をアカデミアへと迎えよう】

 

『くどいぞ、赤馬零王!私は自分の信念は曲げない…私は榊遊矢と共にお前を倒す!』

 

「零児…(ドクン)っぐ…!?」

 

『っ…遊矢…?』

肉親である故の情けなのか…零王は零児へと投降を促す…その時、遊矢に強い動悸が襲い掛かった…!

 

 

ぐ、う…!!分裂、させたのは、誰だ…!

 

「っ…ダメ!遊矢!!」

 

「遊矢…!まさか、この状態が…!」

 

()は、応えただけだ…!お前達の、もっと激しく…!もっと強くという、欲望にっ…ぐうっ…!?」

遊矢の瞳が紅く輝き、遊矢らしくないドスの効いた声が喉から漏れる…それは…遊矢の内に眠る『悪魔』の意思…!

 

 

 

【貴様…ズァーク…!榊遊矢の中に宿る悪魔め…!!】

 

「っ…おい!赤馬零王!お前、()()()()()()()()()()()()のが分からないのか!!」

 

【なに…?】

遊矢の声色からズァーク復活の予兆を感じ、憎悪を露わにする零王…彼に向けて十代が叫ぶ…!

 

 

「ズァークはオレ達デュエリストや観客達の欲望や悪意がキッカケで生まれちまった『怪物』だ…!それに悪意をぶつけたら、余計に()()()()()()だけだってのが分からないのかよ!!」

 

【っ…】

十代は分かっていた…ズァークとは、人間達の欲望や悪意はよって生まれてしまった『復讐者(アベンジャー)』…封印されている今でこそ、遊矢達の精神の奥底に封じられてはいるが…遊矢達の抱いた負の感情や向けられた悪意を力に変え、力を増しているのだと…!

 

 

【だとしても関係ない…!私はズァークを倒し、レイを蘇らせるのだ!!】

 

「だから、それは()()()()って奴だろ…!!」

 

《無駄だよ、十代…いつかの…コブラの時みたいに、奴は目的を達成したいと思うあまりに()()になってる…頭を冷やしてやんないと止まらないパターンだよ……まったく、子の心は親知らずって奴だね》

レイを取り戻す事以外に盲目的になっている零王…その暴走を止める手段は……。

 

 

『榊遊矢…我を失うな、きみは()()()()()()…白波遊海も、遊勝さんもきみを信じている…!』

 

「零児…!(胸の奥から、溢れ出ようとしている…!これが、ズァーク…!でも、まだ…!耐えられる…!)」

 

《オレ達は、ズァークを押さえながら、勝つんだ…!!》

胸の奥から溢れ出す『闇』を自覚する遊矢とユート…だが、零児や遊勝、遊海の言葉を思い出しながら、必死に闇を抑え込む…!

 

 

 

「オレの、ターン!ペンデュラム召喚!蘇れ!『オッドアイズペンデュラムドラゴン』!そして、手札から現れろ…!『EMユーゴーレム』!」

遊矢は必死に悪意を抑え込みながらデュエルを続ける…! 

 

 

「『EMユーゴーレム』はペンデュラム召喚に成功したターン、自身と融合素材となるモンスターを墓地に送り、融合召喚を行える…!オレは、『オッドアイズ』と『ユーゴーレム』を融合!!二色の眼の竜よ…!土より生まれし巨人となりて、新たな種族と生まれ変わらん!融合召喚!『EMガトリングール』!!」

二色の眼とU字型の手足を持つゴーレムが融合、ガトリング銃を構える小鬼を喚び出す。

だが、そのモンスターは『EM』らしくない闇に包まれている…!

 

「ぐ、う…!『ガトリングール』が融合召喚に成功した時、フィールドのカード1枚につき200ダメージを、与える…!フィールドのカードは、12枚…!2400の、ダメージだ!!」

 

【がああっ!?】

 

『っ…!(なんと殺意の高い効果だ…!遊矢の中のズァークの凶暴性が、彼のデュエルに影響を与えているのか…!?)』

ガトリングールのガトリングが火を吹き、零王を撃ち抜く…その効果から零児は遊矢へのズァークの影響を感じ取る…!

 

 

「そして、ペンデュラムモンスターを素材に融合召喚された『ガトリングール』は、さらなる効果を得る…!相手モンスター1体を、破壊し…その攻撃力分のダメージを、与える…!俺は『ペンデュラムガバナー』を、破壊する!!」

 

【お前の、思い通りになどさせるか…!ライトペンデュラムスケールの『精霊炉』のペンデュラム効果発動!フィールドに炎・水・地・風属性いずれかの属性のモンスターが存在する時、自分フィールドのモンスターは1ターンに1度だけ、戦闘・効果では破壊されない!!】

 

『っ…私のモンスターを利用されたか…!』

ガトリングールの銃弾の雨がペンデュラム・ガバナーの前に展開されたバリアに阻まれる…零児のフィールドに風属性の『アレクサンダー』と水属性の『シーザー』が存在した事で、効果が起動したのだ…!

 

 

「ぐ、う…オレは、カードを1枚伏せてターン、エンドだ…!」

 

【っ…ズァークの覚醒は間近か…!レイの欠片達が揃わない今、『アークファイブ』を起動しても…!】

脂汗をかきながらターンを終える遊矢…その不安定な状況を見た零王は焦りを露わにする。

この時点で次元統合装置『アークファイブ』は()()()()()()()、零王の最大の目的であるレイの欠片たる少女達は全員、ランサーズに保護されていたからだ…。

 

 

 

『赤馬零王…!お前にズァークを「悪魔」呼ばわりする資格はない!己の欲望の為にエクシーズ次元の人々をカードに封じ、あまつさえ新次元を創造するエネルギーにしようなど言語道断!お前のやっている事の方が…まさに()()()()()だ!!』

 

【零児…!!】

 

『次元統合など、絶対にさせない…4つの次元の平和は、我々が守る!!』

自分の欲望の為に外道へと堕ちた父を止める為、零児は立ち向かう…!

 

 

 

 

『現れろ!「DDD死偉王ヘル・アーマゲドン」!!』

ペンデュラムモンスター以外での攻撃を封じられた零児…それを突破する為、彼はエースモンスターである『ヘル・アーマゲドン』をアドバンス召喚で喚び出す!

 

 

「上手いぞ零児…!これで『独占封印の契約書』の効果は破棄されたが…闇属性の『ヘルアーマゲドン』と『ガトリングール』しか存在しなくなった事で『精霊炉』の効果を潜り抜けて『ペンデュラムガバナー』を撃破できる!」

遊勝が零児の狙いを察する…これで零王へと攻撃が届く…!

 

 

【だが、攻撃力2800の『ペンデュラムガバナー』が攻撃力3000の『ヘルアーマゲドン』に破壊された所でダメージは僅か200だ…!】

 

『それはどうかな…!「怒涛王シーザー」が墓地に送られた事で私はデッキから「契約書」カードを手札に加えられる……そして!私は永続魔法「戦神の不正契約書」を発動!!1ターンに1度、バトルフェイズ終了時まで自分の「DD」モンスターの攻撃力を1000アップさせ、相手モンスターの攻撃力は1000ダウンする!これでダメージは2200──お前のライフを削りきれる!!』

新たな契約書が零王を追い詰める…!

 

 

 

「っ…流石、だな…零児…!」

 

『待っていろ、遊矢…!私がこのデュエルを終わらせる!!バトルだ!「ヘルアーマゲドン」で「ペンデュラムガバナー」を攻撃!!』

脂汗をかく遊矢を心配しながら…零児は攻撃を仕掛ける!

 

 

【見事…だが、甘いぞ零児!!罠カード『ディススイング・フュージョン』を発動!相手のペンデュラムモンスターが攻撃してきた時、その攻撃を無効にしてコントロールを得る!さらに、コントロールを得たモンスターは効果では破壊されない!】

 

『なにっ…!?』

 

「ペンデュラムモンスターへのメタカード…!!守りは盤石だったか…!」

零王の罠カードによってヘルアーマゲドンのコントロールが奪われる…!

 

 

『ペンデュラムモンスターへの対策もしていたか…!』

 

【まだだ…!『ディススイング・フュージョン』のさらなる効果!相手モンスターのコントロールを奪ったターンに融合素材を1体減らして融合召喚を行なう!私は『ペンデュラムガバナー』1体で融合!!精霊宿りし機械の兵隊達よ!いま新たな力を得て、精強なる大軍として舞い戻れ!融合召喚!!集結せよ!レベル12!『大精霊機巧軍(マスター・スピリット・テック・フォース)─ペンデュラム・ルーラー』!!】

 

「攻撃力3500…!」

さらに零王は掟破りの融合を行ない──最上級のペンデュラム融合モンスターを喚び出す!

 

 

【フフ…ハハハ…!変わらないな、零児…!昔からお前は()()()()だった…!常に正しく、真っ直ぐで自分の信じた道を突き進む……()()()()()()()()()!私がペンデュラム効果によって破壊を防げばその条件を崩しにかかり、『ペンデュラムガバナー』へレベルとモンスターの制限をかければ、それを上回るモンスターで勝てると考える!()()()()()()()()()()()()!お前の選ぶ手は全て()()()()に過ぎん…目の前の現象にばかり気を取られているようでは、デュエリストととしても経営者としても…お前はまだ二流だ!!】

 

『っ───』

零王の指摘に零児は強い衝撃を受ける。

……勘違いしてはならないが、零王は決して妻の日美香や零児を愛していない訳ではない……それ以上に娘であるレイと「1つの世界」への愛が強いのである。

 

 

 

【さぁ…!これで次のターン、榊遊矢の『ガトリングール』を破壊し…お前を始末してやろう…!】

 

「そうは、いかない…!永続罠『二重大盾(ツイン・ビッグ・シールド)』を発動…!その効果で『ガトリングール』を2回まで、戦闘・効果による破壊から守る…!」

 

【悪あがきを…!貴様がシンクロ次元と融合次元の欠片を取り込む前に、必ず始末する!!】

朦朧とする意識の中で防御策を発動する遊矢…それを見た零王は忌々しげな表情を見せる…!

 

 

 

 

【ペンデュラム召喚!エクストラデッキから『精霊結晶─サラマンダー・コア』!そして手札から『精霊結晶─シルフィード・コア』!】

零王のターン…ペンデュラム召喚によって零王は燃え盛る炎の結晶と風の力を宿す結晶を喚び出す…!

 

 

【そして私は『サラマンダーコア』の効果で自身を手札に戻す…『精霊結晶』の効果は手札からペンデュラム召喚した時のみ発動できる…だが、勝ち筋は私にある!『ペンデュラムルーラー』の効果発動!『シルフィードコア』をリリースする事でその効果を2回発動できる!そして『シルフィードコア』は相手の魔法・罠カード1枚を破壊する事で800ダメージを与える!さらに!『ペンデュラムルーラー』自身の効果によって効果ダメージは2倍になる!!榊遊矢の『二重大盾』を破壊!1600のダメージ!!】

 

「ぐっ─!!」

破壊の光が遊矢の盾を破壊し、ダメージを与える!

 

 

【続いて『戦神との不正契約書』を破壊し!零児に1600ダメージ!!】

 

『くっ…!!』

続けた零児もカードが破壊され、ダメージを受ける…!

 

 

【バトルだ!『ペンデュラムルーラー』で『ガトリングール』を攻撃!!】

 

「ぐうっ…!!」

破壊光線がグールを撃ち抜き、破壊する…!

 

 

【これでお前を守るモノはない…!『ヘルアーマゲドン』で榊遊矢にダイレクトアタック!!零児よ…!お前のモンスターに悪魔の欠片を倒す栄誉を与えてやる─!!】

 

『っ─!遊矢!!』

 

「う、あああっ─!!!」

紫色の破壊光線が放たれる刹那…遊矢はローラースケートでフィールドへと飛び出す!

 

 

「アクションマジック…『回避』!その攻撃は、無効だ!!」

 

【っ…このタイミングでアクションカードを!!】

『クロスオーバー』の足場に飛び乗った遊矢はアクションカードによって難を逃れる…!

 

 

 

「ぐううっ…オレは、負けられない…!デュエルで笑顔を、届ける為に…!!──元の()を取り戻す、為に……ぐああっ…!!」

 

「遊矢…!!負けないで…!!」

 

『遊矢…!きみも、必死に抗っているのだな…!溢れ出そうとするズァークの意思に…!』

自意識とズァークの意思に揺れる遊矢…その姿を見た零児は遊矢が必死に戦っている事を確信する…。

 

 

『遊矢!諦めるな!きみは私と共に零王の野望を砕くんだ…!きみを悪魔になどさせない…必ず救い出す!だから、()()()()!!』

 

「零児…!うう、おおお!!」

 

《オレ達は…負けない!!》

必死に遊矢へと激励の言葉を送る零児…その言葉で遊矢とユートは自分を奮い立たせる…!

 

 

【無駄だ…!私の『ペンデュラムルーラー』と息子の『ヘルアーマゲドン』を前に、お前に抗う手段はない!】

 

「オレは、負けない!!」

勝利を確信する零王…その力に抗う為、遊矢は力を振り絞る!

 

 

 

 

「ペンデュラム、召喚!!エクストラデッキから『オッドアイズペンデュラムドラゴン』!『ユーゴーレム』!そして手札から『EMナイトメアナイト』!!」

遊矢はペンデュラム召喚によってモンスターを揃える、そして…!

 

「オレはレベル4の『ユーゴーレム』と『ナイトメアナイト』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙!!いま、降臨せよ!!ランク4!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

ユートのエース、反逆の牙が現れる!

 

 

「う、おおおっ!!オレは魔法カード『幻影騎士団憑依(ファントムナイツ・ポゼッション)』を発動!!エクシーズモンスターの『ダークリベリオン』に、『オッドアイズ』のレベルを与える!!」

 

【エクシーズモンスターにレベルを与えるだと!?】

 

「っ…!遊矢は『オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』を出すつもりか…!?」

 

「でも、あのモンスターはレベル7以下のモンスターを破壊する事で真価を発揮するモンスター…いま喚び出しても…!?」

エクシーズモンスターにレベルを与える…その様子を見た権現坂やデニスは反旗の竜の召喚を予想する…だが、遊矢はその予想を上回る!

 

 

「俺はレベル7の『オッドアイズ』と『ダークリベリオン』でオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」

二色の眼の竜と反逆の牙が銀河へと飛び込む!!

 

 

二色の眼の竜よ…!深き闇より蘇り、怒りの炎で地上の全てを焼き払え!!出でよ!ランク7!災いを呼ぶ烈火の竜!『覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン』!!

 

【覇王烈竜、だと!?】

フィールドに紅蓮の炎が渦巻く…その中から炎が噴き出す翼を持つ赫きドラゴンが現れる…そのドラゴンこそ、怒りの化身──『覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン』!!

 

 

「ぐ、うっ…!『覇王烈竜』の、効果発動!!ORUを全てつかい、フィールドの魔法・罠カードの効果全てを無効にし、自身以外の全てのカードを破壊する!!」

 

【なにっ…!?だが、『ディススイングフュージョン』の効果で『ヘルアーマゲドン』は破壊されず、『ペンデュラムルーラー』は効果では破壊されないっ、うおおっ!?】

 

『ぐっ…!凄まじい力だ…!!』

フィールドに紅蓮の炎が吹き荒れ、フィールド全てを燃やし尽くす…!

 

 

「さらに、『覇王烈竜』の攻撃力はこの効果で破壊したカード1枚につき、200アップする…!バトルだ!『覇王烈竜』で『ヘルアーマゲドン』を攻撃!憤激のデストラクション・バースト!!」

烈火の炎が零王に奪われたヘルアーマゲドンを滅殺する…だが…!

 

『っ!?ぐああっ!?』

 

「兄様!!」

 

「な、に…!?零児…!?」

 

【残念だったな…!『ディススイングフュージョン』でコントロールを奪ったモンスターが受ける戦闘ダメージは、元々の持ち主が受ける!】

突如として零児に襲い掛かるダメージ…それは零王のカード効果によるダメージだった…!

 

 

「だが、次はない!!『覇王烈竜』はバトルフェイズ中に2回攻撃できる!俺は『ペンデュラムルーラー』を攻撃!!憤激のデストラクション・バースト!!」

 

【ぐおあああ!!】

だが、2撃目は零王に直撃…大ダメージを与える!!

 

 

【ぐっ…だが、耐えたぞ…!次のターンになれば…!】

 

『まだ、だ…!俺は墓地の『ナイトメアナイト』の効果、発動!自身を除外し、このターンに戦闘ダメージを受けたプレイヤーに1000ダメージを、与える!!』

 

【なっ…!?】

 

「っ…!待て!遊矢!!そのカードを使ったら、零児のライフまで尽きちまうぞ!!」

覇王烈竜に闇の力が集中する…だが、その効果は零児にもダメージを与えてしまう…!

 

 

「止まって…止まって!遊矢!!」

 

ぐっうう…!!あああっ──!!()()()!零児─!!」

 

『っ!!』

それは怒りに抗う遊矢の叫び…その声を聞いた零児は咄嗟に飛び退く!

 

「ナイトメア・バースト!!」

 

【ぐっ…がああああ!?】

暗黒の破壊光線はまず零王の()()に着弾、零王を王座へと叩きつける、そして──

 

 

『アクションマジック「加速」!!効果ダメージを0にする!!』

アクションマジックを獲得した零児のスレスレを暗黒の破壊光線が通過…アカデミアの天井を貫いた…!

 

 

零王LP0

 

遊矢&零児 WIN!

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!!」

 

『っ…遊矢!大丈夫か!!』

 

「大、丈夫……ごめん、危ない目に、遭わせて…!」

 

『いいや…!よく抗ってくれた…きみの声がなければ、私はアクションカードの存在を忘れていた…!』

 

デュエルが決着し、大量の汗を流しながら膝をつく遊矢に零児が駆け寄る…遊矢はギリギリで理性を保ち、勝利を掴む事ができたのだ…。

 

 

 

 

【ぐ、う…!私が、敗れる…とは…!!おのれ、ズァーク…!!】

 

「罠カード『衝撃の拘束剣』発動!!」

 

【なっ、そのカードは!!】

遊矢と零児に敗れた零王…その体を王座に縫い付けるようにリアルソリッドビジョンの光剣が服へと突き刺さる、そのカードを発動したのは遊勝だった。

 

 

「懐かしいだろう、零王…このカードはきみが作った『失敗作』のカード…デュエルシステムにバグを起こし、デュエルが終わっても消えないリアルソリッドビジョン……初めて使った時に何時間もきみに張り付けにされたのが懐かしいよ」

 

【遊勝…】

零王を拘束した遊勝は彼の前に座り込む…。

 

 

「零王…柚子達がきみの娘の欠片である事も、遊矢がズァークの欠片だと言うのも確かな事実だ…しかし、なんでそれを()()の私に話してくれなかった?なんで、1人で全てを抱え込んでしまったんだ?」

 

【それは…私の『罪』だからだ…!ズァークを生み出し、『1つの世界』を破滅させ、娘を失った私の…!私が、レイに報いるには、これしかなかったのだ…!!】

 

「……全て自分で抱え込んでしまうのは…きみの悪い癖だぞ?零王…きみは世界で一番の大天才だ…きみならば、もっと穏やかに、安全に目的を果たす手段も考えついたはずだ……私も精一杯の協力をしたのに…」

 

【遊勝……ああ…そんな未来があればよかったのにな…】

遊勝は零王の本心を見抜いていた、零王は「1つの世界」の生き残りとして、世界を滅ぼしてしまった者としての責任を果たそうとしていたのだ…彼を支える家族や、親友の事すらも忘れるほどに…。

 

 

「零王、人間は誰しも失敗から学ぶもの……一緒に考えよう、きみの娘を取り戻し、私の息子の中の悪魔を倒す方法を…」

 

【遊勝……すまなかった…!!】

零王は静かに涙を流す…掛け替えのない友人の言葉が、彼の心を溶かしたのだった。

 

 

「フン…頭は冷えたようだな、赤馬零王」

 

【シンクロ次元の、ジャック・アトラス…】

デュエルの前よりは冷静さを取り戻した零王にジャックが話しかける。

 

 

「貴様の言い分は聞かせて貰った…だが、お前は()()()()()()()()()()事がある」

 

【私の、間違い…?】

 

「話してやれ、翠…本来は遊海の役目だろうがな」

 

「ええ…初めまして、赤馬零王さん…私は白波翠、遊海さんの妻です」

 

【っ…!?白波遊海の妻…!?なぜ、お前がこの次元に存在している!?】

ジャックに促され、翠が零王に話しかける…自分と同じ「世界」の人間の登場に零王は驚いている…。

 

 

「零王さん…私達の世界は()()です、戦場だった街は数キロ範囲のクレーターになっちゃいましたけど……世界分裂が起きる寸前にズァークは世界から()()されていたんです…巻き込まれたのは貴方と娘さん、そして遊海さんだけなんです…」

 

【ズァークの隔離ができていた…!?それでは、戦場に誰もいなかったのは…!?】

 

「……ズァークを隔離して()()()で戦う為に、遊海さんが囮になっていたんです……おそらく、連戦の疲れで遊海さんが失神していた時に…貴方達が来てしまった……この次元は「1つの世界」が分かれた次元ではなくて、元々4()()()()()()()()()()新世界だったんです」

 

【そん、な…!私の、してきた事は、無駄だった、のか…】

翠にこの世界──ARC次元の真実を伝えられる零王…。

 

彼はそもそも、世界が滅びてしまったと勘違いしていたのだ。

 

「そうか、零王の話に違和感を感じていたのはそれか…彼はおそらく、自分と白波遊海以外に「1つの世界」の生き残りがいないと思っていた…だから、なおさらに追い詰められていたんだ…」

そして、カイトが零王に感じていた違和感の正体に気付いた…。

 

 

「零王さん、元の世界に戻れば…全てを()()()にできる方法があります…!だから、アカデミアの侵略作戦を止めてください…貴方の娘さんの為に…!」

 

【レイ…!私は、なんて愚かな事を…!!】

翠の言葉を聞いた零王は罪悪感に泣き崩れたのだった…。

 

 

 

 

 

『………これで、次元戦争は決着したな…』

 

 

()()()、まだだ…!この状況を作った()()がいる…!」

 

 

『っ…遊海…!』

 

「すまん、遅くなった……父親との決着はついた、らしいな…」

父親の暴走を止め、安心した様子を見せる零児…だが、そこへ遊海達、別働隊が合流した…!

 

 

 

『次元戦争は、まだ終わってない…!』

遊海が睨む先…そこにいたのは────

 



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元凶─理想と混沌の先に─

こんにちは!S,Kです!

ついに次元戦争の元凶である赤馬零王を制圧したランサーズ…だが、彼らには戦うべき『黒幕』の存在があった…。


それでは最新話をどうぞ!


「まだ、次元戦争は終わってない…!」

 

「っ…遊海さん!!大丈夫ですか!?」

遊矢と零児、遊勝によってアカデミアの総帥・赤馬零王を説得する事に成功した矢先…ドクトル制圧の為に動いていた遊海達が合流する。

そして…遊海は明らかに消耗していた、肩を城之内に支えられていなければ立つ事ができない程に…。

なお、眠っているセレナはカイザー亮の背に背負われている。

 

 

『悪いな翠、この馬鹿…『パラサイト・フュージョナー』に寄生されやがって…ちょっと()()()()()()()()()()()んだが…回復も待たずにお前達と合流するって聞かなくてな……ああ、妖怪みたいな爺は無力化したから心配するな』

 

「ラプラス…!もう…!馬鹿!遊海さんの馬鹿!!さっきの…やっぱり気の所為じゃなかった!!」

 

「すまん…ちょっと、想定外の事を、されてな……」

 

「翠、遊海を責めないでやってくれよ…遊海なら大丈夫だって信じ過ぎちまったオレ達も悪いんだ…」

合流していたラプラスの言葉を聞いた翠は遊海に起きた事態を察して座り込んだ遊海の頭をはたく…そんな翠を城之内が宥めている…。

 

 

 

 

「白波遊海、()()とはどういう事だ?全ての元凶であるズァークの事を除けば…次元戦争の発端である我が父、赤馬零王は制圧できたはずだが…」

 

「いいや…()()()()の問題だ……こうして顔を合わせるのは、初めてだな…赤馬零王」

 

【お前が、赤帽子の英雄…決闘王、白波遊海か……ドクトルが迷惑を掛けたらしいな…すまなかった】

 

「……気にすんな、セレナを洗脳した奴には『罰』を与え、研究成果は全て破壊したからな」

遊海の『黒幕』発言に困惑する零児…その言葉に応えながら、遊海は『衝撃の拘束剣』で拘束された零王に話しかける。

遊勝の言葉によって毒気を抜かれていた零王は遊海に迷惑を掛けたらしいドクトルの行動を気にしていた…。

 

 

 

「答えろ、零王…どうしてお前は世界を1つにすれば()()()()と思った?何故、エネルギーを集める為に()()()()()()()()()という選択をした?」

 

【───えっ…?】

遊海の疑問に零王は咄嗟に()()()()()()()()…虚を突かれたような表情を見せている…。

 

 

【……この世界は、レイとズァークの力の衝突によって分裂した世界だと思っていた…だから、第5次元『アークファイブ』を核に世界を統一すれば、分かれてしまったレイも蘇ると…】

 

「確かに、考え方は間違っていないだろう…だが、こうは考えなかったのか?同じ原理で()()()()()()()()()()()()()

 

【あ……】

 

「…確かに、分かれてしまったレイが戻るなら…その予想はありえない話ではないな…」

遊海を言葉を聞いた零児が眼鏡を押し上げる…『アークファイブ』によってレイが蘇生できるなら、仇敵であるズァークも同じく復活してしまう可能性は高くなる…。

 

 

「そして、『アークファイブ』を起動する為のエネルギーとして『生命エネルギー』を利用する…それ自体も強いエネルギーだが、もっと()()()()()()()()()()エネルギーが存在する」

 

「それはデュエリストの闘争心によって生まれる力…『デュエルエナジー』だ、デュエルエナジーは学校1つの若きデュエリストの力を集めただけで次元の扉を開く事ができる程の力を生み出す…デュエリストではない者をカードにした生命エネルギーよりも、エネルギー効率は良いだろう…人間をカードに封じ込める貴様の科学力なら、装置は作れたはずだ」

 

「海馬…」

 

【デュエル、エナジー…!?】

さらに、エネルギー面…アカデミアはエクシーズ次元の人々をカードにする事で『アークファイブ』のエネルギーを確保しようとしたが…それよりも、かつてのデュエルアカデミアで行われたような【デス・デュエル】によって、アカデミアでデュエルエナジーを集めた方が…まだ、効率は高いだろう。

 

 

「カード化によるエネルギー回収とデュエルエナジーによるエネルギー回収…この2つの大きな違いは()()()()()()()()()()()()()事…カードにされる事による『恐怖』と『絶望』、その様を見た人々や、次元戦争による()()()()()()……そういう『負の感情』を好む者を()()()()()()()!!」

遊海の纏う覇気…怒りの感情が強まっていく…!

 

 

「茶番はここまでにしろ…!姿を現せ!!」

 

 

【っ…何を…?この部屋にいるのは私だけ──ぐ、ぐううっ!?】

 

「っ…零王!?」

 

「父さん!!」

 

「遊勝!零児!彼から離れろ!!」

怒りを宿した目で零王を睨みつける遊海…突然の事に戸惑っていた零王だったが……その体から『闇』が溢れ出す…!

 

 

 

【───ずいぶんと気付くのが遅かったではないか、白波遊海】

 

「ラプラスに頭をぶん殴られたショックで思い出したんだよ…お前のせいで失敗した事を…なぁ!()()()()()!!」

零王の体から溢れ出した闇が固まっていき…そして、黒いローブで姿を隠した何者かが現れる…それは遊海と十代の仇敵、『虚無の邪神』ダークネスだった…!

 

 

 

 

「っ…!?なんだアイツは!?」

 

「この気配…人間ではない…!」

 

「人間じゃないって…!?」

 

「っ…!ランサーズのみんなは離れて!!」

 

「アイツはヤバい奴ッス!!」

 

「くそっ…!嫌な予感的中かよ…!!」

 

《フォウッ…!!(こいつ…!しつこいよ!!)》

ダークネスの事を知らないARC次元組のランサーズは正体不明の魔物が現れた事に動揺する…特に、武術を学んだ事で神経が鋭い勝鬨はその異常性に気付いていた。

 

そして、ダークネスの恐ろしさを知る十代や明日香達、GXのレジェンド達はランサーズを守るように前に出る…!

 

 

 

【我が名はダークネス…世界の闇を統べる者なり…!】

 

「ダークネス、世界が『1枚のカード』から始まった時、その裏側から生まれた暗黒面そのもの…!全ての人間を虚無に飲み込む邪神だ…!!」

 

「虚無の邪神だと…!?父は、その神に魅入られていたというのか…!?」

深淵の底から響くような声で名乗るダークネス…その正体を遊海がランサーズ達に説明する…ダークネスはずっと赤馬零王に取り憑き、世界を虚無に落とす為に暗躍していたのだ…。

 

 

『テメェ…ダークネス…!』

 

「遊海さん…!?思い出したって…!」

 

「俺は、ズァークと対峙していた時の記憶が少し欠けていた…でも、さっきのショックで思い出したんだ…!あの日、なんで俺が失敗したのか…!!」

ズァークへと憎しみを向けるラプラス…そして、遊海は「あの日」の事を語った…!

 

 

 

 

 

 

Side『悪魔が生まれた日』

 

 

 

 

「ズァーク…まだ、逃さないぞ…!お前達の怒りを、憎しみを、哀しみを…世界に向かわせて、たまるか…!!」

 

破壊し尽くされた街…そこで満身創痍の遊海は未だ健在のズァークと対峙していた。

累計戦績999戦500勝499敗…次の衝突で1000戦目、それは1つの区切りになると遊海に予感させていた…。

 

 

 

「もう1度、デュエルだ…ズァーク…!次で白黒、決めようぜ…」

デュエルディスクからは火花が散り、とっくに致死量を超える血を流していた遊海…だが、その目は咆哮する覇王龍をしっかり映していた…。

 

 

「しょうぶだ、ズァーク……おまえたちの、いかりも…にくしみも……よくぼうも……おれが、うけとめ、つづけて、やる──」

 

 

 

グシャ!!

 

 

 

「あっ…?」

 

《っ…マスター!?》

その時、遊海の胸を何者かが貫いた…アヤカのレーダーや遊海の直感をすり抜け、致命傷を与えたのだ…!

 

 

【諦めろ、白波遊海…お前に世界は救えない…】

 

「だーく、ねす…!?」

地の底から響くような声が遊海の名を呼ぶ…それはズァークによる「不安」の感情が大きくなった事で復活したダークネスだった…!

 

 

【我は不滅なり…今こそ、世界はダークネスに沈むのだ…】

 

「くそ…こんな、タイミングで……うぐっ…」

 

《ダークネス!!マスターを離しなさい!!》

 

《遊海!今助ける!!》

 

《これ以上の狼藉は許さん!!》

遊海を救う為に精霊達がダークネスに攻撃を仕掛ける…その時!

 

 

【我と…我とデュエルしろぉぉ!!】

 

 

「っ…があああっ!?」

業を煮やした覇王龍が遊海へと攻撃を仕掛ける…その攻撃は遊海や精霊達に直撃……さらに、その衝撃で崩れたビルの下敷きとなり、遊海達は意識を手放してしまった…。

 

 

 

 

【これで我の邪魔をする者はいない…今こそ、この世界をダークネスに────なに?()()()()だと…!?】

 

そして、ダークネスの誤算だったのは…アストラルによる『ヌメロン・コード』の干渉からは自身ですら逃れられなかった、という事だろう。

 

 

 

 

Side out

 

 

 

 

「お前の横槍がなければ、俺はスフィアフィールドに入り込んだ零王やレイに気付く事ができたはず…!そうすれば世界分断は起きず、ズァークは戦いの中で救えたはずなんだ!!」

 

【笑止…白波遊海、お前に世界は救えない…精々が滅びを先延ばしにするのみ】

 

「いいや…!世界は滅びない…!決闘者達が希望を抱く限り!世界に滅びは訪れない!!」

ダークネスの横槍によってズァークを救う機会を逃していた遊海…それはまさにダークネスこそが『ARC次元』誕生の黒幕と言っても良いだろう…!

 

 

 

「デュエルだ、ダークネス…!俺達の因縁に、けっちゃ、く…を───」

 

「っ…遊海!!」

 

「遊海さん!?しっかりして!!」

ダークネスと対峙しようとする遊海…だが、そのまま前のめりに倒れ込んでしまう……『パラサイト・フュージョナー』によるダメージが回復しきっていないのだ…!

 

 

 

「なんだかわからねぇけど、アイツが黒幕なんだろ…!なら、このネオニュー沢渡が!」

 

「ダメだ!ダークネスは相手の心の闇を見抜き、その傷を抉ってくる…!並のデュエリストじゃ、ダークネスと戦う事もできないんだ…!!」

 

「なんだそりゃ!?」

黒幕たるダークネスに挑もうとする沢渡を流星が制止する…虚無の化身であるダークネスと戦えるのは精神的・肉体的にも「強い」デュエリストか、何事にも揺らがない『明鏡止水』の心を持つデュエリストに限られてくる…!

 

 

 

「ダークネス…!オレの事を忘れられちゃ困るぜ!!遊海先生が戦えないなら、オレが相手だ!!」

 

【汝…遊城十代、世界の異物よ…再び汝を滅殺せん】

だが、ランサーズにはこの男がいる──ダークネスを退けた英雄の1人、遊城十代が!!

 

 

【では、始めよう…全てをダークネスに導く為の決闘を…!】

ダークネスの背中にデュエルディスク代わりの5枚の翼が展開する…!

 

「はぁ…はぁ……気をつけろ、十代…!」

 

「分かってる…!ダークネスには油断しない!!」

翠による回復を受けながら、十代へと注意を促す遊海……時空を越え、因縁が激突する!

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

ダークネスLP4000

十代LP4000

 

 

 

【我のターン】

【魔法カード『二重召喚(デュアル・サモン)』を発動、これで我は通常召喚を2回まで行なう事ができる…そして『ダークネス・アイ』を召喚!】

眼球を視神経ごと引き出したような姿の悪魔が現れる! ATK0

 

【さらに『ダークネスアイ』が存在する時、モンスター1体をリリース無しで召喚できる…現れろ!『ダークネス・ブランブル』!】

無数の眼球が実った悪魔の木が現れる! ATK2000

 

 

【そして、我はフィールド魔法『ダークネス』を発動…!手札から1枚、デッキから4枚の罠カードをランダムにセットする、このセットカードは自分では確認できない】

フィールドが薄暗くなり、背中の翼に5枚のカードが浮かび上がる…!

 

 

【我はこれでターンエンドだ】

 

ダークネスLP4000

ダークネスアイ ブランブル ダークネス 伏せ5 手札1

 

 

 

 

「デッキから5枚のカードを伏せる…!?しかも、自分では確認できない…?何を狙っている…!?」

 

「見たことのない戦術だ…!」

自分達の知らない戦術を前に困惑するランサーズ…彼らはその様子を見ているしかない…!

 

 

「おい、ギラグ…あれがオレ達がアストラル世界で戦った奴の()()()()()らしいぜ…!」

 

「そうみたいだな…!」

そんな中、かつてダークネス・シャドウと戦った事のあるアリトとギラグはその恐ろしさを思い出していた…。

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

 

《気をつけるんだ、十代…どの効果が飛んでくるか分からないよ》

 

「分かってる…!まずは舞台を整える…ヒーローの戦う舞台を!フィールド魔法『摩天楼─スカイスクレイパー─』を発動!」

ユベルの注意を聞きながら十代はフィールド魔法を発動…周囲の景色がビルが立ち並ぶ夜の摩天楼へと変化する!

 

「そして…魔法カード『融合』を発動!手札の『E・HEROフェザーマン』と『E・HEROバーストレディ』を融合!!現れろ!マイフェイバリットHERO!『E・HEROフレイム・ウイングマン』!!」

摩天楼の夜空に融合の渦が現れ、その中から飛び出した人影が摩天楼の中で一番高いビルの頂点へと着地する…それは右腕にドラゴンを宿す、十代のフェイバリットHERO──フレイムウイングマン!! ATK2100

 

 

「来たか!『フレイムウイングマン』!!」

 

「アニキのフェイバリットモンスターザウルス!!」

フレイムウイングマンの登場に万丈目や剣山が歓声を上げる!

 

 

「バトルだ!『フレイムウイングマン』で『ダークネスアイ』を攻撃!フレイム・シュート!!」

 

【その時、我は永続罠『虚無』を発動…さらに『虚無』の効果により永続罠『無限』を発動、その効果によって『虚無』と『無限』の間に挟まれた永続罠『ダークネス3』『ダークネス1』を発動する…!『ダークネス3』が最初に発動した事で1000ダメージを相手に与え、続いて『ダークネス1』が発動した事でさらに1000ダメージを与える…!】

 

「っ、ぐああああっ…!!」

フレイムウイングマンの火球がダークネスアイを粉砕する…だが、発動した罠カードによって十代はダメージを受けてしまう…!!

 

十代LP4000→2000

 

ダークネスLP4000→1900

 

 

 

 

「っ…!?伏せカードはランダムに伏せられ、場所は確認できないはず…何故当たった!?」

 

「しかも、いきなり2000ダメージなんて…!?」

 

「何が起きてるの…!?」

ダークネスの戦術に驚く零児や遊矢達…傍目から見れば、ダークネスは伏せカードを透視したように見えるだろう…。

 

 

「ダークネスの伏せカードは5種類、ある…起動する鍵になる『虚無』と『無限』、そしてフィールドのカードを破壊する『ダークネス1』、自分のモンスターの攻撃力を1000上げる『ダークネス2』、そして、1000ダメージを与える『ダークネス3』…その3枚は発動する順番で効果が変わり、最大で攻撃力を3000アップさせたり、3000ダメージを与える事ができる…!」

 

「なんつーギャンブルカードだよ!?でも強力過ぎるだろ!?」

息を切らせながら遊海がランサーズにダークネスの戦術を明かす…それはギャンブルカードの中でも特に強力な効果を持っている…!

 

 

「だが…確認できないカードを当てるなど、どうやって…!」

 

「ダークネスが操る『ダークネス』モンスターの一部はフィールド魔法の『ダークネス』の効果を無視して、伏せカードを確認できるのよ…!」

 

「「「……意外とズルい!?」」」

翠の種明かしにランサーズの声が重なる…。

 

 

「セコくても、ダークネスは強敵ザウルス…!」

 

「でも、一気にライフは1900…!十代さんなら…!」

 

「……そう甘くはないんだ…!」

 

 

 

 

「オレはカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

【この瞬間、フィールド魔法『ダークネス』の効果によって我の魔法・罠ゾーンのカードはランダムにセットされ…さらに、『ダークネスブランブル』の効果発動!お互いのターンのエンドフェイズに自分のライフが4000以下の時、自分のライフを4000にする】

 

「「「なっ…!?」」」

ダークネスのライフが無傷へと戻る…強力過ぎる効果を見たランサーズは絶句するしかなかった…。

 

 

ダークネスLP1900→4000

 

十代LP2000

フレイムウイングマン 摩天楼 伏せ1 手札1

 

 

 

「削ったライフが、無傷に…!?」

 

「奴を倒すには、『ブランブル』を倒す…それかライフを上回る一撃を叩きつけるしかない、という事か…!!」

遊矢と権現坂がダークネスの力に戦慄する…その力は若き十代が心を折りかける程である…!

 

 

【汝がいくら成長しようとも…闇有る限り、我はその力を得る…】

 

 

 

 

【我のターン、ドロー!】

【『ダークネス・アウトサイダー』を召喚!】

不気味な花の悪魔が現れる…! ATK0

 

「っ…そのモンスターは…!」

 

【『ダークネスアウトサイダー』の効果発動…手札の『ダークネス・スライム』を墓地に送る事でこのカードを相手のデッキに加え、相手のデッキのモンスター1体を我のフィールドに特殊召喚する…我が選ぶのは貴様の持つ『闇』の化身──『E・HEROネオス』!】

 

「なっ…ネオス!!」

 

《くうっ…!?すまない、十代…!!》

悪魔の花の花弁の奥から不気味な触手が放たれる、それは十代のデッキに突き刺さり…十代のエースたる光の戦士をダークネスの場に引きずり出した! ATK2500

 

 

【汝、自らの闇で滅びるがいい…!バトルだ『ネオス』で『フレイムウイングマン』を攻撃!さらに『無限』と『虚無』を発動…その間に伏せられた『ダークネス2』『ダークネス3』を発動…!『ネオス』の攻撃力は2000アップする!】

 

《ぐっ…あああ…!!?》

ダークネスの力がネオスを強化する…!

 

ネオスATK2000→4500

 

 

「っ…!十代!!」

 

「アニキ─!!」

 

「やっぱりお前は頭でっかちだよな…オレと精霊達の絆は、決して途切れない!!手札の『Nエア・ハミングバード』を墓地に送り!速攻魔法『超融合』発動!!オレのフィールドの『フレイムウイングマン』とお前のフィールドの『ネオス』で超融合!!」

 

【なに…!?】

明日香と翔の叫びが響く中…十代は自身の切り札を開放する!

 

 

「宇宙のHEROと地球のHEROが交わる時…絶望を蹴散らす光が現れる!現れろ!!『E・HEROシャイニング・ネオス・ウイングマン』!!」

原典たる『超融合』によって時空が歪む…そして激しい力の嵐の中から希望のHEROが現れる。

それは十代のエースたる『シャイニング・フレア・ウイングマン』の力を受け継ぐ、新たなネオス──シャイニング・ネオス・ウイングマン! ATK3100

 

 

 

「すごい…!アニキのエースの『ネオス』とフェイバリットカードの『フレイムウイングマン』の力が1つに…!!」

 

「やるな、十代…!それでこそ、最強のHERO使いだ…!」

新たなHEROの登場に歓声が上がる!  

 

 

【…だが、まだ我のターンは続いている…】

 

「ああ…だが、効果は発動できる!『シャイニングネオスウイングマン』の効果発動!このカードが融合召喚に成功した場合、フィールドのモンスターの属性1種類につき1枚!フィールドのカードを破壊できる!フィールドに存在するのは光の『シャイニングネオスウイングマン』と闇の『ダークネスブランブル』!消え去れ!『ダークネスブランブル』!そして永続罠『ダークネス3』!!エレメント・バースト!!」

 

【むうっ!?】

シャイニングネオスウイングマンの輝きが邪悪な木とダークネスの罠カード、さらにダークネスのフィールドの魔法・罠カード全てを破壊する!

 

 

「ダークネスのフィールドががら空きに!?」

 

「よし…!フィールド魔法『ダークネス』のデメリット効果だ!自分の魔法・罠カードが墓地に送られた時、全ての魔法・罠カードは墓地に送られる!流石は歴戦の決闘者だぜ!」

ダークネスのフィールドががら空きになった事に驚く柚子…彼女にアリトが『ダークネス』のデメリットを説明する!

 

 

【おのれ…!我は、ターンエンドだ】

 

ダークネスLP4000

手札0

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

「『シャイニングネオスウイングマン』の攻撃力は自分の墓地のモンスター1体につき300アップする!!墓地のモンスターは5体!!」

 

シャイニングネオスウイングマン ATK3100→4600

 

 

「受けてみろ!ダークネス!これが決闘者の希望の力だ!『シャイニング・ネオス・ウイングマン』でダイレクトアタック!シャイニング・ネオス・スラッシュ!!」

 

【ぐっ…!?ぬああああっ!!?】

シャイニングネオスウイングマンがダークネスを両断…ライフを削りきった…!!

 

 

 

 

ダークネスLP4000→0

 

十代WIN!

 

 

 

 

 

「ガッチャ!!ダークネス…お前の出番はまだまだ先だ!!」

決め台詞共に十代は勝利宣言をダークネスへと言い放つ…!

 

 

【ぐっ…おおあああ…!!】

そして、ダークネスは断末魔の叫びを上げ───

 

 

■■■■■!!

 

 

「っ…十代!下がれ!!」

 

「っつ!?」

その瞬間、遊海が叫ぶ…咄嗟に下がった十代が見たのは…ダークネスを包む闇の力だった…!

 

 

 

 

【─────ククク…()()()ぞ…!遊城十代…!】

 

「っ…そんな…!?なんで!?」

 

「お、おかしいッス!デュエルで倒せば、ダークネスは退けられるはずッス!?」

 

「どうなってるの!?」

闇の力を取り込んだダークネスが骨の顔で不気味に嗤う…。

ダークネスは元々()()の存在…だが、決闘者の希望の力をぶつける事で一時的に撃退する事ができる──それが、今までの特徴だった。

 

 

しかし、今のダークネスに撤退の様子は見えない…!

 

 

「───まさか、いや…そんな事が…!?」

 

「遊海さん!何か分かったんですか!?」

その時、遊海が最悪の可能性に気付く…!

 

 

「……今のダークネスは…本当の意味で()()なんだ…!!『アークファイブ』を通じて、4()()()()()()()()()『心の闇』を取り込んでる!そのせいで、十代の力では倒しきれなかったんだ…!!」

 

「そんな…!?」

 

【ククク…その通り…!赤馬零王の作った『アークファイブ』…それは全ての次元を統合する装置…即ち、全ての次元の『闇』を集める事もできる…!】

ダークネスの肯定の言葉と共に緑色の輝きを放っていた『アークファイブ』が漆黒に染まる。

カードにされた人々の嘆きや4つの次元に存在する、()()()の人々の抱える闇がダークネスに力を与えているのだ…!

 

 

【我は虚無の神…!人の心に闇がある限り、我が力は増していく…さぁ、全てを虚無に沈める時だ…!】

 

 

 

「っ…遊海!どうすればダークネスを倒せるんだ!?ZEXALになればいけるのか!?」

 

「ZEXALでも、滅する事ができるか分からない…!虚無たるダークネスに干渉するには、規格外じゃ足りない……()()()…理屈を超えた力が必要だ…!!」

 

「理屈を超えた力って…!?そんなのどうやって…!?」

覇気を増していくダークネス…その様子を見た遊馬が遊海に攻略法を訊ねるが…遊海にも()()()()()()()()()

 

 

手がかりになるのは、記憶の底に残っていた『虚無へ干渉するには理屈を超えた力がいる』…という言葉だけだった。

 

 

 

「(理屈を超えた力…!?攻撃力?効果?…そんなものじゃない……それこそ、全能の───)────あっ?」

 

「えっ…?遊海さん!何か方法が…!?」

必死にダークネスを倒す方法を考える遊海…その時、1つの可能性が遊海に頭を過った…!

 

 

「………翠、もしも俺が暴走したら……()()

 

「えっ…?」

翠の治療によって辛うじて動けるようになった遊海は立ち上がる…翠へと自分の覚悟を託して…。

 

 

「アストラル……ナンバーズを、貸してくれ…!」

 

(遊海…?────まさか!!)

 

「理の外の力…俺に思いつくのは、()()()()()()…!」

次いでアストラルに話しかける遊海…そして、アストラルも遊海の考えを理解した…!!

 

 

(遊海…気は確かか…!いや、これしか可能性がないのは分かるが…!?)

 

「ダークネスをこの世界に呼び込んだのは、俺の失敗だ……俺が、この次元を守る…!!」

 

(っ……信じるぞ、遊海…!)

遊海の覚悟を悟ったアストラルは数枚のナンバーズを遊海に託した…!

 

 

 

 

「ダークネス…俺が、相手だ…!!」

 

【白波遊海…我が敵よ…世界の異分子(イレギュラー)よ…!汝を滅殺する…!】

 

「俺は倒れない…!希望が残されている限り、俺は諦めない!!」

再び闇の翼を広げるダークネス…虚無を祓う為に遊海は命を賭ける!!

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

 

ダークネスLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

【我のターン】

【魔法カード『コストダウン』を発動、手札の『ダークネス・シード』を墓地に送る事でこのターンの間、手札のモンスターのレベルを2つ下げる…そしてレベル4となった『ダークネス・ブランブル』を召喚!】

再び無数の目が実る、悪魔の樹が現れる! ATK2000

 

 

【さらに、我はフィールド魔法『ダークネス』を発動…!手札から2枚、デッキから3枚のカードをランダムにセットする…我はこれでターンエンド】

 

ダークネスLP4000

ブランブル ダークネス 伏せ5 手札0

 

 

 

 

 

「アストラル、白波さんは何を…!?」

 

(……カイト、遊馬…いつでも戦える準備をしておいてくれ…()()になる可能性がある…!)

 

「──まさか」

並々ならぬ覚悟でダークネスと対峙する遊海、その意味をアストラルに問うカイトだったが…アストラルの態度から()()の可能性に気付いてしまった…!

 

 

 

 

「俺の、ターン…!ドロー!!」

「発動しろ…!フィールド魔法『ヌメロン・ネットワーク』!!」

 

「っ…!!遊海!?」

遊海の手元から膨大なカオスの力が弾ける…そして、周囲に赤紫色の水晶が乱立、さらに遊海の背後には巨大な蓮に似た異形の花が咲き誇る…!

 

 

「このフィールドは、ドン・サウザンドの…!?」

 

「止めろ白波!!いくらアンタが最強でも、このカオスは人間が耐えきれる力じゃねぇ!!」

発動したフィールドを見たミザエルが動揺し、真月は思わず遊海へと叫ぶ…混沌の魔神『ランパント・ベクター』としてドン・サウザンドの力を得た事のある真月はそのカオスが人間にとっての()になる事は理解していた…!

 

 

「大丈夫…俺は、負けない…!『ヌメロン・ネットワーク』の効果、発動!自分フィールドにこのカード以外のカードが存在しない時、デッキから『ヌメロン』カードを墓地に送る事で、その効果を発動できる!俺はデッキの『ヌメロン・ダイレクト』を墓地に送り、効果発動!自分フィールドにモンスターが存在しない時、デッキから『ゲート・オブ・ヌメロン』と名のつくエクシーズモンスター4体を、エクストラデッキから特殊召喚する!!現れろ…地球の番人たるナンバーズ…!『No.4ゲート・オブ・ヌメロン─チャトヴァーリ』!『No.3ゲート・オブ・ヌメロン─トゥリーニ』『No.2ゲート・オブ・ヌメロン─ドゥヴェー』!!」

 

 04 03 

  02

 

遊海の背後の異形の花が光輝き、3つの構造体──ゲート・オブ・ヌメロン達が現れる! ATK1000 ATK1000 ATK1000

 

01

 

「そして、現れろ!『No.1』!!天を摩する大いなる門よ…その堅牢なる扉を解き放ち、我らに未来への道を示せ!『ゲート・オブ・ヌメロン─エーカム』!!」

そしてゲート・オブ・ヌメロンの『核』──巨大なる門、全能へと導く扉が現れ、ゲート・オブ・ヌメロンが完成する! ATK1000

 

 

【ほう…『ヌメロン・コード』の番人たるナンバーズか…だが、その攻撃力は僅か1000、汝、何を狙う…?】

 

「バトルだ…!『エーカム』で『ブランブル』を攻撃!!」

遊海の戦術に怪訝な様子を見せるダークネス…遊海は臆せずに攻撃を仕掛ける!

 

 

【愚かなり、永続罠発動!『虚無』そして『無限』…さらに『ダークネス2』『ダークネス1』!その効果により『ダークネスブランブル』の攻撃力は2000アップする!】

 

「っ…があああっ!!」

 

「遊海先生!!」

発動した罠によってブランブルの攻撃力が倍化、エーカムの攻撃が反射され、遊海は吹き飛ばされ地面を転がる…!

 

ダークネスブランブル ATK2000→4000

 

遊海LP4000→1000

 

 

「よりによって、その効果か…ぐうっ…!ナンバーズである『エーカム』は『No.』モンスター以外との戦闘では、破壊されない…!さらに、効果発動…!このモンスターが相手モンスターとバトルを行なった後、ORUを1つ使う事でフィールドの『ゲート・オブ・ヌメロン』の攻撃力を2倍にする…この効果はORUがなければ発動できないが、フィールド魔法『ヌメロン・ネットワーク』の効果でORUを使わずに発動できる!」

大ダメージを受けてしまった遊海がゲート・オブ・ヌメロンの効果を起動する…!

 

 

エーカムATK1000→2000

 

ドゥヴェーATK1000→2000

 

トゥリーニATK1000→2000

 

チャトヴァーリATK1000→2000

 

 

【ふむ…そうか、読めたぞ?その4体のモンスターは全て同じ効果を持ち、その効果で攻撃力を倍にしていく事で相手を追い詰める…だが、残念だが汝にそれほどの余裕はなさそうだ】

 

「それは、どうかな…!メイン2、俺は『エーカム』1体でオーバーレイネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!」

 

【むっ…!】

全能の扉が銀河に飛び込み、再誕する!!

 

01

 

「現れろ…『CNo.1』!悪しき秩序を破壊し、世界を真なる世界へ導け!『ゲート・オブ・カオス・ヌメロン─シニューニャ』!!」

全能の扉が混沌の力を纏い再臨する! ATK2000

 

 

「このモンスターは、フィールドに『ヌメロンネットワーク』が存在しない時、破壊される…そして、効果発動!このモンスターがエクシーズ召喚に成功した時、フィールドの全てのモンスターを除外する!!」

 

【なにっ!?】

フィールドに混沌の嵐が吹き荒れ、ゲート・オブ・ヌメロンとブランブルが除外される!

 

 

「そして、『シニューニャ』は次の俺のスタンバイフェイズにフィールドに戻り、さらにORUを1つ使う事でこの効果で除外されたモンスターの攻撃力の合計分のダメージ…10000のダメージを相手に与える!…俺は、カードを1枚伏せ、ターンエンドだ…!」

 

 

【フン…この瞬間、フィールド魔法『ダークネス』の効果発動…我の魔法・罠カードをランダムにセットする】

遊海LP1000

ヌメロンネットワーク 伏せ1 手札4

 

 

 

【効果ダメージによる決着を狙うか…だが、そう都合よくいくと思うか?】

 

 

 

【我のターン、ドロー!】

【我は『ダークネス・アイ』を召喚!】

不気味な眼球の悪魔が現れる! ATK0

 

【そして永続罠発動『無限』『虚無』!さらに『ダークネス1』『ダークネス3』!汝の伏せカードと『ヌメロンネットワーク』を破壊する!】

 

「ああっ!?」

稲妻が伏せられた『ガード・ブロック』とフィールド魔法を撃ち抜き、周囲の景色が薄暗い王座の間へと戻っていく…!

 

 

「っ…」

 

【我はこれでターンエンド、『ダークネス』の効果で魔法・罠カードはランダムにセットされる】

 

ダークネスLP4000

ダークネスアイ ダークネス 伏せ5 手札1

 

 

 

「っ…遊海…!!」

 

「み、翠さん!遊海さんは大丈夫なんですか!?」

 

「……分からない…遊海さんとダークネス、どちらの()()()が、相手を上回るのか…!!」

デュエルの推移を見守るしかない遊矢達、柚子は翠へと問いかけるが…翠にもデュエルの結末を予測する事はできなかった…!

 

 

 

「ふ、う…!俺は、俺自身でオーバーレイ…!!

 

【フン…来るか、高位次元の力を宿す戦士よ…!】

満身創痍の遊海はダークネスを倒す為、絆の力を解き放つ!!

 

 

我が身に宿る戦いの宿命…救世の願い!今こそ!虚無を貫く力となれ!!シャイニング・カオス・エクシーズチェンジ!!

 

遊海の体から解き放たれた光と闇が遊海をさらなる高みへ押し上げる!!

 

 

邪悪を祓う、絆の輝き!!NEXUS!!

   

混沌を飲み込む黄金の嵐が吹き荒れる…そして黒金の推進翼を背負い、赤と黒の鎧を纏い、金色の髪を逆立てた混沌の決闘者…NEXUSⅢが現れる!

 

 

【ほう…かつてよりも位階を上げたか?しかし、長くは保たないようだな…?】

 

「お前に対しては、ちょうどいい()()()だろ…!」

遊海の進化したNEXUSを見て驚く様子を見せるダークネス…だが、遊海の膝は震え…NEXUSの実体も所々がブレている…体力が足りていないのだ…!

 

 

 

「俺のターン…!真の決闘者の決闘は全て必然!勝利を求める魂は…数多の光を束ね…!ドローカードすら創造する!シャイニング・ドロー!!

黒金の軌跡が「勝利の方程式」を補強するカードを呼び込む!!

 

 

「スタンバイフェイズに除外されていた『シニューニャ』はフィールドに帰還する!」

 

【しかし、フィールドに『ヌメロンネットワーク』が存在しない事で『シニューニャ』は破壊される】

除外されていた混沌の門がフィールドに現れるが…自身の効果によって破壊されてしまう…! ATK2000

 

 

「だけど…これで準備は整った…!!魔法カード『ヌメロン・カオス・リチューアル』を発動!!このカードは、『シニューニャ』がモンスター効果で破壊された時に効果を発動できる!墓地または除外された『ヌメロンネットワーク』と『No.1』から『No.4』を素材としてエクシーズ召喚を行なう!!」

 

【なにっ…?墓地からのエクシーズ召喚だと?】

遊海の墓地から5枚のカードが飛び出す、そして──

 

 

ゴウッ!!

 

「遊海!!」

 

「なんだ…?!あの赤黒い炎は!!」

遊海の背中から赤黒い炎が燃え上り、形を成していく…!

 

 

ククク…ハハハハハ!!我の助けが必要か?遊海…!

 

「ああ…力を貸してもらうぞ、ドン・サウザンド!!」

 

「なっ…!?」

 

「「「「「ドン・サウザンド!?!?」」」」」

高笑いを響かせながら…凄まじい波動と共に黄金比の漆黒の体と金色の髪を持つ男──ドン・サウザンドが現れる。

そして…その姿を見た璃緒以外の七皇達は驚愕の声を上げていた…。

 

 

 

 

「あ、アニキ!?あ、アイツは何者ザウルス!?」

 

「ダークネスよりヤバい気がするッス!?」

 

「奴は、ドン・サウザンド…!高位次元のバリアン世界って所を支配してた『混沌の神』だ……!!」

凄まじい威圧感を放つドン・サウザンドを見た剣山と翔が十代に説明を求め…十代は知る限りの情報を伝える…。

 

 

「……味方、なの…?」

 

(ドン・サウザンドは…本来ならば、我々の敵だ…貴女達で言うダークネス、それか不動遊星達が戦ったZ-ONEの立ち位置と思ってもらえればいい…)

 

「──ラスボスじゃねぇか!?なんで遊海先生がそんな奴と!?」

ドン・サウザンドが味方なのかを訊ねる明日香にアストラルが答えるが…万丈目は思わず突っ込む。

 

 

「ドン・サウザンドは…オレ達がぶっ倒した後、遊海の息子のシャ…神代凌牙を依り代に復活しようとしたんだ…その時、遊海先生がもう一度ぶっ倒したんだけど…奴の力を宿したカードが遊海の中に入っちまって、それがズァークの騒動のせいで復活しちまってたんだ…!!」

 

「遊馬!璃緒!きみ達はドン・サウザンドの復活を知っていたのか!?」

 

「ごめんなさい、ドルベ…お父さんから黙ってて欲しいって言われてたの…みんなに、余計な心配をさせたくないって…!」

ドン・サウザンドが遊海と共にいる経緯を語る遊馬…その理由にドルベ達は言葉を失う…。

 

 

「馬鹿者が…!何故お前は厄介なものばかり引き寄せるのだ!!」

 

「おい!遊馬ったか?遊海は何をしようとしてるんだ!?」

 

「……()()()()()()()を持ってるエクシーズモンスターを、喚び出すつもりなんだ…!!」

 

「っ…遊海…!!」

無茶を重ねる遊海に怒りを露わにする海馬、そして城之内は遊海の目的を尋ね……遊戯は不安そうに遊海の姿を見守るしかなかった…。

 

 

 

【貴様、高位次元の混沌の神か…汝は白波遊海と敵対する者のはずだが?】

 

貴様には分からぬだろうなぁ…理想(コスモ)混沌(カオス)…その全てを否定するお前には……我はレベル12となった『No.1』から『No.4』と『ヌメロンネットワーク』でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!

 

「っ…勝手に進めるなドン千!」

 

だから…略すなと言っているだろう!

5枚のカードが闇色の銀河へと飲み込まれ、混沌の力が爆発する!!

 

 

1000

 

 

【「現れろ!『CNo.1000』!混沌の憂いは浅ましき人の業、天壌の夢は無窮の幻…虚ろの神よ!光を持て!闇に鉄鎚を!!『夢幻虚神ヌメロニアス』!!」】

混沌を封じる扉が再び破戒され、光によって倒された混沌の神の化身が現世に現れる! ATK10000

 

 

【攻撃力10000だと!?】

 

「こ、こんなモンスターが存在するとは…!?」

デュエルモンスターズにおける最強クラスの攻撃力を前に流石のダークネスも表情を変える…そしてランサーズ達は言葉を失っている…。

 

 

虚無の神よ…この一撃を止めてみせよ!

 

「バトルだ!『ヌメロニアス』で『ダークネスアイ』を攻撃!カオス・オブ・ヌメロン!!」

凄まじいカオスの力がヌメロニアスに集中する!

 

 

【クッ…!しかし、大層な攻撃力も届かなければ意味はあるまい!!永続罠『虚無』『無限』!そして『ダークネス1』!砕け散るがいい!『ヌメロニアス』!!】

カオスの雷霆が放たれる刹那、ダークネスの罠から放たれた稲妻がヌメロニアスを撃ち抜き、破壊する!!

 

 

「ああっ!?そんな!!」

 

「いや…()()()()()()()()

 

「えっ?」

切り札であろうヌメロニアスが破壊された事で悲鳴を上げる柚子…だが、その横でカイトは複雑な表情で遊海の『勝利の方程式』が完成した事を告げた…。

 

 

 

 

「『ヌメロニアス』が破壊された時、エクストラデッキの『CiNo.1000夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア』の効果発動!!『ヌメロニア』をエクシーズ素材としてエクストラデッキのこのカードを特殊召喚する!!」

 

【なにっ!?】

フィールドに混沌の光が弾け、アカデミアの天井が崩れ落ちる…!

 

 

ククク…!我は『ヌメロニアス』を素材としてオーバーレイネットワークを再構築!エクスターミネーション・カオスエクシーズチェンジ!!

 

1000

 

「降臨せよ!『CiNo.1000』!我らが天は長し、地は久し…人々の求める光は遠くとも、その手は必ず星へと届く!混沌と虚無を宿す大神よ!光を持て!闇に鉄槌を!!『夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア』!!」

 

──フン、悪くない口上だ

それは異形の魔神、本来ならば人間へと牙を剥く虚数の神…黒紫の翼を広げ、敵対する者の希望を駆逐する神が現れる! ATK100000

 

 

 

「ランク13…攻撃力、10万!?」

 

「こんなモンスターが、存在する、のか…!?」

現れたのはランク13、攻撃力10万を誇る『理の外』の力を宿す神の化身…その威圧感に全員が言葉を失う…。

 

 

【馬鹿な…】

 

そう絶望するな…『ヌメロニアス・ヌメロニア』は自ら攻撃はできぬ…その代わり、攻撃可能な相手モンスターは()()このモンスターを攻撃せねばならぬ…それだけだ

 

「俺は、これでターンエンドだ…」

 

遊海LP1000

ヌメロニアスヌメロニア 手札4

 

 

 

ビキッ…バリバリ!!

 

「っ…ぐううっ…!!?」

 

「遊海さん!!」

ターンを終えた遊海は膝をつく…人間の身には強すぎるカオスが遊海の体──魂を蝕んでいるのだ…!

 

 

情けない声を出すな遊海、それでも英雄か?

 

「無茶、言うな…!封印状態、でも…きつい、んだ…!!NEXUSになってなきゃ、ぐうっ……!! 」

 

【呆れたぞ、白波遊海…貴様は光と共にある愚者だと思っていたが……闇に近しい力を受け入れるとはな】

 

「光も、闇も関係ないさ…!俺は最善を掴む為に歩み続ける……光と共に戦い、闇とも手を取り合う…!それが、今の俺だ…!!」

強すぎるカオスに苦しむ遊海へダークネスが語りかける…だが、遊海は光と闇を併せ飲む者として、ダークネスに向かい合う…!

 

 

【ならば…叶わぬ理想と共に消え去るがいい…!】

 

 

 

【我のターン、ドロー!】

【スタンバイフェイズに墓地の『ダークネスシード』の効果発動、2ターン前に墓地に送られたこのカードを特殊召喚する!】

無数の目を持つ花が現れる! DEF1000

 

 

【さらに永続罠『無限』『虚無』を発動!さらに『ダークネス3』『ダークネス2』『ダークネス1』を発動!汝に3000ダメージを与える!虚無の前に散るがいい!】

 

「手札の『ハネワタ』の効果、発動!このカードを墓地に送り、効果ダメージを0にする!!」

虚無の稲妻が可愛らしい綿の天使に弾かれる!

 

 

【悪あがきを…!我は『ダークネスアイ』を守備表示に変更し、ターンエンド…再び『ダークネス3』が発動するまで…!】

 

「悪いな…ダークネス、お前に次のターンは、来ない!」

 

【なに…?】

再び効果ダメージを与える『ダークネス3』が発動するまで耐える作戦だったダークネス…だが、その考えは通用しない…!

 

 

ああ!最後の説明を忘れていたな…相手が『ヌメロニアス・ヌメロニア』を攻撃せぬままターンを終えた時、相手は()()()()()()()()()───すまなかったな、虚無の神よ

 

【な、なんだと!?】

ヌメロニアス・ヌメロニアにカオスの力が収束する…!

 

 

別に効果名などは考えていなかったが──貴様の手向けにしてやろう、受けるがいい…混沌による裁きを!カラミティ・カオス・エンド!!

 

【お、おのれ…!混沌の神!白波遊海──!!】

ダークネスの断末魔が響く…虚無の神は混沌の大神による爆発に飲み込まれた…!

 

 

 

ダークネスLP0

 

 

遊海 特殊勝利達成!

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…や、やった…!遊海の勝ちだ!!」

 

「待て…!まだ分からない…!」

混沌の爆発を耐える為に顔を覆っていた遊矢が声を上げる…だが、十代は油断なく爆煙の奥を睨んでいた…!

 

 

 

【ぐ、お……お…おのれ…虚無の神たる、我が…混沌に敗れるなど…!】

 

フン…こうなるのは自明の理であろう?人間の負の面にしか目を向けず、喜びも絶望もない虚無に飲み込む貴様…そして、生命の源であり、前に進み続ける力となる混沌たる我…どちらの力が強いかは言うまでもあるまい

爆煙の奥で勝敗は決していた…満身創痍ながらも立つ遊海、そして混沌の力によって半身を消し飛ばされたダークネス……混沌が虚無を貫いたのだ…!

 

 

 

「はぁ…はぁ…!ダークネス、もう一度言ってやる…!デュエリストが希望を捨てずに歩み続ける限り、世界は滅びない…!お前の出番は、訪れない!!」

 

【………初めてだ…虚無たる我が、こんな感情を抱くのは…!こんなにも、汝の事が()()()()のは…!!】

崩壊していくダークネスへ世界の滅びを否定する遊海…だが、その言葉は野心を持たぬはずのダークネスに憎しみを抱かせていた…!

 

 

「父さん!!無事か!?」

 

「遊矢!零児!!」

 

「あっ…黒咲!凌牙!」

 

「瑠璃!そうか…救出に成功したのか…!」

その時、ボロボロの王座の間に救出部隊の凌牙達が駆け込んでくる…異常なカオスを感じた凌牙が必死に走って来たのだ…!

 

 

【我が滅びようとも……白波遊海、汝の()()は折らせてもらうぞ…!】

 

「っ…凌牙!!」

 

「えっ──」

 

 

 

 

それは一瞬の出来事だった。

 

消滅寸前のダークネスが虚無の力を込めた魔力弾を放つ、その攻撃は走って来た事で一瞬反応が遅れた凌牙に迫る。

 

 

そして…凌牙を庇った遊海にダークネスの攻撃が直撃した…!

 

 

 

 

「っ……ぐ、うっ…!」

 

「「父さん!!」」

 

「遊海さん──!?」

 

《フォウ!?》

NEXUSⅢが砕け、遊海が仰向けに倒れ込む…状況を認識した凌牙兄妹と翠の絶叫が響く…。

 

 

【汝に、平穏は訪れぬ…ぐっ…!?】

 

──戯言も程々にしておけ、虚無の神

 

ゴウッ!!

 

遊海に対して呪詛を吐くダークネス…その頭をドン・サウザンドが掴み、混沌の赤黒い炎が燃え上る!

 

 

虚無の神、ダークネス…貴様は不滅の存在らしいな?…ならば、今の貴様の『人格』を燃やし尽くす!次はもう少し大らかな『虚無の神』として生まれるのだな…!!

 

ぐっ…おおおお!!!!

混沌の炎がダークネスを燃やし尽くす、断末魔と共に──遊海と因縁ある虚無の邪神は…ついに現世から消え去った…。

 

 

 

 

 

 

「っ…凌牙、無事、か?大丈夫だな…?ぐうっ…!?」

 

「父さん!ごめん…!俺が油断したから!!」

 

「違う…ダークネスが、あんな事をするのは、予想外、だった…虚無の神の癖に、人間味がありすぎ、なんだよ…」

ダークネスの最期の一撃を受けてしまった遊海を凌牙が抱き起こす…最期の一撃の威力は凄まじく、遊海の口からは血が零れている…凌牙に直撃していたら、重傷では済まなかっただろう…。

 

 

「大丈夫、だ…すぐに治る……戦いは、まだ…終わってない、から……」

 

フン…お前らしいな?遊海…凌牙を庇って攻撃を受けるとは……それほどまでに息子が大事か?

 

「ドン・サウザンド…!!」

辛そうな様子を見せる遊海にドン・サウザンドが冷たい目を向ける…その姿を見た凌牙はドン・サウザンドを睨む…!

 

 

そう睨むな、凌牙…我は久方ぶりに暴れられて良い気分だ……礼として受け取るがいい…ではな

 

キィン!

 

赤い光となったドン・サウザンドが遊海の中に戻る…そして柔らかなカオスが遊海を包み、負っていた傷を癒やした…。

 

 

 

「ドン・サウザンドが…遊海を助けた…?」

 

「嘘だろ…!?あの自己中野郎が…?」

 

(私もまだ信じられないが……遊海との関わりでドン・サウザンドにも変化があった…らしい)

ドン・サウザンドの思わぬ行動に驚くアリトと真月…そんな彼らにアストラルが事情を説明する…。

 

 

 

 

 

 

こうして、最後の憂いは断たれ…そして──最善を掴む為の最後の戦いが始まろうとしていた…。

 

 

 

 

To Be Continued………



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決闘者の選択─前奏曲─

こんにちは!S,Kです!

ついに次元戦争とダークネスの野望を解決した遊海達…残るは哀しき「悪魔」への対処のみ…。

最後の戦いを前に、決闘者達は覚悟を決める…。


【アカデミアに所属する全生徒・職員に通達する!現時刻を以て『アーク・エリア・プロジェクト』『リバイバル・ゼロ』の作戦行動を停止する、デュエルをしている者はデュエルを中断せよ!繰り返す、各自…戦闘を停止せよ!───】

 

 

「おお…!やったノーネ!セニョール遊海とセニョール十代達がプロフェッサーを改心させてくれたノーネ!ブラボー!!」

 

融合次元全域に赤馬零王による停戦宣言が響き渡る…それは融合次元の暗黒時代が終わった事を意味していた…。

 

 

 

 

 

《スキャン開始…マスター・白波遊海の回復率70%、精神汚染等の兆候なし、『CiNo.1000』による魂の消耗30%……時間経過で回復可能……よかった…》

 

「ありがとう、彩華…心配かけたな…」

 

《フォウ!フォーウ!!(本当だよ!大丈夫だとは思ってたけどさ!!)》

 

「フォウ…本当にゴメン…」

アカデミア・王座の間、娘を救う為に狂気に堕ちた赤馬零王を制圧・改心させ、『ARC-V』の物語が始まる元凶となった虚無の邪神・ダークネスを打倒した遊海と伝説の決闘者、そしてランサーズ達。

ダークネスの不意打ちによって遊海が一時重傷を負ったものの、ドン・サウザンドによる回復と翠の治療によって戦える状態まで回復していた。

 

そして、ダークネスによる呪縛と狂気から開放された赤馬零王は次元統合装置『アークファイブ』を停止させ、アカデミア…融合次元全体へと『アーク・エリア・プロジェクト』『リバイバル・ゼロ』の作戦停止・戦闘停止を宣言したのだった…。

 

 

 

…………

 

 

 

「ユート…?ううん、似てるけど…違う…?」

 

「ユート、彼女が瑠璃なんだな?」

 

《ああ、間違いない…!瑠璃!無事でよかった…!!》

 

「ゆ、ユート!?えっ、体が透けて…!?」

 

《話せば…少し長くなる…》

ユートに良く似た顔の遊矢に困惑する瑠璃、そこに霊体状態のユートが姿を見せた事で瑠璃はさらに混乱していた…。

 

 

 

 

「遊海!!貴様、その身に混沌の神を宿しているとはいったいどういう事だ…!!」

 

『シンクロ次元で感じた違和感は気の所為じゃなかったって事だな…!!おい!出てこいドン千!ミドリの受けた仕打ちの分殴らせろ!!』

 

「………遊戯、克也…助けて(泣)」

 

「あはは…素直に説明して、謝るしかないね…」

 

「流石の遊海も海馬の前では形無しだな…」

 

 

【(ネームレスがバリアンに堕ちたのは我のせいではないのだが?)】

 

『(ベクターと一緒にエメルを手駒にしたりとか偽ナンバーズ製造機に利用したりしただろうが)』

一方、遊海はドン・サウザンドをその身に宿していた事がバレた事で海馬とラプラスに詰め寄られている…その圧に遊海は思わず遊戯達に助けを求めたが、2人は苦笑いするしかなかった。

 

 

 

 

「翠さん、セレナは…」

 

「うん、大丈夫!蟲は消えてるし、ラプラスが応急処置をしてくれたから…もう少しで目を覚ますはずよ」

 

「よかった…ドクトルに洗脳されてしまったと聞いた時はどうなるかと…」

 

《フォウ!フォウ、キューウ…(セレナも大変だったけど、遊海も危なかったんだ!あんなに苦しんでる遊海を見たのは初めてだよ…)》

 

「フォウくん…遊海さんも大変だった…って言いたいのね?──分かってる、目の前で子供が傷つけられていたら…遊海さんは迷わずに助けようとするもの……私もドクトルにマインドクラッシュ叩き込んでこようかしら…!!」

 

《フォウ!?(翠!?ちょっとオーバーキル過ぎるよ!?)》

意識を失っているセレナを治療する翠と付き添うカイザー亮…フォウの言葉をフィーリングで理解した翠は凄まじいオーラを纏っていた。

 

 

 

《カイト様、報告でアリマス!次元飛行船の計器によると4つの次元の数値が安定し始めているでアリマス!》

 

「なに…?───そうか、4つの次元を強引に1つにしようとしていた『アークファイブ』が停止した事で不自然な力が掛かっていた4つの次元のバランスが元に戻ったのか…!」

そんな時、次元飛行船に待機していたオービタル7が通信を開き、カイトへとARC次元の変化を伝え、その報告を聞いたカイトは仮説を立てる。

 

 

 

本来のARC-V世界は「1つの世界」が4つの次元に分割されたという『不自然』な状態になっていた…しかし、遊海達のいる『ARC次元』は違う。

 

ARC次元は「1つの世界」であるDM世界の一部が基盤となり、ズァークの持つ膨大なエネルギーとレイの使った『エン』シリーズの宿した膨大な『大自然』のエネルギー、アストラルが使った全能たる『ヌメロン・コード』の力、そして遊海が次元分裂を防ぐ為に使った『NEXUS』の力が互いに干渉し合った事で『4つの次元を内包する世界』として成立した『新世界』だった。

 

だが、「1つの世界」が分裂してしまったと考えた赤馬零王が『アークファイブ』による次元統合を目指した事で逆に不自然な形となり、次元が不安定な状態になっていたのだ。

 

 

「カイト、それなら…!」

 

「ああ、これでARC次元が崩壊する可能性は低くなった…そして、その影響でオレ達の世界が連鎖崩壊する可能性も低くなったと見ていいだろう」

 

「よ、よかった〜!!」

カイトによる分析を聞いた遊馬が安堵の声を漏らす。

そもそも…遊馬達がARC次元に突入したのは『ヌメロン・コード』の干渉を受ける事ができず、行方不明になっていた遊海の救出、そしてARC次元の崩壊によるDM世界への影響を止めるというのが大きな目的だったからだ。

 

 

 

「だが、()()はまだ残っている…ARC次元を覆う「時空嵐」は今も消えていない…そして──」

 

ブルル…ギュイーン!!

 

「ジャック!遊海!無事か!?凄まじい闇の力を感じたが…!?」

 

「遅いぞ遊星!プロフェッサーの制圧と黒幕のダークネス退治は終わったぞ!」

 

「「ダークネス!?」」

ARC次元に残る懸念を伝えようとするカイト…その時、赤いDホイールに乗った2人──リンの救出を任されていた遊星とエドがランサーズと合流、ジャックから思わぬ「黒幕」の存在を伝えられて驚いている。

 

 

「遊星!リンの救出はどうなった?」

 

「ああ、オレ達よりも先にユーゴが到着していてな…遊海さんの渡したカードでリンから飛び出してきた『パラサイト・フュージョナー』は駆除したんだが…」

 

「正気に戻ったリンがユーゴに見事なアッパーを決めたせいでノックアウトされてね…その介抱をしていたから遅くなってしまったんだ」

 

「なんだそりゃ」

クロウの問いかけに自分達の状況を伝える遊星とエド、不憫な目に遭っていたユーゴの事を知ったクロウは呆れていた…。

 

 

ギュイーン!!

 

『ここかぁ!!リンを攫いやがったプロフェッサーって奴がいるのはぁ!!!』

 

「ちょっとユーゴ!落ち着いて!!私は大丈夫だから!!」

 

「っ…ユーゴ!!」

さらに、少し遅れて白いDホイールに乗った2人──ユーゴとリンが王座の間に乗り込む、幼馴染みを攫った赤馬零王へと御礼参りに来たのだ…!

 

 

『ま、まずい!この状況は──』

 

「すまんユーゴ!メダリオン・フィールド!!」

 

キィン!!

 

んがっ…!?んだこれ!?』

 

「ユーゴ!?」

ズァークの欠片のうち3人が1か所に集まった事で顔色を変える零王…だが、すぐさま遊海が紋章の力による結界を発動…ユーゴを結界に閉じ込め、ズァークの欠片同士の干渉を遮断した…。

 

 

 

「う、ううん…?ここは…?」

 

「目が覚めたか、セレナ…安心しろ、次元戦争は解決した」

 

「カイザー亮…そうか…」

そして、その騒ぎで眠っていたセレナも意識を取り戻したのだった。

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

『───オレとニヤケ野郎、それに遊矢とエクシーズ次元のユートがザーク?ズァーク?とか言うデュエリストのカケラ?』

 

「それで、私達が…」

 

「アカデミアのプロフェッサー、赤馬零王の娘の欠片…?」

 

「ああ、これがキミ達4人…いや、8人に隠されていた真実だ」

 

荒ぶっていたユーゴをなんとか落ち着かせた遊海はユーゴとリン・瑠璃へと遊矢達と同じ説明──別世界のデュエリストであったズァークとレイの欠片である事を伝える。

最初は半信半疑だった彼らだったが…遊海による丁寧な説明、零児や零王の補足・謝罪によっておおまかに事情を理解する事ができた…。

 

 

『いやー…確かにスタンダードでユートとデュエルした時とかに体が熱くなる、というか…ぼんやりする事があったけどよ…それがオレらの中にいるザーク?のせいだったなんてなぁ……なぁ?そのズァークとか言う奴をオレの中から追い出すみたいな事できないのか?』

 

「それができたら苦労はしないな…キミ達は榊遊矢やユーゴという『個人』であり、ズァークという存在の『欠片』でもある…今の状態のきみ達からズァーク『だけ』を分離・封印するのは無理だ……俺の力でもな」

ユーゴの疑問に遊海が答える、遊矢達はズァークと『別人』であり『同一人物』…切り離そうとしても、現状では切り離す事ができないのだ…。

 

 

「遊海…オレ達はどうすればいいんだ?全員が別々の次元にいればズァークが復活する事はないって思うんだけど…」

 

「それは俺も考えた…でも、()()なんだ…ズァークは分かれた『自分』を認識してる、その感覚を通じて自力で次元を超える可能性もある…ユーゴみたいにな」

 

「あっ…」

4人が別々になればいいと言う遊矢の提案に遊海は首を振る…ズァークは凄まじい成長力を持つ…その力はランダムとはいえ『クリアウイング・シンクロ・ドラゴン』単体での次元転移を可能とする事からも明らか……油断した瞬間に他のドラゴン達が次元転移能力を獲得する可能性も0ではないのだ。

 

 

「それに遊矢…そしてユート、お前達は既に統合してしまってる……遅かれ早かれ…ズァークの意思はお前達を乗っ取り、統合を目指してしまうかもしれない」

 

《…遊海の言葉にも一利ある…先程のデュエルでオレ達がズァークの意思に抗えたのは()()に近い…そう感じた》

 

「……たしかに…さっきのデュエルは、オレのデュエルじゃ……」

 

「遊矢…」

仮に…遊矢達が1人も統合していなければ、遊矢達に強固な封印を施す事でズァークの動きを阻害できたかもしれない…だが、遊矢とユートが統合してしまった事でズァークの意思は強まりつつある…主導権が奪われてしまうのも時間の問題だろう…。

 

 

 

「……そういえば…遊海さん、ちょっと不思議に思った事があるんですけど…」

 

「ん…どうした?柚子ちゃん」

 

「遊矢達は集まるとズァークの意思が共鳴して、大変な事になるけど…()()は何も起きないのはなんでかな?って…」

 

「……確かに、私達4人が揃っていても…何も起きないな?」

 

「今までの話を聞いてると…私達の大元のレイって人が何か反応してもおかしくないよね…?」

柚子の素朴な疑問にセレナと瑠璃が反応する、この場にはレイの欠片である4人の少女達が揃っているのだが…遊矢達の反応のような特異な事は起きていないからだ。

 

 

「これは俺の仮説になるが……きみ達4人は赤馬レイであって()()()()()()…きみ達はレイの宿した『力』の化身…なんじゃないか?」

 

「力の、化身?」

遊海の言葉に柚子達は首を傾げる…。

 

 

「零王、お前がレイの復活を考えたのは…娘を取り戻すだけじゃない、()()()()の目的があったんじゃないか?」

 

『……ああ、レイがズァークと対峙し、分裂させた時…その要因となった「対ズァーク」用のカード…「エン・ムーン」「エン・バース」「エン・ウィンズ」「エン・フラワーズ」は彼女達が身に着けているブレスレットへと変化した、ズァークの復活を危惧した私はあのカードを取り戻す必要があった…』

 

「対ズァーク用のカード…」

正気に戻った零王が冷静にもう1つの目的を語る。

次元分裂の際に失われてしまった対ズァーク用のカード、それはブレスレットに変化して柚子達が所持している…そして、ブレスレットと彼女達の顔は零王がレイの生存を確信する一因になっていた…。

 

 

 

「おそらく、柚子ちゃん達4人にはレイの『魂』は宿っていない…彼女達に宿ったのはレイの『願い』と『力』…『ズァークを復活させない』、『ズァークを止めたい』…そんな所かな……その願いが世界創世の時に反映され、遊矢達と出会うように柚子達が彼らの近くに生まれた…ズァークを分離させたカードが変わったブレスレットと一緒に………俺の繋いだ『絆』によって遊戯や海馬社長、ディヴァインや亮、明日香や万丈目…俺と『絆』を結んだみんなが、この次元に転生したみたいにな」

 

『───そうか、この世界にいた海馬瀬人や、丸藤亮はただのそっくりな人物かと思っていたが…貴方の力が、この世界に反映されていたという事か…』

 

「ああ、世界や時代を超えて…俺達の絆は繋がっていたんだ」

柚子達の存在に関する仮説を語る遊海…そして、零王はこの世界に『1つの世界』の偉人達が存在する理由を知り、納得した…。

 

 

「……話を戻そう、4人の少女にはレイの『魂』は宿っていない……ならば、その『魂』は何処かに存在するはずだ」

 

『レイの魂が…いったい、何処に…!?』

 

()()()()()()…ボクの近くに…」

 

「っ…零羅!?」

柚子達には宿っていないレイの魂の行方を考える遊海と零王、その時、零羅が遊海達の前に歩み出る…その瞳に強い光を宿して…。

 

 

「さっきから、語りかけてくるんだ…!『ズァークを復活させてはダメ』『世界が滅びてしまう』って…!」

 

「っ…以前の私なら、否定していただろうが…おそらく、レイの『魂』が零羅に宿っている…!零羅は他人の心を読む能力に長けている…それがレイを引き寄せたのか…!」

零羅の言葉を聞いた零児が声を上げる…他人の心を読み、その存在になりきる能力を持つ零羅は肉体を失っているレイの『器』として最適なのだと…。

 

 

「──零羅、レイは何処にいる?」

 

「僕の後ろに…」

 

「分かった…レイ、俺の声が届いているなら…俺の手を取れ」

 

「遊海…何を…?」

 

「俺にもレイの姿は()()()()()…でも、そこにいるなら…()()はできるはずだ」

レイの存在を聞いた遊海は零羅の後ろに手を差し出す、そして──

 

キィン─!

 

「っ…この光は…!」

虚空で光が弾ける…そして、穏やかな黄色の光が人型を形作る。

 

それは柚子達よりも背が高く、長いツインテールを持つ少女…赤馬レイ……その()()()()()()だった。

 

 

《お父様…》

 

『レイ…!?レイ!!』

父の名を呼ぶレイ…その声を聞いた零王は思わずレイを抱きしめようとするが…その腕は彼女の体をすり抜けてしまった…。

 

(遊海、彼女の存在はひどく不安定だ…99枚のナンバーズを失っていた時の私よりも、長年アストラル世界の牢獄に囚われていた時のラプラスよりも…)

 

「…どおりで俺達も気付けないはずだ…存在の全てを柚子達に割いて、ズァークの復活を阻止しようとしていたから…彼女は現世への干渉手段を失っていたんだ」

辛うじて姿を現したレイ、彼女の存在力はとても弱くなっていた…この場に分け身である少女達が揃い、自分の意思を感じ取れる零羅がいた事でようやく存在を保てている…そんな状態だった。

 

 

 

「あれが、レイっ──貴様、小娘ッ!!

 

『うおっ!?いきなりどうしたユーヤ!?』

 

「っ…遊矢!?」

 

《スフィアフィールド多重展開!!》

その時、レイの実体化がキッカケとなったのか遊矢の中のズァークが活性化…アヤカがすぐさま遊矢を隔離する…!

 

 

《ズァークを復活させてはダメ…!今度こそ、世界が滅ぼされてしまう…!》

 

「レイ…キミは1人で頑張り過ぎだ……キミが動こうと思う前に、俺達はズァークを止める為の算段を立てていたんだ…危うく、キミのせいで被害が大きくなる所だったんだぞ?」

 

《えっ…》

荒ぶる遊矢の姿を見たレイがズァークの危険性を訴える…だが、遊海は1人で無茶をしたレイを優しく諌めた…この事態の元凶はダークネスだったが…ズァークと同じく、彼女も「原因」の1つだからだ。

 

 

「キミが知っているかは分からないから、簡単に説明するが…俺達はズァークを別の次元に隔離して対処を続ける予定だった…そこでとある邪神の邪魔が入って、囮だった俺が動けなくなってしまった…そこにキミと零王がやってきた………ギリギリで隔離が済んでいなければ、本当に俺達の世界が分裂してしまう所だったんだ」

 

《そんな…》

 

「キミと零王が世界を救おうと頑張ったのは分かる…でも、せめて所属していた海馬コーポレーションや他の人に相談して欲しかったな…」

 

《───ごめんなさい…》

遊海に静かに謝るレイ…彼女が世界を救おうと先走った結果、ARC次元は誕生してしまったのだ。

 

 

「やっぱり、キミは柚子達の()()()()()だな…彼女達と同じく強気で優しい…大丈夫、キミの事も必ず助ける……だから、ズァークの事は俺に任せてくれ」

 

《……わかりました…お願いします、赤帽子の決闘王さん…》

 

『レイ…』

レイを安心させるように声を掛ける遊海…その言葉を聞いたレイは静かに姿を消した…。

 

 

…………

 

 

 

「それで…遊海、これからどうするつもりだ?」

 

「──()()()()()()()()()()……全てを解決するには、やはり…それしかないだろう」

 

「「「『『「「なんだって!?」」』』」」」

レイが消えた所で零児が遊海にこれからの対処を訊ねる…だが、その答えにランサーズ達と一部のレジェンド達が驚愕する…!

 

 

 

「お、おいおい!?遊海!アンタ達はズァークの復活を阻止する為に来たんじゃないのか!?」

 

「俺達の本来の目的はズァークの復活阻止じゃない…()()に来たんだ、モンスターの怒りと共鳴し、闘争心に呑まれ…自分では止まれなくなってしまったズァークを……」

 

「それに、ズァークの問題を解決しなければ…オレ達は()()()()に帰れない」

 

「帰れないって…どういう事ですか?」

遊海の言葉に驚く沢渡…今までの話の流れからズァークを復活させない為に動いていると思われた遊海達…だが、その事情をカイトが説明する。

 

 

「ARC次元の外周には他の次元からの干渉を阻むようにズァークの力の余波による時空の乱れ…『時空嵐』が発生している、この嵐を止めなければ、オレ達は元の世界に帰れないんだ」

 

『ああ、オレとブルーノは裏技で突っ切って来たが…あの嵐は三幻神の力でも突破できない厚さと強さだ、時空を乱してるズァークをどうにかしなきゃな』

4体の精霊と融合した事で凄まじい力を得たズァーク…その存在によって発生した『時空嵐』はズァークを倒し、無力化しなければ治まる事はない…カイトとラプラスはそう結論していた。

 

 

 

「ズァークを復活させ、打倒…そのタイミングで鎮静化したズァークの魂と遊矢達の魂を切り離す…それが、考えうる限りで()()の方法だ……ズァークは話し合いでは止まらない…止まってくれないだろうからな」

 

「勝算は、あるのか?」

 

「───()()()()()、ズァークは俺達が元の世界で戦っていた時よりも()()()()()()()だろう……それでも、()は戦わなきゃならない」

 

「っ…貴方1人でズァークに挑むというのか!?世界を滅ぼしかけたデュエリストに!!」

 

「それが、俺の()()()だ…あの日、ズァークや零王達を止められなかった決闘者としての…」

そして、零児は遊海のさらなる言葉に絶句する…遊海は悪魔の決闘者に単身で挑もうと考えていたのだ…!

 

 

 

「───遊海、きみなら絶対にそう言うと思ってた……でも、そんな事はさせないよ」

 

「遊戯…みんな…」

その時、状況を見守っていた遊戯が歩み出る…十代、遊星、遊馬・アストラル───歴代の『主人公』達と共に…。

 

 

 

 

「さっき、自分でレイにも言ってたよね?『1人で頑張り過ぎ』だって…それはきみも同じだよ?」

 

「ああ、あの時…オレか誰かが一緒に残っていれば、ダークネスの干渉は防げたかもしれない…今さらの事だけどさ…」

 

「『オレ達はいつも貴方に導かれ、助けられてばかりだった』」

 

「でもさ、今の遊海は1人じゃねぇ!遊海と肩を並べて戦ってきたオレ達がいる!!」

 

(もしかすれば…遊海1人の方が勝算はあるのかもしれない……だが、あえて言わせて欲しい…貴方が背負うモノ──世界を私達にも背負わせてくれ、遊海!!)

 

「遊戯…十代…遊星…遊馬、アストラル…」

それは遊海と共に戦い続けた仲間からの『願い』…世界の命運を()()()()()()()()遊海へ報いる為の言葉だった。

 

 

 

『……馬鹿な意地を張ってんじゃねぇぞ、遊海…お前は()()とは違う……お前の歩んだ旅路が、()()にとっての()()だった…お前がこいつ等と結んだ「絆」…それが破滅の未来を変えて、ここまで未来が続いてきたんだろうが』

 

「ラプラス…」

そしてラプラス──異なる道を歩んだ『シラナミユウミ』が遊海の背中を叩く…『正しい道』を歩んできた遊海を後押しするように…。

 

 

『お前の強さは「絆」の強さだ…1度くらい、その絆を頼れよ…()()からのアドバイスだ』

 

「ラプラスの言う通りですよ?遊海さん…あなたは1人じゃない…私がいて、凌牙くんに璃緒ちゃん、彩華がいて…フレアにメガロック、トフェニ、ウィンダにウェン、ラビエル達三幻魔に…《フォウ!!》それにフォウくん!そして…此処には私達と一緒に戦ってきたみんながいます!」

 

「翠…」

翠の言葉を聞いた遊海は周囲を見渡す…そこには()()()がいた。

掛け替えのない大切な家族、実体化した精霊達、そして…長い時間を掛けて『絆』を結んだ仲間達……世界を守る為に共に戦い続けた戦友達が…。

 

 

「はぁ……───ちょっと、視界が狭くなってたかな……ごめん、みんな……力を貸してくれ…ズァークを止める為に…!」

 

「「「「おう!!」」」」

深く息を吐き、呼吸を整えた遊海が仲間達へと声を掛ける…その言葉に決闘者達は強く頷いた…!

 

 

 

 

 

「──遊矢、ユート、ユーゴ…あとは、お前達次第だ……お前達は自分の中の()()と向き合う覚悟はあるか?」

 

「はぁ…はぁ…遊海…!」

そして遊海はスフィアフィールドと紋章結界に封じられた遊矢とユーゴに声を掛ける…遊矢達はなんとか正気を取り戻していた。

 

 

『ズァークだか、ザークだか知らねぇけどよ…オレの中に悪者がいるなら、さっさと倒してくれ!オレは()()()()()をまだ掴めてねぇんだ!それを邪魔されてたまるか!』

 

「あのねぇ…!?ユーゴ!あなたがズァークに取り込まれちゃうかもしれないのよ!?」

 

()()()()()()()!お前との夢を…キングになるって目標を果たすまでは!!』

 

「ユーゴ…!」

ユーゴは結界の中で腕組みしながら覚悟を決めていた、リンはユーゴを心配していたが…自分の「夢」の障害を排除する為に、ユーゴは戦う決意をしたのだ。

 

 

《………オレも、闘う…!オレ達はズァークの意思に振り回されてきた…それを終わらせる事ができるなら、オレは抗ってみせる!!》

 

「ユート…!」

さらに、霊体化したユートが覚悟を決める…ズァークによって振り回されてきたユート…その戦いを終わらせる為に、抗う事を決めた…!

 

 

 

「遊矢…」

 

「………なぁ、遊海…1つだけ、約束してくれないか?」

 

「どうした?遊矢」

考え込むように目を閉じていた遊矢が覚悟を決め、遊海に話しかける。

 

 

「ズァークを、()()にして欲しいんだ…それで、デュエルの本当の楽しさを思い出させて欲しい…誰もが喜ぶ、本当のデュエルを…!デュエルは、みんなを笑顔にする為のものだから…!!」

 

「遊矢…お前って奴は……ああ、もちろんそのつもりだ」

 

「ありがとう、遊海……柚子、オレは負けない…ズァークに、抗ってみせる…!」

 

「うん…!負けたら、許さないからね!!」

ズァークにデュエルの楽しさを思い出させて欲しいという『願い』を託す遊矢…そして、柚子へと決意を伝えた…!

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も、ユーリに何か言ったほうがいいのか?」

 

「………別にいいと思うな…きみ達は直接の繋がりがないからね…(汗)」

 

《フォーウ…(締まらないねぇ…)》

他三人の様子を見たセレナが遊海へと声を掛けるが…遊海は苦笑いするしかなかった。



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人類悪咆哮──GRAND DUEL──

こんにちは、S,Kです

………書き切った……この後、燃え尽き症候群を起こしそうなレベルで…。

これは世界を救う為の最後の戦い…どうか、見届けてください。




《カイト様!白波様!ユーリを護送してきたでアリマス!!》

 

「ああ、よくやったオービタル7…これで準備は整った」

 

『連絡がつかないとは思っていたが……既に貴方に倒されていたのか…』

 

「コイツが一番厄介だったからな…力を付ける前に封じさせて貰った」

 

アカデミア・王座の間のバルコニー、そこで遊馬号に隔離されていたユーリの身柄が遊海達に引き渡される…仮にもアカデミア最高戦力の1人だったユーリが一番に倒されていた事に零王は驚いていた。

 

 

 

 

 

「───さて、前置きは無しだ……遊矢、ユート、ユーゴ…覚悟は良いな?」

 

「『《ああ…!》』」

そして、遊海はスフィアフィールドに隔離された遊矢とユート、ユーゴに向かい合う…!

 

 

「これから、俺が確保していたユーリの『魂』を肉体に戻す…それによってお前達の中のズァークが活性化、お前達は統合され──ズァークが復活する…だが、お前達の()()はズァークの中に残るはずだ……だから、()()!破壊の限りを尽くそうとするズァークを止め、救うのは俺達の戦いだけじゃない()()()の戦いでもある!!」

 

「オレ達の、戦い…!」

ズァークの復活を前に遊海が遊矢達に語りかける…哀しき悪魔と化したズァーク…その暴走を止めるには、遊海達だけではない…ズァークの一部である遊矢達の力も必要になる…。

 

 

「遊矢…私、信じてるから…!遊矢なら、ズァークになんて負けないって!!私達は一緒に舞網に…遊勝塾に帰るんだから!!」

 

「遊矢、お前は私の…エンタメデュエリスト、榊遊勝の息子だ!それを忘れるな!!」

 

「遊矢!心配するな…!必ず、お前をズァークの中から助け出す!!」

 

「父さん…柚子…権現坂…オレは、絶対にみんなと帰るんだ…!!」

最後の戦いを前に遊勝達が遊矢へとエールを送る…ズァークと()()遊矢の力になるように…。

 

 

 

「ユート、心配するな…遊海達が失敗しても…俺達が必ずお前達を助け出す…!」

 

「ユート…私も、信じてるから…!!」

 

《隼、瑠璃…ああ、オレなりに…精一杯抗ってみせる…!》

 

 

「ユーゴ…!頑張りなさいよ!諦めが悪いのが、貴方の良い所なんだから!!」

 

「ユーゴ…お前は俺と戦う事を目標にしていたらしいな?……全てが終わったら相手をしてやる!」

 

『リン、ジャック…!ヘヘッ…約束だかんな!!』

そして、ユートへは黒咲と瑠璃が…ユーゴにはリンとジャックがエールを送る…悪魔ではない、彼らの帰還を信じて…。

 

 

 

「ユーリ、聞こえてはないだろうが…言わせてもらう!ズァークになんて負けるな!ほとんど会った事もない私に言われても嬉しくないだろうがな!!」

 

「貴方は…きっと、アカデミアで過ごしていなければ…正しいデュエリストになれたかもしれない……これ以上、欲望に…心の闇に負けたらダメよ」

そして…意識のないユーリへは、繋がりがある故の義理からセレナ、そしてデュエルをした明日香が言葉を掛ける…おそらくは最もズァークの『悪意』の影響を受けていた彼に…。

 

 

 

 

「よし……みんな、離れててくれ…!『魂の牢獄』…開放!!」

 

キィン─!!

 

眩い光と共に遊海の持つ『魂の牢獄』からユーリの魂が開放される、カードから飛び出した紫色の光はユーリの肉体に飛び込み────

 

 

【う、うぅ…?ボクは、いったい…?───うぐっ!?】

 

「《『ぐうっ…!!』》」

 

ドクン…!!

 

意識を取り戻したユーリ…だが、遊海の予測通りにズァークの意思が活性化…事態を把握する前に遊矢達と共に『衝動』に支配される…!

 

バリッ…!!バキン!!

 

 

この時を、待っていた…!

 

《今こそが、復活の時…!》

遊矢達を隔離していたスフィアフィールドが砕け散り、遊矢のデッキから飛び出した『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』が実体化する!

 

 

我らが、1つに…!

 

我らを、1つに…!!

さらに、ユーゴのデッキから『クリアウイング・シンクロ・ドラゴン』が…ユーリのデッキから『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』が飛び出し、咆哮する…!

 

「【『《今こそ…1つに!》』】」

 

 

キィン─!!

 

共鳴するように咆哮する四天の竜…その咆哮が遊矢のデッキから『星読みの魔術師』と『時読みの魔術師』のカードを呼び出す…そして、2体の魔術師が1枚のカード──星と時を見定める『アストログラフ・マジシャン』へと回帰する…!

 

『あのモンスターは…!!』

そして、零王は思い出す……『悪魔が生まれた日』──その再演を───

 

 

時空を司る『アストログラフ・マジシャン』よ…!その深遠なる力で我らの望みを重ね合わせよ!!

 

「【『《今こそ1つにぃぃ!!》』】」

 

 

「っ…遊矢─!!」

 

 

キィィン─!! 

 

 

アストログラフ・マジシャンが杖を掲げる…それと共に四天の竜と遊矢達が歓喜の声を響かせる、そして空中に光輝くペンデュラムの軌跡が刻まれ───柚子の悲鳴と共に、全ては光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…どうなったの…!?遊矢は…!?」

 

「これは…!空が…!!」

 

「各次元の姿が、空に映っている…!!」

眩しさに目を瞑っていたそれぞれの視界が復活する、そこに広がっていたのは不気味な緑色の空…そこには『スタンダード次元』『エクシーズ次元』『シンクロ次元』…それぞれの次元の街並みが鏡写しに浮かび上がっていた…!

 

 

「おい…!遊矢は、どうなったのだ…!?」

 

()()()()()()…!」

 

「「「「っ!!!」」」」

権現坂が先程から微動だにしていなかった遊海に遊矢達の行方を訊ねる…そして、遊海の指し示した先を見たランサーズ達は絶句した。

 

 

目の前に広がるのは黒い霞…その奥には黒い体に緑色の光と赤い眼光が輝く()()()()の影があった。

 

その大きさはシンクロ次元で目にした『地縛神』に迫り、威圧感はエクシーズ次元で見た『三幻神』に匹敵する。

 

 

彼の者こそ、怒りと悪意の果てに4体のドラゴンと1つとなった哀しき決闘者の末路、その名は────

 

 

我こそはズァーク…!今此処に…復活せり!!

 

 

「あれが、『悪魔のデュエリスト』ズァーク…!」

 

「デカ過ぎんだろ…!?」

 

「あれが…榊遊矢が抑え込んでいた『闇』の正体か…!!」

全ての次元に響き渡る声で復活を告げるズァーク…その姿を目の当たりにした零児や沢渡、勝鬨は絶句している…!

 

 

キィン!

 

 

《やっぱり復活したんだね、彼は…》

 

「マーリン」

 

《やあ、遊海君!きみがシンクロ次元で『預言者マーリン』を使ってくれたから『縁』を辿って単独顕現したマーリンお兄さんさ!》

 

《フォウ!?(グランドろくでなし!?今更何しに来たんだ!)》

そして、遊海の周りに花吹雪が舞う…その中から白いローブを着た魔術師──マーリンが姿を現す。

…なお、その姿を見たフォウは辛辣な言葉をぶつけている。

 

 

《最終局面だからね、賑やかしは必要だろう?…さて、きみ達に『試練』の話をしよう》

最後の戦いを前に預言者は声を響かせる…。

 

 

 

 

 

《世界に人類が生まれて幾星霜、その文明が発達していく中で世界には『澱み』が生まれる…それは人類史を蝕む『癌細胞』──異なる法則の世界ではこう呼ばれている、人類が滅ぼすべき『悪』…『人類悪(ビースト)』と》

 

 

《本来ならば、彼らに対抗する為には『冠位(グランド)』と呼ばれる英雄達の力が必要となるが…この世界では違う、この世界には人間が神にさえ抗える手段──デュエルモンスターズが存在する》

 

 

《そして…デュエルモンスターズを操る者──キミ達、決闘者(デュエリスト)は叡智を結集し、勇気を以て7つの人類悪、そのうち6つを乗り越えてきた》

 

 

《『憐憫(ダークネス)』『回帰(ネームレス)』『救済(Z-ONE/ラプラス)』『比較(災厄の獣)』『報復(ドン・サウザンド)』『堕落(e・ラー)』…そして…目の前の存在こそ、この世界における終局の『獣』》

 

 

《これは人間が生み出した避けられぬ『獣性』、『覇王龍』とは仮初めの名…止まらない、止める事ができない『闘争』が齎した大災害──その名はビーストⅦ》

 

 

《この世界にデュエルモンスターズが存在する以上、この『獣』の誕生は必然の事だった》

 

 

《さぁ!世界と時代を超えて結集した、誇り高き決闘者達よ…これが──最後の試練だ》

マーリンの言葉がアカデミアに響く、決闘者や観客達がより良いデュエルを求めた結果生まれた『闘争の獣』…それがズァークという存在なのだ

 

 

 

 

 

【久しいな、白波遊海…!お前が自ら我を復活させるとは…少し意外だったが…?】

 

「久しぶりだな、ズァーク…お前は俺達が生み出してしまった『災厄』だ…今、ここで…お前を止める!!」

ズァークの視線が遊海に向く…並のデュエリストならそれだけで戦意を失うだろう殺気の中、遊海はズァークと向かい合う…!

 

 

【良いだろう…お前とのデュエルはまさに血湧き肉躍る戦いだった…!さぁ…戦い続けよう…!永遠に!!】

 

ドクン!

 

遊海の言葉に応えたズァークの龍体が赤黒い煙へと変わり、地面に降り立つ…そこに現れたのは『異形の決闘者』

 

体は灰色の硬質な皮膚に覆われ、背中には黒い龍の翼、遊矢と同じ緑と赤の髪と1対の黒い角、黄色の瞳、そして胸元に()()()()()()()()()のネックレスが輝く者…名付けるならば『魔人ズァーク』が不敵な笑みを浮かべていた…。

 

 

 

「あれが…遊矢、なの…?」

 

「ユート…」

 

「ユーゴ…!」

 

「なんと禍々しい姿だ…!」

初めてズァークの姿を見た柚子や瑠璃達は異形のズァークを見て恐れを抱く…だが、それと同時に感じていた……ズァークに宿る遊矢達の面影を…。

 

 

 

【ククク…あの小娘は蘇っておらんようだな…!さぁ、始めようではないか…!世界を破壊する為のデュエルを!!】

 

「へっ…そう慌てんなよ!お前が戦うのは遊海だけじゃないぜ!」

 

「ああ、ズァーク…お前がデュエルの力で生まれた災厄ならば、決闘者の力でお前を倒す!」

 

「その為に、オレ達は次元や時代を越えて集まった!」

 

「キミに…世界を壊させはしない!!」

殺気を強めるズァーク…そして、遊海の隣に4人の決闘者が並び立つ…!

 

 

【ほう…!九十九遊馬…不動遊星…遊城十代…そして、武藤遊戯…!白波遊海、貴様…どんな魔法を使った…?】

 

「魔法じゃない…これは()()だ!俺達、決闘者を繋ぐ『絆』の力で…お前を倒す!!」

歴代の伝説の決闘者の姿を見たズァークが凄絶な笑みを浮かべる中、遊海が声を張り上げる!!

 

 

 

【面白い…!我を倒せるものなら倒してみよ!伝説のデュエリスト共!!】

ズァークが龍の爪を思わせるデュエルディスクを展開する!!

 

 

「アテム…いくよ!見ててくれ!!僕達の決闘を!!」

自分達を力強く送り出してくれた誇り高き王へと呼びかけながら、遊戯がデュエルディスクを展開する!

 

 

《十代、今回は全力でいくよ!》

 

「ああ!いくぜ!!」

瞳を黄色と緑のオッドアイに変えながら…ユベルと共に十代が気合いを入れる!

 

キィン─!!

 

「赤き竜…力を貸してくれ…!オレ達が暮らす世界を…遊海さん達が帰る世界を守る為に!!」

赤き竜の痣『ドラゴン・ヘッド』が輝く…遊星は世界を救う為に、再び闇へと立ち向かう!

 

 

《遊馬、今回は出し惜しみはしない…ズァークを倒すぞ!》

 

「ああ…!そして思い出させるんだ!本当のデュエルの楽しさを!!」

アストラルと頷き合いながら、遊馬がデュエルディスクを構える!

 

 

 

「頑張って…!頑張って!遊海さん!みんな!!」

 

《フォウ!(頑張って!みんな!!)》

 

「遊馬!アストラル!2人ならきっと勝てる!」

 

「遊星!お前は1人ではない!」

 

「オレ達がついてる!!」

 

「十代!お願い…!」

 

「遊戯!遊海!案ずるな、お前達が負けても俺達がいる!」

戦いを前に翠や小鳥、ジャックやクロウ、明日香、海馬…戦いの場に集う仲間達が声援を送る…!

 

 

「白波遊海!私達の運命…貴方達に託す!!」

 

「頼む…!遊矢を、ユート達を救ってくれ!」

 

「遊矢をお願いします!!」

そして、それはランサーズも同じ…ズァークの中にいる遊矢やユート達の無事を信じて声を張り上げる!!

 

 

 

「待ってろよ、遊矢…お前達も必ず助ける…!いくぞ、みんな!これが最後の戦いだ!!」

最後に全員を鼓舞する為、遊海が叫ぶ…!

 

 

 

 

 

 

ADVENT BEAST

 

人類悪 咆哮

 

 

 

 

 

我こそはズァーク…!我は戦い続ける…この世全てを破壊するまで!!地に伏せるがいい!決闘者(デュエリスト)共!!

 

 

 

 

【「「「「「デュエル!!」」」」」】

 

ズァークLP4000

遊海&遊戯&十代&遊星&遊馬LP4000

 

 

フィールド非共有

 

ターン進行

 

ズァーク→遊海→ズァーク→遊馬→ズァーク→遊星→ズァーク→十代→ズァーク→遊戯………

 

 

 

 

 

 

 

@ズァーク

 

【我のターン!刮目するがいい…!覇道、王道を凌駕した比類なき力を思い知れ!!】

【我は手札のスケール0『覇王門零』とスケール13の『覇王門無限』でペンデュラムスケールをセッティング!!】

 

PENDULUM!!

 

「スケール0と13!?」

 

「いきなりとんでもない事しやがる…!!」

ズァークの背後に「0」と「∞」をモチーフにしたモニュメントが浮かび上がる…ズァークはDM世界の戦いから力を増していた…!

 

 

【これで我はレベル1から12のモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!!我の下へ集え、我が下僕達!2体の『覇王眷竜ダークヴルム』!!】

ペンデュラムの軌跡が揺れ動き、覇王の尖兵を喚び出す! ATK1800 ATK1800

 

【我はこれにてターンエンドだ!】

 

ズァークLP4000

ダークヴルム ダークヴルム (覇王門零 無限) 手札1

 

 

 

 

「やはり()()()になってるか…!なら、俺も出し惜しみは───っつ!?なんで…!?」

 

「っ…?遊海!どうしたんだ!?」

ペンデュラムモンスターの存在からズァークが『完全体』になっている事を確信する遊海…だが、手札を見た瞬間に顔色が青褪める…。

 

 

()()()()()()…!?俺は「クリフォート」を選んだはずなのに!?」

 

「「「「ええっ!?」」」」

遊海は万全の態勢で挑む為に『魂のデッキ』であるクリフォートを選んだはずだった…だが、手札のカードは()()()()()()()()()のカードだったのだ…!

 

「(デッキケースの誤作動…?いや、()()()()()じゃなきゃ…ズァークは倒せない、という事なのか…?)」

遊海は腰のデッキケース、デウス神謹製の『NEXUSコネクター』を見る…それは遊海のカード庫に接続され、遊海の意思に沿った()()のデッキを取り出す事ができる…つまり、ズァークを止めるには、()()()()()()()が最適だと判断されたのだ。

 

 

《マスター…!》

 

「デュエルが始まってしまった以上、やるしかない!!いくぞ、ユウスケ!!」

 

『ああ…無茶だろうが、魂が壊れようが…やるしかねぇ!!』

本来より低くなったデッキパワーを補う為、遊海は切り札を切る!

 

 

俺は俺自身でオーバーレイ!!

 

我が身に宿る戦いの宿命…救世の願い!今こそ!絶望を祓う力となれ!!シャイニング・カオス・エクシーズチェンジ!!

 

遊海から飛び出した光が螺旋を描き、その魂を昇華する!

 

 

闇を祓う、絆の輝き!!NEXUS!!

 

【現れたか…光の戦士…!】

黄金の嵐が融合次元に吹き荒れる…そして、黒金の推進翼を背負う混沌の決闘者──NEXUSⅢが現れる!!

 

 

 

 

@遊海

 

いくぞ…俺のターン!最強決闘者の決闘は全て必然!ドローカードすらも決闘者が創造する!シャイニングドロー!!

光の軌跡が勝利への布石となるカードを呼び込む!!

 

 

「悪いが…お前の得手を封じさせてもらう!速攻魔法発動!『揺れる眼差し』!お互いのペンデュラムゾーンのカード全てを破壊する!」

 

【なにっ…貴様!!】

遊海の目の前にウジャト眼が浮かび上がり、ズァークのペンデュラムゾーンを破壊する!

 

「そして破壊したペンデュラムゾーンのカードの枚数に応じて効果が発動する!俺が破壊したのは2枚!1枚を破壊した効果!お前に500ダメージを与える!」

 

【ぐうっ…!!】

小さな稲妻がズァークにダメージを与える!

 

ズァーク LP4000→3500

 

 

「そして2枚破壊した事でデッキからペンデュラムモンスター『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』を手札に加える!」

 

【やはり貴様は一筋縄ではいかんな…だが、我はその先をいこう…!!手札の『アストログラフ・マジシャン』の効果発動!自分フィールドのカードが破壊された時、手札のこのカードを特殊召喚できる!時を読み、星を読み…時空を操りし全知全能の魔術師よ!今此処に降臨せよ!『アストログラフ・マジシャン』!!】

 

「っ!!」

ズァークの場に白い衣を纏う神秘的な雰囲気の魔術師が現れる! ATK2500

 

 

【さらに!『アストログラフ・マジシャン』の効果発動!このモンスターが自身の効果で特殊召喚に成功した時、そのトリガーとなったカードを元々のゾーンに表側表示で置く!舞い戻れ!『覇王門零』『覇王門無限』!!】

ズァークの背後に再び『0』と『∞』のモニュメントが浮かび上がる!

 

 

「っ…そう簡単にはいかないか…!!俺は手札のスケール1『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』をセッティング!!」

 

PENDULUM!!

 

 

「あのカードは…!?」

 

「遊希さんの使った…!!」

遊海の背後に赤と緑のドラゴンの姿が浮かび上がり、権現坂と柚子が驚く…遊海のデュエルディスクにセットされたのは『オッドアイズ』デッキだったのだ…!

 

 

「これで、俺はレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ!希望のペンデュラム!!我が魂に宿る大いなる力よ!絶望を祓う力を呼び覚ませ!ペンデュラム召喚!!現れろ!幻影揺らめく二色の眼!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

赤色のペンデュラムが揺れ動き、その軌跡の中から外骨格を纏う幻影のオッドアイズが現れる! ATK2500

 

 

 

《グルルッ…!!グアアアン!!》

 

「お前…やっぱり…」

今までにない咆哮を上げながら幻影のオッドアイズはズァークを威嚇する…その様子を見た遊海は疑念が確信に変わり始めていた。

 

【なんだ?その()()()()()()()()()は…!そんなモンスターで我を倒せると思うな!!】

 

「気色悪い…?すっげえかっこいいのに…?」

 

(どうやら…ズァークは遊海のドラゴンの姿を正しい姿で見る事ができていないようだな)

そして…幻影のオッドアイズの姿を見たズァークは怒りを露わにする…まるで()()()()()()()()()()()()()

その様子を見たアストラルはズァークの状態を予想している…。

 

 

「確かに、こいつだけじゃお前は倒せないだろうが…出鼻をくじく事はできる!バトルだ!『オッドアイズファントム』で『アストログラフマジシャン』を攻撃!夢幻のスパイラル・フレイム!!」

 

【ぐうっ…!奴を葬れ!!『アストログラフマジシャン』!!】

幻影のオッドアイズと星見の魔術師の攻撃が衝突…互いに吹き飛ばされる!

 

 

「すまん、オッドアイズ…俺は手札を3枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊海LP4000

(Pペルソナ ミラージュ) 伏せ3 手札0

 

 

 

 

【白波遊海…貴様がどんな手段で来ようとも…その全てを打ち砕いてやろう…!!】

 

 

 

 

@ズァーク

 

【我のターン!!ドロー!】

【魔法カード発動!『死者蘇生』!我がフィールドに舞い戻れ!そして我に力を与えよ!『アストログラフ・マジシャン』!!】

 

「っ!!」

ズァークのフィールドに全能の魔術師が復活する! ATK2500

 

 

「お前達!来るぞ!!気を引き締めろ!!」

 

【ククク…ハハハ!!『アストログラフ・マジシャン』の効果発動!!このカードをリリースし、デッキ・フィールド・墓地・エクストラデッキから四天の龍を除外する事で効果発動!!『アストログラフマジシャン』よ!我が糧となれ!そして四天の龍!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!『クリアウイング・シンクロ・ドラゴン』!『スターヴヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』よ!この我の礎となれ!!】

 

ギィン!!

 

アストログラフマジシャンが杖を振るう…そしてズァークのデッキから四天の龍が飛び出し、さらにズァークを覆うように赤黒い雲が発生…赤雷が周囲に降り注ぐ…!!

 

「翠!フレア!みんなを守れ!!」

 

「はい!千年指輪よ…私達を守って!!」

 

《我が身は闇を祓う太陽の化身…災禍は通さない!!》

赤雷がアカデミアを破壊していく中、翠とフレアの結界が仲間達を守護する!

 

 

 

四天の龍を統べ、第5の次元に君臨する究極龍よ!今こそ、この我と一つとなるのだ!!統合召喚!

そしてズァークを取り込んだ禍々しい赤黒い雲が1か所に集中…決闘者が乗り越えるべき『人類悪』が降臨する!!

 

 

【出でよ…!『覇王龍ズァーク』!!】

闇が爆発する…そして融合でありシンクロ、エクシーズでありペンデュラム…4つの召喚法を内包する『覇王』が現れる。

 

『地縛神』を上回る巨大な翼を広げ、全身に緑と赤のエネルギーを迸らせ、その胸元には魔人ズァークを取り込んだ異形の龍…それこそが『闘争の獣』──『覇王龍ズァーク』!!

 

 

 

「あれが、『覇王龍ズァーク』…!なんて大きさだ…!?」

 

「オレイカルコスの神を思い出す巨大さに、ゾークに迫る殺気…これが、『覇王龍』…!!」

初めて『覇王龍ズァーク』の姿を目の当たりにした遊星と遊戯が冷や汗を流す…その威圧は彼らが戦った強敵の姿を思い出させていた…。

 

 

 

【我はペンデュラムにしてエクシーズ…シンクロにして融合…!全てを司る究極の存在なり!!】

 

《■■■■■■───!!》

魔人ズァークの宣言と共に龍体が咆哮を轟かせる…かつてのパラドックス同様、プレイヤーとモンスターが融合しているのだ…!

 

 

「気をつけろよ、お前達…!『ズァーク』は特殊召喚に成功した時、相手のフィールドのモンスターを破壊、その攻撃力の合計分のダメージを相手に与える…それだけじゃない、ズァークはお互いの墓地または除外ゾーンに融合・シンクロ・エクシーズモンスターが存在する限り戦闘破壊されず、フィールドを離れる効果も受けない…そして、奴が存在する限り…奴のモンスターは俺達の融合・シンクロ・エクシーズモンスターの効果を受けない…!」

 

「っ…なんという効果だ…!?」

 

(人間界で戦った時よりも強化されている…!)

遊海の言葉に遊星とアストラルが戦慄する…DM世界における戦いよりもズァークは強大になっていた…!

 

 

【究極の力の前に滅びるがいい!デュエリスト共!!我自身でダイレクトアタック!!】

 

「まだ始まったばっかりだろうが!!罠カード『攻撃の無敵化』!!このバトルフェイズの間、俺達が受けるダメージは0になる!!ぐうっ…!?があああっ!?」

 

「「「「遊海!!」」」」

 

「遊海さん!!」

破壊光線を放つズァークを前に遊海が遊戯達を守る為に罠カードを発動、攻撃を受け止めたが…その余波で吹き飛ばされ、アカデミアの城壁に激突…NEXUSも解除されてしまった…!

 

 

【フン…愚かな…我はこれでターンエンドだ】

 

ズァークLP3500

ズァーク (P覇王門零 無限) 手札1

 

 

 

 

 

「ぐっ……前より、いてぇ……」

 

「っ…遊海…!」

 

(遊馬、我々も出し惜しみは無しだ…!『ズァーク』は無敵に近いが、必ず活路はある!いくぞ!!ZEXALだ!!)

 

「おう!!」

激痛に表情を歪める遊海…その姿を見た遊馬とアストラルは奇跡の力を解き放つ!!

 

 

 

いくぜ!オレとお前でオーバーレイ!!

 

私達2人でオーバーレイ・ネットワークを構築!!

 

 

【なに…!?】

遊馬とアストラルが赤と青の閃光へと姿を変え、融合次元の空へと飛び上がる!!

 

 

希望に輝く心と心!真の絆で結ばれし魂!その2つの魂が交わる時、語り継がれし奇跡の力が現れる!!

 

螺旋を描いた2つの光が衝突…希望の光が全てを照らす!

 

アルティメット・エクシーズチェンジ!ZEXAL!!

 

光の中から『希望』が現れる、それは光輝く翼と重厚な赤と金色の鎧を纏う、赤と金のオッドアイの『奇跡の勇者』──ZEXALⅢが時空を超えて光臨する!!

 

 

 

「わわっ…!?遊馬とアストラルが超融合したザウルス!?」

 

「違います!あれが2人の絆…魂のエクシーズ召喚、ZEXALです!」

 

「ゼアル…すっげえな!!」

2人の決闘者が1人になった事に驚く剣山に小鳥が補足する…その横でZEXALの姿を初めて見た城之内が目を輝かせていた…。

 

 

【九十九遊馬…貴様も奥の手を隠していたか】

 

「ああ…いくぜ、ズァーク!ここからのオレ達は全力だ!!」

 

 

 

 

@遊馬

 

オレのターン!!最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえも、デュエリストが創造する!シャイニング・ドロー!!

 

光の軌跡が希望の1枚を創造する!

 

 

(遊馬、遊海はペンデュラムゾーンの破壊を一番に狙った…あの2枚にも役割がある、破壊するぞ!)

 

「ああ!オレは『希望皇オノマトピア』を召喚!」

デフォルメされた希望の戦士が現れる! ATK1500

 

「『オノマトピア』の効果発動!手札から『ガガガマジシャン』を特殊召喚!」

希望の導きで学生服の魔術師が現れる! ATK1500

 

 

「さらに魔法カード『ガガガボルト』発動!オレのフィールドに『ガガガマジシャン』が存在する事で、相手のカード1枚を破壊できる!オレはペンデュラムスケールの『覇王門零』を破壊!!」

 

《ガガガ…ボルト!!》

 

【おのれっ!!我が覇王門を!!『覇王門無限』は『覇王門零』無き時に破壊される…!!】

稲妻の一撃が『0』のモニュメントを打ち砕き、連鎖して『∞』のモニュメントも破壊される!

 

 

「よし!!そしてオレはレベル4の『オノマトピア』と『ガガガマジシャン』の2体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

2体のモンスターが銀河へと飛び込み、ビックバンが起きる!

 

39

 

「現れろ!『No.39』!オレ達の戦いはここから始まる!白き翼に望みを託せ!!光の使者!『希望皇ホープ』!!」

 

《ホープッ!!》

銀河の中から現れた白い塔のモニュメントが変形…神殺しを成し遂げた白き希望の戦士が現れる! ATK2500

 

 

 

【現れたか…希望皇ホープ…!ならば、応えてやろう!この瞬間、我は『ダークヴルム』2体でエクシーズ召喚を行なう!!このモンスターはフィールドに我が存在し、相手がエクシーズ召喚を行なった時にエクシーズ召喚できる!】

 

「なっ、このタイミングでエクシーズ召喚!?」

ズァークの目の前に闇の銀河が現れ、爆発する!

 

【漆黒の闇に住まう反逆の牙よ…我に屈し、我に従え!エクシーズ召喚!!ランク4『覇王眷竜ダーク・リベリオン』!!】

闇の爆発の中から禍々しい力を纏う、覇王の下僕たる反逆の牙が現れる! ATK2500

 

 

「あのモンスターは、ユートの…!!」

 

「ユート…!!」

覇王の手に堕ちた反逆の牙を見た黒咲と瑠璃が悲しげな表情を浮かべる…。

 

 

(前に戦った時はなかった効果だ…気をつけろ、遊馬!)

 

「ああ…!いくぜ!オレは魔法カード『エクシーズ・トレジャー』を発動!フィールドのエクシーズモンスター1体につきカードを1枚ドローできる!!」

全ての光よ、力よ!我が右腕に宿り、希望の道筋を照らせ!トリプル・シャイニング・ドロー!!

さらなる光の軌跡が勝利への道筋を照らす…だが…!

 

 

【忘れたか!我が存在する限り、ドローフェイズ以外にデッキから手札に加えられたカードは破壊される!!】

 

「アッチぃっ!?」

ズァークの頭上から飛び出した赤雷がシャイニングドローによってドローされたカードを破壊する!

 

 

破壊されたカード

 

ZW-天馬双翼剣

ダメージダイエット

タスケルトン

 

 

 

(今だ!遊馬!)

 

「おう!!魔法カード『ゼアル・エントラスト』発動!このカードは墓地の『希望皇ホープ』『ZW(ゼアル・ウェポン)』『ZS(ゼアル・サーバス)』のどれか1体を手札に加えるか、特殊召喚する!墓地から現れろ!『ZW-天馬双翼剣(ペガサス・ツイン・セイバー)』!!」

 

【なにっ!?】

遊馬の墓地から白銀のペガサスが飛び出す! ATK1000

 

 

「そして『天馬双翼剣』は『希望皇ホープ』の装備カードとなり、攻撃力を1000アップさせる!チェンジ!ツイン・セイバー!!」

白銀のペガサスが変形…ホープ剣と合体し、絶望を切り裂く力となる!

 

希望皇ホープ ATK2500→3500

 

 

(遊馬!)

 

「おう!バトルだ!『希望皇ホープ』で『覇王眷竜ダークリベリオン』を攻撃!ホープ剣ペガサス・ツイン・スラッシュ!!」

ホープが白銀の刃を振り上げる!

 

 

【無駄だ…!『覇王眷竜ダークリベリオン』の効果発動!このモンスターがバトルする時、ORUを1つ使い!相手モンスターの攻撃力を0にし、その攻撃力を自身の攻撃力に加える!!】

 

「不味い!この効果を受けたら遊馬達のライフが!!」

 

「大丈夫…!今の遊馬とアストラルは…最強なんだから!!」

だが、ズァークも黙って見ている訳ではない…紫電がホープを拘束し、その姿を見たエクシーズ次元のカイトが声を上げるが…小鳥は遊馬達の逆転を信じていた…!

 

 

「『天馬双翼剣』の効果発動!このカードが装備されている時!1ターンに1度、フィールド上で相手モンスターが発動した効果を無効にする!!」

 

【なんだと!?】

希望の戦士は紫電を振り払い、跳躍する!!

 

 

 

【おのれ…!『覇王眷竜ダークリベリオン』の効果発動!自身をエクストラデッキに戻し、墓地の『覇王眷竜ダークヴルム』2体を特殊召喚!さらに、相手のエクシーズモンスターの攻撃力を0にする!】

 

(「なにっ!?」)

 

「ああっ…!?」

ダークリベリオンがその場から離脱…2体のダークヴルムが再び現れ、さらにズァークの赤雷を受けたホープの攻撃力が下がってしまう…!

 

 

ダークヴルムATK1800

 

ダークヴルムATK1800

 

希望皇ホープATK3500→0

 

 

「強くなり過ぎだぜ…!オレはカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊馬LP4000

希望皇ホープ(天馬双翼剣) 伏せ1 手札0

 

 

 

 

(やはりズァークは一筋縄ではいかないか…!)

 

【やるではないか、九十九遊馬…次は我の番だ…!】

 

「っ…!掛かってこい!ズァーク!!」

遊馬とアストラルの猛攻を凌いだズァークが反撃に転じる!

 

 

 

 

@ズァーク

 

【我のターン!ドロー!】

【バトルだ!我で『希望皇ホープ』を攻撃!!】

 

「ぐっ…させ、るか…!罠カード『ガード・ブロック』…!戦闘ダメージを0にして、俺は1枚ドローする…!!」

 

「遊海!『No.』の『希望皇ホープ』は『No.』との戦闘でなければ破壊されない!!ぐううっ!!」

ズァークの破壊光線がホープに直撃…だが、ダメージは遊海の罠カードに防がれ、ナンバーズのホープは破壊を免れる!

 

 

【だが、まだ攻撃は残っている…!2体の『ダークヴルム』で『希望皇ホープ』を攻撃!】

 

「まだだ!墓地の『タスケルトン』の効果発動!墓地のこのカードを除外して、攻撃を無効にする!!ぐああああっ!?」

 

「遊馬!アストラル!!」

 

「大丈夫か!?」

襲い掛かる2体の覇王眷竜…遊馬は一撃は避けたが、二撃目が直撃…遊海と同じく城壁に叩きつけられ、ZEXALが解けてしまう…!

 

遊馬LP4000→2200

 

 

「げほっ…すまねぇ、みんな…!ダメージ、うけちまった…!」

 

「いや、よく攻撃を防いでくれた…!」 

 

「ここから挽回だ!!」

 

「ああ…!僕達で必ずズァークを止めるんだ!」

 

「デュエルは、ここからだ…!」

ダメージを受けてしまった事を謝る遊馬…だが、遊星や十代達は明るく声をかける。

 

 

 

【フン…小賢しい真似を…我はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ】

 

ズァークLP3500

ズァーク ダークヴルム ダークヴルム 伏せ1 手札1

 

 

 

 

「ズァーク…遊海さん達の世界で生まれた災厄…必ずオレ達が止めてみせる!!」

 

 

 

 

@遊星

 

「オレのターン!ドロー!」

「魔法カード『調律』を発動!デッキから『シンクロン』チューナー『アサルト・シンクロン』を手札に加え、デッキトップのカードを墓地に送る!」

 

墓地送り

チューニング・サポーター

 

 

【無駄だ!我の効果でドローフェイズ以外でデッキから手札に加えられたカードは破壊される!】

 

「っ…ああ、だが準備は整った!『ジャンク・シンクロン』を召喚!!」

眼鏡を掛けたオレンジ色のロボットが現れる! ATK1300

 

「『ジャンク・シンクロン』の効果発動!墓地のレベル2以下のモンスターを効果を無効にして、守備表示で特殊召喚できる!来い!『チューニング・サポーター』!」

フライパンを被った小柄なロボットが現れる! DEF300

 

 

「さらに!手札の『ジャンク・サーバント』はフィールドに『ジャンク』モンスターが存在する時、特殊召喚できる!!」

人型の単眼ロボットが現れる! ATK1500

 

 

「オレはレベル4の『ジャンク・サーバント』とレベル1の『チューニング・サポーター』にレベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!!」

 

4+1+3=8

 

「集いし絆が新たに輝く星となる!!光差す道となれ!シンクロ召喚!!飛翔せよ!レベル8!『スターダスト・ドラゴン』!!」

星屑の光を纏い、白き希望の竜が飛翔する! ATK2500

 

 

 

【フン…次はシンクロか…!我はこの瞬間!2体の『覇王眷竜ダークヴルム』をリリースし、シンクロ召喚を行なう!!】

 

「なっ…チューナー無しのシンクロ召喚だと!?」

 

【光の翼持つ眷属よ…その鋭利なる両翼で敵を討て!シンクロ召喚!!現れろ!『覇王眷竜クリアウイング』!!】

 

「『クリアウイング』が…!」

 

「禍々しいな…!本当に『悪役』のドラゴンじゃねぇか…!!」

しかし、それに呼応するように光の翼を持つ覇王眷竜が現れる! ATK2500

 

 

 

【『覇王眷竜クリアウイング』が特殊召喚された時、相手モンスター全ての効果を無効にし、破壊する!】

 

「なにっ!?」

 

「させっかよ!!『希望皇ホープ』に装備された『天馬双翼剣』の効果発動!1ターンに1度、相手モンスターが発動した効果を無効にする!」

 

【ぐっ…忌々しい!!】

破壊の光を放つクリアウイング…その光を天馬の双剣が弾き返す!

 

 

「ナイスアシストだ遊馬!『チューニング・サポーター』がシンクロ素材として墓地に送られた事で1枚ドローできる!さらに装備魔法『白銀の翼』を『スターダスト・ドラゴン』に装備!!」

スターダストが白銀の翼を背負う!

 

 

「バトルだ!『スターダスト・ドラゴン』で『覇王眷竜クリアウイング』を攻撃!響け!シューティング・ソニック!!」

 

【相討ち狙いか…だが!『覇王眷竜クリアウイング』の効果発動!このモンスターが相手モンスターとバトルする時、その攻撃を無効にし、そのモンスターを破壊する事でその攻撃力分のダメージを与える!】

 

「っ…『白銀の翼』の効果!装備モンスターが効果で破壊される時、このカードを代わりに破壊する!」

再び放たれる破壊の光…遊星はそれを間一髪で回避する!

 

「隙がない…だが、オレは諦めない!カードを3枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊星LP2200

スターダストドラゴン 伏せ2 手札0

 

 

 

 

@ズァーク

 

【我のターン!】

【『覇王眷竜クリアウイング』の効果発動!このカードをエクストラデッキに戻し、エクストラデッキの『覇王眷竜ダークヴルム』2体を特殊召喚し!相手のシンクロモンスターの攻撃力を0にする!!】

 

「くっ…同じ効果か…!」

クリアウイングが消え、再び覇王の尖兵達が現れる! ATK1800  ATK1800

 

 

スターダストドラゴン ATK2500→0

 

 

【バトルだ!我で『スターダストドラゴン』を攻撃!!】

 

「やらせはしない!!罠カード『くず鉄のかかし』!相手モンスターの攻撃を無効にし、このカードは再びセットされる!!」

ボロボロのかかしが破壊光線を受け止める!

 

 

【だが、これで終わりだ!1体目の『ダークヴルム』で『スターダストドラゴン』を攻撃!!】

 

「まだだ!罠カード発動!『ドタキャン』!!相手モンスターが攻撃してきた時、自分のモンスター全てを守備表示にする!!」

 

【なにっ!?ぐうっ!?】

続く攻撃を遊海の罠カードがカバー…ズァークに反射ダメージを与える!

 

希望皇ホープ ATK0→DEF2000

 

スターダストドラゴン ATK0→DEF2000

 

ズァークLP3500→3300

 

 

【おのれぇ…!我はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ…!】

 

ズァークLP3300

ズァーク ダークヴルム ダークヴルム  伏せ2 手札1

 

 

 

 

「いくぜ、ズァーク!!」

 

 

 

 

@十代

 

「オレのターン!ドロー!!」

「よし…いい感じだ!魔法カード『ネオス・フュージョン』発動!オレはデッキの『E・HEROネオス』とデッキの『N エア・ハミングバード』を墓地に送り、エクストラデッキから融合モンスターを特殊召喚する!!現れろ!『E・HEROエアー・ネオス』!!」

白き宇宙のHEROと風のエレメントを宿す鳥人が融合…白き翼を持つ赤き風のHEROが現れる! ATK2500

 

 

【融合使いか…この瞬間、我は『ダークヴルム』2体をリリースし融合召喚を───なに…?!】

 

「残念だったな!『ネオス・フュージョン』の効果は融合召喚じゃなくて()()()()!お前のエクストラデッキにいるだろう『覇王眷竜スターヴ・ヴェノム』の効果は発動しないぜ!」

 

【味な真似をするではないか…!!】

 

「流石アニキッス!!ズァークの裏をかいた!!」

 

「頑張って!十代!!」

イタズラが成功したような笑みを見せる十代に苛ついた様子のズァーク…その様子を見た翔や明日香が声援を送る!

 

 

《油断するなよ、十代》

 

「ああ…!「エアーネオス」の攻撃力は自分と相手のライフの差分アップする!!ライフの差は1100だ!」

 

エアーネオス ATK2500→3600

 

 

「バトルだ!『エアーネオス』で『ダークヴルム』を攻撃!!スカイリップ・ウイング!!」

風のネオスが翼から鋭い風刃を放つ!

 

【舐めるな!速攻魔法『瞬間融合』!!2体の『ダークヴルム』を融合する!!】

 

「なにっ!?」

2体の尖兵が融合の渦に飲み込まれる! 

 

 

【飢えた牙持つ眷属よ!その毒で全てを蝕め!!融合召喚!現れろ!『覇王眷竜スターヴヴェノム』!!】

 

「ユーリのドラゴン…!」

 

「本物より禍々しいザウルス…!!」

禍々しさを増した毒龍が現れる! ATK2800

 

 

 

【『覇王眷竜スターヴヴェノム』が存在する限り、このカード以外の融合モンスターは攻撃されぬ…!】

 

「なら…『エアーネオス』で『覇王眷竜スターヴヴェノム』を攻撃!」

 

【『覇王眷竜スターヴヴェノム』の効果発動!このカードをエクストラデッキに戻し、エクストラデッキから『ダークヴルム』を特殊召喚!そして融合モンスターの攻撃力は0になる!!】

 

「っ…ダメか…!!」

覇王の呪いがHEROを蝕む…!

 

ダークヴルムATK1800

 

ダークヴルムATK1800

 

エアーネオスATK3600→0

 

 

 

「でも…少しはヒヤッとしただろ?オレは装備魔法『インスタント・ネオスペース』を『エアーネオス』に装備!カードを4枚伏せてターンエンドだ!」

 

十代LP2200

エアーネオス(インスタントネオスペース) 伏せ4 手札0

 

 

 

 

「くっそ~…!いい線いったと思ったんだけどなぁ!!」

 

「十代、キミのデュエルは相変わらず予想ができないね!」

 

「ヘヘッ…なんか懐かしいな…!この雰囲気!ピンチなのに、()()()()()()()()()()!」

 

「記憶で見た通りだ…どんなピンチでも、遊戯さんも十代さんも…()()()()()()()()()()…!」

 

(デュエルを楽しむ…キミはどうだ?)

 

「ああ…!ピンチで、世界の命運が掛かってるのは分かってるけどさ……正直ワクワクしてんだ!!」

 

「まったく…俺がカバーできてなきゃ、結構ヤバい状況なんだけどなぁ!」

 

《仕方ありませんよマスター…みんな、心の底から()()()なんですから!》

 

 

「みんな…なんだか……」

 

「楽しそう、だな…?」

 

「笑っている場合ではないと思うのだが…」

 

 

『──ああ、そうか……()()()、オレと一緒に戦ったのは──』

ズァークにダメージを与えられなかった事を悔しがる十代、その様子を見ながら苦笑する遊戯…受け継いだ記憶を思い出す遊星、アストラルと笑い合う遊馬…少し呆れた…しかし、楽しそうな遊海。

その様子を見た柚子や権現坂、零児が困惑した様子を見せる。

 

その様子を見ていたラプラスは思い出した、遥かな記憶の彼方…夢幻の世界で彼らと肩を並べて戦った事を…。

 

 

 

 

笑っていられるのも今のうちだ!デュエリスト共!!

 

 

 

 

@ズァーク

 

【我のターン!!】

【バトル!我で『エアーネオス』を攻撃!!】

 

「そうイライラするなって!速攻魔法『コンタクト・アウト』!『エアーネオス』をデッキに戻して、融合素材がデッキに揃っているならその2体を特殊召喚できるんだけど…『ネオスフュージョン』で墓地にいるからその効果は発動できない……だけど!装備魔法『インスタントネオスペース』の効果発動!装備モンスターがフィールドを離れた時、自分の手札・デッキ・墓地から『E・HEROネオス』を特殊召喚できる!」

風のHEROが消え、白き宇宙のHEROが現れる! ATK2500

 

 

【モンスターを出そうが無駄だ!我で『ネオス』を攻撃!!】

 

「さらに罠カード『ヒーロー・バリア』!自分のフィールドに『E・HERO』がいる時、一度だけ攻撃を無効にできる!」

回転するバリアが破壊光線を弾く!

 

 

【くっ…!まあいい…!我はこれでターンエンドだ】

 

ズァークLP3300

ズァーク ダークヴルム ダークヴルム 伏せ1 手札1

 

 

 

「遊海や十代達も頑張ってくれたんだ…僕も応えないとね…!」

 

 

 

@遊戯

 

「僕のターン!ドロー!!」

 

【これ以上お前達の好きにはさせんぞ…!罠カード発動!『覇王無礼』!相手の手札を確認し、このカード以外の『覇王』カード1枚につき1枚、相手の手札を我が選んで捨てさせる!我の場の『覇王』カードは3枚!武藤遊戯!貴様の手札を見せてもらう!】

 

「くっ…!?」

遊戯の手札がソリッドビジョンで浮かび上がる!

 

遊戯手札

 

ブラック・スパイラル・フォース

永遠の魂

ブラック・マジシャン

聖なるバリア─ミラー・フォース

黒の魔導陣

クリボー

 

 

 

【ならば…『聖なるバリア─ミラー・フォース』『ブラック・マジシャン』『黒の魔導陣』を墓地に送る!そして!1枚につき300ダメージだ!】

 

 

「させるか!!墓地の『ダメージ・ダイエット』の効果発動!墓地のこのカードを除外して、オレ達が受ける効果ダメージを半分にする!!」

 

「ぐううっ!!?」

遊戯の手札を爆発させるズァーク…だが、遊馬の罠カードがダメージを最小限に抑え込む…!

 

遊戯LP2200→1750

 

 

「っ…遊戯!大丈夫か!」

 

「ごめん、大丈夫…!僕はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ…!」

ズァークによって妨害を受けた遊戯は悔しそうにターンを終えた…。

 

遊戯LP1750

伏せ2 手札1

 

 

 

 

【これで終わりだ…デュエリスト共!!】

 

 

 

 

@ズァーク

 

【我のターン!ドロー!】

【我は2体の『ダークヴルム』をリリース!二色の眼の眷属よ!我が敵を薙ぎ払え!『覇王眷竜オッドアイズ』!!】

 

「遊矢…!!」

 

「オッドアイズまで…!」

覇王の下僕たる二色の眼のドラゴンが現れる! ATK2500

 

 

【『覇王眷竜オッドアイズ』が存在する限り、相手は他のペンデュラムモンスターを攻撃できず!我のペンデュラムモンスターが相手に与えるダメージは2倍になる!!】

 

(っ…!その効果は『天馬双翼剣』でも無効にできない…!!)

 

【その通り…!だが、本命ではない…!『覇王眷竜オッドアイズ』の効果!このモンスターをエクストラデッキに表側で加え、エクストラデッキから2体の『ダークヴルム』を特殊召喚!そして相手フィールドのモンスターの攻撃力を0にする!】

 

「っ…!」

オッドアイズが姿を消し、覇王の呪いがネオスの力を奪い去る…!

 

ダークヴルムATK1800

 

ダークヴルムATK1800

 

ネオスATK2500→0

 

 

 

【バトルだ!『ダークヴルム』で『ネオス』を攻撃!!】

 

「っ…!罠カード発動!『くず鉄のかかし』!その攻撃を無効にする!」

 

【そうだ!!お前達はこの攻撃を無効にしなければならない…!そうしなければライフが尽きる…どちらにしても、我の攻撃が残っているがなぁ!!】

遊星の罠が攻撃を防ぐ…だが、最悪の一撃が残っている…!

 

 

 

【少しは楽しめたぞ…伝説のデュエリスト共…!さぁ、慈悲だ…消し飛ぶがいい!我で『ネオス』を攻撃!!】

 

「っ…!遊海さん!みんな──!!」

 

「やめて…!止まって!遊矢──!!」

 

「まだだ!!手札の『クリボー』の効果発動!このカードを手札から墓地に送る事で1度だけ戦闘ダメージを0にする!!」

 

《クリクリクリー!》

 

【おのれ…!毛玉風情が!!】

破壊光線がネオスを吹き飛ばす刹那、巨大化した毛玉が攻撃の余波から遊戯達を守りきる!

 

 

「罠カード発動!『奇跡の残照』!このターンにバトルで破壊されたモンスターを特殊召喚する!」

 

「サンキュー遊星!戻って来い!『ネオス』!!」

そして遊星の罠によって十代のフィールドに白きHEROが帰還する! DEF2000

 

 

 

「ありがとう遊星、助かったよ…!」

 

(しかし、状況が悪い…!我々がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚する度に『覇王眷竜』が立ち塞がる…!)

 

「ああ…!今までの攻撃はなんとか防げたが、守り続けるのも限界だ…!」

 

「それに、ズァークに一撃も与えられてねぇ…!」

 

「遊矢達の意識が目覚める気配もない…なんとかしないと…!」

攻撃をなんとかしのぎきった遊海達…だが、次々と現れる『覇王眷竜』とフィールドを支配する『ズァーク』を前に攻めあぐねてしまっていた…!

 

 

【無駄だ!どれほどのデュエリストが束になろうと…我は倒せぬ!我はペンデュラムスケールにスケール5の『覇王眷竜ダークヴルム』をセッティングし、カードを1枚伏せターンエンドだ!】

伝説のデュエリスト達を見下ろし、獰猛な笑みを浮かべるズァーク…全ては次の遊海のターンに懸かっている…!

 

ズァークLP3300

ズァーク ダークヴルム ダークヴルム (P ダークヴルム) 伏せ1 手札0

 

 

 

 

「(っ…どうすればズァークを倒せる…?遊戯の場には『永遠の魂』と『ブラック・スパイラル・フォース』がある、これで『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』を強化……ダメだ、『覇王眷竜オッドアイズ』に攻撃力を0にされる…みんなの思いを背負ってるのに……俺は、ここまでなのか…!!)」

遊海は拳を握り締める…今の遊海は『勝利の方程式』を見い出せないでいた…。

 

 

キィン─

 

 

【っ…?なんだ、この光は…?】

 

「これは…光が降りそそいで…!」

 

「この感覚は…オレは識っている…ネオ童実野シティを救おうと、空を翔けた時と同じ…」

 

(この光…感じる、これは()()だ…人々の願いが、光となって…!)

その時、不思議な事が起きた…不気味な色に覆われた空、そこから無数の小さな光が世界へと降りそそいでいるのだ。

 

そして、遊星とアストラルは気付いた…この光は人々の『祈り』や『願い』の力なのだと…。

 

 

 

 

 

 

 

Sideスタンダード次元

 

 

「遊矢兄ちゃん…帰ってきて…!」

 

「負けないで…!遊希さん!」

 

「信じてる…きっと、無事に帰ってきてくれるって…!」

 

「遊矢…!負けるな!熱血だ─!!」

スタンダード次元、遊勝塾…遊矢達の帰りを待っていた修造とジュニアコースの3人は時空の歪みを通じてズァークと戦うと戦う遊海達の姿を目撃していた。

 

全ての状況は分からない…しかし、悪に堕ちてしまった遊矢を救う為に遊海達が戦っているのは分かっていた…彼らにできるのは『祈る事』…大切な仲間達の無事を信じて…。

 

 

 

 

「遊戯…遊海…みんな…!」

 

「負けるな…!2人とも…!俺達は信じてるぞ!!」

 

「瀬人様…!」

 

「兄様…!!」

 

「遊海…!負けたら承知しないよ!克也と一緒にさっさと帰ってきな!!」

海馬コーポレーション…そこでは留守を任された杏子や本田、沙良やモクバ、舞が同じように祈っていた…ズァークに挑む遊戯や遊海の勝利を信じて…。

 

 

 

 

 

Sideシンクロ次元

 

 

「遊星…遊海…!頑張って…!遊矢を助けて…!」

 

「赤き竜…お願い…!私達の想いを届けて…!」

 

「遊星…私、信じてるから…!」

 

 

『……本当に、お前はいつもそうだよな…悪人でも救おうと手を伸ばしてさ…!勝てよ…白波…!』

 

「あの時と同じさ…!どんなピンチでも、あいつらなら必ず乗り越える!!」

 

 

「遊星…遊海さん…!大丈夫、お前達は何度も世界を救ってきたんだ…!みんなの想いが、必ず力になってくれる…!」

シンクロ次元…同じく戦いを目撃していた龍亞や龍可、アキ…ディヴァインや牛尾、そして不動博士…彼らも祈っていた…世界を救う為に戦う遊星と遊海の勝利を…!

 

 

 

 

 

Sideエクシーズ次元

 

 

「っ…遊矢…!そんな悪そうな奴に好き勝手させてんじゃねぇ!!」

 

「ユート…瑠璃…!」

 

エクシーズ次元…アレンとサヤカも祈る…遊矢やユート、瑠璃の無事を…世界を救う為に戦うデュエリスト達の勝利を…。

 

 

 

 

Side融合次元

 

 

「く、クロノス先生…!」

 

「大丈夫なノーネ…!セニョール十代が…セニョール遊海が…必ず、悪い奴を倒してくれるノーネ…!応援するノーネ!最強の決闘者達を!!」

融合次元…アカデミアの避難場所、ズァークへの恐怖に震える生徒達を励ましながら…クロノスは決闘者達の勝利を祈る…!

 

 

 

 

 

 

 

 

──遊海、大丈夫だ…お前達は勝てる、お前が繋いだ絆が…救い続けた人々の想いが…お前の力になる──

 

「───アテム…!」

降り注ぐ光の中、懐かしい声が遊海の背中を押す…それは冥界で待つ、最後の親友からの激励だった。

 

 

【やはりそうだ…お前は()()()()()()、仲間との『絆』…人々の抱く『希望』…お前が救い続けた者達によってな】

 

「ドン・サウザンド…」

そしてもう1人…遊海の中にいるドン・サウザンドが語りかける。

 

 

 

【ズァークとは悪意によって生まれた『悪魔』……ならば、その()はなんだ?人々の善意や祈りを受けた者…人々に希望を与える者……この世界でのみ、お前はその()()がある】

 

「──ドン・サウザンド…お前、本当に優しくなったよな……ありがとう」

 

【フン…さっさと終わらせてこい、()()()()()()()()()()()

 

──光と闇、善と悪…お前はその全てを乗り越えて進んできた…見せてやれ、遊海!お前が目指した『最善』の姿を!!──

 

「ああ!!」

遊海の体の底から力が溢れ出す…そして──

 

 

 

 

 

 

キィン─!

 

 

「この光は…!赤き竜!!」

 

《キュオオォォオオン!!》

 

遊星達の腕から痣が離れ…融合次元の空に赤き竜が顕現する!

 

 

 

【なんだ…!何が起きようとしている!?】

 

「……ズァーク、すまなかった……お前がそこまで追い詰められる前に、お前を止めてやるべきだった」

次々と起こる異変に戸惑うズァーク…彼の前に遊海が歩み出る。

 

 

【我は追い詰められてなどいない…!我はお前達の望みを叶えようとこの力を得た!!世界を破壊するほど強くなる為に!!】

 

「ズァーク…デュエルモンスターズは人を楽しませる為に生まれたんだ、その戦いを通じて人と人の絆を結び…世界をより良くする為に…それはお前も分かっていたはずだ!」

 

【黙れ…黙れ!!】

ズァークへとあるべきデュエルの姿を思い出すように伝える遊海…だが、ズァークはその言葉を否定する。

 

 

「ズァーク…いいや、遊矢!聞こえているか!お前がペンデュラム召喚を生み出した事でこの世界は変わり始めた!たくさんのデュエルを乗り越え、様々な困難を乗り越えて…お前は世界を変えてきた!」

 

【違う…!違うぞ白波遊海!ペンデュラム召喚を生み出したのは我が分身、榊遊矢ではない…我が…『覇王龍ズァーク』がペンデュラム召喚を生み出したのだ!!全ては()()()()()()()為に!次に戦った時!お前とあの()()に勝利する為に!!】

ズァーク、そして遊矢へと呼びかける遊海…その中でズァークは『ペンデュラム召喚』の始まりを語る…!

 

 

【絶対的存在だった我が小娘の力で分かたれた事でその中を揺れ動く力が生まれた…!それがペンデュラム召喚の始まり!そして我の魂は目覚めたのだ!!ペンデュラムの力を得て!!】

 

「だが、それだけじゃない!ペンデュラムは()()()()力だ!お前の()()によってペンデュラムが生まれたのなら…同じように()()の力も大きくなる!『大きく振れば大きく戻る!』それがペンデュラムだ!」

 

「──その言葉は…!」

悪意によってペンデュラムが生まれたと言うズァーク…だが、遊海は遊勝の言葉を引き合いに出し、ズァークにも『善』の力がある事を指摘する…。

 

 

「『遊矢!縮こまってないで…前に出ろ!』お前が進むべき『道』はここにある!!」

 

キィン─!

 

キィン─!

 

キィン─!

 

キィン─!

 

【っ…なんだ…!この光は!!】

ズァークの中にいる遊矢へと道を示す為に遊海は光を纏う…その力に呼応するように赤き竜や人々の『祈り』の光が遊海へと飛び込んでいく!

 

 

 

 

《───遊海君、きみは…そこに()()()んだね…彼を救う為に…》

そして、マーリンは気付いた…世界を救い、遊矢とズァークを救う為に遊海の到達した場所に……。

 

 

 

 

 

 

「終わりにしよう、ズァーク…お前の哀しい戦いを!」

 

「ゆ、遊海…!その、姿は…!」

 

「す、すっげえ…!」

光が収束した時、遊海の姿は変わっていた…そのシルエットは遊海の究極体である『NEXUSⅢ』と同じだが…姿は異なる。

 

 

白銀に輝く髪が逆立ち、額に金色のウジャト眼が輝き…瞳は赤と青のオッドアイに。

 

鎧は白銀色に輝き…推進翼からは虹色の粒子が漂い、胸元には『混沌(カオス)』の力を宿す赤紫色の核が輝き、それを囲むように赤き竜の痣が完成する。

 

光と闇、善と悪…その全てを宿した遊海の姿はまるで──

 

 

 

 

「遊海さん…()()みたい…」

翠の呟きが全てを物語る…白銀の光を纏うその姿は──『神』のようだった。

 

 

 

 

【っ…姿が変わったぐらいで…!我を倒せると思うな!!白波遊海ィィ!!

 

 

 

「遊戯、十代、遊星、遊馬、アストラル……力を貸してくれ!」

 

 

「(「「「ああ!!」」」)」

明らかに力を増した遊海を前にたじろぐズァーク…そして遊海の言葉に共に戦い続けた仲間達は力強く頷いた!

 

 

 

 

 

@遊海

 

 

「俺のターン!ドロー!!」

光の軌跡が全てを救う力を導く!

 

「揺れろ!希望のペンデュラム!!光と闇の狭間を揺れ動き、新たな未来を指し示せ!ペンデュラム召喚!!手札から『EMスライハンド・マジシャン』!そして、エクストラデッキから舞い戻れ!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

赤のペンデュラムが虹色の軌跡を描き、水晶の奇術師と幻影のオッドアイズを呼び覚ます! ATK2500 ATK2500

 

 

【っ…またそのみすぼらしいドラゴンか!!その姿を我に見せるなァ!!エクストラデッキの『覇王眷竜オッドアイズ』の効果!!相手がペンデュラム召喚をした事で我の場の『ダークヴルム』2体をリリースして特殊召喚できる!!】

再び覇王の眷属のオッドアイズが現われる! ATK2500

 

 

 

「ズァーク…お前の力で()()()()()ペンデュラム召喚が生まれたと言うのなら…!この『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』もまた()()()()()…お前の中に残された()()が、このドラゴンに宿っていた!純粋にデュエルを楽しんでいた頃のお前の思いが!!」

 

《グアアアン!!》

 

【なにっ…!?】

幻影のオッドアイズを嫌悪するズァーク…そして、遊海がその正体を明かす。

榊遊希のエースたる『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』…その正体…それは世界分裂の際、世界の『楔』になろうと展開した遊海の『NEXUS』の力に引き寄せられたズァークの『善性』──ズァークの力の一部が変化した存在だったのだ。

 

 

「ズァーク、本当は()()()()()んだろ…!でも、お前は止まれなかった…お前が()()できるほどのデュエルがなかったから…!だから、俺達の『世界』での戦いではお前は止められなかった!ならばこそ…この次元でお前を止める!」

 

黙れ…黙れ黙れ黙れぇぇ!!我は君臨し続ける!最強の存在として、この世界に──!!

 

 

 

「いくぞ…ズァーク!!俺は『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』と『スライハンド・マジシャン』をリリース!二色の眼の幻影よ!我が身に宿りし希望と共に…神の力をその身に宿せ!現れろ!!『ゴッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

 

《ゴアアアアア!!》

輝く希望を宿した幻影のオッドアイズが進化を遂げる…その体はズァーク本体に迫るほど大きくなり、その背に赤と緑の宝玉を背負い、2つの瞳からは抑えきれないほどの力が溢れ出す。

 

このモンスターこそ、ズァークを止める『切り札』──神の力を宿す幻影の瞳、ゴッドアイズ・ファントム・ドラゴン!! ATK3000

 

 

 

「すごい…!!」

 

「神の名を背負うオッドアイズ…!」

 

「フン…!凄まじいモンスターを出しおって…!!」

融合次元を照らす希望のドラゴン…その姿にランサーズもレジェンド達も目を奪われる…!

 

 

【どんなモンスターを出そうが無駄だ!!『覇王眷竜オッドアイズ』の効果発動!!】

 

「そこだ!永続罠『形勢反転』発動!!このカードが存在する時!自分のターンの間、相手モンスターの効果は無効になる!!これで『ズァーク』と『覇王眷竜オッドアイズ』の効果は封じたぜ!!」

 

【なにっ!?】

ゴッドアイズの力を奪おうとするズァーク…だが、十代の罠カードによって効果を封じられ、無敵性が消え去った!

 

 

 

──今だ!相棒!!──

 

「アテム…!うん!!永続罠発動!『永遠の魂』!その効果によって墓地から蘇れ!最上級魔術師!『ブラック・マジシャン』!!」

 

《我が魂はマスターと共に!!》

アテムと遊戯の声に導かれ、原初の最強魔導師が現れる! ATK2500

 

 

 

「ここだ!速攻魔法発動!『コンセントレイト』!!このターン『ゴッドアイズ』以外のモンスターの攻撃を封じる代わりに、その攻撃力に守備力の数値を加える!」

遊星の速攻魔法がゴッドアイズに力を与える!

 

 

ゴッドアイズATK3000→5500

 

 

「罠カード『ブラック・スパイラル・フォース』を発動!自分フィールドに『ブラック・マジシャン』が存在する事で、このターンの間『ゴッドアイズ』の攻撃力を2倍にする!!」

 

「なら、オレもだ!!罠カード発動!『ネオス・スパイラル・フォース』!!『ゴッドアイズ』の攻撃力をさらに2倍にする!」

 

【なんだと!?】

遊戯と十代、ブラックマジシャンとネオスがゴッドアイズの力をさらに高める!

 

 

ゴッドアイズATK5500→11000→22000

 

 

「いくぞ、ズァーク!バトル!『ゴッドアイズ』で『覇王龍ズァーク』を攻撃!!」

 

【どんなに高い攻撃力があっても…当たらなければ意味はない!!ペンデュラムゾーンの『覇王眷竜ダークヴルム』の効果発動!!自分の『覇王』モンスターが攻撃対象にされた時、その攻撃を無効にする!!】

 

「「「そんな!?」」」

遊海の全身全霊の一撃がバリアに阻まれ、ランサーズ達の悲鳴が響く…!

 

 

 

 

「まだ…!()()()!!いっけぇ!遊馬ぁぁ!!」

 

「見せてやれ!お前達の力を!!」

 

「ズァークにオレ達の全部をぶつけるんだ!!」

 

 

 

(ああ、私達はこの瞬間を待っていた!今だ、遊馬!!)

 

「おう!!速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』発動!自分のモンスターの攻撃が無効になった時!そのモンスターはもう1度攻撃できる!」

 

(さらに!その攻撃力は2倍になる!!)

 

【なっ…攻撃力44000だとぉぉ!?】

その時、小鳥や凌牙、カイトの声援が響く…それと共に遊馬とアストラルが『切り札』を発動する!!

 

 

ゴッドアイズATK22000→44000

 

 

「ありがとう、みんな…!!『ゴッドアイズ』で『覇王龍ズァーク』を攻撃!さらに、効果発動!このモンスターが相手モンスターとバトルする時!『ゴッドアイズ』の攻撃力は2倍になる!!神眼の創造(ゴッドアイズ・クリエイション)!!」

 

【──馬鹿な…!?】

さらにゴッドアイズが自身の権能を発動…虹色の光を纏う!

 

 

ゴッドアイズATK44000→88000

 

 

「受け取れ!ズァーク!!」

 

「これが…僕達、決闘者の光の力!」

 

「お前の闇を打ち払い!」

 

「絆を繋ぎ!」

 

「お前を救う希望の光だ!!」

ゴッドアイズに共鳴するように…決闘者達が虹色の光──希望を纏う!

 

 

 

「届け!!神眼の息吹!ゴッズ・───!!」

 

 

おのれ…おのれ!!伝説のデュエリスト共…白波遊海ィィ!!!

 

 

『ブラック・マジシャン』『E・HEROネオス』『スターダスト・ドラゴン』『希望皇ホープ』…4体のモンスターと共にゴッドアイズの攻撃が放たれる、全ての闇を払う虹色の波動が『覇王龍』を飲み込んでいく…そして、『覇王龍ズァーク』は虹色の光の中に消え去った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──遊矢──

 

「うっ…?ここ、は……」

 

──行こう、みんながお前を待ってる──

 

「───うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズァークLP3300→0

 

 

遊戯&アテム&十代&遊星&遊馬&アストラル&遊海 WINNER!

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…勝った…?勝った…!!遊海さんが…みんなが勝ったぁぁ!!」

 

「「「よっしゃあああ!!!」」」

静まり返った融合次元に翠の歓喜の声が響く…その声につられるように、ランサーズやレジェンド達が歓声を上げた!

 

 

 

 

 

「ひ、ヒヤヒヤしたぜぇ…」

 

「フン…あれだけの決闘者達が集まったのだ、負ける訳なかろう」

 

「…とか言って…拳から血を流してるのは誰だろうな?海馬?」

 

「……フン!!」

 

「イッテェ!?足を踏むな足を!!」

遊戯や遊海の勝利に安堵する海馬と城之内…。

 

 

 

 

「よ、よかったッス…攻撃が無効にされた時は、ヒヤッとしたッス〜…」

 

「十代のアニキと遊海先生達の絆の勝利ザウルス!」

 

「ズァーク…恐ろしい相手だった…!あれ、先生や十代達以外で倒せたのか…?」

 

「分からないわ…遊海先生や翠さんなら知っていると思うけど…」

 

「あれほどの強さとプレイングだ…本来のランサーズだけで対応できたかどうか…」

 

「寒気がするね…」

ズァークの強さに戦慄する翔や剣山、万丈目や明日香達…そして亮やエドは『本来のランサーズ』だけで挑んだ場合を予想して身震いしていた…。

 

 

 

 

「はぁ…よかった…」

 

「わあっ!?璃緒さん!?」

 

「おっと!?大丈夫か璃緒!」

 

「遊海が勝ったんで力が抜けたんだろ…俺も疲れたぜ…」

 

「あんなに強くなったズァーク…オレ達じゃ無理だったな……また修業しねぇとな…」

 

「虹色の光を纏う神のドラゴンか……今度、挑んでみるか」

 

「おいおい…白波を休ませてやれよミザちゃん…」

 

 

《これで、ミッションコンプリート!…でアリマスよね…?》

 

「ああ…そのはずだが…」

デュエルが終わりへたり込んでしまう璃緒とそれを介抱する小鳥とドルベ…疲労を見せるアリトとギラグ、神のドラゴンに挑もうとするミザエルと呆れる真月…そして、カイトは事態の動向を見守っている…。

 

 

 

 

「ジャック、お前ならズァークに1人で勝てたか?」

 

「無理…とはいかんが、苦戦しただろうな…お前達はどうだった?」

 

「僕達が戦ったのは不完全な『ズァーク』…『覇王眷竜』がいなかったのでなんとも…」

 

「全盛期のチーム5D's全員なら、なんとか…?」

ジャックとクロウ、流星と海亜はそれぞれにズァークを分析していた。

 

 

「………うん、ARC次元を覆っていた『時空嵐』が弱まっていく…これなら、帰れそうだね!」

 

『…………だと、いいがな…』

計器を確認して帰り道が確保できた事を確認するブルーノ…だが、ラプラスはなんとも言えない表情をみせていた…。

 

 

 

 

 

「っ…はぁ…はぁ…ぐうっ…」

 

「っ…遊海さん!!」

 

「父さん!」

 

《フォウ!!(遊海!大丈夫!?)》

 

「遊矢!!」

白銀の鎧に身を包んだ遊海が膝をつく…その様子を見た翠や凌牙、そして遊矢を心配した柚子が慌てて駆け寄る…。

 

 

「遊海さん…!大丈夫…!?」

 

「っ…まだだ、まだ終わってない…!」

 

「えっ…!?」

遊海に声を掛ける翠…だが、遊海は半壊したバルコニー…そこに漂う爆煙の中を睨んでいた…。

 

 

 

 

おの、れぇ…!伝説の、デュエリスト、ども…!

 

「っ…ズァーク!!」

煙が消えていく…そこには満身創痍の『覇王龍ズァーク』が存在していた…翼が折れ、戦う力を失い、デュエルに敗れてなお…消滅していなかったのだ…!

 

 

我は、不滅だ…!何度でも…何度でも蘇る─!!

 

ギィン──!!

 

 

《いけない!!ズァークはまた分裂するつもりよ!!》

 

「また4つの次元に転生し、同じ事を繰り返そうというのか!?」

禍々しいオーラを纏うズァーク…その姿を見たレイと零児が声を上げる、ズァークは再び()()し、復活を狙うつもりなのだ…!

 

 

さらばだ…!次こそは必ず…!!

 

「逃す、かぁ!!」

 

なにっ…貴様!?

 

「遊矢…!?」

龍体から離脱するズァークの魂…その魂を魔人ズァーク…否、意識を取り戻した遊矢の腕が掴み取る!!

 

 

 

「逃さないぞ、ズァーク…!悪い事をしたら、ごめんなさい…だろ…!!これ以上、お前の好きには、させない…!!」

 

貴様…我が分身の分際で!!

 

「よくやった、遊矢……上出来だ…!!」

 

白波っ…!?

残された力でズァークを押さえ込む遊矢…その僅かな時間で白銀の遊海はズァークの前に立っていた…。

 

 

 

 

「ズァーク……よく頑張った」

 

あっ……

そして遊海は静かに…優しく、ズァークの魂を抱きしめた…。

 

 

 

 

「お前が凌牙を倒した時、俺は本当に驚いたんだ…まさか凌牙が遊馬や流星、海亜以外に敗れるとは思ってなかった…お前は本当に『運命に愛されたデュエリスト』だった…そんな姿にならなくても、お前は強かった…!」

穏やかにズァークを労う遊海…遊海は最初から、ズァークを認めていたのだ。

 

 

 

 

「今度はちゃんと…1対1でデュエルをしよう…!世界の命運も、誰かの評価も、願いも関係ない…!心の底から笑える、楽しいデュエルを…!」

 

あたたかい…ああ、そうか…俺は……

遊海の暖かな、優しい言葉を聞いたズァークから金色の粒子が漏れ出していく…。

 

 

 

 

【もう少しはやく……あなたに、あいたかったなぁ───】

 

「………おやすみ、ズァーク……お前が巡る輪廻の先で、俺は待ってる」

穏やかな表情を見せながら、ズァークの魂が消えていく…彼がいた場所に遊海は優しく語りかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《『闘争』の果てに生まれた哀しき悪魔は…優しき英雄の言葉によって救いを得た……ここに『第7の獣』は討伐された……おめでとう、今を生きる決闘者達──お疲れ様、遊海君》

 

マーリンの言霊が静かに響く…そして、祝福の花吹雪と共に彼は姿を消したのだった。

 

 



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エピローグ

「………終わった、の…?」

 

「……ああ、哀しき災厄…ズァークはたお……いや、救えた…これで、全部解決だ」

金色の粒子と共にズァークの魂が消え、静寂に包まれたバルコニーに柚子の呟きが響く…その言葉に白銀の鎧を纏った遊海は静かに頷いた。

 

 

キィン─シュウウ……

 

 

うべっ!?イタタ…」

 

「っ…!遊矢!!」

そして変化は続く…バルコニーに墜落していた『覇王龍ズァーク』が消滅、取り込まれていた魔人ズァーク…否、遊矢は床へと投げ出され、異形となった姿も元通りの…上半身裸の少年の姿に戻っていく…。

 

 

 

「遊矢!大丈夫か!?」

 

「遊矢!!」

 

「遊矢…無事で…無事でよかったぁぁ…!!」

 

「みんな…迷惑かけて、ごめん…」

そして、遊勝と権現坂、零児が駆け寄ってくる中、遊矢は号泣している柚子に抱き締められる…そんな中で遊矢は申し訳なさそうに俯いていた。

 

 

「気にする事はないよ遊矢君…僕達も悪い奴に洗脳されたり、操られたりして暴れちゃった人を知ってるしね!」

 

「遊戯さん…」

罪悪感を抱く遊矢に遊戯達レジェンドも歩み寄る…ズァークとして暴れてしまった遊矢をカバーする為に。

 

 

「っていうか…遊海も1回あるしな!エラー?って邪神に取り憑かれちまって大暴れしたんだぜ?あの時は大変だったなー」

 

「それを言ったらティエラの件もあるぜ?オレもぶっ飛ばされて、精霊界1つ壊しかけて──」

 

「おいおーい!このタイミングでそれを言うなって!!その件は完全に不可抗力だからな──!?」

 

「ぷっ…ははは……遊海って、本当にすごいんだな…」

かつて遊海が大暴れした所謂『黒歴史』を話す遊馬と十代、その様子を見た珍しく遊海は慌てていて…その様子を見た遊矢は思わず噴き出してしまった。

 

「遊矢、人間誰しも失敗するもんだ……ちょっと苦労するかもしれないが…しっかり乗り越えるんだぞ?」

 

「遊海…うん!」

肩の力が抜けたらしい遊海が優しく遊矢に笑いかける…その言葉にズァークの呪縛から開放された遊矢は明るく頷いた。

 

 

 

 

「遊海さん─!!」

 

うおっとと!?心配させてごめんな、翠…」

 

「もう…!本当ですよ!」

そしてひと息ついた遊海に勢いよく翠が抱きつく、1つのミスが命取りとなるデュエルで翠は心配しっぱなしだったのだ。

 

 

「でも、無事に戦いが終わってよかった…それに、今の遊海さんの姿、とってもカッコいいです!!」

 

「ん?…あっ、本当だ…めっちゃキラキラしてる…!?デュエルに夢中で気付かなかった…」

 

「ええー…」

 

《フォウ?(天然かな?)》

翠に指摘された遊海は改めて自分の状態を確認する…ズァークを止め、遊矢達を救う為に新たな場所へと到達した遊海は今までにない状態となっていた…。

 

 

「父さん…体は大丈夫なのか?」

 

「ん………大丈夫、特に問題はないさ…もう戦いも終わったからな…逆に、今ならなんでもできそうなくらいさ!」

 

「大丈夫なら、良いけどさ…」

そして凌牙が遊海に体調を訊ねる…遊海は力こぶポーズをしながら元気に応えた…。

 

 

 

「あの…遊海、さん?ユートは…ユートはどうなったんですか…!?」

 

「ユーゴは…!?戻ってきたのは遊矢だけじゃないですか!」

 

「あっ…!?」

その時、戸惑いながら瑠璃とリンが問いかける…ズァークは倒された……だが、戻ってきたのは遊矢1人だけ…ユート、ユーゴ、ユーリの姿はなかったのだ。

 

 

「ズァークは遊矢達4人が1つになった事で復活した…だから、3人は遊矢の中にいるはずだ…遊矢、感じるか?」

 

「────うん、なんとなく…3人とも意識がないみたいだけど…オレの中にいる、っていうのは感じる」

 

「でも…1人になったなら、もう…」

己の中に3つの存在を感じ取る遊矢…だが、その言葉を聞いた柚子は表情を曇らせる…。

 

 

「心配するな、()()()()()…遊矢、ちょっとくすぐったいぞ?」

 

「う、うん…?」

悲しげな柚子達の顔を見た遊海は遊矢の胸に手を当てる、そして…

 

 

キィン─!

 

 

「うわっ!?なんか出てきた!?」

 

「えっ…アストラル!これって…!?」

 

(間違いない、色は違うが…『ヌメロン・コード』だ…!)

遊矢の胸から赤い光を放つ何かが現れる、そして遊馬とアストラルはすぐにその正体に気付いた、それは全能の力──『ヌメロン・コード』なのだと…。

 

 

「『ヌメロン・コード』…?」

 

(この世界の過去・現在・未来が記され、それを書き換える事ができる『全知全能のカード』だ…だが、これは…)

 

「おそらくだが…ズァークの力、『エン』シリーズの力、『ヌメロン・コード』の力が干渉してARC次元が誕生した時、『ヌメロン・コード』の残滓が形になったんだろう…たぶん、ペンデュラム召喚が生まれたのも…この力が遊矢の中にあったからだ」

 

「そんな力がオレの中に…」

零児の疑問に答えるアストラルに遊海が補足する…ARC次元創世時の力の一端が『ヌメロン・コード』としてズァーク、そして分裂した遊矢達に宿っていたのだと…。

 

 

 

「でも…なんか()じゃないか?カードにしては()()に欠けてる、みたいな…」

 

「あっ…確かに…」

遊海の手の中で組み変わる「ヌメロン・コード」を見た十代が異変に気付く…「ヌメロン・コード」が半分に欠けていたのだ。

 

 

「ああ、この力は()()()だ…残りの半分は──()()()()()()

 

キィン─

 

「あっ…!?」

 

「遊海さんの胸の中から、青い『ヌメロン・コード』が…!」

穏やかな遊海の言葉と共に、遊海の胸から光が飛び出す…それは遊海に欠けて宿っていた『ヌメロン・コード』…その半分だった。

 

 

【そうだ、ズァークと遊海はこのARC次元の『創造主』とも言える…その2人に『全能の力』が宿るのは道理というものだ】

 

「……そうか、だからエクシーズ次元の時間を巻き戻した時に1年も戻せたのか…父さんの中に半分とはいえ、『ヌメロン・コード』の力が宿ってたから…!」

 

「…ズァークがこの力に気づかないでよかったね……あれでドローカードを創造する『シャイニングドロー』を使われたら、僕達は勝てなかったかもしれない…」

遊海の中から現れたドン・サウザンドが遊海に宿った経緯を伝える、それと同時に遊戯達は背筋が冷えた…ただでさえ強いズァークが『全能』の力を使い熟せていたら、という『もしも』を考えてしまったのだ。

 

 

(……手は出させないぞ、ドン・サウザンド)

 

【フン…今さら『ヌメロン・コード』にこだわるほど、我は愚かではない…それに、その欠片には全宇宙を書き換えるほどの力もないからな】

『全能』の力を前にドン・サウザンドに睨みを効かせるアストラル…だが、ドン・サウザンドはつまらなさそうに遊海の中に消えていった。

 

 

「アストラル、もうそんなに…ドン・サウザンドの事は気にしなくていいんじゃないか?」

 

(…そうかもしれないな……我々はもう、敵対する必要はないのだから…)

その様子を見ていた遊馬がアストラルを宥める…アストラルも変化したドン・サウザンドの様子を見た事で警戒度を下げる事に決めたのだった。

 

 

 

 

「さて…この2つを合わせれば──」

 

キィン─!!

 

「すごい…」

 

「2つの『ヌメロン・コード』が1つに…!」

遊海の手の中で『ヌメロン・コード』が完成する…神秘的な光を前に一同は目を奪われている…。

 

 

「『ヌメロン・コード』……いや、ややこしいから…アーク・ヌメロン……語呂が悪いな…『ヌメロン・ピース(全能の欠片)』にしよう、この力なら統合されてしまった遊矢達を分離させて、肉体を失ったレイも助けられるはずだ」

 

「レイが…!良かった…!良かったな!レイ!!」

 

《………うん…》

ARC次元の『ヌメロン・コード』──『ヌメロン・ピース』を完成させた遊海が解決策を告げる…その言葉を聞いた零王は嬉しそうにアストラル体のレイに声を掛けた。

 

 

 

 

ズズンゴゴゴ!!

 

 

 

 

「っ…なんだ!?地震!?」

 

「いや…!?地面じゃない…空気が…()()が揺れてる…!?」

穏やかな明るい雰囲気に包まれるランサーズ…その時、突如として地面…否、()()()()()()が揺れ始める…!

 

 

 

《っ…大規模な時空震を確認!先程の『覇王龍ズァーク』と『ゴッドアイズ・ファントム・ドラゴン』の戦闘の余波と思われます!!》

 

「っ…しまった…!流石に攻撃力88000はやり過ぎたか!?」

 

「「「ええっ!?」」」

アヤカが大規模な時空震の発生を計測する…『理屈を超えた力』である『CiNo.1000』の召喚や『虚無の神』であるダークネスの消滅、そして『覇王龍』と『ゴッドアイズ』の衝突…様々な要因が重なって次元に歪みが発生、ARC次元全体に大規模な揺れが起きていたのだ…!

 

 

 

「ちょっ…!?それって大丈夫なのか!?」

 

「…大丈夫!『ヌメロン・ピース』を使えばすぐに収まるはずだ…だけど……遊馬!十代!お前達は遊馬号に避難してくれ!『ヌメロン・ピース』は『ARC次元』の存在にしか効果がないみたいだ!避難していてくれ!」

 

(っ…了解した!)

万が一の被害を防ぐ為、遊海は遊馬達『DM世界』から来たメンバー達に避難を促す。

 

 

「ランサーズ!お前達は各次元出身者ごとに固まっていてくれ!念の為に各次元に送り返す!融合次元のメンバーはバリアを張るからその中に!」

 

「分かった…!遊矢!柚子!」

 

「う、うん!!」

 

「遊星!」

 

「分かってる!リン!お前も来るんだ!」

 

「瑠璃!」

 

「うわわっ!?揺れが激しくなってきたッス!?」

 

「翔!早く!!」

遊海の指示に従って各々が避難を始める…未だに世界は揺れ続けている…!

 

 

 

「翠、お前も避難を──」

 

「私は大丈夫です!遊海さんの近くが一番安心だって分かってますから!」

 

「まったく…そんな事言われたら、ミスできないじゃないか…するつもりはないけどな!」

 

《フォウ!?(惚気けてる場合!?)》

翠にも避難を促す遊海…だが、翠は笑顔で遊海へと寄り添う…その様子を見た遊海は苦笑していた。

 

 

 

「お前達、目を閉じてろよ!『ヌメロン・ピース』の光で目がやられるかもしれないからな!」

 

「わ、わかった!!」

 

「よし…『ヌメロン・ピース』…起動!」

 

キィン!!

 

DM世界組の避難を見届けた遊海が残ったランサーズ達に注意を促す…そして、『全能』の光が周囲を照らす…。

 

 

 

 

「遊矢…」

 

「大丈夫…!遊海が送ってくれるんだ、必ず帰れるよ」

眩い光の中で柚子が隣に立つ遊矢の手を握り締める…幾度となく遊海に助けられた遊矢は安心した表情でいたが…。

 

 

 

 

 

 

ドクン!!

 

 

 

 

 

 

「っ!?遊海さん!!」

 

「えっ…!?」

眩い光の中から遊海に寄り添っていたはずの翠の悲鳴が響く、そこで遊矢が目にしたのは───

 

 

 

 

 

「───くそ……流石に、()()()()()では、なかった、か…」

 

 

「っ!?遊海!!」

()()()()が滴る右手で口元を押さえ、床に広がる()()()()()()()()()の中で膝をついた遊海の姿だった…。

 

 

 

 

 

「ああ、もう……肝心な、時に………すまん、遊矢───」

 

 

「ゆ、遊海──!!」

 

 

 

 

 

キィン─!!

 

 

 

 

 

 

 

そして、世界は光に包まれた…。



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融合次元編 主要オリキャラ・マテリアル

万丈目準 丸藤翔 前田哲夫 ティラノ剣山

 

遊海の知る彼らの転生体、遊海が訪れる前から記憶が蘇り、アカデミアから離反、『遊勝塾』で脱走した学生達を保護していた。

 

 

 

天上院明日香

 

融合次元アカデミアの優等生であり、遊海達が知る彼女の転生体。

GX組の中では比較的早く、カイザー亮やクロノスと同時期に記憶を取り戻しており、異常事態を解決しにくるであろう遊海───それか、『自分のHERO』である十代の到着を待ちながら、『遊勝塾』でアカデミアの学生達を保護していた。

 

(原典ではカード化されてしまった明日香の友人の三つ編みのレッド女子も無事、遊勝塾で保護されている。)

 

 

 

クロノス・デ・メディッチ

 

GXにおける最大の良心、クロノス教頭の転生体。

 

融合次元では平教員だったものの、自身の誇りである『古代の機械(アンティーク・ギア)』達を悪用し、子供達を平気で傷つけるプロフェッサーを許せず、亮や他の生徒・教員達と共にクーデターを計画していた。

 

 

 

赤馬零王

 

融合次元におけるデュエル戦士養成機関アカデミアのプロフェッサーにして『ARC-V』における黒幕の1人。

基本的な来歴は原作と同じだが、この物語においては異なる部分もある。

 

1つはリアルソリッドビジョンの開発経緯

原作では功名心から多少のリスクを度外視してリアルソリッドビジョンをデュエルモンスターズへと転用したが、この物語においては熱い戦いをするデュエリスト達を喜ばせたいという『善意100%』でリアルソリッドビジョンを開発している。

また、KC(デュエルロイド瀬人)の忠告通りに安全装置を設定していたが、特異体質のズァークによる事故は防げなかった。

 

2つ目は『エンシリーズ』の開発経緯

この物語では前線で戦う遊海を始めとした決闘者達に託す『切り札』として開発した…だが、彼らに渡す前に娘であるレイに奪われてしまい…。

 

3つ目は『人々のカード化』の経緯

原作では『生命エネルギーを集める為』にカード化を選んだが…この物語においてはダークネスによる干渉によって『人々の心の闇』を増やす手段として使われていた。

 

ダークネスの干渉がなければ、カード化よりもエネルギー効率の高い若いデュエリストの『デュエルエナジー』を集める装置を開発し、アカデミアや各次元がカード化なしの『デス・デュエル』の舞台になっていただろう。

 

 

 

赤馬レイ

 

DM世界における若手プロデュエリストであり、赤馬零王の娘、そして柚子シリーズのオリジナル。

基本的な来歴は原作と同じ。

 

柚子やセレナのオリジナルという事もあり、優しいが強気であり…やると決めたら突っ走ってしまう性格。

同じプロデュエリストとしてズァークとは顔見知りの関係だったが…彼の異変に気付く事ができなかった。

 

その罪悪感からか…零王が対ズァーク用のカードを開発した際にそのカードを奪い取り、単身でズァークを止める為に動いてしまう。

 

 

世界分断が発生し、ARC次元が誕生した後は柚子達4人にズァークの復活を阻む力を預けた結果、自身は肉体を失い、魂のみの存在となり意識もはっきりとしない状態だったが…融合次元に分け身である4人の少女とズァークの欠片、そして霊媒になり得る零羅が揃った事で意識が覚醒、ズァークを復活させない為に零羅を通じて危険性を訴えた。

 

だが、遊海の力によって実体化…そして自分が余計な事をしてしまった事を知って猛省…ズァークの対処を遊海へと任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダークネス

 

遊海と十代の宿敵たる『虚無の邪神』にして『ARC-V』の物語が始まる事になった『元凶』

世界分裂の際、零王の中に隠れ潜み、無意識に世界に絶望を齎すように促す事でARC次元のダークネス化を企んでいた。

 

零児と遊矢によって零王が倒された事で正体を現し、ダメージを受けていた遊海に変わって十代と激突、瞬殺されたと思われたが…ダークネスは倒れなかった。

 

それは零王の創り上げた次元統合装置『アークファイブ』を通じてカード化された人々や4つの次元の人々──数百億人分の『心の闇』を取り込む事で正真正銘の『不滅』状態になっていた為だった。

 

 

そして、ダメージを押した遊海と三度激突…遊海は『虚無に干渉するには理屈を超えた力がいる』という言葉からドン・サウザンドの力…『CiNo.1000』を開放、世界の『理』を越えた力によって、ついに倒される事となった。

 

決闘後、負け惜しみとして遊海の目指す『最善の結果を掴む』という目標を阻む為に凌牙へと不意打ちを仕掛けた結果、ドン・サウザンドの怒りを買い、現在のダークネスとしての『人格』を燃やされ、現世から退場した。

だが ダークネスの放った『呪詛』は遊海に直撃していて…。

 

 

覇王龍ズァーク

 

『遊戯王ARC-V』におけるラスボス、人々の悪意と闘争心、そしてカードの精霊の怒りに飲まれた結果、その身と4体のドラゴンを1つに融合させ、モンスターと化した『哀しき悪魔』

 

この世界においてはその魂を精霊に愛された事で宿る『精霊の力』と先天的に肉体に宿る超能力『サイコデュエリストの力』を異常に強く宿した、遊海をして『運命に愛されたデュエリスト』として生まれた。

 

 

ズァークが表舞台に現れてから、遊海はその動向を注視していたが…原作同様の事故が発生、それまでの遊海や伝説の決闘者達の功績によって世界の『民度』は良かったものの、ズァークは人々の期待に応えようとして追い詰められていった。

 

そして、人を救う事に関して凄まじい経歴を誇る遊馬とアストラルに対処を任せたが…一部の人々の悪意によって『悪魔』は目覚めてしまった。

 

 

『覇王龍』とは仮初めの名、それは人類が持つ避けられない『獣性』──戦いを求める人々の思いが生み出してしまった『人類悪』──『闘争』の理を持つ『第7の獣』である…。

 

 

 

 

人類悪(ビースト)

 

遊戯王世界とは法則が異なる別世界『型月(Fate)世界』における災厄の総称。

 

人類が持つ『獣性』から生じ、人類を滅ぼす『自滅機構』

『人類()滅ぼす』という『悪』ではなく、『人類()滅ぼさなくてならない悪』

(故に人類を滅ぼす事だけが目的の『ゾーク・ネクロファデス』や『ダーツ/オレイカルコスの神』、『冥界の王』、真意や正体不明の『破滅の光』は該当しない)

 

 

その本質は人類への『悪意』ではなく、人類を愛し、守ろうとする願い…『人類愛』なのである。

(ただし、『人類』という定義は『獣』によって異なる)

 

 

本来、遊戯王世界には存在しない『法則』のはずなのだが…遊海や翠の記憶を盗み見たマーリンによって、遊海達が対峙した歴代の強敵達がそれらしい『業』を持つ人類悪として当てはめられている。

(つまり、マーリンの自己満足)

 

《マーリンヤッパリシスベシフォーウ!!》 「ぶはっ!?」

 

 

 

 

『憐憫』

人類を哀れみ、希望も絶望もない虚無の世界に取り込もうとした『虚無の神』ダークネス

 

『回帰』

絶望の世界から『自分を愛してくれた人』がいる世界へ帰る事を望んだ『悲愛の怪物』ネームレス

 

『救済』

破滅の未来を変え、『未来の人類』を救う為に過去の人類史を犠牲にしようとした『最後の未来人』Z-ONE

 

たった1人の『愛する人』を救う為、過去の歴史から自分を排除する事を望んだ『壊れた転生者』ラプラス

 

『比較』

人類の競争心や欲望を糧に成長し、人類を滅ぼす『災厄の獣』キャスパリーグ

 

『報復』

アストラル世界から追い出され、迫害された事に報復する為に人類の持つ『混沌』を利用してアストラル世界を滅ぼす事を狙った『混沌の神』ドン・サウザンド

 

『堕落』

希望を持つ人々が暮らす世界を絶望に陥れる事で収穫し、喰らう『邪神』e・ラー

 

『闘争』

人々がデュエルモンスターズのより良いデュエルを望み続けた事で生まれ、人々の期待に(間違った形で)応える為に世界を滅ぼそうとした『哀しき悪魔』ズァーク

 

 

型月世界では『人類悪』を倒す為には『人類史存続の願い』を受けたカウンター…『冠位英霊』と呼ばれる『守護者』の力が必要なのだが…この世界においては『デュエルモンスターズ』の力を扱う『選ばれた決闘者』達がその役目を果たしていた。

 

 

 

 

「……という事にしておこう!」

 

「………マーリン、ちょっとそこに座りなさい」

(青色の鎧ドレスを着た金髪の少女が金色の聖剣を輝かせている)

 

「おっと…退散退散!」

(花吹雪と共に逃げるマーリン)

 

「待ちなさい!!」

(『直感』で追いかける鎧ドレスの少女)

 

 

 

 

 

 

 

 

『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』

榊遊希のエースモンスターたる2体目の『オッドアイズ』

 

その正体は遊海が世界分裂を防ぐ為に展開した『NEXUS』の力に引き寄せられた『ズァークの善性の欠片』…つまり、ズァークの力の一部。

 

次元分裂の際にNEXUSによって引っ張られ、遊海(遊希)の魂に引っ掛かっていた『力の一部』がスタンダード次元の遊希対遊戯戦でのシャイニング・ドローによって実体化した存在だった。

 

遊矢達の四天の龍と共鳴…威嚇するように咆哮していたのは『覇王龍』として復活し、世界を破壊しようとする彼らを止めたかったから……なお、ズァークは自身の『善性』を否定している為、このモンスターを正確には視認できない。

(みすぼらしいドラゴン、気色悪いモンスターという形で認識される)

 

 

ズァークとの最終決戦時、遊海本来のデッキを押しのけて登場…人々の願いと決闘者の『希望』の力を受けて『ゴッドアイズ・ファントム・ドラゴン』に進化し、悪意に支配されたズァークを打ち倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

白波遊海

 

グリッターNEXUS

 

 

光と闇、悪と善──全てを飲み込み、『最善』を目指す決闘者の究極体。

 

ランクアップしている遊海自身の『魂』

転生特典であり、光と闇の力を宿す『千年玉』

人が生きる為のエネルギー『混沌(カオス)

人々の善意の化身『赤き竜』の力

そして、人々の『希望の祈り』を受けた白波遊海は本当の意味で『神』の位階に到達した。

姿のベースはNEXUSⅢと同じだが、カラーリングが大きく変わっている。

 

 

頭部 白銀の髪、瞳は赤と青のオッドアイ、額には金色のウジャト眼が輝く

 

上半身 ZEXALⅢに似た白銀の鎧、白銀の推進翼からは虹色の粒子が舞い散り、胸元には『混沌(カオス)』を宿した赤紫色のコアが輝き、その周りに『赤き竜』の痣が完成する。

 

下半身 同じく白銀の鎧、流れるエネルギーは虹色に輝いている。

 

姿のイメージはZEXALⅢ+ウルティメイトシャイニングウルトラマンゼロ+果物ライダーの『始まりの男』

 

 

ただし、この姿へと変身できるのは条件が揃った場合の『ARC次元』内のみ、また体力の消耗は遊海の強化形態では一番大きい。

 

 

 

 

 

ヌメロン・ピース(全能の欠片)

 

遊戯王世界における全能の力『ヌメロン・コード』…その欠片。

 

本来はARC次元には存在しないモノなのだが…遊海がNEXUSの力で世界分裂を阻止しようとした際、アストラルの使用した『ヌメロン・コード』の力の一部がNEXUSの力に引き寄せられる形で遊海の魂に宿っていた。

ただし、遊海に宿っていた力は半分…残り半分はさらに4つに分割されて遊矢達(ズァーク)に宿っていた。

 

遊海命名の『全能の欠片』が示す通り、『ヌメロン・コード』よりも出力が低く、ARC次元内での出来事や誕生した人間・物にしか効果を発揮できない。

 

 

ズァークとの決戦後、その所有権が完全に遊海のモノとなり、遊海はARC次元の『書き換え』を行なった、が…。

 

見た目はパーツの半分が赤色、半分は青色の『ヌメロン・コード』

 



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第6章 決闘共存世界 ARC次元
プロローグ──躍動決闘都市 ペンデュラム・舞網──


質量を持ったソリッドビジョンの実現により生まれた『アクション・デュエル』

フィールド・モンスター・デュエリストが一体となったこのデュエルは、人々を熱狂の渦に巻き込んだ──




「うわあああっ!?寝坊したぁぁ!?」

 

朝の舞網市にとある少年の叫びが響き渡る、寝坊したらしい彼はドタバタと出掛ける準備を整える…。

 

 

()()?何をそんなに慌ててるんだい?日曜だから学校も休みだし、()も午後からでしょ?」

 

「もぐもぐ…()()とデュエルの約束してるんだ!そのあと()()()も行きたいし…いってきます!!」

母親…洋子に予定を伝える遊矢、朝ご飯のパンケーキを詰め込んだ彼は電動ローラースケートで街中を駆けていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………して、この状況は…いったいどういう事だ?」

 

「どう…って言われてもなぁ…」

 

「……何が起きたのか、僕達にもわからないよ」

舞網市、海馬コーポレーション社長室…そこには数人の決闘者達が集まっていた。

社長である海馬瀬人、許嫁の紗良、副社長のモクバ、そして遊戯、城之内、本田、杏子、孔雀舞…遊海を助ける為に冥界からスタンダード次元に転生してきたDMのレジェンド達である。

 

 

 

「私達、みんなの帰りを待って此処にいたはずなのに…地震が起きたと思ったら、気付いた時には…家で寝てて…」

 

「アタシもそうさ…しかもなんだい?ここに来る前にウチの塾に寄ってきたら『ペンデュラム』デッキを使ってる子がいたんで驚いたよ!」

 

「オレもここに来るまでに『ペンデュラム』カードを使ってデュエルしてる奴を見たぜ?」

そして、彼らは『異変』に襲われていた…それまでは極少数しかいなかったはずのペンデュラム使いのデュエリスト達が突如として増加…さらに、『とある事件』以降の記憶が舞網の人々から忘れられていた…。

 

 

 

「遊戯、オレ達はお前らが『覇王龍ズァーク』を倒した所までは覚えてるんだ…融合次元で何があったんだよ?」

 

「……遊海君がズァークの分身…遊矢君やユート君達を救う為に全能の力、『ヌメロン・コード』の欠片の力を使おうとしたんだ…そしたら…」

 

「俺にも()()()()()ぞ…あの大馬鹿者が…!土壇場で気を抜きおって!!」

 

「仕方ねえよ!!……ズァークと戦うまでに無茶しすぎたんだ…!」

モクバの問いかけに遊戯達が事態の顛末を思い出す…。

 

 

 

遊海・遊戯・十代・遊星・遊馬・アストラル、そしてアテムと榊遊矢…歴代の『選ばれた決闘者』達の『絆』と人々の『希望の祈り』によって2つの『世界』に混乱を齎した『哀しき悪魔』ズァークは倒された…だが、それまでの戦いの余波によって時空の歪みが世界を揺らす時空震となって4つの次元へと襲いかかった。

 

甚大な被害を齎しかねない時空震を収める為に全能の欠片『ヌメロン・ピース』を使おうとした遊海…しかし、それまでの無茶が祟り吐血…だが、そんな状態で遊海は世界を守る為に『世界の書き換え』を発動した、が…───

 

 

 

「『書き換え』とやらにどのような手順が必要かは分からんが…それが中途半端になったに違いない…!」

 

「遊海は…翠ちゃんはどうなったの…!?」

 

「分からない…少なくとも、スタンダード次元の中にはいないみたいだ…」

 

「遊海…ちくしょう…!せっかく、全部ハッピーエンドだったのによぉ…!!」

何らかの理由で『書き換え』は不完全な状態で停止、遊海と翠は行方知れずとなってしまった…。

 

行方不明になった遊海と翠を案じる一同…そんな時だった。

 

 

 

 

『瀬人様、レオコーポレーションの赤馬社長からテレビ電話です』

 

「むっ…繋げ」

社長秘書の磯野がレオコーポレーション──赤馬零児からの連絡を取り次ぐ、それを聞いた海馬はモニターに繋ぐように指示を出した。

 

 

 

【忙しい所すまないな、海馬…単刀直入に聞くが…()()()()()()()()の記憶は残っているか?】

 

「無論だ、我らの精神力を舐めるな」

 

【そうか…ならば安心した】

挨拶もそこそこにズァークの件を切り出す零児…その様子に海馬は腕組みしながら応える。

 

 

【おそらくは白波遊海による全能の力…『ヌメロン・ピース』の使用によってスタンダードは『ペンデュラム次元』と言うべき世界へと変化した、だが…()()()()が発生してな…解決の為に協力を仰ぎたい】

 

「フン…良いだろう、何をするつもりだ?」

 

【───舞網チャンピオンシップを()()する】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バトルだ!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』で『覇道星シュラ』を攻撃!!」

 

『アクションカードを──しまった!?既に使い切って…!?』

舞網市のとある河原にデュエルの音が響く、そこではアクションフィールド『クロス・オーバー』の中で2人の少年がしのぎを削っていた…。

 

 

 

『ならば…!罠カード「封魔閃光」を発動!自分の使用していないモンスターゾーンを封印し、1枠につき攻撃力を800アップさせる!さらに、このバトルの後に効果対象になった「覇道星シュラ」は破壊されるが、相手の他のモンスターは守備表示となり、このターンの終わりにお互いに封印したモンスターゾーン1枠につき500ダメージを受ける!これで終わりだ!』

 

「いや、お楽しみはこれからだ!罠カード『アクロバット・タワー』を発動!フィールドの『EMパイロブスター』をリリースして、お互いのプレイヤーは2枚ドローして、墓地に送る…そして、そのモンスターのレベルの合計によって効果が決まるんだ!」

デュエルもクライマックス…遊矢とデュエルしていた()()の前にそれぞれが召喚したモンスターのイラストが描かれたボールの塔が現れる!

 

 

「ドロー!」

 

『ドロー!!』

お互いにカードをドローする遊矢と勝鬨…その結末は───

 

 

 

「私がドローしたのはレベル3の『EMディスカバー・ヒッポ』とレベル3の『EMビッグバイト・タートル』!」

 

『自分が引いたのは──レベル5「地翔星ハヤテ」とレベル5「天昇星テンマ」!』

 

「ここで『アクロバットタワー』の効果発動!自分のドローしたモンスターのレベルが相手より低い時、相手はお互いのフィールドと墓地のモンスター1体につき200ダメージを受ける!」

 

『なんと…!?うおお〜!?』

バランスの崩れたボールの塔が勝鬨に向かって倒れ、ド派手な煙の爆発がフィールドを包み込んだ…。

 

 

 

 

 

 

「勝鬨!大丈夫か?」

 

『ああ…結局、負けてしまったな…だが、楽しいデュエルだった』

 

「そっか…なら良かった!」

倒れ込んだ勝鬨を助け起こす遊矢…負けた勝鬨も晴れ晴れとした表情だった。

 

 

 

『────遊矢、使()()()()()()()()()()?』

 

「えっ…?いや、そんな事はないけど…」

 

『そうか…?自分はお前の()()()()を倒そうとデッキを組んだはず……自分の思い違いか…?』

 

「ドラゴン…って言っても、オレのドラゴンは『オッドアイズ』だけだしなぁ…?」

しかし、勝鬨は小さな()()()を感じていた…遊矢とデュエルするにあたって()()が足りないと……だが、お互いにその違和感の正体はわからなかった。

 

 

 

「あっ…いけね!もう行かなきゃ!またな!勝鬨!!」

 

『ああ、気をつけてな』

デュエルディスクで時間を確認した遊矢は勝鬨と別れてローラースケートで走っていった…。

 

 

 

 

『………自分と遊矢は…()()()()友人になった…?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…塾長」

 

「ん…ああ、遊矢か…いつもすまんな…」

舞網市の病院…その一室に遊矢はやって来ていた、その部屋には普段ならハイテンションと熱血指導がトレードマークの『遊勝塾』塾長、柊修造の落ち込んだ姿があった…。

 

 

()()は、まだ…?」

 

「ああ…柚子…!どうして()()()()()()()んだ…!」

2人は悲しげな様子でベッドを見る…そこには()()()()()柊柚子の姿があった。

 

()()()()()、柚子は眠ったまま意識が戻らなくなってしまったのだ。

 

 

「お医者さんは体には何も異常はないと…何故だ…なんでなんだ、柚子…!!」

 

「塾長…」

眠り続ける柚子の前で拳を握り締める修造…原因不明の昏睡状態が続く柚子に何もしてやれない自分が不甲斐ないのだ…。

 

 

「…塾長!そんな顔してたら柚子のハリセンが飛んでくるよ?『しみったれた顔するな』!って…きっと、目を覚ますよ…!」

 

「そうか…そうだな…!よし!!今日も熱血指導でデュエルを教えるぞ!フトシ達を遊勝先輩のような立派なエンタメデュエリストにする為に!!」

遊矢の励ましを受けた修造が気合いを入れ直す…眠り続ける柚子に心配をかけないように…。

 

 

「柚子…待っててくれ、必ず助けるから………()()()?何から助けるんだ…?」

眠り続ける柚子の手を握る遊矢…だが、その思考に…遊矢自身は違和感を感じた…。

 

 

 

 

「っつ…!?ゆ、遊矢!大変だ!これを見ろ!!」

 

「うわっ!?いきなりどうしたの!?」

2人で遊勝塾へと向かう遊矢と修造…その時、デュエルディスクに届いたメールを見た修造が顔色を変えた…!

 

 

 

「これって、LDSの!?」

 

()()()()()()()()()()の案内状だ!!これに勝てばユースに昇格…()()()()()()()()になる為のチャンス到来だ!早くLDSに行ってこい!!柚子もきっと喜ぶぞ〜!!」

 

「う、うん!!」

修造に届いたのはLDSから遊矢に宛てた『案内状』──ジュニアユース選手権への案内状だった、その知らせを受けた遊矢は慌ててLDSへと走り出す。

 

 

 

 

……それが榊遊矢にとって最後の『試練』の始まりだった…。

 



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再演〜試練の始まり〜

こんにちは!S,Kです!

平和を取り戻したように見えた舞網市…しかし、それは仮初めの平和……とり残された者達を救う為、遊矢の試練が始まろうとしていた…。


それでは、最新話をどうぞ!


『はい!これで手続きは完了です!頑張ってね、榊遊矢君!』

 

「はい!ありがとうございます!ヘヘっ…」

LDSからジュニアユース選手権の案内状を受け取った遊矢は受付で手続きを済ませていた。

…なお、綺麗な受付嬢の微笑みに照れていたりする。

 

 

「遊矢!お前の所にも案内状が来たか!」

 

「権現坂!お前も?」

 

「ああ、光栄な事だ!」

そんな時、受付に新たな人影が現れる…それは遊矢の親友である権現坂だった。

 

「おやおや?お二人さんお揃いで!」

 

「「沢渡!」」

そしてもう一人──それはLDSに所属する沢渡だった、彼のもとにも案内状が届いたらしい。

 

 

「お前にも案内状が?」

 

「それは当然だろう?LDSでも優秀な成績を修め、父親は次期舞網市長と期待されている!選ばれた男「「赤馬零児!?」」っおい!?名乗りの邪魔──赤馬零児!?」

ナルシズム全開の名乗りを上げる沢渡…だが、その口上は思わぬ人物──レオコーポレーション社長、赤馬零児の登場で中断される事になった。

 

 

『揃ったようだな…元気そうで何よりだ、急な招集に応じてもらい感謝する』

全員の様子を見た零児は眼鏡を押し上げる。

 

『さて、今回のジュニアユース選手権だが…()()()キミ達でデュエルを行なってもらう…()()()()()()()()()()()()()だ!』

 

「「「バトルロイヤル!?」」」

零児の思わぬ言葉に遊矢達の声が重なった…。

 

 

 

…………

 

 

 

【皆様!大変お待たせいたしました!ただいまよりジュニアユース選手権を開催いたします──!!】

 

「「「うおお─!!」」」

 

「遊矢兄ちゃん頑張って─!!」

 

「遊矢!柚子の為に熱血だ─!」

同日、午後…LDSのセンターコートに司会のニコ・スマイリーの実況が響き渡る。

急な開催といってもそこはアクションデュエルの聖地・舞網市…センターコートにはたくさんの観客達が集まり、開始の時を今か今かと待っていた。

なお、観客席には遊勝塾のメンバー達を始め、志島北斗・光津真澄・刀道刃のLDS3人組や方中ミエル、茂古田未知夫や大漁旗、聖目や梁山泊塾生など…たくさんのデュエリスト達の姿があった。

 

 

【それでは!出場する4人の選手の紹介を…4人?少なくないか?合ってる?OK…それでは紹介しましょう!!】

ジュニアユース選手権の出場者が少ない事に驚くニコ…しかし、彼もプロ…情報を確認し遊矢・権現坂・沢渡が彼の紹介と共に入場する!

 

 

【そして最後!4人目は──えっ?シークレット?始まってから!?ああ、もう!試合時間が押してしまう!各々方!舞網市内にレッツゴー!!アクションフィールド『ワンダー・カルテット』発動!!】

あまりにもイレギュラーが続く事に戸惑いながら、ニコがアクションフィールドの発動を宣言…舞網市中心部が火山・氷山・古代遺跡・ジャングルからなる4つのエリアに覆われていく!

 

 

トクン

 

 

「っ──この風景、何処かで見たような…?」

 

「奇遇だな…俺もだ…」

火山エリアへと変わった風景を見た遊矢、そして権現坂は既視感を覚える。

 

 

「それよりよ!戦うのは4()()って話だったけど…その『4人目』は何処にいるんだ?」

 

「そういえば…」

そんな時、沢渡が姿が見えない4人目のデュエリストの存在を指摘する…その時。

 

 

「拙者はここでござる!風魔月影、ここに推参!」

 

「月影…!」

遊矢達より一段高い場所に人影が現れる、それは青い覆面で口元を隠した忍者デュエリスト、月影だった。

 

 

 

「おっ…!?これで役者が揃った訳だ!このデュエル、楽勝で優勝はもらったぜ!!」

 

「遊矢、この男権現坂…容赦はせぬぞ!心してかかってこい!」

 

「権現坂…ああ、望む所さ!最高のエンタメデュエルを見せてやる!」

役者が揃い、闘志を高める3人…そして、ニコが高らかに口上を上げる!

 

 

 

 

【戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!これぞ、デュエルの最強進化系!アクショ〜ン…デュエル!!】

 

「「「「デュエル!!」」」」

懐かしき口上と共に、アクションデュエルが始まった!

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対沢渡対権現坂対月影

 

 

 

 

ついに始まった『再演』のバトルロイヤル、遊矢はマスコットである『EMディスカバー・ヒッポ』を喚び出して沢渡の『魔界劇団』の攻撃をアクションマジックで防ぎ、さらに権現坂のエース『超重武者ビックベン-K』の攻撃を『カバーカーニバル』でしのぎ…と盛り上がるデュエルを見せる、その時…今まで沈黙していた男が声を上げる…!

 

 

 

「各々方!思い出されよ!かつて我々が戦ったあの大会──()()()()()()()()()()()の事を!!」

 

 

「舞網、チャンピオン、シップ───あっ…!?」

 

「思い出した!すっごい痺れるデュエル大会!!」

 

「そうよ!ミッチーが出てた!なんで忘れてたの!?」

 

「──そうだ!柚子も出ていたぞ!」

デュエルフィールドに響く月影の声…それを聞いた遊矢や観客達の脳裏に()()()()()()()、それによって無意識に忘れられていた舞網チャンピオンシップの事が少しずつ思い出されていく…。

 

 

「そうだ…このフィールド……たしか、月影が紫雲院素良とデュエルしてて…?」

 

「いや、それは日影…拙者の兄者でござる…そして、それだけではないはず」

 

「そうだ!オレは1回戦で負けたけど、赤馬零児直々に認められて敗者復活で…融合次元、アカデミアのオベリスクフォースに追いかけられて───()()()()()…?誰に…?」

 

「そうだ…!バトルロイヤルの最中に柚子が行方不明になって…!」

月影の言葉と共に、遊矢達は舞網チャンピオンシップ…そしてオベリスクフォースを迎撃したバトルロイヤルの出来事を思い出していく…。

 

 

『その調子だ、月影…手加減は無用──デュエルを続けろ!』

 

「御意!」

インカムから響く零児の指示に従い、月影はデュエルを続ける…全ては『目的』を果たす為に────

 

 

 

 

 

Side零児

 

 

「兄様…」

 

「…零児さん、本当に()()()()でいいの?」

レオコーポレーション・司令室…そこに心配そうな日美香、そして()()の言葉が響く…その目線の先には───

 

 

「こんな事でこの子の───()()の笑顔を取り戻せると、本当に思ってるの…?」

日美香が見つめる先…そこには社長秘書である中島が支えるベビーカーに乗った赤毛の()()──物憂げな表情の赤馬レイの姿があった。

 

 

『ええ…彼女の笑顔を取り戻せるのは榊遊矢()()…ですが、その為には……』

 

「遊矢は…()()()()を乗り越える必要がある」

 

『遊勝さん…』

レイの笑顔を取り戻す為にバトルロイヤルを再演する零児…そこへ遊矢の父、遊勝が姿を現した…。

 

 

「取り急ぎ、各次元を見て来たが……()の姿は無かった…手掛かりもない、エクシーズ次元以外にいる彼の仲間達も心配していたよ…」

 

『そうですか…なら、遊矢に頑張ってもらう他ない…柚子や、セレナを救う為に…』

遊勝からの報告に零児は視線を落とし…そして、再びモニターへと目を向ける──月影によって追い詰められる遊矢の姿を…。

 

 

 

Side out

 

 

 

 

「っ─!!アクションマジック『奇跡』!これで『カバートークン』はバトルで破壊されず、受けるダメージも半分になる!!」

月影の『忍者』デッキによる猛攻を受けた遊矢の残りライフは2200…それを削りきる『黄昏の忍者将軍─ゲツガ』の攻撃をアクションマジックで避けたように見えた遊矢…だが、そこで予想外の乱入が起きる…!

 

 

「おもしれーじゃねぇか!オレも混ぜやがれ!罠カード『魔界即興劇─インブロ』を発動!相手が戦闘ダメージを受ける時!オレの『魔界劇団─カーテン・ライザー』の攻撃力を加える!」

 

「うえっ!?」

なんと沢渡が月影に加勢…遊矢を潰しに掛かったのだ。

 

 

ちょっと待ったぁっ!!自分の墓地に魔法・罠カードが存在せず、守備表示のモンスターが戦闘ダメージを受ける時!手札の『超重武者オタス-K』の効果発動!このカードを墓地に送り、その守備モンスターの守備力に『ビックベン-K』の守備力を加える!!さらに、沢渡の『魔界即興劇─インブロ』によって追加ダメージだ!!」

 

「ぬうっ!?」

だが、それを見過ごせないのが男権現坂…彼が遊矢に加勢し、月影に大ダメージを与えた!

 

 

 

「サンキュー!権現坂…助かったよ!」

 

「勘違いするな!別に助けた訳ではない…()()()()()()()()()!」

 

「わかったよ…なら、まずは──「この2人からだ!!」」

遊矢と雌雄を決する事を望む権現坂…その願いを叶える為、バトルロイヤルは沢渡・月影対遊矢・権現坂へと発展していく…!

 

 

 

 

 

 

「っ…そうだ…!オレは柚子を助けて、アカデミアの次元戦争を止める為にシンクロ次元に行って……牢屋に捕まって…?()()に、助けられて…ジャックとライディングデュエルして──」

デュエルが進んでいく中、遊矢の脳裏にはだんだんと記憶が蘇っていく。

 

次元防衛隊『ランサーズ』…差別の世界『シンクロ次元』…『セキュリティ』『収容所』『ライディングデュエル』『フレンドシップカップ』……様々な記憶が過ぎていく中、その記憶の中に思い出せない『誰か』の影があった。

 

 

 

 

「──『エクシーズ次元』…『半分になった「スマイル・ワールド」』……『エド・フェニックス』っ……『炎の不死鳥』…」

沢渡の猛攻をしのぐ遊矢の記憶はついに悲劇の世界『エクシーズ次元』へ……そして──

 

 

 

「───『融合次元』…『赤馬零王』……『魔人オーケストラ』…!?」

遊矢の記憶はついに狂気の世界『融合次元』に到達する…。

 

 

 

 

「あ、ああ…!?ゆ、遊矢!!!」

 

「よ、洋子さん!?」

その時、観客席で遊矢達のデュエルを見ていた洋子が顔色を青褪めさせる…気付いてしまったのだ、()()()()()()()()()の事を…!

 

 

 

「遊矢!!お兄ちゃんが…()()がいない!!!」

 

「─────あっ…」

洋子の悲鳴が遊矢に届く、その声は一気に遊矢の忘れていた記憶を()()させた…。

 

 

 

 

 

 

『えっと……はじめまして…?遊希です…よろしくね、遊矢』

 

 

 

『はぁ…はぁ…ううっ……いた、い…!』

 

「遊希兄…頑張って…!」

 

 

 

『遊矢…大丈夫…!遊勝さんは、きっと帰ってくる…!!』

 

 

 

『こら!遊矢を虐めるな─!』

 

 

「遊希、兄…」

 

それは、掛け替えのない…もう一人の家族の姿……記憶を失い、傷だらけで…それでも、父がいなくなった悲しみを必死にカバーしてくれた『兄』の姿…そして───

 

 

  

 

 

 

「すまない、少し出遅れた」

 

 

 

「かけがえのない、大切な人を失ったお前には酷な言葉かもしれない……でも、そんな姿を柚子ちゃんに見せられるのか?」

 

 

 

「遊矢、心配するな…この力はお前達を助ける為に使う力だ……俺は世界を救う決闘者だからな!」

 

 

 

「おう、遊矢!ジャックとの決勝戦、なかなか良いデュエルだった…お前が貫くべき『自分のデュエル』を見つけられたみたいだな?最後のペンデュラム召喚からのコンボはすごかったな!」

 

「わぶっ…頭を撫でるのは止めてよ!子供じゃないんだから…」

 

 

 

「遊矢、俺にお前の兄…()()()の面影を重ねるのは仕方がない事だ………でも、俺は()()()()…お前との『思い出』を知らない別人だ……そこだけは間違えたら駄目だ、遊希の為にもな…」

 

 

 

 「───遊海!!!!」

 

そして、その『兄』の本当の姿……その圧倒的な力で次元戦争を戦うランサーズを導いた『英雄』───白波遊海の事を遊矢達はようやく思い出したのだ…!

 

 

 

 

 

 

Side零児

 

 

 

『ようやく、思い出したか…』

モニターで事態を見守っていた零児は遊矢達が記憶を取り戻した様子を見ながら呟く…。

 

 

『白波遊海は全能の力「ヌメロン・ピース」を使い、世界の書き換えを行おうとした……ズァークとして遊矢と統合されてしまったユート・ユーゴ・ユーリ…そして肉体を失った我が姉、レイを救う為に……だが、彼の書き換えは()()()に終わった…遊矢達は分離されず、肉体を取り戻したレイは何故か()()となり……()()を失った……その影響か、柊柚子とセレナ…そしておそらく瑠璃とリンも()()状態にある…』

 

強い精神力を持っていたからか、スタンダード次元組では遊勝と同じく『記憶』を保っていた零児…彼が気付いた時、そこには狼狽する父、零王とその腕の中にいる赤子となったレイの姿があった。

 

事態の解決を図るべく融合次元へと先行した零王曰く、遊海によって元の体に戻れる可能性を示されたレイは…どことなく()()()()()()をしていたという…。

 

 

そこから父である零王が予想したのは…レイが抱いていた『罪悪感』についてだった。

 

 

レイの独断専行とダークネスによる干渉によって発生した『世界分裂未遂』と『ARC次元創世』……彼女は世界を引っ掻き回してしまった事で罪悪感を抱き、心を閉ざし、笑顔を失った…それが分身である柚子やセレナ達に影響を与えているのではないか、と…。

 

 

「ここからが、本当の試練だぞ…遊矢…!」

遊勝は厳しい目でモニターの中の遊矢を睨んだ…。

 

 

 

 

Side out

 

 

 

 

「う、あ…遊希兄…遊海……」

 

「い、いかん…!このままでは…!?」

溢れ出す記憶の奔流に動揺する遊矢…その姿を見た権現坂は遊矢よりも先に()()()()()を思い出してしまった…!

 

「このデュエル、このターンで終わらせる!!」

壊れてしまいそうな遊矢の心を守る為、権現坂は男気を見せる!

 

 

「『超重武者カク-5』の効果を発動!自分のライフを1000払う事で相手モンスター1体の攻撃力や1000ダウンさせる!俺が選ぶなは沢渡の『魔界劇団─ビッグスター』!!」

 

「なんだと!?」

超重武者の効果を開放した権現坂…その効果で体に重圧がのしかかる!

 

 

「まだまだぁ!もう一度『カク-5』の効果発動!そして3度目だぁぁ!!

 

「な、なにそれ〜!?」

残りライフを1000まで削った権現坂の男気によってビッグスターは攻撃力600まで弱体化する!

 

 

「征くぞ!『超重武者ビックベン-K』は守備表示で攻撃できる!『ビッグスター』を攻撃─!!」

 

「う、うわあああっ!?」

権現坂の不動の一撃が沢渡のライフを削りきる!

 

沢渡LP0

 

 

 

「さらに『ビックベン-K』に装備された『超重武者装留ダブル・ホーン』の効果発動!自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない時、装備モンスターは2回攻撃できる!月影の『黄昏の忍者将軍─ゲツガ』を攻撃!!」

 

「くうっ!?」

さらに、連続攻撃が月影のエースを粉砕…そして…!

 

 

「『超重武者カク-5』の効果発動!自分のモンスターが相手モンスターを戦闘破壊した時、ペンデュラムゾーンの『超重輝将ヒス-E』と『超重武者サン-5』を破壊する事でそのモンスターはもう一度攻撃できる!『ビックベン-K』でダイレクトアタック!!」

 

「っ…これにて、御役御免…!!」

魂の一撃が月影のライフを削りきる…だが、月影は零児からの指令を完遂した…!

 

 

月影LP0

 

 

 

 

 

 

「………そうだ、オレは────」

 

 

 

 

【我こそはズァーク!今此処に復活せり!!】

 

 

 

「受け取れ!ズァーク!!」

 

 

「これが…僕達、決闘者の光の力!」

 

 

「お前の闇を打ち払い!」

 

 

「絆を繋ぎ!」

 

 

「お前を救う希望の光だ!!」

 

 

 

【おのれ…おのれ!!伝説のデュエリスト共…白波遊海ィィ!!!】

 

 

 

 

「オレは──ズァーク…」

そして、遊矢に最後の記憶が蘇る…それは自分の『大元』たる存在──『悪魔の決闘者』ズァークとしての記憶…そして、伝説の決闘者達との激戦の記憶だった…。

 

 

 

 

 

「ザーク…?」

 

「ズァーク……ズァーク…!?」

 

「思い出した…!!空に映ったデュエル!!」

 

「い、いやああああ!?」

そして、遊矢の呟きが聞こえた観客席から驚愕の声や悲鳴が上がる…彼らも思い出したのだ、不気味な色の空に映ったズァークと5人の決闘者達の戦いを…。

 

 

 

 

「そうだ…オレは、ズァークの一部だった…でも、遊海や遊馬…遊星…十代さん…遊戯さんがズァークを倒して、オレを…」

 

 

 

「逃さないぞ、ズァーク…!悪い事をしたら、ごめんなさい…だろ…!!これ以上、お前の好きには、させない…!!」

 

 

【もう少しはやく……あなたに、あいたかったなぁ…──】

 

 

「おやすみ、ズァーク……お前が巡る輪廻の先で、俺は待ってる」

 

そして、遊矢は思い出した…激しい決闘の末に『覇王龍ズァーク』は人々の希望の力を得た『ゴッドアイズ・ファントム・ドラゴン』によって倒され、悪意に翻弄され続けたズァークの魂は遊海によって救われた。

 

 

 

だが───

 

 

 

《大規模な時空震を確認!先程の『覇王龍ズァーク』と『ゴッドアイズ・ファントム・ドラゴン』の戦闘の余波と思われます!!》

 

 

 

「ランサーズ!お前達は各次元出身者ごとに固まっていてくれ!念の為に各次元に送り返す!」

 

 

 

「大丈夫…!遊海が送ってくれるんだ、必ず帰れるよ…!」

 

 

 

「ああ、もう……肝心な、時に………すまん、遊矢……」

 

「ゆ、遊海─!!」

 

 

 

 

「そ、そうだ…!?遊海は、柚子…なんで!?」

様々な要因が重なり、時空震が発生…遊海は手にした『全能の力』を開放したが…その体は限界を超えてしまっていた。

 

そして…全ての記憶を取り戻した遊矢は取り乱した…何故、柚子は眠り続けているのか…そして…『最善』を掴み取ったはずの遊海はどうなったのかと…。

 

 

 

『白波遊海は…行方不明だ』

 

「っ…零児!!」

その時、デュエルフィールドとスタジアムにソリッドビジョンによる画面が投影される…そこにはランサーズのリーダーたる零児の姿があった。

 

 

 

「遊海が行方不明って…なんで…!?」

 

『おそらく、「全能の力」による書き換えは不完全に終わった…遊矢、きみから他の三人が…ユートやユーゴ、ユーリが分離していないのがその証拠……何らかのトラブルが発生したようだ』

動揺する遊矢に零児は冷静に事実を伝える。

 

 

「それじゃ…柚子が目覚めないのも…!?」

 

「それは…()()が原因だろう」

 

「零羅…と、赤ん坊…誰だ…?」

柚子が目覚めない原因を訊ねる遊矢…それに答えるように画面の中に零羅と日美香、そして…彼女の腕に抱かれた赤子が姿を見せた…。

 

 

『母の腕の中にいる赤子…彼女は我が姉、レイ…「全能の力」によって肉体を取り戻したが、赤子の姿となってしまった…そして、彼女は()()()()のだ』

 

「レイが赤ん坊に…!?でも、笑わないって…」

 

「僕がいくらあやしても笑ってくれないんだ…ずっと、悲しそうな顔してて…」

 

『おそらく、世界分裂の原因の1つとなってしまったレイの抱いた「罪悪感」が分身である柊柚子やセレナ達に影響を及ぼしている…と推測される』

赤子とは泣いて笑って自分の想いを周りに伝える、その赤子が笑わないのは明らかな『異常』…そして、零児は話を続ける。

 

 

『今回、舞網チャンピオンシップの再現を試みたのには理由がある…1つは記憶を失ったきみ達の記憶を呼び戻す事、そしてもう1つは…榊遊矢、きみの()()()()()()()()でレイの笑顔を取り戻させ…柚子達を救う為だ』

 

「───そうか、レイが罪悪感で心を閉ざして…そのせいで柚子達が眠り続けているなら…レイが笑えれば、自分を許せれば…柚子達も目を覚ますかもしれない…!」

 

『その通りだ』

舞網チャンピオンシップ再演の意図を語る零児…それは遊矢の持つ『笑顔を生む力』──エンタメデュエルによってレイに笑顔を取り戻す為だったのだ。

 

 

 

「だが、それは簡単な事ではないぞ…遊矢」

 

「父さん!?」

そして、零児の言葉を引き継ぐ形で遊勝が現れる。

 

 

「白波遊海はデュエルの力で世界を救った…しかし、彼の力を頼れない今、レイと柚子達を救うのは()()()()()だ…!その為にジュニアユース選手権を勝ち上がれ!それができなければプロにもなれず、柚子やレイを救う事もできない!そして…お前を信じた遊海の思いを()()()事になる!!」

 

「っ…!」

遊勝は『父』としてではなく…エンタメデュエルの『師匠』として、遊矢に厳しい言葉をかける。

 

 

「遊矢、レイを救う…いや、彼女が自分自身を()()()ようになる為の答えは…既に()()()()()()()!デュエルの中で…それを見つけてみせろ!」

 

「答えは、オレの中に…!?」

そして遊勝は遊矢へとヒントを送る…遊矢が柚子達を救う為のヒントを…。

 

 

 

「答えはオレの中にあるって…どうすればいいんだよ…!?」

零児からの通信が切れる…そんな中、遊矢は頭を抱えていた…エンタメデュエルでレイに笑顔を取り戻させ、柚子達を救う為の()()に心当たりがなかったからだ…。

 

 

 

「何をグズグズしてるんだい遊矢!!そんな暇があったら…さっさと私との約束を果たしにいきなさい!!」

 

「か、母さん!?」

そんな時、デュエルフィールドにいる遊矢へと激が飛ぶ…それはニコからマイクを取り上げた洋子の声だった。

 

 

「アンタ、言ったよね?『オレは必ずデュエルでみんなを笑顔にして、争いを止めて、柚子を連れて帰るんだ』って…!アンタはまだ約束を果たしてない!笑顔を失った赤ん坊に、柚子ちゃんは眠ったまま!アンタはそれでいいのかい!!」

 

「っ…母さんは、黙っててよ…!これは、オレがやらなきゃならない…オレの問題なんだ!!」

洋子の激に遊矢は拳を握り締め、デュエルディスクを構える…全てを救う為の答えを探しながら…。

 

 

「オレのターン…っ…!『ディスカバーヒッポ』と『オッドアイズ』を守備表示に変更…カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

しかし、心が揺らいでいるからか…デッキは遊矢に応えない…そして───

 

 

「遊矢…お前がグズグズ悩んでいるなら…!この男権現坂が、柚子もレイも助けてみせるわ!!」

悩む遊矢へと発破をかける為、不動の男が()()()()

 

 

 

 

「俺はレベル8の『ビックベン-K』とレベル2の『カク-5』にレベル2の『超重武者コブ-C』をチューニング!!不動の鬼神よ!覚悟の拳を握り締め!今、鉄の鬼となって戰場を駆け巡れ!!シンクロ召喚!いざ出陣!!レベル12!『超重蒸鬼テツドウ-O』!!」

それは権現坂の新たな力…レベル12、守備力4800を誇る最上級シンクロモンスター…鬼の顔を持つ巨大な機関車が現れる!

 

 

「あれが権現坂の新モンスター…って、()()()()()!?」

 

「これが俺の覚悟!俺の本気の現れだ!!お前を倒して…俺はプロとなる!!」

権現坂の新たなモンスターに驚く沢渡…それは高いステータスを見たからではない──『不動のデュエル』を信条にしている権現坂がテツドウ-Oに飛び乗ったからだった…!

 

 

「いくぞ遊矢!!『テツドウ-O』は守備表示で攻撃できる!ダイレクトアタックだ─!!」

 

「って…走り出した─!?うおあああっ!?」

さらに、テツドウ-Oは権現坂を乗せたまま、光のレールを作り出しながら発進…動線にいた沢渡は慌てて逃げ出した!

 

 

「っ…アクションマジック『回避』!!」

 

「させぬわ!!どりゃああ!!」

 

「うわっ!?」

汽笛を響かせながら迫るテツドウ-Oに対して遊矢は『回避』を発動する…だが、それは見た権現坂は自身の履いていた鉄下駄を投擲…高所にあったアクションカードを()()()()()

 

「アクションマジック『ノーアクション』!これで『回避』は無効だ!」

 

「権現坂が、アクションカードを!?」

その姿を見た遊矢は思わず驚愕する…。

権現坂の信条である『不動のデュエル』は己のデッキを信じ、アクションカードや魔法・罠カードを使わないというデュエルスタイル…だが、権現坂は新たな境地へと踏み出したのだ…!

 

 

「っ…!罠カード発動!『EMシグナル』!!」

勢いを増すテツドウ-Oに崖っぷちに追い詰められた遊矢は一か八かの賭けに出る!

 

「『EMシグナル』の効果でオレは1枚ドローし、そのカードを墓地に送る!そのカードが『EM』モンスターなら、相手の攻撃を無効にする!!──ドロー!!」

それはまさに賭け…魔法でも罠でも…『EM』以外のモンスターを引いても、遊矢はデュエルに敗北してしまう…!

 

 

「──よし!オレが引いたのは『EMソード・フィッシュ』!攻撃は無効だ!」

そして、遊矢は賭けに勝つ…テツドウ-Oの前に鉄道信号が現れ、鬼面の汽車は停止する!

 

 

「ふ、ふぅ〜…危なかったぁ…」

 

「甘いぞ遊矢!『テツドウ-O』の効果発動!1ターンに1度、自分の墓地の魔法・罠カードを全て除外し、1枚につき200ダメージを与える!受けてみろ!遊矢!!」

 

「うわっ!?くうううっ!!」

だが、権現坂はタダでは止まらない…鬼面の口元から砲塔が飛び出し、遊矢へと火炎放射が直撃した!

 

 

 

 

「生ぬるいぞ遊矢!!この程度でプロを目指すとは、片腹痛いわ!」

 

「っ…なんだと!」

残りライフ700まで追い詰められた遊矢へと権現坂が激を飛ばす…!

 

 

「本気でプロを目指すのなら…親父さんのようなエンタメデュエリストになりたいのなら!今のお前にできる()()でかかってこい!!」

 

「っ…オレだって、全力でやってる!全力で考えてるんだ…!!どうしたらオレのエンタメでレイや柚子を助けられるのか…オレは、2人を助けたい!!誰に、なんと言われようと…そうでなきゃ、オレを助けてくれた遊海やみんなに顔向けできない!!」

 

「遊矢…」

権現坂との戦いの中、遊矢は必死に考えを巡らせていた…エンタメデュエルで赤ん坊のレイを笑わせる方法を…彼女の心を救う方法を…。

そして思い出すのは舞網を出発してからずっと自分を守り続けてくれた遊海の姿…遊矢が悪魔の欠片だと知っていながら、それでも自分を導いてくれた背中だった…。

 

 

 

「権現坂…オレはもっと強い自分になる!だから…勝負だ!!」

 

「そうこなくてはな…!ついて来い!遊矢!!」

 

「ああ!!」

汽笛を鳴らしながらテツドウ-Oが光の線路と共に動き出す…リアルソリッドビジョンで作られた線路に乗って遊矢はローラースケートで権現坂を追いかけた…!

 

 

 

 

「ペンデュラム召喚!エクストラデッキから蘇れ!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

デュエルの舞台は火山エリアから古代遺跡エリアへ…遊矢はオッドアイズを喚び出し、権現坂へと食らいつく1枚を発動する!

 

 

「そして永続魔法『ペンデュラム・イリュージョン』を発動!!バトルだ!『オッドアイズ』で『テツドウ-O』を攻撃!」

 

【遊矢選手が権現坂選手へと攻撃を仕掛ける!だが、『テツドウ-O』の守備力には敵わないぞ〜!?】

 

「この瞬間!『ペンデュラム・イリュージョン』の効果発動!ペンデュラムモンスターが相手モンスターとバトルする時、手札の魔法・罠カードを墓地に送る事でバトルの間、相手モンスターは破壊されず、攻撃力・守備力は半分になり、貫通ダメージを受ける!オレはアクションマジック『ダメージ・バニッシュ』を捨てて効果発動!!!いけ!螺旋のストライク・バースト!!さらに、『オッドアイズ』がレベル5以上のモンスターとバトルする時!与えるダメージは2倍になる!リアクション・フォース!!」

 

「ぬうう…!まだまだぁ!!」

テツドウ-Oが螺旋の炎に包まれる…だが、その動きは止まらない!

 

 

「バトルが終了した事で『テツドウ-O』の守備力は元に戻る!」

 

「遊矢…真正面から攻撃してきたお前の決意、しかと受け取った!!ならば俺を…真正面から行く!!」

策を弄せず、真正面から権現坂と向き合う遊矢…その男気に権現坂も正面から応じる!

 

 

 

「バトルだ!『テツドウ-O』で『オッドアイズ』を攻撃!!」

 

「永続魔法『ペンデュラムイリュージョン』の効果発動!アクションマジック『フレイムガード』を墓地に送り、『テツドウ-O』の守備力を半分にする!」

 

『ぬううっ…!!?』

バック走行で遊矢に向けて火炎放射を放つテツドウ-O…だが、アクションカードを取った遊矢が螺旋の炎で迎え撃つ…! 

 

 

『やるではないか…だが、まだだ!「テツドウ-O」の効果発動!手札2枚を墓地に送る事で相手モンスター1体を破壊できる!俺は手札の「超重武者ビッグワラ-G」とアクションマジック「不撓不屈」を墓地に送り、「オッドアイズ」を破壊する!』

 

「うわっ!?」

しかし、権現坂もタダでは終わらない…テツドウ-Oの効果で遊矢をオッドアイズから叩き落とし──

 

「さらに墓地の『不撓不屈』を除外して200ダメージだ!!」

 

「ぐううっ!!」

テツドウ-Oの火炎が遊矢にダメージを与える。

この時点で遊矢のライフは500、権現坂のライフは600…遊矢の『ペンデュラムイリュージョン』が不発になるか…権現坂の『テツドウ-O』の効果が不発になるか…アクションカードに全てが懸かったサドンデスへと突入した…!

 

 

 

 

「アクションマジック『フレイム・チェーン』を捨てて『ペンデュラムイリュージョン』の効果発動!!『オッドアイズ』で『テツドウ-O』を攻撃!!」

 

「なんのぉぉぉ!!『テツドウ-O』で『オッドアイズ』を攻撃!!」

 

「アクションマジック『奇跡』を墓地に送って『ペンデュラムイリュージョン』の効果発動!!」

 

「ぐううっ!『テツドウ-O』の効果発動!『超重武者装留マカルガエシ』とアクションマジック『フレイムパワー』を捨てて『オッドアイズ』を破壊!そして200ダメージだ!!」

 

「っううう…!!!」

古代遺跡エリアからジャングルエリア、ジャングルから氷山エリアへ…2人は一進一退の攻防を繰り広げる。

 

遊矢は分かっていた…権現坂は自身の信条である『不動のデュエル』を捨てても、迷う自分を鼓舞してくれているのだと…2人の熱い決闘に観客達も引き込まれていく…そして…!

 

 

 

 

「バトルだ!『オッドアイズ』!『テツドウ-O』を攻撃!!」

 

「この1枚に賭ける!!うおお!!」

火山エリア…アクションカードを獲得したい遊矢と防ぎたい権現坂、2人が交錯する…その結果は──

 

 

「アクションマジック『フレイム・パワー』を捨てて『ペンデュラムイリュージョン』の効果発動──!!」

 

「く、くっそおおお!!!」

運命の女神は遊矢へと微笑んだ!

 

 

「『オッドアイズ』で『テツドウ-O』を攻げ…権現坂!?」

 

「最後も真正面から受け止める!!来い!遊矢─!!」

 

「おう!!いくぞ、権現坂!『オッドアイズ』の攻撃!螺旋のストライク・バースト!そしてダメージは2倍に!リアクション・フォース!!!」

 

「ぐっ…ぬあああああ!!!」

権現坂は真正面から螺旋の炎を受け止める…こうして再演のバトルロイヤルは遊矢へと軍配が挙がった…!

 

権現坂LP0

 

遊矢 WIN!

 

 

 

 

「権現坂!!」

 

「いつつ…これがお前のエンタメだと?ふざけるな!お前のエンタメはこの程度ではないはずだ!」

 

「権現坂…」

舞網市を覆っていたリアルソリッドビジョンが解除されていく、そして遊矢は倒れ込んでいた権現坂は遊矢へと喝を入れる…遊矢と胸元の青いペンデュラムのネックレスに拳を押し当てながら…。

 

「必ず、お前のエンタメでレイと柚子を救うのだ!分かったな!!」

 

「…ああ…!!」

それは権現坂との男の約束…彼からのエールだった…。

 

 

 

 

【ジュニアユース選手権決着!勝者は榊遊矢選手だ─!!】

 

「「「おおおっ─!!」」」

そしてスタジアムにニコの勝利宣言が響き渡る…会場は歓声と拍手に包まれる!

 

 

 

【これにより榊遊矢選手はジュニアユースクラスからユースクラスへと昇格『いや、まだ()()()()()()!』へっ??】

ニコが遊矢の昇格を祝おうとした時、それを遮る声が響く…それは零児の言葉だった!

 

 

「零児…!?」

 

『遊矢、この戦いはアカデミア軍の急襲によって中断された舞網チャンピオンシップの()()として行われた…あの時点で残っていたのは、私がランサーズとして認めたデュエリスト達…ユース昇格が認められるのは、その中の1人──ならば、きみには戦うべき相手がいるはずだ』

 

「倒すべき、相手…」

ヘリコプターで遊矢と権現坂の決着地点へと駆けつけた零児は遊矢へと戦うべき相手が残っている事を告げる…。

 

 

『ヘリコプターへ乗り込め、きみが戦うべき相手のいる場所へ案内する』

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

「これは…遊馬の飛行船で融合次元に行った時の!?」

 

『ああ、私達が通ったワームホール…次元回廊だ』

舞網市内・某所…建築現場で使われる仮設壁に覆われたそこには()()()()()()()があった…それは別世界から来た九十九遊馬達が使用した次元を繋ぐ通路…次元回廊と呼ばれるモノだった。

 

 

『おそらくは…白波遊海の『繋げる力』によって各次元が繋がったモノだ…遊勝氏に調べてもらった結果、エクシーズ次元・シンクロ次元・融合次元にもこの次元回廊のゲートが開き、各次元を繋いでいる…』

 

「あっ…」

零児の説明に遊矢は覚えがあった、朧げに記憶に残るズァークと遊海達のデュエル…その中で全ての次元の人々の祈りを受けた遊海は光り輝く姿へと変化していた…その力が次元を繋いだのだろうと…。

 

 

 

『きみにはこの次元回廊を通り、エクシーズ次元へと向かってもらう』

 

「エクシーズ…つまり、黒咲と戦う為に…だろ?ランサーズの仲間…舞網チャンピオンシップで残ったのは黒咲にデニス、セレナ…それに…凌牙と、遊海…」

 

『その通りだ…だが、きみが戦うのは()()()()黒咲とデニスだけでいい…セレナは融合次元で昏睡状態、凌牙は『世界』においてのプロデュエリストであり…ARC次元外に避難していて連絡が付かない、そして遊海は…完全に行方不明だからだ…』

 

「遊海…」

遊矢の推測に答えながら零児は戦う相手を指定する…しかし、遊海の名を呼んだ時、その表情は暗かった…。

 

 

 

「フン…そう暗い顔をするな、遊海は必ず生きている!」

 

「あっ…海馬社長、それに遊戯さん、城之内さん…」

次元を渡ろうとする遊矢の前に三人の男達が現れる…それは海馬・遊戯・城之内…遊海の親友である三人だった。

 

 

 

「先程のバトルロイヤルは…及第点だったな、榊遊矢…遊海と翠はおそらく、力を使い果たし、()()()で身動きが取れない状態にあるのだろう……そうでなければ、あのお節介焼きの遊海が姿を見せない理由はない」

海馬が今までの経験から遊海と翠の状況を予測する、融合次元やズァークとの戦いを前に遊海も翠も無茶を重ねていた…その影響が出たのだろうと…。

 

 

「もしも、奴を見つけたらすぐに連絡しろ、我らがすぐに駆け付ける」

 

「遊矢君、これはキミが乗り越えるべき()()だ…遊海もきっと、キミがこの戦いを乗り越えられると信じてるはずだよ」

 

「まぁ、リラックスして戦いに行けよ!別に世界の命運が懸かってる戦いじゃねぇ!お前の()()()()を助ける為の試練だからな!」

 

「じょ、城之内さん!?好きなって、オレと柚子はそそんなんじゃ!?!?」

 

「ありゃ、違ったか?」

 

「城之内君、空気読んでよ…」

 

「はぁ…これだから、お前は凡骨なのだ…」

 

「凡骨言うなっての!!」

遊矢へと遊海の捜索を頼む海馬、試練に挑む遊矢の背中を押す遊戯、冗談を言って遊矢の緊張をほぐす城之内…三人のエールを受けた遊矢は次元回廊へと向き直る。

 

 

『行ってこい、榊遊矢…ここから先は…きみの戦いだ!』

 

「ああ!!」

零児に背中を押された遊矢は次元回廊へと飛び込んだ!

 

 

 

 

「(デュエルの力でしかレイや柚子達を救えないのなら…誰であろうと勝ってみせる…!オレは誓ったんだ、エンタメの力で世界を…みんなを救うんだって、オレを…『榊遊矢』を貫くんだって…!待ってろよ…黒咲!!)」

次元回廊をローラースケートで進みながら、遊矢は自分の誓いを思い返す…遊矢の試練はここから始まった…!

 



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残された爪跡〜呪いの機械仮面〜

ハーメルンの皆様、お久しぶりです、S,Kです。

……3ヶ月もお待たせして申し訳ありません!!(土下座)

懸念していた通りのズァーク戦執筆による燃え尽きと私生活の忙しさで執筆が進みませんでした…本当に申し訳ありません!

物語もついにクライマックス…遊矢は試練を越えられるのか、遊海達は何処にいるのか…少しずつではありますが、進めていきます!


「見えた、出口だ…!」

 

次元を繋ぐ光のトンネル──次元回廊をローラースケートで進み続ける事しばらく…遊矢は最初の目的地であるエクシーズ次元へと到着しようとしていた。

 

 

「っ…?出口で誰かが──あれは…!」

 

『やぁ、待ってたよ!遊矢』

出口の先に人影が現れる…それはランサーズの一員であり、アカデミアのスパイでもあったもう1人の『エンタメデュエリスト』…デニス・マックフィールドだった。

 

 

 

 

「えっ…あれ?ここってエクシーズ次元、だよね…?なんでデニスが…?」

次元回廊から飛び出した遊矢は周囲を見渡す、そこは遊海の起こした奇跡の御業「オーバー・タイム・タイラント」によってほとんどの被害が()()()()()()になったエクシーズ次元・ハートランド…そのセントラルタワー前の広場だった。

 

 

『何故って…キミとデュエルする為に決まってるじゃないか?事情は遊勝先生から聞いてるよ』

 

「デュエルって…黒咲は??」

エクシーズ次元で待ち受けているのは当然黒咲だと思っていた遊矢…だが、彼の姿はなく…何故か、デニスが待機していた事に驚いている。

 

 

 

「遊矢!隼は融合次元に行っちゃったんだ!」

 

「『瑠璃が目を覚まさないのは赤馬零王のせいだろう』って…問い詰めに行っちゃったの!」

 

『そういう事、ボクも引き止めたんだけど…聞く耳を持ってくれなくてさ…』

 

「アレン…サヤカ…黒咲らしい理由だな…」

同じく近くで待っていたレジスタンスのアレンとサヤカが黒咲が不在の理由を説明する。

遊海によってエクシーズ次元に帰還した黒咲達だったが、その直後に瑠璃が昏倒…その原因が零王にあると思い込んだ黒咲は融合次元に向かってしまったのだ…。

 

 

 

『という訳で、ボクとデュエルしてくれないかな?遊矢、別に戦う順番は指定されてないだろう?』

 

「確かに、そうだけど…」

デニスの申し出に遊矢は戸惑う…確かに、零児には『エクシーズ次元に向かえ』と言われただけで…戦う順番は指定されていなかった。

 

 

『それに…ほら!ちょうどお客さんも来たみたいだよ?』

 

「お客さん…?あっ…」

デニスの示す方角を見た遊矢は気付いた、そこには遊海対十代のデュエルを楽しそうに見ていた幼い兄弟の姿があったのだ。

 

 

『ふふっ…じゃ、始めよっか!遊勝先生の弟子の1人として…エンタメで負けるつもりはないけどネ!』

 

「……わかった!デュエルだ、デニス!」

アクションフィールド『クロス・オーバー』が発動され、周囲に足場が構築されていく…ハートランドで2人のエンタメデュエリストが激突する!

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対デニス

 

 

 

 

エクシーズ次元で始まった遊矢とデニス、二人の『エンタメデュエリスト』によるデュエル…先攻となった遊矢はペンデュラム召喚によってエースである『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を喚び出してターンを終える。

 

対するデニスは『emバブル・ガードナー』を召喚、シャボン玉の演出でデュエルを見ていた子供達を笑顔にする…その時だった。

 

 

 

 

「お前達!何をやっているんだ!!デュエルを見るなとあれほど言っただろうが!!」

 

「「パパ…!」」

 

「あなた…!落ち着いて…!あの子の…遊矢君のデュエルは違うのよ…!!」

 

「っ…なんだ…!?」

広場に男性の怒声とそれを宥める女性の声が響く、それはデュエルを見学していた兄弟の両親らしかった…その剣幕に遊矢は思わずデュエルの手を止めてしまう…。

 

 

 

「デュエルは()()()()()だ…!そんなモノに子供達に触れさせるな!!」

 

「っつ…!?」

父親らしい男の言葉に遊矢は全てを察した…おそらく、あの男性はアカデミアによる侵攻でカードにされた被害者の1人だったのだろうと…。

 

遊矢のエンタメデュエルによってエクシーズ次元侵攻は解決し、遊海の奇跡によってほとんどの被害は『無かった事』になった。

 

 

……しかし、エクシーズ次元の人々の心には──消えない()()が残ってしまったのだ…。

 

 

 

「さぁ、帰るぞ!こんな奴らに関わるな!!」

 

『クククッ…!させないよ、そんな事は…()()()()()が見えないのかい?』

 

「っ、『融合』…!!」

子供達の手を掴んで引きずる父親、それを止めさせたのはデニス…彼が手札から見せた『融合』のカードだった…デニスは悪そうな顔で笑っている…!

 

 

『またカードにされたくなかったら…そこで大人しくデュエルを見ている事だな…!』

 

「デニス!?何をっ…(いや、違う!デニスは自分なりの『エンタメ』をしようとしているんだ…()()()()()()()()()()…!!)」

デニスの言い放った言葉に思わず叫びそうになる遊矢だったが…すぐにデニスの思惑に気付く。

 

デニスは融合次元での遊馬とのデュエルによって正義のデュエリストへと立ち返った…しかし、彼がスパイとして混乱を齎したのも事実…故に、デニスは『悪玉(ヒール)』を演じる事で遊矢を『善玉(フェイス)』としたショーを行い、それをキッカケに人々の心を救おうとしているのだと…!

 

 

 

『さぁ、いくぞ遊矢!』

 

「ああ…!かかってこい!()()()()()()デニス!!」

 

『(良いノリだ!ボクの意図に気付いてくれた!)』

遊矢の声を聞いたデニスは笑顔を見せる…そして、胸元から取り出したハーフマスクを着けてデュエルを再開した…。

 

 

 

そして、遊矢とデニスは激戦を繰り広げていく…デニスは新たな「em」「emトラピーズ・フォース・ウィッチ」に装備モンスターに擬似的な『古代の機械』モンスターの『バトル中に魔法・罠カードの発動を封じる』効果を与える『古代の機械仮面(アンティークギア・マスク)』を装備する事で遊矢を攻めたてる。

 

対する遊矢は「EMミラクル・ミラービット」によって「トラピーズ・フォース・ウィッチ」の効果を回避しながら「オッドアイズ」によってそれを撃破する、ミラーマジック・エンタメショーを披露する…そして、遊矢は──

 

 

 

 

「私のエンタメはひとまずここまで!続いては…榊遊勝の()()()が1人!融合次元最高のエンタメデュエリスト!次元を越えてやってきたデニス・マックフィールドが最高のエンタメを披露してくれます!!」

 

『ちょ、遊矢!?せっかくノッてきたのに!?』

遊矢とデニスのデュエルに引き寄せられたエクシーズ次元の観客達や事態を見守っていたエクシーズ次元復興隊のアカデミアのデュエリスト達に遊矢が明るく宣言する…デニスを悪役とするデュエルではなく、デニスと共に人々を笑顔にするエンタメデュエルをする為に!

 

 

「見せてくれよデニス!本当のデュエルを!!」

 

『まったく…せっかくお膳立てしてあげたのに!どうなっても知らないよ?イッツアショータイム!!』

デニスは仮面を投げ捨てる…そして2つのエンタメがデュエルを盛り上げていく!

 

 

 

『ショーマスト・ゴーオン!天空の奇術師よ!華やかに舞台を駆け巡れ!エクシーズ召喚!!「emトラピーズ・マジシャン」!!』

デニスはエースモンスターたる仮面の奇術師を喚び出す…そして、その華やかさが人々を釘付けにする!

 

 

『「トラピーズマジシャン」はORUを1つ使う事で2回攻撃ができる!これでアクロバットショーを2回楽しんでもらえるよ!さぁ、「ミラクル・ミラービット」を攻撃だ!!』

 

「そうはいかない!アクションマジック『回避』!その攻撃を無効にする!」

空中ブランコの勢いを利用した飛び蹴りを仕掛ける奇術師…だが、遊矢が確保していたアクションマジックによってその攻撃は空を切る!

 

 

『フフッ…!遊矢、きみが攻撃を回避したおかげで…ボクの勝利は決まったよ…!』

 

「なに…?まだわからないさ!」

 

『いいや…勝てるさ!「トラピーズマジシャン」で「オッドアイズ」を攻撃!!』

 

「なっ…!?させない!アクションマジック『奇跡』!『オッドアイズ』はバトルでは破壊されず、ダメージは半分になる!」

不敵な笑みを見せながらデニスは相討ちの攻撃を仕掛ける…だが、遊矢は拾ったアクションマジックで攻撃を受け止め、相討ちを防いだが───

 

 

『この瞬間!速攻魔法「RUM─マジカル・フォース」を発動!戦闘破壊された「トラピーズマジシャン」を効果を無効にして特殊召喚!そして、このカードと『トラピーズマジシャン』を素材として、ランクが1つ高いエクシーズモンスターにランクアップさせる!』

 

「デニスが、ランクアップマジックを!?」

デニスが発動したのは新たな力…ランクアップの力が彼のエンタメをさらなる高みへと導く!

 

 

『ショーマスト・ゴーオン!天空の奇術師よ!もっと華麗に!もっと鮮烈に!さらなる大舞台を駆け巡れ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!現われろ!「emトラピーズ・ハイマジシャン」!!』

鮮烈なる光の中で仮面の奇術師は白衣の奇術師へと進化を遂げる!

 

 

「これが、デニスの新しい力…!」

 

『いくよ、遊矢!「トラピーズハイマジシャン」はORUを1つ使い、3回攻撃できる!!「トラピーズハイマジシャン」の超高速アクロバット攻撃に耐えられるかな─!?』

 

「くっ、アクションカード…!うわっ!?」

強力な効果を前にアクションカードを狙う遊矢…だが、フィールドを縦横無尽に飛び回る奇術師によって妨害され、オッドアイズが破壊されてしまう!

 

 

『続いて「ミラービット」を攻撃!!』

 

「くううっ…!」

さらにミラービットを破壊され…遊矢は残りライフ100まで追い詰められてしまう!

 

 

『これで終わりだ!』

 

「まだだ!『EMドラネコ』のペンデュラム効果発動!自分フィールドにモンスターが存在しない時、1度だけバトルダメージを0にする!!」

 

『おおっと!?』

ダイレクトアタックが決まる寸前、ペンデュラムゾーンの胴体が『銅鑼』となったネコが爆音を響かせ、奇術師の攻撃を妨害した!

 

 

『惜しかったネ!ボクはこれでターンエンド!どうだい?遊矢!期待以上の盛り上がりだろ?』

 

「いいや、まだまだ!お楽しみはこれからだ!!」

絶体絶命の遊矢は明るく笑いながらデニスへと向き合う…そこに今までの禍根はない、エクシーズ次元の人々を笑顔にする為に…遊矢は自分のエンタメを突き進む!

 

 

 

「ペンデュラム召喚!甦れ!『オッドアイズペンデュラムドラゴン』!『ミラクル・ミラービット』!さらに『EMソード・フィッシュ』を通常召喚!」

遊矢はペンデュラム召喚と通常召喚を絡めてモンスターを展開する!

 

「『ソードフィッシュ』の効果発動!『トラピーズ・ハイマジシャン』の攻撃力を600ダウンさせる!これで『オッドアイズ』の攻撃力が上回る!」

 

『まだだ!『トラピーズハイマジシャン』のさらなる効果!ORUを1つ使い!このターンの間、3回まで戦闘・効果では破壊されなくなる!』

ソードフィッシュの効果で奇術師を弱体化した遊矢…だが、デニスは奇術師と共にセントラルタワーの天辺へと飛び上がる!

 

 

『さぁ、遊矢!ここまで上がってこられるかな?』

 

「ああ…上がってみせる!!」

デニスの全力に応える為、遊矢は呼吸を整え───

 

 

「レディース&ジェントルマン!!さぁ、いよいよクライマックスです!!」

お決まりの口上と共に道を切り拓く!

 

 

「この塔の天辺に栄光の勝利が待っています!まずは、私をあそこまで連れて行ってくれる『オッドアイズ』の為に道筋を用意します!永続魔法『チャレンジ・ステアーズ』発動!自分のモンスターが相手モンスターを破壊できなかった時、自分フィールドのカード1枚をリリースしてもう一度攻撃できます!続けて永続魔法『ホープ・ステアーズ』を発動!その効果によって相手モンスターとバトルした自分のモンスターの攻撃力を次の自分スタンバイフェイズまで400アップします!!」

遊矢の勝利の道筋を照らすように…虹の道が作られていく!

 

 

「それでは──バトルに入ります!!」

 

 

 

 

Side???

 

 

『フィールドにはレベル4の「ミラクル・ミラービット」がいる…「相生の魔術師」のペンデュラム効果を使って「ソードフィッシュ」をレベル4に変更し「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」を喚び出し、攻撃力を下げれば……』

スタンダード次元、レオコーポレーションの作戦司令室…エクシーズ次元のデュエルを映像越しに観戦していた零児は遊矢の展開を予想していた…しかし…。

 

 

「それでは、バトルに入ります!」

 

『なに─?』

遊矢は彼の予想に反する攻撃に打って出た…。

 

 

 

SideOUT

 

 

 

 

「バトルだ!『オッドアイズ』で『トラピーズハイマジシャン』を攻撃!」

 

『でも、バトルでは破壊されない!』

 

「それでもダメージは受ける!!」

オッドアイズに飛び乗った遊矢は虹の道を突き進みながら攻撃を仕掛ける!

 

 

「『ホープステアーズ』の効果発動!『オッドアイズ』の攻撃力は400アップする!」

 

『そう簡単にはいかないよ!「emリバーサル・ダンサー」のペンデュラム効果発動!お互いのターンに1度、相手モンスターの攻撃力がアップした時!その数値分、「トラピーズハイマジシャン」の攻撃力はアップする!』

 

「では私も!『ミラクル・ミラービット』のさらなる効果!自分の攻撃を破棄する事で、『オッドアイズ』はもう一度攻撃できる!そして『チャレンジステアーズ』の効果でペンデュラムゾーンの『相生の魔術師』をリリースする事でもう一度攻撃!これで『トラピーズハイマジシャン』の効果は使い切りました!!」

 

『ぐううっ…!』

奇術師を強化してダメージを押さえようとするデニス…しかし、遊矢の猛攻が守りを跳ね除ける!

 

 

「そして『チャレンジステアーズ』の効果発動!ペンデュラムゾーンの『ドラネコ』をリリースして4回目の攻撃!」

 

『でも惜しいね!ボクのライフはまだ残る!次のターンで…』

 

「それはどうでしょうか!!私はアクションマジック『奇跡』を『トラピーズハイマジシャン』に発動!これによって『トラピーズハイマジシャン』は破壊されず、受けるダメージも半分になりますが──」

 

『「ホープステアーズ」と「チャレンジステアーズ」の効果が発動する…!?』

 

「その通り!!」

それは予想外の一手、隠し持っていた「奇跡」が遊矢を勝利へと導く!

 

 

「『チャレンジステアーズ』の効果!「ソードフィッシュ」をリリースして『オッドアイズペンデュラムドラゴン』で『トラピーズハイマジシャン』を攻撃!!螺旋のストライク・バースト!!」

 

『うわあああ!?』

螺旋の炎が白衣の奇術師を撃ち抜く、その衝撃でデニスは空中へと投げ出されてしまうが───

 

 

 

「おっと危ない!!」

 

『あいてっ…ははっ…完敗だよ、遊矢』

虹の道を駆け抜けたオッドアイズがデニスを受け止める…世紀のエンタメ対決は遊矢へと軍配が上がった!

 

 

 

 

 

「そういえば…あそこの展望台、家族で昇った事があったなぁ…俺が、デュエルの大会で優勝した時に……」

万雷の喝采が広場に響くなか、デュエルを嫌っていた父親が穏やかに呟く…彼は思い出したのだ、デュエルは争いの道具ではない事を…。

 

 

「あなた…あの時言ったわよね?俺のデュエルで、家族を楽しませるって…」

 

「ああ…!彼らのデュエルが、思い出させてくれた…」

刻まれた傷跡の全てが癒えた訳ではない…それでも、遊矢とデニスのエンタメがエクシーズ次元に光を取り戻したのだった…。

 

 

 

 

 

デニスLP0

 

遊矢 WIN!

 

 

 

 

 

「遊矢お兄さん!エンタメデュエルおしえて!!」

 

「ぼくも!」

 

「わたしも〜!」

 

「よーし、わかった!楽しいデュエルの次はデニス先生がデュエルを教えてくれるぞ〜!」

 

「「「わーい!!」」」

 

『ちょっと遊矢!?』

デュエルが終わり、遊矢達はエンタメデュエルに魅せられた子供達に囲まれていた…そして、遊矢はデニスへと子供達の事を任せる事にした…。

 

 

「頼むよ、デニス…父さんが教えてくれた正真正銘のエンタメデュエルをみんなに教えてあげて欲しいんだ」

 

『遊矢…わかった!それじゃ、みんな集合─!』

 

「「「はーい!!」」」

遊矢の願いに応えたデニスが声を張り上げる…エンタメがエクシーズ次元と融合次元の和解の架け橋になる事を信じて…。

 

 

 

 

 

「遊矢、このまま融合次元へと向かうのか?」

 

「あっ…エド!カイト!」

子供達の笑い声を背に次なる目的地である融合次元に向かおうとする遊矢…彼に声をかけたのはエクシーズ次元のカイト、そしてエドだった。

 

 

「遊勝さんから事情は聞いた…瑠璃の事は心配しなくていい、容態は安定している…だが……」

 

「手分けして探したんだが…遊海さんも、翠さんも…エクシーズ次元にはいないみたいだ…」

 

「そっか……」

瑠璃の一応の無事をカイトから伝えられる遊矢…だが、もう一つの目的である遊海達の行方はわからないままだった。

 

 

「大丈夫、遊海さんは()()()さ…!きみはきみの為すべき事を精一杯やればいい!遊海さんなら絶対にそう言うはずさ!」

 

「エド…ありがとう!」

エド達の激励を受けた遊矢は融合次元へと次元回廊を走り出した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……あれ…?私、どうしたん、だっけ…?)」

 

意識を失っていた翠がぼんやりと目を覚ます、うつ伏せに倒れていた彼女が最初に目にしたのは…神秘的な光が浮かぶ、見慣れない場所の景色だった。

 

 

 

「……綺麗……そうだ…遊海さんが、『ヌメロン・ピース』を…」

そして、翠は朧げに今までの事を思い出す。

 

 

遊海を始めとした歴代の『主人公』達とズァークの激突、その戦いの果てにズァークは浄化され、遊矢達も助けられた…そして、遊海はARC次元を襲った時空震から世界を守る為に『全能の力』を使い──

 

 

 

《フォウ!キュウ…?》

 

「ぁ…フォウくん…無事で、よかった…」

 

《フォーウ…》

そんな時、柔らかな白い毛並みが翠の顔を撫でる…心配そうな表情のフォウが翠に寄り添っていたのだ。

 

 

「フォウくん…遊海、さんは…?」

 

《フォウ…キューン…》

 

「遊海さん…」

フォウを優しく撫でながら翠は遊海の行方を訊ねる、その言葉を聞いたフォウが翠の視界から離れ…その姿を追って翠がなんとか顔を動かす。

 

…そして彼女から見て右側、そこには…うつ伏せに倒れ込んだ遊海の姿があった。

先程まで纏っていた白銀の鎧は消え去り、満身創痍の状態で意識を失っている…フォウが頬を舐めるが、遊海は身じろぎもしなかった…。

 

 

 

「っ…大丈夫、生きてる……もう…無理し過ぎ…なんですよぉ…」

 

《フォ〜ウ…》

翠は震える右手を遊海の左手に重ねる…その冷え切った手からは微かに、生命の鼓動が感じられた。

 

 

「…はやく……みんなの、ところ…に……っ……うごけ、ない……」

腕に力を込め、立ち上がろうとする翠…だが、体は動いてくれなかった……ズァークの攻撃の余波から仲間達を守り続けていた翠も体力の限界だったのだ…。

 

 

「ゆうみ、さん…すこしだけ、まってて……すこし、やすんだら…うごけ、る───」

遊海の手を優しく握りながら、翠は意識を手放してしまった…。

 

 

 

《キャウ…フォウ!》

そして、静かに眠る遊海と翠の姿を見たフォウは走り出す…2人を探しているはずの仲間達のもとへ…。

 

 



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手がかりを探して〜革命の翼〜

こんにちは!S,Kです!

デニスとの戦いを終えた遊矢は黒咲と戦う為に融合次元へと向かう…柚子達を救い、遊海達を見つける為の手がかりは見つかるのか…。


それでは、最新話をどうぞ!



「よいしょ…!着いた…融合次元だ…!」

 

エクシーズ次元での戦いを終えた遊矢は次元回廊を通り、融合次元へと足を踏み入れた、そこで最初に目にしたのは…半壊したアカデミアの姿だった…。

 

「これを、オレが……」

遊矢は朧げに『覇王龍ズァーク』となっていた時の事を思い出す…一撃、一撃が並のモンスターを凌駕していたズァーク…その攻撃や、余波によってアカデミアはボロボロになってしまったのだ。

 

 

 

「オレのせいで…」

 

「あっ…遊矢!!」

 

「素良!」

 

「ちょっと来て!!」

 

「えっ、ちょっ、素良!いきなりどうしたんだ!?」

ズァークとして齎してしまった被害に心を痛めていた遊矢…そんな時、なにやら慌てた様子の素良が現れ、遊矢の腕を引っ張ったのだ。

 

 

「素良!オレは黒咲に会いに──」

 

「だから!その黒咲が()()なんだって─!!」

 

「えっ─!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『離せ…!!瑠璃に何をした!赤馬零王!!』

 

「だああっ!落ち着けっての!!」

 

「零王が全部悪いのは事実ッスけど!今回は関係ないッス〜!!」

 

「力強ッ!?落ち着くザウルス〜!?」

 

「みんな!黒咲君も暴力はダメ!!」

 

「プロフェッサー零王、大丈夫なノーネ?」

 

「ああ…彼には、私を殴る権利がある……」

 

「黒咲!!」

 

『っ…遊矢…!』

アカデミアにある零王の研究室、そこは混沌としていた。

 

瑠璃が昏睡した原因が零王にあると考えて荒ぶる黒咲、荒ぶる黒咲を羽交い締めにして止める万丈目・翔・剣山の三人組、必死に黒咲達に声をかける明日香、黒咲に殴られたのか頬を腫らした零王と声をかけるクロノス…その惨状に遊矢は一瞬、声を失ったものの…荒ぶる黒咲へと声を掛けた…。

 

 

「落ち着けって…!瑠璃や柚子が目を覚まさないのは、零王の仕業じゃないんだ!!」

遊矢が現れた事で一応の冷静さを取り戻した黒咲…そして遊矢は黒咲に柚子達が目を覚まさない理由を説明する。

 

 

遊海が『ヌメロン・ピース』を使い、全てを最善に導こうとした事…その過程でトラブルが発生し、『書き換え』が中途半端になってしまった事。

 

その中で零王の娘であったレイが肉体を取り戻したが、赤子の姿になって笑わなくなってしまった事…その影響で「繋がり」がある柚子や瑠璃達が目覚めなくなってしまった事。

 

事態を解決できる可能性がある遊海は行方知れずとなってしまい…彼の事を探しながら、レイを笑顔にする為に黒咲と戦いに来た事…。

 

ほとんどが零児と海馬の説明の受け売りだったが…遊矢はできる限り詳細に黒咲へと状況を説明した…。

 

 

 

 

『そういう事か…ならば、遊海を探しに行く…!!』

 

「ち、ちょっと待って黒咲!遊海は本当に何処にいるかわからないんだって!?スタンダードにも、エクシーズ次元でも見つかってないんだ!!」

 

「落ち着くノーネ!セニョール黒咲!融合次元からーも、セニョール遊海は消えてしまったノーネ!!手分けして探したのーに見つかってないノーネ!!」

 

『っ…離せ!!』

遊矢の話を聞いた黒咲だったが…やはり、冷静ではなかった…彼は瑠璃を救う為に、何処にいるのかもわからない遊海を探しに行こうとしたのだ。

 

それを止めたのは黒咲と戦うという課題を課せられた遊矢、そして…遊海達が消失した時、一番近くにいたクロノスだった…。

 

 

「急がば回ーれなノーネ!妹さんが心配なのは、痛いほど分かるノーネ…でーも、こういう時こそ落ち着くのが肝心なノーネ!」

 

『っ…くそ…!!』

 

「(取り乱した黒咲を……この人、ちょっと個性的だけど…すごい先生なんじゃ…)」

黒咲に冷静さを取り戻させたクロノスの手腕を見た遊矢は静かに驚く…そして、その姿にいつかの遊海の姿が重なったような気がした…。

 

 

 

「……とは言ったものーの、手がかりがないのも事実なノーネ…()()()が困っているのに姿を見せないというコトーは……プロフェッサー零王、アナータの天才的な科学力でーもダメなノーネ?」

 

「…現状では、何も手がかりは得られていない…そもそも、彼が姿を消したのは『全能』という超常的な力によるもの…私には、彼の行方を追う手段がないのだ…!」

 

「そんな…」

遊海の手がかりを得るべく零王に問いかけるクロノス…だが、零王も首を横に振る…科学力によって次元を一つにしようとした彼でも、『全能の力』を解き明かす事は不可能だった。

 

 

「心配ないッスよ!遊矢君、黒咲君…遊海先生達は()()()ッス、必ず戻って来てくれるはずッス!」

 

「そうザウルス!2人の生命力は恐竜さん以上なんだドン!」

 

「翔、剣山…」

落ち込んだ様子の遊矢と黒咲に翔と剣山が明るく声を掛ける、彼らも行方不明になった遊海と翠の事が心配なはずだが…その思いは表情には出ていなかった…。

 

 

 

ドガッシャーン!!

 

 

 

「「「『なんだ!?』」」」

その時、突如としてアカデミアが大きく揺れる…それはまるで地震のような衝撃だった…!

 

 

「クロノス先生!大変です!()()()が…!」

 

「今行くノーネ!!」

そして、零王の研究室に亮が飛び込み、事態の原因を伝えた…。

 

 

………

 

 

「あれは…遊馬達の飛行船だ!!」

 

「さっきのは飛行船が不時着した衝撃だったんだ…!」

アカデミア・玉座の間のバルコニー…ズァークとの決戦が行われ、半壊したその場所は白い煙に覆われていた。

 

その原因は…ARC次元外に避難していた次元飛行船、かっとび遊馬号が不時着していた事によるものだった…。

 

 

 

 

「いたたた…まさか、ガス欠で墜落するなんて…」

 

(『ヌメロン・ピース』の干渉範囲から急いで離れなければならなかったからな…一気にエネルギーを使い過ぎたらしい)

 

「とりあえずここは…融合次元、みたいだな…」

 

「あっ…!?凌牙!遊馬!」 

 

「おお!遊矢に黒咲!無事で良かったぜ!」

墜落した遊馬号の甲板から人影が這い出してくる…それはボロボロの遊馬、アストラル…そして凌牙だった。

 

 

「他のみんなは無事か?父さ…遊海さん達は?」

 

「っ…それが……」

遊矢に仲間達の安否を確かめる凌牙…そして遊矢は辛い状況を話す事になった…。

 

 

 

……………

 

 

 

「そんな…!嘘よ…!!」

 

「璃緒さん…」

 

「父さん…やっぱり、大丈夫じゃなかったじゃねぇか…!!きっと、新しいNEXUSになったせいで自分が()()を超えてるって気付けなかったんだ…!!」

 

「シャーク…」

 

「…先生…翠さん…!なんで、いつも先生達だけ…!!」

 

《ズァークを止めて、気が抜けてたんだろうね…でも、どちらにしても遊海が『ヌメロン・ピース』を使わなきゃ、ARC次元全体に取り返しがつかない被害があっただろうさ》

 

「十代…」

遊矢からARC次元の現況…柚子達の昏睡と遊海と翠の行方不明を知らされた遊馬達……それを聞いた璃緒は泣き崩れ、凌牙は拳を握り締め…十代は悔しげな様子だった…。

 

 

「いや、まだ希望はある…!」

 

「カイト…!なにかアイデアがあるのか!?」

そんな中、状況を聞いたカイトが声を上げる。

 

 

「ズァークを倒した事でARC次元を覆っていた『時空嵐』は消え去った…ならば、オレ達の世界にも通信が届くようになったはずだ…オービタル!」

    

《カシコマリ!こちらオービタル7!Dr.フェイカー研究所、応答願うでアリマス!!》

カイトの言葉を聞いたオービタルが『世界』に残る仲間達へと通信を試みる、そして…

 

 

『こちらフェイカー研究所!聞こえてるよオービタル!』

オービタルが空間投影したモニターに人影が映る、それは優しげな桃色の髪の青年、IIIことミハエル・アークライトだった。

 

 

「ミハエル!やった…通信が繋がった!」

 

『えっ…遊馬!?なんか小さくなってな…えっ!?みんなも!?』

久しぶりのミハエルの姿に喜ぶ遊馬…だが、画面の中のミハエルは遊馬や凌牙達の身体が幼くなっている事に驚いている…。

 

 

「ミハエル、遊馬達の身体の事は後だ…クリスやバイロン博士は近くにいるか?…緊急事態が発生した…!」

 

『っ…父様!兄様!カイトからの緊急連絡です!!』

カイトの表情を見たミハエルが画面の奥に声を掛ける…すると金髪に鉄のマスクで顔の左半分を覆った()()、そして綺麗な銀色の長髪の青年…トロンことバイロン・アークライト、そしてVことクリストファー・アークライトが姿を現した。

 

 

【やぁ、カイト…どうやら上手くいったみたいだね、観測していたデータからきみ達がズァークを止める事ができたのは分かっているよ…想定外の事が起きている事もね】

 

「それなら話は早い、簡潔に状況を伝える」

そして、カイトはバイロンに状況を伝える…ズァークの打倒、『ヌメロン・コード』の残滓たる『ヌメロン・ピース』の存在、そして遊海と翠の消失を…。

 

 

 

【…なるほど、少し待っていてくれ…クリス!ARC次元周辺のスキャンを精密に!】

 

『承知しました、父様』

カイトの話を聞いたバイロンはARC次元周辺を入念に探査する…そして───

 

 

【…うん、これは興味深いね…カイト、これを見るんだ】

 

「これは…ARC次元の全体図か?」

スキャン結果を確認したバイロンは画面にARC次元の全体図を映し出す。

 

 

【『嵐』が消えた事で以前より詳細なスキャンが可能になった…ARC次元には『スタンダード』『エクシーズ』『シンクロ』『融合』の4つの世界が存在するのは既知の事だけど…その()()、そこにもう一つの次元…いや、()()が存在する事が分かった…それに、特徴的な重力場──おそらく『ヌメロン・ピース』はその場所にある】

 

「なんだって!?」

画面の中に映し出された4つの地球…そして、各次元を繋ぐ狭間の中心部に小さな『点』が表示される、そこに『全能の欠片』が存在する、という事は──

 

 

「遊海達はその場所にいるって事だよな!なら、すぐに飛行船で──」

 

【遊馬、残念だけど…それは難しいみたいだ……この空間は()()()()()、外からの侵入を拒むように壁……「結界」があるみたいだ…普通の手段では到達できない可能性が大きい……おそらくだけど、遊海が無意識に()()してしまったのかもね…全能の力を悪用されないように…】

 

「っ…そんな…」

居場所の候補が絞れた事で遊海を助けに行こうとする遊馬…だが、バイロンは静かに首を横に振る…その領域は()()()、通常の手段では干渉できないと判断したのだ。

 

 

【可能性があるとすれば…その領域にいるはずの遊海に招き入れてもらう…それか、『ヌメロン・コード』でこじ開けるぐらいの事をしないと無理だろうね…】

 

「…感謝する、バイロン博士…異変があれば、連絡する」

 

【ああ、私達も新たに分かった事があれば連絡するよ】

バイロンから新たな道しるべを得たカイトはそのまま通信を終えた…。

 

 

 

 

 

「結局、進展はなし…か……」

 

『瑠璃…!』

遊海の居場所は分かったが、彼の力を借りる事は難しいと知った遊矢と黒咲は静かに肩を落とす…。

 

 

 

「チッ…何をしょぼくれた顔をしてる!榊遊矢!黒咲隼!それでも次元戦争を乗り越えた決闘者か!」

 

「ラプラス…」

落ち込んだ二人に対して声を荒らげる者がいた…それは沈黙を守っていたラプラスだった。

 

 

 

「お前達が決闘者ならば…今、お前達がしなきゃならない事は理解しているだろう!それは──決闘(デュエル)だ!!」

 

「『デュエル…』」

ラプラスの言葉に遊矢と黒咲は顔を見合わせる…。

 

 

「お前達、今までどれだけ遊海の奴に助けられてきたと思ってる?あいつはお前達を護りながら世界を救った…ならば、()()()()()()()()ぐらい、お前達自身の手で救ってみせろ!」

 

「大切なモノ…柚子…」

 

『瑠璃…俺は…!』

ラプラスの言葉に遊矢と黒咲は思い出す、遊矢は遊勝塾での日々を…黒咲は瑠璃やユートと過ごした掛け替えのない日常を…。

 

 

「『ヌメロン』の力は確かに『全能』だ…死者を蘇らせ、2つの世界を1つに統合し、歴史を変える事だって可能だ…でもな、()()()()()()()()()()()()()んだよ……レイを、少女達を本当の意味で()()()のは、お前達だけだ!」

 

 

『……遊矢、デュエルをするぞ…!瑠璃を助ける為ならば、俺は全力でお前と戦う!!』

 

「黒咲……ああ、デュエルだ!」

ラプラスに発破を掛けられた黒咲は遊矢と向かい合う…大切な者達を助けたい2人の決闘者が激突する!

 

 

 

 

 

「……まったく、手間をかけさせやがって……あの馬鹿が…」

 

「ラプラス?2人のデュエルを見ないのかい?」

闘志を高める遊矢と黒咲の姿を見たラプラスは彼らに背中を向ける…その様子を見たブルーノは彼を呼び止めた。

 

「先に行って『ヌメロン・ピース』のある空間の調査をしてくる…オレは奴と()()()存在だからな、場合によってはあの馬鹿を叩き起こしてやる……アストラル、飛行船をいつでも動かせるようにしとけ」

 

(わかった…遊海達を頼むぞ、ラプラス)

 

「もう…相変わらず、きみは素直じゃないんだから…」

 

「……あいつらを無事に人間界に帰らせなきゃ、オレがエメルに泣かれるからな」

ブルーノに呆れられながら…ラプラスはその身を光に変えて次元の狭間へと飛び立った…。

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対黒咲

 

 

 

 

融合次元で始まった遊矢と黒咲のデュエルは白熱していた。

効果ダメージを与える『RR─ラダー・ストリクス』で先制する黒咲…対する遊矢はペンデュラム召喚によって『相生の魔術師』と『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』によって反撃を狙うが、黒咲は自身の効果で手札から特殊召喚できる『ラダーストリクス』のダメージで遊矢を追撃…そしてエースである『RR─ライズ・ファルコン』を喚び出し、遊矢を倒すべく仕掛けるが…アクションマジック『奇跡』『アンコール』のコンボによって耐え切られてしまった。

 

 

 

 

「オレのターン!オレはセッティング済みのペンデュラムスケールを使ってペンデュラム召喚!現れろ!『天秤の魔術師』!そしてエクストラデッキから蘇れ!『オッドアイズ』!『相生の魔術師』!」

遊矢の頭上で青のペンデュラムが揺れ動く…そして天秤の意匠の魔術師、そして破壊された二色の眼のドラゴンと和合を見定める魔術師が復活する!

 

 

『(『天秤の魔術師』と『相生の魔術師』のレベルは共に4…来るか…『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』…!)』

喚び出されたモンスターを見た黒咲は遊矢の次なる手を予測する…だが───

 

 

()()()()!「オッドアイズ」で『ライズ・ファルコン』を攻撃!!螺旋のストライク・バースト!!」

 

『っ─?』

予想に反して、遊矢は再びオッドアイズで攻撃を仕掛けた…!!

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「『オッドアイズ』でそのまま攻撃だと?」

 

「いや、彼の戦略は間違いではない…今の『ライズ・ファルコン』の攻撃力は100、伏せカードを考慮しなければ遊矢の3体のモンスターの攻撃で黒咲を倒す事はできるが…」

 

「なんだか、()()()()()()…?」

遊矢と黒咲のデュエルを見ていたギラグが首を傾げ、ドルベは遊矢の狙いを予想する…そしてアリトは()()で遊矢の異変に気付いていた。

 

 

「なぁ、アストラル…今の遊矢ってさ()()()()()()()()()…みたいなもん、なんだよな?」

 

(ああ、悪魔の決闘者『覇王龍ズァーク』は遊海によって浄化され、消え去った…そして、今の榊遊矢はズァークの力を受け継ぐデュエリストと言えるだろう)

そして…遊馬もまた小さな()()()を覚えていた。

 

 

「上手く言えないんだけどさ…なんか遊矢の奴、無理してねぇか…?()()()してる、みたいな…」

 

「……手加減じゃねぇな、遊矢自身は本気で黒咲と向き合ってる……あれは──」

 

()()()()()()()()()()()…そういう類いだ」

そして、凌牙とカイトは遊矢の変化の正体に気付いていた…。

 

 

Side OUT

 

 

 

「螺旋のストライク・バースト!!」

 

『速攻魔法発動!「RUM─バトル・アップ・フォース」!相手モンスターが攻撃してきた時、自分の「RR」エクシーズモンスターをランクが2つ高いエクシーズモンスターへとランクアップさせる!!』

 

「なにっ!?」

螺旋の炎が迫る刹那、黒咲のフィールドで光が爆発し…革命の炎が吹き荒れる!!

 

 

『誇り高きハヤブサよ!英雄の血潮に染まる翼翻し、革命の道を突き進め!!ランクアップエクシーズチェンジ!!現われろ!!「RR-レボリューション・ファルコン」!!』

黒咲の抱く思いが炎の翼となって現れる!

 

 

『「レボリューション・ファルコン」は「RR」モンスターを素材にランクアップした時、特殊召喚された相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力の半分のダメージを与える…「オッドアイズ」を破壊し、お前のライフを削りきる!!』

 

「まだだ!『天秤の魔術師』の効果発動!!相手フィールドにモンスターが特殊召喚された時!そのモンスターの攻撃力を1000ダウンさせ、自分フィールドのモンスター…『オッドアイズ』の攻撃力を1000下げる!!」

 

『っ…だが、ダメージは受けてもらう!「レボリューションファルコン」!!』

 

「ぐううっ!!」 

空から殲滅の炎が降り注ぎ、二色の眼のドラゴンが砕け散る…しかし、遊矢はライフを繋ぐ…!

 

 

「そう簡単にはいかないよ…!お楽しみはこれからだ!『オッドアイズ』が破壊された時!自分フィールドのモンスター2体をリリースする事で、手札のこのモンスターは特殊召喚できる!いでよ!窮地の壁を打ち砕く、頼もしき渾身の一撃!『オッドアイズ・ランサー・ドラゴン』!!」

 

『新たなオッドアイズだと…!』

そして、遊矢の場に新たな仲間…鋼の翼を持ち、槍のような甲冑を纏う、新たなドラゴンが現れる!

 

 

『だが、そう簡単にはいかないぞ!「レボリューションファルコン」は特殊召喚されたモンスターとバトルする時、その攻撃力・守備力を0にできる!』

 

「それはどうかな!『オッドアイズ・ランサー・ドラゴン』の効果発動!デッキの『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』を墓地に送る事で、相手モンスター1体の効果を無効にする!」

 

『チィッ…!』

 

「バトルだ!『オッドアイズランサードラゴン』で『レボリューションファルコン』を攻撃─!」

革命の翼の効果を封じた遊矢は攻撃を仕掛ける…しかし、黒咲は怯まずにアクションカードへと手を伸ばす!

 

 

『アクションマジック「回避」!その攻撃を無効にする!』

 

「いいや!『オッドアイズランサードラゴン』の効果で相手はこのターン、魔法カードを発動できない!貫け!!」

 

『なっ!?ぐううっ!!』

翼から炎を噴き出した槍のオッドアイズが革命の翼に突進…革命の翼を打ち砕いた!

 

 

『まだだ…!レイド・ラプターズは…倒れない!速攻魔法「RUM─デス・ダブル・フォース」発動!!自分の「RR」エクシーズモンスターがバトルで破壊された時、そのモンスターを特殊召喚し、さらに!そのランクの2倍のランクを持つエクシーズモンスターへとランクアップさせる!』

 

「なにっ…!?」

 

「『レボリューションファルコン』のランクは6…その2倍、という事は…」

 

「ランク12の、エクシーズモンスター!?」

大ダメージを受けた黒咲…だが、彼は止まらない…DM世界やエクシーズ次元においても数えるほどしか存在しない、最高ランクの切り札を呼び覚ます!

 

 

『我が魂のハヤブサよ!揺るぎない信念と深き慈愛の心で堅牢なる最後の砦となりて降臨せよ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!!現れろ!ランク12!!「RR─ファイナル・フォートレス・ファルコン」!!』

それは黒咲の魂のカード…仲間を護り、敵を打ち砕く堅牢なる翼が飛翔する!!

 

 

 

「すごい…!」

 

「痛いほど伝わってくるわ…黒咲君の…妹さんを想う心が…!」

黒咲の切り札を見た観客達は目を奪われる…そして、明日香は黒咲の覚悟を感じ取っていた…。

 

 

(攻撃力3800…凄まじいモンスターだ、幾度倒されても折れる事なく、鋼の意思で戦い続ける、彼を象徴するモンスター…)

 

「ああ…次のターンが、決着になりそうだ…どうする、遊矢…!」

 

「くうう〜っ!遊矢も黒咲も頑張れ!かっとビングだ─!!」

そして、それは遊馬達も同じ…戦いは最終局面を迎える…!

 

 

 

 

「オレは、カードを1枚伏せてターンエンド!来い、黒咲!!」

 

『いくぞ、遊矢!!「ファイナルフォートレスファルコン」で「オッドアイズランサードラゴン」を攻撃─!!』

ターンは黒咲へと移り、無数のミサイルが遊矢めがけて殺到する!

 

 

「『オッドアイズランサードラゴン』の効果発動!自分フィールドの『オッドアイズ』カード…ペンデュラムスケールの『EMオッドアイズ・ユニコーン』を手札に戻す事で戦闘破壊を無効にし、バトルダメージを0にする!!」

しかし、遊矢は諦めない…守りを固めたオッドアイズがミサイルの雨を耐え凌ぐ…が…!

 

 

『「ファイナルフォートレスファルコン」の効果発動!ORUを全て使う事でこのターンの間、自分の墓地の「RR」モンスターを1体除外するごとに相手モンスターに攻撃できる!!』

 

「っ!!」

堅牢なる翼がその効果を開放する、この時点で黒咲の墓地には5体の「RR」が存在する…!

 

 

 

『墓地の「レボリューションファルコン」を除外し、攻撃!!』

 

「『オッドアイズランサードラゴン』の効果!ペンデュラムスケールの『EMオッドアイズ・ライト・フェニックス』を手札に戻す事で戦闘破壊を無効にし、バトルダメージを0にする!!」

必死に攻撃を防ぐ遊矢…だが、遊矢が戻せるカードはなくなってしまった…!

 

 

『瑠璃…待っていろ!墓地の「ラダーストリクス」を除外し、攻撃!!』

 

「オレだって、負けられない…柚子を助ける為に!!罠カード、発動!『クロス・ダメージ』!このバトルのダメージは()()()()()()()!!」

 

『なにっ──はっ…!』

それは遊矢の渾身の一手、ミサイルの雨が遊矢と黒咲に降りそそぐ…そしてその刹那、黒咲は遊矢に重なる親友の姿を垣間見た…。

 

 

 

 

「相討ち…!引き分けか!?」

 

「いや、まだわからない…!」

 

「どうなったザウルス…!?」

デュエルフィールドを覆い尽くす黒煙…そして、煙が風によって晴れていき───

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…!」

 

『っ…』

 

 

 

 

「遊矢のライフが、残ってる!?」

 

「『オッドアイズランサードラゴン』もッス!」

 

《どうやら、あのドラゴンにはもう1つ効果があったみたいだね》

煙が晴れた先…そこには息を荒げながらも立つ遊矢、そして倒れ込んだ黒咲の姿があった。

 

攻撃力3000の『オッドアイズランサードラゴン』が攻撃力3800の『ファイナルフォートレスファルコン』に攻撃される事で発生するダメージは800…『クロス・ダメージ』の効果で相討ちになると思われたが───

 

 

「『オッドアイズランサードラゴン』の最後の効果を、発動していたんだ…!手札の『オッドアイズ』モンスター2枚を墓地に送る事で戦闘破壊を無効にして、バトルダメージを半分にし…そして相手にその数値分のダメージを与えたんだ…!」

 

 

 

黒咲LP750→350→0

 

遊矢LP450→50

 

 

遊矢 WIN!

 

 

 

 

 

『見事だ、遊矢…完敗だ…』

 

「黒咲…」

デュエルが決着し、遊矢が黒咲を助け起こす…黒咲の表情は吹っ切れたように穏やかだった…。

 

 

『俺は、瑠璃を救う為に戦い続けてきた…それはお前も同じだ…お前も柚子を助ける為に戦い続けてきた……お前に託すぞ、俺の思いを!』

 

「ああ…!絶対にレイを…そして、柚子も瑠璃も助けてみせる!!」

黒咲は遊矢へと思いを託す…彼のデュエルが妹や少女達を救う事を信じて──

 

 

 

 

「うぬぼれるな!榊遊矢!!」

 

 

「っ!?ジャック!?」

 

「ジャックさん!?」

その時、激しい怒号とエンジン音がアカデミアに響く…愛機であるDホイールと共に姿を現したのは、シンクロ次元のジャック・アトラスだった!

 

 

 

 

 

 

()()()()()今のお前では、誰一人救う事などできん!!」

 

 

「あっ…」

 

そしてジャックは、今の遊矢の()()を指摘した…。



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ドラゴンと共に〜荒ぶる魂〜

こんにちは!S,Kです!

デニスと黒咲とのデュエルを乗り越えた遊矢…彼の前に誇り高き王者が現れる…。


それでは、最新話をどうぞ!


『「自惚れるな、榊遊矢!!腰の引けた今のお前では、誰一人救う事などできん!!』

 

「ジャック…!?」

レイを救う為、零児によって課された試練のデュエルを終えた遊矢…そこへジャック・アトラスが姿を現し、今の遊矢の()()を指摘した…!

 

 

 

「腰が引けてる…?いや、そんな事は…!!」

 

「遊矢、自分でも()()()()()んじゃないのか?ジャックの言おうとしている事が…」

 

「凌牙…」

ジャックの言葉に戸惑う遊矢…そんな彼に凌牙が声を掛ける。

 

 

「黒咲、お前から言ってやれ…お前も気付いたはずだ」

 

「……さっきのデュエルの時、レベル4のモンスターが2体揃う場面があった…戦略的には問題なかった事かもしれない…だが、俺の知る遊矢ならば…『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』を喚び出していたはずだ」

 

『その通り…遊矢、今のお前は──()()()()()()()()()()のだろう?』

 

「っ…」

黒咲とジャックの指摘に遊矢の表情が強張る…遊矢は自分のエースである『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』以外のドラゴン──四天の龍を喚び出す事を避けていたのだ。

 

 

 

 

『お前のデッキにはズァークが「覇王龍」の素材とした4体のドラゴン達が入っているはず!それらを喚び出した時、再び呼び合う事で「覇王龍」が復活する事をお前は恐れている…故に、ドラゴンをフィールドに並べる事ができなかったのだ!』

 

「それ、は…」

 

『いかに凶暴なモンスターであろうとも、それを自在に操れぬ者に決闘者の資格はない!!』

言い淀む遊矢へとジャックの激が飛ぶ…モンスターを操る決闘者がモンスターに振り回される事はあってはならない事だからだ…。

 

 

 

『そして遊矢…お前のしている事は、この世界を救った白波遊海への一番の()()()だと分かっているのだろうな!!』

 

「えっ…」

そして…ジャックの思わぬ言葉に遊矢は目を見開く…。

 

 

『お前は間近で見ていたはずだ…悪魔のデュエリストと呼ばれたズァークが()()()()姿を!!あの光景を見ておいて、お前はまだ「覇王龍」の影に怯え続けるのか!』

 

「っ──」

ジャックの言葉に遊矢はズァークの最期を思い出す…荒ぶり、全てを破壊せんとしていたズァークが遊海の腕の中で穏やかに消えていった姿を…。

 

 

 

(っ…そうか、分かったぞ!レイが笑わない原因が!!)

 

「アストラル!?いきなりどうしたんだよ…?」

さらに、ジャックの言葉がアストラルの考えていた方程式の答えを導き出した…!

 

 

 

(先ほどまでの話を聞いていた限りでは、レイは世界を混乱させてしまった事に罪悪感を抱き、笑わなくなったという話だったが…それだけではない、彼女には笑顔になれない理由がもう1つ存在したんだ)

 

「もう1つの理由?──アストラル、まさか…!?」

 

(そうだ、レイが笑わないもう1つの理由…それは──キミだ、榊遊矢)

 

「オレが、レイが笑えない理由…!?」

アストラルが今起きている事態の原因を遊矢へと告げる…。

 

 

(正確には、ズァークの分身として…()2()()()()()()になりかねない可能性を持つ、キミへの()()…それが、レイが笑顔になれない理由になっている可能性がある)

 

「あっ──」

アストラルの導き出した答えを聞いた遊矢は膝をつく…レイが笑わず、柚子達が眠り続ける原因は…遊矢自身にもあったのだ。

 

 

 

「オレの、せいで…レイは…柚子達は、苦しんでるって事なのか…!?オレが、ズァークだったから!!」

 

「っ…遊矢!落ち込むんじゃねぇ!お前はズァークだけど、ズァークじゃない!!遊海もそう言ってただろ!?」

 

「遊馬…」

落ち込み、肩を落とす遊矢を励ますように遊馬が声をかける…。

 

 

「レイがお前を…ズァークを恐れてるなら、もう()()()()()()()()って伝えればいいんだ!そうすれば、レイは笑ってくれるって!」

 

「でも、どうやって…」

 

「簡単な話だぜ、遊矢…お前がドラゴン達と…4体のドラゴンと一緒に戦う姿をレイに見せればいい!ズァークみたいに暴走しないって安心させればいいのさ!」

 

「十代さん…レイを、安心させる…その為のデュエルを…」

遊馬と十代の提案を聞いた遊矢は父・遊勝の言葉を思い出した。

 

 

──レイが自分を許せるようになる為の答えは、遊矢自身の中にある──

 

 

その答えは──遊矢が四天の龍達と共に戦うという事だったのだ。

 

 

 

 

『遊矢!何かを成し遂げたいと思うなら、怯むな!!お前が本当にレイや柊柚子を救いたいと願うならば…俺と戦え!4体のドラゴンと共に、全力で!!』

 

「ジャック…でも…」

 

『遊矢、私に異存はない…遊城十代やジャック・アトラスが示した答えこそ…彼女を救う()()()だと、私も考える』

 

「零児!?」

ジャックと戦う事を躊躇する遊矢…その背中を押したのは、投影されたモニター越しに現れた零児だった。

 

 

 

『…私は、きみのエンタメデュエルでレイの笑顔を取り戻そうとした…世界を救おうとした彼女の思いは正しい…失敗してしまったとしても、彼女が気に病む必要はない…私はそう考えてきみに賭けた…そして、彼女が笑わなくなった原因が真に明らかになったのなら……私も手を尽くすまでだ、きみとジャックの為に()()()ライティング・コースを用意した──4つの次元を繋ぐ、ライティング・コースを!』

遊矢とジャックのデュエルを認めた零児が指を鳴らす…すると次元回廊によって繋がった4つの次元にリアルソリッドビジョンによるコースが出来上がっていく!

 

 

『名付けてディメンション・ハイウェイ!遊矢、全ての次元の人々に究極のライディングデュエルを見せてやって欲しい…きみ自身の試練を乗り越え、レイを笑顔にする為に!』

 

 

「マジかよ、あの社長…次元を跨いでライディングコース作りやがった…」

 

「隣接した世界同士だからできる荒業だな…しかし、これなら遊矢とジャック・アトラスが戦う舞台に相応しいだろう」

零児の展開したディメンジョン・ハイウェイを見て引き気味の真月…カイトはその技術力の高さを評価している…。

 

 

 

「ち、ちょっと待ってくれよ!オレにはDホイールが…」

 

「安心しろよ!お前がフレンドシップカップで使った奴を持ってきてやったぜ?メットとライダースーツもな!」

 

「Dホイールも整備・調整済みだ、これならジャックにも張り合えるだろう」

 

「クロウ!遊星!」

どんどんと進んでいく事態に動揺する遊矢…そこへ現れたのはシンクロ次元で遊矢が使ったDホイールとライディングデュエルに必要なモノを持ってきたクロウと遊星だった。

 

 

「遊矢、事情は聞かせてもらった…これはお前自身が向き合わなくてはならない事だ…遊海さんもきっと、同じ事を言うだろう」

 

「しっかし、羨ましいぜ!こんなすげえコースでライディングデュエルできるなんてよ!シティでは徳松のオヤジやガキ共、龍亞や龍可も楽しみにしてんだ!頑張れよ!」

 

「みんなが…それじゃ…」

遊星とクロウの激励を聞いた遊矢は察する、零児はこうなる事を見越してデュエルをセッティングしたのだと…。

 

 

 

「なんだかとんでもない騒ぎになってるけど…遊矢!見せてくれよ、お前のエンタメライディングデュエルを!!」

 

「ジャックは生半の覚悟で勝てる相手じゃないぜ?頑張れよ、遊矢!」

 

「遊馬…十代さん…」

そして、遊馬と十代に背中を押された遊矢はライダースーツへと袖を通した…。

 

 

 

 

 

 

 

「(ジャックの言う通りだ、今までのオレのエンタメデュエルじゃレイを笑顔にできなかった…柚子や瑠璃も助けられてない……でも、やるしかないんだ…!オレの信じるデュエルを!!)」

ライダースーツを纏い、ジャックと共にアカデミアに敷設されたライディングコースのスタート位置についた遊矢は覚悟を決める…遊矢はこのデュエルで自らの呪縛を乗り越える事ができるの

か…。

 

 

【アクションフィールド・オン!フィールド魔法『クロスオーバー・アクセル』!デュエルモード・オン!オートパイロット、スタンバイ…】

無機質な機械音声がライディングデュエルの準備が整った事を告げる…そして…!

 

 

 

【スリー、ツー、ワン…ライディングデュエル、アクセラレーション!!】

 

『「デュエル!!」』

遊矢とジャック、三度目のライディングデュエルがついに始まった!

 

 

 

 

ジャックLP4000

遊矢LP4000

 

 

 

 

『先攻は俺がもらう!俺のターン!!』

『「レッド・リゾネーター」を召喚!』

先攻を取ったジャックは愛用する炎を纏うリゾネーターを召喚する! ATK600

 

『さらに!俺が「レッド」モンスターの召喚に成功した時!手札から「レッド・ウルフ」を攻撃力を半分にして特殊召喚できる!』

さらに、燃え盛る狼が現れる! ATK1400→700

 

 

 

「っ…来る…!」

 

『フン…!俺はレベル6の「レッドウルフ」にレベル2の「レッドリゾネーター」をチューニング!!』

 

6+2=8

 

『王者の鼓動、今此処に列を為す!天地鳴動の力を見るがいい!!シンクロ召喚!!現れよ、我が魂!!レベル8!「レッド・デーモンズ・ドラゴン」!!』

フィールドに紅蓮の炎が逆巻き、原初の悪魔竜…紅蓮の王者が咆哮を轟かせる! ATK3000

 

 

 

「っ!?『スカーライト』じゃ、ない!?そのドラゴンは…!?」

ジャックが召喚したモンスターを見た遊矢は目を見開く…現れたのはシンクロ次元のジャックの『魂』である『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』ではなく…フレンドシップカップ・エキシビジョンデュエルでジャックと対峙した遊海が喚び出した『レッド・デーモンズ・ドラゴン』だった…!

 

そして、そのドラゴンが発する覇気は…遊海が喚び出した時よりも遥かに大きくなっている!

 

 

『遊矢、成長しているのはお前だけではない…遊海と赤き竜の導きによって熱き魂を取り戻し、遊星やお前というライバルとの激戦によってデュエルの楽しさを思い出し!そして!彼方の世界の()の魂を受け継ぐ海亜・アトラスとのデュエルによって…俺は!俺自身を()()させた!!本気を出さねば、すぐに灼き尽くされると思え!!』

 

「っつ…!!」

空気を震わせるジャックの言葉に遊矢はたじろぐ…遊海がこの次元に現れた事によるイレギュラー、それがジャックの真の強さを呼び覚ましたのだ…!

 

『カードを1枚伏せ、ターンエンド!!』

 

ジャックLP4000

レッドデーモンズドラゴン 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

『さぁ、来い遊矢!お前のドラゴンを出して来い!!』

 

 

「ジャックの奴、マジかよ…自力で『レッドデーモンズドラゴン』を復活させやがった…!?」

 

「ジャックはそれだけ遊矢に期待しているんだ…あいつが自分の殻を破ってくれる事を信じて…」

融合次元から次元回廊を通じてデュエルの舞台はシンクロ次元へと移る、そんな中でクロウと遊星は目を丸くしていた…ジャックが『原初の魂』たるドラゴンは呼び覚ました事に驚いていたのだ。

 

 

「……なぁ、遊星…オレ、()()()()がするんだけどよぉ…遊矢の奴、大丈夫かぁ…?」

 

「…信じるしかないな、彼が持つ力を…」

 

 

 

 

 

「オレのターン、ドロー!!」

「オレは…スケール1の『星読みの魔術師』とスケール8の『時読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!これで、レベル2から7のモンスターが同時に召喚可能!」

 

PENDULUM!!

 

コースを駆ける遊矢の背後に光の柱が立ち上がり、2人の魔術師が浮かび上がる!

 

 

「揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け!光のアーク!ペンデュラム召喚!!手札から現れろ!レベル4!『EM小判竜(ドラゴ・リモーラ)』!レベル4『EMオッドアイズ・ミノタウロス』!そしてレベル7!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

遊矢の頭上でペンデュラムの軌跡が揺れ動き、額に小判をつけた小さな竜、牛の獣人、そしてエースたるオッドアイズが現れる! ATK1700 1200 2500 

 

 

 

【お〜っと!遊矢のフィールドにはレベル4が2体!これは当然──って、もう出て行っちゃうの─!?】

シンクロ次元で実況するメリッサの声が響く中、遊矢達は再び次元回廊へと入っていく…実況泣かせのライディングデュエルである…。

 

 

 

『何をしている遊矢!さっさとエクシーズのドラゴンを呼ぶがいい!4体のドラゴン全てを使えと言ったのを忘れたか!!』

 

「(忘れてはいない…でも、()()()()()…!『ダーク・リベリオン』は出たがってる…『クリアウイング』も、『スターヴ・ヴェノム』も…!解るんだ…ドラゴン達は『覇王龍ズァーク』になりたがってる…!!ズァークを蘇らせたいんだ…!)」

ジャックの指摘を聞いた遊矢は歯を食いしばる…レイや柚子を救いたいという遊矢の決意は変わらない。

しかし、ズァークの分身として分かってしまうのだ…再びの統合を狙うドラゴン達の切望が…。

 

 

「(ズァークはもういない…でも、オレが『覇王龍』になってしまったら…!!オレは…ドラゴンを使わずに、勝たなきゃならない!)」

遊矢はズァークの復活を恐れるあまり、ドラゴン達を喚び出さずに勝つ一手を打つ…!

 

 

 

「『小判竜』の効果発動!このモンスターが存在する限り、フィールドのドラゴン族モンスターの攻撃力は500アップする!」

 

『むっ…!?』

ジャックが額に皺を寄せるなか、小判竜の力がドラゴンを強化する!

 

 

小判竜 ATK1700→2200

 

オッドアイズ ATK2500→3000

 

 

「バトルだ!『オッドアイズ』で『レッドデーモンズドラゴン』を攻撃!さらに『オッドアイズ・ミノタウロス』の効果!オレのターンの間、自分の場の『オッドアイズ』・『EM』モンスター1体につき、相手モンスターの攻撃力は100ポイントダウンする!」

 

 

レッドデーモンズドラゴン ATK3000→2700

 

 

「いけ!螺旋のストライク・バースト!!」

 

『罠カード発動!「レッド・クリスタル」!このターン、「レッド」モンスターはバトルでは破壊されない!』

 

「でも、ダメージは受ける!『オッドアイズ』の効果発動!レベル5以上のモンスターとバトルする時、相手に与えるダメージは2倍になる!リアクション・フォース!!」

 

『ぐっ…!!』

赤黒い螺旋の炎が悪魔竜に迫るが…赤い結晶が破壊を防ぐ盾になる…しかし、勢いを増した螺旋の炎がジャックにダメージを与える!

 

ジャックLP4000→3700→3400

 

 

「オレはこれでターンエンド!!」

 

遊矢LP4000

小判竜 オッドアイズミノタウロス オッドアイズ (P 星読み 時読み) 手札1

 

 

 

『っ…遊矢!!こんなデュエルで俺が満足すると思っているのか!?この程度で…俺の魂を止めきれると思うな!!』

消極的な遊矢へとジャックの激が飛ぶ…そしてデュエルはエクシーズ次元を通過し、スタンダード次元へと移っていく…。

 

 

 

『俺のターン!ドロー!』

『永続魔法「クリムゾン・ヘルガイア」を発動!その効果によってデッキから「レッド・デーモンズ・ドラゴン」の名が記された魔法カード「アブソリュート・パワー・フォース」を手札に加える!バトルだ!「レッドデーモンズドラゴン」で「オッドアイズ」を攻撃!この瞬間、「クリムゾン・ヘルガイア」のさらなる効果発動!「レッドデーモンズドラゴン」がバトルする時、相手フィールドのモンスター全てを裏守備表示に変更する!』

 

「なっ!?」

遊矢の足元から炎が噴き出し、モンスター達が裏守備になってしまう!

 

小判竜ATK2200→DEF1000

 

ミノタウロスATK1200→DEF1600

 

オッドアイズATK3000→DEF2000

 

 

「アクションマジック『回避』!」

 

『無駄だ!速攻魔法発動!「アブソリュート・パワー・フォース」!!「レッドデーモンズドラゴン」が相手モンスターとバトルする時!相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できず、「レッドデーモンズドラゴン」の攻撃力は1000アップし、さらに!攻撃力が守備力を上回った時、貫通ダメージを与える!そして、この戦闘によるダメージは2倍になる!受けてみろ、我が魂の拳を!!アブソリュート・パワー・フォース!!』

 

「そんな!?うわあああっ!?」

アクションカードによる回避を狙う遊矢…だが、ジャックはその一手を粉砕…紅蓮の掌底がオッドアイズを滅殺する!!

 

遊矢LP4000→2000

 

 

「ぐ、あ…!?(なんて衝撃だ…!?以前のジャックよりも、強い!!)」

 

『まだだ!「レッドデーモンズドラゴン」の効果発動!!このモンスターが守備モンスターを破壊した時、相手フィールドの守備モンスター全てを破壊する!デモン・メテオ!!』

 

「ぐううっ!?」

そして悪魔竜が追撃のブレスを放ち、遊矢のモンスターを一掃する!

 

 

『オレはこれでターンエンド…遊矢、お前にもう一度チャンスをやろう…!今度こそ、4体のドラゴン全てを揃えろ!!』

 

ジャックLP3400

レッドデーモンズドラゴン クリムゾンヘルガイア 伏せ1 手札2

 

 

 

「ジャック、ダメなんだ…!ドラゴン達を揃えてしまったら、何が起きるか分からない!!レイや柚子達に…世界に、悪い事が起きるかもしれない!!」

 

『貴様…!』

ジャックの猛攻に追い詰められる遊矢…ジャックに勝つには四天の龍達を使い熟すしかない…だが、遊矢はその決断ができずにいた…。

 

 

「オレのターン!ドロー!」

「セッティング済みのペンデュラムスケールで、ペンデュラム召喚!エクストラデッキから蘇れ!『小判竜』!『オッドアイズミノタウロス』!『オッドアイズペンデュラムドラゴン』!!」

ペンデュラムの軌跡から3体のモンスターが蘇る! ATK1700→2200 ATK1200 ATK2500→3000

 

 

「『小判竜』の効果でドラゴン族の攻撃力は500アップし、『オッドアイズミノタウロス』の効果で『レッドデーモンズドラゴン』の攻撃力は300ダウンする!バトルだ!『オッドアイズ』で『レッドデーモンズドラゴン』を攻撃!!」

 

『何度も同じ手を…!アクションマジック「回避」!攻撃は無効だ!』

 

「まだだ!『星読みの魔術師』のペンデュラム効果発動!ペンデュラムモンスターがバトルする時、相手が発動した魔法カードを無効にして相手フィールドにセットする!ホロスコープ・ディビネィション!」

再びジャックに攻撃を仕掛ける遊矢…対するジャックはアクションカードによる回避を狙うが、星読みの魔術師の魔力によって封じられる!

 

 

『甘いわ!!フィールドに魔法カードがセットされた時、手札の「レッド・ジャイアント」を特殊召喚し、その効果でバトルフェイズを終了する!』

しかし、ジャックは手札から燃え盛る巨人を喚び出し、螺旋の炎を蹴散らした! ATK600

 

「っ…オレは、ターンエンド!」

 

遊矢LP2000

小判竜 オッドアイズミノタウロス オッドアイズペンデュラムドラゴン (P 星読み 時読み) 手札2

 

 

 

『……失望したぞ、遊矢…!お前が4体のドラゴンを揃えられぬと言うのなら…もはや、お前と戦う意味はない!!』

 

「っ…!!」

煮えきらない態度の遊矢へと失望するジャック…彼は甘えを捨て、遊矢を叩き潰す事を決めた…!

 

 

 

 

『オレのターン…ドロー!!』

 

 

ドクン! キィン─!!

 

 

『「っ!?」』

次元回廊を進みながらカードを引くジャック…その時、邪悪な鼓動と共にジャックのシグナーの痣、ドラゴン・ウイングが光を放つ…!

 

 

 

『ふっ…はははは!!やはり、そうか!シンクロ次元には冥界の王と「地縛神」が存在した…そして、シグナーの力を得た俺と「レッド・デーモンズ・ドラゴン」が揃ったのならば!()()もこの因果に呼ばれると思っておったわ!!なぁ…!地縛神()()()()()()()()()()!!』

 

 

【ガアアアアッ!!!】

 

 

「な、なんだ!?」

宇宙空間のようだった次元回廊が燃え盛る炎に覆われていく…そして、遊矢達が進む進路上に巨大な赤い影が現れる。

 

それは無数の蛇を従えた、巨大な赤き魔神…かつて、ジャック・アトラスに封印された()()()()()()スカーレッド・ノヴァだった…!

 

 

『ちょうどいいタイミングだ…見せてやろう、遊矢!真の決闘者(デュエリスト)の力を…荒ぶる俺の魂を!!』

 

「ジャック!?」

赤き魔神を見据えたジャックは一気に加速する!!

 

 

 

『俺は「チェーン・リゾネーター」を召喚!!』

鎖を背負うリゾネーターが現れる! ATK100

 

 

『「チェーン・リゾネーター」の効果発動!自分の場にシンクロモンスターが存在する時、デッキから新たな『リゾネーター』…「ダーク・リゾネーター」を特殊召喚できる!』

音叉を背負う悪魔がデッキから現れる! ATK1300

 

 

『見ていろ、遊海!俺の荒ぶり、燃え盛る魂…バーニング・ソウルを!!』

 

キィン!!

 

ジャックのシグナーの痣が輝くと共にその胸と右腕が燃え盛る!!

 

 

『俺はレベル8の「レッドデーモンズドラゴン」にレベル3の「ダークリゾネーター」レベル1の「チェーンリゾネーター」をダブルチューニング!!』

 

「『レッドデーモンズドラゴン・タイラント』と同じダブルチューニング…!?しかも、レベル12!?」

2体のリゾネーターが炎の輪となってレッドデーモンズドラゴンを包み込む!

 

8+3+1=12

 

 

『バーニングソウルを持つ者は赤き竜の力を得て、奇跡を起こす!!紅蓮の悪魔よ、お前の力は再び我が糧となり圧倒的な力を呼び覚ます!!』

 

【ガアアアア!?!?】

 

「赤い巨人が、ジャックの手に吸い込まれていく…!?」

ジャックの手に現れた白紙のカードに赤き魔神が取り込まれていく、そして───

 

 

『王者と悪魔!今此処に交わる!荒ぶる魂よ!天地創造の叫びを上げよ!!シンクロ召喚!!いでよ!レベル12!!「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン」!!』

 

《ガオオオン!!》

レッドデーモンズドラゴンが紅蓮の悪魔の力を取り込み、進化を遂げる…咆哮を轟かせるそのモンスターこそ、ジャックの持つバーニングソウルによって現れた紅蓮の悪魔竜──『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』! ATK3500

 

 

「そのモンスターは…!?」

 

『そうだ…!遊海が燃え尽きていた「俺」の魂に火を点ける為に喚び出したモンスター…このモンスターこそ、ジャック・アトラスの真骨頂!紅蓮の地縛神を荒ぶる魂で捩じ伏せ、従えたのだ!!「スカーレッドノヴァドラゴン」の攻撃力は墓地のチューナー1体につき、500アップする!墓地のチューナーは3体!!』

 

「攻撃力、5000…!?」

『覇王龍ズァーク』の攻撃力を上回る紅蓮の竜に遊矢は戦慄する…!

 

 

スカーレッドノヴァ ATK3500→5000

 

 

『まだだ!俺は魔法カード「死者蘇生」を発動!蘇れ!「ダークリゾネーター」!』

再び音叉の悪魔が復活する! ATK1300

 

 

「…まさか!?」

 

『そのまさかだ!俺はレベル5の「レッドジャイアント」にレベル3の「ダークリゾネーター」をチューニング!!』

 

5+3=8

 

『王者の咆哮!今、天地を揺るがす!唯一無二たる覇者の力をその身に刻むがいい!シンクロ召喚!!荒ぶる魂!レベル8!「レッドデーモンズ・ドラゴン・スカーライト」!!』

ジャックのフィールドで炎が弾ける、そして右角が折れ、右腕にも大きな傷を負った荒ぶる魔竜…シンクロ次元のジャックのエースが現れる! ATK3000

 

 

 

 

「うわっ…!?嫌な予感的中かよ!?ジャックの奴、本当に『スカーレッドノヴァドラゴン』を喚び出しやがった!?」

 

「……今のジャックさん、僕達の知ってるジャックさんより強いんじゃ…?」

 

「い、いや!『スカーレッド・スーパー・ノヴァ・ドラゴン』を喚び出せる、じいちゃんの方が強いし!!……流石に、そうだよな…?」

融合次元の次元回廊から噴き出す紅蓮の炎…その様子を見たクロウや流星、海亜は言葉を失う…今のジャックは『三代目決闘王』となったジャックに近い強さにまで進化していた…!

 

 

「流石だな、ジャック…オレものんびりはしてられない……遊矢、お前の意地の見せ所だ…頑張れよ…!」

そして、進化を続けるライバルの姿に対抗心を燃やす遊星なのであった…。

 

 

 

『バトルだ!「スカーレッドノヴァドラゴン」で「オッドアイズ」を攻撃!バーニングソウル!!

 

「っ!!アクションマジック『奇跡』!バトルでの破壊を無効にして、バトルダメージを半分にする!うわああ!?」

手足を折り畳んだ紅蓮の竜がオッドアイズに隕石のように突進するが、アクションカードで破壊は免れる!

 

 

遊矢LP2000→1000

 

 

『続けて「スカーライト」で『オッドアイズミノタウロス』を攻撃!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!再び地を這うがいい!軟弱者!!』

 

「っ!!(負けるのか?オレは、柚子達を助けられずに…)」

遊矢へと迫る灼熱の息吹…そして───

 

  

 

 

──このまま負けていいのか?遊矢──

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「あっ…」

気付いた時、懐かしい声に誘われた遊矢は暗闇の中にいた…そして、そこには……

 

 

『このまま負けていいのか?遊矢』

 

「ユート…!?」

そこにいたのは遊矢と共にズァークに取り込まれ、意識の中で眠り続けていたユートだった…そして、彼だけではない。

 

 

『ボクは嫌だなぁ…ボクの「スターヴ・ヴェノム」も…』

 

『オレの「クリアウイング」も!』

 

『オレの「ダーク・リベリオン」も、きっとそう思ってる』

 

「ユーゴ…ユーリ…」

ユーリとユーゴ…彼らも姿を見せて遊矢を見つめる…。

 

 

 

『どうしてキミは…ドラゴンの気持ちを分かろうとしないのかな?』

 

『なんでドラゴン達の事を無視する?』

 

『遊矢、聞くんだ…あの戦いの時、遊海が「オッドアイズ・ファントム・ドラゴン」の声を聞いたように…オレ達には、それができるはずだ…!』

 

『『『オレ達には、それができる力がある』』』

 

「みんな…」

ドラゴン達の声を聞くように促すユート達…その言葉は闇へと沈みかけた遊矢の心に差し込む光となった…!

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

「っ…!自分のモンスターが攻撃された時!その破壊とダメージを無効にして!手札の『EMオッドアイズ・ディゾルヴァー』は特殊召喚できる!」

炎が直撃する刹那、青く燃え盛る髪を持つ魔法使いが紅蓮の炎を掻き消して現れる! ATK2000

 

 

「そして!『オッドアイズ・ディゾルヴァー』は相手モンスター1体の効果を無効にできる!オレが無効にするのは『スカーレッドノヴァドラゴン』の効果だ!!」

 

『くっ…やるではないか…だが、「スカーライト」の効果を忘れたか!!』

魔法の力がスカーレッドノヴァの効果を封じるが、ジャックは追撃を狙う!

 

スカーレッドノヴァ ATK5000→3500

 

 

『「スカーライト」の効果発動!1ターンに1度、自身の攻撃力以下の特殊召喚されたモンスター全てを破壊し、破壊されたモンスター1体につき500ダメージを与える!アブソリュート・パワー・フレイム!4体のモンスターを破壊し、2000ダメージ!これで終わりだ!』

 

「まだだ!フィールドに『小判竜』が存在する限り、オレのフィールドのドラゴン族モンスターは効果破壊されず!特殊召喚されたターン『オッドアイズディゾルヴァー』は戦闘・効果で破壊されない!!ぐううっ!!」

地を走る破壊の炎…しかし、オッドアイズミノタウロスが破壊されたのみでダメージを最小限に押さえ込む!

 

遊矢LP1000→500

 

 

『フン…首の皮一枚繋がったか、俺はこれでターンエンドだ!』

 

ジャックLP3400

スカーレッドノヴァ スカーライト クリムゾン・ヘルガイア 伏せ2 手札1

 

 

 

 

「(ユート、ユーゴ、ユーリ…そうだ…オレ達は元々1()()…遊海はオレ達を残して、ズァークの悪い心だけを浄化した……それでも、4人の分身が1人になった今のオレ達は…オレが、()()()()()()()…!)」

ジャックの猛攻を凌いだ遊矢は自身を顧みる…遊海はズァークの悪しき魂を浄化し、遊矢達を守った…しかし、それでも…今の遊矢はズァークという存在である事に変わりはないのだ。

 

 

「(遊海は言ってた…ズァークは精霊使いとサイコデュエリストの()()()()()()…モンスターの声を聞ける存在だったって…なら、今のオレにも聞こえるはずだ…ドラゴン達の声が!!)」

遊矢の迷いが消えていく…自分がズァークであると受け入れた事で、遊矢に秘められた力が目覚めようとしている…!

 

 

「オレのターン!ドロー!!」

「いくぞ、ジャック!オレはセッティング済みのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚!エクストラデッキから蘇れ!『オッドアイズミノタウロス』!!」

三度振り子が揺れ動き、息切れ気味のミノタウロスが現れる! ATK1200

 

「さらにオレは『EMオッドアイズ・シンクロン』を召喚!」

遊矢の場に赤と緑の目を持つ小さなロボットが現れる! ATK200

 

 

『…やっと気付いたか、遊矢』

 

「ああ、ジャックはオレに飼い犬に手を噛まれるような主人になるな、って言いたかったんだよね」

 

『そうだ…!見せてみろ、凶暴なる4体のドラゴンを操る主人としてのお前の姿を!!』

 

「分かった…!見せてやるぞ、ジャック!()()()の力を!!」

平常心を取り戻し、肩の力が抜けた遊矢はジャックの意図を理解し、呪縛を断ち切る!

 

 

 

「待たせたな、ユート…まずはお前からだ!オレはレベル4の『小判竜』と『オッドアイズミノタウロス』の2体でオーバーレイ!」

小判竜とミノタウロスが光の銀河に飛び込み、光がはじける!

 

「漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!!現れろ、ランク4!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

迸る紫電と共に反逆の牙が咆哮する! ATK2500

 

 

オッドアイズペンデュラムドラゴン ATK3000→2500

 

 

「おぉ!ユートのドラゴンだ!」

 

「試練を乗り越えるキッカケを掴んだみたいだな…!」

反逆の牙の登場を見た遊馬と凌牙が声を上げる…だが…。

 

 

 

 

「あ、うぅ…うう…!」

 

「レイ…!レイが、怯えているわ…!」

 

『っ…やはり、遊勝さんとアストラルの推測は当たっていたか…』

レオコーポレーションの司令室ではデュエルの様子を見ていたレイが怯えるように声を漏らしていた…レイはやはり、ズァークの復活を恐れていたのだ…。

 

『頼むぞ…遊矢…!』

 

 

 

 

 

「次はユーゴだ!『オッドアイズシンクロン』はペンデュラムゾーンのカード1枚を素材としてシンクロ召喚できる!!オレはペンデュラムゾーンのレベル5『星読みの魔術師』にレベル2の『オッドアイズシンクロン』をチューニング!!」

そして遊矢は次なるドラゴンを解き放つ!

 

5+2=7

 

「その美しくも雄々しき翼ひるがえし、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ!レベル7!『クリアウイング・シンクロ・ドラゴン』!!」

緑の翼を輝かせ、白きドラゴンが咆哮する! ATK2500

 

 

「最後は、ユーリ!『オッドアイズディゾルヴァー』はペンデュラムゾーンの『時読みの魔術師』を素材として融合できる!闇夜を照らす二色の眼よ!時の指針となりて、新たな道を指し示せ!融合召喚!!現れろ!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!」

そして融合の渦から飢えた牙を持つドラゴンが現れる! ATK2800

 

 

 

 

《────!!!》

 

 

「っ…!この声…怒ってるんじゃない…?()()()()…?」

四天が揃い、咆哮するドラゴン達…その声は()()()()()()()だった…そして遊矢は察した、ドラゴン達は何かに怯えていたのだと…。

 

 

《───…!!》

 

「そうか、お前達は怖かったんだな…自分達と戦い続けた遊海が…自分達を引き裂いたレイが…だから、『覇王龍』になりたがった…なんだよ…お前達もレイも、()()()()()()じゃないか…」

ドラゴン達が怯えていた原因…それは、レイや遊海に対する恐怖…ドラゴン達は自分達を傷付けた彼らを恐れ、彼らに対抗する為に『覇王龍』に戻る事を望んでいたのだ…。

 

 

「──怯えるな!!お前達は『覇王龍』にならなくたって強い!!その事をオレが証明してやる!!」

 

《!?》

だが、遊矢はそんなドラゴン達を一喝…ドラゴン達は戸惑うように遊矢を見つめる…。

 

 

「分かってる、お前達が『覇王龍』になりたがってるって事は…!遊海やレイが戻って来たら、無力化されるって思ってるんだよな?……だからって『覇王龍』にはさせない!お前達にはお前達のまま戦ってもらう!!その力で誰かを傷付ける為じゃなく、みんなの笑顔を守る為に、オレはお前達を使いこなす!!」

『覇王龍』としてたくさんの人々を傷付けてきた四天の龍…遊矢はその荒々しき力を、人々を笑顔にする為の力として振るう決意を伝える!

 

 

 

 

「ごめん、待たせたなジャック!!」

 

『フン…さぁ、見せてみろ!遊矢!お前の力を!決意を!!お前が信じるエンターテイメントを!!』

迷いが消えた遊矢を見たジャックは獰猛に笑い、その全力を受け止める!

 

 

「『スターヴ・ヴェノム』の効果発動!融合召喚に成功した時!相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力を得る!さらに、2つ目の効果発動!このターンの終わりまで『スカーライト』の効果を無効にし、その効果を全て奪う!」

 

『むっ…!』

数多のデュエリストを狩ってきた毒龍がその力を解き放つ!

 

 

スターヴヴェノムATK2800→9300

 

「そして!オレは『スターヴヴェノム』が奪った『スカーライト』の効果発動!1ターンに1度、自身の攻撃力以下の特殊召喚されたモンスター全てを破壊し、1枚につき500ダメージを与える!」

 

『ハッ…ぬるいぞ、遊矢!永続罠「インヴァリット・センシティブ」発動!このターン、お互いのフィールドのモンスターは効果では破壊されない!!敵から奪った借り物の効果で勝利を得ようとするとは笑止千万!この程度は対策済みだ!!』

毒龍の腕から放たれ炎がジャックへと襲いかかるが、罠カードによって無効化される!

 

 

『さぁ、本気で来い遊矢!4体のドラゴンの力、バトルで示してみせろ!!』

 

「ヘヘっ…ジャックなら、躱すと思ってたさ!それに、このまま終わったんじゃ…オレに託してくれたみんなに申し訳ないからね…!行くよ…今から、みんなのドラゴンの力を束ねる!!」

ジャックの思いに応える為、遊矢はドラゴン達の力を振るう!

 

 

 

「『ダークリベリオン』の効果発動!ORUを1つ使い、『スカーレッドノヴァ』の攻撃力を半分にして、その数値分、自分の攻撃力をアップする!さらに、もう1つのORUを使って『スカーライト』の攻撃力も半分に!トリーズン・ディスチャージ!」

さらに、紫電が2体のドラゴンを拘束し、力を奪う!

 

 

スカーレッドノヴァATK3500→1750

 

スカーライトATK3000→1500

 

ダークリベリオンATK2500→4250→5750

 

 

「いくぞジャック、バトルだ!『スターヴヴェノム』で『スカーレッドノヴァ』を攻撃!」

 

『フン!貴様の全てを受け止めてやる!アクションマジック「回避」!その攻撃を無効にする!!』

用意を整えた遊矢はジャックへと攻撃を仕掛ける、その一撃目は伏せられていたアクションマジックによって防がれる!

 

 

「『ダークリベリオン』で『スカーレッドノヴァ』を攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 

『まだ終わらせん!アクションマジック「奇跡の選択」!その効果により戦闘ダメージを半分にする!ぬうう…!!』

反逆の牙が紅蓮の龍を貫くが、ダメージが半減する!

 

ジャックLP3400→1400

 

 

「いくぞ!『クリアウイング』!ジャックのライフを削り取れ!!『スカーライト』を攻撃!旋風のヘルダイブ・スラッシャー!!」

 

『まだだ!永続罠「インヴァリット・センシティブ」のさらなる効果発動!このカードを墓地に送り、戦闘ダメージを半分にする!!』

音速の突進がスカーライトを粉砕…ジャックを追い詰める!!

 

ジャックLP1400→900

 

 

「でも、これでジャックのフィールドはガラ空きだ!」

 

『それはどうだろうな…!』

 

「なにっ…!?」

ジャックのモンスターを一掃し、追い詰めた遊矢…だが、ジャックの目は勝利を見据えている!

 

 

『自分のモンスターが戦闘・効果で破壊された時!永続魔法「クリムゾン・ヘルガイア」の効果発動!!墓地から蘇れ!我が魂!!「レッドデーモンズドラゴン」!!』

 

「なっ!?」

リアルソリッドビジョンのコースから炎が噴き上がる…その炎の中から悪魔竜が復活、咆哮する!! ATK3000

 

 

『さぁ、どうする遊矢!俺の場には「クリムゾンヘルガイア」がある!これで次のターン、貴様のドラゴン達を裏守備にして蹴散らしてくれる!!』

 

「オレは、諦めない!いくぞ…『オッドアイズ』!!」

 

《グギャアアン!!》

一転して追い詰められる遊矢…だが、彼は自分の相棒を…ドラゴンを信じて紅蓮の王者へと立ち向かう!!

 

 

「バトルだ!『オッドアイズ』で『レッドデーモンズドラゴン』を攻撃!螺旋のストライク・バースト!!」

 

『フン…!迎え撃て!「レッドデーモンズドラゴン」!灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!!』

オッドアイズの赤と黒の螺旋の炎、そしてレッドデーモンズドラゴンの紅蓮の炎が衝突がする!!

 

 

『貴様がアクションカード狙いならば…それを上から捩じ伏せる!アクションマジック「飛翔」!「レッドデーモンズドラゴン」の攻撃力はさらに600アップする!!』

勢いを増した炎が螺旋の炎を押し返していく!!

 

レッドデーモンズドラゴン ATK3000→3600

 

 

「これが…オレの運命の1枚だ─!!」

そして遊矢もアクションカードを獲得する!

 

 

 

「──来た!!アクションマジック『バイアタック』!!『オッドアイズ』の攻撃力はバトルの間、2倍になる!!」

 

『……見事!!』

そして、遊矢は運命を手にする…紅蓮の炎が螺旋の炎に押し返され、紅蓮の王者が貫かれる。

 

そして…その炎の中でジャックは笑っていた…。

 

オッドアイズ ATK2500→5000

 

 

 

ジャックLP0

 

 

遊矢 WIN!

 

 

 

 

 

「よ、よっしゃあああ!!遊矢が勝ったぁぁ!熱血だぁっ!!」

 

「やったぁ!!」

 

「痺れる〜!!」

デュエルが決着したスタンダード次元に勝者を知らせるブザーが鳴り響く…そして、勝者を讃える歓声が全ての次元へと響いた!

 

 

 

 

『認めよう、遊矢…お前がドラゴン達の主人であると!』

 

「ジャック…」

デュエルが終わり、ジャックは遊矢へと声をかける…見事にドラゴンを使いこなした遊矢を讃えるように…だが…。

 

 

『しかし、俺はまだ聞いていないぞ!お前の()()()()を!』

 

「えっ…?」

 

『さらばだ!お前には、まだ乗り越えるべき試練が残っている!』

 

「あっ…ジャック!?」

意味深な言葉を遊矢へと残したジャックはDホイールに乗って去っていった…そして…。

 

 

 

『遊矢、見事なデュエルだった』

 

「零児!」

黄昏に染まり始めた空にヘリコプターの音が響く…そして、デュエルを見守り続けた零児が姿を現した。

 

 

 

 

 

「零児!レイは!?」

 

『見ての通りだ…きみがドラゴン達を召喚した時、不安げな表情を見せ…今は、元の通りだ』

零児と共に来た日美香の腕の中にいるレイ…彼女の表情は暗いまま…まだ、笑顔にはなっていなかった…。

 

 

「今のデュエルでも、ダメなのか…!ジャックが言った通り、まだオレには足りないモノがあるんだ…でも、これ以上どうすればいいんだ…!」

四天の龍を使いこなしたデュエルでも笑顔にならなかったレイ…遊矢は自分に足りないモノのせいで彼女が笑わない事に気付くが…その『何か』は分からなかった…。

 

 

 

『…遊矢、きみは私からの課題全てをクリアした事により、ジュニアユースからユースへの昇格が認められた…そして、ユースには()()()()()に挑戦する資格が与えられる』

 

「プロテスト……それは、今すぐ挑戦できるのか!?挑戦させてくれ!零児!!」

レイや柚子達を救う為の手がかりを得られず、落ち込む遊矢…そこへ零児が持ちかけたのは…遊矢のプロテストへの挑戦だった。

 

 

 

『ふっ、きみならそう言うと思っていたよ……これより、榊遊矢へのプロテストを行なう!!その相手は──私だ』

 

「零児…!」

スタジアムへとプロテストの開始を宣言する零児…その試験官となる相手は──彼自身だった。

 

 

遊矢の最後の戦いが、ついに始まろうとしていた…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガッキィィン!!

 

 

『っ゙…く、そ…!やっぱり、ダメか……()()()()なら行けたかもしれないが……転生したら、さすがに別人扱いだよな…!』

ARC次元の狭間に金属音と息切れした声が響く…それは遊海を救うべく調査に向かったラプラスの声だった。

 

そして…そのラプラスは()()()()だった、遊海達がいると思われるARC次元の中心空間…それを覆う『壁』の突破を試みていたのだが…突破する事ができずにいたのだ…。

 

 

『こうなったら「創星神tierra」の力を試す……いや、万が一にでも遊海達ごと()()しちまったら……くそ、面倒な事しやがって馬鹿遊海!!とっとと!気付け起きろ!馬鹿!!

ラプラスは手にした『破邪の大剣─バオウ』を遮二無二に壁に叩きつける、音と衝撃で中にいるはずの遊海を気付かせる為に…だが、叩きつけた反動でラプラスの身体にダメージが蓄積していく…。

 

ガキン!! ミシッ…!

 

っ゙…ぐううっ…!!ああ、こんちくしょう!!創星神権能接続…!我がカオスの源よ!かつて、星を破壊せし──』

ついに右腕が使い物にならなくなり、業を煮やしたラプラスはその身に破壊神を降ろす詠唱を唱え始める…その時だった。

 

 

キィン─

 

 

《フォッ…フォーウ!?》

 

『なんっ!ふぎゃっ!?』

『ヌメロン・ピース』を守る壁の一部がぐにゃりと歪み、その穴から何かが勢いよく飛び出してくる…ラプラスは突然の事で避ける事ができず、飛び出してきた何かを顔で受け止める羽目になった…。

 

 

 

 

『ぐ、む…いきなり、何が……お前!?飛行船で姿が見えないと思ったら…!遊海達と巻き込まれてたのか!?』

 

《きゅう〜……》

ラプラスは顔に張り付いた何かを引き剥がす、それは遊海達の居場所を知らせるべく飛び出したフォウだった…なお、ぶつかった衝撃で目を回してしまっている…。

 

 

『おい、遊海達はこの中にいるんだな!?』

 

《フォウ、キュウ…フォーウ!(二人とも、中にいるよ…でも、遊海が弱りきってて…翠も…二人とも動けないんだ!)》

 

『っ…ああ、もう!似た者夫婦が!!なんで肝心な時ばっかりダウンしてるんだあいつらは!!少しはオレ達を頼れ!!というか『ヌメロン』に関してはアストラルの領分だろうが!』

ラプラスはフォウの言葉を聞き取って頭を抱える…中にいる遊海達が動けなければ、助ける手段が限られてしまうからだ…。

 

 

『くそ…いや、逆に考えろ…ARC次元は既に救われた…時空嵐も消えて、遊馬達は帰還できる…レイも、きっと遊矢が救ってくれる……別に救出を焦る必要はないのか…?』

『──いや…遊海達を助けなきゃ、遊矢達は…いいや、この戦いに関わった奴ら全員が納得しねぇ…!オレ自身もだ!!()()()()の英雄が欠けてるのに、ハッピーエンドなんて言えるか馬鹿ユウミ!!』

一瞬、遊海達の救出を先送りにする事を考えるラプラス…だが、その考えを振り払う。

 

遊海と翠、二人の帰還なくして…『ARC-V』の物語のハッピーエンドは無いのだから…。

 

 

 

『おい、フォウ…いや…()()()()()()()、オレを連れて結界の中に戻れるか?』

 

《キュ!?…フォウ、フォーウ…(キミ、ボクの事…!?…ううん、今はいいや…たぶん、厳しいと思う…ボク一人だから抜けられたみたいだし…)》

 

『そう上手くはいかないか…なら、もう一度…!』

フォウの真名を呼びながら問いかけるラプラス…しかし、元『人類悪』のフォウでも、ラプラスを伴っての移動は無理だと首を振る…その答えを聞いたラプラスは再び破壊神を降ろそうとして───

 

 

 

──焦らなくていいんだ、遊海(ユウミ)……二人を救う為の力は既に()()()の手の中にある──

 

 

 

『───お前…どうして…』

 

《フォウ…!?(キミは…!?)》

ラプラスの動きが止まる、数百年の歳月が過ぎ、転生してもなお…穏やかな()の声は、ラプラスの魂に刻まれていた…。

 

 

──遊海を助けたいのはオレも一緒さ、行こうぜ…お前達が目指した最善(未来)を掴む為に…──

 

『──まったく、()に恵まれたよなぁ、遊海……本当に、お前達が羨ましいよ……行こう、────』

 



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ペンデュラムの軌跡〜異次元の王〜

こんにちは!S,Kです!

数多の試練を乗り越えた遊矢はついに、最後の戦いへと挑む…遊矢はレイに笑顔を取り戻す事ができるのか…。


「ん…うう…?あれ、オレは…?」

 

眠っていたらしい遊矢はふと意識を取り戻した…寝惚けた目で辺りを見回すとそこは見覚えがない…否、LDSのセンターコートにある選手控室らしいと気がついた。

 

 

 

「ふぅ…まったく、いきなり倒れるからびっくりしたぜ?…まぁ、あれだけ()()して疲れてたんなら仕方ねぇ…よく頑張ったな、遊矢」

 

「凌牙…?」

そして、遊矢は自分の周りに人が集まっている事に気付く…最初に目にしたのは肩の力が抜けた様子の凌牙、そして…。

 

 

 

 

「遊矢!よかった…良かった〜!!」

 

「──()()!!」

ソファに寝かされていたらしい遊矢の背後から聞こえる懐かしい/聞きたかった()()の声…そこにいたのは、昏睡状態だったはずの柊柚子その人だった…!

 

 

「柚子!大丈夫なのか!?痛い所とかないか!?」

 

「ぷっ…あははは!もう、遊矢!さっきと()()()を聞いてどうするのよ?」

 

「えっ…??」

一番に柚子の体調を心配する遊矢…その言葉を聞いた柚子は思わず噴き出し、呆れたように笑っている。

 

 

 

「ああ…これはアレだね、寝ぼけて記憶が飛んじゃってるみたいだ」

 

「あれだけ激しいデュエル4連戦はやべぇって…遊海先生でもぶっ倒れるぜ?」

 

「ああ、あそこまでのデュエルは中々ないだろう…ジャックにも後で注意しないとな…」

 

「ヘヘっ…遊矢!()()()()()()()()()()()()()、すっげぇデュエルだったな!!今度、オレともやろうぜ!!」

 

「あっ…みんな…?」

そして、遊矢へと声を掛けたのは遊戯、十代、遊星そして遊馬だった…一様に表情は明るく、遊矢を褒めていり。

 

 

「ふふっ、遊矢?自分が()()()()()()()のか覚えてないの?」

 

「──あっ…そうだ…オレ、零児とプロテストのデュエルを……」

優しく笑う柚子の様子に遊矢はだんだんと冷静さを取り戻す…そして、思い出したのは──赤馬零児との世紀のアクションデュエルの事だった。

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

『用意はいいな、遊矢!アクションフィールドは試験官を兼ねる私が選ばせてもらう!』

 

「もちろん!」

夜の帳が落ち始めたペンデュラム次元に赤馬零児の声が響く、彼に課せられた試練を乗り越えた遊矢はユースクラスへと昇格、その直後に零児を試験官としたプロテスト…アクションデュエルをする事になった。

 

…全ては未だに笑顔を見せないレイと、眠り続ける柚子達を救う為に…。

 

 

 

『では…アクションフィールド「エンタメ・コロッセオ」発動!!』

 

「このアクションフィールドは…!」

零児の宣言と共に投影機が起動、センターコートの景色を塗り替えていく…そのフィールドは遊矢が初めて零児と対峙した『アスレチック・サーカス』の進化版とも言える巨大なサーカスの舞台となった!

 

 

 

「(零児と初めてデュエルした時…あの時はまだ、ペンデュラム召喚はオレと遊希兄だけのモノだと思ってた…何故、オレ達だけが使えるようになったのか…その意味も考えずに…)」

アクションフィールドに立った遊矢はこの数週間の出来事を思い返す。

 

ペンデュラム召喚の覚醒、舞網チャンピオンシップ、次元戦争、フレンドシップカップ、アカデミアとの戦い…そして、ズァークとの決着…数多の出会いと別れを経て、遊矢はこの場所へと戻って来たのだ…。

 

 

「(だけど、今のオレは知っている…ペンデュラムが生まれた意味も…何故、オレが最初にペンデュラム召喚を使えたのかも…)」

遊矢はペンデュラムの首飾りを握り締める…悲劇の果てに悪魔となり、勝ち続ける為にペンデュラム召喚を生み出したズァークの事を思いながら…。

 

 

 

『プロとは、全てにおいて完璧な者の事を指す…きみがそれに値すると私が認めぬ限り、合格はさせん…レイを…柊柚子達を救う為に、私を超えてゆけ!榊遊矢!!』

零児は遊矢へとプロテストの厳しさを伝える…それは彼への激励であり、諌言…最後のアクションデュエルの幕が上がる!

 

 

 

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!』

 

 

「モンスターと共に地を蹴り!宙を舞い!」

 

 

「『フィールド内を駆け巡る!!』」

 

 

『「見よ!これぞデュエルの最強進化系!」』

 

 

『「アクション──デュエル!!」』

 

 

 

それはこの世界の決闘を象徴する口上…決闘の殿堂にて、エンタメの申し子と異次元の王の決闘が始まった!

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊矢対零児

 

 

 

遊矢と零児、2人のデュエルはまさに『最初からクライマックス』の勢いで進んでいく。

 

 

遊矢はペンデュラム召喚による大量・高速展開を生かし、僅か1ターンで『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』『クリアウイング・シンクロ・ドラゴン』『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』…四天の龍達を並び立たせる。

 

だが、零児も負けてはいない…持ち前の天運と計算されたプレイング、そしてペンデュラム召喚によってエースモンスターである3体の『DDD死偉王ヘル・アーマゲドン』を展開…高い攻撃力を持つ王達によってドラゴン達を攻めたてる。

 

しかし、遊矢は持ち前の運動能力…そして、文字通り遊矢と共に地を駆け、宙を舞う四天の龍との連携によってアクションカードを次々と獲得、ダメージを最小限に抑え、『ヘルアーマゲドン』1体を返り討ちにする事に成功した…!

 

 

「(ああ…この気持ち、何処かで───そうか、これは…()()()()()()()()())」

そして、最初の試練を乗り越えた遊矢はふと懐かしい気持ちになる、その感覚の正体…それは遊矢の中に残されたズァークの記憶だった。

 

ズァークはプロデュエリストとして、観客や対戦相手…全ての人々を笑顔にする為にデュエルをしていた…しかし、ズァークの持つデュエリストとしてのカリスマ性が暴走…人々は彼のデュエルに派手さや過激さを求めるようになり、それに応え続けたズァークは…その果てに『悪魔』と化してしまった…だが…。

 

 

「オレが…ズァークが本当にやりたかった事は、世界を破壊する事なんかじゃない…!観客も、対戦相手も…モンスター達も…!みんなが楽しめる、笑顔になれるデュエルをしたかったんだ…!!」

それは遊矢の魂から溢れ出た()()…零れ落ちる涙と共に、遊矢はズァークが本当にやりたかった事を理解したのだ…。

 

 

 

『ならば、それを実践してみせろ遊矢!お前のデュエルで…()()()()()()()()()()!』

 

「零児…」

遊矢の魂の言葉を聞いた零児は力強く言い放つ!

 

 

『だが、そう簡単にできると思うな…!いくぞ!!』

しかし、零児は一筋縄の相手ではない…遊矢も数多の戦いを乗り越えて成長してきたが、零児もまた成長しているからだ…

そして、零児は新たな切り札を解き放つ。

 

 

それは紫色の竜と融合せし王『DDD超死偉王パープリッシュ・ヘル・アーマゲドン』

 

さらに白き腕を持つシンクロの王『DDD超死偉王ホワイテスト・ヘル・アーマゲドン』

 

そして鋭い爪と異形の姿を持つエクシーズの王『DDD超死偉王ダークネス・ヘル・アーマゲドン』

遊矢を迎え撃つのは進化した3体の『死偉王』…零児が鉄壁と称する布陣だった。

 

強力な効果を持つ3体の王の効果によって『ダークリベリオン』『クリアウイング』『スターヴヴェノム』を破壊された上で『オッドアイズ』をも破壊され大ダメージを受けてしまう遊矢…だが、彼も負けてはいない…何故ならば───

 

 

 

「──もう一度、力を貸してくれ!ユーリ!ユーゴ!ユート!」

 

《当然さ、ボク達の力はもうキミのモノだしね》

 

《オレ達は元々1人だかんな!》

 

《思いっきりやれ、遊矢!お前が楽しめば…みんなも楽しんでくれるはずだ!》

 

「そうだな!レイに笑ってもらう為には…まず、オレが笑わないと!みんなの思いは…オレが繋いでみせる!!」

今の遊矢は1人ではない、彼の内にいる三人の魂…そして、四天の龍達が共にある。

 

そして遊矢は新たな力を解き放つ!

 

 

 

 

「二色の眼の竜よ!」

 

《毒持つ竜と一つになりて!》

 

「覇道を導く力となれ!」

 

「《融合召喚!!》」

 

「慈愛の玉眼輝けし竜!!『覇王紫龍オッドアイズ・ヴェノム・ドラゴン』!!」

新たな力、それは四天の龍同士の融合…その先鋒として禍々しさが浄化されし慈愛のドラゴンが現れる!

 

 

「『オッドアイズヴェノムドラゴン』の効果発動!エンドフェイズまで自分の攻撃力を相手フィールドのモンスターの攻撃力の合計分アップする!!」

そして覇王紫龍は自身の効果によってその背に大輪の花を咲かせ、異次元の王へと挑む…!

 

 

 

「バトルだ!『オッドアイズヴェノムドラゴン』で『ホワイテストヘルアーマゲドン』を攻撃!!」

 

『力だけで超えられると思うな!!「ホワイテストヘルアーマゲドン」がバトルする時、バトルする相手モンスターの攻撃力は元々の数値になる!』

 

「アクションカード!っ!?(『ワンダー・チャンス』!?このカードじゃ…!!)」

しかし、零児は甘くない…遊矢はアクションカードによるリカバリーを狙うが失敗…慈愛のドラゴンは貫かれてしまう…!

 

 

《まだだよ、遊矢》

 

《行け!遊矢!オレが付いてる!!》

 

「ああ!フィールドの速攻魔法『オッドアイズ・フュージョン・ゲート』の効果発動!このカードで融合召喚したモンスターが破壊された時、デッキから速攻魔法『オッドアイズ・シンクロ・ゲート』を手札に加える!!」

だが、遊矢は挫けない…新たな風がフィールドに吹き荒れる!

 

 

 

「二色の眼の竜よ!」

 

《光輝く翼を得て!》

 

「覇道の頂きへ舞い上がれ!」

 

「《シンクロ召喚!!》」

 

「烈波の慧眼輝けし竜!『覇王白龍オッドアイズ・ウイング・ドラゴン』!!」

それは輝く翼を得たオッドアイズの新たな姿…慧眼を持つドラゴンが飛翔する!

 

 

「『オッドアイズウイングドラゴン』の効果発動!相手フィールドのモンスター全てを破壊し、その中の1体の攻撃力を自身に加える!」

 

『無駄だ!私の場に「ダークネスヘルアーマゲドン」が存在する限り、私のペンデュラムモンスターは効果では破壊されない!!』

零児のモンスターの一掃を狙う遊矢…だが、破壊耐性によって効果は不発に終わってしまう…!

 

 

「なら…バトルだ!『オッドアイズウイングドラゴン』で『ダークネスヘルアーマゲドン』を攻撃!!」

 

『攻撃力の低いモンスターで…?返り討ちにしろ!』

しかし、遊矢は怯まずに特攻を仕掛ける…粉砕される覇王白龍…だが、そのバトンは次のモンスターを導く!

 

 

《頼んだぜ、ユート!》

 

《ああ、任せておけ!》

 

「行こう、ユート!速攻魔法『オッドアイズ・シンクロ・ゲート』の効果発動!このカードの効果でシンクロ召喚したモンスターが破壊された時、デッキから速攻魔法『オッドアイズ・エクシーズ・ゲート』を手札に加える!!」

ユーゴからユートへと託されるバトン…その覚悟は怒りの力を呼び覚ます!

 

 

 

「二色の眼の竜よ!」

 

《その黒き逆鱗を震わせ!》

 

「歯向かう敵を殲滅せよ!!」

 

「《エクシーズ召喚!!》」

 

「怒りの眼輝けし竜!『覇王黒龍オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』!!」

それは遊矢とユートが目覚めさせし逆鱗の竜…融合・シンクロ・エクシーズ…繋がった思いの力が零児へと迫る!

 

 

「『オッドアイズ・エクシーズ・ゲート』の効果!このカードと墓地の『フュージョンゲート』と『シンクロゲート』を除外し、効果発動!バトルフェイズの間、『オッドアイズリベリオンドラゴン』の攻撃力を1000アップさせ、2回の攻撃が可能になる!さらに、アクションマジック『ワンダー・チャンス』を発動!さらに攻撃回数を1回増やす!!バトルだ!オレは『オッドアイズリベリオンドラゴン』で『パープリッシュ』『ホワイテスト』『ダークネス』の3体を攻撃!革命のイカズチ!ライトニング・ストライク!!」

紫電を纏った逆鱗の竜が翼を展開…紫電のレーザーとなって零児へと襲いかかる!!

 

 

『──残念だったな、「パープリッシュヘルアーマゲドン」が存在する限り、私のペンデュラムモンスターはバトルでも破壊されないのだ』

 

「っ…流石…!抜け目がないな…!」

爆煙が晴れていく…その先では大ダメージを受けたものの、健在の3体の王の姿があった…!

 

 

「オレは…カードを1枚伏せ、ターンエンドだ…!」

カードを伏せ、ターンを終える遊矢…だが、『覇王黒龍』1体で零児の猛攻を防ぐ事はできない…!

 

 

 

『私のターン!「パープリッシュヘルアーマゲドン」の効果発動!「覇王黒龍」を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!』

 

「その瞬間!罠カード発動!『コールド・パフォーマンス』!自分のペンデュラムモンスターが破壊された時!このターンの間、自分が受ける戦闘・効果ダメージは0にし、破壊されたペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンに置く!!」

 

『ふむ…やるな、遊矢』

絶体絶命の遊矢は伏せカードによって窮地を脱する…遊矢の不利は変わらない…だが、遊矢は笑っていた!

 

 

 

「ここからが本番!デュエリストはどんなピンチでも、ライフがあれば戦える…オレの最後のエンタメを見せてやる!」

 

『ならば、見せてもらおうか!キミのエンタメを!!』

デッキトップに手をかける遊矢…その1枚が運命を変える!

 

 

 

「オレのターン、ドロー!オレは『オッドアイズリベリオンドラゴン』のペンデュラム効果発動!デッキからペンデュラムモンスターをペンデュラムスケールにセッティングする!オレが選ぶのは──スケール12の『EM五虹の魔術師』!」

黒龍の導きによって瞳に宇宙を宿す白衣の魔術師がペンデュラムスケールに浮かび上がる!

 

 

「これでレベル5から11のモンスターが同時に召喚可能!!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!!エクストラデッキから蘇れ!『オッドアイズヴェノムドラゴン』!『オッドアイズウイングドラゴン』!『EMオッドアイズ・プリースト』!『EMイグニッション・イーグル』!」

揺れ動く光の軌跡が4体のモンスターをフィールドに呼び戻す!

 

 

『ならば「ホワイテストヘルアーマゲドン」の効果発動!相手に自分フィールドのペンデュラムモンスター1体を選ばせ、そのモンスター以外の効果を無効にする!』

 

「オレが選ぶのは『オッドアイズ・プリースト』!そして効果発動!このカードをリリースして、墓地の『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を特殊召喚!!」

再びモンスター効果を封じられる遊矢…しかし、エースが彼の場に舞い戻る!

 

『だが、きみがモンスターを特殊召喚する度に「ホワイテスト」の効果対象は()()()()される!さぁ、誰を選ぶ!』

 

「オレは『イグニッション・イーグル』を選ぶ!そして…『五虹の魔術師』のペンデュラム効果発動─!!」

再び発動するモンスター効果封じ…しかし、遊矢はそれを意に介さずアクションカードを獲得…そして、逆転を賭けた効果を発動する!

 

 

『っ…!?フィールドのモンスターの攻撃力が、()()0()に!?』

虹色の魔力を解き放つ五虹の魔術師…その魔力はお互いのモンスターの攻撃力を奪ってしまった!

 

 

 

「『五虹の魔術師』のペンデュラム効果…それは魔法・罠カードゾーンにセットされたカードが4()()()()の時、自分フィールドのモンスターの攻撃力は0となり…バトルも行えず、フィールドのモンスター効果も使えなくなる!しかし、5()()セットした瞬間、その制限は無くなり!フィールドのモンスターの攻撃力は元々の攻撃力の2倍になる!そして…オレは今手に入れたアクションカードをセット!この瞬間、『五虹の魔術師』の効果でエンドフェイズになる!そして…ドローフェイズ以外でカードを手札に加えたプレイヤーは、そのカードをセットできる!」

 

『なるほど…5枚のカードを先に伏せたプレイヤーが勝利への権利を得る、という事か…』

 

「そゆこと!」

零児はすぐに『五虹の魔術師』の効果を理解する…本来のスタンディングデュエルならば、カードを5枚セットするというのは中々に時間が掛かってしまう。

 

だが、これはアクションデュエル…フィールドには()()()()()()()()()が無数に散らばっている!

 

 

 

『よかろう…受けて立とう!!』

 

「そうこなくっちゃ!但し、ドローには注意してくれよ?ドローしたらカードはセットできな───」

 

『私のターン!「五虹の魔術師」の効果でドローフェイズをスキップ!』

 

「──正解!!いくぞ〜!!」

それはドローを封じたアクションカード獲得レース…2人のデュエリストはアクションフィールドを駆け巡る。

 

時にトランポリンで飛び跳ね、時に人間大砲で宙を飛び、時に回し車に足元を取られ…モンスター達と共にフィールドを駆け回る……それはまさに、息もつかせぬ『アクションデュエル』の真骨頂!

 

普段は大きく動かない零児もモンスターと共に地を駆け、宙を舞い…遊矢のペースへと引き込まれていく…!

 

 

 

 

「すっげぇ…!これが、本当のアクションデュエル…!超楽しそうじゃん!!オレもホープとやってみてぇ!!」

 

(我々の世界とは違う進化を遂げたデュエルの形…興味深い)

 

「そんな難しく考えなくていいんだよ!こういうのは…頑張れ!遊矢─!!」

 

《まったく…いつまでたってもきみは童心を忘れないねぇ…》

客席でデュエルを観戦していた遊馬と十代が目を輝かせる…本来の「世界」においてはアクションデュエルは邪道と言われるかもしれない、それでも…この世界におけるアクションデュエルは輝いていた!

 

 

 

 

そして────

 

 

 

「オレのターン!!」

 

『させん─!』

お互いにカードを4枚伏せ、リーチがかかる遊矢と零児…王手を指したのは──遊矢だった!

 

 

「よし…!これで、このターン『五虹の魔術師』の効果ではカードを伏せられない!そして、オレのモンスターの攻撃力は2倍になる!バトルだ!『オッドアイズペンデュラムドラゴン』で『ホワイテストヘルアーマゲドン』を攻撃!!」

虹の加護を受けて遊矢のモンスター達の攻撃力が強化され、零児へと最後の一撃を放つ…だが…!

 

『そうはさせん!手札の「DD魔導賢者アルベルト」の効果発動!相手モンスターが攻撃してきた時、このカードを墓地に送る事で…手札の魔法カードをセットできる!これで条件は同じだ!!』

土壇場で零児もカードをセット、遊矢の一撃を迎え撃つ!

 

 

「まだだ!『イグニッションイーグル』の効果発動!ペンデュラムゾーンの『オッドアイズリベリオンドラゴン』を特殊召喚し、自分をペンデュラムゾーンにセットする!そして、特殊召喚したモンスターの攻撃力分、『オッドアイズペンデュラムドラゴン』の攻撃力をアップする!!」

 

『無駄だ…!「ホワイテストヘルアーマゲドン」の効果発動!相手が選んだペンデュラムモンスター1体以外の効果を無効にする!』

 

「オレは『オッドアイズペンデュラムドラゴン』を選ぶ!!」

 

『しかし、忘れた訳ではあるまい!「パープリッシュヘルアーマゲドン」の効果発動!1ターンに1度、相手モンスターの攻撃力を元々の数値に戻す!これで終わりだ!!自滅するがいい──!!』

激しい効果の応酬の末、零児の戦術が遊矢を上回る…だが、遊矢は()()()()()

 

 

 

「レディース&ジェントルマン!!さぁ、皆様お立ち会い!!」

 

 

『なにっ…!?まだ手があると言うのか…!?』

スタジアムに響く遊矢の明るい口上…これが、遊矢の最後のエンタメ劇場の始まりだった!

 

 

 

「皆様!私の相棒、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』はこれから仲間の声援を受けて、強くなっていきます!それがペンデュラムの()()()──光のアークなのです!!」

 

『光のアーク…!』

手元に虹色の光を灯しながら、遊矢は繋がる光の力を開放する!

 

 

「『イグニッションイーグル』のペンデュラム効果発動!このカードと『五虹の魔術師』を除外する事で、お互いの伏せカードを全て破壊します!それによって『五虹の魔術師』の効果が適用されなくなり、フィールドのモンスターの攻撃力が元に戻りますが…お楽しみはここから!今、フィールドから墓地に送られた伏せカード1枚につき1体!私のデッキから『EM』達を華やかに夜空へと打ち上げます!!」

ペンデュラムゾーンから消えたイグニッションイーグルが文字通りの点火装置となる!

 

「さぁ、皆様ご一緒に!!3!

 

「「「2!」」」

 

「『『1!!』』」

 

「イグニッション─!!」

観客達のカウントダウンと共に花火が打ち上がる…それは色とりどりの『EM』モンスターの顔となって、夜空を染め上げ…光のアークを空へと描き出した!

 

 

 

「さぁ、いよいよフィナーレです!発動された『イグニッションイーグル』の効果で『オッドアイズペンデュラムドラゴン』の攻撃力は私のフィールド上のペンデュラムモンスター1体につき500…つまり、2000アップします!さぁ…やろう!オッドアイズ!!」

 

《グギャアアン!!》

遊矢は相棒たるオッドアイズの背中に飛び乗り、最後の攻撃を叫ぶ!!

 

 

 

「いっけぇ!螺旋のストライク・バースト!!」

 

『──「パープリッシュヘルアーマゲドン」の効果で、私のモンスターは破壊されないが…』

 

「ダメージは受ける!それも、『オッドアイズペンデュラムドラゴン』の効果で2倍の!リアクション・フォース!!」

それは希望の一撃、螺旋の炎が零児を飲み込んでいく…その中で零児は穏やかに笑っていた…。

 

 

 

零児LP0

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃは…あはは…!きゃはは!!」

 

 

 

 

「あっ…」

デュエルが決着し、静まり返るスタジアムに楽しげな赤ちゃんの()()()が響く……遊矢はデュエルでレイを笑顔にする事ができたのだ!

 

 

 

『──Winner!榊遊矢!!プロテスト合格だ!!』

 

 

「「「うおおお!!」」」

起き上がった零児が勝者を告げる、それは遊矢がプロデュエリストになった証…勝者を讃える大歓声が全ての次元に響き渡る!!

   

 

 

 

「融合次元の万丈目だ!セレナが目を覚ましたぞ!!」

 

「シンクロ次元の牛尾だ!リンの嬢ちゃんが起きたぜ!」

 

「エクシーズ次元の黒咲だ…瑠璃が、瑠璃が目を覚ました!!」

 

「あっ…やった…!オレ、やったんだ!!」

そして続くように通信が届く…各次元で眠り続けていた少女達が目を覚ましたと連絡が入ったのだ…!

 

 

 

「遊矢!」

 

「あっ…」

そして、それは…()()も目を覚ました事を意味していた。

 

 

「ゆず…柚子!!」

 

「遊矢…ありがとう…!!」

遊矢の耳に届いた声、それは目を覚ました柊柚子の声…2人はスタジアムの真ん中で再会の抱擁を交わす…。

 

 

「柚子…!大丈夫か?痛い所とかないか…!?」

 

「うん!大丈夫…!!レイが()()()くれたの…私達の為に遊矢が頑張ってくれたって…!心配させて、ごめんね…!」

 

「いいんだ…!柚子が無事に目を覚ましてくれてよかった…!!」

お互いに泣き笑いの笑顔で語り合う遊矢と柚子…観客達はその再会を静かに祝福した…。

 

 

 

………

 

 

 

「あう…きゃはは!」

 

「レイ…笑ってくれたけど、赤ちゃんのままなのか…」

 

『ああ…こればかりは…私達にはどうする事もできないな…』

再会した2人が落ち着いた頃、ランサーズを始めとした仲間達はスタジアムの中心へと集まっていた…その中には笑顔を取り戻したレイの姿もあったのだが…彼女は未だに赤ん坊のままだった。

 

 

「遊海さん…何処にいるのか分からないんだよね…?」

 

「ああ…ラプラスさんがしらべて……くれ……あ、れ…?目のまえが、くらく…なって…」

 

「遊矢?遊矢!?」

 

『っ…!凌牙!治療を───』

 

「遊矢!しっかりするのだ!!」

 

 

そして、柚子達を助ける事が出来た事で気が抜けたのか…遊矢は気を失ってしまったのだった…。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

「……思い出した…でも、どうすればいいんだ…?どうしたら、遊海を助けられるんだ…!」

 

「遊矢…」

零児との激戦の顛末を思い出した遊矢は頭を抱える…遊矢達が失ったモノのほとんどは取り戻す事ができた…だが、最善へと導いてくれた英雄を助ける方法は未だに分からないままだったのだ…。

 

 

 

 

『すまん、待たせた、な…』

 

「ラプラっ…!?大丈夫か!?誰かに襲われたのか!?」

 

『違うよ、遊星…まったく…遊海の奴、引きこもりやがって…少しは助ける身になれっての…』

その時…控室の扉が開き、ボロボロの人影──調査に向かっていたラプラスが現れ、床にへたり込む…あまりに消耗した様子に遊星が慌てている。

 

 

「ラプラス!すぐにカオスを!」

 

『大丈夫だ、遊馬…それより、()()()を集めてくれ…遊海の馬鹿、助けに行くぞ…』

 

「っ…!遊海を助ける方法が分かったのか!?」

消耗したラプラスを回復させようとする遊馬…だが、ラプラスはそれより先に遊海を助ける方法が見つかった事を告げた…。

 

 

 

『あいつらを助けるには…()()の力が必要だ…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【……む……眠っていたか…】

遊海の精神世界の最奥、玉座で眠っていたドン・サウザンドが目を覚ます…眠りを必要としないドン・サウザンドだが…いつの間にか意識を失っていたのだ。

 

 

【……フン、外の状況は分からぬが……言ったであろう、遊海…()()()()()()()()()と……聞こえていないだろうがな】

気怠げに石造りの教会を見回すドン・サウザンド、その目に留まったのは…満身創痍で完全に意識を失った遊海とユウスケの姿だった。

 

 

【無理もあるまい、いくら痛みやダメージへの耐性があろうとも…人間が神の領域に踏み込めば、それなりの代償はあるだろう………むっ…?これは…()()()()()()()()…?】

呆れた様子で遊海達の消耗の原因を語ったドン・サウザンドだったが、思わぬ事に気付いた…自身を遊海に縛り付けていた封印が解けていたのだ…!

 

 

【……『ヌメロン・ピース』の権能が遊海の中にいた我の願いを拾ったのか?……まぁ、原因はどうでもよい……神の力を手にした、不死身の()()…そして、範囲は限られるとはいえ…この世界を自由に書き換える『ヌメロン・ピース』…興味がない、とは言ったが……この2つを手にすれば、この世界で我の敵はいなくなる…ZEXALにも遅れは取らんだろう…】

封印が解けた理由を考察したドン・サウザンドは玉座から立ち上がる…そして、無防備に眠る遊海へと手を伸ばし────

 

 

 

 

 

【──ありがたく思え、白波遊海】

 



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戦いの果て─英雄を救うのは…─

こんにちは!S,Kです!

ついにARC-Vの物語も最終局面…遊矢は、仲間達は…遊海と翠を助け出す事ができるのか…!


これが本年最後の投稿となります、読者の皆様もよいお年をお迎えください!


「…すごいね…この状況は…」

 

「フン…本当に()()()めいてきたな」

LDS・センターコート…遊矢とジャックの超次元ライディングデュエルや、零児との世紀のアクションデュエルに沸いたその場所はそれが嘘のように静かになっていた。

 

…否、()()ではない…時刻は深夜、本来ならば疲れた人々が1日の疲れを癒やす時間だが…この場には数多の決闘者達が集まっていた。

 

 

 

 

「遊海…!必ず、助けるからな…!」

 

「俺達には、彼に返しきれない恩がある…!」

 

まずは次元戦争を乗り越えたランサーズの仲間達、遊矢・柚子・権現坂・沢渡・黒咲・月影・デニス・素良・零児・零羅

 

 

《フォウ、フォーウ!》

 

「フォウ…お前が無事で良かった…!父さん達の居場所を教えてくれてありがとな…!」

 

(飛行船のエネルギー充填は済んでいる、いつでも出発できるぞ)

 

「しかしこりゃ…何を始めるつもりなんだぁ?いや、白波の奴を助ける為ってのは分かるけどよ…」

 

遊海を救出するべくARC次元に乗り込んだ救出隊、チームZEXALの遊馬・アストラル・凌牙・カイト・オービタル7・小鳥・璃緒・ドルベ・真月・アリト・ギラグ・ミザエル・流星・海亜・十代・フォウ、そしてラプラスとブルーノ

 

 

「遊海、翠…もう少しだけ待ってろよ…!」

 

「私にもできる事があるのなら…絶対に力になる!」

 

「まったく…本当にあの2人は世話焼かせだねぇ…」

 

スタンダード次元ヘ転生した『DM』のレジェンド達、遊戯・海馬・城之内・本田・杏子・舞・モクバ・沙良

 

 

「すごいドン!遊海先生の仲間が勢揃いザウルス!」

 

「しかーし、私達全員の力が必要とーは?何をするノーネ…?」

 

「遊海先生…翠さん…」

 

融合次元ヘ転生した『GX』のレジェンド達、翔・亮・万丈目・剣山・明日香・エド・哲夫・クロノス

 

 

「……おい、私まで次元を越える必要はあったのか?」

 

「ええ、貴方の力も必要らしいの…だから慌てて5D's全員で貴方の事を探したのよ?ディヴァイン」

 

「…本当に遊戯や城之内の奴までいるのかよ…俺、場違いじゃねぇか?」

 

「そんな事ないよ!牛尾のおっちゃんもオレ達の仲間だもん!」

 

「ふむ…次元と次元を繋ぐ次元回廊…次元を繋いだライディングコース…リアルソリッドビジョン…この仕組みを応用すれば…」

 

「父さん…今は考えこまないでくれ…」

 

シンクロ次元ヘ転生、ないしその記憶を受け継いだ『5D's』のレジェンド達、遊星・ジャック・クロウ・アキ・龍亞・龍可・牛尾・不動博士・イェーガー・ディヴァイン

 

 

「すごい人数だな、これだけのデュエリストを集めて…デュエル大会でも開くのか?」

 

「流石にそれはないんじゃないかしら…?」

そして、目を覚ました少女達…セレナ・瑠璃・リン…総勢56名、このARC次元の戦いに関わった主要な仲間達が集められていた…!

 

 

 

 

 

「ラプラス、キミの言う通りに各次元の協力者達に声をかけたが…これが白波遊海を救う手助けになるのか?」

 

「『全能の力』によって閉じられた世界…それを無理矢理こじ開けるなら、途方もないエネルギーが必要になるだろう」

 

『ああ…遊海の奴を救うには、文字通り全員の力…いや、()()が必要になる……()()()

 

「「らしい?」」

集められた決闘者達を前に零児と零王親子がラプラスへと問いかける…だが、当のラプラス本人も確信が無い様子を見せていた。

なお、近くには遊勝や日美香の姿もあり、その腕の中ではレイが静かに眠っている…。

 

 

 

『ゆ…武藤遊戯、前に出てきてくれ』

 

「うん……こうして会うのは初めてだね、ラプラス…普通に下の名前で呼んでくれて良いんだよ?」

 

『……お前は()()()じゃない…顔は同じでも……その優しさは…オレに向けられるべきモノじゃない』

 

「そっか…わかった」

集まった決闘者達を前に、遊戯を呼び出すラプラス…その態度は少し冷たく、堅い…遊戯にはその理由が分かったが…一部の決闘者達は小さな疑問を抱いた…。

 

 

『話が逸れたな……()()()()だ』

 

「っ…!?それは!!」

 

「なんだとっ!?」

 

「それは…?」

話を戻したラプラスはコートのポケットからあるモノを取り出す、それを見た遊戯や海馬は驚き、遊矢は首を傾げている、

 

 

ラプラスが取り出したモノ…それはウジャト眼が刻まれた()()()()()()──千年パズルだったのだ。

 

 

「どうしてそれを!?この次元には存在しないはずなのに!?」

 

『言っただろ?預かり物だって……()()()()、だそうだ…意味は分かるだろ?』

 

「───分かった、ありがとうラプラス」

ラプラスの言葉の意味を理解した遊戯は千年パズルを受け取り、ネックレス代わりの鎖を使って首から下げる…それは懐かしい重みだった。

 

 

「───力を貸して、()()1()()()()…ううん、アテム!」

 

 

キィン─

 

 

「な、なんだ!?」

 

「眩しっ!?」

 

「こ、これーは…!?」

 

「遊戯さん!?」

 

「一体なにが…!?」

遊戯が優しく千年パズルに触れた瞬間、夜闇が真昼に変わるほどの光が放たれる…その光に事情を知らない者達は戸惑い、事情を知る者達も失われた()()の再演を前に目を見開く。

 

 

 

そして──『王』は遥かなる時を超え、再び現世へと降り立つ

 

 

 

【───よく集まってくれた、誇り高き決闘者(デュエリスト)達…お前達を集めたのは──()()だ】

 

「「「っ!?」」」

 

光の中から厳かな声がスタジアムへと響く…それは遊戯の声色に似た異なる声…そして、光が収まった先に彼は立っていた。

 

そこにいたのは誰よりも優しい柔和な青年ではない、着崩した童実野高校の制服を肩から羽織り、鋭い目で集まった決闘者達を見据える…事情を知らない者達は本能で理解した。

 

 

彼は──『王』であると。

 

 

「…武藤、遊戯…?いや、明らかに雰囲気が違う…!?貴様…いや、貴方は…何者だ!!」

張り詰めた空気の中で零児が震える声で遊戯へと問いかける…ズァークのような『悪』の存在である事を警戒したのだ。

 

 

『心配するな、赤馬零児…彼は悪人ではない──彼は古代エジプトから失われた偉大なる「名もなき(ファラオ)」にして、『決闘王』の称号を最初に得た決闘者…その名はアテム、武藤遊戯の相棒にして白波遊海の一番の親友だ』

 

「『決闘王』武藤遊戯に宿りし、名もなきファラオ…!?本物!?」

 

「マジッスか!?」

 

「まさか…伝説中の伝説の決闘者と出会う事になるとは…!?」

 

「フン…貴様なら来ると思っていたぞ、アテム」

 

「アテム!冥界から来てくれたの!?」

ラプラスの言葉を聞いた決闘者達は驚愕する…特に幼い頃から遊戯の伝説を知るGX組や記憶を通してその存在を知るシグナー組は驚きが大きい。

 

なお、彼と長い時間を過ごしたDM組は冥界から彼が来てくれた事にびっくりしていた。

 

 

 

【オレはそんな大層な存在ではないさ…お前達と同じ、友を救いたいと願う1人の決闘者だ……オレが現世に居られる時間はそう長くない、要件を…遊海を救う為の方法について話そう】

驚いた決闘者達の姿に苦笑しながら語るアテム…そして彼は掛け替えのない友人を救う為の方法を伝える。

 

 

【遊海と翠は今、この世界…ARC次元の中心空間に閉じ込められている…そしてその空間は『ヌメロン・コード』の力によって覆われ、並の手段では干渉する事はできない…だが、お前達…特に遊海と共に過ごした()()()()()を持つ者達には、それを破る手段がある】

 

「ボク達に、そんな力があるッス…?」

 

「精霊の力か…?ここにいる決闘者のほとんどは持っているはずだ」

 

『いや、違う…物理的な力では、あの壁は突破できない……数時間、あの壁を殴り続けたオレが断言する』

 

「ラプラス…そんな事してたからボロボロになってたんだね…」

遊海と共に過ごした記憶を持つ決闘者達に事態を解決する手段がある事を伝えるアテム…だが、彼らにはその力に心当たりが無かった…。

 

 

「──アテム!もしかして、()()か!?」

 

「えっ、城之内さん!?」

その時、何かに気付いた城之内が胸に手を当てる…そして、その手の中に暖かな光が生まれる…その正体は──

 

 

「それは…俺達をこの世界に導いた『絆の欠片』か!!」

 

「絆の欠片?」

その光を見た海馬が光の正体を口にする…事情を知らない他の決闘者達は首を傾げている…。

 

 

 

【城之内君、その通りだ…お前達の中でこの次元の『創世記』を聞いた者はいるか?】

 

「私や遊矢は遊海本人から聞かせてもらった…『世界』においてズァークを足止めすべく白波遊海が戦ったが、虚無の邪神による干渉によって失敗…その後に我が父・零王とレイが大自然の力を宿した『エン』シリーズというカードによってズァークの討伐を図ったが…ズァークの力と『エン』シリーズの力が衝突して世界が分裂しかけ…それを防ごうとした白波遊海の力とズァークを隔離していた『ヌメロン・コード』の力の4つが干渉しあい、召喚法の名を冠した4つの次元を内包したARC次元が誕生した…そう聞いている」

アテムの問いかけに零児が答える…世界を守るべく命を賭けた英雄の奮闘を…。

 

 

【その通りだ…そして次元分裂を防ごうとした時、遊海は繋いだ『絆』の象徴たる力、NEXUSと言う姿になっていた…ズァークとのデュエルで見た者が多いだろう…遊海は自分自身を『楔』として、引き裂かれる世界を繋ぎ留めようとした……しかし、繋ぎ留め続ける事はできず、NEXUSは砕け…遊海は記憶を失ってこの世界に流れ着いた……そして砕けたNEXUSの欠片には遊海の『繋げる』という強い意思が宿り…現世と冥界の()()を超え、遊海と『絆』を結んだ仲間達のもとへと繋がった…】

 

「それで冥界…あの世でこの欠片を掴んだ俺や遊戯は遊海を助ける為に、この世界に転生して来たのさ!」

 

「それでは…俺達が融合次元へ生まれ、記憶を取り戻したのは…遊海先生との『絆』が結ばれていたから…」

 

【ああ、自覚があるにしろ無いにしろ…記憶を持つ者にはその『絆の欠片』が宿っているだろう】

ARC-Vの物語におけるイレギュラー『絆の欠片』について説明するアテム…その言葉を聞いた亮は自分が転生した原因を聞いて納得した…。

 

 

 

 

(繋がる…絆…現世と冥界……っ!アテム王、私の推測が正しければ──「絆の欠片」はまだ()()()()()()()()()()()()()()()?NEXUSはランクアップした遊海の『魂』の姿…つまり、「絆の欠片」は遊海の魂の一部とも言えるはずだ)

 

【その通りだ、アストラル…今もなお遊海とオレ達は()()()()()()

アテムはアストラルの推測に頷く…それと共に城之内が手にしていた『絆の欠片』から細い光が伸びていき…近くの次元回廊の奥へと消えていった…。

 

 

「あ…繋がってるなら、オレ達と遊海の絆が途切れてないなら!壁には()がある!」

 

【そうだ…だが、あくまでも繋がっている()()…それだけでは『ヌメロン・コード』の守りを突破する事はできない】

 

「なら…()()()()いい!一本一本は細い繋がりでも…糸を編んで縄にすれば、強くなる!オレ達の絆を束ねて、遊海さんを助けるんだ!」

アテムの言葉から遊馬と遊星が答えを導き出す…絆の力を束ね、『壁』を乗り越える…この場に集いし決闘者達はそれを何度も成し遂げてきたのだから…!

 

 

 

【しかし、問題もある…単純な縄では束ねても『壁』を突破する事はできない…絆を束ね、壁を貫く()…それを用意できれば…遊海達を助ける事ができるはずだ】

 

「刃…そんなのどうすれば…」

 

「『絆の欠片』は強いエネルギーの塊…だが、実体はない…何かを()として、その力を安定させる事ができれば…」

 

《そんなの()()()()()でもない限り不可能だね…例えるなら…遊海の「No.∞」とか、それこそ千年アイテムみたいなね》

『壁』を突破する為の「刃」…実体のない力を宿し、力に変えるモノ…ユベルの言う通り、特殊な力を宿すモノでなければ不可能だろう…。

 

 

「っ…父さん…父さんなら、どうする…!白波遊海なら、破れない壁をどう破る…!?考えろ…考えろ…!!」

 

「凌牙…」

遊海達を救う為の最後の難問に頭を悩ませる凌牙…その拳からは血が流れ…璃緒は心配そうに寄り添う…。

 

 

 

()()()()()()──っ!!…そうか…賭けてみる事はできるか…』

 

「ラプラス、何かアイデアがあるのかい?」

その時、凌牙の姿を見ていたラプラスが何かを閃く…!

 

 

 

『流星、お前のDホイールはあるか!』

 

「えっ、あ…遊馬の飛行船にあります!」

 

『アストラル、取り出してくれるか?』

 

(了解した…だが、何をするつもりだ?)

何かを思い付いたラプラスは流星のDホイールをスタジアムへと運び込む…。

 

 

 

『遊海から聞いた覚えがある…あいつが流星と初めてライディングデュエルをした時、お前が()()の幻影を見たと……そのDホイールは遊星のDホイールを受け継いだモノだと…ならば…!』

ラプラスは流星のDホイールのエンジン部…モーメントへと手をかざす…!

 

 

『我が真名、ラプラス=シーカー……いいや、()()()()()()()の名の下に告げる!我が力の欠片…未来へと託した希望よ…!我が魂に応えよ!!』

 

キィン─!

 

ラプラスがかざす手に力を込める…それに呼応するように、モーメントから光が溢れ出した…!

 

 

「えっ…ラプラスが、ユウミ…?遊海と、同じ名前…?」

 

「どういう事なの…?」

 

「…聞いたままの通りだ、遊矢…ラプラスの本当の名前はシラナミユウミ…遥かな未来の果てで…道を踏み外してしまった遊海さんの()()()の姿…それが、彼の正体なんだ」

 

「っ…もしもの、遊海…」

 

『遊星、榊遊矢、オレの事なんてどうでもいい…選択を間違えたオレの「物語」は既に()()()()()───だけどさ、お前達と絆を結んだ『白波遊海』の「物語」はこれからも続いていくんだ…あいつが歩み続ける()()()()()()()()は…』

ラプラスの真名を聞いて戸惑う遊矢と柚子…そんな彼らに遊星がその正体を告げる。

 

そして、思わぬ真実に戸惑う遊矢達を前にラプラスが自分の来歴を気にしないようにと声をかける…遊矢達が共に歩むのは自分ではない白波遊海なのだからと…。

 

しかし、そう言ったラプラスの横顔に…穏やかな遊海の面影が重なった事に遊矢達は気付いていた…。

 

 

キィン─!

 

 

『───()()()()からずいぶん永い時が過ぎたが……よく残っていてくれた──()()()

 

「これ…遊海の奴と同じ…」

モーメントから溢れ出た光がラプラスの手の中で形になっていく…そして、光の中から現れたのはウジャト眼の刻まれた金色の卵型の神器、転生者である遊海に与えられた『千年玉』と呼ばれる千年アイテムだった。

 

 

『アテム、これを鋳溶かし…核にすれば、「絆の欠片」を束ねる()になるか?』

 

【ああ、充分に器になり得るだろう…だが、いいのか?遊海(ユウミ)

 

『元々、自分から手放した力だ…これであいつらを助けられるなら、安いもんさ』

アテムによるお墨付きを聞いたラプラスは千年玉を空中へと放り投げる!

 

 

【さぁ!これで準備はできた!『絆の欠片』を持つ者達は自分と遊海を繋ぐイメージを…そして、遊馬や凌牙のような遊海と共に『今』を生きる者達は遊海や翠との『絆』を思い、()()!それが…遊海達を救う為の力になる!!】

 

「「「わかった!」」」

アテムの言葉を聞いた決闘者達はそれぞれに祈る…ある者は手を組み、ある者は胸に手を当て…手を繋ぎ…遊海達を救う為に…。

 

 

 

 

 

《遊海、僕達はずっときみ達に守られてきた…だから、今度は僕達の番だ!》

 

「お願い…帰ってきて…遊海!翠ちゃん!」

 

「オレ達の絆は絶対に断ち切れねぇ!」

 

「届いてくれ…!」

 

「遊海、翠…アタシがどれだけ心配したと思ってるんだい…!さっさと帰るんだよ…アンタ達の世界に!」

 

「遊海、さっさと帰ってこい!」

 

「翠さん…!」

 

「っ〜!!!」

 

 

「遊海先生…!一緒に帰って、デュエルしようぜ!」

 

「遊海先生も翠さんも…私達をずっと導いて、守ってくれた…!」

 

「次元戦争でも、先生達が先陣を切ってくれたから戦えたッス…!」

 

「大いなる力には、大いなる責任が伴う…ずっと重い責任を背負ってきた貴方達を助けたい…!」

 

「うう〜!恐竜さんの絆パワー!遊海先生に届いてくれザウルス〜!」

 

「先生…翠さん…!ボクの思いも届いて欲しいんだな…!」

 

「っ…頼む…!先生…!」

 

「転生しても…ボクの受けた恩は返しきれない…!遊海先生…!」

 

「セニョール遊海…!セニョーラ翠…!貴方達には幸せになる義務があるノーネ!」

 

 

「貴方と遊矢の力があったから、シティは新たな未来へと進む事ができた…!今こそ、オレ達の力を1つに…!!」

 

「遊海、貴方がいなければ…俺は燃え尽きたままだった…!」

 

「アンタ達はいつも無理してばっかりだったよな…!こんな時だからこそ…助けさせてくれ…!!」

 

「お願い…!私達の祈りを届けて…!」

 

「うぅ〜!!帰ってきて!遊海─!翠─!」

 

「お願い…!」

 

「……遊海、お前に救われた者として…友として…!お前を助けさせてくれ…!」

 

「本当によぉ…!なんでお前といると面倒事にばっかり巻き込まれるんだろうな!あの時みたいに帰って来い!!」

 

「前世での事も含めて、私は貴方の貢献に報いる事ができていません…!しかし、祈る事が貴方を救う事になるのなら…いくらでも祈りましょう!!」

 

「遊海さん…貴方は私達の息子をずっと守り、導いてくれた…!だから、今度は私達に貴方を助けさせてくれ…!」

 

 

「遊海…!本当は、オレが一番頑張らなきゃならなかったのに…無理させてごめん…!戻って来てくれ…!」

 

「翠さん…!また、お料理を教えて欲しいんです…!だから…帰って来て…!」

 

「父さん…母さん…!必ず助ける!だから、待っててくれ!!」

 

「お父さん…母さん…!絶対に迎えに行く…助けてみせる!!」

      

「あの時、オレが戦場にいれば運命は変わったかもしれない…白波さん、貴方を助けられなければ…オレが来た意味がない!!」

 

《貴方のおかげでオイラはオボミさんに出会えたでアリマス…!カイト様やハルト様、フェイカー様も家族の絆を取り戻せたでアリマス!その御恩は、まだ返せていないでアリマス─!!》

 

「遊海…貴方は敵であった我らを受け入れ、守ってくれた…その恩を返すのは今だ…!」

 

「…遊海、アンタを助けてぇんだ…!アンタを死なせた事の償いをさせてくれ…!」

 

「うおお!!熱血の絆の力!届きやがれ─!!」

 

「アンタにはポン太共々世話になってんだ…!神様仏様…ドン・サウザンドでもいいから…!遊海を助けてくれ…!」

 

「私は神に祈った事はない…しかし、お前の為にならいくらでも祈ろう!」

 

「遊海さん…!翠さん…!おじいちゃんもおばあちゃんも、夏菜も…みんな、2人が帰ってくるのを待ってます!!」

 

「遊海さん…アタシは、アンタを救う為にじいちゃんに『魂』を預けられてきたんだ…!だから、絶対に助ける!!」

 

「遊海…翠さん…!アーククレイドルでアポリアもパラドックスも…Z-ONEもキミ達を心配してる…キミ達の未来はここからなんだ!!」

 

『(────早く帰るぞ、馬鹿夫婦…これ以上、エメルや大切な子供達を心配させんじゃねぇ…!)』

 

《フォウ…!(ボクのなけなしの魔力…ここで使い切ってもいい…!ボクは…きみ達とずっと一緒にいたい!みんなで家に帰りたいんだ!!)》

 

 

「兄さんから聞いたんです…貴方が、私達を助ける為の力をくれたって…お礼を言わせて欲しいんです!!」

 

「…遊海、お前はアカデミアの戦士だった私を色眼鏡で見ず、仲間として接してくれた…攫われた私を助けてくれた…!だから…だから…!!」

 

「貴方がいたから、ユーゴは私を助けられたって言ってました…!私の祈りが、少しでも力になるのなら…!」

 

 

「白波遊海…翠…私とレイは余計な事をして、貴方達を苦しませてしまった…!貴方達の力があったから、レイを取り戻す事ができたんだ…!その貴方達が苦しんでいるなら…私は…!!」

 

「遊海…貴方の魂の籠められた拳…あれがなかったら、私は遊矢や遊希の苦しみを知らないままだったかもしれない…!そして、息子を救ってくれた貴方を…私は助けたい!!」

 

 

「遊海さん…あなたがいたから、兄様と母様と零王父様は仲直りできた…レイも助けてくれた…」

 

「貴方の力なくして、次元戦争やズァークとの決戦を乗り越える事はできなかった…!私は改めて、貴方に礼を言いたいんだ…!」

 

「…遊海と過ごした時間は短かったけど…あなたは本当に世界を救う英雄だった…!英雄が帰ってきて、初めてハッピーエンドなんだ…だから…!」

 

「遊海、ボクと貴方の接点はほとんどないけど…祈らせてくれ…!貴方が帰って来てくれないと…遊矢は本当の意味で笑顔になれないんだ…!」

 

「拙者も貴殿との関わりは薄かった…だが、貴殿こそ世界を救った英雄…!どうか、戻って来てくれ…!」

 

「…お前がいたから、俺は自分を見失わずに瑠璃を助け出す事ができた…!新たな友を得た…!届いてくれ…!」

 

「オレはさ、アンタに守られてばっかりでほとんどいいトコなしだった…だからさ、祈らせてくれ…!」

 

「…遊海…貴方がいたから、遊矢や柚子を救う事ができた…取り残された貴方を助けたい…!!」

 

「遊海さん…!シンクロ次元で私を迎えに来てくれて、遊矢と再会させてくれてありがとう…!」

 

「遊海…アンタがいなかったら…オレ達だけじゃ、次元戦争を止める事も、ズァークを救う事もできなかった…!なのに、遊海ばっかり辛い目に遭わせて…!オレは、アンタを笑顔にしたい!笑顔で会いたいんだ──!!」

 

それぞれの思いを抱いて祈る決闘者達…その体は虹色の光を纏い、祈りの力が空中に浮かぶ千年玉へと集中していく…。

 

 

 

 

【……感じるか?遊海、翠…お前達を思う仲間や家族の想いを…お前達が守り、導いてきた希望の光……それが、お前達を導く光になる】

 

 

キィン─!!

 

 

アテムの言葉と共に『絆の器』となった千年玉に変化が起きる。

 

虹色の光に包まれた千年玉の形がゆっくりと解けていく…手のひら大だった大きさは元々の数倍以上に大きくなり、解けた光が編み込まれていくように鋭い何かの形へと形成されていく───

 

 

 

【──完成だ、これが…境界を破る為の刃…】

 

『刃…というか………()だな……そうか、この世界では()()()()()が世界を救う為に戦った…だからこの形になった訳だ』

 

「というか…()()()()()()!?あんなの普通の人間じゃ使えないって!?」

変化した「絆の器」…その姿は虹色の光を纏う、巨大な白い塔のような馬上槍(ランス)だった…穂先は金色に輝き、柄から護拳にかけては編み込まれたような白い鋼が輝いている。

 

問題はその()()さ…それは明らかに人間の力では使えない、モンスターサイズの槍だったのだ…その大きさに遊矢は思わず突っ込んでしまう。

 

 

キィン──

 

 

《ほうほう…!遊海君が帰ってくるのにやけに時間がかかると思って覗いてみれば…中々面白い事になっているね!まさか、新たな宝具の誕生に立ち会う事になるとは!》

 

(マーリン、また来たのか…いや、遊海のファンを公言する貴方なら当然か…)

スタジアムの一角に花吹雪が舞い上がり、白いローブを纏う魔術師…マーリンが現れる、遊海達の帰還が遅れている事が気になって様子を見に来たのだ。

 

 

《やぁ、アストラル!決闘者の諸君もご機嫌よう!さっきぶりのマーリンお兄さんさ!と、挨拶はそこそこに…僭越ながら、その槍に名前を付けさせてもらおうか!》

決闘者達の頭上で輝く白い槍を見たマーリンは穏やかに語り始める。

 

 

《キミ達の頭上に輝く白き槍…それは生と死の境界すらも貫く『絆』の結晶、遊海君の持つ『魂の大剣』に倣って…この名を捧げよう──『最果てにて輝く軌跡の槍』…アーク・ロンゴミニアド、と!》

 

 

キィン─!

 

マーリンによる命名を受けた白き槍が優しい光に包まれ、収縮…1枚のカードとなって、遊海の息子である凌牙の手の中に収まった…。

 

 

 

 

「これが、父さん達を助ける為の力…!」

 

【そうだ、あとはその槍を「壁」へと突き立てれば…お前達はARC次元の中心世界に入れるはずだ───そろそろ()()か…】

凌牙へと遊海を救う力を託したアテムは静かに千年パズルへと触れる、そして一瞬の閃光と共にその姿は遊戯と分離した…。

 

 

「…アテム、ありがとう」

 

【良いんだ……オレはもう、冥界に戻らなくてはならない……せっかく手に入れた2度目の人生だ、みんなで楽しく過ごすといい…また会おうぜ──相棒】

 

「──うん!またお土産話をいっぱい持っていくよ…もう1人の僕!」

遊戯と短い別れの言葉を交わしたアテムは千年パズルのウジャトの眼を手で覆う…そして、千年パズルは光の粒子となって消え去り…光の軌跡を残し、アテムは境界の先へと戻って行った…。

 

 

 

 

『アテム、ありがとな───お前達!これで、遊海達を救い出す準備は整った!オレ達はこのまま、ARC次元の中心部へと向かい…遊海と翠を救出する!』

アテムに小さく感謝したラプラスが声を張り上げる!

 

 

『しかし、中心部は未知の世界…何が起きるか分からない!故に、向かうメンバーを指定させてもらう!「人間界」から来たチームZEXALは全員、それから…武藤遊戯・城之内克也・海馬瀬人、そして──』

 

「っ…ラプラス!オレも、遊海を助けに行かせてくれ!!」

 

「遊矢…!」

未知の世界に乗り込む事から向かうメンバーを指名していくラプラス…その様子を見た遊矢が声を上げた…!

 

 

「遊海が戻って来なかったのは、オレの…ズァークのせいなんだ!だから、責任を…遊海を助けるメンバーに入れて欲しいんだ!」

 

()()()、遊矢…お前には立ち会う義務がある…残りのメンバーは榊遊矢!柊柚子!赤馬零児!以上、オレを含めた22名で遊海と翠の救出に向かう!アストラル、頼むぞ!』

 

(了解した!用意ができた者からフラッシュ・トランサーで飛行船に乗り込んでくれ!)

 

「「「了解!」」」

 

「待っててくれ、遊海!必ず助ける、」

そして…準備を整えた決闘者達は次元回廊を通り、ARC次元の中心部へと向かった…。

 

 

 

………

 

 

 

 

『っ…』

 

(ラプラス、大丈夫か?)

 

『……大、丈夫……少し、力を使い過ぎたみたいだ……まったく、馬鹿遊海が……もう少しで、中心空間なのに…!』

次元回廊を進む次元飛行船…そんな時、気を張り続けていたラプラスが膝をつく…力を使い過ぎた事で限界を迎えてしまったのだ…。

 

 

『くそ…肝心な時に、やくにたた、ないのは、オレも…おなじ、か──』

 

「あっ…ラプラス!?」

 

「大丈夫、気を失っただけだよ……お疲れ様、ラプラス…大丈夫、きみの思いは…みんなも分かっているから…」

肉体的にも、精神的にも限界だったラプラスは気を失ってしまう…慌てて遊馬が駆け寄るが…彼の体を受け止めたブルーノの腕の中でラプラスは眠りに落ちた…。

 

 

 

 

 

 

「あれが、この世界の中心部…!」

 

《計器による解析完了…あの空間を覆っているのは『ヌメロン・コード』の力を含んだ、強力な『スフィア・フィールド』でアリマス!》

 

(それは…並大抵の手段では突破できないはずだ…!)

そして、次元飛行船はついにARC次元の中心部に到達した…そこに広がっていたのは…巨大なスフィア・フィールドに覆われた、隔離された空間だった…。

 

 

 

「どうする、凌牙」

 

「決まってんだろ…あの中から、父さんと母さんを助け出す!力を貸してくれ、遊馬!アストラル!カイト!」

 

「よしきた!!行くぜ、アストラル!」

 

(ああ!あのスフィアフィールドを破るには、強力な力が必要だ!)

 

「いくぞ!」

 

《フォウ!!》

強力なスフィアフィールドを前に三勇士達は頷き合い、甲板へと飛び出した!

 

 

 

 

いくぜ、アストラル!オレと!

 

私で!

 

オーバーレイ!!

   

甲板から飛び出した遊馬とアストラルはその身を光に変え、異次元空間を旋回する!

 

 

絆は進化する!より強く!より固く!!

 

絆結ばれし時!力と心が1つとなり、光の奇跡と伝説が生まれる!!

 

アルティメット・エクシーズ・チェンジ!ZEXAL!!

 

遊馬とアストラル、固い絆で繋がった2人の魂が重なり合い…「奇跡の勇者」ZEXALⅢが現れる!

 

 

 

「いくぜ、現れろ!『F No.0』!」

 

00

 

「天馬!今こそ解き放たれ、縦横無尽に未来へ駆ける!!これがオレの天地開闢!オレの未来!!『未来皇ホープ』!!」」

そして現れるのは「F(フューチャー) No.0」…遊馬自身のナンバーズである未来皇が現れる!

 

 

(遊馬!私達の絆の力を合わせるぞ!!)

 

「ああ!オレは『未来皇ホープ』1体でオーバーレイネットワークを再構築!ユナイト・エクシーズ・チェンジ!!」

さらに未来皇は再び銀河へと飛び込み、光のビッグバンが次元を照らす!

 

 

「現れろ!『F No.0』!!」

 

 

00

 

 

「解き放たれし天馬と希望の記憶が合わさりし時、解き放たれるのは新たな天地開闢!希望の未来!!かっとビングだ!オレ!!『未来龍皇ホープ』!!」

希望の光が降りそそぐ中、新たな希望が降臨する…それは遊馬とアストラルの結束の証、ナンバーズの頂点たる龍の力を宿す未来の皇『未来龍皇ホープ』!

 

 

「カイト!!」

 

「いくぞ!現れろ!銀河究極竜!『No.62』!!

 

 

62

 

宇宙に彷徨う光と闇…その狭間に眠りし哀しきドラゴン達よ!その力を集わせ、真実の扉を開け!『銀河眼の光子竜皇』!!

カイトが投擲した青き聖剣が次元を切り裂き、光のドラゴンを呼び覚ます!

 

 

 

「凌牙!」

 

「父さん…母さん!今、助けに行く!!目覚めろ!オーバー・ハンドレット・ナンバーズ!!」

 

 

          107

             106

         105

             104

         103

             102

           101          

 

凌牙がその身に宿すカオスを開放…その背後に7体のカオス・オーバー・ハンドレット・ナンバーズ…「CNo.101S・H・Dark Knight」「CNo.102神葬零嬢ラグナ・インフィニティ」「CNo.103光堕天使ノーブル・デーモン」「CNo.104仮面魔踏師アンブラル」「CNo.105BK-彗星のカエストス」「CNo.106溶岩掌ジャイアント・ハンドレット」「 CNo.107超銀河眼の時空龍」が並び立つ!

 

 

「そして!オレは7体のカオス・オーバー・ハンドレット・ナンバーズでオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

そして、7体のカオスナンバーズは光となり…凌牙の絆の象徴を呼び覚ます!

 

 

混沌の具現たる軍神よ!切なる願いを我が元へ…集え!七皇の絆!『CX─冀望皇バリアン』!!

混沌の光の爆発の中から凌牙の切り札…赤き鎧を纏いし冀望の軍神が降臨する!

 

 

 

(シャーク!みんなの『絆』を束ねるんだ!)

 

「ああ!!装備魔法『最果てにて輝く軌跡の槍(アーク・ロンゴミニアド)』を『冀望皇バリアン』に装備!!」

赤き軍神の手に輝く白き槍が握られる!

 

 

「遊馬!アストラル!カイト!頼む!!」

 

「おう!いっけぇ!『未来龍皇ホープ』!!」

 

「「ランドチャリオッツ・ストライク!!」」

そして、冀望皇と未来龍皇が共に白き槍を掴み…渾身の力で投げ放つ!!

 

「スフィア・フィールドを貫け!エタニティ・フォトン・ストリーム!!」

さらに希望の竜皇の青き息吹が投げ放たれた槍を加速させる!

 

 

「「「「「いけ──!!!」」」」」

凌牙達3人の全力が込められた白き槍は…虹色の光を放ちながらスフィアフィールドへと激突する!!

 

 

「っ…これでも、ダメなのか!?」

 

「そんな…!!」

 

スフィアフィールドと白き槍が衝突…激しい火花が散り、スフィアフィールドに罅が入る……だが、槍はそれ以上進まず…少しずつ勢いが弱まっていく…!

 

 

 

「まだだ!!ホープ剣ドラグーンスラッシュ─!!」

 

「ランドチャリオッツ・スラッシュ!!」

 

「エタニティ・フォトン・ストリィィム!!」

しかし…遊馬達も諦めない、それぞれのモンスター達の攻撃をスフィアフィールドへとぶつける…それでもスフィアフィールドは砕けない…!!

 

 

 

「父さん…!みんな、父さんや母さんを助ける為に力を貸してくれたんだ…!!だから…だから!!」

 

「シャーク…!」

凌牙の必死の思いも虚しく、白き槍の放つ光が弱まっていく…。

 

 

 

 

「まだだ!諦めてたまるか!!」

 

「っ…遊矢!?」

その時、攻撃の余波によって大きく揺れる飛行船の甲板に遊矢が飛び出し、声を上げる!

 

 

「オレは遊海に守られて、助けられてばっかりだった!そのお礼も言えてないのに…こんな所で止まってなんかいられないんだ!!」

 

「その通りだよ、遊矢君…!僕達は、こんな所で止まってなんかいられない!!」

 

「破れないなら…破れるまで威力を上げればいい!!」

 

「全能の力なんかで…オレ達の絆を阻めると思うな!!」

 

「遊海先生!アンタがどんなピンチでも諦めなかったように…オレ達も絶対に諦めない!!」

 

「みんな…!」

そして甲板に出てきたのは遊矢だけではない…遊戯、海馬、城之内…そして十代…仲間達は力を振り絞る!

 

 

「『ブラック・マジシャン』!黒・魔・導!(ブラック・マジック)!」

 

「『真青眼の究極竜』!ハイパー・アルティメット・バースト!!」

 

「『真紅眼の黒竜』!黒炎弾(ダーク・メガフレア)!!」

 

「来い!『ゴッド・ネオス』!レジェンダリー・ストライク!!」

最強の魔導師・究極竜の息吹・黒き炎の息吹、そして絆と友情の光弾がスフィアフィールドに突き刺さる!

 

 

「『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!その二色の眼で…壁を打ち破れ!!螺旋のストライク・バースト!!」

そして…甲板に現れたオッドアイズから放たれた赤と黒の螺旋の炎がスフィアフィールドと拮抗する白き槍の石突に直撃する!!

 

 

キィン─!

 

 

「っ…この光は!?」

 

「アーク・ロンゴミニアドが…!」

そして白き槍に変化が起きる…白き槍の纏う光が強まっていき、虹色の光が螺旋状に渦巻く槍に変わったのだ…!

 

 

(そうか…!『ヌメロン・ピース』の使用権はARC次元を生み出した遊海とズァークにある…つまり、ズァークの力を受け継ぐ遊矢も()()()()()()()()!)

 

「それって─!?」

そして、アストラルが遊矢の隠された力に気付く…ズァークの力を受け継ぐ遊矢は、この次元において遊海と同じく「全能の力」を使う権利を持っていたのだ…!

 

 

「いっけぇぇ──!!」

遊矢の魂の咆哮が響く…そして──

 

 

バキ…バキ…バキーン!!

 

槍の穂先がスフィアフィールドを貫通…スフィアフィールドに風穴を開けた…!

 

 

「や、やった!!スフィアフィールドを破った!!」

 

「っ…まだだ!少しずつ()()されている!!早く通り抜けなければ、やり直しだ!!」

スフィアフィールドを貫けた事で歓声を上げる遊馬…だが、カイトが声を上げる…ようやく開いた風穴が少しずつ塞がり始めていたのだ…!

 

「璃緒!いくぞ!掴まれ!」

 

「うん!!」

 

「『砦を守る翼竜』を召喚!」

 

「頼むぜ!レッドアイズ!!」

 

「榊遊矢!いくぞ!飛行船では間に合わん!!」

 

「う、うん!!」

モンスターの力を借りてスフィアフィールドに飛び込んでいく遊馬や遊戯達…その様子を見た海馬が遊矢へと声をかける!

 

 

「遊矢!」

 

「我々も急ぐぞ!」

 

「柚子、零児…ああ!『クリアウイング・シンクロ・ドラゴン』!頼む!!」

 

「『DDD超死偉王ホワイテスト・ヘル・アーマゲドン』!!」

 

《フォーウ!!(ボクも乗せてー!!)》

 

「わっ!?フォウくん!?」

そして遊矢は柚子やフォウと共にクリアウイングに乗り、零児も自分のモンスターを喚び出してスフィアフィールド内部へと飛び込んだ…!

 

 

 

「遊馬、凌牙、遊矢、遊戯さん…先生達の事、頼んだぜ…!」

 

そして、スフィアフィールドの穴が完全に塞がる…あえて飛行船に残った十代は仲間達に全てを託した…。

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

「ここが、オレ達の世界の中心…」

 

「…きれい…」

 

(アストラル世界に似た環境だな…キミ達にとっては聖域や神域、と言った方が伝わりやすいか…)

スフィアフィールドを抜けて中心空間へと降り立つ遊矢達…彼らが見たのは、一言では言い表せないような神秘的な世界だった。

 

 

空は夜空のように暗く…星が瞬いているが、昼間のように明るく…空中には優しい光を放つ水晶が浮かんでいる。

 

周りには古代の神殿を思わせる石の柱が立ち並び、色とりどりの花が咲き誇り…心が穏やかになるような空気が流れていた…。

 

 

 

「シャーク、この場所…」

 

「ああ、何処となく似てるな…あの時の場所に…」

そして、遊馬と凌牙はその場所に似た場所に覚えがあった…バリアン世界とアストラル世界、そして人間界を守る為に遊馬と凌牙(ナッシュ)が自分の信じる「信念」をぶつけ合った場所…その場所に似ていたのだ。

 

 

《フォウ、フォーウ!!(みんな!こっちだよ!!)》

 

(フォウが道案内してくれるらしい、行こう!)

 

「ああ!行こうぜ遊矢!」

 

「うん!」

フォウが遊馬達を導くように声を上げる…遊矢達はその後ろ姿を追いかけた…。

 

 

 

キィン…

 

 

 

「あ…!あれ!!」

 

「間違いない…『ヌメロン・ピース』だ!」

フォウに導かれて穏やかな世界を進み続けた遊矢達は広場のような場所に辿り着く、そして空を見ていた柚子が空中に浮かぶ赤と青の光に気付いて声を上げた…そこにあったのは、紛れもなく全能の欠片『ヌメロン・ピース』だった…。

 

 

 

《凌牙…遊馬…遊戯さん…!来てくれたのですね…》

 

《よ、よかった…!私達じゃスフィア・フィールドを抜けられなくて…!》

 

「あっ…彩華!ウィンダ!」

 

「っ…父さん!母さん!!」

 

そして、凌牙達が到着した事に気がついた者達が声を上げる…それは人間体のアヤカと霊獣モードのウィンダだった。

そして座り込んだ、ボロボロの彼女達の膝の上には介抱される遊海と翠の姿があった。

 

その姿を見た凌牙達は急いで彼らへと駆け寄った…。

 

 

 

 

「母さん!しっかりして!母さん!!」

 

「っ…うう…璃緒、ちゃん…?」

 

「ああ…!よかった…よかったぁぁ…!!」

気を失った翠を揺さぶる璃緒、その声を聞いた翠は目を開き…璃緒は泣きながら翠へと抱きついた…。

 

 

「心配かけて、ごめんね…疲れて…動けなくなっちゃった…」

 

「もう…!お父さんも母さんも無理し過ぎなのよ!回復魔法で治すから大人しくしてて!!」

 

「あはは…怒られちゃった…」

 

《フォーウ…(そりゃ、璃緒も怒るよ…)》

璃緒は疲労困憊の翠へと治療を施す…頼れるようになった娘の姿を見た翠は穏やかに笑っていた…。

 

 

 

 

「遊海!しっかりして!助けに来たんだ!」

 

「父さん!起きてくれ…!父さん!!」

 

「───りょうが…?ゆうぎ…?……ああ、そうか…おれ、また()()()()()、のか…」

 

「「遊海!!」」

そして…遊戯と凌牙の呼びかけによって意識を失っていた遊海は目を覚ます…だが、その声は弱々しかった…。

 

 

「……ああ、もう……さいごは、ハッピーエンドに…したかった…のになぁ……ゴフッ…」

 

「っ…!!父さん!!」

満身創痍の遊海は血を吐きながら弱音を漏らす…その様子を見た凌牙は慌てて回復を試みる…!

 

 

「凌牙!こういう時は回復魔法よりも回復薬を飲ませた方が早く効くんだ!遊海!これ飲め!!」

 

「あっ…かつ、や…ありがとう…」

そして、城之内は取り出した()()()()を遊海へと飲ませる…だが……

 

 

 

「……ああ、楽になっ───ぶくぶく…」

 

「っ!?父さん─!?」

 

「えっ、あれ!?なんで!?」

 

「なっ…凡骨!貴様、遊海に何を飲ませた─!!」

薬を飲み干した遊海は口から泡を吹いて白目を向いてしまう…その様子を見た海馬は城之内へと詰め寄る!

 

 

「なにって『ご隠居の猛毒薬』の緑の奴だよ!あれなら1200ライフ回復で一番効果があるだろ!?」

 

「───馬鹿者ぉぉ!!『ご隠居の猛毒薬』の回復効果は紫の薬だ───!!」

 

「………えっ、マジ?」

城之内は知らなかった…日本では「回復薬」と言えば緑色のイメージが定着しているが…このカードをデザインしたペガサスの母国・アメリカでは…()()()()のイメージで定着している事を…。

 

そして、彼は覚えていなかった…遊海の毒耐性は、デュエルモンスターズのカードを介した場合は普通に効いてしまう事を…。

 

 

 

「ぶくぶく…ガクッ」

          

「ちょっ、遊海─!?」

 

《ま、マスター!お気を確かに─!!》

 

「うわあああ!?遊海しっかりしろ─!!」

 

(遊馬!「No.49」だ─!)

 

「うおおっ!?かっとビングだぁぁ!!」

 

 

《フォウ…(…踏んだり蹴ったりにもほどがあるんじゃない…?)》

 

 

※この後、回復した翠を含む全員の処置で無事に蘇生しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………アテムが、苦笑いしてた……」

 

「遊海…本当にすまねぇ…いや、ごめんなさい…」

 

《本当です…!私が気付くのがもう少し遅かったら…!》

 

《フレア、落ち着いて…城之内さんも悪気があった訳では…》

 

《フォウ、フォウ…(友達のせいで死んじゃったら笑えないよ…というか、本当に危なかった…フレアが毒を焼いてくれてよかったよ…)》

遊海が生死を彷徨ってからしばらく…遊海はようやく回復し、城之内が土下座で全員に謝罪している…。

 

 

 

 「……というか…ここは何処だ…?俺、『ヌメロン・ピース』の書き換えの途中でぶっ倒れて…」

 

「やっぱりか…父さん、最初から何があったのか説明するぜ…零児、補足を頼む」

 

「ああ、承知した」

落ち着いた遊海は辺りを見回して見覚えのない景色に首を傾げる…その様子を見た凌牙は遊海と翠に事情を説明した…。

 

 

 

 

 

「……ああ……今回の俺は…みんなに助けられてばっかりだ……本当になさけない…」

 

「遊海!そんな事ないって!遊海が守り続けたみんなが…みんなと繋いだ『絆』の力が遊海を助けてくれたんだ!」

 

「その通りだ、遊海!これ以上落ち込んだ姿を見せるなら…我がブルーアイズで吹き飛ばすぞ!!」

 

「遊戯…海馬社長…」

凌牙から自分の引き起こしてしまった事態を聞いて項垂れる遊海…そんな彼は遊戯は優しく、海馬は力強く元気づける。

 

 

「それに遊矢、零児…そして柚子ちゃん…本当にすまなかった…!きみ達には大変な思いをさせちゃったな…」

 

「気にしないでよ遊海!そのおかげで零児とすんごいアクションデュエルができたんだ!」

 

「その通りだ…レイも無事に笑顔を取り戻した、貴方が気に病む必要はない」

 

「私は少し長く寝てただけなので!」  

 

「……ありがとう、みんな」

そして…今回の一番の被害者である遊矢達に頭を下げる遊海…だが、当の遊矢達は笑ってそれを許したのだった。

 

 

     

 

 

「さて…あとは『ヌメロン・ピース』を書き換えて、微調整をすれば…今回の事件は解決だな」

体に付いた埃を払いながら遊海が立ち上がる…ズァークを倒し、ARC次元を救った…遊海達がこの次元に留まる時間も長くないだろう…。

 

 

「でも、その前に……遊矢、お前に頼みがある」

 

「えっ?頼みって?」

 

「エンタメデュエリスト・榊遊矢…俺とデュエルだ」

 

「っ!!」

全ての解決を前に遊海は遊矢にデュエルを申し込む…!

 

 

 

「俺達は間もなくこの次元を離れる…その前に、俺を()()()()()()()…俺達がいなくても、自分達の世界は自分で守れるのだと…より良い世界を目指していけると!」

 

「遊海…!分かった!受けて立つ!」

遊海は静かに闘志を解き放つ…この次元における最高最善の決闘者を見定める為に…。

 

 

「まぁ、普通に戦ったら俺が有利だから…()()()を付けよう…遊矢、俺が使うデッキは()()()()()()()

 

「遊海のデッキを…!?」

決闘を前に遊海の思わぬ提案に遊矢は驚愕する…!

 

 

「そうだな…『アドバンス』『儀式』『融合』『シンクロ』『エクシーズ』…そして『ペンデュラム』…この中から、お前が戦いたいデッキの種類を選んでくれ…俺はその召喚法を主力としたデッキでお前と戦おう!」

 

「面白い事考えたね、遊海…!なら、オレは───」

 

 

遊矢と遊海…ARC次元における最後のデュエルが始まろうとしていた…!

 




最果てにて輝ける軌跡の槍(アーク・ロンゴミニアド)

見た目 穂先が金色に輝く、織り込まれたような模様が刻まれた、虹色に輝く白い馬上槍

ラプラスが流星号(元・遊星号)から回収した千年玉を核として、ARC次元に散らばった遊海の魂の欠片である『絆の欠片』と遊海達を想う仲間達の絆の力が形となって生まれた新たな『宝具』…命名は通りすがりのマーリン

常人には扱う事ができないほどの巨大さを誇る。

モデルはFateシリーズの「最果てにて輝ける槍」

装備魔法

自分フィールドのモンスターに装備できる。
①このカードを装備したモンスターの攻撃力は2000ポイントアップする。守備表示モンスターを攻撃した時、攻撃力が守備力を上回っていれば、その数値分のダメージを相手に与える。

②1ターンに1度発動できる。相手ライフを半分にする。この効果は相手のLPの数値が自分のLPの数値を上回っている場合のみ発動できる。


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最後の決闘─エンターテイナーと決闘王─

ハーメルンの読者の皆様!あけましておめでとうございます!S,Kです!

どうにか松の内の間に執筆できてよかった…ARC-V編完結まであと少し、もう少しお付き合いください!

それでは最新話をどうぞ!


「さぁ、遊矢!俺はどのデッキを使えばいい?」

 

『ヌメロン・ピース』を書き換える際のトラブルによって行方不明となっていた遊海と翠を遊矢達は『絆』の力を束ねる事で救出する事に成功した。

 

これによってズァークの暴走に端を発する全ての事件が解決、遊海達はようやく自分達の世界に帰還する事ができるようになった…そして、帰還を前に遊海は全ての試練を乗り越えた遊矢へと最後の決闘を申し込んだのだが───

 

 

『オレは──全力の遊海と戦いたい、かな』

 

 

「「遊矢!?」」

 

「おおっと…!?予想外の答えだな!?」

 

遊矢は『ハンデ』として、数多のデッキを扱う遊海の好きなデッキを選ぶ権利を与えられていた…しかし、遊矢が選んだ答えは『全力』の遊海と戦いたいという決意だった。

 

その言葉を聞いた柚子や零児は思わず声を上げ…遊海も驚いている…。

 

 

 

『遊海は…ずっとオレ達の事を守って、導いてくれた…それで誰よりもボロボロになって…それでも、オレ達を守れたって笑ってて…でも、()()()()()()()()じゃないんじゃないかって…』

それは遊海の戦いを見てきた遊矢の感じた疑問だった…遊海は故郷である『DM世界』やランサーズ、ARC次元の平和を守る為にずっと戦い続けてきた。

 

 

 

世界を壊さんとしたズァークの足止め

 

スタンダード次元で目覚めた直後のオベリスクフォース戦、無法のデュエルを生徒達に課した『梁山泊塾』ヘの粛正

 

シンクロ次元の世直しを図る為のジャックとのデュエルに、目覚めた『冥界の王』を倒す為のデュエルとオベリスクフォース迎撃戦

 

エクシーズ次元に侵攻するアカデミア軍との戦い

 

融合次元・アカデミアへの反撃作戦…そして、全ての元凶だった『虚無の邪神』とズァークとの決着

 

 

ここに至るまでに数多の戦いを乗り越えてきた遊海…しかし、それは『世界の平和を守る為』『子供達の未来を守る為』『悩む者を導く為』───全て()()()()()()()の為のデュエルだった。

 

そして、遊矢は思ったのだ…「遊海は4つの次元を巡る中で()()()()のデュエルをした事があったのか?」と……心の底から()()()()デュエルをする事ができたのだろうか?と…。

 

 

「ふっ…ははは!あははははは!!……ああ、これは一本取られた……そうだな、遊矢…この次元で目覚めて…俺が心の底から笑えたのなんて数えるほどしかない……俺は『英雄』で『決闘王』だからな!みんなが笑顔なら、それで良いと…満足だと思って戦ってきた…意外と不器用なんだよ、俺は…」

 

『遊海…』

遊矢の言葉を聞いた遊海は一瞬、虚を突かれたように目を見開いた後、噴き出して笑い…バツが悪そうに頭を搔く…遊矢はこの短い期間に遊海の本質に気付いていたのだ。

 

 

 

「大いなる力には、大きな責任が伴う…俺はお前達より()()()()力を持っていた…だから、この力を世界を守る為に使った……それだけの事さ」

 

『でも…もうそんな必要はないよ、遊海…この世界の、ARC次元の危機は終わった!だから…最後の最後に……遊海には笑って欲しいんだ!遊海が好きなデュエルを、心の底から楽しんで欲しい!!それが…オレが遊海にできる、唯一の()()()だから!』

 

「──まったく、『男子、三日会わざれば刮目してみよ』……スタンダード次元で柚子ちゃんを守れなくて泣いていたのが嘘みたいじゃないか……遊矢!お前の()()()()、確かに受け取った!!」

自分の持つ強い力を誰かの為に使い、誰よりも傷ついてきた遊海…そんな遊海に『笑顔』になってもらう為、遊矢は全力の遊海に挑もうと考えた…。

 

そしてそんな遊矢の魂の言葉を聞いた遊海は赤帽子を被り直し、闘志を解き放つ!

 

 

「俺の名は白波遊海!仲間との『絆』と共に、世界を救ってきた『決闘王』だ!」

 

『オレは榊遊矢!デュエルでみんなを…世界を笑顔にするエンタメデュエリストだ!!オレは全力で…伝説に挑む!!』

ARC次元の中心空間を揺るがす遊海の闘志…その名乗りに応えるように、遊矢も声を張り上げる!

 

 

 

「遊矢…!頑張って!遊矢─!!」

 

「榊遊矢!きみの力、遊海に示してみせろ!!」

わくわくとした笑顔を見せる遊矢に柚子と零児が声援を送る!

 

 

「ヘヘっ…!やっぱり、最後はこうでなきゃな!!遊海!負けんなよ─!!」

 

「フン…遊海、そして榊遊矢…今のお前達の力、見せてもらうぞ!」

 

「遊海、遊矢君…きみ達のデュエルが見てみたかったんだ!」

歓声を上げる城之内、そして静かに…しかし、嬉しそうに遊戯と海馬はデュエルを見守る。

 

 

「うおお!!燃えてキタ─!!かっとビングだ!二人とも─!!」

 

「アストラル、このデュエルは──」

 

(おそらく、()()()()()()()()()…だが、彼が遊海に挑む事に意味がある…私はそう思う)

 

「お父さん!頑張って─!!」

 

《フォウ、フォーウ!!(遊海!頑張れ─!!)》

 

「父さん!無理するなよ─!?」

2人の決闘を前にテンションの上がる遊馬、静かに見守るカイトとアストラル、純粋に声援を送る璃緒とフォウ、病み上がりの遊海を心配する凌牙…そして──

 

 

「頑張って!遊海さん──!!」

 

「──ああ、これが…俺の最後のデュエルだ!」

翠の声援に背中を押され、遊海はデュエルディスクを展開する!

 

 

【アクションフィールド『クロス・オーバー』発動!】

 

「(前に戦った時は手も足も出なかった…それでも、オレは…今の遊海を受け止めてみせる!!)」

圧倒的な闘志を放つ遊海を前に、遊矢は覚悟を決める!

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

遊矢LP4000

遊海LP4000

 

 

 

特殊ルール発動

 

フィールド魔法『クロスオーバー』常時発動

 

アクションカード使用可

 

 

 

 

『オレのターン!』

『まずオレはスケール1の「EMレディアンジュ」とスケール8の「EMジェントルード」をペンデュラムスケールにセッティング!』

遊矢の背後に現れた光の柱の中に白いドレスを着た天使の少女とタキシードを着た悪魔の青年の姿が浮かび上がる!

 

PENDULUM

 

『そして「ジェントルード」のペンデュラム効果発動!もう片方のペンデュラムゾーンに「レディアンジュ」がセッティングされていて、自分フィールドにモンスターが存在しない時!デッキから「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」を手札に加えられる!さらに魔法カード「ペンデュラム・カード・バースト」を発動!自分のペンデュラムゾーンのカード2枚を破壊して2ドロー!』

遊矢のペンデュラムゾーンが消え去り、新たな手札を導く!

 

『よし…!オレはスケール1の『EMゴムゴムートン』とスケールの8の『EMクラシックリボー』でペンデュラムスケールをセッティング!』

再び現れた光の柱の中にゴム肌の羊と指揮棒を持つ毛玉が浮かび上がる!

 

PENDULUM

 

『これでオレはレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け!光のアーク!!ペンデュラム召喚!!手札からレベル2「EMオッドアイズ・シンクロン」!レベル8「オッドアイズ・ディゾルヴァー」!レベル4「EMシルバー・クロウ」!そしてレベル7「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」!さらにエクストラデッキからレベル4「EMジェントルード」!』

遊矢の頭上で青のペンデュラムが光のアークを描き、二色の眼を持つロボット、青く燃え盛る髪の魔術師、鋭い爪を持つ銀狼、二色の眼のドラゴン、タキシードの悪魔が現れる!

ATK200 ATK2000 ATK1800 ATK2500 ATK1500

 

 

「モンスター5体の同時召喚…やるじゃないか、なら…その勢いを使わせてもらおうか!手札の『増殖するG』の効果発動!このターン、相手が特殊召喚を行う度にカードを1枚ドローできる!」

 

『いくよ、遊海!「オッドアイズディゾルヴァー」の効果発動!このカードとペンデュラムゾーンの「クラシックリボー」で融合する!闇夜を照らす二色の眼よ!音を奏でる子悪魔と一つになりて…新たな道を指し示せ!融合召喚!!現れろ!「スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン」!!』

融合の渦から飢えた牙持つドラゴンが現れる! ATK2800

 

遊海手札4→5

 

 

『そして!「オッドアイズシンクロン」の効果発動!レベル2のこのカードとペンデュラムゾーンのレベル5「ゴムゴムートン」でチューニング!』

 

5+2=7

 

「その美しくも雄々しき翼ひるがえし、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ!レベル7!「クリアウイング・シンクロ・ドラゴン」!!』

緑の翼を輝かせ、白きドラゴンが現れる! ATK2500

 

遊海手札5→6

 

 

『さらに!レベル4の「シルバークロウ」と「ジェントルード」の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!』

銀狼と悪魔が光の銀河に飛び込み、ビッグバンが起きる!

 

『漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!!現れろ、ランク4!「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」!!』

紫電を纏う黒きドラゴンが現れる! ATK2500

 

遊海手札6→7

 

 

「四天の龍が勢揃いか…流石の運命力だ!俺ではこうはいかないな…強くなったな、遊矢!」

 

『ヘヘっ!ありがとう遊海!オレはカードを1枚伏せてターンエンド!』

 

遊矢LP4000

オッドアイズ ダークリベリオン クリアウイング スターヴヴェノム 伏せ1 手札0

 

 

 

「それじゃ…いくぞ、遊矢!」

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「俺はスケール1の『クリフォート・アセンブラ』とスケール9の『クリフォート・ツール』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

『っ…やっぱり、そのデッキだよね…!!』

 

PENDULUM

 

遊海の背後の光の柱に紫色の核石を持つモノリスと黄色の核石を持つ機械が浮かび上がる!

 

「これで俺はレベル2から8の『クリフォート』モンスターを同時に召喚できる!そして『ツール』のペンデュラム効果!800ライフを払い、デッキから『クリフォート・シェル』を手札に加える!」

 

遊海LP4000→3200

 

「揺れろ!希望のペンデュラム!!我が魂に宿る大いなる力よ!今こそ、その力を開放せよ!ペンデュラム召喚!!手札からレベル6『クリフォート・アーカイブ』!レベル6『クリフォート・ゲノム』!レベル8『クリフォート・シェル』!」

遊海の頭上で赤のペンデュラムが揺れ動き、緑色の核石・オレンジ色の核石・黒色の核石を持つ機械が現れる!

 

アーカイブATK2400→1800 ☆6→4

 

ゲノムATK2400→1800 ☆6→4

 

シェルATK2800→1800 ☆8→4

 

 

「特殊召喚された『クリフォート』はレベル4、攻撃力1800になる…そして!俺は3体のクリフォートをリリース!我が魂!我が相棒たる機殻の王よ!我が誇りを示せ!!レベル10!『アポクリフォート・キラー』!!」

 

《真体顕現…貴方の力を示しましょう、マスター!!》

 

『いきなり!?』

3つの核石が虹色の核石を持つ機械要塞を呼び覚ます! ATK3000

 

 

「言っただろ?()()で来いと…なら、それに全力で応える!リリースされた『アーカイブ』の効果!『スターヴヴェノム』をエクストラデッキに戻す!」

 

『やらせない!アクションマジック「透明」!このターンの間、「スターヴヴェノム」は相手の効果対象にならず、効果も受けない!』

緑色の核石を持つ機械の幻影が光線の放つが、アクションマジックによって不発に終わる!

 

 

「なら『ゲノム』の効果発動!遊矢の伏せカードを破壊!」

 

『っ…「クロス・ダメージ」が…!』

さらに、オレンジ色の核石の機械の幻影が遊矢の伏せカードを吹き飛ばす!

 

 

「『アポクリフォートキラー』の1つ目の効果!このカードが存在する限り、お互いの特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする!機殻の重圧(クリフォート・グラヴィティ)!」

 

『みんな!!』

キラーの発する波動がドラゴン達を地面に押し付ける!

 

オッドアイズATK2500→2000

 

ダークリベリオンATK2500→2000

 

クリアウイングATK2500→2000

 

スターヴヴェノムATK2800→2300

 

 

「さらに『キラー』の第2効果発動!1ターンに1度、相手は手札・フィールドのモンスター1体を墓地に送らなければならない!」

 

「っ…ごめん、オッドアイズ…!『オッドアイズ』を墓地に…エクストラデッキに送る!」

二色の眼の竜が粒子となって消え去る…。

 

 

「バトルだ!『キラー』で『クリアウイング』を攻撃!ネクサス・アーク・キャノン!!」

 

『「キラー」は魔法・罠カードの効果を受けない…だけど、自分のモンスターなら!!アクションマジック「奇跡」!このバトルで「クリアウイング」は破壊されず、受けるダメージは半分になる!くうううっ…!!』

機械要塞から放たれた虹色の閃光がアクションマジックによって半減する…!

 

遊矢LP4000→3500

 

 

「ふっ…よく凌いだ!俺はカードを1枚伏せてターンエンド!そして『アセンブラ』のペンデュラム効果発動!このターンにアドバンス召喚の為にリリースした『クリフォート』1体につき1枚ドローできる!3ドロー!」

 

遊海LP3200

キラー (P アセンブラ ツール) 伏せ2 手札1→4

 

 

 

 

「4体のドラゴンが揃ってるのに…!」

 

「プロデュエリストとなった遊矢でも、まだ白波遊海には及ばないのか…!?」

 

「そりゃそうだ…お前達と父さんじゃ、鍛え続けた()()が違う」

 

「年月…それはどういう事だ?彼は…実年齢が20歳だというキミ達の養父だと言うなら、50代…いや、40代くらいではないのか?」

全ての試練を乗り越え、零児を倒した遊矢すらも手玉に取る遊海…その様子を見ていた柚子と零児は冷や汗を流す…それを見た凌牙はその答えを明かす。

 

 

「父さんと母さんは体の成長が20代くらいで()()()()()()()()…本当の年齢は───何歳だっけ、母さん」

 

「ふふっ…女の人に年齢を聞くのはマナー違反よ?凌牙君…まぁ、100歳は()()()()()()かな?遊海さんの方が1年年上だけど!」

 

「「───えっ…?」」

 

「まぁ、そんな反応になるわよね…私も最初に聞いた時はびっくりしたし…」

翠の思わぬカミングアウトに零児と柚子は思わず目が点になる…あまりにも遊海と翠の外見年齢と実年齢に差があり過ぎたからだ…。

 

 

「フン…そう驚く事はない、遊海と翠は千年アイテムによる呪い…いや、祝福によって闇のゲーム…『命を懸けたデュエルに敗れなければ命を落とさない』という不老不死の力を得た…その力と『最善のハッピーエンドを掴む』という願いを胸に、2人は長い間戦い続けてきたのだ…時代に選ばれた『決闘者』と共にな」

 

「……不死身の決闘者…だからか、幾度となく致命傷を負いながらも…すぐに戻ってきたのは…」

 

「でもそれって…とても辛い事だったんじゃ…!?」

 

「そんな顔をしないで?柚子ちゃん…確かに、辛い事や痛い事、嫌な事…みんなとの悲しい別れもあった……それでも、私が…遊海さんが戦い続けてきたのは…貴女達が生きる未来を守る為…きっと、これで…世界は平和になるから…」

 

「翠さん…」

海馬から語られた真実に言葉を失う2人…それでも翠は笑っていた、彼女は…遊海も知っていたからだ…戦いの先に続いて行く光輝く未来の事を…。

 

 

 

 

《どうする、遊矢…やはり遊海は強敵だ…!》

 

《そりゃそうだよな、オレ達の『本体』相手に1人で数時間粘って、足止めし続けた奴だぜ?》

 

《アイツに本当に勝ちたいなら、それこそ『覇王龍ズァーク』を喚び出さなきゃ無理だよ…まぁ、100%ありえない選択肢だけどね…これはそういうデュエルじゃないんでしょ?》

 

「『ああ、零児の時と一緒だ…オレ達は、オレ達の力で戦えるって遊海に示さないと…遊海は安心して、帰れない!!』

一方、遊海の切り札を前に遊矢達4人は精神世界で言葉を交わしていた。

目の前にいるのは単独でズァークをも倒せる力を持つ『英雄』…その遊海の期待に応える為に遊矢達は知恵を出し合う。

 

 

《ユートの「ダーク・リベリオン」で攻撃力を下げて、正面突破すんのは?》

 

《いや、『アポクリフォート・キラー』はレベル・ランク10より低いモンスター効果を受けない…どちらかと言うならユーゴの『クリアウイング』の効果、ダイクロイック・ミラーでボクの「スターヴヴェノム」の効果を無効にして、攻撃力を上げた方がいいんじゃない?》

 

《いや、遊海のフィールドには『キラー』以外のモンスターがいない…つまり、『スターヴヴェノム』の効果も発動できない…そこまで読んでいたか…!》

 

『…遊海の前じゃ、どんな小細工をしても敵わない…なら、オレにできるのは…真正面から挑む事だけさ…!』

 

《……そうだな、ならば…このドローに全てを賭けよう!》

 

《おう!》

 

《デスティニードローって訳ね…面白いじゃん?》

 

「力を貸してくれ…みんな!!」

遊矢の中で意見が一つに纏まる…そして、その1枚が運命を導く!

 

 

 

 

『いくよ、遊海!オレのターン…!ドロー!!』

 

キィン!

 

「今の光は…さぁ、やってみろ!遊矢!」

遊矢の指先で輝く光の軌跡…それを見た遊海は笑みを見せる…!

 

 

『来た…!このカードなら!!このモンスターは自分フィールドのドラゴン族の融合・シンクロ・エクシーズモンスターを1体ずつリリースする事で、特殊召喚できる!!』

 

「その召喚条件は…!!」

遊矢が掲げたカードの光に導かれるように…3体のドラゴンが光に包まれる!

 

 

「二色の眼の竜よ!反逆の牙・光輝く翼・毒持つ竜と共に新たな世界に生誕せよ!現れろ!!進化の天眼輝けし竜!レベル12!『超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン』!!」

虹色の光が世界を照らす…それは『もしも』の世界における四天の龍の究極体…進化の名を持つオッドアイズが咆哮する!! ATK?→1600

 

 

「あのモンスターは…!?『覇王龍』ではない…遊矢の成長の証か…!!」

 

「すごい…!」

それは遊矢がズァークだった自身の過去を受け入れ、世界を笑顔にするという決意の形…超天新龍の纏う光に零児と柚子は目を奪われる…。

 

 

「やるじゃないか遊矢!だが、攻撃力は『キラー』には敵わないぞ?」

 

『ヘヘっ…「超天新龍」の攻撃力と守備力は相手のライフポイントの半分の数値になる…でも、効果はそれだけじゃない!「超天新龍」の効果発動!1ターンに1度、自分のライフを半分払い!このモンスター以外のフィールド・墓地のカード全てを持ち主のデッキに戻す!』

 

遊矢LP3500→1750

 

「なんだと!?」

 

「『超天新龍』のレベルは12…!アヤカの、『アポクリフォートキラー』の効果耐性を真正面から乗り越えやがった!!」

 

「マジかよ!遊矢の奴!?」

『超天新龍』の真骨頂、それは強力なフィールドリセット効果…だが、遊海もただ見ているだけではない…!

 

 

「アクションマジック『効果暴走』!相手モンスターの発動した効果を無効にし、500ダメージを与える!」

 

『やらせない!アクションマジック「ノーアクション」!アクションマジックの効果を無効にする!』

 

「おっと…!流石にアクションデュエルでは遊矢に分があるか…!」

アクションマジックによる妨害を試みる遊海…しかし、遊矢のアクションマジックにより相殺される!

 

 

『吹き荒れろ!進化の嵐!レボリューション・ストーム!!』

 

「まったく…強くなったな、遊矢」

超天新龍が背負う3つの輪が発光…全てを吹き飛ばす嵐を巻き起こした!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが、()()!」

 

 

『なっ!?「超天新龍」が!?』

嵐の中から伸びた鎖が超天新龍を縛り上げる!

 

「アクションマジックに気を取られたな?…永続罠『デモンズ・チェーン』を発動した!その効果対象になったモンスターは効果が無効になり、攻撃できなくなる!」

 

『そんな…!』

 

超天新龍ATK1600→0

 

 

「二の矢を隠していた…いいや、遊矢の進化すらも計算していたのか…!?」

 

「そりゃそうだって…オレとアストラルだって何回も遊海と戦ってるけど、勝てたのなんて…数えられるぐらいしかないんだぜ?」

 

「これが、遊海さんの本気……」

遊矢の起死回生の一手を封殺する遊海…その様子を見た零児は思わず言葉を失った…。

 

 

 

「どうする?遊矢」

 

『オレは…これで、ターンエンド…!』

 

遊矢LP1750

手札0

 

 

 

「遊矢、お前は本当に強くなった…それでも、上には上がいる…どれだけ強くなったと思っても…それをさらに上から捩じ伏せてくる()()が現れる……俺も、今までの決闘者人生の中で何度も…何度も思い知らされてきた…」

最後のターンを前に遊海は遊矢へと語りかける…。

 

 

「勝って喜ぶ日もあれば…負けて涙を飲む時も、つらさに唇を噛み締める事もある…でも、どんな時でも…()()()()()()()()心だけは忘れないでくれ……それが、俺がお前に送る最後のアドバイスだ」

 

『遊海…』

 

 

 

「俺のターン…バトル!『アポクリフォート・キラー』で『超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン』を攻撃!ネクサス・アーク・キャノン!!」

 

『ああ…本当に、遊海には敵わないなぁ…』

虹色の閃光が遊矢とオッドアイズを静かに飲み込んだ…。

 

 

 

遊矢LP0

 

遊海WIN!

 

 

 

 

 

 

「遊矢!大丈夫!?」

 

『ああ、大丈夫…めちゃくちゃ手加減されてたから…』

デュエルエリアが解除されていく中、倒れ込んだ遊矢に柚子が駆け寄る…。

 

 

『あーあ…また遊海に()()()()()()()()……悔しいなぁ…』

遊海は気付いていた…本来、レイを救う為の零児とのデュエルでデュエルの楽しさを本当に思い出すはずの遊矢が──未だに()()()()()()デュエルを楽しめていなかった事に…そしてそれは、自分が行方不明になった事が原因である事に…。

そして遊矢は遊海の最後のアドバイスでそれを自覚したのだ。

 

 

「良いデュエルだったな遊矢…おかげで…俺は安心して故郷に帰れる」

 

『遊海…』

そして、倒れ込んだ遊矢に遊海が手を差し伸べる…その顔は穏やかに笑っていた。

 

 

()に戦う時はどうなるか分からないが…もっと楽しい、熱いデュエルにしよう!約束だ!」

 

『──うん!!』

遊海の手を握りながら…遊矢は明るい笑顔で応えたのだった。

 

 

 

 

 

 

「──さて…これで憂いも無くなった…とりあえず、戻ろうか!お前達の故郷に!」

 

キィン!

 

デュエルが終わり、『ヌメロン・ピース』の力を開放した遊海が指を鳴らす…それによってARC次元の中心空間を覆っていたスフィア・フィールドが消えていき───

 

 

 

「遊海先生ー!大丈夫か〜!」

 

「無事そうで良かったー!!」

 

「十代!ブルーノ!心配掛けたな!もう大丈夫だ!」

次元飛行船が遊海達の近くに着陸…待機していた十代とブルーノが遊海達に駆け寄る…こうして、ARC次元を揺るがした全ての事件は終結したのだった。

 

 



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光の中に続く物語──昇華された世界──

こんにちは!S,Kです!

全ての戦いが終わり、遊海達の冒険はついに最善の結末を迎える…全ては奇跡の光の中に───


それでは…見届けてください!


「「すぅ…すぅ…」」

 

「遊星、遊海さんと翠さん…大丈夫かしら…」

 

「遊矢と遊馬、十代さん達を信じて待つしかない…大丈夫さ、きっと上手くいく」

 

「けど…こんだけ時間が掛かってると心配だぜ…」

 

早朝の舞網市、LDS・センターコート…そこでは遊海を助けるべく集まった仲間達が体を休めていた。

龍亞や龍可、零羅のような幼い子供達は夢の中だが…ほとんどの者は眠る事なく、今回の戦いの話やかつての冒険の思い出話をしながら、遊海と翠の帰還を待っていたのだ。

 

 

 

「空が白んで来たッスね…徹夜するなんて久しぶりッス」

 

「ぐ〜…ぐ〜…」

 

「剣山の奴はしっかり寝てるけどな…」

 

「むむむっ…眠いノーネ…いや、2人が帰って来ないと、枕を高くして眠れなzzz…ハッ!?」

 

「クロノス先生、ご無理はしないでください」

 

「先生もアカデミアの復興指揮で疲れてるんですから…」

夜闇に閉ざされていた空が少しずつ光の世界に塗り替わっていく…流石のレジェンド達にも疲れが見え始めた頃、()()()はやってきた。

 

 

キィン!!

 

 

「あっ…次元回廊が…!!」

 

「帰ってきたか!!」

白み始めた空に新たな次元回廊が開く、その機能を持つのは遊馬達の次元飛行船のみ…そして、次元飛行船が次元回廊を飛び出し───

 

 

「みんな〜!心配させてごめんなさーい!!」

 

「すまん!ちょっと遭難してたー!!」

 

 

「遊海!翠ちゃん!!」

 

「2人が帰ってきたぞ!」

 

「「「「やった─!!」」」」

甲板に出ていた遊海と翠が手を振りながら声を上げる…その姿を見た仲間達の歓声がスタジアムに響き渡った…。

 

 

 

 

「セニョール遊海!無事で良かったノ〜ネ!!お〜いおいおい!!」

 

「まったく…これ以上肝を冷やすのはゴメンだ!!」

 

「遊海!心配かけやがってコノヤロー!!」

 

「まぁ、生きて戻ってくるだろうとは思ってたけどな」

 

「あはは…遊馬達に聞いてたとはいえ、これはすごいなぁ…」

次元飛行船から降りた遊海は仲間達にもみくちゃにされる…クロノスは大泣きし、ジャックは怒り、本田は肩をド突き…ディヴァインは背中を見せながら皮肉を言う…その目には涙が浮かんでいたが…。

 

 

 

「ところで…なんで遊海の頬は腫れてるんだ?」

 

『オレがぶん殴ったからだが?』

 

「ラプラス…やり過ぎだって…」

 

 

 

 

 

 

 

「翠ちゃん!よかった〜!!」

 

「あ…杏子ちゃん!逢えた…また会えた…!!」

一方、翠は久しぶりの親友の顔を見て泣きながら抱きついた…遊海から冥界から彼女達も転生していたとは聞いていたが…再会は数十年振りの事だった…。

 

 

「翠さん…!無事で良かった…!」

 

「「おかえりなさい!」」

そしてその他の女性陣…明日香やアキ、龍亞兄妹も翠の無事の帰還を祝う…その一方で───

    

 

 

 

 

「なにやってんだい克也!!友達に毒を飲ませる馬鹿が何処にいるのさ───!!」

 

「イテテテ!?ちょ、悪気は無かったんだよ〜!?」

 

「ま、舞さん…そのくらいにしてあげた方が……」

 

「フン…キサマは凡骨から馬の骨に格下げだ!」

 

《フォウフォ〜ウ!(是非もないネ!)》

最後の最後に大失敗をしてしまった事がバレた城之内は舞に盛大な制裁を受けるのだった…。

 

 

 

 

 

「白波遊海…無事に戻ってくれてなによりだ…」

 

「零王と…日美香さん、それに…レイか」

遊海と翠との再会が一段落した頃、1人の男が遊海へと話しかける…それは申し訳なさそうな表情をした零王、そしてレイを腕に抱いた日美香だった…。

 

 

「話は凌牙と零児から聞いてる……しかし、おかしいな…?遊矢達を各次元に送り返して、時空震の影響を止めて…気を失う前にレイの蘇生は()()()()手を付けたはずなんだが…」

 

「なっ…そうだったのか!?」

凌牙の説明によってレイが赤子の姿である事は知っていた遊海…だが、それは…遊海の不手際が原因ではなかったのだ。

 

 

「ごめん、ちょっとピリッとするぞ?」

 

んぅ…!」

優しくレイの頭に触れた遊海は彼女の記憶を読み取る…そして感じ取ったのは…。

 

 

「……はぁ…そんなに自分を責めちゃダメだぞ?キミは悪くない…失敗は誰にでもあるさ…俺だって、何回も失敗しちゃったしな…」

 

「遊海…レイは…」

 

「レイはな、自分がみんなに迷惑を掛けたのに…()()()()()と過ごせるようになる自分が許せなかったみたいだ…だから、『ヌメロン・ピース』の力を意志の力?…()()()で拒絶しちゃったみたいだな……そのせいで赤ちゃんのままになって…柚子ちゃん達にも影響が出たみたいだ」

 

「レイ…!悪いのは私なんだ…!お前を止められなかった私が、一番…!!」

 

「あぅっ…ぱ、パ…」

遊海から伝えられたレイの真意…それを聞いた零王はレイを抱きしめて泣き崩れる…そしてレイも静かに涙を流していた…。

 

 

 

「…遊海、貴方の…『ヌメロン・ピース』の力でなんとかなるか?」

 

「ああ、その為に…俺はスタンダードに戻ってきたんだ」

 

キィン!!

 

泣き崩れてしまった零王に代わって零児が遊海に問いかける、その言葉を聞いた遊海は頷き、その手の中に組み変わる赤と青のカード…『ヌメロン・ピース』を出現させた。

 

 

「レイ、キミは十分に苦しんだ…これからは零王や日美香、零児、零羅と楽しく過ごして良いんだ…『ヌメロン・ピース』よ…彼女にもう一度祝福を…!」

 

キィンー!

 

「レイ…!!」

遊海の赦しの言葉と共にレイが優しい光に包まれる、そして彼女の形が少しずつ大きくなり─────

 

 

 

 

 

「……()()姿()でいいのか?元々は零児より()()だろう?」

 

『──うん、でも…あんなに迷惑をかけて…頑張った零児に()()()()なんて名乗れないもの──()()姿()でいいの』

 

「…そうか」

 

「「「結局子どもなの!?」」」

光の中から現れたレイの姿にランサーズの驚く声が重なる…『ヌメロン・ピース』の力を受けたレイは零羅より年上…龍亞兄妹と同じくらいの白いワンピースを着た少女の姿になったのだ…その選択に遊海も苦笑している…。

 

 

 

『お父さん…みんな…余計な事をしちゃって、ごめんなさい…!』

 

「レイ…」

本当の意味で元の(?)姿を取り戻したレイはその場に集まった人々に頭を下げ、謝罪する…それに応えたのは…。

 

 

「謝らないでレイ…貴方がいなかったら、私は遊矢やみんなと出会えなかったんだから…」

 

『柚子…』

小さくなったレイに目線を合わせてそう伝えたのは…レイの分身として生まれた柚子だった。

 

 

 

「貴女とズァークの戦いがあったから、この世界は生まれた…でも、この世界が無かったら…私はお父さんや遊矢、遊勝塾のみんな…他の次元のみんなとも出会えなかった……それに、遊海さんも遊戯さん達と再会できなかった!貴女は()()()もしたのよ!」

 

「柚子…」

ARC次元は「覇王龍ズァーク」とレイの使った「エン」シリーズの力が衝突して生まれ、次元崩壊の危機を齎した…だが、それと同時に遊海の『絆』の力が反映された事でARC次元は数多の絆が集う『奇跡の世界』となった。

 

そして奇跡の力が繋がったからこそ、ズァークを救う事ができたのだ。

 

 

「だから、こう言わせて──ありがとう、レイ!私達を出会わせてくれて、ありがとう!」

 

『──柚子…ごめんね…!ありがとう…ありがとう…!!』

レイへと感謝を伝える柚子、その言葉を聞いたレイは…彼女の腕の中で泣き崩れた…。

 

 

 

「──よし、このまま他の調整を続けよう…アストラル!ちょっと知恵を貸してくれ!」

 

(了解した、サポートしよう)

救いを得たレイの泣き顔を見た遊海は優しく笑いながら「ヌメロン・ピース」の書き換えを再開する…もちろん、「ヌメロン・コード」の扱い方を知るアストラルの力を借りながら…。

 

 

 

「ARC次元の位置を人間界から少し離して…各次元の強度を上げて……次元回廊が勝手に開かないように……開く場所は固定……ああ、人間界との時間の流れの違いも調整……っと…」

 

「すごい…」

神秘的な光の中で遊海は「ヌメロン・ピース」を操作していく…。

 

 

 

「よし、あとは──待たせたな遊矢!お前達を()()させるぞ?」

 

「あっ…」

しばらくの間「ヌメロン・ピース」を操作し続けた遊海は遊矢へと声をかける。

 

 

 

「みんな…オレ……」

 

《遊矢、確かにオレ達は元は1()()だ………でも、我儘が通るなら──オレは瑠璃や隼と共に過ごしたい》

 

《確かにこうして4人一緒なのも安心するけどよ…まだ、リンやジャックとの約束を果たせてねぇしな!》

 

《ボクはどっちでもいいや……いや、良くないか?分離したらめちゃくちゃ怒られる気が…》

 

「「「それは自業自得だろ」」」

 

《みんなが冷たい…ねぇ、もう少し手加減してよ…?一応、反省したんだよ…?》

遊海の言葉を受けて話し合う遊矢達…一応、意見は纏まったようだ。

 

 

 

 

「お願い、遊海」

 

「ああ…『ヌメロン・ピース』よ!榊遊矢に祝福を!」

 

キィン!

 

キィン!

 

キィン!

 

キィン!

 

遊海が全能の力を解き放つ…それと共に遊矢の胸から3つの光が飛び出し、ユート・ユーゴ・ユーリはそれぞれに身体を取り戻した…。

 

 

『お…っと…自分の足で立つのは久しぶりだ…』

 

『いや〜!空気が美味いぜ!朝だしな!』

 

『すごいね、全能の力って…』

 

「「ユート!!」」

 

「ユーゴ!!」

取り戻した自分の身体の調子を確かめる3人…その姿を見た黒咲と瑠璃、リンがそれぞれに少年達へと抱きつく…。

 

 

『隼、瑠璃…!こうしてまた触れ合うことができるとは思っていなかった…!』

 

『リン!心配かけたな!!』

 

 

『……まぁ、ボクにはいないよね』

 

「ふん」

掛け替えのない仲間との再会を喜ぶユートとユーゴ…しかし、当然ながらユーリにはそんな存在はおらず──セレナもそっぽを向いている。

 

 

「安心するノーネ、セニョールユーリ…貴方にーは、ワタシの特別指導が待っているノーネ…!」

 

『げっ、クロノス先生…!?』

だが、そんなユーリも1人ではない…クロノスが笑顔で彼の肩を掴んでいた。

 

 

「アナータはセニョール十代以上の問題児なノーネ…決闘者として以前に人間とシーテ、性格と性根を叩き治すノーネ」

 

『あはは……誰か、助けてくれない?』

 

「『『ごめん無理』』」

 

「だよねー!!」

 

《フォウ!(流石、同一人物…息ピッタリだね!)》

教師としてのクロノスの覇気に思わず助けを求めるユーリ…だが、彼を助ける者は誰もいなかった。

 

 

 

 

 

「よし…あとは『ヌメロン・ピース』そのものをどうするか、だな……アストラル世界で管理するのがやりやすいか?」

 

(いや、「ヌメロン・ピース」はこの次元を安定させる『核』になっている、下手に次元外に持ち出すべきではないだろう)

大仕事を終えた遊海はアストラルと「ヌメロン・ピース」の対処について話し合う…かつて『世界を創りしドラゴン』が危惧した通り、『全能の力』は争いの火種となるモノだからだ…。

 

 

「なら…『ヌメロン・ピース』は赤と青の2つに分けられる…流石に『No.』みたいな厳重な封印は無理だけど…赤の『ヌメロン・ピース』をランダムに隠そう…まぁ、俺とアストラルは気配で場所が分かるけどな」

 

(それがいい…なら、青の『ヌメロン・ピース』はどうする?2つともランダムでは、万が一に確保されてしまう可能性がある…()()のようなシステムがあればいいが……)

 

「番人……あっ、良い事思い付いた!」

 

(何かアイデアが?やはり、精霊に番人を任せるのか?)

 

「それもいいが…ちょうど()()()()()()()がいるだろ?」

「ヌメロン・ピース」を分割して封印・管理する事を提案する遊海…そして、その管理を任せられる者にも心当たりがあるらしい…。

 

 

「出てこいよ──()()()()()()()()

 

 

「「「「はっ!?」」」」

 

【……貴様、何を考えている?】

 

(遊海!?正気か!?)

 

「嘘だろ!?」

穏やかに自身に宿る混沌の神の名を呼ぶ遊海…思わぬ事に七皇を含めたZEXALの仲間達は驚愕…ドン・サウザンド自身も呆れた表情で姿を見せる…。

 

 

 

【白波遊海…貴様、ついにおかしくなったか?我に『全能の力』の欠片を預けると?我は貴様達の敵だ…封印が解ければ──】

 

「そう悪ぶるなよ…もう分かってるんだ、お前の封印が()()()()事は…」

 

「なっ…!?マジか!?」

 

「っ…!!」

 

「父さん!!なんでそんなに落ち着いてるんだよ!?」

遊海の思わぬカミングアウトに三勇士が戦闘態勢を取る…だが、遊海は落ち着いていた…。

 

 

「落ち着くのはお前達の方だ…もうドン・サウザンドに敵意は無い…俺達をからかってるだけさ」

 

【ほう…何故、そう思う?】

 

()()()()()()()()()()()…それで十分さ、本当にお前が敵なら……俺が倒れてる間に肉体を奪って完全復活、そして「ヌメロン・ピース」で世界を書き換えて…疲労困憊のアストラル達に襲撃を仕掛けてる……そうだろ?」

 

「「「!!!」」」

遊海の言葉に遊馬達は背筋が冷える…ズァーク戦後の消耗した状況でドン・サウザンドに襲われていたら…と想像してしまったのだ…。

 

 

【ああ、そうだ…あの時のように『全能の力』を手にすれば、我は貴様らを倒せただろう………だが、やめた……何故だろうなぁ……白波遊海、貴様の信じる『希望』とやらに我も絆されたか…】

 

「お前…自分の()()に気付いてないのか?」

 

【なに─?】

遊海の肉体の主導権を奪わなかったドン・サウザンド…その様子を見ていた遊海が呆れたように声をかける…その時だった。

 

 

キィン──

 

 

「なっ…!?ドン・サウザンドの体に()が!?」

 

【なっ、これ、は…!?】

ドン・サウザンドの漆黒の体に光の罅が走る…それは瞬く間に全身に広がっていき───

 

 

ピシ…ピシ…バリーン!!

 

 

「なっ…!?ドン、サウザンド…?」

 

「ドン・サウザンドの体が…()()()()()()()()()に!?」

 

【はっ…!?】

漆黒の体が砕け散る…その中から現れたのは、金と赤の髪や赤と青のオッドアイ、黒色の鎧こそ変わらないが…アストラルと同じ、透き通るような水色の肉体へと変貌したドン・サウザンドだった…彼本人も突然の変化に困惑している…。

 

 

「アストラルが遊馬と触れ合い、カオスの力を得た事でお前を乗り越えたように…アストラル世界のカオスを許さなかったエリファスがカオスを受け入れたように……ドン・サウザンド、お前も()()したんだよ…俺を通して人々の暮らしを見て…正しいカオスの在り方を理解した事で…お前自身がランクアップしたんだ」

それはまさに『奇跡』…純粋だったアストラルがカオスの力を手にして成長したように…遊海と共にARC次元の人々の姿を観察し続けた事でドン・サウザンドもまた進化した。

 

『「理想」と「混沌」は表裏一体』…かつて「余分なモノ」としてアストラル世界から排斥されたドン・サウザンドにも、『希望の光』は宿っていたのだ…。

 

 

【我が、ランクアップだと?アストラル世界から追放された…ランクアップする世界には不要と切り捨てられた混沌(カオス)たる我が…!!】

 

「……この世界に不要なモノなんてない、全てのモノには役割がある……ドン・サウザンド、オレは貴方が「不要」と言われた経緯は知らない…でも、貴方が進化したと言うのなら──貴方を()()()()()()()()()()、そういう事じゃないのか?」

 

【不動遊星…】

突然のランクアップに取り乱すドン・サウザンド…彼に話しかけたのは「世界に不要なモノは無い」という考えを持つ遊星だった。

 

 

「必要ってなら…アンタが遊海先生に力を貸してくれなきゃ、今回のダークネスは倒せなかったかもな!あれだけ弱気になった先生は久しぶりに見たぜ?助けてくれて()()()()()!ドン千!」

 

【っ…感謝だと…!?ふざけるな…!我は…我は…!!】

遊星の言葉を聞いた十代がドン・サウザンドへ感謝の言葉を伝える…それを聞いた彼は不快な様子を見せるが…。

 

 

(気付いてないのか?ドン・サウザンド…お前がどんな風に思おうとも──この場でお前を『敵』だと思っている者は()()()()()らしいぞ?)

 

【っ…アストラル…!!】

 

(遊海の中で復活してからのお前は…()()()()()()()()()()…無論、それで今までの罪が消える訳ではないが……今のお前は──既に遊海の()()なんだ)

 

【っ──】

仇敵だったアストラルの言葉を聞いたドン・サウザンドは周囲を見渡す、自分の手駒だった七皇達や戦った三勇士達は微妙な表情をしていたが……それ以外の決闘者達からは敵意も嫌悪も感じられなかった。

 

 

 

「あの…ドン・サウザンド、さん…」

 

【お前は…】

 

「零羅…!?」

そんな時、1人の子どもがドン・サウザンドの前に歩み出る…それは零羅だった。

 

 

「あのね…アカデミアで、ダークネスが出てきた時…僕、すごく怖かった…お義父さんも闇に取り込まれちゃって、十代さんでも、倒しきれなくて……でもね、遊海と一緒に戦う貴方を見てたら…()()()()()()()の…!暖かい力が、僕達を守ってくれた……だから…ありがとう…!本当に優しい()()…!!」

 

【────我が…優しい…?】

 

「ドン・サウザンド…子供の言葉って、裏表がないんだよ……あの時のお前は紛れもない()()だった……そんな今のお前になら──『全能の力』を託せる、俺はそう思ったんだ」

 

【白波遊海…】

たどたどしい…しかし、素直な零羅の感謝を聞いたドン・サウザンド……そこには以前の『混沌の邪神』としての面影はない、遊海と過ごした時間が…そして、間近で見た善い心を持つ人々の姿が…ドン・サウザンドの中に存在した『悪意』を浄化したのだ。

 

 

 

《フォウ、フォウフォウ(諦めなよ、ドン・サウザンド…キミだって、こっち側に来た方が楽じゃない?)》

 

【災厄の獣…】

 

《フォウ、フォウフォウ…フォウ!(キミだって、元々はアストラル世界を無理矢理追い出された『被害者』なんでしょ?なら、この世界を新たな居場所にしてみない?遊海も前に言ったでしょ?『新しい仲間や居場所を作ればいい』って…今のキミなら、この世界を守る神様になれると思うよ!)》

 

「……フォウがドン・サウザンドと話してる…伝わってるのか?」

 

「そうみたい…?」

同じく元『人類悪』であったフォウがドン・サウザンドへ何事かを伝える…なお、その言葉は他の仲間達には伝わっておらず…遊馬と小鳥も首を傾げている。

 

 

 

 

【───白波遊海、後悔しても知らんぞ】

 

「後悔なんてしないさ…もしも、またお前がやらかしたら……また止めにいくよ」

 

【ふっ…ふははははは!!……良かろう…!『ヌメロン・ピース』の番人、確かに混沌の……否!『理想と混沌の神』たるこのドン・サウザンドが引き受けてやろう!】

 

キィン!!

 

「これは…!?」

 

「きれい…!」

 

「マジかよ、白波の奴……ドン・サウザンドまで仲間にしやがった…」

 

「…思う所がない訳ではないが……遊海が認めたのなら、我らは何も言う事はない」

 

「まったく…父さんは優し過ぎるんだよ、本当に…」

「ヌメロン・ピース」の番人として新生したドン・サウザンドが名乗りを上げる…それと共に浄化されたカオスが虹色の光となってARC次元全体へと広がっていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これで帰れるんだね、遊海…きみがいるべき世界に」

 

「ああ…俺達の世界は街一つがクレーターになってるから…復興も手伝わないとな」

そして…全ての責務を終えた遊海達がARC次元を離れる時がやってきた…朝日が照らすスタジアムの中心で遊海と遊戯が向かい合う。

 

 

「さよならは言わないぜ、遊戯…時々、様子を見に来るよ……だから、またな!今度来る時はデュエルしよう!」

 

「うん!いつでも待ってる!」

それは再会の約束…この世界は絆と繋ぐ『奇跡の世界』…遊戯達、レジェンド達の第二の人生はここから始まるのだ。

 

 

 

「十代…」

 

「……ヘヘっ、()()()!明日香!」

 

「──うん!」

そして、十代と明日香…2人も笑顔で別れを告げる…お互いに涙を堪えながら…。

 

 

 

「流星、お前と会えて良かった…そちらの()()にもよろしく伝えてくれ」

 

「はい!…曾祖父ちゃんと一緒に撮った写真を見せたら…びっくりするだろうなぁ…」

 

「はは…叶うなら、そちらの遊星とも会いたいな……あの時、殴ってしまった事を謝りたい…」

シンクロ次元の不動親子と流星も別れを惜しむ…しかし、そこに涙はない。

 

 

「海亜!そちらの俺に伝えておけ!!この俺もバーニングソウルを体得した、とな!!」

 

「は、はい!(どーしよう、そんな事伝えたら…絶対にじいちゃんARC次元に殴り込みに来ちゃうよ!?)」

一方、ジャックの伝言を祖父のジャックに伝えるか迷う海亜なのであった。

 

 

 

 

「遊海!……色々、ありがとう!」

 

「遊矢…ああ、頑張っていけよ!最高のエンタメデュエリストを目指して!応援してるからな!」

 

「うん!」

そして、遊矢と遊海…この「物語」の主人公2人が固く握手を交わす。

 

 

(遊海、そろそろ時間だ…帰ろう、我々の世界に)

 

「ああ!」

 

キィン!

 

アストラルの言葉と共にフラッシュ・トランサーが起動…遊海達は次元飛行船へと乗り込んで───

 

 

 

 

 

 

 

 

「──あっ、と…!忘れてた!遊矢!」

 

「え?どうしたの!?」

フラッシュ・トランサーに乗り込む寸前、遊海が遊矢へと声をかける。

 

「頑張った奴には()()()がないとな!『ヌメロン・ピース』よ!

 

「えっ─?」

遊海が再び『ヌメロン・ピース』を起動する、放たれた奇跡の光は遊矢の前で固まっていき───

 

 

 

『────あ、れ…?()は…』

 

 

「あっ…!ああっ!?」

 

「嘘…!?」

 

「貴方は…!」

光の中から人影が現れる、それは白い髪に左目に傷を持ち、遊矢の服に似た青いジャケットを着た青年…それは───

 

 

 

「遊希兄!!」

 

「遊希さん!!」

 

「遊希!!」

 

 

『あっ…遊矢…?柚子ちゃん…父さん…?』

それは遊海の復活と引き換えに消えてしまったとされていた()()()()()()()……榊遊希だった。

その姿を見た遊矢達は状況を理解できていない遊希を抱きしめる…。

 

 

「遊希兄…!本当に遊希兄なんだよね!?どうやって…!」

 

【フン…遊希の魂が復讐の炎に燃やし尽くされる前に、我が保護しておいてやったのだ……仮にも、我を復活させた恩があったからな……ありがたく思え】

 

「まったく…危うく忘れる所だったぞ?保護してるなら早く言ってくれ…」

消えてしまったと思われていた遊希の魂…だが、ドン・サウザンドによって匿われていたのだ…。

 

 

『なんとなく、何があったのかは識ってる……遊矢…ごめんな…!大変だったな…!!』

 

「遊希兄…よかった…よかったぁぁ!!」

夢うつつの状態ながらも外の状況を知っていたらしい遊希は遊矢を抱きしめる…その腕の中で遊矢は号泣していた…。

 

 

 

「…遊希」

 

『白波遊海……本物の、僕…』

泣きじゃくる遊希に遊海が優しく話しかける…その手に一つのデッキと黄水晶のペンデュラムのネックレスを持って…。

 

「預かってたお前のデッキと新しいペンデュラムだ、この赤水晶のペンデュラムは渡せないからな…お前にこれからも幸運があるように───遊矢を頼んだぜ」

 

『──ああ…!ありがとう、遊海!!』

遊希は遊海から渡されたペンデュラムを首から下げ…泣き笑いの笑顔で感謝を告げた…。

 

 

 

「遊希!!」

 

『あっ…遊戯…海馬社長…みんな…』

そして…落ち着いた遊希へと遊戯達が歩み寄る…だが、その姿を見た遊希は表情を曇らせる…。

 

 

『みんな…僕は、遊海の偽物で…勝手に体を……キミ達の親友を…』

 

「なーに言ってんだよ遊希!お前が何者でも──オレ達が()()だって事には変わらねぇよ!!」

 

「フン…よく戻ってきた!全て解決した後だがな…!」

 

「瀬人様、意地悪はなしですよ?」

 

「おかえり遊希!洋子さんもきっと喜ぶわ!!」

 

『みんな…みんな…!!ありがとうっ!!』

 

自分が白波遊海の『偽物』だった事に負い目を持っていた遊希…だが、そんな事は遊戯達には関係なく──遊希は自分の居場所へと、ようやく帰ってきたのだった…。

 

 

 

 

 

「じゃあな!みんな!!」

 

また会いに来るね─!!」

 

 

「遊海!!ありがとう!ありがとう──!!」

 

「達者でな─!!」

 

そうして…全てをやりきった遊海達を乗せた次元飛行船が浮上する…彼らの居場所へと戻る為に…。

 

 

 

【さらばだ、遊海…もう会うことはないだろうがな】

 

「ふっ…たまには会いに行ってやるよ、翠やアストラルと一緒にな」

 

【フン…ではな…()()()()()よ】

そして一足先にドン・サウザンドが次元回廊へと消えていく…世界を見守る自分の居場所を見つける為に…。

 

 

 

「……さぁ、帰ろう!」

 

「「「はい!!」」」

 

「よーし!かっとび遊馬号、全速前進─!!」

 

《カシコマリでアリマス!!》

そして、次元飛行船も次元回廊の中に消えていく…懐かしき自分達の居場所に戻る為に──

 

 

 

「遊海!みんな!ありがとう──!」

 

そんな遊海達を見送るARC次元の仲間達の声が朝日の照らす世界にずっと響いていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……つ、疲れた〜……終わった〜……!!」

 

「ふう…お疲れ様でした、遊海さん」

人間界…『DM世界』に向かう次元飛行船の甲板、全てをやり遂げた遊海は大の字で倒れ込んでいた…なお、翠と操縦を担当するオービタル7以外は全員、疲れきって眠ってしまっている。

 

 

「いやはや…今までで、一番キツい戦いだった……でも、最善は掴めた…かな?」

 

「はい!本来の『ARC-V』の物語よりも…ずっと、ずっと素敵な冒険だったと思います!」

 

「そうか…なら、頑張った甲斐があったよ……ありがとう、翠」

倒れ込んだ遊海と隣に座った翠は静かに笑い合う…悲劇によって始まった「ARC-V」の物語は──最善のハッピーエンドによって幕を閉じたのだ。

 

 

 

「ふふっ…遊海さん、これからどうします?」

 

「これから、か…」

そして…「ARC-V」の物語を乗り越え、全てをやりきった遊海に翠が問いかける。

 

「これからの事を考える前に…ちょっと休みたいかなぁ…」

 

「そうですねぇ……とりあえず、家族旅行でも行きましょうか?」

 

「ああ、それがいい!まずはそこからだ!」

平和な世界を取り戻し、これからも続いていく希望の未来を思いながら笑い合う遊海と翠…そして──

 

 

 

《お知らせするでアリマス!間もなく、ハートランドに到着でアリマース!》

 

「おっ…」

オービタルが目的地への到着を告げる…そして、次元回廊を抜けた先には…夕焼けのハートランドシティの景色が広がり───

 

 

 

「遊海さーん!!翠さーん!!お〜い!!」

 

「元気そうでよかったぜ…」

 

「フン…遅いぞ、遊海!」

 

「無事でよかった…!」

 

 

「みんな…!」

 

ハートの塔の屋上でアークライト一家やデュエルロイド瀬人、遊星達を始めとした5D'sの仲間達…遊海や遊馬達の帰還を待ち侘びていた仲間達が待っていた…!

 

 

 

 

「ただいま!みんな!!」

 

 

夕焼けの照らす穏やかな世界に遊海の明るい声が融けていった…。

 

 

 

 

 




ARC-V編 ラスト・マテリアル


●ドン・サウザンド

遊海に同化する形で復活したドン・サウザンドが遊海と共に『人間』というものを学び直した事でランクアップし、本来の『アストラル世界の存在』としての在り方に近づいた『混沌と理想の神』としての姿。
アストラル世界への怒りや憎しみは完全に消え去り、世界や人間を見守る『神』として自分を再定義した。

唯我独尊、不遜な性格は変わらないが、人間を見下す事はなくなっている。

その変化と成長を見ていた遊海によって『ヌメロン・ピース』の管理者を任せられる事になった。




●榊遊希

遊海の復活と引き換えに消滅したと思われていたが…消え去る寸前にドン・サウザンドに保護され、匿われていた。

遊海によって肉体を与えられるまでは夢現の状態の不明瞭な意識だったが…自分が消えた以降の事件や遊矢の正体の事も把握している。

『ヌメロン・ピース』の力によって傷・怪我のほとんどは修復され、遊海によって新たに『黄水晶のペンデュラム』を託された。


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エピローグ〜新しい未来へ〜

【さぁ!やって参りました!『覇王龍の乱』から約1年…仕切り直しとなったワールド・チャンピオン・シップス!決勝戦の開幕だぁ~!!】

 

「「「『『『うおお──っ!!』』』」」」

 

デュエルの聖地・ネオ童実野シティのスタジアムが地面が揺れるほどの歓声に包まれる…そこで対峙していたのは──。

 

 

 

「ヘヘっ…やっぱり来たな!シャーク!」

 

「おう…!お前の持ってる()()、獲りにきたぜ…!」

 

方や、父をリスペクトした探検服に赤いチョッキを着た、跳ねた赤い前髪が特徴的な青年、九十九遊馬

 

方や、少年時代から変わらぬ紺色のスーツに身を包んだ青年、神代凌牙…2人は最高の舞台で向き合っていた…!

 

 

 

「さぁ、やろうぜ遊馬!お前に勝って…最高の知らせを父さん達に届けてやる!!」

 

「おう!けど、絶対にオレが勝ーつ!!かっとビングだ!オレ─!!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

「「『『わあああ─!!!』』」」

 

激突する2人の若き決闘者達…2人の決闘は大地を揺るがした…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カン…カン…カンカンカンカン……カカン!!

 

 

「さぁ…掛かって来るがいい!榊遊矢!!」

 

そこは桜吹雪が舞い散る和風の都…その場所で白い学ランを纏い、鉄下駄を履いた益荒男、権現坂がアクションデュエルを行っていた!

 

 

「さぁさぁ皆様お立ち会い!!これより始まるは不動の武人と娯楽師たる私の果たし合い!!遠からん者は音にも聞け!近くば寄って目にも見よ!!エンタメデュエリスト榊遊矢…いざ参る〜!!」

 

「「「おおお〜!!」」」

 

それと対峙するのは和服を纏いしエンタメデュエリスト、榊遊矢…2人は木製の橋の上で向かい合う!

 

 

「っと…付き合うのはここまで!さぁ!エンタメデュエルの始まりだ!!」

 

「空気が読めるようになったな、遊矢!征くぞ!我が不動のデュエル…破ってみせろ!!」

 

 

「遊矢─!!頑張りなさいよ〜!!」

 

「2人のアクションデュエル…やっぱり痺れる〜!!」

 

「遊矢兄ちゃん!頑張れ〜!!」

楽しそうにデュエルで向かい合う遊矢と権現坂…彼らのアクションデュエルは勝利の女神に見守られながら白熱していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まさか()が今年の舞網チャンピオンシップを勝ち抜くとは…」

 

「フン…驚く事はない、彼奴は紛いなりにも『決闘王』の体に宿り、その魂のデュエルを間近で見続けた…ならば覚醒するのは当然、というものだ」

舞網市・レオ・コーポレーション会議室…そこでは社長である零児と同盟関係を結んだ海馬コーポレーションの社長、海馬瀬人が話し合いをしていた…。

 

 

「彼のプロテストの日程は…今日だったな」

 

「うむ…弟には負けられないと張り切っていたな……さぁ、早く上がって来い()()…!我らの高みまでな…!!フハハハハハ!!」

海馬の高笑いが舞網市へと響く…今日も変わらず平常運行なのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【さぁ!やって参りました!フレンドシップカップ・決勝戦!榊遊矢選手が『キング』の座を辞退した今大会…新たな『キング』の称号を手にするのは誰なのか〜!?】

シンクロ次元・デュエルパレスに実況役のメリッサの声が響く中…2人のDホイーラーが対峙していた…!

 

 

「フン…約束通り、この舞台まで上がってきたかユーゴ」

 

「おう!ジャック!アンタに勝って、キングになってみせる!!」

 

方や、シティの先代キング、ジャック・アトラス

 

方や、元ズァークの分身の1人、旧コモンズのDホイーラー、ユーゴ…2人の約束のデュエルが始まろうとしていた!

 

 

 

「今回は遊星が新たなモーメントの開発で参加していない故に不完全燃焼なのだ…お前は我が魂を燃やすに値するか、見極めてやる!」

 

「ヘヘっ…!心配すんなよ!オレの勝利の翼で、アンタから勝利を掴み取ってやる!」

 

「ユーゴ!!頑張れ─!!」

 

「おう!見てろよ、リン!オレ達の夢が叶う瞬間を!!」

 

「「ライディングデュエル・アクセラレーション!!」」

 

シンクロ次元にライディングデュエルの開始を告げる号砲が響き渡った…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たか、ユート」

 

「ああ、カイト…お前と戦える事を光栄に思う!」

 

エクシーズ次元・ハートランド…そこではデュエルスクール四校合同デュエル大会の決勝が行われようとしていた…!

 

 

「頑張って!ユート!!」

 

「俺を倒して決勝に進んだんだ…負けるな!!」

 

「ああ…隼、瑠璃…!新たなハートランド最強を名乗るのは、オレだ!」

 

「ふっ…それはオレの『銀河眼』を倒してからの話だ!いくぞ!!」

 

「「デュエル!!」」

 

ハートランドで反逆の牙と銀河を宿すドラゴンが激突する…そのデュエルはハートランドの伝説に残るデュエルとなった…!

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでーは!デュエルアカデミアの定期テストデュエルを始めるノーネ!」

 

「それで…クロノス先生、僕の相手は誰なのさ?僕といい勝負できる先生なんて貴方しかいないけど?」

融合次元、デュエル戦士養成学校…改め、プロデュエリスト養成学校デュエルアカデミア、そこではユーリのテストデュエルが行われようとしていた…。

 

 

「確かーに、アナータはこの1年で本当の意味で強くなったノーネ…だからこそ、さらに高い壁を用意させてもらったノーネ!試験官、カモーン!!」

 

「おう!ユーリ、お前の相手はこのオレだ!」

 

「キミは…!」

ユーリの対戦相手を呼び出すクロノス…彼が声に応じて姿を見せたのは…オシリスレッドの制服を着た()()だった…!

 

 

「ユーリ、お前とドラゴンの力…オレ達に見せてくれよ!」

 

《キミが本当に「決闘者」を名乗るに相応しいか…ボク達が見極めさせてもらうよ》

 

「なるほどね…!なら、僕の牙がキミに通用するか…試させてもらう!!」

 

「いくぜ、ユーリ!」

 

「「デュエル!!」」

火花を散らすユーリと青年…そのデュエルの行方は神のみぞ知る…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────遊希君、準備はいいかい?」

 

「ああ!今日は胸を借りさせてもらうよ、遊戯!」

 

舞網市のとあるデュエルスタジアムで2人の青年が向かい合う。

 

 

方や、かつて『決闘王』の名を背負ったプロデュエリスト・武藤遊戯

 

方や、先日の舞網チャンピオンシップを()()し…ユースクラスへと昇格した榊遊希…今日は彼のプロテストの日だった。

 

 

「遊戯…僕は…どこまでいっても、()()なのかもしれない──でも!この戦いを乗り越えて、僕は「榊遊希」としてプロデュエリストになる!!僕に第二の人生をくれた白波遊海に応える為に!」

 

「遊希君…きみの覚悟、確かに受け取ったよ…!さぁ、始めようか!!」

静かに闘志をぶつけ合う遊希と遊戯…2人のアクションデュエルが始まる!

 

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」

 

「「フィールド内を駆け巡る!」」

 

「「これが、デュエルの最強進化系!!」」

 

「「アクション──デュエル!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは哀しき龍が生み出した新世界での物語

 

 

 

アクションデュエルに熱狂する『スタンダード』

 

悪意に唆され、災厄となった『融合次元』

 

災厄に襲われ、笑顔を失った『エクシーズ次元』

 

歪んだ価値観と差別に支配された『シンクロ次元』

 

 

 

 

全ての世界を救ったのは、たった1人の『英雄』を救おうとした仲間達の『絆』と『願い』

 

全ての世界を笑顔にしたのは、哀しき龍が生み出した『希望』の分身

 

 

 

虹色の『光のアーク』によって繋がった世界の平和は…これからも続いていく

 

新世界の歴史は織られ始めたばかりなのだから──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うんうん、こんなところかな?きみ達らしいハッピーエンドだったよ、遊海君!』

世界の何処かにある理想郷、無数の花々が咲き誇る世界の中心部にある幽閉塔でマーリンは嬉しそうに頷いていた。

 

 

 

『さてさて…彼の記憶によると、この先に()()1()()の物語があるみたいだけど…まぁ、いつ始まるかは分からないから…気長に待っていようか』

小さなバルコニーから遥かなる世界を眺めていたマーリンは揺り椅子に腰掛けながら、この先の未来を夢想する…そんな時だった。

 

 

 

『ん──んんっ!?まさか、()()だったのかい!?どおりで凌牙君と遊馬君の応援に来ていない訳だ!?』

マーリンの持つ世界全ての『現在』を見通す千里眼が何事かを捉える、その光景を目にしたマーリンは慌てて揺り椅子から起き上がった。

 

 

 

『遊海君、翠…きみ達家族の()()()()()はここから始まるんだね…これは楽しみが増え──《マーリンシスベシフォーウ!!!》ぶはぁっ!?』

感慨深げに笑うマーリン…だが、突然現れたフォウのローリング・トルネード・ダイレクトアタックを受けて揺り椅子ごと床へとひっくり返った!

 

 

『キャスパリーグ!?どうやってアヴァロンに戻ってきたんだい!?というか良い所なんだから邪魔しないでおくれよ─!?』

 

《フォーウ!ジャマシニマイッタフォーウ!!(この覗き夢魔!遊海達の大切な瞬間を穢させてたまるか!!その為に気合いで走ってきたんだ──!!)》

 

『いや!気合いでどうにかなる距離(概念)じゃな…イタタタ!?ああもう!?遊海君!()()()()()()!!』

 

 

「何をしているんですか、あなた達は…」

 

幽閉塔で激戦(?)を繰り広げる1人と1匹…その様子を見て金髪碧眼の少女は呆れ果てていたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───遊海さん……」

 

「翠…よく頑張った…!ありがとう…ありがとう…!!」

 

ハートランドシティ、KC病院…そのベッドの上には疲労困憊といった様子の翠が寝かされていた、そのすぐ隣には大粒の涙を流す遊海が寄り添っている…2人の顔は共に穏やかな笑顔だった…。

 

 

 

「……暖かい…軽い…でも、()()…!まさか、こんな日が来るなんて……!!」

翠のベッドの隣の()()()()()()から遊海が()()を抱き上げる…まるで、()()()()()()()()()()()を持つように──

 

 

 

その腕の中には…生まれたばかりの()()()が抱かれていた…。

 

 

 

《翠…!頑張ったね…!!》

 

《生命の神秘…!》

 

「うん…!うん…!!ありがとう、ウィンダ!ウェン!」

静かに翠に寄り添うウィンダとウェンが新たな命の誕生を祝福する…!

 

 

 

《おめでとうございます、マスター…翠…!もう、なんと言ったらいいのか…私、言葉が見つかりません!!》

 

《今まで、幾度か新たな命の誕生を見てきましたが…こんなに暖かく、嬉しい気持ちになったのは初めてです…!リョウガやリオ…アテムにも早く伝えないと!》

 

《しかし、大変なのはここからだ…凌牙や璃緒のようにはいかんぞ遊海、翠……だが、おめでとう…!しかし、まったく…こんな大事な瞬間にフォウは何処へ行ったのだ?》

 

《主殿…ここから、貴方達の本当の、幸福な人生が始まるのです…!我らも全力でお手伝いする所存!!》

 

《キュオ…!キュオン!!》

 

《主達ノ、赤ン坊…?オメデトウ…!》

 

《我らも祝福する!》

 

《しかし、幻魔の祝福は…良いのだろうか…?悪魔的に…》

 

「みんな…ありがとう…ありがとう…!!」

 

病室に集った精霊達が遊海と翠を祝福する…それは遊海と翠が『叶う事はない』と諦めていた…()()()()()()()()()『奇跡』だった。

 

 

 

 

「遊海さん…なまえ、決めてあげないと…」

 

「そうだな…!この子はきっと、俺達を……これからの世界を照らしてくれる子だ…!!ははっ…」

 

「あ、う…う〜…」

遊海の腕の中ではにかむ赤ん坊…その顔を見た遊海は泣き笑いの顔でその名を呼ぶ…。

 

 

 

「おめでとう…きみの名前は──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは転生者の物語

 

 

 

数多の苦難を乗り越え、希望を繋ぎ…絆を紡いできた『彼』の旅路

 

その『彼』に寄り添う、美しく…強く優しい『彼女』の旅路

 

 

 

彼らの物語はこれからも続いていく、新たな『命』と共に───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5部 ARC-V編 完






改めまして…こんにちは!S,Kです!

『転生して決闘の観測者になった話』を執筆し始めて約5年、ARC-V編を執筆して約2年…ついに完結させる事ができました。


今までこの作品を応援してくださったハーメルンの読者の皆様
特に…たくさんの感想を頂き、新たなカード情報を教えてくれたり、メッセージの雑談に付き合ってくださった『雷影』様

同じく、たくさんの感想を頂き、遊海達の旅路を応援してくださった『機殻の統率者』様・『少年サッカー法第ゴジョ―さん』様

そして初めて作品コラボを提案し、精霊・メガロックや5D's編での「善知の悪魔」ラプラス、ZEXAL編での「名無しの怪物」ネームレスのアイデアを思いつくキッカケとなってくれた『16tuki』 様 

また、感想やコメント、リクエスト、ここすき、お気に入り登録などで応援してくださった皆様の応援のおかげで白波遊海と翠の物語を今まで続ける事ができました…ここに厚く御礼を申し上げます。



当初の目標地点として私は『ARC-V』の物語を1つの区切りにしようと考えていました。
誰かの評価などは特に気にせず、私が見てみたい『遊戯王』の物語を書こう…そんな風に思いながら、今まで執筆を続けてきました…しかし、やはり万人には受け入れられず、厳しい評価や感想もたくさん頂きました。

それでも気付けば…原作『遊戯王』で総文字数・話数はトップ、お気に入り登録は1000件を越えるという自分では信じられない程の評価を頂く事ができました…本当に、ありがとうございます。



そして…今まで拙作を応援してくださった皆様の思いに応えるべく……遊海達の物語はまだ()()()()()()()



『転生して決闘の観測者(デュエル・ゲイザー)になった話』

第6部『VRAINS編』 近日執筆開始予定……



アイデアはOK、デュエル構成は不安、未来は未定……ですが、この作品を楽しんで読んでくださる読者の皆様の為…S,K、もうひと頑張りさせて頂きます!!

どれほどの物語になるかはわかりませんが……変わらぬご支援をどうか、よろしくお願いします!


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幕間の物語〜掴み取った未来〜
その後の物語〜スタンダード・エクシーズ〜


こんにちは!S,Kです!

本当なら、少しお休みと設定見返しの時間をもらってから『VRAINS編』に行こうと思っていたのですが…『その後』の物語が見たいとのリクエストがあったので、久しぶりの幕間の物語です!

予定では2〜3話ぐらい、アイデアが思い付けば増えるかも?


それでは…どうぞ!


「翠!準備は大丈夫か?忘れ物は?」

 

「は〜い!えっと、替えのオムツとミルクと着替えと……」

 

「あう〜?」

 

「うふふ…大丈夫よ~」

穏やかに晴れたとある日…遊海と翠は新たな『家族』と共に出掛ける用意をしていた…。

 

 

 

「遊海さん!アヤカちゃん!大丈夫、行きましょ!」

 

「ああ!みんなにもご無沙汰しちゃったからな…楽しみだな〜!」

 

《では…久しぶりのARC次元に出発します!》

 

《フォウ、フォーウ!(出発〜!)》

真体となった彩華…『アポクリフォート・キラー』の嬉しそうな声と共に…白波一家は次元を超えてARC次元へと出発した。

 

 

 

 

 

 

@スタンダード・ペンデュラム次元

 

 

 

「「「「「「かわいい〜!!!!」」」」」」

 

「「でしょでしょ〜!!」」

 

《フォ〜ウ〜(いい加減にしなよ親バカ夫婦〜)》

 

「フン、2人して英雄の面影もないほどニヤけた顔をしおって…まぁ、仕方があるまい」

 

舞網市、海馬コーポレーションの社長室にとろけそうな優しい、黄色い声が重なる…遊海と翠は久しぶりに遊戯達に会いに来ていたのだ、新しい家族──遊海と翠の息子を連れて…。

 

なお、遊戯や城之内達は赤ちゃんの可愛さに夢中になっているが…海馬だけはだらしのない様子の遊海と翠に呆れていた…。

 

 

 

「碧い眼が綺麗…目元は翠ちゃん似かな?」

 

「ふにふにしてるけど…顔立ちは遊海に似てるね!」

 

「あぶ〜」

遊海の腕の中ではにかむ赤ちゃん…その目元は翠に似ており碧眼、まだ短い髪は遊海譲りの黒髪だった。

人見知りをする様子もなく、遊戯達にもはにかんでいる…。

 

 

 

「名前は?なんて付けたんだ?」

 

 

「───ゆうじ、俺の…()()の名前の『遊』に『嗣ぐ』で『遊嗣』って言うんだ」

 

 

「ゆうじ…遊嗣くんか…!いい名前だね!」

 

「えへへ…褒めてもらって良かったね〜?」

 

「たい〜!」

遊海達の息子、その名は──白波遊嗣…その名を聞いた遊戯は柔らかく笑い、その様子を見た翠と遊嗣も笑い合っている。

 

 

 

「『遊』を『()ぐ』か…お前の二代目にでもするつもりか?……茨の道になるぞ?」

 

「いいや…違う、『英雄』なのは俺だけでいい……この子には『遊』……俺達が受け継いできた、決闘者の願いを継いでいく…未来を明るくする子になって欲しいんだ…それに、この子を危ない目に遭わせたくないからな!ね〜?」

 

「ばぶ〜?」

海馬の指摘に遊海は穏やかに答える、世界を最善に導こうと命を懸けてきた遊海…だが、自分の息子にその茨の道を継がせるつもりはなく…ただ穏やかに、未来へ希望を繋いでいく『光』になって欲しいのだと伝える…。

 

 

「あんなに優しい顔をしてる遊海は前世を含めて初めて見たね…ズァークとの決戦の凛々しさが嘘みたいじゃないか」

 

「ふふっ…この子が産まれてから、ずっとこの調子なんですよ〜凌牙君と璃緒ちゃんも呆れちゃって…あっ、でもやる時はしっかりしてるので!」

 

「はぁ…そうでなければ困る…」

遊海のあまりの変わりように苦笑する舞…その様子は遊海の優しさを知る凌牙達でも呆れてしまうほどである。

 

 

「凌牙君達は一緒じゃないの?」

 

「ああ、この前のワールド・チャンピオン・シップスで遊馬に惜敗してな…武者修行で世界のデュエルリーグを巡ってるんだ、璃緒は大学の授業さ」

 

「こっち…ペンデュラム次元の様子はどうですか?」

 

「そんなに大きくは変わらないかな?…ああ!遊矢君に続いて遊希がプロテストに合格したよ!他のランサーズの子達もユースクラスに昇格してる!」

 

「零児との冗談話だが…4次元合同デュエル大会でも開催するか?と言う話も出たが…まだ実現していないな」

 

「おお〜!みんなも強くなってるなぁ…」

そして、お互いの近況を報告し合う遊海達…そんな時だった。

 

 

 

「瀬人様、お客様です」

 

「うむ、時間通りだな…通していいぞ」

磯野が海馬に来客を告げる…それは──

 

 

「遊海!久しぶり!!」

 

「わぁ…!本当に赤ちゃんだ〜!かわいい〜!!」

 

「うむ…!やはり、赤子は可愛いものだ…」

 

『おめでとう!2人とも!』

 

「遊矢!柚子ちゃん!権現坂君!遊希!久しぶりだな!来てくれてありがとう!」

海馬コーポレーションにやって来たのはチーム遊勝塾…遊矢、柚子、権現坂、遊希の4人組だった、久しぶりに遊海達が舞網に来ると聞いて会いに来たのだ。

 

 

 

「遊矢!息子の遊嗣だ…抱っこしてみるか?ほら、頭の下に腕を添えて…おしりを支えて…」

 

「わわっ!?オレ、赤ちゃん抱っこした事ないって!?」

 

「あう…たい!」

 

「わっ!?ペンデュラムを引っ張らないで…イテテテ!?」

 

「あはは…ごめんね遊矢君!すぐに離してくれると思うから!」

 

「ふふっ…泣かれるよりは良かったじゃない!次は私〜♪」

 

「遊矢!優しく扱うのだぞ!!」

 

『権現坂君、声は小さく…』

 

「あぅ…ふみぃ…!!」

 

「「権現坂〜!?」」

 

「むっ!?す、すまん…!」

 

「ほら…ユウ君〜大丈夫、大丈夫よ〜」

 

『あはは…流石に権現坂君の声は怖かったか〜』

遊矢へと遊嗣を託す遊海…初めての赤ちゃん抱っこにわたわたしてしまう遊矢…そんな遊矢のペンデュラムを引っ張る遊嗣、それを見て優しく笑う柚子、大きい声を出して遊嗣を驚かせてしまう権現坂と慰める遊希…わちゃわちゃとした平和な光景が広がっていた…。

 

 

 

「遊希、体の調子は問題ないか?」

 

『うん!前よりも全然動けるよ!そのおかげでプロテストにも合格できたし!』

 

「そうか…なら、良かった」

機嫌が直った遊嗣を抱っこする柚子を見ていた遊希に遊海が話しかける。

 

榊遊希…不慮の事態で遊海の肉体に宿ってしまっていた『もう1つの魂』…彼は舞網チャンピオンシップ・バトルロイヤルの最中に遊海を目覚めさせる代わりに消滅してしまった……と、思われていたが、密かにドン・サウザンドが保護しており…『ヌメロン・ピース』の奇跡によって蘇る事ができたのだった。

 

なお、その肉体に刻まれていた傷のほとんどはなくなり…身体能力は遊海と同等レベルに調整されている…、

 

 

「……その左目の()は治さなくていいのか?」

 

『うん…この傷は僕が僕である「証」だから…』

遊海の問いかけに遊希は左目に手を当てる…その傷は遊勝塾を賭けたLDSとの4番勝負の際、凌牙とのデュエルで負った傷だった。

失明こそ回復したが…額からまぶたにかけた傷が残っていたのだ。

 

 

『この傷は()の戦った証だ…この傷を見れば、僕は自信を取り戻せる…どんなに辛い目に遭っても、この時よりはマシだって…!』

 

「遊希…まぁ、それでいいなら…俺は何も言わないさ」

遊海に傷を消さない理由を伝える遊希…その思いを知った遊海は穏やかに笑っていた…。

 

 

「遊希さん!はい!遊嗣くん抱っこしてあげて!」

 

『おっ…ありがとう、柚子ちゃん』

 

「ぶ〜…?あい!!」

 

「おっと!?僕のペンデュラムも気になるの!?イテテ!」

 

「遊嗣〜?あんまり遊希を困らせたらダメだぞ〜?」

 

「ヘヘっ…遊海があんな顔してるの、初めてみたなぁ」

そして、柚子から遊嗣を託される遊希だったが…遊矢と同じくペンデュラムを引っ張られて苦笑する…そんな様子を見ながら遊矢は幸せそうな遊海の姿を見て笑顔になっていた。

 

 

 

 

 

 

「遊海、ちょっといいか?」

 

「ん…克也、どうしたの?」

権現坂に抱かれてすぐにぐずってしまった遊嗣をあやす翠を見ながら微笑んでいた遊海に城之内が声をかける…。

 

 

「ほら、ずっと前にデュエルアカデミアで話した時の事を思い出してよ……お前ら、子供の事……」

 

「うん……俺達は不死身だ…体も老いない……そんな親を持ったら、子供に申し訳ない……ずっと、そう思ってた」

それはずいぶんと昔の事、不死身になった2人は子供を持つ事を諦めていた…()()()()()()()、と考えていた…だが…。

 

 

「でもさ…凌牙や璃緒が俺達の子供になってくれて…それで、今までの戦いを乗り越えて思ったんだ…未来へ希望を…『絆の光』を繋いでいかなきゃならない…例え、俺達がいなくなるような事があっても……正しいデュエリストの形を伝えていかないとって…」

 

「遊海…」

数多の戦いを乗り越え、世界の平和をデュエルによって守り続けてきた遊海と翠…その中で2人は改めて『絆』の大切さを知る事ができた…それが、遊海達に新たな一歩を踏み出させたのだ。

 

 

()()()()!遊嗣が抱っこしてって!」

 

「はいはい!遊嗣は俺の事大好きだもんな〜?」

 

「あい〜!きゃう!」

 

「……ヘヘっ、頑張れよ!2人とも!」

翠に呼ばれた遊海が遊嗣を抱き上げ、幸せそうな笑顔を見せる…そんな様子を見た城之内は2人に激励の言葉を贈った…。

 

 

 

 

 

@エクシーズ次元

 

 

「───まさか、生きているうちに遊海先生の子供を抱く事があるなんて…」

 

「落ち着けエド、俺達の人生は2回目だ……いや、一番取り乱しているのは俺か…!?」

 

「おいおい…(汗)」

場所は変わってエクシーズ次元・ハートランド、セントラルタワー広場…遊海達は次元戦争からの復興の陣頭指揮を執っているエドと亮に会いに来ていた。

 

なお、エドも亮も遊海の実子である遊嗣を見て驚いている。

 

 

 

「あう〜」

 

「よしよし…2人とも、エクシーズ次元はどんな様子だ?」

 

「はい…遊海さんの『オーバー・タイム・タイラント』のおかげで街の被害は最小限になっていたので問題なし、範囲外の山の修復ももう少しで終わります!」

 

「その件はごめんね…私がやり過ぎちゃって…」

 

「大丈夫ですよ翠さん…フレア…ラーの翼神竜の神威が残っているのか、植えた木がすくすく伸びて…すぐに元通りになりそうです」

 

「流石フレア…ありがとな」

 

《ふふっ、私は太陽神…豊穣の力も少しはあるのです!》

遊嗣をあやしながらエクシーズ次元の状況を聞く遊海…『ヌメロン・ピース』の奇跡によって市街地の被害は最小限となったが…範囲外になってしまった場所はアカデミアが中心になって現状回復を行っていた…。

 

 

 

「おっ…遊矢達からの連絡通りだな…久しぶりだな、遊海」

 

「ん…?おお!ユートに黒咲兄妹か!」

 

「ご無沙汰してます!遊海さん!」

 

「……本当に赤ん坊を連れているとは……」

そんな時、遊矢から連絡を受けたらしいユート、そして黒咲隼と瑠璃がやって来た…全員、次元戦争以前の私服を着ている。

 

 

「ふふっ…よかったら抱っこしてあげて!」

 

「ありがとうございます!…うわ、軽〜い!!」

 

「きゃう~!」

 

「フッ…やはり…平和が一番だな、隼」

 

「ああ…そうだな、ユート」

翠に促されて遊嗣を抱き抱える瑠璃…その姿を見たユートと隼は平和の有り難さを噛み締めていたのだった。

 



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その後の物語〜シンクロと融合と…?〜

こんにちは!S,Kです!

「その後」の物語、後半戦…遊海達が向かうのは…?

それでは、どうぞ!


「翠、遊嗣は大丈夫か?」  

 

「はい!ミルクも飲んで…とってもご機嫌です♪」

 

「あう〜ぱ〜!」

 

《可愛いなぁ…遊嗣は……だが、直接触れないのが残念だなぁ…》

 

「ごめんな、メガロック…もう少し遊嗣が大きくなったらな…」

シンクロ次元に向かう次元回廊…「アポクリフォート・キラー」の機内で遊海達は穏やかに談笑していた。

その中でメガロックだけは表情が暗い…全身が鋭い岩に覆われている彼は遊嗣を傷付ける事を恐れて触れ合う事ができていなかったのだ。

 

 

 

「大丈夫よメガロック…遊嗣!ほら、メガロックの頭を撫でてあげて?」

 

《むっ!?翠、それは──》

 

「あう?…てい!」

そんなメガロックの様子を見ていた翠が遊嗣を抱いて歩み寄る…そして遊嗣は──ぺちぺちとメガロックの頭を触った…

 

 

《ふふ…はは…!ああっ…小さな手のはずだが…なんとも言えぬダメージだなぁ…》

 

《フォウ、フォウ〜!(メガロック…泣かないで〜!)》

 

「よかったな、メガロック…」

 

「あい〜!」

小さな手の温もりを感じてメガロックは思わず涙を流す…メガロックにとって、遊海と翠は実の子供のようなもの……つまり、遊嗣は()に当たる…遊海と翠の歩んだ今までの旅路を思えば、彼の感動もひとしおだった。

そんなメガロックに遊海やフォウは優しく寄り添っていた…。

 

 

 

 

@シンクロ次元

 

 

「遊海…まさか、お前が子持ちになるとはなぁ…こうして見ても信じられねぇぜ」

 

「か、可愛い〜!翠!抱っこさせて〜!」

 

「私も〜!!」

 

「ふふっ…持ち方はねぇ…」

シンクロ次元・シティ、遊星のガレージ…そこにはシンクロ次元5D'sの仲間達や牛尾、ディヴァインが集まっていた。

牛尾は遊海の息子である遊嗣を見て感慨深げな表情を見せ…龍亞と龍可は翠に教わりながら遊嗣を抱っこしようとしている。

 

 

「おめでとう遊海さん…やっぱり、自分の子供はいいものだろう?」

 

「不動博士…ああ、凌牙や璃緒のおかげで、子供の温かさは経験したつもりだったけど……この子だけは絶対に守りたい、そう言う思いが強くなったよ…()()()の貴方達夫婦の思いが痛い程分かった…」

 

「ははっ…貴方だったら、どんな危機からも守りきれるさ!」

 

「遊海さん…本当に良かった…」

不動博士との父親談義に花を咲かせる遊海…その表情を見た遊星も思わず笑顔になっていた…。

 

 

 

「そういえば…シティの()()はどこまで進んだ…?」

 

「むっ……まもなく終わるらしいが……」

 

「ったく…『元』とはいえキングが街を壊してどうすんだよジャック!オレらも大変だったんだからな!?」

 

「それは()()のジャックにも言える事だろうが!」

 

「結局、自分の事じゃないの…」

 

 

 

次元戦争・ズァーク戦後の平和を取り戻したシンクロ次元では1つの大事件が発生していた。

 

 

その名は──『2人のジャック』事件

 

 

ARC次元から人間界に戻った海亜・アトラスが祖父のジャック・アトラスにシンクロ次元のジャック・アトラスの伝言を伝えた結果、ブルーノを脅した老ジャックがARC次元に突入…若ジャックとのライディングデュエルをする事になってしまった。

 

その結果、デュエルは白熱…変則ルールの中で『Sp-ファイナル・アタック』の効果を受けた老ジャックの『スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン』とアクションマジック『バイアタック』の効果を受けた若ジャックの『レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント』が激突…

 

 

老ジャックの『ネオ・バーニング・ソウル』と『精霊の力』

 

若ジャックの『シグナーの力』と『バーニングソウル』、そしてリアルソリッドビジョン

 

 

全力でぶつかった2人の力によってすさまじい衝撃が発生…アポリアから事態を聞いて駆けつけた遊海と老遊星が見たのは、ガスの大爆発でもあったのかと勘違いするほどの様相となったシティ中心部と言い争う2人のジャックの姿だった…不幸中の幸いだったのは、奇跡的に死傷者が出なかった事だろう。

 

 

なお、その後の2人のジャックは遊海と2人の遊星によってみっちりと絞られ、若ジャックの方はキングとして稼いだ資産のほとんどを失う事になったのだった。(それでも、熱いデュエルに感動したトップスからずいぶんと支援があったとか…)

 

「ズァークの被害がかわいく見えるぜ…」とはクロウの談である。

 

だが、悪い事ばかりではなく…シティの復興に人手が必要となり、旧コモンズの住人達が働き口を得た事で彼らの生活水準を上げる事ができ…犯罪率が大きく下がったらしい。

 

 

 

「ジャック、シグナーの力の扱いには気を付けてくれよ?まぁ…いつまで力を貸してくれるかは赤き竜次第だけどな…」

 

「…反省はしている…だが、後悔はしない!あのデュエルはそれほどの戦いだった!!」

 

「「「後悔もしろ!」」」

 

《キュオ…キュオオン…(特別意訳:ジャックは…どの世界でも揺らがないのだな…)》

 

《フォウッ!?!?(「閃珖竜」が呆れてる!?)》

相変わらずの傲岸不遜ぶりに思わず「閃珖竜」も呆れているのだった。

 

 

 

 

「いないいない〜ばあ!!」

 

「きゃっきゃっ!あう〜!」

 

 

「……白波翠、久しぶりだな」

 

「ディヴァイン…」

龍亞と龍可と戯れている遊嗣を見ていた翠…そんな彼女に話しかけたのはディヴァインだった。

 

「前に会った時は言う暇がなかったが……前世での事、すまなかった…私はキミ達を……」

 

「ディヴァイン…もういいのよ、その事は…」

翠に対して頭を下げるディヴァイン…前世の人間時代において、彼は遊海や翠を何度も傷付け…バリアンに転生した後も遊海は深い傷を負う事になった…。

だが、4度に渡る戦いの末に彼はようやく救われ…今回の戦いにおいては「絆の欠片」を宿した1人として、遊海達を救う一助となった。

 

それを聞いていた翠は静かにディヴァインを許したのだった。

 

 

「それよりも…この子の事を抱っこしてあげて?と〜っても可愛いの〜!!」

 

「ははっ…まったく、キミ達がこれ程の子煩悩になるとは…」

 

「あう〜?きゃい!」

 

「イタタ!ちょっ、髪はやめてくれないか!?」

子煩悩な様子の翠に苦笑しながら遊嗣を抱くディヴァインだったが…トレードマークの前髪を掴まれてしまい、慌てるのだった…。

 

 

 

「お〜い!遊星!Dホイールの調子見てく…おおっ!遊海じゃん!久しぶりだな!その赤ん坊は…?」

 

「もしかして2人の…!?」

 

「おお、ユーゴとリンちゃんか!この子は初めましてだな…俺達の息子の遊嗣だ、よろしくな!」

 

「たい!」

 

「「可愛い〜!!」」

そして、偶然に遊星のガレージにユーゴとリンがやって来る…2人もすぐに遊嗣にメロメロになるのだった。

 

 

 

 

 

 

@融合次元

 

 

 

ふぎゃあああ〜!!!」

 

「オウノー!?大泣きなノーネ!?どうしてなノーネ──!?」

 

「クロノス先生…(汗)」

 

「先生の顔が濃すぎたザウルス…」

 

「あはは…」

融合次元・デュエルアカデミア、その中庭で遊嗣は大泣きしていた…もちろん、原因はクロノスの濃すぎる顔である。

その様子を見た翔や剣山を始めとした生徒達や遊海は苦笑している…。

 

 

「クロノス先生!ほら、代わるよ…遊嗣〜!久しぶりだなー?」

 

「あう…ゆぅい〜…」

 

「流石はセニョール()()、子供の相手は慣れてるノーネ…」

クロノスの腕の中で泣きじゃくる遊嗣をあやしたのは、融合次元を訪れていた十代だった…彼は全ての事件が解決した後も定期的に融合次元に顔を出している。

…なお、その姿は翔や明日香と同年代の()()としての姿…遊馬や凌牙達は帰還後に「ヌメロン・コード」の力で本来の姿に戻ったのだが…彼はこの姿でいる事を選んだのだ。

 

 

 

《ふふっ…上手いじゃないか十代》

 

「ヘヘっ…やっぱり赤ちゃんは可愛いよな〜!ユベルも抱っこしてみるか?」

 

《ぼ、ボクはいいよ…ボクはちょっとトゲトゲしてるし…爪も鋭いからね、知ってるだろう?》

 

「あう…あう〜!」

 

《あっ…》

遊嗣をあやす十代…そんな彼はユベルにも声を掛けるが、ユベルは肩を竦める…『正しき闇の覇王』を守る為に異形の姿になった自分には子供は弱すぎると…。

 

しかし、それを知ってか知らずか…遊嗣は十代の腕から小さな手を伸ばし…彼女の指先を掴んでいた。

 

 

《───まったく、キミは羨ましいね…最強の英雄や、たくさんの仲間達の『愛』に守られて…キミはきっといいデュエリストになるだろうさ…》

 

「う〜?」

ユベルは手のひらで優しく遊嗣の頭を撫でる…その手に感じる、ほのかな温かさに微笑みながら…。

 

 

 

 

「あれ…遊海、来てたんだ」

 

「何を白々しく…遊海が来ると聞いてビクビクしていた癖に」

 

「久しぶりだな!ユーリ、セレナ!」

一通り仲間達が遊嗣との触れ合いを終えた頃、セレナとユーリがやって来る……なお、ユーリは若干遊海に怯えていた。

 

 

「ほら、抱っこしてみるか?」

 

「僕はいいよ、赤ちゃんなんて抱いた事な──「あい〜!」……ねぇ、キミ…僕の眉毛はボタンじゃないよ?」

ユーリに遊嗣を抱くように勧める遊海、ユーリはそれを断ったのだが…何を思ったのか遊嗣が小さな両手でユーリの麻呂眉を押し込んだ…どうやら、おもちゃと勘違いしたらしい。

 

 

「ぷっ…」

 

「「「あははは!!」」」

遊嗣の思わぬ行動とユーリの答えに噴き出したセレナに続いて仲間達の笑い声が響く…新生デュエルアカデミアは今日も平和だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

@???

 

 

 

【フン…わざわざ、我の領域にも顔を出すとはな…暇なのか?】

 

「まぁ、暇なのは否定しないけど…お前にも顔見せしようと思ってな!」

 

「あう〜…?あ〜い〜!」

 

そこは夜空が広がるのに明るく、古代の遺跡と花畑が広がる穏やかな世界…かつて、遊海と翠が遭難した「ARC次元の中心世界」

全ての次元から隔離されたその場所は現在、『善神』ドン・サウザンドが「ヌメロン・ピース」を守る為に利用していた。

 

 

 

「ふふっ…抱っこしてみます?」

 

【……止めておこう、赤子には我の力は強すぎる…だが……】

翠に遊嗣を差し出されたドン・サウザンドは静かに首を振る…だが、その指先で優しく遊嗣の額に触れた。

 

 

【フッ…英雄と女傑の子か…お前もまた()()()()()()デュエリストになるのだろうなぁ…】

 

「世界なんか背負わせないよ……この子は俺達の思いを受け継いで、元気に育ってくれればいいんだ……な〜?」

 

「あい〜!」

 

「お返事上手ね〜!ふふっ」

 

【流石の英雄も自分の子には顔が緩むか…だらしのない】

 

《フォウフォウ、フォウ?(でも、()()()光景だろ?)》

 

【フッ…そうだな、災厄よ】

遊嗣をあやしながら穏やかに語る遊海と翠、その様子を見ていたドン・サウザンドの口角も…僅かに上がっていた…。

 

 

【───だが、()()とは…よく言ったものだ…いずれ、伝えてやらねばな…お前達家族の為に…】

 

 

@アストラル世界

 

 

きゃあ〜!可愛い〜!!!本当に2人にそっくり〜!!

 

でしょでしょ〜!もうほっぺもプニプニで…目もクリッとしてて〜!!

 

「(⁠°⁠o⁠°⁠)⁠」

 

「エメル、落ち着けって…遊嗣が驚きすぎて目が点になってるから、怖がってるから……仕方ないか……すまん、遊海」

 

「はは…エメルが喜んでくれて何よりだよ、ラプラス…遊嗣、少しだけ我慢してくれ…(汗)」

 

遊海達が最後に訪れたのは…遥かなる異次元、アストラル世界……そこで遊嗣は紫色の髪のアストラル人の少女……エメルから熱烈な歓迎を受け、翠も親バカを爆発させていた。

そして、あまりの熱量に遊嗣は泣きも笑いもせずに目を見開いていて、少し可哀想な事になっている。

 

また、流石の遊海とラプラスも女性陣の盛り上がりにタジタジであった…。

 

 

 

「遊海!翠!頑張った…頑張ったね〜!!」

 

「うん…!私達頑張ったよぉ〜!!」

 

 

「遊海…絶対に、何があっても守れよ…お前達の()()()()()を…」

 

「ああ…!この子が優しく、明るい世界で生きれるように…俺はこれからも戦い続ける!」

 

「あう〜?」

 

「ははっ…遊嗣、大好きだ…!俺達の所に生まれてくれて、ありがとう…!!」

涙を流しながら抱き合う翠とエメル…そして、遊嗣を胸に抱きながら戦い続ける決意を固める遊海…彼らの未来は希望の光に満ち溢れていた…。

 

 

 

 

 

 

『フッ…私も祝福しに行きたいが…少し時間をズラすとしようか…』

 

(その方が良さそうですね、エリファス…彼らだからこそ、この時間に意味がある)

 

そんな光景をエリファスとアストラルは優しく見守っていたのだった。

 



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穏やかな日々〜平和な時間〜

こんにちは!S,Kです!

今回は完全な『日常』回……ほのぼのとした白波家をお楽しみください!

それでは、どうぞ!


「───ん……朝か……」

 

「すぅ…すぅ……」

 

「くぅ…くぅ…」

 

とある日のハートランド…遊海はカーテンの隙間から差し込む光で目を覚ました、その隣には翠が…ベビーベッドでは遊嗣が静かに寝息を立てていた…。

 

 

「ああ…()()()()()…」

なんて事のない()()()()()()()…それを見た遊海は穏やかに呟いた…。

 

 

 

…………

 

 

「ふぁ……おはよう父さん、母さん…」

 

「おはよう凌───髪がすごい事になってるぞ?」

 

「んー?……うげ、マジだ…」

それは朝の一コマ…2階から寝癖で髪型が愉快な事になっている凌牙が降りてくる、ソファに腰掛けた遊海の言葉でそれに気付いた凌牙は髪を押さえていた…。

 

 

「あう…たぁい〜!」

 

「おっ、おはよう遊嗣…今日も元気そうだなー?」

 

「きゃう〜!」

 

「うっ──やっぱり、俺の子供達は可愛いなぁ〜!」

 

「父さん…毎日それ言ってるぜ?…というか俺もかよ」

そして凌牙は遊海の膝の上にいた遊嗣に優しく声をかけ、頭を撫で…遊嗣は嬉しそうに笑い声を上げる、20歳差の兄弟の触れ合いは尊く…遊海は毎日尊死しかけている。

 

 

「おはよう父さん!おはよう遊嗣〜!うりうり〜!」

 

「きゃう〜!きゃはは!!」

 

「もう…姉弟揃って可愛いんだから〜」

そして続いてやって来たのは璃緒…既に身支度を整えていた璃緒は遊嗣に頬ずりする…そんな様子を見て翠は子供達の可愛さに顔が緩んでいた…。

 

 

 

「ほら、遊嗣…あ〜ん!」

 

「あう〜……えへへ…!」

 

「そうか…!美味しいか!良かったなぁ…!ママはお料理上手だからな〜!」

 

「ふふっ…たくさん食べて、大きくなってね〜!」

 

 

「まったく…本当に遊嗣は親孝行だな…元気にしてるだけで父さんも母さんも喜んでくれるんだから…」

 

「この前、熱が出ちゃった時なんて2人とも大慌てだったもんね…」

 

《フォウ〜(心配し過ぎだったよね…熱があるって分かった瞬間に回復魔法使ってたし…)》

家族全員が揃った朝食…離乳食を食べるようになった遊嗣はベビーチェアに座り、遊海が付きっきりで世話をしている…そんな様子を凌牙と璃緒は優しく笑いながら見ているのだった。

 

 

 

 

「えっ、お出かけ?」

 

「ああ、今日は凌牙も璃緒も休みだろ?久しぶりに羽を伸ばしたらどうかなって…遊嗣は俺1人で見てるからさ」

今日は日曜日…凌牙も璃緒も休みが重なっている…それを聞いた遊海は翠へと気晴らしを提案していた。

 

 

「俺達は良いけど…父さん1人で大丈夫か?」

 

「大丈夫さ!普段のお世話だって頑張ってるだろ?それに、たまにはストレスを発散しないと体に悪いからな…な〜?」

 

「たゆ〜?」

 

「もう…疲れてるのは遊海さんも一緒なのに……ありがとうございます、遊海さん…」

遊海の優しい心遣いに翠は柔らかく微笑んだ…。

 

 

 

「ほら、遊嗣…ママとにぃにとねぇねにバイバ〜イ!」

 

「ばぁばぃ〜!」

 

「「「「できた!?すごい!」」」」

玄関先で翠達を見送る遊海と遊嗣…なのだが…「初」バイバイを成功させ、家族全員が驚いている…。

 

 

「ふふっ…初パパ・ママを言ってくれる日も近いかもしれないですね!いってきま~す!」

 

「ああ!いってらっしゃい!」 

 

「たぁい〜!」

遊嗣の思わぬ成長を喜びながら、翠達は出掛けていった…。

 

 

 

…………

 

 

 

「たゆあう〜」

 

「ははっ…ちょっと待っててな〜」

翠を見送った遊海は遊嗣を背負い、外のガーデニングの水遣りを始める…その背中で遊嗣はぱたぱたと手足を動かしている。

 

 

「あっ!おはよう遊海!」

 

「おう!おはよう遊馬!」

 

「たいたい〜」

 

(おはよう遊海、遊嗣、元気そうで何よりだ)

そんな時、家の前を通りかかったのは遊馬とアストラルだった…日々プロリーグで戦う彼も今日は休みらしい。

 

 

「たあう?」

 

「おっす遊嗣!今日もぷにぷにだな〜!今日はシャーク達は?」

 

「翠の気晴らしに付き合ってもらってるんだ…今日は俺と遊嗣、精霊達でお留守番さ!」

 

「たい!」

 

「へぇ〜!」

 

(……私達と一緒にバリアンと戦っていた時や、ズァーク戦の時とは大違いだな…これが子供…赤子の持つ力か…)

穏やかな日常を送る遊海を見たアストラルが考え込みながら呟く、彼が知る戦い続けた遊海と比べて…今の穏やかな遊海は本当に幸せそうだったからだ。

 

 

「時間は大丈夫か?何か約束してるんじゃないか?」

 

「えっ…あ!小鳥と待ち合わせしてたんだった!じゃあな〜」

 

「ばぁば〜!」

 

「……あの様子だと、小鳥ちゃんの想いはまだ届きそうにないかな?」

そうして遊馬は駆け出していく…そんな姿を見ながら遊海は笑っていた…。

 

 

 

 

 

「ういいぃぃ〜!」

 

「ほら、キレイキレイしような〜」

 

《フォウ、フォウ!(やっぱり手慣れてるね!)》

 

「ははっ…ようやくだよ…まぁ、自分で自分の血とかを片付ける事も多かったからなぁ…それよりはマシさ」

ぐずり始めた遊嗣のオムツを変える遊海…そんな中で遊海は今までの大怪我の事を思い出していた…。

 

 

「ふんふん〜♪ふんふーん〜〜♪」

 

「たぁい〜えへへ…」

そして遊海は洗い物や洗濯、掃除…日々の家事を終わらせていく…そんな中で遊嗣は嬉しそうに笑っていた…。

 

 

 

《フォウ〜…フォーウ─!!(遊嗣に〜シュート!!)》

 

「たい!てあああ〜」

 

《なんの!!》

 

「よしきた!」

家事を終わらせた遊海はリビングで遊嗣とフォウやフレアと一緒にボール(柔らかい・布製)を使って遊ぶ…もふもふの尻尾を使ったフォウのシュートやフレアのヘディングに遊嗣はご機嫌である。

 

 

 

「ほら、あ〜ん…」

 

「あう〜!」

そしてお昼時、翠が作っておいた離乳食とミルクを遊嗣に食べさせる…なお、遊海自身は久々のカップラーメンである。

 

 

 

 

 

「よしよし…今日はいっぱい起きてたからお昼寝しような〜」

 

「たう〜…」

 

《うむ、寝る子は育つというからなぁ…》

そしてその後はお昼寝の時間…日当たりの良いリビングに布団をひいた遊海は優しく遊嗣を寝かせる…そしてぽんぽんと優しくリズムを取る…。

 

 

「あう……ヘヘっ……すぅ…すぅ…」

 

「──よし、寝かしつけ成功…」

そして30分ほどそれを続けると…遊嗣は微笑みながら夢の中に旅立っていった…。

 

 

 

 

「……なぁ、彩華…俺、こんなに幸せでいいのかな?」

 

《マスター…》

眠っている遊嗣の顔を見ながら、遊海はふとアヤカに問いかける…。

 

 

 

「不意に命を落として…良い神様に巡り会って、憧れの遊戯王世界に来て…翠と再会できて……生涯の親友達やお前達と出会って…凌牙や璃緒、遊嗣が生まれて……こんなに幸せに過ごして、いいのかな…?」

 

《当然ですよ、マスター…貴方達はそれほどの戦いを乗り越えてきたんです…きっと、他の転生者がいたとしても……マスターほどの苦しみや痛みを経験した者はそう多くない、と私は思います》

今までを振り返り、幸せに暮らす「今」を不安に思う遊海…だが、パートナーであるアヤカはその幸せを肯定する…遊海はそれほどの戦いを乗り越え続けたのだからと…。

 

 

《マスターは本当に優しすぎるほど優しい人間です…たまには、その優しさを自分に向けてください》

 

「そうだな……ありがとう、あやか……すぅ……」

 

《……おやすみなさい、マスター…どうか穏やかな夢を…》

アヤカとの問答で不安が晴れたのか…遊海もまた眠りの世界に落ちていった…。

 

 

 

 

《えっと…この時期の赤ちゃんの推奨昼寝時間は……30分から2時間……では、1時間ほどしたらマスターを起こし──おや?》

 

「たぁい?」

 

《フォウ!?(起きちゃった!?)》

ネットで検索した赤ちゃんの昼寝時間から遊海達を起こす時間を考えるアヤカ…しかしその時、眠ったはずの遊嗣が目を覚ましてしまった。

 

 

 

 

《フォウ、フォ〜ウ〜(遊嗣、寝てなきゃダメだよ…遊海も疲れてるから…)》

 

「たうたう〜…たたたた…」

遊嗣を優しく尻尾で包んで寝かせようとするフォウ…だが、遊嗣はハイハイで布団から這い出してしまう…。

 

 

《アヤカ、ユウミを起こした方がいいのでは?》

 

《それが一番なのですが…マスターにも休息は必要です…!私達でなんとかしましょう…!》

 

「てぇう〜!」

目を覚ましてリビング内を冒険する遊嗣、その姿を見たフレアは遊海を起こす事を提案したが…遊海の疲労を知っているアヤカはなんとか事態を収める為に奮闘する事になった。

 

 

 

 

「きゃう〜!」

 

《フォウ?(ボールで遊ぶの〜?)》

遊嗣はまず、落ちていたボールを拾って笑顔を見せる…その姿を見たフォウは遊嗣に歩み寄るが──

 

「てう!」

 

《フォッ!?フォウー!(ああ!?ボールが遊海の顔の方に!!)》

 

《任せろ!!》

遊嗣が手にしたボールを床に叩きつける…そのボールは跳ねた勢いで遊海の顔に向かい──ぶつかる寸前でメガロックに防がれた!

 

《フォウよ、遊海に当ててはならんぞ》

 

 

《フォウフォウ(まかせて…!)》

メガロックから渡されたボールを再び遊嗣に渡すフォウ、そして──

 

「うい〜!!」

 

《フォウ!!(今度は上!?)》

 

《させん!キャッチだ!!》

再び投げられたボールは壁に当たり、反射して遊海に向かい──今度はトフェニにキャッチされる。

 

 

《赤子とはいえ油断でき──!?遊嗣殿!?》

 

「あしょ…あしょ…!」

 

《フォウ─!?(ソファをよじ登ってる─!?)》

取ったボールを遊嗣に返そうとするが…少し目を話した隙に遊嗣はソファによじ登ろうとしていた!

 

 

《フォウ…フォウ!?(遊嗣!上がったらダメ…力強い!?)》

ベビー服のおしりを引っ張って遊嗣を止めようとするフォウ…しかし、赤ちゃんの筋力も意外と馬鹿にできず…遊嗣はソファの上に登ってしまう…。

 

 

「たぁうい〜!!」

 

《おおっ…遊嗣はすごいなぁ!だが、危ないから足から降りるのだ…ゆっくり…!》

 

「あう…てっ!?」

 

「「「危ない!!」」」

ソファの上で嬉しそうに笑う遊嗣…メガロックは遊嗣を褒めつつ、下に降りるように促すが──バランスを崩した遊嗣はソファから頭を下にして落下し───

 

 

 

《せ、セーフ…この姿で持ち上げられてよかった…》

 

《ふ、フレア様…ナイスキャッチ…》

 

「きゃは!きゃはは!!」

落下する寸前にフレアの爪がベビー服に引っ掛かり、遊嗣は静かに床に着地する…そんな中で遊嗣は楽しそうに笑っていた…。

 

 

 

『仕方がありません…遊嗣が眠るまで、私が抱いておきます』

 

《うむ、それが一番安全だ…》

 

《フォウ〜(赤ちゃんは予想外がいっぱいだね…)》

結局、アヤカが人間体であるレイン彩華になって遊嗣を抱き抱える…そこまでで精霊達はへとへとになっていた。

 

 

 

「たい〜?」

 

『ふふっ…遊嗣、おとなしく寝てくれないとマスター…パパとママが心配しますよ?…人肌ヒーターを起動、子守唄データを検索……〜〜〜♪』

 

「あう〜〜」

優しく遊嗣を抱いた彩華は…翠がするように体を揺らしながら子守唄を歌う…。

 

 

「うい〜…」

 

『ふふっ…貴方はマスター…パパとママの大切な宝物です…どうか、優しく強いデュエリスト……いいえ、大人になってくださいね?』

優しく微笑みながら遊海と翠の宝物である遊嗣をあやす彩華…その時───

 

 

 

「あう…ぱ……ぱぁ…ぱ……()()()!」

 

 

『「「「あ」」」』

 

《……フォッ…》

 

 

 

「すぅ……すぅ……ゆうじ……みどり……」

 

 

 

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

 

 

 

「「ただいまー!」」

 

「いっぱい買いすぎちゃった〜…遊海さーん!遊嗣〜!ただいま〜!!」

しばらくして…翠達が帰宅する、日用品やベビー用品の買い物で凌牙は両手に荷物を持っていた。

 

 

 

「遊海さーん…?あら、まぁ…!」

 

「どうしたの母さ………わぁ〜!遊嗣と父さんが同じ格好で寝てる…かわいい〜!!」

 

「ははっ…父さんも幸せそうな顔してるなぁ…」

遊海達の声がしない事を不思議に思いながらリビングへやって来た翠…そこで彼女が目にしたのは、仰向けで同じように右手を頭の上に上げ、右足を曲げて眠る…いわゆる『シンクロ寝』をする父子の姿だった。

 

珍しい光景に璃緒は慌てて写真を撮り、凌牙も幸せそうな遊海の寝顔を見て笑っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

《みんな…なんか疲れてない?》

 

《何かあったの?》

 

《いいえ、特に問題はありませんでした…デスヨネ?》

 

《フォウ、フォ(ウン、ダイジョブ)》

 

《ハハハ……はぁ…》

一方、翠と一緒にいたウィンダとウェンが疲れた様子のアヤカ達に話しかけるが…彼女達は何もなかったと愛想笑いをしていた…。

 

 

 

 

《(み、みなさん…!初パパがあった事は内緒でお願いします…!!)》

 

《(うむ…しかも、アヤカの腕の中というのはなぁ…)》

 

《(そこまで隠さなくても…)》

 

《(ですが、初パパ呼びの感動は…やはり、家族がいる所で…)》

 

《フォウ…フォ〜ウ…(赤ちゃんの成長って、早いなぁ…)》

遊嗣の思わぬ成長の早さに振り回された精霊達なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うむうむ…遊海と翠が幸せそうでなによりじゃ…ホッとしたわい』

 

『ええ…『ARC-V』の物語が始まってしまった時はどうなるかと思ったけど……2人が凌牙くんや璃緒ちゃん…そして遊嗣くんと過ごせるようになって良かった…!』

そんな白波家の様子を天界から見守っていたのは遊海達を転生させたデウス神とアマト神夫婦だった。

立場上、積極的に現世に干渉できないが…彼らはしっかりと遊海と翠を見守っていたのだ。

 

 

 

『遊海よ…次の物語がお前達への最後の試練となるだろう…お前が全ての物語を()()()()()()()のが、少し心配じゃが…お前達家族の…決闘者の絆が最善を掴んでくれる事を信じておるよ』

 

『でも…今だけは──貴方達が掴み取った幸せを噛み締めてね…きっとそれが…これからの力になるから…』

次なる物語の心配をするデウス神とアマト神…彼らの見つめる先で遊海達は幸せそうに笑っていた…。



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第6部 VRAINS編 第1章 New Generation Duelist
プロローグ〜とある復讐の始まり〜


こんにちは、S,Kです!

ひとまず、プロローグを投稿してみたり……アニメ本編を追えていないので今までに比べると設定など、粗い所があるかもしれませんが……よろしくお願いします!


 

 

バチバチバチィッ!!

 

 

「う、うあああ"あ"っ!?」

 

 

何もない「白い部屋」に響く電流音、そして…それに続くように幼子の悲鳴が木霊する。

 

 

その場所は───まさにこの世の『地獄』だった。

 

 

その少年は何故、自分がこの場所にいるのか分からない…否、()()()()()()()()。 

 

 

ある日、彼は何者かに拐われ…気付けば出口のない「白い部屋」に閉じ込められていた。

その部屋にあったのは睡眠用の薄い毛布が1枚、そして1台のVRゴーグルのみ…その部屋で彼は「VR空間」での決闘を強制された。

 

 

相手が何者なのかは分からない…だが、デュエルに負けると体に巻き付けられた装置から電流が流れ、耐え難い痛みと苦しみに襲われた…それだけではなく、食事の量、質や有無、睡眠時間をもデュエルの勝敗で管理されていくようになっていった。

 

 

起きる、デュエル、食事、デュエル、デュエル、デュエルデュエルデュエルデュエル………そして僅かな睡眠…そしてまたデュエル…時間の感覚はすぐにあやふやとなり、ついには自分に関する記憶すらも摩耗していった…。

 

 

 

 

「もう…いやだ……だれか…たすけて…」

 

 

 

少年の肉体は…心は既に限界だった。

 

来る日も来る日も続くデュエル地獄…食事を得る為の蹴落とし合い……少年の助けを求める声は虚空へと消えていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキッ…  ドガーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ…?」

「白い部屋」が揺れる、意識を手放しかけた少年の耳に聞こえてきたのは……何かが壊れる轟音だった。

 

 

 

 

『っ…!キミ、大丈夫か!!』

 

「あっ…」

そして白い部屋の電源が落ち、打ちっぱなしとなったコンクリートに覆われた部屋へと変わる…そこに現れたのは───赤い夕陽を背負った「銀色の騎士」の姿だった…。

 

 

 

『───よく、頑張った…!きみ達を助けに来た…!!』

 

「───……………」

穏やかな…しかし、怒りを宿した声を少年にかけた「騎士」は背中の赤いマントを破り、少年に纏わせる…その声色を聞いた少年の意識は久しぶりの安寧の中に墜ちていった…。

 

 

 

 

 

 

 

《マスター…!!》

 

『っ…!!!なんで()がこんな無茶な実験をしたかは不明だったはずだが──原因は()()か!!()()()()!!』

 

【───!!!】

そして…囚われていた子供達を救出していた「騎士」が吼える、少年達を地獄に落とした『元凶』への怒りを燃やして…。

 

 

『消え去れ…!絶望!!』

 

 

その瞬間、虹色の光と漆黒の闇が全てを飲み込んだ…。

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

「父さん…」

 

『───………』

その日、少年は後悔した…()()()、狂気に染まった父を止め…()()を救う為に警察と都市伝説の『英雄』に頼った事を。

 

 

 

そして、決意した…父の願いを果たす為に───父の作ってしまった『篝火(イグニス)』を抹殺するのだと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これから始まるのは『復讐』の物語

 

 

ある者は自分達を地獄に落とした者に復讐する為に

 

ある者は生み出してしまった脅威を排除する為に

 

そして…ある者は自分の命題を果たす為に──

 

 

 

それは怒りと悲しみ、希望と絶望が生み出した『負のスパイラル』…その物語を最善へと導くのは───

 

 

 

 



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運命の出会い〜初めての試練〜

こんにちは!S,Kです!

VRAINS編開幕となります!この世界を最善に導く者…それは───

新章開幕…第一話を、どうぞ!


──パパ!えほんよんで!──

 

──ん?なんの本がいい?桃太郎か?金太郎?それとも一寸法師か?──

 

──ん〜ん!これ!──

 

──これか〜お前は本当にこの本が好きだなぁ──

 

 

 

夢を見ている、小さい頃の楽しい夢を…

 

 

 

──ママ…かけっこ、負けちゃった…──

 

──残念だったねぇ…でも1位になんてならなくていいの!()()はパパとママのナンバーワン…ううん、オンリーワンだもの〜!──

 

──むぎゅう──

 

 

 

夢を見ている、暖かな思い出を…

 

 

 

 

──お父さん!肩叩いてあげる!──

 

──おっ、ありがとな!後でお小遣いあげるからな〜── 

 

──えへへ…やった〜!──

 

──遊海さ〜ん?あんまり甘やかし過ぎないでくださいね〜?──

 

 

 

 

──バトルだ!『ブラック・レイ・ランサー』でダイレクトアタック!──

 

──うわ〜!?…凌牙兄ちゃん強すぎだよ〜…──

 

──フッ…遊嗣、最強になんてならなくてもいい…でも、自分の事と自分の()()()()()を守れるくらいには強くなってくれよ?──

 

──凌牙〜!?また遊嗣をイジメてるんじゃないでしょうね〜!?──

 

──いや、これは違っ…デュエルディスクを下ろせ璃緒!?──

 

──……璃緒姉ちゃんの方が怖い…──

 

──ガーン!!──

 

──フォウフォウ…──

 

 

 

 

暖かくて眩しくて…本当に大切な『家族』の夢を───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォウ、フォーウ…フォウ!》

 

 

「ん……おはよう、フォウくん……ふぁ……」

 

《フォウ!》

眠っていた少年は何かに頬を舐められる感覚で目を覚ました…それは少年の家の飼い猫、フォウによる目覚ましだった。

 

 

「もう…目覚まし時計よりも正確なんだから……う〜ん…!!」

枕元の時計の時刻は登校には充分余裕のある時間を示している、それを見た少年──白波遊嗣は伸びをしながら起き上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう〜」

 

「あら!おはようユウくん!今日も早いわね〜」

 

「フォウが舐めてくるんだもん…」

 

「ふふっ…起こしてくれてありがとね!フォウくん!」

 

《フォウ!(特別意訳:遊嗣を起こすのはボクの仕事さ!)》

しばらくして遊嗣はリビングへと向かう、そこでは白いエプロンを着た紫色のロングヘアーの美しい女性──遊嗣の母である白波翠がお弁当と朝ご飯の用意をしていた。

 

 

「(母さん…やっぱり美人だよなぁ……外だと親子じゃなくて姉弟に見られるし……)」

 

「うん?ユウくんどうしたの?」

 

「んーん、なんでもない!顔洗ってくる〜」

 

 

………

 

 

「「いただきます!」」

 

《フォウフォウ!》

 

それはいつも通りの朝の食卓…()()1()()、この家の()()()がいない事を除けば…。

 

 

 

「もぐもぐ…ねぇ、母さん…父さんはいつになったら帰ってくるの?もう1ヶ月だよ?」

 

「うーん…ちょっと()()()()()が入っちゃったらしくてね…まだ時間が掛かるみたい」

 

「そんなぁ…まだ制服姿も見てもらってないし、入学祝いももらってないのに〜……」

 

「あはは…遊海さんも早く帰りたいって愚痴ってたわ…(まぁ、ちょっとしかたがない事情なんだけど……遊海さん、大丈夫かなぁ…無理してないといいんだけど…)」

遊嗣の父親──白波遊海はこの場にはいない、遊嗣の高校への入学式を前に()()が発生…その解決の為に奔走しているのだ。

 

 

 

………

 

 

 

 

「じゃあ…いってきまーす!」

 

「あっ、待って遊嗣!忘れ物はない?お弁当は?宿題は?」

 

「大丈夫!宿題も昨日の夜に終わらせたから!」

そして身支度を整えた遊嗣は学校に向かおうとするが…心配性な母親に呼び止められる。

 

 

「じゃあ…いってきますのギューは?」

 

「母さん…もう子供じゃないんだから…(汗)」

 

「がーん!!…これが、反抗期…!?」

 

「いや、恥ずかしいんだって!いってきま~す!!」

 

「も〜う…いってらっしゃーい!!気を付けてね〜!」

翠の声を背に受けて遊嗣は高校に向かう…。

 

 

 

 

ここは「Den City(デンシティ)」…とある企業が「近未来ネットワークモデルシティ」を目指して復興・研究を続ける街である。

 

 

 

 

 

 

 

Side遊嗣

 

 

 

僕の名前は白波遊嗣、市立デンシティ・ハイスクールに通う高校1年生なんだ!……僕、誰に自己紹介してるんだろ?

 

 

 

「おう!おはよう白波!」

 

「ああ、おはよう島君!」

校門を通った僕に声をかけてきたのは同じクラスの島直樹君、中々の事情通でリンク・ヴレインズ…ネットワークに広がるデュエル空間の事をよく教えてくれるんだ。

 

……ちょっと押しが強かったり、目立ちたがりなのが玉に瑕かな?

 

 

 

「あれ…?デュエルディスク変えた?」

 

「おう!SOLテクノロジー製の新型ディスクなんだぜ!デュエルをサポートしてくれるAIも搭載されてるし、リンクヴレインズにもアクセスしやすいんだ!どーだ!すごいだろ〜!」

 

「へ〜…僕も父さんに頼んでみようかなぁ…あっ、そろそろHR始まるよ!」

 

「おっと!?急げ〜!」

始業を知らせるチャイムが響く中、僕達は教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「ふぅ…遊嗣の学校が始まって一ヶ月、か……まったく…()()()()()は勘弁してくれ…」

 

《お疲れ様です、マスター…未だに敵の本拠地は不明のまま…2つの事件に同時に取り組むのは…流石のマスターでも厳しいかと…》

 

「そうだよなぁ…」

とある世界、某所…『英雄』白波遊海は頭を抱えていた…同時期に発生してしまった『2つの事件』…その対応に頭を悩ませていたのだ。

 

 

「極論を言えば…1つ目の『物語』は俺が干渉できる場所は少ない…あれは()()が自分の過去との決着をつける為のモノだしな…2()()()は俺達が頑張らなきゃならないけど……遊嗣と翠が心配だなぁ……」

 

《『ハノイの塔』事件ですね……マスター、やはり……》

 

「……ああ、遊嗣にも自衛できるだけの力は必要だ…だから、頼んだぞ」

 

──任せて、マスター…貴方の息子をしっかりサポートさせてもらうよ──

大切な息子…遊嗣が面倒事に巻き込まれても大丈夫なように、遊海はある決心をする…その言葉に答えたのはデュエルディスクに浮かんだ文章だった。

 

 

 

 

「遅くなってごめんな、遊嗣…お前への入学祝いだ…送信!」

 

『遊海!ネオ・アカデミアの奴らがシンクロ次元に!!』

 

「ああもう…!いい加減にしてくれ!!」

 

《次元回廊を開きます!》

息子へと希望を託した遊海は鋼の鎧を纏う…再び世界の平和を乱す悪党への怒りを燃やしながら…。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…終わったぁ…やっぱり、高校の授業は難しいなぁ…」

終業のチャイムが鳴る中、遊嗣は背中を伸ばす…高校入学から1ヶ月、特に進学校を選んだ訳ではないのだが…遊嗣は勉強に苦労していた…。

 

 

「なぁなぁ!白波!聞いたか!?今日はリンクヴレインズでカリスマデュエリストのGo鬼塚とブルーエンジェルのデュエルがあるらしいぜ!!」

 

「へぇ~!楽しみだなぁ!リンクヴレインズにログインしてみようかな…島君もログインするの?」

 

「いやいや!?そう気軽にログインできる場所じゃねぇって!強い奴らがいっぱいな神聖な場所だし、()()()()()()だって出るんだぞ!?」

 

「ハノイの騎士か…困った人達だよね…」

島の振ってきた話題に答える遊嗣…強い決闘者達がひしめくと言うリンクヴレインズ…だが、その世界を騒がせる者達がいた。

 

 

その名は『ハノイの騎士』…目的は不明だが、リンクヴレインズや他のネットワークを荒らし回る悪質なハッカー集団である。

 

 

「まぁ、運営のSOLテクノロジーも対策はしてるし…きっと大丈夫だよ!話題のPlaymakerも活躍してるしね」

 

「そうだよなぁ!1度でいいからPlaymakerに会ってみたいぜ…まぁ、とにかくカリスマのデュエルだな!楽しみだな〜!」

 

「うん!とりあえず、リンクヴレインズに行ってみるよ!じゃあね!」

 

「おう!あっ、()()()また居眠りしてやがる…起こしてやるか」

   

「藤木君…夜寝れてないのかな?」

 

「まぁ、なんとか起こすさ!」

そして帰り際、遊嗣はとある人物に目を向ける…そこでは青髪の少年が居眠りをしていた…。

 

 

 

 

………

 

 

 

 

「ただいま〜」

 

「おかえりユウ君!学校どうだった?少しは馴染んできた?」

 

「う〜ん…まぁまぁかな?友達?が少しできたくらい」

 

「ふふっ、それならよかった!」

学校から帰り、翠へと声をかける遊嗣…翠は無事に学校に馴染んだ様子の遊嗣を見て安心していた。

 

 

「あっ、母さん!ちょっとリンクヴレインズにログインするから、何かあったら声かけて!」

 

「リンクヴレインズに?…わかった!危なくなったらすぐにログアウトするのよ?」

 

「は〜い」

翠に声をかけた遊嗣は手洗いを済ませて自室へと籠もった…。

 

 

 

《フォウ、フォウ?》

 

「ははっ…フォウも一緒にリンクヴレインズに行けたら良いのになぁ?」

 

《フォーウ…》

フォウを撫でながらベッドに体を預ける遊嗣…デュエルディスクを着けた彼は仮想空間に入る為の合い言葉を口にする

 

 

「フォウ、また後でね!IN TO THE VRAINS!!」

 

その言葉を呟いた瞬間、遊嗣の意識は仮想空間に取り込まれ、その姿は別の自分───アバターへと変わる。

 

癖っ毛の黒髪は金髪に、高校の制服はどこにでもあるスーツに…アバターとなった遊嗣──アカウント名『Yu-Z(ユージ)』はリンクヴレインズへと降り立った…。

 

 

 

「わぁ…いつもより賑やかだなぁ」

VR空間『リンクヴレインズ』…そこには現実世界と遜色ない街並みや中世ヨーロッパを模した街並みなど、現実世界では再現しきれない世界が広がっている。

 

「デュエルは………夕方からか、少しぶらぶらしてよう……なんだか、SOLのパトロールAIが多いなぁ…?」

カリスマ達のデュエルの時間を確認した遊嗣は街中を歩き始める…空を飛び交うパトロールAIの多さを気にしながら…。

 

 

 

………

 

 

 

【みんな!盛り上がってるか〜!?これからリンクヴレインズで続々とカリスマデュエリスト達のデュエルが始まるぞ〜!】

 

「おお〜!」

夕方のリンクヴレインズに司会の実況が響く…遊嗣が楽しみにしていたカリスマ達のデュエルが始まろうとしていたのだ。

 

 

【1番エリアでは『剛鬼』デッキを操るリンクヴレインズ1番の暴れん坊!Go鬼塚のデュエルが!2番エリアではリンクヴレインズの看板娘!ブルーエンジェルのデュエルが予定されているぞ〜!】

 

「カリスマデュエリスト…すごいなぁ…!」

実況と共にモニターに映し出されるのはプロレスラーのような格好をした大男、そして青い天使の姿をした少女…2人はリンクヴレインズでもトップクラスのデュエリスト達だった…。

 

 

しかし、楽しい時間は突如として「悪夢」に変わろうとしていた…!

 

 

ズズーン!!

 

 

「っ…なんだ!?」

突然、VR空間であるはずのリンクヴレインズが揺れる…それは異常事態の始まりを告げていた…!!

 

 

 

ギシャアアン!!》

 

「っ…ドラゴン!?まさか…ハノイの騎士!?」

恐ろしい咆哮がリンクヴレインズに響く、VR世界においてデュエル外でモンスターを出す方法は多くない、それが意味していたのは……ハッカーであるハノイの騎士の襲撃だった…!

 

 

『何処だ…何処にいる!出てこい!()()()()!!』

 

「「「うわあああ!?」」」

ファイアーウォールを突き破って現れたのは禍々しい力を宿す異形のドラゴン…そのドラゴンを操るのは白いフードと仮面で正体を隠したハノイの騎士のアバター…彼はドラゴンにリンクヴレインズを攻撃させ、その炎が次々と一般人達のアバターを焼き尽くし、街を破壊していく…!

 

 

 

「大変だ…!ハノイの騎士に壊されたアカウントやデータは消去(デリート)されちゃうんだ…!!早くログアウトしないと…!!」

 

暴れまわるドラゴンを見た遊嗣は慌ててログアウトしようとする…彼はヒーローでも、勇者でもない…その判断は当然の事だった。

 

 

 

 

「う、うぅっ…」

 

「っ…!?」

その時、彼の耳が細い呻き声を聞いた…その方向に目を向けると…そこには瓦礫の下敷きになってしまった薄桃色の髪の少女がいた…そのアバターにはノイズが走ってしまっている…。

 

 

 

「っ…大丈夫!?」

それを見た瞬間、遊嗣は駆け出していた…自分はヒーローでも勇者でもない。

 

…それでも、困っている人を見捨てられるほど…彼は薄情な人間ではなかった…!

 

 

 

「大丈、夫です…!私のことは、いいから…早く、逃げて…!」

 

「困ってるのに、放っておけないよ!早くログアウトするんだ!」

 

「はじめて、リンクヴレインズに入って…ログアウトの仕方が、分からないんです…!」

 

「っ…ちょっと貸して!ログアウトは──!」

瓦礫に挟まれた少女はVR初心者らしく、ログアウトに手こずっていた…それを聞いた遊嗣は彼女の手を取り、デュエルディスクを操作しようとするが──

 

 

『イグニス!出てこい!!』

 

《ギシャアアン!!》

 

「っ…!ハノイの騎士!!(不味い、避けられない!!)」

何かを探して暴れ回るハノイの騎士…再びその攻撃が遊嗣達に向けられる!

 

 

「っ…!逃げて!私のアカウントはまた作れます!だから…」

 

「逃げられないよ…!女の子1人を残して逃げたら…僕は兄さん達に顔向けできない!!」

遊嗣は少女を庇うように前に立つ…自分が守りたいと思ったモノを守る為に──!!

 

 

 

 

キィン─!!

 

 

《まったく、到着早々にとんでもない状況だね…きみに開封されるまで大人しくしていようと思ったけど、緊急事態だからね!》

 

 

「えっ…?」

 

『なにっ!?』

遊嗣と少女を飲み込むドラゴンの炎…しかし、その炎は遊嗣達のアバターを傷付ける事はない…何故なら、彼らの前に強固な防壁が展開されていたからだ…!

 

 

 

「えっ、今の声…何処から…?」

 

《ここだよ!ここ!ゆう…じゃなかった…Yu-Z!きみのデュエルディスクの中だよ!》

 

「へっ…?」

突然聞こえてきた声と防壁に戸惑う遊嗣…その声は彼のデュエルディスクから聞こえていた…!

 

 

「き、キミは?」

 

《ボクはマスター…きみの父上、遊海が作ったサポートAI、ロマンさ!よろしくね!》

 

「え、エーアイ!?父さんの!?」

 

「AIって…こんなに感情豊か、でしたっけ…?」

遊嗣のデュエルディスクに白い目のような模様が浮かび上がる…そして『ロマン』と名乗ったAIは遊嗣へと語りかけた。

 

 

 

『貴様、ハノイの騎士の邪魔をするつもりか…!ならば、デュエルで貴様をデリートしてやる!』

状況が把握できない中、自分の行動を邪魔されたハノイの騎士がデュエルディスクを構える!

 

 

「っ…ハノイの騎士はデュエリストとしても強い奴らだって聞いてるけど…!」

 

《心配ないよ、Yu-Z…キミは自分が思っているよりも()()デュエリストだ…それに、きみの()()()()としていくつかデッキを預かってる!そのデッキを使って、きみのデュエルでハノイの騎士を退けるんだ!きみが守りたいモノを守る為に!光を掴め!Yu-Z!》

 

「父さんが…!」

デュエルディスクから飛び出す光…遊嗣はその光を掴み取る!

 

 

「ロマン、力を貸して!」

 

《もちろんさ、いこう!》

新たな光と共に…遊嗣は初めての試練へと立ち向かう!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

ハノイの騎士LP4000

遊嗣LP4000

 

 

・マスターデュエル

 

 

 

 

『俺のターン!』

『相手フィールドにモンスターが存在しない時、手札の「ハック・ワーム」は特殊召喚できる!』

身体に緑色の光が走る機械の芋虫が現れる! ATK400

 

『さらに!手札から2体目の「ハックワーム」を特殊召喚!』

2体目の芋虫が現れる! ATK400

 

 

『そして俺は「ハックワーム」2体をリリース!現われろ!「クラッキング・ドラゴン」!』

2体のモンスターがリリースされ、緑色の光球を纏う黒い機械竜が現れる! ATK3000

 

 

「いきなり攻撃力3000…!!」

 

『このモンスターこそ俺がリボルバー様から頂いた最強モンスター!このモンスターは自身のレベルである8以下のモンスターとのバトルでは破壊されない!俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!』

 

ハノイの騎士LP4000

クラッキングドラゴン 伏せ1 手札1

 

 

 

「レベル8以下のモンスターとのバトルでは破壊されない…つまり、レベルを持たないエクシーズモンスターか…リンクモンスターで戦う必要がある…でも、僕は…」

 

《知ってるよ…だから、その為にボクがいる!Yu-Z、恐れずにきみの力を見せてやれ!》

 

「わかった!!」

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「……よし、こうだな…!『星杯に選ばれし者』を召喚!」

機怪虫の鎧を纏う少年剣士が現れる! ATK1600

 

『フン…!「クラッキングドラゴン」の効果発動!相手がモンスター1体を召喚・特殊召喚した時!このターンの間、そのモンスターの攻撃力はそのモンスターのレベル✕200ダウンし、相手はダウンした数値分のダメージを受ける!クラック・フォール!』

 

「くっ…!?」

クラッキングドラゴンの咆哮が遊嗣にダメージを与える…!

 

 

星杯に選ばれし者 ATK1600→1000

 

遊嗣LP4000→3400

 

 

 

《なるほど、レベルを持つモンスターへの耐性に加えて弱体効果…Yu-Z、どうする?》

 

「兄さんや父さんが言ってた…『ライフが0にならなければデュエリストは戦える』……短期決戦で突っ切る!」

 

《ふふっ、そう言うと思ったよ!続けよう!!》

 

「ああ!現れろ!希望を繋ぐサーキット!!」

強力な効果を持つクラッキングドラゴンを前に遊嗣はその手に宿す『光』を解き放ち…空中にリンクマーカーの魔法陣が浮かび上がる!

 

 

「召喚条件はトークン以外の通常モンスター1体!僕は『星杯に選ばれし者』でリンクマーカーをセッティング!リンク召喚!!来い!LINK-1!『星杯竜イムドゥーク』!!」

神器『星杯』の加護を受けた青き守護竜が現れる! ATK800 ↑

 

 

『チッ、リンクモンスターか…だが、攻撃力は「クラッキングドラゴン」には遠く及ばない!!』

 

「まだだ!『イムドゥーク』の効果によって僕は『星杯』モンスター1体を召喚できる!僕は『イムドゥーク』をリリースして『星遺物─「星杯」』をアドバンス召喚!!」

イムドゥークが粒子となって消え去り、神々しい光を放つ『杯』が現れる! ATK0

 

 

『わざわざリンクモンスターをリリースしてアドバンス召喚をするとは愚かな…「クラッキングドラゴン」の効果!』

 

「無駄だよ、『星杯』の攻撃力は0…ダウンする攻撃力がないから『クラッキングドラゴン』の効果は不発になる!さらに、リリースされた『イムドゥーク』の効果発動!このカードがフィールドから墓地に送られた時、手札から『星杯の守護竜』を特殊召喚!」

 

『ならば、そのモンスターに「クラッキングドラゴン」の効果発動!クラック・フォール!!』

 

「くっ…!」

可愛らしい青い仔竜が現れるが…遊嗣はダメージを受けてしまう…! ATK400→200

 

遊嗣LP3400→3200

 

 

 

「再び現れろ!希望を繋ぐサーキット!召喚条件は()()()()()()()()()2()()!!僕は『星杯』と『星杯の守護竜』でリンクマーカーをセッティング!」

 

《──あ、ちょっと待ってYu-Z!!そのカードはマズ──》

 

「リンク召喚!!LINK-2『星杯剣士アウラム』!!」

星杯の加護を受けた剣士が現れる…だが─── ATK2000↙↘

 

 

()()()()()()…?デュエルモンスターズに、そんな種族、ありましたっけ…?」

 

『貴様…!何故、サイバース族のカードを…!』

 

「えっ…?なんか、失敗しちゃった…?」

遊嗣が守っていた少女が戸惑いながら呟き、ハノイの騎士は驚愕する…そんな中で遊嗣だけは状況が分からずにいた…。

 

 

 

《……ごめん、Yu-Z…マスターの判断ミスだ…ハノイの騎士は理由は()()だけど、サイバース族を持つデュエリストを狙ってるんだ…》

 

「えっ、マジで!?」

デュエルディスクから聞こえる申し訳なさそうなロマンの声…その言葉で遊嗣は状況をようやく理解した。

 

 

 

《やってしまった事は仕方ない!隠蔽はボクがなんとかするから、デュエルを続けて!》

 

「わかった…!墓地に送られた『星杯』の効果発動!デッキから2体の『星杯』モンスター…『星杯の妖精リース』と『星杯に誘われし者』を特殊召喚!2体同時の召喚だから『クラッキングドラゴン』の効果は発動しない!」

思わぬ事があったものの、遊嗣は動揺せずに青白い妖精と長槍を操る戦士を呼び出す! ATK100 ATK1800

 

 

『さっきからうっとおしくリンク召喚を続けやがって…!』

 

「これが最後だ!魔法カード『星遺物を継ぐ者』を発動!墓地のリンクモンスター『イムドゥーク』を『アウラム』のリンク先に特殊召喚!」

星杯の加護を受けたドラゴンが復活する! ATK800

 

 

「もう一度現れろ!希望を繋ぐサーキット!召喚条件はリンクモンスター2体以上!僕はLINK-2の『アウラム』とLINK-1の『イムドゥーク』でリンクマーカーをセッティング!リンク召喚!!現れろ!LINK-3!『星杯戦士ニンギルス』!」

星杯の加護を受けた長槍使いの戦士が現れる! ATK2500←↑→

 

 

『フン…LINK-3のリンクモンスターを出そうとも、『クラッキングドラゴン』には及ばない!!』

 

「──それはどうかな…!『ニンギルス』の効果発動!1ターンに1度、自分と相手のカードを1枚ずつ選んで墓地に送る!僕は『星杯の妖精リース』と『クラッキングドラゴン』を墓地に送る!」

 

『なにィ!?』

ニンギルスが傍らに浮かんでいた妖精を槍にくくりつけ、その槍をクラッキングドラゴンに投げ放ち、粉砕する!

 

…なお、妖精は涙目であった。

 

 

「バトルだ!『誘われし者』でダイレクトアタック!!」

 

『ぐうっ!?』

長槍の戦士が石突でハノイの騎士の腹を打ち抜く!

 

ハノイの騎士LP4000→2200

 

 

「『ニンギルス』でダイレクトアタック!」

 

『ぐわぁああ!?!』

さらにニンギルスの槍がハノイの騎士を直撃…遊嗣の初めての試練は彼の勝利で終わった!

 

 

 

ハノイの騎士LP0

 

遊嗣 WIN!

 

 

 

 

 

 

 

「や、やった…!」

 

《流石だね、Yu-Z!マスターから渡されたデッキを初見でここまで扱うなんて…マスターもきっと喜ぶよ!》

 

「うん…ありがとうロマン」

ハノイの騎士が撃退された事で少女が歓声を上げ、ロマンが遊嗣を褒める…しかし、遊嗣本人は()()()を感じるように右手を閉じたり開いたりしていた…。

 

 

『ぐっ…おのれ…!だが、サイバースはイグニス発見への手掛かり…!リボルバー様に報告せねば…!』

 

《させないよ…ハノイの騎士、キミは電脳世界で罪を重ね過ぎた…よって、我がマスターに代わってキミに罰を下す》

 

「わっ!?」

デュエルに敗れたハノイの騎士は情報を持ち帰ろうとログアウトを試みる…それを阻んだのは、遊嗣のデュエルディスクから飛び出した小さな人型だった。

その姿は白い肌に薄い灰色の光のラインが刻まれ、ポニーテールのような頭の形をした若草色の眼を持つ人型…サポートAIロマンのアバター姿だった。

 

 

 

『き、貴様!イグニ───』

 

《残念だけど人…AI違いだよ…懲罰術式・再現!マインド・クラッシュ!》

 

『ぎゃ!?』

ロマンの指先から放たれた光がハノイの騎士の額を穿つ…短い断末魔を上げたハノイの騎士は光の粒子になって消えていった…。

 

 

「えっ、あ…デリート、したの?」

 

《まぁ、それに近いかな?ハノイの騎士の意識データを強制的にバラバラにしたんだ…大丈夫、2〜3日すれば元に戻るから……まぁ、この戦いくらいの記憶は忘れてるだろうけどね!彼のアカウント情報は手に入れたから匿名で警察に伝えておこう、それで万事解決さ》

 

「う、う〜ん?」

突然消滅したハノイの騎士を見て戸惑う遊嗣に自身が何をしたか説明するロマン…だが、ネットワークに詳しい訳ではない遊嗣には理解しきれなかった…。

 

 

 

「あ、あの…」

 

《おっとお嬢さん!ごめんね、いま助けるから…よっと!》

手元で何かをいじるロマン…そのおかげか少女にのしかかっていたビルの残骸データが消失…彼女はようやく自由になった…。

 

 

「あの…助けていただいてありがとうございます!よかったら、名前を聞いてもいいですか…?」

 

「僕は遊……Yu-Z!通りがかっただけのデュエリストだよ」

 

《ボクはサポートAIのロマン、キミの名前…アカウントは?》

 

「私はマシュって言います!本当にありがとうございます!」

危機的状況を脱した3人はお互いに自己紹介をする…もちろん、アカウント名でだが…。

 

 

《お嬢さん…マシュ、申し訳ないんだけど…ボクの事は内緒にしてくれるかい?ボクはマスターに作られた特別製でね…あまり騒ぎを起こしたくないんだ》

 

「も、もちろんです!こんなに情緒豊かなAIって珍しいですし!」

 

《ありがとう、助かるよ》

口らしい部分に指を当てて自分の事を内緒にするように頼むロマン…その言葉にマシュは頷いた。

 

 

「でも…大丈夫かな?リンクヴレインズは常に中継されてるから…」

 

《それなら心配ないよ、ボクが飛び出した瞬間に妨害電波で周りを覆っていたし……それに、他の人達はそれどころじゃないだろうからね!》

 

「えっ…?」

生中継されている事を心配する遊嗣の不安に応えるロマン…その瞬間、リンクヴレインズに強い()が吹き荒れた…!

 

 

「リンクヴレインズに風…!?これってまさか…都市伝説の!」

 

《そう…かつて、この世界に吹いていたデータの嵐───データストームさ…!》

 

 

吹き抜ける風に驚く遊嗣達…その時、都市伝説の『デュエリスト』が初めてその姿を現していた…!

 



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運命の出会い〜風を掴め〜

こんにちは!S,Kです!

新たな『光』と『希望』が出会う裏で…『復讐』のデュエリストはついに表舞台へと姿を見せる…。


それでは、最新話をどうぞ!


「────」

 

そこは何処とも知れない『白い草原』、そこを穏やかな風が吹き抜けていく───しかし、()()()()だった。

 

 

 

風が気持ちいい/しかし、草の匂いはしない

 

風が気持ちいい/でも、独りぼっちだ

 

風が気持ちいい/何故、ここにいるんだろう

 

 

 

 

『───よく頑張った』

 

 

白い草原に立つ(オレ)の前に()()が現れる…あの人は、どうしているだろう…?

 

 

──きみ、起きて……起きて…!──

 

 

そして、()()1()()()()()の声が白い草原に響く…キミはいったい────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ……」

ふと目が覚める、そこはようやく通い慣れたデンシティハイスクールの教室だった…どうやら、授業終わりまで居眠りしてしまったらしい。

 

 

「うおっ!起きてたのか?授業は終わっちまったぜ?藤木って言ったっけ」

 

「お前…誰だっけ?」

 

「おいっ!?学校始まって一ヶ月経つんだから苗字ぐらい覚えてくれよ!?島だよ、島直樹!」

そして、目を覚ましたオレの前にいたのは…小太りの少年、島だった…他のクラスメート達の姿はない、わざわざオレを起こしにきたらしい。

 

 

オレの名前は……藤木遊作、この学校に通う高校一年生…なのだろう。

 

学校生活に興味は無いのだが。

 

 

 

そしてシマナオキと他愛のない話をしてオレは学校を後にする。

 

シマナオキに関して分かった事は3()()

 

 

1つ デュエルは好きだが、実力は伴っていない

 

2つ 実力に自信がないからリンクヴレインズにログインしていない

 

3つ 彼は外見で相手を判断する癖があるらしい

 

……それを指摘したら顔を真っ赤にして去っていった……何故だろうか?

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

「草薙さん、アレって誰だっけ?」

 

「んー?…ああ、カリスマデュエリストのGo鬼塚とブルーエンジェルだな…今日、リンクヴレインズでデュエルするらしい」

 

()()()()、ね…」

学校を終えたオレはその足でバイトをしているキッチンカーのホットドッグ屋へと向かう…店長の名前は草薙翔一、オレの上司であり──唯一の気を置けない仲間だ。

 

 

 

「……なぁ、遊作…()()()()()()()って聞いた事あるか?」

 

「データストーム?」

 

「昔、リンクヴレインズにはデータストームって言う()が吹いてたんだそうだ…一部の連中はその風に乗ってスピード・デュエルって言うデュエルをやってたんだと」

 

「スピードデュエル…ライディングデュエルとかとは違うのか?」

 

「ああ、その風の中には()()のモンスターが住んでて…新世界がある、って噂があった…まぁ、今は風が吹かなくなったらしいけど…そんなのに出会ったら遊作もデュエルを楽しめるようになるかもな…」

草薙さんは感慨深げにそう呟く…データストームにスピードデュエル…そんなモノがあったとしても───

 

 

「……すまないと思ってるんだ、遊作を巻き込んでしまって…」

 

「草薙さん…オレは、()()()()()で動いてる!オレは必ず、アンタの()とオレの()()を奪った()()()()する…!」

暗い表情をする草薙さんにオレは自分の思いを伝える…この()()を終えてこそ──ようやくオレは前に進めるのだから…!

 

 

 

「急にそんな事を言い出して…何か()()があったのか?」

 

「ああ…デンシティのネットワークセキュリティが強化されてる、SOLテクノロジーが()()を探しているらしい」

 

「何か?」

オレの問いかけに草薙さんの表情が変わる…ホットドッグ屋は「表」の姿…「裏」の姿は──オレと同じく、凄腕のハッカーであり、情報屋なのだ。

 

 

「SOLテクノロジーが探してるのは…AIプログラム、らしい」

 

「AIプログラム?逃げ回るプログラムなんて…人間じゃあるまいし…」

草薙さんの思わぬ情報に思わず問い返す…セキュリティを潜り抜けるウイルスなら聞いた事があるが…逃げるプログラムなんて聞いた事が無かったからだ。

 

 

「それを探す為に大規模なスキャンを掛けるかもな…」

 

「そんな事をしたらセキュリティレベルが落ちてハノイの騎士の格好の獲物に───そうか…!奴らも…!」

草薙さんの言葉に点と点が繋がる…オレが追うハノイの騎士も、その「プログラム」を探しているのだと…!

 

 

「草薙さん!忙しくなるぞ!」

 

「ん?まぁ、こんな店でも夜は──」

 

「じゃなくて…!ハノイの騎士もそのプログラムを追っている可能性がある!そのAIを捕まえれば、ハノイへの切り札になるかもしれない!!」

 

「うおっと!?」

その可能性に気付いたオレはキッチンカーに飛び込む…この車には多数のパソコンやハッキングツールが仕込まれている!

 

 

 

「捕まえるって、正気か?大企業のSOLテクノロジーとテロリストのハノイの騎士が追っても捕まらないんだぞ?」

 

「正確には()()()を作る!大規模スキャンの瞬間にだけ開くファイヤーウォールの()()()をオレのデュエルディスクに作るんだ!」

 

「おいおい…!時間がないぞ?」

 

「できるさ…!アンタと2人なら…!」

 

「へっ…よっしゃ!やったるか!!」

 

そしてオレと草薙さんは力を合わせてプログラムを組み上げる。

 

 

 

 

 

この時、オレは知らなかった…これが「心」を持つAI、イグニスとの出会いになり…世界を揺るがす大事件の始まりになる事を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…!来たぞ、遊作!ハノイの騎士のクラッキングだ!!」

 

「そっちが来たか!!っ…?(なんだ?この感覚は…?)」

遊作達が作業を始めて数時間…その時はやって来た。

デンシティのネットワーク全体のスキャンでセキュリティレベルが下がった瞬間、モンスターを従えたハノイの騎士()()がリンクヴレインズへハッキング…無差別の破壊、クラッキングを始めたのだ…!

 

その影響で現実世界でも電子機器が暴走…リンクヴレインズのデュエルが中継されていた遊作達のいる広場も大混乱に陥る…!

 

 

「ハノイの攻撃が始まったぞ!どうする!?」

 

「もうすぐ終わる…!AIを手に入れれば、そいつが()()()になってくれる…!」

 

「本当に捕まるのか!?」

 

「ああ、感じるんだ…!そいつの()()を…!!」

すさまじい早さでキーボードを叩く遊作…彼は感じ取っていた、ネットワーク世界にいる()()の気配を…!

 

 

「これで──完了だ!」

プログラムを組み上げた遊作がエンターキーを叩く、そして彼はデュエルディスクを装着してキッチンカーの外へ飛び出した!

 

 

 

「来い!オレの下へ!!」

周囲の電子機器がスパークする中、遊作は腕を掲げる…そして…!

 

 

 

バチン!!

 

 

《う、う〜ん……はっ!?ここはドコ!?》

 

「よく来たな…!お前には救世主になってもらう!」

 

《え、なに!?オイラ捕まったの!?》

遊作のデュエルディスクに紫と黄色の目玉模様が浮かび上がる…彼らの思惑通り、AIプログラムは遊作のデュエルディスクに逃げ込んだのだ。

 

なお、デュエルディスクは捕獲したAIを逃さないようにロックが掛けられている。

 

 

 

「ほ〜ん、お前が連中の探してるAIだな?」

 

《え〜ん!オラは通りすがりのタダのAIですだ〜!!》

 

「通りすがりのAIがいてたまるか!都市伝説のカイバーマンじゃあるまいし」

草薙の問いかけに涙目で許しを請う謎のAI…その反応はまるで人間のようだった。

 

 

 

「っ…!遊作!大変だ!ブルーエンジェルが!」

 

「っ…時間がない、行くぞ!」

 

《えっ、何処に!?》

 

「リンクヴレインズにだ!」

 

《え〜っ!?オイラ、そこから逃げてきたのにぃぃ!?》

 

「お前の意見など聞いていない!」

草薙が焦りながら生き残っていた広場のモニターを指し示す…そこには『クラッキング・ドラゴン』に追われるカリスマデュエリスト・ブルーエンジェルの姿…そして、ビルの下敷きになった少女を助けようとする金髪の青年に迫る『クラッキング・ドラゴン』の姿が映し出されていた。

 

その様子を見た遊作はキッチンカーに搭載されたリンクヴレインズへのログインルームにAIと共に飛び込んだ!

 

 

「っ…モニターが……くそっ、ハノイの奴らめ…!!」

その刹那、少年達を映していたモニターが途切れる…その様子を見た草薙は拳を握り締めた…。

 

 

 

「行くぞ!デッキセット!!」

 

in to theVRAINS!!

ログインルームで遊作はデッキをデュエルディスクにセットする、それがトリガーとなって遊作の周囲を無数のプログラムが取り囲み、その姿をアバターへと変えていく。

 

青い髪は黄色と赤色の派手な髪へ、学校の制服は黒と深緑色の近未来的なボディスーツへ…その姿こそ、遊作のリンクヴレインズにおけるアバター──

 

アカウント名『Playmaker(プレイメーカー)』…ハノイの騎士が出現した時に現れ、彼らを狩る──都市伝説に語られるデュエリストである!

 

 

 

 

 

『消え失せろ!!』

 

「っ…!!」

ハノイの騎士がブルーエンジェルへと攻撃を仕掛ける…純粋なデュエルの腕前ならブルーエンジェルが上回るだろうが、相手はハッカー…デュエル外で実体化した『クラッキング・ドラゴン』の炎が彼女に迫り──

 

 

「はっ!」

 

「えっ、きゃ!?」

 

《あ〜あ、本当に戻ってきちゃった…》

彼女が炎に飲まれる寸前、リンクヴレインズにダイブしたプレイメーカーが間一髪で彼女を救い出す!

 

なお、AIは不服げな様子である。

 

 

 

「あ、あなたは…?」

 

『誰だ貴様は!!』

 

「オレの名は…プレイメーカー!」

助け出されたブルーエンジェルと攻撃を邪魔されたハノイの騎士が彼の正体を問う…その問いに遊作は堂々と答える!

 

 

「ハノイの騎士、お前達が探している()()はここにある!リンクヴレインズへの攻撃を止めなければ…()()()をこの場で消す!」

 

《ちょっとちょっと!?救世主を人質にするのか!?》

自分のデュエルディスクを指し示す遊作…それを聞いたAIは怒りを露わにする…AIはリンクヴレインズを救う救世主であり、ハノイの騎士を誘い出す「囮」だったのだ。

 

 

「このプログラムはオレのデュエルディスクに紐付いたデュエルプログラムに変換した!こいつを手に入れたいのなら、オレを倒すしかない!」

 

『貴様、イグニスを…!良かろう、ハノイを敵に回すとどうなるか思い知らせてやる!』

 

「望むところだ!」

イグニスの奪取を狙うハノイの騎士は遊作の提案を受け入れ、戦いの場を移す…。

 

 

 

 

 

《だけどマズイよ!ハノイの騎士の『ドラゴン』は強いよ!今のアンタのデッキじゃ勝てないと思うけどなぁ!?》

 

「言ってくれるな…だが、オレが負ければお前は奴らの手に渡る…せいぜい、負けないように祈るんだな」

 

《AIは祈ったりしない…!やるのは勝つ為の計算だけだ!》

ハノイの騎士の恐ろしさを知るAIが遊作に忠告する、それを意に介さない遊作だが……AIは自分が生き残る為の手札を切る!

 

 

《サイバース、データマテリアル、開放!吹き抜けろ!電脳の風よ!!》

 

キィン──!!

 

『「なんだ!?」』

遊作のデュエルディスクが強い光を放つ…その光に呼応するように、風が吹かないはずのリンクヴレインズに強い風が吹き荒れ…さらに、その風に乗ってホバーボードが吹き飛ばされてきた!

 

 

《飛び乗れ!プレイメーカー!!》

 

「っ…!はぁ!!」

AIの言葉に従い、遊作は飛ばされてきたホバーボード…Dボードへと飛び乗った!

 

 

《風を掴め!プレイメーカー!》

 

「っ…これは、まさか…!」

 

《いくぞ…!スピードデュエルだ!》

 

電脳の風…データストームに乗って行うデュエル……その名はスピードデュエル!

 

 

 

《ところでプレイメーカーサマ?マスターデュエルとスピードデュエルの違いは分かっているのカナ?》

 

「分からん、手短に話せ」

 

《教えてもらうのに偉そうダナー》

 

「お前こそ、()()だという事を忘れるな」

 

《へいへい…じゃあ、手短に──》

スピードデュエルを前にAIがスピードデュエルのルールを説明する。

 

 

①マスターデュエルと同じく先行はドローなし、手札は4枚スタート

②フィールドはフィールド魔法ゾーン、エクストラモンスターゾーン2枠、メインモンスターゾーン3枠、魔法・罠ゾーン3枠のみ

③メインフェイズ2は存在しない。

 

 

「メインモンスターゾーンが3つ…オレは、このルールを知ってるのか…?」

マスターデュエルよりも簡略化されたルールを聞いた遊作は奇妙な既視感を覚える…だが、それがいつの記憶なのか思い出す事はできなかった…。

 

 

『逃さんぞ!』

 

「っ…!」

その時、Dボードに乗ったハノイの騎士がデータストームの流れから飛び出し、遊作の前に現れた!

 

 

 

《どうやら、奴はスピードデュエルを知ってるみたいだな…オレがサポートしてやろうか?》

 

「必要ない」

 

《オレも生き残りたいから必死なんだぜ?お前にだけ任せるのは不安──》

 

「黙れ、集中する」

 

《ハイハイ》

饒舌に喋るAIに邪険な態度を取る遊作…凸凹コンビのスピードデュエルが始まった…!

 

 

 

『「スピード・デュエル!!」』

 

 

 

デュエルダイジェスト プレイメーカー対ハノイの騎士

 

 

 

先行を取ったのはハノイの騎士…彼はいきなり切り札カードである『クラッキング・ドラゴン』の召喚に成功する。

 

対する遊作はいきなりの手札事故が発生…さらに『クラッキング・ドラゴン』の持つレベルを持つモンスターに対するメタ効果や、荒れ狂うデータストームを乗りこなす事に神経を擦り減らす。

 

だが、それと同じくしてリンクヴレインズの外からデュエルを見守る者達が驚いたのは遊作の操る『サイバース族』という未知の種族のモンスターについてだった…。

 

 

そして次のハノイの騎士のターン、彼はスピードデュエルでのみ許されたサポート…『スキル』、『ダブル・ドロー』を発動…魔法カードと『クラッキング・ドラゴン』の攻撃によるコンボによって必死に守りを固めた遊作のライフは400まで削られてしまう…そして、不運が続いてしまう…データストームの流れが不安定となり、発生した竜巻に遊作が飲み込まれてしまったのだ…!

 

 

 

だが、それは()()ではなかった。

 

 

「貴様…!わざとオレを竜巻に引き込んだな!?」

 

《あ、バレた?》

 

「スキルの事を言わなかったのも計算の内か…!」

 

《ああそうだ!この竜巻…データストームこそがお前が奴に勝てる唯一の可能性だからな!!》

竜巻の中でなんとかDボードにしがみつく遊作はAIに文句を言う…彼は勝つ為に、わざわざ危険地帯に遊作を引き込んだのだ。

 

 

 

「何を考えている…!」

 

《このデータストームの中には『未知のモンスター』が生きてる!データストームが強力であればあるほど強いモンスターがな!今こそ、お前のスキル『ストームアクセス』を使え!!それ以外にオレ達が勝つ方法はない!》

AIの言葉と共に遊作の右腕に光が宿る!

 

《『ストームアクセス』はライフ1000以下の時、データストームのカード1枚にアクセスできる!風を掴め!プレイメーカー!!》

 

「っ──!!」

遊作は暴風が吹き荒れる嵐の壁に腕を突き刺す…腕がバラバラになりそうな衝撃の中、彼は必死に踏みとどまる!

 

 

 

「っ…オレ、には…このデュエルに負けられない3()()の理由がある…!!」

 

 

「1つ…!それは、オレの失われた『時』を取り戻す為…!!」

 

「2つ…!草薙さんの弟を、暗闇から救い出す為!」

 

「3つ!!オレに勇気を与えてくれた()()()に会う為!!」

 

それは、遊作の抱く譲れない目的…揺るがぬ意志が未知の力を呼び覚ます!

 

 

キン──!

 

 

《今だ!》

 

「うおおっ!!ストームアクセス!!」

遊作が嵐の中から腕を引き抜く…その手には彼を勝利に導く『未知』の力が握られていた…!

 

 

 

『馬鹿な…!お前はデータストームに飲まれたはず!?』

 

「勝負はここからだ!!」

そして、データストームが霧散…五体満足で復帰した遊作の姿に驚くハノイの騎士を前に遊作は勝利の方程式を展開していく。

 

1つ、『サイバース・ウィザード』の効果による『クラッキングドラゴン』の表示形式変更

 

2つ、『クラッキングドラゴン』の効果の穴を突いたモンスターの展開

 

 

そして、3つ目は───

 

 

「現れろ!未来を導くサーキット!!」

遊作の宣言と共に電脳世界に魔法陣が刻まれる、これが彼の勝利を呼び込む最後の一手…!

 

「アローヘッド確認!召喚条件は効果モンスター2体以上!オレは『サイバース・ウィザード』『スタックリバイバー』『バックアップセクレタリー』をリンクマーカーにセット!サーキット・コンバイン!!」

3体のモンスターが3つの赤い矢印となって新たな力を呼び覚ます!

 

 

「リンク召喚!現れろ!LINK-3!『デコード・トーカー』!!」

それはストームアクセスによって手にした新たな切り札…電脳世界の未来を切り開く剣士が現れる!

 

 

 

『馬鹿な…!?お前の切り札がリンクモンスターだと!?そんな情報は…!?』

 

「リンクモンスターはレベルが存在せず、守備表示にはならない!さらに墓地の『スタックリバイバー』の効果で『サイバースウィザード』を特殊召喚!そして『デコード・トーカー』の効果発動!リンク先のモンスター1体につき、自身の攻撃力は500アップする!このカードのリンク先には『サイバースウィザード』と『クラッキングドラゴン』が存在する!よって、攻撃力は3300となる!パワー・インテグレーション!!」

 

『攻撃力3300だと!?』

 

「そして『サイバースウィザード』の効果によって『デコードトーカー』は貫通能力を得る!」

 

『し、しまった!』

 

「受けてみろ!デコード・エンド!!」

 

『ぐ、ぐわああああっ!?』

青き剣士が機械竜を両断…スピードデュエルの決着をつけた…!

 

 

「ハノイの騎士、お前にデュエリストを名乗る資格は───ない!」

 

 

ハノイの騎士 LP0

 

遊作 Win!

 

 

 

 

 

 

「さぁ、ハノイの騎士…!お前達の()()を教えてもらおうか…!」

 

『ぐっ…プレイメーカー…!』

スピードデュエルに決着し、電脳世界のビルの屋上に叩きつけられたハノイの騎士に遊作が詰め寄る…『ハノイの騎士』が遊作の目的を果たす為の情報を持っているはずなのだ…!

 

 

『教えられるわけ、ないだろう…!それに、まだだ…貴様も、道連れに…!』

 

《ヤベ、こいつ自爆してオレ達を巻き込むつもりだ!!》

 

「っ、おい何を!?」

不敵な笑みを見せるハノイの騎士…そこから次の行動を察したAIがデュエルディスクから飛び出し、変形…イカかタコを思わせる姿となってハノイの騎士のアバターを喰らってしまった…!

 

 

 

《けぷっ、ごっそさん》

 

「お前、何をした?」

 

《お前を守ったんだろ?あのまま自爆されてたら、生身のお前が()()()事になってたぜ?…それより、早くここから離れた方が良さそうだな?》

 

「っ…」

ハノイの騎士を処理したAIに問いかける遊作…その時、にわかに周囲が騒がしくなる…!

 

 

「見つけたぞ!プレイメーカー!さぁ、俺とデュエルだ!」

 

「ずいぶんと派手にやってくれたじゃない…!さぁ、観念なさい!」

 

「Go鬼塚とブルーエンジェル…!」

デュエルを見守っていたカリスマデュエリスト2人が遊作の前に立ち塞がる…プレイメーカーの存在はリンクヴレインズの「都市伝説」…まだ見ぬ強者と戦う時を2人は待っていたのだ。

 

 

「悪いが──お前達に興味はない」

 

「あ、待て!!」

だが、遊作はハノイの騎士以外とのデュエルに興味はなく…Dボードによって素早くその場から離れていった…。

 

 

 

 

《(ん…?今、オレ以外のイグニスの気配がしたような…?おかしいな…みんなはサイバース世界にいるはず……勘違いか?)》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊嗣

 

 

 

 

「あれが、プレイメーカー…そしてスピードデュエル…すごかった…」

 

「は、はい…!あんなデュエル、初めて見ました…」

一方その頃、遊嗣とマシュは間近でプレイメーカーとハノイの騎士の決着を見届けていた…。

 

 

《でも、無闇に手を出さない方がいいよ?スピードデュエルは運営のSOLテクノロジーに禁止されてるからアカウント停止になる可能性もあるし、どうやら精神ダメージによって肉体にも影響があるみたいだからね》

 

「そうなんだ…ありがとう、ロマン」

 

「ロマンさんは物知りなんですね!」

 

《ふふっ、AIだからね!》

そしてロマンが2人にスピードデュエルへの注意を促す…2人に褒められたロマンは嬉しそうに笑っていた。

 

 

《さて、そろそろ良い子は家に帰る時間だね!リンクヴレインズの修復もあるだろうし、早めに帰る事をオススメするよ》

 

「そうだね…母さんも心配してるだろうし……マシュも自分で戻れそう?」

 

「あ…はい!大丈夫です!助けていただいてありがとうございました!……また、会えるでしょうか…?」

 

「ああ、デンシティは広いけど…縁があれば、きっと会えるさ!()()()!マシュ!」

 

「はい!また会いましょう!Yu-Zさん!」

再会の約束をした遊嗣とマシュはリンクヴレインズからログアウトする…そして、意識は肉体に戻っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

「ふはぁ…疲れた〜!まさかこんなk遊嗣ぃぃ!!!わぁっ!?母さん!?」

肉体に意識を戻し、一息つこうとした遊嗣…だがその前に──慌てた様子の翠に抱き締められた…。

 

 

遊嗣!大丈夫!?痛い所とかない!?意識はしっかりしてる!?

 

「もごも…!?(母さん!ギブ、ギブ!!)」

 

《フォウフォウフォ〜ウ!?(特別意訳:翠!強く抱き締め過ぎ!?遊嗣が息できてないよ〜!!)》

ニュース速報でリンクヴレインズのトラブルを知ったらしい翠は意識が戻らない遊嗣を心配していたのだ…なお、遊嗣は翠の胸で呼吸困難になりかけている…。

 

 

 

《母上様、安心してください…ハノイの騎士との遭遇はありましたが、遊嗣君は無事に彼らを撃退して人を助けています…どうか褒めてあげてください》

 

「えっ…あなた…!」

取り乱した翠を冷静に戻したのは、遊嗣のデュエルディスクから()()()した白い人型だった。

その姿()に見覚えがあった翠は思わず警戒態勢を取る…!

 

 

《自己紹介が遅れました…ボクはロマン、白波遊海と彩華によって生み出された遊嗣のサポートAIです、以後よろしくお願いします》

 

「───そうだったの…!遊嗣を守ってくれてありがとうね〜!!」

 

《ボクは何もしていませんよ…今回は遊嗣の実力の勝利です》

白いAI…ロマンの自己紹介を聞いた翠は胸を撫で下ろし、ロマンの頭を撫でていた…。

 

 

「か、母さん?驚かないの?ロマンの事…」

 

「ふふっ…遊海さんが関わってるなら、何があっても不思議じゃないもの!遊嗣、お腹空いたでしょう?夕ご飯を食べながら何があったのか聞かせてくれる?ロマンも!」

 

「うん!」

 

《もちろん!遊嗣の勇姿はしっかりと記録してるからね!》

 

《フォ〜ウ…(特別意訳:とりあえず…遊嗣が無事でよかった〜…)》

白波家に穏やかな笑い声が響く…その後、遊嗣の勇姿を見た翠が盛り上がったのは言うまでもない…。

 

 

 

 

ウチの息子カッコいい〜!!

 

 

「や、やめてよ母さん恥ずかしいっ!!」

 

《遊嗣は愛されてるね〜》

 

《フォウフォウ…(特別意訳:相変わらず親バカなんだから…)》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「転校生のマシュ・キリエライトです!日本語は不慣れですが───」

 

 

「「あ」」

 

 

《『運命の出会い』って、本当にあるんだねぇ…》

 

 

 

2人の再会は思わぬほど早かった。



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幕間〜動き出した歯車〜

「すぅ…すぅ…」

 

《キュウ…すぅ…》

 

 

「ロマンさん、遊海さんの様子はどう?無茶はしてない?」

 

《ええ、現地の決闘者達と協力して敵対勢力…ネオ・アカデミアと戦っています…ですが、洗脳された一般デュエリストが多いらしく…思うように戦えていないようです》

 

「そうなの…」

夕食後の白波家、翠とロマンはこの場にいない遊海について…そして、()()()()について話し合っていた。

 

なお、初めての『試練』を乗り越えた遊嗣はソファでフォウと共に居眠りしている…。

 

 

 

「……ロマンさん、貴方は遊海さんから…何処まで()()()()()?」

 

《……ボクの持つ情報はおおまかなモノに限られています『知識』が足を引っ張る事もあるから…と、ひとまずプレイメーカー・Go鬼塚・ブルーエンジェルの簡単なパーソナル、そしてハノイの騎士と()()()()()の情報、私以外の6体のイグニスの存在…それくらいですね》

 

「なるほど…」

 

《マスターは本来、ボクをサポートAI…いいえ、パートナー()()()()として「物語」への干渉を考えていたらしいけど…先の事件が発生した事で作戦変更を余儀なくされたと言っていました……そして遊嗣の保護とサポートの為に改めて送り込まれて…》

 

「そして、ハノイの騎士に襲われていた遊嗣を助けてくれた……でも…」

 

《はい、できる限りの痕跡(ログ)は消しましたが…ハノイの騎士が我々の情報を掴む可能性もある……遊嗣もマスターと同じように巻き込まれる可能性が高いでしょう》

自身が持つ情報を翠へと開示するロマン…そして、蓄積された()()から遊嗣に待つ未来を予測した…。

 

 

「もう…!現実世界で起きる事なら、私でも対処できるのに…!」

 

《それは…やはり、得意不得意の問題かと…大丈夫、遊嗣の強さは母上様…翠さんも分かっているはず》

 

「それはそうなんだけど…やっぱり心配なのよ〜!」

 

《あはは…大丈夫、その為にボクは彼の所にやって来たんだから…》

待ち受ける試練を前に遊嗣の事を心配する翠…その不安を晴らすようにロマンは笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

【プレイメーカー…まさか、奴が()()()()()()だったとはな、我らよりも先にイグニスを手中に収めるとは…】

 

『リボルバー様の判断に手抜かりはなかったかと…不幸中の幸いは……イグニスがSOLテクノロジーの手に渡った訳ではない事でしょうか』

 

【いずれにせよ…奴の正体が分かるまで時間は掛かるまい】

 

それは何処かにある電脳空間…デンシティを騒がせるハッカー集団『ハノイの騎士』のアジト、そこではリーダーらしき近未来の宇宙服を思わせる仮面で正体を隠した男と生身の肉体と変わらない姿の銀髪の青年が言葉を交わしていた。

 

 

デンシティを始めとした世界中のネットワークを荒らし、混乱を齎す彼らの目的…それは遊作の手に入れたAIプログラムを捕獲し、ネットワーク世界の何処かに隠された『サイバース世界』を破壊する事なのだ…!

 

 

 

1()()、理由は不明だが…プレイメーカーは我ら『ハノイのの騎士』を憎んでいる】

 

【2つ、サイバースを持つ者は限られる】

 

【3つ、いずれ…奴は私のもとにやってくる…奴は私と戦いたがっているらしいからな】

 

『仰せの通りです、リボルバー様…奴も正体を隠し続ける事はできないでしょう』

近いうちにダークホース…プレイメーカーとの決戦がある事を確信するハノイの騎士のリーダー、リボルバー…彼は余裕の態度を崩していなかった…。

 

 

【その時を楽しみに戦いの準備をさせてもらおう……そういえば、プレイメーカーと戦っていなかったもう1人の仲間はどうした?何故連絡がない?】

 

『……どうやら下手を打ったようで…警察に逮捕されたようです』

 

【それは不可解だな…奴はそれなりに腕の立つハッカーのはずだが】

プレイメーカーとの決戦を前に笑みを見せるリボルバーだったが…銀髪の青年──アカウント名『スペクター』の言葉を聞いて眉間に皺を寄せる。

 

 

ハノイの騎士には千名近い構成員が存在する…そのほとんどは売名目的やリンクヴレインズに反感を持つだけのならず者…だが、その中でもリボルバーに忠誠を誓った実力者も一定数存在する。

 

AIプログラム…イグニスを捕獲する為にリンクヴレインズに送り込んだ2人もその内の1人だったのだ。

 

 

 

『彼が残した映像データがありますが…ご覧になりますか?』

 

【ああ、確認しよう】

リボルバーの命を受けたスペクターはモニターに映像を映す…そこには『クラッキング・ドラゴン』を使ってリンクヴレインズを攻撃する彼の姿が映っていたのだが…途中で映像が途切れていた…。

 

 

【この先は?】

 

『どうやら、妨害プログラムによって録画データが破壊されたようです…このプログラムの組み方は──』

 

【『鋼の騎士』か…この一ヶ月ほど姿を見せないと思っていたが…あれだけ暴れれば、奴も出てくるだろう】

そしてリボルバーは構成員を倒した者の正体を予測する。

 

 

ハノイの騎士には4つの『敵』が存在する。

 

1つ目は同じくイグニスの捕獲を目論む、リボルバーの復讐相手でもある『SOLテクノロジー』

 

2つ目は神出鬼没のハッカー『unknown』

 

3つ目は『unknown』と同じく神出鬼没に現れてはハノイの騎士を狩る『Playmaker』

 

 

4つ目…それはハノイの騎士に関わらず、全ての『悪の敵』…鎧を纏いしヒーロー『鋼の騎士』

アカウント名すらも分からず、交戦したハノイの騎士の間で恐れられる人物である。

 

 

【………スペクター、映像を止めろ】

 

『はい…何か映っていましたか?』

 

【大したモノではないが…『鋼の騎士』の手掛かりになるだろう】

 

止められた映像…そこには瓦礫の下敷きになった()()()()()()()()()()()()()()()()()()の姿が不鮮明に映っていた…。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

Side???

 

 

 

【財前、今回の件でリンクヴレインズはずいぶんと混乱しているようだな?】

 

【メンテナンスも含め、しばらく閉鎖してはどうかな?】

 

【既に無謀な連中も現れ、スピードデュエル挑んで怪我人も出ているそうだな】

 

『………』

 

そこはチェス盤のような白黒の床が広がる電脳世界…そこには巨大なチェス駒──ビショップ・ルーク・ナイトの駒が浮かび、その前に青いスーツを着た青髪の男がいた。

 

 

ここはデンシティ一番の大企業『SOLテクノロジー』の首脳室…チェス駒はそのSOLテクノロジーの幹部達であり、青髪の男はSOLテクノロジーの警備部長、財前晃という男だった。

 

今回のハノイの騎士の襲撃の原因…それは、この幹部達が逃げ回るAIプログラム──イグニスを探し出す為に無茶な全体スキャンを指示した事が発端である。

 

 

彼らがイグニスを求める目的…それはイグニスが生み出す『データマテリアル』というネットワーク世界の超物質を独占し、利益を生む事である。

 

 

 

 

『発言をしてもよろしいでしょうか…!』

 

【なんだ?財前】

 

『リンクヴレインズの閉鎖は得策ではない、と思われます…!』

 

財前はチェス駒三人衆を前に自らの考えを伝える。

 

 

リンクヴレインズを閉鎖すれば大きな損失が発生する事

 

目的のイグニスはハッカーであるプレイメーカーが保有している事

 

リンクヴレインズを閉鎖し、プレイメーカーとハノイの騎士の戦いが他のネットワークで行なわれれば…サイバース世界は永遠に失われてしまう事

 

ならば、あえてリンクヴレインズを開放する事でプレイメーカーを誘き出し、捕まえる機会を確保する事を……

 

その話を聞いたチェス駒三人衆は渋々という形で財前の提案を承認する。

 

 

そして、財前は自身の持つ人脈を使い…プレイメーカーを追い詰める事を決めたのだった…。

 

 

 

 

Side OUT

 

 

Side遊作

 

 

 

 

「ダメだ〜…こんなプログラム、見た事がない…A()i()は俺の知らないアルゴリズムで構築されてる…これじゃデータストームの正体もわからないぞ…」

キッチンカー『Cafe Nagi』のハッキングルーム、そこに店主である草薙の弱音が溶けていく…。

 

ハノイの騎士を退けた遊作は草薙と共に休日を使って捕えたAIプログラム──仮称『Ai(アイ)』の解析を進めていた。

(命名は遊作、人工知能である『AI』と(eye)だけの状態である事を掛けたダブルミーニングらしい…なお、饒舌過ぎる事からデュエルディスクのスピーカーはOFFにされている。)

 

 

 

 

「見た事のないプログラムだが…一部を繋げる事はできた」

 

「マジか!?」

 

「無数のプログラムが飛び散っているようなプログラムだが…いくつかを繋げる事ができた」

 

「お前はやっぱりすごいよなぁ…!電脳世界を感じられると言うか…俺とは比べられない才能だぜ…」

 

「ありがとう草薙さん…これは──何かの動画だな、Aiの記憶データの一部か…?再生してみよう」

天才的なセンスでAiのデータの一部を読み解いた遊作…そこに映っていたのは破壊される何処かの「世界」の風景、そして…それを成した『クラッキング・ドラゴン』を操る、ハノイの騎士とは違うアバターの人物の姿だった……その時!

 

 

バチバチ…バリバリ!!

 

「っ…!?なんだ!?」

突然、Aiを捕えていたデュエルディスクがスパークし、モニターが異常な数値を示す…!

 

 

────!!!

 

 

「っ!?草薙さん!電源を落とす!こいつを探った事を()()()されたんだ!!」

 

「なにっ!?」

その時、遊作は言い知れない悪寒に襲われる…そこから状況を導き出した彼は慌ててキッチンカーのブレーカーを落とし、外へと飛び出した!

    

 

 

 

「っ…!あれは!!」

 

【────】

そして、外に飛び出した遊作はその姿を見た。

 

デンシティに重なるように存在する電脳世界…その世界を飛ぶ正体不明のドラゴン…そして、それを操るAiの記憶に映った人物の姿を…。

 

だが、その人物は遊作の存在に気付く事なく──夜の電脳世界に消えていった…。

 

 

 

 

 

「おい、Ai!答えろ…!さっきの映像はなんだ?スピーカーはONにしてある、答えなければ──お前をバラバラにするぞ」

 

《あーもー!話せば良いんだろ!?そんなに凄むなって!》

安全を確認した遊作はAiを問い詰める…彼の記憶に映った事への説明を求めて…。

 

 

《さっきも言ったけど、オレの記憶はほとんど破損…というか奪われた!さっきのハノイの騎士にな!残っている記憶は少ししかない》

 

「さっきの映像の奴は、誰だ?」

 

《聞いて驚くなよ?あいつはリボルバー…ハノイの騎士のリーダーさ》

 

「「ハノイのリーダー!?」」

 

《ほーら驚いた》

Aiからもたらされた思わぬ情報…それを聞いた遊作と草薙は驚きを露わにする…。

 

 

《悪いけど、他の事はわからねぇ…あの『世界』が何なのか、とか…オレがなんで追われてるのかもな……》

 

「──リボルバー…!」

 

悲しげな様子を見せるAiを見ながら…遊作は倒すべき『敵』の名前を呟く。

 

 

 

運命の歯車は…静かに回り始めていた…。



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運命の再会〜その「光」を取り戻す為に〜

こんにちは!S,Kです!ちょっと間が空いてしまった…。

2月中は行事と用事が目白押しに……本当に申し訳ありません…。


それでは、最新話をどうぞ!


《おはよう遊嗣!そろそろ起きる時間だよ》

 

《フォウ、フォーウ!》

 

「ん〜…あと5分〜……」

 

《フォーウ!オキルフォーウ!!》

 

むぎゅ!?」

 

《フォウ…お手柔らかにね?》

遊嗣に穏やかな朝の挨拶とフォウの鳴き声が掛けられる、一瞬起きた遊嗣だったが…二度寝を決め込もうとしてフォウに顔を踏んづけられて目を覚ました。

 

 

 

「母さんおはよう〜」

 

「おはようユウくん!……ふふっ、ほっぺに肉球マークが付いてるわよ?」

 

「今日はフォウが厳しかった…ふぁ…」

 

《フォウ!》

それはいつも通りの朝の一コマ…変わった所は──

 

 

《遊嗣、今日は体育の授業があるみたいだよ?体操着を忘れないようにね》

 

「うん、ありがとうロマン」

父から送られたサポートAI・ロマンが()()として増えた事だろう…遊嗣のデュエルディスクに宿った彼はさながら遊嗣の秘書のようでもあった。

 

 

「遊嗣、ロマン…2人ともあまり目立たないようにね?今の若い子のデュエルディスクには普通にサポートAIが搭載されてるけど…ロマンは本当に特別なAIだから…」

 

「分かってるよ母さん、デュエルディスクのソリッドビジョンを弄って実体化できるAIなんて普通じゃないって…」

 

《ボクもできる限り目立たないようにするよ、見る人が見たら()()()になるだろうからね》

 

「うん、わかってるならよろしい!」

ロマンの()()()を理解している翠は2人に注意を促す…少しでも、2人に危険が及ばないように…。

 

 

 

「じゃあ、いってきまーす!」

 

「いってらっしゃい!気をつけてね〜!」

 

《フォウフォ〜ウ!》

翠とフォウの見送りを受けて遊嗣とロマンは学校に向かって行った…。

 

 

 

 

 

 

「お〜い!白波〜!!」

 

「あっ、おはよう島君!」

普段通りに校門をくぐる遊嗣…そんな彼に声をかけたのは少し息を切らせた島だった。

 

 

「お前、この前のハノイの事件の時大丈夫だったか!リンクヴレインズにいたんだろ!?」

 

「ああ…うん、アバターもアカウントも大丈夫だった!それに、プレイメーカーも近くで見れたんだ!」

 

「おまっ!?すげーじゃん!俺も広場で見てたけど…超カッコよかったよな!」

 

「うん!スピードデュエルもすごかったね!」

初めて表舞台に姿を見せたプレイメーカーの話題に花を咲かせる2人…特に、プレイメーカーのファンである島のはしゃぎようは子供のようだった。

 

 

「あ〜あ!俺もプレイメーカーみたいにかっこよくデュエルしてぇなぁ…」

 

「それにはしっかりデュエルと体力作りの特訓しないとね!」

 

「体力?デュエルに体力って必要なのか?」

 

「そうなんだ!体が強くないとデュエルが連続した時に集中力が途切れちゃうし───」

 

「へぇ~…」

そうしてデュエル談義をしながら2人は教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「えー、突然ですが!転校生がこのクラスに入る事になりました!」

 

「「「転校生?」」」

遊嗣のクラスの朝のHR…担任の思わぬ言葉に生徒達の声が重なる。

 

 

 

「本当はキミ達と同じく4月から入学のはずだったんだが…手続きに時間が掛かってしまったんだそうだ…入って来てくれ!」

担任の呼びかけと共に教室の扉が静かに開く、そして入って来たのは──デンシティハイスクールの制服を着た、眼鏡を掛け右目が()()()()に隠れた少女だった。

 

 

 

「可愛い…!」

 

「外国の子かな…?」

 

「メカクレキター!」

 

「──あれ、あの子…?」

可愛いらしい少女の姿をみたクラスの女子や一部の男子がざわつくなか…遊嗣は何処か既視感のある少女の顔に首を傾げる…。

 

 

 

「自己紹介はできるかな?」

 

『は、はい!最低限は覚えてきました!』

担任と言葉を交わした少女は黒板ホワイトボードに英語名と少し不慣れなカタカナで自分の名前を記す。

 

 

『えっと…マシュ・キリエライトです!父の仕事の都合で、イギリスからやって来ました!』

 

「マシュ…?もしかして──」

初々しく自己紹介をする少女──『マシュ』、その名前は遊嗣がリンクヴレインズで助けた少女と同じ名前で───

 

 

 

『日本語は不慣れですが───』

 

『「あ」』

遊嗣とマシュの目が合う…遊嗣の碧い瞳とマシュの桃色の瞳、それはアバターでも変わっていなかった。

 

 

「ん…?白波君?マシュさんと知り合いだったかな?」

 

「あ、えっと…」

 

『先日、初めてリンクヴレインズにログインして、困っていた私を助けてくれたんです!アバターと似ていたので…』

 

「おおっ!?そんな出会いがあるとは…!」

 

《運命の出会いって、本当にあるんだねぇ…》

遊嗣とマシュの関わりを聞いて驚く担任…その様子を見ながら、ロマンは小さく呟いた…。

 

 

 

………

 

 

 

『えっと…Yu-Zさん、じゃなくて…』

 

「遊嗣、白波遊嗣…それが僕の本当の名前だよ、マシュ」

 

『シラナミ、ユウジ…遊嗣さん!この前は助けてくれてありがとうございます!』

時間が過ぎて昼休み…遊嗣はマシュと共に中庭に座っていた。

それまでの休み時間は同級生達の質問攻めでタイミングがなかったのだ。

 

 

「いいんだよ、あれは僕が助けたかったからだし…それよりも、マシュとこうして再会できるなんて思ってなかった!」

 

『私もです!実は、あの日…ハイスクールに来る前に話題作りになると思ってリンクヴレインズに…』

 

「そうだったんだ…」

週明けに控えていた初登校を前に不安を抱えていたマシュ…その為、クラスのみんなの話題に入れるようにリンクヴレインズへとログインしていた…そこで運悪く、ハノイの騎士の襲撃に出くわしてしまったのだ。

 

 

『あの…ロマンさんは──』

 

《ここにいるよ!目立たないように目だけでね?》

 

『わっ…!びっくりしました…』

 

「ロマン、イタズラは程々に」

 

《ごめんごめん》

ロマンについて問いかけるマシュ…その時、白い目の模様が遊嗣のデュエルディスクに浮かび上がる…マシュは突然のロマンの登場に驚き、遊嗣はそれを見て注意していた。

 

 

《マシュ、キミのアカウント名とアバターは現実のキミそのままの姿だったけど…リンクヴレインズでは少しでも変えた方がいいよ?この街にはハノイの騎士が潜んでる…目をつけられると怖いからね》

 

『あ、アドバイスありがとうございます…!気をつけます!』

 

「そうだね…ハノイの騎士を倒しちゃったから、報復で狙われるかも…僕も気をつけないと…」

ロマンの忠告に頷くマシュ…それを聞いていた遊嗣も頷いた…。

 

 

 

『そういえば…遊嗣さんのファミリーネームって、昔のキング・オブ・デュエリスト…決闘王の()()()()さんと同じですね!もしかして…?』

 

「あっ違う違う!確かに同じ白波って苗字…ファミリーネームなんだけど、関係ないんだ!まぁ…白波って苗字の人は日本に100人ぐらいはいるらしいから、遠い親戚…えっと…レラティヴズ?かもしれないけど」

 

『そうなんですか…』

ふとした事から遊嗣の苗字の話になるが、マシュの問いかけに遊嗣は首を振る…小さい頃からこのやり取りは『お約束』になっている。

 

なお、遊嗣は『決闘王』白波遊海と自分の父である白波遊海が同一人物だとは夢にも思っていないのであった。

 

 

 

「マシュは白波遊海の事好きなの?もう80……100年近く昔の人だよ?」

 

『はい…!彼の残した「伝説」と偉業は本当にすごい事だと思うので!』

そしてマシュはすごい勢いで『白波遊海』の伝説を語り始める。

 

 

 

曰く、決闘黎明期に現れ、武藤遊戯と名もなきファラオと共に古代エジプトの邪神や世界を混乱させた秘密結社を倒した。

 

曰く、デュエルアカデミア本校で()()として数多のデュエリストを育て…島に封じられた『幻魔』を再封印した。

 

曰く、未曾有の災害…ゼロ・リバースから自分の体と引き換えに数多の人々を守り…後遺症でボロボロになりながらも、赤き竜の使者であるシグナー達を導き、『アーククレイドル事件』を解決に導いた。

 

時に『赤帽子の英雄』、または『鋼の騎士(メタルナイト)』…そして黎明期から全ての決闘の歴史を見届けた者──『決闘の観測者(デュエル・ゲイザー)』と呼ばれた伝説の『決闘者』であると…。

 

 

 

 

 

『凄い実力を持っていながらも、力をひけらかす事なく…それをデュエルモンスターズや人々を守る為に使い、戦い続けた現代の英雄…私がシャーロック・ホームズと同じくらい尊敬する方です!実は昔、イギリスでチーズ転がし祭りに参加したという逸話があって────』

 

「わぉ…マシュってけっこうオタ──アグレッシブなんだね…」

 

《よほど、彼の物語が好きみたいだね》

目をキラキラとさせながら白波遊海の伝説を語るマシュ…その様子は本当に楽しそうで──遊嗣にはそれがとても眩しかった。

 

 

 

『──はっ、すいません!つい話に夢中になってしまって…!』

 

「いいよいいよ…マシュが好きなモノが分かってよかった!」

 

《2人とも、そろそろ午後の授業が始まるよ?》

 

「あっ!急ごうマシュ!」

 

『は、はい!!』

楽しい時間はすぐに過ぎていく…2人は慌てて教室に戻っていった…。

 

 

《マスター…貴方の思いはしっかり、未来に受け継がれているよ》

 

 

 

  

………

 

 

 

 

 

「二進数とは………ハノイの塔というパズルが───」

 

「ハノイの塔…ハノイの騎士…」

午後の授業中…有名なパズルである『ハノイの塔』の話題を聞いた遊作は考えこむ…自身の仇敵である『ハノイの騎士』の事を…。

 

 

「(ハノイの騎士、リボルバー…そしてスピードデュエルに『ストームアクセス』…あの感覚をオレは()()()()()…1つ、Aiの存在…2つ、データストーム…3つ、ハノイの騎士…この3つはきっと関係している…)」

遊作は静かに考えをまとめる…自分が解決すべき、3つの事柄について…。

 

 

 

「(リボルバーにさえ行き着ければ、全てが分かるのか?オレや草薙さんの弟に起きた過去の事件の事も───)」

 

「なあなあ!この前のプレイメーカーの活躍見たか!?」

 

「ん……いいや」

 

「ええ〜っ!?お前、それでもデュエリストかよ!?」

自分が為すべき「復讐」について考え込む遊作…その思考を止めさせたのは、たまたま隣の席に座っていた島某だった。

なお、遊作達は教室の最後列に座っている為、教師は島が騒いでいる事を気にしていない。

 

 

「俺、広場でプレイメーカーの活躍を見てたんだけど超カッコよかったぜ!……って、あれ?お前、デュエルディスクは??」

 

「家に置いてきた、()()()は留守番だ」

 

「……デュエルディスクに留守番機能なんてあったか?」

プレイメーカーを初めて見た感激を楽しそうに語る島…そんな時、彼は遊作がデュエルディスクを付けていない事に気付く。

 

遊作はデュエルディスクに閉じ込めたAiがやかましいので部屋に放置していたのである。

 

 

「俺なんてさ!いつプレイメーカーが出てきても言いようにずっとリンクヴレインズの中継を───は、ハノイだ!?」

 

「ん?島君どうしましたか?今はハノイの塔の説明を──」

 

「ハノイの騎士がリンクヴレインズに現れた!!」

 

「「「ええっ!?」」」

隠れてリンクヴレインズの中継を見ていた島が驚く声を上げる…彼が持つ端末にはDボードの上で腕を組むハノイの騎士の姿があった。

 

そして…いつの間にか遊作の姿は教室から消えていた…。

 

 

 

………

 

 

 

「(っ…このタイミングでハノイの騎士が再び姿を現すか…今度こそ、ハノイの騎士の情報を…!)」

学校を抜け出した遊作は自宅へと向かっていた、デュエルディスクさえあれば何処でもリンクヴレインズには行けるのだが…自宅に置いていたのが仇になっていた。

 

プップー!

 

「遊作!忘れもんだぞ!」

 

「草薙さん!」

その時、自宅の玄関に辿り着いた遊作にクラクションと共にカード手裏剣が飛んでくる、事態を知った草薙が遊作のサポートにやって来たのだ…なお、渡したのは先日のハノイの騎士戦で遊作が手にした『デコード・トーカー』のカードである。

 

「ありがとう!行ってくる!」

 

「ああ、気をつけろよ!」

カードを受け取った遊作は草薙の見送りを受けながら自宅へと飛び込んだ…。

 

 

 

 

 

《う〜ん!ああ、ソコ!もうちょい右…!》

 

《静カニシテクダサイ、手元ガズレマス》

 

《ああもう!下手くそ!バカ!!》

 

《馬鹿ハ禁止用語デス…》

一方その頃、Aiは遊作の家のお掃除AIロボット・ロボッピを唆して何かをしていた…そんな時──

 

ガチャ

 

《アッ、ゴ主人様デス》

 

《え、えっ!?下校時間にゃ早すぎるぞ!?ロボッピ!!》

玄関が開く音で家主である遊作の帰宅に気付く2体…そして──

 

 

 

 

《よ、よぉ遊作!ずいぶんお早いお帰りで──》

 

「リンクヴレインズに行くぞ!ハノイの騎士が出た!」

 

《え〜っ!?また人質かよぉ!?》

間一髪で監禁されていたガラスケースに戻っていたAi…だが、すぐさま遊作に取り出され、説明もないままに隠し部屋のログインルームからリンクヴレインズに飛び込む事になった…。

 

 

 

 

 

『来たか、プレイメーカー』

 

「………?」

リンクヴレインズに飛び込んだプレイメーカーこと遊作、そんな彼を待ち受けていたのは『ハノイの騎士』として知られるアバターの男だった…だが、そんな彼から遊作は違和感を感じ取る…。

 

 

「お前…()()()()()()()()()()()?」

 

《あー…オレもそう思う》

 

『ククク…ハハハ!流石にバレるか…その通り!お前を誘い出す為にハノイの騎士を利用させてもらった!』

ハノイの騎士の姿が揺らぐ…その中から現れたのは短く揃えられた黄色い髪にレスラーのような服を着た大男──カリスマデュエリスト・Go鬼塚だった。

 

 

 

『俺はGo鬼塚!()()のヒーローがヒーロー気取りのお前の化けの皮を剥がしに来たぜ!!』

 

《Go鬼塚、検索……リンクヴレインズを席巻するエンターテイナー、現在カリスマデュエリストランキング1位…強敵じゃねぇか》

カリスマデュエリスト・Go鬼塚…その情報を検索したAiが声を上げる。

 

 

カリスマデュエリストGo鬼塚…彼はリンクヴレインズの『表』の顔とも言える実力者デュエリスト、そんな彼がプレイメーカーとの戦いを望む理由は3つある。

 

 

1つ、プレイメーカーからイグニス・Aiの強奪を狙うSOLテクノロジーの財前晃からの依頼があった事。

 

2つ、プレイメーカーと純粋な力比べがしたかった事。

 

3つ…これが彼にとって一番の戦う理由──先日のハノイの騎士との騒動で彼に奪われてしまった人々からの注目を取り戻す為。

 

 

Go鬼塚…本名、鬼塚豪は人格者だった…孤児院出身だった彼はリンクヴレインズで名を上げ、その稼ぎを孤児院の子供達の為に使う優しい男である。

…しかし、先日の騒動で表舞台に現れたプレイメーカーに子供達は目を奪われてしまった…その様子を見た鬼塚は子供達の瞳の中の『光』を自分に取り戻す為、財前の誘いに乗り…プレイメーカーと戦おうとしていたのだ。

 

 

 

「オレにはお前と戦う理由はないし、興味もない」

 

《あっ、そうなの?》

 

『むっ…!』

しかし、遊作はそんな事は知らずに鬼塚に背を向ける…彼が戦うべき相手は『ハノイの騎士』のみ…それ以外の相手とデュエルする理由は…彼には無いのだ。

 

 

「だが、ヒーローを自称するなら…1()()言わせてもらう──本当の英雄なら、自ら目立とうなんてしない…オレの知る英雄は──人助けをしても名乗りすらせず、光の中に去っていった」

 

《おお…プレイメーカー様、意外とロマンチスト?》

振り返った遊作はGo鬼塚に忠告を送る、その脳裏には鋼色の大きな背中の英雄の姿があった…なお、そんな遊作の様子を見たAiは少し驚いている。

 

 

 

『っ…お前に戦う理由がなくても…俺には、お前と戦う理由がある!!』

 

キィン─!

 

「これは…」

その時、電脳世界にプログラムが奔る…そして巨大な鉄檻が遊作と鬼塚の周囲を隔離した…!

 

 

 

《これは…気をつけろ、その檻のプログラムはリンクヴレインズからのログアウトを妨害するプログラムだ!》

 

『その通り…このプログラムは俺が倒された場合にのみ解除される』

 

「……誰に依頼された?」

 

『フン…ハッカーに教える義理はない!とにかく、俺はプレイメーカーより強いと証明できればそれでいい!!』 

 

「…仕方がないか…!」

リンクヴレインズからのログアウトを阻まれた遊作は鬼塚と対峙する…その裏にSOLテクノロジーの影を感じ取りながら…。

 

 

《奴は強いぞ…!気をつけろ!》

 

「オレは…負けない!」

 

《よしっ…風を掴め!プレイメーカー!!》

リンクヴレインズに風が…データストームが吹き荒れる、その流れの上で遊作と鬼塚のスピードデュエルが始まった…!

 

 

 

 

 

 

「『スピード・デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 遊作対鬼塚

 

 

 

Go鬼塚が操るのは純粋なビートダウンデッキ、様々なプロレス用語や技の名を持つ戦士達のデッキ『剛鬼』…そのデュエルスタイルは豪快にして緻密…相手にも充分な活躍の機会を与えた上で、それをさらに上からねじ伏せるプロレス的なエンターテイメントデュエルだった。

 

『表』の世界において十分な実力を持つ鬼塚…しかし、そのスタイルに飽きてきた一部の観客達は世代交代を願っていた…そんな時に遊作…プレイメーカーは姿を現してしまったのだ。

 

 

 

 

『行くぞ、プレイメーカー!!現れろ!俺様のサーキット!!』

 

「来るか…」

プレイメーカーの攻撃を()()()受け、不利な状況を作り出した鬼塚…彼は逆境を覆す為の切り札を解き放つ!

 

 

『リンク召喚!現れろ、LINK-3!「剛鬼ザ・グレート・オーガ」!!』

現れるのは鬼塚のエース…獣の皮を纏い、巨大な戦斧を持つ戦士が堂々と現れる!

 

 

『これが俺の戦い方だ…!俺の尊敬するプロデュエリスト、ゴーシュ・ザ・スターマンをリスペクトしたプロレスデュエル、しっかりと味わってもらうぜ、プレイメーカー!!』

 

《ゴーシュ・ザ・スターマン?……覆面スタイルで活躍するプロデュエリスト、観客や相手をノリで盛り上げるデュエルスタイルを得意とする……よーわからん》

 

「…AIには分からないだろうな、奴のやり方は…それが『人間』って奴なんだ」

調子を上げていく鬼塚…彼は一気に反撃に移る!

 

 

『墓地に送られた3枚の「剛鬼」カードの効果で俺はデッキから3枚のカードを手札に加える…そして!「グレートオーガ」の効果発動!このカードが存在する限り、相手モンスターの攻撃力はそのモンスターの守備力分ダウンする!オーガ・プレッシャー!!』

 

《げげっ!?攻撃力下げてくるのかよ!?》

グレートオーガの咆哮が遊作の『サイバース・マジシャン』と『リンク・スレイヤー』の攻撃力をダウンさせる…!

 

 

『さらに俺は魔法カード「剛鬼再戦」を発動!墓地の異なるレベルの「剛鬼」モンスター2体、「剛鬼ライジングスコーピオ」と「剛鬼ツイストコブラ」を守備表示で特殊召喚!』

 

《リンク召喚を決めたと思ったら、守備まで固めてきやがった…派手なだけのエンターテイナーかと思えば…意外と抜かりがないな…!》

 

「……いいや、奴の狙いはそこではなさそうだ…!」

 

《えっ…?》

リンク召喚に加えてさらなるモンスターを展開する鬼塚…隙のない盤面を展開していく彼の姿を見たAiが感心するが、鬼塚の展開はまだ止まらない…!

 

 

『「ツイストコブラ」の効果発動!「ライジングスコーピオ」をリリースする事で「グレートオーガ」の攻撃力をその攻撃力分アップさせる!』

 

《攻撃力4900!?》

鬼塚は守りを固めたのではない…確実にプレイメーカーを倒す為の布石を打っていたのだ…!

 

 

『まだだ!手札の「ツイストコブラ」を墓地に送る事で手札から「剛鬼ヘッドバット」を特殊召喚!その効果で「グレートオーガ」の攻撃力はさらに800アップする!!』

 

《や、やべぇ!攻撃力5700!この攻撃を受けたらオレ達の負けだ─!?》

 

『受けてみろ!プレイメーカー!これが俺のフィニッシュホールドだ!!「グレートオーガ」で「サイバースマジシャン」を攻撃─!!』

最大限まで強化されたグレートオーガの一撃が遊作へと迫る!

 

 

「狼狽えるな!罠カード『サイバース・シャッター』を発動!『ヘッドバット』の効果による『グレートオーガ』の攻撃力の変化を無効にし、カードを1枚ドローする!!」

 

『っ…だが、残るライフは僅か100…!風前の灯火だ!オーガ・アックス!!』

 

「くううっ…!」

 

《うわああっ!?》

グレートオーガの一撃がサイバースマジシャンを粉砕、遊作達は大ダメージを受けてしまう…!

 

『どうだ…!俺はこれでターンエンドだ!』

 

 

 

《プレイメーカー!?どうして『サイバースシャッター』の効果を『ツイストコブラ』の効果が発動した時に使わなかったんだよ!?もっとダメージを減らせたじゃないか!》

 

「黙れ、オレにはオレの考えがある」

鬼塚のターンが終わり、Aiが声を上げる…彼から見れば『サイバースシャッター』の発動タイミングを間違ったように見えたからだ。

 

…だが、遊作は動揺を見せない…その瞳に諦めの色は見えなかった…!

 

 

 

「よしっ…!遊作!プログラムの抜け穴を作った!!すぐにデュエルを止めてリンクヴレインズからログアウトするんだ!!」

 

《おおっ!?プレイメーカー!あの穴から脱出できるぞ!》

 

「───」

その時、ログアウトを阻むプログラムを解析していた草薙が遊作に脱出路を開く…当然、遊作は脱出すると思われたが───

 

 

《えっ!?なんで脱出しないんだ!?》

 

「デュエルを受けた以上──逃げる事はできない!」

 

「遊作!?」

遊作はDボードの進路上に現れた「抜け穴」をスルー…鬼塚とのデュエルを続行する決断を下した…!

 

 

 

《…人間は時として意味不明な事をする…どういうつもりだよ!プレイメーカー様!?》

 

「…オレがこのデュエルを続けるのには3つの理由がある…」

遊作の判断に戸惑うAi…そんな彼に遊作は自分が戦う理由を告げる。

 

1つ、鬼塚が自分の持てる全ての技術やタクティクスを使い、観客や遊作を楽しませようとしている事に気付いたから。

 

2つ、鬼塚にはプレイメーカーを絶対に倒すという強い執念を感じたから。

 

そして3つ、この戦いの中で一流のデュエリストである鬼塚とのデュエルを……遊作自身が受けて立ちたくなったから。

 

それは合理性を優先するAIからすれば理解のできない理由…だが、それは…『復讐の為のデュエル』を続けていた遊作の魂に眠るデュエリストの()に火が点いたという事を示していた…!

 

 

 

そして…遊作には既に勝利への道筋が見えている!

 

 

 

「いくぞ…!ストーム・アクセスだ!!」

 

《あっ…その手があった!!》

それは遊作の逆転の為の一手…ストームアクセス!

 

 

 

《風を掴め!プレイメーカー!!》

 

「うおおっ!!ストームアクセス!!

データストームに突入した遊作は嵐へと右腕を突き刺す…そして、新たな力を手にした!!

 

 

「リンク召喚!現れろ!LINK-2!『リンク・バンパー』!」

 

「さらに現れろ!リンク召喚!LINK-2!『ハニーボット』!」

 

『3連続のリンク召喚だと!?』

それはサイバースデッキの強みを生かした連続リンク召喚…『リンク・スパイダー』『リンク・バンパー』『ハニーボット』の3体を召喚した遊作…そして、彼は切り札を解き放つ!

 

 

「リンクモンスターをリンク素材にする時、そのリンクマーカーの数の分の素材になれる!LINK-2の『ハニーボット』とLINK-1の『リンクスパイダー』でリンクマーカーをセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ!LINK-3!『デコード・トーカー』!!」

 

『っ…!!』

それは怒涛の4連続リンク召喚…彼の切り札たる電脳剣士が現れる!

 

 

「そしてオレは装備魔法『サイバース・アナイレーション』を『デコードトーカー』に装備!さらに墓地の罠カード『サイバース・シャッター』を除外して効果発動!墓地の『ハニーボット』を特殊召喚する!」

 

『っ…一気に3体のリンクモンスターを…!だが、攻撃力は「グレートオーガ」には及ばない!!』

 

「バトルだ!『デコードトーカー』で『グレートオーガ』を攻撃!さらに装備魔法『サイバースアナイレーション』の効果発動!装備モンスターがバトルする時、その攻撃力は相手モンスターと同じになる!さらに『ハニーボット』のモンスター効果より、『デコードトーカー』はバトルでは破壊されない!!デコード・エンド!!」

 

『っ…!「グレートオーガ」がバトルで破壊される時、効果発動!フィールドの「剛鬼」モンスターを破壊する事でバトルでの破壊を無効にする!迎え撃て!オーガ・アックス!!』

青き剣士の剣と戦斧が激突…お互いに弾かれるが、破壊を免れて踏みとどまる…!

 

 

 

『「グレートオーガ」の効果で破壊された「ヘッドバット」の効果発動!デッキから「剛鬼再戦」を手札に加える!相討ち狙いは失敗だ!』

 

「いいや…オレの狙いは相討ちなんかじゃない!『リンクバンパー』の効果発動!『デコードトーカー』はフィールドに存在するリンクモンスターの数だけ攻撃できる!フィールドには3体のリンクモンスターが存在する!!」

 

『っ…!何度でも掛かってこい!!』

 

「ああ…お前がそう望むなら!!いくぞ!!」

それは究極の我慢比べ…剣士と戦士が衝突し、互いに弾かれる…そしてまた衝突する…それはまさに格闘技の試合のように…。

 

 

だが…()()は必ず訪れる!

 

 

「3度目の攻撃!!デコードエンド!!」

 

『負けてたまるか!「グレートオーガ」の効果っ…しまった!?モンスターが!!』

 

「そうだ…!お前のフィールドに『グレートオーガ』の身代わりになれるモンスターは存在しない!切り裂け!『デコードトーカー』!!」

3度目の衝突…先に膝をついたのは鬼塚…グレートオーガが両断される!!

 

 

「この瞬間、装備魔法『サイバースアナイレーション』のさらなる効果発動!装備モンスターが相手モンスターを破壊した時、

相手は破壊されたモンスターの攻撃力分のダメージを受ける!!」

 

『っ…!?うおおっ!?』

 

それは見事な逆転勝利…リンクヴレインズにプレイメーカーの勝利を讃えるゴングが響き渡った…。

 

 

 

鬼塚LP0

 

遊作Win!

 

 

 

 

 

 

『あ〜あ…ハハハ!負けちまった!強かったぜ、プレイメーカー!!』

スピードデュエルに敗北し、リンクヴレインズのビルの屋上に投げ出された鬼塚…だが、彼は──清々しく笑っていた…。

 

 

 

 

《なぁ、アイツは負けて嬉しそうで…お前は勝って嬉しそうじゃない……なんでだ?》

 

「……勝っても負けても、ずっと戦っていたい……そんなデュエルもある」

 

《……理解不能!》

鬼塚の事を振り返らずにデータストームの流れに乗ってリンクヴレインズを去る遊作…その表情は普段よりも少しだけ柔らかかった…。

 

 

 

 

 

『あ〜あ、負けちまった…あいつめ、余裕かましやがって…』

リンクヴレインズからログアウトした鬼塚は暗いプロレスリングのロープに凭れかかっていた。

スピードデュエルの反動で気怠い体…そして、プレイメーカーに負けた事によるSOLテクノロジーとの契約の破棄…鬼塚の気は重かった…。

 

『こんなんじゃ、子供達に合わせる顔が───』

 

「「「チャンピオン!!」」」

 

『うおっ!?…お前ら…』

落とされていたプロレスリングの照明が点灯する…そしてそこには──彼が支援する孤児院の子供達の姿があった…!

 

 

 

「チャンピオン!今日のデュエル、すっごくカッコよかった!!」

 

「プレイメーカーもカッコよかったけど…やっぱり、私達のヒーローはG()o()()()だよ!!」

 

『お前ら…デュエルで負けた俺を、チャンピオンだと言ってくれるのか?』

 

「当たり前だよ!負けたって、何度でも立ち上がる!それがGo鬼塚だろ!」

 

「だから…ずっと私達のチャンピオンでいてね!!」

 

『お前ら…』

負けた事で子供達からも見放されると考えていた鬼塚…だが、そうはならなかった。

確かに、彼らはプレイメーカーをかっこいいと思っただろう…だがそれでも──彼らは分かっているのだ、自分達の為に戦い続ける鬼塚の優しさと力強さを…それを示すように子供達は手作りのチャンピオンベルトを手にしていた…。

 

 

『お前達…ありがとうな…!俺は負けねぇぞ!うおおっ!!』

 

「「「わ〜!!」」」

子供達の手からチャンピオンベルトを受け取った鬼塚が雄叫びを上げる…これからも彼は戦い続けるだろう…大切な子供達の為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、遊作…なんですぐにログアウトしなかった」

 

「草薙さん……拗ねてるのか?」

 

「違わい!…気になっただけだ」

リンクヴレインズからログアウトした遊作は草薙の待つキッチンカーに乗り込む、そこでは抜け穴を使わなかった事で気を悪くしたらしい草薙が待っていた。

 

 

「……ごめん、もう少しアイツとデュエルを楽しみたくなったんだ」

 

「──そうか…Go鬼塚、手強い相手だったが……そのうち、俺達2人じゃハノイの騎士と戦うにも行き詰まるだろう…そんな時、一緒に戦えたらな……」

 

「……ハノイの騎士との戦いは命懸けになる、そんなデュエルにアイツは巻き込みたくないな…」

 

「そうか…」

久しぶりに楽しいデュエルをしたらしい遊作の様子を見た草薙が小さな願いを口にする…だが、それを聞いた遊作は首を横に振った…危険を伴う『復讐の戦い』に関係のない者を巻き込まない為に…。

 



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日常に迫る悪意〜守る為の戦い〜

こんにちは!S,Kです!大変お待たせしました…。

なんであんなに忙しくなったんだろう…今までの人生で一番忙しい2月だったかもしれない…(汗)


マシュと再会し、穏やかな日々を過ごす遊嗣…だが、そんな日常にも少しずつ影が迫っていた…。

それでは、最新話をどうぞ!


『お呼びですか、リボルバー様』

 

【ああ、よく来た】

何処かにある電脳空間…ハッカー集団『ハノイの騎士』のアジト、そこにはハノイの騎士のリーダーであるリボルバー、そして呼び出されたハノイの騎士の構成員の姿があった。

 

 

【お前に任務を与える…()()()()に写っている者を見つけ出し、そのアカウントを破壊しろ】

 

『こいつらは…?』

リボルバーが手元に画像データを投影する、そこにはハノイの騎士の技術で拡大・鮮明化された桃色の髪の少女と金髪の青年の姿が映し出されていた…。

 

 

【先日のイグニス捕獲作戦の際に奴らは我らの同志を妨害し、警察に売り渡した…その報復を行う】

 

『了解しました…すぐに見つけ出します』

リボルバーの指示を受けたハノイの騎士は2人の画像データを受け取り、リンクヴレインズへと向かった…。

 

 

 

『リボルバー様、よろしかったのですか?彼に「鋼の騎士」と遭遇する可能性を伝えなくて…』

 

【問題ない、彼は我らの()()を理解せぬ野良ハッカー上がり…鋼の騎士の情報を少しでも得られれば僥倖だ】

構成員が去った後、リボルバーの背後に現れたスペクターが彼に疑問を投げかけるが…リボルバーはそっけなく答える。

 

 

【それに…鋼の騎士の情報が無くとも──彼には少し興味がある】

そしてリボルバーは画像に写る金髪の青年を見つめた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユウくん、何か学校で良い事あった?」

 

「もぐもぐ…なんでそんな事聞くの?」

 

「ユウくんが学校に行くのが楽しそうに見えたから!新しい友達でもできたのかなーって!」

 

「……母さんって、エスパー?」

 

「ふふっ…そうかも?」

とある日の白波家の朝の食卓、普段通りに朝食を食べる遊嗣に翠が問いかける…翠は母親としての勘で遊嗣の変化に気付いていた。

 

 

《あれ?遊嗣、まだ()()の事を話してなかったのかい?》

 

「彼女……えっ!?恋人!?」

 

げほっげほっ!…ち、違うって!なんでいきなりそうなるのさ!?」

ロマンの言葉を早とちりした翠の思わぬ言葉に思わず咳き込む遊嗣…彼は呼吸を整えながら翠に学校での変化を伝える…。

 

 

 

「実はさ、うちのクラスに転校生の女の子が来たんだけど…その子がこの前、リンクヴレインズで助けた女の子だったんだ」

 

「へぇ〜…!そんな事があるのね!その子もユウ君の事に気付いたの?」

 

「うん、お互いに生身と似たようなアバターだったからさ!イギリスから来たらしいんだけど、いろんなデュエリストの事を知ってる優しい子なんだ!」

 

「……一目惚れ、しちゃった?」

 

「だから…なんでそうなるのさ!?」

 

《遊嗣〜顔が真っ赤だよ〜》

 

《フォウフォウ〜(特別意訳:遊嗣はあんまりそういう経験ないもんね〜)》

 

「も、もう!マシュとはそんなんじゃないって!!」

翠に転校生の少女、マシュの事を話す遊嗣…その姿を見た翠は遊嗣の事をからかい…それを聞いた遊嗣の顔は林檎のように真っ赤になった…。

 

 

「ご、ごちそうさまでした!学校いってきまーす!!」

 

「あっ、ユウ君!……ちょっとからかいすぎたかなぁ?…でも、母親としてはちょっと複雑な気分……」

 

《ふふっ…遊嗣も大きくなったね、翠》

 

《もう少し見守ってあげた方がいいかも?》

 

「そうねぇ…遊嗣もそんなお年頃かぁ……」

照れ隠しに朝ご飯を詰め込んだ遊嗣はドタバタと学校に向かう、そんな彼の背中を見送りながら…精霊達と一緒に翠は微笑んだ…。

 

 

 

 

 

「まったく…母さんもデリカシーがないんだから…」

 

《ははは…翠は母親として遊嗣の事が心配なんだよ》

 

「それは分かってるけどさぁ…」

逃げるように家から飛び出した遊嗣はブツブツと文句を言いながら学校に向かっていた…そんな彼を優しくロマンは宥めている。

 

 

「あっ…遊嗣さん!おはようございます!」

 

「ん…?ああ、マシュ!おはよう!」

 

《おはようマシュ、今日も元気そうだね》

 

「ロマンさんもおはようございます!挨拶は大事だと本にも書いてあったので!」

 

《うんうん、いい心掛けだ》

そんな時、遊嗣の背中から声を掛ける人物がいた…それは噂の彼女であるマシュ…彼女は元気に遊嗣とロマンに声をかけた。

 

 

 

「…あ、あの…遊嗣さん、お願いがあるんですが…」

 

「ん?どうしたの?」

そしてマシュは少し恥ずかしそうに遊嗣に声を掛ける…どうやら、頼み事があるらしい。

 

「放課後、付き合って欲しいんです…!」

 

「つ、付き合う?何処に?」

 

「その……リンクヴレインズに!」

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

「ただいま〜…あれ、母さん?」

時間は流れて放課後、授業を終えた遊嗣は足早に帰宅する…しかし、普段なら出迎えてくれる母の返答がなかった…。

 

 

「母さ〜ん!出かけてるの〜?」

 

「───?───!」

 

《どうやら、電話をしてるみたいだね》

 

「珍しい…凌兄からかな?」

翠が遊嗣の帰宅にも気付かない様子で電話をしているらしい事に気付くロマン…そんな彼の言葉を聞きながら遊嗣がリビングに行くと…。

 

 

 

 

 

 

「もう…!なるべく早く帰ってきてくださいね…こっちも少し騒がしくなってきてて…」

 

『帰りたいのは山々なんだけどなぁ…ネオ・アカデミアの奴ら……ロジェの奴が面倒な事を……キングス・ギャンビットの上位互換な事やらかしやがって…何処であんな技術を…』

 

「っ──()()()!?」

 

「『っ!?』」

遊嗣の目に入って来たのはダイニングテーブルでテレビ電話をする翠の姿、その相手は一ヶ月前から出張中の父、白波遊海だった。

 

疲れ切った様子で話していた遊海と翠は突然の遊嗣の声にびっくりして飛び上がってしまった…。

 

 

 

「ゆ、ユウ君おかえりなさい!?ごめんね!お父さんとの電話に夢中になっちゃって!」

 

『遊嗣…!久しぶりだな!なかなか帰れなくてごめんなぁ…制服姿、似合ってるじゃないか!』

 

「もう…!久しぶりにも程があるよ!!なんで電話もなかなか繋がらないのさ!」

 

『すまんすまん…ちょっと面倒な職場でなぁ』

久しぶりの父の姿を見てモニターに駆け寄る遊嗣…そんな彼の姿を見た画面の向こうの遊海はバツが悪そうに頭を掻いていた…。

 

 

『遊嗣、ロマンとは仲良くやれてるか?』

 

「あっ…うん!ロマンのおかげで助けられてる!」

 

《大丈夫だよマスター、遊嗣とは上手くやれてるから》

 

『2人とも…そうか、ならよかった!』

遊嗣とロマンの相性を気に掛ける遊海…だが、遊嗣本人とデュエルディスクから顔を出したロマンの様子を見て安堵したらしい。

 

 

『そういえば…お母さんから聞いたぞ?気になる子ができたんだって?』

 

「っつつ!?!?ちょっと母さん!?」

 

「えへへ?」

 

「えへへじゃないよ!?まったくもうー!!」

そして翠経由で知った()()の事を遊嗣に聞く遊海…それを聞いた遊嗣は翠に向かって文句を言っていた。

 

画面越しではあるが…久しぶりの家族団欒がそこにはあった…。

 

 

 

「父さん、いつになったら帰って来れるの?」

 

『うーん…もうしばらくは掛かりそうだなぁ…お前の夏休み前には戻りたいんだが……』

遊嗣の問いかけに遊海は顔を曇らせる…どうやら、ずいぶん難しい仕事に取り組んでいるらしい…。

 

『……遊嗣、危ない事には首を突っ込むんじゃないぞ?お前は自分と母さん…お前が守りたいモノを守るだけでいい………何かあったらすぐに連絡……は厳しいな…すぐにその場を離れるんだ』

 

「大丈夫だよ、父さん…僕が慎重な性格なのは知ってるでしょ?上手くやるよ!」

 

『……そうか……強くなったな、遊嗣』

翠から事情を聞いたのか、息子の身を案じる遊海…そんな父に笑いかける遊嗣…その様子を見た遊海は穏やかに笑っていた…。

 

 

 

『遊海!電話中にすまない!』

 

『っ…()()か…すまない遊嗣!翠!また連絡する!』

 

「あっ…うん!頑張って!父さん!」

 

「遊海さん…頑張って!」

 

『──ああ、お前達の応援を受ければ──俺は元気100倍さ!』

そんな時、画面の向こうで赤いマフラーをした眼鏡の青年が遊海に声を掛ける、その言葉を聞いた遊海は家族に別れを告げて通話を終えた。

 

…その声援を力に変えて、世界の平和を脅かす『悪』に立ち向かう為に…。

 

 

 

 

「…まったく…父さんは本当に働き過ぎなんだよ……そのうち過労で倒れちゃうんじゃないの?」

 

「あはは…そうかもね!本当に、お父さんは頑張り屋さんだから…」

忙しい様子の遊海を見た遊嗣は少し呆れたように翠に問いかける…その言葉を聞いた翠は苦笑いしていたのだった…。

 

 

 

「そういえば…ユウ君、ずいぶん早く帰ってきたけど…どうしたの?」

 

「あっ…やばい!リンクヴレインズでマシュと会う約束してたんだ!ちょっと行ってきまーす!!」

 

《マシュからアバターのカスタマイズを手伝って欲しいって頼まれたんだ》

 

「そうなの…気をつけてねー………はっ!?女の子の買い物に付き合うって…!?」

 

《フォウ、フォーウ…(特別意訳:翠、ちょっと落ち着こうか…)》

用事を思い出した遊嗣とロマンは慌てて自室に飛び込む…そして翠は遊嗣とマシュの実質の()()()だと知って頬を赤らめたのだった…。

 

 

………

 

 

「マシュ!ごめん、待たせたかな?」

 

「いいえ!私も来たばっかりです!無理なお願いを聞いてくれてありがとうございます!……遊嗣さん…じゃなかった、Yu-Zさん以外に頼れる人がいなくて…」

 

「大丈夫だよ、しっかり案内するから!」

リンクヴレインズ内の繁華街エリア…遊嗣とマシュはそこで待ち合わせをしていた。

先日の事件でハノイの騎士の恐ろしさを知った遊嗣とマシュ…それを期にアバターの見た目を変えるアクセサリーを見繕う為にリンクヴレインズにやって来たのだ…。

 

なお、今のマシュは現実世界と同じ顔に初期装備のワンピースを着ている。

無料アクセサリーでもそれなりに見た目は変えられるが…リンクヴレインズ内のオフィシャルショップやサークルショップ等を利用する事でさらに見た目を変えたり、アカウントのセキュリティを上げる事ができるのだ。

 

 

「とりあえず、リンクヴレインズの公式ショップに行ってセキュリティアプリとアバター用の服とかアクセサリーを見てみよう!…まぁ、ハッカーのハノイの騎士にどれぐらい効果があるかは分からないけど…」

 

「はい!それでも、何もしないよりかは安心できますから!」

そうして2人はオフィシャルショップへと向かって行った…。

 

 

………

 

 

「Yu-Zさん、付き合ってくれてありがとうございます!」

 

「うん!僕もセキュリティアプリのアップデートができたし…マシュの新しい服も似合ってるよ!」

 

「は、はい…!ありがとうございます!」

 

《(……遊嗣って、無自覚な人たらしなのかな…?マシュとこんなにも早く打ち解けるなんて…翠が見たら騒いでそうだなぁ…)》

買い物をする事しばらく…セキュリティアプリのアップデートや買い物を終えた遊嗣達は夕暮れのリンクヴレインズを歩いていた…そして、マシュの服装は初期装備のワンピースから大きく変わっていた。

 

細い黒縁の眼鏡に黒いワイシャツと赤いネクタイ、その上からゆったりとした白と灰色のジャージを羽織り、足元は茶色のスカートと黒のタイツに厚底のブーツ…傍から見ると理系の研究者にも見える姿となった…。

 

なお、遊嗣の服装はまだ初期装備のスーツのままだった…ピンと来る服装に出会えなかったのだ。

 

 

「それにしても…本当にリンクヴレインズって広いですね…!日本の都市部を模したエリアにアメリカのラスベガスに似たエリア、ヨーロッパの街並みのエリア…他にもたくさんのエリアが広がって…ここがVR空間だって事を忘れてしまいそうです!」

 

「そうだね…リンクヴレインズを作る時にソリッドビジョンシステムやARビジョン最大手のKCとか、ハートランドシティの天才科学者、天城カイト博士なんかも協力したって聞いたよ」

 

「すごい…!だから、こんなにも精巧に世界が再現されているんですね…私、この街に来る事ができてよかったです!」

 

「うん!でも、本当にもったいないよね…リンクヴレインズにログインできるのがこの街に住んでる人だけって…早く世界の人達とデュエルしてみたいなぁ…」

リンクヴレインズの街並みを歩きながら遊嗣とマシュは雑談を続ける、現実世界と見紛うほどの世界が広がるリンクヴレインズ…その世界にアクセスできるのは現状、デンシティの住人かデンシティに通勤通学する人に限られていた…。

 

 

 

「そろそろ時間も時間だし、ログアウトしようか!明日も学校だし…買い忘れとかはない?」

 

「はい!今日はありがとうございました!また明日!」

時刻は間もなく夕食時、時間を確認した遊嗣達はリンクヴレインズから離れようとする…その時だった。

 

 

 

『見つけたぞ、リボルバー様の言っていたハノイの騎士の邪魔をする愚か者共め…』

 

「あっ…!!」

 

「っつ!?ハノイの騎士!!」

遊嗣達の目の前に突如として人影が現れる、それはリボルバーから遊嗣達の粛清を命じられたハノイの騎士だった…!

 

 

 

「(っ…やっぱり、ハッカーのハノイの騎士から逃げるのは難しかったか…!)マ…()()()!早くログアウトして逃げるんだ!!」

 

「っつ!?は、はい!!」

ハノイの騎士を前にした遊嗣は咄嗟にマシュに呼びかけログアウトを促す…だが…。

 

『逃さんぞ!』

 

「っ…デュエルアンカー…!?」

 

「Yu-Zさん!?」

遊嗣の腕に赤い光の縄…現実世界のアウトローやデュエルチェイサーズなどの特殊警察官の扱う拘束具が巻き付く!

 

 

《っ…Yu-Z、相手は本気らしい…このデッキを使うんだ!》

 

「ありがとうロマン…!」

事態を察知したロマンが遊嗣に新たなデッキを開放する!

 

 

 

『さぁ、デュエルだ!ハノイの騎士の恐ろしさを思い知るがいい!!』

 

「負ける訳にはいかない!デュエルだ!ハノイの騎士!!」

 

「っ…Yu-Zさん!気を付けて!!」

夕暮れのリンクヴレインズで遊嗣とハノイの騎士が衝突する!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

ハノイの騎士LP4000

遊嗣LP4000

 

 

『私の先攻!相手フィールドにモンスターが存在しない時、手札の「ハックワーム」は特殊召喚できる!』

身体に緑色の光が走る機械の芋虫が現れる! ATK400

 

『さらに2体目の「ハックワーム」を特殊召喚!』

 

「っ…また、『クラッキング・ドラゴン』を呼ぶつもりか…!?」

2体目の芋虫が現れ、遊嗣は先日のデュエルを思い出す…! ATK400

 

 

『そして2体の『ハックワーム』をリリース!現れろ!貪欲なる捕食生命体!『グリード・クエーサー』!!」

2体のワームが消え去り、腹部に巨大な口を持つ異形のエイリアンが現れる! ATK?→2100

 

 

『「グリード・クエーサー」の攻守の数値は自身のレベル✕300の数値となる!私はカードを2枚伏せ、ターンエンド!』

 

ハノイの騎士LP4000

グリードクエーサー 伏せ2 手札1

 

 

 

 

『(ククク…「グリードクエーサー」は戦闘破壊した相手のレベルを吸収し、自身のレベルと攻撃力を上げる事ができる…!さらに伏せカードは「収縮」と「万能地雷グレイモヤ」…)完璧な布陣だ!』

完璧な布陣を整えて遊嗣を迎え撃つハノイの騎士…一方、遊嗣達は…。

 

 

《Yu-Z、このデッキは少し特殊な動きをするデッキだ…でも大丈夫、あの程度の相手なら簡単に倒せるはずだよ》

 

「ありがとうロマン、やってみる…!」

ハノイの騎士に気付かれないように小さな声で声援を送るロマン、その応援を受けた遊嗣はハノイの騎士に立ち向かう…!

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「こういう感じか…!僕はモンスターを裏守備表示でセット!さらにフィールド魔法『星遺物に差す影』を発動!」

フィールド魔法が発動し、周囲が薄暗くなっていく…。

 

 

「『差す影』の効果発動!1ターンに1度、手札のレベル2以下の昆虫族モンスターを裏守備表示で特殊召喚できる!手札から『クローラー・アクソン』をセット!カードを1枚セットして、ターンエンド!」

 

『……なんだと?』

 

遊嗣LP4000

伏せモンスター 伏せモンスター(アクソン) 差す影 伏せ1 手札2

 

 

 

『どうやらずいぶんと手札が悪いらしいな?それともただの臆病者か……どちらにしても、叩き潰してやる!』

カードを伏せてばかりの遊嗣のプレイングを挑発と受け取ったのか…ハノイの騎士は遊嗣に攻勢を仕掛ける!

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『良いカードだ!魔法カード「シールドクラッシュ」を発動!その効果で相手フィールドの守備表示モンスター1体を破壊する!お前が2枚目に伏せたモンスターを破壊だ!』

 

「っ…なら!永続罠『星遺物の傀儡』を発動!このカードは1ターンに1度、自分フィールドの裏守備モンスター1体を表側攻撃表示か、表側守備表示に変更する!裏守備の『クローラー・アクソン』を表側守備表示に変更!!」

 

『はっ…どちらにしても守備表示なら「シールドクラッシュ」で破壊だぁ!』

ハノイの騎士の発動した魔法カードに対して遊嗣は二足歩行の機怪蟲をリバースさせるが…防御を撃ち抜く光線に粉砕されてしまう…。 DEF1800→2100

 

 

「この瞬間、相手の効果によってフィールドを離れた『クローラー・アクソン』の効果発動!表側表示のこのモンスターがフィールドを離れた時、デッキから同名モンスター以外の『クローラー』モンスター2体を裏守備表示で特殊召喚する!僕は『クローラー・グリア』と『クローラー・ソゥマ』をセット!」

 

『破壊したのに増えやがった…!?』

破壊されたアクソンの破片が新たな機怪蟲の呼び水となり、新たなモンスターがセットされる…!

 

 

 

『な、なら!バトルだ!「グリード・クエーサー」でお前が最初に伏せたモンスターを攻撃!喰らい尽くせ!プレデター・バイト!!』

遊嗣の思わぬ反撃に怯んだハノイの騎士が攻撃を仕掛ける…だが、単眼に赤い光を灯した刃のような脚を持つ機怪蟲がエイリアンの牙を受け止めた!

 

クローラー・スパイン DEF2100→2400

 

『なにっ!?』

 

「セットされていたのは『クローラー・スパイン』!!『星遺物に差す影』の効果を受けたこのモンスターの守備力はお前のモンスターの攻撃力より高くなる!弾き返せ!」

 

『っう!?おのれ…!』

機怪蟲がエイリアンを弾き飛ばす!

 

ハノイの騎士LP4000→3700

 

 

 

「さらに!『スパイン』のリバース効果発動!相手モンスター1体を破壊する!『グリードクエーサー』を破壊!」

 

『なんだと!?』

さらに、エイリアンに肉薄した機怪蟲がその体を細切れに斬り裂いた!

 

 

『くそっ…!私はこれでターンエンドだ!』

 

ハノイの騎士LP3700 伏せ2 手札0

 

 

 

「すごい…!相手に倒されても即座に新たなモンスターが現れ…相手の攻撃によって効果が発動する…これが『クローラー』の戦い方…!」

 

『っ…だが、守ってばかりでは私には勝てないぞ…!すぐに逆転してやる…!!』

 

「ハノイの騎士…これ以上、お前達の好きにはさせない!!」

見事にハノイの騎士に対抗する遊嗣のプレイングに引き込まれるマシュ…その声を聞きながら、遊嗣が攻勢に出る!

 

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「僕は『クローラー・グリア』を反転召喚!」

遊嗣の場に翅を持つアブラムシのような機怪蟲が現れる! ATK500→800

 

「『グリア』のリバース効果発動!墓地の『アクソン』を裏守備表示で特殊召喚!さらに永続罠『星遺物の傀儡』の効果発動!裏守備表示の『アクソン』の表示形式を表側攻撃表示に変更!!」

二足歩行の機怪蟲が現れる! ATK500→800

 

「そして『アクソン』のリバース効果発動!相手の魔法・罠カード1枚を破壊できる!左側のカードを破壊!」

 

『くそっ、「収縮」が…!』

アクソンの単眼から飛び出した光線が伏せカードを焼き尽くした!

 

 

『だが、お前のモンスターの攻撃力は低い…!まだ立て直せる!!』

 

「まだだ!現れろ!希望を繋ぐサーキット!!」

そして遊嗣はその手に宿した光を解き放ち、空中に魔法陣が刻まれる!

 

「召喚条件は『クローラー』モンスター2体!!僕は『スパイン』と『アクソン』でリンクマーカーをセッティング!リンク召喚!来い!LINK-2!『エクスクローラー・クオリアーク』!!」

魔法陣の中から赤い単眼を輝かせる、大型の機怪蟲が現れる! ATK2000→2300↙↘

 

 

『攻撃力2300…!(だが、伏せカードは『万能地雷グレイモヤ』…!まだ耐えられる!)』

 

「さらに僕は『クローラー・ソゥマ』を反転召喚!」

青い単眼を持つ、人型に近い機怪蟲が現れる! ATK2000→2300

 

「『ソゥマ』の効果発動!自身のレベルを2つ下げて、そのレベルと同じ『クローラー』を手札・デッキ・墓地から特殊召喚できる!僕は墓地の『スパイン』を特殊召喚!」

刃のような脚を持つ機怪蟲が復活する! ATK500→800

ソゥマ☆6→4

 

「そして『クオリアーク』は自分の場の『クローラー』の数によって効果を得る!フィールドの『クローラー』は4体、それによって2体以上の効果!僕のフィールドのモンスターの攻撃力・守備力は300アップ!さらに4体以上の効果によってバトルフェイズの間、相手の効果の発動を封じる!」

 

『なんだと!?』

クオリアークからエネルギーの供給を受けた機怪蟲達が活性化する!

 

 

クオリアークATK2300→2600

 

ソゥマATK2300→2600

 

スパインATK800→1100

 

グリアATK800→1100

 

 

「バトルだ!『ソゥマ』と『クオリアーク』でハノイの騎士にダイレクトアタック!!」

 

『ぐはああああ!?』

クオリアークの熱線とソゥマの一閃がハノイの騎士を直撃、ハノイの騎士を撃退した!

 

 

 

 

 

ハノイの騎士LP3700→1100→0

 

 

遊嗣WIN!

 

 

 

 

 

ピコン!

 

 

《遊嗣!ナイスデュエル!デュエルアンカーを通じて奴のIPアドレスは確保した!》

 

「ありがとうロマン…!ハノイの騎士!僕は、リンクヴレインズの平和を乱すお前達を許さない!」

 

『くっ、くっそぉ!!』

遊嗣によって倒されたハノイの騎士は慌ててログアウトして逃走した…。

 

 

 

 

 

「遊嗣さん!大丈夫ですか!?」

 

「うん!相手が手練れじゃなくてよかったよ…でも、また()()()()こなかったなぁ…」

 

「えっ…?しっくり?……収まりが悪い、という意味ですか?」

 

「うん…」

デュエルが終わり、マシュが遊嗣に駆け寄る、遊嗣は大きなダメージを受ける事はなかったが…遊嗣はうんざりした表情で右手を見ていた…。

 

 

 

「実はさ…僕、自分の()()()()()とか、()()()()()()()()()()を見つけられてないんだ……デッキは普通に回せるんだけどね…『これだ!』っていうカードと出会えてないんだ…」

 

「フェイバリットカードがない…珍しいですね…」

 

《Yu-Zの父上…マスターもそれを気にしていてね、Yu-Zが自分の一枚を見つけられるように…折を見て色々なデッキを渡しているんだ》

 

「そうだったんですか…」

それは遊嗣の抱え続ける悩み…「魂のカード」に出会えない──それはデュエリストにとって、一番辛い悩みだった…。

 

 

「まぁ、僕の悩みはいいや!とりあえずログアウトしよう!他のハノイの騎士とか野次馬が集まってくる前に!」

 

「はい!」

右手を払った遊嗣はマシュと共にリンクヴレインズからログアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【………正体は掴めなかったか…だが、その顔は覚えたぞ…Yu-Z】

 

近くの屋根の上から一部始終を見ていた赤髪のバイザーの男に気付かないまま…。

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

「ふはぁ…疲れた〜…まさか、ハノイの騎士と遭遇するなんて…」

 

(お疲れ様、遊嗣…念の為に痕跡は消したけど……これからも用心した方がいいね、少なくともマスターが戻るまでは…)

 

「そうだね…」

無事にリンクヴレインズからログアウトした遊嗣はベッドから起き上がる…その顔には疲れの色が見えた…。

 

 

《フォウ、フォーウ!》

 

「あっ、フォウ!待っててくれたの?ありがとな〜モフモフ〜…」

 

《フォウ〜♪》

そんな遊嗣にフォウが優しく擦り寄る…遊嗣はそんなフォウを抱き上げ、優しくその毛並みを堪能する…。

 

 

ピロン♪

 

「ん?誰からだろ?」

そんな時、デュエルディスクのメッセージアプリが着信を知らせる…それはマシュからのメッセージだった。

 

 

 

『今日は買い物に付き合っていただきありがとうございます!また、ハノイの騎士とのデュエルを任せてしまってごめんなさい…私も自分のデュエリストとしての実力が低い事を痛感しています』

 

 

「マシュ…気にする事ないのに……でも、マシュも自衛できた方が良いよな…そうだ!」

 

『今日の事はあまり気にしないでいいよ、マシュが無事で良かった!それで提案なんだけど…ハイスクールにデュエル部っていう部活があるんだけど、一緒に見学に行ってみない?』

 

「送信っと」

遊嗣はマシュのメッセージを読み、ちょっとした提案を書いたメッセージを送る…そして───

 

 

ピロン♪

 

 

『デュエル部があるんですね!私も興味があります!案内、よろしくお願いします!』

 

「『了解!また明日!』送信……そういえば、マシュってどんなデッキを使うんだろう?」

 

「遊嗣〜!ご飯できたよ〜!」

 

「は〜い!フォウ、ご飯だって!行こう!」

 

《フォウ!》

マシュへの返信を終えた遊嗣に翠が声をかける、それを聞いた遊嗣はフォウと共にダイニングへと向かう…その胸にぽかぽかとした暖かさを感じながら…。

 



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遊作とアイドルとニアミス〜ハノイの毒牙〜

こんにちは!S,Kです!

襲い来るハノイの騎士を退けた遊嗣…しかし、ハノイの騎士は目的を果たす為、その毒牙を伸ばしていた…。

それでは、最新話をどうぞ!


「ん〜…やっぱり無理だ!あり得ない!想像できない!」

 

「どうしたんだ?草薙さん」

閉店後のキッチンカー「cafe Nagi」…そのハッキングルームに店主でありハッカーの草薙の悩んだような声が響く、その様子を見た遊作は何事かと問いかけた。

 

 

「これを見ろ、彼女は財前葵…16歳の女の子で、カリスマデュエリスト『ブルーエンジェル』の正体だ」

 

「彼女がブルーエンジェルか…」

草薙が一枚の画像データを遊作に見せる、そこには茶色がかった髪色の少女が写っていた。

 

 

「彼女はSOLテクノロジー社のセキュリティ部長、財前晃の義妹なんだが……何か気付かないか?」

 

「……何か………この制服は…!?」

 

「気付くの遅いな!?…ああ、財前葵はお前と同じデンシティハイスクールの生徒だったんだよ」

 

《へぇ〜!灯台もと暗し、って奴だな?》

草薙に促されて葵の写真を観察する遊作は既視感のある制服に気付く、彼女は遊作の同級生だったのだ。

なお、しれっとAiも遊作達の会話に混じっていたりする。

 

 

「そこで、だ…遊作が彼女と顔見知りになれば義兄の財前晃からお前の失われた記憶や、俺の弟の情報が得られると考えたんだが……やっぱりありえない!」

 

《どうしてだ?》

 

「……どうしてって、遊作だぞ?遊作が女の子と話してる場面を想像できるか?()()()()()だろ?」

 

《……確かに!想像しろって事自体が無茶な話だな!》

 

「(ムスッ)」

財前葵と顔見知りになる作戦…その一番の難題は遊作のコミュ力にあった。

基本的に人との関わりを避け、言葉数も少ない遊作…そんな彼が女子と話している姿は草薙もAiも想像できなかったのだ。

なお、そんな2人の様子を見た遊作は心なしか不服そうな顔をしている…。

 

 

 

 

「遊作、すまないがこの作戦はボツだ!流石に、無茶にも程が───」

 

()()()

 

「《へっ…?》」

笑いを堪えていた草薙とAiだったが…遊作の思わぬ言葉に目が点になった。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

《…ありえたなお前……こういうのに興味あったのか?》

 

「ない、だが…情報を得る為には仕方ない」

翌日、放課後…校舎の出入り口近くに腰掛けた遊作はAiによる画像認証を使って財前葵を捜索していた…なお、予想外の事にAiも引き気味である。

 

《にしても…ガッコって所はアレだな、同じ格好の奴らがうじゃうじゃしてて…誰が誰だか…》

 

「さっさと探せ、服装じゃなくて顔に対象を絞れ」

 

《ヘイヘイ…AI使いが荒い事で……》

遊作に急かされながらAiは周囲を確認していく、数十…数百人の生徒達を確認していく事数分…ついに…。

 

 

《ビンゴ!見っけ!》

 

「よし、後を追うぞ」

Aiが足早に移動する財前葵の姿を発見…遊作は静かに彼女を追いかけた…。

 

 

 

 

《パーツを総合すると…人間の感覚で美人の部類か?》

 

「黙って様子を見てろ…話かけるタイミングを探れ」

追いかける事しばらく…葵は校舎の別棟へと足を踏み入れる、静かにそれを追っていた遊作だが…彼女は教室の1つへと入っていった…。

 

 

「この部屋は…『DUEL CLUB』……デュエル部?」

遊作は彼女の入っていった部屋を確認する、その部屋はデンシティハイスクール・デュエル部の部室だった。

 

 

 

「あれっ?…藤木君?」

 

「あっ、本当だ!お〜い!藤木〜!」

 

「ん…?!」

その時、廊下の奥から彼の名を呼ぶ声が響く…そこにいたのは…島某、そして同じクラスの白波、そして転校生のマシュだった…。

 

 

 

 

「お前…誰だっけ?」

 

「んなっ!?いい加減名前ぐらい覚えてくれよ!?島だよ!島直樹!!まったく、顔覚えるの苦手なのか?というか、お前もデュエル部に入部しに来たのか?デュエルディスクまでつけっぱで…」

 

「オレが、デュエル部に…?(そうか、ここは部室…!これみよがしにいたら…)」

島とお決まりのやり取りをした後に遊作はミスに気付く、デュエルディスクをつけた状態でデュエル部の部室の前にいれば…入部希望と勘違いされても仕方ない状況だったのだ。

 

 

「奇遇だね藤木君!…あっ、僕は白波遊嗣!転校生のマシュさんがデュエルが強くなりたいっていうから、一緒に見学に来たんだ!」

 

「改めてこんにちは!マシュ・キリエライトです!えっと…藤木さん?」

 

「……藤木遊作だ……別にオレは入部し──」

 

『誰だい?廊下で騒いでいるのは?……ああ、島君か?ずいぶん騒がしいけど、何事かな?』

 

「わっ、部長!?」

廊下で自己紹介をしていた遊作達…その時、部室の扉が開いて七三分けに角眼鏡というガリ勉スタイルの青年──デュエル部部長の細田が顔を出した…。

 

 

「部長!入部希望者3()()を連れて来ました!」

 

『おお!本当かい?入部希望者は大歓迎だ!さぁ入って!』

 

「「お邪魔します!」」

 

「あ、いやオレは──《はい!ありがとうございます!》お前っ!?」

 

《フン!こき使ってくれた仕返しさ!》

うっかり入部希望者にカウントされてしまった遊作は慌てて取り消そうとしたが…なんと、Aiが合成音声で遊作の声を模倣…成り行きで遊作は部室に引き込まれてしまった…。

 

 

 

 

「1年の白波遊嗣です!」

 

「マシュ・キリエライトです!」

 

「…藤木遊作です」

 

『うんうん、それじゃ部員達を紹介するよ!僕は三年の細田、あとは……』

部員達の前で自己紹介をする遊作達…他の部員達は赤髪の背の低い少年や大柄な細目の青年、茶髪の軽そうな少年…そして財前葵という少人数の部活だった。

 

無理もない話だが…プロデュエリストを目指したり、デュエルが本当に好きな者はデュエルアカデミアへと入学する…それ以外の学生にとってのデュエル部は娯楽…嗜むレベルでデュエルが好きな人々が集まる部活なのだ。

 

 

 

「キミ達、新型のデュエルディスクを見てみるかい?」

 

「あっ、島君と同じ奴!っていうか…デュエル部の皆さんも新型ディスクなんですね?」

 

『ああ、財前君のお兄さんがSOLテクノロジーの重役でね!彼女がデュエル部に入ると知って優先的に回してくれたんだ…本当にありがとうね』

 

『いえ…兄は少し過保護なので…』

遊作達に新型ディスクを見せる部員達…やはり、SOLテクノロジーの影響はずいぶん大きいらしい。

 

 

「ところで…白波のデュエルディスクって普通のじゃないよな?カスタマイズ品か?」

 

「ん?ああ、凌にい…兄さんの知り合いにすごい科学者の人がいて…カード収納式とリンクヴレインズのデータデッキ対応、ソリッドビジョン・ARビジョン・リアルソリッドビジョンにも対応して…スマホ機能もある万能タイプなんです!」

 

「「『へぇ〜…!』」」

 

「すげーカスタマイズだな…!」

 

「(その上、自由度の高いAIがいます…とは、言えないよね…)」

島の問いかけに遊嗣が自分のデュエルディスクを見せる。

 

……実は、遊嗣のデュエルディスクはKCと天城カイトに加え、ARC次元の技術が詰め込まれたワンオフ品…彼が本当の価値を知るのはもうしばらく先の事になるだろう…。

 

 

 

 

Side???

 

 

《よっ!新人!元気にやってるか?》

 

《こんにちは》

 

《そうそう、挨拶は大事だぞ?》

 

《おっしゃる意味がわかりません、意味不明です》

 

《なんだよ〜愛想のない奴だな~?》

部員達が自己紹介やデュエルディスク談義に花を咲かせる中、遊作のデュエルディスクから顔(?)を出したAiは葵のデュエルディスクのAIに話しかける…だが、彼ほど自由度のない新型AIはそこまで語彙を持っていない。

 

 

《よし…じゃあ…おっす!元気か?》

 

《……はじめまして!キミこそ元気かい?》

 

《おおっ!?マトモな反応が返ってきた!流石ワンオフ品だな!》

Aiは続いて()()()()()()()()()()()に話しかける…そして思わぬほど明瞭な反応が返ってきて少し驚いている。

 

 

《オレはAiって呼ばれるんだ!よろしくな?》

 

《…ボクはロマンと呼ばれているよ、良い名前だろう?》

 

「ん?」

 

《あ、やべっ!?》

遊嗣のデュエルディスクに搭載されたAIと雑談するAi…だが、物音に気付いた葵に目を向けられた事で慌てて引っ込んだ…!

 

 

 

 

 

 

 

《(………ん?普通に会話が成り立ったぞ?ずいぶん高度なアルゴリズムだな…)》

 

《(びっくりした〜!あちらから話しかけられるとは思ってなかった…気づかれたかな…?)》

 

お互いにニアミスするAI達なのだった。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

『カード収納式デュエルディスク…貴方のデュエルディスク、プレイメーカーと同じなのね?』

 

「……ああ」

 

「そうなんだよ!コイツ、プレイメーカーの真似してるのか旧型使ってるんだ!…というか、なんでプレイメーカーは時代遅れな旧型使ってるんだろうな〜?新型手に入らないのかぁ?」

 

「……きっと、デッキに愛着があるんじゃないかな?紙のカードにはカードの精霊が宿る事もあるし、きっと…プレイメーカーはカードを大切にしてるんだよ」

 

「カードの精霊〜?白波、お前もオカルト信じてるのかよ〜?」

 

「オカルトでもないよ?現に『覇王龍の乱』は精霊達の怒りが噴き出した事件って説もあるし…僕は精霊は()()って信じてるよ」

 

「遊嗣さん…」

遊作のデュエルディスクが旧型…プレイメーカーが使うモノと同型である事に気付く葵…そこから島の旧型貶しが始まったが、遊嗣が静かにそれを宥める、大事そうに自身のデュエルディスクを撫でながら…。

 

 

 

『白波君はロマンチストなのね…藤木君、良かったらデッキも見せてくれないかしら?』

 

「えっ…」

 

『財前さん!?流石にそれは失礼だよ!デッキはデュエリストの魂なんだから…』

 

「いや、いいよ…見なよ」

 

『……ありがとう』

葵の無茶なお願いを聞いた部長が流石に彼女を窘める…だが、遊作は事もなげにデッキを手渡した。

 

 

『これ!?……ありがとう』

 

「ちょっと拝見!…ぷっ…ははは!なんだよこのデッキ!?小学生みたいなお粗末──「島君…!人のデッキを貶すのはマナー違反だよ!」白波っ?!」

 

「白波…お前…」

遊作のデッキを受け取った葵は数瞬困惑した後、遊作にデッキを返そうとする…だが、そのデッキを横から掠めた島はデッキを見て笑い声を上げた…遊作のデッキが小学生の使うような統一性のないデッキだったからだ…。

 

しかし、それを聞いた遊嗣が思わず島の手首を掴んで声を荒らげた…それは、普段の穏やかな彼からは想像できないほどの剣幕だった…。

 

 

 

「デュエリストにとって、デッキは『魂』そのもの…!自分の好きなカードを集めて戦う、それがデュエルモンスターズなんだ…!デュエルモンスターズには、不要なカードも…笑われるようなカードもない!1枚1枚がチグハグでも、力を合わせれば思わぬ力を発揮する事だってある!そんなデッキを笑うような人は…デュエリストの風上にも置けないよ…!!」

 

「ひえっ…!?」

 

『…白波君、今回はキミの意見が正しい…でも、少し興奮し過ぎだよ?落ち着きなさい』

 

「っ…あ…ご、ごめん島君!!つい熱くなっちゃって…」

 

「あ、や…白波って、意外と熱いタイプだったんだな…!?俺こそごめん、流石に言い過ぎた…」

静かに…しかし強い剣幕で島を注意する遊嗣、その圧力に気圧されながらも部長が2人を宥める。

そして冷静さを取り戻した島と遊嗣はお互いに頭を下げた…。

 

 

「…藤木も悪かったな…デッキ返すよ」

 

「いいや、デッキを組むのが少し苦手でな…次はもう少しマシなデッキを組むよ」

 

「藤木君、デッキ構築の時は相談乗るからね!」

 

「…ああ、ありがとう白波」

そして、島は遊作に謝罪しながらデッキを手渡す…が、遊作自身はそこまで傷ついてはいなかった。

 

 

 

…………

 

 

 

『では…改めて、ミーティングを始めようか!今日はデュエルのルールのおさらいから!今、世界には大まかに3種類の基本ルールが存在していて、先日から新たなデュエルルールであるスピードデュエルが──』

 

 

《おい、お粗末ちゃん!()()()()()()を用意しておいて良かったな?》

 

「…黙ってろ」

そして、部長によるデュエルモンスターズのルールに関する講義が始まる中、遊作はAiを窘める…遊作は直前までプレイメーカーとしての『サイバース』デッキを入れっぱなしだったのだ…。

 

《それからよ…あの白波って奴と仲良くした方がいいかもな?案外、気が合うと思うぜ?》

 

「………」

Aiの言葉を聞いた遊作は真剣に部長の講義を聞いている遊嗣に目を向ける…彼の抱くデュエルへのまっすぐな想いを眩しく思いながら…。

 

 

 

 

 

 

Side遊嗣

 

 

 

「マシュ、どうだった?デュエル部の体験入部!」

 

「はい!部員の皆さんも優しい方ばかりで…本格的に入部してみようと思います!」

 

「そっか…!なら、僕も入るよ!マシュを誘ったのは僕だしね!」

時間は流れて夕暮れ時、デュエル部への体験入部を終えた遊嗣とマシュはのんびりと通学路を歩いていた…デュエル部の掴みは良かったらしく、マシュも遊嗣もデュエル部への入部を決めたらしい。

 

 

「でも…意外でした…遊嗣さんもあんな顔をするんですね?」

 

「あっ……ごめんね、怖がらせて…僕の兄さんがそういう事に厳しい人でさ…20歳年上で、プロデュエリストなんだ」

 

「あっ…!そうなんですか!?」

遊嗣の思わぬ告白にマシュが驚く…デュエルモンスターズ隆盛のこの世界でプロデュエリストの家族というのはそれだけで憧れの対象になるのだ。

 

 

「その兄さんがさ…ずっと口を酸っぱくして言ってたんだ…『絶対に他人のデッキを馬鹿にするな』『デュエルはデュエリスト同士の思いのぶつけ合いだ、それだけは忘れるな』って…」

 

「わぁ…!素敵なお兄さんですね!でも、プロデュエリストで白波さんって人は……」

 

「ああ、普段はリングネームで戦ってるから…義理の兄だからそんなに顔も似てないし」

 

「そうなんですか…(遊嗣さんの家も複雑なんですね…)」

大切な家族から教えられた約束を口にする遊嗣…その姿を見ながらマシュは微笑んでいたが、少し複雑そうな遊嗣の家族関係に考え込んでいた…。

 

 

 

『ハァイ!みんな〜!私が来たよ〜!!』

 

 

「あっ…ブルーエンジェル!」

 

「本当だ…またアポ無しデュエルするのかな?」

そして2人がデンシティのメイン広場に差し掛かった時、明るい声が響く…そこにはDボードを乗りこなすリンクヴレインズのアイドル、ブルーエンジェルの姿があった…!

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

『ハーイ!私が来たよ〜!そこの貴方も!そこのキミも注目──!』

 

「いきなりだな…」

同・デンシティのメイン広場、キッチンカー・cafe Nagiを訪れていた遊作はブルーエンジェルの声にモニターに目を向ける…。

 

 

『私、ブルーエンジェルはプレイメーカーとデュエルして…必ず勝つ事をここに宣言しまーす!!』

 

「──なんだと?」

それはブルーエンジェルからプレイメーカーに向けた挑戦状であり、勝利宣言だった。

ブルーエンジェル…財前葵がプレイメーカーとのデュエルを望む理由はただ1つ、プレイメーカーに勝利する事で兄である財前晃に()()()()()()…ただそれだけである。

 

 

『出てこーい!プレイメーカー!カモーン!!見てるのは分かってるのよ?私の挑戦を受けてもらうわ!!』

 

「……あの姉ちゃん、何を熱くなってんだ??」

だが、そんな思いを知らない草薙は彼女の焦りに気付く…葵は明らかに()()()していた…。

 

 

《………遊作、相手してやったら?》

 

断る!

一方、デュエル部での彼女の様子とのギャップに少し引きながら、Aiが遊作に声を掛けたが…遊作はすっぱりとその言葉を切り捨てた。

 

 

「1つ、オレが財前葵に近づいたのは失われた記憶の手掛かりを得る為!2つ、オレが戦うのはハノイの騎士だけだ!3つ、彼女はハノイじゃない!……よって、オレに彼女とデュエルする理由はない」

 

《でもよ〜?あんなに頑張って呼んでるのにでていかなかったら…腰抜けって笑われちまうぜ?》

 

「言いたい奴には言わせておけ…」

遊作は口癖である3つの言葉で彼女と戦わない理由を説明する…この日、プレイメーカーが姿を現す事はなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ご機嫌よう、リンクヴレインズのアイドル…ブルーエンジェル…!】

そしてこの日、天使にハノイの毒牙が喰い込んだ。

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜」

 

「ユウ君おかえりなさい!デュエル部の見学はどうだった?」

 

「うん!良さそうな部活だったから、マシュと一緒に入る事にした!だから…時々帰りが遅くなると思う」

 

「ふふっ、わかったわ!(遊嗣も嬉しそう…マシュちゃんとも上手くいってるみたいね♪)」

マシュと別れて帰宅した遊嗣…彼からデュエル部入部の報告を聞いた翠は嬉しそうに微笑んでいた…。 

 

 

 

『さぁ!本日のプロリーグの注目デュエルは〜!決闘王、()()()()選手対イギリスリーグからの刺客、湖の騎士ことランスロー選手の一戦!強力なランスロー選手のデッキに怯む事なく、凌牙選手が王者の風格を見せつけました!前決闘王、九十九遊馬選手の好敵手として──』

 

 

「あっ…!凌兄だ!やっぱりかっこいいなぁ…」

 

「ふふふ〜…私は生中継で見ちゃったもんね〜!」

 

「ああ!?母さんずる〜い!!」

 

「専業主婦の特権よ〜!」

 

《フォウ、フォ〜ウ…(特別意訳:翠、大人げないって…)》

そんな時テレビのニュースがプロリーグのデュエルダイジェストを放送する、そこには…遊馬から決闘王の座を受け継いで活躍する凌牙の姿があった。

その様子を見た遊嗣は目を輝かせ…生中継でデュエルを見ていた翠は得意気に笑っている。

 

なお、前決闘王であった遊馬が決闘王の座を降りた理由は──『冒険にいく時間が欲しい!』という理由だったりする。

 

それを目の前で聞いた凌牙やアストラル、カイトが(遊海も)頭を抱えたのは言うまでもない。

 

 

 

 

「プロデュエリストは無理かもしれないけど…凌兄みたいなデュエリストになりたいな〜」

 

《遊嗣なら…きっとなれるよ!ボクが保証する!》

 

「ははっ…ありがとう、ロマン!」

決闘者として最前線で戦い続ける凌牙に憧れる遊嗣…そんな姿を見たロマンは優しく笑っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《あ〜あ〜…こりゃ予想以上だな…》

 

「何がだ?」

 

《お前…めっちゃネットで叩かれまくってるぜ?》

翌朝、学校に向かう遊作にAiが呆れた様子で話しかける、Aiは昨日のブルーエンジェルの宣戦布告にプレイメーカーが現れなかった事についてネットで調べていたのだが──

 

『プレイメーカーはチキン野郎だ!』『挑戦を受けないのが残念』『ブルーエンジェルカワヨス』『クリボー大明神』『スルーは可哀想』『誰だ今の!?』『プレイメーカー絶許』

 

などなど…ブルーエンジェルの挑戦を受けなかった事への誹謗中傷に溢れていた…。

 

 

「わざわざ読み上げるな…」

 

《あらら?実は気にしてる?傷付いちゃってる〜??》

 

「黙れ、あいつが来た」

ネットのスレッドを読み上げながら遊作をからかうAi…そんな時、葵が学校に向かう遊作へと話しかけてきた…。

 

 

『藤木、遊作君だったわね…おはよう』

 

「あ、ああ…おはよう、どうしたんだ?」

 

『ちょっと貴方に聞きたい事があって…歩きながら話しましょう』

遊作に用があるらしい葵は彼と共に歩き出した…。

 

 

《よっ!新人!元気でやってるか?》

 

《なによ!馴れ馴れしく話しかけないで!》

 

《ん〜…!?(なんだ?何か変…この()()…まさか…!)》

一方、Aiは葵のデュエルディスクのAIに話しかけたのだが…そのデュエルディスクから異変を感じ取っていた…。

 

 

 

 

『ねぇ、どうしてデュエル部に入ろうと思ったの?…デュエルが好きだから、ってありきたりな理由じゃないでしょ?』

 

「……まぁ、()()()()だな…デュエルは好きでも嫌いでもない」

 

「…そう、意外ね」

葵にデュエル部に入った理由を問われた遊作は正直に答える、彼はデュエル部に入るつもりはなかった…葵に近づく為に入らざるを得なかったのだ。

 

 

「そういえば……昨日、部長が言っていたあんたの兄さんの話なん『っ…やっぱり、あなたもなのね』えっ…」

そして、話の流れで彼女の兄である財前晃について探ろうとする遊作…だが、葵はその話題に過剰に反応した。

 

『新型ディスクが優先的にもらえないか、とか…リンクヴレインズの情報を教えてくれないか、とか…私に近づく人間はそんな人ばっかり…!でも、諦めて…私は兄さんに信用されてないの…!』

 

「あっ、おい…」

遊作の思いを勘違いした葵は足早に遊作から離れていった…。

 

 

 

 

 

《なぁ、遊作ちょっといいか?》

 

「黙れ、お前と話す気分じゃない」

 

《ちょっと待てって!大事な話だ!》

 

「っ…声がデカいぞ!」

その時、Aiが遊作に話しかける…遊作はいつもの雑談かと無視しようしたが…Aiの剣幕にデュエルディスクに顔を近づける…。

 

 

《……ハノイの騎士が現れた!》

 

「なんだって…!?」

それは…遊作達の仇敵の出現を知らせるモノだった…!

 

 

 

 

…………

 

 

 

「おい、この座標で合ってるのか?」

 

《ああ、座標はここで間違いない…いや、合ってるよ》

授業を抜け出した遊作はデュエル部の部室からリンクヴレインズにログイン、Aiの示したハノイの騎士の出現位置に急行した…しかし、そこにいたのは────

 

 

 

『やっと覚悟を決めたのね?』

 

「…ブルーエンジェル?」

見慣れたハノイの騎士のアバターではなく、青髪のツインテールに背中から白い天使の羽をアクセサリーにした少女…カリスマデュエリスト・ブルーエンジェルその人だった…。

 

 

「覚悟…なんの話だ?」

 

『とぼけないで、貴方が私を呼び出したんでしょ?「今なら相手になってやる」ってメールを送ってまで…!』

 

「オレはそんなメール……っ、Ai!お前の仕業か!?」

 

《イエス!》

ブルーエンジェルの言葉を聞いて困惑する遊作…実はAiが勝手にメッセージを送って彼女を呼び出していたのだ。

 

 

「お前…オレを騙したのか?オレはハノイの騎士が出たと言うから来たんだ」

 

《何言ってんだ、騙してなんかないさ……ハノイの騎士は目の前にいるぜ》

 

「なにっ…!?」

 

《ブルーエンジェル、財前葵のデッキからハノイの()()がした…すぐに言おうとしたけど聞いてくれないからさぁ…》

Aiの行動の真意を問う遊作、その答えは…ブルーエンジェルの異変だった…!

 

 

「だが、何故彼女がハノイの騎士に…!?」

 

《さぁな…案外、お前を釣る為のエサに使われたのかもな?》

 

「エサだと…!」

 

《あのお姉ちゃんの背後には()()()()()()()がいるかもしれない…どうする?プレイメーカー…ハノイの騎士は全員倒すんだろ?》

 

「……彼女の真意は分からないが、ハノイのプログラムは危険だ…!ブルーエンジェルと戦って真偽を探る!」

 

《そうこなくっちゃ!》

ハノイの騎士の力を得ているブルーエンジェル…彼女を止める為、遊作はDボードでデータストームに乗り込んだ!

 

 

 

『さぁ、いくわよ!!』

 

 

「『スピード・デュエル!!』」

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト プレイメーカー対ブルーエンジェル

 

 

 

 

ブルーエンジェルが操るのは天使族の女性モンスターで構成された『トリックスター』デッキ…そのデッキの特色はモンスター効果や魔法・罠カードを絡めた効果ダメージ『バーン』に特化したデッキである事。

 

元来、この世界においてはバーンデッキ・バーン戦術は嫌われ、卑怯と思われる傾向にあった…しかし、彼女はその逆境を跳ね返し…バーンデッキの新たな戦い方を切り開いてきたのだ。

 

その戦い方はまさに『蝶のように舞い、蜂のように刺す』を体現するスタイル…バーン効果を持つ『トリックスター』モンスターとそのダメージを強化するフィールド魔法『トリックスター・ライトステージ』を使い、相手を追い詰めていく…それは遊作をして『効率的な攻め方』と言わしめる…。

 

 

しかし、遊作も負けてはいない…サイバースデッキが得意とする連続リンク召喚によってエースモンスター『デコード・トーカー』を喚び出してブルーエンジェルのエースモンスター『トリックスター・ホーリーエンジェル』へと攻撃を仕掛ける。

 

だが、相手もまたカリスマデュエリスト…エースモンスターを守る為に罠カード『トリックスター・リンカーネーション』と『トリックスター・マンジュシカ』のコンボを発動、遊作の手札を入れ替えさせた上で『マンジュシカ』と『ライトステージ』の効果でダメージを与え…さらに『ホーリーエンジェル』の攻撃力を強化する。

遊作は速攻魔法『セキュリティ・ブロック』の効果によってダメージと戦闘破壊を逃れようとしたが…ブルーエンジェルの罠カード『トリックスター・スキャッター』によって『デコードトーカー』は破壊され、遊作も少なくないダメージを受けてしまった…。

 

 

 

「Ai、気付いているか?…ハノイの匂いが強くなってきた…!」

 

《ああ…ちょっとヤバそうだ…!》

そして遊作とAiは強くなっていくハノイの匂いを感じ取っていた…!

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!っう…!?』

 

ドクン…

 

「っ…!今のカードか!!」

その時、遊作はブルーエンジェルがドローしたカードから嫌な気配を感じ取り、彼女自身も異変を感じる…そのカードがハノイの騎士が彼女のデッキに紛れ込ませたカードだったのだ。

 

 

『なに?今の感じ…?まぁ、いっか!貴方の場には攻撃力2200の「サルベージェント・ドライバー」がいて「ホーリーエンジェル」では攻撃できないけど…やりようはあるわ!墓地の「トリックスター・リンカーネーション」を除外して効果発動!墓地の「トリックスター・リリーベル」を特殊召喚!このモンスターは相手にダイレクトアタックできる!プレイメーカーにダイレクトアタック!さらに「トリックスター・ライトステージ」の効果で200ダメージよ!』

 

「ぐううっ!?(攻撃の威力が強くっ!?)」

 

《プレイメーカー!!》

違和感を振り払ったブルーエンジェルが遊作に攻撃を仕掛ける…そして、ハノイの力によって威力を増した一撃が遊作をDボードから投げ出した!

 

 

「まだ、だっ!はあっ!!」

 

《ふ、フゥ…!プレイメーカー危機一髪!!》

だが、遊作は怯まない…落ちる寸前にビルにしがみつき、さらにデュエルアンカーを飛ばす事でなんとかDボードの上へと飛び乗った!

 

 

『流石ね!「リリーベル」の効果発動!このカードが相手にダメージを与えた時、墓地の「トリックスター」を手札に加えられる!私はこれでターンエンドよ!』

 

 

「ハノイのカードを使わなかった…戦略か、それとも…デュエリストの無意識で危険を避けたのか…あのカードを使われる前に、デュエルを終わらせる!」

ハノイのカードを使わなかったブルーエンジェルを見ながら…プレイメーカーは勝利への方程式を賭けたカードをドローする…!

 

 

 

 

 

「オレのターン!ドロー!」

 

『この瞬間!「マンジュシカ」の効果発動!相手に200ダメージ!さらに「ライトステージ」の効果でさらに200よ!!』

 

《出た!またあのコンボだ!!》

 

「くっ…!」

再びバーンダメージが遊作のライフを削る、これで残りライフは800…だが、このピンチを覆す手段を彼は手にしている!

 

 

 

「いくぞ!ストームアクセスだ!!」

 

《待ってましたー!!》

遊作の呼びかけと共にデータストームが吹き荒れる…この逆境を覆す1枚はデータストームの中に眠っている!!

 

 

「うおおっ!!スキル!ストームアクセス!!」

データストームから新たな力を手にする遊作、その1枚は───

 

 

 

「現れろ!未来を導くサーキット!!召喚条件はサイバース族モンスター2体以上!!オレはリンク2の『リンク・バンパー』と『サルベージェント・ドライバー』をリンクマーカーにセッティング!サーキットコンバイン!!リンク召喚!現れろ!LINK-3!『エンコード・トーカー』!!」

それは遊作の手にした新たな力…重厚な鎧と盾を構える電脳戦士が現れる!

 

 

「バトルだ!オレは『ディフェクト・コンパイラー』で『リリーベル』を攻撃!!さらに速攻魔法『戦線撹乱』を発動!!」

 

『っ…この効果は…!?「リリーベル」を戦闘破壊、そして「マンジュシカ」の守備力分、「ホーリーエンジェル」の攻撃力を下げようって言うのね!?』

遊作の発動した速攻魔法の効果を確認したブルーエンジェルは相手の狙いに気付く。

 

『戦線撹乱』は相手のレベル4以下のモンスターを対象に効果を発動し、そのモンスターがフィールドを離れた時に撹乱カウンターを自分のモンスターに乗せる事ができる。

そしてカウンターを取り除く事で相手モンスター1体の攻撃力を相手の守備表示モンスター1体の守備力分ダウンさせるという効果だった…しかし、ここでブルーエンジェルもスキルを使う!

 

 

『スキル、トリック・スター・フロードを発動!相手ターンに「トリックスター」カードを墓地に送り、相手の手札が3枚になるようにドローさせる!これで「マンジュシカ」と「ライトステージ」の効果が発動!これで終わりよ!プレイメーカー!!』

スキルを絡めたコンボによって遊作のライフを削りきろうとするブルーエンジェル…だが…!

 

 

「それはどうかな…!『ディフェクト・コンパイラー』の効果発動!効果ダメージを無効にして、自身にディフェクトカウンターを置く!」

 

『ダメージが、ゼロ…!』

遊作はその一手を見切っていた…そして追い詰められたブルーエンジェルは……

 

 

 

『まだよ…!私にはこのカードが…!……っ?なに?このカード───?』

 

ドクン!!

 

「残ったのはハノイのカードか…」

 

《不味い予感…!!》

最後の手札に手を掛けるブルーエンジェル…そのカードに触れた瞬間、禍々しい波動が溢れ出した…!

 

 

「っ…ブルーエンジェル!!」

 

『うっ…あっ…!?私…わたし、は───【ハノイの騎士】…』

カードから溢れ出した波動にブルーエンジェルの自我が侵食されていく…そして、彼女は狂気に囚われる…!

 

 

『て、手札の「ダーク・エンジェル」を墓地に送り…効果発動───』

 

「やめろ!!」

 

ドクン!!バチバチバチィ!!

 

『きゃあああああ!?』

 

「ブルーエンジェル─!!」

ハノイのカード─「ダーク・エンジェル」…そのカードを使った瞬間、禍々しい黒雷がブルーエンジェルへと襲いかかった…!!

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「う、うわあああっ!?!」

 

「「「っ!?」」」

 

「うるさい!授業中ですよ!!」

 

「す、すいません…!?」

デンシティハイスクールの教室に島の悲鳴が響く…プレイメーカーとのデュエル中に突然悲鳴を上げたブルーエンジェルに驚いて声を上げてしまったのだ。

 

 

「島君、どうしたの?」

 

「し、白波…!ブルーエンジェルが…ブルーエンジェルがぁ…!!」

 

「また授業中にリンクヴレインズを見て───っ!これ、大丈夫なの…!?」

 

「わからねぇよぉ…!」

そして、たまたま隣の席に座っていた遊嗣が尋常ではない様子の島に声をかける…そして、画面の中のブルーエンジェルの様子に言葉を失った…。

 

 

《(ハノイの騎士が本格的に動き出したみたいだね…遊嗣やマシュに危険が及ばないといいけど…)》

 

 

 

Side OUT

 

 

 

『──「ダークエンジェル」の効果…!「リリーベル」をリリースする事で攻撃対象を別のモンスターに移し変える…!!さぁ「ホーリーエンジェル」に攻撃なさい!!さらにこの時、リリースしたモンスターの攻撃力分だけ「ホーリーエンジェル」の攻撃力はアップする!

 

「っ…!この瞬間!『戦線撹乱』の効果で撹乱カウンターを『エンコードトーカー』に乗せる!!」

明らかに正気を失ったブルーエンジェルがハノイの力を解き放つ…そこに明るく楽しげな彼女はいない、そこにいたのは──理性を失った狂戦士だった…!

 

 

ムダ…無駄無駄無駄ァ!!お前の負けだ!プレイメーカー!!

ドスの効いた声を響かせるブルーエンジェル…しかし、既に勝利の方程式は完成していた!

 

 

「『エンコードトーカー』の効果!このカードのリンク先のモンスターはバトルでは破壊されず、受けるダメージも0になる!さらに、このターン終了時まで『エンコードトーカー』の攻撃力は『ホーリーエンジェル』の攻撃力分アップする!!」

 

『なっ…!?』

それがエンコードトーカーの効果、相手の力をそのまま返す『護りの戦士』…だが…!

 

ドクン!!

 

『ぐっ…!?ぎゃああああ!!?

 

《っ…不味いぞ!これ以上暴走させたら精神ダメージでブルーエンジェル…財前葵は廃人になっちまう!!》

 

「っ…!なら、早くデュエルを終わらせる!!」

突如として悲鳴を上げ絶叫するブルーエンジェル…ハノイのカードによって凄まじい精神ダメージが彼女に襲いかかったのだ…!

 

無論、デュエルを見ていたSOLテクノロジー…財前晃はすぐに彼女をリンクヴレインズからログアウトさせようとした…だが、ハノイの騎士の妨害によってそれは叶わない…!

 

 

 

「ブルーエンジェル…!これで終わらせてやる!!『エンコードトーカー』で『ホーリーエンジェル』を攻撃!!ファイナル・エンコード!!」

『エンコードトーカー』自身による強化と『ディフェクト・コンパイラー』による強化、そして『戦線撹乱』による弱体…3つの効果による合せ技がホーリーエンジェルを斬り裂く…そして青き天使は舞い散る羽と涙と共にリンクヴレインズに散った…。

 

 

 

 

ブルーエンジェルLP0

 

プレイメーカーWIN!

 

 

 

 

 

「ブルーエンジェル!!」

デュエルは遊作の勝利に終わったが、彼の仕事は終わらない…遊作はDボードから投げ出されたブルーエンジェルを助け出し、人目のない森林エリアに彼女を寝かせる…。

 

 

《ハノイのプログラムはオレが喰う…!》

 

「っ…しっかりしろ!ブルーエンジェル!財前葵!!」

 

『────』

Aiが捕食形態となってブルーエンジェルを冒すハノイの騎士のプログラムを取り込む…しかし、彼女が目を覚ます事はなかった…。

 

 

「ダメか…!なら、現実世界に戻るぞ!」

意識を取り戻さない彼女の姿を見た遊作はリンクヴレインズからログアウト…現実世界の彼女のもとへと向かった…。

 

 

 

 

 

 

「1つ、今日、彼女は登校していた…!2つ、彼女はブルーエンジェルである事を隠している…3つ、授業中に現れたという事は…人目のつかない場所にいる…!!」

デュエル部の部室から飛び出した彼は校舎の中を探し回る…授業を抜け出したであろう葵は人目のつかない場所でリンクヴレインズにログインしたと考えて…。

 

 

 

「くそっ…ここでもないのか…!」

体育倉庫・無人の教室…様々な場所を探した遊作は屋上に飛び出す…だが、彼女の姿を見つける事はできないでいた…。

 

 

ブーッ……ブーッ……

 

 

「この音は…!っ…財前!!」

その時、スマホのバイブ音が微かに遊作に届く…彼女は屋上の片隅で涙を流しながら気を失っていた…。

 

 

「しっかりしろ!!っ…!!」

呼びかけに応えない葵…彼女を救う為に遊作は救急車を呼ぶしかなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…この事件が遊作を()()()()()に導く事を…この時の彼らは知らなかった…。



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剣と剣〜宿命の邂逅〜

こんにちは!S,Kです!

ハノイの騎士に操られ、昏睡状態に陥ってしまったブルーエンジェル…そしてその事件がついに運命の邂逅をもたらす…。

それでは、最新話をどうぞ!


「遊嗣さん、財前さん…大丈夫でしょうか…?」

 

「うん…学校で倒れて、未だに意識が戻ってないらしいし…心配だね…」

 

プレイメーカー対ブルーエンジェルのスピードデュエルから数日、遊嗣とマシュはデュエル部の仲間である財前葵を心配していた。

数日前、学校で倒れている所を発見された彼女は目を覚まさないまま、病院で眠り続けているのだ。 

 

 

「心配と言えばブルーエンジェルも…あのデュエルは()()じゃなかったよね」

 

「はい…私もネットに出回った動画を見ましたが……授業中に島さんが叫んでしまった理由がわかりました…」

そして、2人の話題は時同じくして姿を消してしまったブルーエンジェルについて移る。

彼女にとって念願だったはずのプレイメーカーとのスピードデュエル…しかし、その途中から彼女は正気を失い、翌日以降リンク・ヴレインズにも姿を見せていなかった…。

 

 

 

「……ロマン、ブルーエンジェルに何が起きたのか…何か分かる?」

 

《映像越しだから、確実な事は言えないけど…おそらく彼女は()()()()()()()()()()()に感染したんだ、それも普通のじゃない…リンクヴレインズのアバターから本人の体や精神にも影響を及ぼす………『電脳ウイルス』とでも言えるモノに》

 

「電脳、ウイルス…そんな恐ろしいモノを作れる…いや、作ろうと考えるのは…」

 

「……ハノイの、騎士…」

 

《……うん、かなり高い確率で…犯人は彼らだろう、おそらくSOLテクノロジーや…プレイメーカーも気付いているはずだ》

遊嗣はデュエルディスクに宿るロマンに事件について尋ねる、そして返ってきたのは…あまりにも恐ろしい答えだった。

 

 

《ハノイの騎士は彼らの目的の為に本格的に動き始めたらしい…遊嗣達も注意しなきゃダメだよ?》

 

「うん…!気をつける…!」

ハノイの騎士の恐ろしさを改めて認識した遊嗣とマシュはロマンの言葉に頷いた…。

 

 

 

 

《それはそれとして…少し急がないと遅刻するよ?》

 

「へっ…ああっ!?急ごうマシュ!!」

 

「は、はい!!」

しかし、シリアスな空気になったのは僅かな事、時刻を確認した遊嗣達は慌てて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

Side遊作

 

 

 

『葵…葵!!』

 

「ご家族の方ですね?彼女はこれから検査室に入ります、心配なのはわかりますが…」

 

『っ…葵…!どうして…!!』

時間は少し巻き戻る…財前葵が遊作に発見され、病院に運び込まれた直後、兄である財前晃が駆けつけたが…葵は目を覚ます事なく、精密検査の為に検査室に運び込まれた…。

 

 

 

『キミが、知らせてくれたのか?』

 

「…はい、屋上で倒れていたのを見つけました」

 

『そうか…礼を言うよ』

葵が運ばれていき、冷静さを取り戻した晃…彼は葵を見つけた恩人──遊作に話しかけ、礼を伝える。

 

 

『こんな事を聞くのもなんだが、キミと葵は──』

 

「ただの同級生です」

 

『そうか…ああ、名前を教えてもらって良いかな?』

 

「藤木、遊作と言います」

 

『そうか…ありがとう』

ありきたりな会話をして…晃と遊作の初接触は終わった。

 

 

 

………

 

 

 

「…Ai、ブルーエンジェルに何が起きた?」

 

《彼女はハノイのカードを持っていた…そのカードに汚染されたんだろう》

 

「……彼女は、どうなる」

 

《さぁ…わからねぇ》

 

「……そうか」

Aiに葵が倒れた原因を尋ねる遊作、だが…明確な答えは得られず、彼は静かに顔を伏せた…。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

「それでは今日のデュエル部の活動は…うん、1年生のマシュさんと白波君!2人にデュエルをしてもらおうかな?デュエルをする事で相手を知る…それが大切な事だと7代目決闘王の九十九遊馬さんも言っていたからね、島君はひとまず見学しててね」

 

「「はい!」」

 

「は〜い…」

放課後のデュエル部、今日はその活動の一環として部員同士のデュエルをする事になった。

なお、遊作と療養中の財前葵は欠席、ブルーエンジェルロスの島は落ち込み気味である。

 

 

「それでは、早速リンクヴレインズに──」

 

「あっ、部長…今のリンクヴレインズは止めた方がいいっす…プレイメーカーとブルーエンジェルのデュエルのせいで記者がいっぱいで…だいぶ()()()なってるみたいです…」

 

「むっ…そうらしいね…では、校庭でのソリッドビジョンデュエルに変更しよう!」

島からの情報を聞いた部長達は校庭へと繰り出した。

 

 

 

 

『遊嗣さん!胸をお借りします!』

 

「うん!今日は楽しくやろう!」

校庭で向かい合うマシュと遊嗣…2人はお互いにリラックスした様子である。

 

 

「マシュ、今回のルールは()()()()()()()()()()()で大丈夫?」

 

『はい!やっぱり、このルールの方が自由度が高いですし!』

 

「そうだね!」

 

 

 

現在、DM世界には大まかに4つのルールが存在し、デュエルの場面によって使い分けられている。

 

1つ目は『プロト・マスタールール』

DM世界におけるスタンディングデュエルに適用されるルール。これは従来からの融合・シンクロ・エクシーズの召喚法に加え、近年に開発されたリンク召喚の扱い方を探る為のルールであり、エクストラモンスターゾーン以外にもエクストラデッキのモンスターを召喚できる。

 

2つ目は『ライディングデュエル・ルール』

DM世界においてライディングデュエルを行う際に適用される。

「スピード・スペル」を使用する『スピード・ワールド3』Ver.と近年開発されたライディングデュエルにおいても通常の魔法カードを使う事ができる『スピード・ワールド・ネオ』Ver.の2つが存在するが、『プロト・マスタールール』とは概ね同じルールとなっている。

 

3つ目は『リンクヴレインズ・エキスパートルール』

これはSOLテクノロジー社が運営するリンクヴレインズにおけるオリジナルルール…エクストラデッキのモンスターは基本的にエクストラモンスターゾーンにしか召喚できない、リンク召喚に特化した形のルール

 

最後に4つ目、『スピード・デュエル』

最近になってリンクヴレインズで復活したという特殊形式のルール。

初期手札は4枚、メインフェイズ2はなし、モンスターゾーン、魔法・罠ゾーンが3枠ずつ、先攻ドローなし、という速さに特化したデュエルルールである。

一番の特徴はプレイヤーが任意で発動できる『スキル』の発動が許されている事だろう。

 

 

 

 

「それじゃあ…いくよ!」

  

『はい!!』

遊嗣とマシュはお互いにデュエルディスクを展開…リアルソリッドビジョンによってカードゾーンが生み出される!

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

マシュLP4000

遊嗣LP4000

 

マスターデュエル

 

 

『先攻は貰います!私のターン!』

『「聖騎士ガラハド」を召喚!』

白銀の鎧を纏う騎士が現れる! ATK1500

 

 

『そして装備魔法「天命の聖剣」を「ガラハド」に装備します!』

ガラハドが名もなき宝剣と純白の盾を構える!

 

『カードを1枚セット、ターンエンドです!』

マシュLP4000

 

ガラハド(天命) 伏せ1 手札3

 

 

 

 

『(そういえば…遊嗣さんはどんなデッキを使うんでしょうか…?リンクヴレインズで使ったデッキはお父様から渡されたデッキ、という話でしたが…)』

遊嗣のターンを前にマシュはふと考える、遊嗣がリンクヴレインズで使った『星杯』『クローラー』はロマンを経由して遊嗣の父である遊海から渡されたデッキである。

 

しかし、それ以前に遊嗣が使っていた()()()()()()があるはずなのだ。

 

 

『(遊嗣さんはすごい実力を持っています……とにかく、様子を見ます!)』

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「僕は手札のカードを()()セット!ターンエンド!」

 

『ええっ!?』

遊嗣LP4000

伏せカード5 手札1

 

 

 

『セットカードが5枚…!?(いったい何を狙って…!過去のデュエリストでデッキを罠カード主体で構築したり、バーンデッキで伏せカードが多いというデッキは聞いた事がありますが…!?)』

 

「ははっ、迷ってるね?これはちょっと面白い動きをするデッキなんだ!」

遊嗣の思わぬ一手に戸惑うマシュ…その様子を見た遊嗣はイタズラっ子のように笑っている。

 

『ここは…慎重に攻めます!!』

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「湖の乙女ヴィヴィアン」を召喚!』

聖剣を腕に抱く水色のドレスを着た女性が現れる! ATK200

 

 

『私はレベル4の「ガラハド」にレベル2の「ヴィヴィアン」をチューニング!!』

乙女がその身を緑色の輪に変えて聖騎士を包み込む!

 

4+2+6

 

『湖の乙女に育てられし騎士よ!その無毀なる力で戦場を切り開け!シンクロ召喚!レベル6!「魔聖騎士皇ランスロット」!!』

黒き鎧を纏う黒髪の男…円卓最強の騎士が現れる! ATK2100

 

 

『そして「ガラハド」がシンクロ素材になった事で墓地に送られた「天命の聖剣」の効果発動!このカードを「ランスロット」に装備!さらに「ランスロット」の効果発動!シンクロ召喚に成功した時、デッキから「聖剣」装備魔法1枚を自身に装備できます!デッキから「聖剣アロンダイト」を装備!』

黒き騎士が純白の盾と不毀の聖剣を構える!

 

『さらに!私は装備魔法「聖剣ガラティーン」を「ランスロット」に装備!攻撃力が1000ポイントアップ!』

ランスロットの腰に太陽の聖剣が携えられる!

 

ランスロットATK2100→3100

 

 

『そして私は「聖剣アロンダイト」の効果発動!「ランスロット」の攻撃力を500ダウンさせて、遊嗣さんの伏せカード1枚を破壊します!』

湖の騎士が遊嗣の伏せカードを両断する!

 

ランスロットATK3100→2600

 

 

「ここだ!破壊されたセットカード『アーティファクト─カドケウス』の効果発動!相手ターンにセットされたこのカードが破壊され、墓地に送られた時!このカードを特殊召喚できる!」

 

『っ!魔法・罠ゾーンに伏せられるモンスターカード!?』

両断されたカードが光の粒子となり、遊嗣の場にオレンジ色のエネルギーが輝く杖が現れる! DEF2400

 

 

『でも、「ランスロット」の攻撃力はその守備力を上回っています!バトル!「ランスロット」で「カドケウス」を攻撃!アロンダイト・スラッシュ!』

 

「その瞬間!速攻魔法『アーティファクト・ムーブメント』を発動!フィールドの魔法・罠カード1枚を破壊する!その効果で僕は自分の伏せカードを破壊する!そして、自分のデッキから『アーティファクト』モンスター1体を自分の魔法・罠ゾーンにセットできる!僕は『アーティファクト─モラルタ』をセット!」

 

『自分の伏せカードを…もしかして!?』

 

「その通り!相手ターンに破壊された『アーティファクト─ベガルタ』の効果!自身を特殊召喚!」

コアを中心に赤いエネルギーが輝く大剣が現れる! DEF2100

 

「そして『カドケウス』の効果発動!相手ターンに『アーティファクト』モンスターが特殊召喚される度に1枚ドローできる!さらに『ベガルタ』の効果発動!自分の魔法・罠ゾーンのカード2枚まで破壊できる!」

ベガルタのコアからエネルギー体の人型が現れ、遊嗣の伏せカードを両断する! 

 

遊嗣手札1→2

 

 

「破壊された『アーティファクト─モラルタ』と『アーティファクト─アキレウス』の効果発動!自身を特殊召喚!」

コアから青いエネルギーが流れる剣と紫色のエネルギーが流れる盾が現れる! ATK2100 DEF2200

 

「『カドケウス』の効果で2枚ドロー!さらに『モラルタ』の効果発動!このカードが特殊召喚に成功した時、相手のカード1枚を破壊できる!『聖剣』装備魔法は破壊されても、『聖騎士』モンスターに再び装備される…でも、その効果は1ターンに1度だけ!『天命の聖剣』を破壊!」

 

『っ…!知っていたんですね…!』

青の剣を操る人型がランスロットから聖剣を払い落とす!

 

遊嗣手札2→4

 

『でも、この攻撃は防げません!』

 

「いいや!『アキレウス』が特殊召喚に成功したターン、相手は『アーティファクト』モンスターを攻撃対象にできない!僕のフィールドには『アーティファクト』しかいないから、マシュは攻撃できない!」

 

『…すごい…!』

斬りかかろうとするランスロットの前に巨大な盾が立ち塞がる!

 

『私は…これでターンエンドです!』

マシュLP4000

ランスロット(アロンダイト ガラティーン) 伏せ1 手札2

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「僕はレベル5の『ベガルタ』と『アキレウス』でオーバレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

二振りの剣が光となって銀河に飛び込み、大爆発を起こす!

 

「エクシーズ召喚!現れろ!ランク5!『アーティファクト─デュランダル』!!」

赤と青のコアを持ち、二色のエネルギーが流れる大剣が現れる! ATK2400

 

「僕はカードを4枚セット!ターンエンド!」

 

遊嗣LP4000

デュランダル カドケウス モラルタ 伏せ5 手札1

 

 

 

「おいおい白波!せっかくエクシーズモンスターを喚んでも、『ランスロット』の攻撃力は2600…すぐに破壊されちまうぞ?」

 

「そうなんだけど…まぁ、見てて!」

エクシーズ召喚を行ってターンを終えた遊嗣を見た島が声をかける…モンスター数では遊嗣の有利だが、攻撃力ではマシュのモンスターが上回っている…それを破る方法は…。

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

「スタンバイフェイズに『聖剣ガラティーン』の効果が発動…『ランスロット』の攻撃力が200ダウンします…!」

太陽の聖剣から魔力が失われ、ランスロットの攻撃力がダウンしてしまう…。

 

ランスロットATK2600→2400

 

 

「白波の奴、この効果を見越してたのか…!」

 

『でも、まだ戦う手段はあります!手札の「聖剣クラレント」を「ランスロット」に装備!』 

ランスロットが眩き銀の宝剣を手にする!

 

 

『「聖剣クラレント」の効果発動!自分のライフを500払う事で、装備モンスターはダイレクトアタックできます!!バトル!「ランスロット」で遊嗣さんにダイレクトアタック!』

自分のライフを糧にマシュはダイレクトアタックを仕掛ける!

 

マシュLP4000→3500

 

「その時!速攻魔法『報復の隠し歯』発動!このカードは自分または相手の攻撃宣言時、自分のセットされたカード2枚を破壊する事で相手モンスターの攻撃を無効にする!」

 

『そんな!?』

デュランダルが聖剣を受け止める!

 

「そして、この効果には続きがある!発動の為に破壊したカードにモンスターが含まれていた時、そのモンスターの守備力以下の攻撃力を持つ相手モンスターを全て破壊し、このターンのエンドフェイズになる!僕が破壊したのは『アーティファクト─アイギス』と『アーティファクト─フェイルノート』!『アイギス』の守備力は2500…つまり『ランスロット』は破壊される!……あれ?僕がやるの!?とりゃ!!」

 

『きゃあ!?』

隠し歯のカードからロングソードが飛び出し、遊嗣の足元に突き刺さる…それを見て察した遊嗣はロングソードを引き抜き、ランスロットへと斬りかかった!

 

「そして破壊された『アイギス』と『フェイルノート』は特殊召喚される!」

黄色のエネルギーを宿す盾と緑色のエネルギーを宿す弓矢が現れる! DEF2500 ATK2000

 

『っ…私は、ターンエンドです…』

 

マシュLP3500

伏せ1 手札2

 

 

 

「僕のターン!ドロー!」

「バトル!『フェイルノート』でマシュにダイレクトアタック!」

 

『きゃっ…!』

マシュの足元に緑色の矢が突き刺さる!

 

マシュLP3500→1500

 

 

「『デュランダル』で終わり!」

 

『っ…きゃう!?』

デュランダルを振るう人型がマシュに肉薄、手刀でマシュの頭を優しく叩いた………剣はどうした。

 

 

マシュLP0

 

遊嗣WIN!

 

 

 

 

 

 

『ああ…負けちゃいました…』

 

「マシュ、大丈夫?」

 

『はい…やっぱり遊嗣さんは強いですね!』

デュエルが終わり、頭を擦っていたマシュに遊嗣が駆け寄る…マシュは悔しそうではあったが、明るい表情だった。

 

 

「マシュ、『聖騎士』デッキって…『聖騎士王アルトリウス』がエースのデッキじゃなかったっけ?」

 

『あ、はい…実はイギリスだと「聖騎士アルトリウス」や「聖騎士王アルトリウス」などの人気が高くて、なかなか手に入らないカードなんです…他の円卓の騎士はそうでもないんですけど…』

 

『そっか…イギリスはアーサー王伝説の本場だもんね…ごめん、悪い事聞いちゃって…』

 

『気にしないでください!このデッキは父のお下がりなので!もっと使い熟せるようにならないと…!』

イギリスにおいて『アーサー王伝説』は日本で言う『桃太郎』や『金太郎』レベルの知名度を誇る英雄譚…それをモチーフとした『聖騎士』のカード達もその影響を受けているのである。

 

 

 

『それが遊嗣さんの本来のデッキなんですか?』

 

「うん!…まぁ、僕が使ってきたデッキの中でも使いやすいデッキを3つ、常に持ち歩いてるんだ…それでも魂のデッキじゃないんだけど…」

 

『そうなんですか…早く運命の1枚に出会えると良いですね!』

 

「うん…ありがとうマシュ」

マシュに3種類のデッキを持ち歩いている事を明かす遊嗣…そんな彼が納得できるデュエルができるようにマシュは祈るのだった…。

 

 

「あ…!?ああ〜っ!?!?」

 

「わっ!?島君!?」

 

『どうしたんですか!?』

その時、デュエルディスクを見ていた島が突然大声を上げる…いきなりの事にびっくりした遊嗣とマシュは思わず声を掛けた…。

 

 

「り、リンクヴレインズに…ぶ、ブルーエンジェルが帰ってきた!!」

 

「『本当!?/本当ですか!?』」

それは先日のデュエルから姿を消していた青の天使の復活を告げる知らせ……だった?

  

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊作

 

 

「電脳ウイルス、か…」

 

「そんなモノをハノイの騎士が開発しているとしたら…相手には常識外の頭脳を持った奴がいる、という事になるぞ…!」

同じ頃、キッチンカー『cafe Nagi』のハッキングルーム、そこでブルーエンジェル/財前葵に起きた事態を探っていた遊作達は病院のカルテやAiの証言からハノイの騎士が『電脳ウイルス』という常識外のコンピューターウイルスを使用した事を知り、その対応に頭を悩ませていた…。

 

 

「Ai、そのウイルスは消せるのか?」

 

《う〜ん…除去プログラムがあれば消せるかも?まぁ…持っているとしてもハノイの騎士だから、簡単には手に入らないと思うけど…》

 

「そうか…」

草薙の問いかけにAiが答える…未知のウイルスならば、それを消せるのは開発者であろうハノイの騎士のみ…だが、それは簡単な手段ではない。

 

 

 

《それか……『鋼の騎士』を頼るか、だな!アイツならなんでもできそうだぜ?》

 

「──鋼の騎士?誰だ、それ?」

 

《えっ、知らないの?ネットワーク世界のヒーロー…正義の味方って奴だ》

Aiの思わぬ言葉に遊作が問い返す…遊作は『鋼の騎士』について知らなかったのだ。

 

 

「鋼の騎士…噂なら聞いた事がある、リンクヴレインズや他のネットワークで悪事を働くハッカーやならず者をデュエルで制圧するネットヒーロー…噂によれば彼の手で10以上のハッカー集団が壊滅させられた、なんて話もあるな…ただ、彼の痕跡はネットには残ってない…本当に『都市伝説』の存在さ」

 

「……鋼の騎士…」

鋼の騎士、その話を聞いた遊作の脳裏には…幼い頃に見た、大きな輝く背中が過っていた…。

 

 

 

 

 

『プレイメーカー!私の声が聞こえているかしら?この前はよくもやってくれたわね!!』

 

《えっ…ブルーエンジェル!?》

その時、リンクヴレインズの様子を映していたモニターから少女の声が響く。

それは昏睡状態にあるはずのブルーエンジェルの声だった…彼女がリンクヴレインズに姿を見せたのだ。

 

 

 

『この映像を見てるなら出てきなさい!そして、もう一度デュエルよ!!』

 

「これは──()()だ、財前葵は病院で眠ってる」

 

《お〜!?って事は…またハノイの奴か…?》

 

「いや…SOLテクノロジーという事も考えられるな…」

再びプレイメーカーに宣戦布告するブルーエンジェル…だが、本物の彼女は病院で眠っている…つまり、リンクヴレインズにいる彼女は()()だと遊作達は気付いた…そして、その偽者を用意した相手の正体も…。

 

 

「……会いに行ってくる」

 

「ちょっと待て遊作!こいつはあからさまな()だぞ!?」

 

「わかってる…だが、オレはいかなきゃならない…1つ、ブルーエンジェルは眠り続けている…2つ、ハノイの騎士の罠なら…必ず治す方法を知っている、そして3つ…SOLテクノロジーの罠なら、ブルーエンジェルに何が起きたのかを伝える…それが、オレの()()だ…!」

それは遊作なりのケジメ…彼は自身の復讐やハノイの騎士との戦いに無関係の人々を巻き込む事を避けていた…しかし、それが元となってブルーエンジェルはハノイの騎士との因縁に巻き込まれてしまった…ならば、遊作は彼女を救う責任があると考えたのだ。

 

罠を仕掛けたのがハノイの騎士でもSOLテクノロジーでも関係ない…彼はブルーエンジェルを救う手掛かりを見つける為、リンクヴレインズへと飛び込んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

『来たわね、プレイメーカー』

リンクヴレインズ内にあるとあるビルの屋上、遊作はブルーエンジェル(?)が待つその場所に降り立った…。

 

 

《う〜ん?どうもコイツからはハノイの()()がしないな…?という事は…?》

 

「……お前は誰だ?お前がブルーエンジェルではない事はわかっている」

 

『あら、もうバレてるの?喋り方がおばさん臭かったかしら?ちょっとショック…』

偽ブルーエンジェルからハノイの騎士の匂いを感じない事を伝えるAi…それを聞いた遊作は偽ブルーエンジェルに問いかける、返ってきたのは演技がかった溜息だった。

 

 

 

『……まぁ、仕方ないわ…悪いけど、あなたを捕まえるわ!力づくっていうのは私の趣味じゃないんだけど!!』

 

キン──!

 

「っ!?う、動けない…!?」

 

《なんだ…!?こりゃ、やばいんじゃないか!?》

偽ブルーエンジェルが取り出した1輪の薔薇を遊作の足元に放り投げる…その薔薇は足元に吸い込まれ、凄まじい重圧を発生させ遊作達の身動きを封じる。

 

さらにそれだけではない、そのプログラムはリンクヴレインズ全体に広がっていき…偽ブルーエンジェルとプレイメーカー以外のアバター達を次々と強制ログアウトさせたのだ…!

 

 

「これは…っぐ!?うわっ…!?」

 

《おいおい…!リンクヴレインズ全域の罠って大袈裟すぎだろ!?》

関係のない人々が強制排除されたリンクヴレインズ、遊作達の周囲は赤色の水晶の檻に囲まれる…さらに、遊作は足元から飛び出した光の縄によって拘束されてしまった…!

 

 

『ふぅ…このプログラムを組むのに徹夜だったんだから…少しは褒めて欲しいわ……さて、一緒に来てもらうわよ、プレイメーカー』

 

「っ…!?」

難なくプレイメーカーを拘束してみせた偽ブルーエンジェル…彼女が指を弾くと遊作達は強制的に転移させられてしまった…。

 

 

 

………

 

 

 

《何処だ、ここ…あれは…!?》

 

「ブルーエンジェル…!」

遊作とAiは気付くと教会のような建物の中にいた…そして、その部屋の最奥…そこには意識を失ったブルーエンジェルのアバターが寝かされていた…。

 

 

『悪く思わないでね、その罠は誰にも解けないわ…私の雇い主以外はね』

 

「……お前の目的はなんだ?」

 

『ふふっ…お金で雇われる魅惑の美女、ってところかしら?』

光の縄が変化した巨大な悪魔の手に拘束される遊作…彼の前に現れた偽ブルーエンジェルが正体を現す。

そのアバターは前髪が紫色の銀髪に覆面で口元を隠した妖艶な女性…裏世界で『電脳トレジャーハンター』として有名なアカウント名『ゴーストガール』だった。

 

 

「雇い主は、SOLテクノロジーだな?」

 

《やっぱりそっちだよね》

 

『私の雇い主があなたに聞きたい事があるらしいのよ』

 

『……お前が、プレイメーカーだな?』

そして、そこに姿を見せたのはゴーストガールの雇い主…妹を救う為の情報を探していたSOLテクノロジーのセキュリティ部長、財前晃だった。

 

 

「オレ1人の為に、ずいぶんと大掛かりだな…!」

 

『お前を捕まえる為なら、どんな事でもするさ…私は財前晃、お前が傷付けたブルーエンジェルの兄だ…!』

 

《おいおい…お兄ちゃん、ずいぶんとお怒りのようだぞ…?》

姿を見せた晃に少し皮肉を言う遊作…だが、晃は意にも介さず遊作へと名乗る…妹を傷付けられた彼は冷静な判断ができないほどの激情を抱いていた…。

 

 

 

『貴様…あのデュエルで、妹に何をした…!妹はあのデュエルのあと、昏睡状態となりリンクヴレインズから抜け出せずにいる…!』

 

「お前は誤解している…オレは何もしていない、彼女はオレと戦う前からハノイのカードを持っていたんだ…!」

 

『嘘をつけ!妹がハノイと手を組む訳がない!』

 

「本当の事だ!手を組んだのか、騙されたのかは分からないが…彼女はハノイのウイルスに感染した!彼女を元に戻すには、ハノイからその『除去プログラム』を手に入れるしかない!お前の敵はオレじゃない!」

 

『そんな嘘が通用すると思っているのか…!?お前を八つ裂きにして真実を聞き出してやる!!』

 

ギン!

 

「ぐ、ぐううっ!?」

 

正直に真実を伝え、晃と交渉しようとする遊作…だが、妹を傷付けられた怒りで瞳が曇った晃は遊作の言葉を信じず、悪魔の腕で遊作を握り締める。

その痛みはスピードデュエルと同じく、遊作の精神に強い負荷を与えていた…!

 

 

 

《おい!暴力反対!!やりすぎだぞ!》

 

『黙れ!イグニス!お前は、我が社が回収する…!』

 

《なんでもかんでも力ずくか…!相当頭に血が昇ってるな!コイツは本当に何も知らないんだよ!》

 

『私を甘く見るな…!!早く喋らないと、全身が引きちぎれるぞ!!』

 

「ぐううっ!!」

 

《ああもう!悪人ヅラしやがって…!鋼の騎士でも助けに来てくれねぇかなァ!!》

冷静さを失っている晃はAiの言葉も聞き入れず、容赦なく遊作を締め上げる…その盲目さにAiは思わず愚痴を口にした。

 

 

 

 

キィン…バリバリバリ!!

 

 

「『『っ!?』』」

 

《なんだ!?本当に助けが来た!?》

その時、建物の天井を貫いて稲妻が落ちる…突然の事に驚愕する遊作達…そして、稲妻と共に姿を見せたのは──顔をヘルメットで隠した、赤い髪の男だった。

 

 

《あいつは…!?》

 

「リボルバー…!!」

 

『リボルバー…?』

 

『ハノイの騎士か…』

その男を見た遊作達の反応は三者三様…Aiの記憶を通じてその正直を知る遊作は警戒し、その正体を知らないゴーストガールは首を傾げ、財前は相手がハノイの騎士である事に気付くだけだった。

 

 

 

 

【プレイメーカーを離せ、この男の相手ををするのは…私だ】

 

『なにっ…そんな事はできん!!』

 

【そうか…お前は、私の力をみくびっているようだな…!】

ついに姿を見せたリボルバー…彼は財前にプレイメーカーの拘束を解くように命令する…だが、財前がテロリストであるリボルバーに従ういわれはない。

その様子を見たリボルバーは規格外の力を解き放つ…!

 

 

ギィン!!

 

 

『『なっ…!?』』

 

「データストーム!?」

 

【であっ!!】

頭上に手を掲げるリボルバー…彼を中心として突然データストームが発生する、そして彼は風…否、竜巻を操り…リンクヴレインズの建物に向けて力を解き放った…!

 

 

『嘘でしょ…!?』

 

『データストームを、自在に操るだと…!?』

 

【私がリンクヴレインズを破壊する事は容易い…だが、そんな事はどうでもいい…私の目的は1つだけだ】

リボルバーの解き放ったデータストームの竜巻によって周囲の建物が半壊する…その様子を見て戦慄する財前達にリボルバーは自身の目的を告げる。

 

 

【私の目的はたった1つ、プレイメーカーが持つAI…イグニスだ!】

 

『っ…だからと言って、渡せると思うか?』

 

【お前は私に従わざるを得ない…何故なら、我々がブルーエンジェル…お前の妹に電脳ウイルスを仕掛けた…あのウイルスは我々でなければ除去できない】

 

『なんだと!?』

 

「やはりか…!」

遊作の持つイグニス…Aiを狙うリボルバー…彼はプレイメーカーを誘き出す為にブルーエンジェルに電脳ウイルスを仕掛けたのだ…!

 

 

『何故、妹を狙う!』

 

()()()()()()()のだ、プレイメーカーの正義感を煽り、()()になるのなら…だが、()()()()()では効果が薄い…そこで、ブルーエンジェルを利用したのだ】

 

『葵を利用しただと…!!除去プログラムを渡せ!!』

 

【それはお前次第だ】

プレイメーカーを誘き出す為に利用されたブルーエンジェル…彼女を救う為に除去プログラムを渡すように迫る晃だが、リボルバーは条件を提示する。

 

 

【SOLテクノロジーセキュリティ部長、財前晃…お前の目的もイグニスを手にする事だったな?お前がこのままイグニスを回収すれば、SOLテクノロジーとしての役目を果たせるが…お前の妹が暗闇から目覚める事は一生なくなる…だが、もしもプレイメーカーが私に勝てば、除去プログラムをお前に渡そう…!】

 

『馬鹿な…!!正体も分からぬお前達に妹の未来を委ねるなど…!』

 

【道は1つだけだ!さぁ、選べ!お前自身で妹の未来を!!】

 

『くっ…!!』

それは二者択一の選択、会社の命令を優先してイグニスを取るか…家族の命を優先するのか…その答えは───

 

 

 

『晃…』

 

『………妹の命には、代えられない…!!』

 

 

キン──

 

 

《ふぅ…ヒドイ目に遭ったぜ…》

晃は妹の命を救う決断を選ぶ…そして、遊作達は悪魔の腕から開放された…。

 

 

 

【フッ…待っているぞ、プレイメーカー…!】

プレイメーカーが開放されるのを見届けたリボルバーは発生させたデータストームによってリンクヴレインズの空へと浮かび上がって行った…。

 

 

《……行くのか?強敵だぞ》

 

「オレは奴と戦う為に、ここまで来た…!」

Aiの問いかけに遊作は拳を握り締める…遊作の目的は『とある事件』によって失われた自身の記憶を取り戻し、自分達を苦しめた事件の首謀者達に復讐する事…このデュエルは手掛かりを得る為のチャンスなのだ。

 

 

 

 

『っ…プレイメーカー!信じて良いんだな?キミを…』

 

「……」

リボルバーを追いかけようとする遊作、その背中に晃が声をかける…真の敵が明らかになった事で晃は冷静さを取り戻していた。

 

 

 

『私はキミに酷い事をした…なのに、キミは私の……妹の為に、戦ってくれるのか?憎まれて当然の私の為に…』

 

「オレは、お前を憎んでなどいない…オレが憎むのは、ハノイの騎士だけだ」

 

『っ…!プレイメーカー…すまない、頼む…!!』

晃の言葉を背に受けて、遊作はDボードで飛び上がる…ハノイの騎士…その正体に迫る為に…。

 



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